衆議院

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第15号 平成21年4月14日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十一年四月十四日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 田中 和徳君

   理事 江崎洋一郎君 理事 木村 隆秀君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 明彦君

   理事 吉田六左エ門君 理事 中川 正春君

   理事 松野 頼久君 理事 石井 啓一君

      石原 宏高君    稲田 朋美君

      浮島 敏男君    越智 隆雄君

      後藤田正純君    佐藤ゆかり君

      鈴木 馨祐君    関  芳弘君

      とかしきなおみ君    中根 一幸君

      西本 勝子君    林田  彪君

      原田 憲治君    平口  洋君

      広津 素子君    福田 峰之君

      馬渡 龍治君    松本 洋平君

      三ッ矢憲生君    宮下 一郎君

      盛山 正仁君    池田 元久君

      小沢 鋭仁君    大畠 章宏君

      近藤 洋介君    階   猛君

      下条 みつ君    鈴木 克昌君

      古本伸一郎君    和田 隆志君

      谷口 隆義君    佐々木憲昭君

      野呂田芳成君    中村喜四郎君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       与謝野 馨君

   内閣府副大臣       谷本 龍哉君

   法務副大臣        佐藤 剛男君

   財務副大臣        石田 真敏君

   総務大臣政務官      鈴木 淳司君

   財務大臣政務官      三ッ矢憲生君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 梅溪 健児君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 湯元 健治君

   政府参考人

   (警察庁長官官房審議官) 園田 一裕君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  内藤 純一君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    三國谷勝範君

   政府参考人

   (法務省大臣官房司法法制部長)          深山 卓也君

   政府参考人

   (財務省理財局次長)   中村 明雄君

   政府参考人

   (財務省国際局次長)   中尾 武彦君

   政府参考人

   (文化庁文化財部長)   高杉 重夫君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  亀井善太郎君     浮島 敏男君

  とかしきなおみ君   馬渡 龍治君

  山本 有二君     西本 勝子君

  和田 隆志君     近藤 洋介君

同日

 辞任         補欠選任

  浮島 敏男君     福田 峰之君

  西本 勝子君     山本 有二君

  馬渡 龍治君     とかしきなおみ君

  近藤 洋介君     和田 隆志君

同日

 辞任         補欠選任

  福田 峰之君     亀井善太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融商品取引法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四九号)

 資金決済に関する法律案(内閣提出第五〇号)


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     ――――◇―――――

田中委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、金融商品取引法等の一部を改正する法律案、資金決済に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣府大臣官房審議官梅溪健児君、大臣官房審議官湯元健治君、警察庁長官官房審議官園田一裕君、金融庁総務企画局長内藤純一君、検査局長畑中龍太郎君、監督局長三國谷勝範君、法務省大臣官房司法法制部長深山卓也君、財務省理財局次長中村明雄君、国際局次長中尾武彦君、文化庁文化財部長高杉重夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

田中委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

田中委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石原宏高君。

石原(宏)委員 おはようございます。自由民主党の石原宏高でございます。

 本日は、金融商品取引法の一部を改正する法律案また資金決済に関する法律案について、一番バッターとして質問をさせていただきたいと思います。

 まず、金融商品取引法の一部を改正する法律案について数問、質問をさせていただきたいと思います。

 最初の質問者なので簡単に今回の改正内容を述べさせていただきますと、金融商品取引法の一部を改正する法律案でありますけれども、まず第一に、信用格付会社に対する公的規制の導入、また二番目に、利用者保護の充実のために、金融分野における裁判外紛争解決制度、いわゆる金融ADRの整備、そして投資家のプロ、アマの移行手続の見直し、また有価証券店頭デリバティブ取引の分別管理義務導入、そして三番目に、公正で利便性の高い市場基盤を目的に、金融商品取引所と商品取引所の相互乗り入れを認める、また開示制度の見直しをする、そういう内容になっていると思いますけれども、最初に数問、質問させていただきたいと思います。

 信用格付会社に対する公的規制について、少しお伺いさせていただきたいと思います。

 これは、サブプライムローンの問題で、格付機関の格付が機能していなかったんじゃないか、世界的な金融危機を背景に世界で論じられているところでありますが、既に米国やヨーロッパではルールが確立をされている。日本は、米国、ヨーロッパに続いてこの法律で整備を進めていくということであります。

 その中で、証券監督者国際機構、IOSCOの信用格付会社の基本行動規範改訂版というのが発表されまして、格付プロセスの品質と公正性の強化、また格付会社の独立性確保、利益相反回避の強化、情報開示の強化というようなことがこの規範の中で述べられているんです。それに基づいて各国が政令とか法律を定めているということなんですけれども、まだこれから詰める段階だとは思いますが、今金融庁の方で考えているこの行動規範に基づく政令、内閣府令等の現段階での大まかな内容について、もしお聞かせいただけるのであればお聞かせいただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 証券監督者国際機構の基本行動規範では、例えば、格付会社が格付の信頼性を維持するため、格付に利用する情報が十分な品質を有することを確保するための合理的な措置を講じること、格付プロセスに直接関係している従業員を顧客との報酬交渉に参加させるべきでないことなどが具体的に規定されております。こうした点を踏まえ、内閣府令等を規定してまいりたいと考えております。

 また、スケジュールにつきましては、格付会社に対する規制は公布後一年以内に施行することとされていることから、法案をお認めいただければ、金融庁において内閣府令案の策定作業を早急に進めてまいりたいと考えております。

石原(宏)委員 特に証券化商品とか仕組み商品の格付というのは、日々日々証券化商品の内容が変わってきますので、公正性の評価というのは非常に難しいと思うんです。

 私も金融機関にいて投資銀行部門にいたものですから、アレンジャーと言われるそういう証券会社が仕組みを考えて、そして過去の倒産の率なんかも格付会社にアレンジャーが説明して、それを後追い的に格付会社が認めるような形でやっていましたので、日々日々スキームが変わってくると、本当に公正かどうかというのをチェックするのは大変難しいと思うんですけれども、それをなるべく開示するような形で、いろいろな人がそのスキームを見ることができることによってチェックが第三者からかかるような形で、ぜひともこの格付の公正性を、特に仕組み商品というか証券化の商品について徹底していただきますようにお願いをしたいと思います。

 次に、私、ちょっとぴんとこなかったんですけれども、金融商品取引法の格付関係の中で、無登録の格付会社による格付に関して、金融商品取引業者がその旨を説明をちゃんとするようにということが書かれているんですけれども、まず、無登録の格付会社というのが、今現状日本で、指定格付機関とかありますけれども、そういう五社以外のところで何か格付をとるなんということはあり得ないと思いますし、今後そういうのが本当に発生するのか、私は余りイメージがわかないんですけれども、どういうケースがあるのか。そしてまた、無登録の格付機関が格付をした商品について、ちゃんと金融商品取引業者がその旨をしっかり説明しているかどうかということをどういうふうに金融庁はチェックをしようとしているのか、検査をしようとしているのか。その点、お聞かせいただけますでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 法案におきましては、金融商品取引業者等が販売、勧誘を行う際に、無登録の格付会社の格付を利用する場合には、無登録である旨の説明をする義務を課すこととされております。

 金融庁は、従来から、日常の監督業務や報告徴取、立入検査等を通じまして、金融商品取引業者等が販売、勧誘ルールを遵守するために必要な体制を整備しているかの実態把握に努めまして、問題が認められた場合には改善を求める等の対応を行っているところでございます。御指摘の点につきましても、このような監督検査を通じまして検証していくということになろうかと思います。

 ところで、御指摘の無登録の格付会社の格付というのはどういうものかというふうなことでございましたが、例えば外国で発行される証券、社債等に対しまして、我が国の登録を受けていない外国の格付会社が付与した格付等が考えられる、そういうものが日本の国内で投資家に販売されるという場合が当てはまるのではないかと考えております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。

 次に、金融ADRについてちょっと質問させていただきたいと思います。

 現行も、各金融関係の業界がこういう紛争処理の相談窓口またあっせんをやられております。例えば、日本証券業協会であれば証券あっせん・相談センター、また全国銀行協会であればあっせん委員会、また生命保険協会であれば裁定審査会、また損害保険協会であれば損害保険調停委員会等、そういう組織が存在するわけでありますけれども、こういう団体がそのままこの金融ADRに移行する、そういうイメージでいいのかどうか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 また、その構成メンバーを見ますと、弁護士とか消費生活相談員等がメンバーになられていて、金融機関の方々が直接そこには入られていないということで、ある意味独立性は保たれているとは思うんです。ただ、実際に、このあっせんをやっているいろいろな協会というものが、コスト、経費は、例えば会費なのかもしくは出資金なのかわかりませんけれども、そういうお金を業界からもらっていて、会費をもらっていて、相談に乗るというときに本当にその独立性というものが確保できるのかどうか。

 これは公認会計士なんかでも議論になりましたけれども、要するに証券取引所が一たん発行体からお金をもらって会計士に支払ったらいいんじゃないかなんという議論もありましたけれども、こういう意味で、いろいろな、証券会社とか銀行とか、そういうところからお金をもらっているこういう将来的な金融ADRが、それで成り立っている金融ADRが、本当に独立性が保てるのかどうか、その点どういうふうに判断をされているのか、金融庁の御見解をお伺いいたします。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、金融ADR機関として、現行の諸団体の諸機関がございますけれども、これがなるというイメージなのかどうか、こういうお尋ねでございました。

 金融ADR制度につきましては、申請に基づきまして、金融商品・サービスに関する苦情処理、紛争解決を行う能力のある者を指定紛争解決機関として主務大臣が指定するという制度となっております。現在、任意の取り組みといたしまして、今委員から御指摘ございました全国銀行協会、生命保険協会、日本損害保険協会、日本証券業協会等の業界団体、自主規制機関が苦情処理、紛争解決を行っているところでございますけれども、まずはこれらの団体により指定の申請が行われることが想定されているところでございます。制度上一定の要件を満たせば、こうした業界団体や自主規制機関以外のものであっても、指定紛争解決機関となることも可能でございます。

 それから、第二の点でございますが、経費を金融機関が負担しているというところからして、独立性の担保が確保されているのかどうかという御指摘でございます。

 金融ADRは、簡易、迅速、安価な裁判外の紛争解決手段であるものの、苦情処理、紛争解決には、弁護士等や職員の人件費、事務経費など、一定のコストを要するものでございます。これらのコストを顧客と金融機関が折半して負担するということになりますと、顧客の負担が非常に膨大な、過大なものになるということで、結果として金融ADRの利用が難しくなるということでございまして、この経費につきましては、主として金融機関より徴収する負担金で賄うということとしております。

 金融ADR制度につきましては、紛争解決委員として、少なくとも一人は弁護士、認定司法書士、消費生活相談員等を含めるとともに、当事者と利害関係を有する者を排除するということを求めているところでございます。また、金融ADRの実施主体である指定紛争解決機関が公正かつ的確に業務を遂行できるよう、主務大臣が指定、監督を行うということとしておりまして、これらにより中立性、公正性が確保されるものと考えております。

石原(宏)委員 次に、資金決済に関する法律について質問させていただきます。

 この法案の内容は、まず第一に、前払い式支払い手段、いわゆるビール共通券とか電子マネーの類でありますけれども、そのルールの見直し、第二に、銀行以外の事業者にも為替取引を認め、資金移動業者として金融庁が管理監督を行っていく、第三に、銀行間の資金決済について所要の制度整備を行う、第四に、先ほどの前払い式支払い手段の発行体みたいなものが協会をつくっておりますけれども、その協会に対し、さらに資金移動業者を足して新たな認定資金決済事業者協会というのを設立するというような内容になっておりますけれども、少し資金移動業者の件について質問させていただきたいと思います。

 実は、アメリカのペイパル社というのが、日本でも二〇〇七年からインターネット上で、インターネットを通して、これはカードの決済なんですけれども、会社自身は海外にあるんですが、インターネットは国境がありませんから、日本語の画面でサービスを既に始めているわけです。

 ペイパル社の方にもちょっといろいろな話を聞いておりましたが、私はインターネットを使っての為替取引についてちょっと心配なところがありまして、それは、特にインターネットのシステムのセキュリティーの水準ということなんです。ペイパル社は、日本の法律が通れば、将来的には登録をして日本の法人としてサービスを始めたいというふうに言っていらっしゃいましたので、そういうインターネットを通した為替取引のシステムのセキュリティー水準、それを金融庁はどういうふうに判断されているか、御意見をお聞かせいただけますでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、「資金移動業者は、」「資金移動業に係る情報の漏えい、滅失又はき損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。」とされております。これを踏まえまして、登録審査の際には、資金移動業者の情報の安全管理に関する体制が、その業務の規模や態様に応じまして適切かつ十分に整備されているかをチェックするということになろうかと思います。

 具体的な内容につきましては、今後内閣府令等で定めることとしておりますけれども、例えば、インターネットを用いて為替取引を行う場合には、データの送受信の際にデータがきちんと保護される体制が講じられているかどうかといったこと等を中心にチェックするというふうに考えております。

石原(宏)委員 私も余りシステムに詳しくなくてわからないんですけれども、何かいろいろな技術的な用語もあるようでありますが、いろいろな世界各国の状況なんかも踏まえて、私は、特にハッカーの攻撃とか、インターネット上だとアクセスがしやすいですから、こういうシステムセキュリティーの水準というのはぜひともしっかりと確保していただきたいと思います。

 次に、同じような観点なんですけれども、マネーロンダリングとか犯罪収益移転防止法関連の体制整備についてちょっとお伺いしたいと思うんです。

 例えばマネーロンダリングの監視体制なんですが、ペイパル社の方と話をしていて、全世界の取引がマネーロンダリングじゃないかどうかをシステム的に機械が判断してくれる。例えば、毎日毎日千ドルずつ同じところに送っているものとか、あと、これは金融機関だと外務省が情報を提供してくれるんですけれども、例えばタリバンの関係の口座はこういう口座で、こういう会社名でありますからみたいなことを機械的に登録をすると、自動的にそういうオーダーが来るとはじくみたいな、システム的な対応をペイパルの方はされている。

 さらに、サンノゼに大きなシステムセンターがあって、そういういろいろな、ある為替取引の例がピックアップされて、人的にも適宜チェックをしている、そんなレベルのものを持っていらっしゃるという話を聞いたんですが、日本で例えばインターネットを通しての為替取引をやるときに、同水準の、今言ったペイパルみたいな水準のマネーロンダリングのチェック体制を求められるのかどうか、それをまず一点聞きたいと思います。

 さらに、ペイパルの方と話をして、本人確認なんですけれども、ペイパル社は本人確認をするに当たって、銀行口座を所有しているかどうかがサービスを始められる要件になっているというふうに話を聞きました。また、クレジットカードの決済をするときは、クレジットカードのカード番号なんかを入れてもらうということを条件にしているんです。

 日本の場合は、本人確認に当たっては、運転免許証とか保険証とか、そういうものを面前で見せてもらって確認をしているんですけれども、インターネットの場合はなかなかそういうふうに面前で、会うわけにはいきませんから、運転免許証とか保険証というのは見せられないんですけれども、ペイパル社みたいに、例えば銀行口座さえあれば本人確認をしたというふうに認めることが日本の法律上できるのかどうか、それを二点目に聞きたいと思います。

 また、例えばいろいろな送金の記録、銀行だと大体十年ぐらい保存をしているんですけれども、こういう新しい資金決済事業者は、どういう法律に基づいて何年間記録を保存しなきゃいけないのか。ちょっとその点、お聞かせいただけますでしょうか。

三國谷政府参考人 御質問三点のうち、最初のマネーロンダリングに係りますシステム問題について御説明したいと思います。

 金融機関等につきましては、犯罪収益移転防止法によりまして、本人確認等や疑わしい取引の届け出等が義務づけられております。金融機関におきましては、これらを的確に実施し得る内部管理体制を構築することが、組織犯罪等による金融サービスの乱用を防止し、我が国金融システムに対する信頼を確保するためにも重要な意義を有しているものと考えております。

 そこで、監督指針におきましては、疑わしい取引の届け出のための体制整備といたしまして、銀行等につきまして、その業務内容、業容に応じまして、システム、マニュアル等により疑わしい顧客や取引等を検出、監視、分析する体制が構築されているかを監督上の主な着眼点としているところでございます。マネーロンダリングの可能性のある取引を抽出できるようなシステムの整備につきましては、このような観点から判断されるべきものと考えているところでございます。

 なお、例えば大手銀行におきましては、マネーロンダリングの可能性のある取引につきまして一定の絞り込みを行うシステムを導入しておりまして、精度向上に取り組んでいるものと承知しております。

内藤政府参考人 引き続いてお答えいたします。

 資金移動業者は、犯罪収益移転防止法、いわゆる犯収法における特定事業者として、同法に定める本人確認方法により本人確認を行う必要がございます。

 同法では、本人確認方法として、特定事業者が運転免許証等の本人確認書類の提示を受ける方法や、本人確認書類の送付を受け、顧客の住居にあてて取引関係文書を書留かつ転送不要の郵便物として送付する方法等が定められております。このほか、特定事業者が他の特定事業者に業務を委託している場合には、委託を受けた特定事業者が既に顧客の本人確認を行っており、かつ、その本人確認記録を保存しているときは、本人確認済みの顧客として委託した特定事業者が改めて本人確認を行うことを不要としております。

 しかしながら、委員御指摘のペイパル社の例でございますけれども、単に顧客が他の特定事業者の銀行口座やクレジットカードを使用しているということをもって特定事業者の本人確認を不要とするというような取り扱いは、法令上認められていないというふうな取り扱いでございます。

 なお、資金移動業者の取引記録につきましては、銀行等と同様、七年間の保存義務が課せられるということでございます。

石原(宏)委員 ありがとうございます。ペイパル社みたいな海外から進出してくるようなところには、日本のルールをしっかりと御説明いただきたいと思います。

 次に、ペイパルばかりで申しわけないんですが、ペイパルの方とお話をしていて、今回の資金決済業者に対しては、未使用残高を供託するとか信託するとか履行保証をするとかいうことで、お金を送金しない前に、事前にお金を預けておいて、そして何回かの送金に分けて、預かっているお金について保全を義務づけるような形になっておりますけれども、その資産保全義務の報告についてペイパルの人の話を聞いていたら、海外だと大体四半期ごと、大体クオータリーに報告をするというふうに話をされておりました。では、日本の場合はどういうふうになるのか、ちょっとお伺いしたいと思います。

 また、サービスをスタートしたときには幾らになるのかわからない中で、最初は信託とか供託とか、そういうことをしなくていいのか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

 また、検査の頻度なんかもペイパルの方に海外の例を聞いてみました。海外の例を見ると、大体法令上は適時というふうになっているわけですが、アメリカなんかだと年に一回もしくは適時というような形になっているんですが、金融庁として資金決済業者に対してどういう頻度で検査を行うのか。また、政令上は適時というような形でなっているのかどうか、今考えていらっしゃるところを教えていただけますでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 本法案におきましては、資金移動業者は、為替取引の利用者に対して負う債務、未達債務と呼んでおりますが、この金額や資産保全の状況を記録した報告書を作成し、内閣総理大臣に提出しなければならないとされております。

 この資金移動業者が登録を受けますと、その時点から、まず、仮に未達債務というものがございませんでも、最低の保証額といいますか、そういったものを入れるということが義務づけられておりまして、その後、利用者の未利用残高といいますか未達債務につきまして、また金額が加算される場合があり得るということでございます。

 それから、これらの資産保全義務に関する報告の頻度でございますけれども、これは六カ月を超えない範囲内で内閣府令で定めるということとされておりまして、資産保全が適切に行われているかを適時に把握する観点から、今後具体的に検討してまいりたいと考えております。

 なお、検査の頻度でございますが、これにつきましては、これも今後の所要の検討を経て、あるいはまた資金移動業者の実態等を十分に勘案しながら、総合的に考えていくべき問題であろうかというふうに考えております。

石原(宏)委員 ありがとうございます。海外の例は一年みたいなものが多いようですけれども、その業者に応じて適切に判断をしていただければと思います。

 時間が大分なくなってしまいましたけれども、今回、この資金決済業者に対して、当初は一回の送金に対しての利用上限規制を設けるようでありますけれども、その趣旨と、金額がどの程度になるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

 また、上限を設けられるというのは、マネーロンダリングとかいろいろなことから、大変いいことだと私は思うんですけれども、ちなみに、ペイパル社の方とお話をしていたら、ペイパル社も一回の送金の上限、これは法律で決まっているんじゃなくて、会社としての上限として一万ドル、約百万円ということを設けているという話も聞きました。

 この趣旨と金額についてお聞かせいただけますでしょうか。

与謝野国務大臣 資金移動業の新設に当たりましては、その業務の遂行に係る実態を十分勘案する必要があるため、少額の取引として政令で定めるものに限定して制度を設けることとしたものであります。

 なお、少額の取引の水準については、現在銀行等で行われる為替取引の一件当たりの平均金額や現金書留の損害要償額などを踏まえれば、五十万から百万円程度とするのが妥当と考えられますが、利用者の利便性等の点も考慮して今後考えてまいりたいと思っております。

石原(宏)委員 ちょっと残すところ、時間がなくなりましたけれども、最後に一問だけ。

 本法律が成立をすると、外国の事業者というものが国内で同じようなサービスを積極的に販売してはいけなくなるわけです。そうすると、実は二〇〇七年からペイパル社というのはもうインターネット上でサービスをスタートしているんですが、この法律が施行されて実際にスタートをするタイミングと、ペイパル社が日本での法人の設立、また金融庁に対して登録のタイミングがうまく合わなくなると、この法律が実際に実行されて、海外の会社がこういう資金移動事業を積極的にセールスしてはいけなくなってしまって、ちょっとトラブルが発生するようなことになっちゃうかもしれないんですけれども、こういうことに対してはどういうふうに対処をされていくのか。

 また、これは別件ですけれども、同じように、この新たな資金決済に関する法律の中で、先ほどお話をしました前払い式支払い手段、要するにEdyとかSuicaのような電子マネーとかビール券みたいなものですけれども、こういうのを海外の業者も積極的に販売してはいけないというふうになるわけですが、実際に、海外の会社がこういう前払い式支払い手段の発行業者として日本の中で大々的にサービスを展開しているのか、ちょっと想像がいかなかったので、そういうものがあるのかどうか。済みません、時間が来ちゃいましたけれども、最後にちょっと教えていただけますでしょうか。手短にお願いします。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 本法案は、銀行等以外の者が登録制のもとで、利用者保護を図りつつ、資金移動業者として国内において為替取引を行うことができるよう制度整備を行うものでございます。

 しかしながら、例えば、事業者やサーバーが外国に存在をしまして、利用もインターネット上で行われる、資金の受け払いもクレジットカード等で行われるというような場合などについては、国内において為替取引、まさに送金業務ですけれども、これが行われたと言いがたい面がございます。したがいまして、このような場合には、本法案に基づいて資金移動業の登録を行わせることができませんで、利用者保護を図るということが非常に困難な場合が予想されるわけでございます。

 このため、利用者保護の観点から、金融庁に対して資金移動業登録を行わない外国資金移動業者が、例えばインターネット上で開設した日本語ウエブサイトで日本国内に向けて勧誘を行うということは禁止するということでございまして、こうした業者においても日本国内において登録が求められるということでございます。

 それから、第二のお尋ねでございましたけれども、外国の法人が日本の国内で前払い式支払い証票を発行している事例があるかということでございますが、これは、業者からの届け出とか登録の状況を見ますと、外国法人が直接前払式証票を国内で発行している事例は見られませんけれども、外国法人が国内に設立した子会社が同法に基づきまして前払式証票を発行しているという事例は存在しているものと承知しております。

石原(宏)委員 済みません、少し時間がオーバーしました。これで質問を終わります。ありがとうございました。

田中委員長 次に、谷口隆義君。

谷口(隆)委員 おはようございます。公明党の谷口でございます。

 きょうは、金融商品取引法の改正案と資金決済に関する法律案につきましてまずお伺いをさせていただいた後に、大臣にお聞きいたしたいことがございますので、またよろしくお願いいたしたいと思います。

 初めに、信用格付業者に対する規制の導入ということでお伺いをいたしたいと思いますが、米国におきまして、大変金融混乱の原因になっておりますサブプライムローン問題、この問題に端を発した金融市場の混乱の状況が今あるわけであります。

