衆議院

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第4号 平成25年3月22日(金曜日)

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平成二十五年三月二十二日(金曜日)

    午前九時一分開議

 出席委員

   委員長 金田 勝年君

   理事 逢沢 一郎君 理事 木原 誠二君

   理事 竹本 直一君 理事 山本 幸三君

   理事 安住  淳君 理事 桜内 文城君

   理事 上田  勇君

      安藤  裕君    伊東 良孝君

      岩田 和親君    小倉 將信君

      小田原 潔君    鬼木  誠君

      神田 憲次君    小泉進次郎君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      高木 宏壽君    竹下  亘君

      豊田真由子君    中山 展宏君

      藤井比早之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    御法川信英君

      山田 賢司君    階   猛君

      武正 公一君    古本伸一郎君

      前原 誠司君    西野 弘一君

      松田  学君    三木 圭恵君

      山之内 毅君    岡本 三成君

      輿水 恵一君    竹内  譲君

      小池 政就君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        山口 俊一君

   外務大臣政務官      城内  実君

   財務大臣政務官      伊東 良孝君

   財務大臣政務官      竹内  譲君

   政府参考人

   (外務省大臣官房参事官) 正木  靖君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    田中 一穂君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月二十二日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     岩田 和親君

  伊東 良孝君     高木 宏壽君

  小林 鷹之君     豊田真由子君

  岡本 三成君     輿水 恵一君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     安藤  裕君

  高木 宏壽君     伊東 良孝君

  豊田真由子君     小林 鷹之君

  輿水 恵一君     岡本 三成君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八号)

 関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出第九号)

 消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案(松本剛明君外四名提出、衆法第二号)


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     ――――◇―――――

金田委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案並びに松本剛明君外四名提出、消費税率の引上げが国民生活及び我が国の経済に及ぼす影響を踏まえ早急に講ずべき措置に関する法律案の各案を議題といたします。

 この際、お諮りをいたします。

 各案審査のため、本日、政府参考人として外務省大臣官房参事官正木靖君、財務省主税局長田中一穂君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。安住淳君。

安住委員 総理、おはようございます。連日、本当に御苦労さまです。まだ予算案が成立しておりませんから、大変緊張もしていると思いますけれども、きょうは、二時間半ほど、財務金融委員会におつき合いをいただきたいと思います。

 私どもの持ち時間は四十五分でございますので、その範囲で質問させていただきます。

 まず、基本的なことを申し上げますと、今回の二十五年度税制改正の大綱に基づく税制改正について、我が党は賛成をいたします。去年の経緯を含めて、所得税の最高税率の見直し等を提案してきましたが、それを引き継いだ形で、今回、三党合意でこれを合意しましたので、民主党は賛成をいたします。

 ところで、総理、基本的な質問をさせていただきますが、社会保障と税の一体改革は、昨年、大変エネルギーを使ってやりました。

 これは、もう細かなことは申しませんが、長年の財政危機的な状況の中で、予算構造が、積極的な社会資本の投資までなかなか振り向けられないほど、日本の財政状況は逼迫をしていました。麻生財務大臣も安倍総理も、総理までおやりになられたから、予算編成の大変さは大変知っておられると思います。社会保障の請求書だけがどんどん来て、ほかに振り向ける予算の余裕がなかなかなかった。こういう中で、我が党が政権を担って、当時の谷垣総裁とともに、ふえ続ける社会保障の、一方で改革と充実、そして一方で、やはり税収の安定を図るために消費税の引き上げというものをやりました。

 総理は、昨年度は、この社会保障一体改革についてかかわっておられませんけれども、どういうふうにごらんになっておられたのか、基本的認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。

 野党時代に、税と社会保障の一体改革について三党合意がまとまったわけでございますが、当時の安住財務大臣を中心にこの三党合意が進められたというふうに承知をしております。当時の我が党の総裁は谷垣禎一総裁でございまして、谷垣総裁は、財務大臣を数年間務め、この問題に取り組まなければならないという強い使命感を持っておられました。

 私も、官房長官あるいは総理を務め、与野党でなるべくコンセンサスをつくって税と社会保障の一体改革は進めていくべきだという基本的な考え方は持っておりました。そして、その際、こうした与野党においてコンセンサスができ上がるということは、国の将来のために、いわば社会保障に対する信認を高めていくためにもよかったのではないか、こう考えておりました。

 少子高齢化が進展する中で、厳しい財政状況にある我が国において、社会保障・税一体改革は、社会保障の安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指す観点から、自民、公明、民主の三党間の協議を通じて進められてきたものであり、最終的にああした合意ができたことはよかったと思っておりましたし、当時、私は総裁になるということは考えてはおりませんでしたが、我が党がもし幸運にも与党に戻ることがあったとしても、この合意はしっかりと進めていくべきだろう、このように考えておりました。

安住委員 ありがとうございました。

 そこで、総理、単刀直入に伺います。今の景気状況は上向きつつあるということは評価します。さて、そうなると、この法律に書かれた文言で言えば、八%と一〇%の引き上げというのは可能なんでしょうか。今のような経済状況だったら上げられると思いますか、それとも、そうでないというふうな御判断でございますか。

安倍内閣総理大臣 これからさらにことしの景気がどういう状況になっていくかということは、注意深く見守っていく必要があるだろう、このように思いますが、いずれにせよ、ことしの秋ごろにさまざまな景気の、あるいは経済の指数を勘案しながら総合的に判断していきたい、このように思っております。

 今の段階でまだ、そのときの足元の状況がどうなっていくかということを申し上げることは難しいということは、委員もよく御承知のとおりだろうと思いますが、この傾向を何とか維持していきたい、このように考えているところでございます。

安住委員 確かに、総理、一面正しいと思うんです。ただ、もう一面で考えなきゃいけないのは、やはり財政状況が今いかに深刻かということもあると思うんです。

 ここに、実は後年度試算の影響評価があります。二十四年度がこっちで、二十五年度がこっちなんです。つまり、後年度試算というのは、財務省として、予算を出すとともに、今後こういうふうに国債費はふえていきますとか、そういうことを試算しているんです。それをごらんになっていただいたかどうかはわかりませんが、これで見ますと、率直に申し上げますと、消費税を上げない場合のリスクも去年は試算をしました。ことしは、実はその試算はしておりません。ことしは消費税を上げることを前提にした試算をしています。

 しかし、この上げることを前提にした試算を見ても、財務大臣はごらんになっておられるかもしれませんが、二十三年度が新規国債発行額四十四・三兆。ちょっと、さまざまな条件を省きますが、消費税を仮に上げたとしても、二十七年度つまり二〇一五年度、一六年度となったときに、総理、現状の国債発行額は減ると思われますか、それとも、減らないと思いますか、どちらだと思われますか。

麻生国務大臣 安住先生、これはケースが四つぐらいありますので、その四つのケースのうちの三番目のケース。資料をお持ちのようなので、三番目のケースでいった場合は減る、その他の場合はなかなか簡単にはいかないということが試算されております。

安住委員 実は、総理、大変残念なんですが、消費税を引き上げて、計算上でいうと十三・八兆円ぐらい入ってくるんです、しかし、今麻生大臣がおっしゃったように、経済が成長したパターンやそうでないとき、さまざまな条件を加味したとしても、残念ながら、国債の発行額は、今の四十四兆円から、雑な言い方をすると、大して変わらないんです。

 ところが、もし消費税を上げない場合どうだったかという計算を昨年したんですね。それだと、さまざまな条件を加味しても、実は国債発行額は景気がよくなっても五十兆円近くに達するということなんです。

 私が申し上げたいのは、消費税を上げても、率直に言えば、財政構造は好転をしない可能性があるんです。悪くなるのを食いとめるのが今のところは精いっぱいなんです。

 これをもしやらない場合どうなるかというリスクもお考えにならないと、一面だけ、景気がよくなればそのことだけを見て、消費税を上げる上げないの議論というのは、十八条の附則によく引っ張られるんですが、実は違う面もあるということを私は認識していただきたいと思うんですけれども、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 確かに、今安住委員が御指摘になられた点も、それは勘案すべき重要なポイントなんだろう、このように思います。

 そうした点を総合的に勘案しながら判断をしていきたい、こう考えております。

安住委員 総理は景気回復は三本の矢とおっしゃっていますが、実は、私は、財政再建こそ三本の矢だと思うんです。

 一つが、今いろいろ取り組まれておりますが、景気をよくすることによって税収をアップしたいということですね、総理は。自民党の公約を見ても、実は我が党が法人税率の引き下げをやったんですが、さらに法人税率を引き下げるべきだと訴えておられますね。景気が好転すると同時に、国際社会の中で、日本企業が日本に残ってもらうためにはやむを得ない部分はあると思います。しかし、税収から見ると、私が申し上げたいのは、景気がよくなっても、思うほど税収の上がらない構造になっていることも事実なんですよ。そういう中で、どうやって税収をアップしていくかということは、成長戦略等含めてお考えになっておられるのはいいんです。

 一方、もう一つあるのは行政改革ですね。歳出をどうやって削っていくか。それからいうと、残念ですが、やはり社会保障にもっとメスを入れなければなかなかいけないだろうということも、三党で合意したんです。だから、そのこともしっかりやってもらいたい。

 もう一方、最後の、三本の矢の三番目が厄介でして、先ほど申し上げたように、一〇%に上げても、今の国債発行額が減るわけじゃないんです、基本的に。押しとどめているというよりも、支えているという状況なんです。そういう中で、もう一段税収構造の見直しというものも、もしかしたら避けて通れないのかもしれないと思います。

 この三本の矢をしっかりやらないと、日本の財政再建という、世界経済の最大のリスクとも言われている状況は好転しないんじゃないかと私は思っておりますので、そのことについての認識を最後に伺って、私の質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま安住委員の御指摘になった点は、我々もしっかりと頭に刻んでいく必要があるだろう、こう考えております。

 我が国の財政状況は、そう簡単な状況ではないわけでございます。そのためにも、しっかりとデフレから脱却をし、経済を成長させていくということと同時に、税収増を図っていくこととあわせて、無駄をしっかりと削減していくということも極めて重要なポイントなんだろう、このように考えております。

安住委員 やはり財政再建の意識をしっかり持って、これからも政権運営というものをぜひ担っていただきたいというふうに思います。

 それでは、終わります。

金田委員長 次に、武正公一君。

武正委員 民主党の武正公一でございます。よろしくお願いいたします。

 きょうは、特に、今安住委員が指摘をした財政再建について、総理の御所見を中心に、本会議でも伺いましたが、伺ってまいりたいと思います。

 まず、財務大臣に、この法律に関しまして一点お伺いしたい点がございます。

 経済取引の国際化、社会保障と税一体改革に伴う税制改正への対応など、国税担当者の事務量が増大しております。これについて、国税職員の定員の確保についての御所見を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 武正先生御指摘のとおり、国際化はもちろんのことですけれども、税務行政を取り巻く環境というのはかなり厳しいことになってきておるのは事実だと思っております。

 申告件数がまず第一に増加しておりますし、滞納件数も同様に増加をいたしております。そのほか、経済取引がグローバル、国際化してきたということもありまして、その取引実態の把握に関しましては、従来とまた違ったものになってきた。そういったことなどもありますので、質、量ともに、なかなか従来とは、厳しいことになっております。

 今後、社会保障とか税の一体改革などなど、いろいろございますけれども、税制改革などに的確に対応していかねばならぬという状況を考えますときに、国税庁において、これまでも、事務の効率化ということに関しましては推進をさせていただいておりますが、署員の定員の確保という点からいきますと、平成十七年から二十五年度まで見ましても、逆に人員は減っておるわけで、そういった意味におきましては、状況としては、対応という意味においては負担がかかっておるということは事実だと思っております。

 いずれにいたしましても、必要な定員を確保ということは、今後ともに考えておかねばならぬ大事なところだと思っております。

武正委員 ありがとうございます。

 さて、今、お手元に、理事会の御了承をいただきまして、資料を配付させていただいております。去る二月十五、十六日のG20での会議声明、共同声明の文書でございます。二枚をおつけしておりますが、一ページ目、二段目でございます。下から四行目でありますが、「米国と日本においては財政状況に関する不確実性を解消し、」と、そして三段目、上から六行目でしょうか、「信頼に足る中期的な財政戦略をサンクトペテルブルグ・サミットまでに策定する。」ということで、これが共同声明の形でまとまったわけでございます。

 そうしますと、特に日本と米国が名指しで挙げられておりますが、財政再建、そしてまた経済成長、この両立を図るということが、ある面、日本に国際公約として課せられたということでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 モスクワのG20におきましては、今、武正先生御指摘になりましたとおり、財政再建と経済成長の両立というものを図ることの重要性が確認をされておりますのは、その声明にも書かれておりますとおりで、この実現を目指しますということを表明してきたと、我々も理解しております。

 政権発足後初めてのG20におきまして、これは引き続き重要な課題としてずっと出ておりました。我々としては、三本の矢の説明をさせていただいて、日本経済の再生というものを目指していくということが、我々にとって、景気をよくする、デフレ不況から脱却するということが最も大切なことなんだということを説明した。その上で、我々はそのために補正予算等々を大幅にやらせてもらったけれども、同時に、財政への信頼というものを確保し続けていくということは国家にとって信用問題にかかわりますので、中期的な財政の健全化を図っていく、そのための予算をという話をさせていただいて、我々は、今後とも財政再建と経済の再生と双方をやっていく、そういうことを我々の責務としてしっかり果たしてまいりたいという旨を表明いたしております。

武正委員 総理にも御認識を伺いたいんですが、政権交代前から、前政権では、財政再建と経済成長の両立を図る、これは国際公約であって、累次のG20サミットなどでもそうした発言があったわけですが、新政権、政権交代しても、これは国際公約であるということでよろしいでしょうか。

安倍内閣総理大臣 先月開催されました、新政権発足後初めてのG20において、財政再建と経済成長の両立は引き続き重要な課題となり、出席した麻生財務大臣からは、新政権が三本の矢を推進することで日本経済の再生を目指すとともに、財政への信認を確保するために中長期的な財政健全化を図っていくこと等を主張したところでございます。

 政府としては、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について、しっかりと検討を進めていきたい、こう考えております。

武正委員 両立を図るということでありますが、特に、財政再建における中期財政計画、これを年央までに策定ということは、総理には本会議でも伺っておりますので、改めて、後ほどその点も伺いたいと思います。

