衆議院

メインへスキップ



第5号 平成20年11月5日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十年十一月五日(水曜日)

    午後二時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    小川 友一君

      越智 隆雄君    近江屋信広君

      亀井善太郎君    後藤田正純君

      佐藤ゆかり君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 有二君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    三谷 光男君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      糸川 正晃君    中村喜四郎君

    …………………………………

   内閣総理大臣       麻生 太郎君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       中川 昭一君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   内閣府大臣政務官     宇野  治君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐々木豊成君

   政府参考人

   (厚生労働省年金局長)  渡辺 芳樹君

   政府参考人

   (農林水産省経営局長)  高橋  博君

   政府参考人

   (国土交通省道路局長)  金井 道夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月五日

 辞任         補欠選任

  後藤田正純君     近江屋信広君

  和田 隆志君     三谷 光男君

  野呂田芳成君     糸川 正晃君

同日

 辞任         補欠選任

  近江屋信広君     後藤田正純君

  三谷 光男君     和田 隆志君

  糸川 正晃君     野呂田芳成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 保険業法の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、保険業法の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長内藤純一君、監督局長三國谷勝範君、財務省理財局長佐々木豊成君、厚生労働省年金局長渡辺芳樹君、農林水産省経営局長高橋博君及び国土交通省道路局長金井道夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。

竹本委員 自由民主党の竹本直一でございます。

 本日は、麻生総理をお迎えしてこの財金委員会で審議をさせていただく、非常に光栄であります。過去の歴史をひもときますと、平成十六年に総理が御出席いただいておるということでございまして、四年ぶりということでございます。

 さて、今回の金融機能強化法、少し思い出話をさせていただきますと、三年前に私は、仕事でニューヨークにおりましたときに、ガイトナー・ニューヨーク連銀総裁、今でも総裁ですけれども、この方と一時間以上お話しすることがありました。そのとき、アメリカ経済についてどうですかと聞きましたら、十年間はまず絶対大丈夫だと言っておられました。ただ最後に、帰り際に、ただ唯一心配なのは住宅の価格がそれほど上がらなくなってきたことだと言っておりました。

 もう一人、同じときですけれども、別の場所で、シティバンクのワイル当時の会長に同じ質問をしました。やはり、設備投資も堅調、企業マインドも非常にしっかりしたものがあるから絶対大丈夫、ただし住宅価格が以前ほど上がらなくなったのでどうなのかな、こういう言い方をしておられました。

 アメリカの経済界の代表的なリーダー格の人がそういう認識を持っておられたのが三年前であります。ところが、それから一年半ほどして、御承知のようなサブプライムローン問題が起こりました。経済というのはそれほど予測のつかないものかなとつくづく思うわけであります。

 さらにもう一つ申し上げますと、何年前でしょうか、もう七、八年前でしょうか、ニューヨークのダウ平均が一万ドルを初めて達成したその翌日に、我々は公用でニューヨークへ参りました。額賀先生も御一緒だったと思いますが、そのとき、ニューヨークの日本クラブにウォール街の投資顧問会社の社長さん方や証券会社の社長さん方、七、八人来ていただきまして、いろいろ話を聞きましたら、今でも忘れません、次は十万ドルだ、こういうことを何度も言っておられました。それほどフィーバーしておったんです。

 それが、その株価はどうでしょう。その後、一万五千ドル近くまで行きましたけれども、それからごらんのような状況であります。それほど世界は大きく、しかも瞬間に変わってしまうということであります。

 今、世界の金融サービスの総額は幾らぐらいかということを役所に聞きましたら、二・二京、京というのは一万兆円でございますので、二万二千兆円というのが総和だということでございまして、世界のGDPの約四倍になっております。日本のGDPは約五百兆円余りですから、いかに大きいかということがわかります。

 今回の一連の金融クライシスで約二千兆円ぐらいのお金が消えていったとも言われております。したがって、かつて経験したことのない最大の危機とも言われますこの危機を世界はどのようにして克服していくのか、大きい国際的な政治課題でもあるわけであります。

 先月ですか、十月の十八日ですけれども、フランスのサルコジ大統領がバローゾ委員長とともにアメリカのブッシュ大統領のもとを訪れまして、ワシントンで金融サミットを開催しろ、こういうことを言われました。市場主義者と言われるブッシュ大統領がよくぞこの御提案をのんでこの会議の開催に応じたと私は思っておりますけれども、その会議に我々の麻生総理が出席されるわけであります。

 アメリカもフランスもイギリスもドイツも、それなりの金融対策として、破綻しかけている、あるいは破綻した銀行に対する政府資金の投入ということを既に決定し、一部では既にお金も投入しております。世界の先進国がこういった状態のときに、比較的傷が浅いと言われている日本の経済でありますけれども、我が国もまたこれらの諸国と同じ構えを姿勢としてやはりやるべきときに来ているのではないか。その大事な会議に我々の麻生総理が御出席されるわけであります。

 その出席される麻生総理に、この国際的な連携の義務感を世界に鮮明に言っていただくためにも、私は、はっきりとした日本の態度、そしてみんなと一緒にしっかりとした安全な体制をとるんだということをぜひしっかり言っていただきたい。麻生総理は英語が非常にお上手でございますので、ぜひ英語も交えて、国際的な理解の中で、日本の経験がうまくいったというところも確かにあります、その経験も他国に教えながら、ぜひこの国際舞台で大いにリーダーシップを発揮していただきたいと私は思っておりますが、これに臨まれる麻生総理の御決意といいますか思いを、ちょっと語っていただきたいと思います。

 以上です。

麻生内閣総理大臣 今、間違いなく、グリーンスパンFRB前議長の言葉をかりるまでもなく、これは百年に一度の金融によります危機、他国にとりましては金融災害とでもいうべき物すごい暴風雨みたいなものが吹いてきておると思っております。

 幸いにして、今現在日本という国を見た場合においては、欧米諸国に比べてその被害は少ない。したがって、土台がそんなに揺らいでいるわけではありませんが、もう竹本先生よく御存じのように、こういう金融という決済機能が揺らいでくる、銀行間で取引ができない、銀行間のオーバーナイトコールが何%も金利がつくなどというのは異常です。そういったような状況になってきているときに、これは必ず次には実物経済、実体経済に影響を与えてくる。もう既に一部出てき始めていると思っております。したがって、日本としては、それに対応するべくあらかじめきちんとした対応をしておく必要がある。

 幸いにして、今お話がありましたように、九七年、九八年の危機のときに、少なくともあのときは、最初、たしか住専、それから三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、続いて債券信用銀行、長銀とばたばたばたと御存じのような形になった。もう御記憶のとおりです。ああいったようなことにほかの国が今なっておるのに対して、日本はあのとき少なくとも日本だけで切り抜けましたし、同時に起きましたアジアの他国に対しても日本はしかるべく金融支援をやって、多くのアジアの国々は日本からの支援、IMFはあのとき余り作動しませんでしたので、その意味では助かったといって今でもよく礼を言われるところではあります。

 そういった経験というものを我々は大事にしておく、これは我々の知見として大事にしておくべきものだと思いますので、こういったものを含めまして、去る三十日に発表させていただきました日本としての経済対策、景気対策、今お願いしておりますこの法案を含めまして、こういったものをきちんとしてやっていくんですが、今回のものは短期的なものと中長期的なものと両方考えておかねばならぬと存じます。

 したがって、会計基準のあり方とか、また格付機関のあり方とか、そういったものを含めまして、こういう金融派生商品に対して一カ国だけでなかなか管理監督ができにくいというのは今回如実に証明しております。したがって、こういったものは国際的にきちんとしたものができる、そういった監視できるような機構、そういったものの必要性などなど、いろいろ話をしなけりゃならぬ、実質的な討議をしなけりゃならぬことが多々あろうと思っておりますので、ぜひこういった我々の経験というものを生かしながら、G7とかいうものではなくて、もっとこれは、中国とかインドとか、アジアに今大きな経済になりつつあるところがありますので、そういったものを含めて、我々としては、新たなものを考えていくということを中長期的には考える必要があるということはきちんと言わねばならぬところだと思っております。

竹本委員 ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 さて、中川財務大臣にお聞きしたいと思いますが、アメリカは約七十兆円の公的資金注入枠を設定いたしました。今総理からお話がありましたけれども、日本は、思い出しますのは六千八百五十億円という住専処理の額ですね。私は、余りこの仕事に関係していなかったころでありますが、よく覚えております。けんけんがくがくの議論をいたしましたよね。あれも含めまして、この金融、トータルで約四十六兆円を我が国は今まで投じているんですね。

 今回議論になっております金融機能強化法、二兆円の枠でやってきましたけれども、実際使われた額がことしの三月までで約四百億円であります。今回、こういう経済情勢の中で、しかも金融機能強化法を改正してやるんですが、どれぐらいのボリュームを予想しておられますか、相場観をちょっとお聞かせいただきたいと思います。

中川国務大臣 今竹本委員御指摘のように、現在、現行の金融機能強化法におきましては、約二兆円がまだ残っているわけでございます。これをどのぐらい中小企業、地域経済に対する貸し出しのために金融機関に資本参加をするかということについては、この法の趣旨、あるいは今総理からも御答弁ございました生活対策の目的のために必要な経費としてどのぐらいかということについては、私は慎重に検討する必要があると思っております。

 十分な額を用意することも必要でありますけれども、他方、余りにも十分過ぎると、逆に、そんなに資本注入が必要なんですかという逆のメッセージを与えることにもなりますので、状況を見つつ、この法案が成立いたしましたときまでに、対応をしっかりして数字を決めさせていただきたいというふうに思っております。

竹本委員 もう一点でございますけれども、今回の公的資金の注入によりまして、最終的には中小企業にしっかりと資金が回らなきゃいけないんですね。その辺の対策として、どういう工夫をしておられますか。

 我々は、不動産業者とかあるいは建設業者などからは、なかなか銀行は金を貸してくれない、物すごい貸し渋りだという話をしょっちゅう聞きます。今回、このようにして資金注入はしますけれども、結果として、やはりお金が中小企業に回らないと我々の目的は達せられないわけであります。また同時に、どうしようもないところにお金をずぶずぶと張り込むのもまた問題であります、国民の税金でありますから。だから、その辺の適切な、しかしながら末端に、中小企業に行くという、その辺の具体的な措置についてお伺いいたしたいと思います。

中川国務大臣 御指摘のとおりでございます。

 金融の決済機能、信用機能というものが十分にこの厳しい中小企業あるいは地域経済のお役に立てるように、資本参加をすることによって、特に中小企業、地域経済に対して貸し出しができる、融資を円滑化するということが非常に大事でございます。

 そういう意味で、今回、資本参加を国に求めるときには経営強化計画というものを出していただくわけでございます。そしてまた、民間の専門家の方々の御意見も聞きながら、経営判断をして資本参加の判断をしていくわけでございます。そしてまた、その後の金融庁の監督、あるいはまた計画との乖離がある場合には必要な報告等を求めるということにしておりますけれども、その計画自体についてはもう少し、法律が通った後に、具体的に、できるだけ明確にできるように努力をする必要があるというふうに思っております。

 一つの例を申し上げますならば、例えば四%の自己資本を、仮に欠けていた場合でも、それだけをもって例えば経営責任を問わないとか、他方、経営責任を問わなければいけない状況であれば、それはそれとしてやっていくのは当然のことでございます。

 さらには、今までは三年計画で一つの事業を進めていかなければ、その債権が悪化をしていくということになり、貸し出し銀行の方も引当金を積み増ししなければいけないというような状況になってくるわけでありますけれども、その条件を五年に延ばす、あるいはまた十年計画の中で、着実に計画が実施されている場合にはまた条件が悪くなるようなことをしないということで、基本的にはその目的達成のために柔軟に対応していきたいと考えておりますが、もとより、繰り返しになりますけれども、経営がずさんであったりいいかげんであったり、またお金が戻ってこないというような可能性が高い場合には、我々は、金融の重要性からいって、きちっとした対応もしていかなければいけない。

 そのバランスをどうとるかということでありますが、今までに比べまして、今申し上げたようなことも含めまして柔軟に対応して、この法の目的に資するように行政を行っていきたい。そしてまた、金融機関側にもぜひこの状況を十分に承知していただくということも必要でございますので、できれば今週中に、各金融の関係の諸団体に御通知をすると同時に、全国の金融行政に携わっております金融庁の職員に私から、公文書をもちまして、きちっと金融行政を行うようにというような文書を発行することも予定をしてございます。

竹本委員 これは総理にお聞きしたいんですけれども、今回、こういう金融機能強化法によりまして、言ってみれば、ガソリンを企業、末端に流す装置はできたわけですけれども、流す先が果たしてあるのかないのか、ここが私は非常に気になるわけであります。