 欧米では、サブプライムローンを組み込んだ証券化商品の安全性に高い評価を与えた格付に対する不信、批判が高まっているというような状況でございます。信用格付は米国で始まったわけであります。投資商品の安全性を評価するというものでありますが、社債の格付については百年ほどの歴史があるという状況のようでございます。このような不信、批判の高まりの中で、欧米、また証券監督者国際機構、IOSCOでございますが、IOSCOでも規制の高まりの動きがある。その動きの中で、今回、金商法の一部改正ということになったわけでございます。

 それで、これは先ほど出ておりましたが、今回、この信用格付業者を、必ず登録しなければならないということではなくて、そういう義務規定とはいたしておらないわけであります。そのことについて理由をお伺いいたしたいわけでございます。アメリカでは、信用格付業者の指定制から登録制度に変わったというように聞いておりますが、このような状況の中で、これを義務化しなかったというような理由をお伺いいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 記号や数字を用いたランクづけにより信用リスク評価の結果を提供するサービスは、格付会社に限らず広く一般に行われていることから、これらに対して参入制限を課すことは適当ではないと考えられております。このような観点から、この法案では、信用格付の付与、提供を業として行うためには登録を受けなければならないとの参入制限を設けることとはせず、登録できる規制としております。

 また、無登録業者の格付の利用に際して、金商業者等に追加的な説明義務を課すことにより、金融資本市場における重要な影響を及ぼし得る格付会社の登録を確保する枠組みも整備しているところでございます。

谷口(隆)委員 前に大臣がおっしゃったように、今回のこの登録制度は参入制限的なものではないということで、一定の要件を満たす場合には登録を受けることができる仕組みなんだというお話でございました。

 そこで、一つお聞きいたしたいんですが、具体的な問題としてお聞きいたしたいことは、今ホールディングスを中心にする金融グループが幾つかございます。そのグループが、例えば信用格付業者を登録して信用格付を行うといったような場合に、そのグループ内の金融機関の格付をそのグループ内の信用格付業者がやり得るのか、また、そのときに登録拒否要件に当たるのかどうか、お伺いいたしたいと思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 法案におきましては、信用格付業を公正かつ的確に遂行するための必要な体制が整備されると認められない場合は、登録を拒否するということとしております。

 具体的には、登録審査の段階におきまして、登録申請を行う格付会社が、独立性確保、利益相反回避のための措置を含む社内規定の策定等の体制整備を行っているか否かを確認するということが予定されているところでございます。

谷口(隆)委員 今ちょっと具体的な例を出したんですが、同じ金融機関グループがあって、その中で信用格付をやりたいということで登録の申し込みがあった。それを、認可を与えたといいますか登録をして、グループ内の企業の信用格付をその格付業者が行うということは問題がないんでしょうか。

内藤政府参考人 失礼しました。お答えいたします。

 今の委員が御指摘のようなケースでございますけれども、これは、格付会社とそのグループの中における金融機関というのはかなり濃厚な利害関係があるというふうに推測されます。個別は個別でまた登録の時点における審査で精密に判断をされることだろうと思いますけれども、今直観的に申し上げまして、かなり問題がある、登録拒否に当たる可能性があるのではないかというふうに推測されます。

谷口(隆)委員 登録拒否要件の中には明確に入っておりませんけれども、そういう問題もありますので、今局長の方からは登録拒否要件に当たるのではないかというようにおっしゃったわけでございますが、そのあたりはしっかりと立て分けをしていただきたいというように思うわけでございます。

 それと、証券化商品の商品設計の過程に格付が組み込まれておるわけでありますが、金融機関と格付会社との関係が一般的にはやはり密接になりがちでございます。格付会社の中立性、客観性に問題がないというようにするためにはどのようにしておるのか、お伺いをいたしたいと思います。

内藤政府参考人 格付会社につきましては、発行者等と格付会社との間に利益相反の可能性が内在しているのではないかという問題がこれまで指摘をされているところでございます。

 このような問題に対応するために、本法案におきましては、禁止行為といたしまして、格付会社が格付対象の金融商品の設計など格付の評価に重要な影響を及ぼす事項について助言を行ったといったような場合には、その金融商品について格付の提供を禁止するという規定を設けております。と同時に、格付会社に利益相反防止、独立性確保のための体制整備を義務づけるというふうにいたしたところでございます。

谷口(隆)委員 この信用格付ということは、数年前に我が国の国債の格付をされて我が国が大変迷惑を受けたことがあったわけでありますが、一般的に、勝手格付と言われるようなことも含めて、経済界ではよく行われておるわけでございます。この信用格付業者の問題については、経済界に与える影響が非常に大きいものでございますので、しっかりと導入をする準備をしていただきたいというように思う次第でございます。

 その次に、金融ADRについてお伺いをいたしたいと思います。

 今回、指定紛争解決制度の創設ということになりますと、金融ADR制度がスタートをするということでございます。これは従来は、金融でトラブルが起こると訴訟に持っていかざるを得ない、なかなか当事者間で和解ができないということで、大変な状況があったわけでございます。そうなりますと、期間もかかりますしコストもかかってくるということで、このような金融ADRができるということは大変好ましいことであると思います。

 今、この金融ADR以外にいろいろな分野で裁判外紛争解決制度、ADRが行われておるわけでございますが、いろいろなことを聞いておりますと、どうもうまく稼働できておらないようなところもあるようでございます。今の全般的な稼働状況について教えていただければというように思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 日本のADRの活動状況というお尋ねでございますが、これは、法定されているADRもございますし、一般的に民間団体が実施主体となるものもございます。それから、法務省が所管しておりますADR促進法というものに基づいて、認証を受けてADRの活動を行っているという団体もございます。それから、民間が自主的に行っているADRといいますか、苦情処理あるいは紛争のあっせんというものの活動を行っているものもございます。

 各団体それぞれで行っているところでございまして、金融分野におきましても、金融商品取引法におきまして認定投資者保護団体というようなものの制度が設けられておりまして、これにより、全銀協でありますとか生保協、損保協も、金融商品取引業務に係る業務につきましてはこの団体に認定を受けて活動しておる。あるいはまた証券関係につきましては、日本証券業協会がいわゆる自主規制機関であり、また認可の金融商品取引業協会としましてADRの活動を行っているというような状況がございます。

谷口(隆)委員 金融以外のことも含めてちょっと報告してもらうように言っていたんだけれども。全体のADRの稼働状況ですね。

 だから、要するに私の問題意識は、このADRそのものは非常にいい制度なんだけれども、なかなかうまく稼働できていないというような状況があるのではないかということをお聞きしたいんですが。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 ADRの制度につきましてはさまざまな制度がございまして、全体の数字というのは私どもあいにくつかんでおりませんけれども、例えば、法務省が所管をしておりますADR促進法という法律によります認証紛争解決事業者というものがございます。これは、二十一年二月現在で、全部で二十六の認証団体がございます。

 こういった団体におきましてのADRの活動でございますけれども、紛争解決をするといいましても、当事者間のいわば任意で、それが和解案に応じるというときに初めて紛争解決が実際なされるということでございますので、やはりその実効性といいますか、そうしたものがいろいろ問題があるのではないかというふうな御指摘が従来からあったところでございます。

谷口(隆)委員 今内藤局長がおっしゃったように、そういう問題点もあるので、この金融ADRは使い勝手のいいように工夫をしていただきたいと思います。制度としてはできたんだけれども、なかなか使い勝手が悪いというような状況になりますと問題があるわけでございますので、ぜひそういう仕組みづくりといいますか、お願いをいたしたいと思います。

 それで、今回の金融ADR、原点に立ち返って、利用者保護の観点からどういうメリットがあるのか、お伺いをいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 金融ADR制度は、金融商品・サービスに関するトラブルについて簡易迅速に紛争解決を行い、利用者保護の充実を図るものであります。また、金融ADR制度においては、利用者保護の観点から、金融機関に金融ADRの利用を義務づけるとともに、資料提出や結果尊重などの片面的な義務を課しており、これにより金融ADRにおいて紛争解決が実効的に図られるものと考えております。

谷口(隆)委員 金融ADR、この実効性がやはり一方で進むように、先ほども申し上げましたようにぜひまた努力をしていただければというように思います。

 それで、今度は資金決済に関する法律案につきまして質問をさせていただきたいと思います。

 銀行間の資金決済では全国銀行内国為替制度がその中核を担っておって、昭和四十八年の全銀システムの稼働開始によるオンライン化が実現して以来、利用規模が拡大をしてきておるということがございます。全銀システムは、オンラインで銀行間決済を当日中に完了するという決済システムであって、世界でもこのような例は余りないというようなことを聞いております。実態は、いわば公共インフラと言えるような大変重要な制度でございますけれども、民間が中心でやっておったというようなところがございます。

 今回のこの法案では、銀行の資金決済に果たす重要な役割にかんがみて、公正性、透明性が高く、ガバナンスの安定性を考慮して、内閣総理大臣の免許制としたというような内容でございますね。実際には、東京銀行協会、これは特例民法法人ですけれども、当該免許を取得して金融庁の監督を受けることを予定されております。いわば公共的なインフラであることを認知したというようなことになるのではないかと私は思っております。

 それで、まず初めにお伺いいたしたいのは、金融庁は、この全銀システムの効率性、安定性、また公共インフラとしての重要性、このシステム自体の信頼性の検査を行う必要があるのではないか、このように考えております。どのようにお考えなのか、お伺いをいたしたいと思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 委員御指摘の資金清算機関でございますが、今般のこの法案によりまして免許制としているほか、免許付与後は、資金清算業の適正かつ確実な遂行のために必要があると認めるときは、その業務や財産の状況について立入検査、業務改善命令等の監督上の措置を講じることができるというふうにされているところでございます。

 それから、システムの信頼性とかあるいはバックアップ体制といった点についての言及がございました。

 資金清算機関につきましては、我が国における重要な資金決済インフラとして、御指摘のようにシステムの信頼性の確保やバックアップ体制の整備を図ることが重要と考えております。このため、本法案では、資金清算機関の業務方法書におきまして資金清算業の継続的遂行の確保に関する事項の記載を義務づけまして、万一システム障害等が発生した場合のバックアップ体制の整備や業務継続計画、いわゆるBCPと呼んでおりますが、この策定を求めることとしております。

 これらバックアップ体制の整備や業務継続計画の策定につきましても、システムの信頼性の確保等と同様、資金清算機関に対する立入検査や業務改善命令等の監督上の措置を講ずるに当たって、これは重要な視点になるということと考えております。

谷口(隆)委員 これは、資金決済を毎日オンラインで、当日決済ということでやられております。それで、このシステムというのは非常に重要でありまして、このシステムが混乱をいたしますと、日本の経済全体が大混乱になるわけでございます。

 そういう意味において、今回、免許を付与する、内閣総理大臣がこの全銀システムに対して免許制として付与するといった以上は、このシステム全体の信頼性をまずは担保するために、そのシステムの検査を行う必要があると一つは考えておるわけでございます。

 またもう一つは、これはシステム自体だけではなくて、先ほど内藤局長がおっしゃったように、バックアップシステムだとかこの周辺のところ、例えば、従来はこの全銀システムは、ワンセンターシステムということで東京にしかなかったわけでございます。ところが、例えば大きな地震が起こるといったようなときには混乱をしますので、大体大きな会社はツーセンターシステムになっていて、東京と大阪と二つ置いて、一つがダメージを受けても、こちらでバックアップができるという体制を整えておるわけでございます。

 このような周辺の体制も含めて、金融庁は、安定性の観点、効率性の観点から検査をしていく必要があると考えておりますが、どのようにお考えなのか、お伺いいたしたいと思います。

内藤政府参考人 先ほども若干お答えはいたしましたけれども、委員の御指摘はまさにそのとおりだと考えております。

 これは、法案が成立いたしまして、実際の施行、あるいは監督検査という段階でまたさらに詳細を詰めていく必要がございますけれども、システムそのものの問題と、それからバックアップあるいはBCPの体制、そうしたことについては最近において特に重要な課題というふうになっておりますので、監督検査においての大きな一つの論点ということになろうかというふうに思います。

谷口(隆)委員 非常に重要なことでございますので、よろしくお願いいたしたいと思います。

 それで、あと残る時間ちょっと大臣にお伺いいたしたいのは、今回、二十一年度補正が策定されて、総理の方から経済危機対策ということで発表されたわけでございます。これは、国費で十五兆四千億円、事業費で五十六兆八千億円ということで大変大規模な経済対策でございます。今、世界全体に金融危機が広まっております。先日の金融サミットにおきましても、世界全体で国際協調の中でこの経済危機を乗り越えていこうということでなされたもので、私は大変評価をするところでございます。

 これはもろもろのところから成り立っておるわけでございますが、しかし一方で、この経済危機対策の中で、「財政の持続可能性を確保する観点から、累次の経済対策として実施される措置を踏まえ、「中期プログラム」について、必要な改訂を早急に行うこととする。」という文言が入っております。

 この文言についていろいろ憶測が飛んだり、また昨日は財務省の杉本次官が、プログラムは持続可能な社会保障の構築と安定財源の確保を目的といたしており、その目的に沿った見直しが行われるというようにおっしゃっておられて、財政規律の緩和を念頭に置いたものではないということを明らかにされているというようなことでございます。

 それで、中期プログラム、平成二十年十二月二十四日に閣議決定いたしました。このどの部分を改訂しなければならないのかということをお聞きいたしたいわけでございます。この二十年の十二月二十四日の閣議決定は、かなりフレキシビリティーがあるものですから、このまま置いておいても問題ないのではないかと私個人は思っております。どのあたりを大臣が改訂を必要なところだというように考えていらっしゃるのか、お伺いをいたしたいと思います。

与謝野国務大臣 中期プログラムの策定以降、累次の経済対策として実施された措置や、策定時点で前提としていた経済財政状況が想定以上に悪化していることを踏まえまして、財政の持続可能性を確保する観点から、改訂が必要であると考えております。

 なお、中期プログラムは、持続可能な社会保障構築とその安定財源確保を目的としているものであり、その目的に沿った見直しを考えております。また、改訂の時期には、例年六月にいわゆる骨太方針と呼ばれる基本方針によって大きな方針が示されることから、そこまでに改訂する必要があると考えております。

 いずれにしましても、昨日始まりました安心社会実現会議や経済財政諮問会議でも御議論をいただきながら、できるだけ早期に中期プログラムの改訂を行うことといたしたいと考えております。

谷口(隆)委員 大臣、この中期プログラム全体に対してもう一度見直すということでございますか。いろいろな分野がございますね。そのどのところを見直していく必要がある、例えば、この中期プログラムの中では第三章として「税制抜本改革の全体像」、非常にこれはいろいろ意見があったところでございますけれども、このあたりを想定しておっしゃっておられるのかどうか、そのポイントを教えていただければありがたいと思っております。

与謝野国務大臣 まず、中期プログラム自体には書いておりませんけれども、一応、政府・与党は二〇一一年をプライマリーバランス到達の時点と想定しながらいろいろやってきたわけですが、この委員会でもたびたび御質問を受け、お答えをいたしましたけれども、二〇一一年の到達という努力目標はなかなか到達できないということが明らかになっております。

 したがいまして、到達の時期をいつにするのか、プライマリーバランスという考え方が正しいのか、債務残高対GDP比一定という財政再建目標が正しいのか、あるいは、到達するためにはどういう道筋を通るのか、経済、特に成長率予想はどうするのか、長期金利の予想はどうするのか、歳出歳入のうち、歳出は抑制的にやるということを二〇〇六年の骨太方針で書いてあるけれども、それはいじるのかいじらないのか等をもろもろもう一度再検討しなければならないのは、何も今回の補正予算をつくったからではなく、経済、財政の状況等、あるいは世界の状況が十二月の時点とは相当大幅に変わっているということであって、やはり周りの状況が変わったことを考慮に入れた物事の考え方というものをもう一度きちんと洗い直す必要があるだろうということを考えているわけでございます。

谷口(隆)委員 おっしゃるように、十二月の時点と今の時点、やはり世界の状況も大分変わっておると思います。しかし、今回は危機対策、経済対策を中心にしてこの補正をやるということでございます。やはり補正の効果を減衰させるようなことのないようにやっていかなければならない。アクセルを踏んでまたブレーキを踏むといったようなことにならないように、そこはいろいろお考えいただいていると思いますが、そのようなことを大変私自身は危惧するところでございまして、ぜひそういうようなことにならないようにお願いを申し上げたいと思います。

 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。

田中委員長 次に、近藤洋介君。

近藤(洋)委員 民主党の近藤洋介でございます。

 本日は、財務金融委員会の質問の機会をいただきまして、委員長初め理事の皆様に感謝を申し上げます。尊敬をいたします与謝野大臣のいらっしゃる財金委員会で久々の質疑でありますので多少緊張しておりますが、答弁者におかれましては、真摯かつ明瞭なる御答弁をひとつよろしくお願い申し上げます。

 まず、金融商品取引法、金商法の改正案について質問をしてまいります。

 今回の改正案の柱の一つに、先ほど来議論になっております格付会社への公的規制の導入があります。目的は、市場の公正性、透明性の確保、このようにうたわれておりますが、要は、市場参加者に正しい情報を伝えるための体制の整備だろう、このように思うわけであります。契機となっておるのは今回のサブプライム問題であるわけでありますが、米国で起きたサブプライム問題は、日本での金融危機、我が国で起きたかつての金融危機とよく対比をされるわけですが、私は大きな点で異なることがある、こういうふうに見ております。

 それは、日本の場合は、我が国の場合は、伝統的な銀行中心の間接金融のもとでこの問題が起きた。これに対して米国の場合は、極めて複雑に発展した、重層的に重なり合うような、いわゆる市場型金融の仕組みの中でこの問題が起きた。これが根本的にこの金融危機、二つの危機が違うんだろう、こう思うわけであります。そして、複雑に絡み合った市場型金融の仕組みで問題が起きたからこそ、全体的なというか世界的な危機に発展した、こう思います。

 そこで、与謝野大臣にまず最初にお伺いしたいわけでありますが、格付会社の格付というのは、本来は投資家への参考意見、すなわち、いろいろな意見のあるうちの一つの意見である、こういうものであるはずなのに、実際には、米国、いや我が国においても、市場における、言葉がいいか別ですが、神のお告げのような権威のあるものになってしまった。このこと自体が、格付というものが市場におけるお告げのようなものになってしまったということが、今回の金融危機を引き起こした原因になったと私は考えますが、この点について与謝野大臣はどのようにお考えですか。

与謝野国務大臣 先生御指摘のように、投資家が過度に格付に依存し投資判断をゆがめたと私も思っておりますし、格付でトリプルAがついていますと、何か絶対安全なものというふうに皆さんは理解をしながら投資行動をとられていたと私は思っております。

 今回の法案では情報開示の強化等をやりますが、何よりも、格付の意義とか限界について投資家の理解を促す仕組み、枠組みを整備し、投資家の格付への過度の依存を是正するということが必要だと思っております。

 それから、格付会社に関しては、格付をしてもらう会社の方が格付会社にお金を払うという変な形になっているんじゃないかということを指摘されておりまして、また、格付会社はいろいろな情報も持つものですから、いろいろインサイダー的なうわさも出てしまって、今や格付会社自体に対する信頼は大きく揺らいでいるということで、これもまた投資家にとって困ることなので、これをどうするかという問題の、今回の法律改正はその端緒であると思っております。

近藤(洋)委員 大臣の認識とほとんど一緒だろう、こう思うわけであります。

 私も、格付会社が要らないとまでは言いませんが、しかし、ここまで過度に依存する構造というのはやはりいびつだったんだろう、このように思うわけであります。そして、格付が機能停止になったら市場そのものも機能停止になってしまったというのはやはりどこかおかしいわけでありまして、その構造そのものをどこまで改善できるか、大臣の御答弁をかりれば、ある意味で限界を理解しつつ、こういうことなんだろう、このように思うわけであります。

 そこで、事実確認をしたいのですが、では、格付会社の実態というのは一体何なんだろうか、こういうことだろうと思うわけであります。

 私の認識では、格付会社は、米国のスタンダード・アンド・プアーズ、ムーディーズ、フィッチの三社の事実上は寡占市場だというふうに認識しておりますが、この三社のいわゆる世界的なシェアというのは一体どのようになっておるのか、総売り上げというのは大体どの程度になっておるのか、また、我が国においてはどのような売り上げを出しているのか、三社の日本駐在員の陣容はそれぞれどの程度なのか、また、我が国からどの程度の利益を上げているのか。これは事実関係ですので、事務方、お答えいただけますでしょうか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 二〇〇八年の世界全体の営業収益につきましては、各社の年次報告書等によりますと、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは約十二億四百万ドル、これは昨年の十二月末でございます。それからスタンダード・アンド・プアーズ、これはマグロウヒル社の一部門としてのクレジットマーケットサービスとして位置づけられておりますけれども、これをとりますと約十七億五千五百万ドルでございます。それから、フィッチ・レーティングスは約六億七千二百万ドルになっております。これは九月末の数字でございます。

 それから、日本国内の営業収益についてでございますが、各社はグローバルに活動しておりまして、国内ベースでの営業収益というものは公表しておりませんので、当庁においても掌握しておりません。

 それから、日本国内の従業員数についてでございますが、ムーディーズは二〇〇八年十一月時点で百四十四名、フィッチ・レーティングスは二〇〇八年十月時点で五十一名でございます。なお、スタンダード・アンド・プアーズにつきましては確認をしておりません。

近藤(洋)委員 きのうの質問通告でありますので、全部答えてくださいというのもしんどかったのかもしれないんですが。

 ただ、あえて申し上げますと、きょうの御答弁でも、S&Pについては日本でどれぐらいあるか確認をしておりません、こういう御答弁であります。日本に何人駐在しておるのか、この程度の情報は、格付会社の規制をする法律を出す大前提として、当局は把握をしているんでしょうけれども、答弁できないという状況なのかどうかはいざ知らず、当然お答えしてしかるべきだと思うんですね。我が国でどれだけの収益を上げているのかということについても、規制をかけるわけですから、どの程度のものがあるのかというのを当局が知らずしてこの法案を出しておるとしたら、大変問題だと思います。

 どういう事情でお答えできないのか、もう一度、局長、お答えいただけますか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 私ども、今の数字につきましては、アメリカの本社にも聞きまして、そして確認もして調べたところでございます。

 それで、例えばスタンダード・アンド・プアーズにつきましては、日本の拠点で幾らという数字は公表していないということでございまして、グローバルな全体のアナリストというものは数字を示しておりまして、この数字は、アナリストは千八十一名ございます。

 それから、国内での営業収益というものについては、これも、各社はグローバルな活動をさまざまにしておりますので、グローバルな全体の収益として今申し上げたような状況でございますので、グローバルな数字はございますけれども、日本国内に限る数字というのは公表していないというふうに承知をしておるところでございます。

近藤(洋)委員 当局としては、どの程度のものかというのは把握はしているんですね。それは公表できないから国会の場では発言できないということで、把握はしているという認識でいいんですか。把握もしていない、こういうことですか。そこだけ教えてください。

内藤政府参考人 お答えします。

 私ども、非公表の数字で聞いているところが一部ございますけれども、必ずしも、格付会社自身がそういった拠点ごとの数字というものについて公表していないというものもございますので、それについては把握していないというものもございます。

近藤(洋)委員 今明らかになったように、どういう会社かというのをきちっと把握しないその格付を信じていたということなんですね。そして、どういう会社かわからぬのに、先ほどもどなたか質問されていましたが、日本国債を勝手に格付されて一喜一憂していたというのは、本当にいかがなものかなという気がするわけです。

 これは、一体格付する人たちがどういう人たちで、何をやっていて、どういう収益構造なのかというのをきっちり把握することがまず最初だと思うんですね。せっかくこういうものをつくるんですから、つくる前にやはりある程度把握するということも必要だということをあえて指摘しておきたいと思います。

 これはまた事実関係でありますけれども、今回のサブプライム問題で、この三社を中心に大失態を演じたわけであります。トリプルAだったものが瞬時にジャンク債になった、こういう状況なわけですね。そして、その仕組み債の格付についても、公正な格付であったのか、世界的にも疑義が指摘をされているわけでありますが、こうした金融市場の大混乱の責任を、三社の経営陣は経営責任をとったのでしょうか、とらなかったのでしょうか。お答えいただけますか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 ムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、フィッチ、三社に対しまして確認をいたしましたところ、サブプライムローン問題において指摘された問題を踏まえ、各社において自主改善策を公表したというふうに聞いておりますが、代表者が引責辞任をしたという事実はないということでございます。