 資料の三ページを開いていただきますと、日本銀行と政府との合意文書、これが、ことし、新政権、安倍内閣でまとめられております。

 きのう、黒田新総裁の、あるいは副総裁の記者会見もあったわけでありますが、この三段目の後ろ二行に、「また、政府は、日本銀行との連携強化にあたり、財政運営に対する信認を確保する観点から、持続可能な財政構造を確立するための取組を着実に推進する。」この二行がこの合意文書には入っております。

 これは、政府も財政再建にしっかり取り組むんだと。日本銀行も、経済好転、デフレ脱却のための大胆な金融緩和を、今回は目標二%ということでのインフレターゲティングを日本銀行もしっかりと確認をする、一方、政府は財政再建をやるんだ、こういった合意文書だというふうに理解いたしますが、この点についての御認識を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 今回のこの日本銀行との共同声明というものは、デフレ不況からの脱却と、特に持続的な経済成長というのを実現する、そのためには、日本の政府並びに日本銀行がともに政策連携を強化する旨を発表したというように御理解いただければと存じます。今言われましたとおり、それぞれ果たすべき役割というのをここに書いてありまして、日本銀行はみずから物価安定二%というようなものを設定し、これをできるだけ早期に実現するという、従来の金融政策から見ればかなり思い切ったことが書かれております。

 同時に、政府といたしましても、その際は機動的なマクロ経済政策というものをきっちり運営するということと、成長力並びに経済の競争力の強化を推進いたしますということで、これを、両々相まって持続可能な財政構造というものを確立するための取り組みとして、着実に進めていきたい。

 一つだけ、日本銀行だけに押しつけるとか、政府だけがやるというのではなくて、双方で一緒にやるということが書いてあるのでありまして、我々は、この道筋につきましては、今後、経済財政諮問会議等々、これは日本銀行も出席されますので、その場において、我々は中期財政計画というものをきちっと作成していかねばならぬ、そのように考えております。

武正委員 きょうは総理出席の貴重な時間でありますので、ぜひ、総理にまずお答えをいただきたいというふうにお願いしたいと思います。

 今の点、日本銀行との合意文書で、政府も財政再建に取り組む、こういったことが確認をされておりますが、この点について、総理の御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいま財務大臣からもお答えをいたしましたが、デフレから脱却をさせ、そして経済を成長させていくための基本的な考え方について、政府と日本銀行で共同声明を取りまとめたところでございますが、日本銀行は、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するということを約束しているわけでございます。

 一方、政府は政府としてやるべきことをこの共同声明の中に書いているわけでありますが、当然、政府は、選挙によって選ばれた政府でございますから、我々はもちろん、国民に対してしっかりとそれをお約束している、こういうことでございます。

武正委員 国民に対しても約束をするということをはっきり今申されたわけです。

 続いて、資料の四ページをごらんいただきたいと思います。

 ぜひ総理にお答えをいただきたいんですが、今、財政再建については、政府としての国民への約束、また、日銀とのアコードとも言われる文書、これにもしっかり財政再建に取り組むことをお約束していただいています。国債の格付が、今、ダブルAが二社、シングルAが一社ということなんですけれども、あと一社シングルAになりますと、ここで書いてありますように、二〇%、外国の金融機関が保有する日本国債がリスク債権というような扱いになってしまうということが、二〇〇七年でございますが、バーゼル2で確認をされております。

 総理は、前政権のときにも、財政再建、二〇一〇年代初頭にプライマリーバランス黒字化といったことを冒頭の所信表明で述べておられるわけです。その後、麻生内閣になって、リーマン・ショックもあって、これをまた十年間先に延ばすというような決定になったわけですけれども、この財政再建に取り組む、改めて今、日銀との合意文書で国民にも約束をと。

 国債のリスクが高まることについての懸念があるわけですが、昨日、新総裁は、就任の記者会見では、国債のそうした積極的な引き受けなども、市中から買い取ることにも前向きな、そんな記者会見もあったわけです。やはり日銀からしても、国債の格付が下がることは大変懸念があるわけでございますが、この点についての総理の御所見を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 欧州の金融機関が欧州域外国の国債を保有する場合、国際的な自己資本規制により、仮に当該国債の格付がシングルA格になると、原則として二〇%のリスクウエートが適用されるということは十分に承知をしております。

 いずれにせよ、日本国債の円滑な消化を図るべく、適切な財政運営に努めていく所存であります。

 また、外国金融機関の国債保有の動向については、今後とも注視をしていきたいと考えております。

武正委員 国債の暴落は金利の急上昇というものを招くということが懸念をされておりまして、総理は、記者会見では、いや、金利の急上昇はありませんということを言っておられますが、国債のこうした格付が下がることによって、外国資本の金融機関が国債を、例えば二割、保有がリスクということで手放した場合は、当然、今言った国債の暴落、金利の急上昇を招くおそれがあるんですが、この点についての総理の御認識はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 もちろん、そうならないように財政金融政策を進めていくのは当然であり、我々は、そうならないための努力をしていく所存でございます。

武正委員 そこで、伺いたいんですけれども、安倍内閣初閣議で、平成二十四年度補正予算あるいは二十五年度予算編成について、総理が指示を出されております。そこで、いわゆる国債発行四十四兆にこだわらずという指示が出たんですが、これは、平成二十五年度予算以降のことも総理は指示をされたということでしょうか。

安倍内閣総理大臣 平成二十四年度補正については、足元に、経済に弱い動きが見られたことを踏まえまして、景気の底割れを防ぐという観点から、新規公債発行額について、四十四兆円の枠にこだわらず、思い切った規模で編成することとした次第でございます。景気自体が底割れをいたしますと、当然税収もがくっと落ちていくわけでございまして、失業率も上がっていく、こういう状況は何としても防がなければならないと我々は考えたわけでございます。

 一方、平成二十五年度予算における公債金は四十二・九兆円となっておりまして、四十四兆円を下回っておりますが、しかし、これは前政権の中期財政フレームにおける新規公債発行枠の四十四兆円枠を念頭に置いたものではなく、財政健全化目標を踏まえて、歳出の必要性等について内容を十分に精査した結果でございます。そして、四年ぶりに税収が公債金を上回る姿になったのは御承知のとおりでございますが、財政健全化目標への第一歩となる予算であった、このように思います。

 前政権の四十四兆円の枠組みにこだわるものではありませんが、いずれにせよ、今後、年央の骨太方針の取りまとめに向けた検討状況も踏まえつつ、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めてまいりたいと考えております。

武正委員 四十四兆円にこだわらずというのは、二十四年度補正予算編成に際してであって、二十五年度以降について四十四兆円にこだわらずということを明示的に示したわけではないということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 二十五年度は四十四兆円を下回っておりますが、我々は、前政権の四十四兆円という枠には基本的にこだわっておりませんし、それには縛られてはいないわけでありますが、同時に、しっかりと財政健全化に向けて進めていかなければならない、このように思っております。

 同時に、二十五年度の予算においては、先ほど答弁をいたしましたように、しっかりと精査をしていく中において、結果として四十四兆円を下回った、こういうことでございます。

武正委員 ただ、本委員会でも指摘があるように、年金特例公債金を含めますと四十五兆円を超えているわけでありまして、この議論というのはまだこの委員会でも残っております。

 今、結果的にと言われたんですが、総理の指示は補正予算編成であって、まだ、二十五年度予算以降、四十四兆円を撤廃するといったところまでは指示をしていないというふうに私は理解しておりますが、その点はいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 撤廃はしておりません。しかし、同時に、今申し上げましたように、これは前内閣の閣議決定であって、安倍内閣の閣議決定ではないわけでありますが、いずれにせよ、撤廃をしていないということにおいては、委員の御指摘のとおりでございます。

武正委員 今、総理は撤廃していないということからいうと、この二兆六千百十億円の年金特例公債金からすると、やはりそれは四十四兆円の枠を超えたということも指摘ができるというふうに思いますが、いずれにせよ、今、四十四兆円は撤廃していないというのは大変大事な発言だったと言うにとどめたいというふうに思います。

 そこで伺いたいんですが、財政健全化目標、これは安倍内閣も確認をされています。国と地方を合わせましてのプライマリーバランスの、二〇一五年度の二〇一〇年度に比べての半減、そして、二〇二〇年度にはこれをとんとんに、均衡させるというふうに言っておりますが、前政権時代は、財政運営戦略を平成二十二年の六月にまとめた折には、国、地方のプライマリーバランスに加えて、国のプライマリーバランス、これも同様に半減、そして、とんとんにといったことを書いております。

 国のプライマリーバランスに触れていない理由、これについて、総理にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 この国、地方のプライマリーバランスにつきましては、これは、中央政府、地方政府によります現在の行政サービスというものに必要な歳出が税収で賄えるか否かというところを示すものでありまして、財政構造上、持続可能性があるかないかというのを見る上で極めて重要な指標なんだと、我々もそう思っております。

 国と地方の財政というのは、御存じのように、これは密接に関連しておりますので、両者を合算したプライマリーバランスの改善というものを考えることが、公財政全体の健全性というものを考える上では、私どもの方ではこれは適当なものだと考えております。

 こうしたことから、平成二十五年度の予算編成の基本方針の策定に当たりましては、財政健全化目標というものをお示しするのに当たりましては、まずは、国際的にコミットをしております国と地方のプライマリーバランスの目標につきまして、日本の財政の国際的な信頼維持、信認維持の観点から掲げておく必要があると考えたものであります。

 今後、国のレベルの財政規律のあり方も含めまして、中長期の財政健全化を実現するための取り組みのあり方については、当然のこととして検討をしていかねばならぬものだと思っております。

武正委員 国、地方のプライマリーバランスということでありますが、国のプライマリーバランスということで、例えば一般会計ということで、お手元の方にも資料をつけております。

 五ページが、これは国、地方のプライマリーバランスであって、内閣府が作成したものでございます。もう既にこの委員会でも議論があるように、二十四年度、二十五年度を比べますと、国、地方の対名目GDP比は悪化をするわけであります。六・六が六・九にということであります。

 次の六ページが、これも同じく内閣府の作成資料ですが、プライマリーバランスの捉え方ということで、右が今言った国、地方、SNAベースのものでありますが、左側が国の一般会計のプライマリーバランスということであります。対GDP比は低目ということになりますけれども、これも一つの考え方として、前政権時代は取り入れていたわけでありますし、国民の皆さんからすると、一般会計での基礎的な財政収支対象経費と税収、あるいはその他の収入ということで見ると非常にわかりやすいというふうに思うわけでありますので、ぜひ、国のプライマリーバランスも中期財政計画には入れていくべきだということを指摘しておきたいと思います。

 そこで、次に移りたいと思いますが、七ページ。これは、この委員会で、同僚の古本議員が提出をし、財務大臣とのやりとりをした資料でございます。総理にもぜひごらんをいただきたいと思います。資料の七ページでございます。

 平成元年あるいは平成九年、消費税増税時には、いわゆる財政中立ということで、増税もするけれども減税もするということで、減税の方が、平成元年、平成九年、二・六兆円あるいは九・五兆円ということで、大きかったわけでございます。ただ、昨年のこの消費税率引き上げは十三・五兆円の増税、そして、あわせて復興税の増税が十・五兆円ということですから、増税額が二十四・〇兆円ということが、過去の消費税率引き上げと大きく違う状況である。

 これを国民の皆様にお願いをする以上は、当然、我々の政治改革、定数削減、あるいはまた、先ほど話もございました行政改革、そしてまた財政改革、あるいはまた経済成長、こういったことが条件になってくるわけなんです。

 総理は、本会議で、私の質問に対して、当然、社会保障・税一体改革の消費税増額分が公共事業費に充てられることはないというふうに答弁をされております。ただ、その後、この委員会でもやはり、お金には色はついておりませんので、当然、社会保障の支出が抑えられる分、国債費が減額をした分、それをまた国債費を増額して、それが公共事業に回る可能性があるのではないのかと。ちょうど先日も、南海トラフの被害額が二百兆円という試算も出ておりましたし、また、既に首都直下型については百二十兆円でしょうか、こうした巨額な、東日本大震災と同規模の場合というようなことの想定がされているわけです。

 この点について、本会議で答弁はいただいておりますが、改めて、総理に再確認をしたいというふうに思います。

 重ねて申しますが、今までの消費税の増税のときと違って、これだけ、増税のみを国民の皆さんにお願いをするわけであります。そのときの説明は、社会保障の財源に充てるんだ、社会保障の安定化と社会保障の充実に充てるんだというふうに、国会で、政府も、そして我々三党も合意をし、国民に約束をしたわけです。

 総理について、本会議の答弁はいただいておりますが、社会保障に消費税が回って、それに応じて国債が減ったとしても、それでまた国債を増発して、それを公共事業に充てるというようなことにはならないということを、改めて総理に確認をしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 平成九年のときには、税においては、増税分と減税分でニュートラルにしたわけでございます。しかし、同時に、社会保険料については新たな御負担をお願いした、このように思います。

 今般の、一体改革における消費税率一〇%への引き上げによる増収額は、平年度で、今御指摘のように十三・五兆円と見込んでおります。一方、復興財源のための税制措置については、二十五年間で十・五兆円を見込んでいるわけでございまして、これは一年間ということではもちろんないわけでございます。

 そして、同時に、今御指摘があった公共事業との関係でございますが、もちろん、先般の南海トラフによる被害の想定というものもございます。そうした際に、しっかりと防災、減災の対策をとっていくことによって、多くの人命を守ることにもつながっていきますし、被害額を相当程度抑えていくことにもつながっていくわけでございまして、やるべきことはきっちりとやっていく必要があるだろうと思いますが、同時に、この消費税率引き上げによる増収分については、全額、社会保障の充実と安定化に向けることとしておりまして、公共事業に充てられることはないということは、はっきりと申し上げておきたいと思います。

武正委員 再確認をしたいんですが、社会保障に消費税の増額分を充てると。ただ、それに応じて、社会保障支出というようなことで、国債が、まあ、お金に色はついておりませんので名目的にはっきりしているわけではありませんが、これだけ増収したことによって、国債の発行を抑える。先ほど安住委員は、実は四十四兆円以下にはなかなか抑え切れないんだということでありますが、それを、やはり先ほど四十四兆円の枠は撤廃していないということも総理は明言をされていますので、しっかりと抑えていく、このことについて改めて確認をしたいというふうに思います。

