衆議院

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第2号 平成26年10月17日(金曜日)

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平成二十六年十月十七日(金曜日)

    午前九時五分開議

 出席委員

   委員長 古川 禎久君

   理事 後藤 茂之君 理事 菅原 一秀君

   理事 竹本 直一君 理事 寺田  稔君

   理事 平口  洋君 理事 古本伸一郎君

   理事 伊東 信久君 理事 伊藤  渉君

      安藤  裕君    岩田 和親君

      小倉 將信君    小田原 潔君

      鬼木  誠君    金田 勝年君

      神田 憲次君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    柴山 昌彦君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      中山 展宏君    林田  彪君

      藤井比早之君    藤丸  敏君

      牧島かれん君    山田 賢司君

      湯川 一行君    岸本 周平君

      武正 公一君    古川 元久君

      吉田  泉君    柿沢 未途君

      小池 政就君    岡本 三成君

      坂元 大輔君    松田  学君

      杉本かずみ君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       赤澤 亮正君

   財務副大臣        宮下 一郎君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   財務金融委員会専門員   関根  弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

十月十七日

 辞任         補欠選任

  小田原 潔君     湯川 一行君

  木原 誠二君     岩田 和親君

  玄葉光一郎君     吉田  泉君

同日

 辞任         補欠選任

  岩田 和親君     木原 誠二君

  湯川 一行君     小田原 潔君

  吉田  泉君     玄葉光一郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

古川委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、副総裁岩田規久男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として財務省主税局長佐藤慎一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。竹本直一君。

竹本委員 今国会が始まって大分日もたちましたが、やっと財金委員会のスタートを切ることができました。関税二法等、これからいろいろ問題はもちろんありますけれども、やはり年内に消費税値上げの判断をしなきゃならない、そういうときにおける当委員会でございますので、非常に重要な役割を持たされていると思っております。

 そういう意味で、冒頭、時間は短いですが、大きい話を麻生大臣ほか関係の方にお聞きしたい、このように思っております。

 我が国の債務残高は一千兆円を超えている、こういうことでございますが、GDPとの比較で見ますと、日本はほぼ二〇〇%を超えているわけですけれども、ギリシャが一四七%、あのイタリアも一四七%、アメリカが一〇六%、イギリスが一〇二%、ドイツが八四%、フランスが一一五%、こうなっているんですね。

 そうしますと、財政の担当者は、ギリシャよりも悪い、だから債務残高を減らさなきゃならない、こういうことをおっしゃる。それはわかるんですけれども、ただ、債務残高がこういう割合だからといって、日本と、申しわけないが、ギリシャあるいはイタリアと経済体力がほぼ同じか、信用の度合いが同じかと言われると、ふと、私はそのようにはなかなか感ずることができない。だから、数字だけの問題ではないというふうに思います。

 この辺は麻生大臣もよく御理解いただいていると思いますが、単に、債務残高を減らせばそれでいい国になる、債務残高が多いから極めて問題だ、問題がないわけじゃないけれども、極めて問題だとも言い切れないんじゃないか。

 その中には、大きい差がある。それは何かというと、ギリシャと日本を比較しますと、ギリシャは債務残高のほとんどを外国から借りている、ところが日本は我が政府が我が国民から借りているだけだ、九五%ぐらいを国民から我が政府が借りている、そこに全然大きい違いがあるのではないかと思っております。

 ですから、政府が債務残高削減のためにいろいろ計画を立てておられますけれども、その計画は真摯に目指さなければならない目標だと思いますが、単に数字だけ減少させればいいものではないのではないか。そういうベースにおける理解を大臣はどのように考えておられるかをちょっとお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 竹本先生、全くおっしゃるとおりなんですが、二〇〇%というのは、これは厳しい状況にあるということは間違いないのでありますし、少なくともG20また先進諸国の中でもこの比率は最悪、これははっきりしておると思います。

 ただ、状況として、ギリシャとかほかの国と言われましたけれども、一番の違いは、何といっても日本の場合は、発行しております約一千兆円の国債というものは全て円建て。今、外国人の持っております比率がふえておりますから、五%からもうちょっとふえて十数%になっているとは思いますが、それも全部円建てであります。ギリシャとかイタリアとかは全部外貨建てですから。自国通貨だけで今国債を発行している国はアメリカとイギリスとスイスと日本だけだと思いますけれども、ちょっと正確じゃありません。そういうことだと思いますので、置かれている状況は、自国通貨でやっているのと外国通貨でやっているのとでは全く意味が違うと思っております。

 今おっしゃいましたように、私どもとしては、今後とも、これをきちんとした方向で減らしていくという努力は、国家の信用とか国債の信用とかいうものを考えたときには大事にしておかねばならぬ数字の目標の一つだとは思いますけれども、PBバランスが非常にうまくいったから景気が悪くなったなんていうのじゃ、それじゃどっちを優先していいんだか、意味がありませんので、何のためにするかということをよく考えてやらないかぬ大事なところだ、私どももそう思います。

竹本委員 政府の中期財政計画では、二〇一五年に国、地方のプライマリーバランスの赤字を半減させる、そして二〇年にはプライマリーバランスの黒字化を図る、こうなっているんですが、子細に聞きますと、いろいろ経費の削減努力等をしながらも、現時点においては、例えば税収が四十数兆円ぐらいしかないのに支出が九十兆円。だから、この四十何兆円をずっとゼロにしなきゃいけないわけですから、大変なことなんですね。

 本当にできるのかということを財政当局にこの間聞いたら、実は、二〇二〇年黒字化と言っているけれども、なかなか難しい、十一兆円の残余ができるんです、まだ赤字です、こういうことですよ。恐らくそうだろうと思いますよ。四十兆円を五年間ぐらいでさっとなくすというのはなかなか難しい。

 だから、目標はいいですけれども、そのことだけにとらわれて、ほかの施策がそのことのために全てささげられるというのはおかしいのではないか、このように私は思っているんです。

 計画は間違いだと言っているわけじゃないんです。目指すべき必要なめどとしていいけれども、そこには柔軟な判断があってもいいのではないかと思っておりますが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 二〇一四年を考え、二〇一五年というものをやってまいりましたときには安倍内閣が新たにスタートさせていただいたすぐだったのですけれども、毎年四兆円ずつ減らさないと二〇一五年にプライマリーバランスが二〇一〇年度比半分という目標達成ができないというお話でスタートさせていただいたのが最初、二年前の話です。おかげさまで、四兆円が、努力の結果、五兆二千億の返済が可能でしたので、その意味ではPBバランス半分の目標のうちの半分、いわゆる四兆円が五兆二千億ですから、パーセントでいけば二割以上うまくいっているということだろうと思いますので、返せるときにはきちんと返すべきということであれをさせていただきました。

 しかし、今年度新たに消費税を上げて、今、来年の予算編成をこの十二月に向けてやっていくわけですけれども、そのときに、さらに残りの四兆円をやらないかぬということになるんですが、その四兆円をきちんとやっていくということをやって半分が仮に達成したとしても、その年から始まります二〇二〇年に向かっての計画というところで、今言われましたように、プライマリーバランスでいけば二〇二〇年度に十一兆円ぐらいのまだ赤字であろうと言われて、予想であります、これは中期財政計画という内閣府で出しておりますものでいくとそういうことになっております。

 これをどうするかといえば、税収が上がるか、少なくとも歳出が減るかということで、こうしていかないかぬところで、残り五年間はさらに一層の努力というものをしていかねばならぬという計画を持っております。おっしゃるように、その計画をするために結果として景気が悪くなって何かなったら意味がないじゃないかという御説だと思いますので、それは全くおっしゃるとおりなので、私どもは、経済の成長と財政の再建という、二律背反したみたいな話ですけれども、これをいかにバランスさせてきちんと目標を達成していくかというのは、今後とも努力をしていかないと、向こう六年間、これはやらねばならぬ大事なところだと思います。

竹本委員 そういうことなので、そういう大きい枠組みの中で、今回、消費税のさらなる値上げを考えなきゃいけない。弾力条項がありますから、経済指標を見て判断されるわけですけれども、一文たりともその計画を崩すと国が信用を失うとか、私は、そんな話じゃないんじゃないか。ところが、そういう論説を結構耳にしますので、そういう一面だけではなくて、総合判断しなきゃいけない。

 そうなりますと、今、円安で輸入物価が上がり、消費者のコストが非常に高くなっていく。ただ、消費する側の個人所得は、実質、非常に収入がふえていない。そうすると、消費が弱まってくる。こういう状況の中でさらに二%の値上げをするというのは、なかなか国民生活に過大な負担をかけるのではないかと思います。

 同時に、もしこれを上げなければ国際信用を失って国債が暴落するという説もありますけれども、私は、必ずしもそれだけではないのではないか。ぜひ総合的な判断に立って消費税の値上げを考えていただきたい。私の希望を申し上げておきます。

 最後に、一点だけ。

 日銀副総裁に来ていただいていますので、黒田さんは、現在、消費者物価上昇率が一・一%ぐらいで、来年、一五年になると目標の二%になる、そうなると目標が達成できる、こうおっしゃっているんですが、その後どうされるのか。つまり、量的な緩和を大幅に続けて……

古川委員長 竹本君、申し合わせの時間が経過しております。まとめてください。

竹本委員 はい。

 ですから、それが達成した後、どれぐらいで出口を探されるのか、その感触だけお答えいただきたいと思います。

古川委員長 岩田副総裁、簡潔に御答弁願います。

岩田参考人 出口ということでおっしゃっているんですけれども、それは今言うような状況ではないというふうに思います。

 ただ、その出口のあり方というのはいろいろシミュレーションしたり考えていますけれども、今、出口を言うというよりも、まだ達成道半ばでありますので、二%に向けて、できるだけ目標としている一五年度を中心に達成するということに邁進していきたいというふうに思っております。

竹本委員 終わります。

古川委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉です。

 今国会から、財務金融委員会で議席を与えられてお仕事をさせていただくことになりました。委員各位の皆様また副総理には大変お世話になりますが、どうぞよろしくお願いをしたいと思います。

 まず、世界経済も、エボラ出血熱の発生などもございまして、非常に不安定な要素を含んでおります。こうした状況下で我が国の経済を安定的に推移させていかなければならない、そうしたことを議論する大変重要な委員会でございます。また、国内においては、年末に消費税のさらなる増税の判断をしていかなければならないということですから、我々は、とりもなおさず国内経済を安定的に推移させていかなければならない、そのために政策を総動員していく、こういうことだろうと思います。

 非常に見方の難しい現在の我が国の経済状況ですが、第三十回IMFC、日本国のステートメントの中で、このように言われております。十一日土曜日ですけれども、日本経済については、本年四月の消費税引き上げを受けた駆け込み需要及び反動減の影響により、二〇一四年第一・四半期及び第二・四半期の実質GDP成長率、前期比年率でそれぞれプラス六%そしてマイナス七・一%、一方で、経済の趨勢を見るために、二〇一四年上半期をならして見れば、前年同期比で実質一・三%のプラス成長、項目別で見ても消費は〇・四%、設備投資は七・五%のプラス成長となっており、緩やかな回復基調にあると認識をしていますと。また、物価動向に目を転じると、消費者物価は、前年比は、消費税率引き上げの直接的な影響を除いたベースで見て、このところ一%台前半で推移しており、日銀の想定する道筋をたどっている、日銀も、今後とも二%の物価安定目標の実現を目指し、これを安定的に継続するために必要な時点まで量的・質的金融緩和を継続していくということを言われております。

 そうした中で、一方で世論調査とかを拝見いたしますと、なかなか今の景気の状況は感覚としては厳しいという声が強くなってきています。九月の日銀短観を見ましても、大企業の製造業、非製造業は一三、製造業にとっては変化幅もプラス一といい数字なんですけれども、中小企業を見ますと、製造業でマイナス一、非製造業で〇、変化幅はともにマイナス二ということです。

 この中小企業に私どもの国は七割の雇用を委ねているわけですから、ここにきっちり手当てをしてメッセージを送っていく、こういうことが極めて重要になってくるだろうというふうに思います。

 そういう意味におきまして、ある銀行が調査をした推計によりますと、十円の円安で、上場企業は約二兆円の増益、中小・小規模企業など非上場企業は約一・三兆円の減益というような調査がございます。

 今申し上げたとおり国内雇用の七割は中小企業で、八月以降の円相場は対ドルで八円近い円安になっています、今少し戻しておりますが。主要な輸出関連企業は、輸出で採算がとれると想定する為替レートを百円程度に設定しています。

 こうした状況を考えますと、政府は、家計や中小企業の負担が増すような円安は断固として阻止をしていく、こうした姿勢も折に触れて示していく必要があるのではないか、こういうふうに考えますけれども、麻生大臣の御答弁をお願いいたします。

麻生国務大臣 これはもう伊藤先生もおわかりのとおりなので、為替の水準の話につきましては、ちょっと私の立場上、このコメントは影響が大きいので申し上げるわけにはいかないんです。

 円安、円高は、我々が二年前にスタートしたときには八十九円だったと記憶しますので、その意味では、株も八千九百円ぐらいだったんですが、それが今、状況として一万六千円、一万五千円ということになっていき、そして円が百円から百七円、一時期百十円まで瞬間では行ったりなんかするほど、この二年間で随分変わったことは確かなんだと思っておりますが、間違いなく、いい面と悪い面と両方あるのは確かです。

 したがいまして、日本の場合は、今、原発がとまっていることもこれありで、石油をこの数年間で猛烈な勢いで買い増し、ガスも買い増し、スポットで買っておりますから高い、加えて円安ときましたものですから、非常に大きな勢いで、三兆七千、八千億ぐらいの金が外に出ていくというのが貿易収支の数字を物すごく悪くしているのは事実だと思います。傍ら、輸出の方はいろいろな意味で助かってきたことは確かなんだと思いますので、これは両方、プラスマイナスあるんだということは誰でもわかっておられる話なんです。

 一番困るのは、急激に上がったり下がったりするのが正直言って我々としては最も困るところで、石油の方は、ドバイもWTIも両方とも、百ドル、百二ドルとか四ドルとか言っていたものが、今、八十六ドル、八十七ドルぐらいまでずっと下がってきています。そういった意味では、石油価格に与える影響は決して悪いことはない、そう思っておりますけれども、やはり今言われましたように、円がこのまま、アメリカの方のテーパリングがとまったりなんかすると、それで金利が上がって、日本とアメリカの金利差が二%か三%なんてことになっていくと、これまた円高じゃなくて円安になりドル高になっていくという傾向が通常です。

 そういった意味でいきますと、私どもとしては、こういったものに対して、今後、きちんと景気回復に与える影響やら何やらを十分に考えた上でこの種の問題を注意深く見守っていかないといかぬと思っておりますので、問題認識は同じ、共有していると存じます。

伊藤(渉)委員 時間が短いので、端的に次のことを聞きます。

 やはり経済は何となく今、全体の雰囲気としては、明るさが満ちている、五から八にしたときとは少し違う気がします。そういう意味では、先に対する期待感というのをやはり政策は出していかなきゃいけないと思います。

 そういう意味では、具体的な話になりますが、住宅は極めて重要で、住宅投資はGDPの三%程度を占めておりますし、家具や家電などの耐久消費財への追加的な効果も大変大きい、雇用創出や安定にも寄与してきます。来年四月からは相続税の増税もございまして、資産の移転ニーズは極めて高いと思います。

 景気の刺激、また期待に働きかけるという観点から、現在、いろいろなところで議論されていると承知をしておりますが、住宅取得の資金に係る贈与税の非課税措置の大幅拡充について検討をしている、こういう話も聞いておりますので、消費のマインドを喚起していく、明るい話題、期待感を提供していくという意味で、思い切った対策をぜひともとっていただきたいと思いますが、副大臣、よろしくお願いします。

宮下副大臣 お答えをいたします。

 先生御指摘の住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税措置は、高齢者の方々から若年世代への資産の早期移転を通じまして裾野の広い住宅需要を刺激することによってデフレ脱却に向けた内需拡大にも資する、こうした効果を踏まえまして、経済対策として、ここ数年来、時限的に講じられてまいりました。

 本措置につきましては、ちょうどことしの十二月末に適用期限を迎えます。したがいまして、この年末の税制改正プロセスにおいて検討されるというふうに承知をしております。

 なお、この検討に当たりましては、この贈与税の非課税措置が、先生御指摘のように、資産の早期移転によりまして大きな経済効果がある、こういう一方で、相続税が持ちます格差の固定化防止機能を損なうという面もありますので、その見直しにおきましては、適用状況の検証も含めて、さまざまな観点からしっかり検討していくことが必要だというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 以上で終わります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、伊東信久君。

伊東(信)委員 維新の党の伊東信久でございます。

 伝統ある財務金融委員会で初めて質疑をさせていただきますので、皆様、よろしくお願いいたします。

 私は、大阪の枚方市、交野市を選挙区とする大阪第十一区選出なんでございます。もともと医療法人の理事長でありまして、外科医でございます。椎間板ヘルニアのレーザー治療という先進医療を専門としておりました。PLDDという、お聞きなれないと思うんですけれども、経皮的レーザー椎間板減圧術という自費診療のクリニックを経営もしますし、執刀もいたしておりましたし、おります。医療法人の運営、経営者として、また医師免許を有するドクターとして、日々患者さんの痛みに向き合っておるつもりでございますし、日々感じていた社会保障制度改革にあらゆる角度で検討に全力で取り組んでいたわけなんです。

 今回、私自身の希望もありまして財務金融委員会の理事を党から拝命いたしまして、今回、財務大臣、内閣府特命担当大臣、金融・デフレ脱却担当大臣であられます麻生大臣に御質問させていただくのを非常に楽しみにしておりました。そして、私自身、何かむちゃなことをせずに、スムーズに、国益のために、国民の皆様のために意義ある質問をさせていただこうと思っておりました。しかるに、その際に、残念ながら、今回、例えば国債に関する質問をさせていただきたいと思ったやさきに、日銀の方から黒田総裁の都合がちょっとつかないということで、特にこの後、民主党の古川先生からの御質問の関係もありまして、時間変更ということを承りました。

 もちろん、今申し上げていることは通告にはございません。ですので、私自身、ルールを守るということを非常に大切にしたいと思いますけれども、かかるこのような事態というのはやはり国としてゆゆしきことでございますので、私自身も遺憾でありますけれども、政府として、大臣である麻生大臣と日銀とのコミュニケーション不足、何かの連絡不足があるとちょっと心配ですので、そのあたりの麻生大臣の御意見とかを、まず冒頭、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 日本銀行というのは、御存じのように、独立した、きちんとした法人格を持っておりますので、政府とはまた別の形で、独立した形になっております。したがって、金融政策等々につきましては日本銀行の専権事項みたいなことになるんですが、そういった意味で、傍ら、財政をやります私どもの方の立場としても、財政と金融というのが歯車がかみ合っていないとなかなか経済というのはうまくいかないというのはもう御存じのとおりであります。

