衆議院

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第18号 平成19年6月6日(水曜日)

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平成十九年六月六日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 伊藤 達也君

   理事 井上 信治君 理事 竹本 直一君

   理事 林田  彪君 理事 宮下 一郎君

   理事 山本 明彦君 理事 池田 元久君

   理事 古本伸一郎君 理事 石井 啓一君

      安次富 修君    伊藤信太郎君

      石原 宏高君    猪口 邦子君

      浮島 敏男君    江崎洋一郎君

      遠藤 宣彦君    小川 友一君

      小野 晋也君    越智 隆雄君

      大野 功統君    亀井善太郎君

      木原  稔君    佐藤ゆかり君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      土井 真樹君    中根 一幸君

      萩山 教嚴君    原田 憲治君

      広津 素子君    松本 文明君

      松本 洋平君    御法川信英君

      石川 知裕君    小沢 鋭仁君

      川内 博史君    楠田 大蔵君

      鈴木 克昌君    田村 謙治君

      三谷 光男君    横光 克彦君

      吉田  泉君    鷲尾英一郎君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   国務大臣

   (金融担当)       山本 有二君

   内閣府副大臣       大村 秀章君

   財務大臣政務官      江崎洋一郎君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  三國谷勝範君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    佐藤 隆文君

   政府参考人

   (金融庁証券取引等監視委員会事務局長)      内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁公認会計士・監査審査会事務局長)     振角 秀行君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          菊池 洋一君

   政府参考人

   (法務省民事局長)    寺田 逸郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           白石 順一君

   参考人

   (日本公認会計士協会会長)            藤沼 亜起君

   参考人

   (社団法人日本監査役協会会長)          笹尾 慶蔵君

   財務金融委員会専門員   鈴木健次郎君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月六日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     遠藤 宣彦君

  越智 隆雄君     松本 文明君

  亀井善太郎君     浮島 敏男君

  広津 素子君     猪口 邦子君

  田村 謙治君     石川 知裕君

  三谷 光男君     鷲尾英一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  猪口 邦子君     安次富 修君

  浮島 敏男君     亀井善太郎君

  遠藤 宣彦君     伊藤信太郎君

  松本 文明君     越智 隆雄君

  石川 知裕君     田村 謙治君

  鷲尾英一郎君     三谷 光男君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     広津 素子君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 公認会計士法等の一部を改正する法律案(内閣提出第七六号)


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     ――――◇―――――

伊藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、公認会計士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として日本公認会計士協会会長藤沼亜起君、社団法人日本監査役協会会長笹尾慶蔵君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより質疑に入ります。

 ただいま参考人として、日本公認会計士協会会長藤沼亜起君、社団法人日本監査役協会会長笹尾慶蔵君、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からお一人十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず藤沼参考人、お願いいたします。

藤沼参考人 公認会計士協会の藤沼でございます。

 本日は、公認会計士法改正案の国会審議の場において所信を表明する機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。

 まず、上場会社の監査の職責を担っていた公認会計士に有罪判決が下されたという、公認会計士監査の信頼性が大きく問われる会計不祥事が一昨年から相次いで起こりましたことに対しまして、遺憾の意を述べさせていただきます。貯蓄から投資へとの政府の金融政策のもとで、個人金融資産が資本市場へシフトする兆しが見えていた中でこのような事件が発覚したことはまことに残念であります。

 私どもは、社会の厳しい批判を厳粛に受けとめ、まず、自分の業務はみずからが改善し、それを協会が指導し監督するという自主規制の強化によって、公認会計士監査の信頼性確保に精力的に取り組む決意であります。

 改正法につきまして所信を表明する前に、昨今の一連の会計不祥事を踏まえ、協会が取り組んでいる自主規制強化策について御説明させていただきます。

 まず第一に、協会は、監査事務所の品質管理体制の向上を図るために、監査事務所の業務運営体制を監督指導する品質管理レビュー体制を大幅に強化するとともに、レビュー基準等を整備してまいりました。

 第二に、監査人の独立性確保の観点から、国際水準の倫理規則の整備を行いました。特に、監査人のローテーションを強化し、上場会社を百社以上監査する監査法人の監査責任者には、米国並みに五年・五年のローテーションを実施しております。

 第三に、協会は会員に年間四十単位の専門研修受講を義務づけておりますが、監査を担当する会員に対して、当該継続的専門研修の中で、職業倫理四単位、監査の品質管理四単位の科目受講を強制しております。

 さらに、本年四月から、上場会社監査事務所登録制度を導入しております。

 当該制度は、上場会社を監査する事務所に対して、協会に設けた上場会社監査事務所部会に登録を義務づけ、登録した事務所に対する協会の品質管理レビューを強化しまして、監査の品質管理体制の充実を図り、上場会社の財務報告の信頼性を確保する制度であります。

 登録制度の特徴は、品質管理レビューの結果、監査の品質管理体制に重要な欠陥が発見された場合には、当該指摘事項を登録名簿において一般に開示するとともに、当該指摘事項に対して適切な改善措置を講じない監査事務所に対しましては登録から取り消すという制裁的措置を採用している点であります。その意味では、上場会社を監査している会員にとって相当厳しい自主規制施策であります。

 協会は、このように、公認会計士監査の信頼性の向上を図るために最大限の努力をしておりますので、協会の自主規制による取り組みに御理解と御支援をお願い申し上げます。

 次に、今回の公認会計士法の改正案につきまして所信を申し上げます。

 改正案には、協会が長年にわたり要望してまいりました事項も織り込まれておりますが、全体としては厳しいものであると受けとめております。しかし、協会として、改正案を厳守し、かつ自主規制の強化策を推進し、公認会計士監査の信頼性の向上に一層努力していく決意であります。

 まず最初に、今回の改正案について、協会の二つの要請事項が受け入れられたことにつきまして感謝申し上げます。

 その一つが有限責任制の導入であります。

 会計不祥事が判明し、監査人に責任がある場合に、関与監査人が無限責任を負うことは当然といたしましても、大規模監査法人に勤務する他の社員が連帯責任を負うという制度は、監査法人の一般社員に過重な負担を強いるものであり、公認会計士が監査の世界から離反する大きな要因となっております。

 有限責任制は欧米主要国では既に導入されている制度であり、協会は従来から強くお願い申してまいりました。当該制度の導入は、我が国の監査基盤の強化に相当貢献するものと考えております。

 二つ目は、今回の改正案に刑事罰が織り込まれなかったことであります。

 金融審議会におきまして刑事罰の導入が検討されましたが、協会は、刑事告発されただけで監査法人が崩壊すると、その導入に強く反対してまいりました。エンロン事件におけるアーサー・アンダーセン、今回のみすず監査法人の自主解散を見ましても、協会の懸念は現実化しております。

 改正案では、協会の意見が理解されたものと受けとめております。

 協会は、この改正法案を受け入れ、監査の信頼性の回復、向上に全力を挙げて取り組んでいく所存でありますが、改正法案の運用につきまして、次の点に御配慮を要望したいと思います。

 第一に行政罰の運用であります。

 改正案では、刑事罰の導入にかわって行政罰の多様化が図られ、従来の行政罰、戒告、業務停止、登録抹消または解散命令に加え、課徴金と業務管理体制の改善命令が新たに追加されました。協会は、行政罰の多様化はやむを得ないものと考えておりますが、監査人が萎縮し、行政の顔色をうかがいながら監査業務を遂行するという監査環境にならないよう、課徴金を含む行政罰の適正な運用を強くお願い申し上げます。

 課徴金の適用につきましては、量刑基準等を整備し、その運用の透明性と公正性を確保していただきたいと存じます。

 また、業務改善の一環として、重大な責任を有すると認められる社員について、一定期間、その職務に従事することを全部または一部禁止することができるとされております。

 当該業務禁止命令の運用につきましても、対象となる重要な社員及び禁止される職務の範囲等について、同様に明確な基準を開示し、適切かつ公正な運用をお願いしたいと思います。

 第二に、改正案では、監査法人等に対する報告徴収、立入検査権限の公認会計士・監査審査会への委任が明記されております。

 現行制度では、協会が品質管理レビューを実施し、その報告を受けた後に審査会が監査事務所の立入検査が実施できるというシステムになっております。その意味において、審査会への権限委任が政令で拡大することのないように要請したいと存じます。

 協会は、現在、上場会社監査事務所登録制度を導入する等、自主規制により公認会計士監査の信頼性確保に精力的に取り組んでおります。財務情報の信頼性の確保は、第一義的には会計、監査のプロフェッションである会計士協会の自主規制が中心となって遂行し、行政は自主規制の不足する面を補完するという間接規制が本来のあり方であると考えるからです。

 最後に、金融審議会において今後の検討とされましたインセンティブのねじれの問題について御検討をお願いいたします。

 現行会社法のもとでは、財務諸表の作成責任者である経営者が、会計監査人の選任議案提案権や監査報酬の決定権を有しております。これは、経営者からの監査人の独立性という観点から重要な問題であると考えております。

 米国では、外部取締役で構成される監査委員会にこうした権限が付与され、監査人の独立性が確保されております。会社法の分野であると考えられますが、ぜひとも、監査役会の独立性及び専門性の強化を図るとともに、監査役会に会計監査人の選任議案提案権及び監査報酬の決定権を付与することを早急に御検討していただきたいと思います。

 バブル経済崩壊後、企業のビジネスリスクが拡大し、これに対して監査リスクが高まってまいりましたが、こうした監査をめぐる著しい環境変化に公認会計士が必ずしも適応できなかったのではないかと深く反省しています。しかし、財務情報の信頼性確保は公認会計士の努力のみで達成できるものではありませんので、協会は、関係者に対しまして、米国の企業改革法のように総合的措置を投じていただきたいとお願いしてまいりました。

 昨年六月に成立いたしました金融商品取引法により、内部統制報告書や経営者確認書が導入され、財務諸表の作成者である経営者の責任体制の強化が図られることになりました。また、ここ数年、複雑化してきた企業活動に対し、会計基準や監査基準も整備されてきております。

 協会も、倫理規則の整備や品質管理体制の強化充実等の自主規制施策に取り組んでおります。その意味で、財務報告の信頼性を確保する総合的な基盤が整備されてきており、関係者の御努力と御理解に深く感謝しているところであります。

 私の三年の会長任期は、本年七月まで残すところわずかになりました。この三年間、いろいろな事件が発覚し、社会の批判や期待に対応するための自主規制策強化に全力を挙げて取り組んでまいりました。

 私どもは、改正案を厳粛に受けとめ、公認会計士監査の信頼性回復に全力を挙げて取り組んでおります。今後とも、引き続き、公認会計士業界に対する御支援、御鞭撻をお願いいたしまして、私の所信表明とさせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 ありがとうございました。

 次に、笹尾参考人、お願いいたします。

笹尾参考人 ただいま御紹介いただきました日本監査役協会の笹尾でございます。

 本日、このような意見陳述の機会を設けていただきまして、まことにありがとうございます。せっかくの機会でございますので、恐縮ですが、冒頭に、私ども日本監査役協会につきまして簡単に御紹介をさせていただきたいと思います。

 私どもの日本監査役協会は、監査役に業務監査権が復活いたしました昭和四十九年の商法改正を機会に法務大臣から設立を許可された社団法人でございます。自来、三十数年にわたりまして、監査役監査制度、これには監査委員会の監査制度も含んでおりますが、その制度の調査研究を通じまして、監査品質の向上を図り、企業不祥事の防止に努め、もって企業の健全性確保に資するということを目的といたしまして活動してまいっております。

 現在、登録会員数は五千七百社、七千七百人の監査人を擁する大世帯になっておりまして、きょう現在も会員数は増加を続けております。

 さて、本題に入りますが、ただいまから申し上げます意見、並びに質疑にお答えする意見につきましては、日本監査役協会の統一した意見として取りまとめたものではございませんで、あくまで私個人の意見として申し述べるものであることを最初にお断りさせていただきたいと思います。

 さて、監査役と公認会計士の関係につきまして簡単に御説明申し上げます。

 会社法におきましては、大会社、御承知のように、資本金五億円以上または負債総額二百億円以上の会社でございますが、大会社につきましては会計監査人の選任が義務づけられております。また、大会社でない会社につきましても、会社の任意によりまして会計監査人を選任することは可能であります。ただし、両者の設置には、会社法上、要件が課されておりまして、会計監査人を設置した会社は必ず監査役を設置しなければならないということになっております。つまり、監査役を設置した会社でなければ会計監査人を設置することができないということでございます。

 次に、監査役と会計監査人の監査の関係について具体的に申し上げます。

 監査役は、会計監査人が行った監査の方法と監査の結果につきまして、その相当性を判断し、当該監査の結果を監査役の監査報告書に記載することが義務づけられております。会計監査人の監査結果を相当であると認めた場合には、会社が作成いたします貸借対照表と損益計算書は株主総会の報告事項とすることができますが、逆に、監査役が相当でないと判断しました場合には、貸借対照表と損益計算書は株主総会の決議事項としなければならなくなります。つまり、監査役の判断次第で計算書類の確定手続に大きな影響を与えることになります。

 それでは、会計監査人の監査の方法と結果の相当をどういう点で判断するのかという問題でございますけれども、二点に集約されます。

 一つは、会計監査人の独立性が確保されているかどうか監査することでありまして、もう一点は、職業的専門家として適切な職務を遂行しているかどうかを監査することであります。

 つまり、監査役は、職業的専門家である会計監査人が適切な監査体制のもとで適切な監査を行っているかどうかに重点を置き、会計監査人の監査計画や監査実施結果等の報告を受け、会計監査人に対する質疑応答などを通じまして、会計監査人の監査が相当であるかどうかについて総合的に判断を行っているところであります。

 会社法では、会計監査人は、さらに会計監査人の職務の遂行が適正に行われることを確保するための体制に関する事項、これは会社計算規則百五十九条でございますけれども、この事項を通知する義務が課されておりまして、具体的には、監査法人において定めております独立性に関する事項、契約の受任、継続に関する事項など、会計監査人の側で確保している品質管理体制の状況を監査役に通知するという制度であります。

 監査役としましては、当該通知の内容をよく確認した上で、会計監査人が適正に職務を遂行しているかどうかを判断することになります。

 以上のような観点から今般の公認会計士法等の一部を改正する法律案を見てみますと、全体としまして、企業財務情報の適正性を確保するために必要となります監査法人のガバナンス体制や品質管理体制の確保さらに監査人の独立性確保などに関する施策が十分に盛り込まれており、評価できるものと考えております。

 中でも、特に監査役と関係のある事項に絞って若干コメントを追加いたしますと、まず、監査法人におきまして確保すべき業務管理体制につきましては、業務の執行の適正を確保するための措置及び業務の品質の管理に関する事項が法案に盛り込まれました。これにつきましては、先ほど申し上げましたように、監査役としましては、既に会社法のもとで高い関心を払って実務に当たっているところでありまして、今後、監査法人における品質管理体制が一層整備されることを期待しているところであります。

 二番目に、大規模監査法人における主任会計士のローテーションルールにつきましては、いわゆる五年・五年という内容になっておりますが、これにつきましては、企業と監査人のなれ合いや癒着を防止しつつ監査業務の継続性の確保を図ったもので、適切な措置であると考えます。

 三つ目に、公認会計士または監査法人に対する行政処分の多様化につきましては、昨年、中央青山監査法人に対する業務の一部停止処分によりまして、当該処分と直接関係しない被監査会社におきましてもその対応に追われる事態となるなど、大変な影響をこうむることになりました。今回の改正によりまして、個別の非違事例に応じた適切な行政処分を問うことが可能となったことは、会計監査人の選任に関しまして一定の権限行使が課されている監査役としまして、評価できるものと考えております。

 以上、簡単ではございますが、私の意見陳述を終わらせていただきます。

伊藤委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。御法川信英君。

御法川委員 おはようございます。自由民主党の御法川でございます。

 きょうは、日本公認会計士協会の藤沼会長さん、そして日本監査役協会の笹尾会長さん、お二人にお越しをいただきまして、本当にありがとうございました。大変貴重な意見を拝聴いたしました。

 今回、我々は公認会計士法の改正ということで取り組んでいるわけでございますが、藤沼会長さんからありましたとおり、ここ数年におけるさまざまな監査をめぐる事件というのは、やはり、それに直接かかわる皆さんだけでなくて、一般の国民の方も大変関心を持っていらっしゃる重要な事項だなと思っています。そういう意味で今回の法改正は大変大事なものだというふうに思っておりますので、忌憚のない意見をきょうは聞かせていただきたいというふうに思います。

 先ほど会長が、貯蓄から投資へということで、国がそういう方向で、これから日本の金融資本市場の信頼性というのを確保しながら、一般の投資家が安心して投資ができるような環境を整えていくために何が大事かというと、やはり企業の透明性、ディスクロージャーという部分が大変大事だというのはもう御案内のことだと思います。

 そのために、公認会計士あるいは監査法人の皆さんが行う監査というのは、このディスクロージャー、透明性を確保するためには欠くべからざる大変大事な機能を持っているというふうに私は理解をしております。公認会計士協会さんとしても、例えば、監査の質の維持を図る、そういう観点から品質管理の状況を定期的にレビューするというようなことをずっとやっていらっしゃったということは私も聞いております。

 そういう中で、例えば昨今のカネボウの事件あるいはライブドアの事件、そういうものが起きてしまったという、そこからの取り組みの前の部分で、そもそも何でこういう事件が起きちゃったんだろうということについて、忌憚のないところを会長さんの方からお聞かせいただければと思います。

藤沼参考人 藤沼でございます。

 今回、いろいろな非違事例が多数発生して、会計監査人の役割が問われたということ、深く真剣に受けとめております。

 非違事例がなぜこういうふうに大きくなったかということにつきまして、協会でかなり前から品質管理レビュー制度を導入していたわけなんですけれども、それがきちっと機能しなかったのではないか、こういうような問題があるわけでございます。

 非違事例が発生した理由というのは、大きく、経済的な理由というのがまず背景にあると思います。

 それは、アメリカでも、エンロン、ワールドコム、一連の会計不祥事が発生したその前提として、ITバブルという一九九〇年代の特に後半の経済ブームがありまして、それが収束したということで一連の不祥事が発覚してきた、こういう問題があります。

 日本も同じように、九〇年代の経済不振からやっと二〇〇〇年代になって回復を見出した。その中で、過去の清算ができない企業だとか、あるいはベンチャービジネスを育てるというようなことから新しい新興企業が出てきた、ところが内部管理体制等が十分ではなかった、そういうようなところが一挙に噴き出たというふうに理解しております。

 会計士協会としてこのような問題をどういうふうに受けとめるかということなのでございますけれども、会計士監査で問題点として私が認識していますのは、まず第一に独立性の問題があると思います。

 企業の経営者に対する公認会計士の独立性、この辺のところに基本的な問題があったのではないかというふうに思っておりまして、我々の社会的使命というものはあくまでも第三者の立場で企業財務を監査するという立場でございますので、その辺の独立性ということをまず第一に認識してもらわないと、業務そのものの改善がスタートから混乱するということ、そういうことを考えまして、倫理規則の改定とか倫理教育の強化ということを行ってまいりました。

 それと同時に、監査の業務の実施についてやはり問題があったのではないか。特に、監査の実施について、事務所における品質管理体制、そういうところにも問題があったのではないかというふうに思っております。そういう面で、ここら辺のところは協会の自主規制を一層強化して、さらなる充実を図っていきたいというふうに思っています。

 一方、企業の側も、やはり、監査法人、監査人に対する認識が、どちらかというと会計顧問あるいはお抱え会計士的な認識があって、企業の中のガバナンスの問題、あと企業の中の内部統制の問題、その辺のところの強化も図っていただけないと、会計士業界としては、我々だけで対応することは難しいというふうに思っています。

 もう一つ、今回のいろいろな会計不祥事の特徴的なところは、収益認識基準、循環取引とか、会計基準の盲点をついたような取引が行われている。例えば投資事業組合、SPE、SPCとか、そういうようなものを使って会計粉飾する。その辺のところの会計基準の整備が追いついていなかったこともやはり問題だと認識しております。

 以上でございます。

御法川委員 ありがとうございます。

 それで、これは会長さんの御感想で結構なんですけれども、たまたま一昨日、例のライブドア事件の公認会計士に対する懲戒処分というのが発表になっております。三人の方に対して、名前は申し上げませんが、登録の抹消あるいは業務停止九カ月、六カ月という形で行政処分が下されたわけですけれども、これに対して、率直な御感想がもしあれば聞かせていただきたいと思います。

藤沼参考人 ライブドアに関与した会計士について厳しい処分が金融庁から公表されたわけですけれども、私どもとしては、これを厳粛に受けとめて、このケースをほかのすべての会員にみずからの業務の改善に使っていただきたい、経験として使っていただきたいというふうに思っております。

 以上です。

御法川委員 こういう事件がさまざまあって、制度的に法的な面で今回の公認会計士法の改正ということで、制度面での手当て、改正をやっていくということに加えまして、先ほど会長さんからるる御説明があったように、会員の綱紀の保持あるいは倫理的なものの向上等、あるいは自主規制の強化、さまざまなことをやっておられるわけでございますが、言葉ではやっていると言いながら、実際の具体的な取り組みとしてどういう進捗状況でというようなことのレビューというのも必要になってくると思うんですが、その辺について協会さんの方ではどのように取り組まれていらっしゃるのでしょうか。

藤沼参考人 この二、三年、大きな不祥事が続いておりまして、協会は、アクションを強めて、いろいろな早目のアクションをとろうということで、基本的には、倫理規則の改正を行ったということと、あと、事務所の品質管理レビューを、協会が今専属二十人のフルタイムの職員でやっているわけですけれども、その中身をかなり濃いものにしたということで、品質管理レビューの内容が今かなり改善していると思います。その結果、いろいろな問題が出てくるということもあると思います。

 それと、私どもは、協会の透明性を高めることも大事だということで、協会の役員に当たる理事会に外部委員を入れる、あるいは外部監査を受ける、そういうようなことで協会の透明性を高めようというようなこともやっております。

 ことしの四月から、上場会社を監査している監査事務所については、もっと一段と高い規律で仕事をしてもらいたいということで、登録制度というものを決定いたしました。今のところ、七月十五日までに登録ということなんですけれども、第一弾の登録の状況では、やはり監査業務についてこれほど社会の関心を浴びて責任があるということで、自分はもう今後監査をやらないという会員がかなり出てきているということも事実でございます。

 これは決して監査の市場から締め出すということではなくて、監査の責任の重要性ということを認識して、それに対応できる事務所がきちっと登録に応じていただいて、今後、登録された事務所がきちっとした品質管理体制で業務を運営していく。もし問題があれば外部にも公表するし、さらに問題のある事務所については登録から外すというようなことも考えて、さらに一段と自主規制を強化していきたいというふうに思っております。

御法川委員 ありがとうございました。

 次に、ちょっと視点が変わりますが、監査報酬についてお伺いをしたいというふうに思います。

 笹尾会長さんの方にお伺いした方がいいと思いますけれども、会計監査事務の監査報酬というのは、監査を受ける側の会社の方から払ってもらっているということになっております。この構造が、本来は株式投資家等のために厳しい指摘をするべき立場にある会計監査人の独立性が阻害されている一つの原因なのではないかというような指摘があるというふうに思います。

 この点、例えば上場会社については、上場する証券取引所が会社あるいは株主から一たんお金を徴収して、そこが配分する、報酬を払うというようなことをするという議論があるというふうに承知しております。そういう形で、もう少し第三者が公正な形で報酬を支払う制度にしたらどうだというような議論に対してどのような御所見をお持ちでしょうか。お聞かせ願いたいと思います。

笹尾参考人 お答えいたします。

 監査役協会は、最初にちょっと申し上げましたが、監査の実務、実際に監査につきましていろいろな制度ができますが、それを実務的に効果上がらしめるようなことの検討を主体にしています協会でございまして、現状を申し上げますと、今の報酬の件につきましては、会社法で報酬の同意権というのが与えられまして、実は、ことしの六月から、総会後の問題で、今各社では、その同意権に対してどう対応するんだということを鋭意検討している段階でございます。

 今申されました、報酬自身をどこで決めるかとか、そういう理念といいますか制度といいますか、そういう問題につきましては、現在協会としては検討いたしておりません。そういう段階でございます。

御法川委員 ちょっとつけ加えてですけれども、例えば欧米の監査法人あるいは監査報酬の払い方ということと比較した場合に、日本における改善策というのを何かお考えのことがあればお聞かせ願いたいし、そうでなければ、今どういう話なのかということをちょっとお聞かせ願いたいと思います。

笹尾参考人 同意権につきまして、私の考えを申し上げたいんです。

 ちょっと話が横になりますが、我々監査役は監査役選任の同意権というのをもらっておりまして、昔は取締役が監査役候補を勝手に決めた。それに対しまして、現在は、株主総会に出す議案を事前に監査役会に同意を求めるというふうになっておりまして、その結果どういうことになったかといいますと、当初はやはり形式でしたが、去年、おととし、ことしなんかは特に、書面で同意をする。しかも、同意するとき、副産物としまして、今まで社長は、監査役はどういう人間がいいかとか、監査役に対する直接の関心というのは余りなかったわけです。それに対しまして、同意権ができたことによりまして、社長と監査役が、監査役というのはどういう人物が必要で、どういうことをやるんだというようなことについての認識が非常に高まりました。そういう意味で、同意権というのは非常にそういう面では効果を発揮している。

 今回の報酬につきましても、先ほど言いましたように、この同意権が有効に機能できるようなことを今各社各社でそれぞれ考えている、そういう段階でございます。

御法川委員 ありがとうございます。

 ちょっと話が飛んでしまって申しわけないんですが、時間がないものですから、最後にお二人に簡単に。

 今回の法案の中で、新しく課徴金の話がございます。これが追加されたということで、いろいろな議論の中では、実は刑事罰ということも、これは先ほど藤沼会長さんの方からもお話があったとおりでございまして、議論としてはあったんですが、今回課徴金ということで、行政処分というものに対する罰則の幅を広げるという意味でこういう形になってくるわけです。これに関してお二人から一言、御感想というか御所見があればお伺いをしたいと思います。

藤沼参考人 課徴金につきましては、私どもは、今回刑事罰が見送られたということで、やむを得ないというふうに考えております。

 ただ、実際の適用に当たっては、課徴金が乱発をされるということになると、特に中小の事務所については、一般的には、過失があった場合には、監査報酬の一倍、除斥期間七年ということでございますので、かなり大きなダメージを与えて、存続がおかしくなるというようなことがあります。課徴金は戒告の前でもあるというような建前になっておりますので、そういう面で、課徴金が適正に運用されるようにお願いしたいというふうに思っております。

 以上でございます。

笹尾参考人 監査という仕事の基本は、制度も大事でございますけれども、あくまで、監査する人間の仕事に対する使命感といいますか、それが基本になるんだろうと思います。

 したがいまして、本来はそういう外部からの強制等がない方が望ましいと思いますけれども、ただ、度を過ごした現象が出てきた段階におきましては、行政がある程度それを是正するという方向に動かれるのはやむを得ないんじゃないかというふうに考えております。

御法川委員 藤沼会長そして笹尾会長、大変貴重な意見をありがとうございました。

 私はこれで終わります。

伊藤委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、日本公認会計士協会の藤沼会長、また、日本監査役協会の笹尾会長、両参考人、大変お忙しい中、当委員会に出席を賜りまして、ありがとうございます。心から御礼を申し上げたいと存じます。

 それで、質問をさせていただきたいと思いますが、この公認会計士法の改正は大変関心を持たれておりまして、きょうも新聞報道で社説に出ておりました。藤沼会長は、冒頭、公認会計士監査の不祥事に関して謝罪をされたわけでありますけれども、やはり、ライブドアであるとかカネボウまた日興コーディアルの事案、事件、大変大きなことであったと思うわけでございます。

 しかし、この法案が全体的にどうかといえば、先ほどおっしゃったように大変厳しいものであるということでございまして、この参考人の質疑が終わった後に法案の審査に入りますけれども、このときに私またお話をさせていただきたいと思いますが、先ほどおっしゃったことについてお伺いをいたしたいと思います。

 私、数次の商法改正にタッチをいたしておりまして、監査役の権限の強化、株主代表訴訟、このようなところを私も提案者でやったところでございます。このようなことも含めてお伺いをいたしたいと思います。

 まず初めに、自主規制機関として品質管理レビュー体制を強化したと藤沼会長はおっしゃったわけであります。それで、監査の現場の状況をお聞きしますと、それは非常に重要なことであると思いますが、今現在、監査法人、公認会計士の業界で品質管理レビューが行われておりますけれども、一つは、監査法人内の品質管理レビューというのが行われている。また、提携先、業務提携をしているビッグファームのレビューがある。また、公認会計士・監査審査会の品質管理レビューがある。また、米国に上場しているところはSOX法に基づいてレビューされる。それで、自主規制機関として公認会計士協会のレビューがある。五つ、多いところは六回ぐらいあるようでございますけれども、余りに厳しいレビューが、果たしてこれによってどういう効果をもたらすのかということに対して、私、若干疑問を持っておるところでございます。

 ざっくばらんな話、藤沼会長が、このような数回のレビューについて、現在、監査事務所の業務の状況であるとか、今現在思っていらっしゃる所感についてまずお伺いをいたしたいと思います。

藤沼参考人 藤沼でございます。

 谷口先生のおっしゃるように、今、監査現場はかなり疲弊しております。疲弊しておりますといいますのは、昨年来のいろいろな事件があって、やはり監査事務所自身が品質管理を一段と強化しようということと同時に、特に、監査の品質管理にかかわる、そのベースになる監査調書における文書化というものを徹底しないと、レビューを受けた場合に、仮にやっていたとしても、それが文書に残されていないと問題である、こういうことになりますので、文書化等、事務所の内部での品質管理の実行が物すごく厳しくなってきている、これは事実でございます。

 それと同時に、事務所内での品質管理のチェック、あと、公認会計士協会による品質管理レビュー、これは大法人については二年に一度。二年に一度と申しましても、真ん中の年はフォローアップレビューということで真ん中に入りますので、実質的には毎年。それと、これは必要であればという話ですけれども、公認会計士・監査審査会による審査あるいは立入検査、報告徴求、こういうようなところがありまして、そういう面では、監査事務所はかなり今大変な、いわゆる実務的にその対応に追われているというのが実情でございます。

 それでは、これが永久に続くのかということなんですけれども、私は今は過渡期だというふうに思っていまして、過渡期がさらに悪くならないように、むしろ効率的なレビュー、効率的な公認会計士・監査審査会による審査とか検査とかという形に移行するように体制固めの時間ではないのかなというふうに思っております。

 一番懸念されるのは、そのような中で、監査の担い手である特に若手の公認会計士が、この業界から、監査から出ていってしまう、やめてしまう、そういうようなことにならないように、業界挙げて、監査の担い手の維持等、若手の育成ということをやらなくてはいけないというふうに考えております。

谷口(隆)委員 今、藤沼会長がおっしゃったように、監査の現場は混乱をいたしております。それで、中堅クラスはもうモラールが低下して、この業界を離れてもいいという方もいらっしゃる。また、新人で入った方は、先ほどの数回のレビューで大変疲弊をしておる。このようなやり方が本来正しいのかどうかということを議論しなければなりません。これは後ほどまた議論させていただきたいと思いますが。

 それと、そもそもこの会計の不祥事を起こしたのはだれかというと、これは企業経営者、企業なんですね。企業の経営者が意図を持ってやった場合と、意図を持たなくてやった場合があります。意図を持ってやった場合は、これはなかなか監査では検出できないところがあるわけで、そもそもこういう企業が上場しておるということが問題、監査の対象先であるということが問題なわけであります。

 次に、これからまたお伺いをするわけでございますが、監査役の権限を強化いたしました。また、監査委員会方式も選択ができるようにやったわけでございます。アメリカ流の経営のしぶりをやっていらっしゃるところは監査委員会方式をとっていらっしゃるところもあるわけでございますが、内部の目で、部署から独立して不正を検出する、発見する、これもやはり大きな監査役の権限なんだろうと思うわけでございます。

 それで、藤沼会長が先ほどおっしゃった、監査役会または監査委員会の専門性、独立性を強化する措置が必要であるというようなことをおっしゃったわけでございますが、このことにつきまして御両人に御所見をお伺いいたしたいと思います。

藤沼参考人 虚偽記載というのは、主犯はあくまでも企業経営者であるということだと思います。企業はそのためにガバナンスをきちっととらなくてはいけないということなんですけれども、そのガバナンスの一つのキー、核心になるところに監査役会あるいは監査委員会があるというふうに思います。