 すなわち、増収分は社会保障にもちろん充てるわけですが、それに応じて国債を発行する余地が出てくるといったとしても、それをもって、また新たに公共事業に充てるといったことはしないということについて、確認をしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 もう一度申し上げますが、四十四兆円の枠について、安倍政権において、この閣議決定を撤廃はしておりません。しかし、この閣議決定はあくまでも前内閣で行われた閣議決定でございまして、基本的に、この四十四兆円枠に安倍政権としてこだわる考えがないということは申し上げておきたい、こう思うところでございます。

 同時に、今申し上げましたように、公共事業にこの消費税を振り向けるということはないわけでございまして、今後、この消費税収を、必要が生じたからといって公共事業に回していくという考え方はないわけでございまして、これは繰り返し答弁をしているとおりでございます。

武正委員 ちょっと、今、大事な発言をされたのですが、前政権の閣議決定は、政府としての閣議決定ですよね。それは今時点で継承されていないという御認識でしょうか。

安倍内閣総理大臣 それは、継承はしておりません。

武正委員 政府の閣議決定は、政権交代すると、その効力は失効するということでしょうか。

安倍内閣総理大臣 閣議決定においては、そのときの政権における閣議決定でございまして、今まで数々の閣議決定が行われておりますが、政権がかわった際に、例えば、自民党政権時代の閣議決定が全て、民主党政権においてそれを一々撤回はしておりませんが、民主党政権において、それに縛られているということはなかったんだろう、このように思います。

武正委員 縛られるということはなくても、新たな閣議決定をし直すとか、別な観点からやり直すとか、そういうような形で、行政の継続性はどういう政権交代をしても保っていかなければ、我々国会の側は行政府をチェックする側ですから、政権が交代しても、やはりその閣議決定が、継続されるのか、あるいはそれをまたやり直すのか、別な観点でやるのかということがない限り、先ほど冒頭、総理がまさにおっしゃられたように、四十四兆円の枠はまだ撤廃していないということだというふうに思うんですが、もう一度、その閣議決定の御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 基本的な考え方としては今申し上げたとおりでございまして、我々は、現段階においては、前内閣が決めたこの四十四兆円の枠について、現内閣でこの閣議決定を撤回はしておりませんが、安倍政権としてはこれにとらわれないということは今申し上げたとおりでございまして、いずれにせよ、今後、年央の骨太方針の取りまとめに向けた検討状況を踏まえつつ、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化を検討していく考えであります。

武正委員 ちょっと時間がなくなりましたので、質疑の中でも取り上げました検討事項、附則百八条の四項目、これは三党でも合意をしておりますので、これは財務大臣は検討するというふうに言っていただいていますので、総理についても、ぜひこの附則百八条についてしっかりと政府として取り組みをお願いしたいと思います。

 今、年央のということをおっしゃいましたが、二月五日の衆議院本会議で野田聖子議員への答弁で、財務大臣は、財政健全化目標を達成するための中期財政計画を年央をめどに作成したいというふうに言っています。総理は、年央をめどに骨太方針を踏まえて検討するというふうに言っていて、そこにそごがあると思うんですね。

 いかがでしょうか。財務大臣の言うように、年央をめどに作成すべきだというふうに思いますが。財政再建で国民へのお約束もされております。その後には参議院選挙も控えております。しっかりと財政再建と経済成長の両立を図る意味からも、年央をめどに作成という財務大臣の答弁と同様だということで、総理の御認識を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘の財務大臣の答弁は、年央を目途という、これは幅を持った表現でお答えをしておりまして、その点で、私の答弁とそごはない、こう考えております。

金田委員長 時間が参りましたので、御協力願います。

武正委員 はい。最後になりますが。

 一昨日、財務大臣は、松田委員の質問に対して、「年央をめどにして、ことし半ばまでに、少なくとも財政健全化目標をするための中期財政計画というものをきちんと立案させていただかねばならぬと私どもは考えております。」と、はっきり言っております。財務大臣ははっきり答弁しています。総理も同じ御認識ということでよろしいでしょうか。最後に伺って、質問を終わりたいと思います。

安倍内閣総理大臣 財務大臣は年央という表現を使っているわけでありまして、この年央というのは割と幅があるというふうに考えているわけでございまして、基本的にそごはない、こう考えております。

金田委員長 時間が参りました。

武正委員 以上で質問を終わりますが、ぜひ、財政再建、国民との約束と明言をされましたので、逃げずにお取り組みをいただきたいと思います。

 以上で終わらせていただきます。ありがとうございました。

金田委員長 次に、西野弘一君。

西野委員 日本維新の会の西野弘一です。

 せんだっての委員会で、大阪の阿倍野という地域ではお好み焼き屋さんにまでアベノミックス焼きとかいうのが出まして、皆さんそういう意味ではいろいろと頑張っておられるという話をしましたが、後援会からすぐ電話がかかってきまして、いや、お好み焼きだけじゃなくてアベノミックスジュースもあるしアベノミックスソフトクリームもあるぞと言って怒られましたけれども。

 とにもかくにも、アベノミクスというのが連日取り上げられておりますが、現に一本、二本の矢は放たれて効果を上げているということは、皆さんがこれは実感をされていることでありますから、ソフトクリーム屋さんでもジュース屋さんでもお好み焼き屋さんでも、そうやってアベノミックスということを冠につけるぐらいですから、それだけの実感を感じておられると思います。これは大いに評価されていいと私は思いますし、また、一応、野党という立場で言うと、三本目の矢がしっかりと放たれるかどうかというところが一番の攻めどころかなと思っておりましたけれども、TPP参加表明もこんなに早い段階でされるとは思っていませんでしたので、これから野党という立場では攻めにくい状況かなということは正直思っています。(発言する者あり)いや、思っています。

 でも、これは国家国民にとってはいいことですから、我々もそう考えていることですから、しっかりと議論すべきところは議論しながら、また逆に言うと、我々がより先鋭的な意見を出しながら、また与党の皆さんにもそういったところに賛同いただけるようなことをやっていくことが新しい野党の形ではないかなと思っておりますので、しっかりと議論をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思っています。

 そういう中で、私も今回当選をさせていただきましたが、実は府会議員を三期務めさせていただいております。その初当選のときの二連ポスターは、安倍総理との二連ポスターでした。

 その写真を撮っていただいたときには、総理が、当時、うちのおやじの会合に来賓でお越しいただいたときに、西野修平というんですけれども、私の弟が先に府会議員に出ておりましたので、うちのおやじが、西野修平というんだけれども今度選挙に出るみたいやから一緒に写真を撮ってやってくれへんかということで、総理が、ああ、じゃ、撮ろうよということで、普通、政治家同士、簡単な握手をして撮るんですけれども、わざわざ上着を脱いでいただいて、こうやって撮った方が雰囲気が出るんだと言っていただいて、写真を二人で撮っていただいたんです。

 その横で、私、兄貴で見ていまして、余りにもうらやましかったので、実は私ももしかしたら近々補欠選挙があって選挙に出るかもわからないので一緒に撮ってもらえますかと言って、撮った写真で初当選したんです。

 そういう意味ですから、きょうはこうやって、この場に立たせていただいて安倍総理と議論をさせていただくというのは、本当に感慨深いものがあるわけでございます。

 そういう中で、政治活動を続けていますと、いろいろなところで、西野君、じゃ、君はどういうことをするために政治家になったんやと、よう言われます。おばちゃん、そんな、一言で言えと言われても無理ですわと思いながら、いつも言うことは、私は、公平な社会をつくりたい、公平な国家をつくりたいということを、いつも申し上げています。

 公平な社会とは何や、公平な国家とは何やというと、まさに総理が所信でおっしゃられた、額に汗して頑張った人が報われる社会、これはまさに、一言で言うとそういうことではないかなというふうに思っています。

 では、頑張った人が報われる。一生懸命ちっちゃいときから努力して、勉強して、いい大学に行って、官僚になって、でも給料は安い。だけれども、皆さんから、あの人たちは本当に頑張っておられるんだということも、これは一つの社会からの報いだと思います。一方で、そうではなくて、一生懸命働いて、額に汗をしながら、たくさんの報酬をもらう。働いた分だけ、たくさんのお給料をもらう、これも一つの報いだと思います。とにかく、頑張った人が、頭を使った人が、知識を得た人が、また技術を得た人が、それをフルに駆使して頑張った人が報われる社会というのがやはり大事だと思うんです。

 そういう意味では、その一つである、頑張って努力した人がそれなりの報酬を得るということもやはり実現していかないと、なかなか、額に汗した人が報われる社会とは言えないのではないかなと思っています。

 そういう中で、今回示された所得税の最高税率の引き上げ、この点は、そういう意味では、総理のおっしゃっている、額に汗して頑張った人が報われる世の中をつくるんだということに逆行しているのではないかなと私は思います。

 また、相続税に関しても、課税対象を拡大したということは、これは評価するべきところだというふうに思っていますが、しかしながら、税率が引き上げられておりますので、その点はやはりまた逆行しているのではないか。課税対象も広げることはいいことですけれども、どうせなら、ついでに税率も下げればいいじゃないですか。もっと言えば、全員から相続税を取ればいいじゃないですか、同じフラットにしながら。それこそが、わかりやすいですし、頑張った方が報われる社会ではないかなと思っておりますが、総理の目指す国家像、社会像と、今回のこの法改正案について、どのようにお考えになっておられますか。

安倍内閣総理大臣 西野委員と一緒に写真を撮らせていただいたときには、まさか西野委員に我が党の候補者を倒されるとは思ってもいなかったわけでございますが、お父様と大分雰囲気の違う、新しい政治家が誕生したなというふうに思いながら、質問を拝聴しておりました。

 そこで、税制と、頑張った人が報われる社会との関係について御質問をいただきました。

 これは、一つの、国としての国柄にもかかわってくるんだろう、このように思います。頑張った人が、今委員がおっしゃったように、それに対して対価を得る、あるいは敬意を受けることができる、それぞれ人生の達成感につながっていくんだろう、こう思うわけでございます。

 他方、日本というのは、やはり、みんなでお互いに助け合っていこう、そういう社会でもあるわけでございまして、所得税と税率構造を考える際には、所得再配分を図る観点と働くインセンティブを損なわない観点のバランスに配慮する必要があるんだろう、このように思います。

 我が国の所得税は、昭和六十年代以降、大幅なフラット化を実施してきたところでございますが、近年は、格差拡大が指摘される中、所得再配分機能が低下をしている状況にあるとされているわけでありまして、こうした状況に鑑みまして、今般、平成二十五年度税制改正において、所得税の最高税率の引き上げを盛り込んだところでございます。

 もちろん各個人の負担能力に応じて税負担を求めることも重要でありますが、いたずらに高い税率を課すことによって海外に逃げていくなどの弊害もあるところでございます。縮小均衡に陥らないように、額に汗して働く人が、頑張った人が報われる社会を目指して、三本の矢によって、企業の収益機会をふやし、雇用や所得の拡大につなげていきたい、このように考えております。

西野委員 せんだって麻生大臣にも教えていただいたようなものですけれども、政治はゼロ、一〇〇じゃない、両極端という道はないんや、その間のどこをとっていくか、これがまさに政治だという御答弁ありましたが、私もそのとおりだと思っています。

 ですから、今の安倍総理の御答弁もごもっともなところもあるんですが、ただ一方で、恐らく、世の中の人に聞いてみたときに、国を担うという意味で自分が負担している部分と受けておられる給付と、割合を考えたときに、負担の方が軽いと思っておられる方はほとんどいらっしゃらないと思うんです。

 でも、現実はどうかというと、赤字国債も発行しているわけですから、負担よりも給付の方がはるかに多いと思うんです、現実は。負担の方が多い方というのはほとんどいらっしゃらないと思うんですが、総理のこれはもう感覚的な部分で結構ですので、世の中で、自分の負担の方が実は軽いんだと思っておられる方の割合というのは、どれぐらいいらっしゃると思いますか。

安倍内閣総理大臣 そこは非常に難しいところなんだろうなと思います。

 給付をするためには必ずどこかで誰かに負担をしてもらわなければならないわけでありまして、それぞれ個人が自分がずっと積み立てているものからおろしていくということではなくて、みんなで助け合っていくという形になっているわけであります。では、実はどれぐらい自分は今まで社会保険料や税でこの国を支えてきたんだろうか、一方、それに対してどれぐらい給付を受けているんだろう、そういうことを普通なかなか考えないということなんだろう、このように思います。

 しかし、そもそも社会保障というのは、健康保険もそうなんですが、健康で最後まで行ければ、これはもうラッキーだったなと、幸せを感じながら人生を終えていくんだろう、このように思いますが、一方、不幸にして病を得る場合もあります。そのときに、やはりこれは給付を得ながら何とか再起を図っていくわけでありますが、給付を得たからといって、それがその人にとって幸せだったかどうかということよりも、そこで給付を受けることができる社会自体が立派な社会なんだろう、私はこう思っているところでございます。

西野委員 そうなんですが、やはり皆さんが、どれだけの負担をしてどれだけの給付を受けているのかということを実感として感じれば、国民の皆さん、全ての皆さんが、この国を支えているんだという意識も出れば、税金の使い道についてももっと厳しい目を向けられると思いますし、給付についても、例えば切り下げられるようなことがあっても、納得もいただけると思うんです。

 ですから、皆さんがどれだけの負担をしてどれだけの給付を受けているのかということをまず自分で感じることというのが僕は大事と思うので、そういう意味でも、全ての皆さんが同じような形で、できるだけ税制はフラットにしていくべきだというのが私の主張でもありますし、会の主張でもあるわけです。

 それとあわせて、皆さんがどれだけの負担をしてどれだけの給付を受けているのかということを感じるためには、自分の所得とかまた給付を明確に人にも把握してもらい、また自分もしっかりと把握できるということが大事だと思うんです。

 内閣府の方でマイナンバー法案を用意されています。いろいろと質疑もさせていただきました。この法案は、私は、今までと比べてかなりの前進をしたと思います。前進だと思いますけれども、どうせやるのであれば、今回ではなくてもいいので、将来にこのマイナンバーを全ての銀行口座、全てのいろいろなそういったお金の出入りするところにはこのマイナンバーをつけていくことが僕は大事だと思いますし、それを想定するべきだと思っています。

