衆議院

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第19号 平成28年5月25日(水曜日)

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平成二十八年五月二十五日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 宮下 一郎君

   理事 うえの賢一郎君 理事 神田 憲次君

   理事 藤井比早之君 理事 古川 禎久君

   理事 松本 洋平君 理事 木内 孝胤君

   理事 古川 元久君 理事 伊藤  渉君

      青山 周平君    赤枝 恒雄君

      穴見 陽一君    安藤  裕君

      井上 貴博君    井林 辰憲君

      越智 隆雄君    大野敬太郎君

      岡下 昌平君    勝俣 孝明君

      國場幸之助君    助田 重義君

      鈴木 隼人君    田中 英之君

      田野瀬太道君    田畑 裕明君

      竹本 直一君    中山 展宏君

      根本 幸典君    野中  厚君

      橋本 英教君    福田 達夫君

      務台 俊介君    宗清 皇一君

      八木 哲也君    山田 賢司君

      井出 庸生君    落合 貴之君

      玄葉光一郎君    鈴木 克昌君

      福島 伸享君    前原 誠司君

      鷲尾英一郎君    上田  勇君

      宮本 岳志君    宮本  徹君

      丸山 穂高君    小泉 龍司君

    …………………………………

   財務大臣

   国務大臣

   (金融担当)       麻生 太郎君

   内閣府副大臣       高鳥 修一君

   内閣府副大臣       福岡 資麿君

   財務副大臣        坂井  学君

   内閣府大臣政務官     牧島かれん君

   政府参考人

   (金融庁総務企画局長)  池田 唯一君

   政府参考人

   (金融庁監督局長)    遠藤 俊英君

   政府参考人

   (金融庁公認会計士・監査審査会事務局長)     天谷 知子君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 中川  真君

   政府参考人

   (財務省主税局長)    佐藤 慎一君

   政府参考人

   (財務省理財局長)    迫田 英典君

   政府参考人

   (国税庁次長)      星野 次彦君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)           吉田  学君

   参考人

   (日本銀行総裁)     黒田 東彦君

   財務金融委員会専門員   駒田 秀樹君

    ―――――――――――――

委員の異動

五月二十五日

 辞任         補欠選任

  大岡 敏孝君     岡下 昌平君

  國場幸之助君     安藤  裕君

  田野瀬太道君     橋本 英教君

  中山 展宏君     田中 英之君

  宮崎 岳志君     福島 伸享君

同日

 辞任         補欠選任

  安藤  裕君     赤枝 恒雄君

  岡下 昌平君     穴見 陽一君

  田中 英之君     八木 哲也君

  橋本 英教君     田野瀬太道君

  福島 伸享君     井出 庸生君

同日

 辞任         補欠選任

  赤枝 恒雄君     田畑 裕明君

  穴見 陽一君     青山 周平君

  八木 哲也君     中山 展宏君

  井出 庸生君     宮崎 岳志君

同日

 辞任         補欠選任

  青山 周平君     大岡 敏孝君

  田畑 裕明君     國場幸之助君

    ―――――――――――――

五月二十四日

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(斉藤和子君紹介)(第二四八三号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三一七一号)

 同(池内さおり君紹介)(第三一七二号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三一七三号)

 同(大平喜信君紹介)(第三一七四号)

 同(笠井亮君紹介)(第三一七五号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三一七六号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三一七七号)

 同(志位和夫君紹介)(第三一七八号)

 同(清水忠史君紹介)(第三一七九号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三一八〇号)

 同(島津幸広君紹介)(第三一八一号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三一八二号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三一八三号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三一八四号)

 同(畠山和也君紹介)(第三一八五号)

 同(藤野保史君紹介)(第三一八六号)

 同(堀内照文君紹介)(第三一八七号)

 同(真島省三君紹介)(第三一八八号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三一八九号)

 同(宮本徹君紹介)(第三一九〇号)

 同(本村伸子君紹介)(第三一九一号)

 消費税の増税反対に関する請願(斉藤和子君紹介)(第二四八四号)

 消費税増税の中止に関する請願(斉藤和子君紹介)(第二四八五号)

同月二十五日

 消費税の増税反対に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三二八四号)

 同(池内さおり君紹介)(第三二八五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三二八六号)

 同(大平喜信君紹介)(第三二八七号)

 同(笠井亮君紹介)(第三二八八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三二八九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三二九〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三二九一号)

 同(清水忠史君紹介)(第三二九二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三二九三号)

 同(島津幸広君紹介)(第三二九四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三二九五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三二九六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三二九七号)

 同(畠山和也君紹介)(第三二九八号)

 同(藤野保史君紹介)(第三二九九号)

 同(堀内照文君紹介)(第三三〇〇号)

 同(真島省三君紹介)(第三三〇一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三三〇二号)

 同(宮本徹君紹介)(第三三〇三号)

 同(本村伸子君紹介)(第三三〇四号)

 消費税の再増税を中止し、生活費非課税・応能負担の税制を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三三九四号)

 同(池内さおり君紹介)(第三三九五号)

 同(梅村さえこ君紹介)(第三三九六号)

 同(大平喜信君紹介)(第三三九七号)

 同(笠井亮君紹介)(第三三九八号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三三九九号)

 同(斉藤和子君紹介)(第三四〇〇号)

 同(志位和夫君紹介)(第三四〇一号)

 同(清水忠史君紹介)(第三四〇二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三四〇三号)

 同(島津幸広君紹介)(第三四〇四号)

 同(田村貴昭君紹介)(第三四〇五号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三四〇六号)

 同(畑野君枝君紹介)(第三四〇七号)

 同(畠山和也君紹介)(第三四〇八号)

 同(藤野保史君紹介)(第三四〇九号)

 同(堀内照文君紹介)(第三四一〇号)

 同(真島省三君紹介)(第三四一一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三四一二号)

 同(宮本徹君紹介)(第三四一三号)

 同(本村伸子君紹介)(第三四一四号)

 同(田嶋要君紹介)(第三四八三号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三六五四号)

 所得税法第五十六条の廃止に関する請願(田嶋要君紹介)(第三四八一号)

 同(宮本岳志君紹介)(第三六五二号)

 消費税増税の中止に関する請願(志位和夫君紹介)(第三四八二号)

 消費税率を五%に戻し、増税中止を求めることに関する請願(宮本岳志君紹介)(第三六五三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 金融に関する件(破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告)

 財政及び金融に関する件


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     ――――◇―――――

宮下委員長 これより会議を開きます。

 金融に関する件について調査を進めます。

 去る平成二十七年六月二十六日及び十二月十一日、金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条の規定に基づき、それぞれ国会に提出されました破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告につきまして、概要の説明を求めます。金融担当大臣麻生太郎君。

麻生国務大臣 金融機能の再生のための緊急措置に関する法律第五条に基づき、平成二十六年十月一日以降平成二十七年九月三十日までの期間につき、六カ月ごとを報告対象期間として、その間における破綻金融機関の処理のために講じた措置の内容等に関する報告書を、それぞれ、平成二十七年六月二十六日及び十二月十一日に国会に提出いたしております。

 これらの報告に対する御審議をいただくに先立ちまして、その概要を御説明申し上げます。

 初めに、管理を命ずる処分の状況につきまして申し上げます。

 今回の報告対象期間中に、金融整理管財人による業務及び財産の管理を命ずる処分は行われておりません。

 なお、平成二十四年九月十日に解散いたしました日本振興銀行に関し、預金保険機構において、預金保険で保護される範囲を超える部分の預金について概算払いを受けた預金者に対する第二回精算払い等が開始されております。

 次に、預金保険機構によります主な資金援助等の実施状況及び政府保証つき借り入れ等の残高につきまして申し上げます。

 破綻金融機関からの救済金融機関への事業譲渡等に際し、預金保険機構から救済金融機関等に交付される金銭の贈与に係る資金援助は、今回の報告対象期間中に日本振興銀行の清算法人である日本振興清算に対する増額等が生じたことにより四百七十億円の増額となり、これまでの累計で十九兆三百八十七億円となっております。

 預金保険機構による破綻金融機関からの資産の買い取りは、今回の報告対象期間中にはなく、これまでの累計で六兆五千百九十二億円となっております。

 また、預金保険機構の政府保証つき借り入れ等の残高は、平成二十七年九月三十日現在、各勘定合計で二兆一千九百五十四億円となっております。

 ただいま概要を御説明申し上げましたとおり、破綻金融機関の処理等に関しては、これまでも適時適切に所要の措置を講ずることに努めてきたところであります。金融庁といたしましては、今後とも、日本の金融システムの一層の安定確保に向けて万全を期してまいる所存でございます。

 御審議のほど、よろしくお願いを申し上げます。

宮下委員長 これにて概要の説明は終わりました。

     ――――◇―――――

宮下委員長 次に、財政及び金融に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 両件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁黒田東彦君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として金融庁総務企画局長池田唯一君、監督局長遠藤俊英君、公認会計士・監査審査会事務局長天谷知子君、財務省大臣官房審議官中川真君、主税局長佐藤慎一君、理財局長迫田英典君、国税庁次長星野次彦君、厚生労働省大臣官房審議官吉田学君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

宮下委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

宮下委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。勝俣孝明君。

勝俣委員 自由民主党の勝俣孝明でございます。

 本日は、一般質問というせっかくの機会でございますので、金融経済全般について麻生大臣にお尋ねをしていきたいというふうに思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず一問目は、個人消費の回復策について少しお尋ねをしていきたいと思います。

 まず、現在、安倍政権において名目GDP六百兆円を目標に掲げておりますけれども、この目標達成のためには、経済の約六〇%を占めると言われている個人消費の拡大を図ることが必要であるというふうに考えております。逆に言うと、この個人消費が活発にならなければ目標達成が難しいとも言えるわけでございますけれども、要は、経済の六〇%を占めるわけでございますので、個人消費が活発にならない限り、経済はなかなかよくなっていかないというふうに私は考えております。

 今、業界団体や企業においてベースアップやボーナスの増加等々が行われつつありますけれども、本来ならば、この上がった分のお金が消費に向かっていくとよいのですけれども、例えば我が国の個人の金融資産は、今、約一千七百兆円とも言われております。私が初当選させていただいた三年半前は、たしか一千四百兆円とも言われておりましたけれども、この三年ちょっとで一千七百兆円までふえているということで、年間で大体百兆円ずつふえていると言われております。そのほとんどが、間接金融の中で、預貯金が占めております。給料が上がった分のお金が、なかなか消費に回らず、預貯金の方に回ってしまっているとも言えるわけでございます。

 そこで、この賃上げで増加した所得をどのようにすれば消費につなげることができるとお考えなのか、大臣の御所見をお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは先生御指摘のとおり、GDPが今五百兆を超えたところまで戻ってきておりますけれども、GDPの中に占めます三大要素は、個人消費、設備投資、政府支出、これが多くの三つ。その中で一番大きいのは個人消費、約六〇%を超えるというところだと認識をいたしております。

 この個人消費をまず拡大するためには、その原資となります給与所得等々の賃金というものが増加していくことが必要でありますので、企業にとっては、これまで過去最高の企業収益を上げておられる、経常も常にふえておりますので、そういったようなことを考えて、賃上げの方に回してもらいたいと。

 ちなみに、内部留保がこの二、三年で約五十兆を超えておりますが、賃上げに回った分は約五千億、設備投資が五兆ぐらいだと思いますので、そういった意味では、政労使会議等々、官民対話等々でいろいろ働きかけを行ったところで、結果としては、ベースアップというものが三年連続、これまでベアなんて言葉は絶えて久しく聞かれなかった言葉が聞かれるようになったのはいいことだと思っております。確実に改善はしていると思いますが、その使い道がなければ消費はふえてこないということは、もうまことに御指摘のとおりであります。

 一番大きなのは、やはり長いこと続いておりましたデフレというものは、金は持っておけば物価が下がるわけですから、金を持っておりますと相対的所得は上がる。いわゆる資産が上がるということを意味しますので、じいっと持っておきさえすればいい。金利がつかなくても物価が下がっていく。

 そういう意識があろうというのは、これはもうよくわかるところなので、こういったところをやっていくためには、やはり産業競争力会議等で、これからの技術というものでIoTと言われる、インターネット・オブ・シングスというのを略してIoTという技術を用いたもので、例えば自動走行の車が出てくる。こういったものができますと、高齢者でも車が乗れるということにもなります。また、洋服。今、これらの技術を使いますと、オーダーメードでどんどん洋服がえらく簡単にできます。

 そういった技術の進歩などいろいろなものがあって第四次産業革命と言われるようなものが出てきていますので、こういったものがうまく利用されていくということが一つの方法だと思っております。

 また、高齢者というものを考えましたときに、介護用ロボットというようなものも大きな消費の一つになりましょうし、それを補うための人工知能、いわゆるAIというものが技術革新等として新しく出てくるものだと思います。やはり、世界最先端のものを目指して、平均寿命が世界一とかよく言われますけれども、そういった意味では、健康年齢というものを考えると、私どもとしてはきちんとそれをやっていかなきゃいかぬ。

 また、住宅。先進国の中で、多分、中古住宅の流通市場を持っていないという国は日本ぐらいだと思っていますけれども、そういった意味で、中古住宅の流通とかリフォームというものの市場というものをもっときちんと整理していく必要がありますと思っておりますので、こういったものも新たな需要の開拓として取り組んでいくことが必要だろうと思います。

 個人が買いたくなるようなものが出れば少々高くても買う、それが個人の消費マインドの一番の根本だと思いますので、個人が欲しくなるようなものをつくるという発想というのは、売れないという前提ではなくて、売れるものをつくるという発想にやはり生産する側の経営者の方も、いわゆるサプライサイドの方もそこらの点を考えていって、両方でやっていかねばならぬところではないかと思っております。

勝俣委員 財布のひもを緩めていただくための、やはり、大臣がおっしゃるように、欲しいものをつくっていく、需要を拡大していくということが大事なことだというふうに私も思っております。ありがとうございます。

 次に、会計に関する国際的な考え方が日本的経営に及ぼす影響についての対策について少しお伺いをしていきたいというふうに思います。

 今、国際化、グローバル化の進展に伴い、我が国の会計制度も国際会計基準が導入されてまいりました。税効果会計ですとか金融商品の時価会計などの導入により、本業の利益をしっかりと把握していくことは私も非常に大切なことだというふうに考えております。

 十数年前から、恐らく一九九九年以降だと思うんですけれども、ROAですとかROEといった、いかに効率的に資産や資本を使い利益を出していくかというこういった国際的な会計の考え方が、こういった市場や金融機関を通じて企業に浸透していく。それ以前の経営意識とは異なり、いわゆる利益至上主義に走ってしまい、企業のガバナンスを失ってしまう、こういう可能性も今出てきているわけでございます。

 余りにも短期的な利益至上主義に傾くと、過剰な効率化を図ることで、例えば正社員から短期雇用への転換等、年功序列、終身雇用による技術等の伝承により育んできた日本企業文化の本当によい部分が崩壊してしまうのではないかというふうな懸念があるわけでございます。このことが、逆に言うと、我が国の国際競争力の弱体化を招いてしまう、これは私は本末転倒なのかなというふうに考えております。たび重なる今のこういった企業不祥事も、このガバナンスの欠如が一因であるということも言うまでもありません。

 そこで、時価会計などの国際会計基準の考え方が浸透する中で、企業で働く人たちの帰属意識、今は愛社精神なんという言葉は余り言われなくなりましたけれども、そういった帰属意識を高めたり長期的な人材育成を行うといった日本的な経営のよい面が失われることのないよう、企業のガバナンスをしっかりとさせ、中長期的な視野に立った企業経営を促すべきだと考えておりますけれども、大臣のお考えをお伺いいたします。

麻生国務大臣 これは勝俣先生、財金の話か経産省の話か文化庁の話か、いろいろなところに重なってくるところだとは思います。

 御指摘のとおり、いわゆる会社は誰のものかという話になったときに、多分、アングロサクソンに聞いたら、ほとんどはまず株主のものと。従業員のものと答える人はほぼいないと思われますけれども、日本の場合は、その点は、従業員とか経営者とか地域の人とか、いろいろな人、株主という形になっていたり下請という形になったり、いろいろな形で皆支え合っているという文化なんだと思いますので、従業員とかお客とか地域住民とかいう人たちが支え合ってつくっているところがありますので、持続的な成長とか中長期的な企業の価値の向上というようなものを長期にわたって図っていくというのは大事で、結果として、日本の場合は、二百年以上続いた会社というのは世界じゅうのうちのほぼ八十何%は日本になっております。

 やはり長く続けていく経営というのを非常に大事にしてきていると思いますので、神戸に行きますと、大化の改新にさかのぼって千五百年間続いている会社が一つありますけれども、あれが世界で一番古い会社ですが、そういったようなものというのは、アメリカにはもちろん、まあ千五百年前なんかアメリカは国もありませんからそれはそんなことを言っても始まりませんが、そういったようなものというのが日本の文化として残っているんだと思います。

 上場企業に適用されておりますコーポレートガバナンスという制度を昨年の六月から入れておりますけれども、やはりコードの趣旨というものを踏まえて、そのコーポレートガバナンスの社外重役とかいろいろな形の中から、短期的な話というのは、先ほど言われましたROEの話にしても、そういったような価値観と異なった価値観というものに関して株主の理解を得るというところが非常に大きな要素を占めるんだと思います。短期で追いますので、四分の一でやっていきますと、どうしても長期の投資、研究開発というようなところに金が回らない。そうなると、結果としては、新しい研究、新しい製品の開発がおくれるということになってきています。

 国際会計基準の中で、やはり一番大きく、法律的に見ますと、簡単なことを言えば時価会計という話なんですけれども、これを全面的に採用しているかというと、そんなに日本と大きく変わっているわけではないんですが、非上場企業の株式というのは、取得価額でやるか時価でやるか等々いろいろなやり方の違いがあります。

 そういったところを含めまして、適切にそういったものも反映させていきつつ、きちんとして残していくというようなものはやはり日本の企業の持っている大きな強みであって、長崎なんかへ行かれるとわかりますけれども、おじいさんも三菱重工にいました、お父さんも三菱重工、私も三菱重工と。三菱重工長崎造船所に勤めるのが家業を継ぐみたいなイメージで、やはり技術が蓄積されていくんですよ。あれには世界じゅう勝てぬですな。みんな来たら、技術屋は必ずそこが目について、みんなその話をしますから、多分みんな同じ驚きで見ているんでしょうけれども、それはやはり、勤めさせたくなるような企業文化がそこにあるんですよ。それはやはり、あの会社の持っている強みというか、あの工場の持っている強みなんだと思います。

