衆議院

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第14号 平成27年9月2日(水曜日)

会議録本文へ
平成二十七年九月二日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 古川 禎久君

   理事 柴山 昌彦君 理事 土屋 正忠君

   理事 藤井比早之君 理事 御法川信英君

   理事 山田 美樹君 理事 鈴木 克昌君

   理事 丸山 穂高君 理事 伊藤  渉君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      鬼木  誠君    勝俣 孝明君

      神田 憲次君    國場幸之助君

      鈴木 隼人君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    津島  淳君

      中山 展宏君    根本 幸典君

      福田 達夫君    藤丸  敏君

      牧島かれん君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      大島  敦君    玄葉光一郎君

      古川 元久君    前原 誠司君

      鷲尾英一郎君    横山 博幸君

      吉田 豊史君    岡本 三成君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    小泉 龍司君

    …………………………………

   参考人

   (株式会社大和総研主席研究員・経済調査部担当部長)            齋藤 尚登君

   参考人

   (平和外交研究所代表)  美根 慶樹君

   財務金融委員会専門員   関根  弘君

    ―――――――――――――

委員の異動

九月二日

 辞任         補欠選任

  伊東 信久君     横山 博幸君

同日

 辞任         補欠選任

  横山 博幸君     伊東 信久君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 財政及び金融に関する件(国際開発金融機関等)


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     ――――◇―――――

古川委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件、特に国際開発金融機関等について調査を進めます。

 本日は、参考人として株式会社大和総研主席研究員・経済調査部担当部長齋藤尚登君及び平和外交研究所代表美根慶樹君に御出席をいただいております。

 この際、両参考人に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、大変御多用の中、本委員会に御出席を賜りまして、ありがとうございました。両参考人におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただきますようお願い申し上げます。

 次に、議事の順序について申し上げます。

 まず、両参考人からそれぞれ十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を得て御発言くださいますようお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず齋藤参考人にお願いいたします。

齋藤参考人 皆様こんにちは。大和総研の齋藤と申します。

 きょうは限られた十五分以内という時間でございますので、まず結論を申し上げたいと思います。

 私自身は、AIIBに日本は参加すべしというふうに考えております。具体的には、内側に入って、AIIBをより好ましい姿、AIIBが国際金融機関を志向するのであれば、そういうあるべき姿に日本が変えていくべきではないかという見方をしております。

 きょう、時間、十五分のうち半分を使いまして、AIIBに対する懸念は何かというお話をします。そしてもう一つ、AIIBが成功するにはどういう条件が必要なのかというお話です。

 後半の部分につきまして、人民元の国際化の話をしていきたいと思います。これは、日本の金融界にとっても、人民元ビジネスを取り込んでいくことが恐らく東京の国際金融センターとしての地位向上につながるからという見方であります。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、一ページ目をお開きください。

 まず、AIIB設立のアジアにとってのメリットは何かということですが、これはもう御案内のとおりであります。

 アジアには膨大なインフラ需要がありますが、既存の国際金融機関の資金ではそれを賄うことができない。ですので、新たな資金調達ルートを開拓し、アジア低所得国の経済発展の促進に資するということが中国側から言われています。

 アジア開発銀行が推計をしておりまして、アジアのインフラ整備に必要な資金額、二〇一〇年から二〇二〇年の十一年間に約八兆米ドル、年に直しますと七千三百億米ドルと試算しております。

 アジアの貯蓄額というものを調べてみますと、アジアの貯蓄額の六割から七割が中国に由来するものという状況になっております。

 そういった意味で、中国が資金を出して資金の足りない国に融通していく、こういう点では、AIIBというのは好ましい存在になる可能性があるというふうに見ております。

 ただ、問題は資金不足だけではございません。特に受け入れ国の制度ですとかガバナンスの未熟さがより大きな問題になりますので、金額というよりも、むしろプロジェクトをどう選択するか、もしくはそのプロジェクトをどう育成していくのかということが極めて大きな鍵を握るわけでございます。

 そのノウハウを持つのはどこかといいますと、世界銀行でありIMFでありADBである、もっと言えば我が国が経験してきた開発援助のあり方である、この経験をAIIBは学ぶべきではないかというふうに考えております。

 次のページが、二ページ目でございます、中国にとってAIIBを設立するメリットは何か。ここに四つ掲げておりますが、私が一番大事だと思っているのが二番目になります。

 中国の景気がスローダウンする中で、中国が過剰生産能力を抱えております。鉄鋼だけでも、日本の生産能力の数倍の過剰な設備を抱えている。そういった意味で、アジアでインフラ投資・整備を行う際に、例えば鉄鋼であるとかセメントが足りない、これを中国から輸出することで、後で申し上げます疲弊する東北三省の再活性化につなげたいと。一つのポイントは、AIIBの出発点はすぐれて国内要因であるということになります。

 三ページがその一覧表になります。下の一覧表が、中国の各地方の実質経済成長率を見ております。

 国全体としましては、二〇一四年に七・四%成長、そしてことし一月から六月ですと七%成長であります。

 特に御注目いただきたいのは、左上の遼寧省です。これは重工業が集約している地方になりますが、二・六%の成長にとどまる。そしてその右、山西省は二・七%。山西省は、石炭を採掘することで潤ってきた地方になります。さらに、先ほど申し上げた遼寧省と、真ん中の上から二番目、三番目の黒竜江省と吉林省、これがいわゆる東北三省となります。

 つまり、中国経済がスローダウンする中でも、その痛みというのが中国全体に満遍なく降りかかっているわけではない。こうした資源依存度、これは山西省ですが、あるいは重工業依存度の高い東北三省、こうした地方の成長率はいわば失速という状況になっております。この起死回生策としてのAIIBという位置づけを中国はしているのであろうというふうに思います。

 四ページ目です。御案内のとおりに、中国のAIIBに対する出資比率が二九・七八%、議決権比率は二六・〇六%ということです。重要なことは七五%以上の賛成が必要でありますので、中国一国で拒否権を持ってしまう、国際金融機関としてはこういうややいびつな議決権比率になっています。

 五ページ目です。両論併記すると申し上げましたが、AIIBに対する懸念であります。

 まず冒頭に挙げましたのが、中国の利益や政治・外交的な思惑が最重視されるのではないかという不安になります。言いかえますと、中国の中国による中国のための機関に成り下がらないのかという懸念であります。

 話はやや横道にそれますけれども、中国も二国間援助ということをやっておりまして、受け入れ国側からは非常にありがたがられているという事実があります。その理由は、厳しい条件をつけないからであります。資金が目的どおりに使われずに、中国さらには受け入れ国双方の腐敗、汚職の温床になるといった懸念も指摘されています。

 また、AIIBが余りに緩やかな条件で投融資を行う場合には、既存の国際金融機関によって律せられてきた規律が無に帰するリスクも懸念されております。例えば、環境問題や人権問題で国際金融機関がノーと言ったプロジェクトがAIIBによって復活してしまうリスク、こうしたさまざまな懸念やリスクに対して中国はみずからきちんと説明をする責任があるというふうに考えております。残念ながら、この説明責任をきちんと果たしているとは言えないのが現状ではないかというふうに思います。

 そして、成功の鍵ということでありますが、これを一言で言ってしまいますと、中国のひとり勝ちを許さない、アジアの中でウイン・ウインの関係を構築できるかどうかということになります。そういった意味で、中国に責任ある大国としての意識変化ということを促していく必要があります。

 私自身、最初の結論で申し上げましたように、日本はAIIBに対して外から影響力を行使するのがよいのか、またはAIIBの内側に入り、そのあり方をグローバルスタンダードを意識したものに変えていくのがよいのか。私は後者だと考えております。

 当然のことながら、我が国が参加することによってAIIBの成功の確率は格段に上がるということになります。私が申し上げたいのは、日本がアジアにどう貢献するかという観点になります。

 そして、残された時間で、人民元の国際化のお話を少しさせていただきます。

 六ページのグラフです。これは急増する人民元建て貿易決済というグラフですが、中国が人民元建て決済を始めたのが二〇〇九年の七月からということで、歴史が非常に浅いんですね。我が国が円建ての貿易決済を認めたのが一九六〇年と記憶しておりますので、中国は四十九年おくれで日本を追っていることになります。

 しかし、その後のスピード感には目を見張るものがございます。去年、中国の貿易決済のうち一八・六%が人民元という状況であります。ことし一―六月について調べますと、二六%が人民元で決済されています。

 ただ、日中貿易ということで数字を調べようと思ったんですが、これは非公表になっておりますので、私がヒアリングベースで感じた感触を申し上げますと、日中貿易では大半が米ドル建てでありまして、円建ては全体の三割から四割程度ではないか、そして人民元決済としては恐らく二、三%程度と非常に低位にとどまっている状況になります。

 人民元の決済は、貿易決済だけではなく、二〇一一年からは直接投資においても人民元決済を推進するという状況があります。

 次の七ページをごらんいただけますか。中国が締結している通貨スワップ協定の締結国の一覧が右にあります。

 中国のスワップ協定ですが、普通の一般的なスワップ協定というのは短期の流動性危機のときに融通し合うというものなんですが、中国の場合は貿易・直接投資を含むということですので、人民元の国際化をかなり強く意識したものになっております。右の一覧表でお気づきだと思いますが、主要国では日本とアメリカはこれに参加をしていない、締結をしていない状況です。

 そして、八ページです。これは資金決済における通貨別シェアということですが、人民元の順番が大きく上がっているということで、今、世界で五番目の決済通貨となっております。

 九ページ目です。人民元が海外、域外に拡散するということで、オフショア人民元が大きくなってきております。左が香港の人民元預金残高を見ておりまして、足元で一兆元を若干割るような状況です。円に直しますと二十兆円に少し足りない状況。右側がオフショア人民元建ての債券発行額です。四千二百六十六億元、円に直しますと八兆五千億円、我が国日本の社債市場と同じぐらいの発行額にまで育っています。

 十ページ目は飛ばさせていただきまして、十一ページ目です。日本と人民元の国際化ということであります。

 実は、人民元ビジネスで先陣を切ったのは我が国でありまして、二〇一一年十二月の日中首脳会談、金融協力の促進で合意。そして、二〇一二年六月一日には、東京と上海の銀行間外国為替市場で円と人民元の直接取引が始まる。この点につきましては、ロンドンがやりたくて猛烈なロビー活動をしていた、それを差しおいて実現したという事実があります。

 ただ、残念ながら、その後の歩みというのは非常におくれをとってしまっておりまして、十二ページのところですね、足元で、人民元の決済銀行の指定は東京ではなされていません。RQFIIと呼ばれる、人民元を使って中国国内の証券市場に投資をするという制度、これも日本はまだ枠をもらっていないという状況になります。

 こういった中で、ことしの六月、日本政府のイニシアチブによって三年二カ月ぶりに日中財務対話が再開した。そして、その月の二十四日、日本国内で日本企業初となる人民元建て社債三・五億元分が発行されるといったように、ようやく人民元ビジネスを取り込んでいくという動きが始まってきています。

 最後、まとめに入りますけれども、私自身、これから日本国内で人民元取引が拡大していきますと、日本国内の金融市場の活性化、もしくは東京の国際金融センターとしての地位向上につながる可能性があるということで、その一つのてことしてAIIBを活用するという考え方も一考に値するのではないかというふうに感じております。