 そういう面で、日本の場合には、監査役の外部性の問題、この辺のところがきちっと整理されていない。あと、専門性の問題で、この辺のところもきちっと整理されていない。さらにもう一つ挙げれば、それをサポートするスタッフの充実、これもやはり欠かせないことだと思います。

 そういう面で、まず会社の経営執行があって、それを会社内でガバナンスの関係でチェックする体制がある、それと対応して外部監査人が監査する、こういうようなシステム構築を急がないと、このような会計不祥事の問題というのは、主犯をそのままにしておくと後でやはり再発する、こういうことではないかというふうに思っております。

笹尾参考人 御承知のように、現在におきまして、まずはやはり取締役の内部統制、これは当事者ですから、取締役の内部統制をきちんとやるということが第一でございます。

 それに対しまして、監査役は、現実にその内部統制が機能しているかということを、現場に行って、実際の業務執行されているプロセスに入ってそれを確認して、決して、入るといってもそこで摘発とかそういうことじゃなくて、不祥事の芽を見て、それがどういうことを原因にそうなっているのか、内部体制のどこが悪いのかというようなことを解析しまして、それを社長に申し上げる。社長に内部統制の欠落あるいは不備なところを埋めてもらう。これが基本的な回り方でございます。

 今言った監査役が取締役の内部統制をレビューする権限は、これは昭和四十九年に監査役に業務監査権が復活して以来、御承知のように、昭和五十六年、平成五年というふうに何回か権限強化されてきました。そういう意味で、私は、監査役の制度につきましては、ほぼ、完璧とは言いませんけれども、非常にいい内容になっているんじゃないかと思っております。

 あとは、この制度を十分に生かして、それを行動に移す、監査役の行動、これが大事で、監査役のそういう使命感とかあるいは能力とかいった点におきまして現状において問題が起こっているということは、欠けているところがあるというふうに思っております。

 ただ、監査役の仕事というのは今のようなことですから、外部から見えないのでございます。あらかじめ問題のありそうなところを事前に火消ししているわけですから。ですから、表に出た問題は確かに監査役の問題でございますけれども、そうじゃなくて、現実に現場でそういうことを指摘することによって、目に見えていない成果というのはいっぱいあるわけでございます。それは残念ながら外に見えないというのが、非常に監査役について理解をしていただきにくい要因だろうと思っております。

谷口(隆)委員 内部の立場から、そういう業務監査のみならず、その会社の経営のありようも見ていらっしゃる監査役会と会計士とが協力をして効を上げるということは、これは非常に重要なことだと思います。

 アメリカでSOX法ができたわけでありますけれども、その原因になったのがエンロン、ワールドコムでございます。

 エンロンの事件というのは、エンロンという会社があって、その下に三千近いSPCがあって、SPCが利益をばらまいておったというような事件だったと聞いておりますが、その際に、やはり監査委員会が機能しなかった。

 私どものこの国で、監査委員会方式を導入して今やっておるわけでありますけれども、両方選択できるわけですね。エンロンの場合は、非常に社長と親しい外部取締役がおって全く機能しなかったと言われておるわけで、監査役方式は非常に効果がないということで監査委員会方式を入れても、両方ともやはり一長一短があるということもございますので、ここは両方が協力し合って、企業にガバナンスを与えるというか、しっかりとした緊張感を持っていただくような経営をしていただくということが非常に重要なことなんだろうと思う次第であります。

 それで、今、非常に公認会計士をめぐる訴訟リスクというのが高まっております。そんなこともございますので、中央青山監査法人が崩壊したといいますか、その後、みすずとあらた、こういうようになったわけでございますが、どうもみすず監査法人も事業継続できないような状況に今なっているというようなことで、監査の対象先の監査難民が出るんじゃないかというような心配をされております。私が公認会計士であれば、非常に監査リスクの高いところをあえて引き受けて少額の報酬でやるというのは、なかなかやはり、ビジネスベースで考えると受け入れられないというのはよく理解できるところでございます。

 最近の状況を見ますと、監査報酬は上がらない、訴訟リスクは高まってくる、こういう状況でございますので、そういうことがあってもおかしくない。このように監査を受けられないということになりますと、上場企業であれば上場廃止ということになるわけでございますが、日本公認会計士協会として、このような監査難民の問題についてどのようにお考えなのか、御所見をお伺いいたしたいと思います。

藤沼参考人 監査を受けられない会社、特に上場会社の場合が発生いたしますと、その株主等、非常に多大な損害をこうむる可能性があるということで、協会としてはこういうことができるだけないようにしなくてはいけないということで、今、対応策をとっております。

 ただ、新聞紙上で、大量に発生だとか、あるいは月刊誌とか週刊誌で何か非常にこれを騒ぎ立てるようなところがありますけれども、協会は相談窓口をつくっておりまして、また、協会の会員の中で監査業務をやりたいという事務所に手を挙げていただいておりまして、現在、約五十弱の事務所が一応手を挙げているという状況でございます。

 相談窓口に来ているということでは、今、三十五ぐらい相談窓口に来た方がいらっしゃいますけれども、中身を見てみると、そういう新聞紙上とかあるいは週刊誌上、月刊誌等で騒ぎ立てているような形で、監査人を探してくれというラッシュになって協会に来ているというわけではなしに、逆に問題点がはっきりしてくるような状況でございます。

 一つは、今の監査人がきちっと自分たちの意見を聞いてくれないから聞いてくれる監査人を探したい、こういうような感覚の人がいるということと、今の監査人から監査報酬を上げてほしいと言われたから、これは気に入らない、一番安いところを探したいから事務所を紹介してくれ、こういうような会社というものがありまして、こういうふうなところは果たして本当に監査を受ける資格があるのかどうかというような問題があると思います。

 そういう面で、本当に困った企業には協会に応募してきた監査事務所のリストをお渡しして、それでコンタクトしてください、こういうことでやっているわけですけれども、企業側にも、問題のある会社、特にもう営業実態がなくて、ただ単に上場だけしているというような会社もありますので、箱企業というようによく言われていますけれども、こういうところはやはり、ローテーションというか、本当に上場会社としての資質があるのかどうか、資格があるのかどうかというような面で、これは何も監査人の問題ではないのかなというふうに思っております。

 そういう面で、市場のニーズに対しては、我々としては的確に対応していきたいというふうに思っております。

谷口(隆)委員 先ほど申し上げた品質管理レビュー、もう幾たびかやって、どうも聞くところによりますと、延べ数万時間にも及ぶというようなことを聞いております。これが果たして効果があるのかないのかというのはあるわけでございますが、しかし、現にやらなきゃいかぬものですからやっている。こういうことになりますと、当然ながら、投入する人員がふえますから、それに対する報酬を上げていただかないとなかなか経営ができないというのは当たり前の話でございます。

 アメリカと日本の報酬の違い、いろいろな基準のとり方がありますけれども、大体四倍ぐらい違う、こういうような話を聞いております。現行の監査報酬基準について両参考人から御所見をお伺いいたしたいと思います。

藤沼参考人 監査報酬については二つの要素がありまして、監査時間の問題と、あと時間当たりの単価という問題、チャージレートというふうに我々言っておるわけですけれども、この二つがあると思います。

 日本の場合には、監査時間についても、多分、これは三年か四年前の調査ですけれども、欧米諸国と比べて約二分の一程度の差があるということでございまして、向こうの方が二倍という、サイズが大きくなるともっと大きくなるわけですけれども、それぐらいの時間の差があるということと、今、円安だということもありますけれども、報酬はアメリカと比べると多分二分の一ぐらい、単価という面ではそれぐらいの差があるのではないか。

 そういう面では、特に時間のことについてはこれからかなり充実させていかなくてはいけないというふうに思っておりまして、今のアメリカとの比較で四倍という比較も、実は内部統制の仕事を外した上での比較なわけですね。ですから、内部統制の時間をやると、導入当初はちょっと内部統制に時間がかかり過ぎたというところがありますけれども、監査と内部統制はフィフティー・フィフティーだった。それが今ちょっと内部統制の仕事が下がっているような状況でございまして、そういう面ではかなり大きな差があるということで、これは来年から内部統制の仕事がありますので、こういうところも含めて監査時間ということと監査報酬の面でかなり充実していかなくてはいけないのではないかというふうに思います。

笹尾参考人 監査報酬につきましては、現在まで監査役は直接タッチしていませんでしたから、今般、同意権の問題が出まして、我々も勉強を始めました。

 過去の例を見ますと、当社の場合なんかでは余り交渉されていないわけです。去年やったと同じ金額で来ている。

 実際、今度どういう基準で我々は同意するんだと執行部と話し、あるいは逆に監査法人とも話すと、一番問題になりますのは、単に工数だけでは、監査というような仕事は余計時間をかければ必ずしもよくなるというわけでもない。品質の問題がございます。その辺をどう織り込んでいくのかというのが、我々は今度の同意権の問題で今検討している最中でございます、そういうことも考えて、同意するかしないかというのを決めたいと思っております。

谷口(隆)委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 次に、池田元久君。

池田委員 おはようございます。

 民主党の池田元久でございます。

 きょうは、藤沼会長と笹尾会長、朝早くから参考人としての御出席、ありがとうございます。

 企業、団体の会計と公認会計士のあり方をめぐっては、近年、さまざまな問題が起こりまして、公認会計士の仕事といいますか、資本市場の公正さと信頼を守る番人として、ますます重要な役割を果たしていかなければならないということになっていると思います。今回の改正案は、まず第一条で、公認会計士及び監査法人は、「独立した立場において」というのが入りましたね。独立した立場において業務を行わなければならないと職責を規定しております。

 そこで、まず総論的にお尋ねをしますが、今回の法改正によって、公認会計士の独立性は確保されることになっているのかどうか、お聞きをしたいと思います。それぞれ、お二人からお聞きしたいと思います。

藤沼参考人 お答えいたします。

 まさに、池田先生のおっしゃるように、監査人の基本は、まず独立した立場で仕事をするということだと思います。

 企業が資本市場を通じて資金調達をする。企業の経営者は、会社の業績、財政状態をきちっと株主あるいはその他のステークホルダーに報告する責任がある。それを真ん中に立って、独立の立場で財務報告が正しいかどうかを監査するのが私どもの立場でございますので、まず第一に、企業経営者に寄り添ったような独立性のない会計士は、最初の段階からこれは失格ということになると思います。そういう面で、独立性の再認識というのが大事だと思っております。

 今回の法律の改正案の中に、例えばローテーションの長期化はよくないということで、主任の業務執行をする関与社員についてはローテーション制度を五年に短縮するとか、一応改正案が入っておるわけで、そういう面ではかなり独立性は強化されるということになると思います。

 ただ、二つありまして、一つは独立性というのは、公認会計士個々が、いわゆる外見的な問題ではなしに、精神的にきちっと持っているか、この辺のところが大事だという、この辺のところで独立性の維持ができるのかどうか、この辺の問題が一つあります。

 あともう一つは、独立性を担保するような、会社側もそれに対応した制度になっているのかどうか。この辺のところが、例えば監査人の選任の提案権につきましても、あるいは監査報酬の決定権につきましても、監査対象の財務諸表を作成する経営者側と、財務諸表の作成で数字の修正等を議論した、終わった後ですか、あるいは前にでも監査報酬を幾らにするかということを交渉しなくてはいけないというのは、これは国際標準からもちょっとおかしな制度であるということでございますので、そういう面で、ここにいらっしゃる笹尾監査役協会の会長様にも御協力を願いまして、監査役がその分、サポートをしてくれるような体制というものを早急につくらなくてはいけないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

笹尾参考人 お答えいたします。

 今回の改正法律案の中に、独立に関する規定が幾つか入っておりまして、そういう意味で、基本的には独立性は強化されるのであろうというふうに思っております。

 ただ、今、藤沼会長からもお話ございましたが、問題は、やはり監査の効果を上げる、そういう意味では、監査役と会計監査人が協力するということが非常に大事でございまして、どういう形で、あるいはどういうふうにすれば協力できるのかというような問題は大きい課題だと思っております。

 従来、余り協会同士でそういう話の機会は少なかったんですが、去年の五月に会計監査人との連携に関する実務指針というのを、我々協会の中で、公認会計士と協力してやりなさいというようなことを現場の方にも流しておりまして、今後とも、公認会計士との、会計監査人との協力によってより監査の実を上げていきたいというふうに思っております。

池田委員 今も藤沼会長おっしゃいましたけれども、監査人の選任と報酬の決定は監査される会社が行って、会社の監査役や監査役会が同意するという仕組みになるんですが、これは端的に藤沼会長にお伺いしたいんですが、これで監査人の独立が守れるかどうか、お答えをいただきたいと思います。

藤沼参考人 同意権につきましては前回の会社法の改正で導入されたわけですけれども、ただ、これではまだ不十分だというふうに思います。

 同意権というのは、能動的に動くわけではなくて受け身的な対応になるわけでして、そういう面では、監査役会あるいは監査委員会の方が積極的に提案権を持つ、それと、あと監査報酬についても決定権を持つ、そういう形で対応していただいた方が、財務諸表の監査での修正等、監査に基づいて数字の修正等について議論している相手と監査報酬も交渉する、これは国際標準ではないわけでございます。その辺のところはきちっとしていただかないと、要するに経営者側は会計士は雇われ会計士だ、こういうような認識になってしまうわけですから、その辺のところの問題というものを解決していただければさらに前進できる、独立性の問題では強化されるのではないかというふうに思います。

池田委員 監査役ないし監査委員会が決定するという案とは別に、上場会社については、証券取引所が監査される会社から報酬をまとめて徴収した上各監査人に支払うという仕組みもあると、これは金融審の報告書にも書いてありますが、これについては、藤沼会長、どんなお考えでしょうか。

藤沼参考人 それについては、確かに、監査報酬の支払いを企業から切り離した方がいいではないかという提案で、一見すごくよさそうな感じがするんですけれども、ただ問題は、監査報酬というものは企業によって全部違ってくるわけです。

 例えば、企業の内部統制がしっかりしていれば監査時間は少なくて済むわけですし、逆に内部統制が非常に悪ければ非常に監査に時間がかかる。これは、あと、経営者の誠実性の問題だとか協力体制の問題。これは会社が同じサイズで同じ業種だからといってすべて同じになるわけではないということで、これは国際的にも、私が国際会計士連盟の会長のときに外部者を集めて、エンロン以降どういう形で監査人の信頼を回復するかという議論があったわけです。そこでもそういう議論をしたんですけれども、やはり国際的にも、資本市場の証券取引所がそれを集めて分配するという制度はなかなか実現が難しい。

 こういうことで、結局、会社のガバナンスの中に、株主あるいはその他のステークホルダーのために会社の執行部を監視するという組織をつくって、その人たちと監査人が監査報酬等を議論する、こういう方が現実性が高いのではないかという形で、大体今のような形になっているんだというふうに思います。

 以上でございます。

池田委員 先ほども出ておりましたが、監査される対象の会社が監査人を決めて報酬も決めることは、監査人の監査自体の公正さと信頼性について疑念を持たれる、その制度そのものが疑念を持たれる制度と言っても言い過ぎではないと私は思うんです。ですから、監査役や監査委員会等が監査人を選任し、報酬も決定できるようにすべきではないかと思うんです。

 そこで、受ける立場の監査役協会として、このような監査人の選任、報酬の決定についてどうなのか。可能と思うんですが、お考えをお尋ねしたいと思います。

笹尾参考人 報酬の問題につきましては、まず、私たち監査役自身が会社から報酬をもらっているわけですね。それにつきましては、監査役が監査の業務に必要なものは、請求すればその立証責任は会社の方にあるということで、我々もやはり会社に対して、いかに監査というのは有効で、会社にとってプラスになっているんだということを一生懸命説明しているわけです。ですから、報酬というのは一方的なものじゃなくて、必ず提供した商品あるいはその他についての品質が絡んでくるわけでございます。

 そういう意味で、私は、今の同意権、社長は大体今さっき話がありましたように、お抱え会計士ぐらいに思っている人も多いんですね、事実。それを同意権のときに初めて、当社でもやったんですが、社長と、本当に公認会計士、監査法人がどういうことを会社にやってくれているのか、それで、出てきた監査報告を社長と一緒になって検討する。それから、さらに取締役会でも説明させました。そういうことで、同意権の中で、取締役の監査に対する認識も深まるという面があるわけでございますね。そういう意味で、これから具体的に同意権の問題を詰めていくわけですが、そこでそういう成果を出したいというふうに思っております。

 さらに進んで、決定権まで行かないと問題が解決しないのかどうか、決定権にした方がよりいいのかというような問題につきましては、最初に申し上げましたように、当協会はそういうことが決まればそれに対する実務的な手当てを検討する立場でございまして、現状におきまして、そういう先の理念、制度についての検討には入っておりません。

池田委員 監査人の選任については、主要国ではドイツを除きまして、上場会社または公開会社については監査委員会が独自に決定、提案をするという制度になっているわけです。監査の独立を保ち、疑念を抱かれないようにするためには、少なくとも上場会社については監査役、監査委員会に監査人の選任と報酬の決定の権限を与えるという制度にすべきだと私は思います。

 金融審議会の報告書では、早急かつ真剣な検討をと言っているわけですね。早急かつ真剣な検討をと。会社法施行の状況を見るなどと言わないで、我々立法府としては、議員の皆さんの方に向いて言わなきゃいけないんですが、議員立法で、監査の独立性を高めるためにも、監査役または監査委員会に決定をゆだねるように法改正をすべきだと私は思います。これを早急に実現したいと思いますので、ぜひ検討をしていただきたいと思います。

 次に、法人の刑事罰について若干お尋ねをしたいと思います。

 今回の改正で、虚偽の監査証明を行った公認会計士の所属する監査法人については、刑事責任を問う規定は設けられてはいませんね。監査法人は監査契約の当事者である上、監査業務の適正な執行について統制できる立場にあるわけですから、監査法人に対しても刑事罰を科すことは不正防止の観点から必要な措置ではないかと思うんですが、その辺について、藤沼会長のお考えをお尋ねしたいと思います。

藤沼参考人 法律的に詰めていくとそういう議論になるとは思いますけれども、虚偽記載の主犯といいますか、いわゆるその元締めといいますか、それは経営者、企業であるわけでございます。監査人は、虚偽記載を見過ごした、あるいは発見できなかったということで過失とか、あるいは、発見したんだけれどもそれを認めてしまった、幇助あるいは共犯という形になって、いずれにしても主犯ではないわけですから、監査法人に対して刑事罰を求めるというのは法律的にも少し無理があるのではないかなと。

 それとあと、それに関与した、虚偽記載に協力してしまった個人の公認会計士については、これは刑事罰が適用されるということで、そういう面では法律的にそれなりの、ある程度の整理はついているのではないかなというふうに思っております。

 あともう一つ、監査法人に刑事罰というのは、これは実態面で見ていただきたいと思うんですけれども、一つは、刑事罰をやるということによって、監査法人自身が存続することが実質的に難しくなる。

 ですから、刑事罰をやることによって、これはアンダーセンのケースもそうなんですけれども、司法省から訴えられるというだけでお客離れが始まってしまった。今回、みすずさんのケースは、刑事罰ではないんですけれども、いわゆるカネボウに関与したとかそういう話があって、事務所の名声といいますか信用が非常に傷ついてしまった。そういうことで、二年ちょっとの間に、結局、事務所自身を実質的に解散せざるを得ない、そういう形になってしまった。

 結局これは、監査人だけの問題ではなしに、企業側にも、特に昨年の夏の業務停止期間には、一時監査人を探さなくてはいけないということで非常に多大な迷惑をかけたというようなことで、私はやはり、実質的なことを考えますと、刑事罰というものはすごく効き目があり過ぎて、壊滅してしまうということで、これは実態を見て決めていただきたいというふうに思います。

 以上でございます。

池田委員 アメリカでは、法人に対する罰金刑はあるものの、監査法人に対して適用した事例はないということのようでありますが、これは引き続き検討する必要があろうかと思います。

 さて、これも最近言われている、いわゆるセカンドオピニオン、きょうも報道されておりますが、公認会計士協会はいろいろな問題に取り組んで大変だと思いますが、セカンドオピニオンの求めに対して少し消極的ではないかという印象を世間に与えているのではないかと思うんですが、その辺についていかがでしょうか。

藤沼参考人 その件は、たしか日興コーディアルのときの話だったと思います。

 まず第一に、セカンドオピニオン、これは会計士の職業の倫理規則の中に、セカンドオピニオンと似たような中でオピニオンショッピングという言葉があります。

 公認会計士の仕事とお医者様の仕事あるいは弁護士さんの仕事と、ちょっと違いがあるのではないかというふうに思います。医者、弁護士は、それぞれクライアントがいて、クライアントに対してサービスを提供するということですけれども、我々の方は、企業が財務情報を作成して、それが妥当なものかどうか、その利用者は右端にある株主とかその他の利害関係者、我々は真ん中に入って独立した意見を言うという仕事でございます。そういう面で、私どもの仕事は三者関係にあるというふうに思っております。

 今セカンドオピニオンと言われている、会計処理についてこれでいいのかという確認するプロセスがあるわけですけれども、そういうことで第三者の意見を求めたいということなんですけれども、会計士協会とかにいろいろなことで意見を求めているのは、一般的に作成者側である企業が多い、圧倒的に多いです。

 というのは、会計士が、自分の監査人が、会社の処理とは違ったことをこれは認められないと言うと、それを認めてくれる会計士を探すということで、オピニオンショッピングということで、これは倫理規則の中にきちっと、それに対応していくと、だれか商売にしたいというような人が出てきて、かえって大混乱になってしまう。そういうことで、我々の仕事の場合には、そういう面で特に企業側からのオピニオンを求められるのを安易に受けるなというのが倫理規則に入っております。

 ただ、株主等ステークホルダーの観点から、ちょっとこれはおかしいということであるならば、それは倫理違反でもありませんから、それはそれで対応できると思います。

 ただ、問題は、そのようなセカンドオピニオンを求めているときに、時間的に物すごく少ない時間で決めろということでございまして、現在の監査人がどういう判断を持ったのか、そこで監査調書にはどういうような資料があるのか等を見ながら判断をするということになると、結果的に、時間的にかなり間に合わないというようなところがありまして、そういう面で、これは必ずしも後ろ向きということではなくて、検討課題であるというふうに思っております。

 以上でございます。

池田委員 最後に、公認会計士の皆さんの仕事の実態について一点触れたいんですが、監査の手続は変わらないのに、作成しなければいけない書類がやたらにふえた、それから、その結果として会計士と企業のコミュニケーションが希薄になってきた、会計監査という仕事におもしろみを実感できないので若い会計士は次の仕事を探す、当局の言ういろいろなこと、評価損等について朝令暮改ですぐ変わってくる、大変だ、こういう実態はどうでしょうか。

藤沼参考人 確かに、今、池田先生のおっしゃっているように、監査の現場は大変でございます。先ほど谷口先生の質問もあったんですけれども、やはり今過渡期だというふうに思っております。

 特に大きいのは、監査調書の文書化というのが、やはり徹底してやらなくては、要するに、どういうプロセスでその手続をやって、それがどういう判断で結論を導き出したのか。それがないと調書としては失格だというようなことになり、その後、品質管理の問題からいろいろな資料が求められる、作成しなくてはいけないということで、皮肉な言い方をすれば、先生のおっしゃるように、コンピューターにばかり向かい合って、会社と話をしないとか、そういうようなことをおっしゃる方もいらっしゃるわけです。

 やはり監査時間の問題、先ほど言いましたように、監査時間がかなり足りない。私も海外で仕事をやりましたけれども、監査時間が十分あるんですね。だから、調書をきちっとつくるとかということと話ができることというのは両立するんですね。

 だから、そういうような問題で、日本は、非常に効率を求めて最短でやれというような話になっておりますので、その辺のところをやはりきちっと改善しないと、会計士の業界は体力勝負みたいな形になってしまいますので、これはいわゆる改善をしなくてはいけないというふうに考えております。

 以上でございます。

池田委員 公認会計士法の審議は始まったばかりでありますが、大分、きょうの参考人質疑で問題点、お考えもわかりました。我々としては、やはり不正会計をなくして安定した日本の資本市場というものをしっかりとしていかなければならないと考えておりまして、今回の法改正、不十分な点も多々あると思いますが、しっかりとした公認会計士制度の確立に向けて努力をしたいということを申し上げて、質問を終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、古本伸一郎君。

古本委員 おはようございます。民主党の古本伸一郎でございます。

 両参考人におかれましては、きょうはお忙しい中、当委員会に御出席いただいておりますことに冒頭感謝申し上げます。

 まず、私からは、今回の法改正案につきまして、一方ではマイナーチェンジということを与党の幹部の方はおっしゃっておられます。私どもは、巷間言われております、数十年ぶりの骨太な改正を目指した法案である、こう受けとめていますが、フルモデルチェンジなのかマイナーチェンジなのか、これはお二方、どう受けとめておられるか、端的にお願いいたします。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

藤沼参考人 今回の改正案で、唯一、唯一といいますか、大きな問題として取り残されている問題があると私たちが認識しているのは、先ほどの企業のガバナンスの問題と関係して、やはり、インセンティブのねじれ、監査報酬とか監査人の選任について、会社内のきちっとしたガバナンスを預かる者がそれを担当するという、この部分が今回の法律案の中には入っていない。これは会社法の世界だからということなのかもわかりませんけれども、これは金融市場全部に影響するわけですから、これが欠けて、そっちはそっちで考えてくれというのは、ちょっと我々としては、国民の立場からすると、少し納得がいかないなというのが一つあります。

 ただ、それ以外の問題につきましては、かなり大きなチェンジが行われているというふうに思っております。特に、刑事罰との関連で行政罰の多様化が図られたというようなこと、あと、監査人の責任の問題では、有限責任制度、これは諸外国にもないような無限連帯責任というものが初めて法案の中から削除された、そういう面で幾つかの本格的な改正案があるということで、そういう面では、法案自身についてはかなりの改善案が見られているというふうに思っております。

 以上でございます。

笹尾参考人 基本的には、現時点で必要な改正が盛り込まれているというふうに認識しております。

古本委員 それでは、両参考人におかれましては、この法改正のたたき台をつくっている段階で、意見陳述を求められたりあるいは審議会等に参画なさったかどうかの事実関係だけ、お二方、お願いいたします。

藤沼参考人 これは、審議会にも私ども協会の役員三人参加させていただきまして議論させていただきましたし、各政党との意見交換ということもやりまして、そういう面ではかなり広範な議論に参加させていただいたというふうに思っております。

笹尾参考人 本日が初めてでございまして、今まではございません。

古本委員 監査役のお立場が、これは会社法に基づく、したがって法務省の事案だということで遮断されていたんだと思うんですが、これは実は、すぐれて、冒頭の笹尾参考人の意見陳述の中でも拝聴いたしましたが、業務のプロセスの中で、企業の財務諸表を監査人が監査し、その内容について監査役が判こを押し、そして株主総会に諮っていく、それで株主の皆様に御承認いただく、このプロセスのまさに真ん中にいる人なんですよね。しかしながら、この監査役の方々との接点を遮断して、残念ながらこの公認会計士法の改正法案の議論がこれまでなされてきているということに、冒頭、藤沼会長からも、ねじれの部分を中心に同僚議員の質問にもお答えいただいたとおり、問題が惹起をされましたが、解決されていないままの法案であるというふうに感じるわけであります。

 これは、真ん中の立場にいる監査役協会としてもそのようにお感じになりますか。

笹尾参考人 監査役は会社法の世界だから本件について無関心であるとか、そういうことはございませんで、先ほども申し上げましたが、会計監査人との連携につきましては非常に意を使っておりまして、ここにもございますが、実務指針とかいろいろなものをつくりまして協力しております。ですから、完全に遮断されているとかそういうことはないと思います。ただ、現時点で監査役協会がいろいろ実務的な意見を聞かれる段階まで来ていないということだと理解しております。

古本委員 その意味では、ぜひ公認会計士協会の会長をもってして、クライアントである会社側と、適正意見を述べる立場にある監査人たる公認会計士として、やはり、フィーをもらう関係である以上は、どうしても情実的な部分が排除されないという現実に今悩んでおられるわけでありますので、次なる段階に議論が進んだときに、当然、会社法というのを変えるとなるとこれは大ごとでありますので、私ども民主党は、公開会社法という立場で、少し切り分けて議論ができればいいなというふうに思っておりますので、またそのときには忌憚のない御意見を聞かせていただきたいなというふうに思っております。

 さて、今お話をいただいている中で、今回の法案の中でいいなと思う点を一点、それから余りよくないなと思う点を一点、それぞれ、お二方から御意見をいただきたいと思います。

藤沼参考人 ちょっと失礼しました。

 いい点、これは先ほど申しましたけれども、有限責任制度が導入されたということがいい点でございます。

 もう一つは、先ほど申しましたけれども、それをちょっと、ど忘れしていたと言うのはあれなんですけれども、刑事罰が見送られた、これのかわりに行政罰が多様化された、こういうことだと思います。

 悪い点というのはなかなか言いづらいわけですけれども、懸念しているのは、やはり、行政罰の多様化の中で、課徴金とかそういう制度、あるいは監査法人の責任者等に対するいわゆる解除命令といいますか、ポジションからどかなくてはいけない、この辺のところの規定が入っているわけですけれども、これがどのように運営されるのか。余り過大な課徴金とか過大な処分ということになると、それがどのように影響するかということがちょっと懸念があるということでございまして、法案の中身について、今の段階でどうだということではありません。

 以上でございます。

笹尾参考人 一点ということでございますが、先ほど申し上げました行政処分の多様化が、現実に、ことしは例の中央青山の問題がございまして、被監査会社は非常に迷惑をこうむったわけでございます。

 ですから、そういう意味で、今回、改善命令という中間の措置ができたということは、現実的対応としては非常にいいんじゃないかというふうに思っております。

古本委員 今、迷惑をこうむったというお話をいただいたわけでありますが、私は、やはり、最大の迷惑をこうむったのは、例えば一連のライブドア事件を見ても、何万人、あるいは十万人ぐらいだったでしょうか、株主の皆さんではなかろうかと思います。

 小泉内閣の時代から安倍政権にかわりました。貯蓄から投資へという大きな流れは、恐らく現在の政権与党も支持されておられると思いますし、私どもも、貯蓄から投資へという大きな流れは、これは支持する立場にございます。

 しかしながら、その前提は、お茶の間にいるお父さん、お母さんが、この会社は何かコマーシャルの雰囲気がいいから買ってみようかなとか、あるいは、この会社の社長さんは何となく感じのいい人だから買ってみようかな、そういう、何か動物的本能で買う人は余りいなくて、いるかもしれませんが、これからは、むしろやはり、そこの企業の経営体質、財務の体質がいいか悪いか、配当はどうなのか、これは当然見るわけでありまして、それが虚飾に、粉飾にまみれた会社であっては、これは全く話にならないわけであります。

 最大の被害者は株主である、こういう立場に立つわけでありますが、その意味で、両名にお尋ねしたいと思うんです。公認会計士の皆様が監査をする際に、どういった倫理観を持って携わるか。同様に、監査役の皆様も、監査人が判こをついて出してきた適正意見に対して、これはそうじゃないんじゃなかろうかということが言えるだけの洞察眼も含めてこれを持っておかないと、これは監査役として株主に顔向けができないわけでありますね。

 その意味で、それぞれ倫理観という意味において独立した立場だというふうに藤沼会長からは先ほどありましたが、果たしてそうなのかというところも含めて、現状と、課題があればお聞かせ願いたいと思います。

藤沼参考人 会計士の精神的な基盤は、先生のおっしゃるように、倫理にあると思います。その倫理の中で特に独立性というのが大事だというふうに思っております。

 公認会計士協会は、倫理規則というものを大幅に見直しまして、国際的な動向も配慮した上で昨年に改正を行ったわけでございます。ただ、倫理の問題というのは、個人の、基本的に、外から見えるものと、あるいは心の中で精神的に持っているものと二つがありまして、外から見えるものは見えやすいんですけれども、精神的なものは見えづらいということで、協会としては、四十時間の義務研修があるわけですけれども、その中で倫理研修については、必ず四時間必須として毎年やりなさいということで、これは強化しているわけでございます。

 ただ、倫理の問題というものは、自分だけが倫理を維持して頑張るぞと言っても、やはり環境というものに影響を受けるわけですから、そういう面で、独立性確保のための企業側のガバナンスの問題とか、そういうことも全体としてやっていただきたいなというふうに思っております。我々は、この倫理の問題、これは各法人も、今この倫理問題というものにまじめに取りかかっておりまして、そういう面では改善に向かうのではないかというふうに思っております。

