衆議院

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第9号 平成19年4月17日(火曜日)

会議録本文へ
平成十九年四月十七日(火曜日)

    午前九時五十二分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    江崎洋一郎君

      小川 友一君    小野 次郎君

      小野 晋也君    大野 功統君

      鍵田忠兵衛君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    鈴木 淳司君

      関  芳弘君    高鳥 修一君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    中森ふくよ君

      丹羽 秀樹君    萩山 教嚴君

      原田 憲治君    広津 素子君

      御法川信英君    山内 康一君

      小沢 鋭仁君    大串 博志君

      楠田 大蔵君    小宮山泰子君

      近藤 洋介君    田村 謙治君

      三谷 光男君    吉田  泉君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君

    …………………………………

   財務大臣         尾身 幸次君

   内閣官房副長官      下村 博文君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   財務副大臣        田中 和徳君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   高橋  進君

   参考人

   (日本銀行総裁)     福井 俊彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田 一政君

   参考人

   (日本銀行審議委員)   亀崎 英敏君

   参考人

   (日本銀行審議委員)   中村 清次君

   参考人

   (日本銀行理事)     稲葉 延雄君

   参考人

   (日本銀行理事)     山口 広秀君

   参考人

   (日本銀行理事)     水野  創君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十七日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     丹羽 秀樹君

  小野 晋也君     鈴木 淳司君

  越智 隆雄君     中森ふくよ君

  亀井善太郎君     山内 康一君

  松本 洋平君     鍵田忠兵衛君

  御法川信英君     小野 次郎君

  川内 博史君     近藤 洋介君

  鈴木 克昌君     小宮山泰子君

  馬淵 澄夫君     大串 博志君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 次郎君     御法川信英君

  鍵田忠兵衛君     高鳥 修一君

  鈴木 淳司君     小野 晋也君

  中森ふくよ君     越智 隆雄君

  丹羽 秀樹君     伊藤信太郎君

  山内 康一君     亀井善太郎君

  大串 博志君     馬淵 澄夫君

  小宮山泰子君     鈴木 克昌君

  近藤 洋介君     川内 博史君

同日

 辞任         補欠選任

  高鳥 修一君     松本 洋平君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 連合審査会開会申入れに関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(通貨及び金融の調節に関する報告書)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁福井俊彦君、日本銀行副総裁岩田一政君、日本銀行審議委員亀崎英敏君、日本銀行審議委員中村清次君、日本銀行理事稲葉延雄君、日本銀行理事山口広秀君、日本銀行理事水野創君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府政策統括官高橋進君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 去る平成十八年十二月十二日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、国会に提出されました通貨及び金融の調節に関する報告書につきまして、概要の説明を求めます。日本銀行総裁福井俊彦君。

福井参考人 おはようございます。日本銀行の福井でございます。

 日本銀行は、ただいま委員長御指摘のとおり、昨年十二月、平成十八年度上期の通貨及び金融の調節に関する報告書を国会に提出いたしました。本日、日本銀行の金融政策運営全般につきまして詳しく御説明申し上げる機会をちょうだいし、厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 最初に、最近の経済金融情勢について御報告を申し上げます。

 我が国の景気は緩やかに拡大しております。この点をやや詳しく御説明いたしますと、まず、輸出は、海外経済の拡大を背景に増加を続けております。また、高水準の企業収益や、総じて良好な業況感が維持されている中、設備投資も引き続き増加しております。

 こうした企業部門の好調の影響は家計部門にも波及しております。すなわち、企業の人手不足感が強まるもとで、雇用者数は堅調に増加しており、雇用者所得も緩やかな増加を続けております。そのもとで、個人消費は底がたく推移しています。

 このように内外需要の増加が続く中で、生産は増加基調にあり、在庫も、全体として見ればおおむね出荷とバランスしている状態にございます。

 先行きにつきましても、このように生産、所得、支出の前向きの好循環が作用するもとで、景気は息の長い拡大を続けていく可能性が高いというふうに考えられます。ただし、米国経済など海外経済の動向や原油価格の動きにつきましては、今後とも注意深く見ていきたいと思います。

 物価面では、国内企業物価は、既往の国際商品市況の反落が影響し、足元では、三カ月前との比較で見て弱含んでおります。先行きは、国際商品市況の下げどまりに伴い、目先、横ばい圏内の動きになると見られます。消費者物価(除く生鮮食品)につきましては、原油価格反落の影響などから、前年比ゼロ%近傍で推移しておりますが、より長い目で見ますと、経済全体の需給ギャップが需要超過方向で推移していく中で、プラス基調を続けていくと予想されます。

 金融面では、企業金融をめぐる環境は引き続き緩和的な状態にございます。CPや社債といった資本市場を通じた資金調達環境は良好な状況にございますほか、民間銀行は緩和的な貸し出し姿勢を続けております。また、民間の資金需要は増加しておりまして、こうしたもとで、民間銀行貸し出しは増加しております。

 次に、金融政策の運営について申し述べさせていただきます。

 日本銀行は、二月の金融政策決定会合におきまして、金融市場調節方針を変更し、無担保コールレートのオーバーナイト物の誘導目標を〇・五%前後といたしました。この政策変更は、昨年三月に導入された金融政策運営の枠組みに沿って行われたものでございます。

 まず、二月会合までに明らかになりました内外の指標や情報をもとに日本経済の先行きを展望いたしますと、先ほど申し上げましたとおり、緩やかな拡大が続く中で、消費者物価は基調として上昇していくと判断いたしました。このように、経済、物価情勢の改善が展望できることから、現在の政策金利水準を維持した場合、金融政策面からの刺激効果は次第に強まっていくと考えられます。

 このような状況のもとで、仮に低金利が経済、物価情勢と離れて長く継続するという期待が定着するような場合には、行き過ぎた金融経済活動を通じて資金の流れや資源配分にひずみが生じ、息の長い成長が阻害される可能性があります。日本銀行としては、経済、物価が今後とも望ましい経路をたどっていくためには、この際、金利水準の調整を行うことが適当と判断いたしました。この措置の後も、極めて緩和的な金融環境は維持され、中長期的に、物価安定を確保し、持続的な成長を実現していくことに貢献するものと考えております。

 日本銀行といたしましては、今後とも、経済、物価情勢の変化に応じて金融政策を適切に運営し、物価安定のもとでの持続的成長の実現に貢献してまいる所存でございます。

 まことにありがとうございました。

伊藤委員長 これにて概要の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤ゆかり君。

佐藤(ゆ)委員 おはようございます。自由民主党の佐藤ゆかりでございます。

 本日は、大変お忙しい中を、日銀の福井総裁初め関係各位の皆様方には、通貨及び金融の調節に関する報告書についての御説明のために国会にお出向きいただきましたことを、まずもって御礼申し上げます。

 御報告いただきました内容に基づきまして、本日は、安倍政権の経済成長戦略の中での金融政策の今後のあり方について質疑をさせていただきたいと思います。

 まず一番目でございますが、安倍政権の掲げる「美しい国、日本」の国家観では、理想的な我が国経済の姿として、イノベーションによる生産性の向上と国際競争力の強化によります経済成長戦略というものをうたっております。この経済成長戦略では、最終的に均衡のとれた経済成長を実現するためには、サービス業や中小企業の生産性の向上などにも力点を置きまして、結果として、企業部門全体の活力の底上げというものを図ることで、家計所得の拡大そして消費の拡大へと波及ルートに対する道筋を立てていく、そういう考えに立ったものであります。

 これは、人口の減少の時代でも、技術革新で企業の生産性を高めまして、そして高い生産性に基づいて賃金を増加させ、それによって今度は一人当たりの所得を拡大させて、結果として、総人口が減少しましても、場合によっては総消費は拡大し得る、そういう刺激効果が創出できるものというような見解に基づいているわけであります。

 その一方で、やや逆のルートの議論というのもございまして、高齢化社会の到来で、消費に対して資産効果の方がむしろ相対的に高まってきている。そういうような見方に基づきますと、今後は団塊世代の方々の退職も増加が予想されるわけですが、そうした中で、利子所得の拡大の方が消費拡大への波及ルートとしてむしろ全体的には重要ではないかというようなことをおっしゃる御議論もあるようです。

 いろいろな御見解があるわけでございますけれども、そこで、福井総裁にお尋ねしたいと思います。

 高齢化社会の我が国経済が高い成長率を手にするためには、機能すべき経済のさまざまな波及ルートの中で、力点を置くべきルートというのをどこに求めるのか、総裁御自身の御所見をお伺いしたいと思います。

福井参考人 日本銀行にとりましても大変重要な御質問をちょうだいしたというふうに思っております。

 御指摘のとおり、少子高齢化、あるいはさらなるグローバル化の進展への対応など、日本経済がこれからも抱えていく難しい課題を克服して、高い成長率を実現していく。そのためには、御指摘のとおり、イノベーションを通じて民間活力をさらに引き出して潜在成長力を高めていくことが極めて重要だというふうに考えています。それも、先頭に立つ大企業、製造業だけではなくて、おっしゃるとおり非製造業、過去の系譜を振り返ってみましても、製造業と非製造業との間には生産性格差が大きいというのが日本経済の特徴でございます。こうした難点を克服していく。そして、大企業、中小企業間のイノベーションの力の差というものも、やはりいつまでも放置できない問題だという意識でもって潜在成長能力を高めていくことが極めて重要だというふうに考えています。

 潜在成長能力を高めるためには、労働や資本といった生産要素の投入を増加させたり、生産性の向上を進めていくことが必要でございます。生産性を向上させるためには、これは、限られた資源が収益性の高い分野に円滑に配分されるような、変化への対応力の高い経済システム、硬直的でなくて変化への対応力の高い経済システムを構築していく必要がございます。

 私ども、マクロの観点からの仕事をさせていただいておりますので、ミクロの分野への政策対応という点は私どもの手からはなかなか及びがたいわけでありますが、マクロの点から見ますと、例えば、我が国の金融資本市場を、より使い勝手がよく、より効率的な資源配分を可能とするような生きた市場としていくことが非常に重要だと考えております。さらに、教育や研究開発分野に対する投資を着実に続けていただける、つまり、そういう方向に資源配分がなされて我が国の有形無形の資本の質が高まっていくということも大切だというふうに考えております。

 私ども、マクロの分野からはそうしたアプローチで行きたいと思いますが、一方、国全体ということになりますと、例えば人の面では、今申し上げましたとおり、今後人口の減少が続いていくことが予想されます。そのことを踏まえますと、資本による労働力の代替に加えて、まだ元気に活躍できるシニア層などが働きやすい環境を整備するなど、未就業者の労働市場への参加を促していくということも追加的に重要なことだというふうに思っております。

 このような課題に地道に取り組んでいくことにより我が国の持続的な経済成長力を高めていくことは可能だというふうに思っております。

 こういうふうに、私どもは、生産性を広範囲にわたって底上げしながら、経済全体が常に生産、所得、支出の好循環のメカニズム、これが生き生きとしたものとなり、結果を一人でも多くの方々が享受できる、そういう循環が望ましいというふうに考えております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございます。

 今お伺いしました総裁の御答弁で私が印象を受けましたのは、どちらかといいますと、総裁も、政府の戦略と似たように、生産性を向上させて、その背景にイノベーションがあるわけですが、生産性向上ルートで、人的な投資、あるいはイノベーションに基づく設備投資を主体とした成長力の全体的な底上げというふうにお見受けしたわけでございます。

 先ほど私の質問で申しましたような二つの、あるいはそれ以上のいろいろな見解があります中で、ともすれば、所得効果を主体とした底上げなのか、あるいは資産効果を主体とした底上げなのか、そういう右左、左右どちらかというふうに言い切ることはできないであろうと思いますけれども、どちらが今の局面において全体的に重要であるかという観点からお伺いしますと、総裁はむしろ前者の方であるというふうにお伺いしたと思います。

 そこで金融政策についてですけれども、金融政策というのは、政策的に変更すれば所得の分配効果というのも必然的に生まれてくるわけでありまして、例えば、利上げをしませば家計部門の利子所得はふえますが、逆に利下げをすれば企業部門の借り入れコストが低くなるというような分配効果というのは当然生じるわけでございます。

