衆議院

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第14号 平成21年4月8日(水曜日)

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平成二十一年四月八日(水曜日)

    午前九時三十一分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      赤澤 亮正君    石原 宏高君

      稲田 朋美君    猪口 邦子君

      越智 隆雄君    亀井善太郎君

      佐藤ゆかり君    鈴木 馨祐君

      関  芳弘君  とかしきなおみ君

      中根 一幸君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    山本 有二君

      小沢 鋭仁君    階   猛君

      下条 みつ君    福田 昭夫君

      古本伸一郎君    松木 謙公君

      和田 隆志君    佐々木憲昭君

      中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   財務副大臣        石田 真敏君

   財務副大臣        竹下  亘君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 望月 達史君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 佐藤 文俊君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 廣木 重之君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 石川 和秀君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 田中 一穂君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   木下 康司君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           渡延  忠君

   政府参考人

   (厚生労働省職業安定局次長)           大槻 勝啓君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           西本 淳哉君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           広瀬  輝君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           稲葉 一雄君

   政府参考人

   (環境省総合環境政策局長)            小林  光君

   政府参考人

   (防衛省防衛政策局次長) 松本隆太郎君

   参考人

   (日本銀行理事)     山本 謙三君

   参考人

   (日本銀行理事)     中曽  宏君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月八日

 辞任         補欠選任

  佐藤ゆかり君     猪口 邦子君

  盛山 正仁君     赤澤 亮正君

  池田 元久君     福田 昭夫君

  鈴木 克昌君     松木 謙公君

同日

 辞任         補欠選任

  赤澤 亮正君     盛山 正仁君

  猪口 邦子君     佐藤ゆかり君

  福田 昭夫君     池田 元久君

  松木 謙公君     鈴木 克昌君

    ―――――――――――――

四月七日

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 資金決済に関する法律案(内閣提出第五〇号)

三月三十一日

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(前原誠司君紹介)(第一一五六号)

 同(山崎拓君紹介)(第一一七四号)

 同(古賀一成君紹介)(第一二〇七号)

 同(宇野治君紹介)(第一二三三号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第一二三四号)

 同(古賀誠君紹介)(第一二九八号)

 同(茂木敏充君紹介)(第一二九九号)

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(辻元清美君紹介)(第一一七五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一二一二号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第一三〇〇号)

 同(松本剛明君紹介)(第一三〇一号)

 納税者権利憲章の制定ないし国税通則法の一部改正を求めることに関する請願(古川元久君紹介)(第一二一三号)

四月八日

 保険業法改定の趣旨に沿って、自主共済の適用除外を求めることに関する請願(市村浩一郎君紹介)(第一三八〇号)

 同(中川正春君紹介)(第一三八一号)

 同(内山晃君紹介)(第一四三三号)

 同(志位和夫君紹介)(第一五一一号)

 計理士の公認会計士試験免除に関する請願(松本文明君紹介)(第一三八二号)

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(松浪健太君紹介)(第一四三二号)

 同(川条志嘉君紹介)(第一六四三号)

 同(三原朝彦君紹介)(第一六四四号)

 同(大野功統君紹介)(第一七三九号)

 消費税増税反対に関する請願(辻元清美君紹介)(第一四九四号)

 消費税率引き上げ反対に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第一四九五号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第一四九六号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一四九七号)

 同(志位和夫君紹介)(第一四九八号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第一四九九号)

 同(重野安正君紹介)(第一五〇〇号)

 同(園田康博君紹介)(第一五〇一号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第一五〇二号)

 同(辻元清美君紹介)(第一五〇三号)

 同(平野博文君紹介)(第一五〇四号)

 同(藤村修君紹介)(第一五〇五号)

 同(細野豪志君紹介)(第一五〇六号)

 同(前原誠司君紹介)(第一五〇七号)

 同(森本哲生君紹介)(第一五〇八号)

 同(山口壯君紹介)(第一五〇九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第一五一〇号)

 同(大畠章宏君紹介)(第一六四六号)

 同(高木義明君紹介)(第一六四七号)

 同(細川律夫君紹介)(第一六四八号)

 同(三谷光男君紹介)(第一六四九号)

 同(岡本充功君紹介)(第一七四一号)

 同(北神圭朗君紹介)(第一七四二号)

 同(小平忠正君紹介)(第一七四三号)

 同(土肥隆一君紹介)(第一七四四号)

 同(伴野豊君紹介)(第一七四五号)

 同(三井辨雄君紹介)(第一七四六号)

 消費税大増税の反対に関する請願(笠井亮君紹介)(第一六四五号)

 納税者権利憲章の制定ないし国税通則法の一部改正を求めることに関する請願(仙谷由人君紹介)(第一七四〇号)

は本委員会に付託された。

三月三十日

 酒類小売業者の生活権を求める施策の実行に関する請願(第五二〇号)は「石田真敏君紹介」を「林幹雄君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 資金決済に関する法律案(内閣提出第五〇号)

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 この際、石田財務副大臣から発言を求められておりますので、これを許します。財務副大臣石田真敏君。

石田(真)副大臣 皆様、おはようございます。

 このたび財務副大臣を拝命いたしました石田真敏でございます。どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 副大臣としての重責を果たすべく、与謝野大臣初め皆さん方の御指示、御指導を仰ぐ中で頑張ってまいりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 また、田中委員長初め委員の先生方にはいろいろとお世話になることと思いますけれども、よろしくお願いを申し上げて、ごあいさつとさせていただきます。

 ありがとうございました。(拍手)

     ――――◇―――――

田中委員長 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成二十年六月十日及び十二月十二日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣与謝野馨君。

与謝野国務大臣 昨年六月十日及び十二月十二日に、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を国会に提出申し上げました。報告の対象期間は、それぞれ、平成十九年十月一日以降平成二十年三月三十一日まで、平成二十年四月一日以降九月三十日までの二つであります。

 これらの報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 初めに、足利銀行に係る特別危機管理について申し上げます。

 足利銀行については、平成十五年十一月二十九日に特別危機管理開始決定がなされて以来、預金保険法に基づき所要の措置が講じられてきたところですが、今回の二つの報告対象期間中には、特別危機管理終了に向けた取り組みが行われております。

 まず、平成十九年十一月二十二日、事業計画書の審査を通過した二者の受け皿候補から譲り受け条件等の提出を受け、審査の結果、平成二十年三月十四日に野村フィナンシャル・パートナーズ等を中心に構成される企業連合を受け皿として選定されております。

 また、平成二十年四月十一日に足利銀行の株式の譲渡に係る株式売買契約が締結され、七月一日には、全株式が預金保険機構から足利ホールディングスに譲渡され、これにより、同行に係る特別危機管理が終了しております。

 なお、預金保険機構による資金援助の実施については、百四十八億円の資産の買い取り及び二千五百六十六億円の金銭の贈与が行われております。

 次に、破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容について申し上げます。

 金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は、今回の報告対象期間中には行われておりません。

 続いて、預金保険機構による主な資金援助等の実施状況及び政府保証つき借り入れ等の残高について申し上げます。

 破綻金融機関から救済金融機関への事業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関に交付される金銭の贈与に係る資金援助は、今回の二つの報告対象期間中に二千五百六十六億円、これまでの累計で十八兆八千六百七十七億円となっております。

 また、預金保険機構による破綻金融機関からの資産の買い取りは、今回の二つの報告対象期間中に百四十八億円、これまでの累計で六兆四千六百六十二億円となっております。

 これらの資金援助等に係る政府保証つき借り入れ等の残高は、平成二十年九月三十日現在、各勘定合計で六兆五千二百億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講じることに努めてきたところでございます。金融庁といたしましては、今後とも、我が国の金融システムの一層の安定の確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。

 以上です。

田中委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行理事山本謙三君、理事中曽宏君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長内藤純一君、検査局長畑中龍太郎君、監督局長三國谷勝範君、総務省大臣官房審議官望月達史君、大臣官房審議官佐藤文俊君、外務省大臣官房審議官廣木重之君、大臣官房審議官石川和秀君、財務省大臣官房審議官田中一穂君、主計局次長木下康司君、厚生労働省大臣官房審議官渡延忠君、職業安定局次長大槻勝啓君、経済産業省大臣官房審議官西本淳哉君、国土交通省大臣官房審議官広瀬輝君、大臣官房審議官稲葉一雄君、環境省総合環境政策局長小林光君、防衛省防衛政策局次長松本隆太郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。広津素子君。

広津委員 本日は、いわゆるFRCの報告が議題となっておりますが、せっかく与謝野大臣御出席の機会ですので、我が国における環境税の導入について御質問をさせていただきます。

 まず、平成二十一年度が終わったときの我が国の財政状態がどうなっているかについて考えたいと思います。

 我が国は、最新の財務諸表である平成十八年度の貸借対照表によれば、国単体で九百八十一兆円の債務があり、純債務は二百七十七兆円となっております。これにより、老人から子供まで含めた国民一人当たりの純債務は約二百十七万円となり、四人家族の御家庭では八百六十八万円の債務を負っていることになります。

 これに加えて、昨年来、燃油価格の高騰によるコスト高とリーマン・ショックによる売上高の減少により、我が国の経済は不況に突入し、政府は景気対策として七十五兆円の経済対策を行い、さらに十兆円規模の補正予算を組もうとしております。

 そこで、御質問いたしますが、平成二十一年度末における我が国の債務、純債務及び国民一人当たりの純債務の予測はどうなりますでしょうか。

与謝野国務大臣 国と地方の長期債務残高は、平成二十一年度の末におきましては八百四兆円になると予想されます。対GDP比では、これは一五八%となると見込まれており、我が国の財政は、主要先進国の中でひときわ厳しい状況に置かれております。

 お尋ねの純債務については、財務省においてはその数値を公表しておらず、国民一人当たりの純債務の予測についてもお答えができないわけでございますが、仮に、平成二十一年度末における国と地方の長期債務残高の八百四兆円について、これを国民一人当たりの数値として試算いたしますと、一人当たり約六百三十万円の借金を背負っているということになります。

広津委員 どうもありがとうございます。私は国だけしか言っていなかったので、地方も含めるとかなり多いと思います。どちらにしても、かなり多いということがわかります。

 次に、地球温暖化対策全体の中で、環境税を導入することの意味についてお話します。

 国の財政状態を改善するためには、もちろん行政改革により無駄を省くことは大切ですが、二十一世紀向けのインフラ整備や景気対策のための支出も必要です。そのため、歳入を図る必要もあります。そして、私は、その一部を環境税で賄うと、グリーン・ニューディールによる補助金の効果をさらに高めることができると考えております。

 つまり、例えば道路特定財源が一般財源化され、どういう根拠でこの税金をいただくかについて議論があるわけですが、これを炭素税もしくは環境税としていただくのが妥当ではないかと思うわけです。もちろん、炭素税もしくは環境税として課税するに当たっては、これを自動車のみに限るのではなく、炭素を排出するものに対しては、炭素に価格をつけて、原則としてフェアに徴収することが必要となります。

 参考資料としてお配りしております、地球温暖化問題に関する懇談会の中期目標検討委員会が出している「温室効果ガス排出量の中期目標の選択肢」は、今後相当な量の温室効果ガスの削減が必要であることを踏まえ、二〇二〇年におけるCO2の排出量を、二〇〇五年及び一九九〇年比を示し、一九九〇年比では、下の方はマイナス一五%のケース、マイナス二五%のケースなど、四つのケースを示しております。そして、先進国一律二五%くらいの目標でなければ地球温暖化はとめられないと思います。それを考えますとき、まず、地球温暖化対策の一環として、自主的取り組みや規制などのさまざまな地球温暖化対策に加えて、環境税を導入するのがよいと思うわけです。

 その理由は、環境税は、日本に限らず、広く世界の意識や行動を変革するためのメッセージ効果があり、エネルギーに関するパラダイムシフトの契機になると思うからです。これに中国、インドやアメリカなどの他国も協調すれば、日本の国際競争力が落ちることはなく、公平に地球温暖化をとめることができると考えます。

 さらに、環境税の導入によりCO2の排出コストの予測ができれば、社会がエネルギーの転換を行うためのインセンティブにもなります。そのため、エネルギーを転換してイノベーションを行う大きな動機づけになるとともに、これを地球的規模で行うことにより、かなりの効果が上がると考えます。

