衆議院

メインへスキップ



第26号 平成23年7月12日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十三年七月十二日(火曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 石田 勝之君

   理事 泉  健太君 理事 大串 博志君

   理事 岸本 周平君 理事 古本伸一郎君

   理事 鷲尾英一郎君 理事 竹下  亘君

   理事 山本 幸三君 理事 竹内  譲君

      網屋 信介君    五十嵐文彦君

      磯谷香代子君    稲富 修二君

      今井 雅人君    江端 貴子君

      小野塚勝俊君    大西 健介君

      岡田 康裕君    勝又恒一郎君

      木内 孝胤君    近藤 和也君

      菅川  洋君    玉木雄一郎君

      豊田潤多郎君    中島 政希君

      中塚 一宏君    中林美恵子君

      三村 和也君    水野 智彦君

      柳田 和己君    和田 隆志君

      稲田 朋美君    今津  寛君

      齋藤  健君    野田  毅君

      村田 吉隆君    茂木 敏充君

      山口 俊一君    佐々木憲昭君

    …………………………………

   財務大臣         野田 佳彦君

   国務大臣

   (金融担当)       自見庄三郎君

   財務副大臣        五十嵐文彦君

   内閣府大臣政務官     和田 隆志君

   政府参考人

   (金融庁検査局長)    細溝 清史君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    畑中龍太郎君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    高原 一郎君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

七月十二日

 辞任         補欠選任

  網屋 信介君     大西 健介君

  柿沼 正明君     磯谷香代子君

  小山 展弘君     中島 政希君

  玉木雄一郎君     稲富 修二君

  松原  仁君     水野 智彦君

  徳田  毅君     稲田 朋美君

同日

 辞任         補欠選任

  磯谷香代子君     柿沼 正明君

  稲富 修二君     玉木雄一郎君

  大西 健介君     網屋 信介君

  中島 政希君     小山 展弘君

  水野 智彦君     松原  仁君

  稲田 朋美君     徳田  毅君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

石田委員長 これより会議を開きます。

 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。

 内閣提出、平成二十三年度における公債の発行の特例に関する法律案及び経済社会の構造の変化に対応した税制の構築を図るための所得税法等の一部を改正する法律案の両案審査のため、来る十五日金曜日午前九時、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

石田委員長 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、政府参考人として金融庁検査局長細溝清史君、監督局長畑中龍太郎君、中小企業庁長官高原一郎君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

石田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

石田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。稲田朋美君。

稲田委員 おはようございます。自由民主党の稲田朋美です。

 まず冒頭、野田大臣に、現在の政治状況について、その御認識をお伺いいたしたいと思います。

 六月二日に内閣不信任案が否決されました。その前の民主党代議士会のテレビ中継を私も見ておりましたけれども、大変不思議な光景でした。なぜ菅内閣の不信任案が圧倒的多数で否決をされたのか。菅さんがやめるとおっしゃったからであります。やめるとは明言をされませんでしたけれども、お遍路で余生を送ると発言をされ、大臣を含め、あの場にいた民主党の議員、菅さんを除く全員が、菅さんはやめると思って信任をされたのです。やめる総理を信任した、総理がやめると言ったから信任した、前代未聞の不信任案の否決でした。

 ところが、菅さんはやめるおつもりがない。前総理の鳩山さんは、やめる気のない菅さんのことをペテン師とおっしゃいました。だとすると、やめると信じて反対票を投じた、本当は不信任案に賛成しようと思っておられた多くの民主党議員は、錯誤に陥って反対票を投じたのです。

 御承知のとおり、錯誤の意思表示は無効です。意思表示の重要な要素に錯誤があれば無効になります。もちろん不信任案否決は法律行為ではありませんけれども、少なくとも六月二日の不信任案否決は重大な瑕疵があったことは明らか。その意味でも一事不再議は適用されません。

 その後の混乱ぶりは目を覆うばかりです。今、菅総理は、再生エネルギー法案が成立しなければやめないと言い出し、野党第一党の我が党に協力を呼びかけながら、我が党の懐に手を突っ込んで参議院議員を一本釣りされました。重大な信義則違反ですよ。

 そして、原発は安全確認できたから、経産大臣は再稼働を玄海原発に要請しておきながら、総理が唐突に、ストレステストをしないと再稼働できない。そのストレステストは、EUのものではなくて日本版のストレステスト。新しい基準ですか、一体何ですか、これは。総理がいいかげんな思いつきを言って後からそれを正当化する、その連続じゃありませんか、TPPも、浜岡も、脱原発も、ストレステストも。

 福井には十四基原発があります。事故直後から幾度となく福井県知事からも国に対し安全性についての質問をしておりますけれども、まともなお答えがありません。高経年化が今回の事故に与えた影響は、その安全性の確認をしたのか、そして浜岡が危険で福井が安全だという根拠は何か。基本的な問いについてまともな答えもせず、日本版ストレステストって一体何なんですか。私を含め国民は、怒りを持って今の政治状況を見ております。

 大臣、今の混乱、そして復旧復興が全く進んでいない現状は総理みずからが招いたもので、国政を混乱させ、本来取り組むべきことに取り組めていないのは菅内閣に大きな責任があると思いますが、大臣の御認識をお伺いいたします。

野田国務大臣 おはようございます。

 目の覚めるような厳しい御質問から始まりましたけれども、御批判は御批判として、これは甘んじて受けとめなければいけないというふうに思います。

 ただ、内閣不信任が採決をされる日の菅総理の代議士会での発言については、退陣の時期等は明言をしませんでしたけれども、いわゆる一定のめどという形でお話をされたことは、私は額面どおりに受けとめております。

 その上で、その後の記者会見の中で、第二次補正、そして特例公債法案、再生エネルギー法案、この三つのことを具体的に申し上げられたということで、さらにその一定のめどの範囲というのが見えてきているのではないかというふうに思います。その間、全力で仕事をしていこう、職責を果たしていこうというのが菅総理の御意思だというふうに思いますので、それを踏まえて、私どもは、内閣の一員として、自分たちの職責を果たしていくということに尽きるかと思います。

 一方で、原発の問題についてお話がございました。

 これは、先週の金曜日の閣議の後の閣僚懇でも、菅総理が御自身で陳謝をされました。自分の指示が不徹底だったこと、おくれたことによって、関係閣僚を含め、あるいは国民の皆様に御迷惑をかけたということを陳謝されていました。今は、ストレステストをやるということでありますけれども、具体的に、いつまでにどういうふうにやるのか、その間の電力は大丈夫なのかということをきちっと説明していかなければいけないだろうというふうに思います。

稲田委員 陳謝をして済む問題じゃないんですよ、一国のリーダーですから。それによって本当に日本の電力がどうなるかわからない、経済に与える影響が、国民の生活に与える影響がはかり知れない。目新しいことをぽんぽん言われて、それで混乱している状況について、私は大変怒りを持って見ております。

 野田大臣、何のために今国会、七十日間延長したんですか。

野田国務大臣 通常国会の会期末は六月二十二日でございましたけれども、その後、第二次補正、これはいわゆる復旧のために万全を期していくための予算を編成し、それを成立させなければいけないということと、引き続き特例公債法案、これは三党合意もございますが、そうした協議を経ながら、何としても一日も早く成立させなければいけないこと等々、関連する重要法案がまだ残っているということで七十日間の会期延長が決まったと承知をしています。

稲田委員 紆余曲折の上に七十日と決まったのは、東日本大震災への対応を切れ目なく行って、復旧復興の予算を速やかに編成し、特例公債法を速やかに成立させるために七十日延長をしたんです。何もできていないじゃないですか。

 復興予算について我が党は、先週の六日、十七兆円の復興予算、復興財源を盛り込んだ具体的な提案をまとめております。ところが、政府はいまだに復興の予算について示されておりません。余りにも遅いと思います。本格的な復旧復興の具体的対策が、震災後四カ月もたってまだ出てこないというのはあり得ません。

 民主党政権でまともな復興ができるのでしょうか。むしろ、民主党政権の政治の混乱が復興をおくらせ、今やるべき最重要課題である復興予算すらつくれないというのが現実だと思いますけれども、大臣、復興対策、そのための予算、財源をどうするか、一体この重要なことについて、いつ具体的なものを出されるんですか。

野田国務大臣 まず、その前の第二次補正予算については、今週末に国会に提出をさせていただきたいというふうに思っております。その上で、いわゆる今度は第三次になりますが、本格的な復興予算については、先月の末に復興構想会議が提言をまとめられました。その提言を具体化していくための基本方針を今月中に取りまとめることになっています。加えて、被災地におけるそれぞれの自治体においての復興計画もだんだん出てまいりました。

 こういうことを勘案しながら、基本方針は七月中です。あわせて、財源をどうするかという議論も並行して議論をさせていただきますので、第三次補正予算の実務的な作業というのはそれが終わった後、八月に入ってからというのがスケジュール感だと思います。御党から御提起があることは承知をしていますが、だから、規模感まで我々の段階では、まだ確たることを申し上げる段階ではございません。

稲田委員 それが遅いというのですよ。

 さて、大臣は、五日の閣議後の会見で、特例公債法の成立に背水の陣で全力を尽くすと決意を示されました。特例公債法を成立させるためにやるべきことは何ですか。

野田国務大臣 五日の記者会見というのは、四月から六月の予算の執行、これは実績がまとまった、それから、七月から九月における各省からの要求が出そろったということで、要は、歳出の許容額が四十八兆の中で、九月末までには四十二兆ほど、建設国債を財源とする事業以外はそれぐらい出てくるだろうというような中で、国民の皆様に不安が出てきている状況の中で、客観的な事実を申し上げたということであります。

 その上で、特例公債はまさに一日も早く成立させなければいけませんけれども、そのために必要な条件は、四月二十九日に、御党の政策責任者、公明党の政策責任者、私どもの民主党の政策責任者でまとめた三党合意、今も子ども手当の協議などが行われておりますけれども、そうした協議が調うということが大前提になるというふうに承知をしています。

稲田委員 ですから、特例公債法が成立する前提にやるべきことは何ですかと聞いているんです。

野田国務大臣 素直に読めば、四月二十九日の三党合意の中で盛り込まれている懸案について協議が調うということでありますし、特に党内での私どもの意見集約もしっかりしながら与野党協議をするということだというふうに思います。

稲田委員 与野党協議じゃないですよ。そこで書いてあるばらまき四Kの見直しなんです。財源なき不道徳なばらまきをやめることが大前提なんです。四Kの見直し、子ども手当、高速道路、農家の戸別補償、高校授業料、これらの見直しを一体いつやられるんですか。

野田国務大臣 ばらまき四Kの見直しという書き方は、三党合意には書いていないというふうに思います。

  子どもに対する手当の制度的なあり方や高速道路料金割引制度をはじめとする歳出の見直し及び法人税減税等を含む平成二十三年度税制改正法案の扱いについて、各党で早急に検討を進める。

  また、平成二十三年度第一次補正予算における財源措置として活用した年金臨時財源については、平成二十三年度第二次補正予算の編成の際にその見直しも含め検討を行う。

  これらを前提として、特例公債を発行可能とするための法案について、各党で、成立に向け真摯に検討を進める。

まさに、今、文字面を追っただけかもしれませんが、これが合意事項だというふうに承知をしています。

稲田委員 それが、背水の陣で特例公債法を成立させようという大臣の意気込みですか。

 野党がこう言っているからといって、大臣も読まれたという十七兆円のこの中間報告ですけれども、そこにはっきりと、「すでに破綻しているマニフェストを撤回し、バラマキ四Kはじめ不要不急の事業を抜本的に見直すべきである。」と書いております。

 政権与党なんですから、自分で、間違っているこの四Kの見直しをさっさとやられたらどうですか。

野田国務大臣 今の十七兆のお話の中に書いてある文章が今読み上げられたことだと思いますが、三党合意については、私が今読み上げたものでございます。

 その上で、私どもは、マニフェストの主要政策を、決して、ばらまきあるいは四Kという言い方はしません。

 ただし、ただしです、三月十一日の大震災の発災によって政策の優先順位は変わってきたというふうに思います。その上で、見直せるものについては見直していくということを今党内で議論させていただいているということでございますし、それを踏まえて与野党協議に臨んでいるということでございます。

稲田委員 財源のない不道徳なばらまきをやめないと、特例公債法なんか成立しませんよ。

 では、六月三十日に政府・与党社会保障改革検討本部が決定した社会保障と税の一体改革についてお伺いをいたしますが、民主党内で大反対があって、大議論の上に押し切ったと聞いておりますが、なぜ反対があったんですか。どういう反対があったんでしょう。

野田国務大臣 一体改革について、基本的に反対があったというふうには認識をしていません。

 経済の好転が前提になる、その好転というのはどういう条件であるかとか、不断の行政改革の努力、無駄排除の努力をしていかなければいけないとか、そういうことをいろいろ、一体改革を進める際に考えなければいけないテーマについて活発な御議論があったというふうには承知をしていますけれども、一体改革をやるべきではないという御議論は決してなかったというふうに思っております。

稲田委員 そんなこと当たり前じゃないですか。そうじゃなくて、消費税増税ということを書くことについて大反対があったというふうに報道で見ておりますよ。ごまかさないでくださいよ。

 そして、この中で、具体的な年次は省かれましたけれども、二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税を一〇%まで引き上げると書かれております。半ばというのはいつでしょうか。二〇一四年、一五年、一六年のいずれかということですか。

