衆議院

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第4号 平成23年2月25日(金曜日)

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平成二十三年二月二十五日(金曜日)

    午後二時六分開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 泉  健太君 理事 大串 博志君

   理事 豊田潤多郎君 理事 古本伸一郎君

   理事 鷲尾英一郎君

      網屋 信介君    五十嵐文彦君

      江端 貴子君    小野塚勝俊君

      大西 孝典君    岡田 康裕君

      柿沼 正明君    勝又恒一郎君

      木内 孝胤君    岸本 周平君

      小山 展弘君    近藤 和也君

      菅川  洋君    玉木雄一郎君

      中塚 一宏君    中野渡詔子君

      中林美恵子君    松原  仁君

      三村 和也君    柳田 和己君

      吉田  泉君    和田 隆志君

      佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  岸本 周平君     大西 孝典君

  中林美恵子君     中野渡詔子君

  吉田 公一君     泉  健太君

同日

 辞任         補欠選任

  大西 孝典君     岸本 周平君

  中野渡詔子君     中林美恵子君

同日

 理事吉田公一君同日委員辞任につき、その補欠として泉健太君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 参考人出頭要求に関する件

 平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案(内閣提出第一号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 開会に先立ちまして、自由民主党・無所属の会、公明党所属委員に対し、出席を要請いたしましたが、出席が得られません。

 再度理事をして出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

石田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度出席を要請いたさせましたが、自由民主党・無所属の会、公明党所属委員の出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 この際、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴い、現在理事が一名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名することに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、泉健太君を理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

石田委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 この際、野田財務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣野田佳彦君。

野田国務大臣 二月十八日から十九日にかけて、フランスのパリにて行われた二十カ国財務大臣・中央銀行総裁会議、G20に出席してきました。今回のG20は、フランスが議長国となって初めてのG20であります。議論の結果、十一月のカンヌでのG20サミットに向けたよいキックオフができたと考えています。

 会合においては、主に、世界経済、強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み、フレームワーク、国際通貨システム改革、一次産品価格の変動等について議論がなされました。

 世界経済については、回復が強固なものとなりつつあるが、依然一様ではなく、下方リスクが残っているとの認識を共有いたしました。先進国では、成長が緩やかで、失業率が高どまりしている一方、新興国では、より力強い成長が続いており、景気過熱の兆候が見受けられるとされています。

 フレームワークについては、統合された二段階のプロセスを通じて、政策措置を必要とするような継続した大規模な不均衡に焦点を当てることを可能にする項目に合意しました。

 具体的には、一、公的債務と財政赤字、民間貯蓄率と民間債務、二、貿易収支、投資所得及び対外移転のネットフローから構成される対外バランスが項目とされています。

 国際通貨システム改革については、資本フローへの対応、資金セーフティーネットを通じたショックの予防や対処能力の強化等の議論を通じて、その機能を強化していく作業計画に合意しました。

 一次産品価格の変動については、価格変動の要因や消費国、生産国両方への影響について検討を深めることとしました。

 また、最近のチュニジア、エジプトの情勢に関して、これらの国々の経済安定のための改革を、国際機関等と調整しつつ、G20として支援する用意があることを確認いたしました。

 今回の合意事項について議論を進展させることで、G20として着実に成果を上げていくことが国際社会にとって重要であります。日本としても、こうした議論に積極的に貢献していきたいと考えています。

 以上です。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。

 自由民主党・無所属の会及び公明党所属委員の質疑に入ることといたしておりましたが、出席が得られません。

 この際、暫時休憩いたします。

    午後二時二十分休憩

     ――――◇―――――

    午後三時三十分開議

石田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 再開に先立ちまして、自由民主党・無所属の会、公明党所属委員に対し、出席を要請いたしましたが、出席が得られません。

 再度理事をして出席を要請いたさせますので、しばらくお待ちください。

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

石田委員長 速記を起こしてください。

 理事をして再度出席を要請いたさせましたが、自由民主党・無所属の会、公明党所属委員の出席が得られません。やむを得ず議事を進めます。

 佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 質疑に入る前に、一言申し上げておきたいと思います。

 私が今ここに立っておりますのは、民主党の議会運営に賛成をして出ているわけではございません。

 きょうの予算委員会の理事会で、二月二十八日の採決日程を、与野党の合意が得られないまま、中井委員長が職権で強行をいたしました。予算委員会では、まだ、集中審議とか一般質疑その他、充実した審議をしなければなりません。それにもかかわらず、それを打ち切って採決日程を強行したということは、決して我々は許すわけにはまいりません。

 しかも、この職権強行を受けて、きょうの一時半、議院運営委員会の理事会が開かれまして、この中で野党がこぞって、二十八日の本会議立てについては反対である、こういう抗議をしたわけですが、その中で、月曜日の本会議立てを職権で強行する、こういうことまで行われたわけでありまして、これは二重、三重に許せない暴挙であると我々は考えております。

 これで一体どういう展望があるのか、全く与党の側からの今後の展望というものが示されてもおりません。それなのに強行する、これは一体何を考えているのか、極めて不明でございます。

 予算委員会の現場では、与党側は、予算の衆議院通過までに、小沢元民主党代表の国会での証人喚問等について、その実現に最大限努力する、こういう約束をされていたにもかかわらず、これ自体も全く、きょうの与野党の国対委員長会談でもゼロ回答である。そういう中で強行する、こういうことはあってはならないというふうに思っております。

 きょうのこの財務金融委員会について言いますと、G20の報告を受けて質疑を行うということでございます。この点については、野党側から、こういうものをやるべきだという要求をしておりました。そして、その上で、与野党で合意をして日程を決めていたわけでありまして、そういう意味で、私はここに立って質疑をしようとしているわけでございます。

 まず最初に、この点を明確に述べておきたいと思います。

 具体的に質疑の内容に入りたいと思います。

 G20の報告、先ほど、野田財務大臣から簡潔にお話がありました。

 まず最初に、金融機関の規制問題についてであります。

 二〇〇八年九月、アメリカのリーマン・ブラザーズの破綻、これを契機として、全体として、一斉に金融の緩和、FRBを初めとしてそういうものが行われまして、投機的な資金が相当膨らんだのではないかと我々は思いますけれども、現在の金融危機の原因というものをどのようにごらんになっているか、日銀総裁、野田大臣、それぞれお答えをいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 今回の金融危機は、リーマン・ブラザーズの破綻をきっかけにしまして、金融市場における信認が崩壊し、企業や家計における不安心理が高まった結果、世界の金融経済活動が短期間に急激かつ大幅に縮小したことが直接の原因であります。

 しかし、先生お尋ねの今回の危機のそのさらに根本原因、この本質は何かということでございますけれども、この点につきましては、二〇〇〇年代半ば以降、世界的に実体経済、金融の両面でさまざまな不均衡が蓄積したことが、より重要な原因であるというふうに思っております。

 具体的に申し上げますと、当時の高成長、低インフレ、低金利という良好な経済環境のもとで、さまざまな経済主体のリスク認識が甘くなり、経済金融活動にさまざまな行き過ぎが生じました。この結果、資産価格が大幅に上昇するとともに、いわゆるレバレッジが拡大し、また、そうした行き過ぎを抑制するような規制、監督の枠組みも不十分でありました。

 現在、世界の監督当局、中央銀行は、こうした危機の再発を防ぐ観点から、さまざまな規制、監督体制の見直しを行っています。また、金融政策の運営という面でも、先ほど申し上げましたような金融面でのさまざまな不均衡を含めたリスクの要因を幅広く点検することの重要性が意識されるようになっております。

 日本銀行としても、こうしたことをしっかり認識して、政策対応を図っていきたいと思っています。

自見国務大臣 佐々木議員からの御質問でございます。

 今、白川総裁が的確な御答弁をされたわけでございますけれども、私といたしましては、重複するところもあるわけでございますけれども、世界的な金融危機の原因については、金融のグローバリゼーションや規制緩和の流れの中で、金融機関による不十分なリスク管理、市場参加者による不十分なリスク評価、その結果としての過度の不健全なリスクテーク、それから、複雑で不透明な金融商品と、結果としての過度のレバレッジ、それから、今、日銀総裁も言われましたように、金融規制、監督においても、金融の技術革新が進む中で、金融市場のリスクを十分に評価、対処できていなかった面があったこと等が原因と考えております。