 したがって、私ども、この種のことをやらされるようになりましてから、財政諮問会議というのが、小泉内閣ですから、二〇〇一年ぐらいのときに始まったあのころから、少なくとも諮問会議に日銀総裁という方がメンバーで入っておられましたので、あのころは総務大臣でしたか、総務大臣か何かしているときだったと記憶しますが、そのころからしょっちゅう、月に一遍はお目にかかるということになっておりました。隣の席ですので、どうしたってそういうことになります。そういうような状況にありましたので、ほかの国のあれを聞いても、私どもはそこの点はうまくいっていた、私もそう思っております。

 民主党内閣のときにそれがなくなって、何となく三年間ほど、日銀と大蔵が会うなんというのはなかなかできなかったでしょう。(発言する者あり)こっそりやっていたと言いたいんですよね。これもやじの一つかしら。

 だから、私どもとしては、今、改めて堂々と日本銀行と普通にお目にかからせていただいておりますので、いろいろな会議なんかで一緒になりましても、日銀との間でコミュニケーションが不足していることによっていろいろ起きるということはない、話がかなりよく通じ合っている、私どもはそう思っております。

伊東(信)委員 突然の質問に対して真摯にお答えいただきまして、ありがとうございます。

 内容に関して、この後、当事者であるところの先生からまた御質疑があると思いますので、私の方からはここまでにさせていただきまして、まず、消費税と財政健全化についてお聞きいたしたいと思います。

 消費税を来年一〇%に上げるかということを政府の中でまた議論もしていると思いますし、消費税引き上げの判断の意義や時期などについては私でなくとも各先生も御質問いただくと思うんですけれども、安倍総理自身、所信表明で、消費税は伸び行く社会保障に対応して云々かんぬんで、そうした目的のために消費税を引き上げていくこととしたと述べておられるんです。

 まずは、大きな質問として、いろいろな理由、引き上げなければいけない理由というのも、国民の皆さんも、理解の程度はあるとは思うんですけれども、おおむねコンセンサスはあるのではないか。五%から八%に引き上がったときの政府の支持率に、それは確かに過去においてあらわれておったと思うんですね。でも、とはいうものの、八%から一〇%、それもプログラムとしてはあるんですけれども、やはり国民の皆様に増税を課すという事実、あったことということで、増税を課すという事実ということに関しまして、大臣のお立場として、増税を課す最高責任者として、まずは大臣の大きなお考えをお聞かせください。

麻生国務大臣 消費税を五%から一〇%へ二段階に分けてという話は、御存じのように、これは民主党内閣のときに決まっております。このときに、民主党内閣と自民党と公明党、三党でこれを合意してでき上がった法律であります。

 これはなかなか、私たちから見ますと、世界の中で、与野党が増税という最も難しい問題を、国家の将来のことを考えて三党で合意した決断というのは、僕はいつも他国に、おたくらはできないでしょうが、アメリカさん、おたくはできなかったでしょうが、うちはこれをやれていますよと。どの国でもこの話をすると皆黙りますから。

 うちは確実にこれをやって、きちんと三党で合意をして、そのとおりに実行しつつあるということが我々の今置かれている状況なんだということを申し上げてきておりますが、その目的は何かといえば、目的税とは言いませんけれども、社会保障。

 我々の、お医者さんでいえば間違いなく、社会保障関係の医療、介護、福祉、子育て等々、いろいろな意味での社会福祉関係のものが、今、国家予算九十兆のうち約三十兆、約三分の一がこれに当たりますので、高齢化、少子化に伴ってこれがどんどんどんどん、このままでいくと毎年一兆円ずつふえていくという状況を借金だけでやるというのは当然のこととして国家財政としてはもちませんので、みんなで広く薄く分担していただかなければ、ほかにしようがない。したがって、いろいろな意味で高齢者の方々にも消費税という形で薄く広く負担をしていただきたいということで、民主、自民、公明でこの話が合意された結果であります。

 先生、目的は極めて明確で、そこのところを今後とも次の世代に、今の社会保障のもの、国民皆保険等々、世界に誇れるような制度がございますので、こういったものをきちんと維持し続けていくために、改革もせねばなりませんけれども、どうしても足りないものというのは、昔と違って少子高齢化というのが一番大きな背景だと存じますので、そういったことで御理解をいただいて、今、増税ということにさせていただきつつあるということだと理解しております。

伊東(信)委員 今、大臣の方から社会保障ということをおっしゃっていただきました。

 私自身、最初、医師免許を有していましたので厚生労働委員会の方で随時質問をさせていただいていたわけなんですけれども、冒頭申し上げましたように、希望しましてこの財金の方に来させていただきまして、理事を拝命賜りました。

 医者なのでどうしても医療的な例えになってしまうんですけれども、国にとって人間の体に値する血液であるところというのはやはり財政なわけです。人間の体だったら、造血細胞というのがあってどんどんどんどん血をつくっていくわけなんですけれども、足らなかったら輸血をする。一生懸命麻酔科医が輸血をするわけなんですけれども、外科医である私が血を流しっ放しだったら、何をやっているんだと言われますね。

 社会保障も、社会保障自体のいわゆる出血している部分を治すのに、先般、厚労省が十五日に社会保障審議会で医療改革案を示しまして、結局、国民の皆さんに、例えば会社員の皆様の保険料とか、七十五歳以上の保険料とか、入院患者さんの食費負担とか、そういった負担増のメニューを出したんですね。

 そのこと自体をこの場でとやかく言うつもりはございません。かかる国の危機をみんなで乗り切っていこうということ自体は否定いたしませんが、私自身も医者でありまして、維新の党というのは身を切る改革で、では医療の場でも、医師も協力して身を切っていかなければいけないということで、例えば割安な後発医薬品、ジェネリックの普及率などは、厚労省は後発薬のシェアを四割から六割に引き上げたんですけれども、麻生大臣、各国に行かれて、日本の三党合意の話をしたりとか、大臣の立場でいろいろな海外の皆さんとお話しするのであれば、欧米諸国に比べて目標値が低いことも、やはり出血をきちっととめていることにはならないと思うんですね。

 そのあたり、各省庁、厚労省は厚労省の御意見もあると思うんですけれども、全体を見られる、言うたら国におけるCOOみたいなものだと思うんです。その立場で、大臣の立場から、こういった医療改革が進んでおられないことはじくじたる思いもあると思うんですけれども、そのあたりの社会保障が進まないことに関して、税と社会保障の一体改革という観点でどう思われていますか。

麻生国務大臣 日本の社会保障の中でやはり一番問題なのは、受益と負担のバランスがなかなか均衡していないというところが一番問題なんだと思っておりますので、特例公債によって多額の借入金を後世にという形になっている、先送りしているというところが最大の問題。

 海外でも、高齢者の年金受給をずっと引き上げたり、五十五だったものをどんどんと引き上げてみたり、またいろいろな形で消費税を、あっちはVATというんですが、付加価値税を二〇%、二二%に上げたり、いろいろな形でこれをしているのも確かですけれども、傍ら、その人たちが、それはしかるべき医療かということに関しましてはなかなか意見の分かれるところです。

 ジェネリックというのを御存じだと思いますが、日本の場合はジェネリックの比率が極めて少ない。アメリカの場合、ジェネリックは九割ですから。イギリスやらフランスあたりは六割、七割。日本の場合は御存じのようにごとんと少ないので、そういった意味では、それをやるべきなんじゃないのかというような意見、細かい話はそちらの方がお詳しいので、幾つもそういった話があります。これは今後社会保障の歳出を考えるときに十分に考えなければならぬいろいろなものの中の一つだと思いますけれども、大きなものの一つにやはりジェネリックというのはあろうと思います。

 いずれにいたしましても、毎年の自然増で伸びていく部分、高齢者の比率がふえて若者の比率が減りますので、そういった面からいきますと、やはりよく精査をしてやっていかないかぬということになってくるんだと思いますので、予算編成にそれを反映させていくというのは、各国皆非常に苦労しているところだと思っておりますし、日本も当然その例外ではないということだと存じます。

伊東(信)委員 政府としての意識として、そういう出血のことに関して、どうしても、財務省のホームページの社会保障制度のところを見ていると、社会保障費の伸びは激しい、ほかの公共事業、いろいろなところで身を削っても焼け石に水的な動画が流れておるんですね。それを見ると、そうではない、全ての部分で、出血しているところは出血をとめて、必要な財政措置は財政措置として、そういうバランスが大事だと思うので、その辺、やはり麻生大臣、全体を見て、私、厚労委員会にいて経産委員会にいてこっちの財務金融委員会の方に来させていただいているのはそういった思いがあるからなので、よろしくお願いいたしますというところなんです。

 もう時間も少なくなってきまして、実際、世界に名立たる国民皆保険は守らなければいけないと私は思っておりまして、やみくもな混合診療など考えておりません。

 しかるに、私のやっているレーザー手術というのは自費診療でありまして、自費診療のクリニックを独立させておりまして、四月の五%から八%に至るまで駆け込み需要というのがありまして、うちのクリニックは売り上げが一・五倍になりました。しかるに、夏、特に八月に反動が来まして、最高時の半分になりました。もろにこの消費税の影響を受けまして、社会保障をやっておられる先生方はその辺の感覚がやはりないのかな、そういうところがあります。

 本来は、同じ企業オーナーである、実業家としての大臣の経営感覚の御質問も、今回の消費税増税に関する、オーナーとしての、経営者としての大臣の所見をお聞きしたかったんですけれども、あと二分ほどしかないので、先ほど日銀の質問をしましたので、そちらのことに関してちょっと意見を述べさせていただいたので、そっちの方を先に御質問したいんです。

 我が党の参議院の藤巻議員も同じような質問をしていたと思うんですけれども、日銀総裁に聞けないので、財務大臣にお聞きします。

 民間銀行の保有する国債の残高が、昨年三月末は百六十七兆円で、ことしの二月が百三十二兆円で、一年で三十五兆円も減っていまして、三十一兆円が大手銀行の減少額で、メガバンクは国債を売っておる。そうなると、それを日銀がずっと買っておるからいわゆる長期金利も変わらないということなんです。

 では、日銀が国のファイナンスをしている、つまりは、輸血の話をしましたけれども、どんどんどんどん輸血ばっかりしていて、赤十字センターとか輸血センターとかがあるんですけれども、そこの血液をどんどん入れているだけの状況で、やはりそのことに対して、新聞報道がなされたりして、国民も不安を持っていると思うんです。

 国自体が政府の借金をファイナンスする、そういう自己消化になっていると思うんですけれども、そのあたりを最後にお聞きしたいんです。どのように思われていますでしょうか。

麻生国務大臣 日銀が量的または質的な金融緩和、業界用語ではそう言うんですが、そういう名のもとに行っております国債買い入れの主たる目的というのははっきりしておりまして、二%のインフレターゲットとか物価目標とかいろいろな表現がありますけれども、これに対応するための金融政策というのが目的ですので、これを日銀みずからの判断で行っておるということであります。

 日銀が財政ファイナンスをしているということは、多分、藤巻さんの話は何かそんな話だったと思いますけれども、ちょっとずれておるなと思いましたけれども、とにかく、そういう話でした。多分、それと同じだと言われるのだったら、財政ファイナンスをしていると言うのでしたら、その御指摘は全然当たっておらぬ、私どもはそう思っております。

 少なくとも、今後ともこの国際的な安定的な消化というのは、今、間違いなく日本銀行が買い取っているという話になりますけれども、市中で既に何々銀行が持っております国債、あと何年残っているか知りませんけれども、その分を買っているということなんですが、これの一番の問題は、市中銀行に、日本銀行が金融を緩めてマネタリーボンドを仮にふやしたとしても、それが大阪の大阪銀行なら大阪銀行までにはその金は行きますが、問題は、大阪銀行から先の市中にその金が散らない。なぜ散らないかといえば、借り手がいないからであります。借り手がいないところを、日銀から来た金をどこかに貸さない限りはその金は何の金利もつきませんので、したがって、借りてくれるところがなければ、一番確実に返ってくるところは国債ということになりますので、国債を買われる。したがって、国債が幾ら出ても国債がどんどん売れるというのは、ほかに確実なところで借りてくれるところがないという需要の不足が一番大きなデフレの要因の一つだと思います。

 その意味では、今後とも、ある程度物価が上がって、企業も、これだけの物価上昇が継続できていくのであれば、我々としても国内に設備投資をして物をつくってやっても大丈夫という判断になって初めて物は回っていきますので、そういったところまでの間、日本銀行としてはいろいろな形で、二%のインフレターゲット目標のためにという形で今の金融政策を継続していかれるんだというように理解をいたしております。

伊東(信)委員 済みません、もう時間になってしまったので。

 三本目の矢がいかに発動されたかということにも関与してくると思うんですけれども、いずれにしても、社会保障の充実に関しましても、やはり国民の皆さんは、何だかんだ言いながら……

古川委員長 申し合わせの時間が経過しておりますので、まとめてください。

伊東(信)委員 はい。

 何もしてくれていないんじゃないかなという怒りもありますので、その辺のことを理解していただければと思いまして、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

古川委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 おはようございます。

 財務金融委員会は久しぶりとなります。麻生大臣は、私が国会で初めて質問させていただきました大臣でもあり、私の父親と同い年、誕生日も一週間違いということで、勝手に親近感を持たせていただいております。その大臣が一歳年をとる間に私は党名が二つ変わりまして、仲間もふえましたので、この財務金融委員会でまたお世話になります。よろしくお願いいたします。

 まず、きょうは、少し大きな話でありますけれども、経済の今の見方ということで、景況ということでお尋ねさせていただきたいと思います。

 現状につきましては、きのうの参議院の経済産業委員会の方でも質疑がありました。大臣の現況というのは、有効求人倍率も伸びている、賃上げ率も名目では伸びているということから、傾向としては経済成長は続いているというような見方かと思います。

 これからの見通しについてでありますけれども、今続いているその経済成長というものがこれからも想定どおり続くのかどうか、その点についてお伺いさせていただきます。

麻生国務大臣 これは、小池先生、なかなか外的要素というのが入ってきますので、例えば今回、きのう、おとといのように、ヨーロッパに対する問題とかアメリカに対する見方で、エボラ熱による影響がどうとか、我々と全然関係ないところで話がぼんと動くといきなり株が三百ドル下がります、二百ドル下がりますという話になりますと、それにこっちが引きずられて、こっちも三百円、四百円下がったりなんかしますので、私どもが見にくいところはいっぱいあるんです。

 少なくとも、私どもとしては、有効求人倍率というのは極めて大きなものだと思っております。これが二十二年ぶりに数字が一挙に一・一か何かになっておりますので、それが大きいのと、やはり働いている人にとりましては、給料のベースが上がるというのは非常に大きな話でして、そういった意味で、いわゆる所定内給与というものが間違いなく三カ月連続でプラスになってきておるというこの三カ月間のあれを見たりなんかしていますと、少なくとも所得環境の改善というのは今後も続く。

 加えて、政労使会議をもう一回やらないかぬということでスタートさせることになろうと思いますが、そういった意味では、企業も、もうかって金を内部留保でためておくというのをこの間ずっとやってきて、この一年間を見ても、三百四兆円の去年の九月がことし三百二十八兆円ですから、二十四兆円、月二兆円ずつふえていっている。二兆円ですよ、内部留保だけで。それはちょっと普通じゃないぐらいふえていますよ。

 そういったことは、明らかに、今までデフレだったものですから、たまった金をじっと持っていさえすれば金の値打ちは上がったんですね。だから、物を売るよりそっちの方が楽だったんだと思いますが、それが、インフレになりますと持っていた金が目減りするわけですから、そういった意味では、その金を使って設備投資に回すか、また、もうけた金を賃上げにつなげて、賃上げが消費を生む方に回るとか、配当に回すとかいったような形で、内部留保をそちらの方に振り向けていただくということを誘導する、そういった方向に事を向かせていただくということをやはりきちんとやっていかないと、なかなか景気の持続というのは難しい。私どもも、その点に関しましては、今後とも気配りが非常に難しいところかなと思っております。

小池(政)委員 なかなか難しいということでありますけれども、想定どおりにこれから成長が続くのかということについて、もう少し具体的にお伺いさせていただきたいと思います。

 といいますのは、この四―六の影響も出たところでございまして、IMFの見通しにおきましては、ことしの実質の経済成長率を〇・九%へ下方修正ということでございます。これは先進国の中で最も大きな下方修正であります。また、国内におきましても、日本銀行が今月末の会合におきまして、今一%の見通しでありますけれども、それをさらに下方修正、〇%台にするということを検討されているということであります。

 これは需要の反動減が長期化することを想定しているということでございますが、その点も踏まえて、今後、想定どおりにいくのかどうか、もう一度お聞かせください。

麻生国務大臣 想定どおりという定義がちょっと難しいんですが、少なくとも、今言われていますような範疇で、基本的に今予想されている範疇の話を想定どおりと言われるのであれば、今我々が出しております予想の範疇で事は動いていくと思っております。

 ただ、きのう、おとといの話が全然別の要素で入ってきていますので、こういったものが入ってくるとなかなか難しいことはあらかじめお断りしておきますが、我々としては、そういうものを乗り越えて、きちんとした国内の需要というものはかなりはっきりしたものがあると思っておりますので、今予想しております方向で伸びていく、私どもはそう思っております。

小池(政)委員 予想している範疇ということでございますけれども、政府としてもことしの実質の見通しが大体どのくらいであるということは出していると思いますので、今はそこの範疇に入っているということで了解させていただきました。

 ほかの角度で少しお伺いさせていただきますと、先ほど大臣がおっしゃったマネーストックの話でございます。

 こちらは、大臣が先ほど御説明いただきましたように、マネタリーベースがふえても市中のマネーストックがふえなければ意味がないということで、先ほど内部留保の話もされておりました。

 この件におきましては、去年金融緩和が行われてきてからずっと、これは必要だということは認識は共有してきたところでございますが、大臣は、そのためにこそ今回は財政出動があるんだということをずっとおっしゃっていらっしゃいました。それがこれまで続いてきたところでございますが、残念ながら、マネタリーベースは三・七%ふえている中で、マネーストックはそれより一%近く少ない伸びにとどまってしまっているところであります。

 また、金融機関の預貸率でございますけれども、これは全国的にもなかなか伸びない中で、大臣もぜひ地方の金融機関をごらんになっていただきたいんですが、地方はかなり厳しい状況の中で、私の静岡におきましても、地方の信用金庫で、預貸率がもう五〇%を切っているというようなところもあるわけでございます。

 なかなか金融の資金需要が伸びないということが今の現状、見受けられるところであります。やはりこれまで金融緩和それから財政出動をしてきたけれども、根本的な需要というものがなかなか伸びてこないんじゃないかということが今の現状であると思います。

 その点を踏まえて、では、これからどうやってマネーストックをふやしていく必要があると思いますか。

麻生国務大臣 おっしゃるとおり、いわゆるマネタリーベースがこれだけ日銀の金融緩和で大きくなった割に、それから先、銀行から先のマネーサプライが、市中に伸びていく比率が、銀行に日銀から入ってくる金と、銀行から出ていく金というものとの差が大きいというのは間違いありません。したがって、その分が需要が足りないところなんです。

