衆議院

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第8号 平成22年3月16日(火曜日)

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平成二十二年三月十六日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 玄葉光一郎君

   理事 岸本 周平君 理事 篠原  孝君

   理事 鈴木 克昌君 理事 高山 智司君

   理事 中塚 一宏君 理事 後藤田正純君

   理事 竹本 直一君 理事 石井 啓一君

      網屋 信介君    荒井  聰君

      池田 元久君    今井 雅人君

      小野塚勝俊君    大串 博志君

      岡田 康裕君    小林 興起君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      斉藤  進君    下条 みつ君

      菅川  洋君    富岡 芳忠君

      豊田潤多郎君    野田 佳彦君

      橋本  勉君    福嶋健一郎君

      古本伸一郎君    森本 和義君

      山尾志桜里君    山崎 摩耶君

      和田 隆志君    渡辺 義彦君

      伊東 良孝君    小渕 優子君

      田中 和徳君    竹下  亘君

      橘 慶一郎君    野田  毅君

      村田 吉隆君    茂木 敏充君

      山本 幸三君    山本 有二君

      竹内  譲君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         菅  直人君

   内閣府副大臣       古川 元久君

   内閣府副大臣       大塚 耕平君

   財務副大臣        野田 佳彦君

   財務副大臣        峰崎 直樹君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   農林水産大臣政務官    佐々木隆博君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    大藤 俊行君

   財務金融委員会専門員   首藤 忠則君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月十六日

 辞任         補欠選任

  荒井  聰君     山崎 摩耶君

  小山 展弘君     斉藤  進君

  山尾志桜里君     森本 和義君

  竹下  亘君     小渕 優子君

  徳田  毅君     伊東 良孝君

  村田 吉隆君     橘 慶一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  斉藤  進君     小山 展弘君

  森本 和義君     山尾志桜里君

  山崎 摩耶君     荒井  聰君

  伊東 良孝君     徳田  毅君

  小渕 優子君     竹下  亘君

  橘 慶一郎君     村田 吉隆君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)

 株式会社日本政策金融公庫法の一部を改正する法律案(内閣提出第二三号)


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     ――――◇―――――

玄葉委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として財務省関税局長大藤俊行君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。福嶋健一郎君。

福嶋(健)委員 民主党の福嶋健一郎でございます。

 本法案は、大きく二つに整理をされると思います。一つは、いわゆる暫定関税率の適用に関する期限の延長という時限マター、そしてもう一つは、罰則水準見直しあるいはAEO制度の整備といういわば税関マター、この二つになると思います。この二つに分けて質問をいたします。

 まず、菅大臣に質問をいたします。

 前段の時限対応マターでございますけれども、適用期限を一年延長する。この理由については、WTOのドーハ・ラウンドが交渉中ということでございまして、理由については理解できるものであり、また一年という延長の期限についてもおおむね妥当と思われるんですけれども、そもそもこのWTOのドーハ・ラウンド、現状の進捗状況そして政府の方針、また、解決というか交渉に向けての大臣の決意について一言御答弁をお願いいたします。

菅国務大臣 WTOのドーハ・ラウンドについては、昨年の九月のピッツバーグ・サミットなどにおいて示されました、二〇一〇年、つまりは本年中の妥結を追求するという政治的な意思を受けて、現在、関係各国間で鋭意議論を行っていると承知しております。我が国においても、交渉の早期妥結を目指して、全体としてバランスのとれた成果が得られるよう、政府一丸となって引き続き交渉に取り組んでいるわけであります。

 御承知のように、こういった多国間の交渉がなかなか進まない中で、二国間の交渉で物事を進めようとする流れも強まっておりまして、そういった点では、我が国にとっても、このドーハ・ラウンドの交渉についてもそうした多国間と二国間というものを両方見据えながら頑張らなければならない、このように思っております。

福嶋(健)委員 今の御答弁どおり、我が国一国では何もできないわけでございまして、ほかの国があってのことなんですけれども、とはいっても、やはりこういう交渉をずっとやっていくという中では、決着点に向けてこれからも精いっぱい取り組んでいただきたいというふうにお願いを申し上げます。

 続きまして、先ほど申し上げた中での税関マターについてですが、ここで一点確認をさせていただきます。

 そもそも、税関というものの役割というのは、簡単に言うといかがなものでしょうか。お願いをいたします。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 財務省・税関では、我が国の水際におきまして、まず、適正かつ公平な税の賦課徴収、また、不正薬物等の密輸摘発等を通じました国民の安全、安心の確保、さらには、物流の円滑化とセキュリティーの確保の両立を通じた貿易円滑化といった使命に鋭意取り組んでいるところでございます。

福嶋(健)委員 今のお話をお伺いしまして、特に九・一一テロ以降、さまざまな犯罪の多様化あるいは国際化というものが行われているわけでございます。そういう中で、税関のお仕事というのは非常に大変だというふうに思うわけでございます。

 ここで、もう一点、これも数字でございますので参考人にお伺いしたいと思いますが、十年前と現在との比較で結構なんですけれども、先ほどのお話でいうと、税収、収入という意味では税関収納額、あるいは仕事量という意味で、事務量でいうと輸出入の申告件数、そして犯罪という意味では、代表的なものは覚せい剤でございますけれども、覚せい剤の摘発件数。十年前と今とを比較してどのようなトレンドになっているのかというのを教えていただきたいと思います。

大藤政府参考人 御質問のありました数字につきまして御説明をさせていただきたいと思います。

 まず、平成二十年度の税関におきます関税及び内国消費税等の収納額は約五兆四千七百六十八億円であり、十年前の平成十年度の収納額約三兆六千五百四十二億円の約一・五倍となっているところでございます。

 また、平成二十一年の輸出入申告件数は約三千二十八万件でございまして、十年前の平成十一年の輸出入申告件数約二千百十万件の約一・四倍となっているところでございます。

 次に、税関におきます覚せい剤密輸入事犯の摘発件数でございますが、平成十一年は三十九件でありましたが、近年大幅に増加しているところでございまして、平成二十年は百十件、平成二十一年は百六十四件と、二年連続して過去最高の摘発件数を更新しているところでございます。

福嶋(健)委員 今答弁いただいたとおり、これだけいわゆる業務量というのはふえているわけでございますが、一方で、税関職員数についてはこの十年間どのように推移していたのか、御答弁をお願いいたします。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 税関の職員数は、平成十一年度が八千二百五十九人、平成二十一年度が八千七百十三人となっておりまして、約五%増加しているところでございます。

福嶋(健)委員 業務量が一・五倍、一・四倍というふうなふえ方をする中、職員の皆さんの数は五%増。もちろん、一概に、これをもってすべてを論じることはできませんけれども、大きな流れとして言えるのは、業務量がふえている割には職員数が追いついていないということがこれではっきり言えるのではないかというふうに思っております。

 かたがた、鳩山新政権になりまして、もうすぐ新成長戦略というのが具体化されていきますけれども、この大きな流れの中で、例えば、アジアとの貿易を中心にしてどんどん貿易を拡大していこう、あるいは海外からの観光客の皆さんを二〇二〇年までに一・五倍にしていこうとか、そういうふうに我が国としても海外に対して門戸を開くということになりますと、今でさえかなり税関の組織及び職員の皆さんに対する負荷は相応にかかっていると思うんですが、これからも、そういう流れの中ではさらに負荷がかかっていくというふうなことであるというふうに考えられます。

 実は、昨年三月十八日の当委員会におきまして関税定率法というのが審議されました。ここにおられる皆様方の中にもこの審議に御参加された方がたくさんいらっしゃると思いますが、その審議において附帯決議がされています。この中で、「国家公務員の定員削減計画の下においても、増員を含む定員の確保はもとより、その処遇改善並びに機構・職場環境の整備・充実、更には、より高度な専門性を有する人材の育成等に特段の努力を行うこと。」ということが附帯決議をされています。

 昨年の段階においても、税関職員の皆様方に対してはこのような附帯決議がされておるんですけれども、これから一年間たちましたが、この一年間の間、この附帯決議に基づきまして政府としてどのように取り組まれたのかについてお伺いをいたしたいと思います。

野田副大臣 福嶋委員にお答えをさせていただきたいと思います。

 委員のお尋ねは、国家公務員の処遇改善等に関する当委員会における昨年三月の附帯決議に基づく政府の一年間の取り組みいかんということだと思いますが、税関においては、適正公平な課税の確保に加え、不正薬物、銃砲等の社会悪物品やテロ関連物資の流入阻止、さらには北朝鮮に対する厳正な措置や、国際物流の円滑化といった要請にもこたえる必要がございます。

 このため、財務省においては、昨年三月の附帯決議の御趣旨を踏まえ、この一年、税関の定員、機構の確保や処遇改善などに向けて最大限努力してきたところであり、具体的には、羽田空港の再国際化に伴う体制の整備や北朝鮮対策等のため、二十二年度予算において、定員八十一人の純増や、統括官機構、これは現場の課長職だと思いますが、三十四の純増等が盛り込まれたところでございます。

 この予算の審議は、今参議院で御議論をいただいていますが、早期成立を目指して頑張っていきたいと思います。

福嶋(健)委員 昨年の当委員会における附帯決議を受けての、当時、与謝野大臣のお話の中にも、こういう御趣旨については十分配意してまいりたいというふうな御答弁をいただき、それから一年たっているわけでございます。

 こういった大方針についても、では一年たったからもうきょうで終わるよということではなくて、先ほど申し上げたいろいろな状況の中では、引き続きこれを進めていかなければいけないというふうに思うんですが、最後に菅大臣にお伺いをいたします。

 我が民主党のマニフェストには、国家公務員の総人件費を二割削減するという大方針がございます。しかしながら、今までの議論を踏まえて、この税関については、まさに国民の生活を守る、命を守るという観点もございます。テロやあるいは麻薬から守るという観点もございます。一方で、七千五百億円を超えるいわゆる関税収入の予算も含まれております。こういった税収もきっちりと確保していかなければいけません。

