衆議院

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第4号 平成26年10月29日(水曜日)

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平成二十六年十月二十九日(水曜日)

    午前十時二十分開議

 出席委員

   委員長 古川 禎久君

   理事 後藤 茂之君 理事 菅原 一秀君

   理事 竹本 直一君 理事 寺田  稔君

   理事 平口  洋君 理事 古本伸一郎君

   理事 伊東 信久君 理事 伊藤  渉君

      安藤  裕君    小倉 將信君

      小田原 潔君    鬼木  誠君

      金田 勝年君    神田 憲次君

      木原 誠二君    小島 敏文君

      小林 鷹之君    柴山 昌彦君

      田野瀬太道君    田畑  毅君

      中山 展宏君    林田  彪君

      藤井比早之君    藤丸  敏君

      牧島かれん君    山田 賢司君

      岸本 周平君    玄葉光一郎君

      武正 公一君    古川 元久君

      柿沢 未途君    小池 政就君

      岡本 三成君    斉藤 鉄夫君

      坂元 大輔君    松田  学君

      杉本かずみ君    佐々木憲昭君

      鈴木 克昌君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        宮下 一郎君

   農林水産副大臣      あべ 俊子君

   外務大臣政務官      中根 一幸君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  高田  潔君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 佐藤 達夫君

   政府参考人

   (財務省関税局長)    宮内  豊君

   政府参考人

   (財務省国際局長)    浅川 雅嗣君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房総括審議官)         今城 健晴君

   政府参考人

   (農林水産省生産局畜産部長)           原田 英男君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      多田 明弘君

   財務金融委員会専門員   関根  弘君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 関税暫定措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一号)

 経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律案(内閣提出第一二号)


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     ――――◇―――――

古川委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、関税暫定措置法の一部を改正する法律案及び経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣審議官高田潔君、外務省大臣官房審議官佐藤達夫君、財務省関税局長宮内豊君、国際局長浅川雅嗣君、農林水産省大臣官房総括審議官今城健晴君、生産局畜産部長原田英男君、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長多田明弘君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

古川委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。

山田(賢)委員 私は、自由民主党、山田賢司でございます。

 本日は、貴重な質問の機会を与えていただきまして、理事の皆様そして委員の皆様、本当にありがとうございます。

 早速ですが、質問に入らせていただきます。

 本日審議いたします二法案につきましては、本年七月に安倍総理が豪州を訪問された際にアボット首相との間で合意された日豪経済連携協定に基づくものでございますが、副総理でもあり、二〇〇六年の交渉開始当時には外務大臣でもいらっしゃった麻生大臣から、この日豪経済連携協定の意義についてお伺いできますでしょうか。

麻生国務大臣 基本的に、経済連携というものを推進していくことは、日本の経済成長戦略にとりましての柱の一つだと思っております。特に豪州は、これまで日本が締結をいたしました二国間のEPAでは最大の貿易相手国で、今、四番目ぐらいの日本の貿易相手国だと存じますので、その意味では、極めて意義の大きいものだと思っております。

 これに基づいて豪州の関税が撤廃されることになりますと、豪州市場におけます日本の商品というか日本の企業の競争力が増していくことははっきりしておりますので、日本にとりましては、エネルギー、石油、ガス、石炭等々、鉱物資源を含めまして、牛肉もありますし、いろいろな食料の調達先でもありますので、この締結によりまして物資の安定供給にも資することははっきりしておりますので、外交的にも極めて意義の高いものだというように理解をいたしております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 今回の日豪経済連携協定は、相互の市場アクセスということで、牛肉を初め農水産品の関税引き下げ、撤廃などが含まれておると思います。

 豪州と先行してこういった関税撤廃などを行うことによって、別途行われておりますTPPで米国への牽制になるなど、こういったTPPに対する影響について、内閣官房の方からお聞かせいただければと思います。

高田政府参考人 お答えいたします。

 TPP交渉は、日豪EPA交渉とは基本的には別の交渉でございます。日豪EPA交渉の合意内容にかかわらず、TPP交渉においては、交渉参加国である他の十一カ国との間でそれぞれ合意に至る必要があります。

 交渉は最終局面を迎えておりまして、我が国としては、早期妥結に向け、引き続き関係国とともに最大限努力してまいりたいと考えております。(発言する者あり)

山田(賢)委員 お役所としてはしようがないと思います。私は、もっと違う、踏み込んだ答弁を期待していたんですけれども。

 本日豪EPA協定につきましては早期の発効が必要だと考えますが、早期発効に向けて取り組む意義について、これは外務省の方からお聞かせいただけますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 日豪EPAの発効に関してでございますが、本年七月の日豪共同声明及び九月の日豪首脳会談において、両首脳は、日豪経済連携協定を可能な限り早期に発効させるよう、取り組みを確認いたしております。

 これを受けまして、豪州政府では、既に七月十四日に本協定を連邦議会に提出し、本協定締結に向けた国内手続が進められていると承知しております。

 また、日豪EPAに先立って、本年四月に韓豪FTAが署名されており、韓豪両国において国内手続が先行してございます。

 政府といたしましては、豪州における日本企業の競争力確保の観点からも本協定を早期に発効させることが重要であり、関連の国内法案ともども、できる限り早期に国会の御承認をいただきたいと考えております。委員の皆様の御協力と御理解をお願い申し上げる次第でございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 ここでちょっと金融一般の質問についてもさせていただきたいと思います。

 今、韓国とオーストラリアの話が出ましたけれども、韓国といいますと、今ちょっと問題になっております、来年の二月に、日韓通貨スワップ協定、チェンマイ・イニシアチブに基づく百億の期限が参りますけれども、これについて延長の予定はあるかどうか、麻生大臣、お聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 おもしろく答えると問題になりますので、つまらなく答えさせていただきます。

 これは野田内閣のときに七百までふやしたんだと記憶していますよ。それが野田内閣の間に百三十まで減ったのかな、何かそんな記憶があるのです、他党がやっておられたので余り記憶はないんですが。

 そうなって、私のときに百三十まで減っていて、内閣を引き継ぎましたときには、百三十残っていたうち、日本銀行の分が三十ありましたものはもう既に切れておりますので、残りがあと百になっております。この分につきましては来年の二月二十三日に期限が参りますので、この問題につきましては、今の段階では、我々としては、向こうから申し出がないのであればこれを継続する意味も余りありませんので、向こうから申し出があれば、その段階で検討させていただきたいと存じます。

 前回の三十の日銀のときには、借りておかれた方がよろしいんじゃないんですかと申し上げましたけれども、いや、要らないという御返事でしたので、何もお願いして借りていただくような話じゃありませんから、そのままにさせていただきました。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 実は、この通貨スワップにつきましては、通貨を交換したときの原資というものは外為特会を利用しております。外為特会というのは、言うまでもなく運用方針というのが定められておりまして、安全性、流動性に最大限配慮することということが定められております。

 実は私、昨年の六月十九日、本委員会においても御質問させていただきましたが、その際、麻生大臣からは、IMFの管理が及ぶので、安全性、流動性にも十分配慮されているというお話がありました。

 ただ、考えてみますと、信用不安が起こるような通貨で外為特会を運用するのは、幾らIMFが管理をしているとはいえ、信用不安の生じるような、そんな通貨でやるのは安全性、流動性にやはり問題があるのではないかということで、外為特会の運用方針に反するのではないかと存じますが、これについて事務方からぜひ御感想をお聞かせください。

浅川政府参考人 お答え申し上げます。

 外為資金特別会計は外貨準備を初めとする外貨資産を保有しているわけでございますが、外貨資産を保有している理由は実はただ一つでございまして、委員御案内のように、外為法に規定しております本邦通貨の安定を実現するための為替介入、あるいは今おっしゃいました通貨スワップ取り決めを行うための貴重な原資ということで我々は保有しているわけでございます。

 ただし、そうした為替介入ですとかあるいは通貨スワップというものは、常日ごろから発動されているわけではございません。これは、通貨危機が起こったときに、あるいは起こらないようにその備えとして発動するということなものですから、具体的にそうした施策が発動されるまでの間は、我々は外貨資産を使って運用しているわけでございます。その運用に当たりましては、今委員御指摘になりましたように、安全性、流動性を最大限配慮した運用ということを行っているわけでございます。

 したがいまして、介入もそうなんですが、チェンマイ・イニシアチブ等のスワップの取り決めというのは本来通貨危機に備えるもの、あるいはそれに対応するものでございまして、本邦通貨の安定を実現する施策そのものの行為であるということでございます。したがいまして、通常我々が行っている平時における運用とは多少趣旨が異なるものでございます。

 ただし、そうした通貨スワップなどを全額実施するときには、今おっしゃいましたように、適切な経済運営を相手国に求めますIMFプログラムの実現を必要条件としておりますので、IMFプログラムが出てくるということは、その国の不適切なマクロ経済政策が正されるということになりますので、結果的に安全性にも可能な限り配意した仕組みになっているのではないかなというふうに考えているところでございます。

山田(賢)委員 それでも、IMFのプログラムを実施しないといけないということは、安全とか流動性という面では問題があると思うんですが、そういう御答弁でございます。

 続きまして、金融面からいうとやはりおかしいなとは思うんですが、それに加えまして、韓国というのは、経済的あるいは安全保障の面からは非常に重要な隣国であることは言うまでもないんですが、今、産経新聞の前ソウル支局長が、大統領を批判したということで起訴され、出国禁止になっている。

 こんな表現の自由あるいは法のもとの平等といった人類の共有の価値観を共有できない中で、やっちゃいけないとは言いませんけれども、あえて原理原則である通貨の安定運用あるいは外為特会の基本原則を曲げてまで漫然と期限延長することは問題があるのではないかな、このように思います。

 また、言うまでもなく、国民の生命、自由というのを守るのは国家の最大の責務でありますので、やはりできること、あらゆる手段を尽くして国民の自由を守らないといけないと思うんですね。その一つとしてこれを引きかえ、バーターに出すというのはどうかとは思うんですけれども、こういったことを使ってでも、今出国禁止になっております産経前ソウル支局長を解放するような圧力をかけるとか、こういった交渉ができないのかというふうに思うんですが、財務大臣、どのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 産経新聞のソウル支局長が、表現の自由にとか理由はいろいろあるんでしょうけれども、起訴されたということは、今言われましたように、表現の自由とか報道の自由とか、そういった我々がふだん持たされております価値観というものとこの話はかなり食い違っておりますので極めて遺憾な話なのであって、事態は長引くような感じがいたしますので、極めて憂慮しているところであります。

 いずれにしても、政府全体として、主に外務省がこれを担当しておりますので私の方からとやかく言う話の筋のものではないとは存じますけれども、こういった問題は両国間の国民感情を著しく損なうということにもなりかねませんし、事実、韓国のメディアでも問題としてこの話を取り上げているというのはもうCNNとかBBCあたりでもやり始めておるぐらいですので、そういった意味では、極めて事態としてはいかがなものかという感じが率直な実感であります。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 確かにこれは、交渉自体は外務省の所管ということになってくるんでしょうけれども、あらゆる手段を尽くすという意味では、経済面でできること、財務省の所管でできること、こういったことも総動員して国民の自由を守る、こういったことに注力していただきたいと思っております。

 本題に戻りますけれども、今回の日豪EPAに伴う関税関係の法律の整備につきましては、速やかに発効できるように、皆様の御協力をお願いしたいと思っております。

 以上で質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。

古川委員長 次に、岡本三成君。

岡本委員 おはようございます。公明党の岡本三成です。

 質問の機会をありがとうございます。

 早速質問に入らせていただきます。

 今回の日豪EPA協定、七年間に及ぶ大変な交渉の中、ここまでたどり着けたことに、関係者の方にまず敬意を表したいと思います。

 その上で、私、全てのEPA協定に思っているんですが、その肝は、国内産業の保護と消費者の利益の拡大のバランスをどうとるかということだと思うんですね。

 今回の内容を見ますと、輸出に関しましては、我が国のお家芸である自動車産業を圧倒的に後押しするような形になっていますし、輸入に関しましても、国内産業、例えば牛肉農家を守るためのいざというときのセーフティーガードもかかっておりますし、また日本の国内の消費者の方がより安いものを選択したいという、その選択肢を提供する意味において、全体的に、ある意味、このEPAの目的は経済のパイを大きくすることですから、日本に得ということではないと思いますけれども、この内容で相手方と最終合意ができるところまで来たということに関しては、大変な評価をさせていただきたいと思います。

 その上で、先ほどの山田委員の答弁に愕然としてしまいましたが、この協定の目的を政府は三つ挙げていらっしゃいまして、そのうち三つ目が、アジア太平洋地域のルールづくりを推進するというふうに書いてあるんですね。つまり、この内容を考えますと、オーストラリア側としては、日本においてアメリカの牛肉がかなり幅をきかせてきたので、何とかもう少し日本に牛肉を輸出したいというお気持ちがあったのではないかと推察します。また、アメリカ側も、このような形で日豪で新しいEPAが組まれると、例えばTPP等の内容に関しましてもある程度譲歩をしなければというふうな気持ちが働くんじゃないかと私は期待をしておりまして、その意味で、先ほどの山田委員の御質問に関しましては、これが契機となって、TPPも、我が国に対して非常に有効に機能して、他国とも交渉ができていますぐらいのことは言ってほしかったんです。