 こうした認識を踏まえまして、金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けて、国際的な金融規制改革について、一昨年、G20首脳会議等の場で具体的な方向性が示され、その実施に向けた作業が着実に進んでいるというところでございます。

佐々木(憲)委員 現在の投機的な資金の動きに対して、一定のルール、一定の規制というものが必要だと私は思っておりますが、今回のG20では、ヘッジファンドなど投機に対する規制、金融規制の強化というものがどのように検討されたのか、それから、国際的取り組みについてどのような検討が行われたのか、御紹介をいただきたいと思います。

野田国務大臣 佐々木委員にお答えをいたします。

 金融危機の発生以来、金融規制改革は、G20の主要議題の一つでございました。昨年のソウル・サミットに至るまで、国際的に活動する銀行の新たな自己資本、流動性、いわゆるバーゼル3への合意など、G20において幅広い合意がなされてきたところであります。

 これまで、そういう検討をして、大体、合意がいろいろ出てきました。これ以降は、それぞれの各国の取り組みをいわゆる進捗管理をしていくということが大事になってくるのではないかなというふうに思います。

 お尋ねの本年のパリにおけるG20のプロセスにおいては、システム上重要な金融機関について、すなわち、いわゆるSIFIsについての規制、監督の強化、それから、銀行業務の外で金融仲介を行うようなシャドーバンキングへの規制強化などについて、引き続き検討を行っていくということになりました。

 これらの検討課題についても、G20として着実な成果を出していくことが重要であると考えています。

佐々木(憲)委員 今回の声明を読ませていただきましたけれども、これはなかなか素人にはわかりにくい。言葉が非常に難しい。

 例えばこういうことが書かれておりまして、我々は、シャドーバンキング及びシャドーバンキングと規制された銀行システムとの相互関係に伴うリスク、とりわけ裁定行為のリスクに実効的に対処するため、FSBが二〇一一年半ばまでに策定することになっているシャドーバンキングの規制及び監督に関する提言に期待すると。

 片仮名と漢字が大変多いものですから、頭にすっと入らない。要するにどういうことですか。

自見国務大臣 今、野田財務大臣からもお話がございましたように、昨年の十一月、ソウル・サミットの合意を受けて、今、佐々木議員も申されましたシャドーバンキングに関して、本年半ばまでに提言を策定すべく、その定義や、規制、監督及び監視のあり方について、今お話が出ました金融安定理事会、FSB等において議論されているところでございます。

 我が国といたしましても、シャドーバンキングへの対応等を含む国際的な金融規制改革については、中長期的に金融システムの健全性の向上に資するものとなる一方、各国の金融システムの実情の違いがございますから、その違いを十分に踏まえたバランスのとれたものであることが必要であるというふうに思っています。また、実体経済への影響に十分配慮していくことが極めて重要であるというふうに考えております。

 シャドーバンキングへの対応を含む金融危機の再発防止あるいは金融システムの強化に向けて、FSB等の場において、引き続き、こうした我が国の立場を主張しつつ、国際的に協調して取り組んでまいりたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 日銀総裁にお伺いしますが、このシャドーバンキングというものは、影の銀行、つまり、本来の銀行とまた違う部門といいますか、分野で金融活動を行うものだと思いますが、これは一体どんなもので、どのぐらいの規模のものが今世界じゅうにあるのか、教えていただきたいと思います。

白川参考人 お尋ねのシャドーバンキングのいわば定義でございますけれども、率直に言いまして、G20を初めとしてさまざまなフォーラムでの議論の場で、シャドーバンキングの定義それ自体が実は各人各様でございます。ただ、通常用いられています意味は、特に銀行がそうですけれどもそれなりにしっかりとした規制が行われている金融機関以外の主体が金融的な活動を行い、それが非常に大きくなってくる場合、これをシャドーバンキングと呼んでおります。

 今回のグローバル金融危機では、例えば、ヘッジファンドあるいは投資銀行の活動の一部もシャドーバンキングというふうに言われるケースが多かったように思います。銀行に対して規制を強化しますと、相対的に規制のかからない主体が金融活動を行うということになります。

 この規模でありますけれども、先ほど申し上げましたように、シャドーバンキングの定義自体が人によって違いますもので、正確にこれは幾らありますというふうには言えません。

 ただ、各国の金融の仲介の中で、例えば銀行の割合がどれぐらい占めているのかというのを考えた場合、日本は圧倒的に銀行中心のシステムでありますのに対し、アメリカの場合は銀行のウエートが二割とか三割でございます。もちろん、残りすべてがシャドーバンキングではございませんけれども、その中で、ある範囲が多分問題になってくる本当のシャドーバンキングでしょうけれども、一応、そういうふうなレベル感でございます。

佐々木(憲)委員 そうなりますと、世界の投機的な資金の流れをある程度規制するということになりますと、このシャドーバンキングに対してどういう対応をするのかというのは、大変重要な位置づけになるだろうというふうに思うんです。

 この規制と監督について、日本政府としてはどのような主張をG20でされたのか、あるいは国内での取り組みはどのように行おうとしておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。

自見国務大臣 お答えをいたします。

 今、白川総裁の御答弁の中にもございましたけれども、シャドーバンキングに関する定義すら実は今議論中だという話がありました。何がシャドーバンキングかということもまだ一概には申し上げられない状態でございますが、G20、FSB、証券監督者国際機構、IOSCO等において、これまでも、銀行システムの外における金融仲介に関する問題として、例えば、格付会社それからヘッジファンドの規制、監督のあり方等が議論されてきたところでございます。

 我が国といたしましても、こうした国際的な論議を踏まえて、格付会社あるいはヘッジファンドに関する取り組み強化等を行ったところでございます。格付会社には、先生御存じのように登録制を導入いたしましたし、ヘッジファンドも登録制ということにさせていただいたわけでございまして、シャドーバンキングへの対応を含む金融危機の再発防止、金融システムの強化に向けて、引き続きG20、こういうことは御存じのように国際協調が非常に大事でございますから、そういったことにおける議論に積極的に参画しつつ、国際的な協調にも取り組んでまいりたいというふうに思っております。

佐々木(憲)委員 この間、先進国で実施されてきたかなり大きな金融緩和、それから、それによって世界的に流動性が拡大をする中で、アメリカで追加的な金融緩和が実施される。こういう中で、全体として流動性が非常に拡大する中で、新興国、途上国に対して大量の資金流入が発生する、こういうふうに言われております。それが新興国のインフレーションの拡大につながったり、あるいは食料、資源の価格高騰、こういうものにつながっているというふうに思われます。

 この日米を初めとする欧米諸国の金融緩和というものが、現在の一次産品の価格の高騰につながっている、そういう認識がどの程度おありなのか、この点を日銀総裁と財務大臣に確認したいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 新興国のインフレ全般の話、それから商品市況高騰の話、両方密接に絡んでおりますけれども、一応、二つを分けて御説明したいと思います。

 まず、新興国では、御指摘のとおりインフレ圧力の高い状況が続いております。これは基本的には、新興国経済が、旺盛な国内需要を背景に、生産と所得と支出の自律的な好循環メカニズムが作用しておるというもとで高い成長を続けていること、これがまず基本的な背景だというふうに思います。

 加えまして、新興国において、全体に金融緩和の修正がややおくれぎみである、あるいは為替レート制度を固定的に運営しているということも、国内のインフレ圧力をなかなか抑え込めない一つの要因になっている。

 先生御指摘の先進国の金融緩和の要因でございますけれども、新興国の高い成長を背景にしまして、先進国から資金が流入している、これも一つの要因になっているというふうに考えます。

