衆議院

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第3号 平成22年9月8日(水曜日)

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平成二十二年九月八日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 海江田万里君

   理事 小野塚勝俊君 理事 岸本 周平君

   理事 高山 智司君 理事 中塚 一宏君

   理事 和田 隆志君 理事 後藤田正純君

   理事 竹本 直一君 理事 石井 啓一君

      網屋 信介君    池田 元久君

      今井 雅人君    大串 博志君

      岡田 康裕君    木内 孝胤君

      小林 興起君    小宮山泰子君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      菅川  洋君    橘  秀徳君

      富岡 芳忠君    豊田潤多郎君

      橋本 清仁君    橋本  勉君

      平山 泰朗君    福嶋健一郎君

      古本伸一郎君   松木けんこう君

      山尾志桜里君    渡辺 義彦君

      小渕 優子君    加藤 紘一君

      北村 誠吾君    野田  毅君

      茂木 敏充君    森山  裕君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   内閣官房副長官      古川 元久君

   内閣府副大臣       大島  敦君

   内閣府副大臣       平岡 秀夫君

   財務副大臣        池田 元久君

   財務大臣政務官      大串 博志君

   財務大臣政務官      古本伸一郎君

   厚生労働大臣政務官    山井 和則君

   政府参考人

   (国土交通省大臣官房審議官)           井上 俊之君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月八日

 辞任         補欠選任

  岡島 一正君     木内 孝胤君

  下条 みつ君     平山 泰朗君

  鈴木 克昌君     小宮山泰子君

  松木けんこう君    橋本 清仁君

  笠  浩史君     橘  秀徳君

  田中 和徳君     加藤 紘一君

  竹下  亘君     小渕 優子君

  山本 幸三君     北村 誠吾君

同日

 辞任         補欠選任

  木内 孝胤君     岡島 一正君

  小宮山泰子君     鈴木 克昌君

  橘  秀徳君     笠  浩史君

  橋本 清仁君     松木けんこう君

  平山 泰朗君     下条 みつ君

  小渕 優子君     竹下  亘君

  加藤 紘一君     田中 和徳君

  北村 誠吾君     山本 幸三君

    ―――――――――――――

八月六日

 一、保険業法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、第百七十四回国会閣法第六四号)

 二、財政に関する件

 三、税制に関する件

 四、関税に関する件

 五、外国為替に関する件

 六、国有財産に関する件

 七、たばこ事業及び塩事業に関する件

 八、印刷事業に関する件

 九、造幣事業に関する件

 一〇、金融に関する件

 一一、証券取引に関する件

の閉会中審査を本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

海江田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として国土交通省大臣官房審議官井上俊之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

海江田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 また、本日は、参考人として日本銀行総裁白川方明君に御出席をいただいております。

    ―――――――――――――

海江田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。加藤紘一君。

加藤(紘)委員 金融、財政、円高などについて御質問申し上げます。

 ただ、今は民主党の代表選挙をやっておりまして、この点も議論になっているようですので、余りどっちかのサイドにつくような質問は、慎重に慎重にやっていきたい、こう思っておりますので、歯切れが悪いかもしれませんが、お許しください。

 きょう自由民主党は、今会議が終わったばかりですけれども、緊急経済対策についての部会レベルの合意を得ました。午後には党内、総務会等の決定になっていきます。さあそこで、四・二兆円にわたる補正を組まなきゃならぬときに来たのではないか、そしてその財源はこういうふうに地道に考えていますよということを発表するんです。

 ただ、問題は、自由民主党は今野党ですから、それをどこに持っていったらぼんときくのか、受けとめてもらえるのか、反対なら反対と言ってもらえるのか。今、政府・与党における経済対策、経済政策の司令塔はだれかということをまずお聞きしたいんです。

 昔は、こういう経済対策をやるときには、例えば宮沢喜一さんのときには経企庁の一定の局長、エコノミストがいて、そこに話すと同時に、当時の大蔵省の肝心かなめの人に根回ししておくというと、だんだんそれが回っていくという、つぼというのがあったんですね。

 それから、もっと昔にいけば、本当に何十年も前であれば、大蔵事務次官と通産事務次官と日銀のそれなりの人が例えば日銀の氷川寮か何かで秘密に会って、こういうふうにしてやっていかなきゃならぬね、それでは政治家に振りつけるのは、では総理・総裁の方は大蔵事務次官がやりなさい、通産事務次官は通産大臣の方に振りつけましょうとかいって、それなりに、よくても悪くても司令塔があった。

 それから、私たちが自社さ政権で四年ぐらいやっていたときは、そのときはかなり政治決定によって経済政策を打っていったから、でも、財源的に大丈夫かというようなことは、財務省の総括審議官というポジション、主計にも理財にもちゃんと話をできるようなポジションの人がいて、そこに話をすると、いや、それはそしゃくできないんじゃないでしょうか、どこまでならいいんだ、この辺までですねというようなころ合いがあって、実に政治と行政がうまく絡んでいたと思うんです。

 小泉さんの時代には、よくても悪くても、悪くてもよくても、竹中平蔵という人がその辺をぐいぐいぐいぐいとやった。

 では、今はだれか。私は、菅さんだとは思わないんですね。菅総理だったとすると、あんなにぐらぐらしないはずです、自分でそこを決めてやっているなら。では、戦略本部をつくるとかつくらないとかいったけれども、ああ、そこに今度できるのかなと思っていたらそれもなくなって、ということは財務省主導に戻ったのかな、すると財務省の総括審議官にまた戻るのかなと思ったりするんですね。

 我々自由民主党がきょう決定したものを、まあ形式的には官房長官に出したり野田財務大臣に出したりするでしょう。しかし、そのときに、内々にあの男に話しておけば大体反応があるだろうと思う、そのミスターXとはだれか。ヘッドクオーター、経済マクロ政策の決定の、財政政策も眺めながらやる決定の、参謀本部の中核の人はだれかということについてお聞きいたします。

 一番最初に、これはもしかしたら内閣官房にお聞きした方がいいのかもしれない。もし自分ですといったら自分ですと言ってもいいんですよ、古川さん。官房で全体を見回して、一体だれなんですか。ちょっと前までは、鳩山時代には仙谷由人という人がやっていたような気がしますけれども、今はだれでしょう。

古川内閣官房副長官 大変、加藤先生から、今までの政権の経済財政政策の決め方についても御高説を賜りまして、私も勉強させていただきました。

 まさに、先生いみじくも言われましたように、小泉政権におきましては竹中さんという、一人でまさに全部負うという非常に象徴的な方がおられたかもしれませんが、加藤先生も今お話をされましたように、ほかの政権下においては、一人がすべてというわけではなくて、何人かの方がチームとなって、最終的にはそれを官邸で、そして総理のもとでまとめていくという形がとられていたのではないかと思います。

 私ども、チーム民主党、そして今菅内閣として、私どもは官邸主導、政治主導で政策を決めていく、そのことについては経済財政政策についてもそうしたスタンスをとっております。したがいまして、経済政策につきましても、これは最終的には総理のリーダーシップで決めていく。もちろん、経済財政の担当の大臣もおられます。そしてまた現場のさまざまな産業の状況などを見ておられる経済産業大臣もおられます。そして財政の方を見ている財務大臣もいるということでございます。

 私ども、今、政府の中で、この金曜日にも経済対策を取りまとめる、その準備を行っておりますけれども、今回の例で申し上げますと、まずやはり総理が、この円高そして経済の先行き不安、こうした状況に対して経済対策をとっていこう、そういう御判断をされまして、そのもとに各大臣に現状はどうなのかという情報の収集を指示し、そして総理のもと、官邸にそれぞれの大臣に現状をきちんと報告させて、もちろんそこには官房長官や私どもも加わっておりますけれども、ヒアリングをした上で、その上で総理が中心となって基本方針を取りまとめ、そしてその基本方針に従った具体的な最終的な経済対策の取りまとめは経済財政担当大臣である荒井大臣にお願いをさせていただいたということでございます。

 ちなみに、今、私どもの内閣におきましては、党の政調会長であります玄葉大臣も閣内に入っておられますので、党の意見等も踏まえるということで、この政府としての考え方をまとめるに当たりましては玄葉大臣にも入っていただき、そして、こうした経済関係の閣僚委員会、そうした場での議論を通じて、総理のリーダーシップのもとに経済対策を取りまとめる、今そうした作業をやっているところでございます。

加藤(紘)委員 今は組織図を丁寧に説明いただいたような感じですが、今の答弁から聞くと、いわゆる官邸主導でやっていくので、総理のもとで何人かで議論をするというあたりが少し感じ取れるかと思うんですね。

 しかし、私も官房長官をやったことがあるんだけれども、官房長官というのは雑務に忙しくて、副長官なんていうのはもっと細かな雑務に忙しくて、じっくりと経済指標を見ている暇というのは、一日十五分なんかあるかどうかな、こう思います。日々動いている円相場、株式市場、そういったところを見ながら日本経済という体の調子を判断する熟練した内科医のような作業は、どこかのセクションでやっていなきゃいけないんじゃないかなというふうに思います。

 今のところ、まだミスターXはだれなのかというところまでの答弁はいただけていないような感じがしますね。その点で、実はこれは最後にちらっとおっしゃったけれども、荒井戦略大臣のところで取りまとめてもらうみたいなことをおっしゃいましたね。

 平岡さん、そういう心構えがございますか。

平岡副大臣 御答弁いたします。

 先ほど古川副長官の方からもお話がありましたけれども、総理より、今回の経済対策については荒井経済財政政策担当大臣に取りまとめを行うように指示がございました。荒井大臣のもとでこの問題についても今一生懸命取り組んでいるところでございまして、私自身も、荒井大臣のもとで、経済財政政策担当の副大臣ということで務めております。

 精いっぱい、この経済対策の策定に向けて頑張っていきたいという気持ちをしっかりと持っておるところでございます。

加藤(紘)委員 そこの体制がこれからしっかりできていかなきゃいけない。それができるまでは、やはり今、財務省が、この事態をほっておけないというので、かなり前面に、または裏面に出て動かそうとしているというのが今の実態なんじゃないかと思うんです。

 ただ、その際に、やはり経済政策のヘッドクオーターとなると、ある種の力と権威と信用がなきゃいけませんね。竹中さんのときには、メディアも含めて、よくても悪くても自分がやっているんだというイメージをつくり上げちゃった。今は、財務省がそれをやると一斉にバッシングになると思いますよ。それはそうでしょう。党首、代表選挙で、そういう財務省の意見を聞くとかまとめさせるということは悪だというようなことを菅さんもそれから小沢さんも言っているわけだから。それは世間の人が、特に国際市場が、世間の目が、世界の目が、財務省の例えば総括審議官が案を決めて野田さんがやっているというふうには見ないように見ないように、みんなで権威を落としているわけだから、やりにくいんだと思いますね。

 さあ、今のヘッドクオーターはだれであるべきか。財務大臣はどうお考えになっていますか。

野田国務大臣 加藤委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 経済政策の、要は司令塔は今どこにいるのかということだと思いますが、事実関係で申し上げれば、先ほどの古川副長官それから平岡副大臣のお話のとおり、八月三十日に決めた経済対策の基本方針は荒井大臣を中心にまとめました。今度は九月十日、さらに詳細にわたる九千二百億円の経済予備費の活用などを含めた閣議決定に向けて準備しているものも、これも荒井大臣を中心にまとめていきます。

 その中で、何かやるととかく財務省主導と言われてしまうので、分をわきまえながら我々もチームの一員として全力で支えていきたいと思いますが、やはり何といってもこれは総理主導だと思います。経済政策全般はやはり最終的には総理主導であるべきだと思っていまして、八月三十日の経済対策の基本方針にも、新成長戦略の実現会議というのをつくるということになりました。それは九日から、あしたからスタートいたします。政府からも、私もメンバーに入っておりますが、議長が総理であります。経済団体あるいは労働団体、民間有識者、あるいは関係機関の長、日銀の総裁も入りますけれども、こういうメンバーで経済についての議論を大いに行って、その集約は議長である総理がまとめていく、そういう流れをこれからつくっていくことになります。

加藤(紘)委員 それはごく当たり前の話なんですけれども、問題は権威なんですね。

 中央公論に、一カ月ほど前、菅総理という人はどういう人なんだと。あなたは自社さ政権で三人組で、菅さんも含めて政策決定したり、それからかつて金融国会で、日本発の金融混乱が世界に出るんじゃないかなと言われていたときに一緒になって協力してやったことがあるねということで、菅さんというのは政策能力はどうなんです、どういう人なんです、こう聞かれましたよ。これはなかなか難しいんですよ。知り合いでもあるし、友達でもあるし、悪口も言えないし、いいことも余り言えないし、政治的には難しいんですけれども。

 そこで、私はあの人はまだらな人だと言ったんです。金融危機のときには、えらい物すごい知識がありまして、感度がよく、そしてここで、自民党の皆さんよ、こうしなきゃいかぬのじゃないですかという、金融正常化それから強化のための法案を提案してきて、そして自由民主党の政策新人類、当時、安倍晋三それから塩崎恭久、根本……(発言する者あり)いたいた。そういう中でやって、いいものをつくり上げましたよ。しかし、時には、消費性向という言葉がわからなかったりするんですね。ですから、そうしますと、総理がやっているということだと、余り今しっくりいかないところが国民の間に私はあると思いますよ。

 さあそこで、今、体制というのは正直言ってできていないという気がします。権威のある、そして実力のある体制が今の政府内に経済司令塔として存在しない。早くこれは何とか手を打たないと、日本のために非常にまずいというふうに思います。

 実は、きょう一時間ほど時間をいただいたので、私、ある人と実際的には討論してみたいと思ったんです。

 それは、新聞報道によりますと、水野和夫さんという民間のエコノミストが、今度政府の中に、経済統括審議官かどこかの名前で招かれるという話を聞いたんですが、その水野和夫さんを政府のチームに入れるという話があるんですか。あるとすれば、どういう気持ちでお招きになり、この発想はどなたから出てきたかということについて、多分これは、いわゆる荒井さんのところの決定でもないし、財務省の決定でもない。これはかなり政治的な決定じゃないかなと思いますが、内閣官房、古川さん、どうですか。

平岡副大臣 御指名の方は古川副長官でありましたけれども、本日発令する予定先になっているのが内閣府の私のところでございますので、まず私の方から先にお答えをさせていただきまして、その後、官房副長官の方からということにさせていただきたいというふうに思います。

 今、加藤先生がおっしゃられたように、本日、水野和夫氏を内閣府の官房審議官、所掌としては経済財政分析担当ということで任命をさせていただくことになります。あと一時間後ぐらいになろうかというふうに思います。

 御案内のように、水野和夫氏については、某証券会社においてチーフエコノミストの重責を担われているほか、各省庁の委員会委員、あるいは各大学の客員教授等を務めておられる著名なエコノミストでございます。これまでも、高度な専門的知識を有している中で、現状分析あるいは歴史的、構造的視点からの経済分析にも精通されているということでございますので、私たちの経済財政分析の場に大いに生かしていただきたいということで、御就任をお願いしたところでございます。

 その他の経緯等につきましては、副長官の方からお答えさせていただきたいというふうに思います。

古川内閣官房副長官 お答えいたします。

 今、平岡副大臣の方からお話がありました、きょう発令になる水野さんでございますけれども、私、たまたま水野さんは高校の大先輩でいらっしゃって、昔からよく存じ上げておりますし、また、仙谷官房長官なども、昔から水野さんとはいろいろ意見交換もして、旧知の仲でありました。

 そのほかにも、政府の中、例えば、きょう自見大臣がいらっしゃっていますけれども、自見大臣のもとの大塚副大臣なども大変昔から、高校、大学両方、先輩後輩というあれもあったとか、かなり政権内、そしてまた党の中でも水野さんには従来よりいろいろな御示唆を、私どもいただいてまいりました。

