衆議院

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第15号 平成28年4月26日(火曜日)

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平成二十八年四月二十六日(火曜日)

    午後一時四十分開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      越智 隆雄君    大岡 敏孝君

      大野敬太郎君    勝俣 孝明君

      菅家 一郎君    國場幸之助君

      助田 重義君    瀬戸 隆一君

      田野瀬太道君    竹本 直一君

      武村 展英君    中村 裕之君

      中山 展宏君    根本 幸典君

      野中  厚君    福田 達夫君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      山田 賢司君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      前原 誠司君    宮崎 岳志君

      鷲尾英一郎君    斉藤 鉄夫君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   財務副大臣        坂井  学君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   財務大臣政務官      大岡 敏孝君

   厚生労働大臣政務官    太田 房江君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 豊田 欣吾君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   政府参考人

   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         中垣 英明君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十六日

 辞任         補欠選任

  國場幸之助君     中村 裕之君

  山田 賢司君     武村 展英君

同日

 辞任         補欠選任

  武村 展英君     瀬戸 隆一君

  中村 裕之君     菅家 一郎君

同日

 辞任         補欠選任

  菅家 一郎君     國場幸之助君

  瀬戸 隆一君     山田 賢司君

    ―――――――――――――

四月二十五日

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四三号)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として外務省大臣官房審議官豊田欣吾君、財務省主税局長佐藤慎一君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君、医薬・生活衛生局長中垣英明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。井上貴博君。

井上(貴)委員 自由民主党の井上貴博であります。

 本日はこういう機会を与えていただきまして、本当にありがとうございます。師匠に直接質問をさせていただくので非常に緊張しておりますけれども、アベノミクスに対する認識と考え方についての質問をさせていただきたいというふうに思います。

 私は、一九八〇年代に大学を卒業しまして、銀座の田中貴金属というところに就職をいたしました。当時、バブルに向かう時代でもありまして、本当に金や金製品が飛ぶように売れて、土曜日、日曜日は、ジュエリー製品なんというのは、一階、二階のフロアは満杯でありまして、わあ、東京の人というのはお金持ちですごいなというふうなのが第一印象でありました。それがバブルに向かっていくという状況だったということというのは、みじんにも感じたことはありませんでした。

 そういう時代に、先人、先達、先輩たちのおかげで本当に経済が右上がりで、頑張れば給料も上がりましたし、ボーナスもたくさんいただいた時代でもありました。

 おもしろいものとしては、相続税がかからない仏具は金製品でつくって、それで、十八金のおりんとか線香立て、線香差しなんかは大体五百ぐらい僕一人で売ったことがあります。それから、二千二百万ぐらいの純金の位牌をつくって売ったこともございました。

 当時、三越の外商なんかもすごくて、何かいい製品があったら持ってきてよと言われて、銀のパターをつくって、ワンロット五百本持ってこいと言われて、たった十五分で全部完売。それを二十ロット売ったこともありますし、それから、もっといいものはないのかと言われて、一本二十二万の金のパターをワンロット千持ってこいと言われて、恐る恐る千持っていって、約三十分で売れてしまいました。そういう時代でありました。

 そういう中、本当に右上がりの時代が続いていき、麻生先生がよく講演の中でも言われますけれども、一九八九年の十二月二十九日を迎えることになります。日経平均が三万八千九百十五円、最高値をつけたときでもありました。それを境にバブルが崩壊し、二十五年のデフレ状況下が続いていくことになります。右下がりの経済状況下になっていくわけです。

 ここの中にも約四十五歳以下の方々がいらっしゃると思いますけれども、僕たちの時代は先輩たちから、頑張れ、頑張れば報われると教わってまいりました。確かに、頑張れば報われましたし、ボーナスも給料も先ほど言ったように上がっていきました。

 ですけれども、デフレ状況下の中では、頑張れば報われるというのが通用しない時代が二十五年続いたと言ってもおかしくないというふうに思っています。今の若い人たちに、頑張れ、気合いや、そんなことが通用する時代ではなくなったということです。それだけ、頑張っても実感がない。頑張ったとしても、ボーナスが減り、給料が減るという時代が続いたことがあります。

 それが、ある意味では、しみついた個人でのデフレマインドだというふうに思っています。

 そういう中からデフレを脱却し、今回のアベノミクスは、一言で言うならば、そういう若い人たちに、頑張ったら報われる社会をもう一度構築させたい、見せてやりたいというのが私の率直な思いであります。

 今回のアベノミクスと言われているものが本当に成功するかどうかということというのが今は岐路に立っているわけですけれども、そういう中で、二%かもしれないけれども成長していくという状況というのをつくり上げることが、今の若い人たちが、本当に気持ちが前向きになり、頑張る意欲を持って、そして新しい起業家も生まれていくでしょうし、サラリーマンも頑張ってくれるんだというふうに思っています。

 私たちの時代は、中間管理職の人たちがちょうど団塊の世代の人たちでして、団塊の世代の人たちの数が多いので、切磋琢磨して企業を守り立てていった時代でもあったというふうに、振り返ってみるとそう思います。

 それで、私は、一九九〇年に入りまして、ちょうど時を同じくして福岡に戻ってくることになります。そして、博多に戻って父の経営している会社で働くようになりまして、経営者の道に進んでまいります。

 ですけれども、この二十五年間は、不良債権処理に追われた二十五年間でもありました。毎日、不良債権処理に追われて、それを何とか返さなければいけないというような状況を銀行と打ち合わせをした二十五年間でもあったというふうに思います。そういう中で会社の売却やMアンドAも経験しました。さらには、会社の存続や雇用を守るために、残念ながら、当時の経営者であった父と訴訟を起こした経験すらあります。結果的には、父から亡くなる前に、おお、おまえよくやったということを言っていただいて涙を流したこともありました。

 売却するというのも、簡単に言いますけれども、会社を売却するということは、どこかで従業員との会社説明会をしなければいけません。そのときに社長と従業員という間柄は、ある意味では敬語で話していただけていたわけですけれども、その説明会を機にタメ口になります。これを経験したことというのは非常に大きかった。僕にとっては非常に大きかった経験だったというふうに思います。

 あの説明会で、一人一人の本当にそれでも雇用を守るために、同業者に売却をし、そして雇用を守るということというのをやった経験というのは、今の現在にも生きているというふうに思っています。結果としては、一人の失業者も出すことなく終わらせることができました。

 デフレ状況下というのは本当に苦しい時代でありまして、そういう不良債権処理を抱えた会社というのもたくさんあったわけです。

 そういう中、バブルが崩壊して五年、十年ぐらいたったときだったと思いますけれども、不良債権処理をそのくらいの時期にやった方がよかったのではないかと振り返ったときに、いろいろな論客の方が言っていることを耳にしました。

 ですけれども、あの五年、十年の状況下の中で不良債権処理を、今のデフレ対策を、特にアベノミクスのデフレ対策をやっていたら、大企業だけではなくて、中小零細企業はひとたまりもなく、ほとんどの企業が潰れていった状況になっていたのではないかというふうに思っています。

 ですからこそ、僕は、ある意味では、日銀のデフレ政策と言われているものというのは、ソフトランディングさせるためにはあの当時は残念ながら必要だったんだというふうに思っています。そういう中で助かった企業もあります。ですけれども、そういう中、中小零細企業は貸し渋りや貸し剥がしが実際にあり、その言葉が今でも残っています。

 今、不良債権処理が一段落したよいタイミングに今のアベノミクスというのは始められたというふうに思っていますし、もしあのリーマン・ショックさえなければ、麻生政権のときにやるのが一番いいタイミングだったのではないかと、今振り返ったらそう思います。

 二十年前、麻生先生から私が三十代半ばのときに言われた言葉があります。人に対する説得力は客観的な過去の歴史観と一桁まで言える数字だ、覚えておけと言われたことがあります。よく怒られもいたしました。

 そんな中、ここまでの、高度成長の時代からバブル期、そしてバブルが崩壊し、不良債権処理に追われ、デフレからの脱却の流れを話してきましたけれども、こういう経緯をどのように振り返られるか。今の安倍政権の中ではリーマン・ショック後の話しか出てきませんけれども、それ以前からの全体の流れを、麻生大臣の御認識と考え方をお聞かせいただければありがたいというふうに思っています。

麻生国務大臣 一九四五年にさきの戦争で負けてかれこれ七十年たつんですが、世界に今百九十三カ国ありますが、その中で、デフレーションによる不況を経験した国はありません。

 戦争で負けた後の昭和二十年代、三十年代、数々の不況がありましたけれども、いずれもインフレーションのもとでの不況でした。初めてデフレーションのもとでの不況というのが始まったのが、多分、歴史家は、先ほど井上先生の言われた一九八九年の十二月二十九日、三万八千九百十五円、これは東証の株価の終値の指数なんですが、経済のわかっていない新聞というのはいっぱいありまして、次は四万円になるとみんな書いたんですけれども、四万円にはついになりませんでしたので、ああ、やはり新聞というのは読んじゃいかぬなと思って、すごい印象があるんです。

 ずっとその後下がりっ放しで、七千円台、八千円台まで行った時代があった。野田内閣のときには最後で八千六百円だったと思うんですけれども、八千六百六十円ぐらいが多分あの時代だったと思いますが、とにかく安倍内閣に政権を奪還したときに我々のやることは何かといえば、これは、デフレ、正確には資産のデフレーション、資産と限定して言いましたけれども、株という動産が三万八千円がただの八千円だ六千円だになっていくわけですから、間違いなく三万円はみんな貧乏になったということです。土地も明らかに、一五%、六大市街化地域で六分の一ぐらいになっていますから、その意味では、間違いなく動産も不動産も、持っている人はということになっていったんです。

 ただ、それを持っている人は、じっとしている分には別に何ということはないので、自分の土地の固定資産税が安くなったなぐらいに感じられた方も大勢いらっしゃるんですが、多くの企業はその資産を担保に金を借りておりますから、その担保が担保不足になって資金が回らなくなってくるという状態に追い込まれる。これが資産のデフレーションによって起きてくる最初の弊害で、企業はいずれも借金の返済に追われる。

 すなわち、企業は、利益を出したその部分の最初にやるべきことは借金の返済です。それが企業にとりまして優先順位の一番にならざるを得ないという状況がずっと続いたというのが、間違いなく、このデフレーションと言われた時期の日本の企業のとった行動だったと、多分、後世、歴史家はそう書くんだと思いますけれども、私どもから見てその状態が、いわゆる貸方、借方でいえば間違いなく債務超過になっているわけですから、企業は金を貸してくれる人がいないという状況下で経営者をやっていくということになりますので、どうしたって債務超過を解消しない限りは貸し剥がし、貸し渋り、資金繰りがつかないということになりますので、それを補っていくためにはというのが企業経営の最先端を行くのはそれしかほかに方法がありませんから、嫌でも企業はどんどん借入金の返済に追われる。

 その結果どうなったかといえば、借りた金を返すのは正しいですけれども、正しいことをすれば必ず世の中がよくなるかなというほど世の中は甘くありませんので、金を借りるというのを悪のごとく言われて、金をどんどんみんなで返したらどうなったかといえば、銀行が潰れたんだ、借りてくれる人がいないんですから。

 それが九七年の通貨危機と重なって、金融機関というものは、一九九七年に都市銀行で最初に北海道拓殖銀行が倒産し、三洋証券、山一証券が倒れ、翌年には長銀が倒れ、債券信用銀行が倒れ、昔の名前で出ていますなんという銀行は東京三菱と三井住友ぐらいで、昔ありました富士銀行だ興銀だ、今は何銀行と言うんですと言われても、即答できる人の方が少ない。それほど銀行も、倒産もしくは併合、合併せざるを得なければ生きていけないというそういった時代というのが、多分、バブルという時代を収束していくその過程において起きた現象だと思っています。

 それが、少なくとも二〇〇〇年代に入って、最初のうちに債務超過をほとんど解消できるところまで来たんですが、そこに来たのがリーマン・ショックです。これでリャンファンかかったみたいな話になって、もうちょっと品のいい表現がいいですな、ダブルにショックが来て、もう一回やり直さないかぬということになったのが政権を私がお預かりしたときだったんですが、これで一挙に予定が狂いましたものですから、このときには過去に例を見ないほど金融収縮が世界で起きましたので、日本としては、金融収縮が起きるということは、これは日本がいよいよおかしくなりますので、日本の持っている金を使って国際金融機関IMFにローンします。一千億ドル、十兆円でしたけれども、ローンしますということをやって、金融収縮を救うというところでは大いに成功したんですが、残念ながらその金融収縮を救うまでであって、日本の景気を立て直すというところにまでとても行きませんでした。

 したがって、その間は、約三回にわたる補正予算というのをやらせていただいてどうにか後をつないだんですが、私どもがやれたのはそこまでです。

 その後は民主党政権になっていく経緯になっていくんですが、ぜひ私どもとしては、この安倍内閣の中において、何としても資産のデフレーションによる不況、これからも脱却するためには、済みません、日本銀行さんもこれまでの政策は間違えました、もちろん政府も財務省もみんな間違えたんです、したがってやり直さないかぬということで、日銀との間に協定を結び、いろいろな形で政権もかわったので、日銀総裁も退官というようなことやら何やらいろいろ、あの年、二月から四月にかけていろいろ三年前はやらせていただいた結果、今のようなものを出してきたんだと思っています。

 やっとどうにかデフレーションという状況から少しずつ今脱却しつつあると思ってはおりますけれども、何となく、景気の気の部分というのはなかなかいま一つそこまで達していませんので、さらにこの政権というものが安定しているのを背景に、経済政策というものを、引き続き景気というものを刺激しつつ、かつ、財政というものもバランスさせるということに配慮を置きながらやっていかねばならぬという、二兎を追うという形のものを、綱渡りのようなところをやり抜いていかなきゃならぬというのが我々に今与えられている状況だ、そう理解をしております。

 長々しゃべりましたけれども、済みません。

井上(貴)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、デフレからの脱却についての御質問をさせていただきます。

 麻生先生は、過去に学ぶべきだということをよく言われております。先ほどお話もありましたけれども、昭和の金融恐慌の際、高橋是清蔵相がデフレ対策を行っている。これはよく麻生先生の講演の中にも出てまいります。今のデフレ状況下からの脱却は、この高橋蔵相がやったデフレ対策をもう一度見て、それを今はやるべきなんだ。それが、その後に起こったアメリカでのニューディール政策にもこのモデル政策というのは使われているというのをよくお聞きすることがあります。

 今、民主党政権下から安倍政権にかわって、そしてアベノミクスを行って、賃金が上がってまいりました。ですけれども、いろいろなところで、実質賃金は下がっているではないかというのがよく問題提起をされています。

 では、これも過去の歴史に学んでみたいというふうに思っていまして、その高橋是清蔵相が行ったデフレ対策も、あのときですら、やはり五年間実質賃金は下がったままの状況で、それを脱却しデフレから脱却している。苦しい状況かもしれないけれども、これを何とか乗り切ってこそ、その後の道が進めるという状況になるんだ。

 今、目の前の実質賃金は確かに下がっておりますけれども、だけれども、この状況下を何とか乗り切って、そしてデフレから脱却させることによって、生活を安定し、そして生活に潤いのある状況をつくってやらなければならないというふうに思っています。この実質賃金がプラスになるまではどうしてもタイムラグがあります。ですけれども、このタイムラグをどうしても乗り切ってでも、デフレ対策、脱却をしなければならないというふうに我々は思っています。

 そのことについて麻生先生からの御意見をいただければありがたいと思います。

麻生国務大臣 これで、財務大臣につきましてから三年四カ月ぐらいがたったんだと思いますが、やはり初志貫徹というか、もともと資産デフレ不況からの脱却というのを優先順位の一番に掲げてまいりましたので、これがきちんとした形になって、だって、インフレになれば必ずよくなるとは限りませんので、インフレでも不況はありますし、デフレでも好況はありますから、そういった意味では我々は、少なくとも今のデフレ不況から脱却していくということは、優先順位として一番に置かねばならぬところだというのを念頭に置いて経済財政運営というのをこの三年四カ月やってきたと思っております。

 おかげさまで、企業の収益は過去最高になりましたし、有効求人倍率、いわゆる就職難という面でいきますと、これは間違いなく二十四年ぶりの高水準というところになりましたし、また、よく言われる、春闘等々においてことしは上がり方が少ないとかわかったようなことを言っている人がいっぱいいますけれども、その前はベアなんか一回も上がったことはないんですから。ベアなんていう言葉すら出てわからなかった人もいるぐらい、ベアという言葉は絶えて久しく聞かない時代、それがベースアップというところまで来たので、三年連続ベースアップが続いたというところは、私どもとしては、非常に状況としては脱却しつつあるんだと思っております。

