衆議院

メインへスキップ



第5号 平成23年3月2日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十三年三月二日(水曜日)

    午前十時三十四分開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 泉  健太君 理事 大串 博志君

   理事 岸本 周平君 理事 豊田潤多郎君

   理事 古本伸一郎君 理事 鷲尾英一郎君

   理事 後藤田正純君 理事 竹下  亘君

   理事 竹内  譲君

      網屋 信介君    五十嵐文彦君

      江端 貴子君    小野塚勝俊君

      岡田 康裕君    柿沼 正明君

      勝又恒一郎君    金子 健一君

      木内 孝胤君    小山 展弘君

      近藤 和也君    菅川  洋君

      玉木雄一郎君    中塚 一宏君

      中林美恵子君    松原  仁君

      三村 和也君    吉田  泉君

      和田 隆志君    今津  寛君

      竹本 直一君    野田  毅君

      村田 吉隆君    茂木 敏充君

      山口 俊一君    山本 幸三君

      斉藤 鉄夫君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   財務大臣政務官      吉田  泉君

   参考人

   (日本銀行総裁)     白川 方明君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二日

 辞任         補欠選任

  柳田 和己君     金子 健一君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 健一君     柳田 和己君

同日

 理事豊田潤多郎君同日理事辞任につき、その補欠として岸本周平君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の辞任及び補欠選任

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 この際、理事辞任の件についてお諮りいたします。

 理事豊田潤多郎君から、理事辞任の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次に、理事補欠選任の件についてお諮りいたします。

 ただいまの理事辞任に伴う補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、岸本周平君を理事に指名いたします。

     ――――◇―――――

石田委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁白川方明君の出席を求め、意見を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。

山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。

 先週の金曜日に予定をしていたのでありますが、与党の強行的な採決方針ということで流れましてね。参議院に行ったから、ではゆっくりやるのかなと思っていたら、きのうの夜、おいしい料理を食べていたら、急にあしたやることになったからということでありました。

 私でも心の準備というのはあるんですから、少しきちっとしたスケジュールをつくってもらいたいなと思います。そういう意味ではちょっと激しくなるかもしれませんから、御勘弁を願いたいと思います。

 まずG20ですが、このことは昨年の十月の二十六日の当委員会で、その前のソウルのG20の声明のことから非常に私は危惧していると。経常収支の不均衡というのが取り上げられた。

 その前にちょっと委員長にお願いしておきますが、私はそのときに、ガイトナーから来た書簡を出してくれとお願いしたはずですが、いまだに出ていない。これは早く出してもらいたい。

 それから、ついでに、今回のパリの会議に先立って、ガイトナーなりフランスの財務大臣から来た書簡があれば、それも出してもらいたい。お願いします。

石田委員長 ただいま山本幸三君の申し出の件につきましては、理事会で協議をいたします。

山本(幸)委員 それで、要するに経常収支の不均衡なんてないと、私はここで証明したつもりですよ。だから、そんなことをこれからのG20で決して決めてはいかぬよと。そんなことをやれば、日本の政策手段が限られちゃうんだ。思い切った介入もできなくなるし、そのほかの悪影響も出てくる。

 そういう意味では、理論的におかしな経常収支不均衡というのは認めたらだめだとあれだけ強く言っていたにもかかわらず、今回の声明では、「過度の不均衡を縮小し経常収支を持続可能な水準で維持することの必要性を強調した。」そしていろいろな指標だかを書いていますが、この文章が入っただけで終わりですよ。

 大臣、何でこんなことを認めたんですか。

野田国務大臣 山本委員にお答えをしたいというふうに思います。

 ずっとG20で問題意識としてあったのは、どうやって対外不均衡を是正していくかということでございます。

 それは、いわゆる金融危機がございましたけれども、もちろん金融セクターの問題もあっただろうけれども、対外不均衡の問題もあっただろうというのが多くの人の意見としてありました。では、それを是正するためにどういう議論を深めていくかということの中で、参考となるガイドラインを議論しながら定めていこうという中で、経常収支という議論が出てまいりました。

 経常収支については、昨年、委員とも議論をさせていただきましたけれども、これは民間の家計や企業も入る、そしてもちろん政府部門も入りますけれども、その経済活動として出てくる結果であって、財政収支のようにコントロールすることはできません。したがって、経常収支で赤字が出たり黒字が出たりすることは、これはある意味、自然なことであります。

 ただし、それが継続的に大規模に続いている場合にはその要因を分析しようじゃないかというのがこれまでの議論の結果でございまして、その中で、対外不均衡を議論する際に、自然体として経常収支の議論もしていこうということになったということでございます。

山本(幸)委員 あなたは対外不均衡と経常収支の不均衡を使い分けましたけれども、対外不均衡というのは何ですか。

野田国務大臣 経常収支、それぞれの黒字、赤字、バランスを崩して出てきているということであります。

山本(幸)委員 そうしたら、対外不均衡と経常収支の不均衡は一緒じゃないですか。そうしたら、経常収支の不均衡というのはないんですよ。

 経常収支とは、おっしゃったように、企業にしろ個人にしろ、最適だと思って行動した結果をちょっとどこかで線を引いただけの話なんだ。こんなもの、赤字も黒字も、不均衡なんかありませんよ。

 万一あるとすれば、経済学の辞典に出ているのは、赤字国で、外貨が払えなくなったような状況になったら問題だと。だから、不均衡といったら赤字国だけが問題だと言えばいいんですよ。アメリカ、おまえら赤字で困るんだったら自分でやれと。黒字国なんか責任も何もないですよ。

 あなたは、この点について、日銀総裁から何かアドバイスを受けたことはありますか。

野田国務大臣 委員御指摘のように、大幅な経常赤字が継続している場合というのは、国内で消費が過熱をしていてバブルが発生する可能性があるとか、あるいは将来的に対外債務の支払いが困難になる可能性がある、そういう問題が一つあると思います。

 経常的な黒字が大規模で続いている場合も、全く問題がないかというと、例えば、為替制度が硬直的で国際競争上優位に立っていて、貿易黒字がずっと積み上がっていくという可能性もある。

 そういう意味で、赤字でも黒字でも、場合によっては問題がある、そういう意味で議論をするというふうに私は理解していますが、お尋ねの、日銀総裁にこの問題を御指導いただくということではなくて、問題意識をむしろ共有しながら一緒に臨んだということでございます。

山本(幸)委員 黒字なんか問題ないの。

 それで、実は、日銀総裁はおもしろいことを言っているんだ、このことについて。

 白川日銀総裁は、フランス中央銀行に寄稿した論文で、不均衡の見きわめに経常収支を使うことは危険だと言っているんです。「経常黒字や赤字は経済主体の自発的な選択の結果として生じるものであるため、その存在自体が問題であるとはみなすべきではない。」と。

 私は、白川さんは、金融政策についてはでたらめ言っていると思っているけれども、たまにはいいことを言う、この経常収支については。そう言っているんですよ。

 その白川さんのアドバイスを聞いて、こんなものは認めないようにすればよかったじゃないですか。

 白川総裁はどういう考えですか。

白川参考人 お答えいたします。

 G20には野田大臣と一緒に出席いたしまして、先ほど来の野田大臣と、私は認識を同じくしております。

 山本先生の前でこういう話をするのは大変気が引けますけれども、経常収支の黒字あるいは赤字というのは、これは、先生が御指摘のとおり、一国全体の貯蓄あるいは投資のパターン、これを反映しております。そういう意味で、経常収支の均衡それ自体をターゲットにして政策を運営することは適当ではないということ、これは今回のG20のコミュニケでも確認されております。

 そう申し上げた上で、一国の経済が長い期間、対外的に何らかの形で不均衡を続けていた場合、それは黒字国であれ、赤字国であれ、問題を起こし得る可能性がある。そういう意味で、幾つかのガイドラインに従って持続可能性を点検していこうということでございまして、結論的には、先生が申されている基本的な貯蓄、投資の理解、あるいは経常収支の理解、これらについて認識し、その上で今回のG20での議論はそごがないというふうに思っていますし、かつ、野田大臣とも全く認識を同じくしているものであります。

山本(幸)委員 随分、論文で言っていることと違いますね。

 黒字で、大き過ぎて、何か問題が起こるんですか。おっしゃったように、それは中国みたいに固定レートにしていれば、自分のところがインフレになるだけですよ。だから、自分でやればいいんだよ。

 変動相場制で黒字で、大き過ぎて、何か問題が起こりますか、大臣。

野田国務大臣 先ほど申し上げたとおり、大規模な経常黒字が継続をしているという場合は、為替制度が硬直的になっていて国際競争上優位に立っている、それで貿易黒字が積み上がっていく、その可能性がある。