 そういったようなものというのをいかに醸成し継続させていくかという面と、技術の開発とかいろいろな利益とかいうのをいかにうまくバランスをやっていくかというのは、企業経営者の責任としてよほど目配りをしておかぬと、なかなかそういったバランスは難しいなと思いながら考えております。

勝俣委員 ありがとうございます。

 最後の質問になります。地方金融機関の役割についてお尋ねをしていきたいと思います。

 これはマイナス金利の政策にも関係していきますけれども、今、日銀の当座預金の残高、これが約二百八十兆円ということでございます。昨年の四月は約二百十兆円でございましたので、この一年で約七十兆円増加しているわけでございますけれども、そういう中でこの状況は、地域の金融機関は、逆に言えばもう貸出先がなくて当座預金がふえているとも言えるわけでございます。

 こういう中で、地域に根差した地域金融機関は、企業の過去の業績のみならず、将来の事業性を評価した融資、創業支援を行い、新規事業の創設や新規開業に必要な資金を供給していくべきであるというふうに私は考えております。

 特に、地域の企業が人口減少等に対応するために業種転換や新規事業への進出を行うことを支援するのは、地域や取引先のことを理解している、まさに今、日本は、間接金融の文化の中での地域金融機関の大きな役割ではないかなというふうに私は考えるわけであります。

 こういった取り組みは、地域経済活性化のみならず、地域金融機関の貸出先不足の解決にもつながるのではないかというふうに考えますけれども、大臣の御所見をお伺いいたします。

麻生国務大臣 この間の仙台のG7でも、勝俣先生、今何が不足しているかといったら、金じゃないんですよ。金は、銀行に限らず皆、一千七百兆の個人金融資産を含めまして、日本の国としての対外純資産も世界一ぐらいのあれなんですが、問題は、金じゃない、需要です。需要がないんだ。この需要を起こすために財政がとかいう話をいろいろしておりますので、私どもとしては、新しい需要を掘り起こしていくに当たって、やはり新しい企業が起きてくるというのが非常に大事なところだと思っております。

 いずれにしても、新しい技術の進歩がいろいろ大きな新しい産業の芽をあっちこっちで多分出してきているんだと思いますが、それは、その人がそれだけ開発しているんですけれども、これが何に向いているのかとかいうことを考えて、つくっていったらできちゃったというような人は、実はもう、これは大田区に限らず、いろいろ日本じゅうあちらこちらで出てきますので、努めてそういうところに行ったりなんかするようにしていないと、永田町ばっかりなんかにいると大体情報なんて偏ったものしか入ってきませんから、そういったところに努めて出ていく。

 それで、聞いてみると、ほおっというのはあるんですが、それを目ききと称して、それに目をつけて、ほかのを聞かれると、あっ、これならこれととか、あっ、そういえばこういったものを探している企業があそこにあったなとかいうのは、やはり地元とかその地域で回っている人というのは、転勤の余り少ない地方銀行とか信用金庫とか信組とか、そういったいろいろな、余り大銀行のように東京から九州へとかいうような感じじゃなくて、その地域にずっと根づいている人というのは、やはり一番よく入り込んでいると思いますので、そこらの人が、少なくとも物づくりを、何に使うかということを考えるいい立場にいるはずなので、そういった人たちの目というのが新しい産業を生み出していく大きな要素になり得るんだと思いますので、実効性のある課題解決というのの提案をする。そのかわり、その金が足りない分は融資しましょうとかいった意味で、担保だけに頼るのではなくて、事業の発展性とか企業経営者の資質とか、そういったようなものをきちんと見抜いて金を貸していく姿勢というのが地域金融に与えられている大きな問題なのであって、それができて、大きな企業にだんだん上がってくれば、逆に今度は人がそこへ入っていきますので、人口減少の問題にも、一つの解決にもつながっていくという面もあろうかと思います。

 そういった面で、地域金融の持っております可能性というのは大きいものだ、私どももそう思って、地域金融は育成庁として頑張らないかぬということを金融庁によく言っているところの一つであります。

勝俣委員 どうもありがとうございました。

宮下委員長 次に、越智隆雄君。

越智委員 自民党の越智隆雄でございます。

 きょうは、会期末近くでございますけれども、質問させていただく時間をいただきまして、ありがとうございます。

 この一月から私自身ちょっと気になっていることがございましたので、それをこの機会に質問させていただきたいと思います。政府参考人の皆様に幾つか事実確認の質問をさせていただいて、最後にできれば大臣から御所見を賜れればというふうに思っているところでございます。

 何をお伺いしたいかと申しますと、財政状況と格付と金利の関係、それと、金融環境と申しますか調達環境、特に民間セクターの調達、これがどういう形で影響し合っているかということについて確認をしたいと思っています。

 と申しますのは、四年前の六月に三党合意があって、その後、財政健全化と経済成長の両立ということで頑張ってきたわけで、財政の方はプライマリーバランスの黒字化二〇二〇年、GDPの方は六百兆円を二〇二〇年過ぎにという具体的な目標を持って今取り組んでいるところでありますけれども、その途中で、いろいろな金融環境の変化、経済環境の変化がございます。

 特に私が気になりましたのは、ことしの一月からの円高、また金利低下というところであります。ここには、もちろん金利の要因があって、日銀のマイナス金利の政策、また、日米の金利差というものが主要因だと思いますけれども、一方で、例えば新聞では、いわゆるリスク回避の円買い、JGB買いというような記述もあります。二月十二日、イエレンFRB議長が議会証言で、利上げのペースも減速するのが適当だというふうに言った直後の日経新聞ですけれども、「世界経済への不安から金融市場の緊迫感が強まり、安全性が高いとされる円や米独の国債に資金が急速に流入している。」というような記載もございます。

 理屈の世界では、財政が厳しい状態になって格付が下がって金利が上昇するということでありますけれども、現実の世界では金利が低下していく。今申し上げたような政策ですとか、あるいは国の信用力ということだと思います。

 このこと自体は、金融政策が効果を出しているとか、あるいは、日本の国の本質的な信用力が高いということだと思いますけれども、一方で、ちょっと冷静に考えると、政府の信用、政府の財政ということと、もっと大きな意味での国家の信用力という意味での乖離が出てきていて、いろいろな現象が出てきている。これは悪いことではないんですけれども、このことをどう捉えて、何を注意しておくべきかということについて私は個人的に関心を持ったということでございます。

 そこで、一つ目、政府参考人に聞きたいんですけれども、主要格付会社による日本国債の格付の推移について、概要を教えていただきたいというふうに思います。

中川政府参考人 お答え申し上げます。

 主要三社の日本国債の格付についての推移のお尋ねがございました。主要な格付会社でありますムーディーズ、S&P、そしてフィッチにおける日本国債に対する過去十年間の格付についてでございます。

 まず、ムーディーズにおきましては、二〇〇七年、二〇〇八年及び二〇〇九年に引き上げられました後、二〇一一年と二〇一四年に引き下げられまして、現在はシングルA1、これは上から五番目の格付となっております。

 S&Pにおきましては、二〇〇七年に引き上げられました後、二〇一一年及び二〇一五年に引き下げられまして、現在はシングルAプラス、上から五番目の格付となっております。

 最後のフィッチでございますけれども、二〇一二年及び二〇一五年に引き下げられまして、現在はシングルAということで、上から六番目の格付となってございます。

越智委員 ありがとうございました。

 ムーディーズとS&Pが行ったり来たりで、フィッチがずっと格下げということでありますけれども、ムーディーズとS&Pを見ていますと、印象としてはですけれども、骨太の方針二〇〇六が出た後、格上げが起こって、その後、リーマンと震災の時期に格下げになっていっているというふうに思います。

 そして、あとちょっと、事前に聞いてみましたらば、格下げの理由ですけれも、ムーディーズの場合は、消費税の引き上げの先送りを理由にして格下げがなされ、また、SPの場合は、アベノミクス、経済に対する期待が弱くなったということで格下げが起こり、フィッチの場合は、消費税の引き上げ先送りに対する見合いの歳出削減がないということで格下げが起こったということで、それぞれ三者三様で、大ざっぱに言えば、SPは経済に注目していて、ムーディーズとフィッチは財政に注目している、そんなようなことだというふうに受けとめさせていただきました。

 それでは次に、ここ数年の国債の利回りの推移と、そして格付の変化について、その関係について質問したいと思います。

迫田政府参考人 お答えをいたします。

 最近の十年債の金利水準につきまして、過去二十年間をフォローしてみますと、二十年前の五月の月中平均金利は三・四%でございました。十年前の五月の月中平均金利は一・九%、五年前の五月の月中平均金利は一・一%でございまして、足元ではマイナスの〇・一%程度ということでございます。

 この間の民間の格付の動きは、長い目で見ますと格付は上がるときもあれば下がるときもあったわけでありますけれども、個々の格付が変化したときの国債市場の動きで見てみますと、これは金利が上がるときもあれば下がるときもあるということでございまして、例えば、格付が下がったから金利が上がるといったような一律の動きを示しているわけでは必ずしもないということでございます。

 いずれにしても、国債金利は、内外の経済財政の状況や時々の海外の市場動向等さまざまな要因を背景にいたしまして決まってくることから、こういうことになっているというふうに認識をいたしております。

越智委員 ありがとうございます。

 ちょっと時間が押していますので、質問を私の口から逆に説明させていただきたいというふうに思います。

 今御説明ありましたとおり、金利がずっと中長期的に低下してきている中で格下げがあります。格下げのタイミングと金利の推移というのは細かく見ると必ずしも一致していなくて、相関は低いということであります。

 では、格下げ局面における利回りの低下の理由は何かということを考えると、先ほど冒頭申し上げたような金融緩和策の影響もあったと思いますし、これはなかなか検証しにくいと思いますけれども、リスク回避の円買いですとかJGB買いもあったんじゃないかなというふうに思っております。

 そんな中で、きょう特にお伺いしたかったのは、今、財政健全化の努力を継続的にしている。ただ、一方で財政の状況は厳しい。格下げは、トレンドとしては低下傾向になっている。ただ、アウトルック、中長期的な展望としては安定的だというふうになっている。そういう中で、JGBの金利は今低下している。

 それで、JGBの金利が低い、これはある意味ではとてもいいことで、安心材料でありますけれども、格下げ等によって、それ以外の、民間セクターへの影響が出ることを心配しなきゃいけないんじゃないかというところについてきょうはお伺いしたいと思って、ここまでいろいろとお伺いしてまいりました。

 特に、ソブリンシーリングの問題があります。国債の格付よりも高い格付を民間にはつけないというのがあって、例外があるので、ムーディーズの場合はキヤノンとかNTTとか十社例外、スタンダード・プアーズの場合は十六社例外でありますけれども、とはいっても、例外といっても、ムーディーズの場合は四ノッチまで、S&Pの場合は二ノッチまで、上までしかつけないということで、シーリングがかかっているということであります。

 あと、長期格付に加えて短期格付もあるので、特に民間企業の場合、資金繰りの問題があります。ここについて、短期格付に影響が出てきた場合に、結構喫緊の課題になるんじゃないかというのが二点目の心配です。

 三点目は、外貨ファンディング。今、ドル・円の通貨ベースが大分上がってきているので、調達コストが上がっています。ただ、これは米銀の資本規制強化による影響だということもあって、金融庁さんもその辺を気にしてストレステストをしているというふうに聞いておりますけれども、いずれにしましても、そういった影響が出るかもしれない状況であります。

 こういった影響というのは大企業のみじゃないかという意見もあるかもしれませんけれども、金融機関も影響を受けると考えると、その先の借り手にも影響が出るということを考えると、これはちゃんと見ておかなきゃいけないというふうに思っておりますが、国債以外の民間セクターへのインパクトについて今当局がどう考えているのかを教えていただきたいと思います。

遠藤政府参考人 委員御指摘の民間セクターへの影響ということで、銀行への影響についてお答えさせていただきます。

 外貨調達について影響があるのではないかという御指摘だと思います。銀行の外貨調達は、民間格付会社の格付のほか、金融機関の外貨の調達方法でありますとか、それから、より一般的な経済情勢あるいは市場動向など、さまざまな要因に影響を受けるものでございます。

 国債の格付が銀行の外貨調達に与える影響については、そういったさまざまな要因が影響するだけに、一概にお答えすることはなかなか難しいかなというふうに考えております。

 足元では、外貨の供給と需要、両方の要素があるわけでございますけれども、特に外貨需要の高まりなどを背景に、外貨調達コストが御指摘のように上昇しております。邦銀は、しかしながら、総じて充実した財務基盤を有しておりまして、必要な額の外貨資金の調達にも支障は生じていないというふうに承知しております。

 いずれにいたしましても、金融庁といたしましては、市場の動向についてモニタリングを継続するとともに、邦銀におきまして、海外業務の拡大に見合った安定的な外貨調達、ストレス時に備えた外貨流動性リスク管理体制、これが確保されるように、検査監督を通じて促してまいりたいというふうに考えております。

越智委員 ありがとうございました。

 これからプライマリーバランス黒字化までの間、財政状況はまだまだ厳しい状況が続くわけで、その間、不測の事態が起きないようにという思いでここまで質問してまいりましたが、大臣、御所見があればいただきたいと思いますが、よろしくお願いします。

麻生国務大臣 たしか二〇〇一年でしたか、ボツワナというアフリカのどこかにある国だと記憶していますけれども、その国の国債より日本の国債の格付が下がった。ふざけた話があったので、時の財務官か国際局長か忘れましたけれども、黒田東彦という人が当時いまして、死んだわけじゃないですよ、その人がいまして、抗議文を書いた。こんな英語のうまいのが大蔵省にいるのかという記憶は、今の日銀総裁、黒田東彦の私の最初の印象なんですけれども、天下の名文だったんです。

 やはり、この格付というのがどういう意味を持つかというのに関しては、これは国際的にもいろいろありまして、スタンダード・アンド・プアーズじゃない、あれはプアスタンダーズと読むのが正しいんだとか、あれはムードで動くからムーディーというんだとか、アメリカ人なんかに言わせたらぼろかす言いますから。そういった意味では余り信用されていないというものではあるのかもしれませんけれども、一応格付会社として残っています。

 この格付会社の信用に乗っかって多くの人が迷惑したのが、リーマン・ブラザーズのあのときのサブプライムローン。あれは格付会社が皆格をつけたんですからね。その会社が皆ばたばたいったというあの歴史を、みんな知っている人からいったらこれは大した話じゃないとは思いますけれども、現実問題知らない方も多いので、そういう方から見れば、少なくともこの格付が、トリプルAからダブルAに下がり、シングルAになっていった、プラスだマイナスだという話を、何を基準にやっていて、一体どれだけの人たちがこれに人間を割いているのかと聞くと、一人か二人でこれを決めているというのが実態というのが、知っている者にとりましては余り大した話じゃないと思いますけれども。

 今、各銀行が出しますいろいろなものに対して、格付によって金利がというようなことになると、それは回り回って一般に影響が出てくるところは無視できないということは我々の頭に入れて配慮しておかねばならぬと思いますが、基本として、国自体のものとはかなり違ったものになっている、私どもはそう思っております。

越智委員 ありがとうございました。

 これで質問を終わります。

宮下委員長 午前十一時三十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前九時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午前十一時三十分開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。前原誠司君。

前原委員 民進党の前原でございます。

 我が党は、先ほど、消費税率引き上げを先送りする法案を国会に提出をいたしました。私も、財務金融の担当者として党の決定には組織人としてコミットメントしますが、きょうの質問は、少し包括的な観点から議論をさせていただきたいと思います。

 まず財務大臣にお伺いしたいというふうに思いますけれども、一―三月期のGDP一次速報値、これは〇・四%プラスとなりまして、二〇一五年度の実質GDP成長率は〇・八%となりました。年初の原油価格の下落、あるいは中国などの新興国経済の先行き不安から、お正月明けから株価は下落をして、株価、為替のボラティリティーが大きくなっていたことを考えますと、逆に言うと、一月―三月がプラスということは、よく踏みとどまった方だと私は思います。

 ただ、二〇一四年度がマイナス〇・九%、その中でも、GDP、これは六割を個人消費が占めるわけでありますけれども、二〇一四年度がマイナス一・七、二〇一五年度がマイナス〇・二、前年度から回復傾向にあるといっても、この六割を占める消費がマイナスであります。

 安倍首相と議論をすると、消費増税を行ったことの影響だということをずっとおっしゃるわけであります。消費増税だけが原因だと私は思っておりませんが、現下の経済状況を含めて、この消費低迷の原因について、財務大臣のお考えをお聞かせください。

高鳥副大臣 前原委員にお答えをいたします。

 個人消費の動向でございますけれども、おおむね横ばいで推移をしております。ただし、消費税引き上げ以降の回復は、総じて力強さを欠いていることは事実でございます。この背景には、以下のような要因が関係していると考えております。

 まずは実質賃金。二〇一四年度は、消費税率引き上げや輸入物価の上昇がございまして、実質賃金を押し下げました。ただし、二〇一五年春以降、マクロ全体で見た総雇用者所得は、名目、実質で増加傾向となっております。

 また、消費者マインド。これは、デフレマインドの払拭に時間を要する中、子育て世代や低所得者を中心に、先行き不透明感等から消費を抑制している可能性がございます。

 それから天候不順。これは、二〇一五年四月から六月期の冷夏、降雨や、十―十二月期の記録的な暖冬。

 そして最後でございますが、耐久消費財の不振ということがございます。これは、消費税引き上げに伴う駆け込み需要やそれ以前の増加を背景に、耐久消費財の減少が続いていることなどが考えられます。

麻生国務大臣 これまでの消費の低迷の要因については、今、内閣府の説明もありましたけれども、現在の経済状況というのを見ますと、御存じのように、企業収益は過去最高ということはもうはっきりしていますし、雇用者報酬も、実質で見ても前期比一・三、前年同期比で二・七ということになっていますし、有効求人倍率を見ましても、二十三、四年ぶりの高水準ということになっておりますので、ファンダメンタルズは確かなものなんだと、私どもはそう認識をいたしております。

