衆議院

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第4号 平成22年2月26日(金曜日)

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平成二十二年二月二十六日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 岸本 周平君 理事 篠原  孝君

   理事 鈴木 克昌君 理事 高山 智司君

   理事 中塚 一宏君 理事 後藤田正純君

   理事 竹本 直一君 理事 石井 啓一君

      網屋 信介君    荒井  聰君

      今井 雅人君    小野塚勝俊君

      小原  舞君    大串 博志君

      岡田 康裕君    金子 健一君

      熊谷 貞俊君    小林 興起君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      下条 みつ君    菅川  洋君

      空本 誠喜君    平  智之君

      高橋 英行君    高邑  勉君

      橘  秀徳君    玉木雄一郎君

      富岡 芳忠君    野田 佳彦君

      橋本  勉君    花咲 宏基君

      福嶋健一郎君    古本伸一郎君

      三村 和也君    柳田 和己君

      山尾志桜里君    渡辺 義彦君

      江藤  拓君    田中 和徳君

      竹下  亘君    徳田  毅君

      野田  毅君    茂木 敏充君

      山本 幸三君    山本 有二君

      竹内  譲君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         菅  直人君

   内閣府副大臣       大塚 耕平君

   総務副大臣        渡辺  周君

   財務副大臣        野田 佳彦君

   財務副大臣        峰崎 直樹君

   厚生労働副大臣      長浜 博行君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   政府参考人

   (内閣法制局第三部長)  外山 秀行君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    古谷 一之君

   参考人

   (中央大学法科大学院教授)            森信 茂樹君

   参考人

   (一橋大学大学院法学研究科教授)         水野 忠恒君

   参考人

   (慶應義塾大学経済学部教授)           土居 丈朗君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十六日

 辞任         補欠選任

  小野塚勝俊君     柳田 和己君

  大串 博志君     玉木雄一郎君

  豊田潤多郎君     平  智之君

  野田 佳彦君     金子 健一君

  山尾志桜里君     高邑  勉君

  和田 隆志君     橘  秀徳君

  村田 吉隆君     江藤  拓君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     野田 佳彦君

  平  智之君     小原  舞君

  高邑  勉君     山尾志桜里君

  橘  秀徳君     高橋 英行君

  玉木雄一郎君     大串 博志君

  柳田 和己君     小野塚勝俊君

  江藤  拓君     村田 吉隆君

同日

 辞任         補欠選任

  小原  舞君     熊谷 貞俊君

  高橋 英行君     花咲 宏基君

同日

 辞任         補欠選任

  熊谷 貞俊君     豊田潤多郎君

  花咲 宏基君     空本 誠喜君

同日

 辞任         補欠選任

  空本 誠喜君     三村 和也君

同日

 辞任         補欠選任

  三村 和也君     和田 隆志君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 平成二十二年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第三号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一四号)

 租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律案(内閣提出第一五号)


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     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、平成二十二年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案、租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として内閣法制局第三部長外山秀行君、財務省主税局長古谷一之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小林興起君。

小林(興)委員 本日、質問の機会を与えていただきまして、まことにありがとうございます。そしてまた、ここで示されております案件そのものと直に関係するわけではありませんが、関連ということで、金融問題についても質問させていただくということを感謝申し上げるものであります。

 国民の生活が第一ということの中で、昨年、新政権が誕生したということは、政策面において、これまでの政策を、変えなければならないものは大幅に変えていくということが国民から要望されている、期待されているというふうに受けとめる中で、今日の日本の経済状況、かつての経済大国日本と言われた日本の経済が今大変な危機に瀕している。その中には幾つかの原因もあり、理由もあろうかと思うのであります。そういう中で、財政立て直しということが非常に大きな課題の中で、今、税制等々の法案が審議されておりまして、これは一日も早く審議を終えて、法案の採決に持っていっていただきたいと思うわけでありますが、私は、財政と並んで、やはり金融政策を特に大きく変えていかなければならない、これも両輪が相まってこそ政府としての大きな役割を果たすことができる、そういう観点から若干の質問をさせていただきたいと思うところでございます。

 まず、金融。もう既に御承知のとおり、金融安定化法等でこれまでの金融政策を大きく修正しつつある、訂正しつつある、転換させつつあるというのは御承知だと思うのでありますが、今、業界から、また関係者から、大きな期待といいますか、要望を寄せられているのが、実は共済の分野であります。

 国民大衆にお金が非常によく行き渡り、有効に経済生活が成り立っていた日本独特の共済システムを、平成十八年に日本の政府は、保険業法というものを変えまして、その中に共済を無理やり押し込むという暴挙をあえてしていったと私は思うわけであります。

 その根底をなすのは、話題になりました郵政民営化法。これに反対しただけで私は自民党を追放されて、刺客という大変結構なものまで送っていただいたわけでありますが、なぜこんなことをしていかなければならなかったのか。これを小泉総理の特異な性格に、まあ、その部分もあると思うんですけれども、そういうことで片づけていたのではならないと思うわけでありまして、この要求の背景には、アメリカから日本に寄せられた年次改革要望書というものがある。したがって、この要望書の趣旨に沿うような郵政民営化でなければ、これを修正することは許されないという背景がきっとあったからこそ、わずか一法案の一項目について、外資に規制をかける、そういうことを一顧だにせず、強引に解散に持っていったということがうなずけるわけであります。

 しかし、きょうは、この郵政民営化を取り上げるのではなくて、共済の話であります。

 実は、共済もまたアメリカの年次改革要望書にしっかりと書かれて、共済のようなものは早くやめて、保険に一元化せよという要求が出ていたわけであります。

 当時、私も含めて、そんなにしょっちゅう金融を勉強しているわけではない我々にとっては、唐突にできてきた法案についてなかなか理解ができなかった。悪い問題を起こしている、例えばオレンジ共済なんてありましたが、いいかげんな共済を取り締まるために、まあ共済の取締法でもつくるんだろう、しかし、その取締法をつくらずに保険に無理やり押し込んでいるのかなと、その背景がわからなかったわけでありますが、やがてわかったわけであります。実は、何のことはない、年次改革要望書に、共済をやめろというアメリカからの要求がびしっと来ていたということが背景にあったわけであります。

 ところが、竹中金融大臣は、この年次改革要望書については私は見たこともないというような、テレビでも実に無責任なことを言っているわけでありますが、そんなばかなことはないわけでありまして、金融庁の担当者、きょうは大塚副大臣がお見えでございますが、そういう方々が、今なお竹中さんのように、年次改革要望書なんというものは見たことがないというような姿勢なのか、考え方なのかということについて、私はまずお聞きしたいと思います。

大塚副大臣 おはようございます。

 小林委員におかれては、日ごろから政策会議等で御指導いただきまして、どうもありがとうございます。

 今、米国の年次改革要望書等を日ごろから見ているかという御質問でございます。野党時代、私どももその要望書に対しては大変関心を払っておりましたし、また今も行政の立場から、関連文書として目を通す立場にあるものと考えております。

小林(興)委員 では、話が非常にスムーズに、早くなっていくと思うのであります。

 そういう中で、基本的に共済というものは、日本独特の文化といいますか伝統といいますか、歴史、そういうものから生まれてきた、いわば相互扶助、お互いに助け合うということを色濃く持ったシステムであります。保険というものは、御承知のとおり、これは一つの金融商品であります。ですから、ずっと金融庁が監督もしていたわけであります。それに比べて、この共済、特に自主共済のようなものは、金融庁の監督が特になかった。だからもちろん問題も起きることがあったわけでありますから、そこの部分を、取締法というような形で、共済について問題点を除去すれば、共済は共済として生き、保険は保険としてやっていけるというふうになったと思うんです。

 今、金融庁の基本的な考え方の中で、共済と保険というものは違うのか、似ているところももちろんあるわけですけれども、これはこれでやはり違うとお考えなのか、それとも全く同じだというふうに考えていらっしゃるのか、その基本をお聞きしたいと思います。

大塚副大臣 基本は、異なる面があるものというふうに思っております。

 このお答えに関連しまして、前段のアメリカからの年次改革要望書との関連で、ここに至る経緯も少し御説明をさせていただきたいと思います。委員から御質問をいただきまして、私どもも改めて調べさせていただきました。

 そうしましたところ、平成十五年十月二十四日の日米規制改革及び競争政策イニシアチブに基づく日本政府への米国政府の年次改革要望書の中に、共済についても次のようなくだりがございます。「米国は日本に対し、共済と民間競合会社間の公正な競争確保のため、すべての共済事業者に民間と同一の法律、税金、セーフティネットのコスト負担、責任準備金条件、基準及び規制監視を適用することを提言する。」というふうに明記をされております。

 そして、それを受けまして、翌月の、小泉政権下における総合規制改革会議の資料の中に、米国のこの要望が明記をされ、そして、翌年、平成十六年十月の総務省の行政評価局、当時の総務大臣は麻生大臣でございましたが、共済について、「対処すべきと考えられる行政上の課題がみられた。」こういうふうに明記をされているわけであります。

 こういう流れを受けて、保険業法の改正の中で共済が取り扱われたわけでございますが、もっとも、同質的な会員を対象とする相互扶助の共済というのは保険とは異なる面があるというのは、この一連の対応の中でも一応意識はされて前政権のもとでも対応されていたというふうには理解しておりますが、そのこと自身が十分であったかどうかということが現在問題になっているものというふうに考えております。

小林(興)委員 ありがとうございます。

 大塚副大臣になってから非常に勉強が進んできたということで、政権交代の意義もあったかなと、今の答弁を聞いていて思うわけであります。

 共済なんていうのは、大体、アメリカにないわけですから、ないものについてああだこうだと考えてみても意味がないわけであります。日本では、御承知のとおり、相互扶助、この共済は非常に普及してきているわけですけれども、それは保険という金融商品とは全然違ったやり方で、非常に簡易に、しかしそこには相互扶助と同時に相互の信頼関係というんですか、言ってみれば、金をすぐ持ち逃げしたりしないとか、仲間のお金を大事にしていく、したがって、預けてあるけれども安心だ、これは日本の非常に立派な文化だと私は思うんです。そういうものがベースにないと成り立たない制度でもあるんですね。逆に日本だったら成り立つ、そういうものがあるわけですから、アメリカに対しても、実は日本の共済はこんなものだと少し教えてやって、文化の違いを納得させれば、向こうもあこぎなことを言ってくることもないかなと思うんですけれども。

 アメリカでは、特に保険なんかは、英語ではバイ、保険は買うと言うわけですけれども、日本の場合は、保険だって入るなんて言う。日本人は保険もまた相互扶助的な意識が強い国民で、保険に入るなんて気楽に言っているわけでありますけれども、保険はもともと買うような金融商品だ、バイだというようなことを、言葉を考えるだけでも、この違いというものはあるということを思わなければならないと思うのであります。

 ちなみに、郵政民営化とこの共済、余りにもめちゃくちゃな日本政府の対応に対して、私も選挙に敗れた後、納得できないので、この「主権在米経済」という本にそういうことを、郵貯の問題、共済の問題を書きまして、自分で言うのもなんですけれども、歴史的な名著だと思いますので、これを大塚副大臣に後ほど進呈いたしますから、ぜひ読んでいただきたいと思うのであります。

 余談になりましたが、続けたいと思います。

 それで、今、当時の法律の改正の中で、どちらかといいますと、共済でやっていた無認可共済ですね、根拠法のない共済というわけでありますけれども、その根拠法のない共済について、政府は当時、これはどちらかといいますと少し規模が小さいという気持ちがあったんでしょう、少額保険という、さすがに日本の役人のいいところ、いいところというのはささやかな悪知恵というんですかね、知恵を使うところで、そういう、いかにも共済が生き残れるかのようなイメージを与える少額保険制度というのをつくり出して、そこにみんな入れればいいだろうということになって、入れたものもたくさんあります。しかし、入れたものについてまた問題があるんですけれども。

 入れなかったものについて、少額保険制度の適用にならないものについてはどういうことになったかといいますと、自主共済。しばらく移行期間で認めるということでありますけれども、非常に困ったのは、御承知のとおり、PTAの皆さんが掛けていた共済。これはどんどんどんどんと縮小する一方、新しく発展させることは許されなかったわけでありますから、これが非常に困っているということで、小学校、中学校、高等学校、学校関係者から大変な苦情が殺到してきたわけであります。最近聞きますと、金融庁は、これは文部省の方でやらせるんだということにしているという話ですけれども、どんなふうにこのPTA共済を扱うことに今大体なっているんでしょうか。

大塚副大臣 PTA共済については、現在、御指摘のとおり、文科省の方で、今国会において、制度共済へ移行するための法案を策定中というふうに聞き及んでおります。

 なお、今の御質問の背景について一言、付言をさせていただきますが、おっしゃるとおり、保険業法の改正の際に、保険に移行するものと、お話のありました少額短期保険業者に移行するものと、それから制度共済へ移行するもの、そして適用除外に移行するもの、この四つに分かれたわけでありますが、その四つのいずれにも入らなかったものの一つとしてPTA共済もあるわけでありますが、このPTA共済は、その四つのうちの、今、制度共済に移行するべく、所管の文科省が対応しているというふうに聞き及んでおります。

小林(興)委員 ただ、文部省としても、こういう分野について余り得意ではない部分がありますので、金融庁とよく連携しながらやっていきたいと本音では話しているわけですね。

 そこが、私に言わせますとちょっと問題があるわけでありまして、結局、金融庁が体質を改善してなければ、昔の金融庁であるなら、ちょうど相談に来た、相手は何か無垢な素人みたいである、ここはこれでいいですよなんて言って、やった結果、また動かなくなるという可能性がありますので、従来のPTA共済に基本的に何の問題もなかったという観点に立って、ぜひこれを推し進めていただきたいというのが一つの要望事項であります。

 それから、いろいろとあらゆる共済から要望が来ているわけでありますけれども、もう一つは、これも皆さん方のところに多分行っていると思うんですけれども、十万人を超えるお医者さんというか開業医さんというんですかね、そういう方が保険医の団体連合会、保団連とかいっていますけれども、そういうグループをつくっていらっしゃるんですね。今までみんなお医者さんは、自分が病気になったときに急に人にかわってもらうわけにいかないので、休業補償というものを大きくテーマにした自主共済を自分たちで考えてやってきた。それが、この間の法改正の後は、現状維持といいますか、つまり、新規に入ることはもう許さない。ですから、お父さんが入っていても、その人が病気になったらお金が出るんでしょうけれども、しかし、その息子さんが、では私も医者になって入ろうと思うと、もう新規加入ができないということで、お金が出ていく一方で、入ってくることがなくなってきたというような苦情が寄せられているんです。

 十万人を超す大きな団体だと言われておりますから、そういうものに対して要望も金融庁に随分と行っていると思うんですけれども、これについても基本的に大きく見直してあげるということを考えていらっしゃるのかどうか、このことも委員会の場でお聞きしたいと思います。

大塚副大臣 結論から申し上げますと、現在、対応を進めつつあるところでございます。

 その背景もぜひ御理解をいただきたいんですが、私ども、保険業法改正のときは、今の連立与党であります民主党は野党でございました。平成十七年四月十四日の衆議院の本会議で可決をされました保険業法改正案、四月の二十二日に参議院で可決をされました同法案、いずれも、当時の野党である民主党は反対の立場でありました。その理由の一つが、今御指摘をいただいているような問題を含んでいたからということを委員会の中で議論をしたからでございます。

 そして、昨年の総選挙の際の、連立与党でございますが、そのうちの民主党の政策集と言われるものの中に、次のように明記をしてございます。「営利を目的とせず、保険会社が扱いにくい特定リスクに対応した保険や低廉なリスク移転手段などを提供し、一定の社会的意義を有する小規模・短期の「自主共済」については、規制の厳しい保険業法上の「保険業」とは区別します。」

 こうした現政権の認識もありますので、今御指摘のあった団体も含めて、これまでるる問題提起をしていただいていることに対して、この国会中に対応できないかどうかということを現在検討しております。

 もっとも、今申し上げました民主党のこの政策集の中の記述には、「小規模・短期の「自主共済」」というふうにありますので、今先生から御指摘のあった、十万人というような会員を抱えているものというのは、例えば今の小規模・短期保険業には該当しないものですから、新たな類型を考える、あるいは何らかのほかの工夫をするということが必要であると思われますので、現在、鋭意検討を進めている最中でございます。

小林(興)委員 ありがとうございます。

 とにかく、年次改革要望書を見ればわかるとおり、アメリカの要求によって、たくさんの、しかもいろいろな種類があった、日本の歴史、文化、伝統に基づいた、非常に便利で大衆的で、相互扶助の精神に満ちあふれたすばらしいものを無理やり保険の方へ保険の方へとやった結果、何ともならないというのがたくさんあろうかと思うわけであります。

 我々は、大きいものについては、そういう関係者が多いので、よくお願いというか陳情に来られたりしてお会いする機会があるわけですけれども、お話を伺いますと、自主共済でしたから非常にささやかな規模でやって非常によかったものが危機に瀕している。

 そういうものについては、逆に、ぜひ金融庁の方で十分に調査をするといいますか、関係者を幅広く呼んでさしあげて、そして自主共済が成り立つような、そういう、逆に優しさというか手だてといいますか、政府としての責任を果たしてくださることが非常に重要だというふうに私は思っておりますので、私が今申し上げなかった各論等についてぜひ御検討をいただきたいと思います。

 それから、いよいよ、多くありました無認可共済、根拠法のない共済の多くがこの少額短期保険という形に移行されてきたわけでありますけれども、ここに入ったところについては、最初はとにかく、今までの共済の権利といいますか、名前は少額短期保険になるけれども共済の利点というのは生かしてあげるし、それから、経営が今まで成り立ってきたわけでありますから、それが成り立たなくするような、そういうひどいことはしないということで話を聞いていたわけであります。

 しかし、実際に法案が施行された後、先ほど申し上げましたとおり、当時私は不幸なことにこの国会にいなかったわけでありますから、そのどさくさに紛れてどんどんと少額短期保険の内容が固められていったようでありまして、その結果、現時点で見ますと、こういう少額短期保険に加入していらっしゃる、これをやっていらっしゃる方で協会がつくられているんですけれども、その協会の皆さんからお話を聞きますと、やはりとても今のままでは経営が成り立たなくなってきている。

 それが、一つは、少額という名のもとに、今まで死亡保険であったら、好きに、自主共済ですから、やっていたんですけれども、それをわずか三百万に制限されちゃう。今どき三百万もらっても、もらわないよりはうれしいんですけれども、わざわざそのためにお金を掛けるかというと、非常に掛ける人が減ってきている。その上に、三百万を掛ける場合には、ふだんの掛金が低いわけですから全然利益にならないというようなことも聞いておりますし、それから、病気になった、医療関係ですね、医療、療養、これはたった八十万というんですね。これもまあまあ低くて、とても話にならない。あるいは人数、一つの保険で何人まとめて契約できるかというのも百人以下に抑えられちゃった。これも本当に小規模に強制的にさせられて、何ともやっていけない。

 せめて三百万をあるいは八十万を一千万にするとか、経営がまじめにやったら成り立つような、そういう見直しをぜひしてほしいという強い要望が協会全体から上がってきているわけですけれども、こういうことについて今考慮をされているのかどうか、確認させていただきたいと思います。

大塚副大臣 御指摘の少額短期保険業者の皆さんですが、大変経営しにくいというお声があることは十分承っております。

 ちなみに、少額短期保険業者の平成二十年度の決算ですが、多くの事業者が開始間もないこともあって、六十二社中四十六社が赤字である。その原因については、上限額に制約があるからだという意見等々があることも承知をしております。

 もっとも、ぜひ改めてこの問題のルーツを御理解いただきたいんですが、確かにこのルーツから今日に至る過程で、冒頭御指摘のあった米国の年次改革要望書等の影響があったのではないか等の指摘があります。

 ただ、もともとのルーツは、平成八年のオレンジ共済事件、そして平成十二年のKSD事件等、さまざまな自主共済が詐欺的事件を起こしたことに端を発しまして、米国の年次改革要望書が出る前から新聞等では随分、この共済を取り締まるべきだという論説が出たりいたしまして、平成十五年当時から無認可共済に対する衆参での、国会での議論が始まり、そして今日に至っていることを考えますと、片方で、今先生が御指摘になった少額短期保険業者の業務の制約を合理的な範囲で緩和をするということに配慮する一方、このルーツになったような同様の事案が生じまして消費者の被害が生じるようなことのない工夫も引き続きしなければならないという、両にらみのポジションが必要だということはぜひ御理解を賜りたいと思います。

小林(興)委員 今、大塚副大臣が言われたことはごもっともな点であります。しかし、気をつけなければならないと思うのは、必ずごもっともな理由がなければ、こうしようああしよう、こうした方がいい、そういう部分も出てこない。私は、アメリカの対日戦略が非常に巧妙である、特に金融資本主義を持ってくるのに巧妙であるのは、必ず大義名分があると。

 今の場合も、共済について、日本としても、ひどい共済があるから見直さなければいけないなという気持ちがあるわけですね。郵政についても、もっと便利にした方が、民間でやったらもっと便利になるんじゃないかという気持ちがある。そういうのをきちっととらえて、しかし違う観点から入ってくる。それがおいしい共済のお金を保険の方で奪っていこうということであり、郵貯、簡保の金をアメリカの金融資本に巻き上げていこうと。

 そういうものを、こちらの大義名分で、うっかりしていると、ごもっともだごもっともだと聞いているうちに、ふと気がつくと相手のわなに陥るというんです。さすがに大国アメリカは戦略が非常にすぐれているんですね。日本は、そこの部分だけ、木を見て森を見ないというんですかね、ごもっともだごもっともだといって小さな正義感でやっているうちに、気がついてみると全部失う。

 そういうことをずっと、年次改革要望書を見ますと必ず、日本の皆さんはこれをやった方がいい、これをやった方がいいと、ちゃんと大義名分を掲げて、アメリカがもうかるからやろうなんて書いていないんですね。日本の皆さんが幸せになるからいかがですかと優しく猫なで声で迫ってくるわけですよ。

 そういうところを見て、政府としては、日本の問題もあるけれども、しかし相手の真の意図も見抜いて、そしてきちっとこの国の国民の皆さんの富を守る、経済を守る、生活を守るということに、いま一度しっかりと、相手のすばらしい戦略に対抗する日本の戦略も考えていかなければならない。

 そういうことで、最後一分ほどあるわけですけれども、きょうは戦略担当大臣もずっとしてこられた菅副総理がわざわざお見えでございまして、おれにはきょうは質問がないのかと安心していらっしゃったかもしれませんけれども、この国家戦略という観点で、金融問題について、外国に負けずに日本を守るぞという決意を国民の皆さんにぜひ示していただいて、さすがに菅副総理だということを議事録にとどめさせていただくことをお願いしまして、私の質問を終わりたいと思います。お願いします。

菅国務大臣 激励の意味を含めての御質問、大変ありがとうございます。

 せんだって初めてG7の場に出まして、もちろん日本からは私と日銀総裁でありましたが、他の国々の中央銀行の総裁あるいはIMF等の皆さんとも多少の議論を交わすことができました。

 今小林議員言われるように、日本において、この金融の分野においてもどれだけ戦略的な形で物事が進められてきたのか、確かにしてやられたところも多かったのではないかと思っております。

 そういう中にありまして、これから、それぞれの国がかなり大きな課題を抱えておりまして、今はオバマ大統領が金融規制についてある方向性を出し、それに対する議論も進んでおりますが、そういったことが我が国の金融あるいは我が国の経済戦略にとってどのような意味を持つのか。これには実は大塚副大臣にも同行いただいたんですけれども、しっかりと知恵を集めて、そうした他の国の戦略に唯々諾々とのみ込まれることがないように私自身も頑張りたいと思いますし、また、小林議員の知恵や力もおかりをさせていただきたいと思っているところです。よろしくお願いします。

小林(興)委員 ありがとうございました。終わります。

玄葉委員長 次に、竹下亘君。

竹下委員 自民党の竹下亘でございます。

 今、確定申告のシーズンに入っております。先日、私たちは、赤坂の税務署に確定申告の現場を視察に行き、納税者の皆さん方、あるいはお世話をしていらっしゃる税理士の皆さん方等々からさまざまな意見を伺ってまいったところでございます。

 日本は世界で一番倫理観の高い国であります。そういう誇りを私たちはずっと持ち続けて今日までやってきたわけでありますが、その確定申告の現場で出ております声を聞きますと、何で十二億円余りも親からもらって、知らなかったら税金も納めなくていいのか、ばれなかったら納めなかったんじゃないか、それが国家の最高責任者、税をつかさどる政府の最高責任者であるということに大変憤りを感じるという声を多くの方から伺いました。

 それは激しい言葉で言いますと、十億まで脱税しても捕まらないならもう納めないぞ、そういう思いを心に持ちながら、しかし、本当に多数の日本国民の皆さん方はちゃんと税を納めていらっしゃる。その現場をこの目で改めて確認をしてまいりまして、鳩山さんが犯した罪は大罪だなと改めて痛感をいたしたところでございます。

 そこでまず、知らなかった、税務上あるいは税法制上でこれがどういう位置づけになるのか。すなわち、普通、知らなかったというのは、親が子供に贈与して知らなかった、小学生以下の子供だったら確かに知らなかった、これはすべて親の意思であろう。しかし、相手はもう六十を超えておる総理大臣まで務める人が子供で、それが知らなかった。どちらに犯意があるのか、だれに犯意があるのか、あるいはだれにも犯意のない脱税というのが存在するのか。

 税法上、この知らなかったというのはどういう位置づけになるのか、まず伺わせていただきたい。どうしても納得ができない点でありますので、政府委員の方で結構でございますので、おわかりになれば教えていただきたい。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 本来参るべき国税庁の政府参考人が来ておりませんので、私の方から答弁をさせていただきます。

 一般論として申し上げますと、脱税犯の法律上の構成要件といたしましては、一般の刑法犯と同じように、まず故意があること、犯意があることが必要でございます。それに加えまして、偽りその他不正の行為があること、それから税を免れた結果が発生していること、この三つの要件が必要であるというふうに承知をいたしてございます。

竹下委員 そうしますと、犯意がある、あるいは故意に何か隠したりした、そして脱税の、いわば懐に入った金があった、この三つが構成要件だ、知らなかったというのは犯罪にならない。それは、日本人の税に対する心を根本からぶち壊す行為を鳩山さんはやってくれたな、先ほど私は大罪という言葉を申し上げましたが、総理大臣なんかやっている資格は全くないな、ちょっとひどいなという思いを改めて強くいたしておるところでございます。

 今は税の問題で日本人の心を総理が壊しておるということをお話しさせていただきましたが、実はもっとさまざま、このままじゃ日本は壊されるぞという危機感を、私自身、強く抱いておるところであります。

 景気の問題、経済の問題、今審議しております来年度予算を見ておりましても、菅副総理はデフレ宣言というのをかなり早い時期におやりになりましたが、ではそれに本当に取り組んでいるのか。経済対策、補正予算を見てみましても、自民党時代にやった分を削って、それをまた戻すということも、本予算の中でもいろいろやっていらっしゃる。さらには、ではどれだけ景気刺激策になるのか、数字を出してみると甚だお寒い。これはもう日本の経済、景気も壊されるんじゃないかな。

 財政に至ってはもっと悲惨であります。よくこんな予算を組んだな、恥ずかしげもなく。あなた方が選挙前、選挙中そして今日に至ってもおっしゃっておりますことは、予算の仕組みを変えて無駄を省けば十兆や二十兆すぐ出てきます、何せ二百七兆円の総予算の枠が、特別会計を入れますとそれだけの枠がありますので、その中で一割ぐらいはすぐたたき出せる、だから赤字国債の増発は必要ないんです、だから増税も必要ないんです。その舌の根も乾かないうちにというか、まだ乾くひまもないうちにやられました今の予算、恥ずかしくないですか。

 私も、短い期間ではございますが予算編成にかかわったことがあります。戦後、日本では、昭和二十一年に一回だけ、税収よりも借金の方が多いという予算を組んだことがあります。それは、まさに戦争直後のあの焼け跡、悲惨な状況の中で、税収よりも多い借金を積んで予算編成をした経験を、日本はたった一回、昭和二十一年に持っております。それをこの平成の世の中、三十七兆円の税収に対して四十四兆円余り、それはいろいろな事情はあると思います。事情はあると思いますが、財政を預かる者の立場として、私はこれは恥ずべき行為であると断定せざるを得ない、こう思います。