 特定の国をどうのということはございませんが、そういう可能性はあるという意味で、一つのやはり議論の材料になるというふうに思います。

山本(幸)委員 そこが問題なんだ。黒字が続いていれば、それは為替レートが操作されているんじゃないかというふうに思われてしまう。この黒字不均衡論を認めれば、そういう議論を引き起こすんですよ。だから問題だと言っているんですよ。そうすると、おまえのところは操作しているんだろうと言われるんですよ。それがねらいなんだ、ガイトナーは。だから、僕はガイトナーの書簡を見たいと思っているんだけれども。

 それに乗っちゃだめなんだ。ガイトナーに対して、何言っているんだと。黒字なんか関係ないよ、赤字で困るんだったら、おまえのところが貯蓄・投資バランスを変えればいいじゃないか、そう言えばいいんですよ。それを言い切らないからだめなんだ。何が通貨外交ですか。

 こればかりやっていてもしようがないんで、私はきょう日銀総裁と徹底的にやりたいと思っているので、次に移ります。だから、そこはよく考えておいてくださいよ。間違っている。これは、これからの為替政策、金融政策に影響してきますよ。

 そこで、僕は金融政策の話に行くんだが、資料を配ってもらっていますね。これは前回も配っていて、ちょっとできなかった話なんですが、一ページは省略して二ページ以降を見てもらいたいんです。

 ここで私は、白川さんとバーナンキさんの発言を対比して並べております。これを見ると、いかに我が日銀総裁が不明確で、自信がなくて、無責任な発言をしているか、それに比べてバーナンキは極めて明確で、何だって自分たちはちゃんとできるよと、責任感と自信を持っているということがよくわかりますよ。

 これは、どちらの発言も論文やあるいは記者会見から引用していますので、全部バックデータがありますから、私はこんなこと言っていないなんてことは言わせませんからね。

 その前提で言いますが、まず、白川さんの発言でびっくり仰天したのが、二ページ目の一の4というところなんですが、中略の後、「名目賃金の伸縮的な調整はサービス価格の下落という形でデフレの原因ともなった。」

 どういうことですか、これは。労働組合の幹部が聞いたらぶったまげるよ。自分たちが賃金引き下げを受け入れたのがデフレの原因だと言っているんだよ。

 これはどういうことですか、日銀総裁。

白川参考人 日本とアメリカのインフレ率の違いというものを過去十数年間分析してみますと、九割方が財ではなくてサービスでございます。

 サービスの値段がなぜ下がっているかということ、もちろんいろいろな要因がございます。そのうちの一つの要因として、サービスというのは、これは御案内のとおり、労働集約的な活動が多いということで、賃金の影響を大きく受けるわけでございます。

 一九九〇年代の後半あたりから、日本の賃金の設定というのは非常に伸縮的になってきて、前年対比でマイナスという世界に入ってまいりました。これは、労使双方とも厳しい経済情勢のもとで雇用の量を確保するということで、賃金の引き下げ、これ自体はもちろん大変に厳しいことでございます。

 そのことは十分認識しておりますけれども、しかし、事実としては、労使が賃金の引き下げをある程度甘受し、それで雇用を何とか確保しようとしたということも、これは一つ影響しているというふうに思います。

 私はもちろん、これがすべての原因だと言っているわけではございませんけれども、日米で比較した場合に、あるいは欧州もそうでございますけれども、サービスの値段が日本は下がっている、その一つの理由として賃金が影響しているということを申し上げた次第でございます。

山本(幸)委員 とんでもない発言で、それは因果関係が逆でしょうが。あなたが失敗してデフレを起こしたから、その結果、企業はリストラせざるを得なくなったんですよ。そして、その負担を労働者が受け入れざるを得なくなったんですよ。労働者の方が先に下げたからデフレになったなんて、とんでもないことを言いなさんなよ。そうじゃないんですか。

白川参考人 ただいま賃金についての御質問で、そのことについてお答えいたしましたけれども、日本のデフレ、これをどういうふうに理解するのかという全体の御説明をさせていただければというふうに思います。

 日本のデフレ、これは基本的に需要が不足をしているということが理由でございますけれども、ごく短期的に見た場合には、例えば、リーマン・ショック後、経済が大きく落ち込み、需要が不足した、その結果、需給ギャップが拡大したということがもちろんきいております。

 一方、バブルが崩壊して長い期間、日本の物価上昇率が欧米対比、低いという原因を考えてきた場合に、もう一つの大きな需要不足の原因としては、先々の成長に対してなかなか期待が持てない、そのことが将来所得の低下につながって、またそれが支出の低下につながっているということでございます。

 それでは、なぜ日本の成長、先々に期待が持てないのかというときに、これはもちろん因果はめぐるところはございますけれども、しかし、日本の成長力というものが徐々に低下をしてきている。その一つの要因としては、急速な高齢化のもとで需要が低下してくる、あるいは、そうしたもとでさまざまな負担、これは現役世代の負担ということも含めまして、将来の所得、実質的な所得がなかなかふえていかない、そうしたことが影響してきているということでございます。

 そういう意味で、私が申し上げたいことは、こうしたトレンドとしての成長率の低下、こうしたものもデフレの原因である以上、こうした問題に取り組む必要があるということを申し上げております。

 もちろん、金融政策については、この間、我々としては、デフレの克服のために全力を挙げております。また後から御質問あると思いますので、そのときにまた御説明いたしますけれども、もちろん金融政策の果たすべき役割も大きいと思って、全力を挙げております。

山本(幸)委員 話をごまかすんじゃないよ。私は、まず賃金の話を聞いていたんだよ。その後、今言ったことを言いますよ。

 何が、金融政策を全力挙げてやっているですか。何もやっていませんよ、私に言わせれば。結果が出ていないというのは、金融政策を何もやっていないということと同じですよ。あなた方が幾らやっていると言ったって、結果が出なきゃだめなんだ。

 そこで、まずこれを詰めておきますが、名目賃金が下がったということ、それがデフレの原因で、あなた方は責任がない、そう言うが、私は逆だと思う。あなた方の金融政策の失敗でデフレが起こってきたから、企業がリストラせざるを得なくなって名目賃金が下がってきた。

 どっちの因果関係ですか。どっちですか。

白川参考人 賃金についてのみ答えるようにということでございますので、賃金についてのみお答えいたします。

 日本の賃金の設定は欧米に比べて非常に伸縮的であるということの結果として、失業率は、これは日本の経済情勢、雇用情勢は大変厳しい状況でございますけれども、しかし、失業率というものを見た場合には、これは欧米に比べて非常に低いということでございます。

 これは、どういう方式がいいか、いろいろな議論があると思いますけれども、欧米に比べて日本は、賃金の低下を受け入れても、しかし雇用の量を確保したいという社会的な選択を行ったというふうに思います。

 金融政策が果たす役割がないというふうに言っているわけでは全くございません。金融政策は、全力を挙げてデフレの克服に向けて努力をしております。こうしたことが実を結んでデフレから早く脱却するということを願って、政策運営を行っております。

山本(幸)委員 全然認めようとしないんですか。これは大問題ですよ。

 デフレの原因は労働者にあるんだ。そんなことを聞いて怒らない労働者がいたら、僕は見たいね。とんでもないことを言っている、日銀総裁は。これは許せない。それが一つ。

 それから、先ほど、デフレの原因というのは相対的には需要が少ないからだと。

 それで、今度は一の2のところですが、「人口減少と生産性上昇がじわじわ下がる傾向に歯止めがかからないことが、デフレという現象に出ている。これに取り組まない限り、デフレから脱却できない。」一の3、「デフレの根本原因は需要不足。決して「魔法のつえ」があるわけではない。生産性向上に地道に取り組むことが不可欠。」

 あなたは、人口減少と生産性上昇が下がっている、これが成長力を弱めてデフレの原因になっている、そう言うんですね。

白川参考人 この一の1あるいは2、3に書いていることの多少説明になって恐縮でございますけれども、経済の成長率、GDPの成長率は、これは労働者の数の伸び率と、それから労働者一人当たりのGDPの伸び率、とりあえず生産性という言葉で表現しますと、この二つで基本的には長い傾向は説明できるわけでございます。

 人口の減少というよりか、労働人口が急速に減少してくる、生産年齢人口が減少してくるということの意味合いでございますけれども、これは、消費あるいは生産あるいは納税の中核層でございます。こうした中核層が非常な勢いで減ってまいりますと、どうしても需要が減ってくる。

 他方、高齢者の需要増ももちろんございます。医療、介護等を中心にして需要はございますけれども、しかし、そうした潜在的な需要が、さまざまな要因によって十分に需要が顕在化しない場合には、どうしても需要の不足ということが起きてまいります。その結果、労働者一人当たりのGDPの成長率、生産性、こういったものが下がってくるということでございます。