 こうした所得の分配的な側面を考慮に入れつつ、主軸として機能すべき、総裁が今おっしゃられました経済の波及ルートの出現のために、これをどうにか実現させるためにはどのような金利の姿というのが、あるべき姿として望ましいのか。すなわち、安倍政権では、「美しい国、日本」をつくるときに金利がどうあるべきなのか、日銀総裁御自身が描かれておられます「美しい国、日本」のための「美しい金利観」について御所見をお伺いしたいと思います。

福井参考人 日本銀行が金融政策を運営していきます場合に念頭にありますことは、日本経済の実力が時の経過とともに常に向上すること、向上した力が、常に現実の経済発展の成果として国民の多くの方々がそれを享受できるような姿として実現していくこと、そのためには、物価安定のもとに息の長い成長を続けること、こういうことになると思います。

 金融政策の観点から申しますれば、それらすべての目標を同時達成していくためには、限られた資源が収益性の高い分野に円滑に配分されるようなメカニズムが、金利の面からもしっかりと作用する必要があるということだと思います。

 そうした観点からは、市場金利が経済、物価情勢を反映した形で円滑に形成される必要があります。そういう金融条件、金融環境というものを用意するということを念頭に置きながら私どもは金融政策を進めていかなければならない。

 逆に、経済、物価情勢と離れた金利形成が行われますと、非効率な経済活動に資金やその他の資源が使われ、長い目で見た資源配分にひずみが生じるおそれがあります。そうなりますと、これは息の長い成長を阻害する可能性があるということで、目的が損なわれるということになると思います。

 現在、日本経済の状況は、過去十何年か、非常に苦しい状態からようやく脱却したばかり。私どもの金利水準の設定の仕方も、本当に望ましい姿に整えていくためのまだプロセスにあるというふうに御理解していただいているというふうに思います。

 私どもは、物価安定のもとでの持続的な成長が今後とも可能であり、かつそれが続くものとなるよう、経済、物価情勢を丹念に点検しながら、適切な金融政策の運営に努めていかなければならないというふうに明確に認識をしております。

佐藤(ゆ)委員 ありがとうございました。

 それでは、少し政府の方に質問を移らせていただきたいと思います。

 我が国政府の経済財政諮問会議におきましては、審議を経まして、ことしの一月二十五日に、政府は「日本経済の進路と戦略」と題する成長戦略を閣議決定いたしております。

 この戦略では、我が国経済が九〇年代の長期停滞のトンネルを抜け出して、今現在、創造と成長による新たな国づくりへの取り組みを始めているということが示されているわけでありますけれども、そうした中で、政府の戦略としましても、イノベーションの促進による国際競争力の強化やIT化の加速、サービス産業の革新などによって生産性を向上させると、いわば人材育成とそして技術革新を主軸とした全要素生産性、TFPの向上に立脚する成長モデルというものを描いていると思います。

 同時に、ことしの二月に入りましては、さらに政府の中で成長力底上げ戦略のチームというのも立ち上がっているところであります。

 そこで、大村副大臣にお伺いしたいと思います。

 この「日本経済の進路と戦略」では、向こう五年間、我が国経済について、名目、実質ともども、具体的にどの程度の成長率を展望しておられるのでしょうか。そして、我が国政府は目下底上げ戦略の具体的な取り組みを始めておりますが、これは「進路と戦略」での成長率の達成を前提とした取り組みというふうに理解をしてよろしいものか、お伺いしたいと思います。

大村副大臣 お答え申し上げます。

 今委員御指摘になりました「日本経済の進路と戦略」、これは一月二十五日に閣議決定をしたものでございまして、今後の日本経済をどう持っていくか、どういうふうに進んでいくかということを示したものでございます。

 そういう意味では、この点につきましては、一つは、もちろん、今後の見通しでございますからいろいろな不確実性も伴いますので、ある程度の幅を持って理解される必要があるということはうたってございますけれども、そこで示されたものにつきましては、今後五年間のうちに、実質成長率につきましては、二%程度あるいはそれをかなり上回る実質成長率が視野に入るということが期待をされるわけでございます。これは、あわせて、閣議決定ではありませんが、内閣府の試算では、二〇一一年には二・五%というところまで期待をされるということで示させていただいております。

 また、物価につきましては、デフレの脱却後、安定的なプラスの物価上昇率が徐々に実現をしていくというふうに見込んでいるわけでございますが、あわせまして、名目成長率につきましては、これも五年間のうちに、三%台半ば程度あるいはそれ以上も視野に入るということを期待しているわけでございます。これも、あわせて示させていただきました内閣府の試算によりますと三・九%。

 二〇一一年に、実質二・五%、名目三・九%のプラス成長というのを、私どもは、いろいろな条件、先ほど委員が言われましたように、生産性向上、いろいろな政策効果をしっかり進めていく中で、そうしたものを視野に入れながら日本経済を成長の軌道に乗せていきたいというふうに思っているところでございます。

 そのための取り組みでございますけれども、人口が減少する中で日本経済が安定的な経済成長を続けていくためには、生産性の上昇でありますとかオープンな国づくり、そして人材の活用といった成長力の強化が不可欠というふうに考えているところでございまして、そういう中の政策の一環といたしまして、二月の半ばに、これも委員御指摘のように、私ども、成長力底上げ戦略というものを取りまとめさせていただいたところでございます。

 それは、一つは人材能力の開発。能力向上ということで職業能力の向上をしていく。それから、福祉から雇用へということで就労の支援戦略。そして三つ目が中小企業の底上げ戦略。生産性の向上と最低賃金の引き上げを内容といたします中小企業の底上げ戦略。この三つを三本の矢として、成長力底上げ戦略というものを策定させていただきました。三月には政労使によります円卓会議というのも設けさせていただきまして、これも順次具体化をしていきたいというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、委員が御指摘になりましたように、日本経済の本来持っている潜在力を生かして、それを、成長といいますか、生産性を向上させていくということをしっかりやっていく中で、私どもが描いております成長力の底上げ、これを実現してまいりたいというふうに思っております。

佐藤(ゆ)委員 大村副大臣、どうもありがとうございました。

 一応、政府の基本方針というのをここで確認させていただいたわけでありますが、こうした政府の取り組みを受けまして、また日銀の方に質疑を戻らせていただきたいと思います。

 日銀は、昨年の三月に、五年間に及びました量的緩和政策の解除に踏み切りました。そして昨年の七月には、無担保コールレートを〇%から〇・二五%へ、初回の利上げというのを行ったわけでございます。

 この利上げの際に、日銀は次のように説明をしておられます。

 金融政策面からの刺激効果は次第に強まってきている。今後ともゼロ金利を継続すれば、結果的に、将来、経済、物価が大きく変動する可能性があるため、経済、物価情勢が望ましい経路をたどっていくために政策金利の調整を行うことが適当であると判断したというふうに説明をされておられます。そして、さらにことし二月にも二五ベーシスの追加利上げを行ったわけでございます。

 ところで、これら二回の利上げについてですが、当時のコア消費者物価を見てみますと、前年比で、旧系列ベースでも〇・五%前後の時点で二回の利上げが実施されております。その一方で、昨年三月の量的緩和の解除の際に、日銀の政策委員の方々の中長期的な物価安定の理解というものが公表されておりますが、当時の政策委員の方々の中心値は一%でございました。すなわち、その二回の利上げの時点では、この政策委員の方々の中心値であります一%よりも低い消費者物価の前年比の次元で利上げが行われたわけであります。

 要するに、受ける印象といたしましては、これらの二回の利上げについては、物価に照らした政策判断であったというよりは、むしろ、福井総裁御指摘のように、緩和効果が経済の一部にいびつな形で出現をしてくる、そういうこと自体に対する収拾の意味合いの方が強かったのではないかというふうに思われるわけであります。実際、現状を見てみましても、今回の景気回復局面では都市部の不動産向けの貸し出しが拡大しまして、そういったことから不動産価格が一部で大幅に上昇するなど、日銀の御指摘どおりの、いわば一部の経済部門に緩和効果がかなりきき始めたというような状態も散見されたわけでございます。

 その結果、バブル的な影響が一部の部門において発生するのを回避するために、中小企業や地域経済など回復がおくれる部門にとりましてはむしろ早過ぎるかもしれないようなタイミングで二回の利上げが行われ、万が一、その結果、緩和効果の波及というのがその時点でとまってしまうようなことになれば、これはまことに残念ではないかと思われるわけでありますが、そこで、もう一度福井総裁に確認をさせていただきたいと思います。

 平成九年以降施行されております、いわゆる新日銀法の第一章の総則の第四条のところで、日銀は、通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものということを踏まえまして、政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないというふうに記されております。したがいまして、政府がことし一月に閣議決定をしました「日本経済の進路と戦略」、今、大村副大臣からも名目成長率は大体三・五%程度というような御答弁をいただいたわけでございますけれども、これが、ある意味展望であって目標ではないということではありますが、これを視野に入れて達成するための政府の経済政策としての中に、日銀も一体となって整合的な政策をとるということが、一応日銀法上は求められてくるわけでございます。

 そういう中で、今後の金融政策の運営について、政府の経済政策との整合性が守られるという理解でよろしいものかどうか、福井総裁にお伺いをしたいと思います。

福井参考人 私どもは、日本銀行法に規定されておられますとおり、政府の経済政策全般が目指しておられる大きな方向と日本銀行の金融政策の目指す方向とが一致をして、あわせて相乗的にいい経済結果を生み出していくようにというふうに、そこを目指して金融政策の運営をしているということでございます。

 金融政策の面からは、その方法としては、やはり、物価安定のもとでの持続的成長を実現していくという視点を欠かさないということだと思いますし、大きく言えば、その点で政府の現在の物の考え方と視点を共有しているというふうに思います。

 したがいまして、今後とも、そうした大きな方向性についてずれが生じないように引き続き政府との密接な意思疎通を図りながら、適切な金融政策の運営をやっていきたいということでございます。

 今、「進路と戦略」のもとで政府がどういうふうな方向を目指し、どういう施策をとられていくかということについて御説明があったわけでございます。特に我が国の潜在成長能力の強化などの観点から、さまざまな施策を政府として行っていくというお話がございました。

 日本銀行の観点から見ましても、やはり、ここから先、物価安定のもとで息の長い景気の拡大を続けていく。つまり、別の言葉で言いますと、振幅の少ない経済の成長を実現していくことによって、すべての企業から見て、イノベーションを実現し、それを投資に化体して実現していく。長期的な投資がやりやすい金融環境を常に用意していく。それが物価安定のもとでの景気の持続的拡大実現ということになりますし、あわせて、投資がイノベーションを伴ったものであれば生産性の向上にもつながっていくということで、大きなねらいがすべて実現していくという道に通ずるのではないかということでございます。

 そういう視点から、私ども、既に、量的緩和からの脱却、ゼロ金利からの脱却、そして、極めて慎重ながら、緩やかな金利の引き上げというプロセスに入っているわけでありますけれども、物価安定という視点を一度も視野から外したことはございません。現実の足元の消費者物価指数は、原油価格の変動等を受けまして多少のアップダウンをしており、現況、足元では、消費者物価指数が前年比若干マイナスという状況になっておりますけれども、今後の経済は、政府の見通しあるいは私どももシナリオとして置いておりますややロングランな持続的かつ安定的な成長というものを土台に考えますと、やや長い視点で見ますと、日本の消費者物価指数は緩やかな上昇基調をたどっていくであろう。私どもが中長期的な物価安定の理解として政策委員会のメンバーとして共有しております〇%から二%という範囲内にこの物価指数が入っていく。そういう視野を踏まえながら金融政策の運営を行っているということでございます。

佐藤(ゆ)委員 ぜひとも政府と一体となった金融政策運営を今後も期待申し上げたいと思います。

 残された時間が五分程度となりましたので、実は資料を配付させていただいておりますが、ちょっと質問を割愛させていただきまして、ややミクロの観点で一つお伺いさせていただきたいと思います。

