衆議院

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第6号 平成19年12月4日(火曜日)

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平成十九年十二月四日(火曜日)

    午後一時二十二分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 大野 功統君 理事 奥野 信亮君

   理事 後藤田正純君 理事 田中 和徳君

   理事 野田 聖子君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      安次富 修君    石原 宏高君

      小川 友一君    越智 隆雄君

      木原  稔君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君    谷本 龍哉君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    西本 勝子君

      萩山 教嚴君    林田  彪君

      馬渡 龍治君    松本 洋平君

      宮下 一郎君    盛山 正仁君

      安井潤一郎君    山内 康一君

      山本 有二君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    平岡 秀夫君

      古本伸一郎君    大口 善徳君

      佐々木憲昭君    野呂田芳成君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   議員           葉梨 康弘君

   議員           柴山 昌彦君

   議員           石井 啓一君

   議員           大口 善徳君

   議員           大畠 章宏君

   議員           階   猛君

   議員           平岡 秀夫君

   財務大臣         額賀福志郎君

   国務大臣

   (金融担当)       渡辺 喜美君

   内閣府副大臣       山本 明彦君

   財務副大臣        森山  裕君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    米田  壯君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十二月四日

 辞任         補欠選任

  石原 宏高君     安井潤一郎君

  越智 隆雄君     山内 康一君

  佐藤ゆかり君     西本 勝子君

  原田 憲治君     馬渡 龍治君

  広津 素子君     安次富 修君

同日

 辞任         補欠選任

  安次富 修君     広津 素子君

  西本 勝子君     佐藤ゆかり君

  馬渡 龍治君     原田 憲治君

  安井潤一郎君     石原 宏高君

  山内 康一君     越智 隆雄君

    ―――――――――――――

十一月三十日

 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案(大畠章宏君外二名提出、衆法第一一号)

十二月四日

 株式公開会社の株式に関して会社法第四百六十九条等(反対株主の株式買取請求)に基づき売却する場合の課税方法に関する請願(北神圭朗君紹介)(第六六六号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために庶民増税の中止を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第六八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六八四号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六八五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六八六号)

 消費税増税をやめることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第六八七号)

 同(石井郁子君紹介)(第六八八号)

 同(笠井亮君紹介)(第六八九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第六九〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六九一号)

 同(志位和夫君紹介)(第六九二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第六九三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第六九四号)

 同(吉井英勝君紹介)(第六九五号)

 消費税の引き上げ中止等に関する請願(穀田恵二君紹介)(第六九六号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第六九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第六九八号)

 保険業法の見直しを求めることに関する請願(川内博史君紹介)(第六九九号)

 中小自営業の家族従業者等のための所得税法の改正等に関する請願(山口壯君紹介)(第七三四号)

 消費税大増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第七四八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第七四九号)

 消費税大増税の反対に関する請願(石井郁子君紹介)(第七六〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第七六一号)

 同(志位和夫君紹介)(第七六二号)

 消費税増税反対に関する請願(北神圭朗君紹介)(第七九〇号)

 同(辻元清美君紹介)(第八〇七号)

 消費税などへの大増税反対に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第七九一号)

 保険業法の適用除外等を求めることに関する請願(中川正春君紹介)(第八〇五号)

 保険業法の適用除外に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第八〇六号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案(葉梨康弘君外四名提出、第百六十六回国会衆法第四五号)

 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案(大畠章宏君外二名提出、衆法第一一号)


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 第百六十六回国会、葉梨康弘君外四名提出、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案及び大畠章宏君外二名提出、犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案の両案を一括して議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。提出者葉梨康弘君。

    ―――――――――――――

 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

葉梨議員 ただいま議題となりました犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案について、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 いわゆる振り込め詐欺の被害者が、犯罪者等を名義人とする預金口座に振り込んだ資金は、現在の法制では、口座名義人のみが払い戻し請求権を有することとされています。

 このように、現行法では、裁判手続によらない場合には、その口座に振り込みを行った被害者が一人しかいないなどの極めてまれな場合を除き、これらの資金を簡易の手続により被害者に還付することが非常に困難で、金融機関に滞留したままとなっており、その総額は、平成十九年三月末現在で約八十億円に上っております。

 このため、平成十八年九月、与党内に設置された振り込め詐欺撲滅ワーキングチームにおいて、所要の法制の検討を開始、行政側のみでなく、日本弁護士連合会や全国銀行協会とも綿密なお話し合いを行ってまいりました。

 そして、かかる検討の結果、迅速な被害回復のためには、犯罪者であると推定される口座名義人の預金債権を一たん失権させるという民法の特則を定め、しかる後に被害者に支給する手続を明定する法制の整備が必須と判断されたわけでございます。

 しかし、口座名義人の預金債権失権の手続については、法律家の方々の中で、当初、裁判所の判断を経由する考え方が有力でした。ただ、これでは、訴訟費用等の面で被害者にも過大な負担をかけることとなってしまいます。ですから、一時、法制の検討自体が暗礁に乗り上げたことも事実です。

 これを打開したのが与党の国会議員自身でした。昨年十二月には、行政や関係団体、さらに衆院法制局の手をかりることなく、与党の国会議員自身が法案骨子を作成、滞留口座は、類似の唯一の立法例である遺失物法に言う犯罪者の置き去り物件と同視できるため、簡易の公告手続により債権を失権させても現行法制と矛盾するものではないというオリジナルな提案を行い、この法律案の骨格をつくることができました。まさに、国会議員主導の立法という意味で、特筆すべきことと言えましょう。

 以上のような経緯を経て、自公両党は、本年六月七日、本法律案を衆議院に提出いたしました。しかしながら、さきの通常国会では審議入りすることすらできなかったことを、法案提出者として非常に残念に思います。

 いずれにせよ、提出後半年間の空白はありましたが、この問題は、党利党略の問題ではなく、あくまで被害者救済のために必要な法案と思います。何とぞよろしくお願いを申し上げます。

 このように、本法律案は、振り込め詐欺等の犯罪行為により被害を受けた者に対する被害回復分配金の支払い等のため、預金等に係る債権の消滅手続及び被害回復分配金の支払い手続を定め、当該犯罪行為により被害を受けた被害者の迅速な被害回復に資するため、所要の法整備を行おうとするものであります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 初めに、本法律案のスキームについて申し上げます。

 この法案では、預金等に係る債権の失権手続及び被害者に対する被害回復分配金の支払い手続については、前者を六十日、後者を三十日とし、通算して九十日としております。

 これは、さきに申し上げた類似の唯一の立法例である遺失物法において、所有者が名乗り出ない場合における拾得者への権利の帰属を三カ月、すなわち九十日としていることから、民法の特則である本法案においても、法体系としての均衡をとらせていただいているわけです。

 次に、具体的な内容を申し上げます。

 第一は、預金等に係る債権の失権手続についてであります。

 金融機関は、捜査機関からの情報等を勘案し、犯罪利用預金口座と疑われる相当の理由がある預金口座については、預金等債権の消滅手続に係る公告を預金保険機構に求めなければならないこととし、六十日を下らない期間内に口座名義人による権利行使の届け出等がない場合には、当該預金等債権を消滅させることとしております。

 この公告の方法につきましては、遺失物法の例に倣えば、当初、各金融機関ないし銀行協会が行うべきとの議論もなされました。しかし、与党ワーキングチームの議員から、現在の預金保険機構が、名寄せの行われていない預金口座の把握を業務としていることに着目し、預金保険機構の本来業務として、インターネット等による簡易な公告を行うことができるのではとの提案がなされ、早速、行政並びに全銀協及び預金保険機構と協議を重ね、今回のような本邦初の仕組みを創造させていただいたことを申し添えます。

 また、六十日の失権手続の期間については、民事訴訟法の公示催告の期間が六十日であることを参考に定めさせていただいておりますが、公告は万人に対して行われるものであり、振り込め詐欺の被害者にとっても、この期間中に、事実行為として、各種の問い合わせを行う一助になるものと確信いたします。

 第二は、被害者に対する分配金の支払い手続についてであります。

 口座名義人の預金等債権が失権した場合には、金融機関は、被害回復分配金の支払い手続の開始のための公告を預金保険機構に求めなければならないこととし、三十日を下らない申請期間内に申請があったときは、被害者及び被害額を認定の上、定められた方法により、申請に係る被害者に対する被害回復分配金の額を決定し、これを支払うこととしております。

 この点に関し、与党ワーキングチーム内でも、昨年十二月の法案骨子作成段階から、金融機関の利便を考えれば、公告は一回でもよいのではという議論がございました。

 しかしながら、失権手続と支払い手続を並行して行った場合、犯罪者でない口座名義人が名乗り出たり、一部の被害者が裁判手続を選択したときは、被害回復を申し出た被害者の期待権をそぐ結果ともなりかねません。

 さらに、より大きな問題は、いわゆる振り込め詐欺の被害者は、預金保険機構によるインターネットでの公告を見ることができる方ばかりとは限らないという事実です。

 このため、私たちは、金融機関の側が、おばあちゃん、こんな振り込み履歴があるんだけど、申請してみねえかといった、必要な情報提供を行うことが絶対に必要と考え、その旨を法律に明記することといたしました。

 ただ、このような明確な情報提供は、法律関係に厳格でなければならない金融機関としては、やはり、口座名義人の債権が失権した後でなければ行うことができないことも事実です。

 このような法律上、実務上の要請を踏まえ、公告手続の中で、口座名義人の失権手続と被害者への分配手続を二段構えにし、被害者への被害回復の実を期すこととしたわけであります。

 委員各位には、被害者保護の万全を期すため、与党内において徹底的な議論を尽くした上で、二段構えの公告という御提案を申し上げている点を御理解賜りたいと思います。

 その他、預金等債権が失権した場合における名義人等の救済措置、犯罪被害者等の支援の充実などについて、所要の規定を置いております。

 一例を申し上げれば、被害者に分配されることなく残ったお金については、犯罪被害者等への支援に充てるという、かつてなかった法制度を構築しております。

 このように、本法案は、私ども与党の国会議員自身のオリジナルなアイデアが凝縮されたものと言うことができます。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容でございます。

 そしてこの法案、半年たなざらしにされてしまったことで、私のところにも、多くの被害者の方から、なぜだという声が集まっております。

 何とぞ、御審議の上、振り込め詐欺被害者のため、国家国民のため、速やかに御賛同をいただきますようよろしくお願いを申し上げます。(拍手)

原田委員長 次に、提出者階猛君。

    ―――――――――――――

 犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

階議員 私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその概要を御説明申し上げます。

 振り込め詐欺については、警察の呼びかけ、マスコミの報道により、国民の意識は高まっているものと思われます。しかし、最近では、警察官を名乗り、被害者の身内が事故に遭ったとして示談金の振り込みを要求するなど、手口がますます巧妙化し、被害は一向になくなりません。平成十九年一月から九月だけでも、認知件数は約一万二千件、被害総額は約百七十一億円にも及びます。

 犯罪者の検挙に努めることは政府の当然の責務でありますが、一方で、被害者の救済も非常に重要な課題であります。犯罪利用の疑いがある預金等で金融機関に滞留しているものは現在約八十億円と言われておりますが、不当利得返還請求や損害賠償請求では、時間もお金もかかり、被害回復はなかなか困難であります。一刻も早く被害回復を行うためには新たなルール設定が必要であり、本法律案を提出することとした次第であります。

 以下、本法律案の概要につきまして御説明申し上げます。

 第一に、金融機関は、捜査機関等から預金口座等の不正な利用に関する情報提供があること、その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがあると認めるときは、取引停止等の措置を適切に講ずるものとしております。

 第二に、金融機関は、捜査機関からの情報等を勘案して預金口座等が犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があるときは、被害回復分配金の支払い手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないこととし、被害者のより迅速な救済のために、与党案にある預金等債権の消滅手続の開始に係る公告と被害回復分配金の支払い手続の開始に係る公告を一本化することとしております。