 それ以外にも幾つかのルートがございますけれども、したがって、急速に高齢化が進むもとでどうやって潜在的な需要を顕在的な需要にしていくかということ、これがやはりないと、なかなか労働の生産性というものは上がっていきにくいというふうに思います。

 それからもう一つ、この引用の中には書いてございませんけれども、ここ当分の間、労働力の急速な減少が見込まれる以上、どうやって労働の参加率を上げていくかということにやはり取り組む必要があると思います。そうしたいろいろな取り組みの結果、GDPの成長率が高まってくるという期待が生まれてきますと、これは人々の消費にもやはり影響してくるということでございます。

 私は、これは少し長い目で見た経済の基調を申し上げているわけで、これだけでもちろん短期のことが決まるというふうに言っているわけではございません。短期的な面では、繰り返しになりますけれども、金融政策の面で全力を挙げております。

山本(幸)委員 あなたが言っているのは、供給の方の、潜在成長力を上げるためには生産性とか、人口減少を補うために労働参加率を上げるとか、そういうことが必要だと言っているわけです。これはむしろデフレをふやす方向に働くはずだ、供給能力拡大なんだから。

 だけれども、大事なことは、あなたがちょっと言ったけれども、それをどう顕在化させるかが大事なんです。それは金融政策ですよ。

 そこで、その前にきちっとしておきたいけれども、人口減少と生産性がインフレ、デフレに関係あるか。岩田さんという人が本を書いてそういうことを言っているんだけれども、わかっていないんだね。

 生産年齢人口が複数年減少した国はOECDで十一カ国ありますよ。だけれども、デフレになったのは日本だけだ、全く関係ない。しかも、彼が言っているのは個別の価格の話であって、一般物価水準の話をしていない。関係ありませんよ、生産年齢人口とインフレ、デフレは。

 それから、生産性。OECDで、労働生産性の変化率とインフレ率の関係を見てみるか。

 これは一九七一年から二〇〇七年の数字ですが、白川総裁が言うように、労働生産性が上がらなければ成長率が上がらなくてデフレになるということが正しければ、この関係には正の相関が存在するはずですけれども、だけれども、データを比べてみると、全く正の相関はない。

 例えば、七一年から八一年は相関係数はマイナス〇・八九、八二年から九二年はマイナス〇・六五、九三年から二〇〇七年まではマイナス〇・四八ですよ。逆でしょう、労働生産性とインフレ率の関係は。

 それはそうですよ。あなたが言ったように、労働生産性が上昇率が高ければ供給能力は増大するんだから、インフレになるどころかデフレになりますよ。それがこのマイナスの相関で調べられているんだよ。

 実証的に見れば、全部間違っていることを言っているんですよ、あなたは。どうですか。

白川参考人 今私が申し上げていることは、これは決して私だけではなくて、オーソドックスな経済学者、余りそういうふうに申し上げるのは私自身は好きではございませんけれども、例えば、クルーグマンという経済学者も、昨年日本に来て、その後、日本の経済の分析として、自分自身は従来、人口動態ということと日本の経済活動、デフレとの関係について十分な認識がなかったけれども、やはり今回こうしたことについてもっともっと研究を深める必要があるというふうに感じたということを感想として書いてございます。

 今の御質問の点でありますけれども、私は、とりあえず便宜的に生産性ということで申し上げましたけれども、これは一人当たりのGDPの成長率でございます。GDPを規定するのは、そうした一人当たりのGDPの伸び率とそれから人口でございます。全体としてGDPの伸び率が下がってくるというのは、労働人口の減少とそれから一人当たりのGDPの成長率、この両方にそれぞれ原因があるということを申し上げているわけでございます。

 先生が御指摘の、需要と供給の関係でむしろ逆ではないかというお尋ねは、これは、現在の供給力を一定にして、供給力がふえればどういうことが起こるか、それは確かにそのとおりでございます。

 一連の議論で申し上げていますことは、現在の供給力が一定のもとでも、しかし将来、供給力、したがって、これは三面等価ですから、所得も減ってくるという期待が広がってきますと、人々がなかなか本格的には需要をふやしていけない、支出をふやしていけないということになりまして、結果的にそれが現在のデフレの方にも影響してくるということでございます。

 先ほど、相関関係という話がございましたけれども、日本のGDP成長率、トレンドとしての成長率とそれから中長期的な予想インフレ率を比較してみますと、かなり高い相関関係にございます。これは、現在日本が直面しているような急激な労働人口の減少という事態を近代の経済において経験したことがないということとも多分関係しているんだろうというふうに思います。

山本(幸)委員 何を言っているか、わけがわからない。現在の供給力が一緒で何とかと。もう少しバーナンキみたいに、はっきりわかるように言いなさいよ。

 私は証明した。生産年齢人口とインフレ、デフレは全く関係ない、それから生産性上昇率とインフレ、デフレは全く関係ない。もし文句があるんだったら、あなたの主張が正しいというんだったら、ちゃんと実証的なデータを出して、そして言いなさいよ。あなたの言っていることは間違っているんだから、私に言わせれば。

 そこで、さっき言ったように、将来的に大事なのは、予想インフレ率と成長率は相関する、そのとおりですよ。だから、私が言いたいのは、予想インフレ率を早く上げろと言っているんです。それは金融政策しかできない。それは私の議論の本質だから、後でやります。

 その前に、一の1、あなたは常々、日本は緩やかな物価下落を経験した、つまり、デフレは経験したけれども、デフレスパイラルは生じなかった、だからいいんだと言っている。

 デフレスパイラルといったら、デフレと景気後退が同時に起こることの意味のようですが、これが大問題なんですね。デフレスパイラルさえ起こらなきゃデフレでいいのか。私はそれが一番の間違いだと思っていますよ。

 この点についてはどうですか。

白川参考人 私も山本議員と同じ認識に立っておりまして、現在デフレスパイラルは生じていませんけれども、しかし、デフレの克服、これが非常に大事な政策課題であるというふうに認識しております。日本の経済がデフレから脱却し、できるだけ早く物価安定のもとでの持続的な成長軌道に復帰することが大変大事だというふうに思っております。そういうふうに認識しているからこそ、包括的な金融緩和という形で全力を挙げております。

 それから、デフレスパイラル云々の件でございますけれども、これは、私が欧米の政策当局者と議論している際に、欧米の政策当局者からいつも聞かれる一つの質問は、日本はしかし、なぜデフレスパイラルが生じなかったんだろうか、これについて、自分たち自身、政策上これは非常に大事な論点だから大いに議論したいというふうに言っておられまして、私自身もそうした問題意識にこたえて発言しているわけでありまして、しかし、政策論として、私は、デフレの克服が大事だという点については先生と認識を同じくしております。

山本(幸)委員 簡単に私に同意してもらうとちょっと困るんだけれども。

 それならそうはっきり言いなさいよ。デフレだけれどもデフレスパイラルじゃなきゃいいんだというふうに常々言っているように聞こえますよ。

 デフレは絶対だめだ、悪だ、そう主張して、ではそれをいかにして早く脱却するかを出すのがあなたの仕事ですよ。

 そこで、もう一個行きますが、「三 たくさん量を供給すれば、デフレから脱却できると思っている訳ではない。」これはどういうことですか。

白川参考人 日本銀行は、現在、潤沢に資金を供給しております。これは、日本銀行の例えばバランスシート、これとGDPの関係を見ても明らかでございます。

 アメリカも今同様に、中央銀行のバランスシートは拡大しております。しかし、リーマン・ショック後、中央銀行のバランスシートは大きく拡大したにもかかわらず、アメリカの物価上昇率は着実に低下をしております。

 したがって、金融政策の刺激度を見るときに、中央銀行のバランスシートの大きさ、それだけで判断できるわけではない。さまざまな政策を使って、経済主体の支出に影響を与えていく変数、よくバーナンキ議長はファイナンシャルコンディション、金融環境という言葉を使っておりますけれども、そうしたものに有効に働きかけていく必要があるというふうに考えております。

 そういう意味で、量だけではないですよと。実質的に経済主体の支出に影響を与えていく、さまざまな金利、信用スプレッド、貸し出し態度、こうしたものに影響を与えていくように、さまざまな政策手段を使ってそうした状況を実現することが大事だ、そういう趣旨でございます。