野田国務大臣 御指摘のとおり、二〇一〇年代半ばまでに消費税率、国、地方、段階的に一〇%に引き上げるということで、政府・与党の検討本部で成案としてまとまりました。

 この二〇一〇年代半ばについての解釈について、成案決定会合で、与党からは二〇一〇年代半ばについては常識的には二〇一四、二〇一五、二〇一六年度との意思が示されております。これを踏まえて、今後の具体的な制度設計、法制化に向けた検討を進めさせていただきたいというふうに思います。

稲田委員 ということは、二〇一四年までに消費税を一〇%に上げるということもあり得るわけですね。

野田国務大臣 経済の動向を踏まえた判断の中で、二〇一〇年代半ばという幅を持った、ただし、そうはいっても一定の時期が明確になっている、そういう文言になったというふうに思います。ということは、言葉どおりで言えば、二〇一四年から一六年、それぞれ可能性があるというふうに思います。

稲田委員 では、二〇一四年までに一〇%に上げるということもあり得るということですけれども、消費税の引き上げをここに書く前に、大臣、国民に対して言うべきことがあるのではありませんか。

野田国務大臣 国民に言うべきことというのは、これからの社会保障はどうなるんだと多くの国民の皆様が不安に思っていること、それをどうやって我々は改革していくのか、それを支える安定財源は何なのかということは、これはしっかりと丁寧に説明をしていかなければならないというふうに思います。

稲田委員 そうじゃなくて、政権をとったときのマニフェストをそのまま実行するのかどうなのか、これをまず明らかにすべきではないかと思っております。

 ばらまき四K、消費税を増税しない、社会保障の自然増毎年二千二百億の抑制はやらない、後期高齢者医療制度を廃止する、年金一元化などなど、マニフェストでさまざまなお約束をされましたけれども、それをやるのかやらないのか、明らかにすべきではありませんか。

野田国務大臣 三党合意を踏まえた主要事項についての見直しはやっていきますが、もともと、衆議院の任期が、ことしの九月というのがちょうど半ば、折り返し点であります。折り返し点までにマニフェストの総括をしていくということを政調を中心にやるということになっていますので、そういう議論を踏まえた対応をしていくということになると思います。

稲田委員 では、マニフェストは今までどおりおやりになるということですね。

 では、なぜ、消費税を上げないと言ったけれども、政権をとったら財源がなかったんだから消費税を増税するんだということを正直に国民に謝罪し、それがマニフェスト違反であるということを明らかにされないんでしょうか。

 この社会保障と税の一体改革は、民主党が政権をとったあの二〇〇九年の総選挙で戦って、多くの私たちの同志が落選をし、百四十名以上の民主党一年生が誕生して政権交代したばらまきのマニフェスト、特に消費税を増税しないと言ったあのマニフェストに違反しているということを明らかにして、なぜ謝罪されないんでしょうか。

野田国務大臣 マニフェストと消費税を結びつけてお考えになっていますけれども、マニフェストで書いてあることは、国民のために実行しなければいけない、国民の生活が第一ということでまとめた内容であって、それを私どもはばらまきだとは思っていません。

 ただし、さっき申し上げたとおり、大震災が発災をして、政策の優先順位が復旧復興であるという中で、その優先順位を踏まえた対応をしていこうと。

 加えて、四年間任期がある中で、この九月に折り返し点に入りますので、マニフェストについては党の中で総括をしていく。そこでは見直されるものも出てくるかもしれませんが、そういうものを踏まえた対応をするということであります。

 加えて、消費税を具体的に実施する前には国民の信を問うということを、現総理もその前の総理もおっしゃっていますので、そのことによって国民には御説明をしながら対応するというのが私どもの基本的な姿勢であります。

稲田委員 そういうのをごまかしというんですよ。

 マニフェストにあれをしますということを書いていること、いや、何かをするということだけじゃなくて、消費税を増税しないということもお約束、マニフェストの一つですよ。ばらまきの財源として消費税増税は一円も書いていないですよ。マニフェスト違反であるということは公知の事実です。なぜ国民に謝罪しないんでしょうか。そういう態度が私は不誠実だと思っております。

 それでは、年金制度についてお伺いをいたしますけれども、この社会保障・税一体改革の成案の年金について、最低保障七万円、保険料率では一五%どまりなどときれいごとを書かれておりますけれども、この政策を実行するのは、消費税を一〇%に引き上げる中に入っているんですか、入っていないんですか。

野田国務大臣 年金の抜本改革においてどれぐらいの所要額が発生するかについては、まだ確たる数字が出ておりません。

 消費税については、高齢者三経費以外に、プラスして、子育て、いわゆる少子化、こうしたものにいわゆる社会保障四経費として充てていくということになっておりまして、年金については今申し上げたとおり明確に所要額が出ていないという状況であります。

稲田委員 ですから、この一〇%以外に、最低保障年金を七万円にするために、さらに増税をしなければいけないということなんです。ところが、この「新しい年金制度の創設」というふうに書かれておりますけれども、中身がわからないんです。

 平成十九年の参議院選では、小沢代表は、年収六百万円までの人には満額払って、年収千二百万円以上の人には支払わないとおっしゃっていたんです。

 ところが、ことしの四月、民主党の調査会案では、所得制限を倍厳しくしても、つまり報道で言われているように年収七百万円以上には支払わない、二百六十万円までは満額という案を検討しておられるようですけれども、その場合、二・五%程度の増税が必要ということの計算ができているんじゃないんですか。

野田国務大臣 いわゆる最低保障年金、どの段階までもらえるかとか、どこから減っていくかというところの、その制度の設計がないものですから、だから所要額が確定はしていないということであります。

稲田委員 制度の設計もしていないし、試算もしていない。それを、何も決まっていないものを、ここに「新しい年金制度の創設」と書いていいんですか。最低でも七万円とおっしゃって、安倍政権下でねじれを生じさせた平成十九年の参議院選で民主党は勝ったんですよ。いいかげんなことを言わないでほしいと思うんですね。公正に選挙してほしいし、まじめに政治をやってほしいんです。

 最低でも七万円、そう言ったんです。普天間と一緒なんですよ。最低でも県外の普天間と、最低でも七万円の最低保障年金。普天間と同じ、いいかげんなことなんですよ。

 一体だれに払うんですか、七万円を。年収二百六十万円までの人なのか、それとも六百万円までの人なのか、七百万円以上ある人には一円も払わないのか、千二百万円までの人には払うのか、はっきりしてくださいよ。そして、その財源にどれぐらい消費税がかかるか、それを検討してからこの中に書くべきじゃないんですか。いいかげんなんですよ。

野田国務大臣 いや、いいかげんじゃなくて、それについてはこれから引き続き具体的な作業に当たっていくということであって、その一〇%まで引き上げるというのは、国、地方合わせて、機能強化にかかわる費用、高齢化の進行等により増大する費用、基礎年金国庫負担二分の一を実現するために必要な費用、後代にツケ回しをしている機能維持にかかわる費用、消費税率引き上げに伴う社会保障支出等の増加に要する費用、これを賄うということで、一〇%まで段階的に引き上げるということになっています。

稲田委員 それがいいかげんで、普天間と一緒だというんですよ。最低七万円とここで大文字で書いておきながら、所得制限をどこからつけるかも決めていないし、それに幾ら消費税がかかるかも試算していない、そんないいかげんなものをここに書かないでくださいと言いたいんです。

 また、マニフェストでは、後期高齢者医療は廃止すると太い文字で書かれておりましたけれども、一体これはどうなったんですか。

野田国務大臣 引き続き検討しているというふうに思います。

稲田委員 引き続き検討しているって、こんな大文字で書いて、社会保障と税の一体改革なんでしょう、その成案なんでしょう。そこに、最低保障年金についても決まっていない、後期高齢者医療制度についても検討している、ですか。

 私は、一年以上前の五月に、厚労委員会で厚生労働大臣にこの後期高齢者医療制度のことについてお伺いをいたしましたら、後期高齢者医療制度についてのお尋ねでございますけれども、これは廃止するということで、工程表も出させていただいて、来年の通常国会に法案を出させていただく、そして一期四年の政権の中で、新しい制度にそのまま、老健に戻すことなく移行すると、胸を張って答えられているんですよ。

 今国会にめどは立っているんですか、今のお答えで。

野田国務大臣 それはちょっと厚労大臣に聞いていただかないとわかりませんけれども、この任期は四年の間にどうするかということを対応するということだと理解をしています。

稲田委員 何を言っているんですか、あなたは天下の財務大臣ですよ。しかも、社会保障と税の一体改革をまとめているんですよ。天下の財務大臣が、後期高齢者医療制度がどうなるか厚労大臣に聞いてみてください、そんな答えしかできないんだったら、財務大臣をやめたらいかがですか。

 年金も示されていないし、後期高齢者医療制度も示されていない、それでどうして成案と言えるのか。私はごまかしが嫌いなんですよ。できなければできない、間違っていたら間違っていたと言ってほしいんですよ。

 行政事業レビューについても……(発言する者あり)ちょっと静かにしてください。

 行政事業レビューについても、二月の予算委員会で私が大臣に、何を幾らずつ切ったのか、そしてそれが何の財源に使われたのか、明確に資料でこの委員会に提出していただくことを求め、そして大臣は資料を出すとお約束をされて、結局資料は出していただいておりませんけれども、行政事業レビューで一・三兆円の財源を捻出したということはごまかしだということをお認めいただけますか。

野田国務大臣 行政事業レビュー点検結果の概算要求への反映額約一・三兆円については、各府省が算出した行政事業レビューの反映額を、行政刷新会議事務局で一定のルールのもとで集計の上、公表されたものと承知をしています。ということで、行政刷新会議事務局でその中の集計の資料は持っているというふうに思います。

稲田委員 そういうことを言っているんじゃなくて、何を幾らずつ切って、それが何の財源に使われたのかを資料で出してくださいと言いましたら、財源に、何に使ったかという資料は出せないとおっしゃったんです。結局、この行政事業レビュー、一・三兆円が財源として出たということはごまかしですねという質問なんです。

野田国務大臣 いや、財源でひねり出したということは、要求段階からの中で、まさにその反映額がどれだけかということで、一・三という数字は出てくると思うんです、各府省別に。

 ただ、そこで集まった財源を何に使ったかというのは、これはお金に色がついていないので、その使途まではっきりするということはできないという意味でお答えがあったんだと思います。

稲田委員 予算委員会でも質問いたしましたけれども、国ごと仕分け、行政事業レビューも含めたプロセス全体での効果ということで三兆円と足し上げられておりますけれども、この中に行政事業レビューの一・三兆円を含めるのはごまかしじゃないんですかということを質問しているんです。

野田国務大臣 たしか歳出削減額が三千数百億、そして鉄運機構の剰余金の国庫納付等で一・数兆というのがあった上で、加えて行政事業レビューの一・三兆を事業仕分けの成果として行政刷新事務局はまとめております。

 それは、行政刷新会議そのものが事業仕分けはやっていなくても、同じ手法をもって各省がまさに行政事業レビューをやったということで計算を合わせているというふうに承知をしています。

稲田委員 先日、資料が出ないので、予算委員会の理事を通じて資料要求をいたしましたが、担当者が説明に来てくれました。

 行政レビューについて説明に行ってこいと言われたそうですけれども、そのときにいただいたペーパーによれば、行政事業レビューというのは、各府省みずからが自律的に、概算要求前の段階において、原則すべての事業について、予算が最終的にどこに渡り、何に使われたのかといった実態を把握し、これを明らかにした上で、事業仕分けの手法も用いながら事業の内容や効果の点検を行い、その結果を予算の概算要求や執行に反映させる取り組みということですけれども、こういうことは政権交代前まではやってこなかったことですか。

野田国務大臣 そういう試みはなかったというふうに思います。

稲田委員 では、概算要求があった後に財務省の査定が行われますけれども、そのときすべての事業について予算の支出先と使途といった実態を把握し、事業の内容や効果の点検を行い、その結果を査定して不要な予算カットはするという取り組みは、これまでやってきたことではありませんか。

野田国務大臣 まさに予算の査定という形で、効果であるとか無駄があるかどうか、そういうことはきっちりと財務省としてはやってきているというふうに思います。

稲田委員 そうしますと、各省では政権交代する以前から、ゼロベースで、すべて根っこから洗い直すということで予算を毎年見直してきているんです。行政事業レビューで何か真新しいことをやり始めたとか、新たな財源を見つけたということではないんじゃないんですかということを申し上げたいんです。

野田国務大臣 財務省の査定のほかに、各省がまさに要求を出す段階で、これまで御指摘いただいたこと、事業仕分けで触れられたこと等々を参考にしながら、横ぐしを通す形で、各省のやっている事業を見直しをしながら予算の要求をするということはこれまでやっていなかったことであって、それはこれからも引き続きやっていきたいというふうに思います。

稲田委員 ゼロベースで見直すということは、我が党の政権下でもやってきたことです。

 行政事業レビューなどで一・三兆円捻出したと説明をしておられますけれども、結局、予算を削ったとは言えませんね。

野田国務大臣 いや、要求しようとしたところで削って、それを反映したということであります。

稲田委員 でも、それで新たな財源を出したんじゃなくて、一・三兆円については、ほかのものに使っていて、ほとんど看板のかけかえをしているんですよ。それを、あなたも蓮舫大臣も、あたかも予算を削減したように説明しているところがごまかしだと言っているんですよ。

野田国務大臣 まさに、看板のかけかえというお話がありましたけれども、組み替えをしながら、本当に必要なところにお金を充てていくという作業を一生懸命やっているということだと思います。