 いま一度、この三つ目の目的のアジア太平洋地域のルールづくりを推進という観点で、このEPAの、TPPを含めた全体に対する影響を教えていただければと思います。

麻生国務大臣 同じ人が答弁したらまた同じような話になるし、答弁のあれも変えられぬでしょうから、私の方からかわりにというのはいかがなものかと存じますが、少なくとも、御記憶かと思いますが、口蹄疫が騒ぎになったときに、アメリカの牛肉は全部、輸入が何カ月とかいろいろルールは決めましたけれども、決められたときに、一番ぐっと伸びたのがオージーだった、豪州産だった。牛丼屋はたしか、吉野家以外は全部オージーになったと思います。吉野家は、とてもだめだ、オージーではこの味が出せないといってだめだったと記憶しますが、ほかの牛丼屋さんは軒並みオージーにかわって、そのシェアを猛烈に伸ばした。

 今回も、アボット首相と安倍総理との間の交渉というか、直接交渉みたいな形になったんですが、なった結果、日本と、今、フロマンという人がアメリカ代表で、こちらは甘利大臣と交渉中なんですが、やはりアメリカの豚業者、牛業者、養豚業者等々はフロマンに対して、早く日本と締結してもらわないとオーストラリアの牛肉に日本を席巻されるというのは、ぜひそこのところはよく考えてもらいたいというような話をしていますから、そういった意味では、いろいろな影響があったんだと思います。

 あのBSEの話、さっき口蹄疫と言いましたがBSEの話ですけれども、あのときのことを思い返しましても、今回のような交渉がきちんとでき上がるということは、いろいろな意味で、日本にとりましてもアジアにとりましても、この種のルールづくりの上で非常に大きな、いい影響を与えるものだ、私どもはそう思っております。

岡本委員 大変力強い発言、ありがとうございます。

 続きまして、いわゆる原産地の自己申告制度についてお伺いしたいと思います。

 今まで、輸入品の原産地がどこかを確認するときには、輸出する側の公的機関の発給した資料等をもとにしておりましたけれども、今後は、それに加えまして、さらに選択肢として、輸入者側が自己申告をしてその原産地を明確にするというふうな制度が導入されることに、今回初めてこれを日本は採用いたします。

 この制度、今は既にアメリカ、カナダ、ヨーロッパの主流になっているわけですけれども、この自己申告制度について、三点お伺いをしたいんです。

 一点目は、現在我が国がやっております制度と比べまして、この自己申告制度は信頼に値するものかどうか。つまり、もう既にこれが普及をしております諸外国において、自己申告、このことがその原産地を特定するにおいて問題になっているようなことはないかというのが一つ目の質問です。

 二つ目が、今回初めて導入をして、加えて、諸外国ではある程度主流になっているということを考えますと、今後の日本のEPA協定の主流になってくるかというのが二つ目の質問であります。

 三つ目には、この結果、税関の方の仕事量がどうなるかということを、予想できる範囲でお答えいただきたいんです。例えば、オーストラリア側の税関の方がどれぐらいの頻度で情報を求めてくるかによると思うんですけれども、諸外国の運用を考えたときに、今後の税関の仕事量をどのように見積もっていらっしゃるかということを御答弁いただければと思います。

宮下副大臣 お答えをいたします。

 この制度の信頼性ということでございますけれども、今回、新たな制度として、輸出国での公的な事前調査を前提とするということで、輸入国の税関、我が国が輸入する場合は、我が国の税関での原産性の審査が信頼性の確保のために非常に重要だというふうに考えております。

 このため、今回の日豪EPAを実施するに当たりましては、現在御審議をいただいている法案を含めまして、必要な関係規定を整備して、輸入通関時に原産品申告書に加えまして契約書、価格表等の資料の提出を求めること、また事後的な確認手続によって原産性をしっかりと確認してEPA税率の適正な適用を確保する、こういったことをしっかり担保する、そういった制度設計にしておるということで、十分信頼性に値するものになると考えております。

 二番目の、今後、これが主流になるかどうかということでございますけれども、アジア太平洋地域の先進国、例えばアメリカやカナダや豪州等におきましては、最近締結されましたほとんど全てのEPAにおいて自己申告制度が採用されております。また、貿易関係者の手続の簡素化、また貿易の円滑化の観点からも、自己申告制度にはすぐれた面がございます。

 一方で、ただ、全部これに置きかわるかといいますと、EPA相手国が発展途上国である場合なんかでは、相手国の状況も踏まえて、これを導入するかどうか検討する余地はございます。

 こうした点を総合的に勘案しつつ、今後の我が国のEPAにおけます自己申告制度の導入について考えてまいりたいと考えておりますが、全体の流れとしては、これが広がっていくのではないかということかと思います。

 三番目の、税関の執行面のお話でございますけれども、確かに先生御指摘のように、新たな業務でありますので、税関職員への十分な制度周知また研修を実施すること、さらには既存業務の効率を図りつつも真に必要な増員要求は行っていくということで、ちなみに、平成二十七年度においては十七名の増員要求というのがございますけれども、必要な税関の体制整備をしっかり行って対応していきたいと考えているところでございます。

岡本委員 麻生大臣、一言御決意をお伺いしたいんですけれども、今、副大臣の御答弁にありましたように、物流動は圧倒的にふえる方向性にあって、オーストラリア側からの依頼もあるかもしれない。加えまして、訪日される外国人の方も多くなる中で、実は、ことしまで税関の職員の数というのは三年連続でダウンなんですね。来年増員の要求をしていらっしゃいますけれども、今後、オリンピックを見据えてさらに人の交流、物の交流がふえる中でいろいろな、麻薬等は水際で防がなければいけないというように、税関の方々の責任も重いわけですから、今後、しっかりとした体制にするために予算も含めまして手当てをしていただくような御尽力をお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 岡本先生御指摘のとおり、二〇二〇年の東京オリンピックまでに、ことしでしたか、千万人というのを目標にしておりましたけれども、二〇二〇年までには倍の二千万人というのを目標にして、オリンピックもありますし、そういったことになってまいりますので、我々としては、試算としては五百五十人から七百人ぐらいの増員がないとなかなか賄えないのではないかといって、今、体制整備を進めることにいたしております。

 加えて、岡本先生、不正薬物という例の、何かいろいろな表現がありましたね、違法ドラッグとかいろいろな名前になっていましたけれども、あの種の話の治安対策とか、また経済連携協定、EPAの活用とか、また観光目的で入ってこられる方の数が、ビザ等々が随分緩和されたせいもあり、円が安くなっていることもあり、いろいろなことがあって増加しつつある傾向にある、喜ばしいことだと思います。

 したがいまして、それに合わせて、私どもとしては、この定員増をやらないと物理的にできないことになりますし、延々と税関でとめられるということになりますと、印象が極めて悪いということになるのは当然のことなんです。成田とか羽田というところ以外の地方空港にも臨時便が着くと、それに当たってクアランティーン、いわゆる税関とか検疫とかいうのが、エボラなんというものも出てきておりますので、いろいろな意味で、猛烈な勢いで人がふえてくることを計算しておりますと、これを純増で、今言われましたように、二年間、二十一人、二十七人とずっと減ってきておりますので、そういった意味では、ことしはプラス百四十人ぐらいの純増ということを目指して私どもとしては対応していかねばならぬと思っております。

岡本委員 本日は、外務省から中根政務官にもおいでをいただいておりまして、幾つか質問をさせてください。

 一つまずお願いは、実はオーストラリアとのEPA協定は、韓国も今、署名を終わって締結に進んでおりますけれども、できれば、韓国の方が三カ月早く署名しているんですけれども、締結のスタートを同じぐらいにできるようなスピード感でやっていただきたいなと思っているんです。

 これはどういうことかというと、日本から輸出するもので最大のメリットをとるのは自動車関連なんですけれども、自動車はオーストラリア市場でも韓国メーカーと日本メーカーが競っておりまして、自動車は耐久消費財ですから、一回買ったら、もう五年、十年買わないんですね。つまり、数カ月差が出てしまって、その間に、価格が安いということで韓国車を購入すると、日本車が売れるまでにはさらに数年かかってしまいます。ですから、一カ月の違いがすごく大きな違いなんです。したがいまして、この交渉、最後、締結に向けてはスピード感を持ってお願いをしたいと思います。

 その上で、ちょっと時間がないので質問に入らせていただきたいんですが、ISDS条項を確認させてください。

 これは、国家と投資家間の紛争に関する条項で、今まで我が国が結んだEPA、加えまして二国間投資協定は三十四ありますけれども、たった一つを除いて、日本の依頼で全てISDS条項は入っています。これは日本からもともとオーストラリアに求めたそうですけれども、先方から拒否されて、いろいろなことがあって、結果的に韓国との協定の中にはISDSは入っているんですね。

 したがいまして、ISDSがなくても全体的にメリットがあると御判断されているんだと思うんですが、少なくともこの協定の内容は五年後には見直すことになっていますから、その時点ではISDSを入れて、日本の投資家の海外での活動をしっかりと担保していくということに御尽力をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

中根大臣政務官 ありがとうございます。

 まず、日豪EPAのことなんですけれども、国会の御承認をいただいた上であくまで締結できるものであり、現時点で発効の具体的な時期について言及することは差し控えさせていただきたいと思います。

 ただ、先生おっしゃいました、豪州政府は既に七月十四日に連邦議会には提出、国内手続が進んでおりますし、韓国の方は、韓豪FTAということで、本年の四月にもう署名されておりますので、韓豪両国においての国内手続が先行しているということは否めないと思っております。

 政府としては、このような状況から、先ほどもお話がありました車などは大変高級品でございますし、一度買うと五年、十年というような話、岡本先生がおっしゃっていたように、競争力確保の観点からも、できるだけ早期に発効させることが重要であり、この早期の国会の御承認をいただきたいと考えております。委員の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。

 そしてもう一つ、ISD条項のことについてでございますが、豪州と第三国とのFTA交渉に関し、政府としてコメントすることは差し控えさせていただいておりますが、日豪EPA交渉において、我が国は投資家の保護に資するISD条項を含むことを主張してきた一方、豪州は慎重な立場でございました。交渉の結果、全体のパッケージの一環として、ISD条項の挿入について、将来の見直しを行うこととなっております。五年後の見直しについても、委員言われたように、しっかりと私たちの企業家を保護するためにやっていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

岡本委員 ありがとうございました。

 以上で終わります。ありがとうございます。

古川委員長 次に、岸本周平君。

岸本委員 民主党の岸本周平でございます。

 本日は、質問の機会をいただきまして、委員長を初め理事の皆さんに感謝申し上げたいと思います。

 きょうは、農林水産省から、あべ副大臣においでをいただいております。ありがとうございます。

 あべ副大臣とは超党派のNPO議員連盟で一緒に事務局を預かっておりまして、本日、野党的な質問をすることは大変心苦しいのでありますが、お許しをいただいて、質問をさせていただきたいと存じます。

 まず、関税の話に入る前に、日豪EPA協定について、あべ副大臣にお伺いをしたいと思います。

 その前に、確かにこの協定、本当に政府の関係者の皆さんの御尽力に敬意を表したいと思います。私どもは、特に私は自由貿易賛成論者でありますので、労を多としたいと存じます。

 その上ででありますが、当然、EPAといいますのは、メリットもあればデメリットもあるわけであります。特に、農林水産業についてはデメリットもある。一方で、工業製品をつくるような製造業にとってはプラスの面が多い。もちろん、トータル、消費者にとってはかなりメリットがあるものであるということであります。

 その中で、やはり農林水産業を守っていくということを一方でどの国もやっております。特に、予算規模でいって、日本よりもはるかに農林水産業に対する予算規模が大きい国もたくさんあるわけであります。その意味で、ここで選ばれている我々、議員全員がそうだと思いますけれども、農林水産業の皆さんにも私どもは支援を得、そしていろいろお困りの御様子を聞きながら国会に上がってきているわけでありますので、ぜひそこら辺はお願いをしたいと思います。

 その上で、実は、平成十八年の十二月七日に、衆議院の農林水産委員会で決議が行われております。当時、委員長は西川農林水産大臣であられました。

 この決議、幾つかありますけれども、関連することについて申し上げますと、「米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの農林水産物の重要品目が、除外又は再協議の対象となるよう、政府一体となって全力を挙げて交渉すること。」これは日豪のEPAに関する決議であります。平成十八年のハウスの決議であります。

 今回の協定では、牛肉は除外されておりません。明らかに決議違反でありますが、農林省の御見解をお伺いしたいと存じます。

あべ副大臣 岸本委員にお答えいたします。

 今回の協定の農林水産のこの合意内容が平成十八年の十二月七日の農林水産委員会決議に反しているのではないかという御質問でございますが、日豪EPAの内容と衆参両院の農林水産委員会の決議との整合性につきましては、国会で評価をしていただくものでございます。