山本(幸)委員 よくわからない。量と言いながら、またほかのことを話し出す。

 あなたはバランスシートのGDP比を言うんだけれども、日本は高い高いと威張っているんだけれども、私はこれは予算委員会で言ったけれども、それは二十年間GDPが変わらなきゃ高くなるに決まっているじゃないですか。それはあなた方の失敗で高くなっているんだよ。ほかの国は、アメリカなんて三、四%、ずっと二十年間成長していたんだから。それに比べて、GDP比が低いというのは当然でしょう。それを、全然成長していない日本では高いから潤沢にやっています、ばかなことを言いなさんな。

 これは伸び率が大事なんだよ。リーマン・ショック後、アメリカにしろ、イギリスにしろ、資産を二・五倍にした、二・四倍にした。日本はたったの一〇%だ。それでデフレが脱却できるわけがない。円高になる。それが起こっているわけでしょう。バーナンキなんかそう言っていますよ。

 私の問題意識は、日銀がお金を供給してもデフレから脱却できない、つまりインフレにならないと言っている、そういうふうに理解しますが、それでいいんですか。

白川参考人 まず、日本銀行は、量の面でも、あるいは質的な面でも、デフレの克服のために全力を挙げてございます。山本先生の御評価は今お聞きいたしましたけれども、しかし、客観的なデータで見る限り、大変に量を拡大しております。

 先生の御質問の趣旨として、バーナンキ議長とそれから日本銀行、あるいは私との比較ということで議論が展開されておりますので、若干バーナンキ議長自体の考え方についても触れさせていただきたいと思います。

 バーナンキ議長は、FEDの政策について、量的緩和という言葉を使うことが不適切であるというふうに言っております。量的緩和は、典型的には銀行の準備預金量を変化させることを通じた効果を追求する政策を指すが、少なくとも米国における状況下ではこうしたチャンネルは相対的に効果が弱いように思われるというふうに言っておられます。

 これは、日本がこの十数年間経験した事態と同じでございます。非常に量は拡大しておりますし、このことは、金融システムの安定を確保する上で、経済活動の下支えに大変大きな貢献を果たしました。しかし、このことだけでデフレが克服できるわけではないというのが日米の経験でございます。

 したがって、それ以外のルートも使って、一生懸命、金融緩和の効果を上げたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 あなたは、予算委員会のときに、バーナンキはそう言ったとしきりに言うんだけれども、私は調べた。バーナンキはそういう趣旨で言っているんじゃないですよ。バーナンキは、議会で、お金の量をふやしたらインフレになるんじゃないかと議員が心配するので、そんな心配は全くありませんよという趣旨で言っているだけですよ。そのほかのところでは、量的拡大すれば、ちゃんと物価にも成長率にもききますと言っていますよ。

 バーナンキのことはいいんだよ。あなたの考えを聞きたい。あなたは、量を供給してもデフレから脱却できないと言っているが、それなら長期国債を買いまくればいいじゃないですか。どうですか。

白川参考人 長期国債を買うという手段は、現在、日本銀行は非常に積極的に使っております。長期国債の買い入れ金額というものをGDPとの比較で見ますと、今大量に買っていると言われていますアメリカの中央銀行と全く同じでございます。

 それで、今御質問の中で、国債を、そうした買い方じゃなくて、もっともっと買っていく、その場合に、国債の買い入れの仕方、これがどういうふうに国民あるいは市場参加者に認識されるかということは、これは非常に大事なことでございます。

 仮に、そうした買い入れが、財政赤字のファイナンス、いわゆる経済学者がマネタイズというふうに呼ばれるような、そういうふうな買い方になっているというふうにみなされますと、これは今度は、今、日本の財政状況が悪い中、長期金利の方にも影響が出てくる、そうしたことをやはり懸念せざるを得ないというふうに思います。

 アメリカにおいても、この国債の買い方について、一方で経済の刺激ということを考え、他方でマネタイズというふうに見られないように細心の注意を払っているというふうに見ておりますけれども、私もそこは同じように考えております。

山本(幸)委員 では、長期国債を買っていたらマネタイズされると思って金利が上がるかもしれないという懸念がある。マネタイズされる心配があるというのは、インフレになる心配があるということと同義ですよ。

 つまり、長期国債をたくさん買っていけばインフレにもなり得ると今言ったじゃないか。ところが、あなたはずっと、たくさん量を供給すればデフレから脱却できると思っているわけじゃないと。矛盾しているじゃないですか。

白川参考人 こういう委員会の場ですから、余り何か学会のような形で議論するということはどうかなという感じにも思いますけれども、もし、国債の買い入れということについて、とにかくインフレ率を上げることだけに専念をし、とにかくインフレ率が上がるまで国債を無尽蔵に買いまくるという政策を行い、かつ中央銀行が今後ともそういうふうに行動すると思ったときに、どこかの段階でインフレ率が非連続的に上がるということがあるのかないのかというふうに問いを立てれば、それはそういうことは起こり得ると思います。

 しかし、我々が今目的としていますことは、物価安定のもとでの経済の持続的な安定ということであって、インフレあるいはハイパーインフレを起こすということが目的ではありません。

 したがって、中央銀行が仮にとにかくインフレ率を上げるんだという政策に入り、しかし一たんインフレ率が少し上がった段階でまたそのインフレ率をコントロールするというふうに市場参加者がみなしますと、なかなかインフレ率は上がっていきにくいと。これもまた、大変恐縮ですけれども、よくここの議論に出てきますクルーグマン自身が言っていることでございます。

 そういう意味で、繰り返しになりますけれども、高率のインフレを起こすために、とにかくそのことだけにすべてを挙げて、中央銀行が経済の持続的な安定ということを忘れた場合には、これは大変に厳しい状況が出現するというふうに思います。

山本(幸)委員 だったら、買っていけばインフレになり得るよと言っているわけで、こんな間違ったことはこれからは言いなさんな。たくさん量を出せばデフレから脱却できると思っているわけじゃない。たくさん量を出せばインフレになる可能性があると、あなたは今認めたんだ。

 そこで今度は、インフレになったら突然ハイパーインフレになっちゃうんだ。そんなばかなことがありますか、非連続的に。

白川参考人 お答えいたします。

 現在、日本銀行は既に大量の国債を買っております。しかし、それにもかかわらず、インフレ率は残念ながら十分には上がってきていないという現実でございます。

 先生の御提案は、消費者物価上昇率が上がるまでとにかく国債をどんどん買っていく、いわば無制限にでも国債を買っていくというスタンスを示せば、どこかでインフレ率が上がるのではないかという御指摘だと思います。

 人々の予想形成、これがどういうふうになされるか、これはよくわかりませんけれども、しかし、過去の内外の歴史を振り返りますと、人々の予想はどこかの段階で非連続的に変化しているというのが経験則のように思います。

 非連続的な変化が生じた段階で、今度はまた突然、その逆方向の、つまり、非連続的なインフレ期待のもとで生じた急激なインフレを抑えるような政策を行うということが本当に可能なのか。可能でない場合には、これはさらに高いインフレ率になってきますし、それから、それがもし可能であるというふうに思った場合には、そもそも出発点としての、非常に大量の国債買い入れそれ自体がインフレをもたらす力も、なかなか働きにくいということのように思います。

 こうした議論が、通常、学者の中で行われているように感じております。

山本(幸)委員 そんな議論なんか行われていませんよ。

 要するに、あなたは認めたんだ、量を供給すればインフレになる。だから、もうこんなばかなことを言いなさんなよ。それが一つ。

 それから、確かに私は、国債を買ってインフレ的にしろと言っているんだけれども、それは、実際にインフレということよりは、デフレ期待からインフレ期待に持ってこい、そう言っているわけですよ。期待感を変えればいいんだ。それをやって、もしハイパーインフレが怖いとなったら、上限を決めたインフレ目標政策が一番いいじゃないか、下限も上限もあるんだから。そのためにインフレ目標政策というのはあるんだよ。

 そこで、ちょっと聞きますが、あなたは、そういうことをやっていると非連続的にインフレになるということが経験則だと言いましたが、どういう経験がありますか。

白川参考人 財政とそれから中央銀行のかかわりの仕方ということは、これは幾つかの例があるというふうに思います。

 例えばギリシャ。ちょっと特定の国を申し上げるのはどうかなという感じもいたしますけれども。

 欧州のいろいろなソブリン危機の過程で、一昨年の秋ぐらいまでは、実は各国の国債の金利は、ほぼドイツの金利と同じような金利でした。しかし、現在は御案内のとおり、一番安全なドイツの国債との比較で見て、随分、長期金利、国債金利が上がっているわけであります。

 この間、客観情勢として、財政の状況、マクロの状況が大きく変わっていったのか、ファンダメンタルズが本当に変わったのかというと、ファンダメンタルズ自体がそれほど短期間に大きく変わったようには見えません。しかし、さまざまな出来事が組み合わさった結果、人々の予想が変わってきた、まさに非連続的な変化が生じたというふうに思います。一たんそうした変化が生じますと、今度は市場の中でまたさらにそうした動きが加速をされていくということであったように思います。