稲田委員 ですから、そんなことは今までもやっているんですよ。

 今言ったようなことが新たな歳出削減で、しかも財源を生み出したというのであれば、毎年の予算査定で当然根っこから見直しをしていて、レビューして、見直して削った分だと言い出したら、九十三兆円の予算、全部一たん削ったということで、九十三兆円も全部、行政事業レビューで削ったということになるじゃないですか。そんなごまかしの、つじつま合わせの、虚偽の政治をやめてくださいということを言っているんですよ。

野田国務大臣 決してごまかしではないと思っています。行政事業レビューを含めて、あるいは事業仕分けを含めて、これからも不断の努力でお金の使い方については精査をしていきたいというふうに思います。

稲田委員 あくまでも認められませんけれども、三千五百億、一兆三千九百億円、これは概算要求後の見直しと、そして行政事業レビューで見直して、ほかのものにつけたものをここで一緒に足し合わせるということがごまかしだということを言っているんですよ。そうなんですよ。それについて認められないので、私はもうこれ以上は聞きませんけれども、こういったことをやること自体がごまかしなんですよ。

 一・三兆円、これは違うものであって、現実には財源として出てきていないんです。そのことを私は事務方にも確認をいたしました。そうしたら、だから、「機械的に足し合わせたものである。」という注書きを書いているんですという説明ですよ。苦しい説明ですよ。こんな苦しい説明を事務方にやらせていること自体がごまかしだし、私はそんな誤った政治主導はやめるべきだということを申し上げたいと思います。

 大臣、九百兆円もの借金をつくったのは我が自民党政権下のことです。原子力政策を推進してきたのも自民党政権です。でも、少なくとも、私たちは、その現実から逃げていないし、正面から取り組んできたんです。小泉政権下で……(発言する者あり)委員長、ちょっと静かにさせていただけますか。

 小泉政権下で、社会保障の自然増を二千二百億円抑制する、公共事業のカットなど歳出削減にも取り組んで、消費税も一〇%と明記してきました。少なくとも、うそやごまかしはやってきませんでした。

 確かに、国民におもねる政策をしてきたことは反省もしなければならないし、もっと早く消費税も上げなきゃいけなかったし、社会保障だって身の丈に合ったものにしていかなきゃいけなかったと私は反省をしております。しかし、うそやごまかしは、また国民に幻想を抱かせるようなことは、自民党政権下ではやってこなかったんです。

 大臣、私は、まじめに、真剣に政治をしてもらいたいんです。

 まず、二〇〇九年のマニフェストでおっしゃっていた、予算を組み替えて、一割、二割、二十兆、四十兆、すぐに財源が出て、十六・八兆円の子ども手当を含むばらまきの政策ができる、そして消費税は上げなくていい、社会保障の自然増二千二百億円は抑制しなくていい、後期高齢者医療制度は廃止する、最低保障年金は月額七万円、普天間は最低でも県外。これらのできもしないでたらめをまず謝罪してもらいたいんですよ。そして、マニフェストを全面改定してもらいたい。

 その上で、消費税の増税のお願いを国民にして、社会保障も削るしかないんだ、そうしないとこの国の財政はもちませんということを私は国民に正直に訴えるべきだと思うんですけれども、大臣のうそのない本当のお考えをお伺いいたしたいと思います。

野田国務大臣 前段の部分は全く共感します。財政あるいはエネルギー政策について、政権与党時代の総括と反省を踏まえた御発言だと思います。

 私どもも、自民党がこんな借金をつくったからとか、原発を推進したからという言い方はしない方がいいと思っていまして、政権与党である以上、現状は苦しいけれども、それに対して現実的対処をするというのが我々の責任だというふうに思います。ということを、お互いに共同で痛みを分かち合いながら、いかに政治を前進させるかという意味でも、問題意識は共有できるかと思います。

 ただし、マニフェストの事項と先ほど来ずっと消費税の議論とを絡めておっしゃいますけれども、マニフェストの中で確かに反省すべき点は、財源手当てのところの見通しが甘かった部分はあると思います。それを踏まえた対応をしなきゃいけないと同時に、加えて、震災後に政策優先順位がやはり変わってくるという中で、今、我々は対応しようということでございます。

 その上で、消費税については、もちろん、さまざまな無駄を削ったりとか経済の動向を勘案したりとか、大事な要素はいっぱいあります。だけれども、委員もおっしゃったとおり、これはもう避けて通れないわけであって、社会保障を持続可能なものにするために消費税を充てていくんだという一体改革の説明は、きちんと国民の皆様に丁寧にしていかなければいけないというふうに思います。

稲田委員 大臣、民主党が政権をとられたあのマニフェストで、予算を組み替えれば一割、二割、二十兆、四十兆、すぐ出るんだ、選挙の後で、初代の財務大臣もテレビで何回もおっしゃいました。そして、今おたくの大臣になられている与謝野さんは、その財源について、犯罪に近いとまで批判をされたんですよ。そういうマニフェストのうそについて、まず私は国民に謝罪をされるべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

野田国務大臣 重ねて申し上げますけれども、まさに二十兆、四十兆とまで言ったかちょっと知りませんけれども、財源の手当てが、ワンショットのお金を含めて、そういうことができるようなお話をした形跡はあったとは思います。

 ただし、マニフェストについては、先ほど来ばらまきというお話がありますが、歳出削減とか税制改正とか、安定財源を確保しながら三・六兆分、これまでやってまいりました。これからも姿勢としては基本的には同じ姿勢でやっていきたいというふうに思います。

稲田委員 私は、もう少し真摯になって、謙虚になってもらいたいと思います。三・六兆円出したとおっしゃいますけれども、平成二十三年度で十二・六兆円出す、そういう工程表だったじゃないですか。できないじゃないですか。二十兆、四十兆なんて財源はどこからも出てこないんですよ。だから、政権をとったら、財源はないんだから、だから、あのマニフェストは間違っていたという謝罪をしていただいて、その上で消費税の増税を私は国民におっしゃるべきだと思いますよ。

 次に進みます。

 金融デリバティブ取引についてお伺いをいたします。

 今、為替デリバティブ取引の被害が社会問題化しております。中でも、通貨オプション取引、クーポンスワップ取引という金融デリバティブ取引で、優良企業であった中小企業があっという間に、わずか二年ほどの間に倒産の危機にあります。

 中小企業に為替デリバティブを勧めたのは信用のある大手銀行で、中小企業は中身もよくわからないまま取引をする。中には、為替リスクヘッジの全く必要のない、すなわち輸入を直接行っていない中小企業が、大手企業から勧められるままに危険な取引に入り、巨額の損失をこうむるケースが出てきております。

 その取引に特徴的なことを列挙いたしますと、まず、優良の中小企業が多い。そして、最初に魅力的な利益が得られる商品設計になっている。三番目に、契約期間が五年から十年と長く、途中解約ができず、多額の解約金を支払わせることになっている。また、その解約金の計算の仕方がわからず、不測の損害をこうむる。複数の銀行と取引するケースが多い。レシオ、ギャップレート、ノックアウトという特約がついていて、損害が巨額になる。銀行は損をしない、もしくは反対取引でリスクをとらない仕組みになっている。ゼロコスト取引になっているため、中小企業は一体幾らでドルを買う権利を買ったのか、また幾らでドルを売る権利を売ったのかがわからず、危険な状態になっている。

 そもそも、こういう重大な結果をもたらしている金融商品自体に問題がなかったのかということも検証する必要があると思うのですけれども、幾つか質問をいたします。

 まず、平成二十二年十一月二十二日の参議院予算委員会における西田参議院議員の質問を受けて、金融庁では、銀行による、特に中小企業に対するデリバティブ取引について調査を行っていると思いますけれども、現在の調査の状況と、具体的に問題になるような取引が発見されたのでしょうか。発見されている場合、どのような場合なのか、お答えください。

自見国務大臣 稲田委員にお答えをさせていただきます。

 調査をしたから調査結果いかに、こういう御質問でございますが、調査の結果の概要を申し上げますと、平成十六年度以降、主に中小企業でございますが、六万を超える契約が締結されていました。平成二十二年九月までに一万九千社に約四万の契約が残存しており、その八割が平成十九年度以前に締結された契約であります。

 また、銀行に対する苦情は、二十二年の一月以降、全体約一万九千社のうち三百社から寄せられ、リーマン・ショックがございましたが、リーマン・ショックの以前の十八年、十九年度の契約分が苦情発生件数の六四%を占めており、この時期に締結された契約についての苦情発生度合いが高い一方、二十二年四月の監督指針改定以降の契約分では、一件だけ苦情が来ておりますけれども、苦情はほとんど発生していないことが判明いたしました。

 当庁といたしましては、金融機関において適切な説明体制や販売体制がとられているかどうかを引き続き注視してまいりたいというふうに思っております。

稲田委員 銀行が中小企業と取引した為替デリバティブ商品について、中小企業にどれぐらいの含み損を生じさせているか、各銀行に報告させて集計しているかどうかについてお伺いをいたします。

畑中政府参考人 お答えを申し上げます。

 為替デリバティブ契約の損益についてのお尋ねでございますが、数字をお答え申し上げます前に、一定の前提をお話しいたしますと、この契約は、一定期間内の為替変動をヘッジするための取引でございますので、その顧客への影響につきましては、ある時点での含み損益のみに着目するのではなくて、契約期間全体を通じた損益を通算する必要がございます。

 こうした考え方に基づきまして、主要行等が中小企業に対して販売いたしました契約のうち集計可能なもの、カバーとしては主要行等の残存契約の九割弱相当、二万五千契約を検証し、合算をいたしましたところ、顧客企業の損益状況は、契約時から通算をいたしますと、平均では一契約当たり約六百万円の損失という調査結果となっているところでございます。

稲田委員 苦情の有無だけではなくて、そもそも、当該デリバティブ商品自体が、当初、半年ぐらいは、十中八九、契約者がドルをスポットレートよりも安く買えて得をしたような気分になるけれども、取引相手に大きなリスクを負わせる商品なのではないかということが指摘をされておりますけれども、商品の内容に踏み込んだ検査や検討まで行うべきだと思いますが、そのような検討を行っておられるのでしょうか。

細溝政府参考人 お答えを申し上げます。

 金融機関が販売します商品につきまして、特に法令遵守等の観点からのチェックということでございますが、金融機関におきまして適切なリーガルチェック等を実施する態勢が整備されているか、これはあくまでも態勢が整備されているかということを検査では検証しております。特に、複雑なスキームの取引、あるいはその他法的リスクが高いと判断をされる取引については、特に慎重な検討をとる態勢となっているかということを検証することになっております。

稲田委員 その検証結果、為替デリバティブ取引商品について、これは問題がないという結果になったんですか。

細溝政府参考人 恐縮でございますが、個別の検査の結果につきましては、御答弁を差し控えたいと思います。

 ただ、一般論として申し上げますと、検査の段階で、法的に問題がある、あるいは不適切であるというふうな問題点を把握しますと、検査において検査結果で指摘をするということとなっております。

 以上でございます。

稲田委員 一般的なお答えしかできないということなんですけれども、一般的に見て、この為替デリバティブ取引、これの危険性についてどういう認識を金融庁は持っていらっしゃるんでしょうか。

細溝政府参考人 金融商品にはそれぞれ、それぞれの性質に見合ったリスクというものがございます。

 次に、金融機関がリスク商品を販売するに際して、顧客保護の観点から、どういうことをやっているかというのをチェックしているわけでございますが、例えば、元本割れ等のリスクの明示、あるいは顧客の属性に応じた説明等が適切かつ十分に行われる態勢を整備しているかといったことを検証しております。

 特に、御指摘のデリバティブ取引につきましては、取引内容やリスクについて、顧客の知識、経験に対応して図面や例示等を用いた平易な説明をやる態勢がつくられているか、ないしは書面を交付しての説明をする態勢がつくられているか、あるいは中途解約時に生じる解約精算金等の計算方法や試算額の説明を行う態勢を整備しているかといったところを中心に検証しているところでございます。

稲田委員 監督指針では最悪のシナリオを想定した損失や解約精算金の説明も求めていますが、そもそも検査を行う検査官が、当該デリバティブ取引において最悪の場合とはどのような場合なのか、またその場合にどうなるかわからなければ、銀行などが適切に説明をしているかどうかわからないと思うんですけれども、デリバティブ取引の設計や分析に精通した方を検査官として配置しているのかどうか、そしてどのような検査をしているのかについてお伺いをいたします。

細溝政府参考人 金融検査を行う上に、いろいろな専門的ないしは先端的な知識が必要でございます。部内の職員等につきましては研修等を通じて人材を育成しておりますが、それに加えまして、民間のノウハウを積極的に活用したいということで、金融実務経験者等、例えば弁護士でありますとか、民間金融機関等においてデリバティブ取引の経験がある者、これを金融庁の検査局の職員として積極的に採用して活用しているところでございます。

稲田委員 自見大臣にお伺いをいたしますが、銀行が販売した為替デリバティブ商品の中には、専門家から見ると、ドル実需のある、円安・ドル高のヘッジニーズのある中小企業にとってもヘッジになるか疑わざるを得ないような、円高・ドル安時のリスクを大きくするような商品も少なくないと聞いております。

 金融デリバティブ取引が法律上許されているといっても、社会の公器として信用され保護もされている銀行にそのような、言っていいかどうかわかりませんが、あこぎとも言えるような取引まで許すというのは、やはりやり過ぎではないかと思うのです。

