衆議院

メインへスキップ



第6号 平成25年11月29日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十五年十一月二十九日(金曜日)

    午前九時三十分開議

 出席委員

   委員長 林田  彪君

   理事 伊東 良孝君 理事 越智 隆雄君

   理事 菅原 一秀君 理事 寺田  稔君

   理事 御法川信英君 理事 古本伸一郎君

   理事 桜内 文城君 理事 竹内  譲君

      安藤  裕君    小倉 將信君

      小田原 潔君    鬼木  誠君

      金田 勝年君    神田 憲次君

      小島 敏文君    小林 鷹之君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      田畑  毅君    竹下  亘君

      竹本 直一君    中山 展宏君

      根本 幸典君    葉梨 康弘君

      藤井比早之君    牧島かれん君

      松本 洋平君    山田 賢司君

      安住  淳君    武正 公一君

      前原 誠司君    鷲尾英一郎君

      坂元 大輔君    田沼 隆志君

      三木 圭恵君    上田  勇君

      岡本 三成君    小池 政就君

      佐々木憲昭君    鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   復興副大臣        谷  公一君

   内閣府副大臣       西村 康稔君

   総務副大臣        関口 昌一君

   財務副大臣        古川 禎久君

   財務大臣政務官      葉梨 康弘君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 佐々木克樹君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   原  敏弘君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  桑原 茂裕君

   政府参考人

   (財務省大臣官房総括審議官)           浅川 雅嗣君

   政府参考人

   (国税庁次長)      藤田 利彦君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   北村 治則君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十九日

 辞任         補欠選任

  牧島かれん君     根本 幸典君

  山田 賢司君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     山田 賢司君

  根本 幸典君     牧島かれん君

    ―――――――――――――

十一月二十八日

 消費税増税の中止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一八七号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一八八号)

 同(篠原孝君紹介)(第一八九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二三二号)

 同(宮本岳志君紹介)(第二六五号)

同月二十九日

 消費税軽減税率適用に関する請願(岩永裕貴君紹介)(第三〇一号)

 同(岸本周平君紹介)(第三〇二号)

 同(左藤章君紹介)(第三四〇号)

 同(関芳弘君紹介)(第三四一号)

 消費税増税中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三〇三号)

 同(笠井亮君紹介)(第三〇四号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三〇五号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三〇六号)

 同(志位和夫君紹介)(第三〇七号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三〇八号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三〇九号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三一〇号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八七号)

 中小業者の営業を破壊し、景気を悪化させる消費税増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一一号)

 消費税増税の中止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三一二号)

 同(笠井亮君紹介)(第三一三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三一四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三一五号)

 同(志位和夫君紹介)(第三一六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三一八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三一九号)

 同(笠井亮君紹介)(第三八〇号)

 同(佐藤正夫君紹介)(第三八一号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八二号)

 消費税の増税はきっぱり中止することに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三三九号)

 来年四月からの消費税増税の中止に関する請願(笠井亮君紹介)(第三八三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四四六号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三八五号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三八六号)

 同(志位和夫君紹介)(第四四七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四四八号)

 消費税の増税反対、食料品など減税に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第四四四号)

 所得税法第五十六条の廃止を求めることに関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第四四五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

林田委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として、内閣府大臣官房審議官佐々木克樹君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長原敏弘君、金融庁総務企画局長桑原茂裕君、財務省大臣官房総括審議官浅川雅嗣君、国税庁次長藤田利彦君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

林田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

林田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民主党の鷲尾英一郎でございます。

 きょうは、黒田総裁にも来ていただいておりますので、せんだっての集中審議に続きまして、よろしくお願いします。

 早速質問をさせていただきたいと思います。

 異次元の金融緩和ということで、私も、いろいろ拝見させていただいて、非常に功を奏しているのではないかという立場ではございます。

 今、国債市場を見ておりますといろいろなリスクの要因があると思いますけれども、黒田総裁が、将来的なリスクとして一番大きいリスクは何か、どういうふうに考えているかということをお聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、量的・質的金融緩和というものを実施しておりまして、そのもとで、国債市場において巨額の国債を買い入れるというオペレーションをやっております。この買い入れ自体は長期金利に強力な低下圧力を加えているわけでございまして、長期金利自体、欧米では長期金利が上がる傾向がある中で、〇・六%というかなり低い水準で安定的に推移しております。

 ただ、巨額の国債買い入れが債券市場に与える影響というものは、やはり引き続き注意深く見ていく必要があろうというふうに思っております。

鷲尾委員 債券市場に与えるリスク、どういうリスクが一番、総裁の頭の中にある最も大きなリスクとしてはどういうものなのかという質問だったんですけれども、どうでしょうか。

黒田参考人 債券市場におけるリスクというものはいろいろあり得ると思うんですけれども、国債は、国が財政の必要に応じて発行するものではありますけれども、無制限に発行できるものではなくて、やはり国の財政に対する信認をバックにして発行しているわけでございます。ですから、それが揺らぐようなことがありますと、国債市場が非常に大きく揺れ動くということにもなりかねない。そういうことになりますと、現在行っているような金融政策自体も影響を受けてしまうおそれがあるということは、一つの可能なリスクであろうと思います。

 それから、もう一つというか、幾つもあるわけですが、もう一つは、現在、国債市場も含めて金融資本市場は世界的に関連しておりますので、今のところ、欧米の長期金利が上昇している、あるいは新興国の長期金利がかなり上がっているにもかかわらず、日本の長期金利は低位に安定して推移しているわけですが、そういう国際的な影響というものもよく注視していく必要はあろうというふうに思います。

 それから、国債市場そのものとしては、日本におけるある意味で最大の市場ではあるんですけれども、日本銀行が相当巨額の買い入れを毎月やっておりますので、その市場に対するインパクトというものもよく注視していく必要があろうというふうに思っております。

鷲尾委員 今、前段で、財政に対する信認というのがやはり金融政策にとっても極めて大事だということをコメントいただいたと思っておりますが、その上で、異次元の金融緩和で、今ほど総裁がおっしゃったように、これまで以上に大量の国債を購入しているわけですけれども、それにつきましては、当初、さまざまな混乱が生じました。いわゆる価格の乱高下が一時起こったわけでございます。今は、それこそ今ほど御指摘いただいたように金利も低い水準で落ちついておりますけれども、さまざまなリスクがある中でそういう乱高下が今後起こった場合、日銀としてはどう対処していくかということについてコメントいただきたいと思います。

黒田参考人 御指摘のとおり、量的・質的金融緩和を導入した直後、四月また五月に国債の価格がかなり変動したということで、いわゆるそのボラティリティーも高まっていたわけでございますが、この大きな理由というか原因は、恐らく、予想を超えるような相当大規模な量的・質的金融緩和というものが行われたことから、国債市場がその動きを消化するまでに時間がかかったということもあったと思います。

 いずれにせよ、その後は委員御指摘のとおり安定しておりますけれども、その大きな理由は、消化されてきたということもありますが、特に日本銀行として、市場参加者との密接な意見交換を行ったということ、オペの手法、運営の仕方に弾力的な調整を加えたということ、それから、毎月毎月、年間五十兆円に相当するテンポで国債の残高をふやしていくということで買い入れが進んでいって、金利低下圧力がさらに強くなってきたこと、そういったことから、恐らく長期金利は低い水準で安定的に推移しているというふうに思います。

 日本銀行としては、市場の状況を常に注視して丹念に点検していくということ、弾力的なオペの運営を行っていくということ、そして市場の安定に努めてまいりたいと思っております。

 ただ、財政に対する信認、あるいは国債に対する信認が影響を受けるようなことがあると、それは日本銀行としてなかなか対応の難しい国債市場の動きになるおそれがありますので、そのあたりは、これは政府におかれてということでございますけれども、引き続き財政の健全化に努力していかれるということを強く期待しております。

鷲尾委員 今、総裁から、一つは、政府の信認についてしっかりと努力をしていただきたいという旨のコメント、また、乱高下した場合は、今ほど総裁もおっしゃったように、いろいろなリスクがあると思うんですけれども、インフレターゲティングというところの特徴からいくと、やはり市場との対話というのは非常に大事なんじゃないかな。アメリカでも随分それで苦労されているような気がしております。

 日銀と投資家間のミスコミュニケーションというのは、できる限りこれはすり合わせていかなきゃいけないというのがいわば常識だと思うんですけれども、先ほどの、乱高下があった場合どうするのかということとあわせて、ちょっとコメントいただきたいと思います。

黒田参考人 国債市場は非常に巨大なマーケットでございますので、参加者も多いし、その参加者のそれぞれの期待というか思惑も違いますので、その動きを簡単に分析することは難しいわけですけれども、私どもは、常時、市場の状況を市場関係者からも聞いておりますし、それから、こちらからいろいろな対話を呼びかけて、マーケットの人たちの意向というものも十分踏まえて、オペの手法については工夫をしてきております。

 したがいまして、おっしゃるとおり市場とのコミュニケーションというのは極めて重要であり、今後ともそれに努めてまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 いろいろなリスクがある中で、やはり金融市場で起こり得るリスクというのは、ぜひ、総裁、尽力していただいて、日銀の政策意図が誤解されないようにお願いをしたいというふうに思います。

 続きまして、先ほど来多少なりともコメントしていただいていますけれども、金融市場内のリスクというよりは、金融政策そのものを揺るがすリスクとしてはやはり国債の価格下落リスクが、財政支出、財政の状況に応じて市場の懸念をどうしても受けてしまうということが当然にしてあるわけで、先ほど来御指摘いただいているとおりであります。では、それに対して日銀がどう対処していくかということについてコメントをいただきたいと思います。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、市場に財政の持続可能性に対する疑念が生じた場合には、金利が乱高下、あるいは金利が上昇するというおそれがあります。そうしますと、我が国の経済とか金融情勢に重大な悪影響を及ぼすおそれがございます。したがいまして、こうした事態とならないよう、政府が、中長期的な財政健全化について、市場の信認をしっかりと確保することが重要であるというふうに思います。

 日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取り組みが着実に進んでいくことを強く期待しておりますし、私自身も経済財政諮問会議の一メンバーでございますので、引き続き、そういった政府の財政健全化に向けての取り組みということをよく注視してまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 慎重な言葉遣いで、よく注視してまいりたいと。総裁としては、注視する以上のものを求められる局面についてどうかというところを今私はお聞きしたわけであります。

 ですから、これは一般論として私はお聞きしたいんですけれども、日銀総裁もさまざまな場所でコメントされていますけれども、やはり市場関係者が気にしているのは財政ファイナンスなんですよね。一般論として、政府の財政問題を中央銀行が肩がわりするということは、中央銀行としてどうなのか。いわゆる金融政策論としてどうかというところをお聞きしたいと思います。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますいわゆる量的・質的金融緩和というものは、できるだけ早期に二%の物価安定の目標を達成するために必要なものとして四月四日に導入されたものでございまして、これは、あくまでも物価安定の目標の実現のためということであって、財政ファイナンスでは全くありません。

 もとより、財政ファイナンスに対する懸念を惹起させないという意味では、若干繰り返しになりますけれども、政府が、中長期的な財政健全化について、市場の信認をしっかりと確保することが重要であるというふうに思います。

 したがって、その意味で、日本銀行としては、政府による財政健全化に向けた取り組みが着実に進んでいくことを強く期待しておりますし、御承知のように、一月の政府と日本銀行の共同声明でも、政府は明確に中期的な財政健全化へのコミットメントをしておられますので、それを着実に実施していただきたいというふうに思っております。

鷲尾委員 日銀としても、これだけの大量の国債買い入れをやっているわけですから、財政ファイナンスはしないんだということをこの場でも言っていただけるとありがたいなと思います。

黒田参考人 もとより、現在も財政ファイナンスは行っておりませんし、今後とも、財政のために金融をどうこうするという、財政ファイナンスという考えは全くございません。

鷲尾委員 それでは、次の質問ですけれども、異次元の金融緩和によってそれこそ総裁が期待されているインフレが実現しつつあるというふうに考えておられると思いますけれども、インフレが起きる原因として、これも最近、本当に世間でもある意味一般的になってきていますけれども、インフレ期待があると思います。そのインフレ期待を支える要因として、大きなものの一つとして、潜在成長率に対して足元の成長率が実際どれだけあるかというところが、インフレ期待の大きな支えになっていると思います。

 現在の潜在成長率でいきますと、総裁はどれぐらいとごらんになっていただいて、足元の経済成長率がどれぐらいなのかということを少し御指摘いただいた上で、インフレ期待が今持続しているのはそういった現象によるところが大きいんじゃないかと私は思っているわけですが、総裁はどうお感じになっておられるでしょうか。

黒田参考人 御指摘のとおり、物価上昇率が次第に二%に向けて上昇していくためには、一つは、GDPギャップというか需給ギャップが縮小していって物価上昇率を押し上げていくという要因と、それから実際に物価が上がっていく中で期待物価上昇率も上昇していく、この両々相まって二%の物価安定目標をできるだけ早く、二年程度を念頭に置いて実現したいということで現在進めているわけでございます。

 日本の潜在成長率の推計はいろいろあるわけでございますが、ゼロ%台の半ばから、いずれにせよ一%をかなり下回るところというのが国内の推計でもございますし、IMFなどの推計でもあるわけでございます。そこのもとで、今年度の経済成長率については、私どもは二・七%ぐらいになるだろうと。そして、来年度それから再来年度につきましては、二回にわたる消費税率の引き上げということを含んでも一・五%、一・五%ぐらいの成長になるのではないかと見ておりまして、今年度、来年度、再来年度と、いずれも日本の潜在成長率を上回る成長が続き、需給ギャップが今、内閣府の推計ではまだ一・三%ぐらい残っているようですけれども、それがいずれなくなり、若干のプラスになっていくことで物価上昇率も少しずつ上がっていくということを見通しておりまして、現状、そういった見通しに沿ったところを動いているというふうに思っております。