 また、社会保障の部分でも、行政の効率もこれで上がると思いますし、例えば税の徴収であったり、いろいろな徴収の行政手続でも、マイナンバーをつけていると完全に所得を把握できるわけです。たんす預金は別として把握できるわけですから、大事なことだと思います。

 FATFが、マネロン対策であったりとか、テロへのそういった資金供給の温床になるような口座をつくらせないという意味での顧客管理をしっかりやれということで、二〇〇八年に、まだまだ日本の顧客管理ができていない、FATFで、皆さんと協定を結んだ中のことを不履行だということも言われています。

 これを受けて法改正をなされて、口座を開設するときには、どなたが口座を開設したのかということをしっかりと特定していくというような法改正がなされていますけれども、まだまだ、じゃ、その後の運用については十分だということも言えていないと思いますので、このあたりのことも鑑みながら、総理として、このマイナンバー法案、将来に向けて、マイナンバーを普通預金にもしっかりとひもづけをしていくということを含みながらしっかりと検討していくということについて、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 ただいま委員が御指摘をされましたマネーロンダリングやテロ資金への対策については、我が国の法体系、対策の効果、国民の負担等を考慮しながら、関係省庁が連携をして取り組みを進めてまいりましたが、FATFからの指摘も踏まえ、対策をさらに強化をしていく考えであります。

 番号法においては、個人番号等の利用範囲をまずは社会保障、税制等に関する分野に限定をしております。他方、法の附則においては、法施行後三年を目途として、個人番号の利用範囲等の拡大に関して検討を加えることとしておりまして、御指摘のマネーロンダリング対策等における利用についても、この規定に基づいて、法律の施行状況、国民の声等を総合的に勘案して検討すべきものである、こう考えております。

西野委員 時間が来ましたのでこれで終わりますが、以上申し上げました二点、しっかりと検討いただきますようにお願いを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 次に、松田学君。

松田委員 日本維新の会の松田学です。よろしくお願いいたします。

 税は政治の基本だと思います。本日、財務金融委員会、総理がお越しになりましたので、そもそも論というか、基本的なことについて、何点か御質問させていただきたいと思います。

 政治の本来の使命というのは、恐らく国が直面している課題を国民にしっかりと語って説得をしていくということだと思うんですが、どうも、この長年の日本の財政の状況を見ていますと、政治が十分この機能を果たしてきたのかなと。それをあらわしているのが、今のこの先進国最悪の財政状況という感じがしないでもありません。

 よく経済学の世界では市場の失敗という言葉がありまして、そういうときは政府が介入する。でも、政府が介入し過ぎると政府の失敗が起こる。でも、どうも日本で起こってきたのは政治の失敗ではないか。財政の不都合な真実というものをもう少し国民にしっかりと語って、あるべき負担を求めるということが十分できてこなかった。

 基本的に、今の財政状況というのは、高齢化に伴う社会保障の増大であり、そして、赤字国債、将来に資産を残さない、ツケだけを残す赤字国債が、今、国債発行残高の大半を占めるようになってきている。この赤字国債も、考えてみると、建設公債と同じ六十年償還、次の世代、次の次の世代にツケだけを、負担を先送りしているという状況が続いている。六十年償還ですから、なかなかこの償還負担というのは、今の世代には痛みが余りわからない。どうも、この痛みがわからないうちに、いつの間にかこれだけ大きな国債発行残高になっているという状況。

 本来は、社会保障の負担というのは、高齢化とともに膨らんでいくのであれば、その都度国民を説得しながら、それを消費税に求めるのであれば、少しずつ税率を引き上げていくというのが政治の役割だったと思うんです。一方で、無駄の削減も大事ですが、無駄の削減をやったところで、この問題が最終的に解決するわけではない。これもわかっていたことでありますけれども。

 結局、この消費税の増税、先ほどネット増税というのは初めてだという指摘もありますが、これを民主党政権に決断させて、そして自民党が政権に返り咲いたということになっているわけなんですが、よくよく考えてみると、こういう今の事態は予想されたわけなので、長年にわたって政権を担っていた自民党にも今日の財政については責任があるんじゃないかと思いますが、総理の御認識をお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 今日のいわば財政赤字、累積債務等につきましては、その多くは社会保障費の増大によって積み上がってきたわけでございます。

 一方、これは特にバブル崩壊後、日本の金融が危機的な状況に陥ったこともございました。その後、数々の、アジアの経済危機もございましたし、ITバブルの崩壊もございましたし、そしてまた同時テロにおける経済の縮小もございました。そういう状況において、まさに景気の底割れを防ぐために財政出動をせざるを得ない、そういう判断をしてきたことも事実でございます。

 そこで、小泉政権においては、当時の小泉総理は、私の政権においては消費税は引き上げないという約束をされて、たがをかけると同時に、財政健全化に向けて骨太の方針をまとめられたわけでございまして、しっかりと歳出の削減をしなければならないと。これは相当の努力がなされたんだろう。そういうたがをはめないと、なかなかこれは、歳出の削減をしていくというのは、さまざまな関係の中において難しかったんだろう、こう思うわけでございまして、そういう意味におきましては、それぞれの内閣において努力をしてきたんだろうな、こう思うところでございます。

 小泉政権の後、私は政権を引き継いだわけでございますが、これは、小泉政権のときからの努力とあわせて、小泉政権のとき、平成十五年に二十八兆円だった基礎的財政収支の赤字は、平成十九年度には五・五兆円まで低下をしたのでございまして、そういう意味での努力の成果はあったんだろう、このように思います。

松田委員 いずれにしましても、結果としてこれだけ大きな財政赤字という状況なんですが。

 今回、これからまた消費税の引き上げ、ようやく五%から一〇%ということになるんですが、それでも、社会保障四経費、国、地方合わせて、現状で三分の一しか賄われていないのが三分の二に持ってくるだけなんですが、まだまだそれでも足りない。かつ、引き上げた五%のうち、相当部分が赤字国債の発行減というか債務の処理に回るという状況になっているのは間違いないわけです。

 こういった状況に追い込まれたことについて、よく多くの方がおっしゃることでもあるんですが、消費税率引き上げのタイミングというのは、もしかすると小泉内閣から第一次安倍内閣のころにあったんじゃないかという指摘があります。当時は、成長なくして財政再建なしと、政権の方では上げ潮路線がかなり支配的だったような感じもしますけれども、その点についてはいかがでしょうか。

安倍内閣総理大臣 タイミングがいつであったかということについては、これは後世の歴史家に任せたいというふうに思うわけでありますが、私が官房長官であった小泉政権、平成十八年の七月に閣議決定した骨太の方針二〇〇六においては、財政健全化に向けた歳出歳入一体改革として、二〇一一年度に国、地方の基礎的財政収支を確実に黒字化するため、ゼロベースから聖域なき歳出を見直すという方針や、当時の与党税制改正大綱において、平成十九年度を目途に消費税を含む税体系の抜本的改革を実現するとされた考えに沿って鋭意作業を進めていくといった方針を明記したところでございます。

 そして、先ほど、私が第一次安倍政権を率いていたときの基礎的財政収支の赤字の減少については、お話をしたとおりでございます。

 しかし、その後、リーマン・ショック等の影響による財政需要の増加や大幅な税収減等によって、基礎的財政収支は悪化することとなってしまったわけでございまして、自公政権として、今般の社会保障・税一体改革につながる平成二十一年度税制改正附則第百四条を制定して、持続可能な社会保障、財政を実現するための税制抜本改革の道筋を構築してきたところでございます。

 いずれにせよ、大切なことは、今まで歩んできた道を振り返りながら、反省すべき点は反省をしながら、しっかりとした税・社会保障の一体改革を進めていくことによって、財政の再建、そして我が国に対する信認を確保していきたい、このように考えております。

松田委員 非常に長い時間がかかって、ようやく国民がわかってきたということが実態じゃないかと思います。

 先般の総選挙で、日本維新の会、橋下徹代表が街頭演説をすると、その半分ぐらいの時間を、これからは税の問題に国民一人一人が向き合わなければいけないということ、それにじっと傾ける有権者の姿がありまして、大分意識が変わってきたなと。

 つまり、どうしても、増税というのは政治的なタブーなので、これはちゃんと説明してこなかった。歳出を削減すれば、無駄を削減すれば問題は解決する、増税の前にやるべきことがある、結局、そうはいっても、政権をとれば増税を決断せざるを得ない、そういうことを有権者が学んで、もう本当にこれは課題に向き合わなければいけない。

 我が維新の党は、苦しいかもしれないけれども、課題に向き合って解決していこう、そういう立場でありますので、この問題にもしっかりと取り組むべきだと思いますが、その上で、やはり、どの多くの先進国でも、政治というものの一種の欠陥、欠点といいますか、次の世代の方の投票が反映されない、だから、次の世代にちゃんと資源を残すために、今の世代の政治も政府もしっかりと法律で財政運営を縛ろうじゃないかというような試みが随分行われているわけであります。

 ところが、先般、予算委員会で、我が党の藤井孝男議員が質問いたしましたが、それに対する総理の答弁が、持続可能な財政構造を確立するため立法化を含めて検討するというふうに答弁いただいたんですが、その後、それを否定するような御発言があちこちからなされているという状況であります。

 やはり、この点については、日本でもそういうことを採用すべき局面なのではないか。これだけ大きな、先進国最悪の財政赤字を抱えているわけですから、そういうふうに考えますけれども、改めて、次世代に向けた財政責任の立法化について、総理の御所見を問いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 御指摘の、財政運営についてガバナンスを確保するための法制化については、イギリスやフランスのように、財政健全化目標を法定するなどの例があるということは承知をいたしております。

 政府としては、今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と経済再生の双方を実現する道筋について、検討を進めていくこととしております。年央の骨太方針の取りまとめに向けた検討状況も踏まえつつ、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めていく考えでございます。その際、財政健全化の実効性をどのように担保していくかについても検討をしていくこととなる、このように考えております。

 先般、財政健全化の実効性をどのように確保していくかについても検討していく、立法化について藤井議員の質問に答えた際の私の答弁でございますが、その一例としてそれを含めて考えていくということを申し上げたわけでございまして、現時点で具体的な検討を行っているということではございません。

松田委員 税はやはり、将来の日本の社会をどういうふうにしていくか、先ほど西野議員からも質問がありましたが、それに応じて考えていくべきものだと思います。

 先般の財務金融委員会で、社会保障の財源は安定的な財源である消費税でいくんだということを、麻生大臣からも御答弁いただいております。もし、それでいくとすると、二〇一五年度を見ても、その時点で一〇%に上がっても、どう考えても、まだまだ社会保障の財源は相当、三分の一以上不足している。そうなっていきますと、やはりその次の消費税引き上げがあるんだ。それを考えると、消費税率を一〇%台半ばにすることはもう選択の余地がなくて、その先にどういう社会をつくっていくのか。

 例えば、自民党もそうだと思いますが、自立と共助ということをやっていくのであれば、そこから先をできるだけ消費税を上げない社会にするのか。あるいは、民主党は子ども手当をやりましたが、国が個々人の面倒を見ていく北欧型の社会をつくっていくのであれば、消費税率は二〇%を超えるかもしれない。そのあたりも選択肢をきちんと示して、その上で、税のあり方についても国民の議論を喚起していくというのも政治の役割だと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは、松田先生、前々からいろいろ議論の分かれているところだと思いますが、目指す社会というものとして、低福祉・低負担、高福祉・高負担、よく言われる北欧型とかアメリカ型とかいろいろな表現もありますが、日本の場合は、やはり中福祉・中負担ぐらいかなというのが大体のコンセンサスかなという感じは、私自身はいたしております。

 したがいまして、それに合わせて中福祉という今程度の福祉を求めるなら、今の場合は、それを消費税だけで賄うわけではありませんが、少なくとも今の五パーとか八パーぐらいではとてもではないというのであれば、今、アメリカが七、八%、あと州によって違いますので一概には言えないんですが、北欧あたりで一九だ、二〇だ、いろいろなところがありますので、日本としてはどの程度のものを目指されるかというのは、国民の合意を得た上でないと、なかなかそこらのところは、どれぐらいのものになるかというのを、今この時点で、一五がいい、二〇がいいというようなことを安易に申し上げられるような段階にはまだない、私どもの感じではそういうような感じがいたしております。

松田委員 これからの社会は、自立型社会を目指すのであれば、やはりそういう判断を国民ができるようなインフラをしっかりつくっていく必要があると思います、この財政制度においても。

 先日も財務金融委員会で申し上げましたが、消費税で社会保障を賄うということであれば、消費税というのは、高齢世代、現役世代、将来世代、これ全体を国民だとすれば、極端なことを言いますと、国民の間のお金の移転にすぎない。これは政府の懐を潤すものではなくて、国民から国民にお金の移転の仕方をどう配分を変えていくかという議論だとすると、それを一つの勘定に統合して社会保障勘定のようなものをつくって、そうしますと、高齢世代がどれぐらいの負担の状況にあるのか、現役世代はそれに対してどの程度の負担が適正か、あるいは、将来世代にこれ以上負担をやってはいけない、やはり世代としての責任があるんだということになれば、消費税をどうするか、あるいは高齢世代に対する支給をどうするか。

 そういう判断を国民みずからができるように、一般会計から切り出して、消費税収入を歳入として社会保障支出を歳出とする、社会保障勘定のようなものをつくるべきではないかということに対して、先日、麻生大臣から前向きな御答弁をいただいたところでありますけれども、総理の御認識についてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 ただいまの議員の御指摘は、給付と負担の関係についてもう少しわかりやすく国民に対して示すべきであろうと。その結果、いわば消費税に対する、あるいは税に対する理解が深まっていくんだろう、このように思います。そういう御指摘の上において、国の一般会計から社会保障関係の歳出歳入を切り出して特別会計で区分経理すべきという御主張だというふうに理解をしているわけでございます。

 しかし、社会保障の制度の多くは、国ではなくて民間や地方公共団体で運営されておりまして、負担面でも、国税だけではなくて社会保険料や地方税の負担もあるわけでございまして、国の会計制度だけを見直しても、これは問題の解決にはならない。他方、仮に社会保障関係の経理を区分する特別会計をつくれば、一般会計の総覧性が失われるといったデメリットもあることから、そうした対応は考えてはおりません。

 もちろん、政府としても、社会保障の受益と負担の関係をわかりやすく示す重要性は十分に認識をしております。引き続きその努力は続けていかなくてはならない、このように考えております。

