衆議院

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第13号 平成19年5月18日(金曜日)

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平成十九年五月十八日(金曜日)

    午後三時一分開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    猪口 邦子君

      江崎洋一郎君    小川 友一君

      小野 晋也君    越智 隆雄君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      関  芳弘君    土井 真樹君

      中根 一幸君    萩山 教嚴君

      橋本  岳君    広津 素子君

      松本 洋平君    御法川信英君

      小沢 鋭仁君    川内 博史君

      楠田 大蔵君    鈴木 克昌君

      田村 謙治君    三谷 光男君

      吉田  泉君    谷口 隆義君

      佐々木憲昭君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   参考人

   (社団法人生命保険協会会長)           斎藤 勝利君

   参考人

   (社団法人日本損害保険協会会長)         石原 邦夫君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月十八日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     猪口 邦子君

  とかしきなおみ君   橋本  岳君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     佐藤ゆかり君

  橋本  岳君     とかしきなおみ君

    ―――――――――――――

五月十六日

 保険業法の適用除外に関する請願(岡本充功君紹介)(第九〇三号)

 同(辻元清美君紹介)(第九〇四号)

 同(牧義夫君紹介)(第九〇五号)

 同(三谷光男君紹介)(第九一六号)

 同(川内博史君紹介)(第九六七号)

 同(野田佳彦君紹介)(第九六八号)

 同(山口壯君紹介)(第九六九号)

 同(古賀一成君紹介)(第一〇〇四号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一〇〇六号)

 同(吉田泉君紹介)(第一〇〇七号)

 同(中井洽君紹介)(第一〇二二号)

 同(古川元久君紹介)(第一〇二七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一〇四一号)

 消費税率の引き上げ・大衆増税反対に関する請願(近藤昭一君紹介)(第一〇一八号)

 同(武正公一君紹介)(第一〇二〇号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第一〇三三号)

 保険業法の見直しを求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇四二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇四三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一〇四四号)

 庶民大増税反対に関する請願(志位和夫君紹介)(第一〇四五号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために庶民増税の中止を求めることに関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第一〇四六号)

 消費税の引き上げ中止等に関する請願(笠井亮君紹介)(第一〇四七号)

 同(穀田恵二君紹介)(第一〇四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、参考人として社団法人生命保険協会会長斎藤勝利君、社団法人日本損害保険協会会長石原邦夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 ただいま参考人として社団法人生命保険協会会長斎藤勝利君に御出席をいただいております。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、斎藤参考人から十分御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、斎藤参考人、お願いいたします。

斎藤参考人 生命保険協会長の斎藤でございます。

 本日は、このように保険金等の支払い検証と今後の対応につきまして御説明をさせていただく場を設けていただきまして、まことにありがとうございます。

 まず初めに、このたび、多くの生命保険会社におきまして、保険金等のお支払いが不足をしていた事案や請求案内をすべき事案等が多数発生したことが判明をし、お客様及び関係者の皆様に御迷惑と御心配をおかけいたしましたことを深くおわび申し上げます。

 保険金等のお支払いは、生命保険事業における最も基本的かつ重要な業務であるとの認識に立ち、これまで以上に各社の経営者が責任を持って業務運営体制を強化し、信頼回復に取り組んでまいります。

 本日は、まず、生命保険協会長としての立場で、本件に係る業界全般の取り組みについて、その後、第一生命の取り組みについて御説明を申し上げます。

 初めに、生命保険協会としての取り組みの全体像を御説明させていただきます。

 まず、現状認識として、生命保険業界における保険金等のお支払いに関する対応につきまして、ケース分けをして御説明申し上げます。

 保険金等の支払いに関する対応につきましては、お客様から御請求があるケースとないケースに大別されます。また、御請求いただいたケースでは、さらに二つのケースに分類でき、大きく三つのケースに分けられます。

 一番目のケースは、お客様から御請求があったものの、保険会社による事実関係の調査、確認が不十分であったこと等を原因として、本来お支払いするべき保険金等が不払いとなったケースでございます。いわゆる不適切な不払いでございます。このケースにつきましては、平成十七年に、金融庁から全社に報告徴求命令が発出されております。各社とも、平成十二年度から十六年度の過去五年分の検証結果について公表を行っており、不適切な不払いについては対応を終了しております。

 二番目のケースは、お客様から御請求があり保険金等をお支払いしているものの、一部支払い金額に不足が生じているケースでございます。支払い漏れと呼んでおります。これは、事務的なミス等を原因として、入院給付金の支払い日数や手術給付金の支払い額等に不足が生じているものでございます。主たる原因はヒューマンエラーでございますが、各案件をより入念に点検することにより発見可能なものでございまして、点検機能が不十分であったと考えております。

 最後に、三番目のケースは、保険会社からの請求案内が不十分なケースでございます。案内不足による請求漏れと呼んでおりますが、これは、お客様から入院給付金や手術給付金の御請求を受けた場合で、請求時の診断書の記載事項から類推すると、ほかに御加入いただいている商品についてもお支払いができる可能性があるケースでございます。このケースにつきましては、こうした可能性を踏まえた請求の御案内が、残念ながら、これまで十分に徹底できておりませんでした。

 今回の金融庁への報告におきましては、各社とも、ただいま御説明をいたしました二番目と三番目のケースに係る事案につきまして、平成十三年度から平成十七年度の過去五年分について検証の上、四月十三日に報告を行っております。

 なお、二番目のケースにつきましては、各社、該当のお客様を特定の上、順次追加のお支払いをしているところでございます。

 一方、三番目のケースにつきましては、大半の会社で検証をしている途上でございまして、おおむね九月ごろまでに追加してお支払いすべき契約を特定の上、遅くとも十一月ごろにお支払いを完了する予定でございます。

 こうした案内不足による請求漏れが生じた背景でございますが、私どもは、お客様からの保険金等の御請求に対して、迅速かつ正確に保険金等をお支払いすることを第一義とした事務基準、体制を構築しておりました。具体的には、生命保険会社は、保険金等のお支払いに当たり、お客様からの御請求に対して、請求書類が到着した日から五営業日以内等の一定期間内にお支払いすることをお約束しております。お支払いを担当する部門におきましては、モラルリスク対策を適切に講じつつ、迅速かつ正確に保険金等をお支払いすることを第一義とした事務基準、体制を構築してまいりました。

 しかしながら、今振り返りますと、残念ながらお客様に漏れなく御請求をいただくということについての徹底が欠けており、この点についての意識改革が求められていると考えております。

 今後は、お客様からの御請求に基づく迅速かつ正確なお支払いに加え、案内不足による請求漏れをなくすためのお客様への情報提供や体制整備の実施等、お客様に漏れなく御請求をいただくというお客様の視点に立った意識改革を進め、必要な施策を講じてまいります。

 現在、生命保険協会では、利用者保護の体制整備をより一層推進していくために、各種ガイドラインの見直し検討を行っております。ガイドラインに基づく各社の具体的な対応例としては、保険金等のお支払いに関するガイドブック等を活用して、保険金等をどういった場合にお支払いができるのかをお客様にお伝えすること等が挙げられます。こうした情報提供によりまして、お客様に漏れなく御請求いただける環境づくりに努めたいと考えております。

 また、保険金等の請求について、御請求の際にいただいた診断書等の情報からその御請求とは別の保険金等をお支払いできる可能性を判断できる場合に、御請求を促すような体制整備に努めてまいります。

 続きまして、第一生命の取り組みを御説明させていただきます。

 保険金等のお支払いにつきましては、御契約の出口に当たりますが、この出口のみではなく、御加入時に当たる入り口、そして御契約期間中の接点でもある中間も含めた取り組みについて、御説明を申し上げます。

 まず、御加入時、すなわち入り口の対応でございますが、営業職員が、契約概要や注意喚起情報をもとに、保障内容や保険金等が支払われない場合等の重要事項をしっかりと御説明し、御契約内容についてお客様により一層御理解いただけるよう努めております。

 また、保険金のお支払いに係る重要なポイントをまとめた冊子「保険金などのお支払いについて」というものを作成し、この冊子をすべての御契約者にお配りし、御請求いただける保険金等につきまして御確認をいただくこととしております。

 御契約期間を通じた中間でございますが、お客様対応体制の強化に努めており、御加入後の営業職員による定期的な御説明やそのフォロー、郵送による年一回のお知らせ等を通じまして、御契約内容を御確認いただく機会を充実させております。

 生命保険契約は非常に長期にわたることから、少なくとも一年に一度は、お客様御自身に御加入契約の内容及びどのような場合に保険金等が支払われるかを御確認いただくべく、当社からの情報提供が必要と考え、実施をしております。

 最後に、出口に該当します支払い時等の対応でございます。

 まず、お客様にわかりやすいチェックシートをお渡しし、御自身で他のお支払い事由に該当していないかどうか御確認をいただくことをいたします。また、万一お支払いができないと判断された場合、お客様に御負担をいただいた診断書費用相当額を当社負担とさせていただき、御請求をしていただきやすい環境づくりをしてまいります。

 このように、御契約時からお支払い後のさまざまな局面におきまして、お客様に対し適切な情報を御提供するとともに、お客様御自身に御加入されている契約内容を確認いただく取り組みを行っております。

 そのほか、お支払いに関する照会や異議申し立て等の窓口についても充実をさせております。

 第一生命の取り組みに関する御説明は以上でございます。

 生命保険会社は、死亡、病気、老後などの各種経済的なリスクに備える保障手段を提供することで、国民の生活保障システムの一翼を担っております。満期保険金等を除く死亡、高度障害保険金だけでも年間三兆円以上をお届けしており、医療保障であります入院、手術給付金等を合計いたしますと、年間四兆五千億円、一日当たり百二十億円を超える保険金等が国民の皆様の生活に役立てられております。

 保険金等のお支払いは、生命保険事業における最も基本的かつ重要な業務であるとの認識に立ち、また、お客様に漏れなく御請求をいただくという意識改革を行うことで、再発防止に向けた業務運営体制を強化し、信頼の回復に取り組んでまいります。

 以上をもちまして、私からの意見陳述を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本明彦君。

山本(明)委員 自由民主党の山本明彦です。

 斎藤会長におかれましては、大変お忙しい中を、我々の参考人招致委員会に御出席いただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、我々が述べることもしっかりと聞いていただき、そして、申し上げたいことがあればしっかりとこの席で申し述べていただきまして、やはり大事なことは、それぞれの保険加入者の皆様方が安心をして加入できる、そうした体制をつくることが大切なことでありますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 生保業界というのは、以前はいわゆる護送船団方式ということで、悠々とというんですか、順風満帆な形でやってこられたわけでありますけれども、橋本内閣時の金融ビッグバンのときの保険の自由化、こうした危機もありました。そして、低金利における予定利率の逆ざやという大変大きな問題もあった。そうした大きな危機を乗り越えられ、中には、二〇〇〇年前後に生保危機がありまして破綻された生保もあるわけでありますけれども、皆様方はそれを乗り越えてこられて、今は順調に進みつつあるところ、そんなふうに思っておりますけれども、そうした中で、今回の不払い、支払い漏れ、こうした事件が発生したわけであります。

