衆議院

メインへスキップ



第2号 平成28年2月12日(金曜日)

会議録本文へ
平成二十八年二月十二日(金曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      あかま二郎君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    國場幸之助君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      薗浦健太郎君    田野瀬太道君

      中山 展宏君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      堀内 詔子君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    村井 英樹君

      山田 賢司君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      鷲尾英一郎君    上田  勇君

      斉藤 鉄夫君    宮本 岳志君

      宮本  徹君    丸山 穂高君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   財務副大臣        坂井  学君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 時澤  忠君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   可部 哲生君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省財務総合政策研究所長)          冨永 哲夫君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           堀江  裕君

   政府参考人

   (観光庁観光地域振興部長)            加藤 庸之君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十二日

 辞任         補欠選任

  井上 貴博君     あかま二郎君

  國場幸之助君     堀内 詔子君

  竹本 直一君     村井 英樹君

同日

 辞任         補欠選任

  あかま二郎君     薗浦健太郎君

  堀内 詔子君     國場幸之助君

  村井 英樹君     竹本 直一君

同日

 辞任         補欠選任

  薗浦健太郎君     井上 貴博君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 財政及び金融に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として総務省大臣官房審議官時澤忠君、財務省主計局次長可部哲生君、主税局長佐藤慎一君、財務総合政策研究所長冨永哲夫君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官堀江裕君、観光庁観光地域振興部長加藤庸之君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山田賢司君。

山田(賢)委員 私は、自由民主党、山田賢司でございます。本日は質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。

 早速、質問に移らせていただきます。

 一昨日の麻生大臣の所信表明を受けまして、本日は財政に関して質問させていただきたいと思います。

 まず、安倍内閣においては、経済再生と財政健全化の両立を目指すということでございます。そもそも、経済再生というのは当然のことながら、なぜ財政健全化が必要なのか。

 よく、日本政府の借金が一千兆を超えているだとかGDPの倍あって大変だという話を聞くんですが、私自身は、この借金の額それ自体が問題ではないというふうに考えております。もちろん、多くていいということではありませんけれども、むしろ問題なのは、歳入を上回る歳出、これが続いていけばどんどん財政赤字が膨らんでいく、このことが問題ではないかと考えております。

 仮に無借金の会社であっても、毎年毎年四十兆円もの赤字を出していれば、十年間でそれは四百兆円になってしまう。だからこそ、しっかりと財政健全化の道筋をつけていかなければならないんだと思っております。

 歳入不足の解消のめどが立たないとどうなるかというと、やはり、これは返済能力に疑義が生じる。ということは、すなわち国債の償還能力に疑義が生じることではないかと考えております。

 ただ、幸い今、足元においては、マイナス金利と言われるように、国債の金利も十年でもう〇・二というように、日本国債の償還に疑問を持つ人はどなたもいらっしゃらない。投資家の中でやや一部にいるかもしれませんが、ほとんどの方は日本国債の償還については疑義を持っていないのではないかと考えておりまして、だからこそ、今の時点で、将来に向けてきっちりと借金が返せる、この道筋をつけていくことが大事だと考えます。

 これがすなわち、歳入と歳出のバランス、プライマリーバランスを黒字化させることだと考えますが、麻生大臣、改めまして、プライマリーバランスの黒字化の必要性について御所見をお願いいたします。

麻生国務大臣 今御質問がありましたけれども、大事なことは、まず第一点、これは日本の借金ではなくて政府の借金ですから。国民の借金と混同して書いている新聞はいっぱいありますけれども、政府の借金と国民の借金は違いますから、そこのところだけきちんとまず踏まえた上で。

 現世代の負担というものは、すなわち税収なので、きちんと現世代の受益、すなわち政策経費を賄うんだという考え方もできるわけですから、その意味で、ある種の歳入と歳出をバランスさせるということとこれは同じことだと。それがプライマリーバランス、基礎的財政収支という意味だとそう思っております。

 ただ、プライマリーバランスをまた黒字化ということによって、これは借金が一千兆とかよく言われます債務残高と、いわゆるGDP比、約五百兆というもののGDP比を引き下げていくことができることになりますから、これも御指摘のように、将来に向けて政府の借金を返せるようになっているという道筋がきちんと示されているということになります。そこが、ゼロにするということはそういう意味です。

 したがって、ある種の歳入歳出のバランスをとる、または借金を返せるというようなちゃんと道筋になっているということを示せるということが大事だということだと思っておりますので、今から五年後に先取って二〇一五年度ということでまず半分にしますという計画を立てたときも、できないんじゃないかとかいろいろ当時言われていましたし、これまでの計画もその目的をきちっと達成できたことがありませんでしたので、そういった意味では、今回、半分にするということを三年、四年ほど前に申し上げて、きちんと一応半分にというところまでできたということはそれなりの成果だと思っておりますが、引き続いて、二〇二〇年度にはその基礎的財政収支の赤字幅をさらに縮めてゼロにしますというところにして黒字化にしていくということは、これは将来のためであって、ここは極めて今後とも日本の政府としてきちんとしたことがやれていく、国際的な信用、マーケットからの信用、いろいろなものを含めまして、極めて重要だと考えております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。財政健全化の道筋をつけるということが大事だということをお伺いいたしました。

 そこで、では具体的にどうやってやっていくのかということですが、政府におかれましては、中長期の経済財政に関する試算ということを定期的に出しておられまして、二十八年一月二十一日に経済財政諮問会議で出されましたこの試算によりますと、改革工程表の中で、二〇二〇年度でPB黒字化を目指すんですが、名目三%の経済成長を見越した経済再生ケースでも、二〇二〇年にはまだマイナス六・五兆円のギャップとなっております。

 そこで、改革工程表に織り込まれたような歳出削減をどんどんやっていくことによってこの六・五兆円のギャップを埋めていくことだというふうに理解しておりますけれども、ここで、これは大岡政務官にお尋ねしますが、このPB黒字化に向けて六・五兆円のギャップを埋めるのがこの改革工程表の中身だ、こういう理解でよろしいでしょうか。

大岡大臣政務官 財務政務官の大岡でございます。山田議員にお答えを申し上げます。

 先ほど大臣から答弁ございましたとおり、平成二十七年度、今年度におけるプライマリーバランス赤字半減目標はほぼ達成しつつあるということでございますが、問題は、二〇二〇年にプライマリーバランス黒字化できるかどうかという御質問でございます。

 既にもう公開しておりますとおり、中長期の経済財政に関する試算ということで、経済再生ケースにおきましても、先ほど山田議員から御指摘のとおり、二〇二〇年度には六・五兆円のまだギャップが残っているということ。つまり、四年間ですので、一年間に一・五兆円ずつ詰めていかないとこのギャップが解消されないということでございます。

 あわせて、ベースラインケースで申し上げますと、まだ十二・四兆円のギャップ。これは、名目成長一・四%、実質〇・八%の成長の場合はマイナス十二・四兆円のギャップが残っている。つまり、四年間ですので、一年間に三兆円ずつこのギャップを詰めていかないといけないということでございまして、目安と言われております実質的な増加額を一・六兆円に抑えるということを進めてもまだこれだけのギャップがあるということでございますので、歳入歳出両面におきましてさらなる合理化、効率化等を進めまして、何としてもこの目標達成に向けて全力で努力をしていかなければならないというふうに認識をしております。

 以上でございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 今おっしゃられたように、仮にそうだとするならば、経済再生ケースであっても六・五兆円のギャップがあって、これを埋めるために歳出削減をしていくということだとすると、まずこれはそもそも、経済再生が名目三%の経済成長というものが前提になっているということですね。言うまでもなく、財政健全化のためには経済再生が不可欠になっているということでございます。

 これはどんどん詰めていかないといけないということもそのとおりなんですけれども、歳出をどんどん削減していくことで経済再生が滞ってしまう、これでは、やはり何をやっているかわからないと思います。

 今おっしゃられたように、改革工程表の中でも、歳出削減ということはある程度道筋が具体的に工程表という形で出ているんですけれども、経済再生の方、どうやって経済を活性化して税収を伸ばしていくんだ、こちらの方が、いろいろ一億総活躍社会とか賃金の引き上げの実現によって消費を喚起していくとか、こういった理念的なものは結構あって期待感はあるものの、なかなか具体的な道筋が見えてこないのではないかと考えております。

 麻生大臣は所信表明の中で「民需主導の好循環を」と述べられておられますが、まだまだ民間の需要が本格的に追いついてきていないというふうな認識をしております。

 こういう場合、先行して政府部門において積極的な財政出動を行うべきではないかと考えております。もちろん、税収増に結びつかないような費用性のものというのは極力抑制していかないといけないということは言うまでもありませんが、税収増につながるような、経済波及効果の高いインフラ投資、研究開発、こういったものにはむしろ積極的に財政出動を行って、ちょっとずつPB赤字を削減していくというのではなくて、仮に足元は多少ぐっとPB赤字がふえたとしても、五年後に向けて復活していくような、収入がふえていくような、こういった財政健全化の方策をとった方が、私は、財政出動をやった方が財政健全化には資するのではないか、このように考えますが、大臣のお考えをお伺いできますでしょうか。

麻生国務大臣 これは山田先生御指摘のとおり、この安倍内閣においては、これまでの金融政策や成長戦略とあわせて累次の経済政策などを、機動的ないわゆる財政政策を進めてきたんだと思っておりますが、これによって結果として今は企業収益は過去最高ということになって、日本経済というものの民間ベースで見ました場合、これはファンダメンタルズとしては過去最高というところまでなってきていますので、極めてしっかりしているんだと思っています。

 こうした中で財政状況というものを踏まえると、財政出動に安易に頼り続けるというのは極めて問題なのでして、そういった意味では、やはり次なる課題というのは、三本の矢でいえば金融であり財政であり、今度は三本目の矢の民間ということで、ことしの正月の経済三団体のそれぞれの代表の発言というものは、これまで三年間政府にやってもらった、今度は民間の番だ、簡単に言えばこういう話を皆それぞれしておられますので、企業の収益というものが、今後、設備投資とか賃金とか配当とか、そういったところに回していかれるということになっていくんだ、私どもはそう期待をいたしております。

 また、政府としても、ちょっと自由主義経済下においてはいかがなものかとは思いましたけれども、企業に対してもう少し賃金とか賞与とかいうものについていろいろ働きかけをさせていただきましたし、官民対話とかコーポレートガバナンスを強化するとか、いろいろな話でやらせていただき、法人税の改革におきましても我々は取り組みを進めて後押しをしてきたんだと思っておりますが、ただ、そういったことをやってこれまで三年間は、やはり長いことインフレマインドというものが経営者の方もしみついていることもこれあり、ことしはそうだったけれども来年もそうかということに関しては、政府の安定感もないという時代が長く続いていましたので、そういった状況もあったのでなかなか信用を得ておられない、得られていないというところもあった。企業家のマインドとしてはわからぬことはないんですが。

 いずれにしても、私どもとしては、きちっとやり続けますということを申し上げて選挙を二回勝たせていただきましたので、そういった意味では今回も、予算編成に当たりましては、投資の促進とか生産性を上げるとか、そういったものの実現に対して、また、国際競争力の強化につながっていくような、そういった効率的なものに関しましては、ネットワークを整備しますとかいろいろな話で支援をさせていただきますとかいうような話で、政策効果の高いものに関して我々は主に重点的に予算を配分するなど、いろいろそれなりの配慮はいたしておりますけれども、これのバランスというものは、財政と民間のバランスというものは、これまでやはりGDPを上げていくということですから、それはもう個人消費と政府支出とそして民間の設備投資、この三つが主力ですから、その民間の消費が一番大きな部分なんですけれども、そこのところはいま一つ、まだ給料が上がるかどうかわからないのに財布が緩むわけがありませんからというふうないろいろなこともあろうと思いますので、ぜひそういったような気分として、景気の気の部分というものが極めて大きな要素を今後とも占めるとは思いますけれども、政府としての体制として、ただただ財政緊縮でいわゆる金融収縮を起こしてみたり財政収縮を起こして、結果としてGDPを縮小するというようなことにはならないという配慮はきちんとしておかねばならぬとそう思っております。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 それではちょっと話題をかえまして、今、日銀においてマイナス金利という政策がとられておるんですけれども、これについてなかなかまだどういうものか世の中の方は御理解が進んでいないのと、これはそもそも何のためにやっているのか、その狙いは何なのか、そして、その狙いどおりの効果が出ているのかということについて財務省の御見解をお聞きしたいんですが、これも大岡政務官、お考えをお聞かせいただけますでしょうか。

大岡大臣政務官 お答え申し上げます。

 先日一月二十九日に、日銀におきましてマイナス金利つき量的・質的金融緩和が決定されたわけでございますが、これは、物価安定目標を確実に達成するために手当てされたものというふうに認識をしております。

 今回の決定は、まず量、量はマネタリーベース八十兆円、それから質、さまざまな資産の買い入れを行うというこの質に加えまして、今回マイナス金利を加えた三つの次元で追加的な金融緩和をすることによりましてこうした効果を出していこうという狙いで、そうしたことを内外の経済情勢につきまして丹念に分析をされた上で金融政策決定会合において決定されたものというふうに認識をしております。

 先ほど御質問のありました効果につきましては、日銀は、金利が、短期から長期まで貸出金利を含めて全体にわたって引き下げられるということによりまして、消費や投資にプラスにきくということが一点目。

 そして二点目として、資産のポートフォリオリバランスを促す。これはちょっと難しい言葉ですので、簡単に言うと、銀行が国債によって運用していたのを少し企業等の貸し出しあるいは投資に回してくれるんじゃないかということなんですけれども、それを促すことによって経済の拡大にプラスに影響するということを説明されております。

 日銀による今回の金融緩和策の効果につきましては、今後とも期待を持って見守ってまいりたいというふうに考えております。

 あわせて、今後とも、政府、日銀が一体となりまして、デフレ脱却を目指してしっかりと経済を成長させてまいりたいと考えております。

 以上でございます。

山田(賢)委員 ありがとうございます。

 要するに、日銀が量的緩和をやったけれども、ほとんど日銀当座にお金がたまっていて世の中に回っていかないじゃないか。金利をマイナスにすることによって、日銀当座に預けていたら逆に金利を払わないといけなくなっちゃう。だったら市中に回した方がいい。そのために、マイナス金利にすることで、当座に置くより、貸し出しに回したり株式に投資なり、そういったものに使った方がいいんだろう。わかりやすく言うとこういうことだと思うんですが、なかなかその効果が本当に出ているのか。これは出ていないんじゃないかなと私なんかは思うんですけれども、これを評価するにはまだまだちょっと時期尚早なのかもしれません。

 だから、何が言いたいかというと、もう量的緩和だけではなくて、先ほどの話に関連しますけれども、積極的な財政出動、こういったことについてもぜひ御検討いただきたいと思っております。

 そしてもう一つ、法人税改革、法人税減税というのが一つの目玉となっておりますけれども、この主たる目的というのは、民間の設備投資の促進、そして賃金引き上げの実現を目指すためだというふうに言われておるんですけれども、この効果というのがどうも、考えてみると間接的なような気がいたします。

 法人税というのは、麻生大臣は経営者をやられていたから僕がこんなことを言うのもあれですけれども、売り上げがあって、経費や設備投資なんかを差っ引いた後の、残った税引き前利益に対して税金をかける分を軽くするということですから、これを軽くしても、どっちかというと、投資に回るというよりは内部留保の方に回るんじゃないかなというふうに考えております。

 もちろん、こういうことをやることによって、稼げる企業がより稼ごうというインセンティブが出ていく、そういったこともあるし、もちろん、安倍総理含め安倍内閣においては、経済界に対して賃上げを要請していっていただいている。このことも重要なんですが、ただ、最終利益をどう使うかというのは、民間企業ですから、結局は企業の自由になってくると思います。内部留保をため込むことがけしからぬとか批判するのはまたちょっと筋違いな話で、内部留保をため込もうがどう使おうが、これはもう民間企業の経営判断でございますから。

 むしろ、それを要請することも大事なんですが、使いたくなるような、内部留保をため込んでいるよりも吐き出したくなるような、先ほどの日銀でいうと、当座預金に置いているよりも外に出した方がいいな、こういうふうな税制に持っていくことが、実は賃金引き上げとかあるいは設備投資に向かっていくのではないかと考えますが、大臣のお考えをお聞かせいただけますでしょうか。

麻生国務大臣 これは、山田先生おっしゃるように、いわゆる特定の政策目的というものを実現させようと思えば、いわゆる租税特別措置法のような方が有効な手段なんだということは、御指摘のとおりだと思います。

 個別の租特の性質というものを踏まえてその取り扱いを考えた方がわかりやすいと思いますので、例えば所得拡大促進税制というのがありますけれども、政労使会議の取り組みなどと相まって賃金の引き上げの動きにつながっているというのは、これはもう今この租特は効果があったと思いますし、引き続きこれをしっかり活用されることを期待をしております。

 また、設備投資の促進、租特としては生産性向上設備投資促進税制というものがありますけれども、これは、いわゆる企業に対して投資判断を前倒ししてくれということを促しているものでありますので、この方はいたずらに期限を延長してくれという話も来ていますけれども、それは政策効果が薄れてしまうということになろうと思いますので、二十八年度の税制改正において、期限を延ばすとかいうことはせず、予定どおり削減、廃止するという方向で明確にしたところであります。

 いずれにしても、こういったものは一般的にいろいろな話がありますけれども、要は、設備投資とか賃金の引き上げとか、そういったものに直接つながっていくようなものに傾斜するというか、主に配分するべきだということなのであって、ただただ二〇%の税制改正というのは、国際競争として二九・七四というのは、ドイツ、フランスというところにほぼ並びましたので、そういったところまでは来ていると思いますが、おっしゃるように、それによっていわゆる純益というものを何に使うかというのは、かかって経営者の判断ということになろうと思いますので、今言われたようなものの方がより効果があるのではないかという御指摘が正しいと思います。

山田(賢)委員 時間が参りましたので、これで質問を終わらせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、井林辰憲君。

井林委員 自由民主党の井林辰憲でございます。

 本日は、財務金融委員会につきまして質問いただく機会をいただきまして、厚く御礼を申し上げたいというふうに思います。この委員会に配属されて一年たちましたけれども、初めての機会ということでございますので、先輩各位の御指導を賜れればというふうに思います。

 まず、法人税改革についてお伺いをしたいというふうに思います。

 我が国が直面をする最重要課題は、デフレ脱却と経済再生だ。特に安倍政権は、この三年間で、大胆な金融緩和、そして機動的な財政出動、そして民間投資を刺激する成長戦略という三本の矢を推進してまいりました。

 大臣の所信にもありましたように、企業の経常収益は過去最高になるとともに、雇用や所得環境も着実に改善をしつつあります。それが消費や投資の増加に結びつくという経済の好循環が生まれ始めており、政権の大きな功績として高く評価されるべきだと私も認識をしているところでございます。

 しかしながら、私の地元静岡県でございますけれども、地方にまでそうした多くの方々が本当に景気が回復したというような実感を持っているかというと、これはまだまだ道半ばではないかなというのが実感でございます。

 ですから、大臣の所信にもありましたように、引き続き、民需主導の好循環を確固たるものにして、そして、強い経済の実現に向けてこれまでの経済政策をより一層強化していくことが必要だと考えます。

 このような観点から、企業がさらなる投資拡大や賃上げに積極的に取り組むことを促すためにも、課税ベースを拡大しつつ、法人実効税率を引き下げるという成長志向の法人税改革は極めて重要な意義を持つものであり、またあわせて、租税特別措置を必要なものに限定していくことで税負担のゆがみを是正していくことも重要だと考えております。

 大臣は、昨年の七月二十四日の閣議後の記者会見で、法人税改革などさまざまなテーマが予想されているところでありますが、課税ベースの拡大に向けて租税特別措置をゼロベースで見直すなど、要望段階から主体的に取り組んでいただきたい旨、各大臣に伝えたとおっしゃっております。

 こうしたことを踏まえまして、財務省から、今般の法人税改革と租税特別措置の見直しについて、その内容と狙いをお聞かせください。

坂井副大臣 法人税改革と租税特別措置の見直しについてということで御質問がございました。

 委員、ほとんど御理解をいただいているようではございますけれども、今般の法人税改革は、課税ベースを拡大しつつ、税率を下げるということによって、法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革するものでありまして、この改革を進めることによって、課税ベースの拡大によって財源をしっかりと確保しながら、税率を下げて、目標としていた法人実効税率二〇%台というものを改革二年目にして実現をしようというものでございます。

 稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することで、企業が投資を拡大しよう、もしくは賃金を引き上げよう、こう考えていただき、それが経済の好循環の定着につながればということで考えております。

 また、租税特別措置につきましては、この特徴として、特定の政策目的を実現するための有効な政策手法となり得る一方で、一定の産業等に税負担のゆがみを生じさせるというような面もあることから、必要性、政策効果を見きわめた上で適切に見直していくべきものと考えております。

 先ほど大臣の答弁でもございましたが、今回の税制改正でも、生産性向上設備投資促進税制は期限どおり縮減、廃止をするということなどを決めましたけれども、今回、期限が到来する十七項目の全てにつきまして廃止または縮減を伴う見直しというものを行っておりまして、今後ともしっかり対応してまいりたいと考えております。

井林委員 ありがとうございます。

 今回の法人税改革と租税特別措置ということで、景気回復に資するようにさらに進めていただきたいというふうにお願いを申し上げたいというふうに思います。

 景気回復による税収増が、大変多くなってきたという御説明があります。また、歳出改革の積み重ねも大変努力をいただいているところでございますけれども、依然として基礎的財政収支は赤字の状態が続いておりまして、国と地方を合わせた借金は一千兆円を超えるという厳しい状況であります。地元の方でも、国の将来について、この借金を見て大変心配をいただく声を数多くいただいているのが現状でございます。

 こういう状況を越えるために、まずは経済成長ということで、名目GDPが五百兆円を超えて、リーマン・ショック前の水準を回復いたしました。安倍政権発足後だけで見れば、名目GDPが約二十八兆円増加をしております。

 また、企業部門も大変な好決算を背景にして内部留保を大変積み上げておりまして、これは、二年前の二〇一四年末で三百五十四兆円という分厚さを実現しております。安倍政権、新政権が発足後、二年間ではございますが、こちらは五十兆円を積み上げているということでございます。

 GDPが二十八兆円伸びていて、内部留保が五十兆円、こういう状況を考えると、法人税減税に対して、財源なき減税ということはなかなか国民の皆様に御理解を得られないんじゃないか。そういう中でも、稼ぐ力を持った企業をさらに応援していくことはこれからも必要だと考えております。

 さらに、税と社会保障の一体改革では、消費税の増税ということをこれからお願いしていくということが法律に明記をされております。こちらも、少子高齢化を初めとして社会構造が大きく変化する中で、将来世代に負担を先送りしないためにも、税・社会保障の一体改革をきちんと実現することも極めて重要だと考えております。

 こうした、法人事業税の外形標準課税ですとか消費税といったような景気によって大きく税収が変動しない税については、安定的に税収が得られるという長所がございますけれども、こうしたような安定的な税収というものが今どれぐらい割合としてふえてきているのか。例えばということでございますけれども、消費税が税収に占める割合というのを少し時系列でお示しいただきたいと思います。

坂井副大臣 消費税の創設以来の一般会計税収に占める割合ということでございますが、税収が平年度化した年度で見てまいりたいと思いますが、創設時三%におきましては、平成二年度の決算ベースで七・七%でございます。五%への引き上げ時につきましては、平成十年度の決算ベースで二〇・四%、そして八%への引き上げ時につきましては、平成二十七年度の補正予算のベースで三〇・三%となっております。

井林委員 ありがとうございます。年々、消費税が国税に占める割合というのが非常に大きくなってきているということでございます。

 消費税は、当初は福祉のためということで導入をされ、また、近年では社会保障のためにということで多くの国民の皆様方に御説明を申し上げ、時には大変厳しい声をいただきながらも、御理解をいただいて進めてきたというのが実情ではないかというふうに考えております。こうした消費税、景気に左右されない安定財源として、これまた景気に左右されない安定的な支出である福祉ですとか社会保障の財源として大変適しているものだというふうに私も考えているところでございます。

 しかしながら、消費税だけではなくて、外形標準課税のような景気変動に左右されないような税の割合がこれだけふえてくると、景気の大きな変動を防ぐためにもともと財政が持っている機能として、ビルトインスタビライザーという機能が言われてございます。不景気のときには、税収が減る、そして民間部門の負担を減らしていく、そして景気が過熱局面に入ってくると、税収がふえて自然と景気の過熱を防いでいく、そういう機能を持っているということでございますけれども、景気に変動されない税収が多くなってくると、そのビルトインスタビライザーの機能が大変弱くなってくるのではないかというふうに考えてございます。

 こうしたことが収入の面から起きますので、今度は財政出動とか財政の支出の面でさまざまな工夫をしていかなければいけないというふうに考えてございますけれども、これからさらにこうした消費税ですとか外形標準課税というものをお願いしていかなければいけない局面で、柔軟な歳出面での対応の意義はこれまで以上に大きくなるというふうに考えてございますけれども、これは大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 いわゆる税のビルトインスタビライザー、自動安定化装置というんですかね、制度というんですか、これに関して、その機能が小さくなったかどうかについてはちょっと一概には申し上げられないんですが、政府として、民間需要主導型の強い経済というものを実現させる方向に向けて、今、経済状況というものを踏まえて適切に対応をするということはしていかねばならぬというのは、井林先生おっしゃるとおりなんだと思います。

 政府として、経済再生と財政健全化の両立を図るという観点から、例えば、平成二十四年度の補正予算においては、景気の底割れ懸念というものがあの当時ありましたものですから、その対応策として五兆二千億の公債発行というのを追加発行させていただいて、十兆三千億の景気対策というか経済対策を実施させていただきました一方、平成二十七年度の補正予算においては、経済の下振れリスクというものを適切に回避させつつ、いわゆる二年連続で公債の減額というものを実施したりして、これまでのところ、税収の伸びもこれありで、適切な対応ができつつあるんだと思っております。

 いずれにしても、この経済状況というものを踏まえた上でいわゆる経済財政運営というのにいかに取り組んでいくかというのは極めて重要な課題だ、我々もそう認識いたしております。

井林委員 ありがとうございます。

 景気の面で、これまで以上に財政の面が非常に重要になってくるという見解をいただいたというふうに認識をしてございます。

 デフレ脱却、経済再生の両立とともに実現をしなければいけないもう一つの大きな課題が、これは大臣が所信でも述べられておりますけれども、財政健全化でございます。アベノミクスの経済成長により税収も十五兆円増加をする一方で、歳出の伸びの抑制にも努めてきて、二〇一五年のプライマリーバランスの赤字半減目標、これは、もうすぐ年度末でございますけれども、達成をする見込みだというふうに伺っております。財政健全化は着実に進んでおります。

 その一方、先ほども申し上げましたように、まだまだ我が国の財政は深刻な状況でございまして、ここで手綱を緩めるわけにはいかないということで、日本銀行がマイナス金利を導入したことで、国債金利が初めてマイナスになる、ゼロ%を下回るといったような事態が起きてございます。

 財政健全化に向けた政府の取り組み姿勢が明示的、継続的に示されないと、マイナスになったとはいえ、日銀による国債購入が財政ファイナンスであるとみなされかねないということで、国債に対する信認が低下する可能性が生じるということに大変注意をしていただかなければいけない。

 そしてまた、先ほど大臣がおっしゃいましたように、支出の面でさまざま経済対策を補正予算で行ってきているということでございます。

 政治が経済に対する一層鋭い感覚を持ちながら財政運営をしていかなければいけないということでございます。

 きょう、ニュースでもよく流れていますけれども、株価も大変乱高下をしております。為替もなかなか今安定しているという状況ではないというふうに思います。こういう状況を眼前に見ながら、さらにしっかりした経済対策をやっていかなければいけない、財政も引き締めていかなければいけないという状況の中で、最後に、二〇二〇年、プライマリーバランスの黒字化に向けて、経済財政一体改革とその前提となるデフレ脱却、経済再生をさらに推進していく必要があるというふうに考えますけれども、大臣の決意をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今御指摘がありましたように、二〇二〇年度の基礎的財政収支のバランスというものを、いわゆる黒字化に向けまして、今まずは経済の成長戦略というものを着実に実施することによって経済再生ケースを実現するということがまず第一なんですが、それでやりましても、内閣府の出しました中長期試算で示されております六・五兆円の赤字というものにつきましては、これは我々としては、経済・財政再生計画で示されております目安というものは出しておりますので、その改革工程表というものに基づいて歳出改革を実行していかねばならぬということだと思っています。