 金融政策の緩和効果について、今いびつな形で出現をしているという御指摘、表現の方法はいろいろあると思いますが、総裁からも御指摘がありましたし、私からの質疑の中でもそういう指摘をさせていただいたとおりであります。

 そこで、金融政策の波及経路そのものについて御質問申し上げたいと思います。

 ある意味で、これまで金融政策の量的緩和時代に、緩和効果というのが、一部の経済部門に集中的に、先行的にあらわれてきたということもありまして、その緩和効果というのがいびつな形であらわれることに対する懸念、それが長期的な、安定的な経済成長をむしろ妨げるというような御懸念というのが日銀の中にあろうかというふうに理解をしております。

 こういった観点で、従来、日銀の金融調節の手法を少し見てまいりますと、いわゆる銀行が中心的な参加者でありますコール市場というものが主軸となりまして、それでコールレートというものが政策金利として置かれて、そこで日々の金融調節というものが行われてきているわけでありますけれども、その一方で、企業金融というのは今非常に多様化をしてきている時代にあります。そうしますと、この日銀の日々の金融調節が、銀行がメーンな参加者でありますコール市場を主体としたもので果たして波及効果として万全なものが期待できるのかどうかという観点も上がってくるのではないかと思います。

 そういう意味で、これからは、やはり、以前から議論が上がっているとおりでありますが、場合によっては株式あるいは社債等もより積極的に公開市場操作の対象に入れるような形で、そして、より公開市場操作そのものに近いような形式で日銀の金融調節を行うような、そういったお考えあるいは検討、取り組みのようなものがお考えの中におありになるものかどうか、そのあたり、波及経路の改善という意味でお伺いしたいと思います。

稲葉参考人 日銀の金融調節でございますが、御案内のとおり、翌日物の市場金利をターゲットにやってございます。そして、この翌日物の金利のコントロールを起点といたしまして、実は、市場間の金利裁定を通じ、他の短期金利、あるいは国債、社債等の長期金利、さらには預金、貸し出し、あるいはその他資産価格等、金利が波及するということをねらってございます。その結果、全体として経済に幅広く影響を及ぼす。こういうような枠組みでやっているわけでございます。

 こうした金融調節の運営の枠組みといいますのは、これは主要国でほぼ共通したものでございまして、現状十分機能しているのではないかというふうに考えております。

 その際の金融市場調節の手段でございますけれども、これも、現在、短期国債の売買とか、それから国債、社債等を担保とする共通担保オペ等を用いることによって円滑な調節をやっておりまして、この辺でも当初の目的を実現できているというふうに考えてございます。

佐藤(ゆ)委員 今、金融調節がコール市場を中心とした金利の裁定効果によって円滑に行われているというような御趣旨の御答弁をいただいたわけでありますが、ただ、現実にはやはり不動産市場に量的緩和時代の効果が集中するというような現象も見られているわけでありまして、結果としては必ずしも円滑ではないのではないかというような印象がやはり否定できないわけであります。そういう意味で、今後とも日銀の皆様方にはぜひともこの効果の波及経路の改善に向けては御努力をお願いさせていただきたいというふうに思います。

 以上をもちまして、私の質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、貴重な質問の機会をいただき、委員長そして理事の皆様に心より感謝申し上げます。

 早速質問に入りたいと思います。

 まず、日本銀行の福井総裁にお伺いしたいと思うのですが、日本銀行の総裁に求められる資質について最初にお伺いしたいと思います。

 福井総裁には、およそ一年前になりますか、六月にもこの半期報告の質問の機会をいただきました。その際には、私としては個人的には不本意ではありましたが、福井総裁個人の資産運用の問題について、これは日本銀行の信用問題にかかわることでありますので質問をさせていただきました。

 銀行は信用が第一であり、銀行の中の銀行である中央銀行、日本銀行にとって、国民からの信用、市場からの信頼、とりわけ執行部の信頼、公正性の確保というのは、その政策の執行にとって、また、我が国の通貨の価値にとって極めて重要である、こう考えたからであります。先ほど、委員から、美しい金利政策なるものの御質問がありましたが、美しいか美しくないかはともかくとして、銀行はともかく見かけではなくて信用が第一だ、こう思うわけであります。

 そこで、総裁、総裁の御任期も、もう現在一年を切られております。もちろん、再任をされるというか続投される可能性もありますし、また、交代される可能性もある。そこで、この信用を旨とする日本銀行に求められる日本銀行総裁の資質とはどういうものか、端的にお答えを、総裁なりのお考えをお聞かせいただきたいんですが、福井総裁個人の考えで結構ですが、お教えいただけますでしょうか。

福井参考人 日本銀行の総裁は、政府が国会の御承認を得られて任命されるものでありますので、日本銀行総裁に求められる資質というのを私自身からお答えするのはまことに面映ゆい気がいたします。

 ただ、私が現在務めさせていただいております経験等を踏まえてあえて申し上げますれば、今おっしゃいました総裁に対する信任の基礎というものの根本的なものは、やはり、通貨価値の安定性というものが、経済が健全でかつ円滑に発展するための基礎的条件であるということに対する強い信念が存在しており、その信念を貫くための力を十分備えているということが第一に重要だというふうに思います。

 そのほかの条件は、時代あるいは経済の変化とともに多少変わるところがあると思いますけれども、現在のような環境のもとでは鋭い国際感覚が要る。やはり、グローバル経済全体としての先行きと日本経済の先行きとを有機的に洞察できるような力が必要だというふうに思いますので、国際感覚はやはり欠かせない。

 それから、市場経済がますます発展していきまして、市場と実体経済との絡み合いの中でいい経済が実現していくということでございますので、市場を大切にする気持ち、そして、市場を発展させるためのさまざまな工夫が必要であり、総裁自身が頭の中でそうした創造的な能力が発揮できるということはやはり欠かせないだろうというふうに思っております。

 そうしたことがあって、あとは、おっしゃいましたとおり、職務の公正性ということがきちんと守られる、こういうことが非常に大事だ、委員御指摘のとおりだというふうに思います。

近藤(洋)委員 総裁からあえておっしゃっていただきました。強い信念と、そして国際感覚、さらには市場との対話能力、そして、当然のことながら公正性であろう、こういうことでありました。

 そこで、そのことを前提にお伺いしたいのですが、最後に総裁が御指摘をされた公正性ということであります。

 当然、この公正ということは、ある意味で、我々政治家が言うのはなんでありますが、我々政治家も信念を持って政治を行っているわけですけれども、一定の政治との距離感というのも重要であろう、こう思うんですね。

 そういう観点から、総裁、あえてもう一点伺います。

 日本銀行の総裁の条件として、いわゆる選挙に出た経験のある方、そして、ある政党に所属をして活動した方というのは、私は個人的には余り好ましくないと考えるんです。過去、日本銀行の歴史をひもといて、日銀の事務当局に昨晩伺いましたが、福井総裁までで二十九代、日銀総裁がいらっしゃるようでありますが、日銀総裁になる前に国会議員であった方、貴族院議員は除きますが、いわゆる選挙で選ばれた国会議員の経験を経て日銀総裁になった方は戦前もいらっしゃらなかった、こういうことであります。

 私は、そういう意味でも、これは明文化されておりませんが、中央銀行としての一つの良識なのかな、こう思っておりますが、総裁の御見解はいかがですか。

福井参考人 私を含め、過去の日本銀行の総裁がそういう経歴を持っていなかったということは確かでございます。これから先の問題として、そういう経歴をお持ちの方が適当であるかないか、これはまさに政府と国会が御判断なさることであり、私自身から申し上げることはなかなか適当でないというふうに思います。

 ただ、政府から常に中立を保つという本人の意思と、そして、そのことが担保される諸条件というものが整っているかどうかということを、政府及び国会がきちんと判断なされることではないかというふうに考えています。

近藤(洋)委員 まず、委員長、ひとつ公正性といいますか、委員会の運営でありますが、ルールを守って私も発言をしたいと思っているんですが、日本銀行の理事というのは、後ろに座っていらっしゃる方、皆さん日本銀行の理事の方なのかどうかわかりませんが、私は、理事の方の後ろの御陪席も認めていないということを事前に通告させていただいております。後ろに座られている方は理事の方なのかどうなのか、随分お若い理事の方もお見受けしますが、ちょっと御退席の方、委員長、お願いしたいのですが、御指導いただけませんでしょうか。

 済みません、後ろに座られる方は御退席いただきたいということを申し上げているんですが、ルールを守っていただきたいと思います。余りこのことで時間をとりたくないので、よろしくお願いいたします。

 それで、お伺いしたいのですけれども、総裁、公正を担保する、こういうことでありますけれども、新聞報道でも、日本銀行の政策審議委員に触れて、来春の総裁についていろいろなことが報じられています、既にこの間の審議委員のことでも。朝日新聞の記事を手元に持っていますけれども、朝日新聞でも、来春の総裁、だれになるのかということで、「元財務次官や竹中氏の名」ということで、見出しでも出たりしておるんですね。こういった報道はこれからさまざま出てくるんでしょうけれども、だんだんこういう報道が出てくる。

 そこで、私は、具体名で恐縮ですが、こういうふうに全国紙でも「竹中氏の名」というのも出ているので、あえて触れさせていただきますけれども、竹中平蔵前総務大臣の名前が取りざたされたりするというのはちょっと異常だなと思います。

 なぜなら、国会議員になられた方というのは、やはりそれなりのさまざまな、幾ら公正性、中立性を担保しようとしても、やはりああいう形で、しかも、党公認で出られてしまった、今はやめられたとしても、ああいう形で活動された方というのが、今、随分早い序盤戦で、さまざまな雑誌だけでなくてこういうところにも出ているというのは、名前が取りざたされているというのは、私は、日本銀行の中立性、公正性を担保する意味でも非常によくないことだな、こう思うんです。非常に残念だなと思いますし、こういった方のお名前、私は、竹中さん個人も大変不幸だなと思います、御本人の意思とは全く別なところで勝手に書かれるわけですから。これは新聞社の勝手でありますけれども。

 しかしながら、日本銀行の公正性、中立性を担保するという意味では、やはり、あれだけ激しい選挙戦を戦われた方が、今はおやめになったとしてもどうかな、一政党のためにかかわった方が日本銀行の総裁として名前が浮上するというのは、これは大変公正性という観点からも残念だ、こういうことを御指摘申し上げたいと思うわけであります。

 その上で、日本銀行の信頼性をはかる上で興味深い調査がございました。委員長のお許しを得て、資料の一をごらんいただければと思うんです。これは、日銀の生活意識に関するアンケート調査という、日銀みずからが調査をしている資料でございますけれども、この調査によりますと、日本銀行を信頼しているかという問いに対して、信頼している、どちらかというと信頼しているというのが、合計で、これは足しますと四一・八%であります。前回に比べて二・二ポイント、信頼しているというのが低下をしております。

 そして、その理由を尋ねたところ、「中立の立場で政策が行われていると思わないから」、こういう答えが、複数回答ですが、この直近の三月の調査で五三・九%になっております。これは、半年前の調査と比べて何と一〇・一ポイントも上昇しているんですね。これは、日本銀行みずからの調査であります。中立の立場で政策が行われていないと思うからというのが大変急上昇している、この半年間で。

 日銀を信頼しているというのが、若干、横並びとはいえ、減っている。その中で、中立性に対して国民が非常に疑念を感じている。この結果について、総裁、率直にどのようにお受けとめになりますか。

福井参考人 さまざまな報道等に多少影響されたアンケートの結果だというふうにも思いますけれども、やはり基本は、日本銀行の政策決定プロセスが完全な合議制で中立に行われているということについての国民の一般の皆様方の御理解を私どもが十分まだ得られていない、その方の問題の方が大きいというふうに意識しておりまして、これからも我々は、政策委員会の機能を中心に中立的な金融政策の運営に努め、その実態をよりよく国民の皆様方に御理解していただく努力を続けたい、こういうふうに思います。

