衆議院

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第7号 平成21年2月24日(火曜日)

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平成二十一年二月二十四日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      西本 勝子君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      武藤 容治君    盛山 正仁君

      池田 元久君    小沢 鋭仁君

      大畠 章宏君    菊田真紀子君

      北神 圭朗君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    和田 隆志君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        竹下  亘君

   国土交通副大臣      金子 恭之君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 西川 正郎君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   齋藤  潤君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    加藤 治彦君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    佐々木豊成君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    玉木林太郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡延  忠君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           佐々木 基君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十四日

 辞任         補欠選任

  宮下 一郎君     武藤 容治君

  山本 有二君     西本 勝子君

  小沢 鋭仁君     北神 圭朗君

同日

 辞任         補欠選任

  西本 勝子君     山本 有二君

  武藤 容治君     宮下 一郎君

  北神 圭朗君     菊田真紀子君

同日

 辞任         補欠選任

  菊田真紀子君     小沢 鋭仁君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案(内閣提出第四号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第六号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣府大臣官房審議官西川正郎君、大臣官房審議官湯元健治君、政策統括官齋藤潤君、金融庁監督局長三國谷勝範君、財務省主計局次長木下康司君、主税局長加藤治彦君、理財局長佐々木豊成君、国際局長玉木林太郎君、厚生労働省大臣官房審議官渡延忠君、国土交通省大臣官房審議官佐々木基君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。少し与謝野大臣に御質問をさせていただきたいというふうに思います。

 いろいろな経緯の中で大臣は、三つの大臣を兼務される、しかも大変厳しい日本経済、ある意味では世界経済の大混乱の中で日本丸のまさにかじ取りを金融、財政面でなさっていくということで、本当に大変な役をお受けになっておるわけであります。マスコミでは一部、陰の総理であるとか、いろいろなことを言われておるわけでありますが、いずれにいたしましても、きょう私は大臣に対して少しお考えを聞かせていただきたい、このように思っております。

 今、ちまたでといいますか、国会の中でもそうでありますが、いわゆる政府紙幣の問題とか無利子国債の問題とか、いろいろな問題が出てきております。勉強会をつくったりというような動きもあるやに伺っておるわけでありますが、このこと一つ一つをお伺いするのはまた別の機会にさせていただきますけれども、なぜこういうことが言われておるのかということの根本なんですよ。これは、やはり思い切った財政出動をするべきだ、経団連の会長も二十五兆円ぐらいの対策を打つべきだというようなことをおっしゃっておるやに伺っておりますが、いずれにしましても、そういう状況の中からいろいろな問題が出てきておるのではないのかな、このように私は思っております。

 そこで、本題に入る前に大臣にちょっとただしておきたいことがあるんですが、二十二日のテレビで大臣は、消費税ゼロということに対して、順番にお伺いしますけれども、直観的には否定的だけれども検討します、こういうようなお話をされたようであります。そこで、まず、宿題として検討をするというふうに述べられたのかどうか、もしそうであるならば、どういう形でいつまでに検討されるおつもりなのか、その辺のところを、勉強する、検討すると言われたあの発言に対して御所感をいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 田原総一朗さんからそういう御提案がありまして、直観的にはこれはなかなか難しいお話ですということですから、そういうふうに率直に申し上げました。しかし、提案された方が田原総一朗さんですので、礼節を失わないように、勉強しますということで、一度田原さんにお目にかかって、なぜ私が直観的にだめと感じたかということは御説明しなければならないと思っております。

 これはなぜだめかと申しますと、一つは、消費税というのは国、地方の財政を支えているという側面、それから、日本は租税法定主義ですから、やめるとなりますと数カ月かかります。そこで猛烈な買い控えが起きる。それから、仮にゼロになりましたときに、十二兆から十三兆のお金が国民の手元に残りますけれども、これは経済において、全部消費に回るということではなくて、恐らく相当の部分が貯蓄に回る。そういう意味では、経済効果の面でもそういうことを想像した方が考えたほどのことはない。

 こういう一連のことを考えていまして、テレビの番組ですから、くどくどと御説明する暇がなかったんですが、そんなことでだめよということは礼節の意味からもなかなか言えなかったので、今度きちんと御説明したいと思っています。

鈴木(克)委員 この御発言は確かに、今大臣がおっしゃったように、はっきりと否定をしたんだという見方はないとはもちろん私は言いません。ただ、問題は、ちゃんとした人がおっしゃっているから勉強しますと。それから、再度、検討するんですかと言ったら、検討しますということをおっしゃっておるわけですね。

 改めて、田原さんほど私はちゃんとした人ではないんですけれども、消費税についてゼロを検討されるんですか、されないんですか。そして、もしそれをされるとするならば、どういう形でされるのかということを聞かせていただきたいと思います。私はちゃんとした人間ではないかもしれませんが、お答えいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 国会の先生からそういう御命令があれば、ちゃんと検討はいたします。ですから、やめるということを検討するのではなくて、ゼロにした場合はこういう影響がありますということは、事実の問題として御提示することは比較的難しくないことの一つです。

鈴木(克)委員 私がなぜこれにこんなにこだわるかということですけれども、私たちは、所得税法の一部を改正する百四条の中に三年後に消費税をという文言がありますよね、これをまさに今検討しておるところなんです。それから、さきに政府が経済財政諮問会議に出された経済財政の中長期方針と十年展望の中に、ゼロにするなんということは全くないわけですよ。現状維持か一%ずつ上げていくかということの試算はありましても、ゼロなんというのは全くないわけですよ。

 であるならば、言下に、そんなことを今考えられるような状況じゃありませんと言うのが大臣としての責務ではないか、私はこのように思うんですけれども、いかがですか。

与謝野国務大臣 言下にという言葉ではなかったんですけれども、そういう御提案に対して直観的にはだめだと思いますと言うことは、ほとんど言下に否定しているのと同様でございますけれども、やはり、せっかく人が御提案になったことを一方的に退けるというのは余り礼儀正しくないと思いましたので、一応検討しますということを申し上げたんです。

 検討はそんな難しい話じゃないので、一度ゆっくり田原さんには御説明したいと思っています。

鈴木(克)委員 確かに大臣、言われたときにその場で、そんなのだめですよと言うのはいかがなものかという考え方もそれはあるでしょう。しかし、今、大臣は本当にこの厳しい日本経済のかじ取り役なんですよ。そして、どういう数字を見ても、先ほど言ったように今後の十年の展望を見ても、本当に全くそういうことは、今検討すらされていない事項なんですね。

 であるならば、私は、もう少し違った言い方があったのではないのかなと。今私が申し上げるように、今こういうような状況であります、したがって、それはとてもじゃないけれどもできることじゃありませんというぐらいのはっきりした形をお示しになるべきではなかったのかなというふうに私は思いますが、くどいようですけれども、もう一度お願いいたします。

与謝野国務大臣 先生にそういう御忠告、おしかりを受ければ、そういう方法もあったかなと反省しております。

鈴木(克)委員 反省しておりますと言われちゃうと、これ以上申し上げようがないわけでありますが、いずれにいたしましても、本当にこういう厳しい、またいつ、何がどういうことで起きるかわからない御時世であります。発言についてはやはり慎重にしていただかないといけない。言葉をもてあそぶと言うとまた言い過ぎかもしれませんけれども、国民は瞬間的には、あっ、消費税ゼロというのも検討してくれるんだなというふうな期待を持った人もやはりいると私は思います。現に私は、少なくともそういうふうに思った一人であります。

 冒頭私が検討していただけますかということを申し上げましたら、できるできないということよりも、比較的簡単なことだから、できないということも含めて少し検討してみるということでありますから、ぜひ一度検討をしていただいて、その結果を、田原さんのみならず、私にもぜひお教えをいただければありがたい。このことはもうこれぐらいにさせていただきたいというふうに思います。

 二つ目でありますけれども、プライマリーバランスの話を少し先にさせていただきたいと思うんです。

 先ほどお示しをしました経済財政の中長期方針と十年展望の中に、二〇一一年の黒字化というのはもう完全に破綻をしているんだ、そして二〇一八年度に黒字化目標を繰り下げたというふうに読み取れるような一連の流れになっておるわけでありますが、いわゆる現在の経済金融危機から順調に回復をし、しかも二〇一一年度から二〇一五年度まで毎年度消費税を一%ずつ引き上げ、五年間で五%引き上げることを前提にこの十年展望というのはできているというふうに私は思っておるんですが、なぜ消費税の引き上げを前提としているのか。

 それから、消費税を据え置いた場合の黒字化は、世界経済が急回復した場合でなければ二〇一八年度の黒字化はないというシナリオになっているわけですね、このシナリオは。世界経済の急回復というのはほぼ不可能ではないのかなと正直私は思っておるわけでありますが、となると、結局、消費税を引き上げなければ二〇一八年度の黒字化は無理であるということをこの展望は示しているわけであります。

 であるならば、いろいろ検討の中である世界経済の回復というものについて、大臣は今どのような所見を持ってみえるのか、お示しをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 世界経済がどういうふうに回復過程をたどるかということは、今、世界の経済学者、経済関係者が最も頭を悩ませ考えているわけですが、いつから回復するということはなかなか断定的には申し上げられません。アメリカのエコノミストの平均的な考え方は、ことしの第三・四半期から少し上向きになるという予想も米国内ではありますけれども、私は随分楽観的だなと思っておりまして、そういう意味では、ことしいっぱいはなかなかいい状況というのは来ないのではないかと思いますし、来ない場合でも日本の経済は底抜けしないというだけのことをしなければならないと思っております。

鈴木(克)委員 非常に難しい経済情勢であるということの御認識は大臣もお持ちのようでありまして、そのところは私も全くそのとおりだと正直思っております。

 また十年展望に戻るわけでありますけれども、いわゆる二〇一八年度の黒字化の試算の中で消費税の引き上げを前提としているということは、この消費税の引き上げはもう既定路線なんだということになるわけですね。そういうことだと思います。これはまさに、何が何でも消費税を引き上げますよ、裏を返して言えばそういうことを公言しているようなシナリオであるというふうに私は思っておるわけですが、では、消費税を本当に引き上げるということなのか、また引き上げるとしてもどの程度引き上げるのか、そしてどのような引き上げ方をするのか、これらのことはまさに国会で決めることだ、私はそう思うんですね。

 だけれども、この展望を見ますと、もう既にいろいろな形で出されているということは、この展望はいわゆる国会の議論よりかなり先に行ってしまっておるのではないのかなというふうに思うんです。恐らく、一つの試算なんだ、それから閣議決定もまだしていないんだ、当然そういうことをおっしゃるとは思うんですけれども、しかし、いずれにしても、国会論議というものをせずに、まさに消費税を誘導するかのごときシナリオであるというふうに私は思っておりますが、そのことに対して、大臣はどのような御見解でしょうか。

与謝野国務大臣 税制の抜本改革というのは、主張されてから非常に時間がたっておりますけれども、今回の中期プログラムで初めて、税制の抜本改革ということが仕事として残っているよということがはっきりしたということは、やはり大事なことだったと思っております。

 この附則に書かれるということはどういう意味を持っているかといいますと、政府に対して義務を課しますし、立法府に対しましても一定の方向性を示すということになると思っております。

 特に、これに似た例で国民年金法の問題がありますけれども、国民年金法はただ三分の一を二分の一にするということを立法府、行政府に物申しているだけではなくて、やはり政府、立法府に対して、安定財源を求めて三分の一を二分の一にしなさいよという一定の義務を行政府にも立法府にも両方に課している、そういう意味でございます。

 今回の中期プログラムは、景気がよくなったら、税制改革については政府も立法府も真剣にお願いしますという、そういう法律です。ですから、厳密にいつからやらなきゃいけないということは書いてない。むしろ、景気回復した後に段階的にやってくださいということを書いてある。これは、政府に対する一定の行動の規範を与えていると同時に、やはり立法府に対しても一定の方向性を与えている、そういう法律だというふうに私は思っております。

鈴木(克)委員 確かに、今大臣がおっしゃった考え方というのは、私もそんなに大きく否定をするものではありません。しかし、余りにも、もう既にできたメニューというか、何遍読み返してみても、これはもう明らかに消費税増税ありきというシナリオでずっと書かれておるということを、私は非常に、ある意味では一つの方向に誘導をするような、いわゆる隠された部分があるのではないのかなという危惧を実は抱いております。

 二つ大臣に申し上げたいんですが、プライマリーバランスは二〇一八年から黒字化というふうに今大臣はお考えになっているのかどうか、従来の考え方を少し修正されておるということでいいんでしょうか。これが一つ。

 もう一つは、いわゆる所得税法の百四条、ここにあります百四条は、税制の抜本改革は世界経済の状況や景気の回復を見きわめた上で行う、まさにそのとおりですよね。では、見きわめはどの機関がどういう形で行うのか、そして最終判断はだれがするのか、そのところですよ。国会が決めるのかどうか。その指標は、例えばGDPがどれだけ上がったら回復したんだとか失業率がどれだけ下がったから回復したんだとか、独立したいわゆる第三者機関がそういうものを判断するのか。その辺は全くここからは読み取れないわけですね。その辺のところを、ひとつこの際大臣にただしておきたいというふうに思います。

 二点、お答えください。

与謝野国務大臣 二〇一一年プライマリーバランスという旗は立っているんですけれども、相当ぼろぼろになっております。もうこんなにぼろになった旗だから撤去しろと言う人もおりましたけれども、やはり、いわば財政規律のシンボルとして残しておく必要があるという意見の方がまさりまして、一応、二〇一一年プライマリーバランスというのはおろしてはありません。しかし、到達することは甚だ困難になっているということは率直に認めざるを得ないわけです。

 それから、百四条の件は、率直に世界経済、日本の景気回復、こういうものを総合的に判断するというのですが、それは政府の独断ではなく、やはり政府も立法府も、行政府も立法府も、それぞれ税法、税制の議論を通じて総合的に判断をするということであって、多分、政府独自の話でもないし、国会独自の話でもない。税制の抜本改革をスタートしていい時期かどうか、この重要な点は、やはり政治全体で総合的に判断していくということが私はしかるべきことであると思っております。

鈴木(克)委員 二〇一一年の目標というのはぼろぼろだということでありますが、ぼろぼろならまだいいんですけれども、もうないに等しいんですよ、本当に。もう飛んでいっちゃったわけですよ。だって、この展望には全く、二〇一一年のどこを見ても全部マイナスですよね。これは旗がないと一緒ですよ。