 今までの危機というのは、いわゆる外圧というのですか、景気動向だとか政策の変更とかいう形の危機であった、私はそんなふうに思っておりますが、今回の危機というのは、これはまさに皆様方の自己責任だというふうに思っております。逆に、ということは、業界の、そしてそれぞれの皆さん方の企業努力でこれが改善できる、そうした問題が今回の問題だろう、そう思っております。

 したがって、先ほど言いましたように、順風満帆で来られた皆様方の業界が、きょうは古本理事もおられますけれども、トヨタ自動車は改善改善という形で、大変な好成績を上げるようになったわけでありますが、生保業界は恐らく初めて改善の危機が与えられた、私はそんなふうに思っておりますので、これをいい機会としてとらえて、生保業界全体がレベルアップされる、国民から信頼を置ける、そんな機会にしていただければ、そういった意味では、きょうはいい機会だと思っていただければ幸いだというふうに思います。

 今回、私も質問するに当たりまして、インターネットでずっと調べていきました。新聞の記事を検索いたしました。生保の不払いという検索でやりますと、ある新聞、大体そうですけれども、二十数回出ておりました。ところが、支払い漏れ、特に、請求勧奨漏れなんていうのは難しいわけですけれども、支払い漏れというような言葉で検索すると、一件も出てこなかったわけであります。

 先ほど会長さんからもお話がございました。三つのタイプがあるというお話がありましたけれども、いわゆる不適切な不払いと、今回対象となっております支払い漏れ、請求勧奨漏れ、こうしたものとはやはりおのずと、大変性格の違ったものだというふうに私は感じております。

 不適切な不払いというのは、やはりそこに意思が働いているわけでありますけれども、先ほど御説明もありました、単純ミスというんですか、ヒューマンエラーと言われましたけれども、単純ミス、そしてお客様へ請求をしてくださいよと申し上げるのを少し怠った、これは多少意味合いが違うなというふうに思います。これはやはり、我々の責任というのは、国民の皆さん方にしっかりと説明をして、不安感や不信感を募らせることが目的ではないと思っております。

 余談ですけれども、私の知り合いが、もう生命保険解約するよと言ってこられました。今こんな状況ですよというお話をしましたら、最近出ている支払い漏れと請求勧奨漏れの件数は、数十万件と大変多い。そのほとんどがいわゆる不適切な不払いであると理解をしておられたようであります。こんなに多くの不払いを生保はしておるのかというイメージを持っておられました。説明したところ、ああそうですかといって帰っていかれたわけでありますけれども、この辺が私は大事な点ではないかな、そう思います。

 そこで、最初にちょっと質問申し上げたいと思いますけれども、これを数字的に少しわかりやすいように、二年前のいわゆる不適切な不払い、そして今回の二つの案件、この点につきまして、それぞれの、業界全体がわかれば業界全体で結構だし、わからなければ第一生命さんで結構であります。発生した件数、そして、分母というんですか、それに対応する、不適切な不払いの場合は不払いの分母ですね、支払い漏れの場合は、支払うべき保険がどれだけあって、支払い漏れが何件あったか、そうした形で、分母と分子なんですけれども、その数をお知らせいただきまして、その割り算をした発生率がどれほどであったかをまずお知らせいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 初めに、山本先生からお話がございました、今回を改善の危機ととらえ、これを契機にしっかりとやるようにというお言葉を重く受けとめて、しっかりと運営したいと思います。

 御質問の件でございますが、第一の分野、いわゆる不適切な不払いでございますが、私どもは各社の数字を取りまとめる立場にはございませんので、第一生命の数値について申し上げます。

 第一生命では、過去五年についての不適切な不払いが二十五件、その発生率は、不払いとした件数を分母といたしますと〇・〇五%でございます。

 一方、事務ミス等による支払い漏れにつきましては、二千百七十四件、その発生率は、支払いの査定をしてお支払いをした件数を分母、四百三十万件だったと思いますが、これに対してもやはり〇・〇五%となっております。なお、付言いたしますと、事務ミス等による支払い漏れにつきましては、直近の平成十七年度単年度では、以前に比べて徐々に改善しておりまして、二百五十三件、発生率が〇・〇三%程度となっております。

 一方、案内不足による請求漏れについては現在調査中でございます。

 以上でございます。

山本(明)委員 予想以上というんですか、数字としては比較的少ないような感じはいたします。ただ、企業からとりますと、この件数というのは四百万分の二千というふうなことで大変少ないわけでありますが、たとえ〇・〇五%でも、国民の皆さん方それぞれにとりますと大変重大なことであると思いますので、やはりこれは限りなくゼロに近づける姿勢をしっかりとこれから貫いていただきたい、そう思います。

 二つ目に入ります。

 明治安田生命さん、きょうコールセンターへ視察に行ってまいりましたけれども、大変よく改善されてみえるな、そんな感じを受けてきました。平成十七年、保険金の不適切な不払いが判明して二度にわたる行政処分を受けました。これは意図的に支払いを少なくするということを組織的に行っておったと判断されたことだというふうに思います。したがって、保険業法百三十三条、免許の取り消しもあり得ると、大変重い条項違反でありますけれども、これによって業務停止命令と業務改善命令を受けられたわけであります。これは大変重大な違反であった、そんなふうに私は判断をしております。

 明治安田生命さんもそうでありますけれども、そのほかの各社の皆さん方も、数は少なかったけれども、多少なりともやはりあった、今、二十五件あったということでありますので。こうした処分を受けて、先ほども説明が若干ありましたけれども、業界として不払い対策をどんなふうな形でされてきたのか。そして、今改善中でありますけれども、これは損保さんもありますから、世間の印象というのは、何か知らないけれども、生保も損保も不払い、支払い漏れが調べるたびにどんどんふえてきておるというイメージがあるというふうに思いますが、もう生保業界は大丈夫です、今回の改善、これからの改善で大丈夫です、さっき言いましたように、〇%に近いようになりますので任せてください、こんな状況になっているのかどうか。その点、ちょっと簡単に教えていただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 不適切な不払いにつきましては、御指摘のとおり、絶対起こしてはならないということで、平成十七年度公表以降努めているところでございます。

 今回特に問題となった事案は案内不足による請求漏れというものでございますが、私ども業界の大半の会社におきまして、今回多くの案内不足による請求漏れという事案が出て、大変申しわけなく思っております。

 この原因といたしましては、各社、お客様に請求漏れを起こしてはならないという強い問題意識のもとで社内の仕組みを構築してこれなかったということがそもそもの原因だというふうに理解をしております。

 今回の事案にかんがみ、これからは、各社、お客様に請求漏れを起こしてはならないという基本的な考え方を据えまして、社内のいろいろな仕組みを構築しているところでございます。今後につきましては、こうした形での請求漏れというものを起こさせないという強い決意で臨んでいきたいというふうに思います。

山本(明)委員 いわゆる払うべきもので払わなかったものが百億近くあるわけでありますけれども、この金額は、先ほどの件数と一緒で、多いか少ないかということだとは思いますが、今はそれぞれ業績も大変好調なようであります。

 お聞きいたしますが、業界にしろ第一生命さんにしろ、営業職員に対し、いろいろなインセンティブがあると思いますが、営業職員の何を評価するのか、ノルマがあるのかないのか、どういった点を評価するのか。それによって営業職員の動き方というのは変わってくると思いますので、どんなノルマを課しておるのか。やはり企業は一般的には利益追求型と思われます。したがって、利益を上げるために支払いを少なくしろ、そういうインセンティブも当然それぞれ考えるわけでありますけれども、そういった意味で、どんなノルマを課しておるのか、どんな教育をしておるのか、どんなインセンティブがあるのかをお聞かせいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 保険金のお支払いとの関係で御説明をさせていただきたいと思います。

 利益を上げるために保険金等のお支払いを抑制してきているということは断じてございません。

 第一生命の事例で申し上げますと、私どもは、営業職員がお客様のいろいろなお支払いのお手続のお手伝いをした場合に、件数に応じて奨励金を支給するという制度を長らくとってきております。お客様へのお支払いを促進すればするほど営業職員に奨励金が入る、こういう制度でございます。

 生命保険は大変長期にわたる御契約でございますので、いかに長期にわたってお客様の御信頼をかち得ていくかというのが経営上大変重要な要素というふうに思っております。お客様の、この長期にわたる御契約の中で発生するいろいろな保全上の手続、名義の変更でありますとか住所変更、あるいは結婚をされて名字が変わる、なかんずく入院給付金や手術給付金の御請求のときにお手伝いをすることによってお客様の御信頼をかち得ていく、こういうことが大変重要な要素であると思い、平成十一年度からこうしたいわばインセンティブを営業職員に与えてきております。

 そういうことで、利益を上げるために支払いを抑制するということとは全く逆のインセンティブを与えているということで御理解をいただきたいと思います。

 以上でございます。

山本(明)委員 支払いをすることによって営業職員を評価するという今の話は、いささかびっくりしたというんですか、そこまでよくやられたな、そんな感じがしないわけでもありません。支払いをすることがやはり保険会社としての使命だ、そのために顧客の皆さん方は入るわけであります。自分たちが保険料を払うのが目的ではなくて、保険金を給付してもらうことが目的で入るわけでありますから当然でありますけれども、その方がお客さんは喜ぶわけでありますので、ぜひそうしたインセンティブをこれからも続けていただきたいと思いますし、協会長として業界の他の会社にもそれを勧めていただければありがたいというふうに思います。

 時間が参りましたので終了させていただきますけれども、今までいわゆる請求主義であったということに多少あぐらをかいてこられた面もあるかというふうに思います。顧客としてみれば、忘れてしまうというのがやはりほとんどでありますので、請求しない方が悪いというようなことはゆめゆめこれからは言われないように、請求しやすいような形をぜひこれからも制度としてもとっていただいて、かゆいところに手の届く、そんな形で、ただし、もちろん不当請求だけは絶対に避けていただきたいと思いますけれども、これから国民の皆さん方の信頼をかち取っていただきたいとお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木でございます。

 私も、限られた時間でございますが、会長に御質問をさせていただきたいと思います。

 まず、お忙しい中お越しをいただきましたことにお礼を申し上げたいと思います。どうも大変ありがとうございます。

 今議題になっておるのは、まさに生保の保険金の不払い、支払い漏れということでございますが、私は、これはまさに保険業の根幹を揺るがすような事態が今起きておるんではないのかな、日本の保険がある意味で危機に陥っているんではないかな、それぐらい実は強い衝撃を受けて、このことをとらえております。