松田委員 今までもいろいろな努力をされていると思いますが、やはり、消費税の性格というもの、あるいは社会保障との関係はどうなっているか、ほとんどの国民がわかっていないのが実態だと思うんですね。この努力はぜひどんどんしていただきたいと思います。

 やはり、今、超高齢化社会に入っていく税制の上で大事なのは、私は、自立の社会をつくっていくというのであれば、世代としての自立というか、それが非常に大事なポイントになっているんじゃないかなというふうに思います。

 今の高齢世代、今のままでは、現役世代や次の世代に社会保障を大きく依存する状況になっている、負担を依存する状況になっている。できることならば、この状況を少しでも、高齢世代なら高齢世代の中で社会的相互扶助でやっていくというような考え方に転換していくのが、本当の意味での自立ではないかと思います。

 今回の税制改正法案では、所得税の累進課税の強化が盛り込まれているんですが、いわゆる公平の確保という観点が入っているんだと思います。ただ、我々維新の会は、先ほども西野委員から話がありましたが、やはり頑張る人を応援する、頑張る人が報われる社会、真に手を差し伸べるのは真の弱者であるという考え方の政党であります。その観点から、税率についてはフラット化を主張しているわけなんですが、他方で、税の所得分配機能というのは、今、むしろ世代間の不公平の是正にこそ重点を置くべきではないかというふうに考えます。

 今、日本では、ほかの国に見られない大変奇異な現象が起こっているという指摘があります。これは、いわゆる勤労世代と高齢世代を分けて考えますと、社会の中で貧困ラインを下回る人たちの比率を貧困率というんですが、現役世代の人たちは、政府が所得分配をした後、貧困率がかえって高まってしまう。しかし、高齢世代は貧困率が大きく低下して、これは、日本では、高齢世代の社会保障がしっかり機能しているのに対して、現役世代に物すごく大きな負担がかかっているということをあらわしている、こういう指摘があるわけであります。

 現役世代から見ると、こんな状況でさらに消費税負担というのは冗談じゃない、政府がいろいろな負担をしてもかえって格差が拡大しているじゃないかというのが、恐らく実感ではなかろうか。日本は、消費税率を上げるのが世界で最も難しい国であると言われていますが、そういった背景もあるんじゃなかろうかな。

 また、これは、景気対策という面から見ても、お金を使わない世代に向けて、お金を使う世代から所得移転が大幅になされているということでもありますから、デフレは貨幣的現象と総理はおっしゃいますが、やはり、税制とか、こういった世代間の所得配分のゆがみといいますか、それも大きな原因であろうということを考えますと、もう少しこの世代間不公平に配慮した税制改正があってしかるべきではないかというふうに考えます。

 そういった意味で、もう少し、税体系全体を通じて、例えば子育て家族とかあるいは若年者の税負担に配慮した視点というのが欲しいと思うところなんでありますが、御見解についてお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは、いろいろ御意見が物すごく分かれるのは御存じのとおりなんです。

 子育て世代に対する財政上の、また税制上の施策につきましては、これまでもさまざまな議論が積み重ねられてきていますのは御存じのとおりなんですが、例の十五歳以下の年少扶養控除を廃止して、その財源によって、例えば三歳未満の子に月額一万五千円を支給するといった児童手当などというのが整備されてきたところでもあります。

 さらに、たしか昨年の三月だと思いましたけれども、改正されました児童手当法の附則において、児童手当の支給や扶養控除の廃止による影響を踏まえつつ、そのあり方を含め検討を行い、必要な施策を講ずる旨の規定というのが設けられておりますのは御存じのとおりです。

 そういった意味では、子育て等に配慮した税体系のあり方を検討する場合には、こうした法律の規定を踏まえつつ、現行の児童手当との関係を整理して議論を進めないといかぬところではないのかな。問題はそれだけではございませんけれども、いろいろな点を考えるに当たりましては、今申し上げた点も考えておかねばならぬ点かなと思っております。

松田委員 この世代間の問題、もう少し高齢世代が自立すべきであるという点に関してもう一つ申しますと、日本の個人金融資産千五百兆円、この大半を高齢世代が持っている。ならば、この多くの高齢世代が持っている資産をうまく高齢世代の中での社会的相互扶助に社会保障で生かしていく、あるいは社会保障にそういうお金が回っていくような仕組みをつくっていくということを、もっともっと考えるべきだと思います。

 そういう点でいいますと、消費税というのも社会保障を支える財源として大事なのは十分わかっておりますが、もう少しこの資産課税にも社会保障財源としての着目をすべきではなかろうか。例えば、日本維新の会は、広く薄い年金目的の相続課税、先ほども西野委員が言いましたけれども、そういうものを提案しておりましたが、そういう点につきまして御見解をお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 二十五年度の税制改正という点におきましては、格差の固定化を防止するという観点から、相続税の課税強化というものを行うことといたしております。資産課税ということになろうと思いますが。全般的には資産課税の強化というのは重要な課題だと考えておりまして、そういった意味では、提案の二十五年度税制改正と、ほぼその点に関しては同じ方向なんだと思います。

 社会保障の財源としての資産課税に着目すべきであるという御指摘につきましては、仮に、年金を初め、社会保障財源として相続税というのを、現在約一兆二千億ぐらいですか、年によって違いますが、相当規模に増税する場合には、国民の理解が得られるかという点と、また、相続税の対象となります資産の価格というものは市場の動向により大きく動きます可能性もありますので、社会保障の安定的な財源としてはなかなか考えにくい。適当か、そういった問題もあると考えておりますのが現状であります。

松田委員 自立型社会というのを展望した際に、同一世代の中でやはり受益と負担を完全にバランスさせていくというのが望ましい税制のあり方だと思います。維新の会は、そういう意味で、各世代間で受益と負担をバランスさせていく、世代間の調整をやる場合には、それを国民にはっきりわかりやすく示す。そういうことができるためにも、私の先ほど提案した社会保障特別勘定をつくるとか、あるいは資産の課税についても着目していくとか、そういうことが大事だというふうに申し上げたんです。

 こういう、世代間で、世代の中でバランスさせていくという考え方をもっと徹底していくべきだと思いますが、その点についてはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 委員御指摘のとおり、世代間とか世代内の公平といった観点などから考えますと、受益と負担のバランスを考えることは大変重要なことだ、私どももそう思っております。

 今般の社会保障と税の一体改革におきましては、少子高齢化というのは嫌でも進展してまいりますので、そういった中で、安定財源を確保し、受益と負担の均衡がとれた社会保障制度の構築を目指すというのが基本的な目的なんですが、引き続き、社会保障改革国民会議等々の議論を含め、世代間、世代内の負担の公平化の観点に立った制度の見直しや、社会保障改革のさらなる具体化というものを検討していく必要があるであろうということを考えております。

 また、財政赤字が拡大を続けまして、債務残高がさらに増大していくといった場合には、これは将来世代への負担のツケ回しという問題が必ず出てくることになりますので、さらに不公平感が増大するということだろうと思います。

 これを踏まえまして、こういったものをバランスさせるために、経済財政諮問会議等々においてこの点についても十分に考えて、受益と負担のバランスのとれた社会を目指していくというようにしないと国民の理解が得にくいという御指摘に関しましては、私どもも、国民の理解を得るというところが一番肝心なところかなと思っております。

松田委員 まさに、国民の理解が得られるような仕組みをつくるべきだと御提案申し上げておりますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。

 あと、ちょっと最後に総理にお伺いしたいんですが、今回の税制改正全体を通して見て、アベノミクス、経済再生というのは非常に重要な視点としてこれはわかるんですが、もう少し、自民党が目指す、あるいは維新の会が目指す、この点は共通だというふうな御答弁が結構多いんですけれども、自立型社会をどうしていくか、自立の上に立った共助をどうやってつくっていくか、そういう社会の理念を反映した視点がどうも余り十分反映されていないという感じがいたしておりまして、この点についてこれからどういうふうに考えていくのか、総理の御答弁を求めます。

安倍内閣総理大臣 自民党の基本的な考え方、理念としては、自助自立を基本としつつ、みんなで助け合っていく、公助そして共助、そうした社会を目指していきたい、こう考えているわけでございますが、その中においても、やはり公助において税制の果たす役割は大きいというふうに考えているわけでございます。

 不公平感のない社会をつくっていくということと同時に、やはり困ったときにはみんなで助け合っていくことができる社会を構築していくことが重要なんだろう。日本という国の特性、麗しい点は、税制においても発現していくことはできるのではないか、このように思っております。

松田委員 そういうお考えが反映された税制改正であれば、この改正案にも我々ももろ手を挙げて賛成ができるところなんですが、どうもその点が逆行している面もなきにしもあらずという点が残念な点であります。

 ぜひ、これから、そういった理念が共通であるのであれば、この次の社会に向けて、もっと税制の議論についてもお互いに深め合っていければと思っておりますので、これを最後に申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

金田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党、新人の小池政就です。

 私も、総理には初質問になりますので、大変光栄に感じております。

 私たちも今のところは野党でありますので、いつまで野党かわかりませんけれども、きょうは、野党らしくしっかりと、不十分なところ、また間違っているところは指摘させていただきたいと思います。

 まず、総理に対してデフレの認識をお伺いしたいんですけれども、総理は、予算委員会また本会議におきまして、デフレというのは基本的に貨幣現象である、かつ、金融政策でそれは解決できるということをよくおっしゃられているんですけれども、今でもその認識なんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、その認識でございます。

 しかし、もちろん、先行きに対してさまざまな不安がデフレには大きく影響しているわけでございまして、そうしたことも総合的に勘案する必要があるんだろうと思いますが、基本的には、今委員の指摘された基本的な考え方でございます。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 私は、デフレというのは、やはり将来に対する不安というのがそこにありまして、その不安というのはもっと複雑なものでできているような感じをいたしております。

 当委員会でも、麻生大臣と、例えば賃金デフレについて議論をさせていただきました。政府の方から企業に対して内部留保をどうにかしてくれということだけではなくて、やはり今、経済統合が進んでいる中で、同じものをつくっていけば、結局、賃金というものはだんだんと平準化されていく、その中で、やはり構造改革また規制改革が重要じゃないかという議論をさせていただきまして、大臣もその認識を共有させていただいたんです。

 現在、三本の矢が示されておりますけれども、その三本の矢の中には、具体的な構造改革また規制改革、その方針が見えないところであります。総理に対して、その件をお伺いいたします。

安倍内閣総理大臣 我々は、規制改革を進めていくこと、そしてまたイノベーション、これは日本経済の成長のエンジンだろう、こう考えている次第でございますが、そうしたものを進めていく上で、成長戦略を策定していく上において、我々は、あるべき社会像を設定して、その社会像に向けて国家資源を投入していく、あるいは、さまざまな規制改革を進めていく、そこでもっともっとイノベーションを喚起していくということによって成長に結びつけていきたい、こう考えているわけでございます。

 このあるべき社会像というのは、我々が抱えている課題を解決し、そして、それをさらに世界にも展開していくことができる分野というふうに規定をしているわけでございまして、雇用やエネルギー・環境、健康・医療、創業を重点分野として、経済再生に資するものから優先的に取り組むこととしております。

 規制改革会議において現在議論を進めているところでございますが、規制改革は、経済の活性化、民需主導の経済成長を実現する重要な手段であると考えておりまして、大胆な改革を推進していく決意でございます。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 構造改革、規制改革といいますと、総理も小泉政権で一緒に仕事をされました竹中平蔵さんが名高いんですけれども、竹中さんに対しまして、総理の評価はどのような形でしょうか。

安倍内閣総理大臣 極めてすぐれた能力を持った方、エコノミストであり、そして、何といっても、政策を進めていく上において、国民とコミュニケーションをとる能力がすぐれている方だ、このように考えております。

 そこで、安倍政権においても、産業競争力会議のメンバーとして政策づくりにかかわっていただいておりまして、安倍政権の政策推進にも大きな力を発揮していただきたいと期待をしている次第でございます。

小池(政)委員 それでは、せっかくですので、横にいる麻生大臣にもお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 何を期待しているかはわからぬわけじゃないですけれども、それに期待どおりに答えるほど素直でもないので。

 今、安倍総理が言われましたように、少なくとも、いろいろなものをまとめて、わかりやすい言葉で表現する才能というのは希有なものがあると思います。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 麻生大臣のブログでは、かなり評価が厳しいところをお見受けいたしまして、政権として、ぜひ、既得権益に切り込んだ構造改革、規制改革というものを行っていただきたいと思います。

 次に、財政再建についてであります。

 自民党も、野党時代から財政再建化に向けた法律をつくるということを公約で挙げておりまして、総理も、さきの本会議におきましても、前向きな答弁をされていました。その内容についてお聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 今御指摘になられたのは、財政健全化法についてですか。(小池(政)委員「そうです」と呼ぶ)

 強い経済の再生を図りながら財政の再建を進めることが極めて重要であります。

 平成二十五年度予算については、財政健全化目標を踏まえて、国債発行をできる限り抑制することとして、歳出の必要性等について、内容を十分に精査をし、税収が公債金を上回る状況を回復したところでございます。

 同時に、社会保障・税一体改革を引き続き具体化をして、中長期的に持続可能な財政と社会保障の実現を図っていく考えでございます。

 今後、経済財政諮問会議において、財政健全化と日本経済再生の双方を実現する道筋について検討を進め、国、地方のプライマリーバランスについて、二〇一五年度までに二〇一〇年度に比べて赤字の対GDP比の半減、二〇二〇年度までに黒字化との財政健全化目標の実現を目指してまいります。

 具体的には、年央の骨太方針の取りまとめに向けた検討状況も踏まえながら、財政健全化目標を実現するための中期財政計画の具体化の検討を進めていく考えであります。

 その上で、財政健全化の実効性をどのように担保していくかについても検討をしているところでございますが、先般の藤井議員に対する私の答弁についても御質問されているんだろうと思いますが、立法措置の必要性に関する質問を受けまして、その一例として、それも含めて考えていくということを述べたわけでございまして、現時点で具体的な検討を行っているわけではございません。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 これから取り組んでいかれるということで、あえて、ぜひ考慮していただきたい点を二点挙げさせていただきます。

