衆議院

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第8号 平成19年4月11日(水曜日)

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平成十九年四月十一日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      新井 悦二君    伊藤信太郎君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      江崎洋一郎君    遠藤 宣彦君

      小川 友一君    小野 晋也君

      越智 隆雄君    大塚 高司君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      木原  稔君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      高鳥 修一君    中根 一幸君

      萩山 教嚴君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 洋平君

      御法川信英君    小沢 鋭仁君

      岡本 充功君    川内 博史君

      楠田 大蔵君    小宮山泰子君

      田村 謙治君    高井 美穂君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      鷲尾英一郎君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   財務副大臣        田中 和徳君

   総務大臣政務官      土屋 正忠君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  鈴木 正徳君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官付参事官)           井上 裕行君

   政府参考人

   (内閣府経済社会総合研究所景気統計部長)     舘  逸志君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局総括審議官)          中江 公人君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    西原 政雄君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      内藤 純一君

   政府参考人

   (総務省大臣官房総括審議官)           久保 信保君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (財務省大臣官房長)   杉本 和行君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           勝 栄二郎君

   政府参考人

   (財務省大臣官房参事官) 香川 俊介君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   松元  崇君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    石井 道遠君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    丹呉 泰健君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    篠原 尚之君

   政府参考人

   (国税庁次長)      加藤 治彦君

   政府参考人

   (国税庁長官官房審議官) 荒井 英夫君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           合田 隆史君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           御園慎一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長)    中村 吉夫君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房政策評価審議官)       中尾 昭弘君

   政府参考人

   (中小企業庁事業環境部長)            近藤 賢二君

   参考人

   (日本銀行理事)     稲葉 延雄君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十日

 辞任         補欠選任

  長崎幸太郎君     御法川信英君

同月十一日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     遠藤 宣彦君

  佐藤ゆかり君     新井 悦二君

  土井 真樹君     稲田 朋美君

  原田 憲治君     大塚 高司君

  小沢 鋭仁君     小宮山泰子君

  鈴木 克昌君     岡本 充功君

  馬淵 澄夫君     高井 美穂君

同日

 辞任         補欠選任

  新井 悦二君     篠田 陽介君

  稲田 朋美君     鈴木 馨祐君

  遠藤 宣彦君     越智 隆雄君

  大塚 高司君     原田 憲治君

  岡本 充功君     鷲尾英一郎君

  小宮山泰子君     小沢 鋭仁君

  高井 美穂君     馬淵 澄夫君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     高鳥 修一君

  鈴木 馨祐君     土井 真樹君

  鷲尾英一郎君     鈴木 克昌君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     佐藤ゆかり君

    ―――――――――――――

三月二十九日

 消費税の大増税反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四八五号)

 農地の相続税納税猶予制度の継続強化を求めることに関する請願(石井郁子君紹介)(第五〇一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第五〇二号)

 保険業法の適用除外に関する請願(近藤昭一君紹介)(第五〇三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五七九号)

 同(柚木道義君紹介)(第五八〇号)

四月三日

 消費税の大増税反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第六〇二号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六〇三号)

 庶民大増税反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第六〇四号)

 保険業法の適用除外に関する請願(石井郁子君紹介)(第六九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事稲葉延雄君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官鈴木正徳君、金融庁総務企画局長三國谷勝範君、金融庁総務企画局総括審議官中江公人君、金融庁検査局長西原政雄君、金融庁監督局長佐藤隆文君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長内藤純一君、総務省大臣官房総括審議官久保信保君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、財務省大臣官房長杉本和行君、財務省大臣官房参事官香川俊介君、財務省主計局次長松元崇君、財務省主税局長石井道遠君、財務省理財局長丹呉泰健君、国税庁次長加藤治彦君、国税庁長官官房審議官荒井英夫君、文部科学省大臣官房審議官合田隆史君、厚生労働省大臣官房審議官御園慎一郎君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長中村吉夫君、農林水産省大臣官房政策評価審議官中尾昭弘君、中小企業庁事業環境部長近藤賢二君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 きょうは、昨年来の懸案となっておりました、課題となっておりました一般質疑を実施できることにやっと至りました。きょう一日になろうかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、私からは、今並行して内閣の方で行われておるやに伺っております株式会社日本政策金融公庫法に関係して、少し尾身大臣にお尋ねしてまいりたいと思います。

 この事案は、申し上げるまでもなく、郵政改革、あの〇五年の総選挙の御党としての最大の、唯一の争点であった郵政論議の、まさに財投改革の出口をどうするかという議論だというふうに思っております。にもかかわらず、この議論が、当委員会での議論の場が、連合審査という形をとらない限りはないという今現状でございます。

 国会の運営でございますので政府に聞く話ではありませんが、どうぞ与党の皆様にも、これは当委員会ですぐれて議論すべき、値するテーマであるということを、きょう少しそのさわりのところができればなと思って、まだ連合審査の環境が整っておるわけではありませんが、お尋ねしてまいりたいと思っております。

 株式会社日本政策金融公庫と、新たに統合される四機関、国金庫それから中小公庫、農林、それとJBICになろうかと思いますが、これらの四機関の統合する前の、つまり現状の収入に占める財投の割合を見れば、多いところでは大体三割から四割依存しておる状況の中で、統合後も依然として、資金調達先としては、財投並びに財投機関債さらには政府出資、これらに依存をしなければ貸付原資が調達できないという状況なわけですね。

 これらを見る限りは、少なくとも出口の改革には値しないんじゃないかという感想を持ちますが、大変大上段からの切り口でありますが、まずは大臣の所感をお聞かせ願いたいと思います。

尾身国務大臣 関係の機関の統合につきましては、改革の一環としてこれを進めるわけでございますが、郵貯等の預託義務を廃止して、市場の規律のもとで財投債を発行して、真に必要な資金だけを調達する仕組みにする、これが一つであります。それから、政策コストの分析や、貸出先の特殊法人等における民間準拠の財務諸表を導入する、二つ目であります。三つ目が、特殊法人自身が政府保証のない債券である財投機関債を発行することでマーケットからの自主調達をするというような改革を進めまして、民業の補完や償還確実性について厳格な審査を行い、対象事業の見直しを行ってきたところでございます。

 その結果、いわゆる財投計画の規模は、ピーク時、一九九六年の四十兆円から、三分の一の十四兆円になったところでございます。

 そういう中におきまして、各機関が自主調達である財投機関債を発行して調達をする、こういうことになるわけでございます。

 したがいまして、今後とも、対象事業の重点化、効率化などを進めて、財投改革の着実な実施を図っていきたいと考えております。

古本委員 財投を管理し、そしてどこにどう運用するかということ、今後縮減をしていくという中にあっても、これは依然として大変大きな規模で残っておるわけでありまして、これの責任者はどなたなんでしょうか。

尾身国務大臣 財投改革は政府全体として決めたわけでございまして、そういう意味では政府全体が責任をとっているということでございます。

古本委員 では、具体的に担当局はどこになるんですか。

尾身国務大臣 財投関係の資金の調達等についての担当は、財務省の理財局でございます。

古本委員 財務省の理財局の中でこの運用を今後なされていくわけなんですね。

 委員長のお許しをいただいて資料をお配りしたいと思いますが、今回統合する四機関のいわゆる資金調達の中身を見る限りは、財投融資の依存度が今大体二割から少しあるというふうに言いましたが、これは各公庫によって差があります。そういう差がある中で、今後これをさらに絞っていくというお考えでいいんでしょうか。

尾身国務大臣 現在の例えば国民金融公庫とか中小企業金融公庫とか、それぞれの財投機関債も出しているわけでございまして、今度は一つの機関になるわけでございますから、そういうふうになった場合でも、資金調達についてはしっかりとできるように私どもとしても頑張ってまいりたい、取り計らってまいりたいと考えております。

古本委員 今資料をお配りいただいておりますので、先生方には届いた順からということで恐縮ですが、少なくとも財務省が所管されております例えばJBICや国金庫を見れば、資料の三の一になりますが、今大臣がおっしゃった財投機関債による資金調達依存度はわずかに数ポイントなんです。直近で見れば三ポイントから四ポイントの間でございまして、圧倒的多数は、そういう意味では残念ながら、三割から四割、財投のままなんですね。これが国金庫であります。

 国際協力銀行を見れば、これは資料の三の四になりますが、財投機関債の割合が八ポイント強ということで、これは国際協力銀行が、その性質から、その設立の使命、業務のミッションを考えれば、これは収益を上げなさいというミッションですから、多分機関債としての魅力があるのでしょうか、依存度が他に比べれば比較的高い。他方、財投割合は、シェアという言い方をしておりますが、大体一〇ポイントから二〇ポイント。それにしても、約二割は財投に依存している。

 数字の事実を少し申し上げましたが、それぞれ国金庫と国際協力銀行を比較したならば、その担っている使命が、これはあまねく国民全体の、中小零細を中心とした、民間ではなかなか貸していただけないような案件でも、将来に対する事業への投資や、あるいは経営を支えていく、支援をする等々、いろいろな意味合いがあって、比較的、民間ではできない部分を支えていこうという意味合いが国金庫の場合は強いんでしょう。他方、国際協力銀行は、似たような仕事をほかでもやっているのではないかという指摘もある中で、この資金の調達の割合になっております。

 そういう中で、続いて資料の二をごらんいただきたいわけでございますが、統合四機関の国庫納付金の推移ということで、今回四機関を統合する一つの目的に、これはせっかくのことなので国庫にも貢献しようじゃないかという切り口も入っておるやに伺っております。ところが、国際協力銀行は、御案内のとおりの規模で、もう既に貢献をされておられる。片や国金庫はゼロです。そうなんですね、国金庫は利益を出しなさいというミッションじゃありませんから。したがって、利益を出しなさいというミッションの国際協力銀行、JBICと、少なくとも、リスクがあってもお金が欲しいと言われている中小零細事業者を支えなさいというミッションでの国金庫とでは、これはいわば水と油の公的金融機関が一つになるという案なんですね。これは両方とも御省の所管ですよ。大臣の差配の下にある二つの公的金融機関でございます。

 ここを見ただけでも、今回の四機関を統合するということが、国庫に貢献するためにこういうことをしていくのか、あるいは、引き続き公的金融機関の担い手として、民間ではやらないような、中小零細、なかなかできないようなリスクをとるというようなことも、国の政府保証がついている資金調達なんですからやろう、そういうミッションをより強化していこうと。これは、実は水と油であり、全く二律背反する話でございます。

 この四つが一緒になったということについて、財投を今後出口の改革として小さく絞っていきたいと今大臣が言われましたミッション、これは郵政改革の出口論です。他方、公的金融機関の担う使命であるはずの、民間ではやれないようなところを、中小零細を少し支えていかなきゃいけないというところと、これは相矛盾するものが二つ一緒になるのが今回の統合なんです。

 さて、大臣にお尋ねいたします。

 財投改革の、あの暑いさなかでの郵政解散で御党が公約された、その後政府としても線を引かれ、そして具体的法案と出てきていますこの四公的金融機関の統合の法案でありますが、この最大の目的は何になるのか。これは、財投改革という意味合いから大臣の御所見をお尋ねいたします。

尾身国務大臣 JBICと国民金融公庫では、現実の問題として、中小零細企業に頻用している、言えば民間金融機関でなかなか受けにくいような金融までも、この中小零細企業を支えるというものまでやっている。中小公庫もそうでございますが、そういう形でやっているわけでございます。

 他方、JBICの方は、国際的な、例えばエネルギー確保とか資源確保とか国際友好の促進とか、そういう点でやっているわけでございまして、狭い意味での目的、業務等はかなり違っておりますけれども、しかし、国として一つの政策課題に沿って対応しているという点では共通でございまして、そういうものを統合することによって、例えば、役職員の縮減、共通経費の節減というようなことができる。

 そういうわけで、組織としてこれを統合して新しい日本政策金融公庫というようなものにしよう、こういうことでございまして、もとより、今までの四機関に分かれている業務の内容も、かなり違っている面もある、しかし共通の面もあるということで、共通の面を生かしつつ全体の出口の改革を進めていくというのが、今回のこの四機関の統合に伴う新公庫の創設であるというふうに考えております。

古本委員 大きな話と小さな話が多分一緒になって今お話をされているように受けとめました。

 大きな話というのは財投改革です。これの出口をどうしていくかという話です。小さな話は、四機関の統合により、人員の配置や、多分、支店網の統廃合とかそういったことを今示唆されたんだと思いますが、これはそんなに大きな効果が出るんでしょうか。

 この四機関の統合により、少なくともそのうちの二行は大臣の配下ですから、ぜひお尋ねしたいです。この四行を統合することによる人員的効果、削減効果と言った方がいいんでしょうか、効率化と言った方がいいんでしょうか、それから支店網の統廃合の効果というのはどのくらいあるんでしょうか。

尾身国務大臣 中小企業金融公庫それから国民金融公庫、農林金融公庫の三つは、日本じゅうの各地に、精粗の差はありますけれども、支店、事務所がございまして、統合効果が非常に明確に出てくるんじゃないかというふうに私は考えております。

 JBICについては、むしろ国際金融をやっているという意味におきまして、役職員の経費の節減等はかなりあると思いますが、業務の内容がほかの三つと比べてやや違ったところもあるというのが実情でございまして、これについては、今までの本来の国家としての必要な機能を果たしつつ、しかし、全体の共通部分については節減合理化をするという方向で、全体の改革の趣旨を生かしてまいりたいと考えております。

古本委員 それでは、少し質問の言い方を変えますが、今回の四機関の統合ということの目的は、この四行を統合すれば財投改革の出口の改革になるんだ、統合という手段が財投改革という目的達成の手段としてかなっているんだ、こういう理解でいいんでしょうか。

尾身国務大臣 全体としての財投改革といいますか、パブリックセクターをスリム化するという大きな目的からいうと、統合がプラスの方向に結果としてなるというふうに考えております。

古本委員 公的な機関を統合するということの、今の大臣のお言葉をおかりすれば、パブリックセクターを統合すること、スリム化する、ぜい肉を取ることのメリットはどういうことがあるんですか。なぜそんなことをしなきゃいけないんですか。

尾身国務大臣 業務の内容が似通ったところもございますし、それから、各地に支店といいますか事務所が、同じような場所に別の事務所があるわけでございますから、当然、これを一つの事務所にすれば、管理部門等の共通部門は同じものにできる。

 そういう点で、徐々に事務所の統一化みたいなものも進めますと、出口のスリム化には相当なるんだろうと思っております。

古本委員 今、大臣のお話の中に天下りの問題についてはお触れにならなかったようでありますが、今回統合する公的四機関への天下りの話と、それから、残り合計八機関、たしか政府系金融機関があったかに理解しております。この天下りの問題については、大臣はどういう感想を持っておられますでしょうか。

尾身国務大臣 天下りの問題については、現在政府・与党内で公務員制度の問題の一環として検討をしているわけでございますが、私自身は、この機関の役職員については、これは民間も同じだと思いますけれども、基本原則は、実力、能力等から見てベストな人材をそこに配置するという考え方で、そういう原点に立ち返って考えていくのが一番いいというふうに考えております。

古本委員 資料をごらんいただきたいんですが、六の一以降に少しおつけしました。今回、内閣の方でお取りまとめいただいた資料をそのまま添付いたしておりますが、政策金融機関の職員数に占める国家公務員出身者の比率ということであります。

 これは商工中金以下出ておりますが、各公庫によって、その比率といいますか割合が、まあ高低はありますが、恐らく、役職員、幹部職員を中心にそうなっておられるんだろう、それ以外の職員はプロパーの、それぞれに就職され、研さんされて今日に至っておられる職員の方々なんだろうというふうに、この数字から見れば拝察を申し上げます。

 ところが、めくっていただきまして、六の二以降でございます。

 大臣の所管されるJBIC以下でございますが、これは大変見事に、次官経験者か局長経験者、並びに、恐らくこれは筆頭審議官というんでしょうか、いわゆるナンバーツー審議官あるいは支分局長経験者の方々がずらっと並ぶんです。

 適材という言い方を大臣おっしゃられましたが、各公的な金融機関のかじ取りをなさる方々は局長経験者でなければできないということなんでしょうか。若くて有能な方が役所の中にもたくさんいらっしゃいますね。そういう方がばりばりとやられてもいいと思うんですが、少なくともこれは外形的に見ればそういうふうに見えるんですが、何かそういう内規のようなものでもあるんでしょうか。

尾身国務大臣 若いからいいとか高齢者だからいいとかいうことではないと私は思っておりまして、あくまでも、人物、識見、能力を総合的に考えて、適材適所でいくべきであるというふうに考えております。

古本委員 決して年齢に対して云々申し上げているわけじゃありません。それぞれ見れば、これはもう恐らく大臣も名前と顔が一致するような、多分御高名なキャリア官僚であった方々ばかりなんでしょう。こういう方々が今、少なくとも総裁以下、副総裁あるいは理事といった枢要なポストを占めておられるという現状。

 今後、大臣のおっしゃるところの大きな方の話、つまりは財投改革の出口の改革をしていかなきゃならないという、四機関を統合する新株式会社日本政策金融公庫なるものが、今後当委員会に、連合審査ができるのかどうか、ぜひお願いをしたいですが、その大きな話の改革をしていく人々が、実は出身が、もともとの財投を運用しなきゃいけない理財局の出身の方を初め大変大勢いらっしゃる、改革をしなきゃいけないと言っておられる大もとの入り口のところの出身の方々が、片や出口の改革をしなきゃいけないというこっちの方でも役者が一緒だというキャスティングの中で、大臣が言われるような本当の大きな観点での改革ができるのかと疑問を感じるんですが、感想をお尋ねいたします。

尾身国務大臣 新しい機関の経営の責任者につきましては、行革推進法におきましても、設立の目的及びその担う業務に照らして必要と認められる識見及び能力を有する者のうちから選任されるものとして、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されるようなことがないよう十分配慮するべきである、こういうふうに書かれているわけでございます。これを踏まえまして、新公庫の法案におきましても、定款の中に行革推進法の内容を経営責任者の選任の要件として記載いたしまして、これにふさわしい者を新公庫みずから選任し、そして主務大臣もこれをチェックするということにしているところでございます。

 このような法律の規定にのっとりまして、政策金融の実施機関である新しい公庫にふさわしい人選がなされるよう、主務大臣として適切に対応してまいりたいと考えております。

古本委員 そうしますと、今、任についておられる総裁以下、各公庫の幹部職員、役員の方々は、生まれ変わるわけでありますので、大臣の言われる大きな財投の出口改革を担う方々でありますので、少なくともこの方々ではこれまでできなかったわけでありますので、人心も一新される、刷新されるという理解でいいんでしょうか。

尾身国務大臣 私も今リストを見まして、知っている方もいるわけでございますけれども、行革推進法の規定、趣旨から見て、この人はこの趣旨に合わないなという人は、私の知る限りは現在のところおりません。かなりの能力の高さを持っているというふうに考えております。

 しかし、さはさりながら、新しい機関になったときに、先ほどの行革推進法の規定に沿ってふさわしい人材が選ばれるよう、しっかりと対応してまいりたいと考えております。

古本委員 再度おさらいします。

 今回のこの四機関の統合の目的は、公的な機関のスリム化、これは恐らくファシリティーですね、施設、支店とかいったそういうファシリティーを少し統廃合してその統合効果を求めていくという物理的、施設的な効果を恐らく大臣は言われた、これは何となく想像はできます。

 次に、人的な効果ということで申し上げれば、資料の一の一にもおつけいたしておりますが、総人件費、これは予算定員ベースなのかどうなのか、数字を少し内閣にもお尋ねしなきゃいけませんが、向こう五年間で五%削減ということも記載されていますね。ただ、これは自然減の部分もあるのかどうか、少し精査が要ると思いますが、こういう人員の削減努力もなさる、こういうことでありますが、今まで本省から、再就職あるいは出向、いろいろな形をとっているにせよ、幹部職員がずっと行って、それぞれの公的機関をいわば牛耳っておられるという実態がある中で、どなたかプロパーで入った人を削って、それでよしとするのか、あるいは、ともに痛みを分かち合ってこの削減を、パブリックセクターとおっしゃいました、よりスリムにして国民に対し範を示すのか、これはどちらになるんでしょうか。前者の施設面はもう少しいろいろなことがあるのかもしれませんが、まずは人的な面で御決意を聞きたいと思います。

尾身国務大臣 役職員の縮減につきましては、総人件費改革の中で、五年間で五%以上の人員の純減または人件費の削減ということにしております。そこの中においてどういう人材をどう使うかということは、あくまで、基本的に、この新しい機関の業務が本来の目的に沿ってしっかり行われるようにという基本的な立場から、適材適所の人材を考えるべきである。

 これが、どういう経歴であるとか、もちろん経歴も考えなきゃいけませんが、人材の適材適所、能力を基本に考えるべきであるというふうに考えているわけでございまして、どういう役職でなければならぬとか、公務員でなければいけないとか、あるいは公務員ではいけないとか、そういうことなしに考えていくべきだと考えております。

古本委員 ここまで半分の時間を要してこだわってまいりましたのは、実は、新たに四機関が統合されて一つの統合効果を目指していくということ自体は、恐らく行革推進法の趣旨に基づくものなんだろうと想像はいたしますが、その際に根っこのところから改革をしていこうと思いますと、それをかじ取りをする幹部の方々が、どういう価値観を持って、どういうしがらみを断ち切るのか、あるいはしょったままいくのかというのは、幾ら看板を新しくしても、キャスティングが一緒ということであればそのお店ははやらないと思うんですね。そういう思いを込めて少し尋ねてまいったんですが、資料の四をごらんいただきたいと思います。

 これは、今回統合される四機関、公的金融機関の現在の随契の状況でございます。国金庫で、随契割合は、件数、契約額ともに八割を超えています。農林公庫に至っては、随契の件数、金額ともに九割を超えています。それから、大臣の管理下にある、お手元にあるはずのJBICに至っては一〇〇%に近いです。

 さて、資料の七の一をごらんいただきたいと思います。

 公共調達の適正化、これは、大臣の前任でいらっしゃる谷垣大臣の時代に各省各庁に発信している、今後随契というものはやめていこう、そして、やむを得ない場合に至っても、七の二に記載していますとおり、総合評価方式を充実したり等々、まあ、これもいろいろ意見はあろうかと思いますが、やっていくということであります。

 法改正前と法改正後、つまり、特殊会社になる、株式会社日本政策金融公庫として新たに産声を上げる以降と今現在とで、この随契に関して、何か縛りは変わりますでしょうか。逆に、今は、当時の谷垣大臣通達のこの縛りは受けていないんでしょうか。

尾身国務大臣 確かにおっしゃるとおり、今まで、これらの機関の中における支出の中で随意契約はかなり多いわけでございますが、例えば国民金融公庫におきましては、店舗の賃貸借契約について、的確な物件を選定するという性格上あるいは目的上、競争入札には適さない場合、あるいはビルのオーナーが店舗の工事についての選定をするというような状況、あるいは海外プロジェクト、JBICの場合におきましては、国際的な専門性あるいは調査能力等々の観点からそういう結果となっているわけでございますが、今後とも、これらの社会情勢の問題や立場を踏まえまして、必要に応じて、入札を初めとする競争性のある契約に移行するよう、契約方法についても不断の見直しを行って、適切に対応していくように指導していきたいと考えております。

古本委員 本省のおひざ元では、財務省の会計課になるんでしょうか、発注に際しては、今後は厳に慎んで随契は控えていく、絞っていくという、数値目標に近いような相当な決意で臨んでおられるというふうに聞いておりますけれども、他方、理財局が運用している財投、その財投を貸し付けている融資先であるこれらの機関が、実は、借りてきたお金を随契で、相みつもとらずに、とったかどうかわかりませんが、少なくとも、随契ですから特命発注ですね。

 そういう状況の中で実に一〇〇%に近いような状況の随契を行っているというのは、何か本省の御努力がなかなか隅々にまで行っていない、もっと言えば、谷垣さんのこのお達しを無視なさっておられるんじゃないか、そのようにさえ感じるんですが、いかがでしょうか。

尾身国務大臣 これは、全体として、随契ではなしに競争入札の方向に行くべきであるという考え方は政府として決定をしているところでございますが、契約とか業務の内容によって随契の方が適切な場合も現実にあるわけでございますから、そういう内容をしっかり踏まえながら、全体としては競争入札をふやしていく方向で考えていく。そして、きっちりと現実対応をしながら、できるだけ、要するに安い価格でしっかりとした内容の業務をする、こういう基本原則に立って対応してまいりたいと考えております。

 そういうことで、随契あるいは競争入札についての政府の基本的な方針をしっかりと守りつつ、業務の適切な遂行を図っていきたいと考えております。

古本委員 今回、統合した暁には、これは特殊会社となるわけなんですが、過去、特殊会社となったのが幾つかございましたね、JR、JT、NTTさん。それらの民営化の際に、この資料の五につけております今般の株式会社日本政策金融公庫法の第三条、政府は、常時、公庫の発行株式数の総数を保有しなければならないという全株保有条項のようなものは、過去あったでしょうか。

鈴木政府参考人 全株式を政府が保有しなければいけないというような特殊会社はこれまでございませんでした。日本政策金融公庫が初めてでございます。

古本委員 つまり、今回できる新公庫は、限りなくこれまでどおりなんですよ。少なくとも政府の管理下にあるという意味ではこれまでどおりなんですよ。ところが、随契の割合を見れば、飛び抜けて高いんです。さすがに財務省の会計課でも、ここまで高い割合の発注は、恐らく財務省のすべての発注の中でもないと思います。

 新しく民間企業になっていくというのであれば、これはいろいろな選択肢があるでしょう。この第三条に込められた思いは、この公的機関を所管される大臣として、少なくともそのうちの二つは今大臣のお手元にあるわけでありますから、今後随契の割合を減らしていくという何か数値的な目標、半減させるとかそういうシンボリックなことをやっていく、象徴的なことをやっていくというような御決意なりがあればお聞かせ願いたいと思います。

尾身国務大臣 先ほど申しましたように、業務の内容、つまり、委託するあるいは購買する内容によりまして、どういうふうにするのが一番、簡単に言うと、安いコストでいい仕事をやっていただけるかということでございまして、そういう意味で、しっかりと実情を踏まえながら適切に対応してまいりたい。

 そういう中で、先ほど随契についての考え方も、基本原則は出ているわけでございますから、その基本原則を踏まえながらしっかりと対応してまいりたいと考えております。

古本委員 実は、財務省の広報予算というのを、さきの予算委員会が行われているあのさなかに、並行してお尋ねをさせていただきました。役所の皆様も、本当に、恐らく夜を徹してのいろいろな作業をしていただいたやに伺っております。

 そういう中で明らかになった事実、恐らく大臣の方にも情報は上がっておると信頼申し上げて少しお尋ねしますが、広報予算というのは、思い出したくもないですが、例の郵政のときに、いろいろな、滑った転んだの話がございましたね。非常にわかりやすい切り口だと思って、ただ一点、広報予算に絞ってお尋ねしました。ただ一点ですよ。

 その広報予算について財務省全体をお尋ねしたところ、年間で約十数億円あるそうです。十四、五億だったかに記憶していますが、もう簡単な話ですので資料はつけておりませんので、ちょっと先生方には申しわけありませんが、このうち、その半額、約七億規模を毎年ある特定の会社に発注されておられます。しかも、随意契約で発注されておられます。しかも、財投の出口の改革を担わなきゃいけないはずである理財局の国債募集の広告を担当されておられる係の発注です。一本で、財務省全体の発注額の、広報総予算の半分です。随契です。ことし限りとかいうならまだかわいいですよ。六年の長きにわたって毎年発注されています、ある特定の会社に。大臣は初めて聞いたんですか、この話。初めてですか。であれば、大臣に聞くのはちょっと気の毒な感じがいたしますが、そういう事実があるんです。