近藤(洋)委員 やはり、これは残念な結果だと思うんですね。現状については非常に残念な結果だ、こういうふうに思うんです。

 特に、中立性への疑問が、ことしに入ってこのグラフのとおり急増しているんですね。このことを考えますと、昨年の夏に私どもが指摘をさせていただいた総裁個人の村上ファンドへの出資問題もさることながら、それ以上に、ことしに入っての政策決定に関して日銀が迷走した、ちょっと迷走という言葉が悪ければ、非常に総裁みずからわかりにくかった、これが大きな要因だと言わざるを得ないと思うんですね。少なくとも、そういうふうに報じられた。報じられただけじゃなくて、みんなそう思っている、専門家の方もそう思っているんだと思うんです。

 実際に、この一月の政策決定会合の際に、与党幹部の方々からさまざまな発言がありました。国民の方々だけではなくて、一般の方ではなくて市場関係者、プロの多くも、これは与党に配慮して一月は見送ったんではないかと考えている。

 これは資料の四をごらんいただきたいわけですけれども、これは日銀法の抜粋でありますが、このとおり四条では政府との関係について明記されている。連絡を密にし、こういうふうに明記をしておりますけれども、与党との関係については明文規定がないんですね。

 福井総裁は、日本銀行と与党との関係について、どのようにあるべきだと考えていますか。政府と同様だというお考えでしょうか。どうでしょうか。

福井参考人 日本銀行の金融政策は、マクロの経済の観点から、物価の安定を基軸として、望ましい経済の姿を実現していくということでありますので、特定のセクターの方々、特定の利益を代表する方々、あるいは特定の主張を代表する方々の意見に片寄せした姿で我々の意思決定プロセスにこれを組み込んでいくことは絶対にできない、こういう立場でございます。

 したがいまして、政府との関係において、十分なコミュニケーションは行うけれども、十分な距離感を保つということでありますし、それ以外の方々、一般国民の方々一人一人に対しても同様でございまして、等しい距離感でなければならない、こういうふうに思っております。

近藤(洋)委員 総裁、ちょっともう一度確認です。要するに、その特定の方々とは、やはり特定の部分と特定の関係は考えなければいけない、注意しなければいけない、こういう御発言ですね。

 そうだとすると、政府というのは、これは政府ですから、公正な立場である、これを前提にしております。ただ、政党というのは、まさに私ども民主党もそうですが、自由民主党も国民政党自由民主党、我々民主党も国民政党ではありますが、やはり特定のグループの、思いの代表者でもあるわけですね。

 やはり、政府と与党はおのずと違う、こういうことでよろしいわけですね。

福井参考人 政府と日本銀行とはコミュニケーションを密にしながら政策の方向性、大きな方向性については整合性をとらせていただく。各政党との関係につきましては、与党、野党を問わず、私どもは、その物の考え方を十分理解させていただいて、私どもも知識は十分ちょうだいしたい、こういうふうに考えております。

近藤(洋)委員 その御発言が正しいんだと思うんです。だとすると、日本銀行のこの一月、二月にかけての行動はやはり疑念を感じてしまう状況を生んだのではないか、こう思うんです。私は、基本的には金利は正常化すべしだ、一月、二月においても正常化すべしだ、こういう思いに立つ者でありますが、その経済観とは別にして、この一月、二月、説明責任という点で、日本銀行のわかりやすさという意味では、利上げをしたという判断自体は私はとやかく言うつもりはありませんけれども、言うべきではないと思っておりますが、この行動についてはやはり疑念が残る。

 すなわち、一月の決定では利上げを見送り、そしてその直後、日本銀行首脳は中川秀直自民党幹事長、丹羽総務会長を訪問されていますね。見送った直後に訪問をされている。そして説明をされている。その直前では自民党はわあわあおっしゃった、いろいろな発言が出てきた。日銀首脳のその行脚を経てといいますか、その途端に比較的急に静かになって、そして二月には利上げが実行された。

 それはそれで一つの事実でありますが、私がちょっと奇異に思うのは、いわゆる日銀が重視していた消費者物価指数、CPIで見る限り、物価の状況という数値で見る限りは、一月も二月も変わっていないんですね。変わっていない。私、総裁の会見を何度も何度も読み直しましたけれども、それはそれで一つの御説明にはなっているけれども、しかし数値的なものについては、残念ながら、一月も二月も変わっていない。なぜ一月は見送ったかということ自体は非常にわかりにくいわけであります。なぜ一月できなかったということについてはわかりにくい。

 そこで、岩田副総裁に来ていただいておりますけれども、岩田副総裁は、二月会合でも利上げに反対されております。なぜ利上げに反対されたのか。また、その利上げに反対された際、改めて伺いますが、日銀の首脳として自由民主党幹部と接触をされましたか。また、今自民党籍は外れていますが、竹中平蔵前総務大臣とは接触をされましたか。お答えいただきたい。

岩田参考人 お答えいたします。

 まず、一月の場合も私は利上げに反対いたしまして、二月の場合も同様ということであります。

 日本の経済情勢、物価情勢を含めて考えますと、一月の時点ではどういうことであったかと申しますと、中間レビューというのを通常日本銀行はやっておりまして、十月の展望レポートが出てから三カ月たってどんな状況でしょうかというチェックをいたしたわけであります。そこではどういう判断を私どもがしましたかといいますと、それは、経済成長率及び物価が、私どもが当初見込んでいたよりも、足元、やや下振れているという判断をいたしました。しかし、先行きの方は見方は変わりがないという判断をいたしました。

 そういうことで、私の考えによりますと、その時点で金利を上げるというのはむしろ非常に説明がしづらい状況であります。つまり、経済の動向が、例えば二〇〇六年度の経済をとってみますとやや下振れている、消費の動きですとかあるいは物価にやや弱い指標が出ているということがありまして、そういう中間レビューの判断に基づけば、私は、利上げをしないということが非常に自然な判断であったというふうに思っております。

 その後の二月にかけましては、その後いろいろな指標が出てきまして、これはGDPの統計もございます。そういった幅広い統計を吟味する中で、二月の決定会合では、私はまだ慎重に考えるべきだというふうに思いましたけれども、八名の方々は、これで先行き十分、日本経済、これからも持続的な成長、少し長い目で見れば物価安定ということも確保できる、こういう判断で二月に利上げの決定がなされたというふうに理解をしております。

 これが経緯でありまして、それからあと、政党の方々とお会いしたのか、あるいは竹中前大臣にお会いしたのかということでありますが、私、その前後でお会いしたということは全くございません。

 以上であります。

近藤(洋)委員 金利観といいますかは岩田副総裁と私は異なりますが、しかし、岩田副総裁の説明の方がわかりやすいです。

 ただ、岩田副総裁も、またさらにその後の状況を見ますと、CPIについては悪化しているんですね。悪化というか、日銀の展望とはだんだんかけ離れている。物価が弱含みになっているといいますか、にもかかわらず、三月、四月については是としている。その状況については、ほかの質問もありますので、またの機会に譲っていきたいと思うわけでありますが。

 いずれにしろ、市場は今、その意味では非常にわかりにくいと見ておるんですね。市場との対話が重要だと福井総裁は繰り返しおっしゃっておりますが、残念ながら、市場との対話が今できていない。何をもって市場は、マーケットは判断していいのかというのがわからなくなっているという状況は指摘をしておきたいと思います。

 要するに、この市場との対話というのは、日銀がメッセージを発信するだけではなくて、恐らく福井総裁がおっしゃっているのは、市場の声も聞くという思いも多分あると思うんですね。双方向のコミュニケーションが大事だということは、総裁の資質の中でも福井総裁おっしゃっておりますけれども、その市場の声を聞くということは、残念ながら今どこまで行われているのかなと。与党の声は聞くけれども市場の声は聞かないんじゃないか、こういう懸念が出ていることだけは指摘をしておきたいと思います。

 大事な問題、きょう、新しい日銀の審議委員になられました亀崎審議委員、中村審議委員、お忙しいところ来ていただいております。国会の同意人事については、我々民主党は、まず、国会で同意する前に、ぜひお顔も見たい、御見識も聞きたい、こういうことでありました。きょう初めてお目にかかります。恐らく与党の議員の方々も初めて見る方が多いかと思います。よく見識も顔も知らないで賛成できたものだなと不思議に思いますが、我々は、見識そして御人物もわからなかったので、賛成するにも、したくてもできなかった、こういうことであります。やはりきっちり、国会の同意人事である以上は、事前に見識を、所信を述べて、そして同意を受けるというのがこれは筋だということは申し上げておきたい。

 その上で、お二方、御経歴から拝察しますと、大変すぐれた経営者であられたということは十分推察はできます。しかし、記者会見で御両名とも、なぜ選ばれたかわからない、こういうふうにお答えになっております。

 そこで、任命されたのは内閣ですから、財務大臣、なぜお二人を選んだのか、簡潔にお答えいただきたい。(発言する者あり)

伊藤委員長 御静粛にお願いします。御静粛に。

尾身国務大臣 その人選の過程で、人物、識見とも適切であるということで内閣が選んだものと考えております。

近藤(洋)委員 内閣が選んだものと考えております、これは連絡は財務省から来ているというふうに記者会見でおっしゃっていますから、財務大臣、財務大臣はお二方とどういう御関係だったかということは別として、なぜ選ばれたのかお答えください。他人行儀じゃないんです。財務大臣が実質的に根回しをされたんですから、お答えください。

尾身国務大臣 政策委員会の審議委員につきましては、日銀法におきまして、「経済又は金融に関して高い識見を有する者その他の学識経験のある者のうちから、両議院の同意を得て、内閣が任命する。」ということになっております。

 具体的な人選に当たりましては、この日銀法の考え方に基づきまして、金融政策の運営の責任を担う最も相ふさわしい人物が選ばれている、もちろん私もその選んだ中の一人であり責任者でありますが、そういうふうに理解をしております。

近藤(洋)委員 なぜかという具体的なことはよくわからないのですが、私は、御両名とも、この難局に当たって日銀審議委員を受諾したというその心意気、まさにその気概については心から敬意を表したいと思う一人であります。大変難しい局面の中でお引き受けいただいた、このことについては心から敬意を表しますが、と同時に、やはりここは国会でありますから、御両名の御見識をお伺いしたいと思うわけです。

 先ほど来、やはり日本銀行の使命、お二方とも恐らく日銀法は当然お読みになられているかと思いますが、日銀法にもうたわれています。物価の安定というのが日本銀行の使命でありますが、その物価の安定の最も代表的な一つの指標であるCPIでございます。具体的に、この物価の安定というのは〇から二%が共通認識という総裁の御発言がありました。

 ここからが大事であります。この幅の中で、具体的に、審議委員として、どの数値が物価の安定水準だということをお考えでありますでしょうか。それぞれ両名にお答えいただけますでしょうか。

中村参考人 中村でございます。よろしくお願いいたします。

 今、近藤委員からの御質問でございますけれども、この物価の安定、どのレベルかというのはいろいろ考えがあるわけでございますけれども、昨年、日銀においては、三月、この物価のレベルにおいては、一応〇から二%という形で、共通の認識ということで、これを一年後にレビューということになっております。私も、そのレベルについて考えがないわけではございませんけれども、近々その見直しが行われることでございますし、その過程において私の見解をさらに明確にしていきたいというふうに思います。

亀崎参考人 お答え申し上げます。

 中長期的な物価の安定の範囲というのは〇ないし二%というコンセンサスであるかと理解しておりますけれども、私も、この数字について、今、特段の違和感があるものではございません。ただし、私自身も、これから自分なりにできる限りの情報を収集、把握、分析いたしまして、先々の見通しも踏まえた上での検証をみずからもやっていきたいというふうに思っております。

近藤(洋)委員 大変酷な言い方をしますが、〇から二、そしてその具体的な、では、〇・五なのか一なのか一・五なのか、この議論を間もなく四月二十七日の政策決定会合で議論するんです、具体的な数値を持って。それぞれの審議委員の方々が、私は〇・五だ、私は一だ、私は一・五だと、さまざまな数値を持って意見をぶつけ合うのであります。

 これは具体的には中身を聞いているので、当然審議委員の方であればその御見識を、ここが大事なんです、細かい話ではないんです、非常に重要なことなんです、ここが。まさに金利は〇・二五、ポツ二五、二五ベーシスとか、非常に細かい数字でやっているわけですから、ゼロから二のこの間が極めて重要です。自動車メーカーでいえば、自社の販売台数が何台になるかというぐらい重要な、政策の、経営決定の大事なレンジの話でありますから、これから勉強しますという発言ではお答えになりません。もう一度きっちり、どの程度かお答えいただけますか。これは極めて重要な話でありますから、お答えいただけますか。

