衆議院

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第10号 平成20年3月19日(水曜日)

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平成二十年三月十九日(水曜日)

    午後五時五十九分開議

 出席委員

   委員長 原田 義昭君

   理事 大野 功統君 理事 奥野 信亮君

   理事 後藤田正純君 理事 田中 和徳君

   理事 野田 聖子君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    木原  稔君

      佐藤ゆかり君    篠田 陽介君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      平  将明君    谷本 龍哉君

      とかしきなおみ君    土井 真樹君

      中根 一幸君    永岡 桂子君

      西本 勝子君    萩山 教嚴君

      橋本  岳君    林田  彪君

      原田 憲治君    広津 素子君

      松本 洋平君    御法川信英君

      宮下 一郎君    盛山 正仁君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    笹木 竜三君

      階   猛君    下条 みつ君

      鈴木 克昌君    古本伸一郎君

      大口 善徳君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣         額賀福志郎君

   財務副大臣        森山  裕君

   財務大臣政務官      宮下 一郎君

   衆議院事務総長      駒崎 義弘君

   参議院議事部長      東海林壽秀君

   政府参考人

   (内閣法制局第三部長)  外山 秀行君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    西原 政雄君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    青山 幸恭君

   政府参考人

   (厚生労働省労働基準局労災補償部長)       石井 淳子君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房審議官)           佐々木昭博君

   政府参考人

   (国土交通省政策統括官) 伊藤  茂君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月三日

 辞任         補欠選任

  平岡 秀夫君     笹木 竜三君

同月十九日

 辞任         補欠選任

  越智 隆雄君     永岡 桂子君

  木原  稔君     御法川信英君

  佐藤ゆかり君     篠田 陽介君

  中根 一幸君     平  将明君

  山本 有二君     西本 勝子君

同日

 辞任         補欠選任

  篠田 陽介君     橋本  岳君

  平  将明君     中根 一幸君

  永岡 桂子君     越智 隆雄君

  西本 勝子君     山本 有二君

  御法川信英君     木原  稔君

同日

 辞任         補欠選任

  橋本  岳君     佐藤ゆかり君

    ―――――――――――――

三月十八日

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

同月七日

 消費税増税に反対することに関する請願(志位和夫君紹介)(第二九五号)

 庶民大増税反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第三二〇号)

 庶民増税反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第三二一号)

 消費税増税反対、住民税をもとに戻すことに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三二三号)

 保険業法の見直しを求めることに関する請願(笠井亮君紹介)(第三二四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三二五号)

 同(松木謙公君紹介)(第三四六号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三六三号)

 原油高騰に伴う営業・生活を守るために当面課税されている税金をゼロにすることに関する請願(吉井英勝君紹介)(第三四三号)

 保険業法適用除外を求めることに関する請願(穀田恵二君紹介)(第三六〇号)

 保険業法の適用除外に関する請願(古本伸一郎君紹介)(第三六一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三六二号)

 同(吉田泉君紹介)(第四〇五号)

 共済年金の遺族年金併給に関する請願(渡部恒三君紹介)(第四〇四号)

同月十七日

 ガソリン税の暫定税率廃止等を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四五〇号)

 同(石井郁子君紹介)(第四五一号)

 同(笠井亮君紹介)(第四五二号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四五三号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四五四号)

 同(志位和夫君紹介)(第四五五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五六号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五七号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五八号)

 消費税大増税の反対に関する請願(吉井英勝君紹介)(第四五九号)

 格差社会を是正し、命と暮らしを守るために庶民増税の中止を求めることに関する請願(志位和夫君紹介)(第四六六号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四六七号)

 庶民増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四九六号)

 同(石井郁子君紹介)(第四九七号)

 同(笠井亮君紹介)(第四九八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四九九号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第五〇〇号)

 消費税の大増税反対に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第五三五号)

 自主共済の健全な発展と運営に関する請願(内山晃君紹介)(第五六八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


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     ――――◇―――――

原田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣額賀福志郎君。

    ―――――――――――――

 関税定率法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

額賀国務大臣 ただいま議題となりました関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 政府は、最近における内外の経済情勢の変化に対応する等の見地から、関税率について所要の措置を講ずるほか、税関における通関制度の改革及び水際取り締まりの充実強化等を図ることとし、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明をします。

 第一は、国際競争力強化のための通関制度の改革であります。

 法令を遵守する体制を整えている事業者に対する特例措置の対象事業者の範囲を拡大するほか、臨時開庁手数料の廃止等を行うこととしております。

 第二は、税関における水際取り締まりの充実強化等であります。

 我が国を経由して第三国に向けて輸送される知的財産侵害物品等を取り締まり対象に追加するほか、犯則物件の鑑定及び民間団体等への照会に係る規定の整備等を行うこととしております。

 第三は、暫定関税率等の適用期限の延長であります。

 平成二十年三月三十一日に適用期限が到来する暫定関税率等について、その適用期限の延長を行うこととしております。

 その他、個別品目の関税率の改正等、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 本法律案については、今年度内に成立させることがぜひとも必要であり、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第三部長外山秀行君、金融庁検査局長畑中龍太郎君、監督局長西原政雄君、財務省関税局長青山幸恭君、厚生労働省労働基準局労災補償部長石井淳子君、農林水産省大臣官房審議官佐々木昭博君、国土交通省政策統括官伊藤茂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。盛山正仁君。

盛山委員 自由民主党の盛山正仁です。

 それでは、これから何点か、質疑に入らせていただきたいと思います。

 二〇〇一年の九月十一日、アメリカで同時多発テロがございました。そのとき、私は家でテレビのニュースをちょうど見ておりました。衛星中継で、テレビの画面が変わりまして、炎上するワールド・トレード・センターが出てまいりました。いや、大変なことになったなと思っておったら、しばらくすると二機目の大型の旅客機が、もう一棟の方のワールド・トレード・センタービル、二棟あるうちのもう一棟の方へ突っ込みました。そして、しばらく見ていると、二棟ともに上から崩壊をしていきました。大変な衝撃を受けたわけでございますけれども、そのときには、あの九・一一を契機にしまして、アルカイダ、テロとの闘いを初め、さまざまな変化がもたらされるというふうには私は気がつきませんでした。

 きょう、これからお尋ねをします関税法の改正と絡めてのセキュリティーの強化もその一つだろうと考えます。九・一一以降、飛行機に搭乗する際、ここにおられる皆様方ももう何度も経験されていると思いますが、旅客についてのセキュリティーチェック、持ち込み手荷物の中の検査はもちろんのこと、その中に入っておりますペットボトル入りの飲料、その液体が何であるか、あるいは瓶入りの化粧品、こういったものまでチェックされるようになっておりますし、コートや上着を脱いで検査をしろということもしばしばございます。さらには、靴まで脱いでチェックするような空港もあるぐらいでございます。

 旅客についても厳しいわけでございますが、同様に貨物についても、不審な荷物を預かることがないように、そういう観点からセキュリティーチェックがだんだんと強化されてきております。私の選挙区は神戸でございますけれども、神戸港に税関がございまして、そこには大型のコンテナ、二十フィート、四十フィートという大型のコンテナ、このコンテナを、一々あけて中に入っております貨物を外に一つずつ出すことなく、外から安全性を確認するような大型のエックス線検査装置が導入されております。テクノロジーは本当に進歩しているんだなと思うと同時に、税関その他、そういうような進化に合わせてシステムも近代化されているということに大変感心をしているところでございます。

 この九・一一があったということで、こういうセキュリティーのチェック強化に一番敏感なのはアメリカであると思いますけれども、そのアメリカの動き、あるいはヨーロッパそしてアジア、こういった諸外国で、今どういうふうにセキュリティーのチェックについて強化がなされているのか。こういう動向について、まず青山関税局長から御説明を伺いたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のとおりでございますが、二〇〇一年の九・一一以降でございますが、アメリカあるいはEU等の諸外国におきましても、国際物流におきますセキュリティーの確保と円滑化というこの両面を満たすために、例えば貨物のセキュリティー管理等にすぐれました事業者に対しましての通関手続上の優遇措置を与えているという制度が順次導入されているところでございます。

 アメリカがまず最初にやったわけでございますが、アメリカにおきましては、例の二十四時間ルール、すなわち米国向けの貨物につきましては、船積み二十四時間前に米国の税関当局に貨物の中身を連絡するというようなやり方、さらに、二番目でございますが、米国向け貨物につきまして、仕出し港におきまして米国税関等と一緒になってコンテナの検査をするというような、これはいわゆるコンテナ・セキュリティー・イニシアチブと言っております。

 さらに、今申し上げました、米国におきましての貨物のセキュリティー管理等にすぐれました輸入者さらには貿易関連事業者等を税関当局が承認いたしまして、段階的に審査、検査率の軽減等のいわゆるベネフィットを与えるという措置といたしまして、C―TPATと申しますが、カスタムズ・トレード・パートナーシップ・アゲンスト・テロリズム、こういう制度を導入してきているわけでございます。

 他方、EUにおきましては、ことしの一月からでございますが、EC関税法、カスタムズコードというのを改正いたしまして、同じようにコンプライアンスの体制等にすぐれました輸出入者さらには貿易関連事業者をそれぞれの国の税関が承認いたしまして、審査、検査率等の軽減等のベネフィットを与えるというようなことでございまして、これらの制度がことし一月からスタートしてございます。これはAEO、オーソライズド・エコノミック・オペレーターと申しますが、この制度を導入いたしまして、現在、申請を各国税関で受け付けているという状況であると聞いております。

 世界の動きでございますが、ニュージーランドの話を申し上げますと、輸出者を対象といたしましたSESという制度がございます。これはセキュア・エクスポート・スキームと言うのでございますが、ちょうど似たような、類似の制度でございますが、これが実施されておりますし、オーストラリアさらには中国、韓国、マレーシア等でございますけれども、こういうところにおきましても、AEO制度の導入に向けましたいろいろな準備がなされているというふうに承知しておるわけでございます。

 以上でございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 私の地元、神戸港は、コンテナ化が始まりました昭和四十年代後半には、我が国におけるナンバーワンポートでありました。また、それと同時に、世界の中でも一、二を争うコンテナ港だったわけですね。それが今では惨たんたる状況でございまして、世界の上位三十港にも入らない、そんなふうな状態になっております。