 政府といたしましては、決議を踏まえて真摯に交渉を行ったところでございます。その結果、米につきましては関税撤廃などの対象から除外をしまして、食糧用の麦、精製糖、一般粗糖、またバター、脱脂粉乳は将来の見直しの対象とするなど、豪州側から一定の柔軟性を得たところでございます。また、牛肉につきましては冷凍と冷蔵の間での四%の税率差と効果的なセーフガードの措置、チーズについては一定量の国産品を使用することを条件といたしました関税割り当ての設置となっております。

 こうしたことから、政府といたしましては、国内農林水産業の存立さらには健全な発展と両立し得る合意に達することができたと考えているところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 それでは、政府としては判断できないということでありますので、国会としてはどう読んでも明らかに協定違反であるということだと思いますので、この委員会で議論する話ではないと存じますので、引き続き、農林水産委員会として、この決議に明らかに違反していることについて議論を続けたいと存じます。

 もう一つ、あべ副大臣にお聞きをしたいのであります。

 先ほど申し上げましたように、EPAにはメリットとデメリットがあります。TPPの交渉に入るときに相当大きな議論があったことは、同僚議員各位は御記憶だと思います。つまり、TPPをやるとGDPはふえるのか、GDPは減るのか、大変な議論をしたわけであります。

 今回、日豪EPAを締結されるに当たり、日本政府として、これは日本経済にプラスの影響を与えるのか、トータルでマイナスになるのか。これは、私ども国会議員ならずとも、国民一人一人がぜひとも聞きたい論点であろうかと存じます。

 あべ副大臣にお伺いします。GDP成長率に対する影響等についての御試算をお示しいただきたいと存じます。

あべ副大臣 岸本委員にお答えいたします。

 今回の連携協定が日本経済に与える影響ということでございますが、この日豪EPAに関する経済上のメリットに関しましては、一般的に、関税削減などによって貿易・投資が促進され、両国の経済を活性化すること、食料、資源、エネルギーなどの安定的輸入の確保、また輸出先の多角化につながることなどがあるものと考えております。

 今後、日豪EPAが我が国のGDPの増大に与える効果につきましては、景気、為替の変動などの要因による貿易及び投資の状況変化にも影響されるものというふうに私どもは考えておりまして、具体的にお答えすることは困難でございます。

岸本委員 具体的にお答えすることが困難だとにこやかにおっしゃいましたが、TPPのときは政府としては試算を出しているわけであります。何でEPAだと出せないんですか。あべさん、お答えください。

あべ副大臣 委員にお答えいたします。

 この試算に関しまして、先ほどお答えいたしましたように、EPAの影響につきましては、景気、為替の変動などの要因による各国との貿易及び投資の状況の変化に影響されるものでございます。過去に締結されたEPAにおきましても、委員が御存じのように、試算は行っていないところでございます。

 仮に影響を試算した場合に、数字がひとり歩きするということが考えられますことから、こうした試算は難しいと私どもは考えているところでございます。

岸本委員 そんなことを言ったら、政府の試算は全部ひとり歩きするじゃないですか。

 年金再計算、今は再検証と言いますけれども、年金再検証にしても、社会保障の将来推計にしても、政府というのは国民に対して、その政策が当を得ているかどうかは、一定の前提を置いて、EPAなら為替の前提を置いたらいいじゃないですか、貿易の伸び率の前提を置いたらいいじゃないですか、世界経済の成長率の前提を置いたらいいじゃないですか、政府はそうやっていろいろな分野で試算を出して、国民に一定のめどを示すんですよ。

 少なくとも我々国会議員に対して一定のめども示さずに、この協定に賛成しろ、それを受けた関税の関係の法律改正に賛成しろとおっしゃられても、これは大変つらいところがあるわけであります。

 それで、最後に、内閣のナンバーツーであられる財務大臣にお聞きしたいのであります。これは担当じゃないことは百も承知でありますけれども、政府として、内閣のかなめである麻生大臣、国務大臣として、この試算を政府としてお出しいただきたいと存じますが、いかがですか。(発言する者あり)

麻生国務大臣 何が当然かは知りませんが、まず、今副大臣の方から答弁があっておりましたように、今言われたように、日豪EPAが日本の経済成長に与える効果について、これは定量的とかいうような数字で具体的に言うのはなかなか難しいのは、先ほど言われたとおり、為替やら何やらが違いますのでなかなか難しいんだと思いますが、このEPAの発効によって十年以内に、日本から豪州への輸出額の九九・八%については関税が無税になるということになっております。

 加えて、豪州への関税支払い額というのは、これは輸出額が不変であるなど一定の仮定を置きませんと試算ができませんので、仮定を置いて試算すると、発効後の八年目には約五百八十億円減少するという予想が立っておりますので、その分、日本の企業の負担、日本側の負担は軽減されるということになろうかと存じます。

 日本への農産品、輸入につきましては、米の関税撤廃等々は御存じのとおりですし、また牛肉のセーフガードが確保されたということも大きいと思いますので、農畜産業への影響には十分配慮されておるように思いますので、競争力の条件の向上に貢献すると同時に、傍ら、日本の経済成長にプラスの影響を与えるものだ、私どもはそう試算をしております。

岸本委員 この問題は、また引き続き他の委員会で御質問させていただきたいと思います。

 では、あべ副大臣、どうぞお引き取りいただいて、御公務に御専念いただきますように。

 それでは、本来の法律改正の質問に移りたいと存じます。

 自己申告制の問題であります。これは先ほど岡本委員から大変的確な質問がありましたので、余り重ならないようにお聞きしたいと思います。

 自己申告制の意義については今の岡本委員の御質問のお答えで大体わかりましたけれども、その際、一番のポイントは、原産性をどのように確認するのかということではないかと思うわけであります。副大臣の方から、ぜひ、原産性の確認についてどのようにするのかを含めて、自己申告制の意義についてもお答えいただければと存じます。

宮下副大臣 お答えをいたします。

 今回、協定上では、輸入通関時に、原産品申告書に加えまして、その他の資料の提出を求めることができることとされております。

 具体的には、日本税関として、輸入通関時に、原産品申告書に加えまして、例えば契約書また価格表等の原産性を満たしていることを説明するための資料の提出を求めて通関審査を行うということとしております。

 また、今回の法律によりまして、原産品であるか否かを事後的に確認する手続というのも協定上規定されておりますが、それが今回の関税暫定措置法において担保されるということでありますので、日本税関としては、輸入者、それからオーストラリア税関、輸出者、生産者等に対して原産性の確認のための情報提供要請等を実施することが可能となります。

 こうした手続を通じまして、輸入貨物の原産性を適切に確認してまいりたいと考えているところでございます。

岸本委員 ありがとうございます。

 ぜひそこは、自己申告制をもとに、貿易の円滑化が日本をモデルにして進むことによって、世界のEPAが進むように、自由貿易が進むように御尽力をお願いしたいと存じます。

 先ほど岡本委員の質問にもありましたが、そうなると、物すごく業務量がふえることは明らかであります。それは先ほどの質疑でありましたので御質問はいたしませんけれども、まず、今回の日豪EPAにおいて、業務量が大きく変化する、ふえる方向に変化するということが一つ。

 その上で、副大臣にもう一度お聞きしたいと存じます。

 先ほど財務大臣もお触れいただきましたように、それ以外にも、いろいろな形で業務量がふえていくわけであります。例えば、この十年間を比べていただいて、入国者数がどれだけふえているのか、あるいは輸入の申告件数がどれだけふえているのかということです。あるいは、自由貿易協定等が進むことによって関税がなくなって、関税収入が減っているんじゃないかという誤解のようなものもひょっとしたら国民の間にあるかもしれませんし、今回消費税が上がりましたので、消費税の税収等も規模が大きくなっているように思うんです。

 その辺についての数字を、副大臣、恐縮ですが、教えていただきたいと存じます。

宮下副大臣 平成十五年と平成二十五年ということで、十年単位で比較をさせていただきましたけれども、まず、国境を越える人の移動の活発化、貿易の拡大に伴いまして、先生御指摘のように、この数が大きくふえております。入国者数におきましては一千九百十五万人から二千八百八十万人と約一・五倍に増加しておりますし、輸入申告件数は千四百三十九万件から二千三百十九万件と約一・六倍に増加しております。

 また、先生御指摘のように、税関におきましては、関税のほか、輸入品にかかる消費税や石油石炭税、酒税、たばこ税等も徴収しておりますけれども、その税額につきましては、平成十五年度の四・一兆円から平成二十五年度決算では六・五兆円と、やはり約一・六倍となっております。

 この六・五兆円の内訳としましては、関税が一兆円で、これは一般会計決算ベースで過去最大でございます。また、消費税及び地方消費税が四・二兆円、石油関係等の内国消費税が一・三兆円というような内訳になっております。

 今後とも、貿易の拡大に伴いまして、税関係業務の担う役割は増大していくものと考えられます。また、消費税率等の引き上げに伴いまして、税関の徴収する税額も増加していくものと考えております。

岸本委員 十年間で一・五倍、一・六倍、これはそのまま業務量というわけではないでしょうけれども、我々が思っていた以上に税関が歳入官庁としても大変大きな位置を占めているということがわかりました。

 もう一つ、副大臣、済みません、先ほど大臣も触れた不正薬物対策です。これは本当に喫緊の課題だと思うんですが、社会悪物品の取り締まりの現状及び今後の対応について、副大臣、教えていただきたいと存じます。

宮下副大臣 お答えをいたします。

 平成二十五年の不正薬物の摘発状況でございますけれども、摘発件数が三百八十二件、押収量は九年ぶりに一トンを上回る一千七キロとなっております。

 その特徴としましては、まず覚醒剤でありますけれども、押収量が前年、平成二十四年の約二倍に迫る約八百六十キロということで、十三年ぶりに八百キロを上回りました。前年も密輸手口の大口化傾向が見受けられましたけれども、その傾向がさらに顕著となっております。また、特徴として、航空機旅客によります覚醒剤押収量が約三百四キロと過去最高となったことが挙げられると思います。

 このような密輸入事犯に対する水際取り締まりを一層強化するために、税関としましては、外国税関当局や国内関係機関との情報交換の促進等による有効な情報の収集、分析の強化及び当該情報を活用したリスクマネジメント、また、エックス線検査装置、麻薬探知犬その他の取り締まり検査機器の有効活用、さらに、広域的な事案に対しまして、警察、海上保安庁等関係機関との合同取り締まりの実施等の対策を講じているところでございます。

 今後とも、関係機関との連携を強化しつつ、厳正な取り締まりを実施してまいりたいと考えております。

岸本委員 そういう意味では、税関というのは本当に幅広い業務をしておられて、特に国際性が必要とされる中での専門性が非常に問われる。一方で、ある意味、水際での警察的な機能も果たされているわけで、現場の職員の皆さんの緊張感といいますか、ストレスといいますか、そういうものは本当に過重なものになっていると思うわけであります。

 しかも、先ほどおっしゃった、十年間でいろいろな取扱量が一・五倍、一・六倍になっているにもかかわらず、定員については十年で比べてもほとんどふえていない、ほんの少し、数%ふえているだけであります。その一方で、この三年間、岡本委員も触れられましたが、三年連続で純減であります。大臣もおっしゃいましたが、純減であります。

 これは余りにも冷たい仕打ちではないかと思います。我々は、あくまでも行政改革をやっていかなきゃいけない立場であります。本当に無駄な人員は削らなければいけませんが、税関のような本当に専門性と緊張感を強いられる職場において、何とか定員を、めり張りをつけて配分していただきたいと思うわけであります。

 これは大臣も触れられましたけれども、例えば、二〇二〇年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されるわけであります。今、足元の円安もあり、あるいはビザの緩和が大変大きかったかと存じますが、観光客が物すごくふえています。入国者数が物すごくふえております。恐らく、二〇二〇年、これは与野党関係ないです、今の政府は二千万人の旅行者数を目標にされていますけれども、これはぜひ我々も応援したいですし、そういう意味では、二千万人来るわけです、二千万人の入国者に対して、税関の人数がこれから減らされていってどうするんでしょうかということもありますし、あるいは不正薬物の問題等々ございます。

 そこで、ぜひとも麻生大臣にもう一度御決意をお願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。どうか大臣、力強い定員増の御決意をお願い申し上げます。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、この三年間を見ましても、二十一人、二十七人、三人等々、純減になっておりますので、これはちょっといかがなものかと、正直な実感であります。

 いずれにいたしましても、二千万人なんて、そんなになるかという話がありますけれども、自分の国の人口より観光客の方が多く来るなんという国も世の中には幾つもあるのであって、そういったことを考えますと、これだけいろいろなものが世界遺産になり、治安もよく、町もきれいで、日本に観光客がふえないはずがないのであって、そういった意味では、ビザ等々の緩和もこれありで、急激にふえていくと思っておりますので、最低でも今後五年間で五百五十人から七百人ぐらいの増員というのを目指しております。