 加えて、五年先の話ですので、まずは二〇一八年度にその進捗状況というものをきちんと評価して、必要な場合には歳出歳入というもの双方にわたって追加的な対応を検討するということと既にいたしてその方向で動いております。

 いずれにしても、不退転の決意でこの二〇二〇年の目標というものをきちんと達成するということにしていくことによって、市場の信頼であり、また先ほど言われた財政ファイナンスに対するそしり等々、いろいろなものにきちっと対応できるという姿勢を示し続けるというのは国家の財政運営として極めて重要なことだ、我々もそう思って臨んでまいりたいと思っております。

井林委員 ありがとうございました。

 大臣の所信について御質問をさせていただきました。

 財政健全化と両立をして、デフレ脱却、経済再生、ぜひとも実現ができるように、そして二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字化を目指して、私も努力をしてまいりたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、上田勇君。

上田委員 おはようございます。公明党の上田勇でございます。

 限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきます。

 麻生大臣は所信の中で、デフレ不況から脱却しつつあると述べられて、そしてその根拠として、雇用また企業収益などの指標を取り上げられております。

 ただ、デフレ不況というからには、物価動向に対する認識というのも重要だというふうに考えておりますので、その点を伺いたいというふうに思います。

 我が国では、二〇〇〇年ごろから今日まで、ほとんどの期間を通じてデフレ状態が続いてきました。その間、消費や設備投資が減少して経済が縮小してきた。このデフレから脱却をしなければ経済の再生は実現できない。その意味で、安倍内閣も日銀も、デフレからの脱却を目標として政策を進めてまいりました。

 現在の物価動向をどのように見るかというのは、政策判断をする上での重要な要素であるというふうに考えております。

 直近の物価動向を見てみますと、生鮮食品を除く消費者物価上昇率、コアの上昇率は、二〇一四年では、消費税率引き上げの影響を除いたとしても、大体一%以上のところで推移をしてきました。しかし、原油価格の大幅な下落の影響もあって、直近ではゼロ近くの横ばいという状況になっております。生鮮食品、石油製品、そしてその他の特殊要因を除いたよくコアコアと言われている指数で見ると、今度は二〇一四年から一五年を通じてプラスで、大体一%前後というところになっております。

 これは後からわかる数字でありますけれども、デフレーターは、二〇一四年からプラスに転じて、直近では一・八%ということであります。

 消費者から見ると、生活実感というのから見ると、コアの数字というのが物価という認識に近いのかなと。一方で、企業から見ると、それぞれの業態にもよりますけれども、コアコアの認識に近いところもあるのかなというふうに思います。

 こうしたさまざまな指標がある中なんですけれども、大臣は、今後の政策判断をするに当たりまして、現状の物価動向はどういうふうに認識を持たれているのか、御見解を伺いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 アベノミクスと言われる経済政策、いわゆる三本の矢とかいうような、いろいろな表現がありますけれども、これによって、生鮮食品とかエネルギーを除いたいわゆる物価の基準が従来のマイナスからプラスに転じたということは確かだと思っておりますし、また、実質GDPの伸びが名目GDPの伸びを上回るとかいうようなものも、逆転現象とよく言われていましたけれども、これの解消もできたと思っておりますので、もはやデフレではないという状況をつくり出したことまでは間違いないと思っております。

 デフレでも景気のよかったときは戦前を見ますとあるわけで、デフレ不況になるところが問題なので、インフレでも好不況があるのと同じなんですが、そういった意味で、我々は、デフレ不況からの脱却まであと一歩というところまでは来ているんだと思っております。

 ただ、足元では、御存じのように、きょうのWTI、ウエスト・テキサス・インターミディエート、いわゆるニューヨークで取引されております石油の価格、ドバイの価格とかいろいろ石油価格があるんですが、WTIと言われるものでいきますと、二十七ドルとか八ドルまで下がってきております。

 おととしになりますか、一年前はほぼ百ドルを超えていましたので、それからいきますと、四分の一まで石油価格が下がってきているというのは、石油を輸入しております我々、石油生産国ではない我々にとりましては、経済に与える影響は極めていい影響を与えるわけですし、ドルが高くなって円が安くなって、本当でしたら石油の値段がもっとふえるはずが、下がった分で我々は助かっておるというので、貿易収支にも非常にいい影響を与えたんだと思います。

 消費者物価という点から見ますと、これはなかなかそっちの方にはプラスには作動しにくいという状況にありますので、先月閣議決定をいたしました政府の経済見通しでは、平成二十八年度の消費者物価、これはコアとかではなくて、いわゆる総合物価指数ですけれども、経済の好循環の進展によって需給が引き締まっていく中で、一・二%程度の上昇というものを見込んでおります。

 今後も、賃上げ等々の流れを受けると同時に、雇用とか所得の拡大というものが続いていくということで考えますと、経済の好循環ということに回すことによってデフレ不況からの脱却というものも確実なものになる、そういった方向で事は進みつつある。我々が考えていたより遅くなっているのは、極めて外的な要因が多いのであって、そのほかの意味においては、きちんとした対応がそれなりにでき上がりつつある、我々としてはそのように考えております。

上田委員 今、答弁にもございましたけれども、いわゆる需給ギャップによるデフレというのは解消しつつあるんだけれども、石油製品というような特殊要因があって、まだなかなかこのデフレから脱却をするというところまでは至っていないというのが現状だというふうに思っております。

 もう一つ、先ほど大臣もお話をされておりましたけれども、やはり、消費者も企業もデフレマインドがしみついていて、今後も物価は下落を続けるんじゃないかという意識が潜在的には非常に強くて、ちょっと新聞にも出ていましたけれども、価格据え置きの呪縛みたいなものがあって、なかなかそこから抜け出せないという状況があるんじゃないかというふうに思います。

 また、デフレが何で悪いのか、どういう悪い影響があるのかという問題意識が企業あるいは消費者に広く共有できていないという部分があるんじゃないかというふうに思います。やはり、物価が緩やかに上がっていくことが日本経済にとっていいことであって、そして、結果的に、所得の増加を通じて、それは生活の向上にもつながっていくんだということを実感してもらうようにしなければならない。これからがそういう意味で、非常にここのところが重要なところだというふうに考えております。

 その意味からは、先ほどもお話がありましたけれども、政労使会議であるとか官民対話を通じて、働きかけるということと同時に広くコンセンサスをつくっていく、そういうコンセンサスをつくっていくということが重要なんだろうなというふうに思っておりますので、また引き続き政府においては取り組みをお願いしたいというふうに思っております。

 そこで、次に、所得税の給与所得控除の上限額の話について御質問させていただきたいというふうに思います。

 所得税の給与所得控除の上限額が、平成二十八年分から給与収入一千二百万円超について二百三十万円に、そして二十九年分からは給与収入一千万円超について二百二十万円に引き下げられるということが決まっております。給与が一千万円超のいわゆる高所得世帯の税負担がふえて、その分税収がふえるということであります。

 私は、この改正によって所得税の累進度が高まって、結果的には所得税の所得再分配効果が高まるというふうに考えております。以前からもこうした措置が必要であるということは私自身も提案をさせていただいておりましたけれども、二十六年度の税制改正でこれが盛り込まれたというわけでございます。

 こうした改正を行う目的、また、それによってどの程度の効果を期待されているのか、財務省の御見解を伺いたいというふうに思います。

坂井副大臣 給与所得控除につきましてのお尋ねでございます。

 この改正につきましては、給与所得者の実際の勤務関係経費等に比べて、控除額の額が、ちょっと水準が過大ではないかという御指摘があったり、また、委員もお触れになりましたが、所得の再分配機能というような、この機能回復を図るという観点がございますが、これを踏まえたものでございまして、この改正によって八百十億円程度の増収を見込んでいるということでございます。

上田委員 所得の再分配機能というのは税制の重要な役割の一つでございます。所得の格差が拡大をしているんじゃないかと言われているときにあって、やはり、所得課税のみならず税制全体でこうした再分配機能についてさらに検討していく必要があるんだろうというふうに考えております。

 また、政府そして与党におきましても、そうした点からの税制の見直しに取り組んでいきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 次に、先般、財務省から公表されました租税特別措置の適用実態調査についてお伺いしたいというふうに思います。

 これは、もう大変な労力をかけた調査であって、費用対効果という面では若干いろいろな御意見もあるのは承知をしておりますけれども、ただ、その調査結果には、政策減税等の政策効果を理解する上で重要なデータも数多く含まれているというふうにも理解をしております。

 その内容に関し何点か質問させていただきますが、これは、通告ではちょっと別々にお話をしたんですけれども、時間の関係もありますので、まとめてお答えいただければというふうに思います。

 その調査結果の中で、平成二十六年度には、中小企業等の法人税率の適用件数が前年度比で約五万件、軽減されている金額では二千二百八十億円、適用が報告をされております。このことは、約五万件の中小企業が、いわばそれまでは赤字で税金を納める必要がなかったものが黒字化をしたんだ、それで法人税を納税したということだと考えております。中小企業の経営が改善をしたのかということを認識されているのかどうかというのを一点。

 また、この調査結果の中で、所得拡大促進税制については、平成二十六年度の適用額が約二千五百億円、前年度比で二千億円増額をしております。これは税額控除でありますから、この分がまさに賃金、勤労者の所得として増加をしたということでありますが、この制度はかなり効果が上がったのか、どういう御認識か、お伺いしたいというふうに思います。

坂井副大臣 まずは中小法人向けの軽減税率についてでございますが、二十六年度の適用実態調査の数字は委員が御指摘をいただいたとおりでございますけれども、この租税特別措置は、資本金一億円以下の中小法人につきまして、所得八百万円以下の部分に係る税率を原則の一九%から一五%へと軽減するものでありまして、法人税を納税する黒字の中小法人であれば幅広く利用可能な制度であるものでございますから、この適用件数が増加しているということは、黒字の中小法人がふえていることを意味するものと考えております。

 また、所得拡大促進税制についてもお尋ねがございました。

 これは、賃金引き上げを後押しするための思い切った政策税制として、二十五年度税制改正で創設をしたものでございますが、二十六年度には二千億円増加して二千五百億円となっているものでございまして、これは順調にこの制度が活用されていることのあらわれだと受けとめております。

 こうした税制面の取り組みのほか、政労使会議の取り組みなどが相まって、賃金引き上げの動きが出てきているものと考えております。

上田委員 ありがとうございました。

 今の経済の動向、とりわけ企業の経営の動向について、結果が出るまでにちょっと時間がかかるんですけれども、非常に税収という面から見れば正確に理解できるものだというふうに考えております。

 ただ、この調査結果では、他方、適用件数が全くないとか、あるいは極めて少ないというようなものもあります。これは、制度の使い勝手が悪いのか、あるいは、そもそもニーズがなかったのか、当初あったんだけれどもそれが減ってきたのか、さまざまな事情はあるんだというふうに思いますけれども、政策減税でありますから、元来は目的があって導入されているわけでありますので、ぜひ不断の見直しを行ってより活用しやすいものにしていただきたいというふうに思いますし、また、要らなくなったものは大体見直していただきたいというふうに考えておりますので、これは要望させていただきます。

 最後に、税務署におけるマイナンバーの利用についてお伺いをしたいというふうに思います。

 納税者が税務当局などに提出する関係書類には、本年一月以降、マイナンバーの記載が必要となっておりますけれども、この国会に提出されております税制改正法案で、本人確認に要する事務負担を軽減するということや、また、番号漏えいのリスクの低下、あるいは、事業者の情報管理の負担の低下を図るために、多くの書類においては番号の記載は不要とする、そうした合理化をする見直しが行われる予定であります。

 しかし、それでも各種法定調書など番号の記載が引き続き必要な書類の中には、情報が適切に管理されていること、そのことに対する懸念を持たれるようなケースもございます。

 例えばこういうケースがありまして、個人が事務所ビルを所有していて、法人に賃貸しをしている、賃貸している。たな子の法人は、大家のマイナンバーを記載した支払い調書を税務当局に提出することになります。

 そうなると、大家はこれは個人でありますから、個人の番号をたな子の法人に知らせなければならない。果たして、その番号を知らされた法人が情報の管理が適切にできているのか。これは、法人の形態にも大きさにもいろいろありますので、心配されている方がいる。それはある意味理解できるところであります。

 そこで、税務当局からも、法人等に、こうした番号が漏えいすることがないようにもう一度管理について注意を促していただきたいというふうに考えますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 マイナンバー制度の周知、広報につきましては、ただいま委員御指摘になられました、番号を取得した法人等における情報管理の徹底を含めまして、内閣官房、内閣府の総合調整のもとで、関係省庁が協力して取り組んでいるところでございます。

 国税庁におきましても、国税庁ホームページを通じた周知、広報を行っているほか、関係民間団体等に対する説明会を開催するなど、あらゆる機会を捉えて積極的に周知、広報に取り組んできたところでございます。

 今後とも、国税庁においては、関係省庁や関係民間団体等とも連携、協調を図りながら、番号を取得した法人等における情報管理の徹底を含め、きめ細やかな周知、広報を行い、国民の皆様の御理解を得られるように努めてまいりたいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 今回の法改正で、かなり番号記載の義務、必要な書類が限定をされたというのは、大変評価をしたいというふうに思っております。

 ただ、やはり先ほどちょっと挙げた事例のように、まだ必要なものがあって、その情報管理というのが求められているわけでありますので、ぜひこれからも、この番号の記載、特に個人の番号の管理については、本当にその書類に記載する必要があるのか、それをもう一度不断に見直しをしていただいて、必要最小限とするような点検、見直しに努めていただくようにお願いをいたしまして、本日は終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 おはようございます。民主・維新・無所属クラブの古川元久でございます。

 けさは、黒田日銀総裁にも、お忙しいところおいでいただきましてありがとうございます。

 今、マーケットが大変不安定な状況になっております。ちょっとここは通告しておりませんけれども、きょう、先ほど一万五千円も株価は割れたようでございますし、きのうから急激な円高も進んだりとか、マーケットが大変不安定な状況になっております。

 この不安定な状況につきまして、財務大臣そして日銀総裁それぞれから、今の状況をどう見ておられるのか、そのことについての見解をお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 我々といたしましては、これはいずれにしても、為替の変動とか株価の変動とか、上がるにしても下がるにしても、急激に変動するということは、これは、いわゆるマーケットに参加をしておられる一般の方々を含めてマーケットの気持ちを非常に不安定なものにさせるということは、これは余りいい結果を招かぬと思っておりますので、いずれにいたしましても、こういったようなものが、確実に、変動幅が急激なものではなくてきちんとしたものになるということが望ましいということは常々考えております。

黒田参考人 御案内のように、国際金融市場では、原油価格の一段の下落に加えまして、中国経済に対する先行きの不透明感などから、世界的に投資家のリスク回避姿勢がここに来て過度に広まっているように思われます。その結果、主要国の株価が下落し、ドル安・円高が進んでおります。

 日本銀行としては、こうした国際金融市場の動きが我が国の経済や物価にどのような影響を与えるかについてしっかりと注視していく方針でございます。

古川(元)委員 株価も大変私も懸念するところでありますけれども、特に、これだけ急激な円高が進みますと、やはりそこは相当な不安が、不安だけじゃなくて、これは今後の日本経済に与える影響も、従来、安倍政権が言ってきた好循環というのが逆回転し始めるきっかけにもなっていくんじゃないかというふうに思っているわけなんですけれども、そういった意味で、特に今急激に進んでおります円高について、為替介入とか、あるいはさらなる金融緩和措置とか、そういった措置は、これは必要に応じてとる可能性はあるというふうに考えてよろしいんですか。

 大臣と日銀総裁、それぞれ見解をお願いいたします。

麻生国務大臣 これは先ほどもいわゆる記者会見等々で申し述べておりますけれども、当然のこととして市場の動向というのは我々としては注意深く見守っているところですけれども、世界的なリスクの回避に向けていわゆる市場というものが不安定な動き、リスク回避の動きというのが見られる中で日本の市場にも大きな変動が見られておるということは事実でありますが、他方、実体経済を見れば、間違いなく企業収益は過去最高となるなど、日本経済のいわゆるファンダメンタルズ、基礎的なものは極めて安定をしておると思っております。しっかりしていると思っておりますので、このところの市場心理というのは少々悲観的に過ぎるのではないかと思っております。

 ただ、政府としては、市場の変動に左右されるということではなくて、G7などの国際社会等々とよく連携をしながら、内外の情勢というものをよく見きわめながら、民需主導の好循環の確立というものをしっかりと取り組んでいくべきだと思っております。

 なお、為替の市場につきましては、これはG7やG20などで合意をされておりますように、急激な相場の変動は望ましくないと考えております。最近の為替市場では極めて荒い動きが見られておりますが、引き続き為替市場の動向を緊張感を持って注視し、必要に応じ適切に対応していく、そう考えております。

 今月下旬に開催をされる予定の上海でのG20に向けまして、昨今の金融市場の状況を踏まえた政策協調等々についても検討を進めてまいりたい、さように考えております。

黒田参考人 御承知のように、為替政策自体は財務省の権限でありますので、それに対して直接申し上げることは差し控えますけれども、先ほど申し上げましたとおり、為替を含めた国際金融市場の動きが我が国の経済、物価にどのような影響を与えるかについてしっかりと注視してまいりますし、従来から申し上げておりますとおり、物価安定目標の早期達成のために必要になれば、ちゅうちょなく対応するということでございます。

古川(元)委員 まあ、そういう答えしかできないんだと思いますけれども。

 大臣、この円高が急激に進んでいる一つの大きな理由に、先ほど黒田総裁からも話もありましたけれども、今、世界的なリスク回避の動きがある。そうなると、そういう世界の中の、結局これは開放経済ですから、私は大臣が言うほど日本経済のファンダメンタルズがよくなっているというふうには思いませんけれども、しかし、見た目で相対的に比較すればまだ日本はいいんじゃないかということで、結果的に、ならば円買いだということで、要は、ますますそれが円高を加速させる要因になってきている。

 私自身、ギリシャ危機のときに経済財政政策担当大臣もやっていまして、当時、急激な円高が本当に進みました。あのときも、結局、国内の要因というよりも、むしろヨーロッパが、それこそEUがユーロが崩壊するんじゃないかという不安の中で、投機資金を中心にして、とにかく一時的な避難ということで見れば、短い期間考えれば日本が安全だろうと。ですから、雨の降り方でいえば、ヨーロッパはどしゃ降りだけれども、日本も雨は降っているけれども小雨だから、とりあえず雨宿りをするんだったら、どしゃ降りのところよりも小雨のところがいいだろうということで、我々も単独でも介入等もやりましたけれども、しかし、そういうのはやはり効果はなくて、結果的にああいう過度な円高に進んだということがありました。

 そういった意味では、今のこれは、皮肉なことですけれども、国内のファンダメンタルズの数字がほかの国や地域に比べて日本がいいということになれば、結果的にそれは円高を進めるというそういう要因につながってきてしまうんじゃないか。

 そうなると、この三、四年間の企業業績の、先ほども大臣のを聞いていると、とにかく過去最高だと言いますけれども、その大きな要因は、やはり今度は急激に進んだ円安だったと思うんですね。そのことによって、見た目の収益が円ベースで見ると物すごく膨れ上がったということが今の状況を招いているわけでありますから、逆にその膨らんだ分が、これだけ急激に円高が進めば急速に縮小していく。

 そうなりますと、従来言っていた好循環が逆に悪循環の方に働いていく。企業収益が下がるという見通しになれば、当然株価も下がる。企業収益が下がってくれば、賃上げをしろと言ったって、企業の方からしたら、今後とも円高方向に流れるというふうに思ったら、とてもやはりそれは、そんなに売り上げが伸びているわけじゃないわけですから。政府が最初言っていたような、アベノミクスによって円安が進めばJカーブ効果が出てくると言う。ほとんど出てきていないですよね。

 そういう状況の中では、これまた円高に戻っていけば、結果的に、そうした膨れ上がっていた収益がしぼんで賃上げの原資もなくなっていく。まさにこれは、悪循環に陥っていくそういう今はざまのところに、とば口のところに来ているんじゃないかと思いますが、そういう今の日本経済の状況と要は世界のほかのところを比較して、極めて今この状況というのは、そういった意味で、今までの好循環と皆さんがおっしゃっていたそれが反転するそういうリスクのとば口にあるという、そういう認識はお二人はありませんか。

麻生国務大臣 これはもう古川先生御存じのように、経済というのは生き物、ましてや、百九十何カ国の中で日本もその一つでありますので、経済というものは、これだけインターナショナルなものになってくると、非常な影響を受けるのも避けがたい事実だと思います。

 今、円の話が出ました。確かにおっしゃるように、円が七十円台、八十円台だったころに比べて百二十円台というのは、これは間違いなく、五〇%も円安に振れたということは、日本の企業にとっての収益を著しく改善させるという意味においては大きかったことはもう間違いない。

 それが下がってくるからどうかと言われれば、我々は大いに関心を持って見守っておかねばならぬとは思っておりますが、他方、そのころに比べて、あの当時に比べて、円が安くなって非常に困ったものの一つは、石油の輸入代金が急激にふえたことです。それで貿易収支が一挙に物すごい勢いで赤字になったんですが、石油が百何ドルから二十七ドル、八ドルなんてことになってくると、一挙にそれが変わって、去年だけでも貿易収支が大幅に改善して、十兆ぐらい縮まったと思います。もっと縮まったかな、十一、二兆縮まったと思いますが、それぐらい急激に縮まってくるというプラスの効果もあります。

 こういったものをいろいろ勘案しながら経営者というか企業というものは取り組んでいかれるんだと思いますので、我々も経済を見ていくときに、企業収益というものに関しましては関心を持って、これによって法人税やら何やら大きな影響も出ますし、今言われましたように、賃上げにつきましても影響が出てくると思いますので、そういった点も含めて注意深く見守っておかなければならぬとは思っております。

黒田参考人 日本経済のファンダメンタルズが改善してきたことは事実でありますが、そのもとで物価の基調も着実に改善してきているものの、石油価格の大幅な下落によって、生鮮食品を除く消費者物価の動きはゼロ%近傍で推移しているというふうな状況でございます。

 したがいまして、量的・質的金融緩和、あるいはマイナス金利つき量的・質的金融緩和にしましても、まだ二%の物価安定目標の達成に向けて道半ばでございますので、引き続き、物価目標の達成に向けて現在の大幅な金融緩和というものを継続していくということになると思います。

 その上で、先ほど来申し上げておりますとおり、国際金融市場の変動が我が国の経済、物価に対してどのような影響が出るかということについては、注視し、先ほど来申し上げておりますとおり、二%の物価安定目標の達成のために必要になれば、ちゅうちょなく政策調整を行う、対応を行うということでございます。

古川(元)委員 ちょっと私の聞き方が悪かったかもしれないのでそういう答えになったかもしれませんが、お二人にちょっと端的に聞きたいと思います。

 今のお二人の日本経済の現状の認識であれば、この世界の経済状況に倣ったら、リスク回避の動きで円が買われてもっと円高の方に動いてもやはりこれはおかしくないような状況という認識ですよね。どうですか、お二人は。そこを聞きたいんです。

麻生国務大臣 世界経済の中の認識につきましては、これは全体として緩やかに回復しているんだということで、先行きについても、米国など思ったほど回復していないとはいえ、かつてとは全然違いますので、そういった意味では、現実は緩やかな回復が今後とも続いていくものと思っております。世界経済の全体の認識としてはそのように考えております。

黒田参考人 私も麻生財務大臣と同じ認識でありまして、例えば、IMFの最近時点の世界経済見通しを見ましても、世界経済全体は緩やかに、昨年よりもことし、ことしよりも来年、成長率が高まっていくという見通しでございます。

 そうした中で最も強い成長を示しておりますのが米国でありまして、その次がユーロ圏で、IMFの見通しでは、我が国の成長率というのがユーロ圏よりやや低いという見通しでありまして、世界経済全体が緩やかに回復していく中で、米国経済が一番強く、その次がユーロ圏経済であって、その次に我が国経済が位置しているというのが、現状の経済のファンダメンタルズに対するIMFその他の見方であろうというふうに思っております。

古川(元)委員 いや、そうなんですけれども、さっきから申し上げたように、要は相対論なんですよ。

 こんなことをお二人には釈迦に説法ですけれども、やはり何でこんなにこの二日ぐらいで急激に円高が進んだかといったら、強いと思われていたアメリカ経済が、別に不況に陥るんじゃなくて、思った以上に成長がそんなに進まないんじゃないか、想定されているよりも回復がかなり遅いんじゃないか。だからこそことし中に四回利上げすると言われていたのが、利上げどころか、下手したらもう一段利下げにするとか、あるいは、この前のイエレン議長の議会での発言で、それこそマイナス金利の導入さえも否定しないみたいな、そういう発言があったことが、これは予想以上にアメリカ経済の回復がおくれているんじゃないか。

 ヨーロッパの方も、それは確かに成長はするかもしれません。しかし、今起きている、ドイツ銀行を初めとする金融不安が再燃するんじゃないかというそういった意味でいうと、ほかの、日本以外の国や地域が、いわばスピードが今まで想定されていたよりもぐっとおくれてくる、遅くなってくるという意識があるから、それであれば、では、今の相対的にいえば、短期的に見ればですよ、まだ日本の方がいいんじゃないかということでわっと円に買いが入ってきている。そういう状況というふうに見るのが普通じゃないかなと思うんですけれども。

 ですから、さっきから申し上げているように、皮肉なことに、日本の経済のファンダメンタルズが足元でいいというふうに言えば言うほど、むしろ円買いを、そういうものを引き寄せて、それが円高方向につながっていってしまう。そういうところに今ちょっと陥ってきつつあるんじゃないですかと。そうなっていくと、これまで言っていた好循環というのが逆に回転していく。そういうリスクが高まってきていて、そういう認識を持たなきゃいけない状況なんじゃないですかということを聞いているんです。簡潔にお答えください。

麻生国務大臣 大蔵省におられましたのでおわかりのことと存じますが、為替の水準についてコメントすることはしませんから。

 その上で、荒い値動きということにつきましては、これは先ほど申し上げましたように、緊張感を持って今後とも注視をしていくと申し上げておりますので、我々としては、今こういったような動きというのは、世界じゅう予想しがたく、ヨーロッパの中でドイツぐらいはと思ったら、そのドイツ・バンクがわざわざ記者会見するような騒ぎですから、それは明らかに我々の見ているところと、実際またどれが本当なのかよくわからぬところというのは、確かにいろいろな見えないところはいっぱいあると思いますし、アメリカも、言われていましたように、イエレンさんの最初の一回目の引き上げのときにつきましては、キャピタルフライトが起きていろいろなアジアの国が金を引き揚げるとか、いろいろな話がドル高に一挙に振れていったのに比べれば、今また逆にこれは上がらないんじゃないのかということになってきて、上げるにしても最低のベーシスで上げるんじゃないかというような話になってくると、何となく状況としては、今言われたように、円が悪くないんじゃないのということになってきているということは、もう相対的な事実としては間違いないと、私どもそう思います。

 しかし、それは日本の企業が悪いということではありませんので、そういった中にあって円が買われる部分というのはある程度避けがたいものだと思っておりますが、ただ、それに関しましても、先ほど申し上げましたように、急激なものというものは、荒い値動きに関しましては、我々G7としても、こういったものに関してはきちんと対応していきたいというように考えております。

黒田参考人 ただいまの麻生財務大臣の答弁に尽きていると思いますけれども、御案内のとおり、G7では従来から、為替レートはファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいということを言っておられまして、私も全くそのとおりであるというふうに思っております。

古川(元)委員 この点は、今までの議論は通告もしていなかったですし、きのうきょうの、おとといあたりからの状況を踏まえた質問でしたからこれくらいにしておきたいと思いますけれども、相当深刻にこれを受けとめていかないと、政府の中で担当させていただいた私自身の経験からいっても、大きな流れが動き出していくと、一国で何かしようと思ってもこれはどうしようもないというところがやはりありますので、そういった意味では、相当やはりこの状況というのは危機感を持たなきゃいけない状況ではないかということをもう一度繰り返して申し上げて、用意した質問に行きたいと思っています。