 これを個人消費の拡大のためというのは、ふえた分は、預金がふえていっているというのではなくて、それが消費に回らず預金ということになっておるんですが、私どもから見ましても、経営者も同じような感覚の方が多いように見受けますけれども、やはりデフレが二十数年も続きますと、金利がつかなくても、物価が下がることによって金の値打ち自体が相対的に上がってくるというところもあって、何となく、一日待てばあしたはまた安くなる、あさってにはまた安くなるという心理がある間はなかなか消費に回っていかないという面は僕は避けられないものだと思いますので、これは企業収益にも、さらに賃金を引き上げてもらいたい、例えば内部留保が五十兆たまっているんだったら、設備投資は幾らにしましたかと言ったら五兆、賃金は幾らふえたんですかと言ったら五千億というのが実態ですから、そういった意味では、やはり引き続きこういったものをみんなで押し上げるためには、個人消費というのはGDPの六〇%を超えておりますので、そこのところをきちんと時間をかけて押していくというか支えていくということが、民需主導の経済というものをつくり上げるためには避けて通れぬところだろうと思っております。

前原委員 後で伺おうと思ったんですが、今、財務大臣がそういう御答弁をされましたので、どうしても聞きたいことがあります。

 G7で財務相・中央銀行総裁会合が行われましたけれども、予定どおり消費税は引き上げるということをおっしゃったということでありますが、これについて、おっしゃったのか、それは国際公約と捉えていいのか。その点についてお話しください。

麻生国務大臣 G7におきましては、午前のこの委員会でも話が出ていましたけれども、海外から、スタンダード・アンド・プアーズとかフィッチとか、余り信用できるかどうかは別にして、こういった数字を出す業界の中において日本の国債というものが下がっている大きな理由の一つが、やはり財務比率が一番大きな理由だということになっておりますし、そういったものによって日本の国債の金利が、普通、そういうのは下げられると金利は上がるものなんですけれども、そういうのが引き下げられたら金利は逆に下がるというような、これだけ信用がないなんというものもいかがなものかと思いますけれども、そういったような形になっておる状況の中にあって、やはり、きちんと日本は財政というものに取り組んでいくという姿勢は私どもはきちんと示しておかない限りは、これはなかなか、例えばそういったトリプルAまで戻っていくとか、そういったことになりにくいと思っておりますし、それは結果として民間の資金調達にも影響を与えてくるという面もありますので、財政というものを考えたときには、この消費税というものは極めて重要な要素を占めておると思っておりますので、私どもとしては、従来どおりということをG7の中でも申し上げております。

前原委員 確認ですが、国際公約と捉えてよろしいですか。

麻生国務大臣 私どもは、日本政府としてこれをずっと申し上げ続けてきておるので、国際公約ととるかどうかは別にして、私どもとしては、こういったものをきちんとやらせていただくということを申し上げ続けてきておるところであります。

前原委員 財務状況が悪いのにもかかわらず金利が下がっているということをおっしゃいましたけれども、今からちょっと日銀総裁とまた議論をさせていただきますが、金利が下がっているんじゃなくて、金利を下げているんですよ。これは金融政策によって無理やり下げている。

 きょうの議論のポイントの一つは、先ほど、内閣府の高鳥副大臣がおっしゃったように、もちろんいろいろな要因があると思います。実質賃金が減っているだけが問題ではないというふうに思いますけれども、しかし、この金融緩和の副作用というものもちゃんとわかった上で処方箋をしっかり書いていかなくてはいけないということで、少し、日銀総裁と改めて議論をさせていただきたいというふうに思います。

 黒田総裁には常に私は申し上げておりますけれども、今の日銀の金融緩和策は行き過ぎだと思っています。金融緩和が要らないと言っているのではなくて、行き過ぎだと言っているわけです。私が経済財政担当大臣をやっていたときは白川さんが総裁でしたけれども、この方は慎重過ぎたんです。白川さんは慎重過ぎて、黒田さんは私からするとやり過ぎている。ですから、白と黒の間の灰色がいいのではないかというのが私の意見であります。(発言する者あり)

 つまりは、二年で二%の物価目標というものを実現するためにこの異次元の金融緩和を行うということをやっておられたわけでありますけれども、これも後で見ますけれども、かなり先送りされていますよね。

 私は金融緩和自体は否定していないということは繰り返し申し上げたとおりであって、白川総裁のときに私は日銀の政策決定会合に全て出て、もう少し大胆な金融緩和をすべきであるということを申し上げ続けてきたわけでありますので、金融緩和というものが重要な役割を果たすという面はあると思うんです。

 それで、黒田総裁がこの金融緩和をやろうとされていた背景というのは、二つ、私の理解では動線があると思っていまして、一つは、大量に国債を買うと金利が下がります。金利が下がるとこれは貸し出しがふえるのではないか、お金が借りやすくなりますから。そうなると、会社は設備投資がふえる。あるいは、個人は車とか耐久消費財を買う。あるいは、マイホーム、住宅を買う人が出てくるかもしれないということで、実体経済にプラスの効果が出てくるのではないか。

 もう一つは、これは企業の動線ですけれども、金利が安くなる、そうすると他国との金利差が広がる。特にアメリカは、テーパリングから、今度は金利を上げるという政策になっていますので、言ってみれば日本と真逆の金融政策をやっているわけでありますので、金利差が広がって、そして円安・ドル高になり、為替効果もあって輸出が伸びるのではないかという期待もあって、企業の業績がよくなる。株価も上がる。そのことによって、先ほど麻生大臣がおっしゃったように、内部留保に回すのではなくて、設備投資とか、あるいはそれが賃金というものに対していい波及効果を生む。こういうものを求められていたということが一つの大きなポイントだと思うわけです。

 時間が限られていますのでその検証を一々やりませんけれども、住宅建設にしてもなかなか伸びていないし、また、先ほど、企業は最高の収益だとおっしゃった。そのとおりです。二〇一二年の東日本大震災の後の景気の谷を一〇〇とすると、大体今は企業収益は一四三ぐらいまでいっていますから、かなり企業利益は上がっていますね。

 ただ、その中の内訳をいうと、四三のうち、内部留保が三〇ぐらい、そして設備投資が一四で、賃金はほとんど名目でも上がっていない。こういう形になっていると思います。つまりは、企業利益というものが、かなりが内部留保にとどまっていて、そして、住宅建設もさほどふえていないしというような状況になっているのではないかと思います。

 それで、私が問題としたいのは、そういう効果を期待されたというその方向性については理解をしているわけです、しかし、二年で二%というものを実現するために、異次元の金融緩和、初めは五十兆でしたっけ、というものをやられた、年の拡大が。それで、一昨年の十月の金融緩和がまさに象徴だと私は思うんですけれども、追加の金融緩和をされましたね。あのときに私が日銀から説明を受けたのは、原油価格が下がり始めた。原油価格が下がり始めたことによって、こびりついたデフレマインドに戻ってしまう。戻ってしまうことは、これはよくない。したがって、追加の金融緩和をし、そして円安にして、輸入物価を上げることによってデフレを脱却するということをやるということなんです。

 こういう説明を私は受けたわけでありますけれども、これは、言ってみれば、いわゆる需要と供給が逼迫してデフレからインフレになるというよりは、かなり無理やりコストプッシュ型でインフレを起こすということをやっておられるし、一昨年十月の追加緩和というのはまさにそういう面があったということは報告をいただいているわけでありますけれども、そのことが結局個人消費を押し下げることになっているんじゃないかということを私は従来から申し上げているわけです。

 きょうお配りをしている一ページ目のグラフをごらんいただきたいわけですが、確かに、先ほど、財務大臣あるいは高鳥副大臣がおっしゃったように、いい数値も出ているんです。例えば企業の利益は上がっている。そのとおりです。そして総雇用者報酬も名目でもふえている。そのとおりです。

 ただ、これを見ていただくと、これは、政府から出された、日銀から出されたものをベースにやっているわけでありますけれども、これは二〇一〇年の平均を一〇〇としています。二〇一〇年の平均を一〇〇としていて、消費者物価というものはどうなっているかというと、この上のものです。確かに今はまた円高に若干なってきましたので、また、原油価格が下がっているということも踏まえて、輸入物価は下がっている。しかし消費者物価はある程度上がっている。

 そうすると、二〇一〇年と比べて名目賃金がほとんど変わっていませんから、物価上昇分を割り引いた実質賃金とか、あるいは実質可処分所得というのは、言ってみれば、四年間マイナスに沈んでいるわけですよ。先ほど、前年比よりプラスになったとおっしゃいますけれども、前から比べると沈んだままなんです。

 こういう実質賃金、実質可処分所得が沈んでいることが、つまりは、金融緩和の副作用というものがこの個人消費を冷え込ませている要因になっているんじゃないかと私は思っているんですが、日銀総裁はどう思われますか。

黒田参考人 この三年間、具体的に申し上げますと、二〇一三年の四月に量的・質的金融緩和を導入いたしまして、それ以降、委員御指摘のとおり、二〇一四年十月にこれを拡大し、また、ことしの一月にマイナス金利つき量的・質的金融緩和という形に拡充したわけでございます。

 その間、基本的に経済状況は改善してきていると思います。この点は、委員も御指摘のとおり、まず、企業部門では過去最高水準の収益を上げておりますし、家計部門でも、失業率が三%台前半と、ほぼ完全雇用の状況にあります。そして、雇用者数がふえて賃金の上昇は、確かにやや緩慢というか、私どもはもっと上昇してくれることを期待しておったんですけれども、そこまでは行っておりませんが、しかし、雇用者数がふえて賃金も緩やかに上昇しているということで、雇用者所得は緩やかな増加を続けております。

 そうしたもとで、一昨年の労使交渉、労使間の賃金交渉で二十年ぶりにベースアップが復活して、ことしも三年連続でベースアップが実現している、中小企業においても賃上げの動きが広がっているということでありますので、全体として、企業、家計の両部門において、所得から支出への前向きの循環メカニズムが働くもとで経済は緩やかな回復を続けていると考えております。

 ただ、委員御指摘のとおり、消費が必ずしも十分な強さを持っていないということは事実でありまして、その背景につきましては、先ほど、内閣府の副大臣から詳しく御説明があったようなことが背景にあると思っておりますけれども、今後とも消費の動向については十分注視してまいりたいと思いますし、その大前提として、賃金の上昇そして雇用者所得の上昇が続いていくということが不可欠でございますので、その点についても十分に注目してまいりたいというふうに思っております。

前原委員 私の質問にはお答えを今直接いただいていないんですね。

 経済は緩やかに回復しているというのは、そのとおりだと思います。我々が言うと若干語弊があるかもしれませんが、アメリカ経済の回復基調と軌を一にしていますし、それがないとやはり円安には、こういう金融緩和をしてもここまではならなかったのは、これはもう間違いないと思いますし、総裁もお認めになることだと思うんです。

 私が申し上げているのは、物にはやはり程度というものがあるでしょうと。先ほど灰色と申し上げた。何か不規則発言で、評論家みたいな話だと。評論家ではなくて、私は、真ん中のいわゆる金融緩和に戻すべきだと言っているわけです。二%の物価目標は、これはもう中長期の目標にしたらいい。二%の目標はそれでいいんですよ。だけれども、二年でやると言っていてもう三年以上たっていて、私からすると五回、総裁からすると四回、先送りしているわけですよ。これは本当に、オオカミ何とかになるわけです。それがコミットメントなんだと言えば、それはそうなんでしょう。

 ですけれども、私の質問は、やり過ぎの金融緩和というものが実質賃金、実質可処分所得のいわゆる落ち込みを招いて、つまりは消費者物価、輸入物価の上昇を招いて、それが個人消費の落ち込みを招来しているのではないか。つまりは、GDPの六割を占める消費というものに悪影響を及ぼして、それが実は副作用として経済全体の足を引っ張っているのではないか、それについてはどうお考えになりますかということを聞いているわけです。

黒田参考人 為替レートの動きが消費を含む経済全体にさまざまな影響を与えることはそのとおりでありまして、三年前の量的・質的金融緩和の導入以前と比べますと、為替レートが円安になっていることは事実であります。もっとも、先ほど委員も御指摘のとおり、このところ若干円高方向に進んでおりましたけれども。

 そうした中で、その影響が販売価格に転嫁するという動きが当然出てまいりますので、そういったものの価格が上がっていくということは事実でありますけれども、それにとどまらず、その他の物品も価格が上がってきております。それは、いわゆるコストプッシュとディマンドプルという分析がございますけれども、コストプッシュであっても、それだけでは、もし本当にコストプッシュだけであれば、需要が相殺され、あるいは減少してしまいますので、結果的に価格が上がらないということになってしまいます。

 したがいまして、コストプッシュの面があったことは事実でありますし、為替の下落がそういった要素を含んでいることも事実でありますけれども、それ以外に、やはり需要が増加して需要が支えたという面もあって、こういった物価の、足元では原油価格の下落でほぼゼロでございますけれども、物価の趨勢、エネルギー品目を除いたところで見ますと一%ぐらい上がっているわけですけれども、やはりその背景には、先ほど申し上げたような、全体としての景気回復に伴う雇用・所得環境の改善とか、あるいは、長い目で見たところの予想物価上昇率の上昇といった要素もあるのではないかと思っておりまして、そういった意味では、委員御指摘のその金融政策、特に、日米の金利格差が円・ドルレートに影響を与えて、それが輸入物価を上げてコストプッシュ、それが消費に影響したのではないかという点は、そういう要素があることは認めますけれども、それ以外のいろいろな要素があって、全体として物価の実勢、趨勢が高まってきている。その背景には、やはり、経済の回復と雇用・所得環境の改善というものも大きくきいているというふうに思っております。

前原委員 先ほどから申し上げているように、財政政策とか金融政策というのはカンフル剤ですから、これは政権が違っても、必要性は認識しているわけです。でも、それに頼り過ぎてはいけないということの中で話をしていて、そして今の金融政策というものは、ダッシュで走っている。ダッシュで走って二年で到着すると思っていたのが、ダッシュで走り続けて、さらにスピードを上げても、逃げ水のように物価上昇目標が遠のいていっている。そのことによって息切れをし始めているし、副作用も出てきているのではないかということを申し上げているわけです。

 二ページをごらんください。これはちょうど、民主党政権の三年三カ月、安倍政権の三年三カ月、比べられるようになったわけでありますが、雇用のところ、失業者とか有効求人倍率というのはよくなっているわけです。これはもちろん、そういう政策効果と、あとは世界の景気がよくなっていった、アメリカの経済がよくなっていったということがやはり大きな要因でありますし、それは日本としてはいいことだというふうに思うんですが、その中にあって、この民間最終消費だけは、むしろ民主党政権の末期で落ちているわけですよ、実質で言うと。

 そこは、先ほどからいろいろなことをおっしゃっていますけれども、真摯にもう一度この金融緩和、金融政策の副作用というものを見られて、金融政策は万能じゃないんだというところで持続可能な巡航速度に落とすべきではないか。まあ、聞いても、恐らく物価の目標は変えられませんよね。

 三ページをごらんください。私で言うと五回、黒田総裁で言うと四回、先送りをされているわけですが、二月の予算委員会で私が質問したときに、量、質、金利、金利というのはマイナス金利、この三つというのは最強の組み合わせなんだ、最強の組み合わせで必ずやり遂げますということをお誓いしますとおっしゃっているんですよ。その後にもう一遍延期されているんですよ。最強のものだったら実現してくださいよ、ちゃんと二%を。私はやるべきじゃないと思っているんですよ、中長期の目標にすべきであると思っていますけれども。できていないのに、最強のものを手に入れたからやるんだと言って、総裁いわく四回、私からすると五回、先送りしているわけです。

 こういうことはいけないので、やはり一%の物価安定目標に変更して、一%の安定目標というのは大事だと私は思いますよ。それを実現するということに変えるべきだということを、お答えありますか。今の政策を続けるわけでしょう。私のアドバイスは聞き流されますか。

黒田参考人 日本銀行は、二〇一三年の一月に、物価安定の目標を消費者物価の対前年比上昇率で二%とし、これをできるだけ早期に実現するということにいたしました。この目標を変更する考えはございません。

 なお、この二%というものについては、これも委員御承知のことと思いますけれども、消費者物価指数は、統計の性質上、物価上昇率を過大に評価するという上方バイアスがあることと、景気が悪化した場合の金融政策の対応力を確保していくためののり代といったものを確保する必要があるということを考慮したものでございます。

 これも委員御存じと思いますけれども、海外の主要な中央銀行でも、同様な考え方から、消費者物価指数で見て二%の上昇を目指して政策運営を行っているということでございます。

前原委員 そういう御答弁でしょう。

 二%は中長期の目標にして、一%の物価安定目標に変える、その英断を持たれた方がいい。そうでないと、これからもう一つ副作用のことを申し上げますが、副作用はより大きくなるということであります。

 もう一つの副作用を申し上げましょう。

 先ほど、財務大臣が、これだけ借金があって国債の格付が下がるにもかかわらず、金利が下がっている、不思議なことだと。金利は、下がっているんじゃなくて下げているんですよ、無理やり。日本銀行の金融政策によって無理やり下げているわけでありますが、これはコストがかからないのかということについて少し議論をしたいというふうに思うわけであります。

 日本銀行は、剰余金の九五%を政府に納めることになっていますね。しかし、二〇一四年度は、財務基盤強化のために七五%に下げていて、そして二〇一五年度からは、引当金を積んで、それを差し引いて九五%を国庫納付する、こういうことであります。引当金というのは、大体四千五百億円程度ということですね。

 これは、出口を意識した引当金ということでよろしいですか。

黒田参考人 平成二十七年度の決算はまだ公表前でございますので、具体的な数字についてお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、基本的にこれは、御案内のとおり、マイナス金利つき量的・質的金融緩和、こういったものを実施している局面では、長期国債の買い入れに伴う利息収入がふえまして、日銀の収益が通常よりも上振れるわけでございます。他方、将来金利が上昇する局面では、収益が下振れる可能性がございます。

 したがって、今般の、債券取引損失引当金を拡充することによって、収益が上振れる局面でその一部を積み立て、将来、収益が下振れる局面でこれを取り崩すということを可能にしたわけでございます。

 これによって、日本銀行の収益の変動がならされて国庫納付金の額も平準化されるという効果があり、これ自体が何か国民負担をふやすというものではございません。

前原委員 確かに、国債を買われる、今高い値段で買われていますね、金利が低いですから。長期国債でマイナス金利ですから。高い値段で買われているということですし、それに対する利息分が入ってくるということで、当然ですよね。国債の買う量を拡大していっているわけですから、その分、国に入るものは多くなってくるのは当たり前のことです。