 こういう観点を見ますと、引き続き、増員を含む定数確保及び業務処理体制の充実、これは組織あるいは設備、人員、いろいろなものを含めて総合的なものが必要だと思います。

 最後に、大臣の御所見をお伺いいたします。

菅国務大臣 おっしゃるとおり、税関については、今も御指摘いただきましたように、いろいろな意味で、より大きな重要な仕事を担っていただいている、こう認識しております。

 国民の安全、安心の確保は、言うまでもありませんが政府の大きな責務でありまして、税関においては、不正薬物、銃砲等の社会的に悪い影響をもたらす物品やテロ関連物資の流入阻止といった諸課題に取り組んでいただいているところであります。

 御指摘のように、国民の安全、安心の確保の重要性にかんがみ、税関においては、エックス線等を使った検査機器の整備、輸出入申告や税関業務に係るIT化の推進などによる業務の高度化、効率化に努めつつ、同時に、所要の定員の確保及び業務処理体制の充実について毎年努力をしてきているところであります。

 これは、鳩山政権の目指す命を守る政治の実現にも通じるものでありまして、今後とも、極めて厳しい行財政事情のもとではありますけれども、業務運営のより一層の効率化を図った上で、所要の定員の確保などについてはきちっと努めてまいりたい、このように考えております。

福嶋(健)委員 当委員会でのこれからの質疑を通じまして、こういう税関組織あるいは人員についてはモニタリングをしていきたいと思います。

 これで私の質問を終わります。ありがとうございました。

玄葉委員長 次に、竹下亘君。

竹下委員 おはようございます。自民党の竹下亘でございます。

 きょうは、関税法あるいは暫定措置法の一部を改正する法律案の審議でございますが、この法律というよりも、むしろ日本全体の貿易、あるいは日本全体の生きる道、その中の一つのツールとしての関税という位置づけがあろう、こう感じますので、まずその点から質問をさせていただきます。

 たしか、民主党が出されたマニフェスト、当初は、アメリカとのFTA、自由貿易協定の締結を促進するということが明記をされておりまして、その考え方と表裏一体をなすものとして、農産物に対する戸別所得補償というものが、表裏一体というか、一体的な考え方の中で出されておったなというふうに認識をしておりましたが、途中でFTAをめぐる考え方の表現があいまいになってまいりました。

 その結果として、米に対する戸別所得補償は実施するという予算の内容になっておりますが、これはまず考え方の問題でありまして、自由貿易、農産物は原則自由化するんだという方向の物の考え方と戸別補償というものが一体的なとらえ方であったのが変わったのかどうか、あるいは変わっていないのかどうか。まずその点からお話を伺いたいと思います。

菅国務大臣 今、竹下委員の方から、我が党の政策が当初農産物の原則自由化という考え方にあって、それを変えたのか変えないのかという趣旨の御質問ですが、我が党の基本的な考え方がもともと、農業の原則自由化を進めるという位置づけにはなってはおりません。

 FTAの表現について、若干変わる経緯には私も直接かかわっておりましたけれども、これは、日米のFTAを締結するという表現をしたときに、いろいろな皆さんから、何か無条件で相手の国の言うことを受け入れるというふうに誤解をされたのか、そういう主張をされまして、それでは日本の農業は壊滅的な打撃を受けるという御批判をいただきました。決してそういう趣旨でもともとの案もできていたわけではありませんけれども、そういう誤解を招くということでありましたので、FTAについて、交渉を促進する、そういう誤解を招かない形に変えたというか戻したといいましょうか、そういう経緯であった。私自身もかかわっておりましたが、そのように理解をいたしております。

 戸別所得補償制度とFTAについては、そのかかわり方について考え方はいろいろありますけれども、必ずしも、何かFTAのために戸別的所得補償制度を導入しようとか云々とかというような意味での一体的な発想ではありません。あくまで、戸別的所得補償については、ヨーロッパやアメリカにおいてもかなり広く行われておりまして、日本における農業、農村の、そうした若い人たちも含めて、安心して農業を継続できるという観点からこうした考え方が出てきたわけであります。

 FTAはFTAとして、自由貿易という原則は日本全体としての方向性であるということはもちろんでありますので、それはそれとして交渉を促進するという形で申し上げているわけで、関係が一切ないとまでは言いませんけれども、何か一体のものとしてこのためにこういう制度をつくったという御指摘であるとすれば、必ずしもそれは当たらない、このように考えております。

竹下委員 民主党のマニフェスト、あるいはそれに至る議論の受けとめ方、私の方が間違っていたのかなという感じでありますので、もう一度重ねて質問をさせていただきます。

 方向として自由貿易協定の促進、自由貿易という方向を目指すということをおっしゃる。そういう中で、アメリカのFTAに対する文言がどう変わったかという問題は別といたしまして、それと日本の農業政策というものの位置づけの関連がどうもすっきりしない。すっきりしないというか、私の理解は間違っていたのかなと。

 どこかの本で読んだり、あるいは国会の答弁を聞いたりいたしておりますと、農業の所得補償という問題は、コスト割れが当然起きる、そのコストを補償するんだという、文字どおり一体的なものとして、表裏、表側と裏側、あるいは、その中にもちろん、アメリカやヨーロッパが行っております、農業をさまざまな形で、WTOに触れない形、あるいは少しグレーゾーンもありますが、援助をしておる、そういうもののダブルで、考え方が合わさって所得補償というものが出てきているのかなと。

 先ほど菅大臣は、当初から、そういう側面はあるけれども完全一体のものではないというふうにお話しになっております。ただ、かつておたくの小沢一郎幹事長が「日本改造計画」という本を出された、あるいはその後の主張等々、民主党の農業政策の中心は、完全に自由にするんだという大前提のもとに、そこに向かって動いているというふうに私なんかは理解をしておったのでありますが、それとは違うものでありますか。

菅国務大臣 時間的な経緯ももう一度、場合によってはちゃんとチェックをしなきゃいけませんが、今、小沢幹事長の名前を出されたわけですけれども、民主党がこの戸別的所得補償を考え始めて議論をし始めたのは、必ずしも当時の自由党、小沢代表率いる自由党と合流、合併してからではなくて、それよりも少し前から、あるいは、合併した後であっても、その合流のときのいわば約束事は、それまでの民主党の政策はそのままで結構ですということで合流いたしましたので、必ずしもその段階で何か大きく、その前と後が変わったわけではありません。もちろん、その後の議論はあります、その後の議論はありますが、少なくとも、二〇〇三年に合流した時点で何か農業政策を変えたわけでは全くありません。

 そういう流れの中で私が理解しているのは、先ほど申し上げたように、もともとこの戸別的所得補償の議論は、私がちょうど農業再生本部の本部長をやっていたときに、私の言葉で言えば二つの目標、一つは、若い人も含めて、安心して二十年先、三十年先を見通して継続できる農業をどうするか。と同時に、食料自給率をもっと高くするためにどうするか。この二つの目標を実現するための農業政策としてどういうことがあり得るか。そういう議論をかなり詳しい篠原さんとかいろいろな方を中心にやっていただきまして、そういう中から、ヨーロッパやアメリカでも行われているこの戸別的所得補償というものが中心的になってきたわけです。

 もちろん、そのことがある意味でFTA等の国際的な問題とも関連するということは承知をしておりますけれども、少なくとも私がその流れの経緯を、ある意味で当事者的にもかかわった中でいえば、何かそういうFTAの方からこういう政策が出てきたということではなくて、関連はしているけれども、あくまで先ほど申し上げたような議論の中から、つまり日本の農業政策をどうするかという中から出てきた問題である、このように理解もしておりますし、それで先ほどのような答弁をさせていただきました。

竹下委員 今、世界の関税の議論といいますのは、一つは、WTOあるいはドーハ・ラウンドと言われるマルチの議論、世界じゅうが議論をする。しかし、なかなかこれは難しくなって、毎年大紛糾をして、まとめる予定がまとまらなかったというケースもたびたび、ここ数年は出てきておる状況にあります。一方で、自由貿易協定、FTA、あるいは経済協力協定、EPAといった、バイの、個別の国と国との交渉というものが、その間にかなり複雑に入り組んで動き始めてきておる。そしてもう一つは、日本とASEAN諸国、マルチでもないバイでもないという中間的な自由貿易協定あるいは経済協力協定といったような動きが各地で出始めておる。

 関税をめぐる、あるいは自由貿易を維持するための世界的な仕組みをつくる議論というのは、バイがありマルチがありその中間もあり、かなり複層的になってきておるというのが現状でありますし、例えば、きょう審議をいたしますこの関税の法律にいたしましても、日本だけですべてが決められるものではない。そういった国際協定の中、あるいはバイラテラルな交渉の中で物事が動いていくという側面があるわけでありまして、方向として自由貿易だというふうに菅大臣はおっしゃいましたが、これから日本として、マルチのというか世界じゅうが集まってやる議論、そしてバイの議論、どういう方向で、どんどんどんどん推進をしていかれるのか、しかし一方で、米に七八〇%の関税を張っておるという日本国が抱えるセンシティブ品目の最大の問題もあるわけでありまして、これからの世界の貿易のあり方、あるいはその中における関税のあり方、そして自由貿易というもののあり方について、どのような方向を考えていらっしゃるのか、お伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 これはよくよく御承知の上での御質問だと思いますが、まさに日本という国が全体としては貿易立国であるという位置づけの中で、自由貿易というものが、日本全体の経済のこれまでの世界第二位のGDPというところまでになった大きな一つの国際的なインフラであるということは、これはもちろん自民党政権の時代からそういう認識をお持ちであったと思いますし、私たちも基本的にはそういうふうに理解をしてきたつもりであります。

 同時に、農業というものが、単に競争力だけで判断するべきではなくて、やはり地域政策として、あるいは食料安全保障として、あるいは環境問題として考えなければならない、そういう側面も大きくあるわけでありまして、そこの、非常に、ある種の緊張関係は、この間ずっといろいろな国際交渉の中でも続いてきたわけであります。