 私からは以上です。どうもありがとうございました。(拍手)

古川委員長 ありがとうございました。

 次に、美根参考人にお願いいたします。

美根参考人 本日は、このような場で私の意見を聞いていただきまして、大変ありがとうございます。

 齋藤参考人と違いまして私は資料を持ってきておりませんので、口頭で説明させていただきます。

 AIIB、アジアインフラ投資銀行ですけれども、この構想が打ち出されました当初は、国内ではバスに乗りおくれるなという論調がかなり強かったように思います。今はかなり鎮静化したようですけれども、しかし、では、参加しないでいいか、参加しないでいることについて自信を持って言えるかといいますと、これもちょっとなかなか自信がないという方が多いんじゃないか。これは一般の話ですけれども、そういう考えが多いんじゃないかというふうに受けとめております。

 そういうふうに思いますが、私自身は、やはりこのアジアインフラ投資銀行への参加は慎重であった方がいいというふうに考えております。本日、私から御説明することは基本的にはその方向での話でございますので、問題点の話が多くなるわけであります。

 その前に、中国の力といいますかパワーというのはやはりすごいものがございます。このAIIB、きょうはAIIBと略称させていただきますけれども、AIIB構想を打ち上げてから二年足らずの間に設立協定の署名式までこぎつけたというのは大変な力だと思います。

 中国の高速鉄道もそうです。それから、西部に多いんですけれども、パイプラインの建設なんかも猛烈な速度でやっておりまして、ちょっと日本では考えられないような速度で大きなプロジェクトをどんどんとつくっていくというのは、さすが中国だなというふうに思っております。

 このAIIBにつきましても、そういう短い期間ですけれども、六十カ国近い数の国を味方につけといいますか、巻き込んでといいますか、一緒になってAIIBを設立するところまでこぎつけたというのは大変な力であると思います。まさにこれは中国のパワーでございます。

 もう一つ、問題点のお話に入る前に前置きとして申し上げておきたいんですけれども、AIIBは、アジアインフラ投資銀行ということで、これは銀行なものですから、どうしても各国においては、銀行だからこれは経済の話だというふうに振るといいますか、担当を決めるようなところがあるように受けとめております。日本のことについてはいろいろありますが、メディアの方を見ていましてもそういうふうに思います。これは日本だけではありませんで、各国ともそういう傾向がある。

 つまり、銀行だからこれは経済問題だということで振る、そうしますと、それについての分析はどうしても経済的な分析が多くなるということですが、私は、このAIIBは半分以上政治問題じゃないかというふうに思っております。

 最初に、AIIB構想は確かに各国を引きつけました。どうして引きつけたのかということをちょっとおさらいしておきたいと思います。

 先ほどもお話がございましたけれども、一つは、アジアのインフラ投資需要が巨大でありまして、アジア開発銀行の試算によりますと、今後十年間で八兆ドルという有名な数字がございます。これは推計でございますけれども、これだけの大きな需要があり得るというふうになっております。これがまず最初の魅力であると思います。

 それからもう一つは、アジア開発銀行もそうですけれども、既存の国際開発銀行は業務のポリシーとマネジメントの両面で改革が必要だということが従来から言われております。改革案も出ております。G7では、国際開発機関の機構改革というのが主要な議題の一つになっております。それほど議論もされておる、問題にもなっておるわけでございまして、中国はかねてからこのあり方についていろいろな不満を持っておったわけです。したがいまして、中国に限らず各国とも多かれ少なかれそういう不満というものがありまして、そこにAIIBがヒットしたといいますか、応えたということが一つの大きな魅力だったと思います。

 つまり、中国は、既存の国際開発金融秩序に対する各国の不満を巧みに利用し、その欠陥を是正するという大義を掲げながら、AIIBが設立されれば大型プロジェクトが続々とつくられることになるという餌をぶら下げまして、言葉が余りよくないかもしれませんけれども、という形にいたしまして、早く設立過程に参加した方がいいよ、そういう印象をつくり出したのだと思います。

 一つ注目する必要がありますのは、これは日本にとっての大きな問題なんですけれども、ヨーロッパ、欧州の各国にとりましてもAIIBは非常に魅力的だと映った、この問題があると思うんですね。イギリス、ドイツ、フランス、イタリーなど、かねてからこういう問題、国際機関とか国際的な交渉とかに非常にたけている国々も参加をしておるわけであります。

 これはなぜかというところは確かにあります。強いて言えば、一般的に、こういう欧州諸国にとりましてはチャイナ・パワーというものがやはり大きな魅力となった、先ほどのことでありますけれども、それは確かにあったと思うんです。

 それからもう一つは、これから申し上げます、中国だけがAIIBにおきまして拒否権を持つ、そういうことについての警戒心は、欧州諸国の場合は日本やアメリカとはかなり違うのではないかというふうに考えられます。これが一つです。

 それからもう一つ、多少この問題に関係しております欧州の方から聞こえてくる話は、情報が欲しかったと。AIIBに参加することによって、アジアにおける投資に関係する状況、それに関係する情報が入りやすくなるという期待感があったのではないかというふうに思います。

 他方、AIIBについては少し考え直した方がいいのではないかというふうに思い直しつつある国があるのではないかというふうにも思われます。

 これは、直接まだはっきりと、いや、考え方を変えたということまでは言っておりませんけれども、例えば、先般設立協定に署名しました国が五十カ国あります。つまり、いわゆる創設メンバーとして資格を持っていた国が五十七ありまして、そのうちの七カ国は署名をしなかったというのがあります。フィリピンなど、デンマークも入っております。タイも入っております。この国々が何を考えているのかということは、さらによく見きわめなきゃいかぬというふうに思います。私は、この国々は少し疑問を持ち始めているんじゃないかという気がします。

 それから、ドイツ。ドイツは、これは後で出資比率の関係で申し上げますけれども、普通に計算しますとたしか四番目ぐらいの出資比率になるはずなんです。そうであれば、通常は理事を出す、当然理事を出すというのが普通の対応の仕方だと思いますけれども、ドイツはこれを断っていると理解しております。

 それから、イギリス。イギリスは、普通の計算でいきますとやはり六番目か七番目ぐらいになるんじゃないかと思いますけれども、自分のところは十番目でいいというふうに、少し腰が引けている対応をしているようなところもございます。

 ということで、確かにこのAIIBは大きな魅力がありますけれども、各国においてはそういう動きもあるということを一つ申し上げておきたいと思います。

 これから、AIIBの何が問題かということについて、私の考えを申し上げたいと思います。

 AIIBの最大の問題は、中国だけが断トツに大きな権限を持っているということであります。

 先ほどもありましたけれども、出資比率は、中国が約三〇%、二位のインドは八%台です。三位のロシアは六%台です。韓国はたしか第五番目ぐらいではないかと思います。いずれにしましても、中国と二位以下は非常に大きくかけ離れております。

 各国の議決権。議決権は決定権ですから、AIIBの中で何が大事かというと、これをおいてほかに重要なものはないというぐらい、とにかく決定的なものでありますけれども、この議決権は出資比率がベースになって計算されます。

 AIIBの場合には、先ほどもありましたけれども、二六・〇六%というのが中国の議決権であります。これは、重要事項は四分の三必要ですので、中国が仮に反対しますと二六・〇六%の反対になりまして、そうしますと七五%は達成することができませんので、成立しない。つまり、中国のみが、一国だけが拒否権を持つということになっておるわけであります。

 中国は米国や日本に対してAIIBに参加するよう勧誘しておりますけれども、私は、出資比率は変えないだろうと思います。なぜならば、この出資比率というのはAIIBの中核中の中核、最も重要な問題であります。

 中国がAIIBを提唱した理由の一つは既存の国際開発金融機関に対する不満があると申しましたけれども、その不満は具体的にどこにあるかといいますと、中国の出資比率がなかなか変わらないというところにあるわけです。つまり、中国の発言権が今までの国際開発金融機関の中では変わらないというところに大きな不満がある。つまり、それは、ほかの機関ですけれども、議決権というものを変えるということがいかに難しいかということをあらわしていると思います。

 後で、BRICSというのもありますが、銀行ですけれども、それとの比較でまたこの点については戻ってきたいと思います。

 いずれにしましても、もし米国がAIIBに仮に参加するということになりますと、米国のGDPは中国のまだ二倍近い、二〇一三年の数字ですけれども、一・七倍ぐらいになります。そうしますと、普通に処理すればアメリカが当然第一の議決権、発言権を持つということになると思います。これは中国は絶対のまないと思います。そういうふうにはならない仕組みもつくってあるんですけれども、こういう問題が一つあるわけであります。

 それから、AIIBの本部は北京に置かれます。これもよく御承知のことと思いますけれども、本部をどこに置くかというのは非常に大事な問題であります。

 私は、AIIBほど大きな交渉ではありませんでしたけれども、一次産品の共通基金というものをやったことがあります。その設立協定の交渉に参加したことがありまして、本部の決定というのがいかに大変かということを私なりに実感したことがございます。

 いずれにしても、常識からしましても国際機関においてどこに本部を置くかというのは大事な問題でありまして、大事な問題であるがゆえに、皆が参加して議論して決定するということが必要であります。

 ところが、AIIBの場合にはどうなったかといいますと、構想が発表されて約一年後、つまり二〇一四年の末にメモランダム、覚書というものができまして、その覚書が北京で署名されたわけです。これは中国を入れて二十一カ国、後に一カ国、インドネシアが加わったので全部で二十二と考えてもいいかもしれませんけれども、この二十二の国で最初の枠組みを決めてしまったわけであります。その中に、本部は北京とするということが書いてあるわけです。もう決まってしまったわけです。

 ことしの春先によく出ておりました話は、日本も早く参加しないと創設メンバーにはなれなくなる、そういう状況がありました。その創設メンバーというのは、結局五十七カ国になったわけです。しかし、その創設メンバー五十七カ国全てがこの本部の決定に参加したかというと、今申し上げたように、せいぜい二十二しか参加していないわけです。つまり、半分以下しか参加していない。創設メンバー国というのはそういうものなんだ、こういうふうに理解するしかないというふうに思います。

 次に、総裁。総裁については、中国は既に具体的な人、金立群という人ですけれども、候補を立てております。この方は世銀、IMFの経験が非常に長く、民間にもおられまして、いろいろな国際的な感覚もあるということでありまして、非常にすぐれた方らしいですけれども、総裁も中国人というのはまず間違いない。どなたに聞いても、間違いないと。当然、最大の決定権を持っておるわけでありますから、総裁も中国人になるものと思われます。

 したがいまして、私は、このAIIBというものは、国際機関として見ると非常に特異なものであるというふうに考えます。むしろ中国の国内銀行に近いのではないか。私は実はほかのところでは国内銀行だと断定しておるんですけれども、ここはもう少し慎重に申し上げなきゃいかぬと思いますので国内銀行に近いと申し上げますけれども、国内銀行として見ればそれほど不思議ではない。国内銀行として、しかし、設立のときから各国に声をかけてつくったんだ、こういうふうに見ると比較的わかりやすくなるというふうに思っております。