 実際に、環境税を導入した場合の効果につきましては、昨年の燃油価格高騰のときに実証されております。昨年の燃油価格高騰の折には、化石燃料の消費が減少し、代替エネルギーに転換するための研究や政策が進みました。その結果、CO2の排出削減が見られ、エネルギー価格の変化はエネルギーの消費に確実な影響を与えていることが明らかになりました。

 現在は、燃油価格の下落により、エネルギーの転換の動きがとまっておりますので、環境税を導入して化石燃料を的確な価格に維持すれば、CO2排出の削減のインセンティブが働くことは明らかです。そして、現在行っているグリーン・ニューディール政策に環境税の税収から充当すれば、二重の効果が見込めると思いますが、いかがでしょうか。

 二重の効果と申しますのは、例えば、環境によい車に補助金をつけるのと、環境によくない車に税金をつけるのは、インセンティブとしては同じ効果がありますが、補助金と税金、同じ金額をつけますと、財政中立になり、さらに二倍の効果が出るという意味です。

与謝野国務大臣 大変いい御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 先般成立いたしました税制改正法の附則においても、今後の税制抜本改革において、低炭素化を促進する観点から、税制全体のグリーン化、すなわち環境への負荷の低減に資するための見直しを推進することとしております。これは、税制の抜本改革の中で行われるこれからの議論として書いてあるわけでございます。

 こうした中で、先生の御質問の中にあった環境税については、地球温暖化対策に係るさまざまな政策的手法全体の中での位置づけ、課税の効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響などを十分踏まえ、総合的に検討していく課題であると考えております。いわば、これから皆様方に御議論をしていただくという国会の課題であるというふうに考えております。

広津委員 どうもありがとうございます。

 次に、国民経済や産業の国際競争力に与える影響につきましては、私は、代替エネルギーへの転換を進めることにより、むしろ買いかえ需要が発生するとともに、環境技術の開発も進むと思います。我が国の自動車が、アメリカの自動車と異なり、省エネの技術にトップランナーと言われるほどすぐれているのは、まさにエネルギーの値段が高く、環境に厳しい国で開発された車だからです。そのため、国民経済や産業の国際競争力に与える影響は、プラス面もあるし、マイナス面もあると思いますが、国としてかたい決意で政策を行えば、経済への影響を緩和し、また脱炭素社会の製法への転換を促すこともできます。

 既に環境税を導入している諸外国では、産業によって軽減措置なども見られ、環境税の産業へのマイナスの影響をなくすことが可能です。さらに、産業におけるイノベーションをむしろ後押しするということもあり、もし国際的にその動きが広がれば、国際競争力が落ちるという問題もなく、本当に地球温暖化をとめることができると思います。いかがでしょうか。

小林政府参考人 お答えいたします。

 今、環境税のプラス面を伸ばして、そして副作用を減らすということができるのではないかという御指摘でございます。

 これは御指摘のとおりでございまして、既に、先例でございますイギリスとかデンマーク等におきましては、一例でございますけれども、鉄鋼あるいは原料炭といったような原材料については免税をするというようなこと、あるいは政府とCO2の削減の協定を結んだ場合には税率を軽減するといったような、いろいろな軽減措置が講じられておりまして、その結果、産業への影響が相当に緩和されているというような御指摘を得ております。

 環境省といたしましても、先ほど御指摘のとおりでございますけれども、環境税の導入というのは地球温暖化対策上、大変有用な政策だというふうに考えてございまして、今後とも、産業の国際競争力に与える影響も踏まえながら、諸外国における取り組みも参考として、我が国の実情に合った軽減方策についても検討を進めてまいりたいというふうに考えてございます。

西本政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほどイノベーションの話についての御質問がございましたけれども、こういう厳しい経済情勢の今こそ、環境分野に対して戦略的に、果敢に投資を行って、低炭素社会の実現を目指すことが重要であるというふうに考えております。このような観点から、経済産業省といたしましては、新エネルギーや省エネルギーの導入に対する補助あるいは革新的な技術開発を支援していくというようなことに取り組んでおるところでございます。

 それから、税制でございますけれども、平成二十一年度の税制改正で、省エネあるいは新エネルギーの設備への投資についての即時全額の損金算入制度を創設したところでございますし、環境性能にすぐれた自動車、こういったものに対する自動車関係諸税の時限的な減免に取り組んだところでございます。それから、太陽光発電設備を含む住宅の省エネ改修に対する減税措置なども盛り込んだところでございます。

 このように、環境関連のイノベーション、これを進めるための助成や環境関連の投資に対してインセンティブを与えるような税制等々、さまざまな手段や手法によりまして、社会全体の低炭素化を進めてまいりたいと思っております。

 環境税につきましては、今後の税制抜本改革に関する議論の中で総合的に検討していくべき課題であるというふうに考えております。

広津委員 どうもありがとうございます。私も、税制の抜本改革の中で消費税等を見直すというふうに書いてありますが、その等の中に環境税をぜひ入れていただきたいと思っております。

 第四番目の質問ですが、では、どういう方法で環境税の金額を決めるか、及び既存エネルギー関係諸税や諸外国における取り組みの状況との関係ですが、私は、既存エネルギー関係諸税を一般財源化するに当たっては、まず、炭素に価格をつけるという発想で環境税の水準を決めるのがよいと思っております。また、環境を守り、エネルギーの転換を促すという観点からは、少なくとも現行の税率水準を維持することが必要であり、他の先進諸外国との比較から考えれば、ガソリンであれば、一リットル当たり二百円程度の売価になるように環境税を設定するのがよいと思います。

 ドイツ、イギリス、フランス、韓国などにおきましては、既に環境税が導入されておりまして、環境対策の役割も果たして、削減効果があったと指摘されております。それぞれの国で一リットル当たりのガソリン価格と税額を申し上げますと、イギリスではガソリン一リットル当たりの価格は二百三十三円、税額は百五十円、ドイツでは価格が二百二十九円、税額が百四十三円、フランスでは価格二百十六円、税額百三十四円、日本では価格百五十五円、税額六十一円となっております。

 今後は我が国も、税制の抜本改革におきまして、環境税を導入して、税制もグリーン化を図っていくことを大きな方向にすべきだと思いますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。

竹下副大臣 私は、今財務副大臣をしておりますが、党の中ではずっと環境税を一生懸命やってきた一人でございまして、今広津委員のおっしゃいましたことに、基本的に、心から拍手を送りながら聞かせていただいておりました。

 炭素に価格をつけるという発想、これが、一つは税という形で価格をつける、もう一つは排出量取引という中で価格をつける、いわゆる経済的手法の中の一つになりますけれども、あらゆる手段を、規制的手段もあるいは自主的な方法もそして経済的な手法も、あらゆる方法を動員して低炭素社会というのをつくっていかなきゃならぬ、こう考えておりますので、先生の御指導を受けながら、これからも検討していきたいと思っております。

広津委員 応援、どうもありがとうございます。私も頑張りますので、よろしくお願いいたします。

竹下副大臣 こちらから、よろしくお願いをいたします。

 環境税をめぐる議論というのは、欧米ですと環境税という名目で税を上げて、実は、ちょっと我々も疑問に思っておりますのは、その使い道が社会福祉やそういうところへ行っておりまして、環境対策になっていないという側面もあります。税の導入と同時に、先ほどおっしゃいましたインセンティブを二重に使うという意味で、低炭素化のために環境税を使えば二重の効果があるという先生の御主張は非常にもっともだと思いますので、できればそういう方向になってくれればいいなと心の中では強く期待をいたしております。

 ありがとうございました。

田中政府参考人 大臣、副大臣から既に御答弁がございましたので、つけ加えることは余りございませんけれども、先生の御指摘のように、各国でさまざまな、その国の特性に応じて、環境税と呼ぶかどうかは別にしまして、エネルギーに関する新しい税であるとかあるいは既存税制の枠組みの変更であるとかいうことが行われております。

 今までの既存の税制の引き上げですとか、あるいは既存の税制において対象外であったエネルギーに新しい税を入れるですとか、あるいはそれを全部組みかえるですとか、あるいは御指摘のありましたような炭素の含有量に応じた税率を設定するとか、内容はさまざまでございますので、大臣、副大臣から御答弁がございましたように、今後の議論の中で、政策的手法のあり方あるいは国民経済とか産業への影響等々を考えながら、総合的に検討をしていく必要があると考えております。

広津委員 どうもありがとうございました。

 本日は、非常に有意義な答弁をいただきまして、心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

田中委員長 午前十時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午前十時五十六分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。古本伸一郎君。

古本委員 民主党の古本伸一郎でございます。

 大臣におかれましては、本当にお疲れさまでございます。外は桜が満開から少し、一番いい桜吹雪の季節になってきておりまして、参議院から衆議院へ御移動される車中でどんなことを思いながら大臣も日夜激務についておられるのかと、いろいろ思いをいたしながらお待ちいたしておりまして、大変お疲れさまでございます。

 ところで、昨日ですか、日銀の白川総裁の会見によれば、今年度の経済成長がマイナス二%という戦後最悪の数字を示唆されたわけであります。同じくして、経済財政諮問会議で、大臣も御出席であったかと思いますけれども、いわゆる成長戦略の議論を少し棚上げというんでしょうか、少しおいておいても、その間に景気対策の方を打たなきゃならないというような議論になっておるやに報道から承知をいたしております。

 このマイナス二%という数字と現在の成長戦略、政府が持っておられる成長戦略とのそごをどのように埋めていかれるのか。財政全般、経済全般を御担当されておられる大臣として、まずは御所見を承りたいと思います。

与謝野国務大臣 今、当面の経済対策として議論をしておりますのは、いわゆる日本経済が、このままほうっておきますと一〇%近くのマイナス成長になる可能性もある。それは非常に厳しい数字ですけれども、国際機関の予想を見ましても、IMFがマイナス五・八、OECDも六%を超えるマイナス。このマイナス幅をどうやって縮めるかということがやはり国民生活にとりまして大変大事なことだ、そういう観点から今経済対策を論じております。

 成長戦略の方は、諮問会議で何回もやってまいりましたが、四月二十四日からは多分、二十四日とはまだ決まっていないんですが、この次の次ぐらいから成長戦略、これは中期的な日本の経済の強さを確保するための考え方を取りまとめるというのは、月末からもう一度再開を当然いたします。

 当面は、この経済危機を脱する、ただ脱するだけではなくて、脱する際にどういう考え方で財政出動をするのかなどなどを今議論しているところでございます。

古本委員 このマイナス二%というマイナス成長率については、与謝野大臣のかじ取りをもってすれば克服できる数字であるのか、それとも、そののりを越えているのか、これについてはいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 はっきりしておりますのは、日本のマイナス成長の要因というのはやはり輸出の落ち込みであるということで、昨年の十―十二月の数字をとって年率に延ばすと一二・一%のマイナス成長になりますけれども、外需の落ち込みによることが、その一二%の大部分を占めているわけでございます。

 したがいまして、外需の落ち込みを全部財政出動で補えるかといえば、それは多分無理だろうと考えております。むしろ、失業率をどの点で抑えるのか、そこのところが、やはり経済政策の規模にかかわる一番重要なことだと思っております。

古本委員 きょうは、委員長のお許しをいただいて資料をお配りいたしておりますけれども、資料の十六、最後の紙になりますが、当委員会で累次にわたりまして、住民税の課税の前年所得課税である現状を現所得課税に変えていただけないだろうかと。これは、多くの派遣労働の皆様やあるいは残業代が減っている方々が、去年の所得で課税をされるという問題でございまして、大臣からは、検討をしてもいいという前向きな御趣旨の答弁を二回にわたりましてちょうだいいたしました。

 私も、これを党に持ち帰りますというふうにこの場で申し上げたわけでありまして、実は昨日、弊党の税制調査会で、与謝野大臣からそういった御趣旨の御答弁をいただいたということを藤井税調会長に御報告いたしまして、与謝野さんがそういうことであれば話が早いということで、弊党といたしましても、もしこの話が出てくれば極めて前向きに対応するということを税調の場で確認してまいりました。

 私の方の宿題は終わりましたので、大臣の御決意を改めてお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 前回の答弁と同じになって恐縮でございますが、制度を所管する総務省において、事務的な問題に配慮しながら検討しているところでございまして、財務省は、当然ながら、必要に応じて全面的に協力してまいりたいと思っております。