近藤(洋)委員 今回のサブプライム問題の主犯格とまでは言いませんが、かなりの部分の大きな要因をとっておるこの格付会社の経営者が、そして我が国の経済にも甚大なる影響を与えていることを引き起こしたこの経営陣が、みずからの商品が欠陥だったということが世の中で明らかになっているにもかかわらず、何ら責任をとっていないということも非常に解せない。この格付会社なるものの規律というものを疑わざるを得ないわけであります。

 そして、実質的にはこの三社の寡占市場だということなんですね。業界があるようでない。実質的にマーケットを支配しているのは、この米系三社が仕切っているわけですから、その三社が何もしてこなかった、経営陣の責任ということを明確にしてこなかったというのは、私は大変遺憾に思います。

 そして、先ほど来指摘をされておるわけですが、この格付というものがそもそもどのようにつくられるかということが不透明な点が、投資家から見て大変問題なわけであります。今回の法改正を受けて大まかなルールはつくられる、このようなことを承知しております。これ自体は評価をしたいと思うわけですけれども、米国においては投資家が知り得ない内部情報提供禁止についての例外規定がSECによって保障されている、日本においてはそのような事実はないということを事前の説明で伺いました。しかし、あえて伺います。

 仕組み債でなくても、社債の格付においても、例えば格付会社のアナリストが企業にヒアリングをすれば、公開情報以外のものを入手できるんじゃないでしょうか。さまざまなヒアリングを通じて、投資家が持ち得ない情報を格付会社のアナリストが入手して、そうしたものを総合して格付をするというふうに私は認識しますが、いかがですか。

内藤政府参考人 格付会社のアナリストは、発行体等から依頼を受けて格付を行う場合には、非公開情報を含めさまざまな情報を入手いたしまして、入手した情報を総合的に判断して格付を付与しているものと承知をしております。

 ただ、一般的に申し上げますと、格付会社は、内部規則を設けること等によりまして、非公開情報の乱用や漏えい等が行われないような措置を講じているというふうに承知をしております。

近藤(洋)委員 今御答弁あったように、守秘義務があるから聞いた話は外には出さないけれども、さまざまな話は入手できるわけですね。

 格付会社側はまさに依頼者からお金をもらって格付をするわけでありまして、お客様です。そのお客様の対象会社側は、ぜひともいい格付をつけたい。その方が資金調達コストが低くなるわけですから、できるだけPRするわけですね。そのPRの中身には、例えば近藤製鉄という会社があったとすれば、まだ内部決定だけれども、今度新しい太陽光パネルの事業に進出しようと思っているんですよ、こういう内部情報を格付会社のヒアリングで言う可能性は十分ありますよね。そういったことのさまざまな情報を入手することができるわけです。

 そういう意味においても、格付というのがどういう仕組みでつくられているのかというのは非常に難しい。また、その内部情報というのが果たしてどこまで決定されているのかというのもよくわからないわけですね。代表権を持つ者が言ったのか、部長の情報なのか。その辺も含めて、総合的に判断してつくられる格付というものが、一体どのような仕組みでつくられるかというのは非常に不透明であって、すなわち外部の投資家からはなかなか判断しにくいんだろう、このように私は思うわけであります。

 そこで大臣にお伺いしたいんですけれども、勝手格付でない、依頼される格付というものは、そもそも本質的に利益相反というのがあるんだろう、こう思うわけでありまして、今回の法改正でも体制整備を盛り込んでおりますけれども、本質的に、格付会社が利益を追求する株式会社である限り、そしてその収益源がもとの依頼側の会社である限り、公正な格付というのは無理なんじゃないか、難しいんじゃないか、このように思うわけですが、大臣はいかが御認識されますか。

与謝野国務大臣 そういう意見は確かにございます。例えば、社債を発行したい、なるべく安い金利の社債を発行したい、格付は高いものがないとそういうことはできないということになれば、格付してもらう方は、むしろどんなことがあっても高い格付が欲しくなるという問題があります。

 これは従前からいろいろ御批判があるところでございまして、評価対象の金融商品の発行者から報酬を受領するビジネスモデル自体に、利益相反の可能性が内在しているのではないかという形で問題は指摘されてきました。

 しかし、残念なんですが、国際的には、格付会社が株式会社形態であることまで規制すべきとの議論にはなっておりません。むしろ、証券監督者国際機構の基本行動規範にもあるとおり、営利法人であるか否かにかかわらず、アナリスト等の報酬体系を発行者等からの手数料と切り離す等の措置を通じて、独立性の確保、利益相反の回避を図っていくことが適当だということで、先生もお気づきだろうと思うんですけれども、やはりどこかでけじめをつけなきゃいけないところはあるんだという点は、私は全く賛成でございます。

近藤(洋)委員 大臣、私は、余り横文字を使いたくありませんけれども、この格付会社のビジネスモデルというのは、どうも公正な格付に対してはふぐあいがあるのではないか、このように思うんですね。

 ですから、株式会社であるならば、その収益構造を変えてもらわなければいけないのではないか、このようにも思いますし、どのようなペイをもらうのかということも含めて規制をかけるというか、料金体系というんでしょうか、そういうことも含めて規制をかけなければいけないと思いますし、本質的には、非営利法人のようなものが格付をするものなんだろうな、本来的にはそういうものなんじゃないか、このように思うわけであります。

 さらにお伺いしたいんですけれども、このアナリストというのは一体どういう人たちなんだろうか、この方々の倫理基準というのは一体どうなっているんだろうか、どういうものがルールとしてあるんだろうか、これも不透明なわけですね。

 例えば、証券だったら証券アナリストというものがある。公認会計士なら公認会計士という資格がある。格付は何の資格もないです。格付アナリストというのがあるかどうか知りませんが、公的な資格は聞いたことがありません。世界的にどのようなのがあるかというのも聞いたことがありません。

 私は、ここまで大きな問題になっている以上、この格付にかかわるアナリストの方々というものに対する倫理規定なり資格というものもあわせて整備すべきではないか、これは国際的にも整備すべきではないかと思うわけですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 証券監督者国際機構の基本行動規範では、格付は、アナリスト個人ではなく格付会社が行うべきものであり、その際、格付会社は、適切な知識及び経験を有する者を用いるべきとされております。

 格付に関する資格を整備すべきとの御指摘については、格付手法は各社独自のものであり、会計基準等のように統一された基準は確立されておらず、また国際的な合意が得られていないことから、困難ではないかと考えられております。

 なお、倫理基準等を整備すべきとの御指摘については、IOSCOの基本行動規範において、アナリストに対し、主担当分野の証券の売買禁止や一定額以上の贈答品の受領禁止等が具体的に規定されております。

 私個人は、アナリストという言葉からは余り感銘を受けない人間でございますし、今から十年以上前にイギリスに行って、イギリスの中央銀行関係者に会いましたが、冗談のように、与謝野さん、ムーディーという会社はスタンダードでプアーな会社です、スタンダード・アンド・プアーはとてもムーディーな会社です、こう言っていまして、やはり皆さん、どこかいま一つ信用しておられないというところがあるのではないかと思います。

 ただ、社債の発行等々で、格付会社が果たす役割というのはそれなりに重要な部分もあるわけですから、こういうところが、やはり信頼される会社、あるいは信頼されるいわば一つのインスティテューションである必要は、全世界的な取引においては私は重要なことだと思っております。

近藤(洋)委員 さすがイギリス人だな、このように思うわけですが、全くそういう気持ちというのは、みんな世界の金融当局者は、格付会社に対して果たしてというのはずっと思い続けながら見てきたんだろう、このように思うんですね。

 ただ、結果としてこのような大惨事を引き起こした、こういうことだろうと思うんです。だからこそ、徹底的にこれはメスを入れる必要があるんだろう、このように思うわけですし、資格、倫理基準についてもぜひ御検討いただきたい、このように思うわけであります。

 ただ、こうした格付会社に対して、残念ながら我が国もお墨つきを与え続けてきたという歴史があるわけであります。

 委員長のお許しを得て資料を配付させていただいておりますけれども、こちらの資料の一枚目と二枚目、これは日米の格付会社の沿革という金融庁のつくられた資料でありますが、我が国で格付会社が本格的に動き出したのは、具体的には一九八〇年代後半からであるわけであります。そして、九二年に指定格付機関制度というのを導入しております。

 指定格付機関というのは、もう先生方御案内のとおりでありますので説明を省略いたしますが、二枚目のページのところに指定格付機関とはと、いわゆる公的利用の枠組みとして、公的にこの指定格付機関というものを五社、S&Pを初めとする米系三社プラス日本系国内二社を指定格付機関として採用しております。それぞれの開示情報の基準としてこれを使っていいよ、このようなことであります。

 さらに二〇〇六年には、バーゼル2の金融機関の資産査定、自己資本比率の査定において、適格格付機関という形で、この格付をもとに、信用して使って自己資本比率を計算しますよ、こういう形で、適格格付機関という形でこの格付を使っておるわけでありますね。

 これは何を意味するかというと、先ほどもちょっと驚いたんですが、局長の答弁で、大体、陣容がどういった会社なのか、さなかでもまだわかっていないこの三社も含めて、この格付を信用しますという形で一種お墨つきを与えてきたわけです、公的な利用という形で。このことはすなわち、残念ながら我が国金融当局も、この格付をある意味で間接的に、絶対的なものだとは言わないけれども、相当信憑性が高いんだという権威づけに加担していたんじゃないか、こうとられても不思議はないと思うのですが、このような認識はございますか。

 そして、今回の格付の機関の規制の見直しに伴って、こういう指定格付機関、適格格付機関というものについて見直すお考えはありますでしょうか。お答えいただけますか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 サブプライムローン問題をめぐりまして、格付の公的利用が格付に対する過度の依存を招き、投資者の投資判断をゆがめられたのではないかという指摘、これは委員いろいろ御指摘されているところでございます。

 このため、我が国におきましても、開示制度上機動的な証券発行を許容するためのいわゆる発行登録制度でございますけれども、この利用適格要件といたしまして、これまで用いてきた指定格付機関の格付というものの要件の規定でございますが、これを今般撤廃する予定でございまして、現在、見直しに向けた作業を開始しているところでございます。

 具体的に申し上げますと、格付の公的利用につきましては、内閣府令において規定をしているところでございますが、これを今後改正するというふうに考えております。

 それから、指定格付機関制度というものについてでございますが、これは、今般、格付会社の登録制度を導入することから、登録制度に統合していくということを予定しているところでございます。

 他方、銀行の自己資本比率規制において利用可能な格付会社を定める適格格付機関制度がございますが、これにつきましては、国際的な銀行の自己資本ルールを定めるバーゼル合意を踏まえたものでございます。このため、今般、適格格付機関制度は、登録制度そのものとは別制度としつつ、登録を受けた格付会社であることをその選定要件とするというふうに予定をしているところでございます。

近藤(洋)委員 局長、要するに、こういうものを利用してきたことは、お墨つきを与えたということに加担したという認識はありますかという、その認識についてのお答えはなかったんですが、その御認識はありますか。

内藤政府参考人 これまでの指定格付機関制度といいますのは、国際的に認知をされた格付会社というものを指定するということにとどまる制度でございまして、格付会社に対して、監督でありますとか検査といったような権限は、残念ながら持ち合わせていなかったという制度でございます。

 今回、欧米を震源地といたします金融危機の中から格付会社の問題というものが表面化をいたしまして、国際的に議論をなされました。各国も、規制を一層強化しよう、あるいは新たに導入しようという機運でございます。これにあわせまして、私どもも、国際的な観点から登録制度というものを導入しようということで、今般法案の中に書き込んだわけでございます。

 これまでのやはり格付会社に対する規制というものが必ずしも十分徹底されていなかったということについては、当然ながら反省もございますし、そしてまた、今回の金融危機、欧米発ではございますけれども、これに関連する諸問題が表面化されたということについては十分認識をいたしまして、登録制度というものを導入しようということになったわけでございます。

近藤(洋)委員 もっときちっと反省を明確にした方がいいと思うんです、局長、当局としても。だって、だれも責任をとっていないんですよ。

 これだけめちゃくちゃな格付をした三社の経営陣は、形として責任もとらずに、それで、紙くずになった、投資家たちだけが被害をこうむって、投資家だけじゃない、私の地元の中小企業の町工場の工場主たちだって、結果としてこのサブプライム問題で大変な不景気、不況の中で苦しんでいるわけですよ。主犯はだれかといえば、こういう格付制度に依存してきたというのは大臣もお認めになっているわけですよ。

 そういう中で、こういったものを利用してきて、反省に立って、欧米もこうしていますからこうしますという程度の答弁では、とてもよくない、このように思うんですね。元凶、大きな危機の根本にこの格付問題があったわけですし、我が国政府もそれに乗ったわけですよ。乗ったわけです。だから、それについてはきちんと当局は反省すべきです。

 もっと言えば、大臣、これは意見だけ申し上げますけれども、今G20の中で格付に関する議論がさまざま行われています。これは、変な話ですが、アメリカ政府に言われる筋合いの話じゃないわけですよ。アメリカ政府は、自分たちがその制度で我が世の春を謳歌してきたわけですから、冗談じゃないわけであります。

 我が国が先導的にどんどん主張をし、意見を述べ、そしてこの議論をリードする。ヨーロッパとともに、ややヨーロッパがきつ目のことを言って、そして日本は中間というようなことのように聞いておりますけれども、むしろ日本が徹底的にこの議論をリードすべきだと思いますが、御感想いかがでしょうか、大臣。

与謝野国務大臣 日本としては、あらゆるレベル、首脳のレベル、また財務大臣レベル、事務のレベルで、言うべきことは全部言っているつもりでございます。

近藤(洋)委員 言うべきことは言っているとおっしゃるなら、大臣、せめてこの質疑で、S&Pの状況だとかなんとか、きちっと資料を提出できるぐらい金融当局に準備させてください。開示基準が云々とか、寡占している三社の状況の従業員数すら国会で言えないようなていたらくでは何をか言わんやだということは指摘したい、このように思います。

 次に、金融商品取引所と商品市場の相互参入の話についてお話を伺いたいと思います。

 今回の法改正では、商品先物市場と金融市場の相互参入、子会社方式だけではなくて、みずからの市場がそれぞれ認可、許可を受ければ市場を開設できるような仕組みとなっております。これは大変大きな動きだろうな、このように思うわけであります。

 お手元の資料の三ページは、これは東証の売買金額の過去の推移であります。折れ線グラフ、ちょっと見にくくて恐縮ですが、三角のマークが我が国の東証でありますけれども、二〇〇七年は、ニューヨークに大きく差を引き離されて第四位であります。

 そして、次のページは、いわゆる商品先物市場のランキングでありますが、これは見る影もない状況でありまして、二〇〇四年は、東工取、東京工業品取引所、世界で第三位だったものが、二〇〇七年では第九位、二〇〇八年の直近の数字では第十位、このような数字になっております。とりわけ、商品先物市場の急落は目を覆わんばかりなわけでありますが、日本のマーケットを何とか再生する、この観点からも私は、東証が商品先物を扱うということは大変意味のあることなんだろうな、このように思います。

 既に商品先物の世界でも、穀物と工業品が一緒になったらいいんじゃないかということは、実際に先物会社の方々から、ユーザーから見ると一つにしてほしい、こういう声が強いわけでありますが、残念ながら、これは役所の縦割りなんでしょうか何なんでしょうか、ばらばらになっているという状況であります。

 こちらの方はなかなか一本にならないわけでありますが、東証であれば、それだけの力量と陣容とを持っているのではないか、このように推察するわけであります。これは、日本のマーケットを再生する、東証にとっても商品先物を扱うことはプラスになると思いますし、何よりも、商品先物を取り扱う商社だとかさまざまな関係事業者にとってみても、マーケット自体が大きくなるということは喫緊の課題だという声が強いわけであります。

 そういう観点から、大臣として、せっかくこうした窓口が開いたわけですから、関係閣僚とも連携をして、東証にひとつ集約するという、集約まではいかなくても、大きく商品先物を取り扱わせるということで指導力を発揮されたらいかがかと思いますが、大臣、どうでしょうか。

与謝野国務大臣 どちらかというと、商品取引という言葉を聞きますと、非常に投機的な要素が強い、何かばくちを打っているような印象を与えているということは非常に残念なことであって、商品取引というのは、自分がつくり出したものの値段を確定するとか、あるものの価格を平準化するとか、いろいろな作用があるわけでして、商品市場、先物取引というのは、経済にとっては非常に大事なものであると思います。

 ただ、先生御指摘のように、穀物と工業品とが分かれている、それからやはり売買高が急速に減っているというので、全体の商品市場、これは世界じゅうでは非常に盛んになってきているわけで、東京の相対的な地位が落ちているというのは、私は非常に残念なことだと思っております。

 東証が参入するかどうかというのは東証自体の御判断であると思っておりますけれども、やはり商品取引の持っている経済的な意義というのをもう少し広く国民に理解していただく必要があるのではないかと思っております。

近藤(洋)委員 大臣、この商品取引というのは、特に商品先物市場というのは、実物経済のインフラとしても極めて重要な役割を果たしておるわけでありますし、本来、御案内のとおり、この商品先物というのは日本が発祥なわけであります。日本がもともとスタートさせたという伝統の分野にもかかわらず、現在このような状況になっているというのは大変残念な状況であるわけでありますから、東京市場の再生という意味を込めて、もちろんこれは東証が経営判断でお考えになることであろうかとは思いますけれども、ぜひ、金融担当大臣としても、指導力といいますか発揮していただきたいな、このように思うわけであります。

 もう一点。同時に、商品先物市場、昨年は原油、また穀物も含めて大変な急騰をしたわけであります、まあ一昨年から続いたわけですが。この動きは逆に、小さな商品先物市場に大きなお金がどっと流れる、WTIがまさに百四十ドル行ったんでしょうか、ちょっと記憶があれでございますが、大変な急騰をしたということで我が国の産業界も大きな影響を受けました。

 これは所管が経済産業省でありますけれども、相互参入ということになれば、商品先物の急激な乱高下については、例えば仮に東証で行うことになれば、それは金融担当大臣も見るということになろうかと思いますのでお伺いしておるわけです。

 こうした乱高下についての対策、世界的な資源高、資源の先物の乱高下、暴騰、暴落に対しての対策というのも、これは今、油がこういう状況ですから、皆のど元過ぎればという空気になっておりますけれども、今から準備しておく必要があるのではないかという思いもあるものですから伺っています。対策を考えるべきじゃないか、このように思いますが、大臣、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 今後整備いたします相互参入の枠組みを利用いたしまして、金融商品取引所が商品市場を開設する場合には、商品取引所法のもとで適切な規制、監督を受けることになります。仮に商品価格の高騰等が生じた場合、商品取引所法の改正法案において、商品相場の異常な過熱等が生じた際に、取引所に対し、証拠金の引き上げ等多様な措置を命じることができる規定が盛り込まれているものと承知をしております。

    〔委員長退席、山本(明)委員長代理着席〕

近藤(洋)委員 ぜひよろしくお願いを申し上げます。

 次に、為替取引、資金決済に関する法律案についてお伺いをしたいと思います。

 これまで、銀行のみに基本的に認められていた送金業務について、登録制として認める、このような法改正であります。先ほどからも指摘をされておりましたが、私も、これは少額ということでありますが、御答弁で、五十万から百万ということで御検討されているというお話でありましたけれども、事業者の健全性について、役所として本当にどこまで保証を担保できるんだろうかと危惧するわけであります。

 例えば、送金事業会社が決済先の事業会社と結託してはかれば、詐欺をしようと思えば、これはできるんじゃないかと私のような素人はすぐ思ってしまうんですが、こういう犯罪が起きやすくなるのではないかと非常に危惧するわけであります。改めて、こうした予防策、どこまで対処できるのか、当局、お答えいただけますか。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 資金移動業者の制度を今般導入しようという運びでございますが、業者の登録に際しまして、資金移動業を適正かつ確実に遂行するために必要な財産的基礎や体制の整備、それから第二点が、規定を遵守するために必要な体制の整備、第三点が、ほかに行う事業が公益に反しないか、第四点が、取締役等のうちに犯歴がある者がいないかといった要件について審査をいたします。そして、こうした要件に合致しなくなったときや不正な手段で登録を受けたときは、登録の取り消し等の行政処分の対象となるということでございます。

 こうした枠組みの適正な運用を通じまして、不適格な事業者の排除に努めてまいりたいと考えております。

近藤(洋)委員 検査も入る、こういうことでありますから、ぜひきちっとやっていただきたい、このように思うわけでありますが、今回のいわゆる規制の緩和ですね、参入規制の緩和でありますから、緩和と同時に、金融庁は、いわゆるポイントサービスや収納代行サービスなど幅広い決済サービスについても、法規制を当初検討されたと伺っております。ポイントサービスなどは私もよく利用をするわけですが、これはもう事実上のお金のように使われているわけであります。

 こういった場合の、破綻した場合、どういった安全網をつくるのかといった議論というのは当然あってしかるべきだろう、このように思うわけであります。こちらの資金移動の自由化だけを認めて、こちらのそういったポイントサービスや収納代行サービスといった幅広い決済サービスについての法規制をなぜかけなかったのか、片肺飛行の感も強いのですが、私は、中期的には整備すべき必要がある、このように思いますが、いかがでしょうか。

内藤政府参考人 御指摘のポイントサービスに関してでございますが、金融審議会におきまして、その取り扱いについてさまざま議論をいたしました結果、意見がある意味で分かれまして、性急な制度整備について現時点においては行わないこととされたところから、本法案においては、これらのサービスを直接の対象とした制度整備は行っておりません。

 このポイントサービスについての金融審議会における議論の内容について若干御説明をいたしますと、ポイントサービスは、汎用性の高いものもございまして、支払い手段として利用される機会がふえていることから、何らかの制度整備が必要であるという考え方がある。他方、ポイントは、マーケティングの手段として発行されるものであり、支払い手段としての機能は限定的であるという考え方から、現時点において制度整備の必要はないのではないかという考え方がもう一方で示されたわけでございます。その結果、先ほど申し上げたように、現時点においては性急な制度整備は行わないというのが当面の結論でございます。

 なお、ポイントサービスにつきましても、ポイントと称していても対価を得て発行されるというものについては、前払い式支払い手段、いわゆるプリペイドカードと同様の扱いとして、規制の対象にするということでございます。

近藤(洋)委員 片っ方だけ規制を緩和して、だけれども、ほかは野方図にしてというわけにはいかぬと思うのですね。私は、この部分というのは国民生活にも大変幅広く浸透している分野でもありますから、すべからく規制規制というわけではないわけですけれども、しかし、やはり何らかの措置というのは法的に必要なのじゃないのかなという問題意識だけ指摘をしておきたい、このように思います。

 最後の質問であります。

 この法案とはかかわりないことで恐縮なんですけれども、いわゆる三月危機というのを、日本銀行も含めてまさに政策総動員で乗り切られたことはよかった、このように思うわけであります。しかし、足元の経済の状況を見ますと、やはり中小企業を中心に大変な状況にあるわけで、とりわけ銀行には、中小企業への資金繰りに万全を期すためにも自己資本を厚くしてもらいたい、このように思うわけであります。

 残念ながら、機能強化法ができてまだ実際には三行しか実行されていないということでありますが、もっと多くてもよいのではないか、このように思うんですね。資本注入はよいことなんだというぐらい、過去の悪いイメージがあるものですから、何とも皆、二の足、三の足を踏む経営者の気持ちはわからないではないですが、もう空気も変わったということで、ぜひその辺、これは日本経済の目詰まり感をなくすための措置でありますから、資本注入について、ためらうことなくということを大臣も重ねて発言されていますが、改めて積極的に行動をとられるべきかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 銀行側の自己資本からいって、貸し出し余力を持つということは非常に大事なことでありますし、今回の資本注入はかつての資本注入とは全く別のこと、別の意味を持つものでありますけれども、メガバンクを中心に相当なアレルギーが実はあると私は思いますけれども、そういうものは少しずつ、我々の善意を理解していただきたいと思っております。