 まず、この点について、菅大臣の思いをお聞かせいただきたい。

菅国務大臣 竹下議員から大変厳しい指摘をいただいております。

 しかし、率直に申し上げて、全く私とは見解が違います。まさに二次補正、本予算、私は画期的な予算だと思っております。

 それはなぜか。つまりは、余り長い時間で答弁を申し上げるのは控えますが、従来、この二十年間あるいはこの十年間とられてきた財政の運営が、結果として経済を底上げし、国民に安心をもたらしてきたのなら、御指摘はある意味で当たっているかもしれません。

 しかし、この二十年、十年の中で、当初は公共事業中心の予算が組まれて、確かに地方に財が移ることによって格差は是正されたと思うんです。私はそれは、かつての竹下内閣を含めた、本当にいい意味の効果があったと思うんです。しかし、それが経済の成長を継続することには、あのバブル以降、余り寄与できていません。

 そして、いわゆる小泉・竹中路線で、今度はまさにデフレ状況に陥ったにもかかわらず、個々の企業を効率化すればそれで景気がよくなるんだと言って厳しい労働政策等をとったことが、これは格差が広がっただけではなくて、経済もさらに悪くしたということを見ていきますと、規模の問題もありますが、根本的に財政の中身を変えなければならない。

 まさに、コンクリートから人へという考え方は、単にスローガンではなくて、従来の公共事業偏重あるいは行き過ぎた市場万能主義へのあり方を根本から変えていこう、こういうことで、まず手がけたのが、麻生内閣時代につくられた第一次補正の、規模ではなくて中身を見直して、第二次補正という形に組み替えて、そして今回の予算にもその考え方がつながっているわけでありまして、まず、ぜひごらんをいただきたいのは、財政の中身が根本的に変わっているという意味で画期的だと私は申し上げたんです。

 金額の問題については、前の政権云々ということを申し上げるのは余り繰り返したくはありませんが、率直に申し上げて、たしか昭和二十年、二十一年以来とおっしゃいました。それは、平成二十一年の予算が結果としてそうなりました。それは御存じだと思います。当初予算三十三兆の国債、そして麻生内閣の第一次補正で四十四兆、そして第二次補正は私たちの政権ではありますけれども、税収見通し四十六兆円とされていた麻生内閣の税収が九兆円落ちたために、それは穴埋めをさせていただきました。五十三兆円の赤字国債を出した形で、二十一年度のいわば予算、決算になるわけですが、これは税収でいうと、三十七兆に対して五十三兆の国債発行ということは平成二十一年で起きたんです。

 私、二十二年を考えました。いろいろな党内外の議論もありました。しかし、リーマン・ショックのこの段階で、二十一年度、先ほど申し上げたように、私たちは野党時代から規模についてそう批判したことはありません。やはりこのリーマン・ショックの中では、少なくとも平成二十二年度にもある程度、景気刺激的な予算を継続しなければならないのではないか。しかし一方では、国債のマーケットの信認も得なければいけない。

 そこで、麻生内閣の一次補正の後の四十四兆というものを一つ念頭に置いて、二十二年度予算についても約四十四兆の国債発行ということを念頭に置いて、何とかそれに抑えながら、しかし一方、総額としては九十二兆の予算ということで、決して緊縮予算ではなくて、景気刺激は続ける、まさに狭い道です。マーケットの信認と景気対策という狭い道ではありますが、ぎりぎりのところで組ませていただいた。そういう意味で、恥ずかしいと全く思ってはおりません。

竹下委員 コンクリートから人へというスローガンで中身を変えたということをおっしゃっておりますが、もともと公共事業というのは、せいぜい六兆円、七兆円。社会保障の二十数兆円に比べますと全然小さい。一般会計の半分以上を圧倒的に社会保障が占めておるというのが日本の予算の最大の特徴の一つであります。

 その意味で、それに子ども手当あるいは高校の無償化等々、まさに所得制限をしないでひたすらばらまく。ばらまくという言葉は使いたくないんですが、ばらまくという状況になった。それを中身が変わったとおっしゃるのでしたら、それは考え違い甚だしいと言わざるを得ません。余り変わっていないんです、ほとんど変わっていないんです。それで、仕組みを変えて無駄を省けば出てくると言われたものは、表面は二兆円ぐらい、実質一兆円足らず。これからどうなるのかなということも非常に気がかりな点であります。

 これは、私が、今あります予算のポイントといったような財務省がつくった資料等々、あるいは皆さん方が出されたマニフェスト等々から推計をして実はつくったんですが、つくったというか計算をしてみたんですが、例えば子ども手当一つをとりましても、今は国費として投入しているのが一兆七千四百六十五億、これで月一万三千円をやるとおっしゃっております。

 これも菅大臣にお伺いをしなければなりませんが、本当に来年、月二万六千円にするんですか。総理は守るんだということをおっしゃっておりますが、閣僚の中からは、いや相当難しいよという声が出ておるというふうにも伺っております。もしそういたしますと、五兆円を超える恒久財源がそれだけで必要になるわけでありまして、仮にことしの一兆七千四百六十五億を引いたとしても、三兆五千億円前後、場合によっては四兆円近い新たな恒久財源が再来年度は必要になってくるわけであります。ことしだって相当厳しいですが、再来年のことをちょっと考えてみただけで、背筋が寒くなるような財政状況になってくる。

 例えば、年金の国庫負担を三分の一から二分の一に、これは自民党の時代に行いましたが、我々もここは物すごく苦しんだんです。苦しんで、財投特会から二年間、つまり来年度までは繰り入れる、その先は安定的な財源を見つけるということを大前提にして二分の一国庫負担というものを行ったわけでありますが、この原資に充てていた二兆二、三千億のお金が、この恒久財源がない、これも苦しい。さらに、年によって違いますが、毎年、社会保障は八千億から一兆二千億、自然増をする、およそ一兆円と考える。

 例えば、道路特定財源の暫定税率、名前はなくなりましたが、これを本当に廃止されるのかどうか。さらには、高速道路の無料化の範囲、今はモデルケースでスタートされるということでございますが、これをさらに拡大されるのかどうか。農業の所得補償の問題、あるいは医師不足といったような問題等々、ほんのちょっと数項目を挙げただけで、十兆円を超える新たな恒久財源が必要になる。これはだれが計算しても、もし私の計算が全然違っているというなら直していただいて結構でございますが、十兆円を超える新たな、しかも恒久財源が必要になる、こういうことが言えると思います。

 それ以外に、ことしは十兆六千億の税外収を予算案の歳入の中に計上していらっしゃいますが、日本国の体力といいますか、大体毎年四兆円前後、三兆八千億から四兆二千億ぐらいが安定的な税外収のレベルであります。そうすると、ここで大体六兆円ぐらい、取り崩し等々で引き出せない、出てこない、つくっていかなければならない恒久財源が必要になってくるわけであります。これだけで十六兆円。これは全部、再来年度以降、赤字国債あるいは国債、借金でやりくりをされるつもりなのか、まずそこからお伺いをさせていただきたいと思います。

菅国務大臣 私も毎日のように、今、竹下議員が言われたような数字を頭の中に描きながら、あとはカレンダー、一年、四年、十年というものを見ながら考えております。

 と同時に、決して前の政権を非難するということではなくても、なぜこれだけ税収が下がってきたのか、なぜこれだけ成長がとどまってきたのか、なぜこれだけデフレ脱却ができない状態が続いてきたのか、そのことも同時に考えないと、一年単位では確かにやりくりで何とかなったとしても、それが三年、五年、十年先に単なるやりくりで終わっていたのではならないと考えております。

 余り長い答弁は控えたいと思いますが、そういう意味で、今、気持ちの中で一番力を入れているのは成長戦略であります。その成長戦略のときに、先ほどのことに若干絡むんですが、これからの成長分野はどうか。端的に言えば二つだと思います。

 一つは、社会保障の分野こそ、場合によっては日本経済の成長分野。つまり、需要は潜在的にあるんですが、負担の問題、つまりはそれをどう負担するかの問題があって、供給されていないために、ここに供給されれば、例えば介護が、介護報酬が少しふえれば、雇用が生まれ、サービスが生まれ、GDPは増大するんです。しかし、その負担をだれがするかというのが、これは政治の問題。今、お医者さんの分野も、あるいは子育ての分野も、待ち行列があるのに、つまり、買いたい人、需要者がいるのに供給が出ない。そういう分野が私は成長分野の第一だと思います。

 もう一つの分野は、やはり環境を含めて、場合によっては森林といったような問題も含めて、新しい需要を生み出すことができる、雇用や需要を生み出す分野。

 大きく言ってそういう二つの分野を考えて、昨年の暮れに出した、目標値ではありますけれども、十年間の平均で名目成長率を三パー、実質を二パーと置いた案を出しました。もちろん、目標でありますから、これを単純な見通しとして来年度の予算ということの税収見通しには、ストレートにはいきませんけれども、大きな流れでは、まず、いかにして成長路線に戻していくかということを念頭に置いております。

 それに加えて、あえて申し上げれば、今言われました十兆円規模というのは、私も計算してみますと、ここで二兆五千億、ここで二兆七千億、ここで自然増だけでも一兆三千億、求職者支援なども考えるとこのぐらいかかる。確かに十兆円前後の、ある意味での実現のための財源の規模というものは、おっしゃる数字は、私がイメージしているものとそう変わってはおりません。

 それをいかにして生み出していくのか。そういうことも含めて、大体、今の内閣で、必要だと思われる議論を、少なくとも議論をする場を全部今つくっていきました。税調も、所得税、消費税を含めた議論を、先日専門家委員会をスタートさせて、いよいよ議論を始めていただきます。また、いろいろなことのベースになる税及び社会保障番号についても議論を始めております。さらに、近いうちには年金の抜本改正についても議論を始めさせていただきます。そして、成長戦略はいよいよ肉づけの段階に入っていきます。

 そういうトータルの中で、来年度予算の次の予算、二〇一一年度、一二年度、一三年度、それを見通して、どういう段階でどういう形にしていくのか。これはまさに、そういう専門家の皆さん等の意見を聞きながら、そういう成長の可能性を見ながら、大変難しい課題だとは思っておりますが、今から組み立てていかなきゃいけない。

 まだ余り私から申し上げる段階ではありませんけれども、谷垣総裁からもいろいろな方からも、年金の議論はやはり超党派でやるべきだとか、場合によっては、そういった根本的な財政再建も、まさにこれは党を超えた問題として考えなきゃならないので、場合によっては与野党の議論もということをいただいていることは認識しております。

 しかし、余り今の政権の側がきちんとした案も持たないでいろいろ相談するということも、私は、段取りとしては決して望ましくないということで、少なくとも六月には中期財政フレームを国家戦略室を中心に組み立てますので、そういった中で、またいろいろな機会に御議論をいただいて、場合によっては、そういった大きな問題を超えるときには超党派的な御相談もさせていただかなければならないときが来るのではないか、このように率直なところ思っております。

竹下委員 先日、中央大学のある先生とお話をしておりましたら、彼が言っていましたのは、今の大人よりも学生の方がわかっているよ、子ども手当やめてくれ、あの負担をするのはおれたちなんだ、あんたたちじゃないんだと教授に向かって学生たちが言ったと。学生の方がわかっているんです。

 お金が潤沢あるいは財政が潤沢にあるときに、そういうある種ポピュリストとしての政策を打つということは、これはあっていいことかもしれない。しかし、財政がこれだけ厳しいときに、それは、先ほど菅さんがお話しになりましたように、前政権のことはもう余り言わないということをおっしゃいましたが、我々も、非常に厳しい財政運営をしてきて借金が積み上がってきたその責任、そこから逃れるつもりは全くありません。全くありませんが、おおらかに借金をふやし続けてもらっては困るんです。本当に、おおらかにふえざるを得ない。来年度、再来年度、十五、六兆円、どうやったって足らないわけでありますので。

 学生たちが言った、借金を返すのはおれたちなんだと。国債というのは六十年償還ですから、子供、孫まで借金というのはついて回る。そのことを、財政の健全化というのは、次の世代が行う選択肢を大きく狭めることにもつながっていくわけでありますので、先日も谷垣総裁が鳩山総理にお話をしておられましたように、例えば年金とかあるいは消費税の問題を含む財政の再建議論とか、本来政局ごっこにしてはいけないもの、これを残念ながら今までの日本の政界は政局ごっこのネタに使ってきた。確かに、国民生活に近い分野でありますので受けはいい。そのことに安易に流れてきたというその責任を、これは今の与野党、かつての与野党を含めて負わなければならない課題である。まずそこはしっかりと認識をしていただいて、そして、そうした国家の基本にとってどうしても大事な問題というのは、与野党の枠を超えた何かが動き出す時期というのは必ずやってくる。

 我々の自民党が政権を持っておりました当時も、何回か、年金の問題でやろう、あるいは消費税の問題につきましても、かつて岡田さんが代表であった時期に、選挙の公約の中の一つに書かれたことはありました。そうした動きが出始めてきただけに、これはもう政治が国家を挙げて、国民の皆さん方と一緒になって議論をして、日本という国をつくり上げていかなければならない。そういう課題というのはだんだん見えてきたかな、集約をしてきたかなという感じは持っております。

 歴史を振り返るわけではございませんが、平成元年に消費税が導入されたとき、三%でしたが、消費税の引き上げに賛成ですか、反対ですかという世論調査がありました。各紙が、マスメディアは全部やっておりました。税金が高いがいいですか、安いがいいですか。答えは、安いがいいに決まっているんです。

 しかし、それは大変な政治問題になりました。当時の政権は、まさに内閣の政治生命を、この消費税をやることによってなくなると覚悟をした上で、しかし、五十年後、百年後の歴史家が、この日本の歩んできた道というものを必ず評価してくれる、そういう確信を持って消費税の導入に踏み切ったわけであります。当時の社会党党首は土井たか子さんでございまして、もう反対も反対、大反対、いろいろなことを言われました。

 私は、そういう国会のやりとりをずっと見て、あるいは肌で感じてきておりまして、日本はだんだん変わってきたな、しかし、ポピュリスト的な政策を打つことによって、選挙というものを意識した動きというものから脱却し切れない部分はまだまだ残っているなと。

 我々も反省しました。小泉さんで郵政選挙で大成功した、あの劇場型選挙で大成功したという歴史がありますだけに、あの成功のトラウマからはなかなか抜け切れないものなんです。その結果、二回大敗をしてしまったわけでございます。そして、パフォーマンスあるいは人気取り、あるいは人気のいい総理を立てればという、ここまでいったらこれはもうおごりです。政権のおごりというもの、長い間、六十年も政権を担当してきたもののおごりがまさに出たという反省を我々は徹底的にしなければならないし、今まさに徹底的にしているその過程にあると思っております。

 でありますから、自民党の綱領も書き直しました。そういう人気取り、あるいはパフォーマンスという政治はもうやらない、私たちは保守政党であるという原点にもう一回しっかり立脚して、大地に足のついた政策、そして、将来を縛らない、将来の世代が自由に振る舞えるような、そういう日本をつくっていこう、そして、家族や地域のきずなというものを大切にしていこう、そういう国を私たちは目指すんだと。もう一回心を入れかえてというのは、本当に入れかえたかと指摘されると、いつも立ち往生してしまう部分がないわけじゃありませんが、本当に入れかえてやらなければ日本は壊されてしまう。

 私は、今の民主党のやり方を見ておりまして、外交、安保も、経済も財政も、田舎も、これはもうがたがたに壊されるぞ、そのおそれを持っておる。まさに、そのおそれのあらわれが、長崎の知事選挙であり、町田市の市長選挙にその一端があらわれてきたんじゃないかな。

 私も、もう少し期待していたんです。もうちょっとしっかりやってくれるだろうと。閣僚があんなに好き勝手なことを言ったり、閣内不統一であったり、本当のことがなかなか決まらなかったり。

 それから、マニフェストは守る、守る、守ると総理はおっしゃいますが、どこまで守ったの、守った結果がこうなのと。いや、守らない方がいいことはいっぱいあるんですよ。守らない方が本当はいいこともいっぱいある。

 逆に言いますと、我々が一番心配しましたのは、政権が誕生して、マニフェストでああ言いましたけれども、これは間違いでしたと大転換を、かつてフランスのミッテランが、社会主義政党ができて、しかし国有化をやって行き詰まって、それから大転換をやった。ああいう形に、あの当時の鳩山さんの人気のもとでしたら、ごめんなさい、間違っていた、マニフェストをこう変えますと。

 そうやって、まさに現実、あるいは財政をこんなにがたがたにしない方向に切りかえていただけるなら、これが一番、政略的といいますか、政党としては、自民対民主、あるいは二大政党という構図の中では、我々にとっては一番手ごわい対応であったな、こう思っておったわけですが、幸いなことにというか、日本にとっては不幸なことに、マニフェストやります、やりますということを言い続けた結果、予算の規模は九十二兆円。私も、規模を責めるつもりはありません。景気対策が依然必要なことは、だれが見ても明らかな状況であります。

 しかし、財政は本当にがたがただ。では、外せるものは何だ。私は、子ども手当だとか、そういうものは外したらいいんじゃないかという思いを持っております。

 今、自民党の方で、予算の組み替え動議を出そうということで準備を進めて、ほぼでき上がりつつありますが、やはり、このおおらかな借金のやり方というのは本当に破綻につながってしまうと強く強く危惧をいたしておるところでございます。

 それから、先ほど菅大臣、六月ごろに財政の中期フレームを出すということをおっしゃいました。私は、話は逆だろうと。だから膨れ上がるんです。その中期フレームみたいな、まず大枠をかけておいて、できれば五年、十年ぐらいのタームの大枠をかけておいて、これからは出ませんよ、財政はここから出ませんと。一時的な景気対策は別なんです。一時的な景気対策は一年か二年の時限のお金でありますので、恒久財源じゃないんです。それと恒久財源というのは全く性格が、財政に与えるインパクトが全く違いますので、そういう総枠を、枠をかけておいて、その中で予算編成をしていく。

 確かに、小泉さん、竹中さんがやられた中、私も、あのやり方は一〇〇%賛成だとは申しません。自民党員でありますので、一〇〇%反対だとももちろん申しませんが、一〇〇%賛成だとは思いません。私なら、ここはこうしてほしいなという部分はあったことは事実です。あったことは事実ですが、やはり、ああやって大枠をはめないと、財政というのは膨れ上がるという、これは、国民に向けば向くほど膨れ上がるという非常に矛盾した性格を持っておるんです。

 予算は、つけることはだれにでもできるんです。大臣じゃなくたって、だれにでもできるんです。問題はどうやってそれを財政規律の中でつけていくか、それが財政が果たすべき役割でありまして、私はその意味で、中期計画がない予算というのは、おいおい大丈夫かいと思っておったら、案の定、本当におおらかに借金が膨れるような、これから先を見ても歯どめないぞというぐらいな感じで今見ておるところでございます。

 ここまでの議論で、菅大臣、何か御感想があったら、お話をいただけますか。

菅国務大臣 まず、真摯に、いろいろな意味で御心配をいただいて議論いただいているということに感謝を申し上げたいと思います。

 その中で、おおらかな借金というふうに言われましたが、それほどおおらかにやっているわけではありません。

 ただ、二つ申し上げるとすれば、一つは、やはり、百年に一度と言われて、百年に一度ではなかったかもしれませんが、今なお、日本も、金融はしっかりしているから大丈夫だとは言われながら、最も外需の激減によって影響を受けたのも我が国でありまして、そういう渦中にちょうど政権交代が起きたということで、先ほど言ってもいただきましたし、私も申し上げましたが、規模においては、さきの麻生内閣がやられたところの補正も含めて、本予算も含めて、それはほぼ維持するという線で来たわけで、決して、判断を抜きにしておおらかに借金をしたつもりはありません。

 それに加えて言えば、先ほど、若い人が、子ども手当は自分たちがという、その気持ちもよくわかります。しかし、御存じのように、日本の少子高齢化が非常に鮮明になったのは二十年ぐらい前でありまして、このままいけば今世紀の終わりには四千五百万人という人口が推定され、もちろん、いろいろな数字を挙げるまでもなく、まさにこの趨勢でそのままいって、日本という国が成り立たなくなりかねない。

 そういう意味では、子ども手当という形について、現物給付をもっとしろとかいろいろな議論があることはよくわかりますが、少なくとも少子化あるいは少子高齢化ということに対して、しっかりと政策の重点を移したということは、将来、やり過ぎたということがたとえあったとしても、ここでそういう大きな政策転換をしたことは、私は、先ほども申し上げたように、大変画期的なことと申し上げたのは、そういう意味で申し上げたつもりです。

 その上で、私も、竹下内閣での消費税の議論、小さな野党におりましたが、いろいろな立場で見ておりました。また、その後の議論も見てまいりました。野党の立場が長かった、一時期は自社さ政権には入れていただきましたけれども、長かったので、若干、私自身が矛盾することになるかもしれませんが、消費税の議論がその後国民の中で理解がなかなか進まなかったことは私は二つ理由があったと思って、私たち自身の一つの教訓としております。

 一つは、今、無駄遣いという言い方を私たちはしておりますが、つまり国民から見て、もうぎりぎりなんだ、だから、福祉、社会保障を守るためにはこういう負担はお互いにしようという、ぎりぎりなんだというところが、やはり国民の皆さんには、まだまだ無駄があるじゃないか、天下りがあるじゃないか、いろいろあるじゃないかと。その信頼が得られなかったことが背景にあったというのが一つです。

 それからもう一つは、先ほども申し上げたことですが、社会保障というと負担というんですね。公共事業というと投資というわけです。しかし、私は、時代によっては、戦後のある時代までは公共事業は非常に投資的効果があったし、いろいろな効果があった。しかし、では社会保障は負担なのか。私は、社会保障も場合によっては投資的な効果があるんだという、そういう発想に切りかわらなかったことが、どうしても負担、負担というイメージで来ているものですから、負担はなるべく軽く、小さい政府論ということになると思うんです。決して大きい政府というんではなくて、今いろいろな学者の議論も聞いておりますが、社会保障こそ、今、日本における最大の成長分野だということをかなり言っている学者もふえてきております。

 そういうことを考えますと、私は、国民の皆さんには、どういう負担の仕方をするかは別として、ぎりぎり、無駄なものを省いた後に社会保障等にお金を投じることが、決して負担の増大ではなくて、ある意味では財の移転ですから、財が移転して、雇用が生まれて、サービスという意味での内需の拡大が起きたときに、そのことが日本経済にもプラスになるんだという青写真が示せたときに、私は、もう一つの理解が得られるんではないかと。

 そういう意味で、先ほども申し上げましたように、ちょうどその時期に来たからということは決して言いわけにはならないかもしれませんけれども、今すぐに緊縮という形に持っていくことは、逆に、将来にとっては、ここは、財務省という役所は、私も財務大臣になってみてよくわかりますが、あらゆる文章に財政規律というのを入れたがるんですよ。大体、一枚ペーパーをつくると最低三カ所ぐらい入っています。しかし、過去において、では、三カ所ずつ入れたからといって財政規律が守られたかというと、決して、結果として守られていない。

 まさに戦略性が必要なのであって、場合によっては、ここまではこういうやり方でやらせていただくけれども、その間に議論すべきことを議論して、それこそ先ほども言っていただいたように超党派ででも議論をして、超えていかなきゃいけないときには、そういう形で超えていくということも、これから本格的な議論を進めていきたい、こう思っております。

竹下委員 心配の種は尽きないんですけれども、ちょっとここで、話が小さくなってしまいますが、念を押しておかなければならないことがございます。

 といいますのは、先ほど言いましたように、十数兆円、恒久財源がなかなか難しい状況になる。禁じ手と言われている中で、やればできなくないことというのは幾つかあるんです。法律はもちろん変えなければなりませんし、ほかに影響が出ることは事実でありますが、例えば、日本銀行に直接国債を引き受けさせるというようなこと、これはもちろん考えていらっしゃらないと思います。それから、年金特会に百二、三十兆円という積立金がありますが、そこから借り入れるということも一時的には可能なんです、やりくりというだけを考えましたら。さらには、国債整理基金、外為特会という十兆円単位で固まりがあるところから借り入れるということは、確かに数字のやりくりの上では可能でありますが、それはまさか幾ら困ってもおやりにならないだろうなという思いがあるんですが、いかがでございますか。

菅国務大臣 この間、埋蔵金という表現も多くありましたけれども、いろいろな性格のそういった積立金等を、まさにこれは前政権の時代からかなり取り崩してきて、今回の予算でも、税外収入で十兆円、一部はそういった外為特会のフローの部分ですが、そういうものとか、あるいは幾つかのものを使わせていただいています。

 また、今言われたように、日銀に直接国債を受けさせるというのは、今、法律的にはできない仕組みになっておりますし、もちろん年金についても、そうした将来の給付のための資金であることは重々承知しております。

 そういうそれぞれの特別会計に意味があるわけですが、ですから、禁じ手という言葉を使われるのはわからないではありません。ここは表現を気をつけなきゃいけませんが、一方では、では国債をどんどん発行すればいいかということも、またこれもそう簡単には、今の四十四兆ですらかなり高い水準であります。では、それもやらない、これもやらない、そうすると、規模を縮小するのかということになります。

 ですから、率直に申し上げて、そうした選択肢の中で、まさに将来の財政健全化の道筋をきちんと示す中でどういう手段がとり得るのか。そこは、何が禁じ手で何が禁じ手でないかを議論する前に、まずは全体の、四年あるいは十年の財政健全化の道筋を示す中で議論をいただきたい、こう思っております。

竹下委員 少し税制もと思いましたが、私の質問はこれぐらいにして、次は若手の、もっと鋭い質問をいたしますので、交代をさせていただきます。

 ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、江藤拓君。

江藤委員 自由民主党の江藤拓でございます。

 若手と言われましたが、余りもう若くなくなってしまったような気がしますけれども、エールにこたえて頑張って質問をさせていただきます。

 一年のときは私も財金に所属しておりましたけれども、途中、自民党から出たりいろいろありまして、離れてしまいました。きょうは、委員ではないんですけれども、差しかえをさせていただいて、このような質問の機会を与えていただきましたことに、理事会の先生方、諸先輩方にまずはお礼を申し上げます。本当にきょうはありがとうございます。

 それでは、質問に入らせていただきます。

 昨年八月の総選挙、もう大分時間はたちましたけれども、民主党さんは、ガソリン税の暫定税率廃止、これをマニフェストに高々と述べられました。私の田舎は、電車は単線です、国道は対向一車線、路線バスはない、地下鉄ももちろんありません。一軒に車が三台、五台なんというのは当たり前なんですよ。こういうところでは、ガソリンの値段が下がるということは物すごいインパクトがありましたよ。大受けだったんですよ。おかげで選挙は苦労したんですよ。四万票勝ちましたけれどもね。ちなみに申し上げますが、実はガソリンの価格は選挙戦の前半戦には既に鎮静化しておりました。それにもかかわらず、税の方は上げられたわけでございますね。

 この件に関しまして、鳩山総理は三つの理由を述べられております。厳しい財政事情、温暖化対策、そして安定したガソリン価格等を勘案して熟慮した結果、そういうことにいたしましたというふうに率直に国民に説明をされた、このことは評価いたします。

 これらは既に、実を言いますと、自公政権が野党の先生方に言っていたことと全く一緒なんですよ。あのときも、財政状況が厳しいから暫定税率を守らせてくれと。そのときに、ガソリン値下げ隊とか、皆さん方はこの辺に立って、ガソリン下げろ、ガソリン下げろとがんがんやってきたじゃないですか。一年生の方は知らないかもしれませんが。すごい国会だったですよね、あのとき。よく覚えていると思いますけれども。

 大臣、とはいいましても、我々も、現在のガソリンや軽油の税率を維持するという法律を、このことだけを取り上げれば、自公政権で十年間の暫定税率維持という法律を通した立場であります。ですから、現下の厳しい財政状況、こういったものを考えれば、このことについて余り皆さん方を深く追及することは、結局自分たちにもはね返ってくることだというふうに思いますので、このことについて深く追及することはしません。ただ、マニフェスト違反であるということだけは、一つだけつけ加えさせていただきたいと思います。