 今言われましたように、治安対策もやらないけませんもので、麻取の方もやらないかぬし、そういった意味では、EPAの活用促進にももちろん資するんだとは思いますけれども、私どもとしては、二十七年度、来年度の定員要求では、この十年間で最も多い、プラスの百四十人という純増要求を行ってまいりたいと思っておりますので、ぜひ応援してください。よろしくお願いします。

岸本委員 ただいま麻生副総理・財務大臣から、力強い定員増の御決意をいただきました。私どもも精いっぱい応援させていただきます。

 本日はありがとうございました。

古川委員長 次に、杉本かずみ君。

杉本委員 みんなの党の杉本かずみです。

 本日も質問させていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 まず、岡本委員、岸本委員から要員のお話がありましたので、ちょっと先にそのお話をさせていただければということで、質問の順序が変わって恐縮ですが、後でまた質問します。

 冒頭、私が申し上げておきたいのは、まさしく現政権が地方創生だということで言っておられます。

 きのう、私ちょっとテレビを見ていたら、チャーター機が台湾から岩手の花巻空港、そちらに着陸して、では税関を通るんだろうなというように思っていて、当然税関を通ったんですが、いただいた資料で、花巻空港というのは税関空港という形になっておらずに、近くだと秋田空港とかいうような空港があって、秋田空港出張所は三名というような職員数しかいないということでございます。

 地方創生で観光客が各地に行く、国際線で入ってくるということがまずあって、それに対してきちっと対応していただきたい。というのは、これはCIQの関係の強化ということで骨太の方針二〇一四で決めていただいているようなので、まさしくエボラの問題があったりとか、テロ対策だったりとか、麻薬の問題ということでCIQが極めて重要なときになってきていますので、その観光客に対することが一つ。

 もう一点は、税関の職員が全国に散らばっていて、そういった職員が地域に長く住まわれたりするようなことになれば、やはり地域のむしろ活性化につながるということで、過疎化対策ということも含めて、力強い大臣のお言葉で、この税関職員、百四十名の増員要求で、長期的には五百五十から七百というお話がございましたので、ぜひともこの七百の方向に向けて、財政制約をつかさどるお立場ではあられますが、私の方からも大臣に、お立場が両面あって非常に難しいとわかっておるんですけれども、これは政権の方向感からすれば、地方創生ということを鑑みても、我が党としても賛成させていただく方向だと思いますので、一方的なお話でございますが、そんなことで聞いていただければと思っております。今、答弁は結構でございます。

 次に、大臣からアボット首相という言葉がございました。これも質問の通告にはないので、一方的にお話をさせていただきます。

 さきの質疑で麻生大臣とさせていただいたときに、社会保障費が大変膨らんでいて、九十兆のうちの三分の一の三十兆が税金投入だというお話が、前回の所信の質疑であったかと思うんです。

 全体のイメージ感で恐縮なんですが、アボット首相の政権は、政権交代後に年金の支給開始年齢をたしか六十五歳から七十歳に引き上げるということを決定され、しかも、その実行の時期が十一年後の二〇三五年だったかと、私ちょっと確かではなくて恐縮なんですが、結構先を見据えて社会保障費の増勢圧縮という政策を打っているという点で、我が国としても学ぶべき点は大変多いかと思いますので、そういった思い切ったことをしていく。しかも、国民から急激な変化で批判を受けにくいような政策の打ち方というのは与野党問わず考えていかなければならないことであると思いますので、ぜひともそんな形で、社会保障費への切り込みをお願いさせていただきたいと存じます。

 さて、勝手に一方的に話していて恐縮なんですが、次に質問に入ります。

 今、我が国は、各地にある原子力発電所が停止状態にあるわけであります。川内原発再稼働も年明けと言われていて、我が党としては脱原発の方向であるということは重ねて申し上げるんですが、そんな中で、原子力発電におきまして、ウラニウムが原材料ということであるわけですが、私の記憶ですとオーストラリアから輸入をしていたというのが、結構昔の記憶なんですが、あります。

 そして、その状況が今どういうことになっているのかということを伺いたいと思います。

 参考までに、九電力が関係している会社が関係しているようなんですが、一九七〇年代にナミビア産のウラン鉱石を産地偽装でオーストラリア産として輸入したようなことがあったということを、他党でありますが、共産党の先輩である吉井英勝さんが二〇〇二年の国会で質問されておられます。産地偽装等がないような自己申告制度だったり、原産地証明の必要性の質疑が行われているわけであります。

 原子力にかかわるウランについて、今、輸入の数量であったり金額であったり、あるいはまさしく発電をとめているので全くここのところはしていないんだとか、この辺を確認させていただければと思います。

多田政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、ウランにつきましては、原子力発電所において燃料として使うためには、ウラン鉱石からさまざまな加工工程を経ることになっております。

 しかしながら、オーストラリア国内にはそうした加工工場がないということ、それから我が国国内にも濃縮工場の前の転換工場がないということから、実態上、直接オーストラリアからウランを輸入するという実態にはございません。

 したがいまして、貿易統計上はオーストラリアという国は出てまいりませんが、一方で、電気事業連合会の方で把握している範囲のことでございますけれども、我が国の事業者が調達しておりますウランの中で、オーストラリア産の天然ウランに由来するものはどれほどかという点を調べてみましたところ、二〇一〇年には約千六百トンほど、これが二〇一三年には約六百トンほど、このような状況になってございます。

 先生御指摘の、原子力発電所がとまっている中でウランを調達する必要があるのかといった点について一言申し上げますと、ウランにつきましては複数年契約で調達しているという実態にございますので、原子力発電所が現在停止している状況ではございますけれども、そうした契約に基づいて電気事業者の方でウランを調達している、こういった実態がございます。

 それから、恐縮でございますが、一点、ナミビアのお話についてもお触れがありましたので一言申し上げますと、私どもといたしましても、二〇〇二年にそうした国会での御議論があったということは承知をしております。

 ちなみに、その論点となりました日豪ウラン資源開発株式会社という会社がございますが、これは一九八〇年に電力事業者等の出資によって設立された会社でございます。当時、国会での御議論もありまして、その時点で私どもの方でも調査をさせていただきましたけれども、この会社を迂回してナミビア産の鉱石を日本に輸入していた、こういった事実は確認されなかった、このように承知をいたしております。

 現在、原発の停止を受けまして、この日豪ウラン資源開発株式会社でございますけれども、ウラン資源の調達、購入といったものはやっておりませんで、現在はオーストラリアでの探鉱、開発事業のみを行っている、このように承知をいたしております。

 以上でございます。

杉本委員 多田部長、わかりやすい説明をありがとうございました。確認いたしました。

 次に、大臣の方から少し、山田委員の質問に対して答弁があったかと思うんですが、重ねて、同じような質問になるかもしれませんが、確認させていただきたいんです。

 今次改正は、暫定とはいえ、関税措置について特別のセーフガード措置を行うということで、具体的には、牛肉の場合、冷蔵、冷凍、それぞれ、牛肉の輸入量が一定量を超えた場合という具体的な数量が設定されています。それぞれ、冷蔵の場合は初年度十三万トン、以降毎年段階的に増加して、十年目に十四・五万トン、冷凍牛肉の場合は初年度十九・五万トン、以降毎年段階的に増加し、十年目に二十一万トン、こうあります。

 これらの数量の設定についてですけれども、林芳正前農水大臣が四月七日の記者会見で、効果的なセーフガードが確保できたというふうに言われました。

 これを概括的に見ますと、国内生産者、国内産業保護という観点では評価できると思いますが、一方で、国内の消費者利益という観点からはいかがなのかという理解もあります。また、経済の基本的な考え方としての比較優位という基本原則がありますけれども、改めて、担当大臣としていかにこのことを位置づけ、評価されるか、教えていただければと思います。

麻生国務大臣 これは杉本先生よく御存じのように、この種の交渉というか、協定というものにつきましては、常に国内産業の保護と消費者の受益というもののバランスが、この自由貿易に関するときの一番大事なところだと存じます。

 今回の日豪のEPAにつきましては、牛肉について関税削減を認めるということはしますが、一方で、冷蔵が十五年、冷凍は十八年というような形で、長期間にわたって段階的に削減していきますよということが一点。それから、国産の牛肉と競合するいわゆる冷蔵牛肉を冷凍の牛肉よりは関税率を高くさせていただきますというので、四%高い税率にさせていただきました。また、輸入量が一定を上回ったときに関税を、今は三八・五%だと思いますので、もし仮に上回ったときは即三八・五%に上回った分だけさせていただきますよという特別セーフガード措置というのを確保すること、これで国内の畜産業を保護する内容となっております。

 この特別セーフガードが発動されますのは、輸入の基準数量につきましては十年間にわたって少しずつ増加させていくこととしておりますので、その間、国内の畜産業の方もきちっと競争力を高めていただく努力をしていただかないかぬのは当然なのであって、それをしていただかないと、今度は消費者の利益というものを確保しにくいということになろうと存じます。ぜひ、その点につきましては、畜産業の方々にもこの点は努力をしていただくということもあわせてお願いをさせていただかねばならぬところだと思っております。

杉本委員 国内産業も競争力をこの間にしっかりつけてほしい、確かにおっしゃるとおりだと思います。その方向で畜産業の方々も努力をしていただきたいと、私の方からもお願い申し上げます。

 もう時間がなくなってきましたので、ちょっと基礎的な質問で恐縮です。

 貿易取引というのは、輸入取引におけまして、レター・オブ・クレジット、LCつきと、ビル・オブ・レーディング、BLと言われる取引、あとは送金によって資金決済が行われる。決済方法について今三つ申し上げたんですけれども、大まかで結構なんですが、我が国の輸入の現状として、この取引分類別で見てどんな形になっているのか。もしわかれば、オーストラリアからはどうなっているのか、もしデータとしてお持ちだったら確認をさせていただければと思います。わからなければ、また追って教えていただければと思います。

 以上です。よろしくお願いします。

古川委員長 宮内関税局長、時間が参っていますので、簡潔にお願いします。

宮内政府参考人 私ども、貿易統計というものを持っておりますけれども、これは、輸出入に係る物の流れと、これに伴う価格の申告のデータを整理するものでございまして、我が国への貨物の輸入の資金決済方法につきましては、輸入申告の内容ではございませんので、財務省では計数を把握してございません。

杉本委員 わかりました。

 どちらかの当局が把握しているかどうかというのは御存じないですよね。

宮内政府参考人 お尋ねがありましたので、昨夜来ちょっと調べてみたんですが、把握している当局というのはちょっと見つかりませんでした。

杉本委員 わかりました。

 決済方法なんですが、銀行を通じてよく確認してみたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、松田学君。

松田委員 次世代の党の松田学でございます。

 昨年の通常国会では財務金融委員をやっておったのですが、当時の日本維新の会の中でちょっとしばらく御無沙汰をしておりまして、次世代の党になりまして、また戻ってまいりました。よろしくお願いいたします。

 ちょうど私の同期が局長になったときに戻ってきたので、大変よかったと思っております。早速、その同期の局長に、はなむけの御質問をさせていただければと、今も御答弁されていましたが。

 今回、二法案が提出されたわけですけれども、これは日本とオーストラリアのEPAを国内で実施するための法整備でありますし、内容はちゃんとしていると思っておりますが、ただ、今回の改正法案は、いわゆる関税法や関税定率法の改正というのじゃなくて、関税暫定措置法で行われる。つまり、本来の制度でなくて、暫定的、例外的な制度、法律上はそういう位置づけになっているんです。

 時限的な立法でもありませんし、これは暫定的にやっているというわけでもないと思いますけれども、暫定措置法であえて規定する理由をまず確認させていただければと思います。

宮内政府参考人 松田先生、御質問どうもありがとうございます。

 関税暫定措置法は、関税定率法及び関税法の暫定的特例を定める法律でございます。一方で、関税及び貿易に関する一般協定、ガットというものが御案内のとおりございます。その第二十四条におきまして、FTAにつきましては、最恵国待遇の例外的措置として位置づけられているところでございます。

 したがいまして、経済連携協定におきまして特別に約束された事項につきましては、WTO協定との関係上例外的なものであり、国内法で措置するに当たりましては、従来から関税暫定措置法に規定することとしておるところでございます。

松田委員 私も昔、関税局にいたことがありますが、交渉といえばWTOとかガットというのが中心であったわけなので、今御答弁にもありましたように、ガットというのが、あくまで世界全体、マルチの協定、これが本則である、FTAとかEPAは例外的な位置づけという形になるわけですが、その例外的な位置づけのEPA、FTAが、御案内のようにたくさん協定が結ばれている。スパゲッティボウルという言葉もありますように、これが余りたくさん進んでいきますと、これはもちろんどんどん推進しなきゃいけないんですが、制度が非常に複雑化して、民間の関係者にとっても使い勝手の悪いものになりかねないのではないかという懸念も一方であるので、今、ドーハ・ラウンドがWTOの方では随分長い間停滞しているんですけれども、こちらの方がどうなっていくような想定を置いているのか。