 しかし、今お話をされたように、これは未来永続できないわけですから、将来的に必ず、言ってみれば資産を圧縮していくということになります。そうすると、今は買い入れているから国債価格が上昇する、つまり金利が低下をするという局面ですが、逆の状況になると、金利が上昇して、そして国債価格が下落をする。こういうことになります。

 今答弁されたことで一つ申し上げたいのは、今まで国会で、出口局面の収益面の影響というのは、実際どのような手段をとるかということによっても違う、また、その時々の金利情勢によっても大きく変わり得る、したがって、まだ出口戦略あるいは出口の運営の仕方については具体的に議論をするのは時期尚早、こう答えられています。

 しかし、まだ確定をしていないといっても、資産でいうと四千五百億円ぐらいの積み立てをするわけですよ。なぜ四千五百億円程度なのかという額が固まってきた場合には、その根拠が示されなければいけませんよね、何で四千五百億円なんだと。つまりは、利潤と国庫納付金、そして、将来そのバランスシートを下げていく上での金利上昇、そしてそれを払わなきゃいけない、それで引き当てなんだ。それはそのとおりでしょう。

 しかし、その額ということを考えた場合に、どのような出口を考えて政策をとろうとしているのかということは、今まで、考えていないから何も言えませんということをずっと三年以上、黒田総裁は、国会で何を聞かれても鉄仮面のように言われ続けていたわけですよ。しかし、出口は問題なんです、今からお話をするように。

 では黒田総裁、本当にこのオペレーションというものは、利潤と、引き当てによって賄ったものについて相殺をした場合に、必ず国民に対して負担を押しつけることはない、つまりは国会に損失を押しつけることはないということは断言できますか。

黒田参考人 この引当金の仕組み、これは委員も御承知のことと思いますけれども、当分の間、有利子負債見合いで保有する長期国債の利息収入と有利子負債に対する利払い費用の差額の五〇%を目途として積み立てる、利益超過の場合は積み立て、損失超過の場合は取り崩すということでございます。

 こういうものにつきましては、外貨の資産についても同様な仕組みがございますけれども、変動をならすという趣旨ですので、一つの目安として、超過分の五〇%を積み立て、マイナス分の五〇%を取り崩すというのは、一つの典型的なこういうもののあり方だと思っております。

 具体的にどれだけ積み上がっていくのか、あるいは、将来どれだけ足りなくなるのかという具体的な試算が、むしろ、経済状況がどういうふうになっていき、かつ、実際に出口に際してどのような経済金融情勢になっているかということは確定的に予測できませんので、あくまでも予備的というか、一種の保険のような形でこういう仕組みをやっているわけでございます。

 これ自体としては、さっき申し上げたように、通常よりもより多く出てくる利益の一部を積み立て、利益が減っていったときにこれを取り崩すというその仕組みになっております。

 こういった形自体は、具体的に出口のときに、前から申し上げておりますとおり、出口のときの二つの重要な要素というのは、金利水準をどういうふうに調整するかということと、拡大した日本銀行のバランスシートをどのように取り扱うか、この二つが重要なわけですし、米国の場合もその順序とかやり方についていろいろな議論が行われ、実際に、かつて言っていたことと今やっていることと違うわけですけれども、いずれにせよ、そういったことでその二つの取り扱いが重要でありまして、それはやはり、その具体的な出口の局面でどういった手段になるかということは、その時点でないとわからないと思います。

 それから、御指摘のプラス・マイナスの点も、あくまでもそれをならすという意味ではあるんですけれども、全体として一体どういう形になるのかということは、これは、先ほど申し上げたように、具体的な出口の中での経済、金融の動向等にもかかっていますし、また、私どもは、金融政策の出口に差しかかった、あるいは出口を出た後のやり方にもかかっていると思いますので、具体的に申し上げることは難しいという点は変わりございません。

前原委員 この金融政策というのは、よく言われるのは、行きはよいよい帰りは怖い。つまりは、お札を刷って、そして国債を大量に購入して、そしてマネタリーベース、マネーサプライを拡大しているという金融政策が、言ってみれば、攻めのときはいいわけですよ。さまざまなもので好循環を生むという、それが政策ですから、それはそれで、私も繰り返し申し上げたように否定はしませんが、では、それを平準化というか常態化するとき、つまり帰りですね、出口、これについては非常に難しいわけで、それについて本当にうまくいけるのかどうなのかといったところについてはわからないという答弁なんですが、これも繰り返し国会でやっていますけれども、ギャンブルのようなところがあるんです。

 日銀が試算されているのは、長期金利が一%上がれば、保有する国債の時価は二十一兆円目減りする。独立法人経済産業研究所の試算、これは、二〇一六年末に恐らく三百六十五兆円に保有国債は達するであろう。仮に長短金利が二%上昇すれば、平均残存期間八年の日銀保有国債の時価は約一四%低下をして、そして日銀の損失は五十一兆円になる。こういう試算も出ているわけです。

 つまりは、こういうオペレーションというものが最後はうまくいきませんでした、国民に対してツケ回しが来ました、請求書が来ましたということでは、これはまさにギャンブルで、それは黒田総裁が腹を切るだけでは済まない話なんです。

 ですから私は、ここで確約をとるのが我々政治家の責任だと思うのは、私がここで聞きたいのは、必ず国民負担は生じさせないという確約ができてやっているのか、そういう確約を持って本当にやっているのか。そういう確約を持ってやっていなかったら無責任ということになりますよ、今さえよければいいということで。いかがですか。

黒田参考人 日本銀行の使命は、物価の安定と金融システムの安定ということでございます。

 そうした際に、当然のことながら、日本銀行の財務の健全性というものも十分考慮しつつ、今申し上げた二つの目標に向けて最大限の努力をするということでございます。

 したがって、財務の状況については、今繰り返し申し上げておりますように、十分配慮しつつやっているわけですが、財務の問題、その可能性を言って金融政策をしない、あるいは物価の安定、金融の安定の目標を達成しないということではいけないと思っておりますので、委員御指摘の点は十分理解しつつ、今後とも、物価安定に向けて最大限の努力をしてまいりたいというふうに思っております。

前原委員 つまりは、国民負担は生じ得るということを認められたわけですよ。

 そして、私が先ほどお話をしたように、余りコミットメントを金融緩和でし過ぎると、結果的に副作用とかこういうひずみというものが大きくなるので、私は、もう少しマイルドなものにした方がいい、より持続可能なものにした方がいい、あるいは、その最終段階においてよりマネジメント可能なものにした方がいいということは、申し上げておきたいというふうに思います。

 最後、残りの時間で財務大臣と議論させていただきたいなと思うのでありますが、先ほど、G7の話を少しさせていただきました。

 財政出動の必要性というもの、これはむしろ麻生大臣よりは安倍総理の方がかなりこのことについて熱心だというふうに思うわけでありますけれども、私は、財政出動というのは機動的にやるべきだと思いますし、これを否定するものではありませんが、ただ、やはりカンフル剤的な財政出動というのは、これだけの莫大な財政赤字を考えた場合はできるだけ避けるべきであって、もし財政出動をするのであれば、日本の構造問題を解決するための財政出動にしなきゃいけない。

 そうすると、財政出動自体が構造的な問題に取り組むということになれば、その恒久財源が必要になりますよね。つまりは、単発ではなくて永続させるべきだと思いますけれども、そうすれば、例えばG7とかで議論される財政出動というものをやるのであれば、私は、赤字国債ではなくて恒久的な財源というものをあわせて考えるべきだと思いますが、大臣のお考えはいかがですか。

麻生国務大臣 これは基本的に前原先生、私どももこの三年間の間、財政というもので言わせていただければ、機動的な財政というものを二本目の矢ということで最初から申し上げてきておりますが、結果として今年度の予算につきましても、九十七兆というので戦後一番大きなものになっております。

 傍ら、新規公債の発行は約十兆減らしておりますので、四十三が三十、約十兆減った形になろうと思いますので、そういったものをさらにあと十兆ふやして、二〇二〇年度にはいわゆる基礎的財政収支をチャラにするという収支目標を掲げながらも、傍ら、今よく話題になります子ども・子育て、介護等々の面というのは、社会的な日本の人口構成、高齢化等々、避けがたいものがありますので、こういったものに対応するための財政の出動というのは必然的にある程度避けがたいものだという分を、赤字公債で全てこれまで、例えば、保険の半分を賄いますとか、いろいろなことを私どもとしては借金でやっていた分を、これは借金じゃなくやろう。

 そういう意味で、消費増税等々いろいろなことを我々はやろうと言い出しておりますけれども、ぜひそういった意味で、健全なものにしていく努力は、デフレが続いた中にあってなかなか厳しい状況にあったとは思いますけれども、これは、皆さんそれぞれの努力をされた結果、なかなかそういかなかったということだと思いますけれども、おかげさまで、景気も三年間の間少し上がってきたこともあったために、税収もふえた結果として、今、十兆円のいわゆる新規公債の発行というのも抑えることもできた、傍ら、景気もそこそこというようなところまで、デフレ状況ではなくなってきたということになったんだと思いますので、安易に新規公債をということを、この間、岡田代表はそのようなことをQTのときに言っておられたように記憶しますけれども、私どもは、QTで言われた話が、どういう話でああいうふうになったんだか知りませんけれども、消費増税はするな、その分に関しては赤字公債、新規国債で賄えというような話で安易にいくのでは、私どもはもとのもくあみみたいなことになりかねぬと思っておりますので、私どもとしては、今、ここは大いに頑張らないかぬ大事なときかなと思っております。

前原委員 時間も限られているので、ちょっと簡潔に私から申し上げて最後に御答弁いただきたいと思うんですが、私が申し上げたのは、構造改革にこそ財政出動はすべきだ、それについては安易な赤字国債は発行すべきでない、恒久財源にすべきだということであります。

 そこで、私は二つ申し上げたいのは、社会保障と税の一体改革というスキームは非常によかったと思うんです。つまりは、税を上げて何に使うかということを、言ってみれば、バランスシートで国民に見せるという意味においては大変よかったと思うんですが、私も政調会長をやらせていただいていて、今、一つ反省していることがあるんです。

 なぜかというと、五%のうち、機能充実が一%しかなくて、四%は社会保障には回っているけれども、しかしそれは、赤字財源で賄われていた社会保障の財源の安定化ということで使われて、つまり借金の穴埋めに使われていたということで、国民からすると、五%上がったのにこれだけかと。そうすると、上がることについて非常に、言ってみれば嫌な感じがするわけです。

 例えば、これが二%とか半分ぐらいが機能充実で賄っていたら、五%上げたらこれだけの子ども・子育て、社会保障の充実ができるのかというようなことを見せてもらえれば、喜んでとまではいかないけれども、国民も税を上げるということについての理解は私は高まると思うんです。

 これからやはりしっかりとこういうことをやっていくためには、例えば八から一〇に上げるに当たって、我々の反省も含めてですけれども、例えば、一%だけを借金の返済に回して、一%を機能充実にされたらどうですか。そして、二%上げる部分の一%部分についてはこれだけの機能充実ができますというところを見せて、増税に対する理解を得る。そのかわり、二〇二〇年のプライマリーバランス黒字化は無理ですよ。

 でも、これはなかなか無理ですって。三パー、二パー、それでやったって六・五兆円足りないんですから。

 それで考えると、本当にできる財政健全化目標をもう一遍立て直して、そして、増税をするときに国民に理解を求めるようなものに変えた方がいいと思いますが、お答え、いかがですか。

麻生国務大臣 極めてまともな話ですよ。

 こういう話ができると非常にいいんだと思いますけれども、何となく、テレビやらマイクが入ると興奮ぎみで皆さんしゃべられる中で、我々はやはりすれているんですかね。何か長いこといると、普通の話ができるようになったのは、我々、この社会に長くいたおかげなんだと思いますけれども。

 社会保障、いわゆる受益と負担の話のバランスの話をしておられるんだと思いますので、やはり私どもとして反省すべきとするのであるならば、やはり、上げた分の三%の分が、個人とか社会とかそういったようなところの子育てとか介護とかいろいろなものに行く比率がもっと高くなって、これまでのいわゆる国民皆保険というものをやっている部分は、保険じゃなくて実はあれは税金が入っておりますから、その部分を減らすという本来の目的、流れとしては正しいけれども、もう少しゆっくりやった方がいいんじゃないか、簡単に言えばそういうことを言っておられるんだと思いますので、私どもとしては、この点は今後の参考としてやらせていただかないかぬところだと、私どもそう思います。

前原委員 終わります。

宮下委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

宮下委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。鷲尾英一郎君。

鷲尾委員 民進党の鷲尾でございます。

 四十五分お時間をいただいておりますので、早速質問をさせていただきたいと思います。

 まずは日銀の黒田総裁にお聞きをいたしたいというふうに思います。

 これまでも質問るるあったと思いますけれども、政府・与党内で消費税増税延期の議論というのがもう公然とされているわけでありますし、先般の党首討論でも岡田代表の方から増税延期の提案もされたところでありますが、一方で、GDP速報値では足元の経済状況ではプラス成長でありますし、そんな状況下におきまして、インフレ率二%達成を目標としている日銀として、量的・質的金融緩和を行っている中央銀行として、政府の財政再建に対するコミットが後退しかねないという、今そういう議論がなされているこの状況をどのように感じているか、お聞かせいただきたいと思います。

黒田参考人 財政運営につきましては、政府、国会において議論がなされ、決定がなされるものというふうに認識をいたしております。

 その上で一般論として申し上げますと、やはり、持続可能な財政構造を確立するということは、日本経済が持続的に成長していく上で必要な前提だと思います。

 そういう意味で、御案内のとおり、二〇一三年一月の政府と日本銀行の共同声明におきましても、財政の持続可能性を確保するということがうたわれておりまして、そういった意味では、この点は日本がやはり国全体として取り組まなければならない課題ではないかというふうに思っております。

鷲尾委員 今現在、与野党の議論をごらんになっていて、どのようにお感じになりますか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおり、財政運営については、やはり、政府、国会において十分に議論をし、そして決定がなされていくものということで認識をいたしております。

 それ以上に、特別にこの消費税の増税延期の議論について何か私から申し上げることは差し控えたいというふうに思っております。

鷲尾委員 これ以上聞いても同じ答えになりそうなので、私は余りしつこくないので次の質問に移りたいというふうに思いますけれども、その物価の目標達成によって何がもたらされるとお考えになっているかということです。

 というのは、既にいわばもう完全雇用を上回る水準となりまして、総裁御自身でも、経済成長には供給面の足かせがある、こう明言されておるところです。GDPもプラスになっておりますし、そうすると、いわゆるデフレマインドを脱却するということで日本経済に何がもたらされるとお考えか。この点、御言及いただけたらと思います。

黒田参考人 やはりこの我が国では、九〇年代の後半以降、非常に長きにわたってデフレが続いてまいりまして、人々の間で、いわば物価はもう上がらないものだという感覚、すなわちデフレマインドというものが定着してしまったわけでございます。

 そうしたもとですと、当然のことながら、現金や預金を保有するということが相対的に有利な状況となりまして、企業も家計も支出活動が消極的になっていったわけであります。

 その結果、価格が下落する、売り上げ収益も減少する、賃金も抑制される、そして消費の低迷、価格の下落という、一種の悪循環に陥っていたというふうに思います。

 デフレの状況ではなくなってはいますけれども、しかし、完全にデフレから脱却したという状況にはなっていないと思っております。

 デフレから脱却して、二%の物価安定の目標が達成された状況では、やはり、企業は収益機会を求めて設備投資や人材投資などの支出活動を積極的に行うようになるというふうに思いますし、その結果、デフレ下の悪循環とちょうど逆に、企業の売り上げや収益の増加、賃金の上昇、消費の活性化、価格の緩やかな上昇といった、前向きな好循環がしっかりと根づいてくるというふうに思っております。

 したがいまして、確かに、足元、GDPもプラスですし、ほぼ完全雇用という状態にはなっておるわけでございますけれども、まだ物価は、エネルギー品目を除いたところで見てもプラス一%強というところでありますし、完全にデフレから脱却したという状況にはまだなっていないのではないか。しっかり二%の物価安定目標を達成し、これを持続していくという状況をつくり出すことが、持続的な経済成長にとって重要な要素であるというふうに思っております。

 他方、委員も御指摘のとおり、確かに経済成長そのものは、やはり供給面の要素が非常に大きいわけでございますので、政府において、さまざまな技術革新あるいは設備投資、人材投資をより積極的に進められるような規制緩和その他の成長戦略等、供給面の施策を充実していただくということが、持続的な経済成長にとっては大変重要であるというふうに私も考えております。

鷲尾委員 今の御答弁をお聞きしてもちょっといまいち判然としないところがありまして、いつもの御説明の範囲だというふうには思うんですけれども。

 デフレから脱却しないと、消費は低迷するし株価も下落してしまうしという話でいきますと、消費につきましてはいろいろな議論があると思いますけれども、株価も既に大幅に上がってきてはいますし、企業のマインドも随分と改善をしているわけでありまして、実際、二%というその数値的なゴール、もちろん、市場に訴えて何とかそれを達成しよう、達成したときに一体どんな状況になっているのかというところでいきますと、今の総裁の御答弁を聞いてもちょっとわからないなと。

 政府の、供給面でのさまざまな制度改革なり規制の改革なりをするべきだというのは、これは従来からの御主張ですし、それはわかるんですけれども、日銀がどういう状態を想定しているかというと、やはり伝わらないところがありますね。

 これは、もうこの国会も恐らく最後の質問になると思いますので、次の国会以降でまた少し深掘りをさせていただきたいというふうに思います。

 といいますのは、完全雇用をいわば上回っているような水準でこうした大幅な金融緩和を継続しておりまして、長期金利を非常に低い状態を維持しているということでございますけれども、これは、人的資源でありますとか企業の投資を、ある意味、強制的に政策によって短期志向に誘導しているということも考えられるわけです。

 つまり、長期の経済成長に果たしてこの政策が役立つかどうか、長期の経済成長という意味での成長率の上昇を場合によっては阻害する結果になりかねないか、私はこう認識しているわけでありまして、この点、総裁の御見解をお述べいただけますか。