鷲尾委員 見通しに沿ったように動いているというのは、足元の状況も潜在成長率から実際上回っているという認識ということでよろしかったでしょうか。

黒田参考人 足元がそうなっているというだけでなくて、むしろ今後、今年度後半それから来年度、再来年度と見通して、潜在成長率を上回る成長が続き、需給ギャップが縮小して、若干プラスになっていって、そうした過程で物価上昇率がだんだん上がっていって二%に近づいていくという姿を想定しております。

鷲尾委員 これは、やはり私が冒頭申し上げたとおり、異次元の金融緩和のすばらしい効果だと思っております。

 実際に経済が将来まで非常に堅調に推移していくんじゃないかというところの中で、先ほど総裁がおっしゃっていただいた、一般論として財政ファイナンスというのはとりようがないし、とるつもりもないと、実際、現実に。そして、金融市場のことについては、先ほど来申し上げたとおり、日本銀行として、しっかり市場関係者とコミュニケーションをとりながら、さまざまなリスク要因はあるけれどもそれを潰していくんだという御発言もいただきました。

 ただ、その根本として、財政政策、財政に対する信認がない場合はやはりどうしようもない。手段としては、日銀としてこれは困ると思います。相当困ると思うんです。

 そういう状況下において、私が申し上げたいのは、今、足元の経済成長が促されているわけでありますから、そうなると、ここで本当にそれこそ拡張的な財政政策というのは、私がもし政策担当者の立場に立ったら、できるだけ避けてもらいたいなというのが本音のところじゃないかなというふうに思うんです。どうですか、総裁。

黒田参考人 具体的な財政運営、財政政策につきましては、これは政府、国会で議論されるものであって、私から具体的にコメントすることは差し控えたいと思いますが、一般論として、委員も御承知のとおり、財政政策は、確かに短期的には有効需要を創出するということで景気刺激効果があるわけですが、同時に、我が国の場合は、既に大幅な財政赤字が続いて債務が相当累積しているわけです。そういうことを踏まえますと、やはり財政の持続可能性と、それに対する信認を維持するということが極めて重要だというふうに私は認識をいたしております。

鷲尾委員 そこで、大臣にもコメントをいただきたいわけですが、今るる議論させていただいている中で、金融政策である程度功を奏しているというところ、その中で足元の経済成長が促されているという中で、さらにここで拡張的な、補正予算等も予定されていると聞いておりますけれども、そういったことを今本当にこの状況でやる必要があるのかどうか。国債市場の信認ということも踏まえながらやらなければならないと思いますが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 一般論として申し上げさせていただければ、先生がおっしゃっておられますように、景気が堅調に推移してインフレ率が上昇しているという前提に立ってしゃべれば、拡張的な財政政策は必要ないということになるのは、通常的にはそういうことになろうと存じますが、しかしながら、現状におきましては、デフレ脱却というところにまではまだ至っておらず、まだ道半ばだと思っております。したがって、引き続き三本の矢等々の経済対策というのをやっていかなければならぬものだというのが私どもの考え方であります。

 また、現在取りまとめております五兆円規模の経済対策につきましては、来年の四月に消費税を五%から八%に引き上げることによって、経済成長という面でいきますれば、民間のシンクタンク等々の予想では約二兆円前後のものが下振れするというリスクに対応するために、今後とも経済成長をデフレ脱却からきちっとした成長路線に乗せていくためには、私どもとしては必要なものだと思っております。

 したがいまして、経済政策パッケージというものを果断に実行していくことが日本の経済の再生に向けて大事な、道のまだ過程にあるというように理解をいたしております。

鷲尾委員 財政の信認を中長期的にも確保していくというところからすると、やたら財政政策を拡張的にやっていくというのは余り、よからぬことであると私は思っているわけでありまして、今ほど大臣からも御指摘いただいたように消費増税がやられるわけですけれども、プライマリーバランスの達成ということを考えますと、まだほど遠いわけであります。

 経済成長は当然大事ですけれども、それと同時に、やはりある程度財政支出の削減というのは必要と考えられるところであります。これは一般的に考えて当然だと思うんですけれども、総裁、いかがでしょうか。

黒田参考人 財政を持続可能なものにするということ、財政を再建するということは、日本経済が持続的に成長していく上では不可欠の前提であると思いますし、日本が国全体として取り組むべき課題であるというふうに思っております。

 この点、政府は、いわゆる中期財政計画におきまして、財政健全化に向けた目標とその取り組みを明らかにしておりまして、二〇一五年度までにプライマリーデフィシットを半減させ、二〇二〇年度までにプライマリーサープラスを実現するという決定しておられて、それに沿って今後取り組みが行われるというふうに期待をしております。

鷲尾委員 もうちょっとはっきり言ってもらいたかったですね。期待というか、期待していないものもきっとそこに含まれているとは思うんです。

 総裁に対する質問は以上とさせていただきますので、委員長の御許可があれば、どうぞ御退席いただいても結構でございます。ありがとうございました。

林田委員長 では、黒田総裁、御苦労さまでございました。

鷲尾委員 それでは、質問を続けさせていただきたいと思います。

 まずは、公認会計士法の話から入りたいというふうに思います。

 平成十五年に公認会計士法を改正しまして、公認会計士試験の合格者数は大きく変動しているんです。これは余り一般的な論点じゃないんですけれども、受験者側からすると、大臣ももしかしたら資料をごらんになったかもしれませんが、大きく変動しているんです。これは制度の安定性としていかがかと思いますが、いかがでしょうか。

桑原政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、平成十八年に運用が開始されました新制度による公認会計士試験の合格者数は、当初増加いたしておりましたものの、平成二十年をピークとして減少に転じまして、足元では、新制度の導入以前の水準まで減少しているところでございます。

 これは、平成二十年以降、経済情勢の悪化等を背景として、監査業界の採用数が大きく減少し、試験に合格しても就職ができない者が多数生じてきたことなどを踏まえまして制度の運用を行ってきた結果であると承知いたしております。

 いずれにいたしましても、公認会計士また試験合格者を取り巻く環境を踏まえつつ、私どもとしては、安定的な制度運営に努めてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 安定的でなかったんですね、それが。

 会計専門人材をふやすということで、平成十五年に改正されたんです。社会にあまねくそういう専門人材を行き渡らせるんだという意気込みはよしだったわけですけれども、実際に試験合格者の皆さんがあまねくというわけにはいかなかったんですね、実態としては。

 監査法人も、折しも景気も悪くてなかなか就職が少なくて、未就職者問題が出てしまった。この未就職者問題については、金融庁さんも頑張って取り組んでいただいたと思っていますよ。思っていますけれども、実際、今の試験合格者数は、試験制度改正前の試験合格者数とほぼ変わらないわけですよ。

 そうすると、社会にあまねくそれこそ会計専門人材を行き渡らせるんだという趣旨は、一方でどこに行ったんだという話になりはしませんか。そこは軌道修正されたのかどうか。

桑原政府参考人 委員御指摘のとおり、平成十四年の金融審議会の答申におきまして、公認会計士が、監査業務だけではなく、企業を含む経済社会の幅広い分野で重要な役割を担うことが求められているという考え方が示されまして、こうした認識のもと、公認会計士法が改正されたところでございます。

 繰り返しになりますけれども、平成二十年以降、経済情勢の悪化等を背景に抑制的に制度の運用が行われてきているところでございますけれども、一方で、会計や監査の専門家である公認会計士が経済社会の幅広い分野で重要な役割を担うという考え方自体につきましては、引き続き妥当なものと考えているところでございます。

 金融庁といたしましては、公認会計士が経済社会の幅広い分野で重要な役割を担うことが求められているという認識のもと、公認会計士の活躍の場が広がるよう、引き続き全力で取り組んでまいりたいと考えております。

鷲尾委員 ちょっと質問には真正面から答えていただけていないのかなという気もいたしておりますが、資格として重要だ、重要性は認めておられるんだなと。

 ですから、試験制度で紆余曲折がありまして、合格者数が随分乱高下したというところの中で思いますのは、やはり試験制度の設計というのは、いろいろな関係者がおられるわけですから、よほど注意して行わなきゃいけないということだと思うんです。つまり、会計士に求められている専門的能力というのは一体何なんだろうというところから入らないと、やはりうまくいかない。

 つまり、試験合格者と公認会計士という資格を取得した人たちは、やはり専門的能力に当然ながら差があるわけです、実務的能力だったり実務補習の状況であったりを踏まえて。だから、いわば試験にただ合格しただけでは社会的な有用性という部分ではやはりいかがなものかという認識が少なくとも今もある。しかし、今ほど局長がおっしゃったように、それこそ公認会計士という部分については、広く社会で活用しなければならない、重要性を認めるという話なわけです。

 ですから、では公認会計士の専門的能力というのはどういうものかというところからやはり試験制度に敷衍して考えていただかなきゃ、これまた同じような、変に制度をいじくったらまた変な話になっちゃうわけですから、そこはよくよく考えていただきたい。勢いで何か改正してしまえばいいという話ではないんだということは、ぜひ認識をいただきたいというふうに思います。

 ちょっと大臣に、今までの話を聞いた感想を一言いただけますか。

麻生国務大臣 公認会計士というのは、私どもが会社を経営しているときには余り必要とされていない業種の一つだったのではありませんか、正直なところ。税理士は多かったけれども、公認会計士は余りそういうものではなかった。

 理由は簡単で、日本の場合は、会社を起こすときには、人に、俺は会社をやるから、安住さん、金を貸してくれと言って、金を借りてやるのが日本。ドイツ、韓国、同じようなものだと思います。それに対して、アメリカ、イギリス、アングロサクソンは、俺は会社をやるから、安住さん、投資をしてくれと。これが、先進諸国と言われた欧米、ドイツは違いますけれども、そういったところ。これはスタートが決定的に、金を借りてやったか、金を投資してもらったかで全く違うんだと思います。

 投資をしてもらった方は、当然のこととして公認会計士が発達した。配当する以外に返済する方法がないからだと思います。借入金で起こした場合の方は、金利さえ払っておけば別に返さなくてもいい、会社はずっと赤字のままでもいい、潰れませんから。そういうような、背景が全然違ってきたんだと思います。

 日本も、会社の規模も非常に大きくなり、国際化したおかげで外部のいわゆる資本家の意見なり資本家の声というものが、声なき資本家からだんだん声のある資本家に比率が高くなってくると、公認会計士が発達してきたというより、公認会計士を必要とするような会社がふえてきたというのが今の時代なんだと思っております。私どもとしては、そういうものに合わせて、公認会計士というものが必要なんだという認識を改めて各企業が持たれるようになったというのは、その背景だと存じます。

 したがって、今後ともそういった方向ではあろうと思いますので、今の時代というものを考えれば、今後とも公認会計士の重要性というのは変わらぬ。したがいまして、今のように乱高下した、導入された時代というのと今とは少し、落ちついてきておられますので、私どもとしては、企業の景気が悪くなった点もあるんだとは思いますが、公認会計士に対する意識が変わってきている面に合わせて、公認会計士の必要性というものも高くなってきたんだと存じます。

鷲尾委員 大臣に一つ。戦前は、計理士という資格だったんですよ。戦後、公認会計士という資格が生まれた。それでも足りないということで税理士という資格が生まれた。ですから、おっしゃったように税理士というのは最初からあってという話ではなくて、戦前は計理士という資格だったんですね。その上で、いろいろ資格が戦後分かれてくる中で、それぞれの資格の性質、業務の所掌が違いますから、そういう中で公認会計士は主に資本市場の方を担当しているということでありますから、そこはぜひ認識を改めていただきたいなと思うんです。

 その上で、今、いろいろ公認会計士、公認会計士というのは公認会計士・税理士にもなるわけですね。私も実は公認会計士・税理士なんですけれども。公認会計士・税理士の税務業務についてもいろいろな議論が行われていますけれども、社会的にこの専門的能力について問題視されているようなことが実際起こっているのかどうか、そこの認識について問いたいと思います。

麻生国務大臣 税理士法上、公認会計士となる資格を有する者は税理士となる資格を有するとされているというのに基づいて、現状におきましては、公認会計士である税理士による税務業務について、具体的に大きな問題が生じているとは承知をいたしておりません。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 では、今度は税理士さんの方の話ですけれども、税理士さんは全国で七万人を多分超えていると思うんです。そのうち、国税庁のOBが税理士になれるわけです。その数というのはどれぐらいいるか。

藤田政府参考人 お答え申し上げます。

 税理士登録業務を行っております日本税理士会連合会の調べによりますと、先生おっしゃるとおり、平成二十五年の三月三十一日現在で、税理士登録していらっしゃる方が七万三千七百二十五人、そのうち元国税職員は一万九千三十六人でございます。

鷲尾委員 多いんですよね。結構多くいらっしゃる、国税OBの方で税理士業務を行っている方が。

 もっと言うと、公認会計士から税理士になっている方と比べてもらいたかったんですけれども、ちょっと一言それを答弁してください。

藤田政府参考人 先ほどと同じ二十五年三月三十一日現在ですが、公認会計士で税理士に登録されている方の数は八千三十五人でございます。(鷲尾委員「国税OBをもう一度」と呼ぶ)国税OBは一万九千三十六人です。済みません。