 今の日本の経済、確かに政府は、自治体を含めまして、八百八十兆円とか言われる債務は抱えておりますが、他方、個人金融資産は千五百兆円とも千六百兆円とも言われる額を持っております。この運用先が国内にない、預金をしても金利がつかない、株に投資をしても下がるばかりだ、そこで、仕方なく外国の、オーストラリアとかアメリカとかそういったところへ資金運用に回っている。せっかくの働いた成果を国内で活用できない、これが日本の経済の大きい特質だろうと思っております。

 今、見ますと、内需、外需という数字がございますけれども、アメリカの内外需を見ると、アメリカは内需が一・六%、外需が〇・六、ユーロは内需が二・二、外需が〇・六、イギリスは内需が三・八%に対して外需がマイナス〇・六%、使うばかりです。日本の場合は、内需が〇・五に対して外需が〇・九。はっきりと違いますのは、諸外国は内需中心の経済、我が国は外需中心の経済であります。

 ですから、この極めて特異な形を今の経済状況の中でどう生かすかということを考えますと、やはりこれからは外需に頼るのじゃなくて内需に頼らないと、だって、アメリカも景気が悪いから物をこれから買いません、アメリカに輸出していた中国は景気がどんどん悪くなる、そうすると、中国に投資している日本の企業も経営内容は悪くなるわけでありますから、運用先は、国内にしかないとは言いませんけれども、国内中心にせざるを得ない。そういう目で見ますと、やはり内需拡大にどういうことをすればいいか。

 今回の麻生総理の出されました生活対策の中にも、住宅の投資減税というのが書かれております。これは大事なことだと思います。お金を有効に使う先をつくってやることが必要だと思います。所得減税も必要ですが、法人税の減税も必要だと思いますけれども、私は、やはり具体的に政府に内需活性化対策本部でもつくって、総理が本部長にでもなって、そして内需活性化に役立つプロジェクトをどんどん進めていく。

 そのためには、国の金を使うんじゃなくて、民間の金融資産を使おうじゃないか。PFIという方式も一つの方法でしょうし、それからプロジェクトファイナンス方式で最近いろいろ議論されておりますけれども、SPCが新型証券、これは政府ないし公的機関が保証をつけた株券でありますけれども、それを発行することによって資金を集める、そのお金で地域活性化事業ないし公共事業をやっていく。いい例を挙げますと、例えばユーロトンネル、あのロンドンとパリのユーロトンネル、あれもPFIでやっております。

 このように、世界各地にはこういう民間資金を使った公共事業の成功例がたくさんあります。これをぜひ国内でやっていただくと、内需の拡大に非常に大きく役立つのではないか。

 ですから、総理の進めておられる税制プラス政府の断固たる決意を、こういう体制をつくっていただいて、ぜひ内需拡大を図っていただきたいと思いますが、総理のお考え方をお聞きしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今竹本先生御指摘のありましたように、日本の場合、今、外需依存率がGDPの伸びに占める率は明らかに、内需よりはるかに、倍ぐらい多いというのは現実であります。また、この七、八年見ましても、日本はいわゆる内需振興みたいな対策をとってきたことはありません。ほとんど外需の影響によりましてGDPを伸ばしてきた。

 御指摘のあったように、中国が伸びた、その中国からアメリカに輸出しておりましたので、その関連でアメリカも伸びた。いろいろな形でアメリカと中国への輸出、もちろんヨーロッパも含めまして大きかったのが、いずれも今回厳しいことになる。すなわち、景気が悪くなるということは、イコール輸入が減るということを意味しております。したがって、その意味でいきますと、日本はこれから景気を振興する、経済を活性化させるために、内需振興というのは避けて通れないところだと思っております。

 ただ、今御指摘のありましたように、日本として内需を振興するときに、今まで公共工事というものを主にしておりましたが、今回の五兆円というもの、真水の五兆円の中に占めます公共工事の割合は数千億、三千億ぐらいだと思いますので、そういった意味では、今までのものとは全く違った形になっておる。住宅ローン減税であってみたり、いろいろなものが入ってまいりますので、民間の持っております活力をというのが一点。

 ただ、企業が、今資金を銀行から借りて金利を払ってまで設備投資をするかといえば、御存じのように、金利がゼロに近くなっていても企業は金を借りて設備投資をしようとはしない、というときには金融政策は余り効果が上がらないというのは、この数年間、如実にそれが証明されておると思います。

 したがって、ここはどう考えても設備投資に関する減税とか住宅ローン減税とか、そういう形でのいわゆる新しい内需が拡大されることにつながっていくものにその主たるものを振り向けていかないと、日本の景気は急にはなかなか直っていかない。そして、底が出て、企業が金を借りてでも設備投資をしようという気にさせる、そこが一番難しいところだと私自身はそう思っております。

 今御指摘がありましたように、今回生活対策という言葉を申し上げましたけれども、ぜひ、今、目先景気対策というもの、これは我々にとってはしゃにむにやらないと失速しかねない状況にあると思いますので、今言われました点を含めまして、内需の拡大をいかにやるか、これは非常に大きなところだと思いまして、私どももその点には十分留意をして事を進めていかねばならぬと思っております。

竹本委員 頑張っていただきたいと思います。終わります。

田中委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 公明党の谷口隆義でございます。

 本日は、総理、出席いただきましてありがとうございます。きょうは、私は浅はかな知識でありますけれども、総理に提案もさせていただきたいなと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 本法案、金融機能強化法というのは、そもそもはこの世界金融危機を、今、百年に一回とグリーンスパンさんがおっしゃっているわけでありますけれども、そのような状況の中で、一刻も早くこれを成立させなければならないということで今審議をいたしております。そもそもその世界金融危機について、この十一月の十五日にワシントンで麻生総理御出席で金融サミットに出られるわけでございますし、財務大臣も行かれるということをお聞きしておりますが、先日、財務大臣の方には若干お話をさせていただきましたけれども、私は、総理は多分大変強い決意でこの十一月十五日の金融サミットに臨んで準備をされていらっしゃるんだろうと思います。

 今回の世界金融危機で、唯一致命傷を負っていない国は日本だけであります。私どものこの国は、この十年近くの間、自公の連立体制の中で、自公の安定したかじ取りを行って、金融機関の不良債権の処理をし、また長期的な景気回復を軌道に乗せるということをやってまいった結果、今回、大きな傷も負わなかったというところがあるんだろうと思います。各国の通貨の中で、我が国の通貨のみが評価を落としていない、下落していないわけであります。

 このような状況の中で、やはり我が国の国際貢献がいかにあるべきなのかということを、その金融サミット、G20でまた言われるんだろうと思うんです。また、そういう日本がどういうことを提案するのかということも、大変注目されておるところだと思います。

 それで、まず初めに私が申し上げたいのは、十月十日にG7がありまして、このときに、IMFの機能強化について言及されまして、必要であれば日本もIMFへ資金貢献を行う用意があるというようにおっしゃっておられるわけでございます。今、そのIMFの状況をお聞きしますと、中小諸国またはその周辺諸国がIMFから融資を受けたいという手が挙がっておるわけですけれども、今現在、IMFでは貸付可能資金が約二千百億ドルだと言われております。

 そのような状況の中で、資金不足になるだろうというような状況だと聞いておるわけでありますが、私は、この際、日本が先進諸国を引っ張るような形で、これは大変多額でありますけれども、今現在、我が国の外貨準備が大体一兆ドル弱あります。このうち、四千億ドルから五千億ドル程度、半分近い資金をIMFに資金拠出する。これは決して毀損するものではありません。毀損するものではありませんので、ある程度のロットがなければその他の先進諸国もついてこないんではないか、このようなことを思うわけで、我が国がある程度のロットを拠出して、それが呼び水になって、誘い水になって、ある程度の資金がプールされるというようなことになればいいというように思っておるわけでございます。

 いずれにいたしましても、信用収縮は絶対させない、また世界の金融システムは断固として崩壊させないという強い意思を総理が述べていただくためには、この程度のロットが必要なのではないかと思っておりますが、総理の御見解をお伺いいたしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 過日のG7の会議において、中川財務大臣の方からIMFに関して言及をしておられます。これは、御記憶のように、九七年、九八年のアジアの金融危機に当たって、IMFとしてはなかなかうまくアジアの国に対しては作動しなかった。結果的に、韓国でありインドネシアであり、いろいろな国がいろいろ資金ショートが起きたときに、それを最終的にバックアップしたのは日本、これは金融関係をやられた方なら、タイの人たちを含めて、皆この事実を知っておりますので、そういった意味では、今回のG7でも、これは非常に大きなインパクトがあった発言だったと思っておりますし、事実、過日会いましたインド、中国、いずれもそのことに関しては高い評価をしておられます。

 今回、今御提案のところですけれども、IMFの資金が、ただいま現在枯渇しているわけではありませんけれども、もしそういった状況になった場合、日本としてはそれに対応する用意があるということは、過日、もう既に申し上げているところでもあります。

 そういった意味では、基本的には、外貨準備のうち約半分というお話でありましたけれども、今直ちにその額を向こうに示すほど、今IMFが緊迫している状況にはないと思っておりますので、そういうものに対して我々は対応する用意があるというものをきちんと表明していくということによって、かなり多くの国々からの安心なり、先ほど言われました信用収縮が起きずに済むということにもなり得るんだと思いますが、いずれにしても、このIMFというのは大いに活用すべき組織だと思っております。

谷口(隆)委員 総理が行かれて、いろいろな発言を今お考えなんだろうと思いますけれども、いずれにしても、国際的な状況を見ますと、エゴイスティックな国だと言われるようなことのないように、総理はもうそんなことよく御存じですからお考えだろうと思いますけれども。

 それで、今度は、BISがありますね、国際決済銀行というのがありまして、ここの組織を我が国から、今申し上げるような形で変えたらどうかということを申し上げたいと思いますが、バーナンキさんが、個別の金融機関ではなくて金融システム全体を守っていかなければならない、マクロプルーデンス政策というのが大事だ、こういうように言っているわけでありますけれども、そういうものをもう少し拡大して、国際的なマクロプルーデンス政策、このようなものを構築する必要があるのではないか。

 なぜならば、今、この国際社会の中で起こっておるのは、十月三日にアイルランドが全額預金を保護しようということを発表しますと、その周辺諸国が大きく影響を受けまして、十月五日にデンマークが預金を全額保護したい、また十月五日にはドイツが個人預金を全額保護したいと、周辺諸国のところにずっと影響が出てまいったわけでございます。これは、私は、各国まちまちの対応が今行われておるところで、このようなまちまちの対応を一元化して整合的な政策を行い得るようなことが必要である、そのためには、BIS内にこのような整合的な、情報を一元化できるような機関を設けたらどうかというのがまず第一点でございます。

 それともう一つは、急激に今為替が変動いたしております。円高がぐっとありまして、その他、ドル安、またユーロ安というような状況があったわけでありますけれども、かなりの幅で上下変動を繰り返しておりますけれども、このような日米欧の通貨、為替を含む協議機関を設置したらどうか。現状を聞きますと、それぞれのところでやっているということなんですが、それが一定のところで行われているというわけでもないわけでございます。ですから、そういう日米欧の先進諸国の中での協議機関を設置したらどうかということ。

 それとまた、CDSというのがあります。クレジット・デフォルト・スワップというのがあります。これが、金額そのものもわからないんです。こういうCDSを、決済システムをつくる必要があるとニューヨーク連銀の元総裁のコリガン氏が言及しているようでございます。これもどこでやるというわけでもないわけで、こういうものもBISの組織内にこういう協議機関をつくってやったらどうかというように私は思っておるわけでございますが、総理の御見解をお聞きいたしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 今、バンク・フォー・インターナショナル・セツルメント、通称BISと言うんですが、国際決済銀行の話をされておられましたけれども、今、御存じのように、過日の三十日の経済対策を発表させていただきましたときに、国際金融というものを我々は避けて通れない、今の状況において。したがって、金融機関に対する監督とか規制、これは最も信頼を置き得るべき組織、極端に言えば、人のお金を預かる組織ですから憶病なまできちんとやっていってもらわなきゃいかぬ、そういった意味なんですが、ここで、今回は一国でそれを管理できなかったわけですから、その回避がばっと国際商品として世界じゅうに散った結果こういうことになりましたので、一国の管理だけではなかなか難しいのではないかということで、国際金融機関に対する監督と規制の国際協調体制というものをつくらないと、今のような状況というのはまた起きる可能性というものは否定できないのではないか。