 阪神大震災があったということで、貨物の流れが神戸からほかのところに変わったということも大きな原因の一つだと私は思いますけれども、それだけではなくて、日本の港湾、空港ともに、全般的に国際競争力を失いつつあるのではないのかなと私は思います。国際競争力を強化していくためには、港湾や空港というハードの施設整備が不可欠でございます。

 北京オリンピックを控えていることもあると思うんですけれども、この十年をとってみましても、中国の港湾、空港ともに大変すごいスピードで、また大変な規模で、目を見張るような規模の整備が進んでおります。規模、スピードともに、日本の現在の公共事業というのでしょうか、港湾、空港の整備とは全く比較にならないということで、機会があるごとに、国土交通省を初め関係各位の皆様に、問題意識をもっと持っていただきたい、ただ整備すればいいのではないんだ、やはり時間という感覚をお役所の人には特に持っていただきたいんだ、そんなふうに言っているところなのでございます。

 ハードの整備につきまして、私、どちらかというと国土交通がメーンなものですから、つい申し上げてしまいましたけれども、同時に、ソフトの対応というのもやはり大変大事だと思います。幾らハードが整備されていても、運営や運用がうまくいかなければ、そういう施設をうまく生かすことはできない、あるいはそういうところに貨物は集まらない、こういうことになるんじゃないかと思います。

 例えば、貨物の受け入れについても、窓口の対応がいわゆるお役所仕事といったような形で、平日の日中の決まった時間だけといったようなことでは貨物が集まらないと思います。深夜、早朝、あるいは休日の応対についてもしっかりとなされているかどうか、そして手数料やコストもリーズナブルなものであるかどうか、そういったことがポイントになってくると思います。質と量、両方の面でうまくサービスが提供できなければ、お客さんの方からすると使いたいと思わない、そんな感じになるのではないのかなと思っております。

 財務省・税関では、これまでどのようにそういった点、ソフトの部分について対応をされてきたのか、お伺いしたいと思います。局長からお願いします。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃるとおりでございますが、ソフトの話、本当に私どもとしましてもこれはかなり大事だと思いまして、平成十三年の八月、二〇〇一年八月でございますが、国際物流改革プラン、これは私ども塩川大臣の時代でございますが、これの中におきまして、港湾の二十四時間フルオープン化の早期実現に向けた取り組みの促進ということが掲げられているわけでございます。

 私ども税関当局といたしまして、この翌年の平成十四年の十月からでございますが、コンテナ貨物の多い税関官署におきまして、今先生も御指摘のとおりでございますが、夜間あるいは土日でございますが、いわゆる税関の執務時間外におきます一定の時間帯におきまして職員を常置させるような通関体制の試行をやったわけでございます。さらに、その翌年から、全国の主な十四官署、先生の御地元でございますと、神戸税関の本関もございますし、あとポートアイランドと六甲アイランドも入ってございますが、ここにおきまして、職員の常駐体制ということを本格的に実施させていただいております。

 空の話でございますと、ここら辺につきましては、成田空港さらには関西空港等につきましては、これらの主要空港におきましても、従来から、深夜、早朝におきまして、あるいは休日におきまして、必要な職員を常時配置しているところでございますが、こういうことで、税関におきましては、サービス面におきます、いわば空港、港湾におきます深夜、早朝、さらには休日における通関需要というものに的確に対応させていただいているというところでございます。

 さて、では値段の議論でございますが、臨時開庁手数料というのがございます。これは実は大分長く続いている制度でございますが、こういう一連の流れの中で、平成十五年の四月からでございますが、いわゆる構造改革特区におきます特例措置といたしまして、まず、その手数料を半分にいたしました。さらにそれを全国展開いたしたのが平成十七年の四月でございます。また、昨年の七月からでございますが、後ほど出てまいると思うのでございますが、特例輸入者あるいは特定の輸出者、いわゆる認定されたAEOの輸出入者に係る部分でございますが、この手数料を通常の四分の一ということにしたわけでございます。

 さはさりながら、近年の企業の国際競争が激化している、さらには港湾自体の競争もどんどん激しくなってきておるということの中で、企業の側からすれば、リードタイムの短縮、コストの削減ということが一番大事になってくるわけでございます。そういう中におきまして、私どもは、深夜、早朝利用の促進ということから、今回の改正の中におきましては、臨時開庁手数料でございますが、これを全面的に廃止しようという案になってございます。さらにまた、職員の常駐時間帯におきましては、申請手続はもう要らないという形にして、それを廃止する等の見直しを行わせていただきたいということでございます。

 以上でございます。

盛山委員 局長、ありがとうございました。

 局長のこれまでの御答弁の中にも、AEO制度のことが出てきております。セキュリティーの強化、これとあわせて、差別化をするということによってスピーディーな処理をする。ただ単にセキュリティーの強化をするだけで、時間がかかって、手間がかかっては、やはり貨物が集まらない、だれも使わないということでの差別化、こういうことだろうかと思います。

 昨年五月十六日に取りまとめられたアジア・ゲートウェイ構想でも、「日本版AEO制度の構築」というふうに書かれているところでございます。こういった観点から今回の関税法の改正が提案されているんだろうと思いますけれども、差別化、つまり優良な事業者とそうでない事業者をしっかり差別しながら、しっかりしているところには簡易な手続でメリットを与える、こういったことも含めて、国際競争力強化、AEO制度の拡充をどのようにしていくのか、大臣からお答えをいただければと思います。

額賀国務大臣 私も、選挙区は鹿島港を抱えて、成田空港に近いところでございますけれども、おっしゃるように、やはりこれだけグローバル化している中で、昼夜を分かたず飛行機が飛んできたり船が入ってこないでは、日本の競争力というのはついていかないという思いは先生と一緒であります。

 おっしゃるように、今のAEOについては、これは、民間企業と税関のパートナーシップをきちっとして、国際貿易における安全確保、円滑化に資するものという形でこれから推進をしていこうということであります。これまでの輸出入業者、倉庫業者に加えまして、通関業者や船会社、航空会社、貨物利用運送業者等の貿易関連事業者も制度の対象とするということでありますから、より以上にこの連関性を強めていく、パートナーシップを強めていく、そして国際物流全体に拡大をしていくということであります。

 これらの事業者が関与する輸出入貨物について、より迅速、スピーディーに、かつ簡素な通関手続が可能となる、そういうことによって多くの貨物の引き取り時間の短縮が図られて、国際競争力が強まっていくことが期待されるということでございますので、優良な業者を育てていく、そういうことが日本のセキュリティーにもプラスになるし、貿易関係の拡大にもつながるということで、これから大いに進めていくことが大事なことであると思っております。

盛山委員 大臣、ありがとうございました。

 今大臣の御答弁の中でも、これまでのAEO制度は、荷主であります輸出入事業者と倉庫業者、これらを対象とするものから、物流事業者であります外航海運会社や航空会社、こういうところへ拡大をしていくというふうに御説明をいただいたところでございます。

 当然のことながら、物流事業者を所管する国土交通省と財務省で十分な調整をしておられることと思いますが、まず財務省の方から、国土交通省と今後どのように連携強化をしていくおつもりなのか、局長からお答えをいただきたいと思います。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 船会社あるいは航空会社等々の物流事業者につきましては、当然のことながら、当該業務を所管しております国土交通省と連携いたしまして承認の審査を行うようにしてございます。

 具体的には、承認要件の一つでございます法令遵守規則のうち、国土交通省が所管するような業務に係る部分につきましては、当省が審査し、必要に応じて合同で立入検査を行い、これらの結果を受けまして、最終的には、これは申請は税関にやるものですから、申請を受けた税関長が承認ということにしたいと思っておるわけでございます。

 また、承認後におきましても、必要に応じまして合同で立入調査を行うなど、事後の調査におきましても連携を図っていきたいというところでございます。

 以上でございます。

盛山委員 局長、ありがとうございました。

 今財務省から御説明があったところでございますが、物流事業者を所管する国交省としては、財務省とどのような連携を図っていかれるのか、あるいは、せっかく今回物流事業者も対象となるわけでございますから、これまでの輸出入事業者あるいは国交省が所管する倉庫業者だけではなく、外航船社、航空会社といった物流事業者とどのように今後この制度を有効に生かすように連携強化を図っていかれるのか、国交省の方からお答えをいただきたいと思います。

伊藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今話題になっておりますAEO制度でございますけれども、この制度の導入で期待される効果として、セキュリティーの強化と効率化の両立という事柄でございます。これは実は、御案内のとおり、平成十七年の十一月に閣議決定をされております物流施策大綱においても、セキュリティー強化と効率化の両立というのが大きな柱の一つとされております。運送業を所管しております国土交通省といたしましても、これは大変重要な課題だと認識しております。

 こうした観点から、平成十六年度からでございますが、政策群の一つとして、安全かつ効率的な国際物流の実現というタイトルで、いわゆる施策の取りまとめを行うために、財務省を含めました関係省庁あるいは事業者の皆様、ここには物流あるいは輸送事業者が入っているわけでございますけれども、こういった関係団体から構成されます協議会が設けられまして、当省もこれに参画をして、実質的にその事務局を務めております。

 その成果の一例をちょっと申し上げますと、平成十八年三月、二年前でございますけれども、事業者が自主的にセキュリティーの管理を促進するというための保安措置強化のガイドラインというのを実は策定しております。

 今回の関税法の改正案では、AEOの制度の対象が、先生御指摘のとおり、当省が所管いたします船会社であるとか航空会社、あるいは貨物利用運送事業者、いわゆるフォワーダーでございますけれども、こうした国際貨物の運送に従事する方々に拡大をされておりまして、事業者の方々はこれを大いに評価し、また大変期待をしていると伺っております。

 一方で、この制度では、こうした事業者がセキュリティー管理やコンプライアンスの体制にすぐれた者として税関長の承認を受ける必要がございまして、ちょっと細かいことになりますが、承認要件の一つとして、事業者がみずから法令遵守規則を定める、こういう仕組みになっております。

 この規則に記載される事項につきましては、先ほど申し上げました協議会のもとにワーキンググループを設けまして、財務省と緊密な連携のもとに、事業者の方々がみずからつくる法令遵守規則のいわゆるモデル案というものを、これも先ほど申し上げましたガイドラインというもの、でき上がったガイドライン、二年前のガイドラインを参考にいたしましてこれの策定を進めている最中でございまして、これは三月までに完成をしたいと思っております。今申し上げましたのは、いわゆるこの制度の実施の準備段階の、財務省と私どもの連携の一例でございます。