笹尾参考人 先生おっしゃいましたように、やはり、使命感、倫理観というのが私は基本だろうと思います。

 ただ、現実に、そういう使命感を基本にしまして、じゃ、具体的に、監査役は監査法人のやった監査をどうやって監査するんだということでございますけれども、一つは、監査役自身が、もう本当に、日常、現場を回っております。そこで我々なりの情報といいますか、経営の実態をつかんでいるわけですが、それで、監査法人が会計の観点からそれをやられる。それを相互に、情報を出し合いまして、お互いに相手の情報を使って、そしてさらに監査を深めていくというのが現状でございます。

 当社の例などで申しますと、もう年に、いわゆる計画段階、中間段階、それから期末の段階、そこで詳細な監査結果の報告を相互にやりまして、先ほど申し上げたんですが、その中で公認会計士が特に内部統制等について見つけてくれたいろいろな問題、これは社長を含む取締役会で報告してもらうというような形で、非常に双方の情報を生かそうというふうなことをやっております。

 以上です。

古本委員 今、倫理観のことをお尋ねしたわけでありますが、実は先日、報道でも出ておりましたので、御両名におかれては、もしかしてごらんになっているかもしれませんが、過日、消費者金融の武富士のオーナーの御子息が、海外にある財産を、海外に住んでいるときに生前贈与を受けた場合には、これは日本国として課税できないという当時のルールを使って、限りなくグレーに近い、今これは係争中ですので余り踏み込めませんが、脱税というか節税というか、恐らく私は脱税に近いと思っていますが、これの指南を公認会計士の方がなさったという、これは今、判決文が手に入っていますけれども、くだりが出てきますよ。公認会計士が累次にわたって指南したということがあるんです。

 今、企業の監査の話に特化していますが、やはり、こういう意味では、これはずばり、弁護士、会計士、医師、これはもう、娘をお嫁に出したいナンバースリーですよ。社会的に地位もある。いろいろな、まあ、代議士はちょっと違うかもしれませんが。

 したがって、こういうビジネスモデルが温床としてある限りは、この倫理観というのは、会長には申しわけないですが、いろいろ内部で四十時間の授業をやりますと言われても、試験の段階でそういう素地のある人を排除するという方法はできるのか。あるいは途中で何か、免許の更新制度がないようでありますので、やっていかないと、それぞれの、今言った医師、弁護士、会計士という、まさに先生と呼ばれる三大職業ですよ。この人々に対する信頼は、特に会計士は、背後にマーケットに参加したいと思っている多くの投資家がいるということを考えれば、結果的に武富士の株も下がりましたよ、いろいろな事件があって、これは投資家は損をしているわけですから。

 そこのトリガーを握っているということをもちろん認識されていると思うんですが、何か今のルールに加えて、倫理観の強化ということで、監査役も結果として見逃していたと思うんですね、そういうことを。ですから、それぞれ、決意といいますか、やっていきたいという方向がもしあればお聞かせいただいて、終わりたいと思います。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

藤沼参考人 武富士のケース、私も新聞で見ましたけれども、公認会計士がアドバイスをしていた、その内容はよくわかりませんけれども、そういうことだと。

 二つ言えることだと思いますけれども、一つは、公認会計士であっても、それは税理士としての資格というか立場でアドバイスしたのであろうなという感じがしております。これは前にもお話ししましたけれども、医者、弁護士、税理士は、基本的にはやはりクライアンツの利益のために動くということで判断しておるんだと思いますので、そういう面では、クライアンツにとって最大のいわゆる節税になるというアドバイスをしたのかなという感じがしております。

 ただ、これはアンダーセンのときもそうだったんですけれども、監査というのはちょっと特殊でございまして、やはり我々は倫理観を持って、市場、株主、ステークホルダーというものを考えなくてはいけない、これが第一にあるわけで、クライアンツ、企業の満足度のために監査しているわけではないという立場でございます。

 それが、コンサル業務というものが非常に事務所の中で幅をきかせてしまって、そこがもうかるということになると、コンサルのカルチャーが事務所の中に蔓延してしまう。こうなると、本来、監査としての倫理観というか使命感というものがどこへ行ってしまうのかなと。事務所運営というものは、そういう面でやはり監査が主体となって、きちっと総合力のあるサービスが提供できる事務所にしなくてはいけないというふうに個人的に思っております。

 以上でございます。

笹尾参考人 監査役協会におきましては、監査役の使命感、倫理観の高揚というのは最大の課題にしておりまして、絶えずいろいろな指針とかそういうのは出しておりますし、それから、年二回の、大体二千六百人ぐらい参加するんですが、大会でそういうことを訴え、また、日常的には、東京なら東京で二十近い部会がございまして、そこで絶えずそういう問題を繰り返し繰り返しやっているわけでございます。

 ですから、やはり先生おっしゃるように、倫理観というのがベースでございまして、それをしっかり皆さんの中に植えつけていくというのが大事な課題だと思っております。

古本委員 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 私は、十五分と大変時間が短いので、主として藤沼参考人にお聞きしたいと思います。

 ここに政連ニュースというのがありまして、これは公認会計士協会と政治連盟が連名で出した、公認会計士法改正に対する要望というのが一番最初に載っております。これによりますと、監査法人等に対する監視、監督は日本公認会計士協会の自主規制にゆだねるべきである、あるいは、監査法人への刑事罰については反対する、このように書かれております。

 この要望書の立場から見て、今回の公認会計士法改正案をどのように評価されているか、まずお聞きをしたいと思います。

藤沼参考人 協会の政治連盟があるということで、これはどこの団体でも、政治資金規正法に基づいて政治連盟をつくるということは法律で認められていることだと思います。我々の方は、協会の会員で、自主的に政治活動について支援をしたいという会員が資金を提供していく、政治連盟をつくっているということでございます。

 それで、今回の会計士法の改正に当たって、私ども、一つは、刑事罰については、これは実例があるということで、劇薬的な刑事罰というのは問題があるのではないかということで、これは政治に携わる先生方に御説明して御理解を得たいということで活動したのだというふうに理解しております。

 また、自主規制につきましては、これもアメリカのエンロン事件以降、いわゆる企業改革法が実施されて、やはり、会計士協会による自主規制から非常に官規制の方に移っているという流れの中で、日本の置かれている状況の中で、官規制に移って果たしていいものかどうか。

 我々はやはり、自分は監査のプロであるし、監査の団体の、監査のプロフェッションがみずからの業務を改善するということは当然のことでありますし、そこのベースがなければ全く国家公務員みたいになってしまいますので、そういうことで、自主規制を強化して、ただ、足りないところもあるかもわからないから、それについては官の方で補完してもらって、チェックしてもらう。こういうシステムが社会的に監査制度の安定化に結びつくのではないか、そういうような観点から主張しているわけでございます。

佐々木(憲)委員 今度の刑事罰の導入については、公認会計士協会あるいは政治連盟の強い反対で、盛り込むことは見送りになったわけであります。

 政治連盟の増田宏一会長は、ニュースの中でこういうふうに言っております。公認会計士法の改正、それから会社法あるいは金融商品取引法、こういうものが制定されたと。当政治連盟は、こうした法改正に際して、協会と一体となって我々の意見や要望を行政当局、国会等で主張し、改正に反映してきました。今春にはこれに基づき、というのは金融審議会の報告ですけれども、これに基づき公認会計士法改正案がまとめられて、通常国会に上程、審議される見通しです。当政治連盟としては、公認会計士法改正に向けて活動を強化していく所存ですと。

 先ほど、議員の方々に説明に回ったというふうにお話がありました。これは、こういう活動の効果というのはあったというふうな認識でしょうか。

藤沼参考人 これは、やはり日本の政治システムが民主主義のシステムですから、国会議員の先生方、私どもはローメーカーだというふうに思っておりますので、その法律をつくる、関与する先生方が、きちっとこの問題点の把握、理解をしていただいて、あるべき法改正に結びつけるというのがこれは筋ではないかというふうに思っております。そういう面で、最近は、これは党派を問わずなのでございますけれども、資本市場について関心を深める先生方が非常に多くなっているということで、それは私ども、非常にうれしいことだと思っています。

 そういう面で、協会が今どういう現状に置かれて、どういうことをやっている、どういう対応策をとっている、改正案についてはこういうふうに考えている、そういうような意見交換の場というものが大事ではないのかということで、政治連盟が活動しているということだと思います。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 この政治連盟の会長の文書が載っておりまして、「当政治連盟は別掲の要望書の趣旨に則り、政治家の先生方をはじめ、関係各方面に向けて積極的な活動を展開していく」こういうことで展開をされたわけであります。

 それで、公認会計士制度振興議員連盟というのがあるようですけれども、これは御存じですか。

藤沼参考人 はい。これは自民党の先生方の有志が、資本市場、公認会計士業務に関心のある先生方が、議員連盟をつくっていろいろサポートしていただいている組織だというふうに認識しております。

佐々木(憲)委員 これは自民党の中にできている議員連盟ということで、このニュースによりますと三十八名が参加しているというふうに書かれております。その会長は衛藤征士郎、副会長伊吹文明、事務局長増原義剛、事務局次長吉野正芳というメンバーだそうであります。

 この議連と協会あるいは政治連盟は、いろいろな意見交換、あるいは説明会といいますか、そういうものを持たれているというふうにお聞きしますけれども、そういう実態でしょうか。

藤沼参考人 今回の公認会計士法の改正ということは、公認会計士制度にかかわる全般的な問題ですから、意見交換会あるいは勉強会、そういうようなことは開催しております。

佐々木(憲)委員 その議員連盟の主なメンバーに対して、公認会計士政治連盟から政治献金が渡されていると聞きますけれども、これはいかがでしょうか。

藤沼参考人 私は、政治連盟の具体的な内容までは深く理解しておりませんが、政治資金を出しているということは理解しております。

佐々木(憲)委員 これは、昨年九月の官報を見ますと、公認会計士政治連盟から政治献金が渡されておりまして、議連会長の衛藤氏には五百二十二万円、副会長の伊吹氏には三百九十万円、事務局長の増原氏には、これは政党支部に百万円、次長の吉野氏には政党支部に二百三十二万円と、政治資金が渡されているという記録が明確に報告で出ているわけであります。

 私は、政治活動というのは、やるのは大いに結構だと思うんですけれども、しかし、政治と金という問題というのは、常にさまざまな問題を発生するわけであります。私が紹介したこの数字は一昨年のものですけれども、これは昨年も同じように献金を続けているというふうに考えてよろしいですか。

藤沼参考人 献金は昨年と同じように、詳細は私自身はわかっておりませんけれども、献金はしているのだというふうに聞いております。

佐々木(憲)委員 これは、私は、こういう形で献金を行うということは非常に問題があると思っております。といいますのは、これまでもKSD事件ですとかあるいは日歯連事件、さまざまな不祥事というのがありました。それは、公益法人が政治連盟という団体をつくって、公益法人は直接は献金できないけれども、政治団体を通じて献金をする。そのことがさまざまな政治のゆがみをつくり出し、腐敗、癒着をもたらしてきた。こういうことで、贈収賄事件にまで発展するケースまであったわけでございます。ですから、こういう献金というのは、私はやるべきでないと思います。

 団体の利益を守るために、その団体と非常に密接な関係にある政治連盟の幹部、そのメンバーに対して献金を行う。その幹部が一体何をやっているかといえば、この連盟、つまり協会の意向をまさに代弁して、法改正その他でも一定の役割を果たしていく、こういう関係になっているわけであります。政治を金の影響力で動かすということになりますと、これは極めて重大であります。したがいまして、私は、こういう運動をするのは大変結構ですけれども、しかし、お金をそれに絡ませるというやり方は再検討すべきではないかというふうに思います。

 ぜひ検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

藤沼参考人 これは、私、個人的な考え方ですけれども、政治活動にお金がかかるということは、これは民主主義の世界ですから、これは当然かかるわけでございます。政治家の方も、自分の得意分野、関心分野というのはあるわけでございまして、公認会計士業務、資本市場の透明性、あるいは資本市場の強化に関心のある先生方に、政治的な、いわゆるその活動の、これは、協会の場合には、ほかの団体と違ってそんなにいっぱい資金があるわけではありませんから、かなり浄財でございますけれども、そういう面で幾らかのお役に立てることができればということでございます。

 今回の改正案の中でも、では、それによって改正案の中身が大きくねじ曲げられたとか、そういうことは私はないというふうに思っております。そういうようなことは初めから考えているわけではなくて、資本市場の強化のために、資本市場に関与している公認会計士制度がいかに強化されるかという観点から、皆さん活動に協力してくれたということだというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 その献金によって中身がねじ曲げられたことはないと言いますけれども、これはあったら贈収賄事件になりますからね。ですから、これは、一般的な献金というふうにおっしゃいますけれども、しかし、こういう政策を掲げ、要望書を掲げ、これは政治連盟だけじゃない、協会と連名で出されている要望書です。それを、一生懸命その要望書を実現する立場に立って動きをしている政治家に献金をすると。極めてこれは疑惑を持たれかねない。私は、疑惑があるとまでは言いませんけれども、疑惑を持たれかねない構造なんですよ。だから、当然、こういうものは再検討をする。

 私は、政治に金がかかるとかといいますけれども、それは個人献金でちゃんとやればいいわけで、何も団体献金、企業献金、こういうものをやる必要はないということを明確にここで申し上げておきたいと思います。ぜひ検討していただきたい。

 以上で私の質問を終わらせていただきます。

伊藤委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。

 参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)

    ―――――――――――――

伊藤委員長 引き続き、内閣提出、公認会計士法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として金融庁総務企画局長三國谷勝範君、金融庁監督局長佐藤隆文君、金融庁証券取引等監視委員会事務局長内藤純一君、金融庁公認会計士・監査審査会事務局長振角秀行君、法務省大臣官房司法法制部長菊池洋一君、法務省民事局長寺田逸郎君、厚生労働省大臣官房審議官白石順一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

伊藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

伊藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。

 先ほど参考人質疑をさせていただきまして、今回は法案の審査ということでございます。主に山本大臣にお伺いをいたしたいと思いますが、先ほどの参考人質疑におきましても、私は立たせていただいて、いろいろな質問をさせていただきました。

 それで、今回の公認会計士法の改正案は、幾たびかの会計不正といいますか不祥事が起こったということも一つの原因なんだろうと思います。二〇〇三年に大改正をやった後、今回の改正ということでございますので、そういうことで今回の改正が行われたと理解をいたしておるわけでございますが、先ほど公認会計士協会の会長は、大変厳しい法律であるというような認識をいたしておられたわけでございます。

 そこで、今回、この不正、カネボウであるとか日興コーディアルであるとか、またライブドアだとか、これはまだ訴訟中のものもございますし、どちらがどうなのか、すべてが決着したわけでありませんけれども、こういうような会計不正について、確かに公認会計士の責任はあると思うわけでございますが、一方で、このような粉飾決算なり会計の不正をした一次的な責任は企業にあるわけでございます。企業の提出した財務書類の監査をするのが公認会計士でありますから、まず、企業は、上場企業であれば、社会的な制裁を受けなければならないわけでございます。

 その際に、先ほど日本監査役協会の会長にもおいでいただいてお話をお伺いしたところでございますけれども、監査役は監査役の立場で企業内にあって監査を行う。この監査役の監査と、または監査委員会の監査と公認会計士の監査がやはり協力をしないといけない。その目的は、企業のガバナンスをしっかりとさせる、経営の緊張感を持っていただくようにやっていかなければならないわけですね。それで、不正な財務書類が出ておった場合には、断固たる監査意見を付さなければならないわけでございます。

 今回の公認会計士法の法案内容、後ほどいろいろ質問をさせていただきたいと思いますが、一方で、監査役についてほとんど言及されておらないわけでございます。私も、先ほど申し上げたんですけれども、幾たびか議員立法の商法改正にタッチをいたしておりまして、例えば株主代表訴訟であるとか監査役の権限強化のところをやったわけでありますけれども、今回のことについては、先ほども申し上げましたように、監査役についてそれほど言及されておらないということがまずあるわけでございます。これは、私はある意味バランスを失するのではないかというように思っておるわけでございます。

 きょう突然、先ほど、法務省民事局長に来ていただきたいということできょうは来ていただいておりますけれども、監査役会または監査委員会、委員会方式をとっておるところは監査委員会といいますから、このようなところの専門性をまず高めていかなければなりませんし、独立性を高めていかなければなりません。会社とは一定程度の距離を置いてしっかりとした意見を述べていただかなければならないわけでございますから、そういうようなことを高めていかなければならぬというようなことであるとか、例えば監査人の選任の議案の提案権であるとか監査報酬の決定権を監査役協会に持たせてはどうかという議論もあるわけでございます。

 このような観点で、私は、今のところ論じられておるのは、公認会計士に対して非常に厳しい対応を求められておるわけでありますけれども、公認会計士と監査役との間のバランスをどうも失しておるというような観点で、今、法務省民事局長にお伺いをいたしたいわけでございますが、会社法の改正も含んでどのようにお考えをされておられるのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

寺田政府参考人 会社をめぐる法律関係でございますけれども、一方では、有限責任の大きな法人ということで債権者に対する関係というのが非常に大きいわけでございますが、他方、会社の内部をどういうように統制していくか、規律していくかということ、つまり、いわゆるガバナンスの問題でございますが、非常に大きな問題でございます。

 その中でも、戦後の商法の歴史、会社法の歴史を考えてみますと、取締役が一方におり、他方ではそれをチェックする機関として監査役が置かれているわけでございまして、この監査役の権限をどう強化するか、どこまで監査役の独立性を保たせるかということについて腐心してきた歴史と言っても過言ではない、そのぐらいのウエートを占めているわけでございます。

 現に、昭和四十九年、五十六年、最近では平成十三年、委員も携わられたというふうに先ほど御指摘になられましたけれども、監査役について、さまざまな面で権限が強化されてきてはいるわけでございます。法律上の制度といたしましては、独立性というのはそこで相当に強化されてきているというふうに私どもとしては考えているわけでございます。

 また、委員も御指摘になられましたように、監査役については、ただいるというわけではなく、もちろんある種の専門家としてチェックするだけの人材であることが必要であるわけでございますので、これはつい二年前に改正されました商法の改正ででき上がりました会社法におきまして、専門性ということをより明らかにしていくという立場から、社外監査役についての属性の情報の開示等を会社法の施行規則等で現に行ってきているわけでございます。

 今、今回の会計士法の改正における議論で、監査役についてどういう役割を与えるべきかというような御議論が出てきていることからも、私どもも十分認識しているところでございますけれども、なお、会社をめぐって、執行部、その中でも内部でこれをチェックする監査役、それと外部からこれをチェックしていただく会計監査人との相互の関係についてはいろいろと問題意識を持っていかなきゃならないところだろうと思います。

 さらに、いろいろな運用を背景にいたしまして、監査役、監査役会の独立性、専門性を高めていくべき措置が必要だということになりましたらば、その見直しに向けた検討を行うことを含めて、十分にこの問題を念頭に置いて対処してまいりたいと考えているところでございます。

谷口(隆)委員 民事局長、もう帰っていただいて結構でございますが、おっしゃっていただいたように、やはり監査役の権限を強化するということも非常に重要なことでございまして、総体的に企業のガバナンスを高めていくということが重要なんだろうと私は思うんですね。ですから、ぜひ、商法と申しますか、会社法の改正の中で、今後、監査役のあり方をもう一度検討していただきたいというふうに申し上げたいと思います。

 それで、本法案のことになるわけでございますが、私も以前、監査の現場に出たことがございますので、よくわかっておるわけでございますが、どうも最近、私、この法案が出る前、またその後、いろいろ公認会計士の方々に意見を聞きましたけれども、先ほども出ておりましたけれども、中堅の公認会計士は、こんなにリスクが高くて、報酬が安くて、やっていられないなというように非常にモラールが低下しておる傾向がございます。また、新人の方、新しく公認会計士の業界に入られた方は、非常に機械的な業務をさせられて、機械的な業務というのは、品質管理レビューを中心にした、判断業務ではなくて、非常に時間がかかるようなところを中心にさせられて過大な労働を強いておる。それがひいては大変な過重感になって大変疲弊をしているというのが現状でございます。

 先ほど藤沼会長の方は、これはまあ一時的なものだというように理解しておるというような御発言があったんですが、私は、どうも違った方向に向かっておるような気がするものですから、そういう観点で、きょう質問をまずさせていただきたいと思うわけでございます。

 そもそも、先ほど共産党の佐々木委員の方からも政治連盟の構造についておっしゃったわけでございますが、この公認会計士の業界というのは、非常にひ弱で、いわば非常にわかりにくい。監査というのは一体どういうものなのかということをわかっていらっしゃる方はほとんどいないと思うんですね、やっていらっしゃる方以外。先ほど監査役協会の会長もおっしゃっていましたけれども、監査役の業務でさえ、どんなことをやっているか皆さん方に理解されていない。こういうような状況の中で一つ不祥事でも起こったら、あなたたちが悪いんだ、こういうようになるわけでございます。

 まずは、どういう業務をしておるのか、また、監査とは一体どういうものなのか、こういうことをしっかりと認識しなければならないと思います。そうしないと、非常にひ弱な団体が四面楚歌に遭いまして、あらゆるところからプレッシャーがかかって、先ほど申し上げましたように、公認会計士協会の方々の中には大変モラールの低下を引き起こしておるような状況もあるということでございますので、これを許していくということになりますと、日本のガバナンスの柱が、公認会計士監査、監査役の監査、このようなところが弱くなってまいりますと、当然、このガバナンスが非常に弱くなってきて、企業行動そのものが安易に流れる可能性があるわけでございます。その中心で、非常に目立たないところで頑張っておるのが公認会計士だ、監査法人だということをよく理解していかなければならないわけでございます。

 私は、金融審議会の公認会計士制度部会の取りまとめ、また審議の状況もつまびらかに聞いておりましたが、業界のことをわからずしていろいろな発言をされている方がたくさんいらっしゃったような気がします。全く新聞報道に踊らされたような発言をされている方もいらっしゃいます。また、公認会計士と同じような弁護士、医師、特に弁護士の方もおられたようでありますけれども、特に非違を抑制するために刑事罰を、こういうように言っていらっしゃる方がおられましたが、では、みずから弁護士の、日弁連だとか弁護士法人に刑事罰を科せられるといったことに対して一体どのようにお考えなのかと私は言いたいわけでございます。ほかの分野のことはいろいろなことをおっしゃるわけでございますけれども、みずからの足元についてはなかなかおっしゃらない。これが一般的なんですね。

 そこで、非常に理解が乏しいこの公認会計士業界、監査法人の業界についてよく知っていただく必要があるということを含めて、今回質問させていただきたいと思うわけであります。

 今申し上げたように、公認会計士の監査の現場というのをごらんになった方はほとんどいらっしゃらないと思うんですね。監査の現場に山本大臣は行かれたことはありませんよね。

山本国務大臣 多くの会計士の友人を持っておりますけれども、現場、特に実査の、大変会計士の皆さんが御苦労されている現場には行ったことはございません。

谷口(隆)委員 大体の皆さんがそうなんだろうと思います。

 企業がどんどん大きくなっていますから、大変な事務量をこなさなければなりません。最近の状況を見ますと、先ほどの参考人の質疑にも出ておりましたけれども、以前は、会社の担当者と意見交換しながら監査を行うということが一般でありましたけれども、どうも最近は、訴訟リスクが高まってまいりましたので、非常に詳細な監査マニュアルをこなしていくということで大変な時間が費やされておりまして、それがパソコンに入っておるものですから、この監査マニュアルを消化していくのにパソコンの前に座り続けているというような状況があると聞いておるわけでございます。

 これは私が現場におったときにはそういう状況ではなかったわけでありますが、最近のいろいろなところのプレッシャーがそういうような監査に今振り向けられているということを私たちはよく理解していかなければなりません。

 では、監査とは一体どういうものなのか、監査の本質とは一体どういうものなのか。これは大臣どうですか、どういうようにお考えですか。

山本国務大臣 今回の法案の背景には、企業活動の多様化、複雑化、国際化、監査業務の複雑化、高度化、公認会計士監査をめぐる不適正な事例等がありましたこと、それらを含めまして、組織的監査の重要性の高まりが背景にございます。

 特に監査は、企業財務情報の信頼性を確保し、我が国金融資本市場の健全性、透明性を維持していく上で極めて重要な役割でございます。この役割を的確に果たすために、監査法人において適切な業務管理体制が構築、運営されることに加えて、個々の公認会計士が、高い見識や職業的懐疑心、職業専門士としての使命感、倫理観を持って監査に臨むことが重要と考えております。

 今般の改正におきましては、業務管理体制の強化を図るとともに、監査人の独立性と地位の強化等を図っておりますが、こうした措置により、各公認会計士、監査法人が、適切な公認会計士監査の実施に向けてさらに真摯な取り組みを行っていくことを期待しております。

 最近、特に企業の社会的影響力が増大する中で、ともすると収益だけに関心がございますけれども、しかし、今後、社会的な立場から見てまいりますと、ガバナンスの点、特に、社会的責任を果たすかどうか、あるいは市場との良好な関係についてどうするかという意味におきましては、収益を図る以外の部分では、公認会計士におかれる監査が大変重要な役割を果たしていくだろうというように思っております。

谷口(隆)委員 大臣は弁護士でいらっしゃいますけれども、監査のことは余り御存じじゃないわけですね。ですから役人のつくった答弁書を読んでいらっしゃるわけですけれども、ぜひ自分の言葉でおっしゃっていただきたいと思います。

 監査というのは、最終的に財務処理の適正性を述べるわけです。財務処理の適正性というのは、組織的監査で時間を過重に投入して、それで適正な監査が行い得るというように思っていらっしゃる方がいらっしゃるわけです。私は、そうではないと言っているわけです。

 弁護士の業界もそうでございますし、医師の業界もそうですけれども、やはり資質の違いがあるんですね。経験を踏んだり、いろいろな事例に当たったりしておりますと、例えば企業が意図的に粉飾をしておった場合に、粉飾を見抜く、異常点を見抜くというような感覚がだんだん研ぎ澄まされるわけであります。この感覚を研ぎ澄ますというのが非常に重要でありまして、このトレーニングを続けなければ、異常点を検出するような監査人、公認会計士になかなかなれない、これはもう当然の話であります。

 今般のこの法案の状況を見ておりますと、特に、品質管理レビューをしろだとか、組織的監査だから大量の人を投入しろだとか、これによって企業財務処理の適正性が維持できるのであればそれでいいんですが、どうも方向が違うと思うんですね。そのことを私は申し上げたいわけであります。

 私、きょう、財務金融委員会提出資料として十五枚の資料を当委員会に提出させていただいております。

 まず第一ページをごらんいただきますと、大手監査法人における品質管理レビュー業務の状況ということでございますが、監査調書はしっかりとしたものでなければならない、監査そのものもしっかりしたものでなければならぬということで、品質管理レビューをやるわけです。これはどういうことをこの中で言っておるかといいますと、監査法人内の担当以外の人たちが品質管理レビューをまずやる。業務提携先の海外のビッグファームからのレビューがある。公認会計士協会の品質管理レビューもある、これは全部ではありません。また、公認会計士・監査審査会の品質管理レビューがある。また、アメリカに上場しているところは、SOX法に基づき品質管理レビューが行われる。これが年間数万時間に及ぶと考えられている。

 特に新人の皆さんは、これでもう物すごく疲れております。このぐらいやらなきゃいかぬのかと私は言っているわけであります。一つは、公認会計士・監査審査会の品質管理レビューも大変重要なんだけれども、これは検査をやらなきゃいかぬところに対して極めて限定した状況の中でやるべきであって、いたずらにやってはならない、こういうふうに言っておるわけでございます。

 このような品質管理レビューにこのように多くの時間を割いているという現状について大臣はどのようにお考えなのか、御見解をお願いしたいと思います。

山本国務大臣 会計士の皆さん、監査法人が、企業における適切なガバナンスの確保の観点から極めて重要な役割を担っていることは御指摘のとおりでございます。会計監査に対するニーズや期待の高まり等を反映して、会計士さん、監査法人における業務の内容が増大かつ複雑化している中で、現場の会計士さんの苦労がさらにふえていることも御指摘のとおりでございます。

 監査の持つ役割の重要性にかんがみまして、関係者の一層の貢献を期待するところでございますが、このように品質管理レビューの五段階全部にすべて全力投球するということになると数万時間に及ぶ、こうした過重な労働が報いられるかどうか、こうしたこともあわせながら、今後検討していく必要があろうかというように考えております。

谷口(隆)委員 申し上げましたように、やはり最近は訴訟リスクが高まっていまして、訴訟リスクが高まるということは、訴訟にたえるような監査をやらなきゃいかぬということに当然ながらなってまいるわけです。ですから、監査調書についてきちっと整えなければならないというところもそういうところにあるわけでございますが、しかし、本来、それによって正しい監査が行い得るのかというと、そうではありません。

 先ほども申し上げましたように、経験のある監査人がいろいろな場を踏んで、そこで研ぎ澄まされた感覚でやるということがやはり非常に重要なんですね。そういうようなところが、この法案の審議、特に金融審議会の会計士制度部会の議論では余りなかったんです。私は、これが非常に問題なんだろうと思います。ですから、非常に多方面からのプレッシャーがかかって、硬直的な監査になっちゃっている。

 最近の状況を見ますと、あれは日本航空だったでしょうか、経営計画のとおり進んでいかないで、突然、繰り延べ税金資産はだめだということを判断した会計士が言ったものですから大きく計画が狂っちゃったというようなことも出てきておるわけで、当然、こんなにたくさんのプレッシャーが出てまいりますと、保守的な監査にならざるを得ないんですね。それが、ひいては日本経済全体に対して果たして好ましいのかどうか。会計士協会の監査全体の問題ではなくて、日本経済全体の問題にもこれは大きくかかわっておるところであります。

 このような観点で今回の法案が出されたのか、大臣にお伺いをいたしたいと思います。

山本国務大臣 もう先生に申し上げるまでもないことでございますが、監査の実施に当たっては、企業の財務書類が企業の財務状況を適正に反映したものとなるように留意すべきでございまして、訴訟対応等を重視する余り、監査人が過度に保守的な対応をとることが適切でないことは御指摘のとおりでございます。

 また、適正な会計監査の実施は、企業による適正な開示の確保等を通じて、証券市場ひいては日本経済の活性化に大きな役割を果たすものでございます。関係者の積極的な貢献を期待したいところでございまして、このような過度な保守性を脱皮できる方法を検討していく必要があろうというように思っております。

谷口(隆)委員 まさに大臣が今おっしゃっていただいたように、そういうような監査は好ましくないんだというようにやっていかなければなりませんが、一方で、あらゆるところでプレッシャーがかかってまいりますと、そうではなくて、どうしても過度に保守的になりがちでございます。私はそれを大変心配しておるところでございます。

 また、公認会計士の監査というのは、先ほど藤沼会長もおっしゃっておられたわけでありますが、直接クライアントから報酬をいただいておりますけれども、クライアントに対して批判的な意見を述べるということで、ほかの、弁護士、医師なんかとは若干違うところがあるわけでございます。

 そこに求められるのは公正不偏な高い精神性が求められるわけでありまして、そういうような高い精神性を業界の皆さんに持っていただくような指導もいたしておるわけでございます。

 だから、先ほども刑事罰の問題が出ておりましたが、このような刑事罰も、どうも、いろいろな金融審議会の取りまとめの状況を見ておりますと、非違を抑制するために刑事罰を科すんだ、こういうように言うわけですね。非違を抑制するために刑事罰と。

 もう既に御存じのとおり、現行法でも、中央青山監査法人が崩壊をし、その後を引き継いだみすず監査法人、あらた監査法人、このみすず監査法人はまた事業継続ができなくなってしまいまして、大手の監査法人を中心に公認会計士の皆さんが今移りつつある、こういう状況で、現行法におきましても大変厳しい状況にあるということをよく知らなければならないと私は思います。

 これをあえてつけ加えて刑事罰と言っていらっしゃる方、どの方が言っていらっしゃるのか。ほとんど、この公認会計士協会のいわば監査の現場を知らない方、マスコミの報道によって、どうも私から申し上げますと誤った方向に行っていらっしゃる、こういうような声だと思うわけでございます。ですから、方向をしっかり見きわめて、正しい方向に向けていかなければ大変な事態になるんだろうと私は思うわけでございます。

 お配りをいたしました三ページに、我が国と米国における監査事務所の比較というものをつけておるわけでございます。今、アメリカ流のいわゆる組織的監査、大量に人を投入してやったらいいと。現に、アメリカにおきましては公認会計士は約三十三万人、我が国では二万三千人ほどでございます。

 今、この準会員が、会計士補というんですが、十三ページを見ていただきますと公認会計士等の登録状況というところがございますが、十八年の三月末現在で、公認会計士登録者が一万六千二百二十二人、会計士補が六千四百十九人でございます。合計二万二千名強なんですね。このうち、監査法人に所属しておる公認会計士の数が八千八百人ですから、大体、公認会計士の登録者の約半数が監査法人に所属して頑張っているというような状況でございます。

