衆議院

メインへスキップ



第10号 平成28年3月1日(火曜日)

会議録本文へ
平成二十八年三月一日(火曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    井上 貴博君

      井林 辰憲君    越智 隆雄君

      大岡 敏孝君    大野敬太郎君

      勝俣 孝明君    國場幸之助君

      助田 重義君    鈴木 隼人君

      瀬戸 隆一君    田野瀬太道君

      竹本 直一君    中山 展宏君

      根本 幸典君    野中  厚君

      福田 達夫君    務台 俊介君

      宗清 皇一君    山田 賢司君

      落合 貴之君    玄葉光一郎君

      鈴木 克昌君    前原 誠司君

      宮崎 岳志君    鷲尾英一郎君

      上田  勇君    斉藤 鉄夫君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    亀井 静香君

      小泉 龍司君

    …………………………………

   内閣総理大臣       安倍 晋三君

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   財務副大臣        坂井  学君

   内閣府大臣政務官     高木 宏壽君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   農林水産大臣政務官    加藤 寛治君

   政府参考人

   (財務省主計局次長)   美並 義人君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (農林水産省大臣官房参事官)           橋本 次郎君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月一日

 辞任         補欠選任

  大野敬太郎君     青山 周平君

  田野瀬太道君     瀬戸 隆一君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     大野敬太郎君

  瀬戸 隆一君     田野瀬太道君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第七号)

 所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出第一六号)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及び所得税法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 両案審査のため、本日、政府参考人として財務省主計局次長美並義人君、主税局長佐藤慎一君、農林水産省大臣官房参事官橋本次郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより内閣総理大臣出席のもと質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古川元久君。

古川(元)委員 民主党の古川元久です。

 まず、きょうは総理中心にお伺いしたいと思っていますけれども、総理は二〇一四年の十一月に消費税の引き上げを延期した際に、来年春、再来年の春、そしてまた翌年の春、所得が着実に上がっていく状況をつくり上げてまいりますというふうにおっしゃったんです。

 総理がいつもおっしゃっている、経済の好循環を実現する、そのためには、やはり企業業績が上がって、そして賃金が上がり、消費がふえる。総理がいつもおっしゃっているその好循環が実現しなきゃいけないと思うんですけれども、そして、それを必ず実現するというふうにおっしゃっているんですが、ことしに入っての円高、株安の進行で企業業績の先行きに黄色信号がつき始めて、どうもこの春の賃上げ、かなり慎重な動きというものがいろいろなところで見えてきております。

 また、マイナス金利の導入でその影響を大きく受けるんじゃないかという金融機関においては、収益悪化を見越して、そもそも、組合の方もベア要求を見送るような動きが広がっている。

 このままの状況ですと、総理がおっしゃったような、去年の春、そしてことしの春、そして来年の春、着実に所得が上がっていく、賃金が上がっていくというような状況はなかなか進まないんじゃないかと思いますが、総理はどのように見ていらっしゃいますか。

安倍内閣総理大臣 世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、我が国の市場でも変化が見られます。これは、中国の景気減速への懸念や原油価格の低下、米国の利上げの動向等、海外要因が背景となります。

 しかしながら、我が国の実体経済を見れば、もはやデフレではないという状況をつくり出す中で、日本経済のファンダメンタルズは確かなものと認識しております。

 今後は、より力強い賃金上昇の実現を促すとともに、消費の底上げ効果が発現するよう、最低賃金の引き上げも含め、各種政策にしっかりと取り組んでいく考えでありますが、ことしの賃金については、賃上げにしっかりと取り組んでいただきたい旨、経済界にもお願いをしているところでございますが、名目三%成長への道筋も視野に、収益が拡大した企業に対し、前年を上回る賃上げを期待し、前向きな検討を呼びかけるとの方針が示されたところでございます。

 また、最低賃金についても、今後、年率三%程度を目途に引き上げ、全国加重平均が千円となることを目指していく考えでございます。

古川(元)委員 では総理、予想どおりちゃんと総理が考えているように賃上げが進んでいく、そう考えているというふうな認識でよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 これは、ことしの今まさにこの四月に向けて春闘が行われるわけでございますが、その成果を注視していきたい、こう思っている次第でございますが、先ほど申し上げましたように、しっかりと経済界にも対応していっていただきたい、このように思います。

古川(元)委員 では、もしその結果を見て思わしくなかった場合はどうするんですか。

安倍内閣総理大臣 消費税との関係におきましては、従来から答弁をさせていただいておりますように、リーマン・ショックあるいは大震災級の出来事がない限り、来年、予定どおり消費税を引き上げていく考えでございます。

古川(元)委員 私は消費税について聞いているわけじゃないんです。総理は二年前に、経済の好循環を実現するためには、来年も再来年も、そしてそのまた翌年もと言っているんですよ。

 私が聞きたいのは、総理が思っているような賃上げがこの春されなかった場合、ではどうするんですか、では、来年の賃上げに向けて何か手を打つんですか、どうするんですか、そこを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 仮定の質問にお答えすることは困難でございますが、いずれにせよ、企業は、過去最高の収益を上げている中においてしっかりと賃上げを実現してもらいたい、このように期待をしております。

古川(元)委員 いや、仮定の質問じゃないですよ。こういう場合にはどうするんですかということですよ。今の状況の中でいえば、そういった場合に対してどう対応するかということをきちんと考えておかなきゃ、今はそういう状況になっていく可能性が非常に高いんですから。賃上げ、そんな総理が思っているように進まないと思いますよ。それができなかったら、それが実現しなかったら好循環なんかならないんですから。そこのところを強く指摘をしておきたいと思います。

 次に、経済の好循環の実現のためには、賃金が上がって、当然、その後には消費がふえるという消費拡大につながらなきゃいけないわけだと思うんですけれども、ここのところ、消費税引き上げによる駆け込み需要とその反動減からなかなか景気が戻ってこない。その大きな要因が、やはり個人消費の伸び悩みだと思うんです。その個人消費の中でいいますと、今どんどん高齢者人口がふえている中で、やはり、個人消費に占めるこの高齢者の消費の割合というのは大きくなっているわけであります。

 したがいまして、個人消費が伸びていくためには、高齢者の消費がやはり伸びるような状況をつくっていかなきゃいけないと思うんですが、リタイアして年金生活に入っているような高齢者の人たちにとってみますと、今まで蓄えてきたもので、これで残りの人生を生きていくということになるわけです。こういう人たちにとっては、今回のマイナス金利、これで預金金利はもうほとんどゼロになりました。ちょっと手数料を取られたら、すぐ元本が減っていくような状況です。

 こういう状況の中では、こういう年金生活者の人たち、高齢者の人たちは、消費をふやすというよりも、むしろこのマイナス金利で金利がさらに低下したということで、とにかく今ある貯金を切り詰めて、そして何とかちゃんと一生生きられるようにしようということで、むしろこの高齢者の消費に対してはこのマイナス金利というのは、これはマイナスに働いているんじゃないかと思いますが、総理の認識はどうですか。

安倍内閣総理大臣 高齢者の皆さんにとってマイナス金利がどのように影響していくかということについては、いましばらく分析をしていく必要もあるんだろう、このように思います。

 高齢者の皆さんは主に年金で生活をしておられるわけでございまして、この皆さんの消費について、これらの消費が少しこれは落ち込んでいるのは事実なんだろう、こう思うわけでございますが、これはそもそも、一昨年、消費税を引き上げたということと同時に、今我々が行っている政策によって、もはやデフレではないという状況をつくっていく中において、物価が上昇していくという中において、企業で仕事をしている方々は賃上げ、これは十何年ぶりの大幅な賃上げが実現されているわけでございますが、年金生活者の方々にとってはそうはなっていないという状況もございます。

 また、年金において、これはずっと行われてこなかった、本来であれば行わなければいけない、デフレ期にデフレのスライドを行うということを、年金財政を安定化させるために安倍政権になってこれは実行したということもあるんだろう、こう思うわけでございます。

 そこで、そういう状況を見ながら、我々は、年金生活者、低所得者の方々、高齢者の皆さんに対して三万円の給付金を支給するということでございました。まさにそれは、アベノミクスで得た果実を、その果実を得にくい方々に対して支給をする、そして、まさに今古川委員も言われたように、消費を底支えしていくという意味において、ミクロ政策においてもマクロ政策においてもこの政策は正しい、このように考えているところでございます。

古川(元)委員 質問したことにだけ端的に答えてください。

 マイナス金利が年金生活者の人たちの消費をむしろ冷え込ませることにつながるんじゃないですか、そこについて聞いているんです。どうですか。

安倍内閣総理大臣 これは先ほど申し上げましたように、しばらく分析をしてみる必要があるんだろう、このように思っております。

古川(元)委員 では、その分析はどういう形でするんですか。経済財政諮問会議なんかでそういう検討でもさせるんですか。どうですか。

安倍内閣総理大臣 今後、どのような影響を与えているかということについては、これは、内閣府であれ、あるいは財務省、またこれは諮問会議等々でございましょうが、分析をしていくということになるんだろうと思います。

古川(元)委員 賃金もなかなか伸び悩む、そして高齢者の消費も広がらないとなれば、安倍総理がずっと言っている経済の好循環というのが実現できないということになって、結果的にこれはアベノミクスの失敗だというふうに言われても仕方がない状況になると思うんです。まさに今そういう状況に入りつつあるというふうに私は言わせていただきたいと思います。

 次に、先ほど消費税の話をされましたが、もうずっとこの委員会、予算委員会でも聞かれている話ですから、引き上げを凍結するのか、または再延期するのかどうかということを別に私はここで聞きませんが、一般論としてちょっと総理の考え方を確認させていただきたいと思います。

 総理は、さっきもちょっと申し上げましたけれども、前回、消費税の引き上げを延期する、その決定した記者会見の際に、国民生活に大きな影響を与える税制において重大な決断をした以上、国民の声を聞かなければならないというふうに言われました。そして解散・総選挙を行ったわけでありますが、ですから、別にこれは消費税にかかわらず、一般論として、税制にかかわる重大な決断をした、そうした場合には信を問うというその考え方、これは今も変わらないというふうに考えてよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 解散については、今は全く考えていないということでございます。

古川(元)委員 いや、その基本的な考え方を聞きたいんです。税制について根幹部分を変えるという決断をしたときには、これは信を問うという考え方は変わらないかどうかということを聞いているんです。

安倍内閣総理大臣 これはまさに私が解散をしたときに述べた言葉でございますが、今現在、解散について軽々に、私はこういう考えで、こういうときには解散するということは軽々に申し上げるべきではないだろう、このように思います。

古川(元)委員 では、今度は、例えば引き上げを延期しても解散しない場合だってあり得るという、今の話を聞くとそういうふうに聞こえますが、そういうふうに認識してよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 解散について軽々に、こういうときには解散するし、こういうときは解散しないということについて一々お答えをすることは差し控えさせていただきたいと思います。

古川(元)委員 しかし、これは一般論としてちゃんとその考え方は、これは総理が自分で言ったんですよ、それでまさに解散・総選挙をやったぐらいの話なんですから。これは総理大臣として言ったことの重みというものをやはり感じてもらわないと、そのときそのときで、いや、解散したときの口実としてこういうことを言ったということであったら、それこそ、いつも総理がおっしゃっている、信なくば立たずという話にならないんじゃないですか。

 ですから、ここのところは、解散したそのときに理由を言うんだということでは、これはまた国民の政治に対する信頼を失うことになりますよ。そのことを申し上げたいと思います。

 その上で、総理、予算委員会やこの財金でも、消費税の引き上げを再延期する状況について、いろいろなお話が少しずつ変わってきている感じがするんです。ここだけ確認させていただきたいんです。

 リーマン・ショックのような事態が起きた場合、そういう言葉遣いとか、あるいは、世界経済の大幅な収縮が起きた場合、また、きのうの予算委員会では、消費税を上げても税収が上がらないような場合、そういう場合には消費税の引き上げを行わないんだというような発言をしていらっしゃいます。

 これはそれぞれちょっとニュアンスが違うんじゃないかというふうにとられているんですけれども、総理の認識としては、これはどれも同じ認識なのか、それとも微妙に違うのか。違うんだったらその違いを教えていただきたいと思いますし、同じだったら同じだというふうにお答えください。

安倍内閣総理大臣 答弁については、これはずっといわば一貫した答弁をさせていただいていると思います。

 来年四月の消費税率一〇%への引き上げは、世界に冠たる社会保障制度を次世代に引き渡す責任を果たすとともに、市場や国際社会からの国の信認を確保するためのものであります。リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施をします。経済の好循環を力強く回していくことにより、そのための経済状況をつくり出していく、この考えに変わりはないわけであります。

 また、その際に、消費税率を引き上げて税収が上がらなければ元も子もないというのはそのとおりでありますが、しっかりと税収が確保されていくよう、一〇%への引き上げにたえ得る経済状況をつくり出していくことが重要であると考えております。

古川(元)委員 それができないんじゃないかなというのが、ずっとこの間の議論や、あるいは、今の経済状況を見ているとそう見えているんですよ。ここについて、何度聞いても同じことしかおっしゃらないと思いますから次に行きたいと思いますが、微妙に変わってきている、そういうふうに皆さん認識をしているということは総理も、意図的に言っていらっしゃるんだと思いますけれども、そういう認識だということだけお伝えしたいと思います。

 次に、今回のこの委員会でも一番中心になって議論されております軽減税率について御質問したいと思います。

 ちょっと資料を見ていただきたいんですけれども、二〇一四年の四月に、東京でOECD消費税グローバルフォーラムというのが開催をされました。ここはちょっと傍線のところを見ていただくと、「消費税が、所得等の異なる層に与える影響についても議論が行われ、低所得者世帯の負担を緩和するため、軽減税率を導入している国もあるが、軽減税率は、低所得者を支援する方策として、対象者を限定した給付措置に比べると極めて非効率であることが確認された。たとえば食料品をゼロ税率や軽減税率にしても、結局その食料品は主に高所得者に費消されるため、公平性の観点からも所得再配分政策の観点からも非効率ではないかという議論が行われた。」

 軽減税率は、この委員会でも、ヨーロッパはみんな入れているというふうによく議論が出ていましたけれども、みんなヨーロッパ諸国が参加しているOECD、ここがこの軽減税率というのは、「低所得者を支援する方策として、対象者を限定した給付措置に比べると極めて非効率であることが確認された。」というふうになっているんです。

 このOECDの考え方は、総理、どう思いますか。総理、総理です。総理に聞いているんですから。

麻生国務大臣 今言われた、平成二十六年に開催されたOECDの消費税グローバルフォーラムでは、消費税に係る政策の国際的な動きや、消費税が所得の異なる世帯に与える影響について議論がされ、その議論の中で、今言われたような、対象者を限定した給付に比べれば極めて非効率的であるという指摘がありましたことは承知をいたしております。

 他方、今般の日本におきます、この導入しようといたしております軽減税率につきましては、家計調査に基づいて申し上げれば、平均的な世帯収入約六百十一万円を含みます年収六百五十万未満の世帯の消費税負担軽減額は全体の六割を占めておりますこと、また、年収の多い世帯というものは当然のこととして人員が多い傾向があり、世帯当たりの軽減の額が大きく出てしまう傾向にあることなどを踏まえれば、低所得者向け対策として非効率であるとまでは言えないのではないか、基本的にそう思っております。

 他方、軽減税率の利点として言えば……(古川(元)委員「もういいです」と呼ぶ)聞きたいと言うから説明しているだけであって……(古川(元)委員「財務大臣、総理に聞いたんですから」と呼ぶ)答弁する権限も与えていただかぬと。

 私どもとしては、これまでたびたび申し上げてきたように、消費税の逆進性の緩和というものを図りつつ、痛税感の実感ができる等々、私どもとしては、極めて重要な判断である、そう思っております。

古川(元)委員 今は総理に聞いたんですよ。財務大臣はこのOECDと同じ考え方だということは、何度も財務大臣御自身で去年ずっと十二月まで発言しているから覚えていらっしゃるでしょう。ですから、別に財務大臣に聞いているわけじゃないんです。総理に聞いたんです。でも、時間がないですから次に行きたいと思います。