伊藤委員長 申し合わせの時間が過ぎておりますので、簡潔にお答えをお願いいたします。

中村参考人 私は、わからないと申し上げているわけではございません。ただ、これから二十七日にかけて、そういう会議が行われますので、その中において自分の考えをさらに精度化していきたいということで、具体的な数字をこの場で申し上げることは差し控えさせていただきたい、そういう意味でございます。

亀崎参考人 まさに四月二十七日に会議を行うところで、現在数値を、私自身も、どの辺かということをいろいろな数値について検証しておりまして、これを二十七日の会議に持って、自分なりの考えを述べようというふうに思っております。

近藤(洋)委員 時間が参りましたので、これで終わりにいたしますが、要は、こういう大事なことについて、これは大変、お二方、両審議委員、お忙しいところ来ていただきました。私は、この難局で難しいお仕事を受けていただいた気概に対してこれは敬意を表しますが、やはり、残念ながら、マーケットも、お二方の御経歴、そしてどういう御発言をされたのか、事務局に言って調べてもらいました。何の予備知識もないんです。何の発言もされておりません。

伊藤委員長 近藤君に申し上げます。

 申し合わせの時間が過ぎていますので、おまとめをください。ルールをお守りください。

近藤(洋)委員 もちろん見識はあるかもしれませんが、それについて、マーケットもわからない、こういう状況ではやはり困ります。偉大なるイエスマンであっては困ります。偉大なるイエスマンは自民党だけで結構ですから、ぜひ総裁の偉大なるイエスマンにはならないで、きっちりとした意見を交わしていただきたい、こういうことを申し上げ、また、こういう人事を断行した国会運営に対してもきつく抗議を申し上げ、時間ですので、質問を終わりたいと思います。

伊藤委員長 次に、大串博志君。

大串委員 ありがとうございます。民主党の大串博志でございます。

 きょうは日銀報告ということで、日銀総裁、そしてもちろん財務大臣もおいでいただきまして、通貨及び金融調節の件に関する報告ということで議論させていただきたいというふうに思います。

 まず、先ほど来議論がありましたけれども、物価の見通しやあるいは今後の金融調節の方向性等々については、ちょっと時間の様子を見ながら、後ほど金融調節の方法論とも絡めて、もし時間があれば議論したいと思いますが、まず最初に、週末にかけて行われましたG7に関してちょっと議論をさせていただければというふうに思います。

 今般、春のG7でございまして、ワシントンで、IMFや世銀の会合等々と並んで行われたわけでございます。週末に御出張されて、急ぎ帰られ、委員会に臨まれているわけで、大変お疲れのところ、ありがとうございます。

 そして、その件について、G7が行われまして、今非常に私が関心を持って見ておりましたのは、マーケットに対して今回どのようなメッセージが出されていくのかというのを非常に注視しておりました。前回行われたのが二月の九日でございます。そして今回が四月でございます。前回もマーケットに対する影響というのは非常に注視されましたし、今回も、マーケットも、どういうふうなステートメントが出るのかというふうなことで非常に注視していたと思います。

 現在、マーケットの動き、荒くはないんですけれども、私の目から見ると一方方向にちょっと動いている面があるんじゃないのかなというふうに思うことがあります。特に為替市場でございますけれども、円安の状態が続いています。特にユーロとの関係では非常に円安、ドルとの関係でも非常に円が安いという状況です。

 前回のG7の際には非常にこの辺が問題になりまして、円安問題、特に欧州勢の方々から、日本の対ユーロでの円安の問題、非常に大きな取り上げられ方をされました。今回はどうだったのかなというところが非常に気にかかるところでございまして、この辺は全部G7のステートメントに集約されるわけでございますけれども、為替の部分に関するステートメントを見てみますと、前回二月と全く同じステートメントになっています。

 言わんとするところは、為替というのは経済のファンダメンタルを反映するべきであるというのと、あと、過剰なボラティリティーは経済に対してよくないんだということ、そして、引き続きマーケットを緊密に見ていくことと、いつも使われる言葉ですけれども、コーポレート・アズ・アプロプリエートというふうな言葉で締めくくられて、同じ表現が使われているんですね。これを受けて、きのうのマーケットなどでは、今の円安状況に関して追認したのではないかという見方があり、さらに円安が続いております。

 財務大臣にお尋ねしたいんですけれども、今回、G7におきまして、一連の、もしバイの会談もなされているのであれば、為替の面についてどのような指摘なり議論なりがあって、あるいは議論の方向性はどのようなものだったのか、この点に関してお聞かせください。

尾身国務大臣 為替レートは経済のファンダメンタルズを反映すべきであるというのが基本的な考え方でございまして、いろいろ意見交換をG7でいたしました。

 日本経済につきましては、物価安定のもとで順調な経済回復を進めつつあるという説明を私はいたしましたし、アジア、ヨーロッパ、アメリカなどにつきましても、全体として世界経済は順調な推移をしているというのがコンセンサスでございまして、為替については、そういう意味で経済のファンダメンタルズを反映すべきであるということで一致したと考えております。

大串委員 それはステートメントにも書かれていることです。

 私がお尋ねしたかったのは、各種のレポート等によりますと、前回のG7の際には、日本の円安状況に関しての懸念が、特に欧州勢からも含めて非常に示されたということが言われております。今回はドイツの財務大臣は欠席されていますよね。欠席されていることからもわかるようにというふうな言われ方もされていますけれども、日本の円安状況に関して、特に欧州勢を含めて、日本の円安が問題なんだというふうに大きな問題になったわけじゃなかったんじゃないかというふうな言われ方がされております。その辺についての、まさに為替の部分の日本の円安状況に関して、問題ではないかとか、あるいはどうあるべきなのか、そういうふうな議論がどういうふうにあったのか、その点についてお尋ねしているわけです。もう一度お答えください。

尾身国務大臣 円の為替レートについて、特別にこれをポイントアウトして議論がなされたということはなかったと思っております。

大串委員 ありがとうございます。

 今お答えいただいた御答弁も非常に重要な情報でございまして、今回のG7会合においては、円の為替の問題を特別に指摘して議論が行われたわけではなかったということでございます。そのこと自体も、G7において今の円の為替相場をどう見られているのかというのがあらわれているんだと思うんですね。

 そこから一歩進んでお尋ねさせていただきたいと思います。

 今、G7あるいは世界経済を見る中においてどのようなことが世界経済のリスクとして考えられているかということなんですけれども、いろいろな言われ方がされています。もちろん地政学的なリスクというのは常にあるんでしょうし、あとは、原油の価格のリスクあるいは米国経済のリスク等々いろいろ言われておりますけれども、私、一つ今きちんと見ておかなきゃならないのは、金融市場のリスクといいますか、これが一つあるんじゃないかと思うんです。

 といいますのは、去年の二月の財務大臣会合の場合もそうでしたけれども、円キャリートレードの件、これは今でもマーケットで言われております。すなわち、安い円を日本で調達して海外で運用する、これが非常に多いがゆえに円安傾向を促進し、非常に一方通行のお金の流れを促進しているわけですね。

 あとはオイルマネーの動向などです。今、イスラム金融と申しますか、ここ数年の原油高の影響を受けて、オイルマネー、非常に世界的に多うございます。それがアメリカに入りにくいというところもあるんでしょうけれども、欧州に相当流れ込んで、日本にも流れ込んでいるんだと思いますけれども、それが非常に金融市場の攪乱要因になっている可能性がある。

 世界的な株高状況というのもいまだに続いていて、二月の同時株安調整というのは、皆さん、記憶にも新しいと思います。

 そういうふうに、今、世界的な金融市場の流れを見ると、比較的楽観的といいますか、一つ一つの、世界における投資案件、カントリーリスク、事業リスク、個人のリスクも含めて、いろいろなリスクをきちんと反映した投資行動が世界全体で行われているかというと、比較的リスクに鈍感になっている。それであるがゆえに、例えば円キャリートレードの問題でもそうですし、あるいはオイルマネーの問題でもそうですし、あるいは世界の同時株高みたいなものでもそうでしたけれども、一方的に資金が一カ所に非常に大きく偏り流れている、そういうふうな状況があるんじゃないかと思うんですね。

 このリスク調整の問題というのもまた非常に大きな問題だと思いますが、このことについても、G7のステートメントを見る限りにおいては、ワンパラグラフ目の世界経済に関する指摘の一番下のところで、世界経済のこのような展開がマーケットの参加者によって認識されて、それがリスクの評価に適切に織り込まれるであろうと、自信があるというふうな言い方、これは二月も四月も変わらないんですね。世界の金融市場に関するリスク評価に関して、本当にこれでいいのだろうかという思いがするんです。

 日銀総裁にお尋ねしたいんですが、世界全体の投資家、金融市場の動きのリスク評価に関して、ちょっと外れた動きになっているんじゃないか。それに対するリスク調整が今世界の金融市場で十分行われてきているか。もし行われていないとしたら、これが将来の攪乱要因にならないか。九七年のアジア危機のときのようにとは申しませんが、金融市場の動きは非常に速いものですから、そのようなリスクが生じてこないか。今、このリスク調整のあり方に関して日銀総裁はどうお考えか、お答えください。

福井参考人 御指摘のとおり、大変重要なポイントとして、IMF、今回のG7あるいはその他の国際会議でも繰り返し議論が行われてきている点でございます。

 今回、御指摘のG7コミュニケの中で、まず全体を大きくとらえて、米国経済は調整過程にあるけれども、世界経済全体としてはバランスのとれた形で堅調な拡大を続けている、これをぜひ続けたいということで、そのために必要なことを三つほど書いているんです。

 一つが、今御指摘のとおり、金融資本市場が健全に機能し続ける、これが大事だということを強調しております。そのほかに、長期的な課題として潜在成長能力を高める努力をしていく必要があるということと、物価安定をしっかりと確保する金融政策を続けていくことが必要だ、こういうふうに何重にも書いているんですが、特に、持続的な成長を実現していく上での課題ということで、金融資本市場が健全に機能し続ける。この点は前回と同じ文言が入れられたということは委員御指摘のとおりでありますけれども、その理解として、金融資本市場、特に為替市場において、市場が一方向に偏って行動することのリスクを認識することが重要だ、このことの認識が今回改めて確認されたということでございます。

 そして、実は二月のエッセンでのG7の後、二月、三月にかけて、株式市場、為替市場等においてかなり広範囲な市場の中の調整が行われました。こういう経験も踏まえて今回のG7が行われたわけでありますけれども、これで十分とはとても言えませんが、世界の金融市場は、相応に自律的な調整機能を備えながら、さらに新しい機能を発揮していくというメカニズムを徐々に整えてきているという認識があったわけでございます。しかし、十分まだテストはされていない。委員御指摘のとおりであります。

 しかも、新しい金融商品が開発され、金融取引が次第に目に見えない形で世界の市場を覆うという形になっています。ヘッジファンドを中心に、そうした新しい金融活動についてのいい面とそれからリスクの面、十分これを正確に把握しながら今後対応していこうという意味で、このコミュニケの背後に、具体的な作業を今後とも続けていこうということが幾重にも確認されております。その点が重要な点だというふうに思っております。

大串委員 ありがとうございます。

 今回、リスク調整の重要性について改めて認識されたということでございますし、今、日銀総裁がおっしゃいましたように、このリスク調整、財務大臣にもお願いしたいんですけれども、金融市場の一方的な動きに関するリスク評価のあり方はぜひ強く気にとめていただいて、今後の政策運営あるいは国際会議の中では、その点に関して、留意し、発言していただければというふうに思います。

 さて、ここで、日銀の独立性というものに関して議論を進めさせていただきたいと思います。

 先ほど近藤委員の方からも議論がありました、ことしの一月、二月にかけて政策決定会合での動き。一月に利上げが行われると思われていたものが、一月には行われないで二月に行われることになった、その間に政治的な影響力の行使があったのではないかという論点でございます。