 次に出てこなくちゃいかぬのは、やはり民間の活力というものが出番なのであって、過去最高の企業収益を出し、企業における内部留保も年間で二十四兆だ二十五兆だというような話が出ていますけれども、傍ら、それに見合う設備投資はどうかといえば、その二年間で五十兆出た企業利益、企業の内部留保に対して設備投資は五兆ですから。賃金が上がったといったって五千億ですから。

 そういった意味では、やはり経営者も企業も、そういった状況を踏まえて、デフレではない、これからのことを考えて、長い間更新していなかった設備というものを新しくすることによって生産性は上がるし、また、電気等々の省エネが進んだ新しい設備はいっぱいありますし、いろいろな意味で新しい機械、設備というものが幾つも出てきますので、そういったものに置きかえてもらう。いわゆる設備投資の更新です。

 そして、企業において従業員というものを見た場合に、やはり従業員の賃金というものが、リーマン・ショックのころに比べて日本の場合は、あれを一〇〇とすれば今は九七、八か九ぐらいだと思いますので、アメリカ等々の国はみんな一二〇とか一三八とか上がっていますので、そういったところを見ると、日本の所得というものをもう少し上げていく方向を考えてしかるべきなんだと、私どもはそう思っております。

 方向としては私どもは決して間違った方向で歩いていないとは思いますけれども、少なくとも企業の労働分配率、労働分配率というのは、企業が持っている金をいかにどれだけ従業員に払うかということだと思いますが、労働分配率はこの三年間下がってきているんですから、何だかんだ言っても労働分配率は、かつては七七、八が今は六七、八ぐらいしかないと思いますので、そういった意味では、間違いなくここらのところも考え直さないかぬところに来ている。やはり経営者もマインドを変えないかぬ、そういったことになってきているんだと思いますので、我々としては引き続き、政労使の会議を含めていろいろ経営者の方々とも率直な話をして、この日本という国というので次なる方向としてきちんとしたものを出して、日本という国は、やはり技術的にははるかにすぐれたものがいっぱいありますし、それを点々としている部分をきちんとみんなつなぎ合わせていくというようなことを今確実にやりつつありますけれども、そういったものから新しいものが生み出されることイコールイノベーションとかいろいろな、片仮名が多いですけれども、生産性が上がってくるということに全力を挙げていかねばならぬことだと思っております。

井上(貴)委員 ありがとうございます。

 もう一つ、今度は企業側から、中小零細企業は特にそうですけれども、今は事業承継が大変な状況になっていまして、農業従事者が平均年齢六十五歳とよく言いますけれども、経営者の平均年齢が六十五歳を迎えております。ここ五年、十年で、先ほど麻生大臣からお話がありましたように、すばらしい技術を持った中小零細企業が次の世代にバトンタッチをする状況というのをきっちりつくってやらなければいけないというふうに思っていまして、中小企業庁の調べによりますと、二〇一四年の中小企業の総数は三百八十一万者、九九・九七%を中小企業が占めているという状況にあります。GDPの六百兆円達成には、大企業だけではなく、中小企業の力が不可欠だというふうに思っています。

 帝国データバンクが全国の社長分析をしております。二〇一四年には六十歳以上の経営者が五一・九%、二〇一六年の中小企業白書によると、六十五歳以上の経営者の割合が三七・五%になっています。この状況下を見ると、五年から十年の間に事業承継のターニングポイントになっていきます。世代を重ねるごとに相続税の負担が重く、事業承継がうまくいかずに、最悪は、事業をやめてしまう企業も多数あるのが現状であります。

 今月二十三日の土曜日に地元の福岡で、偶然にも、福岡地区の五つの法人会からヒアリングを受けました。事業承継税制の抜本的な見直しについての強い要望を受けたところであります。

 日本の伝統や先進的な技術は、物づくりで発展してきた技術大国日本の誇りであり、これらの技術は中小企業の多くが保有しています。資源の少ない我が国がこの先も国際競争力を保っていくためには、これらの技術を次世代に継承し、物づくりを大切にしていくことが不可欠だと考えています。

 財務省、経産省もこのような状況を認識しており、平成二十一年に事業承継税制の創設を行って以来、事業承継のボトルネックとなっている相続税、贈与税に係る負担軽減の税制措置の整備を行ってきたということは承知しております。

 私も事業承継を経験しましたけれども、その際、大変な思いをいたしました。何が大変だったかというと、上場していない株式の株式評価価格の算定方法であります。

 まず、この問題を議論するに当たって、現在用いられている類似業比準価額方式というのはどういうものなのかを御説明いただければと思います。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 取引相場のない株式、非上場株式の公正な市場における取引価格が存在しないことから、財産評価基本通達では、その評価方法として、評価する会社と類似した業種の上場会社の株価をもとに一定の補正を行いまして評価額を算出する、類似業種比準方式というものを定めております。

 これによりますと、評価する会社と上場会社の配当、利益及び簿価純資産のそれぞれの比率を求めた上で、これらを一対三対一というウエートで加重平均をした値を掛けまして、さらに、上場会社、非上場会社との違いを反映させるため、一定のしんしゃく率を掛けて、取引相場のない株式の価額を求める方法でございます。

井上(貴)委員 時間がありませんので。

 アベノミクスによって景気がよくなり、株価が上がっています。ベースになるAと言われている部分というのが上がる、要は算定方式の一番ベースになる部分ですけれども。それから、今言われたようなしんしゃく率等々を掛けていって計算するわけですけれども、これによって一株当たりの評価というのが高くなっていきます。

 この株式方式について、例えば、配当、利益、簿価純資産の割合を見直すとかしんしゃく率を見直すということという考え方はないでしょうか。これによってできるだけ株価を低くして、次の世代に送りたいというふうに思っています。それについての御意見をいただければありがたいと思っています。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生から中小企業の事業承継のお話をいろいろ承りました。

 中小企業の事業承継の円滑化の観点から、これまでも、相続税等の納税猶予または免除の特例が設けられ、負担軽減のため、政策的な配慮がいろいろと行われてきておりまして、こうした点も踏まえた上で、相続税の時価主義の原則のもとで、どのようにすれば類似業種比準方式が取引相場のない株式の実態を反映したものとなるのかをよく検討する必要があろうかと思っております。

 平成二十八年度税制改正でもいろいろと御議論が行われたところでございますけれども、企業の組織形態が業種や規模、上場、非上場の別により多様であるというようなことに留意しつつ、比較対象となるそれぞれの比準要素の適切なあり方も含めて総合的な検討を進めてまいりたい、それによって、中小企業の事業承継の円滑化、どのように図られるかということを考えていきたいと考えております。

井上(貴)委員 前向きな意見、ありがとうございました。秋の税調に向けて頑張りたいと思います。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、古川元久君。

古川(元)委員 民進党の古川元久です。

 まず本日は最初に、震災の件で御質問したいと思います。

 今も熊本、大分では余震が続いております。今回の地震で被災をされて、また、今も大変不自由な生活を送っていらっしゃる被災者の皆様方に心からお見舞い申し上げますとともに、今回の地震でお亡くなりになられた犠牲者の皆様方に心からお悔やみを申し上げたいと思います。

 それで、きょうは金融政策決定会合前のお忙しい中、黒田総裁にもおいでをいただいて、ありがとうございます。ちょっと頭のところで少しだけ御質問をさせていただいて、すぐ席を立っていただいて結構でございます。

 今回の地震で、もう早速、全国各地から義援金が寄せられていると思います。先日、こういう報道がございました。この義援金が集まってくる中で、地銀とか信金などこうした金融機関に多額の義援金が集まると、これはマイナス金利適用の影響で金融機関に負担が生じてくるんじゃないか、せっかく義援金、思いで集まってきたものが、金融機関の方が負担になるということはいかがなものか、そういう報道であります。

 またさらに、これは義援金だけじゃなくて、今後、補正予算もこの震災対応で組まれるというふうに聞いておりますけれども、そういう形で補正予算も組まれて、政府からの復興資金などが払い込みが被災の自治体に行われると、当然、自治体はお金を現金でそのまま積んでおくわけにいきませんから、それを指定金融機関である地元の金融機関に預けるということになろうかと思いますが、そうなると、多額のお金が金融機関に行く。そうすると、日銀当座預金へ、そこに預けるということになるんじゃないか。そうすると、これもまた金融機関にとっては、マイナス金利のもとでは負担が重くなるんじゃないかということが懸念されております。

 ここについては、日銀がとったマイナス金利導入の趣旨とはちょっと違う形の副作用としてあらわれることじゃないかと思いますので、この震災絡みの義援金であるとか、あるいは、それに伴って財政資金等が地方自治体を通じて金融機関に持ち込まれる場合、こうした場合にはマイナス金利適用の例外などの措置をとるべきではないかというふうに考えますが、日銀のお考えはいかがでしょうか。

黒田参考人 まずもって、このたびの熊本地震によって犠牲となられた方々に哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げたいと思います。

 日本銀行は、今回の地震が地元の経済あるいは金融面にどのような影響を及ぼすか、鋭意調査しているところでありまして、引き続き調査を進めてまいりたいと思っております。

 いずれにいたしましても、御質問の、民間金融機関に振り込まれた例えば義援金などは、一般の預金と同様、金利がマイナスになるわけではありませんで、当然、その全額が被災地の方々や支援団体等に届けられるわけでございます。

 なお、マイナス金利つき量的・質的金融緩和のもとでは、金融機関が日本銀行に保有する当座預金残高を三つの階層に分けた上で、その一部にのみマイナス金利を適用することとしておりまして、被災地の金融機関を含めてほとんどの金融機関にとって、日本銀行からはネットで利息を受け取るという形になっております。

古川(元)委員 今はそうかもしれませんけれども、適用を受ける可能性もないわけじゃないですよね。絶対ないということが言えるんですか、総裁。

黒田参考人 現在、個別の銀行について特別な見通しを持っているわけではございませんが、御案内のとおり、四半期ごとに、いわゆるマイナス金利の適用を受ける日本銀行の当座預金の金額を十兆円から三十兆円の間にするように、ゼロ金利の適用対象をずっと拡大していくことになっておりますので、銀行システム全体として、マイナス金利の適用を受ける部分というのは極めて限られたものにとどまるということでございます。

古川(元)委員 聞いていることにお答えいただきたいんですけれども、今回の義援金、あるいは補正予算で財政資金が地方自治体に振り込まれて、それが指定の金融機関に預け入れられると、それが当座預金にどんと入ってきて、それによってマイナス金利の適用を受けるという、そういう状況が起きる可能性は全くないと言えるんですかということを聞いているんです。

黒田参考人 委員御承知のことと思いますけれども、銀行を含めて、金融機関につきましては、当然、資産、負債を全体として考えていく必要があるわけでございまして、貸し出しあるいは有価証券投資に回らなかったいわば残額が日銀の当座預金となるということでございますので、特定の預金とひもつきにして考えるというのは必ずしも適当でないというふうに思っております。

古川(元)委員 ということは、そういう可能性があっても、日銀としては何も対応はしないというふうに理解していいということですか。

黒田参考人 先ほど来申し上げたとおり、義援金あるいは交付金について、それがマイナス金利によって減額されるということはないわけでありまして、あくまでも、そういった意味で、義援金あるいは交付金の交付の効果が減ってしまう、そういうような問題があるということであれば、当然何らかのことを考える必要があると思いますけれども、そういうことは考えられないということでございます。

古川(元)委員 何か、減るとかそういうことじゃなくて、これは金融機関の経営に影響を与える可能性があるんじゃないかという、そういう懸念が報道なんかでもされているんですね。そういう懸念は全くないんですか。それは、減ることはないというのはわかりますよ、金融機関に預けるんだったら。

 しかし、私がちょっと聞くところによると、大口の投資家がかなりの金額のを債券運用していたものを、国債運用で満期になったから戻ってきたお金を銀行に預けようと思ったら、そんな金額は受け入れられないと言って、断られた。そんな話も聞いたことがあります。

 ですから、そういった意味で、例えば財政資金とかがどんと来たら、金融機関の方としてはそれは困ると言う。だから、金融機関にとってのマイナスということが起きる可能性というのはあるんじゃないですかと聞いているんです。

黒田参考人 先ほどから申し上げているとおり、金融機関としては、資産、負債を全体として考えるわけでございまして、特定の預金と日本銀行における当座預金とをひもつきで考えるというのは、必ずしも適切でないというふうに思っております。

 いずれにいたしましても、金融機関の収益状況に対してどのような影響が出るかというのは、何度も申し上げますけれども、マイナス金利そのものの影響というものが最小限になっておりまして、仮に金融機関の収益に影響が出るとすれば、それは、金利全体が下がって、そしてそれが金融機関の収益に影響が出るのではないかという点がいろいろ議論になっているわけでございますが、これについては、基本的には、貸し出しの増加であるとか、あるいは信用コストの削減であるとか、そういったことで、足元ではむしろ金融機関の収益はふえているわけです。

 そうしたもとで今後の見通しを考えた場合、確かに、非常に低い金利が長く続きますと金融機関の収益に影響が出てくるということは、そのとおりであります。

 ただ、これは、経済がデフレから脱却して、物価が二%程度の安定的な上昇のもとで経済の持続的な成長が続くということで、そういうもとで金融機関の収益というのは抜本的に改善され、上昇していくというものでありますので、一時点で、金融を非常に緩和したときに利ざやが減る、貸出金利が下がるということ自体だけをとって、金融機関の収益に問題があるのではないかということは、その時点だけとって、間違っているとは言いませんが、必ずしも適切な議論ではないというふうに考えております。

古川(元)委員 では、結論をちょっとだけ聞かせていただければいいんですけれども、今回の震災絡みで、マイナス金利の適用の例外を設けるとか、そういうことは考えていないということでよろしいですか。

黒田参考人 MRFについて適用の例外的な取り扱いをいたしましたが、これは御案内のとおり、MRFが証券取引について決済機能を果たしている。それが、マイナス金利が適用された場合に、MRFにマイナス金利が転嫁される。そうなりますと、MRF自体がなくなってしまって決済機能を十分果たせなくなるというおそれがあったために、こういった特例措置をとったわけでございます。

 これに対しまして、先ほど申し上げたように、義援金や交付金については、繰り返しになりますけれども、マイナス金利によって減額されるということはありませんので、そういった意味からは、例外的な措置をとる必要があるとは考えておりません。

古川(元)委員 しかし、こうした懸念が示されていることも間違いないわけでありますから、やはりそこは日銀としてもしっかり状況を把握して対応していただく必要があるんじゃないかと思いますし、こういうことで、例えば、地方自治体が持ち込みたいというときに、いや、それはもう受け入れられませんなんということがないように、そういうことだけはしっかりチェックしていただきたいと思います。

 では、日銀総裁、もう結構でございます。どうもありがとうございました。

 次に、財務省の方、財務大臣の方にお伺いします。

 補正予算の方は、震災対応で組まれるということでございます。我々としても、必要なことはぜひ協力していきたいと思っていますが、五年前の東日本大震災のときもそうだったんですが、税制上のいろいろな特例的なこともこの震災に応じてやらなければいけないんじゃないのかなというふうに私は思っております。

 あの東日本大震災のときにも、雑損控除の特例であるとか、被災事業用資産の損失の特例だとか、住宅ローン減税の適用の特例とか、法人税額の還付とか、被災代替資産等の特別償却とか、さまざまな税制上の特例措置をとっております。

 今回の震災、地震に関連しまして、こうした税制上の特例措置を今予定している、準備しているということはございますか。

麻生国務大臣 これはもう古川先生御存じのように、今の現行の税制法上でも、災害を受けられた方々に対しては、一般的な措置として、さまざまな特例措置というのができるということになっております。

 例えば、所得税や法人税の場合には、災害により一定の資産について損失が生じたという場合は、損失を所得から控除するなどの方法によって税額を減額する、軽減するということができますし、また、国税の申告また納付等々の期限の延長とか納税の猶予も可能になっておりますので、先日、四月二十二日に国税庁の方から、熊本県全域について、申告、納税等の期限を延長する旨を発表したところでもあります。