 今回のこの軽減税率のいろいろさまざまな議論で、おかしなことがたくさん起きてくるということが明らかになってきました。

 例えば、テークアウトか店内の飲食かというのは、これはもう販売の時点で判断して、そこで決まる。ですから、それ以降これをどういう形でその場で食べようと、それはもう関係ないんだ。こういう主税局長からの答弁でした。

 そうなりますと、多分テークアウトがふえて、中で食べる人でもとりあえず買うときはテークアウトだと言って買って、そして買ってからその店の中で食べる、そういう人たちがふえてくるんだと思います。しかし、これは違法ではないということです。でも、違法ではないけれども、やはり中で食べるんだったら、中で食べると言って買った人は標準税率で買っているわけでありますから、不公平だし、やはりこれはおかしいと普通は思うんだと思うんですよ。

 ですから、違法ではないけれども、これは事実上脱法行為を助長するようなことに、そういう取り扱いをすると、なると思いませんか。総理、どうですか。総理、感覚的にどう思いますか。

安倍内閣総理大臣 そこはいわばルールとしてあるわけでありますし、税法上、まさにテークアウトか否かの判断を販売時点で判断することについての御懸念でありますが、実際問題として、販売事業者において全ての顧客に対して実際にテークアウトしたか否かの事後確認を求めることは現実的ではないという問題がございまして、しかし、そうしたことがしっかりと周知徹底されていくことによって、基本的には、日本においては、最初からそういう脱法行為をしようという人たちがどんどん出てくるということには私はならないのではないのかな、このように思います。

 基本的には、まずは、税法上、事業者みずからの責任においてしっかりと顧客の意思を確認し、適正に税率の適用関係を判断する必要があることを販売事業者に十分認識していただく必要があると考えておりますが、いずれにしても、可能な限り適正な課税を確保できるよう、事業者の御協力、御理解も得ながら、軽減税率の適用対象の範囲について幅広く消費者にも周知徹底するなどにより、適正な課税の確保に向けて取り組んでいきたい、こう考えております。

古川(元)委員 それは事業者だって、そうやって言われればやりますよ。

 でも、この前の予算委員会のときに聞きましたけれども、覚えていらっしゃるかと思いますけれども、テークアウトだと言ってその場で座って食べ始めて、そして隣の人は、これは中で食べると言って標準税率を払っている。そのときにではお店の人が聞けますかというと、やはり聞けないし、やはりそういう人が出てきますよ。しかも、それが違法ではないという話なんですから。

 やはりそういった意味では、それは私だってそういう人が出てくることは好ましいとは思わないし、そうあってほしくないと思いますけれども、しかし現実には、別に違法じゃないんだったら、それで安くなるんだったらそれでいいじゃないかという人がふえても、それはやはり仕方ないことで、そういう状況をつくってしまうというこの軽減税率に私は問題があると思うんです。そういった意味で、脱法行為をやはり事実上助長することに、こういう取り扱いになってしまうんだと思うんです。

 特に、総理はいつも教育が大事だとおっしゃっているわけでありますけれども、子供たちも、お小遣いをもらっている中でちょっとでもそれは安い方がいいわけですから、であれば、テークアウトだと言って買えば安く買えるよというふうになったら、子供たちがそういう安い方を選んでいく、そういうことはやはり出てきちゃうんじゃないかと思うんですよ。

 税金というのはうまいことやれば逃れることができる、暗にそういう風潮が、この軽減税率の導入で、そしてまた、そういう取り扱いが行われることによって事実上広がってしまうんじゃないか。これは青少年の教育上も非常によくないんじゃないかと思いますが、どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 教育上は、もし目の前で子供が、お子さんが、これはテークアウトと言ってその場で食べている子供を見つけたら、私は注意しますけれどもね。

 それはやはり大人は、当然子供に対して、そういうことをしてはいけないよということを注意していく責任があるんだろう、こう思いますし、例えば、ファストフードの店等々において自分が食べたもの、カフェテリアでもそうなんですが、食べたものを自分で片づけるタイプのお店があると思います。そこは、そういうことをすることによって人件費を削りながら、しかし価格を安くしている。しかし、それはお客さんの協力を前提としているわけであります。これは法律にも触れないわけでありますが、大体ほとんど多くの人たちは自分でこれを持っていくわけでありまして、これは義務がないんですが、日本ではおおむねこれはみんな持っていっているのではないのかな、こう思うわけでございますので、こうした日本のモラルの高さ等に鑑みて、そうした人がどんどん出てくる、また、子供たちの教育に悪いということにもならないし、むしろそういう場でそういうお子さんたちを見つけたら、しっかりと、君たち、これがルールなんだからということを我々は注意すべきではないのかな、こんなように思うところでございます。

古川(元)委員 そうしたら総理は、お店の人に、子供がそこでテークアウトと言って買ってそこで食べ始めたら、それはテークアウトだと言ったんだからあなたは外へ行って食べなさい、そうやって言いなさいというふうに指導すべきだ、そう考えているということですか。

安倍内閣総理大臣 例えば、私がそこに行っている客としてそういう子供を見たら、そういう事情がわかってその子を見たらそのように注意しなければならない、こう思っているということを申し上げたわけでありまして、従業員にそうしろということを私は言っているわけではございません。

古川(元)委員 でも、言わなかったら、やはりそれはそういう子供たちが出てきちゃいますよ。やはりこの問題というのは本当に、法の根底には正義がある、そういう言葉もあるんですけれども、やはり、法がおかしいからこそそういう脱法行為みたいなものを助長してしまう。私は、そういった意味で大変これは問題がある制度だというふうに考えています。

 さらに次の問いに行きたいと思うんですが、ちょっと皆さんに資料を見ていただきたいと思うんです。

 ちょうど与党の税制改正大綱が決まった翌日に財務省から出された税制メールマガジン八十六号の参考資料に入っていた資料なんですけれども、まず、「事業者の主な日々の追加業務」というのがここにずっとたくさん書かれているんです。これを見ていただくと、「飲食料品小売業を営む事業者の例」というので、「日々の業務として、主に以下の作業が発生」と、たくさん作業が書いてあるんですけれども、主税局長、この内容に変わりありませんか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この資料は、軽減税率を検討する与党の議論の過程で出されたものでございます。

 ごらんいただきますと、軽減税率制度を導入することにより、飲食料品小売業を営む事業者に生じる追加事務がどういうものがあるかというのを一般的な例として整理をしたということで、その想定は一応変更はないと思っております。

古川(元)委員 もうかなりの追加の業務が、これを見ていただけても発生するんです。

 次の「地方の商店の例」というのを見ていただきますと、これは零細事業者の場合、これを見て私もちょっとびっくりしたんですけれども、この右側のところ、売り上げの都度、商品ごとに適用税率を判断、代金を税率別にそれぞれ集計というところぐらいはまだわかるんですけれども、代金を軽減税率用と標準税率用の小銭箱に配分する。そして、おつりをそれぞれの小銭箱から案分して支払う。こういうことを求めるということですか。局長、それでいいですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 制度を検討する過程で、事業者においてどういう問題が起こるかということを多角的に整理をしたわけでございます。先ほどの話もそうでございます。

 この資料におきましても、いわゆるレジを導入していないような零細業者において売り上げ管理していかなきゃなりませんが、その一例を御紹介したというものでございます。現金の収支で売り上げを管理しているという事業者に、例えば、即座に区分経理を求めるということが本当に可能かどうかというような論点を示したものでございます。

 こういう検討を全部踏まえまして、たびたびこちらで御説明しているような制度的対応というものも今回の法案に盛り込んだというところでございます。

古川(元)委員 本当に零細事業者にここまでやれるんでしょうかね。ここにおばあちゃんの絵がありますけれども、おばあちゃんとかおじいちゃんでやっているような商店で今からこんなことをやれと言ったら、それこそ麻生大臣が私が聞いたときに答弁した、この機会にやめちゃおうという人がやはり出てくるんじゃないかと思うんですよ。

 次に、もう一枚目の、三十ページ目の「軽減税率を導入する場合の事業者の準備期間について」、ちょっと資料を見ていただきたいと思うんです。

 システム改修などの準備に着手するのは、政省令や通達によって具体的な対象品目の線引きや計算方法、帳票の記載事項等が明らかになってからじゃないとシステム改修に着手できないというふうに書いてあるわけであります。

 具体的なこの制度の詳細を決めて発表するのは、今、これはいつのつもりで政府の方は考えているんですか。

佐藤政府参考人 法案成立後速やかにと思っております。

古川(元)委員 そういうふうで考えると、これはどうしたって四月以降になってきますよね。

 そうすると、ここに「最低一年半程度」というふうに書いてあるんです、最低でも一年半はかかるだろうというふうに言っているんですけれども、今、政府の方はとにかく来年の四月からこの軽減税率を導入しようとしているんですが、一体いつの間に半年間短くてもできるというふうになってしまったんですか、財務大臣。

麻生国務大臣 昨年の与党におけます議論において、この軽減税率制度を平成二十九年の四月に導入することとした場合には、一年余りの期間しかないので、いわゆる、一般的な制度の法案成立から施行までのスケジュール感というものを前提とした場合は、一般的に技術屋、エンジニアの不足が指摘されたりする中で事業者の対応は可能かどうかという点には配慮が必要ということにつきまして議論がなされ、御指摘のありましたように、資料も用いながら検討されたところであります。

 そうして、こうした課題への対応として、できるだけ早期に制度の詳細を明らかにするということで、事業者や、いわゆるシステムベンダーとかレジのメーカーなどが計画的に対応できるようにすることによって、システム改修の需要をできるだけ平準化するということが重要であるという認識が共有されたところであります。

 したがいまして、このために政府としては、既に昨年末、政府税制改正大綱や、今国会に提出をさせていただきました税制改正法案の中において、対象品目の定義などを明確に規定させていただくとともに、いわゆる制度の周知徹底、また、必要な情報の提供、相談等々を丁寧に対応するということを精力的に行うということにさせていただいて、さらに、複数税率対応のために必要なレジや、また、POSとは言いませんけれども、システムの改修について、資金面の問題で事業者の準備が滞ることがないように、予備費を活用して中小企業者に対する資金支援というものを速やかに行うことにしておりますのは御存じのとおりです。

 いずれにしても、今般の法案の附則に示しておりますとおり、事業者の準備状況を検証しつつ、軽減税率制度の円滑な導入及び運用に向けた必要な対応を行うということにさせていただいておりまして、この導入に当たり混乱というものが生じないように、万全の準備を進めたいと考えております。

古川(元)委員 混乱が生じないように万全の準備を進めたとしても、やはり、大臣も何度もおっしゃっているように、それでも混乱は起きると思うんです。ここでもずっと、きのうの参考人でもそうでしたよ、とても対応できませんよという話でありました。

 それは前に出した資料だと言いますけれども、税制改正大綱が出た翌日に、最低でも一年半かかると言っているんですよ。それが、一年も足らないようなところでやろうなんというところが、事業者の人たちが本当に対応できるんだったら、きちんとそこに対応できるんだというものをやはり示さないと、これはもう事業者の皆さん方も本当に不安だと思いますし、実際に大きな混乱は起きてくるんだと思うんです。

 そういう意味でも、総理、一〇%の引き上げと軽減税率の導入が今セットだというふうになっていますけれども、そういう現場の混乱がもうこれは必至じゃないかという状況を考えたら、軽減税率の導入というものを一〇%引き上げとセットだ、その考え方を見直すつもりはありませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 三党合意の中において、軽減税率、給付つき税額控除、そして総合合算制度、この三つの中から我々は軽減税率を選んだわけでございます。この三党合意には、もちろん、当時の与党であった民主党も参加をしている中において三つの選択肢があった。

 そして、今回私たちは、一〇%の引き上げに際して、軽減税率という形で痛税感を緩和していくということも含めて対応していくことになったところでございまして、この考え方には変わりはございません。

古川(元)委員 三党合意、三党合意といつもおっしゃいますけれども、この前も私申し上げましたけれども、三党合意というのは、その後の三党協議もきちんとやってそこで決めるという話になっていたんですよ。そこまでを含めての三党合意なんです。しかし、今回、これについて協議が全く何にもないんです。

 協議していないのであれば、今の法律はどうなっているか、三党で合意してできた法律はどうなっているかといったら、低所得者対策が決まるまでの間は簡素な給付措置でやりましょうということになっているんです。であれば、簡素な給付措置でやっていけばいいじゃないですか。

 総理、きょうこれから採決しようとされているんですけれども、この税法の部分から、軽減税率に関する部分、消費税の部分は切り離して、これからもう一度三党協議を再開してきちんと三党で協議をする。そして、その結論が出るまでは、法律どおり、低所得者対策としては簡素な給付措置を続ける。その決断をしませんか。そして、もう一回三党協議をやりませんか。どうですか、総理。

安倍内閣総理大臣 まさにこの三党合意によって、我々、消費税を引き上げていく、この法案が成立をしたわけでございまして、そういう意味におきましては三党合意は大きな役割を果たした、こう思っているわけでございます。

 そして、我々はその後、選挙で自民党、公明党の与党が勝利をし、政権を担っているわけであります。その中におきまして、この法律にのっとって今回軽減税率を選択し、そして、来年の消費税引き上げ時にそれを実施していくという判断をしたところでございまして、それを変えていく考えはございません。

古川(元)委員 つまり、では、今後三党で協議するという考え方は全くないということですね。

安倍内閣総理大臣 基本的に、三党で協議をするということについては、まさに三党合意においてこの法律ができたわけでございまして、その三党協議によってできた法律に従って我々は消費税を引き上げていく、あるいは、その際、軽減税率を選択していくという判断をしたわけでございまして、今後はまさにどのような経済財政運営を行っていくか、あるいは、税制あるいは社会保障の改革については、もちろん御協力をいただければ大変ありがたい、こう思うわけでございますが、基本的には政府・与党で判断をしていくことではないか、このように考えております。

古川(元)委員 総理、それだと完全にこれは三党合意を破棄したというふうに我々は解釈せざるを得ませんよ。あの三党合意というのは、ちゃんとその後の三党協議もやっていく、三党で協議してこういう問題についてもきちんと決めていくという話だったんですから、もう三党協議をやらないということだったら、それをやらないで来年四月からこの軽減税率を強行するということであれば、もう我々は、三党合意は完全に破棄された、そういうふうにみなしますけれども、それでいいですね。

安倍内閣総理大臣 今、古川委員は、三党合意破棄だとこうおっしゃっておられますが、そもそも、三党合意を踏まえて開催された社会保障制度改革に関する三党実務者協議について、二〇一三年八月に協議に応じないとして先に出ていったのは、これは民主党であろうと思います。また、二〇一四年十一月十四日には、解散表明前に、解散を前提として民主党がみずから消費税の引き上げ延期へと方針転換するに当たって、三党合意の前提が崩れたかのような発言をしておられるわけでございまして、このように、既に何度も民主党の方から三党合意を破棄されたなどと決めつけて、みずから方針転換をされているのではないか、こう思うわけであります。

 さらに最近では、三党合意にはもはや拘束されないと言いながら、今回また改めて、軽減税率について三党合意を破棄した、軽減税率の導入を前提とする一〇%への引き上げは認められないなどと主張するのは、我々としては、矛盾しているのではないか、こんなように感じているところでございます。

古川(元)委員 先日も予算委員会で申し上げましたけれども、ちゃんと私きちんと野田前税調会長に三党協議の申し入れをしたんです、再開しましょうと。それで合意しているんです。よく一回確認してみてください。それを全く音沙汰なしでこういう状況になっているんです。

 だからこれは、与党として三党合意を大事にしたいんだったら、やはりそこは根気よくそちらからも呼びかけがあってしかるべきだし、私たちもやろうと言っているんです。

 にもかかわらず、今みたいなそうした答弁では、もう残念ですけれども、我々からしたら、完全に三党合意、その根底の部分、前提の部分をもうこれは崩された、そういうふうにみなさざるを得ないということを申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、木内孝胤君。