 そういった意味で、過日、ASEMの会議で、フランス、ドイツ、インド、中国、イタリア、皆いろいろな話をしましたけれども、いずれもそこに関して確たる自信が皆ない。なぜなら、こういう経験は、我々は十年前にほぼ似たようなものを、もう少し小さい規模ではありましたけれども、やりました。しかし、あのときは国内だけで決済がし切れた。しかし、今回はもう世界じゅうに散っておりますので、そういった意味ではなかなか難しい、そういうときにするものがありませんから。

 しかも、格付機関なんというものがえらくはやっておった時代がありますが、その格付機関が余り、怪しげな格付をやっておったんじゃないかというような話が出てくると、これはますます投資家は投資を控えるようになるという形になるんだと思っております。

 したがいまして、今回のこの金融機関というものを世界じゅうにどうかする、監督するというのはどういうのがいいのか。また、今BISはバーゼルにあるんですが、バーゼルみたいなところにきちんと置いてやった方がいいのか、チェンマイ・イニシアチブみたいな形で、お互いに今インターネットでどんどんできますので、そういったものを置いた方がいいのか、ちょっといろいろやり方を考えていかねばならぬところだと思いますが、いずれも今度のG20と言われるところの場所でこの問題について検討をしないと、我々はまた何年かして同じようなことを起こしかねないという点は指摘して、きちんとその点は、日本は日本の案の提案をしますけれども、そういったものについてぜひたたき台としてでも提案をしてみて、いろいろな国と意見を交換した上でどうするか、これから先はちょっと、私みたいな話じゃなくて、もっときちんとした国際金融のプロの出番なんだと思いますが、そういったことで対応させていただきたいと思っております。

谷口(隆)委員 例えば今チェンマイ・イニシアチブのことを言及されましたけれども、これもファンドを組成するまでに至っていないわけですね。絵にかいたもちなんです、今の状況では。ですから、それがすぐに機動的にいくためには、やはり日中韓が金を入れるといったようなことも含めて、アジアエリアのところも、ぜひ総理、考えていただければと思います。

 それと、日銀総裁にきょう来ていただいておりますので、まだ総理に対する質問はあるんですが、先に日銀総裁にお伺いしたいんです。

 先日の金融政策決定会合で、無担保コールレートを〇・三%程度で維持するというように決定されたということでございます。ですから、今〇・五から〇・三程度ということになっているわけですね。これは、今まででは〇・二五という刻みでございましたので、のり代というような表現で今されておられるようですけれども、こののり代というのは、もう一回ぐらい例えば金利を引き下げてもゼロ金利にはならないということをねらっているんじゃないかとかいろいろなことを言われております。

 それで、今回、〇・二引き下げた、〇・二程度、このことをまずお聞きしたいことと、今回、この決定については四対四で決定がなされたということでございます。我々忘れてはならないのは、総裁はお一人、副総裁は今度山口さんが入られて二人になった、三人です。それで、審議委員は六人なわけでありますけれども、今五人しかいないわけですね。ですから、八人で決定するということですから、四対四に分かれて、今度、総裁の決定で決まったということです。総裁の決定で決まったことは、これは日銀法に決められていますからそれでいいんですけれども、それは余りに僕は総裁に過重な責任が、まあ、それはそのぐらいの経営責任は持ってもらわなきゃいけませんけれども、本来の姿にやはり戻す必要があるのではないかというように思うのです。

 この二点について、ちょっとお答えをお願いします。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行は、十月末の決定会合で、コールレートの誘導目標を〇・二%引き下げまして、〇・三%前後という決定を行いました。

 既に政策金利の水準が極めて低い中でさらなる金利引き下げを行う場合は、金利水準の引き下げが持つ金融緩和効果とともに、金利の引き下げが金融市場の機能を低下し阻害しまして資金の流れをかえって悪くするということで、金融緩和効果が発揮されにくくなるということにも配慮する必要があります。

 この金融市場の機能ということについて、わかりにくいと思いますので、少し付言いたしますと、これは、金利が随分低下しますと、金融取引に伴う取引のコスト、これを十分にはカバーしにくくなってまいります。そうすると、結果として金融市場で資金を運用するそうしたインセンティブ自体が低下してしまう、結果として資金の流れが悪くなってくるということを考えているものであります。

 現在のように金融市場の機能の大幅な低下が世界的に見られる局面では、この金融市場の機能を維持するということは、これは大変重要だというふうに思っております。今回の利下げは、もう既に政策金利の水準が非常に低い中で、こうした両方の要因を考慮した上で、現時点で最善の選択としてこれを選択したものであります。したがいまして、今委員の方からのり代という言葉をおっしゃいましたけれども、将来の政策対応余地を残す、つまりのり代という配慮ではなくて、あくまでもこの時点でこの政策金利が最適であるという判断でございます。先行きのり代を残すという意味での判断ではございません。

 それから、審議委員の欠員のことでございます。

 この点につきましては、まず、先般国会におきまして副総裁の任命をいただきました。大変感謝をしております。このことをまず申し上げました上で、政策委員の欠員というのは、これはやはり異例の事態であります。意見の多様性、それから政策業務の円滑な遂行ということを考えますと、できるだけこうした異例な事態は早期に解消されることが望ましいというふうに考えております。

 ただ現実に、私ども今、総裁、副総裁、この日本銀行を預かっているという立場からしますと、何であれ日本銀行の政策業務運営が滞るということは許されませんので、これはしっかりと職務を遂行していきたいというふうに考えております。

谷口(隆)委員 ありがとうございます。国際協調がなされたという観点では評価したいと思うのですけれども、今の審議委員のことも含めて、早々に一人やはり入っていただかなければならないと思っております。

 あと、最後に総理、一言で結構でございますけれども、先ほど内需拡大のことを言及されました。私は、内需拡大はやはり労働分配率をふやさなきゃいかぬ。総理自身が財界のところに行ってそういうようにおっしゃったことをお聞きしておりますけれども、やはりどうして労働分配率を上げていくのかということは、お願いベースでは僕はだめなのではないか。ピークは七五%程度あったのが、今七〇%を割っております。

 それで、総理、ちょっと一言このことについて御見解をお伺いして、終わりたいと思います。

麻生内閣総理大臣 前職は公認会計をやっておられましたので、よくおわかりの上で聞いておられるのだと思いますが、御存じのように、景気が悪くなっていわゆる配当、そういったものができなくなって、そして売り上げが減って利益が減りますと、労働分配率は減れば減るほどもうかる、上がるわけですね、労働分配率というのはそういうルールになっていますので。だから、景気が悪くなると労働分配率は上がるのです。

 だから、労働分配率だけ言ってもだめです。少なくとも実質の手取りというものがきちんと行かねばならぬ。今回、保険やら何やらお願いをさせていただくことにしておりますけれども、そういったものをきちんとやりますので、その下げた分がきちんといわゆる従業員のところに回るようにということが一番肝心なところだと思っております。

谷口(隆)委員 それでは、これで質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、中川正春君。

中川(正)委員 民主党の中川正春です。

 ちょっと最初に、通告をしてなかったんですけれども、アメリカの大統領選挙について、これは、通告がなくてもふだんからしっかり考えておっていただくことだろうというふうに思いますので、まず入り口、そこから話を進めていきたいというふうに思います。

 先ほど、委員会が始まる前に、テレビ等々の報道は大統領選挙一色でありまして、オバマ候補がランドスライドで勝っていくという状況が確定をしてきておるようであります。アメリカも、政権交代、その政権の交代ということだけではなくて、恐らく、世界の権力構造というか、経済の構造も含めて大きな転換期をこれで迎えたんだろうというふうに思います。

 そのオバマ候補の勝利について、日本の総理大臣としてこれをどう受けとめて、どのようにこれからの対応を考えていこうとされておるかというところをまずお聞かせをいただきたいと思います。

麻生内閣総理大臣 これは基本的に、どなたがアメリカの大統領になられようとも、日本にとりましては日米というものが基軸というのは、終始一貫変わっていないところであります。

 したがって、これまで民主党政権のときであろうと共和党政権のときであろうと、日本政府としてはきちんとした対応をアメリカとやってこれた。そういった努力を引き続きオバマという人とやっていかねばならぬ。これは、日本にとりまして与えられている責任、また、一番大事な点だと私どももそう思っております。(発言する者あり)

中川(正)委員 つまらないなという声が出ていましたけれども、私もその反応ではつまらないなというふうに思います。

 もちろん、日米の関係というのを基軸にしていく、そんな中でこれから新しい構造を模索をしていくということだと思うんですが、変化は出てくると思うんです。はっきりオバマさんは言っているんです。イラクからのいわゆる撤退ということを早期に考えていくという、これは、政策変更ということはもうはっきりしてきています。

 それから、外交政策にしても経済にしても、これまでのネオコン体制の中でこれは破綻が今起こっているわけですが、この考え方については根本的に新しい基軸というのが生まれてくるんだろう。それが何かということを早く私たちは理解をしていかなきゃいけないというふうに思っておりますし、威圧だけじゃなくて対話を重視した外交政策に変わっていくということの中で、恐らく中国を中心にした新しい対話というのがアジアに対しても始まってくるんだろうというような、そういういろいろな与件というのをしっかりとらえていきながら日本の戦略を考えていくということ、これが私は大切なんだろうというふうに思います。

 その上で、一つ、総理の基本的な経済の枠組みを考えるときの考え方というのを確認しておきたいんです。

 これまではドルが基軸であった。これはアイロニーなんですが、アメリカ発のサブプライムで金融破綻を起こしたにもかかわらず、依然としてドルというのは崩壊をしないんですよ。いわゆる決済通貨として、さっきIMFの話が出ましたが、やはりドルを使ってやっていこうということは今の時点ではあるということなんですが、これは、総理の頭の中では、将来これから先もドルだけが基軸通貨として世界で秩序をつくっていくんだという形でいいのか。

 それとも、いろいろなところで模索が始まっているように、例えばユーロという新しい通貨のいわゆる塊というか、これが出てきた。あるいはアラブ諸国でも、中長期的に見てこれはドルは危ないという形の中で、決済はドル以外のものでしていこうというような動きで、アラブの中でも一つのバスケットをつくるようなそういう流れも出てきた。あるいはアジアでも、私たちはやはりそういうことに対応していくという思いというのはしっかり持っていかなきゃいけない時代になってきたんじゃないかということがあります。

 その上で、総理の今の基本的なスタンスというか考え方として、やはりドルを守り続けていくんだ、ドルでないといけないんだ、そういう前提でこれからもやっていこうとされるのか。それとも、それぞれのブロック単位で、ある程度の決済通貨というのをドルが崩れたときの準備としてつくり上げていきながら、新たな通貨秩序といいますか、世界通貨をつくっていこうというふうに日本は歩み出すべきだというふうに考えておられるのか。ここによって非常に戦略が変わってくるんですよ。

 いずれその基本というのを、これも事前の通告がなくてあれなんですが、これはもう自然に持っていなきゃいけないスタンスだと思うので、改めて確かめさせていただきます。

麻生内閣総理大臣 国際協調がキーワードです。それが基本だと思いますが、今、ドルの決済をやめて別の通貨になって、仮にドルが崩落、暴落したときにおける日本の被害というのは考えておかねばならぬ。どこの国でもドルによる外貨準備をしておりますので、その意味では、ドルの暴落イコール国益を大きく損なうことになる。これは、世界じゅう皆同じことであります。したがって、短期的にはドルというものをある程度支えないとやっていけない。これは、フランスもドイツもインドも中国も皆そこのところは同じだと思っております、既に意見も交換しておりますが。

 しかし、中長期的にはいろいろなことを考えねばならぬ。ブレトンウッズ体制ができてきちんとアメリカのドル通貨体制になるまでにどれぐらいかかったか、御記憶のとおりです。それが七一年になったらどうなったか、御記憶のとおりです。いずれも厳しいことになりました。それでもドルの通貨体制は続いたという背景というものが、一つ考えておかねばならぬもう一点のところ。

 同時に、二十七カ国であのユーロをきちんと維持できるかということに関して、それをやり切るだけの決意と覚悟がEUにあるのか。我々は、そこは見きわめないかぬところなんだと思っております。

 いずれにしても、いろいろな話を、我々は国際的に見れば決済というものを考えないけませんから、その決済がきちんとできるための対応をどうやっていくか。キーワードは国際協調だと思います。

中川(正)委員 私の問いかけに対してしっかりとしたクリアな返事は返ってこなかったので非常に残念なことでありますが、恐らく、私たちのこの国家のいわゆる戦略として、そこのところはもっと議論を深めていかなきゃいけないところなんだろうというふうに思います。

 これはごまかしてもいけないところだし、いつも日本の政府というのは、国際協調だ国際協調だと言って、そうやっている間に自分の存在感をなくしてしまって、他に合わせていく。他が決めたことを与件として受け入れてしまって、それに合わせていくだけで戦々恐々としているというようなそういう状況が続いてきました。それだけに、我々の意思というのをしっかりつくり上げていくということが大切なんだろうというふうに思います。