 また、これは重複になりますが、業所管のお話もございましたとおり、本制度が実施されました際には、その後の手続、具体的には税関長が行う承認に際しての審査あるいは立入調査につきましても、業所管をしております国土交通省が、財務省に対しまして、私どもの組織や人員を大いに活用する形で積極的に協力を行いまして、この制度の円滑な実施に努めてまいる所存でございます。

盛山委員 伊藤統括官、御丁寧な説明ありがとうございました。

 今るる御説明があったこのAEO制度でございますが、我が国だけでAEO制度を活用するということでは、その効果に限界がございます。アメリカはもちろんのことでございますが、できるだけ多くヨーロッパやアジアの諸外国と連携をしていくこと、できたら一つのシステムでどこでも同じように使える、そういうふうになればどんどん使いやすくなるわけでございます。

 このAEO制度につきまして、諸外国との連携強化に向けてどのような交渉をしておられるのか、また、今申し上げましたマルチのシステムづくりについて、どのように取り組み、日本としてイニシアチブをとっていこうとしておられるのか、森山副大臣からお答えいただけると幸甚でございます。

森山副大臣 お答えを申し上げます。

 AEOの制度の推進に当たりまして、我が国と同様の制度を構築しております諸外国との間でAEO事業者の相互承認を行うことにより、より安全で円滑な貿易を実現し、我が国の国際競争力を強化する観点から大変重要であるというふうに考えております。

 このため、既に制度が実施されているアメリカ及びニュージーランドとの間では、昨年度より具体的な協議を進めているところでございまして、今後ともAEO制度の相互承認協議を進めていき、合意をしていくということが大事なことではないかというふうに考えております。

 今後、予定をしている国でございますが、オーストラリア、中国、韓国等の間で、お互いの制度の研究等を進めるなど積極的な取り組みを進めていこうとしているところでございます。

盛山委員 ありがとうございました。

 我が国は、四海を海に囲まれてと言うんでしょうか、国際的な物流に頼らないと食料、エネルギー、何でも本当に困るような国でございます。コンテナの輸送量も世界の中でも相当多い国でもございますので、ぜひ日本がイニシアチブをとって国際的なルールづくりをやっていっていただきたいなと心から願うものでございます。

 私は、役所におりますときに、もう大分たちますけれども、日米、日・EUの港湾運送の協議をちょうどたまたま担当いたしました。船会社、港運事業者、それぞれの方がそれぞれの分野で、自分たちの所管するところについてはこのように改善をしていくんだというふうにもちろん努力をしてはおられるわけなんですけれども、全体でまとまった形になって、本当にそういう努力の積み重ねがユーザーの目から見て使いやすいものになっているかどうか、そこのところは実はなかなかうまくいかないことがあるというようなことを私は強く感じました。その港運協議のときには、そういったことでアメリカやEUが、日本のそれぞれの部分の努力に対して不満を持って国際交渉になったというところでございます。

 きょう御説明いただきました税関関係のこういう改善、AEO制度を含めての改善については、そんなにもめていることはないわけでございますし、アメリカその他の国とも、きょう御説明がありましたように、これからこれをベースにどんどん連携を深められるということで、大変結構なことであると思っておりますけれども、財務省も関係各省も、どこもそうでございますけれども、目的は我が国の国際競争力を強化するためである、そして、ユーザーが使いやすいような制度をつくるためにやるのであるということをぜひ忘れないでいただきたいと思います。縦割りのそれぞれの御所管の部分だけではなく、ユーザーの視点に立って、どういうふうにすればここの港、ここの空港を使いたいと思うのか、そしてそれは、ひいては国際競争力の強化ということになります。常にそういう問題意識を持ってお取り組みをいただきたいと思います。

 最近は、ジャパンをもじってジャペインなんだと言われるようなこともございますけれども、そういうふうに諸外国からやゆされることがないように、積極的に、前向きにお取り組みいただくことを心よりお願い申し上げまして、私の質疑を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 民主党の松野頼久でございます。きょうは、ちょっと立法府の中での手続的な話を若干させていただきたいというふうに思っております。

 昨当委員会におきまして、所得税法等の一部を改正する法律案、強行採決によって参議院に送られました。その参議院に送られた状態の中で、実は今、民主党は一つ法案を、同じような内容の別の法案を提出させていただいております。

 お配りいたしました資料をごらんください。

 まず、資料の一。所得税法等の一部を改正する法律案の取り扱いについて、実はこのような報道がございます、これは報道ですから事実関係はわかりませんけれども。

 そういう中で、実は憲法五十九条というのがございまして、資料の二につけてあります。「衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律となる。」いわゆる三分の二条項と言われるものであります。

 きょうは、衆議院の事務総長、あと内閣法制局、参議院の事務局と来ていただいているんですが、この三分の二条項に対して、一枚めくってください、「「異なった議決」とは、」という、芦部先生という憲法学者の方がこのように述べております。「「異なった議決」とは、衆議院で可決して参議院に送附した法律案を参議院が否決した場合およびそれに修正を加えて可決した場合をいう。」要は、修正なり否決なり、いずれにしても決という、採決というものが必要だというふうに言っておるんですが、衆議院の事務総長、これは間違いございませんでしょうか。

駒崎事務総長 お答え申し上げます。

 これは、私は従来の例をまず申し上げたいと思いますが、従来の例では、法律案の再議決が行われたというのは、衆議院が、修正して回付してきまして、それに対しまして本院の方で同意をしない、同意をしないで本院の議決案を再議決した場合がまず一点ございます。それから、参議院において否決した法律案、これは参議院が否決したということで、それに対しまして再議決をしたこともございます。それからもう一点が、参議院に送付後六十日以内に議決しないため、否決したものとみなして本院議決案を再議決した。この三通りでございます。

 今お話しの件につきましては、事例としてはございません。

松野(頼)委員 今、聞く前に答えていただいたんですが、要は参議院において議決をしていない法律案が返付されてきたということはありますか。

駒崎事務総長 それは参議院においての取り扱いになろうかと思います。

松野(頼)委員 いやいや、違うんですよ。参議院で議決をしていない法律案が衆議院に返付をされたことはありますかということです。ないと思いますよ、もちろん。

駒崎事務総長 国会法の規定によりまして、参議院が議決しないときに、衆議院でみなし否決の議決をしたときには返付されてくるようになっております。

松野(頼)委員 それは六十日たったということですよね、答えてください。

駒崎事務総長 これは憲法五十九条の四項で、六十日を経過したということでございます。

松野(頼)委員 六十日を経る前に議決をされずに戻ってきたことはあるかということです。

駒崎事務総長 それは、これまでには事例としてはございません。

松野(頼)委員 次は、違った視点から伺いたいと思っています。めくっていただいて、資料の五をごらんください。

 これは、国会法八十三条が昭和三十年に三項目つけ加えられたときの話なんです。要は、議決をするときには必ず法律の本書というものが必要である。ですから、議決をしないで法律が戻ってきていない状態で再議決はできないということなんですけれども、それはそれで間違いございませんね。

駒崎事務総長 この昭和三十年の国会法の改正以降はそういうふうに行っていると思います。

松野(頼)委員 この国会法八十三条に三項目加えられた後は、そういう例はないということですね。もう一回答えてください。

駒崎事務総長 今のお話のとおりでございます。

松野(頼)委員 それで、ちょっとわかりやすく、資料の六から実際の法律案というものの現物の写しがつけてあります。

 まずこれは、以前に参議院での民主党の議員立法、参議院での議員立法のタイトルですね、国民年金事業等の改善のために等々の。これが参議院で議決をされて衆議院に送られてきた法律案のコピーです。

 次に、郵政民営化法案。これは衆議院で可決をし、参議院で否決をし回付され、いわゆる返付、衆議院に返付されたときの写しであります。要は、一枚めくっていただくと、まずこういう手続をとって、否決をした通知をまず衆議院にした後に、もう一枚めくっていただくと、返付するという手続、手続を二重にやるわけです。否決をしましたということを通知して、それから返付をするという手続をとるわけです。ですから、参議院議長が返付の手続をとらなければ法律は戻らないということ、これも間違いございませんね。

駒崎事務総長 これは、返付は参議院議長から衆議院議長に送るということでございます。

松野(頼)委員 今、参議院において民主党の議員立法を可決したときに、衆議院から送った閣法を否決したとみなす、そして三分の二で衆議院に戻して再可決をするというような報道があるんですけれども、要は、そういうことが果たしてできるのかどうか。これは事務総長的にお答えになれるのかどうかわかりませんけれども、まず内閣法制局、もし意見があれば教えてください。

外山政府参考人 ただいまのお尋ねは、衆議院と参議院との関係に関する事項であり、また議員の提案に係る法律案に関する事項でございますので、当局としてお答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。

松野(頼)委員 そうなんですよ。行政府に聞く話じゃないんですよね。あくまでこれは立法府の中の手続の話だというふうに思っているんですが、要は、参議院における異なった議決とは、修正及び否決の採決がまず必要なんですね、戻すためには。その採決をしていない法律を衆議院に戻すということは、事務総長、できるんでしょうか。

駒崎事務総長 ただいまのお話でございますが、衆議院から送付した閣法が参議院にあるときに、要するに、一院の、衆議院の議決を経たものが参議院に行っていて、それをそのまま議決しないで参議院で参議院議員の提出法律案を、参法を衆議院に議決して送付してきたということがございませんので、その取り扱いにつきましては私はお答えいたしかねるところでございますが、衆議院規則によりますと、規則の疑義というのは議長が決するということになっておりまして、これは衆議院規則の二百五十八条でございますが、「この規則の疑義は、議長がこれを決する。但し、議長は、議院に諮りこれを決することができる。」となっておりますので、そういう今までに事例のなかったことが実際に起きた場合には、議長が議運に諮問して御協議されるなり、各党間でまず御協議されるということになるんだろうと思います。

松野(頼)委員 それは、要は、その閣法は参議院から回付されていないわけですよ。回付されていないので、衆議院の議運にかかることはないんじゃないですか、回付されなければ。

駒崎事務総長 その場合は、その参議院の参法が衆議院に送られてきますので、それとの関係で取り扱いの協議ということが……(発言する者あり)その参法の取り扱いとあわせて協議されるということは考えられるのではないかと思います。

松野(頼)委員 では、最初の芦部さんのあれに戻ってください、資料三です。

 異なった議決とは、衆議院で可決をし参議院に送付した法律案を参議院が否決した場合、それに修正を加えて可決した場合、要は、決が必要なわけですよ、採決が。だから、採決がなされなければその本書は衆議院に戻ってこないんですよね。