鷲尾委員 多いですよね。その中で、私、いろいろ聞いた話もあるんですけれども、それはちょっと後でまた御紹介いたします。

 国税のOBは、常識的に、一般論として考えますと、税務署をおやめになって例えばその管内で税理士をやる。当然、自分の元部下が税務署内にたくさんいるわけです。当然、いろいろな人脈があります。これは、一般論として考えると、いわゆる天下り問題のアナロジーと考えることもできなくはない。

 もちろん、今おっしゃったとおり、そもそも会社の数も日本は多くて、税務手続をどうしていくのか。国税のOBさんで、いろいろ専門的能力をしっかりと生かしていくという方向性は当然大事だと思っていますし、そのことがいい悪いという単純な議論をするつもりはありません。ただ、そういう人間関係がかなり色濃くある中で、実際どういう監督体制があるかというところをちょっとお示しいただけたらなというふうに思います。

藤田政府参考人 税理士業務の適正な運営の確保を図るために、全国の国税局に十一名の税理士監理官それから三十名の税理士専門官を配置しておりまして、いろいろな情報がありましたら、税理士法違反行為があると認められる場合に懲戒処分等を視野に入れた調査を実施しておりますし、全国の総務課でも、各種の情報がある場合などには実態確認を実施しておるところでございます。

 国税OBの税理士のお話がありましたけれども、税理士法四十二条でございますが、離職後一年間は、その離職前一年以内に占めていた職の所掌に属すべき事件、納税者については税理士業務を行ってはならないこととされておりまして、これは、税務職員出身の税理士が退職時の地位、縁故を利用して不当な業務の拡張を行うというような弊害を未然に防止するためのものでございます。

 こういった制度の周知を退職する予定の職員の説明会などで徹底しておるところでございますし、現役職員の側につきましても、OB税理士とのつき合いにおきまして、国家公務員倫理法はもとより、国民の疑惑や不信を招く行為を行わないよう、機会あるごとに会議や研修の場において指示しているところでございます。

鷲尾委員 先の質問までちょっと答えていただいた感があったんですけれども。今、人脈とか縁故を使わずにおくためにしっかりとこっちも通知をしているし、そういう研修もしているし、それで実際に行為規制としては、退職後一年については開業しないんだという話ですけれども、人間社会の一般常識として、どうでしょうかね、一年という期間は。大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 私どもから見てどうですかねと言われても、一年という期間は、不当に業務を拡張している弊害の発生を未然に防止するというのが目的なんだと思います。

 そういった意味で、私は、今の法人会とか青色申告会とかいうのに地元で行かれたことが、燕だったかな、あの辺だったらあると思うけれども、ああいうところに出てきたとき、昔は、三月十五日が過ぎたらみんなで集まって、みんな手間も省けたし、これで終わったし、ちゃんちゃんというので一杯やることに大体なっておったでしょう。みんなやっていたよね。今はどうですか。行ったことありますか。最近ないでしょう。呼ばれないだろう。呼ばれませんよ、全然。全く呼ばれない。何で呼んでくれないんだと。呼ばれないんですよ、全く。

 そして、そこの税務署長が来ると何を持ってくるかというと、何にも持ってこないんですよ。自分でペットボトルを持ってくる。自分でペットボトルをあけて、自分で飲んでいる。これが現実ですよ。昔は一杯出た。今は、一杯出るどころか、自分持ちで来て、全く盛り上がらないままで、しらっとした雰囲気で終わる。

 私はちょっと異常だと思って、お茶ぐらい出したらと言ったら、いや、お茶を出しても飲まないんですというほど、今は徹底して下の方まできているというのが、私がこの三年間ぐらいで会ってみて、ちょっとこの三年ほど暇させていただきましたので、おかげさまであっちゃこっちゃ随分行く機会がありましたので現場をよく見させていただく機会も多かったんですけれども、それが現場だなと思った。上がやると、下が少々行き過ぎているんじゃないかなと思うぐらい。だから、意思が疎通する感じは全くないんですよ。ただ決められているからやってきました、本人は黒いあれからペットボトルをあけて飲んでいてという感じ。

 こういう関係ですから、私は、一年という期間というのを言わせていただければ、そういった意味で、一年が決して短いとも思いませんし、いろいろな意味で、本人の矜持の問題であったり、本人の持っております倫理観、道徳観の問題だと思います。

鷲尾委員 大臣が最後におっしゃったとおりなんです、実は。やはり御本人の道徳観、倫理観によるところが多いと思います。

 私も、何人も知っていますから、国税OBの税理士の先生方がいかに地元のために、クライアントのために頑張っておられるかというのは。本当に公明正大に業務をやっておられる方もたくさんいらっしゃいますので、そういう尊敬すべき先輩たちに何かけちをつけるまねは、私はそんなことをしようとはこれっぽっちも思っていませんが、ただ、中にはやはり不心得者がいるんですよ。縁故、そんなのは大っぴらに出てくる話じゃないですけれども、ただ、先ほど次長も答弁していただいたとおり、三十人という検査官体制の中で、中には道徳観や倫理観の欠如した方もいらっしゃらないわけじゃないんです、不幸なことに。本当に、クライアントの方も苦労しているし、もしかしたら現税務署の方も苦労しているかもしれない。そういう方もいらっしゃいます。

 ですから、私、一つ提案なんですけれども、そういう苦情を処理する窓口なんかを、検査官体制は少ないわけですから、設けたらいいんじゃないかなというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

林田委員長 藤田次長、時間が過ぎておりますので、簡単に。

藤田政府参考人 国税庁では、苦情対応ということで、全国に納税者支援調整官というものを置きまして、税務一般に関する苦情について適切に対応しております。

 それから、国税局ごとに、納税者の税に関する質問、相談に答えるための電話相談センターを設置しておりまして、一般的な税務相談について集中的に受け付けております。

 こういう窓口では、税理士に関します苦情とか、税理士に対する指導監督事務についての相談も広く受け付けておるところでございます。

鷲尾委員 しっかりPRしていただいて、また徹底をしていただけたらというふうに思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

林田委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 おはようございます。日本維新の会の坂元大輔でございます。

 本日は、質問の時間をいただきまして、ありがとうございます。

 きょうは、復興予算の不断の見直しという点と、国土強靱化と財政健全化の関係、両立に関して伺ってまいりたいというふうに考えております。よろしくお願いします。

 それでは、まず最初の質問なんですが、復興予算に関してです。

 東日本大震災の復興予算、民主党政権時代は十九兆円、安倍政権にかわりまして二十三・五兆円という数字が出ておりますけれども、もともとこの数字がどういった経緯ではじき出されているのかという点からお伺いをしていきたいと思います。

 東日本大震災の予算に関して大きな影響を与えたというふうに思われるのが、東日本大震災直後に出された被害額の推計。十六・九兆円という数字を内閣府が平成二十三年の六月に出しているんですけれども、この数字が復興予算の算定に大きな影響を与えたというふうに考えております。

 この被害額の推計十六・九兆円という数字はそもそもどのようにして割り出したのか、見積もりの内訳も含めて教えていただきたいと思います。

佐々木政府参考人 ただいまの内閣府による東日本大震災におけます被害額の推計につきましては、関係各県、関係府省から提供されました、建築物、ライフライン、社会基盤施設などストックの被害額に関する情報に基づき、取りまとめたものでございます。

 主な内訳としましては、住宅宅地が五兆八千九百億円、民間企業の建築物、機械設備等が四兆三百億円、社会基盤施設が約一兆八千二百億円となっているところでございます。

坂元委員 今お答えいただきました被害額の推計の考え方、ストックの被害というお言葉がありましたけれども、これは基本的に、震災、地震や津波によって失ったものやもしくは壊れたものをそのままそっくりもとに戻すにはという考え方に基づいているというふうに理解をしました。

 とするならば、例えば住宅に関して言えば、厳密に推計をしようと思ったら、いわゆる築年数による減価償却分というものを考慮に入れないと算定できないというふうに考えますけれども、そういったことはこの推計には考慮されているんでしょうか。

佐々木政府参考人 この推計額におきましては、例えば住宅につきましては、被害を受けた住宅について、減価償却を反映させた額ではなくて、基本的に、再建するために必要な額ということで計上させていただいております。

坂元委員 済みません、もうちょっと厳密にお答えをいただきたいんです。

 再建というと、つまり、新しいものをつくる、もしくは買うのに必要ということでよろしいでしょうか。

佐々木政府参考人 発生の時点で把握されております建築価額平均単価、こういったものを参考に計算をいたしております。

坂元委員 そうなんですね。ここに大きな問題というか、私は、この十六・九兆円という額がそもそも相当過大に見積もられているんじゃないかというふうに考えております。これは何も私一人の意見ではありません。

 きょう参考資料としてお配りをさせていただいておりますが、これは、早稲田大学の教授であります原田泰先生の御著書もしくは論文等々からとらせていただいたものでございます。

 一ページ目の下の部分をちょっとごらんいただきたいんです。

 これは内閣府が出した推計ではありません。内閣府はその推計の計算方法の詳細について公表されていなかったもので、これは関西社会経済研究所というところが出した推計を載せさせていただいております。こちらは合計の被害額が十七・七八兆円ということで、少し内閣府よりも多い推計になっているんですけれども、それぞれの項目に関する被害額というものが、そんなに大きくはずれていない推計になっています。

 それで、この関西社会経済研究所の推計の出し方なんですけれども、例えば住宅被害に関しては、全壊の場合は、住宅のみで一戸二千万円、そして家財や外構・設備費一千万円、合わせて住宅一戸当たり三千万円、一部損壊の場合は一千万円ということで、非常にざばっと区切った上で、全壊、半壊の戸数を掛けて見積もりを出しています。

 そして、自動車に関しては、被害を受けた自動車三十二万五千五百台に一台当たり平均三百万円という値段を掛けて、〇・九八兆円というふうな見積もりを出しているわけなんです。

 これは、例えば住宅も、当然築年数がかなりたった住宅も相当数あったわけで、それが全壊したからといって、では、その金額が三千万円もいくのかというところもありますし、自動車に関しても、皆さんも現地視察に足を運ばれていると思いますけれども、東京と違って、そんなに一台三百万円クラスの高級車がばんばん走っているわけではなくて、軽自動車であったり軽トラだったりというものもかなりの台数あるわけであります。そういう中で、これが一台平均三百万円という数字で計算をされている。

 こういった過大な見積もりに基づいて、この十六・九兆円という数字が出されているのではないか。

 そして、つけ加えて、資料一ページ目の上の部分も見ていただきたいんです。

 これは各自治体が出してきている被害額の推計になるんですけれども、詳細は省きますが、これを東北三県全て合算をしても、八兆三千五百四十六億円という形になるわけであります。これは、福島県が現地に入ることもできない場所もありますので、推計が出せない数字もあるんですけれども、それを除いたとしても、内閣府が出している推計の約半分の数字しか出てきていないというところを指摘しておきたいと思います。

 とはいえ、震災直後にとにかく一度被害額の推計は出さないといけないということで、ある意味、震災直後の混乱の中、苦肉の策としてこういう推計を出されたという部分ももちろん理解はできます。それに基づいて、十九兆円という復興予算が一旦組まれたわけです。

 ただ、今はもう、二年以上経過して、復興特別会計の決算も出てきているわけですから、そういった決算の内容も踏まえて、この復興予算については不断の見直しというものが求められているというふうに私は考えますが、こちらに関してはいかがでしょうか。

谷副大臣 坂元委員御指摘の、復興予算が不断の見直しが必要ではないかということについては、おっしゃるとおりだと思います。

 ただ、復興の予算につきましては、毎年度、国会で復興事業に必要な予算額を議決いただいて、計上しているところであります。

 現在、政権交代をして、十九兆円から二十五兆円に、これは集中復興期間の事業費ということで、政府の方は必要な事業費ということで捉えているわけでありますけれども、それも、何も推計ではございません。二十三年度、二十四年度の予算、それから今年度予算、そして二十六、七年度も確実に必要だと見込まれる事業費を積み上げて、若干の余裕はございますけれども、それが二十五兆円、そういうことでございます。

坂元委員 確かに、事業費を積み上げて予算を組んでいるわけです。

 ただ、これは以前の質問でも指摘をしましたが、やはり、今の単年度の会計制度の中で、予算を組んだものに対しては基本的に消化をしていく、消化をしたから翌年度もその予算を組むという形、どうしてもそういう考え方になってしまうわけです。そして、もともと当初の復興予算の組み方がこの被害額の推計を参考にしているんじゃないかという指摘をさせていただいたわけで、先ほど鷲尾委員からの指摘もありましたとおり、我が国の現在の財政状況は非常に厳しいわけですから、この復興予算というものも抜本的に不断の見直しというものを怠ることはできないのではないかというふうに考えておるわけでございます。

 では、少し視点を変えさせていただきまして、この東日本大震災で深刻な被害に遭われた方というのは、いろいろな学者の方がいらっしゃいますけれども、約五十万人程度と考えております。これは、避難者の数がピーク時で四十七万人、浸水地域の人口が約五十一・一万人という数字がありますので、約五十万人程度だろうというところです。そして、住宅被害に関しては、全半壊合計で三十九万八千七百七十戸。

 これはかなり単純な計算ですけれども、復興予算が、今二十五兆というお話がありましたけれども、十九兆から二十三・五兆円ということで、仮に二十兆円という数字を置けば、約五十万人の被災者一人当たりに関して四千万円という金額が出てまいります。

 ちなみに、二〇〇四年に起こりました中越地震では、被災者はピーク時で約十万人、住宅の全半壊は一万六千九百八十五戸だったわけですけれども、復旧費は約三千億円弱。これを単純に計算しますと、被災者一人当たり約三百万円という数字になるわけであります。