 また、六十日を下らない公告期間内に支払いの申請があった場合において、名義人等による権利行使の届け出等がないときは、金融機関は、被害者及び被害額を認定して被害回復分配金の額を決定し、これを支払うこととしておりますが、公告期間内に名義人等による権利行使の届け出等があった場合は、金融機関は、申請人に、被害回復分配金の支払い決定及び実施を行うことなく支払い手続が終了した旨を通知しなければならないこととしております。

 第三に、名義人等が公告期間内に権利行使の届け出等を行わなかったことについてのやむを得ない事情等について必要な説明を行い、消滅預金等債権に係る預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、金融機関に消滅預金等債権の額に相当する額の支払いを請求することができることとしております。

 この場合に、与党案では、金融機関は、消滅手続の実施に関し過失がないときは預金保険機構に支払い相当額の請求をすることができることとしていますが、金融機関が立証責任の負担に萎縮して制度運用に過度に慎重にならないようにするため、金融機関は、一定の書類を添えることにより預金保険機構に対し支払い相当額の支払いを請求することができることとし、当該書類等によって金融機関に過失があると認められるときは、預金保険機構はそれを拒絶することができることとしております。

 第四に、政府は、この法律の趣旨及び被害回復分配金の支払い手続等この法律の内容の周知を図ることとし、預金保険機構は、被害回復分配金の支払いの実施の状況等の公表をするものとしております。

 以上が、本法律案の提案理由及びその概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願い申し上げます。(拍手)

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として警察庁刑事局長米田壯君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関芳弘君。

関委員 私は、自由民主党の関芳弘でございます。

 今回、振り込み詐欺に関します被害者への被害回復分配金の支払いの法律、これは私が待ちに待っておりました法律でございまして、ぜひとも早く法案が通っていただくことを心からお願い申し上げる、本当にこれは今世紀最大のいい法案じゃないかなと思うぐらい、私は期待をしているところでございます。

 これはなぜかといいますと、この振り込み詐欺というのは、非常にたくさん、いろいろなつながりというか関連がございまして、一つは、私は金融機関で十七年ほど働いておったわけですが、平成十五年ぐらいから始まりました振り込み詐欺、多々多々本当に銀行では処理に困っておりました。その預金、振り込んだ人もすごく困るでしょうし、それを処理しないといけない銀行の職員も、取り扱いの手続がしっかりと決まっていなかったので、本当に困っておりました。

 これは本当に、国民全員または金融機関全員が大喜びする法案と思いました。先ほど葉梨代議士が提案者の代表として法案を読み上げていただきました点について、私は、本当にこれは何ともすばらしいと感動した次第でございます。

 私の母は実は振り込み詐欺まがいのものに一回ひっかかりそうになりまして、はがきが送られてきまして、息子さんが、私のことですけれども、息子さんがどうのこうのなったので振り込んでくれと、まさに目の当たりにしまして、これは本当に世の中で件数としても多く発生していることだなと思った次第でございますし、この法案を、提案者葉梨代議士初め与党の委員の方々がことしの六月七日に百六十六回通常国会に提出していただいた、この六月七日というのは実は私の誕生日でございまして、本当にいろいろなつながりがあるということで、本当に期待しているところでございます。

 そこで、この法案をつくられるのにも、今いろいろお話しいただきましたけれども、いろいろな御苦労があったと伺っております。その概要と趣旨に関しまして、もう一度聞かせていただけましたらと思います。

石井(啓)議員 それでは、本法律案の趣旨についてまず申し上げます。

 現在、振り込め詐欺等の預金口座への振り込みを利用した犯罪行為が行われた場合には、金融機関は、捜査機関等からの情報提供を受けて、約款にのっとり、預金口座の利用の停止、解約を行い、その預金口座に係る資金を別段預金で管理しまして、申し出のあった被害者に被害金を返還する扱いをとっております。しかしながら、平成十九年三月末の時点で約八十億円もの資金が被害者に返還されることなく金融機関に滞留をしておりまして、被害回復が十分に行われていない状況にございます。

 このように金融機関に滞留しておりますのは、一つは、この預金口座に係る預金の債権が名義人に帰属をしておりますので、金融機関には被害者と名義人と二重の支払いリスクがあるということがございます。もう一つは、預金口座に複数の被害者から振り込まれている場合における被害者に対する分配のルールが定まっていない、このことから、金融機関から被害者への資金の返還が進んでいない、こういう状況にございます。また、被害者が訴訟を提起する等の方法によって預金口座に係る資金の返還を求めることについては、時間とコストがかかります上に、特に名義人が行方不明の場合が少なくないという状況で、余り行われていないわけであります。

 そこで、振り込め詐欺等の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪に利用された預金口座を、一定の慎重な手続のもとに失権をさせまして、これを原資として被害者に被害回復分配金を支給する、この手続等を定めることにしたものでございます。

 また、本法案の概要について申し上げますが、本法律案は、振り込め詐欺等の預金口座等への振り込みを利用した犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復に資するために、犯罪利用預金口座等に係る預金等債権の消滅手続、振り込み利用犯罪行為の被害者に対する被害回復分配金の支払い手続等を定めたものであります。

 まず、預金等債権の消滅手続でありますが、金融機関は、捜査機関からの情報等を勘案いたしまして、預金口座等が犯罪利用預金口座等であると疑うに足りる相当な理由があるときは、預金等債権の消滅手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないということにいたしまして、六十日を下らない権利行使の届け出に係る期間内に名義人等による権利行使の届け出等がない場合は、公告に係る預金等の債権は消滅するということにしております。

 次に、被害回復分配金の支払い手続でありますが、預金等債権が消滅した場合には、金融機関は被害回復分配金の支払い手続の開始に係る公告を預金保険機構に求めなければならないことといたしまして、三十日を下らない申請期間内に申請があったときは、被害者及び被害額を認定して、被害回復分配金の額を決定してこれを支払うこととしております。

 なお、被害額が消滅預金等債権の額を上回る場合には、被害者の被害額により案分した額を支払うということにしております。

 次に、預金等債権の消滅手続において失権した名義人等の救済措置でありますけれども、名義人等の預金等債権が消滅した場合であっても、権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことについてのやむを得ない事情等について名義人等から必要な説明が行われまして、この預金口座等が犯罪利用預金口座等でないことについて相当な理由があると認められる場合には、名義人等が金融機関に消滅預金等債権の額に相当する額の支払いを請求することができるというふうにしております。

 支払いを行った金融機関に過失がないときは、預金保険機構に対してはその支払い相当額の支払いを請求することができるとしております。

 さらに、被害回復分配金の支払い手続が終了いたしまして、まだ残金がある場合につきましては、金融機関はその残金を預金保険機構に納付しなければならないとしておりまして、預金保険機構は、その納付を受けた金銭について、省令で定める割合を除きまして、犯罪被害者等の支援の充実のために支出することとしているところでございます。

 以上であります。

関委員 今、石井先生から、概要、趣旨をお伺いしまして、本当によく、すばらしくでき上がっているな、弁護士とも何度も何度も打ち合わせされたというところも伺っていますし、全銀協、金融機関の方ともしっかりと打ち合わせされたということが本当に反映されているなというのが、今非常に感じたところでございます。

 そして、一方、銀行の方は、金融機関の方は、実務手続としまして、いろいろなことが今後も発生することでございますけれども、一点、確認をさせておいていただきたい点がございます。それは、振り込み利用犯罪行為による被害財産とまた他の財産が一つの振り込みされた口座に混在している場合、このような場合の預金口座等はどのように扱われるか、その点についてお伺いしたいと思います。

柴山議員 お答え申し上げます。

 関議員には、私どもの苦労の成果につきまして最大限の賛辞をいただいたこと、まず御礼を申し上げたいと思います。

 今の御質問ですけれども、確かにおっしゃるとおり、名義人に関しては、たとえ犯罪行為を行ったにしても、その預金には固有財産ですとかあるいは他の正当な取引によって振り込まれたお金等々が混在をしているという事例が多々あるわけでございます。しかしながら、私どもの考えといたしましては、金融機関が事前に被害財産とそういった他の財産を区分することが困難であることから、名義人等の権利保障にはしっかりとした形での配慮をしつつ、預金口座等に係る預金等の債権全額につきまして、預金等債権の消滅手続を実施することとしております。

 こうした形で預金等債権の消滅手続がとられた場合には、権利行使の届け出等に係る期間内に行使の届け出があれば預金等債権の消滅手続は終了し、そして、その届け出等がなければ預金等債権全額が消滅してしまうという形をとらせていただいているわけでございます。

 なお、このように権利の全部が消滅した場合でありましても、名義人等の救済措置といたしまして、名義人等が権利行使の届け出等に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことにつきまして、やむを得ない事情があったということについて必要な説明を行った場合には、金融機関に対して当該被害財産以外の固有財産の支払いを請求することができるということを二十五条二項で定めさせていただいております。

関委員 今、柴山代議士の方から内容の説明を受けまして、本当に手続が明確化されておりまして、今の手続がきっちりと踏まえられますと、預金口座の名義人とももめることなくスムーズに事務が進んでいくだろうということが想像されるところでございます。

 続きまして、三つ目の質問をさせていただきます。

 預金等の債権の消滅手続に関してでございますけれども、消滅の手続におきます名義人等の権利の行使の届け出等に係る期間としまして、六十日以上、この日にちが設定されているところでございますが、この六十日という日にちの理由と、また期間の決定の主体がだれなのか、そういう点につきまして教えていただきたいと思います。

大口議員 関芳弘議員にお答えをいたします。

 今御質問ありましたように、与党案におきましては、預金等に係る債権の失権手続と被害者に対する被害回復分配金の支払い手続、この二つの手続がございます。そして、今、前者につきまして関議員から御質問があったわけであります。これにつきましては、預金等債権の消滅手続における口座名義人等の権利行使の届け出等に係る期間について、三点、視点がございます。

 一点目は、預金等債権が消滅させられることとなる口座名義人等へ周知することによって、振り込み利用犯罪行為と無関係の口座名義人等の預金等債権が消滅することを防止する、この必要性があるということで、ある一定の期間が必要だということです。

 もう一つは、これは振り込み利用犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復を図る必要がある、これが二点目の視点でございます。

 そして、いろいろとほかに法律等で参考になるものはないかと調べましたところ、非訟事件手続法の第百四十五条に、「公示催告を官報に掲載した日から権利の届出の終期までの期間は、他の法律に別段の定めがある場合を除き、二月を下ってはならない。」こういうことで、二カ月、六十日ということを、非訟事件手続法にもそういう例がある。

 こういうことを総合的に考慮いたしました結果、「公告があった日の翌日から起算して六十日以上でなければならない。」ということを、与党案におきましては五条の二項で規定させていただいたわけでございます。

 次に、具体的な権利行使の届け出に係る期間については、消滅預金等債権に係る預金口座等のある金融機関がこの期間を決定する主体になります。そして、金融機関が決定して、預金保険機構がそれを公告することとしているということでございます。

関委員 今、大口代議士の方から説明いただきました点を伺っておりまして、既存の法律にのっとった、本当に整然とした内容であるということと、預金口座の保有者並びに被害者双方にも問題のないように、しかも配慮された内容だ、この三点、非常によくわかりました。この六十日という理由のところ、どういう理由で二カ月になっているのかなと思ったわけですが、本当によくわかった次第でございます。

 では、続きまして、問い四でございますが、問題四番目、お伺いしたいのですが、これも与党に対して聞きたいと思います。

 これは、被害者の保護というのが非常に大きな観点でこの法律には筋を通していこうという点がありますが、被害回復分配金の支払い手続の実施に関してなんですけれども、支払い手続が実施されているというふうな状況を知らない被害者が実はいるんじゃないかなと思うわけでございます。また、そのように実施されているということと、自分自身が実は被害者だったんだというふうなことさえ気がついてないような被害者もいるんじゃないかな、そういうふうなことも考え合わせますと、支払いの申請期間、三十日というふうな日にちの設定がされているところでございますが、この三十日というところの長短のぐあいにつきまして、説明をいただきたいと思います。