 今出ている二つの法律案を与野党で修正をして採決をして賛成でもすれば、それは一つの法律となるわけですから、戻ってきて再議決という手はずになるんですけれども、さっき見たこの表題を、まあ事務総長に見せる必要もないかもしれませんが、表題を見てください。要は、右本院提出法案、もう一つは内閣提出法案、明らかに法律として別の法律なわけですよ。ですから、別の法律が送られてきたからといって、今、決をしていない法律がみなし否決をされたというのは、余りにも飛躍した話だと私は思うんですが、もう一回整理をしてみてください。

 議決をしていないから、一つの閣法は戻ってこないんですね、参議院が抱えたままなんです。それで、一つの法案は、これは別の法律として衆議院に送付をしてくるわけです。その送付を受け取った段階で衆議院が、参議院にボールがある、本書がそっちにあるわけですから、本書があるまま決をとったというのは、余りにもこれはおかしいのではないかという話をしているんですが、もう一回御答弁いただけないでしょうか。

駒崎事務総長 今のお話は、対案関係であるかどうかということで考え方が、全く別の法案であればそういうことなんでしょうけれども、対案関係、明らかにこれは対案関係を前提にいたしますと、対案というのは一つの法律が成立するともう一方が成り立ち得ないということが前提になりますので、それで今までは、そういう対案関係で、閣法が参議院に行っていて、それと全くの対案を参議院で可決してこちらに、閣法をそのまま参議院に置いたままこちらに参法だけを送付してきたという事例がないものですので、その事例がないものにつきましては、先ほど申し上げましたように、議運の理事会なり議院運営委員会で御協議されることになるんだろうということでお答えしております。

松野(頼)委員 その対案関係という規定は何かあるんですか。

駒崎事務総長 いわゆる対案というのは、一方の案が可決したときにはそれと全く、もう一方の案は成り立ち得ないというようなことなので、その御判断というのはやはりハウスでされるものだろうと思います。

松野(頼)委員 いや、聞いたことに答えてください。対案関係の場合の規定はあるんですか。

駒崎事務総長 これは規定上はございませんが、やはりハウスで御判断されることなんだろうと思います。

松野(頼)委員 要は、みなしの規定があるのは六十日たった、四項だけなんですよ。そうでしょう。議決をするか、みなしの規定が適用されるのは五十九条の四項の方だけ、六十日たった場合、そのときには回付の依頼というのを衆議院から送って、参議院から回付をしてくれと通知を出して、参議院から回付をする、これはちゃんと規定があるんです。それ以外に何か規定はあるんですか、対案関係の。もう一回お答えください。

駒崎事務総長 これは対案とは違うのですが、五十六条の四という国会法の規定がございまして、「各議院は、他の議院から送付又は提出された議案と同一の議案を審議することができない。」これは同一の議案につきましてこういう規定がございますが、対案の関係と言うことはできません。

松野(頼)委員 大体時間が参りましたので、いろいろな事実関係を議事録に残していただきました。過去に一度も例がないということなんですね、これから行われるかもしれないと言われていることは。ただ、過去に一度も例がない状態で、やはりこの五十九条の二項というものを誠実に運用していただきたいし、国会法八十三条というものが昭和三十年に導入をされた経緯というようなものもしっかりとしていただきたいということをお願いいたしまして、簡単ですけれども質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 大変高尚な、非常にユニークといいますか、いろいろなお答えをいただいた後なんですが、私は、通常バッターとしてこの関税定率法の部分について時間の範囲内で御質問をさせていただきたいというふうに思います。もう既に同僚議員の方からもいろいろな御質問が出ました。時間の範囲内なので、手短にさせていただきたいと思います。

 この定率法というのは、牛肉とか、それからスペシャルセーフガード、輸入品の一つの枠を超えてしまったものについては、コンニャクイモとか乳製品とかガードを入れておかないと、つくっている農家にがつんと来る。これはもうもちろんオーケーであります。私どもとしても賛成したい、またはさせていただきたいという気持ちでいっぱいであります。

 ただ、さっきのあの税関の水際の取り締まりについて幾つか意見をいただいたと思いますが、その中で私は、税関は、私の父も東京税関長をやったり、私も東京税関の柔道部の合宿に自分で行ったりいろいろしたんで、その人たちの生声を実を言うと小さいときから随分積み重ねてきておりまして、簡単に言えば、大臣、嫌な言い方ですけれども、隠匿のやり方がレベルアップするというか、非常に手が込んできているということです。

 それから一つ私が言いたいのは、実際の数字というのが僕は好きなんですが、麻薬とか覚せい剤とか不正薬物の摘発が約三百五、六十件、十九年、昨年ありまして、これは、件数はほぼ横並みなんですが、一方で、押収した押収量というのが犯罪につながる一つのボリュームにつながってくると思うんです。量ですね。覚せい剤と大麻の押収量は前年比二一五%です。去年一年で約倍になっている。そして、MDMAとかという向精神性薬等々の押収量は前年比九三五%であります。

 つまり、件数はさることながら、実際にそれが入ってきて、摘発を皆さんの税関の努力でやっておりますけれども、日本まで莫大な量がどんどん入ってきている。これが数字の上での実際の姿だというふうに思います。

 そこで、先ほどから若干出ておりますけれども、これに対して税関の職員の定数は、平成九年から十年間で見て、平成九年を一〇〇とした場合に、わずか一〇四・二の微増でしかない。私は、その生声を聞いたり、実際の方々の本当にいろいろなメンタル面、精神的なプレッシャー、そしてそれが結果的に体に及ぼすいろいろなことをかんがみて、果たして、こんなに莫大に日本にいろいろな不正な物が入ってくるものを、今のままの職員定数で、このままいいのか。

 このままでいいんだという意見もあるでしょう。あとはあなたたちの努力でやりなさいということもあるかもしれないが、大臣が普通にお考えになっていただいて、十倍もふえちゃっている、かつ、麻薬なんか約倍以上ふえているんであります。前年比ですよ、十年前じゃない。一方で、実数的に言えば、税関職員はおまえそのままだとぴしゃっと切られている。ですから、簡単に言えば、いろいろなサービスの、言いにくい残業を含めた、メンタル面を含めたいろいろなプレッシャーがかかってきているんじゃないかなと思っております。

 まず、そこの間口から大臣の御所見をいただきたい。このままでいいのか、定員の部分ですね、これをお聞きしたいと思います。

額賀国務大臣 これは、下条先生のおっしゃるとおり、やはり海洋国家日本としては、水際でそういう不正薬物、鉄砲、それからテロ関連の物、物資、大量破壊兵器等々について阻止をして、国家と国民の安全を守るということは基本だと思います。その上で、そのためにさまざまな機器、先ほど先生がおっしゃるように、コンピューター化されるというか、近代化されるというか、そういういろいろな進んだやり方で入ってくるわけでしょうから、そういうことを巧みにというか、きっちりと捕獲できる機器も要るでしょう。と同時に、やはり人も要るんだと思うんです。

 そういう意味では、我々もそういう方向でこの定員については、二十年度においても純増で五十五人という形にしておりまして、最近ふやしておるわけでございます。考え方としては先生と同じ考え方をしているわけです。

下条委員 ありがとうございます。五十五名純増、それでいいかどうかだと思うんですね。

 私はなぜこの質問をするかというと、いろいろお聞きすると、税関の方々は、いろいろな試験そして体験を通り越してきて、最終的には、最後は勘であるというところに落ちつくらしいであります。私は税関でチェックされる側の口なのでよくわかりません。チェックする側はそうであると。観察眼の勘が最後になってしまう。そうなると、例えばどうしてもベテランに頼るということになりますし、ベテランも年齢がどんどん上がってくる。

 私は、このままで、押収物件が十倍だとか何倍になっている状態の中で、人間だけのスキルアップ、人間だけの勘、人間の方々の神経の消耗、そしてその人たちの汗だけに頼っているだけではちょっと税関としてどうなのかな、もしくは政府として、わかっているならもうちょっと何か使えないかなというときに、例えば昨年八月、大阪港で海上コンテナの製材の中から、覚せい剤が百五十四キロ、大麻が二百八十キロ、MDMAが六十八万八千錠、トータルにして約六百四十一キロという過去最大の摘発をなさった。これに威力を発揮したのが大型エックス線検査装置というものなんですね。これは日本全国で十三の港に十六台だけ配備されている。だけであります。

 ということは、僕はこれはこれで皆さん努力で積み重ねてきていると思うんでありますが、税関の目をくぐるのはやはりいろいろな港もあるでしょうし、本当にこの台数だけでいいのかな、ほかに港はたくさんあるんじゃないのというのが私の気持ちであります。

 ですから、例えばこの大型のエックス線検査装置をもう少しふやすことによって、税関の日ごろからいろいろなプレッシャーやいろいろな体のを押してやっている方々のいろいろなサポート、サブになるんじゃないかということが一つあると思うんです。ですから、この台数は何とか、徐々にですけれどもふやしていただきたいなと。

 それから、先ほども同僚議員からニューヨークのテロの話が出ましたけれども、一番怖いのは、確かに金属探知機で通過するのはいいんですけれども、もしこれがプラスチックだったらどうするのですか。例えば、大臣がイギリス・ロンドンに行くときに、同じ飛行機にプラスチック爆弾をのみ込んだテロの人がいた。これは余りいい話じゃないのでさらっと大臣聞いていただきたいです。余り気分よくないですね、一緒の飛行機にテロが乗るというのは。くぐるのは、金属探知機をくぐりますよね。だけれども、プラスチック爆弾をのみ込んでいますから、こんな小さいやつ、ばあんといけば、腹も割れるけれども、近くのも穴があいて、いきなり飛行機がひっくり返るというか爆破される可能性がある。

 これなんかは、私がお聞きするところによると、税関の方々が言うのは、大量にたくさんのめば、大麻とかというのは、ちょっと動き方がおかしいとか目の動きでわかる。だけれども、自分が死のうと思っている特攻隊の方々にとっては普通であります。ただのみ込むだけ。これは今のシステムではチェックできないんであります。つまり、プラスチックですから金属探知機に何にも反応しない。背広を着て普通の格好で通過してしまえば、わからないわけですよ。

 私は、前もちょっと話したかもしれませんが、会社にいたときの同僚がテロでニューヨークで十八人死んでおりますので、非常にこの問題には意識を持っております。相手がアルカイダみたいな、自分は死んでもいいという人であれば、プラスチックをのみ込むことなんて何でもないのであります、このぐらいのものであれば。それは、のみ込んで飛行機のところに行ってチェックを通過してそのまま乗れば、どかんと来る可能性が大変にある。