 もちろん、今回の東日本大震災と中越地震はさまざまな条件の違いがあります。津波の被害であったり、もしくは被害の長期化であったりというさまざまな要素があることはもちろん理解はしますけれども、それでも、この四千万円と三百万円という一人当たりの数字、なぜここまで復興予算がかさんでしまうのか。原発事故という特殊事項ももちろんありますけれども、なぜここまでの復興予算がかかるのかという理由をお答えいただければと思います。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

谷副大臣 大変高いのではないかということで、中越地震、九年前の地震の例を引かれました。避難者は、御指摘のとおり、東日本大震災の場合はピーク時で約五十万人、それから中越が十万人ということで比較をされましたけれども、避難は一時的なものですから、大事なことは、避難者の数ではなくて、例えば、みなし仮設も含めて仮設住宅、それで考えると、九年前の中越地震はピークで三千を切っていました、二千八百か二千九百です。今回は、ピークは幾らかと申しますと、十三万六千であります。単純に考えると一対五十近い、それだけの規模の大きさがあろうかと思います。

 それに、中越なり、あるいは私も経験いたしましたけれども神戸の場合は、地震であります。壊れたものをきれいに整地をして同じ場所に建てるということが基本でありましたが、今回の場合は、新たに丘陵地帯を削って、土地もないわけですから、たくさんのミニニュータウンと申しますか、それらも数百の単位でつくらなければならない。港湾、漁港の被災した数も四百数十もございます。そういったことをあわせて考えるならば、単純に中越と比較して高いということは言えないのではないかと思います。

 なお、加えて、今回の場合、財政力が大変弱い自治体が多いということで、交付金の創設、そして交付金の裏負担も地方交付税で完全に補填するという過去の災害には例を見ないほどの手厚い財政措置を講じているということも、国の全体の復興事業費が膨らんでいる要因であろうかと思います。

坂元委員 今御説明がありましたとおり、もちろん私も単純に比較を、あくまでも御参考ということでこの数字を出させていただいたわけで、おっしゃるとおり、仮設住宅の戸数であったり、山を削ってかさ上げをしたりとか土地区画整理があるんだというお答えでした。それももちろん理解はしております。

 ただ、やはりこの厳しい財政状況の中で、できることはどんどん何でもやっていきましょうというふうに、それはできればいいですけれども、やはりコストというものをしっかり考えた上でやっていかなければならないんじゃないかという点で少し御参考にしていただければというふうに思いますのが、この資料の二ページ目と三ページ目をごらんください。

 浸水地域が県の総面積に対して一番多かった宮城県で、浸水範囲を赤く塗った地図なんですけれども、これくらいの範囲が浸水を受けたという形になっております。県の総面積と比較しますと、もちろん県の総面積全てがいわゆる住める地域というわけではないですけれども、約二割程度という数値になっている、地図で見るとこういう形になるわけであります。

 そして、三ページ目をごらんいただきたいんですけれども、これは石巻市の津波の浸水地域であります。上が二〇一一年の地図で、実は、下が一九一三年の石巻市旧市街地、つまり昔の都市部というか市街地を示している地図なんです。

 これは、下の写真をごらんいただければわかるとおり、写真は東日本大震災のときの写真です。一番わかりやすいのが右側の写真なんですけれども、旧市街地に建っていた住宅というのはほとんど残っているわけですね。それで、左下の写真ですけれども、戦後、スプロール状に新しく広がっていった市街地の側が大きな被害を受けているというわけです。

 そして、最後のページを見ていただきたいんですけれども、これは、建物が全壊をした割合がどれくらいかというところで、右から二番目の、可住地面積、住める面積に対して全壊のエリアというのはどれくらいだったかというところで、最も高いレベルの南三陸町あたりを見ても、一二%ぐらいなわけです。

 つまり、何が言いたいかといいますと、確かに、山を削ってかさ上げをしたり土地区画整理をするということももちろんとらなければならない地域もあるでしょうけれども、今、人口減少の時代ですから、例えば旧市街地に住宅を集積させていくとか、大きな手を入れて工事をしなくても対応できる方法もあるのではないかということを御指摘させていただいております。

 あと、先ほど仮設住宅の話がありましたけれども、仮設住宅は、実は三十平方メートルで約五百万円のコストがかかるわけです。これをちょっと知り合いに聞いたところ、三十平方メートルで五百万円という数字は、一流ホテル以上のコストがかかっているわけですね。ホテルが建ちますよという話も聞きました。こんなに高いのは、国土交通省がプレハブ建築協会に一括発注、つまり、言い方によれば言い値で一括発注をしているからだという指摘もあります。

 そういったできるだけコストがかからないような発注方法や手法というものを、やはり財政という視点から、財務省にはもっと切り込んでいっていただきたいなというふうに思うんですけれども、こちらに関して御意見をお願いいたします。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

古川副大臣 お答えいたします。

 仮設住宅が高過ぎるんじゃないかという御指摘でございましたが、災害救助法に基づく仮設住宅の設置費用につきましては、これは内閣府告示において決まっております。一戸当たりの規模は二十九・七平方メートルを標準とし、その設置のため支出できる費用は約二百四十万円以内ということになっているわけなんですけれども、一方で、災害の状況によりましてはこれでは十分ではないということもあり得ますから、その場合は、国と被災自治体が協議をした上で、基準額の引き上げなど、特別基準を設定できるということになっております。

 高コスト体質にメスを入れるべきだということでございましたけれども、ただいま申し上げましたとおり、今回の災害の状況等を踏まえて、もろもろの状況を経て、例えば岩手県でありますと、この特別基準を申請して、平均が六百十七万円というぐあいに金額が大きなものになってきているということでございます。

 このように結果的に高くなってしまっているという場合もありますけれども、しかし、それぞれの執行省庁において、やはり適切な単価となるように内容をしっかり精査しながら執行されていくべきだし、また実際そのように執行されているものだというふうに認識をいたしております。

 御案内のとおり、財政状況も大変苦しいわけです。無駄というようなものがあってはなりません。また一方で、被災自治体が一刻も早く復興を遂げなきゃならないわけですけれども、その歩みに水を差すというようなことがあってもなりません。ですから、この事業の内容、進捗状況をしっかり精査しながら、適切にやっていきたいというふうに考えております。

坂元委員 もちろん、さまざまな地域の事情があったり、一刻も早くという御要望があることも重々承知しています。ただ、もう少し財政的な視点というものを復興というところに持ち込んでいただきたいということを再度、御指摘というかお願いさせていただきます。

 そこで、国土強靱化でございます。

 今回の東日本大震災を受けて、この国土強靱化ということが言われ、先日、基本法も衆議院では通過をいたしましたけれども、率直に言って、私は、これを実行していくにはコストがかかり過ぎる、国土を強靱化するには相当なコストがかかると考えます、十年で二百四十兆とかいう数字も言われていますけれども。

 そうした意味で、今回の質問の中でも指摘をさせていただきましたが、やはり何を優先すべきかということを決めてかからなければいけない。私は、命だというふうに思っております。とにかく、まず命だけは助けられる、そして、災害を受けても、それを素早く復旧ができる。壊れないもの、壊れない堤防、絶対に津波が来ない場所に全部住宅を建てるということが、それはできればいいですけれども、では、一体お金が幾らかかるんだという話になってくるわけであります。

 やはり優先順位というものをしっかりつけていくべきだろうというふうに考えているわけですけれども、この国土強靱化と財政健全化というある意味二律背反する政策を推し進めていくというふうに今政府は宣言されているわけですけれども、ここに関して、最後に、財政を預かる財務大臣としての見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 財政状況というのが極めて厳しいのは御存じのとおりなので、その中にあって、私どもがこの前の災害から学ばねばならぬところは、何といっても、それは安心、安全ですよ。何となくコンクリートから人へと言って、トンネルが落盤されたら、かないませんから。やはりそういったところも含めて、安心して道路を歩ける。走っていたらトンネルの上から落っこちてくるなんというような状況というのは、どう考えたって、これは間違いなく日本という国の社会基盤が脆弱になっているということを意味しております。

 そういった意味では、荒れるアメリカと言われた一九八〇年代、橋が崩落したりいろいろした御存じのとおりの事故がありまして、多くの方が亡くなっておられますので、私どもは、ああいったことにならないようにするために、あらかじめ手を打たねばならぬ。ああいったものの多くは、間違いなく、一九三〇年代のニューディールのときにつくったものを五十年間いわゆるメンテナンスをしておかなければ、八〇年代後半から九〇年前半になってああいったことになっていったというのは証明されているとおりなので、そういったものをきちんと見た上で、重点化とか、いわば優先順位というのをきちんとつけてやっていかなきゃいかぬところなんだ、私どもはそういうぐあいに考えております。

 したがって、計画というのは、きちんと、安全率を何百%にとるのか何%にとるのかなんて、これは極めて専門的な話ですけれども、そういったものを考えてやらねばならぬ点が一点。

 また、命の話をされましたけれども、そういったことになったときには、やはりこの間の場合でも、新幹線は全てとまったわけですね。あの騒ぎの中で一つの脱線事故も起きなかったわけです。あれはちゃんと、そういったアラームがきちんと鳴るようなものを、衛星からはかってきちんとやるというような一つのソフト。

 こういったようなものも含めて、これはいろいろな意味で民間資金の活用を含めて、私どもとしては、こういった強靱化をしていく上で、少なくとも、この国は有史この方、最近は竜巻まで含めて、自然災害百貨店のごとく、地震、津波、とにかくありとあらゆるもの全てある国ですから、そういった意味では、いろいろな知恵を出してきちんとしたものを建てていかないと。何となく、これが要るから、今取り急ぎ上に上げておけばいいとか、ちょっと高いところにつくっておけばいいというような種類の話だけで簡単に片づけられる話ではないのであって、これまで長い歴史を見れば、岩手県では、何百年前に地震、津波がここまで来ているからといって、そのまた上につくった村長さんという人が当時は非難ごうごうでやめさせられたそうですけれども、今回はそこに移転した人は皆助かったという話もあります。

 きちんと歴史に学んでやっていったところは今回の中では被害はかなり少なく済んでいるということも含めて、いろいろ学ばねばならぬことは多いと思いますので、坂元先生御指摘のありましたように、財政というものと安心というもののバランスというのはきちんと考えてやっていかねばならぬものだ、私どももそう思っております。

坂元委員 財政健全化という視点をぜひ強く持って取り組んでいただきたいと思います。

 終わります。

林田委員長 次に、田沼隆志君。

田沼委員 日本維新の会の田沼隆志であります。

 本日も質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 十一月の冒頭のこちらの財務金融委員会でも質疑させていただきましたけれども、日本維新の会として、財政健全化責任法、正式名称は国の責任ある財政運営の確保等に関する法律案ということで、今月十三日に提出をさせていただいた。さきの通常国会でも提出させていただいたものですけれども、やはりこの内容というのがいかに必要であるか、その意義というのを御理解いただけるような質疑をさせていただきたいと思っております。

 前回の質疑でも、中長期や短期の戦略の必要性ですとか、その実現を何としても果たすために例えば国会の関与をもっと深めるべきでないかとか、あと発生主義、複式簿記会計への転換を、鬼木委員も言われていましたけれども、私たちもそれをこの法案の中で求めておりますので、そういったものを質疑させていただきましたけれども、今回も、再び同じようにお尋ねさせていただきたいと思います。

 まず、財政検証のあり方に関してなんですけれども、かつての骨太、今で言う、正式な名称は経済財政運営と改革の基本方針、六月にいつも提出されております。これは、私たちの財政健全化責任法案で言うところの短期戦略というものに位置づけられるものですけれども、極めて今の予算編成に大きな影響を及ぼしておると理解しております。この六月の骨太を受けて八月の概算要求になっていって、だんだん詳細化していくというふうな位置づけになっていると思います。

 そうなると、前回も指摘しましたけれども、今の我々国会は、予算と決算が最終アウトプットでぼんと出るだけであって、その源流、源の部分がやはりまだよくわからないというか、ここの骨太の中に戦略が埋め込まれているわけですね。ですから、どうしても、最終アウトプットの予算書、決算書がどんと出てくるだけだと、個別の事業の中身のよしあしになりやすい、あるいは全体的な総覧性を確保したままの議論になりにくいという傾向があると、私は新米議員ですけれども感じておるわけでございます。

 ですので、まず、この骨太の位置づけが予算編成の中でどうあるべきなのか。むしろ、この骨太、基本方針が決まりましたというふうに、内閣の中で、経済財政諮問会議の中で決まったというふうな外の話じゃなくて、ちゃんと国会にもそれを報告してもらって、できるならばこれは国会で承認をする、議決を要するべきじゃないか。そうすることによって、今回の骨太がよいものであるか、妥当であるか、いや、ここは改めるべきではないかとか、そういった議論ができる。そうすると、その後の予算編成も一体的に、中身のよしあしというのが審査しやすくなると思うんです。

 国会での議決を要する形にするべきではないかということに関して、御意見をいただければと思います。

西村副大臣 まさに前半部分で委員述べられましたけれども、予算は国会で審議をいただいてしっかりと決定をしていただくということになっておりますので、その過程で骨太の方針、我々はいわゆる骨太の方針と呼んでおりますけれども、大きな基本方針に基づいて予算編成をしたものについてしっかりと御審議いただくわけでありますので、その審議の中で、全体、大きな方向性、あるいは中長期の見通し、こうしたものについても御審議いただけるというふうに理解しております。