 商品市況でございますけれども、これも、新興国の高い成長がまず基本的な要因でございます。何よりも新興国は非常にエネルギー効率が低い、あるいは食料品の支出ウエートが高いということで、新興国中心の成長は商品市況を上げやすい、これは需要面から上げやすいということでございます。加えて、天候要因あるいは自然災害等の要因、いわゆる供給不安の要因もきいております。先進国の金融緩和の継続も、今申し上げた需要面、供給面の要因による上昇をいわば加速する、そういう要因の一つになっているように思います。

 どの程度、先進国の金融緩和が新興国のインフレあるいは商品市況上昇の要因になっているか、その辺の認識いかんということでございますけれども、基本はこれは実需だというふうに思います。ただ、金融緩和の要因ということ、これも作用していることも事実だろうと思います。その際には、先進国の金融緩和も一つのファクターでありますけれども、一方で、資金を受け入れます新興国、この新興国は、最終的には、為替レートの調整あるいは自国の金利を調整するという手段も持っていることも事実であります。

 いずれにせよ、先進国も新興国も、みずからのとっている政策が世界全体にどのような影響を与えるのか、それがまた翻って自国にどういうふうに戻ってくるのか、その辺をしっかり考えた運営が必要だというふうに思っております。

野田国務大臣 各国の金融政策については、日本銀行も含めてそれぞれの国の中央銀行が、その時々の市場動向であるとか経済動向を踏まえて判断を行っているものと承知をしています。

 なお、新興国においては、旺盛な内需や資本流入を受けた高い成長が続く中、インフレ傾向にあると承知をしていますが、これは白川総裁の御発言とも重複をするかもしれませんけれども、一次産品の価格上昇の背景としては、中東情勢のほか、新興国による実需の増加、天候不順、一次産品の金融商品化の影響など、さまざまな要因が指摘をされているところでございます。

 いずれにせよ、一次産品変動については、今回のG20、このパリの会議がまさにキックオフの議論でございまして、さまざまな意見交換がありました。それを踏まえて、国際機関と協働しつつ、価格変動の要因や、消費国、生産国双方への影響について検討を深めることとされまして、そういう点については合意いたしまして、実際、こうした点についての分析を深めるための事務レベルのスタディーグループを設置し、そのグループの座長には日本銀行の中曽理事がつくというようなことが決まったということでございます。

佐々木(憲)委員 この声明を見ますと、「我々は、この変動が食糧安全保障に与える影響に留意しつつ、途上国の農業セクターへの長期的な投資の必要性を改めて表明した。」こういうことが書かれております。

 これは、食料安全保障、各国の食料主権といいますか、その重要性を確認したものというふうに思いますけれども、そのようにとらえてよろしいかどうか確認をしたいと思います。

野田国務大臣 一次産品の過度な変動、いろいろな影響が出るというふうに思いますけれども、特に食料という意味に限っては、食料安保の議論も必要になってくると思います。それについては、G20の中のいわゆる農水大臣プロセスの中でこれから議論することになると思います。

 それから、いわゆる低所得国への配慮、これも大事になってくるだろうと思いますが、これは外務相プロセスでの議論になると思います。

 一次産品の高騰の問題、いろいろなことをあらゆる観点からやっていかなければなりませんが、それぞれのレベルでG20の中で議論をしていくということになります。

佐々木(憲)委員 途上国では、小麦、米など主食となる農産品の価格が高騰して、食料不安、栄養不足などの深刻な事態が生まれております。みずからの国が自立するという場合の基礎的な課題として、食料の自国生産の確保というものを優先する、これが食料安全保障には必要なものだと考えております。

 このG20において、日本政府は、食料安全保障について、食料主権の問題についてどのような態度をとったのか、この点を確認したいと思います。

野田国務大臣 今回は、一次産品の取引価格の高騰、変動の要因分析をまずしていこうじゃないかと。先ほど、日銀総裁も私もいろいろなその要因の話をさせていただきました。そのためのスタディーグループをつくる。まずは、これはやはりインフレ懸念をみんな持っているわけですから、だから、むしろ金融政策に携わってきている中央銀行の皆さんが集まって、さっき中曽理事のお名前も申し上げましたが、まずその要因分析をしていこうというのが今回のキックオフの最大の合意でございます。

 それを踏まえて、食料安保の話も含めて、それはまさにさっき御説明したとおり、農相レベルでの議論、これは六月に予定をされています。そういう議論になっていくと思いますし、低所得国、貧困国に対する対応、これは外務大臣プロセスになっていく。そういう役割分担をしながら、これから議論が深まっていくということでございます。

佐々木(憲)委員 世界の飢餓の問題を考えましても、食料の問題というのは非常に重要な課題でありまして、各国の食料についての安全保障、各国の食料主権というものは非常に私は大事だと思っておりまして、これは先進国、途上国問わずしっかりと踏まえて対応しなきゃならない、そういうことだというふうに思っております。

 それから次に、貧困や開発問題に取り組む非政府組織、NGOのオックスファムというところから、G20の開催に合わせて、金融取引税の導入、これを各国・地域の代表に求める文書を発表いたしました。この内容を見ますと、金融取引税は時代の要請です、最大で年間四千億ドルを調達することが可能だ、こういうふうに書いています。

 具体的には、株式、為替、債権、デリバティブなどの金融取引に対して、平均して〇・〇五%の課税を行うことを求めている。経済危機の影響で保健、教育、農業予算の削減を余儀なくされている国々へ支援を行うことが、これによって可能となるんだ、こういう提案であります。

 私どもも基本的にはこれに賛成でありますが、投機資金の動きを規制するための一つの有効な手段だと思いますけれども、これについて、日銀総裁、それから財務大臣のそれぞれの認識、この評価をお聞きしたいと思います。

白川参考人 オックスファムからの書簡につきましては、これはG20へ送付され、ことしのG20プロセスにおいて金融取引税導入に向けた議論を進展させる要請がありましたけれども、今回のG20では、これ自体についての深い議論はございませんでした。

 オックスファムの提案につきましては、これは、金融取引税を導入し、この税収入をもって貧困国への支援に活用するものというふうに認識しております。支援への活用という点については、私の、中央銀行という立場からコメントすることが適当ではありませんので、専ら金融取引税の導入という点についてお答えしたいと思います。

 金融取引税の導入、特に為替取引に対する課税につきましては、これにより、短期的な取引を繰り返す投機的な資本の移動を抑制し、国際金融市場の安定を図ろうとする提案であるというふうに認識をしております。

 ただ、もっとも、この提案を実施していく場合には、これは前から言われていることではございますけれども、取引への課税が市場の流動性あるいは効率性を低下させる可能性があることや、あるいは、タックスヘイブンも含めて世界各国がすべて足並みをそろえて課税することが難しいという実効性の問題、こうした問題を検討していく必要があるというふうに考えております。

野田国務大臣 佐々木委員の御指摘のとおり、G20の開催に合わせてオックスファムからの書簡が送付されました。そして、ことしのG20プロセスにおいて金融取引税導入に向けた議論を進展させるような要請があったところでございます。

 加えて、二月十九日、いわゆる本格的な第一セッションのフレームワークの議論をする前に、サルコジ大統領によるレセプションがございました。そのレセプションの席上で、サルコジ大統領も、この金融取引税についてその実現に向けての決意は述べられました。

 ただ、それが、金融取引税自体がG20の議論の俎上にのったかというと、まだそうではございません。レセプションで大統領はごあいさつされましたけれども、今回のG20ではその議論はしていません。

 その評価についてでありますけれども、我が国の場合、平成二十三年度税制改正大綱において、通貨取引税等の国際連帯税について真摯に検討を行う、今こういう段階ということでございます。

 こうした検討に当たっては、特に通貨取引税については、グローバルな執行が困難であることに加え、大量性、多様性、足の速さといった金融取引の特徴を踏まえることが必要ではないかというふうに考えています。