 企業としては、日本銀行の短観やらを見ましても、設備投資は間違いなく新しいものから急激にわあっと大きくなってきておりますが、設備投資がふえれば、普通は銀行からのマネーサプライがふえなくちゃおかしい。ところが、マネーサプライはそんなにふえていないということはどういうことかといえば、間違いなく企業は自分の内部留保で払っているということなんだ、そう思っております。それで、払いながら、なおかつまだ月々二兆円ずつぐらいこの一年間でふえているわけですから、かなりなものがたまっているというように理解をせないかぬと思います。

 こういったものが出て、設備投資に回って、なおかつ企業が銀行から借入金を起こしてまで設備投資をしようという気にならないと、残念ながら日本の景気が回復したとは言いがたい、私もそう思いますので、そこの点は今後ともやっていかねばならぬところだと思います。

 いきなり民間にとか設備投資をとか消費をと言ったって、日本のGDPの中に占めます三大要素は政府支出と設備投資と消費、この三つがGDPの要素で、そのうち二つがとまっておるわけですから、必然的に、政府支出という形で物をふやしていく、それが需要を喚起するという形になっていかざるを得ないというのが今我々の置かれている立場だと思っております。

 したがって、政府の財政出動というものと金融政策とは、二つ合わさらないと経済政策としてはなかなかうまくいかない、これは世界じゅう皆同じ意見に、この二年間の間にほぼその方向で事は収束されつつあろうと思っておりますので、今後ともその方向で事を進めていかねばならぬところだと思っております。

小池(政)委員 内部留保がなかなか減らないという中で、金融緩和、政府支出が大事だという話でありますが、私は、内部留保が減らない、また個人の消費がふえないというのは、これまで上がってきた期待値がもうこれ以上なかなか上がらなくなってきているということに大きな原因がありまして、この期待値というものは、やはりこれからの期待、将来の経済がよくなる、もしくは今、将来に抱えている不安を減らしていくという二つの要素が非常に大事なところであると思っております。

 そのためにこそ、なかなか出てこない第三の矢、成長戦略、それから、私は、この将来の不安を何とか少なくしていくためにも財政再建の取り組みというものが必須だと思っております。自民党さんからは、預貸率については、数値目標を導入すべきだみたいな、そんな議論も夏にあったということでありますけれども、そんな上から押さえつけることではなくて、やはり期待値を上げながら資金需要を伸ばしていくということが非常に大事だと思っております。

 そこで、その財政再建の点についてきょうはお伺いをさせていただきます。

 先ほど大臣も、消費増税というものは、目的としては社会保障の維持であって、また財政再建ということが目的なんだという話がありまして、私もそのとおりだと思います。消費増税というのはあくまで手段であって目的ではないということでございますが、今回の財政再建につきましては、この夏に内閣府から中長期の経済財政に関する試算というものが出されました。大臣も出席されております経済財政諮問会議というところにも提出されているところでございます。

 この中身についてでございますけれども、今後の成長率については、見通しであり、これからの課題でありますから、きょうはそこには触れないんですが、やはりそこで重要となるのは、これから直近の、日本が抱えている目標でございます、二〇一五年のプライマリーバランスの目標、それから二〇二〇年の目標でございます。

 それについて中身をお伺いする前に、まず、この二つ、これは日本として国際公約に当たるんでしょうか。

麻生国務大臣 公約の定義はまた難しいんだと思いますけれども、少なくとも、これまで歴代、二〇一五年、二〇二〇年までに日本のプライマリーバランスはこのような形にするという話を何回となく日本としてアナウンスしていることは間違いないと思っております。

小池(政)委員 公約の定義は難しいということでございました。

 そうしたら、大臣が、手段であります消費増税についておっしゃっていらっしゃいます。国際社会から、話が違う、つまり予定どおり引き上げない場合、話が違うと言われたとき、日本国債が売り浴びせられるということを消費増税についてはおっしゃっておりますが、プライマリーバランスの目標についてはそのような認識でしょうか。

麻生国務大臣 国際社会とかマーケットとか、そういった極めて不透明、形の見えないものからのあれというのはなかなか、どう反応が出てくるかというのは正直言ってよくわかりません。仮に二%上げなかったとして、売り浴びせられるときの恐ろしさを我々は思いますし、日銀総裁も同じようなことを言っておられますけれども、売り浴びせられないかもしれませんから、それはちょっと、正直わからぬのです。ただ、私どもは、売り浴びせられたときの対応が極めて厳しいということを心配して言っておるわけであります。

 したがって、二〇一五年のプライマリーバランス、私どもは半減達成というところまではぜひやりたいと思っておりますけれども、我々の努力のトランスペアレンシー、透明性というもので、ああ、こういう努力をした結果こうならやむを得ぬだろうなというようなもので理解されるのか、ああ、ちゃんと達成したなといって、では達成したからその後どうなるという話はまた全然別の話ですから、そういった意味では、一概に、達成したからどう、達成しなかったらどうというような形で今言える段階ではないと存じます。

小池(政)委員 私は、手段である消費増税について、そこまで国際公約、かつ影響が大きいとおっしゃるのであれば、同じように、その目標であるプライマリーバランスの半減また黒字化というものについても真剣に考える必要があると思っております。

 その中で、やはり財政再建の手段である増税というものは日本が決める話であって、そのタイミングも、もしくはそれは別に消費増税に頼らずとも行うにしても、それは私たちが自分たちで決めることであって、それができないからといって、私は、そのような大きな影響があるかどうかというものは、そこまで大きく自分たちで喧伝する必要はないということを考えているわけでもございます。

 かつ、今回、アメリカの財務長官、大臣もよくお知りだと思いますけれども、ルー財務長官が十月十日、ルーさんのステートメントによりますと、日本はまず国内の需要の喚起というものが重要なんだということを言っております。その中で、政治家、ポリシーメーカーズは、全体の財政の安定化のペースについては、速度については精査しなければならないし、そして必要条件をしっかりと実行しなくてはならないということを言っております。この必要条件は何かというと、グロース・ブースティング・ストラクチュラル・リフォームということで、需要を喚起するための構造改革ということをルー財務長官は言っているわけであります。

 何も消費増税が必ず必要だということを言っているわけではなくて、やはり国際的にも財政の再建が日本は必要だということは認識しているわけでございますけれども、その手段等については別に決めているわけでもないし、外から押しつけるわけでもないということはしっかりと国内においても認識が必要かと私は思っております。

 その中で、財政再建下の中長期の経済財政に関する試算というものの中身についてお伺いさせていただきますが、これは二〇一五年のプライマリーバランスの半減に関しまして、対GDP比三・二%ということでとどまっておりますけれども、この実効性については、大臣、いかが考えていらっしゃいますでしょうか。

麻生国務大臣 おかげさまで、二年間で四兆円、四兆円と予想しておりましたのが、初年度五兆二千億に行っておりますので、その分だけ約一兆円少々、次年度に楽になった部分があります。

 傍ら、反動減の部分がありますので、そういった意味では、足し算、引き算、いろいろやってみないかぬところだと思いますが、私どもとしては、ぜひ、この半分というのは、来年度の予算編成の過程の中において、きちっとその目標を達成するような予算編成をこの十二月につくり上げたい、そのように考えております。

小池(政)委員 今回の中長期の経済財政に関する試算ということについて、大臣は記者会見でおっしゃっております。二〇一五年の半減につきましてはマイナス三・二%程度となっていましたので、赤字半減目標は達成される見込みだと思っていますということでございますが、ただ、その差〇・一%というのは約七千億円ほどですから、そういった意味では楽観ができるという状況にありませんということでございます。そのとおりかと思います。

 その楽観できる状況じゃない中で、では、この見通しをもう少し見ていきますと、非常に厳しいなということでございます。それは、大臣がおっしゃる〇・一%しか差がないということだけではなくて、何とか達成しているという前提にあります経済の成長率についても見てみますと、ここでは、二〇一四年度、実質成長率が一・二%で計算されているんです。先ほどIMFそれから日本銀行の見通しも出しましたが、一・二%、少しこちらは楽観的に見積もっているわけでございますし、名目は三・三%、またCPI、消費者物価上昇率につきましては三・二%、日銀が今一・三%程度ということを考えている中で、かなり楽観的なシナリオの中でもぎりぎりの目標達成でございます。その中で、やはりこの財政再建については相当真摯な取り組みが必要だと思っております。

 その中でちょっと危惧されるのは、今回、消費増税に伴って景気が悪化するからということで補正が組まれました。また、消費増税決定をこれから判断されるわけでございますが、それに合わせてまた補正予算、かつ、来年の一般会計予算におきましては、一兆円ほどの成長枠というものをまたつくって、さらなる景気対策を組もうとしているところでございます。

 財政再建のための増税がさらなる支出を生んでしまっているという中で、本当にこの再建目標が達成されるんでしょうか。これは非常に私は心配が大きいところでもありますし、また財政法の観点からしてみてもこれはちょっと問題じゃないかなと思うんです。

 これまで、財政法におきましては「特に緊要となつた経費の支出」ということで、中身は私たちのこの財金でも予算委員会でも審議されてきましたが、今回私たちが考えなきゃいけないのは、特に緊要になったという背景のことについて私たちは考える必要があると思うんです。自分たちで増税をして景気を悪化させておいて、それで自分たちが緊要になったということが本当に財政法のこの条件に当てはまるのかどうか、非常にここは私は懸念が残るところであります。

 その点について、大臣に、このような解釈で本当にこのような補正予算の取り組みをしていいのかどうか、お伺いさせていただきます。

古川委員長 麻生大臣、時間が来ていますので、簡潔な答弁をお願いします。

麻生国務大臣 今、補正予算につきましては、財政法の二十九条に書かれておりますとおり、緊要となったときの経費の支出を行うということになっておりますので、私どもとしては、あの平成二十四年度の補正予算のときは、景気底割れということが予想されたために、対応で編成をさせていただいたと思っております。

 したがいまして、今回の場合もそういった形になるかならないか、ちょっと今の段階から補正予算の話をするのは、まだ本予算にも入っておりませんので、そういった意味では、今の段階で何らか具体的に申し上げる段階にはないということだと思っておりますが、いずれにしても、七―九の内容をよく見、その後の、経済指標はこれだけではありませんので、いろいろな指標をよく勘案しながら決めていかねばならぬところだ、そのように思っております。

小池(政)委員 終わります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 質問に入る前に、日銀総裁に説明を求めたいと思います。

 きょう、この委員会、定例日です。日銀総裁は国会から、特にこの委員会、出席を求められれば出席する、たしか私は義務があると思います。

 きのう朝、私が質問レクをしようと思いましたら、その直前に御行の国会連絡室の方から、総裁は九時五十分まで入れませんと。なぜ入れないのかと聞いたら、海外からの要人とどうしても会わなきゃいけないと。誰と会うんだ、言えませんと。

 それで、私も、総裁もいろいろお忙しいところもあって、それは大事なこともあるのかもしれない。では、私は質問の順番をちょっと入れかえて、当初は九時二十分からでしたから、五十分というのが難しいんだったら、三十五分ぐらいに入るようにできないかと。五十分までは絶対に入れませんと。誰と会うかも言わない。こちらが少し、では、ちょっと考えようと言っても、一切それはだめですよと。その結果どうなったかというと、維新の会の伊東委員に配慮をいただいて、こういう形で変えてもらって、今私はここで質問に立っているわけです。

 限られた質問時間で、この頭でこういうことを言わなきゃいけないのは私は大変遺憾に思いますけれども、この委員会に出てこない、どうしても九時五十分まで来れないと。しかも、誰と会うかも言えないと。

 一体何をしていらっしゃったのか、やはりここはちゃんと、きちんと、説明責任があると思いますから、説明してください。

黒田参考人 ただいま御指摘の点につきましては、御不便をおかけしたことについては大変申しわけなかったというふうに思っております。

 朝お会いしていましたのは、インド商工会議所会頭を含めたインド商工会議所のメンバーが、いわゆるルックイーストといいまして、インドとして日本を含めた東アジアとの経済関係を強化しようということで、その関係で、日本の経済とか金融とかそういったことについてもお話を聞きたい、そしてまたインドの経済や金融についてのお話もしたいということで御要望があったものですから、インド商工会議所会頭ほかのメンバーと朝お会いしておりました。

古川(元)委員 どうしてそのことが説明できないんですか。誰と会うか何度聞いても、言えませんと。海外の民間の極めて大事な方ですとしかおっしゃらない。

 今のお話で、どうしてこの話ができないのか、私は大変これは疑問であります。

 これは委員長にぜひお願いしたいんですが、当委員会では、日銀報告もかなり滞っているようであります。しっかり日銀の国会との関係のあり方も含めて議論をするのが早急に必要だと思いますから、ぜひこれは理事会の方でお諮りをいただきたいと思います。

古川委員長 理事会で諮ります。

古川(元)委員 それでは、質問に入りたいと思います。

 まず、国債マーケットについてちょっとお伺いしたいと思います。

 今、皆様方に資料をお配りさせていただいておりますが、国債残高に占める保有額、この十年間です。これを見ていただくとわかりますが、日銀は、一時期少し割合が減りましたけれども、アベノミクスが始まって、黒田総裁のバズーカ砲、異次元の金融緩和以降ウナギ登りで、今やウナギは絶滅危惧種に指定されようとしているわけですけれども、日銀の国債保有だけはもうウナギ登りで、今やトップに躍り出ている。

 見てみますと、あとの主体はほとんどが、海外は少しふえているトレンドでありますけれども、国債を今まで買っていたほかの主体はどんどんと減らしている状況にあるわけですね。今、GPIFの運用の見直しの議論もありますが、年金基金も、これまではほとんど国債だったのを、それを減らしていく。

 そういった意味では、今、国債のマーケット、どんどん買い手は減っていって、日銀がひとり買っている、ますます日銀依存が高まっているというような状況にあると思っています。

 こういう国債マーケットの現状を、財務大臣、そして日銀総裁はどのように考えておられるか、御見解をお伺いします。

    〔委員長退席、寺田委員長代理着席〕

麻生国務大臣 日銀の国債保有残高につきましては、同行の資金循環統計によりますと、金融緩和前の二十五年三月二十日で百二十八兆円、足元の二十六年六月末で二百十五兆円ということになっていると承知をいたしております。

 この残高の増加というのは、量的・質的緩和のもとで行っております国債買い入れによるものだと私どもは認識しておりますが、これは基本的には、二%の物価目標の実現という金融政策の目的で、日本銀行みずからの判断で行っているものでありまして、金融政策の独立性というものを尊重する観点からは、その是非についてコメントするというのは私の方としては差し控えさせていただきたいと存じます。

黒田参考人 日本銀行は、量的・質的金融緩和のもとで巨額の国債買い入れを行っているわけですけれども、その実施に当たりましては、市場への影響を含めて国債市場の動きを丹念に点検しておりまして、また、市場関係者との密接な意見交換も行いながらオペ運営面の工夫を行うなど、市場の安定に努めております。

 今後とも、国債市場の動向につきましては注意深く点検し、引き続き市場の安定に努めてまいりたいというふうに思っております。

古川(元)委員 私はそんなことを聞いているんじゃないんです。是非は論じられないというふうに大臣もおっしゃいましたけれども、そもそもこの状況が、マーケットとして普通の状況なのか。あるいは、今、日銀のとっている金融政策は非伝統的な金融政策だと言っていますよね。普通ではないということは、それは日銀サイドも認めているし、みんなそうわかっているわけです。

 では、そういう視点から見て、この国債のマーケット、これだけ日銀だけが買っている、しかも日銀の割合がどんどんふえていっているという状況は、普通のマーケットのあり方から見てどうなのか、どういうふうに見ているのか、そのことの認識を聞きたいんです。どうでしょうか。

麻生国務大臣 我々が置かれている状況は、もともと普通の状況じゃないんですから、それに対応するために我々は非常な手段をいろいろ考えてやっているわけでありまして、少なくとも日本銀行が今までどおりでやっていった場合は、ずっとデフレだったじゃないですか。間違いありませんでしょうが。民主党のときも、うちのときも、ずっとデフレが続いたんですよ。それが現実問題だったじゃないですか。

 それが、今の状況において、間違いなく、日銀の金融緩和が始まってからは、少なくともデフレ状況から我々は今脱却しつつあるところまで来ておるというために、私どもとしては、日銀の政策として金融緩和というものがこれに役立っているというように理解をいたしております。

黒田参考人 現在、欧米の中央銀行も、実は、いわゆるゼロ金利制約、短期金利がほとんどゼロになっているもとで、量的な緩和あるいは質的な緩和ということを行っております。

 その場合に、緩和を行う場合には、中央銀行ですので、基本的には市場から金融資産を購入するという形で金融緩和を行うということが中心になるわけですが、その場合には、どこの国でも先進国では国債の市場というのが一番大きな市場でありますので、そこに金融調節手段の枢要な部分を充てる。

 もちろん、米国の場合もアセットバックト・セキュリティーズ、資産担保証券を買い入れたり、日銀の場合もCPあるいは社債を買い、あるいはETF、J―REITも購入はいたしましたが、市場としては何といっても国債市場が大きいわけですので、その中で大規模な量的・質的金融緩和を行っておる。その場合に、もちろん、市場に対する影響というものにも十分注意しながら行っているということでございます。

古川(元)委員 では、こういう聞き方をしましょう。

 大臣も総裁も、今のこの状況がずっとこれからも続いていっていいと思っているのか。あるいは、将来的にはやはり、今の状況は変わっていかなきゃいけない、こんな日銀ばかりどんどんどんどん多くなっていく状況というのはどこかで戻していかなきゃいけないと。普通の、さまざまな主体がちゃんとマーケットに参加する。

 今は、小さな池の中に鯨が入ってきて、国債の玉も少なくなっている。そういった意味で、私はこれは非常にいびつな価格形成がされているような状況ではないかというふうに思いますけれども、こうした状況が今後とも続いていっていいと思っているのか、それとも、やはりそこは将来どこかで是正されなきゃいけないと思っているのか。そこはどうですか、大臣と総裁。

麻生国務大臣 基本的に、我々としては、今の金融の状況、また財政の状況というのは、日本の場合は極めて厳しい状況にあることははっきりしていますので、その状況から脱するためにいろいろこれまで二十年間ほど、正確には一九八九年に三万八千九百円つけた株が七千円までおっこちた、あのときにさかのぼって、この二十年間ずっとデフレという状況を、少なくとも過去七十年間、世界でこれをやった国はありませんから、日本はデフレーション下における不況というのを初めて経験して、その中にあってどうやってやるかというのを、残念ながら、対応は間違えたんですよ、私どもは経験がなかったから。はっきりしていますでしょう。(古川(元)委員「質問に答えてください」と呼ぶ)ちょっとその大前提をはっきりしておかないと、これは全然わからないと思う。