 これはもう明らかに方針が変わった。現下の状況ではもうこの旗はまさにありません、なくなりました、まことに申しわけありませんというのが私は本来だというふうに思います。そして、新しい旗を掲げて、こういう旗のもとで、ひとつ国民の皆さん、みんなで頑張っていきましょうというのが本来であって、ぼろぼろだけれども規律があるから残しておくというのは、私はこれはまさに方便にすぎないんじゃないかと正直思います。これはいかがですか。

与謝野国務大臣 先生のようなお説、それからぼろだけれども旗は立てておこうという説、両説実はあって、なかなかこれは現実と合っていないという説が有力だったんです。しかし、財政規律を守って予算編成をこれからもやっていくんだというシンボルとして、やはり一応ことしのところは残しておこう、そういう意味でございまして、先生言われるように、二〇一一年に到達できるということは、あらゆる数字を見るとそんなはずはないということは、ほとんどすべての方がわかってくださるものと思っております。

鈴木(克)委員 おもしろいですね。日本のすべての人がそんなことはできないと考えておるということを認めながら、ぼろぼろであるけれども一応まだ旗があるということを言い続けなきゃならない大臣、これは本当に苦しいとは思いますけれども、しかし、これはまさにそういうことが続いてきたから日本の国の現状があるんですよ。やはりきちっと新しい旗を掲げて、国民の皆さん、こういうふうに頑張っていきましょうということを、私は大臣ならやってもらえると思って期待をしておるんですけれども、ぜひひとつお願いしたいと思います。

 それからもう一つ、どこでだれが決めるのか。それは確かにおっしゃったように、世界の経済の総合的判断でということかもしれません。ただ、何が私は言いたいかというと、要するに、税をいただく立場と税を納める立場というのは全然違うんですよ、景気回復一つをとっても。

 そうだから、私は、こういうこととこういうこととこういうことの数値がこうなったときには、一つのバロメーターとして景気が回復したんだという判断になりますよということをあらかじめ示すべきですよ。それでなきゃ、国民は危なくて任せちゃおけないということですよ。それはやはり、私は、少なくともおおよそこんなような、株価がどうなったとか、何か指標というものを出すべきだと。これはくどいようですけれども、納める側と取る側では違うんですということを申し上げます。いかがですか。

与謝野国務大臣 実は、その時期についてもう少し厳密に書けという話と、厳密に書いても無駄だと。例えば、こういう表現を使おうなんという意見もあったんです、日本の持っている潜在成長力が発現し始めたらという意味でそういう表現を使ったらいいと。そんなことを言ったってみんなわからないので、景気回復という言葉の方が率直であるし、そして、そういう言葉を使ってあれば政治として総合的に判断できるんじゃないかということで、国会、特に政治家の皆様方に判断していただく余地を残した表現になっています。

 先生が御指摘のように、必ずしもこれは学問的な表現ではない。学問的表現にすればするほど今後の行動の柔軟性が失われるわけですから、その意味では、世界経済、日本経済、こういうものがよくなってきたからやりましょうというのは、常識的で穏やかで、そしていろいろな具体的、妥当性のある判断ができる、私は結構いい表現だなと思っていますけれども。

鈴木(克)委員 大臣、そこはちょっと私と見解が違うんですね。私は、やはりある程度きちっと指標を示して、こういうふうな状況が来たときには景気回復ですよというふうにすべきだと思う。柔軟性を持たせてそのときの判断で、これが、先ほどから言っておるように、税をいただく側と税を納める側とでは全然違うんですよ。そのときにいわゆる混乱の禍根を残すような形はやはりやめるべきであって、今ここで大臣がある程度の基礎的な指標を示して、こういう状況が来れば明らかに景気回復と判断できますねということを言っておくべきではないのかな、私はこのように思っております。これもまた、どれだけ議論しておっても前へ進まないかもしれませんが、私はそのことをぜひ、くどくなりますけれども、税をいただく側と税を納める側では全然違いますよということを申し上げておきたいと思います。

 本論に入ってまいりますが、まず所得税法の改正法案で二つほど御質問をしていきたいと思うんですが、そしてその後、私は例の埋蔵金についてどうしても大臣ともう一度ここで議論をしたいというふうに思いますので、順番にお伺いをしていきたいと思います。

 まず最初に、中小企業税制でありますけれども、戦後、中小企業が日本経済を引っ張ってきた。もちろん大企業のおかげというのもあるわけでありますけれども、その中で本当に日本経済を支えてきたのはやはり中小企業だというふうに私は思っております。

 そんな中で、いわゆるバブル崩壊、そしてグローバル化、また少子高齢化、そういった状況の中で、今本当に浮上できずに中小企業の皆さんは大変に苦しみを味わってみえるわけでありますが、今回、中小企業の軽減税率を二二パーから一八パーに引き下げるというお示しだというふうに思います。下げるということについては中小企業の立場から見ても大賛成なんですけれども、四%という下げ幅というのは、私はある意味で焼け石に水のようなことだ、ちょっと言葉はきついかもしれませんけれども、そんなふうに考えます。

 そこでお伺いしたいのは、なぜ四%になったのか、そして、二二を一八パーにした、要するになぜ四%下げることになったのか、そのところをお伺いをしたいと思います。

加藤政府参考人 今御指摘の中小企業でございますが、中小企業は金融不安や景気後退の影響を受けやすいことから、資金繰りに苦しむ中小企業への手厚い支援を行うとともに、その活性化を図ることが喫緊の課題と考えているところでございます。

 先生御指摘のように、こうした観点を踏まえまして、税制面におきましては、黒字の中小法人に対しましては、年八百万円までの所得につきまして、軽減税率が現在二二%でございますが、それを二年間、四%引き下げまして一八%に引き下げることを御提案申し上げているところでございます。

 今回、その四%を引き下げた考え方でございますけれども、これは、現行の法人税の基本税率三〇%、これとのバランスを勘案しまして、過去における中小企業の軽減税率とそれから法人の基本税率との格差を勘案しまして、その格差が一二%になるということで一八%を決めさせていただいたものでございます。

鈴木(克)委員 先ほど申し上げましたように、本当に急激な、いまだかつて経験したことのない景気の悪化の中で、中小企業は今、本当に大変な苦しみにあえいでいるわけですね。受注は激減といいますか、そして在庫の積み上がりといいますか、そういう中で、本当に資金繰りの悪化も含めて大変厳しい状況であります。

 私どもは、中小企業の軽減税率を、二二%というのを半減して一一%にすべきだというような考え方を我が党は持っておるわけでありますが、この際、百年に一度の危機であるというならば、本当に効果のある施策を打ち出すべきじゃないか、私はそう思うんですけれども、その辺、財務大臣は、今の中小企業の置かれておる状況とそして今の税の問題で、どのようにお考えになっておるのか、お聞かせください。

与謝野国務大臣 法人税を下げます場合には、やはり中小企業以外の法人税制とのある程度のバランスも考えなければなりませんし、民主党の御提案のように一一%まで社会のいろいろな方の異論なくいければ、それは中小企業自体は喜ぶと思いますけれども、税は、法人税という名のもとでの税には、いろいろな例外はあっても、やはり一定の公平性、バランスというものを確保しなければならないという意味では、今回政府が提案した二二を一八にするというのはいい線をいっているのではないかと私は思います。

鈴木(克)委員 大臣、平時ならいいんですよ。平時なら、確かにバランスをとか、大企業もあるし、ほかのことも考えながらというのは、平時はそれで正解です。だけれども、今は平時じゃないんですよ、さっきから言っておるように。大変な状況なんですから、本当に思い切った施策、そうか、国がここまで考えてくれるのかというようなそれぐらいの施策が打てなくて、くどくなりますけれども、今の経済を所管する、三部門を所管する、財務大臣、金融大臣、経済担当大臣として三部門を所管しておる大臣として、本当に危機感というのか、まだ十分ではないんじゃないかなというふうに私は思いますけれども、いかがですか。

与謝野国務大臣 国会の長い間のしきたりで、当初予算を議論しているときに、あるいは当初予算に関連する法案を議論しているときに、その先のことまで考えてはいけないということにほとんどなっておりまして、その先のことも十分語りたいとは思いますけれども、今は一人で頭の体操をしているわけです。

 ただ、先生が持っておられる危機感というのは私も実は持っておりまして、中小企業は税制で苦しむ前にまず資金繰りで苦しんでいるというのが私の地元の中小企業なんかの現状でございますし、一般的に中小企業は、どんな大きな会社の下請であっても資金繰りは大変になっている。そういう、まず資金繰りの面でやはり、今回いろいろ対策が入っておりますので、そういうものが円滑に動くようにしなければなりませんし、きょうも夕方、経産大臣とともに金融界の皆様方に御要望をする予定になっているんですけれども、金融界が積極的に本来自分たちがなすべき金融仲介機能を果たす、これは大企業、中堅企業、中小・小規模企業に対しても社会的責任を果たすというところがないと、やはり物事はきちんと片づかない。

 ただ、危機感を持てと先生が強く言われることについては、全く同感でございます。

鈴木(克)委員 中小企業に対する今の金融機関の貸し渋り、今夕ですか、金融機関との会合を持っていただいて要請をするということ、本当にそれはぜひひとつしっかりと御要請していただきたいというふうに思うんですが、実情を申し上げますと、いわゆる緊急保証枠二十兆、そして緊急融資枠十兆、これである程度緩和されたんだというふうに言われておるんですけれども、現実は、今大臣もおっしゃったように、まだまだ不足をしておるという声を本当に私ども聞くんですね。

 そこで、これはきのうの新聞ですか、金融庁が十月から十二月に受けた貸し渋りや貸しはがしの相談件数は四百十八件で、昨年の七月から九月よりも倍増しておるということ、こういうのが実態なんですよ。

 それからもう一つは、緊急保証に係る承諾実績というのをずっと見ていきますと、昨年の十二月二十二日月曜日、百二十一億、それから二十四日、世の中はクリスマスイブとかなんとかで、浮かれておったというのはちょっと言い過ぎかもしれませんけれども、そういう中でこの緊急保証のところに申し込みが百二十五億、それから暮れ、十二月二十九日、もう本当に大みそかですよね、そのときに百億を超える融資の依頼が要するに来ているわけです。これが今の経済の実態なんですよ。

 そういうことで、何が問題なのか。これは、きょう夕刻の会合でぜひ言っていただきたいんです。黒字の会社には銀行はお金を貸すんですよ。赤字の会社には貸してもらえないんです。問題はそこなんですよ。赤字であるから、今お金が欲しいんですよね、資金繰りが苦しいんです。そこのところへ、いや、七割ぐらいがお金が回っていないということが言われておるのが昨今の実情ですよ。

 これは、私は、やはり金融庁としてまだまだ実態を把握し切れていない、そしてある意味では指導監督ができていないというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 金融庁も地方の財務局等を通じて中小企業の実態を必死に把握しておりますけれども、恐らく、先生御指摘のように、まだまだ十分でない、まだ十分深く理解していないという御指摘は当たっている部分がある。これからもきちんと中小企業の実態を深く広く把握する必要があると私も思います。

 また、銀行に対しては、本来銀行が果たすべき社会的責任を果たしていただけるようによくお願いをしなければなりませんし、場合によっては指導しなければならない。これは、こういう危機の状況の中で、彼らも、銀行、金融機関も、やはり一定の社会的使命を持って働いていただかないといかぬと私は思っております。

鈴木(克)委員 きのう、いわゆる商工ローン最大手のSFCGが出ました。これは、過去のあれでは年利四〇%、もちろん普通考えられないんですけれども、それでも借りなきゃならない、それでも貸してもらいたいという企業があった、これは事実ですよね。別に商工ローンの話を今さら蒸し返すつもりはありませんけれども、世の中には必要なときに必要なお金が借りられない中小零細企業が本当にたくさんある、このことを我々は肝に銘じて対策を打っていかなくてはならない、このことを私はくどく、ひとつ大臣にお願いをしたいと思います。

 それでは、続けてまた質問をさせていただきます。

 財源確保法案との関連でお伺いをしていきたいんですが、例の埋蔵金であります。

 大臣は埋蔵金という言葉はないんだということを過去におっしゃったように記憶をしておるわけですが、いずれにしましても、平成二十年度の補正予算で四兆四千五百八十億円、そして二十一年度予算で六兆六千九百十億円、二十年度補正と二十一年度当初の合計で十兆八千七百六十億円、私で言うところの埋蔵金を使っているわけですよ。ということは、これはやはり埋蔵金はあったんだということを認めるべきだというふうに私は思っております。これが一つ。見解はまた恐らく違うでしょうけれどもね。

 それから二つ目。埋蔵金というのは一回使ったらなくなる一過性のものだということをずっとおっしゃってきましたよね。ところが、そうではないということを私は申し上げたいわけであります。

 長くなりますので途中割愛をさせていただきますけれども、いずれにしても、私は、埋蔵金がやはりあるんですということをここで認め、そしてこれは一過性のものではないということを認めるべきだというふうに思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 埋蔵金という言葉は、埋蔵金伝説というのが正しい表現でございます。埋蔵金という言葉のニュアンスには、埋め隠してあるという概念が入っておりますけれども、今我々が議論の対象にしております特別会計のお金は毎年きちんと公開されているものでございまして、問題は、それを使っていいかどうかという判断を先生方にしていただくことだろうと私は思っております。それで、毎年出てくる埋蔵金というのがあればこんな幸せなことはないんですけれども、そういうわき水のような埋蔵金というのは多分ないんじゃないかなと私は思っております。

 ただ、問題は、いろいろな特別会計がありますけれども、こういうものをきちんと国民の前にお示しする、それから、これは使っていいお金、使って悪いお金ということははっきりとやはり峻別するというのが国会の責任であり、政府の責任である、私はそういうふうに思っております。

鈴木(克)委員 また今回もちょっと時間がなくなってきましたのであれですが、埋蔵金伝説ではなくて、埋蔵金があるんだということを証明していきたいと思います。

 特別会計の不用額、どのくらい毎年発生をしておるんでしょうか。保険会計を除いたベースで、平成十三年度以降について毎年度の額をお示しいただきたいと思います。

木下政府参考人 平成十三年度以降の保険事業特別会計を除いた各年度の不用額は、十三年度六・九兆円、以下、九・九兆円、八・三兆円、七・五兆円、五・八兆円、七・〇兆円、平成十九年度七・三兆円となっております。