佐々木(憲)委員 もう時間が参りましたので終わりますけれども、この金融取引税の問題は、ぜひ真剣に検討していただきたいと思います。

 実効性、効率性、いろいろ問題があるということは言われておりますけれども、しかしそれは、そういう理由でこれを野放しにするという一方の流れもありますので、やはり今、国際的なこれだけの投機資金の大量の移動というもの、それから各国の国民生活にかかわる食料等の高騰、こういうことを考えますと、何らかのこういうルールというものを持ち込まないと、これはますます、いわば虚業が実業を破壊する、あるいは生活を破壊するということにもなりかねませんので、ぜひその点はしっかり検討していただきたいというふうに思います。

 以上で終わります。

     ――――◇―――――

石田委員長 次に、内閣提出、平成二十三年度における財政運営のための公債の発行の特例等に関する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、これを許します。菅川洋君。

菅川委員 民主党の菅川洋です。

 本日は、所得税法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきたいと思います。

 税制改正といいますと、ほとんど、何が増税、何が減税、そういった内容に注目が集まります。確かに、野田大臣また五十嵐副大臣におかれましては、この税制改正大綱をおまとめになる間、非常に御苦労をされたことと思いますけれども、こういった個別の増税、減税ということでなく、私は、今回の改正の中で最も大きな改正点というのが、国税の手続法であります国税通則法の改正であると思っております。

 国税通則法は、国税に関する手続を定めた法律で、税額の増減には関係ありませんので、一般的には関心の低いものであるかもしれませんが、すべての国税に関係する非常に重要な法律であると思っております。

 この国税通則法、昭和三十七年に制定されましてから、ほとんど改正が行われずに、実に今回が五十年ぶりの大改正ということになりました。しかも、この改正に当たりまして、名称まで変更するということになりまして、国税通則法という名称から、少し長いんですけれども、国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律、このように名称が変更され、そして、この法律の第一条に、この法律の目的として、今まで納税義務だけを規定していたものから、「国税に関する国民の権利利益の保護を図りつつ、」という文言が追加されまして、納税者の権利も明記されることとなりました。憲法にも納税義務の規定がされているだけでありまして、こういった納税者の権利を記載しているのは、この法律だけということになろうかと思います。

 そこで、この法律、こういった納税者の権利を明文化した、こういった大きな改正をしたことにつきまして、野田大臣に、この改正に対する基本的な考え方をお聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 菅川委員、さすがに税の専門家でございますので、いいところを御質問いただいたというふうに思います。

 法人実効税率の引き下げ自体も、これはこれで十二年ぶりの大きな決断でございましたが、何年単位で考えると、委員御指摘のとおり、国税通則法は昭和三十七年以来の五十年ぶりの大変大きな改正でございますので、その意義は大変深いと思っています。

 その基本的な考え方を御説明申し上げたいと思いますけれども、何よりも納税者の権利利益の保護の観点を十分に踏まえつつ、適正、公平な課税の維持にも配慮して、納税者権利憲章の策定、あるいは税務調査手続の明確化等の見直しを図ること、ここに主眼があったというふうに思います。

 こうした今般の見直しの趣旨を法律上明確にするため、各種税務手続の明確化等の措置を講ずることとあわせまして、委員御指摘のように、国税通則法の題名について、改正後の法律の内容をよくあらわすものとするように、そういう思いを込めて、国税に係る共通的な手続並びに納税者の権利及び義務に関する法律と変更をさせていただきたいということと、国税通則法第一条の目的規定を改正いたしまして、税務行政において、納税者の権利利益の保護を図りつつ、税務行政の公正な運営を確保する旨を明確化するということに大きな意義があったというふうに思います。

 個別具体の話は、またこの後御議論できればというふうに思っています。

菅川委員 ありがとうございました。

 今、大臣に御説明いただいたとおり、本当に大きな改正だと思っておりますが、なかなかマスコミの方ではこれが取り上げられることがなく、非常に残念に思ってはいるんですけれども、ただ、これからやはりPRしていく場も出てくるのではないかと思っております。

 というのも、今大臣から御説明がありました一番最初の納税者権利憲章、この納税者権利憲章の規定を新しい法律の中に入れていきます。この納税者権利憲章、日本ではなかなか耳なれないところがあると思いますが、これは一九八五年にカナダで導入され、またその翌年イギリス、そしてフランス、韓国、アメリカと、現在ではOECD加盟国の三十カ国中二十四カ国で制定されているものであります。

 日本もようやく今回制定することになるわけでありますけれども、この納税者権利憲章の規定は、国税庁長官が作成して、平成二十四年一月一日、すなわち来年の一月一日に公表するということになっております。

 ですから、来年まで公表をしないのかということではなく、多分これからいろいろな形で、一般の方々にもこの内容というものを示していくことになると思いますけれども、これからの作業スケジュールというものが今ありましたら、現時点でのお考えをお聞かせください。

五十嵐副大臣 御質問ありがとうございます。お答えをいたします。

 今、菅川委員がおっしゃったとおりでございます。この新しい法律、画期的な法律でございますけれども、法律の中には、十七項目にわたって、重要な部分について法定化をさせていただきますが、法律部分だけではなくて、政省令にゆだねる部分、あるいは、さらに通知等にゆだねる部分とございます。

 ただ、全体像については、この法律を通していただけましたら明らかにしてまいりますし、大事なことは、憲章という以上は納税者にわかりやすくならなければいけないということで、平易かつ一覧性のある行政文書にするということがみそでございます。

 そこで、こうした点を踏まえまして、改正税法の施行後、直ちに国税庁長官が法の規定に従って作成をし、財務大臣に御了承いただいて、税制調査会にかけます。報告をいたします。そして、その上で、今委員御指摘のとおり、二十四年の一月一日に公表するということになりますが、その前にすべて詳細まで明らかにされると思いますし、また現実に、大部分のところはこの税制改正大綱の審議の中でもう決められておりますので、これは御心配がないと思います。

 では、それなのになぜ二十四年の一月一日まで公表を延ばすのかということになると、これは税務職員の周知徹底、教育が必要になりますので、魂が入らないといけませんから、十分にその精神について、また具体的な対応について、税務職員の教育訓練をした上でこれは施行したい、こう思っているところでございます。

菅川委員 大変よく、わかりやすく解説していただきまして、ありがとうございます。来年の一月一日より前に内容がはっきりわかってくるということ、また、職員の周知徹底まで含めて取り組んでいただけるということをお伺いいたしまして、安心したところであります。

 また、この改正の中で、更正の請求の期間ということを定めております。この更正の請求、申告の際に税額が多かった場合、また間違えた場合に、税務署に対しまして、還付請求その他、訂正をしてもらう、直してもらう、そういった手続をする期間でありますけれども、納税者がこの更正の請求をできる期間というのは、現在一年間しかありません。この一年間しかないものを、今回、五年に引き延ばすわけであります。

 これは、今まで一年しかなかったものですから、大体、法人にしても個人にしても、年に一回しか確定申告というものを行いませんので、次の確定申告をするときに、去年のが間違っていたということに気づいたら、もう大体、更正の請求をする期限を過ぎてしまっている。つまり、その中で、更正の請求は結局できなくなってしまって、泣き寝入りをするか、もしくは、これは法律で決まっているわけではないですけれども、税務署長に対して嘆願書という、お上にお願いをするというような書面を提出して、直してくださいというような内容の書類を出すというようなことが、慣行的に行われておりました。

 慣行的に行われているといいましても、実は、裁判で、税理士がこの嘆願書を出さなかったために損害をこうむったと納税者が訴えたときに、裁判所では法律に近いような形で認定されまして、税理士が敗訴するというようなこともありまして、実に、法律では決まっていないけれども、そういった専門家責任を問われるというようなこともあったわけであります。

 こういったことがなくなるということは、この期間を五年に延ばした意味はあるとは思うんですけれども、ただ、私は、権利は義務と裏表だと思っています。納税者が更正の請求をする期間が五年に延びるということになりますと、今度は、税務署側が増額の更正をする場合も同じように五年になるというのは、これは権利と義務の裏腹だと思ってはいるんです。

