衆議院

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第5号 平成28年2月23日(火曜日)

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平成二十八年二月二十三日(火曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      越智 隆雄君    大岡 敏孝君

      勝俣 孝明君    木内  均君

      木村 弥生君    國場幸之助君

      島田 佳和君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    瀬戸 隆一君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      冨樫 博之君    中山 展宏君

      根本 幸典君    野中  厚君

      福田 達夫君    福山  守君

      古田 圭一君    宮川 典子君

      宮路 拓馬君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      若狭  勝君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      玉木雄一郎君    前原 誠司君

      宮崎 岳志君    鷲尾英一郎君

      上田  勇君    斉藤 鉄夫君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   政府参考人

   (内閣官房日本経済再生総合事務局次長)      広瀬  直君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 井野 靖久君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 籠宮 信雄君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   田和  宏君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)   原  敏弘君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (総務省大臣官房審議官) 時澤  忠君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電気通信事業部長)     大橋 秀行君

   政府参考人

   (総務省総合通信基盤局電波部長)         渡辺 克也君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           飯田 圭哉君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           伊原 和人君

   政府参考人

   (厚生労働省政策統括官) 武田 俊彦君

   政府参考人

   (経済産業省大臣官房審議官)           保坂  伸君

   政府参考人

   (中小企業庁長官)    豊永 厚志君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   参考人

   (日本銀行副総裁)    岩田規久男君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     木村 弥生君

  勝俣 孝明君     若狭  勝君

  田野瀬太道君     宮路 拓馬君

  務台 俊介君     木内  均君

  宗清 皇一君     古田 圭一君

  玄葉光一郎君     玉木雄一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  木内  均君     瀬戸 隆一君

  木村 弥生君     冨樫 博之君

  古田 圭一君     宗清 皇一君

  宮路 拓馬君     田野瀬太道君

  若狭  勝君     勝俣 孝明君

  玉木雄一郎君     玄葉光一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  瀬戸 隆一君     務台 俊介君

  冨樫 博之君     福山  守君

同日

 辞任         補欠選任

  福山  守君     島田 佳和君

同日

 辞任         補欠選任

  島田 佳和君     宮川 典子君

同日

 辞任         補欠選任

  宮川 典子君     大野敬太郎君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君、日本銀行副総裁岩田規久男君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房日本経済再生総合事務局次長広瀬直君、内閣府大臣官房審議官井野靖久君、大臣官房審議官籠宮信雄君、政策統括官田和宏君、公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長原敏弘君、金融庁監督局長遠藤俊英君、総務省大臣官房審議官時澤忠君、総合通信基盤局電気通信事業部長大橋秀行君、総合通信基盤局電波部長渡辺克也君、財務省主計局次長美並義人君、主税局長佐藤慎一君、理財局長迫田英典君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官飯田圭哉君、大臣官房審議官伊原和人君、政策統括官武田俊彦君、経済産業省大臣官房審議官保坂伸君、中小企業庁長官豊永厚志君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 ただいま御紹介いただきました民主・維新・無所属クラブの宮崎岳志でございます。

 本日は今回の所得税法について質問をさせていただくわけでありますが、今回議論の焦点になっております消費税法というのは、私にとっても、初めて造反をしたという思い出深い法案でございます。

 大変な議論が二〇一二年にあって、その結果できた法案でありましたが、その際、ねじれ国会でありましたので、民主、自民、公明の三党合意というのが行われました。しかし、その三党合意というのは、私は既に破棄をされているんじゃないかなというふうに思っております。

 なぜなら、これは既に枝野幹事長等が、前回の総選挙のころからも発言もされておりますが、とにかく三党合意でこの時期を決め、あるいは景気条項みたいなものを決めたにもかかわらず、安倍総理が二〇一四年の十二月に、この消費税の引き上げの時期をめぐって解散をされているということであります。

 いろいろな政党ありますけれども、そもそも消費税の方に反対した主要政党というのは、民主と自民、公明、三党しかないわけでありますので、その中で民主党に協議もなく解散したということは、普通に考えれば、既にこの三党合意は破棄をされたものだというふうに理解するのが通常であろうと思います。

 当時の報道を見ましても、これで三党合意は白紙になったんだということでありますが、この三党合意、まだ生きているというふうにお考えでしょうか。麻生財務大臣、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 消費税率一〇%への引き上げにつきましては、今言われましたように、三党合意を得まして、税制抜本改革法の景気判断条項に基づくとともに、三党合意の「時の政権が判断する」との文言を踏まえて、御存じのように、一昨年秋に、延期することを決定をしております。平成二十九年四月に確実に実施するということとしたものであって、三党合意の破棄に当たるとの御指摘は当たらないと思っております。

 いずれにせよ、消費税一〇%に引き上げというものは、これはもう基本的には、我々としては、世界に冠たる社会保障制度というものを次の世代に引き渡す責任というものを果たす、また、市場や国際社会からの国の信頼というものを確保するために、経済財政運営に万全を期して、リーマン・ショックや大震災のようなよほどの重大な事態が発生しない限り、確実に実施をしてまいりたいと考えております。

宮崎(岳)委員 麻生大臣、今、三党合意を破棄されたんじゃないかという御指摘には当たらないというふうに言われたんですが、その理由がありませんでした、今の話の中に。ちょっと不可思議だなというふうに思います。

 民主党政権下でつくられた景気条項というのが盛り込まれておりまして、それが二〇一四年の総選挙後、二〇一五年の通常国会でこの景気弾力条項というものが削除されております。この条項は、単純に景気に対して配慮をするというものではありませんで、二つの特徴があります。一つは、努力目標とはいいながら、具体的な数字が入っているということ、そしてもう一つは、「停止」という二文字が入っているということなんです。

 麻生政権下で、私も今でも覚えているんですけれども、いろいろ消費税について議論がありました。当時、与謝野官房長官だったでしょうか、非常に強力に推進されたんでしょうか、そのときに麻生総理がカメラの前で与謝野さんに、これでいいんだろうと吐き捨てるようにおっしゃったという画面が非常に鮮烈に記憶に残っているんです。

 いろいろ議論の中で、そのときに方向性も決まりましたし、あるいは、当時の所得税法の附則第百四条でしたか、そういったものも決まりました。しかし、その中には、数値とかあるいは停止とか、そういうことは書かれていないわけであります。

 数値であります名目三%、実質二%という数字も、最近はよく安倍総理が口にしていただいてありがたいんですけれども、これもある意味、民主党政権下の新成長戦略、それから日本再生戦略、こういうところに盛り込まれたところから始まっている数字でありまして、私と金子洋一さんという参議院議員と、主に二人でこの数字を入れようということで頑張って押し込んだという数字でありまして、その本質的なところは、新成長戦略の名目三パー、実質二パーという後に、デフレーターで一%の物価上昇を目指すんだということが書いてあります。つまり、デフレーターで一%ということは、消費者物価指数でいうと二%に近いような数字になると思うんですが、そういったことも伏線にあっての数字であります。

 そういったことも考えて、実は、当時のことをなかなか記憶がいろいろな方が薄れておりまして、経過というものも知っている方が少なくなってきているなというのが、正直思っております。今、私はこの間びっくりしたんですけれども、景気条項というのは自民党の要求で入ったんだというふうにおっしゃっている方すらいるぐらいの状況なんです。

 麻生大臣、御存じでしょうけれども、景気条項というものは、民主党が入れようということで言った。特に、数値目標が入っているということについて、自民党の方から相当強い反対が、当時、三党協議の中で出ておりました。二〇一二年の六月のことであります。

 ここに資料も用意させていただきましたが、一つは新聞記事です。これは各紙どこを見ても同じですが、景気が悪化すれば、増税しない景気弾力条項に数字を盛り込むことについて自民党側から削除を要求したという内容であります。民主党側は、目標を削除すれば党内の増税反対論が再燃するということで、それを拒否した。こういう流れであります。

 その下は、これは本会議の質問でありまして、自民党の金子一義さんが、数字を入れることはまかりならぬという主張をされているときのものであります。

 しかし、こういった経過があってつくられた景気条項というものを、二〇一四年の衆院選後、二〇一五年の通常国会で削除をされております。

 そうすると、もうこれは、そもそも三党合意というものはもはや白紙になった、機能しなくなったというふうに、これは常々、野党側といいますか民主党側が主張していることですが、与党もお認めになっていることじゃないかというふうに思うんですが、違いますですか。

麻生国務大臣 お互い記憶が大分薄らいできているのは間違いありませんので、与謝野さんは官房長官じゃありませんで、経済財政担当大臣。官房長官は河村建夫でしたので。

 今のお話のところでいろいろ御意見があるところだと思いますけれども、一昨年十二月のいわゆる経済条項の削除の件に関しましては、いろいろ意見があろうとは思いますけれども、少なくとも優先順位の一番は消費税をという話が一番でしたので、消費税を、経済条項をつけるとまた何か延ばすんじゃないかというような当時の意見がいろいろ出て、これはますます後退するという意見が、マーケットとか、また国際間でいろいろ言われたところでもありましたので、私どもとして、あれはオーストラリアのときだったと思いますが、そのときに、それをつけずに断固うちはやりますということをきちっと世界に証明する必要があるのではないかということからあれをとられたのであって、三党合意ということで言わせていただければ、そういったこととは無関係に、きちっとした意思を示すというのが目的でやらせていただいたと記憶します。

宮崎(岳)委員 とはいえ、三党合意というのは、民主党と自民党と公明党の三党でできたから三党合意なんですね。もちろんマーケットの意見もありましょう、国際的な見方もありましょう。そういったことによって政策を変えるということはあり得ることだと思いますが、しかし、民主党に相談をせずにこれを削除したということですから、少なくとも、三党間の合意という意味では破棄されたというふうに考えられるんじゃないんでしょうか。違いますか。

麻生国務大臣 見解の相違だと思いますけれども、少なくとも、今、私どもと言わせていただいている三党合意の中で決めさせていただきました一〇%等々につきましての基本というものは全く変わらずそのまま進んでおりますので、私どもとしては、三党合意というものをやらねばならぬという意識は私どもの中にはあります。

宮崎(岳)委員 まあ合意でありますから、一党だけ、これが合意なんだ、これは本質は変わっていないんだと言っても、その相手側がそれは違うんじゃないかと言って、文章的にも定められているものと変わっているということであれば、破棄されたというふうに考えるのが常識ではないかというふうに私は思うんです。

 それで、リーマン・ショック級のことがなければ予定どおり実施するんだということはおっしゃっています。そう言う意味はわかりますけれども、年頭からの株価の下落、また中国景気の悪化、そのほかのさまざまな要因を考えると、リーマン・ショック級の経済の混乱というものが、急激にではないにしても、今訪れているんじゃないかというふうに感じております。そういった意味でいえば、消費税の引き上げを再延期すべきじゃないか。

 いずれにせよ、今のまま来年の四月に消費税を上げたら、デフレ脱却というのは私は不可能に近い状況になるんじゃないかというふうに危惧を抱いております。これを再延期する気持ちはございませんでしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘の点ですけれども、少なくとも、今の日本の企業の業績を見ますと、経常収益というものを見ますと過去最高、また、雇用というものが一番不安定な要素ですけれども、この雇用に関しましても二十四年ぶりの高水準、また、昨年の賃金上昇率というものは十七年ぶりの高水準等々、好調な企業収益というものが雇用とか所得といったものなどの改善につながっておりますので、それが消費や投資に結びついていくという投資の好循環が拡大、深化していきつつあるんだと思っております。

 他方、足元では、御指摘にありましたように、海外要因というものが主な理由ですけれども、世界的なリスク回避の動きが見られているということもまた確かだと思いますので、日本市場にもその変動が見られますのはもう間違いないと思います。

 しかしながら、いわゆる実体経済というものを見ます場合においては、企業収益等々は御存じのようになので、いわゆる日本経済のファンダメンタルズというものに関しましては間違いなくしっかりとしておると思っておりますので、今御指摘になりました一〇%の引き上げについては、まだ今から一年ありますので何が起きるかわからぬと言われるのであれば、それはそうかもしれません。さらにこれがもっとひどいことになり得る、絶対そんなことはないと言えるような状況にはないと思っていますので、そういった意味ではそこはよくわかりませんけれども、よほどの重大な事態が発生しない限りは、今の一〇%の引き上げというものを、来年の四月に実施させていただきたいと考えております。

宮崎(岳)委員 まさに、日本経済のファンダメンタルズがしっかりしているというふうに麻生大臣はおっしゃったんですが、八%に上げる前もそういったことだったと思うんです。

 私は、景気条項を自分である程度のところまで書くまでも書いたし、それをわざわざ入れたというのは、やはりデフレ脱却というものが、消費税を上げることによって、そのときに、もう既に民主党は政権から転落するであろうというふうに言われていた時期でもあるんですけれども、しかしこれは、政権がかわってもデフレ脱却ということは必ずやらなきゃならない。そういった中で、消費税を引き上げることによってこのデフレ脱却からの道筋が途切れてしまえば、また失われた二十年ということになりかねないということで申し上げたわけであります。

 八%に上げました。そのときに、いろいろな景気条項に基づいていろいろな景気判断をされて、オーケーだということでアクセルを踏んだと思うんです。しかし、結果として見れば、では、なぜいまだもってデフレから脱却をできていないのかということでいうと、いろいろな要因はありますけれども、国内要因の最大のものというものは、消費税の引き上げだったと言わざるを得ないということだと思います。海外要因はいろいろありますけれども、国内要因としてはやはり消費税の引き上げなんですよ。

 これをもしやっていなければ、逆に、既に日本はデフレから脱却をして、一〇%への道のりももっとスムーズに進んだかもしれないという見方もできるというふうに思うんです。八%の方を基本的に例えば一年なりおくらせているということであれば、もしかしたら、一〇%の方は当初の予定どおりのスケジュールで、そこから一年ずれるわけですけれども、少なくとも来年の四月よりは半年早いのかな、そういうふうになったような、そういう見方もできるということであります。

 私は麻生大臣に、もうちょっと景気について慎重に見ていただいて、やはり確実にデフレ脱却をなし遂げていただくということをお願いしたい。

 そういう意味で、別に党利党略とかそういうことではなくして、消費税の引き上げというのは、もう一度延期をするという可能性はやはりそれなりに残さなきゃならないというふうに思うんです、景気条項が今はありませんから。やはり、これを延長するというハードルは高くなったというふうに思うんです。

 そういった意味で、もう一つ、これは柔軟に判断するんだということについてちょっとお考えをお聞かせ願えませんでしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘のありましたように、五から八への三%の消費税のアップというものがいわゆる消費性向というものを減退させたということは、これは先生、間違いない御指摘なんだと、私どももそう思っております。

 これがなかったらどうだったのか。これから先はたらればの話ばかりになりますので、ちょっとこの先は、予想屋をやっているわけじゃありませんので、そういった話はちょっとお答えいたしかねますけれども。

 私どもとしては、今の状況というものを考えたときには、やはり、日本の経済のファンダメンタルズというものがあの当時とは比べて著しくよくなっておりますのが一点。それから、デフレというのはデフレ不況からの脱却であって、インフレで不況もあれば好況もあるのと同じように、デフレでも好況もあれば不況もありますので、そういった意味では、デフレ不況からの脱却ということに関して言わせていただければ、この三年間、デフレ不況とは言えないところまでは上がってきつつあるんだとも思っておりますので、さらにこれをきちんとした形で財政再建の方に結びつけていくためには、デフレのままでは借金の額がそのままですので、私どもとしては、緩やかなインフレーションというものの必要性というものは、これは非常に必要だと存じますし、世界じゅう主要先進国ほとんど、インフレターゲットというものを二%を皆目指してやっておられるというような状況でもありますので、私どもとしては、今の状況というものを考えますと、国際社会の中における信用の問題、日本の国債の信用の問題等々、いろいろなことを考えますと、私どもは、この消費税の二%というのは極めて重大な要素だと思っております。

 重ねて申し上げますけれども、先ほど申し上げましたように、まだ一年あるのも確かです。一年ありますので、その意味では、中国はどうなるかとか、石油の話がISの話でどうなるか、これは、今、私どもに電話がかかってくる国際的な話はこの話ばかりですから、そういった意味では、いろいろなものが起こり得る可能性はこれは十分にあるんだと思って注意等を払っているところなんですけれども、今この状態で聞かれれば、私どもとしては、基本的に、国債の方の信用というものも考えてきちんとした対応をやらせていただければということを今の段階では考えております。

宮崎(岳)委員 デフレにも不況も好況もある、今はデフレ不況じゃないということだと、デフレ好況なのかどうかわかりませんけれども、私は、余りデフレ好況という見方というのは違うのかなというふうに思います。今がどうかということではなくて、デフレ下で景気がいいという状況があったとしても、それはしょせんデフレはデフレであって、いろいろな構造改革等も進みませんので、やはり一定のマイルドなインフレにすることが必要じゃないかなというふうに思います。

 それから、引き上げまでまだ一年あるということですが、その一年で終わりじゃないんです。引き上げた後、やはり一年ぐらいその引き上げの影響は続きますので、その間にあっても予想外の景気への悪影響というのはあり得る。前後二年とか三年とかのバッファーで見なきゃいけないというふうに思うんです。

 そういったことを考えると、私は、今ここまで世界的な経済の鈍化が鮮明になっている中で上げるというのは、そうそう慎重にしなければならないというふうに思っております。

 次に参ります。軽減税率についてちょっと伺いたいんです。

 軽減税率というのは、私、この質問をする前に地元の前橋市の税理士さんとちょっと意見交換をさせてもらったのですけれども、そもそも軽減税率という呼び方がおかしいということを言っていました。これは複数税率だ。何でかというと、二%しか差がない。諸外国を見ると、軽減をされているという食料品等が、食料品は主に軽減をされていることが多いわけですけれども、食料品と標準税率の間には通常一〇%以上の差があるということです。

 そうすると、この二%でこれを軽減と言ってしまっていいのか、これはあくまで複数じゃないかという御意見であったのですが、これを入れる場合、当然、これまで予算委員会等でさんざん議論されていますけれども、一兆円程度、消費税収が減るということになります。そうすると、比率はともかく、金額面では高額所得者に有利に働く、その軽減額が大きくなるということだと思いますが、これはこれでよろしいでしょうか。

麻生国務大臣 軽減税率制度について、複数税率ではないか、これはいろいろ意見が分かれるところだと思いますし、ヨーロッパで五と一五とかゼロと二〇とか、いろいろ国によって差がありますけれども、そういった意味で、制度上、高所得者を適用対象から除外するということは、だから困難じゃないかということが一番の大きな問題だと思っておるのです。

 やはり私どもがいろいろ考えた中で、低所得者対策に対して三つぐらい案があったのですが、その中で、日々の生活の中において使っておられる立場の方々にとって、いわゆる痛税感というものを私どもは考えたときに、直接軽減した方が痛税感を感じるのが緩和されるというのが一つと、逆進性の緩和というものを考えたときに、やはり額もありましょうけれども、率でいいますと、所得される額の二百万円とか千万円とかいろいろ額が違いますので、そういった意味でいきますと、軽減税率の導入によりまして、率としては、軽減税率による恩恵の負担というものを感じられるのは、むしろ低所得者の方が恩恵が多いという判断をさせていただいております。

 千五百万円以上の世帯では、外食を除きます飲食料品、酒類等々に占めるのは約一五%、年収二百万未満の世帯では三〇%、比率としてはそうなっておりますので、低所得者の方が率がより大きく、倍ぐらいになりますので、そういった意味においては、額はもうおっしゃるとおりだと思いますけれども、率としてはそういったことになろうと思いますので、逆進性の緩和につながるんだと、私どもはそう思っております。

宮崎(岳)委員 今、額は高額所得者の方が多い、でも低所得者の方は収入自体が少ないので、収入に占める軽減の率で見ると多くなるということだと思います。そのとおりだと思います。

 ただ、それが逆進性の緩和と言えるのかどうかということは別としまして、その前段で、では、この軽減税率を入れる前提としまして、これまで過渡的な措置として行われていた簡素な給付措置、臨時福祉給付金、これが廃止をされるということでありますが、低所得者の負担がここで重くなるということだと思うんですけれども、これについては主税局長でよろしいですかね、制度の説明だけ簡単にお願いをできますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 簡素な給付の位置づけでございますが、抜本改革法の第七条によりまして、消費税率引き上げに伴う低所得者対策として、給付つき税額控除、あるいは総合合算制度、あるいは複数税率などをしっかりと検討しなさいというふうになっておりまして、その検討ができるまでの間の暫定的な措置として簡素な給付措置を講ずる、そういう位置づけになっているところでございます。

 よろしいですか。

宮崎(岳)委員 いずれにせよ、市町村民税の非課税世帯に対して六千円ずつですか、を支払っていたものがなくなるということであります。

 そうすると、その分は低所得者、低所得者といっても、人によって違いますけれども、その中でも年収二百万円以下とか百万円以下という方ですが、その方々の不安は、六千円とか重くなるということですね。それに加えて消費税が上がるということであります。

 グラフを用意いたしました。二枚目のグラフの方をごらんいただきたいんですが、これは、収入に占める消費税負担の割合を示したものであります。

 三つなだらかなカーブが上の方にあると思うんですが、このひし形のところの線が、現行の八%のときの収入に占める消費税負担の割合です。収入階層別になっています。

 そうすると、例えば年間二百五十万円の方であれば現行六・四%の負担であるが、千五百万円以上の方であると年間二%の負担ということになります。これが一番上の四角いマークで示されているカーブ、これに変わるということです。違う、一番上じゃないですね。二番目のカーブです。三角のカーブです。七・四%で、千五百万円以上だと二・四%、こういうふうになる。こういうものであります。軽減税率を入れない場合ですと一番上のカーブ、四角のマークで示されたカーブになる。こういうことであります。

 確かに、軽減税率を入れることによってカーブはやや緩やかになっているというのは確かであります。ですから、そういう意味では、逆進性が緩和されたんだと言えなくもない。

 しかし、見ていただけばわかるように、非常に右肩下がりのカーブになっているということは明らかな事実でありまして、これが消費税の逆進性の本質であるというふうに私は思っております。

 これが右肩下がりであれば逆進、右肩上がりであれば累進と言えると思いますけれども、それをなるべくフラットにしていこうというのが逆進性の緩和でありますが、それで、今回、負担の収入に占める率がどれぐらい上がるかというところを抜き出して、つまり差し引きしたところが、一番下のバツのマークで示されているカーブになっています。

 つまり、二百五十万円以下のところで見ますと、現行六・四%で払っている人が、一〇%、軽減入りというものになると七・四%になる、一ポイント上がるということでありますので、ここは一ポイント。そして、千五百万円以上の階層でありますと二・〇%が二・四%に上がる。〇・四パー上がるということで〇・四パーのところにあって、その間に線が引かれているというものであります。

 そうすると、今回の負担上昇分だけを考えると、率から見ても低所得者の方が負担が重いということになるんです。率から見ると低所得者の方が負担が重い。ということは、この軽減なるものに逆進性を解消する効果というものが事実上ほとんどないんじゃないかというふうに思わざるを得ないわけであります。

 もちろん、消費税そのものに本質的に備わっている逆進性でありますから、これを解消するのは容易ではないわけでありますが、やはり私は、この四角のカーブから三角のカーブのところに下げて逆進性を緩和したと言うのは少々無理があるんじゃないかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 社会保障と税の一体改革というものですけれども、この図にありますように、消費税率の引き上げによります増収分を活用して社会保障の充実、安定を図って、世界に誇れます皆保険等々のいわゆる社会保障の制度というものを持続可能なものにするために、次世代に責任を持って引き渡すために、我々の世代でこれをきちんとするべきだというのが三党合意の一番の基本だったと記憶をいたしますが、一方、軽減税率制度の話に関しましては、いわゆる低所得者に配慮をするという観点から、恒久的な対策として導入をさせていただいております。

 今般、軽減税率の導入という制度に加えまして、社会保障の充実の一環として、国民健康保険料の軽減とか、介護の一号保険料の軽減等々の拡充とか、年金生活者の支援給付金の給付などの措置も同時に講じておりますので、歳入と同時に、歳出の部分に関しては今申し上げたようなことをやらせていただいております。

 またさらに、軽減税率制度につきましては、消費税率一〇%の段階における社会保障の姿というものを前提にしながら、我々としては、消費者負担というものを直接軽減できるというようなものに、買い物とか、そういった痛税感の緩和を実感できるという利点があるというものに特に重視してその導入を決定したものです。

 いずれにしても、今言われましたように、我々としてはいろいろなところに配慮をさせていただいておりますので、低所得者への配慮という点に関しましては、その他の部分でも十分にやらせていただいておると思っております。十分というか、いろいろやらせていただいておると思っております。

宮崎(岳)委員 十分かどうかというのは別としまして、今さまざまおっしゃいました。社会保障の方で低所得者への配慮が行われているんだから、この軽減だけをとってどうこう言うものではないという趣旨だと思うんです。

 しかし、社会保障のものというのは、どこがどう緩和されているのか、全体の姿がわかりません。つまり、まさに安倍総理の言をかりれば、痛税感の緩和に全くなっていないんですよ。だって、自分たちが払ったものがどこでどう緩和されているかというところにイコールでひもづけされませんから、これが痛税感の緩和というのにつながらない。やはり、税の本体の部分でも私はきちんと低所得者対策とか逆進性の緩和というものがなされないといけないというふうに思うわけであります。

 私どもは給付つき税額控除という案を出しました。これの制度的なものについては、いろいろな確かに指摘もあると思います。マイナンバー制度が導入されましたから、相当な精度でできるであろうというふうに思いますけれども、しかし、かといって、これは不正に受給する人がいるんじゃないかとか、資産が多い人はどうするんだとか、そういうことはあると思うんですが、私は、もうそもそも、軽減税率なるものが全く低所得者対策になっていないということが最大の問題であるというふうに思うわけであります。

 私たちはこのグラフを見たときに、我々国民の代表たる者はやはり慄然としなくてはいけないと思うんですよ。二百五十万円以下の方に収入の七%を超える負担をさせる、一方で千五百万以上の方は二・数%だというこの事実にきちんと向き合わなければいけないというふうに、私は、それは与野党を超えてそういう気持ちを持たなければいけないというふうに思うんです。

 そして、この状況が続けばどうなるかということもやはり考えていかなくてはならないというふうに思うわけであります。

 一月二十七日の本会議で公明党の井上義久幹事長が代表質問に立たれました。私、井上さんの質問を非常にじっくり聞いていたんです。多分、他党の質問を私ほど真面目に聞いている人はいないと思うんですけれども、いつもそうやって聞いていると、軽減税率のことについて理由を二点しかおっしゃっていないんです。一点は痛税感の緩和です。二点目は国際標準だということなんです。

 痛税感の緩和というのはこれまで繰り返し話されていました。国際標準だというのは確かにそうだと思いますが、ただ、近年の傾向でいえば、だんだん、このいわゆる軽減税率や複数税率というものはよくないんじゃないかということが言われ始めておりまして、最近、消費税というか付加価値税を高くしたところは採用しないところも相当ある。ここら辺は麻生大臣の方が私よりお詳しいんじゃないかというふうに思いますけれども。そうすると、結局、痛税感の緩和にしろ国際標準にしろメリットとして挙げられているのは、わかりやすいという一点なんです。

 私はこの軽減税率、複数税率というものは、百害あって一利のみということだと思っているんです。そのわかりやすいというところはわかりやすい。確かにそういう意味では痛税感の緩和ということは非常にストレートに結びつくんだけれども、感覚だけ緩和されても実態が緩和されなければ意味がないんじゃないかというふうに思うわけであります。

 問題点を挙げれば、低所得者対策にならないということを初め、事務負担が極めて重いということとか、ヨーロッパでは、これは利権の温床だ、利権というか不正の温床だ、つまり、政財界の腐敗、癒着、そういったものの温床になる、陳情合戦が生じるというようなことも強く指摘をされておりますし、税の基本は公平、中立、簡素だというふうに言われているそうですが、その中立性という意味でも極めて疑いが残る。

 例えば、外食産業には多大な打撃になるだろう。この税制が外食産業を抑制しようという目的で入れているのならまだわかりますね、政策税制ということで。しかしそうではない。そうではないけれども、結果的に、後でまた申し上げますけれども、いろいろな形でビジネスのあり方自体を変えてしまう、中立性がない、こういった問題を抱えているということだと思うんです。

 だから、低所得者対策として本当にこれで実現できているとお考えなのか、私はもう一度ちょっと御確認をしたいんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 宮崎先生の御指摘のありました給付つき税額控除というものは、対象者というものを低所得者に絞れるという利点は、これは間違いなくこっちの方があります。それは私どももそう思っております。

 他方、この給付つき税額控除につきましては、先ほどの痛税感の話とかいろいろ出ましたけれども、額がまとめて来ますものですから、そういった意味では、消費税そのものの負担が直接軽減されるというものではないのであって、痛税感の緩和が実感につながらないというのが一点。

 また、所得という面に関しましては捕捉ができますが、資産等々をお持ちのリタイアされた方、引退されている方々の資産の把握が難しいというのが二つ目です。

 それから、行政の立場からいいますと、執行のコストというものを考えると、また別の問題が出てまいります。

 また、これまでヨーロッパ等々で見てみますと、これは、過払いがあってみたり、いろいろ少なかったり不正があってみたりといった、何百億でしたか、毎年発表されておりますけれども、そういった支給の適正性の確保というのが極めて難しいというので、これはいろいろ毎年、ことしはこれだけというのが額が出されていますけれども、そういったものを見ますと、やはりなかなかこれはこれでまた問題があるかなというのが正直な実感です。

宮崎(岳)委員 これはこれで問題あるかなと、非常に正直な答えだと思うんです。軽減税率も問題もあるけれども、この給付つき税額控除の方もこれはこれで問題ある。

 ただ、先ほど言われた点でいえば、例えば資産等の捕捉が困難ということはもちろんそうでありますが、しかし、軽減税率というのはまさに消費しか捕捉していないわけでありますから、当然、財産を捕捉しているわけでもないし収入を捕捉しているわけでもないというのもこれも事実でありますし、コストという点で考えれば、やはり複数税率にした方が、特に、事業者の方々に御負担いただくコストというのは非常に複数税率の方が高いというふうに思いますので、軽減税率の方がすぐれている理由にはなかなかなり得ない。給付つき税額控除にある程度の問題があるとかデメリットがあるとかという説明にはなり得ても、複数税率の方がすぐれているという説明にはなかなかなっていないのかなというふうに思います。

 それから、事業者の負担についてちょっとお聞きしたいんですが、例えば複数税率が導入された場合、八%と一〇%を区分しなければいけないということになりますので、非常に重い事務コストの負担が事業者の方にかかる。これについてどう認識されておられますか。

 これまで何度かこういう質問もありましたので基本はわかっているんですが、この事務負担というのは、私は今回の複数税率で最大の問題だと思っているんですが、いかがですか。

麻生国務大臣 御指摘のありましたように、事業者にとりましては、これは、複数税率に対応した値づけとか、いわゆる値札とか、また、税額計算などが必要となりますし、これに対応するためのシステムとかレジの導入とかいったような改修などの対応が必要となってくるのは確かです。

 したがいまして、今般の税制改正の法案の中にも明記をいたしておりますが、軽減税率制度の導入に当たり混乱が生じないよう万全の準備を進めることが重要であるとして、政府としては、必要な体制を整備するとともに、事業者の準備状況を検証しつつ、軽減税率制度の円滑な導入及び運用に向けた対応を行うなどということを明記しておりまして、しっかりと事業者の対応を行ってまいりたいと思っております。

 かつ、その一環として、これは制度が周知徹底するまでに少々時間がかかるとも思いますので、相談への対応を丁寧に行うのは当然のこととして、中小の、なかんずく零細小売事業者が複数税率に対応するために必要なレジスターの導入や、また、システムの改修などに対して資金的に支援をするということといたしておりまして、予備費、補正予算等々を手当てをするなど、政府としては準備を進めているところであります。

宮崎(岳)委員 私、補正予算の審議の際に本会議場で反対討論に立たせていただいて、この複数税率について、世紀の愚策、亡国の政策というふうに言わせていただきました。このフレーズ自体は予算委員会のあの山井筆頭理事の考案によるものでありまして、しかし、なかなか含蓄のあるフレーズだというふうに思っているんです。

 なぜこれが世紀の愚策とまで言わなければならないのかというと、そのかかる手間とその上がる成果、メリットの間にやはり非常に乖離がある。つまり、効果は小さ過ぎる、そして手間は大き過ぎるということだと思うんです。わずか二%の軽減をして、先ほど見たグラフのように、ほとんど逆進性を緩和する効果がない。それなのに事業者にかかる負担というのは圧倒的に大きい。

 これが例えばイギリスのように、あるいはヨーロッパ各国のように、〇%と二〇%とか、一〇%以上の税率の差があるのであれば、これは考え方は別として、一定の手間とかコストに見合った成果というのが出てくるのかなというのは思うんですけれども、わずか二%でこんなことをやるのかという感覚をどうしても拭えないわけであります。

 そうすると結局、将来、この差を広げるために税率を上げるのか、あるいは食料品を下げるのか、どちらかしかないわけでありますけれども、そういうことになってくるのかなというふうに思わざるを得ないわけであります。

 やはりこの制度を入れたということは、将来的な消費税の引き上げというものも念頭に置いているのかなという感じもあるんですけれども、ここら辺、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 これは宮崎先生、まだ二%も上がっていない今の段階からその先はどうやったら上げるかなんというような話をできるだけの今余裕がありませんので、今、それに対してはお答えはいたしかねますけれども、今後、穀物連鎖等々によって食料品が極めて枯渇していくというような世界的な環境異変の情報等とかいろいろあちこちに出回っておりますし、いろいろな意味で私どもとしては、食料というものはかなりの輸入に頼っている部分がある国にとりまして、私どもとしてはそういったことも考えて、将来、食料品の税率をさらに下げねばならぬというような状況になり得ぬという保証はありません、はっきり申し上げて。

 国際情勢として環境問題等々を見ておりますと、そういった面もこれは常に考えておかないかぬ問題だと思っておりますのでいろいろなことを考えておかねばならぬとは思っておりますけれども、私どもは、今の段階として、今言われたように、二%だからメリットが少ない、確かにおっしゃるとおりなのかもしれませんけれども、将来の方向として、これをさらに上げるか下げるか、直間比率をさらにもう少し直接税のあれを減らして間接税を上げる、いろいろな御意見等々は財政制度審議会などでいろいろ意見が交換されているところでもありますので、今の段階として、下がる上がるということを申し上げられるような段階にはございません。

宮崎(岳)委員 当然、税率をこれ以上上げるということを今は財務大臣が口にするということはできないことはわかりますが、しかし、この二%のためにこれだけの御負担をおかけをするということには向き合わなければいけないというふうに私は思うんです。私はそもそも複数税率の考え方そのものに反対ですけれども、しかし、入れるとなれば、一定のコストに見合った成果というのは必要だと思います。

 そういった意味で、上げる下げるというのは別として、標準税率と軽減税率の間が将来広がっていくという可能性については否定はされないですか。

麻生国務大臣 今の段階でちょっと正直何とも申し上げられませんけれども、両方考えられると思っておりますけれども、両方といったら、これ以上縮まることは考えられないで、二%の差が一%になるとかそういったことは考えられませんので、そういった意味では、このまま、もしくは開いていく可能性はあり得ると思っております。

宮崎(岳)委員 この複数税率については、非常に事務負担が重い、かつ、免税事業者が取引から排除されていくだろう。当然、インボイスというものを入れないと、正確な取引の把握ができませんから正確な税金の徴収ができないということでありますが、これを入れていくと今度は、免税業者というのはインボイスを発行できませんから、BツーBの、つまり事業者同士の取引からは排除されていくだろうというふうなことが言われております。

 そういったことも含めて私も前橋の税理士の方と意見交換をしたときに、このままではばたばたとそういう中小業者が、特に免税業者のようなところは潰れていく可能性はあり得るんだ、大変なことになるということで我々専門家はこぞって反対をしているんだと。

 事実、日本税理士会の神津信一会長は、昨年の十一月十六日のコメントで、複数税率の導入は、単一税率は、公平、中立、簡素で、かつ広く薄くという消費税の長所を後退させるということで、これが与党の税制改正大綱で決まったときにも遺憾の意を表明されております。それはこの翌月のことでありますが。

 あるいは、日本商工会議所の三村明夫会頭、三村会頭は私の高校の先輩でありますけれども、十月十五日の会見で、傘下の百二十五万社の総意として反対をしてきた、口が裂けても容認とは言えないんだ、こういう言い方をされているわけであります。これは、特に中小事業者の偽らざる本心だろうというふうに私は思うんです。