 平岡副大臣の御答弁の中にもありましたように、水野さんにつきましては、現状の分析はもちろんでありますけれども、そうではなくて、今の日本のみならず、世界の経済が陥っている状況、歴史的、構造的な視点から分析をする。多分これは加藤先生も同じような御見識を持っておられるのではないかなというふうに思いますけれども、やはり今、日本経済が直面している、そして世界経済が直面している状況というのは、局面、局面で見える状況だけではなくて、これは相当、何世紀に一度と言われるくらいの大きな構造転換、そういう状況の中に、今、日々の経済現象というものが起きているのではないか。そうした視点を持って、それこそ先ほど加藤先生からもお話があった為替とか株とか日々の動きも見ていかないと、そこの日々起きているところだけを見て、そこに対症療法的に対応していくのでは、今、日本経済が陥っているこの状況からはなかなか脱却できないのではないか、私どもはそのように考えております。

 そういった意味では、水野さんのような、今起きている問題について、歴史的、そして構造的な視点から分析をする、そういった面でも大変すぐれている方に政府の中に入っていただいて、そうした構造的、歴史的視点を踏まえて、その上で、今目の前で起きている現状に対してどういう対応策を打っていくのか。小手先ではない、応急措置ではなくて、本当にこれから長期的に日本の経済、そして将来の成長につながっていく、そのためにはどういう経済政策を打っていくのがいいか、そういった点で、私どもはこの水野さんは大変適格ではないか、そういうことで、政府に今回入っていただくということでお願いをさせていただいたわけでございます。

加藤(紘)委員 私は、水野氏を政府のチームの中に入れるということはいい判断だと思います。まあ、あなたの旭丘の先輩後輩とか、そういうことは余り大した話ではなくて、そういうのはどちらかというとメンションしない方がいいかな。観光庁長官を決めたとき、いろいろなことを言われましたからね、内閣官房副長官というのが。だから、そういう人脈はともかく、いいと思います。

 私は、この水野さんという人に会ったことはありません。勉強会に呼んだこともないし、勉強会で話を聞いたこともない。

 ただ、二つあるんですね。リーマン・ブラザーズに端を発した国際的な金融危機のときに、これをしっかりと分析して、一年も前から予言していました。それは日本のエコノミストで二、三人しかいない。それは相当なものですよ。

 このアメリカを中心とした、やくざなと言いましょう、やくざな信用創造によって、世界経済は今混乱のきわみに達していると思うし、ただ、ほんのちょっと今ふたをしただけで、その混乱の要因はおさまっていないと思います。そういう中で、危機感を持ちながら、大変なことが起きますよと。実体経済、つまり犬の胴体を、国際金融の流れ、つまり犬のしっぽが振り回しているという状況の危機感を持つべきだと言っていました。

 彼のいろいろな論文は、私、相当読みました。これだけの、歴史的にも、それから現状についてもしっかりとした分析をしながら、日々、具体的な話に意見を言ったりコメントをする能力というのは、なかなか相当なものだと僕は思っています。

 彼の意見、デフレはそんなに簡単に直らないよというようなことは意見として、一つの軸を持ったエコノミストがぶれずにいて、その人を中心に、おかしいじゃないかとか、言い過ぎじゃないかとか、いや、このファクターが足りないじゃないかということを政府の中でしっかりと議論が始まるならば、それは国益に合致することだというふうに思うんですね。

 そういう面で、私は、日銀総裁もいらっしゃるけれども、リーマン・ブラザーズの混乱の前の我々の国の国際金融についての分析というのは弱かったと思う。そして、あれが発生してすぐ、与謝野さんが、金融大臣だったかな、財務大臣だったかな、その影響はどうですかと言われたら、まあ日本の金融はしっかりしていますから、ほんのちょっと蚊に刺された程度ですと与謝野さんが言って、これは彼の失点になったと思うんですが、これは与謝野さんが後で僕に言っていました。財務省からいろいろ分析を聞いていたんだけれども、結果として甘くて、そして大変困っているんだよということを述懐していました。蚊の鳴く程度の影響ですと当時の財務省の分析はあったんだと思いますよ。だからこそ、財務大臣がそう発言したんです。

 私は、これは前回ここで言ったかどうか忘れましたが、予算委員会でもちょっと言ったんだけれども、リーマン・ブラザーズの事件は、八年の九月でしたね。九月十五日だったんじゃないかと思います。九月の七日、一週間前、私は中国で胡錦濤と一時間、話をしました。私、日中友好協会の会長にあのときなったものですから、そういうこともあってちょっと行ったんですが、その二日前に中国外務省に行きまして、武大偉事務次官に会って、この人は北朝鮮をめぐる六者会談の座長なんですね。いろいろ話を聞きました。おもしろかった。旧来の友人なものですから、率直に裏話もしてくれた。帰り道、実は武大偉さん、私あさっておたくの親方に会うんだよ、胡錦濤に会うんだよ、それで、これから近々迫り来る国際金融の大波乱について中国は何を考えるだろうということについてちょっと議論してみたい。オタクっぽい話だから少しブリーフィングペーパーを上げておいてくれないかと言いましたら、武大偉が何と言ったか。加藤さん、それは必要ありません、やりません。なぜかというと、うちの親方は、今パラリンピックの仕事がちょっとあるけれども、それ以外の時間は全部国際金融の分析に、衆知を集めて毎日のように会議しているんですと。ですから、外務省からなぞという若干緩いペーパーなんか出したら笑われるから、もうストレートにすぐ討論してくださいと言いました。

 そこで、その討論の七日の日に私は問題を提起しました。いずれそういうときが来る、近いかもしれぬと。そのときに対応できるのは、中国のように二兆ドルにわたる外貨準備を持っているところ、それから産油国グループが二兆ドルぐらい持っている。日本、我々は一兆ドルぐらい持っている。この余裕を持っている国が何らかの形で手伝わなきゃいかぬと思う。それは国内政治からいうと危ないことだ。しかし、国際金融の混乱をおさめるためには必要なことだと思うんだけれども、どうですかと言ったら、胡錦濤はばしっと答えましたね。うちもやります、そのために貢献しますと。中国とアメリカと日本で、そして、その他の国々と言いましたが、産油国ということを言いたくなかったみたいですね、それでやりましょうということを言って、後で聞いたら、いいテーマについていい討論ができたと言って非常に喜んでいたというんですが、まさに自分が危機感を持って勉強していることが、ああ、ほかの国にもそういう意識があるんだなということを彼は喜んだようです。

 一週間後、リーマン・ブラザーズが破綻いたしました。そういうときに、正直言って、外務省には危機感はありませんでした。財務省の一部にはあったように思います。日銀にはもっとあったのかもしれませんが、僕は日銀と余りおつき合いがないものですから、聞いていません。多分、国際局中心にあったんだと思いますね。そういうときに、この水野さんのようなエコノミストを内部に抱えていたら、私は日本の国益はかなり促進されていたのではないかなと思います。

 さあそこで、日銀総裁か、金融大臣にまずお伺いしたいんだけれども、今、世界の金融事情はまだまだおさまっていないように思うんですね。

 いろいろな方の分析を読んでみますと、一九八〇年、サッチャーが政権をとったときに新自由主義化が始まった。そしてアドバイザー、フリードマン。それからハイエク。そしてキース・ジョセフという、サッチャーと同期の男だけれども、余りインテリ過ぎて政治家としてはうまくいかないので自分はアドバイザーに徹すると言った、イギリス政治をその後三十年動かした、根源になった男。四人で決めて、国有企業の民間化ということをどんどんとやっていくと同時に、若干マネタリスト的な政策をどんどんと進めた。そのときに世界の実体経済というのは十一兆ドルのトータルGNPであった。そのときに国際金融の資産は十二兆ドルであった。その後三十年やっているうちに、世界のトータルGNPは今四十五兆ドルと思うんですが、リーマン・ブラザーズの破綻の前にはそれが百六十五兆ドルになっていた、約四倍になっていた。デリバティブスとか何だらかんだら、ありとあらゆる金融商品がつくられて、水膨れしていって、それぞれがみんな、それは自分の財産だと思っている。この状況は余り変わっていないと思うんですね。

 だから、いつかはこれまた来る。とりあえずは食料、とりあえずは石油、とりあえずはゴールドのあたりで悪さしているんだと思うんですが、余り油断できない状況なんじゃないかなというふうに思いますが、金融大臣、いかがですか。

自見国務大臣 大変、加藤紘一先生の本当に含蓄のある経験を踏まえた御質問に、本当に感銘を持って聞かせていただいておりました。

 私も、十二年前、橋本改造内閣の閣僚をさせていただきましたが、加藤紘一先生は幹事長でございまして、自社さの政権で菅総理がさきがけの政調会長をしておられたということを今まざまざと思い出していたわけでございます。

 実は私は、先生御存じのように、二十二年間自由民主党におらせていただきましたが、まさに先生の言われたように、先生が非常にいろいろな有名な方とも対談をしておられますが、まさにサッチャーの時代に始まった新保守主義といいますか、マネタリズムというか、金融をレバレッジだとか、あるいはデリバティブだとか、そういったことでどんどんどんどん膨らませていく、それで実体経済よりもずっと貨幣の経済が大きくなっている。やはりこういう時代というのは長く続かないし、長く続かせてはいけないというふうに私自身は、個人的な政治家としての信条でございますが、思っておりまして、まあ、いろいろお立場はあると思いますけれども。

 そんな中で、まさに五年半前、小泉さんと竹中さんが郵政の民営化をしたわけでございますけれども、そういう時代的な背景の中で、まさにマネー全盛の時代にやった郵政改革だと私は思っておりますので、やはりそれは自分の信念に観じて、やはりこういう時代を長続きさせてはいけない、長続きしない、そう思って、実は大変受難の日もございましたが、今はやらせていただいているわけでございます。

 全く実体経済よりもずっと貨幣経済が大きくなってきている。そのギャップといいますか、それが二年前のリーマン・ブラザーズ・ショックであらわになって、そして非常に世界の、アメリカは当然、米ソの冷戦構造が終わった後、一強、一つの強い、政治的にも経済的にも軍事的にも最も強い国でございましたから、その中心の政治的権力はブッシュさん。そして経済的なバックグラウンドとしては、もう先生御存じのように、ウォール街の、特に今、投資銀行というのがそういった金融工学の発展、あるいは非常にいろいろなものを、証券を細分化する、そういった手法を使ってきて、規制緩和の中でもう政府は何も物は言うな、むしろ我々は自由にした方が一番富が膨らんで、国民、まあ世界の経済が豊かになるんだ、そういう考えが主流だったと思います。

 私も、実はこの前アメリカに、バーナンキさんあるいはボルカーさんを訪ねて行ってきたのでございますが、もう加藤先生御存じのように、アメリカは一九二九年以来八十年ぶりに実は金融規制強化法というのを、金融規制の改革法を、今、オバマ大統領も署名しまして、成立をいたしました。しかしまだ、省令、政令が残っておりまして、これが非常にまた大事なところでございます。

 実は、先生もよく御存じのように、ボルカー・ルールというのがございまして、投資銀行が今までやってきたようなことを銀行が自己勘定の中でやってはだめだ、ハイリスク・ハイリターンのいろいろな、かつて投資銀行が駆使したような方法は、お客様から頼まれたらそれはしてもいいけれども、銀行そのものは自己勘定の中でそういったハイリスク・ハイリターンに対応したようなことを禁止するというのが、実はボルカー・ルールでございます。

 そういった意味で、アメリカという国は先生よく御存じのように大変多様な国であって、ブッシュのアメリカもアメリカですし、ウォール街の本当にいわゆる強欲と言われる金融資本家が世界じゅうを跳梁ばっこするということもアメリカだし、同時に、それに対してやはり反対する人がいるというのもまたアメリカであり、ボルカーという人は、先生御存じのように、一九七〇年代のFRBの議長でございましたが、ああいう方をまたオバマ大統領が重用して法律をつくるというのもまたアメリカだ、私はこう思っております。

 まさに今、世界の中が大きく、今先生が言われましたように、新保守主義といいますか、非常にグローバリゼーション、その中心は経済のグローバリゼーション、金融のグローバリゼーション、特にそれは金融工学の発達あるいはITの発達がありますが、それが極限までいってきて、二年前のあのリーマン・ブラザーズ・ショックで破綻をしたと思っておりまして、そういう中で、やはりそういった意味での天動説は否定されたんですけれども、新たな地動説を模索しているのが今の人類の姿だ、こう思っております。

 そういった意味で、具体的な話でございますが、銀行につきましては自己資本規制の見直し、これはG20サミットで合意をいたしまして、ことしの十一月のソウル・サミットで合意をするという話でございますが、一つは、銀行でございますから、自己資本の質と量をどういうふうに強化するか。しかし、特にアメリカ、英国は今、銀行家のといいますか、強欲な、あるいは投資目的というよりも、そういうハイリスク・ハイリターンのことで、会社の中だけで、企業の中だけでそのリスクをカバーできない、国家にまで悪影響を及ぼして、それを納税者が要するに負担せねばならないという、民主主義国家でございますから、大変批判が強いということが、今さっき、ボルカー・ルールのようなものができた民主主義国家における理由だと私は思っております。

 しかし同時に、銀行というものは自己資本というのがある程度なければ、信用というのがやはり自由主義経済では中心でございますから、自己資本が高ければ高いほどいいというふうにいきがちでございますけれども、同時に、加藤先生も一番御存じのように、十年前、日本国は金融危機に見舞われまして……(発言する者あり)はい、わかりました、短く言いますけれども、貸し渋り、貸しはがしということがあったわけでございますから、そこら辺はきちっと、経済のグローバルな、マクロな発展も考えながら、しっかり、やはり安心と安全と、そして、その地域その地域、その国その国には非常に伝統的な歴史がございますから、経済もまた別々でございますから、そこら辺を見て、バランスを持ってきちっと政治家が判断すべきことだと。

 これが、少し長くてよくわからないよという話もしましたけれども、加藤先生の話自身が大変深遠で、実に精巧で、今の人類の歴史を言い当てていると私は大変尊敬しておりますので、少し何かわからないというようなおしかりをいただきましたけれども、そういったことはよく後から私も勉強させていただきたいと思いますが、そういったことではないかなというふうに思っております。

加藤(紘)委員 よくわかります。

 ただ、大ざっぱに見ますと、世界的な金融の規制強化の話は何だかぴんとこないことが最近あるんですね。

 私は年ですので、小さいとき、おばあちゃんに童話を聞かされました。それは、かちかち山とかなんとかいろいろあって、タヌキというのは怖いんだよ、木の葉をぶうんとやると金貨にしちゃうんだよという、日本に昔から伝わった民話がありますね。だから、日本は、実物経済と貨幣の関係にはかなり密接なリンクをさせなきゃいけないと思う。余りお金がぱらぱらっとなっちゃいけないという国だと思いますね。

 ですから、デリバティブスのいろいろな種類、その中の一つ、サブプライム、それから、一番何かよくわからないんだけれども、銀行が貸し倒れになったときの保険にAIGがつくったクレジット・デフォルト・スワップとかといって、銀行のための保険商品か何かがめちゃくちゃな金額なんでしょう。そういうものを含めて膨大なお金がつくられて、そしてそれが当然ながら、換金してよというとできなくなって、サブプライムが起き、リーマン・ブラザーズがやられちゃったんだと思うんだけれども。

 それを、白川さん、結局、政府と中央銀行が今預かっているようなものですね、アメリカも、いろいろな国も。そしてギリシャはどうしたのか知りませんが、日本はそういうのをやっていない。だから、非常にしっかりとしたことをやっているのです。ところが一方、勝手に勝手に金貨をタヌキにつくらせたようなアメリカがでかい顔しているというのはおかしいなというふうに思っています。