黒田参考人 確かに、一般的に金融緩和を非常に大幅に行い、それを持続した場合に、それが実質金利の大幅な低下ということになるわけですので、それは、企業の設備投資あるいは人的資源に対する投資を促進するということは間違いないんですけれども、それが、御指摘のような、短期的なというかあるいは投機的なというか、そういうものに向かいがちなのか、それとも、より長期の見通しに立った設備投資や人材投資に向かうのかというのは、これはいろいろな議論があるところであると思います。

 今から見て、よく言われますように、二〇〇八年のリーマン・ショックの前に、米国において相当大規模な不動産投資というか住宅投資が行われ、それを非常に大幅な金融緩和のもとでファイナンスしてきたということが、結果的に過剰な不動産投資、住宅投資を招いたのではないかという議論が米国においてもございます。

 そういった意味で、私どもも、実質金利を非常に下げて、設備投資、人材投資を促進するように努力しているわけですけれども、それが具体的にどのような投資になっていっているのかというのは十分注視をしております。

 今のところ、特に何か投機的な動きとか、ごく短期的なものにシフトしているというような状況にはないと思います。

 そういった意味では、委員御指摘の点も十分注視しつつ、現在のマイナス金利つき量的・質的金融緩和を続けて、二%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現したいと思っておりますし、その過程で、実質金利の低下によって企業の前向きな投資、御指摘のような短期志向ではなくて、長期的なことをにらんだ投資、特に、人材投資、あるいは研究投資、開発投資、それからもちろん設備投資もそうですが、そういったものに向かっていくように最大限の努力をしてまいりたいと思っております。

鷲尾委員 お話を聞いておりますと、やはり、日銀の金融政策だけではどうにもならない感じがいたしております。今の総裁の御答弁でもそうなんですけれども、金融政策だけではちょっともうどうしようもない状況になっているのかなということを、改めて、御答弁をお聞きしながら認識をいたした次第であります。

 ただ、今は二%の目標の達成がどんどん延び延びになっていく中で、この異常事態が、異常な状態だと思うんですけれども、この異常が普通の状態になっていくことが果たしてどういう影響があるんだろうか。正直余り想像もできませんけれども、この異常な事態が続いていくということ自体が、日本経済にとって本当に長期的な成長にいい意味でつながっていくのかどうか。これは、もう少し議論していかなければならないのかなというふうに思う次第であります。

 黒田総裁に対しては最後の質問であります。

 現在の若干の円高、ひところよりは円高の水準になっておりますけれども、これは資金の逃避と説明されることが多うございますけれども、十年国債までもが急騰いたしましてマイナス金利になった。資金が安全資産に逃避したと説明されることがございますけれども、円買いや長期国債買いが起きているということ自体は、これは資金の逃避というよりは、資金が逃避するということで国債市場に集まるだろう、集まるであろうからきっと値上がりをするだろう、こういうストーリーも成り立つわけでありまして、そうすると、いわば安全資産である国債市場というのが、短期的に見て、かなり投機的な思惑の投資家からも資金が殺到しているという状況も想像できるわけであります。

 こういった認識に対する総裁の御見解をお示しをいただきたいのと、そういう意味では、国債の価格が乱高下するリスクというのは高まったとお考えになっているかという点にもコメントいただきたいと思います。

黒田参考人 現在起こっております長期金利の低下というものは、それ自体は、いわばマイナス金利つき量的・質的金融緩和の政策効果のあらわれであるというふうに思っております。

 すなわち、日本銀行が導入いたしましたマイナス金利つき量的・質的金融緩和、これはごく短期のところでマイナス金利がつくわけですし、さらに、従来どおりの大規模な長期国債の買い入れということが続きますので、それによって金利全般に、より強い下押し圧力を加えて実質金利を引き下げるということを主たる波及経路としておりますので、これはあくまでも政策効果のあらわれであるというふうに思っております。

 他方で為替相場につきましては、これは、日本国内のものだけでなく、諸外国のさまざまな投資家の、あるいは投機する人もいますけれども、投資家のこのリスクセンチメントを含めて、さまざまな要因によって日々変化をし、変動するものだというふうに思っております。

 そういう意味で、一般論としては、あくまでも為替相場というのは経済や金融のファンダメンタルズを反映して安定的に推移することが望ましいと考えておりますけれども、必ずしもそうもいかない市場でありまして、そういった市場が仮に二%の物価安定目標の達成のために大きな影響を与えているということであれば、当然のことながら、他のファクターと同様に、物価安定目標の達成のために必要というふうに判断されれば、当然、追加的な緩和措置を講ずるということになると思いますけれども、いずれにいたしましても、為替市場の動向については十分注視をしてまいりたいと思っております。

 現時点で国債が乱高下するリスクが非常に高まったというふうには必ずしも見ておりませんが、御指摘のような、為替との関係であるとか、あるいは、資金が安全資産へ逃避したというような説明が御指摘のように市場ではなされておりますけれども、そういったことも含めて十分注視はしてまいりたいというふうに思っております。

鷲尾委員 それでは続きまして、三月に金融庁から会計監査の在り方に関する懇談会の報告が出ております。それに関連いたしまして質問をさせていただきたいというふうに思います。

 東芝の不正会計問題でございます。これは、現行の開示制度自体が問題との指摘もございます。というのは、日本と諸外国の、決算日からの監査報告書提出日までの期間、これはかなり差があると聞いておりますが、どれぐらいの差があるかは金融庁は把握しておりますか。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 我が国の上場企業には、会社法に基づきます監査と金融商品取引法に基づきます監査というものの二つが求められております。

 このうち、会社法に基づきます監査報告書につきましては、株主総会の日の二週間前までに会社に提出される必要があるということでありますが、株主総会を決算日後いつまでに開催すべきかということについて、例えば、会社法などに直接的な規定は設けられていないものと承知しております。

 また、金融商品取引法に基づきます監査報告書につきましては、決算日後三カ月以内に提出される必要があるとされているところであります。

 こうした制度のもとで、お尋ねは、決算日から監査報告書提出日までの実際の期間の長さがどうなっているかということかと思いますが、そうした実際の長さについては金融庁がつまびらかに把握しているわけではございませんが、日本公認会計士協会が作成をされました資料によりますと、我が国の上場会社が会社法上の監査報告書を提出するまでの実際の平均日数は、約四十二日となっているとされております。

 また、同じ資料によりますと、諸外国の上場会社におけます決算日から監査報告書提出日までの実際の平均日数は、米国で約五十八日、英国で約七十七日、ドイツで約八十一日、フランスで約八十五日とされていると承知しております。

鷲尾委員 そのとおりだと思うんです。つまり、日本は少ないということを申し上げたいわけであります。

 監査実務において、特に今回も監査法人が処分を受けましたけれども、不正を見抜くことができなかったということでありました。課徴金納付命令まで出たわけでありますけれども、それにつきまして、実際、では監査する時間というのはどれぐらいあるのかというと、今おっしゃっていただいたように、諸外国に比べると随分と少ない時間でやっているということであります。

 東芝についていきますならば、さらに短い三十六日ということでありますので、これだけ時間が短いということは、もちろん会計士の先生方も頑張っておられるんでしょうけれども、構造上かなり制約があるというふうに見てもいいのではないか、見ざるを得ないというふうに思います。

 そこでなんですけれども、今、会社法上の監査報告書につきまして御答弁いただきましたけれども、そもそも、株主総会の開催日が何でこんなに日本は集中しているのか。この理由についていかがですか。

池田政府参考人 株主総会の集中開催につきましては、東京証券取引所におきましてこれを緩和するために、従来より上場会社に対して、株主総会の集中開催を避けるよう継続的に要請がされてきておりまして、株主総会の開催日の集中自体は緩和傾向にはあるものと認識をしております。

 それでもなお特定日の集中というものが完全になくなったものではないということかと思いますが、企業の株主総会の開催日が集中しているお尋ねの理由につきましては、他の上場会社と同じ日に株主総会を開催することにより、自社への関心が高まることを避ける意図が働いているなど、さまざまな指摘もあるところでありまして、その確たる理由は必ずしも明確ではないというふうに認識をしております。

鷲尾委員 自社への関心が高まるのを避ける、これは、会社法、金商法を含めて、IR上大変な問題だと思いますよ。やはり、しっかり時間をとっていただいた方が私はいいと思うんです。

 諸外国では、当然のように、極端に集中している状況ではありませんし、むしろ、決算日後四カ月目以降に株主総会を開催しているということであります。したがいまして、決算日から定時株主総会開催までの期間でいきますと、日本でいくと東証一部上場企業で大体八十五日ですけれども、アメリカでは百二十四日とか、イギリスも約百二十日、大体百二十日前後が多いですね。こういうことももう少し変えないといけないんじゃないかなと思います。

 これが、一つ目の、先ほどの問いで申し上げましたけれども、監査の実効性にもかかわってくるでしょうし、投資家との対話という意味でも極めて重要なんじゃないかなというふうに思います。

 ですから、こういった点、金融庁としてもしっかり対話していくべきだと思うんですけれども、企業にもしっかり言っていくべきだと思うんですけれども、大臣、どうでしょうかね。大臣、どう思われますか、これはちょっと変ですよね、自社への関心が低くてもいいというのは。

麻生国務大臣 質問通告がなかったので全くの勘ですけれども、総会屋対策もあったわね、一時期は。忘れているよ、みんな。あれが一番大きな理由だったんじゃないですかね。だから、総会屋が一社に全部来られるということになると、全部そこでやると当然のこととしてという話やら何やら、あの時代は、そういった集中したのがあのときは五月に大体総会が多かった時代でしたから、大体そういうものだったという点もあるんだと記憶します。

 いずれにしても、こういったようなものが、税理士が発達した日本と、会計士が発達した、先進国はいいかげんな言葉ですな、戦勝国が正しいですかね、第二次世界大戦の戦勝国の方は総じて公認会計士が発達し、敗戦したドイツとか日本とかいう方は税理士が発達したというのは、これは事実ですから、そういったものを見ても、やはり、最近、外から見た人の見る目というのが非常に関心が出てきた。

 やはりそれは、金を借りるより金を投資するという人の方から見れば、借金でやっている分には金利さえ払っておきさえすれば別に困らぬわけですけれども、投資している場合は、会社が黒字じゃない限り配当という形で金を戻すことはできませんから、現実問題として、外から見た目というのが非常に厳しくなっているということになったのが、多分アメリカとかイギリスとか、そういったところは歴史的にはそういうことになっているんだと思います。

 日本も今は公認会計士というものが昔に比べて随分と私どもとしてはいろいろなことがあるんだとは思いますけれども、いずれにしてもこういったようなものというのは、何というのか、株主総会の持っている機能というのが各国に比べて違っているので、日本の場合は決定事項が結構多いということをよく言われますので、決算後早く開かないと自分の会社の仕事に影響が出るんだという話は、これは会社の経営者の中でよく言われますので、そういった意味では、いろいろ意見があるんだから、早く開かないとビジネスに影響するんだということはよく言われますので、そういうところもあるんだと思いますが、全部これは各社が最終的に判断をされるところだと思います。

 昔に比べて、株主並びに外からの投資家の見た目というのが非常に昔より関心が持たれるようになってきて、会社に対していろいろな話をというのが、今の我々のやっております、中から変えていくという話を含めまして、今そういった方向に来ているんだなという感じはしております。

鷲尾委員 大臣に通告していない中で御答弁いただいて恐縮だったんですけれども、やはり、コーポレートガバナンス・コードというのを金融庁もつくっていますし、そういったものを各社しっかりとみずからコーポレートガバナンスを守っているんだぞということを市場に対してもアピールしているということでありますから、もちろん、大臣が言った歴史的経緯もあると思うんですけれども、やはり、株主総会についてももう少し柔軟にやっていくところがあってもいいんじゃないかなというふうに思います。

 その上でなんですけれども、もちろん、いつ開催するかというのは企業の自由でありますから、そういう中にあって、さらに監査の実務を、先ほど申し上げたように、かなり時間のない中でやらなければいけませんから、それをより効率化するために私が提案申し上げたいのが、上場会社では、もう会社法と金商法の開示における財務情報を一元化して、監査も自主的に一元化すべきと考えるんですよ。これにつきましてはいかがでしょうか。

麻生国務大臣 昔、似たようなことを考えたことがありますので、言っている意味は私にもよくわかるんです。

 これは、金融商品取引法、取引所規則、会社法等々、いわゆる開示制度というのが幾つかあるんですが、株主とか投資家への十分な情報開示の確保というので金商法の開示、それから、タイムリーな情報開示の確保というので取引所の開示、そして、株主の権利保護を図るための株主総会に係る適正手続の確保という会社法の開示、簡単には大きく分けて三つあるんですけれども、その三つの開示をするということになっているのに基づいて日にちもいろいろ出てくるんですけれども、これらは、会社法と金商法との間を一つということになると、これは目的とか役割が全然違っていますので、これはなかなか一つでやるのは容易じゃないなというのが正直な、自分なりにちょっと関心があったものですから、これを知っている範囲で。

 続いて監査の実態については、監査についても、会社法に基づく監査というのを行った上で金商法に基づく監査というのを、会社法監査以降に生じた重要な事項に限って実施されるということで、これは手続を二回重ねて行っているわけではありませんのは御存じのとおりなので、こういった意味では、ぜひとも企業の情報開示のあり方というものについては、これはもっと全然別の角度から、総合的な角度から考えないと、単に二つを一緒にしちゃえというのとちょっと違うようなものだと思っております。

鷲尾委員 大臣が御関心ということで大変ありがたいというふうに思っているんですが、企業は企業でこれ自体もやはり手間だと考えていますし、監査をする側からいっても、もっと有効性の高い、効率性の高い監査をしたい。これを考えると、もうそろそろ考えないと、確かにその趣旨、目的は若干違えど、実際やっていることは変わらないわけでありまして、最後の表示をどうするかという問題ですから、そこはやはり大臣にリーダーシップをとっていただかないとうまいぐあいに収れんしていかないんじゃないか、こう思っておりますので、ぜひ大臣、よろしくお願いをいたします。

 では、表情だけで私は満足させていただいて、ちょっと時間もないものですから、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。

 コーポレートガバナンス・コード、これまでの質問でも少し申し上げておきました。コーポレートガバナンス・コードは今どれぐらいの企業が採用して、かつ、その実効性というのをどう評価しているか、金融庁からお話しいただきたいと思います。

池田政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘のコーポレートガバナンス・コードは、三千五百社を超えます全ての上場企業にこれは適用がされております。そして、コードの原則のうち九〇%以上の原則を約八割の企業が実施しているなど、上場企業のガバナンス改革には一定の進捗が見られると認識をしております。

 しかしながら、形だけではなく、実効的にガバナンスを機能させることは引き続き重要な課題であると考えておりまして、金融庁と東京証券取引所では、有識者会議を設置いたしまして、コーポレートガバナンスのさらなる充実に向けて精力的に議論を行っているところであります。

 こうした場での議論も踏まえまして、今後とも、上場企業全体のコーポレートガバナンスの実効性向上には努力を重ねていく必要があると考えております。

鷲尾委員 ちょっと時間がなくなってきたので幾つか飛ばさせてもらいますけれども、コーポレートガバナンス・コードに記載のとおり、高品質な監査の実施のために十分な監査時間の確保が必要で、監査報酬も必要だと私は思っているんです。これはコーポレートガバナンス・コードにある話ですから、そのことについて金融庁としてどう考えているか、お示しください。

牧島大臣政務官 鷲尾委員にお答えいたします。

 鷲尾議員御指摘のとおり、コーポレートガバナンス・コードにおいては、取締役会及び監査役会は、高品質な監査を可能とする十分な監査時間を確保すべきとされております。

 また、金融庁に設置されました会計監査の在り方に関する懇談会の提言では、監査法人がより高品質な会計監査を提供し、このような監査に対して企業や株主が価値を見出し、また、それが監査の報酬の向上につながっていくなど、高品質な監査の提供ができるように好循環の確立が望まれるということも出てきております。

 金融庁としましては、監査法人がこのようなコードの規定や懇談会の提言を踏まえ、より高品質な会計監査の提供に向けた取り組みを進めていくことを期待しておりますが、引き続き今後とも、監査法人のこうした取り組みを後押ししてまいりたいと考えております。

鷲尾委員 これは金融庁からもしっかり指導していただかなきゃいけないんじゃないかなというふうに思うんです。

 というのは、実際は、大臣からの御発言でもあったとおり、さまざまな歴史的経緯はあるんですけれども、アメリカと単純に比較しますと、監査時間でいきますと、日本が約五千時間に対してアメリカは約一万時間です。日米比較でいきますと、もう本当に五割強の割合しかない。監査報酬で見ますと、日本ですと平均で六千百万円くらいなんですけれども、アメリカですと二億七千万ぐらいです。そうしますと、日米比較でいきますと、二割強なんです、日本というのは。

 これでコーポレートガバナンス・コードを守っていますとか実効性が出ていますと言われると、本当かねとやはり言いたくなるわけでありまして、これはもうしっかりこういう数字もあるわけですから、ちゃんとコーポレートガバナンス・コードを守っていると言うんだったら、もう少し考えてもらわなきゃいけないんじゃないかと思いますが、いかがですか。

池田政府参考人 繰り返しのお答えになりますけれども、コーポレートガバナンス・コードは、上場企業はいずれも、先ほども申しましたように、九割を超える項目について八〇%の企業が遵守している、こう表明されているわけですが、本当にそれが実質を伴ったものなのかどうかということは、引き続き、有識者会議などの場も通じて、検証していく必要があると考えております。

鷲尾委員 そのとおりですね。コーポレートガバナンス・コードをせっかくつくっても、結局、いや、全企業これを遵守しています、そんなの投資家向けの単なるアリバイづくりになったら、では、コーポレートガバナンス・コードは要らないじゃないかという話になります。投資家も、やはりコーポレートガバナンス・コードを見て、この企業は守っているんだな、守っていないんだな、そういうのを見ながら投資判断していくわけですから、それがアリバイになっちゃうと、ちょっといかがなものかと思います。

 ですから、そこはもっとよく考えていただきたいし、場合によってはスーパーコーポレートガバナンス・コードなるものまでつくらなきゃいけなくなるかもしれません。みんなそれを守っている、守っていると言うだけだったらですよ。だから、そういうことをちゃんと考えていかなきゃいけないということです。

 続きまして、きょうは公認会計士・監査審査会の事務局長にも来ていただいていますが、公認会計士・監査審査会の検査の状況、その有効性について少しコメントしておきたいな、また、御答弁いただきたいなというふうに思うんです。