 ではどうするんだというときに、これは、勘もさることなんですが、やはり先進技術に頼る必要があるんじゃないかというふうに僕は思っています。

 例えばこの開発、今はどこまで実を言うと開発されているかわかりませんが、やはり、海外を含めて、日本政府としてこういう摘発するものに対する開発やその機械の導入、これはいろいろな部分で後で効いてくると思います。私はきっと効いてくると思います。宣言しておきます。

 大臣、例えば医療機器でMRI、これは、通っている患者さんにいろいろな放射線を浴びせなくていいものです。電磁波ですから、磁気ですから、何の健康上も問題がないわけです。例えば妊婦の方も問題ない。ですから、そういうものは確かに高いかもしれない、何億もしますから。そういうのを含めてこの委員会で税関の部分の議事録にしっかり残していただきたいと思いますし、また同時に、この部分についてかなり早く取りかかるべきじゃないかなと僕は思っています。

 というのは、海外で今行われているテロも、大臣の方がよく御存じでしょうけれども、大変に手が込んできています。そして、極端な話、いろいろなものをやることによって金属探知機を逃れるものも開発されている。私も耳にしております。と同時に、プラスチックの部分はMRI等々でしか見られないわけであります。相手の、やはり身ごもった方の女性の問題もあるでしょうし、放射線を浴びさせる個人の権利の問題もある。

 この辺をぜひ、今言った部分を含めて、この定率の関税のものは賛成であります。今後についてぜひ政府の側から、行政府の方からこの問題についての検討課題として御意見を聞きたいと思います。いかがでございますか。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 先生のお話、まことにごもっともでございまして、私どもにおきまして、爆発物あるいは大量破壊兵器等のテロ関連、あるいは薬物、あるいは銃砲、さらには知財侵害物品等々、これらにつきまして、限られた人員の中でどうやってやっていくかということでございます。

 まず、エックス線の話でございますけれども、これは、大型エックス線は今十六台でございますが、可動型等々もっともっとたくさんございます。エックス線全体でございますと約二百四十四ございますが、大型の分は、使い勝手が余りよくないというところに問題がございます。

 それで、諸外国におきましてはこれは可動型のがあるのでございますが、日本の場合、いわゆる放射線等、エックス線が漏れるという問題等もございまして、ここら辺の問題を少しクリアしなきゃいけないかなというふうに思っているわけでございまして、専らこれからは、移動型等々を含めて重点的にやっていこうかなと。さらに、車載式の後方散乱線といいまして、いわば移動型なんですが、コンテナをそのまま置いておいて、それでざっと透視できる、こういうのも今やってございます。

 あと、先ほど、人間の話だけでございますけれども、私ども、昭和五十四年から麻薬探知犬を入れてございます。これは約百二十頭ちょっとございますけれども、このうち、今八頭でございますが、爆発物の探知犬にしてございます。

 さらに、爆発物の探知装置等これらの検査機器を重点的に配備しているというところでございまして、ただ、先生がおっしゃるとおり、まだまだこれは足りない分があるわけでございますので、今後、ここら辺の開発等を含めてやっていかなきゃならぬ。ただ、私どもは財務省でございますので、そういうところはなかなか知恵が回らないのが正直なところでございます。

 したがって、総合科学技術会議等々と相談いたしまして、いろいろな研究機関の先生方から成ります、検査機器に関します懇話会というのを二年ぐらい前に設置いたしました。その結果を踏まえまして今やっておりますのが、テラヘルツ波といいまして、ごくごく短い波ですね、物質を透過する能力を有しますこのテラヘルツ波の機器を開発いたしました。これは、私ども、十六日にある郵便局に今入れて試験を行っているというところでございます。

 さらに、今は犬の話を申し上げましたけれども、犬の場合でございますと、とにかく暑かったりしますとすぐへたったりということもございますので、バイオセンサーというのを少しやってみようかなということで、これは、九州大学の先生と相談して今やりつつあるわけでございます。

 いずれにいたしましても、そういう先生が御指摘のような先端技術につきまして、こういう専門家の方々の知見をかりながらどんどんやっていこうかなというふうに思っているわけでございます。諸外国等の動向ももちろん見ながらということでございますが、探知技術の研究開発ということになりますと、これは、私自身もいろいろちょっと勉強させていただきましたけれども、割と機密性がかなり高いというところもございまして、諸外国、特にアメリカでございますが、なかなか出したがらないという向きもございます。

 したがいまして、こういう点を含めて、さらにもう少し関係のいろいろ専門家の方々等を含めて開発していただきながら、有効な検査機器の導入を図りたいというふうに考えてございます。

 それから一点、先生の御指摘のプラスチック爆弾の話でございますが、きのうお話を伺ったものですから、きょう早速私ども東大の先生にちょっとお伺いしたのでございますが、確かに、今現在では探知がなかなか困難と。私ども、いわゆる巻きつけと言っておりますが、回りに巻きつけたり、こういうものは大体すぐ見つけたり、あるいは、のみ込んで、それで胃が異常だということになりますと、やはりそれなりに皆勘でわかるということでございます。

 いずれにいたしましても、先生の御指摘を踏まえまして、新しいこういう事態を考えつつ、さらに一歩前進、二歩前進ということでやっていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

下条委員 ありがとうございます。

 ワンちゃんその他はそのとおりでありますし、大変いい形になっておりますけれども、私は、犯罪の防止と同時に、一番大きな被害は、やはり爆発されてしまうということだと思うんです。ですから、一つの知恵としてこの場をかりて申し上げたのは、MRIであれば、あとはPETとか、こんな小さい米粒のような悪性腫瘍も医療技術でわかるものもありますし、ですからそこは、逆に言えば、大臣の算段次第だというふうに思いますので、やはり大きいところにはそういう人物も、放射線と関係なく、磁波で、磁気波でチェックできるシステムを近い将来にどんどん入れていく必要があるんじゃないかというふうに、この場をかりて、大臣を含めて御提言させていただきたいと思いました。

 次は、例の、第三国に日本を経由して知的財産侵害物品を捜査取り締まり対象に追加するという件であります。

 これは物すごくいいことだと思います。今までは、ある意味ですかすかになっていたところもあった。これまた数字でいきますと、知的財産侵害物品の輸入差しとめは、去年で二万二千六百六十一件、前年比一五・七%増ですね。五年前と比べればもう三倍以上になってきちゃっている。三倍以上どんどん入ってくる。ですから、これをすかすかの日本経由でほかの中国やどこかに運んでいくことはきちっととめなくちゃいけない、こういうことだと思うんです。

 ですから、実を言うと、これも先ほどの話と同じで、単に怪しいものに対して勘だけでやるのはどうかなと。やはり、従前から言われている在外公館とか警察とか公安とか、それから関係省庁と連絡を密にすることによって、三本の弓矢になって強くなるというふうに私は思っています。

 この辺ももう今までの討論で出ましたので、この辺は引き続き回答していただかなくて結構ですが、ぜひ連携を強化していただきたいということを要請したいというふうに思います。

 次は、先ほどから出てきているAEOの話であります。

 これは、手続を優良な先に対しては通関のときに簡略化して、それでどんどん国際競争力を高めようじゃないか、大変いい話だと思っています。

 そこで、このAEO事業者の認定基準、これは、ざっといくと、過去三年間違反ないよ、電子通関システムの導入だよ、それで法令遵守規定の定めがあるとなっている、つまり関税でいえば、優良ドライバーであればこの部分については認定基準でいいですよ。それで、平成十三年に始まった輸入分野では今五十四社が対象になっている、おととしの十八年から始まった輸出分野では八十三社が認定基準を受けている、こういうことでお聞きしています。事後チェックや立入検査によっていきなり取り消しもあるんだよと、大変けつの方もきちっと締めている形ではないかなと思っています。

 そこで、これは先ほどもちょっと出ましたけれども、セキュリティーをきちっとすることと手続を簡素化するというのは、実を言うと相反するところに出ていると思うんです。つまり、すべてをきちきちにやれば、それだけその手続に手間がかかる。だから、今言ったAEOというので、輸出、輸入の対象者に対して、ではできるだけ簡単にやっちゃえ、どんといっちゃえと。

 ただこれは、本当にまさに相反するところがあると思うのは、相手の業況が一年でがらっと変わることもあります。また、この間は公益法人の中で幽霊法人みたいなことを僕は言いましたけれども、いろいろな意味で会社を明け渡す場面は幾らでもある。

 そこで、この手続の簡素化とそのセキュリティー管理の相反する部分についてやはり確固たる規定を設けておかないと、気づいたときにいきなり手を下していくようでは、その間にどんどん入ってきてしまう。何年か前に優良にしたからもういいや、通関どんどんいいぞ、全然オーケーだぞというわけにいかないんじゃないかと思うんですよね。

 ですから、この辺を、三年違反ないよ、電子通関システムの導入だぞと言うかもしれないが、その後にあった部分のチェック機能について財務省としてやはりきちっとした最後までのフォローをやっておかないと、一たん通過したものは、今、車の免許でさえ、簡単に言えばシルバー何とか、いろいろ細かいチェックがあるわけですよ。一回通過しても、相手の会社がシルバーになることだってある。もしくは、言いにくいですけれども、わからなくなっちゃうところもあるわけです。そのチェックシステムをただ抜き打ちだけで私はいいのかなと。いろいろな税関の方が頑張っている、いろいろな機械を置いている、いろいろな投資をしている中で、この部分というのは結構後々抜け道になるんです。

 このお考えを、フォローのお考えを含めて大臣にお聞きしたいと思います。お願いいたします。

額賀国務大臣 それはおっしゃるとおりだと思います。一定の時期に認証していけば、それは、セキュリティーが同じパターンであれば必ず抜け道が出てくるわけでありますから、だから、事後チェックで、立入検査をするとか、あるいは各企業の内部監査をきちっとしてもらうとか、いろいろなことはあるけれども、今先生のおっしゃるように、きちっとそういうAEO制度が発展的に拡大していくためには、セキュリティーと簡素化していくことが両立していかなければならない。そこのところは、先生の知恵もかりて万全を期していくようにしていかなければならないというふうに思います。