 予算の案をつくるところは政府の権限でございますので、私ども、経済財政諮問会議においていわゆる骨太の方針をつくっていただいて、その方針に基づいて予算編成をしていくということでございますので、国会審議の中でそのことについてはしっかり御議論いただければ足りるものかというふうに考えております。

田沼委員 今までどおりいくという御答弁だと思うんですけれども、やはり財政民主主義の観点でも、繰り返しになりますけれども、予算、決算を国会で議決するのみという現状を、もう少しその源、源流の部分からかかわっていけるようにすることは非常に重要であると考えます。運命共同体にもなるという面もございますし、審議の中で議論してほしいという御答弁でありましたけれども、やはりきちんと国会での議決というものを踏まえていく方がより財政民主主義に即していると私は考えるものですから、ちょっと御見解と違うかもしれませんけれども、指摘をさせていただきたいと思います。

 関連して、国の財務書類のことも前回、こちらの青い、これはポイントの方ですけれども、古川副大臣にも御答弁いただきました。国の財務書類をつくられていますけれども、これを全然使っていないじゃないですかという質疑を前回させていただきました。

 徐々に進化はしてきておるとは思うんですね。平成十五年から始めたこの財務書類の作成ですけれども、今、平成二十三年度のが出ていますけれども、だんだんそのシステムもできて、大分ちゃんとできるようになってきたというふうにお聞きしております。これは、皆さん御存じのとおり、発生主義、複式簿記会計での、連結も含めた財務書類でありまして、いわゆる企業会計的な財務書類ですね。

 これは、つくっているだけなんですね。私は千葉市議会議員でしたので、千葉市でも、副大臣御存じのとおり、自治体でもこういうものをどんどんつくり始めているんですね。特に政令市ですからやっておったんですけれども、やはりつくっているだけでした。国もやはりそうですね。つくっていますけれども、ほとんど活用されていない。経営マネジメントに活用されていないとどうしても思えてなりません。

 先日の質疑でも、大臣も、決算というものが非常にこの国会の世界では弱い、不思議でしようがないというふうに言われておりましたけれども、やはりこの国の財務書類をもっと経営マネジメントに活用すべきだと考えています。

 例えば、現状、平成二十三年度の国の財務書類が二十五年の一月に出てきたんですね。物すごく遅いんです。だから、予算編成にほとんど使われておりません。この状況というのは本当に正しいのであろうか。何のためにつくっているんだと。

 やはりPDCAを回すためには、チェックをして、国の財務状況としてこういうふうになっていますというのが見えたら、それをアクションとしてPに反映していかないといけないはずなんですけれども、ほとんどPDCAとして回転しているとは思えません。

 ですので、予算編成にもっと活用すべきでないかと思うんですけれども、御見解をお尋ねします。

古川副大臣 お答えいたします。

 国の財務書類は、要するに、国の財務状況に関する説明責任というような観点から、委員が従来より御主張しておられますように、発生主義あるいは複式簿記というような手法を用いたデータも含めて、できるだけわかりやすくということでつくらせていただいているデータでございます。

 あくまでもそういう目的でございまして、予算編成に当たっての材料にするためという趣旨で作成されているものではございません。

田沼委員 私も調べてまいりました。

 骨太の第三章、「経済再生と財政健全化の両立」「四、実効性あるPDCAの実行」という部分がございます。冊子の方でいうと、お手元にあるかわかりませんが、三十二ページに「実効性あるPDCAの実行」ということがありまして、そこで、「「国の財務書類」等の作成・公表の取組を進めるとともに、PDCAサイクルでの活用を視野に入れつつ、政策別コスト情報等の開示の更なる改善に取り組む。」ということで書いてあるんですが、その枕言葉に「予算執行の効率化・適正化・透明化に向けて、」というふうにあります。

 単なる説明責任と今副大臣は言われましたけれども、そうではなくて、やはり予算がきちんと効率的に使われているか、あるいは適正な予算であったかというのを検証するためにも国の財務書類を作成、公表していくんだというふうにうたわれているわけです。

 実際、PDCAのCA部分として、複式簿記、発生主義会計での書類というのはこれしかないわけですから極めて重要なものでありまして、説明責任を果たすためですというふうに副大臣は言われましたけれども、私はそれのみではないと思います。

 では、御見解があれば。

古川副大臣 私、先ほどの答弁で、予算編成のためのものではないと申しましたが、主に目的とするところは説明責任ということであって、必ずしもそれは全部否定するものではありません。

 ですから、御指摘いただいたように、この文書の中で「視野に入れつつ、」、こう表記してありますけれども、まさにそのとおりでございます。

田沼委員 これは霞が関文学の話になっちゃうかもしれないので、それはどういう意味だとか追及してもちょっとあれなんでやめますけれども、大事なことは、やはりPDCAのCとAをもっと強化することだと思います。

 これは、私は二十代で経営コンサルタントをやっていたものですから、千葉市議会議員のときも疑問でしたし、大臣も先日は、経営者の観点からすると決算というものが非常に弱い、不思議だと言われていましたけれども、やはりそれを強化するのも財務省のリーダーシップが必要な部分だと思います。もしかしたら内閣府さんも必要かもしれませんが、そういった取り組みをぜひ考えていただきたいです。

 やはりこのPDCAの中で、Pの本丸中の本丸が予算であるわけですから、そうすると、チェック・アンド・アクションとして、ここで書かれているように、国の財務書類をもっと活用していってPに反映させるというのを将来的にはぜひ目指していただきたいというふうに要望させていただきます。

 あと、関連して、国の財務書類は、我々が自戒するべき面でもあるのかもしれませんけれども、国会にももっと浸透してもらいたいというふうに思っています。

 今は決算委員会で資料を配付していると理解していますけれども、諸外国では、ちゃんと議会とか委員会で説明している例もあるそうですね。やはり日本でもこれから、副大臣は先日は現金主義がすぐれていると言われていましたけれども、発生主義会計、複式簿記の視点というのを国会議員も行政の方ももっと持っていって、資産との関連性をもっと見ていかないと、今、べらぼうに資産が、資産というか負債ですけれども、膨らんできている現状において現金主義を続けますというのは、余りに何も変えてなさ過ぎるんじゃないかと思わざるを得ないわけです。

 ですので、決算書の位置づけにもなると思いますので、きちんと議会、委員会で提出のみならず説明もするべきじゃないかというふうに考えます。できるならば法制化も、今、作成は法制化されていませんから、すべきじゃないかと思うんですが、御見解をお尋ねします。

古川副大臣 予算、決算は、前回の御質問のときにもお答え申しましたように、これは現金主義でいくことになっております。

 しかし一方で、委員がかねて指摘をいただいておりますように総覧性というのが大事なんだ、こういう視点に立ちますときに、発生主義あるいは複式簿記、そういう手法を用いたさまざまなデータ、指標も大変有用でございます。そういうこともあって、国の財務書類等々、パンフレット等々を通じてできる限り説明責任を果たしていきたいということで従来もやってきておるわけでございます。

 それを、この際、法的に国会において議決をするべきであるとかいうようなことは、国会において御議論いただきたいというふうに思っております。

田沼委員 作成自体を法制化するべきだということに対しての御見解があれば。

古川副大臣 法制化するしないというのは、まさに国会において検討されるべきことだと考えております。

田沼委員 ちょっと水かけ論になりつつあるのであれですけれども、ぜひ、この浸透というのをより図っていくことが、とにかく財務省のリーダーシップとしても非常に求めたい部分であるということだけは御理解いただければと思います。

 関連して、総覧性といったときに、財務書類のポイントの中で、ううん、おかしいとどうしても思ったものがありまして、それが、冊子がもしあればあれなんですけれども、十七ページの年金についての項目です。公的年金についての記述で、「公的年金は、社会保険制度であり、その財政方式は賦課方式を基本とした制度となっており、また、年金の支払義務は保険料の払込によって発生するものではなく、受給資格を満たすことによって発生するものであることから、これを負債として認識しないこととしています。」とあるんですね。これは、ううんと思うわけです。だって、もう既にもらっているわけですから。

 これはやはりちゃんと払う。額は、もらった分と同じ額かはわかりません。むしろ、若い世代の方は国がもらったよりももらえないとか、そういう試算もありますけれども、どちらにせよ、国としては年金特会としてたくさん受け取ってきているわけですね。それを、賦課方式ではありますけれども、やはりいつかは返さないといけないわけです。全額かはわからないけれども、返さないといけないわけです。だから、普通の民間の感覚でいえばどう考えたって負債ですよ、受け取っているわけですから。それを、受給資格を満たすことによって支払い義務が発生するのであって、今はわからない、計算もできないというのもあるんだと思うんですけれども、だから負債として認識しないというのは、本当にそれでいいのかという思いがございます。

 というのも、この右側のページには、例えば運用利回り四・一%の換算で、給付現価という言葉がありますけれども、要は負債の総額が厚生年金だと八百三十兆円ある、国民年金も百二十兆円あるというふうに書かれているわけですね。もし負債とみなすんだったら、巨大な額の負債が存在しているわけで、国の全体の総覧性として、やはり全体を見るという意味では、これを見ない、存在をきちんと認識して位置づけていかないというのは大変なことになるんじゃないかという思いがあります。

 その点に関して、何か改善が必要ではないかと思うんですが、御意見があればいただきたいと思います。

古川副大臣 お答えいたします。

 公的年金に係る負債計上をどう考えるかということについては、さまざまな意見があるところです。委員のようなお考えも一方にありますし、また一方で、御紹介いただきましたとおり、賦課方式をとっていること、あるいは条件を満たしてその支払い義務が初めて生ずるというようなことから、これはやはり負債として計上しない。

 ただし、保険料収入から既に支給された残りの部分は運用寄託金として資産として保有されていますから、これは公的年金預かり金として負債計上するんだ、こういうことになっているわけです。こういうふうに決めたのは、御案内のとおりですけれども、財務書類を作成するときの基準というものを決めております。これは、それこそ財政、会計の専門家で構成される財政制度等審議会においてその基準をつくって、その基準で、これでいきましょうということでつくられているわけなんです。

 ですから、いろいろなお考えがあるのは確かですけれども、それが検討された結果、こういう形で書類を作成していこうということで、公的年金の負債の計上の仕方についてもこういう仕切りになっておるということでございます。

 一方で、委員が先ほど御指摘いただいていますように、これはわかりにくいじゃないかというところがありますから、ですから、先ほど引用していただきましたような表をパンフレット等において紹介させていただいて、公的年金の財源と給付の内訳を示したりしながら、その辺の総覧性の向上のために努力をしているところでございます。

 ただ、確かにわかりにくいなという印象は否めないと思いますので、この点を、担当しているのは厚生省ですけれども、協議しながら、もっとわかりやすく、説明責任をもっとより充実したものにできるように、検討すべき余地はあるなというふうに率直に感じています。

田沼委員 ぜひ厚生省に求めてください。

 もちろん、一般会計とか特別会計の財政も規律をちゃんと守らなくちゃいけないんですが、結局、年金に繰り入れしたりとか、大きな関連性があるものですから、今副大臣が言われた、わかりにくいという意味ですと、この「「国の財務書類」ガイドブック」の中の絵の部分だと思うんですけれども、これも、恐らく委員の皆さんも余りごらんになったことがないと思いますし、非常にわかりにくい、正直、本当に。これは、莫大な額があるにもかかわらず、国の将来に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、わかりにくいままでいいのかという強い問題意識があるものですから、ぜひ厚労省の方に求めていっていただければ、それは財務省のリーダーシップでやっていただきたいというふうに思います。

 時間が迫っていますので、最後に一問だけ。

 財政的な厳しさというのは、将来の負担、未来の子供たち、孫たち、生まれていない世代も含めてですけれども、世代によって非常に不公平が偏るという面があります。財政の持続可能性のみならず、世代間の公平ということも重要だと思うんです。

 それを担保するためにも、世代間の負担を見えるようにする。内閣府さんで世代会計をされていましたけれども、あれは非常にインパクトがあったと思いますね。今の高齢者の皆さんは受益がまさっているけれども、将来世代は負担の方が大きいということがきちんと定期的に見えるような、世代間負担評価報告書みたいなものを定期的に報告していくべきではないか。外部委員会などを設置してそういった機能を付与して、報告すべきではないかと思うんですけれども、最後に、このことだけ御見解をいただければと思います。

林田委員長 西村内閣府副大臣、時間が来ていますので、簡潔にお願いいたします。

西村副大臣 委員御指摘のとおり、世代間の公平性の観点に立ったさまざまな制度の見直し、あるいはそれをお示ししていくということは非常に大事だと思っておりまして、過去、内閣府でもお示しをしたことがございます。

 現在、社会保障制度についていろいろと制度改革の御議論をいただいておりまして、さらに、制度が今後変わっていくということもございますので、今後、また必要に応じて、制度改革とあわせて、できるだけわかりやすく国民に、世代間の公平性、透明性、こうしたことについてお示しすべく取り組んでまいりたいというふうに考えております。

田沼委員 そういったものを含めた財政健全化責任法案を私たちも出しましたので、ぜひ皆さんにも御理解いただければと思います。

 以上で終わります。ありがとうございます。

林田委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 みんなの党の小池政就です。きょうも一人で頑張ります。

 きょうは、税と社会保障の公平性の確保と、また今後の財政の見通しについて主にお伺いさせていただきたいんですが、その前に、これまで確認できなかったことが一点ありまして、大臣にその方針をお伺いさせていただきたいと思います。