 こういったことに向き合ったときに、中小事業者は、今は免税点の制度がありますから、消費税の計算も、考え方はいろいろでしょうけれども、やはり非常に面倒くさい、大変なこともあると思うんです。払う額はもうもちろんですけれども、額よりもむしろその事務負担の方が重いという考え方も、特に中小事業者の税の支払いについてはある。そして、実際に払う税金が二十万、三十万みたいなことでありますけれども、税理士さんにそれに見合うぐらいのお金を払っているという人も事業者の中には多いだろうというふうに思うんです。

 今回の複数税率を入れますと、今免税になっている業者は、結局、取引から排除されないためには課税登録しなきゃいかぬ。課税事業者として登録するとなると、これは、経理を含めた事務負担というのが大変に重くなるということなんですけれども、これをどうやって解消されるんでしょうか。

麻生国務大臣 インボイス制度の導入が、これは免税事業者にとってどの程度どういう影響を与えるかについては、個々の免税事業者ごとに、どのような事業を行っているか、例えば事業者間の取引なのか、それとも消費者との取引が主なのかとか、取引相手がどのような事業者か、例えば大手業者かとか、免税事業者かとか、簡易課税業者のような中小事業者かとか、また、課税事業者となるために必要な記帳等々に対する対応がどの程度整っているか等々によってさまざまだと思いますので、これは一概には申し上げられることはできないと思っておりますが、ただ、御指摘のように、インボイス制度というものは免税事業者の事業に影響を与えるということはもう確かでありますから、そういった意味では、いわゆる中小零細な事業者への配慮が必要、これはもうはっきりしております。

 したがいまして、制度の導入を私どもとしては四年間おくらせていただいて、平成三十三年の四月として準備期間というものを設けさせていただく、また、免税事業者の納入先の企業から短期間のうちに課税事業者への転換を求められたりするということがあるのではないかという御心配のとおりですので、インボイス制度から六年間の経過措置をして、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認めるということなどとさせていただいておりますので、この時間の間にいろいろ、時間があれば、業者というか商売しておられる方々は、それは十分能力がおありだと思いますので、そういった手間に対応していただけるのではないか。

 いずれにいたしましても、インボイス制度の導入に向かいましては、それぞれの業者が必要な準備を進められるようにすることが重要だと思っておりますので、今般の法案の附則におきまして、インボイス制度の導入にかかわる事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証し、必要な対応をとり行うということを附則として書かせていただき、しっかりと事業者への対応は今後とも行っていきたいと思っております。

 これは宮崎先生、役人が考えている発想なんというのは、商売をやったことがないようなのばかりがやっていますから、だから、よくわかっておらぬ人もいっぱいいますよ。あなたは新聞記者だし、そんなに商売を知っているとはとても思えぬけれども、私は商売をしていましたから、だからそういった意味では、こんなことも考えておいた方がいいぞというような話は、したがってもう我々、ヒアリングは物すごく今やらせていただいておりますところなので、いろいろ御意見もあろうかと思いますので、ぜひそういった話も聞かせていただければと思っております。

宮崎(岳)委員 今お話を伺っていますと、結局、いろいろ経過措置等は設ける、あるいは、転換するときにいろいろもちろん支援もあるわけですけれども、最終的には、それは廃業するか、そうでなければ課税事業者を選ぶか、どちらかしかないんであろう、ただ、課税を選ぶということについて、それがスムーズに移行するように支援をするんだというような感じで聞いておりました。そういうことでよろしいのかなというふうに思います。

 それで、先ほど私は申し上げました。制度として中立でない、中立性に欠けるんじゃないかと。

 その一例でありますが、小規模農家がありまして、例えばJAを通じて出荷する、あるいは、いわゆる直売所とか道の駅みたいなところで販売する、あるいはスーパーに販売する、いろいろ農家が農作物を出荷いたします。

 そうすると、例えば農家というのは大半が、現在やっている方は中小零細が多いわけでありまして、私は群馬県なんですけれども、群馬県ですと、販売額一千万円以上の農家というのは一三%しかないんです。そうすると、販売をしていないという方も一四%ぐらいいますので、残りが七三%。そうすると二万三千軒ぐらいあるんです、群馬県だけで農家として。そうすると、その二万三千軒はほとんど多分課税登録されていないと思うんです。

 そうすると、一応、JAに出す場合、無条件委託販売をする場合はここで措置があるというふうに伺ったんです。ここで資料にもおつけをいたしますけれども、農業新聞のニュースサイトから出させていただきましたけれども、無条件販売の場合、JAを通じてカントリーエレベーターか何かに入れて一遍に出すということだと思うんですが、そういった場合は一応免税のままでもやっていける。

 ところが、例えばスーパーに出す、あるいは商社、そういったところを通じて販売する、あるいは、自家用がメーンだけれども、直売所でいろいろ農作物等を販売して日銭を稼いだりお小遣いを稼いだりということをやっている、あるいは、地場の飲食店等に直接入れて、例えば農家から直接地域の定食屋さんとかそういうところに野菜を納入するとか、あるいは、質の高い農作物をつくって全国のレストラン等に直接納入をするとかという場合になりますと、これは当然消費税がかかってくるということになります。

 そうしますと、もちろん事務負担がふえるというのも当然ですし、逆に免税のままやろうと思うと、市場に出すとかJAに出すとかというそういう道しかなくなるんです。中小の農家が直売所に出すという選択が失われるということです、免税のままを選びますと。そうすると、今これだけ六次産業化ということで進めているのに、ビジネスの選択肢というのがそもそも狭まってしまう。

 こういう意味でまさに、やめるか、農協だけに絞るか、それとも課税にするか、こういう選択を迫られるということになりますから、中立性がないのではないかと私は非常に危惧をしているところなんですが、いかがお考えになりますか。

麻生国務大臣 これはもう全くごもっともな御指摘なんだと思いますが、インボイス制度の導入をさせていただいた後、免税業者はインボイスを発行できないとか、免税事業者からの仕入れについては買い手の事業者は仕入れ税額控除ができないということが原則となるんですが、農家が農協を通じて農産物を販売する場合には、一般的には、農協は、どの農家が生産したものかを区別することなく、農産物をまとめて販売ということになっているため、農家がみずから生産した農産物を買い手を見つけてインボイスを発行することはできないという流通プロセスの課題があるということなんだと存じます。

 こうした状況のもとでは、原則どおり仕入れ税額控除を行うために、農家の発行したインボイスの保存を求めるということになりますと、仮に生産、出荷した農家が全て課税業者であっても、買い手は仕入れ税額控除ができなくなるという問題が出てくるんだと思っております。

 この問題を解消するために、今般の制度案におきましては、農家が農協を通じて農産物を販売する場合には、農家にかわって農協が発行した請求書などの保存があれば、買い手は仕入れ税額控除ができるようにするということにいたしております。

 他方、農家が今言われましたように直売所で農産物を販売する場合においては、こうした農協を通じたような取引のような問題は起きませんで、農家は買い手を特定してインボイスというものを発行することができますので、そういった意味では、原則どおりの取り扱いをできるということにいたしたいと考えております。

宮崎(岳)委員 ちょっと今よくわからなかったので、最後のところだけもう一度お願いできますか、直売所の関係。

麻生国務大臣 最後のところをもう一回読み上げますので、恐縮ですが。

 農家が直売所で農産物を販売する場合におきましては、農協を通じた取引のような問題ではなくて、農家は買い手というものを特定してインボイスというものを発行できるということになりますので、原則どおりの取り扱いということになろうということであります。

宮崎(岳)委員 つまり、課税業者にならなければ事業者相手には売れない。相手が一般の買い手ならいいですけれども、例えば、地元でおそば屋さんをやっているとか定食屋さんをやっているとかというところの人が買いに来た場合は、その人には売れない、あるいは、インボイスを出せませんけれどもいいですかということになってしまう。

 そうすると、群馬県内だけで二万三千軒というふうに申しましたが、全国でいうと恐らく百三十七万軒ですかね、私の計算で。全国で八三%、百三十七万軒ぐらいだと思うんですが、二〇一〇年の農業センサスの数字ですけれども。そういった農家がいわゆる直売所等から排除をされていくということだと思うんです。私は、非常に大きな問題がここにあると思います。

 時間がありませんのでちょっと最後に指摘をさせていただきますが、法人税改革のことについてなんです。

 法人実効税率を引き下げる、最高税率を三〇%以下にして二〇%台にした、これで経済が活性化するんだ、成長力がふえるんだと大変自画自賛をされているわけでありますけれども、しかし、法人実効税率は下がっているのに税収は減らないという、どういうからくりかな、こういう話になるわけです。

 それで財務省さんに聞いて、では、どういうところからこの法人税の税収を持ってくるんですかというと、一つは、生産性向上設備投資促進税制の見直しをする、それから、その他の租税特別措置の見直し、これは環境関連投資促進税制、グリーン税制とかそういうことだと思います。あと雇用促進税制、こういったものを見直していく、あるいは減価償却を見直していく、こういう話であります。いずれにせよ、事業者の負担が重くなるものであります。

 それから、地方税の法人事業税、地方税の方に行きますと、外形標準課税を拡大すると言う。外形標準課税は付加価値割というのをふやすと言うんですが、付加価値というのは何ですかというふうに聞きますと、利子と地代と賃金と、あるいは純然たる利益、お金として手元に置いておくなり預けるものと思うんですが、大きなものは賃金であります。

 そうすると、設備投資をしようという人たち、してきた人たち、あるいは人を雇おうという人たち、雇ってきた人たち、こういった方々には総じて増税になる。法人税ですから、最終的な税引き前利益のところから課税をするということになるんですけれども、そうすると結局、設備投資をやろうとか人を雇おうとかというところを抑制して、黒字をため込んでいるところを減税するということになって、これは成長に逆行するんじゃないかというふうに私は思うんですが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 御記憶かと思いますけれども、民主党の政権下で法人税率を引き下げられた際には、課税ベースの拡大による財源確保というものが十分されなかったんだと記憶をいたしますが、今般の法人税では、今言われましたように、租税特別措置の見直しや、また、法人事業税の外形標準課税の拡大などによって財源をしっかり確保しつつ税源を引き下げるということによって、法人課税を広く負担を分かち合うという構造へと改革していこうと思っておるんですけれども、今言われましたように、やはり投資促進税制というものは、毎年度期限が到来するというものを中心にして、租特でいえば、必要性とか政策効果を見きわめて、期限を決めてこれということをやらないと、ずっとあるんだったら何も今やることないわいということになるので、いわゆる促進にはならぬと思いますので、やはりここはきちんと切るべきときは切るんだと思っております。

 生産性向上設備投資促進税制につきましても、今回、その一部においては期限が到来をしておりますので、この扱いについても検討を行ったところですけれども、設備投資の拡大を目的とするというものであることを踏まえて、これは期限をたらたらいたずらに延長するということはしないという姿勢を示すということにおいて、企業に対して、投資判断というものを前倒ししてもらいたい。三年先とか五年先じゃなくて今なんですということを申し上げたいと思っておりますので、約束どおり二十八年度末に廃止するということを明確にしたということでありまして、投資拡大に逆行するというようなわけではありません。

 また、外形標準課税というもののあれは税率の引き下げとセットで行うことにしておりますけれども、赤字企業も、これは黒字化をしてもらった方がよほど安くなりますよと。いろいろな税というものの繰り延べ等々いろいろなやり方はありますので、そういった意味では、インセンティブを与えるということで、前向きの投資とか、また、継続的な賃金引き上げというものを行えるようなことをしていただかないと、少なくとも今のままで内部留保が四十兆も五十兆もたまって、賃金の支払いは三兆とか四兆とか、おととしはマイナス、昨年がやっとプラスの四兆ですから、そういったのはどう考えたって、今までのマインドがまだ変わり切っておられないのは企業側における問題点なんだと私ども思っておりますので、ぜひそういった意味ではっきり意識を切りかえていただいて賃上げ等々に切り上げていただく、そういったインセンティブになればと思っております。

宮崎(岳)委員 時間となりましたので終わりますが、これで成長させるんだと言っておきながら、投資促進、雇用促進、そういったものを切っていくというのは、私は、時間切れだとはいっても別のものでやればいいだけだと思いますので、ちょっと納得できないなというふうに思います。

 終わります。

宮下委員長 次に、玉木雄一郎君。

玉木委員 民主党の玉木雄一郎です。

 きょうは、予算委員会に引き続きまして、財務金融委員会で時間をいただきまして質疑をさせていただきたいと思います。しっかりとした骨太の議論を少しさせてもらいたいと思っています。

 予算委員会に引き続きでまずお伺いしたいのは、黒田総裁、マイナス金利の情報漏えいの問題、何度も予算委員会でも質問しましたけれども、この調査の現状、そして、まとまったら公開して報告するというふうに以前おっしゃいましたけれども、これはいつごろ公表される予定なのか、あわせてお答えください。

黒田参考人 本件につきましては、日本銀行、政府双方の関係者について、財務省、内閣府の全面的な御協力も得て調査を行った結果、当該報道機関との間において本件に関する情報のやりとりがなかったことを確認しております。

 その後、日本銀行において、盗聴探査や監視カメラ画像の確認といった施設面からの調査を行うとともに、外部の専門家の協力を得て、追加的に調査すべき事項がないかどうかの確認などを急ぎ進めております。

 最終的な調査結果については、準備が整い次第速やかに公表したいと考えております。

玉木委員 来年度の予算の審議中には出していただけますか。

黒田参考人 そういった方向で、ぜひ速やかに公表したいと思っております。

玉木委員 速やかに公表してもらいたいと思います。

 これはあわせて、同じような情報漏えいケースがFRBのところであるのかというふうに日銀に聞いたら、そんなことはありませんという答えなんですが、有名な話、二〇一二年のFOMCの議事録が公表前日にアナリストに出たという話がありますけれども、そういったことは日銀は把握されていないんですか。

黒田参考人 最近、決定会合の開催中にそれに関する議論が事前報道されて大きな問題となった事例は把握しておりませんが、今御指摘の、いわゆる一般の報道ではなくて、一部の限られた会員を対象にニュースレターというか、そういう情報を配付しているところがFRBの内部の検討資料ではないかと思われる情報を流したということが事件になったということは承知しております。

玉木委員 メドレー社というところに漏れたということなんですが、私、大事なことは、この漏えい事件に対して、アメリカは司法省が動いています。しっかりとした調査をしていくということをアメリカはやっておりますけれども、ぜひ、これは総裁にも、また財務大臣にもお願いしたいんですけれども、日銀そして政府もかかわっている話でありますから、しっかりとした信頼できる調査結果を出してもらいたいと思います。

 よく調べたけれどもわかりませんでしたというような調査結果にならないように、しっかりとした内容のものを提出いただくこと、これは、日本銀行、そして日銀の政策に対する信頼性を担保するものだと思っていますので、総裁、ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 続きまして、金融政策について伺いたいと思います。

 就任されて黒田総裁も間もなく三年だと思いますが、これまでにない金融政策をこの間やってきました。

 そろそろ私は客観的な検証をした方がいいなと思っています。もちろん、プラスだった面、マイナスだった面ありますけれども、異次元の金融緩和ということで始めた政策でありますので、何か当初予定したことと違ったことが生じて、それを修正すべき点があれば改めるべきだと思っています。

 まず伺いますけれども、マネタリーベースをふやすと期待インフレ率が上がる、異次元緩和の一つの大きな前提といいますか根拠になる考えなんだと思います。そういったことが理論上はあり得るだろうということは理解できますけれども、これが実際、三年間やってきてどのように機能しているのか、ここはやはりそろそろ検証した方がいいなと思っております。

 まず、総裁に伺います。

 マネタリーベースをこの間ふやしてきましたけれども、マネタリーベースをふやすことで期待インフレ率が上がる、このことについては総裁も今もなお信じているということでよろしいですか。

黒田参考人 御案内のとおり、量的・質的金融緩和は二〇一三年の四月に導入いたしました。この際に申し上げましたとおり、これは、国民の間に定着してしまったデフレマインドを抜本的に転換するために、二%の物価安定の目標の早期実現に対する明確なコミットメントを行うとともに、それを裏打ちする大規模な金融緩和を推進するものであります。

 こうした政策によって、主として実質金利を低下させるということを通じて、企業や家計の経済活動を刺激して、企業収益の改善あるいは雇用、賃金の増加を伴いながら物価上昇率が高まっていくという景気の好循環をつくり出すことを目的といたしておりました。

 そういった意味で、量的・質的金融緩和というものは所期の効果を上げていると思いますが、御指摘のマネタリーベースと予想物価上昇率あるいは物価上昇率自体の相関関係というのは、これは、いろいろな研究事例はございますし、関係があるという指摘もありますけれども、先ほど来申し上げましたとおり、この量的・質的金融緩和の基本的な波及のチャネルというか波及の経路というのは今申し上げたようなことであって、マネタリーベースそのもので直ちに物価あるいは予想物価上昇率が上がっていくということではなくて、さっき申し上げた全体としての量的・質的金融緩和というもとで、需給ギャップも縮み、予想物価上昇率も上がっていく中で、先ほど申し上げたように、物価が上昇していくということを狙ったものでございます。

玉木委員 今の答弁はちょっと驚きなんですけれども。

 マネタリーベースをふやす、これを期待に働きかける。特にインフレ予想、これはいろいろなものではかれますね。ブレーク・イーブン・インフレ率とか、あるいは実際の消費者がどう思っているのか。いろいろなことで物価上昇に対する期待インフレ率に働きかけるというのは、私は日銀が今やっている政策の根幹の論理だと思っていたんですよ。そうしたら今、必ずしも直接その期待インフレ率に働きかけるものではないと。マネタリーベースをふやしていることがですよ。

 なぜそういうことを言うかというと、これは後でお聞きしますけれども、岩田副総裁の論文、これは有名な論文ですけれども、二〇一二年、マネタリーベースをふやしたら期待インフレ率が上がっていくようなこと、あるいは景気がよくなっていくということを書いているんです。

 十七ページにいろいろトランジションメカニズムが書かれてあって、イの一番が、日本でも米国同様に中央銀行が流動性を供給し続ければ予想インフレ率が上昇する、まずここから始まっていきますよね。それで、予想インフレ率が上昇すると株価が上がるとか、株価が上がると企業の設備投資がふえる、予想インフレ率が上昇すると生産が拡大する、予想インフレ率が上昇すると円安になると。マネタリーベースをふやすことで、人々の期待、総裁もおっしゃいました、デフレマインドに凝り固まったものを解放して、期待を変えていく、エクスペクテーションを変えていくと。

 このことは、確かにそうかなと思ったんですが、今、随分弱気なことをおっしゃった。マネタリーベースをふやすことは必ずしもインフレ期待に働きかけるものじゃないんですね。よくわかりました。

 では、あえて聞きます。

 最近、期待インフレ率が下がっているんじゃないのかという報道というか、これはあえて日銀が出しているものを取り上げますが、ことしの一月八日に出た、生活意識に関するアンケート調査、第六十四回、日銀の情報サービス局が出しているものですけれども、これによると、一年後の物価上昇と五年後の物価上昇、これは定点観測していますね。それによると、この一月になると、一年後の物価について上がると予想した回答は、前の調査、九月ですけれども、そこから四・三ポイント低下しています。五年後に物価が上がるという答えは、これも前回の九月の調査と比べて三・六ポイント低下していて、ともに二期連続の低下になっています。

 もう一つ言うと、企業のことも言います。これは日銀短観、昨年十二月十五日に出したもので、日銀短観では企業の物価見通しが鈍化しているということですね。

 これはさかのぼること昨年十一月二十日の日銀の月報でも、市場の予測物価上昇率を示すBEI、ブレーク・イーブン・インフレ、まさに使っているものですけれども、これも低下傾向。

 期待インフレ率は下がっています。期待インフレ率が下がっているのは、マネタリーベースの供給が落ちているからですか。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、マネタリーベースの動きと期待インフレ率との関係は、いろいろな研究がありまして、相関関係があるという研究もありますし、そうでもないという研究もあるということでございます。

 そこで、現在の量的・質的金融緩和、実際は今はマイナス金利つき量的・質的金融緩和でございますけれども、量的・質的金融緩和の実体経済に対する影響の主たるチャンネルというのは、先ほど申し上げたように、実質金利を下げるということによって経済にプラスの影響を与えようということでございます。

 その中で、御指摘のように、期待インフレ率というか、物価上昇予想というものは、このところやや弱目になっているということは事実でございます。ただ、やや長い目で見ますと、特に、量的・質的金融緩和を導入した時点あるいはその前と比べますと、物価上昇期待は上がっているわけでございます。

 さらに、足元、幾つかの指標で物価上昇期待が弱目になっているというデータがあることは事実なんですけれども、他方で、消費者物価の構成品目の中で、上昇品目と下降品目とを比べますと、上昇品目から下降品目を引いたDIで見ますと、極めて高いところに来ておりまして、物価上昇がある程度広がりを持ってきているということも言えようと思います。

 また、生鮮食品のみならず、エネルギー品目を除いたところで見ますと、この二十七カ月連続でプラスで、最近時点ではプラス一・三%まで来ているということで、御指摘の点はそのとおりでありますけれども、予想物価上昇率もやや長い目で見れば上昇してきているということと、価格設定行動自体にはプラスへ向けて広がりが出てきているということではないかというふうに判断しております。

玉木委員 昨年の十二月十八日の金融政策決定会合後の記者会見で、総裁は同じようなことをおっしゃっていますね。ごく短期のインフレ期待が下がってきているが、中長期のインフレ期待はそれほど下がっていません、そういう話でありましたが、ただ、今、私、まさに日銀が出している調査結果をもとに申し上げたのは、一年後の物価上昇に加えて、五年後の物価上昇期待についても下がっているんですね。もちろん、いろいろな数字を出されると思いますが、私は、ここは少しファクトに正直に向き合った方がいいのではないかなと思うんですね。

 岩田副総裁にお聞きします。

 私も、今、黒田総裁がおっしゃったようなこと、つまり、マネタリーベースを量的に拡大すれば、そのことをもって期待インフレ率が上がっていくという極めてシンプルなメカニズムというのは、余り信用していません。ただ、この学習院大学の教授だったときに書かれた論文によると、手元に資料を配っていますが、ある種、非常に業界では有名な、一のこの右肩上がりの線ですけれども、マネタリーベースをふやすと予想インフレ率が上がるというこのグラフ。

 岩田副総裁は、マネタリーベースをふやすと予想インフレ率が上がるというのは、論文に書かれているように、それは信じておられますね。

岩田参考人 一番最初、お手元にある二〇一二年の私の論文でありますが、これはリーマン・ショック後のアメリカの予想インフレ率であります。

 アメリカの予想インフレ率というのは、二%前後でずっと、振れは比較的大きいんですけれども、リーマン・ショック前までは平均すれば二%ぐらいの予想インフレ率でいわゆるアンカーされていたということでありますが、さすがのアメリカもリーマン・ショックのような大きなことが起こりますと、そこに平均で書いてありますが、その下の、玉木先生がお書きになった「六ケ月平均ではなく生データ」というところを見ますと、相当、ゼロ%ぐらいまで予想インフレ率が下がっています。赤い点がありますが。

 そういうふうに、アメリカでも予想インフレ率が大きく下がったわけであります。それに対してアメリカのFRBがとった政策というのは、マネタリーベースをふやすんですけれども、そのふやし方であります。

 私は、就任前から申し上げていますが、マネタリーベースをふやすのには長期国債を買うのが一番効果的であると。つまり、短期の国債はほとんどゼロ金利になっておりますので、日本銀行が短期の国債を買ってマネタリーベースをふやす場合には、ゼロ金利の当預とほぼゼロ金利の短期国債を交換するというだけで、民間の資産の構成には何の変化もほとんどないということで、同じマネタリーベースをふやしても余りきかないんだということを申し上げたわけです。

 それに対してアメリカの場合には、MBSであるとか長期の国債といったものを買うということで、全く違う資産を、アメリカの当座預金とは違う資産を買うということによって効果を発揮したということで、これは、ニューヨーク連銀のダドリーが、有名な論文で、二〇一三年の四月ごろですか、私たちが量的緩和をやったときに、日米の金融政策を比較するときに、日本銀行が昔やった量的緩和というものの効果がそれほどなかったのは、同じような資産の交換をしたからだということであります。

 ですから、資産の何を買うかによって、緩和の仕方、マネタリーベースをどういうふうにふやすかは、その資産を、何を日銀が買うかによっても予想インフレ率に対する影響は違うということであります。

玉木委員 同じ論文の中で、買う資産によって予想インフレ率が変わるということは、記述がありますか。

岩田参考人 そこではちょっと覚えていませんが、私がずっと長年から書いていた論文を読んでいただければ、常に、長期国債を買いなさいといったことを言っています。

玉木委員 よくわかりませんね。

 これは、学者の岩田先生に私が申し上げるのもあれなんですが、この一のグラフ、確かに、リグレッションを走らせてみるとこういう線が引かれるんでしょう、リニアな。ただ、これはサンプル数が六つしかない。確かにアールスクエアが高い、〇・九一二出ていますけれども、これはそもそも統計的に有意なのかなというのは純粋に思います。

 半年ごとのばらけた生データにすると下になりまして、それでリグレッションを走らせると決定係数はかなり落ちる。

 もう一つ注目しているのは、私もこれは客観的にどうなのかなと思って、自分自身も虚心坦懐、さまざまなデータに今向き合っていますけれども、アメリカのことを言われるのでアメリカのをちょっと調べてみて、少し長い目で見て、これはかなり過去から、一九九七年から二〇一五年までの同じようなところからとってきて、それでプロットしてみました。

 今、赤で引かれているところが岩田副総裁がとられたデータですね。ここだと、確かに右上の数字が書かれるんですけれども、全ての全データに基づいて回帰直線を引いてみると、ほとんど横一線になるわけです。

 私が注目しているのは、二〇一二年一月二十五日に、まさにバーナンキがPCEのインフレ率二%を長期目標にするということを明確に出した後、むしろ量的緩和と期待インフレ率との相関が崩れているような気がするんです。

 私はエコノメトリシャンではないですから、詳細な分析は学者に譲りますけれども、ただ、二〇一二年に岩田副総裁が書かれた論文、そしてそれに基づいて少なくとも私は行われているやに承知をしていた現在の日銀の量的緩和は、私は、理論的根拠は極めて乏しい、理論的、実証的にもそう思います。

 今、総裁が、必ずしもマネタリーベースをふやすことが期待インフレの上昇をもたらし、そのことが投資や消費を促していく、そういうメカニズムはどうもないというふうなことをおっしゃったので、これから私も、そういう前提でいろいろな数字とかあるいは総裁のおっしゃることを見ていこうかなと思っているんです。

 最後に、岩田副総裁、もう一つお伺いします。

 この同じ論文の中で、こういうふうにおっしゃっているんですね。過去の、特に白川さんのときの政策をいろいろ分析されていて、それ以前からも含めて、新日銀法を施行した後の、上昇率二%以下のプラスの領域にあった、ある種合格点があげられる月は何カ月だという中で、十三年十カ月の中で合格率が一六%でしかない、そういう経営者は責任をとって辞任するはずである、株主も経営責任を追及して経営者を交代させるであろう、しかし、日銀総裁を初め、日銀は誰一人として責任をとろうとしない、こういう記述がありますね。

 私、今同じ思いです。別に岩田副総裁が憎くも何ともありません。ただ、私が重視しているのは中央銀行のクレディビリティーです。これのみです。ですから、総裁、副総裁、この金融政策を担っている人々、そしてその発言、政策は、人々から、世界から信頼されるものでなければならないと思っています。さまざまな困難な時代ですから、財政、金融で実験的なことを試みるのは私は構わないと思う。しかし、コミットした期間、コミットした目標を達成できなければ、私は職を辞するということが明確な信認を保つ責任のとり方だと思いますけれども、岩田副総裁、いかがでしょうか。

岩田参考人 副総裁に就任した際には、目標が達成できない場合には、まず果たすべきは説明責任である、仮に説明責任を果たせない場合には、最終的には責任のとり方は辞職であるということはそのとおりであります。

 その上で、現在の、目標が達成できない状況を説明いたしますと、生鮮食品を除く消費者物価の前年比はこのところゼロ%程度で推移していますが、これはやはり、二〇一四年夏以降の原油価格の大幅下落、四分の一になる、七五%の下落という歴史的な下落によるところが大きいというふうに思っております。

 しかし、生鮮食品とエネルギーを除く消費者物価の前年比を見ると、先ほど総裁がおっしゃられましたように、一三年の十月、量的緩和を始めてから数カ月たった後、二十七カ月連続でプラスを続けているということで、最近は一・三%まで上昇しているということで、物価の基調というものは、エネルギーの下押し圧力はありますが、それを除けばきちっと上昇しているということであります。

 日本銀行としては、二%の物価目標をできるだけ早く、早期に実現するために、今回マイナス金利つき量的・質的金融緩和を導入しまして、それを着実に推進していくということであります。

 したがいまして、このように物価の基調が、エネルギーを除いて連続して物価上昇をずっと続けているというのは、実は量的金融緩和以前にはなかったことであります。

玉木委員 見苦しいという一言に尽きます。

 総裁にお伺いします。

 マイナス金利の導入によって、私は、金融政策のありようが実はかなり変わったのではないかと思っています。今までは物価の上昇を求めていく、私はこれは、デフレはよくないですから、物の値段を上げていく、サービスの値段を上げていく、そういうことは方向性としては正しいと思っています。ただ、唯一上がっていない値段があって、それはお金の値段です。金利だけが極めてデフレなんですね。私は、この今回のマイナス金利のデフレ効果というのは軽視すべきではないと実は思っているんです。

 住宅ローンが下がりますという話がプラスの面で語られることが多いですけれども、金利支払いを入れた住宅取得の価格が下がっているとも言えます。そして、総裁がおっしゃったように、さらに何かあればちゅうちょなく対応をとるということをおっしゃっていて、マイナス金利もさらに下げる余地があると思えば、もっと下がるんだと思ったら待ちますね。

 これは予算委員会でも私指摘をしましたが、預金金利についてもそうです。個人の預金金利はマイナスにならないとおっしゃいましたけれども、これは日銀が当座預金に課している、ある種マイナスの付加の仕方と似ているんですけれども、名前はどうあれ、口座維持のための管理料であったり、あるいは手数料を上げたりということが極めて低金利の中で行われると、実質的なマイナス口座になってしまうことは明らかであります。

 そうすると、消費者心理としては、持っているものが減っていく、特に元本まで食い込んでくるんだというある種の懸念、おそれ、そして、先ほど申し上げたように、お金の値段たる金利が下がるということは、ある種のデフレ効果をあるルートで経済に対して及ぼすというふうに私は思うんです。

 改めてお伺いしますけれども、このマイナス金利が消費者の心理、特に消費者のコンフィデンスですね、この消費者の心理や購買の意欲、安心感、そういったものにマイナスの影響を与えるおそれが私はあると思いますけれども、総裁はいかがでしょうか。

黒田参考人 マイナス金利、これはヨーロッパの四つの中央銀行が既に実施しておりますけれども、我が国では初めてということでありまして、そういった意味でいろいろな御意見が出るということは理解いたしますけれども、従来の量的・質的金融緩和も、やはりイールドカーブ全体を下げて実質金利を下げることによって消費や投資にプラスの影響を与えるというものでありまして、今回のマイナス金利つき量的・質的金融緩和も、そういう意味では全く変わりません。

 ちなみに、実質金利という意味では、米国も欧州もずっと長い間マイナス金利でございます。それによって経済にプラスの効果を与えることによって、米国の場合は既に金利の正常化のプロセスに入ってきている。残念ながら、欧州や日本の場合はまだ実質マイナス金利というのが続いている。

 ちなみに、米国の場合も実質マイナス金利はまだ続いておりますけれども、金利の正常化が進んでいけば、当然のことながら、いずれ実質金利もプラスになっていく。それは、経済がそこまで強くなり、物価も上昇していくという過程で金融政策が正常化されていく。

 ヨーロッパや日本の場合は、まだ物価が十分上がる状況になっていない、エネルギーを除いたところで一%台の前半ということでありますので、やはり、二%の物価安定目標が実現して、それが継続的に維持されるようになるまでマイナス金利つき量的・質的金融緩和を続けていく必要があろうというふうに思っております。

玉木委員 私が申し上げている実質マイナス金利と今総裁がおっしゃった実質マイナス金利は、ちょっと話が違うと思いますので、そのことは申し述べたいと思います。

 あと二つだけ聞いて、お忙しいと思いますのでお帰りいただきたいと思いますが、きのう、ほぼ我が国は完全雇用の状態にあるというふうな発言がありました。

 お伺いします。

 FRBのいわゆるデュアルマンデートであれば、雇用の安定と物価の安定ですけれども、我が国において、完全雇用が達成されてなお二%の物価安定目標が達成できない場合でも、今の質的・量的あるいはマイナス金利つき、この異次元の金融政策は完全雇用を達成してもなお続けるということでよろしいですか。

黒田参考人 御承知のように、完全雇用かどうかというのは、いわゆる需要と供給のミスマッチのような構造的失業率と同程度に現実の失業率が低下してくれば完全雇用であるというふうに経済学的には言われているわけですが、現時点で、三%台前半の失業率は構造失業率とほぼ同じでございますので、完全雇用状態に達しているということは言えると思いますが、物価はエネルギーを除いたところでもまだプラス一・三でございますし、エネルギーを入れたところではまだゼロ%程度で推移しているという状況でございますので、完全雇用状態ではありますけれども、二%の物価安定の目標の実現を目指してマイナス金利つき量的・質的金融緩和を持続していくということでございます。

玉木委員 これも大事な答弁だと思います。

 私は、完全雇用を達成してなお過度な金融緩和をすべきではないという立場です。もちろん、デフレに逆戻りするようなことがあってはならないと思いますが、二%、もう二年守られていませんけれども、二年で二%という期限を切った二%を完全雇用を達成してなおやっていくのは、私はやり過ぎだと思っています。

 最後に伺います。

 きょう、資料にもちょっとつけたんですが、潜在成長率と金融政策の関係についてお伺いします。

 この間、確かに名目GDPはふえました。有効求人倍率もよくなりました。名目にきいてくる税収も上がりました。これは私は率直に評価をします。ただ、この間、潜在成長率は低下傾向です。しかも、少子高齢化ですから、労働寄与率と資本の寄与もそんなに大きくない中で、実際の潜在成長率を決めていくのは生産性の向上ですね、トータル・ファクター・プロダクティビティー、TFPがよく使われますけれども、この間これも落ちているんですね。

 資料の、ちょっと震災があったので、少しイレギュラーなのが一一、一二に出ていますけれども、この間、潜在成長率は下がる傾向にあるし、下側に、TFPだけ取り出してみると、この三年間下がる傾向が顕著なわけですね。

 この時期に大規模な金融緩和をやっているんですが、金融政策ですね、特に量的な緩和と潜在成長率の上昇、あるいは、特に生産性の上昇といったこと、それに対する貢献、これについては総裁はどう考えているのか、最後に伺いたいと思うんです。

 ちなみに、先ほどの岩田副総裁の論文によると、三十九ページなんですが、こういったマクロ環境のもとで潜在成長力を高める構造改革や競争政策を進めるのは政府の仕事であるということで、これは私もそう思いますが、政府の仕事だと思うんですけれども、黒田総裁は、金融政策にも潜在成長率を上げる効果がある、あるいは上げるべき義務がある、どのようにお考えなのか、お答えください。

黒田参考人 潜在成長率、これは、この資料にもありますように、かなり長期的な推計でございますけれども、これにつきましては、御指摘のとおり、資本投入、労働投入、TFP、三つの要素に分解できるわけでして、リーマン・ショック後、一%を割って、ゼロ%台半ばぐらいのところで潜在成長率が推移しているということは事実であります。

 金融政策が直接的に例えばTFPに貢献するということは余り考えられませんが、ただ、デフレマインドが払拭されて企業が設備投資に前向きになる、あるいは、先ほど申し上げたように、金融政策を大胆に緩和することを通じて労働市場がよりタイトになっていくということになっていくと、労働投入についてもある程度のポジティブな貢献があり得るとは思います。

 ただ、基本的には、TFPが非常に重要な要素ですし、TFP自体に金融政策が直接的な影響を与えるということはほとんどないと思っております。

玉木委員 ありがとうございました。

 ここで結構なんですが、もう一問だけ、ちょっと麻生大臣の答弁を聞いておいていただきたいので、ちょっとだけ残っておいてください。

 きのう、麻生大臣、私はこれはある意味非常に共感したんですけれども、このようにおっしゃいました。日本経済の悪化は需要不足が原因で、金融政策ではどうにもならないというのはわかっていた、こういうふうに述べられました。私、そう思うんです。

 今の話とも関係しますけれども、この間の、短期的な景気のよしあしもありますが、潜在成長率というのはある種の実力ですよね、そこが伸びていないということ。

 あわせて、この前、野田前総理からもありましたけれども、実質GDPで見ると、民主党政権の三年間、年率換算に直すと一・八、一・八一だったと思います。それに対して、安倍政権になってからのこの間の年率換算が約〇・六。