 それで、今回の世界的な金融の規制強化のときに、日本は余り規制強化しないでよというポジションなんですね、日本の金融庁は。わかりますよ。四%、八%、自己資本が何だかんだということで、十年前、日本の金融は大混乱したわけですからね。さらにそれを強化したら貸しはがしにつながるだろうというのはわかるんだけれども、自己資本の量と質を最も考えてくれなきゃならぬのはアメリカなんじゃないですかね、これだけ水増し資本をつくらせて。

 だから、日本は資本の規制にちゃんと耐えてきたんだから、アメリカよ、もっとやるべきだという規制強化のポジションに立つべきではないかなというふうに思うんだけれども、やはり余り規制強化には反対の立場ですか、金融庁。

 まずこれは金融庁、その後、日銀にお願いします。

自見国務大臣 簡単に答弁いたします。

 規制強化という話でございますが、今申し上げましたように、やはり自己資本の安定性と、それから当然、貸し渋り、貸しはがしがないような、高ければ高いほど、自己資本比率がよければいいというものでもございませんし。

 しかし同時に、今まで先生が言われましたように、どんどんどんどん自己資本を高くすれば今度は貸し渋り、貸しはがしが起こりますから、日本は十年前に金融ショックというのを、本当に苦しい目に遭いながら経験したわけでございますから、むしろ今は、世界のバーゼルの二十七カ国、主にG20の国がございますが、アメリカやイギリスは、こういうひどい目に遭ったから、民主主義の国ですから、より自己資本を強くすべきだというような意見もございますが、日本という国は、十年前にそういう目に遭っていますから、非常に苦しい銀行危機を乗り越えた先進国でございますから、私が行政当局から報告いただいておるところでは、だんだんだんだん日本の言うことに収れんしつつあるということを聞いておりまして、私は非常にいいことではないかなというふうに、政治家としては思っております。

加藤(紘)委員 最後に、十分ありますので……(発言する者あり)日銀総裁、お願いいたします。

白川参考人 お答えいたします。

 自己資本比率規制でございますけれども、これは先ほど大臣からもお話がございましたとおり、G20のサミットにおいて、自己資本の質それから量の充実を図るという方向性が打ち出されておりまして、日本自身もこれには参加しております。

 その上で、私ども、やはりバランスをとっていくことが大事だというふうに考えております。

 そのバランスというのは三つの点がございまして、一つは、今回、自己資本比率規制だけではなくて、いろいろな規制が同時に提案されております。一個一個の規制は望ましい規制であっても、これを全部足し合わせた場合にどういう効果を生むのか、それをバランスよく見ていく必要がありますよ、これが第一点でございます。

 それから二つ目は、現在の経済情勢とのバランスでございます。まだ世界経済の回復が盤石ではございませんもので、したがって、現在の回復それ自体を阻害しないような形でバランスよく導入する必要があるということでございます。

 三つ目は、これは国ごとにやはり金融の状況は違っております。先生御指摘のとおり、アメリカの銀行は、投資銀行業務が非常に大きいわけでして、日本はそういう業務は相対的に小さいわけでございます。各国それぞれ金融の違いがございますので、そういうものにも配慮したバランス、これが大事だということでございます。

 結論的には、質、量の充実は大事です、しかし、バランスをとっていくことも大事ですという主張を行っております。

加藤(紘)委員 日銀総裁に、続いて円高に関する対策の一環についてお聞きします。

 僕は疑問があるんです。それは、量的緩和というものです。

 円高になりますと、なかなか対策の立てようがない、財政出動は限界に来た、来たどころではない。ですから、そうするとすぐ、日銀がしっかり金融面で支えてほしい、金利はもう限界だから量的緩和といって、無理なことを頼まれているのが日銀なんですね。それで、それはもうだめですとなかなか日銀は言えないから、量的な緩和をやりなさいと言われると、金融緩和をやりますと日銀は答えるわけです。

 そして、五、六年前は、一生懸命同じようなことをやっていたんだけれども、量的緩和といって各民間金融機関にいっぱいお金を借りさせて、そして日銀の当座預金にそれを積ませておく。その金額が大きくなればなるほどそれは金融緩和なのであるといったって、銀行側は貸す相手がいないから当座預金にためちゃうわけで、全く意味のない貯金になっちゃうから、専門家は何か豚積みとかと言っていたんですね、あの当時。

 今度も、日銀、何かやりなさいと言われて、二十兆から三十兆にしましたとかいって、これがまた四十兆になるとさらなる緩和ということになるんでしょう。しかし、民間金融機関が余りリスクがある貸し手には貸さないとなると、その金融緩和というのは一体何の意味があるのかなと。

 金融の量的緩和というのは本当に一体何になるのかなという議論が当然出てきて、最後はやはり財政でやらなきゃならないから、新発国債を日銀は買いなさい、ヨーロッパ諸国でもやっているじゃないですか、清水の舞台から飛びおりたじゃないかみたいなことで、また全部、すべての苦しみを背負うイエス・キリストみたいにあなたがなるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、大丈夫ですか。できないこと、意味のないことはだめですというプロとしての発言をしっかりやると、危ないですか。

白川参考人 金融政策について今加藤先生の方から、中長期な視点をしっかり踏まえた、その上で金融政策をしっかりやれという御指摘をいただきました。

 これは、短期的な、日々起きていることに対してどう金融政策が対応するかという話と、それから基本的な金融政策のスタンスということで、分けて御説明をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、量的金融緩和ということでございますけれども、日本銀行は、現在、先生御指摘のとおり、民間金融機関、金融市場に対して潤沢に資金を供給しております。これは今、金融機関の方にお話を聞いても、日本銀行からの流動性の供給が少ないために本当はもっと貸し出しをしたいんだけれどもそれができないんだという状況ではないということでありまして、量は潤沢に供給しております。

 問題は、量を十分に供給することによってデフレが脱却されるのかということでございます。

 実は、日本銀行は、二〇〇一年から二〇〇六年まで、当座預金の残高を目標にしまして、当座預金を大幅にふやしました。しかし、この効果を冷静に評価してみますと、これは二つありまして、一つは、金融システムの安定を確保するという意味ではこれは大変意味があったというふうに思っております。この面は、金融システムが安定していますと十分には認識されにくい事柄ではありますけれども、これは、先ほどのリーマンではありませんけれども、経済発展の基礎でございます。その意味で、この安定の効果は私は非常に大きかったと思っています。一方、経済活動を刺激していく、あるいは、その結果、物価上昇率が上がっていくという面での効果は限定的であったというのが前回の経験の評価でありました。

 ただ、これは前回の日本でございまして、では今回、世界はどうかということでございます。

 FRBは、当座預金の残高といいますかバランスシートが大いに拡張いたしました。しかし、アメリカのコアとなるインフレ率は着実に今低下をしております。だからこそ、デフレに陥るかどうかということを今議論しているということであります。

 こういうことを総合しますと、経済が本格的に成長していくためには、これはやはり将来人々が成長していくんだという期待が持てるような経済、それは結局は、民間の活力を引き出していくような努力と、一方で行き過ぎの暴走を防いでいくような枠組みというものが両方必要だというふうに感じております。

 短期の政策でございますけれども、せんだって、八月三十日に追加の金融緩和措置を講じました。これは、足元の経済の状況を見てみますと、アメリカの経済の不確実性の高まりを背景としまして、我々としては、経済、物価の先行きの下振れリスクの方をより注意して見た方がいいというふうに思いました。我々は、十分に金融は量も供給しておりますけれども、しかし、この局面でそうした行動をとることが景気の回復というものをより確かなものにするというふうに判断して行いました。

 私どもとしては、中長期的なこと、それから短期的なこと、これをしっかり踏まえた上で、中央銀行としての信認をしっかり守りながら、日本経済の発展に最大限努力したいと思っています。

加藤(紘)委員 御苦労さまでございます。世の中では日銀をぶん殴れば気分がいいみたいな雰囲気がありますが、少なくとも、若干かた目であるけれどもしっかりお仕事をしている。最近は、銀行を通じてですが、具体的に特定の分野の金融を応援するよと、ちょっと日銀の枠を外したようなことまでやらざるを得ない立場にいるということに極めて同情的な気持ちにならざるを得ませんので、頑張ってください。

 最後に、野田大臣、僕は、去年オバマが、十一月でしたか、東京に来て、ここから私はアジアトリップを始めますと言って演説をぶったんですね。あれは重要な演説だったと思います。

 安全保障問題からアジアにおけるアメリカの立場というようなことも全部言ったんですけれども、経済面だけ言いますと、彼はこう言ったんですね。アメリカの方が一生懸命アジアから借金して、それでアメリカにアジアの国々が物を売る、そういう仕組みはもう限界です、もうできませんと。それで、そういうことができないということになると、輸出になれたアジアの国々も急に不景気になって困るでしょう、だから、これから、簡単に言うと、私たちアメリカ人は借金返しの生活に入ります、生活を切り詰めます、アジアの方々もそう思ってくださいと言っているわけだから、ここからくると、アメリカは意図的に円高誘導すると思いますよ。それが現実に起きてきた。そして、それを世界各国が全部協調しているわけですね。

 ですから、今、日本だけが孤立しちゃっている感じですから、ここで日本だけが単独介入なんといったら、一日二兆円か三兆円ずつ、すっちゃっていきますよね。ですから、オバマ演説で予告されたことを今アメリカがやっている、でも余り急激なことは困るよねという通貨外交を、やはり財務省を中心に必死にやらなきゃいけないときじゃないか。

 七十九円七十五銭というのが最近で一番円高ですけれども、そのときに私は自社さ政権の政策取りまとめ座長でした。それで、榊原氏が財務官になってから、彼はサマーズなんかを相手にわっと動いたんだけれども、だあっと百十円ぐらいまで行ったけれども、それは人脈があったということよりも、アメリカ自身が強いドルということを目指したのと一致したんですね。ところが今、オバマ・スピーチはその逆を予告してきた一年後ですから、協調介入はアメリカはやってくれないんだと思いますね。

 さあそこで、大変なことだと思っているんですけれども、そういう中でもありとあらゆる力を使って円高阻止に行くのか、それとも、円高はいいことですと。外国に企業が出ていって空洞化という議論もあるんだけれども、これからは資源というものが経済活動のボトルネックになる中で、日本は安く外国のもの、資源が買えるんですというふうに考えるのかというのが一つ。

 それから、さっき私が言いました、自由民主党は四・二兆円の補正を組むべきだと思って提案しますが、それについての感想、この二つをお聞きして終わります。

野田国務大臣 加藤委員の御質問にお答えをしたいと思います。

 オバマ演説、去年の十一月ですね、私も中身を拝見いたしましたけれども、確かに輸出を重視しようということが強調されている演説でございました。ただ、これは為替には触れておりません。ですから、その先の、心の底の話までは推測の域だろうというふうに思います。

 一方で、今の円高ですが、これは明らかに、一つは、一般的に言われていることは、欧米の経済の先行きに対する不安でリスク回避であるということ、それからやはり日米の金利差が縮小しているということが大きな原因だと思いますが、ただ、明らかに一方的に偏った動きであろうというふうに思っています。

 この間も経産省がこの影響に対する調査を行いましたけれども、輸出産業中心に深刻な影響が出てくると思いますし、下請の企業とかあるいは雇用にも影響するし、委員御指摘のように産業の空洞化にもつながりかねないということで、私も強い懸念を持っています。その中で、できることはあらゆることをやっていかなければならないと思いますが、為替については、これはいつも申し上げるんですが、為替の過度の変動と無秩序な動き、これは経済や金融の安定化にとって悪影響を及ぼす。今の動向については強い重大な関心を持ちながら、これは政府の方針として八月三十日の経済対策の基本方針にも盛り込まれましたけれども、必要なときには断固たる措置をとる、このことに尽きるだろうというふうに思っています。

 四兆円の補正のお話がありました。中身はこれからちょっと勉強させていただきたいというふうに思いますが、とりあえずは九千二百億円の閣議決定をして、これは即応性のある対策であります。即応性のある対策をまず講じながら、あるいは、これからの景気動向、経済動向を見ながら、補正も視野に入れながら検討をするということになると思います。

加藤(紘)委員 終わります。ありがとうございました。

海江田委員長 次に、森山裕君。

森山(裕)委員 おはようございます。自民党の森山でございます。

 野田大臣、自民党は、経済の現状というもの、景気の現状というものに非常に危機感を持っております。ゆえに、緊急経済危機対応特命委員会をつくりまして、どう対応すべきかの議論を重ねてきました。けさの特命委員会で一つの結論が出ましたので、きょうじゅうには党内の手続を終えて政府へ申し入れをするという運びになるんだろうと思います。

 ただ、ここで大変大事だと思いますのは、現状認識が我々と政府と一致するのかどうか、ここは非常に経済政策を打っていく上で大事なことだと私は思っております。私どもが思っている現状認識を少し申し上げて、野田大臣が見ておられる現状認識とどこがどう違うのか、全く一致するものなのかどうか、そこの議論から少し始めさせていただきたいというふうに思っております。

 自民党は、リーマン・ショック後、日本経済は全治三年として、大胆かつ集中的な経済対策を講じてきました。その結果によって景気は回復基調にあったというふうに私どもは思っておりますが、ここに来て悪化傾向に反転をしつつあるというふうに思っています。アメリカを初めとする各国経済の減速等が、我が国経済の実態とかけ離れた急激な円高を招いております。それに伴って輸出産業を中心に成長鈍化の懸念が強まっておりまして、株価も大幅に値を下げ、景気回復の息切れも相まって、今後の我が国の経済に暗い影を落としているというふうに現状を認識しています。

 こうした現状に拍車をかけているのが、申しわけないのですが、民主党政権の稚拙、無能な経済運営による政策不況なのではないかというふうに考えています。急激な円高が進んでいる現状にもかかわらず、菅総理大臣を初め閣僚の相次ぐ静観をするという発言や、CO2二五%削減、派遣の規制強化、あるいは最低賃金の引き上げなど、アンチビジネスな政策を進めているのが現政権なのではないかというふうに思っておりますし、企業を海外へ追い出し、産業の空洞化を招いてしまって、結果として雇用を失うことになるというふうに認識をしているところでございます。

 経済活動あって雇用、そのために国内で事業環境を整えることこそ政府の役割ではないか。私は、一刻も早く経済政策を転換して、政策総動員で経済対策に取り組むべきであり、政治停滞を許している猶予はないというふうに思っておりますけれども、この我々の現状認識というものと野田大臣の認識に差がありましょうか。

野田国務大臣 委員のお尋ねの今の経済、景気の状況に対する基本認識を問う部分でございますが、基本的な認識では差はないというふうに思っていまして、我が国の景気は、持ち直しはしつつありますけれども依然として厳しい状況であって、特に雇用情勢は厳しい、新卒者を含めて大変厳しい状況であるということは間違いありませんし、多くの地域によってもこういう現状があります。

 加えて、お話がありましたとおり、円高の進行とそしてその定着といいましょうか、この傾向が強まっている、これを、為替の問題を含めて、あるいは海外経済の下振れを含めて、景気の下振れリスクというのは間違いなくあると思います。

 その景気の下振れリスクに対する対応が、今回の八月三十日に決まった経済対策の基本方針。これは、一つの視点はやはり下振れリスクへの対応、それからもう一つは新成長戦略を前倒しで実施していこう、こういう問題意識から経済対策の基本方針をまとめました。

 これは、即応性のある政策実現をまずやるということから、九千二百億円の予備費の活用からスタートいたしますけれども、引き続き、先ほども加藤委員の御質問にお答えさせていただいたとおり、景気の動向を見ながら、場合によっては補正予算を組むという対応も視野に入れて対応していきたいというふうに思っています。

森山(裕)委員 大臣、経済政策を転換していかれるということなのでしょうか。そこはどうなんですか、基本的に。もうちょっとわかりやすく言いますと、ばらまきはやめるということでないと政策転換にならないのではないかというふうに私は思うんですけれども、そこのところはどうですか。