 商品の内容にも踏み込んで、取引先のリスクが大き過ぎる商品についてはより厳しく監督するべきだと思いますけれども、大臣の御見解をお願いいたします。

自見国務大臣 稲田議員にお答えをさせていただきます。

 多様化する顧客ニーズに、リスクの管理それから収益力の向上等の観点から、デリバティブ商品自体は必要な金融商品と考えますが、その販売に当たっては利用者保護に十分配慮し、金融商品取引法を遵守する必要があります。

 また、同法案を踏まえて、主要行等向けの総合的な監督指針等において、例えば先生も今御質問でありましたが、最悪のシナリオを想定した損失の額を説明しているかといった利用者保護の観点からの着眼点を設けているところでございます。

 さらに、この為替デリバティブ商品に関する苦情の増加等を踏まえ、昨年四月に監督指針を改正し、為替や金利等不確実な事項について断定的判断に基づいて説明をしないこと、それから顧客のニーズに応じたデリバティブ商品の有効性の確認などの着眼点を追加したが、改正後に販売されたデリバティブ商品に対する苦情は減少しており、一定の効果があったものと考えております。

 当庁としては、金融商品取引法を初めとする現行法令等の遵守状況を適切に監督するとともに、昨年四月に改正した同監督指針の内容を広く国民に周知してまいりたいというふうに思っております。

稲田委員 ぜひ商品の内容にも踏み込んで検討をいただきたいと思います。

 六月二十九日の日経新聞では、アメリカでは金融取引の監視を強化することにして、金融機関に識別番号をつけた上で取引内容の報告を義務づける規制を導入するという方針だそうですが、日本でもこのような規制を検討すべきではありませんか。

畑中政府参考人 今御指摘ございました、金融機関に識別番号を付して個々の金融取引をより精緻にトレースしていく、そういう議論が今国際的に各方面から提案をされておりまして、これは私どもも重要な問題指摘だというふうに受けとめております。

 既に、国際的な金融規制を議論しております場でも、そういった提案について具体的に検討しておりますので、そういった議論にはこれからも積極的に参画をしつつ、今御指摘ございました為替デリバティブを初めとして、顧客保護に大きな影響を及ぼすような取引についてはさらにしっかりとしたチェック体制を構築してまいりたいと考えております。

稲田委員 そもそも、デリバティブ取引という形を整えればどんな取引でも、賭博性の高い取引でも銀行の業務として認められるというのはおかしいのではないかと思います。

 日銀の平成十一年十一月二十九日付金融法委員会で、「例えば、銀行が従事できる「金利先渡取引」の形態をとりながら、経済的な合理性・必然性の薄い、投機性の高い取引を行った場合には、なお賭博罪としての違法性が阻却されない、ということも理論上はありうるものと考えられる。」と指摘をされております。

 実際、為替デリバティブだけでなく、地方公共団体や学校法人が仕組み債や金銭信託に投資をし、多額の損害を出しているという問題があります。例えば、六月二十九日に日経新聞で報道された、兵庫県朝来市が仕組み債で十二億の含み損を抱え、ADRの申請をしたとあります。

 金融デリバティブ商品の商品自体や販売方法が経済的合理性や必然性に疑問を感じるものもあり、大いに問題があると思いますので、引き続き、この点については追及をしていきたいと思います。

 さて、野田大臣。野田大臣は、もし仮に民主党政権が続けば、総理に最も近い方だと私は認識をいたしております。

 それで、最後に二点ほどお伺いをしたいんですが、大臣は、外国人に地方参政権を付与することについてどのような意見をお持ちでしょうか。

野田国務大臣 私は反対です。

稲田委員 立派です。私も反対なんですけれども。

 済みません、野田大臣、なぜ反対か、簡潔にお答えください。

野田国務大臣 憲法上もいろいろ疑義があると思いますし、加えて、いわゆる国政、地方、そのうちの被選挙権、選挙権のうちの四分の一を付与することにどういう意義があるかわかりません。

稲田委員 外国人に地方参政権を与えるということは、日本が主権国家であるということをやめることであるし、また、憲法十五条の、公務員選定、罷免は国民固有の権利であるという憲法上の規定にも明確に違反をしている、違憲な政策ですので、大臣、総理になられたら絶対にそれはやられないということで、きょうは確認をいたしました。

 では、もう一問。

 大臣は、集団的自衛権の行使を認めるべきだとお考えですか。

野田国務大臣 個人的にはそう思っています。

稲田委員 いや、個人的にというか、総理になられたら集団的自衛権の行使は認めると明言をいただきたいと思います。

 今、政府の見解は、集団的自衛権は持っているけれども行使できないという、ばかげた解釈をいたしております。持っているものなら行使できなければならないし、日本が主権国家である以上、自衛権があり、集団的自衛権は自然権として持っているものだからであります。

 では、最後に一問。

 野田大臣は、総理になられたら靖国神社に参拝されますか。(発言する者あり)

野田国務大臣 なっていません、私、総理ではありませんので、そういう前提に立った御質疑にはお答えすることはできませんが、個人的には、私はいわゆる私的には何度も行ったことがありますが、政府の立場でそれをやることがいいかどうかについては、私は慎重な立場にならざるを得ないというふうに思います。

稲田委員 最後の質問だけ、がっかりいたしました。

 仮定であろうとなかろうと、自分が総理になったら靖国神社に参拝するかどうか、政治家だったらこれは明確に答えなければならない問題だと私は思っております。

 また、たとえいかなる歴史観に立とうとも、自分の国のために命をささげた人に対して感謝と敬意を表することができない国のモラルも安全保障もないということを申し上げて、私の質問を終わります。

 きょうはどうもありがとうございました。

石田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 社会保障・税一体改革について質問をしたいと思います。

 政府・与党は、六月三十日に社会保障・税一体改革成案を決めました。消費税をめぐりましていろいろな激論があったと伝わっておりますが、消費税についてはどのような結果になったか、これを説明していただきたいと思います。

野田国務大臣 社会保障・税一体改革の成案において、重立ったこと四点、消費税の扱いについて申し上げたいと思います。

 第一は、社会保障給付に要する公費負担の費用は、消費税収を主要な財源として確保するということ。二つ目は、消費税収については、このうち国分が現在、予算総則上、高齢者三経費に充当されておりますけれども、今後は、高齢者三経費を基本としつつ、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に対処するための施策に要する費用に充当する分野を拡充するということ。三点目は、区分経理を徹底するなど、消費税収の使途を明確化すること。四点目は、二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税率、国、地方を一〇%まで引き上げる。この四点が主たる内容だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 我々の立場を言いますと、消費税の増税には反対でありまして、財源はほかにあるというふうに考えております。

 そこで、これは政府・与党の現段階における基本的な考え方、これを野党に協議を呼びかけるというふうに聞いておりますけれども、そういう考え方なんでしょうか。

野田国務大臣 これは六月三十日の、いわゆる社会保障・税一体改革成案について、政府・与党社会保障改革検討本部において成案として決定をさせていただきました。この成案をもって各党にお呼びかけをさせていただき、協議を経て、その上で具体的な制度設計の話もさせていただきたいというふうに考えております。

佐々木(憲)委員 そうしますと、政府・与党の基本的な共通の考え方であると。

 当然、与党には国民新党も入っておりますので、自見大臣にお聞きしますけれども、国民新党は二〇〇九年政権政策で、「消費税は上げず、全額、社会保障のための目的税とします。」こう書いていました。消費税は上げない、これが前回の総選挙の政策だったわけです。

 国民新党としては、今回の社会保障・税一体改革の議論にどのような形で参加をされたのか、その中でどのような主張をされたのか、明らかにしていただきたい。

自見国務大臣 佐々木憲昭議員にお答えをいたします。

 平成二十三年の六月三十日に、政府・与党社会保障検討本部において、今御指摘のように、社会保障・税一体改革成案が本部決定され、翌日、七月一日に閣議報告されたところでございます。

 この政府・与党社会保障改革検討会議には、政党のことでございますが、国民新党からは下地幹郎幹事長、亀井亜紀子政調会長が出席をいたしておりまして、そして、今、統一会派を組んでおります新党日本の代表の田中康夫さんも出席をさせていただいております。

 今、佐々木議員のお答えのとおり、平成二十一年の政権交代をした選挙でございますが、八月三十日、選挙でございましたが、その前の八月十数日、もう本当に公示の一週間ぐらい前に、実は民主党と社民党と国民新党、当時、私は国民新党の政調会長でございましたが、大変苦労をして、三党の共通項目、衆議院選挙に臨む三党の共通公約を出させていただきまして、その中にも、もし選挙において勝たせていただいて、政権を担当させていただくことになっても、消費税の税率は、引き上げは行わないということを公約して、選挙をさせていただいたわけでございます。

 また、おかげさまで選挙を勝たせていただいた、いわゆる九月の三党合意でも、これは、今回の選挙において負託された政権担当期間中においては消費税の税率引き上げは行わないということ等を、国民新党初め民主党、社民党と合意をして、それぞれの機関決定をして、三党首が署名をしたわけでございます。

 そういったことを踏まえて、国民新党としては、閣議決定することは賛成できないという旨をはっきり政府・与党社会保障改革検討本部で主張させていただいて、結果として、連立内閣でございますから、閣議報告ということになったものだというふうに私は認識しております。

 しかしながら、消費税の引き上げについて論議をすること自体は反対しているものではなく、今回の成案については、政府・与党が精力的な論議の結果として一つの案が報告されたという位置づけであるというふうには認識をいたしております。

佐々木(憲)委員 賛成できない、こういう態度をとっていたと。ということは、閣議決定しないというのは、自見さんが閣内に入っているから閣議決定をしない、こういうことだったんでしょうか。

自見国務大臣 政府・与党社会保障改革検討本部においても、現場においても、我が党の幹事長、政調会長が反対をいたしましたし、また、亀井静香さんが今党首でございますから、党首会談でもそこをきちっと菅党首と話をされたということは仄聞をいたしております。

佐々木(憲)委員 野田大臣にお聞きしますけれども、これは政府・与党の成案である、つまり共通の考え方である、そういうふうにおっしゃいましたけれども、そうではないんですね。

野田国務大臣 政府・与党社会保障検討本部で、国民新党の代表の幹事長や政調会長から御意見がございました。その中で、この案を成案としてこの場所でまとめるということと、それをもって各党に協議を呼びかけることについての御理解はいただきました。

 したがって、先ほど自見大臣がおっしゃったとおり、閣議決定ではございませんが、閣議で報告をさせていただき、その際も、各党各会派に改革のための協議を提案し、参加を呼びかけることについては了解を得ているということでございます。

佐々木(憲)委員 そうすると、これは政府の考え方ではない、現段階で。つまり、成案は得たけれども、成案を得てこれから各党の協議に入る、各党といいますか、野党に対して呼びかける。しかし、閣議決定はしない。つまり、政府の成案ではない、こういう理解ですね、よろしいですね。

野田国務大臣 政府・与党で取りまとめた成案であります。各党に呼びかけた上で、そして協議が調ったときに閣議決定というプロセスをとりますけれども、認識としては、政府・与党の社会保障検討本部において決定した成案という位置づけになっています。

佐々木(憲)委員 国民新党は、消費税増税には反対であるという姿勢は、公約でもあり、かつ、今回もそれを貫かれたわけであります。閣議決定をされるときには当然その閣議決定に反対をする、こういうことにならざるを得ないと思うんですが、自見大臣はどうなんでしょう。

自見国務大臣 佐々木先生、お互いに政治家でございますから、やはり我が党は我が党で、掲げた公約と平成二十一年の九月に三党合意したということはきちっと尊重したいと思っております。

 ただし、一応、官房長官がこれを成案とするというふうに政府・与党社会保障改革検討本部では宣言されたらしいんですけれども、閣議ではこれはあくまで報告にとどめておくということでございまして、私も、閣僚懇で、国民新党、あるいは、政治というのはやはりいつも変わっていくものでございますから、変革していくものですから、私もそれがわからないことはないんです。まあ、しかし、きちっと立場は立場である、国民は国民に公約したことがございますから、そういった意味で、わざわざ閣議報告事項にしたということ、きちっと国民新党の主張を御理解していただいて御配慮いただいたことをありがたいということは、私は政治家としてきちっと発言はしておきました。

佐々木(憲)委員 この委員会でも、私は、亀井代表が金融担当大臣のときにこの問題を質問しまして、非常に、民主党とは全く違う態度をとられたなというふうに思っております。亀井さんは、消費税を上げること自体に反対であると。しかし、民主党の大臣は、この期間、つまり四年間は上げない、政権担当期間は上げない、その後は上げる可能性は十分ある、こういう話をされていました。

 そういう意味で、国民新党の態度は私は非常に納得できますし、しっかり貫いていただきたいというふうに思うんです。私どもも消費税については上げることには反対でありまして、これは野党の中でも随分立場は、それぞれ違うと思います。政党によって違うわけですから、それは当然、政党の立場を貫くというのが基本だと思っております。

 さて、そこで次に、二〇一〇年代半ば、先ほども少し議論がありましたけれども、これは、二〇一四年、二〇一五年、二〇一六年、この三年間を含む期間、これを二〇一〇年代半ばというふうに理解をいたしました、先ほどの答弁を聞いておりまして。そうすると、早ければ二〇一四年までに一〇%に引き上げる、遅くとも一六年までに一〇%に引き上げる、それまでに段階的に一〇%にしていく、こういうわけであります。