葉梨議員 その前に、先ほど提案理由の説明、時間が決められておりました、非常に早口で読ませていただきましたので、原稿を途中で修正しなければいけないなと思っていたところを飛ばしてしまいました。公示催告の期間、今、大口委員からもお話ありましたけれども、民事訴訟法ではなくて非訟事件手続法でございます。

 それで、今お尋ねの件ですけれども、まず一つ押さえておかなければいけないところというのは、これは事実行為のレベルにはなりますけれども、ここで公告が二回行われるということなんです。一回は失権の公告、二回は支払いの公告ということになるわけですけれども、非常に関心のある被害者の方々ということであれば、まず失権の公告が、だれも名乗り出ない、あるいは裁判手続に移行しない場合には、これは当然の前提として、その後に被害回復の分配金の支払い手続に乗ってくるということがわかります。ですから、インターネットを見て、関心のある被害者の方々は、その六十日、これは万人に対してなされる公告ですから、その期間中に、先ほども提案理由説明の中でも申し上げましたけれども、事実行為として銀行に問い合わせをするということは可能だというふうに思います。

 また、現実に私どもも銀行さんとも話をしておりまして、そういったものがあったときにはやはり適切に対応してあげようというようなことを彼らも考えておるというようなことでございまして、そういうような申し出が六十日の期間中にあれば、そして失権ということになりますと、次の三十日の期間においては、当然支払いの届け出にそれは乗ってくるような形に、ある程度の便宜を図ってあげるということが私は可能になるんだろうというふうに思います。

 そして、六十日が終わった後に三十日という期間を定めさせていただいております。これの支払い申請期間についてですけれども、振り込み利用犯罪行為の被害者の申請の期間をやはり十分に確保する必要があります、六十日、見ていない人もいるわけですから。それから、振り込み利用犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復、これも必要です。

 ということで、一応通算の期間を、先ほどの六十日公示催告、そして三カ月というのは、遺失物法で三カ月ということで、たまたま三十日になったというわけでもないんですけれども、ここで私どもが重要視いたしましたのは犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律、これが平成十八年にできました。暴力団等が犯罪で集めたお金を被害者に返すという、これは公告をしてから三十日という期間が定められております。

 ですから、公示催告の六十日、それから犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律の三十日、それと、やはり平成十八年の国会において改正されました遺失物法、これは六カ月から三カ月に期間が短縮されたんですけれども、大体法制上の相場観というのはそういうようなところなのかな。ですから、具体的にやはり今の法制上の期間等との整合性というのをとっていきますと、まずこの法律においては六十日、三十日、通算九十日という形をとらせていただいたわけなんです。

 三十日が実務的に短いかどうかということなんですけれども、先ほども申し上げましたとおり、インターネットの公告で本当に見ていただけるというのは、最初から被害がわかっていた方、それからよほどインターネット等に技術的にも通じた関心のある方ということになりますけれども、一般の高齢者ですとなかなかインターネットを見るということはできません。そこで、この法律案においては、十一条の第四項というところで、銀行の側から被害者に対して適切な情報を提供してあげてくださいというようなことを定めさせていただいております。

 銀行の側から被害者に対して、あなた、支払いの申請をしなさいよというような情報提供を行うということになりますと、先ほど申し上げましたとおり、やはり失権手続を終わってからということになろうかと思うんです。

 具体的に今全銀協の方でどのような検討がなされているか。私どもも一緒になっていろいろと話し合いをしているわけですけれども、一例を申し上げますと、例えば、振り込み人から被害を受けたことが疑われる旨の申し出を受けた銀行はその振り込み先銀行に通知することを促す、あるいは金融機関が被害資金の返還の申し出があった方の申し出内容や連絡先等について振り込み先口座ごとに記録するなどの取り組みを進める、さらには当該口座については、支払い公告を行う場合には、金融機関はその記録などを活用して、もちろん十年前、二十年前というわけにはいかないでしょうけれども、個別に通知するよう努める、これは一例でございますけれども、そういうような取り組みが行われております。

 ですから、その口座の記録の中で具体的に、ああ、この方が振り込んだというようなことがわかった方で、しかもそんなに、何十年前とかいう話じゃない、非常に犯罪との牽連性が強いという場合には、当然その方々に銀行が通知をする、それによって、その方たちが分配金を還付してくださいというようなことを申し出てくるというような形になってこようかと思います。その期間ですから、支払い公告が行われるのと大体同じような時期にそういった情報提供がなされます。そして、それに応じて申請がなされるということですから、この三十日というのは必ずしもそんなに短い期間ということではないだろうというふうに思います。

 今現在、先ほど申し上げましたような全銀協等の業界団体において、実務を踏まえたガイドラインを定めることを予定しております。私どもとしては、これらによって被害者に対する十分な周知がなされることが担保できるんではないか、このように考えております。

関委員 今、葉梨代議士の方から回答をいただきましたけれども、本当に十分な時間をとらないといけない、しかし一方、できるだけ早く返してあげるのもこれまた大切なことだ、そして既存の今までの法律にも、この期間とすれば、のっとって整合性がある、この三点で、支払い申請期間の三十日という意味がよくわかりました。一方、民主党の案の方には日数が書かれておりませんけれども、私は、この日数というのは非常に大事なことではないかなと思う次第でございますが、そこの質問に関しましては、民主党の案に関しましては、同じ自民党の小川議員の方からまた質問が後ほどあるかもしれませんので、よろしくお願いいたします。

 では、引き続きまして、五つ目の質問をさせていただきます。

 金融機関と預金保険機構の立証責任にかかわる規定につきまして質問させていただきます。

 これは、失権した預金口座の名義人等から、やむを得ない事情によりまして権利行使の届け出ができなかったということで支払いの請求がされた場合、これが正当だと金融機関が考えます場合には金融機関がそのお金の支払いに応じて、そしてその不足となった部分を今度は金融機関の方は預金保険機構の方に支払いの請求をする件でございますが、与党案の方は、金融機関がみずからの無過失を立証して預金保険機構に支払いの相当額の請求をするということになっております。一方、民主党の案の方は、金融機関が所定の書類をそろえて預金保険機構に支払いの請求をするんですが、預金保険機構は、過失があると認めた場合だけ支払い請求の拒否が可能だというふうに、項目が、少し内容が違うようになっております。

 この違うところ、私は、このように正当だと考えるのは金融機関自身しかやりようがないんではないかなと思うところでございますが、民主党案についてどのように与党が考えているのか、その点につきまして聞きたいと思います。

石井(啓)議員 お答えさせていただきます。

 預金等債権の消滅手続につきましては、口座名義人等の財産権を消滅させるものでございますので、名義人等の知らないところで犯罪行為と無関係の名義人の預金等債権が消滅することがないように、まず第四条第一項で、金融機関がその開始に当たって踏まえる事由を具体的に規定しております。まず、金融機関自身が情報を持っているということであります。なおかつ、預金保険機構が名義人等の権利行使の届け出に必要な事項を公告するという第五条を規定しておりまして、慎重な手続のもとに行うこととしております。

 しかしながら、犯罪行為と無関係の名義人の預金等債権が消滅してしまう場合も完全には排除し切れないことから名義人等の救済措置を設けたものでございまして、権利行使の届け出に係る期間内に権利行使の届け出を行わなかったことについてのやむを得ない事由について、名義人等から金融機関に対して必要な説明が行われ、なおかつ犯罪利用預金口座でないことについて相当な理由があると認められる場合には、名義人等は金融機関に対して、消滅預金等債権の額に相当する額の支払いを請求することができるというふうにされておるところでございます。

 このように、預金口座等に関する名義人や被害者等の情報を持っておりますのは各金融機関自身でございまして、何らこういった情報を持たない預金保険機構に立証責任を転嫁するのは現実的ではない、こういったことから、私どもとしましては、民主党案のようなスキームをとらなかったところでございます。

 なお、金融機関に対して無過失の立証を求めているわけでございますけれども、この立証については、実務の現場に即した常識的な範囲のものであるということは申し添えたいと思います。こういったことにつきましては、法案作成の過程で金融庁や全銀協などに確認をしているところでございます。

関委員 私も民間の金融機関で十七年ほど働いてまいりましたけれども、今、石井代議士がお答えいただいたようなことで、この立証というのは実際に金融機関しか無理だな、私も全く同感でございます。そのことを一言申し添えておきたいと思います。

 最後の質問をさせていただきます。

 これは政府等によります周知、公表に係る責務規定ということでございますけれども、この法律案に関しまして、民主党の案の方では、政府に対して、法律の円滑な実施を図るため、法律の趣旨及び被害回復分配金の支払い手続等に関する事項等について、広報活動等を通じ国民に周知を図り、その理解を得るよう努めるものと規定をされております。これは当然のことだとは思うんですけれども、そのことをあえて言わなければならないのかなという気もいたすわけでございまして、その点につきまして、与党の提案者の方から感想を聞かせていただけたらと思います。

柴山議員 関委員御指摘のとおり、どのような法律でありましても、法律が成立し、そしてそれが施行されれば、それを誠実に執行する責務のある政府としては、その周知を徹底しなければいけないというのは当然のことだと私どもも考えております。ましてや、この振り込め詐欺等に関する法律に関しては、国民に対して、なおさら、身近な法律関係について平易にわかりやすく説明しなければいけないという必要性が大きいものと考えております。したがって、わざわざ特別の規定を設けるまでもなく、そういった国民への周知広報をするということは当然に私どもとしては予定しておりましたので、あえて御指摘のような条文を設けなかった次第であります。

 また、つけ加えて申し上げさせていただければ、預金保険機構に関しましても、同様の趣旨から、その運用の実態をホームページ等で広く国民に公表することが期待されていると思っておりましたものですから、そのような特別の規定を置くまでもなく、制度の周知、運営に努めていく所存でございます。しかしながら、確認的に政府及び預金保険機構に対してそういった責務を課するということにつきましては、私どもとしても異論はございません。

関委員 今そのように周知徹底を広報についてもしっかりとされる、しかし、法律の方ではあくまでも明文化しなくてもいいのではないかということに私も賛成の考え方でございます。

 もうこれで質問事項は終わるわけでございますけれども、本当にいい与党案だと私は思います。本当にこれ、国民の方々がまさに困っているところに直接的に効果が出てくる法律案だと思いますので、実施された後、国民の方々が喜ばれているような顔も、町で例えばマスコミなんかが取材してくれるといいなと思うところでございます。一刻も早くこの世の中から振り込め詐欺等の本当に変な事件がなくなって、いい世の中ができたらなと思う次第でございます。

 本当に本日はありがとうございました。

原田委員長 次に、小川友一君。

小川(友)委員 自由民主党の小川友一でございます。

 本案件を審議するに当たりましては、それぞれの作成に当たっての経過というものをまず議論しなくては始まらないのかなというふうなことを今法案を見て感じました。

 与党案は、今の趣旨説明の中にもありましたとおり、一年ちょっとをかけ、関係の全銀協や日弁連の弁護士の皆さんやそれぞれ関係の団体との議論を重ねた中で、まさに衆法として、議員提案として、国民の負託にこたえるべく、みずからその責任を果たして百六十六回の通常国会に提出してきた、こんな経過があるわけでありますけれども、民主党さんの今回の提案に関しては、急遽提出がされたように伺っておりますし、ただいまの趣旨説明でもそうであったというふうに思います。

 そこで、今回のこの法案に関しましては、いわゆる実務を執行するには、まさに、銀行がどういうふうな考えがあるのか、金融機関がどう考えているのかが大きな争点になるのではないかなというふうに思います。そういった意味で、今回民主党がこの法案を作成、提案する過程において、全銀協やそしてまた日弁連等関係の方々との協議をどのように進めてきたのか、経過等を御説明いただきたいというふうに思います。

階議員 今回の民主党案の立案は主に私が担当しましたので、私から答えさせていただきます。

 私は、先般、七月二十九日の補欠選挙で当選させていただいて、今臨時国会からこの委員会の委員として活動しておりますが、それ以前は金融機関の社内弁護士をしておりました。そういった中で、振り込め詐欺の被害者からの被害申告に対して銀行としてどのように対応するかという問題について、もう長年頭を痛めてきた、そういうことがあります。