 いろいろな説明があると思います。確かに、民主党政権下はデフレでしたから、物価を勘案すると実質GDPは少し高く出るというのはそのとおりなんですが、ただ、一つの客観的な、経済をはかる指標である実質GDPを見ると、この三年間の方がむしろ成績が悪いということに関して、日銀はかなりやってきたと思うんですが、ただ、やはり麻生大臣がおっしゃったように、需要不足の方が原因、あるいはもう一つおっしゃった海外の要因の方が大きいとすれば、日銀がどんなに頑張っても、需要不足あるいは海外の要因があれば、それは日銀の金融政策の効果を上回ってしまう、いい意味、悪い意味で。そういう御認識なのかということだけ、麻生大臣にお答えいただきたいと思います。

麻生国務大臣 最初に三本の矢というのが出されたときに、金融政策、財政政策、経済成長の三つだったと御記憶だと思います。

 金を刷れば景気がよくなる、ヘリコプターマネーとか言われましたけれども、よく竹中平蔵という人が言っていたと思うんですが、まだ生きておられると思いますけれども、この方がよく言っておられたので、その当時からよくぶつかっていましたので、それは全然違いますということを申し上げて、あのときも、日本銀行に対していろいろな形で、白川さんのときに三十兆とか、多くの金が出されたと思いますが、結果的には効果がなかった。

 なぜかといえば、マネタリーベースはふえたけれども、マネタリーベースをふやすということは日銀の当座預金がふえるということですから、その当座預金から先に、市中にというマネーサプライが全然ふえなかったというのが最大の問題。ということは、金はあるけれども需要がないというのが数字の上でもはっきりしておると思っておりました。

 今回も、私どもは、財政というものの出動、財政の効果的な活用というのであって、財政の均衡一本やりの財務省の案ではだめということで、財政というものが機動的に動かなければマネーサプライはふえませんということを申し上げ続けてきたんです。

 補正やら何やらやらせていただいておりますけれども、私どもとしては、そういったところはこの三年間かかってどういう効果になったかといえば、やはり企業家のマインドとしては、基本的に、銀行に貸し剥がしを食らった、貸し渋りを食らったという屈辱的な思いは抜けがたいと思いますね。しゃべっていてもよくわかりますから。その方々にしてみれば、もう一回銀行に頭なんか下げたくはないよ、そう思っておられる方はすごく多いと思います。

 そういった意味では、私どもは、少なくとも自前の金で、自己資金で設備投資をやりたいと思っておられる方はこれまたかなり多くなっておられますので、銀行から金を借りてまで設備投資をしようという気になっておられないというところが最大の問題なんだと私は思います。

 それが結果として、三番目の、民間のいわゆる企業の成長ということにつながっていくんだと思いますが、私どもは今、同友会、経団連、商工会議所の、このお三方のことし一月四日の発言を見ますと、これまで政府によくやってもらった、これからは俺たちがやる番だ、簡単に言えばそういうことを言っておられるのがあの正月の発言なんだと思いますが、私は、これが一番大事なのであって、これを起こさせるためにこれまで三年間を費やしたんだと言ってもいいぐらいだと思っています。

 私どもとしては、財政としては借金が控えております、そのバランスを考えながら、少なくとも、いろいろな形で補正をやらせていただいたり仕事をつくっていく。消費はGDPの約六〇%を超えておりますので、残りのところは民間の設備投資ですから、そこのところをやっていくにはまず政府支出以外にやりようがありませんでしたので、基本的にはそれからと思っておりますけれども、今のところ、少なくとも、俺たちが今度はやる番だということを言われるようになられたということは、いい傾向になってきたんだと思っております。

 ためにためた四十九兆、五十兆の金を、少なくとも我々としては、ため込んだ金は、賞与、給与に回されてからは、初年度はマイナス三兆、次年度がプラスの四兆、プラスマイナス一兆円、昨年度分はまだ出ていませんけれども、そういったもので労働分配率は激減しておるわけですから、七八から六七、八まで下がっていますから、そういったものにきちっと金が回っていく、労働分配率、そういったようなものをもっとやっていく姿勢というのが出てくるようにしていくような意識になっていただく。

 我々は、これは、日本銀行も財務省も民間も三者一緒になってこのデフレ不況からの脱却をやっていくためには、この三つが一緒になってやっていかない限りはなかなか難しいんだ、私は基本的にそう思っています。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

玉木委員 今の麻生大臣の発言を通訳しますと、ちょっと長かったので要約しますと、需要が大事だということだとは思いますね。ただ、これからの主役は民間だというメッセージなのかなと思います。ということは、裏を返せば、ファンダメンタルズはある程度順調だけれども少し弱含んできているというこの状況の中で、金融政策ばかりに頼るわけにはいかない、この認識も同じだと思いますね。

 そこで大臣、追加の財政措置を、これは財政が厳しい中ではありますけれども、政府として今何か講じる、この底割れを防いでいく、あるいは、さらにそれが次なる軌道に乗っていくために財政として何らかの手を打っていく、そういうお考えは今はございませんか、ありますか。

麻生国務大臣 玉木先生、今、何といったって、二十八年度の予算をやっている真っ最中に、その次の補正の話なんかとても今できるような状況にはありませんから、私どもとしては、そういった状況が必要と判断すれば機動的に対応していく、当然のことだと思います。

玉木委員 では、年度当初の補正もあるということでよろしいですね。

麻生国務大臣 経済状況によります。

玉木委員 ありがとうございました。

 それでは、日銀総裁、副総裁、ここで結構です。委員長、よろしくお願いします。ありがとうございました。

 それでは、残りの時間、麻生財務大臣とやらせていただきたいと思いますが、一つ、これは私、補正のときに国土交通大臣に聞いたんですが、三世代同居の住宅の支援をしていこうと。二十七年度補正ではこれは予算措置で百六十一億円ぐらいだったと思いますがやりましたけれども、今回、二十八年度の税制改正の中で、三世代が同居できるような住宅のリフォーム支援を税制上打とうということになっております。

 これは補正の審議のときにも私質問したんですが、三世代同居を進めていくこと、このことによって出生率が上がるという、そういう論文というか考えもあるし、そんな効果はないというのもある、ここは一回おきましょう。あるとして、前提としてやりたいと思いますが、麻生大臣は何か四世代でお住まいになっているとかというのをちょっと議事録で見たことがあります。私は三世代で同居していますので、三世代同居のよさ、悪さというのはよくわかるんですが、予算のときと同じなんですけれども、今回の税制優遇も、三世代同居を支援する税制でありながら、三世代同居であることはこの税制優遇の条件にしていません。

 私の質問は、これで本当に政策目的が達成できるのかどうか、あるいはその政策目的の達成をどのようにはかるのか、財政当局としてどう考えているのか、お答えください。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは確かに補正のときにお話があっておりました。

 今回の特例というものは、子育てをしやすい環境づくりというものに私どもはつなげていきたいと。三世代同居の方が、私の場合はちょっと極端で、もう四世代の一番古いのは亡くなりましたので、今はもう四世代ではありませんけれども。

 複数世帯と、いろいろな表現をやっておられますけれども、同居しやすい住宅のストックというものの形成というものを促す住宅政策が必要なのではないのかという観点から、東京で子供を産まない人が、これは小松製作所の話でしたけれども、コマツの本社に戻ったら子供を産んだという話を坂根さんがしておられたのが記憶に残るところですけれども、やはり地方の方が家が広いとか、三世代一緒にいておばあさんがいるから面倒を見てくれるとか、いろいろな事情があるんだと思いますけれども。

 そういったようなことを考えると、やはりスペースがないとこれはどうにもならぬというような観点もありますので、工事費に対する支援を行うものでありまして、その工事の内容を要件としているんです。

 同居世帯の構成ということで、いろいろさせていただいておりますけれども、出産を予定している世帯とか、ほかの親族との同居とか、いろいろ含めてケースは考えられるんだと思いますが、私どもとしては、家族の構成とか間柄とか出産とか、そういった極めてプライバシーの高いものにつきましては、これは慎重に取り扱うべきものなんだと考えております。

 そこで、家族の構成とか間柄というものを一律に決めちゃうというので何親等なんというのをきちんと調べるというような話はしないで、子育てをしやすい環境づくりという観点に重点を置いて、三世代同居などの複数世帯の同居に必要となる工事に着目をしているというのが私どもの考え方です。

玉木委員 これは予算のときにも聞いたんですけれども、わけのわからない政策の一つだと思うんですね。

 今おっしゃったのもよくわかります。プライバシーなところに介入していってやるというのは政策的にどうかということなんですが、ただ、一応ポンチ絵を資料四に入れましたけれども、「三世代同居に対応した住宅リフォームを行う場合の特例措置の創設(所得税)」、こう名を打つ以上は、だってこれは、本来なら入ってくる税金をまけてあげる話でしょう。だったら、どういう効果があるのか。少なくとも、三世代同居がこれでどれだけ進んだのか。単にトイレが壊れたので、あるいは、退職したから友達がこれからいっぱい家に泊まりに来てほしいからお風呂ももう一丁つけようかというようなことでやる人だっているわけですよ。だって、三世代同居を条件としていないわけですから。だから、少なくとも事後的な政策効果を、これによってどうなのかということも把握できないのであれば、三世代同居住宅なんという看板はとったらいいと思いますよ。

 ですから、少なくとも、三世代の同居を支援する政策なのであれば、何らかの形で、このことによって三世代同居をするから今回このリフォーム税制、支援に申し込むんですということぐらい、データをとったらどうですか。

 では聞きます。今、とるようになっていますか。

麻生国務大臣 今御指摘のあったとおりに、今回の特例では、いわゆる家族を構成する直接の要件としては設けていないという点なんだと思いますが、おっしゃるとおりで、同居に必要となる工事への支援を行うということになっておりますが、それをきちっと決めているわけではないというのは確かであります。

 したがって、子育てしやすい環境づくりというものにつながっていくと思っておりますし、ひいては少子化の対策にも一定の効果があるとは考えておりますが、これを条件といって決めたときに、今まだ住んでいないじゃないかという話と、いや、これから住む予定なんですという話と、家ができていないから住めないんですとか、いろいろな話が出てくると思っておりますので、私どもとしては、これをやらせていただいて、その結果をもう少し見て、御指摘があったように、さらにちょっと詰めろという話が出てくるかなという気がしないでもありません。

玉木委員 いや、そこなんですよ、大臣。結果を見てまた見直したらいいと思うんですね、これは租特でやるんでしょうから。適用期限が平成三十一年六月三十日までですからね。

 ただ、確認するとおっしゃいましたけれども、どうやって確認するんですか。

麻生国務大臣 同居について、それを全部一々確認するということは、物理的にはなかなか難しいかなとは思っております。

 ただ、本当に住むんでしょうねというような話は、一応聞いたりなんかはするんだとは思いますけれども、基本的には、私どもとしては、こういった形で新しくリフォームされ、そういった形で三世代同居ができるような状況を目指していくという方向であるならば、それはそれでよしとしておかねばならぬところかなと思っております。

玉木委員 いや大臣、ですから、三世代同居を目指すということをどう確認するんですか。

 多分、この中には、本当に同居しようと思ってこの制度を使う方と、さっき言ったように、ちょっと友達に遊びに来てもらいたいからトイレをもう一つふやしましょう、いろいろなニーズがありますよ。やってみて、今から何年間かやって、その結果、やはり三世代の同居にこれは役立ったと思ったら続けたらいい。そうじゃなければやめればいいんだけれども、そもそも、どうやって確認するんですか。

 では、その平成三十一年六月三十日になったときに、一応この特例期間が終わって、これで全国で幾つか減税措置が行われました、そのうち幾らが三世代同居につながり、幾らがそれ以外なのかというのを、政策を確認する、評価するというときに、どうやるんですか。

麻生国務大臣 建てた後のところに関してはそれなりの、一応そのときだけ一緒に住んでおいてまたすぐ別れちゃうなんというのもやられるとちょっとどうにもなりませんけれども、そういったことに関しましては、つくられた後、一応建築確認やら何やらすることになりますが、そういったときに、実際問題として、三世代同居をしているかしていないか等々については、一応のチェックぐらいはできるかなとは思っております。

玉木委員 謎の答弁ですよ。建築確認のときに同居のありようをチェックするんですか。あり得ないと思いますよ。

麻生国務大臣 建築されました後に、少なくともそういったところに、実際建てるときの条件はそれだったはずですから、建てられた後にどうなっているかなというようなチェックぐらいはできるかなとは思いますけれども、実際、一軒一軒、その調べに来るときだけ、例えば三月末そのときだけ同居している風を装うとかいろいろなことは考えられるとは思いますけれども、それをきちっと詰めていくというような体制をとろうと思っているわけではありません。

玉木委員 大臣、誰がチェックするんですか。

麻生国務大臣 これは、建築確認等々が主になりますので、国土交通省かなという感じはしますけれども。

玉木委員 これは石井大臣に聞いてもらいたいな。国土交通大臣が、このリフォーム制度で三世代同居しているのかどうかを調べるんですか。

 これは、租特透明化法という法律を我々民主党政権のとき通しましたけれども、租税特別措置というのは誰がどう使うのかということは、あの分厚いものに出すようにしましたけれども、これは租特ですから、これが一体どういうことに、どういう人に使われたかということは租特透明化法に基づいてきちんと公開することになると思いますが、それはどうやって、誰がつくるんですか。

麻生国務大臣 基本的には、租税特別措置法の所管をしておられるところが租特の効果について調べるというのが基本だと存じますが。

玉木委員 改めて伺いますが、これはそもそも、この税制優遇を受けるときに三世代同居じゃなくてもいいんですよね。では、調べる必要はないですよね。

麻生国務大臣 三世代同居というものを目指して今のうちからきちんと建てておきたい等々の方々もいらっしゃいますので、これはなかなか調べようが難しいなというところからこういうことになった経緯だと記憶します。

玉木委員 政策効果を客観的にはかれないような政策は、税制であれ予算であれ、私はすべきではないと思いますね。

 今、財政再建を進めていく上で、歳出歳入両面にわたった改革をしていかなければいけません。もちろん、いろいろな試みを毎年の予算や税でやっていくのはいいと思いますけれども、私は、数ある税制、いろいろなことを見てきましたけれども、今回ほど政策的に意味のわからない政策はないですね。

 三世代同居のためだと言うんだったら、三世代同居を条件にして予算なり税制優遇を打てばいいんです。でも、そういうことを全く見ないし、事後的にも、何か国交省の人が見に行って調べるかもしれないし、調べないかもしれない。大臣、私はこういう税制はやるべきではないと思いますよ。

 これは大臣がやりたくてやっている税制でないのかもしれませんけれども、一応所管大臣なのでお伺いしているので、もうちょっと筋のいいものをやった方がいいし、どうせやるんだったら、もっといい租特をやった方が、一・八の、出生率を上げていく政策としてはいろいろほかにあるのかなと思っております。これ以上聞きませんけれども。

 これは本当に、政策効果をどうはかるのかについては、よく事務方に検討させてください。何もしないのにこのまま放置して、これは単なる豪華便所、豪華お風呂、豪華玄関建設リフォーム支援事業になっていますよ。だって関係ないんでしょう、同居するかどうかは。

 こういうことを昔の大蔵省、財務省は認めなかったね。本来、主税局で一発で死んでいましたよ、こんな税制改正要望なんか。こういうことが残っていることに何を感じるかというと、やはり財政当局の査定がいろいろな意味で緩くなっているんじゃないかなと。単なるイメージとか雰囲気とか、そういうことで予算編成や税制改正が行われているのではないのか、そのことを心配します。

 最後にお伺いしたいんですが、大臣、配った資料の八を見てもらいたいんです。

 二〇二〇年のプライマリーバランスの黒字に向けて、歳出歳入両面にわたった改革をしていかなければなりません。六百兆のGDPを安倍総理も目指すということを言っていますが、私は断言します、できません。なぜかというと、それは、内閣府の資料に基づけばできないからです。

 先ほど申し上げたように、これから経済成長していくというモデルがそこには描かれています。成長は主に三つの要素で成り立ちます。労働投入、これは、人口がふえている、あるいは女性が参加する、高齢者も参加する、その意味では労働投入がふえるというのが一つの要素ですね。上の七でいうと黄色のところ。しかし、生産年齢人口が、少子高齢化の中でこれはマイナス要因として働きます。ドイツもそうです。そういう中で日本がやらなければいけない成長は、やはり資本の寄与、特に生産性の高い効率的なところに資本投入をしていく、資本蓄積をしていくことと、そして、同じ労働と同じ資本だったら、効率的に、より生産性が上がるための生産性を上げていく。これは、さまざまなイノベーション、技術開発、あるいはIT投資、こういったこともあるかもしれませんが、この三要素で成り立っていきます。

 簡単に言うと、近年に入ってきて、人口が減る、資本はちょっとプラスなので、労働投入と資本投入、大体相殺して消えます。ですから、これから我が国の成長というのは、生産性をいかに上げるかということです。ですから、私は、生産性革命を安倍政権が掲げたことは大賛成です。

 しかし、これを見てください、八です。これから内閣府が財政の中長期試算で、はっきり言って鉛筆をなめたものだと思うんですが、ベースラインケースでもこの生産性の向上、上でいう七のところの青の生産性だけを書き取って下に書いたんですが、先ほど申し上げたように、安倍政権になってから、TFPは、生産性は落ち続けていますが、なぜか来年から上昇に転じるんですね。

 ベースラインケースだとまだあり得るかなという感じなんですが、見ていただきたいのは、今、安倍政権が前提にしている二〇二〇年ごろに六百兆にたどり着くための生産性の伸びなんですが、バブル期の二%台にオリンピック前後に達成するということなんですが、多分それを逆算したんでしょう。ことしから来年にかけて、生産性がたった一年で約倍になるんです。あり得ません。

 確かに、二%台の生産性の上昇というのは過去ありましたが、これを見ていただきたいんですが、この傾きの上昇のときは、バブル期も含めて、ないんです。

 多分、六百兆と総理がおっしゃったので、なめるとしたらここしかないんです、生産性しか。何でかというと、ほかのものは、もういきなり人口が倍になったり十倍になったりしませんから、だから、なめるとしたら生産性しかなめられない。何でかというと、実は、これは経済学を勉強していればわかるんですが、TFPというのは残余の概念です、英語でいえばレジデュアルな概念。ほかで説明できないところを生産性で事後的に説明するから、そこをなめなめしてこんなになっている。

 私が最後に大臣にお伺いしたいのは、この前提で税収見積もりをしています、そして、二〇二〇年にたどり着く。でも、この超楽観ケースでさえ、二〇二〇年はマイナス六・五兆円のプライマリーバランスの赤字ですね。

 最後に伺います。軽減税率の議論をしておりますけれども、底上げ、上振れ、いろいろな議論を大臣ともさせていただきましたが、あるかもしれないという話でした、底上げ、そこから使える税収ね。仮に、ではあったとしましょう、大臣。あったとしても、そもそもこういうなめまくっている成長のパス、加えて、それでもなお二〇二〇年に六・五兆円のプライマリーバランスの赤字がある以上、仮に底上げや上振れということが諮問会議で定義されたとしても、私は軽減税率といった新たな施策の財源に使うべきではないと考えますが、いかがでしょうか。

麻生国務大臣 我々は、基本的には、経済成長の部分と財政再建の部分と、両にらみでやらせていただいております。昔は、どっちかという話で、リフレ派とか再建派とかいうので二者択一みたいな話が主流だったんですけれども、今は両方ということで考えております。

 私どもとしては、今おっしゃったように、もし仮に、どういう定義かというのはよくわからぬので、今、諮問会議でされるということになっておりますので、その部分になったときに、その使い道の話としては、私どもは財政再建をやっていくことをやらないかぬ部分が傍らにありますので、経済成長というものとこれと両立させないけませんので、このバランスのとり方が最も難しいと思っておりますけれども。

 財政再建という部分に関しましては、少なくともプライマリーバランスというものを半分にしますと三年前に申し上げたときには、信用した人は誰もいませんからね。(玉木委員「そんなことはないですよ」と呼ぶ)いや、全然信用されていなかった。新聞社を含めて全然、いや、無理ですよとみんな言っていましたから。財務省も多分無理だと思っていたと思いますから。それだったんだけれども、やりますと言って、結果的には伸びた。できた理由は何かといえば、経済が成長したから一応ことし行きましたけれども。

 したがって、あと五年後、六・五兆円が埋められないとは、私どもまだわからぬと思っているんですよ、正直なところ。極めて難しいハードルであって、今度の半分にするよりもっと難しいハードルであることはよくわかります。ただ、不可能というわけではないんだと思っておりますけれども、今言われましたように、上振れた部分、底上げした部分の使い方に関しては、財政再建という課せられた使命というものは忘れちゃいかぬと思っております。

玉木委員 時間になりましたので、財政再建をしっかりと進めていただきたいことをお願いして、終わりたいと思います。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 鷲尾でございます。

 一時間という時間をいただけていると思いますので、早速ですが質問させていただきたいと思います。

 安倍政権もそろそろ三年と今二カ月ですね。民主党政権が三年三カ月でありましたので、我々にとって三年三カ月という意味というのは結構大きくて、三年三カ月という単位でやはり安倍政権も見たいなというふうに思っているところであります。

 アベノミクスについて最初にちょっと質問させていただいて、マイナス金利について質問させていただきたいと思うんです。ちょっと質疑通告と順序が違いますので、そこは御容赦ください。

 期待されたアベノミクスのそれこそ期待値という意味では、さまざまな、予算委員会の議論を聞いていても、あるいはこの財務金融委員会の質問を聞いていても、期待値という部分では大分下がってきているな。私、地元でも、やはり実感としては、当初期待をしているという人たちの数と今でも期待しているという人の数ということを考えると、かなり雲泥の差があります。

 そういう意味では、政策当局としてもそういうことを前提にいろいろ物事をお考えになった方がよろしいんじゃないかと思いますけれども、特に、世界経済も大分変わってきておりますし、今までは、黒田日銀総裁、今はおられないけれども、大分、黒田さんのそのアナウンス効果といいましょうか、バズーカと評されるような、いい意味で市場を裏切るような政策的な打ち出しというのもこれまであったんだろうなというふうに思います。

 今見たら質問が五十二分に減っていたので、ちょっと速目にします。

 マイナス金利政策につきましてちょっと質問したいと思いますが、二〇一一年ころまでは、長期貸し出しの約定平均金利と新発の十年国債の金利というのは大体似通っていました。金融機関としたら、だから選択するという対象だったと思うんです。でも今だと、普通預金金利、そしてそれこそマイナス金利までなっているわけですから、銀行は、やはりMMFとは違って預金保険料を払わなきゃいけませんから、保険料率、今の十年物の国債でも賄えないということになってしまうと思うんです。

 今見ますと、国内銀行の資産構成は、現金、預け金が国債残高をどんと逆転しているんですよ、御存じだと思うんですけれども。今までにない本当に未曽有の事態だと思うんですけれども、金融機関がこのマイナス金利で、今はその資産構成という意味でどういう行動をこれからされると予測されているのか、状況の認識とあわせて麻生大臣の答弁をお願いしたいと思います。

麻生国務大臣 これは鷲尾先生、敗戦後七十年、デフレも初めてならマイナス金利も初めてのことを日銀がやっておりますので、その意味では、これは受け取る側の方の反応もいろいろ、まだ一月もたっていませんので対応は実にばらばらなところで、個別に伺っても、いろいろな方々は、地銀においても、その内容が地銀によって差がありますので、かなり余裕を持って見ておられるところとかなり違う。

 いろいろあるんだとは思いますが、いずれにいたしましても、日本銀行において、金融機関の収益というものを過度に圧迫するんじゃないかということで、金融介入機能というものが弱まるということがないように、日銀の当座預金というものを見れば、一定の残高までは従来どおりプラス〇・一%またはゼロ金利だということを適用されるものなんだと承知をしております。

 したがって、御指摘のマイナス金利の導入というものは、これを受けたいわゆる金利の動向などが銀行経営に与える影響ということにつきましては、これは先ほど冒頭に申し上げましたように、個々の銀行、または個々の業務内容においても、銀行の持っている資産の構成等々にあわせていろいろさまざまなので、一概にこうだということを申し上げるのは、これはなかなか難しいんだと思っております。

 いずれにしてもマイナス金利の導入というものは、マクロ経済全体に対して経済の好循環を拡大、深化させることが期待されているものとは承知しておりますが、金融機関への影響に絞って言わせていただければ、一般論として、資金調達コストが低下するとか、保有しております国債などの評価益が見えるとかいうようなプラスの面は確かにありますけれども、金融機関の貸し出しの方が、いわゆる利息収入が低下するとか、また、運用手段というものもこれはかなり絞られるということなども考えられますので、両方考えられるということだと思います。

 いずれにしても、デフレ不況からの脱却というものを目指している我々としては、市場の状況を勘案しながらも、経済を成長させる政策というものを進めていかねばならぬという立場にありますので、金融機関の動向というものにつきましては、極端に萎縮することのないように、基本的に金融育成庁と言われるような方向で金融庁は対応を考えろ、金融処分庁みたいなイメージから脱却しないと話にならぬということを申し上げてきておりますので、こういった点を通じて、今後とも、妙に、必要以上に萎縮することのないように指導していかねばならぬものだと考えております。

鷲尾委員 この政策が日本経済の拡大、成長につながるということを期待されているそうなんですけれども、ともすれば本当にどういう不測の事態に陥るかわかりませんし、一つは、円高に対する対抗策という見方もやはり市場ではあると思うんです。円高に振れるということなく、やはり、円安基調の中で日本経済の安定的な成長が望まれるということですから。

 先ほどちょっと世界経済の変調というふうに申し上げましたけれども、今、いわゆるグローバル・リスクオフが起こっているのではないかというふうに言われています。それで為替相場も若干いろいろ振れ幅が大きくなっているというふうに言われていますけれども、それもあって、きょうは御本人はおられませんけれども、マイナス金利をどんと打ち出したのかなというふうに私は思うんです。

 大臣、この点なんですけれども、今、グローバル・リスクオフという関係の中で円高になっているということからすると、何か円高にメリットを感じて円に投資をしているということじゃないでしょうから、リスクがないから円に、逃げ場として円高に振れているということが今の起こっている現象じゃないかと思うんです。

 そこでマイナス金利を幾ら打ち出してみても、そのグローバル・リスクオフとの関係でいくとこれは意味がないんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣、どう思われますか。

坂井副大臣 済みません、私の方から御答弁を申し上げたいと思います。

 今のお尋ねでございますけれども、マイナス金利つき量的・質的金融緩和ということでございますが、あくまでこの施策は、日銀が物価安定目標を確実に達成するために必要な方策として決定されたものと考えておりまして、いわば為替を目的というものではなくて、そういう話ではなくて、あくまで物価安定目標を確実に達成するためということでございます。

 為替相場は、御承知のように、さまざまな要因において相場が決まるものでございますので、今後とも、世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、日本の為替市場でも変動が見られておりまして、引き続き、市場の動向を注意深く見ていきたいと考えております。

鷲尾委員 政府としてはそういう認識、財務省としてはそういう認識ということですね。

 ちょっと時間もないので質問を先に進めたいと思いますけれども、ちょっと幾つか飛ばします、申しわけないです。

 法人企業統計では、これは財務省の公表資料ですけれども、企業の利益というのは過去最高だとなっています。これはもう大臣よく御承知のとおり。

 ところが、売上高という観点からすると、どうも足踏みが続いているんじゃないかというふうに思うんですけれども、どう思われますか。

坂井副大臣 法人企業統計による売上高でございますが、二〇一二年度から二年間で五・三%、七十三・三兆円増加しているという現状でございまして、政府としては、足踏みしているとは認識をしていないということを申し上げたいと思います。

鷲尾委員 そうしたら、利益の上がり度合いに比べると、随分売り上げの上がり度合いは横ばいに近い形なんですよ。額で言われると、率が皆さんお好きなわけですから、上げ率で見ると、売り上げは利益の上昇率とは大分違う。明確にそういうトレンドですよ。ぜひそれを御確認をいただきたいというふうに思うんですけれども、ちょっと時間がないので先に進みます。

 デフレ脱却ということであれば、私は、そのいろいろな経路はあると思いますけれども、特に安倍政権、景気の実感を地方にも押し広げるということを常におっしゃっておられます。景気の実感を押し広げるのであれば、その経路というのをやはり明確に明示していただかなきゃいけないというふうに思うんです。

 前回の補正予算でも、アベノミクスの均てん化ということで幾つか予算を組まれましたけれども、売上高というものがやはり地方の企業はどんどん上がってくる、つまりそれは仕事がふえたということになりますから、やはりその売上高というものにも注目をしていかないと、これは政策当局として間違った現状認識になるというふうに思うんです。その点いかが思われますか。

麻生国務大臣 企業にとりまして、売り上げ減、利益増収、デフレの時代によくあった経営の手法なんだと思いますが、売り上げが伸びているということは、やはり企業が、簡単に言えば、インフレのときは名目ですから、伸びていくのは当たり前の話なんですけれども、そういった形で売り上げというものが伸びていくというのは、売っている側、商売している側の社員の気分としても、これはやはり売り上げが伸びているというのは大きいのであって、利益が横ばいであっても売り上げが伸びているというのと、売り上げは伸びていないけれども純増だけしているというのと、どっちの方が気分的なことかというと、売り上げが伸びている方がやはり気分としてはなかなか前向きにいきやすいという状況にあったと存じます。

鷲尾委員 一般的には、それこそデフレ脱却でお金をばらまいてインフレになっていく、お金の量がふえるというのは経済のかさがふえるわけですから、当然にして売り上げにもっと効果が出てこなきゃいけない。もっともっと効果が出てきてしかるべきだと思いますよ。利益が上がるということと平仄を合わせる形で売り上げも上がってこなきゃいけないと思うんですよ。

 何で上がってきていないと思われますか。

麻生国務大臣 これはいろいろなことが考えられるんだと思いますけれども、純増がふえている部分は、海外から入ってくる、GDP以外のGNI、グロス・ナショナル・インカムというもののGNIのふえ方がかなり企業にとっては大きな部分で、そこが利益をかなり出している。

 傍ら、国内のGDPに直接影響します売り上げという面で見ますと、そちらの方はなかなかまだ価格に転嫁し切れていないとか、いろいろな理由があってそこのところまでは至っていないのが売上高が伸びてこない理由の一つかな、ほかにももう少しあるのかもしれませんけれども、今とっさに思っているのはそういうところです。

鷲尾委員 やはりそこだと思うんですよ。その現状の認識のもとでどういう政策を打ったらいいかということじゃないと、よくこれは総理もおっしゃっているんですけれども、地方も元気になっているとおっしゃっているんだけれども、どういう数字を見て言っているのかなと。よく言われているのは有効求人倍率の話をされていますけれども、これも、数字的に本当に詳細に分析をした中でやはり企業の売上高がどうなっているかというところまで見ていただかないと、これは本当に政策の効果として、地方に景気の実感と皆さんが言われても、全然実感できないよということになりかねない。だから、そういうところで予算の突っ込み方も考えていただかなきゃいけないということであります。

 それで、もうちょっと聞きたいこともあるんですが、ちょっとまた次の質問に移らせていただきたいと思います。軽減税率の導入にまつわる話に移らせていただきたいというふうに思います。

 今回、軽減税率の導入で一応理屈として一番言われているのが、我が方は当然給付つき税額控除がいいということで単一税率を維持すべきだということを話をしていますし、メリット、デメリットは相当議論し尽くされていると思いますので、それを前提にしてお話をさせていただきたいと思います。

 痛税感の緩和ということをよく言われます。この痛税感に関連して、少し深掘りしてきょうはメーンで質問させていただきたいと思うんです。

 戦後の基幹税の純増税、調べますと、二〇一四年の消費税増税というのは、先行する減税措置というのは基本的にはないという中で基幹税を大幅に引き上げているということで、一九八一年の財政再建目的の法人税増税以来の純増税とも言われております。そういう増税の必要性というのがなかなか国民に認識されずに、増税が先送りされてきたとも言えると思うんです、一九八一年以来で二〇一四年ですから。これはどういう理由だと大臣は思われますか。

 ですから、いわゆる基幹税が戦後純増税されたと言われているのは、一応、一九八一年の次は二〇一四年の消費税五%から八%だと言われているわけです。つまり、先行する減税措置がないという状況で基幹税が増税されているんです。ここまでの間、そういう意味で純増税できていないというのは、政治の側の問題かもしれないし、国民の認識の側の問題かもしれない。これはどういう理由だと大臣は思われますか。

麻生国務大臣 これはいろいろ、ちょっと直接かかわったわけじゃない部分もありますのでいいかげんなことは言えませんけれども、あのときやっておけばよかったのになと思う期間はありますよ、正直なことを言って。

 だけれども、消費税を導入するに当たっては、まずは歳出の削減や、合理化やというので、税負担の公平をまずは図るべきではないかというまともな話、御意見等々や、また、事業者の中においては、こういうような状況下においては、先ほどの売買価格に転嫁できないという話などあって、さまざまな御意見があったんだと承知しますが、こういった意見等々を踏まえて、何というんでしょうね、個別に直間比率の見直しがどうたらとか、あのころはいろいろなことが言われていたんだと記憶しますけれども、個別の間接税制度というものの見直しとして直面していた諸問題というものを根本的に解決するという意味で、これは、税体系全体に通じる、いわゆる税の負担の公平というものを図ると同時に、少子高齢化に伴って福祉というものに関する歳出がわあっと伸びていくというものもはっきりしておりましたので、そういった意味では、これは歳入というものをよほどきちっとしておかないと、とても日本としては、この少子高齢化の中において現在の生活水準を維持させながら今後とも先進国としてやっていけるとか、そういったようなことはもう不可能という意見もあの当時はすごく出ていたと記憶をいたします。

 国民各層というものが広く公平に税を負担するというので民主党、自民党、公明党三党でああいった形のものができたというのは、これは、日本の議会制民主主義と言われるものの中で、先進国の中で、少なくとも与野党合意で税を上げるという話をやってのけた唯一の国だと、私はいつもアメリカ人やらイギリス人やらに、おまえらにやれるならやってみろ、俺たちはそれをやってのけているんだと言うとみんな黙りますもんね。だから、やはりこういったものは大きかったんだと思いますね。

 そういったことを考えますと、今これをやらねばならぬと言われるほど、一千兆円とかいろいろな言われる数字が、やはり借金は返さないかぬという思いというのは非常に強いのであって、私どもの国というのは、海外から借りた金、日露戦争のときの戦時公債を含めまして、借りた金を返さなかったことはゼロですから。一回も約定をたがえず返済し切った国というのは多分世界じゅうで日本だけだと私はそう思っているんですけれども、ぜひそういった意味では、そういった意識は国民にも非常に強くて、借りた金は返すというのであって、借りた金を踏み倒すと考えている人とは全然考え方の根本が違っているんだ、私らはそう思っているんです。

 だから、そういった意味で、今回これはどうしてもやらねばならぬというのを機に追い込まれていった大きな理由というのは、やはり、少子高齢化という問題とか、景気がこれだけざあっとデフレになっていったとか、政府の借金がこれだけふえているというようなことに関しては、非常に、根本的にやらないかぬということになっていった大きな理由。それまではなかなか、借金といったって政府の借金じゃないかというハンディは大きかったかなという、ちょっと正直なところ、そういう感じがいたします。

鷲尾委員 なるほど、勉強になりました。

 今大臣おっしゃったとおり、もうちょっとこういう時期に上げておけばよかったかな、そういう時期もあったと正直におっしゃっていただいたというふうに思うんですけれども、消費増税ということで国民の理解が借金の額によって高まったんだ、次の世代に余り先送るのもどうだろう、そういう感覚が広く共有されたということだと思うんです。

 ただ、それもよく考えれば、三十年以上前に予測できていた話ではありますよね。予測できていたんだけれども、やはりそれが適切な手を打てずにこれまでやってきたということで、私、ちょっとひもといて調べたんですけれども、大平さんが一般消費税を導入するということを議論していたときに、日本鉄道建設公団の不正出張問題に端を発する公費天国キャンペーンがマスコミに連日取り上げられたんだそうですね。これでやはり、議論をする土台としては、いや、そんなんじゃ何で増税なんて議論しているんだ、こういう話があったようでございます。

 その後の売上税の議論ですとか、当然、竹下内閣での消費税の議論のときも同様にそういう議論もあって、それこそ大臣が総理時代にも御経験されたと思うんですけれども、天下りの問題だとかばらまき予算の問題だとかさんざん指摘されて、それが結局、国民に対する増税への拒否感のあらわれにつながったんじゃないかなというふうに思うんです。

 一方で、三十年以上前から今のこの現在の状況が予想できていたし、確かに、そのときは政府の借金というのは今よりは少なかったかもしれない。しかし、増税をしなきゃいけない、そうでなければ大変な状況になっているということがわかり切っている中で、一方で、行政の非効率性という部分で随分いろいろ取り沙汰される世論が形成されて、そのことが大分国民にすると、自分が払うことに対する痛税感、払った税金が何に使われているかわからない、そういう意味においての痛税感や、いわゆる租税抵抗につながっているというふうに思うんですけれども、大臣、今の私の話はどう思われますか。