 そうすると、どんなやり方になるのか。例えば二〇一四年までに一〇%にするというなら、二〇一三年に二%、一四年に三%上げる、合わせて一〇%、そういうふうになることも考えられますし、一五年までに一〇%にするというなら、一三年に一%、一四年二%、一五年二%、こんなやり方もある。

 いろいろなやり方、組み合わせがあると思うんですが、野田大臣はどのような引き上げ方を考えているのか。段階的引き上げを実施するその判断基準、これはどういうものなのか、お聞かせいただきたいと思います。

野田国務大臣 引き上げの幅とか時期とかの具体的なお尋ねであります。

 この成案においては、「平成二十一年度税制改正法附則百四条に示された道筋に従って平成二十三年度中に必要な法制上の措置を講じる。」とされておりますので、このスケジュール感の中で、今御指摘のあった引き上げの幅であるとか時期について、その具体的な検討を今後させていただくということでございますので、現時点で何かのイメージを持っているわけではございません。

 ただし、この引き上げの際には、今回の成案の中にも書いてあるとおり、経済の好転とか、いろいろ条件等がございます。そういうことを勘案しながらの具体的な検討になるというふうに思います。

佐々木(憲)委員 その影響ですけれども、東日本大震災の被災地の方々にもこの消費税はかかってくるわけであります。この地域は、農林水産業、零細企業も大変多い、その担い手は高齢者が多い、そういう地域でございます。

 被災地域を調べてみますと、被災三県の沿岸地域で、市町村ですね、六十歳以上の方々が占める比率が非常に高いんです。岩手で三五・二%が六十歳以上です。宮城県では二五・八%、福島県で二八・三%。市町村別に見ますと、一番高齢者が多いのは岩泉町で四一%、釜石が三九%、陸前高田が三八%。人口の大体四割が六十歳以上なんです。これは大変高齢化が進んでいるんですね。

 そういう地域でこれから復興を図っていこうというときに、零細企業、高齢者、農林漁業の皆さんに消費税を負担させる。今でも大変なのに、一〇%の消費税、こうなりますと大変な負担になる。消費税の引き上げというのは、そういう意味では復興の妨げになると我々は思いますが、大臣はどうお考えでしょうか。

野田国務大臣 この成案の中で、税制抜本改革は経済の好転を条件として実施することということになっていますけれども、経済の好転、この中身でありますが、「震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を見極め、総合的に判断する」、そういう意味合いだというふうに理解をしています。

 政府としては、大震災がもたらした制約を順次確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう全力で取り組んでいくというふうに今決意をしているところでありますけれども、そうした総力を挙げて復興対策に取り組むとともに、一体改革、この国民の安心確保というその両立を図っていく、両方をしっかりと対応するということになると思います。

佐々木(憲)委員 被災地のことを考えてと言うけれども、もう時期ははっきり決めたわけですよね。二〇一〇年代半ばというふうに決めたわけですから、それまでには必ず一〇%にするわけですよ。

 被災地を除くなんていう話は成案の中にはありませんし、そういう方々にすべて負担を負わせるということになるわけで、被災地にとって、復興にとってこれはマイナスに作用する、これはお認めになりますか。

野田国務大臣 被災地に例えば消費税を課税しないということは、技術的にはちょっと難しいと思うんですね。だとすると、やはりオール・ジャパン、全国一律に消費税率を上げるときは上げるという対応になると思います。でも、そのお金は社会保障給付にかかわることであって、被災地の皆さんも含めて社会保障を充実強化させていくということで、その恩恵は一緒に出てくるということでございます。

 あわせて、被災地の対策は、そのほかの復興対策も含めて総合的に判断をしていかなければいけないものと思います。

佐々木(憲)委員 被災地はゼロからの出発ができない、マイナスからの出発という状況にありながら一〇%の税率を押しつけられる、これはもう明らかにマイナスなんですよ。そういう点を無視してこの増税を決めるというのは、私は到底認められない。

 政府の家計調査を見ましても、この十年間、平均夫婦高齢者世帯の年金給付が大幅に減っておりまして、年金の収入が減ったために年に二十三万円の減少であります。その反面、保健医療、介護保険、所得税、住民税、この負担は大きくふえておりまして、十年間で年間十万円負担がふえているんです。したがって、貯蓄を取り崩して生活しているけれども、貯蓄も底をつくような状態になっている。

 被災地にこれ以上消費税を増税したら生活できない、悲鳴が上がるというのが実態だと思うんです。この点は、財務大臣、よく認識をしていただきたいと思います。

 次に、附則百四条の問題です。

 二〇一二年三月末まで、つまり来年の三月までに消費税増税法案を成立させる、こういうことが規定されております。これはそのまま堅持すると。

 そうすると、私は、この規定自体は民主党の政策からいっても公約と矛盾すると思っておりまして、最初にこの問題を質問したとき、藤井裕久財務大臣は、これは修正するのが筋である、二〇一二年三月末というのは、これは公約と矛盾するので修正するのが筋だ、こういう答弁をされていたんです。ところが、その後、いや、それはもう修正の必要がない、こういうことで、来年三月までには消費税増税法案を通すんだ、このとおりやるんだというのが、これは、野田財務大臣はそういう立場でやっておられる。

 これは政権の中で大変矛盾した、あるいは方針の転換が行われたというふうに我々は見ておりますけれども、悪い方向に変わったと思っておりますけれども、そうなると、この秋から行われる税調の議論、そこで結論を得て、来年三月までに消費税増税法案を国会で通す、こういうことになると思うんですが、そういう理解でよろしいですか。

野田国務大臣 佐々木委員御指摘のとおり、附則百四条に基づいて、今年度末までに法案を提出し、その可決を目指すということでございますので、スケジュール感は御指摘のとおりでございます。

佐々木(憲)委員 そうなりますと、この法案を通すということになると、内閣が消費税の増税に踏み出すということになるわけです。

 つまり、民主党は今までどういう態度をとっていたかというと、消費税率を引き上げる場合には、総選挙で国民の審判を受けるんだ、国民に信を問うんだというのを繰り返し言ってこられたんですね。それをやらないで、政権期間内に、四年間のこの政権期間の中で、増税を、法案を通す、これは余りにも明確な公約違反ということになるんじゃありませんか。

野田国務大臣 附則百四条に基づいて、今年度中に法案提出ということですから、それまでに、当然のことながら、実施時期をどうするかという具体的な制度の設計を詰めていくことになります。その実施時期をいつにするかということが基本的には大事であって、その実施をする前に総選挙で民意を問うということは、私は、これまで言ってきたことと整合的だというふうに思います。

佐々木(憲)委員 実施の時期をどうするかというのは、四年を超えてから実施すればいいんだ、しかし、四年の中で、四年間のこの間に法律だけは通しちゃう、これは、四年間は上げないと言っていた民主党の公約からいうと、明らかに逸脱していると私は思います。

 当然、法案を出す場合には、その法案を通してよろしいでしょうかということで、解散して国民に信を問う、これをやらないと、そんな、やらないと言っていたものを、いや、やるんだ、法律は通させていただきます、その間に国民に信は問いません、それはおかしいんじゃないでしょうか。当然、法律を通す前に、国民に信を問う、解散をするというのが、これは本来の筋なんじゃないでしょうか。

野田国務大臣 菅総理もその前の鳩山総理も、任期中には上げない、そして、上げるときには信を問うというお話を繰り返してお話しされたというふうに思います。

 ということは、実施時期がいつになるかによって、まさにこの命題がクリアできるかどうかだと思いますので、私どもの衆議院の任期は二〇一三年の八月までです。そして、二〇一〇年代半ばまでに段階的に消費税を引き上げていくというこの成案と、私はそれは整合的になり得るというふうに思います。

佐々木(憲)委員 それは問題のすりかえに当たりますね。

 岡田幹事長の選挙のときの発言によりますと、民主党は四年間は上げない、もし上げる場合は、国政選挙でマニフェストに書いて国民の審判を受ける、こういうふうに言っているわけですね。

 それから、税率の据え置きというのが、三党連立政権合意書、ここでは、「現行の消費税五%は据え置くこととし、今回の選挙において負託された政権担当期間中において、歳出の見直し等の努力を最大限行い、税率引き上げは行わない。」

 「行わない。」というのは、引き上げをする法律をつくらないということも当然入るんですよ。それを、いや、実施は先なんだから法律を通してもいいんだ、これが今の菅内閣、野田大臣の説明なんです。これは問題のすりかえだと私は思います。これは公約違反ですよ、はっきり言って。

 次の問題に行きます。

 民主党は、インデックス二〇〇九、この中で、「逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入します。」これにより、「最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになります。」こう書いていました。この公約は、この成案ではどうなりましたか。

野田国務大臣 民主党のインデックス二〇〇九は、今、佐々木委員の御指摘のとおりの記述がございます。

 そして、今般まとまった社会保障・税一体改革成案においては、「いわゆる逆進性の問題については、消費税率(国・地方)が一定の水準に達し、税・社会保障全体の再分配を見てもなお対策が必要となった場合には、制度の簡素化や効率性などの観点から、複数税率よりも給付などによる対応を優先することを基本に総合的に検討する。」ということで、このインデックスの考え方を踏まえた対応とさせていただいております。

 いずれにしても、この逆進性の問題は、この具体化については、まさに秋以降の制度設計の中で議論をさせていただきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 「一定の水準に達し、」という場合の一定の水準は何%ですか。

野田国務大臣 特に数字的な検討をしているということではないというふうに思います。

佐々木(憲)委員 一〇%を超える、こういうことになるんでしょうか。

野田国務大臣 まさにその制度の具体化の中で、そのことも含めて議論をさせていただきたいというふうに思います。

佐々木(憲)委員 今回、一〇%に上げる、こういうことを決めていながら、その逆進性対策については、具体的にこういうことをやりますということは一切書いていないんです。一定水準を超えるということは、次の段階、一〇%を超えるということにならないとやらない、しかも、それは簡素化、効率化ということを原則として考えるんだ、こういう話になってきているわけですね。だから、私は、このインデックス二〇〇九からいっても、これは大幅に後退しているといいますか、逆進性対策が盛り込まれていない。

 具体的に何か盛り込まれたものはありますか、成案の中に。

野田国務大臣 インデックスというのは、これはマニフェストとは違います。その年における政策の議論の集大成がそういうところまで来ているということです。

 そういう議論を経たうちに、党における調査会において、昨年末、中間整理を行いまして、今回の成案に記載をした事項が入っておりますので、党の御提言、中間整理を踏まえた対応をさせていただいているということで、具体的な逆進性対策については、先ほど申し上げたとおり、これから法案化を目指す中での具体的な制度設計の中で議論をするということであります。

佐々木(憲)委員 かなりこれは、今まで言ってきたことともだんだんだんだん変わってきているんですね。

 ですから、私は、民主党の本来の、選挙のときの主張というのは、選挙中言ってきたことは、四年間は上げません、政権をとったその期間、次の解散までは上げないんだということで、ああ、民主党はこの間は上げない政党なんだな、そういうことで、では民主党に投票しようという人も相当いたと思うんですね。

 ところが、やっているうちに、政権をとって、だんだんだんだん今度は、いや、法律は通すんだ、上げるのは先だけれども法律を通すのはいいんだ。では、法律というのは何だ、これは消費税の増税の法律なんですよ。そういうものをやる。

 それから、逆進性対策はちゃんとやりますから、こう言っていたのに、一〇%に上げるという方針は決めても逆進性対策は何も盛り込まれていない。いや、これから検討する。これはおかしいんじゃないでしょうか。

 私は、こういうやり方というのは絶対に納得できないし、もともと消費税の増税なんというのはやるべきじゃないというふうに思っておりますので、きょうはこれで、時間が参りましたから、続きはあした、やらせていただきます。

 以上で終わります。

石田委員長 次に、柳田和己君。

柳田委員 民主党の柳田和己です。

 まずは、このたびの東日本大震災におきまして被災されました皆様にお見舞い申し上げます。そしてまた、災害救助、復興活動に取り組まれております関係者の皆様に心から敬意を表したいと思います。

 私の県も茨城県でございまして、被災を受けた県の一部でございます。そして、私の地域は県西地域でございまして、御案内のとおり、今、原発による風評被害にさいなまれております。きょうも農林水産委員の、ちょうど同じ時刻に、茨城県のJAの中央会が来て、風評被害等についての発表をしているところでございます。

 まず初めに、五月二十三日に、被災の皆様、関係者の皆様への復興支援策として、東日本大震災復興緊急保証、東日本大震災復興特別貸し付けがスタートいたしました。保証融資の限度額を倍増し、据置期間と貸付期間を延長、金利も引き下げる内容でありますが、改めてこの制度の概要について御説明をいただきたい。また、この支援策についての予算措置、事業規模はどうなっているのかも御説明をお願いいたしたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 今般の震災の影響を受けた中小企業の方々の資金繰りの支援策につきましては、一次補正予算では五千百億円を計上いたしておりまして、新たな保証制度そして貸付制度を創設いたしました。事業規模につきましては十兆円でございます。

 具体的には、保証限度額を過去最大規模に拡充いたしました新たな保証制度、東日本大震災復興緊急保証を創設いたしております。無担保で一億六千万円まで、有担保を合わせれば五億六千万円までの保証額になっております。

 加えて、新たな融資制度として、過去に例を見ないほどの長期、低利の融資制度であります東日本大震災の復興特別貸し付けを創設いたしております。これは、例えば全壊でございますとかあるいは流失の被害を受けられた方々につきましては、三年間、一億円まで実質無利子の融資を受けていただくということになってございます。