 先ほどちょっと触れましたBRICS、ブラジル、インド、中国、南アそれからロシア、ちょっと順序が乱れましたけれども、この五カ国がつくりましたBRICS銀行が、BRICS開発銀行とも言いますが、あります。これと比較してみますと、AIIBの性格がかなり明確に浮かび上がってくるように思います。このBRICS銀行の第一回の総会が開かれましたのは、AIIBの設立協定が署名されたほぼ一週間後であります。

 時間がありませんので、いずれにしましても、BRICSの経験がありまして、そのために中国は非常に、BRICSの中においては実は中国の出資比率を非常に高くしたかったんです。交渉においてそれを持ち出したんですけれども、それがうまくいかなかったということで、BRICSにおいては普通の国際機関として対応したということであります。その反省に立ってAIIBをつくったという経緯があります。

 もし後で御質問がありましたらもう少し詳しく申し上げたいと思いますけれども、時間がありませんので、要するに、中国としては、BRICSの轍を踏まない、そういう観点からAIIBをつくったということがあります。

 それからもう一つ、これだけは申し上げる必要がありますのは、中国には一帯一路という大きな構想があります。つまり、陸上と海上のシルクロードを開発するという大きな構想がありまして、これがこのAIIBを設立する大きな動機になっております。

 実際、習近平主席はある場で、博鰲フォーラムなんですけれども、中国と周辺の国家が運命共同体の意識を樹立することが重要であると、驚く発言をしておられます。しかし、これは中国の主席の発言としては何ら不思議ではないんだろうと私は思います。

 しかし、私が言いたいのは、そういう発想もあるぐらい、中国においては政治的な観点から、特にこの一帯一路という大きな構想と結びつけてAIIBというものを考えているところがあるということであります。したがって、日本は、そういう政治的な性格というものを正しく理解して対応する必要があるというふうに考えるわけです。したがいまして、私は、AIIBについては慎重に考えた方がいいということであります。

 最後に、中国の銀行であるかどうかはともかくとしまして、AIIBにこれからどのように対応していくかというところが考えどころであります。普通の国際機関として考えますといろいろおかしなことが出てくるので、慎重であるべきだというふうに思いますけれども、しかし、これは中国の銀行である、実態はそれに非常に近いというふうに対応していけばいろいろ道が開けてくるのではないかというふうに考えております。

 時間がちょっとオーバーして申しわけございませんでした。

 以上でございます。(拍手)

古川委員長 ありがとうございました。

 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

古川委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。津島淳君。

津島委員 自由民主党の津島淳であります。

 本日は、財務金融委員会、私、デビューでございます。参考人質疑という、ある意味臨場感のある、そういう場でやらせていただくことは非常にありがたく思っておりますし、また、皆様に深く感謝申し上げるところでございます。

 また、齋藤参考人、美根参考人のお二人からは大変示唆に富んだ御意見を拝聴できまして、いろいろたくさんお聞きしたいこともございますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。

 まず、そもそもの話から始めたいと思うんですけれども、本日の議題であるところの国際開発金融、そういうふうに定義づけたところで、途上国のインフラを支援する金融機関にどういうものが求められるんだろうかというところから話を始めたいと思うんです。

 私はこう考えるというところでは、第一に、その目的というのは、支援対象国のインフラの整備を通じて国づくりのノウハウというものを身につけていただくということがすごく大事なことだと思うんですね。そして、国の発展を通じて貧困削減と生活水準の向上を図っていくということにあると思うんです。

 そして、第二に、金融を行うわけですから、資金の融通性というものが高くないといけませんし、それを担保するものは何かといったら信用だというふうに思うんです。信用を得るためには資金の回収可能性というのがしっかりと保たれ担保されていなければならないし、そのためのガバナンスというもの、それから組織の透明性が必要だというふうに考えます。

 第三に、金融機関が所期の目的を達するとともに、出資した国の利益につながるかということも当然考えておかなければいけないことで、いわば我も人もという考え方、また言いかえるならば、自他共栄という言葉でも言えるかと思うんです。要は、そのバランスがどっちかに偏ってもいけないというのが私の考え方であります。

 こういった観点から、まず、齋藤参考人、美根参考人の順番でお考えをお聞きしたいと思います。

齋藤参考人 今の津島先生の御意見は、私は一〇〇%そのとおりだと考えております。

 私自身は、先ほどのペーパーの中にありましたように、お金を出すことが大事なのではなくて、それよりも、受け入れ国のガバナンスをどうやって改善していったらいいのか、あるいは、インフラ投資、インフラ整備をするだけではその後の産業の発展というのは見込めないので、そのプロジェクトから派生する産業の育成にどうかかわっていくのか、その点こそが、仮にAIIBが国際金融機関という名を冠するのであればそういったところまで踏み込んでやるべきであり、そういった意味で、ADBのノウハウというのは極めて重要な示唆に富む、あるいは日本の開発援助のやり方というのも学ぶべきではないかというふうに考えております。

 津島先生のおっしゃった点は、私は一〇〇%そのとおりだと思っております。

美根参考人 私も津島先生のおっしゃったことに一〇〇%賛成でございまして、どの点とどの点がいい点である、そういうことを申し上げるかわりに、私は、AIIBに関して提起された国際金融機関のあり方というものをよく考えるいい機会だ、そういう観点もあろうかと思います。

 つまり、ADB、世銀もそうですけれども、両方ともいろいろ不満があるということは事実であります。また、これは開発途上国だけでなくて、先進国の方からも問題提起されているという事実があります。さらに、今回はAIIBによってもそういう問題提起がなされたというふうに考えることができるわけですけれども、この機会にこれから融資の審査条件をどうするかというようなことも含めていろいろ考えるべき、是正するといいますか、改革するというところはあり得るんじゃないかというふうに思います。

津島委員 ありがとうございます。

 今私が申し上げたところは恐らく委員の皆様にも共有していただけるのではないか、そういう理解に立った上で、AIIBというものがどうなのかやADBがこれからどうあるべきなのかという観点で話をしていく方向で、話を進めていきたいというふうに思うんです。

 いろいろ聞きたいことがあるんですが、AIIBとADBとか、そういった部分に入る前にもう一つだけ前提としてのお話として、支援のあり方として私はこうあるべきだということを申し上げ、皆さんも共有いただいた。では、中国もいろいろな国に対して最近支援を行っていることに対して、私が調べる限りにおいては、中国企業の受注獲得がどうしても優先されるであるとか、支援した国の雇用が確保されていないために不満が生じているとかという、いわばフリクションが生まれているわけですね。今の中国の支援のやり方、その根本思想というものをどうお考えになっているのか、その点をまたちょっと確認させていただきたいと思います。両参考人にお願いします。

齋藤参考人 中国の援助のあり方という点で申し上げますと、恐らくミャンマーが一番わかりやすい例かと思います。

 軍事政権の中で、中国が一貫してミャンマーを支え続けた。いろいろ投資もやっています。そうした中で、ミャンマー側がかわった瞬間に、ミャンマーは我が国であったり米国への接近を強めている。これは恐らく中国の開発援助のやり方に問題がある。

 具体的には、先ほど御指摘のとおり、中国は投資をします、お金を出すんですね。技術も出します。さらに労働者まで出すんですね。これがいわゆる労務輸出と言われるものでして、御指摘のとおりに、現地で雇用が生まれないという批判があります。そういった中国ひとり勝ちの構図というものが維持されればされるほど、中国離れというものが現実のものになってくる。

 そういった意味で、中国は、そのやり方を本質から変えるいい好機。これが恐らくAIIBですね。やり方を学んでいくということだと理解しております。

美根参考人 私は、中国の援助についての問題は、いいところもあります、それは非常に戦略的だということではないかと思うんです。

 先ほどもありましたように、資源確保あるいはそのための手段は何かということを組み立てて考えまして戦略的に進出していくわけでありますが、しかし、中国の場合には、援助を供与することに対する条件といいますか、西側の場合には、日本もそうですけれども、一定の条件というものはやはり無視するわけにはいかない。特にこれは、人権の問題とか、そういう問題というものが必ずどこかで出てくる。

 ちょっと具体的な例になりますけれども、ジブチというところがございます、ソマリアの近くです。ここにアメリカは非常に大きな基地を置いておりますけれども、最近中国の進出が非常に激しくて、ジブチの大統領は米国の議会で専制政治であるということを批判されたりしておりまして、人権問題を抱えておるわけであります。しかし、それに対して中国は非常にソフトな、条件のほとんどない経済協力協定を提供しまして、そのためにアメリカの基地は、これは複数あるんですけれども、そのうちの一つがもう取り上げられそうになっております。そうしますと、米国からしますと、米国は米国なりの一定の基準でやっているということなんですけれども、中国の場合にはそれは全然通用しないというところが現実にあります。

 ですから、そこに私は典型的にあらわれているように思います。つまり、日本にとっても、基本的には同じことなんですけれども、援助をする場合には援助の哲学というのがあるはずですからそこに悩ましいところがある、その点について中国はそれほど悩まないで済むといいますか、国策として出てくるものですから、だからそういう違いがある、それにどのように対応するかというのが、我々といいますか、日本を含めての課題ではないかというふうに思います。

津島委員 ありがとうございます。

 齋藤参考人のお話から、今の援助のやり方というものが、AIIBを設立しての、それを通じての援助というものに対する懸念を生じさせている一つの要因ではないか、それをどう捉えるのかというのが一つ論点としてあろうかと思います。

 また、美根参考人からおっしゃられたことで、私は、今後、ADBというものが現にあって、その哲学というものは先ほど大いに評価されるものがあるという御意見もありましたけれども、ではその哲学をより貫いていくのか、そういったところも一つ考えながら、AIIBに対してそれを求めていく、いわば一つの外圧をどう考えていくのか、そういうことも今考えさせていただきました。

 それで、今度は美根参考人にお伺いしたいのは、先ほどの意見開陳のところでBRICS銀行のことをお触れになって、私自身もう少し詳しくお話をお伺いしてみたいなと思いますので、より詳細なお話を、BRICS銀行とAIIBというものについてお話しいただけるとありがたいと思います。

美根参考人 BRICS銀行は、AIIBより一足先に交渉が始まっております。ざっと二年ぐらい早かったと思います。

 その交渉において大きな問題になりましたのが、さっきも一言だけ触れましたけれども、中国の出資比率であります。中国の出資比率というのは、これは若干技術的ですけれども、中国の経済力をもってすればBRICSにおいて支配的な地位に立つというのは、どうしてもそうなるだろうという見方が非常に強くございまして、各国でもそういうことを気にしておったわけであります。各国というのは、BRICSのインドも、それからブラジルなんかも非常に懸念しておったわけであります。

 結局、出資比率につきましては、さんざん議論したんですけれども、結論が出ませんで、結局中国が折れまして、この五カ国は均等の出資比率ということになりました。もっとも、BRICSの場合には外貨をどのように利用するかという外貨基金というのが別にあったそうでして、それにおいては中国は圧倒的な比率をとっているんですけれども、BRICSについては均等に割り振られたということであります。

 初代の総裁はインドの方です。クンダプール・ワマン・カマスさんということですけれども、インドの方になられました。

 これは少し細かい話になるかもしれませんけれども、私の経験では国際機関においてインドと議論するのはなかなか大変でありまして、まず、インドに対して議論で打ち負かしたと言える人はほとんどいないんじゃないか。ちょっと極端ですけれども、それぐらいの論客なんです。