 それで、現行の日本の監査法人は、ほとんど資格を持った方でやっておるわけでございます。ところが、アメリカの方は、試験そのものが、大学を卒業すれば、一定程度の学力があれば合格できるという比較的易しい試験がありまして、まずはその試験に合格をして、監査事務所に入ってトレーニングを受けて、残っていく方とそうでない方と分かれてくる。我が国の公認会計士というのは、これは大学を卒業されてすぐに職業を選択しないで、しばらく勉強して、資格を取られて入っていらっしゃる方が非常に多い。このような違いもあるわけでございます。

 私は、必ずしもアメリカのような監査のしぶりに合わせる必要はない。今の公認会計士の皆さんの、いわば非常にレベルの高い皆さんが集まってやっていらっしゃるわけでありますから、そこで切磋琢磨をしていただいて、現行の日本の企業の監査に励んでいただきたいというように思っておるわけでございますけれども、これも一緒くたにしてアメリカ的な監査を行えというのもちょっとおかしい。その詳細なことを本当に理解されて今回の法案の基礎になりました金融審議会が行われたのかどうか、私は大変な疑問を持っておるところでございます。

 また一方で、監査報酬におきましても、これは二ページにありますけれども、監査報酬の日米の違いというのはなかなか比較しにくいところがあるわけでございますが、主に大きな企業のところを中心にして比較いたしますと、大体、日本の監査法人の約四倍の報酬をアメリカでは取っているというようなことがあるわけでございまして、いろいろなところに違いがあります。

 このような状況の中で、数万時間に及ぶような品質管理レビューが要求されて、そこに投入をしておる人たちにそれなりのお給料を支払うということになりますと、これは収益性が当然ながらどんどん圧迫されますから、監査報酬の値上げということになるわけでございまして、このことについては余り今のところは議論されておらない。ですから、今の公認会計士また監査法人が置かれておる総体的な状況をよく知っていただかなければならないと私は思う次第であります。

 それで次に、品質管理レビューの一端を担っておる公認会計士・監査審査会の検査について私は申し上げたいわけでありますが、今回の法案で、むやみやたらに、いたずらに検査に入らないというようなことになったと理解しておりますが、公認会計士・監査審査会の検査のやりぶりについて、どういう状況なのか、御報告をいただきたいと思います。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

振角政府参考人 それでは、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 今般、公認会計士法が改正されているわけでございますけれども、現行制度上、金融庁長官が有する、監査事務所に対する一般的な報告徴求、検査の権限のうち、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューの報告に関するものは公認会計士審査会に委任されているということでございます。

 これは、公認会計士・監査審査会の有する専門知識あるいは経験の蓄積を検査等に活用するためでございますけれども、今回、新設の監査事務所で品質管理レビューを受けていない場合、あるいは、その品質管理レビューに対して監査事務所が協力的でない等のために品質管理レビューの報告に支障が生じているなど、例外的なケースにおきましては、当局が品質管理レビューを介さずに直接報告徴求や検査を行う必要があるというふうに考えられたところでございます。

 このような限定的な場合における報告徴求あるいは検査につきましては、金融庁本体が臨時に検査体制を構築してこれを行うよりは、むしろ公認会計士・監査審査会がその専門知識、経験を活用して行うことが効率的と考えられることから、今般の改正におきましては、公認会計士・監査審査会への権限委任の範囲について必要最小限の見直しを行ったところでございます。

 公認会計士・監査審査会としては、日本公認会計士協会による品質管理レビューを前提にすることを基本としまして、今回の改正法案の趣旨にのっとり、適切に今後とも検査を実施していきたいと思っておる次第でございます。

 以上でございます。

谷口(隆)委員 政令によってそのような公認会計士・監査審査会の検査が拡大するのではないかというように危惧をされていらっしゃるわけでありますが、そのようなことについて御答弁をお願いいたしたいと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 今度の公認会計士法におきましては、第四十九条の四におきまして、一つには、日本公認会計士協会の品質管理レビューを受けていないこと、それから二点目は、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューに協力することを拒否していること、こういった二点を中心といたしまして、その場合には、金融庁本体で監査チームを編成することなく、公認会計士審査会におきましてそういったレビューができますような措置を講じさせていただきたい、こういうことでお願いしているものでございます。

谷口(隆)委員 とにかく、公認会計士・監査審査会のスタッフ、そんなに歴史は古いわけではありませんね、この組織は。そこで検査の対象を担っていらっしゃる方は、公認会計士の業界におられた方も任期つき採用で行っていらっしゃいますし、役人の皆さんもいらっしゃる。

 先ほども申し上げましたように、公認会計士のベテランがやった監査をどのように一体チェックされるのか、私は不思議でたまらないわけでございます。現場の公認会計士の監査より良質な検査ができるのかどうか。このような観点でどのようにお考えなのか、お述べいただきたいと思います。

振角政府参考人 お答えさせていただきたいと思います。

 先生御案内のように、我々公認会計士・監査審査会は、日本公認会計士協会が行います品質管理レビューに関する報告を審査し、その結果、必要かつ適当であるというときには検査を実施するということとしております。

 このような我々の検査というのは、個別の監査業務について、いわば再監査をするということを目的としておるものではございません。あくまでも、監査事務所が行う監査の品質管理が適切に実施されているかという観点から限定して行うものでございまして、それに必要な知識経験等を我々は研修等で育成するとともに、それに必要なスタッフをそろえているということでございますので、現場の監査そのものとはちょっと違います。それに応じた体制でやっておるということで御理解いただければと思います。

谷口(隆)委員 先ほども申し上げたんですけれども、例えば監査審査会が指摘しておられたのは、監査調書が十分に編綴されておらないというようなこともあったようであります。

 監査調書を整備するというのは非常に重要なことでありますが、適正な監査を行うといいますか、財務諸表の適正性の上には、これは必要条件ではありません。例えば訴訟が起こった場合に、その訴訟にたえ得るような資料という観点では監査調書というのは非常に重要でありますけれども、財務諸表の適正性の監査においては、これは必要条件ではない。そのようなところに、どうも調書が十分に編綴されておらないというような枝葉末節のことを言っておってはだめだと私は申し上げたわけであります。

 このような観点から申し上げますと、今振角さんの方からおっしゃったわけでありますけれども、もうごくごく限定した検査、これにとどめておかなければならないと思います。

 先ほど申し上げましたように、公認会計士は公正不偏の高い精神性を持った職業的な態度が必要なのでありまして、公権力がそこに入ってきて、どうだこうだと言われますと大変困るわけであります。そこに無用のプレッシャーをかけない、これは非常に重要なことでありまして、これが良質な監査を行い得る環境だと私は思うわけでありますけれども、山本大臣、どのようにお考えでしょうか。

山本国務大臣 おっしゃるとおり、調書の編綴等にこだわるような検査というのは、これは戒めなければなりませんし、この検査というものは、個別の監査業務について検証を行うことを目的とするわけではなくて、監査事務所による監査の品質管理が適切に実施されているかどうかという観点、振角氏が申し上げたとおりでございます。

 監査の基準としては、監査調書の適切な作成、保存等も求められておりますことから、検査において監査の品質管理上問題があると考えられる場合には、監査調書の作成、保存に関する問題点等も指摘し、改善を促すということもあり得るということだけでございます。

 また、審査会としては、公認会計士協会による品質管理レビューの一層の機能向上を公益的立場から促していくことをあくまで基本とすべきであるというように位置づけておる次第でございます。

谷口(隆)委員 本当に限定的に使っていただく、検査をやっていただくということをお願い申し上げたいと思います。

 それと、先ほど申し上げましたように、そのような品質管理レビューがたくさん行われるわけで、その結果、現場の監査に従事をしておられる特に新人の人たちは今大変過酷な勤務状況にある。このような状況について、大臣、どのようにお考えなのか、お述べいただきたいと思います。

山本国務大臣 まさに過酷な状況の中で、むしろ、さらにやりがいのあると言われる、あるいは報酬の高い分野に会計士さんが多く就職、転職をされ、そのことによって現実の監査業務に支障があるというような事態にならないように、今回の改正案が通過し、また施行されました暁には、健全な監査業務が会計士さんのもとに繰り広げられるように努力をしてみたいというように思っております。

谷口(隆)委員 ぜひそういう観点で、本当に私は、言い過ぎではなくて、中堅の公認会計士の現場におられる人たちは非常にモラールが低下している。特に若い人たちの過重な労働は大変な問題になっているということをよく認識していただいて、一刻も早く正常な姿に戻すように考えていただきたいと思う次第であります。

 それで、先ほどこれは申し上げたんですが、中央青山監査法人が崩壊をいたしまして、その後、みすず、あらた。みすずも事業継続ができないという状況になったわけでございますが、そもそもこのような状況はどのような原因で生じたのか、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

山本国務大臣 旧中央青山監査法人につきましては、昨年六月、一部の社員が独立する形で、あらた監査法人が新しく設立されることになりました。また、旧中央青山監査法人の残りを承継したみすず監査法人も、本年二月、他の監査法人との間で社員の移籍に向けた協議を開始することに合意しまして、先般、五月三十日の社員総会におきまして、本年七月末日をもって解散することを決議したところでございます。

 このような事態となりました原因等につきまして、報道によりますと、カネボウ事件による行政処分など幾つかの会計不祥事への関与、それによるレピュテーションの大幅な低下等の影響が指摘されているところでございますが、断定的に申し上げることは困難であろうというように思っております。

 いずれにいたしましても、監査法人におきまして、顧客や投資家等からの信用を保持することがその存立の上で極めて重要でございます。この信用を損なうことのないよう、監査の品質管理の維持向上、適正な監査の実施に向けまして最大限の努力を期待しているところでございます。

谷口(隆)委員 今大臣がおっしゃった理由で中央青山監査法人が崩壊していったわけでありますが、現行法でもこのように大変社会的に厳しく制裁を受けるといったことになるわけでございます。

 今回、それにつけ加えて課徴金だとか行政処分だとか、それに輪をかけたような非常に厳しい態様の法案になっておるわけで、私は、そういう意味において大変心配をいたしておるところでございます。本当にしっかりとした監査意見が表明できる監査法人、会計士になり得るのかということを大変今心配をいたしておるわけでございますが、中でも、先ほど申し上げた刑事罰、このようなばかなことを言っている方もいらっしゃる。私は、これはばかなことを言っている、あえてこういうように言わざるを得ないわけであります。

 これは両罰規定で、公認会計士が罰せられて、監査法人も同じく罰せられる、このような両罰規定のことを言っていらっしゃる。先ほど申し上げましたように、なぜ刑事罰なのかというと、非違を抑止するために要るんだと。このように現行法でも厳しい対応で社会的な制裁を受け、個人の処分も大変厳しいものがあるわけでございます。

 私がきょう提出いたしております資料を見ていただきますと、五ページ、六ページ、七ページのところに、過去五年における公認会計士法に基づく処分事例が出ております。

 平成十四年十月十五日にフットワークエクスプレスの、これは中小監査法人の瑞穂監査法人がやった事例だとか、あとは、個人の会計士の皆さんがやっておられて、虚偽証明が新日本でございますか、あと、著しく不当な業務運営ということで中央青山監査法人、またテスコンだとか、中小、そんなに大きな会社じゃないところの虚偽証明で出てきております。あとは、公認会計士個人の脱税で戒告を受けたり、業務停止を受けたりということであります。最近では、これも中小監査法人、大手ではありませんけれども、日栄監査法人だとか麹町監査法人なんかが処分を受けておる。

 確かに、このような処分を受けるに値するような公認会計士、監査法人もあります。これはどこの業界でもそういう人たちはいらっしゃるわけです。

 私は、それにつけ加えて、若干やっている業務は違いますよ、弁護士また医師の皆さんの懲戒処分の事例も挟んでおるわけでありますけれども、今度、先ほど申し上げましたように監査法人に刑事罰というばかなことを言っていらっしゃる方がいらっしゃいますが、弁護士法人または医療法人の法律制定時にそのような議論があったのかどうか。きょうは厚生労働省と法務省から来ていただいておりますので、それぞれお述べいただきたいと思います。

菊池政府参考人 弁護士法人の関係について御説明いたします。

 弁護士法人は平成十三年の弁護士法の改正によって導入されたものでございますが、その際に、弁護士法人について両罰規定というのが設けられております。

 弁護士法は、その前から、弁護士のいわゆる非違行為のうち、特に違法性の高いものを刑事罰の対象といたしておりました。具体的に申し上げますと、受任している事件に関しまして相手方から利益の供与を受けるといったいわば汚職行為とか、弁護士でない者に自分の名義を使用させるという弁護士にあらざる者との提携行為といった違法性の高い行為を刑事罰の対象にしていたということでございます。

 そして、弁護士法人を導入したときに、今申し上げました違法性の高い行為の禁止の趣旨といいますか、その実効性をより一層確保するために、弁護士法人の社員などである弁護士が、その弁護士法人の業務として、今申し上げました違法性の高い行為をした場合には、弁護士法人にも罰金刑を科すという両罰規定が置かれたわけでございます。

 なお、弁護士のいわゆる非違行為のうち、今申し上げました違法性の高い行為以外のものにつきましては、刑事罰ではなくて懲戒処分の対象としているというのが現行法のスキームでございます。

谷口(隆)委員 では、両罰規定はありますけれども、刑事罰じゃないんですね。

菊池政府参考人 両罰規定と申し上げましたのは、罰金刑でございますので刑事罰でございます。ただ、その対象になりますのは、今申し上げました、特に違法性の高い行為に限られておりまして、それ以外のものについては、刑事罰ではない、懲戒処分、戒告とか業務停止といったものの対象になるということでございます。

白石政府参考人 医療法人についてのお尋ねでございます。

 医療法の七十五条でございますが、両罰規定がございます。これは昭和二十三年の法制定以来の規定でございまして、医療法人も両罰規定がございまして、対象となっております。

 制定当時の経緯等詳細は定かではございませんけれども、今弁護士法の御説明がありましたけれども、そういうのと同様に、使用人の違反行為があった場合には、事業主である法人の側に、使用人の責任、監督その他の違反行為の防止のための注意義務があったという推定をいたしまして、これを処罰するという考え方であろうかというふうに考えております。

 また、医療法人の両罰規定でございますけれども、虚偽の報告であるとか無許可の開設であるとか、そういった非違行為に対する刑事罰、罰金でございまして、医療過誤その他のものにつきましては、これは別途医師法による行政処分で対応する、こういう形になってございます。

谷口(隆)委員 ですから、今の弁護士法も医療法も業務に対しては刑事罰はかかっていない。今まさに議論されておるのは、公認会計士法は業務に対して刑事罰をかけようという両罰規定なんですね。

 そこはやはり非常に重要性が大きくて、現行法でもこのような状況になり得るにもかかわらず、今回これは先送りになりましたけれども、しかし、いまだに言っていらっしゃる方がいらっしゃるので、このようなことはやらない方がいいですよ、やると、日本のガバナンスの柱である企業監査が骨抜きになりますよということを私は申し上げたいわけであります。法律でがんじがらめにして上からも横からもずっとプレッシャーをかけることが問題が起こらなくなってくるということではなくて、これは自主規制団体たる公認会計士協会の中でも非常に厳しい対応も今やっておるわけでありますけれども、そこに任すというのが非常に重要なんだろうと思います。

 全然話の質が違いますけれども、我が国の代表的な輸出産業、リーディングカンパニーであったソニーが、ちょっと最近、どうも国際競争力が弱くなったということで、文芸春秋なんかを読みますと、一つの原因は、目先の状況を目に見えるような形で改善するために開発部門にメスを入れて大変な状況になっている、一たん崩れたシステムは再び立ち上がれないというようなことを言っていらっしゃる方がいらっしゃいましたが、監査の業界もそうであります。この六十年間、非常に高い精神性を持ちながら、日本経済の発展に基本のところで貢献をしてまいった公認会計士、監査法人の仕事が、ここへ来てモラールが低下し、本当に監査をやりたいという人たちがそこに集まってこないとなったときには、これは大変な状況になるのではないか。

 ですから、そういうような状況も十分考えながら、公認会計士また監査法人のあり方を考える必要があると私は思うわけでありますが、大臣、どのようにお考えなのか、御答弁をお願い申し上げたいと思います。

山本国務大臣 監査法人に対する刑事罰につきまして、まず一方で、非違の抑止等の観点から必要である、士業における自主規律の向上にも資するというような考え方がございます。他方で、刑事罰ということになりますと、監査法人の信用失墜、所属公認会計士の離散、そういったリスクが大き過ぎるのではないかという反対論もございました。

 そうした議論の結果、公認会計士制度部会におきます最終的な報告におきましては、刑事罰導入の可能性については一つの検討課題というようなまとめ方をしているわけでございまして、今回は両罰規定は入れないわけでございます。

 特に現実論からしてみますと、エンロン事件の後のアンダーセンで両罰規定が働くと言われておりましたけれども、現実にはアンダーセンには会計士がいなくなった、あるいはカネボウの事件で、中央青山も、現実にはもはや解散という形になるわけでありまして、現実に両罰規定が実務の世界で機能するかどうかについては極めて疑問なしとしないという指摘もございます。

 そう考えましたときに、今回の改正案では、課徴金制度を導入して行政処分の多様化を図っておるわけでございまして、こうした観点に立って非違の抑止が適切に図られるものというように考えておるところでございます。

谷口(隆)委員 今大臣がおっしゃったように、まさにエンロンの場合もそうでありましたし、今回の中央青山の場合もそうであったわけでありまして、そういう風評が立っただけで監査法人の経営が維持できないというような大変微妙な立場、監査をするわけでありますから、そういう存在であるということをよく認識した上で、今の公認会計士、監査法人が置かれておる状況をよく認識し、本来監査はどうあるべきなのか、こういうこともよく理解した上で今後進めていただきたいということを申し上げまして、時間が参りましたので、これで終わらせていただきたいと思います。

 どうもありがとうございました。

伊藤委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時一分開議

伊藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。とかしきなおみ君。

とかしき委員 ありがとうございます。自民党のとかしきなおみでございます。

 本日は、公認会計士法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。私はまだまだそんなに詳しいわけではございませんので、国民の立場からストレートに質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

 金融市場もいよいよ構造改革と活性化、これは我が国の経済にとっても喫緊の大変な課題でございます。そして企業の活動も、投資からグローバル化、間接金融から直接金融ということで、日本の企業も、財務諸表、財務情報の信頼性、透明性がますます重視されるようになってきました。ということで、会計監査をつかさどる公認会計士の役割がだんだん大きくなってきております。

 しかし、残念ながら、昨今の不正問題ということを受けまして今回法改正につながっているわけでございますけれども、公認会計士の方々が抱える構造的な問題から、今回の法律案について少し質問させていただきたいと思います。

 けさの参考人質疑でもたくさん出ておりましたけれども、まず最初に、インセンティブのねじれについてお伺いしていきたいと思います。

 会計士というお仕事は、お客様が満足するサービスを提供していればいい弁護士やお医者様のような職業とは違いまして、お客様である企業に厳しい指南をして、その一方で報酬ももらわなくてはいけないということで、非常に複雑な立場の仕事と言えます。ということで、このようにインセンティブのねじれが生じているわけでございますけれども、これを、会計士の皆さんが投資家サイドに立って経営者の皆さんと対峙していく。法的な独立性がまだまだ弱くて、これをいかに克服していくか、これが重要な問題と考えます。

 金融庁の金融審議会の報告書におきまして、この点につきまして、会社法につき、関係当局の早急かつ真剣な検討がさらに進められることを期待するとの提言も盛り込まれておりますけれども、この点について山本大臣のお考えをお聞かせいただければと思います。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

山本国務大臣 監査人が、被監査会社の経営者との間で監査契約を締結するわけであります。監査報酬が被監査会社の経営者から監査人に対して支払われるということになるわけであります。時に厳しいことも言う監査人に対して報酬を支払うといういわばインセンティブのねじれというものを克服するため、監査人の選任議案の決定権、監査報酬の決定権を監査役等に付与すべきであるという議論がありますことは、とかしき委員御指摘のとおりでございます。

 昨年末に取りまとめられました金融審議会公認会計士制度部会の報告におきましても、会計監査人の選任議案及び報酬の決定に係る監査役等の同意権の付与を定めた会社法につき、関係当局におきまして早急かつ真剣な検討がさらに進められることを期待したいという提言がなされております。

 この点につきまして、監査役等に監査人の選任議案への同意権を付与した会社法が昨年五月に施行されたばかりでございます。その効果をまずは見きわめることが現在は必要であろうというように思っておりますこととともに、取締役や監査役など会社の内部機関の間における業務執行権等の分配のあり方にかかわる問題でもございまして、会社法上の十分な検討が必要であるということも言えようかと思います。

 金融庁としましては、このインセンティブのねじれが克服されていくことは重要な課題であるというように考えておりますので、ただいま申し上げました論点も踏まえつつ、関係当局におきまして早急に検討が進められることを強く期待するものでございます。

とかしき委員 ありがとうございました。

 ぜひこのねじれの現象を解消していただきたいんですけれども、例えば報酬の支払いの方法として、プール制度というのもあるそうでございます。これは、各企業が発行株式数などの規模に応じて監査費用を証券取引所にプールしておいて、その上で証券取引所が入札などを行って監査人を選んで、取引所の方から監査報酬を支払っていくというのがプール制度というものらしいんですけれども、こういったものも今後ぜひ一つの検討課題として、ねじれを解消する一つの方法としてぜひ御検討いただければと思います。

 ということで、不手際を犯した番人だけを市場から退場させていくような方法だけでは不正会計は減っていかないということで、やはり、企業風土や統治のあり方、これも同時にやっていくことがチェック機能を高めていくことになるのではないかと思います。

 それでは次に、監査難民についてちょっとお伺いしていきたいと思います。

 先日の報道にもありましたけれども、寡占化が進むことによって、監査リスクのある企業は引き受けたくないという大手の風潮が見られて、監査難民が出ているというようなことが報道されておりました。

 例えば、三月の決算企業は五月に株主総会招集通知を出します。その時点で後任の監査人が決まっていないと、それだけで、あの企業は危ないのではないかと風評が立って、それがひいては企業の経営すらも脅かす状況になるわけです。

 大手監査法人は、今十分な数の監査企業先を抱えており、内部統制報告制度の対応に追われて人材不足の状態になっております。ですから、リスクを冒してまでわざわざ顧客をふやしていこうという力が普通よりも非常に働きにくい状況になっています。また、今回法律が改正されるわけで、その分、責任も重くなってくるということで、いろいろな力が相まって、より多くの監査難民がもしかして生み出される状態になるのではないかという心配があるわけです。

 私も、ある監査法人にヒアリングに行きましたら、今後のことを見て、しっかりした企業でないとやはり監査を受けられないと。ですから、今でも、打診のあるうち約一割は断っている、こういうようなお話もありました。

 さらに、例えば、一度失敗してしまった企業、何か問題を起こしてしまった企業が今度は監査人から嫌われてしまって、法的な危険を恐れて仕事を受けたくないということで、これによって、企業の再生のチャンス、再チャレンジのチャンスすらも奪われかねないという状況もあるわけです。

 ということで、監査難民の問題に対してどのようにお考えか、三國谷局長、ぜひお願いいたします。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 企業財務情報の適正な開示は、金融資本市場の信頼性を確保していくために大変重要なことであると認識しております。したがいまして、各企業におきましては、監査法人による監査を経て、適切なガバナンス体制のもとで企業財務情報を適正に開示していくことが必要なわけでございます。

 この適正な開示に向けて取り組んでおります企業が監査法人による監査を受けられないといった事態は望ましいものではなく、これにつきましては、各法人それから協会等も真摯に取り組み、努力しているものと承知しております。

 金融庁といたしましても、そうした事態が生じないように、協会等を初めといたしまして、そういった機関と連携しながら、資本市場の健全な発展に向けまして努力してまいりたいと考えております。

とかしき委員 ありがとうございました。ぜひ監査難民を出さないように、監査難民を出すことによって企業の営みすらも奪われかねない状況になりますので、その辺の御配慮をお願いしたいと思います。

 この監査難民、今お話ししていることなんですけれども、これがなぜ起こるのかということで、この一つの原因として、寡占化という公認会計士の業界の特殊な事情もあるわけです。

 グラフをかいて持ってまいりました。公認会計士の業界なんですけれども、ちょっと紙芝居状態でございますけれども、平成元年のころ、四百人以上の大手の監査法人が五一・八%でしたけれども、これが平成十七年の三月になりますと七九・二%、ほぼ八割ということです。そして、見ていただきたいのは、このブルーと黄色とグリーンのところなんですけれども、ここが今大幅に減ってきているわけです。要するに中堅の公認会計士の法人が極端に今少なくなっていて、非常に寡占化が進んでいる。これが日本独自の市場の状況であるわけです。

 このように大手の寡占化が進んでしまいますと競争原理がほとんど働かなくなってしまいまして、ある意味、なれ合い状態になってしまう。逆にこれがどんどん進んでいきますと、またもや問題を起こす温床になる可能性もありますし、せっかく今回の法律でうたっております監査法人のローテーション、これもやりにくくなる状況があるわけです。

 ということで、今後、この黄色とブルーと緑、ここの部分の中堅を政策的に育成していく必要があるのではないか、このように考えているわけです。

 大手が断ってしまった場合は、いきなり、中小がないわけですから、小さい規模に監査をお願いするというのも物理的に無理なわけですから、大きい企業は全く対応ができなくなってしまうということで、こういう厳しい状況にあるわけです。

 ということで、中堅の監査法人の育成強化に向けて、山本大臣の問題意識についてお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 我が国監査法人の規模別分布状況を見ますと、監査法人に所属する公認会計士のうち、委員おっしゃるように八割程度が、社員が数百名を超える四大監査法人に集中しております。

 監査法人の寡占化をめぐる問題につきましては国際的にも関心が高まっておりまして、証券監督者国際機構、IOSCOが最近開催しました円卓会議におきましても、監査法人の寡占が進んで監査法人の規模が大きくなることにつきまして、メリットとデメリットが指摘されております。

 メリットは、組織的監査をより効果的に実施できる、もう一つは、監査手法の開発等にかかる費用が低減され得るということでございました。デメリットは、被監査会社にとっての選択肢が少なくなる、また、非違行為等に対して規制当局がとり得る選択肢が少なくなり、モラルハザードから監査の質が低下しかねないというようなデメリットも指摘されております。

 こういうような現状が、健全な資本主義を支える市場メカニズムの中で大変大事な開示制度、特に財務の健全性をはかる監査法人の役割に支障が出ないこと、これが大事な点であると思います。

 私の一つの理解では、今の無限連帯責任という公認会計士の監査法人のありようも、いわば責任の分散ということも必要だろうということで大型化するような面があろうというように思います。本法案ではその点におきましての措置がとられているわけでございまして、そんな意味で、委員の御指摘の点は大変重要であろうというように思っております。

とかしき委員 ありがとうございます。大臣のお答えのとおりでございまして、寡占化、これは逆に、この業界を脅かして、また企業の成長も脅かすという状況も生んでまいりますので、政策的にこの中堅どころをいかに育てていくのか、これもぜひ御配慮いただきたいと思います。

 さらに、寡占化だけではなくて、次に人材の方の問題も公認会計士の方々は抱えているわけでございます。

 金融庁の公認会計士制度部会の答申では、公認会計士、将来的には五万人にしていきたいという大きな構想が発表されております。しかし、現実はどうかといいますと、かなり人手不足で、監査機能の水準を維持するのも危機的な状況にあるという状況でございます。

 監査人の公認会計士の数なんですけれども、欧米に比べまして日本というのは極端に少なくなっております。約五%しかない。これは、公認会計士プラス補助作業をする人、両方合わせて二万二千四百七十五人というふうに言っておりますけれども、実際に公認会計士の資格を持っていらっしゃる方は一万七千人弱ということで、アメリカの三十三万人とか英国の三十五万人ということを考えますと、極端に人数が少なくなっているわけでございます。

 さらに、大手の監査法人、最近の離職率がどうなっているのかというのを調べてみました。

 上が平成十八年、そして十九年なんですけれども、どこも実は三分の一以上の減少が見られているわけです。この一年間で非常な勢いで離職率が高くなってきているということが言えるわけです。これは多分、公認会計士のいろいろな事件等が起こっているわけですけれども、それに対して非常に絶望感を持った人たちがこうやって離職しているということも考えられます。

 二〇〇三年の法改正で公認会計士の試験が簡素化されたにもかかわらず、実は受験者数はほとんどふえておりません。優秀な人材が入らない、さらにこのようにやめていってしまっているということで、公認会計士の業界はかなり悲惨な状況になっているというわけです。

 そして、今回の法改正もありますけれども、責任はどんどん重くなっている。さらに業務量も非常に多くなっているようでございます。大手の監査法人はほとんどが四千社以上の監査先を抱えておりまして、監査すべき企業数も一人当たり二社から三社ということで、かなりの量をこなさなくてはいけません。さらに、一社一社にかける時間も、統計で調べてみますと、日本と海外で比較いたしますと、日本は海外の約一・一倍から二・八倍の時間をかけているということで、監査の対象の企業も多いんですけれども、時間もたくさんかけなくてはいけない。

 さらにもう一つ問題は報酬面のことでございます。

 このように仕事をたくさんこなさなくてはいけない状況でありながら、報酬面は、欧米に比べるとわずか四分の一から五分の一程度ということで、責任はすごく重くなるんですけれども、仕事量もふえて、そしてかかる時間もふえて、でも報酬は少ないというような形で、会計士を目指す人たちがどんどん少なくなって、むしろ離職率が高くなっているというのが状況でございます。

 さらに追い打ちをかけるように、平成二十年には全上場企業に義務づけられる予定でございます内部統制報告制度と四半期開示制度ということで、さらに業務量がふえて、もっと負担がふえていくということが容易に想像できるわけでございます。

 このような状況の中、公認会計士の量と質をどういうふうに担保していったらいいのか、その辺のお考えを、三國谷局長、お答えいただければと思います。

三國谷政府参考人 御指摘のとおり、公認会計士が果たすべき役割にかんがみまして、我が国全体といたしまして、質を確保しながら、監査業務に従事いたします公認会計士の数を確保していくことが大変重要であると考えております。

 公認会計士、監査法人の業務が増加、複雑化していることは御指摘のとおりでございます。また、監査を魅力ある仕事としていくために、まずは監査の信頼性を確保していくことが必要であろうと考えてございまして、今般提案させていただいております法案におきましても、公認会計士、監査法人制度の充実強化に向けました各般の措置を講じているところでございます。

 これらとあわせまして、一つには、社会人等を含めました有為な人材の確保に向けました公認会計士試験の実施方法のさらなる改善、それから、日本公認会計士協会におきます研修の充実などを通じました個々の公認会計士の皆様のスキルの向上、こういった公認会計士の質と量の確保に向けた施策につきまして、これからまた関係機関とも協力しながら、引き続き可能な限りの施策を講じてまいりたいと考えているところでございます。

とかしき委員 ありがとうございます。公認会計士の先生方は非常に将来に不安を感じていらっしゃる状況ですので、ぜひ希望が持てるように配慮いただければと思います。

 公認会計士を五万人にしていこうというふうに考えていることには、いろいろな業界に公認会計士の知識を持った人たちにどんどん入っていってもらおうというのが、多分、構想のきっかけになったかと思います。民間企業とか銀行とか役所とか学校とか、いろいろなところにこういった知識を持っている人たちが入ることによって産業界の発展を目指していって、皆さんの認識を高めていこう、そういう構想だと思われます。

 しかし、いろいろなところに進出しようという公認会計士の先生方を阻む法制度として、開業登録制度の問題があります。

 この開業登録制度というのは、兼業禁止の規定があって、開業する以外、公認会計士としての仕事につくことはできないということになっております。アメリカでは、開業登録制をとらないで、資格制度にしているわけでございます。ですから、会計士の皆さんがいろいろなところで、幅広い業界で活躍できるようになっているわけでございます。

 これはちょっと通告にないんですけれども、開業登録制度から資格制度の方に今後制度を変えていくと言っていった方が、公認会計士の活躍できる場がどんどん広がっていって、会計士の認知度を高め、支援体制も整えていき、そして、今のような負のスパイラルではなくて、むしろプラスの方のスパイラルに回していく、こういったことも考えられるかと思いますけれども、このような制度を御検討いただくことはできないのか、お答えいただければと思います。