 まず黒田総裁の方にお伺いしますけれども、先ほど来からも質問でも出ておりますが、マイナス金利の導入というものをされて、これまで二回、いわゆる第一バズーカ、第二バズーカと言われたもののサプライズで円安に動き、そして株が上がりというそういうサプライズ効果は、今の議論であるように、もう既に完全に剥げてしまったかなという感じがしますが、黒田総裁が、それ以外のところのマイナス金利を導入した効果について、これについては、現時点を受けてもう既に銀行の預金金利が下がったりとかそういう状況が起こっているわけでありますけれども、この辺についての今の金融機関等の動きについては予想どおりというふうに考えているか、あるいは、世の中のこのマイナス金利に対しての受けとめ方、それについても今の現時点でどのように考えていらっしゃるか、その御自分の評価をお伺いしたいと思います。

黒田参考人 今回導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、日本銀行の当座預金金利を限界的にマイナスにするということで、イールドカーブの起点を下げるとともに、従来から続けております大量の国債買い入れということを通じてイールドカーブ全体を引き下げるということが主たる波及経路として考えられていたわけでございます。

 この点、イールドカーブを見ますと、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降、全体として低下しておりまして、所期の政策効果はあらわれているというふうに思います。

 今後、その効果は実体経済や物価面にも着実に波及していくものというふうに思っております。

 もとより、欧州の四つの中央銀行がマイナス金利を導入しておりますけれども、その経験等も踏まえまして、マイナス金利が金融機関の収益に過度の影響を与えて金融仲介機能を損なってしまってはいけないということもありましたので、日本の実情を踏まえて、いわゆる三層構造にいたしまして、基本的に、これまで積み上げてきた準備預金については従来どおりプラス〇・一%の金利をつけるとともに、これからふえる部分についてマイナス金利をつける。

 ただ、年間八十兆円のペースで国債を買い入れ、マネタリーベースをふやしていきますので、適宜の段階で、ゼロの金利がついている所要準備とかあるいは貸し出し支援資金に対応する部分、ゼロの金利がついているわけですけれども、それを段階的に引き上げていくということによって、金融機関の収益に対する影響をできるだけ小さくしながら、マイナス金利の効果がイールドカーブ全体の引き下げにきいてくるようにするということでやっております。

 もとより、イールドカーブ全体が下がりますと利ざやが減ります。これは、通常の伝統的な金利政策であっても、あるいは非伝統的な量的金融政策であっても、今回のマイナス金利であっても、いずれも同じなんですけれども、イールドカーブを下げようということですので、利ざやが下がって、それだけをとりますと、銀行に対する収益のマイナス効果が出てくることは否めないわけですけれども、しかしながら、過去二年九カ月ぐらいの量的・質的金融緩和導入後の金融機関の収益状況を見ますと、実際には収益が改善しております。それは、主として倒産が減って引当金が減ったということがありますし、さまざまな金融サービスの収入がふえたとか、あるいは投資の収益がふえたとか、その他があったこともありますし、融資の額もふえたということもあります。

 今後の金融機関の収益動向については私どもも十分注視してまいりたいと思っておりますけれども、基本的には、金融緩和というのは、それだけをとりますと、どうしても利ざやの縮小につながる。しかし、長期的に見て、経済が立ち直って経済が順調に成長し、デフレ状況を脱して物価が二%程度で安定的に上昇していくという状況になれば、当然のことながら、利ざやも拡大し、金融機関の収益状況も改善するということであろうというふうに思っております。

古川(元)委員 そういうことになれば、当然、総裁のおっしゃることだと思います。

 ちょっと前に戻るような話なんですけれども、総裁は一回目のときも二回目のときも、やはり相当マーケットに対するサプライズが、今回も、一週間前にはマイナス金利は考えていないと言って、そして入れたことによってこれはサプライズはあったわけでありますよね。

 しかし、この過去の二回のバズーカのときを思い出しますと、金利を引き下げるとかあるいは緩和する、そのことによってイールドカーブを引き下げるとか、そういう政策の直接の効果じゃなくて、やはりマーケットに対するサプライズ効果とインパクト、そういうことで円安、結果としてですよ、別に意図しているというふうにはそれは口が裂けても言えないと思いますけれども。しかし、結果として円安が進み、そしてまた株価が大幅に上昇する、そういう効果があったわけです。

 しかし、今回は、一瞬はありましたけれども、あっという間に今まで言われたそういうサプライズ効果というのは剥げ落ちてしまった。この理由、こういうサプライズ効果が今回は長続きしなかったということについては、総裁はどのように感じておられますか。

黒田参考人 私どもの金融政策につきましては、昨年までは年に十四回、ことしからは年に八回の金融政策決定会合におきまして、それ以前の会合後起こった経済、物価、金融情勢を十分分析、議論して、次回の決定会合までの金融政策を決めるということでやっているわけでございます。

 その際、二〇一三年四月の量的・質的金融緩和の導入、それから二〇一四年十月の量的・質的金融緩和の拡大、それから今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入、いずれも、基本的な経済、物価に対する影響を与えるチャネルは、イールドカーブ全体を下げる、一方で物価上昇期待を維持ないしは引き上げることによって実質金利を下げて消費や投資にプラスの影響を与えるということが主たるチャネルであるわけですが、それと同時に、そういったイールドカーブ全体が下がっていく過程で、金融機関を含めた投資家が、いわゆるポートフォリオリバランスという形で国債から違う資産にポートフォリオを変えていく。融資を増加させるだけでなくて、例えば外債を買うとか投資信託を買うとか、その他、ポートフォリオリバランスというものがあり得るわけですが、それがあった場合には、当然、為替とか株にも影響が出てくることは十分考えられますけれども、これはあくまでも、金融機関を含めた投資家のポートフォリオ決定、ポートフォリオについてどういう決定をするかということにかかっておりますので、米国の場合もユーロ圏の場合も、日本の場合もそうですけれども、金融政策はあくまでも、今申し上げていますとおり、名目金利を下げる、特に最近の量的緩和のもとでは、イールドカーブ全体を下げていく、一方でインフレ期待を引き上げることによって、実質金利を下げて経済に対する刺激の効果をもたらすということが主たるチャネルでありまして、その点については変わりはないということでございます。

古川(元)委員 ただ、総裁なんかもよく、デフレマインドを変えると。やはりマインドを変えなきゃ、さっき財務大臣も前の質疑のときに、気持ちが、気分が大事だと。相当やはりこれまでの第一、第二も、そして今回も、やはりマインドを変えようというそういう要素も、この政策を決定するに当たっては大きかったんじゃないですか。どうですか、そこは。

黒田参考人 今回のマイナス金利導入、いわゆるマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入に当たって公表文が出ておりますけれども、二%の物価安定目標に向けて物価の基調は着実に改善しているわけですけれども、中国を含む新興国経済の不透明性あるいは石油価格の下落の状況等を踏まえて世界の金融資本市場がかなり変動していたというもとで、企業のコンフィデンスや、あるいは人々のデフレマインドからの転換がおくれるのではないか、そういうリスクが高まっているという判断で今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものを導入したわけでございます。

 したがいまして、メーンシナリオとしては、引き続き緩やかな景気回復が続き、そのもとで、需給ギャップも縮小し、物価上昇期待も上昇して、次第に二%に向けて物価が上昇していくというメーンシナリオは変えておりませんけれども、そのもとでリスクが高まっている、そのリスクの顕在化を未然に防ぐという観点から、先ほど申し上げたような、金融緩和をしてイールドカーブ全体を引き下げようということを決めたわけでございます。

古川(元)委員 そういう総裁が言われる方向にマーケットの関係者もマインドを変えてというか、そう思ったからこそ、前の二回のときはそれなりに円安も進み、また株価も上がるという、政策を打って、その後直ちにいわばマーケットに対するマインドを変えるといいますか、先行きに対する強気のマインドをつくって、それがマーケットにも影響を与えたんだと思うんですが、今回は、一瞬そういう状況もありましたけれども、それがあっという間になくなってしまったわけですよ。

 それは、総裁が今回の決定をした後に明らかになってきた新たな世界経済の状況のゆえにというふうに考えているのか、それとも、最初はどんなことでもびっくりしますけれども、二度三度と続いてくるとだんだんびっくりかげんが、びっくり箱でも最初見たときはびっくりしても、二度三度にはまたかという、そういう意味でのマーケットの反応の感度が累次にわたることによって鈍ってきている、そういうふうにも見られると思うんですけれども、その辺はどのように総裁は考えておられますか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、毎回の金融政策決定会合で、それまでの経済・物価情勢さらには金融市場の動向等を踏まえて次回の金融政策決定会合までの金融政策を決めるというルールでやってきておるわけでございます。

 そうしたもとでとられた金融政策が所期の効果を発揮しているかどうかという点につきましては、先ほど来申し上げておりますとおり、所期の効果を発揮しておるというふうに思っております。

 その上で、今委員御指摘のような最近の市場の動向につきましては、先ほど来申し上げたとおり、中国の経済の不透明性とか原油価格の下落、それに加えて最近では、米国の金利の引き上げの動向であるとか欧州の銀行の問題とかがいわば焦点になって、世界じゅうの、特に主要国の株価や為替が動いてきたということはそのとおりでありますけれども、先ほど来申し上げておりますとおり、これは、経済のファンダメンタルズから見ると、やや行き過ぎの、過度のリスク回避の動きではないかなというふうに思っております。

 ただ、それが過度であれ過度でないのであれ、いずれにしても、我が国の経済や物価に対する影響ということはきちっと注視してまいりたい。その上で、二%の物価安定目標の達成のために必要になれば、ちゅうちょなく対応を行うということでございます。

古川(元)委員 私が何でこんなに言っているかというと、黒田総裁はもう最初のときから、とにかくマーケットとの対話は非常に大事だということをずっと言い続けてきて、最初は信じていたんですけれども、だんだん最近ちょっとマーケットの方が、つい一週間前にやらないと言ったことを突然やったりとか、本当に総裁の言うことをどこまで信用していいのかという、総裁の言葉に対する不信感ということ自体もマーケットの今の不安定性の一つの要因になっているということもあるんじゃないかな、私はそう思っているから聞いているんですね。

 そういう視点で少しこれまでの総裁の発言をもう一回振り返ってみますと、総裁は、最初の異次元の金融緩和を決定した際に、戦力の逐次投入はしない、現在とり得るあらゆる手段を動員して二年で二%の物価上昇、安定目標を達成する、これまでのようなインクリメンタル、漸進的なやり方はとらない、何度もこう言っているわけですね、このときに。いろいろ質問に対して、繰り返しますが、戦力の逐次投入はしないということです、とにかく今の時点でやれることは全てやりました、これで十分だというふうに言っていたわけですよ。

 その主張は、第二弾のバズーカをやったときにも、これは戦力の逐次投入じゃないんですかというふうに聞かれたのに対して、これは状況の変化に合わせたもので、戦力の逐次投入ではないというふうにお答えになっていらっしゃるんですけれども。

 御本人の意思としては、意図としては別に戦力の逐次投入ではないという認識かもしれませんが、しかし、今この時点に立って結果として日銀がやってきたことを見ると、意図としては逐次投入じゃないかもしれないけれども、客観的には、結果的には、これはやはり戦力の逐次投入になってしまっているんじゃないですか。どうですか、これ。

黒田参考人 戦力の逐次投入であるとは思っておりません。

 先ほど来申し上げておりますとおり、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入した際に、二年程度の期間を念頭に置いて、できるだけ早期に二%の物価安定目標を実現するということで始めたわけでございます。

 その後、二〇一四年の十月、一年半後ぐらいですけれども、量的・質的金融緩和を拡大いたしましたのは、その時点における物価動向、特に原油価格が大幅に下落し、それが予想物価上昇率等に影響を与えてデフレマインドの転換がおくれるのではないかということを懸念いたしまして拡大したわけですね。その後の状況を見ますと、さらに原油価格が下落していったわけですけれども、幸いに、インフレ期待というか、物価上昇期待自体は比較的維持をされていたわけでございます。

 今回、それから一年三カ月後ぐらいでありますけれども、マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入いたしましたのは、先ほど来申し上げておるとおり、さらに原油価格の低下が続き、それに加えて中国その他新興国経済の不透明性などがあって、市場が非常に大きく変動し、それが企業のコンフィデンスや人々のデフレマインドの転換というものをおくらせてしまうというリスクが高まっているという判断から今回の措置を導入したわけでございます。

 石油価格にしても、その他のいろいろな状況にいたしましても、予想外のことが起こったときに、その影響を見きわめて必要とあらば政策を調整するというのは、これは戦力の逐次投入ではないわけでありまして、戦力の逐次投入というのは、必ずしもその時点で必要なだけの金融の緩和なり引き締めなりをせずに、何度も何度も同様な状況のもとで逐次戦力を投入していくというのが金融政策としては余り得策でないということでありまして、私どもがやっております量的・質的金融緩和の導入、拡大、そして今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入につきましては、いわゆる戦力の逐次投入であるとは思っておりません。

古川(元)委員 主観的には思っていないかもしれませんけれども、結果として見ればそういうことになっているんじゃないですかということを聞いているんです。

 これは総裁が言われた言葉ですけれども、「私どもとしては、現時点で考えられるあらゆる政策を総動員して、二%の「物価安定の目標」について、二年程度を念頭に置いて実現する。そのために必要な措置は、ここに全て入っていると確信しています」そこまで述べているんです。

 その同じときに質問で、「この半年くらいテーマだった付利金利の引下げについては、今回はテーマにはならなかったのでしょうか。」という問いに対して、「先程述べた三つのチャネルを通じて、景気の拡大、二%へ向かっての物価の上昇が達成できる、従って、付利金利を引き下げる必要はないという結論に達した」と言って、実は、マイナス金利までは行きませんけれども、そもそもついていた〇・一%付利の金利を下げるというのは、もう既にあの三年前の時点で検討されて、入っていたわけですよ。でも、その時点で目標達成のために必要はないというふうに、それで判断されたから入れなかったわけですよね。ここを除いて、ほかのでもう必要十分だというふうに言われたわけです。

 ところが、結果的にまだ三年たっても二%を実現できていないという状況ということは、これは、その主観はそうかもしれません。しかし、結果的に見ればそうなっているわけですから。ここに至って、付利を引き下げるどころか、マイナス金利まで来たということは、やはりこれは見通しが甘かったというふうに指摘されても仕方ないんじゃないかと思いますが、どうですか、これ。

黒田参考人 二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入した際にも、リスク要因を点検して必要な調整を行うということは述べております。したがいまして、まさに過去二回、必要な調整を行ったということでございます。

 付利引き下げにつきましては、御案内のとおり、この〇・一%の付利というのは、以前行っておりました包括緩和という中で、短国だけでなくて、いわゆる国債の買い入れもするということが始まったわけでして、その際にも、大量の国債を購入することがスムーズにいくようにということで適用したわけでございます。

 二〇一三年四月に量的・質的金融緩和という形で国債の大量買い入れを始めるに際しまして、引き続きその付利を続けたということであります。それが、量的・質的金融緩和を進めるに当たって、スムーズにいく上で一定の効果があったとは思います。

 ただ、その後の状況を見ますと、欧州では、ECBを初め、マイナス金利という形で、付利どころかマイナス金利までして、しかも、国債等の資産をかなり大量に買い入れていてもそれ自体がスムーズに進んでいるということで、付利が、それ自体がいわば引き下げられることによって大量の国債の買い入れに障害になるということにはなっていないわけであります。

 ただ、先ほど来申し上げておりますとおり、金融機関の収益に過度の影響を与えてはいけませんので、これまで積み上げてきた準備預金については引き続き〇・一%の付利をします。あくまでも限界的に、ふえていく部分についてマイナス〇・一%の金利をつけることによって、金利や相場の決定に、委員御承知のとおり、そういうものの決定に影響するのは限界的なものでございますので、そこは引き続き、限界的にはマイナス〇・一%というものがきくようにして、イールドカーブ全体を引き下げる効果を持たせたということでございます。

古川(元)委員 答えていただいていないんですね。私が言っているのは、なぜ最初のところでということでありますけれども、これは見方が甘かったんじゃないですかということです。

 今、総裁は、その時点では要するに量的・質的緩和を円滑にやるにはそこが必要だったというふうにおっしゃったかと思うんですが、では、百歩譲ってそこを認めるとすると、実はもう一回、付利の引き下げや、あるいは今回のマイナス金利を検討して実行できる段階というのはあったはずです。それはどういうことかといったら、第二バズーカのときですよ。

 このときに、この追加緩和の際に総裁はこういう発言をしているんですね。とにかく、「わが国経済は、デフレ脱却に向けたプロセスにおいて、今まさに正念場、クリティカルモーメントにあると言えます。今回、追加緩和を決定したのは、こうした考え方に基づくものです。」

 今のお話で、確かに第一バズーカのときには、ぐっと急にあれだけ質的、量的な緩和をして国債買い入れをやるんだから、そういう意味では配慮が必要だったかもしれませんけれども、この時点であれば、もうそれはそれこそなれてきたわけでありますから、この時点でクリティカルモーメントだとまで言うのであれば、ここで付利の引き下げとか、今回やったマイナス金利とかをやらないでとっておいたというのは、これはまたさっきの話に戻りますが、それで今やるというのは、これはやはり戦力の逐次投入だというふうに言われても仕方ないんですよ。

 この時点で検討したんですか。検討してやはりやらないということになったんですか。どうなんですか、これ。

黒田参考人 日本銀行の政策委員会、金融政策決定会合において、かつて、私が総裁になる前ですけれども、ある委員から、付利をやめたらどうかという提案があったことは事実であります。その際には、賛否両論を検討されて、結局それはせずに、〇・一%の付利を続けるということになっておったわけでございます。

 私が総裁になって以来、金融緩和を検討する際には、〇・一%の付利については、先ほど申し上げたような考え方で引き続き付利をしていく。そして、その中で、先ほど申し上げたような量的・質的金融緩和の拡大を二〇一四年の十月に決めたわけですけれども、その際も、付利の引き下げについては議論をしておりません。したがいまして、その時点ではそういったオプションは議論していなかったわけでございます。

 なぜ今回そうなのかということにつきましては、最近の状況に鑑みていろいろなオプションを検討しておく必要があるだろうということで、オプションを検討し、それを金融政策決定会合で議論をいたしまして、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和の導入が適当だということで、賛成多数で決定されたということでありまして、国会や記者会見等で、マイナス金利あるいは付利引き下げを検討しているかということにつきましては、その時点で検討しておりませんので、検討しておりませんというふうに答えてきたわけでございます。

古川(元)委員 でも、総裁、先ほどから言われているように、最初からあらゆる手段をずっと考えた上で、この時点でこれで必要十分だと言って決めてきたとおっしゃったわけでしょう。当然、この時点でそのことだって検討に入れて、そして判断をしたということでなきゃいけないんじゃないですかね。

 ずっと総裁がおっしゃっていることとやってきたことが、先ほどから申し上げているように、主観的には戦力の逐次投入じゃないというふうに言うかもしれませんけれども、客観的にやってきたことを見ていれば、最初のときにもそして二回目のときにも、それこそ先ほどから言うように、今まさに正念場でクリティカルモーメントにあると言うんだったら、そこで考えないんじゃなくて、付利の引き下げとかマイナス金利も含めて、ではここでやるという、それが状況の変化に応じた対応なんじゃないかなと思うんです。

 その後また状況が変化したというふうに言われますけれども、その第二バズーカのときにもこういう問われ方をしているんですね。「今回の緩和は必要かつ十分な緩和とおっしゃいましたが、二〇一五年度のCPI見通しを見ると、中央値で一・七%、かつ分布チャートを見ますと下振れリスクがあるような形です。これで本当に必要かつ十分なのかと疑念の余地もあるわけですが、」そういう質問があるんです。

 それに対して総裁は、「二〇一五年度の前半は、原油価格の下落が物価の下押し要因として働いていきます。そして、年度の後半にかけて、こうした下押し要因が剥落するもとで、需給ギャップの改善や予想物価上昇率の上昇を背景にして、消費者物価の前年比は伸びを高めていくとみられます。」その後ちょっと省略しますが、「一・九%という中央値から、一・七%に落ちたわけですが、それは主として原油を初めとする国際商品市況の下落によるものであり、そういったものは先程申し上げたように、年度後半に剥落しますので、十分この一・七%という見通しの中央値のもとでも、二〇一五年度を中心とする期間に二%程度に達する可能性が高い」、そういうふうに答えているわけです。

 そういう意味でいうと、もうその当時から、まだ原油価格とか下落するんじゃないですか。そういう懸念はあったわけです。指摘もされていたんです。しかしそれを、いや大丈夫だ、剥落するというふうに見ていたというのは、やはり今から考えれば、そのときの見通しが甘かったというふうに言われても仕方がないんじゃないかと思うんですけれども、どうですか、これ。

黒田参考人 これはIMFにしても多くの中央銀行にしてもそうですけれども、石油価格について独自の見通しというものを立てるということはしません。基本的には、市場の価格、特に先物の価格を見て、それを経済見通しの前提として置いて経済見通しをつくり、あるいは、中央銀行であれば金融政策を行っているわけであります。

 結果的に、そういった市場の見通しを前提にしたものが外れて、より石油価格が下落したことは事実ですけれども、各国の中央銀行としても、それは日本銀行としてもそうですけれども、石油価格について独自の見通しを立てるというそういった特別の根拠があるわけではありませんので、あくまでも、そういった石油の足元の平均的な価格と、先物市場で形成されている価格を前提にして見通しをつくるということにしております。

 経済見通しは、御承知のように、何らかの前提を置かなければ見通しができないわけでありまして、その場合に、各国の中央銀行やIMFも、石油価格については基本的にそういったものを使うというのがほとんどでございます。

古川(元)委員 いや、価格を想定しろということじゃないんですよ。しかし、下落が続くというそういうことも指摘されていたわけですから、やはりそういうリスクに備えた対応というのを、クリティカルモーメントだと言うんだったら、しなきゃいけなかったんじゃないですかと。そのリスクをやはり想定して、それが起きたときにどうするのか、そういうところの考えが足らなかったと言われても私は仕方なかったんじゃないかなと思うんですけれども、それが結果的にこういう、戦力の逐次投入というふうに客観的に見れば見られるような状況になってきている。それが、サプライズ効果も少なくなっている、そうした大きな要因ではないかと私は思います。

 時間ですから最後にちょっとこの辺をお伺いしたいと思いますけれども、総裁は、繰り返しいつも、金融政策、コミットメントが非常に大事だというふうに言っておられます。

 今、私、総裁のマーケットや国民に対するコミットメントが、ちょっと何か一番最初と変わってきているんじゃないかと思うんです。最初は、二%の物価安定目標を二年程度で実現する、これがコミットメントであったわけですよ。それはいいですか、総裁。

黒田参考人 日本銀行は、量的・質的金融緩和の導入当初から、物価安定の目標を二年程度の期間を念頭に置いてできるだけ早期に実現するということにコミットしておりまして、このコミットメントに変更はございません。

古川(元)委員 でも、二%は二年でというところは実現できていないわけですよ。実現できていないところをそのままこれは続けているということですか。

 それに、今回ので見れば、今回こういう最強の枠組みをつくった、必要があれば何でもやる。最初はこれで打ちどめだという打ちどめ感を出したわけです、戦力の逐次投入はしない。しかし、今回の宣言は、必要があれば何でもやりますよ。ですから、新たなコミットメントというのは、これは二%の物価安定目標の達成のためならば日銀はこれからも何でもやる、そういうコミットメントだというふうに理解してよろしいですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入した際から、経済・物価情勢についてリスク要因を点検して、物価安定目標の早期実現のために必要であればちゅうちょなく調整を行うということを申し上げておりまして、その点については変わりはございません。

古川(元)委員 時間ですから終わりますけれども、最後に一点だけ確認させてください。

 当初にはなかった、この達成のためならば何でもやるという部分を私は追加にコミットされたんじゃないかと思いますが、その点はどうですか。そこだけ聞いて質問を終わります。

黒田参考人 物価安定目標の早期実現のために必要であればちゅうちょなく調整を行うというのは一貫して申し上げておりまして、この点は全く変わりはありません。必要になれば追加緩和を含めて何でもやるということは、量的・質的金融緩和が始まって以来一貫しているわけでございます。

古川(元)委員 質問を終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 民主・維新・無所属クラブの鈴木克昌でございます。

 今、古川委員ととりわけ黒田日銀総裁のやりとりを隣で伺っておりまして、総裁、少し元気がないんじゃないですか、いや本当に。今の日本経済の、また日本の置かれておる状況を鑑みますと、もっともっと元気を出してばっちり言っていただかなきゃいけないというふうに思います。

 私は、ことしで七十二歳の初老を迎えておりますけれども、元気いっぱい、何とかこの国を変えていかなきゃいけない、こういう思いで燃えております。ぜひひとつ、そういう観点から御回答、御答弁をいただきたいというふうに思います。

 私からも総裁に、金融政策、特にマイナス金利についてお聞きをしていきたいというふうに思うんですが、まず、私は地方議会を長くやってきました、人生経験もあるわけですけれども、今回の日銀が創設以来初めてやったマイナス金利というものは、国民の皆さんにとってこれは本当にいいニュースなのか、悪いニュースなのか、そこのところがなかなかはっきりしないんですね。

 私は、ぜひひとつそういうことで御答弁をいただきたいと思うんですけれども、市場は大荒れです。詳しいことはもう申し上げませんけれども、先ほど来のお話のように、発表直後はサプライズ効果というのがあったわけでありますけれども、その後、いわゆる金融株を中心に下落を続けて、値幅が八百七十円を超えて乱高下をしたということであります。長期金利についても、二月九日には一時マイナス〇・〇三五%となるような状況でありました。

 これは私は極めて異常な状況だというふうに思うんですが、このような市場の現状について黒田総裁は、総裁が思い描いていたとおりに事が進んでいるのかどうか、そのところをまずお聞かせください。

黒田参考人 このマイナス金利つき量的・質的金融緩和というものは、先ほど来申し上げておりますとおり、日本銀行の当座預金金利をマイナスにすることによってイールドカーブの起点を引き下げて、大規模な長期国債の買い入れを継続することとあわせて、金利全般、イールドカーブ全体により強い下押し圧力を加えていくということを主たる波及経路として想定しております。

 この点、国債のイールドカーブはマイナス金利つき量的・質的金融緩和の導入以降低下しておりまして、政策効果はあらわれているというふうに思っております。今後、その効果は実体経済や物価面にも着実に波及していくというふうに考えております。

 なお、最近の国際金融市場の動向につきましては、原油価格の一段の下落に加えて、中国経済に対する先行きの不透明感などから、世界的に投資家のリスク回避姿勢がここに来て、私から見ますと、やや過度に広まっているように思います。そうしたもとで主要国の株価が下落し、ドル安・円高が進んでいるということであります。私どものマイナス金利が影響しているというふうには全く考えておりません。市場でもそういうふうに考えられてはおりません。

 日本銀行としては、ただ、こうした国際金融市場の動きが我が国の経済や物価にどのような影響を与えるかについてはしっかりと注視してまいりたいというふうに思っております。

 なお、私も実は七十一歳でございますが、これはダボスでも申し上げたんですけれども、中央銀行総裁としては、やはりコーシャスでないといけない。ただ、私自身、八年間、アジア開発銀行の総裁をやっておりましたので、開発金融に携わる経験からいうと、オプティミスティックでないといかぬ。したがって、私はコーシャスリーオプティミスティックであるというふうに申し上げましたが、そういった心がけは従来と全く変わっておりません。

鈴木(克)委員 よくわかりました。

 私も実は地方の市長を経験しておりまして、やはり首長というのは、言いたいこともある意味抑えていかなきゃいけないし、慎重に発言をしなきゃならぬというのは、立場は違いますけれども、よくわかりました。しかし、やはり元気にやっていくというのは必要なことではないかなと思いますので、よろしくお願いいたします。

 今、やった政策については間違いないけれども、一言で言えば、世界経済情勢が余りにしても悪いというか、そういう結果が出ているんだというお話でしたよね。

 ところが、これは某新聞でありますけれども、景気刺激の効果が不透明なんだ、こういうふうな捉え方を実はしているんですね、今回のマイナス決定が。それから、昨今の新聞の見出しを見ますと、「マイナスに潜む不安」「逆に不安を広げている」「世界不安 惑うマネー」「市場 リスク回避加速」「マイナス金利 影響さらに」「国内相場 不安定続く」、こういうような見出しが躍っているわけですよ。