 そのインドが、不思議にこのAIIBについては非常に、文句を言っておりませんで、静かなんですね。なぜかということが非常に気になっておったんですけれども、BRICSの総裁はインドがとっているんです。それを見まして、私は何かディールがあるんじゃないかなというふうに思ったわけであります。根拠はございませんので、余りそういうことを詮索しても仕方がないところがありますけれども。

 いずれにしても、最初の総会はモスクワでありました。それから、幹事会、理事会のようなものですけれども、その会長はブラジルだったと思います。

 そのように、これは普通の国際機関となったんですけれども、中国はその中で結局非常に、大事なところにおいて中国の主張が取り入れられなかったので不満でありまして、AIIBにおいては、先ほど言いました、構想を打ち出してから一年後に覚書を北京で結んだんですが、これは二十二カ国ですね、その中で大事なことを決めてしまったというのは、そこに一つの反省があらわれているというふうに思います。具体的には、本拠地を北京とするというのはそこでもう既に決まってしまったということであります。

 それから、もう一つ大事なのは、覚書そのものが長い間公表されなかったんです。これもおかしなところでありまして、その中でアジア諸国の出資が全体の七〇%を下らないということを実質決めたんじゃないかと思われる節もございます。これは全くわからないところですけれども。いずれにしても、その七〇%という基準は後に設立協定の中に取り込まれましたので、どこかの時点で出てきたのは間違いありません。

 ちょっと細かくなりましたけれども、そういうこともありまして、結局、中国のやり方を見ていますと、これは、BRICS銀行でやろうとしたことがやれなかった、それの反省に立って中国は着々と最初の段階から手を打っているなというふうに思った次第でございます。

津島委員 ありがとうございます。

 BRICS銀行の設立のときの反省を踏まえてのAIIB設立に一つ一つ布石を打っているということで、その経緯、そして現実に今起こっていること、先ほど本部が北京に設けられるということを御指摘されましたし、それから初代総裁はどうも中国の金立群さんになりそうだ、これは内定というふうに言ってもいいのかもしれません。

 そして、そのボードのあり方というのが、四分の三の賛成で議決される、たしかそういうふうになっていて、その議決権について中国が二六%以上持っているということはそれが事実上の拒否権であるというふうな言われ方をしている。ということは、非常に影響力が強いなというのは皆さん感じているところだと思うのです。

 それで、では齋藤参考人にお伺いしたいんですけれども、日本が入ることによってそういったガバナンスを変えていくことが重要であるとおっしゃられたんですが、今の話を一つ一つ踏まえていくと、中国にとってそれをされるのは余り好ましくないのではないのかなというふうに私は捉えてしまうんですね。果たして、日本が入っていくことで、それを中国がよしとして、今のガバナンス、中国が強い状況にあるということを変えるのはどう考えるのかなというのを思わざるを得ないんですが、いかがでございましょうか。

齋藤参考人 津島先生の御指摘の点、中国が日本に入ってもらうのが嫌なんじゃないかという御指摘でありますけれども、私は、だからこそ日本が入るべきだというふうに考えているんですね。

 先ほど美根参考人のお話にありましたように、議決権比率がアジア域内が七五、域外が二五という、これも非常に不合理な設定の仕方がされていますけれども、そこに日本が入ることで、恐らく今の段階でいえば一〇%程度の議決権があるのではないかというふうに考えます。そうしますと、重要事項の決定には七五%の賛成が必要ということになりますので、中国一国の議決権が恐らく二五%を下回るという状況になるかと思いますので、そういった意味で、中国の独走、暴走を抑制する力となり得るのではないかという想定はしております。

津島委員 時間が参りましたので、いろいろな論点については後の委員の皆様に委ねたいと思います。

 きょうはありがとうございました。

古川委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久でございます。

 本日は、お二人の参考人におかれましては、大変御多用の中、貴重な御意見をお聞かせいただき、また、こうしたお時間をいただいたこと、心より感謝を申し上げます。

 まず、私の基本的なAIIBに対する考え方を申し上げたいと思います。

 私は、設立当初の段階からルールメーキングとか、そういうところにかかわっていって、日本にとって好ましいような状況をきちんとつくるというような段階であれば参加することを検討してもいいんじゃないかと思いますが、今のように大枠が決まってしまったような段階において参加を検討する必要は現時点ではないと思っていますし、将来についても、これは極めて慎重に参加するかどうかを検討するべきだ。むしろ、これから日本がやらなきゃいけないことは、ADBとかあるいはJBIC、そういったものをどううまく活用していくか。そういった意味では、今政府がやっている方針で、私は基本的な方向性としては正しいんじゃないかというふうに考えております。

 その前提で、お二人の参考人にちょっと御質問させていただきたいと思うんです。

 今、津島委員の方からあった話にもちょっと絡むんですが、齋藤参考人の方は内側に入ってというお話でありました。中国の思いもあるでしょうけれども、かなり基本的な枠組みというものをここまで決めている段階でこれから入っていって、そもそもルール的にいっても、そういうものを変える余地というのが本当にあり得るのか。例えば、今さら本部を別の場所に移すとかいうようなことが、一度決めたことをひっくり返すようなことがそもそもできるのか、そういうふうに思うんですが、その辺のところは齋藤参考人の方はどのように考えられるでしょうか。

齋藤参考人 御指摘のとおりに、枠組み自体が決まってしまっている以上、それを早急に変えるということは極めて難しいというのは御指摘のとおりかと思います。

 ただ、例えば案件の決め方であるとか具体的な業務、そうした中で日本の経験を反映させていく。こういった言い方が正しいかどうかはわからないですけれども、中国国内でいろいろな腐敗、汚職問題があって、それを中国が輸出してしまうんじゃないかという懸念さえある中で、どういう日常業務のガバナンスをしっかりとさせていくのか、そういった点だけをとっても、実は日本から学ぶべきところというのは非常に大きいのではないかというふうに考えています。

 古川先生の御指摘は、そのとおりであるというふうに思います。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 私は、そういう形でのかかわり方というのは、内部に入るというよりも、むしろ外側にいて、例えばADBか何かが関与する形でやっていくということで対応ができるんじゃないかと。

 私が知る限りで、今見ておりますと、ではAIIBは実際に単独できちんと案件の審査とかをできる能力が本当にあるのかどうか、そういうかなりの懸念が私は専門家の間で示されているんじゃないかと思います。ですから、実際にやるときには、やはり世銀であるとかADBであるとか、そういうところのアドバイスや、あるいはそれと一緒になってということをやっていかざるを得なくなるのではないかと思うんです。そういうところで日本が積極的にコミットしていって、誤った方向に行かないように導いていくということは十分可能ではないかと思うんですが、その点はいかが考えられますでしょうか。

齋藤参考人 お答えいたします。

 AIIBの参加国からの日本に入ってほしいという声は非常に大きいものがあります。

 御指摘の点、既存の国際金融機関を有効に活用してそれをAIIBへの牽制となす、この点は当然やるべきであります。どちらか一方の選択肢ではなくて、両にらみという戦略もあるのではないかというふうに私は考えております。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 美根参考人にお伺いしたいと思うんですが、今の議論を聞いていらっしゃって、内部に入って、そして両方というお考えで齋藤参考人はいらっしゃるんですけれども、美根参考人の方はいかがお考えになられますか、この点については。

美根参考人 私は、基本的には、現在進んでおる状況を前提にして考えますと、内部に入って改革するということについては大きな限界があると思います。特に、根本的なこと、基本的なことについては、中国はこれは恐らく中国の体制全体にかかわる問題だと捉えているんじゃないかというふうに思いますし、それは少し議論を大きくし過ぎるかもしれませんけれども、基本中の基本でありまして、この点はなかなか変えないだろうというふうに思います。

 したがって、日本としては、金融に関する技術面であるとかノウハウであるとかいろいろアドバイスもできますし、私はそういうことは、中に入らなくても日本のエキスパティーズというものは十分活用できるんじゃないかというふうに思います。したがって、中に入ってできることもあるかもしれませんけれども、外からできることもたくさんあるというのが基本的な考えであります。

 それからもう一つは、AIIBの改革というものは、物によってはこれはAIIBを打ち出した戦略そのものにかかわることなので、非常に政治的なことがある、この面はやはり考えざるを得ない。それは、しかし、具体的にどう証拠があるかということになりますとなかなか難しいんですけれども、ここは長い間の経験でそういうふうに思うわけであります。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 次に、齋藤参考人からのお話の中に、これは中国のひとり勝ちになるかもしれない、そういう危惧もあるから参加したらというお話もあったかと思うんです。

 きょうのお二人の参考人から示されておりますAIIBに対する問題点や懸念、もしそういうことが本当に起きてしまうと、うまくいくというよりも、融資したものがほとんど焦げついてしまったりとか、巨額の不良債権なんかをつくったりして、ともすると、私もミャンマーのネピドーなんかに行きますと、あれはほとんど中国の援助で、ほとんど人もいないところにあんな膨大な映画のセットみたいなものをつくって、ただインフラをつくればいいというものではないですよね。ですから、本当に地域の発展に役立つとか、そういうことも含めて考えると、逆に将来、とんでもない失敗、そういうことになるリスクもあるのではないかと思うんですね。

 そういうリスクについては、お二人の参考人はどのように見ておられますでしょうか。

齋藤参考人 私のペーパーの一ページ目の米印のところをごらんいただければと思います。

 御指摘のとおりに、ただお金を出してインフラを整備するだけでは、全体が百だとすれば十にもならないと思っております。そういった意味では、インフラを整備した後にどのような産業が勃興していくのか、そういった青写真までもきちんと精査した上で融資、投資を行うべきであるというふうに考えております。

 御指摘の点でやはり怖いと思うのは、いろいろなものが中国だけの判断で拙速に行われてしまうリスクです。そのリスクをどう回避していくのかという点は、恐らくAIIBがこれから続いていく上での一番の鍵となることだと思っております。

美根参考人 AIIBが扱いますプロジェクト全てが、中国の欲するといいますか、中国が提案するものとは限らないと思います。

 しかし、それと同時に、中国としてはいわゆる一帯一路という大きな構想がありまして、これはまさにインフラ建設が非常に大きな内容なんですけれども、それが中心的な内容であるのは中国においては間違いないわけです。要するに、中国から出てくる提案というものはその建設に役に立つものだろうと思います。

 これについてはまだまだ時間をかけてじっくりと検討するということが行われていませんで、例えば、ことしの二月に中国の国務院の関係の会議がありましたけれども、そのときには、一帯一路の中にはうまくいっているものもあるけれども、いっていないものもあるということが率直に、参加者の間で話が出ておりました。

 したがいまして、AIIBにおいては、この一帯一路に関する構想というものを実現するというのが中国の考えである限りは、拙速といいますか、準備の時間がなかったということに起因するんですけれども、どうしても中国の今の状況ではそういう非常にリスクのあるものが出てくるということは否めないと思います。