野田国務大臣 従来からばらまきをやってきたつもりはございません。今、二十三年度の予算編成が始まりますけれども、しっかりとそれぞれ今各府省から要求、要望が出てまいりました。精査をした上で、特別枠を設けて、景気に資するように、成長に資するように、雇用拡大に資するように予算の配分をして、生きたお金の使い方をしていくという姿勢は基本的には変わっておりません。

 先ほど申し上げたのは、景気の下振れリスクへの対応で経済対策の基本方針をまとめているということであって、我々の基本姿勢が変わったという意味ではありません。

森山(裕)委員 野田大臣、そこが変わらないと景気はよくならないのではないかなというふうに私は思います。また、雇用の問題も解決をしないのではないかなというふうに実は思っております。そのことはまた後で議論をさせていただきます。

 経済産業省が円高の影響に関する緊急ヒアリングというのをされまして、そのヒアリングの結果について見させていただいたんですけれども、それぞれの企業が、中小企業あるいは大企業、それぞれの大きな問題を抱えておられる、そして、対ドルだけではなくて、ウォンに対しても、あるいはユーロに対しても、いろいろな厳しい対応が迫られているということがよくわかります。

 円高対応というのは本当に大変なことなんだなというふうに思いますし、ここをしっかりやらなければ、日本の経済というのはますます厳しくなってしまうのではないかというふうに思うんですけれども、一ドル八十五円が続くと四割が海外へ移転をしていくという結果も出ておりますし、雇用の面から考えると大変だなというふうに思うわけであります。

 日銀の総裁にちょっと伺いたいんですけれども、きのう、金融政策会議をされまして一定の方向づけをされたわけでありますが、前回の政策会議と少し違いますのは、先行きの経済あるいは物価動向を注意深く点検した上で、必要と判断される場合には適時適切に政策対応を行っていく方針である、こういうふうに述べておられるわけであります。

 ただ、これが発表された途端に八十三円台に円高になりまして、何か日銀の政策会議をあざ笑うような市場の反応がきのうあった。きょうも八十三円台で移行しているわけでありますけれども。ここのところを総裁はどう受けとめておられるのかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

白川参考人 ここのところの為替相場の動き、その背景からまず御説明をしたいと思います。

 リーマン・ショック以降の為替レートの動きを見てみますと、世界経済全体の不確実性が増す、リスクが高まるというふうに認識されますと、これはグローバルな投資家がリスク回避姿勢を強めるということになりまして、そのもとで、相対的に安全というふうに見られている通貨にシフトしていくという動きが生じております。為替レートは二つの通貨の交換比率ですから、相対的な選択の問題としてそういう行動が出てくるわけであります。

 では、どういう通貨が安全通貨として現在選ばれているのかということでありますけれども、例えばこの一カ月間の為替相場を見てみますと、主要国通貨でいきますと、一番がスイス・フラン、二番が円、それから三番目が実はドルでございます。一番下がった通貨が、先進国でいきますと、ユーロであります。

 なぜ、円も含めて安全資産が買われているかというのは、これは基本的に、この夏場にかけまして、アメリカ経済を中心として弱い指標が相次ぎました。この先、世界経済がどういうふうになっていくのか、みんなが下振れリスクを意識するということになりまして、その結果、このシフトが起きているわけであります。

 実は、きのうも同じようなことが起きまして、ヨーロッパの銀行は本当に資産内容が大丈夫なのかという疑念がございました。それで、ことしの七月にいわゆるストレステストというものを発表いたしました。これは、一定の厳しい条件を課して、こういう経済環境の変化が起きた場合に銀行の資産内容は本当に大丈夫なのか、大丈夫ですよ、そういうふうなことをテストすることをヨーロッパのEUの加盟国が全部行いました。

 ところが、きのう、ある米国の大手の新聞ですけれども、実はこの欧州のストレステストは、一番大事な国債というところに係るディスクロージャーが十分ではなかったという報道を行いました。そこで、マーケットの中の反応としては、このストレステストの結果に対する疑念がわいて、つまり、リスクに対する評価が変わって、その結果きのう起きたことは、実はユーロが下がったということであります。もちろん、円はその結果として今も上がっているわけでございます。

 そういう意味で、大きな為替相場の動きの背景としては、世界の経済、金融をめぐる不確実性、そのもとでのリスクテークの姿勢ということが背景にあると思います。

 しかし、日本銀行自身は、結果が何であれ、円高が急激に進みますと、これは企業マインドに大きな影響を与え得るということは十分認識しております。

 景気について、現在緩やかな回復は続けておりますけれども、景気の先行きについては下振れリスクの方をより注意した方がいいと思いまして、八月の臨時会合では追加の緩和措置をとりました。そのときに、記者会見のときに、私は、この後も適時適切に対応をとります、必要な場合には適時適切に対応をとりますということは申し上げました。これは、日本銀行がそういう構えであるということをはっきりとマーケットに理解していただかないと、またその動きを加速するということもございました。

 今回、昨日の会合で、このことを改めて文書の上でもはっきり示すことが適当だぞということで、これを発表しました。

 したがいまして、私どもとしましては、為替相場の影響も含めまして、日本経済の先行きを入念に点検して、必要な場合には必要な対応をとるということを明確にあらわしたいということでございます。

森山(裕)委員 ありがとうございました。

 総裁、私は素人ですからよくわかりませんけれども、やはり市場がきのう一番ポイントにしていたのは、バーナンキ議長の発言がずっとあるんですけれども、八月の二十七日の講演でこのような発言があります。相当程度経済見通しが悪化した場合には、非伝統的な方法を通じて追加的な金融緩和を行う用意があるという、非伝統的なという表現で、大胆なという意味につながるんだろうと思いますけれども、これと日銀の政策とどうなのかなというところが一つのポイントだったのではないかなというふうに思うんです。それに比べて少し弱いという感じがきのうの相場に影響したのかなというふうに素人ながら思うんです。

 ただ、私も副大臣の時代、一年間、政策会議に出席をさせていただきましたので、日銀が真摯に努力をしておられることはよく理解をしておりますし、また、物価に対しての対応もしっかりしておられることもよく理解をしております。

 ただ、今のこの円高傾向、あるいはウォン、あるいは元の問題、ユーロの問題を含めて、何かしっかり対応しなきゃいけないことはそうだと思いますし、それはただ、長期的に考えると、日本だけの問題ではなくて、やはりアメリカにも今後影響するでしょうし、EU諸国にも影響していくでしょうし、また中国にも影響していくでしょう。

 私は、この四つの国が一遍集まって、国際マクロ政策をしっかり議論して方向性を決めていくということが非常に大事なことなのではないかというふうに思いますし、そのことをやはり日本が旗を振って頑張らなきゃいかぬと思うんですけれども、野田大臣、総裁、このことはどうなのでしょうか。そのことをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

海江田委員長 野田財務大臣、質疑の持ち時間が過ぎておりますので、なるべく手短にお願い申し上げます。

野田国務大臣 では、委員の御質問に端的にお答えしたいと思います。

 そういう主要国とのコミュニケーション、G20を含めて、これはしっかり確実にやってきていますし、必要に応じてそういう国際会議ではない場面でも意見交換はさせていただいておりますし、これからも緊密に連携をとっていきたいと思います。

白川参考人 大臣と全く同様でございます。私の場合は相方は中央銀行の総裁ということになりますけれども、これは個別にもそうですし、それから多くが集まる会議でもそうですけれども、密接にコミュニケーションをとって、日本としての考え方、それから世界経済の発展のために何が必要か、しっかり議論をしていきたいと思っております。

森山(裕)委員 時間が参りましたので終わりますが、最後にさせていただきますけれども、G20は十月の二十二、二十三、韓国での予定があるようでございますが、IMF、世銀の総会も十月八日には予定があるようでありますけれども、ちょっと時間があり過ぎますので、できるだけ急いで、私は、国際的な協調というものを模索していくということが大変大事ではないかなということを申し上げて、時間が参りましたので終わります。

 ありがとうございました。

海江田委員長 次に、石井啓一君。

石井(啓)委員 おはようございます。公明党の石井啓一です。

 きょうは、円高対策、またデフレ克服に向けての経済対策や金融政策ということで、財務大臣と日銀総裁にお話を伺いたいと思います。

 なお、今、民主党の代表選挙が行われておりますけれども、私どもはどちらかの陣営に肩入れをするというものではございません。ただ、今回の質問は、どうしても政権を持っている方に厳し目の質問になりますので、どちらかというと菅さんに厳し目の質問になるかもしれませんが、それは何か意図があるというわけではございませんので、あらかじめ申し上げておきたいと思います。

 まず、財務大臣にお聞きをいたしますけれども、最近の円高、またそれに伴う株安、これが日本経済に与える影響についてどのように認識をされているのか、大臣の御見解を伺いたいと思います。

野田国務大臣 石井委員の御質問にお答えをさせていただきたいと思います。

 まず、円高については、経産省の緊急の調査もございましたとおり、輸出部門中心に企業の収益を悪化させ、それは下請やあるいは雇用や、さまざまな悪影響が出てくる、家計部門にも悪影響を及ぼす可能性があるというふうに、厳しく認識をさせていただいております。

 それから、株安については、これは景気の先行き不透明感を強めて、経営者や消費者のマインドを冷え込ませるというような懸念がございます。

 いずれにしても、こういう状況を打開するために全力で取り組んでいかなければならないと思っています。

石井(啓)委員 厳しい影響があるということでありますけれども、残念ながら、危機意識というのは余り伝わってこないんですね。この間の政府の対応を見ていると、私どもにはなかなか伝わってきません。

 例えば、八月の二十三日でしたか、総理と白川総裁がお話をされたようですけれども、わずか十五分の電話会談で済まされたと。これには私ども大変失望いたしまして、政府と日銀が、何か連携をとり合っているアリバイづくりかのように受けとめてしまいましたし、この大変な状況の中で何をやっているのかなという思いがございました。

 また、八月三十日に政府が経済対策の基本方針を発表されましたけれども、これも時期がやはり遅過ぎますよね。この発表後の経済界を中心とする反応もやはり、ようやく重い腰を上げた、こういう反応が大半でございまして、時期として遅過ぎるのではないか。

 残念ながら、政府の危機意識が薄いと私は言わざるを得ませんが、大臣、いかがでしょうか。

野田国務大臣 お答えをいたします。

 この間、円高の傾向、為替の問題、そして株安の問題が進行する中で、総理から順次、経済閣僚が呼ばれてヒアリングをさせていただき、その中で、荒井大臣を中心に八月三十日の経済対策の基本方針のいわゆる決定まで至りました。遅いと言われればどう答えていいのかわかりませんが、必死に分析をしながら、やれることを経済閣僚を中心にまとめてきた内容でございます。

 しかも、八月三十日にまとめた内容は、今度九月十日、あさってに閣議決定をさせていただきますが、即応性の高いものを中心に選んで選んで選んで、有効なお金の使い方をしながら効果が発揮されるようにしていきたいというふうに思いますし、引き続き景気の動向を見ながら、必要に応じては補正予算も視野に入れていきたいというふうに思っています。

石井(啓)委員 ところで、リーマン・ショック後の景気を回復させるために、欧米においても、また新興国においても、輸出で経済の回復を図っていこうと輸出に重きを置いております。ですから、自国の通貨安は放置している、こういう状況でございます。また、円のレートについても、実質実効為替レートから見ると必ずしも高くはないのではないかという指摘もありまして、まだまだ円高が進む余地もある、こういう指摘もございます。

 そういったことから考えると、私は、本当にしっかり手を打たないとますます円高が進む、そういう可能性も強いというふうに懸念を持っているんですが、大臣はいかがでしょうか。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおり、強い懸念を私も持っています。

 明らかに足元の為替の動きというのは一方的に偏っているというふうに思っておりますので、この動向を重大な関心を持ちながら注視していくとともに、これは経済対策の基本方針にも政府として盛り込んでおりますけれども、必要なときには断固たる措置をとる、そういう毅然とした対応をしてまいりたいというふうに思います。

石井(啓)委員 それから、円高が続きますと、先ほどの大臣の答弁にもありましたけれども、日本の生産拠点の海外移転がますます促される可能性がございます。雇用にとっても非常に重大な懸念がございます。

 そこで、実はここで総理に質問ができれば私は総理に直接申し上げたいと思うんですけれども、今総理は代表選の中で、一に雇用、二に雇用、三に雇用というふうに、政策は雇用を中心におっしゃっています。そこまで雇用ということに配慮されるのであれば、円高阻止が最大の雇用対策だということをぜひ私は進言したいんですが、ちょっと総理がおりませんので、ぜひ財務大臣から御進言いただきたいと思うんですけれども、どうでしょうか。

野田国務大臣 総理が雇用、雇用とお話をされているのは、国内経済の中での一番の深刻な状況というのはやはり雇用の問題だと。特に新卒者を含めて大変厳しい状況にあるということは、やはり御認識の源泉だろうというふうに思います。

 委員の御指摘のとおり、円高対策を通じて雇用をつくっていくということも大事であって、今回の経済対策の基本方針は、景気の下振れリスクの懸念への対応と、新成長戦略の前倒しという観点、二つの視点からやっていますが、柱になるのは消費と投資と雇用、あるいは地域防災。雇用という一つの大きな枠の中でも緊急経済対策を講じよう、そういう体制をとらせていただいております。

石井(啓)委員 政府の経済対策、時期が遅いというふうに申し上げましたけれども、規模の方も、予備費の九千二百億円だけでは規模が小さ過ぎるというふうに私は思っております。

 この際、補正予算、これは私ども、ぜひ、予備費のみならず、補正予算を組む必要があるというふうに考えていますけれども、補正予算編成の必要性については財務大臣はいかがお考えでしょうか。

野田国務大臣 十日に閣議決定する予定の経済対策は、たしか、予算規模でいうと、経済予備費の活用ですから九千二百億円です。その中で、需要、雇用を喚起する政策に絞って使っていきたいと思いますが、お金を使わない部分の規制緩和についても、相当前倒しで実施をするということも内容として入ってくると思います。

 それらも含めて総合的な御判断をいただきたいと思いますが、これらの効果が出るようにしっかり執行をするとともに、景気の動向次第では、機動的に補正予算を組むということも視野に入れていきたいというふうに思います。

石井(啓)委員 景気の動向次第では今後あり得るということですけれども、現段階ではどういうふうにお考えなんでしょうか。

野田国務大臣 まずは九千二百億円、いわゆる即応性のある、即効性のある施策の実施からスタートをさせていただき、それでも足りないと判断をしたときには補正予算も視野に入ってくる、こういう順番でいきたいと考えています。

石井(啓)委員 ただ、残念ながら、政府の八月三十日の経済対策の基本方針発表後も、円高、株安の流れというのは全くとまっておりません。だから、市場の評価は低いわけですね、予備費九千二百億円だけでは。

 これはどういうふうに受けとめていらっしゃるんでしょうか。

野田国務大臣 八月三十日の経済対策、基本方針でございますから、具体性のあるものは十日に閣議決定をする、その効果はその後に出てくるということですから、次第にマーケットの評価も出てくるだろうというふうに思っています。

 円高、株安の問題は、これは政府の対策だけの問題じゃなくて、さまざまな要因があったというふうに理解をしています。

石井(啓)委員 では、大臣の言によると、九月十日に具体的な案を出すと市場が反応するということですから、これはぜひ楽しみに検証させていただきたいと思いますけれども、私は、もう既に、大枠の対策を出してそれで反応しないんですから、具体的な案を出しても恐らく期待できないというふうに思っております。

 要は、市場の反応は、政府の対応は遅過ぎるし規模も小さ過ぎると。昔からよく言われましたね、ツーリトル・ツーレート、これはもう随分前から言っていますけれども、またツーリトル・ツーレートだな、こういうふうに言わざるを得ません。