 たとえ振り込め詐欺による振込金であっても、法律上は預金者との間で預金契約が成立するものであって、銀行は預金者に無断で振込金を被害者に返還することができないという原則があります。通常ですと、これを解決するためには、被害者から預金者に対して振込金を返還せよという民事訴訟を起こしてもらって、勝訴判決が確定して、それに基づいた強制執行、差し押さえがあって初めて銀行から振込金が返還されるということでございます。

 しかしながら、御案内のとおり、このやり方では、被害回復にお金も時間も労力もかかってしまいます。裁判手続によらず、簡易迅速に被害回復がなされるような法制度の必要性、私は、社内弁護士の時代からかねがね感じておりました。

 そういった意味で、弁護士でもあり、また金融機関に勤務しているということでもあり、私自身が当事者としてこの問題にずっと取り組んできたという経緯があるわけでございます。また、そういった中で、さきの通常国会でいち早く振り込め詐欺の被害者救済に関する法案提出に至った与党の取り組みに対しましては、心から敬意を表するものであります。

 しかしながら、私の実務の経験を踏まえますと、被害回復の迅速性、被害者の手続参加の容易性、また、金融機関による手続の利用促進という面においてなお改善の余地があると思われます。

 そこで、私の方で案をつくりまして、それをたたき台として党内で議論を重ね、与党案を尊重しつつも、被害回復の迅速化、被害者の手続参加の容易化、また、金融機関による手続の利用促進が図られるような法案ということで提出させていただいたというのが今の民主党案でございます。

小川(友)委員 民主党提出者に再度お伺いします。

 だからこそ、この法案を提出しているんです。今おっしゃったような趣旨に沿ってこの法案が提出されているわけです。

 私がお伺いしたのは、法案を提出するに当たって、今、金融機関、銀行は両替するにも手数料を取るんですよ。そしてまた、新券を発行していただくにも手数料を取るんです。今回は、実務は、ほとんど金融機関、銀行がそれを担うわけです。その金融機関に対して、どのような考えがあるのかという協議がなされていないということはおかしな話ではないかなと思うんです。

 再度お伺いします。三十条で、保険機構には手数料が支払われるように明記されています。その辺、どのようにお考えなのか、再度お伺いします。

階議員 今申し上げましたとおり、私は銀行の実務経験を踏まえてこの法案をつくっていまして、この法案であれば銀行としてもしっかりと取り組んでいただけるということで、また与党案の内容も十分尊重してつくっておりますので、御懸念のようなことはないかと思います。

小川(友)委員 与党案提出者にお伺いします。

 一年をかけて全銀協等との協議を重ねてきたと思うんですが、金融機関にとっては、こういうふうな法案が通れば、当然実務が煩雑化してきて、経費もかかるわけですね。まさに公的機関としての役割として、手数料を取らないでこの法案に対応するということだと思うんですが、その辺の金融機関のお考え等を、協議した中で何かありましたらお答えいただきたいと思います。

葉梨議員 今、小川先生からもお話あったんですけれども、基本的にいろいろな実務を金融機関にやっていただくということになりますので、相当綿密な打ち合わせをしてこなければ、なかなかこういうような法制というのはできないということも事実でございます。

 ただ、金融機関にとっても全くメリットがないわけではございません。といいますのは、実際のところ、先ほど関委員からの御指摘にもあったように、非常に金融機関自身が、この振り込め詐欺で滞留しているという事実に、迷惑がっているといいますか、それを、例えば口座名義人に対して十年間通知をしなければ、取得時効で自分のものになるんだけれども、かといって、片っ方で被害者がいる。そういうところは、本当のところを言えば、やはり被害者に還付を迅速にしたいんだけれども、そこのところが法律的にも整備されていない。

 実際問題として、口座を管理していくということになりますと、やはりそれだけのコストも当然かかってまいります。ですから、そこら辺を総合的に勘案して、では銀行としてはどこまでできるんですかということを詰めに詰めて、こういうような法制度にさせていただいたということなんです。

 預金保険機構についても同じでございます。預金保険機構とも協議をいたしまして、やはり預金保険機構の中でも、今現在、名寄せをする以外の、口座というのをしっかり把握する、そういうような必要性がある。そういうような、本来業務も踏まえて、一体、預金保険機構さんどこまでできるんですか、全銀協さんどこまでできるんですか。

 ただ、全銀協さんだけがガイドラインをつくるということだったら、やはり被害者の方々には、本当に被害者のためというふうに胸を張れる形になるかどうか。やはり客観的なものというのも必要じゃないでしょうか。では、それでしたら、全銀協さんがガイドラインをつくるときには、やはり日弁連さんの担当委員会ともこういう形でお話ししたらどうでしょうかということをこの法案作成の中でつくってまいりました。

 ですから、これは先ほど、与党が主導でというふうに申し上げましたけれども、それだけではなくて、やはり銀行協会も、あるいは預金保険機構も、あるいは日弁連も、みんなが共同作業で、それぞれがどういうような事務を分担するんだということを話し合った上で、この法案を提出させていただいておるということでございます。

小川(友)委員 本法案、両党の法案を見てみますと、大きい相違点というのはそんなにないんですね。大きく変わるのが、いわゆる一元化、公告の手続の一元化の部分が大きく変わるのかなというふうに思います。そのほかには立証責任に係る規定とか、先ほどもお話がありましたけれども、政府の周知、公表に係る責務規定等が、与党案と民主党案との差異があるわけでありますけれども、大きな相違点に対してちょっと質問をさせていただきたい、民主党案に対して質問させていただきたいと思います。

 預金等に係る債権の消滅手続に係る公告が六十日、そして被害回復分配金の支払い手続に係る公告が三十日、これを一元化なされています。この公告期間を六十日とすることに至った理由を御説明いただければと思います。

階議員 ちょっと図を用意しましたので、こちらを拝見していただきながら御説明を聞いていただければと思います。済みません、ごめんなさい、小さくて申しわけないです。

 与党案、失権手続と支払い手続ということで、最初の六十日間が失権手続でございます。ここで名義人の権利を消滅させる。その後三十日間、今度は被害者の方を広く募って、そして被害者を確定して分配手続を行う、こういう二段階の手続で、トータルで九十日ということでございます。

 しかしながら、被害者の参加できる部分、先ほど葉梨先生からも御説明ありましたけれども、事実上、被害者が最初の失権手続のところから参加できるんだというようなお話もございましたけれども、明文上、与党案ですと、手続に被害者が参加できるのは後段の三十日の部分だけになっております。

 ちょっとひっくり返しましたけれども、私どもの案は、この手続を一本化することによって、全体の期間は六十日に短縮した上で、かつ被害者の方は手続の当初から参加できます。つまり、被害者の参加できる期間は三十日から六十日間に延びました。また一方で、手続全体に要する期間は九十日から六十日に短縮されました。そういったことで、被害回復の迅速化、それから被害者の方の手続保障両面において改善がなされたということだと思います。

小川(友)委員 今説明をいただきました。

 基本的に消滅手続は強制的な手続ですね。そしてまた、このことは名義人にしっかりと十分な告知期間がなくてはならないというふうに思います。

 あわせて、支払い手続に入るには、その口座が、今まで、それぞれ金融機関が認めたとかいろいろあって、法的にいわゆる失権していることが大前提だと思うんですね。失権がしていない個人の、要するに失権がしていない、私権を制約していくわけですから、失権することが大前提だというふうに思います。

 そのような意味で、私は、この一元化に関しては無理があるのではないかなというふうに思うんですけれども、再度御答弁をいただければと思います。

階議員 今、被害金の分配の大前提として失権を確定する必要があるということでございましたけれども、支払い手続の円滑な実施のためには一方で対象預金口座等が消滅している必要というのもあるでしょうけれども、支払いの申請をする段階では何も、前段階として権利を消滅させている必要はないのではないか。申請をする分には、別に権利が消滅していなくても自由に行わせていいのではないか。

 最終的に被害者の方に分配する段階では、その段階では、公告期間が終わってからになりますから、公告期間の終了時に権利は消滅しております、口座の方は消滅しておりますので、それから分配をするということでございます。

 支払いの申請については確かに権利が残っている段階でやりますけれども、分配の段階ではもう権利は消滅しているので、これは問題ないのではないかというのが私どもの考えでございます。

小川(友)委員 関連して再度お伺いします。

 被害回復分配金の支払い手続が実施されていることを知らない被害者、自身がいわゆる振り込め詐欺等の被害に遭ったことを認識していない被害者が存在し得る可能性ということは当然想定がされると思います。

 そのような意味で、三十日という支払い申請期間というものはちょっと短過ぎるのではないかなというふうに、要するに支払い申請期間が三十日間であるということは短過ぎるのではないかなというふうに考えますが、いかがお考えでしょうか。

階議員 今のはおっしゃるとおりだと思っていまして、私どもの案は、三十日間だと被害者の支払いの申請の期間としては短いということで六十日間設けておりますので、そういった意味で、被害者の保護には我々の方の案が資するのかと思います。

小川(友)委員 与党として、今の民主党、野党案を聞いていてどのようにお考えになっているか。この一元化、二元化の方がいいというのが与党案ですよね。その辺をどうお考えなのか、お伺いします。

柴山議員 後段の三十日間の権利の届け出期間というものが、もしこれが単体で、被害者保護のための救済期間として、そこで終わりなんですよということであれば、それは若干短いのかなという感触もあると思います。

 しかし、先ほど来御説明をさせていただいているとおり、既にその前提として六十日間の公告等の手続がありますので、少なくとも、被害者と見込まれる方は、その期間内に自分の被害について認識する機会というものは確保されているわけです。

 それを前提とした上で、その申請のみの期間を三十日という期間に限ることは、先ほど御説明があったかと思いますけれども、確定刑事事件等に係る犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律との均衡からいっても、必ずしも短いとは言えない。むしろ、被害回復の迅速性ということに重きを置いた形で、処理の迅速性を図っていくというフェーズに入っていくのかなというように思いますので、また、トータルとしての期間の既存の遺失物法との均衡も考えてこのような制度設計をしたということでございます。

 加えて申しますれば、一度被害者が、これは申し出をすれば被害回復が図れるんじゃないかということで手を挙げたんだけれども、最終的に、何か知らないけれども、調査のときには黙っていた名義人がやおらよっこいしょと手を挙げてきて、いや、やはりあれはおれのものだと言った場合に、金融機関として、こうした手を既に挙げてきた被害者に対して通知を改めて全部出し直さなくちゃいけないという形での混乱ということが見込まれることについても、ぜひ御配慮いただきたいと思います。

 以上です。

小川(友)委員 再度、民主党案に対して質問をさせていただきたいというふうに思います。

 預金等に係る債権が消滅していない段階において、被害回復分配金の支払い手続が開始されることになるわけでありますが、口座名義人等の権利行使の届け出があれば、申請人は被害回復分配金の支払いを受けられなくなることになるというふうに思います。

 そこでお伺いしますけれども、支払い手続を中途で終了することを認めますと、支払いを受けられなくなるという、申請人の期待を裏切ることになるのではないかなというふうに考えますけれども、その辺はどんな見識がありますでしょうか。

階議員 支払いの申請をした人の被害回復分配金の受給に対する期待権を害するという御指摘だったと思いますが、この点については、あらかじめ、申請の際に、権利行使の届け出等によって被害回復分配金の支払い手続が終了する場合があり得るという制度の周知を行うことで、支払いの申請をした方の期待権を害しないようにするというふうに考えております。

小川(友)委員 再度お伺いします。

 民主党案では、預金等に係る債権が消滅していない段階において支払いの申請をしなければならないことになるわけでありますね。被害者に対する個別の通知を行うことが、事実上このことによって不可能になるのではないかというふうに考えます。