 そういう意味で、日本の財政運営と、それから中央銀行が物価の安定のもとで持続的な経済成長を図っていく、この金融政策との関係について、これはもちろん一般論でございますけれども、基本的な政策の軸がしっかりしているということが大事だと思っております。

山本(幸)委員 あなたはギリシャの例を出されたけれども、ギリシャと日本は根本的に違う。これはきょうはやりませんが。

 日本では、例として一九三〇年代の高橋財政があるでしょう。あのときに非連続的にインフレになりましたか。

 あのときは今よりもっと強硬なことをやったんだよ。日銀の直接引き受けをやったんだよ、国債の。そして、非連続的にインフレになりましたか。なりませんよ。インフレ率は二、三%で安定したんだ。金利も上がらなかった。同じことをやればいいじゃない。

 その日本についての歴史は無視している。おかしくなったのは高橋是清が殺されてからですよ。

 高橋の財政の四年間のときは、インフレも安定、成長率も安定、物価も安定したんだ。そうでしょう。それは認めますか。

白川参考人 高橋財政下の政策運営でありますけれども、現在、日本銀行は、国債の引き受け、これは原則できないということであります。国会の承認を経た範囲内で、現在、満期を迎えた国債の借りかえ、これは行っておりますけれども、しかし、財政法の規定に従って日本銀行は行動しないといけないわけでありまして、国債の引き受けという形での金融政策は考えておりません。

 高橋財政についてでございますけれども、高橋財政そのものについて申し上げますと、当時、日本銀行は国債を引き受けたわけでありますけれども、同時に、引き受けた国債のほとんどを市場に売ったわけであります。そういう意味で、実際に、日本銀行のバランスシートに国債が残ったわけではございません。

 しかし、一たん経済がよくなってきた段階で、つまり、先生がおっしゃった、物価も安定し、経済も成長するという何年かの時期を終えて、金利が上がっていかないといけない、そういうときに国債が売れなくなったということでございます。

 そういう意味で、実は、高橋財政を導入したその数年間はうまくいったけれども、しかし、うまくいったその結果として、今度は、今の言葉で言いますと、出口、エグジットにやはり失敗をしたというふうに思います。

 そういう意味で、政策については、入り口と出口、トータルでやはり評価をしていくということが大事だというふうに思っております。

山本(幸)委員 おっしゃったように、日銀が国債引き受けをやるということを発表しただけで、がらっと変わったんだ。つまり、期待感が変われば、全部変わるんですよ。それが大事なんだ。それをやれと言っているんだよ。

 出口で失敗したと。それはそうでしょう、殺されちゃって、次の大臣は軍部に抑え込まれちゃったからね。

 では、あなたは、日銀総裁として、そういうふうになりかけたら、それをコントロールする自信はありませんか。

白川参考人 まず、高橋財政について一言だけ申し上げますけれども、先ほど、国債の引き受けとの関係で御質問がありましたので、その点についてはお答えいたしました。

 しかし、高橋財政の政策を全体として見た場合に、金本位制に復帰した後、それをまたもとの体制に戻していくということで、金平価時代のいわば人為的に高かった円相場、これをやめたわけであります。その結果、円相場は一年ぐらいの間にほぼ半分ぐらいの水準に、実は円安になったということで、その結果、景気が立ち直っていったということだと思います。

 今御質問の、日本において将来問題が生じかかった場合に、日本銀行としてどういうふうに対応するのか、インフレの危険が仮に出てきた場合に、その覚悟はあるのかという御質問だというふうに受けとめましたけれども、これは、日本銀行法に定められた使命に従って、つまり、物価安定のもとでの国民経済の健全な発展、法律に定められたこの理念に従って、しっかり職務を遂行していきたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 そこが頼りにならないと思うんですよ。

 このバーナンキの三の1、「金融当局は、長期的にインフレ率を決める能力を有するが、失業率はそう簡単ではない。」それから、三ページ目の一番最後のところ、二の2ですね、「資産購入は通常の金融政策手段ではないが、これについての心配はオーバー過ぎる。これまでもマネーの過剰供給、インフレ嵩進の惧れはなかった。必要となれば、これに対する備えはFRBには十分ある。」

 自信満々ですよ。心配を起こさなくても、おれたちがちゃんとやるから心配するな、それだけの能力は持っているし自信がある、これが中央銀行総裁のあるべき姿ですよ。それをあなたは何か、法律に従ってやりますと。

 あなたがしっかりしていれば、高橋財政の出口を、まあ高橋は死んじゃったから、高橋が生きていればそんなことにならなかったかもしれないんだけれども、それを体を張って守る覚悟さえあれば、出口で心配はありませんよ。その覚悟がないんですか。

白川参考人 まず最初に、バーナンキ議長の覚悟と同じように、日本銀行も、私もそうですし、政策委員会メンバー九名とも、これは、日本銀行法の精神に従ってしっかり職務を遂行していくという覚悟、決意はもちろんございます。

 日本銀行は、現在、包括緩和のもとで、ほかの中央銀行が買っていないような、例えばREIT、ETF、これも買い入れを行っております。極めて異例の政策を行っておりますけれども、この政策も、こうした政策が必要なときには日本銀行がしっかりやっていく、しかし、必要がなくなった場合にはこの政策はもちろんやめるという覚悟があるからこそ、こうした政策に踏み切っておるわけでございます。

 そういう意味で、日本銀行は、しっかり政策を運営していくという覚悟は、現在もそうですし、今後ともございます。

山本(幸)委員 その覚悟があるんだったら、どんどん国債を買いまくって、インフレ率を、デフレ期待からインフレ期待に早く変えて、そうやればいいじゃない。それが心配になりそうだったら、自分たちはちゃんとコントロールできるという自信があるんでしょう。何でそれをやらない。たかがREITとかCPとか、ちょこちょこっと買ったって効果も何もないよ、そんなのは。全然変わっていないじゃない。あなたはもう三年になるんだ。それでまだデフレが続いているんだ。何だ、これは。

 そこで、ちょっと聞きますが、物価の安定といって、審議委員の間の共通の理解は一%ぐらいだと言っているんですね。この一%というのは、僕は低過ぎると思うんだけれども、その点についてはどうですか。

白川参考人 日本銀行は、今先生御指摘の中長期的な物価安定の理解ということにつきまして、定期的に点検を行っております。現在は、今先生が御指摘のあった数字、つまり、二%以下のプラスで、中心値は一%程度であるという数字を採用しております。

 この根拠でありますけれども、先生もよく御案内のとおり、消費者物価指数のバイアス、こうしたことと、それから、金利がゼロ金利に直面した場合に金融政策運営が難しくなる、そうした可能性、つまり、のり代ということを意識し、現在のこの数字を定めております。

 日本の物価上昇率、この中長期的な物価安定の理解の数字がほかの国と比べて低いのではないかということでございますけれども、これは、例えば一九八〇年代の後半、つまり、今から考えますと日本が最も景気のよかったあの局面でも、例えば一九八八年の消費者物価上昇率は、たしか〇・四、五%でございました。これは、さまざまな経済の構造ということがやはり背後にあるというふうに思います。

 いずれにしても、先ほど申し上げた本質的な論点、つまり、指数のバイアスあるいはのり代を加味して最適な水準を日本について考えた結果、現在は、先ほど申し上げた一%程度というのが最適だというふうに判断しています。

山本(幸)委員 この辺は、おっしゃるとおりバイアス。だから、消費者物価も今ゼロと政府は見通しをしているけれども、この八月になればまたおっこちるんだね、五年ごとの改定で。〇・五ぐらい落ちますよ。だから、バイアスがあるから、当然それは見ておかなきゃいかぬ。

 それから、名目金利は、少しぐらいプラスがついていないと金融政策がやりにくいから、そういう意味では、もうちょっと高い方が私はいいと思いますよ。一%を切ったらすぐデフレになる可能性が出てくるんだ。

 そこは、バーナンキは二%を考えているんだね。三ページ目の一の2とか一の3とか。これまでも前進はあったが、全然満足していないと。「失業率は依然一〇%近くだし、インフレ率も二%を幾分下回っており、低過ぎる。」二%を切ったら低過ぎるという認識なんですよ。それは、デフレに陥る可能性をもたらして、これは日本のことを見て言っているわけだな。

 しかも日本は、ずっとこの十四、五年、GDPデフレーターであるか消費者物価であるかによって違うんだけれども、十四、五年はデフレが続いている。本来ならば、二、三%上がるべきところを、マイナスになっちゃったから、その差を埋めるということもあって少し高目で考えておかないと、経済は順調に回復しませんよ。