 今山本委員の方からもいろいろと御質問がありましたが、まず、言うまでもありませんけれども、十七年十月に、明治安田生命が保険金の不適切な不払いを理由に金融庁から業務停止命令を受けた。ここからいろいろと発生をしていったわけでありますが、斎藤参考人が社長をしてみえる第一生命さんでも、同じようにやはりいろいろと問題があったわけでございます。

 そこで、今山本委員から三つのケース、不適切な不払い、それから支払い漏れ、請求案内漏れ、この三つのケースがあるんだという御指摘がありました。そのことは、先ほど意見陳述もあったわけでありますが、私は、この三つは同根、いわゆる消費者の目、契約者の目、国民の目から見れば、全く同じだというふうに実は思っております。

 確かに、先ほどのお話のように、若干違うという見方もあるかもしれませんけれども、しかし、保険というものに対して国民が本当に何を期待しているのかということからすれば、いわゆる事務方のミスでしたとか、それから、当社から積極的に働きかけなきゃならなかったことだというふうな分け方というのは、それはいわゆる保険業界側からの理屈であって、消費者側から見ればそれはやはり理由にはならないんじゃないかな、私はこのように実は思っております。確かに、請求主義だ、請求しなかったからということはあるのかもしれませんけれども、それで本当にこの保険という業容が成立していくんだろうか、これぐらい重く考えていかなきゃならない、私はこのように思っております。

 そういう視点で幾つかお伺いをしてまいりたいんですが、当然、言うまでもありませんけれども、契約者は万が一のために保険に加入をされておるわけでありまして、どんな理由であれそれが支払われない、それは法令違反の問題は全然別でありますけれども、しかし、どんな理由であれ支払われないということが、契約者側から見ればどういうことになるのかという、この信頼関係ですよね。ここのところを本当に経営者の皆さん方、保険会社の皆さんはおわかりになっているんだろうかな、これをまず一遍お尋ねしていきたいと思うんです。

 そのために、例えば支払い漏れというミスをなくするためにどんなことを、コンピューターで新しいシステムを導入するとか、それから医師の診断書をいわゆる誤って読むことのないような策を講じるとか、そういういろいろな講じる手段というのはあると思うんですけれども、まず、いずれにしても、冒頭申し上げましたように、契約者側から立ってみて、支払ってもらえないということはどんな理屈も成り立たないということを前提に、私はそのことを、まず会長、社長としてどのようにお感じになっているのか、お示しをいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 今回の問題の所在は、基本的には、本来保険金、給付金をお受け取りになれる権利のあるお客様に保険金、給付金をお支払いできていないということと考えておりまして、今委員御指摘のとおりの部分があるかと思います。

 特に、一番目の不適切な不払いについては、完璧に、私どもは社内の体制を二年前に構築しまして、つくり上げております。

 また、事務ミスについても同様に、今回の五年間の事案というものを参考として、二度と起こさないような形での仕組みをつくりつつございます。

 そして、三番目の案内不足による請求漏れというものを起こさないがための、これは先ほども申し上げました、お客様に請求漏れを起こしてはならないという基本的な考え方があるかないかということで大きく違いがあるというふうに思っております。私どもは、今回、業界各社、そういう意味での、お客様に請求漏れを起こしてはならないという意識改革をいたしました。こうすることによりまして、生命保険の場合は、御案内のとおりモラルリスクがない限りは全額お支払いができる、そういうシンプルな構造にお支払いのところはなっておりますので、意識改革ができさえすれば、必ずやお客様に御信頼いただけるような支払い管理体制が構築できるというふうに思っておりまして、一生懸命やりたいと思います。

鈴木(克)委員 繰り返しになりますけれども、支払うべき保険金を支払っていないというのはやはり許されることではない、私はこのことをまず強く申し上げておきます。

 今いろいろと、背景というか手だて、考え方をお示しいただいたんですが、国民の側には、保険会社はいわゆる保険金を支払わなければそのまま利益になる、収益になるから払い渋っておるんではないか、実はこういう疑念があるわけですね。これは恐らくいろいろと言い分はおありになるんではないかなと思うんです。しかし、現実に、やはり国民はそう思っているんですよ。それは、払わなきゃ利益になるから払わないんだね、だからいろいろ理屈をつけて払わないんだねという、ちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういうふうに見られておる。

 その中に、会社の中で、いわゆる保険金部といいますか、これは会社によって名称は違うかもしれませんけれども、そこの担当部署の地位が低いんじゃないか。きょうちょっと、午前中、明治安田さんを拝見に行ったときにそんな議論が委員の中から出たんですけれども、その辺のところは、もしお答えがあれば、保険金部の部署の地位が会社の中で相対的に低いんじゃないかというような問題、それから、生命保険会社は、収支相償といいますか、これが基本だというふうに私は聞いておるわけですが、この二つの点について、第一生命さんにおかれてどんなふうにお感じになっておるのか、お考えになっておるのか、この二点をお伺いしたいと思います。

斎藤参考人 お答えいたします。

 保険金部の地位が低いということはございません。私どもは、この二年間、こういった事案がありましたがゆえに保険金部を大変に増員はしておりますけれども、その二年前に至る過程におきましても、保険金部の査定人員というものを減らしてきたということもございません。

 それから収支の問題でございますが、先ほども、営業職員に、お支払いを進めれば進めるほど奨励金を支給するという制度をつくっておりますが、この背景をちょっと御説明させていただきますと、私どもは、職員満足度調査、ESと言っていますけれども、職員満足度調査というものを外部の調査機関を使って展開してきております。四万人の営業職員についてもこの職員満足度調査に参加してもらっておりまして、こうした営業職員が一番満足度が高くなるときというのがどういうときかといいますと、実は、御契約をいただいたときでありますとか給与が上がったときということではなくて、お客様のお役に立ったと実感できたときというのが実は毎年毎年断トツの一位なんでございます。先ほど申し上げましたお支払いのお手伝いをしたときにインセンティブを与えるという施策も、こういったことが背景にございます。

 そういうことで、利益を上げるためにお支払いを抑制するというようなことは全くございません。

鈴木(克)委員 今、具体例でお示しをいただきました。インセンティブの話があったわけですが、これは他社のことといえばそれまでかもしれませんけれども、午前中お邪魔した明治安田さんでは、実はこういったインセンティブは今のところない、こういうことをおっしゃっておったように私は理解をして帰ってまいりました。

 ということは、やはり業界の中で、まだそういったものが統一されていない、御社はされておるということを今お話があったわけでありますが、この部分というのは、他社のことであるからわからないといえばそれまでですが、そういう方向に今あるのか、それからまた、そういう方向に持っていこうとされておるのか、その辺について、お答えできたら、御答弁いただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えいたします。

 個別の施策につきましては、それぞれ、各社一長一短のある施策を持っているかと思います。先ほど申し上げましたとおり、今回の一番の事案といいますのは、案内不足による請求漏れというものでございまして、ここにつきましては、さっき申し上げましたとおり、お客様にここ以降請求漏れというものを起こしてはならないという基本的な考え方を据えるという点では、全社、意識改革が進んできたというふうに思います。

 したがいまして、それぞれの会社で、この基本的な考え方のもとに、個別の施策を進めていただくということと思います。

鈴木(克)委員 わかりました。

 もちろん、各社それぞれ、個社個社で考え方はあると思いますが、私は、やはり業界全体で一つの考え方を統一していくということも必要ではないのかな、このように思います。また会長としてのお立場で御尽力いただければ大変ありがたい、このように思っておるところであります。

 先ほど、お話の中で、診断書の問題がございました。やはり、保険ということと診断書というのは、私は非常に密接不可分なものがあるというふうに思うんですが、お医者さんの診断書の書き方というのか書式と申しましょうか、例えば、手術の名前の書き方が違っておったがために判断が誤って、支払いに該当されなかったとかいうようなケースがあるのではないのかなというふうに、これは私は専門家ではないのでわかりませんけれども。

 もしそういうものがあるとすれば、やはり生保協会として、医師会に対して、共通のフォーマットと申しましょうか、そういったものをきちっとやられる必要があるのではないのか、私はこのように思うわけでありますが、その点はいかがお考えでございましょうか。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 診断書を正しく保険会社側が理解するということが、適切なお支払いにつながるというふうに思います。

 少々私どもの会社の事例を御紹介させていただきますと、私どもは、今回再検証に当たりまして、過去五年分、二百五十万件の診断書をどういう方法で再検証していくかということをスタートの時点でいろいろ議論したわけですけれども、最終的には、これを全件テキストデータ化していこうということといたしました。手書きの診断書二百五十万枚につきまして、全社を挙げて、土日を返上してパソコン入力をしてテキストデータ化をいたしました。これに対しまして、医学的な見地を含めまして、お支払いの可能性をうかがわせるようなキーワード、合計四千五百になりましたけれども、四千五百のキーワードをぶつけまして、それでヒットをしたものについて抽出をして、何回かスクリーニングを経た上で、最終的に保険金の査定スキルのある人間が査定をしていくという方法をとっております。

 その過程でも、手書きの診断書について、これがワープロ化されたりしていれば、非常に時間の節約ができただろうというふうにも思っております。

 繰り返しになりますけれども、今般のこの支払い漏れ等の問題につきましては、この診断書の情報というものを正確に取得して適切に活用するということが有効な解決方法の一つであると認識をしておりますので、御指摘の点につきましても、今後医療関係の方々とも連携をして検討してまいりたいというふうに思います。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 それでは、質問を続けさせていただきます。

 実は、ここに「第一生命の絆」、CSRレポート、それから「第一生命の現状」、ディスクロージャー誌、この二冊を持ってまいりました。

 ここには、第一生命が、生命保険会社として社会の中で信頼される存在であり続け、生命保険の果たす役割を通じて社会の持続的発展に寄与していくことが最も重要だと考えている、経営基本方針が目指す姿に向かって、社会とのきずな、お客様、契約者とのきずな、職員とのきずなを大切にし、それぞれのきずなを太くするとともに、双方の流れを円滑にしていく努力から第一生命のCSRが始まるという考えだ、このように社長がおっしゃっておるわけですね。

 いずれにいたしましても、そういう中で、例えば、きょう午前中お伺いしてきたんですけれども、明治安田さんでは、今三万人の社員がおみえになる、一年に一万人がかわるということなんですね。業界全体だと、二十六万人の営業マンで約半分がかわるというふうに私ちょっと聞いておるんですが、それがもしそうだとすると、そういう中で本当に職員とのきずなを大切にし、この部分、そしてお客様、御契約者とのきずなをどうやって構築されていく、きずなを深めていかれるのかなということを、実は考えるわけです。