 現在の課税水準の維持という方針が、今度の新しい政権で、どんな法律でどのようにこれは担保されていくのかなということを私は非常に興味を持って待っておりました。そうしましたら、二月五日、所得税法の一部を改正する法律案、そして二月九日には地方税法等の一部を改正する法律案、これがそれぞれ閣議決定されまして、私なりにそれぞれ勉強させていただきました。

 きょうは、この内容につきまして、どうも合点のいかない点、問題があるなと思う点が幾つかございますので、この点について質問をさせていただきたいと思います。

 議論に先立ちまして、まずは、新租税特別措置法附則の第百四十八条の趣旨について、きょうは法制局に御出席を賜っておりますが、確認をさせていただきたいと思います。

 第百四十八条では、政府は、地球温暖化対策のための税について、第八十八条の八第一項による当分の間の税率も含め、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るよう検討を進めるというふうに書いてあります。

 この条文の解釈に関して、政府の義務については、まず一つ、これは政府の検討義務を義務づけたもので、必ずしも成案を必ず得なければならないということを義務づけたものではありません。私の理解ですよ。

 そして二つ目、したがって、平成二十三年度の実施といえば、おのずと二十二年度中の税制改正が必要となることは自明の理でありますけれども、必ずしもそのことを義務づけているのではなくて、それに向けた検討を義務づけたもの、検討することだけを義務づけてあるという内容になっております。

 そして三つ目、検討の結果仮に成案が得られなかったとしても、法律に照らして、政府が約束違反をした、法律を犯したということにはならないと私は理解をいたしております。そうですよね。法律詳しいから。

 さらに言えば、第八十八条の八との関連についてさらに法制局にお尋ねをいたしますが、まず一つ目、仮に平成二十二年度中に成案を得ることができなかった場合でも、同条、八十八条の八です、この規定は有効ですね。第百四十八条、これは附則の部分ですが、この規定によって第八十八条の八の見直しが法律上義務づけられているということではない。先ほども申し上げました。したがって、第八十八条の八の当分の間という、あくまでもこれは当分の間であって、第百四十八条によって期間が全く限定されていないというふうに私はこの法案を読んで理解をしたわけでありますが、法制局の御見解をお伺いします。

外山政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいまのお尋ねは、所得税法等の一部を改正する法律案の附則第百四十八条の規定についてでございます。(江藤委員「それと八十八条の八との関連です」と呼ぶ)はい、両者でございます。

 まず、百四十八条の規定でございますけれども、これは、御指摘ございましたように、検討を義務づける規定ということでございまして、私どもとしては、成案が得られないことを前提として申し上げる立場にはないと思っておりますけれども、この規定の趣旨はあくまでも、政府に対して成案を得るよう真摯に検討を行うことを求めているものであるというふうに理解をしております。

 それからお尋ねの、新租税特別措置法第八十八条の八に規定する当分の間規定する税率についてどうなるのかということでございます。

 これは御指摘のように、改正法附則百四十八条におきまして、新租税特別措置法第八十八条の八第一項の規定により当分の間規定する税率の取り扱いを検討するという旨規定されているわけでございますけれども、この新租税特別措置法第八十八条の八第一項の規定による当分の間規定する税率につきましては、この規定、繰り返しになりますが、すなわち新租税特別措置法第八十八条の八第一項の規定を改正する措置が講じられない限り……(江藤委員「合っているかどうかだけ答えてください」と呼ぶ)終期は定められておりませんので、当該税率は引き続き存続することになるというふうに考えられます。

 以上でございます。(江藤委員「もうそこにいてください、時間がないので」と呼ぶ)

玄葉委員長 委員、発言を求めてからにしてください。

 江藤君。

江藤委員 では、大体合っているわけですね、おおむね、九九%。そこでうなずいてください。はい、それでいいです。時間の短縮を図りましょう。

 これで、必要な議論の前提が一応調ったというふうに私は思いますので、菅大臣に質問させていただきます。大臣に初めて挑戦させていただくので、非常に楽しみにしてきょうはやってまいりました。

 私は、今回の新租税特別措置法それから地方税法の改正案には、大きな問題点が大きく分けて二つあるというふうに考えております。

 まず第一点目。それは、現在の法律は暫定税率を維持すべき期間として十年間、これが長かったという批判を民主党さんからいっぱいいただきました。党内でも、二年がいいとか三年がいいとか、やはり五年にすべきだという意見もありました。ただ、宮崎のようにまだ交通インフラができていないところは、例えば東九州自動車道、当時であと十二年かかるわけですから、十年は維持したいねというのが正直な気持ちだったんですよ。結果として、そういう法律をつくりました。

 したがって、仮に、その期間の後もこれを継続したい、この税率を維持したいということであれば、期限が来たら政府は法改正をしなければなりません。当たり前の話です。今までは、その是非はこの国会で議論される仕組みでありました。

 つまり、政府が何もしなければ、法改正をしなければ暫定税率は切れてしまう。これはこの間経験しましたね。事実上、一昨年の春に、民主党さんが大反対をされまして一時期切れました。地方に穴があいて、五百億か六百億でしたか、財務の方々が一生懸命金をかき集めて、あのときは何か法律をつくったかどうか、ちょっと私記憶がないんですけれども、とにかく地方の穴埋めに奔走したことを私は覚えております。

 これは歴史的にいいますと、もともとガソリン税というものは、立ちおくれた道路整備を進めるための道路特定財源でした。ですから、道路整備の進捗状況に照らして、暫定税率がこれから先も引き続き必要なのかどうかを国会で審議する必要があるという考えに基づいたものであったというふうに私は理解をいたしております。

 昨年、法改正によりガソリン税は一般財源化されました、福田内閣におきましてですね。本来であれば、その時点で暫定税率、追加された税率の部分はその根拠を失うのが本来の姿だったと私も思います。しかしながら、今の内閣と同じように、当時の政権としては、厳しい財政状況、温暖化対策、福田内閣のときに洞爺湖サミットもやりました、そういうことを勘案して、国民の皆様方に暫定税率を維持することをお願いして、批判を浴びましたけれども維持をさせていただいたわけであります。

 鳩山総理も、今いろいろ国民におわびをされていらっしゃいますけれども、言っている内容はまるでコピーのように似ているなというふうに私は新聞を読んで思いました。

 しかしながら、例えば、財政事情というのは将来的には好転することもあり得ます、景気がよくなれば。やはり、一定期間後にはそれらの状況の変化もちゃんとしんしゃくした上で、暫定税率が引き続き必要であるのかもう要らないのか、それを国会でチェックする必要があるとの判断から、十年という長い期間にはなりましたけれども、法改正がなければ暫定税率は自動的に廃止されるという仕組み自体は、自公政権はあえて残したわけであります。

 それに対して、今般国会に提出されているこの法案、当分の間というあいまいな表現になっております。当分というのは、ちょっとかもしれないし、十年先、二十年先もずっと続くのかもしれない。期間は具体的に明示されていません。(発言する者あり)何か言っていますけれども、期間は具体的に明示されていません。

 その結果、仮に政府が何もしなければ、もっとわかりやすく言えば法改正をしなければ、税率がそのままずっと継続することも、これは法律に照らして可能なんですよ。法制局の答弁でもわかったじゃないですか。これは、税率に関する国会の審議権、国会は審議の場所だという議論が最近よくなされます、審議権の観点からすると、極めて重大で問題のある法律であるというふうに私は感じました。

 大臣、なぜ、今回の改正案では国会審議の仕組みまで外してしまったんですか。今の法案では、たとえ非常に景気がよくなって財政事情が改善しても、追加税率の妥当性を審議する仕組みが、法律がすべてですから、条文から欠如しているじゃありませんか。この指摘について、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 もう一昨年になりますか、私も、民主党の道路対策本部長として宮崎に出かけまして、東国原知事といろいろな形で議論をさせていただきました。そういう意味で、宮崎の道路事情も私なりに、北から入って鹿児島に抜ける道は全部車で走らせていただきました。

 そういう中で、御存じのとおり、この道路特定財源を前提とした十年間の期限の制度が、確かに福田内閣のもとで半分変わったんですけれども、法改正的にはきちんとできていなかったものを、今回そういった十年間のさらなる延長というものを変えて、改めたわけであります。

 そして、おっしゃるとおり、この点ではマニフェストどおりの実施ができなくて、実質上、税率としては従来と変わらないものをいただくということで、鳩山総理からも国民の皆さんに、先ほど江藤さんが言われたような理由を述べながら謝られたわけです。

 そこで、御指摘の点ですけれども、確かに、当分の間というので、他の法律でも何十年も続いたものもあることはよく承知しております。しかし、私たちが思っているのは、温暖化税というもの、いろいろな表現がありますが、環境税という表現もありますけれども、そういうものについては、場合によっては同時並行的に考えようじゃないかということも昨年の暮れにやりました。しかし、さすがに数カ月という単位で、炭素税とか温暖化税とかいろいろな表現がありますが、そういうものを導入するには、いろいろな産業界の理解も得なければいけませんので、それは難しい。

 そういうことも前提として、大変恐縮ですが、当分の間はこれまでの水準を維持するけれども、できれば一年の間には環境税等を議論して成案を得て、そしてこれも含めて変えていく、こういう趣旨で当分の間ということを入れた、このように理解しています。

江藤委員 二十三年度に環境税の議論をされるということは、報道等でも私も聞いております。そこまではっきりおっしゃるのであれば、これを二十三年の三月三十一日とはっきりと書けばいいじゃないですか、それまでの覚悟があるのであれば。

 そして、こういう当分の間という表現はいっぱいあると言われました。私も、最近はパソコンが発達していますから、パソコンできのうの夜一時ごろ見てみたんです。そうしましたら、租特、特別措置法の中で、当分の間という表現は三つしか出てきませんでしたよ。たった三つ、こんな千何百ページあるあの法律の中で。第一条と第七十一条と第七十八条の二です。

 一は法律の趣旨に関するものですから、これは関係ありません。七十八の二も、課税期間と直接関係のない部分ですから、これも国民生活には何の関係もありません。ただ、第七十一条だけ、これはいわゆる地価税の非課税措置の期間に関する、いわゆるおまけをしましょうというものですから、これは国民にとってはいい話ですから、当面の間という表現は、国民にとってはウエルカムな話なわけです。

 ところが、民主党さんは、税率を下げますよと言っていたのがやはり上げますよとなって、それを当面の間というと、これは国民受けは物すごく悪いですよ。私はそう思います。今の答弁では、大臣、申しわけありませんけれども、全く納得はできません。

 揮発油税は、あくまで本来二十四円三十銭、それを二倍の四十八円六十銭いただくということになっております。これは今言いましたように、納税者にとっては極めて不利、大変期待していて、本則の部分だけになるんだと国民は信じていたわけですから。その国民の期待を裏切ったんだということは、大臣、胸に深く刻んでください。景気回復に御努力をしていただきたいということであります。

 先ほどの法制局の答弁を見ても、法律なんですから、当分の間はあくまでも当分の間なんですよ。期間限定がないことははっきりしております。そもそも、課税水準の特例措置を当分の間とするあいまいな表現としようとすること自体が極めて異例であるということは、私の今までの議論の中で皆さん方にもわかっていただけたと思います。

 これまでは暫定税率という、これは言葉に語弊があるかもしれませんが、あえていいます、期間限定の打ち出の小づちだったんですよ。自公政権時代、打ち出の小づちでした。財務省にとっては特にそうでしたね。これが下手をすると、そういうことは考えていないと大臣はおっしゃるでしょうけれども、これからもずっと続く無期限の打ち出の小づちとすることもできる法律になってしまっているんです。

 ですから、何度も申し上げますけれども、当分の間を平成二十三年三月三十一日までの間と改めればいいじゃないですか。政権にとってそんなにダメージにはならないと思いますよ。何のダメージもないと思いますよ。簡単な話で、鉛筆をなめてちょっと書けば済むことですから、ぜひやっていただきたいと思います。

 そうすれば、仮にそれ以上継続しようとする場合には、まず国会審議に付されることになります。そうすれば、法律上担保することができますし、法改正がなければ自動的に追加税率は消えてなくなるということになるわけでありまして、政府の責任も明確にすることができる。そうなれば、極めて異例な、当分などというあいまいな表現も回避できて、すっきりとしたいい法律になるじゃないですか。何の問題もないと私は思います。

 大臣、ぜひ、今私が申し上げましたように修正すべきだと思います。もしそれができないというなら、どういう理由でできないのか、私にもわかるように御説明いただきたい。御答弁を求めます。

    〔委員長退席、鈴木(克)委員長代理着席〕

菅国務大臣 先ほど私が申し上げたのは、いい意味で言ったのではなくて、当分の間というのは、たしか地方自治体の起債制限などが当分の間制限されているのが戦後ずっと続いてきているといったようなことで、確かに、当分の間というのが大変長く続いたものもあって、本来の意味を超えてやられる場合もあるということでちょっと申し上げたんです。

 今言われたことは、私は部分的にはわからないではないんですけれども、環境税の議論を始めます、あるいはもう既に始めております。昨年の段階でも環境省の方から一部案が内々には出された場面もありました。しかし、先ほど申し上げたように、この問題は、産業政策、いろいろなものにかかわる問題でありますので、合意形成には相当の力というか時間も必要だと思っております。

 ですから、必ずしもこの条項は、何か審議をしないでそのまま継続するためにやっているというのではなくて、そう長くない時期には、余りざっくばらんな言葉を使うとまたマスコミに書かれてしまいますが、環境税がきちんと用意できたときにはこれは当然なくなっていくということを前提としての当分の間ですから、私は理解をいただけるんじゃないかと思います。

江藤委員 聞けば聞くほど環境税をきちっとやるというかたい御決意に聞こえます。そうであればなおのこと、三月三十一日と書くことが非常にいいと思います。いっぱいあるというふうに言われました。地方税法の中にもあるんですよ、当面の間という表現は。ただ、国税に関してはないということは先ほど申し上げたとおりであります。

 大分時間がなくなってきましたので、どういたしましょうか。それでは、この問題だけに時間をとるのはもうやめることにします。

 次の質問に移らせていただきたいと思います。

 二つあると申し上げましたから、本改正案はもう一つ大きな問題をはらんでおります。それは、新租税特別措置法第八十九条の追加税率分の課税停止、復活の仕組みであります。よく御存じのトリガーというものですね。この仕組みによれば、年度内の税収は燃料価格の趨勢で大きく変わってしまいます。

 もし仮に、停止措置、この第一項が発動されると、最低期間である三カ月間、もしかしたら六カ月、九カ月、一年続くかもしれません、国の税収は大きく減ってしまいます。これは爆弾を抱えたようなものですよ、正直言って。仮に三カ月だとしても、年間税収の八分の一が消えてしまうことになるわけであります。ガソリン税でいうと、私の計算ですからちょっと間違っているかもしれませんが、大体三千五百億消えると思います。これは地方税もリンクするということでありますから、軽油引取税でいえば一千三百億、三カ月で消えてしまうということになります。

 各年度の税収見込みが不安定になるということは、税収を前提とした予算の全体のフレーム、スキームが不安定になってしまうということではありませんか。

 仮に、追加税率分の課税が停止して税収不足が生じた場合、支出削減するんですか。例えば、今までやっていた箇所づけとか、いろいろやられて今たたかれていますけれども、ダム、道路をつくるのをやめちゃうよとか、さらに赤字国債を追加発行するよとか、いずれにしても、補正予算を組まなければならない事態に追い込まれていくというふうに私は思います。あるいは予備費か何かでやるんですか。まあ私の理解では、五、六千億しかないのでとても追いつかないだろうと思いますけれども。

 そういう非常に不安要素を多く秘めた当初予算であってよいのかどうか、これについて大臣の御見解を求めたいと思います。

峰崎副大臣 かなり技術的な話でもございますし、しかし大変重要な課題だというふうに思っていますし、先日も、野田委員からも同じ質問を受けまして私が答弁させていただきました。

 今おっしゃられましたように、このトリガー税制というのは、率直に申し上げて、私たちもこれが発動されることがそれほどいいと思っているわけじゃないんです。できれば、本当に発動されないように安定を望んでいるわけであります。

 ただ、かつてガソリンの価格が非常に高騰したときに、やはり国民の皆さん、ある意味ではガソリンの値上げを何とか少なくしたい、そういう思いを私たちも酌んで運動してきたこともございますし、そういったことで、実はこのトリガー税制というのは一つの方法ということで取り入れたわけであります。

 おっしゃられたように、これが発動されたときに税収不足をどうするんだと。税収不足に対する、どのぐらいの金額が生じるかということについては大体、今江藤委員のおっしゃっている数字とそれほど差がないと私も思っておりますが、やはり三カ月でとどまればそのぐらいの金額だけれども、それは当然のことながら、補正予算を組んだり財政的措置をとらなきゃいけないということになりますので、なるべくそういうことが起きないように、私たちとしては、先ほど菅大臣がおっしゃられたように、できる限りこの発動を短期間といいますか、あるいは発動しなくてもいいように、早く地球温暖化対策税、環境税の論議を急いで進めていきたいなというふうに思っているところでございます。

江藤委員 非常に誠実な御答弁だと思います、正直な。

 しかし、やはり下げたくないとおっしゃいましたね。意地悪な言い方ですけれども、あれだけ選挙のときに半分にするぞと言って何もしなかったら格好がつかないから、こういうトリガー税制を無理無理入れたのかなと。これは邪推ですか。言い過ぎですか。言い過ぎだったらごめんなさい。謝らせていただきたいと思います。

 そういう事態が起こらなければいいというふうにおっしゃいました。私もそう思いますよ。だけれども、世の中というのはわからないじゃないですか。もしかしたら、またどこかのビルに飛行機が突っ込むかもしれない。どこかの油田が爆発するかもしれない。原油なんというのは投機の対象にもなっていますよ。そういうことによって、もしかしたら、きょうから、あしたから原油価格が高騰するということもあるということを財政御当局は肝に銘じてこれからやっていかないと大変なことになる。

 今でさえも、歳入よりも歳出の方が多いという状況の中でしょう。これで、補正予算で赤字国債をどんどん出したら、本当に破綻へのロードですよ、先生から先ほど御質問がありましたけれども。大変なことになりますので、ここについてはよくよく私はお考えをいただきたいと思います。

 あわせてお伺いしますけれども、これは大臣にお答えをいただきたいんですが、この予算、発動されるということを前提として財務大臣としては予算を組まれましたか。これはもうないだろう、発動されないだろうということを前提に立てたものですか。簡単に御答弁をお願いします。簡単で結構です。

菅国務大臣 御承知のように、一昨年ですか、非常に高騰したときに、例えば漁に出ても赤字になるから漁に出られないといったようなことも現実に生じたわけです。ですから、そういう異常な高騰が起きたときには、いずれにせよ何らかの対策が必要になると私は思います。それをあらかじめ制度的に組み込んだのがこの税制であります。

 ですから、先ほど峰崎副大臣も申し上げたように、国際的なガソリンの高騰が起きないことを我々望んでおりますが、起きたときにはこの形で対応したいということでありまして、そういう点で、そういうことはないだろうという想定ではなくて、あってはほしくないけれども、あったときのために設けたという趣旨であります。

    〔鈴木(克)委員長代理退席、委員長着席〕

江藤委員 確かに、大臣のおっしゃることはわかります。何らかの対策を打たなければなりません。しかし、みずから法律の案文の中に、税収が下がるそういう仕組みを織り込んでおくことがいいのかどうか。ぜひ党内で、この委員会でやっていただければもっといいですけれども、御議論をいただきたい、私はそのことを強く思います。

 余計なことですけれども、平成二十三年になれば社会保障費だけで一兆円ふえるわけでしょう。子育て支援が二兆六千億ふえるわけでしょう。それから、埋蔵金ももうありませんね。そして、年金の国庫負担金、今までは基金から埋めていましたから大丈夫でしたけれども、もうそろそろ一般会計から繰り入れなければならない。この部分を考えると、二兆五千億から三兆円要りますよ。マニフェストを全部実行しようと思えば、さらに十兆円要るでしょう。こういう厳しい財政状況が皆さん方の政権の前には待っているわけですよ。その状況の中でこういうものを入れておくことが、果たして、今の政権にとって、この日本国にとっていいことなのかどうか、もう一度原点に返って考える必要があるのではないかというふうに私は思うわけであります。

 あともう九分しかありません。ですから、もっとお聞きをしたいんですけれども、はしょらせていただいて、きょうは総務副大臣にも、ありがとうございます、お越しをいただいておりますので、リンクをしておりますので今度は総務副大臣に質問させていただきたいと思います。

 軽油引取税についても同じような措置がとられる。先ほどもちょっと、一千数百億穴があくというお話をいたしました。そうなると、税収見込みの不透明性は地方でも起こることになるわけですね、国だけではなくて。これは地方の財源の問題だけではなくて、地方の予算執行内容ですよ。予算が執行できない。執行内容まで含めて極めて不透明なものになってしまう。これは混乱が起こりますよ。ということをまず指摘しておきたいと思います。

 この法改正で仮に、軽油引取税への課税税率分の課税が停止されて地方の税収が減収した場合、国からの補てん措置は、もう今の答弁でもわかりましたけれども、あえてしつこく聞きますが、この法律の中で何らかの規定があって、そういう事態が起こったら地方にはちゃんと埋めますよというようなものが書かれているんですか。その減収分が書かれていないとすれば、これはいろいろな方法があるかもしれませんが、事によっては、その減った分は地方に泣いてくれ、我慢してくれということにもなりかねないわけでありまして、非常に問題があると思います。

 副大臣、どうぞ御答弁をよろしくお願いします。

渡辺副大臣 お答えいたします。

 今の点につきましては、二月十六日の衆議院本会議で、谷公一議員に対して原口大臣が答弁をしております。国の政策による大幅な減収、軽油引取税で恐らく月額にして四百億円ぐらいの減収になるというふうに我々試算しておりますけれども、大規模な減収になる以上は、これは確実な補てんが必要であるということはお答えをしておりますし、また税調の中でも、このトリガー規定を設けるときにはその旨につきまして指摘をしたところでございます。

江藤委員 やはり非常に現場をよく御承知で、危機感を感じていらっしゃるということはよくわかりました。

 私も田舎の宮崎ですから、三割自治の非常に典型的なところなんですよ。そういうところの出身の国会議員でありますので、本会議でも聞いておりましたけれども、このことにはあえて触れさせていただきました。

 しかし、言うまでもなくこの国は法治国家であります。法律がすべてなんですよ。政権がかわろうがどうしようが法律は生き残る、そういうのがこの日本の国であります。ということを考えたときに、何かが起こったら手当てをしますとか、その時点で適切な手当てをしますとか、そういう余りにも具体性のない御答弁はちょっとがっかりだったなという気が私はするんです。

 ですから、私が申し上げたいのは、まだ法律は通っていないわけですから、地方にもしそういう歳入欠陥がどかんと生じたときには国がちゃんと補てんしますという条項を法律の中に書き込んでしまえば、これは地方自治体の人たちは非常に安心されると私は思います。

 そして、皆さん方はよく地方との対話をしなきゃいかぬと。私も同感であります。うちの東国原さん大活躍ですから。そういうのを重視されている政権であればこそ、このトリガー税制、そして地方に起こり得る大幅な税収減、このことについて、知事さんやら市町村長やらそういう人たちと事前に意見交換をした上でされたんですか、それとも政務三役でぱかっと決めてしまったんですか。御答弁を求めます。

渡辺副大臣 まさに、地方の知事会やあるいは市長会等の地方六団体からは、代替財源のない暫定税率廃止には断固反対だというような要望をたび重ねていただいておりました。

 その上でいろいろな可能性を検討している中で、昨年末にある新聞で、原油高騰の折には税率の停止というようなことが報道されてから、いろいろ問い合わせが参りました。その点につきまして必要な情報は我々としてお伝えをしたということでございます。

 いずれにしても、代替財源がない中で暫定税率を停止した場合に地方に大変大きな混乱が起きるということは認識しておりますので、その点については、これは重ねて答弁されておりますけれども、一昨年のあの、当時の与党がとった措置というものが一つの参考になるというふうに思っております。

江藤委員 先ほどもちょこっと触れましたけれども、財務省はあのとき物すごい苦労をしたわけですよ、たしか六百億ぐらいだと思いますけれども。これが三カ月、六カ月、九カ月と続いたら、これは、あのときのようなかき集めではとても対応できません。赤字国債を発行するか、何かほかの事業をやめて、どこかのダムをまたばかばかやめて金を回すしかないということであります。

 菅大臣に実はもう一問質問を用意してございましたけれども、時間がなくなりましたので、また次の機会にさせていただきたいと思います。

 ほかのことならともかく、マニフェスト違反ということで、総理は税率を維持するということですよね、違反ではあるけれども。でも私は、そのことについては一定の理解を先ほどから示しております、現下の経済状況では仕方がないだろうと。しかし、二倍の負担をしていただくということについては、これは国民にとっては非常に負担というか失望が広がっております。

 その必要性があるか否かを一定期間ごとに、国会は国権の最高機関ですから、ここでチェックしようという提案を、大臣、どうして受け入れていただけないんですか。国会でチェックする仕組みだけでも受け入れていただけませんか。今既にあるチェック機能を、今あるものを大事にしよう、いいものは残していこうということを私は申し上げているだけです。

 そもそも今回の改正案は、追加税率という国民にとって極めて不利な、裏切られたとも言える仕組みを具体的期間も示さずにとり続けることが可能になる。まあ、二十三年には必ずやるとおっしゃっていらっしゃいます。信じたいと思います。信じたいと思いますが、鳩山さんに信じてくれと言われて、なかなか信じられませんから。その信じるという言葉については私は非常に懐疑的になっていますから。

 ほかに例を見ない異例の措置だということを十分御認識いただいて、もう大臣には御認識をいただけたというふうに私は理解をさせていただきます。

 大臣、しつこくて大変申しわけないんですけれども、法案を提出した財務当局のトップの立場である者として、どうぞリーダーシップ、政治主導を発揮していただいて、私が申し上げた点、いろいろ問題があるなと実はお感じになってもいただけたと思うんですよ。これについては、必要な修正を行った上で改めて出し直すとこの場で言っていただくことはできませんでしょうか。御答弁を求めます。

菅国務大臣 いろいろおわかりの上での御質問だと思いますが、暫定税率自体が、十年、あるいはそれ以前は五年というチェックポイントがあったわけですが、たしか昭和四十九年創設以来続いてきた経緯があります。

 ですから、例えば、今回の場合に十年とか五年とかを置けば、少なくとも十年とか五年とかは今のままで続くというふうに逆に理解されるのではないか。先ほど申し上げたように、環境税については、昨年の段階でも少し議論がスタートしておりますので、そういう意味では、ことしといいましょうか二十二年度の間に議論を進めたい、成案を得たいという方向でやっていますので、逆に、期限を一年で切れというのはわかりますけれども、五年とかで切れば逆のメッセージになるかということで、ぜひそこは重ねて御理解をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、鈴木(克)委員長代理着席〕

江藤委員 私、五年、十年にしろと言っていませんよ。二十三年でいいと言っているんですから。二十三年でいいと言っているんですから、そこは勘違いしないでください。

 それでは、もう時間が参りましたのでまとめさせていただきます。

 きょうの質疑を通じまして、今回の租税特別措置法、地方税法の改正にはいっぱい問題があります。国会の審議権、これが不当に剥奪されるおそれがある。それから、税制に関する政府責任がある意味放棄される可能性がある。そして、国民に不利な税制が半永久化する、暫定税率分がずっと残るということが可能になってしまうという危険性をはらんでいるなどなど問題があることは、委員の皆様方にも御理解がいただけたのではないかと私は思います。

 それにもかかわらず、大臣は私の要求を受けていただけませんでした。残念であります。極めて残念であります。残念でありますが、結局のところどういうことかというと、ガソリン税においては、国民は二回も民主党に裏切られたということになりますね。菅大臣はこの事実を強く心に刻んでいただいて、改めて、重ねて、御再考いただきますことをしつこくお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