 ただ、この五年を決めるときに、現在、税務署側が増額の更正をする場合、三年間となっておりますので、例えば更正の請求をするものを三年に延ばし、税務署がやる増額の更正の三年間と合わせるといった発想というものはなかったのかどうか、また、どうしてこれを五年という形にしたのか、お聞かせいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 専門的なお問い合わせでございます。

 まさにおっしゃるとおり、今委員が御説明をされたとおり、課税庁が減額更正をできるときは五年なんですね。納税者の方が減額してくださいというときは申請が一年しか認められないということで、その間を埋めるために嘆願という、江戸時代じゃあるまいしという、大変、課税庁側が上から目線、納税者の方からは下から見上げるような制度にさせられていた。これを直さなければいけないということで、課税庁側が減額更正できる五年に、申請の方も引き上げようと。

 これに対して、増額の更正、納税が少なかった、後で間違いが見つかったというような場合について、これまでは更正期間三年だったわけですけれども、こちらも五年に合わせようということにしました。

 これはいろいろな議論がやはり税調の中でもありましたけれども、実際の実務上、増額すべきものと減額すべきものが同時に見つかることが結構多いわけですね。そうすると、段違いになっていますと、場合によっては増額更正ができない。三年にしてしまいますと、四年目、五年目はもうできませんから、四年前、五年前の増額ができなくなってから減額の方だけを求める、そしてできてしまうということが起きてしまうものですから、これは、増額、減額を同期間、五年間にそろえるというのが公正性を保つもとだろうと。

 これは、税務署側が、国税側が得するとか損するとかいうことではなくて、最初から適正に、適時適切に大部分の納税者はお支払いをされているわけですから、その方たちと比べて有利、不利がないように適切にやるためには、同期間にそろえるということがバランスがとれるだろうという判断で、こういうことになりました。

菅川委員 確かに、税務調査等では増額と減額というものが一緒に見つかり、またそれが年度が少しずれているようなことも実務上はあるかと思います。

 また、細かい話はあるんですけれども、この更正の請求、今回その期間が一年から五年に延びる。これ以外にも、やはり今までは更正の請求の対象になっていなかったもの、つまり、更正の請求をしたくてもできなかったものまで範囲を広げていると思います。この範囲について、その内容をお聞かせいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 当初申告時に選択した場合に限り適用が可能とされる当初申告要件がある措置について、事後的な適用を認めても課税上問題がないという場合がございます。そういうものについては更正の請求を認める範囲を拡大していこうということに今回いたしました。

 具体的には、当初申告要件がある措置のうち、特定の政策効果の実現に向けた誘引措置であるインセンティブ措置に該当しないということ、あるいはまた有利、不利の操作が可能な措置にも該当しないものについて、この当初申告要件を廃止する。

 ひっくり返して言いますと、こういったインセンティブ措置に該当するもの、あるいは有利、不利の操作が可能なものについては、なおこれはそのまま、請求の範囲としないということが残るわけでございます。

菅川委員 確かに、有利、不利というものの選択が後で変えられるようになると、それもまた面倒なことになると思いますので、そういった判断というのは適切なものかもしれないと思います。

 次に、税務調査の手続につきまして伺いたいと思います。

 税務調査、一般の人からしてみますと、税務署と警察署というのは同じ署という字を書きますけれども、税務署の方が来るとなると、非常に怖いというか身構えるというか、余り来てほしくないなという思いを持っております。

 そういった中、現行でも税務調査は行われておりますけれども、この調査の手続について、今回、条文上に明確化されました。この手続を明確にした趣旨につきましてお聞かせいただければと思います。

五十嵐副大臣 税務調査につきましては、今般、手続の透明性や予見可能性を高めるという観点から、原則として、税務当局が事前通知を行うということにいたしました。

 また、調査の終了に際し、納税者に調査結果を説明し、その内容を記載した書面を交付するとともに、調査終了通知書を交付するということを法律上明確化いたしました。

 まだ調査が続いて仕事に支障を来すのではないかとか、あるいは本当に終わったのだろうかというようなことがないように、きちんと本業に専念をしていただくという観点から、こうした今まで不明確だった部分についても法文にはっきりと明記をして、原則として通知しなければいけないということにいたしました。

 ただし、これを悪用されますと適正公平な課税ができないということもありますので、それは例外事由もある程度法定化をさせていただき、そして、物件の提示や提出を求められるという部分についても明確化をしていくということで、納税者の権利保護と適正公平な課税のバランスをとろうとしたものでございます。

菅川委員 今御説明していただいたとおり、事前通知、これは私、書面でやるということがすごいことだなとは思っています。今までは電話での通知等はありましたけれども、書面で実際に行うということがされてはいませんでした。

 今の副大臣の説明の中にも、この事前通知を、原則としてというふうにお話しされたと思います。原則があるということは例外がある。悪用される方がいらっしゃるかもしれないというような話ではありました。

 ただ、せっかくいいものをつくった中で、原則と例外がある。そうなると、例外というものはきちっと範囲をある程度明確にしておいた方がいいのではないかと思っているんですけれども、この点についてはどうなっていますでしょうか。

五十嵐副大臣 むやみに恣意的に例外というものがつくれないように、常識的な範囲、よほどのおそれが明白にあるというときに例外になるというふうに思っていただきたいと思います。

 例えば、事前通知をすることによって帳簿書類の破棄が行われることが容易に予想される、あるいは正確な課税標準や税額の把握を困難にするような工作が行われるおそれが非常に強いというような場合に限定をされると思っていただきたいと思います。

 これは、事前の予備的な調査や情報等でかなりひどいことになり得るということが予想されるケースがございますので、そういうときに限って適用されるというふうに思っていただきたいと思います。

菅川委員 今のように、例外というものをきちっとわかるようにしていただければ結構だと思いますし、また、その点、運用上しっかりチェックをしていただければと思います。

 また、最初の話の中で、調査終了時にも終了通知という書面を出すというお話がありました。これはどういった時点で、調査が終わるということがはっきりわかるというのは非常にありがたいことだと思っているんですけれども、例えば直さなきゃいけないものがあるとか、指摘事項があるとか、そういった面に対してはどのような流れで終了まで行くのか、お聞かせいただければと思います。

五十嵐副大臣 もう追加的に調査に入る必要がない、そして調査事項が終了したということで、終了しましたという書面を原則としてお渡しをするということでございまして、それは速やかに、その調査が終了したときに行われるというふうに思います。

菅川委員 私の質問の仕方があれだったかもしれませんが、調査に入りますと大体問題点が出てきます。その中で問題点の指摘というものを多分まずは行われると思うんです。その指摘を行った後、修正申告をする、もしくは課税庁側が更正手続を打つか、いずれかがあってから終了ということになると思うんですけれども、その手前の段階のことをちょっと教えていただければと思います。

五十嵐副大臣 雑駁な御答弁で失礼いたしました。

 実地の調査により更正決定をすべきと認める場合、調査結果の内容を説明し、その内容を簡潔に記載した書面を交付し、この場合において課税庁は、修正申告または期限後申告を勧奨できる。あわせて、不服申し立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明いたします。その旨を記載した書面を交付し、調査が終了した場合には、当該調査が終了した旨を書面により通知する、そういう流れになってまいります。

菅川委員 今の説明の中に、修正申告を勧奨するというお話がありました。今までも、税務調査が終了間近になりますと、修正申告を慫慂するというか強要するようなところがありまして、修正申告をすると後で直せないというようなこともあったものですから、そういったおそれを感じる方もいらっしゃると思うんです。

 ただ、勧奨して修正申告した場合、今回、更正の請求期間が延びましたので、後からまた再修正なり再更正というようなことを行うことが可能であればそういった心配もないと思うんですが、その点、いかがでしょうか。

五十嵐副大臣 ですから、勧奨の際には、今申し上げましたけれども、あわせて、修正申告をした場合には、不服申し立てをすることはできないけれども更正の請求はできますよという旨を文書で示して説明をしなければならないということになっております。そういうぐあいに勧奨手続についても明文化を、根拠規定を整備したということでございます。