 それと、ドーハ・ラウンドの中でも、税関との関係でいいますと、昨年末に部分合意として、税関手続に関してトレードファシリテーション協定というものがWTOで合意が調ったと聞いておりますが、その後のこれについての状況もあわせて御説明いただければと思います。

佐藤政府参考人 お答えいたします。

 まず、制度の複雑化ということでございますが、FTA、EPAは、有志国の間でWTO協定で約束した以上の貿易自由化を進めることを通じて、WTOを中心とする多角的貿易体制を補完するものでございます。

 しかしながら、例えばFTA、EPAに基づく特恵的な関税の適用を受けるための原産地規則が協定ごとに大きく異なると、まさに先生御指摘のとおり、輸入者が実際に関税削減、撤廃の利益を享受する上で手続等の多大な負担を生ずることになるものでございます。

 このため、我が国は、各EPA交渉におきまして、原産地規則等の手続につきまして、利用者の利便性の観点から、できるだけ簡素で調和されたものとなるよう交渉してきているところでございます。

 それから、WTOに関してでございますが、FTA、EPAの重要性が近年ますます増しているとはいえ、WTOを中心とする多角的貿易体制の強化も引き続き重要でございます。

 ドーハ・ラウンド交渉につきましては、昨年十二月の第九回WTO閣僚会合において、ドーハ・ラウンド交渉の部分合意といたしまして、バリ合意が妥結されたわけでございます。他方、そのバリ合意の一部である貿易円滑化に関する協定につきまして、予定されていた本年七月末の期限までに同協定をWTO協定の一部とする議定書の採択に至らなかったところでございます。

 バリ合意を含めましたドーハ・ラウンド交渉の今後の見通しにつきましては、不透明ではございますが、我が国といたしましては、引き続き多角的貿易体制の強化を積極的に推進していく考えでございます。

松田委員 自由貿易体制の維持強化のために、WTOであれ二国間のEPAであれ、どんどん進めていただきたいと思っております。

 今お手元にちょっと資料を配らせていただいたんですが、「二十一世紀の国際経済秩序」という大変大げさな言葉を書いていますけれども、今、世界が大きく、いろいろな意味での経済秩序づくりに動いているという局面だろうと思います。

 TPPもいずれ、FTAAPというものをにらんでおりますし、アジアとの間でRCEP、それから、もう御案内のとおり、TTIPという環大西洋貿易投資協定もあれば、一方で日本とEUとの間でもいろいろなものが進んでいる。これだけ大きな経済秩序づくりがせめぎ合っている中で、日本はこのいずれにも関与しているという意味で、我々にとって、世界経済秩序づくりに非常に大きなチャンスが今訪れているのではないか。

 ですから、私は、もともとTPPはどんどん進めるべきだと。手元にこういう私の著書がございまして、これは、二、三年前に、当時「TPP亡国論」というひどい本があったので、私は興国論という本を出させていただきまして、それで私もずっとTPP推進派としてやってきているわけなんです。

 ただ、いろいろな協定を、TPPであれ、あるいは今回のEPAであれ、どんどん結ぶためには、交渉というところでは一生懸命やるんですが、締結して大事なのは、それをどうやって日本の成長戦略に生かしていくかとか、国家戦略全体の中でこれをどういうふうに位置づけていくかという点が私は重要ではないかと思っておりますが、麻生大臣はどういうふうにお考えか、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 これはもう松田先生御指摘のとおり、ジェネラル・アグリーメント・オン・トレードと言われるいわゆるガット、またWTOにいたしましても、今回のEPAにしても、その前のFTAにしても、これはみんな手段でありまして、目的は、今言われたとおりに、経済成長とかそういったものが目的であります。締結が何となく目的みたいな話は、間違いなく手段と目的の混同でありまして、目的としては、経済成長というためには、御指摘のとおり、締結したEPAを活用していかに経済成長に結びつけるかという、少なくともエコノミック・パートナーシップ・アグリーメントなんですから、そういった意味では、我々としてはこれは大変大事なところ。

 しかも、日本の場合は少子高齢化というちょっと避けがたい現実が目の前にありますので、日本が今後成長していくに当たりましては、非常に地理的に近い地域であり、また成長が極めて著しいASEANと言われるアジア太平洋の地域を取り込んでいくというのは極めて大事なことなのであって、これはTPP亡国論じゃ間違いなので、それは興国論が正しいんだ、私もそう思っております。

 人、物、サービス、金等々が投資というような名前で国境を越えて、いろいろな障害があるのを乗り越えて進んでいくのであって、こういうようなもので、今後、物づくりに限らずサプライチェーンというものが、投資の面においても、またいろいろな意味でチェーンをつくっていくというものの中心に日本というのは、人、物、金、全て日本というのは持っておりますので、そういったものをやっていく構想と、それを実行せしめるものを持っておるので、私どもとしては、日本は人口が減っているとはいえ治安はいいし状況はいいんだから、金利は安いし、ぜひこういったところにといって、日本に投資がさらにふえてくるというのがすごく大事な今後の方法だと思っております。

 EPAというようなものも、中小企業が日本の場合は八割、九割を占めておりますので、そういったものが円滑にEPAといったものを利用できる、活用できるというような話をしないと、何となく、外国とか海外とかいうと途端に、ちょっと俺は海外はとか、いや、ちょっと英語はだめとかいうような時代じゃなくなっているのであって、いろいろな意味で、EPAの税率適用のことに関してセミナーを開かせていただいたりいろいろしているんですけれども、なかなか、地方というところに広がっていくときに、やはりこれはすごく大事なところなんです。東京なんかでやるよりは地方の都市でやった方がよっぽど、飛行場もそこにできているし、早いんじゃないんですかというような話になったときに、先ほどの御質問じゃありませんが、いいけれども、おまえ、税関で待たされること、この間二時間だったとか、何とか便で飛んで佐賀空港におりたけれども、全然おりられなかったとか、私らはやたら言われるんですよ。

 そういった意味では、ぜひ、人間の話にしても、そういった時代に合わせて、我々の方も、カスタム・イミグレーション・アンド・クアランティーン、通称CIQと称するこういったようなものの人員、対応を含めて、エボラも、危険、危ないということを警告したという意味においては大きかったんだと思いますが、そういったものを含めて、きちんとした、時代に合わせた人員配置なり制度というものをつくり上げていく必要が我々に与えられているんではないかと思っております。

松田委員 私と認識の方向は共有しておることを聞いて、大変安心いたしました。

 私も、この本で、日本がバリューを世界に生んでいって、それをバリューチェーンでつなげていく、戦略としてこれを考えていって、もうけはこれから成長するアジア太平洋地域で、雇用は国内に生んでいくというようなことも一つの経済戦略、これは重要なツールになるということで、大いに推進していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 さて、残りの時間がもうわずかになったんですが、財務金融委員に戻ってきて、どうしても最初に聞いておきたかったお話をちょっとさせていただきたいんです。

 消費税の来年一〇%への引き上げをどうするかという話を次世代の党の中でも、こういう党ですと私のような者がいきなり税制調査会長になりまして、党内でもけんけんがくがくの議論を、どうするかということをやっているんです。

 ただ、我々、私も財務省出身ですし、次世代の党というのは次世代のための政党ですから、できるだけ次世代に対して負担を大きくしないという基本的立場がありますが、中長期的には引き上げていかないといけない、これはもうどうしようもないことなんです。

 ただ、来年どうするかというと、我々議論すると、やはりまだ準備ができていないんじゃないかと。

 その一つは、お手元に配付した資料の一枚目の下の方、これは、財務省は今年度予算からではないかと思いますが、昨年、私、財務金融委員会で、もう少し受益と負担との関係、社会保障について特別に取り出して、社会保障特別会計とまで言いませんけれども、こういう勘定みたいなものをつくった方が、つまり社会保障の経費というのは、国に入った消費税が全額充てられていて、かつ、これだけ公債金、次の世代への先送りが、これでいうと十五兆円毎年出ているという形になると思うんですが、こういったことが、例えば有権者なんかに話をしても、社会保障に全部充てられているというこんなにわかりやすい税金は世界でも珍しい税金だと思いますけれども、なかなかこれが理解されていない。

 次の、一枚めくっていただきますと、これは、日本の政府の規模も、OECDの中でもかなり小さい部類に入っていますし、それから右下の方では、政府の社会保障以外の支出はOECDでは一番小さい。社会保障にどんどん金を食われて、ほかのお金が世界で一番不足している財政であるということもあらわしている中で、この社会保障についてやるものなんだということについての理解がまだ十分有権者に進んでいないなと。これをわかりやすくするような創意や工夫が非常に必要だと思うんです。

 最後のところに、これは恥ずかしながら私の描いたつまらないポンチ絵で恐縮ですけれども、我々、忘れがちなのは、国民というところに、将来世代の国民がある。次世代の党はそれを意識しているわけですが。憲法でも、この憲法が保障する権利というのは現在及び将来の国民に対して与えられると書いているように、やはり財政というのは、将来世代も含めた国民と考えると、これは解説している時間もございませんが、結局、高齢世代、現役世代そして将来世代、三つに分けると、消費税を上げるというのは、国民と国民との間のお金の移転をしているのが消費税であって、その配分を世代間でどうするかと調整するのが消費税を上げるということにすぎないわけでして、そういった意味では、将来世代まで含めればマクロ的な国民負担がこれでふえるわけではない、こういう理屈もやはり全然、説明してもなかなか浸透していない。

 財務省としても、この辺を一般国民がわからないと、これから税率引き上げをやるにしても、政治的に何回も何回も同じようなこんなものをやっていれば、いつまでたっても次の世代の負担が膨らむ一方なので、もう少し創意工夫を凝らすべきだとかねがね私は思っているんですが、大臣の御所見を伺えればと思います。

古川委員長 麻生大臣、時間が参っていますので、簡潔に願います。

麻生国務大臣 すっ飛ばして発言をすると非常に誤解を招くことにもなりかねぬので、注意してちょっと短く言わせていただきますけれども、簡単に言えば、九十兆の予算のうち三分の一が社会保障関係費で、ここにお示しいただいた部分でいきますと、二十六兆九千億というのは、これは生活保護やら何やらが抜けておりますので、そういったものを外した数字なんだと存じますが、いずれにしても、約三〇%というもので、加えて少子高齢化というのがありますので、毎年一兆ずつふえていくという状況で、このままいきますと国民皆保険なんかとてももてるはずがありません。そういった意味では、勤労者六人で一人の高齢者を支えるというときにつくり上げた設計図は、勤労者三人、二・何人で一人を支えるというときになると、設計図自体をつくりかえない限りはとても無理となろうと存じます。

 したがいまして、直接費より間接費の比率を高めていくとかいったような全体の流れの中で、やはり私どもとしては、今言われましたようなことをもう少しわかりやすく、より御理解いただけるように、我々の世代より次世代のためにというところをもっときちんと説明して、これはむしろ高齢者の方の方が意外と理解していただいたりなんかするところがありますので、私どもとしては、さらに努力をしてまいらねばならぬ、そう思っております。

松田委員 どうぞよろしくお願いします。

 こういった面での仕組みを、我々、財政健全化責任法案とか、かねがね、いわゆる複式会計で予算編成しろとか……

古川委員長 松田君、申し合わせの時間が参っていますので、まとめてください。

松田委員 大変難しい要求を言っているかもしれませんが、そういった改革ができますことが何といっても消費税の前提だと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

古川委員長 次に、小池政就君。

小池(政)委員 維新の党の小池政就でございます。

 きょうは持ち時間をいただきまして、質問を始めさせていただきたいところでありますが、委員長に申し上げますが、この定足数を満たすか満たさないかわからない状況では質問を行うことができません。

古川委員長 ちょっと速記をとめてください。

    〔速記中止〕

古川委員長 それでは、速記を起こしてください。

 委員、質問を続けてください。

小池(政)委員 それでは、質問を始めさせていただきます。

 きょうは法案の質疑ということで、時間の調整を、みんなの党さん、また次世代の党さんにしていただきまして、ありがとうございました。これから二十五分間いただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回、日豪のEPAということで、私たちは経済連携自体については大変、それは積極的に進めていくべきだというような方針ではございますが、この関連の法案につきまして少し気になる点がございますので、その点を中心にきょうは質疑をさせていただきます。

 今回の法案の中に、関税暫定措置法の一部を改正する法律案というものがございます。その中の一つの項目におきましては、食用に横流しされないように、これから関税が引き下げられます麦において、それは税関長に承認された工場によって処理を行うというような制度があるわけでございます。これは、制度としては昔からあるものでありまして、当初は保税工場、それが関税定率法の改正ということで現制度になっていったということを認識しております。

 大臣にお聞きさせていただきたいのは、この保税・承認工場制度の実施の背景、またその意義についてお伺いさせていただけますでしょうか。

麻生国務大臣 今回の日豪のEPAの中において、いわゆる豪州産、豪州で生産、製造されます麦につきまして、飼料の製造に使用する麦に限って関税が撤廃されるということになっております。