 その意味では、この一%というのは明らかに低過ぎる、私はそう思う。これは論理的に決め手がないから、あれだけれども。

 しかし、もう一つは、やはり日本の過去二十年間のフィリップス・カーブを見ていても、二%を切ると失業率が、がっと上がっちゃうんだね。その点から考えても、やはり二%ぐらい、二から三ぐらいに行くというようにしておかないと、私は日本経済は順調に回復しないと思う。

 その点についてどうですか。

白川参考人 金融政策において、目的とすべき、あるいは定義すべき物価上昇率についてはさまざまな議論があります。

 私どもは、毎年これを政策委員会で点検しております。そうした点検を行う際には、ただいま山本先生から御指摘のあった点、あるいは山本先生から御紹介のあった海外の事例あるいは議論も参考にしながら、次回点検するときにもこれはしっかり点検をしていきたいというふうに思っております。

山本(幸)委員 時間が少なくなったので、最後に聞きます。

 私は、インフレ目標政策をぜひとも入れなきゃいかぬと思って、民主党の皆さん方とも議論をして、これは必ずやり遂げる。法案も準備してやります。

 そのときの基本的な考え方というのは、中央銀行の独立性には二つあるんだ。一つは目標設定の独立性、それから手段選択の独立性の二つがあって、中央銀行の独立性といった場合は、世界各国の共通の理解は、それは手段選択の独立性であって目標設定の独立性はないんだ。それは政府が決める、あるいは政府と中央銀行が協議することもあるけれども、基本的には政府の責任において決める、これが本来の中央銀行の独立性についての考え方だと。

 このことはもう世界の常識ですよね。バーナンキも、去年の日銀がやったコンファレンスでそうはっきり言っていますよね。日銀さんは困ったかもしれぬけれども。彼はこう言っている。「金融政策の目標は政治当局によって設定されるが、その目標を追求する方法においては政治的支配から独立であるべきである、というコンセンサスが幅広く形成されています。」

 だから、世界の常識に沿った法改正をきちっとして、日本銀行にちゃんとやってもらって、早くインフレ期待にするように国債を買いまくって、それで非連続でインフレの心配があるんだったら、ちゃんとやるという自信があると言うんだから、やってもらえばいいじゃない。それは、はっきりするためには上限と下限をつくってやれば、何の問題もないじゃないですか。

 それについて、日銀総裁の見解。

白川参考人 日本銀行も含めて、各国の中央銀行の金融政策の目的は、これは法律によってはっきり定められております。これは日本も全く同様でございます。日本銀行の場合には、日本銀行法において、金融政策の目的、使命は、物価の安定を通じて国民経済の健全な発展に資するということを、これは明確に国会でお決めいただいているわけでございます。

 そのもとで、具体的な物価上昇率としてどういうふうな数字を念頭に置くかということは、先生御指摘のとおり、国によって違います。政府が決める先、これは数としては多くございませんけれども、政府が決める先もございますし、政府と中央銀行が決める先もありますし、中央銀行自身が決める先もございます。

 ただ、どういうふうな数字の目標にするにせよ、現在イギリスが直面していますように、あるいは多くの中央銀行が直面しているように、物価上昇率の足元の数字もさることながら、中長期的にどのような物価水準になっていくのか、短期的ないろいろな要因、例えば石油ショックもそうですけれども、中長期的に維持可能な、そういう物価の見通しはどういうふうになっていくのか、これが最大の論点になっております。

 そういう意味では、日本銀行として、ほかの中央銀行と全く同じように、先々の経済情勢の判断を誤らないようにし、かつ適切な金融政策を行い、できるだけ早くデフレから脱却すべく、全力を尽くしてまいりたいと思っております。

山本(幸)委員 いよいよインフレ目標政策をきちっとしなきゃいかぬという確信をいたしました。

 最後にまとめますけれども、結局のところ、白川総裁がずっと言ってきた人口減少と生産性上昇率とデフレとは全く関係ないということを、私は証明した。それから、名目賃金がデフレの原因だというのは間違い、これも証明した。それから、たくさん量を供給してもデフレから脱却できないなんというばかげた話は全く間違いだということも証明した。

 だから、これから発言するときは、そういうことは一切言わないように気をつけてもらいたい。

 そして、ちゃんと早く、デフレ期待からインフレ期待に変わるような政策を早急に打ちなさいよ。その後に、出口で心配だったらちゃんととめる自信があるというのだから、結構なことじゃないですか。何の心配もない。

 そのことを申し上げて、質問を終わります。

石田委員長 次に、竹内譲君。

竹内委員 公明党の竹内譲でございます。

 私ども、できる限り、予算だけを先に参議院に送るのではなくて、やはり予算関連法案も含めて、一体として送っていかなければいけないというふうに思います。かつてのように赤字国債が非常に発行が少なかった時代ではありませんから、やはり歳入関連法案も含めて、一体としてどんどん審議をして結論を出していくということが大事だというふうに、まず申し上げておきたいと思います。

 そこで、きょうはG20の報告に関しての質疑なんですが、大変申し上げにくいことですが、けさの産経新聞で気になる記事が載っておりますので、これはちょっとただしておかなければいけないというふうに思います。

 民主党本部のパーティー券二百七十万円分を、かつて脱税事件で逮捕された方が代表取締役を務めていた会社、それからグループ三社が購入されていた。このうち一社は、十九年に、現在の野田財務大臣の関係政治団体のパー券四十万円分を購入していた、そのほかにも、蓮舫行政刷新担当大臣が代表を務める政党支部に百二十万円を献金していた。

 この男性といいますか、この方は、平成十六年に、競馬予想の情報提供会社の所得を隠したとして、東京地検特捜部に逮捕されて、法人税約三億四千万円を脱税したとして起訴されている方であります。

 政治資金収支報告書によりますと、この民主党のパーティー券は、経営コンサル会社のほか、この男性が代表取締役を務めるなどしたグループ三社で、平成十八年に計百六十万円、十九年は五十万円、二十年は六十万円分を購入していた。また、子会社は十九年六月一日、当時は民主党の広報委員長さんですか、国民運動委員長さんですか、どちらかであったと思いますが、野田さんの野田よしひこ後援会のパーティー券四十万円分を購入していた。同日、蓮舫さんが代表の民主党東京都参議院選挙区第三総支部に百二十万円を献金している。こういう内容の記事であります。

 現在、野田さんは財務大臣でいらっしゃいますから、この脱税関係企業がパーティー券を購入していたということがもしあったとすれば、これはきちんとした説明なり対処が求められるというふうに私は思います。

 まず、この記事について事実かどうか、お伺いしたいと思います。

野田国務大臣 竹内委員にお答えをしたいと思います。

 こういう一部報道が出たことは事実でございます。私自身が、長い間政治家をやってまいりましたけれども、いわゆる政治資金パーティーというのは、平成十九年六月一日、六月一日は払ったという日ですね、六月にやったというのは事実ですが、後にも先にもこれ一回しかやっていないんです。その中で該当するような事例があったのかどうかは、よく確認をしたいというふうに思います。

 事実確認をさせていただいて、仮に脱税をしたような法人とか個人であるならば、それは今の職責上適切ではないと思いますので、返還も含めて検討させていただきたいというふうに思います。

竹内委員 大事な点でございますので、後日きちんと精査をしていただいて、説明並びに対処につきまして御報告をいただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。

 そこで、大事な点なんですが、G20の件に入りたいんですが、その前にもう一点だけ、今後の国会運営に当たってお聞きしておきたいと思います。

 先日来、玄葉大臣の発言が物議を醸しましたけれども、現在、既に趣旨説明が終わっております特例公債法案、所得税法等の法案、重要広範議案でありますけれども、大臣としても、ぜひとも衆参、年度内に通してもらいたい、結論を出してもらいたいという気持ちはありますか。

野田国務大臣 予算と、そしてそれを裏づける関連法案、年度内成立を心からお願いしたいというふうに思います。

竹内委員 我々も、審議をできる限り進めて、国民の皆さんに迷惑がかからないようにしたいという気持ちでいっぱいであります。その意味で、与党におかれましても、そういうバリアをつくっていただかないように、さまざまなトラブルを起こしていただかないように、そういう環境づくりに努めていただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 そこで、国会の状況は既にごらんのとおりですけれども、これは早期に結論が出ると思うんですよ、審議が進めば。もしも、この重要二案が国会で否決された場合、その責任はどこにあると思いますか。大臣は、野党に責任はあるとお思いになりますか。