古川(元)委員 ありがとうございます。

 今のお二人、両参考人のお話にあるように、私はやはりAIIBは、国際機関といいながら、しかし、その動向、動き、行動には中国の国内のさまざまな事情や、中国の国としての思いというのは相当大きく影響しているし、影響してくるんじゃないかと思うんですね。その点は、齋藤参考人のところでも中国にとってのメリットということで挙げられております。私は、その点でいうと、特に最近の中国経済の急速な減速、これは中国にとっては、経済だけじゃなくて政治体制も含めてこういう状況が続いていく、あるいはさらに深刻になっていくと大きな影響を与えかねない、そういった懸念は中国の首脳は持っているんじゃないかと思うんですね。

 そういう状況の中でいいますと、特に国内の過剰な供給能力、これを何とか見た目を繕おうとすると、相当無理な形で海外に形をつくって出していくということが行われるリスクというのは、今、中国経済がどんどん減速をしている、そのことがはっきりしてきたからこそよりリスクが高まってきているんじゃないかと思うんですが、中国経済の減速とAIIBの今後の動向というものはどういうふうにかかわっていくというふうに考えておられるか、お二人の参考人の御意見をお伺いさせていただければと思います。

齋藤参考人 中国経済が減速しているという点は御指摘のとおりでありまして、足元は七%成長を辛うじて維持している状況であります。ただ、私は、これから五年先を見たときには恐らく六%前後、その後の十年というのは五%がせいぜいという状況に変わってくるのだと思います。

 古川先生御指摘のとおり、今、中国の過剰設備問題というのは非常に厳しいものがあります。恐らく過剰設備の裏には、これは無駄な投資という意味ですけれども、無駄な借金を重ねているということがありますので、今、公表ベースでいいますと一・五%という不良債権比率がありますけれども、過剰な設備あるいは無駄な膨張をしてしまった借金問題、これを考えると、恐らく潜在的な不良債権比率というのは、GDP比でいいますと一〇から二〇%はあるという想定をしておくべきだと思います。

 この点で、習近平総書記になってから、新常態、いわゆるニューノーマルという言葉を盛んに言うようになっております。これ自体は、成長率が若干下がるんですが中身をよくしていくという非常に前向きなメッセージであります。

 ところが、私自身一番注目しているのはそこの部分ではなくて、これから経済構造はストックの調整をしなければいけないという言い方をしております。これはいわゆる過剰設備問題をソフトランディングさせていくというものでありますので、成長率がそれだけでも落ちていく、そのかわりに消費を伸ばしていきたいというのが今の戦略であります。ただ、これが急速に起きた場合、何が起きるかというと、成長率が急減速するということがあります。

 その点で、先ほどの御質問に戻るわけですけれども、中国の過剰設備問題をアジアの低所得国のインフラを整備することで賄うことができるか。これはできません。それほど厳しい設備過剰問題があるということになります。

 そういった意味で、中国はいずれ潜在的な不良債権の抜本処理というのを始めなければいけないということになります。

 以上です。

美根参考人 私も、中国経済のスローダウンがAIIBに非常に関係があるというふうに思います。

 中国経済が何%の成長であれば何とか安定的にやっていけるかということについてはいろいろ数字もあるようですけれども、国務院の李克強首相は七%ということを言ったこともあります。ことしは恐らくそれをさらに下回る可能性があるというのはいろいろ指摘されているところだと思います。

 そういう一般的な経済のスローダウンということとの関係と、それからもう一つ、もちろんそれと関係するんですけれども、外資が中国からだんだん外へ出ていく、これも実際起こっております。これはAIIBとは関係なく、もちろんAIIBとは逆なんですけれども、実際には起こっておりまして、これまで中国に対する投資を引っ張ってきました台湾とか香港、特に台湾の投資というのはかなり違ってきております。中国の中には、南部が多いんですけれども台湾企業が出ておりまして、非常に有名な場所もありますけれども、そこは今、まるで、まだそこにいるのかと言われるぐらいの変貌ぶりだというようなところもあります。

 ただ、中国は御承知のように集中ができますので、そういう経済的な問題を何とかコントロールしながら一定のプロジェクトにお金をつぎ込む、そういうことも可能だと思います。そういうところはちょっと中国は特異なところがありますので、それだけは頭の片隅に置いておく必要があると思いますけれども、経済とか外資との関係というものは非常にレレバントだと思います。

古川(元)委員 ありがとうございました。

 お二人のお話を伺いますと、改めて私は、今の状況の中では、やはりAIIBがどういうふうに進んでいくのかというのは非常に先行き不透明だと思います。

 私が懸念しておりますのは、今の中国経済の状況ですと、本来であればやはり国内の経済構造改革を相当大胆に進めなければいけない。しかし、それは日本を考えてみても相当な痛みも伴うわけであって、今の中国政府の方向は、国内の経済のひずみを国内の中で何とか消化しようというんじゃなくて、むしろ外に出していく形で何とか乗り切っていこうというふうに考えているんじゃないか、そのいわばツールとしてこのAIIBを使おうとしているんじゃないか、そういう懸念が私は拭えません。

 そういった意味で、やはり当面この状況を外から見ながら、これがアジアのほかの国の将来に禍根を残すようなことにならないように、外側からADBだとかJBICなどの影響力を日本が行使できる、この点についてはアメリカともしっかり連携をしていきながら世銀なども含め行動していくということが適切ではないかということを、きょうのお話を伺って改めて思わせていただいたということを最後に申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

古川委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 維新の党の丸山穂高でございます。

 本日は、両参考人、大変お忙しい中お越しいただきまして、ありがとうございます。また、示唆に富んだお話、大変勉強になりました。

 お聞きする中で幾つか気になるところ、もともとお聞きしようと思っていたところに加えてさらにふえたところがございますので、詳しくお伺いしていきたいというふうに考えております。

 まずは、先ほど古川委員より少しお話のありました中国経済の関係で、昨今、特に中国株の下落が激しいなというのをすごく感じるところです。それに対して政府の方は、どうやってとめていくかということで、必死に対策をとられていると思います。

 齋藤参考人は、事前に拝見すると、中国経済の御知見をお持ちで、いろいろなレポートをお書きになられています。中長期的なお話を先ほど少しされましたけれども、今の近場の中国経済についてどのようにお考えか、お聞かせいただきますでしょうか。

齋藤参考人 ふだんは三十分かけてお話しする内容を、三分ぐらいでお話ししたいと思います。

 まず、株価が暴落する前に、株価が急騰していたんですね。

 去年の十一月ぐらいからいわゆる金融相場が始まりました。これは二年四カ月ぶりの利下げを契機とするものでありまして、いろいろな景気指標が悪いものが出れば出るほど、もっと強力な下支え策が出るのではないかと。これが、上海総合株価指数でいいますと、二五〇〇ポイントから三四〇〇ポイントぐらいの間のところです。

 その後、四月以降は典型的なバブル相場です。買えば上がる、上がるから買う。四月、五月、六月の三カ月間で新規にできました証券口座が三千八百万口座ございます。日本の証券口座の残ですけれども、二千二百八十万口座ですので、わずか三カ月でその一・六倍、一・七倍のものができた。

 もう一つ、日本のバブル期と同様に、顧客にお金を貸し込むノンバンクが出てきておりまして、例えば百万円持っている顧客に対して十倍の一千万円を貸し込む、これを株式投資に回すということで、もうかっていれば問題ないんですけれども、株価が下がると一〇%でロスカットが出てくる状況です。証券当局は、この過熱ぶりはよろしくないということで、その比率を下げさせました。結局、株を売って現金にするという動きが起きまして、これが株価暴落につながっていった。

 その点で、さまざまな株価下支え策というのを出しております。日本の昭和三十年代後半から四十年の証券不況のことを非常に学んでおりまして、そういった類似の政策を出しておりました。

 ところが、非常にまずい政策も出しておりまして、一つは、上場会社の半分以上の売買をやめてしまう。これは株が売れなくなりますので、日本でも中国株を組み入れた投信が販売されておりますが、解約ができないという状況になっております。

 もう一つ、大手株主、五%以上の保有者に対して、六カ月間株を売ってはいけないということもやりまして、日本の商社なんかは株式の売却を投資の出口として考えておりますので、その出口を封印してしまうということをやっています。

 そういった意味で、これまでいろいろな対策を打ってきたんですけれども、それが水泡に帰す、もっと下がってしまった。

 結論の一つは、恐らく株価対策というのは何をやってもきかない、これは過去の急落局面でも学んだことであります。その点で、きかない株価対策に巨額の資金をつぎ込むのではなく、景気対策強化に資金をつぎ込むべき時期が来ているのだと思います。

 実は、いろいろな景気対策もきかないんじゃないかというお話がありますが、私はそうは思っておりません。中国政府の景気に対するグリップは健在である。

 例えば、住宅が今よく売れております。これは利下げの累積効果もありますし、もう一つは、投資でも投機でも構わないので住宅を売買してくださいという政策が三月の三十日に出ております。

 結果、六月、七月単月でいいますと、住宅販売金額が四〇%ふえている。これが大体六カ月ぐらいのタイムラグで不動産開発投資、今急減速しておりますけれども、そろそろ底打ちから回復へと。これが恐らく中国経済、当面のダウンサイドリスクの低下につながってくるのではないか。株は仕方ないけれども、景気対策はグリップがきいている、そろそろ効果が出てくるのではないかというふうに思っております。

丸山委員 齋藤参考人、ありがとうございます。

 中国経済のお話は、恐らくこれだけで本当におっしゃるように時間が過ぎていきますので、また機会を新たにお聞きしたいなというふうに感じましたが、一方で、そうした中国の経済政策を見ても、かなり統制的といいますか強権的といいますか、ある意味ガバナンスの問題がというのも先ほどのお話の中にありましたけれども、そこにすごく不安を感じるのが中国の政策の部分だと思うんです。

 そういった意味で、先ほど別の委員の方から、津島委員ですかね、少しお話がありました、内部から変えるべきだという参考人の御主張に対して、どういうふうに変えるのか、もしくは変えられるのかどうかという点は非常に、私も、日本が入るべきかというと、慎重な立場なんですけれども、その立場からすると、そこをすごく感じるところなんです。

 そのあたり、大きな点、もう場所も決まってしまっている、出資比率もなかなか変えられない、だからこそ、中国が今動いて先手を打って決めてしまった中で、それでも入ってガバナンスをというのは、どのようにお考えなのか、少し詳しくお伺いできますでしょうか。再度、齋藤参考人にお願いします。

齋藤参考人 先ほど申し上げたことの繰り返しの部分もありますけれども、要は、中国自体がこういう金融機関をつくるのは初めての経験でありまして、やはり中国独自のやり方というのを押し通したいという希望があるのは間違いないと思うんですね。

 ところが、それでは国際金融機関ではないというのは美根参考人がおっしゃっているとおりでありまして、恐らく中国は、AIIBを学習の場としても位置づけているかと思います。要は、グローバルスタンダードというものは何かということを学んでいく。

 少し話が大きな話になって恐縮なんですけれども、今、中国の中で、一つの世界なのか、もしくは二つの世界なのかという議論があると聞いております。日米欧、主要先進国が築き上げた共通の価値観に対して中国が協調的になっていく、これが一つの世界でありまして、もう一つが、西側の価値観とは全く別の世界を中国がつくり上げていくというものになります。