下条委員 ぜひよろしくお願いします。

 これは時間がきょうは余りないのであれですけれども、一たん通過した証書がそのまま永久にいくというのが一番怖い。大臣、抜き打ちというのは少ないんですよ。手間がかかる。物すごい量をやっているわけです。それで、どんどんふえている。さっき言ったように、向精神何とか剤とかというそういう麻薬なんかは十倍になっちゃっているんです、たったの一年間で。それだけ負担がかかっている中で抜き打ちの方になかなか行かないんです。一たん証書が通過したら、もうそれでいいじゃないかと。だんだんそこの面が薄くなっていくうちにいろいろなものが簡単に入ってきちゃうようではちょっと困るかな。

 ですから、この部分については、今御決意いただいたので、今後の課題の中で、推し進めている中のプッシュをしていただく部分にぜひしていただきたいと思っております。

 時間があとちょっとしかないので、最後に、これは、この委員会が財務金融委員会なので、次に、金融に関して一点だけお聞きしたいと思います。例の新銀行東京の話であります。

 これは、いろいろお聞きすると、東京都の知事が、もしつぶしちゃうと一千億かかる、だから、三年間で一千億以上の赤字をつくったんだけれども、今四百億やった方がいいんだよ、こういう議論を今都議会でやっています。ちょっと業況を見た感じでは、三年間で貸し付けたもしくは保証した会社が約一万三千社ある。そのうち、その会社が赤字になったり債務超過になっちゃった、それが、貸した中の四三%に当たる五千六百三十五社にも上がっているわけです。

 この問題は、実を言うと日銀考査がもう入っているわけであります。日銀考査が入っているのはそれはいいんだ。だけれども、問題は、その上にいる金融庁が、今これだけ問題になって、さらにこれに四百億入れれば全部うまくいくのか、それとも、清算して一千億で終わらせるのがいいのか、その議論に立っている中で、このまま金融庁がこれを見過ごしていいのかなという感じが私はしています。

 といいますのは、既に議事録の中で、今、自己資本比率が一七・三だけれども、来年には四%になっちゃう。がたがたになっちゃう。これはちょっと専門的ですけれども、引き当ての部分に当たるわけです。その資本比率は落ちる。それでこれは、BIS規定、昨年新しくなりました新BISもありますが、そういう意味では非常に悪くなるから、今資本を上げて、四百億円都民の皆さん出してください。家族も含めてここに東京都の住民である人もたくさんいるでしょう。そういう人たちの負担にしていいかどうかなんです。

 もう一度言います。たった三年間で一千億円の赤字を持っている。今貸し付けている、保証している先の四三%、もう既にどんと来ちゃっている先に対してさらに東京都知事は、御子息もいらっしゃるので言いにくいんですが、さらに四百億を入れれば、傷口は今つぶすよりも少ないと都知事は言っているわけです。

 でも私は、ちょっとだけ金融をかじった男としては、これは相当臭いですよ。だって、三年間で一千億ですよ。貸した先、今現在で四三パー。というのは、貸し金というのは、言いにくいけれども、今貸していても、条件変更して、八カ月間金利を納めなくていいですというやり方ができるんですよ。そうすると、そういう幽霊な、ぐあいが悪い先は、私は、実を言うともっともっと眠っていると思います。

 だから、ここでやはり私は何を言いたいかというと、金融庁として、これだけ問題になっているんですから、きちっと日銀考査、日銀法の四十四条の三項、あれで請求できるわけですよ。そして、ただ受け身じゃなくて、きちっと中にメスを入れるような状態にしないと、これは大変になるんですよ。これは三千億とか四千億になりますよ。宣言しておきます。

 その部分について金融庁のお考えをお聞きしたいと思います。お願いします。

西原政府参考人 お答え申し上げます。

 私ども、決して放置しているわけではございませんで、私どもは、いろいろな情報をもとにしながら、つかんだ情報に関して、必要に応じて相手に対しても改善を求めたりとか、その取り組みを促しているというところでございます。

 ただいま御質問のありました日銀法の四十四条に基づいた考査結果、これについて要請をしているのか、こういうお話でございました。

 この点につきましては、個別の金融機関の日銀考査に関しまして当局としてそれをどのように取り扱っているのか、こういうことにつきましてはコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、一般論として申し上げますと、当局と日銀との間におきましては、必要に応じて適切な連携を図っていくということでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 もう時間が来ているので最後にしますが、要は、監督局長を含めて、これはこのままじゃいかぬですよ。私は、皆さんよりちょっとだけ、民間に二十年いたので、これは本当に臭いですよ、本当に臭い。だから、これはきちっと金融庁からメスを入れて、その部分を、今、都議会はもう予算について来週に議決するかもしれない。二十六日が採決の日ですけれども、これはもっともっとリーダーシップを持って、どかんと来る前に、また、先延ばしの前にぜひメスを入れていただきたいということを最後にお願い申し上げまして、時間が参りましたので、質問を終わらさせていただきます。

 ありがとうございました。

原田委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階でございます。

 きょうは関税がテーマでございますが、本題に入ります前に、最近の為替相場に関する政府の姿勢などをちょっとお伺いしたいと思います。

 まず、額賀財務大臣、今の為替相場なんですが、円高と考えていらっしゃるのか、それともドル安と見ていらっしゃるのか、あるいはいずれでもないと見ていらっしゃるのか、どれでありましょうか。

額賀国務大臣 基本的には、ドル安に伴う円高傾向という形で見ております。

階委員 今、ドル安というお話がありました。今、一ドル百円を切るような状況になっておるわけでございますけれども、このドル安が日本経済に与える影響をどのようにお考えでしょうか。

額賀国務大臣 二月のG7においても、為替相場の過度な変動というのは世界の経済成長に望ましくはないという共通の認識を持っております。最近の相場の状況は過度な動きではないかという認識をしておりまして、懸念を持っております。米国では、ブッシュ大統領もポールソン長官も、ドルは強いことがみずからの国の国益につながるということを再三言っております。

 私どもは今、こういう為替相場、株安、あるいはまた原油高、米国のサブプライム問題に端を発する金融不安、あるいは経済の減速懸念、そういったことをきちっと注視しながら対応していきたいということ、もう一つは、米欧と我々も緊密な連携をとっていくことが大事であるというふうに思っております。

階委員 米欧との緊密な連携というお話がございましたが、例えば、今のドル安への対応として、より直接的な手段としてドル買い介入などもありますが、為替介入に対する大臣のお考えなどございましたら、お聞かせ願えますか。

額賀国務大臣 為替介入についてはコメントを差し控えさせていただきたい。

階委員 為替介入、ドル買いをするかどうかに関して、実は私、昨年の十一月七日にこの委員会で大臣にお尋ねした際、日本の外貨準備高、約九千五百億ドル、百十兆円程度の残高があるというお答えをいただきました。また、一円円高になると評価損が〇・八兆円ふえるという政府参考人の答弁もいただきまして、それを踏まえて、外貨保有によるリスクが大き過ぎるので外貨準備を減らすべきではないか、そのような指摘をさせていただきました。

 そのとき大臣は、為替相場に影響を与えるという理由で否定的なお話でございましたが、それから約四カ月たつわけでございます。当時は一ドル約百十六円で、今は一ドル百円として計算しますと、〇・八兆円掛ける十六ですか、十三兆円ぐらい評価損がふえている計算になります。そういった中でドル買い介入するということは、外貨保有のリスクをさらにふやすということで、なかなかそういうことはしづらい。要は、為替介入については手足を縛られているような状況ではないかなというふうに考えるわけでございます。

 この点につき、御所見ございますでしょうか。

額賀国務大臣 おっしゃるように、我々は、為替相場それから我が国の円の安定のためにそういう外為で特会という形をつくっているわけでございまして、階先生の分析は分析としてよく受けとめさせていただきますけれども、コメントは差し控えたいと思います。

階委員 なかなかこの点についてはしっかりしたお話を聞けないんですけれども、このドル安の背景を考えてみますと、皆さん御案内のとおりで、サブプライムローンの焦げつきを契機として、米国で金融不安が広がったということがあるわけでございます。

 それで、この問題を解決するために、財務大臣として米国の金融財政当局に何か提言などをするお考えはありますか。

額賀国務大臣 これは、先般の二月のG7の会議におきましても、私は議長国の立場として、アメリカのサブプライム問題が今後どうなっていくかということについて世界じゅうが心配をしておったわけでありますけれども、リスク管理あるいはリスクの再評価の問題があっているわけでございますから、日本の場合の不良債権の処理の経験を語りまして、情報の開示、それから、我々は公的資金を投入して、市場の安心というか信頼を取り戻して金融市場の安定を取り戻したという経緯があります。そういうことをぜひ参考にして、アメリカの金融市場あるいは世界の金融の安定化に努めてほしいというような話をした経緯があります。

階委員 私も十年前、日本の金融不安のときにまさにその渦中におりましたけれども、やはり、最終的には公的資金の導入というところが問題解決に大きくつながったと思っているわけでございます。

 それで、今大臣の方から、そういうお話もしているということでございましたけれども、今現在、アメリカの政府は、利下げはどんどんやっていますけれども、公的資金の投入というところまでは踏み込んでいないわけでございますね。

 十年前、我が国の金融不安の当時は、米国の当時のルービン財務長官、こういった方が当時の宮沢大蔵大臣に金融機関への公的資金の注入を強く求めていたわけでございます。今度は逆の立場になったわけで、我が国の方からパートナーであるアメリカに対して公的資金の注入などをもっともっと強く提言して、金融不安の払拭に努めていくべきではないでしょうか。いかがでしょうか。

額賀国務大臣 私の感触では、米国は日本から何を学んでいるのかというと、一つは、日本の不良債権処理というのはソフトランディング的なところがありました。それで、九八年のああいうアジア通貨危機を迎えて、これではいけないという形で不良債権の処理を本格的に始めたということがあったと思いますけれども、アメリカはむしろその逆で、そういう問題が起これば、きちっと流動性を確保して対応していくという、日本とは逆の立場で対応しているのかなという感じを持っております。

 公的資金云々については、この前のG7で日本の教訓としてお話をさせていただいておりますので、それ以上私から言うことはありません。

階委員 ぜひ十年前の我々の貴重な教訓を今のアメリカに授けていただいて、そして、一刻も早くアメリカ発のこの今の経済の不安定な状況を解決するようにぜひイニシアチブを発揮していただいて、今のお話だと何か、一回言ったからもうこれ以上はというように伝わりましたけれども、もっともっと頑張っていただければなと思っております。