 即応性のある対策、予備費は補正予算を組まなくても使えますから、それはそれでやっていただいて構わないんです。ただ、予備費だけで済むとなると、これはやはり、次の補正予算の編成も示唆をされておりますけれども、小出しの対策なんですよね。やはり、まとめて、セットで、トータルでこれだけやります、まずは予備費でこれだけやります、次に補正予算でこれだけやります、こういうふうにインパクトのある対策を打ち出すべきだというふうに私は思っておりまして、小出しの対策ではやはり市場はなかなか反応しない、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

野田国務大臣 やはり物事には順番があって、きちっと、まず、緊急対応できるところは緊急対応していくということです。

 もう少しスパンを長く持ちながらの対応については、あしたから新成長戦略の実現会議もスタートします。そういうところでの議論の中から、これは補正予算も視野に入ってくるかもしれませんけれども、有効な経済対策を次々と講じていくということにしていくことになると思います。

石井(啓)委員 物事には順序があると言いますけれども、昔から、戦力の逐次投入は避けなければいけない、戦力を小出しに出していたんじゃだめだというのがいわば鉄則ですよね。だから、まずは予備費を九千二百億円出す、その後、必要があれば補正予算をやります、これでは、私はやはり戦力の逐次投入と言わざるを得ません。やはり、この際まとめてしっかりとした対策を出すべきだと重ねて指摘をしておきたいと思います。

 ところで、為替介入の件でございますけれども、本来、十分な効果を上げるためには他国との協調介入が望ましいわけですが、欧米各国が通貨安を放置している状況の中では、協調介入も実質的にはなかなか難しいことかと思います。

 ただ、少なくとも、これについて働きかけをしっかりとする必要があるし、理解を進めていく必要があるとは思いますけれども、仮に協調介入ができなかったとしても、私は、我が国の単独介入も辞すべきではないというふうに考えておりますけれども、大臣の御見解を伺います。

    〔委員長退席、高山委員長代理着席〕

野田国務大臣 前提として、国際社会と緊密なコミュニケーションをとっていくということは、これは大事な視点だと思いますし、その努力は今もずっと継続をさせていただいています。

 その中で、最終的には、必要なときに断固たる措置をとるという中では、当然、介入も含んでおりますが、そのやり方も含めて、頭の中に入れながら、断固たる措置をとっていくということでございます。

石井(啓)委員 日本は単独では介入してこないんじゃないかというふうに足元を見られている可能性もありますから、大臣が発言して、口先介入が効果があればいいんですけれども、逆効果になってしまっては困るので、やはりこれはしっかりと、本気でやるという姿勢を示していただきたいな、こういうふうに思います。

 ところで、私ども公明党は、既に先週、九月二日に、円高対策・デフレ脱却に向けた緊急経済対策、これを発表させていただいております。規模でいきますと約四兆円でございますが、財源も明らかにさせていただいておりまして、予備費の約九千億円、それから昨年度の決算剰余金、これは財政法では、一・六兆円のうち半分、〇・八兆円使えるわけですが、この際全額使ってはどうかと、財政法の特例措置ということにも踏み込んで、決算剰余金の全額、一・六兆円も使ったらどうか、そういう提案もさせていただいておりますし、さらには、これで不足する分、建設国債発行一・五兆円もやむを得ない、ここまで踏み込んで実は提言をさせていただいております。

 中身については詳しいことは申し上げませんけれども、地方の経済の活性化あるいは雇用対策、それから、緊急経済対策ということでありますけれども、やはり国民の安心を確保するということがデフレ脱却に向けた非常に重要な政策でございますので、子育て支援とか医療あるいは介護に関する対策、また環境関係でのエコポイントの継続、かつて私どもが提案したスクール・ニューディールの推進、あるいは中小企業対策で緊急保証制度の一年延長、保証枠の拡充等々、きめ細かな対策を発表させていただいております。

 これに関して、大臣もおおむね目をお通しいただいたと思いますけれども、この御評価について伺いたいと思います。

野田国務大臣 御党が提案をされている経済対策、ざくっと目を通させていただきました。

 そうしますと、雇用対策とか家電、住宅エコポイントの延長、あるいはゲリラ豪雨対策とか学校の耐震化など、我々がこの間まとめた経済対策の基本方針と共通点も少なくないなというふうに認識をしております。その意味では、大変興味深い御提言だと受けとめております。

石井(啓)委員 今大臣がおっしゃった項目は、実は、八月初めの臨時国会をやったときに、予算委員会で既に私どもの井上幹事長から具体的な提言をさせていただいた中身なんですね。ですから、我々からいえば、政府が我々の提言をうまく生かしていただいたなというふうに思ってはいるんです。

 ただ、先ほど言いましたように、予備費にとどまらず、剰余金の活用あるいは建設国債の発行まで踏み込んで四兆円という規模を打ち出している、ここがやはり今の政府の小出しの対応とは大きく違うところであります。また、野党ではございますけれども、財政法の特例措置まで踏み込んで、財源措置まで踏み込んで私どもは真剣な提案をさせていただいているつもりでございますから、ぜひ政府としても重く受けとめて、御検討をいただきたいと思います。

 それでは、日銀総裁の方に質問を移らせていただきたいと思います。

 まず、円高について白川総裁はどういうふうに認識をされているのか、御評価をされているのかということを伺いたいと思うんです。

 といいますのは、かつて速水日銀総裁は、円高は好ましいという趣旨の発言をされました、当時ですね。通貨の番人たる日銀の立場からすると、円の国際的な価値が下がる円安よりは、価値が上がる円高の方が望ましいというのが、日銀のしみついた本質なのかなという感じもいたしますけれども、今の水準が適切かどうかということは、総裁としてなかなか発言はしにくいと思うんですけれども、一般論として、円高についてはどういうふうに御認識、御評価をされているんでしょうか。まず伺いたいと思います。

白川参考人 御質問の円高についての一般的な考え方ということで申し述べたいと思います。

 まず、短期的には、円高は、輸出や企業収益の減少、企業マインドの悪化などを通じまして、経済にマイナスの影響を及ぼす可能性があるというふうに認識しています。現在、私どもとしては、この足元の急速な円高が企業マインドを通じて景気の下振れということになることについて注意を払っております。

 一方、原材料コストや製品輸入価格の低下など交易条件を改善しまして、長い目で見ますと、企業や消費者にとってプラスの効果をもたらす面があります。

 また、企業の行動に即して見ますと、一方で、海外に拠点を移していくということを加速する要因になる面と、それから他方で、グローバルな事業の再構築を進めていく、例えば海外企業の買収、こうしたものを進めることによって、競争力の一段の向上を図る契機ともなるというふうに思っております。

 今申し上げましたことは、短期と長期、それからプラスとマイナス、いろいろな側面を挙げました。為替相場は、日々さまざまな要因を反映して変動するものでありまして、その影響も、今申し上げましたように、両面あります。日本銀行総裁という立場で、円高について、これが望ましいとか望ましくないというふうに評価することは難しいということでございます。

 ただ、はっきりしていますことは、日本銀行としては、この円高も含めて経済がどのように推移していくのか、それを注意深く点検して金融政策を運営することが大事だというふうに思っております。

石井(啓)委員 白川総裁らしい、そつのない御答弁でありました。

 それでは、八月三十日に追加金融緩和の措置を日銀は発表されていますけれども、日銀自身はこの措置に関してどういうふうに評価をされていらっしゃるんでしょうか。

    〔高山委員長代理退席、委員長着席〕

白川参考人 日本銀行は、現在、金融緩和を行っておりまして、我々の政策というのは、今三つの柱で成っております。今回のこの八月三十日の措置だけではなくて、全体としての政策の評価ということがより私どもにとって重要でございますけれども、この八月三十日の措置それ自体についての認識でございます。

 まず、出発点となる金融市場ですけれども、日本銀行の強力な金融緩和によりまして、いわゆるイールドカーブの水準、あるいは形状といいますか形を見ましても、極めて低い水準になっております。この八月三十日の臨時会合後における金融市場の動きを見てみますと、ターム物金利、三カ月とか六カ月という、そうした金利が幾分弱含むなど、臨時会合で決定した追加措置は、既に金融緩和のさらなる浸透に貢献し始めているというふうに認識しております。

 先ほどの御質問に対するお答えとも多少重なりますけれども、日本銀行としては、景気の下振れリスク、これに対応して先取り的に今回の金融緩和を行ったわけではございますけれども、経済のこの後の大きな歩みの中で今回の措置についても評価をしていく、認識していくということが大事だというふうに思っております。

石井(啓)委員 八月三十日の追加金融緩和について、市場の方は、想定の範囲内というふうに受けとめていますよね。事前に幾つかの案が報道でもされていますけれども、全く、ほとんど同じ中身でした。それについては、ある意味では失望感がございまして、この追加金融措置の発表後も、残念ながら、市場においては円高あるいは株安の流れはとまっておりません。

 この市場の反応というのはどういうふうに総裁は受けとめていらっしゃるんでしょうか。

白川参考人 先ほどの野田大臣の御答弁にもございましたとおり、為替相場は、日々さまざまな要因を反映して変動いたすものでございます。先ほどの別の議員の御質問に対するお答えと多少重なりますけれども、現在の為替相場の動きというのは、世界経済についての不確実性の高まり、これを背景とした投資家のリスクテーク姿勢の弱まり、これを反映した安全通貨へのシフトというふうに認識しております。

 原因はそのような原因であれ、しかし、私どもとして、金融政策運営上、先々の景気、物価にどのような影響を及ぼすのかということが我々にとって一番大事なポイントでございます。

 そういう意味で、数日間あるいは一週間のこの間の為替市場あるいは株式市場での評価ということ、これはこれでもちろん私どもは十分注意深く見ておりますけれども、こうしたことも含めて、経済の先行きにどのような影響を及ぼすのか、その点で御評価をいただければというふうに思っております。

石井(啓)委員 先ほど野田大臣にも指摘しましたけれども、市場では、さらに追加の対策があるだろうというふうに考えている、想定しているわけですよね。ですから、結局、小出し小出しに日銀が対策を出すということは、やはり効果に限界があるんじゃないかというふうに思うんですね。

 ですから、この際、日銀としては、ある意味で市場が驚くような対策をやはりやる必要があるんじゃないかというふうに思いますけれども、どうでしょうか。

白川参考人 現在、日本銀行の行っています政策は三つの柱で成り立っております。

 一つは、強力な金融緩和の推進でございます。これは、長短の金利いずれを見てもそうですけれども、最も低いという金利でございます。

 それから二つ目は、金融市場の安定ということでございます。金融市場の安定といいますと、多少迂遠に聞こえるかもしれませんけれども、リーマン・ショック以降の経験、あるいは現在の欧州の金融市場を見てもそうですけれども、金融市場自体がまだ完全には安定していない。このことが景気の回復を阻害しているわけでございます。この金融市場の安定という面で、日本銀行は潤沢に資金を供給し、その結果もあり、金融機関の資金調達という面では、これは欧米とは全く状況を異にしております。

 それから三つ目は、これは成長基盤強化の支援ということでございます。現在の日本の問題は、成長力が低下をしているということでございます。このこと自体は中央銀行の直接の所掌ではございませんけれども、日本銀行としてできることは何なのか、貢献の余地がないのかということを考えまして、先般、成長基盤強化の支援の融資を始めました。これは、こういう政策が全体となって効果を発揮していくというふうに思っております。

 それから、今の、小出しではないか、戦力の逐次投入ではないかという御質問でございますけれども、これはどの中央銀行でもそうでございますけれども、さまざまな政策の選択肢、これについてもちろん考えております。その上で、効果と副作用を比較考量し、その時々の経済、物価情勢に応じて最も適切なタイミングでそれを選択するということが大事だというふうに思っております。きのうの決定会合後の発表でも、必要と判断される場合には適時適切に対応するということを申し上げております。

 私どもとしては、先ほど申し上げました三つの柱に基づく政策と、それから先々の政策の構えということでもって、日本の経済に対して、回復軌道に乗せるためにしっかりと取り組んでいきたいというふうに考えております。

石井(啓)委員 今総裁がおっしゃったきのうの金融政策決定会合で、必要とされる場合には適時適切に政策対応を行っていくと。これは、今後、日銀が追加の金融対策を行うことを示唆したというふうに受けとめられていますけれども、そういうことでよろしいんでしょうか。

白川参考人 昨日申し上げましたことは、多少繰り返しになりますけれども、こういうことでございます。

 現在、日本経済の先行きを展望した場合に、下振れリスクの方をより注意して見ていく、そういう局面であるということでございます。経済、物価情勢を注意深く点検して、必要と判断される場合には適時適切に対応をとっていくということでございます。

 そういう意味で、経済が、もちろん当面、今我々は上振れリスクではなくて下振れリスクの方を懸念しているわけでございます。その下振れリスクが顕在化し、我々が想定している経済との関係で、これは経済状態が悪化する、そういうときに追加措置をとるということ、そういう構えであるということを示したものでございます。

石井(啓)委員 ちょっと失礼な指摘になるかもしれませんけれども、日銀は、政府あるいは世論に追い込まれて渋々金融緩和をやっている、こういう印象を受けざるを得ないんですけれども、どういうふうにお考えでしょうか、総裁。

白川参考人 日本銀行の政策に対してどのような認識をお持ちか、どのような評価をされているかということ自体について、私がこうした場でコメントすることは適当ではないというふうに思います。

 ただ、日本銀行の金融政策は、私を含めまして九名の政策委員会のメンバーで真剣に議論し、物価安定のもとでの持続的経済成長の実現に最大限努力しております。最大限努力しているということで、そのことについての評価は時々いろいろな評価はあると思いますけれども、私どもとしては、最大限、これまでも努力してきましたし、これからもそのことに努力をしていきたいという、その一念に尽きます。

石井(啓)委員 日銀としては努力しているということだと思いますけれども、残念ながら、外部から見るとその努力が、圧力を受けて動いているんじゃないか、こういうふうに受けとめられているということは指摘をしておきたいと思いますし、そういう反応も十分意識していただきたいというふうに思います。

 ところで、日銀の独自性についてちょっと申し上げたいと思うんですけれども、私は、金融政策の手段については日銀に独自性はあると思います。しかし、目標ですね、具体的に言うと物価水準の目標、あるいは経済成長の目標については、私は、これは政府と目標を共有すべきだというふうに考えております。このことについて、総裁はいかがお考えでしょうか。

白川参考人 まず、日本銀行の現在の金融政策の枠組み、法的な枠組みから御説明をしたいと思います。

 日本銀行自身は、日本銀行法の法律解釈を行う立場にはもちろんございませんけれども、国会がお決めになった日本銀行法では、金融政策の目的をはっきりと規定されております。「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資すること」というふうに明確に規定しております。この目的を具体的にどのように達成していくかは、日本銀行政策委員会の自主的な判断と責任にゆだねられているというのが現在の法律の理解だというふうに思っております。

 この点に関し、今委員から御質問のあった具体的な数字の目標といいますか、定義といいますかでございます。

 現在、日本銀行は、中長期的な物価安定の理解という形で、消費者物価の前年比で見て二%以下のプラス、中心値で見て一%程度という物価上昇率を念頭に置いた上で金融政策を行うということ、これは明らかにしております。

 この数字の出し方につきまして、例えば、国によって名前は違っております。中長期的な見通しという国もありますし、FRBは中長期的な見通しというような、そういう感じの英語の表現になっておりますし、それから、ECBは物価安定の定義という形で数字を出しておりますけれども、これはいずれも中央銀行自身が出しております。

 ただ、いずれにせよ、日本銀行の金融政策の目的は法律ではっきり規定されているということでございます。

 成長率、これ自体は、もともと日本銀行の政策の目的としてもちろん掲げているわけではございません。ただ、先ほど読み上げました規定でありますとおり、「物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する」ということがうたわれておりますので、もちろん、景気のことについても、こうした条文から見て判断をしている、念頭に置いているということでございます。

石井(啓)委員 今総裁がおっしゃった日銀法の目的規定と並んで、日銀法第四条では、御承知のとおり、「政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」こういうふうにされていますよね。