 よく監査の現場でも言われる話ですけれども、チェックリストをつくって、もちろん手続に瑕疵がないように、できる限り網羅的にチェックリストをつくってチェックをしながら監査手続を実施していくということをやりますけれども、その手続が余りにも多くて、その監査調書を丁寧につくりはするんだけれども、結局、監査上のリスクを見逃して、木を見て森を見ずの監査になる、そういうことも結果として起こっているんじゃないかということ。

 そこで、もちろん、品質管理ということで検査に入る。しかし、その検査がまたさらに手続に瑕疵があるじゃないかという話になりますと、手続ばかりが多くなって、本当の監査の有効性ということに対して果たして検査がなされているかどうかというところ。

 これまでもそうですけれども、さまざまな監査法人の品質管理の問題が出るにつけ、実際の検査とその監査の現場と、ここのコミュニケーションというのはちゃんとできているのかと思うわけであります。この点、どのように認識をされているのか、お答えください。

天谷政府参考人 お答えさせていただきます。

 私ども公認会計士・監査審査会におきましては、日本公認会計士協会の品質管理レビューを踏まえまして、大手監査法人については二年ごと、準大手監査法人については二年ないし三年ごと、そして中小監査法人については必要に応じてということで、検査を行っておるところでございます。

 そうした中で、近年の大手の監査法人に対する検査におきまして、過去の検査におけるものと同一、同様の不備が繰り返されていたといったような事象も認められたところでございます。

 その背景におきまして、ただいま御指摘ありましたように、私どもが検査する上で、一つ一つの手続だけではなくて、監査法人のガバナンスの問題ということをきちんと見ておくことが重要であろう、そういった問題認識も持っているところでございます。

 そういった問題意識を踏まえまして、審査会におきましては、これまでの検査内容及び手法につきまして検討を行いまして、本年の三月に、大手監査法人を中心といたしまして、私ども、審査会検査の実効性の向上策というものを取りまとめて公表をしたところでございます。

 その中におきましても、大手監査法人に対する検査について、現在二年ごとに行っている通常検査の翌年にフォローアップ検査を行うということとしているとともに、検査の手法という点につきましても、今お話しありましたような細かな手続面だけではなくて、ガバナンス体制等の検証ということを重視していくということで、そのために必要な情報を継続的に入手するなどの、または、そのリスク分析というものを充実させていく、そういった検査手法の向上を図ることを考えているところでございます。

 私どもといたしましては、こうした向上策を、七月から始まります平成二十八事務年度検査から実施することとしておりまして、今後とも、検査の実効性の向上に努めてまいりたいと考えているところでございます。

鷲尾委員 必要なのは、検査がしっかりできる人材をしっかりと育成をしていくという視点だと思います。余り手続論に終始を、もちろん、検査上おかしいというのは当然指摘をいただきたいですけれども、人のあらを探すだけに熱心になってしまって、それ以外の部分がお粗末になってしまうということですと大変ですから、そういった趣旨も含んで検査をお願いしたいということでございます。

 それでは最後に、きょうは厚労省に来ていただいております。前回の財務金融委員会での質問の続きをさせていただきたいというふうに思います。

 先般、吉田審議官の方から、高額医薬品の定期外薬価改定の論点として、医療機関の在庫価値について言及があったところでございます。

 医薬品の取り扱いを考えますと、在庫価値の減額によって悲鳴を上げてしまうのは、病院や診療所といった医療機関だけではなくて、薬局や、医薬品販売を旨とする医薬品卸企業なども対象に入るわけでありますけれども、政策として医薬分業を国民に誘導してきた政府として、医薬品を主として国民に提供する予定である薬局を想定に入れていないという現状認識、入れているんだったら入れているでいいんですけれども、ちょっと甘いかなというふうに思っているところであります。

 また、薬価が下がることによって最も影響を受けますのは、その取扱量を考えますと、医薬品卸企業ということにもなると思います。在庫価値の減額について論点整理をする際に、医療機関の問題というよりは少し幅広に現状を見ていただけるようにお願いをしたいというふうに思っております。

 その上で質問させていただきたいというふうに思うんですが、医療機関や薬局には診療報酬上の基本料というものが設定されておりますけれども、よくよく、これは、診療や調剤をするために準備する手数料のようなものだと聞いております。その意味でいけば、在庫を取りそろえる手数料として、薬局でいえば調剤基本料というものがあるという考え方もできるわけでございます。

 不良在庫になってしまうということもリスクとして想定されているかどうかわかりませんけれども、医薬品の在庫管理につきましてはこの調剤基本料で評価しているというふうに考えるものだと思っているわけでございますけれども、先般の吉田審議官の答弁では、目減りする在庫価値について言及があったわけですが、まず卸企業の負担ということになるんだと思いますし、改定による不良資産化を危惧するのであれば、医師の処方の方式なり不良在庫を出さないための方策なりを考えるのが本来の筋なんじゃないかなというふうに思っているところです。

 そういう意味で、目減りする資産価値というようなおそれを抱かなくていいような環境整備が求められているんじゃないかなというふうに思っております。

 ぜひそういった点で、吉田審議官から指摘された在庫価値の目減りというものが、実際、現場でどういう実態というふうになっているのか。海外のやり方がすべていいとは言いませんけれども、包装単位処方等もそろそろ検討する時期にあるんじゃないかなというふうに思いますが、こういった点、審議官から御答弁をいただけたらというふうに思います。

吉田政府参考人 お答えいたします。

 前回といいましょうか、四月二十六日の当委員会において先生の方から御質問いただきました、効能が追加になった薬剤については、今お話しございましたように、従来の二年ごとの薬価改定のタイミング以外で引き下げるというものを考えるべきではないかという御提案に対して、今御指摘いただきましたように、私、論点は幾つかあるうちの一つとして、在庫管理についても触れさせていただきました。

 調剤基本料で見ているのではないかという御指摘、実は、調剤基本料というのは運営必要経費ということですので、確かに、在庫管理業務についてはここである程度は整理ができると思いますが、前回御答弁申し上げました中で在庫管理に触れさせていただきましたのは、今先生も御指摘いただきましたように、手間の問題というよりも、そこに置いてある在庫の価値が、通常予想されるタイミング以外で引き下げが行われた場合には予期せぬ形で減少するということも、この問題を考える際の論点の一つではないかという趣旨から申し上げたところでございます。

 幾つかそれ以外の点についても御指摘をいただきましたが、そのような形、私ども少しいろいろと整理をさせていただきながら、いずれにいたしましても、今後の薬価制度のあり方について、このような論点も含めて、中央社会保険医療協議会、中医協において検討させていただきたいというふうに思います。

鷲尾委員 時間がなくなりましたのでこれで終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本岳志君。

宮本(岳)委員 日本共産党の宮本岳志です。

 まずは、G7に関連して麻生大臣にお伺いをいたします。

 先日のG7の議長国会見で、消費税増税についてアメリカの財務長官との会談で、私の方からは日本としては予定どおりという話を申し上げている、こう答えられましたけれども、どのような文脈で消費税増税の話となったのか。大臣から切り出して、来年の消費税増税の実施を約束した、こういうことでございますか。

麻生国務大臣 御存じのように、この種の話は相手側がどう言ったとかいう話は一切外に出せないことになっておりますので、具体的なやりとりについてはお答えを差し控えさせていただきます。

 常日ごろから、これは各国との財政政策というものを担当している主に財務大臣等々と意見を交換する中での話でもありますけれども、来年の四月、日本としてはこの話をという話は、日本の財政のバランス、出動に関しては、日本は、財政出動よりは財政の健全化というものをどういうぐあいに考えているんだとか、財政というものに関しては今先進七カ国の中で一応財政支出は最も悪い形になっておりますから、そういった点との関連とかいうような話がやりとりされている中で、私どもとしてはきちんとこういったものも考えております、ちゃんと予算も最大の予算を組みましたけれども、同時に、新規国債もこれだけ減らしているというような話もし、今後の流れとしてという一環の中での話だったと記憶をします。

宮本(岳)委員 その財政出動との関係でも、私ちょっと疑問に思うんです。

 ゴールデンウイーク中の安倍首相の外遊でも、日本政府は各国首脳に対して景気後退を懸念して財政出動を要請した、こう報じられております。今回のG7の仙台の会議でも、協調して財政出動することを働きかけたけれども、各国の事情があることを確認するにとどまった、こう報じられているわけです。

 しかしながら、日本政府が財政出動を各国に要請する一方で、日本国内では消費税増税を予定どおり実施するというのは、消費への影響を考えるとこれは矛盾した効果になるのではないか。何かこの消費税増税をさらに上回るような規模の財政出動でもお考えなわけですか。

麻生国務大臣 私どもとしては、基本的に、今世界じゅうで何が足りないかといえば、金ではありません。金は余っておるんであって、むしろ需要がない。需要を喚起するというのが最大の問題、これは各国全部一致しております。

 したがいまして、それに対応するのにどうしていくか。需要をつくっていくに当たって、構造改革、財政出動、いろいろな方法があると思いますけれども、私どもとしては、研究開発やら何やらいろいろなことをやっておりますけれども、目先、G7の中でも、デフレーションによる不況というものを、インフレではなくてデフレでやったのは日本だけでありますから、その意味では日本は他国とは事情が違う、そういったこともこの三年間よく言ってありますので、今度の予算においては、九十七兆円という予算を組みます。その中で、きちんと財政出動みたいな形でやっていきます。

 傍ら、予算の中で、消費税等々のものを考えて、私ども、その上がった分で、構造改革と言われるものの中で、少子高齢化というのは避けて通れぬ大きな問題が目の前に控えていますので、この問題を長期的に考えるときにおいては、やはりきちんと、子育てとか子ども手当とか介護とか、いろいろなものをやらねばならぬ。その点の財源というものはきちんと恒久財源で充てる必要があるということから、きちんとした対応をしていくためには消費税というのは我々としては避けて通れぬものだと思っております。

宮本(岳)委員 お金がないわけじゃなくて需要がない、まさにそのとおりだと思うんですね。需要がない背景にあるのが、やはり個人消費の冷え込みだと思うんです。

 それで、安倍総理は、二〇一四年四月の消費税増税の個人消費への影響ということについて、ことし三月三日の参議院予算委員会でも、我が党の小池晃議員の質問に対して、確かに予想以上に落ち込んだのは事実であり、また、予想以上に長引いているのも事実である、こう率直にお認めになりました。

 そこで、これは黒田日銀総裁にお伺いするんですけれども、この総理の見解、確かに予想以上に落ち込んだのは事実であり、また、予想以上に長引いているのも事実である、この認識は、総理と日銀総裁は同様の認識ですか。

黒田参考人 二〇一四年四月の消費税率引き上げ後の個人消費の落ち込みが事前の予想を上回り、かつ長期化したということは、そのとおりだと思っております。

 具体的には、事前には私どもも日銀の中で推計しておりましたけれども、消費税率の引き上げは、二〇一三年度の実質GDP成長率を駆け込みで〇・三%ポイント押し上げ、二〇一四年度には〇・七%ポイント下押しするというふうに見ておりましたけれども、実績を踏まえました直近の展望レポートにおける推計あるいは試算では、二〇一三年度に〇・八%ポイント押し上げ、二〇一四年度には一・三%ポイント下押ししていたというふうに判断をしております。

 また、実質GDPの水準に与えた影響も、事前に想定していたよりもかなり長期に及んだというふうに評価しております。

宮本(岳)委員 そうお認めになりましたけれども、では、予想以上に長引いているのはなぜか、その原因についてどうお考えですか。

黒田参考人 先ほども申し上げましたとおり、二〇一四年四月の消費税率引き上げ後の個人消費の落ち込みが予想以上に大きく、長期化した背景には、自動車などの耐久消費財を中心に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要が事前の予想よりも大きく、その結果として反動減も大きくなったということが指摘できるのではないかと思います。

宮本(岳)委員 安倍首相はそう述べ、今、日銀総裁もお認めになりましたけれども、予想以上に長引いているわけでありますけれども、日本銀行の展望レポート等々を見ますと、個人消費は底がたく推移、こう一貫して説明しているわけですね。

 二〇一五年五月の展望レポートでは、足元では、ガソリン安や賃上げ期待などを背景に消費者マインドは持ち直しつつあり、年金支給額の増額や電気代の下落も予想されるなどの要因を理由に、「先行きの個人消費は、二〇一五年度から二〇一六年度にかけて底堅く推移し、」こう分析しておりますし、先月の展望レポートでも、「個人消費は、一部に弱めの動きもみられるが、雇用・所得環境の着実な改善に加え、エネルギー価格下落による実質購買力の改善にも支えられて、底堅く推移している。」こう述べています。

 消費税増税による落ち込みが回復しなくても、底がたく推移していると。これは一体、総裁、どういうふうに理解すればいいんですか。

黒田参考人 最新の展望レポート等でも指摘しておりますとおり、本年入り後の個人消費の動向を見ますと、暖冬による冬物衣料販売の不振、あるいは、株価の下落などを受けた消費者マインドの慎重化といった一時的な要因もあって、一部に弱目の動きが見られていることは確かでございます。

 もっとも、やや長い目で見ますと、耐久消費財の駆け込みの反動減は長引いたわけでございますけれども、外食、旅行などのサービス収支はしっかりと推移しておりますほか、スーパーやコンビニエンスストアなどの売上高も増加基調で推移をしております。

 また、御案内のとおり、多くの企業において三年連続でベースアップが実現し、雇用者数も増加しているなど、雇用・所得環境は着実に改善しております。

 こうしたことを踏まえまして、個人消費は底がたく推移しているというふうに判断しているところでございます。

宮本(岳)委員 予想が外れるとさまざまな短期的な要因を並べて、ただ、それを除けば底がたく推移、こう説明されるわけですけれども、それでは個人消費の中期的な傾向を説明できないのではないかと思うんです。

 個人消費の低迷は深刻であります。きょうは配付資料を皆さんにお配りしてありますけれども、資料一は、五月十八日の諮問会議に提出されたGDP速報の資料であります。

 右下の折れ線グラフ、名目の個人消費の動きを見ていただいても、消費税増税前の駆け込み需要の反動で、二〇一四年四月―六月四半期に大きく落ち込んでから、回復するのではなくて、むしろ緩やかに個人消費は落ち込んでおります。内閣府も、速報で「個人消費の改善には遅れがみられている。」と書かざるを得ませんでした。

 第一生命経済研究所の定例経済指標レポートは、二〇一六年一―三月期四半期別GDP速報について、個人消費は前期比プラス〇・五%と二四半期ぶりに増加した。ただし、うるう年要因によって〇・五%程度押し上げられていると見られ、実態としては前期比で横ばい程度と考えられる。一五年十―十二月期に前期比マイナス〇・八%と大幅に落ち込んだ後にもかかわらず、実態としては反発は全く見られておらず、消費が依然として停滞を続けていることが示されている、こう分析をしております。

 資料二を見ていただきたい。

 消費支出も、四半期ごとに前期比で増加したり減少したりを繰り返しておりますけれども、落ち込みの規模の方が大きいです。当然ですが、GDP速報の図を見ても、レポートどおりであります。

 個人消費は底がたく推移しているのではなく、むしろ改善はおくれ、停滞を続けているというのは明瞭だと思うんです。

 消費の低迷を示す指標はほかにもあります。

 先週十七日に公表された家計調査報告の二〇一六年一―三月期平均速報、これは資料三につけておりますけれども、ぜひ資料三を見ていただきたい。

 上の折れ線グラフでありますけれども、消費支出の推移を季節調整済み実質指数で見てみると、総世帯、二人以上世帯、単身世帯とも、消費税増税の駆け込み需要の反動が出る二〇一四年の四―六月期以降、一〇〇を割った状態でずっと推移しております。傾向とすれば、消費税増税の一年後の二〇一五年四―六月期からさらに消費支出が落ち込んでいるというのがはっきりと見てとれるわけです。

 供給サイドから見た先ほどのGDP一次速報値と需要サイドから見た家計調査の結果が全く同じ傾向を示している。

 暖冬の影響とか製鉄所の事故とか、いろいろ短期的な原因があるわけですけれども、個人消費は消費税増税の反動減で大きく落ち込んだ後も低迷を続けていることはもう明白であると私は思いますけれども、黒田総裁は、これだけ統計が並んでも、個人消費は底がたい、こうおっしゃるんですか。

黒田参考人 先ほど申し上げたとおりのことでありまして、個人消費は底がたく推移しているというふうに判断をいたしております。

 なお、個人消費については、月次の統計として家計調査があるわけですけれども、この統計につきましては、政府の統計委員会などにおきまして調査対象となっているサンプルに偏りがある可能性が指摘されておりまして、月々の振れが大きいという問題もございます。

 なお、GDPの四半期の速報はこの家計調査に基づいて個人消費を推計しておりますので、家計調査とGDPの速報の消費がパラレルに動いているのはそのとおりでございますけれども、先ほど申し上げたようなさまざまな状況から見ますと、個人消費が底がたく推移しているという判断に変わりはございません。

宮本(岳)委員 家計調査はサンプルに偏りがある、今そういう話でありました。

 それをとにかく補正、排除するために、日本銀行は五月から、消費活動指数という新たな指標で消費活動の実勢を知るための試算を始めました。

 先ほどの第一生命経済研究所のレポートでも、日銀の消費活動指数、これについて論じております。消費活動指数を見ても一―三月期は前月比マイナス〇・一%と、十―十二月期の同マイナス〇・四%に続いて二四半期連続の減少である、海外からの旅行者の消費、いわゆるインバウンド消費を除きアウトバウンド消費を含んだ旅行収支調整済みの消費活動指数の値で見ても、一―二月の平均の値は十―十二月期を〇・二ポイント下回る、こういうふうに指摘をされております。

 配付資料の四を見ていただきたいんです。これが消費活動指数であります。その傾向がこれまた消費活動指数にもくっきりとあらわれております。旅行客などが爆買いをする、その国内消費の影響を除いた太い線で見ていただけば、消費税引き上げ後に個人消費が水準を下げ、その後はずっと底ばい状態が続いている。これは、GDP速報や家計調査の結果と全く同じであります。

 増税後の個人消費が停滞を続けているという事態は、そういうサンプルの偏りを補正した日銀の統計指数で見ても、何の違いもないのではありませんか。

黒田参考人 配付された資料でも見られますとおり、家計調査の指数の方がずっと弱目に出ております。

 私どもの試算による消費活動指数で見ますと、全体として底がたく推移しているというふうに思っております。

 ただ、この消費活動指数で見ても、個人消費の足元が明確に増加するには至っておりません。この背景には、先ほど申し上げましたような天候要因あるいは年初来の株価下落による消費マインドの慎重化がマイナスに作用していることなども挙げられると思います。