近藤(洋)委員 時間ですので、終わります。

山本(明)委員長代理 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主党の鈴木克昌でございます。

 金商法の一部改正、そしてとりわけADRについて、まず最初に御質問させていただきたいというふうに思います。

 言うまでもありませんけれども、近年、金融の自由化が進んでまいりました。いわゆる金融分野における垣根が低くなったということなんですが、そういう業界の垣根の中におさまらない金融商品やサービスが登場してまいりました。そして、その販売窓口も非常に多様化をしてきております。釈迦に説法でありますけれども、生命保険や投資信託が銀行の窓口で売られるようになってきておるというふうに現状はなってきたわけでありますが、同時に、窓口が多様化をしてくると、いわゆる消費者との間でトラブルが発生しやすくなっているということだと思います。

 一つ例を申し上げますと、年金で生活をされておったある御夫婦が、退職金の一部を、例えば五百万円をある銀行に預けておった。満期になったので、引き続き同じように定期預金に預けようということで、奥さんが銀行に行きました。そうしたら、銀行の窓口の、かねてより顔見知りの人からある商品を勧められた。何とか保険という商品で、これは非常に利回りも高く、非常に有利だということで、奥さんはその言葉を信じて申し込みをした。そのときに、重要なことが書いてあるパンフレットを渡されたそうなんですが、安全で有利な商品だからという言葉を信じて、そのパンフレットを余りよく読まなかったということであります。

 三カ月ほどして、御主人が入院するということになりましてある程度まとまったお金が必要になったので、この前申し込んだ何とか保険をひとつ解約してくれ、こういう話をしたところ、銀行側から、今解約すると解約金等々が引かれて、また外貨で運用しておるので、現在の為替レートでは戻ってくるお金は三百五十万円ぐらいだ、こういうふうに言われてびっくりしたわけですね。さらに、あなたがお買いになったのは保険なので保険会社に問い合わせてほしい、こういうふうに言われたということであります。

 こういった事例は結構数が多いというふうに私は思うんですが、こんなときのために、独立の第三者がいわゆる消費者と金融機関の双方から話を聞いて解決をしていく、そして解決案を迅速に提示できればいいのじゃないかというのが、一口に言って、裁判外の紛争解決制度、いわゆるADRだ、このように承知をいたしておるところであります。

 そこで、御質問させていただきますけれども、いわゆる金融関係のADRというのはまだ始まって間がないわけでありますけれども、現在までの金融機関のADRの現状、例えば機関の数とか申し込みの件数、和解とか仲裁等の件数等についてまず最初に御質問したいと思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 現在、全銀協、日証協、生保協会など、十六の金融関係の業界団体、自主規制機関におきまして紛争解決が行われているところでございます。この十六の業界団体等が平成十九年度に取り扱った紛争につきまして、紛争解決の申し立て件数の合計が二百五十六件、和解などによる解決件数の合計は百十一件であると承知しております。

鈴木(克)委員 その中で、特に全銀協のいわゆるあっせん委員会、これは昨年の十月から活動が始まった、このように記憶をしておるわけですが、伺いますと、ことし一月二十七日現在の状況では、昨年の十月から十二月までの申し立て件数というのは十五件であった、そして、そのうち七件を受理し、三件が不受理であった、残り五件はまだ審理中というふうに伺ったわけであります。

 その後、この十五件の申し立てはどのように処理をされておるのか。また、あっせん案を示した後の結果についてもお示しをいただきたい。さらに、ことしの一月から三月末の申し立て件数は何件であったのか教えていただきたいと思います。

三國谷政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のとおり、全銀協は、昨年十月一日にあっせん委員会を設置いたしました。

 昨年十月から十二月に新規に申し立てのありました十五件につきまして全国銀行協会に確認したところによりますと、あっせん委員会によるあっせん案の提示後和解に至ったものが三件、あっせん案の提示後不調となったものが一件、申立人による申し立ての取り下げが一件、それからあっせんが打ち切られたものが三件、適格性審査の結果不受理となったものが三件、そのほか、あっせん手続が現在継続中のものが四件であると承知しております。

 また、ことしの一月から三月までの申し立て件数は十一件でございます。

鈴木(克)委員 今お示しをいただいたわけでありますが、果たしてこれが件数的に多いのか少ないのか、この辺は今後少し動きを見ていかないと結論を出せないというふうに思うんですが、私は、やはりまだまだ潜在的なものはあるのではないのかな、このように思っております。

 そこで、今回、この法案についてでありますけれども、先ほど十六団体というふうに御答弁がありましたけれども、十八の機関が存在をしておるというふうに私は承知をしておるわけですが、中身は、銀行関係、証券関係、そして保険関係、信託関係、そして先物関係等々、本当に多岐にわたっておるわけです。これは、細分化をされておると言えばそれまでなんですが、例えば消費者がでは苦情を訴えたいというふうに考えたときに、そもそも余りにも窓口が多いというか数が多いものですから、どこに相談をしていいのかわからない、結果、最も適切な相談先にたどり着けない、こういうケースが生じてしまうのではないのかな、このように思います。

 現在ある金融機関の法律というのは、御案内のように、業態ごとに策定をしておるわけであります。銀行は銀行法、そして貸金業は貸金業法ということでありますし、保険は保険業法ということですから、そこで今回の改正案では、それぞれの業態の中にいわゆるADR、紛争解決制度を創設しよう、こういうふうにしております。私、ここへ持ってきたんですが、まさにこれだけの、ここに挟んである箇所がすべて今回法律として入れられたということであります。ほぼ同じような条文なんですね。

 恐らく、お考えとしては、紛争が起こった場合にはとりあえずその業態ごとに対応する、そしてそういうことを積み重ねていくということで、ある意味では第一歩を踏み出したということで評価されることかもしれませんけれども、先ほど申し上げましたように、余りにも業態をまたがったいろいろな形の商品というのが出てきておるわけでありまして、しかも販売窓口が多様化しておるという現状ですから、それぞれの業態ごとでの対応では、対応し切れない紛争というのが起きてくるのではないかな、このように思っております。

 したがって、金融関係の紛争は、こういった対応の細分化ではなくて、一本化して対応していくということが必ずこの先必要になってくる、私はこのように思いますけれども、これについて、これからの紛争処理のあり方ということで御答弁をいただきたいと思います。

谷本副大臣 お答えさせていただきます。

 利用者保護、利用者利便の向上の観点から見れば、議員御指摘のとおり、業態横断的な金融ADR制度が構築されることが将来的には望ましいというふうに考えております。

 しかしながら、業界団体等によるこれまでの苦情処理、紛争解決の取り組み状況はまちまちであることや、専門性、迅速性の確保等の観点も踏まえ、本法律案においては各業法ごとに、業態を単位として金融ADR制度を導入することとしております。また、一つの団体が複数の業態の指定紛争解決機関となることも可能としており、民間主導の積極的な取り組みに期待をしたいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 さっきから何遍も申し上げておるように、やはり私は、一本化した、統一した制度にいち早く持っていくべきだ、それがいわゆる消費者側に立った、まさに国民の目線、消費者の目線に立った政策であろうというふうに思っています。どんどん商品も変わってきますし、本当に我々が考えている以上に物事はどんどん先に進んでいっておるということだと思いますので、私は強くこのことを指摘させていただきたい、このように思っております。

 さて、次でありますが、郵貯そして簡保が果たしてどうなのかということをちょっとお伺いしていきたいと思うんです。ゆうちょ銀行の紛争そしてトラブルについていわゆるADR機関があるのかどうか、そして、かんぽについてもどうなのかということであります。

 現在、郵貯や簡保に関するトラブル、紛争というのはどのように解決をされているのか。裁判所で和解や仲裁というようなケースが果たしてあるのかどうか。特にかんぽ生命では、申し上げるまでもありませんけれども、最近の報道で、約八十万件の保険金の不払いの可能性がある、このように言われております。そうなると、一段と苦情や紛争が多くなる可能性があるというふうに私は思うんですが、この八十万件の保険金の不払いの報道がなされて以降、いわゆる苦情や紛争の申し立てというのは現状どんなふうになっているのか。その辺についてまずお伺いをしたいと思います。

鈴木大臣政務官 ゆうちょ銀行並びにかんぽ生命のADRについてのお尋ねがありました。

 現在、ゆうちょ銀行におきましては、ゆうちょ相談所を設置しまして、公正かつ中立な第三者の立場から、迅速かつ誠実に対応する苦情・紛争解決支援サービスを提供しているところでございます。ちなみに、このゆうちょ相談所は、平成十五年、金融審議会の答申等を受けまして設置されたもので、外部機関への委託による、金融機関における業務経験を有する者等を相談員として配置しており、お客様からの苦情の申し出等を受けた場合は、申し出の内容を十分にお聞きし、その解決に向けた支援を行い、お客様の正当な利益の保護を図るものでございます。

 また、かんぽ生命に関しましても、お客様相談窓口等での説明ではどうしても納得いただけず、第三者的な立場での審査を御要望される場合等は、かんぽ生命保険に設置された査定審査会において、保険契約者等からの審査の請求に基づき、中立かつ公正公平な審査を行っているものでございます。査定審査会につきましては、弁護士、医師、消費者問題に見識のある者等から構成されまして、査定業務の適正な執行、維持を図るとともに、保険契約者等の正当な利益の保護を図ることといたしております。

 それからまた、八十万件の保険金の不払いの可能性の報道の後の苦情や紛争の申し立ての現状でございますが、旧日本郵政公社時代の簡易生命保険につきまして、かんぽ生命保険から機構を通じまして、最大で八十万件の不払いの可能性があると聞いているところでございます。かんぽ生命保険に、四月八日以降、苦情や紛争の申し立ての状況を確認しましたところ、本件報道関係のお客様からのかんぽコールセンターへの苦情を含む問い合わせは、十二日までの累計の速報値が三百一件、かんぽ生命保険における査定審査会への請求がゼロ件と聞いております。

 以上でございます。

鈴木(克)委員 今度、金融庁にお尋ねをするんですが、今お聞き及びのように、結論からいうと、ゆうちょ銀行そしてかんぽについては、機能としては同じようなものはあっても、はっきりと法的な裏づけのADRということではないわけですね。今回漏れているわけですよね。私は、これは銀行や証券のADRと同じようにやはり郵貯も簡保もやられるべきだ、このように思っておるわけですが、それについて金融庁はどのような見解をされておるのか、御答弁いただきたいと思います。

    〔山本(明)委員長代理退席、委員長着席〕

谷本副大臣 ただいま説明がありましたように、ゆうちょ銀行についてはゆうちょ相談所、そしてかんぽ生命については査定審査会等において現状は紛争解決が行われていると承知をしております。

 金融ADR制度におきましては、紛争解決機関を指定する制度でありますので、同じ業態内であっても複数の指定紛争解決機関が設立、指定されることもあり得ますが、委員指摘のとおり、将来的には、利用者のことを考えて、しっかりと業態横断的な統一された機関の設立が期待されますし、それに先立ちまして、まずは業態内においても指定紛争解決機関の統一が進んでいくことを期待しております。

鈴木(克)委員 やはり私は、計画的に、しかもある程度目標を定めてそういう方向をぜひ出していっていただきたいというふうに思います。これもひとつ強く要望をしておきたいというふうに思います。

 さて次に、ちょっとADRから離れるわけでありますが、現下の経済情勢についてお伺いをしていきたいというふうに思うんです。

 何遍も言われておりますように、百年に一度の危機ということでありますが、我が国の払った犠牲というのは、欧米諸国とはまた違った意味で非常に大きな痛手があったというふうに思うんですね。それは、金融面での痛手ということよりも、いわゆる実物経済へ非常に大きな打撃が今来ておるということだと思います。

 これも前に委員会でお伺いしたんですが、与謝野大臣は当初は、ハチが刺した程度だ、こうおっしゃっておった。ある意味ではここまで深刻な問題ではないというふうにお考えになっておったのかもしれませんが、とんでもない読み違いでありまして、まさに死に至るかもしれないほどハチの針に猛毒が含まれておったというふうに言ってもいいんじゃないかなと私は思います。したがって、今の日本の状況というのは、まさに集中治療室に入り、そしてカンフル剤を打ったり、壊疽になりかかっておる部分を切除するというぐらい重傷、満身創痍というのが今の実情ではないのかな、こんなふうに実は思っております。

 いずれにしても、そういうようなことを生んだというか発症させたアメリカの市場万能主義というのは、もう本当に責任が非常に大きいというふうに思っておるわけでありますが、そんな中でも、各国は相次いで経済対策を打ち出してきています。そして、金融サミットのような国際的な場で話し合いもされておるわけでありますが、報道によると、新興国を含めて株価が若干上がってきておるということや、それから、アメリカの住宅着工に少し動きが出てきておるとか、個人消費も若干ではありますけれどもプラスに転じておるというふうに報道があるわけです。

 もちろん、今の大変な、奈落の底の経済指標がそう簡単に回復をするということではないと思いますが、今申し上げたような一部のいわゆる指標について、政府はどのように今評価というか判断をされているのか、まずそこをお伺いしたいと思います。

与謝野国務大臣 先生御指摘のように、幾つかの指標において改善が見られる。例えばアメリカの例をとりますと、三月の自動車販売台数は前月比八・一%の改善を見ております。二月の住宅着工件数は前月比二二・二%の増加、二月の製造業受注は前月比七・一%増。減るよりはこういう状況が見られることは好ましいことでございますけれども、こうした一部指標における改善の動きは、天候要因や前月の減少の反動といった一時的要因によるところが大きいわけでございまして、世界経済、米国経済は依然として厳しい状況にあるというふうに認識をしております。

鈴木(克)委員 前にハチが刺した程度だというふうにおっしゃっておって、今回はある意味では非常に慎重に、しかも冷静に分析をされておるんではないのかな、このように私は思っております。おっしゃるように、今、天候とか前月の減少の反動というふうな御指摘があったわけでありますが、そういうようなところの実態をきちっと見きわめていく必要があるのではないかなというふうに思います。

 ただ、私は、経済というのはやはり気の問題ですから、本当に寄ってたかって悪い悪いと言い続けるということはいかがなものかなというふうに思いまして、多少でもいい傾向が出てくれば、こういう面もありますよということもやはりアピールしていく、打ち出していく必要があるのではないのかな、こんなふうに思っておりまして、あえてそのところを確認というか質問させていただいたというふうに御理解をいただきたいと思います。

 さて、次の質問なんですが、きょう一番お聞きしたいところはここになってくるわけでありますが、まさに今、グローバル経済の中で、新興国の経済の動向というのを外しては、これは語れない状況だというふうに思います。いわゆる先進国だけが寄って話をしても、まさにこの新興国がどういう動きになっていくのか、ここをきちっと見きわめる必要があるというふうに思うんです。

 さきの金融サミットで、二十カ国が集まって協議が行われました。そのときには、大きく言って三つだというふうに思うんですが、一つは保護主義の拡大を阻止しようということ、二つ目は世界経済の回復に向けて五兆ドルの財政支出を行っていこう、そして三番目にはヘッジファンドなどへの規制、監督をしていこうというようなところが、いわゆる議論の一番の中心点ではなかったのかなというふうに思うわけであります。

 特にお伺いをしたいのは、先ほど申し上げた財政出動の五兆ドルなんですね。これはどのように計算をされて五兆ドルというのが積み上げられてきたのか。なぜかよくわからないというのが一部学者の間でも出ておるのは御案内のとおりであります。五兆ドルというのは、私も計算をしてみましたら、当然、円換算にすると五百兆円というような金額でありまして、世界人口が今六十七億と想定をしますと、一人当たり七万五千円近くになる、私の計算機が間違っていなければそういうふうに思うわけですね。これはもう大変な金額です。

 そこで、まずお伺いしたいのは、その五兆ドルの主要国の内訳、これはどんなようにその五兆ドルというのが議論をされているのか。報道によりますと、アメリカで二兆ドル、我が国は六千億ドル、約六十兆というふうに言われておるんですが、まず五兆ドルの主要国の内訳がどんなふうになっておるのか、それから我が国が六十兆円というのは、どのように計算をしたら六十兆円になるのか、その二点をまずお伺いしたいと思います。

中尾政府参考人 お答え申し上げます。

 確かに、ロンドンのサミットにおきまして、G20を中心とする参加国は、現在行われておる財政拡大によって来年末までに拡大幅が五兆ドルに上るということを確認して、成長を回復するために必要な規模の継続した財政努力を行うということにコミットしております。

 この五兆ドルという数字、どういうふうに計算いたしましたかということをちょっと御説明いたしますと、IMFは、二〇〇八年から二〇〇九年、二〇一〇年、この三年間につきまして、危機が始まる前の二〇〇七年をいわばベースラインといたしまして、そのときの赤字幅と比べて、二〇〇八年は二〇〇七年に比べてどれだけ財政赤字が拡大しているか、二〇〇九年は二〇〇七年に比べてやはりどれだけ拡大しているか、それぞれ試算をいたしまして、その合計額を二十カ国について試算したというのがこの五兆ドルに当たる数字でございます。

 先生御指摘のように、日本については報道されておりますように六千億ドル、それからアメリカについてはおよそ二兆ドルというようなことで、合計して五兆ドルということでございます。

 これは財政出動という言葉がふさわしいかどうかについては、多分ちょっと意見が異なるのではないかなと思うんですけれども、総合的な財政赤字というのがどう拡大していくかということにつきましては、経済刺激による、いわゆる財政出動の減税策であるとか公共投資による赤字拡大のほかに、景気が悪化しまして相当税収減が予想されます。それから失業手当とかがふえていくということで、税収減と失業手当がふえていく部分をいわゆる自動安定化装置と言いますけれども、そういうものも入っている。

 それから、各国がもともと、例えばアメリカなんかについては、軍事費をどういうふうにしていくというふうなことを、アフガンについてどうだとか、そういうことも含めた全体の財政赤字の拡大幅でございますので、そういう試算をIMFが、一定の経済成長率、それに伴う税収減なんかも含めて試算してみた。

 財政刺激の部分については、本年三月までに表明されている経済政策、財政政策に基づいて、その影響が二〇〇八年、二〇〇九年、二〇一〇年にどういうふうに出てくるかということを試算したものでありまして、新たに財政出動を求めるというものではないというふうに理解しております。

 いずれにせよ、IMFが今申し上げましたような独自の前提を置いて試算したものでありますので、その詳細については今申し上げた以上のことは不明でございます。

鈴木(克)委員 今の説明だけではよくわからないですね。

 財政赤字の試算ということですか。財政赤字の試算と景気回復というのか、要するにそれはどういうふうに関連づけられていくんですかね。大臣、その辺、ちょっと私が理解力がないのか、よくわかりませんけれども、その辺をもう一度説明していただけませんでしょうか。

中尾政府参考人 だんだん難しい話に、ややこしい話になってきておるんですけれども、財政赤字の拡大額の中には、確かに景気刺激策ということで非常に裁量的に、意図的に講じたものがございます。これは確かに経済改善につながるもの。それから、税収が減ってしまった、景気が悪くなって税収が減った、あるいは失業手当がふえてしまった、そういうものもいわば自動的に政府の赤字を拡大する。逆に言えば、民間に負担を求めないということで、経済の下支え効果があるということで、昔から自動安定化装置などと言われておる部分ですけれども、そういうものも総合的に含めて、景気の刺激あるいは経済の下支えがあるだろうという前提でこういう数字を発表しておるというふうに理解しております。

鈴木(克)委員 一遍、私も、このことを深く、もう一度別のところで議論させていただきたいというふうに思いますので、資料をまたお示しいただければ大変ありがたいな、このように思っております。

 次に、新興国について少しお話をさせていただきますが、とりわけ中国であります。

 中国は、言うまでもありませんけれども、世界最大の米国財務省証券の保有国になっております。ある意味では、世界に対しての発言力を非常に強めておるわけでありますが、その中国が、さきの金融サミットで、国際通貨の多元化、それからもう一つは、IMFは国際準備通貨を発行する国のマクロ政策に対する監督を強化すべきだといった発言をしたというふうに報道されております。

 もちろん、この中国の発言の背景は、中国自身の国際的地位の向上というものをねらったことだというふうに思うんですが、国際通貨の多元化ということについては、我が国にとって少なからず影響のある話ではないのかなというふうに思っております。恐らく、いわゆるSDRをアメリカ・ドルにかわる世界の基軸通貨にするという意味を込めての発言ではないかなというふうに思うんですが、この中国の発言や考え方に対して、政府はどのように今評価というのか考えているのか、お示しをいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 中国の御提案の背景には、米国が世界最大の債務国であり、経済金融危機によりその経済力が相対的に低下する中、果たしてドル基軸通貨体制が今後とも安定的に持続するのかという懸念が中国側にあるものと考えられております。

 しかしながら、貿易の決済、貯蓄等の手段として民間主体に広く受け入れられ、流通、利用されることが基軸通貨たる条件であり、ドルなどの既存の準備資産を補完するための公的準備資産として創設されたSDRは、現状ではこの条件を満たしていないわけでございます。

 今のところ、ドル以外の基軸通貨というのは日本にとっては考えられないという状況でございます。

鈴木(克)委員 今大臣がおっしゃったように、今のところドル以外の基軸通貨は考えられないという考え方はわかりました。

 ただ、やはり中国の影響というのは非常に大きいわけでありますし、先ほど申し上げたように、アメリカの最大の証券保有国ということもあります。これは、中国の動向というのは我が国に対しても非常に大きいわけですよね。中国に次いでアメリカの証券を持っておるのは日本ということになるわけでありますから、その辺は私は、やはり中国と、連携をとるというのはないかもしれませんけれども、通じ合って、動向を非常に注視していく必要があるのではないのかな、このように思いますので、そのことを申し上げておきたいと思います。

 日銀総裁にお越しいただいていますので、二点ほどお伺いをしたいというふうに思うんです。

 先週七日ですか、日銀政策決定会議の後の記者会見で、景気の先行きについて総裁は、雇用、所得環境の悪化を反映して国内民間需要はさらに弱まっていくのではないか、こういうような認識を示されたというふうに報道されております。さっきも一部に若干の動きが出てきたということでありますが、今からの景気回復というのは本当に大変なことでありまして、かなりの時間がかかるというふうに私も思います。また、総裁も非常に慎重な見解を示してみえるというふうに思うんです。

 そこで、お伺いをしたいんですが、今後も雇用や所得環境の悪化というのが下振れをしていくとした場合に、今後のGDPというのはどの程度の落ち込みになるというふうに日銀として今お考えになっているのか。そして日銀は、たしかことし初めにマイナス二%というふうにおっしゃったと思うんですね、二十一年度の景気の見通し。それをどのように今から修正をされていくのか。そしてまたさらに、総裁がおっしゃっているように、国内需要がさらに弱まっていくというふうになった場合に、日銀としてはどのような対応、次の手と申しますか、されるおつもりなのか、お考えをお示しいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 最初に、大きな景気の現状それから流れを申し上げますけれども、先ほど議員の御質問にございましたけれども、海外に一部明るい材料は出ておりますけれども、私どもまだそこは慎重に見ております。ただ、輸出、生産の大きな落ち込みについては、この後、徐々にそれが下げどまってくるという局面を迎えると思います。ただ一方で、内需、すなわち設備投資それから個人消費については弱まっていく、つまり、経済の弱さをリードするいわば主役といいますか主因が変わってくるというふうに考えております。

 御指摘の先般の決定会合では、我が国の景気全体につきまして、大幅に悪化しており、当面悪化を続ける可能性が高いというふうに判断をいたしました。

 本年一月、中間評価を行いまして、そのときに、議員御指摘のマイナス二%という数字を公表したわけでございますけれども、その後、二月、三月、今回四月でございますけれども、毎回の決定会合において経済情勢の厳しさに関する認識を深めておりますし、だからこそ、二月、三月といろいろな措置を講じたわけでございます。その後、四月初に出ました三月短観もそうでございますけれども、そうした厳しい認識を裏づけるものであったという感じがしております。

 改めて振り返ってみて、一月時点に我々が出した見通しとの関係でどうかというふうに申し上げますと、これは下振れているというふうに判断しております。ただ、その後、我々自身は見通しをまた慎重にしているということでございます。

 それから、成長率の数字でございますけれども、これは実はよく専門家がげたと呼んでいますけれども、二〇〇八年度の後半にかけて経済が大きく落ち込みましたから、通常使っています年度平均のGDP、それから計算される数字で見ますと、実はげたの影響が大きくございますから、そのげたの部分と、それから本当に二〇〇九年度に入って追加的に経済がどれぐらい落ち込んでいくのかということが問題になってまいります。