 その辺は、理念としてはわかるわけですけれども、具体的に、では、そういう現状の中で、その社長のお考えをどうやって徹底されていかれているのか、その辺のところをお示しいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 私は、三年近く前に社長に就任いたしまして、最初に発信した職員向けのメッセージはこういうものでございました。先ほども冒頭陳述で御紹介させていただきましたけれども、生命保険の果たしている社会的な役割を深く認識をして仕事に取り組んでいこうということでございまして、死亡保険金で三兆数千億、手術、入院給付金を合わせますと四兆五千億円、一日当たりに換算しますと百二十億円を日本の御家庭にお届けして、生活の安定にお役に立っている、こういったことを深く認識して仕事に取り組んでいこうということを呼びかけまして、それから、さっき御紹介しましたような形での職員満足度調査というものを実施して、これは両方とも、図らずも、お支払いのところに焦点が当たった、そういった発信でもございました。

 そういうことで、私は、今回十分な形でなくて、いろいろな形で御契約者に御迷惑をおかけしたわけでございますけれども、私どもが社内で発信している私自身のメッセージと、今申し上げましたような施策なかりせば、さらに御迷惑が大きかったとも考えておりまして、今後は、こういったメッセージにふさわしい、さっき申し上げました、お客様に絶対御迷惑をかけてはならないという考え方をまず基本に据えた施策を細部にまで構築していきたいというふうに思います。

鈴木(克)委員 残念ながら時間がなくなりました。最後に、約款の話をさせていただきたいと思います。

 ここに今、「堂堂人生」という御社の生涯設計という保険の約款を持ってまいりました。これは、私、ちょっと正直言って、とても読む気にならないですね。この約款を、やはりもっとわかりやすく、そして、本当にユーザーの側に立った形に変えていただくという努力をしていただかなきゃ、これはなかなか本当に、まだこれでもよくなったとこの前おっしゃっていましたけれども、前はもっと小さかったんですと言われちゃって、それはどういうことだと言ったわけでありますけれども。

 いずれにしましても、御契約者第一主義ということで掲げてみえる御社にして、この約款というものに対して、今後どのように改善をされていくおつもりなのか、最後にお伺いしていきたいと思います。

斎藤参考人 お答えいたします。

 約款について、さらに平明化していくということは、御指摘のとおり、必要だというふうに思っております。

 約款自身は、御契約者との権利義務の関係を規定しなければいけないというものでございますので、条文数を減らすということは難しいわけでございますが、御指摘のとおり、言葉遣いを平易にする、あるいは文章の構成というものを平易にする、こういうことを改善する余地がまだ十分あるというふうに思って取り組んでいるところでございます。

 私どもは、今般、A5判からA4にいたしまして、文字を大きくするというところから取りかかっておりまして、御指摘の方法で努力をしたいというふうに思います。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、終わります。

 どうぞ、ひとつ、二度とこのような問題を起こさないように、本当の意味で国民の役に立つ保険業界として頑張っていただきたい、このことをお願い申し上げて、終わります。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 契約どおり保険金を払われないということであれば、これは契約違反ということになるわけでありまして、やはり、業界として、あるいは生保の会社としての根本が問われているというふうに私は思います。

 二〇〇五年の明治安田生命の不適切な不払いを発端にして、それ以外にも不払いがあったという事態、これが判明をする。そして、生保会社全体に、金融庁が再調査を要請したわけであります。締め切りは四月の十三日ということでありましたが、三十八社に対して、追加的支払いを要する保険金等の件数及び金額について報告徴求を受けたと思いますが、報告をした会社というのは、その三十八社のうち何社でありますか。それから、報告しなかった会社は何社か、お答えをいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 生命保険協会といたしましては、今般の金融庁の報告徴求命令といいますのは各個別会社に発出されたものでございまして、取りまとめをするという立場にはございませんので、大変申しわけございませんが、全体の数字については把握をしておりません。

佐々木(憲)委員 これだけ重大な問題になっているんですから、どのような実態になっているのか、せめて報告した会社は何社かぐらいは掌握していただきたいと思うんです。

 金融庁の報告によりますと、報告がなされたのは極めて少数であります。圧倒的多数は報告がされておりません。それは、期限までには間に合わない、こういうことでありました。これは、第一生命の場合はいかがでしょうか。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 私どもは、四月十三日に報告はさせていただきました。

 ただし、先ほどの第三の分野、案内不足による請求漏れ、この分野については、四月十三日までに、大変遺憾ながら報告をするに至っておりませんでした。

佐々木(憲)委員 報告が十分になされておりませんで、調査中というところが圧倒的多数でありまして、六月末ですとか、あるいは九月末、こういうことになっているわけです。それだけ事態が深刻であるというふうに私は思います。

 具体的にお聞きしますけれども、保険に加入してから支払いまでの間には、相当長い期間というのがあります。個人でいうと、契約したときにどのような内容であったかというものを、うっかり記憶がなくなったり、忘れてしまうというようなことがあると思うんですね。請求漏れというのはそういう中で発生するわけであります。

 基本的な考え方ですが、それは個人の責任なのか、それとも会社側にそれをフォローする責任というものがあるのか、どちらに基本的な責任があるとお考えですか。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 私ども、この問題につきましては、長らく私どもの会社で、第一生命で、御契約者第一主義ということを標榜してまいりました。御契約者第一主義という言葉が、お題目ということではなくて、お客様に対するコミットメントであるというふうに私どもは言い聞かせておりまして、コミットメントだとすれば、今御指摘のような請求漏れをお客様に起こしてはならないというふうに思い、先ほど申し上げましたとおり、意識改革をして、今後、これ以降、お客様に請求漏れを起こしてはならないということを基本に据えた施策を展開しているところでございます。

佐々木(憲)委員 午前中視察をいたしました明治安田生命では、追加情報による支払い可能性のあるものは、十七万七千八百件ほどありました。契約ベースでいうと十二万件だそうです。この全件に案内を出しているわけです。支払われる可能性がありますよという案内ですね。具体的に、そのうち、払うことになりそうだというのは、九万件ぐらいあるというふうにお話をされておりました。

 そこで、第一生命の場合は調査未了件数が約十四万件あるというふうに聞いておりますけれども、このうち何件に案内を出されているのか、それから、支払わなければならないと想定されるのは何件ぐらいか、教えていただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 私ども、調査未了は、四月十三日の時点で十四万件余りという形で発表させていただいております。この多くの部分が通院特約でございますが、これについて、私どものアプローチといたしましては、さっき申し上げましたとおり、これを含めて六月末までに請求案内をすべき御契約を特定するという方向で、現在進めております。

 これは、いろいろな方法としては、例えば通院特約についてはかなりの数についてお出しをできるという体制にあるわけでございますが、実は、私どもは、お出しをした後のお客様の反応というものをやはり判断して、これを分割してお出しをするという必要があるというふうに思っています。

 十数万の発信をして、お客様から、十数万の方から照会の電話が来る、そういうことの対応が十分できるかどうかということを判断して、これを分割してやっているところでございます。したがいまして、現時点でそういうアプローチをとっているがゆえに、他社さんに比べてあるいは発信件数が少ないという事情はございますが、最終的なターゲットまでには、お客様との間で極めて丁寧な対応をしていけるというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 専門的な知識を持っている職員が私は大切だと思うんです。

 先日も、当委員会で、私は山本大臣にお聞きをいたしました。この問題は大変重要であると。といいますのは、十年ほど前ですけれども、生保の内勤者は九万九千四百八十七人、これが十年後には七万五千二百七十八人と、二万四千人余り減っているわけです。それから営業職員、これは外回りの職員ですけれども、十年前は三十六万八千五百六十一人、それが二十一万一千五百二十二人、十年間で約十六万人近くマイナスになっているわけです。これは大変重大な減少だと私は思うんです。

 保険の商品の中身が非常に複雑化する、専門的に説明をしなければならない能力のある人が求められている、にもかかわらず、業界全体としてこれだけの数が減少している。先ほどもお話がありましたけれども、第一生命の場合も減っている。そうなりますと、お客様との関係で、非常に説明不足、あるいは親切な対応というものがおろそかになる、こういう事態を招きかねないと私は思うわけであります。

 今後、職員の、これは質の向上ももちろんあるとおっしゃりたいんでしょうけれども、問題は、これはフェース・ツー・フェースの関係ですから、やはり一定の数が必要なわけでございます。そういう職員の数の確保、あるいはそれをふやしていく可能性といいますか展望、この点についてお聞かせいただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えいたします。

 まず、内勤職員もかなりの数が減っていることは事実でございます。ただ、今回の事案にかんがみ、保険金の査定担当者、これについての人員減というものはこれまでございません。

 それから、全体の運営といたしまして、おっしゃるとおりフェース・ツー・フェースでございますので、できる限り、一人の営業職員が受け持つお客様の数というものが一定数以上にはならないような形で営業職員の数がある程度確保できるということが大切だと思い、そういった形で努力はしているところでございますが、一方で、今日まで、主にマーケットの事情がございます。バブル崩壊以降の金利の低下ということで、金利の低下ということは、保険料を引き上げざるを得ない、そういったことにもつながりまして、そういう環境悪というものが主因として営業職員の数が減少してきたことは事実でございます。

 一方で、お客様に対する対応といたしましては、この部分については、コールセンターというものを充実して、お客様からコールセンターに直接電話をしていただくことによってすべてのお手続が完了できるという方法も別途とっているところでございます。

佐々木(憲)委員 最後に確認をしたいんですが、協会の会員会社がこれまで国民政治協会に政治献金を行っているわけですが、二〇〇六年、二〇〇七年も同様に行っているのかどうか、その金額は幾らか、教えていただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えいたします。

 生命保険協会として政治献金をしているということはございません。また、私ども会長会社として、他社さんがどうされているかということについても把握をしているところでもございません。

佐々木(憲)委員 日本経団連が要請をしているということは、各協会を通じて、銀行の場合も行われておりました。

 では、具体的に聞きますが、第一生命としては二〇〇五年に八百六十七万円の献金を行っていますが、二〇〇六年、二〇〇七年も同様に献金をされているのか、その金額は幾らか、教えていただきたいと思います。

斎藤参考人 お答えをいたします。

 政治献金の実施に当たりましては、政治資金規正法等の趣旨を踏まえまして、社会情勢、経営状況等を総合的に勘案した上で行っております。

 二〇〇六年についても行っておりまして、九百九十三万円の政治献金を実施してございます。なお、二〇〇七年については、本日までのところ実施をしてございません。

 以上です。

佐々木(憲)委員 私は、契約者に対して不払いを起こしているという状況のもとで、自民党というか政権党には献金する、こういう構図が果たして社会的に信用をかち取ることになるのかどうか、これはよく検討していただきたい。これは要望であります。最後に申し上げて、終わりたいと思います。

伊藤委員長 これにて斎藤参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人に一言御礼を申し上げます。

 参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

伊藤委員長 引き続き、金融に関する件について調査を進めます。

 ただいま参考人として社団法人日本損害保険協会会長石原邦夫君に御出席をいただいております。

 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人におかれましては、忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、石原参考人から十分御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、石原参考人、お願いいたします。