鈴木(克)委員 もちろん今申し上げたこの不用額がすべて埋蔵金であるということを申し上げるわけではないんですけれども、大臣、こういうことなんですよ。てんぷらを揚げますとてんぷらかすというのが浮いてきますよね。これを一遍きれいに取ると、また次のてんぷらを揚げるまでに浮いてくるわけですよ。問題は、そのかすの部分なんですね。

 これは今現在どういうふうになっておるかというと、特別会計、歳入がありまして歳出があります。そしてそこに、当然、歳入と歳出の差が出るんですよ。それがいわゆる不用額であり、そして翌年の繰り越しなんです。ところが問題は、その不用額の中が、積立金と翌年繰り入れというふうにまた二つに分かれているんです。問題は、この積立金なんですよ。この部分というのはずっと残っていくんです。それが今言われた、それだけではないんですけれども、この部分は明らかに、私が何を申し上げたいかというと、時間の関係もありますのであれですが、要するにこれは余剰金隠ぺいシステムなんですね。

 私が申し上げたいのは、このお金の使い方、予算の組み方を変えない限り、この問題はずっとくるんです。毎年出ているんですよ、毎年。これが実態なんですよ。恐らく、そうじゃないということを必死になって役所は言うと思うんですけれども、どういう手だてで見ていっても、明らかにこういう余剰金、剰余金の隠しシステムというのが間違いなく存在をしておる。ここが要するに埋蔵金とか埋蔵金伝説の発生源であるということを私は申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 十九年度を例にとりましてその不用額の内容について申し上げますと、総額は七・三兆円ですが、国債費それから予備費、外為特会の利払い費など、予算編成後の外的要因にて左右される支出についての不用、あるいは財政投融資特別会計の貸し出しが見込みを下回ったことによる不用などが大宗を占めております。

 また、ただいま申し上げた国債整理基金特別会計を例にとれば、国債利子の支払いが予定より少なくなったこと等の理由により歳出に三兆円の不用額が発生しておりますが、他方、歳入においても、その分一般会計からの繰り入れが減少しております。

 このように、不用額が発生したからといって、必ずしも活用できる財源が発生するわけではありません。

 委員御指摘のように、不用額の処理については、歳入が予算に比して上振れた、不用額の発生を含む歳出が予算に比べて下振れたことにより、いわゆる歳計剰余金が発生するわけでございますが、これについては、特別会計法に基づき、積立金等への積み立て、翌年度の特別会計の歳入への繰り入れ、翌年度の一般会計への繰り入れとして適正に処理しておるところでございます。

 また、積立金につきましては、委員会でもいろいろ御議論いただきましたように、今回、特に臨時特例の措置として、財政投融資特別会計の積立金については一般会計で使用することをお願いしている、そういうことでございます。

鈴木(克)委員 残念ながら、時間が来てしまいました。きょうはこれぐらいにさせていただきますけれども、私は、改めて時間をとっていただいて、このことをしっかりと議論していきたいと思います。

 洗いがえ方式というのを私は提案してまいりますので。本当に予算の組み方を抜本的に変えなきゃだめです。今のような答弁を百年一日のごとく繰り返しているのが財務省であり、金融庁であり、役所なんですよ。その仕組みを変えない限り日本の国はだめなんだ、このことを申し上げて終わります。

田中委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛でございます。

 前回も与謝野大臣に質問させていただきました。前回はゲストで来ていただいたということですが、今度からはレギュラーだということで、前回はそういう部分でちょっと遠慮もあったんですが、これからは耳ざわりの余りよくないことも言わせていただくと思いますので、その点よろしくお願いします。

 早速なんですけれども、お手元に今資料を配られていますでしょうか。一枚目をごらんになっていただきたいんですけれども、グラフのようなものを配らせていただいております。これは昨年の日経ビジネスに出ていたもので、ちょっと印刷が見にくいかもしれません。こちらの方にもパネルを用意しました。

 これで何を言っているかといいますと、これは、自民党、民主党の各議員それから企業トップの方にアンケートをしたものです。その結果でございます。

 横軸に政府のあり方、縦軸に市場経済のあり方ということで、縦軸の市場経済のあり方は、規制緩和を進めたいという方が上に来ています。規制緩和は余り進めないで格差を是正すべきだという方が下に来ております。横軸については、大きな政府を志向する方がこちらの左側でしょうか、それから、小さな政府を志向する方が右側に来ている、こういうことです。

 自民党の議員の皆様の答えというのは、大体大きく二つに分かれています。一つは右上の方、規制緩和で小さな政府を志向する。私は、これはいわゆる小泉構造改革路線だというふうに認識しておりますけれども、まず全体として、この点について、このグラフで言う右上の部分が、これまで小泉、竹中さんが目指していた構造改革路線だということでよろしいですか。

与謝野国務大臣 大きな政府論、小さな政府論というのは、現在ほとんど意味を失っているんじゃないかというふうにも考えます。

 というのはなぜかといいますと、我々が習った小さな政府論というのは夜警国家、国は外交と防衛と警察しかやらない、そういうのは教科書的な小さな政府。だけれども現実は、政府がかかわっている社会福祉政策というのは、これは小さく縮めることもできないほど大きくなっている。ですから、政府と個人とのかかわり合いでは、もう小さな政府というのは現実にはあり得ない。

 ですから、スウェーデンのような何から何まで政府がやりますという大きな政府にするのか、なるべく社会保障制度には国がかかわらないような小さい方向で物事を考えていこうかという程度の分け方はできるんですけれども、この日本において、小さい政府、大きい政府という議論をすること自体は意味のない話であって、今の中ぐらいの政府をそのままにするのか、もっと国の役割を大きくするのかどうかという議論はできますけれども、これを小さくしようということになりますと、国の行政組織、国の役人の数というのはもうほとんど世界で一番小さい。あと小さくするとしたら、社会保障の世界になっちゃう。

 ですから、国の行政組織のあり方と社会保障制度の小さい大きいのあり方と、やはりそこは切り分けて議論しないと、国の行政組織と社会保障制度を一緒にして小さいか大きいかということを議論するのは、ちょっと議論が混同するし、ややわかりづらいんじゃないかなと私は思っております。

階委員 そのお考えはもっともだと思うんですが、小泉さんとか竹中さんが何をやってきたかというと、まず市場のあり方については、規制緩和を目指してきた。この縦軸でいうと上の方になりますね。それから、政府のあり方については、歳出削減をどんどん進めて小さな政府を目指してきた。

 大臣、行政府のあり方と社会保障のあり方で分けるべきだとおっしゃいましたけれども、歳出削減の聖域なしという言い方で社会保障もどんどん削っていったわけですよ。ですから私は、小泉改革というのは、規制緩和と小さな政府を目指してきたということを申し上げております。

 このこれまでのやり方について、大臣はどのようにお考えになっていますか。これがよかったのか悪かったのか、日本にとってどういう功罪をもたらしたのか。その辺についてお考えをいただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 こういう点で非常に参考になりますのは、「福祉政治」という本を書いた北海道大学教授の宮本太郎さんという先生がおられるんですけれども、この方の本を読むと、国民のセーフティーネットのあり方、これを論じておられるんですけれども、やはりそんな、どんどん小さな政府にしてセーフティーネットまで裸にしていくというような政治は、もともと日本人の文化とか生活にはなじみのないものだし、これからもそういうものは日本の風土に合わないんじゃないかと私は思っています。

 やはり一つのことだけ論じたらだめで、例えば労働力の流動性を確保するというのであれば、それに対応するセーフティーネットをどうするかということを考えながらやらなきゃいけないということについては、この十年間ちょっと怠ったと言われても仕方がない部分があったと私は思います。

階委員 ありがとうございます。今、小泉構造改革路線、このグラフでいうと右上のあり方に問題があったというお話でございました。

 私も、最近の北欧の雇用政策とかを見ていますと、フレキシキュリティーなんという言葉がありますね。規制緩和を進めるのであれば、セーフティーネットもちゃんと整備しなくちゃいけない。だから要するに、ちょっと極端な言い方かもしれませんけれども、左上を目指しているということも言えるわけですよ。

 ちなみに、民主党はこういう右下のゾーンなんです、この四角で囲っている部分。今までは、何が世の中の通説だったか。特に、竹中さんがどういうことを言われていたかというと、要するにこういう左下から右上のところじゃないと論理的におかしいんだ、大きな政府と格差是正、規制緩和と小さな政府、これが論理的に正しいんだということで、民主党のようなやり方は矛盾しているとか、また左上も矛盾しているとか、そういう言い方をされていたんです。

 大臣もおっしゃるとおり、規制緩和でかつ小さな政府ということになりますと、規制緩和で競争がどんどん進んでいきます。敗者が当然出てきます。敗者が出たときに、小さな政府だとその人は救われないわけですよ。セーフティーネットが弱いと救われない。これだと大変なことになります。社会がどんどん壊れていくということで、私は、このあり方というのは非常に問題がある。

 ただ、これをどういうふうに竹中さんとかが説明していたかというと、規制緩和でかつ小さな政府で国民負担を軽くしていくことで、強いところがどんどんお金がもうかっていって、その恩恵が下々の人にも及ぶんだ。トリクルダウンなんという言い方をしていますけれども、そのトリクルダウンによって全体に恩恵が及ぶからこのあり方でいいんだというような言われ方をしていました。

 私は、今回の金融危機とかの一連の動きを見ていますと、それは全く間違いであった、トリクルダウン効果はなかったというふうに判断をしております。

 その点について、今までの小さな政府と規制緩和で、かつトリクルダウンによって全体が発展するんだという考え方は間違いだったということを大臣はお認めになりますでしょうか。

与謝野国務大臣 人間の社会というのはそんな簡単なモデルで律せられないと私は思います。現に、アメリカの社会で起きていることは、そういうフリードマンのマネタリストの流れをくむような流れで物事は動いていないと思います。

 むしろ、流れとしては、アメリカですら弱い人を助けようという、例えば今度の経済危機に関してもそういう動きですから、市場原理主義の人が幻想のように持っていた、物事はルールですっぱり切っていくんだという考え方はアメリカ社会にすら適用されていない。このことは、そういうことを主張された方はやはりもう一度お考えになられた方がいいんじゃないかと思いますし、中谷厳先生の書かれた本は、経済を論じるときに、人間的な要素というものをちゃんと加味して物事を考えないと、あるいは文化的背景というものを加味して物を考えないとだめだということを主張されている。

 それからぜひ、宮本太郎さんという方の本はお読みになった方がいいと思う。これは、ある意味では日本が失った最大のセーフティーネット、日本の社会が用意したセーフティーネットというのは、会社が提供していた終身雇用制度、これは一つのセーフティーネット、それから、家族が親の面倒を見るとかおじいちゃんの面倒を見るという家庭内にあったセーフティーネット、そういうものが壊れちゃったということを論じておられる。これは非常に参考になりますので、ぜひ御一読いただければと思います。

階委員 ありがとうございます。

 構造改革路線というものを今見直さなくてはいけない時期に来ているということだと思います。

 それで、私から委員長にお願いなんですけれども、今回、重要広範議案ということで、参考人の招致をぜひお願いできないか、竹中元大臣を呼んでいただけないかと思います。ぜひ御検討いただけませんでしょうか。

田中委員長 後刻理事会で御相談をさせていただきます。

階委員 ありがとうございます。

 それで、最近の政府の中期プログラム、中福祉・中負担を目指すということなんですけれども、今大臣の御認識としては、日本の政府は、中福祉・中負担ではなく中福祉・小負担とか、そういうような御認識ということでよろしいですか。

与謝野国務大臣 中福祉・中負担というのは、何か概念規定とか言葉の定義があるわけではなくて、やはりいろいろな国の福祉のあり方、税制のあり方を並べてみるというと、多分一番福祉制度が充実しているのは北欧、特にスウェーデン、これは非常に、福祉の内容もレベルは高いし、ただ、国民負担率が七割を超えているというような状況ですから負担も高い。こういうところを仮に高福祉・高負担とする。ずっといろいろな国がありますけれども、アメリカの例をとろうと。アメリカは、国民負担率は低いけれども、社会保障などを見ると、皆年金でもないし医療に関しては皆保険でもない。やはり低いんじゃないか。そういう両者の間で比べれば、日本はその真ん中ぐらいにあるんじゃないですかというのが中福祉・中負担という概念なんです。

 この概念に対しても、ちょっと待てよ、中福祉なんといって威張っていたけれども、中福祉自体に少しほころびが来ているじゃないか、今の医療の現場とか介護の現場とかというのは相当大変なんだよという方が非常にふえてきました。自民党の中でも非常にふえていまして、中福祉・中負担といいながらも、中福祉のほころびというものについてもやはり政治は目を向けないと私はいけないんじゃないかと思っています。

階委員 そうしますと、今、日本の財政というのは、中福祉・中負担、負担と福祉は見合っているというふうにお考えですか。

 今、中福祉とは言えなくなってきている、小福祉の方に近づいてきているというお話だったと思うんですが、一方で、負担が少ないんじゃないかという議論がありますよね。国民負担が少ないんじゃないかという議論があって、そうすると、現在のありようとして、負担と給付といいますか福祉というか、出るものと入るものとは見合っているというようなお考えになりますか。

与謝野国務大臣 きょうこの時点では見合っているわけですけれども、明白なことは、少子高齢化が進むわけですから、医療、年金、介護という制度自体が維持できるかどうか。

 やはり、高齢者がふえる、疾病率の高い階層の人口がふえる、それから現役世代が減る、こういう社会構造、人口構造になったときに、今の社会保障制度、年金、医療、介護の制度が維持できるかどうか。持続可能性という言葉をみんな使っていますけれども、使う人がいっぱいふえて払う人は減るという制度が維持できますかという、問題としては簡単な問題なんですけれども解決するのはなかなか大変な問題。

 ですから、現時点では辛うじて維持できていますけれども、これが将来、五年、十年、十五年の単位で考えたときに、年金、医療、介護というものが維持できるのかどうか。それに少子化対策も加わってくるでしょうと。

 ですから、今度の税法の附則に書かれていることは、いろいろなことがいっぱい書いてあるんですけれども、そこに書いてあることは一言で言えば、年金、医療、介護の将来が心配ですということが書いてあるんです。

 それに対して、財源を確保するというのは、今はちょっと経済の状況が悪くて無理だけれども、やはり将来はそういう財源を確保する必要がありますね、これをみんなで合意できないでしょうかというのが、今回の税法の改正の附則に書いてある大事なメッセージだと私は思っております。