木内(孝)委員 民主・維新・無所属クラブ、木内孝胤でございます。

 今、総理と古川委員の質疑を聞いておりまして、非常にいろいろ質問しやすいなと思いました。といいますのは、実は四年前に私、この消費税で党を離党いたしました。現在は、維新の党、民主党と会派を一緒にさせていただいているわけですから、三党合意の中身には大いに縛られるだろうというふうに考えております。

 一方で、安倍総理がかなり明確に、先般来予算委員会の討論等でも、三党合意を無視というかほごにした発言があるので、私も、堂々と消費税凍結を訴える質問をさせていただけると思って、心置きなく質問させていただきたいと思います。

 二〇一七年四月に消費税を上げるのか上げないのか、これについては先々週の代表質問でもいたしました。先週、安倍総理にも直接いたしましたし、けさも予算委員会以来、恐らく三名が質問して、もう既に御答弁なさっております。同じことを聞いてもいけませんので、幾つか消費税を上げることについて質問したいんです。

 総理は、仮に消費税を凍結したいと思ったときの一つ障害になることがあるかなと思っていますのは、これは私も非常に大きく懸念をしているところですが、その凍結をしたときの市場のリスク、要するに国債が暴落するとか、こうしたことがよく言われておりますけれども、凍結した場合の国債の市場のリスクについてどのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 仮定の質問にはなかなかお答えできないのでございますが、さきの消費税を一年半先送りするという判断をしたときにも、一年半後には必ず消費税を引き上げてまいります、このように申し上げたところでございます。経済条項を削除したのでございますから、それはやはり委員がおっしゃられるような意味においても国の信認を確保しなければならない、そういう考え方からも申し上げたところでございます。

木内(孝)委員 もう一つ、消費税を上げる、上げないの判断でお伺いしたいことがあるんです。

 二〇一二年の末に安倍政権ができてから約三年二カ月ですが、恐らく経済状況も、消費税を二年前に上げるまでとそれ以降で大分差があるんだと思います。恐らく、二〇一三年のさまざまな指標を見ますと、私は、これは本当に胸を張れるすばらしい数字であったなというふうに思っています。

 一方で、二〇一四年の四月に消費税を上げてから、企業収益とか雇用関係、いい数字もたくさんあることを全て認めた上で、やはりGDPが二〇一四年度もマイナス、二〇一五年度も実質GDP、第一・四半期、この間の十月―十二月期もマイナス、中身を見ても、個人消費がとりわけ弱い状況になっています。

 消費税を上げる、上げないの判断をするときに、一時的に消費が駆け込み需要で上がり、落ちる、これは当初から言われておりましたが、総理から見ていて、消費税を上げた後、個人消費の戻りが弱いなと、私から見るとこれは底割れしているというふうに判断しているわけですけれども、やはり当初想定していたよりは個人消費の戻りは弱いというふうにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 それはまさに委員も御指摘になったように、駆け込み需要があり、その後落ち込むということは予想していたわけでございますが、予想よりも大きくこれは消費が落ち込んだわけでございまして、その後の個人消費の戻りも予想よりは悪かった、このように考えております。

 そういうような状況から、我々は、消費税の一年半引き上げを先送り、そういう決断をしたところでございます。

木内(孝)委員 来年の四月に上げると、また個人消費が駆け込みで上がり、その後落ちるということを繰り返すと思いますが、私は、恐らく来年四月、消費税を上げると、消費は総理が想定されている以上に再び落ち込むと思っております。それは予想ということになりますのでどうなるかわかりませんが。

 もう一つ、消費税を上げる障害となり得る事案として、やはり国際社会に向けてのある意味、約束というか、公約ではありませんけれども、自分たちはきっちりと財政健全化を進めていくというふうに言ったわけで、それをきちんと進めていくことは非常に大切なことだと思っております。

 その中で、昨今、世界経済の不透明さから、週末、麻生財務大臣が御出席になられていたG20がございます。五月に伊勢志摩サミットもございますけれども、私は、世界的な潮目が変わった、といいますのは、従来は財政健全化を非常に重視する姿勢であった、今ももちろん財政健全化を重視はしているものの、財政出動に政策転換をするべきではないかという論調が非常に多くございます。

 実際、G20で出された声明としては、あらゆる政策手段を総動員すると言っていますけれども、これは逆に言うと具体策がない。ある意味、非常にうまくいかなかった会議かなと思って心配をしておりましたら、事実、その後、株式市場は弱含んでいるのかな。ただ、その中で一つのメッセージとしてあるのは、財政出動については多くの国から、どこの国という名指しではないものの、期待感が寄せられている。

 すなわち、私が申し上げたいことは、国際環境からいって、財政出動が前よりはしやすくなった環境だとお考えか否か、総理に伺います。

麻生国務大臣 はなから御存じのように、金だけで、ファイナンスだけで景気がよくなると言っていた方は間違いなくいらっしゃいますよ、マネタリストと言われる方々、シカゴ学者とかいろいろな表現がありますけれども。そういった方々に対して、いや、財政と一緒で、今はお金はあって需要がないんだ、実需がないのが問題なんじゃないかと言う方と、二つ分かれていたと思いますね、これはずっとですよ。

 今回も、いわゆるマネタリストと言われた方々の方の形が何となく弱くなってきて、やはり実需が要るんじゃないか、そのためには財政の出動が要るんじゃないかという意見が少しずつだけれども出てきたという流れであるということは、全体としては言えると思いますけれども、やっと当たり前の話になってきたな、私なりにはそう見えます。

 財政出動の場合を、少なくとも日本の場合は、今回の予算は九十七兆といえば一番の大きな予算ですから、財政としてはきちっと対応しているということは、他国に対して、うちはちゃんとやっていますよということはきちんと申し上げております。

木内(孝)委員 安倍総理と麻生財務大臣、きょうはネクタイも一緒ですし、スーツの色も非常に似てはいるものの、私は、経済政策が根本的に、もともと考えている経済政策とか周りにいらっしゃる経済アドバイザーとかも随分タイプが違うのかなと。

 麻生財務大臣は、財政政策については非常に前向きなのですが、昔から、リーマン・ショックが起きたときも金融政策にはほとんど手をつけず。民主党政権のときも金融政策は徐々にしかやりませんでしたけれども。

 その中で、今これだけ状況が変わっているわけですから、財政出動への転換、これは本田内閣官房参与もおっしゃいました財政出動、予算案、きょう採決というような状況の中で次の話をするのは早過ぎるのではないかということもありますが、私は、逆に言うと、今、世界経済のリスクというのはそれだけ危機感を持つべきだと思っております。

 なかなか今、財政出動を本当の意味でできる国というのはございません。日本も何か千兆円というと、そんな余裕は到底ないだろうというふうに私は考えてはいるのですが、実は、多くの国から見て、日本は財源があるじゃないかと思われているんですね。ファンドとかいろいろな投資会社あるいは世界じゅうのエコノミスト、OECD、IMF、いろいろな人たちが目をつけている財源がございまして、それは外為特会なんです。

 財源がないと、財政出動に転換したくてもなかなかできないのは事実です。私も、千兆円の借金と言われると、これは困ったなと思います。しかしながら、この間も麻生財務大臣に質問しましたら非常に後ろ向きな答弁をされましたので、財務大臣にはきょうお答えいただきたくないのですが、安倍総理に伺います。

 外貨資産が百五十兆円ございます。それに見合う借金が百二十兆円ぐらいあって、三十兆丸々使えると私は申し上げませんし、今ちょっと円高になっているのでそれが少し減っているとか、為替は変動するとか。私も、外国為替の専門銀行に十二年間ほどいましたので、非常にここら辺はまあまあ土地カンがあるエリアですが、もしかしていろいろ事情があってこれは手をつけてはいけないのかなと。唯一のタブーとすれば、やはり財務省さんに刃向かうとなかなか厳しいよということ以外の反対理由が誰から聞いても私はよくわからないのです。

 この中のうち、私は、二十兆丸々とは申し上げません、十兆円程度、財政出動あるいは消費税増税の凍結、こうした積極財政へ転換するために財源として使えると思っていますが、総理はどのようにお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 これは当然、私が答えても財務大臣と大体同じお答えになるわけでありますが、政府として、今現在、財政政策をとる必要があるとは考えてはおりませんが、議員が御提案の外為特会の保有する外貨資産の活用につきましては、外貨から円貨への転換が必要となり、実質的なドル売り・円買い介入として金融為替市場に不測の影響を及ぼすおそれがあること、そしてまた、見合いの負債として政府短期証券を抱えていること等から、慎重な検討が必要であると考えております。

木内(孝)委員 ちょっと答弁が繰り返されるのでこれ以上聞きませんけれども、これは、申しわけありませんけれども、財務省さんの打ち出の小づちにすぎません。為替の介入をするために百五十兆の外貨資産は不要ですし、もちろん、これを売却したり、ドルを売って円を買うときというのは円高要因になってしまいますので、そこら辺の実務手続上の懸念はあるというのはお認めいたしますけれども、これは誰がどう見ても使える財源ですので、総理が、もしある日、積極財政に転換したいなと思ったときに、これはもう既に多くの人が指摘している内容だと思いますので、財源として使える可能性があるということだけは頭の片隅に置いていただきたい、そのように思っております。

 同様に、日本たばこの株式、NTTの株式、結構財源がございます。これも質問としてではありませんけれども、霞が関の空中権、容積率が今五〇〇%なんです。これを一〇〇〇%にすれば、二兆円以上の財源が生まれます。もちろん、景観とか環境とかそういうのはございます。これは、安倍総理がお得意の規制緩和とかおっしゃっているのであれば、NTTもそうですし、こうしたものに目を向ける。財源は幾らでもございます。

 逆に言うと、私、与党の立場ですとお役所とけんかするのはなかなか難しい面があるのを承知しておりますので、野党から申し上げますし、提案いたしますので、ぜひこうした財源のことを御検討いただければというふうに思っております。

 次の質問に移ります。

 軽減税率の問題につきましては、昨日の財務金融委員会の参考人質疑の中でも、非常に大勢の方が問題点を指摘しておりました。今回、きょうも午前中の予算委員会で三世代同居の話を玉木委員がたしか質問していたりとか、さまざまな政策を見ると、私は、再分配の意識がもしかして安倍総理は低いのかなと思っています。

 といいますのは、実は、日本というのは格差が実は少ないよと言ってくる学者さんとかエコノミストとか私の周りには非常に多いんです。私はもともと証券会社とか銀行出身だったのでそういう人が多いのかもしれませんけれども、実は、日本は格差が、あるあるみたいな言い方をしているけれども、ないというふうに私に説明してくる人もたくさんいらっしゃるんですね。

 ですから、軽減税率と給付つき税額控除を比較した場合、明らかに給付つき税額控除の方が逆進性対策あるいは格差対策になるにもかかわらず、逆進性対策に重きを置いていないというのは、総理はもしかして逆進性対策は余り必要ないよと思っていらっしゃるのかというのが一つ。

 あともう一つは、逆進性対策というのは、本来、成長戦略になるはずなんです。

 といいますのは、一千万円の所得の人がいて、二百万円の所得の人が四人いた場合、これを、一千万円の人を八百万円にして、二百万円の所得の人を二百五十万円四人にした場合、これは低所得者の方の方が消費性向は当然高いわけです。だから、再分配政策というのは私は物すごく明確に成長戦略になり得ると思っているんですが、総理は再分配政策は成長戦略だとお考えでしょうか。

安倍内閣総理大臣 私は大変、再分配を重視しております。我々の政策自体、一億総活躍社会についても、成長と分配の好循環をつくっていくということでありまして、我々は、我々の経済政策で得た成果を、希望出生率一・八の実現や介護離職ゼロのためにしっかりと投資をしていく、それによって社会的な基盤を安定させていく上において成長を可能にしていくという考え方でございますので、我々はそういう政策を行っていきたい。

 野党の皆さんからは批判を受けたのでございますが、高齢者の低所得者の方々に対して三万円の給付金を出すのも、まさに再分配という考え方でございますし、七千億円、今回も子育て支援のために予算を充てているのも、子育てへの支援という意味においての再分配を行っていくということであります。

 一方、先進国の中において、日本が格差が大きいかといえば、それはそうではないような気がしているのは事実でございまして、木内委員がもし日本のメガバンクではなくて米国の投資ファンドで働いていたら大変な資産を形成しておられたんだろうと思いますが、日本では恐らくそうなっていないのではないかというふうに推測をしているわけでありますが、日本は、欧米に比べれば比較的、それほどの格差はない。

 しかし、今後とも、しっかりと目配りをしながら、再分配機能はしっかりと維持しながら、かつまた、我々は、成長の果実を分配に回しながら、成長と分配の好循環を回していきたい、こう考えているところでございます。

木内(孝)委員 今、分配政策を重視するとおっしゃっていましたが、安倍総理は、介護離職者をゼロと言いながら介護報酬を下げるとか、キャッチフレーズとやっている政策のそごがあるものですから、私、安倍総理の、再分配政策を支持していると言うのは、非常に信じづらいところではあるんです。

 その中で、最後に一つ申し上げたいのが、給付つき税額控除というのは、単なる消費税を上げる際の逆進性対策とかそういうことではなくて、今後の税制のあり方全て、所得控除が主な税制から税額控除で分配をより強化するというインフラづくりでもあるんですね。

 この給付つき税額控除、軽減税率と比較してどちらの方が逆進性対策になるかということだけ、それを最後の質問としてお伺いしたいと思います。

安倍内閣総理大臣 軽減税率制度は、給付つき税額控除そして総合合算制度と並び、消費税率引き上げに伴う低所得者への配慮の観点から、検討課題の一つでありました。

 給付つき税額控除は、所得が低い方に焦点を絞った支援ができるという利点はあると思います。しかし、消費税そのものの負担が直接軽減されるものではなくて、消費者にとって痛税感の緩和の実感につながらないという問題があります。また、所得や資産の把握が難しいといった問題があるものと承知をしております。

 軽減税率制度は、給付つき税額控除といった給付措置とは異なりまして、日々の生活において幅広い消費者が消費、利活用している商品の消費税の負担を直接軽減することにより、買い物の都度、痛税感の緩和を実感できるとの利点があり、この点が特に重要であるとの判断により、導入を決定したところでございます。

 また、軽減税率の導入に伴い、給付つき税額控除など他の二つの施策は、消費税引き上げに伴う低所得者対策としては実施する必要はないと考えておりますが、消費における我々が今回軽減税率の対象とする食品については、低所得の方々において、この比率は高い、消費する比率は高いというふうに考えております。

木内(孝)委員 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 きょうは、総理に質問いたします。

 まず、消費税増税中止の政治判断について聞きたいと思うんです。

 総理は、二月二十四日、当委員会で、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態について、「世界経済の大幅な収縮といったことが実際に起こっているかどうかということについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえて、そのときの政治判断において決められる」と答弁されました。

 では、この世界経済の大幅な収縮とはどういう事態か。これには少なくとも、株価の変動、下落幅も考慮される基準の一つとして含まれるかどうか、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 御指摘の私の発言は、先日の財金委において、リーマン・ショックのような重大な事態とはどういったものを指すのかを問われた際にお答えしたものでありますが、まさに、重大な事態とは、例えば株価の変動幅ということのみではなくて、世界経済の大幅な収縮といったことが実際に起こっているかどうかということについて、専門的な見地から行われる分析も踏まえ、そのときの政治判断において決める事項でございます。

 つまり、世界経済の大幅な収縮というのはどういうものかといえば、これはまさに、実際にそれが起こっているのか、あるいは、どういうものかということについて専門家の皆さんの御意見を伺う必要がある、こう考えているところでございます。

宮本(岳)委員 市場の変動のみではないにしても、株価の変動、下落幅も考慮される基準の一つなのかどうか。

 麻生大臣は、二十四日の当委員会で私に対して、「株価というものもその中の一つだろうとは存じます。」と答弁をされました。全部ではないにしても、株価も含まれる、これは総理もよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 今の答弁において申し上げましたように、これは、株価が全てではなくて、株価もその要素の一つであるという意味で申し上げたところでございます。