    〔鈴木(克)委員長代理退席、委員長着席〕

玄葉委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 昨晩、菅大臣には、予算委員会の分科会で遅くまで大変御苦労さまでございました。引き続き質問させていただきます。

 まず最初に、国税職員の定員確保、機構充実について大臣にお尋ねいたします。

 ここ数年、所得税の申告者数、また法人税の申告件数が増加をしております。所得税の申告者数で申し上げれば、平成十六年度約二千百七十万件でございましたが、二十年度には約二千三百七十万件でございます。五年間で九・四%の伸びになっております。法人税の申告件数で申し上げますと、平成十六年度約二百七十四万件に対しまして、平成二十年度は二百八十一万件、五年間の伸び率は二・三%ということで、毎年、申告者数、申告件数は増加をしております。

 また、今回提出されました租特透明化法案におきましても租税特別措置の適用実態調査を行うということになりまして、国税職員の業務量はますます増加するということになります。

 さらに、経済取引の国際化が進んでいたり、あるいは所得隠しの巧妙化ということで、社会経済情勢の急激な変化にも対応する必要がございます。

 したがいまして、国税職員の定員の確保と、高度な専門知識を要する職務に従事する国税職員の処遇改善、機構の充実に努めるべきというふうに考えますが、大臣の御見解を伺いたいと存じます。

菅国務大臣 おっしゃるとおり、税務行政を取り巻く環境では、所得税及び法人税の申告件数が増加をし、また、高水準で推移しています滞納残高もあります。経済取引の国際化、広域化、高度情報化といった問題もあります。不正手口の巧妙化などにより、全体としては仕事の質、量がふえているという御指摘は、そのとおりだと思っております。

 こういった中で、国税庁については、IT化による事務の効率化やアウトソーシングの推進等に努めるとともに、それでもなお対応困難な業務量の増大については、税務行政の困難性及び歳入官庁としての重要性にかんがみて、所要の定員、機構が確保されるよう努めてきたところであります。

 こういったことで、これからも必要な要員は確保しなければならないと思っておりますが、先ほども申し上げましたように、IT化とか、さらには、今、社会保障と税の共通番号の議論も始めておりまして、そういった形で、定員増という形ではない形で、しっかりと確実な仕事ができるように、そういうことの努力もしなければならない、こう認識しております。

石井(啓)委員 ひとつよろしくお願い申し上げます。

 続きまして、公債発行特例法案について移らせていただきます。

 この法案は、特例公債の発行の権限を与えるというものでございます。私どももいわゆる赤字国債の発行そのものは認めざるを得ないと思いますが、しかし、財政の健全化に対する懸念といいますか、これは非常に高まっている、このことについては大いに私どもも心配をしているところでございます。

 そこでまず、財政健全化についてお伺いしたいと思います。

 先日もこの委員会で指摘がございましたけれども、格付会社S&Pが日本の格付の見通しについて、安定的からネガティブに引き下げたということ。また、国債の元本や利払いが滞った場合の損失を保証するクレジット・デフォルト・スワップについて、この保証料率というのが国債のデフォルトの危険度を示すわけでありますけれども、一月六日には、中国の保証料率〇・六四%、これに対して日本が〇・七一%ということで、上回ってしまった。

 こういったことは、私は、鳩山政権の財政健全化への取り組みに対しまして市場が発したイエローカード、警告だというふうに受けとめるべきだというふうに考えていますが、大臣の御見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 今の日本の財政状況、特に公債残高が非常に高い水準にあるという意味では、今、石井議員の言われるように、そういうことに対するある意味での心配の表明だということはわかります。

 ただ、あえて申し上げさせていただきますと、手をこまねいているわけではありませんで、先ほど来の議論もお聞きいただいたかもしれませんが、政権ができて、今、半年に近づこうとしております。その間に、税調の議論あるいは番号の議論、成長の議論、年金の議論等を踏まえて、六月には中期財政フレームを国民の皆さんにきちっと示す、そういう姿勢を持っておりまして、いろいろな格付会社もありますが、イエローカードというよりは、その推移を注意深く見守っているというふうなメッセージだ、このように受けとめております。

石井(啓)委員 今、大臣、六月に中期財政フレームを出されるというふうにおっしゃいましたけれども、来年度の予算案の中にも四十四兆円を超える新規国債の発行が盛り込まれておりますし、また、財務省が国会に提出しました二十二年度予算の後年度影響試算等を見ましても、二十三年度以降の予算編成というのは相当大変なことになりそうだ、こういった状況の中で、市場からもいろいろなメッセージが出されている。

 こういった中で、この予算審議に今後の経済の見通しとか財政の見通しを出さないというのは、私は政権としては無責任ではないかというふうに思うんですね。五月か六月ですか、中期財政フレームあるいは経済財政戦略ですか、そういったものをお示しになるというのは、私はちょっと遅過ぎるんじゃないかと思うんです。本来は、この予算審議をしている際に、来年度の予算だけでなく、それ以降、日本の財政がどうなっていくのか、経済がどうなっていくのかという議論をすべきなんです。五月、六月に示されたのではもう国会は終わっちゃいますよ、大幅に国会が延長されない限り。

 私は、予算の審議というのはそういうことをやる審議だと思うんですよ。来年度の予算の中身だけじゃなく、今後日本がどうなっていくのか、経済がどうなっていくのか、財政がどうなっていくのか、そういう議論をここでできないというのは私は非常に残念であり、政権としては無責任と言わざるを得ません。この点、財務大臣、いかがでしょうか。

菅国務大臣 これはもう御承知の上で言われているんだと思うんですが、選挙があって、首班指名があったのが昨年の九月の十六日であります。この予算を閣議決定したのは十二月の二十五日であります。つまりは、そういう日程は今の経済情勢を考えると崩せない、つまりは予算案そのものを年を越すという決定はあり得ないという時間的な制約の中でそうした中期財政フレームというものをつくるとすれば、かなり拙速な作業をやらなければならないというふうに見たわけであります。

 ただ、一切何も出していないわけではなくて、十月二十三日には緊急雇用対策も出しましたし、その後、何度かにわたる経済対策も出しましたし、十二月の三十日には成長戦略の基本方針というものも出しました。これは、見通しではありませんが、目標として、二〇二〇年までに平均して名目三%の成長、実質二%の成長ということも打ち出しました。

 ですから、今回の予算に関して、中期的な見通しについてもかなりの、政府としての考え方はそういう形で申し上げているわけですが、六月という日程をセットしたのは、逆に言えば、しっかりしたものを出さなければというふうに考えたからであります。

 あえて申し上げますと、これはずっと政権が続いてきた中ではありますが、自民、公明の政権下における骨太方針もたしか毎年六月に発表されているわけでありまして、それは政権のスタートとかそういうことを考えれば理解をしていただけるのではないか、このように思っております。

石井(啓)委員 経済の見通しを新成長戦略でお示しになったと言いますけれども、あれは見通しじゃなくて、やりたいという希望、願望ですね。今後十年間の平均の成長率を実質二%、名目で三%以上、やりたいという希望であって、どうやってやるかという方策はこれからでして、願望だけ示されても裏づけがなければ信用できないという話になってしまいます。

 従来の政権も、年末に予算編成をやって、年明けから、いろいろな経済の前提あるいは財政の前提を示しながら、十年ぐらい先までの展望は示していたんですよ、経済の見通し、財政の見通し。それを今回全く示されていないので、これはいささか、今までそういうやり方をやってきた立場としては、この政権のそういう将来展望をつくることの重要さの認識というのは非常に弱いんじゃないかと私は言わざるを得ないんです。

 ところで、財政運営戦略というのはどういう中身なんでしょうか。言葉は聞こえてくるんですけれども、中身が全くわかりません。先日の党首討論では、総理は具体的な数字を入れるというふうにおっしゃっておりましたけれども、どういうものになるんですかね、この財政運営戦略というのは。お伺いします。

菅国務大臣 あえて先ほどのことにちょっとだけ触れますと、これももう皆さん御承知のように、ほかの例えばイギリスといったような国でも、リーマン・ショック以来、それまでは複数年度予算で、ゴールデンルールといったような公債発行の上限なども、あるいはマーストリヒト条約におけるそういうものも、例外的にそれを外した予算を組んだというこの時期であります。ですから、そういう、平時ではなかったということはよく御承知だと思います。

 ですから、あえて言えば、二〇〇九年の一月時点で当時の自公政権がいろいろ出されたものも、結果としては、そういう大きな荒波の中で実現は全くできなかったわけでありますので、そこは、そういう外的な要因も含めて、私たちとしては決して逃げたのではなくて、しっかりしたものを出したいからこそこういう日程で進めたということを御理解いただきたいと思っております。

 その上で、中期財政フレーム、さらには財政運営戦略というものを、これは戦略室の方で取りまとめをいただくことになっております。

 中期財政フレームというのは、私が戦略室担当のころに、イギリスをモデルにして、三年程度の期間を見通した複数年度予算というものを想定し、それを、二年たった時点でさらに延ばして新たな三年、二年たった時点で新たな三年、そういうことをモデルにいたしております。そういった意味で、中期と言っていいのではないかと思っております。

 それに加えて、財政運営戦略というのは、もう少し長い展望も含めた見通しを立てて提示するというものになるのではないかと。これは直接の担当は戦略担当の仙谷さんでありますが、私はそのように理解をいたしております。

石井(啓)委員 この財政運営戦略、所管は仙谷大臣のようですが、報道では、具体的な財政健全化の目標の数字が入るか入らないか。何か、入らないかのような報道も出てくるんですけれども、私は、これは財務大臣としては明確な目標をやはり入れるべきだと思うんですね。そうでなければ市場の信認は得られないと思いますけれども、大臣、いかがお考えでしょうか。

菅国務大臣 予算編成の基本方針というのを昨年十二月十五日に閣議決定をいたしておりまして、その中では、財政運営戦略を策定するという中に、中長期的には公的債務残高の対GDP比を安定的に縮減させていくことを念頭に置いて検討を進めると。ある意味では、GDP比というものを一つのメルクマールに置きたいという考え方も提示しておりますので、何らかの、それが数字という形かどうか、比率ですから数字だと思いますが、そういうものは出される、このように理解いたしております。

石井(啓)委員 それも、いつまでにというのは、やはり欲しいですね。中長期的にとなると、いつまで先の議論をしているかというのがありますから、そういう時間的なものもぜひ明示をしていただきたい、こういうふうに思います。

 それから、今回の公債発行特例法案で、財政投融資特別会計の積立金を一般会計に繰り入れますが、これで二十一年度末の積立金は底を打つということになります。

 先ほどの質疑の中でも出てきましたが、もともとこの財政投融資特別会計の積立金は、経済対策と、基礎年金国庫負担二分の一の財源に充てるということで、二十年度二次補正、二十一年度当初予算、一次補正、それから二十二年度、こういうふうに繰り入れてきたわけでありますけれども、二十三年度以降のこの基礎年金国庫負担二分の一財源、これをどうしていくのか。

 前政権においては、ここは、消費税を含む税制の抜本改革をやる中でこの財源を生み出すということにしておりました。当然、その税制の抜本改革というのも、景気回復だとかいろいろな条件のもとでしたけれども、そういういわば税制改革をやる中で財源を生み出すということは明確になっていました。

 では、新政権においては、今の鳩山政権においては、この二十三年度以降の基礎年金国庫負担二分の一財源をどのように確保されるお考えなのか、お伺いしたいと思います。

菅国務大臣 これもおわかりの上での御質問だと思いますが、私たちも三分の一を二分の一にすることには野党時代から賛成をしておりましたが、それをまさに恒久的な財源で行うという当初の、当時の自公政権の方針を変えて、いわゆる埋蔵金的なもので二年間は穴埋めをするということをされたわけでありまして、そういう意味では、私たちもこの二分の一を維持するために、ある意味では苦労を引き継いだという認識をいたしております。

 そういう意味で、国民年金法の規定では、お話のように、税制抜本改革によって所要の安定財源を確保した上で基礎年金の国庫負担引き上げを恒久化することとされておりまして、また、恒久化が二十四年以降になる場合には、それまでの各年度においても引き上げ必要額を国庫が負担するよう、臨時の法制上及び財政上の措置を講ずるものとされている。これは前の政権からの引き継ぎだと理解をしております。

 こういった規定を踏まえて、基礎年金の国庫負担の引き上げのための財源措置については二十三年度予算編成の過程で検討していく、ほかのことも含めてかなり苦労はすると思いますが、検討していくということを現段階では申し上げるにとどめておきたいと思います。

石井(啓)委員 いずれこれはまた新しい課題になるわけであります。

 民主党さんのマニフェストの財源案の中で、実は足りないところがここですね。この基礎年金二分の一の財源をどういうふうに確保するか、あるいは社会保障の自然増をどう賄うかというのは、実はマニフェストの財源案には全く載っておりませんので、ここはぜひ真剣に検討していただきたいと思います。

 それで、外為特会の方に行きますけれども、今回、外為特会の二十二年度の剰余金見込みから、三千五百億円、一般会計に繰り入れるわけです。過去四回しか事例のない、いわゆる進行年度の剰余金の繰り入れを今回やる理由について伺いたいと思います。

菅国務大臣 これももうおわかりだと思っておりますが、外為特会については、二十一年度の決算剰余金、フローの処理として通常行われている繰り入れに加えて、特例により、進行年度、つまり二十二年度中に生じる見込みの剰余金、フローから前倒しで過去最大と同額の〇・三五兆円を同一年度の一般会計に繰り入れることといたしました。

 これは、二十二年度予算における税外収入を確保するために行うものであり、外為特会において、現在は日米の金利差等により引き続きある程度の剰余金、つまり運用収益の発生が見込まれることから、現下の厳しい経済財政状況のもとで、臨時、緊急に行うやむを得ざる措置であります。

 過去においても何度か進行年度の繰り入れが行われておりますが、七年度に行われた三千五百億円と今回、進行年度の繰り入れとしては最大規模になっております。

石井(啓)委員 二十二年度予算のフレームを見ますと、歳入の公債費は四十四・三兆円です、四十四兆三千億円。これは、三千五百億円、外為特会の剰余金、特例を使って繰り入れないと、国債費はその分ふえますね。四十四兆六千五百億円。四捨五入すると四十五兆円になっちゃうんですよ。だから、これは何とか四十四兆円ということをやるために相当やはり無理くりしたなということを申し上げておきたいと思います。

 このことによって、二十三年度の予算編成というのは、より大変になってしまっているんですね。実は、二十二年度の外為特会の剰余金というのは、これは事前に財務省に伺いましたら、見込みは一兆円ぐらいしかないらしいですね。二十二年度の外為特会の剰余金の見込み、一兆円。それで、もう既に三千五百億円先に使っちゃうんです。見込みですから、若干見込みよりふえるかもしれませんけれども、二十三年度の外為特会からの剰余金の繰り入れというのは、今年度から比べると相当減額しそうですね。二十二年度の予算編成、かなり無理をしたことによって、そのツケが二十三年度にも回ってくるということを指摘しておきたいと思います。

 それから、先ほどの質疑にも出ましたが、外為特会の積立金を取り崩すかどうか。実は、先日、予算委員会の質疑で、私は、二十三年度の税外収入は相当減りそうだという指摘をしましたところ、菅大臣から、いや、外為特会については与野党からまだまだあるんだというふうな指摘を受けているような答弁がありまして、大臣の念頭には外為特会の積立金を取り崩すようなこともお考えにあるのかなというふうに私は思ったんです。

 先ほど竹下委員の方から、これは禁じ手だという御指摘があったと思いますけれども、御承知のとおり、この外為特会の積立金とは、特会の資産の為替の評価損を埋めるものでございます。現在の一ドル九十一円程度で評価をしましても、積立金二十・六兆円に対しまして、評価損は二十五・七兆円に上っているんですね。常に評価損がある状況でございます、五・一兆円程度ですね。したがって、外為特会の積立金を取り崩すということは、これはとりもなおさず含み損を拡大させて隠れ借金をふやすということにほかなりません。したがって、これに手をつけるということは、よほどの財政の非常事態でなければやってはならないことだと思いますけれども、大臣のお考えを伺いたいと思います。

菅国務大臣 認識は共通だと思います。

 ただ、おわかりだと思いますが、先ほど来、他の委員の方との議論でも申し上げましたが、今の日本が置かれた、あるいは世界が置かれた経済状況の中で、どの程度の規模の財政出動が必要かということを一方で考えながら、一方で国債のマーケットというものを考えながら、そして、いわゆる埋蔵金といいましょうか、税外収入の可能性を考えながら、全体を考えていくわけです。

 その中で、私なり内閣として特に力を入れているのは、やはり成長戦略というものをいかに具体化して、少なくとも中期的にはそれの中から、それが税収にはね返るといったような形がとれるのか。さらには、税調で御議論いただきますけれども、今この十年間の間で相当所得税などがフラット化したとかいろいろなことがあります。かつての見通しに比べれば、ほとんどの税目でかつての見通しよりも税収が落ち込んでいるわけでありまして、そういうことについても何らかの対応が必要ではないかという議論を始めるわけであります。

 ですから、一つ一つのことをおっしゃるのは、もちろんそれはそれなりの理屈はよくわかっているつもりですけれども、一方で、そういう全体の中で、これもあれもやるべきでないといったときに、それではこの景気の厳しい中でさらなる景気の落ち込みを招いても困るわけでありますので、そのぎりぎりのところで、二十三年度の予算の議論はまた改めてこういう場でもしていかなければいけない、まずは来年度の予算をぜひ早く成立させていただきたいというのが私の思いであります。

石井(啓)委員 大臣はいろいろ、制限をつけさせられるのはかなわないということでおっしゃっているんだと思いますけれども、やはり言葉の端々から、なかなか大変だという認識は伝わってきます。

 予算の全体のことで申し上げれば、二十年度の補正予算あるいは二十一年度の補正予算でやったように、景気対策のための一時的な財政支出のために赤字国債を発行するというのは、今の経済状況の中で私はやむを得ないと考えているんです。

 ただし、問題なのは、当初予算で赤字国債を膨らませるということは、当初予算は継続的な予算ですから、それを赤字国債でファイナンスするということは、これは大変なことなんですよ。だからこそ財政に対する心配がふえてくるんです。

 だから、そこの経済対策のためにどうするかということと当初の予算編成というのは、ぜひ立て分けて考えていただきたい。そのことを私は申し上げておきたいと思います。

 ところで、この公債発行特例法案というのは、民主党さんは野党時代にずっと反対されてきましたよね。何でこれは政権をとったら政府として出されてきたんでしょうか。確認しておきたいと思います。

野田副大臣 石井委員にお答えをしたいと思いますが、特例公債を発行するということは、望ましいとは思いませんけれども、万やむを得ず財源とするということはあると思っています。

 これまで反対した経緯というのは、政府提出の予算の内容そのものに反対をしていたわけで、それに関連する特例公債法案に反対をしたというのが事実だというふうに御理解いただきたいと思います。

石井(啓)委員 いや、それは野田副大臣も苦しい答弁だと思うんだけれども。

 この法案というのは、特例公債の発行を授権している法案なんですよ。特例公債の規模は予算で決めるけれども、特例公債の発行自体を認めるんだということであれば、野党時代であってもこの法案を反対する理由はなかったんですよ。そういうことでしょう。

 だから、予算の赤字国債の規模の問題は予算の方で議論する、これは赤字国債そのものの発行を認めるという法案ですから、ここで規模がだめだからこの法案に反対するというのは、野党時代の理由がおかしかったということじゃないんでしょうか。

    〔委員長退席、鈴木(克)委員長代理着席〕

野田副大臣 私も以前、民主党、野党時代の次の内閣で財務の担当をいたしまして、その前提として、民主党の予算案をつくって、その財源として特例公債を使うということもやりました。予算と特例公債とはやはり一体です。だから、予算関連法になっているんです。

 予算そのものを我々が内容として問題があるとして否定をするときに、当然、赤字国債発行という、その前提となっている財源もこれは否定せざるを得ないということの流れの中で反対をしてきたと御理解いただきたいと思います。

石井(啓)委員 いや、それは理解できないところなんですね、私にとっては。厳密に法解釈をすれば一体かもしれませんけれども、一つ一つ整理して冷静に考えれば、当然賛成してもよかったのではないかというふうに指摘をしておきます。

 それでは、租特透明化法案の方に移りますけれども、租特の適用額明細書を今回新たに法人に申告させることになりますが、これがどの程度の事務量になるのかということですね。過重な事務負担を強いることにならないのかどうか、この点について確認をいたしたいと思います。

峰崎副大臣 適用額明細書の提出を求めるに当たりまして、私たちも、冒頭委員から質問ありましたように、本当に国税職員の皆さん方、多少人数はふえておりながら、大変厳しい労働環境にあるということを非常によく承知しているわけであります。

 今回も、私どもはこれを提案するときに、どの程度事務が大変になるのかなということでこれも調査をしたわけでございますが、実は、これまでも適用を受ける措置にかかわる計算過程などを明示した別表を求めておりました。そういう意味で、この別表に記載されている内容のうち、租税特別措置の適用を受けることにより減少した税額などに該当する部分を適用額明細書の該当箇所にそのまま書き写していただく、こういう作業をお願いすることになるわけでございます。

 いずれにしても、この適用額明細書の作成、提出を求めるに当たっては、一つは、やはり納税者、今回は法人でございますから、法人の方々が本当に大変だというふうに思われないように、申告書作成のソフトウエア、最近はe―Taxが発達しておりますから、こういったことも丁寧に協力を依頼するように、十分対応していけるように、これからも努力をしていきたいということでございます。

石井(啓)委員 ところで、昨年民主党さんが提出された租特透明化法案、議員立法で提出された法案では、その最大の問題点が、適用される企業の名称を公表するということだったんですね。それが私どもも最大の問題点だと思いましたけれども。

 今回の法案では個別企業名の公表をやらないというふうになっていますが、改めた理由について伺いたいと思います。

峰崎副大臣 この点は、私たちがこの法案をつくる過程において、税制調査会の中でもプロジェクトチームなどをつくって、実は連合政権でございましたので、国民新党の皆さんとかあるいは社民党の皆さんなんかと、この点は非常に議論をいたしました。

 率直に申し上げまして、効果を検証するためであれば法人の名称まで公表する必要はないんじゃないかというような意見とか、あるいは、私が非常に注目したのは、この租税特別措置というのは実質上隠れ補助金になっているんじゃないかと。補助金ということについて、企業名を公表しているはずだ、こういうふうに私自身は考えていたわけでありますが、実は、補助金について必ずしも最終受益者の実名は明らかになっていないということが、いわゆるプロジェクトチームで論議をする中で明らかになってまいりました。ああ、そうなのかと。そうすると、やはり補助金、裏補助金といいますか、隠れ補助金とかそういう位置づけをしていたものですから、それとある意味では符節を合わせて、一方の予算における補助金で最終的に受益する企業名が明らかになるのであれば、この点についても同じように租特も明らかにする必要があるけれども、そこがまだ明確になっていないという点においては、この点は少し、租特はある意味では一歩とどまることについては、ちょっとどうかな、そういう意見を私自身は今回は非常に重視したわけでございます。

 それ以外にも、いろいろな取引先から企業名が明らかになると経営戦略上非常に問題があるとか、さまざまな観点の議論がございましたけれども、おおよそそういうことを考慮して、今回は匿名という形で、実際の企業名ではなくて、A社、B社、C社といったような匿名の数字を挙げながら、個別企業は、しかし上位何社というのはわかるようにしていこうと。こういう形で今回は整理をし、昨年まで皆さん方から御指摘を受けた点も実はこの点にあったわけでありますね。当時の与党の皆さん方もこれに賛成していただけないというのは、最大のポイントはここにあったわけでありまして、この点は、今回こういう形で整理をさせていただいたということでございます。

石井(啓)委員 今、答弁の中でお話がありましたけれども、個別企業名を出さない一方で、上位十位までの租特ごとの高額適用額を明らかにしていますね。この目的は何なんでしょうか。

峰崎副大臣 この租税特別措置というのは、先ほど隠れ補助金と申し上げましたけれども、やはり、率直に申し上げまして、黒字企業のある意味では支援をまたやっていこうということですから、公平性という観点から見ると、これはなかなか納得しがたいものがある。

 それ以上に、いわゆる租税特別措置の目的が非常に明確になっていて、しかもその目的が、効果が上がるものだということを私たちはよく調べてみる必要があるということで、その意味で、この租税特別措置一つ一つが、実際上、例えば非常に限られた分野にしか、数が、例えば十社といっても、いやいや、これは十社じゃなくて三社ぐらいで終わっちゃっているんだよというふうに限られているものもあるかもしれない。あるいは、資本金別あるいは業界別に見てどのような広がりを持っているのか。あるいは、最近は、企業も分割をしたり持ち株会社の中に入ったりしています。そうすると、そういう持ち株会社に入ったり、あるいは分割したりする、そういう企業との関係を見る場合にも、こういう個社名というか、上位十社の中にそれが分割して入っているところが多くないかとか、そういう意味での点検をするに当たって、私は、これは大変重要なものだろうというふうに思っております。

 その点で私どもは、仮に、今は上位十社を匿名で明確にしていこう、こういうことでございます。

石井(啓)委員 それでは次に、所得税法等の一部改正案に移らせていただきます。

 まず、所得税について尋ねますけれども、所得控除から税額控除あるいは手当へという考え方は、私どもも同じでございます。ただ、人的控除全体をどういうふうにするかということは、私どもは、これは所得税の改革全体の中で議論しなきゃいけないことだと思っているんですね。

 今回、子ども手当の財源として年少扶養控除、また高校授業料無償化の財源として特定扶養親族控除が改正になっているわけでありますけれども、そういうふうにマニフェストの財源のためにつまみ食い的に人的控除の一部をやるというのは、私はいささか問題ではないかと。そもそも、人的控除全体をどういうふうに改革していくかという議論の中でこれは本来やるべきことなんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

峰崎副大臣 おっしゃるとおり、私たちは、この所得税というものの中において、所得控除というのが現実にどういう機能を果たしているかなと。

 それはやはり、これはあつらえ税とよく言われますが、確かに一つ一つの、障害者がいる場合はどうするのかとか、あるいは老親、親を扶養する場合はどうするのか、いろいろなことにうまく対応できるようにはなっているんですが、実は、所得控除というよりも、それよりもむしろ、それは税額控除の方が、高額所得者よりも低額所得者といいますか、低い所得の方の方はより有効にきいてくるじゃないか、こういう観点から、今、控除全体を見直していこうと。

 最初にマニフェストに掲げたのは、その中でも一番大きなウエートを占めておりました扶養控除あるいは配偶者控除、こういった控除についてまず先行して進めていこうか、こういう議論をしたわけであります。

 これは、たまたまあそこで財源論として書かれているがゆえに、一見すると、何か手当のためにこの扶養控除が廃止になっていったとか、あるいは特別扶養控除が縮小されたとか、最終的には財源の問題がもちろんなかったというのはうそなんですが、もともと、そういう本来の所得控除のあり方、これはやはり税額控除に変えていく必要があるんじゃないか、さらには、給付つき税額控除やあるいは手当に変えていく方が、より再配分機能を強化していくことになるじゃないか、こういう観点から私たちは見直しをしているわけであります。

 今おっしゃられたように、やはり全体をパッケージとしてやる必要があるんじゃないかということはおっしゃるとおりでありますので、これは、今、専門家委員会が立ち上がりましたけれども、その中で、まず所得税のこれまでの累進性の再配分機能がどうして弱まってきたんだろうか、それを回復するにはどういう手だてがあるんだろうか、こういう中でしっかりと全体像は明らかにしていけるように、私たちとしても努力していきたいと思っています。

石井(啓)委員 その点は、残念ながら、ちょっと順番が逆だったと僕は思うんですね。全体像を示してからどういうふうにするかというのが本来の議論であって、その全体像が明らかにならないうちに、とりあえず目につく一番大きな財源を引っ張ってきているという手法をとられたから、私どもはつまみ食いと言わざるを得ないわけであります。