 そういう意味では、さっきの答弁はそういう答えになっていなかったということ、これを指摘をしておきたいというふうに思います。

 その上で、この金融機能強化法の論点について、総理みずからの考え方を端的にただしていきたいというふうに思っています。

 でき得る限り私たちも話し合いをしながら法案の修正をして、それぞれいいところをしっかり組み込んで頑張ってきたんですが、もう少しというところで強硬に採決ということを与党からきょうは話がありまして、非常に憤りを感じております。

 そこで、私たちの意思としては、前々から申し上げておりますように、今の状況を見ていると、確かに、地方を中心にした中小企業の状況というのは本当に厳しい。これからまだ厳しくなってくる。そんな中で貸しはがしや貸し渋り、地方によって相当状況が違ってきておりますが、これに対応するために、公的資金で資本注入をしていくというこの法案をもう一回生き返らせるということ、これについては基本的には賛成なんです。

 ところが、今回問題になったのは、そのことに乗じて、そうした本来の目的とはかけ離れたといいますか、それをうまく使って違った目的を達成しようとする中身が入り込んできている。これを排除しようというのが我々の思いでありました。具体的には、農林中金の問題と新銀行東京であります。

 最初に農林中金の問題に端的に質問をしたいんですが、総理、農林中金にもこのスキームでいわゆる公的資金を資本注入すべきだというふうにお考えですか。

中川国務大臣 現行法においても、農林中央金庫には……(中川(正)委員「総理、総理なんです。総理、あなたの考え方も聞いているんです」と呼ぶ)今、委員長から指名されたんですけれども……(中川(正)委員「委員長、違いますよ。総理です」と呼ぶ)

田中委員長 後ほど、答えた後、総理にも答えてもらいます。

中川国務大臣 現行法におきましても、農林中央金庫を初め、労働金庫等々、協同組合組織中央機関がその対象になっているわけでございます。そして今回も、農林中央金庫は日本のいわゆる代表的な金融機関としてこの対象にするということを排除するということは、私は、むしろこの制度の目的からいって、中小機関、あるいは中小企業、あるいは地域経済への貸し出しをよりやりやすくするというこの法律の目的の趣旨からいって、最初から排除をするということは、この法律の目的に合致しないことだというふうに考えております。

麻生内閣総理大臣 農林中金のお話ですけれども、農林中金に対する基本的な考えは今の財務大臣と同じなんですが、国の資本参加というものの申請に対して、これは、中小企業向けの貸し出しやら何やらいろいろしておられるところだと思いますので、そういった見込みなどいろいろの審査をする必要はあろうとは思いますけれども、基本的に、いろいろな今回の一連の今の状況にあわせて農林中金等々がきちんとしたものになっているというのは大変大事なことだと思いますので、考え方と言われていましたけれども、農林中金がきちんとするのは大事なことだと思っておりますが。

中川(正)委員 この農林中金については、これまでの委員会の議論を通じてさまざまな問題が指摘をされました。恐らく、それがしっかりと総理の頭の中で整理がされていないんだろうというふうに思うので、もう一回これはとめ返しますが、例えば六十兆円の運用資金のうち、この組織そのものが目的とする農業関係の資金の円滑化ということからすると、たった一・六兆円しか貸していないということ、それから、約四十兆円が証券化商品やデリバティブなどいろいろなものを含めて高リスクのいわゆる投資に回っているということ、それがために、恐らく今回の金融破綻で相当穴があいてしまっているだろう。それを、経営責任を問わずに、そのまま公的資本の注入をして穴埋めだけにこれを使うということについては、これは、この法律の趣旨に全く違った形で公的資金が使われていくということになっていくじゃないかという指摘をずっとしてきています。それに対して、いや、そうじゃないんですよというしっかりとした説明もないままに今まで流れてきているということなんです。

 そうした意味で、総理もこの枠組みの中でこれに資本注入すべきだというふうにお考えかどうかということを聞いているんです。

麻生内閣総理大臣 これは、農林中金が申請をしていない段階で今の御質問ですね。そういうことですね。だから、農林中金が申請した場合の話をしておられるわけですね。これはちょっと意味が、前提条件をきちんとしておかぬとはっきりしませんから。

 今の段階で、まだ農林中金がそのようなことを国に対して申請したという事実を知りませんのでちょっとお答えのしようがないんですが、仮にしたとして、その内容を審査した上で、きちんとしておればできる、審査した結果、やるべきと思えばするということなんだと思いますが。

中川(正)委員 もっと言えば、この理事長あるいはその役員の集団、十五、六人いるんだと思うんですが、これはみんな農林省の天下り。給与もはっきりしてきましたが、年収四千百万ですか、こういう年収を取って大穴をあけたということ、今こんなことがどんどん表に出てきたということでありまして、そういうところに対して政府がなぜこれはこだわり続けるのか。ちゃんとした基準をつくって、こんなところはだめですよという話をしっかりしたらいいじゃないかということを我々は言い続けてきているということ、このことを一つ指摘をしておきたいと思いますし、そこのところはしっかりした基準でというのは、基準を見るまでもなく、農中の現状というのはわかっているわけですから、こんなことに対してどうだというリーダーシップを総理の方からしっかり出してくる、そんな中で話し合いをして、ちゃんとこんなものは解決したらどうだと言うぐらいのメッセージが総理から出てくるということ、これを私は期待をしています。まだこれから参議院の話し合いは続いていきますが、そのことを一つ指摘をしておきたいというふうに思います。

 それから、もう一つは新銀行東京でありますが、最近の報道機関で次から次へとずさんな現場の状況が報道をされてきております。都自身は一千億円出資して、三年間で一千十六億円の累積赤字をつくってしまった。さらに、今回の都の決定で四百億円の追加出資をすることにした。これで公的な資金は注入済みであるということ。さらに言えば、もともとの発想の中で、このビジネスモデルが成り立つ、そういう前提の銀行だったのかどうかということと同時に、その役員構成を知事みずからが裁量権を持ってさまざまにやった、やったその役員が現場に対して監督権を全く発動していなかったということ等々、さまざまにこれは指摘されております。

 これに対しても、今のこの金融機能強化法の枠組みの中では、同じようなことで注入しようと思ったらできるんだ、こういうようなことがあるわけですが、私は、本来の目的からいけば、こういう銀行を救済するための法律ではないというふうに思っているんです。そこのところをはっきりさせるべきだというふうに思うんです。

 だから改めて聞きますが、総理はどう思っておられますか。この新銀行東京にも国の公的資金を注入すべきだというふうに思いますか。

麻生内閣総理大臣 この種の場所で個別の議論をするのはいかがかなと。正直、質問しておられる御本人もそう思っておられるんでしょうけれども。あり方についてはちょっと適当じゃないんじゃないかなと私自身は率直にそう思っております、まずは。

 ただ、一般論として申し上げさせていただければ、地方公共団体が支配をしているという形になるんだと思いますね、今のお話ですと。そういった金融機関について、その支配団体であります地方公共団体というものがその資本の充実につきましては一義的な責任を負うのは当然だと思いますので、そういった意味におきましては、制度が適切に運用されるということなんだと思いますが。

中川(正)委員 総理、ここまでこの委員会が議論を進めてきて、それで、金融対策の日本の政策誘導としては一つの目玉なんだと思うんですよ。それをしっかり事前に整理をせずに、ここへ出てきてさっきのような答弁をするということは、一体どこまで腹かけてこの金融対策をやろうとしているのかというのは、私は非常に疑問に思っております。だから、そこのところを総理のリーダーシップを発揮することによって、今問題になっていることがすっきりするんですよ。

 私たちはあえて反対しているわけじゃないんです。あえて反対しているわけじゃない。この問題というのは、資本注入して中小企業に対する資金を円滑化していくというのは、これは本当に金融対策の中では重要だと思っているんです。思っているにもかかわらず、こうしたとんでもないものが中に紛れ込んできて、そこで責任逃れして、公的資金だけもらって穴埋めしようというようなそんな見え透いたものがそこにあるから、我々はそれを指摘しているということなんですよ。

 そこのところをしっかり理解してもらった上で答弁してもらわないと、さっきのような、後ろの役人にちょこちょこっと耳打ちされて、それでそれをそのままオウム返しで答弁しているようなそんなことでは、なかなか我々も納得をしないということ、このことを指摘をしておきたいと思います。

 さらに腹かけた答弁があるんだったら、答えてください。

麻生内閣総理大臣 後ろにちょこちょこ言われて何となく答弁しているかのごとき無礼な話はかなり失礼な話だと思いますけれどもね。まず最初にそう申し上げておきます。

 それから、今話しのお話ですけれども、新生銀行だか何銀行でも結構ですが、その銀行から少なくとも申請があって、審査して、その結果がよければ出します、それだけのことだと思います。ほかには何のルールもありませんので、その審査に受かるか受からないか、それはそこできちんと審査をされればいいのであって、その上での話だと思いますので、これについてはどう思うかというような話を、今、個別の話をされてもお答えのしようがないんだと私はそう思いますけれどもね。これは、どなたが投げても同じことしか言えないと思いますが。

中川(正)委員 論点をそらしちゃだめですよ。私が言っているのは、基準を言っているんです。それから法律の目的を言っているんですよ。これは、中小企業を救済していく、その円滑化をするためにあるという法律であるにもかかわらず、それとは違った目的で使われる可能性があるから、この基準についてははっきりしましょうと言っているんですよ。

 恐らく、総理の頭の中ではこれについてもう議論する気持ちはないんだ、そんな雰囲気がもうありありと出ています。そんなことでは国会の運営は成り立っていきません。これは、総理の考え方がはっきり出てきて、初めて我々は、与党・政府は何を考えているのかというのがわかるんですよ。それが、総理がそんな形であいまいな答弁、あいまいというよりも論点をそらしていくようなそんな答弁で終始しているということ、これに対して、これから先、でき得れば話し合いをしていこうと我々は思っているんですが、非常に暗たんたる思いになります。

 この国会、そういう見通しというのがもうそこに出てきているような気がいたしまして、でき得る限り、早いところこれはもう解散して、しっかりと国民の意思の中ではっきりしていく、何をしていくかということを国民が選んでいくというところまでいかないと、総理、本音といいますか、なかなかまともな議論が出てこないというような感じがします。そのことを指摘をしておきたいというふうに思います。

 次に、経済緊急対策について一つ二つお聞きをしておきたいというふうに思うんです。

 これから、それぞれの緊急対策、私たちも私たちの思いの中で今緊急対策を発表して、これを二つ並べて、また政策のいわゆる競争といいますか、選択肢というのを広げていきたいというふうに思っています。

 その上で、今回総理が出してこられた緊急対策を一言で言えば、その場しのぎのばらまきだ。実際は、内需拡大に向けた種まきを今しなきゃいけない。土壌改良をしていくということ、このことがないと、しっかりとした景気が持続ができる、あるいは今の金融崩壊の荒波に対して日本が立ち向かっていく、そういうエネルギーが恐らく出てこないんだということ、このことだと思います。

 実は、私はさっきばらまきだと言いましたが、私だけが言っているんじゃなくて、これはちょっとした雑誌を見ていたら、前の経済財政の大田弘子大臣がやはり同じことを言っているんですよ。「景気対策の名で必要のない歳出を増やしてはならない。それは、たとえば公共事業の拡大や一時的な減税策だ。今の消費の落ち込みは消費マインドの低下によるもので、一時的な浮揚策では効果は望めない。」ということです。

 特に、最初は定額減税という話で始まったものなんですが、それはそういう形ではなくて、低所得者に向けた定額のクーポンかあるいは現金をばらまこう、それも一年限り。それをやって、最終的に三年後には消費税を上げようということを同時に発表をされておられるわけですが、これ、基本的には景気対策になっていかない、逆にますます国民は不安になっていく、そんなイメージを私は持っていますし、恐らく大田さんも、そういうことを直接的に言うよりも、こうしたものでやわらかく書いておられるんだろうというふうに思います。

 実は、その前の竹中平蔵さんのちょっとした書き物でも、どんなことをこの人は言っているのかなと思って調べてみたんですが、似たり寄ったりの話をしています。

 こういうことから考えて、今の経済対策、いろいろ説明はしておられますが、改めて、その土壌の部分、それからいわゆる土壌改良の部分、種まきの部分、ここをどのようにこれから構築をしていこうとしているのか。今回の緊急対策というのは全くそこからはかけ離れたものだと私は思っているんですが、そういう認識について、総理の改めたお話を聞きたいと思います。