宮本(岳)委員 含まれるということはよろしいですね。

安倍内閣総理大臣 含まれるということでございます。

宮本(岳)委員 二月二十二日に、ブルームバーグは、「原油相場が一バレル当たり三十―四十ドルのレンジにとどまれば、世界の政府系ファンドが今年、四千四十三億ドル(約四十五兆八千億円)を株式市場から引き揚げる可能性があると、ソブリン・ウェルス・ファンド・インスティチュートが指摘した。」という報道を行いました。

 政府系ファンドは二〇一五年に上場株式を約二千百三十四億ドル相当売却したとも言われておりまして、仮にことしじゅうに、この報道どおり、四千四十三億ドルの株式が売却されれば、二〇一五年の倍のインパクトで株式市場の下落を招くことになります。

 万一このような事態が生ずるならば、それは世界経済の大幅な収縮だと判断すべき事態だと私は思いますが、いかがですか。

安倍内閣総理大臣 世界的にリスク回避の動きが金融市場で広がる中、我が国の市場でも変動が見られるわけであります。

 今の仮定の御質問に対して具体的なコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、現在の変動につきましては、中国の景気減速への懸念や原油価格の低下、米国の利上げの動向等の海外要因が背景と見られているわけでありまして、今般のG20の声明においても、「最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではない」との認識が示されたところでございますが、いずれにせよ、市場の動きはしっかりと注視をしていきたいと考えております。

宮本(岳)委員 先日、日銀の黒田総裁は、この場で私に、近年、国際金融市場において政府系ファンドのプレゼンスが大きくなっているということは事実、このところの世界的な株価下落の背景として、原油価格の下落を受けて産油国の政府系ファンドが株式の売却に動いていることがあるという見方が市場にあるということも認識していると答弁をされました。これは決して根も葉もない話ではないんですね。

 同時に、総理は、個人消費について、個人消費がどれだけ落ち込んでも消費税増税中止の判断をすることはないということかと問われて、「もちろん、日本経済自体が危うくなるようなことは、そういう道はとってはならないのは当然のこと」とも答弁をされました。

 そこで、配付資料を見ていただきたいんです。

 これは、昨日、当委員会の参考人質疑に参考人としてお招きした三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社経済・社会政策部の片岡剛士主任研究員が配付された資料であります。

 「落ち込みが深刻な家計消費」と表題がついております。特に左下のグラフ。「過去十年間のトレンドから有意に下ぶれた消費」というグラフを見ると、家計最終消費支出の実績値が、家計消費のトレンドの九五%信頼区間、赤い破線部でありますけれども、これを突き破って下振れしたのは、この十年間で三回。二〇〇九年のリーマン・ショックと、二〇一一年の東日本大震災と、そして現在ということになっております。

 片岡氏は、昨日の参考人質疑でも、二〇一七年四月の消費税増税の凍結だけではなく、この際、消費の喚起のためには、消費税を八%から六%に減税すべきだとの御意見でありました。

 総理、まさに総理の言うリーマン・ショックや大震災と同じレベルの消費の落ち込みが今生じている。増税を中止するのは当然ではありませんか、総理。

安倍内閣総理大臣 繰り返しになりますが、今般のG20の声明においても、「最近の市場の変動の規模は、その根底にある世界経済の現在のファンダメンタルズを反映したものではない」との認識が示されたわけであります。

 こうした中、我が国の実体経済を見れば、三本の矢の政策によって、もはやデフレではないという状況をつくり出す中、企業も最高の収益を上げております。

 また、個人消費については、昨年、初夏の低温や記録的な暖冬などの天候要因、昨年夏に生鮮食品など身近なものの値上がりが見られたこと、消費税率引き上げを含む物価上昇に賃金上昇が十分に追いついていないこと等を背景に力強さに欠けておりますが、雇用・所得環境の改善が続く中、消費者マインドとともに持ち直していくことが期待されるわけであります。

 より強化した経済政策のもとにおいても、経済再生なくして財政健全化なしという方針に変わりはないわけでありまして、現在のところ、来年、消費税一〇%に引き上げていくという方針に変わりはございません。

宮本(岳)委員 「日本経済自体が危うくなるようなことは、そういう道はとってはならない」、こうおっしゃるならば、私は、今この一〇%引き上げを中止すべきだ、やれば間違いなく日本経済自体が危うくなるということを指摘しておきたいと思います。

 先ほど三本の矢ということもおっしゃいましたから、次に、三本の矢の一本目の異次元緩和について少し議論をしたいと思うんですね。

 麻生大臣にまず聞きますけれども、G20では通貨安競争のことが議論されたようでありますけれども、協議の結果、どのような合意に至りましたか。

麻生国務大臣 いわゆる通貨切り下げ競争というものに関しては、そうした対応によって国際経済の不安定性がもたらされることを回避するべきだという認識がG20の議論として共有されたと思っております。結果として、通貨の競争的な切り下げを回避することがG20で改めて確認されましたので、今回のG20のコミュニケにもこれが盛り込まれておりますのは、お読みになったとおりだと存じます。

 なお、G20において他国の発言というのは、どう言ったかというのは言わないことになっておりますので、日本に関する議論について詳しく説明することはできませんが、私の方からは、足元の為替市場を含めた金融市場における変動と不確実性が高まっているという認識を示した上で、いろいろ議論した結果、今回の共同声明においては、為替市場における過度の変動や無秩序な動きは悪影響を与えるというもので、為替レートの安定が重要という認識はこのコミュニケの中にも入れられるようになったという背景です。

宮本(岳)委員 ブルームバーグの報道によりますと、ユーロ圏財務相会合、ユーログループのデイセルブルム議長は、記者会見で、「正直に言って、日本についても討議された。競争的な通貨切り下げの状況に陥るのではないかとの多少の懸念があった」という御発言がありました。さらに加えて、「他が追随し、競争的な切り下げとなるリスクは非常に大きい」と述べられたとも報じられております。

 また、デイセルブルム議長は、「為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に事前に通知することで合意したことを明らかにした。」とも報道されております。

 そういう合意になった、これは本当かどうか。また、ここで言う為替相場の下落につながるような政策決定とはどのようなことを指しているのか。これも財務大臣にお答えいただきたい。

麻生国務大臣 御指摘の報道というのは承知しておりますので、ユーロ圏のデイセルブルムの話なんだと思いますけれども、どのような趣旨で発言されたか、これはわかりません。しかし、発言内容に関して具体的にコメントすることは、先ほど申し上げたような理由で差し控えさせていただきます。

 なお、今回の議論を通じて、為替相場におきます変動の高まりを踏まえて、各国は、為替の動向や、また、市場についての意見交換を行っていくこととか、政策動向を適切にコミュニケートしていくことは、間違いなくその重要性が共有されたということは、これは指摘できると思います。これはやっていこうと。これだけ全部一緒になったというのはなかなかありませんでしたので、その意識をみんなで共有できたというのは今回大きかったんだと思っております。

 少なくとも、「為替市場に関して緊密に協議する。」という文がこのG20の共同声明の中に盛り込まれておりますので、こういったセンテンスが盛り込まれたことも過去ないと思いますので、そういった意味では、私どもとしては、G20において、必要に応じ、引き続きこうした対応というものを綿密に行っていく必要があろうかと存じております。

宮本(岳)委員 先日も私、この場で議論いたしました。日銀の黒田総裁にも来ていただきました。日本で金融緩和政策を実施した場合に、その結果として、金利差が拡大するために、為替相場は円安・ドル高への圧力になる、大半の市場関係者はそのように認識をしているわけであります。

 つまり、日銀の金融緩和策、政府のとっている金融緩和策というのは、為替相場の下落につながるような政策決定と言えるんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 日本銀行の主たる目的というものは、インフレターゲット二%のためにどうするかということを主眼に置いておりますので、その他いろいろ、マイナス金利だ、金利を下げるだということで、全体として、長短の金利が下がってくる、イールドカーブと言われるものが下がってくるということは、間違いなく結果として今起きていることだと思っておりますが、それによって為替が上がるとか下がるとかいうことに関しては、一概に言えないと思っております。

宮本(岳)委員 為替をターゲットにやったことはない、こういう話だと思うんですね。

 そこで、安倍総理に聞きたいと思うんです。

 総理は、二〇一四年十一月二十一日、解散した後の記者会見で、この解散はアベノミクス解散だ、アベノミクスを前に進めるのか、それともとめてしまうのか、それを問う選挙だ、こうした上で、次のように述べました。

 「行き過ぎた円高は、多くの企業を海外へと追いやり、空洞化が進みました。私の地元山口県でも、若者たちを五百人以上雇用していた大きな工場が行き過ぎた円高のために工場を閉めざるを得なくなりました。どんなに頑張っても、どんなに汗を流しても、どんなに良いアイデアを出しても、行き過ぎた円高のために競争に勝てない。」「しかし、アベノミクスが始まって、行き過ぎた円高が是正されました。そうした中で、空洞化の時代が終わり、仕事がいよいよ国内へと戻ってまいりました。」

 ここで総理は、アベノミクスが始まって、行き過ぎた円高が是正されたとの認識を示されたわけでありますけれども、アベノミクスがどう作用してこの行き過ぎた円高が是正されたと言えるのか、総理、お答えいただけますか。

安倍内閣総理大臣 まず、目的はデフレからの脱却であります。デフレからの脱却の中においては、金融政策としては、大胆な金融緩和を黒田総裁のもとに実行したのでございます。

 これは、二%のインフレターゲットに向かって、しっかりとデフレから脱却をして、そこに大体安定させるという政策でありますが、それによって、結果として、政権交代前の行き過ぎた円高が是正されたのは事実であります。また、日本銀行による大胆な金融緩和が、固定化したデフレマインドの払拭にもつながったものと考えるわけでございます。

 こうした中、仕事や投資が国内に戻り始め、倒産は三割減少し、対内直接投資額は十倍以上増加をした、こう考えているところでございます。

宮本(岳)委員 結果としてとおっしゃるわけですけれども、総理はまた、二〇一三年三月七日、衆議院予算委員会で、こうもおっしゃいました。「長い間ずっと続いてきたデフレ、と同時に、行き過ぎた円高というのもあったんですよ。それを変えていく。まさに今変わりつつあるじゃないですか。変わりつつあるんですよ。それは、一つはやはり金融政策なんですね。」「要は、金融政策あるいは財政政策においてどういう変化が出てくるかということにおいては、大胆な金融政策を進めていくことによって、まずは為替とそして株価に変化が出てきますよ。」総理は、アベノミクスの金融政策を進めれば円安の変化が出てくると認識して、この答弁をしておられます。

 「大胆な金融政策を進めていくことによって、まずは為替とそして株価に変化が出てきますよ。」と、はっきりこう述べているわけですから、そう考えているわけですね、総理。

安倍内閣総理大臣 いわば私たちのターゲットはデフレ脱却であり、二%というインフレターゲットに向けて、安定的にデフレから脱却をしていくということが目標でございます。

 その中において、金融政策によって大胆な金融緩和を行っていくことによって、結果としてそれは理論的に導き出されるものでもあるわけでございますが、結果において円高が是正され、そして、先ほど申し上げましたような成果が出てきているということを申し上げたところでございます。

宮本(岳)委員 しつこいようでありますけれども、目的ではない、ターゲットではない、こうおっしゃるわけですね。それならば、行き過ぎた円高の是正は起こらなくてもよかったとお考えですか。

安倍内閣総理大臣 これはいわば、ターゲットはあくまでもデフレ脱却であります。そして、副次的に、結果として行き過ぎた円高が是正されたということでございますが、これは、先ほど申し上げましたように、大胆な金融政策によって、理論的にはそういう効果が出てくるということだったんだろうと思いますが、あくまでも目的は、為替ではなくて基本的にはデフレからの脱却であったということでございます。

宮本(岳)委員 幾らターゲットではないとおっしゃっても、現在の金融緩和政策を進めると円安への圧力になるということは、これはもうまさに市場関係者もみんな認識をしているわけであります。

 財務大臣、デイセルブルム議長の言うとおり、G20で、「為替相場の下落につながるような政策決定を行う際に事前に通知することで合意した」と言うのであれば、アベノミクスによる金融緩和をさらに進めていく際には、事前にG20諸国に通知しなければならなくなるんじゃありませんか。

麻生国務大臣 まず最初にお断りしておきますけれども、金融政策というのはあくまでも日銀の所管ですからね。これはちょっと忘れぬようにしていただかぬと、いかにも俺がやっているように言われると話が込み入りますので、これは日本銀行の所管ですから。

 ただ、一般論で言えば、私どもも、今言われたように、いろいろなことを電話でしょっちゅうやっていますので、そういった意味ではいろいろな話がありますけれども、少なくとも、宮本先生、この二週間で十一円円高になっているんですよ。円安になっているときに言われるならともかく、円高になっているときに言われることはまずありません。

宮本(岳)委員 いや、それは日銀がやることはわかっているんですよ。でも、アベノミクスと呼ばれる政策パッケージの中にはそれが入って、しかも、それを政府が進めていると言っているわけですから、それを論じているわけですよ。

 さらなる金融緩和は、国際的な通貨安競争を引き起こしかねないことは明白だと思います。それは恐らく、国際的にも指弾される結果となるでしょう。

 日本銀行の金融緩和政策に依存するアベノミクスの三年間をきちんと総括して、真っ当な道に進むことを主張して、私の質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 きょうは十分しかお時間をいただいておりませんので、総理、早速質疑に入らせていただきます。

 先ほど来、ほかの委員との議論で、消費税増税を延期する場合の条件について、昨今、総理の言いぶりが変わっているんじゃないかという、報道を含めてあるんですけれども、先ほど来の御議論を聞いていると、確認したいんですが、総理としては、世界経済の収縮という言葉はリーマン・ショックのような事態を説明したものであって、これまでと何ら条件は変わらないという理解でよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 御指摘の私の発言は、さきの財金委におきまして、リーマン・ショックのような重大な事態とはどういったものを指すのかを問われた際に、単に個人消費の落ち込みということのみではなく、その背景に世界経済の大幅な収縮が実際に起こっているかどうかという判断基準をお示しをしたものでありますが、具体的には、専門的な見地から行われる分析も踏まえ、そのときの政治判断において決められる事項であるとお答えをしたところでございます。

丸山委員 つまり、この発言の前後では変化はないということでよろしいんですか。

安倍内閣総理大臣 これは変化はないということでございます。

丸山委員 その上でお伺いしたいんですけれども、予算委員会で、消費税を上げても税収が上がらない場合は上げないというお話をされました。

 リーマン・ショックや東日本大震災のような事態と聞くと、時間的には急激に、大幅とか、幅の範囲ももちろんなんですけれども、もう一つ、急激に経済が悪化するという部分が想像できるんですけれども、しかし、総理の答弁では急激性というものが、今回、例えば消費税を上げても税収が上がらない場合というのは、急激じゃない場合もあり得ると思うんですけれども、この判断というのは、急激性、つまり急激に不況になったとかじゃなくても、じわりと不況になった部分も入るという認識でいいのか。その辺、タイムの部分、教えていただけますか。

安倍内閣総理大臣 いわばリーマン・ショックあるいは大震災級の出来事が起こったとき、事態が発生しない限り、確実に引き上げを行っていく。そして、その際、事態においてはどういうものかということで先ほど御説明をさせていただいたところでございますが、もちろん、大震災にしろリーマン・ショックにしろ、これは急激に起こったわけでございますが、一方、委員が御指摘のように、これは、ある程度の時間をかけながら世界的な大幅な収縮が起こるかどうかということだ、このように思います。

 それについても、そういうことも含めて、専門家等、専門的な見地からの分析も踏まえて政治判断をしていくということになる、このように考えます。

丸山委員 今、重要な御発言がありまして、急激な、リーマン・ショックや東北の大震災のような事態だけじゃなくて、じわりとした不況でも、専門的な見地の分析を踏まえて、必要であれば、世界経済の大幅な縮小が起こっているということであれば判断するということなんですけれども、この判断のタイミングが、このままだったらもちろんやるという御判断をされていますが、一方で、現在の世界経済の状況を見ると、不安定さを増しているのは事実だと思います。