三國谷政府参考人 お答え申し上げます。

 日本の制度の場合に、公認会計士資格を持った方が公認会計士協会の方に登録することによって公認会計士の業務を行うことができることとなっているところでございます。一方、アメリカ等におきましては、資格を有しながらそれ以外の業務に、いわば事業法人を含めまして、あるいは公務員も含めまして、いろいろなところに資格を持っている方が勤められているということも認識しておるわけでございます。

 これは、資格とそれから登録という問題よりも、まずは公認会計士の数を、質をできるだけ維持しながら確保していくということが必要であるわけでございます。

 こういった観点から、実は二年ほど前に公認会計士法を改正いたしまして、試験制度、これは社会人等も広く参加できるような方式に切りかえたわけでございますけれども、現在、この新制度に移りましてまだ間もないわけでございますが、質を維持しながら量をふやすということにつきましては、これからいろいろ、これまでの経験を踏まえながら工夫していかなければいけないことであろうかと思っております。

 日本の場合に、これまで資格をお持ちになりました方が、大体、監査法人あるいは個人として監査業務に従事されるということでございましたのですが、これまでよりは少なくとも量の方においても充実強化する方向でこれからも検討してまいりたいと考えているところでございます。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

とかしき委員 ぜひ、公認会計士の質と量、うまく確保できるようにお力添えいただければと思います。

 次に、日本版のルールについてちょっとお伺いしていきたいと思います。

 日本の近代の監査制度というのは、これは欧米から輸入されたものでございます。しかし、グローバリゼーションが進んだとしても、その国の風土や国情を反映した法制度が私は必要ではないかと考えております。欧州の証券規制当局委員会でも、日本の会計基準を国際会計基準と同等であるというふうにある程度評価をしているわけでございます。ということで、現在のような欧米の方に合わせていく方向性から、日本の独自の会計基準を世界に広めていく、逆の発想がそろそろ必要になってきているのではないでしょうか。

 どうも、日本の企業もそうなんですけれども、スタンダード、ルールをつくっていくのがどうも苦手でございまして、企業活動は大分最近はそれに気がついて、力を注いでいくことになっているんですけれども、日本は、残念ながら、自分たちの法律を世界のスタンダードにしようという力がまだ働いていないようでございます。

 日本独自の、中国やアジアの会社も、日本の公認会計士法、公認会計士が監査して東証に上場するということで、日本の公認会計士法によって進出ができるようにしていく、こういったことも今後考えていく必要があるのではないでしょうか。アジア独自の日本版会計ルールを今後創設していくおつもりはないのか、山本大臣にお伺いしたいと思います。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

山本国務大臣 大変大事な点でありまして、これから日本経済がグローバル化の中でさらなる発展、飛躍を遂げるためには、このようなテーマというものを追求する姿勢が大事だろうというように思います。

 我が国は、これまでも、独自の会計基準を維持する一方で、国際的な動向を踏まえまして、高品質かつ国際的に整合的な会計基準の整備に努めてまいりました。世界の三大金融資本市場の一角を占める日本としましては、金融資本市場のグローバル化を背景にしまして、まずは日米欧で会計基準のコンバージェンス、いわゆる収れんを図っていこうと考えているわけでございます。

 このような認識のもとに、我が国の会計基準設定主体でございます企業会計基準委員会、ASBJは、現在、EU等で使用されております国際会計基準の設定主体でございます国際会計基準審議会、IASBや、米国財務会計基準審議会、FASBとの間で、会計基準の相互のコンバージェンスに向けた取り組みを積極化しているところでございます。

 この取り組みの一方で、企業会計基準委員会は、アジアの会計基準設定主体とも意見交換を進めておりまして、例えば、企業会計基準委員会は、日中韓、この三カ国で会計基準設定主体会議を毎年開催しているわけでございます。

 金融庁といたしましても、今後とも企業会計基準委員会によるこうした国際的な取り組みを積極的に支援してまいりたいと考えております。

とかしき委員 ありがとうございました。日本版の会計基準のルールというのを広めていく、そういった努力も企業の成長にも役立つのではないかと思いますので、ぜひまたこれからも頑張っていただければと思います。

 そろそろ時間で、最後の質問なんですけれども、公認会計士の将来像についていかがお考えかというのをお伺いしたいと思います。

 今まで、なるべく情報を公開して市場の透明性を求めていくというのが公認会計士の仕事というふうになっていたんですけれども、これからは、この公認会計士の仕事、もっと役割が変わってくるかと思います。

 ということで、市場の番人である公認会計士、今後どういうふうにしていったらいいのか、この業界をどういうふうに育てていきたいのか。それに伴って、日本の企業活動をどういうふうにサポートしていきたいのか、その辺の全体の構想を大臣にお伺いしたいと思います。

山本国務大臣 公認会計士さんによる監査は、企業財務情報の信頼性を確保し、我が国金融資本市場の健全性、透明性を維持していく上で極めて重要な役割でございます。

 企業活動の多様化、複雑化や、監査業務の複雑化、高度化が進展する中で、公認会計士監査がこうした役割を的確に果たしていくためには、監査法人がその業務管理体制を適切に整備、運用するとともに、監査人が、独立した強固な立場から監査に臨むことが重要と考えられています。

 今般の改正案におきましても、監査法人の業務管理体制の強化を図るとともに、監査人の独立性と地位の強化等を目指しておりまして、こうした措置を通じて、公認会計士監査の一層の充実強化が図られることを期待するものでございます。

 特に公認会計士のゴールに向かっての意見を問う、こういうことでございますが、まさに、今後の企業価値を高めるためには、経営者以上に公認会計士に期待されているということであろうと思っております。

とかしき委員 ありがとうございました。

 まさに大臣がおっしゃるように、公認会計士の役割、これからとても重要になってまいります。アメリカでは、公認会計士が出している監査証明書があれば融資が受けられるということで、ファイナンスに役に立つから、逆に、公認会計士は命がけで交渉に当たって一生懸命仕事をするという状況にあるわけです。

 日本は、残念ながら、不動産が担保になっているということで、どうも今まで公認会計士の監査証明が軽視されている、そんな傾向もあったんですが、これからは日本もいよいよ直接金融の比重が高まってまいりまして、この監査証明のウエートがだんだん高くなってくるかと思います。ということで、公認会計士は、市場の番人から、これからもっと発展して、私は、金融のサポーター、企業のサポーター、そういう役割に変化すべきだと思います。

 日本の制度は産業界の育成にどうも今まで力を注ぎ過ぎておりましたけれども、それにあわせて、両輪ということで監査制度の育成、これをしっかりしていくことが、日本の発展、国の発展には大変必要なことではないかというふうに思っております。

 ということで、監査制度、これからも育成していけるように、そして、公認会計士の先生方が働きやすい環境をぜひ整えていただきますことをお願い申し上げて、質問とさせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 法案の質疑に入る前に、先ほどのニュースによりますと、きょう午前、大阪地裁で重要な判決がありました。この点についてただしたいと思います。

 これは、大和都市管財の巨額詐欺事件をめぐりまして、近畿財務局の怠慢と責任を判決が認め、国に六億七千万円の損害賠償を命ずる、こういうものであります。

 この事件は、二〇〇一年に破綻をした抵当証券会社大和都市管財によります巨額詐欺事件。同社から抵当証券を購入した被害者七百二十一人が、国を相手に総額約三十九億九千万円の損害賠償を求めた訴訟であります。

 大阪地裁の西川裁判長は、先ほど、九七年十二月の登録更新時、同社が破綻する危険が切迫している事態を近畿財務局は容易に認識できたのに更新を認めたことは著しく合理性を欠く、こう判断して、原告のうち九八年以降に抵当証券を新規で購入した二百六十人に対し、総額約六億七千万円の賠償を命じたということであります。

 大臣、この判決、概要を御存じですか。

山本国務大臣 主文だけ、今手元にございます。

佐々木(憲)委員 この抵当証券の販売業者は、抵当証券業規制法というのがあって、国の登録を受けて三年ごとに更新をする、そういうことになっております。訴訟では、監督官庁だった近畿財務局が、破綻前の九七年に登録更新を認めた、このことが過失であったのではないかということで問われたわけです。

 判決要旨が今手元にありますけれども、これにはこのように言われているわけです。

 近畿財務局は、抵当証券の購入者保護の観点から慎重に検査することをせず、適法に取得していた関連会社の上記帳簿類の検査を放棄して、これを不可能にし、また、大和都市管財の預貯金口座の検証を怠るなど、その目的を達成するために必要不可欠で、かつ、基本というべき検査を合理的理由なしに怠った。そして、大和都市管財において把握している資金需要についての説明を受け、その説明内容について裏づけ調査をするなどといったことすらしていない、こういうふうに言っているわけであります。

 九五年の八月二十一日に、業務改善命令を近畿財務局は読み上げて告知をした。しかし、その社長が同和関連団体に属しているかのように示した言動で、その気勢に気押されて、あるいは忙しかったことなど、理由にならない理由で、内容証明で業務改善命令を発出し、そして、社長をこれ以上刺激するのを避けて、本件処理を先送りしようという意見が大勢を占めた、当時こういうことをやっていた。

 これは、要約をして言えばそういうことになるわけです。監督官庁としてあるまじき対応を正当化するために、当局は、資金繰り表を作成したということを認定して、それで更新を認可した、こういうことをやったということなんです。

 このことは極めて重大な過失でありまして、これは、おとといの日経新聞に、証人として出廷した監督官庁の当時の課長補佐の証言というものが報道されております。この課長補佐の証言によりますと、同グループの違法性や劣悪な財政状況を認識しながら十分な対策をとらなかった、こういうふうに証言をしている。こういうふうに言っている。関東に比べ近畿はきちんと監督していなかった。このように東西を比較して、対応のまずさを指摘した。これは、裁判の中でこういう証言が行われたということもありました。

 こういう状況でありますので、これは国として、監督官庁の怠慢が明確に認定された以上、この判決を真摯にとらえて、控訴というふうなことはすべきではないというふうに思いますし、判決の金額にとらわれず、被害者救済の和解のテーブルに着くようにというふうにぜひ対応していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

山本国務大臣 国の主張が認められなかったことにつきましては遺憾であります。

 今後の対応につきましては、判決内容を十分に精査いたしまして、関係当局とも協議の上決めてまいる所存でございまして、現時点でのコメントは差し控えさせていただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 当時は、非常にさまざまな癒着問題やら怠慢な対応などがあったわけでございます。例えば、今紹介した業務改善命令を出しても、事実上撤回するようなことをやってみたり、それから、九六年当時は官官接待大はやりでありまして、例えば、近畿財務局局長が、管内の高検検事長、地検検事正、府県警の本部長、こういう人々を高級料亭に招いて、一人当たり二万八千円から一万四千円余りの飲食費を公費で負担していた、こういうことまでやっていた。こういう事実が判明しておりますし、そういうことはその後も続いていったわけです。

 当時は、こういう官官接待やらさまざまな大蔵省の汚職事件というものがあって、私も大蔵委員会で追及をしたこともありますけれども、そういう体質の中でこういう被害者が発生をしたわけでありますから、これはやはり真摯に当時の対応について反省をし、そして前向きに被害者に対して補償する、そして何かさらに控訴をするなどということをやらずに対応していただきたい。まず、このことを最初に指摘をしておきたいと思います。

 さて次に、法案の内容についてただしたいと思います。

 この公認会計士法は、前回の改正が二〇〇三年でありました。当時、三十七年ぶりの全面改正というふうに言われていたわけですね。ところが、わずか四年のうちに再び大幅な改正を余儀なくされた。これは、学者の発言などを見ますと、我が国の法制度をめぐる環境においては極めて異例のことである、こういうふうに指摘をされているわけです。我が国の公認会計士監査制度がそれほどの危機に直面しているという状況を反映したんだと思うのですが、これまでの質疑でもありましたけれども、四大監査法人の一つのみすず監査法人が解体に追い込まれていること自体を見ましても、今の実態の深刻さというものがわかるわけであります。

 大臣にお聞きしたいのですけれども、この異例とも言われる法改正の背景、今の状況、これをどのように把握されているか、まずお聞きをしたいと思います。

山本国務大臣 まず、この背景につきましては、昨今、かなり経済界の変化が遂げられておりまして、まずは企業活動の多様化、複雑化、国際化、次に監査業務の複雑化、高度化、そして公認会計士監査をめぐる不適正な事例等、こうした観点から、組織的監査の重要性の高まり、こうしたことに着目した改正だというように特徴づけられようかと思っております。

佐々木(憲)委員 カネボウの粉飾決算ですとかライブドア粉飾決算、日興コーディアル粉飾事件、本当に次から次へと最近大きな事件が続発をして、今回の法改正後も、公認会計士、監査法人をめぐる不祥事というものが本当に直るのだろうかというようなことも言われております。

 この不祥事が発生した要因というのはさまざまあると思いますけれども、大臣はこの不祥事の発生した背景、要因、これをどのように把握されていますか。

山本国務大臣 昨今のディスクロージャーをめぐる不適切な事例につきましては、開示企業の側で財務報告に係る内部統制が十分機能していなかったのではないかという点、あるいは財務諸表を監査する立場の監査人の側におきましても、担当会計士による不適正な業務執行や監査法人における業務管理体制が不備であったのではないかという点、さまざまな指摘がございますが、その原因につきまして、一概に申し上げることは困難であろうと考えております。

 いずれにいたしましても、金融資本市場の信頼性を確保することは大事でございまして、企業財務情報の適正な開示を確保していることが必要でございます。

 金融庁としましては、昨年成立しました金融商品取引法におきまして、財務報告に係る内部統制の強化等の措置を講じましたほか、今般御提案させていただいております公認会計士法等の一部を改正する法律案におきまして、監査法人の品質管理、ガバナンス、ディスクロージャーの強化、監査人の独立性と地位の強化、監査法人等に対する監督、監査法人等の責任のあり方の見直し等の各般の措置を講じているところでございます。

 先生御指摘の西武鉄道、ライブドア等々、不正会計処理事件の続発の原因というものにつきましては、この法律の改正をもってさらに抑止できるのではないかというように考えるところでございます。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 対応として、独立性の確保ということが言われましたが、例えばローテーションルールですね。法案では、大規模監査法人で上場会社の監査を担当する主任会計士のローテーションルールということを法定化しているわけです。現行法では、継続監査期間七年、インターバル期間二年、こうなっているわけです。これを五年・五年に改正するというのが今回の内容であります。

 そこで、まず前提としてお聞きをしますが、現在、上場企業における主要監査法人の同一会計士による継続監査年数が七年を超える、そういう会計士の人数、それから実社員数の総社員の中に占める割合、これはわかったら教えていただきたい。

三國谷政府参考人 この制度が始まりましてからまだ数年でございますので、今の制度に直接にその期間がぶつかっているというものは、現在、数値としては出てきておりません。

佐々木(憲)委員 前回の改正のときに、四大監査法人の同一会計士による継続監査年数七年を超える方々は六百四十九名という議事録の記録があります。これは、実社員数の総社員に占める割合の三〇・一%、三割を占めていたわけですね。七年以上が三割もいるわけですから、これはなれ合いとか、極端な場合は癒着というようなことも起こる危険性が高かったということが言えると思うんです。

 今度の法改正で、五年・五年のルールというものが適用されるわけですが、この対象となる範囲、対象となる主任会計士の人数、それが公認会計士全体に占める割合、これがわかりましたら教えてください。

三國谷政府参考人 これは、これからの監査の実態に応じる数値でございますので、現段階で具体的な数値は持ち合わせておりません。

佐々木(憲)委員 これは、大規模法人で上場会社の監査を担当する主任会計士のローテーションルールですね。ですから、対象にならない中小の監査法人あるいは個人会計事務所など、これはどういう扱いになるのか示していただきたい。

三國谷政府参考人 中小につきましては、現行法でございます、主任会計士に限りませず、七年やった場合には二年間のインターバルを置く、これが適用されるわけでございます。これに加えまして、大規模監査法人の場合には、主任の方は特にクライアントとの関係が濃いわけでございますので、五年監査をいたしますと五年間はインターバルを設けていただく、こういう趣旨でございます。

佐々木(憲)委員 そこで、次に、中小の監査法人の問題についてお聞きしますが、個人の会計士事務所の方のお話などを聞きますと、実際のところ、大手はやれても中堅はなかなか難しい、ローテーションが組めない。ローテーションが組める規模の監査法人は、社員が三十人から五十人が必要であるという話が出ております。

 例えば、具体的な事例でいいますと、昨年六月まで十人ほどで運営していたある監査法人の話なんですが、そのうちの三人の公認会計士が大手の監査法人に移るということがあって、仕事量が急増しているということらしいです。このままだと、中小の監査法人はつぶれてしまう、あるいは大手に吸収される。このまま推移すると、十年後の業界はどうなるか不安だ、こういう声が聞かれるわけであります。

 大臣にお聞きしますけれども、この中小のまじめな会計士、監査法人が安心して監査を担える体制をどうつくるかというのが非常に大事だと思うんですが、お考えをお聞かせいただきたい。

山本国務大臣 現在の公認会計士法では、大会社等の監査を担当する会計士につきまして、継続監査期間七年、インターバル期間二年のローテーションルールが設けられておることは、先ほど御指摘のとおりでございます。

 一方、日本公認会計士協会の自主規制ルールでは、上場会社を百社以上監査する大規模監査法人で、上場会社の監査を担当する主任会計士につきましては、継続監査期間五年、インターバル期間五年にローテーションルールが加重されているわけでございます。

 中小監査法人は、五年・五年のローテーションルールに対応することが、人員、組織等の点で困難であります。現状、協会の自主規制ルールの対象外というようにされておりますが、中小監査法人が市場や企業から適正な評価を受け、ノウハウ、人員、組織等の点で発展していくことは、我が国の監査体制にとって大変大事なことであると思っております。その意味におきましては、中小の監査法人の皆さんにやがて大きな役割を担っていただくべく、御支援をさせていただきたいというように思っております。

佐々木(憲)委員 次に、監査人の選任、監査報酬の問題についてお聞きしたいと思うんです。

 金融審議会の報告書では、監査人の選任、監査報酬の決定について、次のように述べております。「監査人が監査の対象である被監査会社の経営者との間で監査契約を締結し、監査報酬が被監査会社の経営者から監査人に対して支払われる、」これは今の仕組みですね。いわば監査する相手の会社から報酬をもらう、こういう仕組みにはインセンティブのねじれが存在している、これを克服することが大事である、こういう指摘であります。

 この点について、このようにも述べております。「諸外国においては、監査人の選任、報酬決定について、経営者を監視する立場に立つ監査委員会に責任を持たせることにより、「インセンティブのねじれ」を克服しようとするのが趨勢となっている。」こういう指摘であります。

 また、きょうの朝日新聞の社説によりますと、こういうふうに書かれております。「何よりもまず、経営者が会計士を選んで監査報酬を出すという現状を改めるべきだ。」「理想をいえば、上場企業の監査報酬は企業が直接払うのではなく、取引所など第三者が取りまとめたうえで会計士らに配分するぐらいの荒療治がいる。」これは荒療治ですから、このとおりやれと言っているわけじゃなくて、そのくらいの決意が必要であると。

 つまり、監査を受ける法人から報酬をもらうということは、どうしてももらう側が弱い立場になっているんですね。出す側がお抱え会計士みたいな発想になってしまう。したがって、そこを対等なものに改めるためには、報酬を支払うシステムを変えなければならないというふうに指摘をされているわけです。

 今回は具体的には法案には盛り込まれませんでしたけれども、今後こういう問題については前向きに検討すべきだと私は思います。私も以前の財務金融委員会で、この点、そういう方向が必要だという指摘をしたこともございますが、大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 監査人が監査の対象でございます被監査会社の経営者との間で監査契約を締結し、監査報酬が被監査会社の経営者から監査人に支払われているという、いわばインセンティブのねじれ、これを克服することが大変大事な課題であることは私も共通に認識しているつもりでございます。

 昨年五月に施行された会社法におきましては、会計監査人の選任に関する議案の提出、会計監査人の報酬の決定について、監査役等に同意権を付与したわけでございますが、これをさらに進めて、例えば、監査人の選任議案の決定権、監査報酬の決定権につきましても、これを監査役等に付与すべきであるというような議論もあるわけでございます。

 金融庁といたしましては、この問題が関係当局におきまして早急に検討されることを強く期待しているわけでございますが、議員の御指摘のような、第三者機関を利用して監査報酬をめぐる課題に対応していくという枠組みも大変大事な視点かと思っております。ただ、諸外国にも例がありませんし、また、被監査会社の規模等により外形的に報酬額を決めることになるとすると、かえって監査上のリスクが監査報酬に反映されにくいという枠組みになるかもしれませんし、まだまだ十分な、慎重な検討が必要だろうと思っております。

 さらに申し上げれば、やはり、企業の価値を高めるのは単に経営者だけでないという視点が大事でございまして、その意味におきましては、企業の価値が高まるための監査ということになりますと、その企業から報酬をいただくというのもまた必要なことであろうというように思っております。

佐々木(憲)委員 次に、監査法人の寡占化、つまり、大きな監査法人にどんどん人が集まっていくという問題についてお聞きをしたいと思います。

 数字の確認をします。

 四百人以上の監査法人の数、それが全体に占める比率、それから所属公認会計士の数、もう一つは、二十五人以下の監査法人の数、それが全体に占める比率、所属公認会計士の数、これを示していただきたいと思います。

三國谷政府参考人 監査法人の規模別分布状況、平成十八年三月末現在でございますけれども、四百人以上のものは、法人数で四つ、会計士の数で六千九百九十四名でございます。二百名から三百九十九名の間は、数で一つ、公認会計士の数で二百十六名でございます。百から百九十九はございません。二十六から九十九の間でございますと、法人数で八、会計士の数で二百七十六。二十五人以下でございますと、法人数で百四十九、会計士の数で千三百三十二となっております。

佐々木(憲)委員 お配りした資料の一枚目を見ていただきたいんですけれども、今述べていただいた数字はこの一番下のところを見ていただければわかります。四百人以上の法人数は全体の比率でいいますと二・四六%、わずか二%強のところに、公認会計士の数は八割、七九・三%集中しているんですね。二%のところに八割の会計士が集まっている。反面、二十五人以下のところでは、法人数は、数でいいますと九二%の数なんですけれども、規模が小さいために、その所属公認会計士の数は一五・一%にすぎない。つまり、非常に寡占化しているわけであります。

 それから、もう一枚めくっていただきますと、監査法人の離合集散、これは本当に、大変頻繁に、つぶれたり生まれたり合併したり、こういうことがありまして、政界再編なのか何かわからないような、そういう図になっております。この状況を見ましても、一番上の方を見ていただければわかりますように、昭和四十年代、大きな法人といっても、せいぜい百人を超える程度だったわけですね。それが今では千人を超えておりまして、トーマツや新日本は二千人近い、そういう会計士を擁しているわけです。

 そこで、この寡占化という状況をどう見るかでございます。

 四年前の質疑で、参考人の方から寡占化について意見が出されております。これは青山学院大学教授の八田先生ですが、「次第次第に制度的に大監査法人に集中していく方向を国が進めているのではないかという気がしています。」と。これは、我が国の公認会計士制度のあり方の中で、監査法人というものはどうあるべきか、非常に重要な問題提起でございます。

 国として、あるいは金融庁として、中小の監査法人や個人の会計士を今後どのように位置づけていこうとしているのか。大きなところはどんどん大きくなるということで、果たしてそれでいいのか。山本金融担当大臣、どのような姿、どのような方向が望ましいのか、お考えを聞かせていただきたいと思います。

山本国務大臣 我が国監査法人の規模別分布状況を先ほど拝見させていただいたわけでございますが、監査法人に所属する公認会計士のうち八割程度が、社員が数百名を超える四大監査法人に集中しております。

 監査法人の寡占化をめぐる問題につきましては国際的にも関心が高まっておりまして、証券監督者国際機構、IOSCOが最近開催いたしました円卓会議におきましても、監査法人の寡占が進んで監査法人の規模が大きくなることについてのメリット、デメリットが整理されております。メリットとしましては、組織的監査をより効果的に実施できる、監査手法の開発等にかかる費用が低減され得る。デメリットは、被監査会社にとっての選択肢が少なくなる、非違行為等に対して規制当局がとり得る選択肢が少なくなり、モラルハザードから監査の質が低下しかねないなどというデメリットの指摘もございます。

 こうした点からしまして、今のありようが好ましいとは言えません。できるだけこのデメリットが縮小し、健全な監査体制が組まれることを望んでいるところでございます。

佐々木(憲)委員 そのためにどうするかという問題は当然あると思うんです。今は、大きなところは物すごく巨大になり、小さなところはたくさんある、真ん中がない、こういう状況でありますので、真ん中のところをふやすのか、どういう大きな方向を目指すのか、この点は大いに検討の余地があると思いますので、ぜひしっかりと検討をお願いしたいと思うんです。

 次に、今度の法案で罰則の問題が改正されました。課徴金制度が新たに導入されるということになりました。これは、不正に関与したり法令に違反した監査法人に経済的な罰を科すために新設するものだということでございますが、粉飾を重大な過失で見逃した監査法人に対して、期間中に企業から受け取った監査報酬の全額を、故意の場合は報酬の一・五倍の納付を命じる、こういうことになっているようでございます。

 これは、監査法人に対してダメージの大きい刑事罰、先ほども議論がありましたが、被監査企業に大きな影響を与える現行の行政処分よりも機動的な制裁手段であるというふうに言われていますけれども、そういう位置づけでこのような課徴金ということが導入されたんでしょうか。

三國谷政府参考人 課徴金でございますが、今回の制度は、従来の行政処分とは別に、法令違反につきまして、違反行為により得られる経済的利得相当額を基準とする金銭的負担を課すことによりまして、違反行為がいわばやり得とならないようにすることを通じまして違反行為の抑止という行政目的を達成しようというものでございます。公認会計士法におきまして、違反行為の経済的抑止との観点から課徴金制度を導入することといたしまして、その観点から、基準といたしましては経済的利得ということで、今のような御提案をさせていただいているものでございます。

    〔委員長退席、林田委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 やり得というようなことがないようにというような話がございました。

 次に、午前中の質疑で、私は公認会計士政治連盟の話を参考人にお聞きいたしました。ここにありますのが、CPA、つまり日本公認会計士政治連盟、政連ニュースというものでございます。この最初のところに、公認会計士協会と政治連盟のまさに連名で要望書が、五点にわたって要望内容が出されております。

 そこで、この中で、この要望を実現するためにさまざまな運動を行うということが表明されております。増田宏一さんという方は次期協会会長予定者らしいんですが、今は政治連盟の会長であります、この方の「ご挨拶」というのがそこにあります。

 これは添付をしていなかったですね。御紹介をいたしますと、公認会計士法、商法等を大改正した会社法、それから証券取引法を改正して金融商品取引法が制定されました、当政治連盟は、こうした法律改正に際して、協会と一体となって我々の意見や要望を行政当局、国会等で主張し、改正に反映してきました、今春にはこれに基づき公認会計士法改正案がまとめられて、通常国会に上程、審議される見通しです、当政治連盟としては、公認会計士法改正に向けて活動を強化していく所存でありますというふうに書かれているわけです。

 このニュースによると、さまざまな形で政治家に働きかけが行われたようであります。資料の四枚目を見ていただきますと、要望書の次のところですね、「公認会計士法改正に対する協会の要望について」、増田さんの名前で書かれているものであります。これの一番最後のところを見ていただきたいんですね、「今後のスケジュールとお願い」ということであります。(発言する者あり)

 定足が割れている。ちょっと、では……。

林田委員長代理 速記をとめて。

    〔速記中止〕

林田委員長代理 速記を起こして。

 質問者、定数が足りましたので。

 引き続き、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 閣法ですので、提案者の問題も非常に大きいと思いますよ、これは。その辺、だれもいないじゃないですか、自民党自身が。

 それでは、質疑を続けます。

 この政治連盟の会長の「今後のスケジュールとお願い」というところを見ますと、「当政治連盟は別掲の要望書の趣旨に則り、政治家の先生方をはじめ、関係各方面に向けて積極的な活動を展開していく所存です。政治連盟の役員をはじめ会員の皆様方には、この要望書の趣旨を国会議員の先生方に直接ご説明の上、ご理解頂きご支援を賜りますようお願い申し上げます。」こういうふうになっているわけであります。

 こういう働きかけというのは、大臣、直接受けるか、あるいは間接的に受けた、そういうことはありませんか。

山本国務大臣 私の方には全くございません。

佐々木(憲)委員 このニュースの内容で、配付資料を見ていただきたいんですが、増原さんが講演をしている中身がここにありますね。法規制強化ではなく道徳でというふうにおっしゃっておられます。公認会計士の制度の見直しについて、両罰規定というのはけしからぬというようなことを言って、罰金どころか懲役とかすぐ言う、アメリカがやっているじゃないかと言うのですが、実はよく調べてみるとそうではない、課徴金で済ませているんだ、お金のことはお金で済ませている、そこらあたりの機微はしっかりと我々はつかもうと思っておりますと。

 次のページをあけていただきますと、第二十三回公認会計士制度小委員会勉強会ダイジェスト。これは、自民党の公認会計士制度振興議員連盟、「現在三十八名の国会議員が加盟され、」というふうに書かれていますね。増原さんや吉野さんの名前などがありまして、公認会計士制度を理解する勉強会が開催された、昨年十二月十九日は公認会計士法改正に係る要望をテーマに御説明をいたしましたと。

 次のページをあけていただきますと、「公認会計士法再改正に向けての理解浸透・ピーアール活動」というのがありますね。ここで「政治連盟役員は、永田町にある議員会館に集合し、衛藤征士郎衆議院議員のお部屋をお借りして、まずは打ち合わせ。」これで二班に分かれてあいさつ回りと説明を行った。次いで、「弊害すら招きかねない規制強化がなされないようにお願いを致しました。」と。

 そして、次のページをあけていただきますと、政治連盟では平成十六年から自民党議連公認会計士制度小委員会において勉強会を開催いたしました、それはこういうテーマでこれだけやりました、こういうふうに書いてあるんです。これ自体を見ますと、ある団体がその団体の利益のために政治に働きかけた、そういうことで済むわけであります。

 しかし、私は、大変重大だと思っておりますのは、この公認会計士制度振興議員連盟というのは、会長が衛藤征士郎さん、副会長は伊吹文明さん、事務局長は増原義剛さん、事務局次長は吉野正芳さん。この方々というのは、この勉強会などをやっていく中心的なメンバーだったわけですが、その方々に対して日本公認会計士政治連盟から政治献金が渡っているという問題なんです。これは昨年九月の官報ですから、前の年、つまり一昨年にこの公認会計士政治連盟から政治献金が、会長の衛藤さんには五百二十二万円、副会長の伊吹さんには三百九十万円、これは一年間ですよ。事務局長の増原さんは百万円、吉野さんは二百三十二万円と。

 これは、私は一般的に、どういう団体であろうが、どういう方々であろうが、自分たちの主張をぜひ理解していただきたいということで働きかけるのは、これは別に構わないと思うんです。構わないわけですが、しかし、そこにこういう形で献金というものが絡んでくると、これは単なる働きかけでは済まないわけであります。これは金で影響を与えるということにならざるを得ない。

 これは極めて重大でありまして、これまでもKSD事件とか日歯連事件とか、いろいろな不祥事がありました。みんな、こんな形でやっているんですよ。それで贈収賄事件として逮捕されるというようなこともあった。こういうことが野放しになると、そういうところに行き着きかねないという問題があるわけですね。

 それで、山本大臣にお聞きしますけれども、大臣のところに働きかけはなかったと思いますし、また献金も多分ないのかもしれません、確認しないとわかりませんけれども。こういうやり方というのは、私は、お金を献金して一緒に働いてくれというようなやり方をするのは非常にまずいと思うんですね。どのようにお感じでしょうか。

山本国務大臣 献金が適正に処理されて合法であるならば、社会的活動の一環で、団体あるいは企業、個人、それぞれ政治的活動の自由が確保されなければならないというように思っております。その中で妥当性を加えて言えと申し上げれば、代価やあるいは見返りといったものを要求する献金については政治家側がしっかりと見きわめて、モラルやコンプライアンスの立場から抑制的でなければならないというように思います。

佐々木(憲)委員 山本大臣は金融担当大臣になられて、それで私は一番最初に、銀行だとか関係する所管の業界からの献金というものはあるのかないのかというふうにお聞きしたところ、若干パーティー券を買ってもらっていました、それは全部お返ししました、このようにおっしゃいましたよね。潔い態度だと私は思いました。それは、なぜそういうふうにお返しになったのか、理由はどういうところにあったのか、考え方をお聞かせいただきたいと思います。