菅川委員 こういったわかりやすい税務手続になっていくというのは非常にいいことだと思っております。

 すべての処分についても理由付記を行っていくということを税務署側が行うことになるわけなんですけれども、これも理由がはっきりわかるということは納税者側にとってもプラスのことだと思います。

 ただ、この理由付記をする反面で、白色申告者の記帳義務が強化されるということが言われておりまして、これに不安を感じていらっしゃる方も多くいるというふうに伺っております。

 この記帳義務を強化するという内容についてなんですけれども、どこまでのどういったような負担になるものなのかというのをお聞かせください。

五十嵐副大臣 その点についても配慮をさせていただいたところでございます。

 申告納税制度のもとにおきましては、そもそもはすべての納税者がきちんと納税のもとになる根拠がわかるようにならなければいけない、そういう申告を行うことが本来は重要だということでございます。

 今回、平成二十五年の一月からでございますが、記帳義務等がこれまでなかった所得三百万円以下の白色申告者に、現行でも記帳義務等のある所得三百万円超の白色申告者と同程度の記帳義務を課すということにいたしました。

 これは、今言った原則で、そもそも、もとがわからなければ課税も課税の申告もしようがないということから行われるわけですが、原則として正規の簿記による記帳が求められている青色の申告者とは異なり、簡易な方法での記帳義務となっておりますので、青色と同じような、それだけの高水準の記帳水準を求めるものではないというふうに御理解をいただきたいと思います。

菅川委員 こういった税務調査手続が明確になっていく反面、事前通知や終了通知といった書面をやりとりしなければならないなど、手続をきちんと踏まなければいけなくなるということになりますと、税務職員からしてみますと、一件当たりの調査にかかる時間が増加するのではないかというようなことが考えられます。

 現在、ただでさえ実地調査率、実調率というのが年々低下しているというふうに伺っております。これには一部、法人、個人の申告件数がふえているから率的には減っているんではないかというような話もありますけれども、ただ、一人当たりの行ける件数が減ってくるということは、結局、調査に徐々に行けなくなってくるということになってくると思います。

 また、現在のこの実調率、法人で大体五%ぐらい、個人で一%ぐらいと伺っておりますけれども、これが余りにも低くなってきますと、今度はその牽制機能というか、きちっと申告をするというところにインセンティブが働かなくなって、例えば、ごまかしても見つからないんだったら、ごまかしたまま申告しようというような、モラルハザードのようなことが起きないとも限らないと思っております。

 また、近年、国際化とか、もしくは金融取引が随分複雑になってきまして、いろいろなスキームの高度化、電子化、そういった経済環境が随分と大きく変わっている中でも、その取引にも対応していかなければいけないところがあると思っています。この状況の中で、適正な税務行政、これを行うには、やはりそれなりの必要な人員の確保ということも大切になってくるのではないかと思っています。

 確かに、現在の財政状況の中で公務員をふやすというようなことはなかなか難しいところであるとは思いますけれども、ただ、税金というものは国家の根幹をなす部分であると思っておりますし、やはりきちっと納税してもらう。これは、ギリシャなんかの場合は納税がちゃんとされていないというような話も伺ったりしますので、納税義務がきちっと履行されるということが大切なことではないかと思っております。

 その中でも、税務署の中でも内部事務や税務相談業務などの効率化、こういったものも図っているとは聞いておりますけれども、それにも限界があるのではないかと思っています。

 全体の税務職員の体制について、今後ふやしていく必要性というものがあるのかないのか、また、どのようにしていきたいのか、大臣にお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 これまでも、税務行政が円滑に機能するように、そのための所要の定員と、そして機構が確保されるように努めてまいりました。大体今、年度末定員で五万六千人台、そういう組織体制でございます。

 今後も必要な体制整備に向けて関係方面の御理解を得られるように一層努力したいと思いますが、委員御指摘のように、今般の税制改正でも、法律が成立した暁には、例えば新たに法定される手続等の処理に対応するための事務量の増加、これは当然あると思います。また、更正の請求期間の延長等によって処理件数も増加をするということで、これも事務量は増加するというふうに思います。

 そういうこともかんがみながら、どうやったら円滑に税務行政が引き続きできるか、適切な対応をしていかなければならないと思いますが、一方で、やはり公務員人件費二割削減という重たい命題を私どもは抱えています。我々もそれぞれの狭いセクションで考えると、ふやしたい、ふやしたいという要望ばかりになってしまいます。そうすると、逆に言うと、全体の大きな目的は達成できなくなりますね。

 ただ、そうは言っても、おっしゃったとおり、やはり実調率が下がっていけばモラルハザード等の問題もかかわってくるし、実調率が高まれば税収はふえるんですね、間違いなく。そのことを勘案しながら、いかに周りの行政分野に説得力を持って説明をしていくかが大事だろうというふうに思っております。

 いずれにしても、円滑な税務行政が執行できるように、適切な体制をとっていきたいというふうに思います。

菅川委員 ぜひ円滑な税務行政を執行していただければと思っております。

 こういった納税者権利憲章の策定や税務調査手続の明確化、納税者のサイドに立った納税環境整備というのが今回大きく進んできたものと思っておりますし、非常に私は画期的な改正であったと思っております。

 ただ、あと、これは税制改正大綱の中にも検討事項として残っていたところでありますけれども、救済制度について、やはりこれから見直しをまたしていくことが必要であると思っております。

 現在の税務に関する不服申し立て手続、これは非常に複雑な手続になっています。

 税務署長の処分に対して異議申し立てをする、この場合には、処分をした税務署に対してまず異議申し立てをするという作業をやらなければいけません。処分をする側は、それこそきちっと精査をして、そして考えた上で処分を行っていますので、実際に納税者からその処分はおかしいではないかと言われましても、ほとんどその異議申し立てが受け入れられることはありません。

 そして、税務署に対する異議申し立てをした後、次に行うのが国税不服審判所に対する審査請求ということになるんですけれども、この国税不服審判所も、実は国税庁や税務署におられた方が結構入っておりまして、基本的に、税務署で行っている処分と違う考えが出てくるということはまずありません。

 その中で、第三者的な視点で判断をしてもらいたいと裁判を行おうとしますと、この二つの手続を経ないことには、裁判に訴えるということが、提訴するということが現在できないという形になっております。納税者にとって、手続的にも時間的にも非常に負担のかかる形が今とられているわけでありますけれども、まさにこれはこれから先、検討課題だと思っております。

 簡単に変わることではないと思っておりますけれども、やはり税制大綱でも検討事項として残っているということは、現在何かしらの検討がされていると思いますが、その状況並びに今後の進め方、わかる範囲で結構ですので、教えていただければと思います。

五十嵐副大臣 委員おっしゃるとおり、この国税不服審判所の制度についても、本当に今機能しているのか、また、不服のある納税者の方から見て納得できる、中立性が保たれる制度かどうかということについて、議論が大変多くありました。

 そして今回、すっきり全部やれればよかったわけですけれども、実は、行政不服申し立て手続というのは、国税に限らず、ほかの分野についてもありまして、この救済制度については、内閣府の行政救済制度検討チームにおいて、行政不服審査法の見直しや不服申し立て前置、今おっしゃられました、裁判所に持っていく前の前置の手続、これの見直しを、全省庁横断的に、今やっている最中なんですね。

 そこで、私どもも、今申し上げましたように国税について大変議論しましたけれども、結局、全体との整合性を考えて、このチームの検討の結果が出てから追加的にここをやりましょうということになって、二十三年度大綱においては検討項目の中に入れさせていただいた。

 しかし、できるところは先にやろうということで、部分的には改善をさせていただいた。

 不服申し立て期間、今二カ月でございますけれども、これを延長しよう、あるいは、証拠資料の閲覧や謄写の範囲、これも拡大をしていこうということに決まりました。

 また、二段階の不服の申し立て前置のあり方についても検討の方向性を示すということになりましたし、少なくしていこうということでございます。

 また、今、委員がおっしゃられました、審判官に結局はOBが多いじゃないかという話がありますので、これは民間の登用を拡大していかなければいけない。これは半数以上にしていこうという方向性を出させていただきまして、そういうことについて方針を示させていただいたところでございます。