 たしか自社さ政権のときでしたか、あのウルグアイ・ラウンドの合意も、私は端っこの方でしたが、見ておりまして、大変な、何といいましょうか、難しい合意であったというふうに記憶をいたしております。

 そういった意味では、基本的な構造はそういう構造であることはこの間変わっていないわけでありまして、確かに簡単ではありませんけれども、自由貿易の推進ということと、国内の農業の、ある形でのちゃんとした農業が継続、維持できるという、この二つの要素を何とか両立させる道をとっていかなければならないと思っております。

 もちろん、最近の傾向は、今まさに言われたように、マルチの交渉が余り進まない中で、韓国なども積極的にバイの交渉でいろいろな国とのFTAなどの締結が進んでいて、日本が、そういう意味では、マルチが進まない中でバイの交渉の方も余り進んでいないということで、立ちおくれというのか、ややその面でのおくれを指摘されることも多いわけでありますし、そういう方面でのある種の危機感というか、そういうものを私たちも持っております。

 そういった意味で、余りざっくばらんな言い方をするのがいいかどうかわかりませんが、やはりそういう緊張感のある中で、先ほど申し上げたように、国内の農業も守るべきものはしっかり守りながら、一方で、そうした自由貿易の促進という面では、マルチだけでなくてバイについても、あるいは先ほど言われたその中間的なASEANとかAPECとかそういう地域枠組みの中でも、そこは交渉を促進するという表現をしたのは、そこは消極的ではなくて積極的に取り組んでいこう、難しい交渉かもしれないけれども、そこはそういう原則に立って積極的に取り組んでいこう、そういう姿勢を示している、そういうつもりであります。

竹下委員 きょうは自由貿易の議論が中心ではないので、この議論は一たんこれぐらいでとめさせていただきます。

 続いて、我が国の貿易量、あるいは中枢港、港としての機能、関税もその中の一つの大きな貿易を支える要素でありますが、我が国の経済ということを考えた場合、全部の総合力でいろいろなことを判断していかなければならない。

 一つは、例えば、かつてはアジアのハブ港湾であったはずの日本でありますが、今、二〇〇八年の統計によりますと、東京の二十四位が最高で、上位二十位以内に荷物の取扱量で入っていないという残念な状況に、残念ながらなっております。かつては、神戸が三位、横浜十二位、東京十八位と、堂々とアジアのハブという位置づけにあったわけであります。

 こういう問題は、港湾施設の設備のハード面の充実だけではなくて、港湾荷役等々、民間のサービスや輸出入の申告、今度の関税それから手続の簡素化の中に一部含まれる部分もあります。

 さらには、我々自民党の時代に電子政府ということを掲げて、NACCSという、港でのあるいは空港での貨物の出入りを一元的に運営するIT化ということに取り組んで、今その途上にあります。まだすべてができておるわけではありませんが、各省庁がばらばらに持っておったコンピューターシステムをNACCSという形で一元化していこうといったようなソフト面での利便性の向上、円滑化というのが非常に重要になるわけであります。

 そういう中で、財務省・税関というのは、こうした我が国の国際競争力の強化にどのように貢献をしてきたのか、また、今後どのような貢献をしていこうと考えておるのか、お伺いをしたいと思います。

大藤政府参考人 財務省といたしましては、国際競争力に資するという観点も含めまして、適正かつ迅速な通関を確保しつつ、税関手続の利便性向上等を図る観点から、先生御指摘のありました税関手続の電子化や迅速な貨物取引を可能とする予備審査制度の導入、あるいは夜間、休日の通関体制の整備などに取り組んできたところでございます。

 また、貨物のセキュリティー管理と法令遵守の体制が整備されました事業所に対してあらかじめ承認を行い、当該事業者が迅速化、簡素化された税関手続を利用することができるAEO制度を導入するとともに、当該制度に関しまして、諸外国との相互承認に取り組んでいるところでございます。

 今後とも、適正かつ迅速な通関を確保しつつ、税関手続の利便性向上等に鋭意努めてまいる所存でございます。

竹下委員 もう一つの問題が、貿易関係者あるいは国内が、安心をどうやって確保するかということでございます。

 先ほどの方の質問の中にも、麻薬を初め不正物質の量がふえておる、これをどうするんだという話もございました。それだけではなくて、国際経済がグローバル化する中で、例えば日本ですべてのものをつくって輸出する、そこに関税がかかわり税関がかかわるという状況から、アジアあるいは、特に世界じゅうでいろいろなものをつくって、それを世界じゅうで動かす日本企業もたくさん出始めておるという状況になってきておるわけでありますので、そういうビジネスモデルの中で、日本の税関手続だけがいわば円滑化されても、拠点を置くアジア各国での円滑な関税手続の確保というものがなされなければ、我が国全体の企業活動というのは促進をしていかない。その手続の効率化、円滑化についてどのような取り組みをこれまで行ってきたのか。

 あるいは、日本の税関あるいはそうした港のさまざまな電子化の仕組み、あるいは、先ほど菅大臣もお答えになっておりましたが、レントゲンを港に入れてコンテナごと調べるといったようなハイテク、実はハイテクだけじゃなくてローテク、麻薬の摘発にはやはり犬が一番有効なんだそうです。ハイテクからローテクまで含めたそういった国際貢献、あるいは国際的なつながりをどうされておるのか、あるいは今後どうされようとしておるのか、お話を伺いたいと思います。

大藤政府参考人 先生御指摘のように、国際貿易、物流の円滑化を確保していくためには、我が国の税関の水準を向上させるだけではなくて、アジア諸国を初めとする途上国税関における水準も向上させていくことが非常に重要であると考えております。

 そういった観点から、アジア諸国を初めとする途上国の税関に対しまして、その職員を我が国に受け入れて研修を行うとともに、我が国の税関専門家をその国に派遣するなどの支援を実施しているところでございます。こうした支援を通じまして、途上国におきます通関手続の簡素化、透明化や物流の迅速化を図り、我が国企業のビジネス、貿易環境の改善に資するよう努力しているところでございます。

 また、本年、我が国がAPECの議長国を務めることとなっておりますが、税関手続分野におきましても、十一月の首脳会議に向けて議論をリードしていきたいと考えております。

 財務省として、今後も、アジア諸国を初めとする途上国税関を支援し、世界全体の国際的な物流の円滑化を確保する観点から、税関手続の効率化、円滑化に貢献するよう努めてまいりたいと考えております。

竹下委員 終わります。

玄葉委員長 この際、休憩いたします。

    午前九時四十分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時三十分開議

玄葉委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。田中和徳君。

田中(和)委員 自由民主党の田中和徳でございます。

 きょうが昨年九月十六日の鳩山政権発足から半年の節目ということで、マスコミが大きく報道しております。法案の質問の前に、菅財務大臣は副総理でもございますので、その立場も兼ねて、基本的なことについて数点お伺いをしてまいりたいと思います。

 まず、政権発足半年の感想をお伺いいたします。

菅国務大臣 昨年の九月十六日に鳩山内閣が誕生しまして、特に私自身が強く考えたのは、年内に予算編成をしなければならない、こう考えました。そして、十二月の二十五日に予算編成ができて、次には、二次補正とこの本予算を年度内に的確に成立させてもらいたい、こういうふうに考え、今こうして審議を予算委員会ではしていただいておりますが、年度内の成立がほぼ確実になっております。さらには、今後のことに向けて、成長戦略、税制、あるいは社会保障番号、さらには年金の抜本改正など、そういう議論のための場を内閣関連でつくりました。

 そういう意味では、半年を経た今日、経済財政について言えば、やるべきことは時間的にもそう大きくおくれることなくやれてきて、いよいよこれからだ、このように思っております。

 ただ、政権全体としては、率直に申し上げて、政治と金の問題、さらには普天間をめぐる問題などでなかなか難しい問題も抱えておりますし、国民の皆さんの支持率がかなり低下していることも大変残念なことではあります。しかし、やるべきことをしっかりやっていけば、国民の皆さんにも理解が得られて支持率も回復していける、このように確信をいたしております。

田中(和)委員 今、菅大臣からも率直にお話がありましたけれども、七七%という数字が出ているマスコミ調査もありましたけれども、半年たって、朝日新聞は比較的民主党寄りだと言われておりますが、三二%。他のマスコミでは、私も今のぞいてきましたけれども、二〇%台のような数字も出始めておりまして、これは本当に大変なことだなと。私の方も、自民党の立場ではありますけれども、やはり政治不信というようなことも考えれば、これはもう与党の政権の話だけではないという認識に立っておるわけでございます。

 確かに、政治と金の問題、これは非常に大きい問題であったと思いますし、このことについてもちょっと確認をしておきたいと思うのでございますけれども、私はやはり、野党時代に言っておられたことと与党になってからは、全く政党の姿形が変わってしまった。

 はっきり言いますと、私も委員長席にも座っておりましたし、財務副大臣でしたからそちらにも座っておりましたけれども、相当厳しいお尋ねや議会運営があったわけでございます。その結果が、国民の世論を受けて政権を奪取したという大変大きな成果を上げられました。このことについてはだれもがやはり、意見は違うにしても、考えは違うにしても、評価をしているんだろうと思うんですね。

 その皆さんの姿が本当に変わってしまったんですね。君子豹変をするとかせずとかありますけれども、実はこの豹変ぶりが、やはりあれよあれよという間に今日の国民の世論になっていったのではないかな、このように思っております。

 もう一点は、これは非常に菅さんに責任があると思うんですが、お金を使うということについては非常に積極的なマニフェストを掲げられて、相当無理をして実行しておられますけれども、その財源たるものが全く明確にされないままに日にちがどんどん過ぎていく。そして、経済の成長戦略というものも先送りになって、はっきり言って、国民から見れば、どうなるんだろうかな、こう心配をしておるわけでございますね。