 振り込め詐欺の被害者は、先ほど提案者からもありましたとおり、インターネットを使っている方ばかりではないし、そういうふうなことができない方も多くいらっしゃるわけで、公告を見る方ばかりではないというふうに思います。そして、個別に情報提供がなければ被害者が被害回復を図ることができなくなるというふうに考える部分があるんですけれども、民主党案では、そのことでかえって被害者に保護が図れなくなる可能性があるのではないかなというふうに感じますけれども、その辺の見解があればお伺いしたいと思います。

階議員 まず、民主党案におきましても、被害者の方などに対して個別通知というものは行います。ただ、先ほどからも御指摘があるとおり、支払い申請と、あと権利の消滅の手続を同時並行で行いますので、個別通知をする段階では、被害者の方が本当に給付を受けられるのかどうかはっきりしないという段階での通知になるということは確かでございます。

 ただ、それも、実務的にはそういった条件つきの通知ですよということをしっかりと通知することで、その辺の期待権の侵害であるとか不確定的な給付に当たるということによる不都合は回避できるのではないかというふうに考えております。

小川(友)委員 もう一点、ちょっとお伺いをしたいんです。

 先ほど、提案理由の趣旨説明がありました。先ほどの委員の方からも質問があったわけでありますけれども、要するに、民主党案の第四番の部分なんですが、いわゆる周知規定を明文化していかなくてはいけないという部分ですけれども、いわゆる、ここで、政府が法律や政策の円滑な実施を図るために広報活動を行っていることはこの規定がなくても当然だという与党の説明がありました。なおかつ、趣旨説明の中で、振り込め詐欺については、警察の呼びかけ、マスコミの報道により、国民の意識は高まっているものと思われますと言って、みずからそれを認めているわけですね。

 にもかかわらず、与党案にはなかったんだ、必要がないから入れなかったと言っているんですが、どうしてこの余り必要のない部分を明文化してそこに入れたのか、お伺いをします。

階議員 先ほど与党案の趣旨説明にもありましたとおり、この手続、与党案にしましても、私どもの案にしましても、今まで、かつてなかったような独創的な手続でありまして、この手続を被害者の方にまずよく理解していただく、そして、理解した上で積極的に参加していただく、そのためには、政府による周知広報というものが必要不可欠ではないかと。

 確かに、柴山議員もおっしゃったとおり、このような規定がなくても周知広報に努めるというのは政府として当然だというお考えもあるでしょうけれども、やはり、その手続が独創的であり、また被害者の救済を万全にするためにも、手続参加を積極的にしていただくためにも、このような規定をあえて入れさせていただきたいというふうに考えております。

小川(友)委員 もうそろそろ時間がなくなってまいりましたので、最終的に、法案をめぐる今までの過程について、民主党、与党両党にお伺いをしたいんです。

 基本的に、今前段でお話をさせていただいたとおり、与党案は、一年をかけて議論をし、通常国会、衆法として議員提案で、国民の負託にこたえてもう出してきたんだ。にもかかわらず今、今回の国会の中に民主党案を出してきたという理由づけが、大きな争点、要するに、ここだけは与党案とは大きな差異があるんだ、だから、おれたちはこういうふうな対案を出していくんだというふうなことが、本来、対案の提出の仕方かなというふうに思うんですけれども、今の御答弁等をいただいていますと、やはり今のこの現状を踏まえて、社会状況を踏まえて、政治家として国民の民意をしっかりと反映させていくんだ、そして、政治がリーダーシップをとって、国民の負託にこたえて法制化をしていくんだという思いは、与党案も野党案もそんなに違わないと思うんですね。

 であれば、今までの経過からいって、修正をしながら法案をいち早く成立させて、国民の民意を反映させて負託にこたえることが政治の役割ではないかなというふうに私は思います。

 そこで、なぜ、そういうふうな修正協議に応じてこなかったのか。そしてまた、今多少の差異はあるにしても、法案として成立する方向性に向くようなこれからの協議がなされていただきたいなということの思いも含めて、最後に、与党、野党の提出者にそれぞれのお考えをお伺いいたします。与党の方からお願いします。

葉梨議員 提案理由説明で申し上げたとおりなんです。

 実は、この一年の検討の過程で、私どもは二段階構えの公告という提案をさせていただいているわけですけれども、これを一回でやってしまおうという議論もございました。三月というのはまだるっこしいという議論もございました。一月で、これはもう千万円を振り込んで、きのう千万円を振り込んだ人に、何で翌日になって千万円返してあげられないんだという議論もございました。

 そういう議論を全部いろいろと議論した中で、債権者には比例案分という原則をつくらせていただいたものですから、一たん失権をして、そして丁寧にその被害者も掘り出して、当座は三十日、六十日と。もちろん、その期間というのは、今後の法制度のいろいろな整合性の中で、またさらに運用をしながら考えていくということも私はできるだろうと思うし、個人的には、それは短ければ短いほどいいんだろうというふうには思いますけれども、さはさりながら、片っ方で失権をさせるというような法手続があるものですから、今回は三カ月ということで提案をさせていただいたんです。

 実のところを言いますと、民主党からの提案も、既にこの一年の議論の中で与党においても議論をした内容が提案されているわけでございます。したがいまして、民主党さんとそういうことで腹を合わせながら、ここのところはやはり振り込め詐欺の被害者のために一緒にやっていこうというような形の協議ができれば、私は大変幸いなことであるというふうに思っています。

平岡議員 お答えいたします。

 小川先生から、本当にこれからの日本の国会運営のあり方にもかかわる大変重要ないい質問をしていただいたので、まず、この法案についての理論的な根拠というのはちょっと後にしまして、最初にちょっとだけ、これまでの国会でどんなことが行われていたのかということについても触れさせていただきたいというふうに思うんですね。

 先ほど葉梨提案者の方から、こういうふうな提案理由説明がありました。この法案については、行政や関係団体、さらに衆議院の法制局の手をかりることなく、与党の国会議員自身が法案骨子を作成したんだ、こういうふうにありまして、言外に、これまでは与党は行政等におんぶにだっこで議員提案をしてきたんだけれども、今回は違うんだということを証言されたわけであります。

 実は、我々野党もいろいろな法案をこれまで提案してきておるんですね。私、思うんですけれども、そういう状況であったからこそ、葉梨提案者は、この法案に対する愛着というものがあって、できるだけ早く成立させてもらいたい、そういう気持ちを持っていると思うんです。

 実は、私たち野党も同じような思いを何度となくしてきているんです。これまで何回となく、民主党が提案した法案というものが、審議されないでたなざらしにされて、しばらくたって政府提案の法案の中に盛り込まれてしまっていったというのもありました。

 それから、北朝鮮の人権救済法案というのがありまして、これは二〇〇五年の百六十二回通常国会で民主党が出したんですね。これは審議されることなく廃案になりました。そして、二〇〇六年の百六十四回通常国会でも民主党は出しました。そうしたら、何とまた与党が出してきたんですね。そして、それがある意味では、両方で協議されて、何か成立したという経緯があったんです。

 この通常国会でも似たようなことがあったんですよ。被災者生活再建支援法改正法案というのがありました。これも民主党は、二〇〇四年の三月に出して、そして中越地震が発生した後、十一月にも出しました。これらも審議されることなく、あるいは与党に否決されるというようなことでやっていかれました。

 今回、ようやく我々が出した法案がまともに審議されて、そして与党も何と、我々の案に修正案を出せばいいのに、対案という形で出してきた、そういう経緯もあるんですね。そういう経緯を考えてみたときに、私は、今委員が指摘された問題というのは、まさにこれからの国会運営に対して非常に大きな問題提起をされているというふうに思います。

 しかし、今回の問題について言えば、私は、法案両方をよく見せていただきましたけれども、基本構想がちょっと違うんだろうと思うんですね。きょう委員は触れられませんでしたけれども、何か葉梨提案者の方は、遺失物法、遺失物の取り扱いを参考にしたというふうに言っていますけれども、遺失物について言えば、失権と権利の取得というのが同時に起こってくるわけなんですよね。それはむしろ我々の法案に近いんですよ。だから、そういう意味でいったら、ちょっと違う。

 私が思うのは、預金等債権について先に失権させなければならないという理論的根拠は極めて希薄だと思います。もともと被害者というのは、犯罪者に対して損害賠償請求権なり不当利得返還請求権なり、債権を有しているんですね。それがこの財産に係っていくか、そういう潜在的な権利を持っているという状態です。どうして、失権させてだれのものでもなくなってしまった預金等債権に対して被害者が支払いを求めることができるのか、そういう理論的根拠もあいまいになったままでこの法案というのは行われているというふうに私は思います。

 そういう意味では、基本的構想が違うので対案として出させていただいたということで御理解いただきたいと思います。

小川(友)委員 お伺いをしなかった部分までいろいろお答えいただいたんですけれども、今回のこの法律案に関する民主党の対案の提出の仕方というものは、何か与党案に対しての反対のような対案の出し方だったというふうに感じましたので、あえて質問させていただいた。

 国民の負託にこたえて、早く法制化することを願っています。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 本委員会、今議題になっておりますのは通称振り込め詐欺の法案でありますけれども、この本題に入る前に、せっかくの機会でございますので、少し額賀大臣にお伺いをしてまいりたいということでございます。

 大臣、第一回のハイレベル経済対話、大変お疲れさまでございました。お帰りになった早々で恐縮でありますが、少しお時間をいただきたいというふうに思います。

 今、防衛省の問題が本当に大変な問題を引き起こしておるのは御案内のとおりであります。まさに長年そのトップにあった守屋次官が、官僚にあるまじきと申しますか、ゴルフや宴会の接待を受け続けて、そして、その宴席に、額賀大臣、あなたも同席していたという証言をされたということでございました。(発言する者あり)

 そこで、その真偽を確かめる場というのはなかなかありません。せっかくの機会でございますので、国民の前に一遍、明確にひとつ、同席はしていないということを御証明されたらいかがかな、このように私は思います。そして、もしその証明が国民の皆さんが御納得いかないということであれば、アカウンタビリティー、説明責任が十分ではないということでございますが、いかがでございましょうか。(発言する者あり)

原田委員長 ちょっと速記をとめて。

    〔速記中止〕

原田委員長 それでは、速記を起こしてください。

 ここで、委員長として一言発言をさせていただきます。

 本日の委員会は、議員立法である振り込め詐欺被害者救済法案の与野党案の審議でございまして、基本的にはこの法案に関連する質問に限定すべきというふうに考えております。また、衆議院規則第百三十四条には、「発言は、すべて議題外に渉り又はその範囲を超えてはならない。」ということでございます。

 鈴木君におきましては、質問を続けられるに当たりましては、これらの趣旨及び衆議院規則百三十四条を踏まえていただきたいということをあえて委員長として申し上げておきたいと思います。

鈴木(克)委員 委員長の、百三十四条に基づいて質問をしろという御指示というか御意向はよくわかっております。

 しかし、今我々は、国民の前に大きな疑惑というか、疑問を国民が感じておる、そのことをやはり解明し、そして明らかにしていくという責務も私は国会の場として十分ある、このように思っております。

 もちろん、どのように御答弁されるかというのは私はわかりません。しかし、少なくとも、それについていかがですか、こういうことを申し上げておるわけですから、それに対して大臣の御所見を私はぜひ御開陳賜りたい、このように思うわけであります。

原田委員長 委員長として再度申し上げておきます。

 鈴木君の質問に当たりましては、衆議院規則第百三十四条を踏まえていただきたいということをあえて申し上げたいと思います。

 その上で、額賀財務大臣。

額賀国務大臣 発言の機会をいただきまして、感謝を申し上げます。

 十一月二十二日の委員会におきまして、これは参議院の委員会でありますけれども、民主党の辻委員から、私が平成十八年十二月四日に濱田家で行われたジム・アワー氏の宴席に出席していたはずだとする御質問がありましたけれども、これは全くの事実無根でございます。