 ことしの夏に日本郵政とアフラックの提携が発表されましたが、この件につきまして、これから、金融庁といたしまして、大臣の方針、またその提携についてどのような判断基準を持って対応されるか、お伺いさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 日本郵政とアフラックとの業務提携につきましては、経営判断にかかわる事柄でありますので、金融当局として、今両者がやっている真っ最中にコメントするというのは差し控えさせていただきたいと存じます。

 ただ、一般論として申し上げれば、これは保険商品の販売ですから、したがいまして、保険契約者保護という観点から私どもはやらにゃいかぬものですが、保険会社並びに保険代理店が適切なきちんとした顧客管理というのをやっていただくとか、販売体制というものをきちんと整備しておいていただかないと、この問題に関しては、後々問題が起きるということは断固避けねばならぬと思っております。

小池(政)委員 ありがとうございます。

 世論的には、今まで民業圧迫だということをさんざん批判していたアメリカ側が、今回は政府のバックがある日本郵政と提携するのはおかしいんじゃないかという声もありますし、また、日本もそのようなことをなぜ受けたんだという声も上がっております。

 また、四月でありますけれども、大臣は、かんぽ生命が新商品を申請しても認可しないということを表明している中でありまして、確かに今、提携の議論が進められているところでありますけれども、商品の共同開発もこれから進めるんじゃないかということが予定されております。

 そんなようなことも踏まえて、もう一度大臣の方針をお伺いさせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 四月十二日に、閣議後の会見で記者からがん保険等の認可についての御質問というのがあったんだと記憶しますが、かんぽ生命のがん保険等単品医療保険商品というものにつきましては、郵政民営化法や保険業法の枠組みの中で、かんぽ生命というものと他の保険会社との適正な競争関係というのが確立されないといかぬわけで、業務の適切な遂行体制というものが確保される必要があろうと存じますので、そのためには少々時間がかかるというのははっきりしておるということを申し上げたので、だめだと申し上げたというように一方的に解釈されると、それは記者の話かあなたの解釈の仕方がであって、内容を読んでいただければ、そのように述べたと思っております。

 その上で、郵便局にアフラックのがん保険という話を今聞いておられますけれども、新規商品の引き受けというのと比べますと、これはあくまでも他の保険会社、郵便会社じゃなくて他の保険会社が保険リスクを引き受けております保険商品ですから、そういったものを単に販売するにすぎないというように考えるべきなんだと思っております。

 また、かんぽ生命自身ががん保険の保険リスクそのものを引き受けるということとはおのずと差があるというように理解しておりますので、今のアフラックの話は、この前の四月とは違うではないかという御指摘なんだと思いますが、その背景が違っておると考えております。

小池(政)委員 公取もきょうは来ていただいていますので。一般論という形になるとは思いますけれども、今回のような件についての判断と、また対応についてお伺いさせていただけますでしょうか。

原政府参考人 お答えいたします。

 独占禁止法では、一定規模以上の株式取得、合併、分割、共同株式移転、事業等譲り受けといった企業結合につきましては、あらかじめ公正取引委員会に届け出る義務を課しております。しかしながら、業務提携につきましては、この届け出義務の対象とはなっておりませんので、事前に審査をするというものではございません。

 ただ、独占禁止法におきましては、例えば、競争業者同士の業務提携によって、相互に競争をしないということになり、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限として禁止をしております。また、業務提携によって、競争者の取引機会が減少し、当該競争者が代替的な流通経路を容易に確保できなくなるおそれがあるような場合には、不公正な取引方法として禁止しております。

 公正取引委員会としては、こういったような行為が行われる疑いのある情報に接した場合に、独占禁止法に基づいて厳正に対処することとしておるところでございます。

小池(政)委員 事後の対応ということでありますけれども、しっかりと対応、監視のほど、よろしくお願いいたします。

 また、総務副大臣にいらっしゃっていただいておりますので、確認という形でお伺いさせていただきたいんです。

 日本郵政、郵便局になりますでしょうか、税優遇といたしまして、固定資産税また都市計画税の優遇措置があると思うんですけれども、そのような理解でよろしいでしょうか。

関口副大臣 民営化した事業については、特例措置を講じることなく全額税負担をすることが原則であるということでありますが、日本郵便株式会社に対する固定資産税の特例措置は、郵政民営化後の郵便事業会社及び郵便局株式会社に対する激変緩和のために、両会社が日本郵政公社から承継した一定の固定資産に対して、五年度分に限った経過的な措置として、平成二十年度に創設されております。

 二十五年の税制改正によって特例率を二分の一から五分の三に縮減した上で、日本郵便株式会社の一〇〇%の親会社である日本郵政株式会社について三年以内に株式上場が見込まれていることから、三年間延長することとしたところであります。

小池(政)委員 まだ優遇があるということでありますし、また自民党の党内でも今、ちょっと別の観点になりますけれども、公的資金が入った企業、再生された企業でありますとか政府の関与がある企業と純粋な民間との競争環境の改善ということに対しても取り組んでいかなくてはいけないんじゃないかということの取り組みがあるということを伺っておりますので、ぜひ、この件はしっかりとこれから注視して対応していただきたいと思います。

 それでは、話題をかえまして、税と社会保障の公平性の確保という面になりますけれども、私どもが今国会でも、今回は参議院の方になりますけれども、提出をさせていただきました歳入庁についてお伺いをさせていただきたいと思います。

 歳入庁につきましては、政府の方がことしの夏にその検討をされたということでありますけれども、その中身をお伺いさせていただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、昨年八月に成立をしております税制抜本改革法によって、年金保険料の徴収体制強化などの観点から、「歳入庁その他の方策の有効性、課題等を幅広い観点から検討し、実施すること。」とされたというように理解をしております。

 これを踏まえまして、内閣官房副長官及び関係省庁政務官による検討が行われて、本年八月、論点整理が取りまとめられております。この論点整理におきましては、歳入庁に関するさまざまな問題点が指摘されるとともに、国民年金保険料の納付率の向上という観点からは、組織を統合して歳入庁を創設すれば問題は解決するものではないと指摘をされたと承知をいたしております。

 財務省、国税庁といたしましては、この論点整理に示された方向性に従って、年金保険料の徴収体制の強化などに向けた対応というものは別に行っていかなければならぬと思っております。

小池(政)委員 今おっしゃられました論点整理を拝見させていただいたんですが、問題点を挙げられたのはわかるんですが、メリットというものは確認されなかったんでしょうか。

麻生国務大臣 メリット、デメリットの内容を細目知っているわけではございません。前内閣のときの話をずっと継続している部分であって、今国会、私どもになってから引き継いだという部分もありますので、前段階でどれくらいになったんだか、ちょっと正直、詳しく細目知っているわけではありません。

 少なくとも、国税庁への滞納処分権限の委任制度を効果的に活用しよう、徴収しようという話等々は、民間人となった年金機構でもやってやれないわけではないわけであって、いろいろな意味でもっと今の段階でやろうと思ったらやれることはいっぱいあるのに、無理して何も一緒にさせることはないではないか等々、今できるものをもっと使わないでおいてというような話はいかがなものか等々、いろいろな意見が出されたというように理解をいたしております。

小池(政)委員 私どもは、メリットといたしましては、徴収コストを下げることができる、一緒にすることによって国民の利便性を向上することができる、また税及び社会保険料の徴収率を向上することができるということを考えているわけであります。

 今の論点整理の中で挙げられました問題点でありますけれども、これは、これから導入されますマイナンバー制度というものを背景としましても、同じような問題点というのが存続するとお考えなんでしょうか。

麻生国務大臣 社会保障・税番号制度と言われる通称マイナンバー制度というものにつきましては、平成二十八年一月からの利用開始に向けて準備を進めているところであります。

 したがって、本年八月の論点整理の取りまとめの際にも、この制度の導入に合わせて検討がされたところでありまして、その論点整理では、番号制度による情報の効率的、効果的な活用が国民年金の納付率向上や利便性向上に資するとした上で、歳入庁を創設すれば問題が解決するものではないというようにされたものと承知をいたしております。

 さきに申し上げましたとおり、歳入庁についてさまざまな問題点が指摘されておりますことから、現在の体制のままで、社会保障・税番号制度の導入などによって、国民の利便性向上や納付率の向上というものの成果を上げることが重要ではないかというように考えております。

小池(政)委員 否定されていないのはわかるんですが、ただ、マイナンバー制度を前提として考えられたとは思えないような問題点というものがこの論点整理で挙げられておりまして、問題点は四点ありますので、それぞれ見させていただきます。

 例えば、一点目は、年金保険料と税の徴収対象の重なりが小さいということをここでは挙げているわけでありますけれども、これも、これからマイナンバー制度を導入されることによって重なりはふえていくということは想定されるわけであります。

 二点目は、行政改革との関係ということで、年金機構の職員は非公務員でありますけれども、今度、歳入庁という形になると、公務員の人たちでその業務を果たさなくてはならない、これは行革と方向性が逆になっているんじゃないかということを挙げております。この業務だって、マイナンバー制度によって効率化できる可能性はあるわけであります。

 そもそも、歳入庁におきましても、その徴収業務というのを常に自分たちで行う必要はないと思います。これは、外部委託ということをしても別に構わないと思いますし、既に地方税におきましては、この徴収については民間活用、外部委託を行っているところであります。ただ、公権力の行使に係る部分については残さざるを得ませんけれども、その点におきましても、この二点目の行革との関係というところは、この問題点というのはこれからも長く続くものではないと思います。

 また、三点目におきましては、年金保険料と税は基本的に性格が違うということで、問題があるのではないかということを挙げております。また、徴収する職員にこの二つを理解させるのは大変じゃないかということを挙げております。

 この二点は、やはり一番大事な共通点として、それぞれ納入義務が課せられているということから、性格はその点において共通しているわけでありますから、歳入庁がこれを取り扱う点につきましては別に問題はないと思います。また、徴収職員におきましても、現在でも税務職員というのは税務大学校というところで研修を行っているわけであります。採用だけではなくて、年次が一定になったらまた再度研修を行う。その中のプログラムとして、社会保険また年金等をこの研修制度の中に入れれば、それによってその能力というものも十分確保できるものと思います。

 最後に、関係部局の切り離しによる影響ということを挙げております。制度の企画立案と執行を切り離した組織にするのは問題じゃないかということを言っておりますが、そもそも、財務省と国税庁が分かれていたり、それから厚労省と年金機構が分かれておりますし、また、国税庁や日本年金機構にある範囲の企画立案や執行業務というものは歳入庁におきましても切り離されないわけでありますから、ここについても、なぜこのような問題点を出しているのかよくわからないところであります。

 以上がこの論点整理で出されている問題点であるんですけれども、これでも、マイナンバー制度を導入するということを前提として、かつ真剣に議論をしたということを思われるんでしょうか。大臣の所見をお願いいたします。

麻生国務大臣 年金機構というのは、御存じのように、これは民間ですから。民間にしたわけですよね。それをもう一回、国税と一緒にして、公務員にしようというわけですか。(小池(政)委員「業務を」と呼ぶ)論点がよくわからないんですけれども。

 今、問題点と言われたんですけれども、一番の問題点は、せっかく非公務員にみんなでしておいて、民営化、民営化だといって民営化しておいて、それを歳入庁としていったら、もう一回公務員にしよう、そういうようなことになるんじゃないですか。歳入庁、国税庁も民営化しろというわけでもないんでしょうから、そうすると、そこのところが一番難しくなりはしませんかね。今のお話を伺っていて何となく、一緒にしようといった場合は、今の年金機構というのは民間ですから、それをもう一回国営化しようという発想は世間で通る話でしょうか。

小池(政)委員 大臣のおっしゃっている感覚は多分正しいと思うんですよ。ただ、この論点整理が言っている二点目というのは、民間がやっている業務を歳入庁が任せられることによって、歳入庁の公務員がそれを行うことになってしまう、そのことによって人件費がふえたり人員がふえたりするということをここでは言っているんですよ。その理由が私はおかしいんじゃないかということを今申し上げているところであります。

麻生国務大臣 今の税務職員だけで全て賄えば人件費はふえないということなんでしょうけれども、同時にそれは、今やっております年金機構の職員は全員解雇ということになるんだと思います。それでなければ全員公務員に採用するかどっちかということになるんですが、いずれにしても、全然別の問題点を考えておかないと、この話はそんな簡単にはいかないと存じます。

林田委員長 小池君、時間が来ていますので、まとめて下さい。

小池(政)委員 時間が来てしまいましたが、問題点は、大臣もおっしゃられたような、理解がなかなかできないような問題点を挙げて、結論ありきの検討がされているようにしか思えないわけでありますし、歳入庁というのは、大臣が先ほど触れましたけれども、三党合意の消費税増税の方針、法案の中にも含められているわけでありますから、しっかりとこれから前向きに、その課題をどうやって乗り越えていくか、メリットをどうやって追求していくかというような観点で取り組んでいただきたいと思います。

 終わりにします。ありがとうございました。

林田委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 まず、アベノミクスの目標の一つに、物価を二年間で二%上げるというのがありますけれども、それに関連して麻生財務大臣にお聞きしますけれども、物価が上がるということは何でいいことなんでしょうか。

麻生国務大臣 逆に言えば、持続的に物価が下がるといういわゆるデフレの状況においては、貨幣の価値が上昇するということになりますので、貨幣を保有しておくというインセンティブ、いわゆる魅力が高まっていくということにならざるを得ません。これは、今の民間の会社が含み資産何百兆ということになった背景もそのことだと思います。したがって、こういったことは、民間のいわゆる投資というものを阻害し、日本経済を衰弱させ、結果的に縮小均衡ということになっていったということは大きな問題なんだと思っております。