麻生国務大臣 大平内閣の話が出まして、私、そのときに立候補したんです。ですから、すごく印象があります。昭和五十三年、四年、あのころだったと思うんですが、これは当時の選挙の中における非常に大きな問題の一つだったと今でも記憶をしますが、当時、一般消費税と言っていたかな、いろいろな表現が使われていたと思いますが、そういう時代だったと記憶します。その後、今言われたように、スキャンダルの話がいろいろ出たということも確かです。

 いろいろな意味で、あれから三十年少々たっているんですけれども、その間、やはりお役人の数というものは、間違いなく、働いている人、勤労者に対して公務員の占める比率というのは、アメリカの二分の一、フランスの三分の一ぐらいになりましたかね。それぐらいになって、今は先進国の中で、役人のいわゆる勤労者の比率からいったら、自衛隊員を含めて多分一番低いところになっていると思っています。

 そういった形になってきたのも間違いないところでもありましょうけれども、今言われたように、やはり、何となく三十年間延ばしてきたんですよ。私はそう思います。建設公債じゃないですからね。建設公債なら後世に資産が残りますけれども、これは特例公債ですから、そういった意味では単に借金という話になりますので、そういった意味では、私どもとしては、これは何とかせないかぬという意識は多分みんなあったんだけれども、ちょっと余りにもというのが、そこにいきなりどんとデフレが来て、どんとリーマン・ショックが来てというような、いろいろなものが来たものですから、さらにそれがざあっと急激に膨れ上がっていったということもあって、非常な大きな、GDPの倍以上とかいうような話になったのはこの数年の話なんですけれども、ぜひそういったところを含めまして、私どもは、いよいよこれはやらねばならぬというような状況になりつつあるという意識は国民の中でいろいろ持っていただきつつあるかと。

 やはり景気が少しよくなってこないと、こうなっているときにはとても増税なんかできる話じゃありませんので、私どもとしては、景気の上昇という場面も出てきて、それを冷やしてまた落としちゃったら意味がありませんので、上昇を維持しながらやるというところが最も難しいところかと思っております。

鷲尾委員 もちろん、納税者の納得という意味ではいろいろな環境整備ということが大事だと思うんですけれども、今大臣がおっしゃった景気という部分もあるし、国民の理解という部分があると思うんですけれども、その国民の理解のうちの一つとして、行政の非効率性とかがよくやり玉に上げられると思うんです。私も、地元を歩いていてやはりそう思います。公務員の人件費を下げろとか、やはりそういうことを言われるんです。それは、我々もそういうことを言い募ってきたところもあるでしょうし、そういうイメージが国民の皆さんの間に随分と今普及していると思うんです。

 しかし、それはイメージの問題ですから、今大臣がコメントされたように、公務員の人数でいくと、ほかの先進国と比べても大分少ない状況ではありますよね。それが本質ですよ、イメージとは違って。

 もう少し具体的にお聞きしたいのは、公務員の人件費を下げろとか、今は議員定数の削減の議論もしていますし、身を切る改革がないから増税への障害になっているのかどうかとか、そこら辺の大臣のコメントをいただきたいんですよ。身を切る改革とかができていないから国民が増税に対する抵抗感が非常に強いというふうにお感じなのかというところです。

 あるいは、国民の増税への抵抗感、大臣は景気だとか債務の残高と言いましたけれども、こんなところまで放置するという手はなかったわけですから、もっと前に前倒ししてここまでの借金にすべきではなかったわけですから、おっしゃったとおり赤字国債なわけですから。ですから、増税するに当たっての国民のその租税抵抗を和らげるためにはどういうものが必要だとお感じになっているかというところなんです。

麻生国務大臣 これは鷲尾先生、やはり税金を納めていただいている方に御負担というものをお願いするに当たっては、これは御指摘のとおり、納めておられる方々の納得を得られるというのがすごく大事なところなんだと思っております。

 したがって、そういった観点から、まずは予算の効率化とか、無駄の削減とか、公務員の総人件費の抑制とか、いろいろなものをして国民の納得を得ていくんだと思いますけれども、その上でやはり今般の消費税というものの納得をいただくためには、これは、少子高齢化の中にあって、我々は極端な高福祉・高負担という国を目指すわけでもないし、アメリカのように低福祉・低負担というのを目指すわけでもないので、我々としては、少なくとも今あるのは、日本の場合は、北欧なんかの国と比較すれば低いし、アメリカなんかに比べて高いしということで、まあ中福祉・中負担ということになろうかと存じますけれども。

 そういった意味では、我々は、そんなような状況の中にあって、世界の中で誇れるような国民皆保険とか医療制度とかいうのを持って、今アメリカはやっとオバマ・ケアなんていう、何かかなり国民が割れるようなことをやっていますけれども、私どもはもうとっくの昔に、昭和三十何年からこれをずっとやり続けてきているわけですから、そういったものをきちんと、人口構成が変わっていく中にあって次の世代にこれを引き渡していけるだけの財政というものをきちんと持っておかないと、残念ながら責任を果たすことにならぬのではないかと思っておりますので、ぜひそういった意味でこの消費税というのは、これは税と社会保障の一体改革ということで三党で合意したわけですから、私どもとしては、マーケットとか、それからインターナショナルな社会の中においても国家とか国というものの信認というものはやはり大きなものなんであって、そういったものを維持していくためにも、今回の税によって得られたものは間違いなく社会保障の充実に充てる、皆さん方の生活に、皆さん方の老後に、皆さん方の医療にということをよくよく理解していただける、これはきちんと皆さんに還元されるんだというところがきちんと理解していただけるようにさらに丁寧に説明していくというのが非常に大事なことなんじゃないかなと、基本的にはそう思っております。

鷲尾委員 大臣が今おっしゃったところ、ちょっと議論がかみ合っていないところもあるんですけれども、最後におっしゃった、何のために使われているか、出した人にしっかり還元される、出した目的に合ったサービスを受けられるということだと思うんですけれども、そういうことが租税抵抗を和らげるためには非常に重要だ、そういう御答弁だと承りますけれども、そのとおりだと思うんです。そのとおりだと思うので、では、翻って、軽減税率についてどうかという話をさせていただきたいんです。

 何度も言いますが、軽減税率については私どもは反対です。やはり給付つき税額控除の方がいいであろう。この主張するところ、そのメリット、デメリットは、もう大臣もよく御承知のとおりなので繰り返しません。

 予算委員会でも痛税感の緩和とよく言われていますけれども、痛税感、語感のとおり感覚ですから、個人個人によって感覚は違いますから、何をもって痛税感という、その人それぞれだと思うんです。人それぞれである感覚ですよね、痛税感というのは。大臣、どう思われますか。そうですよね、痛税感と言われたらそうじゃないですか。

麻生国務大臣 これは痛税感の定義みたいな話になるんだと思いますけれども、国民の方々が感じられる税の負担ということなんだと思いますけれども、この消費税につきましては、最終的な負担者である消費者が物を買うとき、その都度感じるというものが痛税感というように、定義をすればそういうことになるんでしょう。

鷲尾委員 そういう定義で走っていただいても構いませんけれども、やはりもう少し広い意味だと思います。政策当局としてそういう定義でやられるのであれば、当然、所得階層ごとに、恐らくは買い物をしたときの痛税感の感じ方というのは異なると思います。

 そもそもこの軽減税率の導入ですけれども、痛税感の緩和ということが導入の趣旨になっておるようですが、これは、政策の目標としてどういうものが目標でいらっしゃいますか。

坂井副大臣 軽減税率の導入の目的ということでございますが、これは、所得の低い方々、年収の低い方々に対しての痛税感を和らげていくということを目的としております。

鷲尾委員 今の答弁であったとおり、痛税感を和らげることが目的だ、そういうことですね。そういうことを今答弁されました。痛税感を和らげることが目的なんだと答弁されました。この軽減税率導入の目的は痛税感を和らげることである、この痛税感を和らげることを目的として一兆円予算をかけるということですね。

 本当は大臣に聞いてもらいたかったような発言ですけれども、ということは、質問しますけれども、では、ある意味主観的感覚とも言える、買い物をしたときに痛税感が和らぐんだ、だから軽減税率を導入するんだということですけれども、所得階層においても感じ方が異なるであろうこの痛税感というものを緩和するという目的で一兆円かけるということでありますから、では、痛税感緩和のその効果、それぞれ主観的に所得階層ごとに違うだろうし、所得階層の中においても、同一所得階層内でもかなり感じ方が違うと思うので、この政策の効果をどう測定をしていきますか。

坂井副大臣 まず軽減税率の目的でありますが、痛税感の緩和ということを申し上げましたが、もともとは低所得者のための対策としてでございまして、その結果の判断ということでございますが、今回対象になります酒類及び外食を除く飲食料品等、軽減税率の対象としているところから、この部分をどの程度購入していただいているのか、その割合等につきまして考察をしてそれは判断をしていきたい。

 例えば、年収二百万円未満の世帯では三〇%程度をこの消費支出に充てているということがございまして、言いかえれば、買い物の三割に軽減税率が適用されるということになっておりまして、これで痛税感の緩和を十分実感していただけるのではないかという、その数字として考えております。

鷲尾委員 そこなんですよね。今ある数字でこれだけやれば痛税感が緩和されるよというのはあくまでも政策当局の話であって、消費者の皆さんがそれを痛税感の緩和と感じるかどうかは別なんですよ。

 問題は、低所得者対策とおっしゃっていましたけれども、低所得者対策がなぜ言われるかといったら、これは逆進性の問題であって、消費税という便利な税金を増税するに当たっては部分的に弊害が生まれるであろうから、それについては対策を打っていこう、こういう話だと思うんです。

 ですから、もともとは増税に関して国民の理解を広げなきゃいけない、租税抵抗をできる限り少なくして、そのことによって、大臣もおっしゃったように、これは社会保障に対して使うべきなんだとか、そういういろいろな説明もしながらやっていくということが大前提にあるわけですよ。

 それが、今聞くと、痛税感の緩和ということで一兆円使う。では、その痛税感の緩和というのは本当に消費者の皆さんが望んでいるかというと、今御答弁があったとおり、我々が計算したらまあまあ痛税感の緩和になるんじゃないですか、こういうことでは、この先もまた増税に物すごい苦労すると思うんです。

 国民の皆さんが、税金を上げれば非常に行政のサービスもよくなるし、給付もふえるし、そのことによって身の回りの問題が解決していく、こういう世界を本当はつくらなきゃいけないと思うんですけれども、大臣、どう思いますか。うなずいていただいてすごくありがたいんですけれども。

麻生国務大臣 これはもうおっしゃるとおりで、やはり痛税感というものの感じというものは、五%でも感じない人もいれば、二%でも感じる人がいるじゃないかと前に言われたことがあるので、私もなるほどなとすごく印象的だったんです。

 私、イギリスに住んでいるときにちょうどこの軽減税率というか、これが入ってきたときにちょうどいたものですから、御存じのように、もうあっちは我が国のように引き算がそんなにみんなうまいわけではありませんから、だから物すごく現場でごちゃごちゃしていて、もうえらい騒ぎをやっているなと思ったのが今から何十年も前の話です。そのころの記憶があるんですけれども、御存じのとおり、それからイギリスはざあっとぐあいが悪くなっていって、サッチャーが出てくるまではああいった形になっていくんですけれども。

 私どもとしては、やはり、この税というものが我々のというような気になってもらうようにするためには、これが上がった後の、少なくとも、今までは保険料の半分はずっと国が補填していた部分というようなものもこれはちゃんとそこはとまりますし、いろいろな意味で非常な勢いで大きく変わっていくんだというような話をもう少しわかりやすい話でしませんと、頭のいい人が考えるものですから、どうも財務省の人たちの欠点というのは、頭がよくない人も世の中には大勢いるんだという前提がよくわかっておらぬ人が多いものですから、もうとにかく頭のいいレベルでぼんぼんしゃべってくるものですから、そんなにレベルが高くはないよこっちはと思って聞いて、もう一回、たんびたんびとめにゃいかぬというんですけれども、わかりやすく説明というのは、すごく僕は大きいと思っているんです。

 だからその意味では、今おっしゃったように、やはりこういったようなものに関してはもう少しわかりやすいような説明にさらに努力をしていくということは、私どもは今後引き続きやっていかねばいかぬ大事なところだと思っておりますので、妙な例えをするとその例えだけ突っ込まれたりなんかするのがよくこちらの方からありますので、私どもとしては、どの程度に説明をするかといつも悩みながらするんですけれども、ぜひ鷲尾先生、これはもうおっしゃるとおりで間違いないので、私どもとしては、この痛税感の痛み方の違いというのは人によって間違いなく違いますので、そういった方々に、結果として回り回って日本全体のためになるとか我々のためになるというような話が理解してもらえるようなということに関しては、引き続き努力をしていかねばならぬと思っております。

鷲尾委員 大臣もいろいろしょっているものがあられると思うので、それは個人としていろいろ御発言されるのは難しいと思うんですけれども、国民全体の理解がなければ、というか、逆になかったから、これまで増税に苦労してきたわけじゃないですか。だったら、やはり国民の心にちゃんとピントが合った政策をしていかないと、この先も本当に苦労します。

 この軽減税率も私はずれていると思います。やはり、これだけ緩和措置があるんですよと幾らこっちが説明したって、実際に一兆円もかけてやっているんだと国民の皆さん知っていますよ。痛税感の緩和と言われても、いや、それは我々からしたらよくわからないやという人たちもたくさんいると思うんですよ。だったらもうちょっとサービスを充実してくれよという人たちがいてしかるべきだと思うんです。

 せっかく二〇一四年で純増税を行って、この先もまた上がるわけですから、もうここは、本当は考え直していただきたいですけれども、かなわないのであれば、今おっしゃったような理解。でも、これは本当にきついと思いますよ、正直。そう思っています。

 ただ、この軽減税率導入に当たって、一ついいことがあると私は思っております。それはインボイスの導入です。

 なぜいいことがあるか。インボイスの導入があると、これは益税の問題、消費税導入から益税の問題というのは非常に問題だ問題だと言われて、累次にわたっていろいろ法改正をしてきましたから。実際にその益税の問題はおかしいと思うんですよ。我々消費者の立場からしたら、払ったものが事業者の懐に入って国庫に納まらないという話なんですから。それが結局、いろいろなサービスを自分たちが受け取る際の障害になりかねないということなんですから。それは、納税者の側からいったら益税の問題というのは絶対に看過できない。そういう意味では、所要の改正をされてきていると思います。

 その上でですけれども、軽減税率導入に当たっては、これはもうインボイス導入が必須だと思っています。そういう意味では、今般の法改正によってもそれが規定されているんですが、導入に当たってですけれども、相当な事務上のコストが生じると思うんです。

 大臣にこのインボイス導入がどういうメリットがあるかというところの見解をお聞かせをいただいて、あわせて、その対策として今ある対策が十分であるかとか、あるいは、この先インボイス導入に当たってしっかりと対策していくんだというところをお話しをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 インボイス制度というこの制度の導入がいわゆる免税事業者にとってどのような影響が出てくるであろうかというものは、これは個々の免税業者ごとに、商売の内容で、事業者間の取引の人もいるでしょうし、消費者と直接やっている方もいらっしゃるので、ちょっといろいろ基準が違いますので一概になかなか言えないところだとは思いますけれども、少なくとも町の商店街で、どう考えてもここで二、三千万売ってそうなところが、うちは千万円以下ですと言われても、本当かと思って、それは長いつき合いですから、みんな何となく、そんなとんがっても始まらぬわいと思っている方もいらっしゃる。

 現実問題、この何年間か見てそういうものだと思っていますけれども、ただ、これは詳しく詰めていったら明らかに脱税じゃないかということになれば、それは、税理士をやっておられたりなんかする立場から見れば当然ですよね。僕は、そこのところは当然そういった意見が出てくるのはちっともおかしくないんだと思っていますが、そういったものをみんなできちんとするというのは、これはすごく大事なことだと思っています。

 ただ、今までずっとこれまで来ていたものが、こういったものが入るということになりますと、それは当然のこととして、今まで得ていた利益というものは、本当はそれは払うべきものを払っていなかったというだけの話なんですけれども、それでも利益として懐に入っていたわけですから、それがなくなるかもしれない。その分だけ売り上げは伸ばせばいいだけの話とはいいながらも、そうはなかなかとられませんでしょうから、そうなってくると、なかなか感情論としてはこれは受け入れがたい、一。

 二つ目、手間がかかるのは確かですから、そういった意味では、仕入れに当たりましてのいろいろなことに関しましては少々時間をかけないかぬなと私どもは思って、四年とかいろいろ時間をかけることを申し上げさせていただいているんですが、少なくとも、引き算やら掛け算やら余りうまくないイギリス人やら何やらでもこれは十分にその場でばっとみんなできますし、今はもうレジの機械というものも発達していますので、そういった意味では、しばらくするとそういったものが、極めて便利な機械、レジスターというものが出てくるんだと思います。

 そういったものを含めて私どもとしては、時間をかけながらも、これがきちんとされていくことによって生まれる益税というもの、今まで得ていなかった益税がどれくらい出るのかねということに関しましては、これは鷲尾先生、全然想像で私にはよくわからぬのです。これがあればもう六千億もかからぬだろうがと言われた方もいらっしゃいました、確かに。そうなのかもしれません。そんなに出ないのかもしれません。正直、私にはそこのところはわかりません。

 ですから、そういったことも考えて、私らはいろいろなことを今後ともやっていくに当たって、この益税を含めまして消費税のいわゆるインボイスというものに関しましては、時間をかけて納得していただく以外にはありませんし、これがなければ複数税率は成り立ちませんので、ぜひその点だけはきちんとしていかねばならぬと思っております。

坂井副大臣 インボイスの意味等は大臣の答弁でございますが、同時に、導入のための対策ということでお尋ねがございました。

 混乱が生じないよう万全な準備を進めたいと考えておりますけれども、正確に幾らかかるかということに関して万全かどうかということに関しては、まだ正確な額、量がわかりませんから何とも言えませんが、今回、予算面におきましては、予備費九百九十六億円、昨年末に閣議決定をいたしまして、中小の小売事業者等が複数税率に対応するために必要なレジの導入、システムの改修をする場合、支援することといたしておりますし、また、二十七年度の補正予算におきましては、百七十億円を計上いたしまして、制度の周知徹底、相談の対応などを丁寧に行うとしております。

 また、この今回の法案におきましては、必要な体制を整備するとともに、軽減税率制度の円滑な導入、運用のための必要な対応を行うという旨も明記しておりますので、状況を見ながら、必要があれば、また政府としてしっかりと対応を行ってまいりたいと考えております。

鷲尾委員 インボイスを入れると、それこそ八%に増税したときのように、三%分の転嫁が取引先との強弱の関係においてごまかされるとか押しつけられるということが、インボイスがあるとなくなりますよね。そういう意味でも非常にこれはいい制度だと私思うんですよ。ただ、おっしゃったとおり、今は簡易課税制度と免税点があります。そこの問題はやはりあろうかと思うんです。

 簡易課税についてちょっとコメントさせていただくならば、なぜか大企業まで認められているんですよ、今のこの法律の状況ですと。大企業まで簡易課税、みなし課税が認められているんです。中小だったらまだしも、なぜ大企業まで、大企業は五千万円を超えるということですけれども、認められるのか。これはちょっとどうなのかなと私は思うんですけれども、どう思います、大臣。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今……(鷲尾委員「ごめんなさい、経過措置の話です」と呼ぶ)経過措置、簡易課税ではなくて……(鷲尾委員「失礼、経過措置の話です」と呼ぶ)経過措置というのは、済みません、もう一度確認をさせてください。

鷲尾委員 このインボイス導入までの経過措置の間に簡易課税制度を適用する、事後選択による計算が認められるとなっていまして、基準期間が売上高五千万超の場合は簡易課税に準じた計算を認めるとなっているんですよ。

 中小のための制度なのに、何で大企業までこれを認めちゃうのというのが私の趣旨です。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 インボイス制度を導入するということに当たりましてさまざまな事務負担等々が新たに生じるということで、今おっしゃいましたような形で、例えば、売り上げ、仕入れの一定割合を軽減税率対象であるとすることについて、非常に簡便法でやる特例がございます。その中の一つが、今御指摘の、仕入れ税額の計算の特例のことをおっしゃっておられるということかと思います。

 複数税率になりますので、本来は、仕入れましたときに、それが八なのか一〇なのかということを分けて仕入れて計算をするというのが普通でございますけれども、なかなか急なことで難しいとか、あるいはシステム対応が難しいということが現実に起こり得るであろう。もとより、中小企業は事務負担についての非常に不便さというものをお持ちでしょうが、大きい企業でありましても、システムの問題とかいうことも生じ得ますでしょうし、あるいは、スタートしてから事後的になかなかその仕入れの区分が難しいとかいうのがわかってしまうというようなこともあってはなりませんので、とにかく、導入後の一年ということに限りまして、事後選択というようなことも工夫した形で盛り込んでいるという趣旨でございます。

鷲尾委員 質問時間が当初より短くなっちゃって、尻切れになっちゃって、私かなり消化不良というか、不完全燃焼です。これはまた改めて議論させていただきたいなというふうに思うんです。

 申し上げましたが、痛税感の緩和ということについて国民の理解をしっかりと促していかなきゃいけないところも本当にお願いしたいし、あるいはインボイスも、きょうはちょっと免税点の話はしませんでしたけれども、大臣からちょっとコメントをいただきましたが、その点につきましても、結局は課税事業者になっていただくしかないと思うんです、インボイスを導入したら。そういうことをはっきり言った上で、そのかわりしっかりと政府もサポートするよと言ってあげた方がまだ親切だと思いますよ。そのかわり、いろいろと導入のコストもしっかりとこっちも面倒を見るしということをはっきり言って理解を促していった方が、中途半端なことをやるよりもよりいいと思います。

 大臣は海外での御経験もあるわけですから、そこも踏まえて政策判断されることを望んで、質問を終わります。

 ありがとうございました。

宮下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 どうも、鈴木でございます。

 税制についてということでありますので、午前中の質問者と若干重なるところもあるかもしれませんが、大事な部分でございますので、私からも質問をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、税制の構造改革の動向ということをお伺いしたいんですが、昨年の六月に骨太の方針が閣議決定をなされました。そのときには、経済社会の構造が大きく変わっていく、そんな中で、持続的な経済成長を維持促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般にわたってオーバーホールをする、こういうことが閣議決定されたわけであります。

 これを受けて、政府税調で昨年の十一月には論点整理が取りまとめられました。その中で、「個人所得課税及び資産課税において税負担の累進性を高めることで低所得層の負担軽減を図り、再分配機能を果たす重要性が増している。」というふうにされたわけであります。

 こうした認識については私も全くそのとおりだというふうに思っておりますが、再分配機能について、これはもう相当前から指摘をされておった部分だというふうに思うんですね。率直に申し上げて、何を今さらとは言いませんけれども、少し対応が遅いんじゃないかな、このように思うわけでありますけれども、大臣、税制構造改革の見通しについてお伺いをしたいというふうに思います。

坂井副大臣 済みません、私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 委員御指摘のように、骨太の方針二〇一五におきまして、将来の成長の担い手である若い世代に光を当てることにより経済成長の社会基盤を再構築する、また、特に、低所得若年層、子育て世代の活力維持と格差の固定化防止といった観点から、経済社会の構造変化を踏まえた税制の構造的な見直しを行うこととされておりまして、これを受けて、昨年の夏以降、政府税制調査会におきまして、税制の構造的な見直しについて検討が行われ、昨年十一月に論点整理が取りまとめられました。

 論点整理の中身に関しましては委員御指摘のとおりでございますが、若年層などの働く意欲を阻害せず、安心して結婚し、ともに働きつつ子供を産み育てることができる生活基盤を確保する、所得再分配機能を高め、国民が安心して暮らせる社会的なセーフティーネットを再構築し、経済の成長基盤を強化するなどの見直しに当たっての基本的な考えが示され、また、資産課税につきましては、資産格差が次の世代における機会格差につながらないよう、適切な資産再分配機能をどのように確保していくか検討する必要があると基本的な方向性としてはされたところでございます。

 今も政府税制調査会におきまして検討が進められておりまして、これまでに実施できた再分配機能の回復に向けた取り組みの影響などを見つつ、また、税制調査会における取りまとめなども今後発表されるということでございますが、参考にしつつ、引き続き検討してまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 いずれにしましても、先ほど申し上げましたように、私は少し対応が遅いのではないのかなというふうにこの件については思っております。

 それで、消費税の軽減税率制度の見直しと廃止の可能性、まだ始まっていないのに廃止かよというふうに思われるかもしれませんけれども、なぜかといいますと、今般の所得税法改正案の中に、附則第百七十条に、消費税の軽減税率導入に当たっての必要な措置というのが盛り込まれておるわけであります。この規定には「消費税制度を含む税制の構造改革」という部分がありまして、私がきょうお伺いをしたいのは、この「消費税制度を含む」という部分に軽減税率の見直しも含まれるのか否かということをお伺いしたいわけであります。

 先ほど言ったように、導入前から廃止と言うのはおかしいんですけれども、なぜこういうことを申し上げるかというと、線引きの問題とかいろいろな課題が指摘をされているわけであります。したがって、軽減税率の改革も当然検討の対象になるというふうに思うんですが、そのような理解でいいかどうか、このことをお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 鈴木先生の御指摘のありました規定、いわゆる附則百七十条、これは、軽減税率制度の導入に当たっての財源確保にかかわる規定でありまして、したがって、軽減税率制度の導入または継続を前提としたものでありますので、これの条項に基づいて軽減税率制度そのものの改廃をというようなことを行うことを規定しているものではありません。

鈴木(克)委員 そうすると、軽減税率制度の廃止ということは現段階では全く考えていないということであります。

 しかし、やはり制度でありますので、いろいろな問題が将来出てくる、そしてまた、いろいろな混乱、想定外の混乱も出てくるという可能性が私はあると思うんですね。そのときには、我々が主張しております給付つき税額控除、それから総合合算制度、そういうものが、再びといいますか、検討の俎上に上がってくる可能性というのは、私はあるのではないのかなというふうに思うんですが、その点、もう一度大臣の御所見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 税というものをやった結果、非常に大きな弊害が出たとか、いろいろなことによって変えねばならぬ事態というものがないように考えていろいろやるのが仕事でありますけれども、その上で、あえてこういったようなことが起きればという前提に対して、仮定の質問に少々お答えしにくいところでありますけれども、私どもとしては基本的には税というもののあるべき姿というものを考えておりますので、我々としては、我々の思っているものとは全然別のもののいわゆる問題点が出てきた等々につきましては、その時点で検討せねばならぬという事態があり得ないということを申し上げるつもりはありません。

鈴木(克)委員 まさに何が起きるのかわからないということであります。

 そのときにはまた我々も真剣に議論をさせていただいて、さらにいい制度があればそちらを研究し導入するということも、私は、可能性としてはぜひ残しておいていただきたいし、またそうあるべきではないのかな、このように思っています。

 次に、法人税改革についてお伺いをしていきたいんですが、前向きな投資や、それから賃上げが可能な企業体質への転換、こういうことであるわけでありますけれども、与党の平成二十八年度税制改正大綱では、二十七年度に着手した成長志向の法人税改革を大胆に推進するということで、稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減することによって、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的、積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すというふうにされておるわけであります。

 まさに言葉的にはそういうことになるわけでありますが、私がぜひここでお伺いしたいのは、体質というところなんですね、賃上げが可能な体質への転換の体質。

 この与党大綱で言う、企業が前向きな投資や積極的な賃上げが可能な体質への転換という場合の体質とは、企業がどのような状態になればそのような体質になったというふうに判断をされるのか。ちょっと理屈っぽい話になりますけれども、やはり、その体質によって今回のこの改正の目的がどこにあるかということになりますので、どういったことがこの体質が変わったというふうになるのか、御所見をいただきたいと思います。

麻生国務大臣 今回の法人税改革は、単に税率というものを二九・何%に引き下げるというだけではなくて、課税ベースというものの拡大ということによりまして、財源をしっかりと確保しながら税率を引き下げるということであります。したがいまして、法人税課税というものそのものをより広く負担を分かち合うという構造へ改革していくというものであります。

 例えば、これは総務省の所管ということになりますけれども、大法人につきましては、法人事業税の外形標準課税の拡大ということを行いつつ税率を引き下げるということになりますので、稼ぐ力が高い企業というものは税の負担が減りますし、また赤字の大法人にとりましても、黒字化した場合の税負担というものが、いわゆる増加度合いというものが非常に緩和されるということになろうかと存じます。

 したがいまして、企業が収益力を高め、前向きな投資をやる、また、継続的、持続的な賃上げ等々を行える体質に転換することを期待いたしております。

 同時に、経済界も、与党税制改正大綱に関するコメントとして、これは昨年の十二月十六日に経団連会長が発言をしておられますが、法人実効税率を二〇%台に引き下げられることを歓迎するとした上で、設備投資等の増大、雇用の拡大、賃金のさらなる引き上げに積極的に取り組んでいきたいとしておられますし、また、新年の一月五日でしたか、経済三団体、同友会、商工会議所それと経団連の団体代表のお話というのも聞いておりましたけれども、企業が今後、賃金の引き上げや投資拡大を積極的に進めていくんだという姿勢を表明されておられますので、今後の経済界の実際の取り組み状況というものをよく見きわめてまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 体質ということについてはこのぐらいにしておきたいと思うんです。

 ただ、私が申し上げたいのは、法人実効税率だけでこの体質が改善をしていくということは、私はないんじゃないのかなと。総合的な政策の中の一つがこの税率の問題ではないのかな、このように思うわけですが、その辺、二十八年度の税制改正では、税を下げる以外の方策というか施策といいますか、別にお考えになっておるところがあればお示しをいただきたいというふうに思います。

麻生国務大臣 前にもこれは申し上げましたけれども、実効税率を仮に三〇%を切っていわゆる欧米というかヨーロッパ並みということになっていった場合、当然のこととして、税金が減る分だけ純益はふえることになります。問題は、その純益を何に使われるかです。

 その純益がふえた分だけまたいわゆる企業の内部留保をためられるのでは、何のためにためておられるのかわけがわからぬというので、本来の目的は何かといえば、金をためるのが企業の目的ですかということになりますので、基本的には、賃金の引き上げ、配当をふやす、もしくは設備投資等々にその内部留保というものを回していかれる、それが結果として景気の好循環というものを生みますし、消費というものにもつながっていくということだと思いますので、企業のこういった姿勢が一番問題なんだと思っております。

 幸い、三団体の長ともそろって、この一月五日の新年の挨拶ではその点を御自分たちの方から強調しておられましたところは、我々としては期待をしているところであります。

鈴木(克)委員 くどくなりますけれども、税だけではやはり本来の目的である国の活力を生むという形に私はなっていかないというふうに思いますし、場が違うのでまた議論しますけれども、大企業についてはそういうことであっても、では、それ以外の中小企業についてはどうだというような話にもなってきます。

 いずれにしましても、ぜひひとつ、今回のこの法人税改革が本当の意味での実効性あるものになるように、しっかりと国としても政府としても見守りながら、また指導も相談もしていっていただきたいというふうに思うわけであります。

 それで、次に、税を減らすということになると、拡大も当然考えなきゃならないということなんですが、課税ベースの拡大ということでお伺いしたいのは、生産性向上設備投資促進税制を廃止するという話になっておるわけですね。

 これは、法人税率の引き下げは課税ベースの拡大をしつつ行うことは与党、政府とも共通の方針であるというふうに思いますが、今年度税制改正においても、課税ベースの拡大等として幾つかの項目が挙がっておるわけであります。その中でも、生産性向上設備投資促進税制の縮減、廃止というのは大きな増収項目として位置づけられておるというふうに思うんです。

 この措置を期限が来たから廃止しますよということなのかもしれませんけれども、私は、政策税制として日本再興戦略に示された設備投資額を、当初の目的を達成したからやめるなのか、本当にそれが効果があったのか、もし効果があったのならやめてはいけないんじゃないのかな、そういう視点で、その辺を政府はどのようにお考えになっているのかということをただしたいわけであります。

 財源確保が優先をするんだ、だから、実効性はあったけれども、あくまでもこれは期限とともに廃止をするんだということなのか。この措置が、今回のあれが設備投資を達成したのかしていないのかという検証ですね、それがまず一つ。それから、期限が来たから単にやめるのかどうか。その辺をちょっとただしてまいりたいと思います。

麻生国務大臣 租特、いわゆる租税特別措置というものは、これは基本的には特定の目的という政策を実現するために有効な政策手段となり得るというのは間違いないと思いますが、同時に、必要性とかその政策効果というものを見きわめた上で、常にその見直しを行っていくべきものだと考えております。したがって、毎年度、租特の期限が来るものは幾つもありますけれども、その中にあっては、取り扱いというものをよく見ていかないかぬというところだと思っております。

 今御指摘のありました生産性向上設備投資促進税制につきましては、これは全体の期限が二十八年度末ということになっておりますが、一部は二十七年度末の期限のものもあります。そういったことから、それに合わせまして二十八年度税制改正においてこの議論を行ったところでありますが、その際、この制度というものは設備投資というものの促進を目的とするということでありますから、政府として、官民対話の場でいわゆる設備投資の拡大というものを呼びかけております中で、この税制についてもいたずらに期限を延長しないという姿勢を示すことによって、企業の投資判断の前倒しを促すということを狙っておりますし、期限どおり二十八年度末に廃止するということについて明確化させていただいたところであります。

 また、今般の法人税改革というものは、こうした取り組みによって財源というものをしっかり確保しつつ、法人実効税率の二〇%台を実現するものでありまして、経済界におきましても、先ほど申し上げましたとおり、こうした政府の対応を受けまして、設備投資の増大に積極的に取り組むこととしているということなど、そういった発言があっておりますので、我々としては、誤った政策というようなことではなくて、こういった我々の姿勢を明確にしたことが正しかったんだと思っております。

鈴木(克)委員 次に、増収見込み額の妥当性ということでお伺いをしてまいりたいと思うんです。

 租特透明化法に基づいて、平成二十六年度の生産性向上設備投資促進税制の減収額の試算では、千七百七十三億円というふうに試算をされておるわけです。平成二十六年度は制度の導入初年度でありまして、その減収額は三千五百二十億円と当初見積もられていたわけであります。そうすると、三千五百二十億円という見積もりに対して千七百七十三億円ということでありますから、実際には半分ぐらいしかその実効性はなかったということになるかと思います。

 こうした実績から考えると、今回の縮減、廃止による見直しで確保されるという平成二十九年度以降の見込み額二千四百十億円というのは、課税ベース確保の要請を受けて過大に見積もられておるのではないのか、このように思うんですけれども、この見積金額の妥当性について御説明をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今お尋ねの生産性向上設備投資促進税制につきまして、これを廃止することに伴う増収見込み額、私どもは二千四百億と見積もっておりますが、それがどういうことかというお尋ねでございます。

 この計算の基礎としましては、今お話しありましたように、法人税の租税特別措置の適用実態調査というものをベースにいたしますが、先般、二十六年度分が明らかになったわけでございます。

 それで、今のこの租特を、制度見直しの時点、二十八年度までどういうふうに推移をするかということで、その先を伸ばしていかなければならないということもございます。実際の実態、申請件数などを見まして、そこは伸びるであろうという見込みから、今申し上げました二十六年度の実態にそういう点をも加味いたしまして計算をしたということでございまして、そういうものとして適切な見積もりだと考えておるところでございます。

鈴木(克)委員 今申し上げましたように、二十六年度では約半分ぐらいしか実効性が上がっていないわけですよね。にもかかわらず、また今回、二千四百十億円という数値は、私は少し甘いのではないのかなというふうに思ったものですからお尋ねをさせていただきました。杞憂に終わればいいんですけれども、少し甘い見積もりではないのかなというような気がしたのでお尋ねをしたわけであります。

 それで、次は、ちょっと私もよくわからなかったものですから、御担当に来ていただいてお伺いしたんですけれども、スイッチOTC薬というのについて、この予算書に載っているわけですね。

 今まで余り聞いたことがなかったので、これは何ですかというふうに聞いたら、医薬品の分類と販売制度の中で、例えば、私も聞いたことがあるのが、ガスター10とかダマリンだとかロキソニンだとか、薬の名前ですからあれですが、そういうものが、端的に申し上げて、今までは処方箋をもらって買っておったというのを、これからは処方箋なしで買えるようにする、こういうことなんですね。

 その理由がセルフメディケーションという考え方であるということなんですが、まず、このスイッチOTC薬に係る医療費控除の特例の創設ということについて御説明をいただきたいと思います。

佐藤政府参考人 御説明を申し上げます。

 先生、今お話ございましたように、いわゆるセルフメディケーションということで、骨太二〇一五におきまして、軽度な身体の不調は自分で手当てをする、そういう考え方を推進していこうという流れがございます。