 これを確実に、ちゃんと飼料に使っておるのかということを担保するために、日本の税関長が承認をした工場というものにおいて、食糧用に横流し、流用されないようにするために特殊な加工を施して潰すとか、いろいろな形で飼料を製造する場合には、豪州産の麦に関しまして無税にしますということで、いわゆる承認工場制度を導入するようになった背景というのは、転用されないというのが一番大きなところだと思います。

 この導入によりまして、国内産の食糧用の穀物に関しての被害というものを最小限にしつつも、指定業者は、指定業者というのは税関長が承認したという意味ですけれども、限られますけれども、そういった者に関しては、関税で飼料用麦を自由に輸入できるというメリットを受けることができるという意義があるものと私どもは考えておりまして、手続というものからいくと、かなり煩雑さが抜けたということになろうと存じます。

小池(政)委員 そうしましたら、農水省さんにちょっとお聞きさせていただきたいんですが、今、横流しを防ぐという観点で大臣が御説明いただいたわけでありますが、酪農家に対してはどのような意義があるんでしょうか。

原田政府参考人 お答えいたします。

 餌麦、飼料用麦は今でも実はSBSで入れておりますので、ほとんど、マークアップ分が少なくて、無税に近い状態で入っております。畜産農家にとっては、いずれにしましても、餌麦、飼料用麦がSBSから離れて民間で自由に入るということで、餌のコストを下げるという面ではプラスになるかと思います。

 今先生御指摘の酪農に限って見ますと、酪農家さん自体は餌麦のウエートは余り大きくないので、どちらかというと養鶏農家さんや養豚農家さんの方がメリットは高いと思いますけれども、いずれにしましても、全体の餌の価格が下がることを期待しております。

小池(政)委員 今回の麦に関してだけじゃなくて、承認工場制度全体の意義を今確認したところでありますが、そうしますと、飼料の低廉かつ安定的供給を促すということかと思います。その結果でありますけれども、輸入品による配合飼料が国内でも出回って、今、飼料についてはほとんど全てを海外からの輸入に依存しているという状況かと思います。

 私はこの点についての是非を申し上げるつもりはないんですが、ただ、この件に関しましては、農水省さんは今、カロリーベースの食料自給率を高めようということをおっしゃっておりますけれども、その方針とは矛盾するところになるんでしょうか。お願いします。

原田政府参考人 お答え申し上げます。

 カロリーベースの自給率を上げるために、牧草などの飼料作物、最近は飼料米、そういったものも含めて、国内での餌の生産を高めようとしております。

 現に大きなウエートを占めている配合飼料の原料になっています麦を初めトウモロコシなどの飼料穀物につきましては、関税を下げることで爆発的に、量がそれほどふえるということはないと思うんですけれども、国産の飼料と輸入の飼料をうまく組み合わせて、酪農を初め畜産経営のコスト低減に結びつけることができればと思っております。

小池(政)委員 私は、この点は矛盾していると思います。

 カロリーベースの食料自給率そのものについても果たして意義があるのかということもあるんですが、今ちょっと説明からもわからなかったんですが、農水省さんからも、片方の飼料の方では輸入によって依存率を高めるようなことをやっておきながら、カロリーベースの自給率については、飼料は輸入品についてはカウントしない、できた肉牛についてもカウントしないということでございますから、そもそも、そのような目標というものもしっかりと一から見直すべきじゃないかということを考えているところでございます。

 これは本質の話ではなくて、先ほどの制度の話に戻らせていただきます。

 また農水省さんの方にお伺いさせていただきます。

 それでは、今回、低廉な飼料を供給していくという目的を持った承認制度でございますが、これまで、麦に限らずトウモロコシ等でずっと行われてきたわけでございます。これまで、この承認制度によって飼料価格は下がったんでしょうか。

原田政府参考人 お答えいたします。

 昭和二十八年に今のトウモロコシの承認制度ができたときに免税でございましたから、関税が減免されるということそれ自体は大変大きな価格の下げ要素になろうかと思います。しかしながら、国内での飼料価格自体は、そういった原料の価格もございますけれども、そのほかの外部経済等によって大きな変動がございますので、必ずしも時々について下がるということではございません。傾向的には、トウモロコシで見れば、長い年限で見ますと下がってきておりますけれども、直接的な関税の要素がすぐ反映されて下がるわけではございませんけれども、先ほどお話ししたような、SBSから民間取引に完全に移行することで企業側の自由度も高まりますし、可能な限り下がることを期待しております。

小池(政)委員 そこは、なぜ思ったとおり下がっていないのかということをしっかり検証すべきだと思います。トウモロコシは、関税五〇%ということで、配合飼料の約半分ぐらいを占めているということでございますから、単純に計算しても二割ぐらいは下がるだろうということでございますので、そことの差というものをしっかりと検証すべきだと思います。

 また、今回は麦でありますけれども、それでは、麦については、飼料のコスト削減効果というものはどの程度の見積もりをされているんでしょうか。

原田政府参考人 お答えします。

 見積もりはしていないのでございますが、配合飼料の原料になる場合、今先生御指摘のように、トウモロコシが五割近くウエートを占めております。現在、大麦、小麦のウエートはそれほど大きくなくて、そのときの価格によりますけれども、まだまだ小さいものでございますが、特に最近は、○○麦豚というようなブランドができたり、豚や鶏につきましては大変いい餌という認識がございまして、養鶏農家や養豚農家さんからも、こういった形で飼料用の麦がSBSから外れて民間貿易になれば大変使いやすいというお声を聞いていますので、そういった中でのコスト削減と畜産物に対する品質の向上を期待しております。

小池(政)委員 その点についても、また実施の後の検証というものをしっかりやっていただきたいと思います。

 次に、関税局長さんにお伺いさせていただきます。

 今回の法案について、第九条の二というところで、税関長の承認を受けた製造工場ということでございますが、その承認についてお伺いをさせていただきます。この承認の要件、中身はどうなっているんでしょうか。

宮内政府参考人 お答え申し上げます。

 今回御提案しております関税暫定措置法の改正法におきまして、税関長は、オーストラリアとの協定またはこの法律もしくは関税法の実施を確保する上に支障がないと認めるときは承認をしなければならないと規定してございます。

 製造工場の承認に当たりまして、より具体的には、運用上幾つかチェックすべき要件を設けることとしておりまして、一つは、関税関係法令の規定等に違反していないこと、それから、資力が薄弱でなく、法の規定に対応できると認められること、それから、設備が製造工場の業務を遂行するのに適していることなどがチェックすべき点というふうに考えております。

小池(政)委員 今おっしゃったようなことが関税定率法の施行令、そしてそこにある基本通達にも承認の要件ということであるんですが、これを見ても、その要件というものが、中身が全くわからない。今まで処分を受けたことがないとか、法令に違反していないということはあるんですが、中身のところで、唯一、設備が製造工場として適していることということが、通達レベルでもこの程度ということで、かなり税関の裁量というものが働いてしまうような、そのような感じを受け取ってしまうんです。

 先ほどおっしゃったようなことをもう少し明確に、何を要件としているのか、お伺いさせていただけますか。

宮内政府参考人 少し詳しく申し上げますと、まずは、申請者が製造工場の承認を取り消された者ではないということ、過去三年程度、取り消された者ではないといったこと。それから、関税に関する法令の規定に違反して刑に処せられたといった経験がないということ、これも三年程度経ていないという場合、それから関税以外の法令の規定に違反して禁錮以上の刑に処せられたというような場合は除くということとしております。また、こうした人を役員とする法人も対象外ということとしております。

 さらに、申請者の資力が薄弱であるために法の規定により課される負担に耐えないと認められる場合には、その他製造工場の業務を遂行するのに十分な能力がないと認められるような場合とかにつきましても、承認を行わないこととしております。

 また、設備が製造工場として適していることというのも要件としてございますけれども、一定の加工をしていただくことになっております。そうした加工がきちんとその工場の設備でできるかどうかということがございます。

 このため、工場の構造、あるいは使用しようとしている原料の品名といったもの、それから製造の方法及び計画といったものも申請書に添えて提出していただくことを考えてございます。

 以上でございます。

小池(政)委員 ちょっとよくわからないんですが。

 この工場については、またさらにちょっとおかしいなと思ったのが、では、この工場は、承認をどういうところに税関が行っているんですかということを税関また農水省の方にもきのうお聞きしたんですが、それは答えられないということでございました。

 各県に幾つあるということは回答できるということでありましたが、それぞれの承認工場について、どこがそのような事業を行っているか、それが何で答えられないのか、その理由を教えていただけますか。

宮内政府参考人 お答え申し上げます。

 固有名詞をお答えするという御質問でございましたでしょうか。といたしますと、既にオープンになっている情報であればこれはお答えすることができますけれども、必ずしも全てがオープンになっている情報というわけではございません。個々の企業の経営戦略で、こうした承認を申請し、承認を得ているということがあるわけでございます。そういった事情を踏まえてのことでございます。

小池(政)委員 個々の企業だからということで、ちょっとその理由もよくわからないところであります。

 政府は承認を与えているというところであります。当然、そのような企業はどこかということは公表に値すると思っておりますし、例えば金融庁のホームページを見ましたら、「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」ということで、いつ、それからどのような企業、また住所等、全て公開がされているところでございます。なぜ承認工場というのはこれほど非常に不明確なのかなというところから、少し怪しんでしまうわけであります。

 研究者によれば、配合飼料会社、承認工場を運営しているところだと思いますけれども、三、四割を農協が占めているということでありますとか、また、そもそも、過去の中小企業近代化促進法等によって、政府から助成も受けていたということでもございます。

 そのような工場について、果たしてどのような運営がされていて、それで、先ほどの酪農家の飼料の価格がどうなっているのかということを明確にすべきかと思っております。

 その際に、ここでまたちょっと法案についてお聞きさせていただきたいんですが、こちらでは、承認工場が手数料を税関に払うということになっているかと思います。それは毎月支払う義務かと思いますが、この手数料は果たして、免税で受けた、トウモロコシもしくは麦を処理して高く売った、その分の利益に該当するのかどうか。この手数料というのは、差し引いた残りの分はどうなっているのか。その点について、関税局長、教えてください。

宮内政府参考人 お答え申し上げます。

 手数料は、基本的には、面積が大きければその分大きくなる。それは、チェックすべき部分が大きくなるからです。要するに、手数料は、どれだけの手間がかかったかという実費に対応して定めているということと理解しております。

小池(政)委員 そうすると、見ましたけれども、面積に応じて、面積を基準として手数料が計算されているということでございますから、その面積当たりの例えば運営の改善等を行った際には、利益がたまる仕組みになってしまうということになると思います。

 この手数料の設定についても、過去、昭和二十九年から一度だけそれが改正されているわけでございまして、過去の手数料の計算の仕組みそのままで果たして、そこにある設備等はずっと変わってくるわけでございますから、その結果として、その運営に対して、先ほど申し上げましたような利益等、そこら辺の管理また把握というものはどうなっているんでしょうか。

宮内政府参考人 私の先ほどの説明が悪かったかもしれませんが、利益との相関関係で承認の手数料が決まっているということではございませんで、役所側の承認に係る実費を勘案して定めているところでございます。

小池(政)委員 だから、利益はどうなっているんですかという先ほどの質問になるわけであります。

 中身はわからないので、例えば配合・混合飼料のCIF価格から原価を配分等も含めて割り出してみたものを工場からの配合飼料価格で割ってみますと、七〇パーいかないぐらいになるわけなんです。つまり、残りの部分が、何かしらのコストがかかっている、もしくは承認工場に利益が残されているということが想定されてしまうわけであります。その点もやはりまずは明確化しないとわからないということでございますから、この点は、今回を機にしっかり検討していただきたいと思います。

 また、この承認制度におきまして、当初、先ほど大臣もおっしゃった、横流しを防止するんだということの取り組みでありますけれども、この横流し防止の管理はどのようにされているのか、お聞かせください。

宮内政府参考人 先ほども大臣の方から御答弁いたしましたが、輸入された麦が飼料の原料として使用されるということを担保するための制度として、関税定率法第十三条に既に規定されている承認工場制度と同様の制度を導入することとしたものでございます。

 本制度は、あらかじめ税関長の承認を受けた工場において豪州産麦を輸入し飼料を製造する場合に、当該豪州産麦の関税を無税とする制度でございます。

 この制度により承認を受けた工場に対しましては、原料品の数量と製品の製造予定数量等の書面を輸入申告時に提出していただく、これが一つ。それから二つ目に、製品製造時における輸入原料品の、飼料以外の用途へ適さないものへの加工というものを義務づけている。それから、工場搬入から搬出に至るまでの原料品、製品等に関して、帳簿の備えつけ、記入して備えつけるということを義務づけております。また、製品製造後の税関への届け出も義務づけているところでございます。

 さらに、税関がこれらの帳簿ですとか原料品、製品等の在庫を確認し、製造状況について検査を行うことや、横流れに対する罰則を設けることで、飼料用麦の横流れ防止を各段階において適切に図ることができるというふうに考えているところでございます。