階委員 資料の二ページ目をごらんになっていただきたいんですけれども、今後、国民負担を上げていかなくてはいけないだろうというような議論もあるわけです。そういった中で、この資料の上の方に国民負担率の国際比較ということで、これは財務省の方でつくられる資料です。

 よく財務省の説明では、日本というのは、イギリスとかドイツとか、もちろんスウェーデンとかと比べて国民負担率は少ないんだというふうに言っておりますけれども、これは何をもとに少ないかといいますと、この数式にもあるとおり、国民負担率とは租税の負担率と社会保障の負担率だと。結局、ここで考えているのは、出ていくお金のことは考えているんだけれども、当然、社会保障で給付もあるわけです。給付を考えれば、その給付で戻ってきた部分は、国民の負担としてカウントしなくていいんじゃないかなというふうに私は思います。

 先日、ちょうど予算委員会の公聴会が行われました。その中で、公述人の方で住江さんという全国保団連の方が来られていまして、その方が説明されていた中で、要するに下のグラフのようなことをおっしゃっていたわけです。

 つまり、日本というのは、負担したものの中で給付として戻ってくる分が、下のグラフにあるとおり四一・六%なんだ、一方で、スウェーデンなんというのは七五・六%なんだと。ドイツ、イギリスとかありますけれども、そういうことをおっしゃっていました。こちらの指標もちゃんと見なくちゃいけないですよということをおっしゃっていたわけです。

 私も、それはそのとおりだと思いまして、私が考えるに、国民負担率というのを考える場合に、単に出ていく金額が多いか少ないかという議論じゃなくて、出ていく金額のうち給付として戻ってこない、純粋にネットアウトしている部分、これを負担として考えるべきじゃないかというふうに思ったわけです。

 それで、何を計算したかといいますと、例えば上の表で、スウェーデン、国民負担率七〇・七%とあります。しかるに、下の表でスウェーデンは、給付として戻ってくる割合が七五・六%なんだということですから、一〇〇引く七五・六で二四・四という数字が、戻ってこない、つまりネットアウトしている数字だ。だから、二四・四とさっきの七〇・七を掛け合わせた数字、これが実質的な国民負担率じゃないかというふうに思うわけです。

 こういう掛け算、上の表の七〇・七と下の表のネットアウトする割合、スウェーデンでいうと二四・四、こういう掛け算をやっていくと実質的な国民負担率、これは年次がまちまちなので、そこはちょっと差し引いて考えていただきたいんですが、例えばスウェーデン、掛け算すると実質的な国民負担率は一七・三%になります。ドイツでいいますと二一・四、イギリスでいうと一九・八。日本はどうなのかというと、二三・四なんですよ。実は、そういうふうな観点で見ると、日本というのは国民負担が高いということなんですね。

 今申し上げた数字は、あくまで試算したものだし、直近の数字でもないので変わっているかもしれないんですが、我々が議論する中で、こういう考え方で国民負担率の高い低いを議論しないと、ミスリーディングじゃないかなというふうに思いますけれども、今の御説明と申し上げた点について、何かお考えはありますでしょうか。

与謝野国務大臣 中期プログラムというのはほとんど先生の考え方で書いてございまして、仮に、次に消費税をお願いするときには、それは官の肥大化には使わせない、すべて国民に還元する、社会保障を通じて還元する、そういう税制でないといけないんだという思想で実は中期プログラムは書いてありまして、そういう意味では、先生の考え方、還元するものは国民負担率に入れない、そういう考え方と同じ考え方で税制抜本改革をお願いしたいということが実は中期プログラムの基本的な思想になっております。

 ですから、ほかの経費には使わせない、入ってきたものは、年金、医療、介護を通じて一〇〇%還元される、そのための税制改革をお願いしたいというのが中期プログラムの基本的精神ですから、先生の御主張どおりの考え方で実は書かれているということです。

階委員 同じ考え方だったら、ちゃんと数字で示していただければいいと思うんですよね。そういう試算というのはされているんでしょうか。事務方で結構です。

木下政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま御議論がありましたように、どこの範囲について差し引くべき受益と考えるのかについて意味が異なろうと考えますので、一義的にそういう数字をはじきますと、かなり、いろいろな解釈も可能でございますので、必ずしも、委員が御指摘のような数字を算出することはなかなか難しいのではないかと考えております。

階委員 大臣、ちょっとおかしいと思いませんか。同じ考え方だと言っているのに、数字は出せないというふうに今役所の方が言われています。数字は出すべきだと思いますけれども、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 全体の予算から社会保障給付というのはわかるわけでございますから、それはお出しすることはできますけれども、社会保障給付というのは、直接出しているものもありますし、間接的に給付となっているものもあるわけです。

 給付というのをどこまでカバーする概念かということによって、ただキャッシュをお渡しするとか現物給付をするというのが給付だというふうに考えるのか、医療制度全体を用意しておいてその利便性を活用していただくことが給付なのか、そこは大体のことはわかりますから、後ほど先生に、日本の国の予算あるいは地方予算で国民に還元されているもの、これは、還元されているものというと、例えば義務教育費とかいろいろな分野があるわけですよ。(階委員「社会保障を議論しているわけですよ」と呼ぶ)社会保障だけ。それは後で、概数はお渡しします。

階委員 そういうことで、国民負担率というものを考えるときに、今までは何となく上の数字だけで議論していたわけですけれども、そういう実質ベース、実質的な負担がどうなっているかということをちゃんと国民の皆さんにお示しする、これは大事なことだと思います。ぜひ今後、資料とかお願いします。

 次の質問に移ります。

 先ほど、我が方の鈴木克昌議員の質問でも、プライマリーバランスの二〇一一年度の黒字化目標を撤回するのかどうかという御議論がありました。シンボルとして残すんだということでありましたけれども、私も鈴木先生と同じように、新しい旗をちゃんと立てる必要があるんじゃないか、ぼろぼろの旗をいつまでも立てているよりは、新しいきれいなにしきの御旗を立てるのがふさわしいんじゃないかと思っております。

 かねがね思っていることなんですけれども、資料の三ページ目を見ていただけますか。これは、例の財政諮問会議に出された試算シナリオの一部を抜粋したものです。三ページ目のグラフ、上の段と下の段があって、要するに上のグラフは、プライマリーバランスの推移を示しております。下の段は、借金と名目GDPの比率がどうなっているかというのを示したものです。

 興味深いなと思うのが、上のプライマリーバランスについて言うと、過去の分を見ますけれども、二〇〇五年から七年あたりは、景気がよかったのでプライマリーバランスはどんどん改善されてきました。一方で、下の段を見ていきますと、名目GDPと借金の比率というのは余り改善されていないわけですね。劇的には改善されていない、若干よくなっているのかもしれませんけれども。これは何を意味するかというと、要するに、財政はよくなったけれども、名目GDPというのはそれほどふえていなかったということなんだと思うんですね。

 一方、将来の方のシナリオもちょっと見ますと、これはいっぱい線があって見づらいんですけれども、順調回復シナリオというところに注目したいと思います。

 順調回復シナリオというのは、上のグラフでいきますと真ん中の二本のライン。二本のラインについて見ますと、プライマリーバランスは、上の方でいけば二〇一八年ぐらいには黒字になりますよ、下のラインでいけば、ずっと低迷していくからいつ黒字になるかわかりませんよと。

 この差はどこから生まれるかというと、要するに上のラインは、極めて歳出を厳しく抑制していったやり方でいくとこうなるわけです。そういうことで、歳出を抑制するかしないかによってプライマリーバランスの変化というのが変わってくる。それが一つ。

 そして、今申し上げた二つのラインの推移を今度は下のグラフで、名目GDPと借金の比率で見ていきましょうという場合に、これもやはり真ん中の二つがそうなるわけですけれども、実はそんなに差は出てこないわけです。

 つまり、何が言いたいかといいますと、我々は今までプライマリーバランスというにしきの御旗のもとで財政健全化を考えてきたわけです、プライマリーバランスというのは財政の支出という変数だけで見るものだと。そうじゃなくて、名目GDPと借金との関係、名目GDPというマクロ経済全体の変数と、あと借金の残高、公債等残高と書いていますけれども、借金の残高という財政上の変数、この両者を見ていく。そっちの方が、より的確な財政健全化の指標となり得るんじゃないかというふうに思うわけです。

 だから、多分そのことを気づかれて、皆さんこうやって二つグラフを書かれていると思うんですね。上段というのは余りもう意味がないような気がしております。プライマリーバランスの意味が余りないんじゃないかと私は思っておりますけれども、ちょっとその辺についてお考えをいただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 プライマリーバランスという言葉を、だれだか知りませんけれども基礎的財政収支と訳したんですが、プライマリーというのは基礎的という意味じゃなくて、小学校をプライマリースクールとか、プライマリーというのは初期段階とかというものであって、基礎的というところまでいっていない。そういう意味では、基礎的財政収支という訳語が誤解を与えた、私はそう思っています。

 プライマリーバランスというのは何を意味するかというと、借金のことを忘れて物事を考えるというだけの話で、実は忘れてしまう借金の話が重要なんで、やはり先生言われたように、対GDP比借金がどのぐらいかということの方が、日本の財政の健全性を図るメルクマールとしてはやや真に迫っているかな、私はそう思っています。

 それで、仮にプライマリーバランスを到達したとします。しかし、財政がそこから先どうなるかというと、先生が懸念されたように、国債の発行残高がプライマリーバランスを到達した後発散しちゃうというケースもあるわけです。

 ですから、プライマリーバランスは通過しなきゃいけない地点ではあるんだけれども、それを通過したからその後の展望が明るくなるという話じゃなくて、必要に迫られていて一度は通過します、だけれども、大事なのは、日本の借金の残高が、借金が借金を呼ぶという発散型にしない、ここがポイントだということを多分先生は御主張されていると思うんで、私は、いかに発散型にしないか、そこは、今の二枚の表のうちの下の方の表の非発散型のところに、何とか日本の財政を持っていくという努力をしなければならないというふうに思っております。

階委員 この説明は、普通の人にわかりやすくするのは非常に難しいんですけれども、要するに、プライマリーバランスの黒字化を達成しても、金利と名目経済成長率の関係で、金利の方が経済成長率を上回った場合は発散していくわけですね。この中間の説明は、ちょっと時間がないので省略しますけれども、そういう前提があるわけですよ。

 その点に関して、ちょうどきょう手元に来たのが厚労省の年金の財政の見通しです。これはごらんになりましたか。もし、まだごらんになっていないようであれば御説明しますけれども、ここで非常に問題だなと思っているのが、今のプライマリーバランスの関係でいうと、この前提に置いている数字が今後、ちょっと何十年間だか忘れましたけれども、名目の長期金利は三・七、名目GDPの成長率は一・八、まさに発散する前提を置いているわけですよ。こういう数字になっています。三・七と一・八というのは後でお読みになればわかると思うんですけれども、このような数字が政府から出てくるということについて、問題はないんでしょうか。

 今まで、プライマリーバランスは大事だ大事だとおっしゃっていましたけれども、まあ与謝野大臣は違うのかもしれませんけれども、プライマリーバランスを黒字化するといっても、結局今回の見通しの数字を前提にすると発散がどんどん進んでいってしまうわけです。ということは、このプライマリーバランスを黒字化するということは、今回の見通しを踏まえれば何の役にも立たないということになってしまいますよ。こういう数字が出てくること自体、何か政策を立てる政府としてちょっとおかしいんじゃないかなと思うんです。

 そこの点について、そもそもこの試算の数字は、政府としてちゃんと全体の整合性に配慮したものなのかどうか、プライマリーバランスの黒字化とかそういうものと整合性をとったものなのかどうかというのをちょっと御説明いただけますか。

木下政府参考人 財政検証の前提については、将来の出生率の見通しに加え昨年末までの株価下落を織り込むなど、足元の状況もできる限り織り込み、経済、金融の専門家の議論等を踏まえて、厚生労働省において設定されたものであると聞いております。

階委員 政府内で調整しないでこういう数字が出てきているということなんですよ。非常にまずいと思いますね。

 だって、黒字化はシンボルとして立てている中で、そのシンボルを否定するような数字が出てくるわけですよ。このままいくとどんどん借金が発散して、もう財政は破綻しますよ。これでいいんでしょうか。こういう数字を出してきていいんでしょうか。

与謝野国務大臣 これは一定の前提を置いた試算でしかないので、試算は試算として冷静に受けとめたらいいと思っております。

階委員 やはり全体として、政府ですから、一体ですから、ちゃんと整合性をとった数字を出さないと、何かいいとこ取りという感じが非常にします。だから、厚労省の責任で勝手にやったことだなんということはちょっとおかしいんじゃないかということを申し上げておきたいと思います。

 だんだん時間がなくなってきましたけれども、法案の方で、今回、先ほども議論にありました、金利変動準備金を使いますという話です。前回私が質問したときは、補正予算の中のお話でございました。

 資料の四ページ目を見ていただきますと、前回私が質問したときは、上段の図でいいますと真ん中の部分の四・二兆のお話でした。第二次補正予算で金利変動準備金を四・二兆使いますよということは、既に前回議論させていただきました。

 今回はその右側の、来年度予算のところを議論しているかのように思えるんですが、実は、今回提出されている法案というのは来年度分だけじゃないんですね。再来年分も使うという話なんですよ。この四・二兆という数字だけ出されると、何か非常に我々も誤解するんだけれども、実際には再来年度分も使う分がありますので、だから再来年分も考えなくちゃいけない。

 それで、まず前提として、再来年は幾ら使う金額があるのか、今の段階でどういうふうに見込んでいるのかというのを教えてください。

木下政府参考人 お答えいたします。

 二十二年度における歳出を幾ら予定しているのかという御質問であるかと思いますけれども、生活対策及び生活防衛緊急対策の一環としての減税措置、それから雇用創出のための地方交付税の増額、及び基礎年金国庫負担割合を二分の一とすることについては、平成二十二年度においても継続するため、これらの財源について財投特会の金利変動準備金を充てることが考えられますが、その具体的な金額等については、平成二十二年度予算編成で決めるものであり、現時点で確たることを申し上げることが難しいことは御理解いただきたいと思います。

階委員 少なくとも、年金の国庫負担の分二兆三千億、雇用創出の地方交付税五千億、それから減税措置、今回の数字は、先ほどごらんになった資料四の下の方に表として出ていますけれども、今回減税措置は四千三百五十となっていますが、これは来年になると、初年度効果といいますか、初年度は途中から減税の効果が始まりますので、それが抜けますから減税効果がさらにふえます。十ページ目にそれが出ていますけれども、平年度のところ六千八百五十億、さらに膨らむわけですよ。だから、今既に見込まれている部分だけでも三兆五千億ぐらい再来年度は使います。そういうことです。