 以上でございます。

柳田委員 ありがとうございました。

 続きまして、三月二十三日、被災直後に私も本委員会で発言をさせていただきました。震災の影響で資材が調達できなくなった製造業者、そのために発注がなくなった運送業者、また、ちょうど年度末でございました、歓送迎会の季節でありましたが自粛により次々と宴席をキャンセルされた料亭など、風評被害を受けた方がたくさんおります。

 震災直後の災害復旧貸し付けの支援策では、間接的な被害については限定された制度でありましたが、今回の支援策ではそのあたりについてどのように配慮されているのか、具体的にお話をお伺いしたいと思います。

高原政府参考人 お答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、今般の震災によりまして、中小企業の方々の影響というのは、被災地におられる方だけではなくて、取引先が被災された、あるいは風評被害など、さまざまな形で極めて広範囲に及んでおります。

 今回創設をいたしました東日本大震災の復興緊急保証でございますとかあるいは特別の貸し付けにつきましては、直接被災された中小企業の方々だけではなくて、取引先が被災された場合、あるいは風評被害で間接的に被害を受けて著しく業況が悪化しておられる中小企業の方々も対象とさせていただいております。

 以上でございます。

柳田委員 ありがとうございます。

 続きまして、先ほど、支援策への予算措置は五千百億円、事業規模はおおよそ十兆円とお伺いしました。要は、予算措置というのは、それだけ貸し倒れがあっても大丈夫だ、その規模が十兆円まで枠を広げた、そういうことに解釈しております。

 信用保証協会、日本政策金融公庫、それぞれ幾らぐらい予算が投入されたのか、またどのように執行されるのかも御説明ください。

高原政府参考人 まず、信用保証向けでございますけれども、一次補正予算では信用保証向けに三千二百九億円の措置がなされております。

 このうち、社団法人であります全国信用保証協会連合会に対しては、信用保証協会の損失の一部を補てんするために必要な基金を造成するための補助金ということで、三百九十六億円が措置されております。また、日本政策金融公庫に対して、信用保証協会が行った保証でいわゆる代位弁済が発生した場合に協会に保険金を支払うわけでございますけれども、そのための出資金として二千八百十三億円が措置されております。

 また、融資向けでございますけれども、日本政策金融公庫に対しまして、東日本大震災復興特別貸し付けや、あるいは危機対応貸し付けの金利引き下げなどを行うための出資金でございますけれども、千七百九十一億円が措置されております。

 この事業規模は、それぞれ五兆円程度ということになっております。

 以上でございます。

柳田委員 規模が十兆円で、予算措置は五千百億。代弁率が一〇%ぐらいとしても一兆円かかるわけですから、まだまだ予算が足らないというふうに私は思います。

 十年前のアジア通貨危機のときには七、八%の代弁率と聞いておりますが、私は、ここで一番大事なことは、これは私の持論なんですけれども、今回の震災は、皆さん御案内のとおり、日本国が初めて味わう千年に一度の震災でございます。そのような思いから、私たち政治家は、あるいは政策担当者はしっかりとやっていかなくちゃいけない、そのように考えております。

 したがいまして、枠をつくったから、予算措置をしたからというのではなくて、しっかりとそれが運営されているか。私の持論では、二、三割は代弁率が上がってもしようがない、そのぐらいの思いで私はこの政策を見守っていきたいと思っております。

 続きまして、これだけの金額が注入されたわけですから、公的金融機関の職員の方も、リスクを恐れず、先ほど言いましたように、思い切って貸し出しをし、保証することができると思います。無担保での保証限度は、緊急保証とセーフティーネット保証を合わせて、先ほど高原長官からもお話ありました、信用で最大一億六千万、すばらしい額ではございますが、これが実際、借りたいといったときに、その額が本当に実行されるのか、私は非常にそこら辺に疑問を感じております。しっかりとここは見守っていきたいと思っております。

 私も銀行員でございましたので、現場のことはわかっているつもりでございます。やはり、金融機関の皆様も、ただ待っているのではなくて、目標を掲げて行員が一丸となって貸し出しをふやす、業績を伸ばすことが大事です。だからといって、私はバブル時代も生きておりましたが、それを助長することとは全く違います。

 今回の支援策においても、日本政策金融公庫の皆さん、信用保証協会の皆さん、そして地域の銀行の皆さん、それぞれが一人でも多くの被災者の方にこの制度を利用してもらうという目標を持ち、お客様に接することが大切だと思っています。

 私の持論は、被災に遭われた人たちの思いを十分に酌み取り、被災をされた方が本当にお金を借りてありがたい、そのように思われるような、お金だけではなくて対応ですね、金融機関の対応、これが大事でございます。

 私も銀行の支店長をやっておりました。部下は横柄でございます。君たち、銀行にお金を借りに行ったことがあるのかね、ほとんどありませんと。敷居が高いんですよ、銀行というところは。ですから、同じ目線に立ってしっかりと、ましてや今回は本当に、家族を失い、家を失い、職も失い、そのような方々ですから、よくよく皆さんの関係者の方もわかっていただいて、実行していただきたいと思っております。

 そのような観点からも、今回の震災において、一昨年実施されました金融円滑化法のように、利用実績等を一定期間公表する仕組みなどを導入すべきだと思います。また、その利用実績や相談に対する実行率なども毎月公表するなど、この辺の考えをお聞かせ願いたいと思います。ましてや、私もこの円滑化のときに質問しましたが、ちょうど一昨年の十二月からスタートしました。そして三カ月ごとに発表した。おかげで、円滑化は私は円滑になったと思っております。お聞かせをお願いいたします。

 以上です。

高原政府参考人 まず、現在、東日本大震災復興緊急保証あるいは東日本大震災復興特別貸し付けの利用実績、あるいは信用保証協会の金融機関別の保証債務残高を中小企業庁のウエブサイトで公表いたしております。

 また、御指摘ございましたいわゆる条件変更でございますけれども、日本公庫でございますとかあるいは商工中金が、これは中小企業金融円滑化法の適用対象外なんでございますけれども、自発的に申込実績でございますとかあるいは承諾実績などの公表を個別に行っております。

 いずれにいたしましても、御指摘のとおり、一人でも多くの被災者の方々に制度を利用していただくということが重要でございます。この広報も大変重要でございますし、あるいは、相談窓口において被災中小企業に対して親身に相談に乗っていくということにつきましては、経済産業大臣あるいは金融担当大臣からそれぞれ、保証協会なり政府系金融機関にも累次にわたり指導しているところでございます。

 いずれにいたしましても、さらなる詳細な実績につきましても、関係者と調整しながら、可能なものについて公表を検討していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

柳田委員 ありがとうございます。

 まだまだ生ぬるいと私は思っております。私も銀行員で、サラリーマン生活をしておりました。やはり、こういうものは下から上げるのではなくて、しっかりと頭取あるいは会長さんが、今度はこういうことだということで、しっかりと軸足を移していただいて、そして、上から下へというんですか、しっかりと相談に乗る、これが非常に大事でございます。今までの価値観や融資制度のあれにとらわれることなく、しっかりと、制度に、目的にのっとった実行をお願いしたいと考えているところでございます。

 続きまして、これも金融円滑化のお話になりますが、当時の金融担当大臣でありました亀井大臣に質問させていただいたときに、金融機関はコンサルタントであるべきだと議論させていただきました。

 まさに今、被災地の皆様がこの震災から立ち直るためには、被災地だけではなくて日本全体が元気にならなくてはなりません。そのためには、今回の緊急保証や特別貸し付けはもちろん、創業者に対する新規融資や再チャレンジされる方への融資においても、金融にかかわる皆様が、これまで以上にコンサルタント機能を発揮し、担保ありきではなくて、その企業の可能性や将来性を見きわめ、適切な指導を行い、育てていくことが必要だと思います。

 この点について、金融担当大臣にお考えをお聞かせいただきたいと思います。

和田大臣政務官 柳田委員にお答えいたします。

 今、中小企業庁長官との間でいろいろ政策について御議論いただいたところでございますが、その中のお話にあったとおり、民間金融機関にしても政策金融機関にしても、特に被災者の方々に対しまして、一緒に寄り添って、もう一回企業や事業を復興させるという意識でもって働いていただく必要があるという委員の御趣旨、非常に私どもも共感を覚えます。

 そうしたこともありましたので、中小企業庁においていろいろな補正予算までの政策ツールを検討していただいたところでございますが、私どもからすれば、それをしっかりと金融機関の方にも周知徹底し、さらには、被災企業との間で、そうしたツールを総動員して一緒に復興を図っていこうよという趣旨を徹底する必要があると考えましたので、五月九日には、金融庁の監督局長名で、特にその役を担っていただきたいと考えております地銀協会長あてに、要請文を発出いたしております。

 その後、今御指摘にありましたコンサルティング機能につきましては、もともと、平時の金融においてもしっかりと取り組んでいただく必要があると考えているところは、どうも、私、過去の資料を拝見しましたら、委員が亀井前大臣との間でやりとりしていただいた中でも答弁の中に入っているようでございますが、特にこの震災が起きてからは、そのコンサルティング機能をしっかり発揮してくれということを要請いたしております。

 その結果、地銀クラスでは、被災者、被災企業との間で復興支援チームを立ち上げて、それで一緒に考えていくという姿勢を持ってもらったり、相談窓口を充実していただいたりしております。こうしたことをよりいろいろな金融機関にやっていただきたいというふうに思い、取り組んでまいりたいと思います。

 以上です。

柳田委員 ありがとうございます。

 まさに、被災者の立場に立つ。やはり被災者は、私も銀行員をしておりまして、相手はなかなかちゃんとした冷静な判断ができない、将来にいろいろな不安を抱えている、あるいは被災に遭って家族の方が亡くなられている方もおられる、いろいろなそういうような精神的な不安定、財政的な不安定、そんな中でしっかりとやるわけでございますから、私は、紋切り調ではなくて、それを相談を受ける方も、やはり人間味にあふれる、本当に寄り添う、そのような方を選んでいただいて、やっていただきたいなと思っております。

 本日は日銀が金融政策決定会合をやられているということで、ちょっと寄り道にそれますが、私は、デフレ脱却をするために、やはり名目成長率を二、三%ぐらい、目標を持つのが適正じゃないか、そういうふうなことで、余談でありますが、私は税金は上げないということでやっていきたいと思っております。

 次に、被災した企業が新たな借金を抱え込む二重ローンの問題についてお伺いいたします。

 政府が六月十七日に取りまとめた二重債務問題への対応方針に基づき、与野党間で御調整をいただいておりましたが、この問題について、先週の金曜日に協議は物別れになってしまいました。しかし、この対策は、被災した中小企業や農林漁業者にとっては一刻も早く対応してほしい支援策であります。

 政府・与党案では、中小企業基盤整備機構が八割を出資する、仮称、産業復興機構を被災県に設置、復興機構は、金融機関が新規に融資することを条件に債権を買い取り、返済猶予や債務の一部放棄などを行うとの内容と伺っております。

 そこで、政府に対して確認ですが、まず、債権の買い取りやその後の処置についての決定判断の権限がどこにあるのか。そしてまた、責任の所在ははっきりさせておくことが重要であり、債務者救済、公助という考え方からも、国や県がリードしていく必要があると考えております。新しい機構や第三者機関など外部組織が権限者であれば、国や県はどのように関与するのかもお示しをいただきたいと思います。

高原政府参考人 被災地域の事業者の方々の二重債務問題に対応するため、まずは、中小企業の再生支援協議会の体制を、国が中心となって、いわば各県とも連絡をとって拡充をしたいと思っております。その上で、小規模企業の方々でありますとか、あるいは個人事業主の方々、さらにはさまざまな業種の方々、これらの皆様方に対するワンストップの窓口として機能するように整備を図りたいと思っております。

 さらに、旧債務の負担によりまして新規融資を受けることが困難となっている事業者の方々につきましては、旧債務の買い取りでございますとかあるいは凍結によって、地域の金融機関からの新規融資を可能にいたしまして、事業の迅速な再建を促進するために新たな機構を設立したいというふうに考えております。

 再生支援協議会が相談された事業者の方々の再生可能性があるというふうに判断した場合につきましては、債権の買い取りなどにつきまして、再生支援協議会と新たな機構が一緒に事業者の方々からお話を伺って、統一的な判断を行うということにいたしております。

 なお、国、県が個別具体的な決定に関与するわけではないということも申し添えさせていただきます。

 以上でございます。

柳田委員 ありがとうございます。

 新たな機構による債権の買い取り価格に対する基本的な考え方はどのようになっているのか、お伺いします。

 一律で何掛けということではないと思いますが、金融機関の言い値や希望に沿うのか、機構が決めるのか、第三者機関等を設置して判断してもらうのか、決まっていなければ方向性を教えていただきたいと思います。

高原政府参考人 いわゆる旧債務の買い取り価格でございますけれども、新規の融資を行うに当たって、その事業者の方の将来の見通しでございますとか、あるいは被災をされる前の事業の状況をもとに算定をするということが基本になります。ワンストップ窓口として機能する中小企業の再生支援協議会におきまして、将来の事業計画についての確認を行った上で、新たな機構が再生支援協議会と密接に連携しつつ、その統一的な判断に基づきながら債権者である金融機関との間で具体的な買い取り価格について決定をするということになります。

 いずれにいたしましても、具体的な価格の決定方法につきましては、被災県でございますとかあるいは地域金融機関の方々と調整を進めているところでございまして、地域ごとの実情も十分踏まえながら、特に被災の事業者の方々を迅速に支援できる、そういう体制を早急に構築していきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