 こういう状況の中で、やはり副総理として財務大臣として、菅さんがどのようなお考えでおられるのか、自分自身が重大な政権の責任者としてどういうリーダーシップを発揮しようとしているのか、ぜひお伺いをしたいと思います。

菅国務大臣 せっかくの御質問ですから、多少私の見方を申し上げますと、私は、民主党が必ずしも、党全体として、内閣全体として豹変したというふうには実は感じておりません。

 実は、昨年の今ごろもなかなか大変でした。当時は、小沢代表のもとで秘書の逮捕ということもありまして、総理自身、私たちもかなり、政権をかけた総選挙が目の前の段階で、果たしてこういうことがあり得るのかといったことも含めていろいろと悩み、また候補者であった新人の方も大変だったと思います。それを何とか越えて、新しい鳩山代表のもと、また当時は小沢代表代行のもとでまとまって選挙に臨んで、そして国民の皆さんの支持を得て政権交代を果たすことができました。

 確かにいろいろな課題が今噴出しておりますけれども、ある意味では、私も多少この社会に長くなっておりますから、そうした過去のいろいろな経緯を見ておりますと、豹変したというよりも、本来ならもっと早い段階でクリアしておくべき問題が、あえてきょうはだれの責任とかどうということは申しません、去年のあの時期の捜査についてもいろいろ疑問などもありましたけれども、いろいろな問題を含めて、何か越え切れないで残ってしまった問題が、決して私たちに責任がないという意味で言っているわけではなくて、政治と金の問題であった。これは先生も御存じのように、長い長いいろいろな経緯がある中で残ってしまった問題だ。

 あえて言えば、この場には新しい議員の皆さんも多いわけですから、そういうものを越えて本来の形での政策的な議論が中心となるようになってほしいし、もちろん、それには私自身も一つの大きな責任があるとは思っております。

 それから、もう一点言われました、政策的にお金を使うことはいろいろやられたけれども、財源がはっきりしない、成長戦略が先送りだという御指摘です。

 ここは、昨年のまさに九月の十六日に政権が誕生しまして、マニフェストを最大限生かした予算をつくるということで、と同時に、リーマン・ショックの大きな経済の後退の中である程度大きな規模の予算も必要だ、これは、前の麻生政権と規模においてはそう下げないでいくことが必要だという中でつくった予算でありまして、私は、お金をどんどんばらまいたと言われますけれども、規模においてある程度の規模のものをつくるということはこの時期において必要であった。前の政権もそうであったし。来年、再来年どうするかということは問題ではありますけれども、ここは財政出動が必要であったということで、まず、規模についてはそういうふうに御理解をいただきたいと思っております。

 成長戦略、これも、この場でも申し上げましたが、過去においてもいろいろな成長戦略が出されておりますけれども、率直に申し上げて、達成できたと言えるものは、私の目から見るとこの十年間ほとんどありません。なぜそれができなかったかということの検証を踏まえて、昨年の十二月の三十日に成長戦略の基本方針を出し、今具体的に肉づけを始めているところであります。

 そういった意味では、先送りをしているわけでは全くなくて、まさに半年の間に一次補正、本予算、そして幾つかのいろいろな手だてを打って、成長戦略の基本方針も出した中でいよいよこれから、中期財政フレームを含めて、六月に向けてのそうしたものに間に合うように肉づけを行っている。十分だとは申し上げませんが、その点では、私の頭の中でいうカレンダーでいえば、決して先送りでも、大きくおくれたとも思ってはおりません。

田中(和)委員 今菅大臣の答弁を伺いまして、いろいろな理屈があると思いますけれども、私とは意見が大分違うところもありますが、それなりに今承っておりました。

 ただ、私たちの国がこのままでは滝つぼに財政面では落ちていく可能性が払拭できない、この現実にあるということは、きょう、与野党を問わず、みんな共通の認識ではなかろうかと思っております。

 そういう中で、小沢幹事長という、民主党の中で大変大きな力を持っておられる方があって、万が一、普天間問題で鳩山総理がおかわりになるというようなことになれば、多分、菅副総理が次期総理に一番近いんではないか、このように言われておるわけでございまして、私もそうかなと推測をしておるわけでございます。

 ただ、今のような状況の中で、今も政治と金のお話もありましたしいろいろなお話がありましたけれども、菅さんは、どのようにすれば政治の信頼を得られるのか、皆さんのまさしく奪取されたこの政権がより国民の信頼を得る、まさしくすばらしい政権としてお褒めがいただけるようになるのか、ひとつぜひ具体的な話を、副総理ですからね、これは少し、やはりのりを越えた御答弁をいただいてもいいんだと思うんですけれども、ぜひお答えをいただきたい。

菅国務大臣 いろいろ御指摘や激励をいただいているようにも思いますけれども、先ほどとやや重なりますが、私は、やはり昨年のことを思い出してみますと、民主党の多少のこの十年来の歴史の中でもいろいろなことがありました。私も代表をやらせていただいて、年金未納という、これは社会保険庁の間違いでもあったわけですが、そういう中での辞任ということもありましたしいろいろなことがありました。

 ただ、昨年来、こういうある意味で厳しい状況の中でもやはり党が、いろいろな立場の人はあるけれども、やはり民主党としてまとまっていなきゃだめなんだということがほとんどすべての人に共有化されていたところに、あの昨年の問題も越えていくことができましたし、私は、今の状況も、基本的にはそこが一番大きなポイントだと思っております。

 もちろん、政治と金のことについて、今のままで十分に国民的な理解が得られているかと聞かれれば、不十分だと言わざるを得ませんけれども、いずれにしても、党としてしっかりまとまっていくことがまずその責任を果たす上での前提条件だ、このように思っております。

 その上で、多少逃げのように聞かれるかもしれませんが、今私が置かれた立場、つまりは財務大臣あるいは経済財政担当大臣という立場でやはり最優先して私自身が担わなければならないのは、今お話もありました、この日本が、これは一年二年の単位ではなくて、バブルの崩壊後の二十年間成長がとまり、そして大きな財政赤字がここの状況まで来ている中で、この状況を打開する道をいかに見出していくか。場合によれば、それは党内の議論だけではなくて、連立政権内の議論だけではなくて、こういった場を通して、あるいはさらにこういった場を超えて、与野党含めての議論も必要なような、まさに国難とも言える状況にあると思っておりまして、私自身はやはりそのことの責任を感じて、そこにエネルギーを注ぐことが私に与えられている役割だろう、このように理解をいたしております。

田中(和)委員 もう一つ確認をしておかなきゃいけないんですが、やはり政権の支持率がここまで急速に下がったというものの一つの中に、連立政権の姿というものがあるんではないかと思います。

 マスコミ報道を中心としたことではございますけれども、我々から見ても、国民新党の人たちの言っている話と社民党の言っている話というのは常に食い違いますし、中にあって民主党の皆さんも、閣僚も含め幹部を含めいろいろと発言が出てまいります。特に基地問題などというのはその最たるものだと思うんですが、他にもいっぱい出てまいります。政治献金の問題もそうでございましょうし、言えば切りがない。外国人の参政権もそうでしょうし。

 こういう連立政権というものは、我々も過去に、自民党も経験をしてきたことでもございますけれども、本当に難しいんですね。確かに、参議院の結果いかんによらず連立は続くんだというお話も幹部の方はしておられるようでございますけれども、本当に、菅さんは副総理としてそのことについてどう思っていらっしゃるのか、非常にここはわかりづらい部分だと思いますので、ぜひひとつ、この際伺っておきたいと思います。

菅国務大臣 私も連立政権、特に自社さ政権というものを経験いたしました。今振り返ってみて、自社さ政権は比較的、政策調整などそれなりにうまくいったのかとは思っておりますけれども、それでも、まさに当時は、当時の村山社会党党首が総理大臣でありましたから、多分、自民党の当時の皆さんからすれば、ある意味での我慢を相当にされて、当時の村山総理を立てて運営されたんであろうと。私は、さきがけの政調会長などをやらせていただきましたから、渦中にはおりましたけれども、そういう大きな二つの政党の中にあって、やや緩衝材的な役割も当時は果たさせていただいたと記憶をいたしております。

 そういうものと比べて、現在の国民新党、社民党との三党の連立政権、私はそんなに、当時の政権に比べて大変難しいとか大変コミュニケーションが悪いとか、そういうふうには感じておりません。もちろん、党それぞれがある種の、ここだけは譲れないというものをお持ちですから、そこはなかなか、調整ということについては丁寧にやらなければならないわけではありますが、しかし一方では、それぞれの党なりそれぞれの党首が、やはりある場面ではお互いの対立を緩和するような役回りもお互い果たすようなところもありまして、いろいろマスコミ等が言っておられますけれども、鳩山政権をしっかりともにしていこうというところでは、私はかなりうまくいっている方だと。

 もちろん、大きな課題で争点があることは決して否定しませんが、そういう共通した、政権を自分たちでともにつくっていこうという意味ではうまくいっている、このように感じております。

田中(和)委員 自社さ政権のときの経験を振り返って、自由民主党が相当我慢したというお話があったのでございますけれども、実に、連立政権というのは立場立場の違いを、また大小の立場を乗り越えてやっていかなきゃいけないのでございますが、私は、普天間問題ではその我慢がし切れない状況にまさしくぶつかるのではないかなと、本当に、ちょっとそばから見ていて心配をしておる状況にあるわけでございます。

 さてもう一点、先ほどちょっとお話ししましたけれども、政治と金の問題で、私たちも政権時代に参考人招致だとかあるいは証人喚問だとか、野党の皆さんから特に強く求められて、喜んでとはもちろん言いませんが、応じてきたという長い歴史がございます。これは野党の皆さんからのお話というよりも、国民の疑惑にこたえる、国会ができる限りみずから、疑惑を持たれたことについてはただしていく、明らかにしていく、やはりこういう使命を果たしてきたからだと思っております。

 ところが、民主党政権になってからは、全くすべてがノーであります。そのことが、先ほど言った、副総理のお立場からも今御答弁がありましたけれども、政権の支持率が急落をした原因であっただろうと予測もしておられたわけでございます。