 今回の、量的緩和にマイナス金利を加えたということは、これまでの中央銀行の歴史の中で恐らく最も強力な枠組みをしたんだ、こういうお話をされておるわけですね。そこに、いわゆる現実に捉えている部分と、それから総裁が思われている部分との乖離、ギャップがあるというふうに私は思うんですよ。

 その点については、どちらが正しいのかとは言いませんけれども、やはり世間の受けとめ方が、十分伝わっていないということなのか、そうではないのか、総裁、その辺はいかがですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げていますとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和の効果というものは極めて明瞭に出ておりまして、イールドカーブ全体を引き下げる、そういうことによって実質金利が下がっておりまして、経済に対してプラスの効果を及ぼすということでございます。

 ただ、委員御指摘のとおり、マイナス金利というものは、日本銀行に金融機関が準備預金として預金している部分のごく一部にですけれども、限界的にマイナス〇・一%かかるということでございまして、それがイールドカーブ全体を引き下げ、貸出金利その他にも影響を及ぼしていくということは当然考えられているわけでありますけれども、何か、マイナス金利が直接に国民生活に大きなマイナスになるというようなことは全く考えられません。

 ただ、御指摘のとおり、我が国では初めてでありますし、欧州の中央銀行は四つの銀行が既にもう何年かやっておりまして、その影響、効果というものもわかってきているわけですけれども、何といいましても、我が国では初めてのことであります。

 委員御指摘のとおり、この趣旨とかその影響、効果については私どもとしても十分説明をしていきたいというふうに思っておりますが、市場は比較的素直にというか、直ちにイールドカーブ全体の低下ということにきいてきたというふうに思っております。

鈴木(克)委員 今回の決定に至る過程を私はもう一度総裁に伺いたいんですが、この追加緩和を指示した時期を明らかにされたわけですよね。要は、ダボスに行く前に事務方に指示をして行った、こういうことをあえて記者会見でおっしゃったわけですよね。そのときに、帰国した後、仮に追加緩和を行うとしたら、どのようなオプションがあるか検討してくれということを私は言って行きましたと。

 ふだん、私もそんなに長い経験ではありませんけれども、余りそういう裏の話を、裏の話を表に出すというのもおかしな話ですが、ということは少なかったと思うんですが、今回そういうことをあえておっしゃった。この点は何かあるのかなと。

 とりわけ、本当に、一週間、十日前までマイナス金利はやりませんということを総裁はおっしゃっていたわけですよね。にもかかわらず、こういう形になったということで、何か、事務方に指示をした時点でもう既にマイナス金利導入ということを意識してみえたのかどうか、それからまた、なぜこの裏の話をあえて表に出されたのか、ちょっとそこの辺の経緯を私はお聞きしたいと思います。

黒田参考人 一月末の金融政策決定会合に先立って、一月二十一日の参議院の決算委員会におきまして、マイナス金利について御質問がありましたので、現時点で具体的に検討していないという旨の答弁を行いました。

 その後、一月二十九日の金融政策決定会合後の記者会見において、記者から、この答弁との関係で、マイナス金利導入の決定に至った経緯を問われたわけでございます。そこで、正直に、ダボス会議に先立って、仮に追加緩和を行う場合の具体的なオプションを検討するよう事務方に指示しまして、事務方からはオプションの一つとしてマイナス金利というものが示されまして、それについて一月末の金融政策決定会合においてさまざまな議論がありまして、議決によって賛成多数ということでマイナス金利の導入が決まったということでございます。

鈴木(克)委員 そうすると、今回あえて裏の話をされたのは、特に、聞かれて、その延長で答えたんだ、こういうことであるわけですね。

 いずれにしましても、私は、その決定の過程で何かあったのかなということをお聞きしたかったので、あえて、そう大した問題ではないかもしれませんけれども、質問をさせていただいたわけであります。

 さて、今お話にありましたように、政策委員、決定のときに結構反対意見が多かったんですね。五対四ですよね。ここが、「主な意見」ということで出されておりますので、私もずっと読ませていただきました。

 その中で、かなり慎重な意見が出たわけですよね。あえてちょっとそこのところを、前後を省略してその部分だけ申し上げますと、「国際金融資本市場の不安定な動向からリスクは下方に厚いが、ただちに政策対応が必要な情勢ではない。マイナス金利導入が市場にかえって政策の限界を印象づけてしまうことを懸念する。」それから、「「量的・質的金融緩和」を補完するための措置の導入直後のマイナス金利導入は、資産買入れの限界と受け止められるほか、複雑な仕組みは混乱・不安を招くリスクがあり、かえって、金融緩和効果を減衰させるおそれがある。」「また、マイナス金利導入は、金融機関の国債売却意欲を低下させ国債買入れ策の安定性を損ねる、金融機関の収益性をさらに悪化させ金融システムの潜在的な不安定性を高める等の問題があるため、危機時の対応策としてのみ妥当で、現時点では温存すべきである。」というような意見があったというふうに出ておるわけですね。

 そこで、今回のマイナス金利導入とそのタイミングについて私なりに考えますと、市場にかえって日銀の異次元緩和の限界を印象づけるおそれがある、懸念がある、もう国債などの資産買い入れには限界があるから金利政策にした、日本の金融情勢には危機が迫っているからマイナス金利を導入したのではないか等々の臆測を招くおそれがあった決定だったというふうに私は思うんです。

 このことについて、別に反対意見に対して総裁がどうのこうのということじゃないんですけれども、そういう全体の流れのニュアンスを感じられて、総裁はどんなふうな御見解を持たれているのか、御所見を聞かせていただきたいと思います。

黒田参考人 ただいま委員御指摘のような意見が出まして、「主な意見」として既に公表をされております。そういった意見もあり、また、この際リスクの顕現化を防ぐために直ちにマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入すべしという議論と両論あったわけでありまして、そういった議論が最終的に議決によって賛成多数でこういった決定がされたわけですけれども、そういう議論の経緯、流れは今後公表されます議事要旨でごらんになっていただきたいと思うんですが、この議事要旨は次回の金融政策決定会合で承認されてから出ますのでもうちょっと先になりますけれども、委員の御指摘のような意見が出たことは事実であります。

 ただ、私を含めて五名の委員は、金融市場の世界的な不安定な動きなどによって、企業のコンフィデンスの改善とかあるいは人々のデフレマインドの転換がおくれてしまって、物価の基調に悪影響を及ぼすリスクが増大しているということを踏まえると、そうしたリスクの顕在化を未然に防いで、二%の物価安定の目標に向けたモメンタムを維持するため、やはりこの際マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入することが適当であるという意見を述べまして、公表されておりますように、五対四という形ですけれども、賛成多数で決定されたということでございます。

鈴木(克)委員 日銀の中で本当にさまざまな議論の上で今回の決定があったということについては理解をいたしました。

 しかし、私は、日銀の伝統ということではありませんけれども、例えば合議制とか、それから反対派の意見を取り込んでいわゆる合意形成を進めるというようなやり方も伝統的にあったわけですよね。その辺のところが少し流れが変わったのかなというような気がしたものですから、あえてそのことをお尋ねしたということであります。

 さて、総裁に対しては最後の御質問ということになるかと思います。

 私は、今ここに、「マクロ・ストレス・テストのシナリオ設定について」という、これは日銀が出されておるものなんですが、これを持ってまいりました。こういう形で別冊にして公表されておるということなんですが、ここの中に書かれてある、いろいろなパターンを想定されておられる、二つの種類を。その中で、特に、いわゆる厳しい方のパターンを見て、これは新しい形の恐慌の前兆というか、そんな兆しを感じてみえるのかなとか、それから、驚愕の未来図といいますか、これは本当にこういうふうになってしまうのかというような、ちょっと私、見てびっくりしたわけなんです。

 そのことは、そういうふうなありとあらゆることを想定して物事を判断しているんだという一つのあかしにも逆になるわけでありますが、私は、アジア経済の成長が減速するシナリオの中で、こういうことなんですね。「資源価格の下落を通じて資源国経済にも悪影響を及ぼす」、それから、「海外投資家のリスク回避姿勢が高まり、わが国の株式市場や不動産市場にこれまで流入してきた投資資金が引き揚げられ、株価や不動産価格が下落する。」それから、「資産効果を通じて設備投資や個人消費などの国内需要を減少させ、この面からもわが国経済に下押し圧力がかかる。」こういうことが要約すると書かれておるわけですが、これを見まして、今まさに我々現実に目の前にしていることと余りにも近いんじゃないのかなというふうに私は見たわけです。

 それで、こういうタイミングでいわゆるマイナス金利の導入というのは、私は、先ほど申し上げたように、日銀の緩和策の限界、それから金融情勢悪化の予防策のように市場に印象づけてしまったのではないのかな、こんなふうに思えてならぬわけですね。現実に、市場は今荒れています。

 先ほども議論がありましたけれども、二年で二%という、ある意味大見えを切った手前、もう後戻りもできないということで、デフレ脱却どころか、逆にデフレ不況に向かってしまっているのではないか。げすという言葉を使ってはいけないかもしれませんけれども、げすの勘ぐりでいうと、そんなふうにすら思えてくるわけです。余りにしてもここのシナリオが現実を映しているものですから。

 そういうことで、これに対してお聞きしたいのは、総裁は、今回のマイナス金利導入によって物価安定目標の実現が近づくというふうに確信をされておるんですか。その点、まず総裁からお聞きしたいと思います。

黒田参考人 その御質問にお答えする前に、ストレステストの内容について若干補足させていただきますと、毎年二回、金融システムレポートというものを発表しておりまして、その中でストレステストに触れております。今回は、さらにその別冊でかなり詳しく示しておりますが、これはあくまでも、仮にこういったストレスがかかった場合に金融システムがどのように影響されるかということでありまして、今申し上げたようなストレスがかかっても、我が国の金融システムは資本を十分持っているので、資本不足などによって重大な影響が起こるということはありませんということを示しているわけでございます。

 ただ、もちろん、非常に大きなストレスがかかりますと収益には影響する可能性がありますということでありますが、日本の金融システム全体として十分な資本を持っているということがそのストレステストで示されているというふうに思います。

 それから、御質問の、マイナス金利を今回導入したことによって物価安定目標の実現が近づくのかということでありますが、先ほど来申し上げておりますとおり、イールドカーブ全体を引き下げて実質金利を引き下げ、これによって家計や企業の経済活動を刺激するということで、基本的に経済にとってプラスの影響が出てくるということで、当然二%の物価安定目標の早期実現に資するものであるというふうに確信をしております。

鈴木(克)委員 確信をしておるというふうに、今力強く、はっきりおっしゃったわけでありますが、私は、出口はますます遠くなっているのではないかなと。したがって、私は、極端なことを言えば、今回のこのマイナス金利がもたらす負の影響をよく精査していただいて、場合によっては撤回も排除しないというぐらいの姿勢で臨んでいただく必要があるんじゃないのかなと、現在のこの状況を見ていったときには非常に心配をしておるところであります。

 そして、この質問の最後に大臣にちょっとお伺いをしたいんですが、一連のマイナス金利の導入に対する評価、それから、今回の日銀の決断に対して政府としてどう受けとめられたのか、そのところをコメントいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これは、デフレ経済も敗戦後七十年初めてなら、マイナス金利も同様に初めてのことを導入されておられますので、こういったもので市場が上がったり下がったりするというのは、もうこれはさまざまな要因でこの世界は動きますので、私どもとしてその評価を具体的な形でコメントするというのは、いつもは避けさせていただいておるということです。

 そういった意味で、今回のマイナス金利につきまして、これまで、いわゆる八十兆とかいう量の話と、それからJ―REITとかCPとかそういった質の話、そしてこのマイナス金利というので、いわゆる三つの次元で、追加的な金融緩和というのを可能にしたスキームを示されたということであって、これにつきましては、当然のこととして、五対四で分かれたという話が出ていましたけれども、内容をいろいろ御議論された上で結論をされたものだと思って、適切な判断をされたものなんだと私どもとしては評価をいたしております。

鈴木(克)委員 それでは総裁、どうもありがとうございました。ここで御退席いただいて結構でございます。

 では、質問を続けさせていただきますが、国債金利低下の影響について大臣にお伺いをしていきたいというふうに思います。

 言うまでもありません、先月の二十九日に日銀がマイナス金利導入を決めて以来、国債の金利の低下が続いておるということであります。

 現在、金融機関が日銀に預けているお金は約二百五十兆ということなんですが、これに〇・一%の金利をつけておって、二千億円程度の利息がついておったということであります。

 日銀は、影響を考慮されて、マイナス金利は今後ふえる分だけにしているということでありますが、先ほど来の議論のように、マイナス金利の影響というのは非常に広がっているわけであります。とりわけ国債への影響は顕著でありまして、銀行や生命保険会社などは、資金運用のための金利がプラス圏にある長目の国債の買い入れ需要を高めているというふうに報道されております。

 このような中で、先ほどもお話ししましたけれども、新発十年物の国債の利回りが史上初のマイナスを記録したということであります。

 この国債市場の状況について大臣はどのような認識をお持ちなのか、また、国債のマイナス金利のメリット、デメリットはどのようなことがあるのか、御教授いただきたいと思います。

麻生国務大臣 国債の金利につきましては、これは、経済とか財政の状況いろいろありますので、海外の市場動向も含めましていろいろな要因で、その背景に市場というものは決まっていくんだと存じますので、これについてのコメントは差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げさせていただければ、いわゆる国債の金利が低下すればその時点における調達コストが低下するわけですから、それはもう間違いなく確かなことだと思います。一方で、著しい低金利ということになりますと、国債の取引自体というものが限定されるということになり得るということもあるんだと思います。

 いずれにしても、金利環境の変化というものによって、投資家の動向とか、また、市場の流動性の状況が変化するということも考えられるんだと思いますので、引き続き、市場との密接な対話というものが我々としても必要なんだと思いますので、市場の動向とか状況とか投資ニーズ等々には、常にそういったものに敏感に、きちんとしたアンテナを立てて把握をしておかねばならぬ、そう思っております。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、ある意味では異常というか、本当に問題のある状況だと私は思っておりますので、この部分については、やはり今後本当に政策上でもしっかりと対応をしていっていただく必要があるのではないかな、このように思っております。

 次に、ちょっと視点を変えまして、財政健全化ということについてお尋ねをしていきたいんです。

 健全化については、税収の上振れ分の使い道ということになってくるわけですよね。政府は、五年間の赤字国債の発行を可能とする特例公債法の改正を御提案されておるわけでありますが、きょうはそのことと別に、いわゆる、釈迦に説法ですけれども、財政法第四条第一項には「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」こういうふうにある。これはもう本当に基本中の基本でございます。ところが、ただし書きで、公共事業や出資金及び貸付金の財源として、いわゆる建設国債の発行は認めているということであります。

 基本的には赤字国債はだめだということなんですが、そうはいっても、現実の予算を組んでいく上において、やはり発行せざるを得ない。それが冒頭申し上げた特例公債改正法ということになるわけであります。

 この赤字国債の残高をずっと見ていきますと、平成二十八年度末には五百五十五兆円ということになるわけであります。これはまさに、将来世代にツケ回され、将来世代がその負担を負うことになるということであります。来年度予算の税収見込みは五十七・六兆円というふうに聞いておりますので、そうすると、そのほぼ十年分、十倍、今、赤字国債だけで五百五十五兆円あるということなんです。来年度も二十八・四兆円の赤字国債を出すということなんですが。

 そこでお伺いしたいのは、税収の上振れ分の使い道ということであります。

 仮に見込み以上に税収が上振れすることがあったとすれば、当然、赤字国債発行額を減らすということだというふうに私は思うんですが、現在、いろいろと、その上振れ分をどうのこうのという議論が騒がしいわけなんです。

 当初の見込み以上に税収がふえた場合、本来財政法で禁止されている赤字国債の発行抑制に私は充てるべきだというふうに思うんですが、大臣はどういうふうにお考えになっているのか、御答弁いただきたいと思います。

麻生国務大臣 鈴木先生、御指摘がありましたように、これはもう、当初予算を作成いたしました後の状況変化によって実際の税収が予想しておりました額を上回った場合に、補正予算においてこれを財源として歳出を追加するということはあり得ます。

 しかしこれは、経済情勢が悪化したとか災害が起きたとか、そういったような緊急に対応する必要がある場合に限っておるというのは御存じのとおりであって、財源があるからといって、今のような状況下の中において、無駄な歳出が新たに計上されることがあってはならぬということは当然のことなんだと思っております。

 したがいまして、補正予算の作成とか編成に当たりましては、事業の必要性とか緊急性とかいうのをよく考えて計上するんですけれども、残った財源につきましては、公債金の減額、いわゆる借入金の返済ということに充てるなど、財政健全化にしっかり配慮しているところでありまして、二十六年度でも公債金の減額幅は七千五百七十一億、二十七年度補正でも公債金の減額に四千四百四十七億だったかを充てさせていただいておりますので、そういった姿勢できちんと対応していかねばならぬものだと、我々もそう思っております。

鈴木(克)委員 確かに、厳しい経済状況に陥った場合にはそんなことも言っておれないということかもしれませんが、やはりこれは、私はいわゆる財政健全化の基本中の基本だと思うんですよね。

 ここのところを、いろいろな理屈はあるでしょう、いろいろな理屈はありますけれども、やはり、きちっとやっていっていただくということが本当に将来のツケを減らしていく、これは我々の責務だというふうに思いますので、どの部分をどういうふうにしろということではありませんけれども、上振れ分についてはまず返していくんだという基本を何度も何度も確認をしながらやっていっていただきたいなというふうに私は思っておりますので、そのことを改めて伺ったわけでございます。

 次に、国際金融について何点かお話を伺いたいのですが、まず、IMFの第十四次の増資の発行についてお伺いしたいと思います。

 これは麻生大臣が総理のときにかかわられたということもありまして、ここでもちょっとお伺いしたいのですが、一月二十六日にIMF第十四次増資及びIMFの改正協定が発効した。

 今回のIMFの改革については、今申し上げたように、大臣が総理のときにかかわられたということでありまして、民主党政権の二〇一〇年に合意がなされ、二〇一一年に国会で承認をしてもらったということであります。

 ただ、アメリカが批准をしなかったということでおくれてきたわけでありますが、今回、米国での批准が行われたということで増資が行われることになったわけでありますが、総理のときに携わられたこのことについて今大臣がどんなふうにお考えになっているのか、お聞かせください。

麻生国務大臣 当時はリーマン・ブラザーズという会社の破産ということによって世界じゅうで金融収縮が起きて、世界経済が一挙にという時代にありましたものですから、G7でしたか8でしたか忘れましたけれども、そのときに、私の方からIMFに、日本から十兆円ローンする、融資するという話をさせていただいて、当時、一千億ドルということになろうかと思いますが、それをローンするという話をしたのが始まりです。

 我々としては、IMFが対応するためには、これだけの金融状況に対応して資本をふやさぬとどうにもならぬという当然の話をして、みんなで支えておるわけですから、筆頭株主アメリカ、日本それぞれちゃんと、きちんと増資を応じる、融資ではなくて増資というものを応じるという話を当時させていただいて、野田総理のときにこれがきちんと批准された形になって以来五、六年たったんだと思いますが、これは、残念ながら、アメリカの中では、オバマという人に対する反発もいろいろありましたものですから、冗談じゃないということで、議会で全く批准される状況にありませんでした。

 国際金融の世界で、私はかれこれ連続三年少々出ているんだと思いますけれども、ずっとこの話題で、何とかしろというので、これはアメリカの財務長官がやり玉に上げられるというかなり針のむしろの状況が私が知っているだけでかれこれ三年少々続いておるんだと思います。

 今回、こういった形で、少なくとも改革は、二〇一〇年のときの約束が今発効するということになったというので、これはIMFの正当性とかいわゆる実効性とかいうことを考えたときには、これを強化する意味での改革というものが野田総理のときから数えて五年ぐらいで実際にできるということになったのは、私どもとしては大変歓迎をすべき、世界でも歓迎をすべき国際金融システムというものがより安定化に進むということを意味する上からも、今後のこの資金をバックにしたIMFの役割をさらに期待したい、そう思っております。

鈴木(克)委員 そこで、続いてお伺いをしたいんです。

 今回の増資で中国や新興国の出資比率や投票権が引き上げられたということであります。新興国のシェアが高まるということは、我が国のシェアが相対的に低下する、こういうことなんですが、新興国のシェアが増加するというのは歓迎すべきことでもあるわけですけれども、逆に国際開発金融機関での我が国の立場が低下をするということについて、やはり我が国は一定の影響力を保っていく必要が私はあるというふうに思うんですが、その点について、新興国のシェアがふえ、我が国の力が少し落ちていくということについての御見解をお聞かせいただきたいと思います。

麻生国務大臣 二〇一〇年の改革において各加盟国の出資比率というのを、みんなあのとき大分がちゃがちゃいろいろあったんですけれども、加盟国間で二〇一〇年に合意されたんですが、この合意も、もっと我々の分が上げられるべきだと主張していた国も、今はもっと下げてもらった方が助かるぐらいの経済状況になっている国もあったりして、なかなか今は難しいなと思っております。

 しかし、いずれにしても、あの当時決めたものに比べて、アメリカが一番、日本が二番という状況は今回もかわらないんですが、三番がドイツから中国にかわって、ドイツが四番にかわったりなんかしております。同時に、インドとか、それから、もう少し下にいたブラジルとかいうのがそこそこ上がってきたりなんかしておりますので、当時で下のインド、ロシア、ブラジル等々が少し上に上がってきたかなという感じがしますので、新興国もこういったものに対して大いに発言を増したいという気持ちもあるんだと思います。

 そういったようなことに関しては、こういった国際金融というものの重要性というのにいわゆる理解が出てきているということは、私はいいことだ、大変喜ばしいことだと思っております。

鈴木(克)委員 そこで、国際金融についてさらにお伺いをしていきたいんですが、AIIBであります。

 AIIB、一月十六日に開業をいたしました。これは、AIIBが五十七カ国の加盟によって開業したということであります。当然、主要メンバーは中国なんですが、その中国の経済が減速をしておる中で開業したということであります。

 このことについて、とりあえず大臣の御所見、御感想をいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 アジアには、御存じのように、膨大な社会資本、いわゆるインフラストラクチャーというものに対する需要があるというのははっきりしておりますので、それに応えていかねばならぬというのは、これはアジアの経済をさらに促進していくためには重要な課題だと。需要がある、それに応えていかねばならぬということが私どもとしては大事なので。

 その意味では、アジアン・インフラストラクチャー・インベストメント・バンクでしたかいうのができるという話なので、国際金融をやっていかれる新しい機関ができるということは、これはスタンダードがあります、基準がある程度ありますので。

 こういったインベストバンクというのは世界じゅうに今幾つありますか、二十、二十一ぐらいあるんだと思いますが、有名なところで世銀とかIMFとかアジア開発銀行、先ほどの黒田総裁のおられたADBとか、ヨーロッパとか、いろいろあるんだと思いますが、こういったようなものというのは、それぞれのスタンダードをきちんとしておりますものですから、信用が高い。結果として、金利も物すごく安く抑えられるという形になっているんだと思いますので、そういったものをきちんとクリアしていくということがすごく、この新しい開発銀行というのは、もう世界にいっぱいありますので、そういったレベルから、きちんとそういったスタンダードをクリアされるような銀行になっていけるということを私どもとしては期待いたしております。

鈴木(克)委員 基本的なお考えはよくわかりました。

 それで、またちょっと視点を変えてお伺いをしたいんです。

 AIIBとそれからADB、アジア開発銀行と協調融資ということが検討されておる、また、案件によってはそうせざるを得ないのもあるというのはわかるわけですけれども、要するに、AIIBのガバナンスが非常に心配だ、確立されていないんじゃないかという中でADBと協調融資をしていくということは、やはりそこにリスクが出てくるのではないのかなというふうに思うわけですよ。

 したがって、ADBの主要国である我が国として、AIIBとの協調融資についてどのように基本的に考えていかれるのか、お聞きしたいと思います。

麻生国務大臣 アジア開発銀行、これは日本とアメリカが株主としては大きいんですけれども、長い実績もありまして、少なくとも、融資に当たっての審査能力というものはかなり高いと思っております。事実、我々は、黒田さんの前には千野さん等々、大蔵省財務官等々の経験者をずっと送り続けてきて、ここまで、アジア開発銀行というものをあれだけ信用できる開発銀行に育て上げたんだと思っております。

 新しく出てくるところとの間で、例えばスタンダードでいきますと、一番話が込み入るのは、審査能力がありますかと。金を貸す、日本の国内においても同じことです。鈴木克昌という人間、その国の、国家の代表、その人の信用、プラスその国の何とかというと、それは蒲郡ではあるかもしれぬけれども、どこかではわからぬですからね。

 だから、そういったところをきちんと見ておかないと、勝手に貸しておいて、ほかの国も、ちょっと待て、そんなに貸したってあそこは返せないぞと言って、ADBとかIMFとか世銀がとめているのに、AIIBだけがフライングぎみにわあんといって、結果として、向こう側はそれに対応ができなくて破産したということになりますと、自分たちだけでそれをかぶってくれればいいですが、一緒に出していたこっちも被害をこうむるというのは、何を言っているんだ、あのときとめておけばこんなことにならなかったじゃないかということになりかねません。

 そういった意味では、協調融資をするに当たっても、アジア開銀が審査して、これならというのと一緒に、よく話ができ上がった上で協調融資をするというのであれば、それは不足した分を、もう少しあれば、あと数億ドルあればもっとこれもできてやれるのにというようなところもありますでしょうから、そういったことを考えますと、今言われたように、AIIBとADBがうまいこといって協調融資をできるということになるというのは、私どもとしては望ましいことではないか。

 問題は、一人だけぱっと走られると話が込み入っちゃうというところが後々出てきますので、そこのところが、ほかの国も、大丈夫ですかというのが、一番心配しておるところであります。

鈴木(克)委員 我が国のスタンスといいますか、大臣のスタンスというのはよくわかりましたので、当然、ADBにおかれましても今の御発言を注視していただいて、慎重に、大きな誤りのないように進めていってもらうというのが大事じゃないかな、このように思っています。

 それで、ちょっと視点を変えるんですが、財務省のホームページ、これがつながらなかったということです。

 きょうの報道にも出ていますけれども、一月三十一日の日曜日の深夜から財務省のホームページがつながらなくなった、実際、二月一日にはホームページが閲覧できず、二日の火曜日に正常に閲覧できる状態になったとのお知らせが出たそうだが、私は五日に登院して、ようやくホームページの閲覧ができるようになったということであります。

 ましてや、この間、一月二十九日に日銀が例の、初めてのマイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入したということで、国債の情報やら、財務省のホームページに国民の関心が非常に高い、そのときにいわゆる財務省のホームページが見れなかった、つながらなかったということは、非常に大きな問題ではないかなというふうに私は思っています。

 報道によりますと、国際的ハッカー集団のアノニマスが関与を認めるというふうになっていますが、ホームページへの攻撃を示唆する記述をしておるということでありますが、したがって、外部からの攻撃であろうということはわかるわけでありますけれども、いずれにしましても、営業日にして四日間、ホームページが閲覧できずに、国民にとりわけ今大事なときの情報が提供できなかったということは非常に問題があるというふうに私は思っております。

 まず、復旧までに四日なぜかかったのかなというところをおわかりであれば御答弁いただき、また、今後、セキュリティー等、非常に難しい部分もあるかもしれませんけれども、やはり対策をしっかりやるという意味で、どのようなことをお考えになっているのか、御答弁をいただきたいと思います。

坂井副大臣 御指摘をいただきましたように、一月三十一日の夜から財務省のウエブサイトが閲覧できない状況になっておりました。アクセスの集中によるということでございました。

 財務省といたしましては、ちょうど深夜二十四時ごろ確認をいたしまして、二月一日の月曜日の午前中に公表させていただいているところでございます。現在は正常に閲覧できる状態になっております。

 また、事実関係ということで申し上げますと、ウエブサイトの改ざんでありますとか、それからウエブサイト上の、ウエブサイト上というのは情報流出ですね、出てはいけない情報が流出をしたということは認められておりません。