野田国務大臣 基本的には、まだ法案審議は与党の審議が一部終わっただけであって、これから野党の皆さんの御意見をお伺いする質疑に入るという段階ですので、余り否決された場合ということを考えたくはないと。基本的には丁寧に説明しながら御理解、御賛同をいただきたいというふうに思いますけれども、あえて御質問でございますので。

 可能性としてはいろいろありますが、否決されないように頑張りますけれども、もしそういうことになるならば、基本的には、第一義的には、政府の側に責任があるというふうに思っております。

竹内委員 そういうことですよね。我々としても、いい内容であればそれは賛成をいたしますし、とてもこれはだめだということであれば反対をする、これしかないわけでありまして、そういうことで、しっかりと審議をやっていきたいというふうに思っております。

 そこで、G20などの国際会議に関して、国権の最高機関である国会から報告を求められた場合には、やはり政府は国会において報告するのが行政府としての務めであると私は思います。まずこのことを申し上げておきたいというふうに思います。

 今回のG20でございますが、世界経済の不均衡是正が目的の一つだというふうに伺っております。しかし、実質的にこの問題は、ありていに言えば米中問題ではないのかというふうにも思うわけであります。すなわち、中国に対して、経済のファンダメンタルズを反映した為替レートに持っていってもらいたいというのがアメリカの本音ではないのか、他方、中国はこれに対して抵抗している構図ではないかというふうに推測しているわけであります。

 そこで、まずお尋ねしますが、大臣は、一九八五年のプラザ合意についてどのように評価をされていますか。

野田国務大臣 プラザ合意は、ドル高是正をするために、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、この五カ国が、緊密に協力して政策協調を行うということで合意をされました。

 その評価については、さまざまな見方があるように思いますけれども、少なくとも、今委員が御指摘された言葉を使わせていただくならば、為替レートはファンダメンタルズを反映すべきであるという考え、そのもとに具体的な行動をして合意をした、その意味では意義があったというふうに思います。

竹内委員 大臣は、その後の日本経済に対して、意義があったと思われるプラザ合意がどういう影響を及ぼしたというふうにお考えになりますか。これは質問通告しておりますので、この点についてはいかがですか。

野田国務大臣 政策協調をして、主要国が一定の合意のもとで行動するというそのこと自体は、意義があると思うんです。それの日本経済に対する影響、これはまた、さっき申し上げたように、さまざまな見方があると思います。

 少なくとも、いわゆる円が増価をされたわけです。円高になりました。その思惑としては、前に山本委員との議論でもお話しさせていただいたことがありますけれども、日本の経常収支が、黒字が一瞬は縮んでいって、でも最終的にはまた戻っているということで、いわゆる意図した効果、いろいろな意図があったと思いますが、それがすべて成功裏に終わったかどうかは、これはよく分析、評価しなければいけないだろうというふうに思います。

竹内委員 バブルの発生との関係はどのようにお考えになりますか。

野田国務大臣 因果関係としては、一つの要因ではあったのかと思います。

竹内委員 因果関係の一つ。

 中国はこれをよく聞くんですよね。日本がプラザ合意をどういう評価をしているかということは、向こうの経済人はあちこちでいろいろな人に聞きます、政治家もそうですけれども。

 ですから、当時二百四十円ぐらいしていたのが、一気に百円を上回るような大変な円高に突入したわけでありまして、それが日本経済に及ぼした影響というのは、当時大変なものがありましたよね。それを防衛するために各企業は個別の対策をとったわけですけれども、日本としても、超低金利政策という時代に突入をしていくわけですよね。

 これが、規制緩和などを通じて過剰流動性を生んできたということは事実だと思います。その中でバブルというものも発生してきた、こういうふうに思っております。

 中国は、そういう経緯をよくよく調べていまして、バブルを崩壊させた後の金融政策というものを日本はどういうふうに持っていったのか、こういうことについても研究しています。

 そういう意味で、日本側として、財務大臣が、プラザ合意がその後の日本経済に対してどういう影響を及ぼしたのか、また、そのときの政策はどうだったのか、それから、バブルの発生と崩壊の過程で日本の財政金融当局の政策はどうだったのか、こういうことをやはり総括を持っていないといかぬと思うんですよ。

 そういう意味で、私は、事前に質問通告をしているわけです。当然、後ろにいる財務官僚の皆さんが用意しているものだと私は思っていたんですが、その辺の、プラザ合意とその後の日本の経済への影響について、大臣はどういうふうに総括されていますか。

野田国務大臣 中国が日本の過去の経験に非常に注目をしていて、非常に勉強していることは事実であります。プラザ合意以降も、委員がおっしゃった歩みについては非常に関心を持って、それを踏まえながらさまざまな政策に生かそうとすることは事実であります。それも感じています。

 そういう中で、ただ、個別の国の為替の政策については、きょうは言及しません。

 今のプラザ合意の総括の話でありますけれども、いわゆる国際協調として一定の目標を持って主要のアクターが合意をして動いたこと自体は、世界経済を考えた中で妥当性はあったというのが、さっきの冒頭申し上げた私の回答です。

 ただ、日本経済のこれまでの歩みの中でさまざまな意味の影響があったこと、その後の我が国の財政政策や金融政策に、一つの因果関係があるという簡単な申し上げ方をしましたけれども、大変大きな影響があったことは事実だというふうに思っています。

竹内委員 中国はこの辺をよく研究していまして、日銀総裁もそれはよく御存じだと思いますけれども、大変な、世界第二位の経済大国にのし上がってきた。アメリカからどんどん切り上げろと言われているわけですよね。その仕組みをG20でやろうとしているんだろうと思っているわけです。

 ただ、中国は、日本の過去のこういう経験を勉強して、実力とは別に、徐々にやっていこう、管理相場にして、徐々に適正なものに持っていこう、こういう感じを私は受けております。そういう意味で、G20においても中国のスタンスというのがいろいろ注目を浴びているわけでございます。

 そこで、きょうは日銀総裁に来ていただいていますのでお伺いしたいんですが、今申し上げました中国などの新興国のやや硬直的なこういう為替レートが世界経済に及ぼす問題をどのように認識されているか、このことをお伺いしたいと思います。これは、G20に先立つフランス中銀の討論会で総裁がおっしゃっていますので、述べていただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 近年の世界経済を見た場合に、その大きな環境の変化として、経済、金融のグローバル化が、これは大変な勢いで進行しています。それからもう一つ、新興国の経済のウエートが大変高まっている、新興国の経済の成長力が非常に高いということでございます。

 今申し上げたこの大きな環境の変化の中で、仮に新興国の為替相場制度が十分な伸縮性を欠いている場合には、もともと成長期待が高い国である新興国に対し、海外から資本が大量に入ってくるということでございます。そのもとで、為替の伸縮性がない場合には、余計に資本が入ってくる。その結果、当該国の景気が過度に刺激されて、結局はその国の経済の持続的、安定的な発展が損なわれる可能性があります。

 そのことの影響は、その国にとどまるだけではなくて、世界経済全体にも影響が出てくるというふうに思います。

 これは、なかなか一般論で申し上げることが難しいわけですけれども、経済政策の運営は、どの国でもそうですけれども、まずは自国の経済の持続的、安定的な成長、これが目的でございます。そうした観点から、今申し上げたようなことも含めて、政策、自国経済の安定が何なのかということをしっかり考えていく必要があるというふうに思います。

 その際に注意すべきは、やはり、グローバル化のもとで、経済、金融の相互依存関係が強まっているということでございます。したがって、自国のとる為替政策、金融政策が、自国のみならず、他国にどういうふうに影響し、それがまた、最後、自分にどういうふうに影響してくるのかということを考える必要があるというふうに思います。

 これは、新興国についてのみ言っているわけではなくて、先進国の政策についても同じように当てはまる、そうした基本的な考え方を双方がしっかり認識することが大事だというふうに思っておりまして、G20の場でのいわゆる相互評価の枠組みも、そうしたことを念頭に置いているというふうに理解しております。

竹内委員 ですからG20をやっているんですけれども。

 野田大臣にお伺いしますが、参考指針として外貨準備高と実質実効為替レートが今回採用されなかったようでありますけれども、このようなことで為替相場に柔軟性を取り戻すことができるとお考えでしょうか。

野田国務大臣 最終的にコミュニケで合意できた指針というのは、公的債務と財政赤字、民間貯蓄率と民間債務、そして、貿易収支、投資所得及び対外移転のネットフローから構成される対外バランスということなんですが、特に、貿易収支、投資所得及び対外移転のネットフローから構成される対外バランスの前文がありまして、為替政策を十分に考慮しつつというところがございます。

 ということで、作業部会では確かに外貨準備とか実質実効為替レートという項目が入っていましたけれども、幅広い意味で為替政策に十分留意をしながらというところで、事実上は念頭に入った表現になっているというふうに思います。