 したがって、それに対応するために、今、非常手段としてこういった形をとらせていただいているということは、日銀も言っておられますし、私どももそう思っております。

 したがいまして、こういった状況が、プライマリーバランスがきちんとなり、財政赤字が減り等々、いろいろな形になっていけば、自然とそういったような方向は是正されていくのは当然のことなのであって、是正されるように、かつ、それが景気も維持しながらやっていけるというようなことにしていかねばならぬのだと思っております。

    〔寺田委員長代理退席、委員長着席〕

黒田参考人 昨年四月に現在の量的・質的金融緩和を導入いたしまして以来一貫して申し上げていることでございますけれども、この金融緩和は二%の物価安定目標の実現を目指し、それを安定的に持続できるようになるまでこの政策を続けるということでございますので、二%の物価安定目標が達成されて、それが安定的に維持されるということになってくれば、現在のような量的・質的金融緩和から脱却するということは当然でございます。

古川(元)委員 最初からそうやって答えていただければいいんですよ。大臣は是正していくとおっしゃったんですからね、今。つまり、この状況はやはり普通ではない、戻していかなきゃいけないという認識はあるわけでしょう。

 総裁に聞きます。

 では、これをやめたときに、これだけ持っちゃった国債、それは今すぐじゃないです、将来の話ですよ、総裁がおっしゃるように二%の目標を達成してからだと思いますけれども、そうなったときに、それで安定的になったときにどういう形で、極端な形で日銀が国債を保有している状況、そこから脱却をしていくのか、さっきの大臣の言葉をおかりすれば、是正をしていくのか。どのように考えていらっしゃいますか。

黒田参考人 現在、二%という物価安定の目標をできるだけ早期に実現するために最大限の努力を払っている最中でありまして、まだ道半ばというところでございますので、今の段階で、出口戦略、いわば量的・質的金融緩和からどのように脱却していくかという、出口戦略を具体的に議論するのはやはり時期尚早ではないかと思います。

 と申しますのは、出口ということになりますと、その後の政策運営のあり方について十分な議論が必要ですし、何よりも重要なことは、そのときの経済物価情勢あるいは市場の状況などによって具体的な出口戦略というものも変わってくるわけでございますので、そのことを今から、こういう場合はこうする、違った場合は違ったようにするというふうにいろいろなことを申し上げると、市場との対話という観点からもかえって混乱を招くおそれが高いのではないかということで、具体的に出口戦略を議論するのはやはり時期尚早ではないかというふうに思っております。

古川(元)委員 ただ、総裁御存じだと思いますけれども、IMFから出されたレポートの中に、今の話、出口戦略について、出口は遠い未来であるが、保有債券の満期が長期化する中、出口戦略の実施にはより長い時間を要し、金利リスクも増すことから、計画をしておく必要がある、そういう指摘をされていますよね。それは御存じですよね。

 では、IMFのこの指摘はどのように考えているんですか、総裁。

黒田参考人 いろいろな議論を、各国中央銀行、量的緩和をしている中央銀行は考えておるわけでして、それは日本銀行も同じでございます。

 ただ、それを具体的に示して政策をしていくというのは、やはり、それぞれの中央銀行が、現在の量的緩和といいますか、非伝統的金融政策からの出口にどの程度近くまで来ているかということによって異なっておりまして、一番出口に近いと思われているフェデラルリザーブが、先日のFOMCで出口の戦略について初めて具体的に明らかにしたというところであります。日本銀行あるいはECBなどはまだ、当面、現在の極めて緩和的な金融スタンスを続けていくということでございますので、いずれも、具体的に今、出口戦略を説明する段階に至っていないというのが実情でございます。

古川(元)委員 またこの議論はやらせていただきたいと思いますが、議論の段階ではないというよりも、出口というのはあるのかなと。私も、考えてもなかなか出口というのがわからないんですね。本当に日銀が、総裁も出口をちゃんとわかってこの異次元の金融緩和に突入したのか、あるいは、それとも、えいやという形で突入したのか。どうも、私は、えいやという形で突入したのではないかなと。

 今議論する段階ではないというふうにおっしゃっていますけれども、本当にちゃんとそこのところに知恵がある、ちゃんと考えている、プランがあるんならいいですよ。しかし、そこのところは大変私は危惧をしている。そのことを申し上げて、次の質問に行きたいと思います。

 次に、消費税の引き上げについて伺いたいと思います。

 まず、大臣、この消費税の引き上げの判断、これは年内、年内というふうにおっしゃっていますけれども、予算編成作業等を考えると、そんな、十二月三十一日というわけにはいかないでしょう。一体具体的に、これはいつまでに決めないと予算編成作業を考えてももうぎりぎりだというふうに考えていらっしゃるんですか。

麻生国務大臣 御存じのように、消費税の値上げが来年の十月というので、どうして十月にされたんだか、そちらの方がお詳しいんでしょうけれども、私らから見たら、二年じゃなくて一年半にされた理由がよくわからないんですが、とにかく十月ということになっておりますので、十月ということになりますと、それに伴う反動減等々を考えると、来年度の予算の中にこの問題をある程度組み込んでおかないかぬ、反動減対策やら何やらを考えますと、やはり来年度の予算を決めますことしの十二月までに決めないかぬということだと思っております。

 QEがとかいう話がよく出てきますけれども、七―九のQEを含みます経済指標、ほかにも経済指標はいっぱいありますので、そういったものを見て我々としては総合的に判断することであって、それが十二月の何日といって、今決めているわけではありません。

古川(元)委員 何で十月になったか、大臣は、わかりませんがと、あなた方が決めたんですからと言われたんですけれども、これは大臣、わかってもらわなきゃだめなんですよ。

 二〇一五年のプライマリーバランスの赤字半減目標を達成しようと思ったら、二〇一六年じゃだめなんですよ。これはもうぎりぎり半年前のところでやらないと、プライマリーバランスの赤字半減ができないからなんです。そんなことぐらい財務大臣としてわかっていてもらわないと、あなた方が決めたんだからというのは、本当にそれは困りますから、ちょっとしっかり覚えておいてください。

 その上で、今のお話、十二月ということは、これは上旬には、これまでには判断をしないと予算編成にも支障があるということですね。そういうふうに理解してよろしいですか。

麻生国務大臣 来年の十月に実施をするという前提に立ちましたときには、その十月以降に起き得るであろう反動減等々を考えたときにおいては、そのための予算編成を、来年度、平成二十七年度の予算編成の中にある程度反動減対策を盛り込んでおく必要もあろうかと存じますので、その意味では、十二月の予算編成時までにそういったものを決めておく、あらかじめそういうのを見込んで決めておくという意味においては、この十二月の予算編成時というのは極めて重要な時期だと存じます。

古川(元)委員 次に、消費税を予定どおり上げた場合のリスクと、上げないという決定をしたときのリスク、その対応についてお伺いしたいと思います。

 まず、消費税を予定どおり上げた場合のリスクをどのように考えていて、そのリスクに対してはどう対応するということを考えていらっしゃるんですか。

麻生国務大臣 消費税を予定どおり一〇%に引き上げた場合に、引き上げの影響によって景気が悪化し、税収も増加しない、税は上げたけれども増収しないというのは、九十何年かに似たようなケースがありましたけれども、そういったリスクは避けないかぬというのは当然だと思っております。

 したがいまして、経済再生と財政健全化というものを両立させながら、経済の好循環というものを確かなものにすべくいろいろなことを考えないけませんので、そういったものを考えて、いろいろな対策というものをこの二十七年度の予算の中に盛り込まねばならぬというのは、目下、我々としていろいろ鋭意検討中のところであります。

古川(元)委員 補正予算も考えるということですか。

麻生国務大臣 一つの手段とは存じますけれども、今の段階で、補正予算をいつまでに幾らなどというような状況にはございません。

古川(元)委員 では、消費税を予定どおり引き上げない、そういう判断をした場合に、考え得るリスクとしてはどのようなことを考えていますか。

麻生国務大臣 一番の大きな問題は、まず法律改正が必要になるんだと思いますね。これは法律で一〇%と決められておりますので、法改正をやらないかぬということになるんだと思いますのが、まず一番の、やらなきゃいかぬ、物理的というか、実務的にやらねばならぬところだと思います。

 同時に、政府の財政健全化への意思というものが市場から疑念を持たれる、やる気があるのか、そういった努力をちゃんとしているのかとか、いろいろな意味での疑念を持たれるおそれがありますので、確率は低いとは思いますけれども、そういった事態が起こった場合、いろいろなマーケットの反応、市場の反応というのは、ちょっとこれは景気後退とは全然違った、予測をしがたいというのがちょっと余り一般に理解されていないところで、先生なんかよく御存じのところなんですが、ここらのところが私らから見て今一番の問題かなという感じはします。

古川(元)委員 私も全くそのとおりだと思うんですが、そういう疑念が持たれた場合に、そのリスクに対応策はありますか。どうですか、大臣。

麻生国務大臣 これは、どういうことが起きるかということがよく見通せない状況の中にありますので、今の御質問に対する率直な答えは極めて困難だと存じます。

古川(元)委員 さっき、予定どおり上げた場合には、それに伴うリスク、そこはそれなりに想像もできて、何か起きればそこには対応するという話がありました。しかし、もし予定どおり上げないという判断をした場合には、そのリスクというのはなかなか、どう対応できるのかということをお答えを今はできないと。

 そういうことを考えると、対応できるリスクと、対応方法もわからないし、どうしたらいいのか。であれば、とるべきといいますか、とれる選択肢というか、これはおのずから限られてきてしまうんじゃないかというふうに思うんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 今おっしゃられたところに関しましては、やはり、経済状況というものを総合的に判断してきちんとした対応をするということは、今の段階ではそれしか申し上げられませんけれども、この二カ月以内に、そういったところをきちんとした結論をおろさないかぬということになると思います。

 これは、多くの方々、いろいろ、この種の話に関しては、税金が安くなるならいいんじゃないのなんという話のレベルから、今みたいなレベルの高い話まで、物すごく幅がある話をうまくつくり上げていかないかぬところだと思います。

 私どもとしては、上げた方が、少なくとも低所得者の人たちにとっても、おたくらの社会保障やら健康等々いわゆる医療関係のもののためにやる、目的税とは言いませんけれども、それに近いようなものになっているんですから、これは物すごくそちらにとっても大事なことなんですよという話を、この間もある方にしたことがあるんです。

 そういったようなことを含めてきっちりやっていかないといかぬところだと思いますので、これは丁寧に結論をおろしていかないかぬところだと思いますが、そこに至るまでのプロセスは、いろいろ手間をかけないかぬ大事なところだと思っております。

古川(元)委員 今の大臣の御答弁の関係でちょっと御質問しますけれども、まさに、例えば子育てであるとか社会保障の、我々は三党合意の中で、四経費にとにかく増収分は全部充てると。

 来年度やること、当然これは、消費税の増収分を前提にして組んでいるいろいろな政策があるわけですね。もし上げないという決断をした場合には、そうした政策はやらなくなるんですか。あるいは、それとも、別に財源を工面して、それはきちんとやるんですか、どうなんですか。

麻生国務大臣 先生よく御存じのとおりに、増収分になった五%のうち、四%は社会保障の安定化に振り向け、残り一%を社会保障の充実に振り向ける、こう決められております。したがいまして、上げられた場合には、この充実に振り向けられる金額というのは国と地方の合計で最終的に二・八兆円見込まれておりますので、この財源を活用して、待機児童解消やらいろいろなことをやろうとは思います。

 仮にそれが八%にとどまった場合はどうするんだというお話ですけれども、充実に振り向ける額は一〇%のときの半分以下になりますので、一・三ぐらい、一兆三千五百億ぐらいの程度になると見込まれますので、予定した充実案を実行するということは極めて困難になると考えております。

古川(元)委員 要は、上げない場合には、もうこれはやらない、別に財源を見つけてとか、調整してということじゃなくて、もうやらない方向になる、そういう認識でよろしいですか。

麻生国務大臣 今申し上げましたように、突如法人税がめちゃくちゃふえるとかいうような、うまい話もちょっと期待できそうもありませんので、私どもとして、しかるべき財源を今の段階で見つけているわけではありませんので、二カ月以内にその種のものが出てくるというのはちょっと考えられません。私どもとしては、今申し上げたように、極めて難しいというように考えております。

古川(元)委員 消費税を引き上げるかどうかについての日銀総裁のコメントをお伺いしたいと思います。

 総裁は記者会見で、消費税の引き上げが行われた場合と行われない場合のリスクについて、先ほどから話をしておりますように、要は、行わない場合には、それによって仮に政府の財政健全化の意思や努力について市場から疑念を持たれると、政府、日銀としても対応のしようがないということになりかねません、一方で、上げて、予想以上にあるいはその他の内外の経済状況いかんで経済の落ち込みが大きくなる事態となれば、財政金融政策で対応できる、そういうふうに言っているわけですね。

 ということは、総裁は、これはやはり上げた方がいいというふうに考えている。つまり、対応できないリスク、起きてしまったら対応ができないんじゃないかと。総裁も言っています、確率は低くても、その影響は甚大なものになる可能性があるという意味ではリスクが大きいと。

 そういう甚大な影響が起きるかもしれないというリスクをとれるか。そういう意味では、消費税の引き上げをしない、延期をするという決断をするということはそういう極めて大きなリスクを伴うことになる、その認識は財務大臣も持っていらっしゃるというふうに私は感じました。

 そういう点からすると、日銀総裁は、そういった意味でいえば、これはやはり法律どおりきちんと上げていくべきだというふうに考えていると理解してよろしいですか。

黒田参考人 委員御指摘の発言につきましては、消費税を引き上げた場合及び先送りした場合のリスクについて問われましたので、それぞれリスクはありますけれども、万一先送りということによって財政運営に対する市場の信認が失われると、対応が極めて難しくなる可能性が高いということを申し上げたわけであります。ただ、そういったことの確率は非常に低いのではないかとは思っておりますけれども、対応が極めて困難になる可能性があると思います。

 なお、消費税率の引き上げそのものの問題につきましては、もとより、政府、国会において経済状況等を総合的に勘案して判断されるというふうに認識をいたしております。

古川(元)委員 確率が低くても起きるというのは、それこそ、この前の千年に一度の地震でもそうですね。起きてしまったら本当に大変なことになってしまうわけでありますから、取り返しがつかない。

 しかも、先ほどのお話からしても、それにどう対応できるかということについて、一度持たれた疑念を払拭するというのは、これは何かお金を出せばいいとか、そういう話でもないわけであります。御判断は最終的には政府がされるんでしょうけれども、これは我が国の将来に極めて重大な影響を与えかねない、そういう問題であるという認識はしっかり持って、判断をしていただきたいということを申し上げたいと思います。

 その上で、そことの絡みで、中期財政計画についてちょっとお伺いしたいと思います。

 先ほどの質問の中で、麻生大臣、これは公約ではない、公約というか、世界に対してアナウンスしたんだというふうにおっしゃいましたけれども、きのう、レクに来た事務方と話をしましたら、これは国際公約かと言ったら、これは国際的なコミットメントですと言いました。

 国際的なコミットメントだという認識で、大臣もよろしいですか。

麻生国務大臣 先生、公約というのは、我々が選挙のときによく使う選挙公約というような、公衆に対して、大衆に対して、みんなに対して約束をしているものとして使われるというのが私の意識なんですけれども、この財政健全化目標というものにつきましてはコミットメントなんだということを申し上げておりますけれども、いわゆる国際公約みたいなものだということを申し上げていた位置づけが変わったというわけではありません。

 ただ、何となく、いろいろな人から、コミットですか、公約ですかとか、いろいろなことを言われるものですから、それで、私どもとしてはコミットメントということを国際的には、訳するよりもこっちの方が話が早いので、海外的にはそういうぐあいに申し上げておるということであります。

古川(元)委員 英語の堪能な大臣ですから、その意味はわかっていらっしゃると思いますが、コミットメントという言葉はプロミスよりももっと拘束力が強い。これは、単に約束しましたというんじゃなくて、ちゃんとやる責任があるという、そこまでの強いものなんですね。

 ですから、むしろ公約よりも、私はコミットメントという言葉を聞いて、公約というと約束、しかし、それよりも強いものだ、そういう認識でいるということでいいんですね。ちゃんとやるところまで約束したものだ、その責任がある、そういうものだ、そういう認識でいいですね。

麻生国務大臣 古川先生、やはりこういったようなものは、国際的に見て、日本としてはこれまでやるんだというコミットをしているからこそ、今、日本の信用が高いんだと思っておりますし、事実、今年度は四兆円というのをきちんとクリアしているじゃありませんか。ちゃんと日本はコミットどおりしていますね、では来年もですねということになってきますので。

 そういった意味では、私どもとしては、こういった公約、コミットメントを海外に発信しているというのが、今、日本にとっての大きな信用の一部になっている、そう理解しております。

古川(元)委員 これが信用になっているとなりますと、先ほどの議論の中でも出てきたんですが、来年、消費税を予定どおり上げないと、ほかでそれこそ財政規模を減らすか、あるいは財源を見つけでもしない限りは、二〇一五年度のプライマリーバランス赤字半減の目標は達成できないはずなんです。その場合に、達成できないということは、コミットしたことを実行しない、責任を果たさないということになるわけですよね。

 消費税の引き上げをしないという決断をした場合でも、しかし、このコミットメント、二〇一五年のプライマリーバランス赤字半減のこの約束はきちんと実行する、そういう予算編成を組む、そういうふうに認識していいですか、大臣。

麻生国務大臣 基本的には、我々は、中長期の経済財政に関する試算の中におきまして、上げた場合にはこれは何とか達成できるめどに入っている、なっておりますのは御存じのとおりですが、仮に上げないということになった場合は目標達成は物すごく厳しくなる、もうこれははっきりしております。

 私どもとしては、そういった場合においては、二%上げるということは三党で合意した結論なんだということを世界に向かって言っておりますものの方が、国際的なコミットメントをするより、よほどこっちの方が説得力のある話なので、三党合意でうちはやっているんだということを言って、みんなにうらやましいとまで言わせた三党合意ですから、そういったようなものがきちんと履行されていくというのはすごく大事なことなのであって、コミットメントの話の後の、PBの半分とかゼロとかいうような話より、この約束の方がよほど私どもとしては国際的には大きな約束なんだ、私はそう思っております。

古川(元)委員 これは、どっちも大事な話だと思うんです。さっきから申し上げているように、コミットメントというのは、それは英語を母国語としている人から見れば、プロミスよりももっと拘束力がある、責任があるという話ですから。

 お伺いしますが、では、万一、消費税を上げないという決断をした場合には、今大臣がおっしゃったように、二〇一五年のプライマリーバランスの赤字半減は極めて難しくなるわけですよね。その場合には、そもそもこの財政健全化目標それ自体、そういう決断をするときには、これ自体も見直しますか。あるいは、どうするんですか、そのときは。

麻生国務大臣 今のは仮定の問題で、ちょっとお答えはいたしかねますけれども、少なくとも今の話の中で、仮にならないという結論になったときでも、二〇一五年にプライマリーバランスが半減するような方法で我々としては努力をせねばならぬということだけははっきりしていると思います。