 先ほど申し上げましたように、経済が追加的に落ち込んでいくかどうかということは、先ほどの輸出、生産の減少圧力、これがだんだん下げどまってくるという力と、それから内需がこれから弱まってくる力の綱引きになってまいります。

 現在、その点について、四月末の展望レポートに向けて作業を行っておるということでございますけれども、いずれにせよ、私どもとしては、景気の先行きについて不確実性が大きいというふうに今見ております。その点についてはまた再度この場でもお答えしたいというふうに思います。

 政策の体系でございますけれども、大きく分けて三つの柱で行っています。一つは政策金利の引き下げ、二つ目は金融市場の安定確保、それから三つ目は企業金融の円滑化の支援ということでございます。日本銀行としては、この三つの柱を軸に、これからも経済、金融の情勢を丹念に点検しながら、物価安定のもとでの持続的な成長の実現ということに努めてまいりたいと思っています。

鈴木(克)委員 先回の当委員会で私は総裁に、後世に、歴史に名を残すぐらいの大胆な政策、やれるだけのものすべてをぜひやってもらいたい、こんな御要望をいたしました。それ以降、日銀の動きは本当に、私が申し上げたからということではありませんけれども、かなり大胆に、次から次へと政策を打っていただいておるというふうに思いますので、これからも景気の動向をしっかりと踏まえて、誤りのなきように日銀に頑張っていただきたいなというふうに思っております。

 さらに一点だけ御質問をしておきたいんですが、先ほど来もお話がありましたけれども、三月末というのはおかげさまで大きな混乱がなく乗り越えることができました。ただ、市場では五月危機とか、さらにまた五月危機の後は八月危機というのが言われておるわけであります。それは何がというと、やはり資金繰りということが一番大きな問題であるわけでして、金融機関の対応が果たして本当にどういうような状況になっていくのかということだと思います。

 現在、信用保証協会の特別融資枠の利用状況というのは一件当たり約二千万というふうに言われておるわけですけれども、私はこれは決して潤沢な金額ではないんじゃないかな、企業への資金繰り対策は本当にこれで十分なのかなというふうに思っています。

 日銀の、先ほど申し上げましたように、CPや社債の買い取りを通じて、そして企業へ資金が行くように支援をしていただいておるわけでありますが、この前の金融機関からの社債の買い取りが、入札予定額が千五百億に対して約四割程度にとどまったということを聞いております。三月のときも札割れだったわけですよね。

 こうした状況で、日銀の格付、いわゆるシングルA以上、それから満期までの残存期間が一年未満という買い取り条件がちょっと厳しいんじゃないのか、これをぜひ緩和してもらいたい、こういう声も聞いておるわけですが、そこについて、総裁、今後条件を緩めていくお考えがあるのかどうか。もちろん、日銀の財務内容に影響を与える大変なことでありますから、そう軽々にはということかもしれませんが、市場が立ち行かなくなってしまったらまさに元も子もないわけでありますので、ぜひその辺のところを総裁のお考えを聞かせていただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 現在、日本銀行の社債の買い入れでございますけれども、御指摘のとおり、三月以降、二回の買い入れを行いましたけれども、いずれも応札額が買い入れ予定額を下回りました。いわゆる札割れでございます。今後も買い入れ額そのものは大きくならない可能性があるというふうに私どもとして判断しております。

 この点をどう考えるべきかという御質問でございますけれども、日本銀行の社債買い取りのねらいでございますけれども、これは社債市場における、本来行われていますような資金仲介機能を日本銀行自身が大規模に肩がわりしようということが目的ではございません。あくまでも、必要な場合に日本銀行に対して社債を売却できるという安心感をつくり出しまして、そのことを通じまして社債市場の機能改善を何とか後押ししていこう、そういうことをねらった措置でございます。一種、これはセーフティーネット、安全弁でございます。

 私どもとしましては、日本銀行が昨年秋以降さまざまな企業金融の支援を講じてまいりましたけれども、その一つ一つもさることながら、全体として企業金融を円滑にしていくということが目的でございますので、そこの点を中心にこの施策もやはり評価をすべきであるというふうに考えております。

 そういうふうに考えた場合に、先ほど議員の御質問にもございましたけれども、CPの買い入れ、それから企業金融支援特別オペ、それからドル供給オペ、こうしたものが全体として企業金融の安定化にやはり相応の効果を上げてきているというふうに判断しています。

 少し数字を申し上げますと、リーマン破綻以降大きく上がりましたCPの発行金利は、年明け以降はっきりと低下してきております。上位格付については、むしろ短期国債の金利を下回るというような現象まで出ているぐらい、実は改善しております。銀行貸し出しの伸び率は、これは統計開始以来の高い伸びの圏内で今実は推移しております。それから、銀行が企業に貸し出しをする際の基準金利、これも徐々に、ひところに比べて低下をしているということでございます。それから、問題の社債についても、上位格付については、足元はむしろ活況を呈しておるというぐらいまで実は改善してきております。

 私としましては、こうしたさまざまな措置が、ほかの市場に対して効果のしみ出しということがあるということを期待しております。つまり、CP市場の改善が社債市場にも及び、あるいは社債の上位格付の改善が格付の低いところにも及んでくるということを期待しているわけでございます。

 先々どうなのかということでございますけれども、現状、そうした判断でございますので、現在、社債の買い入れ条件について見直すことは考えておりません。

 ただ、繰り返しになりますけれども、金融の情勢、経済の先行きについて不確定要因がございます。そうした場合に金融機関が何を意識するかという場合に、みずからの自己資本の基盤が崩れてしまうということを懸念しますと、どうしても貸し出しに対して慎重になってまいります。そうした事態への対処としては、日本銀行は先般劣後ローンの供与ということを決定いたしたわけでございまして、これも近々、実際の供与の手続に入りたいというふうに考えております。

鈴木(克)委員 総裁、どうもありがとうございました。

 本当に、先ほど申し上げたように、今日銀がセーフティーネットを考えていただいておる、これは非常に大きいわけでありまして、そうすると、逆に、今からお伺いしますけれども、政府は果たして一体全体どこまで考えていただけるか、こんなことを続けて御質問したいと思います。総裁、どうもありがとうございました。

 それでは、中小企業の資金繰りについて、時間はあとわずかでありますが、お伺いをしていきたいと思います。

 これも言うまでもありませんけれども、金融庁が調査に入られるということでありますが、現在まで、貸し渋り、貸しはがしに関する情報というのはどんなふうになっておるのか、苦情があるから金融機関の調査に入ろうというのが金融庁のお考えだと思いますので、その辺の、今事業者等から寄せられている苦情について、どのような苦情が寄せられているのか、具体的にお示しをいただきたい。そしてまた、そういった苦情に対してこれまでどのように対処をしてきたのか説明をいただきたいと思います。

畑中政府参考人 お答えいたします。

 中小事業者等から金融庁の相談窓口に寄せられた情報の多くは、一つには新規融資拒否に関する情報提供、それからもう一つは返済要求に関するもの、三つ目は更改拒絶に関するもの等々がございます。

 寄せられた情報につきましては、情報提供者の了解を得た上で金融機関側に伝達をし、事実確認や金融機関の体制面についてヒアリングを実施しておりますほか、検査におきましては、今御指摘ございましたように、四月から集中検査を実施しているところでございます。これは、主要行と、今御指摘ございました貸し渋り、貸しはがし等の苦情が多い地域金融機関等を対象に、中小企業向け融資、中堅、大企業向け融資、そして住宅ローンの各分野につきまして、三月末までの年度末金融への取り組み状況と、四月以降、新年度入り後の信用供与の状況に焦点を絞りまして、四―六月に短期集中的に検査を行うことにしております。

 この検査に当たりましては、ただいまの貸し渋り等々の情報を活用いたしまして、金融機関が適切かつ積極的に金融仲介機能を発揮しているかどうか、それから貸し渋り、貸しはがしと受け取られかねない対応がなされていないか、こうした点についてしっかりと検証してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 時間になりましたので以上で終わらせていただきますが、次の機会にぜひ大臣にお伺いしたいのは、十五兆円の対策、これが本当に有効なのかどうか、それから、予算が成立して十日もたたないうちにまた次の補正というのは、果たして、前の二十一年度予算というのは本当にそれでよかったのかどうか、その辺のところをちょっとお伺いしたかったのですが、時間がなくなりましたので、次回、楽しみにさせていただきますので、よろしくお願いします。

 以上で終わります。

田中委員長 午後三時十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十五分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時十分開議

田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。下条みつ君。

下条委員 民主党の下条みつでございます。

 大臣におかれましては、午前と引き続きで、ぜひまたいいお答えをいただきたいと思っています。ただ、私の方がちょっと花粉症で多少鼻が詰まっていますので、聞き苦しい点はちょっとお許しいただきたいと思います。ぜひ、範囲内で、五十分でございますけれども、いいお答えをいただければというふうに思っています。

 私の方は、きょうは、金融商品取引法の一部を改正する法律案、この中の信用格付会社の規制についてお話を、また御要請をさせていただきたいと思っています。これは午前中、私どもの同僚の近藤議員を含めて質問させていただいておりますけれども。

 そこでまず、信用格付は、もう大臣御承知のとおりで、アメリカのムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズ、そしてフランスのフィッチ、そして日本は格付投資情報センターと日本格付研究所、全部でこの大どころ五つであります。こういうの以外に、三國さんとかいろいろ、実を言うとプロがよく知っているところはたくさんあるんですが、この五つが主に大きい指定格付金融機関である。

 問題は、アメリカだろうがフランスだろうが日本だろうが、格付の会社の活動というのは、ともかく国を越えて活動しておりますし、またその利用も、当然ながら国を越えて利用されている。ということは、ヨーロッパだと格付機関の言うのがちょっと厳しくなっちゃったり、アメリカは、きょうは余りアメリカの話はしませんが、格付が少し弱まってしまうとか、日本に来たらその両方をどっちか見ながらやっていくのか、いろいろな点がこれからあると思うんです。まさにそのことを、この間のサミット含めてやっていくという話なので。

 そこでまず、昨年の金融審議会の金融分科会の報告でも、「国際的に整合的な枠組みの下、国際協調を図りながらその実効性を確保していく」、国際協調を図りながら実効性を確保していくのが重要だという話がありました。

 まずは、第一の御質問をさせていただきたいのは、欧米と日本との統一性についての進展状況は今どうなっているか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。

内藤政府参考人 お答えをいたします。

 格付会社の規制についてでございますが、まずアメリカの状況を申し上げますと、二〇〇七年の七月に登録制度が導入をされました。二〇〇八年の六月以降、規制強化のためのSECの規則の改定作業が行われている段階でございます。

 それから欧州でございますが、二〇〇八年の十一月に、欧州委員会より格付会社規制に関する規則案が公表されておりまして、現在検討を鋭意進められていると聞いております。

 我が国の規制につきましては、従来から指定格付制度等がございますけれども、格付会社そのものに対する直接的な規制あるいは監督というような制度はございません。そこで、格付会社規制に対する検討を、今委員御指摘のような金融審議会で行ってまいったわけでございますけれども、この規制につきましては、証券監督者国際機構、いわゆるIOSCOの基本行動規範との整合性を確保することが国際的に合意をされておりまして、欧米における検討作業でもこれがベースになるものと考えております。

 ただし、欧米では、この基本行動規範に一部上乗せされた措置が提案をされておりまして、例えば米国では、規制強化のためのSEC規則改正において、情報開示規制の強化、金融商品のストラクチャー等に関して推奨を行っている場合の格付の禁止、欧州では、情報開示規制の強化、格付対象の金融商品の発行者等に対して、重要事項に係る相談、助言サービスを提供することの禁止などが盛り込まれているところでございます。

 我が国も、こういった状況を十分勘案いたしまして、今回、制度改正という形で法案に盛り込んだところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 そのとおりで、これからいろいろなものをとっていきながら統一規制をやっていくということなんですが、簡単に言えば、アメリカは、こういう御時世ですから、非常に規制に消極的だと僕は思っています。これはもう原文で出ています。一方で、ヨーロッパは、規制強化に積極的かつ早い動きをしている。

 それで、昨年の十月に日本格付研究所、格付指定業者ですけれども、発表した「日本における格付会社規制のあり方」でも述べておりますけれども、日本の格付会社は、将来、最大で日米欧三当局による重畳的規制を受ける可能性がある、したがって、国際的整合性を確保する必要は非常に大であるという忠告をしています。米SEC規制案とEU規制案の間に多くの不整合が存在していると。

 今、IOSCO、証券監督者国際機構の話が出ましたけれども、そうはいっても、何か今までの動きからすると、日本はかなりアメリカに近い動きをしていますので、僕は、今どうかなと。アメリカが発した今回のことを含めて、格付会社には、ここは冷静に対応して統一、整合を図る必要があるんじゃないかと思っています。

 具体例を言うと、アメリカとヨーロッパの規制の強さの違いは、例えば欧州では、去年の十一月にアナリストのローテーション制度というのを盛り込んでいる。これは、同一の格付先を四年超えて担当することを禁止してしまう。担当するときは、少なくとも二年以上あく。アメリカはこういう規制がないんですね。同じ人がどんどん同じ感じで対応していいということであります。この辺にすごく、格付会社のアナリストの、ある意味でなれ合いも出てくるでしょうし弱さも出てくると私は思っています。

 もう一つ、今ちらっとお話しになったお話ですが、ロンドン発の中で、欧州議会の経済通貨委員会で、格付会社の登録義務化と直接監督を柱とする改革法案について、賛成多数でもう議員立法として通ったということでありますね。

 私が何を言いたいかというと、これだけいろいろ混乱したというのは、やはり日本人の弱さだと思うんです、大臣。それは、銀座の画廊に行って、この絵いいですよと言われちゃうと、もうその絵は絶対いい。例えば、ピカソの絵を並べて、その横に小学生のかいた何かわからない抽象画をぼんと置いておいて、両方ともピカソだよと。そういうふうになっちゃうんです。

 要するに、初期段階の住宅ローン担保証券に対してぐらいだとまだ目ききはきいているんですが、それを証券化でデリバティブで割っていったときに、はっきり言って、素人が非常に惑わされるような状態になっている。そこにポイントが、僕は、今回の本当に病巣が眠っていると思うんです。それをやはり直していきましょうというのが、今回の御省が出した法案の、私は大賛成でありますが、問題は中身である。

 そこで、格付会社の対応の混乱ということがこれから出てこないように、金融庁のトップとして一体どういうふうにこの統一性を組んでいくか。さっき局長はIOSCOのお話を出しましたが、それだけでなく、日本がやはり自分でリーダーシップをとって、日本に入ってきた、日本に関係する方々にはきちっと、こういう行政方針で統一性を持っていくんだという決意を私は大臣から聞きたいと思います。いかがでございましょうか。

谷本副大臣 まず先に、副大臣の方からお答えをさせていただきます。

 今回の法案では、登録制の枠組みのもとで、登録を受けた格付会社に対して四本柱で対応する、誠実義務、体制整備、禁止行為、情報開示等、この四つを義務づけることというふうになっております。なお、その詳細については、内閣府令において具体的に定めるというふうになっております。

 議員御指摘のとおり、欧米において、格付会社規制の導入強化に向けた議論や検討が現在進行しており、基本行動規範に一部上乗せされた措置も提案されていると承知をしております。

 法案をお認めいただいた後に行われる内閣府令の策定作業においては、しっかり欧米の対応も視野に入れて、そして、その動向を注視しつつ適切な対応を図りたいというふうに考えております。

与謝野国務大臣 格付会社に対する規制については、先般四月に行われ、私も参加しました、ロンドンで開催されたサミットにおきまして、国際的なルールであります証券監督者国際機構の基本行動規範と整合的なものにすることが合意されたわけでございます。

 金融庁においても、これまでも、アメリカのSECや欧州委員会と情報交換を行っておりますけれども、引き続き、各国当局と協調しつつ、国際的に整合的な規制の構築に努めてまいりたいと考えております。

下条委員 議員の先輩として、いつも非常に模範解答であれだと思うんですが、私の質問は要するに、欧州は少し厳しいですよ、米国のムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズについては米国は割とやわらかくしていますよ、でも、ムーディーズとスタンダード・アンド・プアーズが欧州で何かやるときは厳しくしますよと欧州は言っているわけです。要するに、日本の金融庁の頭として、それを両方とも統一、整合するというのは、これはなかなか難しいと私は思います。

 私の意見としては、今回のことが起きてしまったのは米国流の、後でまたお話ししますけれども、発端であるので、整合性でやりますよとまたお答えになるかもしれませんが、できるだけ厳しく、ある意味で欧州並みに、フランスは非常にいいのを出すと僕は思いますけれども、やっていただきたいということをもう一度御要請させていただきたいと思います。

与謝野国務大臣 下条議員が御指摘のように、アメリカ、欧州、日本と、その内容あるいは規則を制定すべき時期については、少し考え方にずれがあるのではないかと私は感じております。

 ヨーロッパは、どちらかといえば規制をなるべく早くやろう、こう言っているわけですが、いろいろな国々は、やはり今は、今起きている経済危機をどうするか、これがまず第一であって、次に、今回起きている一連の出来事の反省の上に立ってどういう規則、規制を考えるのか。

 しかし、方向性については、格付会社についてもヘッジファンドについても、その他もろもろのことについても、方向性は一致していると私は思っております。日本も当然、米国、欧州のいろいろな物の考え方、こういうものに沿ったことをやらなければならないと思っておりまして、今回の法案はそれの第一弾ともいうべきものだと考えております。

下条委員 ありがとうございます。まことに模範解答でございまして、今おっしゃった裏は私もわかります。

 今、欧州は格付会社にどんどん厳しく規制をしていっている、一方でアメリカはゆっくりだと。もし、今アメリカがムーディーズ、スタンダード・アンド・プアーズに厳しくしてしまうと、実を言うと、言いにくいですけれども、中のいろいろなものが出てきやすくなっている。

 私は、先般の委員会で質問をさせていただいたんですが、いろいろな問題でまた債券を発行して、政府短期証券をまた日本に押しつけてくるかもしれませんよ、これはどうしますかという話をさせていただきました。同様に、アメリカの今の情勢の中で、格付の部分で余り厳しくし過ぎてしまうと、私は、実を言うと本当はうみは全部出すべきだなと思う主義なので、今お答えできないと思いますけれども、やはり厳しく接して、格付会社に対して欧州並みにやっていただきたいということを御意見申し上げておきたいと思います。

 それから次は、格付会社の規制の効果、つまり効き目と利益追求という問題、実は同じ包合の輪に入っているということなんですね。

 これはどういうことかというと、ムーディーズやスタンダード・アンド・プアーズは非常に高額の料金を取って格付をして商売が成り立っています。日本の二社も株式会社だ。その一方で、民間企業が格付したのが準公共的な効果を持って、投資家や個人投資家が半ば絶対的な指標にしている。これに僕は非常に含まれた危険性を見ているわけです。

 例えば、大臣はお忙しいので見たことはないと思いますけれども、ムーディーズのホームページがあるんですが、一体幾らぐらい相手から料金を取っているのか全然わからないんですね。このホームページをずっとよく見ていくと、ここに持ってきているんですが、こんなちっちゃいところにこういうちっちゃい字で免責事項と一行だけ入っているんです。

 私も花粉症でちょっと性格が変わりまして、免責事項をマニアックにクリックして見ていきました。そうしましたら、免責事項の中は、本当に虫のように書いてありまして、ムーディーズは、ムーディーズが格付を行っている債券、社債とか地方債、債券、手形、CPなど、及び優先株式の発行者の大部分は、ムーディーズが行う評価、格付サービスに対して、格付を付与するのに先立ち、千五百ドルから二百四十万ドルの手数料をムーディーズに支払うことに同意していますと。日本流でいうと、今、十五万から二億四、五千万の格付手数料を、やってもらう会社が払うというわけですね。ムーディーズに払う。

 これは何を言うかというと、それだけ大量に何億も払われている先の顧客との利益相反関係を完全に排除するということは、一体可能なのかなという問題なんですよ。

 これは、実を言うと非常にやみに隠れている部分でありまして、大量にもらっているお金がある。そのときはきちっとスタートでやったかもしれないが、公認会計事務所がアメリカの企業の粉飾決算をしてというのが何年か前にありましたけれども、あれとは違って、準公共的な格付会社が何百万ドルももらって評価をしている。ここによっぽど厳重な監督と罰則を入れない限り、もしくは義務がなければ、最初にぽんというふうにやった後は、私は知りません、どうぞということになるわけです、レギュレーションがないですから。アメリカは今度つくるかもしれませんが。

 そこで、まず大臣に、この利益相反についてどういう御認識であるかを、これはもうレクで言ってありますけれども、お聞きしたいというふうに思います。

与謝野国務大臣 格付を受けたい会社というのは、なるべく高い格付が欲しい。これは、社債を出すとき、あるいはCPの金利、いろいろなものにきいてきますから、高い格付が欲しい。

 格付会社は、一般の投資家から見ると、大変権威のあるものというふうに見てしまうわけでして、やはり格付を決める過程というのは相当公正なものでないといけないんだろうと私は思っております。

 議論されていますのは、格付によって報酬の多寡が決まるとか、本当にそれでいいんだろうかという問題が当然あります。恐らく、格付されたことによって多くの投資家が投資行動を決めていくということがあるわけですから、一方では、大変高い社会的責任も持っているだろうと思っております。

 そこで、この法案ではまず、やはり格付というプロセスの品質を高いものとして確保しようということを初め、いろいろな規制を設けておりまして、こういうことを通じて検査監督をやる。規制の実効性を確保していくことによって、いろいろ御指摘を受けております格付会社にかかわる問題を少しでも解決しようという意思を持って法案は出されております。

下条委員 私もすごく難しい質問をしたんですが、今大臣もおっしゃったとおりで、何億も払っているとなかなかというところがやはりあると思うんですね。

 私は、要するに、人間は商いをしているわけですから、どの人も自分にプラスになるように動いていきたい、それについて対価を求めている、これが問題になっていると思うんです。ただし、それが準公共的に動いていってしまう、それが指針になっている、ここがポイントなんですね。

 そこで、もう一つのホームページをまたクリックしまして、今度はスタンダード・アンド・プアーズです。これも、アメリカで今回非常に大きないろいろな原因になったと私は見ておりますけれども、クリックしてレポートをしていくと、本当に小さい字なんですよ。私はまだ老眼ではないんですが、非常に見にくいぐらい小さい字なんです。でかくして今ここにレポートしてあるので、それを読ませていただきます。

 そうすると、スタンダード・アンド・プアーズは、非常に小さい字で何て書いてあるかというと、「弊社発信のリポートは信頼しうる情報に基づくものですが、情報源あるいはリポートその他に人為的または機械的な誤謬が生じる可能性があるため、情報が正確、妥当または完全である旨の保証は致しかねます。」と書いてあります。保証しないと言っている。そして、「さらに誤謬や脱漏、あるいはそうした情報に基づく結果についても責任を負いかねます。スタンダード&プアーズは格付けに際して原則として対価を受領しています。」

 これは、個人投資家や、ここでいろいろ問題になっていた農林中金さんが何兆も運用している、それのもとになっていたわけなんですよ、大臣。まあ、そうだとは思ったんですが、ここまで明確に書いてある。要するに、保証しないと言っているわけです。いろいろなことがあるのは、おれは知らねえと。こういうことが中にはあるんです。

 ところが一方で、今度の法案は私は賛成ですよ。そのためにいろいろ今お話をしているんです。賛成だからお話をしているのであります。まず、金融庁として詰めていかなきゃいけないのが幾つかあると思うんですね。それで、アメリカ任せになっちゃいかぬというのは、僕はこの中でもわかると思いますけれども、既に、日本企業では現在千五十六社が格付を取得しているんですかね。そのうち、ムーディーズが百九十七で、スタンダードが二百六十五社という数字が出ている。

 一つの方向感として、これから政令でいろいろ出てくるんだと思うんですが、金融庁の局長としてはどういう方向感で、今までのお話をお聞きになっていただいた上で政令に反映していくか、まずお聞きしたいというふうに思います。

内藤政府参考人 お答えをいたします。

 格付会社に対する規制の、さらにこの法案をお認めいただいた段階における詳細な規制内容の詰め、今後の大きな課題であろうと思っております。

 まず、先ほど申し上げましたIOSCOの基本行動規範でございますが、これにおきまして、格付会社に対して、格付のモニタリング、更新のための人員等の確保や過去のデフォルト率等の格付実績の公表が求められております。