 その上で、現行制度による対応に加えまして新しく措置を講ずるべきかどうかについては、今、被災地においての被害の状況とか被災地の復旧等々の状況を踏まえて関係方面からいろいろ御要望というのを聴取させていただいているところなので、まだちょっと補正予算といったって、額も、積み上げるものも、まだ余震が続いて、またいくかもしらぬというような状況なのであれですので、被災者の支援等々を的確に見た上で判断をさせていただかないかぬので、今の時点で何をするというのを決めているものはありません。

古川(元)委員 今決まっていなくても、私もまだテレビ等で見るだけですけれども、阪神大震災や東日本大震災並みのかなり被害を受けているところは甚大な被害があるわけですから、やはりこうした今ある普通の災害のときに適用される税制上の特例にさらに上乗せしたようなものが必要ではないかというふうに思いますし、ぜひこれは早急に検討していただいて、措置をとっていただきたいと思いますけれども、どうですか、大臣。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、現行の税制法上でも、災害を受けたときのいろいろな措置がとられることになっておりますので、今お尋ねの、一定規模の災害が起きた場合にどういうことをするかといったようなことについて、阪神・淡路大震災とか東北大震災についてはちょっと例がないほどの大きなものだったこともありますので特別な立法措置を講じたということはもう私どもも承知をいたしておりますが、この熊本の地震に対して直ちにそれをというほど、どれぐらいの規模のものなのか、ちょっといま一つまだ判明しておりませんので、今の段階でこれをやろうと思っているというのを決めているわけではありません。

 その上で、さらにいろいろ余震やら何やらでまだいろいろなことが続いておりますので、そういったことになってきた場合においては、基本的に、いろいろな税制がさらに必要と判断した場合は対応させていただかねばならぬことになるということだと思っております。

古川(元)委員 今回も激甚災害に認定されましたけれども、そういう従来の、今の税法の中で予定している災害の想定を超える激甚災害が最近非常に多いと思うんですね。

 ですから、そういった意味では、税法の場合、前の東日本のときも、別にこれは特例法という形でやっていたわけですね。ですから、税法の中に、普通の災害の場合はこう、でも、激甚災害に指定された場合にはこういうところまで認めますよというようなものを、やはりこれだけ激甚災害もしばしば起こるようになった状況では考えるべきではないかというふうに思うんですが、大臣、いかがですか。

麻生国務大臣 これは、一定規模の災害がというまずその定義から難しいんですが、自動的に特例措置をできるようにするべきだ、簡単に言えばそういうことを言っておられるんだと思いますけれども、災害の種類とか規模とか、また、発生した地域の特性とか、いろいろ千差万別ありますので、何をもって規模の基準にするかというのが、ちょっとこれはあらかじめ決めておくというのはなかなか難しいというのが一点です。

 その中で、災害が被災者の生活や事業に及ぼす影響というものにつきましても、これは地域によって随分差があろうとも思いますので、これを一定の枠をはめて一律に措置を講じるというのは、なかなか的確に対応していく上でおのずと限界があるんじゃないかなと考えてはおります。

 何よりも重要なことは、災害の全容を踏まえた上で、税制というものを含めた総合的な支援をきめ細かくやっていかねばならぬということだと考えておりますので、いずれにしても、今回の震災を受けてどのような対応をしていくかにつきましては、被害の状況とか復旧状況とか、また、御要望等々をよく伺った上でしっかりと検討してまいりたいと思いますが、そういった意味では、スピード感も持ってやらねばならぬと思っておりますので、私どもとしては、そういったものが実際に出てきたときには速やかに対応できるように考えておかねばならぬと考えております。

古川(元)委員 今回の激甚災害の指定も、それこそ政府の立場から見れば、実際に本当に補正を打つときに指定すれば、それでちゃんと補助は出せますよ、補助率を上げますよということでなるんですけれども、やはり被災地の人たち、被災者の皆さんから見たら、一日も早く激甚災害の指定をすることが安心にもつながっているわけですね。

 それと同じように、税制上の特例措置についても、例えば、基準がないと言われましたけれども、激甚災害に指定された場合には、普通の災害に上乗せしたこういう税制上の特例措置がありますというふうに枠をつくっておけば、それが実際に必要な事例なのかどうかというのは個別の適用ですけれども、ちゃんとそこのところで、一々そのときになって、いや、これは普通の災害の特例の税制ではなかなか対応できないから、さらに特例法をつくってというふうにならなくても済むんじゃないか。

 ですから、そういった意味では、一般的に、激甚災害の指定をしたときにはこういう上乗せの措置がありますよということをつくっておくことが被災者の皆さんにとってもやはり安心につながるんじゃないかと思うんですけれども、どうですか、大臣。

麻生国務大臣 御指摘のあったやり方も一つの方法だと私どもも思いますが、他方、災害そのものや被災者の置かれた状況というのは個々の災害ごとに差があろうと思いますので、したがって、個々の災害というのに的確に対応していくというためには、やはりまずは被害の全容を踏まえた上で税制を含めた総合的な支援をしていくということなんだと思います。

 私どもとしては、きめ細かく検討することが重要だと思いますが、こういうのがあればいろいろ支援があるということは、どのように対応していくかということと重なってまいりますけれども、今言われたように、大きなものが激甚災害を受ければ何がつくという話ですけれども、激甚災害を受けても、実際、それは状況によってそういう対応がない場合もあろうかと思いますので、そういった必要がなかった場合も起きたりするかと思いますので、これはなかなか一律に決めるのはいかがかなという感じが率直な実感です。

古川(元)委員 私は、こういう災害対応というのは、やはり被災者の立場に立って考えるということですね。これは私も東日本大震災を与党の立場で経験いたしましたけれども、やはりやれることは何でもやる、そういう姿勢をきちんと政府の方が示すことが安心になるんですね。

 ですから、実際には、そういう税制上の枠があっても、それが適用にならないかもしれない、必要ないかもしれないけれども、ちゃんとそのときにはこういう枠がありますよということは、それは安心につながるんじゃないかと思うんです。だから私は言っているんですね。

 だから、実際にそれが本当に使われるかどうかというのは、それぞれの災害のときの対応によると思います。しかし、激甚災害になれば、こういう大きな枠として、ちゃんと安心のそういうものがありますよ、そういう大きな構えが被災者の皆さん方のやはり安心にもつながるんじゃないかと思いますけれども、どうですか、大臣。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、おっしゃるように、こういった状況になれば、例えば激甚災害の指定を受ければ、災害という名前で、水害であろうと地震であろうと火事であろうと、いろいろな形のものの災害は考えられますけれども、その災害に当たっては、ちょっと法律のつくり方もいろいろ難しいとは思いますけれども、今言われたように、安心感があるという点に関しましては確かにおっしゃるとおりなんだと思いますけれども、実際にそれを法律にしていくということになりますと、柔軟に対応してやっていかないかぬという感じがしますので、一律に決めちゃうというのはどうかなというのは率直な実感です。

古川(元)委員 一律に決めた上で、適用するかどうかはその現場現場の状況によって変えればいいんだと思うんですね。ぜひ前向きに検討していただきたいと思います。

 これはちょっと消費税絡みの話になりますけれども、今のところでは、今回の地震があったからというので、これがいわゆるリーマン・ショックとかあるいは東日本大震災級のそうしたものには当たらないというふうに、大臣初め、政府の関係者の方、また、自民党の税調会長もおっしゃっておられるようでありますけれども、今後の被害の拡大の状況、まだ、地震も余震も続いていますから、はっきり全体がどうなるかわかりません。そういう影響の拡大の状況によっては消費税引き上げの判断に影響を与える場合という、そういう可能性もあるというふうに思われますか。

麻生国務大臣 少なくとも、いわゆるリーマン・ショックや大震災などというような表現でずっとこれまで答弁をさせてきていただいておりますけれども、この熊本地震がその中の大震災に当たるかといえば、今の段階ではそういう段階にはない、私どもはそう判断をいたしております。

 ただ、これは御存じかと思いますけれども、私ら福岡とか熊本というのは、地震はないんです。地震があれば炭鉱なんか全部つぶれていますから。震度三で炭鉱は全滅です。したがって、今炭鉱はないから少なくとも今回の死者がいないのであって、昔みたいに昭和三十年代のように炭鉱があれば死者は桁違いになっていただろうと思うほど、地震というものがないところです。

 したがって、そこで初めて地震が起きて、震度三といっても別に東京じゃ驚きませんけれども、福岡で震度三といったらそれはえらい騒ぎで、今までありませんから。そういった意味では、これはいわゆる群発地震という形になっておりますので、余震が二とか一で別に驚くことはないでしょうというのが地震の多い地域ではそういうような反応ですけれども、やはり、私らがおります筑豊とか福岡とか熊本とかあの辺へ行くと、地震というのは生まれて初めての経験ですから、何となくおびえがあるというのはもう確かだと思います。

 加えて、それが起きたことがない地域で起きた場合は、どういう地震につながっていくのか。これは、地震屋とか予想屋とか気象何とかとか、地質学の方がいろいろしゃべっておられますけれども、全然予測が立っておられませんので、私どもは、今の段階では先ほど申し上げたとおりのお答えにしかなりませんけれども、これがさらに大きなものになっていくという可能性はゼロかと聞いてみると、誰に聞いても皆それに対しては答えを出されませんものですから、今の段階でとしか申し上げられないんですけれども、今の段階では、これまで申し上げたとおり、大震災というような感じで対応するつもりはございません。

古川(元)委員 また新たな地震が起きるという可能性もあると思いますが、同時に、経済的ないろいろなダメージ、それこそ自動車の生産がとまったりとか、きのうもちょっとテレビを見ていましたら、大分の方の温泉街はがらがらだとか、そういう経済に対しての波及的なマイナスの影響が今後もっと大きくなってくる可能性も否定できないんだと思うんですね。

 そういうような場合に、それが経済に波及する影響が大きくなれば、それが消費税の引き上げの判断に影響を与える場合、そういう可能性はあり得ますか。

麻生国務大臣 今、例えばいろいろな形で私どもとしては対応というのを考えないかぬというものがありますけれども、経済への影響として、企業の生産活動というものに対して影響が出てくるというのは、今、サプライチェーンが一つ、ボルトとかナットが一個飛んでも車がつくれなくなるという状況でもありますので、これは被害の対応、災害応急対策に対しては全力を挙げていかないかぬと思っておりますけれども。

 引き続き経済活動等々に対して十分に注視してまいりたいとは思っておりますけれども、これがさらに大きくどんどん、こちらで、大分でつくるといったらあそこはアイシンがありますけれども、アイシンのが一個飛んだら、結果として、アメリカの自動車工場がとまっちゃうとか東北の自動車工場がとまっちゃうというような話にまでいくのかといったら、今のところそこまでいかないという感じがいたしておりますので、私どもとしては、どれぐらいの状況が起きるかというのをよく見きわめた上で判断をさせていただくということになろうかと存じます。

    〔委員長退席、うえの委員長代理着席〕

古川(元)委員 わかりました。

 では、次の質問に行きたいと思います。財政健全化についてちょっとお伺いしたいと思います。

 さきに財政審の方で、海外各国における財政健全化の取り組みを調査したというふうに伺っています。多分、大臣の方もその報告を受けていらっしゃるんじゃないかと思うんですが、ちょっと資料を見ていただくと、「各国のリーマンショック後の財政健全化の進捗状況」、フローとストック、二枚、これは財政審に出された資料ですけれども見てみますと、リーマン・ショック以降、日本に比べて各国の財政健全化の取り組みの方が進んでいるなという感じなんですね。

 リーマン・ショックによる影響は、むしろ日本の方がダメージ的には、世界の中でいうと、麻生大臣は、まさに総理として一番この影響を受けたんですから、俺が一番影響を受けたと思っていらっしゃるかもしれませんけれども、世界の中で見ると、まだ比較的日本のリーマン・ショックによる影響は小さい方であったんじゃないかというふうに言われていたかと思うんです。それでも、大きなショックを受けたヨーロッパ各国を初め、そういうところの方が、財政健全化の取り組みが進んでいるんじゃないかなというふうに思います。

 これは多分、大臣も報告を受けただろうと思いますけれども、この調査報告を受けられて、どういうふうに大臣は考えられたか、御所感をお聞かせいただければと思います。

麻生国務大臣 これはもう古川先生御指摘のとおりで、リーマン・ショックの後、欧米において、G20の合意とか、あれはEUの合意等々がありますので、財政収支などをベースにした、日本のような基礎的財政収支というより、一段高い目標を掲げてスタートしておられるんだと理解をしておりますので、この高い目標に向けて、間違いなく欧米各国の方が日本より速いペースで財政健全化を進めてきた、これは間違いなく事実だと思っております。

 他方、日本の場合は、欧米と比べて、リーマンが起きる以前から財政状況というものは大きく悪化しておりましたので、その原因が、高齢化による歳出圧力と税収の基盤というものの脆弱化という構造的なものであることなどから、まずは基礎的財政収支というのを目標に掲げて、欧米に比べれば緩やかなペースで財政健全化を進めてきたんだと思っております。

 しかし、経済再生と財政健全化の両立というのを進めていった結果、二〇一五年等々ここのフローの改善幅で見ますと、フランスやカナダ等々を日本の場合は上回っておりますし、ストックの改善幅も、二〇一五年では、フランスやアメリカを上回るというところまで来ていると思っております。

 今般の海外の調査では、個々の国々について具体的な取り組みを調査した上で、共通の要因としては、きちんと財政健全化をする前の計画をして確実に実行していく、そして、構造改革など、いわゆる成長戦略と言われるようなものと財政健全化を両立させるというようなことが指摘をされております。

 安倍政権における経済財政の計画とかそういったものの取り組みは、まさにこの取り組みと同じものなんだなという感じがしておりますけれども、引き続き、これはきちっとした健全化というのを目標に据えておかないと、何となく財政出動みたいな話にずっととらわれて、最近は、金融じゃない、財政だとかなんとかいう新聞の話に乗せられてみたりなんかしかねないので、きちんとそこのところは金融も財政も両にらみでやっていかねばいかぬものだと思っております。

古川(元)委員 大臣、計画を確実にと言われているんですけれども、安倍政権は、三党合意で決めた二〇一五年十月の消費税の引き上げというのも延期したわけですよ。計画を着実にやっているというふうに言えるのかなというふうに思います。

 それに、今、財政の話も言われましたけれども、今回の震災絡みの補正の前に、もう既に、またかなり大規模な補正があるといううわさも聞こえてきていたわけですし、こういうヨーロッパを初めとするほかの国の取り組みに比べると、日本はただでさえもスローな上に、それでもまたかなり積極的にやろうとしているかのように思えるんですね。

 特に、今回ドイツなんかは、ドイツという国柄もあるのかもしれませんけれども、財政赤字をストックで減らすというところまで来ているわけです。この辺の、ドイツあたりのこういう進展と日本の違いというのはどの辺にあるというふうに思いますか、大臣。

    〔うえの委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 基本的にドイツの場合は、御存じかと思いますけれども、東西ドイツ合併というか統一したときに、ドイツはいわゆる高失業と景気の低迷で、早い話が欧州の病人、それがドイツについた名前です。

 私は、シュレーダー政権だと思いますので千九百九十何年から二〇〇〇年初めごろだったんですが、こういう状況だったので、これはえらい勢いでドイツは立て直さなならぬという使命感もあって、ドイツの場合は、戦前、ハイパーインフレなんかで悩んだ国でもありますので、経済成長というものと財政再建というのを一生懸命やってきたのがドイツの歴史なんだというように思います。

 財政健全化というものに対して、今も財政出動というものに関しては、G20の中で、断固拒否とは言いませんけれども、まずやる気がないという態度で、財政出動というものに関しては極めて後ろ向きなのがドイツの姿勢だと思いますが、財政健全化というものに対する、あそこはハイパーインフレを二度やったのかな、そういった意味では、すごいコンセンサスが国民の間にあるというのが、結果的に、財政健全化と経済再生との両立というのにこの国は向かっていったんだと思っております。

 日本はそれほど確固たるコンセンサスがあったかと言われれば、そこまではないんだと思っておりますので、私どもとしては、経済を成長させていく、もうちょっと、もうちょっとといって何となく財政の出動というのにかなり頼った部分というのを否定できないところはあろうかと思います。

 いずれにいたしましても、今回はおかげさまで、三党で合意をさせていただいて、税収も消費税を含めまして十五兆というほどの税収の伸び、新規国債も四十四兆が三十四兆ですから、十兆円ほどこの三年間で減るというところになってきておりますので、どうにかプライマリーバランスの半減達成という目標は、私どもとしてはきちんと達成をできたということは言えるんだと思っております。