 したがって、新しくできる新公庫、これは一〇〇%政府が持つんです。第三条です。かつてJTでもJRでもNTTでも書かなかった一文が入っているんですよ。これは、すぐれてこの四機関は、公的な使命をより今後とも維持継続しなきゃいけないという背景が恐らくあるんでしょう。これは弊党としても支持している部分であります。国民の皆様に、なかなか担保がない、あるいは民間ならなかなか貸してもらえないというところをぜひこの公的機関に支えていただきたい、そういう思いからすれば、この三条の書きぶりは、読みようによっては、ある意味では頼もしく感じるかもしれません、政府保証がつくわけですから。

 だからといって、他方、財務大臣の谷垣さんからお達しが出ているんです、随契はもうやめようと。片や、どうですか、大臣のところの部下の皆さんが出向している、天下っている先の幹部をお歴々が占めている各公庫じゃないですか。そこの発注が、実に随契が九割を超えているんですよ、一〇〇%に近いところもある。

 大臣、この四機関の少なくとも随契の中身について、一度精査をするように事務方に指示してもらえないでしょうか。

尾身国務大臣 これらの機関について、先ほど申しましたような、例えばJBICの例で申しますと、外国の経済産業動向の調査あるいは海外プロジェクトについての調査委託等、特殊な専門性を要するものも多いということでありまして、各国別の非常にプロフェッショナルな方々がおられるわけでございまして、そういうことが随意契約の理由であるというようなことも聞いております。

 そういう中で、最近の社会情勢や先ほどの大きな立場を踏まえまして、必要に応じて実情をよく調査しながら、競争性のある契約に移行するようなことを考えていきたい。そういう意味で、内容の絶えざる見直しを行っていく。そして、一番安くていい仕事をやっていただくような体制をつくることは当然のことでございますが、こういうために不断の見直しを続け、必要な改正を進めていきたいと考えております。

古本委員 これは民間企業ならこんなことは言わないんですよ。これは全部財投が入っている会社じゃないですか。あるいは政府の出資のある会社じゃないですか。財投機関債ももちろんありますよ。でも、その財投機関債も、ポートフォリオでどこが引き受けているかというのを精査したら、公的資金が注入されているような機関投資家が大体買い支えているわけでしょう。ここでごりごりはやりませんが、そうなっていますよ。

 その中で、例えば大臣の配下にある国金庫で六十億、JBICで八十億、これは、ほぼ八割、九割以上随契で発注しているわけです。

 この発注した先の会社にさらに天下っているということはないですね。

尾身国務大臣 発注した会社に天下っている人はいないかという質問をしてみました。

 現在のところ、いないという答えでございました。

古本委員 では、それらを資料でいただけますように事務方にぜひ指示してください。ということを、大臣、約束してください。

尾身国務大臣 そういう資料を出すことが適当かどうかも含めまして、検討させていただきます。

古本委員 委員長にお諮りします。

 これが今後連合審査になるかどうかは、ぜひ連合審査にしなきゃいけない事実がだんだん明らかになってきておるとおりでありますので、ここで議論しております資料は、当委員会としても理事会でお諮りいただきたいと思います。

伊藤委員長 ただいまの古本君の御要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

古本委員 再度整理をしたいと思います。

 今回の四機関の統合による新株式会社日本政策金融公庫法の趣旨は、財投改革の出口の改革である、これは正しいでしょうか。大臣、そういう理解でいいですか。

尾身国務大臣 これは、先ほど来申し上げておりますように、統合することによってコストあるいは人員の縮減を図って、よりスリム化する、そして同時に、本来国のために果たすべき役割はきちっと果たしていただくということで考えていくべきであると考えております。

古本委員 そういたしますと、財投改革の出口改革である、大きな柱である、入り口を絞って出口も絞るという、財投の使い先になっていた、資金需要があったところを改革するという大きな話は、この法案を幾ら議論しても成就はできないということなんでしょうか。

尾身国務大臣 財投の改革を、スリム化をしながら、しかし、政策的なニーズには対応するということで考えているわけでございまして、少なくとも、これがスリム化である、無駄な経費の縮減に通じるものであるという意味では、大きな財投改革の方向の一環として、それに沿ったものであると考えております。

古本委員 今の大臣のお話は僕はよくわかります。これは決して全否定しているのじゃなくて、確かなまず改革の一歩には多分なるんでしょう。ただ、甘いということなんだと思います。

 その理由は、少なくとも人員それから支店網の統廃合による縮減効果、いわゆる経費の削減効果というのは、では大臣、今総額幾らを想定しているとお答えできますか。統合後の初年度が幾らで、例えば向こう五年間で大体これぐらいの数値目標があって、十年後、大体ランニングしていって、安定飛行に入ったら大体このぐらい国庫への貢献並びにいろいろな販管費の縮減を行って経費節減をやる、その数字、これぐらいですと今言えますか。多分ないんですよ。内閣に聞いたら、ないと言ったんです。

 ないと言っていることを、大臣、聞かれていますか。

尾身国務大臣 財投改革は、例えば国民金融公庫や中小企業金融公庫が行っている、中小企業を支え、それを活性化するという業務の基本的な目標は国としてきちっとやっていただかなければならない。同時に、不必要な経費や人員を縮減して、スリム化して国全体の負担を減らしていかなければならない。こういうことであるというふうに考えております。

 したがいまして、そういう意味で、統合する形において、五年間で五%以上の人員の純減あるいは人件費の削減をするということは非常に大変なことでございまして、そういうことをやるということは政府として決めているわけでございますから、大きな財投改革を進める上で非常にプラスになるものである。これは何も意味がないではないかということには決してならないと考えております。

古本委員 意味がないとは言っていません。甘いんじゃないかと指摘しているだけであります。

 ちなみに、この五%の縮減というのは、俗に役所の人が使われる言葉の、生首をとるという五%なんですか、それとも退職による自然減なんですか、予算定員の減なんですか、どれなんですか。

尾身国務大臣 人員の削減については、必要な業務はきちっとやりながら無駄を省いていくということでございます。

 では、五%がだめで、五〇%削減したらいいではないか、あるいは七〇%削減したらいいではないかという議論も議論としてはあるわけでございますが、本当にそれで業務がやれるかという問題もあるわけでございまして、私どもとしては、きちっと業務がやれるということを確認しつつ不必要な人員を削減するということでございます。

 したがいまして、削減目標は多ければ多いほどいいというものではございませんで……(古本委員「そんなこと聞いていませんよ」と呼ぶ)きちっと我々として責任を持って、業務をやりながら、しかし不必要なものを削減する、こういうことで決めたわけでございますから、そういう点での我々の決意、それからまたこの改革の有意義性というものはぜひお認めをいただきたいと思います。

古本委員 五%の絶対値が高い低いは言っていません。五%の中身は純減とおっしゃいますけれども、予算定員の削減なのか、いわゆる行政用語でたまに使っておられる生首なのかとお尋ねしたのです。

鈴木政府参考人 事実関係について御説明申し上げます。

 先ほどの五%でございますけれども、五%は、これは定員の削減でございます。

古本委員 その五%というのは、幹部職員も含めてですか、一般のプロパーの人だけをいじめて削るという話ですか、どっちですか。

鈴木政府参考人 基数でございますけれども、これは役職員数でございます。

古本委員 さわりをやっただけでもこういう問題が控えております。しかも、財務省の所管の二行が含まれた法案でございますので、ぜひ充実した審議を当委員会でも委員長に求めたいと思いますが、いかがでしょうか。理事会でぜひこの件を諮ってください。

伊藤委員長 今の御要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

古本委員 では、最後の五分ほどで少し触れておきたいと思います。

 実は国有地の問題なんです、大臣。これは、財投改革と並んで、たしか昨年、御党の方でさまざまな資産圧縮を御議論された際に、我が国が持ちます主な資産のポートフォリオを見ますと、財投、私が今提起した財投が約三百兆円近いです。これが一つの国の資産ですね。さらに、道路とか河川の公共財産が百兆円ぐらいあります。これは、簿価という概念があるかどうかよくわかりませんが、少なくとも財務省の資料によればそう書いてありますね。その中で、国有財産、これは、一般庁舎、宿舎それから未利用の国有地、行政財産として使っている部分と普通財産、これを合わせて、国有財産と称するものは四十兆円ぐらいあります。つまり、国有地というパイは非常に大きいんです、我が国の資産といったときに。

 これを、御党の皆さんが中心になってまとめた計画によりますと、今後十年間で一兆円を売却していくというお話だったんです。これを受けて、各都心三区にある役所の方々の官舎を含め、いろいろ売ったりしていくということだと思うんですが、実は谷垣さんの時代には一度ここで私も申し上げていますので、ぜひ尾身大臣にも拝聴いただければありがたいなと思って、資料をつけました。資料の八の一、八の二、八の三です。

 これは、国会周辺の、かつての江戸城から皇居になって、明治政府、それから大正、昭和と、随分前のこの地区の地図をつけたんです、実は当委員会で去年使った資料ですが。これは、見ていただいたとおり、それぞれ先祖伝来の、これよりもう一つ前の江戸時代のも実はつけておったんですが、きょうははしょりましたが、お殿様が持っておられた土地を、その後明治政府が、譲り受けというか、そこを受けて、その後役所が建ち、そして今日の官庁街になったわけです。

 こうした土地を今売っていけということで、売っていく計画を政府・自民党はつくっておられますが、もとはといえば、この国有地というのは一体だれのものだという強い問題意識を私は持っております。

 ちなみに、今話題の東京ミッドタウンです、資料の八の二。これは今、六本木の防衛庁跡地で、連日話題になっていますが、実は、一年前にもう既に私は指摘しています。大体、不動産業界における基本的な方程式を、そうは違わないと思っていますが、ほうり込んで計算をいたしますと、実は、売るよりも貸した方が、永続的に、かつ金額的にも、すぐれて国庫への寄与という意味では高いんです。これを、貸した方がいいよという提起をしたにもかかわらず、今後とも売り続けるようでおられますが、金持ち土地売らずですよ、金持ちは土地を貸すんです。

 そういう意味では、大臣、その後の御省の中での、国有地をただ売ればいいではなくて、本当の一等地は実は貸した方がいいんだという御議論、検討の状況についてお尋ねしたいと思います。

尾身国務大臣 現在の厳しい財政状況を踏まえますと、未利用の国有地などの売却可能な国有財産につきましては、行革推進法の趣旨にのっとり、できる限り売却し、財政健全化に最大限役立てることが原則と考えております。

 ただし、国有財産につきましては、民間賃貸への活用等によりまして、保有する国有財産の有効活用を最大限図ることとしております。

 具体的に言いますと、従来から、PFIの枠組みを活用した民間事業者による使用収益を認めてきたほか、先般、国有財産法を改正し、庁舎の余剰スペースの民間貸し付けを可能としたところでございます。

 先月に取りまとめられました国有財産に関する有識者会議の中間取りまとめにおきましても、財政健全化への貢献を第一とし、できる限り売却収入を上げることを目指すとされております。そのとき、PFI等の民間的手法の活用、民間との合築や民間への貸し付けも進めることも重要であると提言されているところでございます。

 その有識者会議におきまして、引き続き、上記中間取りまとめに沿いまして、PFI等の民間的手法や民間賃貸等を具体的にどう活用していくかを含めまして検討いただいているところでございまして、財務省といたしましても、この検討を踏まえつつ、今後とも国有財産の有効活用に努めてまいりたいと考えております。

古本委員 もう時間が参りましたので終わりますが、有効活用というのは、売ってしまうともう所有権はないんです。皇居のお堀の前の土地が、かつてだれが所有者で、そして今どんな人々が住んでおられるかというのを、一度ぜひスタッフから、大臣、レクを受けてもらいたいと思いますね。売ったら損ですよ、持って貸した方が得ですよ。ぜひ、大臣への宿題としてお願いしておきたいと思います。またこれは後日聞かせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉であります。

 一般質問、一時間ほどいただきましたので、国の政策、地域の問題等、何点か質問をいたします。

 最初のテーマは、格差と税制ということでございます。

 国民の間で所得の格差が拡大しております。いろいろ原因はありますが、根本的には経済のグローバル化だと言われております。つまり、日本人が中国人やインド人と実質的に同じ労働市場で競争せざるを得ない、そういう時代になったせいだという指摘があります。私もそんな気がしているところでございます。

 そういう意味で、この格差の問題というのは、世界的な傾向であり大変根深い問題だというふうに思います。それをそれなりに是正しようというときの手段が税制と社会保障、この二つで格差を和らげようということは可能であるというふうに思います。ここをやらないと、今後ますます高齢化が進む我が国において大変悲惨な状況が出現する可能性がある、そういう心配があるものですから、なるべく早い段階で税制、社会保障を見直そう、こういうことでございます。

 今、資料を配っていただいたと思います。資料の一というのを見ていただきたいと思います。これは橘木先生の「格差社会」という新書の中に入っている表でございます。OECDの一九九九年、もう随分前の資料ですが、この数字しかないようでございます。OECD加盟の先進国の税と社会保障による再分配効果を比較した表でございます。

 右側の「効果」というところを見ていただくと、一番再分配効果のある制度を持っているのが、下から二番目のスウェーデンであります。これが二五・七。それから、一番低いのが実は日本であります。七・五。これは、アメリカが一一・一ですから、アメリカよりも日本の税と社会保障による再分配効果は低い。橘木先生は、世界で最低だ、こういう表現をしております。

 そこで、最初に、このOECDの指摘を財務大臣はどういうふうに受けとめておられるかということと、それから、いろいろ原因が考えられると思います、いろいろな要因があると思いますが、その辺に対する御所見を伺います。

尾身国務大臣 この資料は、OECDに所属いたします研究者が発表した論文に基づくものであると聞いております。その算出方法等の詳細は明らかにされていないようでございます。

 ただ、この資料の中において示されているとおり、我が国の再分配前のジニ係数については諸外国の中で最も小さいわけでございまして、この再分配を社会保障、税で行う前の段階での所得分配としては最も平等になっているのが我が国の実情であるというふうに読み取れるわけでございます。このことも、この再分配効果が我が国の場合ほかの国に比べまして低くなっている原因の一つなのではないかというふうに考えております。

 それから、税及び社会保障の再分配がなされた後の所得分配についても、いわゆるジニ係数で見た格差は、我が国は大体中くらいに属しているということも留意すべきであるというふうに考えております。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

吉田(泉)委員 私は、先ほど申し上げましたけれども、グローバル化に伴って格差はこれから拡大せざるを得ない、そういう何か根本的な環境があると思っております。今現在は、確かに再分配前のジニ係数は日本が一番低い。しかし、私が今申し上げた問題は、今は低いから再分配後も中くらいにとどまっていますが、この再分配前がますます広がってきたときに、それを是正する仕組みが今我が国は非常に弱いということを申し上げたわけでございます。それが私の問題意識でございます。

 ちょっと追加でお伺いしますが、結果的に日本の再分配効果が世界最低になったわけなんですが、これは日本政府の政策なんでしょうか。つまり、小さな政府、小さな政府というスローガンがここのところとられてきましたけれども、政府を小さくして国民は自助努力でやるべし、やはりそういう国家を政府は政策的につくってきたのかということを、ちょっと確認させていただきます。

尾身国務大臣 大事なことは、私どもは、結果の平等を実現することが適切であるとは考えていない。機会の平等のもとで努力した人が報われるような社会をつくるべきであって、努力してもしなくても同じ結果になるという社会がいいというふうには考えておりません。もし一律に同じ結果を保障するというようなことになるとすると、社会の活力という点からも問題が多いというふうに考えております。

 したがいまして、格差が不公正、不公平な原因の結果として生まれるものであってはならない、それからまた、格差が固定することは避けなければならないと考えておりまして、そういう中から再チャレンジという考え方も出てきているわけでございます。そこをぜひ御理解いただきたいと思います。

吉田(泉)委員 そうしますと、政府は結果の平等を保障すべきではないというのが根本哲学のように承りました。その結果が、やはりこういうことになっているんじゃないかと私は感じるところでございます。

 私も、結果の平等を一〇〇%保障できるとは全く思っておりませんけれども、世界で最低の保障力しかなくなってきた、そういう仕組みしか我が国は持っていないんだ、ここをやはり、これからますます高齢化、格差拡大化が進む前に何とかすべきじゃないのかというのが最初の問題提起でございます。

 今度は資料の二枚目をちょっと見ていただきます。これは国税庁につくっていただきました。ベースは、十七年度の申告所得税標本調査という国税庁の資料に基づいて、国税庁に計算していただいた資料でございます。これは、所得の階級ごとに所得税の負担の割合を並べていただいた表でございます。

 一番上、七十万円以下の低所得の方々の平均所得税の負担割合は二・二二%でございます。それが、超過累進の構造になっていますから、だんだん上がってまいります。五百万で六・七%。そして、だんだん上がってきまして、下から二行目ですが、五千万円以下というレベルになりますと、所得税の負担割合が二三・四八、ここまで上がってきたわけであります。ところが、そこを超えると、五千万円を超える所得階級は、今度は逆に、この割合が二二・三八というふうに下がります。

 実は、標本としては、この五千万円を超えた階級を、一億、十億、百億といろいろ標本はあるようですが、ことしはここまでしか計算できなかった。来年以降は、一億とか十億とか、さらに高額の所得者を、階級をもっと細かく分けて国税庁は出してくれるということでございます。

 質問は、まず、この数字の読み方ですけれども、日本の今の所得税の制度からいきますと、五千万円を超えると負担割合が下がるということで、そういう読み方、認識でいいのかどうかという確認です。そして、さらに、なぜそういうことになってしまうのか、その屈折する原因、要因をお伺いします。

尾身国務大臣 この点は、よく言われているところでございますが、五千万円を超えた者の所得税の負担率がその下の所得階層の者よりも下がっているのは、主として、上場株式等の譲渡所得等について一〇%の軽減税率が適用されていること等が影響しているというふうに考えております。

 この上場株式等の譲渡所得等に係る一〇%の軽減税率でございますが、その適用期限を一年延長いたしまして、この間に、金融所得の間の損益通算範囲の拡大策、あるいは市場の混乱を回避するための特例措置等について検討を行いたいと考えております。その上で、一年後にはこれを廃止していきたいというふうに考えているわけでございます。

吉田(泉)委員 主として株式譲渡益の一〇%の低率課税のせいだということです。そして、一年後にはこれを二〇%に戻すんだということであります。しかし、二〇%に戻せばこの逆転現象というのは変わるんでしょうか。所得税は最高税率が今四〇%ですが、それよりも低い。二〇%も四〇%よりは低いわけですから、私、今の一〇%、二〇%にしても、本質的に変わらないんじゃないかというふうに見ているところでございます。

 一つ確認ですけれども、我々、学生時代に、所得税というのは累進課税であるべきだというふうに習いました。最近では、そうでもないんだ、比例税がいいんだとか、もしくは逆U字型がいいんだとか、いろいろな学説はあるようでありますが、私は、やはり累進税というのが今の時代に合っているんじゃないかというふうに思っているんです。大臣に、所得税は累進制であるべきかどうか、そこをちょっと確認させていただきます。

尾身国務大臣 現在の所得税はいわゆる累進課税になっておりまして、これは全体として、世界の大きな流れもそうなっていると考えております。

 そういう方向が妥当なものである。これは、公平、公正、簡素という基準、また、それに加えて活力という考え方を税制の中で取り入れているわけでございますが、これを総合的に考えて、今のような累進課税制度をとっているところでございます。

吉田(泉)委員 大臣も、所得税は累進税が妥当であるということでございます。しかしながら、現実は、この国税庁のデータにあるように、超高額所得者になると、実は、累進税じゃなくて逆進的な税制になっているということであります。

 では、これをどうやって直すのか、もう直せないものなのかどうか、そういう視点から幾つかお伺いをいたします。

 先ほど大臣からもお話がありましたけれども、所得税が一部逆進的になっているという最大の理由は、株式譲渡益も含めた、利子配当も含めた金融所得に対する課税のあり方だと思います。つまり、金融所得を分離課税にしている、そして、低い税率といいますか、一〇%ないし二〇%という税を今かけている、こういうことであります。

 それで、一年後には二〇%に戻すというお話がありましたが、その後、長い目で見て、将来を考えて、この金融所得に対する課税の方式、実は、シャウプ勧告という戦後間もなくの勧告以来、原則は総合課税だと。金融所得も含めて総合課税だという原則があったわけでありますが、その原則にのっとって、将来的にはこの分離課税をだんだん減らしていくんだ、こういう方向なのか、もしくは、今の金融所得の分離課税を、金融所得の一体化という言葉もありますが、一体化しながら、あくまで分離を続けるんだ、場合によっては、北ヨーロッパでやっているような勤労所得と資産所得をはっきり分けるような二元的な所得税を目指すんだ、そういう幾つかの将来の方向性があると思うんですが、現在のところの考え方をお伺いします。

尾身国務大臣 所得の再分配機能を有する所得税の基本的な枠組みといたしましては、広く公平に税を負担するという観点から、総合課税を原則としているわけでございます。

 他方、金融所得課税につきましては、貯蓄から投資へという政策的要請を受け、金融商品の間の課税の中立性を確保し、預貯金並みの手軽さで株式投資ができるような、簡素でわかりやすい税制を構築するために、分離課税を基本として、税率二〇%に均衡化する。それから、金融所得間の損益通算範囲の拡大を柱とする金融所得課税の一元化を進めているところでございます。

 そういう流れに沿いまして、制度改正に伴います株式市場への混乱等を回避する措置を講じつつ、一年後には一〇%の特例を廃止して二〇%の分離課税の基本税率に戻すという方向で、今進めているところでございます。

吉田(泉)委員 そうしますと、金融所得については分離課税が基本である、二〇%にだんだん一元化をしていくけれども、あくまで分離課税でやっていくというお話だったと思います。

 確認ですけれども、日本の所得税のあり方を規定しているのが所得税法でありますが、所得税法においては、金融所得というのは総合課税になっているんでしょうか、分離課税になっているんでしょうか。

尾身国務大臣 所得税法の本則では総合課税になっているわけでございますが、金融所得課税の一体化という流れに沿いまして、先ほどの、上場株式等の配当、譲渡益に係る軽減税率を一年延長して廃止する、それから、金融所得間の損益通算範囲の拡大を行うということで検討を進めてまいりたいと考えておりまして、こういう措置はいわゆる高額所得者を優遇するということを目的としたものではないと考えております。

吉田(泉)委員 高額所得者優遇かどうかはともかくとして、いずれにしても、所得税法の本則では、二十一条の二項だと思いますけれども、利子、配当、株式の譲渡益、こういうものは総合課税にしましょう、退職金と山林所得は分離にしましょう、これを決めておいて、先ほどの大臣の御答弁ですと、それにもかかわらず金融所得はこれからも分離課税でやっていくんだということでした。

 私は、両方の考え方はあると思いますが、もしこれからも将来長きにわたって金融所得の分離課税を続けるならば、やはり所得税法の本則を直さなくちゃいかぬじゃないでしょうか。二十一条の二項を修正しないと、今のような政府の考え方、ちょっと法令上、私は納得できない。

 要するに、法制上も、それからいろいろ政府税調の基本方針等も、原則は総合課税だ、こう言っているわけです。建前は総合課税なんだといいながら、現実的にはそれが守られない。なし崩し的にだんだん分離課税が強まってきて、将来的にもそれを維持しようというのが現在の政府の立場だと思いますが、結局、建前と現実が離れているということでありますね。私は、これはやはり国民サイドから見ると、一体日本政府はどういう理念で税を取っているんだ、税の基本理念に対する不信感を招く、極めて根本的な問題じゃないか、こういうふうに思います。

 それで、もう一つ追加で御質問しますけれども、日本は、総合課税といいながら総合課税をとっておりません。そういう国はあるんでしょうか。つまり、先進国でいいですけれども、総合課税か、もしくは北ヨーロッパの二元的課税か、この二つに、ほとんどの先進国がそういう制度をとっているというふうに思うんですけれども、どちらもとっていない、総合課税でもない、二元的課税でもないという国は、これは日本以外にあるんでしょうか。

石井政府参考人 今、先生の御質問でございますけれども、特に資産の金融所得、あるいは株の譲渡等に関しまして、例えばフランスでございますと、これは申告分離課税をとっております。それから、アメリカ、イギリスは、一応総合課税の中で、譲渡益あるいは配当についての課税については一般の所得とは違ったブラケットと税率の適用を、総合課税の傘のもとではございますけれども、とっております。それから、ドイツにつきましては、昨今、税制改革の動きがございますけれども、現在、改革の方向としては、金融所得と申しますか、株式の譲渡益あるいは配当等につきまして、申告分離にする方向で今改革を行おうというふうにしていると聞いております。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(泉)委員 それから、もう一つ追加で確認をしたいと思いますが、金融所得については、一年後、二〇%に一元化するという方針でございますが、この二〇%という数字の意味、なぜ二〇%なのか、それを教えていただきたいと思います。

石井政府参考人 二〇%でございますけれども、これは今、利子に対する課税が分離課税で二〇%になっておりまして、その他の金融商品、あるいはいろいろな資産の譲渡益等に関しましても、全体として課税の均衡化を図る必要があるという観点から、二〇%に統一する方向で現在検討を進めている、あるいはその動きを進めているということでございます。

吉田(泉)委員 今現在、利子課税が二〇%だからそれに合わせるんだということですが、そうしますと、なぜ利子課税が二〇%なのかということにもなってまいります。北欧の二元的所得税、スウェーデンあたりが三割の税率をとっているということでございます。

 ちょっと話を進めますが、日本の所得税は累進課税になっていない。どこをどう直したら累進課税になるのかという視点から、次は給与所得控除の問題です。

 最低でも六十五万円の給与所得を控除できるということですが、これは上限がございません。五千万給与所得を取る人でも、一億円でも、十億円でも、青天井に給与所得が控除できる、上限がないという制度になっております。給与所得控除の本来の趣旨からいえば、私はちょっと解せないというふうに思っているんですが、今、なぜこの給与所得控除に上限がないんでしょうか。

石井政府参考人 給与所得控除の性格につきましては、これまで二つの考え方に基づいてこの給与所得控除というものがあるというふうに考えてきております。

 一つは、実際の勤務費用の概算控除、実際にかかります個々の経費を計算するのではなくて、それを概算的に控除するという趣旨が一つ。それから、被用者と申しますか、サラリーマンと申しますか、そういう方々の事情に配慮した、他の事業所得者の方々等との負担調整のための特別控除という性格をあわせ持つものとしてこの給与所得控除というものがこれまで考えられてまいりました。

 今までいろいろ制度の変遷がございましたけれども、現状では、そういう二つの基本的な要素をもとに今のような仕組みをとっているということでございます。

吉田(泉)委員 どうなんでしょうか。二つの要因があるということですが、私は、青天井を認めるにしては、その二つの要因、理由はちょっと時代の変化もあってもう弱くなっているんじゃないか、ここは再考すべきテーマでなかろうかというふうに思っているところでございます。

 それからもう一つ、今度は最高税率の問題です。

 今現在は所得税の最高税率は四〇%、地方を合わせると、住民税を合わせると五〇%ということでありますが、かつてはこの合計率が九〇%であったという時代もあったようでございます。それがだんだん、今ここまで下がってきたわけですが、今までどのような考え方で、どのような哲学で最高税率を下げてきたのか、そして、今後についてはどういう考え方で税率を決めていくのか、お伺いいたします。