 以上です。

小池(政)委員 その点、しっかり見ていただきたいと思います。

 といいますのは、先ほど教えていただけなかった承認工場はインターネットで調べてみますと幾つかありまして、またその承認工場は、同じ企業で食料も扱っているわけであります。例えば、雑穀を扱っている、それからまた、みずから畜産を行っているというケースもあります。例えば、卵とか肉を販売している。それを処理したかどうかというものを見分けられるかどうか、そういうのも非常にここは課題かと思っておりますし、また、先ほど、税関の体制はどうなったんだ、これから業務がふえるじゃないかという話がある中で、ここの点も、これから麦についてまたしっかりと見分けなければならない、審査しなければならない大きな課題だと思います。

 時間が来ましたのでまとめさせていただきますが、先ほど申しましたように、経済連携は大いに結構なんですが、ただ、かこつけて、不透明で公平性を損ね得る、そういうスキームで、手間とコストをかけて酪農家に上乗せした飼料を買わせるというようなことではなくて、やはり配合飼料という競争と疎外された業界の中で、それを改善するために、例えば将来的には、食糧用に、飼料についての関税を撤廃して、横流しされたら困るようなところに戸別所得補償を行うというようなことをしっかり検討に入れて、これからの連携を進めていただきたいと思います。

 終わります。ありがとうございました。

古川委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。

 提案されている法案に関連して、幾つか確かめておきたいと思います。

 今回の日豪経済連携協定は、重要品目のうち除外となったのは米のみでありまして、牛肉、乳製品で大幅な関税削減を認めるというものになっております。そういう点では、国内農業に大変大きな打撃を与える内容になっているのではないかと思うわけです。

 まず、大臣に確認したいんです。

 日本から豪州への輸出額のうち現在関税が無税となっている割合は何%か、それから、今回の日豪EPA協定が完全に実施された場合、何%にそれが拡大するか。逆に、豪州から日本への輸入額のうち今関税が無税となっているのは何%か、それが協定の完全実施で何%になるか。基礎的なことですけれども、確認をしておきたいと思います。

麻生国務大臣 佐々木先生、まず、日本から豪州への輸出額のうち、現状でいきますと三三・八%が関税が無税でありますけれども、日豪EPAが発効後十年以内に九九・八%について無税ということになることになります。

 また、豪州から日本への、輸入につきましては、現状では九三・五%につきまして無税でありますけれども、発効後十年以内に九三・七%が無税になるということであろうと存じます。

佐々木(憲)委員 次に、関税総額について聞いておきたいと思います。

 貿易量が一定と仮定しまして、最終年には現状に比べて豪州が受け取る関税額は幾ら減少するか、また、日本が受け取る関税額は幾ら減少するか。これは政府参考人で結構ですが、お答えいただきたい。

宮内政府参考人 お答え申し上げます。

 日豪EPAの実施が我が国の関税収入に及ぼす影響等につきましては、今後の貿易動向や為替変動等についての予測が困難であるため正確には見積もれませんが、その上で、オーストラリアからの輸入量が一定である等の一定の仮定のもとで最新のデータを用いて機械的な試算を行ってみますと、関税の支払い額、すなわち豪州が受け取る関税でございますが、関税引き下げ等の最終年度で五百八十億円程度の減収になります。一方、我が国の関税収入額につきましては、最終年度で三百三十億円程度の減収となります。

 以上でございます。

佐々木(憲)委員 この数字だけ見ますと、日本の方が何か得をしたかのように見えますけれども、問題は、誰がどれだけ恩恵を受けるか、誰がどれだけ打撃を受けるか、こういう問題であります。

 具体的にお聞きしますけれども、日本から豪州への輸出について、上位五品目の輸出額、現在の関税率と協定の関税率、これを述べていただきたい。それから、豪州からの上位五品目の輸入額、現在の関税率と協定による関税率、それぞれ述べていただきたいと思います。

宮内政府参考人 お答え申し上げます。

 日本からオーストラリアへの主な輸出品目の二〇一三年の輸出額につきましては、自動車が約七千五百億円、石油製品約三千百億円、ゴムタイヤ及びチューブについて約六百億円、建設用・鉱山用機械約五百億円、自動車部品については約四百億円でございます。

 これらの品目は、現在、無税または五%の関税が課されておりますが、有税部分につきましては、一部の例外を除きまして最終年度までに撤廃されるところでございます。

 また、オーストラリアから日本への、主な輸入品目の二〇一三年の輸入額でございますが、石炭約一兆四千八百億円、石油ガス類約一兆四千六百億円、鉄鉱石約九千九百億円、非鉄金属鉱約二千億円、牛肉約千四百億円でございます。

 このうち牛肉以外につきましては、一部の例外を除き、現行で関税率が既に無税でございます。現行の牛肉の関税率は三八・五%でございますが、生鮮等の牛肉につきましては十五年目に二三・五%まで、冷凍牛肉につきましては十八年目に一九・五%まで、段階的に削減されるという予定でございます。

佐々木(憲)委員 今御説明がありましたように、お配りした資料、これがそのことをあらわしております。

 二枚目を見ますと、日本から豪州に対する輸出に係る関税、これが特に自動車関連は非常に恩恵が大きいわけであります。ところが、逆に豪州から日本に対する輸出に係る関税、これらは既に上位四品目はもう無税でありまして、問題は牛肉なんです。それからチーズ及びカードとか、下にありますけれども、こういう農産品に関連するものが大変な打撃を受ける、こういう構図になっているわけですね。

 結局、自動車の輸出に関する関税が撤廃されて、輸入では豪州産の牛肉の日本の関税が軽減されて、輸入が促進される。要するに、大臣、これは、自動車と引きかえに牛肉の大幅な引き下げ要求をのんだ、こういうことになるんじゃありませんか。

麻生国務大臣 いろいろ先ほども申し上げましたように、この種の話というのは、消費者の利益と生産しておられる方々とのバランスというのが常に一番の問題になろうと存じます。国内産業の保護と消費者利益のいわゆるバランスということなんだと思います。

 先ほど申し上げましたように、冷蔵牛肉と冷凍牛肉の二つがあるんですが、これをかなりの長期間、片一方は十五年、片一方は十八年の長きにわたって時間をかけてやってまいります。国産牛肉と競合いたします冷蔵牛肉につきましては冷凍より四%高いことにしておりますし、いろいろな意味で、輸入量が一定を上回った場合はちゃんとセーフガードをかけますよとか、いろいろな形にしてございますので、私どもとしては、これは国内の畜産業者をかなり保護する内容にやれたんだと思っております。

 同時に、やはり国内の畜産業者の方々もこの十五年、十八年の間にいろいろ努力をしていただいて、消費者の利益がふえていきますようにいろいろ御努力をいただかねばならぬということも確かだと思いますけれども、いずれにいたしましても、こういったことによって輸入牛肉の値段が安くなっていくということは非常に大きな利益になるものだ、私どもはそう思っております。

佐々木(憲)委員 今の説明は納得できないところが多々ありまして、消費者の利益と言いますけれども、安くなるという利益ももちろんあるかもしれないが、問題は、安定供給という面ではどうか。国際的な食料危機などの問題がありますよね。そういうときに、国内の自給率が下がっている場合はどうなんだと、非常に大きな懸念が持たれているわけであります。

 そういうときに、国内の畜産業界が打撃を受けるようなことを一方でやる。プラスには決してなりませんね。打撃をどれだけ少なくするかという程度の話なんですよ。問題は、自動車の輸出を何とかしたい、そちらの方が先行しておりまして、結果的に農家が犠牲になる、こういう構図になっていることはもう明らかであります。

 そこで、農水省にお聞きします。

 先ほどもちょっと議論がありましたが、豪州産牛肉の関税が下げられることによって国内の畜産業にどういう影響が出るのか。これは、貿易量、為替について一定の前提を置けば試算はできると思いますが、ぜひそれを出していただきたいと思います。

あべ副大臣 佐々木委員にお答えいたします。

 この日豪のEPAの合意内容につきまして、先ほど財務大臣からも御説明がございましたように、冷蔵、冷凍間の四%の税率差、例えば、冷蔵に関しましては三八・五%が二三・五%に、冷凍は三八・五%が一九・五%というふうにされた。また、近年の輸入水準以上の輸入量になったときには、先ほど大臣からも申し上げましたとおり、関税を現行水準の三八・五%に戻す効果的なセーフガード、さらには長期の関税率の削減期間を冷蔵十五年、冷凍十八年の確保など、国内畜産業の存立さらには健全な発展と両立し得る内容であると私ども農林水産省は考えているところでございます。

 そうした中、日豪EPAが今後の我が国の牛肉の生産に与える具体的な影響に関しましては、関税のほか、他の外国産牛肉の輸入状況、景気動向、為替変動などさまざまな要因が影響を及ぼすため、予測することは困難であるというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、本協定の効果、影響に留意しつつ、生産者の皆様が引き続き意欲を持って経営を続けられるよう、畜産、酪農に対して構造改革や生産性の向上による競争力強化を推進してまいりたいと思っております。

佐々木(憲)委員 要するに、長々言いましたけれども、計算できないのではなくて、計算しないということだというふうに私は思いますね。

 大体、二〇〇六年十二月一日に農水省が「豪州産農産物の関税が撤廃された場合の影響(試算)」を公表しているんじゃありませんか。

あべ副大臣 佐々木委員にお答えいたします。

 おっしゃるとおり、二〇〇六年十二月に農林水産省におきまして、豪州の農産物の関税が撤廃されたときの影響、試算を公表したことは事実でございます。

佐々木(憲)委員 だから、結局、試算をしようと思ったらできるわけでありまして、若干複雑になるかもしれないけれども、前提を置いてやればできるんですよ。

 この二〇〇六年の農水省の試算によると、価格面で国内農産物は市場での競争に敗れ、豪州産の農産物に置きかわり、それに見合う国内生産が縮小する可能性、その場合に受ける四品目についての直接的な影響を見積もれば、合計で約八千億円という試算、こういうふうに公表しているわけです。しかも、牛肉に限って言うと二千五百億円の減少ですよ。これは関税撤廃という前提ですけれどもね。

 ですから、試算をやろうと思ったら幾らでもできるわけで、マイナス影響が大きいから試算は出したくないというのが本音だというのが、もうありありとしているわけであります。

 今、農民の側から非常に不満が広がっておりまして、大変な事態になっている。一方で、オーストラリアの側のMLA、豪州食肉家畜生産者事業団の駐日代表のホームページでの声明を見ますと、まさに勝利宣言でありまして、二十年後には五十五億豪ドルにまで拡大する、つまり今の約四倍になる、こう言っているわけですね。こうなりますと、国内生産が大変な事態になるということはもう明らかであります。

 既にこの十年間、例えば乳用牛の飼養戸数、それから肉用牛の戸数は両方とも、乳用牛の方は九千戸減っております。肉用牛の方は三万二千戸減っているわけです。これが実態なんですね。その上に、豪州に言わせれば、これから四倍にもふえてくるんだと。こうなりますと、壊滅的な事態になるわけですね。

 セーフガードがある、セーフガードがあると言いますけれども、セーフガードの基準は一体何によって決まるんですか。

あべ副大臣 佐々木委員にお答えいたします。

 セーフガードは輸入の急増時の安全弁として措置されるものでございまして、一般的に、輸入数量が一定の基準を超えた際に関税の引き上げを行うものでございます。

 発動基準を定量的に定めている既存のセーフガードとして、例えば特別セーフガード措置、これは、ウルグアイ・ラウンドの合意に基づき関税化された農産品を対象として、前三年の輸入数量の平均をもとに算出する一定の数量を超えた場合に追加関税として通常関税の三分の一を上乗せする措置でございまして、また、牛肉に関しましては、関税の緊急措置として、四半期ごとの輸入数量が対前年同期比で一一七%を超えた場合に関税を三八・五%から五〇%まで戻す措置でございます。

 今回の日豪のEPAにおける牛肉の特別セーフガード措置の合意内容、これは、冷凍、冷蔵別に、あらかじめ毎年定められた年間の輸入数量、例えば初年度は冷凍十九万五千トン、冷蔵に関しては十三万トンを超える輸入が行われた場合にセーフガードを発動いたしまして関税を三八・五%に戻すといった内容となっておりまして、単純に過去の輸入実績を基準とする措置と比べて効果的なセーフガードであるというふうに私どもは考えております。

佐々木(憲)委員 長々答弁したけれども、結局、過去の実績を基準にして、それを上回るように設定されているわけです。ですから、現実にそれによって輸入する量が確保される……

古川委員長 佐々木君、申し合わせの時間が来ておりますので、まとめてください。

佐々木(憲)委員 了解です。わかっております。もう終わります。

 したがって、このセーフガードというのは、事実上、農家を守ることには役立たないというのが実態だと思います。

 時間が参りましたので、以上で終わりたいと思います。

古川委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 生活の鈴木であります。

 最後の質問になりますので、今までの委員の質問と重なる部分もあろうかと思いますが、私の立場に立って質問をさせていただきますので、ひとつよろしくお願いをしたいと思います。