 デフレが継続するということになりますと、企業というものは当然のこととして収益を借入の返済とか内部留保の積み上げに充てますので、設備投資とか賃金の上昇とかいうものに全く振り向けない。もうこれは過去、この十数年間、はっきりしております。個人は賃金がふえないために消費や出費をふやさないという結果になりますので、経済全体の需要というものが低迷していくことになりますので、長期にわたり経済の成長率を著しく低下させてきたということははっきりしておると思っております。

 こういった認識がありますので、長引くデフレ不況から脱却して雇用、所得につなげていくためには、やはり強い経済というものを取り戻していかない限りはならないと思っております。したがって、私どもとしては、経済は成長する、ある程度物価も上昇していくというある程度安定した目標というものを掲げて、その実現に向けて日銀も財務省も政府も民間もみんなやっていくということにしていかないと、企業としては、設備投資をし、生産性を上げ、国際競争力を高め、いろいろなことをやっていくという努力というものをせずして何となくデフレになって縮小していったということに対する反省は大きなところだと思います。

 お断りしておきますが、佐々木先生御存じのように、デフレで好況もあればインフレで不況もありますので、デフレがいい、インフレがいいというのは一概には申せないというのは確かです。

佐々木(憲)委員 経済成長の中で、好循環で賃金も上がり、その中で若干物価が上がっていく、そういうことであればいいんだけれども、どうも今は、デフレの反対はインフレだ、それで物価を上げるんだ、そちらが先行しているような感じがするわけです。

 どうも国民の意識と大分ずれがあるような感じがしまして、日銀の生活意識に関するアンケート調査を見ますと、物価上昇についての感想というのがあります。お配りした資料の二枚目にありますけれども、それを見ますと、どちらかといえば好ましいが三・六%、どちらとも言えないが一四・五%、どちらかといえば困ったことだが八〇・九%ですね。圧倒的多くの国民の皆さんは、物価が上がるということは困ったことなんだ、こう答えているわけです。甚だ印象が悪いわけでございます。

 このアンケートの結果についての大臣の印象はいかがですか。

麻生国務大臣 先生の資料を拝借して恐縮ですけれども、その下の段の物価下落についての感想というのも非常に参考になると存じました。

 これは、きのうまで一本九十七円だった大根が、きょう行ったら九十五円になっていた、次の週に行ったら九十三円になっていた、使い前がふえる、難しい言葉で言えば可処分所得がふえたというのはええこっちゃないかと多くの奥さん方は思われた、私はそうだと思います。ハンドバッグを買おうと思っていたけれども、もうちょっと待ったらまた安くなるかしらと、事実、一月待ったら安くなった、あともう二月待ったらまたさらに安くなった、あらまあということだったのが現実だと思っております。

 しかし、回り回ってよく考えてみれば、大根をつくっている農家の実入りは減り、当然のこととしてそれを売っておりますスーパーマーケットの売り上げも減り、利益も減ることになり、回り回って亭主の給料も下がり、会社も倒産ということになっていっておりましたので、やはりデフレの場合は、インフレと違って、緩やかに体温が低下してやがて死んでいくという形で、静かに死んでいくという感じの経済だと思っております。

 インフレとはちょうど真逆に動いておりますので、このような二番目の表の意識というのを多くの方が持たれておるというのは、自分で稼いでおられない、使っておられる方々から見れば、この意識というのはよくわかるところであります。

佐々木(憲)委員 これは、所得がそれほどふえていないのに物価が上がると生活が下がりますから、そういう意識がここにちゃんと反映しているわけであります。したがって、物価だけ上げていくということが、結果として生活が下がるということになると困るな、これはもう普通の感覚だと思うんですね。

 具体的にこの間どの品目が上がっているかというのが一枚目の表、これは日銀で作成していただいたものでありますが、上昇しているのは、ガソリン、電気代、テレビ、ルームエアコン、自動車保険料、これは任意の保険料、都市ガス代、自動車保険料、自賠責の方ですね、ハンバーガー、灯油。こういうふうに、公共料金的なものが非常に上がっているわけです。

 こういうものが上がっている原因については、大臣はどのように認識されていますか。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、生鮮食品を除くいわゆるコアベースの消費者物価指数の前年比に対する寄与度を、例えばことしの三月と九月で比較しました場合には、その寄与度の拡大幅が大きい品目として、上から、ガソリン、電気代、テレビ、ルームエアコン等が挙げられるわけでございます。

 これらの品目の寄与度が拡大したその背景でございますが、基本的には、円安傾向の中でエネルギー等の輸入価格が上昇しているほか、下落が続いてきた耐久消費財、この価格に下げどまりの動きがある等があると承知しているところでございます。

佐々木(憲)委員 一番生活に必要な、これから冬にかけて、灯油代も上がる、ガソリン代も上がる、電気代も上がってくると、生活が大変だ、こういう声も聞こえてくるわけですね。

 円安によって輸入物価が上がるためにこういう事態が発生しているということなんですけれども、本来、円安にした目的は、輸出をふやすというのが目的だったのではないかと思うんですけれども、この間の輸出の増加は一体どうなっているんでしょうか。

麻生国務大臣 これはG20においても説明申し上げたところではありますが、いわゆる日本銀行による量的もしくは質的金融の緩和というものは、間違いなく、二%の物価目標を達成する目的で、いわゆるデフレ不況からの脱却というものを目指してやったのであって、円安はその副次的に生まれたものでありますから、円安に誘導して貿易収支をよくしようとかいうようなもので考えたわけではないということが一番大事なところだと思っております。

 足元の輸出の動向という点だと思いますが、これは、アジア、アメリカ、EUというように大きく三つぐらいに分けますと、おおむね横ばいになっております一方で、いわゆる新興国、資源国向け輸出等々は需要減速というものがかなりはっきりしてきておりまして、弱含んでおります。

 したがいまして、全体のところで弱含んでいると認識いたしておりますので、円安になったからといって、私どもとして見れば、石油代金というものも、これは原発がとまったおかげで三兆七、八千、四兆円ぐらいのものが、現金が出ておりますので、さらに石油、ガス等々を急激に輸入することにならざるを得ませんでしたので、そういった意味では、いわゆる円安になれば、ガソリン、石油の部分が高くなった分さらに出し前はふえるということになろうと思いますので、その意味では、マイナスに響いたというのは否めない事実だと存じます。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 最近、貿易収支が黒字から赤字に転化したというのがニュースになっていますけれども、輸出はそれほど伸びていないんですよね。

 私は、対外的な、外国側の需要というものがふえたとか減ったとかというのはそれはあると思いますが、より構造的に見ていく場合は、日本の大企業が海外に出ていって多国籍企業化しているということが背景にある、このことをよく見なきゃいけないと思っております。

 国際協力銀行、JBICが公表している我が国製造業企業の海外事業展開に関する調査というのがありまして、これを見ますと、海外生産比率は、全業種で二〇一一年度三一・三%、一五年度には三七・七%に上昇する、こういう見通しを出しております。特に海外生産比率が高いのが電機・電子で一五年度に五〇・六%、自動車は四一・八%に伸ばす、こういう計画だ。どんどん海外生産の方がふえているわけですね。

 進出先の需要があると、そこに工場をつくる、そして、低賃金労働力あるいはコストの低い原材料を利用する。そういう形で国際的な生産拠点をあちこちにつくって、部品を組み合わせて、最もコストの低い、そういう製品をつくって世界に販売していく。こういう国際的な生産のシステムというものがつくり上げられているわけですね。

 そういう中で、日本の製造拠点というのが相対的に空洞化が進んできている。その結果、外国の生産拠点からの販売に軸足がどんどん移っていって、円安になっても輸出がなかなか伸びない、そういう傾向が出てきているのではないかというふうに思うわけです。

 したがって、内需をどう拡大するか、これがポイントになると思うんですが、麻生さんはどのようにお考えですか。

麻生国務大臣 これは、企業の海外拠点に向かっての移転が進んでおりますために、円安方向に為替が動いても輸出は緩やかにしか増加していないという指摘があることは十分に承知をいたしております。事実、製造業の海外生産比率を見ますと、二〇〇〇年一一・一%でありますが、二〇一二年では一七・七%という形で、生産の比率が高まってきておりますのは間違いない事実だと思っております。

 しかし、同時に、足元の輸出の伸びが鈍化している背景はこれだけではなくて、アフリカ等々いろいろ新興国がありますけれども、新興国におきます需要の減速というものが海外景気に影響を大きく与えている、私どもはそう理解をいたしております。

 輸出の先行きということになりますと、これは確実に見通せるというものはあるわけではございませんが、いずれにしても、アメリカも、かつてほどの確実な伸びではありませんけれども、この数カ月間の報告内容を見ておれば、主要地域の景気は全体としては底がたく推移し始めたと思っておりますので、これで、円安方向への動きによります輸出というものによって、数量は伸びなくても、国内の企業の利益というものはふえてきておりますので、そういった意味におきましては、効果としては次第に上がっていくであろうというように考えております。

佐々木(憲)委員 そこで、私は、内需の中で家計消費というのが非常に重要だと思っていまして、GDPの六割を占めておりますそれが伸びていくということが、全体として国内の需要が、市場が広がって、設備投資にもつながっていく、こう思うわけです。

 ところが、安倍内閣がやっているのは、家計消費をこれから温める方向じゃなくて冷やす方向に行っているんじゃないか。二年後に二%物価を上げる、そういう目標を立てて、しかも来年の四月には消費税の増税をやるというわけでしょう。これが二つ合わさりますと、かなり生活にマイナスの影響が出るわけです。

 お配りした資料を見ていただきたいんですけれども、これは静岡大学の教授が試算したもので、産業連関表も利用しながら分析をしたものであります。輸入物価の上昇によって消費者物価が二・六%上昇する、為替レートをどう想定するかによって若干違うかもしれませんが、電気代、ガス代の上昇が顕著であります。これは日銀の資料と符合するわけです。

 問題は、消費税増税で物価が押し上がっていく、その結果、平均家庭で、例えば消費税八%になった時点で、円安の影響による物価上昇と合わせると、年間十八万八千円、月額にして一万五千七百円の負担増、こういう試算をしているわけですね。これはかなりきついわけであります。年収二百万未満のワーキングプアの場合、消費税八%のとき六・一%増、こういうことになります。これは大変な事態でありまして、これを乗り越えるほどの所得の増加がなければ、生活が下がるわけです。

 そこでお聞きしたいんですけれども、具体的に、これを乗り越える所得増加の方策はどのようなものを政府は用意しているのか、お答えいただきたいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 この消費税の引き上げによって得られた財源というのは、基本的に、社会保障の充実、安定化というものに使うということで、まず国民生活に還元されるということになります。さらに、消費税の引き上げに伴う個人の負担というものの軽減策といたしましては、住宅ローンの減税とか、また簡素な給付措置等々によって、家計へも十分に配慮するということといたしておるところでもあります。

 したがって、消費税の引き上げに関しましては、負担増のみというものを議論するのは適切ではないのではないか。

 なお、御指摘のとおり、所得の増加を伴った経済の好循環を実現するというのが重要だということは、私どももそう認識をいたしております。したがいまして、先般確定をいたしました経済政策パッケージにおきましても、所得拡大促進税制というものを拡充し、また、政労使の連携により賃金上昇を含む共通認識を醸成するなどの施策を、これまでこの十カ月間、たびたび、政府としてやるのはいかがなものかというところも含めまして、やらせていただきました。

 民間の企業の賃金に政府が介入するという話ですから、いかがなものかと、私どもは率直に、後世でいろいろ批判が出るだろうなと思ってはおりますけれども、事は、賃金をぜひ上げていただかない限りにはということでお願いをさせていただいておりますが、いずれにいたしましても、社会保障の持続性と安心というものを確保していかなければなりません。

 したがって、所得の増とか消費の拡大を伴う経済の好循環を実現していかないと、これは物価だけ上がることになるじゃないかという御指摘はまことに正しいので、私どもも、その点を踏まえて対応してまいりたいと考えております。

佐々木(憲)委員 今いろいろお答えになったんですけれども、具体的に、国民の所得をふやしていく、そういう姿が見えないです。

 社会保障に還元するといいますけれども、実態は公共事業がふえて、社会保障に全額還元するように見えるけれども、それは表向きだけであって、置きかえられていくわけでありまして、結果として、社会保障に回る分は非常に少ない。その上に、医療も負担がふえるんですよ。介護も負担がふえる。年金も支給が減る、負担がふえる。こういう計画がずっと続いているんじゃないですか。その部分で何か所得がふえるという方策はありませんしね。

 それから、簡素な給付措置といいますけれども、これは、一年半の間に一万円とか、あるいは年金生活者に一万五千円という話でしょう。一カ月にしたら五百円少しですよね。これを、平均家庭で月に一万五千円の負担というような状況を考えると、その程度のスズメの涙のようなばらまきでは全然話にならない。

 やはり来年四月から所得は確実に落ち込んでいくんです、この増税によって。我々は、この増税をやめるべきだ、こういうふうに思っているわけです。内閣参与の浜田教授も、消費税増税をやめたら国民の所得がふえると言っているんですよ。

 そういうことをよく考えて、内需を拡大していくのを家計中心に考える、そういう発想に思い切って切りかえないと、このまま突き進んでいきますと、これはスタグフレーションになります。インフレが進んで、経済が停滞し、家計がマイナスになって、また失業者がふえていく、こんなことを繰り返してはならないということを最後に指摘いたしまして、質問を終わります。