古本委員 きょう、事務方も来ていただいているわけでありますが、総務省、これを実現するためにクリアしなければならない課題をかいつまんで説明していただけますか。

佐藤政府参考人 御指摘のとおり、個人住民税は、前年中の所得を課税標準として課税する方式を採用しております。これは、所得税の課税資料を活用することによって、個人住民税の調査事務の簡素化、効率化を図っております。また、こうした仕組みをとりますことから、給与支払い者も、毎月確定した税額を徴収すればよい、所得税のような年末調整は不要であります。さらに、納税者も確定申告が不要、こういうふうになっております。

 したがって、これを現年所得課税の仕組みに移行する場合には、このメリットが失われるということになります。つまり、年末調整が必要となるなど、給与支払い者の事務負担が増加いたします。それから、納税者も確定申告を行う必要が生じるというような大きな課題が出てまいると思います。

古本委員 事務方はそう私にもおっしゃるんですね。

 ただ、これは考えてみれば、全国の中小零細事業者、そして大企業も含めて、自社の従業員の皆様のまさに夏の賞与が払えるだろうか、あるいは月々の残業代を本当に削り、タイムシェアというんでしょうか、今までは残業してくれと頼んでいたパートの奥様に、今度は二人でそれを分け合ってくれということをやっているような事業者が今ごまんとあるわけですね。

 そういう状況の中で、今、役所の説明によれば、給与支払い者、つまり事業者にとってみれば、いわば税務署あるいは市役所の市民税課に成りかわって徴税を代替しているわけですよね。その実務工数がふえるということの理解を得ることが大変だということがあったんですけれども、まさに、自分のところの従業員が、去年の所得で一年おくれで課税されるために、住民税を払いたくても払う原資がないという事態に大勢の方々が今陥っているわけですよ。

 これを解決するということにおいては、私は、ある意味で、今の状況は大変、事業者も含めて、理解を得る上で千載一遇のチャンスではなかろうかと思うんですけれども、総務省はあれ以上の答弁は恐らく出ないと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

与謝野国務大臣 私は別に総務省の肩を持つわけではないんですけれども、実は、これはよく考えてみると、納税の一年猶予制度というふうにも考えられるわけです。稼いだ年にすぐ税金を払いなさいというのではなくて、いわば地方税に関しては一年おくれで支払うということですから、その部分は納税者にとっては有利になっているという議論もあるわけでございまして、そういうこととのバランスを全体考えて、恐らく総務省の方ではいろいろ勉強され、検討されていると思います。

古本委員 この話題はこれで最後にしますけれども、総務省、本来、所得課税のたぐい、これは住民税も、所得に対し課税するものは、できれば現年所得課税が理想ではないんですか。イエスかノーか。

佐藤政府参考人 この点に関しましては、過去の税制調査会の答申においても、所得課税においては、所得の発生時点と税負担時点をできるだけ近づけることが望ましいというふうに答申がなされておりますので、我々もそのように考えております。

古本委員 大臣、今そういうことでございます。できれば、所得が発生した時期と課税のタイミングはできるだけ近い方がいいという政府税調の御判断も出ておるようであります。恐らく、課題は一つずつ乗り越えていっているような気がいたしますので、ぜひこの際に、政府部内でもこの議論を深めていただきたいというふうに思うわけであります。

 総務省、担当の方はもう結構でございます。

 それから、景気の対策のところで申し上げますと、実は今、政府・与党の追加経済対策ということで、先ほど大臣がお越しになる前も随分雑談で盛り上がっていたんですけれども、自動車の買いかえに対するインセンティブについて議論になっていたんです。

 当委員会でもスクラップインセンティブの議論を少し申し上げたわけでありますが、その際に大臣からいただいた御答弁は、環境目的でそういったスクラップインセンティブを考えていくのか、産業、雇用という観点で考えていくのか悩ましいという御趣旨の答弁をいただいたと記憶いたしております。

 御党、政府の中でこういった御議論を前に進めていただくことについては大変大歓迎であるわけでありますが、結局、どちらのニュアンスで導入する運びになりつつあるんでしょうか。

与謝野国務大臣 雇用を維持するためにそういうことをやりますと、何らかの形で雇用を義務づけるという話になりますと、これは多分WTO違反になる可能性があるわけで、雇用は維持していただかなきゃいけないんですが、こういう制度を通じて雇用を義務づけるというのは、多分、WTOから違反と言われますし、非関税障壁と言われる可能性もあると私は思っております。

 しかしながら、やはり非常に古い車で、汚い排ガスをまき散らしながら走っている車には御引退願うということは大事なことでもありまして、恐らく、そういう買いかえの特例を考える場合には、むしろ環境問題あるいは低炭素社会ということが大義名分となるべきものと思っております。

 ただ、そうだからといって、雇用はどうでもいいというわけではございません。

古本委員 今、大臣のお話を伺いまして、まことにそのとおりだなというふうに、私も同感でございます。

 そうなりますと、けさの報道なんか見ていましても、事実上の自動車業界救済とか保護主義の懸念とか、いろいろな記事が躍っておりますけれども、実は、先般ここでも申し上げました、車齢が十年以上のお車というのは、日本の道路を走っている中で大体四割ありまして、その車が仮に、今走っているような最新型のクリーンエネルギー、これはハイブリッドとは限りません、ノーマルアスピレーションエンジンでも十分、例の、星が四つとかついているお車、そういったものに代替をしていただいた場合には最大で、CO2の排出削減が一年間一千万トンできるという試算もあるんですね。

 私は、この場で先生方にたしか課題提起したと思うんですけれども、他方で、環境省は外国の空を買ってくるということを今やっているわけですね。ですから、同じ税を投入するのであっても、費用対効果を考えれば、事実、東京二十三区の空がきれいになり、かつ、そういった景気対策の意味合いも入るのであれば、これは一石二鳥ではなかろうか。

 当然、外国の空をきれいにする事業に対し、日本国政府としてお手伝いをしていくということ自体は、大変すばらしいことでありますけれども、それ以前に、今、日本の経済がこういう状況の中にあって、まずは自分のところの空がきれいになって初めて他人の空も気にすることができるわけでありまして、まずは自分ちの庭の前をきれいに掃きなさいよ、こういうことだと思うんですね。

 その意味では、実は自動車だけではないんですね。ちょっときょう調べてきたんですけれども、電球、各社つくっておられると思うんですけれども、例えばパナソニックさんの六十ワット形パルックボールプレミアにかえますと、六十ワットのいわゆる裸電球をこのタイプにかえますと、何と、これは三年間もつそうですが、普通の裸電球に比べて、大臣、感覚ですよ、大体幾らぐらい節約になると思いますか。私、これはびっくりしたんですよ。裸電球一個で。

与謝野国務大臣 電球が幾らかは知りませんけれども、恐らく、三年間使えば電気代は取り戻せるぐらいの効果があると思っております。

 裸電球というのは電気がほとんど熱に変わっていますから、熱の出ない発光体というのは実に電気代が安いので、そういう意味では、電気代は比較的早く取り戻せる。それから、ああいう発熱のしないものは、同じ電球に比べて相当耐用年数が長い。両方の意味で、私は、お勧め品じゃないかなと思っています。

古本委員 カメラを初め多趣味でいらっしゃる大臣ですから、よく御存じなわけでありますけれども、実は、三年間で何と一万三千円ほどの節約になるそうです、電球一個かえれば。

 だから、一家で五個かえればどれだけ節約になるかというんですが、ところが、通常の裸電球ですと一個大体二百円ぐらい、量販店に行けばもっと安いと思うんですけれども、このパルックボール、個社の名前で恐縮ですけれども、一個千数百円するんですよね。ですから、恐らく、年金暮らしのおじいさん、おばあさんがいつものようにふろ場の電気が切れたといって買いに行ったら、ちょっとこの千数百円というのは手を出しにくいと思うんですよね。

 例えば、こういう省エネの電化製品もあるでしょう。それから、まだあるんですよ。大臣のお宅のトイレというのはどうなっているかあれなんですけれども、INAXさんとかTOTOさんがつくっておられる最新型の省エネ便器につけかえますと、四人家族で朝それぞれ用を足して、要するに便器を使って、四人家族で一日水が大体どれぐらい節約できると思いますか。想像もつきませんよね。おふろ一杯分が節約できるそうなんです。これは、一年間の水道料金でいえば一万数千円の節約。まあ、電気代と水道代はまたちょっと違うんですけれども。

 何より、循環型社会になりますよね。やはり、朝ちょっと用を足して水をざあっと流すと、もったいないなという思いがありますよね。では、こういった省エネ便器に対してちょっと応援しよう。これがまた安くはないんですよ。

 それから、もっとあります。屋根に、例のルーフガーデンというのがありますね、ああいった植栽で緑を施すと、東京の都心のビルの半分くらいを屋上緑化しただけで、実は数百億円電気代が浮くという試算もあるんですよ。

 ですから、この際、私は、あらゆる省エネにかかわることについて、政府を挙げてこういったものを導入する、あるいは促進することへの動機づけになる手を何か打つことが、これはすぐれて一石二鳥になる話になるんじゃなかろうかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 省エネ商品をどこまでカバーするかということは別にしまして、先生のおっしゃる方向は、やはり検討すべきものだと私は思っております。

古本委員 ぜひ今後、政府・与党の追加経済対策、この国会にも五月にお出しになる予定だと聞いておりますので、充実した議論の中で、また与謝野大臣として、マイナス二%の見込みをいかにして早期に回復させるかということの、必ずこのことはエンジンになると思いますので、またよろしくお願いをしたいというふうに思います。

 さて、総務省の関係で、済みません、もう一点やり忘れました。固定資産税が、結局これは資産課税ということで課税がされているんですけれども、今、全国の新規で家を建てられた若い世帯ですね、ちなみに、大臣、何歳で家を建てられましたか。大体何歳で持ち家にされたんですか。

与謝野国務大臣 私、六本木に住んでいますので、結構固定資産税は高いなと思っております。

古本委員 それは大変御苦労さまでございます。

 固定が、はっきり言いまして、新規で住宅を取得された方が、六十平米から百二十平米までのお宅、ですから標準的な日本のお宅ですね、こういったお宅を新築された方は、三年間二分の一にこれが減免されておるという措置が長らく続いております。

 ローンを組んで、地方へ行けば比較的取得が容易である環境でありますので、恐らく三十代前後で新規の取得をするというイメージでいけば、今、残業代が減って、あるいは派遣どめに遭って、ローンの返済計画が狂ってしまっているという方が随分いらっしゃいます。そういう方々が、本来の課税ということになりますけれども、三年目にして全額の請求が来るわけですね。間もなく市町村から納付書が来ます。

 これはいろいろ調べてみますと、例えば市町村が独自で、三十代の若い方が新たにその町に家を建ててくれたということは、向こう二十年、三十年、その町に住民として住み、付加価値を生み出してくださるという意味においては、企業を誘致するにまさるとも劣らない、大変その町への貢献であると思うんですね。町も若返ります。お子さんももうけていただければ、若返っていきますね。

 そういう若い方が今実は、所得の目減りという一つ目のパンチと、それから固定が三年目にして来るという話、これはわかっていたことなんだけれども来るということと、先ほど来言っています、住民税が一年おくれで請求が来るという、トリプルパンチになっている御家庭が結構あるんじゃなかろうかと思うんですね。

 総務省、三年間二分の一の措置を受けて、今回満額請求が来る額というのは大体どのくらいで、世帯数でどのくらいの影響がありますか。

佐藤政府参考人 新築住宅の固定資産税の特例については、御指摘のありました一般住宅の場合は新築後三年度分、それから三階以上の中高層耐火建築住宅については五年度分、固定資産税の税額の二分の一を減額する特例措置が講じられております。この二つを合わせた二十年度における減収の総額は千五百三十五億円という数字になっておりまして、件数は三百六十万件となっております。

 したがって、特例措置の終了した年に発生する市町村の税収入額は、特例期間が三年ないしは五年であることを考慮しますと、おおむね四百億から五百億ぐらいの収入といいますか収入増といいますか、一方で新しいものが出てきますから同じとなります。そういう数字になろうかと思います。