 その中で、医療用の医薬品と同じ有効成分が含まれる市販薬、これをいわゆるスイッチOTC薬と呼んでおりますけれども、それを使うことを促進するということで医療費の適正化に資するというようなことを狙いとしておりまして、スイッチOTC薬の購入費用のうち、一万二千円を超える部分につきまして所得控除を受けられるということで、医療費控除の特例という形で導入をすることとしたものでございます。

鈴木(克)委員 どういう考え方からこういう形になっていったのかというのはちょっとまた後で教えてもらいたいんですが、私は、規制緩和とか自由化とかいうことでいいじゃないかという部分もありますけれども、果たして薬も、今の話では、自分で処方箋を書くということですよね。

 これは、非常にある意味では危険な部分もあるのではないのかなというふうに思うものですから、いわゆる自己判断に基づく誤った種類の薬を選択するリスクや、無計画な利用等によって症状の重篤化や副作用が発生する懸念も排除できないというふうに思うわけであります。

 このような指摘に対して、どのようなお考えでこの制度を今進めてみえるのか、お示しをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 通称スイッチと言われるOTCの話ですけれども、この薬を含みます医薬品の販売に際しましては、いわゆる薬剤師などが関与して、そして必要に応じて医師の診断を受けるということを勧めるなどなど、適正な使用のための必要な情報提供というものを行っていると伺っておるところです。

 また、この控除を受けるに当たりましては、適切にセルフメディケーションというものに取り組んでいる人に限り支援するという視点でやりますので、納税者が医師の関与を伴ういわゆる検診または予防接種というものを受けていることを条件ということにいたしております。

 これによりまして、例えば重症の初期症状というものにおきまして適切な治療を受ける機会というものを逸してしまうといったような事態を避ける、回避できるという効果も期待できるのではないかというように考えております。

鈴木(克)委員 今の御説明、わからぬわけでもないんですが、逆に私の言うこともぜひ御理解いただきたいと思うんですけれども、例えば、体調が不調になった後の対症療法としての薬の購入ということになるわけですよね。

 まず、病気になってからというか、ぐあいが悪くなってから薬を買うということに対して控除するよりも、その前に、例えば、その予防や、今大臣がおっしゃった健康診断を医療費控除するということによって、事前的に措置をするということの方が本来じゃないのかなというふうに思うんですよ。

 これで誰が得をするというか、損をするというのはおかしいんですけれども、素人の生兵法とか、いろいろありますよね。本当に、私は、さっきもちょっと言ったように、無計画な利用で副作用が出てしまったとかなんとかということになる可能性がかなり高いんじゃないのかなというような気がします。

 それよりも、今言っているように、ふだんの体力づくり、健康維持だとか、それから、いわゆる健康診断をしやすくしていくとか、そういう形で医療費の控除を進め、経費を抑えていくということの方が本来であって、今回の改正は、そんなに大きな薬は、私も医者じゃありませんので全部はわかりませんけれども、何か的が違っておるんじゃないのかな、考えていることが違っておるんじゃないのかな、こんな気がしますので、御担当で結構ですが、そうじゃないということを、私をぜひひとつ納得させていただきたいというふうに思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生おっしゃいましたように、病気にかかる前の予防の努力というのは当然あった方がもちろんいいということかと思います。

 このスイッチOTCの今回の特例措置というのは、やはりセルフメディケーションという考え方は一応あって、軽い病気にかかった人がいきなり医療機関に行くのではなくて、薬局で購入をすることで、できれば医療費の適正化を図りたいという面はございます。

 ただ、そういう控除を受けるいわば要件として、誰でもいいということではなくて、例えば、その方が自己管理をしている、すなわち、特定保健検診であるとか定期健診とか人間ドックとかそういうことを受けている、そういうことでこういうふうなOTC薬を買った場合ということで、その要件の中にそういう努力をしているという人を対象にするといったようなことで、そういった思想も盛り込んでいるというところでございます。

鈴木(克)委員 ちょっと私の理解力がないのか。

 そうすると、証明か何かを持って薬局へ行くんですかね、私はそういう検診を受けていますよ、そういうあれをしていますよという。そういうことなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 医療費控除の特例という位置づけでございますので、医療費控除を受けるときのいろいろな書類を整備いたしますけれども、この特例を受けるときには、自分が買ったときの領収書に加えて、こうした健康診断をしっかり受けたということも添付していただくということで、その要件をいわば運用するというふうに考えてございます。

鈴木(克)委員 これぐらいにしておきますけれども、何か今回の措置は私自身は腑に落ちないなと。むしろ、もっとほかにやることがあるんじゃないですかということが言いたいわけです。製薬業界からの要請なのかわかりません。私はわかりませんけれども、何かちょっとこの施策については、さっきも言ったように、的が少し違っておるんじゃないのかな、別のところに力を入れていった方がいいんじゃないのかな、そんな気がしたものですから、私の専門分野外で、本当に私も最初、何なのかちっともわからなかったんですが、今御説明を聞いて、何となくおぼろげながらわかってきたということであります。

 いずれにしても、国民が健康で、本当に長寿で幸せな生活を送る、そういうふうにしていくのはまさに国家の責任であり、我々の責任でありますので、くどくなりますけれども、乱用したり副作用が出たり、おかしな形にならないように、しっかりと見きわめていっていただきたいな、このように思うところであります。

 これはこれぐらいで終わります。

 さて、今回の税制改正で一番大きな問題は、消費税の軽減税率制度ということになります。これを少しお話しさせていただきたいと思います。

 まず、予算委員会だとか、また、きょうも午前中ありましたけれども、本当に、この制度の効果というのがどこにあるのかということをお伺いしたいんです。

 安倍総理は、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できることが特に重要である、こういうことをおっしゃって、これだから軽減税率制度の導入を決定した、このようにおっしゃっております。

 しかしながら、低所得者対策ということであるなら、これまでもいろいろな方から指摘をされておるように、私は本当にそれでいいのかなというような思いがしてなりません。

 何が言いたいかというと、要するに高額所得者ですよね。麻生大臣は高額所得者だというふうに思いますが、大臣がキャビアを召し上がっても税控除になっていく。私はやはり、地元で若い人たちに言われるんですね。先生も控除になるんですかと言うので、そうだと言ったら、少なくとも我々より所得の高い人たちが控除を受けるなんていうのはそれはおかしいじゃないですかというふうにずばっと言われて、返答に窮するところもあるわけです。

 くどくなりますが、本当にこの施策しかないのかどうかということが私はいまだに腑に落ちない。むしろ高所得者にも恩恵が及ぶということで、ある意味では、もっと違う方法の方がいいのではないのかなというふうに思うわけであります。

 例えば、低所得者対策を税制で対応しようということであれば、累進構造によって所得水準に応じた税負担を求める所得税による対応をしていくというのが私は筋ではないかというふうに思っていますし、我々が主張しておる給付つき税額控除というのは、少なくとも、軽減税率制度よりは低所得者層を対象にした負担軽減策として有効なものであるというふうに思っています。

 いわゆる特定の低所得者層に対して痛税感の緩和を実感できる、先ほどの総理が言われたことよりもさらに私は痛税感の緩和を実感できるというふうに思っておるわけですが、ぜひひとつ、もう一度、原点というか基本の話になるかもしれませんけれども、私は麻生大臣ならその辺のところは御理解をいただけるのではないかなと思っておるんですが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これは鈴木先生、軽減税率制度というものにつきましては、もともとというか、そもそも制度上、高額所得者というものを適用から除外するといったことは困難であります。

 日々の生活において、消費者が消費とか利用している商品の消費税負担を直接軽減するということによって、いわゆる逆進性の緩和を図るとか、また、痛税感の緩和を実感できるという利点があるというのがこの軽減税率というものの持っております利点でして、この点が特に重要だということで、私どもとしては、ほかの給付つき等いろいろなやり方よりこれがいいということで、今般導入を決定させていただいたということであります。

 こういうことをやらせていただいて、いずれにしても、消費税が上がるということは税負担がみんなに及ぶわけですから、それを、どうやって軽減税率等々を採用して低所得者への負担というものを軽減させるかというところが一番大きな問題であります。

 私どもとしては、額ではなくて、いわゆる家計調査というものを使って、酒類、外食を除きます飲食料品の消費支出の割合というものを調べてみますと、年収が千五百万円以上の方ですと約一五%、しかし、年収二百万円未満の世帯ではそれが倍の三〇%程度というふうに率が上がりますので、そういったことを考えて、低所得者の方が高所得者よりはるかにそういった面が高くなっておりますので、制度の導入によりまして、消費税の負担の軽減の度合いについて低所得者の方がより多くなっているというのはパーセントから見てもはっきりしておりますので、その意味ではまさに逆進性の緩和につながるんだ、そう思ってこの導入を考えておるところであります。

鈴木(克)委員 先ほども紹介しました、総理は、いわゆる買い物の都度、痛税感の緩和を実感できることが特に重要である、そういった判断でこの軽減税率の導入を決定したんだ、このようにおっしゃっておるわけですが、私は、くどくなりますけれども、本当に低所得者対策ということであるならば、さっき申し上げましたような給付つき税額控除の方がすっきりとしていくんじゃないのかなと。地元に帰って、先生は我々よりも少なくとも所得は高いだろう、一緒に軽減されるのかと言われたときに、本当に、それは今大臣がおっしゃったようなことを当然言わなきゃならないわけですけれども、そうじゃなくて、まだ別にそういうことをすきっとする方法があるわけですから、何もこれでしかないということでは私はないと思うんですよ。

 まして、いわゆる八パーに据え置くだけのことですからね、一〇パーになったのを。これを例えば五パーにしますとかゼロにしますということならまた話は全然別だと思うんですけれども、これは、何か私自身は納得いかないというか腑に落ちないというか、本当にこれが低所得者の皆さんに喜ばれ、そして高所得の人たちがそれなりにきちっと税を払うという、やはりそういう方向に私は変えていくべきではないのかなというふうに思うわけです。

 給付つき税額控除について、大臣はどのようにお考えでしょうか。

麻生国務大臣 この給付つき税額控除というのは、御指摘のありましたように、対象者というものを絞れるということに関しましては、これは利点があることは事実だと思います。

 他方、この給付つき税額控除につきましては、実際の買い物をするときのタイミングというものを考えましたときの、買ったときの購入額というものに全く関係なく、所得水準に応じて決まった額を給付されるということになりますので、消費税そのものの負担が直接軽減されるというわけではありません。また、消費者にとっても、痛税感の緩和に関しての実感はないということだと思っております。

 また、所得というものや資産というものの把握、どれぐらいあるんですかというのに関しましては、所得の把握ができても資産の把握はなかなか難しいというのが実態でありますので、いわゆる行政が執行を可能にするに当たってのコストといった面も、これはもう一点考えておかねばならぬところだと思っております。

 また、間違いとか不正受給とか、そういったものが海外でいろいろ出てきている話は御存じのとおりなので、そういった支給の適正性というものにつきましても、我々としてはそれをきちんと確保しておかねばならぬということなどを考えますと、私どもは、今言われましたような点に関しましては、確かにメリットもありますけれども、逆に、今申し上げたようなデメリットも十分に考えておかないかぬところではないかと思っております。

鈴木(克)委員 私はそういうふうに思うし、そうでない方は軽減税率がいいんだということですから、平行線になるかもしれませんけれども、いずれにしても、先ほど私が議論したように、この制度が進められていく中で、非常に大きな問題があるというふうになったときには、私は、廃止をするということも含めて、やはりきちっと考えていっていただく必要があるんじゃないかな、真の公平公正、平等というものを考えていったときに、何が本当に正しいのかということになるんじゃないかなというふうに思います。

 話を進めさせていただきますが、次に、軽減税率ということでいきますと、この対象品目や線引きの問題、取引の線引きの問題というのがあるわけですよね。これについて少しお尋ねをしていきたいんです。

 酒と外食を除く飲食料品全般が対象になったということであります。しかし、これで全てが解決をしたというわけではなくて、飲食料品全般の中にもさまざまな、グレーゾーンといいますか、非常に難しい問題があると思うんですね。もちろん、全てのグレーゾーンに対応するということは、これは神様でもない限りできないのかもしれませんが。

 私が心配するのは、例えば税務署ごとのその判断が異なるというような、実際に進める中でそんなふうになってきたときには、消費者や事業者の混乱を招くということになると思うんですね。それからまた、消費税制度自体の信頼性が損なわれるということにもなるわけであります。

 こうした事態に備えて当局はどのような取り組みを行う予定なのか、お聞かせをいただきたいと思います。

麻生国務大臣 軽減税率の適用対象品目というんですか、そういったことにつきましては、これは、消費税率一〇%の引き上げに伴いまして、低所得者への配慮という趣旨を踏まえまして、幾つかのことを考えております。

 日々の生活の中での消費または活用の状況、また、逆進性の緩和、そして、合理的かつ明確な線引き、そして、社会保障財源である消費税収全体、これは、やり過ぎますと消費税収自身がなくなって、社会保障という意味で本末転倒になりかねませんから、そういった意味では消費税収への影響などなどのあれを総合的に勘案をさせていただいて、酒類及び外食を除く飲食料品及び一定の新聞の定期購読料としたところであります。

 今般の税制改正案におきまして、具体的には、飲食料品を食品表示法に規定する食品、これに記されていないものはだめです、口に入るものであっても、食品表示法に記せられていないものはだめと。また、酒類も酒税法に規定する酒類というものにさせていただいて、外食も、テーブル、椅子などの飲食設備を設置した場所において飲食をさせるサービスと規定をするなど、適用対象品目につきましては明確に定義をしたところであります。

 その上で、この定義の具体的な当てはめにつきましては、これは実際に個別具体的な状況を踏まえましてその都度個別に判断をしていくべきものと考えておりますけれども、消費者及び事業者にとって、軽減税率の適用範囲というものをわかりやすいものにする。

 そのためには、今後、その具体的な線引きの当てはめ等々につきましては、これは通達やQアンドAとかいろいろなものがあろうとは思いますけれども、できるだけわかりやすくお示しをするということは当然のことなのであって、事業者からの相談等々につきましても対応を丁寧に行っていくというように努めてまいりたいと考えておって、一時期、税務署に聞いたらどうだなんという話がありましたが、税務署なんてところは最も電話をかけたくないところの一つですから、そんなところに問い合わせをする人はおりませんので、商工会議所とかいろいろな形で、そういったものに丁寧に答えられるようなところを考えていかねばならぬところだと思っております。

鈴木(克)委員 今、御丁寧に大臣がお示しをいただいたんですが、実際は、やはり運用を始めてみないとわからないところが相当出てくるんじゃないかなという気がしてならないんですね。それほど、全然話は別ですけれども、マイナス金利の話とこの軽減税率の話は、国民にとってよくわからないという話になってくると思うんですね。

 したがって、極力、個別判断というようなことのないような、そしてまた、しかし最後はやはり税務署の判断というのはあるんじゃないのかなと思いますので、かけたくない、かけたくあるということは別としても、やはり、ありとあらゆる所管庁でそれなりのきちっと判断のできる体制を私はきちっとつくっていってもらいたいというふうに思うので、もし導入するということになれば、ぜひひとつ万全の体制で混乱を招かないようにやっていただきたい、このことを要望させていただきたいと思います。

 それから、当然、この話の延長が益税という話もお尋ねをしなきゃならぬと思います。

 消費税の事業者免税点制度や簡易課税制度によっていわゆる益税問題が生じてくるということは、これまでも指摘をされておるところでございます。

 今般の税制改正法案では、いわゆるインボイス制度が導入されるまでの間、経過措置として、売り上げや仕入れの一定割合を軽減税率の対象品目に係る売り上げや仕入れの額とみなして税額計算を行う方法などの特例が認められておるということであります。

 これらの特例によって算出された税額というのは、実際の税額を下回る可能性もあるというふうに思うんですね。ここでいわゆる益税というものが発生をするわけでありますが、こうした障害の可能性を伴う特例というのは、やはり消費税を負担する消費者側への説明が私は非常に不可欠だというふうに思うんですね。

 何かあいつは納めるべき税を猫ばばしておるんじゃないか、言い方は悪いんですけれども、そういうようなことになったらこれは本当に悲劇でありますし、本来のものではないというふうに思うんですが、この特例を選択せざるを得なかったというか、特例を選択した理由というのは何なんでしょうか。

麻生国務大臣 これは、政府として、軽減税率制度というものを導入することに当たりましては、がちゃがちゃしない、混乱がないようにすることが極めて重要だと考えております。

 したがいまして、複数税率に対応したいわゆる区分整理というものが困難な中小事業者もおられるであろうということを想定しまして、税制上の対応として、売り上げの一定割合というものを軽減税率の対象であるものとするということができる税額計算の特例を設けるということにいたしております。

 この売上税額の計算の特例というものは、事業者の状況に応じていろいろきめ細かな対応をするということが必要なんだと思いますが、実態と大きく乖離しないようにしておくということがすごく大事だと考えております。

 仕入れた商品というものをそのまま販売する卸売業者もしくは小売業者というものは、仕入れのいわゆる軽減対象品目の割合というものがわかる場合にはこれを売り上げの軽減対象割合として用いるということでしょうし、また、卸売とか小売業以外の事業者で、連続する通常十日間ぐらいの実績というものを用いまして、大体二対三とか二対八とか三対七とか、いろいろ対象品目、対象品目じゃないとかいうのを、大体それくらいのものでわかるというような形で十日間ぐらいの実績を用いてみるとか、これらの方法も困難である場合には、原則、対象割合を百分の五十だということとして、特段複雑なものと考えているわけではございません。

 いずれにせよ、今般の税制改正法案において、軽減税率制度の導入に当たって混乱が生じないようにということで万全の準備というものを進めていかねばならぬと思っておりますので、政府の必要な体制というものをきちっと整備すると同時に、いわゆる事業者の準備状況というものをきちんと検証して、軽減税率制度の円滑な導入及びその運用に資するための必要な対応を行うということにいたしておりまして、こういったことをきちっと明記させていただいて、政府としてしっかり事業者への対応というものを行ってまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 最後の質問になると思いますが、一つ飛ばさせていただいて、インボイス制度への移行期間の妥当性ということについて質問をさせていただいて、終わりたいと思います。

 インボイス制度が平成三十三年四月から本格的に導入される、それまでは、現行の請求書等をベースとした方式がとられるというふうに聞いておるわけです。

 まず、このインボイス制度へ完全移行するまでの間の措置について、その概要とスケジュール、そして、経過措置としていわゆる区分記載請求書等保存方式を導入する趣旨、ここをお答えいただきたいということが一点。

 もう一つ、続けて御質問しますが、インボイスを導入するといいますか、そういった処理ができる業者に対してはインボイス制度を前倒しという形でやっていくというお考えは全くないのかどうか、それをお尋ねしたいと思います。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 平成三十三年四月からインボイス制度に移行するということで、それまでの間、四年あるわけでございます。いきなりインボイスというわけにも、なかなか対応はできないということでございます。制度の趣旨、それから事務的な負担、そういうものを考えた上で移行ができるようにということで、四年というある程度の期間をとらせていただいたということでございます。

 その中身は、今までお話ありましたような、売り上げそれから仕入れの計算について、本来はきちっと複数税率でございますから区分経理をしていただかなければなりませんけれども、それがなかなか十分ではないというケースもありましょうから、特に中小企業者にはそういうことが起こりますので、一定の特例計算ということをしていただくということでその間を対応いただくということでございます。

 それから、実際にインボイスが入りましたら、今度はまた、きょういろいろ御議論ございましたけれども、免税事業者の方々への影響もございますので、それについても一定の、仕入れ税額についての特例のようなものも考えながら、円滑にインボイスに移行できるような形、導入までの期間をとりながら、その後も円滑にするような措置もあわせて講じているということでございます。

鈴木(克)委員 もう終わります。

 ただ、私が申し上げたかったのは、四年の経過が、四年必要だということを主張される方もありますが、逆に、現場の対応として、四年もかかっておって本当にいいんだろうかと。

 いわゆるこういった経過措置の導入で、事業者としては、区分記載請求書等保存方式への対応とインボイス方式への対応の二回の対応が必要になってくるわけですよね。したがって、初めからインボイスを導入した方が、事務負担の面でも、また制度移行時の混乱という面でも影響が少なくなるのではないかなというふうにおっしゃる方もあるわけです。

 したがって、もう一度御答弁いただきたいんですが、事務能力のある事業者に対しては前倒しでインボイスを導入するということをお考えになるかどうか、それだけ御答弁をお聞きして、終わります。

麻生国務大臣 いわゆる導入時期を前倒しするということについてですけれども、これは、事業者の準備に配慮をして、四年間の準備期間を設けて、平成三十三年の四月というぐあいにさせていただいておりますが、鈴木先生は対応する事務能力を持っている企業はもっと早く移行したらどうかということなんだと思いますが、この制度というものは、売り手と買い手というものが、同じインボイスというものに、納入書に基づきまして税額計算をする仕組みでやりますので、一部の企業というものだけが対応したとしても機能しないということになろうということも御理解をいただきたいと思っております。

 加えて、このインボイスには事業者の登録番号を記載するということになっておりますので、この登録番号は平成三十一年四月以降に事業者の登録を受けてから付番することということにいたしておりますので、そういった意味では、事業者の判断ですぐに記載できるものではございません。

 そういった意味では、政府としては、こういったものの準備というものをいろいろ御心配いただいて大変ありがたいと存じますけれども、万全の準備を進めてまいりたいと考えております。

鈴木(克)委員 終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。

 先週の火曜日、所得税法について本会議場で代表質問をさせていただきました。

 ちょっと今は若干複雑な気持ちでおりますのは、四年前の消費税を上げる上げないの議論の際に、先ほど、宮崎委員は造反、鈴木委員は造反、その後離党。私も実は、閣議決定した直後、四月二日に一人で民主党を離党しまして、今この席に賛成した人が一人もいない。

 先週金曜日に民主・維新・無所属クラブは、会派として、軽減税率を前提とした消費税の増税に反対というような意見を集約いたしました。

 そういう意味でいいますと、私は、一人でやめて、その後本当にイバラの道が続いていたわけですが、何とかこうして立てて、なおかつ、その会派を代表して皮肉なことに本会議場で代表質問をしたというのは、信じるところを進めば道は開けるかなということを改めて感じている次第です。

 きょうも財務金融委員会、あるいは予算委員会等でもいろいろ質疑がありましたけれども、やはり今回の税制改正、軽減税率が最も大きな焦点の一つだと思います。しかしながら、その前にそもそも論として、二〇一七年四月、消費税の増税についてどうするのかということについて伺いたいと思います。

 二月十八日、経済財政諮問会議がございました。会議の資料の冒頭に、アベノミクス、ファンダメンタルズは揺らいでいないと書かれています。予算委員会やきょうの答弁の中でも、非常にファンダメンタルズは揺らいでいないと強くコメントなさっていらっしゃいます。確かに、企業収益、これは非常にすばらしいと思いますし、これがトリクルダウンしていないとかいう批判とかそういうのよりも、企業収益は上がっているということは私はきちっと評価するべきだと思っています。あるいは有効求人倍率、そして失業率、これもリーマン・ショックを底にずっと改善しているとはいいながら、安倍政権になりましてからずっと改善傾向が続いている。完全雇用に実質近い状態だというのもそのとおりだと思います。

 ただ、普通であれば、経済指標はいろいろございますが、一番オーソドックスにどの指標を見るかというと、やはり実質GDPというのは、数ある指標の中でも重きを置くべき数字だと私は考えています。

 具体的には、二〇一四年度の実質GDP、これはマイナスです。二〇一五年度に入りましてからも、四月―六月期はマイナス、七月―九月は一旦速報値ではマイナスが出ましたけれども、その後、見直しで一応プラスに転じました。その後、二月十六日に数字が出ましたが、年率マイナス一・四%。

 石原大臣なんかは、暖冬だからという割と荒い言葉一つで片づけていらっしゃいますけれども、やはりこれだけ足元が実質ゼロ成長圏内、個人消費に関してはマイナスが続いていますし、あるいは、二〇一四年の四月―六月期、消費税を上げた直後、非常に大きく反動減で落ちました。そこから水面下、実質出られていない。構造的に非常に低迷した状態が続いている。ある意味、底入れと言ってもいいような状況が続いています。私もその後、総務省の発表している家計調査等も細かくいろいろ聞きましたけれども、確かに、衣料とか、暖冬の要因というのもございますが、全体から見ると物すごく小さな要因なんです。

 ですから、二〇一四年四月の消費税の増税というのは、かなり構造的にこの個人消費の落ち込みに大きな影響を与えた。その前は、一旦反動減はあるけれども、もとに戻るよということではありましたけれども、明確にこれは戻っていないというのが正しい見方ではないかというふうに思っています。

 その中で、やはりそうはいっても、いい数字もあるのも事実です。こっちから見ると、個人消費中心に悪い数字があるというのも事実です。何か議論がずっとかみ合っていないのは、ある種の禅問答というか、やはりお立場というのもあると思うんです。七月に参議院選挙がございます。アベノミクスは失敗だと言いたい野党、与党は逆に、アベノミクスはうまくいっているじゃないか、そうおっしゃりたい。これはある意味、何か禅問答が続いてはいるんですが、私はこの中で消費税の増税はするべきでないと思っています。

 やはり、消費税を上げる、上げると言ってきた与党からして、それを上げないと決断するのは、非常に大きな決断だと思います。

 私は、国内経済のこの禅問答は一旦横に置かせていただいて、海外の経済、世界経済に目を向けたいと思っています。

 今週末といいますか、金曜日の午後からG20もございます。中国リスクというのは、去年の五月をピークに株価がずっと落ち続けて、成長率も急減速しているというのが一つ。原油安も、これも二十六ドルまで落ちて、その後三十三ドルへ上がったり、いろいろ乱高下はありますけれども、やはり非常に低位で安定している状態は続いております。

 それに加えまして、先般も触れましたが、ドイツ銀行が大きなロスを発表し、その後、CoCo債、あるいは自社の社債を買い上げるとかいろいろなことをやっていますけれども、ギリシャ・ショックとも関連して、欧州の銀行がどうなのかという不安定要素もございます。

 加えて、米国経済、先般のイエレン議長発言あるいは各投資銀行のレポートなんかを見ていますと、もともと三%近くあった今年度の米国経済の見通しが、一・五とか、大体半減している予想が非常に多く出ています。利上げが恐らく年に一回、二回あるかどうかというような形に変わっておりますので、結果として、円高、百十二円レベルになっています。

 こうしたことを全部踏まえていくと、私は、日本経済にとっても不確実性が大きく増していると思っているんです。こうした、日本経済という要因ではなくて、海外の経済の要因が強く影響し得る日本経済のことを考えても、私は、二〇一七年四月の消費税の増税を凍結するべきだと考えています。

 この現下の経済状況、世界の経済状況を見て、この分析は正しいと思っていらっしゃるのかどうかということ、この状況を踏まえて、増税をするべきと思っているのか思っていないのか、大臣の御所見をお願いいたします。

麻生国務大臣 今言われましたヨーロッパの話、アメリカの話、中国の話、石油の話等々、これはいずれも、この二月二十六日、G20で話し合われる議題の四項目のうちの一つです。

 したがって、今言われておられます分析なり考え方というのは、全然間違っていない。世界情勢の見方としては正しいと思っております。

 私どもはそういうものを判断して、我々としても、これは、日本という大きな経済力を持っている国がそういった世界の経済の中で占めます貿易の額というものは、中国とかドイツと違って、私どもの場合は一〇%ちょっとぐらいしかありませんので、その影響力というものは、ドイツとか中国なんかに比べれば、それはもう断然少ないんですけれども。

 いずれにしても、日本としては、その他の国に比べて内容は、冒頭に言われましたように、経常利益等々全ての経済指標というのはほとんどいいものになっておりますので、それだけいいところはほかの国にはありませんから、そういった意味では、他国に比べて、政権の安定も含めまして、私どもとしては、内容は、他国から見たら極めていい内容になっているんだと理解をしております。事実、海外からかかってくる電話もほぼ同じような話ですから。

 そういったような話でありますので、いろいろなリスク回避の動きなどが金融市場で多く見られることはもう間違いなく事実です。しかし同時に、私どもは企業収益等々は過去最高等々いろいろなものがいっぱいありますので、そういったものの認識はもうお互い共通しておると思います。

 いずれにしても、私どもとしては、そういったものを考え合わせた上で、少なくとも我々としては、少子高齢化という長期的な問題というものを今後考えていくに当たって、やはり、税収というものを考え、よって財政というものを健全化させていかねばならぬという大きな課題を抱えておりますので、私どもとしては、できるときにはきちっと財政というものをやっておかないと、先延ばし、先延ばし、いつかしていったら、今考えてあのときやっておけばよかったなというのはないわけじゃありませんから、そういったことを考えますと、我々はできるときにはきちっと頑張ってやっておくということをしておかないと、我々としては、後世、建設公債じゃなくて赤字公債を残すということは、政府の借金というものを納税者にツケ回しするような形になりかねぬということを憂えておりますので、きちんとした対応をやらせていただかねばならぬと思っております。

木内(孝)委員 今のですと、消費税を上げるのか上げないのかという意味では、将来にツケを先送りしないというふうに聞こえましたので、消費税を上げないという解釈でよろしいということでしょうか。

麻生国務大臣 人間の話というのは全然逆に聞こえるものだなと思って改めて感心しましたけれども、上げるということを遠回しに、私なりに説明したつもりです。

木内(孝)委員 同じ資料の中に、海外リスクの発現等により、必要と判断される場合には機動的に対応するべきというコメントもございます。もう一つありますのが、金融市場の安定及び持続的な成長を含め、国際連携を強化していくことが求められる。我が国は経済財政運営に万全を期すとともに、消費の質や生活環境の向上を原動力とする内需主導の成長を実現というふうにも書かれています。

 私は、この内容と、消費税を凍結して内需を拡大させることというのは、一つ整合性がとれていると思っています。

 同時に、昨今の、例えばOECDでございますが、二月十八日にレポートを出していまして、日本の成長率、ことし、一・〇から〇・八に下方修正しています。

 同時に、今までは、世界じゅうの財政健全化について重点を置くというところから、財政再建を重要視し過ぎることの再考を促しているようなレポートというのも出始めています。

 週末のテレビでも自民党の稲田政調会長が、消費税、経済が壊れてまではしない、ごくごく当たり前のコメントだと思いますけれども、壊れてまでは消費税は上げないとおっしゃっています。安倍総理も予算委員会の答弁の中で、若干前後の話もありますが、税収が減っては元も子もないというようなコメントもなさっています。

 若干、消費税を上げる上げないの話についての潮目というか雰囲気がちょっと変わっているような気もするんですが、もしかしたら、増税を一番強くしたい官庁というのはやはり財務省でありますので、麻生財務大臣の周辺にだけ、ちょっと見直そうかという機運が伝わっていなくて、麻生大臣以外のところは徐々にポジショントークを始めているような気がするんです。

 私は、最近も自民党の先生方と個人的にですけれどもいろいろあれしていますと、消費税なんて上げられるわけがないよねと思っていらっしゃる先生方が前よりも相当数ふえていると思うんです。

 この状況を踏まえて、今週の金曜日、G20サミットにいらしていろいろな主要議題があると思いますが、私は、消費税を凍結するという選択肢ぐらい持っていてもいいのではないかと思っていまして、今ここで、上げる気はないですというような答弁は事実上無理なのは承知していますが、場合によっては凍結をするという環境整備をG20で行うというのも、一つやるべき麻生財務大臣の仕事ではないかと思っておりますけれども、G20に向けての主要テーマ、目的、この二点についてお伺いできればと思います。

麻生国務大臣 先ほど申し上げましたように、今回のいわゆるG20においての、上海で行われるんですが、これは、世界経済情勢等々についていろいろ話し合う中の内容として、今申し上げたような問題として、中国の過剰設備、過剰信用等々のいわゆる構造問題、また、アメリカの利上げというものに関して、これは年四回上げるとかいう話ではなくなってきて、随分変わったものになりつつある、これがいいか悪いかは別にして。また、原油安ということの悪い話ばかり出ていますけれども、原油安によって、これは間違いなく経済にとっては、貿易等々を見ますと貿易赤字が大幅に縮小しておりますので、そういった意味では大きな影響を日本にとっても与えたことは間違いありません。

 そういったいろいろな議論を行ってまいりたいと考えておりますが、先ほど言われた消費税の話をG7の人たちと話す気はありませんし、我々としては、今おなかの中で何を考えておるかというのをこの場でしゃべることもありませんし、また、我々としては、この掲げております意義というものは、目先の景気だけではなくて、長期的なことも考えておかねばならぬという立場にもありますので、私どもとしては、今の段階でこれに関してコメントすることはございません。

木内(孝)委員 今、中国経済について触れられました。過剰設備であるというのはそのとおりだと思います。

 そうした中で、今、中国の場合、人民元の追加の切り下げがあるか否か、これが一つ大きな注目になっています。あるいは、場合によっては変動相場制に移行するのではないか、そういうような観測も一部ではございます。

 ただ、一方で、人民元を切り下げしますと、中国経済にとっては、いろいろな問題を解決することにはつながるとは思うんですが、違う新興国にとってはより大きなマイナス影響等もあり、なかなか、そこら辺の整合性をとった為替の政策、通貨政策というのが困難だと思っています。

 今回の世界経済の不安定要因の一つに、米国と中国の金融政策等がきちっとうまく連携がとれていないのではないかという問題意識を私は一つ持っています。そこを麻生大臣が本来であればアメリカと中国のかけ橋となって、いま一つうまくいっていない意思疎通を、麻生大臣がリーダーシップをとって、世界経済、特に米中関係の金融政策、通貨政策についてリーダーシップを発揮するというのが私は必要なことではないかと思っているんです。

 会議に向けて腹のうちは伝えられないということかもしれませんが、そこについて何かリーダーシップを発揮しようというお考えはございますでしょうか。

麻生国務大臣 中国の外貨準備高、公称三兆四千億ドル、五千億ドルということになっていますが、十二月、一月と毎月一千億ドルを超えているでしょう、売りが。一千億ドルって日本がIMFに貸した金と同じですよ。それが毎月減っている。尋常じゃないですな、私らから見ていて。正直、それほど急激に落ち込んでいるという状況にありますので、それがどういうわけだか知りませんけれども、余り皆話をされません。外貨準備が毎月一千億ドル、二年半したらゼロですよ。えらいことだと私らから見ていると思いますけれども、そういった問題を含めて中国の問題というのは、ヨーロッパの人やらアメリカの人から地理的に遠いせいかしれませんけれども、よく見えておられないところがあるのかなと思います。

 私どもとしては、こういった問題というのはあるという現実というものを知った上での話をしてもらわないと、スペシャル・ドローイング・ライツ、SDRのあれをとったりいろいろされておられますけれども、現実問題、足元で起きている実態というものを見た場合には、いきなり為替がストップしてみたり、いきなり市場をクローズされてみたり、正直、いろいろな形で話として、これはどうです、もうちょっとこうされたらどうですかという話を仮にしたとしても、実際しましたけれども、それはもう全然聞く気がないのが一点。聞いても、どうやっていいかやり方がわからない。これは経験の違いだからしようがないんですよとは思いますよ。しようがないといっても、ほたっておいても、影響力が隣の国とかアジアは迷惑しますので。

 そういった意味では、もう少しきちんと聞く耳持って事実それを対応するということをしていただかないと、担当者をいきなり先週解雇しておられますけれども、ああいった形で解決できる問題ではないのではないかというような話は、我々としては今後ともしていかなきゃならぬと思っております。

木内(孝)委員 ちょっと中国に関連して、これは質問通告にないのでお答えいただけるかわかりませんが、AIIB、去年の三月にイギリスが急遽参加を表明して、しばらく右往左往した事案だと思います。その後、日本は参加することを決定していませんし、私は、現状のガバナンスの状態で、参加をしないという政府の判断というのは正しいものだと考えております。

 ただ、一方で、日本と米国が参加すれば、日本が満足できるようなガバナンスになる可能性が十分あると思っています。すなわち、日本と米国が参加すれば、あるいは日本だけが参加したとしても、いわゆる拒否権を持つという、日本が満足し得るガバナンスが生まれるかと思っているんですが、AIIB、その点についてかたくなに参加をしないと日本政府として決めているのか、あるいは、米国とやはり協調姿勢のもと、一緒でないと入れないということなのか、そのガバナンスの問題がクリアできるのか否か、この点についてお伺いいたします。

麻生国務大臣 大分長い話になりますけれども、これはいろいろ御意見の分かれたところだったと記憶をします。私どもは、少なくともこのAIIBというアジア投資銀行というものが、まともなものができ上がるということは歓迎します。アジアにおいてインフラストラクチャーの絶対量が足りていませんから、そういったものを新たにやろうという意欲が出てくるのは、これは歓迎すべきことだと基本的には思っております。