 そこで、年少扶養控除でございますけれども、今度は、子ども手当の財源として、所得税のみならず住民税も廃止する。所得税は二十三年から、住民税は二十四年からということであります。これで、今、児童手当をもらっている家庭は子ども手当を受けてこの控除が廃止されることによってどうなるかということなんですが、仮に手当が一万三千円にとどまると、三歳未満の子供さんのいる家庭では、既に児童手当一万円もらっています。手当がふえる分は月額三千円ですから、三万六千円のプラスなんですが、その一方で、この控除が廃止されるということになりますと、所得税の年少扶養控除三十八万円、最低税率五%でも一万九千円の負担増ですね。住民税は三十三万円ですから、一〇%の税率で三万三千円、合わせて五万二千円の負担増。

 ですから、手当がふえるのは三万六千円だけれども、負担増は五万二千円ということですから、子ども手当が一万三千円にとどまった場合は、今の児童手当よりも負担がふえてしまうということになります。

 今の政府が出している子ども手当の法案というのは、あくまでも二十二年度をどうするかということであって、二十三年度以降の姿は全く示されていません。そういう、二十三年度の支給額が定まらない中で、負担は今回確定するわけですよ、この所得税法等の改正案で。子ども手当によってかえって児童手当より負担増になる家庭が出てきかねないということは私は問題であるというふうに思いますが、この点、いかがでしょうか。

峰崎副大臣 石井委員御指摘のように、私たちも、年少扶養控除の廃止について、住民税まで含めて、そういう問題が今のままだと出てくるということについてはよく認識をしているわけであります。

 ただ、御存じのように、今度の法改正をしても、国税については恐らく来年の一月から多分三月、そして、要するに年度を超えて二十四年度から、実は住民税は実際上は適用になるということでございます。

 私たちはやはり、その意味で、ことしは一万三千円の月額であるけれども、マニフェストに従いながら、これを、二万六千円という私たちの目標を設けておりますので、来年以降はそういう形で引き上げられればこの差はなくなって、どの世帯も、損をすると言ったら変でございますが、その対応関係だけ見ても、損得関係から見て、私たちはマイナスにならないというふうに判断をしているところでございます。

石井(啓)委員 確かに二十二年度一カ年度だけとればそういうことです。マイナスにはなりません。

 それから、確かに満額支給されれば、それは負担増にならないんだけれども、でも、峰崎副大臣も指摘されたとおり、満額支給のハードルは高いですよ。確実に一〇〇%やっていただけるのであれば、こういう指摘は申し上げないんだけれども、そうではないでしょう。本当に二十三年度、確実に一〇〇%、子ども手当を満額支給できると今約束できるということはあり得ないじゃないですか。それがあり得るのだったら、子ども手当の法案だって、二十三年度分、やればいいんだから。二十二年度しかやっていないんですよ。だから、法律的には二十三年度以降の支給額が決まっていないんですよ。一万三千円より下がる可能性だってあるんですよ。その中で、負担だけは今回確定するということですよ、この所得税の改正案で。それが問題だというふうに私は申し上げたいと思います。

 それからもう一つ、高校無償化で特定扶養控除を、これも所得税、住民税ともに縮小しますね。このことによって、高校授業料無償化の経済支援効果は大いに減殺されます。二十二年度の高校無償化の予算は三千九百三十三億円ですけれども、特定扶養控除を縮小しますと、平年度ベースでは、所得税は一千億円の増税、住民税は四百億円の増税になるんですね。三千九百億円の予算に対して増税が一千四百億円ですから、三分の一以上はこの特定扶養控除の縮小によって、経済的支援といいながら、その支援効果は減殺をされてしまうということになります。

 もともとマニフェストですと、高校授業料の無償化は特定扶養控除の縮小を財源に充てているとは全く書いていませんよね。そのほかの予算等の見直しをやることによって財源を生み出すというふうにされていたところが、どういう経緯でこうなったか判明いたしませんけれども、この特定扶養控除の縮小のために大いに効果が減殺をされているというふうに指摘をいたしたいと思います。

 それから、特に問題なのは、高校に子供さんが通っている御家庭の中でも、既に授業料の減免を受けている家庭がある。特に全額免除を受けている家庭は、免除が変わらないわけだから、この控除の縮小によって従来より負担がふえてしまうということが一つ。

 もう一つは、高校進学率が九八%といいながら、二%は進学していない。進学していない家庭で特定扶養控除を受けていた家庭は、丸々授業料無償化の恩典は受けられない一方で、負担はふえてしまうということになります。

 こういう問題点がございますが、この点についていかがお考えでしょうか。

峰崎副大臣 御指摘の点は、本当に私たちも論議をする中で真剣に議論した点でございます。

 実は私は、この高校授業料の問題もそうなんですが、現物サービスと言われている分野、現金給付も当然入ってまいりますが、やはりユニバーサルサービスを適用していくというのがこれからの社会保障における大きなポイントじゃないかと思っているわけです。

 そういう意味で、これは実は、高校授業料の無償化の問題にも所得制限を設けるか設けないかということで随分議論がございました。私どもが最終的に議論するときに、高等学校に通っている子供、それは小中学校も全部そうですけれども、やはり授業料の補助を受けている方とそうでない方という形で分かれるというのは、本当にどうなんだろうと。私はやはり、それはユニバーサルサービスでいくべきだ。

 そうすると、どうしてもそこの財源の問題が実は大変大きな問題になって、その財源ということで、先ほど、余り、財源との対応関係というのは、扶養控除と子ども手当とは本当は連動させたくなかったわけでありますが、この問題に関しては、最後までその点が大きなポイントだったというふうに思っております。

 その意味で、私は、どんな高等学校に通っておられる方でも、お金持ちであれ、あるいは貧しい方であれ、これはやはり同じサービスを適用されるようにするのが正しい道だろう。そこの中で、国民の間に一級市民、二級市民というような分断がされないことが必要だろうというふうに私は思ったわけであります。

 もう一点は、二%の、いわゆる高校に行っておられない方々に対する対応というんですね。これも私たちとしても非常に心が痛む問題であったわけでございます。その分、負担を、ある意味ではそういう方に、もしかすると働いておられる方かもしれませんし、どこかまた専門学校に行っておられる方かもしれません。そういう方々に対する対応は別途、やはり予算上の措置が必要であるとすれば、私たちはとっていくべきだろうというふうに考えていたわけであります。

 ただ、それが十分とられたかどうか、私も今回の予算の中で、それについてちょっと十分点検しておりませんが、そういう方向で対応していくべきだろうというふうに、税の論議の場ではそういう議論をしてきたということでございます。

石井(啓)委員 ちなみに、私どもは、高校授業料無償化というのも、所得制限を設けて、中低所得者に重点的に支援すべきだという考え方です。所得制限を取っ払ったから特定扶養控除を縮小したというのは、ちょっとそれはおかしいんじゃないかと私は思うんですね。本来、所得制限がかからないような中所得者の方にもこの特定扶養控除の縮小の影響は出てくるわけですから。

 だから、所得制限を設けずに高所得者の方にも高校無償の恩恵を与えたがために、今回、中低所得者の方の負担をふやしてしまったというのがこの特定扶養控除の縮小の結果であります。そのことは指摘をしておきたいと思います。

 ちなみに、きょうは長浜厚労副大臣、お越しいただいていますが、人的控除、今回、年少扶養控除それから特定扶養控除の縮小、これによって税額がふえますよね、当然。特に、住民税も今回やりますから、住民税額がふえる。実は、医療とか福祉関係のさまざまな保険料等で、住民税と連動してセットしているものがありますね。これは税制大綱の中でも、そこのところは意識されていらっしゃいまして、住民税額に連動している国民健康保険料や保育料、これが引き上がる可能性があります。

 ただ、これは、自治体によっては、住民税額を算出根拠にしているところとしていないところがありますから、自治体によって異なりますが、自治体によっては、控除の廃止によって思わぬ負担増になることがある。

 大綱でもそのことは意識をされていまして、「負担の基準の見直し、経過措置の導入など適切な措置を講じる」というふうにしていますが、具体的なその措置の検討、準備状況について確認をいたしたいと思います。

    〔鈴木(克)委員長代理退席、委員長着席〕

長浜副大臣 今御指摘の部分においては、たしか、平成十五年ぐらいでしたか、石井さんが財務副大臣としてやられていたころにおいても、公的年金の控除の限度額の引き下げ、平成十六年度税制改正大綱のときがあったと思いますので、石井さんは大分お詳しいというふうに思っております。

 今お話ありましたように、国税あるいは地方税の中において、それを根拠としながら、料金、使用料金あるいは負担率、保険料率を決めているという分野がございます。前回も御説明といいますか、御質問がありましたものですから、我が省主管のところで三十二にわたる部分があるということも申し上げました。住民税の扶養控除の見直しで大体十七項目、それから所得税の扶養控除の見直しで二十三項目、重複が八ありますので、トータルで三十二項目というような形になります。

 先ほど御説明がありましたところの国民健康保険、石井さんが東京にお住まいかもしれませんが、住民税方式を採用している自治体が東京二十三区、横浜、名古屋等、三十八の保険者がおりますので、この部分においては住民税に影響を受けてくるところでございます。

 また、保育料の御説明もありましたが、保育所においては、所得税額に対して保育料基準額を算定しておりますので、こういった部分で影響を受けてくることになるところでございます。

 先ほど峰崎副大臣からも御説明がありましたように、税調のところで、控除廃止の影響にかかわるPT、プロジェクトチームをつくりまして、このはねの時期が二十三、二十四年度に影響が出てくるものでございますので、現在、その中で細かく検討を続けているところでございます。

 以上でございます。

石井(啓)委員 その点はきめ細かな御検討をよろしくお願いいたします。

 それからガソリン税等の暫定税率の方に移らさせていただきます。

 先ほどの菅大臣の御答弁の中で、当分の間の税率のことがございましたね。環境税が導入されればなくなるという意味での当分の間だという御答弁でございましたが、この当分の間の税率の見直しというのは、環境税、地球温暖化対策税の導入とセットということで理解してよろしいんでしょうか。

峰崎副大臣 先ほど菅大臣の方からも答弁がございましたけれども、今般、税制改正法案の附則において、地球温暖化対策のための税については、当分の間として措置される税率の見直しも含めて、平成二十三年度の実施に向けた成案を得るよう検討を行う旨が規定をされているわけでございます。

 したがって、御指摘のように、今回は当分の間として措置される税率のあり方については、地球温暖化対策のための税の二十三年度実施に向けた検討の際に、あわせて、同時に検討されるということになるわけでございます。

石井(啓)委員 といたしますと、仮にガソリン税の暫定税率を廃止しても、そのかわりに環境税を導入されれば、ほとんど減税の幅は小さくなっちゃいますよね。もともと、二十二年度の改正の議論の中では、ガソリン税の暫定税率はリッター約二十五円に対して、環境税はリッター二十円導入しようという議論がなされたというふうに承知をしております。これが実現していたとするならば、暫定税率を廃止して環境税を導入しても、トータルとしては、リッター五円しか下がらない。

 だから、暫定税率廃止、廃止と言っているけれども、環境税でその分カバーしてしまえば、ほとんど看板のかけかえにすぎないんじゃないか。暫定税率の廃止というのは、結局そういう、予算委員会で朝三暮四ということわざがありましたけれども、朝三暮四にすぎないんじゃないかと思いますけれども、どうですか。

峰崎副大臣 二十円というのがどういうふうに調査をされたのかわかりませんが、実は、私どもの中で、環境省からの案だとかさまざまな議論が出てまいりました。あるいは地方自治体というか県知事会とか、そういったところからも出てきておりまして、そういう点で、環境問題というのは、現在、先ほどの戦略室を中心にして、この問題は環境対策全般を議論しておるわけでありまして、その中で環境税の問題も出てまいります。

 今おっしゃられた二十円というような案も一つの案であるかもしれませんが、本当にCO2に着目をしたものにしていくと、リッター、例えばトン当たり三千円ぐらいでいいますと、ちょっと古い数字かもしれませんが、最近、トン当たり三千円ぐらいのCO2で換算すると、ガソリン税価格にすると二円か三円ぐらいになっておりますね。むしろ、やはり環境にとって非常に大きいのは、石炭とか重油だとか、そちらの問題が非常に、CO2の排出が多いわけであります。

 そういう意味で、これからの環境税の仕組み方をどのようにしていくのかというのは本当に重要な問題で、国民生活や経済やいろいろな問題に影響してまいりますので、今これらの点について総合的に検討していかなきゃいけないな、税調でも当然のことながら、先ほど申し上げたように、この暫定税率と絡んでおりますので、そのいわゆる二十五円との関係でどういう金額を設定するかというよりも、環境税としての理念にやはりしっかりと忠実に対応していくべきだというふうに私は思っております。

石井(啓)委員 その点についてはこれからの行く末を見守っていきたいと思いますが、もう時間でございますので、最後、指摘だけにとどめたいと思います。

 ガソリン税のトリガー条項、先ほど、仮に発動されれば、税収減ということで財政的に大変な影響があるという御指摘がありましたけれども、私は、社会的にもやはり混乱は避けられないんじゃないかと思うんですね、これが実際に発動された場合に。民主党さんがやられたガソリン値下げ隊で事実上一カ月間値下げしたときも、やはり大変な混乱がありました。これが本当に発動されるようなことになると、社会的、経済的な影響は非常に大きい。恐らく発動されないことを念頭に、暫定税率を引き下げないための言いわけとして導入されたんじゃないかというふうに理解をしておりますけれども、こういうやり方をするのはいかがなものかということで指摘をさせていただいて、私の質問は終わります。

玄葉委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 最初に、政府税調のあり方についてお聞きをしたいと思います。

 政府税制調査会、これは民主党政権になって大きく位置づけが変わったと思います。その内容がこれまでとどう違うのか、政府税調の位置づけについてまず菅大臣にお聞きをしたいと思います。

菅国務大臣 御存じのように、従来、特に自民党政権下では政府と与党に二元化していた従来の税制調査会を、この新しい鳩山政権では一元化をして、政治家をメンバーとする新たな税制調査会を設置し、同時に、税制改正プロセスを透明で国民にわかりやすいものといたしました。

 この新たな税制調査会においては、議事の模様をインターネット中継するなど、公開を原則とし、透明性の確保を図ったところであります。

 また同時に、一昨日、専門家委員会というものをこの税調のもとに設けまして、そうした専門家の皆さんの提言や御意見もいただく、そういう形になっております。

佐々木(憲)委員 税制改正大綱を見ますと、納税者の立場に立って、公平、透明、納得の三原則、これを税制のあり方を考える際に常に基本とすると、立派な中身であると思いますが、述べています。政府税調のあり方、運営の仕方、当然この三原則を貫くというのは基本だと思いますが、先ほども透明性に言及をされました。

 そこで、具体的にお聞きしますけれども、例えば昨年の十一月十七日に、租税特別措置及び非課税等特別措置の見直しのための論点整理に関するプロジェクトチーム、こういうものが報告を政府税調に提出しておりますが、このプロジェクトチームはいつ行われ、どのような内容か、どういう理由で報告がまとめられたのか。議事録、配付資料も含めて、ホームページを見ても公開されているのかどうか。この点は公開されているんでしょうか。お伺いしたいと思います。

峰崎副大臣 プロジェクトチームについては、これは論点整理ということが一つの大きな課題でございましたので、これについては原則として公開をしないということで進めてまいりました。当然それは、ちょっと敷衍いたしますと、本体会合で出てくるわけでありますので、そこでは全部公開をされるということでございます。

佐々木(憲)委員 原則これは公開されていないということですね。

 先日、二月二十三日、政府税調は、所得税、住民税の所得控除見直しに伴う社会保険料負担への影響を検討する作業部会の初会合が開かれたと報道されていますけれども、そこに出された配付資料、議事録、これはホームページではどこで公開されているんでしょうか。

峰崎副大臣 この点も、先ほどの租税特別措置に関するプロジェクトチームとほぼ同じ扱いなんですが、資料の公表だけは、会議が終わった後に主査となっておられる政務官が記者ブリーフィングをいたします、その中で資料として公表をしている。そして、中身については、どういうことを議論しましたということは記者会見を通じて明らかにしているというのが実態でございます。

佐々木(憲)委員 そうすると、一般の方が見ようと思ってもこれは見られないわけですね。

 では、先日、二月二十四日、政府税制調査会専門家委員会の初会合に出された配付資料、議事録、これはホームページに公開されているんでしょうか。

峰崎副大臣 この専門家委員会については当然、旧政府税調と同じように、資料はホームページで公開いたしますし、議事録も、これは実は早く出してもらいたいということで私どもも、かつての経済財政諮問会議と同じぐらいのペースで早くやってもらえないかと思ったんですが、実はメンバーの方が十一名おられます。その十一名の方々に全部やはり目を通していただいて、間違いがないかあるいは修正をする必要がないか、こういった点やはり時間が必要だということで、一応二週間ということで、ややちょっと遅い感じがしないでもないんですが、なるべく早く急がせますが、議事録の公表はしております。

 そして、記者会見については、実は神野委員長が記者会見を進めるということになっております。

佐々木(憲)委員 近々公開されるということですが、この配付資料も当然公開するという理解でよろしいですね。

峰崎副大臣 配付資料は、先ほど申し上げましたようにホームページで公表するということになっております。

佐々木(憲)委員 最初にお尋ねをした部分については公開をされていないと。それから、二十四日の分はまだ日が浅いので公開していないと。したがって、私が指摘した部分についてはまだ何も公開されていないわけであります。

 これは、新聞にはそういうことがあったということは報道されているわけですから、当然国民は関心を持って、どんな資料なのかな、こういうことになります。

 このプロジェクトチーム、専門委員会などを非公開にする理由ですね。透明性をしっかり担保、確保していくんだ、こういう話がありましたが、どうも実態は、公開が十分進んでいないような感じがいたします。菅大臣、こういう実情ですので、やはりこれはできるだけ公開をしていくということが必要だと思います。

 自民党、公明党の政権のときと比較をいたしますと、政府税制調査会、総会だけでなく小委員会、それからその下のワーキンググループなどの議事録、配付資料、それから会長会見録、これはホームページで公開して、国民だれもがそれを見ることができたわけです。

 その点からいうと、どうも政権がかわって公開が後退したんじゃないかと逆に思わざるを得ないような事態になっているわけで、これはおかしいんじゃないでしょうか。

峰崎副大臣 この間、二十四日に行われた専門委員会の第一回の会合について出された資料はもう既にホームページに掲載をしておりますので、議事次第もそこに載っていますし、設置要綱や運営要綱なども全部載っておりますので、この点は明確にしておきたいというふうに思います。

 それから、いわゆる何が私たち変わったかというと、やはり税制調査会というところの決定会合ですから、これがやはり内閣の中で一元化をして、そこはすべて私たちは、二十五回行いましたけれども、すべてこれはオープンにしておりますし、インターネットにおける中継もやっております。かつての自由民主党の税制調査会はこういう公開はなかったと私は思っておりますし、私も自社さ政権のときに内閣におりました。そのときにも、実は決定する人と実際に答弁席に立つ方は全然違っておりました。

 そういう意味でのやはり大きな質的な違いがそこにございますので、我々は、職務権限と実はその物事を決める人がやはり同時でなければいけない、このことを、政官業の癒着の構造を絶っていくためにも不可欠だということを申し上げておきたいと思います。

佐々木(憲)委員 いやいや、ちょっと話がずれておりまして、自公政権の時代でやっていた、少なくとも政府税調の話を私はしているんですよ、政府税調の話を。総会はもちろんですけれども、小委員会、それからワーキンググループの議事録、配付資料、こういうものも全部公開していたんですよ。

 ですから、菅大臣にお聞きしますけれども、こういうものは公開して、国民の知る機会をふやすというのは当然のことだと思います。大臣にぜひ御回答をいただきたいと思います。

峰崎副大臣 ちょっと具体的なことですから。

 先ほど、ちょっと私勘違いしておりまして、旧政府税調の中で本当にそれは公開されていたのかというと、実は、部会だとかあるいは専門委員会とかそういったところは公開はされておりません、原則は。そういう意味で、その点は事実関係の違いがありますので、その点を私の方からは指摘しておきたいと思います。

佐々木(憲)委員 いや、ホームページで公開をしていたのは、小委員会、その下のワーキンググループなどの議事録、配付資料、こういうものが公開されていたというのは事実ですので、したがって、当然そのぐらいのことは、政権がかわって透明性と言っているんだから、やるべきじゃないのかと。

 やるならやると言ってくださいよ。それをやらないというんなら、それはその姿勢だから、それはやらないということなんだろうと。これは後退だなと思わざるを得ないわけで、はっきりしていただければいいです。

峰崎副大臣 今お話しなさったことも、あるときは出したり、部分的に公表されたりすることはありましたが、全面的な公表というふうにはなっておらないんです。

 ですからその点は、私どもは今回、税制調査会の各種の、今お話があった専門家委員会の本体会合についても、議事録、ホームページ、こういった点についての公表はすべて行っているわけですから、この点は旧政府税調と決して大きく劣るということはありません。むしろ進んでいるというふうに思っていただいて結構だと思います。

佐々木(憲)委員 どうも認識が少し違うんですね。ここはもう少し事実関係を明確にした上で、さらに透明性を求めるということで議論を続けたいと思います。きょうはこの程度にしておきたいと思います。

 それから、その問題に関連をしてメンバーのことですが、政府税調はこれまでは、人選の問題は別として、例えば消費者の代表、労働組合の代表が参加して審議をしていたと思います。今回はその機会がなくなったのではないかと思います。改善するというおつもりがあるのかどうか、お聞きをしたいと思います。

峰崎副大臣 私たちは野党時代、今は政府ですからあれですが、野党時代に、政府税制調査会というのは一体どんなことをやっているんだろうということを絶えずウオッチングしてまいりました。そのいわゆる政府税調、旧政府税調の答申の中身を見てみると、どうもやはり、ある意味では丸くなっていったり、筋が通らなかったりするような点も多々見られたのではないか。

 私たちは、そういう旧政府税調におられた方々からもいろいろな意見を野党時代にも聞いてまいりました。そうすると、どうしても利害関係に絡む方々が入ってくると、その利害関係の入った方々が実は、非常に理屈とは言えないようなものが入って、最後の調整段階でそれが調整されてしまう。その意味では、やはり筋の通った答申案をつくってもらうという必要があるんじゃないか。こういったことを私どもは、旧政府税調を担当しておられた、すべての方ではありませんが、主な方々からヒアリングをしたことがございます。

 その意味で、できればこの専門家委員会の場合は、原則的にはやはり専門家と言われている方々を、しかも一つの論理というか理論的に、やはり税というのは一つの論理ですから、その意味で、それをしっかりと確立していただいて、中長期的なビジョンをつくってもらう必要があるのではないかということを考えたわけです。

 そこで、例えば労働界の人たち、消費者の人たち、こういう人たちの声を聞かないのかというと、そういうことではありません。これは、私たち政府税調の本体でも聞いてまいりましたし、これから専門家委員会の中に置かれる小委員会の中には、そういう、ある意味では利害の絡んだ方たちの代表者みたいな方たちも入って意見を表明するということ、これも十分検討されているということでございます。

佐々木(憲)委員 論理を重んずるので声は聞く必要はないというのは、どうも私は理解できませんね。消費者というのは、国民の大多数が消費者ですよ。大多数というかみんな消費者ですよ。そういう関係者の意見、それから、働いている方々は労働組合をつくっておりますから、そういうものの代表の意見を聞く、そういうのは私はごく自然なことだと思います。もちろん、個別の業界団体とかそういうものの癒着などというのは廃しなきゃいけないと思いますけれども、国民の声を聞くという基本的な姿勢は、この税制についてもしっかりと確保していただかなければならないと思うんですね。

 それから、通告はしていませんけれども、少し関連して言いますが、財務省の陳情への対応ですね。これは菅大臣にお聞きします。

 官僚が国民の声を聞くというのは、私は必要なことだと思います。いろいろな陳情があると思うんです。例えば消費者団体、労働組合、あるいは中小企業の団体、そういう方々が財務省にぜひこのことを訴えたいと行きますと、新政権になったので役人が陳情で話を聞くことはできなくなった、こういうふうに言って断られるというわけですよ。私はこれはおかしいんじゃないかと思うんですね。

 もちろん、役人が政治家にかわっていろいろなことを言うのは、それはいけないという理屈はわかります。しかし、そういうことを言われたから、もう一切陳情は受けないんだと。私は、これはほかの省庁もずっと聞いてみたら、ほかの省庁は、陳情は受けると受けているんです。実際にそういう陳情をしている方々は、財務省だけは受けてくれないというんですね。菅大臣、そういう事実、御存じでしょうか。

菅国務大臣 一度、私も改めて状況を把握してみようと思っていますが、この間、党の方でかなり陳情については、いわゆる一元化というようなこともありまして、そちらから来るものについては政務三役が手分けをして対応すると。

 財務省の方は、どこかの部門で窓口はあるようですが、どういう基準で受ける受けないをやっているのか、もう一度改めて、またどうあるべきかも含めて改めて、私自身把握をしてみたいと思っています。

佐々木(憲)委員 わかりました。

 それでは次に、もう大分時間がたちましたが、子ども手当の関連について、残り時間、質問したいと思います。

 所得税、住民税の年少扶養控除の廃止は、子ども手当の財源に充当するために行われるんだ、こういう説明であります。基本的なことですけれども、子ども手当が支給される家庭はすべて、負担増との差し引きで手当の額が上回る、こういうことになると理解してよろしいのかどうか。ここを伺いたい。

峰崎副大臣 先ほどもお答えしたように、今年度一万三千円の支給をされる。

 そのときに、いわゆる税法では、所得税の扶養控除それから住民税の扶養控除、これが廃止をされるというのが来年あるいは再来年度というふうに延びてまいりますので、そのときに今のままですと、先ほど公明党の石井委員からあったように、もし一万三千円のままだったらどうなんだと言われると、それはやはり負担が上回る世帯も出てきますよということは間違いないと思いますが、我々は、先ほどから言っているように、来年はナローパスというか非常に大変厳しいけれども、マニフェストで子ども手当を来年は上げるということを約束しているわけですから、その前提でいくとこの点は解消されるということでございます。

佐々木(憲)委員 すべて上回るというふうにはならないということだと思うんですね。

 では、具体的にお聞きしましょう。

 来年度予算案及び関連法案によりますと、今回の措置で手当てする子ども手当の制度は、単年度、つまり二〇一〇年度分のみとなるわけです。支給金額は、子供一人当たり月額一万三千円。その一方、年少扶養控除を廃止するということですが、その実施は、所得税が二〇一一年一月から、住民税が二〇一二年六月から増税となる。

 給付については、恒久的な制度だけれどもまだそれが定まっていない、今検討中、それなのに財源は、増税は恒久措置として認めてほしい、こういうことになっていると思いますが、そういうことですね。

峰崎副大臣 現時点においてはそういうことでございます。

 ただ、私たちは、先ほど言っているように、来年度の約束をずっとしてきているわけでございます。

佐々木(憲)委員 峰崎さん、ちょっと答弁が余分なことが多過ぎますので、私、時間がなくなりますから。

 先日、二月二十三日の本会議で、子ども手当法案の質疑の中で、長妻厚労大臣が二〇一一年度以降の子ども手当について、昨年十二月の四大臣合意を踏まえつつ、財源のあり方も含め、平成二十三年度予算編成過程において改めて検討することになっております、基本的には、マニフェストどおり実現できるよう、政府全体で検討し、結論を得てまいります、こういう答弁でした。

 ということは、二〇一一年度以降は検討の結果、満額の支給ができるといいますが、できないこともあり得る、検討するわけですから、できないこともあり得るということなんでしょうか。

菅国務大臣 先ほど来峰崎副大臣からもお話をしていますように、マニフェストで二万六千円、初年度はその半分ということで今回お願いしているわけで、今からいえば二年後には、マニフェストに沿ってそれを充当するよう全力を挙げたい、このように考えております。

佐々木(憲)委員 まだ決まっていない、検討して全力を挙げる、こういう話でありました。

 今国会で、月額二万六千円というものが、恒久措置を盛り込んだ法案ができなかった。その理由、これは財源の問題だと思いますが、財源がないから結局半額ということなんでしょうか。

峰崎副大臣 これは、私たちが総選挙の際に出しておりました工程表に沿って、初年度は一万三千円、翌年度から二万六千円、こういう方針を出していますので、それにしっかりと基づいているということです。