古川(元)委員 ということは、仮に消費税の引き上げをしない、凍結するとか、そういう判断をしてもこのコミットメントは引き続き掲げる、そういう認識、理解でよろしいですね。

麻生国務大臣 これは、古川先生、今、十月のこの段階では最大限努力するとしか申し上げようがないと思いますけれども、我々としては、仮に十二月にそういうことになった場合でも、きちんとそういったものの目標を掲げてやり続けるということは申し上げないかぬところだろうと思っております。

古川(元)委員 目標を掲げてやり続けるというか、まさに来年の予算編成のところでこれは達成できるかどうかというのが見えてくるわけでありますから、つまり、もう十二月には、できるのかどうかという一つの形が見えてくるんですよね。

 それができないと、それこそコミットメントですから、責任を果たしたことにならなくて、先ほどから議論している、この政府は財政健全化に向けてちゃんとやる意思があるのかどうかという、まさに政府に対する信認に疑念が起きる。先ほどから議論になっている、上げないことによって起きるかもしれないリスク、しかし、起きてしまうと対応ができないリスク、それが発現する可能性が非常に高くなるんじゃないかと私は思います。だからこそ聞いているんです。

 それから、ここはしっかりと、消費税を上げる上げないのところと、財政健全化目標、国際的にコミットしたもの、これをちゃんと実行するかどうか、達成するかどうか。これは、目標として単に掲げるという、そんな先の話じゃないんですから、もう来年の話なんですから、そこはきちんとやるというふうに理解していいですね。

麻生国務大臣 何度も申し上げますように、我々は、三党合意の上でこういうのをきちんとやった、それに基づいてPBの話もしておるわけですから、三党合意がなきゃ、あのPBのバランスの話も成り立つ話ではないということを言っておられるんだと思いますので、私どもとしては、少なくとも二%の増税をきちんとやった上でPBのバランスをやる、半減させますという目標、これは目標ですから、そういったもののコミットをしておりますので、この方向をやらないと世界的にどういう影響を受けるかということも考えて結論をおろしてもらわなきゃ困りますよという話は、反対される方々もいらっしゃるんだと思いますけれども、そういう方々にはその種の話を申し上げて、御理解いただかねばならぬところだと思っております。

古川(元)委員 時間になりますので終わりますけれども、消費税を予定どおり上げるか上げないかという決断は、先ほどから申しておりますように、極めてこれは重い決断であって、もちろん日本経済に与える影響もあります。

 しかし、先ほどから申し上げているような、一旦、財政に対する、政府に対する疑念が湧いてしまえば、それこそ今の国債マーケット、これだけ日銀だけが買い上がっている、そういうような状況の中では、一度これが崩れ出すと、信認が崩れて、とめどない円安が進む、あるいは金利の高騰が進む、そうすると財政破綻という、今までは財政破綻というのはオオカミ少年のように言われていましたけれども、本当にそういうことが起きかねない。

 そういう極めて重大な決断をするんだということの意識を持って政権運営に当たっていただきたいと最後にお願い申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

古川委員長 次に、坂元大輔君。

坂元委員 皆様、おはようございます。次世代の党の坂元大輔でございます。

 我々次世代の党は、改めてでございますが、旧日本維新の会の分党に伴いまして、八月一日に結党させていただきました。新党新会派として、こちらの財務金融委員会でもこれからお世話になります。私は以前から財務金融委員としてこちらの委員会に所属しておりましたが、改めて、新しい党会派として、よろしくお願い申し上げます。

 この次世代の党という党名でありますが、実は、私、坂元が提案をして、この党名で、党内がそれでいいじゃないかということでまとまりまして、決まりました。

 この次世代の党という名前に対する私の思いをお話をしているときに、我が党の石原慎太郎最高顧問からは、君はよくしゃべるなというふうに笑われたくらい、この名前に対する思いをお話しさせていただいたわけですが、それはまさに次世代のための政治を行っていきたいということであります。我々の子供たち、孫たち、それからずっと続いていく子孫たちのために、このすばらしい国日本、そして豊かな地域を守ってしっかりと引き継いでいきたい、その思いでこの次世代の党という名前をつけさせていただきました。

 そのためには、皆様もこの点については党関係なく同意いただけると思いますが、今政治が抱えているさまざまな問題、課題は、やはり先送りをし続けてきたこの日本が抱えている構造的な問題、課題に真正面から取り組んでいかなければならないんだというところであると思います。そして、その最も大きな問題の一つが財政の問題であるというふうに私は認識をしております。

 これまでも当委員会で財政健全化の問題をたびたび御質問させていただいてまいりましたが、今回は、消費税率の引き上げと財政健全化というテーマについて御質問をさせていただきます。

 まず、本年六月三日の当委員会における私の質問に対して、麻生大臣は、きちんと一〇%になれるような状況にことしじゅうにしておかなければならぬというところが、私どもにとって一番大きな大事なところかと思っておりますというふうに答弁をしていただきました。

 しかし、大臣は所信的発言の中で、アベノミクスの効果で日本経済は緩やかに回復基調が続いている、近年にない賃上げも起こっているというふうにおっしゃいましたが、私もこの夏、地元の選挙区、広島県の福山市中心にいろいろな方とお話をして、やはりどうも国民の実感として、景気が上がっている、賃金が上がっているというふうにすぱっと答えられた方は少なかったというのが私の実感であります。そういう中で、七月―九月の経済状況の詳細はまだ出ておりませんけれども、私は厳しい数字が並ぶのではないかなというふうに感じております。

 率直にお伺いをいたしますが、四月に消費税率を八%に引き上げて以降、景気の回復がおくれているというふうに私は感じますけれども、もしそうであれば、その理由というのをどのように大臣としてはお感じになっていらっしゃるでしょうか。

麻生国務大臣 四月の消費税に伴います反動減の影響が残っておりますのは、自動車なんかを見ますと、自動車の品目、広島でいえば多分マツダやらが皆関係していると思いますが、そういったところを調べられたらわかりますけれども、間違いなくそうなっております。傍ら、広島だったら、近く、反対側の今治造船初め造船のところへ行ってみられるとわかると思いますが、ここは、向こう三、四年、仕事はもうとれませんよ。いっぱいで、ドックはもう満杯でしょう、今。

 だから、広島にその影響が出てきていますので、いろいろ業種によっても地域によってもすごく差があることははっきりしていると思っております。

 それから二つ目は、天候不順というのが結構大きな理由で、例えばゴルフ場なんかでも、八月、キャンセル三百組とか、七月でもキャンセル二百七十組なんというのは私どもの福岡県ではざらでした。三百組というのはでかいですよ、一月間で。掛ける四人ですからね。それに一万円掛けてみたらわかると思いますが、結構なでかいキャンセルになった。では、天気がよくなったから来月は倍しようなんて、そんな人はいませんから。ビールも、この間聞きましたら壊滅的ですという話でしたけれども、では、九月になって天気がよくなったから、八月に飲めなかったから倍飲むかというと、そんな人もいませんから。やはりこれももろもろマイナスになるという面は、坂元先生、大きなところなんです。

 一部に弱さが見られることは確かだと思いますけれども、傍ら、先ほどどなたかの御質問に答えましたけれども、有効求人倍率とかそういったようなものを見ますと、基本給もそうですけれども、極めてプラスにはなっております。四―六が非常に厳しいものになったということになっておりますけれども、その四―六とその前の一―三月を並べて一―六の半年間で見ますと、前年同期比でプラスの一・三ということになりますので、そういった意味では、決して景気は落ち込んでいるというわけではないと思います。緩やかには回復している、はっきりしていると思います。

 ただ、地域差、業種差というのはかなりあって、例えばガソリンなんかを見ましても、極めてガソリンの値段が高いというところは、例えば山口県とか、地域によってすごくあるんですよ。そういった差がどうして出るかというと、いろいろ理由はあるんですが、とにかく、地域差やら何やらでリッター当たり十五円も二十円も違っています。

 そういった意味では、非常に地域によって差がある、業種によって差があるということも含めて、この年末に向けて、先ほど古川先生の御質問にもありましたけれども、きちんとした形で予定どおりのものができるような経済状況というものをつくり上げていかねばならぬな、そういったものを配慮しておかねばならぬなと思っております。

坂元委員 天候不順や地域による差というものを今御答弁いただきました。ただ、天候というものはもちろん我々でコントロールできないものですので、対応していかなければならないわけであります。

 緩やかに回復基調にあるのではないかと。確かに、四―六に比べれば七―九は当然、四―六はまさに上げた直後ですから大きく落ち込んだわけですので、回復してくるとは思いますけれども、問題は、それが一〇%に上げる決断をするくらいの状況になるのかどうか。それをしていかなければならないんだというふうに今大臣から答弁がありましたけれども、政権与党である自民党内でもいろいろな意見が出てきているというふうに伺っております。先ほど、竹本委員からも慎重にというような御質問もあったと思います。

 そういう中で、先ほど古川委員からも御質問がありましたけれども、仮に一〇%への引き上げというものを見送るというか、先延ばしするというか、おくらせるというか、そうした場合、財政健全化目標である二〇一五年のプライマリーバランス赤字半減という目標達成はかなり厳しいというふうに先ほど大臣からも答弁がありました。

 しかし、財政審の文書でもありますとおり、二〇一五年の赤字半減も、二〇二〇年の黒字化ですら一里塚にすぎないというくらい我が国の財政は深刻な問題でありますので、私は、八%据え置き、一〇%は、一年半なのかそれ以上なのかあれですけれども、先送りをしても、二〇一五年のプライマリーバランス赤字半減は絶対に達成しなければならない、それこそコミットメントだというふうに思っております。

 そうなると、やはりとれる方策としては、私は二つぐらいしかないんじゃないかと思っております。

 その一つ目は、大胆な歳出の削減であります。

 例えば、これはずっと言われ続けていることですけれども、高齢者医療負担。今、法定では二割のものを特例で一割にしている、これをできるだけ早く法定に戻していく。もっと言うならば、小学生以上は三割払っているわけですから、では何で高齢者は二割なのかというふうな議論もしていかなければならないというふうに思っております。あと、我が党が今、外国人の生活保護措置を見直すべきだというふうに提案しておりますが、そういった法と今の実情に基づいて、これは本当に必要な歳出なんですかというところをしっかりと見ていかなければならないんじゃないかと思っております。

 そしてもう一つは、課税ベースの拡大だと思います。

 例えば、重厚長大産業にどうしても偏重しがちな租特、租税特別措置を抜本的に見直していくことであったり、我々が維新の会時代からずっと提案をしておりますけれども、広く薄い年金目的の相続税というものを新たに創設したりであったり、そういう課税ベースを拡大していくということ、これを思い切ってやっていくしかないんじゃないかなというふうに私は考えております。

 そういった大胆な歳出の削減もしくは課税ベースの拡大というところに関して、麻生大臣の御見解をお伺いできればと思います。

麻生国務大臣 今言われた話のかなりの部分は、古川先生の先ほどの御質問の趣旨とかなりかぶっているところがあるんですが、基本的に、これを上げなかった場合でも来年のプライマリーバランスの半減までは達成せい、その手口としてはというので今いろいろな御意見を言われておられますけれども、それは全部法律の改正を伴うものばかりですから、法改正の時間を計算しますと、来年の三月三十一日までに間に合うかといえば、それはなかなかさようなわけにいきません。プライマリーバランスの半減目標をきちんとやろうとするならば、やはり消費税の二%というものが最も、方法としては法律改正が要るわけでもありませんし、法律どおり。ただし、いろいろな反動減を考えて、その対応をあらかじめ盛り込んでおく、対応しておくということの方がより現実的ではないかというように感じます。

坂元委員 確かにおっしゃるとおりだと思います。私も経済状況が許せばそうすべきだというふうに考えておりますが、ただ一方で、先ほど来議論にありますとおり、果たしてそういう状況になるのかどうか、そして一〇%に引き上げた場合の景気に与える影響というものも考えていかなければならない、非常に難しい判断になるんじゃないかなというふうに思います。

 少し質問をかえますが、黒田総裁にお伺いしたいと思います。

 一〇%への消費税の引き上げをおくらせた場合、国債の長期金利上昇リスクが高まることは避けられないというふうに考えますが、この点について、御見解を改めてお伺いさせていただきます。

黒田参考人 もとより、消費税率引き上げそのものにつきましては、政府、国会において経済状況等を総合的に勘案して判断されるというふうに認識しておりますけれども、その上で、一般論として申し上げますと、やはり国全体として、財政運営に対する信認をしっかりと確保するということが極めて重要であると思います。この点は、委員の御指摘のとおりであります。

 この点、政府は、中期財政計画において、財政健全化に向けた数値目標と、その達成に向けた取り組みを明確にしておるわけでございます。ずっと話が出ておりましたとおり、プライマリーバランスの赤字を二〇一五年度までに半減し、二〇二〇年度までにゼロにする、こういうことになっているわけでございまして、日本銀行としては、今後とも、持続可能な財政構造を確立するための取り組みが着実に進められることを期待しております。

坂元委員 もちろん政府と日銀はそれぞれ独立した存在でありますけれども、やはり金融の状況であるとかそういったものを、しっかりと黒田総裁からもコミュニケーションをとっていただいて、一体となって取り組んでいただきたいと改めて御要望させていただきます。

 続きまして、日銀の金融緩和についてお伺いをさせていただきます。

 黒田総裁は就任以来、二%の物価安定目標というものを達成するんだというふうに掲げて運営をされてきたわけですけれども、本年八月のコアCPI上昇率は前年比一・一%、六、七月よりも下がりました。

 こちら、きょうお配りしている資料をごらんいただきたいというふうに思うんですけれども、これは、コアCPIとコアコアCPIとエネルギー価格の上昇率をグラフにしたものでございます。

 これを見ると、八月、なぜコアCPIが下がったのかという理由は私は明らかだというふうに思っておりますが、エネルギーを除くコアコアのCPIは横ばいに推移しているのに対して、エネルギーを含むコアCPIは、特にことしに入ってからはエネルギー価格とほぼ並行して上がっているという形であります。

 つまり、最近のインフレの最大要因は、円安、原油高、原発停止によるエネルギー価格の上昇なのではないかということです。特に、八月のインフレ率が下がったのは、原油価格が下がったことが大きいのではないかというふうに私は捉えております。

 これは、二%のインフレという目標、本来は、経済の循環をよくして、所得が上がることによって物の値段も上がっていってという健全なインフレを狙っていたわけですけれども、残念ながら、特にことしに入ってからのインフレというのは完全にコストプッシュ型になっていると理解せざるを得ないというふうに私は考えますけれども、この点について、まず黒田日銀総裁の御見解をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 八月の消費者物価、除く生鮮食品の前年比が前月に比べてプラス幅を縮小しましたが、これは、御指摘のとおり、主としてエネルギー価格の低下を反映したものであります。

 ただ、もっとも、中長期的に見た物価の動向というものは、やはり基本的に、需給ギャップの改善と予想物価上昇率が上昇しているということを背景に物価が次第に上がってきているというふうに考えております。

 需給ギャップが労働面を中心に改善を続けておりまして、最近は過去平均並みのゼロ近傍ということになっておりますし、また中長期的な予想物価上昇率は全体として上昇しておりまして、こうした動きは実際の賃金、物価形成にも影響を及ぼしているというふうに思います。

 そうしたもとで、消費者物価、除く生鮮食品、いわゆるコアの前年比が、量的・質的金融緩和の導入前の昨年の三月はマイナス〇・五%であったわけですけれども、最近では、消費税率引き上げの直接的な影響を除いて一%台前半で推移しているということも背景にあるというふうに思っております。

 御指摘のように、輸入品のコスト等が上がったときに足元の物価を引き上げる、逆に、最近のように、エネルギー価格が低下すると足元の物価上昇率を引き下げるという効果があることは事実ですけれども、中長期的に見ますと、コストが上がったものが転嫁できるというのは、それだけ需要もある程度ふえていないとコストが転嫁できなくて、結局、一時的に輸入物価を上げたものの、売れ行きが落ちてしまってまた下がってしまうということにもなりかねませんので、短期的に見ておっしゃるとおりの影響が出ているということは事実だと思いますけれども、より中長期的に見て物価水準が上がってきているということの背景には、やはり需給ギャップが改善し、予想物価上昇率が上がってきているということがあるのではないかというふうに思っております。

坂元委員 中長期的には需給ギャップの改善があらわれているんじゃないかという御見解でありましたが、同じ質問を麻生大臣にも、最近のインフレはコストプッシュ型なんじゃないかというところに対しての御見解を伺いたいと思います。

麻生国務大臣 御指摘のとおり、エネルギー価格の上昇というものが物価の押し上げに寄与してきたことは間違いない事実だと思っていますが、しかし、エネルギーとか消費税率の引き上げの影響を除くベースで見ましても、上昇率は依然として前年度比プラスになっていると思います。

 資料を見ましても、全国で、食料、それから除く酒及びエネルギーを除くいわゆる総合消費者指数、CPIですけれども、二十四年度がマイナス〇・六、二十五年度がプラスの〇・二、そして二十六年四―六月期が二・二になってきて、そして七月、八月は二・三ということになってきています。

 そういった意味では、先ほど総裁が言われましたように、予想物価率の上昇というものが何となく全体として感じられますから、そういった意味では、需給が引き締まってきているとかいろいろなこともあって物価を押し上げているんだというような感じがしますので、コストプッシュインフレであるという御指摘は当たらないのではないかと思っております。

坂元委員 私もそうであることを願っておりますが、どうしても現状を見るとだんだんだんだんコストプッシュ型になってきているんじゃないかなというふうに私には捉えられます。

 そうなると、アベノミクスの論理の一つであった、ゼロ金利制約下で日銀が、中央銀行がマネタリーベースをふやすことでインフレ期待に働きかけ、実質金利の低下を促して資金需要をふやしていく、その上で、第二、第三の矢と組み合わせることで実体経済を好転させていくというモデル自体がちょっと崩れかねないんじゃないかなという疑念も持っておりますので、この点についてはまた次回以降の御質問で取り上げさせていただきたいなというふうに思っております。

 時間の関係もありますので、最後の質問をさせていただきます。

 黒田総裁は、昨年四月の異次元の金融緩和スタートのときの会見で、二年程度で物価安定の目標が、これは二%ということですが、達成できれば非常に好ましいというふうにおっしゃっておられました。

 しかし、今月、十月七日の金融政策決定会合後の会見では、この政策自体は、あくまでも、米国で言うカレンダーベースではなくアウトカムベースといいますか、まさに物価安定の目標との関係で、それが実現し、安定的に持続されるまで続けるというものですと。

 アウトカムベースという言葉を、私の認識では初めて使われたのではないかなというふうに思っております。この表現は、カレンダー、つまり二年程度という期間の目標を放棄したように捉えられなくもないというふうに思うんですけれども、このアウトカムベースという言葉の真意について、もう少し詳しくお話を伺いたいと思います。

黒田参考人 日本銀行が昨年の四月に量的・質的金融緩和を導入して、それ以来これを推進しているわけですが、昨年四月に導入したとき以来申し上げていますとおり、二%の物価安定の目標を、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に実現するという方針で進めていることに変わりはございません。