山本国務大臣 ひたすら、李下に冠を正さずという考え方だけでございます。

佐々木(憲)委員 今回の公認会計士法の改正に当たって、その中身がいい、悪いというのは別にして、お金を渡して自分たちの要望を何とか実現したいというようなやり方をするのは、李下に冠を正しまくりです。これは余りにも疑惑を招きかねない。むしろ私は、この動きを見ますと、これは国会の中で例えばお金をもらって、この主張どおりやりなさいと政府に対して質問をする、そういうことがあるとすると、これは極めて重大な贈収賄事件になりかねないですよ。これはKSD事件のときに、その要望を質問したというだけで罪に問われたわけであります。

 そういう意味からいいましても、まさに疑惑を招きかねないようなこのようなやり方は、私は正すべきだというふうに思いますが、最後に大臣の見解を伺って、終わりたいと思います。

山本国務大臣 そのような疑惑等がないことを期待しておりますし、他方、政治活動というものの確保も大事な点であろうというように思っております。

佐々木(憲)委員 終わります。

林田委員長代理 次に、吉田泉君。

吉田(泉)委員 民主党の吉田泉です。

 私の方からも、公認会計士法改正関連法案について質問をさせていただきます。

 今までの方の質問と重なるかもしれませんが、まず総論的なことをお伺いして、その上で、今回の改正案に盛り込まれた項目、さらには盛り込まれなかった項目について、何点か取り上げたいと思います。

 会計不祥事といいますか不正会計が相次ぎました。大きな社会問題となったのは十年前の山一証券のころからと言われておりますが、最近では足利銀行、カネボウ、そして日興コーディアル、さらにはそれに関係した中央青山監査法人が業務停止命令、後を継いだみすず監査法人も一年足らずで解散と、いまだに会計の業界で混乱が続いているという状況だと思います。

 そこで、まず、相次ぐ会計不祥事発生の時代背景、さらにはいろいろな制度的な原因をどう見るべきか、お伺いします。

山本国務大臣 昨今のディスクロージャーをめぐる不適切な事例につきまして、その原因でございますが、開示企業側で財務報告に係る内部統制が十分機能していなかったのではないかという点、財務諸表を監査する立場の監査人の側におきましても、担当会計士による不適正な業務執行や監査法人における業務管理体制の不備があったのではないかというような指摘がございます。一概に申し上げることは困難でございますが、いずれにしましても、金融資本市場の信頼性を確保するために、企業財務情報の適正な開示が必要でございます。

 金融庁としましては、このような観点から、昨年成立いたしました金融商品取引法におきまして、財務報告に係る内部統制の強化等の措置を講じたほか、今般提案させていただいております公認会計士法等の一部を改正する法律案におきまして、監査法人の品質管理、ガバナンス、ディスクロージャーの強化、監査人の独立性と地位の強化、監査法人等に対する監督、監査法人等の責任のあり方の見直し等の各般の措置を講じているところでございまして、これによりまして不適切な事例というものを抑止しようという意気込みでやっているところでございます。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。

 私は、経済の停滞が長く続いた時期に、一部の不振企業が一部の監査法人となれ合って、その業績不振を隠ぺい、粉飾してきた、それが結局もたなくなって爆発した、そういう事件が最近起こっている、表面化している、そういうことだろうというふうに思っております。もちろん、それに対して制度的な、会計の制度それから監視の制度がついてこなかった、四年前に会計士法の改正もありましたけれども、まだ足りなかったというのが今回の改正の背景だろうというふうに思っているところでございます。

 先ほども出ましたけれども、日本の会計監査の報酬がアメリカと比べると大変少ない、四分の一ではないかという指摘も委員からありました。私の方からは、その一つの要因になっている時間の問題について伺いたいと思います。

 これは会計士協会の方の報告書ですが、それによると、欧米における会計の監査の時間が日本と比べると約二倍、一・一倍から二・八倍と書いてありますが、単純平均すると二倍と。非常に監査する時間が日本の場合は少ないというのが現実であります。これがひいては監査報酬の低さにつながっているんだろうというふうに思います。この監査時間が少ないというところに日本の会計士監査の非常に特徴的なものが如実に出ていると私は思うんです。つまり、日本の会計制度、監査制度に非常に深く根差した風土の問題といいますか、それがこの時間の少なさに出ているんだろうというふうに思います。

 なかなか対策というのは難しいとは思いますが、どういうふうに考えたらよいのか、御所見をいただきます。

山本国務大臣 監査時間につきまして国際的に比較することは必ずしも容易ではございません。例えば、日本公認会計士協会の調査によりますと、海外における監査時間数は日本における監査時間数のおおむね一・一倍から二・八倍という結果になっていると報告されております。

 監査時間につきましては、被監査会社に係る監査上のリスクを踏まえて適切な監査計画を策定した上で、当該計画に沿って適切な水準を確保していくことが重要でございます。このための環境整備に引き続き努めてまいりたいと考えております。

 具体的に申し上げれば、日本公認会計士協会におきまして、監査時間の見積もりに関する研究報告等が公表されております。これについてさらなる内容の充実を図りまして、その成果が実際の監査計画の策定等に適切に活用されていくことを期待するところでございます。

    〔林田委員長代理退席、委員長着席〕

吉田(泉)委員 ビジネスがますます国際化する時代、だんだん監査の時間も国際的な水準に高まらざるを得ない、私はこういうふうに思います。ただ、その前提として、会計士の質、量ともの増強ということが必要だろうと思います。

 一つ、非常に素朴な質問ですが、会計上の粉飾が発覚したとき、一体だれがどういう責任をとるべきかという問題であります。

 監査を受けている会社の役員、取締役もしくは会計参与という制度もできましたが、それから監査役、執行役員、こういう人たち、それから今度は監査をする側、会計士そして監査法人、こういう関係者の間で、一体、粉飾会計の責任をどういう順序でだれがとるべきということに今なっているのか、お伺いします。

三國谷政府参考人 御指摘の点につきましては、現行の証券取引法第二十一条に所要の規定がございます。

 具体的には、まず役員の方でございますが、有価証券報告書等に虚偽記載がある場合、故意または相当な注意を怠ったことにより当該有価証券報告書等を提出した取締役、会計参与、監査役及び執行役等の会社役員は、当該有価証券の取得者に対し損害賠償責任を負うこととされております。

 また一方、公認会計士、監査法人でございますが、故意または過失により当該有価証券報告書等の財務書類を虚偽がないものとして証明した場合、当該有価証券の取得者に対しまして損害賠償責任を負うこととされております。

 仮に、会社役員と公認会計士、監査法人がともにこの損害賠償責任を負う場合には、両者は連帯して責任を負うこととなると承知しております。

    〔委員長退席、井上(信)委員長代理着席〕

吉田(泉)委員 会社側と監査側の連帯責任、並列連帯責任ということだと承りました。

 先ほど申し上げた関係者の中で、私も、やはり監査役の影が大変薄い、もう少し責任を会社側の監査役がとるような、監査役がもっと力を振るえるようにしたいと思うんですが、この点はまた後ほど触れたいと思います。

 もう一つ、総論的にお聞きしておきますが、会計士の考えと会社側の考え、会計に関する考えが違った場合、どうしても折り合わない場合、会計士は不適正意見というものをつけます。もしくは、意見を差し控える、判こは押すが意見は述べない、こういうことができるようになっております。

 伺いますと、去年だと思いますが、一年間で不適正意見は一件つけられた、意見の差し控えも十一件起こった。この程度の数ではありますが、起こっているということであります。こういう場合、当局、金融庁ないし監視委員会というのはどういう対応をとっているんでしょうか。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 不適正意見または意見の表明をしない旨の記載がなされました監査報告書を添付した有価証券報告書、これが提出された場合には、これは個別の事案にもよりますけれども、一般的には、所管の財務局におきまして、提出会社及び公認会計士または監査法人から、当該意見等が記載されました経緯などにつきまして、必要に応じまして聴取を行うといった対応がなされているものでございます。

 なお、例えば東京証券取引所などの場合でございますと、不適正意見または意見を表明しない旨が記載され、かつその影響が重大であると取引所が認める場合には、上場廃止の事由にもなるわけでございます。

 これから先は個別の問題でございますので、あくまで一般論として申し上げるわけでございますが、金融庁及び監視委員会といたしましては、監査意見の内容等にかかわりませず、提出されました財務書類につきまして、仮に法令に照らして問題がある場合には、法令に基づき適切に対応していくことになるものでございます。

吉田(泉)委員 会計士側から意見をつけられないとか不適正意見をつける、ここがやはり一つの大きな、摘発といいますか、不正の芽を摘む大きな機会だと思うんですね、チャンスだというふうに。そこのプロセスが大事だというふうに思います。

 それでは、続いて、改正案に盛り込まれた幾つかの項目についてお伺いをいたします。

 まず、ローテーションの問題です。

 先ほどからも大分この問題は取り上げられておりますけれども、大規模監査法人が上場会社等の監査証明業務をするときに、筆頭業務執行社員等に限っては、今の七年・二年のローテーションを五年・五年のローテーションにするということになります。「筆頭業務執行社員等」とされておりますけれども、この「等」という表現にはどういう社員が含まれるんでしょうか。

三國谷政府参考人 大規模監査法人におきます、五年やった場合の五年インターバル期間の話でございますが、筆頭業務執行社員等の具体的な範囲、これにつきましては内閣府令で定めることとしているものでございますけれども、一つには、業務を執行する社員のうち、その事務を統括する者、これのほか、当該被監査会社に係る監査の審査に責任を有する者、これも含める方向で検討してまいりたいと考えているところでございます。

吉田(泉)委員 追加で局長にお伺いしますけれども、筆頭業務執行社員、そしてその会社側で審査に責任を負う社員ということですけれども、そうしますと、都合何人になりますか。

三國谷政府参考人 事案によりますけれども、典型的な場合でございますと、一人・一人といったケースも多かろうと思います。

吉田(泉)委員 それから、不正、違法行為を会計士が発見して会社側に通知をした、しかし会社が適切な対応をとらないというときに、今度は会計士が内閣総理大臣に申し出をするという制度が新しくできました。具体的に、これは窓口はどこになるんでしょうか。そして、申し出を受けた窓口はどういう対応をとることになるんでしょうか。

三國谷政府参考人 まず、内閣総理大臣に申し出るということになっておりますが、金融商品取引法上の内閣総理大臣の権限は金融庁長官に委任されておりますことから、不正、違法行為発見時の意見申し出の受理、これも金融庁長官が行うことになるわけでございます。

 その中で、具体的な、事務的な窓口ということになりますと、これは金融庁の内部の問題でございますが、現在、開示制度、監査制度などを所管しております総務企画局に企業開示課というところがございますので、ここになるものと考えているところでございます。

 次に、申し出を受けた後の当局の対応はどうかということでございますけれども、これはまさしく個別の事案によるわけでございます。私どもといたしましては、そういった意見の申し出がなされました場合には、企業財務情報の適正性を確保する観点から、それこそ個々の申し出事案の内容に応じまして適切な対応をとってまいりたいと考えているところでございます。

吉田(泉)委員 これも不正の芽を早く摘むといった趣旨で、厳重な対応をしていただきたいというふうに思います。

 課徴金が創設されます。従来からいろいろな行政処分があるんですが、それと重複して課徴金がかけられる場合もあるし、片方しか処分しない、課徴金をかけたら行政処分はしないとか、行政処分をしたら課徴金はかけないとか、いろいろなケースがあると思うんですが、そこの考え方、基準についてお伺いします。

三國谷政府参考人 これまで、監査法人に対します行政処分の対応といたしましては、戒告、業務の停止、それから解散という三つの手法しかございませんでした。しかしながら、さまざまな事案がございますので、行政処分の多様化ということで、今回いろいろな措置をお願いしているところでございます。

 今回の中で、改正案におきまして、違反行為がやり得とならないようにする、そういった観点から課徴金制度を導入しているところでございます。課徴金と課徴金以外の行政処分、これにつきまして、二つ課すことは法令上もできることとなっております。したがいまして、課徴金とそれ以外の行政処分が重複して課されることもこれはあり得るところでございます。

 しかしながら、一方におきまして、今回の改正案というのは、公認会計士、監査法人の業務の状況、それから再発の蓋然性、被監査会社への影響などを踏まえまして、実効的かつきめの細かい対応を可能とする観点から、一定の行政処分を行う場合には、課徴金納付命令を行わないことも可能とされているところでございます。

 大きく分けて二つございますが、違反の態様等が軽微でございまして、課徴金を賦課するに及ばないケースもあろうかと思います。一方、重大な違反でございまして、課徴金以外の行政処分を課す場合でありまして、それに相当の、一定的な経済的負担をもたらしまして、それによりまして十分な行政目的を達せられる場合、例えば既存業務に係る業務停止命令が行われる場合でございますとか、解散命令または登録の抹消が行われる場合、こういった場合には課徴金の納付命令を行わないことも可能としているところでございます。

吉田(泉)委員 先ほどの質疑の中で、お金の問題はお金で済ませるという考え方があるというようなお話も出ました。私は、問題によってはやはりそれでは済まないケースがあるというふうに思います。お金を払えばそれで終わりだというわけにいかないケースがある。重大な不正行為については根っこまでやはり掘り下げるべきだ、こういうふうに思うところでございます。

 今度は、今回の法改正に盛り込まれなかった項目について、今後の検討の姿勢といいますか、そういうことをお伺いします。

 随分取り上げられましたけれども、まず、この会計士問題の基本でありますインセンティブのねじれという問題であります。

 監査をされる会社から報酬をもらう会計士が会社に対して厳しい証明を出すというのは大変難しい、こういう根本的な問題であります。雇われ会計士という言葉も先ほどから出ているところでございます。

 この問題は、今回の改正ではほとんど前進がなかったというふうに思います。将来に向けて解決していく必要がある問題だと思いますが、私は二つの考え方があるというふうに思います。

 一つは、会計士と会社は別に一体でもいいんじゃないか、ただし、その一体となった両者に対して監視委員会なり行政が厳しくチェックをする。これは、私は、例えば税理士の世界などはこういうスタイルじゃないかなというふうに思います。税理士は、会社と契約して報酬を取って、会社に成りかわって税務申告をする、それに対して税務署が厳しいチェックを入れる、これはこれで一つの考え方だろうというふうに思います。

 そしてもう一つは、会計士というのをなるべく会社から独立させるという考え方であります。例えば、今の業界団体としての協会とは別に、何か公的な会計士の監査団体というものをつくって、そこから会計士を会社に派遣する、例えば無作為抽出で派遣する、そして報酬はその団体が取る、極端に言うと、そういうイメージもあると思うんです。

 今回のこの法改正、第一条の二ですか、独立性という条項が入ったということであります。ということは、私は、今二つの道について申し上げましたが、大勢としては二番目の道を我々はとるんだ、そっちにかじを切るんだということだろうというふうに思っているところであります。

 以上を踏まえて、基本的なねじれの解消策を今後、将来にわたってどういうふうに考えていくか、基本的な姿勢を伺います。

    〔井上(信)委員長代理退席、委員長着席〕

大村副大臣 会計士の問題につきまして基本的な御指摘をいただきました。

 委員御指摘のように、いろいろな考え方はありますけれども、やはり私どもは、委員が最後に言われました後者の考え方といいますか、独立性というのを大変重要に認識をしているところでございます。

 公認会計士、監査法人による監査の適正を確保していくためには、監査人が独立した立場に立って、経営者との関係におきまして強固な地位を確保しながら監査を行っていくことが重要というふうにまず認識をしているわけでございます。その際に、監査人がその会社の経営者との間で契約を締結し、報酬が会社から払われるという、このインセンティブのねじれを克服していくということは大変大事なことだというふうに思っております。

 この点につきまして、昨年末に取りまとめられました金融審議会公認会計士制度部会の報告におきましては、会計監査人の選任議案及び報酬の決定に係る監査役等の同意権の付与を定めた会社法につきまして、関係当局において早急かつ真剣な検討がさらに進められることを期待したいといった提言がなされているところでございまして、金融庁といたしましては、関係当局におきまして早急に検討が進められるということを、これは引き続き期待をしたいというふうに思っております。

 なお、関連いたしまして、先ほど委員が、後段の独立性ということであれば協会だとか、そしてまた行政との関係でもいろいろな考えがあるではないかというふうに言われました。

 これは、現段階では、これも委員御案内のとおりでございますが、日本公認会計士協会におきましては、監査事務所への監査の品質管理の状況につきまして、その独立性が確保されているかどうかのレビューを行っているところでございますし、また、こうしたレビュー結果については、公認会計士・監査審査会がモニタリングというものを行っているところでございます。

 したがいまして、金融庁といたしましては、こうした協会そして審査会と連携をいたしまして、引き続き監査法人の適切な監督に努めてまいりたいと考えております。

吉田(泉)委員 ありがとうございました。やはり会計士の独立を大事にする道を行くんだ、そして、それなら、会社の経営者から直接会計士が報酬をいただくという今の制度を何とかしていくんだというお話だったと思います。

 今、副大臣も既にお触れになりましたけれども、きょうも朝から、監査役の会計士選任議案決定権さらには監査報酬決定権、これが今回の法改正に盛られなかったのはまことに残念だ、何とか議員立法でもこれに対応しようじゃないかというお話がありました。

 もう既に今のお話で若干そのところにも触れていただいたとは思いますけれども、いろいろ関係者に聞くと、やはり監査役にとって今既に持っている同意権と今申し上げた決定権では全く違うと言うんですね。何とか決定権を日本の法律でも取り入れるべきである、こういうことを申し上げたいと思います。

 それから、ローテーションの問題、先ほどちょっと触れましたけれども、監査業務の担当をしている人、リーダー一人と、それから会社側でそれを審査している社員一人、合計二名がこの五年・五年のローテーションの対象になるというお話がございました。これはこれで一歩前進ではありますが、これをどんどん突き詰めていくと、監査法人そのものもローテーションさせるべきじゃないかという意見が理論的には出てくるわけでございます。

 そして、既にイタリアやブラジル、こういう国ではそういう法人のローテーションを制度として取り入れているという国が出てきているわけでありますが、日本ではこの問題をどういうふうに検討されているのか、お伺いします。

三國谷政府参考人 ローテーションルールは監査人の独立性確保のための一つの手段でございまして、これをどのような範囲で義務づけるかにつきましては、利点と問題点とのバランスに配慮した上で決定する必要があると考えているところでございます。

 御指摘の監査法人自体のローテーションにつきましては、何点か指摘されているところでございます。

 一点目は、監査人の知識経験の蓄積が中断されてしまうのではないか。二点目は、監査人、被監査会社に交代に伴うコストが生じるのではないか。三点目、御指摘のとおり、一部で監査法人のローテーションを採用しているところも見受けられますが、全体の大宗といたしまして、主要な先進国で監査法人のローテーションが全体としては行われていない、こういった現状におきまして、仮に我が国の監査法人のみがローテーションを行うこととした場合には、国際的に活動をする被監査会社に対する監査について実務上の問題が生じるのではないか。四点目は、大規模監査法人の数が限定されている中で、監査法人の交代というのは実務上なかなか困難なところがあるのではないか等の問題点が指摘されているところでございます。

 少なくとも現状におきましては、監査法人自体のローテーションを導入することには慎重な対応が必要であると考えているところでございます。

吉田(泉)委員 現実にはいろいろ難しい問題があるということでした。

 ただ、本当にできないのか。若干ではありますがやっている国もあるということですから、会計士の独立性をどう強化していくかという観点からこれは検討をし続ける価値があるというふうに私は思っているところでございます。

 ちょっと話はかわりますが、会計士と税理士の業務のすみ分けについてお伺いをいたします。

 公認会計士は、試験に合格して会計士になると、自動的に税理士の資格を取得できることになっております。そして、監査法人としては税務業務はできないわけですが、個人の会計士、個人事務所としては税理士業務をやってよろしいと。資格があるわけですから当然ですが、やれるということになっているわけであります。

 これは監査審査会の方の報告書、ことしの三月の報告書ですが、それによりますと、現在、公認会計士の個人事務所の大体六割が税務業務を主体としている、こういうデータが出ておりました。一方で、これも先ほどから出ておりますけれども、会計士の不足というのが既に深刻になっている。そして、金融庁は、十年かけて会計士の数を五万人、今の約三倍にしようとしているわけであります。そういうときに、会計士の資格を持っている人が税務業務で事務所を運営しているという事態をほっておいていいのかという問題であります。

 そもそも、監査証明という仕事と税務申告という仕事は、性格的には大分質の違う仕事でもございます。私は、今後、会計士が自動的に税理士の資格を取得できるという今の仕組みは一度見直しをかけたらどうか、そして、この両者のすみ分けをもう一度考え直したらどうかというふうに思うところでありますが、いかがでしょうか。

大村副大臣 委員から、会計士と税理士の関係の御質問をいただきました。

 監査及び会計の専門家であります公認会計士には、税理士法の規定によりまして税理士となる資格が与えられているということは、御案内のとおりでございます。こうした現行制度を見直すべきというふうな御意見、御指摘に対しましては、公認会計士は会計の専門家として、単に監査業務に従事するだけではなくて、会計に関するさまざまな分野で活躍することが期待をされているところでもございます。また、監査業務を効果的に行っていくためには、監査業務以外の領域も含めた、会計に関する幅広い知識経験等が求められるという指摘もございます。また、国際的には、税務というのは広く会計の一分野を構成するものというふうに考えられているところでもございます。

 そういったことから、この点につきましては慎重な検討が必要であるというふうに考えているところでございます。

吉田(泉)委員 慎重に検討してもらいたいと思いますけれども、会計士が足りないんですね。会計士が足りないという時代で、三倍にしようという時代ですから、税理業務に打ち込んでいる会計士さんに本来の会計士の業務に戻ってきてもらって、専念してもらいたい、そういう発想で検討をしていただきたいと思います。

 それから、これも先ほどから取り上げられている問題ですが、刑事罰の問題であります。既に監査法人に対して刑事罰の規定があることはあります。例えば当局による報告徴求、さらには立入検査、これを忌避した場合は監査法人に刑事罰をかける、法人両罰規定があるわけであります。しかし、今問題になっている監査の虚偽証明、これは刑事罰の対象から外れているということであります。

 監査法人が会社と監査契約をするときの契約の当事者に伺ったところ、これはもう大半が、監査法人の代表者が、理事長ないし代表社員の中の代表者が契約にサインをするということであります。それから、監査証明についても、その担当した社員と並んで法人の代表者がサインをするということでありますので、そういうことからいうと、監査業務における法人の責任というのは極めて重く、極めて明白である、こういうふうに思うところでございます。

 先ほど税理士のお話も申し上げましたが、税理士が脱税の相談に乗ったりすると、これはその税理士の事務所も法人の方も両罰規定がかかってくる。先ほどは、弁護士さんでも、それからお医者さんでも両罰規定があるという答弁もございました。今回は、刑事罰を見送った、まず課徴金導入からやりたいということでありますけれども、将来的には、今後、虚偽証明をした監査法人、今申し上げたようないろいろなバランスを考えますと、私は、この刑事罰適用ということも検討に値する、慎重に検討すべき課題ではないか、こういうふうに思っておるんですが、改めて見解をお伺いします。

山本国務大臣 監査法人に刑事罰を導入することにつきましては、監査法人の信用失墜等のリスクが大き過ぎるのではないか等の指摘もございますし、法的になお広範な検討が必要な分野でございます。

 このため、昨年末に取りまとめられました金融審議会公認会計士制度部会の報告におきましても、監査法人に対する刑事罰導入の可能性について、このように言っております。一つの検討課題であるが、非違事例等に対しては、課徴金制度の導入を初めとする行政的な手法の多様化等により対応することをまず求めていくことが考えられるというようにしております。

 今回の公認会計士法等の一部を改正する法律案におきましては、このような考え方を踏まえまして、刑事罰の導入を見送る一方で、公認会計士、監査法人の虚偽証明に対する課徴金制度を導入することとしておりまして、他の行政処分の多様化と相まって、公認会計士、監査法人の非違の抑止が適切に図られていくことを期待するものでございます。

吉田(泉)委員 四年ぶりの法改正でございますけれども、今回一歩前進ではございますが、全体的に、では、これで不正会計、会計の不祥事が根絶できるかというと、私はそこまでの期待感は持てない、こんなふうに感じております。さらに不正会計根絶へ向けて根本的な解決を、このインセンティブのねじれの解消も含めて、探る必要があると申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 公認会計士法等の一部を改正する法律案につきまして、事前に通告させていただいた条件に従いまして質問をさせていただこうというふうに思います。

 まず、ことしは、業界で大分大きなインパクトを持つ事件がございました。と申しますのは、二月二十日でございましたか、中央青山監査法人を改組したみすず監査法人、日本の四大監査法人の一角を占めるみすず監査法人が、実質解散の宣言をしたというわけであります。

 このみすず監査法人は大変大きなクライアントを抱えておりまして、それこそトヨタを初めとする超優良企業、上場企業を初め新興市場にも多くのクライアントを持っていた監査法人であります。この監査法人がさまざまな不祥事、我々も以前から追及しておりましたカネボウの事件、そして日興コーディアルの事件を含めまして、実質解散へと追い込まれたわけであります。

 このみすず監査法人が自主解散を決めたわけでありますが、自主解散を決めるに当たりまして、既存の監査契約というのはやはり適切に移管されなくてはならない。監査法人が、倒産したわけではないですけれども、解散したということで監査を受けられない企業というのがあってはならないわけでありまして、これは当然、例えば三大監査法人を初めほかの監査法人にその監査契約というのを移管することになっているというふうに思うわけでありますが、みすず監査法人の既存の監査契約の移管状況について金融庁さんにお伺いしたいと思います。

三國谷政府参考人 御指摘のとおり、みすず監査法人におきましては、一つは、本年三月期の決算につきましては確実に監査業務を遂行するとともに、二点目は、将来的に証券市場の混乱を防止するとの観点に立ちまして、これまで、他の監査法人との間で、七月末を目途とした社員及び職員の移籍に向けた協議を進めてきているものと承知しております。また、これらの人員の移籍とあわせまして、監査を担当してきたクライアント企業等は、原則として監査チームが移籍する先の監査法人に引き継ぐ、そういった手続も鋭意進めてきているものと承知しております。

 現在の状況でございますけれども、六月四日、これは正午の時点ということになりますが、みすず監査法人が監査を担当してきた約六百社強の上場会社のうち、約八割に当たる会社が、これまで既に後任会計監査人につきまして適時開示を行ったものと承知しております。

鷲尾委員 金融庁さんにお伺いをさせていただきたいんですが、今、六百社強のうち、八割方、監査契約の移管が進んでおるというふうにおっしゃっていただいたと思うんですけれども、移管されないというおそれがある既存の監査契約というのはありますでしょうか。そういう懸念がある先についてはどう把握されていますでしょうか。

三國谷政府参考人 現在も、みすず監査法人は、他の監査法人などの協力を仰ぎながら、業務の移管をさらに促進していると承知しております。

 現段階で確たることを申し上げることは困難でございますけれども、金融庁といたしましては、企業等が監査を受けられない事態が生ずることのないよう、日本公認会計士協会を初めとする関係者が適切に対応することが必要と考えておりまして、また、私どもも協会等と十分連携をとりながら対応してまいりたいと考えております。

鷲尾委員 例えば、これは後でもうちょっと議論させていただけたらなと思うんですけれども、今回みすず監査法人が自主解散することによって監査契約が大幅に宙に浮く状況にある。それが今いろいろなところに移管されているという話でありまして、監査契約がそれこそ宙に浮いた状況のままだれも引き取り手がないという状況もこれは想定されるわけであります。

 三國谷さんが今十分協議してという話をされておりましたが、最終的には行政もある程度の明確な意思を持って、監査契約が引き受けられない先というのは市場にない、ちゃんと監査契約をほかの監査法人に引き受けてもらうということはしっかりと措置するおつもりなのかどうかというところについてもお聞かせ願いたいというふうに思います。

三國谷政府参考人 監査契約は民間と民間の契約でございますので、私どもが直接そういったことに関与することにはおのずから限界がございますけれども、私どもといたしましては、協会等とも連携しながら、そういった環境づくりに努めてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 では、続きまして、みすず監査法人が自主解散の宣言をしたということで、これから清算手続に入っていくというふうに考えておりますが、この清算手続についてお聞かせ願いたいというふうに思っております。

 例えばの話ですけれども、みすず監査法人、今もって、足利銀行の粉飾事件について民事訴訟の被告の立場になっておるわけでありまして、この点はどのような取り扱いになるのかとか、清算業務というのは全体の概要としてどんなものになって、手続としてはどれぐらいの時間を要するものなのかということについてもお聞かせ願いたいと思います。

三國谷政府参考人 個別の事案につきまして言及することには制約がございますけれども、一般論として申し上げたいと思います。

 みすず監査法人が清算手続に入ることを先般決定しているわけでございますが、一般的に、清算を行いました場合には、公認会計士法三十四条の二十二というのがございまして、これは非常に複雑な準用規定でございまして、読みにくいところでございますが、これにおきまして、会社法の規定等も準用しているところでございます。

 ここで準用しております会社法の規定に従いまして清算した場合には、清算人を置き、清算人が債権の取り立て、債務の弁済及び残余財産の配分等を行って、清算手続がすべて終わるとき、このときに法人として消滅するということでございますので、清算手続が行われるという形になろうかと思います。

鷲尾委員 済みません、重ねてちょっと細かい取り扱いをお聞きしたいんですけれども、冒頭申し上げました例えばの、今、足銀で民事訴訟の被告になっているわけですね、みすず監査法人というのは。被告の立場である場合、例えばだれが費用を負担するのか。みすずさんの社員は当然ほかの監査法人にスタッフごと移管されることになるわけですよね、例えば、あずさ、トーマツだ、新日本だとかいって、大体、社員そしてスタッフは移管する。みすずはもぬけの殻になって、ただ清算業務を待つのみというふうな話になるわけですけれども、訴訟が行われて、その弁護士費用、訴訟費用も含めて、だれがどのように負担することになるのかということについてもちょっとお聞かせ願えませんでしょうか。

三國谷政府参考人 現在の制度でございますけれども、現在の監査法人制度におきましては、監査法人の財産をもって債務を完済することができないときは、監査法人の各社員が連帯して責任を負うこととされているところでございます。

 したがいまして、仮に、監査法人の財産、保険金によっても清算業務に要した費用を支払った後の監査法人の債務を完済することができないような場合には、各社員が連帯して個人財産をもって債務を弁済するというのが現在の制度でございます。

鷲尾委員 ちょっと法律の細かい話で恐縮ですが、社員が連帯しての社員というのは旧の社員ということでよろしいですね、確認ですけれども。わかりました。

 では、みすずさんの話をしますと、今の理事長さんは片山理事長さんです。この片山理事長さんは、前の公認会計士協会の会長さんの奥山さんが急にやめるという話になって片山さんの登板になったということなんですね。

 私、思いますのは、日興コーディアルの調査報告書、外部の方も入って、どういう経緯でSPCのあの連結の範囲のああいう粉飾が行われたかという話について調査報告書が出ていますけれども、その中で、かなり確定的に、奥山理事長が粉飾をある意味リードするような発言、行動があったというふうに調査報告書上されているわけですけれども、そう考えますと、もう社員をやめている奥山理事長というのは、例えば清算を含めて何の責任も負わないということになるんでしょうか。ちょっとその点、どういうことになっているのか、お聞かせ願えますか。

三國谷政府参考人 個別の事案につきましての言及は差し控えさせていただきたいと思います。

 一般的な制度論として申し上げますと、社員であった当時のことにつきましては、社員でなくなりました後も責任を負うという形になっていると承知しております。

鷲尾委員 わかりました。

 続きましての質問に移りたいというふうに思います。

 ことしの七月までですが、上場会社監査登録制度というのが発効になって、上場会社を監査している監査法人については登録を行わなきゃならないというふうにしているわけですけれども、この監査登録制度について、登録の状況をお聞かせ願えませんでしょうか。

三國谷政府参考人 御案内の日本公認会計士協会による上場会社監査登録制度でございますが、これは、上場会社を監査する事務所の監査の品質管理体制を強化し、資本市場における公認会計士監査の信頼性を確保する観点から、協会におきまして、上場会社監査事務所登録制度を導入したと承知しております。

 この監査事務所名簿への登録状況でございますが、これは七月十五日までに行うこととされていると承知しておりますが、日本公認会計士協会が先般、五月三十一日に公表したところによりますと、四月十七日の時点で、百十一の監査法人及び四十九の個人事務所が登録を行ったというぐあいに承知しております。

鷲尾委員 ちょっと質問が前後するんですけれども、今、公認会計士・監査審査会でも、公認会計士の監査の状況について、公認会計士協会が行った品質管理レビューを前提として検査を行っているという制度設計になっていると思います。日本で最も著名とされております、みすずを含めますと四大監査法人ですか、今は実質解体ということなので三大監査法人ですけれども、この三大監査法人の法人としての品質管理の状況がどのようなものになっているかということについてちょっと確認をさせていただきたいんですけれども。