佐々木(憲)委員 連立与党の社民党の阿部知子議員が二月二十三日の本会議の質問、私聞いておりましたら、二〇一〇年度からの月額一人一万三千円は、欧州諸国の水準です、民主党のマニフェストによれば、二〇一一年度から、さらに倍額の月額一人二万六千円にするとしておられますが、それ以前に現物給付の充実を図るべきです、こういう発言をされています。

 与党内で子ども手当の倍増の問題というのは、ここでは合意されていないというふうに思われますが、いかがですか。

菅国務大臣 先ほどの一万三千円、さらに二万六千円というのは民主党のマニフェストでありまして、もちろん政権合意というところで決めていることもありますけれども、この分野については、民主党という立場ではそのマニフェストを実現するという方向で努力することは先ほど申し上げましたが、最終的には連立政権の中で、どういう形でそれを実現するか、議論することが必要だと考えております。

佐々木(憲)委員 そういう状況であるにもかかわらず、住民税、所得税の部分は恒久措置として増税させていただきます、今回この法案はそういうことになっていきますね。どうも釈然としないわけであります。

 具体的に資料を見ていただきたいんですが、ちょっともうきょうは時間がだんだんなくなってきましたので連続してやりますが、現時点で政府が提案している範囲で、手当と増税の差し引きがどうなるかを示したのが一ページの表です。

 サラリーマン片働きの両親と三歳未満の子供の三人の家庭で、子ども手当が月額一万三千円のケースだと、収入別に見るとこういうふうになります。つまり、所得税を納税して児童手当を現在支給されている世帯は、おおむね負担増になるんですね。これは間違いありませんね。

古谷政府参考人 技術的なことでもございますので、私の方から答弁をさせていただきます。

 先ほど副大臣の方から説明がございましたように、子ども手当が月一万三千円のままであれば、二十四年度からこういう計算が可能だと思います。

 先ほどの議論で、年少扶養控除の廃止等の部分が五・二万円、三百万円の給与収入の部分でございますが、そういう議論がございました。この注にもございますように、税源移譲の際の調整税額控除を加味してあるということでございますので、三百万円、五百万円の、収入金額が低い方の部分の増税はこういう金額になろうかと思います。

 そういう意味で、二十四年度以降現状のままであれば、こういう計算が可能であろうかと存じます。

佐々木(憲)委員 それで、現時点で、月額二万六千円というのは確約されたものではまだありません。月額を倍にするための財源、それもまだ明らかにされていない。その財源でふえるか減るかというふうな話も聞こえてまいります。

 例えば、今回見送られたけれども、見直しに取り組むと税制改正大綱に書き込まれた配偶者控除の問題というのがありますね。民主党はマニフェストで、それが子ども手当の財源だ、こういうふうに主張されていました。

 仮にこの配偶者控除が廃止された場合、これが資料の三枚目の試算となります、年収七百万円ぐらいの家庭では増税による負担増の方が大きくなるんですね。この数字は間違いありませんね。

古谷政府参考人 お答えをいたします。

 七百万円、九百万円と収入金額が上がっていきますと、適用される税率が上がっていきますので、こういう計算になろうかと存じます。

佐々木(憲)委員 特定扶養控除の上乗せ部分の廃止でも、同じように負担増の懸念がぬぐえないわけです。

 先ほども少し議論がありましたけれども、高校の無償化の財源の一部として特定扶養控除、十六歳から十八歳の上乗せ部分の廃止による増税分、これがある。地方住民税でも同様の措置がとられ、所得税の控除額が六十三万円から三十八万円に二十五万円縮小される。住民税の控除額は四十五万から三十三万に、これは十二万縮小ですね。これは二ページの表を見ていただければ。

 この結果、特定扶養控除の上乗せ部分廃止の影響は、所得税と住民税を合わせ最高で十一・二万円の増税。負担の差し引きは、資料の二ページの文科省の作成した表で読み取ることができるわけです。

 特定扶養控除は、十六歳から二十二歳で、税制上の扶養対象であれば学生かどうかは関係がない制度でありますから、単純に高校授業料の無償化と連動させれば、一部に負担増となる矛盾が発生します。例えば、定時制、通信制の高校や特別支援学校など全日制高校よりも学費が安い場合、あるいは公立高校の授業料減免を既に受けている場合、これは二十三万人おられるようですが、負担増になってしまう。通学も就労もせずに親族に扶養されている場合、これは恩恵はなく増税だけになります。

 それから、文科省の資料の高校実質無償化、十一万八千八百円を安い学費に置きかえていたしますと、どれだけの負担増になるかわかるわけです。例えば、公立高校の定時制で年間三万三千円だといたしますと、すべての収入階層で負担増になります。

 税制改正大綱あるいは答弁で、このような世帯には適切な対応を検討すると明記されているわけですが、今のところ、まだ具体策が示されておりません。これは……

玄葉委員長 佐々木委員、申し合わせの時間が経過しております。御協力願います。

佐々木(憲)委員 わかりました。もう終わります。

 この点については、先ほども指摘がありましたが、具体策を早急に示すべきだと思いますが、最後にこの点だけお聞きをしておきたいと思います。

玄葉委員長 簡潔に。峰崎財務副大臣。

峰崎副大臣 先ほど来ずっと指摘をされております点について、昨年末、閣議決定された税制改正大綱においては、高校の実質無償化によって、特定扶養控除の縮減によって、現行よりも負担増となる家計については適切な対応をするということです。

 さらに、特定扶養控除の縮減によって実際に家計に影響が出る平成二十三年末、これに必要な対策については、関係省庁で今対策を検討するということになるわけでありまして、その点で、先ほども私は予算措置ということで言いましたけれども、これらの点については、この年末に向けて議論されるものだと私たちは承知しております。

佐々木(憲)委員 以上で終わります。

玄葉委員長 午後一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三十分開議

玄葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 引き続き、内閣提出、平成二十二年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案、所得税法等の一部を改正する法律案、租税特別措置の適用状況の透明化等に関する法律案の各案を議題といたします。

 本日は、各案審査のため、参考人として、中央大学法科大学院教授森信茂樹君、一橋大学大学院法学研究科教授水野忠恒君及び慶應義塾大学経済学部教授土居丈朗君、以上三名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人の皆様に一言ごあいさつを申し上げたいと思います。

 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいというふうに存じますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、参考人各位からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますと、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いをいたします。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず森信参考人にお願いいたします。

森信参考人 中央大学の森信でございます。よろしくお願いいたします。

 それでは、私の方から、税制改革につきましての意見を述べさせていただきたいと思います。お手元に資料をお配りさせていただいておりますので、基本的にはこれに沿ってお話をさせていただきたいというふうに思います。

 私は常々、税制を考えるに当たって二つの大きな柱があるというふうに考えております。

 一つは、政府の規模をどの程度にするかという観点からの税制改革、これは基本的には受益と負担、受益が大きければ負担もそれに伴って大きくなる、あるいは受益が小さければ負担も小さくてもいいじゃないかというふうな議論だと思います。

 もう一つは、そういう受益と負担あるいは政府の規模と離れまして、今のグローバルな経済社会の中で我が国の経済社会がどのような問題を抱えていて、それに対してどういうふうな税制を考えていくべきか、これは私の言葉で言えば、あるべき税制はどうあるべきかというふうなことだと思います。

 つまり、財源調達機能としての政府の規模としての税制改革の問題と、それからグローバルな世の中に的確に対応していくための税制のあり方、この二つを基本的には分けて考えながら、最後には、同じ税制ですから一緒に考えていくというふうなことが必要ではないかというふうに思います。

 こう申しましたのは、世の中の議論がどうしても、税制といいますと消費税の議論につながりまして、そこで実は議論がとまってしまうということが過去往々ありました。そういうことから、あるべき税制の姿というものは消費税の増税ということと切り離して考えて、最後にはもちろん、同じ税制ですからあわせて考えていくというふうにすべきではないかというのが私の基本的な立場でございます。

 今資料をお配りしておりますが、一ページ目でございます。

 そういった状況の中で、では我が国としてどういうふうな税制を考えるべきかといったときに、我が国は既にグローバルな経済の中に取り込まれているということの認識が重要だと思います。グローバルな経済といいますのは、わかりやすく言えば、人も物も金も、さらに今、企業の価値とも言えるかもしれませんが無体財産権、そういったものも自由に動き回る、こういった経済社会の中で我々が活動しているんだということでございます。

 では、そのグローバルな経済のもとでどんな問題が起きているかということで、課題を五つ整理させていただきました。

 一つは、所得格差の拡大と貧困問題。これはやはり、冷戦後の国際競争の激化の中で中進国から安い商品が先進国に入ってくる、そうすると低スキルの労働代替が起きまして、どうしても企業としては、正規雇用を非正規雇用にしていったりということで対応していかざるを得ない、そういう中で所得格差の拡大と貧困の問題が出てきているということです。

 それから二番目は、税の引き下げ競争。これも特にヨーロッパで激しいんですが、冷戦後の、特にEUの域内が拡大しましたから、かつての東欧圏、こういったところが法人税率を引き下げて、ドイツとかフランスとかから企業を呼び寄せて、そこで雇用を確保しよう、あるいは所得税で稼いでいこうというふうな形での法人税の引き下げ競争が激化しております。これは後で申し上げたいと思います。

 それから同時に、今度は高所得国の企業の行動として、法人所得を低税率国へ移転していくという、これは決して非合法という形ではありませんで、むしろ合法な、いわゆるタックスプランニングとしてそういったことが行われております。例えば、低税率国に持ち株会社をつくって、そこにいろいろな世界各地に散らばる法人の収益を集約させていく、そういう形でのタックスプランニングが進んでいるということでございます。

 それから三番目でございますが、個人の富裕層の所得、これが租税回避地、タックスヘイブン国ですね、こういったところにやはり回避が進んできている。

 これは目に見えませんので、なかなかこれだというふうにわからないんですが、例えば有名な例としまして、リーマン・ショックのときに世界的に問題になりましたのは、タックスヘイブン国にたまったさまざまな膨大な金融資産、資金が、いわゆるサブプライムローンの証券化した商品に回って、それがバブルを大きくしたというふうなことがあって、それ以降、タックスヘイブン対策というものが、単に今まではOECDの租税委員会のレベルで議論されておりましたが、その後、サミットとかそれからG20とかそういったところで、国際的にタックスヘイブン対策を共通して講じなければいけないじゃないかというふうな状況になっております。

 それから四番目に、そういうような状況の中で、しかし政府は、高齢化に伴い増大する社会保障費用というものを確保しなければいけない、それと同時に経済の活力も保持しなければいけないという難しい選択を迫られているわけでございます。

 それから最後に、五番目に、これは今の高齢化のための、社会保障のための財源確保というだけではなくて、さらに穴があいた危機的な財政の赤字への対応としての税収の問題が出てきているというふうなことでございます。

 それでは、次のページに行きたいと思いますが、次のページは、そういった状況のもとで税制はどうあるべきか。これはやはり日本独自で考えていく分野もなきにしもあらずと思いますが、基本的にはやはり世界の税制の大きな流れの中で考えていかなければ、一国だけ異なった税制を構築していくということはなかなかできにくい状況にあると思います。

 ここに、今の五つの問題に対して私なりの考え方を整理させていただいております。

 一番最初は、格差、貧困問題。これにつきましては、「税制と社会保障の一体化による低所得者対策としての勤労税額控除」と書いてありますが、いわゆる給付つき税額控除でございます。そういう意味で、民主党の考え方であります所得控除から税額控除へ、税額控除から給付つき税額控除へ、さらには手当へというこの考え方の流れにつきましては、私は全面的に賛成するものでございます。

 ただ、この給付つき税額控除というのは、単にお金を与えるという思想ではございませんで、ワークフェアという、働くことによって給付がふえていく、働くことによって老後の生活を豊かにしていく、そういった政策でございまして、これはよくイギリスで言われておりますが、セーフティーネットからトランポリンへ、つまり政府は、上からこぼれ落ちてくる人を受けとめるためのセーフティーネットを張りめぐらすというだけではなくて、というか張りめぐらすのではなくて、むしろ一度、こぼれ落ちたと言うと失礼ですが、そういった人たちをもう一度市場経済に押し出していくというトランポリンの役割を持つべきだ、その一つのツールが給付つき税額控除、勤労税額控除だというふうに考えております。

 そういう意味で、私は所得税の累進機能の再構築が必要だというふうに考えておりますが、それは、この給付つき税額控除で、今貧困、格差の問題で困っている低所得者層への対策として、ここを政策として補うことによって、全体の累進機能の確保あるいは活用を図るべきだというふうに考えております。

 それから二番目の、法人税の引き下げ競争でございますが、これは私は、課税ベースの拡大とセットで日本も法人税率の引き下げをする、つまり税収は中立で、税率を下げる、しかし課税ベースを拡大していくということが必要だというふうに思います。これにつきましては資料をつけておりますので、簡単にちょっと資料だけ見ていただきたいと思います。

 三番目、これは全部OECDの分析をとりましたので英語で恐縮ですが、法人税の表面税率、法定税率、この推移でございます。この二十年に大体十数ポイント、法人税の表面税率がどんどん下がっております。特にこの十年で大体一〇ポイント下がったという分析があります。日本も、この二十年をとれば下がってはいるんですが、この十年では下がっておりません。今、日本とアメリカだけが四〇という水準にありまして、この図にありますのは二〇〇六年でございますけれども、今ドイツは四〇から一〇ポイント下げて三〇になっております。

 次のページをお開きいただきたいんですが、実は表面税率を十数ポイント下げているんですが、特にこの十年で一〇ポイント下げておりますが、法人税収のGDPに占める割合は落ちていない、むしろ上がっているんですね。ここに書いてありますが、九四年と二〇〇四年を比べますと、法人税収のGDP比はむしろふえております。

 それから、次のページでございますが、今はGDP比をとりましたが、今度は税収に占める法人税収の割合でございます。これもこの十年でふえております。つまり、税率を引き下げたけれども、結果的に法人税収はGDP比でも税収の中に占める割合もふえているということが見てとれるわけです。

 それで、最後のページでございますが、では、何でそんなことが起きるのかということで、これはOECDの分析を私なりに整理をしたものでございます。このGDP分の法人税収というものを三つに分けまして分析をしております。

 結論だけ申し上げますと、一つは、一番下の三行でございますが、税率の引き下げ競争といっても、各国とも課税ベースは広げているということでございます。特にドイツとかイギリスとか、それから、ついことしスウェーデンが下げましたけれども、これも基本的には課税ベースを広げて税率を下げていますから、基本的には税収は傷んでいない。傷んでいないどころか、二番目、三番目、特に個人から法人へのシフト、あるいは三番目が重要でございますが、個人のアントレプレナーシップというものがわき起こりまして、新規起業というものが起きて、それが結果的には増収につながっている。言ってみれば、活性化が原因になっているということでございます。

 つまり、この三つが合わさって先ほどのような法人税のパラドックスと言われているものが起きているので、私は、これはもう少し先の話かもしれませんが、こういった法人税率を、課税ベースを広げながら下げていくという改革が必要だというふうに思っております。

 ちょっと前に戻りますが、三ページ目でございます。三枚目の先ほどのところでございます。

 法人税の後の租税回避の問題は、これは所得税の問題ですが、各国は課税ベースを拡大しつつ所得税の最高税率を引き下げてきたというふうな動きがあります。それから情報交換協定の締結、租税回避の防止措置。ただ、これは幾ら法律で決めても、現実が先に行くということがあります。なかなか難しい問題だと思います。

 四番目、高齢化に伴う社会保障費の増大。これは、先進各国はやはり今、所得税というよりは消費税を中心に引き上げるという対応をしてきております。

 以上を総合しますと、税制としてあるべき姿というのは、やはり公平というもの、これと効率というもの、活力とか成長とかと言ってもいいかもしれませんが、これをうまくバランスをとりながら世界各国がそれなりにやってきている。こういった流れの中で、我が国も税制改革を考えていくべきじゃないかというふうに思っております。

 とりあえず、以上で私の話は終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 次に、水野参考人にお願いいたします。

水野参考人 ただいま御紹介いただきました水野でございます。十五分ほどお話をさせていただきます。

 今回のテーマは専ら税制改正法案ということで、私も法案をいただきまして、特に例年にも増して非常に分厚いといいますか、本当に昔あった電話帳ほどの改正法案と対照表、この委員会にお持ちしようかと思いましたけれども、やはり多分見ることはないだろうと思いまして、失礼させていただきました。

 意見陳述項目としてごく簡単なことを挙げております。専ら、今回の税制改正の目玉のようなものについてそれぞれお話をさせていただきたいと思っております。

 最近は非常に便利になりまして、例えば平成二十二年度税制改正のポイント、いわゆる税制改正大綱、これの後ですけれども、概要がホームページから拝見できます。さらに、それのポイントということでもう少し易しい形のもの。それから、これはもう少し後になりますけれども、六月の時点で「改正税法のすべて」といった非常に詳細なものが出てまいりますけれども、それまで待っているわけにいきませんのでこの場でお話をさせていただきたいと思います。

 非常に全般的に申しまして、今、森信参考人が税制を取り巻く状況など幅広いお話をいただきましたが、私の方は、もともと租税法というものを専攻にしておりますので、多少細かいところに目が参りましたので、それに沿ってお話をさせていただきたいと思います。

 ただ、全体的な印象でございますけれども、とにかく歳入が三十五兆という、ちょっと今までには考えられないような税収の落ち込みです。これは、やはりリーマン・ショック以来の経済的な不況、世界的なものですけれども、日本もひどくそれに影響されてここまで来ているなという印象を持っております。

 例年ですと、例えば法人税率を下げるとかそういうことは必ず議論になるんですけれども、これは、いわば今日のこの状況を全般的に検討して対応していかなければいけませんので、税制だけ取り上げてということもなかなか難しい問題であろうかと思っております。

 ただ、税制について言えますことは、団塊の世代がどんどん退職されて年金世代に入るということもございますし、社会保障全体の伸びということが必要になってまいります。それを賄うために、本来税制が中心にあるべきですけれども、とうとう五〇%にも満たない状況になってしまいました。しかしながら、いずれにしましても、これについては既に首相も言われていることですけれども、抜本的な改革というものが必要になってくるであろうし、問題はそのタイミングがどの時期であるかということでございます。

 とにかく、租税というのはそもそも財源の調達手段である。それと並んで、公債ですとか、ごくわずかには公営事業といったものも考えられましたけれども、いずれにしましても、財源調達機能をどうやって直していくのかという問題がございます。

 それから、最近は格差社会ということ。これは十年ぐらい前の税制調査会の答申などを見ますと、大体、我が国では世帯による格差というものがよその国に比べてみますと割に平準化している、こういうような書きぶりであったんですが、最近は、非常に格差、特に低所得者の方が増加して、これはリストラの問題からも出てまいりますし、また失業率といったもの、非常に大きな問題を抱えておりますので、その中で租税の所得の再分配機能、これをやはり重視せざるを得ないということでございます。一般的に申しますと、いわゆる支え合うような社会を目指していかなければいけないということ、これは当然ですけれどもお話をさせていただきました。

 ちょっとぐずぐずしていたら時間がなくなってまいりましたので、論点だけ申し上げます。

 二番目が個人所得税ですが、これは非常に課税最低限の問題が、やはり所得再分配機能から考えた場合に一体どのあたりに置くべきかという問題。

 これは最近の政策的な手段、手法としまして、税制のみでなくて直接的な給付、子ども手当といったもの、こういうものが出てまいりましたので、当然税制に対しても見ていかなければいけないのかと。既に改正案に上がっておりますけれども、年少扶養控除といったもの、これをまず削っていく。それから、もう少し上の世代になりますと高校生の授業料を無償化する、そういうふうなことになりますので、当然、対応としまして特定扶養控除の方も高校生の世代のものはもとに戻してという形になってまいります。

 政策的な手法としてなかなか、税制、一方的に徴収するものと、それから最近目立ってまいりましたのがいわゆる給付である、この二つをどうやって組み合わせていくのかということが大きな課題ではないかと思います。当然ですけれども、直接的な給付というのは受給者にとって非常に影響が大きいので、それだけ反応も大きいなというふうに考えております。

 こういうようなことでございますが、ちょっと角度を変えて今度は法人税です。

 非常に技術的なお話になって恐縮ですけれども、グループ税制というものが改正案に入っております。従来ですと、いわゆる親会社と子会社と取引した場合にどうするかということで、例えば国際課税の面では有名な移転価格税制で、親子会社といえども適正な時価で取引をしないとその分は課税される、これが国際的なルールです。これは、いわばどっちの国で税収を確保するかという国と国の競争あるいは協調の問題がありますのでそういう問題が出てまいりますが、我が国の国内の親子会社の取引については、簡単に言いますと、これはこの時点では見ないということが今度の改正案になっております。非常にこれは興味深いものでございまして、連結納税を選択した法人は、既に親子会社というものは一体としてとらえられておりますけれども、選択をしていないいわば一〇〇%親子会社の場合には、これについて今回大きな改正が入ったということでございます。

 時間がなくなりましたのでまた飛ばします。

 それから、私が非常に関心を持ちましたのは租税特別法の透明化法案というものでございます。これは数年前から既に民主党さんの方から出ておりましたが、今回、これが法案になって、成立しますと非常に重要な法律になるのではないかと思っております。

 こちらは、実際に租税特別措置が利用された場合に、年度末になってどれだけ本来の税収が失われているか、それを公にするものですので、納税者の方にどういう申告書を出させるか、そちらの検討も当然なされていると思いますけれども、それを最終的に集めて公表する。

 これと関連したものに、租税歳出予算というものが世界的にございます。これはもともと、スタンレー・サリーさんという租税法の世界で非常に先駆的で、なおかつ独創的な考え方をされる先生がおられましたが、サリー教授が、ケネディ政権になったときにケネディ大統領から直接、財務省のアシスタント・セクレタリーですね、アシスタント・セクレタリー・フォー・タックスポリシーと書いてありましたが、いわゆる租税政策担当の財務次官補になられまして、これがきっかけでございます。非常に公平な課税というものを考えておられたサリー教授が、租税歳出予算というものを考案されました。

 我が国の今回の租税透明化法案の方は、結論としてどれだけ失われたかということですけれども、サリー教授が考えられたのは、いわば見込みとしてどれだけの税収が失われるだろうか、こういうようなものでありました。非常にこれが全世界にといいますか、特にOECD諸国に採用されて、現在ではどの国にもこの租税歳出予算という考え方が定着してきているところでございます。

 我が国でも、これは解説に、諸外国と比較しても先進的な取り組みである、こう書かれてありますが、そのとおり、こういった公平の観点から租税特別措置を見直すという試みについて、これはぜひとも進めていただきたいと思っております。

 時間になってしまいましたので、まだお話ししたいことはございますが、これで私のプレゼンテーションは終わりにさせていただきます。どうもお粗末で失礼いたしました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 次に、土居参考人にお願いいたします。

土居参考人 皆様、こんにちは。慶應義塾大学の土居でございます。

 きょうは、このような形で皆様の前でお話をさせていただくことを大変うれしく思っております。お手元に横長の参考資料を御用意させていただきましたので、これに沿いながらお話をさせていただきたいと存じます。

 この委員会では、特例公債法、それから税制改正法案、それから租税特別措置透明化法が御審議されているというふうに伺っておりますので、それに関連するお話を私からはさせていただきたいと思います。

 まずは、特例公債法絡みの話でございます。

 我が国は、皆様に申し上げるまでもなく、財政赤字が累増いたしまして、非常に大きな政府債務を抱えております。ついに、この直近に至りましては、我が国の政府債務というものが、実は我が国の家計が蓄えている金融資産とほぼ同じような金額に達するというような事態に陥っているというふうに思っております。

 お手元の参考資料の二ページをごらんいただきたいと思いますけれども、我が国の家計は一千四百兆円ぐらいの金融資産を持っているとされております。しかし、そのうちの四百兆円ぐらいは、自分たちの住宅ローンなどの家計の債務ということで、ほかの企業とか政府には貸し出せないお金ということで持っております。自分で持っているはたで自分で借りているという状態であります。それを差し引きますと、大体一千兆円ぐらいの純金融資産が家計にはあるということであります。

 これに対しまして政府、これは国と地方自治体合わせてということでありますけれども、それが、一般政府と呼ばれるものではかりますと大体一千兆円、GDPの二倍という金額で、直近ではほぼ近しい値に到達しているという状況であります。

 この状況は、直ちにあす財政破綻が起こるというわけではないわけですけれども、今までのように、国内で低い金利で国債を発行できるというような状況がもはやなくなりつつあるということを意味しているというふうに御理解いただければと存じます。

 ちなみに、釈迦に説法ですが、諸外国、先進国をごらんいただきますと、三ページにありますように、去年で見ましても、欧米先進国は三%から四%の国債金利を支払っているという状況にありますが、幸いというべきか、我が国は一・四%程度の金利で済んでいるという状況であります。

 しかし、これは、国内の貯蓄があって、国内で国債を消化できるという状況があって成り立つというものでありまして、それがだんだんなくなりつつある、海外の投資家からお金を借りてこなければならないというような状況になりますと、当然のことながら海外の投資家は、そんな低い金利では貸せないよと。別に、日本政府が信用できないということでなくても、アメリカ政府、イギリス政府、その他先進国の政府と同等の信用が日本国政府にもあるということだとしても、同じような金利水準、つまり三%から四%の金利水準を要求してくるという日が近づいてきているというわけであります。

 直ちに三%から四%の金利になるということではないかもしれませんけれども、そういう金利上昇圧力が徐々に高まっているということでありますので、私が思いますのは、できるだけ早くこの国債発行についての歯どめないしは財政健全化目標というものをきちんと打ち立てていただきたいというふうに思うわけであります。

 さはさりながら、財政健全化にいそしめば、経済成長がおろそかになって、経済成長によって財政健全化がなし遂げられるという道をふさいでしまうのではないかという懸念があります。つまり、自然増収が税に期待できる、その税の自然増収を財政健全化の糧にすればいいではないかという御議論があります。ただ、私がいろいろと調べておりますところによれば、残念ながら、そうした状況も期待ができなくなるというのが将来像であろうということであります。

 四ページの表にあります、これは財務省が平成二十二年度予算にあわせて後年度影響試算ということで出した資料に基づくものでありますけれども、この数字を私の学者の立場から検証いたしますと、もし経済成長が期待できたとして、例えば想定よりも二%高い成長が期待できたといたしましても、自然増収は二〇一一年では〇・八兆円、二〇一二年では一・七兆円、二〇一三年では二・七兆円の自然増収が期待できる。ところが、それに比して国債の金利がもし上がってしまうと、それよりも多い利払い費の増加が予想されているということであります。

 確かに、経済成長率が高まれば、国債金利がそのままであるとすれば、その分の自然増収が収支の改善につながるということでありますが、残念ながら、経済成長というものは国債の金利をむしろ引き上げる可能性がある。つまり、民間での資金需要が高まれば、それだけ国債の金利は低い金利では借りられなくなるという、幸か不幸かそういう経済の原理があります。

 そういたしますと、経済成長率が上がって喜んだ反面、金利も上昇します。その分、国債の利払い費がふえてしまうという意味で、収支が改善しにくい状況が今の我が国の財政構造であるということは、恐らくこれは確かなことであろうというふうに思います。そういうことを踏まえながら財政健全化の道を探っていく必要があると考えます。

 五ページには、私が思っておりますことで、財政健全化は重要であるということなんですけれども、特に重要なことは、今すぐ財政健全化のために増税せよというような意味ではなくて、むしろ少し先の話でもよいので、行く末はこういう行く末である、こちらの方向に向かって政策のかじを切っているんだという方向を指し示し、それを人々に知らしめるということが重要だということを申し上げております。

 むしろ、二〇二〇年代にどうするかというようなことでも構わないので、国債残高をこういう形に抑制していくんだとか、ないしは財政収支をこういう形で改善していくんだというような、何らかの具体的な指標を伴いながら、それでいて低過ぎず高過ぎないハードルを設けて、その目標に向かって頑張っていく、そういうやり方が求められていると思います。

 もう一つは、これは財政健全化と経済成長という話の中にあっては忘れ去られがちなことなんですけれども、政府が借金を残すということは将来世代に対して負担を残すということである、将来世代の負担をふやしてしまうということで、将来世代と現役世代との間の負担の格差を生んでしまうということにもきちんと配慮をする必要があろうかと思います。そういう意味では、いわゆる霞が関埋蔵金依存は永続できないので、早い段階で恒久的な財源の検討をお願いしたいところであります。