 それとともに、これも四月に導入したときから申し上げているわけですけれども、この二%の物価安定の目標は、一時的に達成すればよいということではなくて、二%が安定的に持続するということを目指しております。量的・質的金融緩和はそのために必要な時点まで継続する、これも昨年の四月以来、毎回の金融政策決定会合後の会見でも申し上げておりますけれども、継続するということになっておりまして、その意味では、あらかじめ期限を切っているというわけではありません。

 繰り返し申し上げますと、今申し上げたことは量的・質的金融緩和の導入当初からいささかも変わっていないということでございます。

坂元委員 先ほどのプライマリーバランスの目標と同じで、この二年程度という目標もぜひ達成していただきたい、カレンダーもお忘れなくというふうにお願いを申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

古川委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみであります。

 久々に財務金融委員会に戻ってまいりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず初めに、きょうの質疑は一般という解釈もあるんですが、大臣の所信的発言に対する質疑ということでありますので、大臣の責任感というか思いというか、そういう部分をぜひとも承りたいと思っております。よろしくお願い申し上げます。

 正直、今、日本丸は、私が感じるところ、アメリカで言うと、その昔、レーガン・ブッシュ・アドミニストレーションという言葉がありましたけれども、実際、今、安倍政権と言われていますけれども、現実は安倍・麻生アドミニストレーションということで、私は、麻生副総理がしっかりと支える中で、安倍政権が第二次改造を迎え、今回の臨時国会を迎えさせていただいているというふうに考えております。

 そんな意味から、来週には、二十一、二十二とAPECに、北京の方に行かれて、そして、経済のお話も当然、財務大臣会合ですから大事でありますけれども、中国との関係の導きをされるというような報道もありますので、そういった意味で、大変重たい責任を麻生副総理・財務大臣・金融担当大臣は負っておられるというふうに、僣越ですけれども、私は拝察させていただいております。

 そんな意味で、私も一日本国民として、あるいは国会議員をさせていただいている立場の人間としてですが、現在、日本の厳しい状況というのは、例えていいかどうかわかりませんが、山登りをしていて、天候が非常に不順の中で、霧がかかって雨も降ってきて、もう前が見えなくなっている。そんな中で、岐路に立っていて、右に行くのか左に行くのか、こういう選択がまさしく今回の消費税でもあるかと思いますし、それ以外の部分でも、質疑でも大臣は、借入金を後世に先送りできないんだということをおっしゃっておられました。まさしくこの責任というものを踏まえていらっしゃると思うんですが、政治の課題を後世に極力先送りしないというような実効性みたいなところが今我々の政治というのは、私は僣越な立場ですけれども、そう感じております。

 そんな意味で、第二次内閣の中での本当に安倍総理とともにアドミニストレーションを担っていらっしゃる副総理というお立場もありますし、消費税という問題もある財務大臣として、その責任というか思いというか、これはちょっと変な言い方かもしれませんが、一回生、二回生の我々にはわからない重さをしょっておられるというふうに拝察いたしますけれども、その現在の思いを改めて伺わせていただいてよろしいでしょうか。ちょっとこれは事前通告はないですけれども、所信ということで、その発言に対してお答えをいただければありがたく存じます。

麻生国務大臣 時代が物すごく大きく変わっていっておりますので、その中に我々は政治の責任を負っておるという状況を恵まれていると思うか大変だったと思うかは、先生、御自身の判断なんだと思います。

 今、昔の本を読んでも、明治の時代はおもしろかったろうな、私はそう思いますが、あの時代にもし生きていたら、ある日突然来て、杉本、おまえ、そのちょんまげを切れとか、全部一方的に決められちゃうわけですね。着物はだめだとか、三味線は全部禁止するとか、全部ギターにしろとかバイオリンにしろという話。みんな強制的も甚だしい時代で、僕は、あれは庶民にとっておもしろい時代だったかといえば、極めて生活環境が地すべり的に変わっていく時代で、薩摩から私どもの先祖がごそっと入ってきて、田舎者がお江戸を占領するような話ですから、お江戸の人にとってはさらにおもしろくないという、あの時代にいるんだと思います。

 今我々が置かれているこの二十一世紀という時代も、後世から見たら、あれはおもしろい時代だったろうと言われる時代なのかもしれませんが、今いる我々にとりましてはそれはなかなか厳しい状況なので、方向を間違えると、我々としては、今までとは全然違ったことになるのではないか。その最たるものが、例えば日本でいえばデフレーション。デフレーションなんというものは、少なくとも、一九三〇年代に一回やった以来やったことがありませんから、デフレーション下で経済政策や景気対策をやった経験者は日本には一人もおりません。したがいまして、我々は歴史に学ぶしかほかに方法がないんです。

 そういった置かれている状況を考えると、やはり今は、この時期、三党で合意して消費税とかいろいろなことをそれなりに、後世、歴史家が評価されるのは、あの三党の合意にしても、いろいろな意味で評価されるものも我々はやっているんだ、そう思っていますけれども、いずれにしても、結果を出さなきゃいけませんものですから、どうしても、今、デフレが悪いんじゃない、デフレ不況というものが悪いのであって、デフレ不況からの脱却というところに我々は行き着いて初めて成果が上がったということが言えるんだという責任は強く感じているところであります。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 それで、三党合意、再三質疑で出ていますが、他国からうらやましいと言われるほど重要である、重たいということで、古川元大臣の質問にも御答弁があったかと思います。

 そんな中でも、やはり厳しい判断というか正しい判断をしていただかなければならないという思いの中で、我が党にもいろいろな意見があることも事実でありますけれども、先日、十月六日、予算委員会の二日目で、我が党は浅尾慶一郎代表が質問に立たせていただいて、これもちょっと通告していないんですけれども、あえて確認をさせていただきたいんです。

 浅尾代表は安倍総理に対して、まず五%から八%に上げたときのレビューをしっかりしておくべきではないかということを言われ、そしてそのときに、去年の十月一日の閣議決定でございます、それで五兆円の経済対策を打つということも含めて閣議決定がされたわけであって、その結果、ことしの四月の三%上げにつながったわけでありますが、安倍総理からは、その五兆円の経済対策についてはしっかりレビューをする必要があるというような御答弁を賜りました。

 その中で、我が方の要望としては、できれば臨時国会中にそのレビューをちょっと出していただけないかというようなことをお願いし、総理からはっきりした御答弁はありませんでしたけれども、レビューの必要性だとか、あるいは、五から八に上げたところをもう一回確認した上で一〇%の判断というのをしていただくことが本当に正しい判断をしていただく上で必要だと思っておりますけれども、そのあたりの、担当大臣というか、財務大臣としての思いを確認させていただければと思います。

麻生国務大臣 先生、基本的にはこれは内閣府が主にやる仕事なんでありますけれども、経済対策の効果の検証ということにつきましては、三カ月ごとの経済対策というものの執行とか進捗状況の調査というのは内閣府がやっている話なんです。そういった意味では、少なくとも、例えば繰越明許はつけているとはいえ、予算、補正等々で次に繰り越した、繰り延ばしたものがどれだけ進捗しているかとか、そういったものがどれくらい効果があったかとかいうものはきちんとやっていくのが後々のためになると私どもも思っております。

 いずれにしても、どういう政策が効果があったかと私ども思い出しましても、最初、リーマン・ショックが起きましたときに、エコカー減税というのを私どもやらせていただいた。七千億だったと思いますが、財務省の評判は最悪でした。こんなものをつけて何するんだとぼろかすに言われましたけれども、結果的にあれは波及効果が、三兆何千億という効果が出ております。

 こういったときには、何が人の気持ちを緩ませるか。少なくとも一千六百兆円の個人金融資産、うち八百六十兆円が現預金というような薄気味悪い金を持っている国ですから、国民ですから、その持っているお金がちょっと動くだけで景気は全く変わっちゃうということになりますので、そういった意味では、私どもは、どこが人の気持ちをそうさせるかというところがなかなか、こういう世界、永田町とか霞が関に三十年もいると少し頭がおかしくなってきているので、やわらかいところの人をもう少しいろいろな意見を聞いて集めないかぬところだろうな、私どもはそう思っております。

杉本委員 御答弁ありがとうございます。

 レビューをしっかりしていただく方向にあるというふうにとらせていただきました。

 おっしゃられるように、気が大事でございます。私の地元の山である御嶽が噴火して多くの方が亡くなられて、まだ行方不明の方がいるというような意味では、国民は気が非常に下向きになってしまっていると思いますので、そういった意味で、ぜひとも、明るいリーダーでいらっしゃる麻生副総理に大いにエールを送らせていただきたく存じます。

 それで、本来のところで、まず、プライマリーバランスの目標の点について、麻生財務大臣の所信的発言の中で幾つかポイントがあったと思うんです。二〇一五年の目標、二〇二〇年の黒字化を、健全化目標実現に向け、引き続き歳出歳入両面における取り組みを進めるというお言葉があって、これが具体化することがやはり現実政治だと思うんですが、具体的にどんな分野を行っていくという、内閣全体として伺いたいのですけれども、思いがあられるのか。

 それと、もういらっしゃいませんが、維新の党の伊東さんがジェネリック医薬品のことについて触れられていました。社会保障費が自然増で年間一兆というような形でふえていく中で、内閣としてマクロの経済スライドをやるという方向はわかっておりますけれども、やはり答弁で、九十兆のうちの三十兆、三分の一が社会保障費のお金であり、そして受益と負担の不均衡を改めなければならないというお話がありました。

 厚労省とどちらかというと余り仲よくない関係の八代教授に言わせると、表現としては、今の時代というものは孫のクレジットカードをおじいちゃん、おばあちゃんがどんどん使っているという表現が一番みんなにフィットするんではないかということを言われます。

 この社会保障費の部分、七十五歳以上の後期高齢者の負担も低所得者を含めて見直しの方向にあるとも報道されていますけれども、この部分への切り込みをすることが、ちょっとこれはすぐの法案とかいうことではないですけれども、短期的に手を打っていかなければならない、まさしくアドミニストレーションをされておられる立場として、財政の健全化目標と絡めても切り込んでいかなきゃならないと思います。

 社会保障を中心にということになると思うんですけれども、改めてその思いを確認させていただければと思います。

麻生国務大臣 杉本先生、まずは、先ほどの古川先生の質問じゃないですけれども、二〇一五年の基礎的財政収支の半減目標の達成というのは一番目先に出てくるところだと思います。これは予算の中身を大胆に重点化、効率化していかないかぬところなんですけれども、そういった意味で、やはり一五年、二〇年という目標をきちんとしておりますので、具体的な道筋というものも早期に明らかにできるようにしていかねばならぬだろうと思っております。

 その際に、やはり収支改善が可能なときにはできる限りやっておいた方がいいのであって、去年四兆のところを五兆二千億行きましたので、五兆二千億やるということで去年やらせていただきましたけれども、そういったものはきちんとやる方向で、できるときにやっていかないかぬのだろうと思っております。

 それから、社会保障の話がありましたけれども、これはやはり一番大きい話でありまして、九十兆の中に三割を占めております。そういった意味では、受益と負担という関係がバランスしておりませんものですから、それを先送りして、早い話が全部借金で賄っておるということになろうと思いますので、先ほどのクレジットカードの話じゃありませんけれども、ある意味で当たっているという感じがしないわけでもありません。

 したがって、社会保障費の伸びを抑制していくときに当たって、自然増が毎年一兆円、これはいわゆるベビーブームと言われた人たちがどっと来年からふえてきますので、その世代の人たちのふえ方やら何やらを考えてみましても、やはり高齢化による自然増というもの以外のものもこの一兆円ふえていく中に入っていると思われます。

 六月に閣議決定されておりましたいろいろなものの中で、介護報酬の中におけます、例えば社会福祉法人の内部留保、これが約二兆円ぐらいあると思っております。そういったものやら、介護保険サービス事業者の経営状況等々を勘案してみるとか適正化するとか、また通称ジェネリックと言われる後発医薬品、日本語でたしか後発医薬品と言うんだと思いましたが、後発医薬品というものを病院の薬の使用の中に入れていくということを考えますと、アメリカではこの後発医薬品の使用量が九〇%なんです。日本は四〇%です。開発を一番しているのはアメリカですから、そのアメリカで九〇%がジェネリック、イギリスが七〇、ドイツが八〇ということになっている中で日本だけが四〇というのは、どう考えてもこれは、我々としては、さわれる部分が大きいのではないかということなんだと思います。

 もう少し具体的なところを詰めないかぬとは思いますけれども、詰めてきちんと御質問の趣旨に沿うように応えてまいりたいと存じます。

杉本委員 ぜひとも思い切った切り込みをしていただきたいとお願いを申し上げます。

 次に、古川元大臣とのやりとりの中でも、二〇一五年と二〇二〇年の目標ということで、質疑にも随分出ていましたけれども、七月下旬ないし八月八日に経済財政諮問会議に提出された中長期の経済財政に関する試算で、二〇一五年の目標がまず一番であることは確認しているんですけれども、二〇二〇年の黒字化達成が、一つの試算だと十一兆、もう一つのものは十二・四兆と出ているんですが、これは前提が成長率二・一というような数字で出ております。

 改めて、もう質疑の中で大分確認させていただいているんですが、二〇一五年の赤字半減目標というのは、これをとにかくやろうじゃないか、コミットメントだというお言葉も確認されておられましたけれども、それを、ちょっと先の話をするものじゃないと言うかもしれないんですが、あえてさせていただくとすると、その二〇一五年をクリアというか越えた後、二〇二〇年が厳しいということは引き続き指摘をされております。

 その場合に、来年度以降の話になるかもしれませんので、ちょっと先の話は言えないよと言われちゃうと寂しい限りなんですけれども、やはり目標というのはしっかりできて、しかし次についてはという、修正というのも改めて私は必要ではないかと。

 ただ、日本は着実に、少しずつでも改善に向けて動き出したぞという国際的な評価をいただくことが大事だと思いますので、そういった意味から、二〇一五年は当然クリアしていくんだという前提の上で、二〇二〇年の目標時期、内容を経済情勢によっては変えていく可能性はあるよということは確認させていただけないでしょうか。

麻生国務大臣 これは先ほどの古川先生の御質問とかぶっているところもあろうかと存じますが、おっしゃるとおり、七月に内閣府が公表しております中長期の経済財政に関する試算を見ましても、経済再生のケースを当てはめて試算しております五年間の分を見ましても、約十一兆円の収支改善努力が要る、まだ必要です、その分だけまだ赤字ですという数字になっておるわけです。

 したがいまして、残り五年間で少なくとも毎年二兆円ずつぐらいきちんとしたものをやらないと、この十一兆円はきちんとはまらないということになろうと思いますので、私どもは、それをきちんとやっていくということが次の目標になろうと思います。

 同時に、それをやるときには、それから先、PBがバランスしたからいいというわけじゃないのであって、だんだんだんだん借金を減らしていくようなことを考えていかぬと、銀行におられたのでよくおわかりだと思いますが、これは、いわゆる債務超過とは言いませんけれども、情勢としては、きちんとしたものにしていかないといかぬと思います。

 財政健全化目標というものの内容をきちんと修正した上で、私どもとしては、その後、二〇二〇年以降の分もちゃんと少しずつ少しずつバランスというかよくしていくように、景気がよくなっていけば税収がふえる、民間のいわゆる仕事が出ていく、需要がふえる等々によって政府支出はその分だけ減らせるわけですから、当然のこととして赤字国債等々のものを出す比率は下げていかなきゃいかぬということになろうと思います。そういったことまで考えてやっていくという計画をきちんと立てておかないといかぬものだ、私どももそう思います。

杉本委員 ありがとうございます。

 改めて、二〇二〇年より先もしっかりとむしろ計画を立てていく必要があるんだというふうに受けとめさせていただきました。ありがとうございます。

 最後の質問になってしまうかと思うんですが、所信の中で、「長期金利が急上昇するリスクに対応することが必要」というお言葉がありました。

 私もマーケットにいて、宮沢総理が当時、公定歩合をということで、実際、公定歩合が上がったときに一パーはね上がって、国債マーケットで一日近く買い手がつかない。当時、三・九%国債という、非常に高利だったですが、四%を割っているというだけで人気のない国債がありまして、それが値がつかないので、杉本、何とか売れ、こんな話になったんです。

 そういった値がつかないような時代というのを実際私は体験しているんですが、この「急上昇」と言われたところは、どのくらいの数字を想定されておっしゃっておられるのか。そんなことはなかなか言いにくいぞというのはわかっているんですけれども、あえてやはりリスクに対する備えというのを我が国はしっかりしておかないと、むしろ、我々にはなかなか言えないけれども、役所の中では、いわゆる財政破綻というと単語が難しくて何の意味かわからなくなるんですが、金利急上昇に対する備えといったものをしっかりしておく必要があると思うんです。このあたりの御認識を改めて確認させていただければと思います。

麻生国務大臣 杉本先生、国債を発行しております当局側としては、これはなかなか、ちょっとコメントしづらいところなのであって、無用な混乱を市場に招くのも断固避けないかぬところでもありますので、金利上昇のリスクとかそれに対するお答え、そこはちょっと差し控えさせていただきますが、金利上昇が財政に与える影響ということにつきましては、ことし一月の後年度影響試算というものを見ますと、平成二十七年度以降金利が仮に一%上昇した場合は、平成二十七年度に一兆円、平成二十八年度に二・五兆円、平成二十九年度に四・一兆円増加するという試算を示しております。政府としては、国債の管理政策というものに努めていくわけですけれども、いずれにしても、ここらのところを十分に頭に入れておかないかぬところだと思います。

 ただ、先生も御存じのように、これだけ国債を発行すれば金利が上がる上がると聞かされて、三十年間、下がりに下がったんですから、これぐらい世の中で信用されなくなったものはないですよ。いずれ上がりますよと言っても、麻生先生、あんたら、ずっとうそをつかれっ放しだろうが、ずっと下がってきたじゃないかと言われると反論の余地がないぐらい。大蔵省にだまされ続けてきた三十年とか、金利が上がる上がるとうそばかりつかれてきたじゃないかと言われたら反論できないんですよ。本当に、〇・四幾つですから。それだけ下がってこられると、これはちょっと、昔、武村正義が財政は破綻すると言ったときは金利が六%ですから、今はその十分の一以下ですよ。

 そういった状態になっておりますので、金利というものはなかなか、我々が習った経済学ではとても追いつかないなというのが正直な実感なので、ぜひこういったものも頭に入れながら、常に、先ほどのあれじゃありませんけれども、もし二%しなかったときのリスクはどうだといって先ほど古川さんが聞いておられたあの質問と同じで、もしもというときの話は十分に考えておかぬといかぬというので一応の数字を、当てはめただけの数字ですけれども、そういった数字にはなっております。

杉本委員 もう時間となりましたが、経済がよくなって、本当に需要が起きたときに逆に金利が上がるというリスクも御案内のとおりでありますので、備えあれば憂いなしということで、ぜひともいろいろなシミュレーションをしておいていただきたいと思います。