 もう時間が来てしまいましたのでここで聞きっ放しになりますが、これから、そうした論戦をしっかりと繰り広げていきたいというふうに思います。

 以上です。

麻生内閣総理大臣 次々何となくルール違反が、あらかじめ質問の通告もなかったのが出てくるし、それに答えるから時間がなくなっちゃうんですよね。やはり大変だ、あなたは。時間配分をきちんとやらぬといかぬですわ。それがまず最初に言いたいことですな。

 それから、今、公共工事を何とかという話を大田弘子の論文を使っておられましたけれども、今回の五兆円の中には公共工事は二千億か三千億しかないじゃない。たしかそう思いますので、その点はかなり、大田弘子も論文を読んでいないということはないような気がしますけれども、基本的に、公共工事を使ってばらまきと言われるような対策には今回なっていないことははっきりしていると思いますが。(中川(正)委員「その後の話です」と呼ぶ)

田中委員長 質問の時間が終わっておりますので、よろしく御理解のほどお願いいたします。

 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛でございます。本日は、首相に質問の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。

 私もちょっと、きょうは歴史的な日ということで、アメリカ大統領選挙について端的に聞きたいんですけれども、アメリカのように二大政党で、それぞれのリーダーとなるべき人が主張をぶつけ合って国民の審判を仰ぐという選挙を、今回のアメリカ大統領選挙を見て首相もやりたくなったんではないかなというふうに……(発言する者あり)ちょっと聞こえないと思います。

田中委員長 御静粛にお願いします。

階委員 その二大政党制で主張をぶつけ合う選挙をやりたくなったのか、それとも、民主党がアメリカでも政権をとったということで逆に選挙をしたくなくなったのか、この辺について率直な感想をお聞かせ願えますか。

麻生内閣総理大臣 民主党という名前はあちらこちらにありますので。失礼ですけれども、アメリカだけではありません。日本にもありますし、ほかの国にもありますので、別にアメリカができたからすぐ日本も民主党というような、そういった短絡的な思考は私は持っておりません。それがまず第一です。

 二つ目。ああいったような選挙をやりたいと思っても、我が方では党首討論に相手の方が出てきておられませんので、ここらのところはなかなか難しいというのが現実なんじゃありませんか。

階委員 選挙の話をしているので、党首討論じゃないということを申し上げたいと思います。

 次に、今回、追加景気対策にはなぜか生活対策という名前をつけておりますけれども、この「「生活対策」について」というものについて、ちょっとお聞きしたいんです。

 二ページ目の(四)というところに、「一過性の需要創出対策ではなく、自律的な「内需主導型経済成長」への移行を後押しする」というふうにありますけれども、今回の定額給付金はまさに一過性、一時的なものです。なぜそういうふうに言えるのでしょうか。

麻生内閣総理大臣 私が今生活対策と申し上げておりますのは、少なくとも今回の中で三つ申し上げたんだと思っております。

 一つは生活者の暮らしの安全ということで、これは消費の安定ということが大事なところだと思っております。二つ目は金融、経済の安定。これは、中小また小規模企業の資金繰りというものを考えたところには、これが一番大事なところではないか。三点目は、地方というものがかなり疲弊してきていると思っておりますので、その意味では地方の底力を発揮するということが大事なのではないかということで、一、二、三としてその順番で申し上げたと存じます。

 また、生活対策というものは、これは有効需要というものをつくり出さぬといかぬのはもう御存じのとおりなので、少なくとも、私たちは一過性の財政出動というものにとらわれることなく、内需拡大というものをやっていかないと、これから外需に頼る部分というのはかなり減ってくるだろう、減らざるを得ないと思っておりますので、そういった意味では、経済成長を実現するためにはということでこの案を考えております。

 住宅ローン減税過去最大、またリフォーム等々につきましてもということをいろいろ申し上げておりますのは、少なくとも内需拡大においては住宅は大きな問題だと思っておりますので、私は住宅ローン減税というものを過去最大ということを申し上げているということであります。

 そして、こういった対策を速やかに実施するということは、やはり経済対策というものを、経済の体質というものを内需に交換していく大事なところなんだ、私自身はそう思っておりますので、公共工事等々に安易に頼ることなく、こういったことをしていくということが大事なのではないかと思っております。

階委員 一過性のものではないというお話で、経済の体質を転換しようという御趣旨なんでしょうけれども、そういったことは、そもそも追加景気対策で言うまでもなくて、所信表明演説のときに言うべきことじゃないでしょうか。なぜ、当初から首相の基本方針として言わなかったのでしょうか。この期に及んでなぜ出てきたのか教えてください。

麻生内閣総理大臣 所信表明におきましても明らかにさせていただきましたけれども、米国の経済とか世界の金融というもの、こういったものから目が離せるような状況にありませんから、実体経済へどういった形でこれが影響が出てくるかということをよく見定めた上で弾力的に行うということは、施政方針というか所信表明演説においてもそう申し上げて、そのとおり政権運営を行っておると思っております。

 安心実現のための緊急総合対策の決定というのは八月の二十九日、その後に九月の十五日のいわゆるリーマン・ブラザーズの破綻に端を発しましたので、実体経済に与える影響というのはさらに大きなものになってきている、急激に十月ぐらいからはっきりしてきたと思っております。

 そういった状況を踏まえて、今般、経済の体質というものを考えて、日本の経済というものを、今後その底力を発揮していくときに、やはり生活のところが安心しないとどうにもなりませんので、そういった意味では生活対策ということを申し上げたところでして、今後も市場の動向というものを考えながら、少なくとも必要な措置というものは必要に応じて弾力的に行っていくということが大事なところだ、かつ迅速にやっていかなければならぬのだと今回はつくづく思っております。

階委員 この問題についてはこれから法案がいろいろ出てくるでしょうから、またそういう場でも議論させていただきたいと思います。

 今回の公的資金の問題について、お話を移らせていただきます。

 私も十年前、先ほど首相もおっしゃられた長銀ですね、あそこにおりました。それで、公的資金を実際に注入されるかされないかということで、その当時国会でもけんけんがくがく激しい議論がされていたわけです。ところが、今回は、何となく公的資金を使うことに対して何か当たり前のことのような雰囲気も漂っているわけです。まさに隔世の感といいますか、私どもは本当に、公的資金を入れられることの重みといいますか、我々は本当に長銀という銀行が社会に迷惑をかけたとすごく責任を感じたりしたわけです。

 そのようなことを思いながら当時を振り返ってみますと、まず平成八年から、当時橋本首相だったと思いますが、金融ビッグバン、フリー、フェア、グローバルという合い言葉で、金融機関の業務の自由化、ルールの明確化、透明化、世界標準に合わせた制度の導入、そういったものが進んだわけです。以来、金融機関の競争が激しくなりまして、その前の護送船団と言われた時代と違って、金融機関も自己責任を問われることになりました。自己責任を問われることになりまして、その結果、平成十年、それ以外の金融機関も含めて長銀も破綻したわけです。

 金融ビッグバンのもとでは、今申し上げたとおり自己責任が大原則でありまして、公的資金の注入は例外中の例外というふうに認識しております。

 そこで、今回お配りしている資料、四ページ目、下から三つ目の丸のついた項目で「「金融機能の強化のための特別措置に関する法律」の活用・改善」というところで、その下の括弧書きで「使い勝手の改善を図る」ということが書いてあります。この「使い勝手の改善を図る」というのは、いかにも何か公的資金を安易に使う、公的資金に安易に依存するというようなことを言うニュアンスがありまして、私は金融ビッグバンのもとでの自己責任の大原則と矛盾するのではないかと思うんですけれども、その点について、首相の御所見を伺いたいんです。

中川国務大臣 公的資本を注入するということは、国民の税金を使わせていただくわけでありますから、十年前もそれから今回も、非常に慎重な制度設計をしていかなければなりませんし、国民の皆様方の御理解もいただかなければならないことは同じだろうと思います。

 ただし、今回は、システムリスクはないけれども、世界的な経済の状況あるいは日本の景気の低迷の状況の中で、特に、地方そして中小企業が必要とする資金を金融機関から融資してもらうときに、金融機関の方も十年で、階委員も御承知だと思いますけれども、企業が債務を減らしていくとか、あるいは債権の方ですね、金融機関の債権の方の証券化によるオフバランスの問題だとか、いろいろな形で出てきているわけでございます。

 そういう中で、金融機関は必要なお金を貸したくても貸せないという状況も他方にある。健全な金融機関であってもそういう状況に陥るわけでありますから、今回は、そういった緊急な経済対策の一環といたしまして、緊急に資本参加をする、公的資本を使って国が資本参加をするということについては、私は、このルールどおりに行っていけば、国民のニーズあるいは期待に十分こたえられるものである、そういうふうにしていかなければいけないというふうに理解をしております。

階委員 首相に聞きたかったんですけれども、ちょっと時間がないので次に移ります。

 要するに、自己責任の大原則というのがあるということはお認めになっていると思うんです。ただし、自己責任を問おうとしても問えない場合がある、これが大きな問題なんだと思うんです。

 金融ビッグバンによって、金融と実体経済の関係が大きく変わったというふうに認識しております。以前は、実体経済の成長に貢献するのが金融の役割だった。ところが、最近では、実体経済の成長に関係なく金融が肥大化して、金融危機が起きると実体経済に悪影響を及ぼしている、こういうことだと思います。特にアメリカの例なんかを見ていますと、例えて言えば、金融が実体経済を人質にとって、そして国民に対して身の代金を要求している、そういうような感覚も覚えるわけです。

 私が思うに、自由と責任はセットだ、責任なき自由というのはあり得ない。したがって、金融が実体経済に貢献するという積極的な役割、公共的な役割、これが金融が責任を果たすということだと思いますが、この点について、首相、どのようにお考えになりますか。

麻生内閣総理大臣 御質問の趣旨は、あれですか、自由と責任はついて回るという話をされて、それと金融とどういうぐあいにつなげておられるんですか。

階委員 済みません、ちょっとはっきりしませんで。

 要は、今までは自由の方だけに余りにもウエートが置かれ過ぎていたのではないか。日本も含めて、金融ビッグバンですから世界標準だと思います。日本も含めて、金融の世界が自由にのみ偏重してきた。

 そういう中で、自由で、かつそれに伴って責任も負わなくてはいけないのではないか、つまり公共的な役割も果たさなくてはいけないのではないか、そういう問題意識なんですけれども、自由と責任がちゃんとセットになるように、自由を行使するのであれば責任もちゃんと負うというような規制、そういう規制にしていくべきではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

麻生内閣総理大臣 金融がきちんといろいろな、自由な市場とか経済というものをいろいろな金融の面で支援していくという、自由には責任が伴っているのは当然じゃないかというお話なんだと思いますが、それは当然のことなんであって、金融機関はそれに対してしかるべき責任は持たねばならぬ。それはどこの自由主義経済でも、そこが一番の考え方の基本になっているということは、それはもう間違いないと思いますが。

階委員 要するに、今の規制のあり方でいいのかどうか。自由だけを追求して、その結果、経営に失敗したときは自分では責任をとれなくなって、そして公的資金のお世話になる、社会に迷惑をかける、そこを見直さなくてはいけないのではないか、今までの規制は余りにも自由に傾き過ぎていたのではないか、そういう問題意識なんですけれども、その規制のあり方について、今のままでいいというお考えですか。

麻生内閣総理大臣 基本的に、金融会社というか金融関係に携わっている業界というか、そういった人たちはそれなりの、金融という非常に大きな、かつ公的資金も含めましていろいろ扱うところが、きちんとその責任体制をしておかないかぬ。それは何も長銀に限ったことではない。世界じゅうみんな、銀行たるものは同じ責任を、少なくとも、多かれ少なかれきちんと負わなきゃならぬのは、これは金融という業界にいる場合の最低のルールだというふうには、私もそれは全くそういうものだと思っております。

 ただ、今言われましたように、起きております例は、例えば、巨大な金融破綻がアメリカで起きたときに、それを責任だと言ってほうった場合、それによって被害を受ける、そこに預金している人たち等々に多大な被害が起きるということを考えて、それぞれの国で、今回はどうするとか資本注入をするとか、いろいろな、その国によって対応はこれまでも違ってきたんだと思いますが、日本の場合においても、少なくとも自由主義経済をやっている以上、基本は今のものが基本なんだと思いますが、その影響が余りにも大き過ぎた場合はしかるべきことをやってきた。

 アメリカの場合でも、ここは助けて何でここは助けないのかとか、いろいろな話がよくあるところではありますけれども、そこのところのどこで線を引くかというのは、これは物すごく難しいところだとは思っております。

階委員 私が長銀で感じたことを言いますと、やはり金融というのは特殊な業界なんです。いざとなったときに、自分だけの問題じゃないんです。破綻したときに、社会全体、経済全体に迷惑をかける。