 副総理ですから、小沢さんの参考人招致だとか石川さんの辞職勧告決議案だとか北教組の小林代議士の問題であるとか、どんどんと菅さんがリーダーシップをとって、今までも強い御発言をしておられたあなたでございますから、ぜひひとつ、この政治と金の問題を一刀両断、国会の責任を果たしみずからがリーダーシップをとっていく、こういう役目を果たすお考えはございませんか。

菅国務大臣 余り形式張った答弁をするのも恐縮ではありますけれども、やはり今は、先ほど来申し上げていますように、閣僚としてあるいは財務大臣としてという役割が私自身にとっては最も優先される役割だと思っております。

 また、党との関係でも現在の仕組みの中では、もちろん鳩山総理は、総理であると同時に党代表でありますけれども、私は、閣僚ではありますが党の役職を担う立場には現在ありません。

 そういった意味で、皆さんがおっしゃる意味は十分わかりますけれども、やはりそこは、それぞれの持ち場持ち場でそれぞれの判断を含めてやっていくのが、一つの与党と政府の間の運営であろう。

 ただ、そのことが結果としてうまくいかないときには、やはり国民からの支持を現在若干失っているわけですが、そういう形で結果がまたあらわれてきますので、そこは、一方的に私も、今までのやり方がすべていいという意味で言っているわけではなくて、ただ、私の立場からすれば、やはり優先しなければならないところを頑張ることによって、この政権なり党に対する理解と支持を回復するように全力を尽くすというのが今の私の立場であります。

田中(和)委員 議会にお任せをしているとか、議会で決めることだというのが大体決まり文句になっているんです。

 当時、振り返ってみるときに、我が党の政権の中でも政府側の、総理であったりあるいは大臣であったり官房長官であったり、そういう人たちが党側に強く求めて、参考人招致とか証人喚問が行われたことがありますね。(発言する者あり)ええ、これは本当にたくさんあるんです。調べてみてください。

 ということは、与党と政権というのは一体なんですよ。運命共同体なんですね。ですから、この使い分けをどうするということは実は全く当たらないわけでして、副総理ですから、ぜひひとつ頑張ってもらいたい。これは、党の幹部でもありますし大変なお立場ですから。

 さて、時間がもう来つつありますので、たくさん質問が用意してあってとてもでき切れないんですが、もう一点、政治主導ということについてお尋ねをしていきたいと思います。

 私からすると、これは議会制民主主義、議院内閣制ですから、政治主導というのは当たり前なんですね。これを国民の皆さんの前に、主権者の皆さんの前にいかにわかりやすくお示しができるかというのは、そういう意味では、皆さんの事業仕分けというのは、中身は別にしてもヒットしたなと評価せざるを得ないのでございます。

 ただ、今度は財務大臣として、この事業仕分けというのは、考えたら予算に関連することなんですよね。当然、財務省の中で責任を持ってやるべきことでありまして、事業仕分けをパフォーマンスで国民に見ていただくということも、ショーとすればすばらしいことなんですが、一方において、財務省の責任を回避しているあるいは逃げている、こういうことにもなるわけでございまして、まさしく、菅さんの政治主導であの事業仕分け以上のものを財務省の中で、副大臣もお見えでございますが、おやりになったらどうかな。それこそ、国民の前に財務省の中でやったらどうか、このように思いますが、どうですか。

菅国務大臣 政治主導という言葉は、いろいろな形で私たちも使いますし、またいろいろな形で使われるわけです。

 やはりその一つは、官僚主導というものに対しての政治主導あるいは政治家主導、そういう対比も多く使われる、あるいは大きな意味だろうと思っております。ややもすれば、今私は財務大臣に、この一月から藤井大臣の後をお引き受けしましたが、財務省主導も官僚主導の象徴のようにある意味言われてきたところもあります。

 そういったことを含めて、事業仕分けというのは、一般の国民の皆さんからすれば、やはり予算編成という、多少テレビの場面で大臣が最後の折衝をしていたりということは見えても、あるいは主計局にいろいろおにぎりか何かを持って大臣が慰労するというような場面はテレビ等で見えても、その中身に立ち入ってどういう議論がされているかというプロセスは、ほとんど一般の国民はそれに接する機会がなかった中で、ああいう事業仕分けという形で、完全にオープンな形で具体的な課題を議論し一定の評価をするというのは、私は、まさにおっしゃるとおり、政治主導を超えて、やはり国民に開かれた予算編成という、まさにそういう意味で非常に大きな象徴的な意味があったというふうに思っております。

 ですから、財務省が予算案を主計局を中心につくるというのは、これは逆に言うと従来からのやり方であって、その部分はこれからも役割の上では当然残るわけですけれども、決してその部分を放棄するということではありませんが、単純に、財務省の予算編成を国民の前にあれと同じように明らかにするというのは、もしかしたらいい知恵があるかもしれませんが、私はやや、場合によっては無理があるのかなと。

 財務省は財務省でやらなければいけない仕事がありますので、予算編成という、まさに政治主導で、できるだけ国民に見える形で編成をしていくというのは、仕分けだけではありませんけれども、そういった形をできるだけとる。

 今回、若干逆の意味で問題になりましたけれども、例えば箇所づけなども、本当にちゃんと出せる形が事前にあり得るならば出そうということを国交大臣も言われていましたけれども、予算のこの国会議論の段階でもできるだけ出せるものは出すとか、さらに予算執行の過程も国民から見えるものにしていく、そういう形で、政治主導を超えて、国民が見える予算編成という形をとるというのが必要で、それに必要なことで財務省がやるべきことがあれば、それは大いにやっていきたい、私はこのように思っております。

田中(和)委員 私は、本来やはり財務省がやるべき仕事というのがあるんだと思うんです。確かに、今までいろいろな議論があったと思いますけれども、政治主導をまさしく財務省で発揮されることが私は第一義的な責任ではないか、このように申し上げておきたいと思います。

 最後になりますけれども、一つだけ関税関係の質問をさせていただき、終わりたいと思います。

 実は、私の地元の横浜でAPECが開催をされることになります。当然のことながら、この御準備には万端心を砕いていただいていると思いますけれども、ぜひお答えをしておいていただきたいと思います。

 羽田空港もいよいよ十月、第四滑走路が完成をし、供用開始となるわけでございます。当然、羽田では今後国際線も入ってくるわけですし、いろいろな関税関係の業務も煩多になってくると思いますが、この点について簡潔に御答弁をいただき、私のきょうの質問を終わらせていただきたいと思います。

玄葉委員長 野田副大臣、時間が過ぎていますので、まさに質問者がおっしゃったとおり簡潔に。

野田副大臣 田中委員の御質問に簡潔にお答えをしたいと思います。

 羽田空港については、平成二十二年十月から、昼約三万回、夜、早朝約三万回、年間計六万回の国際定期便の離発着が見込まれており、大規模国際空港としての供用開始の予定となっています。

 財務省としては、羽田空港の再国際化に伴って大幅に増大することが予想される税関に対する行政需要に適切に対処するため、所要の定員の確保に努めており、平成二十一年度予算において八十三人、二十二年度予算では百三十九人の増員が盛り込まれているところでございまして、税関業務の処理に支障を来すことのないように適切に対応していきたいと考えております。

 APECについては、これは昨年の十一月、内閣総理大臣決定で日本APECの準備会議をつくりまして、その安全に向けての万全な体制をつくろうとしていますし、財務省についても、関係機関とよく連携をしながら対応していきたいと思いますし、現場の税関については、横浜税関も含めてその体制の整備に努めているところでございます。

田中(和)委員 終わります。

玄葉委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 公明党の石井啓一でございます。

 まず、関税法及び関税暫定措置法一部改正案に関しまして一問質問をいたしますけれども、関税に密接に関係をいたしますWTOですね、現在行われておりますドーハ・ラウンドの動向について、まず確認をいたしたいと思います。

大藤政府参考人 お答えいたします。

 WTOドーハ・ラウンド交渉につきましては、昨年九月のピッツバーグ・サミット等において示された、二〇一〇年、すなわち本年中の妥結を追求するとの政治的意思を受けまして、現在、関係各国間で議論が行われているところでございます。今月末には、これまでの議論を踏まえ、交渉の現状評価と今後の取り進め方などについて議論を行う予定となっております。

 交渉の早期妥結に向け、関税制度を所管する財務省としても、交渉において全体としてバランスのとれた成果が得られるよう、関係省庁と連携して引き続き取り組んでいく所存でございます。

石井(啓)委員 ありがとうございました。

 続きまして、ちょっとテーマをかえまして、きょうは皆様に資料を配っていただいていると思いますが、これは、財務省が予算委員会の方に提出しました、平成二十二年度予算の後年度歳出・歳入への影響試算でございますけれども、これをもとにしまして、財政の健全化について主に財務大臣にお伺いをいたしたいと思います。

 これは予算委員会でも取り上げましたが、二十三年度のこの影響試算、これは単純試算ではございます、二十三年度には政策的な歳出増というのは特にございません。その上で、歳出は一・六兆ほどふえて九十三・九兆、これは主に国債費が、想定している利率が二十二年度は二%、二十三年度は二・二%に上がっていますので、その影響で国債費が上がっているということであります。大きいのが税収のところですね。税収の伸びが、三十七・四兆が三十八・七兆、一・三兆ほどしかふえない一方で、その他収入が大きく減っている、六・七兆減っているということで、税収、その他収入の合計が五・四兆減りまして、したがって、歳出と税収等の差額である国債費が五十一・三兆という試算になっております。これは大変な状況でありまして、国債費が五十一兆円を超える、これは大変な財政状況であります。

 私は、やはりこういう試算、これは試算そのものというわけではありませんけれども、大まかな傾向性はよく示していると思います。特に、その他収入が大きく落ち込んできて、なかなか大変な状況になっているということは現実でございます。