 以上であります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 法人税の減税問題についてお聞きをしたいと思います。

 消費税を一方で増税して、国民の負担をふやしながら、他方で法人税をさらに下げる、こういうことは国民の理解を到底得られないことではないかと思っております。

 ことしの骨太方針には具体的な税財政改革の方向が示されておりまして、その具体的政策の一番最初に法人税の改革というのが出てまいります。ここで、国、地方合わせて三五%程度の法人実効税率を数年で二〇%台まで引き下げることを目指す、この引き下げは来年度から開始する、こう書き込まれているわけですね。新成長戦略の中でも、二〇%台の法人税の税率実現、こういうことが書かれております。

 麻生大臣、これは麻生大臣が指示して書き込ませた、こういう理解でよろしいんですか。

麻生国務大臣 二〇%台にするということを決めておりますのは、私一人が決めたわけではなくて、これは、経済財政諮問会議等々多くの識者の方々の御意見をいただいた結果、今の日本の法人実効税率を少なくともせめてドイツ並みぐらいにはというようなお話もあったりして、二〇%台ということにさせていただいたと記憶します。

佐々木(憲)委員 安倍総理は、一月二十二日にスイスのダボスで開かれた国際会議で、法人税をことしの四月から二・四%下げます、本年さらなる法人税改革に着手いたしますと述べております。その後、法人税のさらなる減税を骨太方針に盛り込ませるために、六月三日、官邸に党税調の幹部を呼んで、法人税率の引き下げを国際公約した、来年度から下げてもらいたい、こう指示したと報道されておりますが、こうなりますと、安倍さんが国際公約をして、それを実行するためにこの骨太方針に書き込んだ、こういうことになるんじゃありませんか。

麻生国務大臣 そこに至るまでの話がいろいろあろうと存じますが、日本の経済というものを考え、経営を考えていった場合において、少なくとも、他国に比べ、なかんずくアジアの中において、法人実効税率が日本の場合は高いという状況の中にありますので、国際競争を考えていく上で、投資を呼び込む等々のことを考えていったときにはやらねばならぬのではないかという、いろいろな方からの御意見というのは私どもにも数多く寄せられたところでありますので、総理が決めたからみんなそれに合わせたというような筋の話ではございません。

佐々木(憲)委員 しかし、この骨太方針に書くかどうかというのは一つのポイントだったわけでありまして、総理が関与したことも事実でありますから、どうもトップダウン方式であるということは間違いないと思うんですね。

 これを喜んでいるのは財界だけなんですよ。日本経団連は、九月十日の平成二十七年度税制改正に関する提言において、骨太方針に二〇%台の法人税実効税率の引き下げが書き込まれたことについて、画期的な方針が示された、こう言って、もろ手を挙げて歓迎しているわけです。誰のためにやったかということは明らかだと思うんですね。

 麻生大臣は、九月十六日の経済財政諮問会議でこういう発言をされていますね。法人実効税率を下げることはもう決めているが、下げた分だけ企業の内部留保に回っては意味がない、企業の内部留保は昨年の三月に三百四兆円だったのが、ことしの三月には三百二十八兆円までふえている、こういうふうに述べておられます。

 この限りでは私は理解できる発言でありまして、なぜこういう発言をされたのか、説明をしていただきたいと思います。

麻生国務大臣 景気をよくする、経済を成長させる、GDPを大きくする、同じことですけれども、基本的にその中身は大きく分けて三つです。個人消費が伸びるか、民間の設備投資が伸びるか、政府支出が伸びるか、そのほかにも純輸出とかいろいろありますけれども、大きく分けてこの三つ。その三つの中で設備投資というものが伸びるためには、やはり消費が間違いなく国内にないとなかなか伸びないということもありますし、円高では国内で幾らつくっても輸出ができないとか、いろいろな状況があったことはもう間違いないとは思います。

 少なくとも、企業はこの二十年間、デフレーションという今までやったことのないものをやった結果、経営者はじっと金を持っておきさえすれば、金の値打ちが上がって物価が下がる、一番楽な時代があったんですよ、私に言わせたら。じっと持っていたら上がったんですから、金の値打ちが。

 ところが、それが二%インフレにするといったら、じっと持っていたら二%下がりますから、間違いなくそれを、設備投資に回すか、消費を考えたら賃上げに結びつけてくれるか、もしくは株の配当に回すか、何かしてもらわないとということを言い続けたんですが、残念ながら、去年一年間を見ますと、三百四兆円が三百二十八兆円と、二十四兆円、月々二兆円ずつ内部留保がふえているんですから、これはどう考えたっておかしいでしょうと。

 設備投資も確かに今ふえていますよ。ただ、ふえていますけれども、その割に、銀行から借りて、それを使っていない。ということは、内部留保を取り崩して、そっちに回している。それだけの金があるということなんだと思いますが、それをやっても、なおかつ二兆円預金がふえていくということになります。

 そういった意味では、これはかなりのものになりますので、いわゆる中を、きちんとやってくれているんでしょうねということを調べさせてもらいますよというので、いろいろな方からの文句を突っ込んで今やらせていただいておりますので、そういったものをきちんとやっていただかないと、単なる法人税を下げても、その効果が景気に出てくるという保証がない、私自身はそう思っております。

佐々木(憲)委員 個人消費がやはりGDPの六割でありますので、それが伸びない限りは、当然、設備投資も伸びないわけであります。

 設備投資が伸びたという統計がありますけれども、中身を見ますと、能力を増強する、こういう部分がどんどん下がっておりまして、老朽化した設備の更新という部分、あるいは修理、こういうのがどっとふえているんです。今はこちらの方が大きいんです。だから、実際に需要が伸びて設備投資がふえるという形にはなっていない、逆転しているというのが現状であります。

 昨年来の議論で、法人税を下げたら賃上げをするということを言っていたんですけれども、今財務大臣もおっしゃったように、復興特別法人税を一年前倒しで廃止したんですけれども、大企業はわずかな賃上げを行いました、ベースアップも一部ありました。しかし、現状は、物価上昇で全て消えてしまっているんですよ。実質賃金は、十四カ月連続してマイナスです。そういう状況の中で内部留保だけがどんどんどんどんふえていっている、これが実態であります。

 麻生さんが出られた九月十六日の経済財政諮問会議で、日本経団連の榊原会長は何と言ったか。法人実効税率を真水で二%下げれば、賃上げに回すことができる。賃上げを口実に、また法人税を下げてくれと。私は、これは非常に虫のいい話でありまして、真っ先にやるべきは内部留保を活用して賃上げをする、もう既にこんなにたまっているんですから、そっちの方が先じゃないですかと言いたいんですが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 基本的に、賃上げとか雇用の拡大については企業の自主的な判断で決められるので、これはちょっと共産国家とかいうのと違いますので、その点は大原則なんだと思っております。

 少なくとも、二十年続いたデフレ不況のもとで、企業家の投資意欲が減退して、結果として、デフレーションも合わさって三百兆円に及ぶ内部留保が蓄積されたんですが、こういった中で今我々がやろうとしておりますのは、コーポレートガバナンスをやりますとか、スチュワードシップ・コードをやりますとかいうことを言って、企業さん、そういったものは、内部留保などが賃金とか雇用の拡大とか、そういうものに回るようにちゃんとやっていただけるでしょうねということをちゃんとチェックするということをやらせていただきますということで、先般の九月の二十何日でしたか、政労使の会議でもこの議論をさせていただいたところでもあるんです。

 企業にとりましては生産性の向上というのが一番なんだと思いますが、生産性の向上と賃金の上昇というのがうまいぐあいに好循環していくというところの中でつくられていくということにしなきゃいかぬところなので、今佐々木先生がおっしゃるように、そういったようなもので、少なくとも、何となく、おねだりしますみたいな感じにとられるような発言はいかがなものかというような感じで、御自身も後で、その発言に関しては別のところで取り消しておられると記憶しております。

佐々木(憲)委員 今おっしゃったように、内部留保の活用というのはやはり賃上げに回すべきなんですよ。

 スチュワードシップ・コードあるいはコーポレートガバナンスというのがありますけれども、これは、株主の、投資家に対する配当をふやせ、こういうことが基本でありまして、やはり、企業の中の内部留保を活用するということになりますと、賃金の引き上げ、下請単価の引き上げですよ。ここを回さないと、GDPの六割を占める家計消費に回っていかない。やはりそこが大事なんですね。

 そのために何が必要かということになりますと、最低賃金の問題ですとかあるいは非正規雇用、これをもっと改善して正規に変えていく、そういう措置をとる。法的にそういうものをきちっとやっていくということによって、企業がそうせざるを得なくなる。何も私は、大企業に強制して何かしろとか、そんなことを言っているわけじゃない。そういう制度をきちっと整備していくべきだ。今までの政府のやり方は逆の方に行っているんじゃないか、規制緩和で。そのことを主張しているわけです。

 それからもう一つは、日本の法人税は高いと言うんですけれども、税調の法人課税のディスカッショングループに提出された資料で、国税の法人税額と税引き前利益の関係、平成二十四年度、お配りした資料ですけれども、これがあります。

 これは二〇一二年度の数字ですけれども、これを見ますと、減税措置がないときの法人税総額は十六・二兆円です。租税特別措置による減税、さらに受取配当の益金不算入、海外子会社配当の益金不算入、それから欠損金の繰越控除、こういうものによって実際には十・四兆しか負担をしていない、こういうことになっているわけですね。

 国税庁が、二〇一二年度の実績に基づいて、法人税額が申告所得に占める比率、つまり負担率、これを資本金階級ごとに出したものがありまして、私どもも試算をしておりますが、それによりますと、中小企業は軽減税率があるから若干負担率が低い。どんどんどんどん高くなっていって、資本金一億円程度のところがピークなんですよ。それからどんどん下がっていく。大体、連結納税をやっているような大企業の場合には一〇%台ですよ。

 そういう負担率なので、大企業に対する政策減税、さらにほかの制度的な減税、こういうものが重なって、実際の負担率というのはそんなに重くないんです。その点で国際比較をしなきゃ私はおかしいと思います。それから、ヨーロッパの場合には、社会保障費の負担、これは日本よりも多いですよ。ですから、税、社会保障の負担を合わせて国際比較をする、こういうことをやらないと、表面税率だけ見て、そこだけで比較するというふうになると、これは間違ったことになる。

 税負担の実態は、お配りした資料、このとおりじゃありませんか。

麻生国務大臣 この資料のとおりかと聞いておられる。(佐々木(憲)委員「そうです」と呼ぶ)

 そうです。

佐々木(憲)委員 これは、国税庁の資料に基づいて財務省で集計しているわけですからね。

 何か高い高いと言うけれども、十六兆円払うのが十兆円になっているというのは、これはどう思いますか。

麻生国務大臣 この資料ですけれども、税負担の現状につきまして、これは他国に比較して高いとの指摘がされております一方で、今御指摘のありましたこの資料のように、租税特別措置、通称租特という部分ですけれども、その影響を繰り込んだ実際の法人税収というのは、GDPの割合で見ますと他国に比べて特に高いわけではないということだと思いますし、きのう御党の大門先生の示された、共産党のつくられた資料もぜひ参考にされると、共産党の資料を共産党が参考にしても始まりませんけれども、すごくよくできていますよ。

 私どもとしては、こういったものは大いに参考にさせていただかなきゃいかぬところだと思っております。

佐々木(憲)委員 政府は、日本経団連など財界の要望をよく聞いておられるようですけれども、法人税が高い高いとずっと言い続けて、法人税をずっと下げてきたんだけれども、どうも賃金はさっぱり上がらない、これが実態なんですね。本当に正確に内容を分析して、実態はどうなのか、このことをしっかり調べていただきたいと思います。

 それから、減税といいますけれども、減税は、当然、赤字企業にはいかないんじゃないんですか。

 今お配りした二枚目の資料ですけれども、例えば中小企業の場合、欠損法人が非常に多いわけです。例えば資本金百万円以下、こういうところは七割が赤字です。それから、五百万円以下のところ、五百万から百万ぐらいのあたりは七五%の赤字なんです。

 ですから、減税をしたら企業に回って賃上げにつながる、あるいは景気がよくなるという話がありますけれども、これは結局は、大手のところに減税が集中していって、日本社会の全体の底上げにつながっていかない、そういう問題点もあるわけです。

 この点については、麻生さん、どのようにお考えですか。

麻生国務大臣 この御質問の趣旨というのは、外形標準課税の話なんだと思いますが、それによって赤字の中小企業に負担が求められて、大企業に税率引き下げのメリットを与えようとしているのではないかという御懸念、簡単に縮小して言うとそういうことなんだと思います。

 今回の法人税の改革の中におきましては、地方経済を支えます中小企業への影響というものは十分に配慮してやらねばだめだと、これは最初に安倍総理から指示されたところでしたので、ここが一番数が多いところなんですけれども、地方創生ということをいいながら、それをやったらえらく影響を与えますよということで、中小企業への影響に配慮しつつ検討ということで、そこは中小企業という言葉が入ってきております。また、赤字企業の多い中小企業に負担を求めて、大企業に減税をやろうとしているわけではないということも御理解いただきたいところなんです。

 いずれにいたしましても、今全体で、どうでしょう、バブルのときですら日本で、全企業で法人税を納めているところは約五割、景気のいいときでも五割ぐらいだったと思います。したがいまして、やはり企業でもインフラはしっかり使っておられるわけですから、そのしっかり使っておられる分を誰が払っておるのかといえば、黒字の会社が全部その法人税を払っておるということですから、そういった意味では、利用しておられる方々もそれなりの負担ぐらいはしていただいてもいいのではないかというのが、基本的な外形標準課税の考え方の一番のもとだと思います。少なくとも、黒字にすればその分だけ法人税がこっちが減ってきてという形になりますので、自分の会社を黒字にしようというインセンティブも働くということになろうと思います。

 私どもとしては、こういったものも考えて、今回、法人税を下げるというのであれば、それにかわる確定した財源というものを、何となく上振れでもらえますとかなんとかというような、いいかげんな話ではなくて、きちっとしたものをしていただかない限りは法人税の減税には対応できませんということを申し上げてきたところであります。

    〔委員長退席、菅原委員長代理着席〕

佐々木(憲)委員 外形標準課税の問題は大変重大な問題でありまして、もしこれを実行しましたら、赤字の中小企業は大変な負担増になるわけですよ。

 税調の法人課税ディスカッショングループの意見書というものが出ています。これを読んでびっくりしたんですけれども、単年度で税収中立の必要はないとか、赤字企業に対しても一定の負担を求めるという課税ベースの拡大、こういうものが出されておりまして、応益性の観点から、将来的には外形標準課税の割合、対象法人を拡大していく方向で検討する、多数の法人が事業税を負担していないという状況の是正を図ると。

 これをもし実行しましたら、資本金一億円未満の赤字の中小企業に対しても課税対象を広げるという形になります。そうすると、これは本当に、今でもぎりぎりの状況なので、店を畳むか畳まないか、この消費税増税で大変な状況になる、さらに追い打ちをかける、こういうことにならざるを得ないです。

 中小企業四団体は厳しい抗議文を出しております。外形標準課税の中小企業への適用拡大には断固反対。代替財源の議論に上がっている法人事業税の外形標準課税は、従業員給与に課税するためアベノミクスの賃上げ政策に逆行する。地域の雇用を支え、労働分配率が八割にも達する中小企業への適用拡大は、赤字法人百七十五万社が増税、その影響が甚大であり、断固反対する。こういうふうに言っております。

 それから、中小企業家同友会全国協議会は七月に特別決議を上げています。法人事業税の外形標準課税適用拡大では、資本金一億円以下の中小企業も外形標準課税の対象とする。そうなると、従業員への給与総額、資本金が新たな課税対象となる。中小企業は正規雇用率が高く、雇用の安定を支えている存在であり、雇用や賃金水準の維持向上にとって阻害要因にしかなりません。賃金課税である外形標準課税適用拡大に反対します。

 私は、これは当然の声だと思うんですよ。応益負担とか、いろいろ言っておられますけれども、現実の中小企業ですよ、労働者を抱えて、労働者が多いところほど税負担が大きくなる。今までかかっていない中小企業にまで全部広げて、無理やりむしり取るようなやり方というのは、しかも大企業ですよ、減税対象。そんなことあるか、これは当然、中小企業の怒りであり、国民の多くの皆さんの声なんですよ。

 どうしても外形標準課税をやるという決意、あるんですか。もしあったら、大変なことになる。麻生大臣はどうお考えなんですか。

麻生国務大臣 わかって聞いておられるんだと思いますが、法人事業税は地方税ですから、これは総務大臣の所管であって、財務省の所管ではないということはよく御存じの上で聞いておられるんだと思いますが、この外形標準課税を中小企業向けに拡大していくということについての御懸念なんだと思います。

 これは、日本じゅうの中小企業、約七割が赤字だと思いますね、中小企業のうちで。したがって、そういう状況でありまして、今後の議論に当たっても、総理も本会議場で答弁されておられますように、中小企業への配慮というものの観点というものを含めて検討していくということは、はっきり明言されているところであります。

佐々木(憲)委員 配慮と言うなら、こんなことはやめた方がいいということを最後に述べて、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

菅原委員長代理 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木です。

 少しまた伺ってまいりたいというふうに思います。

 まず、きょうの新聞を引用させていただきますと、株安連鎖、アメリカに疑念ということです。世界的な株安が鮮明になってきた。十六日の東京株式市場は、前日の米欧株価の大幅下落を受け、日経平均株価の下げ幅が一時四百円を超えた。欧州や日本、中国の景気が不安を抱える中、好調が続いてきた米国にも悪影響が及び、世界経済の牽引役が不在になりかねないとの懸念が浮上したためだ。同日のアメリカのダウ工業株三十種平均は一時二百ドル超値を下げた。市場の混乱が長引けば、世界経済を揺さぶるおそれがある。これは、けさの新聞の見出しでございます。

 きょうは、どんなふうになっておるのか、そう大きな下げではないというふうにちょっと聞いておりますけれども、いずれにしても、株のことですから、いろいろな動きが出てくるということであります。

 そこで、私がお伺いをしていきたいのは、こういう状況の中で消費税アップはいかがなものかという視点で、お伺いをしてまいりたいというふうに思います。

 繰り返しになりますが、内外の株式市場が波乱局面に推移している。最大のポイントは、アメリカでの金融引き締めの中期的な見通しが強まりながら、短期的には金利引き上げのタイミングが先送りされる見通しが強まり、米ドルが反落していることである。

 十月八日に公表された九月十七日のFOMC、アメリカの連邦公開市場委員会の議事録要旨では、アメリカ経済見通しを脅かしかねない要因として、世界経済の成長減速とドルの上昇が指摘されたのである。FRBがドル高進行に対する警戒感を有していることが判明したため、為替市場でのドル高進行に対する警戒感が急速に強まっている。金融超緩和環境の持続は株価支持要因であるけれども、世界経済全体に対する警戒感が強まっていること、ニューヨーク株価に株価波動から判断される調整警戒感が生じていることから、ドルとニューヨーク株価の軟調が同時に発生する状況が生まれている、こういうことでございます。