菅川委員 今の手続法の改正とともに、やはり納税者サイドに立った不服審判制度というものをぜひとも築いていっていただきたいと思っておりますし、また、今現在もできることを進めていただいているということに対しましては、非常に敬意を表するとともに、ぜひとも応援してまいりたいと思っております。

 手続法につきましてはここまでにいたしまして、今度の改正の中で、また細かい話ばかりで済みませんが、所得税法の改正について伺いたいと思います。

 今回の改正におきまして、給与所得控除の上限設定、また特定支出控除の支出範囲の拡大、成年扶養控除の見直しなどが行われておりますが、全体的に今回の所得税を変えていく、この中での考え方を大臣にお伺いしたいと思っております。

野田国務大臣 所得税については、累次の改正で、これまで累進緩和や、あるいは各種控除が拡大をされるということが傾向としてはずっと続いておりました。

 その結果どうなってきているかというと、所得再分配機能と財源調達機能が低下をしてきているというのが今の実情だと思います。所得再分配機能が低下をしているということは、要は格差が拡大をするという中で、果たしてこれでいいのかという根本的な議論がやはりあると思うんですね。

 皆さん若干お疲れのようなので、少し理念的なお話からいきたいと思うんです。

 私は余り原理主義じゃなくて、特定の学説にこだわるタイプではありません。税制改正も、あるいは予算編成もそうなんですが、今回、かなり格差是正をしていこうと、去年、二十二年度も、二十三年度も。それは、人類が獲得してきた価値、命がけで獲得してきた価値というのは、自由と平等だと思うんです。この自由と平等は、両方しっかり守らなければいけません。

 ただし、これは時代状況によって、自由という右足を踏み出すときと、平等という左足を踏み出すときと、やはり二足歩行であって、自由度をきかせたような税制改正をこれまでしたことはありましたよね。だけれども、今度は、所得再分配機能が低下している中、格差是正が進んでいる中、どういう税制改正をやっていくかというときは、少し平等という左足を踏み出す、そういう機会ではないかなという位置づけのもとで、そういう理念のもとで今回は、今回というか二十二年度から始まっていますが、二十三年度の税制改正においては、これは議員御指摘のあったいわゆる給与所得控除、そして成年扶養控除の見直しをさせていただいているということでございまして、給与所得控除については、上限を設定するとともに、高額な法人役員等の給与に係る給与所得控除を縮減する。

 一方で、法人実効税率の引き下げなんかをやったから、大企業優先、そして個人を泣かせるのかというレッテルの張られ方を割としています。これは大きな間違いであって、法人と個人を二分に分けること自体がおかしいですね。元気な法人が出てきて個人の生活も豊かになるわけで、これは連携しているはずです。その中で、この見直しの話というのは、さっき言った所得再分配機能の低下において、いかに格差是正をしていくかということであります。

 ということで、給与所得控除を今回いじった分、何か大衆増税みたいに言われていますが、給与所得者の大体一・二%が対象ですから、決してそういう批判は当たらないということはぜひ御理解をいただきたいというふうに思いますし、成年扶養控除についても、成年者は基本的に独立して生計を立てるべき存在であるということを踏まえながら控除を縮減していますが、これは、心身ともに障害を持っている場合であるとか、六十五歳以上であるとか学生であるとか、確実に就労困難な人たちはその対象から外しておりますので、まさに大衆課税ではないということだけは、ぜひ御理解をいただきたいというふうに思います。

菅川委員 ありがとうございました。

 確かにその理念、非常にすばらしいところがあると思いますし、格差是正に今回の税制改正は非常に役に立っていると思います。

 給与所得控除に関しましても、それこそ本来であれば、給与収入を得るための概算経費であるにもかかわらず、その概算経費が、給料の金額がふえればふえるほど、どんどんと青天井のようにふえるということは現実にはない話だと思いますので、上限を設定するというのは当然のことではないかと思っておりましたし、また、どうして今まで導入されなかったのかが非常に疑問なぐらいであります。

 ただ、この中で、二千万以上の役員報酬をもらう方々に対して、今度はその上限から縮減をしていくという方向にあります。その縮減をしていくというのを見ると、どうしても昨年廃止しました特殊支配同族会社の役員報酬の損金不算入のまたそのかわりに出てきた制度なのかなというような憶測を持ってしまうわけでありますけれども、そういった点ではないと思うんですが、その理由についてお聞かせいただければと思います。

野田国務大臣 平成二十三年度税制改正において、格差是正、所得再分配機能の回復から、委員御指摘のように、給与所得控除に上限を設けるといった見直しとともに、現在の給与所得控除については、マクロ的に見ると、給与収入総額の三割程度が控除されているという一方で、給与所得者の必要経費ではないかと指摘される支出は給与収入の約六%であるという試算もございます。主要国との比較においても、全体的にこれは高い水準となっています。

 また、給与所得控除については、勤務費用の概算控除と他の所得との負担調整の二つの性格を有しているとされておりますが、法人役員については、一般従業員に比べて、勤務態様が必ずしも従属的ではないということ、給与の自己決定度合いが高いこと、さらには一般従業員と役員の給与格差が拡大をしているということなどを踏まえると、給与所得控除の性格のうち、他の所得との負担調整部分を勘案する必要性は薄れてきているというふうに考えております。

 そこで、今回、特に高額な役員給与に係る給与所得控除について、勤務費用の概算控除部分に相当する金額として、給与所得控除額の二分の一に相当する金額とする等の見直しを行うこととさせていただきました。

菅川委員 ということは、やはり特定の役員報酬をターゲットにしているわけではないという理解でよろしいわけですね。ありがとうございます。

 また、所得控除について少しお話をさせていただきたいんですが、昨年、子ども手当が導入されました。ことしも子ども手当法案が今後どのようになるのか少し心配なところはあるんですが、もともとの理念、子供の育ちを社会全体で支えるという理念からのものでありまして、この導入に当たりまして、児童手当、そして扶養控除のうち年少扶養控除を昨年なくしました。

 この二つの制度、子育てに対する今までの、私は現金給付と同じものだと思っております。片方は児童手当という、まさに現金が出る、もう片方の扶養控除というのは税金がその分安くなるという効果がありましたので、現金給付と実質的に同じものであると思うんです。

 ただ、扶養控除であると、どうしても高所得の人の方が、日本の場合は累進課税ですから、たくさんの控除を受けられる。つまり、税金がそれだけ多く、所得の高い人の方が控除を受けることができる。

 また、その反面、逆に今度は所得の低い方、こういった控除を受けることができずに、結局、税金のメリットはなくても、児童手当という形で現金給付がされる。

 そうなると、低所得者と高所得者はそれなりの恩恵があったわけですけれども、結局、その中間層、児童手当をもらえない、もしくはそこまで高所得じゃない、こういった方々が一番、国からの現金給付、実質的な現金給付のメリットがなかったものだと思っております。

 ですから、結局、親の所得に着目して国の給付を変えていたというのが今までの仕組みであったと思うんですけれども、これを子供に着目して、子供一人当たり、皆公平に同じ金額にしたというのが子ども手当であると私は思っておりますし、そのことが控除から手当へというふうに行ってきたものであると思っております。所得控除は、こういうふうに所得の高い人にメリットがあるものでありますから、これからやはり控除から手当へという流れというものをもっとやるべきではないかと私は思っています。

 ほかの国では今、この控除から手当へというものを給付つき税額控除という形で、税制の中にパッケージとして手当も入れてしまうというようなことを行っております。今回は成年扶養控除の一部だけ改正をしたわけでありますけれども、こういった控除から手当へという方向、また給付つき税額控除というような方向、こういった方向へと今回の改正がつながるものなのかどうか、そういった点をお聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 もう答弁の必要がないぐらい、逆に趣旨を御質問の中で御披露いただいているというふうに思います。