 ですから、今回の法案が通ると、四兆二千億プラス少なくとも三兆五千億、合計七兆七千億使われます。こういう話なんですね。

 こういうことを前提にすると、千分の五十という金利変動準備金の適正な準備率、これは大幅に下回ってしまうんですけれども、これは大臣がかねがね言われていた御主張、金利変動準備金というものは金利変動リスクに備えるものなんだから一定限度確保しておく、それが千分の五十なんだ、こういうかねての御主張と矛盾が非常に甚だしくなってくるわけですけれども、この点についてはどういうふうに御説明されますか。

与謝野国務大臣 もともと、とっておいた方がいいお金かなと思いますけれども、やはり世の中には、背に腹はかえられないという場面があって、今はそういう場面じゃないかなと思っております。

階委員 背に腹はかえられないで済めば、本当に何でもできますからね、危機になったら何でもいいのかという話で。

 逆に、もしそこまでおっしゃるんだったら、今回、税制改正の附則に、何か三年後に消費税を上げるんだか上げないんだかわからないような文言をつけましたよね。あんなものも必要ないんじゃないですか。一方では、背に腹はかえられない、何でもかんでもオーケーと言っておいて、何か一方では財政規律みたいなことを、それも中途半端な形で盛り込んでいる。

 附則百四条というのは何を目指しているのかというのを、ちょっと御説明いただけますか。

与謝野国務大臣 そこはやはり、今の状況ではいろいろなことはやります、財政出動もやりますし、こういう財融特会のお金も使わせていただきますという、本来はやらないようなことも全部やりますけれども、それでは将来に責任を持つのかと言われれば、今回政府が閣議決定しました中期プログラムに書いてありますように、景気が回復した後は税制の抜本改革をやって、社会保障、年金、医療、介護及び少子化の財源をきっちり確保する、そして年金、医療、介護を持続可能なものにする。なお、税を通じて国民に御負担をいただいた部分は、そっくり国民に還元をする。そういうような中で、税制改正をちゃんとやるということを今申し上げておくということが、むしろ将来世代に対する責任を果たすことになる、そう我々は考えて法案を提出しているわけでございます。

 ただ使え使えと言うだけの話はやはり余りにも無責任である、そう思いますし、国民年金、三分の一を二分の一にするについては、年金に対する安心感を確保するという意味では、三分の一を二分の一にするということは非常に大事だったわけで、そのとおりにいたしましたけれども、そもそも、年金法が我々に要請していることは、ただ三分の一を二分の一にするということではなくて、安定財源を求めたいということをあの法律は言っているわけです。

 そういう意味では、今回は、税制改正はとてもできないという状況の中で財融特会に財源を求めたという異例のことをやりましたけれども、二年たった後、三年後ぐらいにはきっちり正しい軌道に戻るということは、やはり今から考えておかなければならないことだと私は思います。

階委員 資料の五、六ページあたりに、今出た基礎年金の国庫負担割合三分の一を二分の一に引き上げるというところの関連条文が出ております。

 従来は、いつから引き上げるかというところが、特定年度は、「平成二十一年度までの間のいずれかの年度」ということできっちり特定されていたわけです。ところが今回は、特定年度が特定されていないという非常に矛盾がある内容になっている。そういう意味では、幾ら附則の方で財政規律に配慮したといっても、年金の部分について言えば、従来より後退しているということを申し上げておきます。

 時間がないので最後の質問の方に移ってまいりますけれども、住宅ローンの問題をちょっと取り上げさせていただきたいと思います。

 資料の十一ページあたりに、今回アメリカでは、住宅ローンの債務者対策ということでいろいろやっています、金利減免もやっていますということで、住宅ローンといっても、政府系の住宅ローン会社、フレディーマックとかファニーメイ、日本でいえば旧住宅金融公庫、こういうところがやる部分と、あと民間の金融機関がやる部分があるわけです。

 きょうは国交省の副大臣も来られていますので、ちょっとお尋ねしたいんですが、旧住宅金融公庫の貸し方なんですけれども、十年たつと金利がぽんと上がる。今ちょうど見直しのタイミングが来られている方は、従来二%ぐらいだったのが四%、倍になってしまう。非常にこれは、返済負担という意味では大きい。かつ、今税制改正の中で住宅ローン減税がありますけれども、このあたりで借りている人というのは、住宅ローン減税はもう終わっている人たちなんですよね。それもどこかに資料をつけてあったと思いますけれども。

 そういう中で、こういう金利がぼんと上がる人に対して、何らか国交省として支援を考えておられるのかどうか、その点についてお考えをお尋ねします。

金子副大臣 お答えいたします。

 今お話がありました、旧公庫時代の段階金利制度というのがございまして、当初十年間の返済額を抑制して、ライフステージの早い段階での住宅取得を支援することを目的としてつくっておりまして、そういう意味で、借り入れを行う時点で返済終了までの毎月の返済額等は明示しておりますし、利用者としては、借入期間を通じた返済計画の策定が可能なものというふうに承知をしておりますが、今お話がありましたように、経済情勢の変動等によりまして大変返済計画に変更が生じる、非常にローン返済の負担額が増すというふうにも考えております。

 それで、今お話がありましたように、住宅金融支援機構におきまして、ローン返済が困難となった方を対象といたしまして、居住の安定確保の観点から、特例措置として、毎月の返済額を軽減するための返済条件変更のさまざまなメニュー、例えば返済期間を最長十五年延長することによって毎月の返済負担を軽減する、さらに、失業中の方あるいは収入減少割合が二〇%以上の方々については、最長三年間の元金据置期間の設定を行いまして、毎月の返済負担を大幅に軽減しているところでございます。

 今後とも、返済条件変更のメニューについて、ローン利用者に対して適切に情報提供を行いつつきめ細やかな返済相談を行うように、住宅金融支援機構を指導してまいりたいと思っております。

階委員 時間が参りましたのでこれで終わりますけれども、もっと踏み込んだ対策が必要だという問題意識を持っていますので、今後ともよろしくお願いします。

 本日はどうもありがとうございました。

田中委員長 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 私の場合、先般の代表質問にも立たせていただきましたので、与謝野大臣にはその延長線という感じでいろいろと政治家としての御答弁をいただければというふうに思っています。

 今回議題となっております税法案また財投の特例を定める法案につきましては、私自身、公務員としていろいろと仕事をさせていただく中で、本当に考えるところがたくさんある法案でございました。先ほど来我が党の同僚議員の質疑の際の大臣の御答弁を聞いておりまして、少なくとも、考え方の違いがある程度あるのかなと思いながらお聞きしておりました。しかし、その中で、もう一度たどるようにお聞きすることになりますが、お許しいただければと思います。

 まず最初に、与謝野大臣が鈴木議員とのやりとりの中でお述べになっておられたところにかかわります。

 今回、この税法案の中に、これだけいろいろ議論があったところではありますけれども、秋以降、景気が急激に悪化してきている中で、それでもなお、政府としては、中長期的な観点から税制の抜本改革を目指した表現を今回の法律案の中に盛り込むということを決定されたわけでございます。先ほど与謝野大臣の御答弁を聞いておりまして、その部分について私は異議を唱えるものではないんです。政治と行政との間でやりとりをしながら、中長期的な税制のあり方について責任を持った発言をしていくということについては、全く同感でございます。

 しかし、私が実際に政治の世界に身を置かせていただいてみて、もう一つ考えていただくべき要素があるのかなというふうに感じます。それは、各時点において責任ある立場の方がどのようなメッセージを国民の皆様方に送っていらっしゃるかということが、その時点その時点での国民の皆様方に対する、国としての税制をどのように考えているのか、どのような方向に引っ張っていこうとしているのか、それについて、感じ取り方が、一定の方向が見出せなくなってきているのではないかというふうに思うわけでございます。

 なぜかといえば、先般、九月以降、麻生総理が御就任なさいましたけれども、麻生総理になられて、政府がおっしゃっていることを全部総合して考えましたときに、これは私自身もそう思ったんですが、国民の皆様方と接する中でかなりの御意見をいただきました。

 例えば、政策的な是非は別に置きまして、定額給付金を給付して、皆さんにぜひ使っていただきたい、消費をどんどん喚起していただきたいというふうにおっしゃる中で、確かに消費税の将来像を議論しなければいけないことはもう既に国民の皆様方はこの数年来の議論の中でおわかりのはずでございますが、それを、景気が急激に悪化してきている中で、三年後に消費税を上げさせていただくことを考えていると。三年後には景気がよくなっていることを期待しているというふうにおっしゃいますが、勉強していらっしゃる国民の皆様方からすれば、そうしたことは、景気をよくすることに全力を挙げた後政府がおっしゃるべきではないかという御意見がたくさん返ってまいります。つまり、アクセルを踏みながらブレーキを踏んでいるようなイメージを国民の皆様方のかなりの数が持っていらっしゃるように思うわけでございます。

 おっしゃっていることそのものは、それぞれについては、中長期的な観点から正しい発言をされている場合が多いんだと私は思います。しかし、今のこの経済の困難に直面していらっしゃる国民の皆様方が、それぞれ自分の仕事に頑張って、所得を得て、消費をしながら、また政府からお金が給付されるのであればそれを消費してやろうかというふうに思っていただく路線に、今、とにかく目の前にそういったものが転がっている中で、中長期的な課題をここまで、ことしの通常国会で審議する法案の中にお述べになった理由が私はまだわかりません。

 その部分について、もう一度お答えいただけますでしょうか。

    〔委員長退席、木村(隆)委員長代理着席〕

与謝野国務大臣 言うべきこと、お願いすべきことはどんな状況にあっても正直にお願いするというのが、私は政治の責任であると思います。

 これは、それぞれの政治家の人生観や哲学の違いで違う考え方を持っておられる方がおられるということは当然知っておりますけれども、やはり、こういうことが将来起きます、こういう御負担をお願いすることになりますということは、あらかじめ申し上げること。申し上げるについては、どの政党であれ、どの議員であれ、かなり苦しいものがありますけれども、その苦しいものを乗り越えて正直に正しいことを言うということも、私は大事な政治のあり方ではないかと思っております。

和田委員 正直に政治家の信条を申し述べるべきであろうという御答弁、それは私自身もそのとおりだと思います。しかし、もう一度お聞きしたいんですが、国民の皆様方にどのようなメッセージを送ることが今の財政運営の責任者として最も適切なのかという観点を持っていただきたいと思うんです。

 私が申し上げたいのは、国民の皆様方は大変よく勉強していらっしゃるように思うんです。今与謝野大臣がおっしゃっているようなことは国民の皆様方は既におわかりになっていて、それでお聞きになっておられるんだと思うんです。そのときに、世界じゅうで経済困難に陥っている中でなぜ日本だけが、税制改革は確かに必要でございます、数年後に必要だと思いますが、しかし、それを今、この通常国会で議決をとるべき法案の中に入れ込むという、そこまでの必要性が私には理解できないのでございます。

 国民の皆様方から多数私自身がいただいてきた御意見でございますが、今は財政運営の責任者としておっしゃるべき内容は、本当にとにかく皆様方に頑張っていただきたい、頑張って、とにかく国全体として経済困難を克服していきたいというメッセージを送っていただくことがみんなを元気にする政策ではないかと。麻生総理が御就任直後に、元気の出る国家を目指したいというようなことをおっしゃっておられましたが、国民の皆様方の今の御反応というのは、ああいうふうにおっしゃる総理のもとで編成される予算案なり税法なのかというような感情が芽生えているようでございます。もう一度お答えいただけますか。

与謝野国務大臣 先生、多分、IMFのレポート、一番最新のに目を通されたのではないかと思いますが、その中にもやはり、財政出動のことも書いてありますけれども、中期的にそれぞれの国の財政の健全性ということも大事だということが書いてあるわけでして、我々はこういう経済の困難な時期にいろいろなことをやりますけれども、中期的な財政の健全性ということももう一方では考えて進んでいかないといけないというのが我々の考え方でありますし、それを、例えばIMFというような国際機関でも同じようなことを言っているということは注目に値すると私は思っております。

和田委員 今IMFの方を引いていただきましたが、確かに私も拝見しております。私の方がもうちょっと幾つかの文献を見てみたりしたわけでございますが、今、国民の皆様方からそんな反応が返ってくることの背景に、恐らくこの数年来の政府の出されたものに対する国民の皆様方の評価が入っているのではないかというふうに思うわけです。

 それは、前回選挙が行われてから既に四年近くが経過いたしておりますが、その中で、たびたびかわる政権が何度も打ち出しています大きな経済財政政策運営の方針、例えば骨太の方針だとかそういったものが出ているわけですけれども、そのたびごとに、景気がいい中で、景気が非常に回復してきて日本経済が成長している中でおっしゃっている文言と、今景気が随分ダウンしている中で今回盛り込まれた表現、これらのバランス感覚というものが非常に悪いのではないか。

 本来ならば、一つの国家像として考えるときに、みんなが要するに成長していて税収も上がっているときにもう一度皆さんで中長期的な改革の像を示そうではないか、考えようではないかという意味での政府の御発言なり、いろいろなものへ盛り込む表現なりというものを見ていらっしゃる中で、今回、九月以降、急激に悪化してきている中であれだけの表現を盛り込まれることのバランスというか妥当性というんでしょうか、そうしたものが国民の皆様方にまだ御理解いただいていないように思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 別にあの文章で日本の経済が悪くなっているわけではない、あの文章を書いたからさらに悪くなったわけでもない。日本の経済はなぜ悪くなったかというのは客観的にいろいろ御説明できますけれども、例えば、いいときにああいう税制改正をやると、せっかく経済がいいのになぜ経済を冷やすような議論をするのかということも言われるわけです。

 ですから、いつかは言わなきゃいけない。ただ、あの文章をよく注意深く読んでいただくと、すぐやるなんということは書いてないんです。一一年以降、とにかく景気回復があって、その後も段階的にぼちぼちやりましょうねということが書いてあるので、ただ、全く書いてないということは、本当に中期的な財政に対して、多分無責任のそしりは免れない、私はむしろそちらの方を実は心配しているわけです。

和田委員 中長期的な表現を今回の税制法案の中に盛り込むことが責任ある表現だというふうにおっしゃっているわけですね。私自身は、その部分が全くゼロと申し上げようとは思いませんが、今、いろいろなものを激変している中で考えるということを前提にして見た場合に、ここまでの表現をこの国会で通すべき税制改正案の中に盛り込むべきかどうかということについて疑問を持っているわけでございます。