 私も、まず、牛肉の関税削減によって、いわゆる国内生産者及び財政への影響、そしてその対応ということで、ひとつ質問をさせていただきたいというふうに思っています。

 今般のオーストラリアとのEPAでは、先ほど御説明がありましたように、段階的に関税率が削減をされる、それは冷蔵牛肉と冷凍牛肉に分けてあるという御説明でございます。

 そのことは承知をしておるわけでありますが、いずれにしましても、先ほど来の質疑のように、オーストラリアからの牛肉というのは国内生産者にとって大変な脅威であるわけであります。加えて、BSEの発生後、アメリカ産牛肉の輸入が再開されて以来、年々輸入量が増加しておるのも御案内のとおりでございます。そういう中で、やはり国内生産者は非常に危機感を持っている、不安が高まっている、このように思っております。

 そこで、岸本委員そして佐々木委員等々の質問があったわけでありますが、この影響と対応について御質問させていただきます。

 さきの通常国会でも、農水大臣の答弁は、その影響については、貿易、景気、為替、そういったもろもろの動向によって左右されるのでなかなか予見することは困難である、ただ、生産者に対しては影響が出たときには必要な対策を検討する、こういう答弁であったわけです。

 オーストラリアとのEPAの発効による関税収入に及ぼす影響については、EPA発効の初年度は百二十億円、最終年度で三百億円程度の減収が見込まれる、牛肉についてこのように説明をされております。この削減見込み額は今後精査をされて、来年度以降の歳入予算において関税収入の見積もりに反映されるということになるというふうに思います。

 ということは、国内生産者への影響は予見は困難である、しかし、実際に影響が出た場合には後追いで対策をする、そして財政への影響については一応見込んでいる、こういうことでよろしいかどうか。

 減収見込み額を示すことが可能ということであるならば、先ほど来のお話のように、同様の考え方で、国内生産者への影響も示す必要があると私は思います。そして、示した上で万全の対策を講じていくというのが本来の政府の責任であるというふうに思いますが、この点について、重ねてひとつ政府の見解を求めたいと思います。

原田政府参考人 お答えいたします。

 基本的な考え方につきましては、先ほど、あべ副大臣の方から佐々木先生にお話ししました。

 まず、今先生から御指摘のあった関税収入の減収見込みでございますが、最終年度三百二十億円という御指摘でございましたけれども、これは全体でございまして、牛肉だけで見ますと、最終年度二百億円ぐらいの減収を見込んでおります。

 関税収入自体は、牛肉関税収入を毎年予算に計上して、肉用子牛等対策費という費目で、肉用子牛の価格低下時の対策ですとか、通常、新マルキンと申していますけれども、肥育経営のセーフティーネットに使っております。

 実は、関税収入自体は、三八・五%という今の固定した関税でも、例えば収入の実績で見ますと、二十一年度は七百九億円、昨年、二十五年度は一千四十七億円ということで、為替ですとか現地の価格ですとか、そういったもので大きく振れております。

 いずれにしましても、そういったものは差しおいて、関税だけで見て、二百億円ぐらいが最終年度に減収になるのではないかと見ております。

 それはそれとして、牛肉を生産する肥育農家につきましては今お話しした肉用牛肥育経営安定対策がございまして、これは、牛肉自由化以降、内容を充実しながら、今現にセーフティーネットとして肥育農家の一番大きな柱になっております。これも予算も十分確保してございますし、直近は、肉用牛の卸売価格が昨年暮れぐらいから非常に上昇していまして、比較的枝肉の卸売価格はいい状態、子牛の価格が高いものですから肥育農家さんはつらい部分があるんですけれども、このセーフティーネットが十分機能してございます。

 したがいまして、関税収入自体あるいは実際の輸入牛肉の価格というのは今先生からもお話がありましたようにいろいろな要素で変わるんですけれども、現行のセーフティーネット対策がかなり機能しておりますので、これでしっかりと肥育経営を支えていきたいということでございます。

鈴木(克)委員 先ほど来からの繰り返しになりますが、確かに、貿易、景気、為替、もろもろの条件によって変わってくるので非常に予見しにくい。しかし、先ほど来の質疑のように、いわゆる仮の数字といいますか、想定した数字を置いていけば、私は十分それを出すことも可能だというふうに思っています。

 したがって、うがった見方をすれば、やはりその影響を余り表に出したくないということで、わからないというふうな答弁を繰り返されておるのではないのかな。うがった見方をすればそんな考え方ができるのではないかなというふうに思っています。

 次に、先ほどお話しの肉用子牛対策です。

 これは、牛肉に係る関税収入がいわゆる肉用子牛対策の特定財源として充当されておる、このように承知をしておるわけでありますが、先ほどお話しのように、三百億円のうち、牛肉に係る部分がその三分の二の約二百億円程度に上るのではないか、こういう話も聞いておるわけであります。

 ということは、やはり肉用子牛等対策への影響というのが懸念をされてくるのではないのかなというふうに私は思うんですが、もう一度このオーストラリアとのEPA発効による牛肉に係る関税収入の減収見込み額を確認させていただき、同時にその影響と対応策をお示しいただきたいと思います。

原田政府参考人 お答えいたします。

 日豪EPAの関係で、関税減収額をごく単純に機械的に試算しますと、発効初年度目で牛肉は八十八億円の減でございます。最終年度で二百十四億円の減という試算をしております。

 関税収入自体は、牛肉については今先生から御指摘のあった法律で特別に肉用子牛等対策費という形で国内の生産者のセーフティーネットに充ててございますけれども、今までも、仮に牛肉関税だけでもしも足りないということがあれば、農林省としましては一般会計も含めて充てることを要求することになると思いますし、今までは先ほどもお話ししたように七百億円ぐらいの関税収入しかないときもありましたけれども、現に充足しながら運営しておりますので、まことに申しわけございませんが、先のことはやはり断定的には申し上げられませんけれども、しっかりと対策は打っていきたいということでございます。

鈴木(克)委員 あと時間がわずかでありますので、まだまだTPPに関する御質問とかいろいろとあったんですが、これも先ほど来各委員から御指摘があったわけでありますけれども、税関行政について、ぜひこれだけはお聞きしておきたいというふうに思います。

 我が国では、これまで十三の国、地域との間でEPAを発効させております。日本再興戦略においては、グローバルな経済活動のベースとなる経済連携を推進し、貿易のFTA比率を現在の一九%から二〇一八年までに七〇%に高めるとされております。したがいまして、今後はEPA締約国との貿易量の増加が見込まれるところであります。

 また、今般のオーストラリアとのEPAでは自己申告制度の導入などが図られていることから、税関における事後確認が非常に重要となってまいります。

 さらに、これも大臣からの答弁にもありましたけれども、増加傾向にある覚醒剤等の不正薬物それからまた知的財産侵害物品への対応、そして危険ドラッグの水際の取り締まり等々、非常に重要な課題が山積をしております。

 加えて、先ほど来のお話のように、二〇二〇年にはオリンピック・パラリンピック東京大会が開催をされるということでありますし、二〇二〇年に向けて外国人旅行者二千万人の高みを目指す、こういうことでございます。そうしてまいりますと、いわゆる外国人旅行者の増加に対応できるように、計画的に、地方空港、港湾を含めた税関等について、必要な物的、人的体制の整備を進めることが不可欠だというふうに思います。

 これも繰り返しになりますけれども、税関における業務量の増加とともに税関の機能の重要性が高まってきておるわけでありますから、そういった状況を踏まえて、税関行政のあり方について大臣の御見解をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今いろいろ述べられましたけれども、少なくとも税関というところは、貿易の円滑化を推進すること、それから、今、危険ドラッグの話等々がありましたけれども、いわゆる国民の安全、安心の確保、そして適正かつ公平な関税の徴収等々という使命感が課せられているというのは確かだろうと存じます。したがいまして、今後とも、この円滑化のためには、今回の原産地をきちんとする方法等々、いろいろな形で新しい業務がまた発生してきていることにも、これは円滑化するためにできてきた結果でありますけれども、なっております。

 また、国民の安全、安心というところに関しましては、危険の内容が、物すごく技術が進歩したおかげで3Dを使って拳銃がつくれるとか、いろいろな話になってきていますので、いろいろな意味で、不正薬物を含めまして密輸の問題というのは非常に大きな問題で、水際の取り締まりというのは極めて重要な位置になります。地方空港でCIQ、カスタム・イミグレークション・アンド・クアランティーンが少ないからといって、地方空港を狙ってその種の話がされるということは十分に相手方とすれば考えるところでもあろうと存じますので、そういった意味では、対応するために人をきちんとふやしていかないかぬ、いろいろ御指摘があっておりましたけれども、そうだと思っております。

 また、徴収につきましては増加傾向にあることは確かでもありますけれども、その役割が高まってきている、関税を安くしても絶対量がふえてきているということだと思います。今後とも、それらに対応するには、相手方の情報、ITの利用とか、いろいろな取り締まりの検査機器というものが随分進んでおりますので、そういったものをやりましたり、外国の税関との連携強化等々、やらなくちゃいかぬことは幾つもあろうかと思います。そういったものをあわせまして、体制の整備ということに関しまして、我々としては、人数を含めましてきちんと対応していかねばならぬということだろうと思っております。

鈴木(克)委員 終わります。

古川委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古川委員長 これより両案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。寺田稔君。

寺田委員 私は、自由民主党を代表し、ただいま議題となりました関税暫定措置法の一部を改正する法律案並びに経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律案の二法案につきまして、賛成の立場から討論を行います。

 日豪EPAは、自由貿易体制の推進、比較優位を有する我が国のすぐれた産業の国際競争力の強化に資するものであり、我が国の国益の増進に直結するものであります。とりわけオーストラリアは我が国にとり主要なエネルギー、食料の調達先であり、エネルギー安定供給、食料安全保障にとり重要な意義を有するものであります。

 現在審議されております関税二法案は、協定発効のため必要な国内法整備を行うものであり、これらの法律案が成立しなければ協定は発効いたしません。

 国内農業への影響につきましても、米について関税撤廃の対象から除外をする、また牛肉につきましては、長期間の移行期間を確保した上、特別セーフガード措置を施すなど、適切な対応をとっております。

 こうした種々の国内措置が施される結果、本協定が発効しても、適切な国内農業保護を図ることは可能となっております。

 以上のことから、日豪経済連携協定及び関税二法は、国益にかなう適切なものとなっております。

 韓国政府も、オーストラリアとの間で同様の協定の発効を急いでおります。

 本協定並びに二法案の早期の成立と、ワークロードがますます増します税関職員の適切な定員確保をお願いし、賛成討論といたします。

 ありがとうございます。(拍手)

古川委員長 次に、佐々木憲昭君。

佐々木(憲)委員 日本共産党を代表して、二法案に対し、反対の討論を行います。

 法案は、日豪経済連携協定の重要な構成部分である牛肉に係る特別セーフガード、原産品確認手続の自己申告制度などの国内法令を整備するものであります。

 本体の日豪経済連携協定は農産物輸出大国と結ぶ初めての経済連携協定であり、合意内容も、豪州の関税無税化が自動車を初めとする工業製品を中心に三三・八%から九九・八%にまで引き上げられるのに対し、日本の関税は牛肉や乳製品を中心とする重要品目の関税率を引き下げるものであります。日本製工業製品の輸出拡大のために、国内の牛肉や乳製品など畜産業界が犠牲となることは明らかであります。

 豪州畜産業界が協定締結交渉を大成功と評価し、牛肉の対日輸出が二十年で四倍にふえると声明を出すほど、日本の牛肉市場が輸入品に席巻される危険があるにもかかわらず、政府は、国内への影響を具体的に説明できないありさまであります。新たに盛り込まれた特別セーフガードも、豪州産牛肉の輸入が制限される確実な保証はありません。

 また、この協定は、二〇〇六年十二月七日に全会一致で可決した衆議院農水委員会の日豪EPAの交渉開始に関する決議を無視するものであり、国会軽視も甚だしいと言わなければなりません。

 また、本協定は同時に進められているTPP交渉の露払いと言われており、これをてこに、さらなる関税撤廃が求められる危険があります。

 以上の理由から、日豪経済連携協定には重大な問題があり、協定本体と一体であるこの二法案についても反対といたします。

古川委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

古川委員長 これより採決に入ります。

 まず、関税暫定措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

古川委員長 この際、ただいま議決いたしました本案に対し、竹本直一君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、維新の党、公明党、次世代の党、みんなの党及び生活の党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。伊東信久君。

伊東(信)委員 維新の党、伊東信久でございます。

 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    関税暫定措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

  第九条の二に定める規定の適用に当たっては、税関長の承認要件の明確化を図るとともに、製造工場の経営状況の明確化が図られるよう努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

古川委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古川委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

古川委員長 次に、経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定に基づく申告原産品に係る情報の提供等に関する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

古川委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

古川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

古川委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十二分散会


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