石原参考人 日本損害保険協会会長の石原でございます。

 一昨年来、付随的保険金の支払い漏れ、医療保険など第三分野商品にかかわる不適切な不払い、また火災保険契約の保険料誤りなどによりまして、お客様を初め関係者の皆様に多大なる御迷惑をおかけいたしました。こうした事態がたび重なって発生いたしておりますことにつきまして、損害保険業界を代表して深くおわび申し上げる次第でございます。

 損害保険協会並びに会員各社は、こうした事態を厳粛に受けとめまして、皆様からの信頼を一日も早く回復すべく、全力を挙げて取り組みを進めているところでございます。

 次に、これらの問題の経緯、原因並びに再発防止策につきまして御説明申し上げたいと存じます。

 まず、問題の経緯でございます。

 自動車保険の臨時費用保険金など、主たる保険金が支払われているにもかかわらず支払い漏れのあった、いわゆる付随的保険金の支払い漏れにつきましては、金融庁からの報告徴求命令を受け、各社が調査を行った次第でございますけれども、本年四月末の段階で、二十六社合計で約四十七万件、三百四十九億円の支払い漏れが判明しております。

 今申し上げました支払い漏れには、大別いたしまして二つの類型がございます。一つは、例えば自動車の修理費用など車両保険金をお支払いした際に、これに付随して支払うことが可能な代車費用保険金の支払いを行っていなかったというようなケースでございます。もう一つは、例えば契約車両に乗車中のお客様が他の車に衝突され、けがをされた場合、定額にて給付いたします搭乗者傷害保険金の支払いを行ったケースでございます。この場合、お客様は、衝突してまいりました加害車両の保険会社から賠償金を受け取ることになりますが、事故の状況などによりましては、休業損害あるいは慰謝料などを補償する人身傷害補償保険金もお支払い可能な場合もございます。ところが、この支払いを行っていなかったという、これはいわゆる組み合わせに関する保険金の支払い漏れと称するものでございます。

 後者の組み合わせに関する保険金の支払い漏れにつきましては、各社における検証作業の過程におきまして、複数の保険会社が関係した事故の調査が不十分であるということが判明いたしました。その後、各社は追加調査を行いまして、現在、一部会社を残しまして既に検証を終了し、先ほど申し上げました結果について対外的な発表を行ったものでございます。

 続きまして、医療保険など第三分野商品に関する不適切な不払いにつきまして御説明申し上げます。

 本件につきましては、昨年七月、金融庁から報告徴求命令を受け、各社が調査を行いましたところ、本来支払うべき保険金を支払っていなかったといういわば不適切な不払い案件が、二十一社において五千七百六十件、約十六億円存在していることが判明いたしました。これによりまして、本年三月、十社に対しまして、業務の一部停止を含む行政処分が行われたところでございます。

 不適切な不払い事案の例でございますけれども、例えば、保険金の支払い対象でない、保険始期以前に発病していた疾病の認定が適切でなかった事例、契約時の健康状況に関する告知が事実と異なったものであった場合の事実確認あるいは手続などが適切でなかった事例などがございました。

 なお、こうした保険金の問題のほかに、例えば火災保険の場合でございますと、保険料の割引適用あるいは構造級別の適用さらには保険金額の設定などに関する御契約保険料の適正性につきまして、損害保険協会といたしまして自主点検を実施することとしております。加盟各社は、昨年末より、保険契約全般にわたりまして、個々の御契約内容あるいは保険料につきましての点検を実施しているところでございます。

 次に、これらの問題の発生原因でございます付随的保険金の支払い漏れにつきましては、自由化、規制緩和によりまして、また契約者ニーズの多様化、高度化を受け、積極的に行われました新商品の開発の結果、各社の商品ラインナップあるいは商品内容が複雑化してきている、こういう状況にございます。

 本来でございますと、これらに対応したシステムあるいはマニュアルなどの体制整備が必要だったわけでございますけれども、結果として、こうした手当てが不十分であったということだと考えております。

 具体的には、付随的保険金の支払いを的確に行う、こういう観点でのマニュアル、チェック体制、特にシステムによるチェック体制などに不備があったこと、お客様に対する商品内容あるいは保険金請求に関する説明が不十分であったことなどが主な原因と考えております。

 また、第三分野商品の不適切な不払いでございますけれども、これは、損害保険業界として新しい分野に進出するに当たりまして、保険金支払いの実務的なルール、規程、マニュアルの策定に当たって、疾病を対象とする医療保険の特性というものが十分踏まえられていなかったということ、支払い実務担当者に対する医療に関する専門的知識などの教育体制が不十分であったこと、また、商品設計において社内各部門の連携体制が十分でなかったことなどが主な原因と考えております。

 いずれにいたしましても、このようなお客様対応上重大な問題を早期に発見し、適切に対応策を講ずるべきであったものと真摯に反省しているところでございます。

 続きまして、再発防止策でございます。

 現在、各社におきましては、それぞれの原因分析に基づいた再発防止策を経営上の最重要課題として取り組んでいるところでございます。

 具体的には、支払い漏れへの対応策として、マニュアルなどの再整備、支払い実務担当者に対する教育等の徹底、システムチェック体制の整備などを行っております。

 また、第三分野商品におきましては、医療などの特性を踏まえた支払い実務の見直し、マニュアル類の整備あるいは支払い実務担当者に対する教育等の実施、支払い業務を集中化するなど、支払い体制の再構築などを行っているところでございます。

 また、一連の問題を踏まえまして、商品、サービスの品質管理体制そのものを一から見直し、社内の関係各部門が密接に連携して、入り口から出口まで、お客様の視点からの商品開発、募集における御説明、保険金のお支払いを行う体制を構築しているところでございます。

 損害保険協会といたしましては、このような極めて厳しい状況から一日も早く脱却し、皆様の信頼を回復できますよう、協会みずからが先頭に立って対策を講ずるとともに、会員各社の取り組みを強力にバックアップすることが喫緊の課題であると認識し、鋭意取り組みを進めているところでございます。

 例えば、消費者の皆様の声を真摯にお聞きし、しっかりと受けとめた上で迅速かつ機動的に対応していくという観点から、委員の過半数を外部の有識者といたします「消費者の声」諮問会議を設置いたしました。

 これまで、募集文書の表示のあり方、募集人の資質向上、保険商品、約款のわかりやすさなどについて提言いただいているところでございまして、これらの提言を踏まえ、具体的な対策を講じているところでございます。

 例えば、保険金支払いに関するガイドライン、募集コンプライアンスガイドなど、業界共通の基準となる自主ガイドラインを策定いたしました。また、契約者等への適切な情報提供といった観点から、保険契約の手引や保険金請求の手引などのいわゆるバイヤーズガイドを作成いたしました。さらに、協会に対して寄せられます苦情などの消費者の皆様からの声を会員各社に的確にフィードバックするために、そんがいほけん相談室の体制強化を図ったところでございます。

 以上、るる御説明申し上げましたとおり、当業界といたしましては、実態把握に基づく原因追求と再発防止に向けまして、業界を挙げて取り組んでいるところでございます。一刻も早く信頼回復をなし遂げた上で、損害保険が担うべき安心と安全の御提供を通じて国民生活の安定あるいは経済社会の活性化に寄与するといった社会的使命を果たしてまいりたいと存じます。

 引き続き、皆様方におかれましては、私どもに対しまして御指導賜りたく、よろしくお願い申し上げる次第でございます。

 以上でございます。(拍手)

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、大変お忙しい中、損保協会の石原会長、御出席を賜りまして、ありがとうございます。

 きょうは、会長もおっしゃっておられた、保険金の支払い漏れであるとか、不適切な事例についてお伺いをするわけでございますが、まず初めに、このこととはちょっと離れるわけでありますが、金融ビッグバンが橋本内閣からスタートいたしまして、本年の五月には一年おくれの三角合併までスタートいたしまして、金融改革がずっと進めてこられたわけでございます。この金融改革というのは、いわば鎖国の状況であった日本の金融を開国していくということ、また、金融業界の皆さんに国際的な力をつけていただくということを念頭に入れた改革であったわけでございます。

 それで、私もイスラム金融というものを、大変な規模に今なってきておりますので、国内にこれを引っ張ってくることが必要であるというようなことを申しておりまして、やっておるわけでございますが、どうも聞くところによりますと、石原会長の東京海上さんではタカフルというイスラム金融向けの商品も開発をされまして、イスラム金融のいろいろな会議に出ましても、非常に評判が高いわけであります。

 このように、中国で国際競争力をつけたような企業の戦いと申しますか、中東地域でも頑張っていらっしゃるわけで、こういう時勢のときにこのような事案が生じたということは私は残念な思いでいっぱいなわけであります。

 そもそも損害保険というのは、突然の不幸、事故によって発生する経済的また心理的負担に備えるものであり、国民生活に密接に関係をしておる非常に重要な存在でございます。

 今回の事例が出まして、先ほども会長の方からお聞きしますと、付随的な保険の支払い漏れについては、二十六社四十七万件、三百四十九億円と結構大きな金額になっております。契約をされている国民の皆さんにもやはり戸惑いがあるわけでございますが、一刻も早く、今までいろいろな再発防止策をおっしゃったわけでございますが、それを講じられて、国民の信頼を回復していただかなければならない。このような保険が不安になってまいりますと、国民そのものが非常に不安になってくる、こういうことになるわけでございます。

 こういう、安心して国民の皆さんが保険に加入できるというような状況に持っていっていただきたいと思うわけでございますが、初めに、損保協会の会長といたしまして、先ほど若干御指摘をされましたけれども、このような信頼回復について、もう一度お考えをお示しいただければというように思っております。

石原参考人 先生御指摘のように、私ども損害保険業界として担うべき役割といたしましては、今日の国際化の中で、特に世界が、安心と安全という観点でいろいろ問題を生じております。そういった中で、損害保険が、国民生活の安定、世界の経済的な安定あるいは経済社会の活性化に果たすべき役割は本来非常に大きいものだと思っているわけでございますけれども、ただ、あくまでも、それをやっていくためには、私どもが社会の皆様、消費者の皆様から信頼いただいて、御支援いただくことが何よりの前提でございます。

 そういった中で今回いろいろな問題が生じましたことはまことに私どもとしては痛恨に思うわけでございまして、こういった事態を一刻も早く脱却して、次なるステージに向けて我々も努めなければいけないということを感じている次第でございます。

 したがいまして、まずは、我々としては信頼回復に経営の最大の精力を注ぐ、その後に今申し上げましたことをどんどんやっていきたい、こういうふうに思っている次第でございます。