 私は、例えば先般まとめられた中期プログラムの中にあれだけの表現を盛り込まれることは、もともと中期プログラムとしてつくられているものでございますので、その中にどういった表現を盛り込まれるかの視点は、今おっしゃったようなことを前提にされればよろしいのではないかと。しかし、所得税法の改正案、関連する税制法案の改正案は、ことしこの国会で審議して、来年また別途税制法案の改正案を審議しようと思えばできるわけでございますが、なぜこの今回のめぐりの中でそれを表現しなければいけないのかということについて、私はいささかこの景気情勢の中では早計なのではないかというふうに感じたわけでございます。

 これ以上は恐らく見解の違いになるかと思いますので、次に移りたいと思います。

 今回、税制法案としていろいろなものが上がっておりますが、次に財務大臣にお聞きしたいのは、毎年毎年のように行われます租税特別措置についての改正、期限の延長等でございます。

 私自身も幾つか携わってまいりましたけれども、実際にやってみまして、例えば一つの新しい措置をつくろうというふうに思った場合に、今まで租税特別措置として認められているものがあるがためになかなか芽が出せないという実情もございましたし、実際に延長することそのものが目的となっていて、実績等についての検証そのものは各省が十分に行われていないように実感いたしました。

 私自身は、やっている間に持った一つの意見でございますが、確かに政府の理論としては、予算案を出しているがゆえに、一つ一つの租税特別措置というのはその税収を減じるというふうなものがたくさんあって、中には一つずつ増税になるものもございますが、そうしたものがなぜ一括してこの国会で審議されなければいけないんだろうか、本当に国のことを考えた財政運営をするならば、一つ一つその実施状況を検証しながら、その措置について本当に妥当なのかどうか、これらについてまさに関連する業法との間で定めていくべきではないかというふうに思った次第です。

 もっと言えば、今民主党に身を置いておりまして、個々の租税特別措置について賛否を表現しようとしたときにしようがございません。これは国民の皆様方によく聞かれるところでございまして、なぜ賛成したり反対したりすることができないのかと。国会議員として、もっと国民の皆様方の御意見を聞きながら、この部分については賛成なんだけれども、この部分については反対なんだということを表現できるような国会の議事運営を、国会議員として出ていらっしゃる財務大臣には求めたいと思うんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 平成二十一年度税制改正法案は、住宅ローン減税の延長、拡充や中小企業対策税制といった現下の厳しい経済金融情勢を踏まえた各種減税措置を講ずるとともに、必要な納税環境整備を行うものでございます。共通の趣旨、目的に沿った各税法相互に関連する横断的な改正内容が含まれることから、一本の法律案としているものでございます。こうした法制的な取り扱いは、平成十五年度税制改正以来一貫しており、相互に関連する税制改正全体の姿について一覧的、かつわかりやすく示すことに資すると考えております。

 税制改正法案の一体としての年度内成立に向けまして、議員各位の御理解と御協力をぜひお願い申し上げたいと思います。

和田委員 今の大臣の御答弁は、一括して審議する合理性を説明されたようには感じられません。なぜ全部を一緒にしなければいけないのか、もう一回御答弁いただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 一つ一つについて意見を十分述べられるということは必要なことでございますし、我々もそういう御意見に対して静かに耳を傾けるという姿勢は当然持っております。

和田委員 耳を傾けていただいて、出し直していただければと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 謙虚な気持ちで耳を傾けるわけでございまして、初めから民主党のおっしゃることを否定的なことで耳を傾けるわけではなくて、多分いいことをおっしゃるだろうなと思いながら耳を傾けるわけです。ですから、いいことをおっしゃっていただきたいと思います。

和田委員 今おっしゃっていただいたことは少しすれ違っているように思いますが、私は、今の大臣のお考えとして、一括して出すことの合理性を御説明できる状況なのかということをお聞きしたいんです。今それが御説明できないのであれば、私どもの提案を受け入れていただいて、それぞれ出していただければと思うんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 一括して出して皆様方の御意見を伺わないというのならいけないけれども、一括して出して皆様方に御意見をいただくということであれば、私は、審議の機会は十分確保されている、そのように思っております。

和田委員 意見はどんな形であろうがたくさん出させていただきたいと思うんですが、今国民の皆様方が求めていらっしゃるのは、それぞれに対する賛否を国会で明らかにしてほしいというお声だったんです。いわゆる一括して法案として出ている限りは、その中で、例えば十個ある中で、五つは賛成で五つは反対なときにどっちに入れるんだ、最後の本会議場での議決はどちらに自分の意思を決めるんだといったときに、決められない状態に私どもはあるわけです。これを今、国会の審議としてもっと改善すべきではないかという御意見としていただいたんです。いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 これは、もともと議会というのはそういう内在的な悲劇を含んでいるわけです。

 もともと私は小選挙区制は反対だった。なぜかといったら、例えば私の選挙区には、公明党に入れたい方も共産党に入れたい方も社会党に入れたい方も、いろいろな、価値観が多様化しているわけです。そこで一まとめに国民の意見をまとめてしまうということ自体がおかしいなと思っているわけです。

 それで、自民党の中でも、税法なんかは賛否いろいろあるんですよ。あるんですけれども、やはり党の意思を決めるときには、おれは本当はこの部分は反対なんだけれどもと言うんだけれども、組織として決めている。それから国会でも、党対党がやるときは、この部分は賛成したいけれどもとかなんとか、いろいろそういうのはあるんですけれども、全体の意思を決めるときというのは先生が心配されるような部分というのはどうしても出てきちゃうということはあります。

和田委員 今、大臣の御答弁をお聞きしますと、どこかで仕切りをつけなければいけないのは確かなんです。それはよくわかります。しかし、この租税特別措置をずらっと全部にわたって見たときに、これらを一括しなければいけない必然性はおよそないように思うわけです。全く違った分野の税制について、この部分については時代の要請が終わっているのではないかとか、この部分はつくってはみたけれどもなかなか使われていないではないか、こういったものがいろいろな事情としてばらばらにあるわけでございます。そんな中で、国民の皆様方に一つずつ今話題に上がっているような特別措置について御説明していった場合に、この部分はやってもいいけれども、この部分はもうやめにした方がいいんじゃないかという意見が出てこられる方が普通でございます。

 だから、今までの法案がどのようなレベルで一括して審議されることになっているのかということを私自身はそれぞれずっと検証していく必要があるんだと思っていますが、特にこの租税特別措置につきましては、こういうふうに一括することは逆に国民の皆様方にわかりづらくさせるような審議の仕方ではないかと思う次第です。いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 一つ一つの税制について大いに意見を言っていただくということは必要である、また我々もそれに対して謙虚に耳を傾ける、これも必要である、これは私は認めているわけでございます。

和田委員 この部分についても恐らく見解が随分異なっている中での議論でございますので、例えば、では与謝野大臣のおっしゃっていることを前提としながら、今何か改善の余地はないんだろうかということも問題提起したいと思います。

 政府・与党が御提案になっておられる税法案の中で、やはりこれだけ衆議院と参議院との勢力図面が変わっている現状の中では、それぞれについて修正の余地をお考えいただくということも一つの議決を経ていく上での工夫ではないかと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 私は長い間、国対とか議運とかというところばかりおりまして、委員会の筆頭理事だけで八回やらされていまして、専ら野党の御意見を伺って、いかに野党の御意見が実現できるかということばかりやっていた人間ですから、もう少しこの国会でも与党と野党と話し合われた方が、スピードも、また中身もいいものができるんじゃないかな、私はそう思っています。

 私はそういう意味では、今政策を論じていますけれども、実際は国会で、議運とか国対で国会の中を走り回っていた。そういう人がやはり自民党の中にも何人か出てこないと、それで御用聞きをして、民主党が何をお考えになっているか、どういう御要望があるかということをやはりちゃんと事前に話し合わないと、実りある国会にはならない。私は筆頭理事を八回もやったんですから、そんなことばかりやっていたんですから。

和田委員 今おっしゃっていただいた歴史は、私どもとして心強い限りでございます。実際に、参議院でも衆議院でもそれぞれ審議するわけでございますので、ぜひ今の大臣の御経験を生かしていただいて、今の与党の国対幹部にぜひ御指導いただければというふうに思います。

 一つだけ、この国会質疑というものを、攻めて守るというだけじゃなくて、やはり意見を述べ合う場にしていきたいという観点から、ぜひ大臣にコメントをいただきたいといって質問通告させていただいた件ですが、民主党として先般出して、参議院では議決をとりましたが、衆議院で審議未了になった租税特別措置の透明化法案というのがございます。前回の国会で出ておりますので、ある程度趣旨を御存じではないかと思います。

 今までの政府がやってこられた租税特別措置に対する対応よりも、もっともっと国民の皆様方に、前にお出しして、それぞれの特別措置がどのような経緯をたどってきているか、実績はどうなのか、これから先業界のニーズはどうなのか、そういったものをそれぞれ出していって、その中で存続の可否について審議しようという姿勢でつくった法案でございますが、この法案の中身をごらんになってどのようにコメントいただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 昨年の国会審議の過程では、参考人として出てきていただいた有識者の皆様方から、租特透明化法案については、政策評価や効果の検証を行う観点から実績の公表は大きな意義があるという御指摘があった一方で、企業秘密や企業戦略の観点から慎重な検討が必要、そういう御指摘もあったと伺っております。

 したがいまして、制度面、実務面からさまざまな論点があるというふうに私は理解をしております。

和田委員 今の御答弁ですと、まだ私ども、大臣からの及第点はもらっていないような感じの御答弁でございました。

 ただ、今おっしゃった、それぞれ適用対象となった企業のプライバシーというんでしょうか、そういったものに配慮するというのは、国家財政として税制の優遇措置を講じている相手方としては、むしろ国民の皆様方に自分の状況について説明の義務があろうかというふうに私自身は考えています。こういったところを将来議論させていただければというふうに思います。

 それでは、次に移りたいと思います。

 次に申し上げる件は、代表質問でも少し取り上げたのでございますが、麻生総理からは、今の実情は、やってきたことは道理にかなっているというような御答弁がございました。

 私自身、政府に身を置いていたときにここまで考えたことはなかったんですが、実は与謝野大臣、また国土交通省からも副大臣にいらっしゃっていただいておりますが、道路特定財源につきましては、暫定税率の議論をしました昨年の四月、非常に国民の皆様方の御関心が高まりました。その際に、私自身も今まで制度の側にいたわけですから、説明もし、意見も伺うわけでございますが、代表質問の際に取り上げましたこの特定財源制度を存続せしめてきた合理性を説明する一つの理由として、受益者負担の原則というものがございます。道路を使う人が受益をこうむっているんだから、その方々に道路をつくっていく費用を賄っていただくという意味で、ガソリン税その他をいただいておる、そういう意味での受益者負担の原則というものはよく説明されることです。

 しかし、この三十数年間、とにかく長期にわたってこの原則を上げながら道路特定財源制度を維持してきたわけですけれども、国民の皆様方からよくいただく御意見です、もしこの原則に従って忠実に政府がそのときそのときの実情に応じて道路財源を配分し、事業を実施していたなら。既に三十数年間たっているわけでございます。これが二、三年のことであれば私も申し上げることではないと思うんですけれども、三十数年間の長期にわたって日本全国で道路整備が行われてきている中で、国民の皆様方はまだ御納得いただいていないようでございます。

 なぜかといえば、それぞれの国民の皆様方は、それぞれ自動車を買われる際、またガソリンスタンドに行かれる際、これらの関連税制についての税金を負担していただいているわけでございますが、その負担している納税者たる国民の皆様方が、自分の生活上、本当に納得のいく道路が整備されているかどうかということについて、まだまだ御不満が高いように思います。それは、よく与党の中でも御議論なさることですけれども、まだ必要な道路がたくさんあるという趣旨の方もいらっしゃるのは確かにいらっしゃいますが、私が自分の身の回りを聞いてみて最も御意見の高いものは、整備され方に余りにもアンバランスがあるということでございます。

 例えば、私もその声を聞きまして、行ってみたところで目の当たりにするのでございますが、一つの道路、一本の道路が、確かにAという地域とBという地域とを結ぶ交通網として整備する必要がある、その計画が立てられて道路財源がそこに振り向けられている、しかしその区間の間で、どこかは広い道路がつくられていて、どこかは急に細くなってそのままであり、また次には太くなっている。こんなことの整備状況というのは、よくよく地域に行ってみればたくさん転がっている状況でございます。こういった中で、国民の皆様方に道路特定財源制度の存在意義をまだ引き続き御説明なさって、今の受益者負担の原則をかざされるということに私は大いなる疑問を持った次第です。

 そこで、まず、この制度は特別会計の中で運用されてきたわけですから、国土交通副大臣、恐縮ですが、今までの歴史を振り返っていただきまして、具体的に箇所づけは国土交通省において行われてきたわけでございますが、今までの道路整備状況をどのように検証されているか、政治家としてどのように役所がやってきたことをごらんになったか、お述べになっていただけますでしょうか。

金子副大臣 お答えいたします。

 道路整備については、先ほど先生からお話がありましたように、道路特定財源制度に基づきまして、受益者負担の考えのもと、道路の利用によって最大かつ直接的な便益を受ける自動車利用者の方々に財源を負担していただきながら進めてきたところでございます。

 私自身も国土交通省副大臣室にいる際、全国各地から、もちろん広島からもそうでありますが、道路をもっと整備してほしいという声もいっぱいあります。また、私の地元においても、道路に対する必要性というのは非常に大きいものがあると思います。

 道路行政の課題というのは非常に多岐にわたっております。いろいろな道路の整備についても、新規でつくるところもあれば、バイパスみたいなところもあれば、お年寄りや子供たちのために歩道を整備するとか、そういったものも含めまして、それぞれ地域ごとに異なっているところもありますし、道路特定財源だけでは足りなくて、その地方によっては一般財源やそういったものも追加をして整備をやっていただいているところもあるわけでございます。

 箇所づけのことについてでございますが、そういう意味では、地域住民の要望とか地方公共団体の意向を踏まえながら、地域のニーズに即した整備を進めてきているところでございますし、また、平成十年度から、新規事業化に当たっての新規採択時評価とか、継続中の事業における再評価を実施いたしまして、事業実施の妥当性を確認した上で毎年度の個別事業を執行しているところでございます。