 当然のことながら、我が国にとって最も好ましい選択というのは、中国が一つの世界に協調的になっていくことである。そういった意味で、中国がグローバルスタンダードを身につけていくその手伝い、指南役を日本がやるというのは、私は考える余地があるのではないかというふうに考えております。

丸山委員 言葉が難しいですけれども、言い方をかえれば、獅子身中の虫となって、中国が日米の今の国際体制の中で変な動きをしないように中できちんと見ていく役割というのもあるんじゃないかというお考えですね。ありがとうございます。非常にわかりやすく感じました。

 美根参考人にもお伺いしていきたいんですけれども、一方で、日本は慎重にすべきだという中でも、ほかの国、特にヨーロッパの方は魅力的に感じている部分があって、そしてその中には、中国も含めて、現在の国際金融機関に対する不安、不満といったものがあるというふうな背景の話の中で、では、日本が今後入っていくかどうかを検討しないにしてもするにしても、現行の、日本が抱える課題だけじゃなくて、国際金融機関が抱える課題、アジアのインフラ需要に対して供給が追いついていないことも含めて、いろいろな問題があるのは事実だと思うんです。この解決に向けて日本がどうしていくかという部分に関してはどのようにお考えなのか、美根参考人にお伺いできますでしょうか。

美根参考人 私は、国際金融機関の専門といいますか、私の専門とはかなり離れまして、技術的といいますか専門的なことについては率直に言いましてよく知らないところがあるんです。

 その前提で申し上げますけれども、私なんかがよく聞きますのは、開発途上国の場合にはどうしても、例えば融資を受ける場合に、プロジェクトの労働条件がどうなっているかということまで踏み込んでいきますといろいろなぼろが出てくることがある、そういうことを問題視されると融資が受けられなくなる、融資条件というようなことが一つの壁になっていると思うんです。そういうところをそれでは緩めればいいかというと、そう簡単ではないんですね。ですから、そこが難しいんですけれども、その辺のところは考慮する余地があるのかどうか。

 少なくとも中国はそういう点については非常に緩やかといいますか、条件というものはほとんど出さないというところが中国の援助の特徴でありますから、そういうところで売りつけているというところがあるわけです。

 だから、それがいいか悪いかという大きな問題はあるんですけれども、そこは実際のプロジェクトを進めていく上でいろいろなことがあって、その中には日本としても改善に寄与できることもあるかもしれないなという気はしております。

丸山委員 まさしく今回の中国の動きは基軸通貨、ドルが今基軸通貨で体制を組んでいる中で人民元をどのように、挑戦とまでは言いませんが、やっていくというのは明らかに中国の野心が見えるところなんですけれども、それは国としてはある意味あり得るな、経済の発展を考えたときにあり得ると思うんです。先ほど美根参考人がお時間がなくてという話をされていたBRICSの新開発銀行の話、一四年ですよね、だから昨年だったと思うんですが、これを踏まえてまたことしのAIIBの動きというのは確かに、齋藤参考人がおっしゃった速いというのは私もすごく感じるところなんです。

 一方で、その反省を踏まえてというお話を美根参考人が少しされていたと思うんですが、具体的に、この辺、どのようなところに中国が反省を感じて、そしてそれをAIIBにどう生かしているというところをもう少し詳し目にお話しいただけますでしょうか。

美根参考人 ある程度繰り返しの部分があろうかと思いますけれども、BRICSの設立交渉において中国が不満だった点は、出資比率を中国がほかの国よりも多くしたいということであったということは申し上げたとおりであります。それについては随分議論もいたしましたし、各国からいろいろ批判に近いこともあったようです。

 その結果、結局、出資比率は均等ということに、結論はそうなったわけですけれども、恐らく中国としては、その過程において、普通のルール、つまり国際間で通用しているルールからすれば、国際機関としては当然話し合って決めるということがルールですから、そういうことであると中国の希望というものは達成できないということを感じたんだろうと思います。それは出資比率もそうですし、本部所在地もそうであります。総裁もそうであります。

 中国は、国際開発金融機関のみならず、ほかの問題におきましても、国際機関を招致するということについては非常に強い願望がございます。

 上海協力機構というのが、これも一種の国際機関ですけれども、ございまして、主要なメンバーは中国、ロシアそれから中央アジアの各国であります。これはもともと安全保障というものが共通の課題であったわけですけれども、最近はかなりその問題は解決しまして違ってきていますけれども、その本部も中国に持ってきたい、上海ですけれども持ってきたい、それから初代の事務局長も中国人にしたいと。やはり普通の国際的なルールといいますか常識からしますと、それはないでしょうということをやってきております。

 ですから、私は、そういうことも見ていますと、中国は総裁とか本部とかそういうものについては物すごく強い思い入れがある、それがBRICSの交渉においては実現できない、ああいうやり方では実現できないと考えるようになったんじゃないかというふうに見ております。それがBRICSとの対比で出てくるところであります。

 一言だけさらにつけ加えますと、では、中国はBRICSとAIIBとをどのように使い分けるのかということも問題になろうかと思うんですけれども、どうも、一方では、インドとかブラジルとかうるさ型がいますので、そういう国に対して、満足といいますか、ある程度のあめを与えつつ、他方では、AIIBでは中国のやりたいようにやりますよとはもちろん言いませんけれども、実質的には最初からそういうふうにつくっていった。先ほども御説明しましたけれども、ニュークリアス、小さな核をつくりまして、二十二カ国の核をつくって大事なことを決めておいて、それをさらに広げていく、そういう手法をとったというところにもそれがあらわれているように思うわけです。

丸山委員 齋藤参考人にもお伺いしたいんですけれども、BRICSの新開発銀行とAIIBの関係を中国はどういうふうに考えて使い分けようとしているのか。先ほど美根参考人からあった使い分け方で考えているのかどうかというのは、どのようにお考えでしょうか。

齋藤参考人 BRICS銀行というのは、恐らく経済体として、中国が世界に対する発言権をまとまりとして強めていく中でやろうとしているんだと思います。BRICSの中には資源大国というのがありますので、恐らく資源外交の一環という位置づけもあるかと思います。もう一つ、AIIBについてはもっと幅広な概念があるかと思います。これによって中国のアジア、世界でのプレゼンスを高めていくということですので、恐らく一つは資源という観点、もう一つはアジアでの影響力拡大、これがBRICSとAIIBの差というふうに見ているのではないかというふうに思っております。

丸山委員 齋藤参考人に重ねてお伺いしたいんですけれども、今回、米国も我が国日本もAIIBへの参加は見送っていますけれども、これに対して、国内の話、もしくは英字も含めて米国国内の世論はよくお聞きするんですけれども、お仕事柄お聞きになった観点から、中国側がどう捉えているのかというのを伺えますでしょうか。

齋藤参考人 私が知る限りでは、中国は日本の参加を期待している、希望しているという話は聞いております。

 先ほど丸山先生から基軸通貨という御指摘があったわけですけれども、恐らくアメリカは、議会というものもありますし、もう一つは、基軸通貨を持っているアメリカ、この強みをやはり維持したいんだというふうに思っております。

 こういう点で、基軸通貨への挑戦とみなし得るささやかな一歩でもこれを潰したい、そういう戦略がもしかしたらアメリカにあるのではないかというふうに考えています。この点で、日本とヨーロッパというのは少し立場が違うのではないかということです。

丸山委員 中国が基軸通貨を目指しているのはすごく感じるんですけれども、一方で、他の国、日本も含めて考えたら、すごく人民元の不安定さを感じるところなんです。このあたりはどのようにお考えか、最後、齋藤参考人にお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 私自身、中国が基軸通貨になる可能性ということでいいますと、恐らく、五十年でいえば、ほぼゼロだと思います。

 というのは、やはり基軸通貨を使うというときに、共通の価値観というのが一つ必要な条件になります。もう一つは、既に米ドルを基軸通貨とするシステムができ上がっている。それを変更するコストというのはやはり非常に大きなものがあるかと思いますので、中国が先ほど申し上げた一つの世界に極めて協調的になる、西側先進国との価値観を共有できる、こうした中で中国の経済規模がアメリカをはるかに上回る、そういう状況、さまざまな条件をクリアしなければ基軸通貨という話にはならないのではないかというふうに考えております。

丸山委員 ありがとうございました。

古川委員長 次に、伊藤渉君。

伊藤(渉)委員 公明党の伊藤渉でございます。

 重ね重ね、本日は、大変お忙しい中、また急なお願いにもかかわらず、齋藤参考人そして美根参考人には、当財務金融委員会にお運びをいただきまして、大変ありがとうございました。

 早速質問に入らせていただきたいと思います。

 これまでたびたび出てきておりますが、一番大事なことだと思いますので、改めて確認をしたいと思います。

 齋藤参考人にお伺いをしたいと思います。

 このAIIB、アジア地域の旺盛なインフラ整備の需要に資金を供給していくということ、また、IMFあるいは世銀、ADBといった資金供給スキームに加えてこうした資金供給できる機関ができていくということ自体はいいことだと思います。最終的にアジア地域全体の発展に寄与するという意味では全体としては歓迎すべきことなんですけれども、これに対して日本がどう対応していくか。

 これは現在進行形ですから、現状の日本政府の立ち位置については当然私はこれでよしと思っているわけですけれども、日本がここに参加をしていくに当たって、これもここまでるる出ていますとおり、いわゆるAIIBは本当に国際金融機関なのか、中国の中国による中国のための金融機関になりかねないというリスクがありますし、このAIIB内における意思決定のあり方がいまだ不透明であるということ、そして、これも先ほど来ございますとおり、現時点においては中国が事実上の拒否権を持ち得るということ、こういうようなリスクがあるということがございました。

 齋藤先生は、やはり中に入ってリーダーシップをとるべきであると。その主張は私も大変理解ができますし、これまでも質疑がありましたとおり、具体的にどうやって中でリーダーシップをとるのだと先ほど直前の丸山委員もお聞きをされておりました。

 そこで齋藤先生はこのようにおっしゃっていました。初めて中国としてのこういう国際金融機関をつくるのだ、そういった意味では、これは中国にとっては学習の場でもあるだろう、そしてその中国の方向性として、一つの世界を目指しているのか、あるいは二つの世界を目指しているのか、これはまたこれからの推移によって明らかになっていくだろう、そういう中で日本が、一つの世界を目指すためにも指南役を買って出るべきだ、こんなことを先ほどおっしゃっていただいていたと思います。

 せっかくですので、さらに深掘りをして、なかなか難しい内容ですから、このわずかな時間で御答弁をいただくことには限界があると思いますけれども、指南役として、今見えているAIIBの組織も含めて、どういうふうに具体的に、中に入って指南役をとり得るとしたら考えられることを、さらに少し詳細にわたって齋藤参考人にお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 具体的にどういう行動を日本がとるべきかということでありますけれども、先ほど議決権比率の話が出ました。今、中国が二六%を占めているということでありますので、いわゆる一票否決なんですね。重要事項は中国が同意しなければどうにも変えられない。仮に日本が入った場合に、恐らく日本の比率というのは一〇%を若干割るぐらいの比率になるのではないかと思います。こうした点で、中国の比率が二五%を割り込んでくる、計算上そうなってきます。