 一点目は、新規国債発行額の上限というものは、現状、当初予算は対象となっているんですが、今回私も国会議員になって驚いたのは、やはり補正予算のあり方というものを考えていったときに、補正予算に対しても、通年で新規国債発行額につきましても上限というものを考慮すべきではないかなということを考えております。

 また、もう一点が、恒久的な歳出削減を行うこと。これは、中期財政フレーム、先ほど、これには縛られないというお話もありましたけれども、こちらにも書かれているものでありまして、これをより明確化していただきたいと思います。

 この二点について、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 補正予算の話ですけれども、補正に関しましては、経済は生き物でして、年初に考えたときと後半というものを考えたときには、情勢が全く変わるというのはよくある話であります。

 少なくとも、昨年の九月―十二月を見ますと、成長率マイナス三・五%まで昨年は下がっておりますので、このままいくと、これは間違いなく底割れしかねないという状況が昨年の九―十二月の指標であります。それに合わせて、これは何かしない限りはとてもではないけれどもということで補正を出した。最近の例の一つですけれども。

 そういう意味では、経済の情勢とか、そのときの情勢に応じていろいろなことになりますので、全然出さない年もあれば出すときもある。そういった意味では、これは景気等々が非常に影響いたすところだと思いますが、それでも、なるべくそういったものは低目に出すように心がける、当然のことだと思います。

 それから、もう一点は何でしたか。(小池(政)委員「恒久的な歳出削減です」と呼ぶ)

 恒久的な歳出削減につきましては、これは基本的には、先ほどの御質問の中にもありましたけれども、やはり政府として、どういった国の姿を考えるかによって、これは随分また変わってくるんだと思いますが、今のように中福祉・中負担というのを前提にするのか、もっと高齢化が進んで高福祉でいくのかとか、いろいろな考え方がありますので、その段階で税制のあり方というもののとり方が全然変わってくると思いますので、そういうことも考えながらやっていかないといかぬのだと思います。

 いずれにしても、税制を考えました場合に、こういったものがきちんとした形で抑制されて運用されるようなことを心がけるのは当然のことだ、我々もそう思います。

小池(政)委員 先ほど竹中平蔵さんの名前を挙げましたけれども、竹中さんがよく引用するハーバード大学のアルベルト・アレシナ教授のレポートというものがありまして、OECD加盟国の過去三十五年間にわたる財政データの分析から、経済成長と財政再建とを両立させるという方法を研究されたものです。こちらは、結果としまして、歳出削減、特に社会保障費と公務員人件費、こちらの削減にウエートを置いた財政再建の方が、その後の経済回復に及ぼすプラス効果が大きいという結論を出しています。

 また、言葉は違うんですけれども、先般の当委員会で日銀の白川前総裁も答えていらっしゃいました。デフレ脱却のための金融政策を有効に機能させていくのに、日本の財政が信認を得ていくことはぜひとも必要だと。日銀は政府と共同目標を持ってこれから金融緩和を行っていくと思うんですけれども、やはりその前提として、財政への信認を得るという財政再建が必要だということだと思います。

 少なくとも、私は今、この税制改正におけます減収は一千億から二千億ということになりまして、いつになってその減収が増収に変わるかということも不明である点、また、今回の補正予算の大きな支出を見ましても、これから財政が再建されていくというような期待値を持つことがちょっとなかなかできなくて、非常に不安を抱えております。

 やはりデフレというものは、期待値をいかに継続的に維持するかということが大事だと思いますけれども、改めて総理に、財政健全化におけます取り組みというものをお聞かせいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 財政健全化に向けて歩みを進めていくためにも、まずはデフレから脱却をしなければならないわけでございまして、このデフレ下にあって国民は五十兆円の所得を失っております。そういう大きな富が失われたわけでありますから、税収も減っているのは当然のことであろう、こう思います。

 そこで、デフレから脱却をして経済を成長していかない限り、財政は再建しない。同時に、無駄な歳出はできる限り減らしていくのは当然だろう、このように思います。同時に、来年から、伸びていく社会保障費、あるいはまた子育て等に対する費用のために消費税を上げていくことをお願いしていくわけでございますが、そうしたことをしっかりと進めていくことによって財政の健全化に向けて歩みを進めていきたい、こう考えております。

小池(政)委員 ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 次に、資産デフレの話も麻生大臣がよくおっしゃられるんですけれども、資産デフレというのは、やはり、金融資産でありますとか、または実物資産の価値が非常に低下しているということが現象としてありまして、その一つの施策として、今回、税制改正にもありますように、投資を活発化させる日本版ISAという項目が入っております。こちらは、利益が出た際の税を減免するという目的だと思うんですが、一方で、投資の損が出ても安心できるように、損益を通算できる制度を拡充するということも大事だと思います。

 この件に関しても麻生大臣と議論をさせていただきましたが、資産デフレの一つの施策としまして、土地というものもこの損益通算の対象に加えるべきではないかなと思いますけれども、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 資産デフレというのは、株の場合は九〇年から、御存じのように、当時三万八千九百十五円、これが最高値だと思いますが、土地は九〇年、九一年とずっとまだ上がっていまして、九二年からいきなりどんと不動産という名の資産も下がったんだと存じますが、やはり資産デフレの場合は、この動産のデフレと不動産のデフレと両方が二年ぐらいの間に一緒に来たというのが最も大きかったんだと思っておりますが、いずれにしても、過去六十年ぐらいで初めてのことが起きておりますので、いろいろな意味でその対応に追われたことは確かだと思います。

 今回の金融所得課税の中において、対象に公社債を含めますということで今回の改正をやりつつあるんですが、これは、意図的な租税回避の防止、物すごく簡単に言えば脱税、そういったようなことにも十分に配慮しつつ検討をしていかなきゃいかぬのでありまして、暦年課税である中において、例えば、上場株式の譲渡損失については特例として三年までの繰り越しというものを認めておりますのは御存じのとおりなので、この所得税は、上場株式の譲渡損失と相殺できるという意味において、外国とは異なって、対象範囲が配当まで認められているというのは日本だけだと思いますので、さらに今回の税制改正で、損益通算課税が公社債の譲渡益、利子にまで拡大することとしております。

 こういったもので、今じっとしておりますいろいろな意味での個人金融資産、一千五百兆とかよく言われます、そのうち、現預金八百何十兆と言われている個人金融資産というものがこういったものに向く方向になりますと、我々としては、企業、景気、そういったようなものの活性化につなげ得る、株式はもちろんのことですけれども、そういったものにおいて、いろいろな意味で、預金、現金がさらなる投資に向かう一助になればと思っております。

小池(政)委員 土地の取引に関する損益通算は平成十六年度に廃止されまして、そこからやはり土地の取引というのが非常に少なくなっているところでありますから、ぜひこれをもう一度見直していただきたいと思いますとともに、やはり、土地の資産の価額が高くなれば、銀行も担保価値を認めて、貸し出す余力というものがふえてくると思いますし、それによって、設備投資の活性化につながって、また実体経済を強くしていくという方向にもつながる重要なことだと思います。

 この点につきまして、総理の考えをお聞かせいただけますでしょうか。

安倍内閣総理大臣 基本的な考え方としては、ただいま麻生大臣から答弁したとおりでございますが、いずれにせよ、デフレから脱却をし、同時に、景気を回復し、経済を成長していく上において、投資を活発にしていく必要は重要なポイントなんだろう、このように思います。

 そういう観点からも税制改正について考えていく必要もあるんだろう、こう思うわけでございますし、また、この資産効果ですね、資産がふえていくことによって、それを担保に銀行からお金を借りることもできるわけでございますし、投資も活発になっていくんだろう。

 いずれにせよ、そうしたことをあわせて勘案しながら、さまざまな政策を実行していくことによって、デフレ脱却、また成長に結びつけていきたい、このように思っております。

金田委員長 小池政就君、時間が参りました。

小池(政)委員 はい、わかりました。

 ぜひ、その期待値をしっかりと継続させていただくようにこれから取り組んでいっていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 今議題となっております関税法案は、国境措置にかかわる問題であります。それに関連して、今焦点となっておりますのはTPPの問題です。

 我々は、TPP交渉に参加することには反対でありまして、これは日本国民に甚大な被害をもたらし、国の土台を危うくするものであるということで、参加すべきではないということを主張してまいりました。

 きょう確認しておきたいのは、投資分野の中核的な規定でありますISD条項についてです。

 簡単に言いますと、この条項は、多国籍企業が、進出した先の政府から不当な法律や規制で損害を受けたとみなした場合、国際的な第三者機関に仲裁を申し立て、認められたら賠償金を獲得できる、こういう制度です。

 そこで、自民党が二月十三日にTPP交渉参加に対する基本方針というものを発表しておりますが、その中に、「国の主権を損なうようなISD条項は合意しない。」というふうにしております。

 総理に伺いますけれども、国の主権を損なうといいますが、それはどういう意味でしょうか。

安倍内閣総理大臣 ISD条項については、御承知のように、我が国がこれまで締結をしてきた十五の投資協定、そして九つのEPAにも規定されているわけでありまして、新しいものではないわけであります。締約国が必要かつ合理的な規制を行うことを妨げるものではございません。

 TPP交渉においては、これまで得られた情報によれば、投資の保護と国家の規制権限の確保との間の公平なバランスを保つことで、ISD手続の濫用を防ぐための規定が検討されているというふうに承知をしております。

 国の主権を損なうようなISD条項には合意しないという党の基本方針は、さまざまな協議を経て、党の英知を集めて取りまとめを行ったものでございますが、今後、交渉を行っていく中において、今交渉を行っているわけでございまして、具体的な内容について言及することは適当ではございませんが、TPP交渉においては、国の主権を損なうようなISD条項には合意をしないということでございまして、自民党の決議については、しっかりとそれを胸に刻んで、強い交渉力を持って、国益を最大限に実現するように全力を尽くし、結果を出していきたいと考えております。

佐々木(憲)委員 自民党のTPP対策に関する決議というのが三月十三日に行われておりまして、そこには、「政府調達、金融サービス等について、我が国の特性を踏まえることなく、国際調和の名の下に変節を余儀なくされるのではないか、といった様々な懸念が示されている。」というふうに書かれています。

 また、TPP検討委員会第二グループの検討結果の中には、我が国が訴えられる危険性が高まる可能性、国内投資家に対して海外投資家を過度に利するおそれを内包している、こういう指摘があります。

 そこで、具体的にお聞きしますけれども、裁定を下す第三者機関、これはどのようなものがあるか、外務省、説明していただきたい。

正木政府参考人 お答えいたします。

 通常、投資関連協定では、投資家と投資受け入れ国が選定した仲裁人から成る仲裁裁判所が裁定を下します。その際に付託できる主な仲裁としましては、投資紛争解決国際センター、ICSID条約による仲裁、国際連合国際商取引法委員会、UNCITRAL、国際商業会議所、ICC、及び、ストックホルム商業会議所仲裁協会、SCCの各仲裁規則による仲裁が挙げられます。

 なお、これらの機関の事務局は、仲裁の行程の管理などの手続的な側面的な支援を行うことはございますが、仲裁範囲の判断に影響を及ぼすことはございません。

佐々木(憲)委員 今、複数の機関が挙げられました。

 この第三者機関と呼ばれる組織の特徴はどうなっているか。不利益を受けた外国企業、多国籍企業が、このうちの一つを選択して訴えを起こすわけです。その場合、仲裁人は三人しかおりません。紛争当事者同士が一人ずつ推薦し、あとの一人を両者の合意で選ぶ、こういうことになっております。そして、この三人の多数決で裁定を行う。それから、上訴の仕組みはない。こういう理解でよろしいですか。

正木政府参考人 お答えいたします。

 今先生御指摘のとおり、一般的には、投資関連協定に基づく国際仲裁においては、仲裁裁判所の裁定は、仲裁人の多数決で決定いたします。

佐々木(憲)委員 総理、これは外国企業、多国籍企業が国を訴える仕組みなんですよ。しかも、その裁定にその国の国内の司法権は及ばない。これは一体どこに主権があるんでしょうか。国の上に企業を置くようなものですよね。

 これは主権を侵害する制度ではないかと思いますが、どうですか。

安倍内閣総理大臣 そもそも、この協定を結ぶ上において、これは、TPPについてはマルチ、多国間で協定を結んでいくわけでございますが、既に、先ほど答弁をさせていただきましたように、関税協定等において十五の国々と我々は協定を結んでいるわけでございます。この協定を結ぶ際に、我が国はそれを了解し、それによってむしろ国益は守られるとお互いに判断し合っていわば協定を結んでいくことになるわけでございまして、いわば主権とのかかわり、そしてその合理性等、バランスをとりながら運用していくことが正しいわけでございまして、交渉をしていく中において、そうしたものが損なわれることがないように交渉をしていく考えでございます。

佐々木(憲)委員 この制度自体の問題点として、企業が国を訴えて、それを第三者機関が認めたら損害賠償を行う、こういうわけでありまして、企業が損害が生じたと認識して第三者機関に訴えた場合、結論が出たら、これはその上に上訴できないんですよ。もう結論は一発で終わり。ですから、直ちに国民の税金で損害賠償をするということになる、そういう仕掛けですね。確認したいと思います。

城内大臣政務官 佐々木委員の御質問にお答えします。

 我が国は、投資関連協定を締結するに当たりまして、国内法との整合性の観点から、必要な範囲で留保及び例外規定を置いてきております。我が国が法令に基づき合理的で必要な規制を行っている限り、仮に国際仲裁を提起されたとしても、協定違反が認められることは通常想定されておりません。

 その上で申し上げますと、万が一、仲裁廷が、我が国の協定違反により投資家に損害が生じたことを認定し、金銭等による賠償を命じた場合には、国際約束に従って賠償することになります。賠償金を支払う場合には、国庫から支出することになると考えられます。

佐々木(憲)委員 仕組みはそういうことになっているんですね。

 この裁定では、不利益をどれほどこうむったかということが争われるのが基本でありまして、その国内の国民の健康や安全、あるいは環境保全にとって必要だということで、その制度がなぜ必要になったのかということについては争わない。つまり、不利益か不利益をこうむっていないか、それはどれほどか、これが争われるというのが基本だと思いますが、いかがですか。

正木政府参考人 お答えいたします。

 通常、このISD手続に基づきます仲裁廷が示し得る判断は、御指摘のように、損害賠償あるいは原状回復ということに限られます。したがいまして、仲裁廷が、投資受け入れ国に対し、国内の法令、制度の変更を命じることはできないと考えております。