古本委員 大臣、政府・与党のいろいろな景気対策の中に、住宅取得支援という新規の話は随分入っていますね。ローン控除も随分拡充をなさいました。

 ところが、今現在、やはりこういう御時世で、家を建てて頑張っていこうという若い世帯、ニューファミリー、まさに今このトリプルパンチで大変御苦労なさっている人を応援していくということを、例えば市町村が独自で手を打とうとしたならば、考えられるのは、固定資産税というのは一・四パーが上限ですから、別に下げたっていいんですけれども、これを下げた場合は、交付税の措置を計算する上では満額の一・四で計算されてしまうんですよ。

 ですから、ここをいじるというよりも、恐らく基金か何かを積んでおいて、この分の差分を、当然、ある所得以下の方、本当に苦労されている方については、例えば市町村が独自で積んでおいた基金で補てんを、ちょっとこの期間、何とかこの苦しい状況を抜け切る間を応援しましょうというような施策を市町村が打とうとしたら、総務省がどういう指導をするかということになるんですけれども、基金を積んでおくということは市町村の自由ですか。そういったことを市町村長が仮に英断をしたとして、総務省はそれに対して何か指導をするということはありますか、どうですか。

望月政府参考人 地方公共団体におきましては、地方自治法の定めによりまして、公益上必要性があるという場合には寄附または補助をすることができるとなっております。この公益上必要性があるかどうかを認定するのは市町村長さん、知事等の長及び議会でございますが、この認定は、全くの自由裁量行為ではなく、客観的にも公益上必要性があると認められなければならないと解されております。

 御指摘の給付につきましては、この規定の趣旨等を個々の団体におきまして慎重に検討していただいた上で御判断いただくものと考えております。

古本委員 つまり、市町村が独自でやっていいというふうに理解をしていいわけですか。

望月政府参考人 繰り返しになりますが、御指摘の趣旨につきましては、長及び議会におきまして十分に議論していただいた上で御判断いただくものというふうに思います。

古本委員 大臣、つまり、みんな現場で暮らしていていろいろな苦労をしますけれども、いわば、それでも家を建てただけかい性があったわけです。これは資産課税ですから、所得の山、谷にかかわらず支払いなさい、こういうことが原理なんだろうと思うんですけれども、他方で、住宅取得支援ということではもろもろの手を打っていくわけでありますので、この問題も決して軽視できない問題だと思うんですけれども、今のやりとりを聞いて、何か感想があれば。

与謝野国務大臣 固定資産税というのは、景気に左右されない税という特徴を持っている。それと、実態においては、地方財政の安定した財源として非常に重要な地位を占めております。

 ただ、随分さかのぼるんですけれども、固定資産税の課税標準を公示価格の七割にしようということを随分、今から十五年ぐらい前にやったんですけれども、それ以来、特に東京都心では固定資産税に対する痛税感というものを持つようになったわけです。

 ただ、所得によって固定資産税を変えるとか、年齢によって固定資産税を変えるというのは、多分理屈に合っていない話なので、そこのところは多分総務省もなかなか検討しづらいのではないかなと思っています。ぜひ、鳩山邦夫総務大臣を呼んで、しっかり質問をされるとよろしいのではないかと私は思っております。

古本委員 これは総務省の所管になっていますけれども、もとより、実は税を決めているのは国で決めておって、それを運用しているのは現場の方でありまして、その現場の方は、交付税といういわば縛りの中でいろいろなことの様子を見ながら生きているという状況ですね。ここに対する課題の提起と受けとめていただけたならば、大変ありがたいなと思います。

 総務省、結構です。ありがとうございました。

 続いて、お待たせしました。北朝鮮のミサイル実験、テポドンについて少しお尋ねをしておきたいと思うんですが、大臣は、あの市ケ谷にも配備して、まさに臨戦態勢をとっておった状況をごらんになって、閣僚の一人として、今回の事柄についてどういう印象を持っておられるでしょうか。

与謝野国務大臣 一つは、やはり国連の安保理決議に違反しているということは明白だということと、やはりミサイル、ロケットに関して、ある一定水準以上の技術を持ったのではないかなという感じでございます。

古本委員 お配りした資料の一、二、三をちょっと続けてごらんいただきたいと思うんですが、これはよく出ておる資料であります。これは、一個高射群で高射隊というのが大体四つ編成されるそうでありまして、よくテレビに映った発射機ですね、ランチャー、筒を積んだトラック、これが四つ編成して一つの高射群ということになるわけでありますが、この一つの高射群を調達するのは大体幾らですか、防衛省。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 御質問の、一個高射群に対して弾道ミサイル対処能力を付与するために幾らかということでございますけれども、直近のケースで申し上げますと、第二高射群、これは九州の春日でございますけれども、このPAC3化に関する経費として約五百九十七億円を計上しているところでございます。

古本委員 そうしますと、約六百億円なんですけれども、大臣、ちょっとごらんをいただきたいのが二の資料なんですけれども、いいですか。今、日本に高射群というのが関東、中部、そして九州、この三つなんですよ。資料の二でございます。他方、今回の事柄で配備をした秋田の駐屯地、そして岩手の駐屯地の二カ所については、これはもう撤収していますね。つまり、日本列島は南北に広いわけでありまして、この三カ所で事足りるのかという議論が他方であるわけです。

 これを財務省になぜ聞くか。これは簡単でありまして、一つの高射群を調達するのに約六百億円。今、全国で三カ所。少なく見ても射程距離数十キロというふうにテレビでも言っていますから、多分そうなんだろうと思いますけれども、これはざっくり言って、中国、四国地方にありませんし、東北が、大体北朝鮮の北緯三十八度から四十二、三度までの間から撃ってくるとしたならば、今後とも、秋田や岩手の皆さんは、撤収するどころか、常駐しておいてくれという思いではなかろうかと思うんです。

 つまり、配備するならきちっと全部配備すべきですし、どなたか政府高官が、打率は低いんだなんていうことをおっしゃっていましたけれども、どのみち、どこかに着弾するおそれがあるのであれば、これはある意味、ある程度あれば抑止力ということでいいのか。つまり、どういう査定をなさっているのかということについてお尋ねをしたいんです。せっかくですから、大臣。では、まず木下さんから。

木下政府参考人 お答えをいたします。

 どういう査定をしているかということでございますが、防衛装備品に関しましては、その価格について、主要な装備品の過去の調達価格や単価の構成などを聴取して、要求が適切かどうかなどを精査した上で予算を計上しておるところでございます。

古本委員 では、防衛省、お尋ねしますけれども、ずばり、東北以北、それから中国、四国地方はなくていいんですか。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のとおり、図の二のとおり、現行の計画では四個高射群相当のペトリオットを弾道ミサイル防衛化するという計画しか有しておりません。

 ただ、弾道ミサイル防衛システムについては、実は、先生御指摘のPAC3のほかに、我が国全体を二隻から三隻で防護し得るSM3搭載イージス艦による防衛システムというのがある、ミサイル防衛システムでございます。そういう意味で、このイージス艦と組み合わせた形で多層的な防衛という考え方をしているわけでございます。

 それからあと、今般も浜松の方から秋田に行くというような形で、PAC3についても、状況に応じて適切な地域に展開して対処するというような考え方をとっておりますので、そういう意味で、PAC3による我が国全域の防護ということは必ずしも検討しているわけではございません。

古本委員 大臣は査定責任者なのでこういう話を今言っているんですね。

 せんだって、秋田と岩手に配備するために走っていった車がどこかにぶつかって立ち往生ということもあったじゃないですか。これは、本当の事態対処という意味ではしゃれになりませんよ。何をやっているんだという話ですよ。

 つまり、撃ってきたら、ある意味、数分中に事が起こる話であって、そのときにそっちの方面に走っていきますという答弁をしているように聞こえてならないんですけれども、これが羽が生えて飛んでいく設備ならいいですよ。そういうウエポンじゃありませんよね、陸送ですから。

 大臣、この議論は、ぜひわかっていただきたいのは、今SM3でイージス艦から発射するのが、撃ち出して、これはミッドコースという、頂上でまずねらって、それでだめだった場合が一番ですね。資料一でごらんいただくと、ミッドコースでまずはSM3でねらう、それで撃ち損じがあった場合は、今度はおっこちる寸前のターミナル、最後の終末においてPAC3で迎撃するということなんです。それのハイブリッド型でいくというお話だったですけれども、だったならば、実は今回でいえばイージス艦も展開していたわけで、結果として、このPAC3は要らないという話になるじゃないですか。

 要するに、SM3で撃って、それで撃ち損じがPAC3ということであれば、必ず、半径何キロなんですか、比較的狭い狭小の範囲でしょう、この範囲のところにそれぞれピンポイントでPAC3がないことには、実はこれは完全な防空体制とはならないんじゃないですか。

松本政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しの答弁になって恐縮でございますけれども、私どもの考え方として、まずは我が国全体を防護し得るSM3搭載イージス艦によって高層での、上層での防衛というのをやっていく、それとともに、今御指摘のあったPAC3による下層防衛との組み合わせ、これによってミサイル防衛システムというのを考えているのは事実でございます。

 ただ、先生の御指摘というのも私ども理解する点があるわけでございますけれども、今後のBMDシステムの整備につきましては、今後の技術動向でございますとか、というのは、やはり我々が対処すべき弾道ミサイルというのも能力向上というのはいろいろあるというふうに思います。そういったことも踏まえまして、例えば、現在、日米間で能力向上型の迎撃ミサイルの共同開発というのもやってございます。

 そういったこと等を踏まえまして、現在、防衛大綱の修正でございますとか、次期中期防衛力整備計画に関する議論というのも行っておりますので、そこの中でこのBMDシステムのあり方については検討してまいりたいと考えているところでございます。

古本委員 防衛省も、市ケ谷のわざわざ人目に触れるところに設置して、写メールで撮りに来た近所の人がいて隊員の士気が上がったぐらいのことを言っているじゃないですか。

 私が申し上げたいのは、やはり今回の機会をとらえて、多くの国民が現実の問題として受けとめたと思うんですよ。ところが、この日本地図を改めて見ると、少なくとも配備されていないエリアはあるわけで、常駐という意味でですよ。いつ飛んでくるか、何時何分に撃ちますと言ってくれるとは限らないじゃないですか。だから、そういう意味でいけば、財務省は査定のときに、本当に全体のネットワークとしての効果を上げるのであれば、果たしてこの三カ所でいいのかという議論もあってしかるべきだし、この三カ所である意味気休めなのであるならば、だったらもともと要らないんじゃないかという両論があるわけなんです。ともに極論を言っていますよ。

 ですから、そういう観点でぜひ査定をしていただきたいし、そのときに、実はこれは約六百億円ということですけれども、これはどこから買っていますか。

松本政府参考人 生産はどこかという御質問でございますけれども、例えばパトリオットのミサイルについては、これはライセンス国産というような形で……(古本委員「アメリカのメーカーはどこですか」と呼ぶ)アメリカのメーカーは、レイセオン等のメーカーだというふうに承知しております。

古本委員 つまり、アメリカ国内でのミサイル一発の値段と、恐らくライセンス料が乗ってくる日本での値段は随分違うんだろうなということは大臣も想像にかたくないと思うんですね。ですから、もうきょうは時間がありませんけれども、できるだけ安くてかつ性能のいい配備をきちっとしておくことが安心、安全につながりますので、そういった議論を今後ぜひ財務省の中でもしていただきたいというふうに思うんです。これ以上踏み込んだ話は、きょうはやめておきます。

 残りの時間で、あわせて、今国連決議の作業を外務省なさっておられますけれども、資料の五をおつけいたしましたが、今、日本は、国連費の分担率でいけば、二〇〇八年六月末現在で一六・六二四%。恐らく、アメリカに次いで二番目に分担をしている国だということになりますけれども、資料の五でございます。

 他方で、望ましい職員数の範囲ということで、国連職員はできれば平均で三百名ぐらいは日本国から出してもらいたいなという数字であるにもかかわらず、現在、人員は百十余名でありまして、判定というんでしょうか、足りていませんという三角の評価。足りていますという丸がついているG20各国が多い中で、どうしてこういうことになっているのかという問題があるわけなんです。