竹内委員 中国は、恐らくですけれども、徐々にファンダメンタルズを反映したい、プラザ合意は余りにも急激にやり過ぎた、だから日本は失敗した、バブル崩壊も、急に金利を上げ過ぎた、だから失敗したと。恐らくその辺の軟着陸を考えつつやっていますから、そういう意味では、できる限りこういう外貨準備高とか実質実効為替レートは外したい、こういうふうに思っているんだろうというふうに思うわけであります。

 では、次に、日銀総裁にお伺いいたしますけれども、新興国では、今、先進国の金融緩和がインフレを招いていると批判をしているわけであります。特に、昨秋のアメリカのFRBの六千億ドルに及ぶ資金供給が穀物相場などに流れ込んで価格高騰をあおっているのではないかという主張をしているわけでありますが、日銀総裁は、米国のQE2の金融緩和政策、マネー・イージング・ポリシーが世界経済にどのような影響を及ぼしているとお考えでしょうか。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、アメリカの経済でございますけれども、昨年夏ごろ見られました先行きに対する悲観論が後退しまして、足元はむしろ楽観論が高まっているということでございます。こうした足元の改善の背景ですけれども、一つは行き過ぎた悲観論の後退でございますけれども、二つ目は新興国の成長が再び加速している、三つ目にはアメリカにおける減税措置の延長あるいはFRBの政策対応があるというふうに思っております。

 FRBの金融緩和政策でありますけれども、アメリカの景気回復に貢献する一因となっているというふうに思いますし、これを通じて世界経済全体にも相応の好影響を及ぼしているというふうに思います。

 ただ、委員の問題意識だというふうに思いますけれども、アメリカにおける金融緩和の効果につきましては、利回りを追求する投資家の行動、よくサーチ・フォー・イールドというふうに言われますけれども、そうした行動を加速しまして、高成長を続けている新興国や、あるいは商品市場への資金流入の拡大につながっているという指摘もございます。現実の商品市況の上昇には、実需の増加、供給の制約、それからこの金融面の要因、こうしたさまざまな要因が複合的に影響しているというふうに思います。

 先ほど申し上げましたけれども、これは、アメリカの金融政策もそうですし、それから新興国の為替・金融政策もそうですけれども、政策効果の波及と自国経済の安定に軸を置く、これはもう当然でございますけれども、その際に、自国経済の海外に及ぼす影響が自国にどうまたはね返ってくるかということも、双方しっかり考えていく必要があるというふうに思っております。

竹内委員 次に、今回のG20でも経常黒字国の責任ばかりが強調されているように思うんですね。先ほどの山本先生からの御質問にもありましたけれども、野田大臣は、経常赤字国は不均衡是正にどのような責任があるとお考えでしょうか。

野田国務大臣 対外不均衡是正のためには、やはり、経常黒字国そして経常赤字国、双方が必要に応じて適切な対応をしなければいけないと思うんです。

 経常赤字国については、これまでG20の議論においては、開かれた市場を維持し、輸出セクターを強化しつつ、民間貯蓄を支える政策をとり、適切な場合には財政健全化を実施することが重要であるというふうに合意をされてきているところでございます。経常赤字国がこうした合意を踏まえて適切な国内対策を実施していくということが大変重要だというふうに認識をしています。

竹内委員 日銀総裁にお伺いしますが、FRBのバーナンキ議長は、緩和的な金融政策で先進国の景気が回復すれば新興国の利益にもなると述べているわけであります。

 日銀総裁は、これは正しい経済政策であるとお考えでしょうか。

白川参考人 FRBも含めまして、各国の中央銀行は、自国の経済の安定に最終的に責任を有しています。したがいまして、今の米国を考えました場合に、失業率が高どまっている、景気回復の足取りの重さを踏まえますと、米国において緩和的な金融政策が行われることそれ自体は、これは自然だというふうに思います。

 ただ、先ほど申し上げましたとおり、金融緩和に対してさまざまな議論が行われることは、議員御指摘のとおりであります。アメリカの経済を見ますと、バランスシート調整のおもしが働く中で、どうしても金融緩和の効果が自国国内では発現しにくくなって、資本の流出を通じて新興国にも影響を与えるという側面があるということは事実だというふうに思います。

 そういう意味で、FRBが自国の経済の安定に責任を持って政策をやる、これは当然でございますけれども、その自国の経済の安定ということを考えていくときに、少し長いスパンで見たその影響ということも踏まえて、その上で、しかし自国の経済の安定に努力することが大事だというふうに思っております。

竹内委員 自国の経済でということを考えればそれは自然である、これはわかるんです。

 ただ、今回のG20の目的、不均衡是正という目的からすれば、これは単に不均衡を維持拡大しているだけじゃないかというふうに思うんですね。その点と、そういう意味では、アメリカの経済の構造改革が必要なんじゃないかなというふうに思うんですが、この点につきましては、日銀総裁、いかがですか。

白川参考人 アメリカの経済の構造改革の必要があるという点については、全くそのとおりだと思います。

 アメリカは基軸通貨国ですから、赤字を出しても直ちには調整の必要を感じにくいという特性がございます。それだけに、今、アメリカの経済の直面している家計の過剰消費、過少貯蓄、この問題が今回の問題の根源にあるわけでありますから、こうした問題にやはりしっかり取り組んでいく必要があるというふうに思っております。

竹内委員 時間もだんだんなくなってきたんですけれども、一週間近く日銀総裁は海外に行かれますので、なかなか質問するチャンスがありませんので質問しておきます。

 最近、英国経済は、イギリスの方ですね、インフレ目標の二%を上回る消費者物価が続いております。これはなかなか注目すべき現象なんですけれども、その原因並びに英国経済の状況について述べていただきたいのと、また、こういうことを踏まえながら、現状としてこのインフレターゲット政策の有効性について、日銀総裁の見解をいただきたいと思います。

白川参考人 お答えいたします。

 まず、英国の経済情勢、物価情勢でございますけれども、消費者物価指数の前年比がインフレ目標である二%を上回る状況が続いておりまして、ことし一月は前年比四・〇%の上昇になりました。

 英国の場合、この目標率を一%以上上回ったり、あるいは下回った場合には、総裁が財務大臣に公開書簡を出すということでございます。そうした説明を見ますと、これは、一つには付加価値税率の引き上げ、それから国際商品市況の上昇や、あるいは既往のポンド安に伴う輸入物価の上昇が影響しているというふうに説明をされております。

 もっとも、先行きの物価動向について、イングランド銀行自身は、財の市場や労働市場の需給は緩和した状況が続いているために、この付加価値税率の引き上げや商品市況上昇の影響、これは一時的な影響というふうに仮に考えますと、これが剥落しますと消費者物価指数前年比はインフレ目標をやがて下回っていくというふうに判断をしております。

 一方、実体経済の方ですけれども、昨年十―十二月は大雪の影響からマイナス成長となりましたけれども、基調としては緩やかな回復を続けています。既往のポンド安を受けて、輸出がユーロエリアや新興国向けを中心に増加し、製造業の生産活動は堅調に推移しております。先行きも、輸出の増加や緩和的な政策に支えられて、英国経済は緩やかな回復を続けるというふうに見られます。

 ただし、英国の場合、緊縮財政の影響から、消費者マインドや住宅投資が、足元、今までのような動きとなっていますことから、先行きの家計支出の下振れリスクには注意が必要だというふうに判断しております。

 長くなって恐縮でございますけれども、インフレーションターゲティングでございます。

 インフレーションターゲティングの評価、改めて御質問にお答えしますと、インフレーションターゲティングは、これはあくまでも金融政策を行う上での説明の枠組みでございます。したがって、このインフレーションターゲティングの導入それ自体で、インフレがおさまったり、あるいはデフレが解消するというものではございません。

 インフレーションターゲティングを結局採用するかどうかにかかわらず、各国の金融政策は、中長期的な物価の安定を達成し、持続的な経済発展に貢献するということを目的に運営されております。

 イギリスの場合も、かつては、物価上昇率とかなり機械的にリンクした政策運営が行われていましたけれども、現在は、中長期的な安定を目指したフレキシブルな運営になっております。

 この点、今、イギリスで問題になっていますことは、消費者物価上昇率が現に四%になっている、その一時的な要因が本当に一時的な要因なのかどうか、もし商品市況の上昇が一時的ではなくて世界的な経済の変化を反映していれば、これはむしろ、結果としてインフレを追認してしまうことになってしまうという議論も一方でなされております。

 この辺が今大きな議論の対象になっておりまして、今回また国際会議でも意見交換をしてまいりたいというふうに思っております。

竹内委員 時間が参りましたので、これで終わります。

 ありがとうございました。

石田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時八分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.