 そこで、財政の健全化というのは、こういった影響試算を見てみましてもやはり喫緊の課題ではないかというふうに考えますが、まずこの認識について大臣の御見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 財政の健全化ということそれ自体は、一般的に言えば、多分二十年ぐらい前からずっと継続してきている大きな課題であると思います。今の状況は、その中でもまさに一層厳しくなった状況だと認識しております。

 ただ、今言われた数字は、もう十分御承知の上で言われたと思いますけれども、ある意味で機械的にいろいろなものを、現在の政策を大きく変えないで進めたときにこうなるということでありまして、そういう意味では、その他収入などは、埋蔵金といったものがかなり、今年度あるいはそれ以前の段階で捻出をしたところで、小さくなっておりますが、必ずしも差額そのものが公債費に当たるという意味で述べたというよりも、機械的に計算するとこういう差額が生じるということを示しているということは、もちろん御承知だと思います。

 しかし、当然ながら、何らかの手当てをしなければこの予算が組めないわけでありますから、そういう点では、大変厳しい状況だという認識は共通に持っているつもりであります。

石井(啓)委員 確かに、これは財務省がつくった資料ですから、なるべく厳し目の試算になっていることはもちろんそうなんですよね。歳出の方の国債費も、十年国債が金利二・二%を想定していますけれども、足元の一・四%前後から比べるとかなり高い金利ですから、そうならないことを期待したいと思いますし、税収の方も、これまで伝統的に名目経済成長率に弾性値が一・一ですから、名目経済成長率が二十三年度は一・七%の前提だけれども、そんなに税収がふえないというふうになっています。これはもう少しふえてほしいなというふうに期待はございますけれども。

 歳出の方の国債費が減ったり、あるいは、税収が多少ふえたりということがあったとしても、歳出と税収との差額が大きく小さくなることは余り期待できない。やはり依然としてかなりの国債発行の圧力がかかるといいますか、そういう状況には私は変わりないと思うんです。

 質問通告はしておりませんけれども、大臣は、当初の国債発行額というのはどれぐらい以内に抑えなきゃいけないという何か御認識はございますでしょうか。

菅国務大臣 実は、ことしのといいましょうか、二十二年度の予算では、一方では四十四兆円程度ということ、一方では、今の経済状況を考えたときに、二十一年度の予算規模を大きく下回るような予算は、やはりこのリーマン・ショック後の状況の中ではそうすることはできない、少なくとも前年度と同程度ないしそれを超える程度の予算規模は必要だ、このように、大きいところでは考えました。

 来年について、来年といいましょうか二十三年度について、どのように考えなければならないのか、まさにこの予算が成立したところから用意ドンでスタートをしなければならないと思っております。

 まだ余り確たることを申し上げる時期は、さすがに早過ぎると思いますが、第一に考えなければいけないのは、国債発行のこともそうでありますが、やはり予算規模全体をどの程度にするのか。各国、いろいろなところでは、もう出口戦略でかなり、ヨーロッパなどは一、二年の間にはGDP比で三%以下の赤字に落とすといったような計画を発表しているところもあります。

 しかし、私が感じているのは、すぐに出口戦略まで二十三年度予算で考えられるのか、もう一年ぐらいはやはりある程度の規模の予算を前提として、その中でいろいろな国債費の問題なども市場の信認を得られる形でぎりぎり組んでいくということが必要になるのではないか。まだ確たることを申し上げることはできませんが、大きな問題点としてはそういうことが頭にずっとあるということだけ申し上げておきたいと思います。

石井(啓)委員 市場の信認を得られる範囲でと、まあそういうことになるかと思いますけれども、この二ページ目をごらんいただきますと、下の方に参考ということで、名目経済成長率が前提よりふえた場合、減った場合の税収の増減額と、金利が変化した場合の国債費の増減額が参考として載っています。

 これも財務省がつくった資料ですから、名目成長率が伸びるより金利の伸びの方が影響が大きいんだという資料になっているんですけれども、実際本当にこうなのかしらというところはあるんですが、傾向として見ると、やはり名目経済成長率が伸びるよりも金利が伸びた方が影響は大きいんですね。例えば、二十三年度だけとってみましても、名目経済成長率が前提から一%伸びても税収は〇・四兆円しかふえないのに、一方で金利が一%ふえると、国債費は、歳出の方は一・一兆円も伸びてしまう。それだけ今国債のストックが大きくなっていますから、やはり金利が上がる場合の影響が非常に大きい。

 大臣おっしゃったように、この参考のデータを見ても、やはり国債市場の信認をきちんと確保しておくということは非常に重要である。裏返して言うと、国債の信認を損なうような財政運営をすると、途端に歳出の国債費が激増していくことになりかねない。恐らくそういう警告の、財務省がつくったから、そういうことを暗に、これを見て読み取ってくださいという資料なんだと思いますけれども、私は、そういうことは余り大きく異なっていないことだろうな、やはり国債市場の信認をきちんと確保していくということは財政の健全化を保つ上で非常に重要なことだ、こういうふうに思っています。

 その上で、ちょっと質問の順序を変えてお尋ねしますが、前もこの委員会でやりましたけれども、その他収入が二十三年度は大きく減りますので、どうしてもその他収入に何とかふやしたい、そういう誘惑に駆られがちだと思うんですね。そういった意味で、以前に御指摘しました外為特会の積立金あるいは国債整理基金、これに手をつけることは、私は、市場の信認を大きく損なうことになりかねないというふうに思っています。

 外為特会の積立金については、以前指摘しましたように、外為特会の外貨の資産の為替評価損、この積立金を取り崩すということは含み損を拡大して結局隠れ借金をふやすということにほかなりませんし、また、国債整理基金の方について言えば、実は国税三法のとき参考人質疑で、慶応大学の土居教授がこのことをまさに指摘をされまして、国債整理基金の取り崩しは財政規律を損なわせる可能性があり大変強く懸念する、国債の六十年償還ルールをやめるという悪いメッセージを国債市場に投げかけるおそれがある、こういう指摘をされております。

 そこで私は、やはり国債市場の信認を確保するという意味では、外為特会の積立金あるいは国債整理基金に手をつけるという前に、まずは歳出削減や税制改革という財政の構造改革をやることがまず先にやらなければいけないことだ、こういう認識でおりますけれども、大臣の御見解を伺いたいと思います。

菅国務大臣 指摘をいただいた、マイナス一、プラス一、プラス二というこの成長率と、さらに金利の関係というのは、もうよく御承知のように、よい金利上昇と悪い金利上昇があるとかいろいろ言われますが、いずれにしても、景気回復の段階で金利が上昇したときに、果たして税収の増大とこの国債費の増加がどちらがどうなっていくのか、これはいろいろな議論があります。せんだって衆議院の方の委員会で、自民党の中川秀直議員が四%が黄金律だという発言をされまして、成長率が四%を超えれば金利を上回る成長率になるので、それに向かって努力すべきだというような趣旨のことも言われました。

 そういった意味で、もう十分御承知のことだと思いますが、悪い、つまりはリスクプレミアムで金利上昇することはもちろん避けなければならないことでありますけれども、景気が回復したときの金利上昇というものもまずいということになると、ずっと景気を悪くしておかなきゃいけないということに論理的にはなるものですから、ここは本当に難しいところであるということももちろん御理解いただけると思うんです。

 そこで、財政をよくするには、当然ながら、歳出を抑える、あるいは歳入をふやす、その場合も、税でふやす、あるいは成長という形でパイを大きくすることで結果として税がふえていく、こういう三つの要素が、だれが考えてもあるわけでありまして、そういう意味では、税の議論も本格的に始めておりますし、歳出についても、先ほど申し上げたように、総額のところではいろいろ景気対策もありますけれども、さらなる事業仕分け、あるいは無駄の削減ということもさらなる努力が必要だと思っておりますし、新成長戦略の肉づけを通してパイそのものも大きくしていく、この三つの手だてをとることで、何とか市場の信認を維持しながら成長路線へと転換していきたい、このように考えております。

石井(啓)委員 それでは、歳出の削減に関連しまして、事業仕分けについてお尋ねします。

 事業仕分け第二弾をこれからおやりになる予定でありますけれども、予算の削減目標がないかのように枝野大臣は何か発言されているようですけれども、そういったものは本当にないのかどうか。また、財務省としては、この事業仕分けの第二弾によって、予算削減に対する期待というのはどういうふうにお考えになっているのか。この点、ちょっと確認をさせていただきます。

古川副大臣 お答えいたします。

 今回予定をいたします事業仕分けは、昨年十一月に実施した事業仕分けにおいてさまざまな問題が指摘された、行政から支出を受け、あるいは権限を付与される等によって独立行政法人及び政府系の公益法人が行う事業、そういった指摘があったものがありますので、こうした独法及び公益法人が行う事業を取り上げて、予算面にとどまらず、事業の必要性や有効性、効率性や緊要性や、だれが事業を実施する主体として適当かということについて検証を行うことを主の目的にいたしております。

 したがいまして、その事業仕分けを行った結果としてある程度の歳出削減というものが出てくるということは私どもも想定をしておりますが、当初から歳出削減額を、目標を設定して仕分けするというものではないということを御理解いただきたいと思います。

菅国務大臣 今内閣府副大臣の方からお話がありましたように、この事業仕分けの性格は、私も今の副大臣の説明のように理解をいたしております。

 財務省として予算削減に期待をするかという御質問ですけれども、もちろん、無駄な費用がより多く削減されるという意味では、ぜひともそうあってほしい。ただ、だからといって、財務省が何かこういう目標を出して、それに向かってどうしろこうしろ、そういう性格のものではない、このように思っております。

石井(啓)委員 予算委員会等では、二十三年度のマニフェストの財源は何で確保するのかとお聞きしましたら、総理も財務大臣も、特殊法人、独法、公益法人の見直し、補助金の一元化、これでやるとおっしゃったけれども、やはり今の答弁を聞くと、ほとんど期待できないんだなということがよくわかりました。