 その対応でございますが、御指摘いただきましたように、この大事な時期にウエブサイトが閲覧できないという状況は大変よろしくない状況でございまして、対策は今とっておりますけれども、セキュリティーの観点から、こういう対応をとっているということまで明らかにいたしますと、またそれへの対応を相手側にとられてしまう可能性もございまして、この点は、具体的なことに関しましては回答を差し控えたいと思っております。

 しかしまた、広報対応として、ウエブサイトでどうしても閲覧ができない、見れないということに関しましては、ウエブサイトがつながりにくい状態であった期間中、ツイッターでありますとかフェイスブックといったものを活用いたしまして、国民の皆様に向けての情報発信を行っております。実際、ツイッターを見ていただきますと、通常ではツイッター上には載せていない情報までその期間はツイッターに載せまして、情報発信を行ってきたということでございます。

鈴木(克)委員 いずれにしても、やはりあってはならないことでありますので、その対策を、技術的なことは私はよくわかりませんけれども、そのようなことのないように、きちっと省内で検討し、これは省のみならず、いわゆるネット社会の大きな問題だというふうに思っていますので、その辺のところをしっかりと対応していただくようにお願いをしたいと思います。

 恐らく質問の最後になってしまうかもしれませんが、アベノミクスの効果の再検証ということで、具体的には、実質賃金が四年連続減少しているということについて大臣の御所見をいただきたいと思うんです。

 アベノミクスについては、企業収益は経常利益で見れば史上最高だ、それから、有効求人倍率は上がって、賃金も、ベアを含めて所得等は上がっておる、こういう認識を大臣もおっしゃっていますし、そういう御認識かというふうに思うんですが、問題は、これも言われておることですが、その積み上がった内部留保やキャッシュフローが本当に働いている皆さんなんかにおりてきているかということであります。アベノミクスを実感できていないというのが、いわゆる一般の労働者の皆さんだというふうに私は思っております。

 二月八日に厚生労働省が公表した毎月勤労統計調査の二〇一五年の結果、これは速報でありますけれども、名目賃金は二年連続で伸びたものの、実質賃金は四年連続のマイナスになったと。すなわち、賃金の上昇を働く皆さん方が実感できない、できる水準になっていない、できないということなんですね。とりわけ、パートの皆さん方が三〇・四六%と過去最高を記録して、非正規雇用が拡大しているというのは、もう言うまでもありません。

 そこで、雇用形態が不安定、そして実質可処分所得がふえない、こういう状況で日本経済が上向いていくということは私はあり得ないというふうに思うんですが、実質賃金が伸び悩んで、アベノミクスの効果が労働者に行き届いていないという現状について、大臣はどのような御所見をお持ちでしょうか。

麻生国務大臣 御存じのように、これは名目GDPが約二十八兆、九兆ぐらい伸びておりますし、就業者数も、百万人を超えて百十万人ぐらいになっていますし、昨年の賃金の引き上げ幅というものを見ましても十七年ぶりの高水準等々、もう経済の好循環が確実に生まれているということは事実なんだと思っております。

 今言われましたように、いろいろな点を言われ、それは立場がありますので、こういう面もある、ああいう面もあるという、それは全然反対するつもりもありませんけれども、今までは名目ですら下がっておったんですから、その名目は一応上がっておりますから、その部分は随分変わってきたことになってきているんだとは思います。

 問題は、鈴木さん、そっちよりは、連合所属の組合員は給料が上がっている分だけまだいいですよ、僕に言わせたら。それより、リタイアしている人たちの方がよほど問題で、その人たちの方が、金利は下がって、そして預貯金というものがいわゆる金利は全然生まないという話になってきているわけですから、そういった中でという話の方がよほど問題なんだと、私にはそう見える。

 したがって、企業の、まずは労働しておられる方々の賃金が上がっていくためには、企業がもうからないと、また生産性が上がらないと、企業はそういうものを出そうにも出せませんから、そこを出そうという話でいろいろやってきたんです。

 問題は、その結果として、企業は多額の、いわゆる業績、経常利益でいけば極めて上の、高いものを出しているにもかかわらず、その得た利益が企業の中に蓄積して内部留保として、まあ、去年の数字がまだ出ていませんのであれですが、その前の二年間を見ましても二十四兆五千億とか二十五兆とか、かれこれ五十兆近い金が、三百何十兆合計で積み上がっておるというところが、GDPが二十八とか言っているのに企業の内部留保は五十兆ということになってくると、その利益が賃金として、もしくは国内における設備投資として、もしくは株の配当としてそういった内部留保が外に出ていくということにならないと、これは皆さん方、皆さん方というのは、経営者側はいわゆる税金を安くしろとか言うけれども、安くして純利益がふえた分を何するんですか、またためるんですかと。何のために金をためるんですか。そこが目的として明確になってきていないと、私どもとしてはそんなものにはとても応じられませんということで、企業の法人税の引き下げという話には、それはその分だけほかのものでちゃんと出すものも出していただかないと、我々としても安易に法人税を値下げすることはできませんと。

 いろいろ長いことやりとりがありましたけれども、結果として、私どもとしては、外形標準課税等々、大企業に関してはやらせていただくなど、ほかにもいろいろありますけれども、話をやらせていただいて、今、事が進んでいるんですけれども。

 今、鈴木先生の御指摘されているのは、全くそこの点は正しいのであって、企業側も、さっきのどなたかが聞いておられた、古川先生だったか、企業のマインドの話でいくと、やはり経営者のマインドもまだ頭は二十年固まったデフレで、あのころは、もうけた金をじっと使わずためておきさえすれば、物価が下がっていきますから、企業の金の価値は上がったんですよ。だから、ため込んでおくというのが正しい経営姿勢だという意識なんだと思いますけれども、変えてもらわなければいかぬというのが私どもの言い方であります。

 今そういった話で、これは少々時間がかかるんだとは思いますけれども、私どもとしては、それが給与にはね返るなり賞与なりなんなり、形はいいですよ、年間の所得として、ベアとは言いませんけれども、少なくとも、いろいろな形での賃上げにつながっていく、賞与として、形はいろいろあるでしょうけれども、そういった形としてやっていただきたいという話、私どもとしては。

 本来、これは連合の仕事を我々がしているような感じなので、何となく、ちょっといま一つ腑に落ちないところはありますよ。我々、選挙で応援してもらっていませんからね。だから、ちょっと違うんじゃないの、言うべきは、民主党が言われるせりふを俺たちがやっているのはおかしいんじゃないのと面と向かって何回も言い合ったことがありますから、よく向こう側も知っていますけれども、そういった話をあからさまに二人で話し合わないと、両方とも黙っているだけでは事は動いていかぬ、私どもはそう思っております。

鈴木(克)委員 まだまだこの議論をやりたいので、また後刻、時間をつくっていただけたらと思います。

 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。落合貴之君。

落合委員 維新の党、落合貴之でございます。

 民主・維新・無所属クラブの時間の範囲内で質問させていただきます。先ほど質問に立った鈴木先生の半分の年齢ですが、鈴木先生よりも元気よくやっていきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 まず、昨日は祝日でしたので、この件、事前通告はしていないんですが、きのう、欧米の外国為替市場で相場が急激に円高に振れました。一時一ドル百十円台をつけました。その後、急に速いスピードで二円程度値を下げたわけですが、これはいろいろと政府、日銀が介入した、しないということが言われていますが、実際には介入をしたんでしょうか、していないんでしょうか。

麻生国務大臣 御存じかと思いますが、この種のことで政府がコメントをすることとか、そういったことを述べるということはありません。

落合委員 ありがとうございます。そういうお答えであろうとは思いましたが、本来の質問を続けさせていただきます。

 本日、財務金融委員会で私は初めての質問ですので、今後の質問にも備えまして、基本的な見解や姿勢についてお伺いをできればと考えております。

 まず初めに、金融行政等について質問させていただきます。

 一月二十九日、日銀のマイナス金利つき量的・質的緩和が発表されました。マイナス金利政策の導入はさまざまな金融機関にも大きな影響を与えるものと考えられます。マイナス金利政策下での金融行政のあり方について御見解を伺えれば、そのあれで質問をさせていただきます。

 まず、都市銀行、メガバンクについてですが、今回の金融政策変更後のメガバンクの財務のストック及びフローへの影響をどのように分析されていますでしょうか。

麻生国務大臣 マイナス金利の導入につきましては、これは基本的には、金融機関というものにいらしたんだと思いますので、メガバンクの一つだったな、たしか三井住友でしたか、あなたの場合は。金融機関の収益というものを過度に圧迫するということによってかえって金融仲介機能を弱めるということがないようにしながら、当座預金はわかりますよね、日銀の当座預金のある一定の残高まではプラス金利、〇・一だと思いますが、またはゼロ金利を適用するものと承知しております。

 それで、御指摘のマイナス金利の導入は、それを受けた金利の動向が、いわゆるメガバンクのフローとかストックに与える影響ということは、これは個々の業務内容や資産構成に応じてさまざまだと思いますので、一概に、三井はいいけれども三菱はだめとかそういうようなことを言えることでないんですが、一般論として申し上げれば、メガバンクを初めとする金融機関に対して、資金の調達コストというものの低下とか、保有しておられます国債の評価というものに益が発生するということなどの影響が出てくる一方、金融機関の貸し出しなど、利息収入というものの低下とか、運用手段というものは減少します影響が出るなど、いろいろ両面考えられるんだと思います。

 いずれにいたしても、金融庁といたしましては、引き続き、検査とか監督とかいろいろな形を通じまして、金融機関の動向というものについてしっかりモニタリングをしておく必要があろうと考えております。

落合委員 では、現状では、収益がプラスになるかマイナスになるか、これははっきりとは言えないということでよろしいですね。

麻生国務大臣 銀行によって運用の仕方等々もいろいろあろうとは思いますけれども、プラス、マイナスを今の段階で申し上げることは難しいと存じます。

落合委員 金融機関もいろいろな財務状況それから経営業態がありますので差があると思うんですが、特に地方金融機関、地方銀行ですとか信用金庫ですとか信用組合、これは、銀行の国内業務の収益の柱というのは、金利、それから運用益、手数料収入の三本柱ですが、メガバンクと比べて地域金融機関の方が金利収入や国債のクーポン収入への依存度が一般的には高いということで、この日銀のマイナス金利政策発表後、金融機関の保有している債券の価格は上がってはいますが、利ざやが下がっている。この影響を受けやすいのではないかと考えられると思います。

 長期プライムレートも、最低の一・〇%に今なりました。東京銀行間取引金利のTIBORも十年ぶりの水準になっています。これを、ここ数年どういう流れで来ているのかなと見てみますと、二〇〇九年にもう既に利ざやが平均値で〇・二九%しかない。昨年の三月末で〇・一七%しかない。これは大変低い数字です。

 これは、利ざやを収益源としている地域金融機関にとってはこのマイナス金利の導入、収益を圧迫する要因に大きくなる可能性があるというふうに言えると思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これはメガバンクも基本的には同様なんだと思いますが、メガバンクも内容によって、地域の金利差でやっているところとか、インターナショナルでやっている分の多いところとか、銀行によって違いますので、メガバンクもほぼ同様なんだと思いますが、基本的に地域金融機関というものに関して言わせていただくと、先ほど申し上げましたように、地域のいわゆる資金の調達コストが低下するとか、もちろん保有国債もありますので、その保有国債に評価益等々が発生するということは当然なんですが、傍ら、今言われましたように、貸出金利の利息の収入の低下とか、運用手段が減少するということの影響は、これは間違いなく出てくると思いますので、そういった意味では、基本的には、メガバンクと地域金融というか、地銀、第二地銀を含めまして信用金庫、信金といったもののあれと大きな違いは、基本的な違いはないんですが、いずれにしても、そういったようなものによって収益がかなり圧迫される。傍ら、人口も減ったりしたりいろいろなものが今重なっておりますので、地域の中小の金融機関にとりましては厳しい状況にあろうと思います。

 私どもとしては、預かり金利というか、日銀の当座預金の減る分というのは、ほとんどそういったところの出てくる額も少ないんですけれども、そういったところは、地域に一番密着をしておられる方々が、今、地方の企業等々に関する融資に関しましては、これまでのような担保とか土地とか不動産とか、そういうもの以外にいろいろな企業が新しいものに挑戦をしておられるのがいっぱいありますので、そういったようなものに関して、地域において一番密着をしておられる方々なものですから、転勤がほとんどないという例もあるんですが、そういったこともありますので、メガバンクとは違った意味でそういったところにおいて収益を上げていくという方向でやりたい、そう言われる方もおられますので、そういった方々の意欲に期待をいたしております。

落合委員 利ざやに頼っている金融機関は、環境が厳しくなってくるので多様な収益源を確保する必要があるというお話でしたが、マイナス金利を発表して、十六日から実施をされて、この次、さらにマイナス金利政策が深化していく可能性もあるというふうに思います。

 マイナス金利政策が長く続いていくと、やはり、地銀、信金、地域金融機関にとっては苦しくなってくる、メガバンクもだんだん苦しくなってくる。こういう中で、有権者にとっては、自分の預けている預金の金利、また、借りている金利が金融機関の判断でマイナス金利になるという可能性があるのかどうかという心配、懸念というのもお持ちの方がいるのではと思います。

 今すぐそういうことが行われるということはないでしょうが、今後、仮定の話として、銀行が預かっている預金や貸し金にマイナス金利を導入することを個別の金融機関が決定すると、その場合、今は自由金利ですから、個別の金融機関の判断は金融庁としては容認するということでよろしいですね。

麻生国務大臣 基本的には、今御指摘がありましたけれども、今、世の中は金が足りないのではなくて、金はある、需要がないというのが今のデフレという状況において言えることだと思いますので、しかも、これは日本だけに限らず、総じて先進国は皆、金融の置かれている状況はほぼ同様の状況にありますので、各国みんな、金利がどんと下がっている。

 御存じのように、国債を大量に発行して担保がほとんどふえていなければ、当たり前の話ですけれども、金利は上がっていくのが当たり前なんですが、日本の場合はずっと下がっていってマイナス、そういった形まで来ておりますので、我々といたしましても、この状況がずっと続くとは思いませんけれども、経済状況が今のままがずうっと行くような状況に仮になったとすれば、そういったことがあり得ないということを申し上げるだけの判断はありませんし、これは自由裁量ということになっておりますので、それは各銀行において判断をされるということになろうかと存じます。

落合委員 わかりました。各金融機関の自由裁量であると。金融庁はマイナス金利を、仮定の話ですが、個別の金融機関が選択をしたとしても、それを金融庁がとめることはないということでよろしいですね。

麻生国務大臣 法律的に基本的に介入するというのではなくて、これは、いわゆる預金者というか利用者の利便に一番供しなければならぬというのが一番のところですから、それに鑑みてどうかというような話は当然のことですけれども、それを介入して何%にしろとかいうような話ができる立場にない。法律的にはそういうことはできないんだと存じます。

落合委員 参考までに、金融機関とマイナス金利の影響、二月八日に発表したSMBC日興証券の試算によりますと、マイナス金利政策導入による家計、企業、銀行への影響、これは、家計は、利息収入が減るが、住宅ローン金利負担が千八百五億円減って、家計全体への影響はプラス、そして、企業も全体で千二百七十九億円のプラス、銀行は、利ざや収入が減るが、預金者への利息も減り、また一方で、保有する国債を日銀が有利に買ってくれるということで国債売却益が八千七百八十一億円もふえるため、銀行全体への影響もプラスであるというふうに試算しています。試算上では、損をするのは日銀だけというような発表が二月八日にされています。

 ただ、これは、マイナス金利というものは、先ほど大臣もおっしゃっていましたが、デフレというのが戦後初めてなのと同じように、マイナス金利というのも初めてだと。金利という話になりますと、有権者、消費者、国民、皆さん自分が関係する話ではないかというような認識がありますので、ぜひここは慎重に政策を運んでいただければ、特に、金融機関に対して慎重に見ていただければというように考えております。

 それでは次に、平時も含めまして、金融機関の監督のあり方について質問をさせていただきます。

 まず、メガバンクの検査についてですが、十年ちょっと前までは、不良債権の区分の査定というのが一番力を入れていた分野だと思うんですが、今、メガバンクの経営の新しいリスク、検査に重点を置かなければいけない分野、これは何だとお考えでしょうか。

麻生国務大臣 少なくとも私が三年ほど前に金融庁担当の大臣に就任したときに、金融庁というのは金融処分庁というイメージだ。この役所は大体処分ばかりしかやっておらぬでしょうが。メガバンクが皆抱えてきた不良債権をみんな抱えたんだから当然のこととしては当然だし、不良債権を全部外に出して、金融側から見たら債務超過になっている企業なんかいっぱいありました当時ですから、そういった意味ではやむを得ない部分もあったと思うが、少なくともこれからは、そういった状況から立ち直りつつあるんだから金融育成庁に変えてもらう、そのイメージに変えるのが一番の仕事だということを申し上げたんです。

 いわゆるメガバンクに限りませんけれども、今気をつけておかねばならぬことは、やはり、海外業務というものが急速に拡大しておりますので、いわゆる収益とかリスクといったものがかなり大きく変化するんだと思うんですね。国内だけと違いますので、そういった意味では、実効性のある、いわゆる海外の監督、検査、そういったようなことに関しましては、おたくは経営管理とかリスク管理というものを確立させていますかというところが貸し出してはいるけれども、本当に貸し出しているのか、大丈夫かということが、むしろ、そういった経験の長いところと新たに始めたところではかなり差が出るということだと思っておりますので、そういったことは我々としては十分に注意を払うようにしておかねばならぬのだ、そういうぐあいに指導いたしております。

落合委員 確かに、どんどん経済のグローバル化も進んでいる、金融の国際競争も進んでいる。その中で日本を代表して闘っている金融グループの大きな一つがメガバンクであるということで、今、世界的な株式市場の不安定さが注目されていますが、そこでもグローバルな金融機関の株価が注目をされています。保有資産がどのように、毀損しているのではないかというような話も出ているわけですが、海外の保有資産のリスク、これは年々見なくてはいけない重要な点だと思いますので、これからこの委員会の質問でも取り上げさせていただきたいと考えております。

 続きまして、地域の金融機関、地方銀行、信用金庫、信用組合への金融行政、金融監督についてですが、金融庁が昨年九月に、平成二十七年度金融行政方針、これを出されております。

 そこの「重点施策」のところにごもっともなことが書かれていまして、「金融仲介機能の十分な発揮と健全な金融システムの確保」ということで、先ほど大臣も少し触れました「目指す姿」として、「担保・保証に依存する融資姿勢を改め、事業に対する目利き力を高める」というふうに書いてあります。これは本当に重要なことで、これができなくて、十年、二十年、金融機関は苦労しているわけです。

 まず確認ですが、前段の「担保・保証に依存する融資」は何が問題なのか、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 一番最近起きた中で言わせていただければ、やはり今まで、少なくとも昭和二十年この方、日本はずっとインフレーションによる不況というものはやりましたけれども、御存じのように、一九八九年の十二月末、株価は三万八千九百十五円をつけたんですが、それが、新聞は来年は四万円と書いていた。例によって経済のわからぬ政治部が書くものですからああいうことになるんだと思いますが、ごっそり、四万円どころかぼんぼん下がってというのは、もう御存じのとおりです。同時に土地も、九〇年、九一年は上がりました。九二年から土地も下がった。

 早い話が、銀行が押さえていた株という動産と不動産という土地というものは、両方とも完全に毀損して、株価は三万八千円が一万円を割って八千円台になる、土地も六大市街化地域で一五%まで平均で落ちておりますから、そうすると、銀行にそれを担保にして金を借りていたところ、坪百万円で七十万円借りていた人は、それが十五万円になれば、それの掛けるの七掛けということになりますと、それはもう全く債務超過ということにならざるを得なかった。

 結果として銀行は、追い担保を出してください、増し担保を出してくださいと言って迫った。あればいいけれども、ないから売る、売るからまた下がるということになって、結果的に企業はどうしたかといえば、利益の最大化というのをやめて、債務の最小化という方に経営方針を変えざるを得なかった。

 結果として、銀行には一斉に借入金の返済が始まって、結果として銀行は、九七年、御存じのように、北海道拓殖銀行に始まって、都市銀行ですら倒産、翌年には長銀も倒産、不動産銀行も倒産、三洋証券は言うに及ばず、御記憶のとおりだと思いますが、ざあっと倒産していったときがある。全部担保です。

 担保に偏ったためああいうことになっていったんだというのが歴史ですから、そういった意味では、かなりの部分、そういったものに偏り過ぎると、いざというときになると、土地は必ず右肩上がりで上がるという神話が崩れた途端にそういったものが作用しなくなりますので、という経験に基づいて、今申し上げたような方向で事は柔軟に対応できるようなことになりつつあるんだと思っております。

落合委員 インフレを前提とした間接金融のビジネスモデルが壁にぶち当たってしまったと。インフレが必ずしも約束されていない時代の中では、金融庁の書かれている「事業に対する目利き力」を間接金融機関がつけていかなくてはならないということですが、では、この「事業に対する目利き力」、これは具体的には何なんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、その地域において一番数多く地域の企業を回っている人は、間違いなく、地方中小金融機関の支店というか、本店の方なんだと思っております。

 したがって、この企業はこれだけのいいアイデアはある、しかし、それを何に使っていいかわからぬ、この企業はいい内容のものをつくっているけれども、早い話が、総務系列、経理系列が全然できていない、この企業とこの企業とをくっつけるととか、いろいろなことで判断できるネタを最もお持ちの方は、都市銀行じゃありません。都市銀行は転勤が多くてとてもじゃないので、そういったことまで目が回りませんので、地方中小銀行の金融機関の方がはるかにそういったことに詳しいというのは、もう信用金庫の例を見るまでもなくはっきりしていますので、そういった方々の、企業を見て、これとこれとをくっつけたらとか、これとこれはもっと投資すればもっととかいうような、目ききという表現を使っておりますけれども、そういったようなことができ得るいわゆる可能性を秘めておるのが地方中小金融機関なんだと、私どもはそう思っております。

落合委員 地域との、地元の企業とのリレーションシップを深めて、それが目ききになる、そこからビジネスチャンスを発見していく、それが地域の銀行の役割であるということですが、実際にこれを地域の金融機関がやろうと思ってもなかなか難しい。こういう問題があると思います。

 実際には、各地域の金融機関は収益性が低い金融機関が多い。これは金融庁として、具体的にこういった目ききの機能を高めるためにどのように工夫を行っているんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、それこそ各企業というか各金融機関が御自分で率先して、地域の中においていろいろな中小零細企業でイノベーションにたけているところは幾つもありますので、そういったところにきちんと、ああ、こういうものがあるんだという感性を持たないと、これはとてもじゃありませんけれども、幾ら立派なものがあってもと思っております。

 事実、今地方を見てみましても、少なくとも世界で並みいる企業の中で、例えば、名前を言うとちょっと問題ですな、中小零細企業の中で例えば私の選挙区とか、みんな一億円以下の資本金で、世界シェアの七〇%を持っています、八〇%を持っていますという中小企業というのは、実はかなりの数あります。お調べになったらすぐ出ますから。

 この人たちは立派に利益を出しています。しかし、この人たちは言わない。もうかっている人は言わないんです。銀行にいたからわかると思うけれども、余り長くいたことがないか。長くいたらわかると思うんですが、もうかったら言わないんですよ。だって、宮崎さんが来てパーティー券を買ってくれとか、鈴木先生も来られて、うちを励ます会で何とかしてくれと言われる可能性がないほど小さな企業なんですが、実は物すごい利益が出ている。世界のシェアを全部持っていますから、これが出さなかったらとまっちゃうんだから。それは物すごいものを持っていますよ。

 そういったところが幾つもありますので、そういったものを、さらにもう少しやればもっとというのを今度は逆に勧めても、いや、これ以上もうける必要はないから要らぬわと言うんですよ。融資してもらわぬでもいい、うちはもうかっていますから全然要らない、そういったところの企業というのはいっぱいある。ところが、機械設備をこの三十年間ぐらい設備投資を更新していませんので、意外と、生産性という面からいくとかなり落ちてきていることは確かです。

 そういったところに、いや、もう今はこういう時代ですよというような話がそういった人たちに入るかといえば、もうほとんど技術のプロなものですから、そういったものに物すごく特化しておられる方なので、そういった金融とか世情とかいうことにはかなり疎い方も非常に多いというのも事実なんです。

 ぜひそういったところからやっていかれるというのが一つの可能性だ、自分の経験からはそう思います。

落合委員 金融機関が、各地元の事情に合わせて、各顧客の事情に合わせて自分でビジネスチャンスを見つけるべきだということですが、大臣はそういう能力とかセンスがあるかもしれないですが、実際には、地方の地域金融機関で働いている方々がその目きき力がない。だからこそ、今、間接金融にたまっているお金が市中に出ていかない、企業に出ていかない。こういう問題がもう長年続いていると思います。

 ですから、これは各銀行で自分たちで頑張ってやってくださいというのと同時に、金融庁としても何か指導をしていくことはできないか、手助けをしていくことはできないかというような問題意識もあると思うんですが、そういった施策は行っているんでしょうか。

麻生国務大臣 下手したら介入になりますから、難しいですよ、これは。銀行に対するいわゆる行政介入みたいになりかねませんから、役人がやるということは。

 したがって、これはどういった形で言うかというのは極めて難しい話なものですから、これは基本的には民間が努力されないと、御自分のところの今までのものとは違って、経費の削減に始まり、いろいろなことはやはり各企業の努力によるということにしないと自由主義経済というものは発展していかないんだ、私はそう思います。

落合委員 ありがとうございます。

 昨年末に金融庁が金融仲介の改善に向けた検討会議の設置ということで、恐らく、今私が言ったようなことも含めて、どのような金融機関のあり方、新しいビジネスモデルがあるべきかということをこれから検討に入っていくんだと思います。それでこの質問をさせていただいたんですが、こういった会議がどのような動きをしていくのか、これからちょっと私も見させていただきたいと考えております。

 それでは保険業界についてですが、生命保険業界、損害保険業界も、マイナス金利の影響、これは受けるものと思いますが、どのような影響を受けると分析をされていますでしょうか。

麻生国務大臣 今、マイナス金利を導入されたことによって、これも影響がさまざまだろうとは思いますので一概に申し上げることはできないと思いますが、当然のこととして、保有しておられる国債というのはかなりな額をお持ちですから、そういったものの評価益というものが当然出てくるのは損保、生保同様だと思いますが、長期的な金利低下というのが継続していくことはこれは当然のこととして、こちらの場合も運用利回りというものが収益を悪化させる要因になるというのも、これはもう銀行、金融機関と同様に損保、生保も同じだと思っておりますので、いわゆる財務の健全性とかそういったものを考えましたときには、私どもとしては、引き続き、保険会社の財務状況という内容がどうなっているかというものは、今後きちんとモニタリングをしていく必要があろうかと存じております。

落合委員 保険の中でも特に生命保険は、債券のクーポン収入に頼る比率が高いものが多いと思います。特に一時払いの年金保険、貯蓄型保険などは、利回りが低下すればかなり打撃を受ける。こういったことから考えますと、こういった貯蓄型保険の利回りの低下を受けて、保険料の値上げ、これは各保険会社が行っていくことは予想はされますね。

麻生国務大臣 私の立場で生保、損保の今後の経営はかくあるべきなどということを申し上げる立場にもありませんし、また、個々の会社がどういった方法をとればもっともうかるなんということを言う立場にもありませんので、今の質問に対してはお答えいたしかねます。

落合委員 保険会社の財務状況をチェックする立場にもあられますので質問をさせていただきました。もう少し時間がたたないと詳しい状況もわからないという面もありますので、これは、いい機会を見て改めて質問させていただきたいと思います。

 それではあと少しですが、税制のお話に入らせていただきます。

 平成二十八年度の税制改正の中で、まず一つ目、三世代同居に対応した住居リフォームに係る税額控除制度の導入というものが少子高齢化対策の一環のものとして出されてきていますが、この控除制度の導入による少子化対策の効果、これはどのように試算されているのでしょうか。

高鳥副大臣 落合委員にお答えをいたします。

 三世代同居に対応いたしました住宅リフォームに係る特例でございますが、家族において世代間で助け合いながら子や孫を育てることができるようにするため、三世代同居を希望する方がその希望を実現できるように、三世代同居を支援するものでございます。

 この特例によりまして、三世代同居を希望する子育て世代が、祖父母による育児や家事の支援を受けつつ子育てを行うことが可能となり、子育てへの不安や負担が緩和されることから、少子化対策にも効果があるものと考えられております。