 それでは、本題の関税のお話に入ります。

 まず、また暫定税率という我々にとっては何か余り好ましくない言葉が出てきますけれども、関税の関係の暫定税率がこのまま廃止になった場合、税収や国民生活にどのような影響が及びますでしょうか。

額賀国務大臣 先ほどの米国の問題については、緊密な連携をとって、お互いにこれは緊迫感、緊張感を持って対応していくことが大事である、そういう共通の認識を持っております。四月の十一日にはワシントンでG7の会議が行われます。

 それで、今の暫定税率の話でありますけれども、国民生活に非常に密着した品目の税率が、結果的に暫定税率が失効した場合には引き上がっていくことになるわけであります。

 輸入類とか額とか数量がこれまでと同じ程度であるというふうに機械的に計算をいたしますと、二千億円ぐらいの増収になる。主な品目に係るものでは約千六百五十億円、それから加工再輸入減税制度、これは二百九十億円、航空機部分品等の免税制度二十億円。それから、そのほかでん粉等の農産品に係る特別緊急関税制度が失効するとどういうふうになるかというと、国内産業の保護に重大な影響が起こる。これは、輸入価格が一定水準を下回る場合とか数量が上回る場合に自動的に追加関税が上がるというシステムでありますが、国内保護ができなくなるということでございます。

 非常にわかりやすく言うと、例えば牛肉の場合ですと、ステーキ用肉百グラム当たり約十五円上昇する。それから紙巻きたばこですね、一箱当たり約十二円の上昇になる。日常生活に関係するようなことではそういうことになります。

    〔委員長退席、田中(和)委員長代理着席〕

階委員 暫定税率、いろいろな品目があるようでございますが、例のガソリン税のように、延長を繰り返して長く続いているものにはどういうものがあるのか、期間もあわせてお答えいただけますか。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 関税の暫定税率といいますと、もともとは昭和三十五年に、貿易自由化に合わせまして、これへの対応措置ということで、暫定的に、例えば関税割り当てをセットするとかいうような議論で決められたものでございます。

 現在、この三月末に期限が到来するのが四百十七でございますけれども、内訳は、いわゆるウルグアイ・ラウンド、十三年前でございますか、九五年以前に合意されておりますような、一定限度までは低税率、無税の枠を設けて、それで、それより高い税率をとる、二次税率は高い税とする、そういうのが六十六ございます。

 それからまた、ウルグアイ・ラウンド合意に基づきましていわゆる自由化して、これを関税化したというものがございます。これが八十七品目ございます。

 それからあと、国家貿易品目というのがございまして、これが百五十七。さらには、ウルグアイ・ラウンドの際の関係国との合意に基づきまして引き下げを約束いたしました五十一品目、これには例の牛肉なんかも含まれます。それから、その他が五十六ございます。

 古いものということで申し上げますと、例えばトウモロコシでございますが、これは昭和四十年度改正におきまして、輸入のトウモロコシを原料といたしますコーンスターチの生産が急にふえたということでございまして、では、これは国内の産業では何が困るかということでございますが、これは、国内の国産の芋でん粉を保護するということで、枠内税率を一〇%といたします関税割り当て制度を導入して、その後、国際交渉等の結果等を踏まえまして、累次の税率引き下げあるいは枠の拡大をやっているというところでございます。

 もう一つ申し上げますと、プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズでございますが、これは、国産生乳の安定的な引き取りを確保する観点から、昭和四十五年度改正におきまして、枠内税率を一〇%といたします関税割り当て制度を導入しておりまして、その後四十七年に枠内税率は無税とする等々の措置を行いまして、ウルグアイ・ラウンド以降ずっとそのまま継続しているわけでございます。

 それからあと、鉛、亜鉛等につきましては、昭和三十九年度の改正におきましてスライド関税というのを導入いたしましたが、この税率につきましても、時々見直しを行った上で今に至っているということでございます。

 なお、品目数でございますが、実は、ウルグアイ・ラウンド、九五年からスタートしているものでございますが、これ以前は五千数百品目ございました。これを大幅に見直しいたしまして四、五百にしたという経緯がございます。

 私どもの今の考え方は、今ドーハ・ラウンドをやっておりますが、今後、これの終了とあわせまして大幅にまた見直していこう、こういう考え方でやっておるわけでございます。

 以上でございます。

階委員 自動車関係の暫定税率でも議論になったことですが、暫定と言いながら、廃止になると国民生活に影響が大きいなどとして長年延長を繰り返してきているわけでございます。今、将来に向けて見直すという話ではございましたけれども、本当に必要な税金であれば、国民的には、暫定というまやかしの表現ではなく、本則の税率にすべきではないかというふうに考えるのでございますが、大臣、この点についてどのように思われますか。

額賀国務大臣 租特とかそういうものは、ある政策目標を達成するために特例的に定めているものでございますから、本来はやはり整理をしていくことが望ましいんだというふうに思います。

 だから、これはきちっと点検をして、本当に必要なものなのであるのかどうか、国民生活や経済の発展のために資するものであるのかどうか、国民の皆さん方に納得していただけるものであるのかどうか、そういう視点からこれはきちっと見直していくことが大事であるというふうに思います。

階委員 今、非常にいいお話をいただきました。ぜひ、そういったことで自動車関係の暫定税率もしっかり見直していただければと思います。

 この暫定税率の関係とはちょっと離れるのですが、今回、加工再輸入減税制度の三年延長というのも盛り込まれております。これも、原材料の生産業者にとってはこれが恩恵になるとも思われるのですが、一方で、海外で加工、組み立て、これの外注を促すということで、国内のこういった加工、組み立て産業の衰退を招くのではなかろうかと思うわけでございますが、この点についてはどういった判断でございましょうか。

青山政府参考人 また少しちょっと歴史の話を申し上げますと、加工再輸入減税制度でございますが、昭和四十四年度に、我が国と外国との貿易の拡大均衡に資するためということで、国際分業体制の確立を目指して、まずは機械類の一部を対象に行われたものでございます。その後、この対象範囲を拡大しておりますが、現在では、繊維製品とそれからあと皮革関係でございます。

 先生御指摘の、今の国内産業との関係ということでございますが、むしろ生産の海外展開をせざるを得ない状況にある。したがって、国内に残すべき部分と海外で生産する部分というものを分けまして、国内の加工産業の実態を十分に勘案した上で、むしろこれは、国内の産業を逆に推進するという観点からの制度に今はなってございます。

 例えば皮革産業でございますが、これも、国内のなめし革の業界の保護という観点から、今やもう加工賃がかなり高くなっているということもありますので、これを海外展開する、そういうのが実態になってございます。

 今回も、これの拡大ということをお願いしているわけでございます。

階委員 あと、環境問題への取り組みも今回この改正法の中で入っていると思うんです。

 具体的には、バイオETBEの価格競争力を向上させるという理由で輸入関税を廃するというお話がありますが、これにより、どの程度バイオETBEを混合したガソリンの価格が下がるのでしょうか。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のバイオETBE、エチルターシャリーブチルエーテルでございますが、これは、ヨーロッパで使われているバイオ燃料の一種でございまして、ガソリンの添加剤ということでございます。

 御案内のとおりでございますが、二〇一〇年までに五十万キロリットルを原油換算で導入するということでございまして、混合率によって異なるものでございますので、一概にどれぐらいになるかということは計算するのは難しいわけでございますが、あえて、輸入価格一リットル当たり百円、七%ガソリンに混入する、これは石連の前提でございます、といたしますと、リッター当たり〇・二円の免税といいますか、減税措置になるということでございます。

階委員 その程度で果たしてどの程度バイオETBE混合ガソリンの使用量がふえるのか疑問に思うわけでございますけれども、財務省として、ほかに環境問題対策として税制面においてどのような取り組みを行っているのか、大臣、その点についてお聞かせ願えますか。(額賀国務大臣「バイオ関係ですか」と呼ぶ)環境保護のための税制ということで。

    〔田中(和)委員長代理退席、委員長着席〕

額賀国務大臣 先般衆議院で可決いただいた税制改正法案では、環境問題などの国民生活に配慮する税制措置の一つとして、バイオ燃料の導入を促進する観点から、バイオエタノールそれからまたバイオETBEを混合して製造される揮発油について、揮発油税を軽減するという新しい措置をつくっております。これによって、揮発油等の品質の確保等に関する法律の改正、所要の制度整備を踏まえて行っていくことでありますが、これによって税制の軽減措置が実現をしていくことと思います。

 具体的には、バイオ燃料に含まれるエタノール、バイオエタノールに相当する揮発油税等を軽減するし、揮発油等の品質の確保等に関する法律によってエタノールの混合上限は三%とされておりますから、三%までバイオエタノールがガソリンに混合された場合、バイオエタノール相当分の揮発油税がリッター当たり約一・六円軽減されるということになります。

階委員 時間が参りましたので、最後の質問とさせていただきます。

 今回、臨時開庁手数料を廃止するということで、夜間、休日などの通関需要が一層ふえるというふうに思われるわけです。また、水際取り締まりも強化されるというお話でした。そういった問題に対応するためには、職員教育であるとか勤務体制の整備などをきっちりやる必要があると思いますが、この辺についてはどのように取り組んでいくおつもりでしょうか。

額賀国務大臣 これはもう階委員がおっしゃるとおり、税関においてきっちりと仕事をしていくためには、人員配置を含めた勤務体制、それから職員の教育が大事であるというふうに思っております。

 厳しい財政事情ではありますけれども、定員の確保、予算の確保、機構の整備、適切な人員配置等々に全力を尽くしてまいりたい、そしてAEO制度の充実と研修を続けてまいりたいというふうに思っております。

階委員 これで終わります。どうもありがとうございました。

原田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 AEOという制度が導入されたのが七年前の二〇〇一年三月であります。特例輸入者に対して簡易申告制度が導入され、貨物の到着前に申告許可が可能となり、納税申告前に貨物の引き取りなどができるようになった。続いて二〇〇六年三月、特定輸出者に対して、貨物がどこにあっても輸出申告を行い、輸出許可を受けることができる特定輸出申告制度というのがつくられた。

 それで、今回の改正、これは特典を受ける対象となる事業者を通関業者や運送業者にも拡大し、AEO通関業者あるいはAEO運送者、こういうものをつくるということだと思うんですが、このように理解してよろしいかどうか、まず大臣にお伺いします。

額賀国務大臣 そのとおりです。

佐々木(憲)委員 それでは、これまで認められた特例輸入者、特定輸出者、これは何社ありますか。また、新たな対象となる通関業者は何社あるか。それと、特例を認められるための基準、これはどういうものか説明をしていただきたい。