 今回の法案におきましても、格付会社に対して、格付プロセスの品質管理等のための体制整備や、透明性確保のための年一回の説明書類の公衆縦覧等の情報開示が義務づけられているところでございます。

 今回の法案をお認めいただきますと、今申し上げましたIOSCOの基本行動規範というものを踏まえまして、内閣府令におきまして、信用格付会社の体制整備及び情報開示の具体的な内容を適切に今後定めてまいりたいというふうに考えているところでございます。

下条委員 ありがとうございます。

 大臣、何で私がこういう話をしているかというと、格付というのは何段階もあって、分かれてつくられているわけなんですが、要するに、一気にこの間格付が下がっちゃった事態がアメリカで起きているわけですね。平成十九年七月に、米国のサブプライムローンの問題で大混乱が起きた。

 格付会社は、サブプライムの証券化商品の格付を大量に大幅に引き下げた。ムーディーズの場合だと、十九年七月に三百九十八件のサブプライムの証券化商品を格付した。サブプライムローン、つまり信用力の低い層の住宅ローンを原資産とする住宅ローン担保証券の格付を一気にどんと引き下げたんです。その三カ月後には、十月ですけれども、実を言うと、今度は二千五百件の格下げを一気に下げてきた。

 私は思いますけれども、要は商品が、私はこの動きを見ていて、要するにサブプライムローン自体が、一般の方々にとっても明白に悪くなった後に動き出したような感じがいたします。この数字とそれから月数、まず七月に四百件ぐらいやって、その三カ月後には二千五百件以上の格下げをいきなりぼんと落としてきた。それは大混乱します。

 というのは、私は思いますけれども、これは何でこんな一気に格下げが、いきなり十倍ぐらいの銘柄の格下げが起きてしまったか。実を言うと、ここに問題点があると僕は思うんですが、大臣はこの辺はいかがお考えでございますか。既にレクで金融庁の方には申し上げてございますが、一気に下がってしまった理由は何だと思いますか。お答えいただきたいと思います。

与謝野国務大臣 仕組み商品に関する格付の品質について疑念が生じたのは、非常に急速に格付会社が、最初はサブプライムに対して高い格付をした、その後、大部分について急激な引き下げを行った、これはやや問題だというのが先生の御指摘だと思います。

 多分、格付を付与するに当たって、データの利用方法とかモデルなど、格付手法の妥当性について十分な検証が行われていなかったのではないかというような指摘が実はなされているわけでございまして、今回出しました法案は、こうした問題に適切に対応すべく、格付会社に対して必要と思われます規制を整備することとしております。

下条委員 ありがとうございます。大どころそんな感じだと思うんですね。

 例えば、この点についてことしの二月、「資本市場」に関西大学の田村香月子専任講師が書いているんですけれども、要するに、住宅ローン担保証券の仕組みというのは、住宅という担保の価値が上昇していくから維持されている前提だった、それが平成十八年から吹っ飛んでしまった、十九年に入ると今度は数倍の延滞率がふえてきた、サブプライムローンのデフォルトが高まった、サブプライムのデフォルトが高まったので、多くの証券化されていた価格の方が先に下落していった、そしてサブプライムローンの住宅ローン担保証券、今度は証券化商品に変えますから、債務担保証券、それを切っていった先の価格がぐぐぐっと落ちていっちゃった、それを知らないで、最初の部分の評価だけになっていた、こういうことを言っているわけなんですね。

 だから、アメーバみたいに分裂をしていったものは、実を言うと非常に難しくて、御庁でもマッピングというのをやっていて、金融庁のBIS規制について、もう釈迦に説法なので中身は言いませんが、どのぐらいのデフォルトが十年であるかをそれぞれ、スタンダード・アンド・プアーズからフィッチから含めて全部やって、表にしてやっているのがあるんですよ。でも、それはあくまでもその格付会社が最初に出したものの結果がどうかなんですよ。最初に出したものは、あくまでも住宅ローン担保証券なんです。

 これだけだったら別に、これもウオッチしなきゃいけないんですけれども、その後の細分化した債務担保証券の評価が問題になっている。これは実を言うと、今金融庁の中でも評価はないんです。ただ、最初に出たものをずっと見て、どのぐらい当たっていたかな、デフォルトになったかなというのを表にしてあるのは、ここに今、僕持ってきています、あります。

 私が何を言いたいかというと、今度の大混乱で日本も、大臣が腹を痛めながら頭を悩ませながら非常に景気対策をやらなきゃいけない原因は、突っ込み過ぎちゃったせいなんですね、いろいろな商品に対して。そのうちの一つに農中さんがあると僕思うんです、法人として。また、個人投資家もいろいろなものに突っ込んじゃって、それがどかんと来ている。だから回らなくなって、外資系含めて、金が足りなくなって日本から引き揚げたので株価が落ちて、銀行の担保余力がBIS規制上なくなったので、貸し金ができなくなって貸しはがしが、こういう順番になっていますよ、簡単に言えば。

 だから、本当の原点は、実を言うとこの評価なんですね。すべての原点は、最初の評価がそのまま続いちゃったことによる、どかんと来たときの対応ができなかった、僕はそう思っているんです。だから一気に下がっちゃったんです、三カ月のうちに十倍も下げだと。そうすれば、当然市場は混乱するわけであります。それが、一部、今大臣がおっしゃった理由だと私は思うんです。

 そこで、一番必要なのは、今大臣もおっしゃっていた金融商品についての十分な見識が果たして、発行した会社に対する評価をした格付会社がその後まで追っかけていなかったと僕は思うんですよ。この部分をきちっとやっておかないとまた同じことが繰り返されます。幾ら登録して、何とか証券、フィッチでも投資研究所でもスタンダードでもいいんですけれども、登録して、はい検査報告しますよ、事務だけやったところで何にも変わらないです。また同じことが起きます。私は、どうしてもここでやらなきゃいけないのは、実際にそれを運用している部分のモニタリングをしていかなきゃいけないと思うんですよ。つまり監視ですね。

 この監視は、実を言うと難しくて、さっき私が利益相反の話をなぜしたかというと、何百万ドルも金を払ったから格付をしてやった、スタンダード・アンド・プアーズが。ところが、その後は何の義務もないんですよ。ということは、もちろん、証券にしろ債券にしろ、毎年株主総会をやって発表しますよね。でも、最初の段階から別に崩さないわけです、スタンダード・アンド・プアーズはそのレーティングを。そうすると、そのままの状態で商品は走っていくわけです。なぜかというと、金をもらわなきゃやる必要はないし、払う方は、わざわざお金を払ってもっと下げてくださいとは言わないわけなんです。

 ここに、実を言うと、今回の格付の評価だけで走り過ぎてしまった全世界の動きがある。その原点がアメリカに僕はあると思っています。それはちょっときょうは外しますけれども。

 そこで、ここに割とおもしろい指標があって、これは金融庁が発行なさっている、昨年の十二月の時点の数字で、我が国の預金取扱金融機関の証券化商品の保有額についてという発表をなさっていまして、その中にサブプライム関連商品の商品別毀損率というのがありますね。住宅ローン担保証券が第一段階で四九・九六%。CDO、つまり債務担保証券の毀損率が八六・七七%。つまり、切り売りしたら、八七%、九〇%近くが毀損していってしまうという結果が出ています。これは、皆さんがお出しになったものですけれどもね。

 今、モニタリングという行動規範はあくまでも努力義務なんですね。努力しなさいよと。要するに、後を追っかけるのは、まあ努力しなさい、よほど悪くなったらやってもいいけれども、こういう状態になっているんですね、大臣。だから、これはこのままでいいのかなと。

 もしも、登録制だ監視だとやるのであれば、その部分をきちっとやっていかないと、これは悪く言うと、せっかくいい法案ですけれども、事務だけがかさんで、モニタリング、追っかけができていないレギュレーション、規制になってしまうと私は思います。

 そこで、このモニタリング、要するに証券化商品、分散していけばいくほど毀損率が高くなっていく、非常にデリバティブの難しい部分に対しての格付を、あくまでも今までどおり努力義務だけにしておくのか。それとも、これからの政令の中で、具体的にその部分についてやはり橋渡しをして条件をつけていくのか。そこをまず、金融庁の方から方向感としてお聞きしたいと思います。

内藤政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げておりますけれども、IOSCOの基本行動規範におきまして、発行体の信用力を定期的にレビューをいたしまして、必要に応じてタイムリーに格付を更新することとされております。格付会社には、これを踏まえた情報開示や体制整備が求められるということになっております。

 こういったことを踏まえまして、本法案におきましては、利益相反回避や格付プロセスの品質確保等の観点から所要の規制を設けることとしておりまして、検査監督を通じて規制の実効性を確保していくということによりまして、格付会社をめぐる問題に今後は適切に対応していけるというふうに考えているところでございます。

下条委員 局長、そこの部分なんですが、具体的に言うと、それは格付会社が自己負担でモニタリングをやるということでしょうか。それとも、具体的な話、一番必要なのはモニタリングですから、その発券したものの後のフォローですよね。それをあくまでレギュレーションしていくのか。それとも、努力義務にするのか罰則規定があるのか。そこをもう一度ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

内藤政府参考人 格付のモニタリングあるいは更新のための体制の整備、最も重要なのは、人員等の配置から始まりまして、過去のデフォルト率等のトレースなど分析をいたしまして、それで格付作業に当たるというような、全体的な体制の整備というのが一番重要ではないかなというふうに考えております。したがいまして、こうした体制の整備というものがきちんとなされているかどうかということにつきまして、格付会社を指定するというときに、その指定の要件というふうに考えております。

 仮に、これに違反をするというような場合には、監督上の権限がございますので、業務改善の指示、命令をするとか、そうした対応を行政的にやりまして内容の是正を図るというように考えております。

下条委員 人員というのは、局長、必要ですね、体制の整備で。私の質問は、体制整備はそれは必要だ、それから、MBAだ、何Aか知りませんが採って、そういう人たちを用意して、それは確かに必要なんですが、私が今言っているのは、そのモニタリングをきちっとレギュレーションで切っていくんですかと。それについて、切る場合だと費用がかかるわけですよ。それを今どういうふうにお考えになっているか。それとも、その部分についてはあくまでも政令で努力義務にまたなってしまうのかというところなんです、ポイントは。

 もう一度申し上げます。人員は必要です。おっしゃっているとおり必要です。それを整備することも必要です。でも、実際、その格付会社が、発行した債券でも証券化商品でもいいんですけれども、それをモニタリングしていくことをきちっとレギュレーションに入れていくのか、その場合の費用はどうでしょうかという質問であります。お答えください。

内藤政府参考人 費用については当然ながら、そういう体制整備を求めるわけですから、格付会社自身がそうしたコストを負担して体制の整備を図る、その基本的な社内的なルールというものを定めてもらうということになろうかと思います。それを、我々としてはよく審査し検討した上で、先ほど指定と申し上げましたが、登録ですけれども、登録という形で認めていく、こういう形になります。

 その後、登録された格付会社としての業務が開始されますけれども、その後におきましても、定期的に私どもとしては監視をしてまいりまして、問題があれば検査をし、あるいはまた行政的な対応も行うことができるということでございます。

下条委員 なかなか答えにくいんでしょうけれども、あくまでも法案は賛成なんですから、私個人は。党としてもこれから話さなきゃいけないと思いますけれども。

 私が言っているのは、今言いました、いろいろな問題が起きているのは、格付会社の整備ももちろんながら、彼らはあくまで利益相反の中で動いてきた民間会社なんですよ。それが準公共的な非常に大きなブランドを持って世界じゅうを駆けめぐったために、いろいろなものが起きた後に格付が後追いしていったような結果があったから、突っ込んじゃった人もまたきずものも多くなった。

 だから、レギュレーションを、アメリカに学べというんじゃないですよ、やはり監視機能を深めると同時に、格付会社が、自分が格付した会社の債券とか証券に対するモニタリングをどういうふうにやっていくかのレギュレーションはどうかと聞いているんです。

 格付会社が、一度自分がトリプルAとかダブルAとかを出した後、そのままほったらかしでいいんですか。それとも、そこにはもう一回、行政庁、金融庁としてきちっとレギュレーションを設けて、必ず一年に一遍はやりなさい、世間がどんどんデフォルトになってから後追いで、しまった、済みませんといってやっても、それでも責任がないようだと同じことが繰り返されますよ、そういう意味であります。

 局長、時間がもうないんです。お願いします。

内藤政府参考人 もう少し詳細なお尋ねですので、これはIOSCOの信用格付機関に関するプレスリリースというものでございますが、この中では、信用格付機関は、みずから使用する格付方法及びモデル並びにこれらの重要な変更に関する定期的なレビューに責任を負う厳格かつ正式な機能を設置し、これを実行するというふうにございます。

 ですから、格付会社自身が常に、格付の手法なり格付の成果といったものについてきちっとモニタリングをしていくという体制を備えてもらうというのが、登録される格付会社の責任ということになります。

 当局は、こうした格付会社の内部の管理体制というものが適切に機能しているかどうかということを、監督という立場からチェックしていくということでございます。

下条委員 ちょっと押し問答になっちゃって、時間だけたっちゃうんですけれども、実を言うと、それはまだ大ざっぱな、大ざるの中での話だと思うからそこまでしかお答えになれないのかなと思います。

 大臣、今までこれだけ時間を使って話したのは、簡単に言えば、要するにモニタリングはやっていなかったということなんですよ。それはやはり、レギュレーション、どこを見ても規則がない。さっき言いましたように、全く関知しない、責任はないんだというところもあるわけです、アメリカの。これでやられて、でもそれは、その人たちはだっとトリプルAだダブルAだといって買うわけですよ。だからこそ起きてしまったということなんですね。最初はどのものでもいいですよ。よくなる場合もあるし悪くなる場合もある。これをモニタリング、監視で追いかけない、レギュレーションを置かなければまた同じことを繰り返すことになります。

 ですから、これは所轄の大臣として、局長はあそこまでしか言えないと思うんですが、このレギュレーションをぜひ日本が独自にでも入れて、アメリカは、さっき言いましたようにいろいろ国情があって厳しくできない。そうしたら、欧州ときちっとやればいいんですよ。それで統一性を出して、日本国に関係する、日本の中で、そういう発行体については厳しく、その部分についてはモニタリングで追いかけていくようにレギュレーションを設けるんだということを言ってくださいよ、大臣。お願いします。

与謝野国務大臣 格付というのは、ある断面での評価、瞬間風速を計測するみたいなところがありますので、下条議員が言われるように、格付した後は知らぬ顔というのも私は無責任だと思います。そういう意味で、格付した会社のことはやはりフォローしてよく見ていくというのも、格付会社の権威を高める上からも大事なことだ、私はそのように思っております。

 これを法律上どう規定するか、あるいは政省令の中でどう規定するかというのは、またもう一つの問題があるだろうと思っております。

下条委員 なかなか言えないなという感じがしているんですが、本当にここの部分は、我が日本が傷を負わないためにも、また日本の、何回も申し上げて申しわけないですけれども、農中さんなんかがファニーメイとかフレディーマックに入れたのは、格付なんですよ。その後の債務担保証券の格付もそのままで走っていったから、何兆買うと、去年の夏でさえ常務理事はまた何兆買うと言っているぐらいですから。それは格付があるからなんです。それはやはり行政がわかっているなと。これは議事録に残るわけですから、わかっているんだったらやってもらいたいなと思っています。

 それから、私の時間があと三分しかないので、提案でございますが、レギュレーション、罰則がもし難しくなっているとしたら、監督機関である金融庁が、登録された格付会社の格付の実績を定期的に公表すればいいんですよ。スタンダードだ、ここはトリプルAだった、その後あれになっているけれどもこういう債券の実績があると公報か何かでどんどん公表していけばいいんです。何のお金も要らないです。もちろん、行政としての人員の配備も必要です。大臣、一つの提案です。

 なぜかというと、今、格付会社というのは、さっき言いましたように、ホームページで世界じゅうにオープンしているわけですけれども、自分は何の責任もないんだよ、知らぬぞと。ただ、こんな小さいものですけれども、クリックすると出てきます。そういう状態の中で、誤った会計情報を公表した会社というのは、それなりに罰せられるわけです。会計士も罰せられる。ただし、準公共である格付会社だけが今まで生き残ってきたことに、やはり今回の、世界じゅうがこれだけ参ってしまった結果があるわけなんですね。

 ですから、私は、最低公表。申しわけない、こういう結果だったよ、この格付の結果はこうだったとずっと出せばいいんですよ。本当に正しいことはそういうふうに追いかけられます。というのは、投資家だけに公表するのだと、その新しいファンドをほかの新しい人が買うときにわからないんです。だから、公報で公表するわけです。

 そういうことを行政庁がやることによって、格付もやはり、やばいなと常にウオッチしていく目を持ちます。それじゃなければ、一つの債券、一つの会社の動きやデリバティブについては、深く入っていけば物すごく人員と金がかかりますから、そんなのレギュレーションがなければ、僕が部長だったらやらせません。おまえ、違うところに行って営業してこいとなります。そこに素人の人たちが痛む理由があるというふうに思っています。

 もう最後なので、大臣、この御提案にできるだけ、お答えできないかもしれないですけれども、前向きな御答弁を最後にちょうだいしたいと思います。公表、どうですか。お金はかかりません。

与謝野国務大臣 下条議員は御専門家でございますから、金融庁の事務当局も私も、先生の御意見を拳々服膺しながら今後もやってまいりたいと思っております。

下条委員 ありがとうございました。

 拳々服膺ということで、政令の中にはぜひそれに近い形でどんどん入れていっていただきたいと思いますし、それがいろいろな方を救う結果にもなるし、二度とこういう事件が起きないような結果になると思います。よろしくお願いします。

 以上です。ありがとうございました。

田中委員長 次に、和田隆志君。

和田委員 民主党の和田隆志でございます。

 下条委員に続きまして、質疑をさせていただきます。先ほど、大臣その他の御答弁をお聞きしておりまして、その延長戦をさせていただければと思いますので、まずは格付機関についていろいろお尋ねしてまいりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 私も、かたはずこういったところに携わっておったことがございますけれども、きょうは、与謝野大臣のお考えに即した法案なのだろうと思いながら、大きな概念の部分をぜひ大臣のお考えとしてお聞かせいただければというふうに思います。その中から、今回規定されている条項が、それぞれ適正な趣旨にのっとっているのかということを見てまいりたいというふうに思います。

 まず、今の下条委員、午前中の質疑等も通じまして与謝野大臣が御答弁なさっていたのをお聞きしておりましてお聞きしてみたいのは、格付というもの、この制度を、大臣みずからはどなたのためにある制度だとお考えでしょうか。

 このようにお聞きするのは、サブプライムローンの問題を初め、ここ一、二年間で急激に格付をめぐって事件が起きておりますけれども、私の認識では、格付を使って、それを利用して債券を発行したりする発行体、また、それらについて情報を得て資金を供給しようする、利用者というんでしょうか、そういった方々のためにあるというのは、多分大臣とも共通しているのではなかろうかと思います。

 そのときに、この数年の流れの中で、格付制度ができた当初から、まずは市場のことは市場に聞けという感じで、自由主義の取引の中で、とにかく一定のルールを定めれば、最終的には市場がいろいろな悪いことは淘汰してくれるだろう、適正なものが残っていくだろうという大きな流れがあったかと思います。そんな中で格付機関はどんどん大きくなっていったわけでございますが、この数年間は、格付機関のやり方、方針というものが少し行き過ぎているのかなというふうに全世界の方々も思い始めているんじゃないか。その中で今回サブプライムローンの問題が発生し、全体に波及していったという認識を私は持っているわけでございます。

 まず、今、ある程度時間を置いたつもりでございますので、大臣の御認識として、私がお話し申し上げたようなところとある程度共通していただいているかどうかお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 格付というのは、多分、必要性があって発生した業務だと私は思っております。

 これは、ある会社が社債を発行する、あるいは増資をする等々を行います場合に、やはり自分たちの会社の客観的な評価というものが欲しいというのは当たり前でして、また投資に向かう人たちも、自分たちがその会社の何から何まで知るわけにいかないので、格付会社を通じてその会社の様子を知ろう、そういう動機が働くことは当たり前でございます。また、日本でも、間接金融から直接金融にシフトする過程で、やはり格付会社の役割は相対的に大きくなったと思います。

 社会的必要性あるいは経済活動の上では、やはり格付会社というのは必要だったということがまず議論の大前提ではないか、私はそのように考えております。

和田委員 今の大臣御答弁部分は、私も全く同感でございます。

 もう一つだけ、お聞きしたつもりなんでございますが、そういう必要性があって生まれてきた格付という制度は、だれのためにあるのかということについてはいかがでしょうか。

与謝野国務大臣 それは、高い格付を得られれば、恐らく社債などを発行する場合の金利は相対的に低いということもあるわけですから、そういう意味では、まず、会社にとっては社会での信用度を確かめるヤードスティックになっている。しかし、多くはむしろお金を出す方のためにあって、ほとんどの投資家の方々は、最近、ここ二、三年の様子を見ますと、大銀行の大専門家といえども、例えばサブプライムのトリプルAを黙って信じて買っているというところがあって、そういう意味では、やはり投資家のために、あるいはお金をそこに投ずる人たちのためにあるんだろう、これはある種の投資家保護の分野に属しているのではないか、私はそう思っております。

和田委員 大体予想していたお答えが返ってまいりましたので、私としても安心いたしました。

 そのような大臣の御認識であればこそなんですけれども、例えば、今回この法案を審議するに当たって、発行される主体がいろいろなレベルにわたるわけです。今大臣のおっしゃったような企業が発行する場合もあれば、何と国が発行する場合もございます。企業が発行する場合にはその企業を見詰めている国民の皆様方、国債を発行する場合にはまさに国民の皆様方が相手先です。そういった方々をまさに保護するために今回の法案を審議するということになろうかと思います。多分、そこの部分はもう御異論ないところだと思います。

 そうだとすれば、ここから先、幾つか各論に入っていきたいと思いますが、今回、信用格付業者に対して、既存の業者につきましてはそのままそれが業務が行われることを前提に、だけれども、やはり適正な格付をやらせるよう推進していく流れの中から、新規参入者に対して、無理なく入れ、だけれども絶対にむちゃくちゃはしないようにという趣旨で恐らくこの登録制ということが設けられるに至っているんじゃないかと推測するわけでございます。

 その際に、私も確かに、登録制度を導入するということ自体は納得がいくような気がいたします。ここから先は、では、それを導入するのであれば、登録をして、できた業者については少なくとも今と同じような、格付業者と一緒のような業務をしっかりやれるであろうという認定が行われたようになる。だけれども、市場全般での取引を阻害しないように、登録されていない業者についてもそれを扱うことを禁じるものにはしていない。だけれども、私は登録されていないんですということをしっかりと宣言なさった上でしなさいという制度でございますよね。

 しかし、業者の立場に立ってみれば、自分が登録されていないということをみずから進んで言う気になるだろうかというふうに考えた場合に、私が直観的に思ったのは、実態上はこれを言わないで取引していて、全くそれを知らないでお金を供給されて、最終的に被害に遭われる方が出てきやしないかなというふうに思ったわけでございます。

 そういう観点から、私、通告では申し上げたと思いますけれども、登録されている部分はいいとしても、登録されていない業者について、国民の皆様方のためを思えば、登録されていない業者、一回は申請をトライされてきたんだけれども、それを何らかの基準によって、国は判断として登録しないこととしたというふうな結論を得ているわけでございますので、その情報を開示しないという方向性はやや消極的に過ぎるのではないかというふうに思うのでございますが、この部分は大臣、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 今回の法案では、格付会社に対する登録制の導入に伴いまして、金融商品取引業者に対し、登録拒否に至った業者も含め、無登録業者の格付を勧誘に利用しようとする場合には、その格付のリスク等を投資者に十分説明させることにより投資者保護を図ることにしております。

 こうした枠組みに加えまして、登録拒否に至った業者の登録拒否を一般に開示することについては、さまざまな拒否理由が想定され、登録申請者の業務上の利益を不当に侵害するおそれがあることから、慎重に検討する必要があると思っております。