石井政府参考人 所得税の最高税率でございますけれども、累進税率によりまして所得再分配機能を果たしている税でございます。税制の抜本改革が行われます前の昭和六十一年までは、所得税の最高税率が七〇%、住民税と合わせますと八八%という極めて高い最高税率がございました。

 このような中で、税率水準が高過ぎる場合には勤労意欲を阻害するといった弊害も指摘をされました。また、諸外国におきましても、全体として最高税率を引き下げるという動きが主要国でございまして、このような諸外国における潮流にも沿いまして、国民の勤労意欲あるいは事業意欲に配慮するという観点から所得税の改革をこれまで行ってまいりました。

 具体的には、昭和六十一年と比べまして、累次の改正を行いまして、先ほどの所得税の最高税率七〇%が現在は四〇%、地方税と合わせても八八から五〇%というふうに下げますとともに、所得税の税率構造全体につきましても、十五段階から六段階に簡素化をいたしておりまして、全体として所得税負担の引き下げを累次にわたって行ってまいりました。

 いずれにしましても、所得税の累進税率につきまして、このような経緯を踏まえますとともに、国民の勤労意欲とのバランスということを考慮しながら、再分配機能を有する所得税の果たす役割にも留意しながら今後議論を行う必要があると考えております。

 本年秋以降の抜本的、一体的な改革を議論する中で、公平、中立、簡素、さらには活力といった税制の基本的な原則に照らしまして、各税目がそれぞれ果たすべき役割を見据えながら税体系全体のあり方を検討することとしております。所得税率の問題につきましても、この中で幅広く議論をしていくということであろうと思います。

吉田(泉)委員 勤労意欲の問題も出ましたが、世界の各国の潮流も考えながら下げてきたということであります。何かこの最高税率だけは世界の潮流に合わせているというような気がします。先ほどの総合課税、よその国ではほとんどの主要国が総合課税をやっているのに、日本は現実問題やらない。給与所得控除なども、日本は特別、高額所得者に有利な制度になっている。そちらは日本独自のやり方をしておいて、最高税率だけは世界の潮流に合わせて下げてきたというところが、私はちょっと解せないところでございます。

 もう一つ、給付つき税額控除という制度についてお伺いします。

 アメリカ、イギリス、それからオランダ、こういう国で税額控除が大分制度化されてまいりました。オランダなどは、もう所得控除をやめて、税額控除に全部切りかえると。しかも、低所得者、税金を払わない人には、場合によっては給付する、こういう制度を導入したわけでございます。学者の先生方の話ですと、この制度は、低所得者の人の就労、子育て、こういうものを支援するための政策的な手段として大変有効だと。そういう意味で二十一世紀の税制とも呼ばれている制度でございます。

 日本でも、格差社会、高齢化社会を迎えて、この制度を検討する価値があるというふうに私は思っているんですが、日本で導入を検討するには、どういう課題なり条件なりがあるのか、お伺いします。

尾身国務大臣 アメリカやイギリスにおきまして、低所得者に対する経済的支援という観点から、就労や子育てに着目をいたしまして、課税最低限以下の低所得者に対する給付を行う制度が実施されておりまして、給付つき税額控除制度ということになるわけでございます。ただ、諸外国におきましては、この制度は税額控除と組み合わされておりますが、実質的には、税というよりも給付、つまり、歳出という性格を有するものであると考えております。

 このような仕組みを我が国に導入するかどうかということにつきましては、例えば、アメリカでは日本のような包括的な生活保護制度がない、イギリスはかつて深刻な失業問題への対応が大きな政策課題であったことなど、それぞれの国においてそれぞれの固有の実情があるわけでありまして、そういう社会的背景が異なるということも考えておかなければならないと思っております。

 そもそも、この所得控除を整理して税額控除を導入することについては、所得控除と税額控除とは考え方や税負担の軽減効果が異なるために、所得控除の機能である担税力の減少への配慮をどうしていくか、あるいは政策目的を達成するために新たな税額控除を設けるかというような検討課題がございます。

 それから、アメリカやイギリスのように、一定の低所得者に対しまして税額控除できない分を給付する仕組みを設けることにつきましては、関連する既存の社会保障給付、例えば児童手当とか生活保護との関連をどうするか、また、低所得であるからといいまして、資産の保有がどうなっているかということもあるわけでございまして、こういうことと関係なく一律に現金を支給することが適正と言えるかどうか。また、財政状況厳しい中で財源手当てをどうするか、あるいは、不正受給を防止するためのフレームワークをどうするかというようなことも問題点としてございまして、極めて慎重に議論を行う必要があると考えております。

 したがいまして、御指摘のような仕組みにつきましては、今申し上げておりますようないろいろな問題点、留意点が多くあるために、直ちに具体的なことをお答えするような状況にはないと考えております。

吉田(泉)委員 この給付つき税額控除の制度というのは、今大臣おっしゃったように、基本的には税と社会保障を融合させるような話だと思うんですね。それがうまくいけば、これからの高齢化、格差社会、非常に有効な政策手段になる。ただ、問題は、日本の官庁の縦割りだと思うんです。税は財務省、社会保障は厚労省、ここが、いわば国難の時代に、一致団結して新しい制度を創造しようじゃないか、つくり出そうじゃないか、こういうことができるかどうかという問題のようにも思っております。

 この税制の問題、もう最後になりますけれども、今までいろいろ質問させていただきましたら、結局、今、所得税の累進度を落としている金融の分離課税、これは続けるんだ、それから、最高税率も今さら上げる気はない、さらには、この税額控除等も直ちに検討するようなつもりはない、こういう答弁だったと思います。そうしますと、結局、この日本の所得税の累進度は、私は回復できないと思うんですね。いつまでたっても高額所得者の方が税金を払う割合が少ない、逆進の現象が続くと言わざるを得ません。

 そうすると、では、ほかの税でもってその欠点を補完するしかないんじゃないか。大きく分けると、所得と消費と資産、この三つに税金はかかるわけですが、消費税は逆進的ということですから逆進の解消には使えません。そうしますと、もう一つ、資産税というものをもう一回見直して、所得税の欠点を補って高額所得者の負担割合を是正する、こういうことしかないんじゃないかというふうに思います。

 資産税もいろいろあります。相続税などの資産の移転にかかる税、もしくは、昔ありましたけれども、資産を保有しているだけでかかる保有税、こういうことも考えざるを得ないんじゃないかと思うんですが、資産税についての方向性をお伺いいたします。

尾身国務大臣 資産税といいますか、主として相続税でございますが、相続税も、相続を契機として、無償の財産取得に担税力を見出して課税をするということでございまして、資産のいわゆる再分配効果を持つものでございます。

 これにつきましては、今後、抜本的税制改正の中でいろいろと議論をしていくつもりでおりますけれども、いわゆる相続税の最高税率でございます。日本は最高税率五〇%でございます。例えば、アメリカ四五%、イギリス四〇%、ドイツ三〇%、フランス四〇%というようなことで、日本の相続税の最高税率は、実はほかの主要国と比べて一番高い水準にあるわけでございます。そういう意味におきまして、全体としての、少なくとも相続関係の資産課税についての再分配効果というのは、かなり高いものがあるというふうに考えております。

 ちなみに、先ほどの所得税の最高税率につきましても、日本の五〇%最高税率は、アメリカ四五%、イギリス四〇%、ドイツ四七%、フランス四〇%というような他国の例を考えますと、つまり一番高い水準にある。そういうわけで、少なくとも所得税あるいは相続税についての資産再分配効果というものは、ほかの国に比べて、資産再分配効果が高い方がいいというふうになるわけではございませんが、相当に高いものであるというふうに考えております。

吉田(泉)委員 いずれにしても、この秋には税制の抜本改革を議論しようということでございますので、この所得税の問題、ひとつ議論の中心に据えていただきたい、こういうふうに思います。

 時間も大分過ぎましたが、二つ目の大きなテーマとして、金利と財政再建ということを考えてみました。

 参議院の方の予算委員会、富田先生が公述人で来られてこの財政問題に触れられたときに、金利の問題というのは非常に大きい、経済が成長して金利が上がってくると、一%上がると確かに税収は六千億ぐらいふえる。景気がよくなって経済成長があれば税収はふえる、それが一%で六千億。ところが、国債の金利負担が一兆二千五百億円上がる。差し引き六千五百億円ぐらい負担がふえる。非常にここが大きいんだという問題を指摘されました。

 きのう日銀の金融政策会議があって、今回は据え置きということですが、既に二回金利が上がってきました。いわばこれは短期金利の正常化という過程だとは思いますけれども、これが国債の金利にどういう影響を与えるのか、場合によっては、大変な財政負担になって、これが日本の経済の大きなリスク要因になるんじゃないかという心配をする向きもあるわけでございます。

 それで、最初に、国債の金利も含めた長期金利というのはどういうふうに決まるものなのか、ちょっとメカニズムを簡単に教えていただきます。

稲葉参考人 長期金利の決定メカニズムに関するお尋ねでございます。

 長期金利でございますので、これは長期の資金が債券等に運用されまして、そのことによって先々得られる収益の利回りのことを示すわけでございますので、その決定に際しましては、将来にわたってさまざまな要素がかかわってくることになります。

 基本的な金利の部分に関しましては、足元から先々の短期金利の動きに関する人々の予想、あるいはその間の経済や物価に関する人々の見方などを反映して決まってくるものでございます。さらに、これに加えて、債券を保有することに伴うさまざまなリスクがございますが、これに応じた上乗せ金利というものが加味されまして個々の長期金利というのが決定される、こういうふうに一般的には理解されているところでございます。

吉田(泉)委員 さまざまな要因があって、長期金利、これは政府が、日銀がなかなかコントロールできる金利ではないということだと思います。

 日銀がコントロールできるオーバーナイトの短期金利、これを今、少しずつ慎重に上げているわけですが、これが国債の金利を含めた長期金利にどのような影響を与えるものなのか、改めてお伺いします。

稲葉参考人 短期金利政策の長期金利への影響ということでございますが、先ほど申し上げたようなメカニズムで長期金利が決まりますので、短期の政策金利を変更した場合に、それが人々の予想あるいは期待といったものにどう影響するか、あるいはリスクの評価にどう影響を与えるか、こういうことによりまして、長期金利に対する波及も異なってくるということでございますので、短期金利の及ぼす影響について一概に述べることは難しいわけでございます。

 ただ、長期金利に関しましては、先行き物価が安定している、あるいは経済が安定しているということでありますと、長期金利の形成も安定的なものになるということでございますが、この点、短期の金利政策において経済、物価の安定を図っていくということを心がけておきますれば、長期金利の形成も安定的なものになっていくというふうに考えております。

吉田(泉)委員 結局、短期金利が長期金利にどういう影響が与えるのか、いろいろあって一概に言えないというようなことだと解釈しました。

 一月の日銀の金融政策決定会合、これは利上げが見送られましたね。その直前に、政府・与党から何か日銀に対して圧力があったんじゃないかと新聞は随分書きました。そのシナリオを書いたのは財務省じゃないかという指摘をする方もいます。もしそういうことがあったとすれば、思惑は、余り急いで金利を上げないで、何とか今の景気を維持して、税収をこれ以上上げよう、そうすれば財政再建にもつながるんだというのが、財務省の立場になって考えたときの圧力をかける動機だろうというふうに思うんです。

 ただ、先ほど紹介した富田先生のお話、それから今の稲葉理事のお話等を考えますと、景気をよくしていく、今二%ぐらいのをだんだん三%、四%まで名目成長率を上げていくとなると、長期金利も上がってくる、そうすると財政負担が逆にふえるというのが富田先生の指摘でございます。ここで、短期金利を上げるな上げるな、こういう圧力をかけると、かえって財政負担がふえてくるんじゃないか、こういう理屈なんですが。

 日銀から見て、そういう利上げに対する周囲の圧力がもしあったとすれば、あってはいかぬことですけれども、あったとすれば、何か長期金利の決定メカニズムに対する誤解があるんじゃないかと私、ちょっと感じるところなんですが、その辺はいかがでしょうか。

稲葉参考人 最初に申し上げますと、一月の決定会合におきまして、政府とか、あるいはその他から圧力がかかって、それで議論が、そういうことを念頭に置きながら議論をされたということは一切ございません。毎月の決定会合で、経済の現状、先行きの状況、あるいは物価の現状、先行きの見通しなどを念頭に置きながら議論を進め、その時々の金融政策を決定しているということでございます。

 それで、長期金利の形成に関して申し上げますと、仮に、金利を上げないということを無理に誘導しようということで、例えば短期金利を過度に低く長く維持するということになりますと、かえって市場ではインフレ期待、インフレに対する懸念というのが発生いたしまして、長期金利は場合によっては高くなるということもございます。したがって、一番大事な政策、長期金利の安定的な形成ということからいたしますと、先ほど私が申し上げましたように、短期の金利政策においても、経済、物価の安定的な運行を確保する、そういうことを念頭に置いて政策を決定していく、このことが基本的な金融政策の目的でありますけれども、長期金利の安定的な形成にも資するものだというふうに考えております。

吉田(泉)委員 今の我が国の財政上の最大の目標はプライマリーバランスでございますが、これは利払いは関係ない数値であります。しかしながら、実は、景気がよくなって利払いがふえてくると、税収を超えた利払いがふえるということは財政にとっては大変な負担だ、ひとつ長期金利の推移をよく見ていきたい、こういうふうに思うところでございます。

 それから、最後になりますけれども、地域金融の問題ということでちょっと触れたいと思います。

 地方にとって非常に経済的な困難な時代がまだ続いております。地方の企業はなかなか売上高を維持するのが難しい、売り上げが下がると銀行、金融機関から借りている借金もなかなか返せない、こういうことも今でももちろん起こっているわけでございます。そういうときに、金融機関が取引先に対して、それでは、金利を少し下げましょう、もしくは、返済期間をもうちょっと長くしましょう、こういう条件緩和ということをやってお互い生き延びよう、こういうことが地域金融の世界ではよくあることでございます。

 ところが、ここに金融庁の検査が入って、条件緩和をした債権については、即刻これは要管理債権だ、そんなに取引先が条件緩和しなくてはならぬほど厳しいんじゃないのか、これは要管理債権だ、こういう区分けをされてしまうと、これが金融再生法上は開示債権ということになってしまう。そうすると、いろいろ、営業報告書上、相手方、取引先の名前を開示しなくちゃいかぬ。そうではないですかね。私の理解はそうなんです。それに対して引当金をもっと積み増しせないかぬ、そういうことになるので、なかなか金融機関としては条件緩和しにくいという状況がある。しかし、条件緩和しないと、ますます相手企業が下り坂になって、貸し倒れの可能性がふえてくる。この条件緩和というのは、長年のお互いが生き延びる知恵ということでもあるわけでございます。

 地元で、何とか金融庁の方にも、余りしゃくし定規ではない、柔軟な検査、指導をお願いしたいという声を企業からも、それから金融機関からも聞いたところでございます。

 質問は、金融庁の検査において、今申し上げたような条件緩和債権はどういうふうに扱っておられるのか、お伺いいたします。

西原政府参考人 お答え申し上げます。

 条件緩和債権についてでございますが、今お話がありましたように、開示しなければいけない不良債権、リスク管理債権の一類型であるということでございますが、開示すべきというのは、取引先、その名前まで開示するということではございませんで、不良債権の、これは破綻先ですとかいろいろな不良債権の分類がございますが、それらについて合計額を開示する、こういうことでございます。したがいまして、名前まで出ていくものではございませんが、これはリスク管理債権としてしっかりとした把握をしていかなければいけないということ。

 それから、法令でもそれが明確に定義をされております。法令では、貸し出し条件緩和債権と申しますのは、「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行つた貸出金」、こういうぐあいに定義されているわけでございます。これにつきましては、不良債権の一類型としてしっかりとした開示をしていかなければならない。法令にのっとってしっかりとした開示が行われているかどうかということを検査では検証しているわけでございます。

 この不良債権と申しますのは、やはり、銀行自身、金融機関自身が自分の健全性を維持するためにはしっかりとリスク管理していかなきゃいけない、ひいては預金者保護といった観点からも非常に重要な、把握が必要なものでございます。それと同時に、これについては、放置するのではなくて、なるべく早いタイミングでこれに対する取り組みを行っていくということで、例えば、事業再生に向けた取り組み、経営に対するいろいろな助言をもって、なるべく早いタイミングでランクアップを図っていくというような取り組みが望まれるものでもございます。

 こうした中で、画一的にやっているのではないか、こういう今御質問がございました。私ども、法令等に基づいて行っているわけですが、さらに加えまして、特に中小企業融資の関連につきましては、この貸し出し条件緩和債権に該当するかの判断基準については、中小零細企業の経営の実態に応じてより明確化を図る、こういう観点から金融検査マニュアルの別冊編を用意してございます。いわゆる中小企業融資編というものでございますが、これにおいて具体的な運用に際しましての事例を示しておりまして、その中では、中小零細企業の特性に配慮した検証のポイントを解説してございます。そういうような形で、丁寧な検証に努めているということでございます。

吉田(泉)委員 機械的な対応というのじゃなくて、機械的な対応をすると結局悪循環を招くということでございますので、リレーションシップバンキングという言葉もございますが、原点に返った検査をぜひお願いしたいと思います。

 最後の質問ですけれども、BISの新しい基準ができまして、日本でも十九年の三月期決算から基本的に適用になるということであります。融資が焦げつくリスクを今まで以上にきめ細かく自己資本比率に反映させるという趣旨の改正というふうに聞いておりますが、これが日本国内の金融機関にどういう影響を与えると見ているか。

 さらに、今度新しくアウトライヤー銀行という定義ができたそうであります。アウトライヤーというのは、日本語で言うと平均から外れた銀行だと。つまり、国債などを過剰に持っている銀行はリスクが多いんだということで、アウトライヤー銀行というふうに今度は区分され得るということでありますけれども、そこを心配している金融機関もあるんですが、アウトライヤーとなった場合には、金融庁は一体どういう措置をとるものなのか、その辺をまとめて最後に御答弁いただきたいと思います。

山本国務大臣 バーゼル2の影響について御答弁申し上げます。

 各金融機関の状況により違いがございます。平均的な自己資本の負担水準につきましては、おおむね従来のバーゼル1とほとんど同じであろうというように考えております。具体的には、最低所要自己資本比率の計算におきまして、オペレーショナルリスクに関する負担が追加されるということでございますが、他方で、信用リスクにつきましては、中小、個人向けを中心に負担が軽減されることになるという、重い負担と軽い負担がマッチして同じになるのではないか。

 このように、特に、中小、個人向けを中心に信用リスクに関する自己資本の負担水準が軽減されるという点に注目しますと、これはリスク分散のおかげでございますが、我が国金融の円滑化にも資する面があるのではないか、特に過少資本の中小零細企業に対する対応が若干よくなることが見込まれるという印象があるわけでございます。

 以上です。

伊藤委員長 質疑時間が終了していますので、簡潔にお願いします。

佐藤政府参考人 アウトライヤー基準に関する部分についてお答え申し上げます。

 バーゼル2におきましては、御案内のとおり、最低所要自己資本比率を定めます第一の柱に加えまして、第二の柱というのが設けられております。銀行自身がみずから抱えるリスクを総体として適切に把握、管理することを求めるというものでございますが、このアウトライヤー基準は、この第二の柱のうち銀行勘定で保有しております金利リスクに関するものでございます。この基準は、金利変動に関する標準的な仮定によって計算される資産、負債ネットの経済価値の低下額が金融機関の自己資本額の二〇%を超えている場合にアウトライヤー基準に該当する、こういう枠組みになっております。

 金融機関が仮に金利リスクのアウトライヤー基準に該当することとなった場合の対応でございますけれども、金融庁といたしましては、早期警戒制度の枠組みの中で、ヒアリング等の実施を通じて当該金融機関により適切なリスク管理を促していく、こういう対応をすることになります。ただし、アウトライヤー基準に該当したことのみをもって当該金融機関の経営が不健全であると自動的にみなされるものではございません。私どもといたしましては、直ちに自己資本の賦課を求めるといった性格のものではないというふうに考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 終わります。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、二月二十八日の財務金融委員会で障害者控除の問題を取り上げました。障害者手帳がなくても、六十五歳以上の高齢者で、障害者に準ずると市町村長などの認定を受けた人は障害者控除を受けることができるというのがこの制度の内容であります。きょう来ていただいている厚生労働省の中村障害保健福祉部長は、要介護認定も判断の材料の一つというふうに述べ、申請があれば受け付けるというふうにお答えになったわけであります。

 ところが、この制度は一般によく知られておりません。知らなければ申請もできないわけですね。したがって、このような制度があるということを住民にお知らせするというのは大変大事だと思います。

 例えば、私が知っているある市では、要介護認定を受けている方々にお知らせを出しております。その市では、要介護認定を受けている人が約一万人おります。そのうち、障害者手帳を持っている方を除いて、約六千二百人にお知らせを出しました。平成十八年分の確定申告等をされる要介護認定高齢者の皆さんへ、こういうお知らせであります。申請を受け、審査した結果、三千二百四十五人が新たに障害者控除を受けられると認定されたそうでございます。これは大変喜ばれているわけですね。

 私は、これは自治体としてなかなか親切な対応だと思いますが、尾身大臣はこういう親切な対応をどのように思われますか。

尾身国務大臣 これは、要介護認定を受けている者が、市町村によって認められた場合に今の障害者控除の対象になるということでございまして、この点については、市町村において、自己の責任において周知徹底をして、しかるべき対応をしていただきたいというふうに私どもは考えております。

佐々木(憲)委員 自己の責任において親切な対応をされている自治体があるわけでございます。今、私が例に挙げましたのは、岐阜市の例でございます。

 厚労省に改めて確認をしたいんですが、この例でも明らかなように、寝たきりでなければ障害者控除を受けられないというものではないということでございます。つまり、寝たきり度というか、障害の重い、A、B、Cと重くなっていくわけですけれども、最初から、BでなければならぬとかCでなければならぬというように、寝たきりでなければ一切対象にならないというものではない。この点、もう一度確認しておきたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 所得税法等におきまして、障害者控除の対象となる方につきましては、児童相談所等で知的障害者と判定された方、身体障害者手帳を有している方、それから、年齢六十五歳以上で、これらに準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者などとされております。

 このうち、身体障害者に準じる方につきましては、身体障害者の障害の程度の等級表で三級から六級と同程度の障害の程度であるということが基準とされております。例えば障害六級とは、下肢の肢体不自由の場合、一下肢の足関節の機能に著しい障害がある場合というふうにされております。

 市町村において認定する場合には、申請者から提出された資料等に基づきまして、個別に、先ほど申し上げました基準に該当するかどうか判断されるべきものでございます。

佐々木(憲)委員 もう少し確認をしたいんですが、寝たきりでなければならぬということで最初から申請を受け付けないとか、あるいは、寝たきりじゃなきゃだめですよというようなことを最初から言うというのは、これは非常に、今の説明からいうと、狭い解釈になりますね。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど御答弁いたしましたように、身体障害者に準じる方というのは、身体障害者の障害の程度の等級表で三級から六級と同程度の障害の程度であるということが要件になっておりますので、御指摘のありましたような形で狭く解釈するということは、ただいま申し上げました基準に照らして、やや問題があるかなというふうに思います。

佐々木(憲)委員 いろいろな自治体の審査の基準というのがありまして、どうも私は、これは不統一ではないかと思っているんですね。例えば東京都内では、BやCのような特別障害、寝たきりか、あるいは寝たきりプラス重度の障害しか対象にしていないというような区がありまして、我々が調べたところによりますと、港区、江戸川区、品川区、江東区、渋谷区。こういう事例があります。

 今御説明ありましたように、狭い解釈というのは私は間違っているというふうに思いますし、また、そういうことが今の説明でも明らかになったというふうに思っております。

 次は、保険会社の保険金不払い問題でございます。

 保険会社の保険金不払い問題は国民の怒りを大変呼んでおりまして、二〇〇五年に、明治安田生命の不払い問題に対する行政処分がありました。それ以後、生保の不払いはもとより、損保の自動車保険、医療保険の第三分野、つまり、がん保険、それから火災保険、こういう分野でも不払い問題が発覚して、多くの生損保に対し、行政処分が下されているわけです。しかし、いまだに全容が明らかになっておりません。

 そこで確認いたしますが、生保、損保の各分野ごとに、これまでの不払い事案の件数それから不払い総額、これに対する行政処分の内容、これをお答えいただきたいと思います。

山本国務大臣 保険業界におきましては、これまで、保険金等の支払い管理体制及び経営管理体制に問題が認められたところでございます。特に、一昨年来、生保会社、損保会社におきましては、保険金等の不払い等といった利用者保護に欠ける問題が明らかになってございます。これは、保険事業に対する保険契約者の信頼を損なうものでございまして、極めて遺憾でございます。

 生保について申し上げます。

 十七年十月に、不適切な不払いが多数認められたこと等から、明治安田生命に対し、一部業務停止命令等を発出いたしました。また、このほか、三十一社につきましても不払い事案が認められております。

 さらに、保険金等の請求を受けながら、本来支払うべき保険金等の一部を支払っていないものが少なからずあり得ることが判明いたしました。このため、保険金等の追加的な支払いを要するものの件数、金額等につきまして、四月十三日までに報告を行うよう求めているところでございます。

 損保について申し上げます。

 付随的な保険金の支払い漏れが二十六社で認められたことから、十七年十一月に業務改善命令を発出いたしました。その後も、検証が完了していないと認められましたことから、十八年十一月にさらに報告を求め、遅くも本年六月までに調査が完了するとの報告を受けております。

 第三分野商品に係る不適切な不払いにつきましては、本年三月十四日に十社に対しまして業務改善命令を発出し、うち六社につきましては、一部業務停止命令を発出いたしました。この業務改善命令に基づきまして、四月十三日に改善計画が提出されることになっております。

 また、火災保険につきまして申し上げます。

 当局の要請に基づきまして、損保各社が、十九年三月を目途としまして、保険申込書に記載された契約データ等をもとに、建物構造級別の適用等、誤りの蓋然性の高い契約を抽出して調査を行い、さらに今後一年程度かけてすべての契約について確認をいたしまして、問題がある場合には適正化を図っていくというようにしていると承知しております。

 いずれにいたしましても、今後、生損保各社の報告書等を十分に精査、分析いたしまして、必要に応じ、適切に対応してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 ほとんどの会社で、驚くほど多くの不払いが発覚しているわけであります。

 大臣、これはまだ全体像というものが最終的には明らかになっていない段階だと思うんですが、いつごろまでに全体像をはっきりさせて、その対応策、処分というものを最終的に明確にするのか、その見通しをお聞かせいただきたい。

山本国務大臣 まず生保につきましては、四月十三日に報告をいただくことになっておりまして、これで大体の把握ができるように思っておりますし、また火災保険につきましては、今後一年程度かかるというように考えております。

 そうした報告を精査いたしながら、また適宜適切に、全体像について、わかり次第御報告できるかと思っております。

佐々木(憲)委員 これは何か泥沼のような感じがしないでもないわけで、一企業の問題ではなくて、業界全体にかかわる問題だと私は思っております。これだけ多数の契約者に被害を与えているわけですし、保険金の不払い、保険料の取り過ぎというものまで発生しておりまして、保険に対する国民の信頼は地に落ちたと言わざるを得ないわけであります。