 大臣、これは印象だけ言っていただければ、もう時間がありませんので。金は出して口は出さないというのはもういいかげんやめた方がいいと思うんですね。金も出すし、しっかりと議論にも参加できるだけの陣容を整えないと、やはり事務方も大変だと思いますよ。この百十三名、国連大使を中心に今奔走されているんだと思います。それに対してエールを送るという意味で陣容も強化した方がいいと思うんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 徐々ではありますけれども、国際機関で働きたいという国民はふえているのではないかと私は思っております。また、国際機関に行っている日本人の方々も、本当に使命感に燃えてやっておられる方が多いわけでして、そういう意味では、国際機関側にとっても、なくてはならない存在に今なりつつあると私は確信をしております。

 願わくは、もう少し多くの方が国際機関に行かれるということが、日本にとっても、世界にとっても望ましいことではあると思います。

古本委員 ぜひ、そういうふうになっていただきたいと思います。

 最後に、委員長申しわけないんですが、一点だけ。資料の十二にちょっとおつけしたんですけれども、先日、同僚委員の鈴木克昌先生が与謝野大臣にお尋ねした際に、特会全般に対して与謝野さんはこうおっしゃったんですね。「日本国の政府の持っております特別会計は全部オープンでございまして、むしろそこにある金を、使っていいお金なのか、使ってはいけないお金なのかということを国会の皆様方に峻別していただくということが必要なので、中には絶対に手をつけてはいけないというお金があるわけです。」ということだったんです。

 実は、一連の自動車の保有コストについては、私も当委員会で随分取り上げてまいりましたが、資料の七にありますように、都道府県別に見ますと栃木県が全国一ですよ。世帯平均で七万九千円も負担されているんですね。下に手書きで書きましたが、実は平均的な中山間地域、地方都市に住む方の燃料消費量は一月八十リッター。満タン二回すれば八十リッター。そうしますと、ガソリン税が、栃木の方でいきますと九万円払うんですよ。ですから、この七万九千円というのは自動車重量税と取得税と自動車税ですから、これにガソリン税を足しますと、実に十七万円を超えるんですね。これは世帯平均ですから、本当に二台、三台持っておられる方はもっと負担しているんですね。

 こういう方々にさらに負担を求めている、地方の方ほど負担をしている自動車の保有コストの中で、自賠責保険というのがあるんです。きょう、これで本当に最後にしますが、自賠責特会という特会から、今は特会の名前が変わりましたが、財務省に五千六百億円貸し付けた、一般会計に融通した、特会からですよ、特会に手をつけてはいけないとおっしゃりながら融通したお金がまだ返ってきていないんですよ。

 これは、手をつけてよかったお金かどうかの議論には戻りませんけれども、戻すタイミング、そして戻す先については、ぜひ慎重にも慎重なる御判断の上で確実に期日に返していただきますようにお願いをしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。これは税ではありません、受益者負担の大原則でドライバーが負担した保険料でありますから。

与謝野国務大臣 自賠責というのはいわば強制加入保険でございまして、すべての方が加入しなきゃいけない。もともとは、そこの保険料が幾らかというのは事故率で決まってくるわけでございまして、保険料率は統計的に出てくるものだと私は思っております。

 あそこのお金を少々お借りしていることは事実でございますので、なるべく早く返さなければならないとは思っております。

古本委員 ありがとうございました。終わります。

田中委員長 次に、階猛君。

階委員 民主党の階猛でございます。

 PAC3が配備されている岩手の選挙区でございますけれども、先週はそのPAC3の話題が大きく地元でも取り上げられたわけでございますけれども、一方で、選抜高校野球で、やはりこれは岩手の代表が初めて決勝に出て、しかも優勝までもう一歩というところまで迫ったという明るい話題もございました。岩手県、何か暗い話題が多いように思われているんですが、そういう明るい話題もあるということをまず一言申し上げたいと思います。

 そして、きょうの質問でございますけれども、先ほどFRC報告について大臣からもお話があったかと思います。お配りされているきょうの資料の中に、平成二十年十二月期のFRC報告書があるかと思います。私、これをきのうざっと見まして、ちょっと気になったところがございましたので、まずそのことについてお伺いしたいと思います。

 この資料の六十七ページをごらんになっていただきますと、足利銀行の経営陣の責任追及についての話が書いてあるわけでございます。破綻したのがたしか平成十五年の十一月二十九日で、その破綻の経営責任とかを問うために、平成十六年二月から内部調査委員会が立ち上がっていろいろと調査をしてきた。その結果が平成十七年の二月と九月に出てきて、その中に、刑事責任についてどういうふうに対応をとるかということを書いているということだと思います。

 そして、この六十七ページを見ていただきますと、刑事責任の追及につきましてはということで、まず、不正融資事案二件については刑事告訴を見送るというふうに書かれております。その後、違法配当事案の責任追及については、当行としての責務を果たすべく対応してきたんだけれども、最後のところ、「平成十八年六月をもって時効が成立いたしました。」というふうに書かれております。

 これを素直に読みますと、時効が成立したので、結局、刑事責任の追及をしなかった、告訴しなかったというふうに読めるんですけれども、なぜ時効になるまで告訴をしなかったのかというふうな疑問があるわけでございます。その点について、事務方で結構ですのでお聞かせください。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘の点は、参考資料として掲げております平成二十年六月三十日に足利銀行が作成いたしました「「業務及び財産の状況等に関する報告」の追加報告」の中の内容であると存じております。

 足利銀行におきましては、同行の旧経営陣による平成十三年三月期の違法配当事案に係る刑事責任につきまして、平成十七年二月に旧経営陣に対する民事提訴の際に考え方を公表しております。その際、内部調査委員会の報告を検討した結果、違法配当事案の刑事責任追及については、民事と刑事の要件の相違もあり、慎重を期すために、捜査機関に対し証拠資料の提供など積極的に捜査に協力し、当行としての責務を果たしていくという旨を公表いたしまして、対応を図ってきたところでございますが、結果といたしまして、平成十八年六月をもって時効が成立したものであると承知しております。

階委員 同じ金融機関の破綻で経営陣の刑事責任が追及されたケースの中に、私が勤めていた長銀のケースもあります。同じく違法配当の事案でございました。そのときは、私の記憶によれば、平成十年の十月に特別公的管理になって、翌年の六月には経営陣が逮捕、そして起訴されたというふうな、かなりスピーディーにやられたわけでございます。今の話を聞いておりますと、結構慎重な対応をしておるようなことでございましたけれども、そのときはかなりスピーディーにやられて、最終的にこの事件はどうなったかといいますと、報道とかでも御案内のとおり、無罪という結論になったわけでございます。

 今にして思うと、この長銀の事件については非常に拙速な、しかも、私、きょう毎日新聞のコピーを手元に持ってきました。三月二日月曜日の朝刊でございましたけれども、このとき逮捕された人の中に当時の頭取の大野木さんという方がいらっしゃるんですけれども、国策捜査だったということだというふうに断言されています。今も怖いんですよというふうにコメントされております。そういう国策捜査というふうに本人がお感じになるようなやり方で、結局、拙速に逮捕、起訴されて、そして無罪になっている。

 こういうことを考えると、足利銀行さんの場合は慎重にやる、これはこれで非常に大事なことだと思いますし、それはいいことだと思いますけれども、今振り返ってみますと、長銀についてはもっと慎重にやるべきではなかったのかという気持ちを持っております。刑事告訴までする必要がなかったのではないかということを考えているわけでございますけれども、その点について大臣のお考えはいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 やはり裁判所の判断を仰がなければならないという事案と判断して最終的に起訴をされたわけでございます。これは、起訴をするというのは別に有罪と断定するという行為でありませんで、あくまでも裁判所で御判断いただくべき事項であるという判断であると思っております。

 したがいまして、長銀の事件については、起訴する国側としては起訴すべき案件だと判断したわけですけれども、これは、起訴というのは訴を提起するということであって、裁判所の判断を仰ぐということでございますから、それ自体は私は適切な判断であったと思っております。

階委員 今、非常に大事なお話をいただきました。これは、別に起訴されただけでは有罪という話ではなくて、裁判所の判断を仰ぐ行為にすぎないということでございました。

 今ちょうど、小沢代表の秘書の問題、起訴された直後ということでございますけれども、こちらについて、やはり世の中の反応が、起訴されただけであるにもかかわらず、もはやもう有罪である、極悪非道であるかのような報道がされているわけでございます。今の大臣の答弁というのは、まさに正論でございまして、ぜひそのような考え方を世の中に普及させていかなくてはいけないというふうに思っております。

 また、事件の性質につきましても、私、長銀にいたものですから、この秘書の問題の事件を見ましたときに、全く同じ構図というか、かなり似た構図だなと思いました。長銀の事件のときも、これは企業の決算でございますけれども、従来の会計処理を行っていたものが、ある日突然、これが違法だということで、粉飾決算であるとか違法配当であるというふうに検察から起訴されたわけでございます。

 今回は政治資金収支報告書の話でございますけれども、これも、従来から同じような処理を行っていたにもかかわらず、ある日突然、これが違法だというふうに検察から言われて起訴された、こういうことで、私は非常に似通った構図にあるかと思っております。

 そういう中で、今大臣が言われたとおり、起訴というのは一つの裁判所のアクションを求める行為なんだという位置づけでお話になられましたけれども、まさしく今回の事件も、この事件、私は有罪ではなく無罪になる可能性が極めて高いと思っておりますけれども、そういう意味では、起訴というのはあくまで検察の一つの意見、裁判所の判断を求めるための一つのアクションだということを確認させていただきたいと思います。

 本題に入ります。

 今回、いろいろな金融機関の資本増強策というのが、金融機能強化法を皮切りに、株式取得機構による持ち合い株式の購入とか、あるいは日銀さんも株式の購入とか、これは資本増強だけではなく金融機関のリスク資産を圧縮するということも含むわけでございますけれども、そういった金融機関の資本に関する手当てがされているわけでございます。

 そして、金融機能強化法については、昨年国会で審議されたときは、これは金融機関が損をこうむったところの穴埋めという意味ではなくて、主に中小企業への貸し出しを円滑に行うためにやるんだ、貸し出しにつながるような公的資金の注入なんだという御説明であったかと思います。

 今回、資料一というのをお配りしております。これはこの三月に資本注入されました北洋銀行の財務数値でございますけれども、北洋銀行の二十一年三月期見込みという、真ん中の縦のところを見ていただきますと、当期純利益が二千四十三億円のマイナスということで、ちなみに、この内訳の中で有価証券の関係の損失が二千五百三十一億円というふうに伺っております。これに対して、三月に資本注入が金融機能強化法に基づいて行われまして、一千億円注入されているということでございます。この結果、自己資本比率としては、注入前の二十年九月期に比べて〇・三八%上がっているということでございます。

 ちなみに、その結果、貸し出しはふえたのかどうかというところでございますが、参考の一番下のところでございますけれども、中小規模事業者等向け貸出残高、これが昨年の九月からことしの三月の見込みまで二百三十億円ぐらいしかふえていないというふうになっております。これはまだ資本注入がされたばかりですので、これだけで判断するわけにいかないとは思います。資本参加のときの銀行が出してくる計画を見ますと、三年間の計画というのもありまして、この三年間の計画で見てみますとどうかというと、中小企業向け貸出残高は三年間の間に約八百億ぐらいふやすという計画が出されています。

 そういうことなんですけれども、そもそも、公的資金を注入することによって資本が一千億ふえれば、理論上は、一千億ふやすんだったら、国内基準行は自己資本比率四%ということでございますから、一千億の二十五倍、二兆五千億は貸し出しに回せるというのが理論的な話だと思います。ところが、今申し上げたとおり、三年間を見ても八百億ぐらいしか貸し出しはふえません。これは当初の話と違うのではないかというふうに思うわけでございまして、貸し出しをふやす額がなぜこれだけ少ないのかということを御説明いただけますでしょうか。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 三月に北洋銀行、福邦銀行及び南日本銀行の三行に対しまして、金融機能強化法に基づく資本参加の決定を行ったところでございます。

 各銀行からは経営強化計画が提出されておりまして、そこで中小企業向け貸出残高の目標が掲げられております。これは、各銀行が営業地域の状況や中小企業向け貸し出しの実績など、地域経済が厳しさを増している状況を踏まえつつ、中小企業金融の円滑化に積極的に取り組み、着実に計画を履行するとの観点から目標が設定されているものでございます。