 問題は、融資とか審査とかいうものをやる能力、これが問題だと思っています。

 少なくとも、銀行におられたので審査とか融資の意味はわかっておられると思いますので、ADBとか世銀とか、またIMFとか、いろいろなところが仮に一つのプロジェクトに融資をしたとします。後からAIIBが出てきて、いきなりどおんとそれの倍だけ融資しますと言われて、返済能力がありません、はい焦げつきましたといったときには、その焦げついた金は、AIIBの分だけ自分たちで持って、こちらの分だけはきちんと払ってもらえるかといえば、比率でみんなで割ろうなんて話になりかねぬ、そういう世界ですから、そういったような無責任なものに税金は突っ込めぬというのが私どもの基本的な姿勢です。

 そこのところのガバナンスがしっかりしていただくというのがまず第一です。

木内(孝)委員 私も同様の部分のガバナンスを心配しておりましたが、かなり体制が改善して、日本が十分参加できる程度のガバナンスに今大きく改善をしていると考えておりまして、日本が出おくれたから、米国が参加をしないから、何かかたくなになって参加をしないというふうに決めているように見えているものですから、いずれにしましても、そうしたガバナンスの問題は大部分解決されていると思いますので、いま一度、参加の再検討というのをお願いしたいと思います。

 次の質問に移ります。

 今、海外の経済の動向について質問いたしましたが、消費税の増税と景気判断条項の考え方についてお伺いをいたします。

 いろいろな答弁の中で、リーマン・ショック級の事象がない限りは増税を実行するということを再三答弁なさっています。二〇一四年十一月に消費税の増税を延期したときと今の状況と比較して、二〇一四年四月に増税をした後の個人消費の落ち込み方、こうしたものを踏まえて、リーマン・ショック級でないと上げる、上げないを判断しないという答弁というのは、極めて無責任だと私は考えております。

 先ほどの質問の中で、当時はその景気条項を外さないと国際社会に認知してもらえないからそういう約束をしてしまったというような答弁を麻生財務大臣はなさっていました。しかしながら、過去をいろいろ振り返ってみますと、例えば、それは八九年というのか九一年というのか、バブルの崩壊ですとか、あるいは九七年のアジア通貨危機、あるいはITバブルの崩壊、それぞれに、リーマン・ショック級とは言いませんけれども、かなり大きな経済的なイベントというのは過去にもございました。こういうようなイベントがあったとしても、もうリーマン・ショック級でなければ消費税を上げるというのは、私は極めて無責任な経済政策運営だと思っております。

 私、「GDP成長率の推移」というのを紙でつくってきたんですが、こうやって見てみますと、二十年間日本の経済が停滞していたというのは、やはり、経済の政策がいろいろ失敗してきていると思っているんです。例えばバブルの崩壊の後、本来であれば不良債権をきちんと早目に処理するべきところ、それを先延ばしにしたこととか、いろいろ経済政策のミスがあった。あるいは、需要が不足しているときに消費税を上げてしまった。

 こういうのは、どれがどういう因果関係があるのかというのを証明するのは非常に難しいですけれども、例えば不良債権の処理についていえば、昔、梶山静六先生が住専の処理を一生懸命されました。そうしたら非常に世論の反発があった。でも、それを実行したからまだ傷口を小さくできたんだと私は思っているんです。

 だから、経済の政策を間違えると我々国民の生活に大きなダメージを与えるわけで、来年四月に消費税を上げるのか上げないのかというのは、これは今の景気条項に物すごく丁寧な判断を要するんだと思うんです。もちろん、消費税を凍結すると、今度は例えば国債の格下げリスクというのもございます。凍結することによるリスクというのを私も重々承知はしております。

 しかしながら、ここまで世の中が不安定になっているんだとした場合、本来、二〇一四年の秋口に有識者会議を立ち上げていろいろ話し合ったように、再度そうした有識者会議を近々立ち上げて、今の景気状態がどうなのか、消費税を上げても大丈夫なのか、凍結すると本当に日本国債は格下げになっていきなり国債暴落が起こるのか、そういうようなこと全てをトータルで一度考え直さないと、リーマン・ショック級がなければ増税は実行するという答弁というのは余りにも乱暴だと思います。

 それは、二年前であれば、まだ増税したてだから仕方ないというのはあるかもしれませんけれども、その有識者会議の立ち上げ等について、大臣、これは所管ではないかとは思うんですが、非常に大切なものを決めるという意味において財務大臣としてどうお考えか、お聞かせください。

麻生国務大臣 これはたびたび申し上げておりますように、いわゆる景気条項というものを外して必ずやりますということを世界にメッセージとして出したのが二年前の十一月だと思っておりますが、そういった意味では、少なくとも日本としては、今よほどのことがないとという例でリーマンとか大震災とかいう例をそこにわかりやすい例として引いたものなのでありまして、私どもとしては、確実に実施するということを伝えるための例として使わせていただいておるということで、日本にとっての重大事態というのは何かと言われれば、それはそのときにおいて判断をするということだろうと思っております。

 また、具体的なケースというのを申し上げるのはなかなか難しいということはもう御理解のとおりなので、私どもは、景気判断条項削除ということをしました以上、少なくとも、一昨年のような景気判断で行うということはありません。

 私どもは判断基準というのを新たに設けることを考えているわけではありませんので、今言われましたように、まだまだ一年先の話とはいえ、私どもの置かれている状況、予算も通っておりませんし、いろいろな形で世界の景気動向というのは、上がったり下がったり非常に株の変動も大きい。いろいろなことが私どもとしてはまだまだ判断条項がいっぱいありますので、今の状況としてお答えできることは、ずっと申し上げているとおり、よほどのことがない限り一〇%に上げるということをもって、私どもとしては、少子高齢化という長期の問題にも、国際社会からの疑念等々にもきちんと応えられるような対応で臨んでまいりたい。

 また、世界じゅうが、財政再建よりはいわゆる景気対策というような話がIMFに限らずいろいろなところで出ていることは、もう去年からの話でして今に始まったことではありませんので、私どもとしてはそれをよく承知しておるところでもありますので、そういったところも含めて私どもとしては判断をさせていただきたいと考えております。

木内(孝)委員 先ほどと繰り返しにはなりますが、リーマン・ショックという、百年に一度あるかないかというような大きな経済の事象がない限り引き上げると答弁しているというのは、いかにも乱暴だと思っておりますし、まさに精神論で覚悟を示す意味でこうした景気判断条項を外しているという、経済政策の責任者として私は実にいいかげんだというふうに思っております。

 この点については、我々の生活に直結する大切な判断になるわけです。いま一度、乱暴な一言で片づけないで、それは、合議的にやっても、有識者を集めるという形、いろいろあるかもしれません、そこはぜひお願いしたいと思います。

 続きまして、次の質問に移ります。財政健全化目標の実現と、消費税の凍結を含めた財政出動や政府資産の売却についてお伺いをしたいと思います。

 私は、消費税を凍結するべきだという話を申し上げました。現下の経済情勢であればそうだと信じております。そうしますと、当然、歳入、予定していた税収がなくなってしまうわけでございますので、それは財政健全化と相反するものでございますので、これは極めていいかげんな話となってしまいます。私は、凍結すると減ってしまう税収をきちっと埋め合わせをするために政府資産の売却をするべきではないか、そのように考えております。

 先般も少し質問して時間が途中でなくなってしまいましたが、日本たばこ、これの株式は今三兆円ございます。これをなぜ売却できないかという理由は皆さん御存じだと思いますが、念のため説明しますと、葉たばこ農家を保護しなければならないからです。私は葉たばこ農家を保護することは大変結構なことだと思いますが、それをやる方法というのは幾らでもございます。

 今、国際価格の約三倍の葉たばこ価格でございます。それを全量買い取りをするという全量買い取り制度が今ございます。この問題点を解決さえすれば、三兆円のこの日本たばこの株式は売却が可能です。

 それに加えまして、これを持っていると七百億円超の配当金があるので、これも使えるだろう。これも一つわかります。ただ、日本政府がこうした投資で配当を得る目的というのは極めて不健全だと思っておりますし、やる必要のない投資業務だというふうに私は考えます。

 ここでお伺いをいたします。なぜ、日本たばこの三兆円の株式を政府は売却できないのか。合理的、論理的に説明をお願いいたします。

麻生国務大臣 冒頭、御自身の方で御説明はあっておりましたけれども、これはもう葉たばこ農家の経営安定に資するためには、日本たばこが行います国産葉たばこの全量買い取りという問題は、これは、与える影響は極めて大きな農家の部分であろうかと存じます。

 また、たばこ小売店の経営の安定のための一定のマージン確保、これも大きな問題だと思っておりますが、実質的に担保するということを、国営というか、この株式を持っているがために担保するという意義を有しておると思っております。

 また、今言われましたように、配当金につきましては、これは財政投融資特別会計の歳入でありますので、産業投資の財源に活用をさせていただいておるというので、言われましたように、八百億、九百億、いろいろ年によって違いますけれども、このところ六百二十九億から七百八十七億、大体そういったところであります。

 こうした背景を踏まえまして、二十七年の六月に財政制度審議会において取りまとめられた中間報告によりますと、現時点での政府保有JT株式のさらなる売却を適当と判断すべきではないとする一方、専売制度改革当時からの、全株売却して完全民営化を目指すとの基本的な方向性は引き続き堅持すべきとされたところであります。

 JTの葉たばことの間の長期契約ですが、長期契約等々はいろいろやり方としてはあろうとは私らも思っておるのです。しかし問題は、長期契約というのはよく言われるところなのではありますが、長期契約を締結した場合、契約期間の終了後の葉たばこ生産をどう考えるかという点も考えなければいけませんでしょうし、完全民営化後の株式会社に対して、長期間の経済負担を負う買い入れ契約というものを強制することが可能かという点もあろうかと思いますし、また、政府保有義務の存続を強く要望する葉たばこ農家というものの不安というものもあわせて考えておかねばならぬと思っておりますので、収入の面、そういったいろいろな面から、これはなかなか慎重な検討が必要だろうと考えております。

木内(孝)委員 逆に今の御答弁からは、きちんとした長期契約ですとか保護政策が担保できれば売却してもいいというお考えでしょうか。

麻生国務大臣 私どもは今、こういったTPPに限りませんけれども、いろいろな形でこれまでの長い間のお取引を願っていたところ等々の部分、それをいきなり我々の都合だけで解約ということに関する影響というのははかり知れぬものがあるだろうと思っておりますし、また、民間から八百億を超えるような、六百億を超えるような、年によって違いますけれども、そういったものの収入等々につきましても、これは、確実なものというのを我々としてはいただけるということができなくなることになりますので、そういったようなこともあわせて考えておかないかぬだろうと思っております。

木内(孝)委員 今の御説明を伺っていますと、一言で言うと、十分に解決できるものを、売りたくないので、いろいろな理由をつけて売却をなさろうとしないというふうにしか聞こえません。

 ほかにも私は売却可能な資産があると思っています。ほかのお役所の所管ですので細かくはお伺いしませんが、例えばですが、NTT。これは、全国あまねく通信網の整備ということで国が三分の一超を保有し続けているわけです。こうしたものの完全民営化というのは、外資系に買収されたら困るとかいろいろ言われておりますが、それは例えば黄金株を入れるとか、買収防衛の整備というのは幾らでもできますので、私はこれも売却可能だと思っております。きょうはこれについては触れません。

 あと、日本郵政。これは売却という方針が出ておりますが、ちょっと一つお伺いしたいんです。上場後の株価推移と、公募の価格を今割れているような状況でございますけれども、今後の売却スケジュール等について教えていただければと思います。

迫田政府参考人 お答えをいたします。

 今後の日本郵政株式の具体的な売却については現時点では未定でございますけれども、郵政民営化法で、「政府が保有する日本郵政株式会社の株式がその発行済株式の総数に占める割合は、できる限り早期に減ずるものとする。」と規定をされておりまして、これは私どもも重々承知をしております。

 今後、株式市場の動向あるいは日本郵政の経営状況等さまざまな事情を勘案して、判断をしていくことになります。

 なお、委員よく御承知のとおりでございますけれども、現在はいわゆるロックアップ期間でございますので、日本郵政グループ三社株式の次回以降の売却については言及をしないというふうなことになっていることは、あわせて御理解をいただきたいと思っております。

木内(孝)委員 日本郵政はたしか五月にロックアップ解除かと思いますけれども、その後も着実な売却をお願いできればと思います。

 政府の保有資産というのはほかにもいろいろありまして、これは麻生大臣に細かくはお伺いいたしませんが、例えば霞が関エリア、ここの容積率というのは今五〇〇%になっています。これを丸の内並みの一〇〇〇%に容積率の緩和を実現しますと、その空中権が事実上売却できて、いろいろな試算があるのでそれが正確かどうかは別にしまして、二兆円を超えるような新しい政府資産ができることになります。

 もちろん、霞が関の場合、東京の顔といいますか、皇居もあってなかなか高い建物を建てられないとか、いろいろな要件はあるかとは思いますけれども、とにかく工夫さえすれば、まだまだ売却可能な政府資産がございます。総務大臣もやられていたので、電波オークションの話等々もございますが、ぜひ、こうした規制緩和に伴い売却可能になるような資産というのをいま一度洗い出して、売却することをお願いしたい。

 これは、単に虎の子のへそくりを売却するという意味合いだけではなくて、規制緩和にも、規制改革にもあわせてつながる政策だと思っておりますので、あわせてお願いできればというふうに思っております。

 これもちょっと何回か同じ質問を過去に、去年も予算委員会でもしたんですが、政策投資銀行について改めてお伺いをしたいと思います。

 これは二〇〇五年に完全民営化の方針を決定されました。民主党政権のときに、ちょうど震災があったということで、商工中金とあわせて民営化の延期、その後、去年、さらに延期が決定をされていまして、民営化の方針の旗はおろしていないという説明ではありますが、事実上、今はもう民営化が完全にストップした状態でございます。

 私、政策投資銀行さんには、昔、金融機関に勤めていたころも一緒に仕事をさせてもらったこともありますし、非常に仕事の内容を高く評価させていただいておりますけれども、なぜこれが政府系の金融機関であり続けないといけないのかの理由が全くわからないんです。今、官民ファンドをやっているとかいろいろ話もございましたけれども、なぜ日本政策投資銀行の民営化を進めないのか、全くわからない。

 これは麻生財務大臣から、なぜ民営化をしないのかという理由、お聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 昨年五月だったかな、成立しました政策投資銀行法の改正において、いわゆる民間によります危機対応が困難な、これはもういろいろな例もありますけれども、数々の国からの依頼に対して、民間の銀行で、我々政府からお願いしたことに応じていただいた民間銀行はありません。これが事実です。それが対応できたのは、ひとえに政策投資銀行です。

 いわゆる成長資金の供給というものをいろいろな形で、アジアの国々等々がスタートをしていくに当たってインフラの絶対量が不足している、AIIBも似たような話ですけれども。そういったものに対して、ここは間違いなく、融資とか審査をする能力もありますし、そういったものがありますので、私どもとしては、こういった銀行によります審査能力が中心となって、民間の銀行に当たってこれは審査したところ、いいという内容やら何やらがきちっと行き、このところが、我々がやろうという意欲があるからといって声をかけると民間が乗ってくるという面も極めて大きな要素だと思っております、現実問題として。

 ただ、同時に、あれを決めさせていただいたときに、危機対応などの役割を政投銀に求める必要がなくなったとき完全民営化いたしますという規定になっておると思いますので、そうした見直しを行うための検討条項というものを行っているので、この検討条項に沿いまして、危機対応業務の運用状況とか、また、金融情勢を初めとした社会経済情勢の変化等々をしっかり目を配って、我々としては政投銀の民営化というものにつきましては、これは決して悪い方向じゃないとは思いますけれども、残念ながら、今の民間銀行にそんなことができるようなのが、私どもはこの三年間しか経験がありませんけれども、この三年間、そのようなお話をいただいたことはありません。

木内(孝)委員 危機対応ということでございますが、もちろん震災直後に、商工中金さん、あるいは政投銀さん、いろいろ危機対応業務をやっていただいて、それの成果もたくさんあったということは評価をしております。

 しかしながら、ある意味、今有事になって、もちろん残高ベースでは、どこそこに貸している、いろいろございますけれども、そういう危機対応業務を今なお続けているということが、まさにこの国の抱えている一番の問題。私は、この国の抱えている問題は、自由で公正な経済ではなくて、統制経済の名残が残り過ぎているのが問題だと思っています。

 それは、理由をつければ幾らでもあります。ただ、市場をゆがめるという行為に加担をしているのが私は今のこの政府系金融機関の役割だと思っておりますので、本来金融機関がやってはいけないことをやることによって市場をゆがめている、そういうふうに私は思っております。

麻生国務大臣 七十五年も生きていますと、やはり自然災害とか突発事故というのにいろいろ遭うんですよ。そのときに銀行がどんな対応をしたかという歴史をよく見てみると、政投銀というような特殊な政府系金融というものがなかったら、あのリーマン・ショックのとき、中堅企業としてアメリカに出ていった企業は、多分ほとんど倒産していたはずです。あそこにたった一本の糸をつないでずっと助けてきた、したがって後の民間がついてきたというのが歴史だということも、我々実体験として、そのときたまたまその担当をしておりましたので、いろいろな意味で私どもとしては経験がある。

 そういった意味では、こういったものの必要性というのがなくなるかといえば、それは自然災害が日本からなくなるかとか経済危機が世界からなくなるかというような話と同じような話なのであって、私どもとしては、政権を担う立場としては、そんな簡単な話で大丈夫ですよなんて話に乗れるほど簡単なものだとは思っておりません。

木内(孝)委員 その議論というのは、二〇〇六年当時、本当に政府系金融機関がなくなって大丈夫なんでしょうかという議論がなされ、日本政策金融公庫にその業務を全部やっていただくというような議論で集約しています。私は、そこを軽視したりとか、そういうことは申し上げておりませんし、そういう答弁をずっと続けることによって、こういったものが民営化されないという理由には全くならないというふうに思っています。

 続きまして、次の質問に移りたいと思います。潜在成長率の推移と向上に向けてお伺いをしたいと思います。

 一枚物の資料を用意させていただいておるんですが、潜在成長率が一九八〇年代は四%とか五%であったところ、直近は〇・四、五、震災の影響で一にふえたりゼロだったりというような表がございます。

 午前中も玉木委員から潜在成長率の動きについての質問がありましたが、一つ、この潜在成長率を短期的に上げる即効性のあるものとして、もちろん、生産性を上げるというのは我々が目指すべき方向性で、それは今既にやろうという努力はしているというふうに思っています。

 一つ、これはいろいろ議論もあろうかと思いますし、当然反対意見もあるかもしれない政策だと思っていますので、私は麻生大臣の考え方を教えていただきたいんです。

 外国人労働者にもいろいろな形の職種もあろうかと思いますが、これを例えば年間三十万人程度受け入れること、期間を例えば五年間にすること。これは、移民と難民、外国人労働者、いろいろあるかもしれませんけれども、あくまでも、外国人労働者を期間限定で年間三十万人程度受け入れるということに関していかがお考えでしょうか。

麻生国務大臣 難民、移民、今、多分ヨーロッパ最大の問題は金融じゃありません。間違いなく難民問題ですよ、現実問題として。そういったものが、現実として今我々は、ヨーロッパで遠いから見えていませんけれども、似たようなことがもしアジアで起きたら、大量な難民を日本に受け入れてくるときにどうするかということもきちんと考えておかないと、この話はうかつに、今の話で平和なときに考えるというようなのは、そういった意味では危機対応という経験が全くありませんから、難民は武装している可能性も覚悟しておかないかぬ。

 その武装難民に対してどうするかというふうなことも考えた上でこの種の話を進めないと、平和なときに平和なことしか知らない人たちが考えると危ないことになりかねぬというのを頭に入れた上で、私どもは、外国人などの受け入れにつきましては、これまでもいろいろな形で受け入れてきているのは事実でありますので、一定の海外の人材を受け入れてきているのは確かですので、ラグビーでいえば五郎丸ばかり有名になっていますけれども、実際問題、五郎丸以上に活躍した外国生まれの日本籍の人もいっぱいあの中にいらっしゃるというのが現実ですから、サッカーよりよほどラグビーの方がインターナショナルにやっている、私はあれを見てそう思いました。

 ぜひそういった意味で、必要な分野にきちんと着目した上で、モンゴル人しか勝たないから相撲がおもしろくないとかつまらないことを言わないで、活躍できる人が大いに活躍できるというのはいいことだ、私どもは基本的にはそう思っております。

木内(孝)委員 私もヨーロッパに十年以上住んでいましたので、こうした移民政策とかに関しては物すごく慎重な立場でございます。一方で、私は、外国人労働者を受け入れる政策に関しては非常に積極的な立場です。

 今、移民政策と外国人労働者受け入れ政策といろいろと混同されがちでございますが、私は、ぜひそこの議論を整理して、外国人労働者、専門職であったりとかいろいろな職種というのは考えられますけれども、数千人とかそういうことではなくて、十万、二十万人単位での受け入れというのも、国力を考えた場合、シンガポールみたいに、三百五十万人シンガポール人がいて移民が百八十万人とかそういうことを私は申し上げているわけではございませんが、労働力人口が減る程度の外国人労働者の受け入れというのをぜひお願いしたい、そのように思っております。

 次の質問に移りたいと思います。

 二〇二〇年ごろ、GDPは六百兆円というふうに目標を政府として掲げられていらっしゃいます。九二年度以降の最高のGDP名目成長は二・二%です。リストでもうごらんのとおり、潜在成長率も安定的に低下傾向である中で、この二〇二〇年の六百兆円を実現するためには、一八年が三・九、一九年が三・五、二〇年が三・六、そして二一年が三・七という、言ってみればやや荒唐無稽ともいうべき高い数字になっております。

 それに向けて努力をする、頑張るというのは結構でございますけれども、先ほど午前中でも質問ございましたけれども、こんな非現実的な目標をベースに六百兆円ということがまかり通っていいのか不思議に思っております。六百兆円の根拠となるこの名目成長率が妥当だと思われるのかどうかということが一点。

 それと、これの達成時期というのは、十月―十二月期の数字が下方修正されましたので、実際これが実現するのは二〇二二年の一月過ぎではなかろうかなという気がしております。それを二〇二〇年に六百兆円というのは、幾ら何でも乱暴ではないか、そのように考えるわけですけれども、今の二点について御所見をいただければと思います。

井野政府参考人 お答えいたします。

 内閣府の中長期試算の経済成長率が高過ぎる、楽観的ではないかという御指摘かと思いますけれども、本年一月に公表いたしました内閣府の中長期試算では経済再生ケースとベースラインケースの二つのケースを示しているところでございますけれども、御指摘の経済再生ケースにつきましては、安倍内閣の経済財政政策の効果が着実に発現し、政府が目標として掲げております実質二%程度、名目三%程度を上回る経済成長が実現するケースでございます。

 アベノミクスによりまして、もはやデフレではないという状況が実現し、経済の好循環が回り始め、多くの人々が自信を回復しつつある今こそ、経済再生ケースがお示しいたしますような望ましい成長の姿を現実のものとしていく好機であると考えているところでございます。

 引き続き、政府といたしましては、経済再生なくして財政健全化なしという基本方針のもとに、経済と財政双方の再生を目指して、こうした望ましい経済成長を実現できるよう政府として全力を挙げて取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

 それから、六百兆円の達成時期についてもお尋ねがございました。六百兆円につきましては、政府としては二〇二〇年ごろということで言っておりますけれども、御指摘いただきました中長期試算の経済再生ケースでは、現在の試算で二〇二一年度に六百兆円を上回る数字となっているところでございますけれども、もとより、一定の仮定を置いた試算でございますので、その数字については、幅を持って見ていただく必要があるものと考えております。

 いずれにいたしましても、これからしっかりと経済運営を進めて六百兆円経済を実現するように努力していくことによりまして、二〇二〇年ごろに六百兆円を達成するということを目指してまいりたいと考えているわけでございます。

木内(孝)委員 六百兆円という数字はいろいろな意味で無理があるというふうには思っている一方で、その方向性として、成長を重視するという姿勢を示す意味での六百兆円というのは私はそれはそれで意味があると思っております。これを実現するために本来やらなければならないことはまさにデフレ脱却というときにもかかわらず、なぜ来年の四月に増税をするのかというのが全くもってこの政策と矛盾をした、そういうことではないかと思っております。

 ぜひとも、来年四月消費税増税、これを凍結することを、いま一度足元の経済状況を検証していただき再考いただくことをお願いしまして、私の質問とさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、國場幸之助君。

國場委員 自由民主党の國場幸之助です。財務金融委員会で初めての質問の機会をまことにありがとうございます。

 経済再生により財政再建を目指すアベノミクスの実績と評価は確かなものがあると思います。その上で、二〇二〇年度までにプライマリーバランスの黒字化を実現するための取り組みについてお尋ねをしますが、名目三%、実質二%の経済再生ケースでも六・五兆円の赤字が残ります。大変困難な目標であると思いますけれども、PB黒字化の実現のためにどのような取り組みをしていくのかをまずお尋ねします。

    〔委員長退席、松本(洋)委員長代理着席〕

麻生国務大臣 いわゆる財政の健全化につきましては、この安倍内閣におきまして、この三年間の取り組みによって、少なくとも、平成二十七年度におけるいわゆる基礎的財政収支の赤字半減目標と言われたものは、まず達成はされないだろうと言われた方の方が多かったんですが、現実問題としては達成できるということになりました。着実に成果が出てきているんだと思っております。

 また、内閣府の中長期試算で、今言われたような、名目三%、実質二%の高い成長率を前提としてもなおかつ二〇二〇年度において六・五兆円の基礎的財政収支に赤字が立っておるということも確かであります。

 こうした中で、政府としては、成長戦略というものをこれは確実に実施していくことで引き続き経済再生というものに取り組んでいく、経済成長を含めまして経済再生に取り組んでいくと同時に、経済・財政再生計画に示されております目安、目安が立ててありますので、改革工程表に基づく歳出改革を実行する。そして、その進捗度合いというものは二〇一八年度の時点で評価をし、必要な場合には歳出歳入の追加的な対応というものを検討するなどなど、こういった問題にきちっと対応することによって、プライマリーバランスの黒字化、基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化するという方針を、私どもとしては頑張ってこれを達成させたい、そう思っております。

國場委員 日本経済が名目三%、実質二%という経済成長実績を最後に達成したのは平成三年、今から約二十五年前です。ちなみに、次年度の税収は五十七・六兆円と、こちらもまた二十五年ぶりの高水準を達成しております。

 今回の成長目標を達成するためには、先ほど来議論にありますけれども、潜在成長率を高めることが必須であると思います。ちなみに、日本銀行の潜在成長率推計は今わずかに〇・二三%しかありません。内閣府は〇・四%と見積もっております。民需主導の成長戦略や、午前中の質疑にもありましたように、生産性の向上など課題は山積しておりますけれども、有効求人倍率や失業率など、雇用に関する統計は大幅に改善しております。

 それであるがゆえに、その一方で、地元を歩いて最も切実な訴えの一つとして聞こえてきますのが、求人しても人が集まらない、人手不足であるという声であります。

 今、お手元の方に、OECD諸国の高齢化率、若年年齢率のリストをお配りしておりますけれども、この中で、日本という国は顕著な人口構造になっておりますが、OECDの三十四カ国のうち、六十五歳以上の人口比率が二五%を超えている国は日本しかありません。その一方で、十五歳未満の人口比率が一二%台しかいない国というものも、日本とドイツしか今は存在しておりません。

 ドイツの方は、先ほど木内委員も質疑に立っておりましたけれども、人口約八千万人のうち、一二・八%から約二〇%は外国人や移民の出身で、その中でも、保護申請者の約五割は十八歳から三十四歳と、若い外国人を受け入れることにより人手不足に対応しております。ちなみに、日本の方は在留外国人が一・七%と、世界百九十五カ国のうち百五十一位と異様に低い実情でございます。私は、安易な移民や外国人の受け入れには慎重であるべきだと考えております。

 その上での質問ですが、労働力不足が日本経済の成長に与える影響と、今後どのように経済の担い手不足に対応し、潜在成長率の向上に資していくのかを示してください。

    〔松本(洋)委員長代理退席、委員長着席〕

広瀬政府参考人 お答え申し上げます。

 委員から御指摘ございました、人口減少社会のもとで持続的な成長を実現していく上で、供給面での制約、これを打破するためには、まさに企業や個人の潜在力を最大限発揮させるような生産性革命、これを実現することが非常に重要だというふうに思ってございます。

 こうした生産性の向上を図るためにまさに最大の鍵は、民間投資の拡大と活性化というふうに考えてございます。設備、技術、人材、そういった投資など、質と量を兼ね備えた前向きな投資の拡大を図りますとともに、イノベーションの創出によりまして付加価値の向上を図ることが重要だというふうに考えてございます。

 そうした観点から、成長戦略のもとで、企業の稼ぐ力を向上させるためのコーポレートガバナンスの強化、あるいは法人税改革、また、IoT、人工知能、ロボットといった先端融合分野での投資を促進する研究開発支援とか規制・制度改革、あるいは、人材面で申しますと、大学のイノベーション創出力を強化するための大学改革とか、あるいは、サイバーセキュリティー対策の徹底、IT利活用の推進、さらには、女性、高齢者、高度外国人、こうした人材の活用の促進とか、あるいは、生産性の向上に寄与する働き方改革、さらには、農業、医療、エネルギー、こういった分野での岩盤規制改革、こういった取り組みを進めているところでございます。

 今後、こうした成長戦略に盛り込まれました取り組み、これを着実に進めていきますとともに、成長戦略をさらに進化させまして、潜在成長率の向上を図っていきたいと考えております。

國場委員 済みません、質問の順番を一部変えて質問したいんですが、法人税改革について質問したいと思います。

 過去最高の企業収益、内部留保があるにもかかわらず、設備投資や配当や賃金に反映されていない、そういう声が、委員会の中でも質疑が続いております。

 法人税の先行減税分というものは、さらなる内部留保の増大のためではなく、設備投資や技術開発や賃金の上昇、配当につなげ、経済の好循環を実現するのが目的であります。その目的達成のための取り組みについて明らかにしてください。

坂井副大臣 御指摘のとおり、企業の内部留保、三百五十兆円を超えているということでございまして、手元資金もふえている状況でございます。経済界がマインドを変えていただいて、賃金の引き上げや投資拡大に積極的に取り組んでいただくことが重要だと考えております。

 今回の法人税改革を行って、また、こうした改革を行っても、もうかっている企業がさらにお金をため込むというようなことでは意味がないのでありまして、その点、麻生大臣からも、政府を代表して、官民対話や経済財政諮問会議などのさまざまな機会で繰り返し申し上げてきているところでもございます。

 これに対応していただくような形で、与党税制改正大綱に関するコメントといたしまして、例えば昨年十二月十六日の榊原経団連会長のコメントとしては、今回の法人実効税率が二〇%台に引き下げられることを歓迎するとした上で、設備投資等の増大、雇用の拡大、賃金のさらなる引き上げに積極的に取り組みを進めるとしているなど応えていただきまして、企業が賃金引き上げ、投資拡大を積極的に進めていこうとする姿勢があらわれてきているように考えておりまして、これらに期待をすると同時に、よく見きわめてまいりたいと考えております。

國場委員 その上で質問したいんですが、昨年、経団連が提言書を提出しております。財政健全化計画の策定に向けた提言という内容なんですが、その中に、企業は賃上げをするものの、社会保険料の負担増で賃金を相殺してはいないかという問題提起が含まれておりました。

 具体的には、従業員五百人以上規模の事業者を対象にした調査を行った際に、現金給与総額の増加分の約六五%は社会保険料の負担分の増加により相殺されているという内容でした。

 今の日本の社会保障制度は、現役世代の保険料で給付を賄うという賦課方式でありますから、これだけ極端な人口構造下における社会保障制度設計では、企業が賃金を上昇したとしても、社会保険料の上昇で従業員の手取り分がふえないという構造的な要因があります。

 しかも、社会保障給付費自体が経済成長率を上回るペースで上昇している現状下で、従業員がアベノミクスの成果を実感できるくらいの所得の向上を企業が実現させていかなければなりませんけれども、そのための環境づくりにどのように取り組んでいくんでしょうか。

武田政府参考人 お答えいたします。

 社会保険料についての御質問がございました。

 社会保険料の事業主負担分でございますけれども、社会保険制度により、事業主も利益を享受すること、企業の社会的責任として御負担いただくこと、そういった観点から御負担をいただいているものでございますけれども、御指摘のように、賃金の引き上げ、また、企業の競争力などの観点から考えますと、この負担水準につきましては上昇を可能な限り抑制していく、そういった観点に配慮することは重要なことと考えているところでございます。

 具体的に申し上げますと、厚生年金の保険料につきましては、現在一七・八二八%でございますが、平成二十九年度以降は一八・三%に固定し、これ以上引き上げないこととしております。

 また、健康保険料におきましても、例えば中小企業が加入する協会けんぽの保険料率につきましては、平成二十四年度から一〇・〇%の横ばいで推移ということで、私どもの医療費適正化努力の反映ということではないかと考えてございます。

 また、雇用保険につきましても、現下の雇用情勢、雇用保険の財政状況などを踏まえまして、現在一・〇%の失業等給付の保険料率を来年度から〇・八%に引き下げるべく、法案を今国会に提出しているところでございます。

 今後とも、企業にとりまして、また被保険者にとって過重な保険料負担にならないよう、効率的な社会保険制度の構築などに努めてまいりたいと考えております。

國場委員 法人税は三割の企業しか払っておりませんけれども、社会保険料は一〇〇%払います。社会保険料負担金は今後経済成長率を上回って増加するのは、先ほどの人口の資料を見ても明らかでございますので、政府が企業に賃上げを要請する際にも、社会保険料負担の増加とのバランスも踏まえて対話を重ねていただきたいと思います。

 続きまして、中長期の経済財政に関する試算について質問をします。

 内閣府の最新の中長期の経済財政に関する試算では二〇二四年度までの試算となっておりますが、二〇二四年度までに期限を区切っているのは何か意味があるんでしょうか。また、二〇二四年度以降の債務残高の対GDP比率はどのようになっていくのかについてお尋ねをしたいと思います。

井野政府参考人 お答えをいたします。

 内閣府の中長期試算で二〇二四年度までの試算結果となっている理由でございますが、政府といたしましては、骨太方針二〇一五に基づきまして、二〇一八年度の国、地方の基礎的財政収支の赤字の対GDP比一%程度を目安とするとともに、二〇二〇年度には国、地方の基礎的財政収支を黒字化することを目標として、経済と財政双方の一体的な再生に取り組んでいるところでございます。

 内閣府の中長期試算は、この目標に向けた改革の進捗状況を点検することを目的としておりますことから、この目的に沿った範囲といたしまして、二〇二〇年代前半までの十年間程度の期間をとって試算をお示ししているところでございます。

 それから、二〇二四年度以降の債務残高GDP比がどうなっていくかということでございますけれども、これにつきましては、試算をしてございませんのでお答えすることはできませんけれども、いろいろな仮定に基づきまして姿が変わってくるものと考えてございます。

國場委員 本来でありましたら、団塊の世代が全て七十五歳以上となる二〇二五年以降の見通しというものが極めて重要であると考えます。経済成長より常に社会保障の伸び率というものが上回ると予測されるからであります。

 もちろん、二〇二〇年度までのPB黒字化の目標達成というものが緊急の課題ではありますが、企業や国民というものが今不安に感じているのは、将来先行きが見えないこれからの日本の将来というものを、従業員一人採用するにしても人の人生を預かるのが企業の役割でありますので、中長期の見通しというものを当然示すべきだと思いますけれども、その点に関しての答弁をお願いします。

井野政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど申し上げましたとおり、内閣府の中長期試算は、政府の基礎的財政収支の黒字化等の目標に向けた改革の進捗状況を点検することを目的としておりますことから、十年間程度の期間での試算をお示ししているところでございます。

 それで、目的に沿った範囲を超えた期間について試算を行うことにつきましては、より将来の期間について試算をするにつれまして種々の不確実性が増していくこともあり、基本的には適切ではないというふうに考えているところでございます。

 なお、現在十年間程度の試算期間をお示ししておりますけれども、来年度以降におきましても十年間程度の試算期間は確保することとしたいと考えているところでございます。

國場委員 済みません、時間の都合で質問を大分飛ばさせていただきます。申しわけありません。

 軽減税率について、二点お尋ねしたいと思います。

 まず、来年の四月から導入が計画されておりますけれども、その対応というものがどのようになっているのか、事業者、約一年少しでありますけれども、取り組みの内容についてお聞かせください。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業庁としましては、消費税の軽減税率制度の導入時に事業者の現場で混乱が生じないよう、関係省庁とも密接に連携し、影響を受ける中小企業、小規模事業者の準備に対する支援に全力で取り組むことといたしております。