 山本大臣にもう一度聞きますが、信頼を回復するということが大事だと思うんです。そのためには、全容を解明するということ、それから、契約者に謝罪が必要だと思うんですよ、それから、きちんと返金する、返還する、その上でしっかりした再発防止策をとる、こういうことが大事だと思いますが、お考えをお聞かせいただきたい。

山本国務大臣 適時適切な保険金の支払いというものは、保険会社の最も基本的かつ重要な責務の一つでございます。保険金の不払い等の問題が生じていることは極めて遺憾でございます。

 一般論で申し上げれば、こうした不払い等の問題につきましては保険会社側に落ち度があると考えられることを踏まえまして、手紙等において保険会社から契約者へのおわび等がなされているものと承知しております。また、不払い等となっている保険金につきましては、十分に事実確認等を行った上で、支払い可能なものにつきましては支払うなど、迅速かつ適切な顧客対応を行うことが大事でございます。

 金融庁といたしましては、報告徴求等によって不払い等の実態把握に努めておりますが、問題が認められる場合につきましては、業務改善命令等においてしっかりとした対応を進めております。特に、判明した保険金の不適切な不払いにつきましては、迅速かつ適切な顧客対応を図るための体制を整備することを要求しておりますし、また、保険募集業務や保険金支払い業務等の顧客対応に係るすべての業務の検証を行った上で、適切な再発防止策を策定することを要求しております。

 いずれにしましても、金融庁としましては、各保険会社におきまして、入り口である保険募集から出口である保険金支払いまで、保険契約者等の保護の観点から、業務全般を見直し、適切な業務運営に努めていただきたいと考えておるところでございます。

佐々木(憲)委員 言っていることは、それはそれとして、方向としては正しいんだろうと思うんですが、なかなか、実際に各保険会社が自浄能力を発揮してやっているかどうか、これが問題なわけであります。問題が指摘されて、それで、確認しました、何件で幾らですと言われても、その後からまた出てくるわけですね。こうなりますと、これはもう体質的にどこか問題があるんじゃないかと言わざるを得ないわけです。

 こういう実態に対して、金融庁としては、顧客対応というのが非常に大事だと思うんですが、全体の件数が一体どうなっているのかについて、個々の、会社側と契約者側の対面によって具体的な調査を行うということが必要ではないかというふうに思うんです。そうしないと全容が解明できないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。

佐藤政府参考人 全容をできるだけ早く解明するということは大変重要な仕事であると思います。現在、私どもでは、行政処分等を打ちました場合には、必ず、その再発防止体制、保険金支払い管理体制それから募集体制、あらゆる面での顧客の信頼をかち得るような体制整備を求めるということでございますけれども、具体的な不払い等が想像されるようなケースについて、私どもの方で、報告徴求をかけたり、あるいは調査の要請をしたりということをしておるわけでございます。

 各社における具体的な不払い事案の調査の仕方でございますが、不払い事案等に関する調査方法、これは保険会社からヒアリングしたところによりますと、標準的には、おおむね以下のような手順をとっているということでございます。

 まず第一に、保険会社において、支払い請求書そして医師の診断書、こういった書類の確認をする、あるいはコンピューター等で一定の条件に該当するものを抽出するといったことで、不払い等の可能性のある事案をまず抽出するという作業がございます。その上で、これらの契約について、契約者に支払い等の可能性のある旨の案内の文書を郵送するという手順をとりまして、その上で電話等で確認をする。これがおおむね各社ともやっているような標準的なアプローチでございます。

 これらのほかに、御指摘いただきましたような、案内文書の郵送後に個別に訪問することによって契約者に対して直接確認する、こういう調査をやっている会社もあると聞いております。

 それから、火災保険料の適切性の調査につきましては、この火災保険、多くは一年単位で更新されるケースも多うございますので、そういった場合には、契約更改時に契約者を訪問して契約内容を確認するといった会社もあるというふうに聞いております。

 すべての件数を対面で調査すべきではないかという御指摘につきましては、そもそも調査対象の件数が非常に膨大であるということもございますので、まずは保険会社が全体としての調査の実効性を確保するということ、あるいはできるだけ早く調査を一通り終えるという要請、こういった点も踏まえて、具体的な方法を責任ある立場で判断してほしいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 正確に早くというのが非常に大事だと思うんですが、どうも各保険会社の事実確認というのは非常に不十分で、不正が判明した後も契約者に対して説明がほとんどなく、謝罪もないというようなことが指摘されております。

 私、何人かの被害者から具体的な事例をお聞きしておりますが、例えば、具体的に言いますと、日本興亜損保の火災保険の契約者の場合ですが、この方は、五年前に新築を購入し、火災保険の契約をした。昨年、報道によって火災保険の保険料の過払いなどの不正行為があることを知って、保険会社に電話連絡をした。そのとき、火災保険の契約は時価ベースとなっているのに、再調達価額ベースで保険料を算出して、過大に保険料を払っていたということがわかった。交渉の上、契約を再調達価額に変更することになって、書面で修正を行うことになった。書面を郵送してくるだけで、説明も謝罪もなかった。しかも、それまでの払い過ぎた保険料について、返すのかどうか、何も言ってこないという事例。

 それから、三井住友海上火災の契約者の場合、十四年前に新築を購入した。十七年間の火災保険を契約しました。昨年末、新聞記事で、平成五年に省令準耐火構造という分類が制定されたということを見た。保険料が、支払った額の半額ほどになっていたということを後で知った。三井住友海上に問い合わせたところ、保険の料率はしょっちゅう計算し直されるので、制度が変わっても契約者には知らせないのが原則だ、こう言われた。この契約者は大変怒っているわけです。

 この準耐火構造の制定というのは、料率計算上の問題ではなくて、それまで木造と鉄筋の二分類しかなかったそういう矛盾を、建築性能の実態に合わせて改めたわけです。新しい社会制度である。当然、その制度を切りかえて契約を改めるというのが当たり前じゃないのかといって怒っているわけです。

 このケースでは、耐火基準の改定があり、それに従って契約内容も変わっているにもかかわらず、損害保険会社は、契約者に連絡もしない、保険料を算定し直すこともしない。これは新聞にも報道されていますけれども、損保は、改定された保険料率の適用は消費者側からの申請がないとできないんだ、こう言って居直っているというふうにも書かれているわけです。

 これは、私は非常におかしいんじゃないかと思うんですね。損害保険会社というのは、こういうふうに、保険料自体が変わっても連絡もしない、契約者が請求しなければ訂正もしない。そういうことなのか、そういう対応しかしないのかということになるわけですね。

 金融庁は、保険会社への要請の中で、先ほどの大臣の答弁にあったように、顧客への親切な対応、この点検をしなさいと言っているわけですね。それから、不正な保険料が判明した場合は、当然、損害保険会社が契約者に謝罪し、再契約のためのお知らせをする、こういう対応をすべきだと思うんです。

 契約者への適切な対応というのは、大臣、そういうことを求めているんじゃないんでしょうか。

山本国務大臣 おっしゃるとおり、一般論で申し上げますと、募集という入り口から支払いという出口、その間に商品管理という大事なことがございます。その間に、いわば顧客と会社側には情報の非対称、募集から支払いまでの期間が生保、損保ともに相当期間経過しますので、個人でいえば、うっかりして忘れていただとか記憶にないだとかいうことがございます。そういったことをフォローするのは会社側であろうというように私どもは考えております。

 その意味におきます平等感というものをこれからどうつくっていくか。特に、今回の業務改善命令の中には、支払い管理体制の中で、苦情処理体制をしっかりしろ、その上でさらに不服申し立て体制もしっかりしろというようなことも申し上げておるわけでございまして、今後、こうしたことのないような、損保、生保ともに構造的な改善をお願いしたいというように考えております。

佐々木(憲)委員 不払い問題のお粗末な対応というのは、今私が紹介しただけじゃないんです。ほかにもいろいろありまして、例えば第一生命保険は、三大疾病保険の不払い、あるいは払い漏れについて自己検証をしたところ、約一千八百件の該当する事案があった。そのうち約五百件の支払い漏れを確認し、二百二十九件保険金を支払ったとみずから公表しているわけです。ことしの一月です。

 そもそも、不払い、払い漏れというのを、顧客が請求して初めてわかるとか、あるいは顧客が請求しなかったために不払いになってしまったんだ、こういう態度は私は非常にけしからぬと思うんですね。契約上の支払い要件を満たしているものであれば、当然その契約者に説明し、支払いの手続をするというのは当たり前なわけであって、該当する事案があったと確認したら、それをしっかりと契約者と確認した上で適切に対応する、適切に支払うというのは当然だと思うんですけれども、金融庁としては、そういう具体的な指導というものをどのようになさっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 佐々木委員御指摘のように、保険における給付については、申請や請求が前置主義とされている原則は、これはあろうと思います。しかし、例えば自動車事故のように、事故があったことが確認されていて、にもかかわらず付随的条項について告知されていなかったというような話である場合に、当然保険会社側からは、細かな点でございますし、それは告知しようがしまいが、申請しようがしまいが、やはりそこにおいては適切な処置というものが前提になろうという商品設計だろう、私どもはそう考えております。

 したがいまして、顧客に対する適切なサービスをしっかりやっていただくために、迅速かつ適切な顧客対応という意味で、いわゆるしゃくし定規な契約の解釈というようなものを盾に不払いをするなんということは絶対許されない、そういう対応をしていきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 金融庁にお聞きしますけれども、今まで生損保で明らかになった不払い金額があると思うんですが、そのうち、実際に支払いが済んでいるものというのはどのくらいあるんですか。その数字は把握されていますでしょうか。

佐藤政府参考人 各社において、確認できたものから順次支払いを実行しているというふうには聞いておりますけれども、その定量的なデータを現在持ち合わせておりません。申しわけございません。

佐々木(憲)委員 実際にどの程度払われているかということはぜひつかんでいただきたいと思います。ある程度の期間がたったときにどの程度支払われたか、これは確認すればすぐわかると思うので、その報告はまた別途いただきたいと思いますが、いかがですか。

佐藤政府参考人 しかるべき節目で、まとめて御報告をさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 今回のこういう一連の事態を受けて、一部の会社では、再発防止策ということで、保険商品の簡素化の方向で見直しを検討しているというふうに聞いております。

 大臣にお聞きしますけれども、簡素化をする理由といいますか目的、これをどのように把握されていますか。

山本国務大臣 多様化や複雑化が保険商品の傾向でございますが、それに商品管理体制が対応できなかったということで、個社において、不払いの要因にそこをとらえれば、簡素化して、管理ができるというような体制にしていこう、いわば、自分の会社の特質に応じて商品設計をしていくというような再発防止策の一環でなかろうかというように思っております。

佐々木(憲)委員 保険商品が多様化、複雑化するということは、契約者も理解できないけれども、契約をとりに行く保険会社の側、勧誘する側、あるいは代理店も、理解できないで販売しているという事例もあると聞いております。

 例えば、自動車保険の人身傷害保険の場合、歩いていたときに事故に遭っても保険ができる特約というのがあるそうですね。これは、あいおい生命であるようですけれども。よく理解できずに勧められるままに契約すると、こんな特約というのは忘れてしまう、先ほど大臣がおっしゃったように。当然、代理店も、歩いているときの事故まで聞くことは少ない。実際の請求が漏れる可能性もあるということだと思います。

 さまざまな付加価値といいますか、商品にいろいろな特約を二重、三重につけていきますと、一層複雑になっていくわけです。

 例えば、このことについて毎日新聞の社説がこういうふうに書いたことがあります。損害保険業界においては、自由化以降、商品開発競争が激化し、特約数が一社で千を超えるなど、保険商品の内容が複雑、多様化した。このため、システムを中心とする新商品の支払い部門の整備がおくれた。また、職員、代理店の知識も追いつかず、契約者に対する説明も不十分であった。このことが大量の支払い漏れにつながった。こういうふうに社説で書いているわけです。

 これまでの一連の事態を招いた要因として、保険商品の複雑化、多様化という問題があると私は思いますが、大臣はどのように認識されていますか。

山本国務大臣 委員御指摘のとおり、多様化、複雑化、それに対して、多くの損保会社は代理店制度を構造的にとっております。代理店制度である限りは、保険会社とまた別会社で商品が売られるという事態になっております。

 その点におきましての研修不足あるいは知識不足、そういったものについて認識を今回していただきましたので、そうした面について十全を果たすべく、研修制度や、長期にわたる資格的な観点から、さらに強化した販売体制をとるというように約束もちょうだいしておりますし、そういったことからして、多様化、複雑化への対応が保険会社等はおくれておったということに対して、今回それに追いついてくれるというように期待しておるところでございます。

佐々木(憲)委員 これは、私は、保険会社あるいは保険業界の責任は非常に大きいと思いますが、同時に、複雑多様な商品を可能にした背景にある規制緩和の問題あるいは自由化の問題というのが、もう一度見直される必要があるんじゃないかというふうに思っております。

 金融庁、当時大蔵省ですけれども、保険会社の新しい商品を認可制から届け出制に規制緩和しましたね。当然、複雑な商品が、競争が激化し、また、アメリカの資本が入ってくる中で、次々と開発されていく。したがって、今日の事態が起こることを予測して対応すべきだったのではないかという感じを私は持っております。

 一九九五年の保険業法の改正のときに、保険商品及び料率が認可制から届け出制に緩和されました。当時から、保険会社の引受拒否あるいは差別的な引き受け、料率の乱高下、保険料の支払い遅延等の弊害、こういうことが指摘されておりました。

 大蔵省としては、その当時、どういうふうに対応していたかということなんですが、一九九五年三月十七日の大蔵委員会、当時の山口公生大蔵省銀行局保険部長がこういうふうに言っているんです。

 そういったことを十分に私どももよく考えまして、あくまで料率、約款等の自由化につきましては、基本的には、自由な方向、規制緩和の方向に持っていくわけでございますけれども、漸進的にやっていく。また、そういったものを防ぐためには、算定会制度というものの基本は堅持しながら、その自由度を増すことは努めていきますけれども、その算定会による客観的な料率によるダンピング防止あるいは引受拒否の防止というようなことに努めてまいりたいというふうに思っているわけでございます。こういうふうな答弁をされているわけですね。だから、当時も、今のような事態が起こる危険性を早くも感じておられたわけでありまして、そうならないように防止をしたいという答弁もされていたわけです。

 その当時、何か手を打っているかのような話をされているわけですけれども、ところが、現実は、今の不払いというような事態が続発するという結果を招いてしまった。

 やはり今回の不払い問題の背景に、こういう規制緩和、自由化というものの行き過ぎた状況というものがあったのではないか、その点で行政の側もその責任の一端を感じてもらわなけりゃならぬと私は思いますが、どのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 保険商品の多様化が進められたことによりまして、顧客はよりニーズに合った商品を購入する機会を得ているという面もございますが、そのことにおいて、また反面、不払いの大きな要因になったことも事実でございます。さらにまた、価格競争が促進されまして、低廉な保険料で保険商品を購入できるようになったと言われるメリットも他方でございまして、いずれにしましても、競争激化、そして、商品にさらに魅力をつけるための多様化、複雑化というような傾向が今日の特徴であることは間違いありません。

 しかし、反面の問題の不払い事実があるからといって、もう一回許可制にして、商品について単純化でなければならないというようなことに、もとに戻すというよりも、今保険会社も反省し、また、改善を努力すると約束していただいておりますし、今後、先ほど申し上げました支払い管理体制、特に苦情処理、そしてまたさらに不服申し立ての制度等が完璧を期することができますならば、利用者も、また保険会社も新たな次元に進むことができるだろうというように思っておりますので、さらに時代を進化させていくというような観点から金融行政を進めていきたいというように考えております。

佐々木(憲)委員 私は何も、許可制に今すぐ戻せと言っているわけではありませんで、自由化、規制緩和が行き過ぎたんじゃないか、あるいは、自由化を進める場合に、被害というものが発生し得るので、それに対する規制も同時に強めなければ大変な事態になるんだ、こういうことを言っているわけでございます。

 したがって、現在の事態を踏まえて、今の野放しのような状況を改善するということは当然すべきだと思います。今までの行政はすべて正しかった、問題は会社の側なんだ、これではちょっといただけない。やはり、今日の事態を招いた背景にどういうことがあったのかを深く分析して、それに対応する、今の時点に立った適切な対応策というものを考える、これが大事ではないかということを言っているわけであります。

 さてそこで、次に、競争の激化ということが、この間、規制緩和によって、いろいろな形で発生しました。これは商品の多様化という面だけではなくて、収益性を向上させるために、各社ともこぞってリストラというものを推進したわけです。費差益をふやすというためにリストラを行ってきたと思うんですが。

 この十年間、統計を私ども調べてみますと、インシュアランス生命保険統計号というのがありまして、それによりますと、損害保険の従業員数は、十年前の一九九六年、十一万四千六百三十人だったわけです。これが現在八万四千九百五十九人ですから、十年間で二万九千六百七十一人のマイナス、約三万人減っているわけです。それから生保の内勤者を見ますと、九万九千四百八十七人から七万五千二百七十八人、十年間で二万四千二百九人減っているわけです。約二万五千人減っている。これは内勤者です。それから生保の営業職員、外回りの職員ですけれども、十年前は三十六万八千五百六十一人だったんです。それが二〇〇六年には二十一万一千五百二十二人。ですから、十年で十五万七千三十九人、大変なマイナスであります。

 これは、各社のリストラ競争、コスト削減、そしてまた、営業収益を拡大していく、企業の収益を拡大していく、そのために相当ドラスチックにやったんじゃないかというふうに思われます。

 その結果、外務員が非常に減少しております。いわば契約者と直接対話をし、契約者と商品の内容についてお話をする、そういう機会の多い外務員が大幅に減っている。最近は、外資がインターネット販売を拡大するとか、あるいは新規契約高がそのために伸び悩む。そういう中で、外務員に非常に厳しいノルマ、販売目標を課して、それが非常に耐えがたいということで、また外務員の離職を促進しているという面もある。

 保険会社の労働者というのは、そういう意味では、お客さんと直接フェース・ツー・フェースで話し合いのできる窓口ですからね。このリストラが極端に進められると、専門家である保険商品の販売員が保険会社から離れていって、同時に、商品が複雑化していく、この二重の問題が発生するわけです。

 今日の事態を招いたものの一つとしてそういう状況があるのではないかと思いますが、大臣はどのように認識しておられますか。

山本国務大臣 おっしゃるとおり、ここ十年、十五年の金融システムリスクの時代におきましては、再編統合がございましたし、リストラを余儀なくされた生損保であったことは間違いないだろうと思います。

 また、さらに別な次元での話としましては、例えば保険商品の販売形態の変化。近時、伝統的な、営業職員によるもののほか、インターネット等を活用した通信販売等、販売チャンネルが多様化しておりまして、必ずしも外勤職員や募集人によらない販売方法が見出されてまいりました。

 保険会社がどのようなチャンネルで保険商品の販売を行い、そのためにどのような体制を構築するかにつきましては、基本的に各会社の経営判断による事項となったわけでございます。ただし、どのような販売チャンネルによる場合でありましても、保険会社が適切な募集管理体制を整備することが必要でございます。その上で、顧客がみずからのニーズに合致した保険商品を適切に選択、購入できるようにするための情報提供や、保険契約に関する重要事項をわかりやすく説明することが必要だと思っております。

 金融庁としましては、保険会社がこうした体制を整備することで、より満足度の高い保険商品の販売、勧誘が実現されることを期待するものでございまして、今後さらに、システムリスクを脱して安定期から成長期に入ったときには、大事なお客様のための従業員数の確保、新規採用を含めてさまざまな採用が増加していくということも言えるかもしれません。そんな意味で期待するところでございます。

佐々木(憲)委員 やはり外務員とか代理店というのは、専門性それから商品の知識を高めていくということが大事であり、また、それが地域や顧客との信頼関係を構築していく上での基礎になると思うんですね。それがコンプライアンス確立の一つであり、不払いの対策にもつながるというふうに私は思います。

 ところが、収益第一主義で職員をどんどん減らすということが、やはりそれを阻害する要因になっているというふうに思うんです。いまだにリストラをまだまだ進めていくという方針が出ているようでありまして、例えば東京海上日動火災、これは、日動火災の創立以来九十年余り、顧客との重要な接点となっていた外務員制度を廃止するというんですよ。

 もともとこの石原社長は、外務員、リスクアドバイザーというらしいんですが、これについてこのように言っておられたわけです。各地域に密着して会社施策を着実に実行し、高い専門性を持つプロフェッショナルとしてお客様に御支持いただいた、こういうふうに評価をされていたわけですね。ところが、経済合理性の問題を中心に置くようになり、その制度を廃止しちゃうということですから、支持をしていただいたと評価しながら、これはもうやめちゃいますというわけです。

 東京海上日動は、十兆円を超える総資産を有し、千六百億円を超える経常利益を上げる、まさに日本最大手の損害保険会社であります。そこが、経済合理性を理由に、コンプライアンスのかなめの一つである外務員を切ってしまうというわけです。東京海上日動というのは内勤や代理店勤務への転職を勧めていますけれども、これまでそれぞれの外務員が長期の関係で培ってきた顧客との信頼関係あるいは地域のネットワークを断ち切ってしまうということになるわけです。

 契約者への説明義務が問われているときに、このようなネットワークを持つ外務員をリストラするというのは、保険会社と顧客との重要な信頼関係を断ち切ってしまうんじゃないか、私はこれは非常に問題があるんじゃないかと思いますが、いかがですか。

山本国務大臣 おっしゃるとおり、金融商品というものは、信用の高いレベルでの商品設計や、また販売が必要でございます。例えば専門性の高い募集人の例としましては、ファイナンシャルプランナー等、資格を有する者を活用した営業形態を必ずとるとしたような会社も現在見出されているわけでございますし、識者によりますと、アメリカの地方銀行では、むしろ今日では、人をふやさなければディテールができないというようなモデルになっているそうでございますし、また、他の識者によると、ロンドンにおける雇用の拡大はほとんど金融機関だというようなことも言われております。

 今後、そうしたような時代が早晩到来するだろうというように思いますので、今までは、いわゆる経営基盤が脆弱になったときの統合の余波がございますけれども、これが安定期を経て発展期になれば、雇用についてもかなり期待をすることができると私は思っております。

佐々木(憲)委員 期待されるのはいいんですけれども、実際に、現実にこういう人減らしがどんどん進んで、外務員を全廃するとか契約者との関係が希薄になる、そういう事態というのが発生しているわけです。こういうことに対して、それは収益性が上がるからいいんだと単純に言えるのかどうか。今大臣おっしゃったように、むしろ逆であって、顧客の信頼を獲得し、そしてみずから専門性を高めていく。そのことによって営業のすそ野が広がり、収益も拡大していくわけである。

 何か、私は今の経営のあり方というのは、基本的な考え方がどうも違う方向に行っているのではないか。つまり、収益を短期的に上げようとして、結果的に長期的な収益を減らしているような感じがする。やはりそういう点を、これは私企業ですから、一々、手とり足とりそれに対して介入することはできないと思いますけれども、しかし、全体としての保険の行政を担当する大臣として、先ほど、ある方向をおっしゃいました、外国の例を挙げましたよね。やはり日本の保険会社のあり方として、信頼性の確保ということからいって、極端なこういう人減らしというものについて何らかのメッセージを発して、もっと親切な対応ができる体制を人も含めてつくるべきだ、こういうことを発するべきではないかと思いますが、いかがですか。

山本国務大臣 生保、損保を通じまして、いわば情報の非対称を補完すべく、人材の育成や要員というものについて重要視していただけるような業界であってほしいというように考えております。

佐々木(憲)委員 今私が取り上げた東京海上日動の外務員制度の廃止問題では、職員の中から、立場の維持の問題で労働争議が起こるような事態にもなっているんです。争点は、制度廃止後の外務員の地位の確認の問題と言われております。ことし三月二十六日に東京地方裁判所でこの争議の判決が行われて、外務員は職種限定契約であることを認められたということです。

 さらに、その判決文を見ますと、東京海上日動が〇七年七月一日に制度を廃止することによって、原告らがそれまで積み上げてきた顧客との契約関係あるいは人的なつながりを失い、事後に廃止の無効による地位確認等が認められても回復困難な事態を招来することも考えられる。つまり、外務員制度を廃止しちゃうということは、人的なつながりを失って、これは二度と復活できなくなってしまうんだ、こういうことを裁判所の判決文の中で書かれているわけです。それで地位の確認を認めているわけですね。裁判でも、顧客との人間関係というのは非常に大事だということを認めております。

 このような関係を非常に私は今後とも大事にしていくことが求められていると思いますが、もう一度、最後に大臣に確認をしたいんですけれども、日本の保険会社というものは、ただ商品を、物を売るということではなくて、契約を結んでいくその専門性を持った、そしてまた人と人のつながりを大事にしていく役割を担っていると思うんです。そういう意味で、人間を大事にするということは、契約者を大事にすることにもつながるわけですし、それが将来、会社の発展にもつながっていく、こういうことになると思いますので、その点について最後に大臣の基本的な見解をお聞きして、質問を終わりたいと思います。

山本国務大臣 まず、個別の裁判事例、特に個別企業の人事面における紛争についてはコメントはできませんが、一般論で申し上げれば、委員御指摘のとおり、短期的な収益をねらうものでない、将来にわたってのゴーイングコンサーン、長期的な繁栄を得るための企業としては、やはり人の信用が大事だろうというように思っております。

 信用する者と書いてもうかると読むわけでございますから、その意味でも、人を大事にする企業体質で日本企業はあってほしいと願っております。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 きょうは、大きく分けまして、税制改正手続についての問題を、前回、予算分科会の方で、私、尾身大臣の方に質問させていただいた経緯があるのでございますが、それに引き続きまして、この財務金融委員会の場で質疑をさせていただけたらというふうに思っておるところでございます。

 それでは、まず初めに、特殊支配同族会社に対する役員給与の損金不算入制度というのが平成十八年度改正で盛り込まれております。そして、平成十九年度からは所得基準額が一千六百万円ということで適用除外が設けられておりまして、ただ、その一年前の税制改正では八百万円とされていたところであります。

 この制度の導入時点におきまして大変いろいろな議論がありまして、私もこの財務金融委員会の場で議論をさせていただいたところではありますが、まず、この制度は課税理論上、税理論上、非常に問題がある。個人所得税の問題、それを法人税法上で取り扱う、そういう理論上の問題があるわけでございまして、まずその点、導入に難ありではないかという話をさせていただきました。

 そしてまた、もう一方で、この制度を導入するに当たって、要するに、まじめに取り組んでいらっしゃる中小企業の方々に対して影響が甚大ではないか。その当初の所得基準額八百万円というのがどうにもかなりの影響を及ぼしそうであって、統計数値としてその根拠を財務省さんの方で示されたわけですけれども、これについては影響が大き過ぎるのであって、財務省さんが言っている見通しというのは甘いんじゃないかという議論をさせていただいたところであります。

 それからまた一年後に、要するに、今度は一千六百万円に所得基準額、適用除外の基準を大幅に引き上げたというところでございます。この点につきましては、前回の質疑におきまして、尾身大臣の方から、中小企業の活性化という観点からという話をいただいたところではありますが、この八百万円と一千六百万円という基準引き上げの期間として、たった一年しかない。実務上を考えますと、これは大変混乱を来すところでもございますし、何よりも、その八百万円として導入したときの根拠、これが脆弱であるというふうに私は申し上げながら、ではこの一年後に一千六百万円にするというのは何とも納得がいかないわけでございまして、この点について、大臣、御見解を再度求めたいと思います。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