 もう一つ重要なのは、何も日本だけが影響力を行使するという話ではなくて、イギリスでありドイツであり、そういった西側の先進国と協調するということが一つあるのと、もう一つは、先ほど御指摘がありましたけれども、やはりアメリカとの連携を絶えず持ち続けている。そういった意味で、西側先進国連合がAIIBをあるべき姿に時間をかけてでもやっていくべきだ。

 これは早急に答えが出るはずがないんですね。というのは、御指摘のとおりに、中国がかなりのウエートを持っていて、総裁も金立群氏、そして本拠地は北京、さらに理事会は常設されないという状況ができておりますので、それをやってみたときに何か不都合があるときに提案をしていく。その提案というのは、きちんと連携をとっていれば非常に出しやすいものになっていくのではないかと考えております。

伊藤(渉)委員 ありがとうございます。

 西側諸国の連合、これは非常に重要なことだと思います。

 関連して、次は齋藤先生と美根先生にお伺いしたいと思います。

 本年三月、このAIIB自体にはアメリカは慎重な姿勢を今ももちろんとり続けているわけですけれども、そういう状況下にもかかわらず、私の印象としては、いわゆる外交関係においては親米の国家群であるイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、オーストラリア、韓国、イスラエル、こういったところがAIIBに続々と参加表明をした、これは多分衝撃的な出来事であったのではないかとも思っております。欧州を初め、まさにそういった諸外国の対応で、一つは、中国の影響力の大きさが改めて世界に認識をされたという出来事だったというふうに思っています。

 これは、先ほど齋藤先生がおっしゃった、目指しているのは一つの世界なのか、また違うカテゴリーで世界観をつくろうとしているのかという非常に大きな話とも直結するんですけれども、アナリストの方々の中には、いわゆるこれまでの世界金融を支えてきたブレトンウッズ体制への挑戦という言い方をされる方もみえるわけでございます。そういった中で西側諸国連合が、要するに西側諸国もどういうふうに全体観を捉えてこのAIIBの中で振る舞っていこうというのは、これはまさに現在進行形だと思うんですね。

 その中にあって今先生がおっしゃられたようなことを形づくっていくためには、今、日本国としてなすべきことは何かという観点で少しまた御教示を、この点については美根先生にも少しお話をお聞かせいただきたいと思います。

齋藤参考人 イギリス、ドイツ、フランス、イタリア、韓国等がこぞってAIIBに入ったというのは、ある意味、我が国にとってもそうですし、アメリカにとっても衝撃的な話だったのではないかと思うんですね。

 恐らくイギリスは、金融センターとしてのロンドンの機能、これから人民元ビジネスがいや応なくボリュームが出てくる中で、金融立国をしているイギリスにしてみれば、人民元ビジネスを取りこぼすわけにはいかない、そういう極めて経済的な理由があったかと思います。

 その一方で、これは聞きかじりのお話を申し上げますけれども、アメリカとイギリスの同盟関係が非常に強固であって、イギリスがAIIBに抜け駆けして入ってしまったということでもって米英同盟が崩れる、そんなやわな同盟ではないという見方を披露される方がいらっしゃいました。

 もう一つ、これも確認のすべがないんですけれども、ドイツは、イギリスが入ってやや慌てた感があったと聞いておりまして、ドイツが非常にこだわったのは、AIIBから出る、一旦入った後にどうやってそこから出るのか、その手続のことを非常に気にしていたということをおっしゃった方もおりまして、私自身、決して確固たるポリシーがあってみんなが入っているわけではない、ただ、乗りおくれちゃいけないという焦りもあったかのようには思います。

 そういった意味で、日本が是々非々で慎重な態度をとる、そういったことも十分に理解できる話ではないかと思います。

美根参考人 西側諸国が続々と参加したというのは、私も大変びっくりしたところがございます。その後いろいろ調べてみたんですけれども、わからないことが多いんですが、かなり国によって違うようだという印象を持っております。

 といいますのは、一つは、例えばイギリスの場合は、かねてから国際開発金融機関、つまり世銀とかIMFとか、ADBなんかもそうですけれども、そういったもののあり方に対する不満といいますか、改革心が非常に旺盛でして、しかも、それに対して、アメリカもそうなんですけれども、対応が非常に鈍いということを盛んに問題視しておった経緯があります。そういうことが背景にあるのではないかというのは、イギリスについて一つ言えることであります。

 ドイツについては、先ほど齋藤参考人からもお話があったことですけれども、横並びといいますか、イギリスなんかを見て、どうするかということを考えざるを得なくなった面があるんじゃないかというふうに思っておりまして、もう既にドイツについてはちょっと考え始めているということをほかの形で言われているというのは、先ほど最初に申し上げたとおりであります。

 もう一つは西側諸国の対応なんですけれども、こういう私のような経済マンではない、金融マンではない者が言うのはよくないかもしれませんけれども、この問題は銀行だから、だから経済の方に振るといいますか、担当は経済というところが西側諸国においてもあるんじゃないかということをちょっと思っておりまして、これもまた根拠がないんですけれども、同じような対応をしたとしても不思議ではない、そこにも一つ問題がある。

 ということがありまして、日本としては今後どうするかということですけれども、日本はやはり、経済的な分析も必要だけれども、政治的な面もよく見ていかなきゃいけない。つまり、中国の意図がどういうところにあるかということと、それから、これも繰り返しですけれども、中国が盛んに言っております一帯一路、そういう大きな構想との関係というものがある。つまり、政治的な目的というのは厳然とあるわけです。そういうことについて西側と意見を共有する、認識を共有していくということが非常に大事だと思います。

伊藤(渉)委員 ありがとうございました。

 次は、中国の経済を、これまでもやはり重なる質問がありましたけれども、改めてお聞きしたいと思います。

 中国には、これもよく言われることですけれども、九十兆から百十兆元の、日本円にすると千八百から二千二百兆円の膨大な個人金融資産が存在をする。かつてはその六割が銀行の預貯金にあり、これらを株式市場に呼び込んでいこうということで、企業の上場審査の迅速化など、改革を推進してきたというふうに承知をしています。

 一方で、ここのところの中国経済の先行きの不安の一番最初に起こった出来事、先ほど齋藤参考人からこれまでの流れ、一端を御報告いただきましたけれども、報道等で見ておりますと、一つは株価の急落ですね。株価の急落で中国経済の先行きに対する不安が世界に広がり、その際に、新規の上場を制限するといったような、矢継ぎ早に手を打たれたわけです。

 こういった状況を見ますと、九月四日、あさってからG20も行われますけれども、この中国の株式市場というもの自体が本当にいわゆる開かれたマーケットなのかとか、そういうこと自体も大変不安視をされているわけで、この中国の株式市場をまず安定させていく、世界の一般の人が考えているようなマーケットにしていくために中国が取り組むべきことというのをやはりG20の場でも議論するべきではないか、私はこういうふうに思っているんです。

 これは齋藤参考人にお伺いをしますけれども、中国の株式市場が安定化していくために今後取り組む必要があると思われることについて御教示いただきたいと思います。

齋藤参考人 伊藤先生御指摘の点、まず、中国の株式市場が対外的に開かれたものであるかどうかという点は、基本は開かれておりません。外国人もしくは外国人機関投資家の比率でいいますと、恐らく売買代金の二%程度であります。残りの八割が中国の個人投資家、残りの一八%程度が中国国内の機関投資家ということになります。

 御指摘の、株式市場を安定させるという点でありますけれども、これは非常に難しいものがございます。理由は、先ほど申し上げた、個人投資家が八割を占めているということですので、政府がどんな対応をとってもマーケットの力で負けてしまうということがあります。

 その点で、私自身、中国が危機対応的に株価対策をやったことというのはある意味仕方のないことだとは思うんですけれども、それが先ほど申し上げた水泡に帰したということでありますので、むしろこれからやるべきは、株価を安定させる、その遠回りかもしれないけれども、景気を安定させる、そこに重点を置くべきではないか。政府が手を出して直接的に株式市場に関与する、このやり方は今まで失敗しています。ですので、その同じ轍を踏まないように、もう踏んでしまっておりますけれども、これからは景気対策に力を入れるべき。

 特に、設備過剰問題。先ほど御指摘がございましたけれども、一般的な製造業、特に重工業の分野で投資をふやしても仕方がないということがございますので、一つは中国のインフラ、そしてもっと重要なのは環境保護投資なんですね。こういった部分にきっちりとお金を出していく。そして、出した企業にはきっちりと優遇策を与える。これは企業所得税の減免等ですね。こういった政策が打ち出されることが景気の安定化、ひいては、遠回りになるかもしれませんが、株式市場の安定化につながっていくのではないかというふうに考えております。

伊藤(渉)委員 重ねて齋藤参考人にお伺いしたいんですが、私も八割が個人投資家ということはよく聞いておりまして、個人投資家ということは、専門的知識がある人も余りない人もいるわけで、そういう意味では、長期に保有をする機関投資家というのはやはり育てていかなきゃいけないと思うわけです。その点については、これから中国の株式市場の見通しというもの、何か御所見があればお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 御指摘のとおりだと思います。

 まず、外国投資家の割合が二%程度というのは非常に低いんですね。中国はQFII、適格域外機関投資家制度というものをつくっておりまして、我が国の機関投資家も中国の株の売買をするということがあります。その導入の目的というのが、やはりファンダメンタルズに基づいてきちっと中長期投資をやっていく、こういう投資手法を中国国内にも入れていきたいという希望があります。

 そういった点で、二%程度というのは極めて低い。私は、一桁多くなるぐらい、二〇%、三〇%が外国人投資家である、こういう状況になりますと、いろいろな思惑を持った、存在感を持った投資家のブロック、国内の個人投資家、機関投資家、そして外国の個人投資家、機関投資家、こういった人たちがさまざまな思惑を投資市場にぶつけて、合理的な価格形成ができていく。

 そういった状況にするためには、御指摘の国内の機関投資家もさることながら、外国人投資家への開放を大きく進めることが健全化に向けた一歩ではないかと考えております。

伊藤(渉)委員 時間になりましたので、終わります。

 貴重な御意見、大変ありがとうございました。

古川委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、お忙しい中、二人の参考人には本当にありがとうございます。

 慎重派からの質疑が続きましたけれども、私たち日本共産党は、AIIBについては参加すべきであるということを考えております。

 アジアは、経済成長率が世界で最も高い、そして貧困人口も最も多い地域で、先ほど来お話がありますように、膨大なインフラ整備が必要になっております。これに対して世銀でも応えられない、ADBだけでも応え切れない、そういう中でAIIBが設立されたわけです。これについては、IMFもADBも歓迎の公式の声明を出しております。

 ですから、客観的に言えば、インフラ整備の需要に応えるための国際金融機関が必要だというのは言えると思うんですね。ならば、国際金融機関にふさわしく公正、民主的な運営がなされるように、日本は参加していかなきゃいけないんじゃないかというふうに私たちは考えております。