 残り五年間できちんとこれを、基礎的財政収支を、ゼロにするというところまで目安を立てて、工程表をつくってきちんと今進めていかねばならぬと思っておりますので、基礎的財政収支、二〇二〇年度黒字化というのの目標は、これはきちんとやり遂げていくという気構えでいかねばならぬところだと思っております。

古川(元)委員 二〇二〇年の目安を立ててきちんとやらなきゃいけない、気構えはというふうにおっしゃるんですけれども、この調査の報告の中に、「財政健全化に当たっては、経済成長が期待通りにいかないことがあることも踏まえ、客観的で堅実な経済前提を置くことが重要」だと。また、「経済が予想以上に好調に推移し、想定を上回る税収が得られる場合には、財政面での「貯金」を作り、余力を確保することで、将来起こり得る経済の危機等を乗り越えることが可能となり、また、中長期的に財政健全化を進めることが可能となる。」そういう報告がなされているんですね。

 そういう視点から見ますと、今の中期の財政の見通し、基本的には我々の政権でつくったのと同じなんですけれども、違いが大きくあるのは、我々のときは、成長戦略の目標としては、今の安倍政権と同じように、名目三%、実質二%。しかし、やはりこれは財政健全化の堅実な相当かた目の数字を見ていかなきゃいけないだろうということで、我々は慎重シナリオ、今で言うベースラインシナリオと言われているところをベースにして、そこで財政の健全化をどうしていくかということを考えたんですね。

 ところが、今、安倍政権は、これは経済再生ケース、アベノミクスがうまくいったことを前提にしたそういう中で考えているんですよ。これが客観的で堅実な経済前提というふうに言えると大臣は思いますか。

麻生国務大臣 今言われておるいわゆる論点整理で、財政健全化に当たっては、経済成長が期待どおりいかないこともあることを踏まえて、客観的で堅実な経済前提を置くことが重要と指摘されておりますのは、よく承知をいたしておるところであります。過去にも経済成長か財政再建か二者択一みたいな議論もありましたけれども、私どもはその両立というものを図って、少なくとも今のところ、きちんとした三本の矢というのを掲げて、私どもとしてはここまで進めさせていただいてきております。

 今お尋ねの中長期試算、これは内閣府によるものだと思いますが、私から詳しいコメントをすることは差し控えたいとは思いますが、経済再生ケースというものは、まさにその姿を示しておりますので、一種の見通しを明確に示すものだと認識しておりますが、今お話がありましたように、これは厳しい経済状況というものを前提としたいわゆるベースラインケースというものを同時に示しております。

 二〇二〇年度のプライマリーバランスというものはどちらのケースにおいても見込まれているわけではありませんので、私どもとしては、引き続き、歳出の改革を強化、継続して、きちんと本来の目的であります基礎的財政収支を二〇二〇年度までに黒字化ということを目標としてやっていくという、この姿勢は極めて大事でありますし、半減するということを申し上げた三年前、絶対無理と言われたのが、現実問題としては達成が半分のところまでは来ておりますので、引き続き私どもとしては、対応をしてまいりたい、頑張ってやっていかないかぬ、大事なところだと思っております。

古川(元)委員 大臣の口から言いにくいのかもしれませんけれども、どう考えたって、これは客観的で堅実な見通しだと言えないと思うんですね。しかも、アベノミクスで得られた果実を分配するんだといって、想定を上回る税収が得られた分もあると思うんですけれども、それをまた分配に回しちゃっているわけです。

 ですから、こういう財政審で調査されるのはいいですけれども、ちゃんとそうして指摘されたら、きちんとそういったものを謙虚に受けとめていかないと、とても、やります、努力していかなきゃいけないということの思いだけで達成できるわけじゃないですから、そこのところはしっかり認識をいただいて、やはり財政当局はかた目に考えていくということでなきゃいけないんじゃないかというふうに思います。

 では最後に、ちょっと時間がなくなりましたけれども、ちょっとグローバルファンドについてお伺いしたいと思います。

 もう大臣も、総理、外務大臣も経験された人はよくわかると思いますが、このグローバルファンドは日本は生みの親で、資料をちょっと見ていただきますとわかりますけれども、これまでこのグローバルファンドについては日本がリードしてきたと言ってもいいと思います、設立から。

 これについては、二〇一三年の十二月に開催された第四次増資会合で、二〇一四年以降当面の間に八億ドルの拠出を行うということを約束しているわけなんですが、この増資会合、またことし行われるんですね。

 ですから、そういった意味でいうと、この八億ドルというのは、グローバルファンド側から見れば、当然ことしじゅうにはちゃんと振り込まれるものだろうなというふうに見ていると思いますが、この当面の間というのはそういう認識でよろしいですか。

麻生国務大臣 グローバルファンドにつきましては、いわゆる感染症への取り組みというのが基本的には一番の目的。加えて、今の世界銀行の総裁も、感染症のプロの医者が世銀の総裁になっているということもこれありで、極めてこの問題に関しては非常に熱心になっておられるということは間違いないと思っております。

 それで、これは設立されたのが二〇〇二年だと思いますけれども、日本はそれなりに相応の貢献を行ってきたものと承知しております。

 そうした中で、二〇一三年の増資会合におきましては、外務省から二〇一四年以降の当面の間に八億ドルの拠出を行う旨表明していることも承知をいたしております。

 当面の間がいつまでかということだろうと思いますが、今の日本の具体的な拠出額及びその時期については、これはまずは外務省において検討されるべきものなんだと思っております。

 いずれにしても、財務省といたしましても、これは極めて世界的な大きな大事な問題でもありますので、私どもは、時々の財務事情、財政事情等々もよく勘案しながら、外務省と検討して対応してまいりたいと考えております。

古川(元)委員 最後にちょっと、財務大臣麻生太郎さんに聞くというよりも、総理、外務大臣も経験された麻生大臣個人の立場としてお考えをお聞かせいただきたいと思うんです。

 日本は、TICAD、ことしはアフリカでも開催する予定です、やはりこういうものに積極的に対応していく。安倍政権が積極的平和主義というものを標榜するのであれば、まさにこれは、人間の安全保障を外交の基本方針としてもずっとこれまでとってきた日本政府としても、最もふさわしいものじゃないか。

 ですから、これについては、伊勢志摩サミットのときには、いつまでにやるということは、外務省に任せるというよりも、それは麻生大臣も積極的にリードしていただいて、この辺は財務省の方にもきちんと、ちゃんと日にちを出せ、期限を出せということでやっていただくべきじゃないかと思いますが、どうですか、大臣。

麻生国務大臣 これまでもいろいろこのファンドについて、これは補正で措置しているんじゃないかとか、よく言われるんですよ。財政のわかっていない人って必ずそう言うんですけれども。これは、会計年度とフィスカルイヤーとの違いですから、そういった意味ではずれがどうしても生じますので、予算を要求されて出てくるときには、こっちは予算が終わってから出てくるから、どうしても補正でやらざるを得ぬというようなタイミングのずれということもこれまで何回かありますので、私どもとしては、このところ、二十六年以降は補正で主に対応させていただいてきている。とにかく、言ってくるタイミングが全然違いますので。

 ことしもそういった形で、今百八十億とか百何十億とかいろいろやってきておりますので、そういった意味では、今後ともきちんとした対応をさせていただくということにはなるとは思います。

 今、本チャンの予算で組んでいないじゃないかという御指摘は、この間ある方から言われましたが、いやいや、ちょっと待ってください、違うでしょうがという話を説明せないかぬところなんですけれども。

 いずれにしても、これは極めて大事な話ですし、私どものように、このグローバルファンドを使って、日本の保健というものが、ほかの国でこれだけきちんとできている国はありませんので、それを基礎としてやりたい等々いろいろな話が私どものところに、あれはWHOですかね、通じて、マーガレット・チャンという人が議長ですけれども、この人が、キム総裁経由でこちらにという形で、今いろいろ来ておりますので、きちんとした対応をさせていただくつもりにいたしております。

古川(元)委員 しっかりやっていただくことをお願いして、私の質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民進党の鷲尾でございます。

 まずは冒頭、熊本の震災に対して、財政金融当局としても迅速なる対応をお願いしたいというふうに申し上げておきたいと思います。

 きょうは、社会保障費の関係につきましてこの財務金融委員会でも質問させていただきたいというふうに思っておりまして、一般会計予算の三割を超えております社会保障費でありますけれども、近年いろいろな手当てをしておりますが、特にふえている医療費の問題。

 この医療費なんですけれども、財政当局も、あるいは、きょうは厚労省にも来ていただいていますけれども、できる限り診療報酬で抑制をきかせようということで財政との兼ね合いを図ってきているんだというふうに思います。

 この診療報酬ですけれども、総額をできる限り抑制する方針の中で、私から言わせると、総額をできる限り抑制しよう、抑制しようと言うだけで余り芸がないというところがありますものですから、きょうは少しそこを深掘りしながら、今後の日本の社会保障費をできる限り抑えつつ、かつ、国民にいかに質の高いサービスを供給していくかという切り口から質問させていただきたいというふうに思います。

 それで、まずはPMDAにつきまして質問させていただきたいというふうに思います。

 医薬品医療機器総合機構ということで、PMDAでありますけれども、そのPMDAが大阪に設立をしたPMDA関西支部のテレビ会議というのがありまして、このテレビ会議の使用料につきましてちょっと議論させていただきたいというふうに思うんですけれども、要するに、かなり高額になっているということであります。

 そもそもPMDAというのは、医薬品、医療機器の承認審査、関連業務を中心に、その品質、有効性及び安全性について、治験前から承認までを一貫した体制で指導、審査し、また同時に、市販後の安全性につきましても、情報収集、分析、提供を行うなどの安全対策を通じて国民保健の向上に貢献することを目的としているわけであります。

 これまで、東京の新霞が関ビルで全ての業務を一貫してとり行ってきたというのが現状でありますが、関西イノベーション国際戦略総合特区の要望を受けまして、製薬企業の本社が大阪などの関西地方に多く存在することから、平成二十五年の十月一日にPMDA関西支部が開設されたところであります。

 地方創生という観点からいけば、こうした試みは好ましいことだというふうに思っておりますけれども、きょう議論させていただくそのPMDA関西支部の極めて法外に高額なテレビ会議使用料、この妥当性について質問をしたいというふうに思います。

 このPMDA関西支部を利用して専門家の高度な助言を必要とするような対面助言を製薬企業が求める場合、大阪には専門知識を十分に有する者が常駐していないというところから、東京にあるPMDA本部に勤務する専門知識を有するPMDA職員と通信回線を利用してテレビ会議を行うということがある。まあまあ簡単に言うと、テレビ会議ですよね。このテレビ会議を行う際に、一相談当たり使用料二十八万円ということだそうであります。

 これはどうしてここまで高くなってしまっているのか。普通にテレビ会議を使用しますということになりますと、ここまで高いというのは余り聞いたことがないんじゃないかなというふうに思います。当然これは根拠があることだというふうに思いますので、その根拠につきまして厚労省からお聞かせいただきたいと思います。

中垣政府参考人 ただいま御質問いただきましたPMDAにおけるテレビ会議手数料の問題でございます。

 今先生るるおっしゃったように、もともと東京でずっとやっておったのを、関西イノベーション特区で、まさに先生がおっしゃったとおりなんですが、やはり、大阪というのは製薬の中心地であって、そこからイノベーションを起こして地域の活性化をしていきたいという御要望があって、それでまず、PMDA関西支部、PMDA―WESTと言っております、それを設置いたしました。

 そこで相談を行っておったわけでございますけれども、ここは専門職員は行ってはおりましたけれども、医薬品といってももう非常に普通の、例えば循環器の薬から抗がん剤までいろいろな薬があって、それはその人が一人で対応できるものではございませんので、いろいろな、例えばこういう特に医薬品の承認、先生がおっしゃるとおりですが、承認とかの手続になれていない人とか、あるいは、データのとり方でどうやってとればそれがちゃんと治験のところに使えるデータなのかみたいな話がございます。そういった相談をまずきちんとやろうということで始めました。これは無料相談でやっておりました。

 一方、今後治験に進んでいってちゃんと進めていくという場合には、やはり手術なりなんなりに対応した専門家がやらなきゃいかぬ。それは、一人だけじゃなくて、PMDAもいろいろな審査の部が分かれておりますけれども、抗がん剤なら抗がん剤をやるところ、そういった担当の職員が対応するといったことで、チームで対応するというような形になっております。

 今回新しく導入するものでございますけれども、これは高度なテレビ会議システムの導入ということで、実は、このPMDA―WESTをつくったとき、建物と、やはりこの会議をするにはちょっと手狭だということがありまして、それで隣の建物に移っております。その中で、今回、その初期費用については大阪府とそれから地元の経済界で御負担いただいておるわけでございますけれども、ランニングコストについては実費相当分として利用者に御負担していただくということとされておるところでございます。

 これが、相談の見込み等も勘案いたしまして、今先生がおっしゃった一回当たり二十八万円とさせていただいたところでございます。

 この具体的な内訳でございますけれども、これは、会議室の新設、その中の賃料でありますとか光熱費、あるいはテレビ会議システム等の必要な機器の維持管理費、そういったものから成っておるところでございます。

鷲尾委員 今お答えいただきましたけれども、ランニングコストを、相談の見込み、つまり、利用される件数の想定でそれを除したものを手数料にしているということなのかなというふうに認識をいたしましたが、そこには当然、今オフィスが移転をして、その高額な賃料等も反映されたものがその二十八万円の中に含まれている、そういう認識だと思います。

 このPMDAのテレビ会議なんですけれども、内閣府の資料によりますと、宮崎県からも提案があったようでありまして、宮崎県の資料を見ますと、ランニングコストに限ってみれば、今回PMDA―WESTの年間約二千九百万円に対して、宮崎が提案したものは約五百万円、六分の一程度で済むそうです。

 高額のその部分については、若干折半なりなんなりで補助が入るという話でありますけれども、テレビ会議、一般的なシステムについても、一般的なものを調べると大体月額十二万円程度なんだそうです。ですから年間百四十四万円程度でありまして、この関西支部が年間二千九百万円という数字になるというのが、かなり私、ちょっとどうなのかなというふうに思っております。

 高額な家賃、これはどれぐらいなのかということももう少しお答えいただけたらなと思うんですが、いかがですか。

中垣政府参考人 家賃の問題もあると思いますけれども、やはり、相談にいらっしゃる方の便宜ということも考えれば、非常に便利な場所がいいんじゃないかというのはございました。

 あと、もちろんおっしゃったように、非常に都会の真ん中にある場所でございますので、そういった賃料もそれなりのものだろうと思っております。

 一方で、この建物には今、独立行政法人の医薬基盤・健康・栄養研究所というのが合併する前に創薬支援ネットワークという事業をやっておって、今は日本医療研究開発機構の方に移っておるんですが、そこは、創薬のシーズを持っている方を、どうやってそれを製薬業界につなげて、そのシーズをどうやって早く製品化して患者、国民に届けるかというのは、そういうことで非常に大事であります。

 まさにこのPMDAも、そういった、いかにして早くうまく治験につなげていってやろうかというのでやろうとしております。

 そういった意味で、ここの建物にはそういった日本医療研究開発機構の創薬支援戦略部の西日本統括部が同じところにあるとか、それから、大学のそういうイノベーションを行うところが入っておるとか、そういった相乗効果も期待されるといったこともございます。

 さらには、先ほどちょっと先生おっしゃいましたけれども、具体的には、この二十八万円について、大阪府の方でも支援をするといった形をとっていただけるというふうに承知いたしておりますので、そういった形で、利用者の便利を確保しつつ、適切な価格でやっていけるのではないかと思っておるところでございます。

鷲尾委員 いや、適切な価格というのは、少し一方的な気がいたします。今、付随で、テレビ会議、PMDAのそもそもの趣旨とはまたちょっと違う、ビルにいろいろ入っているんだという話もされていましたけれども、それが同じビルに入っているからそういう高額な賃料のところに移転すればそれでいいんだ、こういう話ではないんじゃないかなと。

 むしろ、そのテレビ会議というコストを引き下げることによって、よりもっと頻繁に相談することによってスピードを上げる、そういう方向性だってあるわけで、そもそもその価格設定自体、ふさわしいと言うにはちょっと一方的に過ぎるような気がいたします。その上でですけれども、できればそういったランニングコストをできる限り低くすることが、製薬企業に、結局、医療品の価格を下げていくということに結果としてつながるというふうに思います。