尾身国務大臣 日本経済の発展を実現するためにも、中小企業の発展というものは極めて大事であるというふうに考えております。

 そういう中で、地域の中小企業の活性化に取り組むことが大事であるという指摘も経済成長戦略大綱においてなされているところでございまして、十九年度改正の一環として、法人所得とオーナー給与の合計額が八百万円以下の場合に制度の適用除外としていたものを千六百万円に引き上げたものでございまして、今般の改正は、中小企業の活性化という安倍政権の大きな政策課題に迅速に対応して見直しを行ったものであるというふうに考えております。

鷲尾委員 まず、中小企業の活性化という話をいただきましたが、もし中小企業の活性化ということであれば、翻って、一年前に導入した制度自体をもう一度検討し直すという方向性も考えられたというふうに思います。それを、その基準額を引き上げると。課税理論上、大変に問題がある。これは当然、学者の方からも理論上は問題があると。所得税法の改正としてやるべき問題ではないという話をしているところでございまして、要するに、こういう理論的に問題がある制度をそのまま残していいのかということも一方であると思うんです。

 所得基準額を引き上げたということは、当然、引き上げた方が中小企業活性化に資するということでありますから、そもそも、この税制自体をもう一度見直すという方向性も中小企業の活性化という観点からは考えられると思うんですが、大臣はいかがお考えでしょうか。

尾身国務大臣 もう委員はよく御存じでございますが、従来から、法人税法上、不相当に高額な役員給与等については、損金算入をするなどの課税上の弊害を防止する対応を講じてきたところでございますが、この制度の創設については、オーナー企業の役員給与の支給について、経費の二重控除に相当する部分を損金不算入とすることで課税上の弊害を防止するものでございまして、これは従来からの法人税法の考え方に沿ったものでありまして、理論上、問題がないと考えているわけでございます。

 むしろ、中小企業の平均的な所得水準を超える所得があり、なおかつ、経営と所有を実質一人で行っている企業についてまで経費の二重控除による節税のインセンティブを放置することは、課税の公平上、適切でないということで本制度を創設したものでございまして、その後、八百万円を一千六百万円にした経緯は先ほど説明したとおりでございますが、私自身は、この制度を撤回することは適当でないと考えております。

鷲尾委員 大臣、租税理論上問題はないという話をおっしゃっていましたけれども、余り瑣末な議論になってもしようがないんですが、所得税で、当然その給与所得控除というのは認められているわけでございまして、これを法人段階で認めないというのは、やはり租税理論上、おかしいと言わざるを得ないんじゃないかと。それとは別に経費の二重控除の問題があって、これについては、確かに不公正であるという批判は一部免れ得ないわけでございまして、それについての対策という意味で恐らくこういう制度を導入されたという話なんでしょうけれども、それについては、やはり私自身はかなり影響が広範囲に及ぶと。

 一つは、広範囲に及ぶのでやめた方がいいんじゃないか。一つは、租税理論上も誤りであるんじゃないか。もう一つここには重要な問題がありまして、要するに、去年八百万で導入しておきながら、なぜことし一千六百万か。中小企業の活性化に即時対応したと。では、導入した当初、中小企業の活性化を考えていなかったかといったら、恐らくこれは考えられておったはずです。ですから、私自身は、その中小企業活性化という点でいきますと、そもそも、導入時点においてより統計数値を含めた幅広い議論を行っていくべきであったのではないかと思うわけです。

 ですから、制度の導入の議論が一つと、その導入に当たってどういう議論をやっていかなきゃいけないのかという点で、やはり当然、いろいろな関係団体等にヒアリングをされたんでしょうけれども、そして、与党内での議論、政府内での議論、当然いろいろされたんでしょうけれども、ただ、我々、私は野党なものですから、政府部内そして与党内でどういう議論があったのかわかりませんが、現象として、去年八百万、ことし一千六百万、去年もことしも中小企業の活性化を考えているわけですよ。であるならば、どうして制度導入時点においてしっかりと幅広い議論をできなかったのかという議論がやはりなされるべきだと思うんです。

 ですから、このことについては、現象として、こういう一年足らずで、しかも八百万円、確定申告、ついこの間、先月終わったばかりですから、その実績がこれから出てくるわけです。その実績を見ない中で一千六百万という基準の引き上げを行っている。こういうことが現象としてあらわれてきているわけですから、政府内そして与党内、税制改正の手続として、よりもうちょっと幅広いものをやっていかなきゃいけないんじゃないかなというふうに私自身は思うわけですけれども、大臣、いかがですか。

尾身国務大臣 昨年の五月に会社法が新しくなりまして、資本金が一円でも株式会社の設立が可能となって、法人の設立が容易となりました。そういうことを踏まえて、個人事業者が節税を主たる目的として法人成りを行うというインセンティブを抑制するという観点から、いわゆるオーナー企業について、経費の二重控除を防止するという趣旨でこの制度をつくったわけでございまして、私は、ちょうど一年以上前でありますが、一昨年の十二月の議論の段階では、この制度創設のときの議論に関与をしておりました。そのときに、いわゆる中小企業関係者に御意見を伺いましたところ、そういう制度を導入することもやむを得ない、こういう意見が実はかなり多数ございまして、この二重控除を防止するという制度ができたわけでございます。

 しかしながら、安倍政権になって、やはり中小企業の活性化が非常に大事であるということになり、かつ関係者の御意見もいろいろと踏まえまして、この八百万円というのはもうちょっと上げる必要があるのではないかということで千六百万円に上げたものでございまして、中小企業に、さらに充実した活動をしていくためには、今の千六百万円に対象を適用除外にするということが適切であるというふうに判断をして、こういう改正をしたものでございます。

鷲尾委員 大臣自身が当時から議論に加わって、当然、その議論の状況を私はうかがい知ることができませんけれども、多分、ある程度その議論をやられていたという御答弁だったと思うんです。御答弁だったと思うんですけれども、現象としては八百万から一千六百万。

 そもそも、去年もことしも、中小企業活性化という点では、当然、皆さん考えられておったという話だと思うんですよ。ですから、それは、大臣が当時議論に加わって、いろいろ中小企業の団体からと。確かに、経費の二重控除の問題、私自身もそれは存じ上げております。オーナー企業の問題については、かねがね私も存じ上げております。そのことについての何らかの規制が必要だ、その必要性の中で制度を導入した。導入したのはいいんですけれども、実績も何らない中で、一年もたたぬうちに、朝令暮改みたいなものじゃないですか。ですから、こういう朝令暮改が起こらぬように、より適切に議論すべきだったんじゃないかと私は思うわけです。

 大臣、当時加わっていろいろ議論されたというのはよくわかりました。よくわかりましたけれども、行政のつかさのおさとして、やはり現象としてこういうものができ上がってしまっている、朝令暮改に見えてしまうようなことがある。当初、八百万で導入したときも、いろいろなところから私のところにも話が来ました。これはおかしいじゃないですか、これは影響が大分多くなりますよと、いろいろなところから来たわけです。それで、その当時、谷垣財務大臣とこの場でいろいろと議論させていただきました。

 ですから、確かに議論はされたんでしょうけれども、それをやはりもっとよりよく改善していくべきなんじゃないかなというのが私の訴えでございまして、私の今の話を聞いて、大臣、その点はどう思うか、一言お願いをいたします。

尾身国務大臣 この点については、今おっしゃったような議論も理解できるところであります。

 しかしながら、現状、私どもとしては、八百万円を千六百万円に上げて適用除外範囲を広げるということが中小企業の活性化のためにもいい、かつ、しかし、二重控除ということをなくすことも大変大事であるという判断をいたしまして、このような制度改正にしたわけであります。

鷲尾委員 大臣、済みません、しつこいようですけれども、税制改正の内容ではなくて、税制改正の手続といたしまして、前回導入した時点での議論は不十分だったんじゃないかな、やはり、より改善していかなきゃいけないんじゃないか、そういう御感想をお持ちかどうかについて、コメントをいただけますか。

尾身国務大臣 私自身は委員の意見と違いますが、そういう委員の意見も理解できると先ほどから申し上げているところでございます。

鷲尾委員 余り了解はしていないんですけれども、これ以上話してもせんないことでございますので、続いての質問に移らせていただこうというふうに思います。

 山本金融大臣にお伺いさせていただきたいというふうに思っておるところがございます。実は、何を申し上げたいかというと、ライブドアの問題がございました。せんだって、風説の流布、偽計取引、あと粉飾のかどで実刑判決を受けたというところでございます。

 このライブドアが、堀江さんが会社ぐるみでやったことというのは、法律に書かれていない、制度の不備をついておったということを言われておりました。制度上の不備、要するに、法律上手当てされていないもので、例えば株式の百分割で株価をつり上げたとか、これについては、株券の発行がおくれるという、そういう実際上の問題点を利用して、需給構造から株価つり上げということができたわけです。

 そしてまた、連結外の投資事業組合ですか、投資事業組合の開示制度の不備をついたことで、利益、益出しをするということを行ったとか、これはニッポン放送株の取得にもありましたように、立ち会い外の取引で株式を大量に取得しておったということでございました。

 あと、MSCBで資金調達をしたというところとか、規制がなされていないさまざまな部分について、その制度の不備をついてみずからの会社あるいは個人の利益を図るということがありました。

 そのかどで断罪されたわけですけれども、こういう制度の不備というものを放置しておっては、当然、日本の資本市場、今までいろいろ規制緩和ということの中で、そして金融ビッグバンをしてきて、対内直接投資を含めて海外からいろいろ資金を呼び込もうとしている中で、日本の資本市場の整備というのをこれからやっていくに当たりまして、余り法律に対応していない、要するに社会的な要請がいっぱいありますよと、これを放置していくのは問題だと思うんです。放置していくのは一方で問題でありながら、放置していること自体がこういうライブドアの事件がないと明らかにならないというのも、これは一つ問題だと思います。社会的に認知されない、重い腰をみんな動かさないというのは、これは非常に問題があるというふうに思います。

 ですから、こういうことをより早く、機動的に、先手を打って、不公正な取引についていろいろ金融当局としても対応していかなきゃいけないというふうに思うんですけれども、大臣、この点についてはどのような対応を考えておられるのか、どういう心構えでおられるのかということをお聞きしたいと思います。

山本国務大臣 委員御指摘の点は、まさに市場がクリエーティブである限りにおいては、常に必然的にあり得る体質であろうと思います。すなわち、規制をしましても、さらにそれとまた違う形での商品が生まれてくるというようなこともあります。

 そこで、ヨーロッパでは、プリンシプルベースという考え方で、原則論ですべてを包括していこうという規制のやり方、さらに、それに対するものとしてルールベース、つまり、紙に書いてそれ以外は許していこうという考え方でございます。日本においては、両方いいところをとろうという考え方をとっているわけでございますが、それにしましても、先ほど申し上げましたように、市場の健全性をどう担保していくかという問題につきましては、常に注意をしながら、一般投資家が市場に対していわば絶望感に浸らないような、そういう問題については、常に事前事前に抑止していくなり、ルールを作成するなり、警告を発するなりというような視点で考えていきたいと思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 実は、これも新聞のコラムなんですけれども、こういう事例がございましたので、ちょっと御紹介させていただこうかと思います。ライブドアがニッポン放送買収に乗り出したころ、ちょうどサンケイといろいろ、差しとめだ何だかんだでいろいろ司法当局とやり合っていた二〇〇五年の三月十五日の日経のコラムでこういう話がございました。

 「株券の印刷が間に合わず、売り手が株券の受け渡しができないことを見越して、百対一の株式分割を繰り返したのが今話題の企業である。」ライブドアのことですね。「百対一の株式分割をすれば株価は百分の一になるはずが十八倍にもなる。下がる時期も分かっているから往復で大もうけだ。こんなのはたった今でも違法に決まっているようなものだが、現実には適法とされ、しかし問題だから改正が必要とのことだ。」「金融弁護士と金融庁に任せておくと、今やっていることは皆、適法とされる。米国は不公正取引を網羅的に捕まえる包括規定が大活躍するため、やましい行為に対する抑止力が働く。日本にもある包括規定を活用すれば、こうした行為の大半はたった今違法だ。」「司法が勇断を示さない限り、日本の資本市場、企業社会の劣化はとどまるところを知らないだろう。」

 こういうコラムが、ライブドアとニッポン放送、ちょうどこの問題があったときに書かれておりました。

 みんなわかっていたわけですよ、ライブドアが違法であると。違法行為をしているんだということはわかっておった。ところが、それは、現在の日本の市場では、やましい行為だけれども適法だとされてしまっていた。このことについて、結局ずっと放置されていたわけですね。放置されていたあげく、与党の皆さんには耳が痛い話かもしれませんが、ホリエモンが政権与党の無所属で広島の方から出て、武部さんが弟だとかなんとかいう発言が出たりして、ある意味、一世を風靡したわけです。一世を風靡して、そして株価が思いっ切りつり上がったところで検察の強制捜査が入ったわけですね。これは、普通の金融市場の予測可能性という面から見ても、やはりおかしいんじゃないかと思います。

 いろいろな先生方と議論させていただきますと、法律に書いてあることについてはちゃんと対応できるよ、違法行為についてはこちらは摘発する準備はある、ただ、法律に書かれていないことをやろうとすると、それは予測可能性としておかしいんだという議論をされるわけです。でも、現におかしな取引を行っていて、こういうライブドア、二十万ぐらい小口の株主がいた中で、株価がつり上がったところで強制捜査と。これは果たして、では、今までそれこそ、やましい、一部分の人については違法だとわかっていた行為、これをこういう時点で強制捜査に入るというのは、予測可能性という面から見ても大変に問題があると言わざるを得ないわけです。

 ですから、予測可能性を言うのであれば、先ほどコラムでも紹介させていただいたように、証券取引法百五十七条の包括規定をこれから、事前チェック型ではなくて事後チェック型という形で行政が変わってきておりますから、大臣おっしゃったように、それこそプリンシプルベースかルールベースかということで、そのベストミックスでやっていくんだ、そういう心構えがおありであれば、何とぞ今申し上げたこともちょっと勘案していただいて、予測可能性という面から見ても、やはりやましい行為は罰するんだと。

 それは、当局としてやはり、当局だけではなくて、東証を含めて、最近東証もいろいろな事件があった中での、課徴金を含めたいろいろな措置を打ち出していますけれども、いろいろなバリエーションでもって日本の金融市場というのをしっかりと健全化していかないと、いつまでもライブドアのような企業が雨後のタケノコのように出てくるでしょう。そしてまた、外資も入ってきて好き勝手なことをやっていくでしょう。こういう事態はやはり避けなきゃいけないと思いますので、ぜひとも今の、ちょっとるる自説を開陳してしまいまして、質疑時間、ちょっと申しわけないですけれども、大臣に感想としてさらなる心構えをひとつお述べいただけませんでしょうか。

山本国務大臣 鷲尾委員の御指摘は、今日、市場にとって非常に大事な観点であろうと思っております。

 そして、市場の健全性を担保する役割は、当然金融庁も負っているわけでございますが、金融庁だけが負っているわけではなくて、市場参加者全員が負っているというように思っております。

 したがいまして、先ほどの新聞の引用もございましたように、パブリックプレッシャーという形での市場の健全性を守るやり方もございますし、さらに、自主規制団体として証券業協会、そういったものが、みずからの業務として、これは不健全だと思うところについては相互抑制をしていくという観点も必要でございますし、また、上場基準を設定している東京証券取引所、また廃止基準も考えているわけでございますので、当然、そこの点におきます自主規制委員会や今後定められます自主規制機関、こういったものが、そうしたまず市場に近いところで警告を発してくれるということに対して我々は期待するところでございますが、それでもなおかつ不安がある場合には、金融庁としてはメッセージを出すということも考えなければならない観点かなというように思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 もう一点だけちょっとお聞きしたいことがございます。

 それは、包括規定を運用するかどうかというところで、明確な言明というのは今大臣の方はなさらなかったわけですけれども、それはそれとして、これから金融行政を行っていくに当たりまして、当然専門家の養成というのが急務であるというふうに思っております。

 証券等取引委員会の人員を拡充するという手当てはなされておりますけれども、そもそもやはり証券取引を熟知している方とか金融市場のプロというのが養成されませんと、監督する側としては、包括規定の運用を含めて、これから適切なメッセージを発していくということを含めて、何をおいてもやはり人材の育成が大事だなというふうに思っておるわけですけれども、この人材の育成という面では、証券等取引委員会の人員を拡充するということは私も存じ上げておりますが、これから金融専門家を育成していくということについては、大臣、何かお考えはございませんでしょうか。

山本国務大臣 特に、大きな資金には国境がなくなっております。そして、その国境を越える要因としては、人材を求めて資金が動いているということも言えようかと思います。市場のあり方も人材によって決まってくるわけでございまして、おっしゃるとおり、人材なかりせば繁栄なしというのが金融マーケットの鉄則だろうというように思っております。

 その点において日本における証券等監視委員会は努力を重ねているわけでございますが、例えば、ヨーロッパにおける例でいきますと、証券市場でいわば業務としてやっておった方が逆に規制側に回っておられるというようなことからすると、そこに人材の流動性、したがって手口も逆に取り締まりの方がよく熟知しているというところがございます。その点においては、現在の金融庁及び証券等監視委員会につきましては、いわば役所そして官僚が検査監督また市場チェックをしておるわけでございますので、その意味における専門性についての壁はあろうと思います。

 そこで、金融庁は、専門家を内部に人材として登用するという考え方をとっておりまして、金融機関にいた方も百名以上採っておりますし、さらに、弁護士、公認会計士等につきましての職員も登用しているところでございます。

 今後さらにそうした人材の流動化を推し進めていきながら、さらに市場との対話を密接にしていきたいというように思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 こういう人材の育成という問題、金融庁の取り組みとして大臣るるおっしゃっていただきましたけれども、これは金融庁に限らず、やはり司法制度改革を含めて日本全体として取り組まなきゃいけない問題ではないかなというふうに思っておりますので、ぜひともまた閣内で、こういう資本市場の、せっかくライブドアという奇貨があるわけですから、これを生かして、日本全体の法律の形成能力と言ったらちょっと変かもしれませんけれども、専門的な人材育成、そして法律を適時につくっていく能力というのを高めていってもらいたいというふうに思う次第です。

 続いての質問に移らせていただきたいと思います。

 こういう金融不祥事がありますと、最近ではライブドアの問題のほかに日興コーディアル証券の問題もございました。これはシティグループがTOBに乗り出したというところまで話は私もわかっているところでございますけれども、これの裏で監査法人がかなり関与したのではないかというところがございました。

 公認会計士法の改正は、今回、また財務金融委員会の方で審議されるとのことでございますが、公認会計士法の改正の中で、私はどうしても忘れてはいけない視点があると思うんです。それは何かと申し上げますと、一つは、やはりこういう会計上の不正操作、粉飾決算というのは、あくまでもやはり第一義的には会社経営者の方が行うということだと思います。会社経営者がプレッシャーをかけることによって、会計士がそのプレッシャーに耐え切れなくなって、例えば会社側の主張をのんでしまうとか、それはもう長年いろいろ、会社と会計士のなれ合いという関係もありましょう、いろいろな関係性があると思うので、個別の話とまたちょっと全体の話と違うのかもしれませんけれども、そういう会計上の不正経理、粉飾決算というのをまず起こさないためには、やはり会社経営者に対して強く市場全体がプレッシャーを与えるということが不可欠であるというふうに思う次第です。

 こういう不祥事が起こりますと、どうしても、市場の番人がまた見逃す、また粉飾を見逃したんだ、ねらいになったんだという話ばかりが先立ちますけれども、そもそも公認会計士監査というのは不正の発見を第一義的な目標にしておらないわけでございまして、そういう意味では、今回の公認会計士法の改正にもございました独立性について、独立性については、しっかりと独立の立場で監査するという旨のコメントを明記したということが今回の改正の法律案の概要でわかっております。独立した立場において業務を行わなければならない、これを職責規定において明確化したというふうにあります。

 これも一方でやはり大事だと思うんですが、独立した立場で行うためには、やはり会社側から報酬をいただくわけです。会社側から報酬をいただくわけでございまして、その会社経営者が自分たちの公認会計士の給料を決めるとなると、やはりここには何らかのプレッシャーが働きやすくなる。

 そこで、やはり監査役なり監査委員会の方から、そういう報酬なりを会計士の方に渡す、決定権限としては監査役なり監査委員会なりの方が独立性という観点ではよりよいのかと思いますが、山本大臣にお聞きしたいと思いますが、この点はどのようにお考えですか。

山本国務大臣 この点、直截に申し上げれば、会社法における経営側のコンプライアンス、ガバナンスにおいて、監査委員会あるいは監査役との緊張関係、これを前提とするわけでございますけれども、現実の会社経営の実態を見てまいりますと、社長のラインから外れた方がやや監査役になっていたりするという実情からしますと、必ずしもそれですべてが担保できるわけでもないというように思います。

 とりあえずは、今回の公認会計士法の一部改正によって、職責規定における独立性を明文化し明確化するということをまず念頭に置いて改正しておきまして、今後そうした点において、この委員会で与野党の議論の中からいいものが生まれればというように思っておりますので、どうぞひとつよろしくお願いいたします。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 大臣、いみじくも今おっしゃったとおり、監査役というのはやはりちょっとラインから外れた方が今実務を担当されている、そういう実態がございまして、ということは、会社法が予定している監査役の機能、監査委員会の機能というのが著しく理念と実際で違ってきてしまっているという現状があると思います。

 ですから、この建前を直さずして、コーポレートガバナンス、コンプライアンスの体制を考えるというのもやはり難しいことだと思いますし、会計士に対するそういう規制を強化すればいいという方向性が果たして本当にそのコンプライアンスに役立つかというところについても若干の疑念を呈させていただきたいというふうに思う次第です。

 済みません、ちょっと時間もありませんので、最後になりましたが、今回、今天下りの規制について大変議論がやかましくなっておるところでございますが、その天下りの中で、一つは、国税職員が税理士さんに天下るという、税理士さんというか、民間企業に対して天下るという事態が常態化しておるわけです。

 問題点は二つあると思います。

 一つは、国税職員さんが専門的な税理士という資格を、ある程度年数を、この場合二十三年間ですけれども、二十三年間国税の職員として働くと税理士という資格を得られる、この問題がまず一つと、その税理士という資格を得て退職した場合です。税理士さん、例えば、署長さんが退職しますよと、退職したときに、その税務署内の職員さんが各企業を回って、ちょっと署長のクライアントとして頼むという行為がやはり常態化していて、それで、これは国税庁の発表ですけれども、あっせんを行った退職職員、平成十八年七月、四百七十九名、一人当たりの平均あっせん企業数が八件、一人当たりの平均月額報酬が五十万、こういうようなあっせんの実態があるわけでございます。

 これ自身、当然天下りとして規制していかなきゃいけないというふうに思うわけですけれども、まず、こういう実態があるということについてどういうようなお考えをお持ちなのか。これは財務大臣にお聞きしましょう、尾身大臣に。

尾身国務大臣 この申告納税制度の普及発展のために官民を問わず有為な人材を活用していくことは重要でございまして、退職した職員が税理士として国家のために働く、貢献するということは大きな意義があると考えているわけでございます。

 今のあっせんのお話につきましては、いろいろ聞きますと、私も政治家として思うところがございまして、そのあり方について今後よく検討してまいりたいと考えております。

林田委員長代理 時間が来ていますので、簡単に。

鷲尾委員 はい、了解です。

 大臣と見解が一致しまして、大変うれしく思っておりますが、一つ御紹介させていただきます。税理士制度は、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念に沿って、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命としておりますと。一方で、これはホームページからとってきましたけれども、国税専門官というのは、これは「内国税の賦課・徴収を行う官庁で、国の財政基盤を支える重要な仕事をしています。」ということが書かれております。

 やはり、税理士になられる方、二十三年勤続したからそれでオーケーというのでは、やはり、要するに簡単過ぎるのではないかと思います。税理士は税理士なりの社会使命があり、それで試験勉強で苦労されている方々がいるわけです。それを、二十三年勤め上げればそれで税理士資格が付与されるというのは、やはりちょっと問題があるのではないかなと思いますし、そしてさらに、これは国税庁の採用案内に書いてあるんですけれども、人事・福利厚生等という中でその他という項目がありまして、二十三年間勤務した者は税理士となる資格を取得することができますと。これは国税庁の福利厚生に書かれてあるんですね。これはちょっとおかしいと思いますね。

 確かに、勤続して税理士の資格を得られる、このこと自体も、何らかのもうちょっと高いハードルを設けて、専門性というのを維持しながらの税理士資格であるべきだと私は思います。さらには、ホームページで人事・福利厚生のところに書いてあるというのは、これはちょっと常軌を逸しているなというふうに私なんかは思うわけですけれども、大臣、どう思われますか。これを最後の質問にします。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

尾身国務大臣 先ほど申し上げたとおりでございまして、私もそのあたりの細かいことは実は存じ上げませんが、いずれにしても、疑惑を招かないようなことにしていかなければならないと考えております。

鷲尾委員 ぜひ、こういうことはなきように、より業務の適正を図っていただきたいと思います。

 質問を終わります。ありがとうございました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官付参事官井上裕行君、内閣府経済社会総合研究所景気統計部長舘逸志君、財務省大臣官房総括審議官勝栄二郎君、財務省国際局長篠原尚之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 次に、楠田大蔵君。

楠田委員 民主党の楠田大蔵でございます。

 まず、私にとりましては復活後初めての質問でありますが、明らかに空席が多いのではないでしょうか。定足、足りていますでしょうか。御確認をよろしくお願いします。

伊藤委員長 理事の方々、定足数を確認してください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

伊藤委員長 速記を起こしてください。

 楠田君。

楠田委員 正常化の条件でありました本日の一日の一般質疑でございますので、ルールに従ってやらせていただきたいという思いで指摘をさせていただきました。

 私、昨年末に繰り上げ当選という形で戻していただきまして、三カ月余りたったところでありますが、本日、本委員会では初めての質問でございます。いわばこの中では選挙が一番弱かった議員でもありますが、逆に言えば、国民に一番近い立場で質問を行うことができるとも思っております。そうした思いで、率直な観点から質問を行わせていただければと思います。

 今回、財投の出口改革として政策金融機関が統廃合または民営化されるということで、少なくとも、その数は減少をいたします。また、午前中の大臣答弁にもありましたように、一定程度役職員の数や店舗が減少し、リストラ効果もあると私も認識はしております。

 しかし、その統廃合の仕方、民営化の進捗の方法等には疑問も残るところでございます。財投の入り口改革であった郵政民営化があれほど徹底的に、実効性を担保するために法律で法定したのと比べますと、なおさらその思いを強くするところでございます。

 そこでまず質問ですが、今回の質問において、この委員会が開かれるにおきまして、政策金融公庫や商工中金は本委員会の所管ではないので聞かれると困るというような役所の方からの指摘も多々いただきました。しかし、やはり政策金融機関をどう全体的に改革するかという全体の視点からこの問題はとらえるべきだと私は思っておりますし、また、その全体像を、関連委員会すべてが参加をして、慎重に時間をかけて審議を行うべきではないか、そのようにも考えております。

 まず、ここで一つ確認ですが、そもそも、なぜ今回、日本政策金融公庫法は内閣の所管で、政投銀はこの委員会、そして商工中金は経産委員会と分けて法律が出されてきたのか。この点について、財務大臣、御確認でございますが、よろしくお願いします。