 当日出席をした八名の方については、逮捕された二名を除いて、私が出席していないことをすべて確認いたしております。

 まず、十二月四日はジェームス・アワー氏を慰労する会合であったと聞いておりますけれども、その主賓のジェームス・アワー氏自身が十一月三十日に記者会見をされまして、私が宴席に出席した事実はないと明言をしております。その上、私とは、面識はあるけれども、朝食も昼食も夕食も、一回もとったことがないと断言をしております。と同時に、主催者である国際研修交流センターの理事長も、出席していないと断言をいたしておるわけであります。

 さらに、十二月四日の私の日程について、客観的な証拠を明らかにした上で大島理森国会対策委員長に御説明をし、同委員長から、報道機関を通じて国民の皆様方に説明をさせていただきました。

 私が大島国対委員長を通じて御説明申し上げましたのは、第三者的な客観的な検証を経た上で国民の皆様方に御説明することが適当であろうと判断をし、客観的な資料を国対委員長に示し、御納得いただいたものを報道関係各位に公表したものであります。

 大島国対委員長の記者会見の後、民主党の山岡国対委員長から、デジカメのデータは偽造であるかのような発言がありましたけれども、公党の責任ある立場の発言とは思えない、残念な思いがいたします。

 その私の日程については、さらに詳しく申し上げれば、プライベートなことも申し上げて私は真実を明らかにしたつもりでございます。

 十二月四日の日程については、当日午後五時半ごろ、私は、家族と家族の友人らと、知人も含めて銀座のホテルで夕食をとりました。会食は午後六時過ぎに始まりまして、一時間ぐらいの後に記念の撮影をしました。これはちゃんと時刻が表明されております。

 午後八時ごろに、会食した皆さん方と写真撮影を終了した後、永田町で行われていた勉強会に向かいました。その勉強会は七時から始まっておりまして、私が行ったときは既に始まっておりました。録音テープをとっておりまして、いろいろな議論がなされているわけであります。勉強会は午後十時過ぎまで行っており、最後まで参加者の皆さんと一緒にいました。

 この勉強会は、安全保障の問題で、元防衛施設庁の長官をしていた宝珠山さんが講師を務めておりました。そして、既に本人の了解をとって、例えば学習院女子大学の畠山先生とか、何人かのお名前は明らかにしております。私のところに手紙をくれております。事実関係を明らかにしてしっかりと頑張ってください。我々は、日米同盟とか安全保障の問題を真剣に議論してきた、そういう話でございます。

 これに対しまして、民主党の発表された調査結果は、客観的な事実とそごがあると思います。

 すなわち、十一月二十七日に発表した民主党の聞き取り結果によれば、守屋前次官は、エネルギー庁の日下氏に誘われて行った、日下氏とは一緒に米国に行ったので親交もあると電話で述べたと説明しております。しかし、守屋前次官が逮捕された日に放送されたTBSのニュース特番でのインタビューでは、額賀氏の先輩の、財団の金子さんから、電話で、アワーが来るから来ないかと誘われてお受けしたと記憶していると述べております。

 それから、先日のテレビ番組で、山岡国対委員長が守屋前次官から聞き取ったと言われる十二月四日の席次を表にしましたけれども、これは新聞にも出ておったと記憶しておりますけれども、その出席者は十一名以上というふうに聞いております。私どもの確認したところでは八人でございます。

 さらに、守屋前次官の証人喚問における証言については、不確定な事実に基づくような印象の中で守屋次官が話をされて、不確定なことでもいいから、だれだれであるというふうに思いますという形でしゃべってくださいということから始まっております。

 十一月二十九日付の読売新聞記事においては、証人喚問で、宮崎容疑者との宴席に同席した政治家として額賀財務相、久間章生元防衛相の名前を出した理由は。その答えは、記憶が間違っていることもある、御迷惑をかけたくないと言ってきたんだ、でも、言えって話だから。額賀財務相らが行っていないって言うから、今は、間違っていたんじゃないかと今度は不安になった、そういうインタビュー記事が載っております。

 私は、自分で、十二月四日については真剣に、自分の日程、長官時代の運行表、ジム・アワーさんとのかかわり、すべてのことを調査した結果、これまで、どの委員会においても、今述べたようなことを申し上げてきたわけであります。

 きょうあたりの雑誌では、額賀は宴席に出ていなかった、そういう報道がちまたの雑誌でも見られるようになりました。国民の皆さん方は、きっと私の潔白を信じてくれると思っております。

 ありがとうございました。

鈴木(克)委員 先ほど私も、国民の前に明確にお知らせをされた方がいいということを申し上げたわけでありまして、そういう意味で、今申されたことが、私は真剣に御答弁いただいたということについては理解をいたしたつもりでありますけれども、しかし、事実であるかどうかというのは、これからやはり国民の皆さんやそしてまた司直で、いろいろな関係の中でまた解明をされていくのではないかなというふうにも思っております。

 そこで、もうこの質問についてはこれ以上深くさせていただくつもりはありませんが、財務大臣として、今度はちょっと別の角度でお伺いをしたいんです。

 今回の防衛省の一連の不祥事をごらんになっておって、来年度の予算編成についてどんなお考えをお持ちなのか。当然のことながら、赤字国債を発行しながら来年度予算もまた編成をされていくと思うんですけれども、そういう中で、防衛省関連のこの一連の大きな疑惑の中で、予算について今大臣はどんな御所見をお持ちなのか、お示しをいただきたいと思います。

額賀国務大臣 防衛省における今度の不祥事は、国民の信頼を失墜するものであり、司法手続によって事実関係が明らかになっていくものと信じております。

 予算編成に当たっては、安全保障は、日本の防衛は、国家国民の安全と身体生命を守る上で不可欠のものであります。しかしながら、効率的に、合理的に、真に必要なものを予算化していかなければならない。厳しい態度で査定をし、予算を編成してまいりたいというふうに思います。

鈴木(克)委員 大臣、今まさに、予算は効率的、合理的であるべきだというふうにおっしゃいました。そうしますと、一連のこういった、もちろんまだ解明はされてはいないわけでありますけれども、防衛省の報道されておるような不祥事や、また、一部事実として出てきておる不祥事で、これが果たして本当に効率的な予算編成であったのか、合理的な予算編成であったのかということを我々はもう一度原点に立ち返って振り返ってみる必要があるのではないのかな、このように思います。

 そこで、自衛隊というのは二十五万人の方々がおみえになります。ある意味では日本で最大の官庁ということが言えると思うんですけれども、この自衛隊員の皆さんが今回の一連の報道そして疑惑に対してどんな思いでみえるのかな、私はそんなふうなことを考えるわけであります。

 そこで、引き続き大臣にお伺いしたいんですが、大臣は防衛庁長官を御経験なさってきたわけですね。その防衛庁長官の経験者として、今のこの一連の不祥事をどのようにお感じになっておるのか、お示しをいただきたいと思います。

額賀国務大臣 私は、九八年と、二〇〇六年でしたか、二回防衛庁長官をしておりますけれども、九八年も調達実施本部の不祥事がありました。このときに水増し請求事件というのがあったわけでございますけれども、本部を解体して、そしてチェック体制を、全部組織を変革して、再びこういうことがないようにと思って対応させたことがあります。

 それから、先般は施設庁の談合事件が起こったわけであります。この際も、施設庁を解体して、内局と全部組み入れて、施設庁の特権を全部破壊したわけでございます。

 今度、また三たびこういう不祥事が起こったことに対して、国民の皆さん方にどういうふうに説明ができるのか、大きなショックを受けております。しかもなおかつ、トップレベルでこういう事態が起こったことは極めて重大なことであると思っております。

 今、政府で、内閣で、防衛省全体の組織あるいはまた意識、あるいは調達、あるいはシビリアンコントロール、さまざまな改革の審議を始めたと聞いております。政府を挙げて防衛省の新しい改革をしてスタートしてくれることを期待したいと思います。

 我々も努力をしていかなければならないというふうに思います。

鈴木(克)委員 今大臣は、率直に、残念なことだ、そして反省もしておる、国民の期待にこたえていかなきゃならない、全く私もそのとおりだというふうに思います。

 それで、本題の質問に入りたいと思うんですが、あと二点だけ、あえてちょっと大臣にお伺いをしたいので、申しわけありませんが、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。

 日米平和・文化交流協会についてなんですが、たしかことしの八月まで理事をなさっておったというふうに伺っておるんです。確認としてお伺いしたいんですが、いつからいつまで理事をなさっておったのか。実は、協会の方へ問い合わせたら、文書で出せということで教えていただけなかったものですから、だったら大臣に直接お伺いした方が早いんじゃないかということで、お伺いしたいと思います。

額賀国務大臣 平成十七年八月から十月までの二カ月弱と、平成十八年十一月から十九年八月までの九カ月余り、十カ月弱ですか、この二回であります。

鈴木(克)委員 これに関して最後にさせていただきます。

 理事の役割というのは、私は勉強不足でわかりませんので、ちょっと教えていただけたらというふうに思います。

額賀国務大臣 理事をしているといっても、私の中心的な仕事というものは、この日米平和・文化交流協会が中心となって、日米間で、安全保障の問題だとか地域の問題だとか、あるいは日米同盟関係について、政治家、学識経験者、さまざまな分野の方々が一堂に会してシンポジウムを開いたり、討論をしたり、議論をしたりする中で、日米同盟関係の信頼とこのアジア太平洋地域の安定をどういうふうに構築していくかということが主要なテーマでございまして、そういう趣旨に賛成をして、私はシンポジウムとか討論に参加をさせていただいているわけであります。

 一年ちょっとの二回にわたる理事でありましたけれども、理事という肩書を持っておっても、日常の業務にまで携わることはありません。立場ではありません。したがって、一つ一つのことについていろいろと承知をしているわけではない。

 本来の政治家としての私の立場としては、そういう大きな視点から、日米同盟や地域の安全保障についてどういうふうにこたえていくか、それを理論構築し、国民的な理解を得ていくためにはどうしていったらいいのか、あるいは、世界との信頼関係をどうつくり上げていくのか、それが本来の私どもの目標でございました。

鈴木(克)委員 文化交流協会がどういうことをやってみえるのかということで、今、日米同盟やアジア太平洋の安定の研究等、そういったものをおやりになっておるということはよくわかりました。ありがとうございました。

 最後にさせていただきますけれども、その日米平和・文化交流協会が、防衛庁の発注であった福岡県苅田の毒ガス処理事業の調査業務を受注されたということなんですが、日米同盟、アジア太平洋の安定ということとちょっとそごがあるような気がしますが、いずれにいたしましても、理事当時、そういうようなことを御存じであったかどうか、それだけちょっとお聞かせいただけませんか。

額賀国務大臣 私は、遺棄化学とか何かについて知ったのは最近の報道とかそういうことでございまして、あなたがおっしゃる苅田何とかというのは、調べたところ、平成十五年ごろのことなんだそうですね。それはもう、私は理事でも何でもないし、全く知る由もありません。

鈴木(克)委員 中国からお帰りになってお疲れのところ、いろいろとお伺いしたわけでありますが、私は、やはりこういう委員会の場で大臣みずからがきちっと説明をされるということについては大事なことだ、このように思います。

 委員長、百三十四条の御指摘を私もこれからきちっと踏まえて委員会の質問をさせていただこうというふうに思いますが、私は、きょうの質問は、これで国民の前に、一つの大臣の姿勢そして考え方を示したということであった、このように理解をいたしておるところでございます。

 大臣におかれましては、ぜひひとつ、財務大臣として、そして防衛庁長官経験者として、いわゆる予算、大変財政の厳しい中での予算編成についてどのような形にやっていかれるのか、我々も注目をして、そしてまた意見があればどんどん具申をさせていただきたい、このように思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。

 それでは、本題に入らせていただきたいと思います。大変お待たせをいたしました。

 今回のいわゆる振り込め詐欺救済法、これは、不幸にして被害に遭ってしまった方々を救済する手段としては大変すぐれた考え方だと、先ほどの自民党の委員からの御質問のとおり、私も評価をいたしております。