 となってくると、やはり規制のあり方というものも余り、自由でいいよ、そういうことではない。やはり金融機関として公共的な使命を果たすような、例えば、もうけた金額を全部利益の配当に回すとかそういうことではなくて、かえって規模が大きくなればなるほど自己資本を厚くしていざというときに備えるとか、そういうような、行動を自重する、余り激しいリスクテークとかそういうことをしないような規制のあり方を考えていくべきじゃないか、そういう問題意識なんですが、いかがでしょう。

麻生内閣総理大臣 基本的に、今先生の言われているところは、金融機関としてのあり方、姿勢、いろいろなことを言っておられるんだと思いますが、私も、基本的に、その金融機関が大きくなればなるほど破綻したときの場合の社会的影響は大きい、はっきりしていると思っております。

 そういった意味で、アメリカの場合も、どういう基準であの銀行は助けてこの銀行は助けなかったのか、これはいろいろ意見が分かれるところなんだと思いますが、それぞれその場におられる方々はいろいろなことを勘案されて、こっちはやるけれどもこっちはやらないということは今回の場合も決めているんだと思います。そういう意味で、日本の場合におきましても、何を基準にするかというときには、やはり物すごく大事なところは、今言われたようなところはきちんと踏まえてやらないと、こっちは助けたけれどもこっちは助けなかったという、その基準というものをきちんとしておかないかぬという御意見なんだと思いますけれども、それは間違いなく、その基準というものは明確かつ納得を得やすいものにしておかないといかぬ。

 ただ、前回のときのように、急に来ちゃったりなんかするとどうにもならなくなったりいたしましたのは、一九九七年でしたか、前回の騒ぎのとき、九八年のとき、あのときも多くの銀行が、長銀を含めて、あのときは債券信用銀行また証券会社でも幾つか、年末から年始にかけてすごい騒ぎになったときがあります。あのときに、我々として教訓を随分学んだと思った。おかげで、今回の場合、他のヨーロッパの国々に比べて日本の場合はそのころから学んだことが多かった、学習したことが多かったのではないかと思っております。

階委員 確かに、その十年前の教訓で、私も含め日本の金融機関、いろいろ学んでいます。それは確かなんですけれども、やはり今回のようなことが何年か置きに繰り返されるわけですね。金融危機が実体経済を振り回してしまう、しっぽが胴体を振り回すというような表現を使ったりもしますけれども、そういうことがないように規制のあり方を考えるべきだということです。

 それで、日銀総裁もいらしていただいていますので、法案の話は先ほどからいろいろ出ていますのでちょっと一たん離れて、日銀総裁の方に伺わせていただきます。

 今回、利下げされたわけですね。それで、お配りしている資料、多分一番最後についていると思いますけれども、今回は、こういう例が過去にあったのかどうかわからないんですけれども、日経新聞で、三十一日の政策決定会合の前、二十九日の朝刊一面に大きい記事が載りました、「日銀、利下げ検討」と。これをマーケットが織り込んで、マーケットがどんどん利下げを織り込む方向で進んでいってしまった。こういった事実がある中で、実際の政策決定会合の判断には影響が当然及んでいるんじゃないかと思うんですけれども、この点について、総裁、どのようでしたでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 日本銀行では、毎回の金融政策決定会合におきまして、政策委員が、会合までに明らかになりました経済金融指標やさまざまな情報を丹念に点検しまして、十分な討議を行った上で政策を決定するということを行っています。この点は、今回の決定会合も全く同様であります。

 会合では、実体経済面につきまして、各種の経済指標などから、世界経済の調整が一層厳しさを増していること、それから日本経済についても、輸出が頭打ちにあり、設備投資や生産が減少傾向にあることなどを確認しました。また、金融面では、株価の下落、それから社債の信用スプレッドの拡大や為替円高など、国際金融資本市場の動揺が我が国の金融市場にも波及してきているということを確認いたしました。

 こうした点検結果に基づきまして、会合では、日本経済は当面停滞色の強い状況が続くと見込まれ、また、先行きの景気の下振れリスクが高まっている一方で、物価の上振れリスクは以前に比べ低下しているというふうに判断しました。

 以上申し上げましたような情勢判断を踏まえ、政策金利を引き下げるとともに、金融調節面での対応力を強化することを通じて、緩和的な金融環境の確保を図ることが必要というふうに判断しました。

 このように、今回の政策判断は、事前の新聞報道等によって左右されたものではありません。経済金融情勢に関する十分な点検に基づいて決定を行ったということであります。

階委員 影響されていないというお話ですけれども、今回仮に利下げを見送ったとした場合、マーケットは大混乱ですよ。こういうことを今回の報道というのは招きかねなかったということです。こういう報道のあり方について、これでいいんでしょうか。報道の自由ということで問題ないんでしょうか。御見解を伺えますか。

白川参考人 金融政策でございますけれども、これは、金融市場や金融機関の行動を通じまして効果を発揮するものでありますので、中央銀行としましては、タイムリーで適切な情報発信を行うことが重要であるというふうに考えています。

 こうした点を踏まえまして、日本銀行では毎回、金融政策決定会合後の公表文や展望レポート、それから金融経済月報などのレポート類、さらには記者会見など、さまざまな機会を通じまして、経済、物価情勢の判断や、金融政策運営の基本的な考え方について丁寧な説明を行っております。

 もっとも、具体的な政策判断ですけれども、先ほど御説明しましたように、毎回の決定会合において、これは、ぎりぎりまでさまざまな指標、情報を集めまして、それをもとに政策委員が討議をして、決定をしております。こうした枠組みにおいて、具体的な、日本銀行自身が政策のタイミングをあらかじめ示唆することはもちろんあり得ませんし、そうしたことをしますと、市場の持ちます経済・物価観を読み取ることができなくなってまいります。

 日本銀行としては、市場とのコミュニケーションを双方向の有意義なものとしたいというふうに思っていますけれども、日本銀行の金融政策決定の枠組みが先ほど申し上げたようなものでありますと、そのことは……(発言する者あり)そうした仕組みであることが関係者の間に十分浸透していってほしいというふうに強く願っております。

 マスコミのあり方について私がここでコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

階委員 質問をかえます。

 特別会計等々のリスク管理について伺いたいんですけれども、今回の定額給付金の財源としては財投特別会計の金利変動準備金を充てるというふうに聞いております。その結果、充当された後、二兆円でしたでしょうか、二兆円をその準備金から充てた後、残った準備金というのはそのリスクに見合う十分な額になっているのか。なっているとした場合、どの程度その必要な準備額を上回っているのか。ここについて、事務方で結構ですので、教えていただけますか。

佐々木政府参考人 財投の金利変動準備金についてのお尋ねでございますが、今般取りまとめられました生活対策に基づきまして、私ども、速やかに実施できるものは実施に移すことにいたしました。また、予算措置等が必要なものについては、今後さらに内容を詰めるというような、必要な作業を進めることといたしております。そうした作業を行った上で財源について検討を行うということでございまして、財投特会の金利変動準備金の活用額につきましては現時点では決まっておりません。

 いずれにしましても、当面の緊急的な対応として、一時的、特例的に財投特会の金利変動準備金を活用するに当たりましては、財投特会の財務の健全性に配慮しつつ今後検討を行ってまいりたいと考えております。

階委員 それから、きょうは厚労省と金融庁の局長にもおいでいただいているんですが、公的年金の積立金の含み損益の状況、直近の数字、お願いします。それと、あと金融庁の方には政府保有株式の含み損益の状況、時間がないので続いてお願いします。

渡辺政府参考人 公的年金に関してお答え申し上げます。

 御承知のように、国が年金積立金管理運用独立行政法人に資金を寄託して、そこで分散投資をして運用しておりますので、その実績につきましては、時価における運用収益という形で管理し、公表をしてきております。もとより長期的な観点から評価すべきものでありますが、年金加入者の方々に適時適切に情報提供をするということがありますので、諸外国の例も参考にしながら四半期ごとにこれを公表しております。

 直近でございますが、十九年度全体を通じまして約五兆二千億のマイナスとなりましたが、過去七年間の累積では二十三兆円のプラスとなっていることを公表しております。また、二十年度に入ってから、四月から六月の第一・四半期におきまして、市場運用分では約一兆四千億円のプラスが出ているということを公表しております。第二・四半期を含む上半期の運用実績につきましては、昨年の場合、十二月上旬に公表しておりますので、そうした時期までには、私ども今のところ、当該独立行政法人で公表の手続を踏まれる、こういう予定であると承知しております。

 以上でございますが、何とぞよろしくお願いいたします。

内藤政府参考人 私どもが所管しております銀行等保有株式取得機構の保有株式の状況でございますが、直近、これは平成二十年の九月末現在の数字でございますが、同機構が保有する株式は、簿価総額が四千五百六十一億円、時価総額が四千五百四十六億円ということでございますので、十四億円の含み損ということになっております。

階委員 先日は、質疑のときに、たしか一ドル九十五円のときでしたけれども、外為特会の含み損が二十四兆円あるというふうに伺いました。積立金を差し引いても四兆円マイナスです。外為特会の資産規模というのは日本円に直すと百兆円程度で、大体メガバンク一行分ぐらいなんですよね。銀行であれば即倒産するような、そういう含み損を抱えているわけです。

 政府は、金融機関のリスクの管理体制、これを監督しているんですけれども、外為特会のリスク管理を含め、また、今聞いた公的年金のリスク管理を含めて、非常に心もとないと思っております。

 首相は政府の資産や負債のリスク管理についてどういう方針をとろうとしていますか、最後にお聞かせ願えますか。

麻生内閣総理大臣 基本的には、特別会計がいろいろありますのは御存じのとおりなんで、これはそれぞれ法律が全部別々にありますので、その法律に基づいて適切に管理するとしか申し上げられないんですが、例えば外国為替資金というのにつきましては、これは為替介入に備えて保有するものですから、流動性とか安全性とかいうものを考えて保有するということだと思っております。

 また、逆に、年金の積立金といったようなものにつきましては、これは将来の年金給付のいわゆるもとになる財源ですから、そういった意味では、これはむしろ長期的な観点から、こういったものはきちんと、利益よりむしろ安全かつ効率的に運用を図るというようなことを考えていかなければならぬのであって、安易に株とかなんとかそういったことはだめということが基本なんだと理解しております。

階委員 我々はふだん、予算という単年度の数字しか見ておりませんけれども、やはりバランスシートもこれからちゃんと見ていかないと、財政再建するに当たっては本当にそれは大事なことなんだと思います。ぜひそのリスク管理ということを、金融機関だけではなく、まずはみずから襟を正すということでしっかりやっていただきたいなというふうに思います。

 きょうはどうもありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案された法案によりますと、金融機関への資本注入の資金でありますが、これは預金保険機構が政府保証によって調達し、最終的な損失が出た場合には国民が税金で負担する、こういう仕組みになっておりまして、私どもは、国民にツケを回すようなやり方には賛成できません。

 まず、総理の認識をお聞きしたいと思います。

 この資本注入をすれば中小企業に貸し出しがふえるかという点ですが、事実を見ますと、一九九六年三月から二〇〇八年、ことしの八月まで、十二年五カ月間でありますが、公的資金による資本注入、十二兆四千億円行われました。しかし、中小企業への貸し出しは、八十四兆円これは減少しているわけであります。この事実をどのように受けとめておられるか、そして、どこに原因があったというふうに思われるか、お答えいただきたいと思います。総理、総理の認識です。きょうは総理にお聞きしたいと思います。

麻生内閣総理大臣 御指名をいただきましてありがとうございました。

 中小企業に対する貸し出しの話を佐々木先生は聞いておられましたけれども、減少している理由というのが一番の問題点だと思っておられるんですが、これは、いわゆる中小に限りませんけれども、企業の過剰債務体質というのが日本の場合は昔からあるところではありますけれども、そういったものを解消する努力をしないといかぬのではないかというのは、これはもうずっと昔から言われている話ですが、そういった意味で、資金需要が低迷しているということは、もう間違いない事実として、厳然たる事実としてあると思っております。

 こうしたことを背景に、年末というのが、いろいろ十―十二で来ますので、そういった意味で、資金繰りに不安を感じるいわゆる中小とか小規模とか零細企業とかいうのが、これは多いことは事実です。

 中小企業に対するその円滑な金融というのは、大きな企業とまた別にちょっと考えないかぬところなんだと思いますが、こういった中で最も重要な役割の一つは、やはり小規模企業に対する金融支援というのは、これは主に資金繰りの話が大きなところだと思っておりますので、そういった意味では、今回いろいろな形で金融の仲介機能などなどは財政当局できちんと発揮を求められているところだと思っておりまして、先月末からでしたか、緊急保証のいわゆる制度の開始など、しっかりした資金繰りというものの支援を迅速にやっていきたいと思っております。