尾身国務大臣 なぜそういうふうになったかということ、私もつまびらかではありませんが、関係者が相談をした結果だと思っております。

楠田委員 もちろん関係者の一人でもあられるわけでございますから、もう少し踏み込んで、今回の御感想でもよろしいですから、お願いいたします。

尾身国務大臣 一つ一つの法案について、いろいろな意味で関連があることは、私もそう思っておりますので、全部を連合で審査をするというやり方もあると思いますし、それぞれの法案について別の委員会に出すというやり方もあると思います。政府としては、これを提案したわけでありますが、その扱いについては、国会の方でいろいろと御議論いただいて、そのように決定されたと承知しております。

楠田委員 尾身大臣も通産省出身でもあられますので、商工中金にはお詳しいはずでございますし、すべて関連をしながら総合的に見ることの重要性はよく御存じであられると思いますので、この点に関しましては、関係委員会が協力をしてぜひとも慎重審議されるように、まず御指摘をさせていただきたいと思います。

 続きまして、午前中の古本理事の質問にも関連することでございますが、こうした新機関のトップの人事についてであります。

 行革推進法におきましては、第五条の三号というところで、必要と認められる識見及び能力を有する者のうちからということと、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分に配慮するという、法律が明確化されておりますが、まず、この点に関しては、政策投資銀行また商工中金でも特別法で同様の規定があるか、お答えください。

尾身国務大臣 今の政策金融公庫の経営責任者につきましては、今お話しのとおり、行革推進法におきまして、設立の目的及びその担う金融業務に照らし必要と認められる識見及び能力を有する者のうちから選任されるものとし、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分配慮するということにされているわけでございまして、新しい新公庫法案におきましても、新公庫の定款に行革推進法の内容を経営責任者の選任の要件として記載をし、これにふさわしい者を新公庫みずから選任することといたしまして、主務大臣もこれをチェックする旨を規定しているところでございます。

 このような法律の規定に沿って、政策金融の実施機関である新公庫に相ふさわしい人選がなされるよう、主務大臣としても適切に対応してまいりたいと考えております。

楠田委員 公庫についてはそのとおりでありましたが、まだ付託されておりませんが、政策投資銀行、これから出てまいると思いますが、この点に関しても同様の決まりがあるかどうか、お答え漏れがありましたようですので、この点をお願いいたします。

尾身国務大臣 日本政策金融公庫は株式会社でありますが、株式会社日本政策金融公庫法におきまして、全株式の政府保有が義務づけられている特殊な事情があることや、行政改革推進法五条三号にあります新政策金融機関の経営責任者のあり方に関する規定も踏まえまして、この同公庫法において、経営責任者について特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分配慮するとの規定を定款に記載することとされているわけでございます。

 完全民営化する株式会社日本政策投資銀行及び株式会社商工中金につきましては、全株式の政府保有が義務づけられている日本政策金融公庫とは異なり、全株式をおおむね五年後から七年後に処分することとされておりまして、その経営責任者は民間株主を含めた株主総会や取締役会において選任するものでございまして、政府がその選任を拘束することは適当でないと考えており、そういうことから、移行期間中の両株式会社の経営責任者の人事に係る定款の規定は設けていないところであります。

 なお、経営責任者の選任に係る国の議決権行使に当たっては、制度設計における、経営責任者については、新政策金融機関と同様に、必要と認められる識見及び能力を有する者のうちから適材適所で選任されるものとし、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分に配慮するとの方針に沿って行っていくことが重要であると考えております。

楠田委員 大分同じことをお答えいただいていますので、時間も限られておりますので簡潔にお願いしたいですが、私が言っておりますのは、あくまで移行期間の時点においての、当然、トップの人事の件であります。

 そうした期間においても、完全民営化後の状況を踏まえて経営陣に任せるというお答えだったと思いますけれども、少なくとも平成十八年の六月二十七日に出された政策金融改革推進本部の決定、行政改革推進本部の決定、ここにおきましては、政投銀と商工中金に共通する事項として、先ほどの固定的に選任されることがないよう十分に配慮するという規定が既に盛り込まれていたはずでございますから、この点に関しては、やはりこの委員会で所管する政投銀に関しても同様と考えてよろしいでしょうか。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

勝政府参考人 お答えいたします。

 今大臣が申しましたように、完全民営化します株式会社日本政策投資銀行及び株式会社商工中金、これにつきましては全株式をおおむね五年ないし七年後に処分するということでございますので、その経営責任者は民間株主を含めた株主総会や取締役会において選任することになっておりまして、それを政府が拘束するというのは適当ではないと考えております。

 なお、代表取締役の選任につきましては、移行期間中は、株式会社日本政策投資銀行につきまして認可事項にはなっております。ただし、その認可事項につきましては、業務の適切な執行または兼職制限違反等の観点から、選任された代表取締役について問題がないかどうか、そういうことを判断いたしております。それは他の特殊会社の例に倣っております。

 以上でございます。

楠田委員 確認でありますので参考人の方にもお答えいただきましたが、やはり政策金融公庫と異なって、この政投銀、これから出てきますが、商工中金等では、この点に関してははっきりとした法定がされていないということは確認できたと思います。

 そもそも、そうした方針がありながら、なぜこの規定が消えているのかということに関しては、後に行われます政策投資銀行の法律のところで指摘をしてまいりたいと思いますが、その中でも方針としてはある、政策金融公庫では法定をされている、有能であって、そしてかつ固定的に選任されることがないよう十分に配慮するものという規定において、本当にこれが担保されるのか、具体的な話として。例えば内閣委員会での話では、同じ局長もしくは、当然、事務次官経験者のような方が自動的につかれるようなことがない、連続してそうした方がつかれるようなことがないというような渡辺大臣の答弁もあったと確認をいたしております。

 そうした中で、政策投資銀行においてもそうした固定的に選任されることがないということは、どのように大臣としてはお考えになるか、その点に対してお答えをいただきたいと思います。

尾身国務大臣 経営責任者の選任に係る国の議決権行使に当たりましては、制度設計における、先ほどのお話のとおり、経営責任者については、新政策金融機関と同様に、必要と認められる識見及び能力を有する者のうちから適材適所で選任されるものとし、特定の公務の経歴を有する者が固定的に選任されることがないよう十分配慮するとの方針に沿って行っていくことが重要であると考えております。

楠田委員 その固定的の中身を、ちょっとしつこいようですが、教えていただきたいと思っているわけです。

 やはり今までの政策投資銀行のポストを見ておりましても、基本的に事務次官経験者がついているという歴史がございますが、今後はこれが、移行期間、特に移行期間でございますけれども、その際においては、毎回、こうした自動的に連続してつくことはないと。この点に関しては、大臣として。

尾身国務大臣 今申し上げたとおりでございまして、あくまで適材を適所に配置するという考え方でいくわけでございます。

楠田委員 適材適所ということを言われるのであれば、今回、例えば郵政民営化法におきましては、西川前三井住友銀行頭取、会長がトップにつかれた。もちろん、そうした中で、郵政民営化の際は、こうした民営化の進捗を問う上で、そうした民営化委員会、そしてまた持ち株会社に経営委員会というものが設けられているわけであります。そうした外部のチェックというものが、今回そうした新しい政投銀にはまだ明らかでないとも考えますが、この点に関してはどのように。

尾身国務大臣 例えば、公職にある特定のポストについている者が自動的にこの新しい組織のポストにつくということではないわけでありますが、同時に、必ず民間からでなければいけないとか、どこの分野でなければいけないという固定的に考えることはない、適材適所であるというふうに考えております。

楠田委員 先ほどのお話から、もちろん民間がすべて担えと言っているわけではございませんが、同じようなポスト、今までのような自動的な連続したポスト、しかも五年から七年という期間を区切って今回移行期間が設けられているわけでありますし、その間において完全民営化後のビジネスモデルを構築しなければならないわけであります。そうした意味でも、政策金融公庫におけるそうした人事的な縛り以上に、今までのような官僚出身の方が連続してつくということは大変憂慮すべきことではないか、やはり民間の経営感覚を持っている方がつくことがむしろ必要ではないかと私は思っておりますので、この点、御考慮願いたいと思います。

 次に進ませていただきます。

 今回、郵政民営化においては、移行期においても銀行法や保険業法という一般金融法令が適用をされることになっております。しかし、これから出てまいりますそうした政投銀や商工中金では移行期は特別法の適用ということになっておりますが、この点の差が出てきたのはどういう理由からでありましょうか。大臣、お願いします。

林田委員長代理 事務的な中身ですので、勝大臣官房総括審議官。

勝政府参考人 平成二十年十月から、日本政策投資銀行は一たん特殊会社に移行します。したがって、今提出させていただいていますそれに関連する法律は、その株式を完全処分する五―七年後までの業務を規定する法律でございます。

 特殊会社とした理由でございますけれども、日本政策投資銀行につきましては、行革推進法において、長期の事業資金に係る投融資機能の根幹を維持することが定められております。また、そのために、現在業務として行っております出資と融資を一体として行う必要がありますこと、また、そのためには、完全民営化するまでの移行期間中に、資金調達体制の抜本的な改革を見きわめながらグループ化も含めて業態を確定していく必要があること、そういういろいろなことを検討する必要がありますので、そういうことを含めて、特別の法律に基づく特殊会社としたわけでございます。

楠田委員 私の思いでは、郵政においても、我が地元の村などでは、郵便局が、かつて十人ほどいた職員が今では三人になって、それでもなお経営努力をしている。こうした方々に関しては目配りをせずに、先ほど申された中小企業の構成員、長期の事業資金を対象とするそうした方に対してのみ今回配慮をして特別法の管轄にするということは、私にとりましては、少し入り口の改革と出口の改革の温度差がまさにあるのではないかなと、この点に関して懸念をしておるわけでございます。

 この点に関して、率直な印象を大臣からお願いします。

尾身国務大臣 五年から七年の移行期につきましては法律に基づく期間でございますが、その後は、一般の銀行法等の規制を受ける、まさに私企業になる。それまでの、株を国が持っている間の期間と、全部株を売却した後の民間企業になるときの扱いには、当然異なるものがあると考えております。

楠田委員 もちろん、移行期と完全民営化後の話をしているわけではなくて、郵政民営化の件に関しても、完全民営化の前の売却をする十年間、これは法定もされておるわけであります。そうした決定と今回の決定においての差があるのではないかと言っているわけです。

 この点に関しては、大臣、お願いします。大臣からお願いします。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

勝政府参考人 日本政策投資銀行に対する政府出資等に係る株式の処分につきましては、行政改革推進法におきまして、市場の動向を踏まえつつその縮減を図り、おおむね五から七年後を目途としてすべてを処分することが定められております。

 一方、郵便貯金銀行の株式につきましては、郵政民営化法におきまして、平成十九年十月以降から平成二十九年九月までの期間にその全体を段階的に処分するものとされていると承知しておりますけれども、その理由及び経緯につきましては詳しくは承知しておりません。

 政投銀の株式処分につきましては、やはり市場の動向等を踏まえる必要があること、また、資金調達面を含め完全民営化後のビジネスモデルを移行期間中に明確にしていく必要があること等を踏まえまして、五年ないし七年という期間を設けております。

楠田委員 私がお聞きしていますのは、もちろんその中身もありますけれども、そうした入り口の改革と出口の改革でなぜこれほど縛りが違うのかという問題意識があるからでございます。そのことによって、その後の民営化のやり方にも非常に影響が出てくるのではないか。こうした、おおむね五年から七年を目途という表現になっているわけでありますけれども、十年で株式を処分する義務というふうに法律で決定したこととの違いは余りにも大きなものがある、この違いがまずなぜ起こったのか。

 先ほど、事務方の方からは経緯は存じ上げないと言われましたが、大臣自身はこの経緯は政治家としても御存じでしょうし、また、こうした進捗状況、五から七年を目途となっていますけれども、これを本当にこの期間中に完全売却するような工程みたいなものが既にあられるかどうか、この点に関して、これは大臣からお願いします。

尾身国務大臣 日本政策投資銀行における政府出資等に係る株式の処分につきましては、行革推進法におきまして、市場の動向を踏まえつつその縮減を図り、おおむね五年から七年後を目途としてすべてを処分することが定められているところでございます。

 なお、郵政株式会社が保有する郵便貯金銀行の株式につきましては、郵政民営化法におきまして、平成十九年十月以降平成二十九年九月末までの期間にその全部を段階的に処分するものとされていると承知しております。この郵政の方についての理由及び経緯につきましては、私自身が同法を所管しているわけではございませんから、答えることは差し控えさせていただきたいと思います。

楠田委員 私にとりましては、しかし、そうはいいましても、所管が違うと言われましても、あくまでまさに財投の入り口と出口、その注目に関しては国民にとっては全く同じ注目であると思っておりますし、私は、これだけ法律の中身が違うということは極めて不自然ではないか、こうしたことはこれからのさらなる委員会審議の中でもう一度詰めてまいりたいと思います。

 最後に申し上げました目途というのは、あくまで目途でございまして、この進捗をいかに国民に見える透明性のあるものにしていくかという上で、例えば工程表をつくるであるとか何年で上場をするであるとか、そうした方針は少なくとも出していかなければ、裁量行政のまさにたまものになってしまうのではないか、私はそのように思っておりますので、この点に関して、大臣、おつくりになられるかどうかも含めてお願いします。

尾身国務大臣 私どもといたしまして、実際の株式の処分に当たりましては、市場の動向等を踏まえる必要があること、あるいは資金調達を含め、完全民営化後のビジネスモデルを移行期間中に明確にしていく必要があること等を踏まえまして、処分期間をおおむね五年から七年後を目途としたものであります。

楠田委員 全くお答えをいただいていないわけであります。

 市場動向を見るであるとか、ビジネスモデルをどのようにつくり上げていくかということをまさに知りたいわけでございまして、この進め方をどのようにするかということは、当然、これをつくっていかなければ、まさに五から七年目途というのはただの数字の羅列になってしまうわけであります。これは、市場動向が変わればどのようになるのかということも含めて、この工程をつくるということは極めて重要なことではないかと思いますので、この点に関してはぜひとも御検討いただきたいと思いますが、大臣、どうでしょうか。

尾身国務大臣 完全民営化後のビジネスモデルあるいは工程につきましては、移行期間中に、業務運営や民間株主の意向等を踏まえまして、新会社の経営陣が検討して的確に判断すべきものであると考えております。私どもとしては、五年から七年ということを目途にするということを決めているわけでございます。

楠田委員 移行期間中のそうした工程表をつくってほしいということでありますから、今、移行期間後の話ではございません。もう一度お願いします。移行期間中、五から七年、どのように売却するかということです。

尾身国務大臣 ですから、移行期間中の五年ないし七年の間に、その間の経営陣がいろいろとビジネスモデルあるいはスケジュールを決めていく、そして、五年―七年の後には民間企業に移行する、こういうことでございます。

楠田委員 ですから、その間の透明性をどのように確保するか。これは特別法で所管するわけでございますから、この間を完全に経営陣にゆだねるということは私は違うと思います。その点、もう一度お願いします。

伊藤委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、おまとめください。

尾身国務大臣 これは、民営化をするということでありますから、私どもとしては、その経営陣にできるだけゆだね、そして経営陣が検討して的確に判断をすべきものであると考えております。

楠田委員 時間が来ましたが、明らかに、郵政民営化では、外部委員会もチェックしながらそれを行っていくという透明性が確保されるわけであります。それは移行期間でありますから、なぜこの点だけが経営陣にゆだねられるかというのは全く納得がいきませんので、これからまた後に譲りたいと思います。

 終わります。

伊藤委員長 次に、田村謙治君。

田村(謙)委員 民主党の田村謙治でございます。

 本日は一般質疑ということで、九日に、つい二日前でありますけれども、多重債務者対策本部の有識者会議で、意見取りまとめ、報告書のようなものをお出しになりました。昨年の臨時国会におきまして、貸金業改正法につきまして議論をさせていただいて、そして、さまざまな課題を多重債務者対策本部で議論して早急にまとめるというお話をいただいたわけでありますので、この機会を利用して、それについて質問させていただきたいと思います。

 今回の報告書、法案改正から四、五カ月という、ある意味短期間でおまとめになった。いろいろ各省庁のあつれきもあったというふうに聞いておりますけれども、そういった中で短期間でおまとめになったということは、その御努力に関しても私も敬意を表したいというふうに思っておりますし、非常に包括的な中身であるなというのは私も思っているところでありまして、それはそれとして評価させていただきます。

 ただ、一言申し上げさせていただきたいのは、今回、例えば相談窓口の整備、それについてこれから議論をさせていただきますけれども、そういったことというのは、それこそ去年の臨時国会において、金利を引き下げるというのを中心に法改正したわけですけれども、その法改正を受けてというわけではなくて、そもそも既存の枠組みをどのように利用していくかという話であります。多重債務者というのは、ずっともう何年も前、十年以上前から多重債務の問題というものは存在をし、そしてまた、自殺にまで追い込まれるような人々というのは後を絶たない状況がずっと続いてきて、法改正というのをきっかけにようやく動き出した。ある意味では非常に遅かったというふうに私は思っておりますけれども、もちろん、何もしないよりは、した方がいいに決まっておりますので、そこは遅きに失したという部分もありますが、自殺した人は生き返りませんので。ただ、法案改正をきっかけに非常に熱心にやられているということは評価をさせていただきたいというふうに思います。

 そういった中で、相談窓口を整備するということを一つの大きな項目として取り上げていらっしゃるわけでありまして、そこは、昨年の法改正のときにも、大臣からもそういったことを考えているというお話を伺っておりました。

 ちなみに、我々民主党は新たなカウンセリング機関を設けるべきだということを提言しておりますけれども、そういう大がかりなものというのは、確かに長期的課題になってしまいますので、今は、今ある枠組みの中でそれをいかに拡充していくか。そうなると、地方自治体、それこそ県庁、市役所、町役場をいかに活用していくのかということが非常に大きな課題となっているわけであります。

 それについて今回のこの報告書においてもいろいろ書かれているわけでありますけれども、やはり地方自治体というのは、日ごろ、さまざまな相談窓口というのがあって、まあ、役所によって、県庁や市役所それぞれ、担当課の課の名前は微妙に違いますけれども、環境生活政策課とかあるいは消費者対策課とか、そういったような消費者問題について相談する窓口をしっかりと拡充する、整備をする。要は、その担当者が、多重債務者が相談に来た場合にしっかりと対応ができるような体制を全国で張りめぐらせていくという、大変私もいい方針だというふうに思っています。

 そういった認識のもとで、例えば昨年の臨時国会においても、私も総務省さんに、地方自治体はどのように多重債務者への相談について協力するのかということをちょっとお伺いしたときにも、そのときの政府参考人の答弁というのは、「国と地方との役割分担というものもございますけれども、それを踏まえて努力をしてまいりたいと考えております。」と、非常に漠然とした、当時、問題意識が薄いのではないかなという印象を私は持ちました。

 そしてまた、今この報告書が出るに当たって、当然総務省さんも対策本部に入っていらっしゃると思いますけれども、やはり相変わらず後ろ向きだということを、私は、むしろマスコミを通じてでありますけれども、マスコミがそういう書き方をしているというのを、マスコミを通じて感じているところであります。

 結局、出した報告書においては、「多重債務者への対応は自治体自らの責務」であるというふうにしっかりと三ページに書いてあります。結局、国、国でいうと金融庁が中心になると思いますけれども、あるいは地方、お互いに、どちらが中心だ、あるいはどちらがお金を払うと、何となく押しつけ合っているんじゃないかなという印象がございます。

 その中で、この報告書に、「多重債務者への対応は自治体自らの責務」だというふうにしっかりと書き込まれているわけですが、いろいろ経緯はあったにせよ、現在総務省としては、自治体に対して、自治体がどれぐらいちゃんと全国で多重債務者への問題について対応すべきだと考えているのか、そして、総務省さんがそれにおいてどのような役割を果たそうとお考えになっていらっしゃるのか、御説明ください。

土屋大臣政務官 委員の御質問にお答えを申し上げます。

 多重債務者問題につきましては、去る四月九日に公表された有識者会議報告書の意見の取りまとめにもありますように、国はみずからできる限りの取り組みを行うとともに、地方自治体の取り組みも重要になってくると考えている次第でございます。

 特に、適切な相談先を紹介できる体制は、これが全部十分かどうかは別にして、一応、調査によりますと、九四・一%の市町村でとられているわけであります。これらについては、一次相談と実質的な中身の相談、一次相談というのは、専門機関を紹介するとかといったような相談も含むわけでありますが、すべての市町村でこれを行うように要請していきたいと考えております。

 ただし、小規模な市町村等でそこまでの体制がとれない自治体もありますので、都道府県の補完、クレジットカウンセリング協会などによる相談体制の充実、国の出先機関への窓口設置などの対応を行うことが重要である、このように考えているところであります。

 この問題につきましては、私も一昨年まで自治体の首長を二十三年間やっておりましたが、今まで、基礎的な自治体としてそういう意識が必ずしも十分でなかったということを感じております。しかし、こういったことが国会でも問題になり、法改正もあるわけでございますので、総務省としては、多重債務者対策本部の一員として、多重債務者問題の改善プログラムの取りまとめについて、金融庁を初めとする関係省庁とも相談しながらやっていきたい、こういうふうに考えております。

田村(謙)委員 例えば、もう既に方針転換をなさったということであればいいんですけれども、最近、この報告書を取りまとめるに当たって、総務省さんが、とにかく財政負担というのがかかる、それは国の方で手当てをしてくれなければなかなか自分たちは動けないということを言っているような報道がなされておりますけれども、それについての真偽というか、実際のスタンスというのはいかがですか。

土屋大臣政務官 基本的な角度についての御質問かと存じますが、まず、個々の表現の違いはともあれ、総務省といたしましては、基本的には、新しい財政負担を要するものについては、地方財政法の規定に基づいて財源的な措置をしていただくというのが前提だと考えております。

 しかし、市町村は、日常的に、多重債務者問題以外の消費生活相談といったようなことを幅広くやっているわけでありますから、これらの中で、専門性を要するこの種のことがどこまでできるかということについては、実態に即して、この方向でやっていきたい、このように考えているところであります。

田村(謙)委員 実態に即してやっていくというのは、何かをする場合、実態に即するのは当たり前ですので、実際に、具体的にどういう方針で取り組むのかという御説明に全くなっていないような気がするんですけれども。

 確かに、新しい政策をする場合に、いろいろ、何らかの費用がかかるというのは当然でありますけれども、一方で、今回の多重債務の相談窓口ということに関しては、実際、もう自主的に、先進的に取り組んでいる自治体というのはあるわけですね。今回、この有識者会議でも、岩手県ですとか、あるいはその中の盛岡市とか、岐阜県とか、さまざまな例が紹介をされていたようでありますけれども、それこそある人が、相談窓口の人が非常に問題意識を持って取り組んでいけばできるような部分もあるわけです。

 ただ、そういった自主性を全自治体に求めるのは当然無理でありますので、やはり何らかの、例えば国から県庁への指導、そして県庁から各自治体への指導というものが当然必要になってくる。ただ、それだけで新たに人をふやさなければいけないとは全く限らないんだと思うんですね。別に県庁も、実際に岩手県やあるいは岐阜県にしても、今までいた人たちが新たに問題意識を持って取り組んできたという事例もあるわけであります。

 またさらには、そういった多重債務者の相談に乗ることによって、今まで多重債務者は、結局、例えば、違法な金利の返済ばかりにお金を使っていた、そして公営住宅の家賃も払わない、あるいは税金も払わないといったような人が、多重債務が解消することによってそういった税金も払うようになるといった例もあって、逆にそれは収入増につながるというようなケースも、もちろんそれが全部ではないと思いますけれども、そういう例もあるんだ。だから、そこはとにかく、財政措置とかなく、今いる職員でもできることはたくさんあるという報告もあるわけですね。

 そういった中で、確かに、各市町村に一律にやれと言うのは当然無理だと思いますけれども、県庁というのは四十七しかないわけですから、そこにしっかりと指導していく。県庁が、その県内の市町村で、既にもうそういう体制があるところは別ですけれども、ないところについてはカバーをしていく。そういう体制というのは、一番恐らく実現が簡単にできる、一番早くできるんじゃないかなというふうに思います。

 私は昨年の臨時国会のときも申し上げましたけれども、後でちょっと申し上げますけれども、とにかく法改正の、実際に金利を引き下げるまでに何とかする、あるいは、去年の議論をしていたときでもそうです、日々新たな多重債務者というのは生まれているわけですね、あるいは多重債務者の予備軍になるような人が新たにお金を借りる。それは本当に、とにかく一日も早く体制を整備しなければ、現在のまだ高金利によって犠牲になる人というのは次々に生まれてくるわけです。

 それを、今お話を聞いていても、問題意識は今まで地方自治体で薄かったですね、何とかしなければいけませんねと。そこは、久保審議官がずっと地方自治体にいらっしゃって、御自身がどれだけ問題意識を持っていらっしゃったのかどうかは知りませんけれども、実際、国が指導しなくても、金融庁が指導しなくても、自主的にやっているところはたくさんあるわけです。実際、どの地方に行ったって多重債務で苦しんでいる人はたくさんいるわけですから。

 とにかく、一日も早くすべての多重債務者がそういった相談窓口に駆け込めるようにする体制を築いていく。そういう中で、まず、今の地方自治体の相談窓口の枠組みをつくっていく中で、総務省がリーダーシップを発揮しなければ、早急にそういう体制を構築することは難しいと思うんですけれども、それはいかがお考えですか。

久保政府参考人 私どもも、先ほど土屋政務官が御答弁申し上げましたように、地方公共団体としても、通常の消費者行政など、これは自治事務として当然やっていくべきものだと考えております。

 ただ、これはもう委員御指摘のように、すべての市町村が同じような体制でこの多重債務問題に取り組むといったことにはなかなか難しい点もございますので、そういった相談体制が整っているところはさらに丁寧な相談体制ができるように充実させるようにしつつ、また、すべてのところに何らかの形で相談窓口を設置していく、こういったことについては要請していくつもりでございます。

田村(謙)委員 いろいろと相談業務というのはあると思いますけれども、それだけお聞きをすると、さまざまな多重債務以外の相談業務があって、消費者、一般の市民の相談窓口をしている人はとてもそこまで手が回らないというように受け取れるんですね。それは、さらに言うと、多重債務問題というのはそんなに優先するような話じゃないと。

 今までの業務、私はそこは、もちろんいろいろな相談がありますから、個別に、具体的に優先順位をつけるつもりはありませんけれども、多重債務問題というのは、それこそ自殺に追い込まれるような状況もあるわけですし、生活が立ち行かなくなっている人たちであるわけですから、非常に優先度は高いと思うんですね。

 それで、既にやっている人たちがいるのは、それはそれでもちろんいいわけですけれども、ない部分について指導していくんだというのは、どういうふうに、単に整備しなさいというふうに県に言うだけなんですか。

久保政府参考人 これは有識者会議の報告書にも出ておると思いますが、先般、金融庁と協力をして私ども実施いたしました市町村へのアンケート、千八百三十団体から回答が返ってきておりますけれども、その結果を見てみますと、現状で、住民から多重債務に関する相談に対して、消費生活センターあるいは相談窓口を常設しているという市町村、これは八百九十四団体、全体の四九%ございます。また、そのうち、多重債務問題も扱う消費者相談の専任者、これを置いている市町村は三百八十六団体、約二一%となっておりまして、こうした団体を中心に、事情の聴取でありますとかあるいは解決方法の検討、助言がさらに丁寧にできるようにまずは要請してまいりたいと考えております。