 やはり、テレビ会議で一件当たりそれだけ高い値段、では、高い値段をどこに転嫁するかといったら、薬価に転嫁するわけですから、そういったことを製薬企業に、薬価については大分、引き下げろ、引き下げろということを財政規律上言いつつも、一方で、いや、これがふさわしいんですと言いながら、中身を見ると、ちょっと一方的に過ぎるんじゃないかという価格設定になっているというところは、ちょっといかがなものかということをコメントしていきたいというふうに思います。

 実際、今ふさわしいというふうにおっしゃっていましたから、いや、もういいんです、補助金も入っているから利用者には何も迷惑はかけていません、そういう御答弁なのかもしれませんけれども、実際に高いという声が、こうして国会でも質問しているわけですから、こういう声に対して、何か対処しようとすることはございますか。

中垣政府参考人 この額につきましては、いろいろ関係者の間で合意のもとで、実費相当として利用者に御負担していただこうということになったところでございます。

 ただ一方、利用の見込みというのはあくまで見込みでございますので、今先生おっしゃったみたいに、どの程度利用されるかということで、やはり当然、利用実績等があれば、必要に応じた見直しを行うものと承知いたしております。

 いずれにいたしましても、繰り返して恐縮でございますけれども、今回は、大阪府の方で補助をしていただけるということもございますので、まず、この六月からの機能拡充がうまくちゃんとスタートできるように準備していきたいというふうに思っておるところでございます。

鷲尾委員 PMDAは、独占事業ですからほかに頼ることができないという状況にあって、半ば一方的に高額な値つけを強要している。関係者は合意している、合意していると言いますけれども、お上から言われるとなかなか声も出しにくいしというところもあるでしょう。まさかテレビ会議相談でそこまで巨額になるなんということも、場合によっては想定していないけれども、半ば諦めに近い形での合意ということも当然考えられるわけでありまして、私はそういう声を一部代弁しているつもりでありますので。

 そういう意味で、では、PMDAとして、先ほど申し上げたとおり、いろいろな理屈はあるけれども、ある程度製薬企業に負担をかけてしまえばいいや的な感覚で今後も根回しをしていくというのはいかがかというふうに思いますので、PMDAの経営体質も効率化を常に図っていくという意識が大事だと思いますが、ぜひこの点、きょうは太田政務官にも来ていただいていますから、いかがですか。

太田大臣政務官 お答えいたします。

 御指摘の点でございますけれども、今、二十八万円のテレビ会議システムへの支出は高いというような御指摘でありますが、みんなが合意をしてこういう値段に決めたということや、あるいは、私も今も大阪府民でございますので位置関係はよくわかりますけれども、グランフロントという、梅田のど真ん中にあって皆が集まりやすく、しかも、うめきた、ナレッジキャピタルという、知的な、インテリジェンスを全てそこに集めて、これから大阪の産業の発展を図ろうという中心地であります。

 また、このテレビ会議によって、PMDAの東京に来る以前の段階のところは、本当の最終的な承認に至るところまでのステップをかなりこなすということでありますし、実際の審査も、十人のチームが移動するということになりますと、旅費だけで二十八万円かかるというのもこれはあることでございますから、決して私は、個人的に高いなという感じはしていないのであります。

 むしろ、地方創生、大阪あるいは西日本に大きく医療関連産業を花開かせていくために必要な拠点に育っていってほしい、ことし六月からのこのシステムの稼働が成功裏に行われるようにと願っております。

 そういう意味で、現時点でこれは妥当だと私は思っておりますけれども、いずれにしてもPMDAは、御指摘のように、独立行政法人として適正かつ効率的に業務を運営する責任がございますし、私ども厚生労働省は、その所管官庁として独法評価ということも適切に行っていかなくてはなりません。PMDA自体が国民の生命、安全などにかかわる重要な役割を果たしていけるように、私どもも、適切な業務運営が行われるよう努めてまいりたいと思っております。

鷲尾委員 ここで麻生大臣にも一言コメントをいただきたいわけでありますけれども、厚労省当局としては、ふさわしいんだ、大丈夫だ大丈夫だ、これでいいんですと言うかもしれませんけれども、それは結局薬価にはね返ったりするということも考えますと、財政当局としても常に目を光らせておかなきゃいけないというふうに思います。

 この点、麻生大臣から一言コメントをいただけたらと思います。

麻生国務大臣 このPMDAですか、これは医薬品医療機器総合機構とかいうのを略してPMDAという名前になっているのは承知していますけれども、医薬品の審査や相談というので今まで東京でやっていたのを大阪で、薬屋が大阪に多いからという話で多分こうなったんだと背景は理解ができるんですけれども。

 これは、所管するのは厚生労働省ですので、一義的には厚生労働省がきちんとやられるというのが一番大事なことなんですが、事業の実施に必要な経費というものを賄う観点からその水準が設定される、そういうことなんでしょうね、これは。まず基本的にはそういう考え方なんだと思います。だから、交通費、東京まで行ってかかる金、宿泊料等々を計算していって、いろいろなことをこれは計算して出しているんだと思いますけれども、基本的には、手数料自体は医薬品メーカーというか企業側の負担になるということですよね、これは。

 そういう意味においては、事業ができる限り効率的に実施をされるということになって、手数料の水準というものをきちんと決めて、それによって手数料の水準が抑制されるということは、それは薬自体の製造コストが下がるということになりますので、それは回り回って保険料または医薬品等々に係ります社会保険に関する支出、歳出というものが減っていくことにつながっていきますので、こういったものは、効率とかそういった費用対効果というものに常に目を光らせておいていただかぬといかぬ。

 これは、一義的には厚生労働省の目の光らせ方にかかってくるんだと存じます。

鷲尾委員 財政当局も、査定をしている中で、ぜひそういう観点で、さらに厳しく見ていただけたらなというふうに思うところであります。

 続きまして、ちょっと以前、質問主意書でも出させていただいたんですけれども、今回の診療報酬改定において実施されました特例引き下げにつきまして、イノベーション型の経済成長を実現するんだという安倍政権の目標から考えて、そういう切り口から質問させていただきたいというふうに思います。

 我が国の薬価制度というのは非常に透明性が確保されているというふうに思っておりますし、そのように評価されておりますけれども、今般実施されました、巨額な売上高の医薬品に対する特例再算定については、やはり関係者からも、余りにも突然に実施されたんじゃないか、そういう声が上がっておりますし、これは一つの意見として、公的医療保険のあり方につきまして、当然、戸惑いなり不信感なりに広がる可能性があるというふうに思っております。

 質問主意書でも明示をいたしましたけれども、例えば、平成二十八年一月二十一日に、米国研究製薬工業協会の在日執行委員長のパトリック・ジョンソンさんの就任会見で、この特例引き下げにつきまして、日本の医薬品市場が縮小して、新規医薬品を開発する市場としての魅力が失われるということについて強い警鐘を鳴らしておられます。

 このことについて質問主意書でしたところ、簡単に、承知をしていない、そんな答弁が来たわけでありまして、承知をしていないということではなくて、やはり、こういう声があるんだというところを承知をした上で、実際、政府として見解を述べていただきたい、あるいは善処をしていただきたいというふうに思うわけであります。

 安倍総理も、「日本を世界で最もイノベーションに適した国としていく。」ということをおっしゃっておるわけですから、ぜひ、イノベーションに熱心な国、先ほども申し上げた創薬型製薬企業の団体もそのような声を上げているわけですから、それに対して、改めて厚労省の見解を伺いたいと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 平成二十八年度の薬価改定におきまして、今御指摘ございました、年間販売額が企業の当初の見込みを超えて極めて大きくなった品目について、市場拡大の再算定の特例、特例再算定というのを設けました。

 これにつきましては、製薬業界から、この制度を検討いたしました中医協、中央社会保険医療協議会において、意見陳述の機会というものがございました。また、今回の薬価改正後、今月四月に開催されました革新的医薬品・医療機器創出のための官民対話の場、こういう場において薬価制度に対する御意見を伺っております。

 この中で、特例再算定についても、例えば、市場規模拡大の事実のみをもって薬価を引き下げるというルールの導入には反対であるとか、あるいは、イノベーション創出の取り組みに逆行する制度であるといった御意見があるということは承知をしております。

 今、委員の御質問の中で、かつての質問主意書について御言及いただきました。

 ちょっと私、手元にありませんので正確ではありませんが、たしかそのときは、アメリカのある代表の方の会見の発言を引かれて、この事実に基づいてというような御質問でございましたので、その時点において私どもとしては会見までは完全にフォローし切れないということで、先ほど委員がおっしゃっていただいたような答弁を申し上げたかと思いますけれども、私どもとして、今申し上げましたように、内外の製薬業界の方々がこの制度についていろいろとおっしゃっていることについては、いろいろな機会を通じて伺っているところでございます。

 今回の改定、特例再算定を導入する一方で、イノベーションということを御指摘をいただいております。

 私どもも、イノベーションを促進するということは大事だということでございまして、研究開発経費を早期に回収できるような市場実勢価格に基づく薬価の引き下げを一時的に猶予する、いわゆる新薬創出等加算という試行をやっておりますが、これを継続するなど、今回の薬価改定におきましても、イノベーションの評価というものと我が国の国民皆保険というものを持続可能にするというこの二つの重要な課題の両立を目指して取り組ませていただいているところでございます。

鷲尾委員 承知をしているということだったと思います。

 では、その上でですけれども、これを続けるかどうかですね、端的に言うと。先ほど答弁の結びでイノベーションが評価されるようなというコメントもされていましたけれども、巨額であるから、市場規模が広がったから、では、それで引き下げますということですと、余りにも乱暴に過ぎるなというふうに思いますし、不正な営業努力だとか不正な臨床研究の結果を使ってというような、そういうものについてはもちろん引き下げていただいても当然だと思うんですけれども、巨額な売り上げだからといって一律に値引きを迫るというのはいかがなものかというふうに思っているところでありまして、今後も継続して実施していくおつもりなのか、この点につきまして見解をお示しいただけたらと思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 先ほども申し上げましたように、御指摘いただいております今回の特例再算定につきましては、単に市場規模が大きいからとか、小さいからというだけではありませんで、年間の販売額が、企業の方が当初その薬の見込み額を出していただいて、それを超えて極めて大きくなった医薬品について薬価を引き下げるという意味で、私どもとしては、イノベーション評価と国民皆保険の維持を両立させるということも念頭に置いて仕組ませていただいたものでございます。

 特例再算定につきまして今後という御指摘でございますけれども、平成二十八年度改定における中医協の附帯意見におきましても、市場拡大再算定のあり方について引き続き検討することとされておりますので、今後、次期改定に向けて、この意見に基づいて対応してまいりたいと思っております。

鷲尾委員 今ほど見込み額につきましてコメントされていましたけれども、今回の特例再算定におきましては、C型肝炎の治療薬が対象となったところであります。これまでの製品が病状の進行を抑えることが目的となる、そういう治療薬でありまして、投与が開始されると一生涯にわたって服用されなければならなかったということに対しまして、今回対象となったC型肝炎の治療薬というのは、肝炎を完治させることができる治療薬であったということであります。

 そうしますと、使うと完治されるものと使い続けなければならないものと、おのずから将来に対するコスト、これが違ってくると思います。そうした将来のコストの縮小も考慮された、そういう値つけが公定薬価制度のもとで適正に協議が行われた結果の高額な薬価であったということでありますけれども、そこを後出しじゃんけんで引き下げますよ、値引きしますよということは、ちょっとやはり一方的に過ぎるんじゃないか。

 今、見込みという話がされましたけれども、将来のコストがいかに引き下がるかということまで含めて薬価というのを出しているわけですから、そこで引き下げるというのは、先ほど申し上げたイノベーション評価をゆがめる結果につながっているんじゃないかというふうに思うわけであります。完治する治療薬でありますから、導入当初は当然費用負担がふえるのは当たり前でありますし、こういったことが続くと、誰も、完治できる治療薬を我が国で売りたいという形で企業さんも思わなくなるんじゃないかというふうに思います。

 ですから、創造性の高い治療薬というのは、今見込み額ということもおっしゃっていましたけれども、これは見込みよりも上振れしたからということではなくて、やはり、限られた財布の中ですけれども、その中でしっかりと評価できる仕組みを私はつくるべきであろうかと思います。将来コストが縮小することも考えながら、一時的に予算超過に陥ったとしても、それは将来また補填するというようなシステム、枠組みということも考えなきゃいけないかなというふうに思っています。

 イノベーションを第一と考えるのであれば、それぐらいやっても私は問題ないというふうに思うんですけれども、そういった財政的な配慮、大臣、この点は考えられないかというところを御見解を伺えたらというふうに思います。

麻生国務大臣 御存じかと思いますけれども、二〇二五年に、いわゆる団塊の世代と言われた方々がいずれも全て七十五歳以上という超高齢化社会というのが日本では実現することになるので、伴いまして医療に対します費用というものは、これは大幅に増加していくということが見込まれております。

 したがいまして、今言われたように、イノベーションということで、新しい開発ということでしょうけれども、鷲尾先生の話では、そういうものを今回のような対応をするとイノベーションに対するモチベーションがなくなる、そう言いたいわけですね。

 私どもとしては、医療保険制度の持続可能性というのは、両方勘案せないかぬところなので、これは、両方ともどの程度に評価してどの程度にバランスするかというのは最も大事なところだと、私どももそう思っておりますので、それぞれの医薬品について、費用対効果等々を踏まえてそれに見合った価格づけを行っていくということとともに、いわゆる後発医薬品というものの使用を促進してもらうとか、市販品の中で類似薬があるものについてはそういった保険給付なんというのは見直せとか、いろいろな形でさまざまな側面から私どもとしてはこういった制度改革というものをきちんとやっていかないと、持続可能ないわゆる皆保険とか、保険とかいうものは成り立たなくなりますので、そういった意味では、どの程度にやっていくかというのは不断の努力が必要なんだと思っております。

 今C型肝炎の話をしておられましたけれども、このほかにもいろいろな薬というのは出ておりますので、考えてみれば、それが出たことによって、少なくとも、今後医者に行く必要がなくなることによって生み出される利益というのをどれくらいに考えるか。また、私どもとしてみれば、その医薬品をやることによって、今度はほかの医薬品にずっと持続されると、こっちの医薬品の支出はもっとふえますので、そっちの支出ががたっと減るということ等々を考えて、新しいものができるということに伴います歳出減というものは極めて大きなものになりますので。

 私どもは、そのバランスというものを常に考えながら、こういった新しい医療というものの進歩というのには、引き続き、そういったものに対して、特許とかいろいろな形で保護されるものがいっぱいありますけれども、私どもとしては、それによって多くの人が助かるという点につきましては、金の問題ももちろんあろうとは存じますけれども、基本的には、保険でどの程度のものが賄えるか等々は、私ども歳入歳出を預かる立場としては、常に気を使ってこないといかぬところだと思っております。

鷲尾委員 大臣、御趣旨を理解いただきまして、大変ありがたく思っております。

 では、改めて、ちょっと具体的に厚労省に聞きますけれども、今申し上げた、高額、高額と言いますけれども、あるいは、見込みを上回る市場規模になりましたということでありますけれども、完治を前提としているかいないかというところで差別化というのは考えていくべきだと思いますが、いかがですか。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 新たに保険収載される医薬品の薬価、C型肝炎治療薬の例をお示しいただきました。その例で申し上げれば、医薬品の効能、効果と類似している薬剤が既に収載されていたということで、その類似薬の価格のもとに算定するということを基本としながらも、この薬は、ウイルス除去率という、今御指摘いただきました画期的な治療効果を有するということに着目いたしまして、これはもう薬価制度の中で決められたルールでございますけれども、高い治療効果を有するというその薬剤の有用性に着目いたしまして算定した価格への加算、本剤でいえば一〇〇%の加算という形で評価をさせていただいております。

 本剤の話と、一般にということもございましょうけれども、医薬品の治療効果を踏まえた薬価の設定のあり方ということにつきましては、今申し上げた制度はありますけれども、さらにどのような対応が必要かどうかという点も含めまして、今後、中央社会保険医療協議会、中医協の中で検討してまいりたいと思っております。

鷲尾委員 ありがとうございます。

 それでは続いてですけれども、これも今答弁にありました中医協でも話題になっているようでありますけれども、オーファンドラッグとして承認されまして高額な薬価が付与された治療薬が、別に効能、効果を追加承認になった場合の価格再算定ルールにつきましても、厚労省からこの際ですから見解を求めておきたいなというふうに思います。