 もっとも、雇用・所得環境が着実に改善を続けるもとで個人消費は基調的に底がたく推移しているというふうに判断しているわけでございます。

宮本(岳)委員 いやいや、このグラフを見ても、駆け込み需要前にも全く復帰していない、ずっと横ばいのまま低迷しているということは明らかだと思うんです。

 それで、私は、この際、消費の低迷ということをきっぱりと認めて、底がたいなどと言わずに、これはやはり消費税の増税ということについては考え直すべきだと思うんです。

 駆け込み需要の反動減の影響は徐々に戻ると言ったものが戻っていないわけですから、これは、さらに同じように来年四月に一〇%に引き上げれば、また同じく駆け込み需要が手前であるかもしれませんが、その後の反動減、これでさらに落ち込むということはもう明確でありまして、そういう見通しの間違いをきっぱりと認めるべきじゃありませんか、黒田総裁。

黒田参考人 先ほど申し上げましたとおり、二〇一四年四月の消費税率三%引き上げの影響につきましては事前に予想しておりました。ちなみに、これは日本銀行だけでなくてほかのいろいろな民間のエコノミストもそう予想しておったわけでございますけれども、実際には、その予想以上に大きな駆け込みがあり、その駆け込みの反動も予想以上に大きく、また、長引いたということであったと思います。

 その上で、今回の二〇一七年四月に予定されております消費税率の二%引き上げ、そして、その中で食料品については税率を引き上げない、八%で軽減税率として据え置くということを踏まえまして、そういった消費税率引き上げの影響も織り込んで経済・物価見通しを作成しております。

 そのもとで、我が国の経済は二〇一六年度にプラス一・二%、二〇一七年度にプラス〇・一%、二〇一八年度にプラス一%の成長を遂げるという見通しになっておりまして、基調として潜在成長率を上回る成長が持続できるというふうに考えております。

宮本(岳)委員 いや、今までの見通しはとっくに外れているわけですから、そんな見通しには何の根拠もない。

 総裁も大臣も、僕は消費に対する認識が楽観的過ぎると思うんですね。いろいろ短期的な要因を取り上げて個人消費は底がたいなどという強弁をするのではなくて、統計や国民の実感を真摯に受けとめて、来年四月の消費税増税はきっぱり中止すべきだ、このことを申し上げて、今国会最後の質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

宮下委員長 次に、宮本徹君。

宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。

 きょうはまず、国際的な課税逃れについて質問します。

 タックスヘイブンには三十兆ドルもの資金が蓄積されていると言われております。OECDは多国籍企業だけで年間一千億ドルから二千億ドルの税逃れがあると試算をし、欧州委員会は域内で年間五百億から七百億ユーロの税収を失っていると試算しております。

 日本政府としては、推計が難しくて試算は行っていないというきのうの参議院での答弁がありました。ですので、ちょっと、桁でどれぐらいの税収が失われているのかというのをお伺いしたいんですが、兆の単位と見ているのか、十兆の単位で見ているのか、あるいは、数千億の単位と見ているのか、数百億の単位と見ているのか、お答えいただけますか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 今先生から、いわゆるオフショアの軽課税国などへの投資によって日本の税収がどの程度減額になっているのかというお尋ねでございました。

 先ほど先生がお触れになりましたOECDにおきましては、BEPSプロジェクトにおきまして、国際的な租税回避による法人税の失われた税収の規模を世界全体で一千億ドルから二千四百億ドルと推計しております。

 ただ、OECD自身がこの試算を出すときに言っているとおり、推計の基礎となるデータですとか試算方法につきましては課題が多く残されていて、実態を反映した結論を示すためにはさらなる検討が必要という留保をつけて出しているところでございます。

 日本からの投資につきまして、例えば、収益の総額がどれぐらいであるかということが不明であったり、また、個々の納税者の事実関係や適用される税法の規定がそれぞれ異なっているといったようなことがございまして、現時点で課税当局が保有するデータでは推計を行うのに十分ではありませんで、今のところ推計は行っておりません。

 したがいまして、お尋ねの、どの程度のオーダーかということについてもなかなか申し上げられないということを御理解いただきたいと思います。

宮本(徹)委員 けさの読売新聞を見ていましたら、フランス当局がグーグルを家宅捜索して、行き過ぎた節税策での課税逃れがあったというので二千億円課税を求めたというのも出ていました。こういう報道を見ていますと、やはり日本で失われている税収も兆の単位だろうなというふうには私も思います。

 あらあらでも推計は出す努力を、大変だと思いますけれども、やった方がいいと思うんですね。これだけ税逃れがやられているのかということが国民的な認識になりましたら、それを許さない世論ができるわけですよ。多国籍企業や富裕層の皆さんの課税逃れを許さない仕組みを前進させていく上では、そういう世論というのが一番大きな力になると思いますので、あらあらでも推計を出す努力を求めたいと思います。

 もう一つ、海外に五千万円を超える資産を持つ日本の居住者に国外財産調書の提出義務づけが始まって、二〇一五年三月提出期限分で八千百八十四件。実際は十万人ぐらいいるんではないかという指摘もあるわけですが、国税庁としては実際どれぐらいいて、国外財産調書制度の捕捉率というのはどの程度だと見ているんでしょうか。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 国外財産調書についてのお尋ねでございますけれども、提出件数でございますが、ただいま先生が御指摘のとおり、平成二十六年末におけます提出件数、昨年六月の取りまとめ時点で八千百八十四件です。

 これに対しまして実際の提出義務者の数がどれだけかということでございますけれども、本制度は施行から三年目となる制度でございまして、現時点で必ずしも調書の提出義務のある国外財産の保有者について完全に把握できているとは考えておりません。

 国外財産調書につきましては、確実な提出を促す観点から、調書提出の有無等による加算税の加減算の措置ですとか制度上の手当てが行われているところでございまして、今後、国税庁といたしましては、こうした点も含めまして、引き続き制度の周知、広報に努めるとともに、調書の提出義務があるにもかかわらず未提出となっている者に対しては、行政指導等による適正な提出を促すといった対応に努めてまいりたいと考えております。

宮本(徹)委員 完全に把握できていないということですから、出していないという方がおられるということです。

 外国の口座を利用した国際的な脱税の防止のために、非居住者の口座情報を自動交換する共通報告基準、CRSがつくられました。情報交換に同意した国は百一国ということで、二〇一七年、日本でいえば二〇一八年から金融口座の情報の自動交換が始まるということです。

 ただ、この百一カ国を見ますと、アメリカが入っていないんですよ。アメリカは御存じのとおり、デラウェア州など国内に租税回避地を抱えている国です。ですから、アメリカが租税回避地の州まで自動交換の輪に入るということにならないと大きな穴があくということになりますので、ここまで共通報告基準に加わるよう、麻生大臣にはしっかりアメリカにも働きかけていっていただきたいというふうに思います。

 さらに大きな穴は、ペーパーカンパニーの実質的な所有者については明らかになっていないということです。この間、G7の仙台の会議でも実質的所有者を明らかにするルールづくりということなんかも話し合われてきているわけですが、きょうの報道なんかを見ていますと、欧州の提案に対してアメリカと日本が後ろ向きだなんという報道もあるわけですよ。ですから、ここがはっきり実質的所有者が誰かということにならないとこの穴が埋まりませんので、この点でも政府には、ペーパーカンパニーの所有者特定へ実効ある制度をつくるためにイニシアチブを発揮していただきたいと思います。

 いずれにしても、二〇一八年までにこの情報交換が始まっていくということになるわけですけれども、これは始まりますと、これまで扱ってきた情報量に比べて相当膨大な情報量というのが日本の課税当局にも来ると思います。しかも、脱税などというのは、ペーパーカンパニーを使って巧妙にやられているわけで、調査にも相当な手がかかると思われます。

 ですから、これは思い切った人的な体制の補強が必要だと思うんですが、大臣、どうでしょうか。

麻生国務大臣 経済がどんどん国際的になってまいりますので、国境を越えていろいろな金が動くというのに対応して、適正、公平な課税というものをやっていくというためには、まずは、租税条約というのを結んでいない国もありますので、二国間で租税条約を結んだ上で情報交換を積極的に実施する、まずここから始めないといかぬのですが。

 問題がある取引があれば、当然のこととして調査に入ることになるんですが、こうした認識を持っておりまして、我々としても、国税庁のもとで、この種の話ができる外国の税務当局との情報交換をやれるような部署というのを増員する、かつ、こういうのを担当する専門官というものをつくって、日本語でやるわけではありませんのでそんな簡単な話じゃないんですが、必要な体制整備を図っているところです。

 これまでのところ、この十年間で二倍ぐらいにはふえているとは思いますけれども、今後とも、こういった税務執行をやっていくに当たってきちんとした情報交換をやっていくと同時に、今インターネットとかその他の機械が発達してきましたので、お互いに今度の協定で、少なくともこっちが要請しなくても、我々のところに預けている人たちの名前というのを自動的に交換するというルールづくりをやることに決まりましたので、これに入っていなかったのがパナマだったと記憶しますが、そのパナマがこのたび、この五月二十日に正式に世界で最初に日本とこの種の情報開示をやるというのを結んでおりますので、我々もできたので、他国も、これをパナマとやるという話は既に伝えてありますけれども、そういったようなことを一つ一つ手間をかけてやっていくに当たっては、人員が要ることも確かなので、この点については配慮していきたいと思っております。

宮本(徹)委員 人員は増員していく方向だというお話でしたけれども、私、前にはここで庶民いじめの税務調査の問題も随分やらせていただきましたけれども、そういうところに人を割くよりも、やはり大規模な税逃れを摘発するところにしっかり人を割いていくということを求めておきたいと思います。

 それからもう一つ、きょうは相続税などの対策のためのキャピタルフライトについても質問したいと思います。

 庶民は増税されても逃げられませんが、巨額の資産家は相続税のない国にキャピタルフライトできるわけで、不公平だという声が上がっております。

 例えばベネッセホールディングスの最高顧問の福武總一郎氏は、アメリカのフォーブス誌によると、一千三百八十三億円の資産を持っていらっしゃいます。二〇〇八年十一月に、奥様のれい子氏と一緒に、ニュージーランドの資産管理会社に保有する株式一千三百六十一万株を譲渡し、さらに、御本人も二〇〇九年十二月に住所をニュージーランドに移しております。ニュージーランドは相続税も贈与税もないということであります。ベネッセですから、進研ゼミだとかこどもちゃれんじだとか、日本で生み出された富がもともとの彼の資産のもとになっていると思います。

 BEPSプロジェクトは、法人税については価値が生み出された場所で課税しよう、こういう方向になっているわけですが、しかし、相続税制ではそういうことはまだ話し合われていないわけですけれども、もともと日本で生み出された富であっても、現行の税法では、相続人、被相続人とも五年以上国外に居住していれば、国外財産については相続税、贈与税ともかからないということになります。

 一千三百八十三億円ですから、日本国内で相続ということになったら数百億円ということです。幾つもの自治体の予算にも相当する税額ということになります。しかし、ニュージーランドで福武夫妻の場合はもう五年以上たっていますので、ゼロということになるわけですよ。

 現行法では、五年たって、相続あるいは贈与を受けた人が日本に帰ってくるという節税というのも可能になっているわけです。

 ですから、ちょっとお伺いしたいんですけれども、相続税、贈与税の納税義務が生じる要件として、国外での居住期間が日本で言う五年以内よりも長いスパンをとっている国というのはあるんでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生のお尋ねですので、居住期間要件が長い国を申し上げますと、アメリカにつきましては、被相続人が市民権を有する場合には、相続人が海外での居住期間がどれぐらいであるかにかかわらず、国内、国外財産とも課税対象になるということでございます。

 オランダにおきましては、オランダ国籍を有する被相続人がオランダから離れて十年以内という場合には、国内、国外財産とも課税対象になるということでございます。

 補足いたしますと、日本は五年ということでございますけれども、他国、例えばドイツは同じ五年、それからイギリスは三年ということになってございまして、それぞれ国情に応じて設定されているのではないかと思っております。

宮本(徹)委員 日本よりも長い国、アメリカは市民権があれば無期限というお話でした。

 今、節税目的で永住権を得る富裕層がふえている、香港、シンガポールが人気だ、こういう報道もあるわけです。

 外務省の在外邦人統計を見ると、シンガポールの永住者は、二〇一〇年千五百七人から二〇一四年に二千二百五十人と、一・五倍になっております。香港への永住者は、千三百九十七人から二千五百二十一人と、同じ期間に一・八倍に大きくふえております。

 もちろん、永住の理由はさまざまで、節税目的以外の方もたくさんいらっしゃるというふうに思いますが、一方で、節税目的でのキャピタルフライトもふえている、永住もふえているということも言われているわけです。

 ですから、こういう実態を踏まえて、国外財産の相続税、贈与税、この納税義務の生じる要件について、国外での居住期間の問題の見直しも含めて、意図的な相続税逃れを防ぐ対策というのも検討が必要なんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。

麻生国務大臣 これは今宮本先生おっしゃるとおり、租税回避に対する国民の関心はパナマペーパーのおかげですかね。BEPSなんて言ったって全然関心を持ちませんでしたものね、みんな、ついこの間まで。持っていただいた方は本当に数名の方だったと記憶しますけれども。あのパナマ文書のおかげでえらく興味を持っていただけるようになったので大変助かったと思っているんですけれども。

 税制に対する信頼というのを確保するというのは極めて重要なものだと思っておりますので、先ほど佐藤の方から答弁をいたしておりますけれども、平成十二年度の改正において、経済のグローバル化といった経済社会状況の変化への対応とか租税回避行為の防止の観点から、五年以内の居住期間要件を導入したところなんですが、さらに、平成二十五年度の改正において、相続人が日本国籍を有していない、かつ日本には住所を有していない場合でも、被相続人が日本に住所を有しているときには国内及び国外財産等を課税対象とさせていただいたところであります。

 そういった形になっているんですけれども、世の中には相続税の全然ない国というのが幾つもありますので、そういった意味では、制度を濫用した意図的な課税逃れというものに関しましては、課税の実態とか、これは諸外国はいろいろ皆苦労しておられるので、今後ともこういった努力というものは引き続き検討していかねばならぬところだと思っております。

宮本(徹)委員 引き続き検討していかなきゃいけないということですので、本当に、国民にとっては、普通の庶民は逃げたくても逃げられないという状況があるわけですけれども、富裕層だけが逃げられる、このことへの不公平感というのは相当大きなものがありますので、しっかり前向きに早急に検討していただきたいというふうに思います。

 さらにもう一問だけお伺いしますけれども、この間も、相続税なんかはシンガポールだとか香港では廃止されたという経過もあります。それと同時に、法人税についてはもう二十年ぐらい前から、法人税引き下げ競争というのが各国の財源を奪うということで問題になってまいりました。BEPSプロジェクトで課税の穴を塞ぐということではこの間議論が進んできているわけですけれども、法人税引き下げ競争については、問題になって二十年ぐらいたつわけですが、これがおさまっていないというのが今の状況です。

 ですから、BEPSプロジェクトで課税の穴を塞ぐということと同時並行で、法人税を初めとした税金の引き下げ競争をやめさせていく。この点でも日本政府が積極的なイニシアチブを発揮する必要があるんじゃないかと思いますが、大臣の御見解をお伺いします。

麻生国務大臣 各国の法人税の引き下げ競争というのが、際限なくやっているということを続けると、これは各国とも財政が立ち行かなくなりかねぬという基本的な問題意識というのは共感するところです。

 この問題意識というのを背景にこれまで、軽減競争というのは避けて、少なくとも協調して税制の調和を図っていこうじゃないかというので、OECDとかG20のBEPSプロジェクトというのは始動してきたんです。

 法人税率自体の議論というものはこれからやっていかないかぬのですが、一番基本は、グローバルな企業というものは、経済活動が行われて、いわゆる価値、バリューというものが創造される場所で税金を払えというのが原則なんだ、そう思っておりますので、このルールというものを再構築して、国際的な租税回避を防止するための議論というのが、昨年の十月、最終報告書が公表されたところです。

 先週のG7の会合におきましても、この問題は、法律はできたけれども、実施できますかね、本当に実施してくれるのかというところがもっと問題なんですよ、我々に言わせれば。言うだけ言って、やらないところだっていっぱいきっと出てきますから、そこのところの方がよほど問題なんだと私らはそう思っているんです。

 いずれにしても実施する重要性の確認はされたところなので、私どもとしては、単に表面税率の引き下げだけを行うのではなくて、課税ベースの拡大というものも、今度、外形標準課税をいろいろやらせていただいておりますけれども、税率を引き下げているということとしているものですけれども、引き下げ競争といったものではないということは各国も認めているところです。

 いずれにしても、今後こういったような問題というのは、一カ国でやっても、キャピタルフライトという言葉がどれくらい通じるんだか知りませんけれども、こういったお金が一番簡単に外に逃避しやすいものであることははっきりしていますので、今は瞬時に移動しますので、そういった意味では、これに対する対応策というのは一国とか先進国だけなんというレベルのものでは全くない、そう思っております。

 私どもとしては、これをやるのは、まずはBEPSでスタートして、これはどれくらい行けるかというのに関心を持っておりますが、この六月にBEPSの第一回の実施するための会議というのを日本で開くことにしております。OECDは四十数カ国ですけれども、今回の日本が最初にスタートさせます実施の会議において、参加希望国が百カ国を超えておりますので、少なくともやる気は今のところあることは確かだと思いますが、実際やり切るかねというのは別問題です。

宮本(徹)委員 BEPSの具体化をやり切るためのイニシアチブとあわせて、法人税引き下げ競争もやめさせていく。この点でのイニシアチブを重ねて求めまして、質問を終わります。

宮下委員長 次に、丸山穂高君。

丸山委員 おおさか維新の会の丸山穂高でございます。

 きょうも私で最後でございます。

 先ほどインターネットでニュースをちらっと見ていましたら、きょうが何か平成の一万日目だそうです。昭和も遠くなりにけりと言ったら、恐らく私は大先輩の麻生大臣にお叱りを受けてしまうかもしれませんが、実は私は昭和五十九年の生まれでして、国会議員の男性でも一番若い議員の一人なんです。しかし、恐らく、このダブル、あるかないかというお話もありますけれども、次の選挙、もしくは次の次ぐらいには平成生まれの議員がついに国会議員で出てこられるのかなというような方も思いながら、しかし、昭和が終わって、平成ももう一万日目かと感慨深い思いになりました。