 特に今回難しかったなと私思えるのは、政治の影響力が金融政策にあってはいけない、これは国際的な合意といいますか常識でございます。日本の議院内閣制を前提とすると、政治の圧力というのは、もちろん政府からも来得るし、あと与党というものからも来得る、このことを今回痛感したわけでございます。ただ、与党というものをいわゆる日銀法という仕組みの中に反映していくのは非常に難しいなという感じがします。

 日銀法を改正されました。日銀法を改正されていわゆる政策決定会合というものをつくられ、透明性が向上されて、実はこの新しい日銀法は、世界の中央銀行法を参照されてつくられたと言われていまして、透明性あるいは独立性などの点においては非常に高い水準になっているというふうに言われています。しかし、それを、議院内閣制、与党のあり方、野党のあり方、この日本の政治制度の中において考えると、本当にこれだけで十分なのかという論点はあろうかと思います。

 私は、法律で決められることと決められないことがあるんじゃないかと思います。法律で決められることは、世界水準からして独立性、透明性に関してはこれだけ。それ以外の、例えば、もし日本の政治制度の中でもっと透明性や独立性を高めていくために法律以外で何かあるかということも考えていかなければならぬということもあるんじゃないかと思うんですね。

 その点で私が非常に重視するのは、法律がそういうふうに独立性、透明性が非常に高い法律になっているのであれば、さらに一歩進めて、日本の場合には、実践面、つまり、総裁も含めて日本銀行の方々の日ごろの言動、行動、そういうところで独立性やあるいは透明性が非常に高いという信認を受けることが非常に大切なんだろうと思うんです。

 そういう点から、一つ一つ、きょう委員会の中で確認させていただきたいということがあります。

 こういうふうに政府と日銀が独立しているということから考えると、私、いつも前から非常に違和感を覚えていたものがあります。政府のいろいろなステートメントの中にこういう文章が出てくるんですね。これは、ことしの一月二十五日に策定されました「経済見通しと経済財政運営の基本的態度」というものですけれども、これは皆さんお読みになっていることだと思いますので御存じだと思いますけれども、その中に、「政府・日本銀行は、マクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、物価安定の下での民間主導の持続的な成長のため、一体となった取組を行う。」こういうふうに書かれています。これは「政府・日本銀行は、」が主語になっていて、「一体となった取組を行う。」と、行動の面まで含めた書き方になっているんですね。

 ところが、その次のページを見ると、金融政策運営に関して、「政府は、日本銀行に対して、政府とマクロ経済運営に関する基本的視点を共有し、政府の政策取組や経済の展望と整合的なものとなるよう、市場の動向にも配慮し、実効性のある金融政策運営に努め、引き続き金融面から確実に経済を支えることを期待する。」と書かれているんです。

 ここは、やはり日本銀行法の四条の読み方が非常に大きいのではないかと思います。日本銀行法四条で政府との関係というのが書かれていて、「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」こう書かれています。

 財務大臣と日銀総裁、両方にお尋ねしたいんですけれども、私は、この四条の読み方、何を求められているかというと、日本銀行の方に求められているものは、政府と十分な意思疎通を図る、これが求められているんじゃないかと思うんです。その結果として、経済政策の基本方針が政府、日銀で整合的になっていく。これは結果としてそうなっていくであろうということが期待されている。だから、書き方として「整合的なものとなるよう、」「十分な意思疎通を図らなければならない。」求められていることは十分な意思疎通なんですね。

 福井総裁、いかがでしょうか。ここで求められているのは、行為といいますか、政策の具体的なあり方まで一体的でなければならないというふうに求められているのではなくて、最終的に一体的になっていくように、意思疎通さえ十分にしていれば、経済状況に関する認識さえ一致していればおのずと一体になるであろうという見込みのもとに、十分な意思疎通を図ることだけ、これだけが求められているんだと私は思いますけれども、日銀総裁はどういう思いでしょうか。

福井参考人 日本経済の運営の結果よろしきを得るために、政府の政策と日本銀行の政策が常に整合性のとれないものであってはならないということは常識として当然のことでございますし、日本銀行法も、その常識を背後に置きながらこれを前向きに書けば、物価安定を基軸とするという点でやはり強い独立性が必要だ、こういうふうになっているわけでございます。

 その両者の要請をきちんと満たしていくために日本銀行に求められておりますことは、第四条で、政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図るという点でございます。

 何のために意思疎通を図るかというと、結果として政策の整合性がよりよくとれるためだということでありますので、具体的な金融政策の中身を打ち合わせるということではなくて、大きな経済の方向、そして大きな政策運営の方向性について十分意思の疎通を図る、こういう趣旨だというふうに理解しております。

大串委員 安心したような気がしました。今おっしゃったのは、求められているのは十分な意思疎通を図る、それによって大きな政策の流れが一体となっていくような方向になるように、実際に行うことは十分な意思疎通を図るんだということをおっしゃいました。

 総裁、それを前提としますと、私、先ほど申し上げました政府の文書の中に、主語が「政府・日本銀行は、」と打たれて、そして、最終的には「一体となった取組を行う。」こういうふうに書かれていることに関して、日本銀行総裁として総裁は違和感を感じられませんか。

福井参考人 この文章をつくる上で、日本銀行とも文章の打ち合わせは十分行っております。私どもとして違和感のないように成文上の整合性の努力をいたしておりまして、でき上がりましたこの文章について、違和感はございません。

 極力、政府の方におかれましても、日本銀行の独立性の真の意味を今後とも中心に据えて政府と日本銀行との関係を考えていただければ非常にありがたい、その方が国民経済の結果よろしきを得るに違いないというふうに考えております。

大串委員 私も、政府と日本銀行が経済政策の大きな枠組みを共有して同じ方向性に向かうということになる、これは非常に重要なことだと思いますし、そうならなければならないと思います。

 ただし、重要なのは、そこに至る過程で必要なのは十分な意思疎通を図るということであって、具体的な政策をどうこうするということを、政府と日本銀行の間で、日本銀行の意思がある程度プレッシャーをかけられる形で変えられるということがあってはいけないと思うんです。その辺の考え方を推し進めると、私はどうしても、この文章に関しては、日本銀行の方が考えられるとすると、やはりちょっと違和感があるなと感じられるのが普通じゃないかと思うんですね。だから、ちょっと遠慮されて発言されているんじゃないか。

 こういうところの発言一つ一つが、多分、日本全体の方々から見られて、日本銀行の総裁として本当に政治から独立されているのかということを厳しく見られているんだろうと思うんです。まさに先ほど私が、日ごろの言動、行動、実践、プラクティス、その面での独立性が非常に重要だということを申しましたけれども、この辺からあらわれているんだと思うんですね。

 もう一つお尋ねさせていただきます。

 今、日本銀行総裁と官邸との間、総理との間で定期会合を行われていらっしゃいますね。今まで七回開かれています。最初に開かれたのは二〇〇三年の四月、福井総裁が就任されたそのときですね。それから、二〇〇三年の八月、二〇〇四年の五月、十二月、二〇〇五年の十二月、二〇〇六年の六月、安倍政権になってから二〇〇六年の十二月、こういうふうに開かれています。

 この官邸との定期会合は、当初から、これを行うことによって日銀の独立性が侵されるんじゃないかという懸念がマスコミでもマーケットでも流れておりました。タイミングを見てみますと、量的緩和の政策が変わるかもしれないよというときに行われたり、あるいは村上ファンドの問題が生じた去年の六月、ちょうどそのころ、六月二十二日にも開かれたりしている。そして、安倍政権になってから一回というのは二〇〇六年十二月五日、これも、再利上げが行われるかどうかということが視野に入ってきている中で行われている。

 こういう会合が行われていることは、私自身は否定はしないんです。ただし、否定はしないんですけれども、こういう会合が行われているのであれば、できるだけ透明性を確保することによって、独立性があるということを皆さんに認知してもらう必要があるのではないかと思うんですね。

 この官邸の意見交換、総裁は結果を公開すべきだというふうにお考えになりませんか。

福井参考人 今御指摘の総理との非公式会合は、私どもにとりましては、政府との十分な意思疎通を図っていく上で非常に有益な機会の一つになっております。

 私自身、ここにいらっしゃいます尾身大臣、あるいは経済担当大臣とは意見交換をさせていただく機会が比較的多いわけでありますけれども、やはり総理は大変お忙しいわけでございまして、意思疎通を直接図る機会というのは意外に少ないものでございます。

 そういう意味で、忙しい総理の日程を割いていただいてこうした機会を我々として持てるということは、私どもにとっては、意思疎通を図っていく上で大変大切な機会だと考えています。そうした機会でございますので、私が直接総理に、私の言葉で率直に、政策運営上の大きな方向性、経済の認識についての大きな判断についてお話を申し上げ、また総理からも率直な反応を聞かせていただいているということでございます。

 したがいまして、非公開とするという前提で率直に話し合う場というふうに認識いたしておりまして、これをすべて公開するということになりますと、本当に率直な意見交換の場になるかどうか疑問が残っているというふうに思います。

大串委員 きょうは下村官房副長官にも来ていただいています。

 官房副長官に同じような問いをお尋ねしたいんですけれども、先ほど、率直な意見交換を促進するために非公開なんだとおっしゃいました。しかし、世の中の目から見ると、金融政策も含めて率直な意見交換であるからこそ、より開示すべきじゃないかということなんだろうと思うんです。

 官房副長官、これは結果だけでも、いろいろな方法はあると思います、例えば日銀の政策会合だったら、概要を出し、その後議事録を出すというふうになっています。記者会見という方法もある。定例会見にするという方法もある。いろいろな方法があると思いますけれども、なぜやられないんですか。

下村内閣官房副長官 お答えいたします。

 御指摘の会合は、年に一、二回開かれているわけでありますが、今、日銀総裁からお話がありましたように、政府と日銀との間で十分な意思疎通を図るため、総理と日銀総裁が、関係閣僚等を交えて、経済情勢などについて自由な意見交換を行っているものでございます。

 日銀法においても、日本銀行は、常に政府と連携を密にし、十分な意思疎通を図らなければならないとされており、政府としても、今後とも、定期的な会合ということではございませんが、適時適切に連携をとっていく考えでございます。

 また、今御指摘の会合は、そういう意味で非公式の会合でございますので、インフォーマルな雰囲気の中で、ざっくばらんに閣僚と日銀首脳の間で自由に意見交換が行われることが重要であるというふうに考えておりまして、だれが何を発言したか等を明らかにするということは会合の趣旨にはなじまないものというふうに考えております。

大串委員 非公式ということでも、あと、自由な意見交換を促進するという意味でも、公開にできない理由はないと私は思うんです。かつ、非常に金融政策に関する総理と日銀総裁がお話になる場所であるからこそ、どういう話があって、どういう議論だったんだということを公開するべきだと私は思う。

 日銀総裁は、今、下村官房副長官と同じような答弁でございました。先ほど私が日ごろの実践からと申し上げたのは、まさにこういうところから、日銀総裁には、いや、私だったら公開していいと考えますというふうに言っていただきたい。それが、日本銀行総裁というのはやはり透明性、独立性に関して非常にインテグリティーが高いんだというふうに世間の人々に思っていただく、そういうふうなかぎだと思うんですね。

 こういうことはぜひぜひ、きょうは時間がこれだけなのでこれ以上できませんけれども、またこの委員会でもいろいろな局面があろうと思いますので、議論させていただきたいというふうに思います。ぜひそこのところを気にとめていただきたいと思います。

 こういうふうに、日ごろの実践のところから透明性、独立性、中立性が疑われないようにしなきゃならないというのは、高い位の地位にあるからこそそうだと思います。

 村上ファンドの問題もございました。最後に、私、一つだけ確認させていただきたいと思いますけれども、これまで、去年の六月からずっとこの問題を議論させていただいて、この流れは、何か、ためにする議論をするというよりも、きちんと説明していただいて、日銀総裁の中立性、公正性を確認させていただきたい、それを世間に知らしめていただきたいという思いでやっていたわけでございます。