 そして、市町村等でなかなか多重債務問題について取り組むのが難しいというネックといいますか、そういった一番大きなネックというのは、恐らくノウハウの不足であろうというふうに私ども考えておりますので、市町村など十分な対応が困難な地方公共団体が専門的ノウハウを習得することができるようなマニュアル、これを、国として、金融庁とも相談をしながら作成して提供するといったようなこと、これは極めて有効な手段であると考えておりますので、そういったことにつきましても私ども検討していきたいと考えております。

田村(謙)委員 何度も申し上げますけれども、とにかく、日々多重債務者というのは、新たに生まれるというか、ふえていって、生活がどうしようもなくなっている人がふえていく。そして、その予備軍、新たに多重債務の一歩手前という人が日々どんどんふえている状況にありますので、そういった相談窓口の整備というのは、ぜひともちゃんと連携をしてやっていただきたい。

 そういった中で、今総務省さんからもおっしゃったように、当然そこは金融庁さんの、国というと中心は金融庁さんだと思いますけれども、リーダーシップというのが大変重要だと思うんですね。とにかく、各地方、あらゆる地方でそういう相談窓口を整備するということになると、例えば金融庁さんと財務局になると思いますけれども、財務局とあるいは県庁とか、それをどのような連携をしっかりとっていこうとお考えになっているか、もしそういうお考えがあれば教えてください。

山本国務大臣 各省庁間の連携でございます。有識者会議におきましても、各関係省庁も御出席いただきまして議論が行われました。そうした中でこの取りまとめができたわけでございます。

 今後、関係省庁で具体的な措置を検討しまして、多重債務者対策本部において早急に、今度は多重債務問題改善プログラムというものを策定することとしておりますので、このプログラムの精緻化を期してまいりたいというように思っております。

田村(謙)委員 その改善プログラムというのは、ちなみにどれぐらいの期間でおまとめになられるおつもりでいらっしゃいますか。

山本国務大臣 有識者会議との御相談もありますので、具体的にこの日までということにはなかなかならないところでございますが、早急に具体的な措置を検討した上で、関係省庁との打ち合わせもできるだけ早く図りながらプログラム作成にこぎつけたいというように考えております。

田村(謙)委員 結局、いつなのかというのは全くお答えいただけない。官僚答弁だとそうなってしまうのだと思いますが、そこはとにかく一日も早く、最近も有識者会議をもとに随分精力的にやっていらっしゃると思いますけれども、とにかくできるだけスピードアップしていただきたいというのを重ねて申し上げたいと思います。

 その中で、今まで相談窓口についてお伺いをしましたけれども、当然、教育ですね、教育機関。例えば中学校、高校あたりでしっかりと、多重債務者にならないように、大人になって貸金業からお金を借りるようになる前に、その前の段階で、さまざまな、気をつけなさいということを教育する必要がある。その点に関しても、有識者会議の報告書にも書いていらっしゃいます。

 マスコミの報道ではありますが、総務省だけではなくて文部科学省もやや後ろ向きだ、少なくとも積極的な姿勢が見られないということが新聞には書いてあります。例えば、学習指導要領に具体的に盛り込むべきではないかという意見もありますけれども、それはできない、今回の多重債務のような緊急課題を盛り込むのはそぐわないというふうに文部科学省は言っていると報道に書いてありましたけれども、そういったスタンスなんでしょうか。いかがですか、文部科学省さん。

合田政府参考人 お答えをさせていただきます。

 御指摘のように、学校におきますこの問題の取り扱いにつきましては、学習指導要領の見直しにつきまして、現在、中央教育審議会において検討をいただいているところでございます。

 現行学習指導要領におきましても、高等学校の家庭科におきまして、契約、消費者信用、問題の発生しやすい販売方法などを取り上げて、消費者の権利と責任を具体的に理解させるということとしております。これに基づきまして、教科書におきましても、クレジットカードなどの販売信用と、消費者金融の仕組みと問題点、あるいは返済能力を超えた安易な利用によって多重債務や自己破産に陥る危険性があるといったようなことなどが取り上げられているところでございます。

 このたび、御指摘のように、多重債務者対策本部有識者会議によります意見の取りまとめ、御提言もいただいたところでございますので、私どもといたしましても、多重債務問題の重要性にかんがみまして、御提言を踏まえまして、こういった御意見の内容を中央教育審議会にきちんとお伝えさせていただきまして、高等学校家庭科の学習指導要領における具体的な取り扱いについて専門的に検討していただきたいというふうに考えているところでございます。

田村(謙)委員 済みません、私が質問が下手だったかもしれませんけれども、多重債務問題というのを学習指導要領に盛り込むのは難しい、それは緊急課題だからだというふうに文部科学省の方がおっしゃったと新聞に書いてあるんですが、それは事実かどうかというか、そういうお考えなのかどうか、そこを教えてください。

合田政府参考人 お答えを申し上げます。

 そういう趣旨ではございませんで、先ほど申し上げましたように、この御提言の趣旨をきちんと中央教育審議会の方にお伝えさせていただいて、具体的な取り扱いについて検討していただきたいというふうに考えております。

田村(謙)委員 役所だとよくありますけれども、結局、自分たちは専門家じゃないから審議会の判断が必要なんだ、よくある言いわけだと思いますけれども。

 先ほどから申し上げているように、日々多重債務に陥って苦しんでいる人がいるわけですから、今こういう検討をしていること自体が、もうそれこそ五年、十年と対応がおくれていると思いますけれども、そういった中で、今ようやく動き出した。それは本当に、一日も早くしっかりとした形にしなければいけない。

 学校の教育の話になると、例えば来年からやるのか、再来年からやるのか。それによって、卒業しちゃった人はもうそういう教育を受けられないわけですから。現在、そういう金融について中学校、高校である程度教えるようにという方針にはなっていても、実際に、貸金業、その先の多重債務問題についてということになると、学校の先生自体も利用していない人も多いでしょうし、実態を全然知らず、教えられない人も多いわけですね。

 そういった中でも、中には学校で真剣に取り組んで、そういう専門家を呼んで講義を開いたりしているところも若干はあると聞いておりますけれども、それはごく一部、もう数%、一割もないというような状況であると聞いております。そこはとにかく、今後、今の子供たちが大人になったときに、正しい利用をして多重債務に陥ったりしないというような、やはり防止というのは非常に重要だと思いますので、ぜひそこは、審議会という他人任せではなくて、御自身方が問題意識をしっかり持っていただいて、別にそんなに難しい話じゃないと思いますので、小学校、中学校、高校生に教える内容というのは。いかに正しく利用するかという話ですから、それは、とにかくできるだけ早急にしっかりとやっていただきたいというふうに思います。

 あと、もう時間も限られておりますので、事前防止という話で一点だけ申し上げたいんですけれども、相談、カウンセリングに戻りまして、今までこの相談というのは、既に多重債務に陥った人、あるいはもう自分が陥ったと思い込んでいる人が相談窓口に駆け込むわけですね。その体制をとにかく早急に全国にしっかりと整備しなければいけないというのは当然のことでありますし、それは一日も早く整備をしなければいけないわけですけれども、やはり防止という観点、もう既に貸金業からお金を借りて利用している人が多重債務に陥らないようにするために、我々民主党としては、例えば四、五件以上借りる場合にはカウンセリングを条件にするとか、あと、さらに、いろいろ心理的な面もあるわけですね。少数かもしれませんけれども、ついついパチンコにはまってしまうような人とか、そういった心理的な面のカウンセリングというのも例えばアメリカなどではかなり制度化をされていて、そういうカウンセリングの資格がある国もあるわけです。

 そこは、もう既に多重債務に陥ってしまった人の相談体制、カウンセリング体制を整備するのは当然なんですけれども、事前の、ある意味で、多重債務に陥っていない貸金業者の利用者についてのカウンセリングもしっかりと整備すべきじゃないかということを昨年の臨時国会でもお伺いをして、そのとき金融大臣は、まず現在のそういう相談窓口の整備が最初で、その後にそういったことも取り組む必要もあるのではないかといったようなニュアンスのことをお答えになっておられましたけれども、それについての御認識はいかがでしょうか。

山本国務大臣 大変重要な御指摘だと思っております。

 特に、今回の有識者会議の意見の取りまとめの過程で御指摘をいただいた点の中で、市町村は、生活保護を担当する福祉事務所職員を持っておられます。こうした福祉事務所の職員は、家庭内暴力だとかあるいは児童虐待に間々遭遇いたします。また、公営住宅料金徴収の担当部署もございますが、そうした方々も、地域の窮乏化防止や、保険料、公共料金の不払い等の中で貧困の実態に遭遇します。そういう中から、恐らく多重債務に陥る根があるだろうと思いますので、そうした点におきます心理相談というものも含めて、今後、我々としましては、地域地域で、具体的にこの心理相談、カウンセリングということにどう対処できるか、考えてみたいというように思っております。

田村(謙)委員 最初にも申し上げましたように、とにかく、今回のこの有識者会議の報告書、その方針というのは、大変御努力なさったというのは評価いたしますが、やはりほかの欧米諸国に比べては、相当、もう五年、十年、国によっては十五年おくれてようやくというレベルでありますので、今回の報告書、そして、その先の多重債務問題改善プログラム、それができたら終わりというわけではなくて、さらに、ほかの国もいろいろ参考にしていただきながら、鋭意引き続きずっとさまざまな点を検討して実行に移していただきたい。そして、総務省さんも当事者意識をしっかり持っていただきたいということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わります。

伊藤委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 お疲れさまです。民主党の古本伸一郎でございます。

 尾身大臣におかれましては、前半の方でお尋ねしました国有地の問題の残りを少しだけお願いしたいんですが、有効活用していくということについては、大臣もそのとおりだということだったというふうに理解をいたしております。

 そういう意味では、今、虎ノ門にアメリカ大使館がございます。国会でも累次にわたりまして話題になっておりますが、今、地代は、いただいていないというか、条件が折り合わないので支払いがとまっているといいますか、これは外務省所管になるということではあるんですが、国有地を有効活用していって、アメリカ大使館として使っていただく、そのことによる少なくとも使用収益をした分の応分の負担はしていただかないとこれは道理が通りませんでして、その底地を持っておられる大家さんとして、責任者である財務大臣として、少し感想をお聞かせいただきたいと思います。

尾身国務大臣 在日米国大使館敷地の貸付料につきましては、一九九七年分の貸付料が九六年十二月に支払われましたが、九七年を期限とする契約にかわる新たな変更契約の合意に至っておりません。このため、一九九八年分以降の貸付料について支払われていないわけであります。

 本件につきましては、現在、両国間におきまして、早期解決に向けて鋭意交渉中でございまして、その詳細について明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 いずれにいたしましても、先日、外務大臣も、明らかに公平さを欠いていると思われるが、経緯をきちんと調べて鋭意交渉したいという答弁をされておりまして、財務省といたしましても、外務省と連携しながら、本件の解決に向けて努力していきたいと考えております。

古本委員 他方、イギリス大使館さん、これは半蔵門の交差点の少し向こうにございますね。虎ノ門とどれだけ、地価公示あるいは基準値、路線価、どれでもいいですが、いずれに照らしても、そんなに、数倍の差があるとは思えないイギリス大使館は、これはもう耳をそろえて支払っていただいていますし、なお、適正地代かどうかはよく知りませんが、アメリカ大使館への賃貸料とけたが違いますね。年間数千万というふうに承知しています。片やアメリカ大使館用地は、お納めをいただいたとしても、たしか数百万だったように承知しています。

 ぜひ大臣、海外御出張、G7も、理事会で確認といいますか、御出張いただくということで、成田までお見送りに行けないのは申しわけなく思っておりますが、財務担当官と会うわけですから、ぜひインナーの内々の話題にしていただきたいですね。これは本当に笑い事じゃないです。国民は見ていますよ。なぜアメリカからもらわないんですか。

尾身国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、現在交渉中でございます。詳細について申し上げることは差し控えさせていただきたいと思いますので、この点も御理解をいただきたいと思います。

古本委員 大臣にお預けしましたので、どうぞ話題にしていただけることを願っております。

 続いて、金融担当大臣に少しお尋ねをしたいと思います。

 委員長のお許しをいただきまして、今資料を配付させていただきました。これは、実は前回の委員会でも既にお配りをしておりますので、二度目になりますから、委員各位におかれましては、もう既にごらんになっておるかもしれません。

 これは、私どもの方で各所管の委員会に投げ、そして集約をした常任の委員のいらっしゃる審議会のいわゆる勤務ぶり、働きぶりを、極めて外形的ではありますが、出勤日数並びに労働時間といいますか、年間での実働時間をそれぞれ個別にお尋ねしたところ、こういうふうに返ってきているデータでございます。それぞれ、内閣府以下、当委員会に関係します金融庁の所管の審議会も含めて添付をさせていただいております。

 さて、過日、いわゆるライブドア事件の渦中の人でありました、堀江被告に対する判決が出ました。この後いろいろな、控訴の手続もとっておられるというふうに承知しています。

 もちろん我々は立法府の立場でありますが、ライブドア事案の事の始まりというのは、証取法に違反しているんじゃないかという、二〇〇五年の二月に行われましたニッポン放送株の市場内時間外取引。

 いわゆるToSTNeT1というシステムがあるんですが、これは当委員会でも現地視察、東証も見に行ったわけでありますので、当時の先生方は御記憶にあるかもしれませんが、画面の端末上に売り手と買い手が出合うんです。何株を売りに出しているよというのに対し、画面をじっと見ていた人が、ああ、こんな売りがあるなら私は買いたいということで、条件も見合って初めて、スイッチを押せば端末上買える。これがToSTNeT1というシステムでありまして、東証が設置する、市場内の時間外取引のシステムでありました。

 これは市場内時間外ということで、つまり市場内であるということが大事でありまして、証取法に定めるルールを逸脱していないという御判断を、当時、ここにいらっしゃいます伊藤委員長がなさったわけでございます。

 私、実はこれは累次にわたりまして国会で取り上げておりまして、きょうはそこのさわりだけにとどめておきたいと思いますが、そのToSTNeT1というシステムを使って、実に二十八分間の間に、九百万株を超えんとするニッポン放送株を一分置きに買ったんですね。実は、そのことが市場内の時間外取引だということでライブドアサイドは主張した。それに対し、フジテレビサイドは、これは明らかに事前にできている話じゃないか、つまり証取法違反じゃないかという大変な議論だったんです。

 ところが、伊藤当時金融担当大臣は、早々に、これは適法であるというコメントを出され、その後の司法の判断をゆがめたんじゃないかということを累次にわたり指摘しましたが、当時の与謝野金融担当大臣は、出合い頭にこれほどのボリュームの株が売りに出て、それを買いたいという人が、しかも朝の一番です、日がな一日、端末を見ている人なんか、そういませんよ、そういうのがよく出合ったものだということを、率直に与謝野さんも言っておられました。

 これが実は、ライブドア事件が、その後、時代の寵児となり、御党としても、ある意味、こんなはずじゃなかったという郵政の候補の一人になり、恐らくいろいろな思いはあるんでしょう。しかしながら、きっかけはまさに、二〇〇五年二月の、市場内時間外取引でライブドアがニッポン放送株を大量に取得した、ここから実は物語が始まっているんですね。

 そういう中で今般の判決に至っているわけでありますが、実は、その後の市場内時間外取引のToSTNeT1を利用した取引については、法改正が早速措置されていますので、二度とこういうことができなくなったわけであります。

 そこで、経緯も含め、少し整理させていただいたんですが、大臣にお尋ねしたいのは、今後、公認会計士法の改正が出てくるというふうに聞いております。これもまた、事の始まりは、例の、いわゆる匿名組合を介して、ライブドアが株価の操作あるいは風説流布等々いろいろなことをやっていく上での舞台になったわけですね。これを当時のライブドア社の公認会計士、監査法人であったところが見落としたのがきっかけだったんですね、これが故意的だったかどうかは司直にゆだねたいと思いますが。そういう意味では、実は公認会計士法の改正というのは大変大きなポイントになってくるわけであります。

 大臣、大変長い話を整理しましたが、要は、この審査会の話に戻ってきたいわけなんです。

 そういう大きな話を、公認会計士法、あるいは公認会計士試験の運用それから合否も含め、すべてこの公認会計士・監査審査会がやるわけですね。これは正しいでしょうか。

伊藤委員長 古本委員にまず申し上げます。

 私のことに言及をされましたが、個別具体的な取引について私はコメントをいたしておりませんので、ぜひ議事録をよく見ていただきたいと思います。

 山本金融担当大臣。

山本国務大臣 個別の事案ではなくて、公認会計士全般にわたる問題に関する監査、審査において任務を負っているというように考えております。

古本委員 恐らく公認会計士・監査審査会が、今回の公認会計士法を改正していく上でも、いろいろな意見をおっしゃる立場にもあるでしょうし、逆に、有識者集団であると思うんですね。

 さて、大変大きなライブドア事件の対策になるような公認会計士法の改正になっているというふうに期待をしていますので、今後、当委員会での充実した審議を期待するところでございますが、その大前提である証券取引等監視委員会、これは、この事件を切り取った当事者であります。検察の方が先だったか、どっちが先だという議論はどうもあったようですが、これは監視委員会に花を持たせましょう。持たせたとして、やったとしましょう、ライブドア事件を切り取ったと。それから、公認会計士・監査審査会も、まさにその後の再発防止に向けた手だてを打っていくということで、位置づけ、役割、期待値は大いに高いわけであります。

 大臣、どうですか。全委員会は全部答えてきているんですよ、出勤日数あるいは時間、見事ですよ。ここだけですよ、答えられませんと。

 ちなみに、私は、全部は無理でしたが、いろいろな省庁所管のところへ行きましたよ。懇切丁寧な対応をしてくれましたよ。委員会の部屋、委員の先生方の部屋を見に行きました。証券取引等監視委員会は、どうも中は見せられないということでありましたが、何のことはない、私が黙って院車で入っていって、それでふらっと行けば、見せられないといいながら、セキュリティーなんか大したことないですよ、ドアの前まで入っていけますから。これは三河弁でだだくさと言うんですが、だだくさでした。それから公認会計士・監査審査会、ここはセキュリティーはすごかったです。何かぴゅっと押さないと入れなかった。それはファシリティーの問題ですが。

 そんなことよりも、これはどうなっているんですか。何か秘匿性なり、ベールに包んでおきながら、実はやっていることは大したことないということじゃないでしょうねという話になりますので、ぜひ、いろいろなことに、情報開示も含めてちゃんと協力せよと指示していただけませんか。

山本国務大臣 誤解があれば、ぜひ積極的に解かせていただきたいと思います。

 特に証券取引等監視委員会あるいは公認会計士・監査審査会が古本委員の御質問に誠実に答えないということではないというように思っておりまして、証券取引等監視委員会及び公認会計士等では、常勤委員は特別職の国家公務員であり、国家公務員法の適用対象から除外されているという認識がまずあったようでございます。

 そして、一般職の国家公務員について出勤簿等の作成を義務づける国家公務員法六十八条の適用がないということから、古本委員の御質問に対しては、もし何日とか何時間というような答えをしてしまうと、六十八条の適用があるような外形、あるいは取り扱い、運用になってしまうということを恐れたゆえにそうした対応をしたというように聞いております。

 このため、監視委員会及び監査審査会の常勤委員の勤務日数、勤務時間を正確に把握していないわけではないんですが、把握は困難であるという認識をしております。

 そこで、これからでございます。実情を申し上げますと、各委員さん、いわゆる夏季休暇、病気等、出勤されない場合を除いてほぼ毎日出勤されておられます。いずれの方におきましても年間最低二百日以上出勤されているとのことでございまして、もしお許しをいただけるならば、この年間出勤日数について二百日以上という表記が許されるものであれば、そのような形でお答えをさせていただければというように思っているところでございます。

古本委員 それはぜひ、また教えていただきたいと思います。

 と同時に、監視委員会というのは、もちろん、いろいろな捜査権を持った集団でありますので、なかなかその機能あるいは要員の実態等々というのはわからないのかもしれませんが、どうでしょう、この際、一度当委員会で、監視委員会の今の働きぶりといいますか実態調査のようなものを、現地視察も含めてぜひお諮りをいただきたいと思うのですが、大臣がいいよと言えばいい筋のものなのかどうなのか、そこも含めて一度御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

山本国務大臣 この機関は私からも独立しておりまして、特に、犯罪捜査ではありませんけれども、市場の健全性を確保するという意味では大変大事なところでございます。

 そして、ライブドア事件におきましても、この委員会の職員だけで捜索、差し押さえに入っているわけでございます。特に、特別調査課を中心として、非常にデリケートな問題、すなわち刑事事件に発展するかもしれないような問題を取り扱っていることからしまして、想像でございますが、克明に何をしているかまでの調査というのは、これは国家公務員法の守秘義務違反になろうかとも思いますし、そこのところの国政調査との調和というのはかなり微妙なものがあるだろうというように想像しております。

古本委員 例の日興コーディアル事案については、犯罪としては切り取らなかったわけですね。当然、監視委員会の皆さんも、いろいろな陣容で、水面下での調査態勢ということだったと思うんですが、これはよもや、人手が足りなかったからとか、あるいは物理的な制約があってどうも手が回らなかったとか、そんなことによって、恐らく、これは個人的な感覚ですが、ライブドア事案より本質的には根が深いものがあの日興コーディアル事案だというふうに感じておりますし、そう思っておられる同僚委員も少なくないと思っておる中で、実はライブドアしか切り取らなかったわけですね。

 ですから、そういう意味では、この監視委員会なるものが一体どういう、個々の中身の調査資料を見せてくれなんという、そんなことじゃないんですよ。どういう建屋で、どういう部屋で、どういう人々がいらっしゃるのかぐらいは、ここの委員会で、監視委員会をどうするかをまさに去年の証取法改正で議論したわけでありますので、いや、見せられない、見ちゃいかぬじゃなくて、少し御検討いただいてもいいのではなかろうかと思うのですが、委員長、ぜひこの件、理事会にお諮りをいただきたいんですが。

伊藤委員長 ただいまの古本君の要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

古本委員 それでは、これで終わります。

 委員長の個別のお名前を出しましたことを、どうぞお許しいただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。

 東京都知事選挙が終わりまして、我が方は負けたわけでございまして、与党の推す候補が勝った。勝った途端に傲慢な口ぶりが戻ってきているというような評価もされているわけでございます。

 悔しさに紛れて申し上げるわけではないが、世界の築地市場を、シアン、ベンゼン、六価クロム、砒素などで高濃度に汚染をされている豊洲、汚染土壌の上に移すとか、あるいはオリンピックを招致してみんなで夢を見ようよとか、あんたに夢を見させてもらうほど落ちぶれちゃいないとこっちは思うわけでございまして、そんな時代でもないだろうというふうにも思います。

 では、あの方が実際に何をやっているのかということを、きょうは本委員会で取り上げたいというふうに思います。

 今私は、環境委員会で築地の豊洲移転について議論をさせていただいておるところでございますが、本委員会においては、石原知事の二期目の選挙公約で設立をされた新銀行東京について、今、現状がどうなっているのかということについて聞いてまいりたいというふうに思います。

 金融庁さんの方から、株式会社新銀行東京の平成十九年三月期中間決算説明資料というものをいただいておりますが、この中間決算の概要について御説明をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 新銀行東京の平成十八年九月期決算の概要でございますが、当行の決算公表資料から申し上げますと以下のとおりでございます。

 まず、経常収益につきましては、資金運用収益三十五億円、役務取引等収益六億円等を計上することで、四十七億円となっております。これに対しまして、経常費用の方ですが、資金調達費用十五億円、貸倒引当金繰入額九十九億円等を計上することで、二百一億円となっております。

 この結果、十八年九月期の経常損益は百五十四億円の赤字でございます。なお、当期は特別損益、損失等が計上されておりませんので、最終損益は百五十四億円の赤字ということでございます。

 また、前年同期との比較ということで申し上げますと、同様に当行の決算公表資料に基づいて申し上げますが、まず経常収益は、十七年九月期の五億円から、十八年九月期は四十七億円に増加。一方で、経常費用の方は、平成十七年九月期の百一億円から、十八年九月期は二百一億円に増加いたしております。

 その結果、中間期の決算赤字につきましては、平成十七年九月期の九十五億円の赤字から、先ほど申しました十八年九月期は百五十四億円の赤字ということで増加しているということでございます。

川内委員 新銀行東京はちょうど二年前の平成十七年四月一日から営業を開始しているというふうに聞いておりますが、累積赤字は幾らぐらいになっておるのでございましょうか。

佐藤政府参考人 十八年九月期で約四百五十億円でございます。

川内委員 累積で四百五十億円の赤字を出していると。

 ちなみに、資本金は幾らでしたか。

佐藤政府参考人 六百六億円でございます。

川内委員 六百六億円の資本金。もちろん、その他の資本類似のお金もあるんでしょうが、そういう銀行が開業二年にして四百五十億の赤字を出している。一年目も赤字、二年目も赤字、そしてまた先ほどの御説明では、二年目の赤字については四月から九月、半期の決算で百五十億の赤字ということで、その赤字の幅が拡大をしているわけでございますが、金融庁として、この新銀行東京に重大な関心をお持ちになられないのかということを山本大臣から御答弁いただきたいと思います。

山本国務大臣 この銀行については、自治体としてみずから地域経済の活性化を図る観点から、中小企業への総合的な支援を行うという政策目的を実現するために設立されたと承知しております。

 また、金融庁も、設立時におきまして強い関心を持っておりますし、また、そのことにおいて、開業準備について一部業務停止命令を発出しまして、的確な開業準備を求めた経緯もございます。

 そんな意味では、健全な銀行として所期の目的を達していただきたい。特に、地域経済、中小企業への総合的支援、こうしたことについてしっかりとやっていただきたいという期待とともに、監督や検査の視点からも注目しているところでございます。

川内委員 ちょっと細かく御説明をいただきたいんですが、そもそも、開業二年でこんな赤字が出る、この新銀行東京の赤字の原因は一体何なんでしょうか。

佐藤政府参考人 個別銀行の決算の話でございますので、私ども当局からその決算結果について直接コメントを申し上げるというのは、差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、せっかくのお尋ねでございますので、これまでに銀行自身が記者会見等で言及している話、あるいは関係者が言及している話をちょっと参考にさせていただきますと、幾つか挙げられるかなという気はいたします。

 一つは、銀行というものは、新しくつくった場合には、一般的には最初の何年かの期間というのはいわゆる創業赤字ということで、赤字の期間が続くというのが一般的でございます。それから二つ目には、この銀行は、東京都の政策の一環として、無担保のものも含めて中小企業向け融資をもっと充実させるという考え方で設立されたわけでございますけれども、その無担保、無保証の融資が必ずしも十分伸びていないといったことや、それから、先行してと申しましょうか、そういう形で行いました貸し出しについて、それが不良債権化しているという部分があるといったこと、それから、ほかの業態、銀行とか信用金庫等において、中小企業向け融資を積極化する、こういった動きもあって、銀行間の競争が激化している、こんなこともあろうかと思います。

 こんなことは一般的には言えようかと思います。

川内委員 銀行というのは創業当時は赤字が続くのが一般的だそうだというお話でございますが、こんな赤字が出ることは一般的とは言えないんじゃないですか。

佐藤政府参考人 その辺は、恐らく銀行自体の規模、預金量がどれくらいか、それから貸し出しの規模がどれくらいか、その貸し出しの規模に応じて不良債権化するような部分がどれくらいあるか、それから全体としての費用がどれくらいかかっているか。当初は直ちに収益を生まない部分がございますし、そういったことが全体として赤字の規模ということにつながっていくんだろうというふうには思いますけれども、個別行について断定的なことを申し上げるのは差し控えさせていただきたいと思います。