 こういった銀行におきましては、二十三年三月末に向けて貸出残高の目標数値をふやしておりますが、この制度の趣旨、目的を踏まえまして、この計画の各種方策の着実な履行を通じまして、中小企業向け貸出残高の目標の達成、これを図っていただきますとともに、地域の中小企業等に対する円滑な信用供与に一層努めていただきたいと考えているところでございます。

 私どもといたしましても、中小企業向け貸し出しの取り組み状況につきましては、適切にフォローアップしてまいりたいと考えているところでございます。

階委員 ちょっとよくわからないんですけれども、またおいおい聞いていきます。

 今、企業の資金繰りが厳しい中で、金融を円滑化していかなくてはいけないということで、金融庁さんの方では三月十日に「金融円滑化のための新たな対応について」というペーパーを出されております。金融円滑化のための五つの措置を講ずるということで、この五つのうち、きょうは、一つ目の金融円滑化のための特別ヒアリング、集中検査の実施というところと、三番目のコベナンツ対応の弾力化の促進ということと、五つ目の金融機能強化法の活用促進、今の点にも関係しますけれども、この三点についてこれからお聞きしていきます。

 まず、一点目の金融円滑化のための特別ヒアリングということについて、これをどのようにやったのか、どういう内容でヒアリングをしたのかということと、そのヒアリングの結果についてお聞かせ願えますでしょうか。

三國谷政府参考人 特別ヒアリングでございますが、この前の年度末から、一点目は、企業金融の円滑化に向けた金融機関の取り組み状況についてきめ細かな実態の把握に努めること、二点目は、金融機関に対しまして年度末に向けた金融の円滑化を改めて要請することを目的といたしまして、主要行を初めといたしまして、原則すべての銀行及び信金、信組等に対し、個別に特別ヒアリングを実施してきたところでございます。

 今回の特別ヒアリングでは、企業の資金需要への対応方針、それから条件緩和への取り組みを含め、中小企業の特性や実態を踏まえた柔軟な対応についての取り組み方針、三点目は緊急保証制度の活用方針、四点目は営業店への指示、周知徹底の状況など、さまざまな項目につきましてヒアリングを行っているところでございます。

 また、その結果につきましては、金融円滑化のための集中検査等にも活用してまいりたいと考えているところでございます。

階委員 そして、この四月から集中検査が始まるということで、貸し渋り、貸しはがしが行われていないかを短期集中的に検証するというふうに三月十日のペーパーには書かれているわけでございますけれども、そもそも、貸し渋り、貸しはがしというのはどういう意味なんでしょうか。その定義を教えてください。

三國谷政府参考人 定義という御質問でございました。

 いわゆる貸し渋りや貸しはがしにつきまして、一般的に受け入れられているような、そういった明確な定義はございませんが、金融機関に対する批判として、金融機関が貸し付けに必要以上に消極的になっていたり、無理な回収を行ったりするということを指していると考えられるところでございます。

 いずれにいたしましても、企業等に対します円滑な金融は金融機関の最も重要な役割の一つであると認識をしておりまして、私どもは、金融機関におきましては、適切かつ積極的に金融仲介機能を発揮していただくことを期待しているところでございます。

階委員 無理な回収とか、そういうのが貸し渋り、貸しはがしだといいますけれども、先ほどの北洋銀行の例ですと資本を注入してもそんなに貸し出しはふえないという中で、逆に、資本注入を利用しないところはもっと貸し出しはふえないというか、貸しはがしをせざるを得ないのではないか。北洋銀行のケースでいうと二千五百億も有価証券損失が出ておりますから、ほかのところも推して知るべしだと思います。

 こういう中で、自己資本比率を維持するために貸出資産を圧縮している可能性があるのではないかというふうに推察されるわけでございますけれども、それが無理な回収と言えるのであれば貸し渋り、貸しはがしということに当たるんだと思いますけれども、これはそういう貸し渋り、貸しはがしとして問題になるのかどうか。今言ったような自己資本比率維持のための金融機関の行動に問題がないのかということを、問いの二というふうにしております。大臣にお願いできますか。

与謝野国務大臣 我々が銀行に期待しているものというのは、やはりきちんとした金融仲介機能であると私は思っております。

 取り戻せないところにお金を貸せということは多分できない話ですけれども、やはり金融機関は日本の経済にも責任を持っているということを自覚していただいて、自分の庭先だけきれいにしておけばそれで事済むんだ、これは余りにも社会的責任に対する自覚が欠如していると言わざるを得ないと思っています。

 少し応援すれば助かるというところをリスクをとっていただく、このリスクを逃げて逃げて逃げて歩くというのは、見かけは自己資本比率もいい、健全な銀行ですけれども、本来の、銀行に我々が期待する社会的使命とはおよそかけ離れたものだろう、私はそういうふうに考えております。

階委員 おっしゃるとおりだと思います。

 自己資本比率の維持だけを金科玉条のように守っていくのでは社会的使命は果たされないということで、そのために、自己資本比率が低下してきて貸し出しに回すお金がないんだというときのために金融機能強化法を我々が国会でつくったわけでございまして、そういうものを利用すればいいと思うんですね。

 そこで、その部分について、話がちょっと先に行きますけれども、多分そういう趣旨だと思うんですが、三月十日のペーパーで金融機能強化法の活用促進を行うというふうに書いているんですけれども、これは今私が言ったような趣旨ということで、実際問題、自己資本比率を維持するために金融機関がきゅうきゅうとしていて貸しはがしを行っているからこそ、こういう活用促進というものをあえて金融機関に言わなくてはいけなかったのかということを、確認までに聞かせていただけますか。

    〔委員長退席、江崎(洋)委員長代理着席〕

与謝野国務大臣 これは先生がもう御存じのことばかりでございますが、金融機能強化法は、国の資本参加を通じて金融機関の金融仲介機能を強化することにより、厳しい状況に直面する地域経済や中小企業を支援することを目的とするものでございます。

 こうした目的を踏まえまして、金融庁としてはこれまでも金融機関に対して、本制度の趣旨、内容について周知を図るとともに、その活用について広く、積極的に呼びかけを行ってきたところでございます。

 金融機関に、同法を積極的に活用し、金融仲介機能を適切かつ十分に発揮していただくため、今後とも積極的な検討を呼びかけていきたいと思っております。

階委員 今、三月十日のペーパーのうち、一番目の特別ヒアリング、集中検査の点と三つ目の金融機能強化法の活用促進について聞かせていただきました。

 残された一点、コベナンツ対応の弾力化の促進ということについてお聞かせ願います。

 このペーパーの3の(2)というところに「現下の状況に鑑み、コベナンツを機械的・形式的に取り扱わないよう、金融機関に対して要請する。」という文言が書かれております。

 コベナンツということについて、耳なれない言葉であるかもしれないので、一応、資料二というものを用意してきております。これは若干セールスになりますけれども、私が書いた「銀行の法律知識」という日経文庫のコベナンツに関する記述なんですけれども、コベナンツというのは、取引先が守るべき約束事を銀行取引約定書の条項以外にも定めて、万一約束が守られなければ、銀行は、融資の金利を引き上げたり、期限の利益を喪失させたりできるようにするものであるということでございます。

 このコベナンツというのは、金融機関が、こういうコベナンツのようなもので取引先に企業の経営をちゃんと健全に保つように約束していただく、その分、担保については余り要求しないということで、コベナンツローンなんというのもありますけれども、そういうことで、担保融資から企業の信用力を見た融資に変えていくという中で普及してきたものでございまして、金融庁も恐らく、こういう流れは進めていくべきだというお考えだったと思います。

 ところが、今回はその流れに逆行するような話でございまして、今回、コベナンツの形式適用はだめなんだよということになりますと、そもそもコベナンツローンというのが金融機関としては非常にやりづらくなるわけでございますし、また根本的な考え方として、こういう民間ベースの、民民の取引に対して行政が介入していく、契約書に書いていることをそのまま適用するなということを言っていくというのは私的自治への重大な介入であるというふうに考えておりまして、この部分は非常に問題が大きいというふうに思っておりますけれども、大臣の御所見をお聞かせ願えますでしょうか。

与謝野国務大臣 例えばここに、非常にいい会社なんだけれども、たまたま二期連続赤字になった、そうするとコベナンツの条項にひっかかって、期限の利益を喪失したり、先生言われたように金利が上がったりという、それはちょっとひどいじゃないかという場面もあるわけでして、金融庁が銀行に申し上げているのは、やはり実態に即した物事の判断をしていただきたいと。

 特に、今みたいな経済状況のもとではみんなが苦しんでいるという状況の中での判断というのは、契約の条項どおりプラス具体的な、妥当性のある、また相当性のある判断が必要だろうということを優しく申し上げているだけでございまして、それぞれの銀行の経営判断それ自体に干渉しよう、そういう考え方はありませんし、コベナンツ条項をどう発動するかというのも、もとより、それぞれの銀行の経営判断そのものであると思っております。

階委員 今大臣がおっしゃられた経営判断というのは大事なことでございまして、せっかくコベナンツローンというのが普及してきたのに、こういうことを要請なんというふうな言葉で表現しますと、萎縮的効果が生まれて、コベナンツローンの芽を摘みかねないと思いますので、今のような御説明をぜひ広く金融機関にもされて、あくまで経営判断によるんだということは徹底していただきたいと思っております。

 そして、また別なテーマに移るわけでございますけれども、さっき資本増強の話をさせていただきましたけれども、一方で、銀行が持っている持ち合い株あるいは取引先が持っている持ち合い株、こういうものをリスクを軽減するために買い取っていきましょうということで、政府としては銀行等保有株式取得機構というものを設けているわけでございますけれども、三月末の段階で取得実績が四百十五億円というふうに伺っております。

 四百十五億円、始まってまだ一カ月ぐらいなんですけれども、ただ、決算期を挟んでおりますので、三月末にかけてこれはもっと利用されてしかるべきなんだと思うんですね。この利用が非常に少ないと思うんですけれども、なぜこんなに少ないんでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 銀行等保有株式取得機構による株式の買い取りについてでございますが、改正法の成立を受けまして、三月の十二日から業務を再開いたしております。これに伴い、機構におきましては、その業務の透明性を高める観点から、月次の株式買い取り実績について、翌月の最初の営業日に公表することとしております。

 去る四月一日に、その第一回として二十一年三月分の買い取り実績が、おおむね約二週間程度の営業日でございますが、この買い取り実績が四百十五億円である旨の公表が行われております。この実績の評価に当たりましては、先ほど申し上げましたように、機構が業務を開始してから十三営業日の数字であるということを勘案すべきものと考えております。

 いずれにいたしましても、機構による株式買い取りは、銀行による株式保有のリスクを低減させ、銀行の財務の健全性を確保するためのセーフティーネットとしての役割を期待されているところでございまして、業務開始の当初からその役割が果たされているものと私どもとしては評価をしているところでございます。

階委員 役割が十分果たされているというのであれば、二十兆円というのは多過ぎないですか。もっと少なくてよかったということじゃないですか。その点、いかがですか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 政府保証枠の二十兆円でございますけれども、これは、二〇〇七年度末の時点で銀行等が事業法人株を約十七兆円保有していること、事業法人は持ち合いによりまして銀行株を約五兆円保有しているとの推計が可能であるということ等を勘案いたしまして、銀行、事業法人の保有株式額を十分にカバーし、市場に対して安心感、メッセージを発することが必要との考えに基づいて措置をされたものでございます。

 機構は、今後三年間にわたりまして、銀行等の株式処分の受け皿、セーフティーネットとしての役割が期待されておりまして、現下の厳しい金融経済情勢に対応して、こうした安心感といいますかメッセージを継続的に発していく必要があると考えております。以上を考えますと、政府保証枠二十兆円というものが過大であるというふうには私どもとしては考えておりません。

 今後、株価の動向等もございますけれども、銀行あるいは持ち合い構造にあります事業法人の方からも、環境的に売りやすいような状況であれば、持ち合い解消というものが進んでいくのではないかというふうに期待をしているところでございます。

階委員 今お話があったのは、銀行が持っている株が十七兆で、企業が持っているのが五兆というお話でございました。

 それで、参考までにお聞かせいただきたいんですが、今回の保有株式取得機構、従来と違うのは、持ち合いがあるということが前提なんですけれども、企業が持っている株も自由に買い取れるようになっている。企業側からの株式購入の自由度が高まったというのがポイントだったかと思います。