 一般に、患者数が限定されて少ない治療薬につきまして、その希少性が評価されて高額な価格に決定されるということを聞いておりますが、例えば、オーファンドラッグとして承認された後、肺がんなど抗がん剤として製造販売が追加承認された場合、そうすると、二年ごとの薬価改定を待たなければ、高額の薬価のままこれは使用されるということになります。こういう場合は、逆に、改定を待たずして適正価格に落とし込めるようなルールも必要になってくると思うんです。

 こういった細かなルールにつきまして、厚労省はどう考えているかについて御見解をお願いします。

吉田政府参考人 一般論としてお答えをさせていただくことをまずお許しいただきたいというふうに思います。

 現行の薬価制度、通常二年ごとに行われます診療報酬改定の際に、市場実勢価格に基づいて薬価を見直すというのとあわせまして、例えば、先ほど来御指摘いただいています今回導入した市場拡大再算定など、あらかじめ定められた薬価改定のルールというものを適用するということにしております。

 御指摘のような、通常の薬価改定における対応とは別に、個別の時点において薬価を見直すということについては、例えば、どのような場合に薬価の再算定をするのかとか、あるいは、効能追加による市場の拡大の程度をどのように評価するかとか、あるいは、既に医療機関に納入されている医薬品の在庫価値が随時改定いたしますと減額されるということになりますが、それをどう考えるかなどのさまざまな論点があると思っております。

 どのような対応が可能かどうか、中医協での議論の中で今後検討してまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 やはり、その工夫をしていただけたらというふうに思います。めり張りのある薬価制度がないと、先ほど来議論させていただいておりますイノベーションと共生できる持続可能な社会保障制度というのはあり得ないと思っておりますので、そこはもう本当に細かくやっていくべきだろうというふうに思っております。

 ちょっと時間がなくなってきておりますが、一問飛ばさせていただいて、最後また大臣にちょっとコメントいただきたいというふうに思っているんです。

 今回の特例引き下げを見ていますと、先ほど大臣にも御答弁いただきましたが、イノベーションの評価をちょっとゆがめてしまうような、そういう施策なのかなと。それは今後いろいろな観点から議論していただけるということでありましたので、きょうの委員会でもそういう答弁をいただきましたので、それはそれで評価させていただきたいと思いますけれども、少なくともことしの改定につきましては、厚労省の当局としても、業界も特例引き下げを含めてびっくりしているわけですから、逆に、財務省の査定に合わせる、そういうような手っ取り早い引き下げというような感覚も否めません。

 先ほど冒頭申し上げたように、手数料の設定につきましても、あるいは今回の引き下げにつきましても、ちょっとずさんなところがあるんじゃないかなというふうに思っております。

 ですので、制度自体、こういうことが続きますと本当に信頼が損なわれるというふうに思いますので、やはり大臣としても、そういう観点からしっかりとこの制度を注視しつつ、財政の立場でプレッシャーをかけていただきたいというふうに思うんですが、最後、大臣に御答弁をお聞かせいただけたらと思います。

麻生国務大臣 繰り返しになりますけれども、イノベーションというものの評価というのをどの程度にするかというのは、これは難しいですよ。ゆがめられているというのは、それは誰の見解ですかという話になるから、これは難しいんですよ。そこのところだけ頭に入れておかないと、適切に評価しつつなんて、みんな役人は言うんですよ。誰が適切に評価しているんですか。鷲尾さんができるわけでもないし。だから、みんなでしなきゃいかぬということになると、医療制度審議会とか中医協とか、いろいろなものが出てくることになりますので。

 そういった意味では、これは、私どもとしては、モチベーションをちゃんと高めながらイノベーションをぜひという話をする反面、傍ら、こちら側には、世界に冠たる医療保険制度というものがありますので、それが少子高齢化によって今破綻しつつあるというので、毎年高齢化が進むために年間の社会福祉関係の歳出の増が一兆円になりますというような話ですから、それではとてももちませんので。

 私どもとしては、それをいかに抑制してもらうかということで、いわゆるジェネリックと言われる後発医薬品というものとか、先発医薬品で特許切れになったものというような形のものについては、価格評価のあり方等々についてはもういろいろなところで検討しながら、この制度というものをちゃんときちんと後世にこういう制度を残しておけるということをやっておかないかぬというのは、我々の世代の責任だと思っております。

 消費税の話につきましても、この医薬品の価格の話につきましても、これは非常に大きなところですので、少なくとも、全予算九十七兆円ですけれども、社会保障関係で約三〇%を超えておりますし、これで、いわゆる国債の払いを除きますと四〇%を超えるというのがこの医薬品だけですから、やはりこれはきちんとした対応でやらないと、無原則なことになってもこれはとてももちませんから。

 というようなことを考えながら、私どもとしては、きちんとした薬価制度のあり方等々を含めまして、引き続ききちんとした検討を続けていかないかぬと思っております。

鷲尾委員 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうは、まず初めに、国税通則法の第七十条の運用の問題について質問させていただきたいと思います。

 一九八一年の法改正で、偽りその他の不正行為があった場合は、国税の更正決定を遡及して処分できる期間が五年から七年に延長されました。そのとき、八一年四月二十四日の衆議院大蔵委員会では、附帯決議が全会一致で上がっております。

 その際、沢田広委員は、代表して附帯決議を読み上げる際に、次のように述べています。

  本附帯決議案は、この法律案が航空機汚職事件に端を発し、国民の多くの批判を受けたことを契機とする脱税に対する経緯にかんがみ、高額かつ悪質な脱税に対し厳しくしたことは一歩前進とみなすことができます。

  ただ、このことにより営々として働く中小企業者をも含めて厳しくすることを求めたものでなく、特に政府の特段の配慮を要請するとともに賦課、徴収、帳簿の保存期間の延長等についてもきめの細かい配慮を要請するものであります。

こう述べております。

 つまり、ロッキード事件にかかわった田中角栄首相らへの批判がある中、高額な脱税事件の摘発期間を延ばすというのがこの法案の趣旨だったわけですね。そして、附帯決議にも同じ中身が入っています。

  今回の改正により延長された更正、決定等の制限期間における調査に当たつては、高額、かつ、悪質な脱税者に重点をおき、中小企業者を苦しめることのないよう特段の配慮をすること。

こう書き込まれました。

 当時の渡辺美智雄大蔵大臣も、「ただいま御決議のありました事項につきましては、政府といたしましても御趣旨に沿って、誠意を持って対処いたしたいと存じます。」と答弁しております。

 ですから、時の立法府は、法改正の趣旨に従って、高額かつ悪質な脱税者に重点を置くことを要求した上で、この遡及期間を五年から七年に延長することを認めたという経緯だと思います。

 きょうは国税庁に来ていただいておりますが、現在も、税務調査においてはこの附帯決議の内容というのは尊重されているんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘になられました国税通則法七十条の規定で、税務署長が更正または決定をすることができる期限は、原則として法定申告期限から五年を経過する日とされておりますけれども、八一年、昭和五十六年の税制改正によりまして、偽りその他不正の行為により税額を免れたり税額の還付を受けた者の更正・決定については、法定申告期限から七年を経過する日がその期限とされたところでございます。

 また、その際につけられました附帯決議につきましても、承知をしているところでございます。

 国税当局といたしましては、高額、悪質な納税者に重点を置いて税務調査を行っております。偽りその他不正の行為により税額を免れた者等につきましては、法令に則して七年前に遡及して更正・決定を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めているところでございます。

宮本(徹)委員 しかし、実態がそうなっているかということなんですね。実態は、中小零細企業のなけなしの収入に対して税務調査後に七年間分の修正申告を勧奨して、少額の利益にも重加算税を課税するケースがふえているのではないか。

 東京税理士会の会報を見ますと、税理士の安藤光宏さんが、「最近の税務調査、特に法人税の調査では、軽微なミスで故意性の感じられないものまで重加算税の賦課対象とされているような気がする。」こういう指摘もあります。

 きょうは私、一つの事例を紹介したいと思います。本やCDなどのインターネット販売を行っているAさん、二〇一四年の税務調査で重加算税の適用対象とされました。税務職員が作成した過去七年分の修正申告書に署名捺印を求められ、言われるがままに署名し、印鑑を押したということであります。

 そのときの税務調査により指摘されたAさんの七年間分合計の所得税額は約八百五十万円、確定申告で納税していた額を引くと、七年間の過少申告の総額は五百九十万円、七年で割れば一年で八十五万円程度ということになります。ちなみにこれは後で議論しますが、税務調査で指摘されたこの所得税額自体が間違っていたというのがわかるわけですけれども、これは後で議論します。

 それでこのAさんは、聞きますと、勤めていた会社が倒産したので、妻と子供の生活を守るために、本やCDなどの販売、インターネットで行って小遣いを稼ぐ程度で始めたのが、仕事が見つからなかったので本業として始めることになった。初めての事業だったわけで、税金の知識など全くなかった。そのため、開始時の二年間は申告もされていなかったということであります。

 国税庁にお伺いしますけれども、一般的に言ってこういう事案というのは、附帯決議が言う、七年間も遡及すべき高額かつ悪質というのに当たると言えるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘の個別の事例に即しての答弁については差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げれば、国税当局においては、税務調査は、主として高額、悪質な納税者に重点を置いて実施しているところでありますけれども、税務調査の結果、偽りその他不正の行為により税額を免れたり税額の還付を受けたりしたものに該当した場合には、法令の規定にのっとり、七年間遡及して更正等を行っている事例がございます。

宮本(徹)委員 私は初めに法改正の趣旨と附帯決議も紹介しましたけれども、今回のこれでいえば、高額でもなく、悪質とも言えないというふうに私は思うんですよ。

 今のAさんの事例も参考にしながら、国税通則法七十条四項の運用が適正に行われているのかと見てみたいと思います。

 このAさんの例でいえば、一つは、金額が七年間で約五百九十万円過少申告していたこと、二つ目に、税務調査により無申告であることが発覚したこと、三つ目に、倒産により突然始めた事業で、納税に関する知識がほとんどなかったこと、これが七十条四項の要件として該当するかどうかということになると思うんです。

 これを、他の報道などで公になっている例と比べてみたいと思います。

 まず金額の問題ですけれども、鳩山由紀夫元総理のケースと比べてみたいと思います。鳩山元総理のケースでは、七年間以上、母親から毎月資金が提供されていることについて指摘があったわけです。鳩山元総理は、二〇〇二年から二〇〇八年までの七年間分、合計十一億七千万円分を対象に修正申告を提出して、贈与税約五億七千五百万円を納付しました。

 ここのポイントは、鳩山元総理は七年間分の修正申告書を提出したということなんです。通常の税金の時効は五年なわけですよ。ただし、隠蔽、仮装の場合は七年ということになります。ですから、七年間分の修正申告書を出したということは、みずから隠蔽、仮装を認めたに等しい手続を鳩山元総理の場合はやられました。

 しかし、これに対して国税庁は隠蔽、仮装とは認めなかった。五年間の贈与について贈与税が発生したということで、本税は四億三千六百万円、プラス延滞税と無申告加算税が課税された。報道ではこうなっているわけですよ。

 ですから、これは国税庁に一般論としてお伺いしますが、ある納税者本人が十二億円の贈与の事実を隠蔽していた。それを事実上認める手続として七年間の修正申告をした場合にもかかわらず、国税庁は、第七十条四項の偽りその他の不正行為、もしくは、重加算税の要件である隠蔽や仮装と認定しなかった。では、七年間で五百九十万円分の所得税の過少申告というだけで、偽りその他の不正行為や隠蔽、仮装というふうに言えるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 個別にわたる事柄についてお答えすることは差し控えさせていただきたいですけれども、一般論として申し上げますと、繰り返しになりますが、偽りその他不正の行為により贈与税等々について税額を逃れていた場合における国税につきましては、法定申告期限から七年間、修正が可能ということになっておりますけれども、仮に七年たちますと、国税の徴収権は、七年間行使しないことによって、時効により消滅するといった場合がございます。

 一般論として申し上げますと、そういった時効の規定、また、先ほど申しました七十条の規定、こういった規定に基づきまして、法令を個々の事実関係に当てはめて処理をしているということでございます。

宮本(徹)委員 ですから、この鳩山さんの例と比べてみても、これだけで七十条四項の要件に該当するというのは、私は到底考えられないというふうに思います。

 それから、先ほど要件として挙げました二つ目の、税務調査により無申告であることが発覚したこと、それから三つ目の、倒産により突然始めた事業で納税に関する知識がほとんどなかったことについて、今度は脳科学者の茂木健一郎さんのケースとちょっと比べてみたいと思います。

 報道によりますと茂木さんは、税務調査を受けて、二〇〇六年から二〇〇八年までの三年間の所得の申告漏れが発覚しました。茂木さんはそれ以前はみずから確定申告をしていたということですので、税務についての知識はあったと思われます。報道によると、仕事に追われて書類を整理することができず、申告する暇がなかったと言われています。そして、報道によりますと、このケースについては、重加算税ではなくて無申告加算税が適用された。

 つまり、単に仕事が忙しかった、納税する暇がなかったというのは仮装、隠蔽に当たらない、こういう判断を国税庁は当時されたということだと思います。

 一般論で聞きますが、無申告だというだけでは悪質とは判断しない、つまり、無申告は即偽りその他の不正行為とみなさないということですね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 個別にわたる事柄についてお答えすることは差し控えさせていただきたいと思いますけれども、一般論として申し上げますと、繰り返しになりますけれども、法令上、偽りその他不正の行為により税額を免れたり税額の還付を受けたものの更正または決定期限は、法定申告期限から七年を経過する日とされております。

 この法令の規定に当てはまるかどうかということにつきまして、個々の事実関係に即して対応しているということでございます。

宮本(徹)委員 ここは、一般論で聞いているので一般論で答えていただければいいんですけれども、無申告のみでは悪質だと判断しないということですよね。それぐらいは答えてください。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 偽りその他不正の行為が何に当たるかということは個別の事例に即して判断をすべきだと考えておりますけれども、例えば例示を挙げますと、二重帳簿の作成でございますとか、単純無申告の納税者による法定申告期限後の虚偽の申告ですとか、あるいは、税務職員の質問または検査に対する虚偽の陳述、虚偽の事実の提示などが挙げられるものと考えております。

宮本(徹)委員 つまり、無申告のみでは、それだけでもってするということだとはならないということだと思うんですよ。

 ですから、初めに紹介しましたAさんのケースというのは、今、有名人二人の修正申告の事例と比較してみましたけれども、この例について、七十条四項の要件を適用して、七年間遡及して修正申告の勧奨をして、さらに重加算税を適用する、こういうことをやるべきではないケースだということが私は言えると思うんですよ。

 その上で、安易に七年間遡及するような税務調査が横行すると、問題となるのは、税務調査の側が間違っていた場合ですよ。税務調査に不備があった場合、これは大変な問題が私は起きると思っています。

 一般的な運用について聞きますが、税務調査の結果、職員の勧奨に従って納税者が七年間の修正申告を行います、その後、納税者の主張により偽りその他不正の行為が認められないという事実が発覚した場合、この六年前だとか七年前の修正申告は、国税庁はどういう扱いにされるんですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 偽りその他不正の行為により税額を免れたり税額の還付を受けたものにつきましては、法定申告期限から七年を経過する日まで増額更正することができるということでございますが、こうした増額更正等につきまして減額すべき一定の事由が生じた場合には、法定申告期限から七年を経過する日まで、税務署長の権限により減額更正を行うことができるということでございます。

宮本(徹)委員 税務署長の権限により減額更正ができるということですね。

 それでもう一つ聞きますけれども、修正申告から一年以上過ぎても、税務署長の権限による、職権による減額更正というのは全部可能になりますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げた一般的なケースで想定しているものは、税務署、国税当局が、偽りその他不正の行為が行われたということで七年さかのぼって増額更正を行ったケースにおきまして減額すべき一定の事由が生じたということで、この増額更正を行う際にそれに付随して行われる減額につきまして、署長の権限により減額更正を行うということでございます。

 その際、こういった申告を行った事情を記載した書面などに証拠となる資料が添付され、それを、適正な課税を実現する見地から見て必要であると認められた場合には、今申し上げました権限に基づいて調査したところにより、減額更正をするということでございます。