青山政府参考人 お答え申し上げます。

 特定輸出者でございますが、昨日現在で八十三社でございます。それから特例輸入者でございますが、五十四社というふうになってございます。さらに通関業者でございますが、現在八百七十七社ございます。

 それから、要件の話でございますが、通関業者の話で申し上げますと、通関業者が認定通関業者として税関長の認定を受けるためには、過去三年間、関税法等の法令違反がないこと、それから二番目でございますが、電子システムを使用して通関手続を行うこと、あと輸出輸入に関する業務について法令遵守規則を定めていること、それから通関業者として三年間の業務実績があること等を要件としているわけでございます。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 要するに、コンプライアンスの体制が整備されている、これが絶対条件ですね。

青山政府参考人 そのとおりでございます。

佐々木(憲)委員 配付資料を見ていただきたいんですが、これは特定輸出者の一覧表です。この中に名立たる巨大企業が入っておりまして、例えば、日本経団連の会長を出しているキヤノン、あるいはトヨタ自動車、こういうのが入っています。これらの企業が法令を遵守するのは当然だと思うんですが、果たしてどうか。

 通関業務から少し離れますけれども、例えばキヤノンは、これまでにも何件もの偽装請負が発覚しておりますし、正社員を逆に派遣社員に置きかえるなど、問題となっております。また、キヤノンの大分進出をめぐる裏金疑惑というのも報道されているわけです。

 トヨタはどうか。

 厚生労働省にお聞きします。トヨタ自動車で内野健一さんという若い労働者が二〇〇二年二月に過労死した事件について、昨年十一月名古屋地裁は、QCサークル活動を労働時間と認める判決を下しました。この判決に基づいて、労働基準監督署は、QCサークル活動なども業務である、こう認定して遺族補償年金などを支給する決定をした。これは事実ですね。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 本件判決におきまして、被災者の労働時間を管理、認定する権限を有する上司の業務命令のもとで行われるQCサークル活動、そのほかに創意工夫提案とかそういった活動もございましたが、そういった活動につきまして労働時間と認定されたものでございます。

 厚生労働省としましては、その判決の考え、判断を受け入れ、控訴は行わなかったものでございます。

佐々木(憲)委員 その判決の趣旨に沿って遺族補償年金を支給する、その計算の根拠の中に、QCサークルの活動も労働時間として計算の根拠にしているということでよろしいですね。

石井政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のようなQCサークル活動、本件事案につきましては、個別具体的に判断した結果そのように判示されたものというふうに承知いたしておるところでございます。

 労働基準監督機関として基準というものがあるわけでございまして、その基準に照らしまして明確に言えない場合は労働時間と認定することは困難な場合もあったわけでございますけれども、本件判決に関する限りは、被災者が直属の上司と同じ詰所で勤務をし、その在社時間が上司の在社時間と重なっていたといったようなこともございまして、この被災者についての特別の事情のもとで、QCサークル活動などの小集団活動について労働時間として認定されたものでございます。

佐々木(憲)委員 それに基づいて厚労省も遺族補償年金を支給する決定をしたわけですね。トヨタ自動車はこれをしっかり支給するというのは当然だと思いますが、いかがですか。

石井政府参考人 個別の事案についてお答えを控えさせていただきたいと思いますが、ただ、今後とも、労働時間に該当するか否かについて、今回の判決で示された要素も踏まえまして、この基準に照らして総合的に、適切に判断して対応してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 いや、適切は当然ですけれども、私が言っているのは、労基署の決定に従って当然会社側が遺族補償年金を支給するというのは当たり前のことだと思いますが、いかがかと聞いたんです。

石井政府参考人 失礼いたしました。

 遺族年金等を支払いますのは国側でございまして、トヨタではございませんので、違う形で答弁させていただきました。

佐々木(憲)委員 トヨタの側が今こういう文書を一月に出していまして、ここには、「従来の国のルールが変更されるかどうかは現時点では不明。そのため、当社自主活動の活動時間の取り扱いを変更する必要があるかどうかは、現時点では不明。」こういうふうに書いていまして、この判決とそれから国側の対応に対して、従来どおりなんだ、これからどうするか、どうなるかは不明である、こういうことを書いているわけですね。

 しかし、実際には、QC活動を労働時間と認めたわけです。判決も国の側もそのように確認をしたわけですね。したがって、この確認に基づいて、みずからがこれまでやってきたQC活動について、今までと同じだというのではなくて、当然見直して、その判決に当たる部分については当然労働時間と認めて、例えばサービス残業の部分に当たるのであれば是正する、こういうことをするのが当然だと思うんですけれども、いかがですか。

石井政府参考人 重ねてのお尋ねでございます。

 やはり個別事案でございますので、個別の事案のお答えは、まことに恐縮でございますが、差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、しかしながら判決で示された労働時間の考え方それから判断、これは当然それに従うべきものというふうに考えておりまして、私ども監督機関としては、この労働時間の考え方については、こうした今回示された要素も踏まえて、総合的に判断をして適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 これは、個別の問題であると同時に、すべての日本の企業がその基準を守らなければならない、つまり、裁判で示された基準、そしてそれを厚労省も、当然である、このように認めたわけですから、それは、トヨタはもちろんですけれども、日本のすべての会社はそういう基準で労働時間を考えなければならない、こういうことだと思うんですが、そのとおりですね。

石井政府参考人 お答えいたします。

 とにかく、労働時間の考え方が今回明らかな、具体的なものとして示されたというのはそのとおりなわけでございまして、その考え方がしっかりほかの企業も含めましてるる徹底されることが大切かというふうに考えております。

 したがいまして、今後も、労働時間の該当、これにつきまして、今回判決で示された要素を踏まえて、通達で示されたさまざまな過去の基準もございます、それも含めまして総合的に判断をして、この徹底が図られるように努めてまいりたい、かように考えているところでございます。

佐々木(憲)委員 過労死をさせるほどの働かせ方というのは非常に問題があると私は思いますし、特に大手企業は、コスト削減ですとかあるいはスピードアップと効率化、こういうことを最優先させていくようなやり方を根本的に見直していくということが今求められていると思います。例えば、効率化ばかり追い求めていきますと、製品の上でリコールなどというものも多発する、これで果たして社会的に信用されるコンプライアンスを整備した会社と言えるかどうかという問題も問われるわけです。

 例えば、今回の法案との関連でいいますと、日経新聞ですけれども、こういうことを書いているわけですね。「部品は名古屋港でも税関の審査や検査はない。船積みされるまで事実上のフリーパスだ。」「この制度は出荷する工場からでも申告でき、製品は保税地域を素通りできる。」広い意味でコンプライアンスに問題がある、そういう企業が効率化を最優先させて、それを後押しするというようなことではよろしくないと私は思います。

 今回の法案も、効率化ということを企業側が要請している、それにこたえて進めるというようなことになっておりまして、やはり、そこで働く労働者あるいは製品の管理、コンプライアンスのしっかりした確立、こういうものが今後必要だと思いますが、最後に大臣の見解をお伺いしておきたいと思います。

額賀国務大臣 おっしゃるとおり、今回の問題は、セキュリティーの確保、それから日本の、我が国のグローバル化した中での国際競争力をいかに強めていくか。これは、機械化、電子化していくことによって人間の労働も非常に余裕ができるような形になっていくことが望ましいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、終わります。

原田委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、これを許します。佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 私は、日本共産党を代表して、関税定率法等改正案に対する反対の討論を行います。

 反対の理由の第一は、日本版AEO制度の対象を新たに通関業者などに広げることを初め、特定、特例の輸出入者に与えられている優遇措置、特例をさらに拡大することであります。

 我が党は、AEO制度導入のときから、大手企業の要望に沿ったものであり、検査体制を骨抜きにしかねない、そういう問題点を指摘してまいりました。国際物流の促進と利便性の向上の名のもとに、今回、関連の通関、運送業者にまで特典を与えることは、水際でのチェック機能を強化すべき通関行政を揺るがし、通関行政の弱体化につながるものであります。

 同制度の対象となる事業者の要件としてコンプライアンスの体制整備が挙げられていますが、その基準、チェック体制などは不明確であります。

 反対理由の第二は、加工再輸入減税制度の延長によって、制度の対象となっている繊維製品、革製品などの製造にかかわる零細業者、職人などの生活と仕事を圧迫し、地域経済に大きな打撃を与えることになることであります。

 また、WTO農業協定で関税化した米などの暫定税率適用期限の一年延長、生糸の関税割り当て制度への追加措置など、日本農業と地域の産業に否定的な影響を与える内容を含んでおり、賛成しかねるものであります。

 以上、反対の理由を述べ、討論を終わります。

原田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

原田委員長 これより採決に入ります。

 関税定率法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

原田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、後藤田正純君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。松野頼久君。

松野(頼)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、国民経済的観点に立って国民生活の安定に寄与するよう努めること。

   なお、関税の執行に当たっては、適正・公平な課税の確保に、より一層努めること。

 一 高度情報化社会の急速な進展により、経済取引の国際化及び電子商取引等の拡大が進む状況下で、税関における事務の一層の情報化・機械化を図るとともに、従来にも増した執行体制の整備に特段の努力を行うこと。

 一 最近におけるグローバル化の著しい進展による貿易量、出入国者数の伸長等に伴う業務量の増大、銃砲、覚せい剤等不正薬物、知的財産侵害物品、ワシントン条約該当物品、テロ関連物資等に係る水際取締りの国際的・社会的重要性、経済連携協定の進展による貿易形態の一層の複雑化の様相にかんがみ、高度の専門知識を要する税関業務の特殊性、国際郵便物の通関手続を含めた今後の国際物流の在り方等を考慮し、職務に従事する税関職員については国家公務員の定員削減計画の下においても、増員を含む定員の確保はもとより、その処遇改善並びに機構・職場環境の整備・充実、更には、より高度な専門性をめざした人材の育成等に特段の努力を行うこと。

   特に、国民の安心・安全の確保を目的とするテロ・治安維持対策の遂行及び輸出入貨物のセキュリティ管理とコンプライアンスの体制が整備された事業者に対する通関手続の特例措置の拡充に当たっては、増員を含む定員の確保及び業務処理体制の実現に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようによろしくお願いを申し上げます。

原田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

原田委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣額賀福志郎君。

額賀国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

原田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

原田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

原田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後八時七分散会


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