 このため、まず平成二十七年度補正予算に基づきまして、軽減税率制度の内容や対応策について十分な周知、広報を行うため、関係省庁や主要な中小企業団体と一体となって、パンフレットの配布、説明会や講習会の開催といった取り組みを行っております。

 また、本年度の予備費を活用しまして、中小の小売事業者等に対しまして、複数税率に対応が可能なレジの導入等を補助するとともに、電子的な受発注を行っている中小の小売事業者、卸売事業者に対して、複数税率に対応するために必要なシステム改修を補助することといたしております。

 これらの作業はかなりの数の中小企業、小規模事業者を対象とすることになろうかと考えますが、十分な支援体制の整備や支援制度の簡素化を図り、来年四月の制度導入に向けて、関係者一丸となって取り組む所存でございます。

國場委員 今、中小企業庁より答弁いただきまして、ありがとうございます。

 前回のこの委員会の答弁の中で、対象品目が曖昧であるとか、軽減税率の導入や運用に伴う不明な点があれば所管の税務署に問い合わせてくださいという政務官からの答弁がありましたけれども、一般の事業者は、やはり税務署との接触というものに心理的な不安というものも感じると思います。ですから、匿名で、いろいろな軽減税率に関する問い合わせの窓口や、中小企業のなじみのある商工会や税理士さんとか、そういったところとの連携も必要であると考えますので、よろしくお願いします。

 そして、免税事業者はインボイスを発行できませんので、仕入れにかかった消費税分を肩がわりしたくないという理由で、BツーBの取引というものが排除される危険性があると思います。その点に対する対策というものを最後にお尋ねしたいと思います。

大岡大臣政務官 國場議員にお答え申し上げます。

 沖縄のさまざまな中小企業を想定しての声を受けて御質問いただいているんだと思います。

 御案内のとおり、インボイス制度につきましては、インボイス制度導入後六年間は、一定の仕入れ税額控除を認めるなどの経過措置を講じております。この間に自分たちの業態をよく見きわめていただいて、免税事業者がインボイス制度に乗るのか、あるいは今までどおり免税事業者としてやっていくのかを見きわめていただくことになろうかと思います。

 これは、個々の取引の内容によって、一般の消費者に売られている場合と、まさにBツーBで会社に納めている場合とによっても違いますし、例えば沖縄でしたら、日本人相手に売っている場合と外国人の観光客にお土産を売っている場合とでも恐らく変わってくるかと思います。

 今後、こうした影響や軽減措置の適用状況等を検証しながら、必要な対応をしっかりと行ってまいりたいと思っております。

 以上でございます。

國場委員 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、上田勇君。

上田委員 公明党の上田勇でございます。

 きょうは、消費税の軽減税率制度を中心として質問させていただきますので、どうかよろしくお願いをいたします。

 消費税率の引き上げにつきましては、平成二十四年の税制改革抜本法で、五%から二段階で一〇%に引き上げるということが決まりました。

 私は、そうした議論の過程の中でも、消費税率の引き上げを行うのであれば軽減税率の導入が必要ではないかということを主張してきた経緯がございます。それは、消費税について、その増収分は、全額、増大をする社会保障の安定した財源を確保するために使うということで国民の皆様の一定の理解は得られているものの、依然として消費税については抵抗感が強い。その国民の理解を得ながら円滑に進めていくためにも必要であるというふうに考えたからであります。

 とりわけ、アメリカやEU諸国などのほとんどの国においては、飲食料品に軽減税率を適用するというような制度が導入をされているわけでありまして、こういったことも参考にしながら、飲食料品等の軽減税率適用を提唱してまいりました。それは、所得に占める飲食料品等の消費割合というのは、低所得世帯、そしてそれだけじゃなくて、中堅所得であっても子育て中の世帯であるとか、そういったところに非常に負担が重くなって、その負担を軽減するということが理解を得ていく上で必要であるというふうに考えたからであります。

 特に、これまでの給付措置などでは、非常に負担感の大きい、所得としては中堅世帯なんだけれどもなかなか給付の対象にならない子育て中の世帯などについても、負担を軽減するということが重要であるというふうに考えてきました。

 また、これまでさまざまな所得制限を設けての給付措置ということについては、どうしてあの人はもらっているのに自分のところは対象にならないのかというような、こうした不公平感がどうしても、いつも耳にしてきましたので、そういったこともなくす、そういう意味でのわかりやすさ、納得感、それも重要であるというふうに考えてまいりました。

 今回、そうした内容が盛り込まれ、二十九年四月の再引き上げの際には導入をされるということが決定したことは評価をしているところであります。

 この軽減税率制度について、金持ち優遇ではないかという批判がよく聞かれております。それは、高所得者の方が消費総額が大きいので、当然のことながら、そこの税率に差額が出てくれば、飲食料品の消費総額も大きいわけでありますから、消費税負担の軽減額は所得が高い人の方が低い人よりも多くなるというのは、ある意味当然のことであります。

 しかし、これまでこの委員会あるいはそのほかの場でもいろいろな議論が行われてきましたけれども、税負担の軽減の所得に占める比率に着目をすれば、これはやはり低所得者の方が高所得者よりも軽減率が大きくなっているということは明らかになってきたところであります。

 またさらに、ここの部分だけじゃなくて、税制全体で見なければならない面があるというふうに思います。

 先日、この委員会でも取り上げさせていただきましたけれども、所得税については、ことしから始まって、累進度を高めるということが導入をされます。特に、課税所得が五千万を超える世帯については最高税率を四五%に引き上げること、あるいは、給与一千万円超の世帯の所得控除の上限額の引き下げによって、所得税の面では非常に累進度が高まるということがとられております。

 そういう意味では、税制全体で考えれば、かなり税負担の所得累進度は高まっている。高所得者を優遇している、金持ち優遇というような批判というのは税制の一部分だけを捉えたものであって、税制全体を考えたときには、今、政府として累進度を高める方向にある。したがって、そうした批判というのは極めて一面的、そして的外れなものであるというふうに考えております。

 このことについて、大臣の御所感を伺いたいというふうに思います。

麻生国務大臣 これは、家計調査に基づいて申し上げさせていただければ、いわゆる消費税の逆進性というものの緩和の観点から、酒類、外食を除く飲食料品の消費支出の家計に占めます割合は、年収千五百万円以上の御家庭では約一五%に当たりますけれども、年収二百万未満の世帯では約三〇%程度ということになっております。

 また、酒類、外食を除く飲食料品などに係る消費税負担の収入に対します割合は、低所得者の方が高所得者より高くなっているということから、制度導入によります消費税負担の軽減度合いにつきましては低所得者の方々の方がより多くなっておりまして、その意味では消費税の逆進性の緩和につながるものだと、基本的にそう考えております。

 さらに、上田先生御指摘のありましたとおり、国民の負担というものを考えるときには、消費税だけではなくて、税制全体で考えてみることが重要であろうと考えております。この点、近年の税制改正において、今御指摘のありましたように、給与所得控除の見直しを初めとした税制の累進性が高まるような改正を行ってきたところであります。

 加えて申し上げれば、消費税率引き上げの増収分というものは、基本的には社会保障の充実、安定化に充てることとされておりますので、特に低所得者対策として、国民保険料や介護保険料の軽減の拡充、また、年金生活者支援給付金などを実施することといたしておりますので、消費税の負担はこうした受益とあわせて評価されてしかるべきものではないかと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 次に、若干技術的なことでありますけれども、適格請求書、インボイス制度について何点かお伺いしたいというふうに思います。

 今回の改正におきまして、平成三十三年度から、適格請求書、いわゆるインボイスが導入をされ、それによっていわゆる益税と言われているものが縮減するのではないか、そういう効果があるというふうに言われております。ただ、事業者の中には、現行の請求書保存方式と比べて事務がすごく面倒くさくなるのではないかという懸念の声も伺います。

 確かに、記載しなければならない項目、要件としての項目というのはふえていくことになりますけれども、ただ、今一般的に発行されている請求書あるいは領収書、そういったものを見てみますと、既にかなり詳しく書かれていて、実質的にふえる事項というのは事業者の登録番号ぐらいなのかなというふうにも感じております。もちろん、複数税率になれば二つに分けなきゃいけませんのでそれはふえるわけでありますが、それ以外でいえばその登録番号かなと考えます。

 事業者の皆さんの中には、これまでの請求書とは異なって、インボイスということになると一回の取引ごとに発行しなければならないんじゃないか、そうすると発行する書類や保管しなければならない書類というのがすごくふえる、そういう懸念の声も伺います。

 そこで伺いたいんですが、現行制度に比べて、この適格請求書になれば、そうした書類を発行しなければならないような頻度というのはふえるのか、また、そうした書類全般の量がふえていくのか、その辺の御見解を伺いたいというふうに思います。

坂井副大臣 発行頻度に関してのお尋ねでございましたが、確かに、現行制度におきましては、必ずしも取引ごとの請求書である必要はなく、例えば月単位のように、一定期間内に行った商品の販売等をまとめて記載することも可能としております。

 それでは、インボイス導入後はどうかといいますと、この制度導入後におきましても、現行制度と同様、一定期間内に行った商品の販売等をまとめて記載する適格請求書等の発行を可能とすることとしておりまして、その旨、今般の税制改正法案に盛り込んでいるところでございます。

上田委員 ありがとうございます。

 つまり、適格請求書、インボイスになったとしても、発行される書類の量自体はふえるものではないということだというふうに理解をしております。

 次に、この適格請求書は、登録を受けた課税事業者のみが発行できる、これは当然のことであるんですけれども、したがって、その登録番号を記載したもののみが有効ということであります。

 仕入れ税額控除を受けるためには、適格請求書の保存が要件となります。適格請求書を発行できない年間売上高一千万円以下の免税事業者との取引が敬遠されるのではないかという懸念があります。

 そうした懸念に対応するために、この適格請求書保存方式に移行する平成三十三年度から六年間については、仕入れ税額相当額の一定割合を控除できるような経過措置が講じられておりますけれども、その内容及び趣旨について御説明いただきたいと思います。

坂井副大臣 委員が御指摘のような事業者の声というものも届いております。

 免税事業者が課税事業者への転換の要否を見きわめながら、しっかりと準備ができる期間を確保することと今しておりまして、インボイス制度の導入時期につきまして、軽減税率制度の導入から四年間の準備期間を設け、平成三十三年四月とするとともに、インボイス制度導入から六年間の経過措置として、その間に課税事業者への転換の可否をみずから判断ができる時間をとるため、免税事業者からの仕入れにつきまして一定の仕入れ税額控除を認めることといたしております。この間、平成三十九年までということでございますので、来年から見ても約十年という期間でございます。

 今般の税制改正法案の附則においては、政府は、インボイス制度の導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性、また、軽減税率制度の導入に伴う経過措置の適用状況等、これは検証をしつつ、必要な対応を行う旨を明記しておりまして、しっかり現場で頑張っていらっしゃる事業者への対応を行ってまいりたいと考えております。

上田委員 ありがとうございます。

 インボイス制度というのは、どうもその内容が今まで明らかになってこなかったこともあって、現行の請求書保存方式と比べてかなり事務的なものが負担がふえるんじゃないかというふうにも懸念をされております。今、さまざまな配慮がなされているということでありますので、ぜひそういったことも、安心感を与えるためにも周知をお願いしたいというふうに思います。

 次に、この移行期間、平成二十九年度に複数税率制度が導入をされてから三十二年度までの移行期間の特例措置等についてお伺いしたいというふうに思います。

 三十三年度に適格請求書保存方式に移行するまでの間は、経過措置としては、現行の請求書保存方式、それを維持した上で、軽減税率の対象品目であることがわかるような、例えば軽減税率適用品目には星印みたいなマークをつけるとか、そういったことをわかるようにした上で、それぞれに税率区分ごとに合計した金額を記載する。今の請求書保存方式をベースとしたそういう方式をとるということが決められております。

 しかも、経過措置の期間内というのは、免税事業者は、年間売上高一千万円以下の小規模事業者でありますけれども、区分記載請求書を発行することができるということでありますから、現行制度と同様の取り扱いになる、取引から排除されるという懸念はないというふうに考えております。

 また、売上高の計算については、税率ごとの売り上げを区分することが困難な中小・小規模事業者、確かに今までは、売上高というのは一つで、税率が単一税率であれば全部合算すればよかったんですけれども、今度は分けなきゃいけない。そうすると、それを日ごろから区分しておくことが困難ということもあり得るのかもしれません。そういった懸念に対して、売上高の計算の特例も設けている。

 そして、仕入れ額の計算については、税率ごとの仕入れ額を区分すること、標準税率と軽減税率のそれぞれに仕入れ額を区分経理しなければならないということでありますけれども、そうしたことが困難な事業者については、売上高五千万円以下の中小事業者については簡易課税制度の事後選択も可能にしようと。現行の簡易課税制度の選択というのは、事業開始年度、事業年度の開始時に決めなきゃいけないわけであります。選択をしなければならないんですが、今回は、区分経理をしようと思っても途中でわからなくなってしまった、そういったことにも対応するために、事後選択も可能にしようという措置がとられています。それ以外についても、中小以外の事業者についても、簡易課税方式に準じた方式を認めるというような措置がとられております。

 こうした特例措置によって、複数税率制度の導入に伴う事務負担の増加にどうしてもたえられないというような中小・小規模事業者、そういった事業者が出ることを未然に防いで、また、複数税率制度に対応した経理とその後の適格請求書保存方式への円滑な移行が可能になるというふうに考えておりますけれども、御見解を伺いたいというふうに思います。

坂井副大臣 もう委員十分に御指摘をいただいたところでございますけれども、事業者のインボイス導入に係る準備に十分配慮するとの観点から、まずは、インボイス制度の導入時期について、軽減税率制度の導入から四年間という準備期間を設けているということでございまして、平成三十三年四月とするとともに、この間の経過措置として、区分記載請求書等保存方式とすることとしております。これは、現行制度を維持しつつ区分経理に対応するため、軽減税率対象品目である場合にはその旨、税率ごとに合計した対価の額の記載を求めるものでございます。

 さらに、経過措置期間において、複数税率に対応した区分経理が困難な中小事業者やシステム整備が間に合わない事業者等も想定をされるところでございますので、これらの事業者に対しましては、売り上げまたは仕入れの一定割合を軽減税率対象であるものとすることができる税額計算の特例を設けることとしているところでございます。

上田委員 確かに、経理の方法が随分と変わります。一つには、適格請求書、いわゆるインボイスに変わるということは今までと異なった方式であります。そこには、当然、登録番号を記載しなければならないという大きな違いが出てまいります。そしてやはり、軽減税率制度が導入をされて税率が複数になれば、それごとの区分経理も必要になってくる。

 そういう意味では大きく変わるんですが、さまざまな対策を講じることによって、そして準備期間もかなりとることによって、それが円滑に進むような配慮が講じられているというふうに理解をいたしております。

 ぜひ、この辺、事業者の方々の中には大変不安を持たれている方も大勢いらっしゃいますので、かなり財務省の方からいろいろな資料も提示をされていて、そして周知に努めていただいておりますけれども、さらにきめ細かな対応をお願いしたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いをいたします。

 最後になりますけれども、ちょっと今度は違う話で、今回の改正の中では、外国人旅行者向けの消費税免税制度を拡充する、いわゆる金額を変更する、あるいは手続も簡素化することになっております。

 これは、インバウンド観光を振興していこうという意味において、そういう要請に応えたものだというふうに理解をしておりますけれども、どういった効果を期待しているのか、御意見を伺いたいというふうに思います。

大岡大臣政務官 上田議員にお答えを申し上げます。

 訪日の外国人旅行者の数は、二〇一二年、八百万人でありましたのが、二〇一五年には二千万人近くまでふえまして、その消費額は、年間約一兆円だったのが、二〇一五年は三兆五千億円までいくというふうに見込まれております。これは、外貨を獲得するという点で輸出にみなしますと、大体、日本全体の自動車部品の輸出とか鉄鋼の輸出に匹敵する金額になっております。

 このような流れを一層強化していくためにも、今般、消費税免税制度につきまして改正をさせていただきまして、具体的には、一般物品を購入する場合、これまで一万円超であったものを、免税下限額を消耗品と同様五千円以上としたものでございまして、こうしたことから、さらに外国人旅行者による旅行消費の経済効果を高めていきたい、さらには、地方に対する波及効果も狙っていきたいと考えております。

 以上でございます。

上田委員 終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 前回の続きの質問をさせていただきたいと思います。

 前回、軽減税率による減収額、国民経済計算からは〇・八兆円よりは大きいというのが佐藤主税局長の答弁でした。だけれども、財務省としては、財源が足りなくなったら困るので、家計調査を利用した一兆円の方が正しいんだ、そっちをとるんだという説明でした。だけれども、国民経済計算よりも家計調査を利用した一兆円の方が正しいという根拠は示されない、これで終わったというふうに思います。

 そうすると、実際の減収額がどうなるのかということですよね。これは、二〇一七年、この法律が成立した場合、それを実行してみないとわからないということなのかもわからないですけれども、一兆円が正しいという根拠が国民経済計算から証明されていない以上、実際の減収額よりも財源確保の一兆円の方が大きくなる、こういうことはあり得ますね。

麻生国務大臣 今御質問のありました、消費税の軽減税率制度の導入によります減収の見込み額の推計の話だと思いますが、家計が負担いたします一%当たりの消費税収というのを基礎に一兆円というのを割り出した、見積もったというものでありまして、消費税収というものは、実際に消費の支出に対応して現に負担をされておられます額でありますから、これを基礎とした減収見込み額というものはこれが一番妥当なものだ、基本的にはそう考えております。

宮本(徹)委員 前回の質問では、国民経済計算からいったら〇・八兆円よりはやや大きいだろう、そこまでは佐藤主税局長からもお話しありましたけれども、これと一兆円との整合性をつけられるだけのものはないというお話だったと思うんですよね。

 そうすると、実際の減収額がどうなるのかというのは定かじゃないわけですよね。そうすると、実際の減収額よりも財源確保しようという一兆円の方が大きくなるというのは、実際起こり得るんじゃないかということを聞いているわけです。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 前回いろいろ御議論させていただいたときを思い返しますと、まず、国民経済計算のお尋ねがございました。食料・非アルコール飲料の家計消費が四十一兆円なので、それをもとに減収の見込みを計算すると〇・八兆円だという御指摘で、それに対しまして私の方から、国民経済計算のカバー率に問題があって、外側に捉え切れていないゾーンがあるというお話でございますので、〇・八兆円よりも大きいのではないでしょうかと申し上げました。

 一方、私どもが一兆円と申し上げているのは、今大臣御答弁いただきましたように、やはり消費税収というのは、まさに家計が負担している税額そのものでございますので、実際の消費支出そのものから割り出してくることでございますので、国民経済計算のようにやや捉え切れていないものがあるというものに比べまして、極めて精度の高いものが計算の基礎になっているというふうに思っておりますので、私どもとしてはこれは極めて妥当な数字だというふうに思っておるわけでございます。

 そのもとで、今先生からのお尋ねでございますけれども、私どもの考え方としては、きちんと予定どおり二十八年度末までに必要な財源を、安定的な恒久財源を確保するというふうになっておるわけでございます。

 そういうことでございますが、それは私ども、例の百七十条の第一号に基づいてしっかりやりますよということが書いてございます。

 第二号には、この間御議論ございましたけれども、全体として二十九年度四月に軽減税率制度が導入された後、なお経済・財政再生計画に基づく中間評価というようなものがございます。そういうもとでさまざまな検討をしないといけないというときに、軽減税率制度の導入とか安定的な恒久財源を確保したという、そういう新しい事情もしっかり織り込んだ上で検討をする、こういうことも答弁申し上げたと思います。

 恐らく、今御指摘のあった点は、このような第二号における中間評価というような段階で具体的な実績が出てきたときに、二十八年度末までにしっかりと財源を確保するということをした後、さまざまな事情によって、結果的にそれがどういうふうに動いているのかどうかということも確認するという中の一つとして入ってくるんだろうというふうに思います。

 私どもとしては、税収の見積もりといたしましては非常に極めて妥当なものだという前提ではございますが、仮にというお尋ねでございますので、例えばそういうところでしっかり検証するということも可能かと思っております。

宮本(徹)委員 つまり、そこの二〇一八年度の中間評価で検証することができるという答弁ということは、逆に言えば、一兆円よりも実際の減収額の方が小さいということはあり得るということをお認めになったということでいいわけですね。

佐藤政府参考人 私どもの現時点における減収見込み額が一兆円ということは、妥当でございます。

 仮にというお話でございます。経済はさまざまな影響、変動がございますので、そのもののフォローアップというのは当然必要であろうというふうに思います。それが、今申し上げたような、例えば中間評価という場があるのであれば、その辺でもう一度評価をするということも一つの要素としてはあり得るだろうということでございますが、私どもとしては、しっかりと一兆円というものを確保する、そういう責任があるんだろうと思っております。

宮本(徹)委員 ですから、先週、佐藤主税局長も、国民経済計算からは一兆円にはならないというお話でした、〇・八兆円よりは大きいと。それは、いろいろなものを足したら、〇・八三とか〇・八四とか〇・八五とかあるかもわからないですよ。だけれども、一兆になるというお話ではなかったわけですよ。

 そうすると、どう考えても、実際の減収額の方が一兆円よりも小さくなるというのはあり得るかどうかということを聞いているわけですよ。必ずそうなるというふうに答弁してくださいと言っているわけじゃなくて、あり得るのかということを聞いているわけです。

佐藤政府参考人 前回やりとりがある中で、私どもは、一兆円と申し上げている計算の基礎が消費税収によるものであって、それは家計の負担そのものの額であるということから、極めて精度の高い計算の基礎になっているものだということは申し上げた次第でございます。

 それに比べれば、国民経済計算というのは把握されている範囲がやはり狭い、六十兆でしょうか、狭いということもございますので、その部分について、〇・八兆円よりもふえるはずだということまでは申し上げましたが、私どもとしては、極めて妥当なものとして一兆円と申し上げたつもりでございます。したがいまして、これをもとに作業していくということになるんだろうと考えております。

宮本(徹)委員 精度が高い、精度が高いと言いますけれども、一方で、家計調査は六割しか消費は把握できていないからというので、一番初めの予算委員会でも私への答弁をひっくり返したわけですから、それをもって精度が高いと言われても、全く説得力がないとしか言いようがないわけですよね。

 一兆円を確保するんだということを何度も繰り返されるわけですけれども、一兆円の財源を、私たちがいつも言っているような防衛費を削れだとか浪費型の公共事業を削れ、こういうことで捻出するんだったら別ですけれども、国民向けの予算のカットだとか国民向けの増税で、別の形で賄うということになりますと、もし仮に、そういうことも絶対ないとはおっしゃらないわけですけれども、一兆円よりも実際の減収額が小さいということになったら、軽減税率による国民への軽減額は八千数百億円程度だ、そして、国民への給付カットや負担増など、財源確保は一兆円だということになるわけですよね。

 こうなると、消費税増税に加えて、国民は二重に踏んだり蹴ったりになるということになるんじゃないですか。

佐藤政府参考人 繰り返しになりますけれども、一兆円ということについて、繰り返し、三つの基礎的なデータを比較したときに、消費税収をベースにするケース、国民経済計算をベースにするケース、家計調査をベースにするケース、それぞれ比べたときに、私どもとしては、それぞれ、特に家計調査あるいは国民経済計算においては、非常にカバレッジが小さいということは言えるんだろうということを申し上げたつもりでございますし、繰り返しでございますけれども、消費税収の方は、現に家計が負担している額そのものであるということの、ベースが極めて信頼性が高いという前提でございます。

 ただ、今後、百七十条第一号に基づきまして、二十八年度末までに歳入歳出両面にわたってしっかりと必要な財源を確保するということになります。その結果において、例えば、第二号の話でございますけれども、中間評価のようなときに、軽減税率を導入した、それに伴う財源を調達した、そういう新しい状況がどのような形で反映されているかということも恐らく重要な評価の一つのポイントになるんだろうと思います。

 その状況を見て考えるということで、それ以上でもそれ以下でもないということでございます。

宮本(徹)委員 国民経済計算の〇・八兆円よりやや大きいという数と、消費の六割しか把握していない家計調査も含んでのこの一兆円という額の差というのは、一千数百億円にもなるわけですよ。大きいですよね、一千数百億の差というのは。

 例えば、今年度、介護報酬の最大の引き下げをやられました。そのことによって、全国各地で介護事業所の倒産というのは、恐らく皆さんの地元でもあったと思うんですよ。私の地元でもデイサービスの事業所、幾つも閉鎖がありました。このときに削減した税金というのは一千百三十億円なわけですね。ですから、この一千数百億円の違いというのは極めて大きいですよ。

 ですから、国民経済計算の数と家計調査をもとにした一兆円という差、これを合理的に説明できないまま物事を進めていくということは、私は許されないと思いますよ。このまま行ったら、消費税は増税、そして、この間議論ありましたけれども、簡素な給付的措置は廃止、そして軽減額を上回る社会保障の削減ないしは新たな負担増というトリプルパンチということになる可能性もあるというのが、この間のこの数字の問題の議論の到達点だということを指摘しておきたいと思いますので、改めて、国民経済計算との違いをちゃんと説明できるように、私は求めていきたいというふうに思います。

 ちょっと法案の文言についてお聞きしたいんです。

 先ほど主税局長が述べられました、法案では、軽減税率の財源について、平成二十八年度末までに歳入及び歳出における法制上の措置などを講ずることにより、安定的な恒久財源を確保することとなっております。

 ちょっとお聞きしたいんですけれども、この二十八年度末までに確保するというふうになっているわけですけれども、これは、二〇一七年度予算案の段階では恒久財源が既に、皆さんの主張するのでいえば、一兆円確保されているということなのか。それとも、この間やられた法人税の先行減税、二年間の先行減税というのをやられて、三年目で税制中立だということをやられていますけれども、こういうやり方で先行減税的な財源の確保というのもこの文言の中には入っているんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 百七十条の第一号に書かれている趣旨でございますけれども、軽減税率導入に伴う安定的な恒久財源を二十八年度末に確保するということが、政府に対する義務という形になるわけでございます。

 恐らくそれは、二十九年度予算あるいは二十九年度税制改正の中でそれが具体化されていくということになるんだろうと思います。

 したがいまして、その中でしっかりと確保するということでございますので、軽減税率制度を例えば先行的に導入して、必要な恒久財源の確保を先送りするといったことは想定されていないということでございます。

宮本(徹)委員 つまり、法人税のときに行ったような先行減税的なやり方は、ないということを確認してよろしいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 財源は、二十八年度末の段階で、歳出歳入を見直しながらしっかりと確保するということでございます。

 まさにそれを二十九年度予算、税制改正で示すということでございますから、それがどういう形になるかということについては、二十九年度予算ないしは税制改正の過程でしっかりとお示しをするということになるんだろうと思います。

宮本(徹)委員 いや、今の答弁はよくわからないんですけれども、私が聞いているのは、先行減税的なものにはならないですよねということを聞いているんですけれども。

佐藤政府参考人 今の時点では具体的なことは申し上げられません。

 いずれにしても、検討をして結果をお示しするということでございます。

宮本(徹)委員 今の時点では具体的に言えないということは、先行減税的なものになる可能性もあるということでいいわけですね。確認します。

佐藤政府参考人 いずれにしましても、二十八年度末の段階で、予算、税制改正等を通じまして満額一兆円を確保するということでございます。それについて、それをどういう方法によってなされるかということ次第だと思います。

 私どもとしては、満額一兆円を確保するということが頭にある検討をしっかりと進めていくということでございます。

宮本(徹)委員 それは、満額一兆円を確保することを目指すけれども、満額一兆円が二〇一七年度で確保されているかどうかはわからない、一八年度からの満額一兆円は確保されているような税制改正になるかもわからない、こういう理解でよろしいわけですね。

佐藤政府参考人 私どもの提案しております第一号の考え方というのは、軽減税率導入に伴います財源について、二十八年度末までにしっかりと安定的な恒久財源を確保するということで、一兆円ということで満額を確保するということでございます。

 それが、繰り返しでございますけれども、歳入歳出がどういう形になるかということの中身によりまして、そこはどういう形になるかということはしっかりとお示しをしなければならないというふうに思っているところでございます。

宮本(徹)委員 何回聞いてもよくわからないんですけれども、ここは曖昧になっているという理解でいいのかなというふうに思います。

 それからもう一つ、文言についての関係でお伺いしたいんですけれども、安定的な恒久財源という言葉の意味がどういうものなのかなというのを確認したいんですけれども。

 昨年、与党税調の議論の中で、たばこ税の増税という話も報道の中ではありました。私たち、健康を守る対策としてたばこ税増税というのは、その対策としては賛成だということも表明してきておりますけれども、たばこ税増税の賛否は別にして、この税金の性格ということを考えたら、この法律で言う安定的な恒久財源というものには値しないのかなというふうに思います。

 喫煙率を見ても、一九九〇年は男性で五三%、直近は三二%。健康を考えて、吸う人はどんどん減っている。いいことだと思います。販売本数を見ても、この二十年で半減しているわけですよね。これからもどんどん減っていってほしいというふうに私は思っております。

 この間も何度かたばこ税を増税しましたけれども、増税したら、一旦税収はふえるけれども、その後漸減していくということが繰り返されております。だから、この事実を見ても、たばこ税というのはこの法律で言う安定的な恒久財源というのには当たらないという理解でいいんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今後、二十八年度末に向けて検討していくということでございますので、個別具体的にどういう項目がそれに当たるかということは今後の検討にまつということでございますが、安定的な恒久財源というときに、例えば恒久的という場合は恐らく制度改正を伴うものだということでしょうし、安定的という場合には、通常頭に浮かぶのは、景気動向になるべく左右されないというふうなことが頭にあるんだろうと思いますけれども、いずれにしても、その辺の特性をもしっかり確認をしながら検討していく必要があろうと思っております。

宮本(徹)委員 安定的というのは景気動向に左右されないんだということでありましたけれども、それだけだと、では、たばこ税はこの枠組みに入るということなんですね。

 本数はどんどん減っているわけですよ。私はとても安定的な税収とは言えないと思いますけれども、本数はどんどん減っている、毎年の収入、私もたばこ税のを見ましたけれども、増税しても漸減していくというのを繰り返していますよね。こういうのは安定的と言うんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 軽減税率制度導入に伴う財源をしっかり確保するということでございますし、それが安定的で恒久的だということが宿題になるわけでございますので、それぞれの候補となる選択肢というものがあるとすれば、それぞれについての特性のチェックというふうになされていくんだろうと思います。

 たばこはどうかということについてもその時点でしっかりと、もしもそういうことが俎上に上るのであれば、その趣旨に合うかどうかということを検討していくというふうになるんだろうと思います。

 今はちょっと仮定の話は差し控えたいと思います。

宮本(徹)委員 安定的で恒久財源に当たるかどうか、安定的かという角度で見るという御答弁でございました。

 先ほど、安定的というのは景気動向に左右されないということを言われましたけれども、景気動向に左右されない、あるいは左右される税目というのは何なんですか、具体的には。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先ほど、安定的というものを考えるときに、例えば景気動向に左右されるかどうかという視点があるのではないかと一例として申し上げましたので、その安定的をどう捉えるかということは、まさに検討の過程でしっかりと概念規定をしていくというふうになるんだろうと思います。

 それで、どういう税目があるかということについても、その中で、我々としては、もしも法案を通していただければ、しっかりとした対応をしていくということになります。

宮本(徹)委員 いや、今の答弁はおかしいですよ。法律として、法律の文言として安定的恒久財源を確保するとなっているのに、概念規定はこれからやっていくというのでは、法案審議にならないじゃないですか。例えばという一例だけおっしゃって、これが何なのかというのが全くわからない。これでは議論にならないと思いますよ。この問題は引き続き議論していきたいというふうに思います。

 続いて、たくさん質問通告して前回もできていないので、前に進みたいと思います。

 外形標準課税の問題についてお伺いします。

 消費税増税の一方で、今度の税制改正は、黒字の大企業は減税となる、外形標準課税の拡大ということで法人実効税率の引き下げが行われます。

 先週の委員会では、総務省から、赤字企業については一社当たり一千六百万の増税だということで、資本金ごとの負担増を示していただきました。きょうは、さらに詳しい資料を総務省に試算していただきました。配付資料にあるとおりです。

 大企業と中堅企業に分けて、課税所得ごとに外形標準課税の拡大でどういう影響が出るのか、総務省に、増税になるところと、あと一番減税になるところを紹介していただきたいと思います。

時澤政府参考人 お答えいたします。

 御指摘のありました今回の試算でございますけれども、これは、今回の外形標準課税の拡大によります一社当たりの負担増減につきまして、資本階級別及び所得階級別の課税標準で、平成二十五年度の課税実績をもとに機械的に試算をしたものでございます。

 平均で負担増となりますのは、欠損法人につきまして、資本金一億円超十億円以下の約四千八百社で平均三百万円の負担増、資本金十億円超の約千六百社で平均五千五百万円の負担増。利益法人につきまして、資本金一億円超十億円以下で所得一億円以下の約六千社で平均三百万円の負担増、資本金十億円超で、所得一億円以下は約八百社で平均千七百万円の負担増、所得一億円超十億円以下は約千五百社で平均二千九百万円の負担増となっております。

 一方、負担減となりますのは、資本金一億円超十億円以下で、所得一億円超十億円以下の約五千三百社で平均若干の負担減、所得十億円超は約千三百社で平均三千四百万円の負担減、資本金十億円超で所得十億円超の約二千社で平均六千七百万円の負担減というふうになっているものでございます。

宮本(徹)委員 つまり、資本金一億から十億円の中堅企業の場合でも、黒字でも課税所得が一億円ぐらいのところまでは増税となる。資本金十億円を超える大企業の場合は、赤字企業はもちろん、課税所得十億円ぐらいのところまでは平均すれば増税となるというのが今度の税制改正の中身です。

 ですから、本当にこれで得するのは、所得が十億円を超すところに集中しているわけですよね。とりわけ大企業の部分は、ここの二千社というのは、平均で六千七百万円の減税となるわけですよね。赤字企業や課税所得が小さいところは軒並み負担増になって、一部の大企業、内部留保をため続けている大企業のところに減税が集中するというのがこの総務省の資料でも明らかだというふうに思います。

 改めて麻生大臣にお伺いしますけれども、この資料を見ていただいて、外形標準課税の拡大で法人実効税率を引き下げても、投資や賃上げに回るということは、そういう説明はおかしいということになるんじゃないですか。

麻生国務大臣 これは宮本先生、たびたび御説明をしておりますけれども、この外形標準課税に限らず、赤字であろうと黒字であろうと、企業が持っております内部留保というものの比率がこの数年間の間に極めて高いものにはね上がっておるという実態というものがあって、去年の資料はまだありませんけれども、昨年、一昨年で約五十兆、正確には四十九兆何千億ということになっていますが、そのもの自体が私どもから見ると、これは税引き後の話ですから、税引き後その金がそこにずっと内部留保として残って、それが企業の中において賃金とか賞与とか、またその他の払うべきもの、例えば配当とか設備投資とかいうところに回らないという問題の方が一番問題なんだ。

 私どもはこれが一番問題なんだとずっと申し上げておりまして、労働分配率、組合用語かもしれませんが、労働分配率というものが下げ続けているというところこそが問題なんだ、私どもは基本的にはそう思っておりまして、これこそ企業としてもうちょっとちゃんとされるべきじゃないですかということをいろいろな会合で申し上げ続けておるというのが実態なんだと思います。

 この外形標準課税の話につきましては、今の総務省が出された資料のとおりなんだと思いますが、私どもは、こういったものをきちんとやっていただいて、なおかつそういった方々がきちんと配当なりなんなりに回していただくようにしていただかないかぬというのが一番の基本的な考え方であります。

宮本(徹)委員 全く今のは説明になっていないと思うんですけれどもね。一方では、黒字の大企業に対しては、内部留保をためている、だから実効税率を引き下げるから賃金に回せ、投資に回せ、こう言っておきながら、赤字企業に対しては、増税しておきながら、賃上げに回せ、投資に回せと。全く説明になっていないと思うんですよ、今の御説明というのは。赤字企業にこういう形で一部の黒字企業の減税のために増税していくというのは、麻生さん自身が今説明できなかったように、どう考えても賃上げや投資が進むということにはならない。

 朝も何かの政策について愚策だというお話もありましたけれども、本当に、法人実効税率を引き下げるために外形標準課税を拡大していくというのは、私は愚策だと。これで賃上げ、投資が進むどころか、賃下げ、リストラの誘因になりかねないということを指摘しまして、質問を終わります。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 私は、先日の予算委員会でも、軽減税率というものはまやかしであって、痛税感は緩和されるかもしれないが逆進性は解消されないこと、それどころか、むしろ痛税感の緩和を利用して、さらなる税率アップをしやすくするものであることを指摘いたしました。