 この条文は、例えば、日銀は物価安定の理解というものを独自に発表されているけれども、これはあくまでも政策委員がどのように理解をしているかを公にしたものであって、日銀自身のものでもないし、これを政府と十分な意思疎通を図った上でやっているわけでもありませんよね。そこは、私はやってもいいんじゃないかと思うんです。

 この第四条というのは、物価の安定というのはどうあるべきかということをきちんと政府と話し合って目標を決めてもいいんじゃないか、私はそういうふうに思いますけれども、総裁、どうですか。

白川参考人 委員御指摘のとおり、日本銀行法では、政府との間で連絡を密にし、十分な意思疎通を図りつつ、物価安定のもとでの持続的経済成長の実現ということがうたわれております。そういう意味で、日本銀行と政府との間で、さまざまなレベルで十分な意思疎通を図っているというふうに思っております。

 先ほど中長期的な物価安定の理解という数字を申し上げましたけれども、もう一つ、こうした数字を念頭に置いた上で、いわゆる二つの柱ということで経済、物価情勢の点検を行って、これを踏まえて政策を決定するという枠組みを採用しております。こうした枠組みは政府からも十分な御理解をいただいているというふうに理解しております。

 政策運営に当たって念頭に置く物価上昇率に関しても、政府と日本銀行の間で認識に大きな違いはないというふうに考えております。

石井(啓)委員 誤解なきように申し上げておきますけれども、私は、物価の水準を目標として定めて、そのために、日銀だけでそれを金融政策だけで達成しろというふうに申し上げるつもりはありません。そこは、政府の財政政策、経済政策と当然両輪でなければならない。とかく政府は、財政がなかなか出せないと日銀にやれやれと言いかねないところがあるんですが、私はそういう立場はとりません。

 政府の財政経済政策と日銀の金融政策、両方相まって、物価の水準あるいは経済成長は達成するものというふうに考えておりますけれども、その目標とすべき物価の水準なりなんなりというのは、やはりこれは、私は、目標は政府と共有していいのではないか、というか共有すべきではないか、こういう意見を持っていることは申し上げたいと思います。

 もう時間がありませんので最後の質問にしますけれども、総裁は、八月下旬に訪米されて、米国の要人とも接触をされているようですけれども、アメリカの景気の先行きや、あるいはFRBの追加金融緩和についてはどういう感触を得ていらっしゃるのか、最後に御質問したいと思います。

白川参考人 ただいま議員御指摘のとおり、八月の下旬に、私はアメリカのジャクソンホールで開かれましたシンポジウムに参加しました。その際に、多くの中央銀行総裁と意見交換を行いましたけれども、FRBのバーナンキ議長ともかなり長時間にわたって一対一で意見交換を行いました。

 まず景気の方でございますけれども、実はこの同じコンファレンスで、バーナンキ議長が先行きの景気についてかなり詳細な見通しを発表しております。米国経済の回復のペースは、FOMCの多くのメンバーが年初に予想していたよりもやや弱目であるということを示しているということでございました。また、先行きについては、経済の見通しは不確実であり、米国経済は脆弱なままであるが、今年下期も米国経済は緩やかながら拡大を続け、二〇一一年には成長が持ち直していく前提はそろっているという認識を示しました。

 金融政策運営の基本的な考え方についても意見交換を行いましたけれども、これにつきましては、先方との関係もあり、この場で具体的な内容をお話しすることは差し控えたいというふうに思っております。

 いずれにせよ、この八月の下旬の訪米は、率直な意見交換ができたということでは大変貴重な機会でございました。私が金融政策の決定会合に臨んでいろいろな判断をするときには、こうしたバーナンキ議長を初め海外の要人との意見交換の結果も十分念頭に置いて判断を行っているということでございます。

石井(啓)委員 最後のコメントにしますけれども、先ほど総裁は政府と十分な意思疎通を図っているとおっしゃっていましたけれども、総理と十五分の電話会談では十分な意思疎通とは言えないのではないかというふうに思います。しっかりと連携をとりながらやっていただきたいと思います。

 終わります。

海江田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず配付した資料を見ていただきたいんですが、九月四日に、第一生命保険が、過去の保険金などの不払いが新たに見つかった、こういう報道であります。二〇〇七年当時は約七万件、百八十九億円の不払いがあった。これは確認をされていた数字です。その後、最近再調査をされて、新たな不払いが見つかった。

 自見大臣にお聞きしますけれども、何件、幾らの金額が新たに発見されたのでしょうか。

自見国務大臣 佐々木先生も御案内のとおり、保険会社の支払い漏れについては、平成二十年でございますが、二年ほど前でございますが、生命保険会社十社に対して業務改善命令を出しまして、これを踏まえて、現在各社で業務改善を、現在でも進めておるところでございまして、その中で、所要の調査を実施し、必要に応じて、二〇〇八年の七月からでございますから、期間がございますから、順次個別に追加の請求案内を行っているところでございます。

 個々の保険会社の対応については、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思っておりますが、御指摘の保険会社を含む各社は、この平成二十年七月の業務改善命令以降でございますが、今でも継続的に調査を行っておりまして、順次追加的な支払いを行ってきており、その事実が報道されたのだというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、各保険会社に対し、過去の顧客からの請求漏れについてもさらに調査を実施し、個々の追加請求案内を迅速かつ適切に実施するように指導を行っているところであり、他の保険会社ですね、十社に対しましたからあと九社でございますけれども、他の保険会社についても同様の取り組みが行われているものというふうに承知をいたしております。

佐々木(憲)委員 数字を言われないんですけれども、これはおかしいんですよね。二〇〇七年九月末時点では、各社の社内調査、当時あの不払い問題は大問題になりまして、社内調査をやった数字が金融庁によって公表されているわけです。ここに一覧表もありますけれども。

 こういうことは当然やるべきものであって、何か新たに発見されたものを隠す必要はないんじゃないですか。今調査をされているというのであれば、一定段階でその数字は公表する、過去もやってきたわけですから、当然それをやるべきだと思いますけれども、大臣の見解を聞きたいと思います。

自見国務大臣 今御答弁申しましたように、継続的に追加的な支払いを行っているところでございまして、集計は個々にはしていないところでございます。

佐々木(憲)委員 これは余りにもおかしな答弁で、各社がそれぞれやっているんだから、何件あるのか、幾らになるのか、不払いはわからないと。こんなことで、金融庁として監督ができるんですか。

 これは非常に重大な問題で、新聞報道、きょうお配りした資料にもありますが、「第一生命の不払いをめぐっては昨年以降、複数の職員が「幹部が不払いを隠している。さらに数万件の不払いが存在する可能性がある」と金融庁に内部告発していた。」こういうふうに報道していますね。

 数万件というのは大きいですよ、それは何百件とか何十件という話じゃないんですから。数字を出すのは当然じゃないんですか。何で隠すんですか。

自見国務大臣 答弁申し上げますけれども、公益通報があったということは事実でございますが、今、業務改善命令を出して継続的に順次そのことを、業務改善命令に従って継続的に調査を行っていただいているものでございますから、当然、業務改善命令が終了いたした時点ではきちっと発表するということにいたしております。

佐々木(憲)委員 この問題をめぐりましては、二〇〇七年当時、政界工作が行われたという疑いがありまして、私も前回の当委員会で指摘をいたしました。不払い問題が余り大きくならないように議員に働きかけた。それから、この財務金融委員会の質疑時間についても、短くせよ、参考人の数を減らせ、こういう形で政界工作を行って、実際にそれが強行された。我々としては極めて重大だと思っておりまして、それに反対をしておりましたが、特定の生保にこの疑惑がかからないように、突出しないように平準化させるとか、そういう疑いもあるわけです。

 したがって、これは徹底した調査が必要だと私は思います。当然、この不払いの金額、件数、各社について、当委員会に数字を報告すべきだと思いますので、委員長、理事会で協議をしていただきたいと思います。

海江田委員長 ただいまお申し越しの件につきましては、理事会で協議いたします。

佐々木(憲)委員 自見大臣にお聞きしますが、大臣は、銀行あるいは生命保険会社、損保保険会社、こういうところから政治献金を受け取ったりパーティー券を購入してもらったことはございますか。

自見国務大臣 私の政治活動に関しましては、広く浅く多くの方々から、適法に、法に従って浄財をいただいておりまして、金融担当大臣をする前の話でございますが、過去の私のパーティーにおいては、保険会社を含め、若干のパーティー券を買っていただいているということを私の事務局から報告をいただいております。

佐々木(憲)委員 これは具体的な数字を報告していただきたいと思います。

 野田大臣の場合は、前回、私も同じことをお聞きしたんです。そのときは、平成十九年に一回政治資金パーティーをやった、銀行からは二万円、損保の会社からは四万円と、非常に、金額としては少ないと思いますけれども、誠実に数字を出していただきました。自見大臣もそのようにされていただきたいと思います。

自見国務大臣 佐々木先生御存じのように、政治活動の自由というのがございまして、当然、国民はいろいろな各種の選挙に立候補する自由もございますが、同時に、各種個人も、いろいろな企業、団体も、今の法律では、自分の政治的な参加をするといいますか、応援する自由がございます。

 今、先生は具体的に明らかにせいということでございますが、私はそこまで、二十万以上はたしか公表だと思いますが、それを超えた部分はございませんけれども、私も大体、保険会社については数万円程度でございますが、具体的に今手元に持っておりませんので、大変強い御意思があれば当然委員会の理事会に諮って、当然ですが、きちっと報告をさせていただければありがたいなというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 何かちょっと歯切れが悪いですね。数万円というのであれば別に隠すことも何もないと思いますから。

 問題は、銀行、保険の所管をする大臣なんですから、疑惑が持たれないようにすべて公表して明らかにする、これは当たり前だと思いますよ。そうしなければ、強い姿勢でしっかりとしたルールに基づく監督というのはできないと思うんです。

 そういう意味で、先ほどの歯切れの悪い答弁というのはそういうところにも原因があったのかなと思わざるを得なくなってきますからね。だから、その辺はちゃんとしなさいよ。私はそう思います。

 次に、話題をかえまして、日銀総裁にお聞きします。

 円高が短期間に急速に進んだ理由についてはこの委員会でも説明をいただきましたが、日本経済への影響についてどのように判断されているか、まずお聞きをします。

白川参考人 円高の影響についての御質問でございますけれども、一言、円高の背景について御説明申し上げます。

 日々さまざまな要因を反映して変動しておりますけれども、最近の円高は、世界経済の先行きをめぐる不確実性の高まりから、グローバルな投資家のリスク回避姿勢が強まっている。そうした中で、相対的な安全通貨、安全資産として、円、スイス・フラン等が買われているというふうに思います。

 この急速な円高の影響でございますけれども、円高は言うまでもなく、輸出企業を中心として、輸出あるいは収益に影響を与えてまいります。そのことがまたマインドにも影響を与えていくということで、当面、私どもは、景気の下振れリスクを構成する一つの大きな要因だというふうに認識しております。

 私どもとしては、こうした円高、まあ円高だけではございませんけれども、その背景にあります世界経済の不確実性、なかんずく米国経済の不確実性、それから、そのもとで生じている円高、株安等々の影響も含めて、しっかりと点検していきたいと思っています。

佐々木(憲)委員 野田大臣にお伺いしますけれども、急激な円高になりますと、それに対応するということで、製造業を中心に大手企業が下請に対して単価をたたく、あるいは、非正規雇用に対しては、いきなり人減らしをする、リストラを行う、こういう形で、労働者と中小企業に非常に大きな影響が出るわけです。

 そういうことに対してしっかり歯どめをかけないと、まさに内需そのものが急速に冷えてしまう、最終的な家計消費というものが冷えるということにつながりますので、それに歯どめをかけるということがやはり政治的行政の上でも大事なことだと思いますけれども、どのようにお考えでしょうか。

野田国務大臣 佐々木委員の御指摘のとおりだというふうに思っていまして、円高の進行と長期化というのは、もちろん、輸出関連産業は輸出が減少し企業収益が悪化する。そのことにかかわる中小企業、特に下請の企業には大きな影響が出てくると思いますし、雇用の問題にも深刻な影響が出てくると思っております。

 そういう危機感を持ちながら経済対策の基本方針をまとめましたけれども、為替の問題にも対応するべく、こうした雇用の問題、中小企業の問題を視野に入れた対策をしっかり講じていかなければいけないというふうに思っています。

佐々木(憲)委員 問題は、具体的にどうするかということなんですよね。これはやはり、特に大きな力の強いところが、そういう合理化、リストラということを、これを契機にやりますと、影響が社会的に非常に大きく広がりますので、やはりそこに歯どめをかけるということが大事だと思うんです。具体的な方策は何をやりますか。

野田国務大臣 これは、具体的な方策を十日に閣議決定することに至って、今、最後の詰めのところをやっているところでございますが、国内の立地促進であるとか、やはり空洞化につながらないような措置をどうするかということと、それから、やはり雇用の問題に焦点を当てて対策を講じていくということで、財源はもう経済予備費を活用するということになっていますが、今それは最終的な詰めの段階でございます。

佐々木(憲)委員 下請単価を切り下げるとか、労働者に対していきなり雇用不安を招くようなことをやる、それに対して具体的な歯どめがないといけないと僕は思うんです。一般的な財政による雇用創出のような、ばくっとした話では、今の急激な円高に対応する企業行動に対して対応できないというふうに思うので、そこはしっかりやっていただきたいと思っているところでございます。

 さて、では次に、白川総裁に、円が何で今こんなに買われるのか、相対的に、日本の経済あるいは金融資産の安全性ということに対して、日本は良好な状況にあるので、経済不安のある欧米から資金が流れてくる、こういうふうにおっしゃいましたが、日本経済の中でやはり一番大きな不安要因というのは、先進国の中で財政赤字がGDP比で世界最大である。これは、菅総理に言わせると、ギリシャのようになったら大変だ、こういうふうな話もされているわけです。

 にもかかわらず円が買われていくということは、この財政状況というのはそれほど悪いものとは評価されていないのではないか、まだ余力があるのではないか、相対的なことですけれども、こういう評価を受けているというふうに見ていいのかどうか。

 これは、総裁の立場からどうかというのはあるとしても、ぜひお聞かせいただきたいと思います。

白川参考人 大変に難しい、しかし非常に重要な問題だというふうに常々考えております。

 世界経済の不確実性が増すときになぜ日本の円が安全資産として買われるのかということについては、いろいろな議論がございます。

 私自身が海外の当局者と、あるいは投資家と話して感じますことは、これは本当の危機のときに何が起こるのか、一国で何が起こるのかということを想像してみますとわかりますけれども、危機はすべて資金繰りからやってきます。金融機関もそうですし、一国も、これは資金繰りでございます。リーマン・ショックもそうでしたし、それからギリシャも、これは資金繰りであります。円については中央銀行がございますけれども、外貨については、日本銀行がドルを直ちに供給することは、これは原則としてできないわけであります。

 日本の対外債権の構造を見てみますと、経常収支の黒字の累積を背景に、これは対外的に債権の方が債務を上回る純債権国でございます。今、この純債権の金額は対GDP比で五〇%でございます。そういう意味で、危機のときに一番問題になる外貨の資金繰りという意味では、日本は先進国の中では最も強固な国であります。この強固な国であるということは、不確実性が増すときに円高という形であらわれてくることにもなります。

 それでは、財政バランスが非常に悪いときに、なぜ強固だというふうに見られるのかということでございます。

 今、国債金利を見てみますと、日本の国債金利は御案内のとおり一%前後でございまして、低位かつ安定的といいますか、足元はまたさらに低下してきたということでございますけれども、このマーケットの動きから見てみますと、これはマーケットの動きからの結果論といいますか類推でございますけれども、今のところ、我が国の財政状況が市場の大きな不安定要因として強く認識される状況には、そういう投資行動にはなっていないということであります。