振角政府参考人 それでは、私の方からお答えさせていただきたいと思います。

 今御指摘のありましたように、私ども公認会計士・監査審査会は、平成十七年の十月から十八年の六月までの間に、四大監査法人に対して検査を行っております。そして、各監査法人につきまして、監査の品質管理のための組織的な業務運営が不十分であると認めたことなどから、平成十八年六月三十日に、公認会計士法の規定に基づき、金融庁長官に対して、業務改善指示をするように勧告したところでございます。

 具体的には、業務運営全般、あるいは監査業務の遂行、監査調書、監査業務に係る審査等に関して不十分な点が認められたというふうに指摘しているところでございます。

 公認会計士・監査審査会としましては、当該勧告及び金融庁によるその後に行いました業務改善指示に基づく改善策を各法人が確実に実行することで、監査の品質管理に関する改善が速やかに進められ、我が国の会計監査に対する信頼が確保されることが重要だと考えている次第でございます。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

鷲尾委員 今の振角さんの発言からしますと、一番大きい監査事務所、日本の三大監査法人と言われている監査法人であっても、やはり組織としての品質管理の状況というのは、これはまだ不十分だと言わざるを得ないという状況だと思います。

 では、上場会社の監査登録制度の話ですけれども、今百十一の監査法人と四十九の個人事務所が登録しているという話でありますが、これは、品質管理が一番進んでいるというふうに言われておる大きな監査法人でも組織的な管理体制というのが不十分であるというのが現状なわけでありますから、当然、中小を含めた監査法人、個人事務所の監査の品質管理の状況というのは、公認会計士・監査審査会の基準に照らせば、かなりといいましょうか、ある程度お粗末なものなのかなということが想定できるわけであります。

 そうしますと、この登録自体を辞退する法人も多々出てくるのではないかなというふうに私自身は感じておるところなんですが、登録辞退の状況と今後の見通しというのも、金融庁さん、どのように把握しておられるのか、お聞かせ願いたいと思います。

三國谷政府参考人 先ほど、名簿の登録は七月の十五日までに行うというぐあいに申し上げましたが、現時点で、登録辞退の見通しにつきまして確たることを申し上げることは困難であることを御理解賜りたいと存じます。

鷲尾委員 私自身思いますのは、かなり登録辞退する事務所もふえてくるのではないかなと思います。登録を辞退するということは、当然、上場会社を監査しないということになりますから、それまで契約していた上場会社の監査契約についても、これはどこかしら移管、引き受けなきゃいけないというふうになると思っております。

 続きまして、ちょっと質問を変えますが、みすず監査法人が自主解散をいたしまして、もうみすずの公認会計士の皆さん、大部分、ほかの監査法人に移っておるというふうに情報が入ってきておるところではありますが、みすずをやめた公認会計士は特にそうなんですけれども、これに限らず、先ほど吉田委員からも指摘ありましたが、公認会計士自身が監査業務から撤退しておるという傾向があるのも事実であります。この件についての現状をちょっとお聞かせ願いたいというふうに思います。

三國谷政府参考人 現在、ある程度状況を把握しております、みすず監査法人の例で申し上げたいと思います。

 みすず監査法人におきましては、他の監査法人との間で、七月末を目途といたしまして、人員の移籍に向けました協議を進めてきているところでございます。この概要は、先般、五月七日にみすず監査法人から公表されておりますが、それによりますと、多くの人員が他の監査法人等に移籍し、引き続き監査業務に従事する方向で協議がまとまってきているとされているところでございます。

 なお、この公表資料によりますと、約二千四百名の人員のうち、まだ態度未定の方が約三百六十名存在していると承知しております。これらの三百六十名の中に、監査の現場からの離脱を希望する者も存在しているとは聞いております。ただ、最終的な移籍数等がいまだ確定しているわけではございませんことから、監査現場からの離脱傾向が最終的にどの程度になるかということにつきまして、現段階で確たることはまだ申し上げられない状況でございます。

鷲尾委員 局長、ありがとうございます。

 二千四百人のうち約一割強ですか、三百六十名ほど監査業界から離脱するのではないかという話ではありますが、監査業務から撤退する公認会計士の気持ちというのがわからないでもないなというふうに私自身は思っております。

 先ほど来、上場会社の監査登録制度の話で登録辞退の状況についてお聞きしたのは、監査法人が登録しない、登録を辞退する、個人事務所が登録を辞退するというのは、やはりこれも、監査業務を辞退するということにほかならないのではないかと思います。

 監査業務から公認会計士が逃れてしまっている、これは大変な問題であると私自身認識しておるわけでありまして、この要因をちょっと考えてみたいというふうに思っております。なぜ公認会計士は、今、監査という一番の職業的使命を、忘れているわけではないですが、やりたいけれどもやれなくなっているところも多々あるのではないかと思います。その要因についてちょっと議論をしたいというふうに思っております。

 監査業務ですけれども、最近は、社会的にかなり批判されることが多うございます。それは何かと申し上げたら、粉飾を見逃した。ライブドアの事件もそうです、日興コーディアルの事件もそうです。その他いろいろ、粉飾を見逃したというかどで公認会計士はかなり批判されるわけですけれども、公認会計士の第一義的な目的というのは財務諸表の監査、情報の保証でありまして、そういう意味では、粉飾を見逃すといった行為、粉飾を見逃すだけではなく、それに加担していたという行為は当然非難されるべき行為でありますが、もう一つ重要な機能として、公認会計士は企業の財務諸表を適切に作成する手助けをする、そういう指導的な機能もあるというふうに、これはもう釈迦に説法かもしれませんが、そういう機能もあるという話であります。

 ところが、最近の公認会計士に対する風当たり、規制を強化すべき、先ほど吉田委員の方からも刑事罰の導入についてもという話がありました。私自身は、刑事罰の導入を含めて、規制を強化していくという方向性については若干の疑念を持たざるを得ません。公認会計士が不正を看過してしまったということが問題になることはあると思いますが、あくまでもそれは重大なものについては問題であるという話であって、むしろ、公認会計士が何も発見できなかったというよりも、適切に財務諸表をしっかりと作成する手助けをしている、そういうことが重要な機能であるというふうに私自身は思っておるわけでございます。

 最近、監査業務から公認会計士が逃れ出ているというのは、一つは、責任だけ大きく重くなって、やることばかりふえて、また後で議論したいと思いますが、報酬については全く上がらずというような状況が一つあると思います。

 ここでちょっと大臣にお話をお伺いしたいというふうに思うんですけれども、公認会計士の最近の規制強化の流れ、これについては、私、先ほども申し上げました、一抹の疑問を感じておるところなんですが、大臣自身はどのようにお考えなのか、お聞かせください。

山本国務大臣 企業財務情報の適正な開示につきましては、一義的な責任を負うのは各企業の経営者でございます。監査人の責任のみが過度に強調されることは適切ではございません。適正な開示の確保に当たりましては、開示企業の経営者等による適切なガバナンス等と相まって、公認会計士、監査法人による実効性ある監査が重要であると考えております。

 監査を魅力ある仕事としていくためには監査の信頼性を確保していくことが重要でございまして、今般御提案させていただいております、公認会計士監査制度の充実強化に向けた各般の措置を確実に実施していくことがまず重要ではないかと思っております。

 鷲尾議員の御指摘のとおり、いたずらに規制を強化することによって優秀な公認会計士が監査業務に戻ってくるということはあり得なく、むしろ、職場を魅力あるものにする、監査業務が非常に有意義なものであるというような方向づけも大変必要なことだろうというように思っております。

鷲尾委員 大臣、ありがとうございます。

 ところが、やはりここ数年、ちょっと状況が違ってしまっているという話だと思います。会計士不祥事が頻発するたびに、監査業務に関連して、少なからず逮捕者を出しておるところであります。

 特にライブドア事件についてですけれども、担当公認会計士に実刑判決も下りました。粉飾決算書を作成した担当者でもないにもかかわらず、その粉飾を黙認したからという理由で実刑判決が下ってしまう。これは公認会計士にしてみたら、監査業務は大層きわまりない、今そういう状況になっておるんじゃないかなというふうに思います。

 それだけではありません。ちょっと議論を深めさせていただこうと思いますが、監査報酬について少し議論をさせていただきたいと思います。

 今の業界、例えば売り上げ区分に応じた監査報酬の平均の水準というのはどんなものかということをお聞かせいただけたらと思うんですが。

三國谷政府参考人 日本公認会計士協会の調べに基づきまして、一部上場の被監査会社の連結売上高に応じました平均監査報酬ということでございますと、連結の売上高が百五十億円以下であれば平均報酬額が千五百七十九万円、百五十一億円から三百億円以下でございますと千九百六十二万円、三百一億円から五百億円以下でございますと二千二百七十二万円、五百一億円から一千億円以下であれば二千四百五十三万円、一千一億円以上三千億円以下であれば二千九百六十一万円、三千一億円以上八千億円以下であれば四千三十六万円、八千一億円以上が七千二十九万円となっていると承知をしております。

 こうした我が国の監査報酬水準がまだ諸外国に比べて低いといった指摘があることは承知しております。ただ、監査報酬水準につきまして、国際的に比較した正確なデータをお示しすることは困難でございますが、協会の調べによりますと、平均監査報酬としては以上のような数字となっているところでございます。

鷲尾委員 今お聞きすると、国際比較は単純にできないという話ではありますが、今のは連結、単体合わせた平均という形で局長はおっしゃっていただいたんでしょうか。

三國谷政府参考人 連結売上高に応じました平均監査報酬ということでございます。

鷲尾委員 年間の売り上げが十億円に満たないような水準の会社について、これは私の方の調べですけれども、大体、連結で八百万円ぐらいらしいんですね。売上高が十億円未満の会社でも八百万円ぐらいだ。

 これは正直申し上げまして、監査は、いろいろな人に聞きますけれども、どんなに小さい企業でも、しっかりやろうと思ったら最低でも一千万円はかかるよという話を言われておる中で、国際比較は単純にはできないですけれども、欧米と比べると大分監査に対する報酬額というのは低い。そして、会社によっては、本当に赤字覚悟、赤字でやってしまっているという状況だというふうに私自身は認識しています。

 何を申し上げたいかと申しますと、例えば、上場企業、一部の超優良企業というのは、確かに監査に対してもお金の払いはいいわけです。業績もいいですし、何も隠すところはないですから、当然監査報酬も、監査法人に対して払いも比較的財布のひもが緩くなるわけですね。ところが、中小といいましょうか、最近は新興市場の拡大も伴っていろいろな企業が入ってきております。そういう企業は監査に対するマインドが若干低い傾向がありまして、そういう企業に限って監査に対する報酬を渋るという傾向にある。

 監査人側から見た場合に、超優良企業と、そうではない、例えば新興の上場企業だとか比較的規模の小さい企業、どっちが、監査リスクといいましょうか、危ない会社かどうかという話をしますと、今危ない会社と申し上げたのは、例えば粉飾のインセンティブが強い会社ということですけれども、これは、超優良企業といって業績も大体安定している企業ではなくて、むしろ業績が不安定な会社、業界の少しの動向で売り上げが吹き飛んでしまって、利益も吹き飛んでしまって、そういう会社の方がより粉飾するインセンティブというのは強い、公認会計士の側から見れば危ない会社なわけでありますが、その危ない会社の方が逆に監査報酬が少ないというのが今の現状なんです。

 そうしますと、先ほど来申し上げました監査契約。今、みすず監査法人については監査契約を移管するという状況になっている。そうでなくても、上場会社の監査登録制度が入って、それで監査業務を辞退する会社もふえるかもしれない。その中で、監査契約がまたも宙に浮くというような状況がある。その浮いた監査契約は引き取り手があるかという話を申し上げますと、これはなかなか難しいのではないかな。

 何を申し上げたいかというと、宙に浮いてどこも引き取り手がいなくなった監査契約は、監査人側からしたらかなりのハイリスクであります。そのハイリスクなものをしょってしまったが最後、先ほども申し上げましたが、今は公認会計士に対する世間の批判の目が強いです。規制も強化されています。それで、場合によっては刑犯に値するという事件も、そういう事態にも陥りかねないわけです。

 そういう部分では、私、今回の公認会計士法の改正でいろいろ処分も課徴金も導入されたということは非常に歓迎すべきだとは思うんです。とはいえ、監査契約を逆に引き受けないインセンティブが強くなってしまっている、上場会社監査登録制度を初め、監査報酬の問題も初め、そういう問題はこれから先解決していかなきゃいけないというふうに思うんですけれども、大臣、これはどのようにお考えですか。

山本国務大臣 大手か否かにかかわりませず、適正な監査業務の実施のために業務管理体制を整備して運用していくことというのは、すべての監査法人に求められる責務でございます。また、いかなる監査法人であれ、監査を行うに当たりましては、個々の企業の監査リスクを踏まえた適切な監査手続の選択が求められるところでもございます。

 監査リスクの大きい企業等の監査人が中小の監査法人に集中するといった状況が一般化しているとはまだ必ずしも言えないように思いますけれども、金融庁といたしましては、各監査法人等が監査について十分な水準の品質管理を確保できるよう、日本公認会計士協会や公認会計士・監査審査会と連携しつつ、監査法人等の適切な監督に努めてまいりたいと思います。

 と同時に、健全な資本市場を確保する日本の監査体制にありましては、アメリカと比べまして、一般的に、監査報酬、監査時間が四分の一であるというように言われております。その点におきましても、さらなる報酬と時間の投入、これへのインセンティブがいかにあるべきかということも考えていかなきゃならぬと思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。今おっしゃっていただいた監査報酬と時間、現場を経験した者の発言としてちょっと聞いていただきたいと思うんですけれども、単純に時間ではないと思います。

 ちょっと話の本筋からそれますけれども、欧米は、会計に対する意識としては、公認会計士自身に会社の内部管理をある程度任せて、欧米の会社のスタッフというのは会計の知識は余りないけれども、それこそマニュアルに従ってぼんぼん伝票を処理する、会計を処理する、それを公認会計士がその作成途中でチェックする。それで公認会計士がチェックする案件というのは、日本の今の監査制度、公認会計士がやっている仕事と比べると膨大な量になっているわけです。それは、その裏として、欧米の会社、特にアメリカの会社の経理スタッフのクオリティーという部分、そういう問題もまた裏側には存在しているというふうに思うわけです。ですから、有名なあのエンロンの事件も、公認会計士がチェックした伝票から事が始まったという話もあります。

 片や日本を見ますと、日本の会社というのは、経理担当者を含めて、公認会計士とほぼ同等かそれぐらいの水準の方が現場におられて、公認会計士とけんけんがくがくの議論をしながら実務を取り仕切って、チェックしてやっている。それをさらに公認会計士がチェックするということなので、国際水準に合わせて日本が監査時間をふやそうふやそうと思っても、なかなか構造的には、大変口幅ったいですけれども、日本の会社の社員の方の、経理スタッフのクオリティーというのは多分アメリカの経理スタッフの質よりも大分高いんじゃないかなというふうに私は思っておりますので、そういう意味におきますと、単純に監査時間、これからふえるインセンティブをどこでつけたらいいのか、大臣がおっしゃったように大変悩ましいんですけれども、その点についてはどうしたものかなと本当に悩ましい話であります。

 ちょっと話がそれて申しわけないですけれども、いわゆるハイリスククライアントについて監査したくないというインセンティブがどんどん働くようになってしまっているのが今の業界の状況です。ところが、ハイリスクのクライアントであっても、正直申し上げて、公認会計士が、ハイリスクのクライアントだから意見表明しないよというのは公認会計士としては問題だと思うんです。ハイリスクのクライアントであっても適切に、例えば不適正意見だとか意見差し控えだとか、いろいろな限定をつけて意見を表明する手段はあるわけですから、これはちゃんと表明しなきゃいけないわけです。

 ですから、ハイリスクかどうかというところでより好みしてはいけないということはわかるんですけれども、大臣もおっしゃっていたとおり、今、ハイリスクのクライアントであればあるほど監査報酬の水準が低いんですよ。ですから、これを何とか考えていかなきゃいけないというのが私の問題意識でございます。

 るる申し上げましたが、今、監査法人の経営というのは、それこそ、内部統制の監査が入りました、国際的なパートナーシップも組んでいますので、当然アメリカの会社、ヨーロッパの会社に上納金を上げなきゃいけないとか、本当に経営が苦しいという話なわけです。ですので、その苦しい状況で、これから資本市場を、例えば監査難民をなくしてどういうふうに運営していくかというのは悩ましい大変な問題だと思うんですけれども、大臣、私の話を聞いてどのような感想をお持ちですか。

山本国務大臣 中小監査法人を含めまして、監査法人における業務が増加、複雑化していることは認識しております。こうした中で、中小監査法人が、御指摘のように監査リスクの高い企業の監査を進んで受託している状況にあるとは必ずしも言えません。

 監査報酬という面から見ますと、被監査会社に係る監査上のリスクを踏まえて適切な水準を確保していくことが重要でもございます。このための環境整備に引き続き努めてまいりたいと思いますけれども、ともすると、あつものに懲りてなますを吹く、できればやりたくないというような傾向がないとは言えないというように思います。

 具体的に申し上げれば、日本公認会計士協会におきまして、監査時間の見積もりに関する研究報告等が公表されていることを踏まえまして、その成果を実際の監査計画の策定等に適切に活用していくこと、財務書類の作成に当たって監査にどのような対価を支払ったかについて透明性を確保する観点から、企業等による開示の充実等を促すこと等に努めてまいりたいと考えるところでございます。

 いずれにしても、監査難民が出てこないという体制整備には重点を置いて今後対処しなければならぬというように思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。今までの話と大変逆説的なんですけれども、監査難民、これは報酬も低い、リスクも高い、だから引受先がない。そこで、無理やり、おまえ引き受けろやという方式ではなくて、やはり監査を受ける側のマインドをもっともっと上げてもらって、いや、そうじゃないんだ、監査報酬をもっと上げなきゃちゃんと監査してもらえないんだ、自分は上場するに当たってはそれぐらいのコストを負担するんだ、それぐらいの意識が私は経営者の側に求められると思いますので、ぜひそこら辺の啓蒙活動も、大臣、率先してやっていただけたらというふうに思います。

 話をかえます。

 精神的独立性と外形的独立性を監査人は言われているわけですけれども、最近、この外形的独立性をしっかりと担保するという制度設計がかなり強化されてきているのではないか。今の公認会計士の業界でいいますと一項業務と二項業務というのがあって、同一会社に対して非監査業務と監査業務は同一の社員がやってはいけないという条文があるわけですけれども、それのみならず、外形的独立性、クライアントと癒着が生まれないための措置を強化する方向にある。この一つが、私は関与社員の交代制度だと思います。それこそ午前中から委員の先生方は御議論だとは思うんですけれども。

 外形的独立性をどう担保するかという話で私自身が思いますのは、これも皆さん議論されてきたかとは思いますが、私は、監査報酬の存在がやはり一番外形的独立性を害すものだというふうに思います。いかにいろいろな規制をしようとも、クライアントからお金をもらっている以上は、それが一番の外形的な非独立性の証拠であるというふうに私自身は思うわけです。ですから、このことについて、根本的な解はないんじゃないかなというふうに私は思います。

 大臣、この外形的独立性の規制強化と、監査報酬を公認会計士がもらうという外形的な非独立性についてお考えをちょっとお聞かせ願えませんでしょうか。

山本国務大臣 監査の適正性を確保していくために、監査人が独立した立場に立って、経営者等との関係において強固な地位を保持しながら監査を行っていくということは申すまでもありません。

 被監査会社から監査報酬が支払われること自体が監査人の独立性を害することになるのではないかという趣旨であろうと御質問については思いますけれども、これは諸外国においても同様であると承知しております。

 他方、監査人が被監査会社の経営者との間で監査契約を締結し、監査報酬が被監査会社の経営者から監査人に対して支払われるというインセンティブのねじれを克服していくことは重要な課題でございます。

 この点につきまして、昨年末にまとめられました金融審議会公認会計士制度部会の報告におきましては、会計監査人の選任議案及び報酬の決定に係る監査役等の同意権の付与を定めた会社法につき、関係当局において早急かつ真剣な検討がさらに進められることを期待したいという提言がなされておりまして、金融庁としましては、関係当局において早急に検討が進められることを強く期待するところでございます。

 つまるところ、企業価値を高めるという意味におきましては、代表取締役も公認会計士も実に最大の貢献をしているわけでありますが、利益処分や人事権が過度に日本型に、代表取締役に集中している。創業者の企業については特にそうでございます。そんなことを克服するということは、今後、政府当局を初め、市場自体の課題だろうというように思っております。

鷲尾委員 監査役の関係は、法整備をどんどん進めていっていただけたらなと私自身は思うんです。

 私、そもそも公認会計士として重要なのは、外形的独立性ではなくて、やはり精神的独立性だと思います。どれだけ癒着しようとも、監査意見の表明に当たってはしっかりと独立して、会社側の判断に立つのではなくて、公認会計士として、会社の実態に即して今の財務諸表が適正かどうかというところで判断できれば、私は問題ないと思うんです。全くもって問題ないと思います。ところが、やはり精神的独立性を保てないのが恐らく人間のさがということなんでしょう。外形的独立性を担保するための制度がいろいろできている。

 一つの方向性といたしましては、確かに外形的な独立性を規制していく、これからもどんどん規制していく、イタチごっこのように規制していくということも必要なのかもしれませんけれども、私自身は、粉飾ですとか、しっかりとした監査意見を出していないという事例があればこれをしっかりと摘発するんだという、一罰百戒といいましょうか、そういう方向性も考えていかなきゃいけないんじゃないかと思います。

 何が問題なのかといったら、精神的独立性が侵されるのが問題なのであって、そういう意味では、今市場で事件化している問題があります。日興コーディアルの問題なんて、過去五年間で見たら史上最大の合併、買収の話でございますし、ライブドアもあれだけ世間で騒がれている事件です。そういう問題しか本当に今の市場で起こっていないのか。実は、今も中小の監査法人は、監査報酬欲しさに、もしかしたらめくら判を押しているかもしれない。そういう懸念もあるわけです。

 でも、そういうことをやったらちゃんと罰せられるんだよというところを会社経営者も監査人も認識すべきだと私は思いますし、そういう意味において、規制を強化するといいましょうか、それこそ事後チェック、しっかりとその機能を高めていかなきゃいけないんじゃないかというふうに私自身は思っております。

 と考えますと、続いての質問をさせていただきますが、私、証券取引等監視委員会の機能強化というのは喫緊の課題であるというふうに思っております。専門的な知識を持っている人間であれば、実際にどんな監査が行われているといいましょうか、財務データなり経営環境なり見れば、どういう会社が粉飾のインセンティブがあるかなんて、ある程度わかるわけですよ。ただ、それが、実際、証券取引等監視委員会を含めてどれだけの人材がそろっているんだ、法律だけじゃない、会計の知識も持った専門家がどれだけいるんだということが今本当に重要な視点じゃないかなというふうに私は思うんです。

 今の証券取引等監視委員会ですが、法曹関係者もそうですけれども、監査経験者というのはどれぐらいいるんでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 証券取引等監視委員会におきましては、市場監視機能そして体制の強化という観点から、民間における人材をできるだけ活用していこうということで、広く人材の登用を図っているところでございます。

 弁護士等の法曹関係者、公認会計士、システム専門家などの民間専門家を積極的に登用しているところでございますが、今お尋ねの公認会計士につきましては、本年の六月一日現在で、十一人の公認会計士さんに来ていただきまして勤務をしていただいているというところでございます。

鷲尾委員 やはり十一人では少ないと私は思います。

 これだけの市場を、これからもっともっと的確に、予見可能性を持ちながら、怪しいと言われるものについては的確に調査して分析して、摘発すべきものは摘発する。それも、それこそ監査経験者のみならず、法曹関係者を含めた連携が必要なわけでありまして、当然そこには行政法に通じた方々との連携も含まれますが、そう考えると十一人では余りにも少ないというふうに思うわけですが、大臣、いかがですか。

山本国務大臣 国家公務員の定員の問題もこれあり、ふやしたいところでございますし、御理解をいただくように私の方も予算等で頑張っていくつもりでございますが、ぜひとも与野党を超えて御協力を賜りたいというように思います。

鷲尾委員 ここは、それこそ与野党を超えてやっていかなきゃいけない問題です。そうじゃなきゃ証券市場は大変なことになりますから、ぜひともそこは共通の認識を持ってやっていただけたらというふうに思います。

 それで、時間もなくなってまいりましたので、個別の事項について、ちょっと法律的なことですけれども、お聞きしたいというふうに思います。

 公認会計士法の現状の第四十六条の九の二ですが、業務の状況というコメントがあります。これについては個別業務が含まれる余地があったというふうにされているわけですけれども、今回の改正によりましてこの調査対象は限定されることになるのかどうかというところについて質問させていただきたいと思うんです。

三國谷政府参考人 御指摘の四十六条の九の二におきましては、業務の執行の適正を確保するための措置、それから業務の品質の管理の方針の策定及びその実施、公認会計士である社員以外の者が公認会計士である社員の監査証明業務の執行に不当な影響を及ぼすことを排除するための措置をいうものと考えておるところでございます。

 今回の改正案におきましても、業務の運営の状況の調査を行います過程では、個別の監査証明業務につきまして調査を行うことが適切な場合もあると考えられますことから、この用語の整理をもって公認会計士協会の調査の対象に変更が加えられるというものではございません。

鷲尾委員 いろいろ話したいんですけれども、ちょっと時間がないので次の質問に移ります。

 公認会計士法の第四十九条の四、これは通告どおりさせていただきますけれども、四十九条の四第二項におきまして、「その他の内閣府令で定める事由があることにより日本公認会計士協会が当該公認会計士等に係る同条第二項の報告を行つていない場合において、」というふうにあります。これにつきまして、二項の中に前もって二つ事例が挙がっているわけですけれども、この二つ以外でどういうものが想定されているのかということをお聞かせ願えませんでしょうか。

    〔宮下委員長代理退席、委員長着席〕

三國谷政府参考人 御指摘の四十九条の四でございますが、これは一つは、日本公認会計士協会が行います品質管理レビューを受けていないこと、もう一つは、日本公認会計士協会が行う品質管理レビューに協力することを拒否していること、その他の内閣府令で定める例外的な事由があることなどによりまして協会が品質管理レビューの報告を行っていない場合に、監査法人等に対します金融庁長官の報告徴求、立入検査権限、これを公認会計士審査会に委任するものでございます。

 ここに言う内閣府令におきましては、法案に例示されている場合を基本的には再度列記することを考えてございますが、日本公認会計士協会が品質管理レビューの報告を行うことに真に支障が生じる場合がほかにあるかにつきましては、これは慎重に検討してまいりたいと考えております。

鷲尾委員 これは協会の自主規制との関係もありますので、ぜひとも慎重に御検討いただけたらというふうに思います。

 最後の質問に移らせていただきたいと思います。

 今回、金融商品取引法の第百九十三条の三、法令違反等事実発見の場合に対する対応といたしまして、公認会計士も、違反事項があった場合に、経営者に通告し、それに適切に経営者の方が対応しなかった場合は、今度は内閣総理大臣に申し出なきゃいけないという規定が盛り込まれているわけであります。

 ちょっと細かい話になりますけれども、第百九十三条の三の第一項では、法令違反事実その他の財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実を発見したときは、その法令違反の是正その他の適切な措置をとるべき旨を発行者に書面で通知することとする。第一項では、財務計算に関する書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実とされています。これは二項がありまして、今度それを内閣総理大臣に申し出るときの規定ですけれども、重大な影響を防止するために必要があると認めるときというふうにあるんです。

 この影響を及ぼすということに当たって、第一項では単純に影響を及ぼすというふうに言っていて、第二項で今度は重大な影響のあるというふうに言っているんですけれども、これはどういう違いがあるのかについてお聞かせ願えませんでしょうか。

三國谷政府参考人 御指摘のとおり、金融商品取引法第百九十三条の三は、まず第一に、監査人に対しまして、財務書類の適正性の確保に影響を及ぼすおそれがある事実を発見した場合に、まずは被監査会社へ通知することを求めているわけでございます。監査人が第一項の事実を発見した場合におきまして、まずは監査の現場において、被監査会社とのやりとりを通じまして不正、違法行為の是正を図っていくことが監査の基本でもあるわけでございます。

 一方、二項におきましては、第一項の通知に係る事実が財務書類の適正性の確保に重大な影響を及ぼすおそれがあると認める場合ということで、重大なという言葉がついているわけでございます。

 したがって、この重大に係るような場合というのは、監査人が発見した不正、違法行為等につきまして、会社側に通知するなどの取り組みを進めてきたにもかかわらず是正が進まないといった事由によりまして、当該不正、違法行為等が財務書類の適正性の確保に影響を及ぼす蓋然性が高くなった場合、この場合には当局に通知してもらうというものでございます。

鷲尾委員 わかりましたと言っておきます。

 もう二つ質問させてください。

 一つは、この百九十三条の三ですけれども、法令違反事実を発見したときとありますけれども、発見したときというのは、監査実施過程において、当然監査基準がありますから、その監査基準にのっとって重過失がないという場合については、これは発見できなくても免責されるかどうか、これは大変重要な点です。発見できなければどこまでも責任を負うかどうかという話になってしまいますので、この点、ちょっと明らかにしてもらいたいんです。

三國谷政府参考人 御指摘は二つの分野の問題かと思います。

 一つは、この条項の直接適用の問題でございますが、そういった事実を発見しない場合にはこの条項に当てはまりませんので、この条文の適用にはならないという形になろうかと思います。

 ただ一方、監査人は、これとは別に、一般的に会計専門家として監査証明を行う立場にあるわけでございまして、その監査人に故意や相当の注意を怠った事実が認められる場合、これはこの条項とは別に、そのこと自体が別途公認会計士法上のいろいろな、例えば、そこにもし不当あるいは問題があればそちらの方の対象になってくる、こういうことでございます。

鷲尾委員 三國谷さん、済みません、最後に一つ。

 対象となる財務書類ですけれども、これは当期分に限定されますか。当然、監査の対象としては前期分を含めてチェックすることになるわけですけれども、これは当期分に限定されるんですか。このことについてもちょっとお聞かせ願えませんでしょうか。

三國谷政府参考人 制度上は、財務書類の期に限定は付されておりません。ただ、事実上は、当期にかかわる場合が最も一般的であろうかと思います。

 どちらを先に言うかでございますが、制度上は、過去のものであっても、そういった事実を発見した場合にはこの条文の対象になるということでございます。

鷲尾委員 わかりました。

 もうちょっと詰めたい事項もありますが、私、質疑時間がもういっぱいでございますので、もうちょっと質問時間をいただきたいという旨最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

伊藤委員長 次に、川内博史君。

川内委員 川内でございます。よろしくお願いをいたします。

 今、同僚の鷲尾議員の、専門家としての非常に専門的な質疑を聞かせていただいておりましたけれども、私は、公認会計士法あるいは公認会計士の世界について全く素人でございますので、素人の視点からの質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、今回の公認会計士法等の一部を改正する法律案が、なぜ、どのような経緯で、どの場で議論をされ、どういう形でまとまって法案になったのかという基本的なところから教えていただきたいと思います。

三國谷政府参考人 まず、この法案でございますが、昨今、一つは企業活動の多様化、複雑化、国際化といった現象がございます。また、それに伴いまして、監査業務の複雑化、高度化といった点もございます。また、昨今、監査をめぐります非違事例等もあったわけでございます。

 こういった中で、組織的監査の重要性の高まりということが課題となりまして、これにつきまして金融審議会、ここに公認会計士制度部会というのがございますが、ここで昨年来、公認会計士、監査法人制度のあり方などにつきまして総合的な検討を行っていただきました。その結果を踏まえまして、今般、法案として御審議いただいているものでございます。

川内委員 これは、諮問に応じて答申が出されたということなんですか。

三國谷政府参考人 金融審議会に対します諮問は幅広く一般的に行われているわけでございますが、今般は、この公認会計士制度部会におきまして、公認会計士制度、特に組織的監査のあり方につきまして総合的な検討をいただくということでお願いしたものでございます。

 この金融審議会公認会計士制度部会におきましては、昨年四月以降、十一回にわたる会合を開催いたしまして、昨年十二月に部会報告といたしまして公認会計士、監査法人制度の充実強化につきまして取りまとめていただいたところでございます。

川内委員 それでは、この金融審議会というのは、そもそも諮問がなくても意見を言うことができるという機能を持っているということでよろしいですか。

三國谷政府参考人 ちょっと正確な文言はあれでございますが、金融審議会は、幅広く我が国の金融制度につきましていろいろな御審議をお願いする機関としていろいろなことをお願いしているものでございます。さまざまな課題を検討しておりますが、この中に公認会計士制度部会というのがございまして、ここで今の問題につきまして御審議いただいたものでございます。