佐々木(憲)委員 これまで、FTA、EPAを初めとする投資関連協定に基づいて提訴された件数、これが幾らあるか、それを紹介していただきたい。

正木政府参考人 お答えいたします。

 今まで、このISDにつきまして、最も広い統計をとっております機関としまして、国連の貿易開発会議、UNCTADがございます。こちらの資料によりますれば、二〇一〇年末までに付託された世界の投資関連協定に基づきます国際仲裁の件数は、三百九十件であると承知しております。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 その中で、アメリカが訴えられてアメリカが負けた件数、これは何件ありますか。

正木政府参考人 今申し上げました件数のうち、アメリカ政府を訴えたものは十四件とされております。

 ちなみに、この統計の中では、国側が敗訴した事例というものは集計しておりませんので、どちらが勝ったかということは承知しておりません。

佐々木(憲)委員 アメリカが負けた件数はゼロであります。

 北米自由貿易協定、NAFTAを結んでおりますカナダ、メキシコの場合、これまでにISDを使って四十六件の提訴があったと言われておりますが、この原告のうちアメリカ系企業は何件でしょうか。

正木政府参考人 お答えいたします。

 先生御指摘のとおり、今の国連貿易開発会議、UNCTADが公表している投資仲裁データベースによれば、一九八七年から二〇一〇年までの間に、NAFTAに基づく投資仲裁の事例としては、四十六件が掲載されております。そのうち、アメリカ国籍の企業が仲裁に付託した事例は、三十件と承知しております。

佐々木(憲)委員 圧倒的にアメリカ系企業がこの条項を使っているわけです。

 いかにアメリカが有利に使ってきたかということを示しておりますが、具体例として、アメリカの企業がカナダとメキシコから多額の賠償金をかち取った事例、これを紹介していただきたいと思います。

正木政府参考人 お答えいたします。

 NAFTAにおきまして、カナダが敗訴し多額の損害賠償の支払いを命じられました事例としましては、廃棄物処理事業者であるSDメイヤーズ社がカナダを訴えた事例というものが挙げられます。仲裁廷は、カナダの内国民待遇違反を認定しまして、損害賠償として約三百八十六万ドル及び利子の支払いを命じたと承知しております。

 また、メキシコの例ということでございますが、メキシコが敗訴し多額の損害賠償の支払いを命じられた事例としましては、甘味料の製造企業であるアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド・カンパニー、それからテート・ライル・イングレディエンツ・アメリカス社がメキシコを訴えた事例があると承知しております。仲裁廷は、この事件に関しましては、メキシコの内国民待遇違反というものを認定いたしまして、損害賠償として約三千三百五十一万米ドル及び利子の支払いを命じたと承知しております。

佐々木(憲)委員 企業が国を訴えて、そしてその企業の言い分が認められたら、直ちに国民の税金を使って賠償金を払う、こういうことになるわけです。

 今紹介を受けました事例は、環境問題などに関連して起こったものであります。国内事情によって環境保護のルールなどを変更する、つまり、より強くするというような場合、それによって多国籍企業が損害を受けたということで訴えた場合、企業の言い分が認められると国は税金で支払わなきゃならぬ。

 これは非常におかしな話でありまして、しかも、結果的には、多国籍企業の言うとおりの制度にしなければ、いつまでも、何度でも訴えられるという話になるわけでありまして、主権侵害の極めて重大な仕組みだと思いますが、安倍総理はそういうふうに思いませんか。

安倍内閣総理大臣 この仕組みは、相互に協定を結んででき上がる仕組みでございまして、先ほど申し上げましたように、投資協定の中において十五の国々と日本は既に結んでいるわけでありまして、当然、これは、日本の企業も相手国政府を訴える権利を得るわけでございまして、相互にとって平等な条約であります。

 当然、米国がいわばそういう今までの事例において勝訴をしている事例が多いということは十分に承知をしております。その上において、TPPについては、十一カ国が加盟をしておりますから、そういう国々ともいわば情報交換等をしながら、よりよい形にしていくことが必要であろう、こう考えております。

佐々木(憲)委員 国家主権を非常に強く主張される安倍総理にしましては、極めて納得できない答弁であります。日本の企業も訴えることができる、相手も訴えることができると。しかし、こういう制度自体が国の主権を危うくするということに、どうも気づいていないようであります。

 最近、おくれて交渉参加を表明したカナダとメキシコが、アメリカなど既に交渉を始めていた九カ国から、交渉を打ち切る権利は九カ国のみにある、既に現在の参加国間で合意した条文は原則として受け入れ、再交渉は要求できないという、極めて不利な追加条件を承認した上で参加を認められていたというふうに言われております。これは事実ですか。

安倍内閣総理大臣 メキシコとカナダが本件について今立場を明らかにしていない中において、メキシコ、カナダとTPP交渉参加国とのやりとりの内容について、第三国である我が国がコメントする立場にはございません。また、我が国に対して御指摘のような条件が提示をされているということはございません。

 他方、交渉開始から既に二年が経過をしているわけでございまして、既に合意されたルールがあれば、おくれて参加をする我が国がそれをひっくり返すということは難しいというのは厳然たる事実であります。

 いずれにせよ、我が国としては、可能な限り早期に交渉に参加した上において、強い交渉力を持って、主張すべき点、国益はしっかりと守っていきたいと考えております。

佐々木(憲)委員 しかし、コメントできないというわけですけれども、現実に何が起こっているかを十分把握できずに、ともかくやみくもに参加だ参加だという話は成り立たないと思いますよ。

 自民党の検討委員会では、ISD条項の除外を前提に交渉に臨むべきだと言っていますけれども、このTPPというのはパッケージになっているわけです。一つの条項だけを除外したり拒否するということはできないんじゃありませんか。

安倍内閣総理大臣 自民党としては、ISD条項についても、国益にかなわなければならないということを政府に要求しているわけでありまして、我々も当然、国益にかなうものでなければならない、こう考えているわけでございます。

 そこで、先ほども申し上げておりますように、このTPPについては、これはマルチの交渉になるわけでございまして、TPPに参加をしている国々とEPAあるいは投資協定においてISD条項を結んでいるところもあるわけでございまして、なぜ結んだかといえば、それは、我が国にとってそれは利益になる、こう考えたわけであります。

 そうした意味においても、このTPPにおいて日本の主権が守られるのは当然のことでございますが、国益という観点からも、このTPPにおいてISD条項がよりよいものとなるように交渉していきたいと思っております。

佐々木(憲)委員 国益、国益というふうにおっしゃいますけれども、この条項の内容、それから提訴の仕組みなどを見ますと、国家主権そのものを侵害する内容になっているということは極めて明白であって、そういうことを十分に知っていながら、あるいは知らないというのもおかしな話でありまして、それでいながら、それに参加することだけを優先させる、これは非常に重大な事態を招くということを最後に指摘しておきまして、終わりたいと思います。

金田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 総理、大変お疲れだと思いますが、最後に少し御質問をさせていただきたいと思います。

 私は、所得税法等改正案の中で、税制関係、それから財政関係、金融関係と、時間の範囲の中でお尋ねをさせていただきたいというふうに思います。

 まず最初に、二十五年度の税制改正案に対して総理がどのように考えてみえるのか、評価という言い方はおかしいんですが、当然、評価は高いわけであります、御自分で出されたわけですから。だけれども、そこのところをどういうふうに考えてみえるのか、少し掘り下げてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 今回の税制改正案の根本というのは、社会保障・税の一体改革、これを着実に実施していくということが大前提だったというふうに思います。

 そこで、法人税の各種減税措置をやられる、それから所得税の最高税率を引き上げる、相続税、贈与税を見直す、こういうような形でずっと今回の一連の改正案が出されておるというふうに思います。

 この改正事項について、これまでの審議の中でも指摘をしてきたわけでありますが、その改正の効果というのが必ずしも明確ではないんじゃないかな、このように思っております。

 社会保障・税の一体改革に関して言うなら、いわゆる消費税増税のみが先行をして、社会保障分野の改革の議論というのは進んでいない、さらに、低所得者対策についての議論が先送りされている、こういうことだと思います。

 したがって、このままでは、具体的な低所得者対策が示されないうちに消費税増税が決定されてしまうということになるのではないかというふうに私は思うわけでございます。

 このように、今回の税制改正法案は、提案の趣旨とその内容に少し乖離があるのではないのかな、このように思うわけでありますが、総理の御見解を伺いたいと思います。

安倍内閣総理大臣 平成二十五年度の税制改正については、成長による富の創出や社会保障・税一体改革の着実な実施を目指すものとして御提案をさせていただいております。

 その内容においても、機械等の設備への投資額を増加させた企業に対する減税措置の創設や研究開発税制の拡充等により、民間投資の喚起による成長力の強化を図る。そしてまた、所得拡大促進税制の創設や雇用促進税制の拡充により、給与等や雇用者の増大を図る。そしてまた、税制抜本改革法附則の規定に沿って、所得税の最高税率の見直しや、相続税、贈与税の税率構造等の抜本的な見直しを行うこととなっております。提案の趣旨にふさわしい内容になっている、こう考えています。

 また、社会保障に関しては、既に、年金や子育て分野について関係法案が成立をしております。加えて、現在、社会保障制度改革推進法を踏まえ、これまでに六回の国民会議を開催するなど、活発な議論が進められているところでございまして、今後、自民、公明、民主の三党間の協議も踏まえながら、医療、介護分野を初めとして、国民会議で議論を深めるなど、改革の具体化に向けてしっかりと検討を進めていく考えでございます。

鈴木(克)委員 今総理がおっしゃいました、そのことはもちろん承知をしておるんですが、一番問題なのは、先ほど申し上げたように、低所得者の皆さん、そして大方の国民の皆さんが、今のこの流れについて、確かに、株も上がり、そして円安にもなっていく、そういったことについては何も問題はないかもしれませんけれども、何か自分たちが置いていかれておるのではないのかなというふうな感覚を抱いてみえる、そこがやはり私は問題ではないかなということで、冒頭にこのことをお伺いしたということでございます。

 次に、相続税についてお伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 これまで地価が大幅に下落をしてまいりました。そんな中ではあっても、相続税は、バブル期の地価上昇に対応した基礎控除の拡大とか、いわゆる税制構造の緩やかな水準といいますか、要は、据え置かれてきたわけであります。

 しかし、その結果、これは相続ですからお亡くなりになったということになるわけですけれども、そういった方々の課税件数の割合というのが、平成三年の六・八%をピークに、現在では四%前半で推移をしておるということでございます。ここを少し改正していこうというのが今回の相続税の見直しだというふうに思うんです。

 今までは、デフレが長期化をし、地価も下落傾向にあった中でやられてきたわけです。しかし、先ほど申し上げたように、安倍内閣発足後、株価は上昇に転じ、今後は地価についても上昇が考えられます。

 きのう、このように二〇一三年の公示地価が示されました。ここに書いてあるのは、都市部で上昇地点が増加をしたとか、下落率はいずれも縮小し、一部で上昇した地域もあったというようなことで、地価についても明らかに上昇機運に入ってきておる、これはもう御案内のとおりでございます。

 そういう中で、繰り返しになりますけれども、今の相続税の見直し案というのは、いわゆるデフレ下でまとめられたものでございまして、当然、民主党時代にまとめられたということなんですが、しかし、今申し上げたように、地価がどんどん仮に上がっていったということになりますと、これは、ある意味では、想像以上に税負担が発生していくということになるわけですね。

 そこで、何をお伺いしたいかというと、要は、平成三年度の六・八%がよかったのか、今の四%前後がよかったのか。よかったのかというか、では、どこを今目指して、五%なのか一〇%なのか、そういうようなことについて具体的に目標をお持ちであればぜひお示しをいただきたい、こういうことでございます。

麻生国務大臣 鈴木先生、いわゆる適正な課税割合というのがどの程度かというのは、これはなかなか一概に論じることは難しいんだと思っております。

 その上で、いわゆるバブルがはじけた以降の話で、昭和六十年以降の最大の課税の割合は、言われるとおり八%だったんですが、今は、言われますとおり、大体四%ちょいぐらいのところまでずっとということになってきたんです。今般の見直しというのは、大体六%程度の課税割合ということにしたので、これは、過去の水準というものを考えますれば、我々から見たら適正な水準なのではないか、さように考えております。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、今後、地価が上昇をしていくというふうに考えられます。そのときに、では、どういう形で、六パーという一つの目標を今お示しになったんですが、本当にそれがそういうような状況で進んでいくのか、逆に言えば、もっと多くなって、やはりちょっと最初の目標とは離れてきたなというような状況も私は出てくると思います。

 それ以上は申しませんけれども、ぜひひとつ、そういうときは、また臨機応変ないわゆる見直しといいますか、そういうものをやっていただきたいというふうに思っております。

 続いて、財政についてお話をさせていただきます。

 これは、私、予算委員会でも質問をさせていただきました。アベノミクスによって、いわゆる円安が急速に今進んでおるわけです。ただ、その反面、石油やガスや食料といった、いわゆる代替できないものを日本は輸入に頼っております。そのために、円安によるマイナス面というのも明らかに出てきておる。そこにやはり目を向ける必要が私はあると思うんですね、国民の大方はこのことに非常に関心を持っておるわけでありますから。

 いわゆる円安によって生活必需品の価格が高騰し始めておる、国民生活への影響が懸念されておるという状況の中で、政府として、消費税を上げていく、こういうことになるというふうに思います。そうすれば、結局、国民生活へさらなる追い打ちになっていくのではないか、このように思います。

 我が党は、国民の生活が第一の視点で、このアベノミクスというのを注視しております。現段階で申し上げると、率直に申し上げると、安倍政権にはいわゆる国民レベルのきめ細やかな視点が欠けているように私どもには思えてなりません。

 円安によって価格高騰が進む、それから、景気回復による賃金引き上げの恩恵が国民生活の隅々まで及ばないと仮になって、それでも消費税率の引き上げを判断されるということであれば、これはまさに、繰り返しになりますが、国民の生活を直撃することになる、このように思います。

 我々は、特別会計の全面見直しだとか、政治改革だとか、行財政改革だとか、地域主権改革によってやはりその財源というものを捻出していくべきだ、このように考えておるわけでありますが、いずれにしても、今申し上げたことに対しての総理の御見解をお示しいただきたいと思います。