 もう大臣は結構でございます。済みません。

 我が党においても、さきに与党が出された法案と同様の趣旨の案をまとめておるわけでありますが、ただ、大きく言えば三点違っておる、このように思っております。その第一点が、先ほども自民党の委員の方からの質問にもあったわけでありますが、公告期間の件であります。

 与党案では、言うまでもありませんけれども、預金消滅手続のための公告期間六十日間、そしてその後、消滅した預金債権を原資とする被害回復分配金の手続のための公告期間三十日ということであります。私は、与党案の九十日間というのは少し長いのじゃないかということでございますが、先ほども御答弁ありましたけれども、もう一度与党から、そして民主党から、この期間について御説明をいただきたいと思います。

大口議員 鈴木委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 これまでの質問でもお答えをさせていただいたと思いますけれども、与党の議員立法の作成におきまして、葉梨委員からも非常に苦労話がありました。裁判所の判断を経由すべきではないか、こういう意見も強かったわけですね。しかし、訴訟費用等の面、また、被害者に過大な負担をかける、こういうことで、何か知恵はないかということで考えたときに、遺失物に関する法律があるということで、ではこれを参考にしましょうと。

 遺失物の場合は、大体、紛失する方が一人ですよね。それに対して拾った人が一人。非常に単純なわけでありますけれども、この振り込め詐欺の問題につきましては、たくさんの被害者がいらっしゃる。そういう点でも、手続的には遺失物より複雑ではあるわけです。しかし、非常にこれは参考になる法律ということで、その単純な件であります遺失物法においても、期間を三カ月すなわち九十日としているわけですね。ですから、この九十日というのは、一つ法体系全体の並びで考えますと、非常に参考になる日数であるなと。

 そして、預金等債権の消滅手続の公告期間として六十日以上設ける。これにつきましても、先ほども答弁させていただきましたが、口座名義人が振り込み利用犯罪行為と無関係な場合ということを防止するためにも、やはりある程度の期間が必要である。それから、振り込み利用犯罪行為の被害者の財産的被害の迅速な回復を図る必要がある。ということは、余り長過ぎてもいけない。

 そういう中で、非訟事件手続法百四十五条に、公示催告について、権利の届け出を催告するための公示催告期間が二カ月を下ってはならない、こういう規定がある。そういうことで、六十日以上ということを第一段階としたわけです。それで、失権手続は六十日。

 それから、被害回復分配金の支払い手続につきまして三十日以上と設定したことについては、被害者の申請の機会を十分に確保する、そして、被害者の財産的被害の迅速な回復が必要である。こういう法体系において何かないかというときに非常に参考になるものとして、平成十八年に成立した犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律、こういうものがあって、犯罪被害財産の支給の申請期間が三十日以上であるということでありますので、こういうことを総合的に考えますと、六十日と三十日で九十日がいいのではないかということで九十日間という公告期間にさせていただいたわけです。

 六十日の失権手続におきましても、本当に被害者の方々に対していろいろな形でそういうお知らせもできますし、九十日ということで、複雑な、要するに被害者がたくさんいる中でも、これぐらいの期間は確保しておく必要がある、こういうことでございます。

階議員 民主党案についてお答えさせていただきます。

 委員御指摘のとおり、私どもとしては、合計九十日間という期間は短縮する余地が十分にあるというふうに考えました。と申しますのも、手続を二つの段階に分けた場合はある程度の期間必要になるかと思うんですが、私どもの案は、両手続を一本化して同時並行的に進めます。それでトータルで六十日ということですから、与党案で言う権利消滅手続、支払い手続、この二つを六十日間で全部やってしまうということですから、もし仮にこれを二段階になぞらえてみれば、合計百二十日間の期間を確保しているわけでございます。

 そういった意味で、期間を全体で短縮しつつ、かつ各当事者の手続の参加の保障を十分にしているということでございますので、私どもの方が、期間を短くし、かつ手続参加の保障をしているという点で、よりいい案ではないかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 私も、なるべく短い、九十日を六十日ということであるならば、その方がさらに法案としてはいいのではないのかなと個人的には考えております。

 続いてお伺いをしてまいりますけれども、民主党案では、金融機関の立証責任を預金保険機構側に置いて、金融機関の手続に過失があったことを証明しなければならないということになっておるわけでありますが、この点について民主党側から説明をしていただきたいと思います。

    〔委員長退席、後藤田委員長代理着席〕

階議員 与党案では無過失の立証責任を金融機関が負うということでございますが、一般論として、無過失の証明というのは、ないことの証明というものでございまして、司法の世界においては、これは悪魔の証明とか言われて、非常に困難であるという議論があるわけでございます。ないことを証明するよりも、あることを証明する方が簡単なわけでございます。

 ですから、この場合ですと、過失がないということを金融機関が証明するのではなくて、相手側である預金保険機構に、過失があるということを証明させた方が、より立証責任の分担としては公平であろう。

 ただし、そういうことになりますと、預金保険機構の側では、手持ちの証拠がなくてどうやって過失があることを証明するんだという問題があることは、先ほど与党側の委員からも御指摘があったとおりでございます。私どもの案としては、金融機関の方で所定の書類を添えて預金保険機構に対して支払いの請求をする、その書類などによって、預金保険機構の側で、金融機関に手続について過失があるというふうに認めるのであれば、その段階で、過失があるとして支払いを拒絶する、そういうたてつけにしたものでございます。

鈴木(克)委員 無過失の証明は悪魔の証明だというのを私も教えていただいて、いい勉強になりました。そういうことを聞きますと、立証責任は、金融機関側ではなくて預金保険機構側に持たせる方がいいのではないのかなというふうに私は感ずるわけでございます。

 三点目ですけれども、本制度の周知広報についてお伺いをしていきますが、金融機関から連絡がつかない被害者等は本制度を知らないままでいる可能性もあるわけであります。したがって、本制度についての広報を政府が行うことが必要だというふうに考えるわけでありますけれども、これについては民主党側はどのように考えてみえるのか、御答弁をお願いします。

階議員 委員御指摘のとおりでございまして、被害者の側でこの手続の存在を知ることができなければ、被害者救済というこの法律の意義は著しく損なわれることになります。

 そこで、私どもとしましては、この制度は全くオリジナルな制度であるというふうに、先ほど、与党案、葉梨議員の方からも御説明ありましたとおり、全くオリジナルで、前例がないものですから、徹底的に周知広報を図り、被害者によく理解、御認識いただいて、そして積極的に参加していただく。そういった意味で、周知広報というのは必要不可欠ではないのかというふうに考えております。

鈴木(克)委員 警察庁の方から来ていただいておるというふうに思うんです。

 言うまでもありませんけれども、毎年、こうした振り込め詐欺の被害に遭われる方、本当に善良な人たちが後を絶たないわけであります。被害総額は二百五十億とも二百八十億とも言われる、大変な巨額になっておるわけでありますが、携帯電話や預金口座を使って、犯人の顔が見えないというような特徴もあってなかなか犯人の摘発が進んでいかないということで、非常にもどかしい思いがいたしておるところであります。

 警察においても、被害に遭わないようなさまざまな防止策をお立てになっておるというふうに思うんですけれども、しかし、一方で手口が巧妙化していくということであります。イタチごっこというのか、本当に難しい状況にあると思います。

 そこでお尋ねするんですけれども、最近における振り込め詐欺事件の特徴、そして被害の実態、あわせて、被害防止に向けた警察の取り組みについて御説明をいただきたいと思います。

米田政府参考人 振り込め詐欺につきましては、従来は、いわゆるおれおれ詐欺それから架空請求詐欺及び融資保証金詐欺、この三類型で統計をとっておりました。

 しかしながら、昨年六月ぐらいから、新たに、還付金等詐欺と私どもが呼んでおる類型があらわれております。これは、税務署等をかたりまして、税金の還付が受けられます、その必要な手続をしなければなりませんということで被害者をATMのところまで行かせまして、そして指図して、このように操作をするんですよと。被害者としては、当然、それで自分の預金口座にお金が入ると思っているんですが、実は自分の預金口座から相手の口座にお金が流れてしまう、こういう詐欺でございます。これが最近非常に目立っております。

 これらを合わせました振り込め詐欺全体でございますが、本年十月末現在、認知件数としては一万四千二百件、被害金総額が百九十七億というところまで来ております。もちろん、前年同期に比べまして、件数で約八・二%、被害金額で約三・三%減少にはなっております。減少にはなっておりますけれども、本年一月は九百八十五件でございました。それが月を追うごとに増加してまいりまして、十月には千七百六十件ということで、一たん減ったものの、また情勢は非常に厳しいところまで来ているという認識でございます。

 これに対する対策でございますけれども、警察としてはまず検挙であります。

 これは、振り込め詐欺の本犯の検挙のみならず、犯行に用いられる口座とか携帯電話の売買等の、犯行を助長する、あるいは犯行の手段を提供するような犯罪の検挙に努めております。ちなみに、検挙件数は、本年は十月末までで、前年同期比の一七・二%増の二千四百八十六件となっております。

 それから、被害拡大防止策をやっております。一番は金融機関に対する口座凍結依頼、あるいは携帯電話事業者に対する契約者確認の求めでございますけれども、口座凍結依頼につきましては、本年上半期、振り込め詐欺関係では約一万一千件の依頼をしておるところでございます。それから、最近は、口座以外に、EXPACKとか現金書留とか、そういった手段で現金を送らせるという手法も目立っております。したがいまして、その送付先の住所を公表し、さらには郵便局等にお知らせをするということもしております。

 それから、未然防止策といたしましては、金融機関と連携をいたしまして、窓口でそれらしい人がいれば声をかけてもらう、必要に応じて警察官もそこへ臨場するというようなこともやっておるところでございまして、また、金融機関初めいろいろな事業者に本人確認をお願いするということをやっております。

 なお、振り込め詐欺に最近よく利用されます私設私書箱につきましては、本年の通常国会で成立をいたしました犯罪収益移転防止法、これが、まだこの部分は施行されておりませんけれども、来年三月までに施行される予定でございます。これによりまして私設私書箱の契約者の本人確認というものも義務づけられますので、このような制度も使いながら未然防止にも努めてまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 ありがとうございました。

 被害に遭われた方を救済するという法律を今我々は議論しておるわけでありますけれども、もちろんそれは大事なんですけれども、もっと大事なのは、被害に遭わないということが本来ではないかなと思うんです。今、金融機関では本人確認を窓口でやっておるわけでありますけれども、しかし、実際には毎年二百五十億にも及ぶ被害が出ておるということであります。

 お伺いしたいんですが、振り込みの種類によっては本人確認が必要ないというようなものもあるようでありますが、いずれにいたしましても、本人確認と、そしてその効果というのをどのように考えてみえるのか、金融庁の方から御答弁をいただきたいと思います。

渡辺国務大臣 鈴木委員御指摘の本人確認が必要ないというケースは、預金口座からの振り込みについては、適切に本人確認がなされていれば足りると考えられることから、基本的に本人確認を不要といたしております。

 十万円を超える現金振り込みを行う場合には、本人確認が御案内のように義務づけられております。本人確認法に基づいた本人確認義務が課せられております。これは、金融機関等には預金口座の不正な利用の防止を図る必要があるためでございます。

 また、組織的犯罪処罰法に基づいて、マネーロンダリングやテロ資金供与等に関する疑いのある取引について、疑わしい取引の届け出義務などが課されているところでございます。これらによって、マネロンやテロ資金の供与の防止に効果があると考えております。

 また、先ほどの本人確認が必要ないというケースに当たりますが、十万円を超える現金振り込みであっても、国または地方公共団体に対する金品の納付または納入に係るものに限り、本人確認の対象から除外をいたしております。これは、犯罪収益の隠匿、収受に利用されるおそれがない取引と考えられるからであります。

 金融庁としては、法令を踏まえ、監督指針や金融検査マニュアルにおいて、金融機関等が本人確認や疑わしい取引の届け出を適切に行うための体制を整備することの重要性を指摘してきたところであります。これらに従って適切に検査監督を行ってまいります。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきますけれども、今申し上げましたように、我々は、被害に遭った方々をどうやって救済するかということを真剣に議論しておるところであります。しかし、もっと大事なのは、被害に遭わないように、そして被害者を出さない工夫をしていくことが大前提というか、それが最も大切なことではないかなというふうに思います。