谷口(隆)委員 再発防止策で、マニュアルをもう一度徹底するだとか、例えば教育であるとかシステムであるとか、このようにおっしゃったわけでございますが、もうかなりの件数の契約をやっていらっしゃるわけで、そういたしますと、これはなかなかシステムがしっかりしていかないと、当然ながら今回のような不払いが起こり得る状況にもなりかねない。特に、今回保険商品に附帯する特約から生じたことで、非常に複雑な内容になっておるというようなことが原因であったようでございます。

 それで、やはり高度なシステムサポートをやっていく必要があるのではないか。そのためには設備投資もなかなか多額に上るわけですけれども、このような設備投資、いわば損保業界、生保業界もそうでありますけれども、装置産業、システム産業というような位置づけさえされておるわけでありますが、今回のこの事例、支払い漏れであるとか不適切な事例を踏まえまして、業界として相応のこのようなシステムの設備投資をどのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

石原参考人 先生御指摘のとおりでございまして、私ども、損害保険業務を営んでいく上におきましては、その裏づけとしてのシステムというのは今必須のこととなっております。あらゆる私どもの活動にシステムというものが裏づけとなってきているということがございます。

 今回問題になっております保険金のお支払いに関しましても、例えば、契約者の皆様方から事故の報告をお受けいたします。その際に、契約者の方々がおつけいただいている保険金、保険の種類、そういった中で、どういった保険金をお支払いすることができるか、それをすべて一覧にいたしまして契約者の方に御案内する。そして、実際の事故処理を行う中で最終的なお支払いがそれとの間でどういうそごがあったかということについてフォローをしていく、こういうことが必要になってまいります。

 こういった一連のプロセスを遺漏なくやっていくためには、もちろん私どもの職員のノウハウというのも必要でございます。そういったことで要員の拡張も進めているわけでございますけれども、どうしても人間にはヒューマンエラーというものがございます。そういったものを最小化するためのシステム投資は私どもにとって必須でございまして、損保各社とも、いずれもそういった将来に向けて、あるいは現在の対応の中で、システム投資というものは経営にとって非常に大きな課題となっているということであろうかと存じます。

谷口(隆)委員 これは業界各社の問題でございますので、業界の方からそれをリードしていくようなことをしていただいて、やはり、現状の問題点のそもそもの原因を分析された状況をお話しされておったわけでありますけれども、システムの一層の徹底といいますかシステムサポート、それに対する、金もかかりますけれども、設備投資もしていただければというように思うわけであります。

 これは先ほどの生命保険のところでも聞いていらっしゃる方がいらっしゃいましたけれども、損保も同じく、契約者の立場に立ちますと、約款が非常に複雑でわかりにくい。まあ、普通の人は余り約款の詳細まで読んでいないというのが一般的なんだろうと思うんですね。損保協会として、より一層保険約款のわかりやすさということについて努めていただかなければならないわけでございますが、何か今考えていらっしゃることがございましたらおっしゃっていただきたいと思います。

石原参考人 先生御指摘のとおり、冒頭申し上げましたのは、私ども損害保険は、保険の自由化、あるいはお客様のいろいろなニーズが高度化、多様化していく中で、そういった御希望におこたえする形で新しい商品をどんどん開発してまいりました。

 その裏腹の関係として今回一連の問題も発生したということも言えるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、社会の複雑化、それすなわち、私どもの保険約款の複雑化にさらに相乗効果としてあらわれてきているのではないかということになっているわけでございまして、逆に言えば、今回の問題は、私どものいわば商品の表の顔とも申します約款がわかりにくい、平明さを欠いている、そういうところにあったのではないかと私ども自身も反省しているわけでございます。

 現在、私どもといたしましては、約款のわかりやすさを追求すると同時に、その約款を御説明するために、お客様に対しまして、御契約に当たってどういうことを御注意いただいたらよいかというようなことを、いわゆるバイヤーズガイドと申しますが、これを策定いたしまして契約者の方の御理解を深めていただく、あるいは、契約の概要ですとか重要情報といったものを約款に添えて御案内するということもしております。

 さらにこの四月からは、御承知のとおり適合性の原則が適用される中で、私どもはそれに対応する形でお客様の意向確認ということを行っております。そういう中で、これをいかにわかりやすく、なおかつお客様の間違いのないようにしていくかということが大事かと思います。

 ただ、根本的に申し上げますと、約款そのものが余りにも複雑怪奇になっているのではないか、こういう反省がございます。したがいまして、これは「消費者の声」諮問会議の先生方からも御指摘いただいたわけでございますけれども、協会が主導権を握りまして、ぜひ各社の約款の平明化、簡易化に取り組んでまいりたいということで、プロジェクトチームを立ち上げまして検討に着手したところでございます。一刻も早くその実りがあるよう私どもとしても頑張ってまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。

谷口(隆)委員 これも先ほど会長の御報告のところであったわけでございますが、付随的な保険の支払い漏れが、二十六社四十七万件、三百四十九億円ですか、第三分野のところでは、二十一社五千七百六十件、十六億円と。

 このように見ますと、これは個社の問題ではない。特定個社がこのように多額に、また件数も多く出てまいったら、これは国民全体の立場から見てもこのようなことは決して許されることではないんですが、状況を分析しますと、これは定性的な問題なのではないかというふうに考えられるわけでございます。

 ですから、二十一社であるとか二十六社であるとか、大体業界のところは大なり小なりこういう支払い漏れが生じておるというような状況を踏まえまして、単独個社は当然ながら考えていただかなければなりませんが、一方で業界横断的に発生しておるという共通した問題がここにあるというようなことでございますので、これは業界が一丸となってやっていただく必要がある。

 そういう意味では会長の立場というのは非常に重要な立場になるわけでありますが、業界一丸となってやるということの視点で申し上げますとどのようなことを今考えていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいと思います。

石原参考人 先生御指摘のとおりでございまして、今回の問題、業界各社に共通して発生してございます。

 したがいまして、私どもといたしましては、業界が一丸となって取り組んでいくことが何よりも重要ではないか。もちろん、個社の関係は競争関係にございます。ただ、こういったコンプライアンスの問題等々については、共通の目線に立って、共通の地盤に立って問題に取り組んでいく必要があるのではないか、こういうふうに考えている次第でございます。

 その際には、やはり協会が一歩も二歩も先んじて業界をリードしていく必要があるのではなかろうか。そういう観点から、昨年九月、私は協会長に就任したわけでございますけれども、例えば、先ほど申し上げました保険金支払いに関するガイドライン、共通の基準、スタンダードを決める、あるいは保険金を御請求いただく場合の手引についてユーザーの方々に御案内するということも、我々の共通基盤としてつくることといたしました。

 そのほか、今申し上げましたような信頼回復に向けた取り組みにつきまして、先ほどの約款のわかりやすさということもそうでございますけれども、業界が共通に、業界のポジションを上げていくために努力しなければいけない。しかも、なおかつそれが業界共通のインタレストになり、またお客様のためになるという取り組みについてはさらに一層協会として主導権を握ってやっていく必要があるというふうに思い、さらにこれを徹底していくつもりでございます。

谷口(隆)委員 冒頭申し上げましたように、業界各社は、それぞれ、国内のみならず海外にも出ていかれて、今、国際競争のさなかだと思うわけでありますが、国内でもしっかり頑張っていただいた上で、ぜひ業界全体としても海外に目を向けていただくことが、これは国民経済にとっても大変有益であるわけでございます。

 ですから、今回の問題、会長の方からは、非常に細かい観点から今頑張っているんだということを御報告受けたわけでありますが、ぜひ底ざらいをしていただいて、一刻も早く国民の保険に対する信頼を取り戻していただくように業界の方でも御努力いただきますようお願いを申し上げまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

伊藤委員長 次に、小沢鋭仁君。

小沢(鋭)委員 民主党の小沢鋭仁でございます。

 きょうは、損害保険協会の石原会長には、御多用のところ御参加を賜りまして、ありがとうございます。民主党としてお礼を申し上げます。

 先ほど来、御説明があり、また質疑が続いているわけでありますが、私がこの損保の不払い問題に最初に接したときの実感を申し上げますと、一言で言うと驚いたんです。驚きでありました。先ほど石原会長がお話しいただいた付随的な不払いのところで、四十七万件、三百四十九億円、こういう数字だったと思いますが、いわゆる損保業界というのは、私もずっと銀行などで仕事をしたりしてきた経験からすると、ある意味では大変しっかりしたジェントルマンの業界だ、こういうイメージがありました。一言で言って、学生諸君の就職希望も大変高い、そういった希望率を誇っていた業界でもあるわけであります。

 その損保業界で、先ほどヒューマンエラーというお言葉を会長はお使いになりましたけれども、一件あったなとか二件あったなとか、各支店でそれぞれあると十件とか二十件かな、こういう話ならばヒューマンエラーというのも確かにあるな、こういうことでありますが、正直言って、この四十七万件、三百四十九億円という数字は、これは一体どうしたことなんだろうかということであります。

 ですから、協会の皆さんが、この問題が起きてから、それぞれ財務金融委員会の委員のところへ御説明いただいたりもしたんだと思います。私のところにも来ていただきましたが、そのときも申し上げたのは、幾ら何でも多過ぎるよね、こういう話を申し上げたところであります。

 そして、今、さきの谷口委員からもお話がありましたように、個社だけではない、残念ながら業界全体にかかわる問題。そして金融庁としても、いわゆる一罰百戒ではなくて、これはもう一斉処分をせざるを得ない、こういう形での処分、こうなったわけであります。

 そういった意味では、まず、損保協会の会長として、あるいはまた歴史ある東京海上の社長として、こういったことが発生したことに対して、国民、契約者に多大なる心配と不安をもたらしている状況について、率直に今どんな責任をお感じになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

石原参考人 先生御指摘のとおりかと存じます。

 私どもといたしまして、今回の保険金のお支払い、あるいは契約にかかわる各種問題につきまして大変多くのこういった事態が生じていること、並びにそれが業界において共通の課題として出ている、その結果、消費者の皆様方に大変な御迷惑と御心配をおかけしていること、まことに申しわけなく、責任を痛感している次第でございます。

 損保業界といたしましても、あるいは個社といたしましても、今回の問題は、私どもの業務、すなわち保険契約をいただいた時点からお支払いするまで、私どもの業務の入り口から出口まですべての業務プロセスにおいて一から見直して、そういう中でお客様の信頼回復に努力しなければいけないと痛感しているところでございます。

 まず、損保協会といたしましては、今申し上げました信頼回復、これを至上命令といたしまして各業界レベルの施策を講じているところでございますけれども、ただ、まだこの道は半ばであるというふうに存じております。この道は継続しながら行っていく中で、信頼を一刻も早く回復するようにということは業界全体の使命であるというふうに考えている次第でございます。