安倍内閣総理大臣 政府としては、三本の矢によって企業の収益機会をふやし、雇用や所得の拡大を実現することで、国民生活に経済成長の恩恵が幅広く行き渡るようにしていくこととしております。この過程では、物価のみが上昇するのではなく、企業の収益力向上の成果が適切に勤労者にも分配されることが重要であると考えております。

 このため、私から、可能な限り報酬の引き上げを行ってほしいと産業界に要請したところでございます。また、平成二十五年度税制改正においては、利益を従業員に還元する企業を支援することとしているところでございます。

 消費税率の引き上げについては、附則第十八条にのっとって、名目及び実質の経済成長率と種々の経済指標を確認して、経済状況等を総合的に勘案して判断をしていく考えでございます。その際、さまざまな経済指標を確認する中で、賃金など、雇用情勢も見ていく考えでございます。

 また、御指摘の行政改革についてでございますが、当然、不断の取り組みを進めていくことが必要不可欠である、こう考えています。今後、行政改革推進本部や行政改革推進会議での検討を通じて取り組みを進めることとしております。

 また、政治改革、地方分権改革についてもしっかりと取り組んでいく考えでございます。

 こうした改革を進めていくということと同時に、消費税については、年金や医療や介護、そうした社会保障費、あるいは子育て、まさにこれは、国民の皆様にとって大切なセーフティーネット、プラス子育ての支援、こうしたものの財源を確保していくものでございますから、むしろこれは国民の生活にも直結をしていくというふうに考えているわけでありまして、そうしたものの安定性、財源を確保していくことも我々政府の大切な責任ではないか、こう認識をしております。

鈴木(克)委員 総理が先頭に立って、各企業に対して、給料を上げてくれ、賞与を上げてくれ、こういうことを一生懸命おやりになっているのは、もちろん私も承知をいたしております。

 ただ、問題は、総理、御答弁はいいんですが、本当に給料を上げたくても上げられない中小零細企業はいっぱいあるんですよ。ここをどうするかというところがやはり問題だということを私は再三申し上げておるわけであります。

 時間の関係がありますので、金融関係で一点、総理と大臣にお伺いをしたいというふうに思います。

 今、総理からも御答弁がありました。三本の矢の話が出ましたね。これは、今から一つ一つ申し上げるまでもないんですが、結論から申し上げて、三本の矢のうち、どの矢に重きを置いていかれるのか。当然、三本ですから、三本に重きを置いていくということなんでしょうが。

 問題は、安倍総理と麻生大臣の間にちょっと考え方のそごといいますか違いがあるのではないかと私は思えるんです。だから、この際、そんなものはないよということであれば否定をしていただけばいいんですけれども。

 では、何が言いたいかというと、麻生大臣は十五日の当委員会で、いわゆる第二、第三の矢、とりわけ三番目の矢が一番肝心だ、このようにおっしゃいました。すなわち、民間の金を動かして実需につなげることが大事だ、こういうことをおっしゃったわけですよね。これは明確にここでおっしゃいました。

 一方で、総理は、二〇〇六年の三月に日銀が量的緩和政策を解除したことについて、日銀の判断が早過ぎたということで、これは二月七日の衆議院の予算委員会を初め、いろいろなところでおっしゃっているわけです。

 そこで、私が感じるのに、総理は、どちらかというと、いわゆる大胆な金融政策といいますか、日銀を中心とした政策というものに対して非常に重きを置いてみえるというふうに見えます。ところが、麻生大臣は、今申し上げたようなことで、そうじゃない、むしろ民間投資を喚起する成長戦略が大事なんだ、このようにおっしゃっておられるんですね。

 もしそうであるならば、総理と大臣と、見解といいますか考え方にもしそごがあるとすれば、これはもう閣内不一致という、そこまで大げさではないかもしれませんけれども、限られた時間ではありますが、この際、ぜひひとつ、御答弁をいただきたい。

 委員長、お二方から御答弁いただくように御配慮いただきます。

安倍内閣総理大臣 私と麻生副総理とは、歩んできた道のりも大分違いますし、考え方にも違う点は多々ございます。ですから、これは人間が別の人間でありますから、タッチが違うところは当然あるわけでございますが、政策の基本においては、もちろん、当然同じでございまして、この三本の矢でもってデフレから脱却をして、力強く経済を成長させ、そして国民の皆様それぞれにこの果実を均てんしていく。この温かい風が各地域に、そして全ての方々に吹いていくようにしていく。

 そのためにこの三本の矢はそれぞれ大切でございまして、ですから、当然、まず一本目の矢を、大胆な金融緩和をしなければ事は始まりませんし、同時に、財政政策を行っていくことによって実需をつくっていく、内需を喚起していく。しかし、ずっといい方向で持続的に経済を成長させていく上においては、やはり一番大切なのは、民間の投資が起こって初めてそれは本格的な動きになっていくということでございます。

 質問に対しての答弁でありますから、その際その際、説明の仕方が多少違ったように見えるかもしれませんが、基本的には、この三本の矢があって初めて経済はしっかりと力強く成長していくわけでございますし、多くの方々からも、こうした政策によって景気がよくなったし、収入がふえたな、ことしよりも来年はいい年になるんだな、私たちは成長していくことができるんだ、こういう自信を取り戻していくことにつながっていく、こう確信をしているところでございます。

麻生国務大臣 安倍総理と麻生太郎とに差があるんじゃないかと。小沢一郎先生と鈴木克昌先生の差ほどないと思うんですが。

 大した差じゃないんであって、三本の矢を同時にやるというのが一番大事なところで、優先順位は、これを一つ、みんな一緒にどんとやるから一九三〇年代に成功しておりますので、同時にやるのが一番大事なところであります。

 私が申し上げたのは、一番目は日銀であり、政府なんですが、三番目は民間が入ってきますので、最終的にここのところが笛吹けど全然踊らなかったらということを特に強調したというところだと存じます。

金田委員長 時間が参りました。

鈴木(克)委員 時間が参りましたので、以上で終わらせていただきますが、ぜひ一つ、私が総理に最後にお願いをしたいと思うのは、前にも申し上げましたけれども、いわゆる強者の目線ではなくて、弱者の視点に立って政策をお進めいただきたい、このことをお願い申し上げて、私の質問を終わります。ありがとうございました。

金田委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 ただいま議題となっております各案中、内閣提出、所得税法等の一部を改正する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案に対する質疑は終局をいたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、所得税法等の一部を改正する法律案に対し、桜内文城君外一名から、日本維新の会提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。山之内毅君。

    ―――――――――――――

 所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

山之内委員 日本維新の会、山之内毅と申します。

 ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、日本維新の会を代表いたしまして、提案の趣旨及びその内容を御説明いたします。

 日本維新の会は、自立する個人、自立する地域、自立する国家を訴えてまいりました。また、現役世代を元気にし、世代間の協力関係を再構築するという方針を掲げております。このような観点から、平成二十五年度税制改正に際して、平成二十五年度中に検討を加えるべき事項を追加することにより、税制に関する我が党の基本的な考え方を示すものであります。

 以下、具体的に申し上げます。

 第一に、最高税率の水準を含む所得税の税率構造全体のあり方について、税負担の累増感の解消を図るため、税率の累進度を緩和すること等により簡素なものとすることを含め、検討すること。

 第二に、相続税について、格差の固定化を防止する観点から、課税標準とされるべきものの範囲、税率構造等のさらなる見直しを行うこと。

 以上が、本修正案の趣旨及び内容であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

金田委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。古本伸一郎君。

古本委員 私は、民主党・無所属クラブを代表し、内閣提出の所得税法等の一部を改正する法律案に賛成の立場から討論を行います。

 民主党は、社会保障・税一体改革に係る積み残し課題について、自民党、公明党と協議を行ってまいりました。

 結果、所得再分配の観点から所得税の最高税率の見直し、格差固定化防止の観点等から資産課税の見直しについて、ほぼ民主党案どおりの形で法案に盛り込まれることとなりました。また、新しい公共の視点から大学への寄附金控除、サラリーマンの視点から特定支出控除の活用、経済活性化等の観点から交際費課税の緩和、贈与税については結婚、出産などを視野に入れる等、民主党の提案どおり、平成二十六年度中に検討する旨が附則に盛り込まれることとなりました。

 よって、本法案には賛成をいたします。

 消費税引き上げの影響緩和対策については、住宅ローン減税の拡充以外、具体案は残念ながら示されておりません。二十六年度改正に先送りされております。目前に迫る消費税引き上げが国民生活及び経済に与える影響を考えれば、対策は急務であります。

 これらについても、民主党提案のとおり、簡素な給付措置、住宅購入に係る給付措置等、医療機関の損税問題への対応等の早急な具体化、自動車取得税の廃止、自動車重量税の当分の間の特例税率による政策増税は廃止すべきであります。

 また、今国会に、民主党政権で成立させた租特透明化法に基づく適用実態調査が初めて報告されました。このデータを生かし、役割を終えた租特等の改廃を果断に行うべきであります。

 社会保障については、自民党、公明党は現状維持の姿勢であり、改革に対する意欲が残念ながら伝わってまいりません。

 税法がここに成立するわけであります。加えて、特例公債に至っては、当委員会での審議なく発行されることが認められるわけでございます。このことの重みを政府・与党は真摯に受けとめていただきまして、社会保障改革を置き去りにすることのないよう警鐘を強く鳴らし、私の討論を終わります。(拍手)

金田委員長 次に、桜内文城君。

桜内委員 日本維新の会の桜内文城です。

 私は、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案に反対の討論、そして、同案に対する日本維新の会提出の修正案に賛成の討論を行います。

 以下、理由について述べます。

 第一に、個人所得課税として、四千万円の課税所得に対し、最高税率を四五%に引き上げる政府案は、我が党が目指す税のフラット化とは真逆であり、断固としてこれに反対します。

 我が党は、民間経済の活力を最大化する小さな政府を目指しており、努力して成功した者ほど懲罰的に税率の高まる累進課税はできるだけ避けるべきです。また、累進課税の強化は、税制の簡素化の方向性にも反すると考えます。

 第二に、相続税の課税ベースの拡大と最高税率の引き上げについては、社会保障制度における世代間格差の是正の観点も含め、より幅広い議論が必要であることから反対いたします。

 我が党は、資産課税については広く薄く課税すべきだと考えています。政府案は、相続税の課税ベースを拡大することにより広く課税すると同時に、最高税率の引き上げによってより深く課税するものとなっています。

 我が党は、課税ベースの拡大によるより広い課税には賛成しますが、そうであれば、税率については、フラット化するとともに、引き下げるべきであると考えます。

 以上、本法律案の問題点を指摘しておきます。

 今後、我が国経済の発展に寄与するとともに、社会におけるさまざまな不公正を是正していく望ましい税制について、積極的かつ建設的に議論を闘わせることをお約束して、私の討論といたします。(拍手)

金田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、所得税法等の一部を改正する法律案に対し反対討論を行います。

 反対する第一の理由は、本法案に約三千三百億円の大企業減税が盛り込まれていることです。

 例えば、研究開発減税は、さらに拡充して五百八十億円規模の減税を盛り込んでいますが、赤字の中小企業には利用できず、資本金十億円以上の大企業に減税額の八割が集中するなど、不公平を拡大するものであります。新設される生産等設備投資減税も同様です。

 賃上げ促進策の目玉として導入される所得拡大促進税制も、一時的な減税措置を設けても利用されないという声が上がっているように、政府の見込むような効果は期待できません。

 また、企業への成長マネー供給のためとして、日本版ISA、少額投資非課税制度など証券優遇税制の拡充がなされていますが、これは、金融資本市場の投機化と所得、資産格差の拡大をもたらすものであります。

 反対する第二の理由は、所得税最高税率見直しと相続税の見直しが盛り込まれましたが、高額所得者等に対する課税強化として極めて不十分であり、一年後に実施予定の消費税増税への地ならしにすぎないからであります。所得格差を一層拡大し、景気を冷え込ます消費税増税は中止すべきであります。

 社会保障の財源は、大型公共事業や軍事費などの無駄遣いをやめること、大企業、富裕層優遇の不公平税制の抜本的な見直しなどで確保すべきであります。

 本法案には、長年、事業者等から要望があった延滞税、延納等に課される利子税の引き下げ、中小企業への事業承継税制、設備投資減税の拡充、復興支援税制の拡充など、評価できる項目もありますが、さきに述べた理由も含め、総合的に判断し、法案に反対といたします。

 なお、関税定率法等改正案のウルグアイ・ラウンド合意に関する暫定税率等の適用期限の延長措置については、例外なき関税化に賛成するものではありませんが、TPPにおいて関税の原則撤廃が大きな焦点となっていること、また、この十年余りを見ても、主食の米については高い関税によって外国からの輸入を一定程度抑えることができていること、これらを総合的に勘案して、法案には賛成といたします。

 以上で討論を終わります。(拍手)

金田委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

金田委員長 これより採決に入ります。

 初めに、所得税法等の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決をいたします。

 まず、桜内文城君外一名提出の修正案について採決をいたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決をいたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、木原誠二君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。古本伸一郎君。

古本委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

  申告件数の増加、滞納状況の推移、経済取引の国際化・広域化・高度情報化による調査・徴収事務等の複雑化に加え、近年の国税通則法の改正及び社会保障・税一体改革に伴う税制改正への対応など事務量の増大に鑑み、適正かつ公平な課税及び徴収の実現を図り、歳入を確保するため、国税職員の定員の確保、高度な専門知識を要する職務に従事する国税職員の処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決をいたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

金田委員長 次に、関税定率法等の一部を改正する法律案について採決をいたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

金田委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、木原誠二君外二名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から趣旨の説明を求めます。木原誠二君。

木原(誠)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 東日本大震災により多大な被害を受けた地域における復旧・復興を図るため、被災者の状況に十分配慮した税関手続の弾力的な対応に引き続き努めるとともに、被災地域の物流・貿易の円滑化、活性化に向けた税関による支援策を積極的に実施すること。

 一 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和ある対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。

 一 最近におけるグローバル化の進展等に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適正かつ迅速な税関業務の実現を図り、また、水際において国民の安心・安全を確保するため、税関職員の定員の確保、高度な専門性を要する職務に従事する税関職員の処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。(拍手)

金田委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決をいたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

金田委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対しまして、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

金田委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

金田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

金田委員長 次回は、来る二十六日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会をいたします。

    午前十一時五十一分散会


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