宮本(徹)委員 私が聞いているのは、もうちょっと聞きますけれども、税務調査の結果、修正申告が七年間の期間制限のぎりぎりだった場合、どうなるのかということですよ。その後に税務調査の誤りがあったとしても、一番古い七年前の修正申告は時効となって、職権による減額更正の対象とならないケースというのが出てくるんじゃないですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま申し上げましたとおり、法定申告期限から七年を経過する日まで、税務署長の権限により減額更正を行うことができるケースがございますけれども、この減額更正を行うためには一定の調査期間が必要でございまして、七年を経過した時点で期限が徒過をするということでございますので、その期限徒過の前に一定の合理的な調査をする期間を確保した上で、先ほど申し上げた書類等々、証拠を提出していただく必要があろうかと考えております。

宮本(徹)委員 つまり、税務署の側が、七年間の期間のぎりぎりのときに修正申告を出せと言われた場合、いろいろ手続をとっても救済されないケースがあるということですよね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 七年の期限を設けているわけでございますので、この七年の期限内に更正を打てるように、その判断ができるように、一定の合理的な期限の前に証拠等を出していただく必要があるのではないかということを申し上げたわけでございます。

宮本(徹)委員 その一定の合理的な期間に証拠を出さなきゃいけないという税務調査が間違っていた場合に、何を言っているのかという話を今の答弁を聞いていて思うわけですけれども、一定の合理的期間がない場合は、税務調査の方が間違っていた場合、救済されないわけですよ。

 私が今初めに述べましたAさんの例ですけれども、修正申告の直後に税務に詳しい方にこの方は相談されました。御自身で、税務署が作成した申告書類を改めて確認された。そうしたら必要経費が入っていなかった。外注工賃、旅費交通費、通信費、消耗品費など、一切経費として計上されていなかった。これに疑問を持ちましていろいろな手続をとられるわけですけれども、ちなみにこの領収書は、税務調査のときに税務署に全部渡している領収書ですよ。

 そこで、Aさんは七年分の更正の請求を行いました。六年分までは主張が認められました。そして職権による減額更正が行われました。そして、この六年のうち、ちなみに三年分は所得税額がゼロになりましたよ。ただし、七年前の修正申告については、職権による減額更正の期間が過ぎているということで減額更正がされなかったんです。

 こういう事案が起こるということを国税庁は認識していますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 誤った申告を行った事情を記載した書面に証拠となる資料が添付され、提出され、その内容が適正な課税を実現する見地から見て必要と認められる場合には、その権限に基づいて調査したところにより、増額の更正を行った後でも減額更正をされる場合がございます。

 ただ、これは、今申し上げたとおり、内容が適正な課税を実現する見地から見て必要だということが判断できる期間が必要でございますので、証拠となる資料がそういった期間前に適切に提出される必要があろうかと考えております。

宮本(徹)委員 だから、その期間を保障しないようなときに税務調査をやって、修正申告させているわけじゃないですか。そうでしょう、税務署の側がそういうことをやっているからこういう問題が起きるわけですよ。

 こういう問題について救済措置の検討というのは必要なんじゃないですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 繰り返しになりますけれども、減額更正をするケース、七年さかのぼって増額更正をしたその中身につきまして、内容が適正な課税を実現する見地から見て適当ではない、そういう証拠となる資料が添付され提出した場合には、それを検討し、権限に基づいて減額更正をする場合がございますけれども、こうした判断をする上で必要となるタイミングでもって証拠となる資料を提出していただく必要がございます。

 七年経過すれば期限が徒過いたしますので、それ以前の合理的な時期にそういった資料を提出していただく必要があるということを繰り返し説明させていただいております。

宮本(徹)委員 そういう態度じゃだめだと思うんですよ。だって、もともと間違った税務調査をやって、その間違いに基づいて税務署自身がつくった修正申告書にサインさせられて、署名を出して、その後、これはおかしいなと思って調べて是正を求めたら、税務署は六年分までは間違っていましたと言いながら、あと一年分は期間が過ぎていますからだめですなんて、こんなばかな話、ないじゃないですか。

 幾ら聞いても同じことしか答弁されませんので、ちょっと真剣に、この問題どうすべきかというのを研究、検討をしていただきたいと思うんですよ。

 麻生さん、一時期ちょっと席を立たれていましたけれども、どう思われますか、麻生大臣。突然振って申しわけないです。

麻生国務大臣 席を立っていたときの話をいきなり聞かれても、どう思われますかと言われて答えられたらおかしいでしょうが。

 質問されるんだったら、質問したいで、あらかじめきちんと質問通告をされた上でされることをお勧めします。

宮本(徹)委員 後で議事録、また説明させていただきたいというふうに思いますので、副大臣、聞かれていたと思いますので、御検討をよろしくお願いしたいというふうに思います。

 大体、税務署が間違って、その救済もできないんですから、この国会の附帯決議に反したような、中小零細業者に対して無理な税務調査はやるべきでないということを強く求めておきたいというふうに思います。

 次に、格差の拡大と税制のあり方について質問させていただきたいと思います。

 「金融財政ビジネス」の一月十四日号に、一橋大学の小塩隆士教授の「アベノミクスで拡大する所得・資産格差 懸念される二極分化の兆し」という興味深い論文が出ておりました。アベノミクスが始まってから格差が拡大したかどうか、総務省の家計調査をもとに分析されております。

 家計調査の集計データをもとにしたものなので粗い計算だと断りながらも、ジニ係数について、所得については、安倍政権以前の十年間、二〇〇二年は〇・三〇二、二〇一二年は〇・二九七と若干低下した。アベノミクス期になって、二〇一四年は〇・三〇〇と上昇したと分析されております。そして貯蓄残高のジニ係数、安倍政権前の十年間は、二〇〇二年〇・五四八が二〇一二年は〇・五六四に上昇、アベノミクス期になると、二〇一四年は〇・五七五と上昇のペースは加速しております。

 アベノミクスのもとでの格差の拡大について、大臣はお認めになりますか。

麻生国務大臣 格差に関する捉え方というのはこれはさまざまなんだと思いますが、格差の程度については、これは一概に申し上げることは困難ですが、例えば、これまでの当初の所得に比較して税や社会保障による再分配後の所得の格差というのはほぼおおむね横ばいで推移しておるというのは、数字としては言えると思っております。

 内閣府が行っております世論調査によりましても、国民の中流意識というのは根強く続いておりまして、大きな意識の変化は確認されていないということであります。

 安倍内閣においてデフレ脱却を目指していわゆる経済再生に取り組む中で、格差が固定しないようにさまざまな取り組みを行ってきたところでありますけれども、例えば家計調査によれば、所得の面で見た場合に、先生よく言われましたが、昔から、世帯収入の低い方の四百万円ぐらいのところだったかな、の割合の方が高くなっているじゃないかというお話を前にもしておられましたが、この調査をよく見ますと、同じ期間で世帯収入が四百万円以下の世帯においても、世帯主の平均年齢が高齢化しておりますので当然のこととして高齢者が増加するというほか、世帯の人員数の絶対数が減少しておりますので、こういうことを勘案いたしますと、この割合は必ずしも、いわゆる中間層が減少するとか、二極化しているとか、貧しくなっているとかいうようなことではない。

 貯蓄残高の話も今されておられましたけれども、アベノミクスの二年間で平均貯蓄残高は約百四十万円増加しておりますので、世帯分布で見ましても、千万円以下の世帯の割合が二〇一四年では二〇一二年より減少しておりますので、国民全体の貯蓄額は底上げされているというように考えられるのではないかとも思っておりますので、これはいずれにいたしましても、今後、アベノミクスの経済成長によります成果というものが国民に、より広く行き渡っていくように対応していくということだと思っております。

    〔委員長退席、神田委員長代理着席〕

宮本(徹)委員 きょう、小塩教授のつくられたグラフも資料として配付させていただきましたけれども、これは、薄いグレーのところが安倍政権以前の十年間、濃いグレーのところがアベノミクス期というふうになっております。

 先ほど、大臣は中間層は減っていないというふうにおっしゃいました。このグラフを見ていただければわかりますけれども、確かに、高齢化の要因だとかいろいろなことというのは、これは、アベノミクス以前のときからグラフに反映している面というのはあると思います。

 それと同時に、この上の所得のところでごらんになられればわかりますように、四百万から七百万のところがアベノミクス期になって減っているんですよ。これは、先ほど大臣がおっしゃった高齢化だけでは私は説明できないんじゃないかというふうに思います。その部分が減っている分、低所得者層と高所得者層、比較的収入が多い層がふえているというのがこのグラフから見てとれるというふうに思います。

 それから下のグラフ、貯蓄の方ですけれども、これは資産格差の広がりを示すものだと思いますが、家計調査の十九の貯蓄残高階級を九つに集約しています。

 金融資産については、これは安倍政権以前から三百万円未満の世帯がふえています。一方で三千万円以上の世帯もふえているわけですが、アベノミクスの二年間で顕著なのは、貯蓄残高、金融資産三千万円以上の世帯が増加する勢いが加速している。以前は十年かけて一・一ポイントの増だったのが、二年でさらに一・一ポイント増ということになっています。

 ですから、小塩教授は、資産格差の拡大がアベノミクスで加速していると分析されておられます。私もそう思いますが、大臣はこの指摘についてどう思われますか。

    〔神田委員長代理退席、委員長着席〕

麻生国務大臣 これは重ねて申し上げるようで恐縮ですけれども、四百万円以下の割合というのは、これは間違いなく二〇一二年に比べて二〇一五年の方が多くなっているというのは、もう間違いない事実だ、私どもの数字でもそうなっておりますが、ただ、高齢者が増加しているというのは、これは年金で食べている人の比率がふえてきているということを意味していますし、世帯人員が減少してくる。世帯で計算しておりますので、世帯収入四百万円ということになりますと、世帯の人員が減少すれば当然のこととしてそこのところも減少してまいりますので、この割合というものは必ずしも、いわゆる中間層が減少しているとか二極化しているとかいうことの根拠とはちょっとなりにくいんじゃないかというのが正直な実感です。

宮本(徹)委員 高額な資産を持たれる方がふえる勢いが加速しているという認識は同じですか。

麻生国務大臣 貯蓄残高ということにもなるんだと思いますが、アベノミクスのこの二年間で、少なくとも、平均貯蓄残高というのが百四十万円増加をしております、私どもの持っておる数字では。世帯分布で見ましても、貯蓄残高千万円以下という世帯の割合が、二〇一四年では二〇一二年に比べて減っておりますので、少なくとも、平均貯蓄残高、二〇一二年で一千六百五十八万が二〇一四で一千七百九十八万といった形でふえてきておりますし、いわゆる千万円以下の比率も、二〇一二年五一・七一%から四九・九六%、減ってきておるという数字もありますので、そういった意味では、国民全体の貯蓄額というものが底上げされているということにも考えられるのではないかという面も言えると思っております。

宮本(徹)委員 このグラフを見れば、高額なところで資産の積み増す勢いが加速しているのは、資産格差が拡大しているというのは間違いないというふうに言えると思います。

 そこで、残りの時間が短くなったんですけれども、政府税調でも、所得再分配機能を回復するのが税制で重要だということをおっしゃっておられます。

 その上でも、私たち、金融所得課税の強化というのを何度も提案してまいりました。

 株式譲渡益配当については、日本は所得税一五%、住民税五%、合わせて二〇%、国際的にも大変低いわけです。そしてこのことが、日本の所得課税が、所得一億円を超えると実際の負担率が下がるということを指摘されていた原因だというふうに言われております。

 そこで私たち、高額な株式譲渡益については税率を三〇%に引き上げることというのを質問させていただいて、三月二十三日の参議院の財金委員会で小池議員の質問に対して、検討させていただくと大臣は答弁されました。そのときに、勤労所得とのバランスとかリスク資産への投資促進という面も踏まえて金融所得課税全体のあり方を考えないといかぬ、こう大臣は答弁されているわけです。

 ちょっと確認したいんですけれども、こう答弁されたということは、現在の配当や株式譲渡益への課税というのは、勤労所得への課税とバランスはとれていない、こういう認識だということでよろしいんでしょうか。

麻生国務大臣 今御指摘のありました私の答弁は、金融所得課税全体のあり方を検討するに当たっては、勤労所得に対する課税とのバランスやリスク資産への投資促進などといったさまざまな要素を総合的に勘案する必要があるということの趣旨で申し上げたというように記憶をいたしております。

 このうちで、勤労所得に対する課税とのバランスについて申し上げさせていただければ、これは、株式などの譲渡益の中には、長い間に積み重ねてこられた益が売却することによって一度に実現するといったようなこともありますので、これは当然、一定の配慮というものが必要であろうと思っております。

 また、金融資産というのは、御存じのように、これは譲渡性というか流動性が極めて高いものですから、過度の税負担を求めると、自動的にキャピタルフライト、出ていっちゃう、キャピタルフライトが生じるというおそれがありますので、そういったことを考えますと、現行のいわゆる金融所得課税の課税方式や税率の水準には、これは一定の合理性がある。すなわちバランスがとれていると考えております。

 なお、今後、金融所得に対する税率の水準につきましては、いわゆる景気情勢や市場の動向とか、税制などによって所得分配の動向などを勘案してこれは検討する必要があるということで、過日の、行われたあの政府の税制調査会の中間的な論点整理の中においても、こういった点を検討する必要があるということが言われているんだと理解しております。

宮本(徹)委員 景気情勢、市場の動向ということをおっしゃっているわけですけれども、二〇一四年に一〇%から二〇%に戻されましたよね。証券優遇税制を廃止されて戻されました。

 このことが景気情勢や市場の動向に何か重大な悪影響を及ぼした事実というのはあるんでしょうか。

麻生国務大臣 一概に申し上げることは困難ですけれども、景気や市場の動向というのは、金融所得に対する税率の水準のみで決まるものではありませんので、上場株式などの配当とか譲渡益等々については、軽減税率一〇%というものを廃止して二〇%のいわゆる本則税率というものに戻したことによって景気や市場に重大な影響を及ぼしたか否かというについては、これは一概に申し上げることはできません。

宮本(徹)委員 いや、一概に申し上げていいんじゃないかと思いますけれども、何かそんな、政府がこれを二〇%に戻したことによって景気や市場に大変な影響があったという議論は、私、どこでも聞いたことがないですよ。

 大体、投資家のあのウォーレン・バフェット氏が、かつてニューヨーク・タイムズでこうおっしゃっています。私は六十年も投資家たちと仕事をしてきたが、一九七六年、七七年にキャピタルゲインの税率が三九・九%だったときでさえ、税率を理由として投資から遠ざかる人は見たことはない。六十年間、一人も見たことがない。人々はもうけるために投資する。税が投資を怖がらせることはなかった。世界的に有名な投資家の方がそうおっしゃっているわけです。

 実際、二〇一四年、一〇パーから二〇パーに引き上げたことによって、税収はふえてこれは大変よかったというふうに思いますが、これが景気情勢に何か影響を与えたということは私はなかったと思いますし、実際、大臣も一概に申し上げられないと言うだけで、何か具体的な話は大臣からも一つもなかったということだと思います。

 ですから、重ねて、やはり日本のこの今の不公平な、所得が一億円を超える人の実質の税負担率が下がっているこの状況を改めて、そして税収も確保していくために、株式の高額な譲渡益については税率を三〇%に引き上げる、配当については総合課税も含めて検討していく、こういうことが必要なんじゃないでしょうか。

麻生国務大臣 全然見解を私とは異にしております。

宮本(徹)委員 検討を求めまして、質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 もう三時間の最後の二十分でございまして、大臣も、また委員の皆さんも、お疲れのところはあると思いますけれども、あと二十分、おつき合いいただきたいと思います。

 私からは、幾つか一般質疑ということでお伺いしていきたいんですが、まず、いわゆるパナマ文書の件についてお伺いしていきたいと思います。

 タックスヘイブンの税逃れという形、非合法というわけではないものも多いということでございますが、しかし、この点、非常にニュースになっておりまして、そして、各国の税務当局も非常に関心が高いというような報道がされております。

 一方で、我が国を見てみますと、一応、海外に五千万円を超える財産、結構な財産だと思います、五千万円を超える財産を海外に持っていらっしゃる方は国外財産調書というのを財務省の方に出すルールになっておりまして、それが大体約八千人ぐらい今出されているということでございます。

 一方で、今回のいわゆるパナマ文書の中に日本人らしきお名前が多々あるという報道もございます。五月に国際調査報道ジャーナリスト連合の方が正式に公表するという話も出ておりますが、これについて、この日本人らしき方々への調査という部分で政府として今どういうふうにお考えになっているのか。まずそれをお伺いできますでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 いわゆるパナマ文書に日本人が含まれているとの報道があることは承知をしております。同文書の詳しい内容は承知しておりませんけれども、いずれにせよ、個別の納税者に関する事項については、お答えすることを差し控えさせていただきたいと思います。