 それで、ここからが質問なんですが、冒頭申し上げましたように、こういう状況の中でのさらに消費税増税はいかがなものか、こういう視点でお伺いしたいと思うんです。

 日本は、円安傾向、ニューヨーク株高傾向という株式市場の好環境が存在しているうちに消費税再増税先送りの方針を明示していれば、株価の本格反騰が実現し、日本経済の回復基調への回帰を実現できた局面であったわけですが、安倍政権は、消費税再増税決定の可能性を模索しており、早期決断はできない姿勢を示している。その間に、今述べたように、米国市場を取り巻く環境が転換しつつある。そのため、日本の株式市場は株価急騰のチャンスを生かすことができない可能性を強めたのではないかということでございます。

 これについて、まず大臣の御所見をお伺いしたいと思います。

    〔菅原委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは、株式市場の動向、きょうは前場が七十一円安の一万四千六百六十七円ぐらいで引けていると思いますけれども、いずれにしても、その時々の株価に対するいろいろな評価とかその要因について、具体的にコメントを金融担当大臣がするなんてことは考えられませんので、今そういったことを期待しておられるんだったら、その種の答弁はありません。

 それから、いずれにしても、デフレ不況からの脱却と日本経済の再生というのを図って、我々は今やっておるわけですけれども、先ほどいわゆる消費税のお話が出ておりました。先ほど民主党の古川委員のお話のときにも申し上げておりますけれども、これは、もし上げなかったときの場合はどうなる、上げたときの場合はどうなると、いろいろなリスクを考えてやっていかなければいけませんので、我々としては、残りまだまだ時間がありますので、その間にいろいろな経済手法を十分に考えて、本年中にこれを適切に判断していかざるを得ないということなんだと思っております。

 少なくとも、我々としては、在庫指数等々も足元で上がったりしておりますことも事実ですから、そういったことも考えて、今後どうしていくかということにつきまして、きちんと答えを出していかねばならぬと思っております。

鈴木(克)委員 さらに、消費税の再増税を凍結ないし先送りすべきだ、こういう視点で御質問します。

 今ちょっと在庫指数の話もあったわけでありますが、日本経済が浮上する展望を持てない最大の理由は、先ほど来もお話が出ていましたけれども、GDPの六割を占める個人消費の基本環境が激烈に悪化している点にあるということであります。

 これは、言われておりますけれども、八月の家計調査統計で、二人以上の勤労者世帯の実質実収入が八月時点で前年比マイナス五・四%の減少、そして、二人以上世帯の八月の実質消費支出は前年比マイナス四・七%である。家計所得と家計消費支出が前年比で五%の減少を示しているということであります。消費税大増税でこの状況がもたらされており、変化の可能性は全く示されていない。

 八月の毎月勤労統計で、名目でありますが、現金給与総額が前年比プラス一・四%となったわけでありますけれども、物価の変動を考慮した実質賃金は前年比二・六%減と、十四カ月連続でマイナスになった。これも本当に言われ続けておることであります。

 それから、これは先ほど大臣もちょっとおっしゃったんですが、十月十五日に発表された八月の鉱工業生産統計で、製品在庫率指数が一一八・五にはね上がった。製品在庫率指数のグラフというのは景気循環を判断する上で最も信頼できる経済指標であるというふうに言われておりますが、在庫率の急上昇は、日本経済が景気後退局面に移行したことを示している。つまり、既に日本経済は景気後退局面に移行しているのではないかというふうに言われておるわけであります。

 したがって、ここからなんですが、二〇一五年十月の消費税再増税を実施するということは一〇〇%間違った判断になる、直ちに増税凍結ないし先送りの決定を公表する必要がある。ところが、安倍総理にはそのような機動力、判断力、行動力がありません。先ほどの大臣の答弁のように、最終判断を十二月まで先送りする優柔不断さが如実に示されているわけであります。

 最終的には、増税見送りを表明せざるを得ない状況に追い込まれる可能性が非常に高いというふうに私は思っています。この決定を早期に示すことができれば効果は絶大でありますし、追い詰められて示す場合には効果が激減する。早期の判断、機動的な対処が肝要であるというふうに考えるのですが、もう一度大臣から御答弁をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 足元の経済状況につきましては、もう先ほどいろいろな方々の御質問に対してお答えを申し上げたとおりであります。

 少なくとも、四―六の実質経済成長率はマイナス七・一%ですけれども、四―六の前の一―三月分、ならして一―六で見ますと、前年同期比でプラスの一・三%プラス、もう御存じのとおりです。だから、緩やかに回復しているという数字は疑いようもない事実なんだ、私どもはそう思っております。全体的には緩やかですけれども、地域によって差があることははっきりしている、私どもはそう思っております。

 普通のガソリン、レギュラーのガソリンの値段も、地域によって、百七十円しているところもあれば、百四十円台後半のところもあればという。これだけ差が出るというのは、地域差もありますし、当然、業種によってもすごく差があるというのは事実だと思いますので、我々としては、こういったものを考えながら引き続きやっていかないかぬと思っております。

 今、在庫の話が出ておりましたけれども、八月は一一八・五と上昇していることもありますので、こういったものを加重平均するということなんだと思いますが、おわかりのとおり、自動車の品目において、ことしの四月の消費税率の引き上げの駆け込み需要の反動減とかが色濃く残っているのは愛知県です。もう数字の上ではっきりしておりますので。加えて、天候不順の影響もあって、個人消費にこのところ足踏みが見られるということ、これも事実です。

 そういった一時的な要因の影響があるということを考えねばいかぬと思いますが、過度に悲観的になるというようなことではないのであって、日本の経済はこのまま落ち込んでいくのではないかというような考え方は私どもは持っておりません。

鈴木(克)委員 私はもともとくどい男でございますので、本当にくどくお伺いをするんですが、今、大臣の頭の中に、想定の中に、消費税アップを見送る可能性というものも、もちろん、いろいろな指標を見て十二月までにというのはよくわかるんですけれども、そういう可能性もあるかなというようなところが多少でもあるのかないのか、ずばり本音で聞かせていただきたいと思います。

麻生国務大臣 クイズじゃないので。少なくとも、そこにおられる民主党の方々と公明党の方々と自民党とで、三党で合意してきちんとやるということを決めて、法律までつくってきちんとやり、これによって世界の評価を高く得た、そして、そのとおり実行せしめた、この四月に実行したということは、これは国際金融とかいろいろな、世界の中において高い評価を受ける大きな理由の一つだったと思います。

 私どもの考え方として、これが今、アメリカ、イギリス、ドイツに対してすら、我々が持っておる最も大きな手で、おたくらはそれができなかったでしょうが、うちはそれをきちんとやれたんですよ、日本の民主主義の方がおたくらよりよほど成熟しているとは思わぬですかと言って、反論した人はいませんから。

 そういったことを我々は堂々と会議で言ってきて、少なくとも私どもとしてはこういった形でここまで曲がりなりにも来ておりますので、さらにこれを二%上げたときに落ち込む可能性、来年の十月以降の落ち込みに対する対応というものは、我々としてはきちんとした対応を考えておかねばならぬとは思います。

 それと、信用を失ったときにどっと売り浴びせられる、僕は、可能性があると申し上げているのではありませんよ、それがゼロではないと申し上げております。金利が上がったら上がったらと財務省みたいなことは言いませんから、ずっと言い続けて下がりっぱなしなんですから。そういうことを言うつもりはありません。

 ただし、我々は常に、置かれている立場としては、最悪のときを考えておかないけませんので、先ほど黒田日銀総裁も言っておられましたように、もし売り浴びせられたときというのは、対応は我々にはとてもできませんというようなお話を何回か、いろいろな国際会議でも二人だけの席がありますのでよく話をするんですけれども、そういったときのことを考えて我々は対応するとなると、やはり上げて反動減になったときの対応を考えた方が、我々として現実的に対応できるのはそちらの方だ、私どもはそう思っております。

鈴木(克)委員 これ以上は申し上げませんけれども、やはり、三党合意の中にも、経済の動向をしっかりと見きわめてということがあるわけですよね。そういう視点からいくと、私は、とても上げられるような状況ではないんじゃないかなということをあえて申し上げておきたいというふうに思います。

 次に、かねてよりぜひお伺いしたいなというふうに思っておった案件がありますので、お聞きします。

 金融モニタリング基本方針というのが出されましたよね。事業性評価に基づく融資という言葉が載っておりまして、私はちょっとこれを、ひっかかるというのか、注目しておるんです。

 金融庁で、金融機関の検査監督に当たって、平成二十五事務年度より、従来の検査方針にかえて金融モニタリング基本方針を導入し、平成二十六事務年度からは、そこへさらに監督方針も一体化させた金融モニタリング基本方針によって金融機関の検査監督を進めていくというふうにしておられるわけであります。その中の重点施策のうち、気になったのが「事業性評価に基づく融資等」という項目でございます。

 麻生大臣は、先日の所信的発言の中でも、金融機関に対して事業性を重視した融資に取り組むということを促していくというふうにおっしゃったわけでありますが、これは、ある意味では、金融機関にとっては至極当然、当たり前の話ではないのかなというふうに思うんですね。

 そこで、改めて、この事業性評価あるいは事業性を重視という言葉が示す具体的なイメージをお教えいただければ、このように思います。

麻生国務大臣 鈴木先生も商売をしておられたので、少しはこの種の話を蒲郡の信用金庫あたりとされたりするんだと思いますけれども、金融、なかんずく中小の信用金庫、地銀、第二地銀等々を含めまして、事業性の内容はほとんど評価しない。持っている資産、なかんずく土地を評価して、その土地に金を貸している。日本の融資というのはその程度のものだったんじゃないんですかと、僕は何回も金融の偉い方に申し上げたことがあるんですが。

 その土地の値段が、一九九二年を境に土地の価格がどんと落ちて、土地神話が崩れた。これによって、日本の銀行は間違いなく債務超過というような形に陥るまで土地と株が下がった、結果、ぐあいの悪いことになった。九七年、八年、一番最低の底まで行ったんだと思います。

 そういったような時期を我々は今振り返ってみますと、やはり、その人の持っている能力、その人のやっている仕事の内容、その人が売っている先の企業の信頼性、売り掛け債権に至るまで、きちんとしたようなものを評価するという審査能力、目きき、そういったものが中小に育っていない限りは、間違いなく地方の中小金融というものは成り立ちませんよ、なぜなら人口が減っていくんだから、仕事もなくなりますよ、おたくらはと。

 そういった意味では、間違いなく、自分たちで外のところに出ていって、人が取りこぼしている、目こぼししている、気がついてないところに、鈴木産業に行ってこの仕事というものをやるときに、隣の古川産業さんのこの話とくっつけて一緒にやりませんかというような、横の目ができているというのは、僕は、地方の中小金融は一番その目ききが出るんだと。私には、地方を見た場合に関してはそんな感じがしますので、大企業の場合は商社ということになろうかと思いますが、地域で見た場合は、これは断然、地域金融を握っている人たちが一番と思います。

 そういった意味で、事業性評価というものはきちんと見てやらぬと、とにかく持っている担保で、本人の個人保証で、そういったものだけで安心しておけば取りっぱぐれがないというような話ではなくて、育成するという感じでぜひ事を進めてもらいたいというのが申し上げている趣旨と御理解いただければ幸いです。

鈴木(克)委員 確かに、特にアメリカあたりの融資と日本の融資の状況というのは本当に根本的な違いがあるというのは、私も体験をしております。日本の場合は、どこの大学を出られましたか、親御さんは何をやっていますか、どういう資産がありますか、こういう話ですけれども、アメリカの場合は、どういう事業を展開するんだ、どういう理念でやるんだ、例えばどういうボランティアをあなたは考えているかということで、全然日本とは違うというのは私も十分理解をしております。

 そこで、時間もあれですので、具体的な話を一つだけお聞きしたいんです。

 一部地銀で、いわゆる動産・売掛金担保融資、ABLを再生可能エネルギー関連融資などに導入した、このように聞いております。昨年、金融庁が指針を出して以来、地銀等、民間金融機関の動きはどのようなものになっておるのか、このABLに対して。そして、政府系金融機関はどうか。このことについて御答弁をいただきたいと思います。

宮下副大臣 お答えいたします。

 ABLの取り組みについて、まず、政府系金融機関、日本政策金融公庫や商工中金における取り組みでございますけれども、これは、件数を見ましても着実に増加してきているということだと思います。

 また、これまでこういった動産については機械設備などの固定資産担保というのが中心でありましたけれども、例えば、日本政策金融公庫では、平成二十年度から、不動産担保に依存しない融資手法として、例えば農林漁業の分野、食品産業の分野などで家畜等を担保にした新たな融資をスタートするとか、また、商工中金でも、平成十七年度からは在庫また売掛金等を担保にしたABL等も開始して、その取扱件数は着実に増加傾向にあるということでございます。

 先生御指摘の再生可能エネルギーに関連したABLということですけれども、これについては残念ながら実績の集計がございませんけれども、制度上はもちろんそうした再生可能エネルギーにもこのABLを適用していくというのは十分可能でございますので、今後その活用もふえてくるのではないかなというふうには推測されるところでございます。

赤澤副大臣 地銀等、地域金融機関につきまして、金融担当からお答えを申し上げます。

 委員御指摘のとおり、金融庁としては、平成二十五年二月に、動産・債権譲渡担保融資、ABLの積極的な活用を進めるため、金融検査マニュアルの運用の明確化を行うなど、環境整備を行ってきたところでございます。

 これらの動きもありまして、地域金融機関の中小企業向け動産・債権譲渡担保融資、ABLの利用状況は年々増加しているものと承知してございます。

 金融庁としては、今後とも、金融機関の積極的な取り組みを促してまいります。

鈴木(克)委員 最後の質問になると思いますが、今の、再生可能エネルギーで融資が起きておるというのは、私も実態を承知いたしておるんです。

 そこで、ちょっと確認をしておきたいのは、私は、再生可能エネルギーを担保にといいますか、保証として融資をするというのは非常にいいことだというふうに思っておるんです。中小企業や農業従事者も、要するに太陽光とか、そういった再生可能エネルギーでの融資を受けるというのは非常にいいことだし、新たな市場の創出という意味では、私は非常に効果のあることだというふうに思っているんです。

 スペインやイタリアで、一旦決めた買い取り価格を変更した、こういうことがあるやに伺っています。もし日本も、一旦政府が決めた担保価値を政府が変えるというようなことになると、これは大変なことになってしまいますので、我が国ではそういったことはあってはならないというふうに私は思っていますが、今、そんなようなことをお考えになっているような嫌いがあるかないか、そこのところだけ最後にお聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 再生エネルギーの話というのは、これは基本的には御存じのように経済産業省の所管ですから、そういった意味では、エネルギー政策の観点からいろいろな検討がされているんだと考えております。

 一方、金融機関としては、先ほど話題になりましたアセットベースド・レンディング、ABL、いわゆる売掛金・動産担保融資というものを行うというときに、担保となります売掛金の評価を適切に行うということが必要なんだろうということになります。

 今言われましたように、こういったものを、昔は高い値段で、一キロワット当たり四十八円とかなんとかだったのが、どんどんどんどんいろいろなものがふえてきて、原発がとまっているときはともかく、原発が動き始めたら原発はもっとどんと下がりますので、そうすると、その差額の三十円だ、二十円だというようなものは全部消費者が払うのかというような話になってまいります。

 このところは、需要と供給やら何やら考えて、電力業界に皆アクセスが自由になってくるという今の流れからいきますと、それは自由競争ということになってきて、買い取り価格というのはある程度競争入札という形になっていく傾向というのは、これは今後ふえてくれば間違いなくそういう傾向、太陽光に限らず、風力、いろいろあろうと思いますので、そういったものがふえてくるかなと。

 ちょっと今、所管ではありませんので何とも申し上げられませんけれども、流れとしてはそういう流れかなという感じはいたします。

鈴木(克)委員 時間だと思いますが、要は、例えば太陽光を例にとりますと、二十年間、例えば四十二円でも幾らでもいいんですが、電力会社が買いますという契約をするわけですよね。そうすると、二十年間四十二円というのは、ある意味では担保されているわけですよ。だから、そこに融資が当然発生するわけですね、四十二円ということを想定して。ところが、途中でそれが三十八円だ、三十六円だということに仮になると、融資を受けた側も融資した側も、これは話が違うんじゃないかということなんです。

 私が申し上げるのは、契約というのは、確かに四十二円のときも三十六円のときもあると思います。だけれども、少なくとも二十年間とか十五年間とか、決めたものを見直すというようなことがあれば、これは根底から信頼関係が崩れてしまう。ABLはもうみんな信用しなくなるわけなんですね。そういうことは政府としてあってはならないというふうに私は思いますので、あえて伺ったわけであります。

 所管は確かに経産省ということになるかもしれませんけれども、国の大きな施策として、金融の仕組みとして、先ほども言ったように、スペインやイタリアではそういうケースがどうもあったようなんですね。それで、日本は大丈夫かという声もあるものですから。九州電力を言うまでもありませんけれども、今、電力を買いますよと言っておって、そのつもりで設備投資やあれをしたら、ちょっと買えませんよというような話にもなってきておるわけです。

 ちょっとそのケースとはまた別として、契約をして決めたものが途中で金額を見直すということになれば、ABL自体が成り立たなくなるんじゃないですかということが申し上げたかったことでございます。

古川委員長 時間が経過しておりますので、簡略に御答弁願います。

麻生国務大臣 重ねて申し上げますけれども、経産省の所管でもありますので、私の方からこうあるべきではないかなどと言うつもりは全くありません。

 少なくとも、我々としては、ABL、アセットベースド・レンディングというものを考えたときの背景というものは、これまで、土地を担保にするとか、いわゆる固定資産、建物とか、そういったようないわゆる不動産を主にやっていたものに対して、このABLというのは、例えば売り掛け債権とかいったものを含めて、いいじゃないかという話やら何やらをしていくことをやらないと、日本の金融機関の融資というより審査能力というものは、おまえ、土地の値段で不動産屋とどこが違うんだというような話にしかならぬでしょうということを何回も申し上げて、しかし、長い間これだけでやってきましたというから、変えていただきますと。

 今から変えてもらわぬともちませんよ、これからの時代というのは、目ききをお育てにならぬと、とてもではないけれども、地方の金融機関は間違いなくこれは人口減とともに、とてもできません、だからぜひそこのところはということから、政府としてもこれを応援するようないろいろなことを考えて、このABLというような話になっていったんだと記憶します。

 いずれにいたしましても、こういったようなものは、でき上がりつつあるというべきか、まだでき上がったばかりなところだとは思いますけれども、こういったような新しいもので、土地以外のもの、不動産以外のものを担保にして金を貸すとか、事業性を見て金を貸すとか、経営者の才能、能力、経験を見て貸すというような方向で事が進んでいくようなことにしないといかぬものだ、基本的にそう思っております。

鈴木(克)委員 終わります。

古川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時四十九分散会


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