 私ごとで恐縮なんですが、実は、一万日目のきょう、私、委員会での質疑が百回目だそうでございまして、ゼロがえらく並んで、自分的には、私としてはすごく節目の日なんです。本会議とか入れればもっとやっているみたいなんですけれども、委員会質疑では百回目ということで、二十分ではございますけれども、しっかりと気を引き締めて、恐らく財務委員会もきょうで最後じゃないかなとも思いながら、しっかり質疑させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。

 最初の話はさておき、前置きはさておき、早速質疑に入りたいと思います。

 まず財務省にお伺いしたいんですけれども、パナマとの租税協定合意のニュースが入ってきました。昨今、パナマ文書の話、この委員会でもさまざま御議論ありまして、そして財務省の方も、しっかり怪しきものは捜査していくというふうなお答えだったというふうに理解しておりますけれども、今結ばれようとしている、まだ、報道ではこれから交渉だというふうに見ているんですけれども、パナマとの租税協定の合意について、まず、内容も含めてお話を伺えますでしょうか。

佐藤政府参考人 お答え申し上げます。

 パナマとの租税情報交換協定についてのお尋ねでございます。

 これは、本年四月二十日に日本とパナマの首脳会談におきまして、正式な協議を開始しましょうということで合意をされましたことを受けまして、つい先日でございますが、五月二十日にパナマにおきまして正式交渉を行いまして、実質合意に至っております。そういう意味では、内容は確定しているということでございます。

 主な内容は、OECDが作成をいたしました国際基準に基づきまして、非居住者に係ります金融口座情報を税務当局間で自動的に情報交換するというその規定、これが盛り込まれたものとしての合意でございます。

 したがいまして、ここまで合意してございますので、後の手続ということにつきましては、正式に署名をする、それから国内法の条約の手続を行う、それから発効というような段取りになっていくというふうに思ってございます。

 相手国もございますので、明確にいついつということは申し上げがたいところがございますけれども、可能な限り早期に決着するように努力してまいりたいということでございます。

丸山委員 国税庁にお伺いしたいんですけれども、これはしっかりやっていくんだ、もし怪しいものが発見されれば、それはしっかりとチェックして、それが違法であれば、その範囲できっちり取り締まっていくという理解でよろしいんですよね。

星野政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま主税局長から答弁がございましたとおり、今般、パナマとの間で、非居住者に係る金融口座情報につきまして、自動的情報交換の実施について実質合意をしたということでございます。

 また、一般的に、その情報交換協定が締結されますと、要請に基づく情報交換が可能となりまして、例えば、相手国に所在する法人の登記情報ですとか決算書といった情報を相手当局を通じて入手することができるということになります。

 その上で、一般的に国税庁における国際的租税回避への対応について申し上げますと、今後、租税条約等に基づく情報交換、国外送金等調書等の資料情報を活用するなど、あらゆる機会を通じて情報収集を図るとともに、税法に照らし問題がある取引があると認められれば、税務調査を通じて事実関係を的確に把握した上で、適正、公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。

丸山委員 適正そして公平な課税の実現というのは、非常に国民の皆さんにとっても興味、関心のあるところだと思います。昨今、消費税も上げる、上げないという議論もありますけれども、やはり地元を回っていても、地元だけじゃなくていろいろな方のお声を伺っていても、我々は税金が高いけれども政治家や公務員はどうなっているんだとか、ちゃんと使われているのかどうか、そういった部分は非常に皆さん御興味をお持ちで、チェックをされているところです。

 これは逆に打ち消していただきたいのであえて申し上げるんですが、不確かな話なんですけれどもあえて申し上げるんですけれども、前次官ですか、以下財務省の幹部七名の名前、写真入りで、インターネット上で、今回のパナマ文書に名前があるんじゃないか、そのような租税回避を財務省幹部がやっているから国税当局がぬるいんじゃないかみたいな、そんな投稿まであって、それが結構シェアされていたりもするわけですよ。

 これは私、ちゃんと打ち消していただきたいし、さっきの、国税としてはしっかり、おかしいものはやっていきますよ、捜査しますよという方針を出していただくことで、そんな疑いを国民の皆さんから払拭いただきたいんですけれども、改めまして、そういった事実はないですよね。そして、しっかりやっていただけるということでよろしいんですか。

坂井副大臣 私のアイフォンでフェイスブックのページを開きますと、御指摘の投稿と思われるような投稿も見させていただきましたが、写真の横についている肩書がかなり古いものだなというのを思ったのを覚えておりますけれども、ICIJ、国際調査報道ジャーナリスト連合のウエブサイトで調べた結果、御指摘の名前というものは掲載されておりません。なので、この投稿に関しては事実無根であると考えております。

丸山委員 私、しっかり否定するのはしていただいたらいいと思います。特に役所の方はどうしても慎重な御答弁がこの間多かったので、国民の皆さん、ごらんになっている皆さんからしたら、何か隠しているんじゃないかとか、それか、やらないつもりなのかなみたいに思われてしまうと思うので、こういうときは毅然と、違うんですということと、そして、しっかりやるということをお伝えいただきたいというふうに重ねて申し上げます。

 パナマの件は何か出てきましたらしっかりと対応いただきたいというふうに思いますので、次の件に移っていきたいと思います。

 これもちょっと社会的に話題になっている件で、きちんと今の段階から詰めていかなければ後々大きな問題になるなということで、お伺いしていきたいと思います。

 携帯のアプリで、通話や通信、そしてゲームも最近できるLINEというアプリがありまして、その中でのゲーム内通貨に対して、今般、関東財務局の方で立入検査をされたというふうな事実を聞いております。

 LINEの通貨の案件についてお伺いしたいんですが、私、LINE自身はやらないんですけれども、しかし、携帯のゲーム、いろいろあるのは見ていまして、自分自身は余り課金はしないというか、課金はしたくない主義で、課金しないんですけれども、ただ、いろいろな方のお話を聞くと、課金をして幾らかけたとかいう話を聞きますし、昨今ニュースで多いのは、いわゆるガチャと呼ばれる、確率に基づいてアイテムがもらえるものに対して、そこに恣意的に確率をいじったり、また、かなり低い確率で購買をあおることで、不当とまでは言わないですけれども、不当に近いような利益を得ているのは問題だということで、ガイドラインをつくるという話が出ております。

 一方で、きょうお話ししたいのは、資金決済法上のお話でございまして、具体例を挙げた方がわかりやすいですね。

 LINEのゲームの中に「LINE POP」というパズルゲームがあるということで、私も、やったことがなかったんですけれども、現物を見せていただきましたけれども、こう指で、同じ絵柄がそろったら消えていくというゲームでございます。その中で、宝箱の鍵となるアイテムがありまして、そのアイテムが、今回、財務局によって、いわゆる二次通貨、資金決済法上の前払い式支払い手段に当たるんじゃないか。つまり、これに当たってしまうと、例えば現在のSuicaみたいなプリペイドカードもそうですけれども、供託金という形で法務局に半額、一千万円以上の場合は納めなきゃいけないという現行法がありまして、それにかかるんじゃないか。

 いわゆる一次通貨、ゲーム内で日本円で、例えばこのゲームの場合はルビーというそうなんですけれども、ルビーを一次通貨で買ったものに対しては、ゲーム会社は供託をしている例がほとんどなんですけれども、一方で、そのルビーをもとに、今申し上げたような二次通貨としての宝箱の鍵というものを買って、それがどうやら宝箱をあけるような要はアイテムになっていて、それを得ることで宝箱をさらに二次的に取得できる。

 つまり、解説するとややこしいんですけれども、簡単に言うと、宝箱の鍵自体にも供託金が要るようになって、それによって、LINEの会社に対して指導なり、もしくは違法行為じゃないかという事態に今なっているということでございます。

 ただ、ゲーム業界の中では、一次通貨のルビーに対してはもちろん供託金をやるという話が出ているんですけれども、一方で、二次通貨、今申し上げた宝箱の鍵、買ったものから買ってという、もっといけば、多分、ゲームによっては三次、四次といろいろなアイテムが出てくると思うんですけれども、例えば、あるゲーム内のアイテムで、ゲーム内通貨でしか購入できなくて、直接現金では購入できないようなものも出てきていると思うんです。この宝箱の鍵なんかまさしくそうなんですけれども。

 こうしたものも、取り扱いした場合でも、この法上の前払い式の支払い手段に当たる可能性があるという理解でいいんですか。簡単に言うと、今回の事例はどういうことで、どういうことになっているから当たると判断したのかも含めて、お答えできる範囲でお答えいただけますか。

牧島大臣政務官 丸山議員にお答えいたします。

 当社に関東財務局が立入検査を実施したことは承知しておりますが、具体的なものに対しましては、個別業者に関する検査内容についてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

 一般論でございますが、プリペイドカードに該当するかどうかは、資金決済法上、三つの要件がございます。金額または数量が記載、記録されるものであること、価値の保存と言われるもの。そして、金額、数量に応ずる対価を得て発行される証票、番号、記号その他の符号であること、これが対価発行と呼ばれるものです。そして三つ目として、商品、サービスの代価の弁済等に使用されるものであることという権利行使。この三要件を満たすものが前払い式支払い手段に該当することとされています。

 これら三要件は個別具体的に判断されるものでございますので、ゲーム内のアイテムについても、当該アイテムのゲーム内での位置づけなどに鑑みて、価値を保存し、対価を得て発行され、かつ、当該アイテムを使用することによってさまざまなサービスを受けることができるものであれば、前払い式支払い手段に該当する場合もあり得るということになります。

 いずれにせよ金融庁としましては、前払い式支払い手段の利用における安全性の確保及び利便性の向上という資金決済法の趣旨にのっとり、引き続き適切な監督に努めてまいりたいと考えております。

丸山委員 ちょっと細かいことをお伺いしたいので、ぜひ事務方の方にお聞きしてもよろしいですか。ちょっと細かくなってしまいますので。

 今回、法令上も実務上も非常に判断基準が明確でないなというのが私、見ていて思ったところなんです。

 例えば、さっきの宝箱の鍵なんかは当たっていますけれども、別のゲームでもこんなパターンというのはいっぱいあって、例えば私が昔やっていたようなゲームだと、剣をゲーム内通貨で買うわけです。だから、直接円で買うわけじゃないんですけれども、でも、その三つの剣がそろったら錬成して新しい剣にできる。つまり、そこに、先ほどお話にあった、まず、価値の保存が剣という本数でできますし、対価性があるわけです。そして、権利行使が、要は、三つそろえば錬成できる、権利行使があるので、こういうのも当たっていってしまう。これは、挙げれば挙げるほどあまた出てきてしまうんです。

 でも、一方で、そこは個別で判断していくという話だと、業界からしたら、どこが基準になるかわからない。消費者からしても、急にこのサービスが停止してしまうんじゃないか。非常に不安な状況になっているのが今だと思うんです。

 今、調べたら、一兆円に迫ろうとするスマホのゲーム、もっともっと多分広がっていくんだと思うんですね。その中で、しかも、いろいろなゲームの可能性を否定することができない。いろいろなサービスが出てくると思います。

 一方で、業界の方の話を聞いていると、海外の企業でつくったものは今回の資金決済法上の規制がないので供託金が要らないそうで、そういった意味で、海外におくれをとっているというふうに言うんですけれども、しかし、消費者の方の利益保護を考えたら、私は、この供託金の制度も大事だというふうに思っているんです。

 だから、お互いにわからない、不明な状況になっている今からきちんと基準をつくって、ガイドラインを業界団体さんだとか、特に、この決済法の業界団体さんの名前を見ると、ゲーム業界が新し過ぎて、ゲーム業界の方は余り入っていなくて、だから逆に、別にプラスしてゲーム業界の方も含めて、何か大きな取引上のそごだとか消費者の利益が損なわれる前に、きちんとしたガイドラインを役所の方で旗を振って、金融庁さんでぜひやっていただくことが、実は、この市場をクール・ジャパンで育てていく意味でも意味があるし、何より我々ユーザー、消費者側も安心できるんですけれども、金融庁さん、細かいところも含めてお尋ねしたので、お答えできる範囲で構いませんのでお答えいただけますか。

遠藤政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のゲームについての前払い式支払い手段、プリペイドカードに当たるかどうかということについての当てはめでございますけれども、基本は、先ほど政務官からお答え申し上げましたように、前払い式支払い手段の該当性は、価値の保存、対価性、それから権利行使性、この三つの要件を個別具体に当てはめて考えていくということだと思います。

 基本は、これは先生御指摘のようにさまざまなゲームができておりますし、ゲーム内アイテム、ゲーム内通貨というものがこのプリペイドカードに当たるかどうかということに関しては、私どもは、まずはプリペイドカードの発行者、ゲームの提供者、この方々がどういうふうに考えるかということだと思います。そういった考え方に基づいて、もし疑義があるんでしたらば、法律家の方あるいは金融庁の方にぜひ御相談いただいて、そこで議論するということだと思います。

 この個別具体の当てはめというものが積み重なっていって、先生おっしゃるように、これは一定のやはりルールがあるじゃないか、ルールができるじゃないかということであれば、このルール的なもの、共通の考え方のものをどういう形でほかの業者の方にもお示ししていくかという次の段階に行くと思います。

 そういった方向で、先生おっしゃるように、これは透明性ということが非常に重要だと思いますので、前向きに取り組みたいというふうに考えております。

 まずは、個別具体的にどういう当てはめができるかということについて、金融庁としても議論を深めていきたいというふうに考えております。

丸山委員 局長、個別の話はそれでいいと思うんですよ。起こってしまったことに対しては、一個一個、向こうも弁護士を立てて、金融庁さんも専門の方が示し合わせていくというのが非常に大事で、それの積み重ねが判例にもなると思うんですけれども、現状は、もちろんそれはやっていただきたい。

 プラス、逆に言えば、今、グレーでわからないからこそ、新しいサービスをつくるときにも、いいのかどうかわからない。それによって、要は、踏み込めない、踏み込めるというのがグレー過ぎて、つまり、それがイノベーションを阻害していたり、消費者利益を損なっている気がするんですね。

 そういった意味で、早目早目に金融庁さんの方でも業界団体さんと話してもらって、ガイドラインみたいな形で、個別例をもちろん積み上げていく、重ねて、ガイドラインみたいなものをつくっていただく方が、実は、全体からしていいんじゃないかなというのがお願いなんですけれども、こちらももちろん同時にやっていただくということでよろしいんですか。やっていただきたいんです、ぜひとも。

遠藤政府参考人 現時点において、ガイドラインをつくってそれを公表するということについて、まだ我々は検討が深まっておりませんので、必ずしもここで明確に申し上げられないんですけれども、ただ、やはり方向性としては、そういった共通のルールといいますか、共通の考え方がないかどうかということは、これは探っていきたいなというふうに思っております。

 先ほどの三要件の中でも、特に権利行使性、すなわち、その商品とかサービスの提供というものをどういうふうに認定するのかというのがやはり難しいところではないかなというふうに思っているんです。

 ゲーム内アイテムそのものが実は商品、サービスの提供に該当してしまうということであれば、そのアイテムはプリペイドカードにはなりません。でも、そのアイテムが商品、サービスの提供の対価として使われるということであれば、これはプリペイドカードになり得る、ゲーム内のアイテムであってもプリペイドカードにはなり得るということだと思います。

 ちょっとそこら辺の当てはめということについて恐らくこの難しさがあると思いますので、そういったところを中心に、どういう基本的な考え方を一般化していくのかということについて検討していきたいなというふうに思っております。

丸山委員 これは、聞いていますと、例えば、金融庁さんが出されたパブコメがあるんですけれども、唯一これに関係するアイテムパックというものに対してのパブコメの意見に回答されているんですね。これしか今判断基準が見えない状況で、このLINEの件も一つの判断になっていくんだと思うんですが、非常に、ほかの業界さんだけじゃなくて、ゲーム業界も戦々恐々としているわけですよ。萎縮しかねないなと思っていて、しかし一方で、ちゃんと取り締まらないとやはり消費者の利益を損ねると思いますので、個別だと、個別過ぎて暗闇になっちゃうんですよ。ぜひ、それをできる限り皆さんにわかるように出していただきたいというのが一つで、御回答は同じになると思いますので、もう大きくうなずいていただいているので、よろしくお願いします。

 そして、過去分までこれはさかのぼるというのが今回の件で、そうすると、コンピューター、聞いたら、過去の話は分けていないので、要は、有償か無償かみたいな部分で、データはプログラム上分けていないので、結構厳しいみたいな話もあります。

 そういった意味で、早目早目に手を打っていただくことが、実は、ゲーム業界にとっても将来的にいいことだと思いますので、お願い申し上げます。

 最後、本当は大臣に質問を実はしようかと思っていたんですけれども、済みません、このゲームの話で盛り上がってしまったので、一言だけ何か、今のをお聞きになって、ゲームやアニメといえば麻生大臣だと思いますので、私の質問を終わりたいと思います。

麻生国務大臣 時間もないので、延々と私にその種の話を聞きたいと言うんだったら、一杯飲ませていただいたときにでも話さないわけではありませんが。

 少なくとも、今のような新しい技術というものの進歩に伴って全然別の消費が進む、そして、それによって新しい需要が生まれる等々の面、こういった面は、なかなか我々の頭から落ちているところなんですが、そういった面というのが、どんどん全然別のところからも需要が起きてきて、日本のアイテムを使って外国人が新しいものを創造して物をつくっていくというのが立派な商品化されているというのは事実ですから。

 ぜひ、そういった意味で、日本のきちんとしたものをやっておかないといかぬというので、これは何も新しいものに限りません。手塚治虫の「ジャングル大帝」が「ライオン・キング」に化けて、あの特許料は日本には一円も落ちませんでしたから。あれを見て、「ジャングル大帝」じゃないかと思ったのは私らの世代、「ライオン・キング」と思ったのはおたくらの世代なんですが、あんなものは間違いなく手塚治虫のぱくりもいいところですから。それでこっちに特許を言ってくるんですからね。だから、そういうもので負けたらいかぬだろうというのがありますので、今の話も似たような話なんだろうなと思っております。

丸山委員 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

宮下委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五十分散会


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