 では、それはなぜなのかということでございますけれども、これは、財政バランスが日本は非常に悪いわけですけれども、にもかかわらず、日本の当局それから国民は最終的にはこの財政バランスの問題にきちっと対応していくという認識があるということだと思います。

 もう一つは、日本の中央銀行である日本銀行が、物価安定のもとでの持続的な経済成長の実現という目標をぶらしていない、しっかりその目標を目指して政策を行っているという信認だというふうに思っております。

 逆に言いますと、この二つが当局としては非常に大事だというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 対応ですけれども、この日銀の金融緩和というものが効果を上げることができるのかということなんです。

 お配りした資料をちょっと見ていただきたいんですけれども、大企業の内部留保の推移をグラフにし、また関連資料をもう一枚、三枚目のところにつけてありますけれども、この間、利益剰余金、資本剰余金というのは非常にふえてきているわけですね。引当金を入れるかどうかという議論はあるけれども、仮に入れても、このふえ方は大変なものでありまして、〇九年度で二百五十二兆四千億円であります。このリーマン・ショック以降の非常に経済的には厳しい状況の中で、これだけ大企業の内部にため込んだ利益はふえ続けているわけであります。

 三枚目の表を見ますと、有形固定資産、設備投資の部分でありますが、これは非常に低迷しているわけです。それから、右の方にありますが売上高、これは横ばいであります。つまり、経済危機の中で消費がふえない、売り上げが伸びない、したがって設備投資がふえない、むしろマイナスである、この数年間。

 こういう中で、投資その他の資産というものが急激にふえているわけです。この投資の中には、株式もありますし債券もあります。そういう金融資産が急速にふえてきている、また内部留保がふえ続けている。これが大きな会社の実態、平均的な実態であります。

 そういうときに、総量的な金融の緩和をやっても、確かにだぶだぶと資金は出ていくとして、どこに滞留しているかといえば、銀行に滞留する、日銀と銀行の中に滞留している。その先に進まない。進まないのは、銀行の貸し出し姿勢にも問題はもちろんあると思います。同時に、その先の最終的な需要、家計を中心とする、GDPの六割を占めるその部分が活性化しないものですから、当然、消費が伸びない。たまりにたまっている。これをどのようにして、先にその資金が流れるようにするかというのが、経済全体のマクロ的な政策判断として大事なことだと思うんですね。

 この緩和というのは金融面での措置ですけれども、これが経済全体に効果を上げるかどうかというのは、その末端の部分の政策との関連が大変大事な問題だ。したがって、金融だけでは限界があると私も思います。

 その点については、どのようにお考えでしょうか。

白川参考人 まず金融政策の話、それから金融政策以外の話ということでお答えをしたいと思います。

 日本銀行は、先ほど来申し上げますとおり、強力な金融緩和を行っております。これは企業の資金調達コストを低下させるとともに、先行きの資金調達に対する安心感を高めるということで、これは企業活動をしっかり下支えしているというふうに思います。

 それから、金融機関の貸し出し態度、あるいは企業の資金繰りも、これはもちろん厳しい先も残っておりますけれども、しかし、全体として見ますと、かなり改善をしてきたということでございます。

 先生御指摘のとおり、特に大企業については、手元資金は今は非常に潤沢でございます。これは各種の統計でももちろん確認できますし、私どもが企業の経営者と会いますと、手元に資金は潤沢にあります、問題はこの資金を使う場所がなかなかないんですということを、金融機関の経営者からも企業経営者からも、これはしょっちゅうお聞きします。

 実は、この現象は日本だけではなくて、アメリカも今全く同じことが起きていまして、アメリカの企業、特に大企業のキャッシュフローは非常に潤沢でございます。

 なぜこれが実物投資に向かっていかないのかということでの御質問でございます。

 私はこれは、少し中長期的な話とそれから短期の話とありますけれども、中長期的なことからいきますと、これは日本経済について言いますと、やはり成長力が低下をしてきているということだと思います。そういうもとで、将来に対してなかなか自信が持てないということだと思います。この点については、政府の方でもさまざまな取り組みをなされているわけですけれども、成長基盤を強化していくということが大事だと思っています。

 それから、もう少し短期的な面でいきますと、これは今申し上げた大きな話とは別に、やはり先々について不透明感があるということでございますから、その不透明感をできるだけ取り除くことは、これは大事でございます。日本銀行の金融政策だけで解決するとは思いませんけれども、しかし、金融政策の面からすると、この不確実性を取り除くということが、少しでも企業家がいろいろな活動に取り組むことを後押しすることになるというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 野田大臣にお聞きします。

 このような大企業の実態、つまり内部に利益をどんどこため込んで潤沢に資金がある。日銀が緩和しても、そんなにその資金の投資先がふえるわけじゃありません。したがって、この投資先をどうふやすかということを考える場合には、先ほど私が申し上げましたような、経済の最終的な需要の部分に対してどういうふうに手を打つかというのが非常に大事なことだと思うんです。雇用の問題にしても社会保障の問題にしても、基本はそこにあるというふうに思うんですね。

 同時に、企業に対して、例えば法人税の減税の議論があります。法人税の減税をしても、企業のそのような状況を考えると、それは一体どうなるのかといえば、同じようなことになるわけでありまして、例えば、内部留保にたまってしまうとか、あるいは、カルロス・ゴーンのような社長にぼんと報酬が配られるとか、株主の配当をやるとか、そういうところに消えるといいますか流れていくわけであって、本当に経済を活性化する方向に行かないというのが問題なので、法人税の問題はそういう角度からも扱うということが私は必要だと思う。だから、今減税をやる必要はないと私は思っております。

 そこで、この法人税の問題に少し具体的に入ります。

 日本の法人税は高い高いと言いますけれども、表面的な実効税率だけであればそういうふうに見えないことはない。しかし、政策減税がさまざま行われております。研究開発減税その他ですね。そのために、実際の大企業を中心とする税負担はそんなに重くはない。

 例えば、日本経団連の税制問題の担当者であります経済基盤本部長が、日本の法人税は見かけほどは高くない、表面税率は高いが、いろいろ政策減税あるいは減価償却から考えれば実はそんなに高くない、今でも断言できますが、特に製造業であれば欧米並みであります、実際の財界の中心で税制を担当している方がこのようにおっしゃっているわけなんです。

 我々が試算したところによりましても、四〇%といいますが、実質的には三〇%台、三〇%の前半、こういう結果が出ているところであります。その点を、さらに今度は社会保障の負担との兼ね合いまで入れますと、国際的に見て日本は決して高いものではないというふうに思うわけです。

 それで、数字を確認しますけれども、対GDP比で法人所得課税の税収と社会保険料の事業主負担の合計で、日本はドイツ、フランス、スウェーデンと比較して高いのかどうか。

 それから、業種的にいって、自動車産業、エレクトロニクス産業、情報サービス産業、この三つの産業で、国税、地方税、社会保険料を合わせた負担は、ドイツやフランスと比べて日本は高いのかどうか。この数字を確認したいと思います。

野田国務大臣 数字にかかわるお話なので、これはちょっと正確に申し上げたいと思います。

 まず前段の、法人所得課税の税収と社会保険料の事業主負担の合計対GDP比ということでございますが、日本は九・五%。

 それで、フランスは一四%、スウェーデンは一三・五%ということで、フランス、スウェーデンは日本より高い。

 ドイツは八・五%、イギリス七・一%、アメリカ六・四%。ドイツ、イギリス、アメリカについては日本より低いということが数字では出てまいります。

 それから、自動車産業、エレクトロニクス製造業、情報サービス産業、この三つの産業についてのお尋ねでございますけれども、若干古いんですが、平成十八年に財務省が行った委託調査によりますと、自動車製造業、エレクトロニクス製造業、情報サービス産業について、我が国の法人所得課税と社会保険料を合わせた法人負担は、ドイツ、フランスと比べて低い水準であることが示されたというふうに承知をしています。

 委託調査は、前提条件の置き方によっていろいろ負担は変わるんですが、平成十八年の試算結果ではそういう結果が出ております。

佐々木(憲)委員 したがって、日本の法人税が高い高いというふうに言いますけれども、これは事実を正確に見て言わなければならないというふうに思いますし、法人税をどんと下げれば何か景気がぱっとよくなるような、そんな関係にはないというのは先ほど言ったとおりであって、大事なことは、国民の生活をどのようにして支え、そこから、下から需要を生み出していくか、その観点が大事なことだという点が、私がきょう申し上げたかったことでございます。

 以上で終わります。

海江田委員長 次に、高山智司君。

高山委員 民主党の高山智司でございます。

 何かこの時間帯に質問すると野党みたいな感じになっちゃうんですけれども、与党の質疑で、かつ、実は今閉中審査ということでございますけれども、閉会中にもこの財務金融委員会、自民党の竹本筆頭を初め田中元委員長ともども、海江田委員長を団長といたしまして、今、ギリシャ危機ということが非常によく言われておりました。そのギリシャ危機で、ギリシャの国の信用が失われて、財政破綻になってしまった。日本もそういうふうになるんじゃないかというようなことで、この半年間、いろいろなところでギリシャのようにならないようにというような例でよく使われてきたということで、今回の財務金融委員会の視察団は、八月十九日から八月二十八日までの十日間、ドイツ、ギリシャ、ベルギー、フランスということで視察をしてまいりました。

 まず、ドイツでは、実際にギリシャ危機に、ギリシャを守るというよりはユーロを守ろうということで、欧州中央銀行とそしてEU加盟国とIMFのトロイカ体制でギリシャに対する支援をしている、そういう実際のお話も聞いてまいりましたし、また、ギリシャにも参りました。

 ギリシャですけれども、皆さんもう御案内のことだと思いますけれども、このギリシャの金融危機がなぜこう表面化してきて今大ごとになったのか。これはまさに我が国に参考になるといえば参考になるでしょうし、いや、参考にならないなという面もあるなという、ちょっと今悩ましいところなんですけれども、二〇〇九年の十月にギリシャでも政権交代がありました。二〇〇九年にギリシャで政権交代が起きて、新しい政権が前政権のいろいろな腐敗だとか粉飾決算を調べていったら、財政赤字が当初、旧政権では二%台だと発表していたのが実は一三%もあったということが明らかになって、ギリシャの国債の格付がことしになって下がってきたということがこのギリシャ危機でございます。

 さらにまた、政権交代前の旧政権においては、では、どうしてそんなにギリシャは財政破綻になるほど財政支出が多かったのかということも、これはギリシャの新政権の財務大臣以下伺ってまいりましたけれども、まず公務員の人件費が高い。公務員の人件費が、結構ギリシャは、公務で働いている人が全労働人口の三分の一はいる、しかも割かし組合が強いということもあって、むしろ旧政権下においては公務員の給与はどんどんどんどん上がってきていたという事実がまたあったそうです。

 それともう一つは、ギリシャにおいては年金が非常に手厚い。手厚いし、かつ五十代から前倒しで年金をもらうことができるので、実はアーリーリタイアメントで早目に年金をもらって暮らしている人が多い。だから、年金の支出も非常にふえてしまった。こういうような現実がギリシャはあったということがございます。

 政権交代後に、この危機の中で、実際EUやIMFから援助を受けるに当たって、もちろん消費税も四%上げました。こちら、今皆さんにお配りしました日本とギリシャの比較という表をぜひ見ていただきたいんですけれども、もともとギリシャの消費税は一九%もあったんですけれども、それが段階的に二一%、二三%ということで、消費税も四%増税ということになりました。そして、公務員の人件費も一〇%削減して、年金の支払いも一五%削減して、随分厳しい歳出の削減をするという改革をギリシャではやっているという話を実際伺ってきたわけでございます。

 資料も皆さんのところに届いたと思いますので、こちらの資料二の方、特に日本とギリシャの比較というところをごらんいただきたいんです。その比較をごらんいただいて、ぜひきょう私が考えていただきたいなと思いますのは、実は、例えば、これは今度は日本の話ですけれども、日本の六月二十二日の閣議決定の財政運営戦略、この中でも、ギリシャ、ギリシャという文字が結構出てくるんです。ギリシャのようにならないようにやりましょう、これは六月の時点の話です。

 しかし、実際に我々視察団が行きまして、ヨーロッパのEUあるいはギリシャの話を聞いてまいりますと、喧伝されているほどギリシャ危機というのは、確かにことしの当初は、かなりの危機だ、大変だということだったんですけれども、やはりユーロのシステムの中でだんだんだんだん今安定してきているという実際があって、実際、野田財務大臣の八月の財務金融委員会での所信、この中でも、ギリシャという文字は全然出てこない感じになってきているわけですよ。

 そういうことも考えまして、まず大臣に一つ伺いたいんですけれども、今回の参議院選挙のときも、何かギリシャのようにならないようにこれからやはり財政再建が必要だというふうなことをやたら引き合いに出されていたんですけれども、実際、ギリシャの例というのは我が国にとって本当に参考になるのかなと。これは、先ほどからもお話が出ていますけれども、やはり、国の信用力とかいろいろな面で違いがあるんじゃないのかなということを私は特に思うものですから、本当にギリシャというのを参考にしてこれから我々の財政運営というのを考えていくことがいいことなのか、まず財務大臣に伺います。

野田国務大臣 高山委員のお尋ねにお答えをしたいと思います。

 実際にギリシャに行かれていらっしゃるので、いわゆる体感をされている部分があるので、私は行ったことがないので、そこはちょっと違いがあるかもしれませんけれども、よく一般的に言われるのは、ギリシャの場合は経常収支の赤字国、日本は黒字国、これはやはり違いが大きいと思います。加えて、先ほど委員がおっしゃったように、ギリシャの財政危機の発端は財政統計の不備から始まったというきっかけも、これも違うだろうと思います。また、国債の海外保有比率、ギリシャの場合は七割が海外、日本の場合は海外保有五%。いろいろな意味での違いはあると思うんですね、経済財政事情。

 ただし、いわゆる債務残高の対GDP比というのは、G7でもG20でも一つの参考資料として使います。その意味では、二〇一〇年度末、あのギリシャも一二〇%台、我が国は一八一%と、主要先進国の中では一番深刻な水準、こういうものはやはりギリシャも一応対象として見比べた方がいいのではないかなというふうに思いますし、いわゆる財政情報の不備が発端でしたが、景気のいいときにいわゆる財政再建の努力をほとんどしなかったことも大きな原因だし、その結果、今、ギリシャ危機はもう通り過ぎたように言われていますが、たしか五月が一番ピークです。ただ、ドイツとの国債の開き、対独国債スプレッドは、あの危機と同じぐらいに今上がってきています。

 いろいろな意味で、まだそういう意味での財政危機というのは続いているのではないかということは、数字の上ではあらわれているというふうに思います。

高山委員 今、財務大臣の方から、違う面と参考にしなければいけない面ということがございましたけれども、今おっしゃいました債務残高の対GDP比、これはよく使われます。ギリシャがもう一三〇%だけれども、それどころじゃないよ、日本はもう一八〇%で、そろそろ二〇〇%にも達しようとしているということがよく言われます。

 でも、その他の財政収支であるとか経常収支、こちら、私の表にも書きましたけれども、見ると、これは明らかにやはり日本はまだいいんですね。これはギリシャと比べてというだけではなくても十分いいし、あと、特に、先ほどからお話あります長期金利ですけれども、長期金利、ギリシャは、二〇〇九年の時点で四・五七%だったのが、もうことしは一〇・三四%まで、めちゃめちゃ上がってしまっている。

 それに比べて、日本は結構ずっと一%ぐらいであるということで、いたずらに余り、ギリシャのようになってしまう、なってしまうということで危機感だけあおっていく、そして、財政再建というのはやはりもう絶対的に必要であり、そもそもこれは、民主党が政権をとった一番の理由は、きちんと財政再建してもらいたい、そして、もう将来に赤字を残さないでもらいたいというところが、やはり一番原点として私はあったと思います。思いますけれども、それにこだわる余り、景気対策面やいろいろな面でブレーキがかかり過ぎてしまうと問題じゃないかなというふうにちょっと私は思っておりまして、この点、自見大臣にもお話を伺いたいなと思っているんです。