 そうした中でこのタイムリミットは、正直、かなり迫っていると思います。このままであれば、もちろん、この法案が通れば一〇%に上げるということですけれども、一方で、先ほど民主党の古川委員の御指摘もありましたけれども、軽減税率を導入するにはすごく準備がかかります。数カ月から、下手すると一年以上かかるんじゃないかという話がありました。また、法案を出すには、十二月には御準備されて、一月か二月に始まる国会にはお出しになる。そもそも、来年の一月、二月に出しても、恐らく、民間の設備投資から考えたら間に合わないと思うんです。

 総理、このタイムリミットについてお伺いしたいんですが、特に民間の設備投資のタイム、時間を考慮いただけるのかどうか。民間が、導入したいのに急にそんなことを言われてもとならないように、その場合にはやるという御判断でよろしいんでしょうか。

安倍内閣総理大臣 消費増税を延期する場合はいつまでがタイムリミットなのかということでございますが、繰り返しになりますが、来年四月の消費税率一〇%への引き上げは、リーマン・ショックや大震災のような重大な事態が発生しない限り、確実に実施をしていく考えであります。

 その上で、重大な事態であるとして増税を延期するかについては、その発生した事態の状況のもとで、そのときの政治判断で決定すべきものと考えております。

丸山委員 そのときに、もう準備したじゃないか、今さら困るよということにならないように民間の方々に対しては配慮いただけるということでよろしいですか。

安倍内閣総理大臣 現在のところ、消費税の引き上げを延期する考え方はないわけでございますが、いずれにせよ、その時期等について今御質問があったわけでございますが、発生した事態の状況のもとで、そのときの政治判断、総合的な政治判断を行うということになるわけでございます。

丸山委員 つまり、その発生が、直前に起こった、例えば来年の三月に起こってしまったという場合には、三月でもこれはとめるということなんですか。

安倍内閣総理大臣 ぎりぎりでございますから、実際どのような形で、それを実際に法律も出さなければならないわけでございますから、そのタイミングではどこが可能かということはもちろんあるんだろうと思いますが、いずれにいたしましても、そのときの政治判断で適切に対応していきたい、このように考えております。

丸山委員 最後、新聞の軽減税率をお伺いしたいと思います。

 新聞以外の書類や雑誌についても、来年以降検討される可能性があるという話を前回の総理との質疑でされました。

 そうした中で、この新聞が来年以降逆に落ちる可能性というのも、もちろん新聞だけじゃありません、軽減税率に今回載っています酒や外食を除く食品と、そして新聞が入っているんですけれども、今回載っているものが逆に落ちる可能性ももちろんあるという認識でよいのかをお伺いしたいんですけれども、前提として、ずっとお話をしているように、食料品が入った次に、なぜか、ガスや電気や水道を抜いて新聞が入っている自体が私はおかしいと思うんです。

 一方で、政府案では入ってきている中で、来年以降、今入っている項目も、逆に、加わるものがあるということは落ちるものもあるということでよろしいのか、新聞の軽減税率についてお伺いできますか。

安倍内閣総理大臣 基本的には、今お示しをしている対象を軽減税率の対象としていく考えであります。

丸山委員 逆に、加わるものがあるということは落ちる可能性もあるということでよろしいんですよね、当たり前なことだと思うんですけれども。来年以降です。

安倍内閣総理大臣 加わるものがあるかどうかについては検討をいたしますが、落ちるものはないというふうに考えております。

丸山委員 つまり、安倍内閣である限りは、来年以降、今載っている項目を落とすつもりはないということですか。

安倍内閣総理大臣 それはないということでございます。

丸山委員 つまり今のお話だと、新聞というのは安倍政権である限り残る、また食料品も、外食と酒を除いたものはこのままやっていくという話です。

 我々おおさか維新の会としては、大事なもの、必要なものに関しては賛成していくという観点です。

 しかし、この軽減税率については、やはりずっとお話しさせていただいているように、対象品目が非常に曖昧であるというお話、また、特に税務の作業は非常に煩雑化するということは、税理士の先生方だけじゃなくて、中小企業の皆さんからも主張があるところです。

 痛税感の緩和とか低所得者対策とおっしゃっていますけれども、それも非常に効果が薄いという中で、この所得税法に関してはどうしても我々おおさか維新の会としては認めるわけにはいかないなというのが、今回の質疑を通して感じるところでございます。

 とはいえ、本日採決でございます。採決の後もまた財務金融委員会は続きます。総理に御参席いただくときもあると思いますので、引き続きこの議論を通じて国民にわかりやすい税制をおおさか維新の会も目指していくことをお約束しまして、私、丸山穂高の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 これにて内閣総理大臣出席のもとの質疑は終了いたしました。

 内閣総理大臣は御退席いただいて結構でございます。

 質疑を続行いたします。宮崎岳志君。

宮崎(岳)委員 白熱する予算委員会の裏番組でございます。そして、注目される総理入りの後の球拾いでございますが、マスコミを含めてほとんど注目されない議論でありますが、軽減税率という重大な論点がございます。マスコミに注目はされないかもしれませんが、当委員会の会議録は百年後にも残るものでございますので、質疑の終局にふさわしい議論をしたいというふうに存じます。

 時間も限られている中でありますので、答弁は簡潔に願います。徹夜で御準備をいただいた役所の皆さんには大変申しわけないんですが、過去の答弁の繰り返しは、会議録も読んでおりますので、避けていただきたいというふうに思います。

 さて、軽減税率の導入、大変残念であります。税金が安くなるという話でありますので、本来、野党としても反対しやすい話ではありません。反対したところで国民受けをするものでもないのであります。しかし、それでも反対をしてきたのは、制度自体に大きな問題点があるからであります。低所得者対策としての十分な効果がない。そして、事業者の事務負担が大幅に増加する。たった二%の軽減のためにこれほどの手間をかけるのか、まるで、東京駅から上野駅に移動するのに特急料金を払って上越新幹線に乗るようなものだというふうに私は言っております。

 政府の主張するとおり、軽減税率は国際的には一般的な手法ではあります。しかし、同時に、EU、OECD、IMF等、その廃止縮小論というのが潮流になりつつあるというのもまた事実であるということは、麻生大臣も御存じのことと思います。

 日本の税制には、複雑で恣意的な租特などさまざまな問題点があると思ってきましたが、私は、世界に誇り得る点の一つは、この消費税が、付加価値税が単一税率であるということだと思ってまいりました。そういった意味では諸外国の税務当局からも高い評価を受けてきたものと思っております。

 つまり、軽減税率というのはいわば戦艦大和であります。大艦巨砲主義の時代にはこれはすばらしいものだというふうに思われてまいりましたが、今や、航空戦の時代になって無用の長物になっているというところかなというふうに思います。他国から見れば、何で今さら戦艦大和をつくるんですかというふうに思われているのが軽減税率だと思います。

 通告をしておりませんが、もしお答えいただければと思うんですが、G20にお出かけになって他国の財政当局者と雑談をする機会もあったかと思うんですが、そういう方から、何で日本は軽減税率を今さら入れるのというふうに言われたことはないですか、大臣。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

麻生国務大臣 ありません。

宮崎(岳)委員 わかりました。

 では、きょうは、この間ちゃんと聞けなかった内閣府より高木政務官にいらっしゃっていただいていますので、その軽減税率の話をする前に、三世代同居の税制の話をしたいと思います。

 三世代同居促進税制について、想定される利用者一万世帯、免税額は総額十億円ということで先ほど聞いておりました。

 人口問題研究所の調査で、三世代同居の場合は、出生率が〇・二五人ぐらい、夫婦だけで住んでいる場合より高いということでありますので、単純計算で、一万世帯でいえば二千五百人ふえるということになるのかもしれませんが、しかし、二〇一五年の出生数は百万八千人でありますので、その〇・二五%であります。

 そして、十億円、一万世帯というのをちょっと人口割にしてみたんですが、私の地元である群馬県では、対象件数は単純割りで百五十五件になります。そうすると、三十九人子供がふえる、こういう計算になります。

 今政策、一億総活躍の目玉ということであります。これは前回聞きました。三世代同居が出生率向上につながるという科学的根拠も、これはないというふうに思っております。

 前回御答弁いただきましたが、なるべく違う範囲で。前回は呼び水だという話だと思うんです。これを呼び水にして、三世代同居、新しい家族のあり方、出生率の向上ということを含めてその呼び水だということだと思うんですが、私は、どうも政策効果が極めて薄いんじゃないかというふうに思っておりますが、政策効果が高い、あるいは出生率の増加につながる政策だというふうにお考えでしょうか。

高木大臣政務官 宮崎委員の御質問は、少子化対策としての効果の規模は小さ過ぎないかということだと思います。

 出生数にはさまざまな要因が影響しておりまして、親との同居、別居ということのみをもって出生数等を単純に議論することは適当ではないと考えております。少子化を克服するためには、政府一体となって総合的に施策を推進していくことが重要であります。

 なお、この特例により、三世代同居を希望する子育て世代が祖父母による育児や家事の支援を受けることが可能になり、子育ての不安や負担が緩和されることにつながるものと認識しており、この特例を設ける意義は大きいものと考えております。

宮崎(岳)委員 二世帯住宅をつくって三世代同居すれば、祖父母に子育てを任せられるので負担が緩和される、少子化対策という意味での効果とか人数ではないんだというお答えだというふうに理解しました。大変苦しい答弁だと思いますが、きょうは時間がこういうことでありますので、私は効果ないというふうに思っているということをお伝え申し上げて、きょうはこれで結構でございます。ありがとうございました。

 さて、続いて、複数税率が農作物の販売方法に及ぼす影響ということについて、前回に引き続いて議論したいと思います。

 前回、こういう表をお手元に配付をさせていただきました。どういった経路で免税業者である農家がどこに、どういうふうに販売をし、そして、消費税でインボイス制度が導入されると、どういう経路が塞がれるのかという話であります。

 そうすると、この塞がれた経路から生きている経路に販売方法が誘導されていく。例えば商社や問屋におろしていたものが、これはもうできないのでJAにおろすようにしようか、こういうふうになるのではないかというふうに心配をしているわけであります。

 財務省のパンフレット、「もっと知りたい税のこと」というのがありまして、税の三原則は公平、中立、簡素であるというふうに書いてあります。中立の原則というのは何ですかといいますと、このパンフレットによると、「税制が個人や企業の経済活動における選択を歪めないようにするのが、中立の原則です。」というふうにあります。この辺は基本知識でございます。

 直売所や商社などが免税業者の販売先から免税業者であるインボイスが出せないということで排除をされ、そして、例えばJAの無条件委託販売等に移行をしていく、こういうことは中立の原則に反するんじゃないかというふうに思いますが、大臣、御見解はいかがでしょうか。

麻生国務大臣 公平、中立云々、今は、やはり選択性がありますので、基本的に中立というものはそれなりに維持できていると思いますが。

宮崎(岳)委員 私は、この中立というところについて中立性が維持されていないんじゃないか、つまり、現在商社や問屋に卸している、スーパーに卸している、あるいは直売所で売っているという方々が、JAの無条件委託販売以外になかなか売り口がなくなってくる、こういう中立性が損なわれているんじゃないかというふうに思うわけです。

 それで、きょうは農水省にも来ていただきました。農水省から加藤政務官が来ていただいたんですか、ちょっと伺いたいんですけれども、今、六次産業化を熱心に始めております。これは民主党政権でスタートした政策でありますし、最初は六次産業化という言葉を自民党支持者の方々にはなかなか使っていただけなかったんですが、最近定着してまいりまして、皆さん使っていただけるようになってよかったなというふうには思っているんです。

 こういうところでは、農家の方々が、例えば組合をつくって加工販売をするというようなことを奨励しております。そうすると、インボイスを出せないということになると、そういった組合に自分のところで収穫した作物を持ち込んで、そこで付加価値をつけて販売をするというようなことにマイナスの影響があるんじゃないか。

 あるいは、農協改革、昨年安倍政権でやりました。私どもは必ずしも賛成ではありませんでしたけれども、それが実行されて、その中で、今、JAは委託販売が九六%だ。ここでいう無条件委託販売というものです。インボイスのかわりになるものが出せるというもの、これが九六%なんですけれども、これだと農協は全くリスクをとっていない、だから、有利なふうに販売をするというモチベーションが出てこないから問題だ、買い取り制に移行すべきだというふうな議論も農水委員会では非常に多くなされてきました。

 しかし、実際にこれでインボイス制が導入されますと、全国の八割以上を占める、免税業者である農家というのは、農協に買い取ってもらうことも基本的にはできないし、六次産業化みたいな形で直売とか加工販売というのも阻害をされるということだと思います。

 この間の大臣との議論ですと、課税業者になるべくなっていただきたいということだと思うので、それはそういうことかと思うんですが、農水の立場からすれば、これはもちろん自分たちのことで税制を変えろというわけにはいかないでしょうけれども、何らかの、このインボイス制度が導入されても六次産業化や農協改革は進められるようにという手だてを打たなきゃならないと思うんです。どういうことをお考えになっていますでしょうか。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

加藤大臣政務官 お答えいたします。

 インボイス制度導入後も、農家が競り売りや農協などに委託して農産物を販売をする場合には、農協などが代替発行した請求書により仕入れ税額控除ができることとされております。

 これは、農協を通じた農産物の委託販売や卸売市場での取引においては大量の出荷物を短時間でさばかねばならないこと、また、出荷物を課税事業者と免税事業者別に分けて管理できないこと、生産者が買い受け人と直接価格交渉を行う機会がないこと等の農産物流通の特性がございます。この方法によらなければ幅広い事業者に多大な影響を与えることから措置されたものと承知をいたしております。

 一方、農協を通じて委託販売する場合には、農家は生産物の販売価格を自分で決められないこと、また、農協や市場の手数料を負担することになることから、農協を通じて売るのが当然に有利になるということではないと考えております。

 したがって、必ずしも免税事業者である農業者が農協等への委託販売に誘導されるとは言えないという思いでありますし、六次産業化や農協改革の流れに逆行するものではない、このように考えておるところでございます。

宮崎(岳)委員 余りお答えになっていないんです。

 お手元の図の一ページを見ていただいて、こういう経路が塞がれるであろう、インボイスが出せないんだから買う方はお断りだというふうになるんじゃないんですかというふうに聞いているんですけれども、今の説明を見ると、JAに手数料を取られるんだから、それはほかに売るということもあるんじゃないんですか、こういう答えであります。

 JAに手数料を取られるも何も、買う方が買ってくれないんだという問題を指摘しているのでありますから、ちょっと的外れだなというふうに思います。つまり、余り考えていないんじゃないかというふうに思うんです。

 実はきのう、農水省の方も伺いました。きょう、政務官の答弁も伺っているんですけれども、どうもインボイスができたときにどういう問題が起こるかということについては、農水省さん、余りまだ把握されていないのかなというのが正直な感想です。無理もないところもありますが、ちょっとこれから大問題になってくると思いますので、時間はありますから、御検討いただければと思います。

 さて、表を二ページ目、用意しました。これは単純な計算の例です。何が起こるかということです。

 ちょっと時間がないので余り詳しくは説明しませんけれども、一番左側が本体価格です。三本の棒グラフがかかっていますが、一番左側がいわゆる本体価格、真ん中がいわゆる税金の額、そして右側が実際に誰が納税するかという納税額です。百万円のものを仕入れて百二十万円で売る。さらに、買った販売先の事業者が百四十万円で売る。二十万ずつ利益を積んでいくというふうにします。

 そうすると、通常であれば、その百万円に十万円の税額がかかって百十万円です。総額百十万円で買って、それに二十万円の利益を乗っけて、さらに税金が十二万つきますから、百三十二万円で売る。そうすると、二十二万円利益が出るんですが、十二万円の税額のうち十万円は既に仕入れ税額控除、そして二万円残りますので、その二万円を払う。買った方は、さらに百二十万円の本体価格にさらに二十万円を乗っけて転売をすると百四十万円。税額が十四万円、総額百五十四万円になります。十四万円の税額ですが、既に仕入れで十万プラス二万円で十二万既に払われていますので、二十二万円の利益のうち二万円消費税を納めると残り二十万、こういう話だと思います。ちょっと複雑になって申しわけありません。