 実際、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査によれば、親との居住距離が近い夫婦ほど出生する子供数が多くなる傾向があるものと承知をいたしております。

落合委員 実際に今回の政策でどれぐらい効果があるというふうに試算をされているんでしょうか。

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 この特例単体でどの程度効果を考えるかという問いに対してなかなかお答えすることは難しいのではございますけれども、別居よりも近居、そして近居よりも同居の方が完結出生児数は多いというデータが出ていることから、その効果には期待をいたしたいと考えております。

落合委員 別居よりも近居、同居の方が効果は高い、これはごもっともだと思います。

 内閣府の資料を見ますと、この控除創設についての説明、まず、子育て世代の三、四十代の二割が同居したいと考えている。一方で、実際に同居しているのは五・二%しかいない。だから、三世代同居する場合に、今回、キッチン、トイレ、浴室、玄関を増設、改築すること、リフォーム工事を行う場合に特例措置を講じるというような論理の流れになっているんですが、同居のためにキッチン、浴室、トイレ、玄関の四つのうち一つ以上を増設し、二つ以上が複数箇所ある場合の控除というのは、物すごく狭い範囲ではないですか。これは、広く一般の国民を対象とした控除ではないと考えてよろしいですね。

高鳥副大臣 御質問の点でございますが、本来、国交省の方で通告いただければお答えをする内容であると思いますので、ちょっと、私の方から今この場でお答えは差し控えさせていただければと思います。

落合委員 国交省の方でというふうにおっしゃいましたが、要は、リフォーム会社が営業するときに、こういう控除がありますよ、リフォームしましょうというのに使うのにはいい控除であって、しかも、これから民泊というのも言われてきています。こういうものに使うための控除であって、これは少子化対策のための控除なんでしょうか。麻生大臣、これでいいと思いますでしょうか。

麻生国務大臣 今お話しでしたけれども、三世代同居というものに対して住宅リフォームに係る特例ということなんですけれども、これは平成二十八年度の税制改正において、たしか、今言われたような状況に応じて特例を設けることとしているんですが、この特例の条件というのは、今御指摘がありましたように、理想の家族の住まい方として考える方が二割程度存在するという一方で、今言われたように、実際は数%ということになっておりますので、そういったところで考えますと、これは、プライバシーの確保や生活空間の分離の配慮が必要と考えられることから、住宅政策という面でいろいろ考えないかぬのではないかというのでこれは始まったんだと記憶をいたしております。

 そういった意味で、別居している世帯と比べて出生児数が高い傾向にありますので、私どもとしては、こういったものをもっと広く考えられるべきなのではないか。これはまずやってみて、その上でさらに改正する必要があると言うのであれば、そういった方向で、要は、人口減にいかに対応していくかというのは国にとっての一番の問題だと思いますので、その線に沿って、今言われたような提言等々につきましては対応してまいりたいと考えております。

落合委員 これは参考人の方の答弁でもいいんですが、同居しているということはどのように確認するんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回講じます三世代同居に対応した住宅リフォームに係る控除の制度でございますが、基本的には、住宅の仕様に、形ですね、住宅の仕様に着目して設けたものであるということなので、実際に三世代で居住しているかどうかということは要件とはしていないということでございます。

落合委員 同居のための控除であるということで取り入れられるにもかかわらず、同居かどうかは確認しないということですね。

 しかも、これは財務省がつくったものだと思うんですが、三本柱、法人税改革、消費税の軽減税率、三番目が少子化対策、女性活躍、教育再生。この三本柱の三つ目の一番最初、三世代同居、少子化対策のためにやりましょうと言っているのが、この目玉なのがこの控除です。

 しかし、同居していることさえも確認しない。リフォーム会社にとってはプラスになるでしょうが、これでは、お金持ちの節税、それからリフォーム業者への後押し、それのための控除なんじゃないでしょうか。本当に少子化対策のために控除を設けるのであれば、住民票などを根拠に、同居しているかどうかで控除を決める。リフォームのことはそんなに重要なんじゃないんでしょうか。

 時間が来たので、大臣、最後に御見解をお願いします。

麻生国務大臣 今の今回の特例の話は追加工事に対する支援ということになっていますけれども、基本的には、こういううちになってから、あなた一緒に住まないかと言える立場にあるかどうか。まだできてもいない間にはなかなか説得力がありませんから、それはいろいろな考え方ができると思う。俺のところは四世代同居しているからね。だからよくわかりますよ。だから正直なことを言いますけれども。

 そういった意味では、今、プライバシーにかかわる話ですから、これはうかつなことはなかなか申し上げられぬと思いますね。

落合委員 それを言ったら、私は同居したいですが、うちに一緒に住めません。狭いからです。そういう問題をどうやって解決していくのか、これが少子化の問題を解決する問題につながると思いますので、ぜひ中長期的な施策を打っていただければ。

 こんな中身で少子化対策の一番の先頭に持ってくるような控除じゃないということを私は申し上げて、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。二〇一二年以来、三年ぶりの財務金融委員会となります。

 きょうの前場、午前中は、日経平均株価一万四千八百七十五円、前日比マイナス八百三十八円となりました。世界経済の不確実性あるいは不透明性が増しています。経済のかじ取り一つで我々国民の生活が大きく左右されます。委員会の質疑を建設的、充実したものにしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 質問通告にないのでお答えできなければ結構なんですが、リーマン・ショックについて一つお伺いをしたいと思います。

 たったこの四十八時間の間にもさまざまな動きがございました。リーマン・ショックが起きたとき、これは当時、福田総理が総理をやめることを発表して、自民党の総裁選が行われている最中にリーマン・ショックが起こり、そして、その九日後に麻生財務大臣が当時の総理に就任をなさいました。

 昨今の世界経済の不確実性というのは、当時の状況と今の状況は大きく違うと思いますが、当時、リーマン・ショックのときは十八兆ドルの株式時価総額が吹っ飛びました。概算ですけれども、今回も大体十四兆ドルの株式時価総額が下落しているという状況でございます。

 全然状況が違うとはいえ、日経平均も二万一千円近くから一万五千円割れというような状況でございますので、今後、リーマン・ショックのときのさまざまな事例というのが大いに参考になろうと思いますが、当時、麻生財務大臣は、総理大臣として一年間、このリーマン・ショックに立ち向かったと考えております。

 当時の大型の補正予算、緊急の経済対策等々ございましたけれども、今振り返ってみますと、この経済対策の規模あるいはタイミング、こうした中身については十分だったと思っているのか、思っていないのか。あるいは、今の経済政策とも大きくかかわり合いがあるんですが、金融政策ですね。当時、欧米が非常に大胆な金融政策を行っている中で、麻生総理のときは、その当時は大胆な金融政策を行っていなかった。

 こうしたことを全て振り返って、リーマン・ショックについてどのような総括をなさっているのか。質問通告にないので恐縮ですが、お伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 質問通告をいただいておりませんので、記憶力でしゃべりますから少し違っているかもしれませんが。

 あのときで一番やはり大きかったのは、世界じゅうで金融収縮が起きるということを前提にした対応をいかにするかという話だったんだと思いますが、少なくとも、各国はそれに対する対応すべきすべは全く皆さん持っておられませんでした。

 したがって、日本としては、G8だったか何かで、G7でしたか、何かのときに私の方から、IMF、いわゆる国際金融機関が九七年のときのアジア通貨危機のときには、IMFというところの対応というもののまずさから、結果として、韓国、インドネシア、タイ等々がいずれもアジアにおける通貨危機を誘発し、対応できず、日本から最終的な支援をした。もう御記憶のとおりだと思いますが、そういう対応にまたなるのはかなわぬから、IMFに、我々としては融資をするから、その融資の額の中からIMFでアジアに対して、あのときはストロスカーンでしたか、まだいる時代でしたから、あなたがやった手口だったんだから、あなたのおかげでみんなえらい迷惑したんだから、我々はあの記憶だけは鮮明に覚えているので、アジアだけはちゃんとやってもらいますよということをみんなの前でばさっと言った記憶がありますけれども。

 結果としてどうなったかといえば、日本から約一千億ドル、各国それぞれ費用を後から入りました。おかげもこれありで、アジアで通貨危機は起こらず、むしろ東ヨーロッパとか西ヨーロッパの小国で、いわゆるサブプライムローンに貸し込んでいた銀行が多かったために、その銀行が倒産するというような状況になり、それを保証した政府が、全く財政内容はよかったにもかかわらず、小さな国の政府が破産するということを救う、そちらの方に金が回る。結果として金融危機というのをどかせることに成功しましたので、その件に関しては私どもとしては成功したと思っております。

 傍ら、日本の場合の方は財政を出動させております、金融ではなくて。そして、金余りという状況は、今の方よりもう少し、金余りよりもっとわけがわかっておりませんので、サブプライムローンというものに日本はほとんどひっかかりがありませんでしたので、まあ、英語がわからなかったからみんなほとんど買わなかったんだという話もありますけれども。みんな、サブプライムローンにひっかかった企業がいっぱいあるわけで、私ども、その内容はほとんど日本は少なかったものですから、不景気になることだけははっきりしておりましたので、たしか補正予算を三回組んだんだと思います。

 戦後、三回組んだというのは余り例がないと思いますので、そういった意味では、それで対応してあの急場をしのいだというのが私どものやったことでありまして、もう少し落ちついてというか、ああいうときは非常事態でもありまして、落ちついてやる時間もありませんでしたけれども、取り急ぎ三回の補正予算であの急場をしのいだというのが今の実感です。

木内(孝)委員 サブプライムローンで一番ひっかかった会社は、メリルリンチ証券という会社がありまして、実は私は二〇〇八年の八月までメリルリンチ証券にいまして、選挙に出た翌月にいわゆるリーマン・ショックが起こり、リーマン・ショックが起こった日に、よくリーマン・ショックと言われますけれども、実はあの日、メリルリンチもバンク・オブ・アメリカに買収をされ、実質破綻をしたというようなわけなんですが。

 ここで、当時、私も選挙に出たばかりでありながら、メリルリンチが破綻し、リーマン・ショックが起こりという前後に、私、当時、麻生総理が非常に大型の補正予算を組んだこと、それを非常にスピード感を持ってやったこと、当初は与謝野大臣が蜂に刺された程度というような表現もしておったかと思いますけれども、あのときかなり大胆にやったということを非常に実は評価をしております。

 それと、先ほど話がありました金融システムの安定化についても、総理は当時、非常にスピード感を持っていろいろな諸策をやったと評価しております。

 しかし、今も質問させていただいたんですが、金融緩和、これに対して当時どういう評価をしていたのか、効果があると思っていたのか思っていなかったのか。これは日銀中心にやる政策とはいえ、総理として全体を見渡す立場で、なぜあのときに金融緩和をやらなかったのか。その後、民主党政権になりまして、幾度となく金融緩和はありましたけれども、現黒田総裁のような大規模な金融緩和はしませんでした。

 その間、実は欧米では、バランスシートを三倍程度に膨らませたりということをやっていた中で、麻生大臣は、金融緩和は効果がないと思っていたのでやらなかったのか、それとも、日銀に任せていて、当時、日銀の白川総裁がそういうのに後ろ向きだったから何となくそのままやらなかったのか。

 それとあと、アメリカが先行して金融緩和をやって、今、出口戦略ということでなかなかこれも右往左往して、金利を上げるところを上げられないとかはございますけれども、非常に経済が好調になっています。

 こういうのを踏まえて、金融緩和という政策そのものの評価を現時点でどのように総括されているのかということをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 当時は、日本銀行としては、少なくとも、デフレというものに対する基本的な意識というのは我々とはかなり違っていたと思います。

 私どもは、デフレということでありましたので、たしか、小渕内閣以外一貫して日本の自民党政権の中では公共工事が減っていると思いますが、麻生内閣のときだけ、前年度比でふえていると思います。

 私どもとしては、デフレーションというものに関しては、少なくとも、消費がない、設備投資がない、政府支出がない、三つないわけですから、その三つがGDPの基本ですから、その三つのうち二つないわけですので、政府支出というものは絶対必要という意識がありましたのでそれをやらせていただいたのが財政側から見たときですが、金融を預かっておられる日銀の方は、その当時、黒田さんと違って、デフレーションということに対してどうすべきかというような意識をお持ちではなかった。私の記憶ではそうです。何回か話をしたことがありますので記憶がありますけれども、少なくともそういったのではなかった。時間がありませんので、我々としては、もうたったったっといかねばならぬと思っておりましたので、財政というもので主導すべきと思ったのが一点。

 もう一点は、やはり、あのとき各国で約束したわけです。少なくともうちは一千億ドルで融資するが、やられてもらいたくないことが幾つかあると。まず、平価の切り下げ競争はやめよう。自国通貨の切り下げ競争はやめよう。それが一つ。ブロック経済もやめてもらおう。第二次世界大戦に突入していったような形になるのはやめてもらいたい。そして、いわゆる金融というものに関して言わせていただければ、各国でいわゆる関税障壁をぼっと設けるというのもやめよう。この三つが条件というので、これはみんな一応合意した。議事録なんか残っていませんよ、極めて限られた人数でやっていたんですから。ぼんとやった、七人だけで。

 しかし問題は、各国はどうしたかといえば、それを守りながらも、ごっそり金融だけ緩めていったわけですよ。平価の切り下げと同じことを、私に言わせたら、裏口入学みたいな手口でやってのけたわけだ。話が違うじゃないかと何回もやり合ったことありますよ。

 でも、日本はその点はきちっと守った結果、円がどっとあれだけ上がっていったということになっていったというのが、私の方から見た、今思い返してみればそういうことだったかなという感じはいたしますけれども、いずれにしても、今考えてみますと、リーマンのときは、波及がどれくらいどうなるのかということに関しては、私は正直よくわかりませんでした、全く。そういった意味で、金融が機能しなかったんだという意識だけはあります。

 しかし、今の場合、ヨーロッパにせよ中国にせよ、みんな原因はわかっておるわけですから、そういった意味では、今の状況は、金融は機能していないという状況ではないんだ。今はそういうような感じで、比較すればそういうことになろうかと思います。

木内(孝)委員 麻生財務大臣が今の各国の金融緩和をそれほど評価されていないということがわかりました。

 今、非常に予算委員会等々でも一つの論点となっておりますのが、金融緩和が限界があるのか、あるいは意味があるのかということが、与野党の党内の中でもいろいろな意見が分かれているというのが実態だと思います。

 もう一つ、予算委員会等々の質疑を聞いていて感じますのは、与党は、今の経済は非常に順調にいっているということを一貫して言いたがる。野党は野党で、無理やり悪い指標という部分ももちろんあると思っていますので、これはどっちもどっちだなとは思うんですが、きょうの午前中の質疑を聞いていましても、ちょっと現状の経済についての客観的、冷静な見方をされていないんじゃないか。これだけ株価が下がり、中国の問題があり、きょう、黒田総裁だけが少しだけコメントしておりましたけれども、欧州株安というのも、非常に私は深刻な事態だと思っております。

 あるドイツ系の銀行が、先月、八千億円を超える損失の決算発表をしました。これは個別の、ミクロの話では現時点ではあるかもしれませんけれども、欧州最大とも言えるような銀行があれだけの決算のロスをやり、きのうの時点ですけれども、いわゆるクレジット・デフォルト・スワップ、これが二〇ポイントぐらいはね上がっている。この報告はもう既にいっていらっしゃると思いますけれども、これくらい厳しい状況の中で、これはもしかしたら金融システムリスクにつながっていくリスクというのも十分あると思っております。

 私、きょう質問通告に出していて、ちょっと時間がないのでできませんけれども、今後何が起こるかというと、我々は、プライマリーバランス、二〇二〇年の黒字化というのを、あらゆる政策を実現して実現をしていかなければならないというふうに考えています。これは正しい方向だと思います。しかしながら、本来タイムリーに大胆な財政措置をとらなければならないときに、それが足かせとなってなかなかスピード感がおくれたり、あるいは規模が小さくなり過ぎたりという懸念を持っております。

 きょうの質問の中で一つ思っておりましたのは、千四十四兆円の負債、借金があって大変だというニュース、きのうも出ておりました。一方で、日本には六百五十兆円を超える資産というのもございます。この資産というのは、使えない資産、流動性のない資産、それもたくさんありますが、私は、その中でも五十兆円程度は、まだ十分に売却可能あるいは流動化可能、証券化という意味で、広い意味でいえば、二百兆円程度の流動化可能な資産もあると考えております。

 その中で、去年の予算委員会で私は麻生財務大臣にも質問したんですが、日本たばこの株式、三三・三五%保有しております。これは時価総額で約二・七兆円、決して小さい額ではございません。もちろん、葉たばこ農家、これを保護することも大切な話だと思います。昨年でいえば約二百五十億円、内外価格差ということで、全量買い取りで日本たばこが国際相場より高い値段で購入しているわけです。ただ、この保護政策を別途切り分ければ、これを全部売却して二・七兆円の財源を得ることは十分に可能だと思うんです。

 これだけ危機感をあおっておきながら、本来であれば最初にへそくりをきちっと使い、これは当たり前の話なのに、いや、全量買い取りしなきゃいけないから。一九八五年から三十年間時間が経過しています。なぜこれを売却しないのか。合理的、論理的に説明をお願いいたします。

麻生国務大臣 この種の質問をされるなら、もう少し時間をとって聞かれないと共産党から文句がつきますので済みませんけれども、宮本さん、ちょっと時間を申しわけありません。

 これは御存じのように、JTの株式の保有というのは、今言われたように、国産葉たばこの全量買い取り等々が決まっているのも確かです、それは間違いなく。また、たばこの小売店というものも全国にありますので、そういったものの一定のマージン確保というのもやらねばならぬ、それで食っている人たちがいるわけですから。実質的に担保をするということも意義を有しておりますので、そういった意味ではまた、JT株の配当金というものも、これは財政投融資特別会計の歳入としてはかなり大きなものだというのはもう御存じのとおりです。

 はしょって言いますので恐縮ですけれども、こういったことで二十七年の六月に財政審議会等々において取りまとめられた中間報告でも、この話は、さらなる売却は適当と判断すべきではないとする話がある一方、全株売却して完全民営化を目指すという方向は基本的に堅持すべきだということで話がついたというように記憶をいたします。

 この中間報告で、いわゆる株式処分の必要性、合理性が一層高まる事態というものを念頭に置いて、こういったものを適時に売却して利害得失というものを合理的かつ速やかに判断できるように所要の実態把握というものや法制面の整理を進めておくように求められておりますので、今後ともこういったときを考えなきゃいけませんが、少なくとも、あれだけ株式が下がっている今じゃないですな。

木内(孝)委員 歳入の質疑でありますけれども、国が保有している資産を今後とも危機感を持った形でチェックをしていただければと思います。

 以上で質問を終わります。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 この間の衆議院、参議院の予算委員会の審議を聞いておりまして、私は大変驚きました。消費税率を一〇%に引き上げた場合、いわゆる軽減税率を導入したとしても消費税負担額がどれだけふえるのかとの質問に対して、衆議院での答弁と参議院予算委員会とでは大きく食い違ったからであります。

 去る一月十三日の衆議院予算委員会で、我が党の宮本徹議員に対して麻生大臣は、国民一人当たり及び世帯当たりの増税額について、それぞれ一万四千円と三万五千円、こう答弁されました。それが、参議院予算委員会答弁では二万七千円と六万二千円に倍増したわけであります。

 まず確認しますが、なぜ負担額が拡大したか、これをお答えいただけますか。

麻生国務大臣 お尋ねの消費税率一〇%への引き上げに伴う一人当たり及び一世帯当たりの消費税負担増加額につきましては、これは、家計が負担する消費税率二%分を掛けますと四・六兆円というものになり、二・三兆円掛ける二で、四・六兆円から軽減税率導入による減収見込み額約一兆円を差し引いた額、すなわち三兆六千億円を家計における消費税負担増加額の総額と見ることが適当であることから、まず、一人当たりの負担増加額は、この三・六兆円を一億三千万人で割りまして二万七千円程度となり、次に、一世帯当たりの負担増加額は、同じく三・六兆円を五千六百万世帯で除した六万二千円程度になるものと考えております。

 これまでの議論の中において、一人当たり及び一世帯当たりの消費税負担増加額として、家計調査をもとに、一人当たり一万四千円程度、一世帯当たり三万五千円程度とお答えしたことがありますが、これは、収入階級別の数字に関するお尋ねに対しまして、データというものの制約上、家計調査によらないとお答えができないという状況のもとで、総世帯平均もこれと整合的なものにするという観点から、家計調査に基づく機械的な試算をお示ししたものということを御理解いただきたいと思いますので、負担増加額を過小に示そうとしたものではありません。

 その上で、両者の違いが生ずるのは、家計調査が、サンプル調査によりまして、家計消費の内容や構造、動向の把握を目的とした統計でありまして、消費支出の総額を捉えるということを目的としたものではないということによるものである、私どもはそう考えております。

 いずれにしても、この種の誤解を招くことになりかねませんので、今後は、収入階級別の負担増加額など、データの制約上、家計調査によらないとお答えできない場合には、家計調査に基づく機械的な試算であるといった形であらかじめ明示するなど、どのような統計を活用したのかを含めまして、丁寧に御説明をしなければならぬところだと考えております。

宮本(岳)委員 配付資料の一を見ていただきたいんです。

 これは、財務省が昨年十月二十九日の与党税調に提出した資料であります。下の、参考、消費支出額及び一%当たりの税収という欄。この時点で既に財務省は、二〇一五年度予算から推計した場合、国民経済計算から推計した場合、そして家計調査から推計した場合、三通りの方法で一%当たりの税収を算出しております。

 つまり、ことし一月十三日の衆議院予算委員会で宮本徹議員に答弁した時点で、政府及び財務省はこの三通りの試算による消費税増税の国民負担額をちゃんと知っていたはずだと思います。これは事務方でいいんですけれども、事実ですね。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 お示しの資料は、御指摘のとおり、昨年十月二十九日の与党の税調に提出をしたものということでございます。

宮本(岳)委員 既に去年の段階でわかっていたんですね。

 ところが、総理や麻生大臣は、先ほどの答弁にもあったように、所得階級別の世帯単位での消費税負担額を尋ねられたから、家計調査の計数をそのまま用いて算出される世帯ごとの消費税負担額を答えたのだ、こういう答弁を繰り返されております。

 しかし、一月十三日の宮本徹議員の質問を改めて議事録で確認しますと、「麻生大臣に伺いますが、飲食料品と新聞以外のものが消費税一〇%に引き上げられた場合、現行の八%と比べてどれだけ増税になるのか。一世帯当たりの増税額、一人当たりの増税額についてお答えください。」というものであります。

 別に宮本徹議員は、あなた方の言うような所得階級別の世帯単位での消費税負担額などを質問しておりません。ただ単に、一世帯当たり、一人当たりどうなるかと聞いているんですね。これは言いわけにもならないですよ。

 では聞きますけれども、一月十三日、予算委員会で麻生大臣が、あらかじめ計算済みであった三通りの負担額の中から、別に所得階級別の消費税負担額など聞かれてもいないのに、家計調査をもとに推計した負担額一万四千円と三万五千円、これを答えたのは一体どういう理由ですか。

麻生国務大臣 一月十三日の衆議院の予算委員会において、家計調査における平均的な一人当たりの負担増加額を機械的な試算としてお示しをしたものは、御質問いただいた宮本議員からあらかじめ、総世帯平均の消費税負担額とともに収入階級別のものに関する資料の要求を受け、収入階級別のデータをとることができます家計調査に基づく機械的な試算をお示ししてきたということや、質問の事前通告におきましても、総世帯平均の消費税負担増加額とともに、収入階級別の消費税負担の増加割合をお尋ねされるとされていたことによるものであります。

 したがいまして、これは、収入階級別の数字に関するお尋ねに対して、データの制約上、家計調査によらないとお答えできないという状況にありますので、総世帯平均もこれと整合的なものにするという観点から、家計調査に基づく機械的な試算をお示ししたものであったというように御理解いただければと存じます。

宮本(岳)委員 あらかじめ資料要求したかどうかは私は知りませんけれども、そのときの問いは、別に所得階級別に答えよというようなことは一切言っていないんですね。

 そもそも麻生財務大臣は、一月十九日の参議院予算委員会で我が党の小池晃議員に対し、我々、税収からとってきたものの方が、一兆円と申し上げておりますけれども、この方が基本的には正しい、常に正しいものなのだと私どもは思っていると答弁されました。

 一人当たり二万七千円と世帯当たり六万二千円の消費税負担増というのが基本的に正しい、常に正しいと理解していながら、一月十三日の予算委員会では、わざわざ家計調査から算出した、その正しい額のほぼ半分の、小さい方の額を答えたということになります。単純に、準備された大臣の答弁書がそうなっていたということなのか、あるいは、あえて小さい負担額をお答えになったのか、どちらかしかあり得ません。

 どちらにせよ、これは事実に反した、間違っていたわけでありますから、素直にその誤りをお認めになるべきではありませんか。

麻生国務大臣 質問の事前通告で収入別のお尋ねがあったということも確かでありましたし、実際に議事録を見られたらわかると思いますが、一月十三日の予算委員会で収入別の質問もあったと記憶をいたしております。

宮本(岳)委員 私の後、また宮本徹議員が質問いたしますから、ぜひ直接御本人とやっていただきたいと思うんですが、少なくともこのときの答弁は、後に倍に膨れ上がるような不正確なものであったということであります。

 そこで、次に軽減税率について少し議論をしたい。

 軽減税率の導入は、低所得者に配慮するための逆進性対策だと言われております。安倍総理は、消費税における、所得が低い方ほど収入に占める消費税負担の割合が高いといういわゆる逆進性を認めた上で、この逆進性を緩和する観点から、ほぼ全ての人が毎日購入している酒類及び外食を除く飲食料品等を対象に軽減税率制度を導入することを決定したと答弁いたしました。

 どうして食料品等の軽減税率の導入で逆進性が緩和されると言えるのか。これまで政府の説明では、消費税率を一〇%に引き上げたとき、消費税負担の軽減率が低所得者層ほど大きいと説明してまいりました。

 配付資料の二を見ていただきたい。

 所得階層別の消費税負担率と軽減税率導入による負担軽減率を示しております。所得が低いほど、左へ行くほど、点線の軽減率は確かに大きくなっております。

 財務省、このことを言っているわけですね。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆる逆進性という点のお尋ねでございますけれども、この図にございますように、消費税率を一〇%とすることとした場合において、軽減税率制度を導入すれば、これを導入しない場合と比べまして、収入に対する消費税負担の割合が低所得者の方がより大きく引き下がるという趣旨で、その意味におきまして逆進性が緩和される、こういうことでございます。

宮本(岳)委員 では、配付資料の三を見ていただきたい。

 収入に対する消費税負担率が、たとえ軽減税率を導入したとしても、消費税率を八%から一〇%に引き上げた場合にどうなるかを示したグラフであります。赤い部分が現行の八%、緑の部分が新たに負担増になる増税分であります。低所得層ほど、緑の部分、負担の増加率もふえております。

 大臣、これは紛れもなく逆進性が高まったということではありませんか。

麻生国務大臣 もともと、御存じだと思いますが、これは一〇だったら赤はもっと上の方にあるわけですから、そこのところだけちょっと忘れぬようにお願いします。

 家計調査に基づいて申し上げると、これは、軽減税率制度を導入して消費税率を一〇%に引き上げる場合においても、消費税率八%の場合と比べれば、収入におけますいわゆる消費税負担の割合の増加度合いというのは、低所得者のプラス〇・九の方が、高所得のプラス〇・四より大きくなる。正しいと思います。

 しかしながら、軽減税率制度を導入いたしますと、軽減税率を導入せずに消費税を一〇%にした場合と比べますと、収入に占める消費税負担の割合の引き下げ度合いというものは、低所得者の方は〇・五、そして高所得者が〇・一ということになりますので、消費税の逆進性の緩和につながるということなんだと思っております。

 加えて、消費税率の引き上げによる増収分は、全額社会保障の充実等々、所得の低い方々に対しましては、これは社会保障の充実とか安定化に充てることになろうと思いますし、国民健康保険の保険料軽減の拡充を講じることといたしておりますので、これはまさに所得再配分につながるものと考えております。