 所得控除自体は、どちらかというと、やはり高所得者が有利ですね。その流れを税制改正として変えていくという中で、所得控除から税額控除、給付つき税額控除、手当へというのは、私どもの税制改正の理念であって、それは、今進行中の平成二十二年度予算の中では子ども手当として実現をし、その財源の部分に、いわゆる年少扶養控除を廃止するという形で財源を確保いたしました。

 加えて、いわゆる高校授業料実質無償化については、これは特定扶養控除の十六歳から十八歳の上乗せ部分を縮小する形で対応するという形でやりました。

 その延長線上に、平成二十三年度の税制改正においても、成年扶養控除そして給与所得控除、これらの控除を、いわゆる子ども手当の七千円上乗せ部分に活用させていただきたいという趣旨で御提案させていただいています。

 私どもの任期四年間の間で、できるだけ控除から手当へという流れを力強く推進していきたいと考えています。

菅川委員 そうなりますと、あと、配偶者控除、これはもともとマニフェストの中で、廃止していくという話がありました。

 この配偶者控除、これは控除から手当へというものとはまた別の考えがあるとは思うんですが、今回、この配偶者控除が残ったということについて、その理由と、また今後の課題としてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 与党質問なのに、きつい質問だと思います。

 配偶者控除について、いろいろ議論がありました。働き方の選択に対してできる限り中立的であるべきだからということで、制度の見直しに積極的な御意見、党内にもこういう御意見がございました。一方で、夫婦が生活の基本単位である点を重視する考え方から、慎重な御意見もございました。

 という御意見の中で、まだ結論を出し切れなかったということです。党内の議論ももっと深めなければいけないですし、もっと幅広く国民の御意見もお聞きしながら、これから見直しをしていきたいと思います。

 ただ、平成二十三年度の税制改正大綱の中には、きちんと、配偶者控除をめぐるさまざまな議論、課税単位の議論、社会経済状況の変化等を踏まえながら引き続き検討するということになっていますので、宿題として依然として残っているし、きちっとこれは、検討したことを国民の皆様に、どういうプロセスを経てどういう結論になったかということはお伝えする責任があると思いますので、真剣な議論をこれからもしていきたいというふうに思います。

菅川委員 今、課税単位という話もありましたけれども、私自身の、個人の考えでは、例えば夫婦単位での、一体での申告とか、そういったものも視野に入れて検討したらどうかと思っておりますので、またそういうことをお考えいただければと思います。

 あとは、退職所得について少しお伺いしたいと思っております。

 退職金というのは、非常に税制にとってはメリットが高くて、退職金にかかる税金というものは、額面の金額から、勤務年数に応じた所得控除というものを控除します。控除した上に、それを二分の一にする、半分にする。その半分にしたものをさらに、ほかの所得とは合算せずに分離して、それだけに課税をするというような、非常に有利な形になっています。

 今回の改正では、勤続年数五年以下の法人役員についての規定はありましたけれども、これは天下りのわたりを念頭に置いているのではないかなと思っているんです。

 ただ、現在、いろいろ働き方が多様化している、また雇用のあり方も随分と多様化してきています。そして、退職金を設けずに、年度年度の給与の中に退職金部分も上乗せして支給する会社もふえていっていると思っています。

 ですから、控除があって、所得が半分になって、他の所得と合算しない、こういった優遇措置というものをこれからもずっと続けていくのかどうか、もしくはこれを検討していくのかどうか、もしくは検討の段階にあるのかどうか、現在のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 退職所得については、長期間にわたる勤務の対価が一時期にまとめて後払いされるものであることや、退職後の生活保障的な所得であること等を考慮して、二分の一課税といった累進緩和措置がとられています。

 この二分の一課税を前提として、短期間のみ在職することが当初から予定されている法人役員等が、給与の受け取りを繰り延べで高額な退職金を受け取ることにより税負担を回避するといった事例がかねてより指摘をされてまいりました。

 今回、勤続年数五年以内の法人役員等の退職所得について二分の一課税を廃止するということにしたんですが、五年にするか、そうじゃない年数にするか、いろいろ議論がありました。例えば首長だと四年です。それより下にすると、そこは逃しちゃいますよね。そんないろいろな議論、いろいろなことを想定しながら、五年という年数を決めさせていただきました。

 退職所得課税のあり方は、退職金の実態をさらに把握に努めながら、いろいろな委員の御指摘もございましたけれども、引き続き検討させていただきたいというふうに思います。

菅川委員 それでは、最後の質問に参りたいと思います。

 今、党内でも政府内でも、社会保障と税についての議論が行われていると思っています。この社会保障と税の議論になると、大体注目されるのが消費税の動向ではないかと思います。消費税の税率を何%にするかとか、そういった話に注目が集まるわけですが、確かに、日本の消費税、ほかの国と比べますと税率は低いものだと思っていますし、また、国民所得に対する国民負担率、こういった面から考えましても、例えばイギリス、ドイツ、フランスでは一四%前後、それに対して日本は七%ぐらいしかありませんので、確かに約半分しかありません。

 ただ、他方で、ほかの国に比べて税の負担率が低いのは、実は、消費税だけではなくて、所得税もほかの国に比べて少し低いものとなっています。個人所得課税について、アメリカでは大体、国民負担率で考えますと一三%、イギリスが一四%、ドイツが一二%、フランスでは一〇%、スウェーデンでは二〇%というふうになっております。それに対して日本は、消費税と同じ約七%でありますので、一概に半分とは言えませんけれども、平均して半分ぐらいということになっております。

 それを考えますと、まだまだ所得税のあり方、こういったものは議論の余地があるのかなと思っておりまして、ただ、他国と比べて同じようにするというわけではありませんけれども、ここを意識していくことも必要ではないかと思っております。

 確かに、今の日本の税収を考えますと、いろいろな面から、消費税頼みではなくて、全体の税制そのものを考えなければいけないと思っておりますので、こういった国際的な国民負担率のあり方、こういったものも一つの参考になるのではないかと思っております。

 そんな中、平成十九年十二月に、実は、民主党税制改革大綱というものを策定したわけでありますけれども、この大綱の中に、「納税者としての意識や税金の使途に対する監視意識を高めるため、給与所得者の年末調整を廃止し、原則、納税者全員が確定申告を行うこととする。」というような記述が実はあります。

 現状でいきなり年末調整をやめるというようなことは、私はこれは非常に困難なことだと思っております。業務も煩雑になりますし、また、申告件数が急にふえるということになりますと、税務行政に対しまして非常に混乱を来すことになるとは思います。ただ、この考えの中で、やはり納税者に、自分の払った税金を意識してもらう、またその税金の使途に対して監視意識を持ってもらう、これを高めてもらう、これは非常に有意義なことであると思っております。

 ですから、こういった有意義なことに対しまして、この税制大綱にかつて書いてあったものに対しまして、大臣の御所見を最後にお伺いしたいと思います。

野田国務大臣 年末調整制度は今かなり広く定着をしていますので、それをドラスチックに急になくすということはなかなか困難だと思いますけれども、申告をもっと幅広くみんなができるようにするため、そのためには、委員のお仕事のようなお仕事がなくなるぐらい、税理士さんが要らなくなるぐらい、控除の計算とかが簡単になって、はがき一枚でみんなが出せるようになったら、確定申告というのはすごく有意義になると思いますが、まだちょっとその域まではなかなか到達はしないのではないかと思うんです。

 ただ、私どもが取り組む税制改革は、消費税を含む税制の抜本改革というのは消費税ばかりやるように誤解をされています。そうではなくて、消費課税そして所得課税、法人課税、資産課税、あらゆる税制の抜本的な改革、見直しをしていくということでございますので、委員の御指摘のようなことも含めて、個人の所得課税でできることはまだいっぱいあると思いますので、引き続き検討させていただきたいと思います。

菅川委員 以上で終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時八分散会


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