 その中で、御確認をもう一度しておいた方がいいと思われる問題に関しては、村上ファンドへ出資された一千万円でございますけれども、これが、マーケットのいろいろなうわさ等々によりますと、総裁御自身のお金じゃない、ほかのところから来て、それを使われているんじゃないかというようなうわさもありました。

 それをもって、去年十一月の参議院の財金では、大久保委員もこの件に関して、拠出した資金は総裁自身のお金ですねということ、それをどういうふうに証明されますかということを聞かれました。そのとき、総裁からは、これは自分のお金です、念のため自分の金融機関取引を確認しているので間違いございませんというふうな答弁がございました。その際に、何がしかの証拠みたいなものがありませんかという問いをしたところ、個人情報の取り扱いでありますので、委員会において検討していただきたいということでございました。

 総裁にひとつ確認したいんですけれども、このとき、これは自分のお金である、自分のお金を拠出したんだということを確認するため、念のため自分の当該金融機関取引を確認したんだというふうにおっしゃいました。これはどういうふうにして確認されたんでしょうか。

福井参考人 それは、私の預金を引き落とし、先方の指定口座に振り込んだという振り込み実績の確認でございます。

大串委員 その点、先日の十一月の議論のときにはそこまで確認できなかったわけでございます。今おっしゃいました、金融機関の御自分の預金口座から振り込みする形で相手方の口座に振り込まれましたということでございました。

 この件に関する議論がずっと行われてきたのは、総裁の公正性、中立性が問題ないんだということをこの委員会の議論の場を通じて世間に広く公知してもらいたいという意味で行われていたわけでございます。それによって、より仕事もやりやすくなるだろうということでございます。

 委員長にぜひお願いしたいんですけれども、当該金融機関取引を御自分の口座で行われたということを証明するものが何かありませんかということを参議院の方でお尋ねしたところ、個人情報だからということで議論が進んでおりません。ぜひこのことは衆議院の方でも、個人情報でございますので取り扱いは非常に難しゅうございます。ですから、委員会の場じゃなくても、例えば理事会等々でも確認するような方法はあるんじゃないかと思います。ぜひ、こういうことを通じて日銀総裁の公正性、中立性がきちんと確認できるような取り扱いを理事会においてお諮りいただくようにお願い申し上げます。

伊藤委員長 ただいまの御要望につきましては、後刻理事会で協議をさせていただきたいと思います。

大串委員 時間が来ましたのでこれでおしまいにしますが、先ほどの官邸との意見交換の公表の件、記者会見あるいは事後報告の件、ぜひぜひよく検討していただいて、またこの辺に関しては意見交換をこの委員会の場でもさせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、景気回復の現状と展望、特に景気と雇用の関係について、総裁の見解をお伺いしたいと思います。

 先ほどの総裁の通貨及び金融の調節に関する報告書概要説明、この中で、「雇用者数は堅調に増加しており、雇用者所得も緩やかな増加を続けております。そのもとで、個人消費は底がたく推移しています。」こういうふうに述べておられるわけです。

 ところが、同じ時期に、昨年の十二月、内閣府が出した日本経済二〇〇六―二〇〇七、いわゆるミニ経済白書があります。このサブタイトルが景気回復の今後の持続性についての課題ということであります。

 これを見ますと、二〇〇六年の、つまり昨年の中ごろまでは順調に回復してきたけれども、二〇〇六年半ば以降の消費には伸び悩みが見られる、こういう分析があります。そして、このように書いているんですね。「その背景の一つとして雇用者所得の伸び悩みがあると考えられる。実質雇用者所得の推移をみると、二〇〇五年以降、実質雇用者所得は緩やかな増加を続けており、それと歩調を合わせて消費も緩やかに増加を続けてきた。しかしながら、二〇〇六年半ば頃から、実質雇用者所得の伸びは鈍化し、その動きと合わせるように、消費の伸びも鈍くなっている。」こういうふうに指摘をしているわけです。

 福井総裁にお伺いしますが、この二〇〇六年の半ばごろからの変化をどう認識されておられるでしょうか。

福井参考人 GDP統計の中の個人消費の項目をごらんいただきましても、御指摘の時期に個人消費がかなり落ち込んだような形になっております。しかし、その後のGDP統計では、それがかなり取り戻されているというふうな形になっておりまして、個人消費は、通じて見まして、決して堅調とは申し上げられませんけれども、底がたく推移しているという言い方でほぼ現状を正しく表現しているのではないかというふうに思っています。

 個人消費が企業部門の活動に比べていまいち物足りない、底がたいとは言えても個人消費は堅調だとなかなか言えない状況にあります背景としては、やはり、一人当たりの名目賃金が、緩やかな上昇基調にはありますけれども、ともすれば伸び悩みぎみになる、そうしたことが大きな背景にあるのではないかというふうに私どもも認識いたしております。やはりグローバルな競争環境が大変厳しい中にありまして、企業が賃金の引き上げについて慎重な姿勢を維持している。その一方で、働く側の方でも、やはり、過去の厳しい雇用環境を経験いたしました後でございますので、賃上げよりも安定的な雇用を志向するという傾向がなお残存しているということに影響されているのではないかというふうに思っております。

 なお、つけ加えて申し上げれば、団塊世代の退職は昨年の後半から増加し始めておりまして、賃金水準の高い世代の退職者が前年対比で増加していることも、賃金の平均的な前年比を押し下げる方向に働いている、これがまた消費の基調に何がしか影響している、こういうふうに考えております。

佐々木(憲)委員 半分お認めになっているようで、そうでもないような答弁でございます。

 賃金の傾向が、六月、昨年の半ば以後マイナス傾向に転じているということが具体的な数字でも言えるわけでございます。その要因として、先ほど、労働者の方が賃金よりも雇用なんだというふうにおっしゃいましたが、労働者は雇用と賃金両方要求しているんじゃないか、抑制しているのは企業の側じゃないかと私は思っております。

 それから、団塊世代の退職の話がありましたが、これは、数字からいいますと、全体の中では現在ではそれほどまだ大きくないわけで、極めて部分的なものであります。もちろん、傾向としては、おっしゃる傾向はありますが、総体としてまだ比重は小さいと私は思っております。

 具体的な数字で言いますと、例えば毎月勤労統計、厚生労働省の統計ですけれども、一人当たりの名目賃金、二〇〇五年から二〇〇六年、二年連続で前年比プラスだったわけですが、所定内給与は、二〇〇六年には前年比マイナス〇・三%、小幅ですけれどもマイナスに転じておりますし、特に昨年の十一月から十二月期、前年同月比で〇・八%マイナスであります。この一月は、所定内給与は前年同月比でマイナス〇・二%、マイナス圏にあるわけです。加えて、この一月は、特別給与が前年同月比マイナス二一・八%と、かなり大幅に落ち込んでいるわけであります。一人当たり平均給与もマイナス一・四%と低迷しているわけであります。

 ですから、このような点からいいますと、先ほど説明にありましたように、「雇用者所得も緩やかな増加を続けております。」というのは少し楽観的に過ぎるのではないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

福井参考人 一人当たり賃金が伸び悩んでいるということは、私も申し上げました。一方で、雇用者数、雇われる人の頭数は、かなり順調に伸びております。したがいまして、雇われている方掛ける一人当たり賃金という意味での雇用者所得は緩やかにふえ続けている、これは統計的に検証されることでございます。極めて緩やかな増加でございますので、個人消費を支える度合いもかなりモデストである。したがって、個人消費は、ふえてはいますが目下底がたいと言える程度ではないか。

 ただ、私ども、先行きを考えますと、経済が緩やかであっても順調に拡大を続けるならば、やはり労働需給も一層タイト化してまいりますので、賃金の伸び率につきましても、上向く方向でさらにいい傾向が出る可能性があるのではないか、そういうふうに見ております。

佐々木(憲)委員 私は、先行きの問題で大変重要な要因として考えなければならないのは、非正規雇用の増加という問題でございます。

 これは構造的な要因でありまして、非正規雇用の賃金は、正規雇用に比べれば当然かなり低いわけであります。その非正規雇用の比率が企業内で高まるというふうになりますと、平均賃金を押し下げる要因になるわけですね。ミニ経済白書によりますと、非正規雇用者の比率は労働分配率を押し下げる方向に寄与し続けているという指摘をしているわけです。雇用の非正規化の流れが労働分配率の低下に一定の役割を果たしていると考えられると指摘をしているわけです。

 この非正規雇用の比率がふえるとなりますと、平均賃金を押し下げる、こういう要因になると思いますが、総裁、どのようにお考えでしょうか。

福井参考人 非正規雇用と申しますか、パートタイマーあるいは派遣社員といった形での雇用のウエートが上がりますと、これは相対的に賃金水準が低いということでその比率が高まるわけでございますので、おっしゃるとおり、それだけ一人当たり賃金の伸び率を押し下げる力がある、それは確かだというふうに思います。

佐々木(憲)委員 そこで、福井総裁が四月十日に行った記者会見の報道を見ますと、こういうことを総裁はおっしゃっているわけです。フルタイマーの所定内給与はなかなか伸びにくい、これは企業が長期的な競争力確保のために固定費抑制姿勢を堅持していることもある、こういうふうに述べて、一番予想増加率が弱いという点では、我々の消費に対する予測を難しくしている、こういうふうに発言されていますね。これはどういう意味でしょうか。

福井参考人 働く人々から見ますと、やはり将来の所得がどれぐらい保障されているかという意味の恒常所得と申しますか、そこの予測がしっかりしていると消費にお金が向かいやすい。したがって、我々も消費の予測がつきやすいということはございます。

 これまでのところ、パートタイマーないしは契約雇用の方々の賃金はかなり上がっているんですけれども、フルタイマーのいわゆる所定内賃金の上がり方が鈍い。このことは、もしかすると働く人々の将来の所得予測というものがかつてに比べて弱いかもしれない。つまり、恒常所得という認識がもしかしたら弱いかもしれない。しかし、どれぐらい弱いかというのはなかなか正確につかめませんので、その分、将来の消費を予測することが少し難しくなっている、そういうふうな意味でございます。

佐々木(憲)委員 パートタイマーとか契約社員の賃金は若干上がっているとはいえ、正規雇用に比べるとまだまだ低いレベルにあるわけですね。そして、その部分がふえるというふうになりますと、全体としては賃金押し下げ要因というのは変わらないと思います。

 同時に、今総裁がおっしゃったように、フルタイマーの所定内給与の伸びというのは、企業の競争力確保ということで固定費抑制という企業の行動が働くために、どうしても抑える傾向が強くなる。そうなりますと、非正規雇用化の流れがとまらないのが一つと、総裁が指摘されるように、正規雇用の賃金が伸びない、この二つが合わさりますと、消費の伸びというのは非常にマイナスの要因が大きくなるのではないかというふうに思いますけれども、今後の見通しで、この二つの傾向はなかなか反転しないような感じがしますが、どのようにお考えでしょうか。

福井参考人 その点は、私どもも注意深く今後の状況を点検したいと思っております。

 二点申し上げさせていただきますと、一つは、委員おっしゃる非正規雇用という形の働き方でございますけれども、過去、経済が非常な不況の状況にありましたときはこれが非常にふえる、一方、正規雇用が減るというかなり明確なコントラストがございました。それに比べますと、最近は、企業はやはり良質な労働力をかなり安定的に確保したい、経済が順調に拡大するならば、そういうふうに労働力を求めているという傾向が強まってまいりましたので、かつてのように、いわゆる非正規雇用がどんどんふえ、正規の雇用がどんどん減るというふうな状況は一応終わったというふうに思います。

 ここから、正規雇用、非正規雇用を含め、多様な形の労働力をいかにいいバランスで使うかという方向に変わってきているというふうに思いますので、従来のように、一方的に非正規雇用のウエートが高まるという状況ではなくなったという点が一つでございます。

 それから、正規雇用、非正規雇用を含めまして、全体の労働力に対する企業の需要は、たとえ緩やかであっても、景気の拡大が長続きすればするほど需要が強まってくる。つまり、需給がタイトになってまいりますので、需給バランスから見て、賃金が上がりやすいという傾向がやはり強まってくる。過去の高度成長期時代と違いまして、周辺諸国との企業競争というのは厳しくなる一方でございますから、固定費を抑えたいという気持ちはずっと続くだろうとは思いますが、そうであっても、やはり良質な労働力を確保しないと企業としては競争力を築いていけませんので、賃金を引き上げるという力も徐々に強まってくるのではないか、こういうふうに予測をしております。