 ところで、これも少し先の話になりますけれども、二十三年度の概算要求で、従来はシーリング等を設けて歳出増を抑えていたわけですけれども、そのシーリングにこだわる、シーリングをやれというふうに言うつもりはありませんけれども、歳出を絞り込む、そういう手法というのは、概算要求段階では、二十三年度についてはお考えになっているのかどうか、その点について確認をいたしたいと思います。

菅国務大臣 まだ二十三年度のそういった手法というか、そこまでは議論を十分いたしておりませんが、今出している予算の編成過程のことを私なりに若干の反省も含めて申し上げますと、ちょうど選挙の投開票日の翌日が旧政権における概算要求の提出日でありました。もちろんまだ内閣はできておりませんでしたが、私は、八月三十一日に概算要求を前の政権が出すのはおかしいじゃないかということを申し上げて、事実上それが凍結というか、とまったわけであります。そしてその後、一次補正の見直しということと、それを経て、改めての概算要求を新しい内閣として出すことになりまして、たしか十月十五日のころだったと思います。

 今、若干の反省を込めて言えば、従来のシーリングというのは、御存じのように各省一律というふうな考え方だったものですから、そうすると、例えばもっと大きく削るべきところ、場合によったらもっとたくさんふやさなきゃいけないところ、そのいずれもが五%程度の幅の中でしか調整できないということがありましたので、そういうシーリングの手法はとらないでいこうということで、それぞれの大臣がみずからのところで、本当に必要なもの以外は削って、必要なものをのせてくるということを期待いたしました。

 しかし、今になってみますと、一次補正の見直しに時間がある程度かかったのと、概算要求までに時間がなかったものですから、結果として、前の内閣が出していた概算要求にマニフェスト部分を上乗せしたような形に大筋なってしまったことは、今考えてみると、やや反省材料であります。

 ですから、今後、機械的に従来のような各省一律のシーリングということを考えることは多分ないと思いますけれども、やはりいろいろな段階を経て、部分的にはこういった手法も使うことがあるのかもしれない。率直に申し上げて、ここはまだ関係閣僚とも全く相談しておりませんので、反省を含めて申し上げれば、そういう反省も含めて今後の扱いを決めていきたいと思っております。

石井(啓)委員 私どもも昨年の概算要求の姿を見ていまして、総理も、あるいは当時は菅副総理でしたか、各省大臣は査定大臣としておやりになるようにというふうにお命じになったようですけれども、査定大臣じゃなくて結局、要求大臣になってしまったということがあるようですから、そこのところはぜひ一工夫していただきたいな、こういうふうに思います。

 ところで、マニフェストの実現、依然としてマニフェストは頑張られると思うんですけれども、このマニフェストの実現ということと財政健全化ということは、どちらを優先しておやりになるべきだというふうにお考えなんでしょうか。

菅国務大臣 私は、マニフェストというのはさきの衆議院選挙で国民にお約束をした、まさに政権公約でありますから、これは今後もできるだけ実現を全部の面で図っていくというのは当然のことだと思っております。

 ただ、もう一方で、長く言えばこの二十年来、日本の経済成長が事実上とまって、そして公債残高が非常に大きくなっている。公債残高の大きくなっている原因も、大体この十年ぐらいを分析してみますと、半分は税収減でその原因になり、半分は社会保障費の増でその原因といいましょうか、そうなっている。この問題は、マニフェストと重なる部分、重ならない部分がありますけれども、これはこれとしてしっかり取り組んでいかなければならない課題だと思っております。

 ですから、そういう意味では私は、先ほど田中さんでしたか、御質問いただきましたが、そういう本格的な中長期の財政再建を含め、成長路線へ戻していくための本格的な活動が、まさに半年たったこれからの、特に来年度予算が成立してからの大きな重点を置いての仕事だ、このように考えております。

石井(啓)委員 先ほど、資料で、後年度影響試算を御紹介しましたけれども、この後年度影響試算の二十三年度以降の歳出には、マニフェストの主要事項は入っていないんですね。これが入るともっとこの歳出がふえるわけです。その歳出が、財源がきちんと何らかで確保できれば、それはまたそれということなんでしょうが、今のマニフェストの主要事項を盛り込まないでも非常に厳しい財政運営になってしまっている。この上、マニフェストの主要事項というのはどういうふうにやっていくのかしら、これは非常に、なかなか大変だなと思うんです。

 端的に聞きますと、子ども手当、二十二年度は半額支給で、なおかつ児童手当の制度を残しながらですから地方負担とか企業負担を残しながらですけれども、これは全額国費で、あるいは満額支給までいきますと五・三兆円、丸々国費として必要になりますよね。二十二年度の子ども手当の国費は一・七兆円ですから、三・六兆円もふえなきゃいけない。あるいは、高速道路無料化なんかも二十三年度末には全部やるような工程表になっていますから、これをやるとすると一・三兆円、今年度は一千億円しか入れていませんから、一・二兆円ふやさなきゃいけない。

 こういったことをどこまで本気で実現を目指すんだろうか、こういうふうに今の段階でも疑問に思うんですけれども、その点はいかがでありましょうか。

菅国務大臣 同じ答弁になって恐縮ですが、基本的にはマニフェストの実現を目指して、それはそれとして全力を挙げなければならないと思っております。

 しかし一方では、税収が大きく落ち込み、また、公債残高も、その率は先進国の中でも飛び抜けて大きい比率になっており、そういういろいろな厳しい状況の中で、先ほども申し上げましたけれども、もう一つの大きな課題もあわせて考えなければならない。

 つまりはそれは、一方では財政再建であり、また、そのための歳出の問題、場合によっては歳入の問題、さらには成長の問題、そういうものをすべて考えた中で、六月にはそういうものも基本的な形で考え方を盛り込んだ中期財政フレーム、三年程度のものをめどにして出して、ほぼ同時に、財政運営戦略、十年程度の展望での考え方も提出していく。そういった形の中に、今申し上げたようなことがどこまでしっかりと盛り込めるか、これからの努力だと考えております。

石井(啓)委員 鳩山総理にもこの財政運営の厳しさというのはぜひ御認識いただきたいなというふうに思っております。内閣全体として、実際もう二十三年度は大変な状況に直面しかねない、そういう危機意識をぜひ共有していただいて、これから中期財政フレームあるいは財政運営戦略をおつくりになるようですが、ぜひしっかりしたものをつくっていただくように期待をいたしまして、私の質問を終わります。

玄葉委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 法案に関連をして、基礎的なことからお聞きをしたいと思います。

 関税などの国境措置というものは、基本的には、国内の農業や中小企業を守る上で重要な役割を果たすものだと私は思っております。まずこの点で、菅財務大臣の基本的な認識をお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 関税を初めとする国境措置は、国境において内外価格差を調整する機能等を通じて、国内産業保護のために重要な役割を果たしている、そう認識しております。

 一方で、世界経済の持続的な発展のためには、保護主義の抑制及び自由主義、自由貿易の推進というものが重要だと考えております。

 また、国境措置が消費者に与える影響も、諸外国との関係に与える影響についても十分に考慮する必要があり、関税政策においてはこれらの点を総合的に勘案することが必要だと思っておりまして、基本的には、佐々木委員が言われたような性格を持っているということは私も認識をいたしております。

佐々木(憲)委員 もしこの国境措置というものが撤廃されたら、例えば日本の国内の農業というのはどうなるのか。その影響を試算したものが、農水省から平成十九年二月に出されております「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」というものでございます。結論だけで結構ですが、紹介していただけますか。

佐々木大臣政務官 お答えさせていただきます。

 今、委員から御指摘がありました試算というのは、当時の経済財政諮問会議の民間議員から、国境措置が撤廃された場合に国内農業への影響はどうなるのかということを公表すべきだという指摘があって、関税あるいは国境措置を撤廃した場合の影響について、財政負担等追加的な対策を行わないという前提でまとめたものでございます。

 事実関係でありますが、それによると、国境措置の撤廃により、内外価格差が大きくて外国産品との品質的な優位性がない米、麦類、砂糖、生乳などを中心に、国内農業生産額が約三兆六千億円減少。これは当時の農業総産出額の四二%に相当するわけであります。国産農産物の大幅な減少により、自給率は四〇%から一二%に低下。それから、農産加工など関連産業を入れますと、国内のGDPが約九兆円減少。さらに、就業機会等でありますが、これらの関連産業を合わせますと、約三百七十五万人の就業機会が喪失するというような試算が行われております。

 また、国境措置の撤廃により国内農産物の価格低下分を補てんするための費用ですが、それについては、少なくとも毎年約二兆五千億が必要というふうな試算が出てございます。

 以上です。

佐々木(憲)委員 これは、私も最初に見たときは大変衝撃を受けたわけであります。非常に重大な結果がもたらされるという感じがしますが、菅大臣はこれを見てどういう感想を持たれるか、感想をお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 まさに、もしこのとおりになるようなことをやったとすれば、日本の農業を崩壊させることになる、こういう結果をもたらしてはならない、このように思います。

佐々木(憲)委員 国内産業を守るための国境措置の重要性というのは共通の認識があると思いますが、今後どういう対応をするかということが問われると思います。

 昨年の総選挙の際に、民主党はマニフェストで、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進」する、こういうふうに明記されました。それまでにあった、これは案というんでしょうか前段では、FTAの締結と書かれていたわけです。この批判が非常に強く起こったために、交渉の促進というふうな表現に変えたのだと思いますが、この締結と交渉促進というのはどう違うのか。これは、直接これに携わった菅大臣としてのその当時の認識をお聞きしたいと思います。

菅国務大臣 当時、結果として私はこの調整に当たりまして、よく経緯は覚えております。

 基本的には、当初、米国との間で自由貿易協定、FTAを締結し云々と書いたことに対して大きな誤解を生んだ。つまりは、米国との間でFTAを締結するというのを、米国の要求をすべて受け入れて締結するというふうに、決してそういう意味ではないとは申し上げたんですが、いや、そうだそうだと言われて、大変な誤解を生み、あるいは生みかけたものですから、やはりそういう意味では誤解されない表現にするために、「米国との間で自由貿易協定(FTA)の交渉を促進し、」というふうに改めたということでありまして、考え方を変えたというよりも、つまり、米国の言うことを一〇〇%聞いて締結するんだというような誤解を招かないように表現を改めた。