 インボイスを発行できない場合はどうかというと、ここに出ておりますが、免税業者が真ん中にいますので発行できません。ですから、百三十二万円で免税業者が売ると、自分は消費税を納めなくていいわけですから、二十二万円の利益になります。買った方は百三十二万円で買うんです。そして本体に二十万円乗っけて、税額をプラスして総額百五十四万円で売るんです。ここまで同じです。消費税額も十四万、ここまで同じなんですが、仕入れ税額控除ができないので、十四万円全部払わなきゃならない。

 そうすると、利益が、課税業者から買う場合は二十万円出るのに、免税業者から買うと八万円しか出ない、消費税の分を引かれる。こういうことが起こるんじゃないか、だから免税業者が取引から排除される。これが基本的な議論であります。

 その下は、この間、麻生大臣とお話をさせていただいたものです。だったら、おまえらは税金を払っていないんだから、その分下げろ、こういう話になります。例えば、十一万下げろと言って、販売先の業者は確かに取引先に値段を下げさせているんですけれども、利益は別にふえていないんです、税金の分だけですから。

 それで、真ん中にいる免税業者、仕入れて売るその免税業者の方は、仕入れ税額控除、免税業者だからそもそもできないわけです。それで売るわけですけれども、その分利益を下げられるということになると、本来二十万円得られてきた利益が十一万円しか得られない、こういうことになる。

 では、この消費税分を値下げさせるということがいいのか悪いのかというのがこの間麻生大臣に聞いた話なんですね。それで、麻生大臣の答弁と主税局長の答弁に食い違いがあって、麻生大臣はこれは好ましくないんだ、主税局長はまあいいんだ、こういう話でありました。そして統一見解を出してくれと言ったんですが、出ませんで、我が党の落合委員に対する麻生副総理の答弁は、優位な人が一方的に要求するのはよくない、対等の立場でお願いするならいい、こういう話で、違った答弁に聞こえたかもしれないが、基本的なところにそごはないという答弁でした。

 しかし、これは禅問答のような話でありまして、円錐を横から見れば三角だけれども、上から見れば丸ですよみたいな話なんですけれども、私はそういう漠然としたことは聞いていないんです。

 インボイスが出るときにどうなりますか。免税事業者は売上高一千万円以下の零細事業者ですね。買う側は、簡易課税を選択していないのでそれなりの規模ですね。それはありますけれども、おたくはインボイスを出せないでしょう。そうすると、うちは消費税を丸かぶりですよ。普通なら取引してあげられないんだけれども、その分下げてくれるんだったら取引してあげますよ。それでもうちは利益が別にふえるわけじゃないんだよ。そういうことで値引きしろということが許されるのか許されないのか。こういうことを伺っているわけです。

 消費税の転嫁対策特措法とか独禁法の優越的地位の濫用とか下請法とか、いろいろこういうことで、買いたたきとか減額の強要というのは禁止されているわけですけれども、この場合、例えば違法になるのか、違法ではないけれども、法の趣旨に照らして好ましくないという話なのか、いやいや、当然あっていいことなのか、これどれでしょうかという質問であります。もう一度お願いします。

麻生国務大臣 これはよく整理できていますよ。わかっていない人がいっぱいるから、ありがとうございました。

 インボイス制度の導入による影響というのを申し上げれば、いわゆるBツーB、事業者間ですから、実際の取引価格の設定というのは、仕入れ税額控除の可否というだけではなくて、例えば、いわゆる免税事業者が提供している商品とかサービスとかその質とか、いろいろあるんだと思いますが、その独自性等々あろうと思いますが、免税事業者が支払った仕入れ税額などもさまざまな条件の影響を受けるということになるんだと思いますが、また、いわゆる業者間の力関係もこれはさまざまなんで、したがって、必ずしも他の納入事業者よりも低い価格を求めるということになるものではないということですよね。

 したがって、事業者間の取引というのは、これは実に千差万別ですから、そういった意味では、具体的にどのような場合には独占禁止法や下請法において問題となるのかと質問をされても、それはちょっとなかなか一概には答えられぬということになるんだと思うんですが、いずれにしても、取引上優位な立場を利用して、取引先と十分協議することなくて、一方的に通常の場合より著しくおまえ安くせい、払っておらぬのだから安くできるだろうがという話になってくるような、対価を求めるような、それに該当するということになってくると、個別具体的な事情も踏まえて、これは最終的には公正取引委員会で判断されるということになり得るということだと思います。

宮崎(岳)委員 ここもよく固まっていないのかなと正直思います。

 この場合、問題なのは、買う側は値下げを要求しているんですけれども、別に自分たちの利益はふえるわけではないんです。ところが、免税業者の方は利益も減るんです。つまり、どっちも損をしているということになるわけです。

 ではなぜかというと、免税事業者の方が仕入れ税額控除をしていないから、仕入れたときの消費税分まで誰が払うのかということを、ばばの押しつけ合いというか、その税金を誰が払うのかというのを押しつけ合いになるということなんです。

 だから、本来はみんな課税業者になってインボイスを出すのが正しいということだと思うんですが、現実はなかなかそうはいかないのではないかということでちょっと確認をさせていただいたんですが、結論とすれば、これからやはり整理しないといけないのかなというふうに思います。

 さて、ちょっと話がかわります。ヒラリー・クリントン氏が、これは質問通告してありますので平気だと思いますけれども、今、民主党のヒラリー・クリントン米大統領予備選候補が、日本が円安誘導を行っているということを、アメリカの新聞への寄稿で批判をした。各新聞にも載っておりますけれども、クリントン氏は為替の問題を取り上げて、「中国、日本、他のアジアの国々は数年間、通貨価値を抑えることで自国製品を人為的に安く保ってきた」というふうに指摘をして、「為替操作は米国人労働者に破壊的効果をもたらす。断固たる対応を取る」というふうに日本を批判したというような内容であります。

 駐米大使が、誤解があるということで、抗議なのか指摘なのかわかりませんが、したというふうには聞いておりますが、改めて、この発言について財務大臣、どのようにお答えになりますか。

麻生国務大臣 ヒラリー・クリントン元国務長官ですけれども、今は単なる大統領候補ですから。他国の大統領候補の個々の発言についてコメントするというのはちょっとどうかとは思いますけれども、選挙の真っ最中でこれだけヒートアップしていれば、大概いろいろなことをわんわん、トランプに対抗してこっちも言うだろうとは予想はしますので余り気にもなる話じゃないんですが、一般的に申し上げれば、日本は、過去、G7とかG20で既にこれは合意をされておりますので、通貨のいわゆる競争的な切り下げというのは回避するとか、競争力のために為替レートを目標にするとかいうことはしないということでコミットしておりますし、いろいろ他国からも十分にこれは理解されているところなんですが、大体、この人は余り円の最近のレートを見ていないんだなとあのとき見て思ったんです。

 レートが上がってきて二週間で十一円も上がっているときに安いとかなんとか言うのは、ちょっと情報がずれておるなと思いながらあの話を読みました。

宮崎(岳)委員 私、このヒラリー・クリントンさんの話は、さすがに理不尽なことを言うなあというふうに正直思っているんです。

 なぜかというと、この文章を見た限りでは、日本が為替介入をしているというふうなことを批判しているのか、日銀が緩和していることが通貨安誘導だと言っているのか判然としないんですけれども、多分日銀のことを言っているんだと思います、文脈からいって。

 しかし、ヒラリー・クリントン氏は国務長官であられて、二〇〇九年の一月から二〇一三年の二月までやられているんです。ヒラリーさんが国務長官になられたときは、まさに麻生内閣のときであります。そして、リーマン・ショックがあったときということです。そして、アメリカのFRBがいわゆる量的緩和を行ったのもちょうどこの時期なんですよ。まさにヒラリーさんの在任期間中なんです。

 二〇〇八年の十一月から量的緩和第一弾、QE1、二〇一〇年の十一月から量的緩和第二弾、QE2、二〇一二年九月から無制限緩和、QE3、総額四兆ドル以上です。今のレートに直すと四百五十兆円とか、今の日銀の緩和をはるかに上回る規模の緩和をその在任期間中にしていて、国務長官という外務長官ポストにいて、それでドル安になって、麻生さんも総理のときに大変苦労されたと思うんです、円高で。我々民主党政権も相当苦労しました。それは、我々民主党政権の日銀に対する交渉力がなかったといえばそうかもしれないんですが。

 しかし、FRBがあれだけ緩和をして、これだけドル安になって、これだけ円高になって、日本人としては相当苦労したという思いがあるのに、それを今さらあなた、何を言うんだと正直思っているんですけれども、駐米大使が言っているんだから、別に麻生大臣がここで言っても問題ない部分もあると思うので、もう一言、ちゃんと明確なメッセージをお願いします。

麻生国務大臣 あれはちょうど二〇〇八年のリーマン・ブラザーズの破綻のすぐ直後に私は総理になって、即ニューヨーク、そのすぐ後はワシントン等と何かえらく騒ぎだったんですけれども、このリーマンのときの対応というのは、明らかにFRBは、最初は大したことはないと思ったのは間違いないんだと思いますけれども、残念ながら、結構アメリカの想像したより波及効果がでかくてえらいことになって、即会議をということになって、十月でしたか、急遽電話がかかってきて、G7をやるとかなんとか言うから、意味ないと。今、日本と中国と韓国で、イギリス、フランス、ドイツを足したGDPより俺たちの方がでかいと知っているかと聞いたら、ノーと言うから、イエス、俺たちの方がでかいんだと。そのでかい国の方が呼ばれないで、弱いやつを集めたってしようがないだろうが、みんなを集めなきゃどうしようもないだろうと言って、日本から推薦で中国、韓国、インド、それからオーストラリアが入ったんだと思います。そう言って入れてやらせていただいたんですが、結果的に金融収縮なんですよ、あのときは。

 したがって、猛烈な勢いで金融収縮になりますと、まず一番被害が出るのは、九七年のときのあれが間違いなく、アジアで韓国、タイ、インドネシアがデフォルトになりましたので、そのときに日本がえらい助ける羽目に陥った記憶がありますので、ああいったことにならないように、IMFに金を貸すから、ちゃんとこれを面倒を見るようにしてくれ、日本が手間をかけるのは大変だから、IMFでちゃんと組織としてやってくれ、そのかわり、そこにちゃんと資金だけ出します。条件がある。通貨の切り下げ競争はしない、関税を引き上げるということもしない、ブロック経済をやらない、この三つが条件と言って、そこに出たやつはみんな賛成したんだ。

 ところが、それができ上がった途端に、今言われたとおりに、いきなりどんどん金融の緩和を始めた。俺に言わせれば、通貨安じゃないけれども、裏口入学なんですよ。通貨安をターゲットにしていませんよ、だから結果として通貨安になりますから。日本はその間、ただの一言も文句を言わずに耐えましたから、七十円になるまで耐えたんですから。

 今さら、今度はこっちがちょっとやられたぐらいでごたごた言われても、冗談を言っちゃいけませんよと、私は特にあの人とドイツにだけは、あのときはいた人ですから、その二人にだけは言いたいね、もしそういう立場にあったら。だからドイツには言いましたよ、この間。以後、何もドイツからは言われませんけれども。

宮崎(岳)委員 麻生大臣の言われることは本当にもっともだなというふうに思いますし、私も、当時のアメリカの方に言われるのはちょっと理不尽だなというふうに思います。

 ただ、我々は、それはだまされた方がお人よしなんだと言われればそうかもしれませんけれども、正直、民主党政権下でも白川総裁にはもう少し頑張って緩和していただきたかったなというのが本音でございますが、それはおいておきます。残り五分でございます。

 法人税改革についてお伺いをしたいと思います。

 法人実効税率引き下げのための財源というのがいろいろありまして、前回、一回質問させていただきました。ここの表の三枚目にありますけれども、いろいろな財源があるんです。結局、生産性向上設備投資促進税制見直しとか雇用促進税制の見直しとか、あるいは欠損金繰越控除の見直しとか、地方税の部分でいうと、課税ベースの拡大、外形標準課税の拡大であります。

 付加価値割をふやすということですが、付加価値割の大きな部分というのは賃金です。そうすると、結局、人を雇ったり設備投資を一生懸命やろうというところの租特を切って、そして実効税率だけ下げるというのは、投資拡大や雇用拡大を目指す政府方針と矛盾するんじゃないですかというのが前回の質問であります。

 余り時間がありませんでしたが、もう一度お伺いしたいのは、結局、黒字をふやすという方法は売り上げ増だけではない。いわゆる焼き畑経営というのが言われておりますが、よく外資系の企業で、プロの経営者とされる人がぽんと飛び込んできて何をやるかというと、投資を抑制し、人員を削減し、コストを落とす。そうすると見かけの利益がばんと上がる。しかし、それは長期持続的なものではないけれども、年限で、歩合で役員報酬をもらっていますので、そうやって荒らして逃げていく。まさに焼き畑農業的経営だということであります。

 こういったことが、法人実効税率を下げると、その原資が投資促進税制であったり雇用促進税制だということになりますと、こういうことを促進するんじゃないかというおそれがあるんですが、大臣、御見解はいかがですか。

麻生国務大臣 これは宮崎先生、前回もたしか、ちょっと別の言い方だったので、似たような御質問をいただいたんだと思いますが、企業の投資判断の前倒しを促すための政策税制ということになりますと、これは、適用期限というのをちょっと延ばすと逆にすると政策効果が薄れちゃうという面があって、ここだと言うからそれまでにやらないかぬと思わせないといかぬというところもありますので、今回、生産性向上設備投資促進税制などは、これはもうさっさと、税率引き下げの財源にも充てることもできますものですから、もうきちんとそれはやめますということで廃止、縮小させていただいております。

 いずれにしても、こういった形で企業に今内部留保が二十四兆、二十五兆とかそういうレベルでたまっておりますので、ちょっと去年はまだ出ていませんけれども、おととし、さきおととしとトータルで四十九兆、五十兆近く出ておりますので、問題は、こういったものがたまっているにもかかわらず、企業が従業員に払っております給与というものは、三兆減って四兆ふえているんですから、その二年でいえば一兆しかふえておらぬ。五十兆ふえて給与は一兆しかふやしていませんから、それはおまえおかしいだろうが、もうちょっとという、経営者用語で言う労働分配率が多分今はもう七〇を切って六十幾つにまで下がっていると思うんですが、私ども、昔だったら七七、八あったと思いますが、今は七〇を切っていると思います。

 そういったような点においては、これはきちんとしたものに使ってもらわないと、税金を下げて純利益がふえたから、ふえたらそのまま内部留保で何にも回らないんじゃ、先ほど宮本先生の御質問があっていたように、企業が得たものを従業員に払わない、賃金を上げない、上げないから消費が伸びない、結果的にという話になってきますので、そういった意味で、好循環をつくり出すためには、この企業家のマインドというものが一番これからでかくなってくるので、三本目の矢でいいますところの民間ということになるんですが、その民間の経営者が、やはり二十数年間デフレをやっているものですから、とにかくじっと持っておきたい。それは、物価が下がっていくから金の値打ちは上がっていくという時代を長くやっていますから、金利が安くたって、こうやって持っておきさえすればよかった時代が長いものですから、それを解かして普通な方向に切りかえていかせるというのには、つついたり、いろいろ言ったりしないとなかなかできぬなというのが、しゃべっていて、そんな感じが私の実際の感じです。

宮崎(岳)委員 時間なんですけれども、最後に一点だけ。

 確かに今おっしゃるように、租特ですから、時限が来たら切る、これでいいんですが、その間に十分な政策効果が上がり切っていないという前提がある中で切っちゃっていいのかなというのが私の疑問点であります。