 今回、四百十五億円という実績の中で、企業側から買った銀行の株がどれぐらいあるのか、そして銀行から買った一般企業の株がどれぐらいあるのか、その四百十五億円の内訳について教えてください。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 機構の買い取り実績については先ほどお示ししたとおりでございますけれども、この中で、どのような区分で、あるいはまたどのようなタイミングでさらなる開示を行うかということについては、機構の業務の透明性確保という観点もございますけれども、さまざまな他の要素もございますので、今後検討してまいりたいというふうに考えております。

 すなわち、機構に株式を売却した主体等について、買い取り後余りにも短期間のうちに詳細を開示した場合には、市場での価格形成等に悪影響を与える懸念もあろうかと推察をしておりますので、業務再開後間もない現時点におきましては、売却主体の区分ごとの計数を開示することは適当ではないというふうに考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、機構におきましては、その業務の透明性を高める観点から、まずは月次の株式買い取り実績について、翌月の最初の営業日に速やかに公表を今回始めたというところでございまして、私ども金融庁としても、こうした取り組みを支援してまいりたいというふうに考えているところでございます。

 なお、買い取り実績につきましての、会員からの買い取りそしてまた事業法人からの買い取りの区分の計数でございますが、本年の一月に、これは当衆議院の財務金融委員会におきまして、改正法の審議の過程で、平成十三年度から十八年度の買い取り実績につきましてお示しをしたところでございます。これは、既に買い取りというものが終わって相当時間がたっているということを踏まえて公表させていただいたというところでございます。

階委員 先ほど、なぜ二十兆かというところで、企業が持っている株が五兆、銀行が持っている株が十七兆だからという説明をされた以上、買い取った内訳も、企業から幾らなのか、銀行から幾らなのかというのはちゃんと開示させてもらわないと、この二十兆が正しかったのかどうかという検証ができませんので、そこはぜひ早急に開示をお願いしたいと思います。

 そのことを申し上げまして、あと、きょうは日銀の山本理事にもお越しいただいておりますので、今の点に関連して一点お聞かせ願いますけれども、日銀も今回、銀行が持っている株の買い取りというものを、新たにといいますか、従来行っていたものを復活させたわけでございます。

 この日銀の買い取りというのは、今政府の取得機構でも、二十兆という枠がある中でそれほどたくさん買われているわけではないということで、こういうイレギュラーな、銀行の持っている株を買うというのは資産のリスクを高めることにつながるので、これは必ずしも日銀としては本来やるべき仕事ではないというふうに理解しておりますので、この際、こういうようなことは日銀としてはもう手を出さなくていいのではないか。緊急対策ということでやっているかと思うんですが、もうその必要はないのではないか、二十兆の枠がありますから、もうそれで十分ではないかと思うわけでございます。

 その点について、お考えをお聞かせ願えますか。

山本参考人 お答えいたします。

 日本銀行は、二月二十三日に株式の買い入れを再開いたしました。御指摘のとおり、日本銀行による株式の買い入れも、これまでのところ少額にとどまっております。

 もっとも、金融機関は株式保有リスク削減が経営上非常に重要な課題であると認識しているというふうに理解しております。日本銀行がこうした金融機関保有株の買い入れを再開したということは、実際の買い入れ実績の多寡にかかわらず、金融機関にとって一種の安全弁として機能していると考えております。

 今回の私どもの株式の買い入れは、金融機関による今後の株式保有リスク削減努力を支援する、これを通じて金融システムの安定確保を図るという観点から、日本銀行がみずから判断して実施しているものでありまして、私どもとしては、既に決定、公表しましたところの二〇一〇年四月末までの間、本措置を実施していく考えでございます。

階委員 それでは、日銀の理事の方、お帰りになって結構でございます。ありがとうございました。

 次の質問に移りますけれども、これは先日の新聞にも出ておりましたけれども、金融安定化フォーラムによる提言ということで、今、貸し渋り、貸しはがしと関連して、金融機関の経営が自己資本比率によってかなり縛られる。すなわち、景気がいいときには、有価証券の値上がり等によって自己資本比率がふえますから、その自己資本比率の一定倍貸し出しに回るというBIS規制のルールによって貸し出しをふやしやすくなります。ところが逆に、景気が悪くなって有価証券の価額などが減りますと、貸し出しに回せるお金が減ってくるということを、プロシクリカリティー、要するに変動を増幅するようなことだというふうに言われているわけでございます。

 そのプロシクリカリティー、景気循環増幅効果というふうな訳語も付されておりますけれども、そこについて、今回提言としてFSFの方ではどういうことを言っているかといいますと、「銀行システムにおける自己資本の質及び水準を好況時に引上げ、経済及び金融のストレス時に取崩しが可能であるようにするべきである。」こういう提言を行っております。

 この点について、大臣はどのようにお考えになりますでしょうか。これはやるべきだというふうにお考えでしょうか。

    〔江崎(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

与謝野国務大臣 プロシクリカリティーとなかなかわからない言葉で表現されていますが、要するに、いいときには調子に乗って余り貸し出しをふやすんじゃなくて、むしろ資本の充実、質、量とも充実させよう、不況になったときにはそれを使っていろいろやろう、こういう、いいとき悪いときの波をなるべく小さくしようという考え方で、これはすぐれた考え方であると思います。

 バーゼルでこれから話が進むと思いますので、日本としても積極的に協力をしていきたいと思っております。

階委員 この先の話はわかったんですけれども、今、この現状について、このプロシクリカリティーという問題についてどのように対応していくかということについてもお考えをお聞かせ願えますか。BIS規制が変えられるまでの間、どういうふうに対応していくかということをお聞かせください。

与謝野国務大臣 まず、先ほど申し上げましたように、プロシクリカリティーの論議が国際的に行われていくということは、私は大変有意義なことだと思っております。他方、我が国の現状を見ますと、現下の異例の経済状況における自己資本比率の急激な変動によりまして金融仲介機能を低下させないよう、自己資本比率規制の一部弾力化を行ったところでございます。

 現実の問題として、自己資本比率を今、四%の部分も八%部分もいじる余裕は日本の経済としては全くない、現状はそうであります。

階委員 ここについては大事な問題だと思いますので、ぜひ検討を進めていただければなと思っております。

 予定ですと、次に貸金業法のお話を聞くことになっておりますが、時間も大分迫ってまいりました。あした消費者問題の特別委員会に与謝野大臣が来られるということで、私、あしたも質問することになっておりますので、この問題はまたあしたでも……(発言する者あり)ええ、答弁もしておりますが、それはあしたまた聞かせていただくかもしれません。

 それで、今度は財務大臣としてどういう考えをお持ちであるかということを、新しい経済対策に関係してちょっとお聞かせ願えればと思っております。

 資料の三枚目をごらんになっていただきたいんですけれども、今回、GDP比二%という数字が出てきているわけでございます。このGDP比二%は、ガイトナー米財務長官が三月のG20で、主要各国がとる財政刺激策の数値目標として実現を呼びかけたものだというふうに承知しておりますけれども、この二%という数字は、資料三の上から二段目のところにありますけれども、与謝野国務大臣の答弁の中でも触れられているとおり、日本は既に二十年度一次補正、二次補正、それから二十一年度当初予算、これによってほぼIMFの期待にこたえているというふうなお考えを示されておりまして、私もこの二%というノルマはもう達成したものだというふうに理解しておりました。

 ところが、今回またGDP比二%に対応するような十兆円という数字が出てきているわけでございまして、そもそも、既に期待にこたえたというふうな与謝野大臣の発言については、これは撤回されるのかどうか。それと、その十兆円の根拠についてお聞かせ願えますか。二点、お願いいたします。

与謝野国務大臣 IMFの判断ですと、日本の過去の財政出動は一・六とか一・八に評価されておりまして、必ずしも二には行っていない。G20では、やはり各国ともそれぞれの財政状況が許す範囲で財政出動をしようということがG20の流れでございまして、そういう中で、先般、麻生総理からGDP比二%超の経済対策をつくれという御命令があって今やっております。素直に二%というのをGDPに掛けますと大体十兆円ということで、十兆円という数字を申し上げたことはないんですけれども、二%だから十兆円だろうという話になっているわけでございます。

 今期は、やはり一つは金融の流れ、クレジットフローを確かなものにする。これは今までと違って、中小企業も考えなければなりませんし、中堅、大企業の分野もやはりいざというときの金融ということを考えなきゃいけないという問題があります。それから、需要を喚起するという部分がありますけれども、それでは一体どういうところで需要を喚起するのかという問題があります。昔の財政出動のように公共事業中心ということでは、多分ないのだろう、また社会の御要望にはこたえていないのだろう。やはり国民生活に直接かかわるような、医療とか介護とか、あるいは食料の自給とか環境とか、あるいは弱い立場の方々に対するいろいろな施策とか雇用とか、そういう部分を足し合わせていくとおおむね二%超になっていくということでございます。

 これを経済学的にどう説明するのかということになりますと、結局は、日本の外需が失われた部分、その失われた部分をどれほど内需によって取り戻すことがいいのか。多分全部はだめだろう、また全部はできないだろう。しかしなるべく、例えば失業率とGDPの関係からいいますと、ある種の相関があるわけでして、GDPのマイナスを抑えることによってマクロでの失業率を抑制する、そういうことからいって、やはり二%超という数字が出てきているわけです。

 もし御必要であれば、昨日行われました経済財政諮問会議の民間議員のつくられた紙がよくできていますので、それを御参考にしていただければと思っております。

階委員 確認になりますけれども、そうすると、今回の十兆というのはガイトナーのGDP二%とは別の話だということでよろしいですか。

与謝野国務大臣 G20の精神というのは、やはり一国主義に陥らないということがあって、一つは、そういう意味から保護主義に走らないという部分、それから国際機関、例えばIMF、アジア開発銀行等々にもみんなで協力していこう、それから、できるところは内需を拡大したらどうだろうかと。こういう一連のことの中の総理の御判断であると思っております。

階委員 麻生総理が三段ロケットと言っていたものは一体どこに飛んでいってしまったのだろう。北朝鮮のロケットじゃないですけれども、どこに行ったかわからなくなったなという感じがしたということをちょっとお伝えしておきます。

 最後にもう一点だけ御質問させていただきたいんですが、ぼろぼろの旗と言われていたプライマリーバランス、これは旗はもうなくなったという理解でよろしいですか、十兆を今後出したらもう終わりだと思いますけれども。

与謝野国務大臣 財政規律を象徴するものとして、やや古く、ぼろくなっていますけれども、立っております。

階委員 私にはもうさおしか見えません。旗はもうなくなったと思っています。

 まあ、それはそれとして、きょうはどうもありがとうございました。またあした、よろしくお願いします。

田中委員長 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 きょうは、今の経済危機のもとで銀行の果たすべき役割という問題についてただしたいと思います。

 まず、日銀にお聞きしますけれども、日銀は銀行に対して潤沢な資金を供給しているということでありますが、銀行から先に資金が流れないというのが大変問題になっているわけでございます。それを示すのが信用乗数とかあるいは貨幣乗数と言われるものでありまして、皆さんにお配りした一番最初の一ページのところにそのグラフが、これは日銀から提供していただいたものでありますが、掲げてあります。最近の特徴について、まず説明をしていただきたいと思います。

中曽参考人 お答え申し上げます。

 貨幣乗数あるいは信用乗数とは、先生御指摘のとおり、マネーストックをマネタリーベースで割って求めた指標でございます。九〇年代以降、分子でございますマネーストックが比較的安定的な伸びを続けておりました一方、分母のマネタリーベース、特にその構成要素でございます日本銀行当座預金残高が大きく変動したため、結果的に振れの大きな展開をたどってきてございます。

 すなわち、配付資料の一のグラフにございますように、量的緩和政策が採用された二〇〇一年以降、日本銀行当座預金残高の増加に伴いまして、この貨幣乗数ですが、大きく低下をしてございます。

 その後、二〇〇六年に量的緩和政策が解除された後は、日本銀行の当座預金残高の圧縮によって、貨幣乗数は今度は大きく上昇してございます。

 さらにその後でございますけれども、昨年秋以降は、国際金融資本市場の動揺が深刻化したことを背景に、日本銀行は積極的な流動性供給を再び拡大してきてございます。このため、日本銀行の当座預金残高はまた大きく拡大をしてきてございます。一方、マネーストックの方は二%程度の安定的な伸びを続けておりますため、結果として、このグラフにございますように、足元では貨幣乗数は低下をしてきてございます。