 そして同時に、記者会見をいたしまして、「食の安全・安定供給、食料自給率の向上、国内農業・農村の振興などを損なうことは行わない。」ということもあわせて申し上げました。

佐々木(憲)委員 誤解を与えたので表現を変えた、しかし基本的な考え方は変えたわけではない、こういうふうな答弁でした。

    〔委員長退席、高山委員長代理着席〕

 果たして、交渉をするという場合、日本の農業に打撃が与えられることになるのか、あるいはそれ以外の方法というものがあるのか、これは大変重要な問題であります。

 日米の関税というものを比較してみますと、日本が競争力を持っている鉱工業製品、この関税というのはかなり低くなっております、アメリカに比べて。非農産物というくくりで見ますと、日本は二・六%、アメリカは三・三%。アメリカよりも日本の方が低いです。他方で、農産物というものをとってみますと、平均関税率は日本は二三・五%、アメリカが五・三%。これは日本の方が格段に高いわけであります。高い関税率が実施されているのは、例えば米ですね、七七八%、こういう品目があります。

 こういう状況の中で日米のFTA交渉というのを推進するということになりますと、一体どういうことになるか。農産物、とりわけ米などが、アメリカ側の関心事、あるいは我々に言わせると標的といいますか、そういうものになりかねない。

 それが仮に関税の大幅引き下げ、あるいは撤廃ということになれば、これはもう農業にとっては大打撃になるわけでありまして、交渉といいましても、アメリカは日本の農産物の関税を下げなさいと言う、日本はアメリカに対して鉱工業製品の関税を下げなさいと言う、こういう関係にならざるを得ないんじゃないでしょうか。

    〔高山委員長代理退席、委員長着席〕

菅国務大臣 十分おわかりの上で質問されていると思いますが、マルチの交渉のWTO、あるいはバイでの交渉のFTAなど、やはり日本が一方で貿易立国の国である中でいえば、そういった自由貿易の原則というのは、やはり我が国にとっても大変、これだけの経済大国といいましょうか、経済成長にとっては大変大きな国際的なプラスのインフラになっているということは、これはお互い認めなければならないと思うんです。

 その中で、いかにして日本における農業を、安心して若い人も農業で子供を生み育てることができ、そして地産地消を拡大して自給率を高めることができ、そして一方で、そういうバイやマルチの中でそこは守りながら、鉱工業製品などを含めた自由化をより進めていくか。

 確かに、交渉は簡単ではないと思いますし、この間も、そのために、必ずしも他の国に比べてそういったものが進展しているとはやや言えないといいましょうか、おくれているという見方も強いわけであります。

 ただ、交渉でありますから、何か相手がそういうことを要求しているから初めからもう交渉はしませんという姿勢ではなくて、交渉は大いにやりましょう、しかし、主張すべきことあるいは守るべき原則はしっかり守ろう、そういう意味を含めてのマニフェストである、このように考えております。

佐々木(憲)委員 私は、日本の大手企業にとっては、アメリカに対して輸出をふやしたい、そのためにアメリカの関税は下げてもらいたい。それに対して、アメリカは日本に対して、そのかわり農産物の関税を下げなさいと言ってくる。こういう交渉にならざるを得ないと思うんです、今の状況は。したがって、そういう交渉に日本が臨む、あるいはそういう交渉に入るということ自体非常に危険であると私は思っております。

 交渉をするなということは言うな、交渉はするんだ、これは今の政権の姿勢かもしれません。しかし、私は、その方向に行くと大変危険な事態になる、こういう危惧を持っておりまして、日米FTA交渉というものはやるべきではないという立場に立っております。

 なぜかといいますと、例えばアメリカが日米同盟に関する報告書というのを二〇〇七年二月十六日に出しております。これはアーミテージ報告と言われておりますが、いろいろな分野を書いております。

 この報告書によりますと、農業は、米を含む全分野が交渉対象となる、米日FTAの中心部分になり得るし、ならなければならないと。つまり、米を含む農産物は対象にする、そうしなければならない、こういう立場でありまして、これは農産物を除外するという立場には全く立っていないんですね。

 だから、交渉によって日本の農業を守ることができると言いますが、交渉に入ること自体こういう危険性を惹起するという意味で、多くの農民の皆さん方が、日豪FTAあるいは日米FTA、これはもう絶対に反対である、そういう交渉自体を阻止するんだ、こういうふうな大運動も展開されている状況でありますので、そういうことをよく理解していく必要があるというふうに私は思っております。

 日米FTAで関税が仮に撤廃されるということになりますと、日本の農業に対する打撃は、例えば日米経済協議会の委託研究というのがありまして、「日米EPA 効果と課題」、これは二〇〇八年の七月に出されております。

 その報告書によりますと、米の生産は八二%マイナス、穀物は四八%マイナス、肉類は一五%、それぞれ減少するという結論が出ているわけです。したがって、この日米FTA、交渉に入ったら、最悪の場合そういう事態も招きかねないということを私は指摘したいと思います。

 菅大臣はどのようにお考えでしょうか。

菅国務大臣 私どもも、このマニフェストでいろいろ当時指摘を受けたときに、当時の与党であった自民党のマニフェストも、マニフェストといいますか政策も拝見をさせていただきまして、結論的には、表現は微妙に差はありましたが、交渉の促進という点では、結果として共通の表現であったというふうに記憶をいたしております。

 先ほど来申し上げていることを繰り返して恐縮ですが、交渉するということと相手の言うことを丸のみするということは全く違うわけです。ですから、私たちは、きちっとした原則を立てて、そして守るべきものは守る。

 しかし一方で、これは日米だけではありません、まさに最近では、韓国などがかなりの国々とFTAを締結して、ある意味で、そういった世界の自由貿易の中で積極的な活動をしていることは御承知のとおりでありまして、ややもすれば日本が、必ずしも日米ということだけではなくて、他の国々とのFTA交渉等もやや足踏み状態にある。ですから、交渉自体を一切しないんだという姿勢はとるべきではない。あくまで、交渉はするけれども原則は守る、農業は守る、こういう姿勢でいくべきだと私は考えております。

佐々木(憲)委員 交渉をするということは、締結に向けてお互いに譲歩するということになるわけですね。

 今の日本の状況でいいますと、財界側はぜひ結びたいと言っているわけです。農業、農民の側は、それは絶対に反対であると言っているわけです。

 そうなりますと、いわば財界が、輸出自由化、貿易の自由化をどんどん進めるという立場で、利益を求めてどんどん国際的な国境措置を取り払っていく。それに対して農民の側は、国境措置を取り払われると農業がだめになる、先ほどの農水省の試算によっても、大打撃を受ける、こういうふうにされているわけですね。もちろん、譲歩しない、譲歩しなければいいんだと言うんですけれども、これはなかなか、一度交渉に入りますと非常にシビアなことになります。

 例えば、鳩山内閣としては戸別所得補償制度の創設というのを言っていますね。国境措置が低下をしていくあるいは撤廃される、そうすると、その差額を埋めるために、先ほど御答弁がありましたけれども、二兆五千億円というお金が必要になるわけです。財政的にも果たして耐えられるのかという問題につながるわけですね。

 だから、我々としては、国境措置をしっかり維持強化する、それと同時に、この所得補償なども組み合わせていくということをやらないと、日本の農業は守ることができない、こういうふうに私どもは考えているところであります。

 今回提案されている関税というのは、この国境措置を取り払うというものではありませんが、しかし以前は、日本の例えば米あるいは麦、乳製品、でん粉など、これは輸入数量制限というので規制をしていたわけですね。米は一切輸入はだめだったわけですが、ウルグアイ・ラウンドの合意に基づいて農産物の関税化、自由化を受け入れることになって、高い関税率だけれども自由化の方向に行った。そのことによってミニマムアクセスの割り当てをふやされたり、あるいはさまざまなそれにかかわる問題というのが発生してきたわけですね。

 私たちはそういう意味で、今回提案されている法案については、この暫定税率等の延長ということでありますので、従来我々はこの点では反対してまいりましたので、今回もこの法律については反対をいたします。

 今後の展望について、先ほど、鳩山内閣は、この日米FTA等々については前の政権と余り変わらないという姿勢をとられるように感じましたので、この点については、私どもは明確に違う立場をとっておりますので、今後さらに議論をしていきたいというふうに思います。

 きょうは、以上で終わりたいと思います。

玄葉委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

玄葉委員長 これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。

 関税法及び関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

玄葉委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

玄葉委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

玄葉委員長 次に、内閣提出、株式会社日本政策金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。財務大臣菅直人君。

    ―――――――――――――

 株式会社日本政策金融公庫法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

菅国務大臣 ただいま議題となりました株式会社日本政策金融公庫法の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 昨年十二月、我が国は、コペンハーゲンで開催された気候変動枠組み条約第十五回締約国会議において、気候変動対策に取り組む途上国に対する支援策を発表しました。

 気候変動対策は喫緊の課題であり、膨大な資金需要がありますが、民間資金の呼び水としてリスクの補完を行うため、平成二十年十月に発足した株式会社日本政策金融公庫の国際部門である国際協力銀行を活用することが重要となります。

 政府は、地球温暖化を初めとした地球環境問題の解決に向け我が国として貢献するため、株式会社日本政策金融公庫が民間金融を補完することを旨としつつ、地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業を促進するための金融機能を担うことができるよう、所要の改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。

 本法律案の内容は、株式会社日本政策金融公庫の目的及び国際協力銀行の業務の範囲に、地球温暖化の防止等の地球環境の保全を目的とする海外における事業を促進することを追加するものであります。

 以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。

玄葉委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時五十八分散会


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