 今後とも、事業の実施に当たっては、最新の交通需要予測データ等に基づきまして、厳格な事業評価を行いながら、必要な道路整備を進めてまいりたいと思っております。

和田委員 今、時間をかけて答弁していただきましたが、私の質問に対する御答弁部分はほとんどなかったように思います。

 私がお聞きしたかったのは、いろいろ努力して整備してこられたということを否定するものではないんですが、その整備のされ方がアンバランスではなかったのかということでございます。各地域によって、実際に道路の目の前に行ってみますと、ある一定区間だけは片側二車線で整備されてみたり、ある一定区間は片側一車線で整備されてみたり、これは普通に国民の皆様方が、その地域に住んでいらっしゃる方が通ってみて、とてもこの整備の仕方がまともだとは思えないという実情がたくさんございます。

 そういったことは、今お述べになったことが適正に行われていれば、必ずまとまった部分についてきちんとした道路整備が行われているものと思われるわけですが、私自身にはそこが疑問でございます。いかがでしょうか。

金子副大臣 道路事業の場合は、さっき言いましたように、地域の事情があるわけです。用地買収もしていかなければいけないし、地形の問題もございます。工事ができるところと技術的にできないところもありますし、そういうものももろもろ含めた中で、そこを解決すべく、地域の要望を聞きながらできるところからやっているというのが現状だと思います。

和田委員 今、国土交通省として地域の御要望を聞きながらとおっしゃられましたが、私自身、いろいろと各地に行って検証させていただいてみて、その地域のお声というのはごく一部の方のお声のように思います。そこのところはもう一つ突っ込んだ検証を行ってみていただければというふうに思います。実際に、地域のお声が高いところが、そこが順番に整備されているとはとても思えないような現状だからお問い合わせしたんです。いかがでしょうか。

金子副大臣 我々も丁寧に地方の要望を受けております。一部の人たちが要請したからといって、これは事業ができるわけじゃございません。地域の、国民に近いところにおられる各市町村の議員さんなり首長さんなりが、この地域にはこの事業が必要なんだということを要望を持って、県に要望し、そして国に上がってくるわけでございまして、国土交通省が一部の方々の要請によって事業をやっているわけではございません。これはきちんとしたプロセスを踏んで国民の要望にこたえてやっているわけでございますので、そこは御理解をいただきたいと思います。

和田委員 形上のプロセスは経ていただいていると思います。しかし、私自身、国民の皆様方に聞いてみまして、この部分については議会の力が強く、その議会の中にいらっしゃる先生方のお力が強く、そのためにそこの部分は地域の声として強く上がってくるんです、そういうお話を各地でお聞きいたす次第でございます。

 ここから先は、幾ら御答弁いただいたとしても、恐らくそれより踏み込んだ御答弁にはならないと思いますので、そこは切り上げさせていただきますが、財務大臣、私自身、この道路特定財源がどのようにこれから使われるべきなのか、一般財源化ということは政府側の主張では実現したとおっしゃっておられますけれども、本当に道路を国民の皆様方の御期待に沿ってつくるためには、道路をつくる必然性としてやはり客観的な指標が何か必要なのではないかというふうに思います。

 まず最初に、財務大臣の御認識として、財務大臣も各地にいろいろいらっしゃると思いますが、交通網の整備として全国で均質化した交通をある程度確保しなければいけない国の責務が今現在果たせているとお考えでしょうか。

与謝野国務大臣 まず、一般財源化の意味でございますけれども、必要な道路は財源と関係なくつくるということが一般財源化の意味で、財源の話と道路の必要性というのは切り離されて議論されている、また議論しなきゃいけない。

 先生が、道路の必要性というのは何をメルクマールに決めていくのかと。これは、地元が大きい声を出したから決めるのか、あるいは外部経済効果があるからとか、長い間の歴史があるからとか、いろいろな観点はあると思います。そこは非常に大事なポイントです。

 東京にいてはなかなか地方の道路事情というのはわからない。やはり地方の知事、市町村長の御意見を伺いながら、何が地域社会にとって必要かということは決めていかなきゃいけないし、多分まだ、地方の声を直接お伺いすると、自分たちの村には、町には、市には、道路が足りない、道路予算が必要だという方が圧倒的に多いというのが私の印象でございます。

和田委員 その必要性をお感じになっていらっしゃる中で、私が財務大臣としてもっとリーダーシップを発揮していただきたいと思うのは、どこからどうつくっていくかについて優先順位を決める際に、もっともっと財政担当者としてよく見られるべきではないかというふうに思ったわけです。

 最初に申し上げました受益者負担の原則というものを議論の前提に置いた上で道路特定財源制度を形成されたわけでございますけれども、その受益者負担の原則に基づいて自動車諸税、ガソリン税などを負担された方々は、三十数年間たってみて、自分の身の回りはどうかというふうに、今、あの話題が盛り上がったときに振り返っていらっしゃるように思うんです。

 そのときに、東京だけで議論していたらとても成果は得られないわけですが、各地域の中小都市のそれぞれの、例えば人口規模だとか、そのときそのときに毎日、通勤風景だとか渋滞度合いだとか、そうしたものを見ている限り、国がもっと責任を持ってそれぞれに地域の実情を把握していれば、こんなことにはなっていないんじゃないかというような道路整備状況ではないかということが心配なのでございます。

 そういった意味で、これから先、財源としてどれぐらいの大きさを確保していくかということは政党間で多分意見が大分違うんだと思いますが、同じく財源を確保した後の配分の仕方として、もっと客観的な手法を用いて、ここはこういうふうになっているから整備しなきゃいけないんだということを国民の皆様方に御説明する仕組みが要るのではないかというふうに思っています。

 例えば、今申し上げた各中小都市の間で、この区間ではどれぐらい朝夕に渋滞が発生していて、それに対してほかの地域はどれぐらい発生している、そうであれば、限られた財源のうち、ここの部分に対してことしは優先的に配分しようというところを決定づけるような仕組みが何かあってよいのではないかというふうに思っているわけですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 幾らでもお金がある時代と違って、限られた中で物事をやるわけですから、いかに効率よく例えば道路整備を進めるのか。これは、今先生は財政当局ももうちょっと関心を持て、見張っていろ、こうおっしゃるんですけれども、どこの役所がやるかということは別にしまして、やはりお金を使う以上、それが効率よく、合目的的に使われるということを確認しながら使うということは必要なんじゃないかと思います。

和田委員 今、コンセプトの上では、私としては評価できる御発言だったと思いますが、もう一度申し上げておきます。

 受益者負担の原則というものを自分でも随分よく役人時代に勉強してまいりましたけれども、よく考えてみると、負担した方々のところにきちんと受益が返っているかどうかという視点が今まで欠けていたのではないかというふうに感じた次第です。

 各地域でそれぞれ毎日のように車を動かして通勤されている方々がどれぐらいの頻度でガソリンスタンドへ行かれるかわかりませんけれども、そうしたそれぞれの負担感の中で、自分はたくさん負担してきたと思っていらっしゃる方々のところに必ずしもしっかりとした道路整備が行われていない。また逆に、いろいろ各地に皆様方いらっしゃるわけですから、ここの部分では恐らく今の自動車諸税、ガソリン税等をそんなに負担していただいていないであろうと思われるところに、むちゃくちゃ大変立派な道路ができている。

 こうした状況を国民の皆様方がごらんになったときに、自分が三十数年間も負担してきた自動車諸税に対して、自分はまともな受益を受けているだろうかという疑念を抱かれ始めているのではないでしょうかということを申し上げたわけでございます。そうした意味において、もう一度、受益者負担の原則を一つずつ検証するような作業をやっていただければということを御要望したいと思います。

 それでは、次に行きます。

 最後、数分間でございますが、先ほど同僚議員の質問の中にも出ておりました、もう一つの法案である財投の特例を定める法案でございますが、私自身、その部局に身を置かせていただきまして、上司の指導を受けながら作業をしてまいりました。

 今の金利変動準備金につきましては、今回、これをやむを得ず、恐らくやむを得ずだと思いますが、使うことにされたということになっていますけれども、私自身は、財投の仕組みの中で資金調達の部分と貸し付けの部分で金利差が生じていることによってこの仕組みがあるわけですが、その部分を極力小さくしていくようにというふうに指導を受けながら作業をしてまいった一員でございます。もう随分前からこの差は非常に縮まってきておりまして、金利変動準備金として何がしかの概念変更をしながら適切なレベルを定めるべきではないかという観点からお聞きしたいのでございます。

 与謝野大臣は、先ほどの御答弁の中では、持っておいた方がよいお金ではあるというふうにおっしゃっておられましたが、私がお問い合わせしたいのは、持っておいた方がよいレベルを今の財務大臣としてどれぐらいとお考えなのかをお聞かせいただければと思います。

    〔木村(隆)委員長代理退席、委員長着席〕

与謝野国務大臣 金利変動準備金そのものは、将来のリスクに備える、金利変動リスクに備えるというものでありますけれども、千分の五十というのは五%でございますから、それはいかにも随分大きい数字をとったなというのが私の率直な印象でございます。

 具体的なレベルでどこがいいかというのはにわかにはお答えできませんけれども、そんな高いレベルでなくても将来のリスクには十分対応できると思っております。

和田委員 余りレベルを明言していただくことを期待していてお聞きするのではございませんけれども、同僚議員もお聞きしましたとおり、今回の法案では、臨時異例の措置とおっしゃりながらも、二年分はこれを要するに使うということを前提に法案をつくられているわけでございます。

 そうすると、最低限、国民の皆様方に向かってお答えいただきたいのは、この二年後に使う部分について、それで残っている水準はそれでも大丈夫だとお考えになっておられることだけは確認しておかないと、それが大丈夫でないとお考えなのであれば、使ってはいけないお金でございますので、その辺はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 大丈夫だという判断のもとに法案をお願いしております。

和田委員 そうした意味で、そうした大丈夫な状況というのが今回特に新しく発生したわけではなくて、数年前から同じような状況が続いております。

 そうした意味におきまして、私自身は埋蔵金という言葉は余り好きではございませんが、数年前から使おうと思えば使えた財源であったということはお認めになりますでしょうか。

与謝野国務大臣 いわば、国債整理基金に入れていたという意味では、使っていたということでございます。

和田委員 私がお問い合わせしているのは、千分の五十を超えた部分についてのお話ではなくて、その内数の問題でございます。財務大臣がお答えになった、二年後にこの水準でも大丈夫だということを前提にしているのであれば、数年前から同じような事情は広がっております。

 そうした意味では、数年前からここの部分までは金利変動準備金としてとっておかなくても、使っておいてよい金額であったというふうに認定してよろしいでしょうかということです。

与謝野国務大臣 理屈の上ではそうかもしれませんけれども、現実には使わなかった、こういうことでございます。

和田委員 ということは、その部分では、本来もっと細かに見ていけば、財務大臣として、国債の残高を少しでも減らそうとするために、そのときそのときにぎりぎり組み込んでいいお金までは組み込まれなかったということになりますが、それでよろしいでしょうか。

与謝野国務大臣 やはり、そこまでぎりぎりの物事を判断できる人間というのはそうはいないわけでして、その辺、千里眼を持った人はいないということでございます。

和田委員 全部細かにということが難しいという御説明でございましたが、財務大臣としてお述べになる内容ではないのじゃないかなというふうに思いました。

 なぜかといえば、国民の皆様方からすれば、先ほど大臣御自身がおっしゃったとおり、中長期的には負担を求められるという覚悟を持ってこれから日々を暮らしていかれるわけでございます。そうした国民の皆様方には、一円でも余裕のあるお金は国債の残高を減らし、税制改革の際には一円でも皆様方に御負担を軽くしてまいりますとおっしゃらなければいけない立場のように思った次第でございます。私どもが政権を持たせていただいたときには、そのお誓いを立ててまいりたいと思います。

 これにて質疑を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず大臣に、今の日本の企業、とりわけ大手企業のあり方について御認識を伺いたいと思います。

 まず、配付した資料を見ていただきたいんですが、一番最初のページにグラフがあります。このグラフを見て明らかなように、東証一部上場の全産業の配当金総額でございます。

 つい最近の数年間、この配当が急増しているわけであります。例えば二〇〇一年の三月、この段階では二兆一千九百八十八億円、それが二〇〇八年の三月には五兆五千三百十六億円と、二・五倍になっているわけです。小泉内閣が成立して以後、とりわけこの配当だけが非常に急増しているわけです。同時に、大手企業の役員給与、賞与、これを見ましても、二倍ぐらいにふえているわけであります。その一方で、労働者に対する賃金ということで見ますと、この統計には載せておりませんが、マイナスが続いてきたわけですね。

 どうも日本の大手企業というのは、働いている労働者あるいは下請にかなりしわ寄せをした上で利益を上げて、その利益のかなりの部分が株主に配当されている、こういうのが実態だろうと思うんです。

 そこで、最近の、景気が非常に落ち込んできた、こういう中で企業がとっている行動は、派遣切りということを見てもわかりますように、ともかく労働者に対しては徹底した労務費の削減、賃金のカットということを優先して行い、他方で、株主に対する配当はどうか。つい最近の報道によりますと、上場企業の三社に二社が横ばいまたは増配という状況なんですね。総額で見ても、九%ぐらいしかこの三月期決算では減らないのではないか、こういう状況です。

 つまり、今の大企業の企業のあり方として、株主だけが最優先されて、働く者には非常に厳しい状況が押しつけられている。この状況について、与謝野大臣自身、これが真っ当なものであるというふうに御認識なのか、あるいは別な考えをお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 一時期、会社は株主のものという誤った考え方が広まりまして、私は、会社のステークホルダーというのは株主だけではなくて、やはりそこの従業員、経営者、お得意様、下請、こういうのがいわば会社のステークホルダーであって、株主もステークホルダーのうちの一人ですけれども、会社は株主のもの、そういう考え方は私にはとてもなじめない考え方であったわけです。

佐々木(憲)委員 ただ、これまで構造改革路線で株主への配当をふやすということを最優先するような経営が行われ、かつ、それを側面から応援する、そういう政治が私は続いてきたと思います。その結果が今のこの事態だと思うんですね。

 そこで重大なのは、しかもその上に、その株主への配当あるいは売買益に対する税金が、大幅に減税が行われてきた。こういう事態は、ますますこの状況を加速するものであるというふうに私は思うんです。