 ただし、一般に、あなたは日本の社会において格付会社として登録業者ですかどうかということは、やはりその格付会社を使うかどうかということの一つの重要なメルクマールになる、そういうふうに私は思っております。

和田委員 今大臣がお述べになったところは、私もそのとおりだとは思っているのでございます。

 ただ、申請したけれども結果的に登録できなかった業者に対して、この文言を見る限り、自分が格付業者としてその情報を提供し、いろいろな業務を行っていこうとするならば、みずからはまだ登録は得ていないんだということを相手方に宣明してやりなさいという趣旨に読めますね。それを義務づけるということであれば、その部分についてはしっかりとした罰則がなければ実効性がないのではないかというふうに思うわけでございます。

 それが世の中一般的にこれぐらいの厳しいものになっているのであれば、みんな登録されていないものは、それを消費者というか利用者に対してしっかり言った上で業務を行うことになるだろうというふうに推測できるのであれば、私も納得できるのですが、いかがでしょうか。

内藤政府参考人 私の方からお答えをさせていただきます。

 今委員御指摘ございましたように、無登録の業者あるいは登録できなかった業者が格付を行ったというような場合でございますが、実際にはこの格付を金融商品取引業者が投資家に対して勧誘の際に用いるということが考えられております。そこで、この場合には、その格付のリスク等を投資者に十分説明する、これは登録されていませんというようなことも含めて説明をするということが義務づけられております。この義務に違反をするということになりますと、この業者に対する行政処分というようなことになろうかと思っております。以上でよろしゅうございますか。(和田委員「行政処分の内容は」と呼ぶ)

 金融商品取引業者に対する処分の内容というのは、普通は行政処分という形で対応するというふうに整理をされておりまして、刑事処分ということになりますと、非常に重い問題について、例えば説明内容に虚偽があったとか相手を欺くような、そういうような場合には刑事罰という形での規定を設けるということがございますけれども、通常、こういう場合には、私どもとしては金融商品取引業者に対する行政処分という形で考えております。

 それから、登録制度そのものについてでございますけれども、格付会社に対する登録制度といいますのは、登録ができるという制度でございまして、登録しなければならないという制度ではございません。これは、いろいろ意見表明というようなものがございまして、どういうものが格付であるのかというようなことについて一義的に規定づけるというのはかなり難しいものでございますので、実際にマーケットで広範に取引されている証券について格付をしている、そういう格付会社は登録を積極的にやってくるということで、そういう格付会社が登録をして、みずからのレピュテーションを高めて格付行為を行っていくということになろうかと思います。そういう点で、無登録という業者に対してはこういうような対応で考えているところでございます。

和田委員 るる御説明いただきましたが、行政処分ということになりますと、無登録の業者は、いわゆる無登録でございますので、業法にのっとって、例えば金融機関等にやる業務改善命令や業務停止命令など、そういったものを打てないのではないかというふうに思って私はお聞きしたつもりなんでございます。実効的な処分が何なんだろうというふうに思ったわけでございます。それが一点。

 それからもう一つは、この法案の趣旨が、信用格付機関を新規にも参入をふやしていって、結果的にそれらの競争を促進していくことによって格付の精度を高めていくということが、大きな世界全体の考え方の流れにあるように思うんですけれども、しっかりと精度の高い格付機関を幾つかつくっていくという趣旨、目的の中で、こういったところではまだ少し甘いんじゃないかなというふうに思ってお聞きしているんですが、いかがでしょうか。

内藤政府参考人 まず最初の点でございますけれども、信用格付業者に対する登録制というものの導入との関連で、無登録の格付会社の格付を使って商品を販売する、実際には金融商品取引業者がその証券を投資家に勧誘し販売するというときに問題が生じる可能性がございますので、その点に着目をいたしまして、金融商品取引業者に処分を下しまして、それで、こういう商品については説明なしに売ってはならないという形で実効性を確保したいというふうに考えております。

 それから、この格付会社というのは、よく言われますけれども寡占体制にあるのではないかということでございまして、やはり参入を促進し、競争性を高めていくということは非常に重要な点であろうかと思います。そういう観点からも、登録制度につきましては、登録しなければならないというよりは、登録できるという制度で登録をできるだけ促進いたしまして、その中で格付業務のお互いの競争を高めていくという形で内容的な改善を期待していくということが重要ではないかなと考えております。

和田委員 これ以上は、恐らくお聞きしていくとだんだん見解の相違ということになっていくのかなというふうに思ってお聞きしましたが、考え方には両様あると思って局長の答弁もお聞きいたしました。

 新規参入を促進しというその文言だけで言うと、自由にやれるようにするのが最もいいんだという考え方は十分成り立ち得るんだと思いますけれども、やはりしっかりした人たちが十分入ってくるようにというふうに考えたときには、あえて私の考え方を申し上げれば、一つの登録という概念を用いる以上は、登録をできた方々についてはそれを公表し、申請してきて登録ができなかった方についてはそれを淡々と事実として公表し、登録を申請していない人については、無登録ですから、全く門をたたいていないわけですから、その部分は今のおっしゃったようなことで対応するというぐらいの方が本来適切なのかなと思って、御意見として申し上げておきたいと思います。

 次に移りたいと思います。

 先ほど大臣に最初の概念としてお聞きしたとおりですが、格付制度はやはり最終的にはそれぞれのお金を供給する人のためにあるというふうにおっしゃっていただきました。その一番の象徴が国民の皆様方でございます。

 そういったことからすると、この数年間の格付制度に関する議論をこれからどう向けていくかという趣旨からすれば、今までやってこられた格付機関の格付や、これからこのようにエントリーしてやろうとしている方々の格付がどのように適正なのかということを、やはり行政機関として、どういった要素をその機関に開示させるべきという概念をしっかりと打ち出さなければいけないのではないかという趣旨でお聞きしたいと思います。

 実は昨日、質疑の直前に事務方の方にお願いしまして、そうした実態がわかるものがないだろうかというふうにお問い合わせしたのでございますが、今現在、恐らく私が推察するに、今まで日本が持っていた指定格付機関制度や適格格付機関制度というのは、もう既にいろいろな御答弁にあったとおり、行政上の規制、監督のために設けられていたものではないから、ほかの限定的な目的のために使っていた制度であって、そのために必要な資料をとるのみで、いわゆる適正な格付が行われていたかどうかということを検証するための資料をとる、相手に対して報告を義務づける、そういった制度はないように思ってお聞きするのでございます。

 その意味で、いろいろとIOSCOでの行動規範の問題もございました。しかし、最近、まさに世界首脳同士で問題意識として取り上げられている格付機関のあり方について考えるという絶好の機会でございますので、今の大臣のお考えとして、行政側というんでしょうか規制当局側から、格付機関のやっている実際の格付の適否について判断するような仕組みをこれから構築すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 これはなかなか難しいわけでして、まず格付機関と監査法人の違いはどこかという問題があるわけです。監査法人が監査した結果も格付会社の判断と非常に似た部分が多分あるんだろうと思うんですけれども、格付会社は、監査法人がやったそういう監査のほかに、プラス経営者の手腕とか経営方針とか、あるいはいろいろな社会的な信用度とかというものを総合的に判断して格付を行っておられる、私はそう思っております。

 それでは、個別の会社の格付に関して何か問題があったかというと、私は、多分個別の会社の格付に関しては、極めて客観性を要求されますから、そんなに今まで問題は発生していなかったんだろうと思います。ただ、報酬や何かの問題がありますから、それはまた別の問題として問題はあると思うんです。

 やはり格付機関の一番の大きな問題は、余り素人目からよく内容がわからない仕組み商品について安易な格付をした。これは、一流の金融機関もみんなそういうものを信じてやっているので、なかなか格付会社の判断というものを見抜けないという難しい金融派生商品について、多分非常に安易に格付をしたのではないか、私はそう思っています。

 それから、余り話題にされないんですけれども、将来は格付機関の持つ情報をきちんと、機密の保持ということは非常に大事であって、いわば格付機関が格付ということをやるプロセスにおいて得た情報、機密というものをよそに流すというような倫理上の問題が恐らくあって、そういうことはまだ余り議論されていませんけれども、やはりそこのところが今後の格付会社の問題点になり得るところでないかと私は個人的に思っております。

和田委員 今最後に大臣がおっしゃったところは私も今まで視点として持っておりませんでしたので、気づかせていただきました。ありがとうございます。

 ただ、今の御答弁を聞いていますと、大臣は最初に監査人制度と格付制度の違いをおっしゃるのかなと思いながらお聞きしたんですが、そうだとすれば、どういう理解をすればよろしいか、もう一回確認させていただければと思います。

 監査人制度というのは、企業が企業全体として適正な業務遂行をしているかどうかをトータルで判断するためにある監査人であり、監査制度だと。格付制度というのは、何かとにかく格付機関が採用した指標に基づいて出てきたグレードであって、それのみをもって企業を判断するというのは常識として採用されていないということを前提に、それだから格付制度は、規制当局として、私が申し上げたようなところまできっちりと適否を見るという必要性を持たなくてよいし、持つべきでないとおっしゃったように聞こえたんですが、この理解でよろしゅうございますでしょうか。

与謝野国務大臣 会計監査というのは、いわばスタティックな、ある瞬間をとらえたものですけれども、格付会社の例えば企業に対する判断は、将来を予想する、経営者の資質を判断する、もう少しダイナミックな、動的要素が入った判断が格付の判断だろうと私は思っております。ですから、監査法人の監査よりもはるかに実は難しい判断であるはずなわけです。

 監査法人の判断というのは、済んでしまったことに関してのいわば判断ですから、それはかなり確定的な判断として結論は出せますけれども、格付会社の判断というのは、現在から将来に向かっての判断というものであるわけですから、その部分はやはりどうしても違ってくるわけです。これは、最後には格付会社の信用自体の問題、格付会社の実績とか歴史が格付の権威を多分維持するんだろうと私は思っております。

 そういう意味で、今回は、登録制度でよく格付会社のことを見ていこうということでございます。恐らく普通の会社は、ほとんどの方々はきちんと登録された格付会社を使うことが十分予想できます。ただ、先生も役所も心配しておりますのは、格付ができました、できましたと言って、いいかげんな格付を看板にいいかげんな金融商品を売る、これはやはりどうしても回避しなきゃいけない。これが先ほどからの御説明であるわけでございます。

和田委員 大臣、余り揚げ足をとるつもりはございませんので、そのつもりでお聞きいただければと思うんですが、先ほど下条委員に対して御答弁なさったときに、今の御答弁とは若干ニュアンスの違うことをお答えになったように私は今受けとめています。

 今、監査人制度と格付制度を要するに比較の対象として挙げられながらおっしゃっていましたけれども、下条委員に対する答弁では、格付制度は若干瞬間風速的なところがある、瞬間での判断になっている部分があるというような答弁をされたように覚えています。

 今の御答弁では、どちらかというと監査人制度の方がその時点での企業の実態をということであって、格付の方がダイナミックな企業の動きについて、前は悪かったけれども今はよくなった、今はいいんだけれども後は悪くなるかもわからない、そんな流れを評価しようとしているようなことを御答弁なさったように思いますが、その部分はどのように受けとめればよろしいでしょうか。

与謝野国務大臣 両方とも、ある時点でのその会社の経理の状況、経営の状況というのが判断の基礎になっていまして、両方ともそれからは抜けられない、監査も格付も抜けられない。ただ、格付の場合は、ただ監査をやるよりは、もう一歩踏み込んで、その会社の将来性とか見通しについて語ることが要求されているという点は違うのではないでしょうかということを申し上げました。

 ただ、格付会社もある断面での経営状況が格付の出発点であるということを申し上げたつもりでございまして、誤解をお与えしたとしたら、御理解をいただきたいと思っております。

和田委員 その部分はまだちょっと、議事録を見ながら勉強してみます。

 結論的に、今大臣は、格付機関並びに格付制度については、金融規制当局としてその適否を判断するという仕組みを採用すべきではないというふうにお考えだと思ってよろしいでしょうか。

与謝野国務大臣 なかなかそういう判断は、多分、客観的な基準ではできないんだろうと思っております。誠実な行動規範を採用して格付をやっていただくということをお願いする以外は方法はないと思っております。

和田委員 その部分はいろいろな考え方があっていいと思っておりますので、大臣のお考えとして受けとめさせていただければと思います。

 私自身もたまたま、格付を日本国債について得ていく、あの当時はもっと深刻な事態で、ワンノッチ下げられることは大変なことになりそうだというような時代を経験してまいりましたけれども、そういったときに、よくよく考えてみれば、その当時の仕事の中身としてはどうやってそれを防ぐかという頭だけがございましたが、今大臣に冒頭におっしゃっていただいたとおり、最終的には国民のためにこの判断の基準たる格付制度があるという視点に立てば、もっともっときちっと、国は発行体としての色合いもあるわけではございますが、規制をしようと思えば、監督しようと思えばできる唯一の組織であるのが各国であり、その各国が集まったIOSCOという当局であり、また首脳の集まっている会議であろうかというふうに思いますので、今のお考えとして受けとめさせていただきますが、これからの事態の推移によっては、より強化した体制を組むこともお考えいただければというふうに思います。

 次に移りたいと思います。

 格付機関について最後の御質問になりますけれども、今の大臣の御答弁をお聞きしていますと、これについては余り国策として取り上げるところまではというふうにお考えのようにも感じますが、質問をセットしましたのでお聞きしたいと思います。

 それぞれの格付機関がやっていることに対して、それを利用しながらお金を供給する人たちが一番よかったと思える制度になるべきでございますが、そういった観点から、我が国日本はこれまでの格付機関制度に対して、この格付機関制度を利用してみて、日本国として世界のほかの各国と比べて、本当にきちんと日本の国なり、発行体としてさまざまある企業なりの評価をかち得てきているだろうかということを、今回法案の審査で質問させていただくに当たっていろいろな企業の方々に聞いてみました。しかし、私が聞いた範囲では、その反応はどちらかというと逆に出てまいりました。

 その大きな要素は、今世界で最も大きな地位を占めている格付機関はアメリカの、二つですか、会社でございます。S&Pやムーディーズがそれだけ大きなロットでさまざまな企業を比較しながらやっていることに対して、それに異論を差し挟むつもりまではございませんが、日本の一つの国策として、国としてこの格付制度を、日本企業やひいては国債を発行する日本国政府自体がもっと利用しやすい形に整えていくためには、日本の企業なりいろいろな主体の取引実情や慣行なるものをきっちりとわかった格付機関というのがあってほしいと。

 企業の経営者の皆様方からすれば、少なくとも日本の企業同士で取引しているような間柄では、外国との間ではまた外国の国際ルールがあろうかと思いますが、少なくとも日本国の企業同士で取引している間柄ではいろいろな取引慣行があるよねと。例えば売り上げについて、どの時期に本当にお金を受け取るのかということについて、日本という国はどちらかといったら、その当事者の間でいろいろな寛容な文化がございます。しかし、欧米では非常にクールで、期日が来たらもうアウトということがよくございます。これのどちらがいいとか悪いとかの問題じゃなくて、それぞれの国の中でのそういった商慣習なるものをきちっと格付の評価をする際に要素として織り込んでいてほしいというのが、私の聞きました企業経営者の方々の、かなりの方々の御意見だということが背景にあるのでございます。

 そうしたことから、日本としてこの格付機関を、日本から見てきちっと適正な評価をしてくれるような機関、実は日本にも二つほど格付機関が既にございます。しかし、事前に資料をいただいておりましたが、こんなに違うのかと、ある意味また認識を新たにしましたが、やっている格付の数にしましても大きな、何けたもの差がございます。こういった格付機関を日本政府として育成するという結論を導いてもよいのではないかと思ったんですが、いかがでしょうか。

与謝野国務大臣 地域のことをよくわかった格付会社、やはりそれぞれの国には別の商慣行、制度があるんだということを前提に、そういう地域の実情をよく理解した格付会社を育成するというのは、私は大変重要な点であろうと思っております。麻生総理も、実は昨年十一月のG20のサミットで、各地域にローカルな格付会社を育成することの重要性については既に提案をされておられます。

 日本にも幾つかの格付会社がございますけれども、今般の規制導入によって、これらの格付会社で十分な体制整備を整えられ、金融商品市場において活躍をしていただきたい、心から私はそう思っております。

和田委員 法制上の仕組みの議論だけではなくて、予算上の話もいろいろございますので、ぜひオール日本として、こういったところに日本が、少なくとも外国の各企業や各国政府と比べて不利な立場に置かれないぐらいの平等性だけは担保することが国の責任であろうかと思いますので、ぜひじっくりお考えいただければというふうに思います。

 時間が迫ってまいりましたので、次のテーマに移りたいと思います。

 もう一つ考えておりましたテーマは、指定紛争解決制度でございます。よく金融ADRと言われているものでございますけれども、私はこういった制度を設けることそのものには異議はないということを前提に質疑させていただければと思いますが、しかし、いろいろいただいた資料等を拝読しますと、今回のこの制度を取り入れる、創設するということについて趣旨が、目的が当事者間の紛争解決を迅速化するということにあるように書いてございます。

 ここから先、きょうは法務省からも来ていただいておりますが、両省の間でそれぞれ調整なさった結果法案が出てきているという認識でございますので、その調整の結果としてどのような概念整理になっているのか、お聞かせいただければと思います。

 もともと日本は三権分立の国として、争い事は司法の場でというのがまず原則としてあるわけでございます。しかし、私がこの条文なり趣旨を読んでみて思いましたのは、いきなり司法に来られても、こういった部分については、非常に複雑、錯綜した利害関係等があって、それをすぐに、法廷で仕事をやっている裁判官、またいろいろな、それぞれ当事者として弁護士、そうした者にゆだねるより、この制度にのっとって、もっと知識に明るい方々の間でいろいろなことを話し合ってみて、それで解決すればそれでいいじゃないかというふうに読めたわけでございますが、よくよく考えてみますと、それでまとまった場合にはそれが一番よろしゅうございますが、まとまらない場合に、その手続を経た後、その後に司法の場に移ってくれということになるのではないかというふうに思ったわけでございます。

 そうなってくると、専門的な知識を有する人たちの間で議論している場、それが今回のこの指定紛争解決制度でございますが、この制度の中でやりとりしていることが、少なくとも次の司法の場に移るようなケースの場合には、この期間なり内容なりというのが決して無駄にならないように移行しなければならないのではないかと思ったわけでございます。

 そういった意味で、この法案を御提出になるに際しまして、まずは恐らく司法制度の関係で、自分たちの所掌分野との関係でどのような概念整理で今回この法案の提出をお認めになったか、法務副大臣の方からお答えいただけますでしょうか。

佐藤副大臣 ただいまの御指摘の点でございますが、先生の御指摘は、いわば金融ADR、オルタナティブ・ディスピュート・リゾリューションあるいはリゾルブというものでございますが、もともと創設したのが紛争解決の迅速化にあるんだ、迅速化にある以上、司法手続が最後に残っていたなら、屋上屋を重ねるようなことを回避する必要があるんじゃないか、これがまず一点だと思うんですね。

 これは金融商品・サービスをめぐる紛争だけではなくて、すべての法的紛争というのは最終的には裁判所における訴訟手続で解決される、これは先生、釈迦に説法でございます。ですが、訴訟手続というのは非常に厳格であるため、どうしても紛争当事者に一定の手続的あるいは時間的な負担がかかることになるわけでございます。そこで、今般の改正法案では、金融紛争に特化した専門のADR制度、保険は保険とか、銀行は銀行とか、信託は信託とか、これを設けることによりまして、訴訟手続よりも簡易で迅速な紛争解決手段を創設するものと了承いたしております。

 そして、金融ADR手続では、金融機関に対して、手続の応諾義務、それから資料の提出義務、さらには紛争解決委員の提示する和解案、特別調停案といいますか、それの尊重義務を負わせているなど、実効力のある強力な紛争解決の仕組みがとられておりますので、相当数の紛争が限られてとられているこの手続の中で解決するんじゃないか。

 それからもう一点、先生指摘されたのは、もっとも最後に訴訟があるじゃないかと。訴訟の部分でいったときに、屋上に屋を架するようなことになるんじゃないかという点でございますが、すべての金融紛争がこの金融ADR手続により解決できるとは限りません。事案によっては、訴訟によって解決せざるを得ないことになります。

 しかし、その場合でも、事前に金融ADR手続を経ていることによって、訴訟当事者間で争点が明確となってくる。それから、証拠関係でも整理された状態で訴訟が開始される。訴訟手続の迅速な進行が期待される。したがって、先生御懸念の点でございますが、屋上に屋を架するという点でございますけれども、御心配なされるような屋上屋を架する、かえって時間がかかってしまう事態になるんじゃないかということはないと考えているわけでございます。

 以上です。

和田委員 副大臣、いろいろお話しいただきましたが、ほとんどが私の質問を復唱していただいたようなものでございました。お時間もお時間ですから実際もう一度お勉強していただければと思いますが、先ほどおっしゃっていただいた答弁の中で唯一私が拾い上げましたのは、争点の明確化だとか証拠資料としていろいろ整理された状態で出てきているとか、そういったことをおっしゃっておられました。それは実態としてそういうことがおありなのかもわかりませんが、制度としてこれを規定する以上、例えば、では、その論点はそれを採用して審理することにするのか、証拠書類はそれを証拠として認定する制度をつくるのか、そうしたところまで本当に考えていただかないと、結局はどれだけ時間がかかるかイメージが持てないのではないでしょうか。

 財務大臣、金融関係の紛争処理として、確かに、専門的な知識を有する人たちの間でこういった手続が行われること自体、私自身は否定すべきものではなかろうと思います。しかし、先ほど副大臣が御答弁になったような法務省との仕切りの問題として、ちょっと時間が切れてまいりましたので一緒に御質問させていただきますが、今回、それぞれの業態についてこの紛争解決のための制度を、それぞれ義務づけるものではなくて、自主的な動きを見詰めながら、これは創設するんですから、実際に志願してきたものについてはそれを認めましょうと。自分のところの業界ではそういったところまでなかなかできないから、ほかの手段で考えていきましょうということを包含して今認めているわけでございます。

 私がこの点を拝読して一番危惧しましたのは、三権分立という大きな原則の中で、司法との間でどこで線を引くのかが各業態ごとに異なることになりはしないかという論点でございます。財務大臣としていかがでしょうか。

与謝野国務大臣 まず先生の最初の御質問の中にあった、ADRをつくるのであれば、事実審はそっちの方でやって、法律判断だけさらに裁判所に行けばいいじゃないか、多分そういう意味が含まれていたわけですけれども、他のADRもそうなんですけれども、事実上、裁判に持っていって事実関係も争うという権利を剥奪するというのはなかなか制度として難しいということがありましたから、今回も、やや消極的な書き方ですけれども、専門の人たちが集まってやった、出した結論は尊重しましょうよという尊重義務のところが最大限かなと。上訴するというか、ADRが終わった後もう一回裁判に行くというところの権利までなかなか遮断ができない。

 ただ、佐藤さんが御答弁させていただいたように、どこが争いかということもはっきりしますし、ADRの調停にかかったときは、自分の主張を主張として裏づけるためのたくさんの資料が出てきますから、そういうものはそんな手間がかかることなく裁判手続でも使えるわけですから、それはある程度裁判が迅速化されるということは言えるんじゃないかな、私はそういうように思っております。

和田委員 時間が参りましたので、今のに対する長いコメントは避けますけれども、大臣がおっしゃってくださったことを整理するとこのようになるかと思います。

 今まで、これがない現在、こういった問題が司法に持ち込まれたときには、裁判官や弁護士が総動員されて、いろいろなものを集めながら一生懸命何日かかけてやっていく。だけれども、それをもっと専門家の間で事前に粗ごなししておけば、要するに集まった状態で裁判制度に乗っかっていくから、その部分は迅速化していくだろうということだろうと思います。しかし、私は、法をつくる立場からすれば、その部分を担保する規定を何らかの意味で盛り込んだ方がよろしいのではないかなという意見で申し上げました。

 最後にもう一つでございますが、先ほどの、各業態ごとに動きを見詰めるという流れになっておるわけでございますが、日本のそれぞれの業態を今まで見てまいりますと、こういう設定の仕方だと、結局やるところはやって、やらないところはやらないということになりはしないかなという危惧がございまして、そういった意味で、意見として申し上げれば、何年間かの期限は設けた上で、そのペースはそれぞれの業態に任せるけれども、最後はちゃんとつくっていきなさいという方がよろしいのではないかなと思って質疑させていただきました。