 さはさりながら、ただ単に赤字だから増税せよというようなことは、なかなか国民も理解をいたしません。そういう意味では、財政運営に対する中長期的な姿勢をきちんとした形で示すということが重要なのではないかというふうに考えております。

 六ページには、私も学者としてかねがね、こういうことを我が国でも導入してはどうかということを提起しておりましたけれども、鳩山内閣になりまして、昨年十月二十三日に閣議決定されたようでありますけれども、「予算編成等の在り方の改革について」ということで中期財政フレームをお示しになるというようなことで、それについては私も非常に期待をしております。確固たる形で、よりきちんとしたコミットメントで国民にお示しになるということを期待したいと思います。

 私が思いますのは、複数年度予算編成というものは、イメージとしては九ページのところにございます。単に、二年から三年の収入と支出についてあらかじめ示すというだけの話ではなくて、むしろ、この二年から三年かけてどういう政策目標を達成しようとするのか、目標と具体的な手段を両方セットできちんと示すということで国民に対して約束をするとともに、コミットメントの信頼性を持って国民を安心たらしめる、そういうような効果というものがあるのではないかというふうに思っております。

 そういう意味では、中長期的な財政運営のスタンスとして、経済学から一つの示唆が与えられておりまして、これは十ページにあります課税平準化政策というメッセージであります。イメージといたしましては、十一ページの方にイメージをかかせていただいております。

 単純に申しますと、できるだけ税負担の増加、増税を先送りにして、土壇場になってやむを得ず増税せざるを得ないという形で追い込まれて高い税率をかけてしまうというよりかは、毎年こつこつときちんと税をかけていく。確かに、目先は少し税負担が重くなるかもしれないけれども、早い段階で税負担をお願いしていくということを通じて、将来税率がどんどん高まっていくというようなことを防ぐ、そういうふうに財政運営を行っていくことで、逆に経済成長にもいい影響がある。

 つまり、経済学が示唆するところでは、税率は高くなればなるほど、その税率の大きさの二乗に比例する形で経済活動を阻害すると。例えば、消費税が五%のときの経済活動を抑制する大きさを一とすれば、二倍の税率である一〇%のときには、単に税率が二倍になったということで経済活動は二倍分萎縮するというのではなくて、むしろその二倍の二乗、つまり四倍の大きさで経済活動を萎縮させる。さらには、二〇%という税率にすれば、五%のときに比べて税率は四倍ですので、その四倍の二乗で十六倍の大きさの経済活動を阻害する悪影響が及ぶということが経済理論では知られております。

 そういう意味では、やがて上げざるを得ない税率であるならば、余り最終的な税率が高くならないようにする。そのためには、タイミングを逃さずにできるだけ早目に税率を上げて、かつ、将来は余り高く税率が上がらないようにとどめさせる、そういう財政運営が求められると思います。

 後半では、税制改正法案に関連するところで意見を述べさせていただきたいと存じます。

 十二ページには、私が重要であろうと思う点について触れておりまして、今後の税制を考える上では、少子高齢化、グローバル化、財政健全化、地球温暖化防止という観点をどういう形で税制に反映していくかということが重要だというふうに思っております。

 そういう意味では、効率性と公平性、特に垂直的な公平性と効率性ということでいえば、消費税と所得税との間の役割分担というものがこれからは重要になってくるという考え方を持っております。

 税制改正法案の具体的な話に関連いたしましては十四ページに述べておりますけれども、所得控除から給付へという形で、この税制改正、特に所得控除の見直しというものが図られた点に関しましては、私は望ましい方向だというふうに思っております。

 確かに、子ども手当というものは子育てについての社会的な支援という観点もございますが、もう少し税制と関連したところで、所得再分配効果がどうなっているかということで私が研究しているものの一端を御紹介させていただきたいと存じます。

 十五ページですけれども、私の転記ミスで、一枚紙の訂正のものを御用意させていただいております。左上に「訂正」と書いてある方が正しいものでございます。これで、皆様御承知のように、年少扶養控除を廃止し、特定扶養控除の十八歳以下の部分についての上乗せを廃止するということとともに、子ども手当を支給するということの効果を見ております。

 所得階層を一〇%ずつ区切りまして、下から一〇%、その次の一〇%ということで十分位の階級になっております。一が一番低い所得で十が一番高い所得層ということであります。

 右下の所得純増額ということで、子ども手当の受け取りがふえる一方で控除が減って税負担が多くなるというものの差し引きでどうなるかということで数字を見ますと、十分位、一番高い一〇%の所得層を除くと、子ども手当の支給によって可処分所得がふえるという経済効果、さらにその上に、基本的にはより低所得の方々の方がより多く所得がふえるという意味で、格差是正の効果が働いているという計算結果になっております。

 そういう意味では、子ども手当は、もちろん子育て支援という意味のところが重要な一つのポイントではありますけれども、また別の側面で、所得再分配効果もより発揮されているという経済効果が期待できるということが予想されております。

 さらにもう一つは、社会保険料負担が実は逆進的であると。この十五ページの右上の社会保険料負担のところをごらんいただきますと、低所得層の方ほど負担率が高いという意味で逆進的になっております。

 そういう意味では、今後さらに、子ども手当という形ではないかもしれませんけれども、例えば給付つき税額控除など、逆進性緩和、所得再分配効果をより発揮させるという観点からすれば、給付つき税額控除というのも一つの重要な選択肢なのだろうというふうに思います。

 最後に一言だけ、租税特別措置透明化に関連して申し上げさせていただきたいと思いますが、透明化ということは非常に重要で、これは私としても強く賛同できるところであります。ただ、今後の課題といたしましては、単に租税特別措置法に書かれているものだけが対象になるということなのではなくて、本則の税法、それからさまざまな政策的な配慮、つまり税を通じた政策の効果を発揮させるのがよいか、ほかの方法がよいかという比較考量などの観点も交えながら、もう一段さらに再整理なさるといいのではないかというふうに思っております。

 以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

玄葉委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。網屋信介君。

網屋委員 民主党の網屋信介でございます。

 本日は、お忙しい中、各先生方には快く参考人の意見陳述に応じていただき、本当にありがとうございます。心から感謝申し上げます。

 今、この財務金融委員会では、今回の租税特別措置法それからその他の税法関連の討議をずっと続けてきてまいっておるわけですが、私としましては、そもそも論のところで少し、皆様が今までいろいろ御研究をなさったベースで御意見をお伺いしたいと思っております。

 まず、森信先生にちょっとお伺いしたいのでございます。

 きょうのお話で、税制改革についてということでお話をいただいたわけでございますが、今回の所得税法の改正と、それから子ども手当等々の、いわゆる先生がおっしゃっている所得控除から給付へという形の典型的な形でつくっているわけでございますが、十二月ですか、ちょっと前に先生が「時評」という本にお書きになった内容で、「最新の経済学では「不公平を是正することは、長期的には経済成長にプラスの効果をもたらす。一方高い累進税率は、経済にゆがみ・非効率をもたらす。そこで、納税者が均等に受益するような再分配政策とセットで税率引き下げが行われるなら、トレードオフは解消される」」というお話をここに書かれていらっしゃいます。

 よく使われる再分配の係数でジニ係数というのがございますけれども、ジニ係数と成長率といいますかの関連、つまり再分配を進めることによって経済は成長するのかそうでないのかということについて、ひとつ御意見をお伺いしたいなと。その結果として、今回の所得税法の改正をどう評価するのか。これが一番。

 二番目が、全くこれとはずれるんですが、最初に、消費税が三%から五%に上がった、たしか橋本内閣のころだったですかに直間税率の見直しという言葉が実は当時ございまして、消費税を上げるかわりに所得税を下げますよと。国民が知らない間にいつの間にか所得税だけはもとに戻っちゃったという状況なのでございますが、この直間税率の考え方について、もし御意見があればお伺いしたいなと思っております。よろしくお願いいたします。

森信参考人 それでは、私の意見を申し述べさせていただきたいと思います。

 最初の御質問でありました、ジニ係数と経済成長の関係ということでございます。

 あの小論に書きました趣旨はこういうことでございます。OECDの三十カ国の過去十年間のいろいろな統計をプロットいたしまして、統計的にどういうことが言えるかということをいろいろ見たものでございます。

 その結果わかってきたことは、一つ、まず政府の規模、あるいは社会保障の規模と経済成長というものはそれほど関係がない。かつて、小さければ小さいほど効率がいいというふうな形のことがよく言われましたが、私が統計を見る限りは、社会保障の規模あるいは政府の規模が大きくても成長している国もあれば、逆に小さくてもだめになっている国もあるということが第一点でございます。

 それから第二点は、社会保障を充実している国ほどジニ係数が低いということでございます。これは考えてみれば当たり前で、より多くの再分配機能効果を発揮しているということだと思います。

 三番目が、今先生がお尋ねになったところだと思うんですが、ジニ係数が低い、つまり平等度が高い国ほど中長期的に見れば経済成長をしている。これは有名なオズバーグという教授の研究成果でもあるんですが、それもOECDの統計から見てとれるわけです。

 問題は、そういった三つの事実をどう組み合わせていくか、あるいはどういう因果関係にあるかというところが実は難しいところでございまして、そういったところが必ずしも、統計だけですから因果関係がわからないんですね。

 ただ、私が考えましたストーリーとしましては、やはり所得再分配機能を高めて、より平等度の高い社会をつくれば、その結果、これはオズバーグの論文の趣旨なんですが、特に教育に効果があって、教育の水準が底上げされて、皆さんがより競争をしていくことによって経済成長が促進されていくのではないか。したがって、社会保障あるいは教育を充実させることによって経済成長が結果的には上がっていく、こういう姿が描かれて、その典型が北欧諸国だというふうに私は思っております。

 それで、私は勝手にこういう姿を、弱肉強食社会ではなくて切磋琢磨する社会、こういった方向で少し社会保障の規模を大きくして、あるいは教育の規模、政府の規模を少し大きくすることによって結果的には経済成長が高まっていくという、これまでとちょっと違うことが見てとれるのではないかというふうに思って書いたものでございます。

 それから第二点でございますが、直間比率の見直しといいますのは、私も経験がありますが、結局、当時の抜本的税制改革、昭和六十二年、六十三年あるいはその後の平成七年のいわゆる税制改革で消費税を導入し、五%に引き上げてきたわけですが、その当時の状況は、やはり所得税の持ついろいろな弊害が出てきていたということですね。

 やはり、特に中堅所得者層に非常に重たい負担になって、その結果、勤労意欲というんでしょうか、そういったものが損なわれるというふうな状況が一方にあって、他方で社会保障のために安定的な財源を確保する必要がある、余り景気に左右されないような税体系を構築する必要があるといったようなことが両方あって、それではこの比重を変えていけばいいじゃないかと。

 そのときの心は、要するに、税収は基本的に同じということなんですね。だから、六対四か七対三かといろいろありますが、結果的にはトータルの税収は、最初の抜本的改革なんかはネット減税、二番目も、特別減税を入れますとネットで減税になっておりますが、そういうことで、とにかく税収に重点を置いた改革ではないということなんですね。

 ところが、今日では、先ほどから土居参考人の意見にもありましたように、やはり税収そのものが問題になってきているということでございますので、今余り直間比率の問題ということは言われなくて、むしろ足りない税収は主として消費税で引き上げていくのがやむを得ない一つの選択肢じゃないかというふうに私は考えておりまして、今後、余り直間比率という考え方は出てこないのではないかというふうに思っております。

 以上です。

網屋委員 ありがとうございます。

 続きまして、水野先生にお伺いしたいことがあります。

 先ほど法人税の話に少し触れられたと思いますが、国会の中でも法人税についていろいろな議論がございます。特に、二〇〇二年から二〇〇六年ほどのいわゆる経済成長の中で、特に大企業を中心に非常に法人の所得は上がったんだけれども、なかなか勤労者への配分が行われなかった。実際には、配当ですとか取締役の所得は四〇パー近く上がったにもかかわらず、そこに働いている勤労者の皆さんの平均所得というのは、六%ぐらい平均で上がっていますけれども、場合によると下がっているところまであるというような状況で、その見直しも含めて、大企業を中心に法人税のあり方を考えるべきじゃないかという議論、もちろん両方あります。

 法人税率を上げるべきなのか下げるべきなのかという議論があるわけでございますが、この分配という形で考えたときに、それともう一つは、国際的な競争力ということを考えたときに、先生の御意見は、法人税についてはどういうふうに御意見がございますかというのが一つ。

 もう一つは、租特のことでございます。先ほど土居先生からもちょっとありましたが、租特法の透明性、これは皆さん意見が一致するところではございますが、私は正直言いますと、租特法そのものの存在価値といいますか、租特法というよりも、一つ一つの項目について本来の本則の中でカバーすべきじゃないかと私は思っておるんですが、その辺について御意見があれば教えていただければと思います。

水野参考人 私の感じているところを述べさせていただきます。私、専門は法律学でございますので、かなり主観的なものになるかと思いますが。

 法人税というものは、経済の影響を受けていろいろ変遷を重ねてきて、ただ言えることは、今、この二十年ばかりはどんどんどんどん下がりつつあるということですが、やはりこれは経済情勢との見合いですけれども、それから他の財源を見つけることができるか、具体的には消費税の方になりますが、そういうものが整った場合にはこれを下げるということもあり得るかなと私は思っております。

 現実に、単純によその国と比較するわけにもいきませんけれども、税収、いわゆる財源機能としての法人税は、他の先進諸国では付加価値税にかわりつつありますし、またあるいは、アメリカ合衆国のように、連邦国家として消費税を持っていない国でも法人税の負担は少なくなる、そのかわり、個人所得税の占める割合が非常に高くなっております。

 先ほど従業員の給与のお話も出ましたけれども、こちらも今度は、法人税の負担に依存できないので所得税にと、こういうふうに当然単純にはまいりませんので、こちらの方は今度は、先ほどもお話が出ておりましたが、扶養控除等の所得控除をどういうふうに整理合理化するか、場合によって、直接的な給付の形によって賄うかわりに所得税の占める役割を変えていく、こういうことはあり得るかなと思っております。

 それからもう一つ、租特の透明化法案のお話ですが、幸か不幸か、例えばよその国の例で申しわけないんですが、アメリカ合衆国が始めたときに、アメリカ合衆国というのは全部の税法を一つの法律にしまして、内国歳入法典と呼んでいるわけですが、どれが租税特別措置でどれがそうでないかというのは、いろいろ基準の立て方がございまして、具体的には、単純に言ってしまいますと、民主党政権になりますと租税特別措置とされる項目の範囲が広がりまして、共和党政権になりますとこれが狭くなる、これの繰り返しで来ております。

 我が国では租税特別措置ということで一つの法律になっておりますが、厳密に理論的に申し上げれば、租税特別措置法に入っている中でも特に国際課税にかかわるもの、移転価格税制あるいは過少資本税制その他ございますが、これは租税特別措置というよりも、性格的には国際課税の基本をなしているものですので、先ほど土居先生の表にもありましたが、必ずしも租税特別措置が、それがそのまま特別措置であるかどうかはまた別な話で、逆に本法はどうなっているかといいますと、所得税法に、今回変わりましたが生命保険料控除、ずっとございましたが、これはいわゆる一種の金融商品であり租税特別措置ではないか、こういうような考え方が出ております。

 そこで、ではどうするかといいますと、租税透明化法案ということでこれを制度として定着させることを考えますと、私としましては、租税特別措置法というものが現在もう長いこと続いてきておりますので、これをもとにして集計するというのがやはり適当ではないかなと。一番簡単なのは、租税特別措置法に入っているからこれは特別措置であると。

 非常に無責任ではありますけれども、現実に運用していくことを考えてみますと、租特の中にもそうでないものがあって、所得税や法人税法の中にも特別措置がある、これをやりますと、毎年点検し直しというようなことにもなりますので、この法案が成立した場合には、当面は、これは租税特別措置法を対象にしたものである、数年経験を積んだところでもう一度議論をするというのがよろしいのではないかと思っております。

 失礼いたしました。

    〔委員長退席、中塚委員長代理着席〕

網屋委員 ありがとうございます。

 それでは、土居先生にまたよろしくお願いいたします。

 きょう質問するに当たり、土居先生がいろいろなところでお書きになっていらっしゃる、「金融財政事情」ですとかエコノミストですとか「経済教室」ですとか、ちょっと読ませていただきました。三つの質問をさせていただきます。これは財政的な問題でございます。

 一つは、九〇年代にこの国で非常に厳しい、いわゆる失われた十年とかいう言葉がありますが、その期間に、昔のケインズの理論みたいな形で、公共投資をとにかく主体にして財政出動を行ってきたと。先生の御意見では、その九〇年代の財政出動と、極端に言えば、穴を掘っては埋め、穴を掘っては埋めをやれば、とにかく経済は大きくなるよということをやってきた、これが、ポスト・リーマン・ショックにおける各国での財政出動とは質が異なるんだというお話を書かれているようですが、そこについてちょっと御説明をいただきたい、これが一番。

 二番目が、おっしゃるとおり、実は私も同じことを考えておりまして、経済成長すれば当然金利が上がる、いわゆる期待インフレの部分で、インフレにすれば国債の価値が下がるだろうという簡単な話じゃなくて、これだけ国債が大きくなると利払いがかなり厳しくなる、これはどうするんだろうというのを常に考えていたわけでございますけれども、最近よく言われているいわゆるGDPギャップという言葉がございます。これを財政出動で埋めるんだ埋めないんだ、五十五兆円出せとかいういろいろな話もございましたけれども、GDPギャップを国の財政出動で埋めることの意義があるのかどうか、これが二番目です。

 三番目は、たしかエコノミストでしたか、先ほどの複数年度のつくり方の話で、英国式の予算編成のやり方を学ぶべきではないかというようなお話がたしかあったと記憶しております。その辺について、もし御意見を拝聴できればなと思っております。よろしくお願いいたします。

土居参考人 御質問ありがとうございます。

 まず一点目に関しましては、確かにいわゆる伝統的なケインジアンという、経済学者のアイデアによる公共事業で景気対策という話は、さすがに今日では経済学者の中では大分傍流になっておりまして、そのかわりに、かといって全く政府が何ら介入もしないで自由に任せていいというばかりではないという考え方は当然ありまして、この一つの学派としてニューケインジアンと言われる学派がございます。

 ただ、このニューケインジアンという学派は、必ずしも、伝統的なケインジアンと同じ立場をとっているかというと、実は本質的なところでかなり違いがあるということであります。特に、ニューケインジアンと呼ばれる学者で、オバマ政権でアメリカの政権中枢にアドバイザーとして入った学者がたくさんおられたのでありまして、それを私がとらえまして原稿を書かせていただくときには、実はオバマ政権がやろうとしている財政出動というのは、これまでと違うことをやろうとしているのではないかということを申し上げたわけです。

 ただ、ふたをあけてみますと、すべてがすべてそうではないといいましょうか、やはりそこは政治的判断というのもあって、それは当然のことながら、政策遂行というのは学者の書生論だけでは実行できないわけでありますから、若干ピュアなものではないというか、ニューケインジアンが言っていたようなものではない。

 ニューケインジアンが言っていたものはどういうことかというと、どちらかというと、市場の失敗を是正するのに効果のあるような財政出動ということだろうというふうに思います。例えば、アメリカではインターステートハイウエーが必ずしも十分に整っていないようなところは、もうちょっと高速道路をきちんとつくってあげたらどうだと。そこは、もしつくると、製造業とか流通業とかそういう生産面で効果があるんだから、そこでそういう政策を講じたらどうかと。

 極端に言えば、伝統的ケインジアンというのは、需要を掘り起こすということにどちらかというと主眼があって、つくった後の公共資本というかインフラストラクチャーは、それは野となれ山となれとまで言ってはちょっと言い過ぎかもしれませんが、そういうような発想が若干あります。

 つまり、需要側を刺激すれば経済はよくなって、それで立ち直ればいいじゃないかとする伝統的なケインジアンに対して、ニューケインジアンというのは、実は需要側というよりかは供給側の方にもっと刺激を与えて経済を活性化する、そのときには財政政策というものも効果があるんだ、そういうような考え方を持っているというふうに私は理解しております。そういう意味では、これまでの公共投資とは質が違う。

 ただ、日本の場合ということで申しますと、少なくとも麻生内閣でなさった政策というのは、私から申しますと、必ずしもニューケインジアンとは言えない政策だったんだろうということは一言、付言させていただきます。

 二番目の点ですけれども、今の話と関連するところでありまして、GDPギャップをどちらの側、つまり需要の側からなのか、供給の側からなのか、どちらから埋めるのかということなんだろうと思います。

 当然のことながら、伝統的な考え方では、有効需要をふやして需要側からGDPギャップを埋めていくということが有効なのではないかという考え方はあろうかと思います。

 ただ、私が思うのは、財政政策を講じても、その後、結局のところ借金がふえて、その借金はやがては増税によってそのツケが回ってくるんじゃないかというふうに国民の、消費者の多くが思うと、目先の消費を萎縮させてしまう可能性というのがあって、確かに公共事業とか財政支出はふえたかもしれないけれども、借金がふえている分だけ民間の消費を抑制してしまうということになると、結局GDPギャップも、埋まるものも埋まらないというようなことがあると思います。

 あとは、財政の債務の規模が大きいということもかんがみますと、私が思うのは、今の状況からすれば、確かに財政が出ていかざるを得ない部分はあると思いますけれども、もう少し金融政策にもお願いをするとよいのではないか、日銀にももう少し頑張っていただきたいなというような思いが学者としてはいたします。

 最後に、英国式の財政運営、予算編成ということでありますけれども、私がイギリスの財務省などにもいろいろとヒアリング等々で勉強させていただいて、私なりに考えたことで申しますならば、やはり、なぜイギリスかというと、日本と同じ議院内閣制をとっているということがまず一つ重要なポイントで、イギリス式の予算編成も割とすんなり輸入しやすい部分がある。もちろん、国情が違いますので直輸入というわけにはいきません。

 ただ、少なくとも私が思うのは、非常に強いトップダウンのリーダーシップによって予算がつくられるというところが極めてイギリスにおいては顕著なところがあって、もう少し我が国でもそういう要素が取り入れられるといいのかなというふうに思います。

 以上です。どうもありがとうございました。

網屋委員 私の質問は以上でございます。きょうは本当にありがとうございました。

中塚委員長代理 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 本日は、参考人の先生方には大変ありがとうございます。

 まず、財政健全化について、三人の先生方それぞれにお伺いしたいと思うのであります。

 我が国の長期金利は比較的、比較的といいますか、先進国に比べるとかなり低い状況でございます。先ほど土居先生から御紹介いただいたとおりでございます。

 ただ、やはり市場は楽観してはいけないと私は思っております。一つは、格付会社が日本の国債に対して格付を下げるような動きが出始めているということ。あるいは、国債の元本や利払いが滞ったときの損失を保証するクレジット・デフォルト・スワップの保証率が上がってきているというようなことは、私は、やはり市場のメッセージとして政策担当者というのは敏感に受けとめなければいけない、こういうふうに思っております。

 そこで、政府も五月から六月には中期財政フレーム、また財政運営戦略をつくるというふうにおっしゃっているんですけれども、これがどのようなものをつくるかというのが私は非常に重要だと思っております。市場の信認を得るためには、やはり明確な数値目標が盛り込まれた財政健全化のシナリオをつくる必要がぜひともあるというふうに思っておりますが、この件につきまして、それぞれ御意見を伺いたいと存じます。

森信参考人 では、私の意見を申し述べさせていただきます。

 私も基本的には先生と考え方は全く同じでございます。

 私が特に強調したいのは、財政赤字というようなものはマーケットの中でどういうふうに評価されるかという点が重要でございまして、例えば、今既に日本の国債の発行が、国と地方を合わせた債務の残高が例えば千兆を超えれば、日本は大きな一つの分水嶺を越えるんじゃないかというふうなことが言われたりしておりまして、つまり、政府というものは、そんなマーケットに人質にとられるような財政政策をすべきではないというふうに考えております。

 そのためには、やはり、きちっとした数値目標を設定して、そのもとでこういうふうな財政運営をするんだということを明確に示して、マーケットのそういう材料にする、あるいは漠然とした中でマーケットのえじきになるような財政政策をとるべきではないというふうに考えております。

 その目標については、やはり当然数値がなければ目標とは言えないと思いますし、ただ、短期間だけの数値ではなくて、もう少し長い、中期的な、短期、中期あるいは中長期といったふうにいろいろ分けて数値目標をつくっていくということが重要ではないかというふうに考えております。

 以上です。

水野参考人 私の個人的な意見を述べさせていただきます。

 財政再建と申しますと、幾つか手段があると申しますか、あるいは限られているといいますか、現在三十五兆円の歳入、これではどうしようもないので、といって、他方で経済全般の情勢がございますので、新しい税目を今、具体的には消費税の方でカバーする、これもなかなか決断の要ることでございます。

 ただ、国債依存というものも、これはいつまでもというわけにもまいりませんので、既に政治の世界でも議論されておられるということですけれども、税制の抜本的な改革、こういうものも必要になってこようかと思います。

 もう一つの手段は、例えば、思い切って経済を回復するために法人税率から下げてみて、それで回復してきたら、それによって税収が上がるのでだんだんバランスがとれてくる、こういうような御意見もありました、ラッファー・カーブと題して。

 ただ、非常によくわからないところ、例えばアメリカ合衆国が双子の赤字を掲げていて、レーガン大統領になりまして、一九八一年に大幅な投資減税を行った。その当時は、これが翌年以降、非常に赤字が拡大してしまって、これでは大変だというので、結局一九八四年から六年にかけて税制改正を行って、前よりも税率は単純化されましたけれども、課税の対象は広げるというようなことが行われました。

 それが今度、クリントン大統領の時代になったところが、今まであった、あれだけ十年近くアメリカが困っていた財政赤字が、すっと戻ってしまった。

 さて、これが一九八一年のレーガン税制改革の効果なのかどうかということは、十年たった後の話ですので、これはなかなか判断は難しいと思いますが、我が国で考えるに当たっても、どれが本当に効果があるものなのかどうか、これは非常に難しい問題ですので、十分に議論して決定していただきたいと思っております。

 ありがとうございました。

土居参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、財政健全化の重要性については、先ほど申し上げさせていただきまして、かつ私の参考資料にも述べさせていただいたように、何らかの財政健全化の具体的な目標となる数値ないし指標を示すということが重要だと思います。さらに、森信参考人もおっしゃったように、短期、それから中長期というタイムスパンでの目標設定というのも効果的だろうというふうに思います。

 これに加えまして、私が一つここで申し上げさせていただきたいことは、若干そういう議論があるやに聞いておるものですから懸念しているところは、特別会計のいわゆる霞が関埋蔵金、これについての議論の中で、国債整理基金特別会計の積立金について、これを取り崩してはどうかというような議論があるやに聞いております。これは学者が言っているというようなこともあるんですけれども、私は、そこにタッチをすることは非常に危険である、財政規律を損なわせる可能性があるという意味で、大変強く懸念をしております。

 特に、六十年償還ルールという、我が国がずっと伝統的に守ってきた国債償還、減債にかかわるルールをないがしろにしてしまう可能性があって、確かに、そこにたまり金がある、これは別に今すぐ要らないんだから使ってしまえばいいじゃないかという向きもありますけれども、それはほかの積立金とはわけが違って、これは六十年償還ルールを担保するためのものである。もしこれをなくしてしまうということになりますと、我が国は六十年償還ルールというのをやめるということなのかという悪いメッセージを国債市場に投げかけるおそれがあるというふうに思います。

 そういう意味においては、そういう誤ったメッセージを流さないということ、それから一般会計から国債整理基金特別会計への定率繰り入れをきちんとするということも含めて、我が国の六十年償還ルールを最低限でも守るということはぜひともお願いしたいというところであります。

    〔中塚委員長代理退席、委員長着席〕

石井(啓)委員 今、土居先生がおっしゃったことは、実は午前中の質疑の中で、ほかの委員と菅大臣とのやりとりがありまして、禁じ手じゃないですかということで大臣に指摘をされたところ、大臣は、禁じ手だとは肯定されなかったんですね。だから、ちょっと私も不安なところがあるんだけれども、それは今後よく我々も監視をしていきたいと思っています。