 いずれにしても、消費税率一〇%に引き上げは、これは社会保障と税の一体改革というもので、この世界に冠たる社会保障制度というものを次の世代に引き渡していく責任が我々の世代にあろうと思いますので、今後とも市場とかまた国際社会からの国の責任等々を確保するためのものでありまして、これに伴う低所得者層への配慮という点から軽減税率を導入するというものであると御理解いただければと存じます。

宮本(岳)委員 いや、使い方の話、社会保障に使うかどうかという話はやっていないんですよ。税の取り方の議論をやっているんですよ。

 それで、逆進性を認めた。逆進性は緩和されるかという議論をやった。低所得者は高所得者よりも収入が少ないわけですから、収入に占める軽減税率の軽減度合いというものが低所得者の方が大きくなるというのは、それは母数が少ないんですから当然のことでありますが、私が問題にしたのは、しかし、八パーを一〇%に引き上げたときの税負担の増加率も同じく低所得者の方が高くなるだろう、こういう話をしたんですね。

 わかりやすく、資料四に、全部をまとめたグラフをつくっておきました。これは、青が五%です、消費税。赤は八%です。緑の一〇%、これは、もちろん食料品等の軽減税率も考慮した一〇%が緑です。これは線が引いてありますが、この線は私が勝手に引いたのではなくて、ちゃんと平均をとる、そういう関数を入れたグラフとして平均値をとっております。

 このグラフを一見していただけばわかるように、低所得者層ほど、つまり、左へ行けば行くほど直線の間隔は開いております。たとえ軽減税率を導入したとしても、消費税率を一〇%に引き上げた場合に、低所得者の消費税負担の増加率は高所得者の消費税負担の増加率に比べて大きくなる、これはもう否定しようのない事実だと思うんですが、大臣、よろしいですね。

麻生国務大臣 これは先ほどの御質問とほぼ同趣旨の御質問なんですよね。

 それで、図が違っているところが、こっちの方が、示しておられるこのグラフがさっきの質問と違うものを使っておられるんですが、三つ分けて色を使われて、わかりやすくつくっておられるんだと思いますが、私どものレベルに合わせていただきましてありがとうございました。

 軽減税率がなくて一〇%に引き上げた場合というのは、このグリーンはもっと高くなるということなんだと思いますけれども、比べまして、低所得者への負担も軽減できたということではないかと思っておりますので、先ほどお答え申し上げましたとおり、所得再配分等々いろいろなものにこういったものを私どもが使えていきますので、今言われましたように、額としてはおっしゃるとおりですけれども、率の面も考えていただければということを申し上げております。

宮本(岳)委員 そうなんです。どう言おうが、八%を一〇%に上げたら、たとえ消費税を八%に据え置いたとしても、低所得者層ほど消費税負担率の増加は大きくなる、これは動かしがたい事実なんですね。まさにこれこそ逆進性というものであり、逆進性は高まると私どもは思いますね。

 にもかかわらず、あなた方は、軽減税率により、日々の買い物の都度、痛税感の緩和を実感していただける、こう言って、その例として、総理は、コンビニの買い物で千百円ではなくて千八十円のままだなと思うことによって痛税感は緩和されるだろうなどとたびたび答弁をしております。

 痛税感の緩和というのは、その言葉のとおりですよ、痛みを和らげること。つまり、何か得した気にさせることにほかなりません。

 しかし、実際には、この表でも明らかなとおり、低所得者層ほど逆進性はかえって高まることになります。これこそ、まさに中曽根元総理がおっしゃったように、羊が鳴かないように毛をむしり取ろう、こういう話ではありませんか、大臣。

麻生国務大臣 ちょっと見解が違うかと存じますが、酒類及び外食を除く飲食料品のいわゆる消費支出全体に占める割合を見た場合に、家計調査の計数をもとに、一定の前提のもとに機械的に試算すれば、年収千五百万円以上の世帯では一五%程度にとどまる一方、年収二百万未満の世帯では三〇%近いということでありますので、低所得世帯の方が飲食料品の割合が高いということはこれからわかるんだと思います。

 したがいまして、低所得者の方が消費税負担の軽減度合いが大きくなりますので、まさに逆進性の緩和につながっていくものだと思っておりますし、また同時に、ほとんどの御家庭では、日々、飲食料品を購入されておられます。最近はコンビニとかいろいろな形のものが近くにありますので、これらを対象にいたしました軽減税率の導入というのがやはり日々の痛税感の緩和につながるので、毎日行くというようなところのものの値段が据え置かれるとか、そういったことによる痛税感の緩和というのに我々は重きを置いたというように御理解いただければと存じます。

宮本(岳)委員 いろいろ言うても、まさに負担の増加率は上がるわけですね。

 では、次の、それだけにとどまらないという議論に行きたいと思うんです。

 今回の制度では、軽減税率が八%に据え置かれるだけなので、軽減税率対象品目以外のものを消費税一〇%で買えば、低所得者層も全て増税になります。しかし、低所得者層の負担の増加はそれだけではありません。

 そこで、確認したいんですけれども、消費税八%への増税時に、低所得者の負担を軽減するために、臨時福祉給付金、いわゆる簡素な給付措置として現金が支給をされました。配付資料の五にそのときの厚生労働省のポンチ絵をつけてあります。

 住民税非課税の人約二千二百万人を対象として、消費税率を八%にアップする際に簡素な給付措置を支給すると。これは、消費税率引き上げによる影響を緩和するため、消費税率引き上げに伴う食料品支出の増加分、三%アップ分を参考に算出した額を支給した、こういう説明になっておりますが、厚生労働省、間違いないですね。

堀江政府参考人 お答え申し上げます。

 簡素な給付措置につきましてのお尋ねでございますけれども、厚生労働省では支給の実務を担当しておりますけれども、その内容については御指摘のとおりでございます。

宮本(岳)委員 そうしますと、資料六を見ていただきたいんです。私が作成した消費税増税の負担に関する概念図でありますけれども。

 つまり、簡素な給付措置を受けていない人にとっては、今回の増税は、食料品等が八%に据え置かれて、その他だけが一〇%に増税されます。一方、簡素な給付措置を受けている住民税非課税の方々約二千二百万人にとっては何が起こるか。簡素な給付措置がなくなることで、実質上、食料品の消費税率は、これまで五%に抑えられてきたものが八%に増税されて、その他の消費税は低所得以外の方と同じく一〇%に増税される、こういうことに財務大臣、なりますね。大臣、なりますね、そうなりますね。

麻生国務大臣 今のは多分通告を受けていなかったと思いますので、ちょっともう一回言っていただけますか。

宮本(岳)委員 そうしますと、簡素な給付措置というものを受けている住民税非課税の方々にとっては、この給付措置が廃止されれば、八%導入時に五%に抑える三%分として出されてきた分がなくなるわけですから、これが八%に引き上げられることになりますねと聞いているわけです。

麻生国務大臣 失礼しました。

 そもそも、消費税の一〇%に引き上げというのは、御存じのように、社会保障と税の一体改革の一環として行われるものですので、その増収分は、全額社会保障等々の充実、安定化に充てることとしておりますのは御理解をいただいているところだと存じます。

 また、特に所得の低い方々に対しては、国民保険の保険料の軽減の拡充とか、介護保険料の軽減の完全実施とか、年金生活者支援給付金の支給等を新たに実施等を講じることとしておりますので、消費税の負担はこうした受益とあわせて一緒に評価をしていただく必要があろうかと存じます。

宮本(岳)委員 使い道の話はさっき聞いたんですよ。何に使うかという議論をやっているんじゃないんです。取り方なんですね。

 大臣は先日の所信表明でも、その際、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮として軽減税率制度を導入いたしますとおっしゃるから、配慮になっているかどうかを議論しているわけですよ。

 それで、これは御承知のとおり、資料にもつけましたが、民主党、自民党、公明党の三党合意の後、修正された抜本改革法第七条一号のロというところに書き込まれたものに基づくものなんですね。

 それで、この条項の追加と簡素な給付措置について、当時の議事録には興味深い質疑があります。

 二〇一二年八月十日の参議院社会保障と税の一体改革特別委員会で、三党合意の後の修正案について、共同提案者であった公明党の竹内譲衆議院議員は、同じく公明党の荒木清寛参議院議員に対して次のように答弁をいたしました。

 二〇一四年四月からの増税とはいえ、

八%ですよ。

 増税とはいえ、まだまだ非常にデフレ経済の下、非常に景気が悪いと、また売上げも上がらず、給与も上がらず、可処分所得も向上していないと。こういう中では非常に国民の間にはまだまだ厳しい認識があろうというふうに思っております。そういう意味で、やはり八%の段階からしっかりとした低所得者対策が必要であると。

  現実には簡素な給付措置というのが盛り込まれておりますが、これだけでは不十分でありまして、国民の理解を得るにはやはり八%の段階から複数税率を排除すべきではないというふうに考えた次第でございます。

こう述べておりますね。

 八%の段階で軽減税率を導入したいんだが、やはり八%の段階からしっかりとした低所得者対策が必要であるという公明党の御主張で簡素な給付措置がつくられた。その経緯を踏まえて、事実上、食料品五%据え置きとなる額の給付を行ってきた。これは財務省、事実ですね。

佐藤政府参考人 三党合意に至る経緯のお話にかかわる部分でございます。

 御説明申し上げますと、まず、政府提出段階におきまして、税制改革抜本法第七条で、給付つき税額控除、総合合算制度等の低所得者に対する総合施策を講ずるということとあわせまして、それまでの間の暫定的な臨時措置として簡素な給付措置を実施する、こうなった後で、その後の三党協議におきまして、自公民の中で複数税率の検討をすべきではないかという話があり、最終的には、調整された結果、これも含めたものとなっております。

 したがいまして、成立いたしました抜本改革法上は、総合合算制度、給付つき税額控除、軽減税率制度を検討するというそれとの関連で、それがしっかりとした結論が出るまでの間の措置としてという位置づけで簡素な措置ができたということになってございます。

宮本(岳)委員 そのとおりでしょう。そういうことで合意されたわけでしょう。私は当時、社会保障と税の一体改革特別委員会のメンバーだったんですよ。論戦に当たってきた本人ですからね。ごまかしたって、当時の議事録には幾らでもそういう議論がございます。

 当時の国会審議では、八%の増税時に簡素な給付措置か複数税率を導入すべきだ、そういう議論、それから、世界の軽減税率は五%だとの主張がなされておりました。

 例えば、先ほどの荒木清寛参議院議員は、二〇一二年八月十日の特別委員会で、「食品に関する消費税で見ますと、イギリスは〇%、アイルランドは〇%、ドイツは七%、フランスは五・五%、ルクセンブルクは三%、ポルトガルは五%、チェコは二%でありますので、軽減税率を導入しないと、食品だけを見ればむしろ日本の方が高いというケースも出てくる」と述べ、同じく公明党の西田実仁参議院議員は、七月二十七日の特別委員会で、今世界にある軽減税率をかけているところに関しては、特に食料品に関しては平均で四%、まあ五%程度のものというのが世界標準だと述べて、八%の増税時に簡素な給付措置を導入し、実態として、食料品の五%に据え置く、こういう措置がとられたんですね。これは来年からはやらないんです。

 あなた方は、消費税の八%の増税時には、食料品に関しては平均で四%、まあ五%程度だと言っておきながら、そして簡素な給付措置を入れておきながら、消費税、来年四月からは、今度はたとえ軽減税率を導入して八%に据え置いたとしても、低所得者層の食料品の消費税負担は五%から八%へ三%分も増税するということになるじゃありませんか。いかがですか。

麻生国務大臣 これは、先ほどの答弁と重なるところもあろうかと思いますが、消費税の負担というものは、他のいろいろな受益とあわせて考えていかぬといかぬことになるんだというように思っていただかぬといかぬところなので、介護保険料の軽減の完全実施とか、いろいろ、年金生活者支援給付金等々、新たなものもやりますので、そういったものと一緒に合算して考えていただかないといかぬところかと思っております。

宮本(岳)委員 時間が来ましたから終わりますけれども、きょう私は、消費税の増税が低所得者層ほど税負担率が大きくなる、逆進性は高まるという事実を示しました。同時に、食料品については、引き下がるどころか、これまでの実質五%から八%へ、低所得者の方こそ引き上がるという話を指摘いたしました。

 これのどこが配慮なのかと言わなければなりません。まさに、低所得者こそダブルパンチだと言わなければなりません。弱い者いじめの消費税増税はきっぱり中止すべきだということを指摘して、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 通告してないですけれども、先ほど宮本岳志さんから消費税のことがありましたので、初めにそのことだけお話しさせていただきたいと思います。

 麻生大臣は、多分、書かれた答弁書を読まれたということですのでそういうことだと理解しておりますが、私自身、予算委員会では初めに二つ聞いているわけですね。

 一人当たり及び一世帯当たりどれだけ増税になるのかということ。これはなぜ聞いたかというと、軽減、軽減と軽減税率のことを言うから、いや、軽減じゃなくてふえるんでしょうということを、どれぐらい痛みが来るのかというのを明らかにするために聞いたわけですよ。

 もう一つは、低所得者対策、低所得者対策と言うけれども、実際は低所得者ほど負担が重いじゃないですかと言うために、所得階層ごとの負担率をお伺いした。この二つは別々の質問なんですよ。

 ですから、私、事前の財務省への説明資料の提供も、それぞれ分けて要求したわけですよね。所得階層ごとの負担率がどうなるのかという資料ももちろん要求しました。同時に、一世帯当たり、一人当たりがどれぐらいふえるんですかというのも、質問の前日にお願いして、いただいたわけですよ。それが事実の経過なんですね。

 ですから、そういう点では、きょうはお役所の書かれた答弁書をずっと読まれているわけですけれども、あらかじめ三通りの試算をしておきながら、私に対しては家計調査で答えた。それはまずかったというので参議院で謝ったという点では、私の質問時間が無駄になったということですから、その点については、よくなかったということぐらいはお認めになっていただければなと思います。

麻生国務大臣 今、御意見のあったところですけれども、このときの宮本先生の話で、飲食料品と新聞以外の税率を一〇%にした場合、収入に占める税負担率は現行の八%と比べてどれだけふえるのか、収入が二百万円から二百五十万円の世帯のケースと一千五百万以上のケースについてお答えくださいという質問に対しましたので、私どもとしては、家計収入というあのサンプル以外に使えるものがありませんので……(宮本(徹)委員「それは二問目です。その前に一問目に」と呼ぶ)

宮下委員長 済みません。席での発言はちょっと控えてください。

 財務大臣、よろしいですか。

宮本(徹)委員 それは、私が予算委員会でした二問目の質問についてのお答えなんですよ。

 一問目は、所得階級のことなんて何にも聞かずに、一世帯当たり、一人当たりどれだけ負担増になりますかということを聞いて、何の前提もつけずに聞いています。

 それは、財務省に対しても何の前提もつけない資料をお願いして、財務省の方から、赤旗の計算とはちょっと違う資料が出ますけれどもいいですかと言われて、いいですよというふうに事前にお話をして出てきた数なんですよね。そういう経過なんですよ。

麻生国務大臣 今、一問目、二問目というお話でしたけれども、私どもは、基本的には、収入階級別の数字に関するお尋ねがありましたので、そういった意味で、データの制約上、家計調査によらないとお答えできないという状況にありますので、総世帯平均もこれと整合的なものにせぬといけませんので。

 そういった関係から、家計調査に基づくということを申し上げているということであって、試算をお示ししたものだというふうに御理解いただけないと、ちょっと、こっちの部分とこっちは質問が違うけれども、この部分とこれとを整合的なものにするためには、このサンプル調査のこれをもとデータにしないと私どもできないということだと存じますが。

宮本(徹)委員 そうすると、あらゆるものを所得別と整合性をつけなきゃいけなくなったら、今度は、参議院でした答弁をもとに戻さなきゃいけないという話になりますよ、麻生大臣、今の説明だと。違うわけでしょう。何の前提もつけずに私は聞いたわけですよ。一番初め、一問目は。

 これ以上やったら、私の初めの質問、時間がなくなりますので、そこは、改めてちょっとお役所の方ともちゃんと整理しておいていただければというふうに思います。

 それで、大臣所信について質問いたします。

 まず、法人税についてきょうお伺いしたいと思います。

 大臣は所信で、経済の好循環を確実なものとする観点から法人税率を引き下げるんだ、税率を引き下げることで、投資や賃金引き上げに積極的に取り組むように促す、こうおっしゃいました。ですが、現実の日本経済の動きは政府の説明とは異なっているわけですよね。

 この三年間でどうだったのかということで、配付資料を見ていただければわかりますけれども、財務省の法人企業統計から、資本金十億円以上の大企業、ちょっと間違いがあるので、直しながら言います。

 一番上が経常利益ですね。二〇一二年度から二〇一四年度まで四四・一%の伸びです。上から二つ目、一三・九%伸びているのが配当金です。上から三つ目、五・六%伸びているのが、これは一人当たりの役員報酬です。ちょっとこれはグラフに書いている字が間違っているんですけれども、一人当たりの役員報酬。その次が、三・四%伸びているのが従業員給与の総額です。そして、一・三%、これは一人当たりにした場合の給与の伸びということになっています。これが十億円以上の大企業の、法人企業統計から出てきたものであります。

 そして、右側に内部留保の伸びも載せていますけれども、配当は伸びた、役員報酬も伸びているわけですけれども、一人当たり給与というのは、この間議論になってきたとおり、実質賃金で見ればマイナスという状況で、その中で内部留保は大きく積み上がるということになったわけですね。

 ですから、こういう大企業に対してさらに法人税率引き下げということをやっても、内部留保がさらに積み上がるだけなんじゃないですか。

麻生国務大臣 これは宮本先生、たびたび私の方がいろいろなところでほぼ同じような御質問に対して同様の答えをしていると存じますが、課税ベースの拡大等により財源をしっかりと確保しながらということで、法人税を下げている分だけこっちでふやしている分がありますので、外形標準課税等々、そういったものをやらせていただいておりますので、確保しながら税率を引き下げるという点が一点。

 それから、法人課税をより広く負担を分かち合うという構造への改革にしていくもので、もうかっているところだけから取るというだけではなくて、いろいろインフラストラクチャー等々を使っておられますので、そういったものへと改革していくということであって、企業が収益率を高めてもらって、さらに設備投資とか賃上げ等々、積極的に取り組むようにしてもらうのはもちろんのことなんです。

 もう一つ、何もそちらにお教えする必要もないと思うけれども、労働分配率というのはもっと問題なんですよ、私に言わせると。これは、あなたに言う必要もいかがなものかと思うけれども、労働分配率というのは明らかに下がっていますよ。これは、さっきの銀行やら何とかにしたって、皆同じことを知っていたと思うけれども、労働分配率は昔、七七、八あったはずでしょう。今、六七、八まで下がっていませんか。一番最近の資料を知りませんけれども。

 私らのときとは随分違ってきていますので、こういった意味では、私どもは、さらに現金をため込むとか、さらに内部留保をふやすというのは、これ以上ふやして何をするんですかということを私どもがいわゆる経済界と話をし合ったときに私どもからたびたび申し上げてきたところであります。

 したがって、今回の、一月の四日でしたか、経済三団体の長の話は、いずれもその種に関しては、これまで政府にやってもらった、これからは民間がやる番なんだということで、給与の話や賃金の話は、それぞれ正月に話をしておられますので、それなりの効果は少しあったのかとは思いますが、今言われたように、給料の分をもっと上げなくちゃおかしいというのは、私どもも基本的にそう思います。

宮本(徹)委員 給料を上げなきゃいけないというのはそのとおりだということですけれども、問題は、実際は、今度の法人税率の引き下げ、外形標準課税の拡大なんであります。

 基本的には、もうかっている大企業ほど減税になって、それ以外は増税になるということになっているわけですけれども、もうかっている大企業のところには、利益もあれば内部留保もあるわけで、賃上げするための体力が既にあるわけですよ。体力があるところに減税の恩恵をばらまいても、やはり内部留保がたまるだけだと思いますよ。やる気があればできるんだから。そういう点でいえば、減税をさらにそういうところにやっていくというのは本当におかしな話だと思います。

 そして、法人税率を引き下げたら設備投資に回るのかということで、大企業に限ってみても、内部留保は昨年七―九月期で見ても三百兆円を突破しました。

 問題は、どういう形で内部留保がふえているのかということです。この三年間で、資本金十億円以上の大企業について、有形固定資産と、固定資産のうち投資有価証券と手元資金、それぞれどういう動向になったでしょうか。お答えください。

冨永政府参考人 お答え申し上げます。

 財務省の法人企業統計四半期別調査によりますと、金融業、保険業を除く資本金十億円以上の大企業につきまして、有形固定資産は、二〇一二年七―九月期では百三十五・八兆円、二〇一五年七―九月期では百三十・六兆円、次に、固定資産のうち有価証券につきましては、二〇一二年七―九月期では百八十三・八兆円、二〇一五年七―九月期では二百十七・五兆円、また、手元資金は、二〇一二年七―九月期では五十八・五兆円、二〇一五年七―九月期では六十四・三兆円となっております。

宮本(徹)委員 今数字を示していただきましたけれども、結局、機械などの有形固定資産というのはこの三年間で見ても減っているわけですよね。一方で、有価証券や現金など金融資産がふえている。はっきり言って、内部留保が余剰資金になっているということが言えるというふうに思います。

 それから、これは質問しないですけれども、参議院調査室の興味深い資料も出されておりました。

 吉田博光氏の試算によりますと、法人実効税率を一%引き下げた場合の設備投資の促進効果は、一九八〇年代から九〇年代でも〇・二七%だ、だけれども、直近まで含めた推計でいくと〇・一九%に低下していると。なぜか。内部留保や配当金がふえて設備投資が伸びない構図になっているんだ、だから、こういう中で法人実効税率を下げても、経済を活性化する原動力としての効果が余り発揮されない、こういう指摘が参議院の調査室の方からも出ております。

 ですから、法人税率をどんどん引き下げても、賃金にも投資にも回らないということだと思うんですね。

 私がさらに問題だと思うのは、今回、法人実効税率を引き下げる財源として外形標準課税を拡大するということになっている問題です。赤字企業は増税になります。外形標準課税の拡大で増税となる企業数の見込み、これは資本金規模別にどうなるでしょうか。お答えください。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 今回の外形標準課税の拡大によります一社当たりの負担の増減につきまして、資本金階級別の課税標準を二十五年度課税実績をもとに機械的に試算をいたしますと、欠損法人につきましては、一社当たり、資本金一億円超十億円以下で三百万円の負担増、十億円超五十億円以下で一千五百万円の負担増、五十億円超百億円未満で二千九百万円の負担増、百億円以上で一億五千五百万円の負担増でありまして、全体では一社当たり一千六百万円の負担増というふうになります。

 総務省といたしましては、資本金階級別の課税標準の合計の数字は把握しておりますけれども、個別の法人データを有しておりませんので、負担増となる法人数を計算することは難しいものでございますが、欠損法人につきましては、今回税率を引き下げることとしております法人事業税所得割を負担しておりませんので、一般的には負担増となるというものでございます。

 なお、外形標準の対象となりますのが二万三千社ございまして、うち欠損法人六千四百社、内訳では、一億円超十億円以下が四千八百社、十億円超五十億円以下が約九百社、五十億円超百億円未満が二百社、百億円以上が約四百社となっておるものでございます。

宮本(徹)委員 ありがとうございます。

 二万三千社のうち六千四百社が赤字で、そういう企業は、今お話あっただけの相当な増税になります。

 ちなみに、読売新聞の報道によりますと、課税所得が小さい企業では、黒字であっても外形の部分が大きくなりますから増税になるということで、こういう報道も出ていました。課税所得が十億円以下の黒字企業でも、一社当たり五百三十万円の増税だということです。こういうものを含めると、二万三千社のうち二万社が増税になる。減税になるのは三千社だ、逆に言えば。そういう話が報道としても出ているわけですよね。

 ですから、今回の法人税改革で、賃金に回すんだ、投資に回すんだとお話しされますけれども、実際は、減税になるのは本当にもうかっている一部の大企業。資本金一億円以上の企業でも相当部分が増税になるというのが今度の法人税改革の中身ということになっています。

 麻生大臣は経営者の経歴もお持ちですけれども、こういうことになって、一体どうして賃上げや投資が進むんでしょうか。かえって賃下げだとかリストラの圧力になっていくんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 今言われましたように、これは、大法人につきまして、先ほど申し上げましたように、法人税を下げるところと上げるところと両方一緒にして一方的に法人税収入を下げるということはしませんということで、私どもとしては、国際競争ということを考えたときにおいては二九%台ということでさせていただきました。

 私どもは、これによって稼ぐ力というものの高い企業の税負担が減ると同時に、赤字の大法人にとりましても、これは黒字化した場合の税負担の増加というものが緩和されるということになりますし、企業にとりましても、いわゆる利益を稼ぐというインセンティブというものが必然的に高まるということになりますので、賃金の引き上げ等々を継続的、積極的にやっていってもらう体質に転換していってもらわないと、少なくとも、今までのようなままで、これだけもうかっているんだから、その分だけ内部留保だけふやしていって、いわゆる配当、労働分配率はそのままなんというんじゃ、これから人も雇えなくなりますよと企業の方にも何回も申し上げました。

 そういったところで、この二十年間でしみついている意識というものを少し変えていただかぬと、我々の世代に比べましても、労働分配率が一〇%以上下がっているというのはいかがなものかということを何回も申し上げておりますので、意識としても、そういった意識を持って対応していただかなきゃいかぬところだと思います。

宮本(徹)委員 ですから、もうかっているところの問題じゃなくて、今は、外形標準課税の拡大というのはもうかっていないところが大変なわけじゃないですか。そういうところに、赤字のところに増税していったら、それで設備投資や賃上げが進むというのはやはり常識に反するというふうに私は思います。

 大体、外形標準課税の拡大は、当初、経団連でさえこう言っていました。業績が回復途上にある企業の税負担が重くなるデメリットがあると言っていたわけですよね。

 私がいろいろなところを回っていますと、今回、外形標準課税の拡大は資本金一億円以上ですけれども、それ以外の中小企業の皆さんからも、こういう法人税改革の方向が続くと、私たちのところまで今度は課税対象になるんじゃないかという心配の声を本当によく聞きますが、資本金一億円以下の企業への外形標準課税の拡大は今後やるべきではないと考えますが、麻生大臣はその点どうお考えでしょうか。

麻生国務大臣 これは御存じのように、法人事業税というのは総務省の所管でありますので、私どもの所管ではありませんけれども、平成二十七年、二十八年度の税制改正において、大法人につきましては外形標準の拡大というものを進めていく一方、資本金一億円というものにつきましては引き続き外形標準課税の対象としておりませんのは、御存じのとおりであります。

 今後、適用法人のあり方については、与党の税制改正大綱等々においていろいろ検討されるんだと思いますが、地域経済とか企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行うということとされておりますので、この方針に沿って対応していくことになるんだと存じます。

宮本(徹)委員 慎重に検討ということですが、やらないということで対応していただきたいというふうに求めておきたいと思います。

 結局、法人税率を引き下げて外形標準課税を拡大していくというのは、私は、賃上げにもつながらないし、投資にもつながらないし、経済の好循環にはつながっていかない、さらに内部留保を一部の大企業に積み上げていくという結果になるんじゃないかというふうに思います。

 結局、今回の法人税率の引き下げというのは一部の大企業だけが減税になる。もっと言えば、経団連が下げてくれと言ったから、その部分だけ下がるように下げたんじゃないかというふうに私は思わざるを得ません。

 経団連は、税制改正要望で、法人税率を下げよということを言ってきました。企業の負担が実質的に増加することのないようにということを繰り返し言ってきたわけですよね。それで、税制改正大綱がまとまった際の経団連会長のコメントはこう書いていますよ。経団連の主張が受けとめられたということで、「法人実効税率が従来の計画より一年前倒しで平成二十八年度より二〇%台に引き下げられることになったことを歓迎する。」と。

 結局、経団連の要望をどんどん丸のみして税制改正を進めている、こういうことなんじゃないんですか。

麻生国務大臣 今御指摘のあったところのほかにもちょっと読んでいただかないかぬと思いますけれども。

 政府としては、我々としては経団連の要望というものを丸のみしたとおっしゃりたいんだと思いますけれども、内容面をよく読んでいただくと、経団連が昨年九月に公表した提言をよく読んでいただくと、外形標準課税のさらなる課税というものは行うべきではないとされておりますし、また、減価償却の見直しについても慎重に検討することが必要とされておりましたが、二十八年度の税制改正においてはそれらの改革についても盛り込んでおりますので、今言われた御指摘は当たらないのではないかと思っております。