川内委員 新銀行東京は銀行法上の銀行であって、何か特別の法律によって設立をされた政策的な目的を持つ銀行ではないということをまず確認させてください。

佐藤政府参考人 おっしゃいましたとおり、銀行法上の銀行でございます。

川内委員 しかし、東京都が大株主である、東京都が出資をしているということによって、株主としての影響力を銀行の経営陣に対して行使することによって、中小企業向け融資、あるいは無担保、無保証の融資というものを拡大しているのではないかというふうに思われるわけでございますが、これは株主としての権限の行使であるといえばそれまでかもしれませんが、ある意味特殊な、それこそ一般的ではない事例であろうというふうに思います。

 そこで、ではどういう特殊なことが行われているんだろうということで、お答えいただける範囲でお答えをいただければ結構なんですが、新銀行東京の個人の定期性預金はどのくらいあるのか、そしてまた、その平均の調達金利はどのくらいなのかということについて教えていただきたいと思います。

佐藤政府参考人 手元にございますデータによりますと、預金全体の数字でございますけれども、十八年九月期で四千七百八十六億円ということになっております。そのいわば金利に当たりますが、預金の利回りでございますけれども、平均で〇・九〇%ということでございます。

川内委員 最近はキャンペーンで大分定期性の預金をお集めになっていらっしゃるということを聞いておりますが、キャンペーンの金利はどのくらいですか。

佐藤政府参考人 一・五%というふうに聞いております。

川内委員 最近は一・五%で預金を集めている。

 一般的な最近の定期預金の金利は、それこそ平均の金利は〇・九ぐらいですね。確認させてください。

佐藤政府参考人 直ちに正確な数字はお答えできませんが、下一けたのもっと低いところだろうと思います。

川内委員 ごめんなさい。下一けたのもっと低い、私ちょっと勘違いしていました。さっきの〇・九というのが頭にあったもので。下一けたのもっと低いところが普通だが、新銀行東京は、キャンペーンで一・五で定期性預金を最近は集めている。

 さらに、不良債権の比率はどのくらいあるのか。二年で不良債権になるというのは、果たしていかなる理由によって不良債権として分類されるのかということについて御説明をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 まず、不良債権比率でございますが、十八年九月期で二・〇%、再生法開示債権でございますが、ということでございます。

 それから、比較的短い間に貸し出しが不良債権化することについては、これは一般論でございますけれども、さまざまな要因があろうかとは思います。外部的な要因で融資先の企業が急激に悪化したというようなケースもございましょうし、あるいは融資をするときの貸出審査が必ずしも十分ではなかった、あるいは審査をした時点の内容を超えるような急激な業況の悪化があったといった、さまざまな要因が一般的にはあろうかと思います。

川内委員 済みません、委員会の質疑なので、先ほどの一般的な銀行の定期性預金の調達の金利について、大手都市銀行の定期性預金の金利について正確な数字を御答弁いただきたいということがまず一点。まず、それからいきましょうか。

佐藤政府参考人 今ちょっと調べますので、後刻御報告させていただきたいと思います。

川内委員 それでは、その間に、新銀行東京のそもそもの設立の経緯について、もう一度御説明をいただきたいと存じます。

山本国務大臣 平成十五年三月、石原東京都知事が、東京都が主体となった新銀行を設立する旨を表明されました。新銀行につきましては、当時、東京都は、地方自治体としてみずからの地域経済の活性化を図る観点から、中小企業への総合的な支援を行うという政策目的を実現するために設立するものということでございました。

 これを受けまして、平成十六年四月一日、東京都がBNPパリバ信託銀行を買収しました。新銀行東京は、この信託銀行をもとに設立されたわけでございます。その後、一年間の準備期間を経まして、十七年四月一日、本格開業に至ったところでございます。

川内委員 BNPパリバ信託銀行を買収した。買収の仲介をしたコンサルタント会社なんというのは教えてもらえませんか。わかりますか。

佐藤政府参考人 ただいまちょっと手元にございません。恐れ入ります。

川内委員 では、それは後刻御回答をいただけますか。

佐藤政府参考人 そのことが開示できる性格のものであるかどうかも含めて確認の上、開示可能であれば御報告をさせていただきたいと思います。

川内委員 この新銀行東京の設立に関して金融庁は、先ほど、開業に当たって一部業務停止処分をしたという大臣の御答弁がありましたが、金融庁が認可をしたという理解でよろしいでしょうか。

佐藤政府参考人 この銀行は、実質的に新しい銀行をつくった、東京都が出資してつくったということでございましたけれども、法形式的には、BNPパリバ信託銀行を買収すると申しましょうか、そこに出資することによってそれを買い取ったという形でスタートいたしました。それが、先ほどもありましたように、平成十六年の四月一日ということでございました。

 ただし、この段階では、株主は東京都ということになりましたけれども、新銀行東京として形は発足いたしておりますけれども、新銀行東京としての業務を開始するまでの体制整備はまだできていなかったということでございましたので、主要株主の認可という手続が銀行法上はございますけれども、それを行って、形の上で法的には新銀行東京がスタートした後に、その準備期間ということで一年間業務停止がかかった、こういうことでございます。

川内委員 済みません、ちょっと私は法律のことに疎いので。そうすると、新銀行東京の設立について金融庁は認可している、していない、どっちなんですか。

佐藤政府参考人 先ほど申しましたように、この銀行の場合には、新しい銀行を設立するという形ではございませんので、通常の、銀行免許を新たに付与する、こういうことは行っておりません。そのかわり、BNPパリバ信託銀行の株式を一〇〇%取得した東京都が銀行法上の主要株主というものに該当いたしますので、主要株主の認可という手続は踏んでおるということでございまして、主要株主の認可というものが実質的には新銀行東京の発足について金融庁としてお認めした、こういうことになろうかと思います。

川内委員 もう一つ鳴り物入りで設立をされた銀行に日本振興銀行というのがありますが、ここは開業二年で検査が行われたというふうに聞いております。

 新銀行東京についても、私は、銀行法上の銀行である、しかし大株主が東京都であり、その東京都の知事さんが選挙公約で、中小企業向けの融資をやるんだ、無担保、無保証だということを言い、本来は一般的な銀行として経営をしなければならない中で、そういう大株主からの意向を受けて、資金調達にしてもかなり御無理をされているのではないかというふうに思います。その結果として、開業二年でこれだけの大赤字が累積してしまったのではないかというふうに思いますが、金融庁として設立時に強い関心を持っていたと山本大臣はおっしゃっていらっしゃるわけでございまして、この銀行について、私はその業務の内容、健全性について、検査を日本振興銀行と同様にすべきではないかというふうに考えますが、大臣の御所見を賜りたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 ちょっと大変申しわけないんですけれども、先ほど、私の答弁で勘違いがございました。

 一般的には主要株主の認可というものを行うわけでございますけれども、本件の場合には、主要株主が東京都、地方公共団体ということで、そういう手続は踏んでおりませんでした。申しわけございません。

 ただし、実質において主要株主ということでございますので、この銀行のあり方につきましては、業務遂行能力、人的構成あるいは財産的基礎、収支の見通しといったことについては、それに匹敵するような審査を事前に行わせていただいたということでございます。

川内委員 ちょっともう一回。

 今、御答弁の訂正があったわけでございますが、私も、けさレクで聞いたこととお答えになったことがちょっと違ったので、あれっと思いながらお聞きしていたんですが、結局、新銀行東京の設立に、金融庁は法的な認可、金融庁に与えられている認可という権限を行使してはいないということですね、今の御答弁。実質的にはいろいろ審査はしたけれども、法的に認可という手続をとっていない。そういう中でこのような経営が行われ、たくさんの方々が新銀行東京の先行きに心配をしているということでございます。

 金融担当大臣として、新銀行東京に対する検査方針いかんということについて御答弁をいただきたいと思います。

山本国務大臣 まず、設立時のことをもう一度申し上げますと、開業準備期間であります平成十六年度について、預金者等の保護、開業準備に向けた円滑かつ適切な準備体制の確保等を図るために、同行が発足した十六年四月一日に、銀行法二十六条に基づきまして、十六年四月一日から十七年三月三十一日までの間に、既存顧客との既存取引に係る管理業務、資本の預け金への運用、この二つを除いて業務停止ということをしまして、的確な開業準備を求めたということでございます。いわば、銀行法に基づく新たな認可をしたというわけではないということでございました。

 次に、御指摘の検査を行っているかどうかでございますが、個別行についての検査云々については言いがたい点がございますけれども、新設については公表された部分もございますので、その限りで申し上げますと、新銀行東京に対しては、十七年四月の営業開始以降、立入検査を行った実績はございません。

 個別の金融機関の検査実施については申し上げませんが、一般論で申し上げれば、金融検査実施は、当局の組織、人員に制約がある中で、検査業務全体を効率的、効果的に行う観点から、各金融機関の経営状況等のさまざまな要因を総合的に勘案した上で、検査の実施先及び検査実施時期を決定しているところでございます。

 新規参入銀行について申し上げますと、大体参入後二年以上経過して、しかるべき時期に検査に立ち入るというような例が通常であるというように言われていまして、長い場合では四年近い時期を経過した場合もございますので、この新銀行東京のケースが異例とまではまだ言えないというようでございます。

川内委員 ありがとうございます。二年経過をしたわけでございまして、重大な関心も持っていらっしゃるということでございますから、あとは推して知るべしということで、新銀行東京についてはこのくらいにさせていただきたいというふうに思いますが、すべては石原東京都知事のおやりになられることでございますが、夢を見るのは結構だし、夢を見せてやると豪語されるのは結構だけれども、すべては税金で行われているということをしっかり私どもは肝に銘じておかなければならないというふうに思います。

 そこで、次の論点に移らせていただきますが、これもやはり税金を使う事柄でございます……。金利、はい、どうぞ。

佐藤政府参考人 先ほど確認をさせていただきましたところ、三メガバンク、たまたま今同じ水準でございますけれども、一年物定期預金につきましては、三百万円未満のところが〇・三五%、それから三年物につきましては〇・四%、こういう水準でございます。

川内委員 普通の銀行は、いわゆる普通の銀行というのは健全な銀行ですよ、これが〇・三五なり〇・四で調達するところを、新銀行東京はキャンペーンで一・五で調達をしている。これは、私はかなり無理をされているんじゃないかなというふうに思います。これは感想です。

 それでは、ODAについて、財務大臣並びに財務当局にお伺いをさせていただきたいというふうに思います。

 私、手元に、財務省さんが毎年の予算の執行状況について予算執行状況調査というものを行っていらっしゃる総括調査票というものをいただきました。さまざまな分野でこの予算の執行状況調査をおやりになっていらっしゃるわけでございますが、無償資金協力についての予算執行状況調査、さらには、JICA、独立行政法人国際協力機構の運営費交付金についての予算執行状況調査がそれぞれに行われております。

 この予算執行状況調査について、その内容の概要を簡単に御説明いただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 財務省におきましては、予算が実際に効率的かつ効果的に執行されているかといった観点から、毎年各予算分野におきまして、予算執行調査を実施しているところでございます。

 お尋ねのODAに関しましては、平成十七年度に主に機材供与に係る無償資金協力につきまして、また、平成十八年度にはいわゆる技術協力支援を執行する独立行政法人JICAに対する運営費交付金について、それぞれ予算執行調査を実施したところでございます。

 同調査の結果におきましては、まず、無償資金協力につきましては、競争入札の効果が限定的であるためにコスト削減が不十分である、あるいは、事業規模、内容に比してコストが割高と考えられる事例がある、さらに、供与した機材が使用されていないといった事例がある等の問題点を指摘いたしております。

 また、技術協力を実施するJICAに対する支出につきましては、事業費や人件費等のコストが割高であり、制度的に改善の必要がある、また、効率化目標の設定対象が事業の一部にとどまるといった問題点を指摘しているところでございます。

川内委員 厳しい指摘がこの総括調査票の中では事細かくされております。

 その中の一点について聞かせていただきますが、ラオスの地下水開発及び機材供与事業というのが行われております。このラオスの地下水開発及び機材供与事業というのに対して幾ら予算が支出されたのか、施工企業に幾ら支払ったのかということについて、まず事実関係だけお答えいただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のラオスの井戸建設案件は、ラオスの農村部に三百五本の井戸を掘削するODAのプロジェクトにつきまして、深井戸等の建設工事費、機材供与費といたしまして計十一・七億円が支払われております。

川内委員 同じく財務省がおつくりになられた資料によりますと、このラオスの井戸建設案件については、現地政府職員からの聴取結果等をもとに経費を試算したところ、当時の見積額は過大であるというふうに評価されております。この十一・七億円が過大であるというふうに評価しております。実際には、財務省としては、このラオスの井戸掘削事業について幾らぐらいでできたというふうにお考えになっていらっしゃるかということを御答弁いただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 本案件につきまして、当初の見積もりの積算資料がないこと、また、仕様、設計の違いなどを考慮する必要があることなどから、正確な検証、厳密な対比は困難であると考えております。

 しかしながら、当時の執行調査における現地での聞き取りなどを踏まえますと、より割安、具体的には、一定の試算を行いますと、約四割程度で施工できた可能性もあるのではないかと考えております。

川内委員 十一・七億、国民の税金を使ったODAの事業が、いろいろな前提を置いた上ではあるが、四割ぐらいの金額でできたのではないかということが今示されたわけです。十一・七億の四割というと、大体五億円ぐらい、多目に見積もって五億円ぐらいということでございましょう。

 それでは、この平成十六年度の無償資金協力の案件というのは、全部でまず何件あったのかということをお答えいただけますか。平成十六年度の無償資金協力全体の案件数というのは何件あったのかということをお答えいただきたいと思います。

松元政府参考人 お答えいたします。

 平成十六年度の無償資金協力におきます一般プロジェクト無償の件数は、百九十九件でございます。

川内委員 その百九十九件のうち、落札率が九九%から一〇〇%、九九か一〇〇の落札率は何件ですか。

松元政府参考人 お答えいたします。

 百九十九件の案件のうち、落札率が九九から一〇〇%の案件は百十三件となっております。

川内委員 余り細かいことはお聞きをいたしませんが、では、その百九十九件のうち、一社入札は何件ありますか。

松元政府参考人 お答えいたします。

 ただいまお答えいたしましたもののうち、一社入札のものは三十八件でございます。

川内委員 三十八件というのは、落札率が九九から一〇〇の百十三件のうち、三十八件が一社入札ということですね。

松元政府参考人 お答えいたします。

 そういうことでございます。

川内委員 大臣、これは、実は落札率が九九から一〇〇だけではなくて、これはコンサルがついていますから、コンサルに支払う額も入れたら、落札率一は超えているわけですね。一社入札も多いし、このODAのあり方というのは、平成十九年度予算で、外務省も多少は反省したのか、四十億ぐらい、現地企業に任せる部分を含めてコスト削減に努めましたと、何か威張って言っていましたけれども、一般無償だけで千六百億ぐらいあるわけですからね。それで四十億ちょっと改善したから改善しましたと威張られても、国民は困るわけです。

 大臣も今お聞きになられて、落札率が九九なんというのはほとんど一に近いわけですから、余り一にするのは申しわけないから九九にしたぐらいの話でしょうからね。これは、ODAの仕事のあり方について、もうちょっと政府として真剣に取り組んでいただかなければ、先ほど財務省の事務当局から御答弁があったとおり、四割程度の値段でできたのではないか。これは前提を置いてですよ。だから、それを私は決めつけて言うわけではないですよ。決めつけて言うわけではないです。四割程度の値段でできたのではないかということも考えられるというふうにおっしゃっていらっしゃる。

 そうすると、ODAを戦略的に使うという観点から見ても、たくさんの国に必要なODAで御援助申し上げるという、件数をふやす方向で考えることもできるわけですし、もちろん国民からすれば、税金の無駄遣いはとにかくやめていただきたいということだろうというふうに思います。

 財務大臣として、このODAのあり方についてどう思われるのか、それについて問題だということであれば、それに対してどう対処されるのかということを御答弁いただきたいと思います。

尾身国務大臣 ただいま議論がありましたように、財務省といたしましては、ODAの執行について、予算執行調査等の結果を踏まえまして、日本との二国間の援助案件につきまして、事業や機材調達等のコストが割高であること、入札における競争性が十分に確保されていないこと、相手国のニーズや実情に合わない事例があることなどの問題点があると認識しております。財政制度等審議会の議論におきましても、こうした問題点を指摘しているところでございます。

 現在、外務省を中心といたしまして、現地の仕様、設計の施工によるコスト縮減、入札期間延長によって複数の業者の応札を促すことによる競争性の向上などの取り組みが行われていると承知しております。

 政府全体といたしましても、本年一月の海外経済協力会議におきまして、ODAの質をどう改善するかといった議論について討議をしておりまして、引き続きODAの効率的かつ効果的な実施に向けた改善に努めていくことが必要であると考えております。

川内委員 非常に一般的な御答弁で、私は内心残念だなというふうに思うわけでございまして、これは割と政府が真剣に取り組まなければ、財務省というのはやはりさすがだなと、大臣、僕は思うんですよ、非常に細かくよくお調べになっていらっしゃるし。非常におもしろいなと思ったのは、これはJICAのことなんですけれども、「独法化以降、事業規模が減少している一方で、JICA全体の人員は、海外事務所での現地雇用を中心に大幅な増員。」と書いてあるんですね。しかも……(発言する者あり)そうです、日本で採用できないから、現地で採用している。しかも、役に立つ人を採用するならまだしも、どういう人がふえているか。「(特に秘書・運転手等)」と書いてあるんですよ。

 これは財務省の調査資料ですからね。私が言っているわけじゃないですよ。財務省さんが調査された資料の中に、こういうことをやっている、これはいかぬということを書いてあるわけで、やはり、現場はさまざまに頭を使って、あの手この手ですり抜けてくるわけですから、これは大臣、まず、では落札率が九九から一〇〇なんというのは、これは異常な数字だ、現状では考えられない数字だと思いませんか。まずそこから。

尾身国務大臣 いろいろな意味で、この予算執行調査を行って予算の執行を適正にするということに、現在、私ども鋭意努めているところでございまして、この実例が今話題になっているわけでございますが、全力を挙げて改革をしていくことに努めてまいりたいと思っております。

川内委員 ちょっと聞いたことにお答えいただいていないんですが、九九とか一〇〇という落札率は異常な数字だというふうにお思いになられないですかということをお聞きしています。

尾身国務大臣 確かに、おっしゃるとおり、一社入札とか、あるいは九九、一〇〇というのはノーマルな数字ではないと思っております。

川内委員 その認識をもとに、この対策について考えていただきたい。

 私は、ただ、申し上げておきますが、落札率が低ければ低いほどいいなんということを言っているんではないですよ。落札率が低ければ低いほどいいなんということを言っているわけではない。会計法と予決令によれば、予定価格は市場の実勢に応じて適正に定める、適正に定めると書いてあるわけですから、予定価格がある意味で適正な価格である。しかし、そこにある種の競争があるから予定価格よりもちょっと値段が低くなる、あるいは、どのくらい低くなるのかはさまざまな入札の方式によるでしょうから。

 しかし、今のこのODAのあり方というのは、国内で本当に厳しい思いをしていらっしゃるさまざまなお会社の方々、公共調達にかかわる方々から見たら、ちょっとあんまりなんじゃないのという思いを持たれるのではないかな。したがって、財務省としても、外務省をしっかり督励していただいて、このODAの仕事のやり方について、さらなる改革をお願いしておきたいというふうに思います。

 それでは、最後の論点でございますが、税制でございまして、政府税制調査会の提出資料によれば、今、法人税の実効税率が大きな話題になっているし、これからもなっていくわけでございますが、経済界の皆さんは、法人税の実効税率をさらに引き下げるべきであるということを主張されていらっしゃるし、大臣もその意見に、もしかしたら個人的には同調されているのかもしれないですが、私は全く違う考え方を持っておりまして、その前提として、さまざまな議論のたたき台になる資料が政府税制調査会に提出をされております。

 昨年までの石先生が税制調査会の会長であられたころは、この税制調査会の各国の法人税の実効税率を比べた表には、ニューヨークの法人税の実効税率が棒グラフで出ておりました。ニューヨークの法人税の実効税率は、ちなみに何%でしょうか。

石井政府参考人 お尋ねのニューヨークにおきます法人税の実効税率でございますが、いわゆる連邦税二九・一〇、それから地方税、これは州税と市の税があるようでございますが、一六・八五ということで、合計いたしますと四五・九五ということでございます。

川内委員 ニューヨーク市の法人税の実効税率は四五である。それが、税制調査会の石先生が会長だったころはちゃんと資料に出ていたわけですね。世界じゅうの人々があこがれる、経済活動が世界じゅうで最も活発であると思われるし、実際に活発であるニューヨーク市の法人税の実効税率は四五である。四五・九六でしたか。(石井政府参考人「九五」と呼ぶ)四五・九五、正確に言います。

 しかし、税制調査会の会長がかわられてから、税制調査会に提出をされる各国の法人税の実効税率の表からはニューヨーク市がなぜか消えてしまったんですね、なくなったんですよ。私は、これはちょっと公正さを欠くのではないかというふうに思うんですね。新しい税制調査会になってニューヨーク市を外したのはなぜなんでしょうか。

石井政府参考人 今委員御指摘のとおり、以前、法人税の実効税率の国際比較をいたします際に、アメリカにつきましては、カリフォルニア州とともにニューヨーク市を出しておりました。しかしながら、アメリカでは、法人所得に対しまして、連邦税として三五%の基本税率での法人税が課されておりますけれども、これに加えまして、地方税につきまして、これを課している州もあれば、ゼロのところもございます。こうしたことから、連邦税だけが課税されている例、逆に申しますと地方税が課税されていない例といたしましてネバダ州を新たに紹介いたしますとともに、地方税を課している例としてはカリフォルニア州の税率をそのまま示したわけでございます。

 なぜ、今までニューヨーク市とカリフォルニアと二つあったもののうち、地方税を課しているものの例としてカリフォルニアを選択したのかという点でございますけれども、一つは、カリフォルニア州はニューヨーク州を抑えまして州の生産額が全米でトップでございます。それからまた、西海岸にあるという地理的な条件から、日本とのつながりも比較的強いだろうというようなことも考慮をいたしました。

 アメリカでは、州、都市ごとにこのように法人の実効税率が異なっております。したがいまして、各法人が税負担を含むさまざまな要因から拠点を決定しているわけでございますけれども、現在、州ごとの法人数ですとか今申しました生産額、これのトップがカリフォルニア州でございますので、必ずしもニューヨーク州が代表例としていいのかどうか、むしろそういう観点から、カリフォルニアが代表例として適切ではないかという判断からカリフォルニア州の税率を地方税を課している例として示しているわけでございます。

川内委員 法人税の実効税率を議論するときに、税率が低い方が企業の競争力に資するのだということが実効税率引き下げ論者の論拠になるわけでございます。しかし、果たしてそれが本当なのかどうかということを検証しなければならないというふうに思います。

 そのために私は、ニューヨーク市という世界で最も経済活動が活発な都市、しかも法人税の実効税率が四五・九五%と日本よりも五%高い町が最も経済活動が活発であるということに留意はしなければならないというふうに思います。

 そこでお尋ねをいたしますが、今おっしゃられた、カリフォルニアは面積も多いし人口も多いし、単純に足し算すれば、生産額もそれは一番多いですよ。それはそうでしょう。しかし、では、カリフォルニア州あるいはネバダ州、そしてニューヨーク市に本社を置いている企業の数、上場企業で置いている企業の数はそれぞれ幾つかということをお答えいただきたいと思います。

石井政府参考人 今先生がおっしゃいました上場という意味は、ニューヨークの証券取引所への上場という意味でおっしゃられたんだと理解いたしますが、ニューヨーク証券取引所に上場しておりますアメリカ企業、これは全体で三千百二十五社あるようでございます。恐縮でございますが、その企業の各本社の所在地がどの州にあるかという統計がトータルでは把握できませんものですから、その点については把握しておりません。

 ただ、上場とは別途、別な話でございますけれども、法人税を申告している法人の数を見ますと、ニューヨーク州が約二十三万社、それからカリフォルニア州が約三十三万社、ネバダ州が約三万社というふうに承知をしております。

川内委員 ぜひ私は、やはり企業活動が活発であり、あるいは、国際競争に資するのだ、企業の競争力を強化するために法人税の実効税率を引き下げるのだという論者の方々の議論に資するためには、国際競争をする会社というのはでかい会社ですから、当然証券取引所に上場している場合が多いでしょうから、ニューヨーク証券取引所の三千百二十五社について、カリフォルニア、ネバダ、ニューヨーク市、どこに本社を置いているのかということについて、今はわからないということで結構ですが、今私が聞いたことを誠実にお調べいただきたいというふうに思います。そうでなければ、ニューヨーク市を税制調査会の資料から落としたことの論理的な説明にならないですよ。いかがでしょうか。

石井政府参考人 三千数百社が今上場されておるということでございますが、その個別企業についての情報は、それぞれ、公表のいろいろな資料をインターネット等で調べればあるいはわかるのかもしれませんが、それ以外に統計的な数字はございませんものですから、今、個別に三千数百社すべてについてそれを見るというのは物理的にちょっとできない部分がございますので、ちょっとそれ以上の数値は今持ち合わせていないわけでございます。

川内委員 いや、今は持っていないというのはわかりました。しかし、法人税の実効税率の問題というのは、この秋の税制の抜本的、一体的改革に向けて非常に重要な資料になるというふうに思われます。

 したがって、私は委員長にお願いをしておきたいと思いますが、今私が申し上げた資料の理事会への提出を御検討いただきたいというふうに思いますが、いかがでしょうか。

伊藤委員長 これはまず政府の方においてしかるべき措置をというふうに思いますが、御要望がありますから、理事会の方でも後刻協議をさせていただきたいと思います。

川内委員 大臣、今私が申し上げていることは、決して私自身は理不尽だとも思わないし、与党の先生方も、うなずいている先生方もいらっしゃいましたから、法人税の実効税率がどうなのか、しかも、それが企業の競争力との関連について議論をされるという場合に、今まで載せていたものをわざわざ落としたということは、そこまでやることはないんじゃないですかということを御指摘申し上げているわけで、いや、そのまま載せる、税制調査会の資料にニューヨーク市の実効税率も別に載せておいていいじゃないかと大臣がおっしゃるのであれば、それはそれで結構ですが、最後に御見解をいただきたいと思います。

尾身国務大臣 税制の各国比較は大変大事でございまして、私は、そういう議論があるならば、アメリカ全州のデータをとって、その平均値をきちんと出して比較をするということをむしろ考えた方がいいんじゃないかと。何か一部だけとってやると、都合のいいところだけとったというようなあらぬ疑いをかけられることは政府としてよくないと思っておりまして、調べられるだけのことは調べます。

川内委員 ありがとうございます。いや、大臣、平均値をとったら意味がないんですよ。だから、企業がどこに本社を置くか、企業がどういうビヘービアをとるかということが大事なわけです。そういう意味でニューヨークというのは非常に重要なポイントなのではないかということを御指摘申し上げておきますが、大臣はやれるだけやるというふうにおっしゃられたので、事務当局としても、大変だと思いますが、よろしくお願いをしておいて、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございます。

伊藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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