 実効税率を下げれば、例えば業績の悪い会社を市場から退出させる効果はあると思うんです。いわゆるゾンビ企業と口の悪い人が言うような企業は退出させて新陳代謝をもたらす、構造改革をもたらす効果はあると思うんですが、そういうフェーズに移行したのか。そうでもなくて、ある意味でそういう赤字企業的なところも支えながらやっていこうということだったのか。ゾンビ企業を退出させて構造改革をもたらすという路線になったのか。そこの違いというのがちょっとわからないので、どちらなのかということをちょっとお伺いできますか。最後でございます。

麻生国務大臣 これは一概にそういうぐあいに決めたわけではありませんが、世の中がこれだけ大きく動いてくれば、従来のようなままでいけるかといえば、これはなかなか企業としては生き残りにくくなってきているのは確かなので、企業も、生き残れるような体質、生き残れるようなものに構造改革をみずからしていかないといけない、そこを促しているということになってきているんだと思っております。

宮崎(岳)委員 ありがとうございました。終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きのう、参考人質疑がありましたが、二つの法案への批判的な意見もたくさん出されました。そういう点でいえば、きょうはこの後質疑終局ということになりますけれども、審議はまだまだ尽くされていないということを申し上げまして、質問に入りたいと思います。

 質問通告の順序をちょっと変えますけれども、初めに一点、法案の附則百七十一条の二の意味について確認しておきたいと思います。

 先ほど宮崎岳志議員からもお話しありましたし、本委員会でも何度も何度も、インボイス制度の導入で免税事業者が取引から排除されるのではないか、あるいは、そうならないために強制的に課税業者への転換が迫られるんじゃないか、このことが繰り返し指摘されてきました。

 きのうの参考人質疑でも、業者の皆さんの代表としてお米屋さんの太田さんがいらっしゃいましたけれども、課税業者になるのか、それとも、もうBツーBは諦めてBツーCに特化した業者になるのか、どちらを選んでも将来はもう潰れるしかない、悪魔の選択だ、こういうことを訴えておられました。

 そこで、この法案の附則百七十一条の二なんですけれども、インボイスの導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとするというふうにあります。

 法律を見ると、この検証をやるのは軽減税率制度導入後三年以内をめどと。三年以内をめどということはインボイスが始まる前に検証するということがここの文言としては書かれているわけですが、ということは、ここで言われている必要な対応というのは、インボイス制度の導入を延期するということも含むということでよろしいのでしょうか。

麻生国務大臣 これはまず宮本先生、複数税率というものを導入した以上は、インボイス制度、この制度というのは、いわゆる納品明細書の説明という、こういったものをきちんと整備しないと複数税率というのはなかなか施行できない、まずこれが大前提です。

 その上で、このインボイス制度というものをやります場合には、免税事業者が課税事業者へ転換というものをやれるかやれないか、そっちの方が得か損か、いろいろなことを考えられると思いますが、そういったものを準備される部分には当然時間があって、あしたからどっちかを選べなんと言われたってそれは無理なので、そういったもので私どもとしては、まずは、インボイス制度の導入は平成三十三年の四月ですから、約四年間の準備期間を設けさせていただきます。

 それと同時に、導入から約六年間は、免税事業者からの仕入れにつきましては一定の仕入れ税額控除というものを認めます。一定にしてといった形にさせていただいて、その上で今般の税制改正法案の附則において、政府としては、この導入に係る事業者の準備状況等々、事業者の取引への影響の可能性などを考えながら必要な対応を行うということにしております。

 いずれにしても、これを導入するに当たっては、我々としても、これは日本で初めての制度でありますのでどんなことが出てくるかというのは、ちょっと正直なことを言って、商売をしたことがない役人にそんなことがわかるはずもないんだと私は最初から言ってありますので、これはそんな簡単に、きのう、きょうからあしたとすぐできるわけがない。時間をかけてみない限りは絶対こんなものは追っつかないから、そういった意味では少々最初から厳しくやったってこれはえらいことになるので、きちんとした時間をかけてやっていく必要がありますということを最初から言い続けてきております。

 そういった意味では、我々としては、この事業者の件にさらに六年の時間をかけてきちんとインボイスの時期というものを考えてやらせていただきたいと思っております。その間約十年あるという話をして、この間、こういったある関係者の人に会ったら、大臣、わしはもうそのころ死んでおるからもうええわとかなんとか言われて、いや、おやじさん、十年して生きておったらどうするんですかと言って、もうちょっと真剣に息子の話も考えたらどうという話もして、るる説明するとわかるんです。

 そんなに今までの仕入れのあれとむちゃくちゃ違うわけではありませんので、るる説明させてもらうと理解を得られる方もおられますので、時間をかけて丁寧にやっていかねばならぬと思っております。

宮本(徹)委員 だから、私が聞いたのは、必要な対応と法律で言っている中には、インボイス制度の導入を延期するという選択肢を、検証の時期をわざわざ三年以内をめどにというふうに書いたわけですよね。わざわざインボイス制度が始まる前に必要な措置をとると言っているのは、今の法案では、軽減税率制度導入後、四年後からインボイス制度が始まるわけですけれども、その前に見直すこともあり得るということは、インボイス制度の導入の延期という選択肢も含むのかということをお伺いしているんです。

麻生国務大臣 これはあくまでも、インボイス制度の導入それ自体を延期するということを想定しているわけではありません。

 その上で、今ありました百七十一条の第二項に基づきます必要な措置というものの具体的な内容につきましては、これは軽減税率を導入した後、約三年ということになるんですが、それをめどに検証というのをさせていただいた結果を踏まえてその内容を検討するということを考えておるというので、現時点で具体的な対応が固まっているわけではありませんので、そういう書き方をさせていただいております。

宮本(徹)委員 否定はされないからあれなんですけれども、インボイス制度が始まる前に、三年以内に検証ということは、この三年以内と入れた意味はどういう意味なんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣から御説明申し上げましたように、インボイス制度というのは非常に大きな制度改正でございます。四年間の準備期間を置いておりますので、その間にさまざまな準備等々が行われてくるということで、そこで、どういうふうな対応、例えば、延期ということではなくて、何か追加的にすべきことがあるかどうかというのをスタート前にはしっかりと責任を持って検証して、何か必要ということであればやるということを申し上げているわけでございます。

 スタートしてしまった後では遅いということもあるでしょうから、前には検証し、必要な対応をするということでございます。

宮本(徹)委員 大臣の答弁だとまだいろいろな幅があるのかなと思いましたけれども、今の主税局長の答弁だとインボイス制度導入の延期は絶対ないというふうにとれるんですけれども、そういうことですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 この条文としては、そういう状態は想定していないということでございます。あくまでインボイス制度がスタートする前の段階で準備が進んでおりますので、その状態がつつがなく進んでいるのか、どういう状態かというのをしっかり検証して、必要な措置があるのかどうかということも検討するということを政府に義務を課しているということでございます。

宮本(徹)委員 今の段階で想定していないということかもわからないですけれども、その後、いろいろ検証してみたら、これはとても日本じゅうの業者を潰すことになっちゃうということが、ここではそういう議論がされてきたわけですけれども、そのことも政府も認識するに至って、今の時点では延期は想定していないけれども、その時点で延期するということもあり得るということなんですか、それとも、この法律上の文言は延期は絶対しないということなんですか。どっちなんですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 延期を規定しているというものではなくて、なるべくそうならないように万全の対応をとるという趣旨でございます。

宮本(徹)委員 なるべくそうならないように必要な対応をとると。今の時点で延期を想定しているものじゃないけれども、私が延期というものは絶対ないと言い切れるかと言ったら、絶対延期はないんだとは言われなかった、ということでいいわけですよね。

麻生国務大臣 同じことを向こうの方が品よく言うから何となくわかりにくいんだと思いますが、導入を延期するという考えを基本に置いているわけではありません。

宮本(徹)委員 基本に置いていないのは、それは法律として出しているからわかるわけですけれども、ただ、ここでとる必要な措置というのには、そういう事態もあり得るということで書いているということでよろしいんですね。わざわざ、三年以内と。

麻生国務大臣 いろいろ初めてのことでもありますので、導入というものに当たっては、いろいろなものが、我々の想定以外のものというのは普通はちょっと税制の世界では考えられないんですが、初めてのことをやりますので、いろいろなことが起こり得るかもしれぬということでそういったときのことを考えて、少なくとも四年したら導入はします。

 したがって、それまでの間いろいろやってみた結果、ここは附則やら何やらについていろいろ検討ということが十分に起こり得る。しかし、我々として、複数税率というものをやる以上はこのインボイスというものは避けて通れぬと思っておりますから、複数税率導入に当たってはインボイスというものを四年後導入するというのはきちんといたしております。

宮本(徹)委員 今はそうしたいというのはわかるわけですけれども、延期は絶対しないんだということもおっしゃらないということは確認しておきたいというふうに思います。

 それとあわせて、その含まれる措置の中には、免税業者の皆さんが課税業者に絶対強制的にならなくてもいいような、何か新しい、この法律には書かれていないような仕掛けを考えるということもあり得るということですか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 いずれにしても、四年間という準備期間がございます。その間にさまざまなことが起こり得る、先生おっしゃったようなことも起こるかもしれません。そういうことをやはり検証した上で、何か制度的対応が必要ということもあるかもしれません。そういうことを附則でわざわざ入れておりますのは、そういうことをしっかりやることでつつがなくスタートできるようにと、そういう趣旨でございます。

宮本(徹)委員 いろいろなことを考えるということですけれども、インボイス制度を今のままやればつつがない状態には絶対ならないというのは、この間の議論でも、多分大臣自身もよくよくわかっていらっしゃるようなことだと思うんですね。さっきの宮崎議員の資料を見ても、一目瞭然なわけですよね。

 ですから、こんな中で、課税業者への転換を強制する、もしくは、免税業者を取引から排除していくようなインボイス制度をこのまま導入するということは絶対やってはならないということを重ねて申し上げておきたいと思います。

 あと最後残された時間で、消費税の転嫁の問題について少しだけ議論させていただきたいと思います。

 この間、各種の団体が消費税の転嫁の問題の実態調査をやっています。日本商工会議所も、昨年、価格転嫁に係る実態調査をやられて三千百社の会員さんに聞いていますが、この調査では、消費税が全部価格に転嫁できたというのは、二〇一四年は六〇・六%だったと。それが去年は五七・六%ということで、全部転嫁できたという方は減っているという結果になっておりました。そして、小売業、生活関連サービス業、飲食業の半数が、転嫁が困難だというふうに回答されております。あと、宿泊業や卸売でも転嫁できないという回答がふえているというのがその中で出ておりました。

 聞きますけれども、転嫁できない消費税があった場合、業者が税務署に納める消費税というのはどこから出してくるんでしょうか。

麻生国務大臣 基本的には、消費税というものは、これは価格に転嫁することによって、最終的には消費者に御負担をいただくということが予定されているという、税の基本的な体系としてはそうなっておりますので、仮に今御指摘のような消費税に転嫁できない場合ということになりますと、これは、事業者が利益として確保することを想定している額は減少する、はっきり言えばそういうことになろうと思います。

 したがって、こういうことにならないようにするために、事業者の方々が消費税を価格に転嫁していただくことは極めて重要なことなのであって、政府としては、転嫁対策特別措置法等々に基づいてしっかり転嫁対策というのに取り組んでまいりたい。私たちは、その法律によって、これは最初に、五から八のときに非常に激しくやったんですけれども、ずっとこういった形でやらせていただくということになるんだと存じます。

宮本(徹)委員 政府がいろいろな対策を打っても、実態としては、政府の調査を見ても、いろいろな業者団体の調査を見ても、価格には転嫁できていない方がたくさんいらっしゃる。利益が上がっているところは利益を減らす、赤字のところは、赤字でも消費税を納めなきゃいけないですから、保険を解約して払っただとか、ある方なんか年金の方から消費税を払ったんだとか、私自身も本当に大変な話をたくさん伺ってきました。

 そういう点でいえば、価格が転嫁できないという事情があるにもかかわらず、消費税は納めてくださいというのは、私は、これは欠陥税制だ、一番の消費税の欠陥だというふうに思っています。

 これを一〇%に引き上げたら、この業者の苦しみはますます拡大すると思いますので、消費税は絶対増税してはならないということを申し上げまして、時間になりましたので質疑を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 二回目で恐縮でございますけれども、数えましたら、この所得税法、十回目の質疑でございまして、十回目なんですが、十分しかいただいておりませんので、短目で、しかし大事なお話を伺っていきたいと思います。

 先ほど総理との質疑で、消費税の増税の延期の可能性の場合のお話をさせていただいたんですけれども、これはやはり、目下の経済状況が不安定さを増している中で、かなり世論的にも気になっているところだと思います。だからこそ、総理の発言が、世界経済の収縮という新たなワードが出ただけでマスコミが、これまでと言いぶりが違う、消費税を上げるのを延期するんじゃないかという報道が出ているんですけれども、先ほどのお話では、総理は、いや、今までと変わらないんだというお話もありました。

 しかし、どうなるか、見えないところもあると思うんですけれども、麻生大臣として、議論をごらんになっていて、また、総理のそばにおられて、この点、どのようにお考えになりますか。

麻生国務大臣 言いぶりが変わったというのは、大体マスコミが皆そういった話をして、だって売れるような新聞のネタにしますので、そういうような書き方になるのは、この種の話になるとよくありますので、解散とか、いや、解散じゃないとか、大体似たような話ですよ、こういった話は。

 だけれども、基本的に言っておられることは同じことしか言っておられませんので、世界経済と、これはG20が終わったばかりだからそういう話が出ただけであって、先ほど言われたとおりに、来年の四月というのを基本に置いておられるということは間違いないと思っております。

丸山委員 根本の、今までの所得税法の議論がこれによって大きく変わってしまうものですから、そのあたりの判断はしっかり、していただくときはしていただかなきゃいけないと思いますけれども、慎重に御判断いただけるものだと思っています。

 そういった意味で、消費税の税率の話を今回いろいろさせていただきました。特に、軽減税率を導入することで、税率を軽減税率の分だけしか下げないということですから、結局、合計で一兆円足らないという議論をずっとしてきました。

 今回の総理の御発言で、新たに軽減税率に加わるものは可能性はある、しかし今、安倍政権で入れている食料品や新聞というのを外すことはないと先ほど御発言がありました。これは大事な御発言だと思うんですけれども、そうしたら、今後、軽減税率を適用すればするほど税収は少なくなっていくということです。

 つまり、その先には、欧州の例がこの委員会でもさんざん挙がってきましたけれども、欧州は軒並み高い、二〇%前後の消費税をつけているわけですけれども、将来的には、財務省としては、そのあたりまで行く、二〇%の欧州並みに行くんだという理解でよろしいですか。

麻生国務大臣 基本的に、この財政の健全化というのが我々にとっては最大のテーマですから、経済再生と財政の再建、この両方をきちっとやっていくというのが、二〇二〇年度までのいわゆる基礎的財政収支の黒字化というものを最大の目標に掲げております。

 それの達成に向けて取り組んでいくということなので、私どもとして、今言われたように、今の段階で既に目安をつけておりますので、その計画に従って今後とも進めていくということなので、今、さらに歳入が減るというような方向のものを新たに積み増すかと言われれば、それはちょっと私どもの立場としてはとてもではありませんので、今のままですらまだ六・五足りないと言っている状況にありますので、基本的に、さらに八%にする科目をふやすというつもりはありません。

丸山委員 つまり、裏返せば、検討の可能性がある、例えば雑誌や書籍は、もしいわゆる規制されるような部分が解決されれば、検討の可能性があるという御答弁もありました。

 そういった中で、何か加わる場合には、もちろん恒久財源がなければ挙げられないという認識で大臣はいらっしゃるということですか。

麻生国務大臣 雑誌の話は、もう前にも一回申し上げました。各雑誌社がそれをみんな、談合するというか協定するのは極めて難しいのははっきりしておりますので、これはなかなか難しいだろうと思っておりますというのが一つ。雑誌の定義も、もう雑誌はいっぱいありますので、なかなか難しいなと思っている。