 一方、個社といたしましては、先月、不適切な不払い、あるいは付随的保険金の支払い漏れなどの一連の問題の再発防止策につきまして、金融庁に業務改善計画を提出したところでございます。これらの再発防止を着実に実行すること、そしてそれを行うことによって皆様からの信頼を一刻も早く回復するようにすること、それを私どもにとりましての至上命題といたしまして、また経営上の最大の課題といたしまして取り組んでまいる所存でございます。

小沢(鋭)委員 報道によりますと、石原会長自身は辞任も表明し、ある意味ではすべての責任をおとりになる覚悟で、改革といいますか対応を進めているというふうに承知しているところでありまして、ぜひ、今おっしゃっていただいたようなまさに改革、改善をしていただいて、損害保険への国民の失った信頼を取り戻していただきたいと、まず御要望を申し上げておきます。

 それから次に、先ほど、発生原因なり発生防止策なりの説明を受けたわけでありますが、もう一つ踏み込んで、いわゆる経営者の立場から、こうした問題が起こった最大の原因というのは一体何なんだろうかというところを率直に聞かせていただきたい、こう思うんです。

 というのは、先ほども申し上げましたように何万件という数字ですから、そういった意味では、今回、金融庁から、調査しろよ、こういう話が出る前から、恐らくそういった話があるみたいな話は、それぞれ個社の中でも協会の中でもあったのではないかとも思うわけです。ですから、そういった意味では、そういうことがあっても、何となくここは、抑え込んじゃえばいいんだとか、あるいはもっと言うと組織ぐるみでそういったものは対応してきているとか、そういうことがあったのではないかということも実は危惧されるわけでありまして、そういった、例えば組織ぐるみ、意図的な保険金の不払い、支払い漏れ、そういったことはなかったのかということをもう一回お尋ねしたいと思います。

石原参考人 今回の一連の問題の原因でございますが、基本的に、私どもといたしまして、最大の原因は何だろうかといろいろ考えております。

 ただ、先ほど申し上げましたように、保険の自由化が参りました、そして規制緩和がどんどん行われてまいりました。一方、この背景といたしまして、契約者の皆様方のニーズがどんどん多様化しております、また高度化しております、あるいは個別化しております。そういったお客様のニーズにある意味で損保業界としておこたえするために、新しい商品の開発というのをどんどん行ってまいりました。

 ところが、その結果として何が生じたかということは、各社の商品ラインナップが余りにも複雑になってきた、商品内容そのものも複雑になってきたということで、お客様の理解との間でいわば情報の非対称性というのがより際立つような形になってしまったということだったかと思います。

 そういった場合には、当然のことながら、私どもとして、先ほど申し上げましたようなそれを裏づけるべきシステム手当て、マニュアルの手当て、あるいはそれを担当する者の教育ですとか、そういったことが同時並行的に行われなければいけなかったのが、どうしても新商品開発の方に目が向いてしまって、それが後手に回ってしまったのではないかということを率直に反省している次第でございます。

 第三分野についても同様の問題があろうかと思います。第三分野にいたしましても、私どもにとっては新しい分野でございます。それに進出していくときに、医療あるいは疾病といった非常に特殊な要因がございます。そういったものに対する十分なノウハウなり教育なりという裏づけ、あるいは判断基準というものをきっちりとやった上で我々はやってきたかという点で反省がございます。そういったようなことが今回の原因につながったのではないかというふうに考えている次第でございます。

 したがいまして、私どもとして、今回の対応というのは、そういった対応が不十分であり、後手に回ってしまったということかなと思いまして、決して私どもが組織ぐるみあるいは意図的に行ったものではない、こういうふうに認識している次第でございます。

小沢(鋭)委員 金融自由化の話はつい先般のこの財務委員会で私も議論をさせていただいたんですが、本当に大変なスピードで進展をしていて、そういう中でのいろいろな多様化の問題だ、こういう会長のお話でありましたが、一言で言うと、いろいろな競争がある中で、あるいは国民が望む中で、主たる商品は支払ってきたけれども、言葉はちょっと適切ではないかもしれませんが、おまけ的な、おまけがいっぱいあり過ぎて何が何だかわからなくなったみたいなところがあるのかなというふうに私なんかは受けとめさせていただいているところであります。

 続きまして、先ほど生保のところで、私どもの鈴木委員の方から、いわゆる人事の仕組みとしての保険金の払い方の話が出ました。一言で言うと、生命保険会社というのは、社員の皆さんがきちっと保険金を払うとそれに対して報奨金や何かを払う制度がある、だから一生懸命保険金を払うようにしているんだ、こういうお話があったんですが、逆に言いますと、損保業界というのは、ある意味では、代理店の皆さんが販売をしていく、こういう話になって、そうすると外の人ですから、会社の中としては、できるだけ払わない方が得だ、こういうふうなふらちな考え方も起こり得る可能性がある。

 例えば火災なんかのときも、全壊ではなくて半壊にすれば保険金が半分で済むとか、査定をうまく低く減額した人が逆に評価されるとか、そういうようなことは、会社の体質としてあるいは業界の体質としてないんでしょうか、人事の評価として。

石原参考人 私ども、人事はいろいろございますけれども、保険金支払い担当部門について申し上げますと、何が一番大事かと申しますと、契約者の皆様あるいは被害に遭われた方々のお話を十分にお伺いする、そういう中でいかに迅速かつ適正な保険金をお支払いするか、これが私どもの使命でございます。この使命を果たしているかどうか、これがまさに評価のポイントでございまして、御質問のような実態はないものと考えております。

 例えば、私ども個社の例になりますけれども、損害保険保険金の支払い部門における三つの約束というのがございます。これは何かと申しますと、まずは、お客様あるいは被害者の方にいかに親身・誠実であるか、そして高い専門性を持って対応できるか、それと同時に、お客様あるいは被害者の方々とコミュニケーションを持って対応しているか。親身・誠実、高い専門性、コミュニケーション、これを遂行することによって初めてお客様の満足度が上がるのではないか、この満足度というものをいかに向上させていくのか、これが評価の基準になっております。

小沢(鋭)委員 次に、これまた先ほど来議論になっております、いわゆる請求主義からお客様主義へ、こういう、ある意味では価値観の転換といいますか経済文化の転換といいますか、このことに関しての御意見を賜りたいと思います。

 これはどういうことかといいますと、よく、日本の社会というのは余り契約社会じゃないんだ、こう言われますね。さっきも約款の話が出ていましたが、いっぱいある、なかなかそこが見られない。だけれども、そこの中で請求されたものはきちっと当然対応する。しかし、請求されないものまで、別に、さっきのおまけみたいな商品のところは気がつかないし、支払わなくても何となく済ませていた。

 だけれども、今度、逆に言うと、請求されないことであっても、お客様、これは請求できるんですよとわざわざお客様の立場になって、そしてある意味では請求を手伝ってあげてやっていきなさいよ、こういうふうになったわけですね。だから、いわゆる通常の契約よりも半歩踏み越えてというか、ユーザー第一主義、これは大変結構なことだと思いますが、でも、会社としてはこれまた大変ですよね、そういうことまでやっていくという話になりますと。

 ついでに余計なことを言うんですが、今年金の話をずっと厚生労働委員会でやっていますが、日本の年金で社保庁が年金データをなくしたんです。これはどうしてくれるんだと言ったらば、それの立証責任は国民にあるんだと今言っているんです、厚生省は。

 これはもうどうにもならないひどい話だと僕は思っているんですけれども、それに比べれば、今の損保の皆さんたちというのは、請求されたものは必ずやっている、請求されないものまでやるんだと。こういう話は、本当にこれはもうざっくばらんに、何がいい悪いではなくて会長の御意見を賜りたいと思いますけれども、そこまでやるか、そこまで要請があるか、こういうのが本音ではないんですか。

石原参考人 先ほど来申し上げておりますように、保険の場合、自由化というのは割と遅く来たわけでございます。自由化、規制緩和、そういう中で、お客様と本当に相対峙していろいろな形での保険商品の提供をさせていただきました。

 そういう中で、先生がおっしゃるように、おまけみたいといいますか、特約もどんどんでき上がってきたわけですけれども、それが起こる前ですと、ある意味では請求主義でも物事は済んでいたかもしれません。非常に簡単でございますから、お客様から事故報告があった場合に、これをお支払いすればそれで済んだ。ところが、保険商品そのものが多様化した、複雑化したというのは、ある意味ではお客様ニーズに合致するものでもありますし、我々業界としても、そういう中で我々が社会における存在意義を高めていこうということかと思います。

 そのときに我々が忘れていたといいますか、先ほど言いました、お客様と私どもとの情報の非対称性というのがどんどん広がってきているんだ、こういう認識において欠けるところがあったのではないか、こういうふうに思っているわけです。

 今のこういった時代の中で、私どもは、そういった情報の非対称性をいかに縮める努力をするか、これがまず第一だと思います。そのためには、我々は、漏れなく御案内して漏れなくお支払いする、この姿勢を貫いていかなければ、日本の社会においても国際社会の競争においても勝ち抜いていけないと思います。あるいは存在できないのではないか、こういう認識ではないかと思っています。

 例えば、それをより進めますと、せんだって能登の地震がございました。地震の被災された方々というのは保険どころじゃないわけです。自分がおつけになっている保険に地震保険をつけたということを、御自分で書類を出して、見るまでには相当な時間がかかります。そういう場合に我々はどうしているかといいますと、私どもは、その地域のお客様の地震保険をつけていただいているリストをアウトプットします。そのリストに基づいて一軒一軒伺って、実はお客様はこういう保険をつけておられますというようなことをやっております。

 これは、請求も何もない、あるいは事故通知もないけれども、当然その地域で地震が起こったんだからというところまで我々はサービスをより拡充していくということを、ちょっと時間が長くなってしまいますけれども、むしろ我々がこれから本来やらなきゃいけないのはそういった仕事。さらに、事故そのものをなくすために、少なくするために、ロスプリベンションと言っておりますけれども、そういう活動にまで我々の領域を広げることによって損害保険のまさに社会における役割を大いに果たしていくべきである、私はそういうふうに考えております。

小沢(鋭)委員 柳澤厚生労働大臣に本当に聞かせてあげたいようなお話だった、こう思います。

 ただ、本当にそういう時代になったのも事実でしょうし、会長がおっしゃるように、そうしなければこの世界的な競争の中で勝ち残っていけないんだ、そういう基本的な認識もあるんでしょうから、そういった意味で頑張ってやっていただきたいと思うし、ユーザーの皆さんも、本当に損保の皆さんの社会的責任を果たされる姿を見れば、今失いつつある信頼もまた取り戻してもらえるのかな、こういうふうに思います。

 最後に、これも先ほど谷口委員からも質問がありましたが、私も同じような質問なんですけれども、保険約款が難しい。これは、この問題が起こったときに、保険約款を見て、これはみんな絶対読まぬな、おれも一度も読んだことがないな、こう思っているからみんな同じことを聞くんだと思うんですけれども、これは難しいですよね。やはり契約のときにはあれがないとだめなんですか。事前のもうちょっとわかりやすいもので契約が成立するということはないんでしょうか。