柳田委員 ありがとうございます。迅速な対応をぜひお願いいたします。

 いずれにせよ、この買い取り価格が低ければ金融機関はきつくなり、高ければ機構のリスクは大きくなります。そのあたりの試算をすることはなかなか難しいとは思いますが、報道等でも、債権などの買い取り規模については与野党間で大きく隔たりがあり、自民・公明案では二兆円とも言われ、民主党政府案では数千億とも言われております。政府としてどの程度の金額を想定しているのか、また、その積算根拠も含めてお答えをお願いいたします。

高原政府参考人 まず、金融庁の試算などによりますと、民間金融機関による被災をされた中小企業向けの債権の総額というのは最大で一兆四千億円程度、また、被災事業者向けの債権のうちで約定返済を一時停止している債権は大体二千五百億円程度、これはいずれも簿価ベースでございますけれども、そういう金額というふうに伺っております。

 ただ、機構が行う支援は、委員御指摘の債権買い取りだけではなくて、出融資などの手段というものを被災された事業者の方々の実情に合わせて用いていくということになりますので、買い取りだけが再生の手段ではないこともございまして、機構において買い取る債権がどの程度の額になって、機構の事業規模の程度をどのぐらいの規模にするかということにつきましては、被災県ごとの状況にも左右されるものでございます。

 いずれにいたしましても、各県と早急に調整を進めていきたいというふうに考えております。

 以上でございます。

柳田委員 どうもありがとうございます。

 また、この新しい機構は被災県に設置するとのことですが、私の地元、茨城県やいわゆる被災三県以外の県についても新しい機構が創設されるのか、お答えをお願いいたします。

高原政府参考人 新しい機構をどこに設立するかという問題につきましては、国が一方的に決めるだけではなくて、各地域のニーズに基づきまして、県あるいは地域の金融機関の方々と調整の上決定をしていく必要があるというふうに考えております。したがいまして、もちろん茨城県につきましても、そのようなニーズがあればぜひ御相談をさせていただきたいというふうに考えている次第でございます。

 以上でございます。

柳田委員 地方分権ということで、地域の、ほかの県の申し出ということもあるんでしょうけれども、これはやはり、私も今回わかったことは、国がせっかくいい法案をつくっても、それが県に行き、県のまた出先があり、そして市があり、行政がある、そうすると、そこでなかなかその法案のとおりいっていない部分が多々見受けられますので、ここはしっかりと、国が、あるいは政府が指導してやっていただければと思っております。

 最後に、中堅企業、大企業への震災金融対策についてお伺いします。

 五月の補正予算において、日本政策投資銀行に対し、二兆五千億の予算措置がされております。

 実は、このたび日本政策投資銀行の社長に就任されました橋本徹様は、元富士銀行の頭取でありまして、私の銀行時代の大先輩でございます。橋本大先輩は、ちょうど昭和五十年代、米国の金融会社ヘラー社を買収して、国際部長で、頭取が非常に褒めていたことが記憶に残っております。私もそんな先輩になりたいなと。橋本頭取を余りあれですが、非常に人柄も温厚で、金融にもたけたすばらしい方を得たなと私は考えております。大いに期待をしているところでございます、まだあいさつには行っておりませんが。

 それゆえに、このたびの震災からの復興と日本の景気の回復のため、大いに御手腕を発揮され、御活躍をいただきたいと願っております。

 私の地元、茨城県県西地区においても、多くの工場が操業を期待しております。私の県西地区も、日野自動車本社が移転も内定しているところでございます。そして、そこで働く従業員の方も会社のことを非常に心配されております。私も、地元の皆様の声を受け、党の会議などで支援策の拡充を求めておりますが、この場をかりて投資銀行の支援状況をお伺いしたいと思います。

 また、このたび、自動車部品工業会とのサプライチェーン・サポートファンドを組成し、下請も含め部品メーカーに安定した資本的資金を注入するとのことですが、その件についても御説明ください。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 柳田委員が、経験に裏打ちされた、大変被災者に温かい御質問をいただきまして、ありがとうございます。

 今御質問の一点は、日本政策投資銀行による被災者支援の状況、これはどうかという御質問でございました。

 立派な橋本社長を迎えて、これまで蓄積されたノウハウやネットワークを活用して、復旧復興支援に全力を挙げていただいているものと承知をいたしておりますし、また、私どもも、できるだけしゃくし定規ではなくて、まさに柳田先生の意思を体して、柔軟に被災者に向かうようにということをお話しさせていただいております。

 そして、今の件でございますが、具体的には、危機対応融資を迅速かつ円滑に実施し、足元の資金需要にこたえているほか、今後の需要が見込まれる資本性資金への対応もただいま準備をいたしております。おっしゃるとおり二兆五千億の事業規模を予定しておりますが、三月十二日以降六月末までの実績は、今のところ、中堅・大企業向け危機対応融資実績としては、まだ五百六十九億円にとどまっておりますけれども、今、電力向け等一千億円オーダーの話が進んでおります。これから伸びるものと思っております。

 御質問のもう一点は、自動車部品工業会と連携したサプライチェーン・サポートファンドの組成のお話でございました。

 これは、下請企業も含めて自動車産業のサプライチェーンを支える企業に対して、資本性の資金を含む長期安定資金を供給する取り組みを今一生懸命、鋭意進めているものと承知をいたしております。ただし、事業開始は八月初旬ごろになるかと思います。ファンド規模は当初五十億でありますが、最大は五百億円まで想定をいたしております。

 財務省としては、日本政策投資銀行が引き続きこうした取り組みを積極的に進められるようサポートをしてまいります。迅速かつ円滑に対応していくことを期待いたしております。

 ありがとうございます。

柳田委員 ありがとうございます。

 もう時間もあと一分ということですから、早々と。

 実は私も、六十年代、東京電力の担当課長として、新潟の柏崎刈羽の原子力発電のかまの上にも上りました。そしてまた、余談ですが、全日空が国際便を出した、まさに日本の経済が高度成長をしていたときでございました。

 そんな中で、大企業や中堅企業が元気にならないと従業員や下請にも影響を及ぼします。これからが勝負どころとなってくると思いますが、今御説明をいただいた部品メーカーに対するファンドのようなものももっといろいろな分野に広げていただき、支援策のすそ野をどんどん拡大していただきたいと思います。

 以上、質問を終わります。ありがとうございました。

石田委員長 次に、菅川洋君。

菅川委員 民主党の菅川洋です。本日は、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 先ほど佐々木委員からもお話がありましたけれども、先月末、六月三十日に、社会保障と税の一体改革成案がなされました。現状では、政府・与党での一体改革の成案ということがされたわけですけれども、もともと、現状では社会保障費が年々増大している中、社会保障のあり方、またその財源をどのようにしていくか、この課題は常に問題とされてきました。そして、簡単に解決できる問題でもございません。

 社会保障はそれこそ生活に直接関係ある話でありますから、この社会保障の中身をどうしていくのか、医療、年金、介護、子育てといった広範な内容を、それこそ充実していくところは充実していく、また効率化、重点化できるところは効率化、重点化をしていく、もしくは負担できる方がいらっしゃれば御負担もお願いするというようなことも考えていかなければならない議論だと思っております。

 その中、きょうは財務金融委員会でありますので、この社会保障と税一体改革成案の中でも財源の方の議論につきまして、五十嵐副大臣にお伺いをしたいと思っております。

 この成案の中では、安定財源として消費税を一〇%に引き上げる。時期につきましてはいろいろと議論がございましたけれども、一〇%に引き上げるということは、現状からいいますと五%税率を引き上げるということになります。この五%、現状の消費税では大体一%が二・五兆円という金額ですから、単純に五%を計算しますと、十二・五兆円の増税ということになります。

 そこで、過去、これだけの金額、十二・五兆円という金額の増税というものを一年もしくは二、三年連続して行うというようなことがあったのかどうか、まずお伺いしたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 過去には、平成元年以降というお話でございましたが、十二・五兆円という規模の増収になる増税はございません。

 平成六年の税制改革、これは満年度のあれではありませんけれども、二・四兆円の消費税率の引き上げによる増収となっております。また、平成十五年には、これは中小企業特例措置の縮減等でやはり消費税で〇・五兆円というような数字がございますが、十二・五兆円という規模の増税はございません。むしろ、個人所得税、法人税等、減税の方は大きな減税がございますが、増税の方は大きなものはないということでございます。

菅川委員 やはりこれだけの規模の増税をするということは非常に大変なことだと思っているんですが、今、五十嵐副大臣の方から、平成六年の改正のお話がありました。これは実際には平成九年に消費税の率を上げたときのお話であると思っておりますけれども、この平成九年のとき、三%から五%へと消費税を引き上げしました。

 先ほど二・四兆円とありましたけれども、これは多分国税部分だけではないかと思いますが、この平成九年のときに引き上げを行った結果、実際にはどれだけの税収増ということになったのか、お聞かせください。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 消費税収につきましては、消費税率引き上げ前の平成八年度に七・六兆円ございました。消費税引き上げの影響が、平年度化した平成十年度で見ますと十二・六兆円となっておりますので、消費税率の引き上げ三%から五%により、消費税収は、今、菅川先生がおっしゃったとおり、一%が二・五兆円で、二%分、当然五兆円ということで、その数字どおりの増収の効果となっております。

菅川委員 税収としては、やはり五兆円というのは非常に大きな金額であると思っております。もちろん十二・五兆円には及ばないわけでありますけれども。

 この平成九年にそれだけ税収が上がったということはありますけれども、その後、景気の状況も悪化した。これは消費税だけの問題ではないと私は思いますけれども、ただ、消費税の問題もその一因にはなっているのではないかと思っております。

 この平成九年に消費税率を上げた後、平成十年、平成十一年の税収、これは消費税以外の税収も含めたところで全体の税収がどのようになったのか、お聞かせいただきたいと思います。

五十嵐副大臣 お答えをいたします。

 平成十年度の一般会計税収、決算額でございますが、全体で四十九・四兆円でございます。これは九年度の五十三・九兆円と比較すると四・五兆円のマイナス、八・四%の減少となっております。また、平成十一年度の一般会計税収、決算額は四十七・二兆円でございました。これは平成九年度と比べますと六・七兆円の減収、一二・四%の減となっております。

 今、菅川先生おっしゃいましたとおり、これにはさまざまな要因があると思います。実は、前回の消費税増税も、私が与党の責任者として税を仕切らせていただいたときのことでございますが、同時に社会保障の保険料の引き上げを半年おくれでやっていまして、その半年おくれから急激に景況が悪くなっていったということもありますし、その他の並行しての減税措置が行われました。先行減税と、それから景気が悪かったことに対応する追加の減税もいろいろしておりまして、その影響も大きいのかなと。

 平成十年には、アジア通貨危機や金融システム不安に対応して法人税率の引き下げが行われました。平成十一年には所得税の定率減税や法人税率の引き下げが行われまして、制度的要因が考えられるので、一概に消費税の影響だけを取り上げて言うことはできないというふうに考えております。

菅川委員 五十嵐副大臣がおっしゃられるとおり、消費税の問題だけではないと私も思っております。

 ただ、景気が悪くなると、結局、景気対策というものを行う結果、法人税もしくは所得税の大幅減税というようなことも行われてきていることが税収減につながっている部分も否めないと私は思っております。

 そうなりますと、逆に言うと、全体の税収をどうやって確保するのか。これを考えたときに、やはり消費税を上げる、少なからずとも消費税が景気に影響を及ぼす、そういうことがあるときに、景気に影響を及ぼせば、結局は、ほかの税率を下げたり税制を変えていくというようなことも措置をしていかなければいけないこととなってしまいますので、この景気の動向というのは非常に大事ではないかと私は思っております。

 特に、今回、五%といいますと、先ほど来話したとおり十二・五兆円ですから、一説によりますと、これだけの増税をしますとGDPを二%押し下げるのではないかというような試算も出ております。

 そういった中、国が全体の税収を安定的に継続して確保するということを考えると、景気動向というのは重要だと思います。

 そこで、五十嵐副大臣にお伺いしたいところですけれども、消費税率をこれから引き上げる際に、増税するときの景気状況、これをどのようにお考えになられるのか、そういった所見を聞かせていただければと思います。

五十嵐副大臣 おっしゃるとおり、景気への配慮というのは大変重要だと思っておりますし、デフレからの脱却に全力を挙げなければいけないと思っております。一〇年代の半ばまでに一〇%まで引き上げるということになっておりますので、弾力的に様子を見ながらやるということになると思いますし、実際には、そのころまでデフレ脱却できないようでは、今やっている政策は何なんだということになると私は思います。むしろ、脱却することを前提としなければいけないと思いますし、景気も幸い緩やかな上昇軌道を今現実的には描いていると思いますが、これを確かなものにしていく政策の集中が必要だと思っています。

 それから、ただ、一概に、増税が景気にマイナスだというだけではないことも考えなければいけないというのは、ここまで財政赤字が拡大をしてきますと、景気がよくなりかかったときに、むしろ資金の供給を邪魔するクラウディングアウトという現象が起きて、景気の足を引っ張るということが逆に起きますし、さまざまなことに気を配りながら、税もその一環として政策運営を、正確にきちんと最善の道を選んでいかなければならない、こう思っております。

菅川委員 五十嵐副大臣のおっしゃられるとおり、全体を考えていかなければならないことだと思いまして、やはり安定した社会保障を継続していくということ、また、財政の問題に関しましても、きちっとバランスをとっていくことを考えていかなければならないということ、また、それに対して、景気に対しても、やはり政府として、デフレの状態がこれだけ長いということは、もっとしっかりと取り組んでいただきたいということをお願いいたしまして、五十嵐副大臣への質問はここまでにさせていただきます。