 参議院選挙のときもそうだったんですけれども、つい財政再建のことが心配な余り、ちょっとそっちに重きが行き過ぎてしまって、ほかにも何か、今の日本経済の財政再建をする方法としては、税制の抜本改革ももちろん大事だけれども、それ以外の景気対策だとかいろいろな方法があると思うんですけれども、この点、まず自見大臣、お考えをお聞かせ願います。

自見国務大臣 高山議員が実際ギリシャに行かれたということで、大変敬意を表させていただく次第でございます。

 今、財務大臣から話がございましたように、財政規律ということはどの国にとっても大事でございますが、今いろいろなことを野田財務大臣が言いましたが、私は、ギリシャと日本、ごく一般的に言えば、大体日本の二十分の一ぐらいの経済規模だと思っていますし、国債の国内の消化率も、先生の表によりますと日本は九五・四%、ほとんど国内が国債を消化いたしていますが、一方、ギリシャは、これの表を見ましても三〇%ということで、確かに財政規律というのは大変大事でございますけれども、同時に違いもしっかりあるわけでございまして、他山の石とすべきでございますが、一概にギリシャ危機を余りあおり過ぎると、何となしに萎縮してしまうというところもございますから、そこら辺は、あくまで私は、政治家のきちっとしたバランス意識と申しますか、そういったことが必要であるということを思うわけでございます。

 今の政権、先生のところの民主党と国民新党の連立でございますが、そういった意味で、新成長戦略というのは、御存じのように、先般、既に七つの分野でつくらせていただいたわけでございまして、今からしっかり、今の内閣でも、こういった環境、エコだとか、あるいは健康だとか、あるいはアジアの経済。

 この前、中国に行かせていただきまして、温家宝さんともお会いしましたけれども、二年前のリーマン・ショック以降、特に、今さっきどなたか委員からもお話がございましたように、中国のマクロ経済政策、これが功を奏したというか、非常に適切、的確で、ことしも第一・四半期が一一・九%の経済成長率、第二・四半期が一〇・三%、通期で八%ぐらいの経済成長率を目指すということを言っておられました。そういった意味で、中国と日本が一七%、世界のGDPでございますから、中国と日本がある意味でアジアの成長センター、あるいは、きちっとやはり責任を持ってやっていかなければいけないという話がございました。

 そういったことも含めて、やはりアジアの経済を常にきちっと日本の経済の成長戦略の中に取り込むということが私どもは大変大事だと思います。

 それから、観光、地域活性化、それから科学技術。長期的に国家の競争力というのはやはり科学技術の高さということは、もう先生御存じのように大変大事でございます。

 それから、雇用・人材戦略、それから金融戦略でございまして、この金融戦略のところは私が受け持たせていただいているところでございますが、実体経済、企業のバックアップ役としてのサポートと同時に、金融自身がやはり成長産業として経済をリードしていくことが必要だ、私はこう思っておりますので、しっかりいろいろ御指導いただきながらそのことをやっていきたいというふうに思っております。

高山委員 ありがとうございます。

 新成長戦略は、まさに今の財政再建だけじゃなくて、増収を目指していくということだと思うんですけれども、私、ギリシャに行きましたときにも、パパコンスタンティヌ財務大臣なんかと話しますと、もう一〇%カット、年金の一五%カット、増税も含めて、国民の支持があるからこの改革ができるんだという非常に力強いお話がありました。

 逆に今度は、銀行協会の会長のラパノスさんとか、また、民間の大きな銀行の方ともギリシャでお会いすることができて、いろいろ話を聞きました。その際に、私の方から、先ほどギリシャの財務大臣に聞いたら、緊縮財政でやっていく、それを改革だと言うんだけれども、逆に景気を冷え込ませることになるんじゃないかというような質問をいたしましたら、確かにその面は一定冷え込むことは間違いないだろう、余り緊縮財政でやると。

 しかし、こういうふうにおっしゃっていました。ギリシャが今最も必要としているのは国際的な信用であり、信用さえ回復できれば投資も呼び込める、だから、中長期的に見れば、今やっている改革というのは相殺されてプラスの方が大きいだろうというようなことを言っておりましたので、やはり私、財政再建をしっかりやって日本という国がより一層信用力を高めて、今、自見大臣おっしゃったような新成長戦略をやっていける体制になるということが一番必要だなと思っております。

 ギリシャの報告はちょっとこのぐらいにいたしまして、今度は、概算要求の締め切りで、この間もう締め切りがありました。今、各省からいろいろな要望が出てきていると思います。今回、政治主導ということで、復活枠の中で大きな組み替えをやっていこうというお話になっていると思うんですけれども、ちょっと私、一番気になるのが年金の財源なんですけれども、この点について、まず厚生労働省に伺いたいんです。

 今回、財務省から説明を受けますと、政策的な一割カットの部分と、社会保障などの一割カットしないような部分と、いろいろ要求できる方法がある。そしてまた、要求という方法と要望という方法と二個あるというような話がございましたけれども、年金の予算に関して、厚生労働省は今どのような要望というか要求をしているか、概算要求をしているのか、教えてください。

山井大臣政務官 高山委員にお答えを申し上げます。

 平成二十三年度の概算要求においては、年金の基礎年金国庫負担の割合を二分の一とすることを前提としております。

 その理由は、国庫負担割合二分の一の維持については、年金制度の持続可能性を確保するとともに、現役世代の負担が過重とならないようにして、年金制度に対する国民の信頼を確保するために必要不可欠と考えているからでございます。

 以上のことから、平成二十三年度の国庫負担割合について、二分の一を前提に概算要求を行いました。

高山委員 私、今、この年金の二分の一の件に関しましてはちょっと話が複雑なので、資料一という形でお配りをさせていただきました。

 この二分の一の財源ですけれども、ことしの分までは、まさに自民党政権下のときに、財投からいわゆる埋蔵金を取り崩してきて持ってくるということで手当てをしてきたわけなんですけれども、それが来年から切れてくるということになります。

 この点に関して、まず、今、財務省の方でどういう財源の準備をしているのか、これは財務大臣に伺います。

野田国務大臣 お答えをいたします。

 委員の提出していただいた資料にも書いてあるとおりなんですけれども、基礎年金の国庫負担は、法律上、税制抜本改革により所要の安定財源を確保した上で二分の一を恒久化するとして、そして国民年金法で、今、資料のとおりでございまして、二十一年度、二十二年度については、財政投融資特別会計から一般会計へ特例的な繰り入れを行いました。

 その結果、国庫負担二分の一を実現しましたけれども、二十三年度については、この二分の一を維持するために、これは必要額が二兆五千億円ぐらいになります。これは今後の予算編成過程で検討をしていきたいというふうに考えています。

高山委員 これは私も非常に心配というか、今まさに蓮舫大臣がやっているところの行政刷新PTの、党側の、今私も副座長もやらせていただいておりますし、何とか無駄も削減しなきゃいけないという気持ちは今非常にあるんです。

 ただ、これは野田財務大臣に伺いたいんですけれども、今、無駄の削減やあるいは一割カットでやっている部分というのは、どちらかというと政策経費というか、そういう部分が多いんじゃないのかなというふうにちょっと思っております。それで、社会保障費の方は、一・三兆円の自然増も含めて、聖域とまでは言いませんけれども、いわゆる無駄削減のメスがまだ入り切っていないというか、入れていないのではないかと思うんです。

 まず、私の今のこの認識なんですけれども、要するに、今いろいろな事業仕分けだとか無駄削減をやっているのが、まさに社会保障費の、どちらかというと一割カットをかぶっていない方ですね。こちらに対してはメスが今入っているのか、それとも入れていない状態なのか、そこをちょっと財務大臣に伺いたいと思います。

野田国務大臣 委員の御指摘のとおり、概算要求の組み替え基準のときは、地方交付税は仮置きで出してもらう形で、そして、社会保障の部分は自然増分があるので、その根っこの部分もかなり社会保障は関連しておりますので、慎重な検討を要するということで、一律削減の対象にはなっていません。なっていませんけれども、これからその予算の要求の部分については、事業仕分け等によって精査をしていきます。

 要望部分については、公開手法を取り入れながら、これは特別枠からの配分になりますから、これも精査をしていきます。その精査の過程の中では当然社会保障も入ってくるということで、御理解をいただきたいと思います。

高山委員 私もいろいろ無駄の削減をやってみて実感としてもあるんですけれども、この事業は確かに無駄だからやめようとか、半額にしようとかということを積み重ねていって、本当に社会保障費の中で二・五兆円という額がまず捻出できるのかという、自信のなさと言ってしまうとちょっと与党としてふがいない部分もあるんですけれども、実際、その二・五兆円、どうやって社会保障費の中でやりくりして出していくのかというのを、もう一回、財務大臣に御答弁願えますでしょうか。

野田国務大臣 今の段階で確たることは申し上げられません。

 ただ、法律上は、安定した財源を確保して三分の一から二分の一に引き上げるということになっています。できない場合は、臨時の対応をこれまでやってまいりました。どういう対応をするかというのは、まさにこれから予算編成の過程で知恵の出し合いをしなければいけないと思っています。

高山委員 私が今お配りしました、いろいろ法律の条文が書いてあるものの一番下のところですけれども、十六条の二というのがあります。ここで、差額について、要は臨時の法制上、財政上の措置を講ずることもあるというか、する必要があるというようなことが書いてございます。

 今、無駄の削減で仮に二・五兆円が出なかった場合、無駄の削減は徹底してやったんだけれども、それはほかの要求だとか要望の中でももちろん使わなきゃいけないかもしれないし、無駄削減だけでは出なかった場合には、やはり何か臨時の措置ということが考えられると思うんですけれども、これはどういうオプションが今考えられるんでしょうか。

野田国務大臣 まだそこまで、オプションを語る段階ではございませんが、いろいろ知恵を絞らなきゃいけないと思いますし、やはり年金制度の信頼性が根幹から崩れないように頑張っていきたいというふうに思います。

高山委員 この点に関して、これはちょっと党内的にも私は少数かもしれませんけれども、もし二分の一が堅持できなければ、三六%の、三分の一ぐらいの国庫負担に戻るということですけれども、その場合に、これは厚労省に伺いたいんですけれども、もし財源が確保できずに三分の一になってしまった場合、じゃ、これは来年からいきなり給付額が減っていく、そういうことなんでしょうか。どういう影響が出てくるのか、教えてください。

山井大臣政務官 高山委員にお答えを申し上げます。

 仮にこの二分の一が維持できなかった場合には、現行の給付水準というものを前提とすれば、将来的に、現在予定されている以上の保険料を引き上げて補うか、あるいは年金積立金の取り崩しを行う必要が生じるという問題があります。

 また、これは給付にも影響いたしまして、従前、保険料免除期間における基礎年金の支給水準は国庫負担比率に連動してきましたから、保険料免除期間における年金給付の水準が、その期間だけ二分の一から三分の一に低下することが懸念される、そういう問題がございます。

高山委員 今の政務官の御説明ですと、つまり、来年からいきなり給付水準が下がる、こういうことはないわけですね、来年からいきなり下がるというのは。自民党時代に百年安心と言っていたのが、例えば九十八年安心とか、そういうふうになるというようなイメージのお話だと思うんですけれども、それで間違いないですか。

山井大臣政務官 来年からということはございませんが、やはり将来的に、その部分、二分の一から三の一になったら、将来受け取る今の方々の給付が減ってしまうという問題点が生じます。

高山委員 私は、この年金の二分の一の国庫負担の問題は、ことしだけの資金繰りのことももちろんすごく大変なんです。今、財務大臣が御答弁されたとおり、かなり大変な話だとは思います。

 けれども、将来的に考えても、実はことし乗り切っても、じゃ、その後ずっと二分の一でやっていく話なのか、それとも逆に、将来給付が少し下がるようなことも検討しながらやっていかなきゃいけないのか、非常に大きな議論になってくるなと思いますが、ちょっと今時間がなくなってまいりましたので、もう一つの質疑通告をしている項目の特別会計のことに入っていきたいと思うんです。

 先ほどから、やはり今、日本は財政難であり、財源捻出のためには特別会計に切り込むということは、はっきり言って避けて通れないというふうに思っております。

 この点に関しまして、二〇〇六年当時、私も政調副会長をやらせていただきましたけれども、そのときに野田現財務大臣がNC財務大臣をやられて、そこで始めた特別会計の改革の話がございまして、結局、特別会計の直嶋プランという形で、二〇〇六年に我々の方で今ある特別会計をどのように存廃していくのかという話をまとめさせていただいたんです。そのときに、本当に必要なもの以外はかなり縮減するということで三つぐらいに絞ろう、もうそれで、あとはほとんど一般会計にして、その中で自由に予算の組み替えができていくようにしようというような感じのプランを、対案として、法案として出させていただいた経緯があるんです。

 実際に政権交代してみますと、そのときの特別会計は、既に自民党時代になくなったものもありますし、状況が変わっているものもあるということで、今、ちょうどこれから特別会計の見直しをやっていくわけなんですけれども、その当時の野党時代の我々のスタンスと、あるいは、今政権をとってみてこれから特別会計の改革をやっていくということで、スタンスに変わりがないかどうかということをまず財務大臣に御答弁願います。

野田国務大臣 確かに、私、かつて民主党の次の内閣の財務の担当をしているときに、特別会計改革に着手をいたしました。最終的には、私のレベルのときには中間的整理で終わって、直嶋さんが引き継いで最終形をまとめられたというふうに記憶をしています。

 特別会計、あの当時はまだ小泉さんが頑張っていらっしゃるころで、特別会計はたしかピークで三十一会計あったものを、いろいろ改革をされて十八に減らしていこうという方向性は出ていたと思いますが、もっとやはり聖域化せずに総ざらいをしていこうというのが民主党の趣旨だったと思います。

 私は、その精神は、やはり基本的には、野党だろうが、与党になっても変わらずに、総ざらいという立場は必要だろうと思っていまして、やはり基本的には、特別会計だけじゃなくて、長い間の野党経験からすると、スペシャルは洗った方がいいというのが私なりの経験でございます。

 既に今、二十二年度予算執行中ですが、税外収入、これはいろいろの特別会計の積み立て、剰余金を含めて八つの特別会計からつくり出して十兆六千億、これは過去最大の規模でございました。これまで、だから全く努力はしていないと思うんですが、今回、この秋から始まる事業仕分けで特別会計を全部おさらいをすることになっています。

 高山議員も民主党行政刷新PTで今御活躍だというふうに思いますけれども、大いに見直していただければというふうに思います。

高山委員 この特別会計の見直しをしていくと、つい財務省が他の省庁のお財布をとってきているんじゃないかとか、あるいは他の省庁が頑張っちゃってそれぞれの権益をというイメージがあるんですけれども、その中で、財務省自身も実は特別会計をたくさん持っています。そういう財務省自身の特別会計に対しても聖域なくやっていきたいなという気持ちはあるんですけれども、この点、ああ、それはやってくださいという話なのか、いや、それはちょっとまあということなのか、ぜひ財務大臣からびしっと、我々全体の、仕分け人もきょうは大勢いますので、後押しをしていただければと思います。

野田国務大臣 確かに、御指摘のとおり、財務省関連でも国債整理のかかわるものとか、外為だとか地震の再保険とか、いろいろなことをやっております。

 財務省の所掌の分だけ勘弁してくれよなんてことは、私の立場からは申し上げられません。やはり、むしろ範を垂れる立場で、ほかの十八の会計と同様にきちっと議論をしていただくことがありがたいというふうに思います。

高山委員 今、財務大臣からも後押しをしていただきましたので、当財務金融委員会にも特別会計の仕分けを熱心にやっている委員もたくさんいますので、ぜひ大きな結果を党側としても出していきたいと思います。

 きょうはこれで質問を終わります。

海江田委員長 本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四分散会


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