川内委員 私も読ませていただいたんですが、「公認会計士・監査法人制度の充実・強化について」という報告書でございます。さまざまなことが書いてあるんですけれども、今般、公認会計士法等の一部を改正する法律案として、この報告に出ているものがすべて法律になっているのか、それとも、審議会の報告に出ていないこともこの法律案の中にはありますか。

三國谷政府参考人 一般的に、審議会におきましては基本的な考え方等を御報告いただくケースが多いわけでございます。それを受けまして、法案といたしましては政府の責任において策定するものでございます。特に、細目等につきましては、具体的な条文化をする過程におきまして審議会等で行われました議論、これを踏まえまして、さまざまな細部の詰め等は政府において行うものでございます。

川内委員 それは私もわかっているつもりなのですが、では、金融審議会公認会計士制度部会の中で議論をされていない項目についても、今般、法律案として提案をされていらっしゃいますか。

三國谷政府参考人 基本的に、今回の公認会計士法の改正案は、審議会で行われました議論、その報告を踏まえて、大体その考え方がこの法案に反映されていると考えております。

川内委員 大体反映されているということは、違うところもあるんじゃないかなと思うんです。きのう、レクの段階じゃ違うところもあるということだったんですけれども、違うんですか。

三國谷政府参考人 答申は、条文ではございませんでして、物事の考え方でございます。それぞれの審議会の御報告というものを、私どもといたしまして、法案化する過程におきましてさまざまな技術的な問題点を含めまして解決を図っていくわけでございます。それぞれの法案におきましていろいろなバリエーションがあろうかと思いますが、今回の審議につきましては、基本的な考え方、これがこの法案に反映されていると考えております。

川内委員 それでは、法案と一緒にいただきました公認会計士法等の一部を改正する法律案の概要という、二枚紙の二枚目の四の「その他」の「社員の競業等の禁止」の中の二つ目、「監査法人の社員が大会社等から非監査証明業務により継続的な報酬を得ている場合、監査法人が当該大会社等に対して監査証明業務を提供することを禁止」と書いてありますが、これは公認会計士制度部会報告の中のどこにこれに類似することが記述されておりますでしょうか。

三國谷政府参考人 「公認会計士・監査法人制度の充実・強化について」でございますが、この中に十四ページというのがございまして、「その他」というところがございます。「その他」の「1社員の競業禁止規定のあり方」というのがございますが、ここ全体におきまして、

  監査法人における社員の競業禁止の規制については、この存在が個人の公認会計士による監査法人の組織化を敬遠させているのではないかとの指摘がある。例えば監査法人の全社員の同意がある場合に、当該監査法人の社員が非監査証明業務を提供することについては、これを容認していくことが適当である。ただし、監査法人が監査証明業務を提供している先に対して、当該監査法人の社員が非監査証明業務を同時に提供することがないよう、所要の手当てを併せて行うことが必要である。

こういうぐあいに書かれているものでございます。

    〔委員長退席、宮下委員長代理着席〕

川内委員 前段の部分は、語尾が「適当である。」ということになっていて、後段の部分は「必要である。」というふうになっているんですが、「適当である。」と「必要である。」の違いとは何ですか。

三國谷政府参考人 言葉のとおり、適当と必要ということかと思いますが、適当というのは、これは、いろいろな考え方がある中で、先般の改正のときに非監査証明の業務を全面的に禁止したわけでございますが、それはちょっと行き過ぎではないかという議論がある一方で、もしそれを行うのであれば、それにあわせまして、脱法的な行為をあわせて行うことが必要である、こういう適当という一つの判断と、その際にはそういう措置も必要であるということを書いて、私どもは受け取ったものと考えております。

川内委員 ちょっと私、言葉の使い方がよくわからぬのですが、前段の部分は、監査法人の全社員の同意がある場合に、これを容認していくということが適当であるということで法律にしましょうと。

 後段の部分、「ただし、監査法人が監査証明業務を提供している先に対して、当該監査法人の社員が非監査証明業務を同時に提供することがないよう、所要の手当てを併せて行うことが必要である。」という書き方と、この法案の概要のところの、「監査法人の社員が大会社等から非監査証明業務により継続的な報酬を得ている場合、監査法人が当該大会社等に対して監査証明業務を提供することを禁止」と書いてあって、この「大会社」という言葉はこの報告の中には入っていないわけですけれども、法律の中には「大会社等から」という言葉が入っているわけです。

 では、そもそもこの大会社等とは何かということを教えてください。

三國谷政府参考人 この大会社と申しますのは、もともとの公認会計士法におきまして、非監査証明業務を提供している先、これと監査証明業務を同時提供することを禁止する、そのときの対象として大会社等が掲げられておりますので、概要におきましては、そういった下敷きを反映いたしまして、このように書いているものと承知しております。

 その一方、この答申のあたりでは、これは基本的な考え方でございますので、一般的には、社員全員の同意がある場合において、それは一部解除することも適当だけれども、しかし、制度として、一つの業務を、非監査証明業務を行うことということと、具体的にある会社に対しまして同時提供すること、これは違いますので、後段の方は、適切な規制をすることが必要であるということをこの報告において書かれているものと私は考えております。

川内委員 いや、相変わらず大会社等というのがよくわからないんですけれども、もう一回、ちょっとわかりやすく説明していただけますか。

三國谷政府参考人 大会社等の単位は、現行の公認会計士法の二十四条の二に掲げられているものでございます。

 具体的には、会計監査人設置会社、あるいは証券取引法百九十三条の二第一項の規定により監査証明を受けなければならない者、あるいは銀行法に規定する銀行、長期信用銀行法に規定する長期信用銀行、保険業法に規定する保険会社、それに準ずる者等が法律に書かれているものでございます。

川内委員 それで、そういう大会社等を法律にするときは盛り込んだ、しかし、報告の中には特に大会社等という言葉は出ていない。それはなぜですかということに関して、もう一度わかりやすい説明をしていただけますか。

三國谷政府参考人 中身に矛盾があるわけではございません。

 もともとの法律の下敷きに大会社という言葉がありまして、それを受けまして、報告におきましては、そこにつきまして現実的な解決策を図ってはどうかということでございます。

 この法案の概要でございますので、法案の概要に当たりましては、その法律用語も踏まえまして、このように記載させているものでございます。

川内委員 冒頭、私は素人なのでわかりやすく教えてくださいねということを申し上げたわけですが、その公認会計士法の二十四条の二に大会社等という言葉の定義があるということはわかりました。それはわかりました。

 では、公認会計士法上は、監査法人というのは大会社等しか監査しないということを書いてあるんですか。そういうものなんですか。だから大会社等が前提なんだ、そういう御説明だったんですか。

三國谷政府参考人 公認会計士法で規制するところの監査等につきましては、大会社等に限定しているものではございません。しかしながら、ここにおきます競業避止義務ということにつきましては、これは大会社等としているところでございまして、この範囲につきましては、その二十四条の二で列挙させていただいているところでございます。

川内委員 いや、だから、金融審議会の公認会計士制度部会報告の中では大会社等という限定はつけていないのに、なぜ法律の中では大会社等というふうに限定をつけたのですかと。法律にする段階でなぜ限定したんですかということを聞いているんです。

三國谷政府参考人 これは、同時提供の禁止ということでこの大会社が対象になっているものでございまして、そこにつきましては例外をつくらないということで、このような形になっているものでございます。

川内委員 いや、だから、同時提供の禁止とか、何かよくわからないんですけれども、要するに、大会社だけを前提にしたのはなぜですか。報告の中では別に限定していないじゃないですか。

三國谷政府参考人 競業避止義務と申しますのは、監査法人が、非監査証明業務、具体的には、コンサルティング業務とかそういったことをやる一方で監査証明を行うということにつきまして、一定の規制を加えているものでございまして、この中で規制の対象となっておりますのは、大会社等、これには証取法上の上場会社等が含まれているわけでございますが、そういったところにつきましては競業避止義務を課している、こういうことでございます。

川内委員 今のは、上の方を言ったんですよね。私は今、後段の部分を言っているんですけれども。

 競業禁止規制も大会社等に限定しているんですか。ちょっとよくわからぬな、何を説明しているのか。私も、質問していて、自分が何を質問しているのかわからない。あなたの説明が悪いから、私がわからなくなるんだよ。

三國谷政府参考人 説明も大変複雑で恐縮でございます。制度自体がちょっと複雑になっておりまして、ここでいきますところの監査証明と非監査証明業務の同時提供の禁止ということは、上場会社等、そういった会社について係っているわけでございます。

 今般、前回は、会社に従事する人がその会社の行っている業務につきまして同じ業務をするということは全面的に禁止していたわけでございますが、しかしながら、非監査証明業務でありまして、全員の承認があった、そういった他の社員全員が同意しているという場合であれば、それは解除してやってもいいのではないかと。先ほど来議論がありますところの、例えば中小の監査法人をどう育成するか、こういったことがもしそういったものの妨げとなっているとすれば、そこは全員の同意を得た上で解除してもいいのではないか。しかしながら、もともとございますところの、その結果として大会社等に対しまして同時提供するということになれば、それは解除のし過ぎであろうということでございます。

 方法論といたしましては、もともとそういった法律の下敷きにありましたもの、それを解除する場合にその法律の下敷きをもう一回かぶせる、こういう形でそういう表現になっておるわけでございまして、報告の場合には必ずしも法文上の表現に倣いませんし、法文に落とします場合にはどうしても条文的な表現になりますので、その辺の表現の差は少しは出ておりますが、基本的なところは変わってございません。

川内委員 いやもう、私は、自分の頭の悪さを、本当に不明を恥じるわけでございますが、今の説明でもよくわからぬのですね。

 では、もう一度ちょっと整理しますよ。

 法律案の概要の二枚目の「その他」のところの「社員の競業等の禁止」。それで、一ポツの「監査法人における社員の競業禁止規制について、非監査証明業務に関しては、他の社員全員の同意を要件に解除を容認」というのは、これは報告の中の十四ページの「1社員の競業禁止規定のあり方」の前段、「適当である。」までに書かれている事柄である。さらに、これは別に大企業等などの限定はついていない。法律案の概要の「監査法人の社員が大会社等から非監査証明業務により継続的な報酬を得ている場合、監査法人が当該大会社等に対して監査証明業務を提供することを禁止」というのがポツ二。報告の中では、十四ページ、「5 その他」の1のただし書き以降がこれに当たるというふうに局長は御説明になられた。

 しかし、私が聞いているのは、ただし書き以降に大会社等からということは報告の中では特に限定をされていないが、法律にする段階で大会社等からというふうに限定をつけていらっしゃいますねと。

 では、これは政府の判断でつけたのですか、独自におつけになられたのですかと聞き方を変えます。

三國谷政府参考人 この報告の方には、直接には大会社等と明記はされてございませんが、現在あります公認会計士法、この下敷きを念頭にそのような措置を講ずるべきである、こういうことかと思います。したがって、この下敷きをもとに、この改正をするに当たりましては、これは大会社等という形で条文上はきちんと掲載させていただいている、そういう制度をそのまま持ってきているというものでございます。

川内委員 公認会計士法の下敷きとは何ですか。下敷きをもとにの下敷きとは何ですか。

三國谷政府参考人 言葉が舌足らずであれば恐縮でございます。

 現行の公認会計士法、改正法案でございますので、現行の公認会計士法に今回の改正法案は、法案一般でございますが、溶け込むわけでございます。根っこに現行の公認会計士法、それに今回の改正案が溶け込んでいく、こういう意味で表現するべきであったかもしれません。

川内委員 いや、だから、さっき、現行の公認会計士法の二十四条の二に大会社等というものの定義はしてあるということで御説明をいただいて、それは理解をいたしました。それでは、現行の公認会計士法は大会社等しか対象にしていないのですか。

三國谷政府参考人 同時提供はそういうことでございます。公認会計士法一般はそこに限定されているわけではございません。

川内委員 同時提供は大会社等に限定をしている、それはどこに書いてあるんですか。どういうふうに表現されているんですか。それを教えてください。

三國谷政府参考人 現行の公認会計士法第二十四条の二でございますが、ここに関しまして、「大会社等に係る業務の制限の特例」というのがございます。条文的には、公認会計士は、当該公認会計士、その配偶者または当該公認会計士もしくはその配偶者が実質的に支配していると認められるものとして内閣府令で定める関係を有する法人その他の団体が、次のいずれかに該当する者、これが大会社等でございます、これにより継続的な報酬を受けている場合には、当該大会社等の財務書類について、同条第一項、これは監査証明業務でございます、これを行ってはならないということで、大会社が列挙されているということでございます。

川内委員 いや、だから、それはもう定めてあるんでしょう。定めてあるわけですね、今。今回新たにこれは定めるんでしょう。ちょっと、今の説明、もう一回、よくわかりやすく説明してください。

三國谷政府参考人 今回の、全員の同意を得た場合の……(川内委員「全員の同意はもうわかりましたから」と呼ぶ)その場合に、それが脱法的に使われてはいけないと。脱法的な形として、現行の法令は大企業等に対してそういうことの同時提供が禁止されておりますので、そのことをこの報告のただし書きで書き記しているものでございます。それを受けて、このような法案にさせていただいているということでございます。

川内委員 今何となくわかってきたんですが、非監査証明業務に関して、他の社員全員の同意を要件に、非監査証明業務を報酬を得て請け負うことができるようになります、しましょうという法改正をしますと。そうすると、この制度を悪用して脱法的にそういうことをする人たちがいっぱい出てくるかもしれない、それを回避するために、大会社等に関しては限定を付して、では、大会社等に関しては、社員全員の同意があっても非監査証明業務をすることはできないというふうに読むわけですね。

三國谷政府参考人 その大会社等に対しまして非監査証明業務を行っている場合には、全員の同意があってもそれは同時提供になりますので、禁止させていただくということでございます。

川内委員 やっとわかりました。ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 まず、これも言葉の問題なんですが、これもやはり法律案の概要に、一ページ目に「いわゆるローテーション・ルールの整備」と書いてあります。いわゆるローテーションルール、これは何でわざわざいわゆるをつけるのかなと。いわゆるローテーションルールとローテーションルールの違いというのは何でしょうか。

三國谷政府参考人 ローテーションルールというのは法令用語ではございませんが、ローテーションという言葉を使わせていただきます場合には、一般的にそう言われているということでいわゆるローテーションルールという言葉を使わせていただいているということかと存じます。

川内委員 法令用語じゃないのはわかっているんですけれども。では、ローテーションルールと言ってもよかったわけでしょう。何でいわゆるをつけたんですか。これをつけた理由は何ですか。

三國谷政府参考人 題名にいわゆるをつけて、中はつけていない理由は何かということかと存じますが、通常、これも決まり事ではございませんが、何回か使う場合には、最初の方にはいわゆるをつけて、後段は、そこで大体意味が通じているということで、冗長な表現を避けるために割くケースが多いかと思います。いわゆるという言葉をつけた意味というのは、まさしくローテーションルールというのが世上一般に言われているいわゆるローテーションルールということ、そういう意味で、それ以上でもそれ以下でもございません。

川内委員 わかりました。

 では次に、この金融審議会公認会計士制度部会の中で一番激しい議論になった論点というのは、この法律案の概要に書かれていないこともこの報告書の中には出ているわけですけれども、どこが一番大きな論点だったんでしょうか。

三國谷政府参考人 この審議会におきましては、十一回にわたりまして議論が行われているわけでございます。それぞれの項目が大変重要な項目でございまして、したがいまして、どれが一番ということではなくて、全体的にさまざまな意見が出まして、その議論の結果としてこの報告がまとめられたというものでございます。

川内委員 では、聞き方を変えますね。

 例えば、報告書の六ページの「監査人の選任・監査報酬の決定等に関する適切な枠組みの整備」のところの「監査人の選任・監査報酬の決定」、あるいは「監査報酬の開示」、あるいは「監査人交代時の対応」などについては、今回法律案の中に出ていない。

 さらには、九ページの「刑事責任のあり方」について、刑事責任を問えるようにした方がいいのではないかというような議論があって、これらは「引き続き十分な検討を行っていく必要がある。」とか、先ほどから大臣も副大臣も何回か御答弁をされていらっしゃいますけれども、「会計監査人の選任議案及び報酬の決定に係る監査役等の同意権の付与を定めた会社法につき、関係当局において早急かつ真剣な検討がさらに進められることを期待したい。」ですとか、さまざま、報告の中にはあるけれども法律にならなかった、要するに合意形成が図れなかったという点があるわけで、それは最も議論になった点であると言えるのではないかというふうに思いますが、そういう理解でよろしいでしょうか。

三國谷政府参考人 そこのところも熱心な議論が行われました。それ以外のところも熱心な議論が行われております。

川内委員 それでは、刑事罰の導入についていかなる議論があり、そして、だれがこの公認会計士制度部会の中で反対をしたのかということについて教えてください。

三國谷政府参考人 どのような議論があったかにつきましても、報告書にそのエキスがまとまっているところでございますが、監査法人に対しまして刑事罰を導入することにつきましては、一つの意見といたしましては、刑事罰の導入は「非違の抑止等の観点からも必要であり、士業における自主規律の向上にも資する、」との指摘がございました。

 一方で、逆の考え方といたしましては、「監査法人の信用失墜、所属公認会計士の離散等のリスクが大きすぎるのではないか、」などの指摘もされたところでございます。また、法的にもなお広範な検討が必要との指摘がなされたところでございまして、ここにございますように、最終的には、同部会の報告におきまして、監査法人に対します刑事罰導入の可能性につきましては、一つの検討課題であるが、非違事例に対しては、最後は、「課徴金制度の導入をはじめとする行政的な手法の多様化等により対応することをまず求めていくことが考えられる。」という形でまとまったものでございます。

川内委員 議事録もあることですから、刑事罰の導入について、刑事責任のあり方について、それはちょっと時期尚早なのではないかというような御意見をおっしゃられた方々がいらっしゃるわけでございまして、その方々というのはどういう方々だったんですかということをお尋ねしております。

三國谷政府参考人 議事録は公開しているところでございますので、そこには皆様がニュアンスも含めましてどのような形で発言されたかということは記されているわけでございます。一般的には、監査の実務に近い方々からはそれは行き過ぎではないかという意見もあった一方で、市場の規律という立場からそれは意味があることではないかという、両論があったところでございます。

川内委員 監査の実務に近い人たちからそれは行き過ぎなのではないかという議論があったというのは、公認会計士協会なり公認会計士の先生方は、それは行き過ぎであるという意見を部会の中でおっしゃっていらっしゃったということでよろしいでしょうか。

三國谷政府参考人 それぞれの意見でございますので、学界の方もいらっしゃれば、産業界の方もいらっしゃれば、実務そのものに携わっている方もいらっしゃるかと思います。正式な分類ということではございませんけれども、おおむね今のような形ではなかったかと思っております。

川内委員 それでは、有限責任組織形態については、平成十五年の公認会計士法改正時に、有限責任組織形態についても早急に検討すべきであるという附帯決議がついていたというふうにお聞きをいたしましたけれども、今回の公認会計士制度部会の中では、やはり実務に近い方々が積極的にその意見をおっしゃっていらっしゃったという理解でよろしいでしょうか。

三國谷政府参考人 この有限化の問題につきましては、かねてから、我が国の監査法人制度でやはりどこかで乗り越えなければならない課題であるということは一般的に共有されていたのではなかろうかと思っております。

 当初、この監査法人制度ができ上がりましたときに合名会社の考え方を用いまして、非常に小さい規模の人的なつながりということが前提でこの制度が最初のときに制度設計されてきたというぐあいには考えているわけでございます。一方で、会社法におきましては、今般、合同会社、そういう仕組みもでき上がったところでございます。現時点で考えますると、やはりこれだけの大きな規模の監査法人があらわれた場合、いつまでも連帯責任を負うという形が本当に今日的な意味があるのかどうかということも踏まえまして、これは幅広い、そういう意見があったところでございます。

 なお、今回の法案におきましては、会社法で合同会社が規定されたということもございまして、この有限責任形態の監査法人につきましては、合同会社の規定を相当準用するような形でこの制度設計ができ上がっているものでございます。

川内委員 ありがとうございます。

 ちょっと法律を離れて、公認会計士の先生方、先ほど共産党の先生からも、いろいろロビー活動を激しくやられているのではないですかというような御指摘があったわけでございますが、ちょっと私もそういう観点でお尋ねをするわけでございます。

 ずっとこの間、財務金融委員会で議論をしてまいりました消費者金融の問題でございますけれども、これも公認会計士協会が絡んでいるわけですけれども、「消費者金融会社等の利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」の公表についてとする日本公認会計士協会の平成十八年十月十三日付の文書がございます。これについてどういう性格の文書かということをちょっと詳しく御説明いただきたいと思います。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 証券取引法の規定により提出されます財務諸表は、一般に公正妥当であると認められるところに従いまして、内閣府令で定める用語、様式、作成方法により作成することが求められているところでございます。

 この規定を受けました内閣府令は、財務諸表の用語、様式、作成方法に関して、同府令に定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うとしておりまして、例えば、企業会計審議会の公表しました企業会計の基準、これはここに言う一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に該当するものとされているところでございます。

 引当金につきましては、企業会計審議会が策定しました企業会計原則注解、ここにおきまして、「将来の特定の費用又は損失であって、その発生が当期以前の事象に起因し、発生の可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、当期の負担に属する金額を当期の費用又は損失として引当金に繰入れ、当該引当金の残高を貸借対照表の負債の部又は資産の部に記載するものとする。」とされているところでございまして、こうした原則のもとに、適切に計上すべきものと考えております。

 御指摘の日本公認会計士協会の「監査上の取扱い」は、こうした原則のもとで、消費者金融会社等が、利息返還請求に係る引当金を計上するに際しまして、その算定方法等に関する監査上の取り扱いを専門的な見地から具体的な指針として整理したものと理解しております。

川内委員 企業会計原則と監査基準というのは、全然別物ですよね。

三國谷政府参考人 企業会計は、監査原則、会計の原則を定めるものでございます。だんだんそれが実務におりていくに従いまして、実際の段階では監査と非常に接近してきますし、監査の方でも、そういった実務の指針につきましては所要の定めをするということかと思います。

川内委員 日本公認会計士協会が出した監査基準と、企業会計審議会が出した企業会計原則は同じものなんですか。

三國谷政府参考人 監査基準は、監査のためでございます。企業会計原則は、企業会計のためのものでございます。

川内委員 今回、公認会計士協会が出されたこの「利息返還請求による損失に係る引当金の計上に関する監査上の取扱い」という文書、これは企業会計原則とはまた別の監査基準に係るものである。そうすると、この監査基準は、公認会計士協会のどのようなセクション、部門で議論をされて出されたものですか。

三國谷政府参考人 御指摘の「監査上の取扱い」は、日本公認会計士協会の常任委員会の一つで、特定業種に係ります監査上の問題について議論を行う業種別委員会、この下に設置されました消費者金融等監査対応検討専門部会、ここにおきまして専門的な検討を踏まえて取りまとめられたものと理解しております。

 同専門部会は、利払い返還請求に係ります引当金の計上という消費者金融会社等に特有の監査上の問題を専門的に検討するために構成されたと聞いております。

川内委員 公認会計士協会の中の業種別委員会、消費者金融等監査対応検討専門部会でこの監査基準が定められたということでございますが、この監査対応検討専門部会というのはどのような方々で構成をされておりましたか。

三國谷政府参考人 専門部会は、消費者金融会社等に特有の監査上の問題を専門的に検討するために、当該業種の問題に精通した者といたしまして、消費者金融会社等の監査を担当する公認会計士により構成されていたと聞いております。

川内委員 消費者金融会社の監査を担当している公認会計士の先生方が監査の基準をつくった。規制する側が規制される側のルールをつくったみたいなもので、私はこの辺がどうも納得いかないんですけれども、このメンバーというのは公表されているんですか。

三國谷政府参考人 メンバーは公表されておりません。

 どういった方々が集まっているかということにつきましては今申し上げたとおりでございますが、この「監査上の取扱い」は、そういった部会での専門的な見地からの検討を踏まえまして、その上位機関であります業種別委員会、それから理事会の承認を経て取りまとめられたものでございまして、その取りまとめに当たりましては、公開草案を公表の上、広く市場関係者の意見を聞く手続がとられたと聞いております。

川内委員 山本大臣、これは御存じですか。「三十人「貸金業・法改正」を語る」という、最近多分すべての先生方の事務所に送られてきていると思いますけれども、月刊クレジットエイジ増刊号という形で。

 貸金業規制法はとんでもない悪法だというようなことが、すばらしい、おしゃれな形のつくりになっておりますけれども、彼らは虎視たんたんと三年後の法改正を目指して、その見直しのときに上限金利を引き下げなくてもいいように、僕はいまだにあきらめていないというふうに思うんですけれども、与党筆頭であった増原先生もこの中に顔写真つきで……(発言する者あり)出ていますよ、ほら、こういう形で。金融庁の大森さんも。いや、これは金融庁の大森さんも、増原さんも変なことを言っているわけじゃないですよ。おっしゃっていることはごくごく常識的なことをおっしゃっていらっしゃると思いますよ。「借手のことを考えない貸手は消えてください。」これは大森さんのものですね。

 だけれども、大森さんと増原さん以外のところは、これはもう、「「われわれは国民に必要な業界だ」こう社会に強く主張すべき」と。主張してもいいけれども、ちゃんとしてから主張しなさいという話。「新貸金業法は、「空気」によって決定された。」「「業者のダメージ」が、「借手のダメージ」に至ることをわかっていない。」「「新貸金業法」は、憲法違反。」とかですね。こういう雑誌をつくって、彼らはまだ一生懸命巻き返しをねらっている。そういう中で、消費者金融の会社の経理を見ている公認会計士の先生方が監査の基準をつくられた、名前も公表されませんと。

 返還請求が大変だ大変だ、引き当てをするんだ、大変な赤字になっているということなんですが、では、実際に、消費者金融大手五社の、利息返還請求に備えて引き当てられた、平成十八年度決算におけるその引き当ての金額というものをそれぞれ教えていただきたい。さらに、平成十八年度決算において実際に支払った、引き当てたのではなくて、実際に利息返還請求があって返還をした、外に出たお金というのは、大手五社に関してそれぞれお幾らかということを教えてください。

佐藤政府参考人 大手消費者金融五社の平成十九年三月期の決算公表資料によりますと、いわゆる利息返還損失引当金は、単体ベースでそれぞれ、アコム四千九百億円、アイフル二千九百五億円、武富士四千八百八十八億円、プロミス三千九百八億円、三洋信販九百五十六億円ということで、合計で一兆七千五百五十七億円となっております。

 他方、大手消費者金融五社の平成十九年三月期の決算公表資料によりますと、十八年度一年間の過払い返還額は、元本充当による債権の減少額というのを含めまして、単体ベースでそれぞれ、アコム八百四十一億円、アイフル五百六億円、武富士一千八十七億円、プロミス六百九十八億円、三洋信販二百三十六億円で、合計三千三百六十九億円となっております。

川内委員 元本充当による債権減少額というのは、一体どういうことですか。

佐藤政府参考人 利息制限法を超える金利の部分について過払い返還請求があった場合に、当該債務者の方が借入残高を有している場合には、そこの返還すべき金額を借入残高から差し引く、こういう処理をするのが一般的でございまして、その部分を含めたということでございます。

川内委員 平成十八年度決算において一兆七千億、大手五社で引当金を積んだ、実際に外に出ていったのは三千三百六十九億である、差し引きすると一兆三千億ですね。

 私は、過大に赤字を計上して、非常に経営が苦しくなったというようなことを、消費者金融大手五社の言いわけをつくるようなことをわざわざ公認会計士の先生方がお認めになられたということは、ちょっと腑に落ちないというか、それはちょっと違うんじゃないのかなという気がいたします。

 なぜかならば、例えば、この本の中には、貸金業規制法が施行されると中小企業金融に大変な影響が出る、中小企業はばたばたつぶれるだろうと書いてあります。あるいは、個人で借りられない人がたくさん出てきて、今よりもっと大変なことになるというようなことが書いてあります。

 では、今現在、中小企業金融の状況、あるいは一般的な消費者金融の状況というものを教えていただきたい。要するに、混乱が起きているのかいないのかということを御答弁いただきたいと思います。

佐藤政府参考人 まず、中小企業金融の方でございますけれども、昨今の報道で、昨年度下半期に個人事業者の倒産が増加した要因の一つとして、貸金業者の融資審査が厳しくなったことを挙げるといった見方が紹介されているのは事実でございます。ただ、企業倒産の要因はさまざまでございますので、今般の貸金業法改正が個人事業者の倒産増加の主たる要因であるというふうに判断するに至る十分な材料は今持ち合わせていないという状況かと思います。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、中小企業向け金融の円滑化ということは重要な課題でございますので、地域密着型金融の推進、あるいは政府が先般取りまとめました多重債務問題改善プログラムの中の施策を進めていくということで、これについての対応をしていくということが重要であろうと思っております。

 それから、消費者金融の方でございますけれども、貸金業者、御案内のとおり、足元における過払い金返還請求の増大、あるいは将来的に総量規制が導入される、あるいは上限金利の引き下げが行われる、こういった新しい経営環境のもとで、倒産コスト、貸し倒れコストの圧縮のために与信基準を強化しているというのは事実でございまして、これに伴って成約率が低下している、あるいは融資残高が減少しているということも一応数字としては出てきているわけでございます。

 例えば、十九年三月の大手貸金業者四社の成約率は平均で前年同月比で一七・九%ポイントぐらい下がっているということでございます。また、十九年三月末の大手五社の貸付残高は平均で前年比マイナス八・八%といった数字になってございます。

 このような市場動向が現実に資金需要者にどのような影響を与えているか、現時点で確たることは申し上げられませんけれども、当局といたしましては、引き続き状況を注視するということと、利用者相談窓口に寄せられる相談内容等にも注意を払っていく必要があるというふうには思っております。

    〔宮下委員長代理退席、井上(信)委員長代理着席〕

川内委員 業界の中で新しいビジネスモデルに向けてさまざまな御努力が行われているということはそのとおりであろう。そういう御努力の中で、成約率が落ちたりしている、あるいは店舗が合理化されたり効率化されたりということもあるでしょう。しかし、もうお金が借りられなくて困った、それこそ、自殺者がふえているですとか夜逃げがふえているですとか、そういう実態は私は確認されていないのではないか。要するに、消費者金融を利用する側のことを我々は考えればよいわけですから、消費者金融を利用する側には混乱は起きていないのではないかというふうに言えると思います。

 そこで、最後に、大臣に確認をさせていただきたいんですが、先ほどからこの雑誌にこだわるわけでございますけれども、この中で金融庁の大森参事官は、この貸金業規制法の見直し規定ですが、「最終施行を円滑にするための見直しということですから、「上限金利を引下げない」とか「総量規制を実施しない」という選択肢はありません。」というふうにインタビューに答えていらっしゃいます。

 他方で、自由民主党金融調査会貸金業制度に関する小委員会委員長であり本委員会の与党筆頭理事でもあった増原先生は、「その見直しという意味は?」というふうに聞かれて、「全部含まれますよ。もう少し議論を詰めるべきではないかということがいくつかありますね。金利の「水準」もあるでしょう。「幅」もあるでしょう。そのほか金利の「概念」の問題もある。」という、そのあらゆる可能性について言及をしていらっしゃいます。

 私たちは、貸金業規制法のときも大臣に確認をしたわけでございますけれども、政府の意思としては、最終施行に向けてそれを円滑に進めるための見直しだということで、上限金利の引き下げをしないなどということは政府の意思としてはあり得ないということを、法律の本則に書いてあることをそのまま施行することが政府の意思であるということをもう一度確認させていただけますか。

山本国務大臣 本規定による見直しは、みなし弁済規定の廃止あるいは出資法の上限金利の引き下げを実施することを前提として、その円滑な実施のために必要であれば行うものであり、みなし弁済規定の廃止や出資法の上限金利の引き下げを実施しないことまでも含むものではございません。

川内委員 いずれにしても、私は、この公認会計士協会の、消費者金融の過払い金返還請求に対する引き当ての問題を、なぜこのようなことをされたのかということについてはもう少し議論をさせていただきたいということを申し上げて、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

井上(信)委員長代理 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

    〔井上(信)委員長代理退席、委員長着席〕

伊藤委員長 速記を起こしてください。

 この際、一言申し上げます。

 委員各位におかれましては、理事間の協議が断続的に続いた関係で長時間お待たせする事態に至り、まことに申しわけございませんでした。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時七分散会


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