 加えて、この法案ができますと、民間金融機関の資本基盤というものがさらに強化をされるということになろうと思いますので、中小企業に対する金融の仲介機能というものの発揮というものをぜひというようなことを考えているのが率直なところであります。

佐々木(憲)委員 私は、実績で、九六年から今までの間に公的資金が十二兆円以上入ったのに、中小企業向け貸出金は八十四兆も減った、これはどこに問題があるのかとお聞きしたんですけれども、どうも、余り鮮明な回答ではなかったように思います。

 中小企業の経営環境というのは極めてこの間悪くなりまして、倒産や廃業というのがかなりふえました。これは銀行の不良債権処理とも関連しております。資金需要がそういう形で減ってきているというのはもちろんあります。同時に、問題にしなきゃならぬのは、銀行の側が自己の利益だけを追求する形に変わってきたという問題がある。自分の利益だけを追求する、そういう姿勢に非常に問題があるのではないかと私は思っております。

 つまり、本来の金融機関というのは、相手側の経営が苦しいときに、将来性を見通して、そしてリスクをとりながら貸し出していく、お互いに共存共栄で利益をふやしていく、こういう関係が望ましいわけでありますが、この間の小泉構造改革以来、ともかく銀行は利益を上げなきゃならぬのだということだけが強調されたように思うんです。その結果、銀行の姿勢が従来とは随分変わってしまった。こういうところにやはり問題があるように私は思うんです。

 やはりそういう点で、銀行の貸し出す側の姿勢という問題について、これを正していく、こういうことも非常に大事じゃないかと思いますが、総理自身はどのようにお考えでしょうか。

麻生内閣総理大臣 貸し出し姿勢、佐々木先生はちょっとなかなか難しい表現でして、これは御存じのように、いわゆる金融のビッグバン以来の話で、日本の場合は過少資本じゃないかとか、企業がいっぱい多い割にとか、いろいろずっと言われ続けてきたものと物すごく関係しているんだと思いますけれども、借り手企業の経営状況やその特性に応じたリスクテークをやらないかぬという基本的なところなんですが、円滑な資金供給をしていくというのはすごく大事で、日本の場合は、過少資本というのは、かなりな分、随分この何年間かで解消されつつありますけれども、いずれも総じて過少資本が多いと言われております。これは、大分世の中が変わってきたので少し変わってきているんですが。

 したがって、いろいろみんな工夫を凝らして各金融機関がやっておられるのはもう御存じのとおりなんですが、金融の仲介機能というものがうまく発揮されるようにならないと、何となく、いろいろ借りる手口がふえておりますので、その意味でかなり昔とは変わってきて、銀行だけとかいうんじゃなくなってきているのは事実なんでありますので、少なくとも、国の資本参加というものがきちんとできることによってある程度そこの内容が安定すると、自己資本比率とかいろいろな表現がありますけれども、そういったものが貸し出しやすくなるということで、金融機関の強化というのをある程度図ってやらないと、なかなかリスクテークをやりたがらない。聞こえがよく言えばこうしているわけですけれども、少なくとも、ある程度のリスクテークをするのが銀行の仕事ですから、そういったところは、きちんとそこらのバランスはとっていくというのが大変大事なところだという御指摘なんだと思いますが、全くそう思います。

佐々木(憲)委員 このリスクテークをなかなか銀行の側がとらない体質に変わってしまったのが問題ですねというふうに私は思うんです。そこを変えなきゃだめだというふうに思います。

 次に、大手銀行の税負担の問題についてお聞きしたいんですが、先日、十月二十九日、私は三大メガバンク六銀行の法人税についてお聞きしました。そのとき金融庁監督局長は、「おおむね過去十年間程度は法人税を納税していないケースが多い」というふうにお答えになったんです。

 これは、若干ファジーなお答えだったのでもうちょっと確認したいんですが、三大メガバンク六銀行すべての銀行が法人税を全く払わなくなったのはいつからかというふうにお聞きしましたら、どのようにお答えになりますか。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 三メガグループ六銀行のいずれもが法人税を納税していない期間は、平成十三年度以降と承知しております。

佐々木(憲)委員 二〇〇一年から二〇〇七年の七年間は、法人税がこれはゼロなんですね。その前の三年間、これは法人税を払っている銀行が若干ありますけれども、七年間は、黒字は十兆円出ているのにもかかわらず、法人税は一円も払っていない。驚くべき実態であります。これは、過去の欠損金を繰り延べて黒字と相殺するという仕組みをつくったためにこんな事態になっているわけですが、私は、これは事実上、公的資金の投入のようなものじゃないかと思うわけです。これは、まともに法人税を払えば、十兆円以上の利益が上がっているんですから、三兆程度の法人税を払って当たり前でありますが、それが全く払われていない。

 その一方で国民の負担の方はどうかということで、総理にお聞きしますが、十月三十日の記者会見で、三年後に消費税の引き上げをお願いしたい、このようにおっしゃいました。これ、税率を何%にするおつもりでしょうか。

麻生内閣総理大臣 今の段階で税率を何%という案を考えて申し上げているわけではありません。今の状況というものを見ました場合においては、日本の景気というものは、少なくとも全治三年と申し上げたと思いますが、状況としてはかなり厳しいと思っております。世界的に悪くなっている中にあって、日本は相対的に、欧米に比べればの話ですけれども、いいと思っておりますが、これがいずれ実体経済に影響が出てくるであろうと思っておりまして、既に幾つかいろいろな現象は見られますし、日本のいわゆる二次産業と言われる自動車などなどにもその影響はもうかなり顕著に出始めつつあるという報告も上がっております。

 したがいまして、今の段階でちょっとどれぐらいとも申し上げられませんけれども、少なくとも、全治三年と申し上げましたので、かなり厳しいのでこんなもの三年以上かかるぞと言われたりいろいろされておりますけれども、私は、その段階で景気が立て直ってもいないときにまたやるというのはいかがなものかと思っておりますので、今の段階で何%というのを考えているわけではございません。

佐々木(憲)委員 総理は、中央公論の三月号で「消費税を一〇%にして基礎年金を全額税負担にしよう」というタイトルの論文を書かれています。十月三十一日の記者会見でそれを聞かれまして、そのぐらいのものが要るのじゃないかな、このようにお答えになりました。これは事実ですね。

麻生内閣総理大臣 このときに申し上げた、中央公論の三月号において御指摘のように提言を行ったことは間違いない。それは書いてあるとおりなんですが、公的年金というのが当時いろいろ話題になって、未払いの方が多いとかいろいろ話題が、今でもありますけれども、国民生活に直接かかわりますので、そういったものは払わない方がどんどんふえておる比率が、いろいろ数字がありますのでどれが正確かわかりませんけれども、いろいろ払わない人がいるとか未払いの人がいるとかいう話になっておりますので、そういったものでさまざまな選択の一つとして申し上げましたけれども、その後、読売方式とかスウェーデン方式とか、何か随分いろいろな方式というのが出されておりますので、そういった意味では、その問題を勘案して考えればよろしいので、これじゃなきゃだめだと申し上げているわけではないというのは、御理解いただけるところだと存じます。

佐々木(憲)委員 一〇%というのがその総理の中央公論の論文で書かれていますが、今五%ですから、一〇%にすると五%上がるわけですね。これ、五%でどのくらいの額になると思いますか。

麻生内閣総理大臣 あと五%上げたらどうかという、大体一%二兆五千億とか六千億とか言われておりますので、それでいきますと、その掛けた倍率ということになろうと存じますが。

佐々木(憲)委員 十三兆円程度と。総理自身もこの論文の中で、「具体的な消費税率を一〇%とすれば、五%の増税分で約一三兆円の財源ができる。」こういうふうに書かれているわけです。

 これは、三年後か何年後かということ、そのときの判断というふうにおっしゃいましたが、一〇%にするということは、国民にとっては大変な負担増なんですよ。これを一家庭当たりにしますと、一人当たりにして約十万円ですから、四人家族で年間四十万負担増になるわけです。実際上そういうふうになったら、年間四十万も余分に払わなきゃならぬのですよ。

 これは私は、全体として見ると、今回の経済対策の中でこれが総理の口から出されまして、逆に非常にショックを受けた、そんな増税があるのかと。今、経済対策、生活重視とおっしゃっても、控えているものがそれであれば、なかなか消費する気にならないというふうに思うんです。この点、総理、どのようにお感じですか。

麻生内閣総理大臣 税というものと社会保障、そういったようなものの水準というのは、これは、給付と負担のバランスというものが常に考えて議論されてしかるべきだと存じます。

 したがいまして、今、いろいろな意味で年金の話が出てきましたり、医療、介護、保険の話が多く出されております。社会保障国民会議におきましてもいろいろ試算が出されましたのはもう既にお手元に届いておると思いますので。そういったことを考えますと、今後、少子高齢化が今までどおり進んでいくという前提で考えていった場合、いろいろ変わりますので簡単には言えないんですけれども、この社会保障関係の給付というものは、これは大幅にならざるを得ない。傍ら、高齢者がふえる、勤労者が減っていくという数字になりますので。

 そういった意味で、年金の形も、全額税方式とか今のような形とか、実にいろいろな御意見が出されておりますので、私は、こういったものはきちんともっと多くの方々に議論をしていただいて、少なくとも、中負担とか中福祉とかいうものとある程度バランスさせないと、小負担のまま中福祉とかいうことはなかなかできない状況になってきているという認識を我々は持たねばならぬのではないか、基本的には私自身はそう思っております。

 それが、スウェーデンのようなやたらというのか、あれがいいのかと言われるとこれまた意見が分かれるところだと思いますので、これはいろいろ御意見を聞かせていただけるものだと思っております。

佐々木(憲)委員 総理の発想は、私は、税制全体を見ると非常に偏っているんじゃないかと思うんですよ。

 というのは、先ほど言ったように、銀行に対してはいわば五年間で二兆円の減税ですよ。こういうことをやって、法人税は銀行はゼロである。しかも、これは銀行だけではありません。全産業の大手企業、そういうものを利用できる。しかも、法人税の税率はこの間下がってきた。四三・三%だったのが今は三〇%。しかも、ほかにいろいろな政策減税が行われています。そういうものは、一方で過度な減税だと私は思いますよ。それでいながら、何か社会保障の財源は消費税しかない、消費税しかない。そういう発想自体を私はもっと変える必要があると思います。そうしないと財源というのは出てこない。

 もちろん、社会保障の財源はこれから必要だし、高齢化社会になれば当然お金がかかる。そのお金をどう生み出すかという点でいうと、今までのような国民負担だけにすべて負わせていくやり方ではなくて、もっともうかっている大企業、大銀行、こういうところからきちっと税金を受け取る、そういう姿勢がないと、とてもバランスのとれた政策とは思えない。総理、どのようにお考えでしょうか。

麻生内閣総理大臣 これは佐々木先生、我々は自由主義経済をやっていますので、統制経済をやっているわけでは、先生と基本的な考え方が違いますから、その前提の上で話をさせていただかぬと話が込み入ってしまうので。

 自由主義経済の前提からいきますと、少なくとも、世界じゅうで国際競争をやっている中で我々は生き抜いております。したがって、世界じゅうで法人税がとかいう中にあって、日本は今でも法人税率は他の先進諸国の中にあっては高いというのはもう御存じのとおりだと思っております。

 傍ら、いわゆる付加価値税とか消費税とかいろいろな言い方がありますが、ヨーロッパの国々を見ますと、大体一〇%後半から二〇%前半ぐらいのところでみんな付加価値税とかいろいろな表現の税をやっていますが、間接税をやっておるという状況の中で、我々は国際競争の中で生き抜いていかねばならぬという状況にありますので、今申し上げたように、五%という状況でやるというのができるであろうかというと、今、残念ながらそういった状況は難しくなりつつあるというのが基本的な私の考え方の根本にあるということは、前からもう何回も議論させていただきましたので、御存じのとおりだと存じます。

佐々木(憲)委員 私は何も統制経済をやれと言っているんじゃないんですよ。国民の負担を軽くしなさいという当たり前のことを言っているんですよ。大企業に対して余りにも過大な減税をやり過ぎたんじゃないですか、それをもう少し見直したらどうですかという普通のことを言っているんですよ。何が統制経済ですか。

 大体、ヨーロッパの税率は高いと言いますけれども、ヨーロッパの付加価値税というのは、税率が表面的に高いように見えますけれども、しかし、食料品とか、そういう生活関連の部分というのは税金は軽いわけです。ないわけですよ。だから、全体としていえば、税率は高いけれども、税収というのは日本と余り変わらない状況ですよ。だから、何か日本だけが低い低いと言うのはおかしいですね。