佐々木(憲)委員 簡単に言いますと、日銀が潤沢に、表現は別として、じゃぶじゃぶと資金を供給しているわけであります。ところが、銀行から先に流れない。このグラフが下向きになっているのは、そういう状態を示しているわけであります。

 中曽理事は御退席いただいて結構です。これだけ確認したかったんです。

 そこで、与謝野大臣にお伺いしますけれども、三月十三日の金融審議会でも同様のことが指摘されておりまして、配付した資料の二枚目には、最近の中小企業向け融資が減少をしているということが指摘をされているわけです。そこで、銀行から先に融資が流れない理由、原因、これをどのようにとらえておられるか、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 要因を一概に申し上げることは困難でありますけれども、例えば、中小企業の投資スタンスの慎重化等を受けた設備資金需要の減少、あるいは金融機関の貸し出し態度の厳格化などがあると承知をしておりますが、むしろ、この二つの理由の中では、貸し出し態度の厳格化ということが主な理由だろうと思っております。

佐々木(憲)委員 そこが大変大事な点だと私も思います。

 資金の流れがなぜうまくいかないかというと、銀行の貸し出し態度が、優良な格付の高い大企業に対してどんどん貸し出す、ところが、格付が低い企業に対して、大企業でも格付が低いところにはなかなか貸さない。ましてや、中小企業は全体として景気が余りよろしくない、経営が厳しい。そういうところにはほとんど貸したくないといいますか、貸し渋りというような事態というのが現に生まれているわけです。

 ですから、ここにやはり行政としては注目をして、大臣が御指摘になったように、その部分を改善していく、こういうことが大変大事だろうというふうに私は思うわけです。

 そこで、具体的な事例を指摘したいんですけれども、静岡市の清水区、昔、清水市と言っておりまして、港のある、風景も大変美しいところですけれども、この清水区の造船会社の事例なんです。この会社は、お配りした資料を見ていただければいいんですが、三枚目に、これは朝日新聞の四月三日付に報道されたものですけれども、突然、内定取り消しというのが大変大きな問題になったわけです。

 この会社は、メーン銀行である三菱東京UFJ銀行から必要な運転資金の融資が受けられなかったということで、四月一日から工場の操業を一時停止するという事態になったわけです。それまで、内定をしていて、四月一日に入社式を予定していたわけです。三月三十一日になって、新卒者十九人の内定が取り消された。

 これは大変な事態でありまして、ともかく、あしたから新入社員だ、会社で働くんだといって大変希望に燃えていたわけですが、その前の日になりまして突然、あなたの内定は取り消します、来なくていい、これは大変なショックでありまして、本人はもちろんですけれども、家族も非常に大きな失望を受けているわけです。

 そこで、まず厚労省に確認をしたいわけですけれども、一般論として、内定というものは雇用契約が成立しているということではないかと思います。入社の前に、前日に内定を取り消すというのは違法ではないか。そのような場合、厚労省はどう対応しているのか。簡潔にお答えいただきたい。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 一般論としては、採用内定により労働契約が成立したと認められる場合、要は単なる雇用予約ではない場合でございますが、内定取り消しは労働契約法の解雇に当たるため、労働契約法第十六条の規定により、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない内定取り消しは、権利の濫用として無効となる、このように法で規定されております。

 私ども厚生労働省、労働基準行政といたしましては、労働契約法は民事の法規でございますが、出先機関を通じまして啓発指導に努めておるところでございます。

佐々木(憲)委員 内定を取り消すという場合は、非常に厳格な要件を満たした場合でなければ認められないわけでありまして、前の日になって突然取り消しだ、こう言われても、これはとてもたまったものじゃないわけでありまして、例えば四月分の給料ぐらい払えというのは当たり前なんですけれども、そういうことはできないんですか。

渡延政府参考人 お答えいたします。

 一般論として申し上げれば、内定取り消しでありましても、ただいまお答え申し上げましたとおり、労働契約が成立している場合は解雇に当たりますので、解雇ということであれば、労働基準法上の手続としてはいわゆる解雇予告が必要でございます。

 これは、三十日前に行うか、その予告期間が三十日に満たない場合は、満たない日数分の平均賃金の支払いが解雇予告手当として必要とされるものでございます。この不履行につきましては、労働基準法上罰則の定めがございます。

 労働基準監督機関としましては、監督指導を通じまして、そうした最低労働基準に係る法規の履行確保に努めておるところでございます。

佐々木(憲)委員 この問題では塩谷文部科学大臣も大変ショックを受けたらしくて、一番最後の新聞記事にありますように、これは静岡新聞の夕刊ですけれども、四月三日午前の閣議後の記者会見で、あすから仕事だという前の日に取り消すというのは、学生の立場に立てば普通では考えられない、とんでもないことだと批判して、舛添厚生労働大臣と連携して対処していく考えで一致したというふうに述べています。

 与謝野大臣、この内定取り消しについてどう思われますか。

与謝野国務大臣 内定をするということは、学生が他の就職機会を選択する機会を奪うことになりますので、私は、内定という名前の雇用契約は成立していると考えるのが当たり前だと思っております。

 ただし、金融の側面から見ますと、今我々が考えておりますのは、中小企業の金融というのは信用保証制度で一応ある程度のことはできておりますけれども、やはりこれから資金繰りで大変になりますのは、今先生が例示をされたような中堅中型の企業の資金繰りというものをちゃんと政策的に考えていかないと、こういう社会的な悲劇が起きるということで、我々としては、新しい経済対策の中では、中小企業のみならず、もう少しサイズの大きい、地域を支えるような中堅中型企業にも政策金融の恩恵が行き渡るようにしなければならないと思っております。

佐々木(憲)委員 この造船会社がこのような事態に立ち至った理由としては、銀行の融資の問題があるわけです。メーンバンクであります三菱東京UFJ銀行が、必要な運転資金の提供を拒否したというところに原因があるわけなんですね。

 この会社というのはどんな状況かといいますと、現在、新造船の受注残高が七百二十二億円あるわけです。これだけの仕事をまだ抱えているわけです。この受注残というのは大変優良な仕事として残っている。この仕事をやりますと、かなり利益が見込めるということになっているわけですね。前期は、経常利益は一時的に赤字になったんです。しかし、その前は黒字だったわけです。この仕事をこなせば今期は黒字になる、こういうふうに説明をしているようであります。

 ですから、受注した新造船を建造していけば、一定の経営の改善と利益の黒字化ということが見込まれる。その前提としては、運転資金がきちっと供給されるということが前提なわけです。これが切られると、ぱたっととまってしまう。四月一日から現にとまっちゃったわけでありますから。

 この静岡新聞の記事にありますように、この会社の労働組合執行委員長ら役員三人が清水商工会議所と市の経済局を訪れまして、メーン銀行に対して融資を再開するようお願いしてほしい、こういうふうに要望をしたわけです。これに対して清水商工会議所の専務は、地元の企業を守るのは我々の務めである、市と協力して、意に沿うようにバックアップしたい、こういうふうに答えているわけです。市の方も、前向きに対応したいと言っているわけです。

 ですから、この地域では、この造船会社というのは、下請もありますし、地域経済にとっては非常に重要な役割を果たしているわけですね。まさに今、労使ぐるみなんですよ。それから、地元の経済界ぐるみであり、また行政も、銀行の融資を何とかしてほしい、こういうふうに要望をしているわけであります。

 この会社は、今は、これだけ受注残を抱えておりますので、再開がいつでもできるようにということで、会社の幹部や労働組合の役員も交代で出勤して、資材だとか機材、それから工具、こういうものを一生懸命磨いて保守保全に当たっているわけですね。融資が実現すれば操業はすぐ再開できる、そうすれば、内定取り消しをした対象も正規にちゃんと雇用します、こういう話までしているわけですね。

 だから、決定的なかぎは、この大手銀行が運転資金をきちっと供給するという、それでもうすべて解決するわけなんです。こんなに地域ぐるみで大変大きな問題になっているにもかかわらず、それを放置するというのは、これは非常に私は問題だと思うんですよね。

 やはり、大臣が先ほど御答弁になったように、銀行のあり方というのは、単に庭先だけきれいにして、あとほかの家はどうなってもいいというんじゃなくて、社会的な役割を果たすべきだというふうにおっしゃいました。この場合もやはりそうすべきだと私は思うんですけれども、大臣はいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 銀行というのは、リスクをとるのがもともとの仕事なので、こういう難しい状況になったときに全部リスクを回避しますと、きちんとした金融仲介機能を果たさない。これは実は情けない話なので、我々もいろいろ申し上げますけれども、やはりそれでは間に合わないということになれば、静岡市の御要望のように、日本公庫あるいは中小企業の信用保証制度、こういうものも活用しなければなりません。

 さらに、先ほど申し上げましたように、中堅企業とか中規模の企業のところに政策金融の光が当たらないと、どんどんだめになるところが出てくるということで、やはり、例えば政策投資銀行の役割とかそういうものも少し拡大をして、こういうときこそ、政府が持っているあらゆる政策手段、政策金融手段を動員できるような体制をもう一度再整備しなければならないというふうに私は今考えております。

佐々木(憲)委員 政策融資も大変大事なことでありますが、今私が問題にしているのは民間の大手銀行の融資態度の問題であります。やはり、今こういう事態になっているのは直接的にはそこに問題があるわけですので、調査をして、問題があれば是正するというのが私は当然だと思いますが、最後にその点をお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 今、金融庁は四月から、大手行を含めて、きちんとした金融仲介機能を果たしておられるかどうか、一応検査という形で各行の状況を調べております。その結果がどうなるかはわかりませんけれども、やはり是正すべき点がありましたら是正していただくということでなければならないと思っております。

佐々木(憲)委員 これはぜひ是正していただきたいということを最後に申し上げまして、終わります。

     ――――◇―――――

田中委員長 次に、内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、資金決済に関する法律案の両案を議題といたします。

 順次趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣与謝野馨君。

    ―――――――――――――

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案

 資金決済に関する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

与謝野国務大臣 ただいま議題となりました金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び資金決済に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 まず、金融商品取引法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。

 現在の国際的な金融資本市場の混乱等を背景にして、我が国の市場の機能強化、利用者の保護の充実を図り、信頼と活力ある金融資本市場を構築することが重要な課題となっております。このような状況を踏まえ、必要な制度整備を行うため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、市場の公正性、透明性を確保するため、信用格付業者に対し、登録制を導入するとともに、利益相反防止措置を含めた体制整備、格付方針の公表等を義務づけるなどの措置を講じることとしております。

 第二に、利用者保護の充実を図るため、金融分野における裁判外紛争解決制度、いわゆる金融ADR制度を創設し、紛争解決機関の指定制を導入するとともに、金融機関等に指定紛争解決機関との契約締結義務を課すなどの措置を講じることとしております。

 第三に、公正で利便性の高い市場基盤の整備を行うため、金融商品取引所による商品市場の開設等を可能とするための制度整備を行うこととしております。

 次に、資金決済に関する法律案につきまして御説明申し上げます。

 社会的なインフラである資金決済に関するサービスにつきましては、信頼と活力のある金融資本市場を構築するため、利用者保護の充実を図りつつ、利用者利便の向上やその適切な実施の確保を図ることが重要であります。こうした観点から、必要な制度整備を行うため、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。

 第一に、利用者利便の向上を図るため、利用者に引き渡すべき資金と同額以上の資産保全を義務づけるなど所要の措置を講じつつ、銀行のみに認められた為替取引を、銀行以外の者でも行うことができるよう、所要の制度整備を図ることとしております。

 第二に、発行者がコンピューターのサーバーなどに金額を記録する前払い式支払い手段についても、現行の商品券やプリペイドカード内に金額が記録されるカードと同様に規制の適用対象とし、利用者保護の充実を図ることとしております。

 第三に、銀行間の資金決済の円滑な実施を確保する観点から、資金清算を行う者に対する適切な監督等を行うため、所要の制度整備を図ることとしております。

 以上が、金融商品取引法等の一部を改正する法律案及び資金決済に関する法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

田中委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後一時六分散会


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