 続きまして、自見大臣にもお話を伺わせていただきたいと思います。

 今の話の中で、経済を何とか立て直していくというときに、一つの要素として、私は、新しくどんどん起業していく人、新しいものに取り組んでいく人、挑戦する人、こういう人がもっと社会の中で出てこなければならないと思っております。

 しかし、日本は、残念ながら、開業率よりも廃業率が上回っている年が近年では多くありまして、しかも、現在の日本の開業率というのは三・二%しかありません。この中、アメリカやイギリスでは一〇%以上の開業率で、それこそ新たに起業する人がたくさんいる、挑戦する人がたくさんいる社会になっているわけでありますが、なかなか日本はこれがふえません。

 私は、その一つの要因として、やはり失敗したときのリスクというのが日本の場合は非常に大きいのではないかと思っております。大体、会社が、起こしてから十年後生き残っている確率というのが一割だというようなことが言われています。つまり、残り九割は倒産もしくは廃業されるということになるわけであります。

 倒産するときに、例えば借金がたくさん残っているということになりますと、中小、特に零細企業におきましては、家を担保に入れている、また個人保証をしている、そして仲のいい方に連帯保証を引き受けていただく、こういったことをやっておりますので、結局、倒産しますと、家がなくなる、そして、事業は続けられないので収入もない、かつ、連帯保証になってくれていた仲間の人に対しても非常に迷惑をかける、その結果、相談できる人が周りにいなくなる、孤立化する、こういった状況の中で、なかなか再スタートできないというようなところに追い込められるケースが多々あると思っております。

 そういった状況を変えるためには、やはり、失敗しても再スタートできる、また再チャレンジできる、そういった場をつくることが必要であると思っているんですけれども、それを考えたときに、今の貸し付けの制度、不動産の担保を中心にした貸し付けであったり、また連帯保証人の信用をもとにした貸し付けであったりして、事業の中身よりも、ほかのもので貸し付けの担保をとるということが行われておりまして、こういった制度というものを見直していくことが私は大事なことだと思っております。

 そこで、昨年十二月、金融庁におかれましては、アクションプランを公表されたと思います。その中に、第三者の連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立という文言をうたっておりまして、こういった見直しは非常にいいことだと私は思っております。この見直しを行っていくに当たって、現状の連帯保証制度について、まずは、大臣として基本的にどのようにお考えなのか、お聞かせください。

自見国務大臣 菅川議員にお答えをいたします。

 基本的には、私も先生と全く同感でございまして、そういった意味で、本当に日本は、今ほど、開業率、新たに事業を始める人が、今先生の数字で三・二%だ、英米は一〇%ある。これはやはり十年近い間の日本の非常に構造的な問題でございます。

 そのときに、今先生が言われました個人の連帯保証という問題、あるいは中小零細企業、失敗すると家も屋敷もとられてしまう、再びもう起き上がれないという方が私の友達にもたくさんいまして、アメリカの人に聞くと、むしろ、何回も倒産した経営者の方がいっぱい経験を得ているからいいんだというような話も漏れ聞くわけでございます。

 今、個人連帯保証の話でございますが、金融庁のアクションプランでも、経営者以外の第三者の個人連帯保証等の見直しについては、平成二十二年六月に閣議決定された新成長戦略及び同年十二月に金融庁において公表した金融資本市場及び金融産業の活性化等のためのアクションプランにおいて、監督指針の改正等によって対応することとされております。

 監督指針の改正に当たっては、まず一つ、経営者以外の第三者の個人連帯保証を求めないことを原則とする融資慣行を確立する、二番目には、保証履行時における保証人の資産、収入を踏まえた対応を促進することを基本的な考え方といたしております。

 しかし、これがなかなか、先生、やはり融資というのは、お人様から預かったお金を、最後は金融機関というのは利子をつけて返さねばなりません、やはり金融規律も要るわけでございますから。そういった意味で、なお、その際、経営者以外の第三者の個人連帯保証を過度に規制することによって、かえって中小企業による円滑な資金調達の支障とならないように十分配慮してまいりたい、こう思います、まさに起業家の目線に立って。

 こういうことを言いますと、もう、どんどんまた昔のように第三者から保証をとっていいんだ、こうなりますと、金融庁といたしましても、監督指針の改正をしたわけでございますから、これが実態として守れるように、しっかり検査監督、私の場合はきちっと督励をしてまいりたいというふうに思っております。

菅川委員 自見大臣のおっしゃられるとおり、欧米の場合は、失敗してもやり直せる、そして失敗した人の方が、というよりも、失敗は成功のもとだと私は思っておりますので、失敗した人の今までの経験というのを生かして新たにまた新しいものをつくっていく、それが社会の活性化につながると思っておりますので、このような改正というのは非常にいいことだと思っております。また、金融規律も大事でありますけれども、やはりそこに人が生きていくことが一番重要なことだと思っておりますので、ぜひとも今後これを早く進めていただきたいと思っております。

 今の二つの具体的な内容をお聞かせいただきましたけれども、この監督指針を変更するということの現在の状況につきまして、和田政務官の方から具体的な内容を教えていただけますでしょうか。

和田大臣政務官 菅川委員にお答えいたします。

 今大臣が御答弁申し上げたところをもう少し具体的にということだと思いますので、私の方から御報告したいと思います。

 大臣の方からございましたように、これから先、連帯保証のあり方としては、経営者以外の第三者の連帯保証人になっていただくところを原則としては求めないということで、そういった融資慣行を確立していくべく作業中でございます。

 そして、それらを金融機関の方々に認識していただき、しっかりと自分たちの金融方針、融資方針に定めていただく、クレジットポリシーというふうに呼んでいるようでございますが、その中にきっちりと明文化するということをやっていただきたいということを検討しています。

 しかし、先ほど大臣が申し上げたとおり、ある程度金融機能をしっかりと維持する必要もあるものですから、あくまで例外としてではございますが、信用保証協会が保証人として定義してよいというところのルールを定めているところにつきましては、それと連動して連帯保証の概念を定めていきたいというふうに考えています。

 さらに、最後に申し上げれば、こうしてルールとして定めていったことをしっかりと顧客となる融資対象の企業や個人事業者の方々に説明した上で融資を決定する、こういったことに取り組んでいただこうと考えている次第でございます。

菅川委員 ぜひ連帯保証の制度につきましてもまだまだこれから検討していただきまして、それこそ挑戦した人、リスクをとった人、失敗してもやり直せる社会の情勢づくりにまた尽力をしていただければと思っております。

 今新たに挑戦した人の話でありますけれども、現在、それこそ、三・一一以前から日本の景気状況というのは非常に厳しい状況があり、また、それが現在も続いていると思っております。その中で、リーマン・ショック後、金融円滑化法案をつくりまして、さらにこの円滑化法案、延長をして、順調に今制度としてうまく進んでいるところであると思いますけれども、現在のこの円滑化法案の実施状況につきまして、和田政務官に教えていただきたいと思います。

和田大臣政務官 お答えします。

 円滑化法が施行されたのは二十一年の十二月四日でございましたが、そこから二十三年三月末までで集計いたしましたところ、六百四十五の金融機関の実績として、中小企業者からの貸し付け条件の変更等の申込件数は約百七十七万件となっています。そのうち、実際に貸し付け条件の変更等を決めて実行しているのが約百五十九万件ということになっております。

 この数字から実行の割合を計算しますと、審査中の案件は除いておりますが、九割を超える実行水準となっておるということで、貸し付け条件の変更等に向けた取り組みは着実に実施されていると認識いたしております。

菅川委員 百七十七万件申し込みがあるということは、やはりそれだけ困っていらっしゃる方が全国にいらっしゃるということだと思いますので、今後もしっかりとこの制度、続けていくというよりも、本当は景気がよくなれば言うことはありませんけれども、注視していかなければならないと思います。

 一つに、この制度、やはり返済計画、リスケジューリングというのを行っていると思います。それは、経営改善をする計画をつくって、その上でリスケジューリング、リスケを行っていることだと思いますけれども、経営改善計画、これは計画が絵にかいたもちになってしまっては仕方がない話でありまして、やはり改善をしっかりしていくことが必要であると思います。

 そうなりますと、計画をちゃんと実行できているかどうか、これを、計画を立てた後、モニタリングをしていくことが必要であると思いますし、モニタリングをした中で、やはり実行できていないところに対しましてはいろいろなアドバイスをしていく、こういった体制が必要だと思いますけれども、その点につきまして、金融庁として、金融機関に対しましてどのような取り組みをお願いしていらっしゃるのか、お聞かせください。

和田大臣政務官 今、菅川委員の御指摘どおり、実は、貸し付け条件の変更等に応じるということは、そこでとまってはいけないということをまた意味するものでもあるものだと考えています。つまり、貸し付け条件の変更、また返済猶予をやっている間に、先ほど御指摘いただいたように、どうやってその企業を再建するのかということを考えるということが必要でございますが、先ほど柳田委員の御質疑にもお答えしたとおり、私どもは、やはりそういったところで金融機関がしっかりと寄り添って考えることが必要であろうというふうに思っています。

 先ほど御報告しました申込件数と実行の実態をもう少しつぶさに見ていきますと、実は、新たにニーズがどんどん出てきているという状況よりは、むしろ、三カ月や半年貸し付け条件の変更、つまり、条件を変更したり返済を猶予したりしているものについて、さらに次のときが迫ってきたものにもう一回貸し付け条件の変更等に応じている、こういった実態もたくさんあるようでございます。その意味するところは、返済計画、再建計画がもう少しきっちりと立てられる必要もあるということを物語っているんだと思います。

 そうした意味において、平時におけるコンサルティング機能も、それから震災対応等によってもっともっと細かにコンサルティング機能を発揮していただくということも必要であるというふうに感じています。

 また、先ほど委員は、それを立てた後に実際に実行されているかどうかをモニタリングする必要があるというような意識をお述べになりましたが、それもそのとおりだと考えております。今申し上げたところまでは、金融機関の中にコンサルティング機能を内製化して、しっかりとそれを果たすということまでにとどまっておりましたが、さらには外部の有識者、税理士の方々や、また経営相談員の方々のお知恵もかりながら、その実行を担保していくことが必要であろうと考えています。

菅川委員 今、和田政務官の方から話がありましたけれども、やはり金融機関だけではもう対処できない部分があると思っております。金融機関も余分な人材を抱えているわけではないと思っておりますし、コンサルティングをやりながらさらにモニタリングもやって、それを検討してまた新しいアドバイスをするというようなことをやるのは非常に時間のかかることですし、これを丁寧に行うには、やはり外部の人材というものを登用していくということは非常に必要なことではないかと思っております。

 この件に関しまして、今少しお話を振られましたけれども、外部の公認会計士、税理士、こういった専門家の方々にもお願いをするということですが、これは金融庁として、各金融機関に対しても何か指針のようなものをお出しになられているのでしょうか。

和田大臣政務官 そういった方針を監督指針として定めるということで考えております。

菅川委員 ぜひとも一日も早く監督指針としてしっかりと定めていただき、そして、さらには計画をしっかり実行して、再起できるように力をかしていただければと思います。

 それで最後に、日本郵政株式会社のことにつきまして質問をさせていただきたいと思います。

 この三月の決算が発表されました。その決算の内容、全体的にごらんになられまして、全体的な感想を自見大臣からお聞かせください。

自見国務大臣 議員にお答えをいたします。

 日本郵政グループの二十二年度の決算、連結でございますけれども、前年度決算と比較すると、経常収益がマイナス六・九%の減少、当期純利益がマイナス七・〇%の減少でございまして四千百八十九億円であり、減収減益の厳しい状況となっております。また、郵貯の貯金残高及び簡保の保有契約件数がいずれも十年以上にわたって減少をし続けておりまして、さらに一層郵便事業の経営基盤が脆弱となっているというふうに認識をいたしております。

 ちなみに、私は十三年前、郵政大臣でございましたが、当時、貯金残高は二百五十九兆円ありましたが、八十四兆円減りまして今は百七十五兆円になっておりまして、まさに、ひどいときは一月に一兆円郵便貯金が減少していくという状態にもございました。

 簡易保険でございますけれども、これはちょうど十四年前がピークでございましたが、そのときは八千四百三十二万件あったんですね。日本人が一億人ちょっとですから、もうほとんどの方は簡易保険に入っておられた。それが実に四千二百六十五万件減りまして、今は実に四千百六十七万件ということになりまして、国民の三人に二人が入っていたのが、三人に一人になった。四千万件、実は簡易保険の契約数が減ってきたということでございまして、それが実態でございます。

 日本郵政グループの事業環境は引き続き厳しい状況が続く中、経営陣を初め全職員の一層の努力が必要でありますが、それを後押しする意味からも、今この内閣で決定して、これは民主党さん、あるいは国民新党、社民党の公約でもございました。これを踏まえての郵政改革関連法案、衆議院では特別委員会をつくっていただいた、特別の御配慮をいただいておりますけれども、各党各会派いろいろな御意見があると思いますけれども、ぜひ審議をさせていただきたい。内閣から国会に出させていただいた担当国務大臣として、そういうことを強く皆さん方にお願いさせていただきたいというふうに思うわけでございます。

菅川委員 時間が参りましたので、以上で終わります。どうもありがとうございました。

石田委員長 次回は、明十三日水曜日午前九時十五分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.