 本来、政府税調が今まで、例えば二〇〇六年十二月の答申によりますと、株式等の保有状況を配慮しつつ、公平性の観点にも留意する必要がある、こう言って、上場株式等の配当や譲渡益の優遇措置については、金融所得課税の一体化の方向に沿って、期限到来とともに廃止し、つまり減税措置はやめて、簡素でわかりやすい制度とすべきだと。このことについては、次の年の二〇〇七年十一月の政府税調の答申でも、昨年の答申の方向に沿って対応すべきであると。

 ところが実際には、これは実行されておりません。廃止しないで減税がずっと続いてきているわけです。しかも今度、政府の提案ではまたこれを三年続けると。

 これはちょっとやり方としては、株主優遇、今の大企業のあり方というものを問題だという発言をされましたけれども、この制度を今回続けるというのは、私はおかしいんじゃないかと思うんです。やはり見直すというのが基本でなければならないと思いますが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 金融に対する課税は、やはり金融商品にかかわらず一律であるべきであるという筋論があります。

 私は、おととしの暮れは自民党税調の小委員長をやっていて、株式の売買益に対する課税、臨時的に一〇%にしておくというのは、他の金融商品に比べて優遇が少し過ぎるのではないか、そう考えて、少しずつ直そうということにしたわけです。あのとき、よく覚えておりませんけれども、一年でぱたっと直すとショックが大きいので、何段階かに分けて直そうということでしたけれども。

 また、去年になりまして、株価の下落で、やはりもとの一〇%にとりあえず戻しておかないと、相場に対する影響が大き過ぎるという意見が党内で強くなって一〇%ということになりましたけれども、いずれは、やはり金融商品については同じ税率をかけるべきだという筋論は私は正しいと思っております。

佐々木(憲)委員 例えば、預金の利子については二〇%なんですよね。株主の配当は一〇%なんですね。しかも、いろいろな理由をつけてそれを延長する。これは税収だって落ちるわけです。

 実際にこの減税で、例えば株主配当に対する減税、それから譲渡益課税の減税、これは今まで、年間どのぐらいの減税になりましたか。

与謝野国務大臣 上場株式等の配当に係る軽減税率による減収見込み額について、平成二十年度予算ベースで、国税、地方税合わせて平年度三千八百億円程度でございます。

 一方、株式譲渡益については、株価の動向等に直接影響を受け、また、株式の運用者がいつ譲渡を行うか事前に見込みを立てることが難しいという事情があることから、従来より増減収の見込みを行っていないということを御理解いただきたいと思います。

佐々木(憲)委員 我々の試算では、兆円単位の譲渡益減税が行われていると思います。しかも、株の保有が一部の大資産家に偏っておりまして、そこに大規模な減税が行われている。

 例えば我々の試算では、お配りした資料を見ていただきたいんですが、申告納税者数でいいますと、これは約十人ぐらいだろうと。合計所得階級でいうと百億円を超えるこの方々の譲渡所得は、一千八百三十二億円。これは減税額にしますと、一〇%の減税ですから百八十三億円の減税である。十人に対してですよ。したがって、一人当たり十八億円を超える減税が行われているわけです。

 こういうことを見ましても、いわば特定の大資産家、大株主に対する減税、これは余りにも極端過ぎると私は思います。

 下を見てみますと、具体的な名前も出しておりますが、例えばトヨタ自動車名誉会長、配当が十五・六億円。寝ていても配当ががっぽり入ってきて、この方に一億五千六百四十六万円の減税です。今、社長は豊田章男さんですが、この方と合わせますと二十二億円の配当があり、減税だけで二億円を超えるわけです。一方で、このトヨタ自動車は、大変な派遣切りを初めとして、今公表されているだけでも一万七千人の人減らしが行われているわけですね。

 こういう状況を見ますと、これは非常に極端な事態ではないのか。同じ資本主義でも、もっとありようがあるのではないか。格差がこれほど広がっているときに、こういう方々への減税を、一般庶民が、利子がほとんどつかないけれども税金は二〇%取られる、そういう中で、こういう方々になぜこんなに減税をしなければならぬのか。これが我々根本的に疑問に思うわけです。

 大臣、どのようにお感じでしょう。

与謝野国務大臣 多くの方がやはり、金融所得に関しても総合課税にしろという意見も多いわけでございますけれども、市場の動向とかそういうことを考えるとなかなかそこまで踏み切れない、それが自民党の中の税制に関する議論の歴史だと私は思っております。

 ただ、非常に多くの方がやはり、公平という観点から考えれば、すべての金融所得に対して総合課税でもって対応するということは正しい、こういう意見を言う方も党内では多い。

佐々木(憲)委員 先ほど、配当に対する減税、これが三千八百億円と言われました。この配当金のいわばほんの一割程度、これを雇用に回したらどうなるのか。雇用に回しますと、約十数万人の雇用が確保できるわけです。株主に対してこれほど配当を行い、そして減税を行うというのであれば、ほんの少し、まあ一割雇用に回せば、今の派遣切りなんというのは抑えられるわけですよ。本来ならばそういうふうに対応すべきだと私は思いますし、このような、もうやめようやめようと言いながらいつまでも続けるような減税、これは早くやめた方がいいということを指摘しておきたいと思います。

 しかも、私が大事だと思いますのは、資料を見ていただきたいのは、株主は一体だれなのかということなんです。今、株式の保有を見ますと、圧倒的多数は外国人です。二七・六%。金融機関が二二・五、事業法人が二一・三、個人一八・二。圧倒的に、今は外国人が日本の株を持っているわけです。

 しかも、株の売った買ったをやっているのはだれかといえば、次のページを見ていただきたいんですけれども、結局は外国人ですね。外国企業あるいは外国の投資ファンドですね。こういうところの売った買ったが全体の六割を占めているわけでございます。

 こういうことを考えますと、株主中心主義といいますか、その経済というのは、日本経済全体を非常に大きくゆがめているというふうに私は思いますので、ぜひここは是正すべきだ。いつまでも続けているこういうやり方には我々反対であります。

 大臣、そろそろ、もうやめますと言いませんか。

与謝野国務大臣 基本的には、総合課税にしろという方は多いですし、そういう方向で議論をしますけれども、やはり株式市場のことを考え、いろいろなことを考えますと、現在のままを今は維持しておりますけれども、いずれ、税制の抜本改革のときなどには、総合課税にすべきだという議論はもう一度非常に強くなるはずだと私は思っております。

佐々木(憲)委員 次に、派遣会社というのがこの間非常にふえました。ふえて、今大変な派遣切りで、中小の派遣会社が倒産をするあるいは廃業に陥る、そこの派遣労働者は途端に生活に困る、こういう事態が次々と発生しております。

 これは厚労省に伺いたいんですが、企業が倒産するという場合、労働債権というのは一体どのように保障されるか。つまり賃金ですね。私は、生きていく上でこれは非常に大事なことだと思うんですけれども、この点、どういう保障をされるのか、今の体制ではどうなっているのか、お聞かせいただきたい。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 労働者の賃金の保全の関係でございますが、こちらについては、倒産法制においてその順位が定められている、これは先生御承知のとおりでございます。

 そうした法律上の倒産の場合と、もう一つ、今お話がありましたとおり、事実上の倒産というケースがございます。事実上の倒産については、法律的に整理すれば任意整理という形になろうかと思いますが、その際の賃金の優先順位というのを見た場合には、例えば租税債権等に比較した場合には下位の状況にあると認識いたしております。

 これを踏まえまして、昭和五十一年に未払い賃金の立てかえ払い法というのが制定されております。企業の倒産によりまして、これは事実上の倒産も含みますが、賃金未払いのまま退職を余儀なくされた労働者に対しまして、一定の範囲を立てかえ払いする制度を設けております。この場合は、法律上の倒産に限らず、労働基準監督署長の認定を受けた事実上の倒産の場合も対象としておるところでございます。

佐々木(憲)委員 立てかえ払いについてはまた後でお聞きしますが、今、税金との関係というお話をされました。

 そこで大臣、税務大学校、国税庁の学校ですけれども、「国税徴収法(基礎編)平成二十年度版」というのがありまして、これを見ますと、これは、税務署員に対する教育をこういう形で行っているわけです。差し押さえという問題が今あちこちで発生しておりまして、つまり、税金を滞納した場合、差し押さえをして徴収をする、このやり方が書かれているわけです。

 例えば、「差押禁止財産」というのが書かれているわけです。「この規定は、滞納者及び滞納者と生計を一にする親族の最低生活の保障、滞納者の最低限度の生業の維持及び精神的生活の安寧の尊重を図るために設けられたもの」だ、国税徴収法の七十五、こういうふうになっているんですね。

 それから、給与収入ですね。「給与収入は、給与生活者の生計維持に欠くことができない重要なものであるため、給与生活者の最低生活費程度に相当する金額について、差押えを禁止している。」こういうことであります。これも国税徴収法の七十六の一、こういうふうに紹介をされているわけです。

 それから、滞納処分の執行に支障がない限り、第三者の権利を侵害することがない財産を選択すること、こういうふうなこと。

 つまり、いろいろ法文上の問題を細かくここで問うわけではありません。法の精神として、差し押さえをするという場合、相手が生活ができないような差し押さえはしちゃいけませんよ、賃金でも、当然それは、賃金を押さえるということは禁止ですよ、そういう考え方であります。これは私は、基本的な考えとしては必要なことだと思うんですが、大臣はどのようにお感じでしょうか。

与謝野国務大臣 破産法一般の概念は、先生言われたとおり、相手が死んでしまうようなところまで差し押さえということはできないという一般概念があって、やはり最低生活に必要なものは残して差し押さえるというのが破産法の概念ではないか、一般論として私は思っております。

佐々木(憲)委員 そこで、具体的な事例で紹介したいんですけれども、これは、ある京都の事例であります、あるいは彦根にもかかわる事例なんですが。

 Kという派遣会社、ここの従業員が、派遣されてTという工場で働いていた。ところが、その派遣会社の経営が行き詰まりまして、税金を滞納しました。税金を滞納しているからということで、大阪国税局が売掛金の差し押さえをやりますよ、こうなりました。

 その売掛金というのは、派遣会社にとっては、いわば派遣先から契約上もらうお金ですよね。そのお金というのは、当然労働者に支払う賃金が含まれているわけであります。これを差し押さえてしまって、全部税金で持っていきますよ、こうなりますと、働いている人は賃金を払ってもらえないんです。こういうことは、先ほどの精神からいうとやってはならないと私は思うんです。

 当然、賃金は、もう既に働いているわけですから、何をさておいても支払うべきものであって、税金は、その賃金を払った上で国としては徴収する、これが筋だと私は思うんですけれども、どのようにお感じでしょうか。

与謝野国務大臣 私がその方の弁護士であれば、一般的な売り掛け債権を回収したというふうには多分主張しないで、労働債権をまとめて請求しているという法理論を構成して、租税債権よりは先取特権があるんだという主張を多分すると思うんで、そこは弁護士の腕じゃないかと私は思います。

佐々木(憲)委員 これは財務大臣の腕だと思うんですね。そういう立場でぜひやっていただきたいと私は思うんです。

 つまり、この労働者はどういう方々かといえば、ずっといわば年収二百万程度の非常に低所得の方々なんですよ。ですから、貯金もほとんどありません。いきなり、もうあなた方に払う賃金はなくなりました。しかも解雇されるわけです。寮から出ていただきたい。そうなると、賃金を受け取らないまま路頭に迷うことになるわけです。そういうことをやってはならない。

 今大臣は、優秀な弁護士なら先ほどのような主張をして労働者の労働債権を守るだろう、こうおっしゃいました。やはりそういう立場で具体的な税務行政も行うべきだと私は思うわけです。

 もう一度、税務行政としても当然そういう立場でやるべきだというふうに発言をしていただければ大変ありがたいと思います。

与謝野国務大臣 やはり法律の適用というのは、具体的妥当性というものがないといけないんだろう。厳格に規範どおり適用するということのほかに、妥当性、例えば社会的妥当性、そういうものが法概念としては必要なんじゃないか、私は一般論としてはそういうように思っております。

佐々木(憲)委員 大変大事な答弁だったと私は思います。

 そこで、厚労省にもう一度聞きますが、先ほど、破産手続をした会社、あるいはそれに至る前の事実上の破産状態にある会社の労働者の賃金に対して、立てかえ払いの制度がある、このようにお話がありました。ただ、立てかえ払いの場合、幾つか問題点があるわけです。

 それはどういうものかといいますと、実際の支給までに非常に時間がかかるんです。三カ月かかるということがあります。それから、支払われる賃金相当分は基本給を対象にしているものですから、支払われるのは八割といっても、非常に低い基本給で、残業によって何とか生活を維持するという状況の労働者にとっては、これではほとんど生活できない、そういう実情があります。

 したがって、この立てかえ払いという問題も、こういう制度的な問題点をもう一度、今の状況を考える、見直す必要があるんじゃないかと私は思うわけです。この点の改善の必要性、余地というものが当然あると思うんですが、どのような検討をされていますでしょうか。

渡延政府参考人 まず、立てかえ払いの対象となる賃金でございますが、いわゆる月次賃金でございます。これについては、超過勤務手当も当然対象となるものでございます。もちろん、今お話出ましたように、事実上の倒産の前後に超勤が行われているような景況にあるかという問題はおきまして、月次賃金プラス退職金が立てかえ払いの対象となります。

 なお、この立てかえ払いのお金につきましては、課税上の取り扱い等もございますので、課税対象の通常の賃金の場合との均衡を考慮して、八割という範囲を定めておるところでございます。

 また、冒頭御指摘のございました立てかえ払いに要する時間でございます。

 確かに、御指摘のとおり、事実上の倒産の場合は数カ月かかっておる実情があるように聞いております。厚生労働省といたしましても、現下の社会経済情勢にかんがみ、立てかえ払いの早期実施につきまして、引き続き強力に取り組んでまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 これから三月末、四月にかけまして、派遣を中心とする労働不安というのは非常に広がると思います。年越しも大変でしたけれども、年度が越せるかどうかというのが次の問題なんです。二〇〇九年問題というのがまさに今発生しつつあるわけですね。

 そういうときに、労働者の生活あるいは命をどう守るのかというのが政治の責任だというふうに私は思うわけでございます。したがいまして、財務省も金融庁も、こういう問題について、それぞれの立場から国民の暮らしを守るという視点をぜひ貫いていただきたい。税制にしても、今の状況ですと逆を行っているように私は思います。

 根本的な問題はまたいろいろと議論していきたいと思いますけれども、きょうは以上で終わらせていただきます。

    ―――――――――――――

田中委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 両案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時六分散会


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