 以上でございます。ありがとうございました。

田中委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案されている二つの法案のうち、まず金融商品取引法改正案についてお聞きをしたいと思います。

 前提として与謝野大臣の認識を確かめたいのですが、昨年、原油ですとか穀物がどんと高騰いたしました。その原因は、投機資金が金融市場から商品市場に流入したというのが大変大きな原因だと私は思いますが、大臣はどういう御認識でしょうか。

与謝野国務大臣 昨年夏まで、原油、穀物が急騰した。これについては幾つかの説明がなされております。一つは、中国など高度成長国における原油あるいは穀物等の需要の高まり、それから世界的な景気変動等の循環的要因、それから戦争、内乱等の地政学的リスク、あるいは、商品先物市場への投資資金、あるいは投機資金と呼んでもいいんですけれども、これが流入した、こういうさまざまな理由で説明されております。

 例えば、ニューヨークの原油市場の規模というのは、あそこに一気に投機資金が流れ込んだんですけれども、その当時は八兆円か九兆円の非常に小さい市場だったわけでして、そこに何兆とか何十兆のお金が一気に流れ込んだという、いわばニューヨークの原油市場は賭博場と化したと言われていることで、やはり、そういう投機資金というものが暴れ回ったということは事実だと思っております。

    〔委員長退席、吉田(六)委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 私も非常に似たような認識を持っておりまして、金融市場というのは非常に規模が大きいわけでありまして、世界じゅうに資金が瞬時に移動するような状況であります。商品市場というのは特定の、原油だけではない、穀物もいろいろありますが、規模としては非常に小さいわけであります。そこに一気に金融資金のごく一部でもどんと入っていけば、ひとたまりもない。どんと高騰する。その結果、日常生活品が大変暴騰するという形になって、いわば庶民が打撃を受けるわけであります。

 そういう意味では、この反省の上に立って、今、市場のあり方をどうするかというのが国際的に議論されているというふうに私は思います。

 そこで、具体的に聞きたいんですけれども、日本政府として、例えば国際会議、さまざまな金融の会議があります、そこで投機に対する具体的な規制策、これを提起したことがあるのかどうか、あるいは国内で具体的な措置をとったことがあるか、これについてお聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 佐々木先生の御指摘の点につきましては、先般のロンドン・サミットでも、ヘッジファンド等への登録制導入が合意されるなど、規制、監督の範囲の拡大について前向きな成果があったと我々は考えております。

 サミットに至る準備過程では、日本としては、ヘッジファンドの規制、監督のあり方について、一つは透明性の向上、一つは規制の実効性の向上、一つは国際協調の強化を主張するなど、金融危機再発の防止や金融システムの強化に向けた議論に積極的に参画してきたつもりでございます。

佐々木(憲)委員 積極的に参画されたということなんですけれども、日本政府としてもっと前向きに積極的な規制策の提起というものをすべきだと私は思うんですが、どうもそこが余り見えないような感じがいたします。

 この法案に即してお聞きしたいと思いますが、金融商品取引所と商品取引所、この垣根を取り払って一体で経営ができるようにする。そうなると、投資家が一つの取引所に加盟するだけで、金融商品の取引も商品取引も両方可能になる。そういう意味では、こういう取引をしたい、両方やりたいという方にとっては、あるいはそういう基金なり企業にとっては、利便性は高まるかもしれない。しかし、この部分は規制緩和の方向だと私は思うわけです。

 やはりこれまでの教訓から考えますと、金融と商品というものがきちっと分離されていなければならないわけでありまして、これがこの法案では、投機を規制するよりも、両方、垣根を取り払って、金融と商品に資金が自由に出入りできる。こうなると逆ではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

谷本副大臣 お答えいたします。

 取引所の相互乗り入れにつきましては、取引所の取扱商品の多様化を図り、公正で利便性の高い市場基盤を整備するものであり、取引所の市場規模の拡大や取扱商品の多様化による収益基盤の安定を通じて、取引所の経営基盤の強化に資するものと考えております。

 なお、相互乗り入れに当たっては、監督当局間の一層の連携を通じて、両市場の適切な監視、監督に努めることとしており、両市場をまたいだ不公正取引の監視強化にも資するものと考えております。

 また、今通常国会に提出されている商品取引所法の改正法案においては、商品市場における透明、公正な取引を確保するための規制を強化する等の措置を行うものと承知しております。

佐々木(憲)委員 収益基盤の強化とか利便性の強化ということが先行されて、規制がおろそかになっているんじゃないかという疑問を持っておりますので、この問題については、具体的な法の中身に即して引き続き議論をしていきたいと思っておりまして、あすもこの委員会が開かれますので、そこで具体的に質疑をさせていただきたいというふうに思います。

 さてそこで、きょうは、残された時間、少し話題をかえまして、国有財産の管理の問題についてお聞きをしたいと思っております。

 財政赤字が非常に拡大していく中で、国有財産の売却というものがこの間進められてきました。私は、国民の共有財産であるべきこの国有財産を安易に民間に売り渡していいのかというのをずっと前から疑問に思っておりまして、やはり国有財産は、国民の共有財産として公共的な役割を果たすように活用すべきだ。ただ売ればいい、一時的に資金が入るかもしれないけれども、しかしそれは、将来、国民にとってマイナスになるのではないかというふうに思っております。

 まず与謝野大臣に、こういう国有財産の売り渡しというのをどんどんやっていくことについてどのようなお考えをお持ちか、お聞きしたいと思います。

与謝野国務大臣 何か、あるものをみんな売って売り食いしろという感じがあって、これは宮沢喜一先生に言わせるとタケノコ生活だ、こういう表現もあるわけでして、私は、国有財産、不用なものは売却するということはあり得ても、財政のために国民の貴重な財産を売るということは必ずしも賢明なやり方ではない、そういうふうに思っております。

佐々木(憲)委員 具体例として、接収貴金属等の処理に関する法律というのがありまして、この点についてお聞きしたいんですが、戦後、占領軍によって接収された貴金属が日本政府に引き渡されるということがありました。この法律によって、それまで、この貴金属は私のものですということで申し出をして、本人のものであると確定した場合には本人に返す、しかし、それがはっきりしないものは国に帰属させる、つまり国有財産とする、こういうことを規定した法律であります。

 確認したいんですけれども、国庫に帰属させた金額、これは幾らになるのか、その後売却された金額は幾らか、現在、残高はどうなっているか、お聞きをしたいと思います。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 占領軍により引き渡されました貴金属等のうち、先生がおっしゃいました接収貴金属等の処理に関する法律施行の際、同法第十一条の規定に基づきまして、同法に基づく返還ができず国に帰属されたものは、金地金約七トン、銀地金約千五十三トン等でございます。

 これらについての金額につきましては、当時の法令上、台帳に記載する必要がないとされていましたことから、現存する帳簿には金額が記載されておらず、現時点では、大変申しわけございませんけれども、金額はわからない状況でございます。

 なお、この接収貴金属等につきましては、昭和三十五年度から平成十二年度までの間の売却等によりすべての処理が完了しておりまして、現在、国が接収貴金属として保管しているものはございません。

 なお、売却等の金額は約二百五十億円でございます。

佐々木(憲)委員 接収されたものは全部売却されて何も残っていない、タケノコが全部むかれてしまって何もないということであります。

 もう一度聞きますが、接収されたものの一部が何らかの理由で後で発見されたという場合は、その貴金属というのはどういうふうに扱いを受けるわけですか。

中村政府参考人 お答え申し上げます。

 占領軍に接収されました貴金属等につきましては、政府が連合国占領軍から引き渡しを受け、先生がおっしゃいました接収貴金属等の処理に関する法律に基づいてこれを被接収者等に返還し、残余のものについては国が処理してきたところでございます。

 これらの接収貴金属等は、占領軍に管理されている間に、溶解あるいは混合される等により形状、数量の変動を生じたものがあるものの、結果的に、平和条約の発効後にすべて返還されたものと理解しておりまして、御指摘のような事態は想定はしておりません。

 したがって、御指摘のような事態は、民法の特別法として制定されました接収貴金属等の処理に関する法律のいわば射程外の問題であるというふうに理解しております。

 したがいまして、具体的にそういう話が仮にあったとすれば、それは、具体的な事実関係に即し、民法等の一般の民事関係法令に照らして処理されるべきものであると考えております。

佐々木(憲)委員 平成七年に、接収刀剣類の処理に関する法律という、これも似たような名前の法律がつくられました。これは自民党の山中貞則議員を中心に議員立法として提案をされまして、全会一致で、我々も賛成してこれが国会を通りました。この法律に基づきまして、戦後占領軍に接収された経緯のある刀剣類、刀、やり、なぎなた、そういうものでありますが、これが国有化されたわけです。

 まず、当時、何本国有化されたのか、これを文化庁に確認したいと思います。

高杉政府参考人 先生御指摘の接収刀剣類の処理に関する法律の規定によりまして、これは施行が平成八年の二月一日でございます、そして、この法律の対象となった刀剣類は四千五百七十六本でございます。そして、同法第四条の規定に基づきまして、最終的に旧所有者へ返還した七本を除く四千五百六十九本、これが国に帰属するということになりました。

佐々木(憲)委員 第二次大戦後、占領軍が日本の武装解除の一環として、一般国民が持っていた数十万本の刀剣類を接収したわけです。その大部分は破棄されたり海外に流出したりしたと言われておりますが、それを免れた刀剣類は、東京都北区赤羽にありました米軍第八軍兵器補給廠に集積されておりました。そこに集積された刀が赤羽刀と呼ばれているわけです。

 昭和二十二年に、そのうち美術的価値があるものについては日本側に引き渡されたわけであります。その引き渡された先は一体どこなのか、それが国有化される以前に管理していたのはどこが管理していたのか、これを示していただきたい。

高杉政府参考人 昭和二十二年に返還された刀剣類、これは、当時の国立博物館、現在は独立行政法人の東京国立博物館になっておりますけれども、そこに引き渡されまして管理がなされておったものでございます。

佐々木(憲)委員 まず、この赤羽刀の数字を確認したいんですけれども、昭和二十四年四月に国家地方警察本部がつくった、進駐軍より返還させられた刀剣類作者別分類目録というのがあるそうなんですね。この目録に記載されたのは何本でしょうか。警察庁、お答えいただきたい。

園田政府参考人 議員御指摘の目録でございますけれども、これにつきましては確認できない状況でございますので、お尋ねの内容についてはお答えすることができない状況でございます。

    〔吉田(六)委員長代理退席、委員長着席〕

佐々木(憲)委員 これは極めて奇妙なことでありまして、私が専門家に聞いたところによりますと、この目録に掲載されている刀剣の数は四千四百六十本と聞いております。

 それでは、「赤羽刀」というこういうリーフ、これは文化庁がつくったわけですけれども、平成十二年につくられました。ここには何本と書いてあるんですか。

高杉政府参考人 平成十二年につくりました「赤羽刀」というリーフレット、ここには、「集積されていた数十万本の中から約五千五百本が選定され、旧所有者に返還するまでの間、国立博物館を保管場所と定め、昭和二十二年十二月一日に搬入された。」と書いてあります。

佐々木(憲)委員 五千五百ということが書かれているわけです。

 平成七年にできた、先ほど言った接収刀剣類の処理に関する法律に基づいて平成八年八月二十九日付の官報に掲示された赤羽刀の数、これは何本ですか。

高杉政府参考人 平成八年八月二十九日、文化庁名で、接収刀剣類の種類、形状及び作者名及び接収刀剣類返還請求書及び提出先に関する官報告示を行いました。この官報告示によって示した本数というのは、四千五百七十六本でございます。

佐々木(憲)委員 全然数字が合わないんですよ。これは、文化庁が五千五百と言っているんですね。官報は四千五百七十六本なんですよ。どうしてこんなに差があるのか。

 なぜ私がこんな数字を問題にするかといえば、これは、国有財産として一体どれだけ国に帰属するかどうか、そこにかかわる大変重要な数字だから聞いているわけであります。こんなに数字が違うのは非常におかしいというふうに私は思います。

 それで、三月二十四日、先月ですけれども、朝日新聞の夕刊に、財団法人日本美術刀剣保存協会の収蔵庫から、銃刀法で義務づけられている登録がなされているかどうか不明の三百九十一本の刀が見つかったと報道されました。これはどういうものなんでしょうか。本来国に帰属するはずだった赤羽刀の一部ではないかと言われておりますが、その可能性は否定できないんじゃありませんか。

高杉政府参考人 このたび、日本美術刀剣保存協会で発見されました刀剣につきまして、当該法人に対して、これがどのような由来であるのかということについて調査をして私どもの方に知らせるようにということでお願いをして、現在調査をしていただいているというところでございます。

 なお、先ほど数字が合わないというお話がありましたけれども、実は、約五千七百本のうちから、所有者が判明をして返したという記録のあるものが一千百三十二本ございます。そうしますと、おおよそ五千七百本と、一千百三十二本を引きますと四千五百本余に数字としてはなってくるというようなことを考えております。

佐々木(憲)委員 数字の問題は、まずそこからいきますと、五千五百本というふうに文化庁は書いたわけですから、今五千七百本というのは、どうして七百になるんですか。それが一つと、それから、この数字というのはいろいろな数字が出てくるわけですよ。余りにもばらばらで、何が本当なのかがよくわからない。まあ、その問題はもういいです。

 それで、三月に発見されたこの新たな三百九十一本という刀、一体これは何なんだろうと。本来なら、こういうものは届け出て登録して、じゃないとこれは所有できないものですよ。銃刀法違反ということにもなりかねない。

 無届け、無登録で刀剣類を所持していれば、これはどのような法律の違反になるのか、罰則はあるのか、警察庁、お答えいただきたい。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 お尋ねのような場合が銃刀法に違反するかどうかということにつきましては、個々の事案の事実関係に基づいて個別に判断する必要がございますけれども、一般論として申しますれば、銃刀法の規定に基づく登録または許可を受けていない刀剣を発見したにもかかわらず、警察への届け出をすることなく所持し続けていた場合には、不法所持になる場合があると考えられております。

佐々木(憲)委員 不法所持ということは銃刀法違反であり、罰則はどういうふうになっていますか。

園田政府参考人 許可なく所持した場合の不法所持の罰則につきましては、三年以下の懲役または五十万円以下の罰金ということになってございます。

佐々木(憲)委員 この美術刀剣保存協会というのは、刀剣類を専門に扱う公益法人なんですよ。無届けの刀剣が長い間放置されていたことは事実でありまして、登録されていたかどうかもまだわかりません。調査中です。

 こういうものがそこにあるということ自体、これはあってはならないものだと思いますが、文化庁はどう考えていますか。

高杉政府参考人 議員御指摘のこのたび発見されました刀剣について、今、その来歴とか詳細について、事実関係の調査と報告を求めております。

 私ども、その内容を踏まえまして、今後とも適切に指導してまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 聞いたことに答えていない。あってはならないものかどうかということを聞いたわけです。

 それでは、この三百九十一本以外に、一切ほかにこういうものがないと断言できますか。

高杉政府参考人 それにつきましては、それも含めて調査をするようにお願いをしたいと思っております。

佐々木(憲)委員 では、これ以外にも可能性はあるということですね。

高杉政府参考人 こういうものが出てきたわけでございますから、きちっと調査をするようにお願いをしておるということでございます。

佐々木(憲)委員 これ以外にもある可能性があるということを認めているわけですが、こういう大量の、要するに刀ですよ、こういうものがいつからこの収蔵庫の中にあったのか。

 収蔵庫が建てられたのはいつですか。

高杉政府参考人 この新しい博物館の収蔵庫になりますけれども、これは昭和四十三年に建てられたと承知しております。

佐々木(憲)委員 昭和四十三年に建てられたわけですね。つまり、昭和四十三年、一九六八年以降に何者かがそこに持ち込んだ、運び込んだということしか考えられないわけです。刀は、自分で歩いてはきませんから。

 つまり、これはだれでも自由に入れるところじゃないはずです。そういう貴重な刀剣類が保存されている場所、収蔵されている場所ですから。したがいまして、それができるのは、権限のある者じゃないと出入りできない。

 出入りできるのはどのようなレベルの人ですか。

高杉政府参考人 それにつきましては、私もつまびらかに聞いているわけではございませんけれども、関係の財団の職員等であろうかと思っております。

佐々木(憲)委員 財団の職員が自由に出入りできるはずないじゃないですか。そこをあけたり閉めたりする権限を持っている人というのは、特定の、ごく一部の幹部以外いないじゃないですか。

高杉政府参考人 基本的にだれがそこをあける権限を持っているのかということについては、現在の段階では、私どもは承知しておらないところでございます。

佐々木(憲)委員 こんなことさえ調べていないのはおかしいですよ。文化庁としてまともに管理監督をやっているのかという問題ですよ。

 こんな重大なものが一カ月前に出てきて、一体それはなぜそこにあったのか今調べていただいていると。だれが調べているんですか。協会の中で調べているんでしょう。まず第一、みずからそこに乗り込んで実態を調査する姿勢がない。しかも、性格もよくわからない。だれが管理しているかもわからない。そんなことで監督ができるんですか。

 まず警察庁に伺いますけれども、そういうものがあったということが発見されて、通報を受けて協会に出向いて現場を確認したのは何人の警察官ですか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 三月三日に通報を受けまして、本件刀剣類が収蔵されているとされる財団法人日本美術刀剣保存協会に赴いたのは、代々木警察署署員三人との報告を受けております。

佐々木(憲)委員 最初から三人ですか。一番最初に入ったのは一人じゃないんですか。

園田政府参考人 警視庁からは三人という報告を受けております。

佐々木(憲)委員 私が聞いているところによりますと、最初は一人です。名前も知っております。

 こういう問題を発見し、通報があった場合、通常は複数で行くんですよ。しかし、この場合は一人で行った。現場に行った警察官はどういう確認作業をしたのか。収蔵庫に入って、対象となるものを封印したというんです。

 封印したのは何カ所ありますか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 刀剣類を封印したということでございますけれども、これにつきましては、三月三日に代々木警察署員が協会から帰る際に、刀剣類を保管している棚の扉を閉めて、協会関係者がみだりにあけることのないようガムテープを張りつけたものでありまして、警察が三月二十日に本件刀剣類を運び出すまでの措置であったという報告を受けております。

佐々木(憲)委員 三月六日に三人が行った。その前に、今言われたのは三月三日ですね、代々木警察署から、これは一人ですよ、警察官が行って、そして封印をした、みだりに持ち出さないようにということで。

 それを封印したのは、三カ所封印したと聞いております。それは、この協会の幹部であります田野辺氏のコーナー、小林氏のコーナー、それぞれ管理している担当のコーナーなんでしょうね、そこを封印した。もう一カ所は、新しく発見された、つまり隣にある三百九十二本の刀剣のコーナー、この三カ所を封印した。そうじゃないんですか。

園田政府参考人 お答え申し上げます。

 三月三日の通報を受けまして、代々木警察署員が同協会で確認いたしましたのは、この協会の三階の収蔵庫、ここは全国から刀剣審査のために寄せられた刀剣類を保管するスペースと、それからもう一つは協会の刀剣類を保管するスペース、これに仕切られておりまして、本件刀剣類は、同協会の刀剣類を保管するスペースにあるたんすなどの中で発見されたとの申し出でございましたけれども、実際に署員が行きましたときには、協会関係者によりまして、それら最初にあったたんすなどから既に取り出されておりまして、同じスペース内の刀剣類の保管棚に並べられたというような報告を受けております。

佐々木(憲)委員 警察官が行く前にその協会の関係者がそれをいわば取り出して並べていた、こういう状況ですね。

 封印は三カ所と聞いておりますが、そうなんですか。

園田政府参考人 保管棚の扉にガムテープを張ったというふうに聞いておりますけれども、保管棚は幾つあったか、二つについては承知しておりますけれども、三カ所ということは私は報告を受けておりません。

佐々木(憲)委員 封印には名前が刻印されていなかったですか。

園田政府参考人 お答えします。

 封印といいますけれども、そこにあったガムテープで棚の扉を張りつけたということでございますので、名前等については承知いたしておりません。

佐々木(憲)委員 それは、具体的に聞いていないからそういう答弁しかできないんです。

 問題は、その田野辺氏それから小林氏のコーナーがあって、その隣にこの新しく発見された三百九十二の、刀剣類という意味では非常に重大なものがそこで発見された。隣ですから、当然、田野辺氏とか小林さんという人はそれを知っていなければおかしいですね。その事情は聞かれたんでしょうか。つまり、前からそこにあったということを当然知っていなきゃおかしいですよ。

 一体、そういうことがきちっと調査されたんでしょうか。

園田政府参考人 お答えいたします。

 この事案につきましては、現在、警視庁において、発見時の状況あるいは入手経緯等につきまして事実関係を確認しているところでございまして、その結果を踏まえて適切に対処するものと考えております。

佐々木(憲)委員 そこにあった刀剣類を、今度は警察署に搬送したんですか。事実関係を確認しないうちに何で警察が搬送するんでしょうか。

 現場にどういう状態で置かれているのかというのをきちんと確認して、その原因を突きとめる。それはどういう性格のものであるのか。例えば、そこに新聞紙にくるまれていれば、その新聞紙の日付ですとか、確認するのは当たり前なんですが、どこまでやったのか。

 それから、何で搬送して持ち出すんですか。そういう必要は私はないと思う。登録されているかどうかの確認作業というのは、その場で、これは東京都教育委員会のやる仕事です。極めて不思議な行為だと私は思います。

 これは、こういう指示をしてやらせたんですか。

園田政府参考人 刀剣類を運び出した理由についてでございますけれども、これにつきましては、これらの刀剣類につきまして、協会側も入手の経緯がわからないということでございましたために、警視庁におきまして、所有者が明らかでないものについては協会に保管させるのは適当でないというふうに判断いたしまして、警察において保管することとしたものとの報告を受けております。

 これにつきましては、本件については、警察が通報を受けて、先ほど申し上げましたとおり協会に出向いた時点では、既に本件刀剣類が、もともと保管されていた収蔵庫内のたんすなどとは別の棚に保管されていたものでございまして、もともとの保管状況を保全できる状況にはなかったものでございます。

佐々木(憲)委員 大体、発見された後、協会の関係者がそこから外に、外にといいますか移動させて、もとの状態はどうだったのかということもわからない状況になっていたということ自体、私は非常に問題があると思います。

 それから、経緯がわからないと言っていたと。協会の関係者が何でそこにあるのかわからない、それをうのみにしたんですか。わからないと言ったので、では持っていきましょう、そんなやり方はおかしいですよ。わからないと言っても、例えば、昭和四十三年以降しかそこは持ち込めないわけですから、その当時、一体どういう経緯だったのか、だれがその収蔵庫を管理していたのか、持ち込むことができる人物というのはどういう人なのか、そんなのはいろいろ調べようがあるじゃないですか。

 私は、この警察の対応の仕方というのは非常に問題があると思います。協会の言うことを何かうのみにして、まともな調査もやらない。これは、銃刀法違反で重大な案件ですよ。そうなりかねないような事態ですよ。それについて、そんな対応をしていいのかという問題がある。

 最後に文化庁に聞きたいけれども、これは警察任せにしないで、文化庁として、一体なぜそういう大量の刀剣があったのか、ほかにもあるかもしれない、本当に責任ある調査を文化庁としてやるべきだ。いかがですか。

高杉政府参考人 私どもも、協会にきちっと調査をして報告するようにしておりますので、それを受けましてきちっと対応していきたいと思っております。

 それと、先ほど議員の方から、ほかにまだないのかというお話がございました。

 実はその後、一部、雑品倉庫から発見されているのがございます。これにつきましては、警察に御相談をしたところ、もう刀剣類としての形状をなしていないので廃棄してくれというようなことでございました。そういうものもあるということについては、一言つけ加えさせていただきます。

佐々木(憲)委員 文化庁として独自の調査をやるべきですよ。何か、報告を待つとか、調べて報告くださいみたいな官僚的な、まあ官僚だからそうかもしらぬけれども、そんなやり方で実態がわかるわけないですよ。みずから調査をする、調査権限はあるわけです。現に、今までもやったことがある。

 どうですか。当然、乗り込んで調査すべきじゃないですか。最後にそれを答えてください。

高杉政府参考人 必要な指導というのはやってまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 終わります。

田中委員長 次回は、明十五日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時三十三分散会


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