 ですから、何とかあれを、あれはどうしても必要不可欠なんだ、説明のための資料をもうちょっと準備します、そういうことがきっと先ほど来の御回答だと思うんですが、そもそも契約の書類そのものがもうちょっと簡単にならないのか、こういう話を最後にお尋ねして、これは全国民の気持ちだと思いますから、お答えをいただきたいと思います。

石原参考人 保険はまさに契約でございます。双方がその内容を確認する中で、合意した諾成契約として成立するものでございます。そういった観点から申しますと、いわゆる契約書であるところの保険約款、これは必須のものであるというふうに考えております。

 ただ、先生おっしゃいましたように、それを一つ一つお読みしながら御確認いただくということ以外に、これを概要としてわかりやすくする、あるいは、保険の中でポイントとなる点について、お客様の御意向はこういうことでございますね、間違いございませんねという意向確認を今行うこととしております。

 いろいろな工夫を凝らすことによって、よりわかりやすさを追求してまいりたいというふうに思っておりますし、根本的には、保険約款そのものを直していくという作業に我々は今着手したところ、こういうことでございます。

小沢(鋭)委員 頑張ってください。

 終わります。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 先ほど、保険というのは契約であるとおっしゃいました。しかし、その契約どおり保険金が払われないというのが不払い問題でありまして、これはまさに契約違反ということになるわけで、四十七万件、三百四十九億円という数字も出されましたけれども、これは根本的に信用が問われているというふうに思います。

 そこで、その原因ですけれども、先ほどのお話の中でもありましたが、非常に構造的な問題になっているのではないか、あるいは体質の問題になっているのではないかということが問われるわけです。

 不払いの原因として、一つは、商品が非常に複雑化した事態というものがある。それからもう一つは、その商品を扱う社員あるいは代理店などの販売員の専門的な知識、これが十分備わっているのかどうか。それから、その職員の数が果たして十分なのかどうか。こういうことが問われているのではないかと思うわけです。

 私はこの両面があると思うんですね。九〇年代に保険業界の規制緩和というのが進んで、外国の保険会社新規参入などがあって非常に競争が激化した。そのために、収益性を向上させなければならない、あるいは経済合理性の追求というものが必要である、こういうことで各社の競争が激しくなった。これが非常に大きな要因としてあったのではないかと私も思うわけです。

 そこで、対応策として大事なことは、わかりやすい商品に切りかえるというのが一つ、それから専門的な知識を持った職員をきちっと確保する、この二つが大事だと思いますけれども、会長の御認識を伺いたいと思います。

石原参考人 先生御指摘のとおりの背景で今日の問題も起こっているという中で、我々としては、いかに信頼を回復していくかということに全力を注いでいるわけでございます。

 今先生が御指摘ございました一つ目のわかりやすい商品、これはまさにそのとおりかと存じます。

 そのためには、現在たくさんございます商品そのものの数と申しますかラインナップといいますか、これの見直しということが今各社において行われているところでございます。それと同時に、その中でつけられている保険の中身というものを、より間違いのない形、お客様の間で誤解のないような形に約款そのものを見直していく、こういう作業も今やっているところでございます。それと同時に、今御質問ございました約款の言葉そのものをいかに平易にわかりやすくしていくか、こういうことに我々は今最大の努力を講じなければいけない。あるいは約款に対する附属資料としての、先ほど申しました意向確認ですとか契約概要ですとか、そういったものにもより工夫を凝らしていく必要があるというふうにまず一つは考えております。

 それから、二番目に先生が御指摘いただきました、これを実際に販売する、あるいは事故処理を行う職員、あるいは販売に当たる代理店、これの質をいかに向上するか、この問題でございます。まさにその点につきましては、募集人の質的向上ということにつきまして、先ほど申し上げました「消費者の声」諮問会議からも御指摘いただいているところでございます。

 一つは、私ども損保各社の社内における教育というものを、もう一度原点に振り返って、より一層徹底していく必要があるのではないかというふうに思っております。第三分野、非常に特殊な領域もございます、そういったものについての教育というものをより集中してやっていく。もちろんこの点については、業務そのものをある部門に集中するというような形で解決する手もとられているわけでございますが、合わせわざでやっていく必要がある。

 あるいは募集人につきましては、現在、試験制度の見直しということを考えております。そういう中で、一度取ったらずっと続く募集資格というものを何年に一回か見直していく、それぞれの試験の内容をより高度かつそれぞれの領域に合った形にしていくというようなことを合わせわざでやっていく必要があるのではないか、こういうふうに思っている次第でございます。

佐々木(憲)委員 質の向上というのは非常に大事だと思うんですね。日本の保険会社は、保険外務員という、お客様と直接接するすぐれた制度を発展させて業界の成長を支えてきたという歴史があると思うんです。石原会長自身も日動火災の外務員制度について、リスクアドバイザーというのがあって、これが各地域に密着して会社施策を着実に実行し、高い専門性を持つプロフェッショナルとしてお客様に支持をしてきていただいた、これは二〇〇五年にそのようなお話をされたと聞いております。その認識に変わりはないかどうか、このリスクアドバイザーというのは現在何人ぐらいいらっしゃるか、お答えをいただきたいと思うんです。

 この点については、私が前回の財務金融委員会で山本大臣にお聞きをしたところ、大事なお客様のための従業員数の確保、新規採用を含めてさまざまな採用が増加していくことも期待される、つまり、人的な確保が大変重要であるということをお答えになっていたわけです。それで、具体的に先ほどのようにお聞きをしたわけですけれども、お答えをいただきたいと思います。

石原参考人 私どもの募集は、基本的には保険代理店という形でやってございます。

 そういう中で、先生御指摘の保険外務員が一部ございます。その数につきましては、現在六十七人です。かつて千人ほどおりましたけれども、その後、いろいろ職種転向等ございまして、現在ではそのぐらいの数になっております。

 現在、私どもにとりまして、先生御指摘のように、社員、これは何と申しましても、最大、最優の財産と言ってもよい存在でございます。そういった中で、その社員が専門性を持って契約者のニーズに適正、的確に対応させていただく、これが何よりも我々にとっての信頼獲得の発展のきずなである、こういうふうに思っている次第でございます。

 ただ、そういう人たちをいかに配属していくかという問題もございます。

 私どもの専門性という観点につきましては、例えば保険金支払い部門における専門性もございますし、今回の問題が、入り口から出口までいろいろな形での業務プロセスのことで行っていった場合には、そういった中でいろいろな人がいろいろな経験をしていく、これも専門性を高めるための一つの要因ではないか。

 要するに適材適所に起用することが我々にとっての重要な使命ではないか、こういうふうにも思っている次第でございまして、そういった観点から、よりよきお客様サービスに努めてまいりたい、こういうふうに思っている次第でございます。

佐々木(憲)委員 最大の財産であるというふうにおっしゃいましたが、このリスクアドバイザー制度というのは千人おられたわけですね。それが、現在六十七人ですか。これは大変な激減でありまして、六月に打ち切るというふうにも聞いておりますが、この最大の理由は経済合理性であるというふうに説明されているようですけれども、先ほどお話しになった、お客様との関係を非常に重視しなければならない、最大の財産だと言う割には、いとも簡単に減らすなというふうに思うわけです。

 東京海上日動は、グループ全体で、昨年度の純利益九百億円、大変な利益を上げているわけです。ですから、そういう意味で、それだけ利益が上がっているわけですから、当然、契約者に対して親切に対応する、そのために必要な人員を確保するというのは私は非常に大切なことじゃないかというふうに思うわけですね。

 どうもこの問題で今労働争議が起こっているようでありまして、三月二十六日の東京地裁の判決では労働者側の主張が認められているようです。判決文は、「労働契約において職種を限定する合意が認められる場合には、使用者は、原則として、労働者の同意がない限り、他職種への配転を命ずることはできない」としているわけです。

 その理由として、東京海上日動火災や旧日動火災は、リスクアドバイザー職種の性質にかんがみ、定期的な人事異動を前提とする内勤社員の人事体系とは区別された存在としてこの制度を位置づけている、顧客との関係を断絶するような配転を行わないことに積極的な意味を見出していたとされているわけです。

 つまり、外務員と顧客との信頼関係について、会社自体が積極的な意味を認め、重視をしてきた。それゆえ特定の雇用関係を結んでいるということであります。

 不払い問題の発生を防ぐためには、こういう専門的な知識を持つ販売員と顧客との真の信頼関係を築く、これが非常に大事だと思うんですね。これはやはり簡単に廃止すべきではないと私は思うわけであります。

 外務員の専門的知識を活用して顧客との信頼関係を回復するということに努めるべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。

石原参考人 これは東京海上個社のことでございます。

 RA制度そのものは廃止することといたしておりますけれども、一方、継続雇用を希望されるRA、外務職員につきましては、全員の雇用を確保した上で、損害保険代理店の育成など、RAとして培った専門性を最大限生かすべく、まさに、先ほど申し上げました適材適所での起用を準備しているところでございます。

 現在、代理店への転身を希望されましたRAの方々に対しましては、最大限の支援をお約束する中で、引き続き、お客様に最大の御満足をいただける商品、サービスを御提供されるパートナーとして現在も十分な支援を継続している。そういった状況の中で先ほどのような状況になったということを御理解いただければ幸いと存ずる次第でございます。

佐々木(憲)委員 これは裁判所の判決で、他職種への配転命令をすることはできない、そういう性格のものだと認定されているわけでありまして、しっかりとそれを受けとめて対応すべきだと私は思います。

 最後にお聞きしますけれども、これまで、損保協会の会員企業が国民政治協会に献金を行っておりますね。東京海上日動も二〇〇五年に国政協に一千七百六十四万円の献金をされているようですが、二〇〇六年、二〇〇七年、これはどうなっているでしょうか。金額は幾らでしょうか。

石原参考人 個社の問題でございますか、協会全体でございますか。(佐々木(憲)委員「両方です」と呼ぶ)

 政治献金につきましては、御高承のとおり、政治資金規正法に沿いまして、各社が個別に決定しているものでございます。したがいまして、国民政治協会への政治献金につきましても、加盟各社が幾ら献金したかということにつきましては、協会としては把握してございません。

 先生から御質問ございました東京海上日動個社の件でございますけれども、二〇〇六年度につきましては二〇〇五年度と同様の額ということでございます。二〇〇七年度につきましては、現時点では献金を実施しておりませんし、対応未定でございます。

佐々木(憲)委員 これだけ不払い問題が起きているわけでありまして、やはり契約者に払うということが最優先でありまして、その点を十分踏まえて対応していただきたいということを最後に申し上げまして、終わりたいと思います。

伊藤委員長 これにて石原参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人に一言御礼を申し上げます。

 参考人におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


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