宮本(徹)委員 丸のみしたわけではないと言いますけれども、説明のつかない、経済の好循環におよそつながるとは思えない、多分、麻生さんもそう思っているであろう今度の法人実効税率の引き下げを、これだけは経団連の要求をのんでいったということだと思います。

 経団連、財界は、これだけじゃなく、さらに法人実効税率を二五%まで下げてほしいということを繰り返し言っております。競合するアジア近隣諸国並みということを言われているわけですけれども、今回二〇%台に引き下げたことというのは、政府としては、国際相場に照らして今どういう水準だというふうに見ていらっしゃるのでしょうか。

麻生国務大臣 日本の法人税のいわゆる実効税率というのは、諸外国に比べて高いと指摘をされてきておりますけれども、今回の改革で三十年度には二九・七四%まで下がることは決定しておりますので、フランスの三三・三三%を下回っておりますし、ドイツの二九・七二とほぼ並んでおりますので、私どもとしては、国際的に遜色のない水準へ移行できた、改革ができたというように考えております。

宮本(徹)委員 ということは、経団連が言っている二五%に引き下げるべきだという立場には立たないということなのかなというように思いますので、その点は確認しておきたいというふうに思います。

 もうちょっと麻生さん宛ての質問も通告してあったんですけれども、初めに時間をとってしまったために、麻生大臣への質問はここまでにしておいて、最後に、残った時間で保育料の問題について取り上げさせていただきたいと思います。

 一年前、本委員会で、年少扶養控除廃止に伴ってそのみなし適用を保育料に限っては続けてきたものを、子ども・子育て新制度の発足に当たって年少扶養控除廃止のみなし適用をやめた、そのことによって保育料が上がります、大変なことになりますよ、多子世帯ほど上がりますよということを言いまして、値上がりにならないための対策をこの場で求めました。

 結果、どうだったかというと、対策をとらなかった自治体では多子世帯の保育料が上がりました。四人、五人、六人と、子供が多いほど大きな保育料値上げとなって、私も、直接、全国各地の方の悲鳴の声もその後伺うことになりました。メディアでも取り上げられました。NHKでも特集も組まれましたし、北海道テレビや関西のMBSなどでも繰り返しこの問題は取り上げられました。

 少子化対策、少子化対策といいながら、子供が多くいる世帯ほど保育料が上がる、こういうことになったわけですが、こういう少子化対策に逆行する事態が起きたことについて責任をどう感じておられるのかというのをお伺いしたいと思います。

高鳥副大臣 宮本委員にお答えをいたします。

 子ども・子育て支援新制度における年少扶養控除のみなし適用の廃止につきましては、市町村の事務負担等を考慮しつつ、保育料の負担が改正前後で極力中立的なものとなるように配慮したところでございます。

 具体的には、夫、妻、子二人の世帯につきまして、年少扶養控除廃止前とおおむね同じ程度の保育料の負担となるよう、利用者負担額算定の基礎となる市町村民税所得割額を設定したところでございます。

 しかしながら、御指摘のとおり、子供が三人以上の世帯においては負担増となるケースがあり得ることから、市町村の判断により、既に入園をしている子が卒園するまでの間に限り、年少扶養控除等の廃止前の旧税額に基づく利用者負担額を適用する経過措置を講じることを可能といたしているところでございます。

 なお、市町村が経過措置を講じた場合には、当該経過措置の適用を前提とした国庫負担も行うことといたしております。

宮本(徹)委員 だから、責任をどう感じているのかというのを私は聞いたわけですよ。

 経過措置をとることができるということをおっしゃったわけですけれども、とらなかった自治体もたくさんあるわけですよ。年少扶養控除の再算定をするのは大変だ、事務負担が大変だからやめさせてくれということを受けて、政府はそれをのんじゃったわけでしょう。原則これからはやらないこととする、だけれども希望する自治体については経過措置をとったら財源を手当てするよというのが政府のやり方だったわけですよ。だから、経過措置をとらない自治体で多子世帯ほど保育料が上がるということが起きたわけじゃないですか。

 この責任をどう感じているのかというのをお伺いしているわけですよ。

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 例えばですけれども、平成二十八年度の予算におきましては、先生よく御案内と思いますけれども、多子世帯の保育料負担軽減といたしまして、年収三百六十万円未満相当の世帯につきまして、多子計算に係る年齢制限を撤廃し、第二子を半額、第三子以降無償化を完全実施するとか、あるいは、一人親世帯の保育料負担軽減といたしまして、年収三百六十万円未満相当の一人親世帯等への優遇措置として、第一子は半額、第二子以降は無償とすることといたしておりまして、それぞれ所要の経費を計上したところでございまして、責任云々ということはございますけれども、政府としては全力で対応していると考えております。

宮本(徹)委員 責任云々じゃなくて、本当に責任を強く感じてほしいと思うんですよね。本当に、保育料を払えなくて借金したという話まで私のところに来たんですから。多分、厚労省の担当者のところにもそういう話がたくさん来たんじゃないですか。きょうは内閣府に来ていただいていますけれども。そういうことが起きたわけですよ。

 先ほど、年収三百六十万までは今度は第三子以降は無料化するというお話がありました。もともと、幼児教育の無償化は、当初、五歳からという話が昔ありましたけれども、多子世帯からするというのは賢明な判断だと思いますけれども、問題は、三百六十万より上の人は、まだ上がったままの方がたくさんいるわけですよ、年収三百六十万より上の人が。東京でいえば、年収三百六十万円までの世帯というのは、大体全世帯の一五%ですよね。ですから、八五%の世帯は、今回値上がりした人は上がったままということになっております。

 ですから、本気で少子化対策と言うんだったら、第三子無料、第二子半額、この所得制限を撤廃するか、あるいは大幅に引き上げていくということが必要になるんじゃないですか。

 それと同時に、現に値上がりした自治体に対して、経過措置がとれるんだからちゃんと措置をとりなさいという働きかけも必要ですし、あるいは、経過措置をとった自治体でも、途中でやめている自治体がたくさんあるわけですよ。半年でやめました、今度の年度末でやめる自治体もあるというふうに私のところに話が来ております。

 ですから、そういう自治体に対しても、ちゃんと経過措置をとり続けなさいということを国として主導的に責任を持って働きかける必要があるんじゃないですか。お答えいただきたいと思います。

高鳥副大臣 お答えをいたします。

 子ども・子育て支援新制度における保育料負担については、平成二十五年の幼児教育無償化に関する関係閣僚・与党実務者連絡会議において定められた基本方向に基づいて、幼児教育の無償化に向けた段階的取り組みを進めてきたところでございます。

 もう先生御指摘のとおりでございますけれども、その所得制限等につきまして、多子世帯へのさらなる配慮につきましては、財政が非常に厳しい中ではありますけれども、幼児教育の無償化を段階的に進めるという文脈の中で、引き続き検討してまいりたいと思います。

 それから、自治体に対する、市町村に対する指導をもっと積極的にやった方がいいのではないかという御指摘だと思いますけれども、子ども・子育て支援新制度に基づきます事務は自治事務でございまして、経過措置を適用するか否かは、事務的な負担の観点等も踏まえまして、新制度の円滑な実施を図る観点から、それぞれの状況に応じてなされた市町村の判断を尊重することが適切であると考えております。

宮本(徹)委員 市町村の判断なんて言っているわけですけれども、もともと市町村が値上げしてもいいような仕組みをつくったのは国なんですよ。

 国自身がもっと責任とらなきゃだめだということを厳しく指摘して、時間が参りましたので、私の質問は終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私からも、日銀総裁そして麻生大臣にもろもろお伺いしていきたいと思います。

 まず総裁、お伺いしていきたいんですけれども、先ほど官邸に入られて、財務官とともに総理とお話しされたという話が報道で出ております。経済金融情報について意見交換をされて、総理から金融政策への要望がなかったという話なんですけれども、本当なんですか。総裁、お答えいただけますでしょうか。

黒田参考人 総理とは定例的に経済金融情勢について意見交換の機会をいただくことになっておりまして、本日は、昼食をとりながら、最近の国際金融資本市場の動向を含めまして、内外の経済金融情勢について意見交換を行いました。

 また、その中で私の方から、マイナス金利政策の内容、趣旨等についても御説明をいたしました。それに対して特別の御注文等はございませんでした。

丸山委員 午前中の総裁からの御答弁で、マイナス金利の効果が出ているという話がございました。確かに金利は下がってきているというところですけれども、一方で、きょうも株価、先ほど終わり値をつけまして、一万五千円を割っている。円の為替の方も百十二円と、非常に危機的な状況にあるというのが私の認識なんですけれども、一方で、総裁の午前中のお話も、ファンダメンタルズ的には非常に問題がないという、楽観まではいきませんけれども、ある意味、今の市場が抱えている総裁に対する視線という部分では、緊張感がないんじゃないかなとまで言うとそこは失礼ですけれども、しかし、市場が思っている総裁への期待感と比べて少し薄いんじゃないかなというふうに感じるところでございます。

 そういった意味で、マイナス金利の効果が出ているという認識で総理とお話しされたということですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げておりますとおり、このマイナス金利政策を導入した際の政策委員会での考え方というのは、確かに、経済自体は緩やかに回復してきており、そうしたもとで物価の基調も着実に高まっているわけでございますけれども、しかしながら、原油価格の一段の下落に加えて、中国を初めとする新興国、資源国経済に対する先行き不透明感などから、金融市場は世界的に不安定な動きとなっております。このため、企業コンフィデンスの改善や人々のデフレマインドの転換が遅延して、物価の基調に悪影響を及ぼすリスクが高まっているという認識から、マイナス金利の導入を決定したわけでございます。

 したがいまして、現在の国際金融資本市場の動向につきましては、しっかり注視し、今後とも、二%の物価安定目標の達成のために必要であれば、ちゅうちょなく、追加緩和も含めて政策の調整を行うという基本的な考え方に変わりはございません。

丸山委員 市場の荒れぐあいを見ていますと、マイナス金利について、総裁の発言に対する信頼性、もしくは総裁が何をお考えかということが、市場との対話がうまくできていないんじゃないかなというところがすごく気になるところです。国会でも黒田総裁はマイナス金利は検討しないと御発言されて、その直後にマイナス金利を導入されて、まさしく、世間で言うところのサプライズであったと思います。

 一方で逆噴射が今来ているんじゃないかなと思うんです。量的緩和だけで難しいからこのマイナス金利を導入したことではない、つまり量的緩和の限界ではないという御発言があったんですけれども、それはどういった意味で総裁は御発言されたのか、お伺いしたいんです。

 つまり、今まで量的緩和をやられてきて、それだけじゃ足らないからマイナス金利を導入されたというのが自然な考えだと思うんですけれども、そうじゃないということでしょうか。総裁、よろしくお願いします。

黒田参考人 昨年、市場の一部に量的・質的金融緩和の限界というものを指摘される向きがあったわけですけれども、私どもはそういった限界が今生じているというふうに全く考えておりませんけれども、しかし、一部にあったそういった懸念も払拭するために、昨年の十二月に、量的・質的金融緩和を一層円滑に進めるための措置、いわゆる補完措置というものを導入いたしました。したがいまして、現時点で量的・質的金融緩和について限界があるというふうには考えておりません。

 そうしたもとで、現状の経済、物価の判断、さらには、先ほど申し上げたような国際的な金融資本市場の変動ということを踏まえた上で追加的な緩和措置が必要だということであり、そうした中で、オプションとして幾つかのオプションがあったわけですけれども、今回、マイナス金利を導入し、マイナス金利つきの量的・質的金融緩和ということで、いわば量、質、金利という三次元で今後緩和手段を駆使していけるという新しいフレームを決めまして、二%の物価安定の目標の早期実現を図るということを確認したわけでございまして、先ほど来申し上げていますように、量的・質的金融緩和という面で何か限界があって、それができないからマイナス金利に行ったということではなくて、むしろ、三つの次元で緩和手段を駆使して、二%の物価安定目標をできるだけ早期に実現するという方向で一層の努力が可能になったというふうに考えております。

丸山委員 総裁が何を考えているのかというところが、わかりやすく市場にも国民の皆さんにも対話をしていくというのが、為替や株価の安定において非常に大事だと思うのですけれども、もう一つ、先日の予算委で総裁が御発言された部分で私は気になるところがありまして、今回のマイナス金利は日銀の当座預金にかかるものなので、確かに、直ちにそれが民間銀行の個人向け預金にマイナス金利になるというわけではないんです。しかし、予算委では、民間銀行の個人向け預金にマイナスの金利がつく可能性がないとおっしゃっているんです。それはどういうことかというのをお伺いしたいんです。

 つまり、例えば、日銀に先駆けて欧州では複数の中央銀行がもう既にマイナス金利を導入しておりまして、そういった意味では、確かに総裁がおっしゃるように、かつては、法人の預金とか、あと富裕層の預金に関して一部の銀行がかけているというのはあったけれども個人にはなかったというのが通常でしたが、最近見ていますと、例えば経営体力の弱い小規模行が、本当に小口のリテールに、顧客から利子を取るような事例も出てきているんじゃないでしょうか。

 例えばスイスのオルタナティブ・バンクなんかも、去年十月、個人の預金金利にマイナスの〇・一二五%、つまり、一千万円預けたら、それに対して一万二千五百円減るという形でかかっています。

 さらには、金利という形をとらなくても、手数料という形で、今でも十分銀行の手数料は高うございますけれども、そういった形で預金者、個人向けの預金に対しても、特に経営体力の弱い小規模行に対して可能性がないと言い切るのは少し言い過ぎで、逆に誤解を招いてしまうんじゃないかと私は思います。

 逆に、銀行への打撃も考えた場合、それを和らげる措置、先ほども、午前中御答弁いただいていますけれども、それを含めた上で、逆に誤解がないように、この辺、マイナス金利がつく可能性がない、ゼロだというわけじゃないと私は思うんですけれども、総裁としてどういう思いで御発言されたのか、お答えいただけますでしょうか。

黒田参考人 欧州の四つの中央銀行がマイナス金利を導入してある程度の期間がたっておりますけれども、特に、そのうち一部の中央銀行はマイナス一%前後のマイナス金利を導入しておりますけれども、そうしたもとでも、欧州の例を見ますと、金融機関の個人向け預金の金利がマイナスになっている例はないというふうに理解をしております。

 ただ、準備預金に対するマイナス金利が非常に大きくなっていったときに何らかの影響が出るかもしれないという議論はあり得るとは思うんですが、先ほど来申し上げていますとおり、日本銀行が今回導入しました当座預金に対するマイナス金利というのは、これまで積み上げた準備預金には引き続きプラスの〇・一%という金利をつけ続けるわけですし、その上に、必要準備とか、あるいは貸し出し増加支援資金等で日本銀行から借り入れを受けているというものに相当する部分はマイナス金利にしないでゼロになっていますし、マイナス〇・一%の金利がつく部分というのは、実は限界的なものであって、今後、年間八十兆円の国債の購入によるマネタリーベースが増加するのにつれてゼロ%の部分も上げていきますので、全体として金融機関の日銀における準備預金というのはふえていきますけれども、そのうちでマイナス〇・一%の金利がつく部分というのは、常に限界的なものであって、金融機関の収益には大きな影響を与えないようにやっておりまして、これは、欧州の経験も踏まえつつ、日本の事情を勘案して、金融機関に過度の影響が出ないようにしているということでありまして、そういった意味でいいますと、準備預金に限界的にマイナス〇・一%の金利をつけたからといって、我が国の個人向け預金の金利がマイナスになるという可能性はまずないと思っております。

丸山委員 つまり今のお話は、現時点で配慮されているという、それは大事なことだと思います。特に体力の弱い小さい銀行、中堅の銀行に対する御配慮をされているというふうに私も感じますが、一方で、今は総裁みずからお話しされたように、現時点でなわけで、要は、日銀は国債を今大量に毎年毎年買っておられるわけですから、この積み上がりもしていくということを考えれば、今のお話は、現時点では個人向けの預金にマイナスの金利がつくことはないということですけれども、しかし、ヨーロッパの事例を見ても、長期的に完全に可能性がないというのは、私は逆に市場に誤ったメッセージを与えると思うんですけれども、それは将来的な話も含めてということをお考えなんですか。

黒田参考人 もとより預金金利というものは、さまざまなことを考慮して金融機関自体が決めるものでありますけれども、先ほど来申し上げていますとおり、我が国の場合は既に準備預金は相当大きく積み上がっている。これまで積み上がった分についてはプラス〇・一%を引き続きつけます。さらに、これからふえていく分にマイナス〇・一%をつけるんですけれども、そのものもゼロ%というものを段階的にふやしていく。

 つまり、典型的に言いますと、年間八十兆円、準備預金、マネタリーベースがふえていくというときに、基本的にその分だけゼロ金利の対象をふやしていきますので、あくまでもマイナス〇・一%の金利がつくものというのは限界的なものであって、そのものがどんどん大きくふえていくということにならないようになっているわけです。

 これまで積み上げた分はプラス〇・一ですし、これからふえていく分も、先ほど申し上げたようにゼロ%で、いわばパーパーになっている形になっているわけです。必要準備はもともとゼロでしたし、それから、貸し出し支援資金などで借りる分もゼロ%ですし、仮に準備預金を積んでいてもゼロなんですね。

 あくまでもマイナス〇・一%がつくのは常に限界的な部分。限界的な部分が金利や相場の決定に影響するというのが、経済学的にもそういうことですので、金融機関に対する影響というのは最小限にしつつ、イールドカーブ全体を引き下げる効果は出るということです。

 現にイールドカーブ全体も下がっているわけですので、今後さらに準備預金がふえていっても、マイナス〇・一%がかかる部分がどんどんふえていくことにはなりません。その点は御理解いただきたいと思います。

丸山委員 預金金利は民間で決まっていくという部分もありましたけれども、そういう意味では、将来に向けてということがないのかなというのは感じたところです。

 一方で、先ほど来総裁の話を聞いていますと、もちろん、金融機関に対する影響は最小限に抑えていくという御発言があって、そこは心強いところですけれども、一方で、いい部分ばかりを捉えているなという印象も受けます。

 例えば一つ、イールドカーブの話をされましたけれども、今回イールドカーブ全体を下げたいという話ですけれども、このイールドカーブ、利回りの曲線もそもそも今フラット化していて、金利自体が長期も短期もほぼ先行き的には一緒に思われている中で、景気後退の局面にあるというのが世界的な流れだというふうに思うんですけれども、今回のこのマイナス金利、日本が導入したことで、恐らく世界的にも、ほかの国も、欧州や日本に続いて、次は英国やアメリカといった主要な国もマイナス金利が視野に入ってくる可能性があるなというふうに思うところなんです。

 総裁として、今回のマイナス金利政策の悪影響、先ほど、中堅や小規模の銀行に対する問題点とフォローの話をされました。それ以外で、今回、このマイナス金利政策においてどういった問題が生じてくる、そして、それに対してどう御対応されるのか、お伺いいただけますでしょうか。

黒田参考人 現在のイールドカーブは、やはり正の傾きを持っておりまして、時々見られる、短期が高くて長期が低いという逆イールドカーブの形になっておりません。したがいまして、利ざやはあるわけですけれども、全体としてイールドカーブが下がっていき、そして、そういう中で若干フラット化するということで、金融機関にとっての利ざやは減少しているわけです。

 これは、従来から申し上げておりますように、包括緩和のもとでも、それから二〇一三年の四月に始まった量的・質的金融緩和のもとでもイールドカーブは全体として下がってきて、金融機関の利ざやは縮小してきたわけです。今回のマイナス金利の導入によってもまたイールドカーブが下がって、利ざやは縮小しております。

 ただ、量的・質的金融緩和を導入して最近までの二年九カ月ぐらいをとりますと、金融機関の収益は基本的にはふえていまして、それは、倒産が減って、貸倒引当金、引き当てをする必要がなくなったということで利益がふえているというのもありますし、金融サービスの対価でふえているものもありますし、また、融資自体もふえていますので、その効果もあります。さらには、さまざまな証券投資による収益というのもあって、全体としてはふえてきているんですけれども、今後どうなるかというのは、もちろん、今言ったような要素がどのように展開していくかによるので何とも言えませんけれども、利ざやだけとりますと、確かに、金融機関の収益にとってマイナスのインパクトがあり得るということであります。

 ただ、必要なことは、経済を持続的な成長経路に乗せて、デフレから脱却して物価が二%ぐらい安定的に上昇するという形、そういう経済になれば、あるいは、そういう形にすることによって金利も上昇し、利ざやも拡大し、金融機関の収益も適切に上昇していくということになると思いますので、ここは、利ざやの縮小ということは、いかなる金融緩和措置でも起こり得ることですけれども、そうしたことを通じて消費や投資が刺激されて経済全体が好循環をして、先ほど申し上げたように、経済の拡大の中で、利ざやも、あるいは金融機関の収益もさらに増加していくということが望ましいとは思いますけれども、今の時点で利ざやだけを取り出しますと、確かに従来から減少してきておりますけれども、さらに減少するということは確かです。

丸山委員 経済の拡大に向けてこの部分がクリアされていくという話ですけれども、現に問題は、特に、原油安によって今回物価目標をどんどん後に先送りしているというのが日銀の現状だというふうに思います。経済の拡大のために物価の上昇が欠かせない、デフレ脱却が欠かせないというのがアベノミクスですし、そして、何より日銀総裁の目標だったと思います。

 しかし、この間のマイナス金利の発表と同時に出した展望レポートでも、二%の物価目標をついに、一六年度後半とおっしゃっていたのが一七年度前半にされています。最初は二年で二%だったのが、できるだけ早く、そして、一六年度前半だったのが次に後半ごろになって、そして今回、一七年度前半になりました。

 ずっとこの委員会でもお伺いしているのは、原油価格が予想以上に問題だ、上がらないという話ですけれども、上がると半年後には見通しがよくなってくるからこの物価目標は達成されるという御答弁をされていましたけれども、結局、これもまた先送りの状況になってきた。

 これは、どうして上がらなくて、そしてこの見通しの失敗はどこにあって、そしてそれは、今回の見通し、半年また先送りされましたけれども、そこではクリアされるという理解で、特に原油のところ、思われているということですか。

黒田参考人 原油価格の見通しにつきましては、各国の中央銀行も、日本銀行もそうですけれども、あるいはIMF等の国際機関も、足元の市場の石油価格と先物価格の動向を見て、それを踏まえて経済見通しをつくっております。

 したがいまして、石油価格自体について、市場の先物価格よりももっと上がるとかもっと下がるとかいう特別の根拠を持っているわけではありませんので、あくまでも、その市場が示している今後の石油価格の先行きというものを経済見通しの前提にして、そして、その上で金融政策なりそれぞれの政策を決めているということであります。

 その結果として、市場が見込んでいたよりももっと上がれば、逆に物価はより上がるでしょうし、また、市場が見込んでいたよりも上がらない、さらに下落するということになれば、足元物価はむしろ下方に圧力がかかってくるということであります。

 ただ、原油価格の先行きにつきましては、どこの中央銀行も、IMFですら、特別の知識というか認識、先見の明があるというわけではありませんので、そういったものを前提にしてつくっている。

 もちろん、IEAというパリにありますエネルギー機関自体はいろいろな形でエネルギー見通しをつくっておりますけれども、それはエネルギーに関する国際機関としてのエネルギーの見通しをつくっているわけですし、その場合には、また逆に、世界経済の伸びとかそちらは、また一定の前提を置いて石油の見通しをつくっているということであります。

 石油価格につきましては、需要と供給と両面から見通しというのはかなり難しいわけでして、先ほど申し上げたように、特別の知見があるわけでない中央銀行としては、市場の原油価格の先行きの見通しを使ってそれぞれの経済見通しないし金融政策を決めているというのが現状であり、これ以外の方法、例えば、市場はこのぐらい上がると言っているけれども実際はもっと上がらないだろう、だから、その上がらないということを前提にもっとすごいたくさんの緩和措置をとっていたらいいというのも、それは中央銀行としてそういった政策はとり得ないわけでして、あくまでも、一定の合理性を持った石油価格についての前提を踏まえて見通しを立て、政策を立てるということであろうというふうに思っております。

丸山委員 時間も迫ってきたので。

 総裁のお話を聞いていると、やはり市場との対話をもうちょっと重視していただきたいなというのが正直なところです。市場も、総裁が何を考えていらっしゃるのかがさらに見えてくればこの荒い動きが落ちついてくるというふうに私は信じますので、そういった意味で、しっかりとそういったお考えを外にも発信していただきたいというふうに思います。

 きょうはありがとうございます。

 麻生財務大臣、幾つかお伺いしたいんですけれども、既に過去の委員の方々から同様の答弁がされているもの、例えば景況についてどうお考えかということは、ファンダメンタルズ的には安定しているというお答えをいただいています。また、マイナス金利の影響もお答えいただいていますので、気になるところ、最後に残っているところを一つお伺いして終わりにしたいんですけれども、軽減税率のお話です。

 麻生大臣にお話を聞いていると、ずっと否定的なお考えだったんじゃないかなと。税務が複雑になりますし、実質的に低所得者対策にもならないということから反対のお声も多い中で、どういうお考えなのか。否定的なお考えというのは変わってしまったのかというのが一つと、もう一つ、一番これを伺いたいんですけれども、新聞の軽減税率の話です。

 食べ物だとか飲み物というものに対して軽減税率をかけなければいけないというのは、理解できない部分もありますけれども、一方としては理解できるところです。しかし、その次に、水道とか電気やガスとか携帯電話とかあらゆる必要なものを除いて新聞が入るというのは非常におかしいんじゃないかというふうに本当に率直に思うんですけれども、これについて麻生大臣、どういうふうにお考えですか。

麻生国務大臣 軽減税率制度につきましては、私どもが最初から申し上げておりますように、これは、一般では主に消費者と物を売っている人との間の話のみがえらくやっておられましたけれども、一番大変なのは、経産省にいたからおわかりだと思うけれども、業者と業者の間のBツーBの方が一番大変なんですよ。というところが全然わからぬ人たちばかりみんなそれぞれしゃべっていますから、ですから、ちょっと待ってくれ、これは一番大変なのは業者と業者なんじゃないんですかという話をして、そうしたら、そこの面倒くさいところだけとられて、何だ面倒くさいという話になって、まあいつものことですけれども、そういう話になっているんですが、私どもとしては、こういったものが一番手間がかかりますので、そこのところをきちんとされておかないと大変なことになりますよということが私どもの一番の趣旨です。

 そして、軽減税率にするか、給付つき税額控除にするか、総合合算制度にするかで、三つ提言されたうちの一つを私どもは選択させていただいたということなんだと思っておりますので、その内容につきましては、政府税調なり、また党税調等々でいろいろ話をされた中で出された問題だと思いますので、私どもは今でも、事業者の混乱を最小限に抑えるというところをようと頭に入れておかないと現場でえらい困ることになると思うのは、業者間同士のあれの話が物すごい数が多いので、そちらの方が大変だろう。準備期間というものをきちんとしておかないとえらいことになるので、レジの導入とかそういったシステムより、そちらの話の方をもう少し配慮していただかぬといかぬことになるのではないかと思っております。

 それで、今はもう一個、新聞等と言われましたけれども、日常生活における媒体として、また水道とか言われましたが、これはもともと消費税というようなものの話じゃなくて、もともと住民の話としてこれは全然別の次元の話ですので、こういったところはもともと低く抑えられているところもありますので、こういったところは直接いわゆる地方自治体が水道なんかは特に管轄しておられますので、そういったところもあろうかと思いますので、私どもとしては、全国あまねく情報というものを均質に提供しておられるという中においては、新聞を買っておられる方が少なくなっているとかいろいろなことをおっしゃいますけれども、それでいきますと、負担率からいきますと、いわゆる逆進的になっていることは、低所得者層もみんな新聞をとっておられる方も多いので、こういったところは総合的に勘案させていただいて決めさせていただいたというふうに御理解いただければと存じます。

丸山委員 もう時間ですので終わりますけれども、この問題、皆さんお聞きいただいたように、ちょっと歯切れが悪いなというふうに思います。しっかりとこの後の質疑でお伺いしていきたいと思います。

 御静聴ありがとうございました。

宮下委員長 以上で、大臣の所信に対する質疑は終了いたしました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.