 きょうは、この軽減税率に伴うインボイス方式の導入についてただしたいと思います。

 まずは大臣に確認いたしますが、なぜ今回、インボイス方式を採用するんですか。

麻生国務大臣 複数税率というもののもとでは、適正な税というものの確保というものをきちんとするためには、この制度の導入が必要だというのがまず第一です。

 いわゆる複数税率のもとでは、売り手は軽減税率で申告し、買い手は標準税率で仕入れ税額控除をするといった事態が発生するということがないように、売り手である課税業者がみずからの申告する税額また税率を記載したいわゆる内容証明、インボイスを発行して、これに基づいて買い手が仕入れ税額控除を行うという、事業者間の相互の牽制を確保するという仕組みが必要だというのが基本的なところであります。

宮本(岳)委員 このインボイス方式には、消費税導入時からさまざまな問題点が指摘をされてきました。

 国税庁の税務大学校のウエブサイトには、研究活動として税大論叢という冊子が掲載されておりますけれども、その四十二号、二〇〇三年六月三十日発行の分に、「消費税の複数税率化を巡る諸問題」という望月俊浩研究部教育官の論考が掲載されております。

 この論考によりますと、インボイス方式には、一つ、「事業者にとってはインボイスの発行及び保管、課税庁にとっては課税事業者の管理といった事務負担が増大する、」二つ、「免税事業者からの仕入れが控除できないために免税事業者が取引から排除されるおそれがあるという問題点がある。」こう指摘をされております。

 そういうふうに、これは国税庁のウエブサイトにも掲げてあるわけですけれども、これは事実か。この二つがインボイス方式の問題点であるということを財務省も認めるか。これは主税局長、いかがですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今の先生御指摘の税務大学校の論文でございますが、それは確かに存在するところでございまして、それはまさに個人の見解で述べているという立場で書かれているものですから、それはそういうものとして受けとめておるということでございます。

 一方で、これとは別でございますが、よくしばしば、インボイス制度についての懸念というか、そういうことが言われることがあるんだろうと思います。きょういろいろ御議論がこの場でもありましたとおり、例えば、免税事業者が取引から排除されるのではないかとか、あるいは、課税事業者に免税事業者が転換するということになれば新たな事務負担が生じるんじゃないだろうか、そういうふうな御懸念があるということは十分承知しているところでございます。

宮本(岳)委員 ここに、参議院の調査室が発行している「立法と調査」の三百七十三号、これはことし一月号です。参議院の調査室が出しているものですが、財政金融をめぐる諸問題、参議院財政金融委員会調査室の村田和彦さんの論文というのが載っていますけれども、私の紹介したこの二点が指摘をされてこの望月さんの論文が引用されていますから、今回、院で、参議院ですけれども、議論してくれというときの情報提供にもやはり引用されている論文だということは申し上げておきたいと思うんです。

 私がきょう聞きたいのは、この二点、事業者の事務負担が増大する、免税事業者が取引から排除されるおそれがある、この二つの問題点はどのように解消されるのかということであります。

 今回インボイス方式を導入するというわけですから、この問題点は解決できるということですか、財務大臣。

麻生国務大臣 複数税率と言われるもののもとでは、適正な課税というものを確保していくためには、いわゆるインボイスと言われる、適格請求書等保存方式とか、訳すとそういうことになりますので、みんなインボイスと言うことになりますので、片仮名は余り使いたくないんですけれども、こういった言葉が今はやっておりますので、インボイスというのが何となくみんなわかったようなことを言われますけれども、余りインボイス自体がわかっておられぬ方の方が多いので、これは、言っている本人に、言っている意味がわかっているのといつも聞くんですけれども。よく国会議員の中でおられますので、インボイス、インボイスとか言われる方ほどわかっておられぬなと、いつもそう思うので。

 どうしてもこれは適格請求書などを保存しておかないかぬというところが一番手間のかかることだというふうに理解されているんだと思いますが、御指摘のように、この制度を導入いたしますと、免税事業者からの仕入れというものにつきましては、仕入れ控除ができない、いわゆる仕入れ税額の控除ができないということになりますので、免税業者が取引から排除されるとの声があるということはもう承知をいたしております。

 また、免税事業者が課税を選択した場合には、他の課税事業者と同様に、この制度、インボイスの発行や納付税額の計算等々につきましても、対応をいただくという必要があろうと存じます。

 こうしたことを踏まえまして、免税事業者が課税事業者へ転換ということをやるかやらないかを見きわめながら、しっかり準備ができる期間というものを確保しておかないかぬと思っておりますので、この制度の導入は平成三十三年四月、約四年間の準備期間を設けるということにいたしております。

 同時に、インボイス制度の導入から六年間というものの措置として、その間に課税事業者への転換の可否を御自分で判断をしていただくようにするために、免税事業者からの仕入れについて一定の仕入れ税額控除を認めるということにいたしておりまして、仕入れから八〇%とか六〇%とかいろいろなやり方があろうかと思いますが、今のところ、税額控除の可能性を、最初の三年間で八〇、その後五〇というように一応考えておるんです。

 免税事業者が課税事業者へ転換をするという場合に、新たに生じます事務負担、これも事業者にとってまちまちなんだと思っておりますので、BツーBでやっておられる方とBツーCでやっておられる方は大分違うと思いますので、個々の事業者にどのような準備が必要か、これはよく考えていただく必要があろうと思いますので、まずは、免税業者を含めましてこの制度の周知徹底というものを図っていくのは、これが一番だと思っております。

 いずれにしても、今般の税制改正法案の附則におきまして、政府としては、この制度の導入によります事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証しつつ、かつ必要な対応を行うということとさせていただいておりまして、しっかりかつ丁寧にこれは対応していかないと要らぬ混乱を招くということを、私どもとしては断固避けたいと思っております。

宮本(岳)委員 そんなことで本当に問題が解決するのかということをきょうは取り上げたいんです。

 私は、一昨日、大阪で業者の皆さんから直接話を伺ってまいりました。

 印刷デザインの会社を経営している年配の経営者は、インボイスが始まったら課税業者を選ぶ人もいるだろうが、消費税は身銭を切って赤字でも払わなくてはいけない。後継者もいないし、そうなったら商売をやめる。こう言っておりました。

 アイスが人気の大阪のゼー六というお店があるんですが、ここのアイスはうまくて人気です。店の前でアイスを売りながら、店の中で喫茶店もやり、中ではコーヒーも飲み、アイスも食べられます。大阪でも有名な店であります。

 ここの店主は、消費税率が八%になったとき、一個百円のアイスもなかの値段を据え置きました。牛乳や材料の値段は上がっているので、利益を出そうと思えばその消費税分も転嫁しないといけないんですけれども、これはできなかったと。それでも大阪のお客さんは、笑い話ですけれども、ちょっと小さくなったんちゃうか、あるいは消費税の分、味が薄くなったんちゃうかと言わはると。

 その方が言うには、お客の反応で価格が決まるんだ。我々業者は、店に来てくれるか来てくれないかを肌で感じながら値段を決めるんです。業者というのは、働き分だって削って商売をやっているんですよ。最賃で換算したら時給二百円ぐらいですよ。こうも言っておられました。うちはもなかの持ち帰りもやっているが、八%と一〇%になったら中用と外用とレジを分けなきゃいけない。持ち帰りは八%らしいけれども、持ち帰るためのビニールや資材は一〇%だ。持ち帰りされた方が原価が上がると。

 そば屋さんは、八%になると出前がふえるだろう。しかし、出前をするために人を一人雇わぬといかぬ。麻生さんは出前料を取ったらええなんて言うたけれども、そんなことを大阪の商売でやっているところはない。できるのは大手の宅配ピザとか一部のことだ。大体、大阪市内は駐車もできない。すぐ駐車禁止のステッカーを張られて反則金だ。こういうようなことでございました。

 大臣、これが業者の実態だと思うんですよ。混乱することはもう明瞭です。そして、最初の印刷デザイン会社の人のように、そんなややこしいことになるんやったらもうやめやということになるのは、火を見るより明らかではありませんか。

麻生国務大臣 これは繰り返しになるかもしれませんけれども、複数税率というものをやろうと思いますと、適正な課税を確保するためには、いわゆるインボイスというものの導入というのは、これは必要なんだと思っております。

 他方、今いろいろ言われましたように、この導入に当たりましてはいろいろな影響が出るということはもう重々承知をしておりますが、しっかり丁寧に業者に対応を行っていくという、これは重要、これもはっきりしていると思います。

 したがいまして、今般の法案の附則において、政府におきましては、インボイス制度の導入にかかわりますいわゆる事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証しつつ、必要な対応を行うということにいたしておるところであって、この方針に沿ってしっかりと事業者へ説明等々を行っていかねばならぬのですが、おっしゃるように、今さまざまな御意見というのは、筑豊でも似たような話がいっぱい出たことは確かですが、出前のところは少し違っておりましたけれども、私の聞いたそば屋さんは二軒しかありませんので、ちょっとそこのところは大阪とは違っているのかもしれません。

宮本(岳)委員 実態は本当にさまざまで、意見を聞いてもらいたい、こういうことですよ。先ほどのゼー六の御主人は、麻生大臣にも聞いてもらいたい、国会議員の先生方にぜひ話を聞いてもらいたい、こういうふうにおっしゃっておりました。私は、財務金融委員会でも理事会では参考人質疑や公聴会もやろうという声も出ておるので、その際には真っ先にお声をおかけします、こういうふうに言っておきました。

 ここで委員長にお願いがあるんです。こういう声に応えるためにも、参考人質疑あるいは公聴会が必要だと私は考えます。この間の理事懇談会での合意の方向を踏まえて、ぜひとも開催していただきたい。

宮下委員長 理事会で協議をさせていただきたいと思います。

宮本(岳)委員 では、具体的に聞きたいと思います。

 財務大臣、一四年四月に消費税が八%に引き上げられたとき、規模が小さな事業者も、その引き上げ分、三%分、消費税の価格転嫁はきちんとできたという御認識ですか。

麻生国務大臣 消費税率の八%への引き上げ時における引き上げ分の価格転嫁につきましては、ことしの一月、中小企業庁が実施したアンケート調査があります。

 これによると、全て転嫁できていると回答した事業者が、事業者間取引で八五・八%、消費者向け取引で七一・八%おられました一方で、全く転嫁できていないと回答された事業者が、業者間取引で三・四%、消費者向け取引でも五・四%おられたものと承知をいたしております。

 いずれにしても、事業者の方々が転嫁ができずに消費税の負担を自分でのみ込むといったような状況にならないようにするために、引き続きこれは政府としては一丸となって対策に取り組んでいくということで、あのときも随分いろいろな形で、それまでやるのはやり過ぎじゃないか等々御意見がありましたけれども、強引にやらせていただいて結構その対応はできたので、あれをしていなかったらもっと多かったかなと思わないでもないんですけれども、いずれにしても、かなりいろいろな努力が必要だ、私どももそう思います。

宮本(岳)委員 きょうは公正取引委員会にも来ていただいております。

 公正取引委員会の調査では、転嫁の状況はどうなっていますか。

原政府参考人 お答えいたします。

 消費税の転嫁拒否行為に対しましては、迅速かつ厳正に対処しているところでございます。

 消費税転嫁対策特別措置法が施行された平成二十五年十月から平成二十八年一月までに、公正取引委員会及び中小企業庁において二千四百四十七件の指導を行っており、また、重大な転嫁拒否行為に対しては、公正取引委員会において三十二件の勧告を行っているところでございます。

 今後とも、消費税の転換拒否行為について、未然防止と迅速かつ厳正な対応を努めてまいりたいと思っております。

宮本(岳)委員 そういうのは本当に氷山の一角なんですよ。実態はそんな、大方いけているなんという状況では全くないですよ。

 私が一昨日に話を聞いてきた、難波の駅前でスナックを経営しているマスターの話でありますが、簡易課税で計算すると、売り上げ一千万円で税額は三十二万円になる。仕入れ値も上がっているし、不況で客足も本当に遠のいているという話でありました。客から三千円ぽっきりでと言われますと、その金額の中でやるしかない。中には三千円でビールを五本も十本も飲む人もいるけれども、消費税を上乗せするどころか、まけて自腹を切っている。断ったらお客に来てもらえなくなる。利益なんか出ていないですよ。消費税額三十二万円が丸々自腹ということになる。消費税は紛れもなく営業破壊税だ。こうその方はおっしゃっておりました。

 ゼー六さんがおっしゃるように、売り値は需要と供給で決まるんです。お客さんの顔色で決まるんです。激しい価格競争がある。しかも、そこに軽減税率が導入されて、インボイスが発行できなければ取引から外れるということになれば、免税業者はまさにどんどん取引から排除されていくのではないか。

 財務大臣、それは明瞭じゃありませんか。大臣、排除されるんじゃありませんか。

麻生国務大臣 これはたびたび御答弁を申し上げているように、BツーBの間で起きる可能性というのはこれは十分にあり得るんだと思っておりますので、消費者との直接の場合よりBツーBの間で起きる可能性が高いという点は、もう宮本先生がおっしゃるとおりなんだと思っておりますので、先ほども申し上げましたように、いろいろな形での支援というものと、時間をかけてやっていくということをやっていかないかぬのだと思っております。

宮本(岳)委員 この免税業者の排除問題というのは、これは、決して一握りの、少数の業者の話ではないんです、おわかりだと思いますけれども。日本の伝統的な産業構造または商慣行に基づいて、我が国には何層にもわたる分厚い中小零細業者が存在します。ですから、大臣がおっしゃるBツーBというものが、零細な業者がそのBツーBの中に入り込んでいるというのが日本の特徴なんです。

 これも、きょうは中小企業庁に来ていただいております。改めて確認いたしますけれども、分厚い中小零細業者が存在すること、それが幾層にもわたって間に介在しているということは、我が国にとっては非常に重要なことであって、我が国経済の強みだと私は思いますが、そうですね。

豊永政府参考人 お答え申し上げます。

 中小企業、小規模事業者は、物づくりから卸、小売業やサービス業といった広範な業種に及び、産業活動や国民生活に必要な多様な製品やサービスを提供する役割を担っていると認識しております。

 また、この中小企業、小規模事業者は、事業者数では九九・七%を占め、雇用者数で約七割を担っております。

 このように、中小企業、小規模事業者は、多種多様な活動を通じて地域の経済や雇用を支える重要な存在であると認識しております。

宮本(岳)委員 答弁のとおりです。既に小規模企業振興基本法というものもつくられて、そこでもしっかり位置づけられているわけです。

 そこでお伺いします。これは財務省ですけれども、平成二十六年度で課税事業者数、免税事業者数の推計はそれぞれどのようになっておりますか、主税局長。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 課税事業者数でございますけれども、国税庁の二十六年度の統計年報によりますと、申告ベースで約三百十二万社、個人、法人を入れてでございます。

 それから免税事業者数でございますが、消費税の申告をいたしませんので正確な数字を把握することが難しゅうございますけれども、総務省の国勢調査等をもとに機械的に試算をいたしますと、約五百十三万社程度と推計しております。

宮本(岳)委員 課税事業者三百十二万、免税事業者数五百十三万、合計八百二十五万事業者のうち免税事業者が五百十三万ということですから、六割以上を占める事業者、この六割以上を占める事業者にかかわる大問題なんですね。

 冒頭に紹介した望月俊浩研究部教育官の論考では、紹介した二つの問題点を指摘した上で、「特に免税事業者の取引排除の問題はインボイス方式の大きな問題点である。インボイス方式を採用する場合はこの問題をやむを得ないものと割り切ることとなる。」という指摘がこの論文の中に出てまいります。

 今回、二〇二一年度からインボイスを導入するということについて言えば、まさに望月さんが言うとおり、この問題を、取引排除が起こってもやむを得ないということで割り切る、つまり、免税業者はもう潰れてもよいと割り切るということになるのではありませんか、財務大臣。

佐藤政府参考人 今御指摘の論文でございますけれども、論文の中には「割り切る」という記述があるようでございますが、先ほど申し上げましたように、個人的な御見解であるというふうに思います。

 一方で、インボイス制度というのは、複数税率制度のもとで、適正課税を行うためになくてはならないものであるということでございます。

 ただし、それが、今まで御議論ありましたように、取引排除の懸念とかといったような問題を含めまして、免税事業者の事業に大きな影響を与えるということも十分肝に銘じなければならないということで、それに対応した制度設計、あるいは運用での対応といったものもきちんと丁寧にやっていく必要があるものだろうと認識してございます。

宮本(岳)委員 私は余りまた聞きをしたくない方なんですが、では聞きますけれども、今おっしゃった取引排除の懸念、これは一体、具体的にどのように解消されるのか。どうするんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 さまざまなケースがあると思いますけれども、一つは、今、排除されるということですから、仮にインボイス的なものが出せないということであれば、取引をやめますよとかいうようなこともひょっとして起こるのかもしれません。いろいろなケースが想定されるんだろうと思いますが、一つの例として申し上げます。

宮本(岳)委員 いやいや、だからそういうことが起こる懸念がある、それを解決するのにどういう策があるんですかと僕は聞いたんですが。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 そういう懸念があるということでございますので、やはりしっかり時間をかけて、しっかり、インボイス導入までの間の準備あるいはそれの後の仕入れ税額控除に伴う一定の特例措置というようなものも工夫しながらそうしたものに対応していくというふうに、制度設計として提案申し上げているところでございます。

宮本(岳)委員 昨日も維新の党の井坂議員が質問していました。免税事業者の排除というこの問題は、経過時間、準備時間があれば解決するという問題ではありません。

 免税事業者が準備期間を経て免税事業者でなくなるとすれば、レジなどを導入して課税業者になるか、最初に紹介した大阪の業者のように廃業するか、どちらかであります。免税業者が免税業者である限り、インボイスは発行できません。そのインボイスが発行されなければ、そこから仕入れた事業者は仕入れ税額控除が受けられないわけですから、その免税事業者は取引から排除されます。

 これは、準備時間を置こうが経過期間を置こうが、インボイスを発行できる課税業者になる以外に解決しようがないんですよ。あるいは、競争の中で淘汰される以外ないんですよ。

 財務大臣、この制度のこの問題点というのは、まさに、我が国八百万事業者のうち六割以上を占める中小零細の免税業者にかかわる問題ですけれども、結局はこれは、強制的に課税業者になるか、あとはもうやめるか、こういうことになるんじゃないですか。時間で解決しますか。

佐藤政府参考人 答えさせていただきます。

 一般的に、やはりそういう排除の問題とかいろいろな問題は出てくるんだろうと思いますけれども、実際、それでは個々の免税事業者がどういう形の人たちを想定するかということもあるんだろうと思います。BツーBであるのかBツーCであるのか、そういう事業かどうかによっても影響してくるんだろうと思います。BツーBだと比較的そういう問題が起こりやすいかもしれませんけれども、BツーCだとそういうものとは違う局面があるかもしれませんし、あるいは取引相手がどのような事業者であるかとか、いろいろな事情があるんだろうと思います。

 ただ、我々といたしましては、こういう制度を新しく導入することを提案しているという以上、やはり事業者が、インボイスについて自分の事業にどのような影響を与えるのかというものをちゃんと見きわめる、それから、課税転換する場合、本当にそれが必要なのかどうかを判断する、それから、課税転換が必要と判断した場合には、区分経理に伴う準備がどういうものが必要かということをしっかりと考えていただくというようなことが生じてくるということは、制度変更でございますので、やむを得ざることとしては起こりますので、それに対してしっかりと対応していただけるような経過措置なり、あるいは制度の周知徹底というものに最大限努めていくという立場でございます。

麻生国務大臣 先ほど言われた三百万社、五百万社、合計八百万社のうち、払っていない方の方が五百万社というところですけれども、これは、一番の問題はその中の内容で、BツーBの人がその五百万のうち何百万社いるかであって、BツーCの方にとっては、これは基本的には免税業者のままでいるという選択だとか十分あり得るんだと思っておりますので、その内容の詰めがちょっとよくわかりませんので、五百のうちの内訳がBツーCかBツーBかというところがちょっとわからぬなという感じがしますけれども、いずれにしてもBツーBの方々にとっては、そういったことは十分にあり得ると思っております。

宮本(岳)委員 この議論をずっとやっていきますと、結局、だから、主税局長の答弁を聞いても、準備期間を置いて、そして課税業者になるための準備期間は十分とっていますという話であって、免税のままでいける具体的な手だてというものは何らないわけですよ。BツーCなら大丈夫でしょうという話以外ないわけですよ。

 それで、今回、法律の附則百七十一条二項、消費税の軽減税率制度の導入後三年を目途に検証して、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他必要な措置を講ずる、こういう一文が入っているからということも言われました。

 では、この必要な措置というのは、免税業者をインボイス導入により廃業や課税業者に強制的に追いやるということがないようにするための措置を講じるというふうに考えていいんですか、大臣。そういうように理解していいですか。

麻生国務大臣 これは現実問題として、その三年なり四年なりの時間の間にどういったことがいろいろ起こるのか、ちょっとまだ私どもとして全部が全部予測できているわけではありませんけれども、そういった意味で私どもとしては、なるべくそういった形で、強制的にやらされる、そんなに一千万も売れていないのに課税業者にされるというのはちょっと納得できないというところもいっぱいおられると思いますので、そういったところをどうするかというのは、ちょっと別の問題として考えなきゃいかぬと思います。

宮本(岳)委員 時間ですから終わりますが、絶対に、インボイスの導入によって廃業したり、その意に反して無理やり課税業者にならざるを得ないといった状況を生んではならないと思うんです。しかし、そういう方法がそんなに簡単にあるぐらいなら最初からやれということになるわけです。

 時間を置こうが、徐々にやろうが、免税事業者として必死に頑張っている五百万の小規模事業者を切り捨てることにつながるインボイス方式はきっぱり撤回する。何よりも、軽減税率の導入などではなく、消費税の増税こそ中止することを強く求めて、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 私で最後でございますので、もうしばしおつき合いいただきたいと思います。

 まず、先ほどの宮本委員のお話を聞いていて、やはりこの点もずっと言われているんですけれども、軽減税率というのはかなり急場でおつくりになった制度だなというのを強く感じます。

 そういった意味で、財務省さんもずっと軽減税率に後ろ向きだったわけで、去年の委員会質疑の議事録を見ていますと、大臣自身も後ろ向きだったはずの軽減税率が、急遽、恐らく公明党さんの御意向が入って今回の軽減税率になったということで、先ほどの宮本委員の質疑においても、やはりインボイス制度、では、免税事業者の方はどうするんだという点、今の御回答でも明らかになっているように感じませんし、もう一つ、前回の質疑でも、私、これはおかしいとずっとお話しさせていただいている新聞の軽減税率の適用についても明確な線引きのお答えがないなというのが、伺っていて感じるところです。

 ただ、おかしい、おかしいと言っているだけでは前に進みませんので、そういった意味で、今回、きょうは時間が二十分ほどでございますので、少し細かい部分になってくるんですが、軽減税率の適用における線引きについて、事務方の方メーンで構いませんので、細かくお伺いしていきたいと思います。

 財務大臣、事務方の方にお伺いしますけれども、聞いておいていただいて、後でお話は伺いたいと思います。

 まず、軽減税率を適用するかどうかの判断基準について明確にお伺いしたいと思います。過去のいろいろな委員会、予算委員会、この財務委員会の答弁を伺っていますと、恐らく四つほど基準があるんじゃないかと思います。

 一つは、日々の生活において消費、利活用の状況がどうであるかという点が、軽減税率の適用をするかどうか。そして、税の逆進性があるかどうかというのが二つ目。合理的かつ明確な線引きができるかどうかという点が、適用できるかどうかの三つ目。四つ目、最後が、社会保障財源に与える影響が大きいか小さいか。余り大きいと軽減税率としては難しいんじゃないかというのが方向性としての答弁だったと思うんです。

 この四つの基準を総合的に勘案して軽減税率の適用の線引きをお決めになった、そして今後もなる、この基準が大事になってくるということでよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 そのとおりです。

丸山委員 非常に明確にお答えいただきました。ありがとうございます。

 それをまず大前提にお伺いしていきたいと思います。細かい名目になってまいりますが、今後の議論において非常に大事でございますので、お伺いしていきたいと思います。

 先日も少しお伺いしましたが、お酒がなぜ今回の軽減税率で適用除外とされているかという点で、恐らく、一つ目に申し上げました、日常における消費、利活用状況の頻度が余り高くないんじゃないか。要は、飲んでいる人と飲んでいない人が結構どちらもいるんじゃないか。そして、二十歳以上という年齢で区別されているがゆえにその対象も広いとは言えないんじゃないかというお答えがありましたが、酒を除いた理由について、できる限り客観的な数字等も踏まえて言っていただけると助かるんですけれども、役所の見解をお伺いできますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 酒類のお尋ねでございます。

 二点ございまして、酒類は、法律上、未成年の飲酒が禁止をされているということ、それから、データでございますが、平成二十六年度の国民健康・栄養調査結果というのがございまして、その中で、飲酒習慣のある者の割合が二十以上で男性で三五%、女性で八%、こういう数字がございます。

 日々の生活の中で幅広い人が消費云々ということとの関係でこれを捉えて外したということでございます。

丸山委員 非常に明確でわかりやすい御答弁でした。

 そもそも、日常生活における消費、利活用の状況として、多くの人がやっているとは限らない。特に、男性の場合は三五%、女性は八%がという数字も今出していただきましたし、また、年齢で法律上も区分されているという明確な答弁です。

 次に、外食が今回除かれていますが、外食を除かれた理由についてお伺いしたいんです。

 これも、以前の御答弁を思い返してみますと、日常における消費、利活用の頻度が高いと言えるかどうかということ、そして奢侈性に関して少し述べられたような気がします。そういった意味で、逆進性という点でも関係してくるのかと思いますが、明確に、できるだけ客観的に、外食を除いた理由をお答えいただけますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 外食につきましては、家計調査に基づきまして調べますと、収入に占めるその支出額の割合という形で見ますと、五分位で見たときでございますが、最も収入の多い第五分位の世帯は比率で二・四%程度、収入の最も少ない第一・五分位世帯は四・三%というふうになってございます。

 他方、酒及び外食を除く飲食料品ということで、現在御提案申し上げている軽減税率の対象品目と比較をいたしますと、その範囲でいきますと、第五・五分位は七・二%、第一・五分位は二〇・一%という形になっておりまして、外食の消費税負担というものが、相対的でございますけれども、逆進性がむしろそれよりも劣るということだろうと思います。

 それには、恐らく、前回御答弁申し上げましたけれども、外食の態様として、非常に安価で食べられる定食屋さんと比較的高級なレストランというふうな、いわば幅がかなりあるというふうなことも背後にはあるんだろうと思っております。

 したがいまして、ここの判断は、逆進性に着目して、いわゆる通常の食品に比べてそれが劣後するという判断でやったということでございます。

丸山委員 前々からお話ししているように、ここまではある程度、軽減税率の適用の部分に関しては私はそもそも反対ですけれども、一方で、もしこの場合、今回適用するとおっしゃるなら、酒と外食を除くというのは今のお答えでも明確にわかるところなんですが。

 少しお伺いしたいのは、通告とは項目が一つずれるんですが、電気、ガス、水道といった基礎的なインフラの部分に関して、今回新聞が入っているわけですけれども、これよりも先にこれらをやることが、それこそ痛税感の緩和もしくは低所得者の方に対する対策として適当じゃないかということに対して、国民の皆さん、多くの方がそのとおりだと、地元でお伺いしていてもおっしゃるんです。

 ここを除いた理由について、たしか社会保障財源に与える影響がでかいと、財務大臣が前回の答弁のときに、これは何千億になるんですかね、計算はさせていないけれどもというふうにおっしゃったんですけれども、これは、計算していないというのは、逆に言えばそれが大きいというのは言えないと思うんですけれども、その大枠でもわかっていらっしゃると思うので、財務省として、これらを除いた理由を明確に客観的に教えてください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 今回、軽減税率の対象品目を選定するに当たりまして、先生とのやりとりの中で、四つの重要なポイントというのを一つのメルクマールとして選定してきたわけですが、やはり非常に重要なのは、生活の一番基本である食というところに着目をいたしまして、飲食料品とするというところがいわばど真ん中にあるということです。

 もちろん、それとの関係で、外食、酒類をどうするかということで若干の除くという措置を講じておりますけれども、やはり人間の生活の一番基本中の基本は食であるというところで考えているということがまずスタートでございます。

 そこからスタートいたしまして、その上にさらにつけ加えるべきものがあるだろうかということに恐らくなってくるんだろうと思います。そのときには、さらに、先ほどからも御指摘のあります四つの視点というものが、いわば飲食料品に加えてやる意義があるかどうか、やることに問題がないかどうかとかいうことに、さらにいわばハードルが上がるというか、そういうチェックを入念にしなきゃならぬだろうという感じだろうと思っております。

 その上で申し上げますと、電気、ガス、水道といいますのは、おっしゃいますように生活必需品的でございますので、いわば不可欠なサービスであるということはもう言うまでもありませんし、食料品ほどではありませんけれども一定の逆進的な面がある、逆進性を持っているということも否めないところでございます。

 ただ、この三つ、電気、ガス、水道ということになりますと、これはやはり認可などに伴います料金が公共的なものである、そういうサービスであるとかいう面と、それから、公共料金を全部に広げるというところまで恐らく行き着くんだろうと思います。電気だけとかガスだけとか、なかなかならないことだろうと思います。電気、ガス、水道全部ということで公共料金全体というふうになりますと、目の子のざっとした試算で恐らく四千億ぐらいの減収になるというのが私どもの感じでございます。

 したがいまして、一兆円の減収に加えて四千億の減収ということをどう考えるかということもあろうかと思っております。ここは、税と社会保障の一体改革の実現ということとのいわばバランスの問題もあるということもあろうかと思いまして、そういう理由も含めまして今回は見送っているということでございます。

丸山委員 線引きが明確にしづらいので全部入ってくる、そうすると社会保障財源を脅かすような額になるというのが今のお答えだと思います。

 インターネットの通信というのも今のこの社会において重要なインフラとなっていると思うんですけれども、これを除いた理由というのは今と同等ということでよろしいんでしょうか。具体的にお答えください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 基本的な頭の整理の仕方は、今申し上げましたように、食料品をまず中核にした上で、それにつけ加える必要があるかどうかそれをチェックするという姿勢でございますが、インターネットの通信料、確かに我々の生活回りではもうかなり一般化していることは事実でございますけれども、それでは、携帯電話の料金との関係はどうなるんだ、ケーブルテレビとの接続料はどうなるんだと、これがまたどんどん広がるという世界もございます。この辺の線引きの難しさというものは出てくるんだろうと思いまして、今回は外れているということでございます。

丸山委員 先ほどからの答弁で、線引きが難しいという御答弁がございましたけれども、しかし、政府が出してきた案では、現に新聞は線引きを、しかも、週二回以上発行されて定期購読の宅配がされている新聞だと、明確に切りにくいところを切っている新聞があるのにもかかわらず、ほかのものは切りにくい、切りにくいと言って排除しているという、そこに対してすごく矛盾を感じるところなんです。

 そういった意味で、ヨーロッパでは書籍、雑誌も軽減税率、新聞と重ねて入っているところが多いのに、どうして書籍、雑誌を除いているんですかというときに、この間の予算委員会では、麻生大臣は、暴力表現とかエロ、グロといった表現が雑誌や新聞は排除できないというお話がありましたけれども、しかし、新聞を見ても、現に夕刊紙、スポーツ新聞ではそういった表現があるような、しかも今回の軽減税率の適用対象になる新聞、例えばサンケイスポーツさんだとか、スポーツ紙で宅配しているようなものがありますので、現に入っているわけです。

 そういった意味で、書籍、雑誌がどうして入らないかというところをお伺いしたところ、まず一つ、逆進性として、お金を持っていらっしゃる方の方が多く買うものが書籍、雑誌なので、逆進性が余りその分なくなってくるんじゃないかというところと、もう一つ、その時々で関心があって購入されるもの、嗜好性があるのでということなんですけれども、ここ、なぜ書籍、雑誌を省いたのかというのを端的にお答えいただけますか。それはエロ、グロ、暴力というのは入っているんですか、入っていないんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 書籍、雑誌につきましては、いろいろ観点がございます。

 一つは、御指摘ございましたように、逆進的かどうかということでございます。これについては、例えば、家計調査に基づきますと、支出の割合でございますけれども、第五・五分位の世帯が〇・二%程度、第一・五分位であると〇・四%程度ということで、大体イーブンという感じでございます。

 それから、書籍、雑誌については、やはり何が書籍、雑誌かという明確な定義がないというところがございます。パンフレットの類いからしっかりとした学術書まで非常に広く含みますので、ここらあたりをどう考えるかという問題がございます。

 それから、一つやはり重要な点は、例えばフランスあたりと比べまして、適切に有害図書を排除するという問題ができるのか。フランスの例などを見ますと、それに対する一つの立法というのがありまして、有害図書を排除する仕組みがございますけれども、日本の場合には、必ずしもないということも含めましてまだまだ未熟な段階ではないだろうかというのが書籍の扱いでございます。

 新聞につきましては、定義でございます、一応税法上は、ちょっと申し上げますと、「一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞」、こういう書き方をしてございますが、基本的には、独禁法にかかわる規定などを参考にこのような規定を置いてございます。長らくの規定でございますので、ある程度社会通念上の共通のイメージというのができる規定ではないだろうかということで、これを定義として使わせていただいているというところでございます。

丸山委員 大臣が予算委員会でおっしゃった、暴力とかエロ、グロといった表現というのは、この適用するかしないかに入っているんですか、判断基準として。明確にお答えください。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞につきまして、今回は新聞の定期購読料という形になってございます。これは、イメージといたしましては、一番中心的な供給のされ方は宅配という形になります。駅売りは対象にならないという整理でございます。私どもいろいろ調べますと、同じような新聞でも、駅売りと宅配では中身が一部つけかわっておるというような実態もございます。宅配にふさわしいような販売の仕方もしておるということも間接的にはございます。

 いずれにしましても、宅配という定期購読料に係る部分ということで、スタンド部分は入らないという整理をさせていただいております。

丸山委員 明確ではないんですけれども、そういった表現が今回の判断に入るのかどうかというのはどうなんですか。明確に、入るのか入らないかでお答えできると思うんですけれども、端的に。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 定期購読料という形で捉えたということは、まさに家に届くということに焦点を持っているわけです。それは、日々の生活において情報がしっかりと届くというところに着目した概念として、宅配をイメージして、定期購読料という形にさせていただいているということです。

丸山委員 局長、答えていないですよ。

 要は、表現の内容によって今回の適用されるかされないかということの判断に入っているのか否かというのを聞いている。イエスかノーかでわかると思います。

佐藤政府参考人 販売実態におきまして、今申し上げましたように、駅売りが外れて宅配の分が入るという中には、そうした暴力であるとかエロ、グロ的な要素が極小化されているということを念頭にそういう定義を置いたということはございます。

丸山委員 宅配だからそれが省かれるかどうかというのは一つ議論があると思います。

 時間がありませんのでまた次の委員会でもお伺いしていきたいんですけれども、最後、お伺いしたいのは、今回、週刊の新聞は除かれているんです。週二回以上刊行されている新聞は今回の軽減税率の適用内です。

 この新聞の話、例えば、ほかの政党さん、余り触れられない政党さん、御自身で発行されている新聞とか、また応援されているところが発行されている新聞がある政党さん、これは余り触れられませんけれども。

 でも、しかし、なぜ新聞だけこれに入っているかというのは、非常に今後の軽減税率、ずっと続く議論の中で大事なところなんですけれども、新聞が今回軽減税率に入っている理由の中に、幅広い層に日々読まれているというところがあると思うんですけれども、今回、これなのになぜ週刊新聞が除かれて、週二回刊行の新聞が日々に入ったのか、その判断基準、お答えいただけますか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 新聞につきましては、幅広い層に日々読まれているというところを一つポイントにしたということでございます。典型的には、恐らく日刊新聞が想定されるところでございます。毎日宅配されてくるという新聞が典型的事例でございます。

 ただ、地方のさまざまな新聞の事情とかいうふうに見ますと、やはり毎日ではなくて一日置きであるとか、そういうふうないろいろなこともございますので、基本は日刊新聞ということをベースにしながら、どこまでそれに類したものとして考えるかという頭の整理をしたところでございます。

 月ごととか二週間に一回というふうになりますと、この辺は日々情報が渡ってくるというコンセプトとの関係で、ここは線を引くべきであるという判断で、ぎりぎり週二回というふうにさせていただいたということでございます。それは、地方紙の発行状況なども総合勘案した結果でございます。

丸山委員 もう時間がないので終わりますけれども、そうすると、例えば、赤旗さん、日曜日バージョンは入らないけれども、普通の赤旗さんは入るみたいな、同じ媒体であるのにそれによって変わってくるみたいなこともあるようなおかしな状況が生じると思います。

 もう時間がなくなりましたので続きは次の委員会でお話しさせていただきますけれども、この件、やはり少し判断の部分が曖昧だなというのを感じましたので、引き続きやらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、明二十四日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時七分散会


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