 予測どおりいくかどうか、注意深く見ていきたいというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 需給がタイトになって、賃金の上昇する要因は背景としては広がる。しかし、問題は、企業行動として、例えば、利益の分配をどういう形で行うかというのが大変重要なかぎになると思うんですね。確かに、大企業の経常利益は、この間バブル期を超えておりまして、問題は、それが一般の労働者の賃金を上げる方向に作用せず、むしろ役員給与を大幅に上げる、あるいは配当金が急増する、こういう形で分配が行われているのではないか、結局、株主重視、人件費抑制、こういう傾向が強まっているのが現実の姿ではないのかというふうに思うわけです。

 数字で見ましても、財務省の法人企業統計で、二〇〇一年を一〇〇とすると、二〇〇五年の従業員給与等は九三・三、これはマイナスであります。これに対して、配当金は二七七・六、大変急増しております。それから、役員給与等は一八七・六であります。ですから、今回の景気回復の非常に特異な現象は、こういう形で一般の労働者の賃金が抑制され続けている反面で、配当と役員給与が急増しているという、ここに特徴があります。

 そこで問題は、消費につながるという点でいいますと、配当がふえたり役員給与がふえれば消費がふえるじゃないか、そういう議論も一部あります。しかし、問題はそう単純ではないと私は思うわけです。なぜかといいますと、配当が増加しても、個人株主の割合はそれほど高まっているわけではありませんで、雇用者報酬にかわって家計の可処分所得を押し上げるというような役割は余り期待できないのではないかというふうに思うからでございます。

 一番肝心なのは、やはり従業員の全体の給与が引き上がることだというふうに思いますけれども、この点は、岩田副総裁、お答えいただきたいと思います。

岩田参考人 ただいま御質問をいただいた点であります。

 御指摘いただきましたように、現在、グローバル化というのが進展しているもとで、日本の企業も、そのグローバルな競争の中でどうやって生き抜いていくかという課題に直面しているというふうに思っております。

 そうしたことを背景にしまして、企業は、どちらかといいますと、販売管理費でありますとか人件費、こうした固定費用をなるたけ抑制する、その一方で、海外におきます収益機会の拡大でありますとか、あるいは設備投資をより最新なものにして生産の供給体制を整えるというようなことを努力されているように思います。

 そして、御指摘がございましたように、このところ、日本企業の配当性向というのも、これは国際的に見ますと必ずしも高いわけではございませんが、次第に高まってきております。

 同時に、新卒の採用、大学の卒業あるいは高校卒業、これは、内定率もこのところ高まってきておりますし、初任給も、昨年に引き続きことしも上昇するということが見込まれております。

 私、日本の企業がこうした課題に直面している中で、資本市場からの規律というのがやはり次第に強まってきている。コストはできるだけ抑制して、その中でぎりぎり必要な支出を行う、そういうことを通じて生産性を向上させ、企業価値の向上を強く意識した経営というのが行われているように思います。

 私は、こうした我が国企業が国際競争力を向上させて新たな付加価値を生み出していくということは、日本経済を発展させていく上での基盤であるというふうに思っております。そうした日本企業がさらに力を強めていくということが、次第に家計にも及んでいくのではないかと思うわけであります。

 ただ、今御指摘ありましたけれども、企業が得た収益をどういう支出項目に割り振るのか、あるいは利潤の配分をどのように行うのか、これは市場経済のもとで民間企業がそれぞれ独自にお決めになることでありまして、中央銀行の立場からこの配分が適切であるかどうかというようなことを述べることは適当ではないというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 どうも私の質問に対して、えらい漠然とした、ばくっとした答えしか出てこないので、若干失望いたしました。

 私が聞いたのは、一般の労働者の賃金の引き上げと配当の所得、これが消費拡大という観点からいってどちらが効果があるのですかという点を聞いているわけでございます。しかも、その理由として、私は株の配当というのは単純に消費に回るものではないということを指摘したわけですが、これに対して何もお答えがなかったんですが、きちっとお答えしていただきたい。

岩田参考人 配当の所得が、確かに家計部門も、株式の保有比率を見ますと、このところ外国投資家の比率も高まっておりますし、家計部門も四分の一かそのぐらいの比率で持っておられると思います。二〇〇五年度国民所得統計によりますと、家計部門が受け取った配当所得というのは七・五兆円というふうに言われております。このところ、この額はふえてきております。

 こうした財産所得がふえているのが、果たして極めて豊かな人だけが享受しているのかどうかということについては、例えば最近の投資信託でありますとか、これはかなり幅広い方々がお持ちになっております。それから、株式の保有を年収別に調べたことがかつて私ございますが、それほど年収が高くない、年金等で生活されている方も、過去の貯蓄で株を持っておられるというようなこともございます。ですから、かなり幅広い方がこの財産所得を、ふえるということで、そのある割合は消費に向けられていくのではないかと思います。ということであります。

佐々木(憲)委員 では、次に行きましょう。

 福井総裁は、昨年十月十三日の経済財政諮問会議でこういうふうに述べておられるんですね。「イノベーションを進め、経済のオープン化を図るということは、経済全体として競争相手国との関係でこれを見た場合には、いわゆる要素価格均等化定理はもっと徹底的にしみ込んできて、」というようなことを言っているんですが、非常にわかりにくい専門的な用語を使われているような感じが私にはするんですが、これはどういう意味ですか。

福井参考人 オープンな経済になりますと、資源の最適配分の力が一層強く働いて、すべての生産要素について同じ価格がつく傾向がある。その生産要素について技術ないしイノベーションの力が附帯しておりますので、イノベーションの力の強い生産要素についてはより高い対価が払われ、そうでない資源については相対的に低い対価が払われる。それぞれ、国境を越えて、技術レベルが同じであれば同じ価格に収れんしていく傾向が出るでしょう、これが要素価格均等化定理でございます。

 賃金というふうなレベルでこれを考えますと、人間というのは労働力が一つの生産要素でございますので、これが、製造業の技術あるいはIT関連技術、あるいはそんなものでなくても、ちょっとした工夫を凝らしながら仕事ができる人あるいはできない人の差というものが賃金の開きとして出てくるし、しかし、それぞれの同じレベルの製造業技術、IT技術、あるいは工夫ができる力ということであれば、これは国際的に均等化する方向に行くだろう、こういうことを申し上げたわけでございます。

佐々木(憲)委員 なるほど、そういう意味で言われたということは今わかりました。

 そういう観点からいうと、同じその会議の発言で、「イノベーションを身につけた人と、イノベーションをなかなか身につけられない人との間の所得の差は、むしろ、さらに広がるということを相当覚悟しておかなければいけないのではないか。 そういう差はむしろ縮まるんだという幻想を余り容易に与えない方がいいのではないか。」こう発言されましたね。このことに対して、どこかの党の幹事長がかなり攻撃をしたようでありますが、私はそういう傾向は確かにあるんじゃないかと思うので、一々イノベーションに対してけちをつけたかのように受け取って、与党の幹部がこの発言をこきおろすなどというのはやるべきじゃないと私は思っております。

 実際に進行している格差の拡大、それから景気回復の中でのこの二極化の傾向、そういうことを考えると、今後さらにそれがどういうふうな日本経済の発展の姿になっていくんだろうか、これを考えていかなきゃならぬと思うんです。

 その場合に、今おっしゃったように、オープンな経済、つまり、日本が例えばアジア諸国と今後FTAとかEPAを結んで経済的な国境を取り払って、自由な物、金、人の移動が可能になるという状況が生まれてくる。そうなりますと、日本の労働条件というものがアジアの労働条件と平準化してくる。先ほど総裁がおっしゃいましたように、アジアの労働者の賃金というのは今後は相対的に上がるでしょう。同時に、日本の一般労働者の賃金はかなり下がっていく可能性がある。つまり、アジアとの競争、アジアとの平準化ということを考えるとですね。

 そうなりますと、日本自身の国内の、国内経済としての日本経済の発展ということを考えると、この平準化というのは私はマイナスではないのかというふうに思うわけです。

 もちろん、イノベーションに関連する業界あるいはそこの労働者の賃金は、若干上がるかもしれない。しかし、アジア全体との競争でいきますと、一般の労働者の賃金というのはもっと下がっていく可能性がある。そのことが日本経済の将来にとって一体どういう事態をもたらすのか、その展望を総裁自身はどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

福井参考人 委員御指摘のとおり、日本経済、そしてその中に働く我々一人一人が非常に厳しい条件のもとにさらされているというのは御指摘のとおりだと思います。

 厳しい競争というのは今後ますます厳しくなる。これを避けるのがいいのか、あえて厳しい競争に挑んでいくのがいいのかという選択が一つございます。恐らく、私の個人的な感じでは、この厳しい競争を避けて閉鎖的な経済という方向に進むならば、多分、日本経済は世界全体の発展の中から取り残されていく方向になり、みんなが不幸せになる危険があるのではないか、こういうふうに一つ思います。

 したがいまして、むしろこの競争に積極的にチャレンジして、競争がいかに厳しくとも、我々の力を磨いて、技術レベルそれからイノベーションのレベルでは常に他国に一歩先んじている、常に一歩先んじているという状況を実現し続けていくということが大切ではないかと思います。これは大企業だけの問題ではなくて、大企業、中小企業、製造業、非製造業を問わない問題として、外国と比べて、常に一歩イノベーションのレベルで先を行っている。企業を構成しているのは働く人たちでございますので、働く人たちの能力が、諸外国と比べて、一人一人比較しても常に一歩先を行っているという状況が一番理想的な状況で、そうした状況を実現できるかどうか。もしそうした状況を実現できれば、賃金が一方的に下がるというふうなことを悲観的に考える必要、その度合いはかなり薄れるというふうに思います。

 しかし、その場合でも、国内で見ると、やはりイノベーション、技術革新についていける人たちと、その度合いが少ない人たちとの間で格差が生じてくる、あるいは広がるということは避けられない、それは私が諮問会議で述べたとおりでございます。社会全体がみんなの幸せを築いていけるような社会、新しい課題を、どういう政策対応を割り当てていくか、別の問題があるわけであります。最終的に、どんなに努力をしてもイノベーションについていけない人たちのためのセーフティーネット等、これは新しい政策課題、これは日本だけではなくて、すべての国がこの新しい政策課題に今直面し、新しい政策体系の樹立の競争が始まっている、こういうふうに理解しています。

佐々木(憲)委員 もう時間ですので終わりますが、日本の将来にとって、技術革新、イノベーションというのは当然必要なことだろうと思いますけれども、問題は、それが、国内の国民、働く人々、労働者、勤労者、こういう方々の生活水準が向上する形で消費も拡大し、よい循環を確保していくことだろうと思うんです。その場合、今のままではなかなかそうはいかないので、私は、企業の行動についても一定のルールが必要である、つまり、利益が上がったものを経営者と株主だけに配分して労働者は二の次、そういう経営の仕方では、本当に将来にとってプラスになるとは思えないわけであります。

 したがって、それを規制するというか、ルールをどう確立していくか、これは法制度の問題でもあるんです。規制緩和をどんどんやれば企業の野放し状態が生まれますので、そうではなくて、がんじがらめにするというのじゃありませんが、生活を重視した一定のルールづくりというものが大変重要である。しかも、国の政策の方も、例えば国民負担、この問題について一層軽減措置をとるとか、こういう政策対応が求められているというふうに思っております。

 そのことを最後につけ加えておきまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 以上で質疑は終了いたしました。

     ――――◇―――――

伊藤委員長 この際、連合審査会開会申入れに関する件についてお諮りいたします。

 内閣委員会において審査中の内閣提出、株式会社日本政策金融公庫法及び株式会社日本政策金融公庫法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案について、内閣委員会に対し連合審査会開会の申し入れを行いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、内閣委員長と協議の上、公報をもってお知らせいたします。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会


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