 今回、AIIB設立の背景にあるのは、IMF、世銀体制に対する新興国、途上国の批判だというふうに指摘されております。

 IMF、世銀でいえば、重要事項の議決は投票権の八五%の賛成が必要だ。それに対してアメリカはIMFでいえば一七・一四%、世銀では一五・〇二%の投票権を持っていて、世銀、IMFでいえばアメリカだけが拒否権を一国で持つということになっています。そして、融資に当たって構造改革の名でアメリカ流の新自由主義的なやり方を押しつけて、批判されてきたのは御存じのとおりです。この路線は若干修正が始まっておりますが、米国主導の仕組みというのはいまだ変わっていないわけです。途上国の議決権は若干この間ふえましたが、アメリカの抵抗でIMF、世銀の改革は進んでいないというのが今の現状です。

 そういう中でAIIBは生まれたわけですが、先ほどお話があったとおり、ではAIIBはどうなったかというと、重要事項の議決は七五%の賛成だけれども、中国が二六%以上の議決権を持って、今度は中国が拒否権を持つということになります。IMF、世銀体制の反発で生まれながら、世銀などをモデルにしたために、同じように一国だけが拒否権を持つ。先ほどいびつな形だという御指摘もありましたけれども、私も非常にいびつな形になっているというふうに思います。一国だけが拒否権を持つというのは、国際金融機関のあり方として公平、民主的と言えるんだろうかということがあると思います。

 ですから、私は、AIIBにしても、そして世銀にしても公正、民主的な国際金融機関への改革、改善が求められていると思いますが、その点、お二人の参考人に御意見をお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 私自身、やはり国としての信頼感の問題というのは非常に大きな点だと思うんです。政治体制も経済体制も異なる中国が一票否決という拒否権を持つことに対する、少なくともそこはかとない不安感というものが当然あるわけでありますので、そうした不安感あるいはリスクに対して、それが違うのであれば違うんだということをきっちりとさまざまな場所で説明する責任が中国にはあるかと思います。

 その点で、私自身、大変不勉強で申しわけないんですけれども、世銀なりIMFの拒否権ということが問題であるという認識を持ったことはありません。

 私からは以上です。

美根参考人 国際金融機関についていろいろ意見があり不満があるというようなことはよく知られていることでありますし、先ほど委員も御指摘になりましたように、出資比率、議決権のところが非常に大きな問題であるわけですけれども、IMFと世銀については、そういう今のような形になるにはいろいろな歴史を経てきておるわけであります。

 中国としては、議決権とか出資比率について一国だけが拒否権を持つということは問題であるというふうに考えるのであれば、新しい機関をつくるというときにおいてはそういう問題がないものを提案する、つくるというのが当然であって、悪いところを引き継ぐというのは、新しい提案としていいか悪いか、ちょっと考えさせられます。

宮本(徹)委員 大変参考になりました。やはり、まずいところは正していくという国際金融機関にならなきゃいけないというふうに思います。

 そこで、日本がAIIBに参加することで、中国一国が拒否権を持つという事態について、齋藤参考人の方から、それは解消できるのではないかというお話がありました。

 私は、仕組みが、AIIBについてそこまで詳しくないからちょっとお聞きしたいんですけれども、今は重要事項を議決するのに七五%必要だ。もし日本が参加するに当たって、その前に、七五%じゃなくて、これが八十数%とかに変えられるという危険性はあるのかないのかというのをお聞きしたい。

 それからもう一つは、日本が参加することで、ほかは具体的にどうなっていくのか。理事のポスト、あるいは、日常的な運営は総務会が当たるんですか、その総務会のポストというのはどういうふうになっていくのかというのについてお伺いしたいと思います。

 これは齋藤参考人にお伺いします。

齋藤参考人 まず、日本が参加することによって、中国の拒否権が二五%を割り込むのではないかというお話を申し上げたんですけれども、これは恐らく短期的なことになるかと思うんです。

 つまり、中国の成長が、曲がりなりにも成長率が保たれる、あるいはアジアでいえばインド等ですね、これから恐らく成長率でいうとインドの方が中国を上回ってくるという状況になってまいりますので、そういった点で、日本が入って拒否権がどうのとかいう話というのはもしかしたら短期的なお話かもしれないという点を申し上げておきます。

 仮に日本が入ることが決まって、中国が重要事項四分の三というのをいじるのではないか、そのリスクはあるかと思います。ただ、それをやってしまった場合に、中国のための銀行だというレッテルがより深く張りつけられるわけですね。恐らく、それをやってしまいますと、美根参考人の御指摘にもありましたように、国際金融機関の体をなさない、そういった状況に成り下がるのではないかというふうに考えますので、中国が国際金融機関をみずからの手で、きちんとしたグローバルスタンダードで運営していくということを考えているのであれば、それは決してやってはいけない話だと思います。(宮本(徹)委員「あと、総務とか理事の」と呼ぶ)

 恐らく日常的な業務というのは、理事会のところに董事会というものがありまして、そこが行っていくんだと思います。ある程度の出資比率を持つところが理事なり董事会で重要な役割を果たすというのは当然の話ではないかと思います。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 加えて、AIIBが実際これからどういう基準でどういう案件に融資していくのかというのは非常に重要になると思います。先ほど美根参考人の方から一帯一路の問題もお話がありましたが、習近平体制のもとでAIIBの構想と同時に打ち出されたのが一帯一路の構想ですから、両方が一つの国家方針の一環なのかなというふうに私たちも見ております。

 ただ、具体的な方針というのはなかなか見えてこなくて、恐らく次の五カ年計画で出てくるんじゃないかというふうに思いますが、中国では一帯一路の構想は国外のインフラ建設、中国企業のビジネスチャンスとして捉えられているというふうに言われております。中国が一帯一路で開発計画を立案して、AIIBで中国が中心になって融資していくというお手盛りになっていく可能性もないとは言えないのが今の現状だというふうに思います。

 AIIBでは今後どういうものが対象になって融資されていくんだろうか、そういうのを、もし具体的な手にしている情報だとかがあれば教えていただけたらなというふうに思います。

齋藤参考人 第一号案件が、たしかパキスタンの案件で内定しているというお話は漏れ聞いております。案件を中国が見つけ出してくるのではなくて、恐らく加盟国が自分たちで、こういう案件があるんだけれどもどうだろうかということで、そういう提案がなされて、それをどうするのかということだと思います。ある程度リスクが高いもの、民間ではリスクが負い切れないようなものをAIIBがある程度リスクを負って投融資を行う、そういう姿ではないかと思っております。

美根参考人 私の理解では、AIIBは、設立協定の署名は行われましたけれども、まだ発足はしていないと理解しております。これまでの計画では、ことしの年末までには発足するという予定だということになっていましたけれども。したがいまして、具体的なプロジェクトというものが認定される、そういう段階ではまだないんじゃないかというふうに思います。

 それからもう一つは、先ほどから出ておりました、AIIBの改革ということによっていい方向に持っていけるかどうか、そういう問題の関係ですけれども、もし中国が国際的なルールに従ってやろうということであれば、これはBRICSを利用すればよろしいわけです。しかし、中国はそれでは満足できないということでAIIBを提案したので、そこには根本的な問題があるんじゃないかというふうに思います。

宮本(徹)委員 AIIBが国際金融機関としてふさわしい役割を果たすためには、やはり国際開発金融機関としての独立性がしっかり確保、担保されなきゃいけないというふうに考えておりますが、そのためにどういう手だて、方策というのが今後さらに必要になるというふうにお考えなのか、齋藤参考人にお伺いします。

齋藤参考人 まず、恐らく一番大事なのは、先ほど宮本先生から御指摘のありました中国のお手盛りにならないという制度をきっちりつくっていくことだと思います。これは、中国のお手盛りという状況、ウイン・ウインではなくて中国のひとり勝ちという状況が続けば続くほどAIIBは求心力を失っていくわけでありまして、協定の中にもAIIBからの脱退というのも協定としてありますけれども、六カ月前に言えば基本的には認められるという話のように聞いております。

 そういった点では、中国が初めて自分たちの手で育んでいこうとしている国際金融機関を潰さないためには、先ほど申し上げたお手盛りをなくす、大変恐縮な言い方なんですけれども、自制というのが恐らく一番のポイントになるかと思います。自分の国もある程度、あるいは企業がある程度利益を得る、これは当たり前であるけれども、それだとウイン・ウインにはならないので、ほかの国、企業にもそのベネフィットを与える、そういうことを中国みずからが自制をして行っていくことが肝要かと思います。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 あと、今の経済関係ということを見ますと、日本にとって中国は一番の貿易相手国ということになっております。ですから、日中の経済関係はこれからさらに深まっていくということになると思いますが、日本政府の対応を見ていますと、AIIBの問題でもアメリカの顔色をうかがって、結局、参加については見送るということになりました。

 今、参議院では安保法案が審議されておりますけれども、その審議の中でも、防衛省の司令部である統合幕僚監部の内部資料が出てきて、南シナ海に対する警戒監視活動についてワーキンググループをつくって、具体的にどう関与するのかということを検討するというのが出てまいりました。

 南シナ海の話ですから、我が国の周辺の話じゃないわけですよね。ですから、アメリカの対中国包囲網にアメリカにつき従って参加していくことはずっと検討が進んでいるわけですが、アジアの経済発展のためにも、そして日本の本来の国益にとっても中国との関係では平和的な関係を築く外交努力こそ求められるというふうに思っています。そのあたりについてお二人はどうお考えかということをお伺いしたいと思います。

齋藤参考人 当然のことながら、日中関係が良好であるということが非常に重要であるというのは御指摘のとおりであります。

 ただ、こういう言い方が正しいかどうかわかりませんけれども、やはり日本が中国に対してきっちりと意見を言っていくということも大事でありまして、これは、首脳会談がきっちりと行われ続ける、何が起きても対話の場を閉ざさないということが極めて重要ではないかと考えております。

 六月の財務対話のときに、麻生大臣と向こうの楼継偉財務大臣は非常に友好的な雰囲気で、いろいろな議論がなされたというふうに漏れ聞いております。こういった努力を続けるということ、何があっても対話の窓口は閉ざさないという姿勢が重要ではないかと考えております。

美根参考人 私も、宮本委員がおっしゃったような中国との関係、AIIBに関しましても中国との関係を良好に保っていくというのは非常に大事なことだと思います。

 これは若干繰り返しが入りますけれども、日本としてなすべきことというのは幾つかもう既に御審議いただいたところであります。私も、日本としてやるべきことはいろいろある、西側との関係でもあるというふうに考えておりまして、その中にはアメリカとの関係もあるわけであります。

 さらに具体的に言いますと、アメリカにおいてもやはり経済的な観点からの分析というものは行われますけれども、政治的な関係がちょっとおろそかになっているんじゃないかと思われる節もある、そういうふうにも思います。

 それからもう一つは、私は、AIIBというのは中国の国内銀行に近いということを申し上げましたけれども、それはAIIBに敵対するということでは決してありませんで、基本はそういうものだということを前提の上で、友好関係あるいは積極的な関係というものはつくり上げていけるんじゃないかというふうに考えております。

宮本(徹)委員 時間が来ましたので、これで私の質問を終わらせていただきます。

 本当に、お二人の参考人の方には、大変忙しい中、貴重な御意見をありがとうございました。

古川委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、両参考人に一言御挨拶を申し上げます。

 本日は、貴重な御意見を御開陳いただきまして、ありがとうございました。委員会を代表いたしまして心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時二十分散会


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