 これからも、ひとつ渡辺大臣のもとでいろいろと手段を講じていただいて、こういう被害が出ないような方策をぜひとっていただきたい、このことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。

後藤田委員長代理 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 与党案、民主党案、それぞれ振り込め詐欺の被害を救済するというものでありまして、両案とも私は前向きな内容であるというふうに思います。

 そこで、両案に共通する問題点を幾つかただしておきたいと思います。

 本法案が言う振り込み利用犯罪行為というのは、「詐欺その他の人の財産を害する罪の犯罪行為であって、財産を得る方法としてその被害を受けた者からの預金口座等への振込みが利用されたもの」こういうふうになっているわけですね。つまり、犯罪行為の要件は被害者の預金口座への振り込みということである。

 この法案提出の背景は、振り込め詐欺事件、これを中心で考えられたと思いますけれども、被害者の預金口座への振り込みというふうになりますと、少し広いと思うんですね。

 そこで、その他対象となる犯罪というのはどういうものを想定されているか。まず、これは与党の方にお聞きをしておきたいと思います。

葉梨議員 ほとんどが詐欺であることは間違いございません。先ほど刑事局長の答弁にもありましたとおり、振り込め詐欺の態様というのは非常に多くのものがある。

 詐欺以外で何だという御質問だと思いますけれども、刑法犯として典型的なものは恐喝がございます。恐喝で振り込ませる。それから、あと特別法犯の場合がございまして、例えば、やみ金融などで預金口座への振り込みが利用されるといったような、経済犯といいますか、特別法犯ですね、こういったものがこの対象となってくるわけです。

 いずれにいたしましても、刑法、特別刑法の中であっても財産犯である、それから振り込みが利用されているというこの二つの要件を我々は考えております。

佐々木(憲)委員 振り込め詐欺というような犯罪の場合は、利得を確保するために、入金されたらすぐ引き出してしまうというのが通例ですね。そこで問題は、一番最初の段階が大変重要でありまして、残っていなければ配分もできませんからね。ですから、最初の、犯罪利用預金口座の疑いのある口座に「取引の停止等の措置を適切に講ずる」判断基準、ここが大変大事だというふうに思います。

 そこで、両提案者が想定している要件は、「捜査機関等から当該預金口座等の不正な利用に関する情報の提供があること」と「その他の事情を勘案して犯罪利用預金口座等である疑いがある」こういうふうになっておりますが、捜査機関等からの情報の提供、これは従来の我々の体験からいうと、偽造・盗難カードの被害あるいはやみ金被害、こういう場合は、警察に言ってもなかなかすぐ対応してくれないということで、なかなか警察自体が犯罪行為と認めないということが多いんです。捜査機関からの情報提供というふうになりますと、認定する手続に非常に時間がかかり過ぎまして、結局のところ救済に役立たない、こうなってしまいます。

 例えば、これは日弁連等が提案しているんですけれども、捜査機関の情報提供以外にも、例えば、本人確認がなされた被害者が被害の具体的事情を申告し、凍結等の要請をしたとき、その他これに準ずる事情、そういう場合も取引停止というようなことをやるべきではないか、こういう提案をされているんです。

 こういう立場は、私はなるほどと思いまして、迅速な預金口座の凍結を行う上でこれは効果があると思いますが、この点、民主党の提案者はどのようにお考えか、お聞きをしたいと思います。

階議員 委員御指摘のとおりでございまして、まず口座凍結をしないことには被害回復はままならない、そのためには口座凍結を速やかにする必要があるということで、おっしゃるとおり、捜査機関の情報提供をまつまでもなく、信頼できる形での情報提供があれば「捜査機関等」の「等」に当たるということで、口座凍結はすべきだというふうに考えております。

 また、この点については、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた上でガイドラインなどの形で統一的な基準が定められるものというふうに伺っております。この点については、実は私も、金融機関に勤めていた時代も、捜査機関の情報提供がなくても、弁護士さんからそういうような情報提供があったり、また、被害者の方とよく面談して、信用性があるというふうに判断した場合には、実務上、口座凍結をしておりました。

 そういった形で今度のガイドラインも定められるものというふうに考えておりますので、御懸念の点は大丈夫かと思います。

佐々木(憲)委員 次に、預金等に係る債権の消滅手続という問題ですが、法案では、疑うに足る相当な理由があると金融機関が判断した場合となっておりますね。法案では、相当な理由を判断する基準ということで四点挙げておるわけですね。一つは捜査機関等からの情報提供、それから被害状況について行った調査の結果、それから名義人の住所への連絡等による名義人の状況についての調査の結果、預金口座等に係る取引の状況、この四つを挙げられているわけです。

 相当な理由という場合、預金口座を債権の消滅を行う場合には、この四つが基準になっている。しかし、凍結を判断する場合、最初に私が申し上げました凍結、最初の凍結という場合の判断、これは判断基準に差があるわけですね。そういう認識でよろしいですね。では、与党案。

柴山議員 この部分は、民主党の提案と私どもの提案で差がないものと考えますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 今、階議員の方から御答弁がありましたとおり、口座の凍結ということに関しましては、要は、名義人、いわゆる加害者がこれを引き出すのを何とかして食いとめなければいけないということで、もちろん金融機関側の債務不履行のリスクというものはありますけれども、比較的迅速性に重きを置いた形で凍結等の運用をしなければいけないという必要性があるのに対しまして、佐々木委員が御質問されたとおり、失権という部分に関しましては、むしろ、より名義人の権利保護にしっかりと重きを置いた形での扱いが必要になるというわけで、御指摘の法四条の各号に、失権をさせてもやむを得ないという形で、これはあくまでも例示列挙でありますけれども、相当の理由というものを書かせていただいた次第でございます。

 なお、これに加えまして、先ほど階議員の方から法三条の方について御説明があったのと同様、金融機関が行う認定方法の詳細につきましては、全銀協等の業界団体で、実務を踏まえた形でガイドライン等の統一的な基準ですね、口座売買を疑わせる相当な理由ですとか、あるいは異常な入出金、過去の履歴等と比較して異なる形での取引履歴が発生しているような場合等々、精緻な検討がされているというように承知をしております。

佐々木(憲)委員 具体的な事例でお聞きしたいんですが、例えば、被害者Aという方が、一千万円を振り込んだ直後にそれが詐欺だと気がついた。その後、振り込み先の口座が凍結をされた。その口座の残高を見ると一千万円であった。しかし、所定の手続に従って公告を行ったら、その以前の、過去の被害者が九名出てきて、各人一千万円の被害を申し出る。そして、その被害は確認をされる。そういう場合、被害回復分配金は、このAさんを含め十人になりますから、百万円ずつ、一人百万円ということになりますね。

 被害者Aさんへの回復というのは、自分のお金が最後に残ったわけですから、本来それは被害救済を厚くすべきではないのか、そういう議論がありますけれども、与党はこの点はどのようにお考えですか。

    〔後藤田委員長代理退席、委員長着席〕

葉梨議員 先ほども議論がございましたけれども、ケースがたくさんあるんですね。私も遺失物法の担当の課長補佐を二年間、詐欺罪の捜査を六年間やっておりましたけれども、いろいろなケースがございます。まさに佐々木先生言われるようなケースというのも結構ございます。そして、今、銀行の実務を聞いてみましたら、どういうふうにやっているかというと、まず直近の一千万に返してしまうという銀行もあれば、ほかの十人が名乗り出てくるかもわからないから返せないという銀行もあれば、もう本当に銀行ごとにばらばらなケースになってしまっている。

 そこで、私ども考えましたのは、だからこそこの失権手続というのをかっちりやらなきゃいけないんですけれども、一つには、そういう方というのは、まず、一千万円で被害を受けたら、すぐに銀行に届ける。一番最初に届け出をしたから、一千万円私のところに返ってくるという大きな期待感があるんです。ところが、この法律で失権で六十日ということになって、その後三十日になりますと十人に分けられてしまう。百万円ずつになってしまうという方は、多分一千万円を、一番直近のもので、その前がゼロだから、訴訟手続に乗せてくれという形で、訴訟手続に乗せるということもあるだろうと思います。

 それから、ちょっとこのケースとは違いますけれども、実は、振り込め詐欺の対象口座というのは、この法律によってだあっと広がってまいります。本当に一部しか返すことが今までできませんでした。ところが、恐喝の振り込みについても返すことができる、あるいはやみ金の振り込みについても返すことができるということになりますと、その口座の中に、生活口座と一緒になっている口座というのも結構出てくるだろう。そういう場合の失権手続というのはしっかりとかっちりやっておかないと、実際、生活口座と一緒になっているようなところに振り込みが行われているというものもありますので、まず失権手続をかっちりやるということにいたしましたが、今のような場合ですと、まずその千万円をぜひ返していただきたいという方については、訴訟手続によっていただくということになるだろうと思います。

 そして、この法律は、簡易の公告という手続でやるということになりますと、破産手続あるいは民事執行手続における配当、こういったものを考えまして、比例案分ということでそこのところは我慢していただこう、この法律の手続に乗っていくときは比例案分ということで考えております。

佐々木(憲)委員 同じケースで、これは民主党にお聞きしますけれども、いわば最後の被害者Aさんが被害と気がつかないという場合がある。その場合、前の九人に対して配分される。そうすると残らないわけですね。しかし、後で、一定期間たった後、Aさんが被害に気づいて被害回復分配金の支払いを請求してきた。しかし、もうないよということで払われない。これは何らかの措置が必要ではないかと思いますが、民主党はどのようにお考えでしょう。

    〔委員長退席、後藤田委員長代理着席〕

階議員 委員御指摘のとおりでございますが、その点については、被害者がこの手続に漏れなく参加できるように、政府として周知広報の規定をまず設けました。

 また、多分に理念的ではございますけれども、仮に被害者がこの手続で救済を受けられなかった場合でも、民事上の加害者に対する損害賠償請求とか不当利得に基づく返還請求といったことで被害回復をする余地は残っているということを申し添えておきます。

佐々木(憲)委員 時間が迫ってまいりました。

 あと一点だけお聞きしますが、被害回復分配金が決定した後で、預金口座の名義人が申請を行い、犯罪利用預金口座ではないということが認められる場合、消滅預金等債権は回復するという規定になっていますね。そして、この名義人には、権利の回復は、後でも期限は特にないわけですね。しかし、先ほどのAさんの場合は、一定期間後にはその権利を失うということになっていますね。これはバランスがとれていないんじゃないかと思いますが、最後に、与党にこの点をお聞きしたいと思います。

    〔後藤田委員長代理退席、委員長着席〕

石井(啓)議員 お答えいたします。

 口座等の名義人の預金等債権が誤って失権された場合については、本法案のような救済手続を設けないことには、もはや、民事手続によってその神聖な権利の回復ができないということになってしまいます。一方で、被害回復分配金を受けられなかった方については、この法案によって救済されなかったといたしましても、加害者に対する損害賠償請求権あるいは不当利得に基づく返還請求権が消滅するわけではない。こういったことから、理論的には権利行使の機会は残っているというふうに思っています。

 なお、つけ加えて申し上げれば、今回の法律案の中では、六十日の失権公告の期間あるいは三十日の支払いの公告の期間、こういう適切な期間を設けている。あるいは金融機関に対しては、被害を受けたことが疑われる者に対して情報提供その他の措置を適切に講ずるということで、被害者に対して周知の努力をしっかりと行わせていただいていることも申し添えたいと存じます。

佐々木(憲)委員 両案ともいろいろ特徴がありますが、調整不可能ではないと私は思いますので、ぜひ、全体で調整した上で、できるだけ早く成立をさせていただければということを申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

原田委員長 この際、委員長から一言申し上げます。

 ただいま議題となっております両案の今後の取り扱いにつきましては、理事会で協議をさせていただきたいと思います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時四十二分散会


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