 それから、法人税についていいますと、これは、日本は社会保障の負担というのは大企業はほとんどやっていないんですから、これをヨーロッパ並みに負担すれば、全体としていいますと、日本の方が軽いんですよ。そういうことを考えないと、何か消費税しかないとか、一〇%がいいとか、そういう議論にだけ集中して国民負担のことばかり考えるようでは、これは逆統制経済ということになりますから、国民を統制するようなことを余りやらないでほしい。負担を軽くしてもらいたい。

 それで、内需を拡大しようとしたら、そちらの方を拡大しないと、本当に輸出依存それから投機依存という体質を変えることはできません。内需を拡大しようとしたら、雇用の安定、社会保障の充実、負担の軽減、こういう方向しかないということでありまして、私は、もう時間が参りましたので、以上の点を申し上げまして、終わらせていただきます。

田中委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 以上をもちまして両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、ただいま議題となりました両案中、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、竹本直一君外四名から、自由民主党及び公明党の共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。木村隆秀君。

    ―――――――――――――

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

木村(隆)委員 ただいま議題となりました金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、自由民主党及び公明党を代表いたしまして、提案理由を説明申し上げます。

 修正案はお手元に配付いたしたとおりでございます。

 以下、その提案理由及びその内容を御説明申し上げます。

 第一に、政府案においては、国の資本参加の要件として、金融機関の経営責任等の明確化を制度上一律には求めないこととしておりますが、国が資本参加を行う以上、責任ある経営がなされることが確保されるべきことは大原則であります。こうした点を踏まえ、修正案においては、経営強化計画の記載事項の一つである「責任ある経営体制の確立に関する事項」を「従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項」に修正し、国の資本参加に際して従前の経営体制の見直しが求められる場合もあり得ることを明確化することとしております。また、協同組織金融機関の中央機関が提出する協同組織金融機能強化方針についても、同様の記載を求めることとしております。

 第二に、政府案においては公表事項の例外とされていた、国が資本参加を行った協同組織金融機関の中央機関により資本支援を受けた協同組織金融機関の名称について、公的資金の活用状況の透明性確保の観点から、主務大臣による公表事項とすることとしております。

 以上であります。

 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

田中委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。江崎洋一郎君。

江崎(洋)委員 自由民主党の江崎洋一郎でございます。

 私は、自由民主党と公明党を代表し、金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案、その修正案及び保険業法の一部を改正する法律案に対し、賛成の立場から討論を行います。

 現在、米国のサブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱により、地域経済、中小企業は大変厳しい状況に置かれております。こうした中、国の資本参加によって、金融機関が資本基盤を強化、適切な金融仲介機能を発揮し、中小企業を支援していくことが強く求められており、まさにこれが本法案の目的であります。

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案は、こうした要請にこたえ、資本参加の申請期限を平成二十四年三月末まで延長するほか、金融機関が資本参加を申請しやすい環境を整え、さらに、協同組織中央金融機関等への資本参加を可能とする新たな枠組みを設けるなど、現行法の使い勝手の改善を図っております。

 金融行政が事前予防型から事後チェック型に転換している中、今回の法改正もこうした流れと軌を一にするものであります。すなわち、国の資本参加の要件を一部緩和することにより、資本政策を検討している金融機関にとって公的資金の申請がしやすい環境を整備する一方、国の資本参加後は、政府が中小企業向け貸し出しの円滑化方策などを含む経営強化計画の履行状況をフォローアップし、必要に応じて監督上の措置をとることとされています。

 このように申請しやすい環境を整備し、スピード感を持って中小企業の貸し出しの円滑化を推進していくとともに、一方で、責任ある経営体制の確立を厳格に求めていくとの観点から、修正案においては、国内基準行で自己資本比率が四%未満の場合、従前の経営体制の検証に基づき、経営者の責めに帰すべき事由により基準を下回ったと認められる場合には、明確な経営責任を厳しく問うことといたしました。

 また、事後チェックを適切に行うため、より一層の透明性向上を図るとの観点から、修正案では、協同組織中央金融機関等に資本参加した後、中央機関等から傘下の協同組織金融機関等に対し資金支援が行われた場合、支援の対象となった個別の協同組織金融機関等の名称を開示することとしました。

 このような改善点を含め、厳しい状況に直面する中小企業を支援するため、今回の法律により信用供与の円滑化を図っていくことは、時宜を得た施策でございます。ただし、単に中小企業に対する資金面の対策のみならず、中小企業の体質を強化していくための抜本的な対策についても、今後早急に検討することを要望いたしたいと思います。

 次に、保険業法の一部を改正する法律案は、最近の経済社会情勢の変化を踏まえ、厳しい状況のもとにおいて保険契約者等の保護を図り、保険業に対する信頼性を維持するため、生命保険会社が破綻した場合のセーフティーネットを平成二十四年三月末まで延長するものです。

 厳しさを増す経済社会情勢のもと、地域経済、中小企業、保険契約者等を支援する、ひいては、まさに津波が来ようとしている現下の情勢から国民を守るためにこれらの法律案は不可欠であることを再度訴えさせていただきまして、賛成の討論とさせていただきます。

田中委員長 次に、松野頼久君。

松野(頼)委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、政府提出の金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案の原案に対して反対、政府案に対する修正案に賛成する立場から討論を行います。

 まず、政府原案に反対する理由は、第一に、農林中央金庫を公的資金注入の対象としている点であります。農林中央金庫等農協系統金融機関は、農業者の育成を図ることを目的としているにもかかわらず、農業者から集めた預金を市場運用に集中させ、農業者への融資が極めて低い水準にあります。このように本来の設立の目的に大きく反する経営を行っている農林中金に公的資金を注入することは、その資金運用の失敗を国民の税金で救済することに等しく、地域の中小企業に対する金融円滑化という本法の目的から逸脱するものと言わざるを得ません。また、農林中央金庫等農協系統金融機関の政治的中立性が担保されていない点も極めて重大な問題であります。

 第二に、新銀行東京も本法に基づく公的資金注入の対象となり得る点であります。新銀行東京は、ずさんな経営により大きな損失を出しており、まさに乱脈融資の源と言っても過言ではありません。このような損失を国民の税金で穴埋めすることには断固反対するものであります。

 次に、修正案に対しては、民主党が要求した内容が一部盛り込まれているために賛成するものであります。

 以下、その理由を申し上げます。

 第一に、経営強化計画に「従前の経営体制の見直しに関する事項」を記載することが盛り込まれたこと、第二に、協同組織金融機能強化方針に「従前の経営体制の見直しその他の責任ある経営体制の確立に関する事項」を記載することが盛り込まれたこと、第三に、協同組織中央金融機関等による協同組織金融機能強化方針に関する主務大臣への報告事項のうち、特別関係協同組織金融機関等の名称についても、主務大臣による公表事項としたことであります。

 この修正案については、農林中央金庫と新銀行東京の取り扱いについて不満が残るものの、我が党の修正要求を一部取り入れたことを評価して、賛成するものであります。

 なお、本委員会での質疑の中で、金融庁の監督指針と金融検査マニュアルを今週中に改訂し、金融機関が中小企業向けの融資の貸出条件を緩和した場合でも不良債権と認定をしない範囲を拡大するとの政府答弁が得られたこと、これは民主党のこれまでの主張に沿っており、評価するものであります。

 以上、政府原案に対し反対し、修正案について賛成する理由を申し述べ、討論を終わらせていただきます。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 金融機能強化法案、修正案及び保険業法改正案に対して反対討論を行います。

 まず最初に、金融機能強化法改正案についてであります。

 本法案に反対する理由は、第一に、貸し渋り対策を理由として、公的資金を使い、サブプライム関連商品などへの投機的運用を拡大させ、大きな損失を出してきた金融機関を救済するものだからであります。

 一九九六年の住専処理以来、四十六兆円を超える公的資金を金融機関に投入し、十兆円以上の国民負担を発生させました。公的資金による巨額の資本増強などの銀行甘やかし政策が、金融機関とその業界に安易な依存心を生み、今日のような投機中心の銀行、金融機関を生み出す一因となりました。金融安定化の資金は金融業界全体の責任と負担で確保すべきであり、そのことによって自己規律を生み出し、また、業界内での相互監視機能が働き、最も少ないコストで対処できるのであります。

 今回の法案によって、公的資金投入の仕組みを復活させれば、投機で失敗しても公的資金で救済されるという新たなモラルハザードを生み、さらに深刻な金融危機を招くことにつながりかねません。

 第二の理由は、本法案による資本注入が銀行の貸し渋り対策となる保証がないことです。過去十二年間に十二・四兆円もの資本注入が行われましたが、銀行業界全体で八十四兆円も中小企業向け融資が削減され、貸し渋り対策につながりませんでした。

 さらに、本法案では、中小企業向け貸出残高など地域経済貢献目標が未達成の場合に株主責任や経営責任を問う現行法の仕組みを削除するなど、目標達成を一層あいまいにするものとなっています。そのため、本法案の資本注入が貸し渋り対策として機能する保証はありません。

 今求められているのは、貸し渋りや貸しはがしを進めている金融機関の姿勢を正すことであり、中小企業を直接支援することであります。日本共産党が提案してきた地域金融活性化法もその一つであります。信用保証制度の責任共有制度の導入や政府系金融機関の弱体化など、この間政府が行ってきた施策を見直すことこそ必要であります。

 なお、修正案は、「従前の経営体制の見直し」を経営強化計画の要件に入れたものの、国民負担の仕組みなど根本的な問題は変わっていないので、賛成できません。

 次に、保険業法改正案についてです。

 保険契約者保護制度は、保険会社の破綻時に機構が資金援助等を行うことにより破綻保険会社の保険契約者等を保護する仕組みであります。本来、その費用は保険業界全体で負担するのが原則であります。責任のない国民に破綻保険会社の損失を無制限に負担させる仕組みを延長する本法案には、反対であります。

 大和生命の破綻を含め、これまでの保険会社破綻の背景には、過度の高リスク金融商品での運用、生保不信による解約増、バブル期の乱脈経営などが指摘されています。こうした経営責任と監督責任をあいまいにしたまま税金投入する仕組みを残せば、業界と政府のモラルハザードを招くことになるのであります。

 以上で反対討論を終わります。

田中委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより採決に入ります。

 金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、竹本直一君外四名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本修正案は可決いたしました。

 次に、ただいま可決いたしました修正部分を除いた原案について採決いたします。

 これに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本案は修正議決すべきものと決しました。

 次に、保険業法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 ただいま議決いたしました金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対し、山本明彦君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    金融機能の強化のための特別措置に関する法律及び金融機関等の組織再編成の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 農林中央金庫及び農協系統金融機関は、本法に基づく公的資金注入の対象となることにかんがみ、貸出し等の金融業務の実施に際しては、厳正な政治的中立性を確保すること。

 一 農林中央金庫をはじめとする農協等系統金融機関の農業融資及び資金運用の実態については、その一層の開示に努めること。また、農林中央金庫については、その使命にかんがみ、農林中央金庫に対し公的資金を注入した場合には、農林水産行政に深く関わった理事長については、その報酬等の処遇情報は、自主的な開示がなされるよう、強く促すこと。

 一 公的資金注入を受けた協同組織中央機関等については、その内容を、国会に報告すること。

 一 農林中央金庫をはじめとする農協等系統金融機関は、農業者等の育成、農林水産業の発展を図ることを使命としていることにかんがみ、その資金については農業者等に対する金融の円滑化を一層図るとともに、市場運用については、十分留意するものとすること。

 一 地方公共団体が支配株主となっている金融機関については、支配株主である公共団体がその資本の充実について一義的に責任を持つこととすること。

 一 改正法の運用に当たっては、その趣旨である「中小企業の金融の円滑化や地域における経済の活性化」を旨とし、経営者の責めに帰すべき事由により経営難に陥った個別金融機関の安易な救済を目的とする運用は厳に慎むこと。

 一 改正法の趣旨である「中小企業の金融の円滑化や地域における経済の活性化」を確実にするために、政府答弁に基づく「金融検査マニュアルの見直し」の迅速な実施と周知徹底を行うとともに、政府において中小企業の資金繰り状況の把握に努め、その結果に基づき、速やかに必要な対応に努めること。

 一 中小企業に対する貸し渋り、貸しはがしを防止し、地域への貢献や中小企業に対する金融の円滑化などの情報を積極的に開示するよう、金融機関に対して要請する。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

田中委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付すことに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。金融担当大臣中川昭一君。

中川国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨を踏まえまして、配慮してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

田中委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

田中委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時五十九分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.