 その上で一般論として申し上げれば、国税当局といたしましては、あらゆる機会を通じて課税上有効な情報の収集を図るとともに、課税上問題のある取引が認められれば税務調査を行うなど、適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。

丸山委員 個別の事例はお答えできないということですが、関心を持っていらっしゃる、そして、出たからにはチェックはされるという認識でよろしいんですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 こうした報道があることをもちろん関心を持って見ておりますし、ただいま申し上げたとおり、課税上問題があるようなことが認められれば、そこは税務調査を行うということになろうかと思います。

丸山委員 関心の高い事項ですし、何より、もし不正があればこれはしっかりと見ていかなければならないと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 そういった意味で、この間のG20でも、こういったタックスヘイブンを含めてこういう税逃れの話、各国で連携していかなきゃいけないという形が出ているというふうに聞いていますが、改めて、この連携をどのようにされていくのかということをお伺いできますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 どこの国も当然でございますけれども、基本論としては、大企業や富裕層におります課税逃れということは大問題であるということは共通の認識でございまして、ただ、各国、制度がばらばらであるとなかなかそれに対して対抗ができないということで、実は、国際的な租税回避とか脱税の防止ということについては、これまでも国際的な連携ということで、御案内のとおりのBEPSプロジェクトによる対応とか、あるいは、非居住者に係ります金融口座情報の自動的な交換とかいう恐らく二つのトラックで、国際的な協調枠組みで進んできたということでございますが、先般のG20の場におきましても、このパナマ文書とのかかわりにおきまして、課税逃れとか不正資金の流れについての対抗策につきまして議論がございまして、今申し上げました、その中でBEPSプロジェクトの推進であるとか、あるいは自動的情報交換の推進ということが極めて重要であるということが認識されたということで、国際協調して進めていこうということになったと承知してございます。

丸山委員 ほかの国では、政変につながったり、重要人物、特に政治家の方々も辞任されるみたいなことにつながっているようなものもございます。特に日本の場合、さっき、共産党の委員から累進課税も含めたお話がありましたけれども、お金を持っていらっしゃる方に対する課税の適正さ、適正に課税されているかどうかというところに対しては、国民の皆さんも非常に関心の高い国柄じゃないかなというふうに思いますし、国税庁さんも、今はうなずいてくださっているように、そう思われていると思いますので、そういった意味で国民の皆さんに不平感、不満が高まらないような適正な処置をしていただきますように、重ねてお願い申し上げます。

 そういった意味で、少し違う話題に、これも税のお話なんですが、お伺いしたいと思います。

 今、三菱自動車の軽自動車の燃費の不正操作の話で、経済面にしても報道にしても、かなりにぎわっているところでございます。

 非常に問題で、今は自分のところで第三者の調査委員会を立てられて調査をされるということですので、この調査結果を待たないと、どういう状況かというのは大まかにしかまだ見えていないというのは今現状だというふうに思いますけれども、まず財務省として、現状で、現時点で、この件について、自動車重量税においてエコカー減税というのがあると思います。平成三十二年度の燃費の基準において例えば一〇%の軽減達成した場合に、軽自動車税、二五%軽減しますよとか、二〇%達成だったら五〇%軽減しますよ、非常に今はエコカーを促進するために日本の税制も、軽自動車を含めてエコカーに対する減税の措置をかなりしていると思います。

 これは政策的に意図もわかりやすくて、やるべきだというのは私の立場とも一致していますし、我が党とも一致しているんですが、しかし、今回のような不正の案件が出てしまう温床にもなりかねないかなというところは、今回ニュースが出て多くの方がお感じるところですし、そうなった場合に、もし不正が発覚した場合にどういう対応をするのかというのは非常に関心のあるところだと思います。

 まず最初に、今回の件についてエコカー減税の不正適用はあるのかないのか、財務省、現時点でどのようにお考えになられていますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回不正が行われた車種や台数、正しい燃費値などにつきましては、国土交通省におきまして、三菱自動車からの報告を受けて調査を行っていくものと承知をしております。まずは不正の全容を明らかにすることが重要であると考えております。

 それらをよく精査した上で、エコカー減税の適用との関係で問題があるのかどうかしっかりと確認し、国土交通省を含む関係省庁と連携しながら、法令にのっとって適正に対応してまいりたいと考えております。

丸山委員 現時点ではそういうお話だということです。

 では一般論でお伺いしたいんですけれども、一般的に、企業側によって燃費についての税逃れのような形、例えば今回のケースのようなことを一般的に言うと、税逃れのようなものが発覚して、財務省としては、追徴課税が生じるような事例があったとして、それに対して、その税金、追徴部分に関して負担するのは、果たして自動車を所有されている国民の方なのか、それとも税逃れを主体的に行った企業側なのか。財務省、これは一般的に言うとどういう状態になるんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 一般論として申し上げれば、自動車重量税について納税不足額が生じた場合に、その不足額に係る納税義務者、これは自動車検査証の交付を受けた者になります。

 他方で、国税通則法の規定の中に、第三者が納税義務者にかわって税額を納付する第三者納付の制度が規定されておりまして、仮に第三者が自動車重量税を第三者納付した場合には、納税義務者の納税義務は消滅するという、法律上のたてつけとしてはそうなっているということでございます。

丸山委員 つまり今の話だと、国民の皆さんの御関心は、もし仮にこの三菱自動車の件で、企業側の不正で、要は、これだけ減税になりますよと言われて買ったのに、だまされて、そして今の御回答だと、国民の方が、買われた方がその追徴課税分を払わなきゃいけない事態もあり得るということになってしまうと思うんですけれども、買われた方はどういうことやねんというふうに率直にお感じになると思うんですが、例えば、今は三菱自動車さんが第三者機関が調査されて、もしかしたら、企業側がそれを何とかするというふうに言ってくる可能性もあります。それはしっかり私は企業側には求めるべきだというふうに議員としては思うんですが、しかし、現行法上は、今のお話だと、もう少し詳しく聞きたいんですけれども、国民の皆さんが必ず払わなきゃいけないのか、それとも、これは払わなきゃいけないケースについて最後少しおっしゃったんですが、もう少し詳しくお伺いできますか。

星野政府参考人 繰り返しの答弁になる部分もございますけれども、一般論として申し上げますと、自動車重量税について納税不足額が生じた場合に、その不足額を納める納税義務者は、一義的には自動車検査証の交付を受けた者になります。

 ただ、先生今言われたとおり、今回のケース、三菱自動車が負担すべきといったような御意見、御趣旨もあろうかと思いますし、また、三菱自動車自身が、そうした負担の点についてどのような意向を示し、どのような対応をしていくかということによっても、考慮すべき事柄が異なってくるかなというふうに考えております。

 いずれにしても本件につきましては、まずは、繰り返しになりますが、不正の全容を明らかにして、どのような課税関係となるか精査することが重要であると考えておりまして、その上で、納税不足額が生じる場合には、こうした三菱自動車の対応も踏まえつつ、どのように御負担していただくことになるかなどにつきまして、国土交通省を含む関係省庁と連携しながら検討していくことになろうかと思います。

丸山委員 役所として今御答弁いただきまして、非常に大事な点だと思っていまして、この検査証の交付を受けるのは、つまり持っていらっしゃる所有者の方ですから、通常は、一般的に言えば、国民の皆さんが払わなきゃいけない可能性が高い。企業側は払いませんと言ってしまえば、なってしまう状況にある。

 ただ、買った方としては、簡単に検査できるようなものであれば、それはその買った人がチェックできると思います。しかし、燃費がどうこうというのは、やはり企業側が言ったことを信じるしかない。それを検査できる国民の方はほとんど限られている中で、しかも、政策的に減税しまっせと言って今回の件はそれを後押ししているわけですよ。それで、では軽自動車を買おうかなと思われた方も多いはずで、これに対して後で、いや、通常課税で済みませんと言われても、それはそうは問屋が卸さんでという話になると思うんです。

 そういった意味で、特に買われた方はこれは非常に御関心が高いところだと思うんですけれども、大臣、ずっとこの話、役所の方に答えていただこうとは思ったんですけれども、この点、政治家としてどういうふうにお考えなのか、大臣自身にお伺いしたいと思います。

麻生国務大臣 今、あらかじめ質問書が出ていませんでしたので、副大臣と二人で、ふうんと言って二人で関心を持って聞いてはいましたけれども、うかつにコメントするのは差し控えさせていただきます。

丸山委員 ぜひ伺いたいところですけれども、これは多分、最後は政治的な部分も強いと思うんです。そういった意味で国民の皆さんが関心のあるところで、そして多分救済できる。企業側がちゃんとやるというのが大前提だと私は思います。そして、それがもしならないときには、政府側が国民の皆さんにきちんと納得のいくような形で、制度上フォローできる範囲でしっかりやっていく、そういったことが当たり前のことだというふうに思いますけれども、大臣、それもお答えいただけないですか。

麻生国務大臣 もう少し若いころはぱっと答えたんですけれども、だんだん、後期高齢者になると慎重な答弁を要求されるようになってきて、今の答えに対しても、うん、理屈としてはなかなかだなと思いながら、感心して聞いてはいましたけれども、それに対するコメントは差し控えさせていただきます。

丸山委員 大臣、珍しいですね。いつもはぱっぱっとイエス、ノーでお答えいただける大臣が、この件は非常に、気持ちは一緒だというふうには思いますが、うなずいてくださっているんですけれども、一方で、恐らく、制度上の話だとか、役所から余りコメントするなととめられているのかもしれませんが、お笑いになっていますけれども。しかし、この点、まだ明らかになっておりません。明らかになってきた段階でもまたお伺いする形になるかもしれませんが、しっかりと御対応いただけるということは御答弁いただいていますので、御対応いただきますようにお願い申し上げます。

 次の話題に移りたいと思います。

 今回の軽減税率、ずっと議論をさせていただく中で、事例集を、ぜひ具体的な例を挙げてくださいというお話をして、早速国税庁が挙げてくださっていると思います。私も拝見して、非常に細かいところまで書いていらっしゃるんですね。非常にすばらしいと思います。

 そういった意味で、役所の方のお話を聞いていましても、これに対して特段何かわかりにくいとか、どういうことだみたいな形の問い合わせ、苦情みたいな形は今のところはないというふうに聞いているんですけれども、しかし、これからも、いろいろな事例、想定しないような事例が出てくると思うんです。

 そうした意味で、随時追加していただくこともあり得るし、わかりにくいと言われたところに関してはわかりやすく書いていっていただけるものだというふうに考えるんですけれども、これはそういうことでよろしいですか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生からお褒めをいただきました消費税の軽減税率に関する事例集、QアンドAでございますけれども、軽減税率制度について広く国民の皆様の理解を深めていただけるよう、具体的な事例をなるべく挙げまして解説したものでありまして、四月十二日に国税庁ホームページに公表したところでございます。

 当該事例集につきましては、公表後、事業者団体等から事例集の内容について、類似する他の事例についても同様の考え方でよいかといった確認の照会もいただいているところでございまして、今後、多くの事業者の方にさらに参考となる事項があれば、随時、設問の追加や内容の改定を行うこととしております。

 いずれにせよ国税庁といたしましては、事業者の皆様が軽減税率制度の導入に向けてしっかりと準備ができるように、今後、事業者向けの説明会等において、こうした資料も活用しつつ、周知、広報等にしっかり取り組んでまいりたいと考えております。

丸山委員 しっかりやっていただきたいと思います。

 非常にわかりやすかったんですけれども、一個だけ、私、見ていて、余り細かいところを詰めたいわけじゃないんですが、しかし、国民の皆さんの生活に直結する部分なので、細かいところになってしまうんですが、伺いたいんです。

 何かといいますと、老人ホームでの食事や小中学校での給食、今回、この軽減税率の適用の範囲、要は安いままだ、八%のままとする。それは今回の軽減税率の質疑でもずっと伺っていて、理由は明確で、これは選べないからなんですね。入居されている方もしくは給食を食べている子供さんたちはメニューを選べないし、店も選べない、場所も選べない。そういった意味で、今回外食を除いていますが、それに当てるのは問題だろうということで、非常にわかりやすいと思います、理由としては。

 しかし、今回のこの事例集を見ますと、その老人ホームの食事や小中学校の給食について、例えば選択できないという部分で切る。例えば、メニューがいっぱいあって、その中で選べないものに関してはこの事例に当てはまりますよとか、もしくは、あるメニューの中から選べる、もしくは、何店舗かある中から選べる状態だったらこれは適用しませんとか、選べる、選べない、そういう基準だとわかりやすいんですけれども、今回の事例だと、一食当たり六百四十円以下、一日の食事代が千九百二十円以下だというのが対象ということで、値段で切っていらっしゃるんです。

 これはきのうずっと財務省の方と電話で一時間以上お話しして、大変申しわけなかったなというふうに思っているんです。しかし、大事な点だと私思っていまして、例えば値段で切ってしまうと、選べるかどうかということに対しての形づけに、枠になっていないというふうに思うんです。つまり、六百四十円以下で一食当たりという話になると、千円のメニューというものがあるときと六百四十円のメニューがあるときで、千円だとぜいたくだからといったらわかるんですけれども、逆に、例えば六百四十円のメニューがぶわっといっぱいあるようなものでも選べる、選択制があるのに、しかし、その中で選べないから今回の枠に入っているみたいな話になってくる。済みません、説明していても非常にわかりにくいんですけれども、値段で切る意味はないんじゃないですかというふうにすごく思うわけです。

 しかし、財務省さんとしては、値段を切って入れる。この点について一応明らかにしておきたいので、国会答弁として求めます。お願いします。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 まず制度の前提でございますけれども、先生御指摘ございましたように、有料老人ホームにおきます食事につきましては、本来はケータリングのような形で、外食の一部として一〇%に該当するわけですけれども、生活を営む場において他の形態で食事をとることが困難、要するに個人の選択がままならないということに特に配慮をして、これは八%の適用としたところでございます。

 ただ、全てそれでは八%でいいかということが論点かと思っております。すなわち、ケータリング等は原則として一〇%適用になるという中で、老人ホームにおきます食事といいましても高額なものも存在するわけですので、これらを含めて全てに八%ということが、特別の配慮ということとして適当であろうかどうかということが考えられるところでございます。

 それから、消費税法を見ますと、実は入院時の食事というものにつきましては、保険に係る部分でございますが、非課税とされておるというふうなこととの課税のバランスということを考えまして、この入院時の食事費の水準を準用というか、援用する形で決めさせていただいているということでございます。

 あくまで自己選択ということの難しさを前提としながらも、そうしたバランスも考えた上で一つ線を引かせていただいたということでございます。

丸山委員 もう時間も来ていますし、ちょっと内容が細か過ぎてここのお話では終わらないのでもう終わりますけれども、しかし、健康保険法に関しても、選択できるかどうかという点でこの六百四十円と決まっているわけじゃないので、そういった意味では、それを援用していくというのは少し変だと思いますし、値段を切ることで選択できなくなるというのも私は何か変だと思います。

 そういった意味で、細かいので、またこれは財務省の皆さんと議論しながら、よりよい制度になることを目指して私も頑張っていきたいと思います。

 ありがとうございました。

     ――――◇―――――

宮下委員長 次に、内閣提出、情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。金融担当大臣麻生太郎君。

    ―――――――――――――

 情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

麻生国務大臣 ただいま議題となりました情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。

 情報通信技術の急速な進展等、最近における金融を取り巻く環境の変化に対応し、金融機能の強化を図ることが喫緊の課題となっております。このような状況を踏まえ、本法律案を提出した次第であります。

 以下、この法律案の内容につきまして御説明をさせていただきます。

 第一に、金融グループにおける経営管理を実効的なものとするため、銀行持ち株会社等が果たすべき機能を明確化することとしております。

 第二に、金融グループの効率的な業務運営と金融仲介機能の強化を図るため、グループ内の共通、重複業務の集約等を容易化することといたしております。

 第三に、金融機関と金融関連IT企業等との一層の連携の強化を可能とするため、銀行及び銀行持ち株会社による金融関連IT企業等への出資の容易化などを図ることといたしております。

 第四に、仮想通貨について、G7サミット等の国際的な要請も踏まえ、マネーロンダリング・テロ資金対策及び利用者保護のための法制度を整備することといたしております。

 そのほか、関連する規定の整備などを行うことといたしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようよろしくお願いを申し上げます。

宮下委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、明二十七日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十八分散会


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