林田委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 いつもでありますけれども最後の質問ということで、国会もいよいよ最終盤ということであります。きょうを除けば審議をするのは来週五日間しかないということでありますので、政府のナンバーツー、事実上ナンバーワンに近いわけですけれども、党としても非常に大御所である麻生大臣に今国会について少しお伺いをしていきたい、そして、順次質問をさせていただきたいというふうに思っておるんです。

 今国会は、御記憶だと思いますが、経済成長、財政再建、それから社会保障の拡充といいますか、それを求められた国会だったというふうに当初は言われておりました。ところが、ふたをあけてみると、今日の状況というのは、日本版NSCから始まって特定秘密保護法等々で、何か、当初我々が期待しておった、国民が期待しておった、もちろん期待外とは言いませんけれども、そういうような流れではない国会に今来ておるのではないのかな、そして、まさにあとわずかな会期を残すだけになってしまったということだと私は思います。

 そこで、大臣に、今の状況についてどのようにお考えになっておるのか、ぜひ一度お聞かせをいただきたいということであります。

麻生国務大臣 見解の相違だとは思いますけれども、我々として、今御指摘のありましたように、NSCとかいろいろな話は、国土の保全、安全のためにはぜひともやらねばならぬ法律だと思っております。そういうものがきちんと通ったのもまことに結構だったと思いますし、また、それに伴いまして、いろいろな安全保障、防衛等々を考えますと、秘密保護法等々は前々から必要なものだというような御指摘は数々あっておりましたので、それも曲がりなりにも審議していただけたということは、衆議院で通過したというのは喜ばしいことだと思っております。

 そちらの方に話をマスコミやらテレビやらが振っているから、何となくそちらの方に話が行っているように感じられるのは御勝手ですけれども、現実問題として、私どもとしては経済政策というものを立てて、そして事実、この臨時国会の中でも、私どもが立ててきた経済政策に関する数値は、少なくとも、去年の七―九、民主党ではマイナス三・五ぐらい、我々になりましたらプラス一・九か、いろいろな形で変わってきておりますので、そういった意味では、経済は間違いなくマイナスからプラスということになってきております。いろいろな意味で、ほかの指標は幾つもありますけれども、失業率を含めて皆いい方向に向かってきております。

 多くの方々は、そういったものに関して、決められない政治から決める政治に変わっていったということも事実だと思いますし、十月一日の、あれはファイナンシャル・タイムズだったと思いますけれども、オバマ政権の方は、いわゆるシャットダウン、国立公園等々はみんなシャットダウンしましたので、その意味で、日米逆転、安倍決めた、オバマ決められず、それがファイナンシャル・タイムズの一面ですから、そういった意味では、外から見ている雰囲気もいろいろな意味で変わってきているところまで来ておると思います。

 今、我々としては、二十年近く続いておりますこのデフレ不況、正確には資産デフレ不況というものから脱出するためにいろいろやってきたこの十一カ月ではありましたけれども、二十年を一挙に一年で取り返すなんということはできもしませんけれども、少なくともそういった方向に事を向けられるということになれる一つの方向は見出したものだと思って、私どもは、今後ともこの経済政策はきちんと続けていかねばならぬ、そのように考えております。

鈴木(克)委員 大臣の現下の状況に対するお考えというのを伺ったわけでありますが、確かに、経済については、私も全く評価がないということではありません。ただ、三つの中で、財政再建とそれから社会保障の拡充という意味においては、私は、決して今大臣がおっしゃったような状況ではないと。

 また、今、経済のことを中心にお話をされたわけでありますので、そこで、少し財政再建を中心にお話をさせていただきたい、御答弁をいただきたい、このように思っております。

 ことしの六月に閣議決定をされた例の骨太の方針ということで伺っていきたいんですが、言うまでもありません、財政健全化目標は、国、地方のプライマリーバランスを、二〇一五年度までに赤字の対GDPを二〇一〇年度の水準から半減し、そして二〇二〇年度までに黒字化する、こういうことをお決めになったわけですよね。まさに、この方針というのは、G20のロンドン・サミット以来の世界に対する日本の公約だというふうに承知をしておるわけであります。

 ただ、骨太の方針の今後の取り組み内容を具現化というか具体化していくには、例の中期財政計画というものになっていくわけでありますが、これを我々はやはり参議院の選挙の前に出すべきじゃないかということを申し上げたんですが、結果的には、八月八日でしたか、参議院の選挙の後に出されたということです。しかも、それが閣議決定ということではなくて閣議了解ということになったのは御案内のとおりであります。

 そこで、中を精査してみますと、いわゆる徹底した効率化とか、非常に具体的ではなくて抽象的な表現が羅列をされておる、私はこのように思うわけですね。だから、歳出であるならば、どこをどのようにしていくのか、それから幾らカットしていくのか、歳入をどうやってふやしていくのかというような具体的な話というのは載っていないというふうに思うんですね。

 さらに、私は、この達成の見通しについては、極めて本当かいなという気持ちが実はしております。詳しいことは時間の関係で申し上げませんけれども、例えば二〇二〇年度の黒字化目標というのは、十二・四兆円の赤字が残るというふうにされておるわけでありますが、さらなる収支改善努力がなければ達成は困難な状況だ、このように思います。しかし、一方では、自民党の中では、さらなる歳出拡大を求める声もあるということです。

 したがって、私が申し上げたいのは、大臣に伺いたい第一点は、歳出削減に向けた具体策を明らかにし、慎重な経済見通しに基づいた信頼できる中期財政計画を、しかも閣議決定すべきではないか、このように考えるわけですけれども、大臣はどのようにお考えでありましょうか。

麻生国務大臣 まず、中期財政計画の二〇一五年度までの赤字半減目標の達成に向けては、二十六年度並びに二十七年度の各年度において、私どもが予算を編成してまいります中で、基礎的財政収支というものを少なくとも各年約四兆円前後改善をするということにいたしております。そういたしませんと半減目標は達成できにくいというように思っておりまして、いろいろ書いてありますけれども、時間もおありでしょうから、社会保障とか社会資本整備とか地方財政とか、いろいろなものに関しまして、私どもは今後削減していかなければならぬと思っております。

 そういった意味で、今、閣議決定の話もあっておりましたけれども、議員御指摘のとおり、本年八月に作成をいたしました中期財政計画というのは、策定時点では、これは八月でありますので、消費税率八%への引き上げの判断はまだ行われておりませんでした。したがいまして、閣議決定ではなくて閣議了解にしたところでありまして、中期財政計画を閣議決定するかどうかについては、今後八%から一〇%への消費税率の引き上げというのをもう一回お願いしなきゃならぬということになりますので、その際に検討することになるというように理解をいたしております。

鈴木(克)委員 少し話を先に進めさせていただきたいんですが、今、一〇%に決めなければなかなか長期の見通しは立てにくい、こういうお話でございました。それについては、また後ほど伺います。

 まず、来年の状況を少し伺いたいんですが、報道によりますと、平成二十六年度の税収は五十兆円を超えるというようなことが言われております。もしそうであるならば、中期財政計画の目標である四兆円の収支改善は恐らく達成可能である、このように思います。それから、社会保障費の自然増も避けがたいわけでありますが、これも十分賄えるのではないかなというふうに思っています。

 そこで、来年度の予算編成で、そういった余裕、税収が上がって余裕が出てきたときに、それを何に充てるのか。

 何が言いたいかというと、余分に上がってきたものは、要するに借金の返済に回すべきではないかというのを私は申し上げたいわけであります。しかし、一方では、公共事業費のような政策経費に振り向けようというような流れもあるわけでありますので、財政再建という意味で、今大臣はどのようにお考えになっているのか、そこを確認したいと思います。

麻生国務大臣 五十兆おめでとうございましたと言いたくなるぐらい、そんなに来ますかね。(鈴木(克)委員「新聞によると」と呼ぶ)新聞ですか。新聞で選挙の予想や何かをやっていたって当たらないのと同じぐらいで、余り、新聞の情報ではちょっといかがなものかと存じますが。

 少なくとも、鈴木先生、私どもは、中期計画の二〇一五年までの目標というものを考えるとすると、やはり各年四兆円ずつぐらいのものをバランスさせないと半減というわけにいかないんだと思っております。税収が仮に上振れした分ということになれば、それはおつりが出てくるという話で、まことに結構な話なんだと思いますけれども、仮定の話でありますので、ちょっと現時点でそれに対してお答えすることはできません。

 いずれにしても、これは経済再生と財政健全化を両立させていくというのが我々に与えられている、国にとっても与えられている方向だと思いますので、少なくとも健全化と経済再生の両立というものを考えながら私どもとしては対応していかねばならぬと思っておりますので、それを全部使っちゃおうというような感じにはならないんだと思っております。

鈴木(克)委員 冒頭申し上げましたように、財政再建というのは政府に課せられた非常に大きな責務だというふうに思うんですよね。幸いにして景気が回復し税収もふえてきたということであるならば、私は、しっかりと過去の負債に対する借金返済に回していくべきだ、そういう方針をやはり大臣みずからが強く持っていただかないと、いや、これも要るよ、あれも要るよ、これは災害もあるしというような形でいけば、本当に当初の計画どおりの返済というのができなくなってしまうのではないかというふうに思います。

 景気を見ながら基本的には借金の返済をしていくというようなニュアンスで今お答えになったと思うんですが、そこのところを、大臣の強い意思というものをぜひもう一度お聞かせいただけませんか。

麻生国務大臣 財政再建というのは、これは国として世界に約束しております。世界各国みんな約束して、なかなかそれとはほど遠い国もいっぱいありますけれども、私どもとしては、世界に対して、うちは経済再生のために、正確には資産デフレ不況からの脱却をやるために財政出動をやる、ただし、私どもは財政の再建ということが大事なので、そのために民主党、公明党、自民党三党で与野党合意して消費税増税ということを決めたと。ほかの国では上下両院でねじれているからとかなんとかかんとかいって成立はできなかったけれども、うちは民主党の内閣のもとで、政権のもとで自公合わせて三党合意でこれをやれたので、少なくとも皆さんの国より俺たちの国の方が民主主義の成熟度合いが進んでいるんだと。誰一人反論した人はいません。我々は、それをやってのけるということを言って、事実、この十月一日にその方向でかじを切っております。

 私どもとしては、財政再建という方向というのは世界に対して送った明確なメッセージの一つだと思いますので、その後の対応に関しましても、経済の再生と財政再建、両にらみできちんとやっていくというのが基本的な方向というように理解をいたしております。

鈴木(克)委員 時間もなくなりましたので恐らく最後の質問になると思うんですが、税制関係でお尋ねをしたいんです。

 消費税増税に伴う五兆円規模の経済対策、五兆円であるか七兆円であるか、これは今後のあれかもしれませんけれども、一応五兆円というふうに言われておるんですが、これは何のための経済対策かといえば、当然、消費税を上げる、いわゆるその反動に対する景気対策だというふうに理解をするわけであります。

 したがって、その景気対策、なぜ五兆円という金額が出てきたのか、ここのところを、私は、大臣にもう一遍確認したいと思うんですね。

麻生国務大臣 新たな経済政策の五兆円という規模についてのお尋ねだと思いますが、まず、歳出面においては、これは民間のシンクタンク等々約四十社の予想ですけれども、二兆円前後のものがいわゆる四―六月期の中において消費税の値上げにより反動減が起きるということになっておりますので、それをまず上回るものにしないと、私どもとしては、経済対策とは言いがたいと思っておりました。

 また、消費税三%の引き上げで見込まれます国民の負担増というものがございます。これは二・七掛ける三%ということになりますので、そういったものを大幅に緩和するということを頭に置いて、その後の、経済の成長が一回落ちて、それが上向いたって、もとのレベルまで戻ってこなければ、そのままずっといくのでは意味がありませんので、成長軌道へ早期回復するという点も勘案したところであります。

 私どもとしては、今申し上げたような形でいきますと、二十四年度の決算剰余金というものも復興分を含めて二・八兆ございました、また、二十四年度決算の税収が上振れたことによりまして、先ほど五十兆という話がありましたが、そこまでちょっと私どもは見ていないんですけれども、税収の土台増が〇・七兆円程度あるというのはわかっておりましたので、その他、今年度二十五年度、いわゆる使い残し、不用になりましたもの等々がございますので、そういったものが見込まれることなどから、財源の確保という意味においては、新たに国債を発行するということではなくて、きちんとした対応ができる範囲でないと、消費税の増税をお願いして、なおかつ国債もまたさらに発行するというのでは、それはいかがなものかというようなことを考えて、こういった額にさせていただいております。

 基本としては、何といっても、この下振れリスクを一日も早く、四―六、七―九では難しいかもしれませんが、十―十二ぐらいにはきちんともとのところに戻すラインまでやりたいということを考えて、この五兆円という額を算出させていただいております。

鈴木(克)委員 質問を終わりますが、二つだけ申し上げておきたいと思います。

 なぜ私がこのことを伺ったかというと、大臣は、いわゆる消費税率引き上げに伴う反動減が約二兆円、倍返しプラス一兆円などというような発言をされたことがあるわけですよね。このことについては、倍返しプラス一兆円で五兆円じゃないか、そういうことでこういう数字が出てきたのかなということを実は確認したかったんですが、時間がなくて、まことに残念であります。

 もう一点は、確かに、民間のシンクタンク等四十社のデータでそれぐらいの反動減があるんじゃないかということであったわけでありますけれども、やはり私は、民間のデータでということではなくて、政府自体がそういったきちっとした確信を持ってやっていくべきではないのかなというふうに思ったものですから、このことをちょっと御質問させていただいたということであります。

 時間が来ましたので、以上で、申し上げるだけで終わります。どうもありがとうございました。

林田委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.