 ところで、きょうの土居先生の資料の四ページ、財務省の二十二年度予算の後年度影響試算を抜き出していただきましたけれども、私もこれを見まして、やはり今の国債のストック増が利払いに与える影響というのは本当に大きいな、こういうふうに思いました。

 ただ、これは財務省が伝統的に、経済成長率に対する税収の伸びを弾性率一・一しか見ていませんので、もう少し入ってもいいんじゃないかという思いは多少あるんです。落ち込むときは激しいんだけれども、復活するときは小さいというので、かたく見過ぎているんじゃないかという嫌いもあるんですが、それにしても、名目成長率の伸びと金利の伸びを比べますと、はるかに金利の伸びによる国債の増額の方が大きいということで、本当にこれは真剣に考えなきゃいけないなと。

 ただ、これは、「経済成長率が上がれば金利も上昇」と先生は書いていただいているんですけれども、もっとひどいのは、経済成長率は上がらないのに悪い金利だけ上昇してしまうという最悪の事態も考えられますので、そういったことにならないように、やはり財政の健全化というのを真剣に考えなければいけない、こんなふうに思っているところでございます。

 続いて、税制の方に移らせていただきますが、同じく三先生にそれぞれお聞きしたいと思うんです。

 陳述の中でもお触れいただきましたが、実は、前政権時代も、税制の抜本改革というのはやろうということで、閣議決定なりあるいは税法の附則なりに書いてございます。その大きな目的というのは、これから安心社会をつくるために社会保障を充実させなきゃいけない、それにはやはり財政が必要ですねということ。つまり、現在ある社会保障の制度でも自然増で費用がふえていきますから、社会保障を充実、安定させるための財源としては、やはり消費税を含む税制の抜本改革がどうしても必要だ、こういう判断に立っていたわけです。

 もっとも、これを実際に実行するのは景気を回復させた後だとか徹底した行革をやった後だとか、あるいは消費税を社会保障目的化するとか、いろいろな条件はつけていましたけれども、やはり実施するんだという意思は示しておりました。

 私は、新政権、マニフェストで四年間消費税を上げないということで約束しているんだというふうに総理も重ねておっしゃっていますけれども、それでもてばそれにこしたことはないんですけれども、少なくとも、消費税を含む税制抜本改革は早期に検討をしておく必要があるな、こんなふうに思っておりまして、この点につきましての御意見を承りたいと存じます。

森信参考人 お答えいたします。

 私の意見としましては、まさにできる限り早く議論を始めるべきだというふうに思っております。その場合、ではどういうふうなことになるのかというふうに申しますと、やはり今の税体系といいますのは、所得と消費と資産、これがうまくミックスされて、うまくかどうかわかりませんが、ミックスされて現在動いているわけでございまして、そういう意味で、それぞれの税制、税目について点検をしながら、その上でやはり大きな改革をしていく必要があろうかと思います。

 そういう目で見ますと、所得税につきましては、いろいろ世代間の不公平をもたらしております例えば年金税制の問題とか、それからサラリーマンに少し有利になっております、特に高所得サラリーマンに有利になっております給与所得控除の問題、そういった問題はやはり残っておりますので、そういう問題も点検しながらやっていくべきだと思いますし、また、資産課税につきましては、今の格差社会、これが世代を超えて伝播しないように、相続税につきましても非常に課税ベースが小さくなっておりますから、そこをもう一度議論し直していく必要があろうかと思います。

 そういった上で、やはり税収が足りないということになろうかと思いますので、それはやはり経済に与える負荷が最も少ないという観点から、消費税の議論を進めていくべきだと思います。

 何か我が国の消費税の議論といいますのは、どうも高齢化の足りない費用を賄うためだけの観点がメーンでございますが、世界的に見ますと、消費課税というのは、他の、特に所得税に比べまして、経済効率という観点ではるかにメリットの大きい税制でございます。

 例えば、我々が貯蓄しますと、税引き後から貯蓄した利子に対してもまた利子課税がなされる。あるいは、配当が法人段階で課税されて、また個人段階でも課税される。しかし、消費税の体系では、そういったものには二重課税というような問題がないような形で税制を仕組むことができるということになっておりますし、設備投資に与える効果も、消費課税のもとでは、即時に全額設備投資は損金に算入されるというようなこともありまして、経済に与えるメリットが大きい。そういう観点からも私は議論をしていくべきじゃないかというふうに思います。

 以上です。

水野参考人 どうもありがとうございます。

 私、また自分なりの考えを述べさせていただきますけれども、先生おっしゃいますように、財政の健全化、これはどうしても避けては通れない問題で、恐らく国民一般の中でも、税制についての何らかの大きな改革は必要だろうという意見を支持される方は多いと思います。

 問題は、いつも議論になりますけれども、タイミングをどうするかということでございます。そうはいっても、その時期になってすぐ実施できるわけではありませんので、助走期間といいますか、議論を重ねて原案のようなものをつくるということが必要になるわけですけれども、これもなかなか、いわば特別の委員会をつくった途端にもう来年実施だとかいううわさになる可能性もありますし、なかなか難しい問題ではあろうかと思いますけれども、選択肢としましては、どうしてもやはり消費税を充実させていかざるを得ないということであろうと思います。

 ただ、これまた外国の例ですが、ヨーロッパの国々では非常に付加価値税の税率が高いですが、付加価値税の税率はもともと高かったわけではなくて、付加価値税の税率を上げるために所得税の方を今度は少し下げるとか、そういうふうな工夫をしながら上げてきたわけです。

 我が国で平成元年に消費税が実施されまして、そのときにもやはり抜本的改革ということが言われていたわけですが、その時点では、いわば利子所得の大きなものが非課税になっていた、これを源泉課税にかえるというような試みを行いまして、消費税にとどまらず所得税等についても、今までの不公平な部分を直したということがございました。

 ですから、今後、消費税について議論をしていただきたいと思いますが、当然のことですけれども、抜本的改革ということですから、それぞれの税目についても議論しなければいけないということでございます。

 その中で、非常に関心がありますのは、消費税というと必ずひところはインボイスの問題が出まして、いわば食料品の非課税なりゼロ税率の問題、これをどうするかという話でありました。最近、給付つき税額控除の話の中で、実際にカナダが行っていることですけれども、食料品に使用する家庭の支払い額というのは大体それほど変わるものではありませんので、それに見合うだけの税額を今度は所得税の方から控除する、こういうような試みといいますか、こういうことを実施している国もありますので、幅広に、いわばバランスをとるような形で消費税の議論も考えていただけたらと思っております。

 失礼いたしました。

土居参考人 御質問にお答えします。

 私もお二人の先生方と同じように、できるだけ早期に議論を始めるべきだと思います。当然ながら、議論を始めることと直ちに増税することとはわけが違うということだと私は思います。そういう意味では、どういう税制に将来この国の税制を導くのかという具体的なアイデアをいろいろと御議論いただき、かつ、それを、できればより細かいところまでも含めた形での具体策を、今すぐ増税するわけではないけれども、いずれその時期が来たならば直ちに実行できるような、いわゆるスタンバイをしておくというような形でアイデアを練っていただくということがよいのではないかというふうに思っております。

 ただ、私が思いますのは、この日本の景況を見ますと、とても直ちに増税できるような状況では、残念ながらありません。そういう意味では、確かに四年間消費税率を上げないという御判断ではあるんですけれども、これもまた国民の支持を得たということであるんですけれども、恐らく、我が国の経済状況からすると、仮にこれを公約に掲げなくとも、多分四年間ぐらいは消費税を増税できないぐらいの景況が、残念ながらしばらく続くのかなと。

 ただ、少なくとも、もしかしたら四年後には景気がよくなっているかもしれない。それならば、そのときにはどういう税制改革を実行するのかということについては、今からでも決して遅くはないので、御議論を深めていただくということが、やがて来るべきときの備えという意味では重要なのではないかなというふうに思います。

石井(啓)委員 ありがとうございます。

 それから、最後の質問にしようかと思いますが、森信先生に給付つき税額控除についてお伺いしたいんです。

 森信先生の著作等によりますと、給付つき税額控除もいろいろな目的がある。勤労を促す目的であったり、あるいは子育て支援をする目的であったり、あるいは、私ども注目していますのは、消費税の逆進性緩和のために使えるということでございます。

 実際、私ども今回の政府の税制大綱の中で注目しましたのは、この給付つき税額控除の目的で、消費税の逆進性緩和ということを非常に重点を置いて書いていらっしゃるんですね。軽減税率よりも給付つき税額控除の方がいいんじゃないかというふうにすごく踏み込んで書いていらっしゃるので、私は非常に着目しているんですが、諸外国でも複数税率を導入していますから、我が国でもできないことはないと思うんです。

 ただ、複数税率を導入すると、やはりどこかで非常な割り切りが必要になりますね。日本の場合はどっちかというと厳密さを求める。よく言われる例えで、マクドナルドのハンバーガーの件がありますけれども、飲食業に対しては一般の税率、食品に対しては軽減税率とした場合、マクドナルドを買ってその場で食べると高い税率だけれども、持って帰って食品にすると安い税率になる、どうなんだという議論が時々言われますが、厳密さを好む日本の国民性を考えたら、私も、消費税の逆進性緩和には給付つき税額控除が大いに活用できるのではないかなというふうに思っております。

 それ以外にも、もちろん、所得税の体系自体からいって、格差是正、あるいは課税最低限以下の世帯への支援等、いろいろな目的で使えるかと思いますが、我が国に導入するに当たってどういう形でやったらスムーズにいくというふうに先生はお思いでいらっしゃいますでしょうか。御意見があったらお伺いいたしたいと思います。

森信参考人 お答えしたいと思います。

 これは全く私の私見でございますが、今おっしゃいましたように、消費税の逆進性対策、これは軽減税率が普通でございますが、しかし、ヨーロッパでは、この軽減税率が大きな問題になっております。今委員がおっしゃいましたようなテークアウトとレストランサービスの問題だけでなくて、例えばイギリスでは子供服専門のデパートがありますが、なぜそんなものがあるかというと、子供服は軽減税率、ゼロ税率になっておりまして、大体、少し体の小さい方はそこで大人も買うということで、よく、イギリスの統計なんかに、子供服の売り上げが子供の数に比べて三倍ぐらい多いじゃないかということが指摘されております。

 それから、もう一つ大きな問題で、逆進性対策として例えば食料品を軽減税率にしても、高所得者層の方がどうしても食料支出が多いですから、そういう意味で、金額的に見れば、軽減税率で逆進性対策をやった結果、高所得者層の方がより有利になっているというようなことも指摘されております。

 そこで、カナダとか、最近ではシンガポールも給付つき税額控除で対策をしておりまして、要するに、中低所得者層の基礎的な食料支出掛け消費税率、その部分を大体所得税の中で還付している、給付しているということでございます。でも、金額を見ますと十万円程度、つまり、カナダでは大体百万円ぐらい掛け数%ということで、七、八万円の還付をしているということでございます。

 それで、私も、消費税が上がる際には最大の問題は逆進性でございますので、今言った問題をなくすためには、この給付つき税額控除が一番効果的だというふうに思っております。事業者の手間もないし、ピンポイントで低所得者層の保護に、逆進性対策になるということでございます。

 しかし、給付つき税額控除には、そのほかにも勤労税額控除と、それから社会保険料の負担を軽減させるという大きな効果がございます。これはアメリカで、特に今、オバマ政権になりまして、これはメーク・ワーク・ペイ減税というふうに呼んでおりますが、社会保険税を、低所得者層に負担を軽減するというための手段として給付つき税額控除を導入しております。これを我が国に翻って考えますと、特に低所得者層は未納が非常に多いわけでございますから、その部分は結果的には最後に、例えば、将来的には生活保護になるような形で国民負担になるのであれば、働いて少し所得があるときに、それにプラスアルファ、プレミアムをつけて返していって、その返すときに、それはその人の社会保険料負担と相殺をするという形で行えば、未納も防げるというふうな大きな効果があると思っております。

 私は、今おっしゃいましたように、消費税の逆進性対策として、給付つき税額控除が非常にフィージブルな形で設定されると思いますが、その際にあわせて、例えば、勤労税額控除として社会保険料負担と相殺していくような形でやれば、実際に給付をしなくてもいいかもしれない。これは実はオランダでそういうふうにやっておりまして、社会保険料と相殺をするという形をやっております。

 そういうふうに、いろいろな政策に使えると思いますので、まさに今後の議論だというふうに思っております。

 以上です。

石井(啓)委員 ありがとうございました。以上でございます。

玄葉委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。三人の専門的な御意見をお伺いしまして、本当に参考になります。ありがとうございます。

 まず私は、少し広く、税財政というものの位置づけですけれども、それ自体は、例えば税制、あるいは財政、それは言うまでもないことですけれども、自己完結してそれで終わるというものではなく、背景にある全体の経済、それから、経済の中での国民生活あるいは企業の状況、そういうものをどう認識するか。そしてその上で、経済政策として基本方向をどう打ち出すか。その中で税と財政というものがどのような役割を果たすか、どういう機能が必要か。全体として言いますと、こういうふうな位置づけだろうと思うんですね。

 したがって、まず、経済の構造全体をどう見るかというのが、基礎的なものとして大変大事なことだと思います。その点で新しい政権は、経済格差、所得格差というものに着目をして、その格差を是正したい、そういう意向を持っているというのは、私は今野党ですが、伝わってきている、そういうふうに思っております。

 そこで、税の役割というのは、そういう経済格差を縮小していく上で、手段として大変大きな役割を果たすことになるんだろうと思うんです。所得の再分配機能ということがこの間弱まってきたというのが政府税調の答申でもありますが、それを強めていく、再分配機能の強化というものが基本方向として政権の方から打ち出されているように私は思います。

 そこで、私は、その基本方向は賛成なんです。その方向に向けて、税制あるいは財政、これが一体どのような具体的な政策として必要なのか。専門の先生三人の方々の少し具体的な提言も含めた御意見をそれぞれお伺いできればと思っております。

森信参考人 お答えしたいと思います。

 私の個人的な意見でございますが、先ほど冒頭意見を申しましたように、我々は今、極めて難しいグローバルな経済の中にいるということでございまして、どちらかといえば、あちら立てればこちら立たずというふうな状況にあるということでございます。

 どういうことかと申しますと、税制の最大の原則であります垂直的公平性、こういった原則を重視して、こちらに重点を置いた所得再分配政策をとりますと、今度は経済効率という別の租税原則が損なわれる。これが特にグローバルな経済の中で、人、物、金、日本の富裕層でも個人の所得を海外に移すということが実際行われているというふうに私は認識しておりますので、なかなかそういった垂直的公平性一本で税制を構築するということができない状況になってきているというふうに思います。

 そういう意味において、私はうまく公平性と効率性のバランスをとった税制が必要じゃないかということで先ほど申し上げた次第でございますが、具体的にどういうことかというふうに申しますと、今起きている格差、貧困、この問題のやはり主眼は、特に若者の低所得者層の所得が一番影響を受けているわけでございまして、そこに手厚く給付つき税額控除等で経済援助をしていく、あるいは児童手当、これは子ども手当というふうな形で設計されておりますが、児童税額控除とかそういった形で、子育て家庭に経済支援をしていくという形で手当てをしていく。

 他方で、では、高所得者層の方はどうするんだということでございますが、最高税率を引き上げるというふうな考え方もあると思いますが、私は、グローバルな経済の流れの中において、これ以上最高税率を引き上げますと、結果的には、税源といいますか資金が海外に今以上に逃げていって、日本の国の中に税源が残らないというふうな状況になる可能性があるというふうなことを考えております。

 そういう意味で、所得再分配機能をより強化することは大賛成でございますが、その手段としては、あくまで、原因をつくっております低所得者層の方に給付つき税額控除という形でお金を支援していくということが必要ではないかというふうに思っております。

 資産課税につきましても、基本的には私は、相続税につきましては、やはり課税ベースを広くしていく。税率は変えないで、課税ベース、今は被相続人百人に対して四人程度が相続税を負担しているというふうな状況でございますが、これをもう少し、百人の方に対して一割ぐらいの方が相続税を負担するような、そういった形で税制を構築していくべきじゃないかというふうに考えております。

 とりあえず、以上でございます。

水野参考人 御質問いただきましてありがとうございます。また、私の個人的な意見を述べさせていただきます。

 確かに現在、非常に、税収の落ち込みとともに格差が広まっている。通常ですと、所得税が機能すればそれなりの所得再分配というのは果たせたわけですけれども、今の状況でなかなか難しいと思っております。もう一つ、相続税というものが、これも富の再分配というものを期待されておりますけれども、再分配機能を考える場合には、所得税と同時に相続税の方も考えるのがよろしいかと思っております。

 今後の、将来の話ですけれども、いわば消費税のウエートが高くなってまいりますと、特に高額所得者の場合に、消費されずに残された資産ということで、相続税の重要性はまた大きくなっていくものと思っております。

 基本的には所得税の問題をまず議論すべきであると思いますが、これは困りますのは、所得税の税率、これを上に上げればそのまま再分配につながるかというと、そうではなくて、実際問題として、いわば給与所得者で働いている、なおかつ高額の所得を取っている方、最近は少しずつ出てきているようですが、所得税の税率がそのまま適用される高額所得者というのは決して多くなくて、いわば課税逃れと言っておりますけれども、最近の裁判所の判決など、国際的なレベルで大きな課税逃れが行われているということがございます。

 平成二十二年度の改正法案の中に、タックスヘイブンの税制に対する改正も入っておりますけれども、そのようなタックスヘイブンと言われる軽課税国を利用したような投資というものは盛んに行われているようでありますし、具体的には、外国の不動産に投資をして、減価償却などを計算した結果、意図的に損失を出しまして、それで国内の所得と合算してマイナスにしてしまうとか、そういうような試みが、経済がよくないときであるにもかかわらず、どうもやはり高額所得者の方の方では、恐らくそういうものを唆すような会社があるんだと思います。

 そういうような問題が出てまいりますので、やはり税率とともに、課税の対象となるべき所得が意図的に縮小されないような検討というもの、これもあわせて行うことが大事ではないかと思っております。

 ただ、課税逃れだけで格差が広がっているわけではありませんので、当然のことながら、経済全体の中で、さて税率の問題、これを引き上げることが経済的にどういう影響をもたらすだろうか、非常に難しい問題ですけれども、そのあたりも含めて、全体的に議論していかなければならないと思っております。

 失礼いたしました。

土居参考人 御質問ありがとうございます。

 私は、財政学を研究している立場から申しますと、財政政策、税制も含めたところでの機能というのは、資源配分機能、所得再分配機能、経済安定化機能という三つの機能があるということを学生にも教えておるわけでありますけれども、多分に、これまでの、特に九〇年代以降の日本の財政では、経済安定化機能、つまり景気対策がかなり大きなウエートを占め過ぎた。いつも裁量的な財政政策がその都度その都度行われてきたというところは、やはり今後は少し抑制していかなければならないところなのかなというふうに思っております。

 そういたしますと、前二者の資源配分機能と所得再分配機能ということが、もっと大きなウエートとして、財政政策ないしは税制の設計というところでは重視していかなければならないところだと思います。特に、格差が広がっているということがありますから、目下のところは、この所得再分配機能について、より有効に、財政政策ないしは税制でこれを果たしていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、もう一つ、日ごろは余り強調されていないようではありますけれども、私が最近こういう点は重要ではないかと思っている点について述べさせていただきますと、いわゆるビルトインスタビライザーというものをもう少し、より強く働かせるようなことが求められるのではないか。ビルトインスタビライザーというのは、御承知のように、景気がよくなると、累進課税がなされたり社会保険料が徴収されるようになるなどというようなことで、経済の過熱を抑制する反面、不景気になると失業給付が出たり、累進課税で、低所得になるとその分税負担が軽くなるということで、景気の底割れを防ぐということが、制度の内在的な要因によって果たされるということだというわけです。

 もちろん、法人税とか、ある意味で、景気がよくなったらたくさん税を取るけれども、景気が悪くなるとたちまち赤字法人が出てきて税を取らないというような意味のスタビライザーはあるのかもしれませんが、所得税制ないしは社会保障制度で、私は、もう少しよりよくビルトインスタビライザーが機能するような仕組みを埋め込んでいく必要があるのではないか。それがないがゆえに、景気が悪くなると裁量的な財政政策を講じて、景気対策だ景気対策だと、必ずしも本当に効果があるかどうかわからない裁量政策もなされるというようなことが、残念ながら九〇年代から繰り返されてきたのかなと思います。

 もしビルトインスタビライザーがちゃんと機能する財政制度であれば、それほど裁量的に財政政策を講じなくても、失業手当なり累進所得税なり、いろいろな仕組みを通じて経済安定化機能も果たせる。さらには、所得格差是正という観点からも、累進課税だとか失業給付だとかというものは、格差是正機能も実は両方果たし得るという意味で、そういう意味では、我が国の税制、財政は、もう少しビルトインスタビライザーの機能を埋め込むような仕組みに転換していくことが必要なのではないかというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 大変参考になる御意見、ありがとうございました。

 社会保障の役割というのも、今のお話との関連でいいますと、所得再分配機能の中で非常に大きな柱になるだろうと思うんです。ですから、税制だけではなく社会保障の分野をどうするのかというのも、やはり重要な柱に位置づける必要があるというふうに思いました。

 それから、もう一つは、例えば社会の格差ということを考えると、非正規雇用がこれだけ広がっている状況をどうするのか。これはやはり労働法制の問題にかかわるものでありまして、必ずしも税財政だけにおさまらない、そういう分野も念頭に置いた対応というものが必要だろうというふうに感じております。

 さて、そこで、先ほど少しお話ありましたが、森信先生の方から、公平と効率のバランスというお話がありました。

 垂直的な所得の再分配、それだけを追い求めると、今度は、例えば国際的な課税の面でいいますと、企業に負担がかかり過ぎるのではないか、当然そういう論理になると思うんですね。そこで問題なのは、その論理が正しいかどうかというのは吟味が必要だと思いますが、それが前提としますと、国際的な課税のあり方というのがもう一つの分野として求められるんだろうと思います。

 先ほどの水野先生のタックスヘイブンなどを初めとする税逃れの問題、これはこれとして、しっかりと税を把握する、課税するという動きはあると思います。ただ、それだけではなく、OECDなどでは、国際的な税引き下げ競争というものがよろしくないのだと。つまり、各国の財政、税制に空洞化をもたらすものである、したがって、それを抑制するために、どのようにして国際的に、利益の上がっているところに課税を強めていくかということが議論になっているんだろうと思います。

 リーマン・ショック以降の議論の中では、金融資本を中心として非常に莫大な金転がしが行われた、それが余りにも膨らみ過ぎてバブルがはじけて全世界が大変なショックを受けた、したがって、その要因となるようなところに対しては、あらかじめ低い水準の課税なり、あるいは何らかの行き過ぎないようなコントロールが必要であろう、これは国際的な議論に今なっていると思います。

 そういう点で、森信先生は、この国際的な課税の今の議論というものの関連でどのような御意見をお持ちか、お聞きをしたいと思っております。

森信参考人 お答えします。

 私は、先ほどの冒頭のプレゼンテーションでも申し上げたんですが、タックスヘイブンに対して資金が集まる、あるいは、タックスヘイブンまでいかなくても、もう少し低税率国の方にお金、あるいは人間そのものが逃げていって、日本に一年の半分以下の居住という形で暮らすというふうなことも実際起きてきているわけでございます。

 そういったときに、今委員が御指摘のように、タックスヘイブン、世界的な税の引き下げ競争に対して、OECDがイニシアチブをとってそういったことを抑制するようなプロジェクトをつくるということは非常に必要だと思いますし、現実に、これは法人税の世界が中心でしたが、ハームフル・タックス・コンペティション、有害な税の競争に対して、先進国共通でそういったタックスヘイブンを名指ししてやったこともあります。それから、最近では、まさに今おっしゃいましたように、サミットでもG20でもそういうことが行われておりまして、そのときのかぎになるのは、私は情報交換だと思います。

 やはり、課税当局者がそういった今まで銀行機密で守られていた国に対して情報交換協定を結ぶことによりまして、そこの情報が日本の課税当局に流れるようになってくる、そういうことが非常に公平な税制につながってくると思います。現に、リーマン・ショック以降のいろいろな先進国の努力にもよりまして、日本も最近、たしかスイスと情報交換協定を結んだり、ケイマンともそういう話を、締結の方向で進んでいると思いますが、タックスヘイブン国も、なかなかそういった自分たちだけがいい形でというふうにはならないような、先進国のそういう動きが起きてきているというふうに思っておりますので、この動きをもっと進めていくことが必要じゃないかというふうに思っております。

 以上です。

佐々木(憲)委員 最後の質問をしたいと思います。

 証券優遇税制の是正の問題は、この委員会でも議論をしてまいりました。譲渡益課税あるいは配当課税が二〇%のところを半分の一〇%、こういう形になっている。私は、当然これはもとに戻すべきだというふうに主張してまいりましたし、新しい政権になって、当面は前の政権から維持されているものはありますが、できるだけ早くこれを是正したい、そういう意向が示されております。

 やはり、そういうことを一つ一つきちっとやっていく、それから、根本的には、やはり総合課税に累進課税ということが大事だと私は思っておりますが、いずれにしましても、現在の減税というのはちょっと行き過ぎた面があるのではないかと思っておりまして、この是正の方向について、今度は水野先生と土居先生のお二人に御意見をお伺いしたいと思います。

水野参考人 どうも御質問ありがとうございます。

 私も基本的に先生の御意見と同じでございまして、そもそもかつては、株、有価証券の取引についてはなかなか所得税がかけられないという捕捉の問題、それから証券市場を育成しなければいけないということで非課税になっていたわけです。

 その分、有価証券取引税という形で対応していたわけですが、これも、税制の抜本的な改革、消費税の議論の中で、基本的に源泉分離課税あるいは申告分離課税という二つの方式、それによって課税されることになったわけですが、源泉分離課税というのも、これもまだ不公平であるということで、大分前になると思いましたが、もう十年ぐらい前になりましたでしょうか、これを申告分離に一本化するという話にまとまりまして、法律もそのようになっていたわけですが、今度は、株を取得したときの原価がなかなかわからないとか、いろいろな不平が出てまいりまして、結局、申告分離の形にはなっているけれども、特定口座を開いておけば、そこで証券業者の方で源泉分を徴収しますと。

 この状態と、税率が一〇%に引き下げられているという状態が続いておりますので、総合課税まではまだほど遠いということですが、せめて利子並み課税と言っておりますけれども、大体金融商品は二〇%で課税するという方向へ収れんしてきております。申告分離に一本化されてから大分になりますので、そろそろ、私も先生が言われるように、せめて税率を二〇%に戻すべき、これをしたから急にまた株が暴落するというものではないのではないかと思っております。

 個人的意見ですが、失礼いたしました。

土居参考人 御質問ありがとうございます。

 私も、基本的には、金融所得一体課税という意味では、税率をそろえていくという意味で、軽減税率という形で軽い税率になっているものを改めていくということは重要なことだと思います。

 税率を上げると、とかく、課税後の収益が下がるということで株式等への投資が鈍るのではないかというような懸念が示されるんですが、私は、必ずしもそればかりではないと。むしろ、税率が上がることを通じて、損益通算制度を使えばリスクが軽減するというメリットがあって、そのリスクが軽減するということを通じて、そういうローリスクな資産、税引き後ですけれども、税引き後、ローリスクになった金融資産に対して投資が行われる可能性というのも決して無視できないというふうに思います。もちろん、言うまでもなく、損益通算制度というものは重要ですので、これがうまく機能するように制度設計をしていただきたいというふうに思っておりますけれども、基本的には私はそういう考えを持っております。

佐々木(憲)委員 きょうは、大変貴重な御意見を三人の先生方から伺いました。以上で終わります。ありがとうございました。

玄葉委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げたいと思います。

 参考人各位におかれましては、大変貴重な御意見をこの場におきましてお述べいただきました。まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして御礼を申し上げたいと思います。ありがとうございます。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十八分散会


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