 もう一点、消費税がさらに一五だ、二〇だという話ですけれども、これは、いわゆる欧州の場合、特に北欧の場合、スウェーデンの、二二とか二一とかいろいろありますけれども、基本的にあそこは、福祉の場合は高福祉・高負担になっておりますので、日本と大分違う。アメリカの場合は低福祉・低負担ですので、そういった意味では、日本の場合は中福祉・中負担ぐらいのところなのを、今、何となくそういう合意ですから、これを上げるということは、それはよほど高福祉を期待するということになっていく、そういった国民世論が醸成されるということがない限り、なかなかそんな簡単にはさらなるということは難しいと私は思います。

丸山委員 お伺いしたいのは、もちろん、それを詳しくお伺いしたくて、つまり、何か軽減税率を新たにふやそうとすれば、その分の財源が必要なわけです。しかし、今のところ、財源を必要とする、軽減税率の対象が来年度以降も膨らむ可能性があるというのは御答弁をいただいているわけですよね。

 つまり、もし万が一この対象品目がふえる場合には、それに対しても、今回、新聞とか食料品にはもちろん恒久財源が必要と言って、今、つくると必ず言っていらっしゃいます。このふやす可能性がある部分は、来年度以降にも必ずこれは恒久財源を充てなければならないというのが財務省、大臣としての御認識でよろしいですかということです。

麻生国務大臣 そのとおりです。

丸山委員 ありがとうございます。

 これは、今後以降、しっかり議論していかなきゃいけないと思います。

 最後、これで締めたいと思いますが、やはり新聞の話でございます。

 十回質疑させていただいた中で、ほとんどこの話をさせていただきましたけれども、やはり腹に落ちないんです。特に、局長との、本当に何度も何度も、恐らく嫌われているんじゃないかなと心配しているぐらいやりとりさせていただいて、細かいところまで聞かせていただきました。しかし、これは、今後の税制の中で非常に重要な判断をしていく中で、重要な御答弁もいただいていると思いますので、御容赦いただきたいと思います。

 しかし、お話を聞いていても、なぜ食料品の次に、生活必需性が新聞より高いガスや電気や水道が入らず、新聞だけが入るのかというのは、本当に明確に御答弁いただいていません。

 ガスや電気や水道は、線引きが明確にできない、難しい、どこまで公共料金に入れればいいのかわからないとおっしゃりながら、新聞だけはなぜか、日々読まれているというのはぎりぎり週二回以上は日々読まれていると言えるかなみたいな御答弁とか、なぜか宅配のみで、同じ内容の駅売りとか、また電子版は除かれているとか。多くを入れてしまうと社会保障財源の関係で足らなくなってしまうから、入れるのはできない、追加で入れていけないと言うんですが、なぜか二百億円の新聞だけ先に入れてしまって、それよりも公共性が高い、そして二百億もかからないNHKの受信料とかは入らないとか。

 本当に、お聞きしていても矛盾だらけだと思います。もう入れるつもりで、逆に、入れることを前提に理屈を積み重ねているんだなというのは、正直、優秀な皆さんがそろっていらっしゃる財務省の御答弁を聞いても矛盾を感じるので、そういうふうにしか思えないんですけれども。

 そこはさておき、最後、大臣、今までずっと横で聞いていただいていたと思います。お立場もあります、御発言、言えること、言えないことはあると思いますけれども、議論を聞いていただいて、この新聞を軽減税率に入れる、逆に、意義があるのかどうか。あるのでしたら、どういったところにあるのか。そこを読んでいただくだけじゃなくて、大臣としての素直な政治家の御答弁を最後にいただきたいと思います。

麻生国務大臣 これはいろいろ意見の分かれるところであったのははっきりしていますので、私どもとしては、この新聞というのは、海外において、ヨーロッパの場合は、これは新聞やら、書籍もそうですが、学術誌等々は無税ということになっておるんです、いわゆるゼロ税率なんですけれども。

 そういった意味で、新聞というものは、広く日常的に読まれていると一般的に言われているのが一点。もう一点は、特に日本の場合は宅配なものですから、広く薄くというか、低所得者層まで全員読まれていますので、結果として、消費負担に関する税の率が高所得者に比べたら高くなっているというのは事実ではありますので、そういったことを考えると、新聞というものになってくるんです。

 今言われましたように、NHKとか、例えば、ガスとか水道とか、これは公共料金なものですから、新聞とはちょっと違っているし、NHKの場合、一種国営みたいなものですから、これまた少し違っているということもありますので、宅配される新聞、新聞も学生の新聞からいろいろありますので、新聞の定義もまた難しいとわかりましたので、そこで、毎日読まれている宅配される新聞というのが、何となく、情報が広く共有されているというところで、ぎりぎり納得できるところかなというのが正直な実感です。

丸山委員 所得の少ない方が真っ先に気になる新聞が入って、そもそも切れない必需品の水や、やはりガス、水道が入らないのはおかしいということを最後に申し上げまして、私の質疑を終えさせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 この際、ただいま議題となりました両案中、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対し、古川元久君外一名から、民主・維新・無所属クラブ提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。木内孝胤君。

    ―――――――――――――

 東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

木内(孝)委員 ただいま議題となりました東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提出者を代表いたしまして、その趣旨を御説明申し上げます。

 政府が提出している改正案は、特例公債を平成三十二年度まで当財務金融委員会の関与もなく発行できるようにするものであり、財政健全化の取り組みが後退するおそれがあります。

 そこで、本修正案は、平成二十八年度から平成三十二年度までの五年間の特例公債の発行に係る規定等を整備する規定について、平成二十八年度における特例公債の発行に係る規定を整備する規定に改めるものであります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

宮下委員長 これにて修正案の趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより両案及び修正案を一括して討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。落合貴之君。

落合委員 維新の党、落合貴之です。

 民主・維新・無所属クラブを代表し、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案に反対の立場で討論をさせていただきます。

 反対の理由の第一は、期間の問題です。

 従来、国債を発行するための法案、この特例公債法案は、一年ごとに出され、審議がされていました。しかし、今回の法案は期間が五年。この法案が通れば、平成三十二年度まで、特例公債発行が適正かどうかの審議がされません。

 民主党政権時代の平成二十四年、与野党の衆参の議席のねじれから、秋になっても特例公債法案が通らず、復興債の発行もできず、ぎりぎりの期限を迎え、民主、自民、公明の三党により、復興が政局により滞らないよう、平成二十七年度まで、例外的に特例公債発行を認めるとする委員会修正を経て、十一月に法案が成立いたしました。

 今、衆参の与野党の議席のねじれはありません。せめて、復興債の発行は別の法案にし、特例公債法の審議は一年ごとにするのが真っ当な姿ではないでしょうか。

 第二に、政府保有の資産の売却が計画どおりに進んでいません。

 今、JT、日本郵政、NTTなど上場企業のものも含め、政府保有株は二十四社、十二兆円に及んでいます。また、売却方針が決まっていても、なかなか進んでいない政府資産がまだまだたくさんあります。

 第三に、特別会計のあり方です。

 例えば、復興特別会計の役割が終わったら一般会計に繰り入れるという基本中の基本も、審議の中で明確な答弁はありませんでした。外国為替特別会計には百五十兆円ものお金が、労働保険特別会計などにも膨大なお金がため込まれています。

 もう二十年近く、特別会計のあり方については国会で議論がされてきました。野党議員が指摘するだけでなく、時の財務大臣が特別会計のあり方について疑問を呈したこともありました。今の状態では、改革は不十分です。

 安倍政権は、改革を叫びながら、実際には、未来のために既得権に切り込む改革は、発表だけで、実行していないことが多いのではないでしょうか。

 以上の点などから、我々はこの法案に反対をいたします。

宮下委員長 次に、鈴木克昌君。

鈴木(克)委員 私は、民主・維新・無所属クラブを代表して、ただいま議題となりました、政府提出、所得税法等の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。

 社会保障の充実、安定化を図り、将来世代に借金を押しつけないため、消費税引き上げを含めた社会保障と税の一体改革を推進することの重要性、必要性は全く変わりません。しかし、引き上げの前提の一つであった社会保障の充実は、総合合算制度の取りやめという形でないがしろにされ、議員定数の大幅削減を含む身を切る改革もいまだに実施されていません。

 また、最重要課題の一つであった消費税の逆進性対策も、党利党略で迷走しています。政府提案の軽減税率は、格差是正に乏しく、事業者にコストばかりかかり、現場の混乱も避けられず、その上、財源の手当てもありません。最も効果的な逆進性対策は給付つき税額控除であり、財源もそれほど必要としません。

 以下、軽減税率以外の点で本法律案に反対する理由を具体的に申し述べます。

 第一に、成長戦略に反する法人実効税率引き下げです。外形標準課税の拡大などは、雇用及び成長に悪影響を与えます。

 第二に、格差是正に対する視点に欠けていることであります。

 第三に、自動車関係諸税の問題です。自動車は地方の生活の足であり、民主党は、自動車関連諸税の抜本見直しを求めてきましたが、政府案では問題が先送りにされています。

 第四に、医療、介護等の控除対象外消費税の問題について、方向性すら示されていないことであります。

 我々は、対案として、給付つき税額控除法案と格差是正等税制措置法案を既に国会に提出しております。問題の多い政府案は撤回し、速やかに我々の案を審議し、可決することを求め、私の討論を終わります。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 日本共産党を代表して、政府提案の所得税法等改正案及び特例公債法案並びに民主・維新・無所属クラブ提案の修正案に反対の討論を行います。

 第一に、今やるべきは消費税一〇%の中止であり、来年四月の一〇%増税を前提とした軽減税率の導入などではありません。

 二年前の消費税八%への増税が、いまだ個人消費を大きく落ち込ませています。この中、十三兆円の連続増税を行えば、暮らしにも経済にも深刻な影響を与えることは明らかです。同時に、低所得者への簡素な給付措置をやめるので、低所得者にはダブルパンチです。さらに、軽減額が一兆円という根拠は曖昧なままです。財源確保の名による社会保障カット、負担増が実際の軽減額を上回れば、国民生活にはトリプルパンチになります。

 附則百七十条では、二〇一八年度以降、財政健全化目標を踏まえての消費税を含む税制改革の検討が明記されています。この文言には、二〇二〇年度までのさらなる消費税増税が選択肢として含まれることが質疑を通じて明らかとなりました。

 軽減税率は将来のインフラ整備など与党幹部の発言は、今回の複数税率導入にさらなる消費税増税の狙いが込められていることは明らかです。逆進性の強い消費税の大増税路線に断固として戦う決意を表明します。

 第二に、庶民への増税の一方で、黒字の大企業に一層の減税を行うことには道理のかけらもありません。

 政府は、賃上げ、投資を促すためだと言いますが、株高、円安のアベノミクスのもと、大企業は巨額の内部留保を積み上げてきました。大企業には賃上げの体力が十分あります。このような大企業にさらなる減税を行っても、内部留保を一層積み増すだけです。しかも、法人実効税率引き下げの主要な財源として外形標準課税を拡大することは極めて問題です。

 中堅企業は、赤字企業はもちろん、課税所得一億円未満の企業まで軒並み増税となります。賃金が中心の付加価値割を拡大し、赤字企業に増税を行って、どうして政府が主張する賃上げ、投資が進むというのか。逆に、賃下げ、リストラの誘引となる愚策と言わなければなりません。

 所得税法等改正案には、東日本大震災復興支援の税制など賛成する内容もありますが、以上の理由から総合的に判断し、反対します。

 次に、特例公債法案は、憲法と財政法の定める財政民主主義を幾重にも踏みにじるものです。

 昨日、参考人からは、財政法を暗殺するものだ、こういう厳しい指摘がありました。本法案は、財政法四条に反する赤字国債の発行について五年間、国会そして本委員会での審議、チェックの機会を奪うものであり、このような法案に賛成することは、国会の自殺行為と言わなければなりません。

 なお、民主・維新・無所属クラブの修正案は、政府提案の問題点を正す内容が含まれておりますが、政府の来年度予算案は大企業減税、軍事費拡大、浪費型公共事業の拡大を内容としており、この予算を支える赤字国債発行に反対の立場から、賛同いたしません。

 以上、反対討論とします。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高です。

 所得税法等の一部を改正する法律案に反対し、復興財源確保法の一部を改正する法律案及び特例公債法の一部を改正する法律案には賛成の立場で討論いたします。

 まず、所得税法等の一部を改正する法律案についてです。

 本法案は、法人税率の引き下げ等、成長重視の法人税制の改正について評価できる点はあります。しかし、政府自身が行おうとしてきた配偶者控除や年金控除等の見直しが行われず、女性の活躍促進や世代間の公平の点で、なすべき改革がまた先送りされた内容となっています。

 重ねて、今回提出された法案は、総理と自民党がみずから国民に約束してきた身を切る改革、定数削減を先送りしたままに消費税増税を行うことを前提としており、我が党は到底賛成できません。

 さらに、消費税率引き上げに伴って導入される軽減税率制度は、極めて大きな問題をはらんでおり、我が党はその導入に反対いたします。対象品目の線引きは、どう工夫しても国民の間に不公平感を残し、痛税感の緩和や低所得者対策といった点でも効果が薄いものです。

 また、電気やガスは一〇%の税率になるのに、新聞の税率は八%のままなのはなぜなのか、国民の納得のいく説明は全くなされておりません。一旦軽減税率制度を導入すれば、新聞に限らず、あらゆる業界団体が適用を求めて陳情合戦を繰り返すことは目に見えています。結果として、消費税制度はヨーロッパの一部の国のように複雑きわまりないものとなり、財源の穴埋めのために標準税率も上がることになりかねません。我が党は、消費税の単一税率制度を維持することが、国民生活のために望ましいと考えております。

 次に、復興財源法案及び特例公債法改正案についてであります。

 今後五年間の復興財源確保のための法案が必要であることは当然であります。我が党としては、復興財源には特別会計の剰余金をさらに利用すべきと考えておりますが、この法案自体には賛成できます。

 これまで何度も赤字国債の発行を人質にとった政局によって、財政運営に支障を来しかねない事態が生じてきたからです。国民生活に直結する予算の執行を混乱させてでも政府・与党を困らせよう、支持率を下げさせようというやり方には、やはり問題があると考えております。

 ただし、その運用に当たっては、財政規律の点で本気の取り組みが必要と考えます。五年にわたる自由な国債発行を認める以上、毎年の予算審議が、これまで以上に極めて重大なものであり、政府にも、これまでとは異なる厳しい財政規律が求められます。これにつき、さきの予算委員会で、我が党からの質疑に総理は、行政改革の断行と財政再建を責任を持って行うと明言されました。総理の言葉を我が党としてしっかりと確証をとった上で、この法案については賛成と決しました。

 行政改革を安倍政権が本気で断行するなら協力します。しかし、それを行えないと言うのであれば、安倍政権と戦っていきます。

 なお、民主・維新・無所属クラブ提出の修正案につきましては、見解が異なるため、反対とさせていただきます。

 以上を国民の皆さんにお約束申し上げまして、私の討論を終わります。御清聴ありがとうございました。

宮下委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 これより採決に入ります。

 初めに、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法及び財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行の特例に関する法律の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、古川元久君外一名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

 次に、所得税法等の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 この際、ただいま議決いたしました所得税法等の一部を改正する法律案に対し、うえの賢一郎君外二名から、自由民主党、民主・維新・無所属クラブ及び公明党の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。古川元久君。

古川(元)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表いたしまして、案文を朗読し、趣旨の説明といたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 一 高水準で推移する申告件数及び滞納税額、経済取引の国際化・広域化・高度情報化による調査・徴収事務等の複雑・困難化に加え、税制改正による税制の複雑化、社会保障・税一体改革に伴う税制改正への対応などによる事務量の増大に鑑み、適正かつ公平な課税及び徴収の実現を図り、国の財政基盤である税の歳入を確保するため、国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同賜りますようよろしくお願い申し上げます。

宮下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

宮下委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、本附帯決議に対し、政府から発言を求められておりますので、これを許します。財務大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配意してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

宮下委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

宮下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時五十三分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.