衆議院

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第4号 平成13年3月7日(水曜日)

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平成十三年三月七日(水曜日)

    午後一時開議

 出席委員

   委員長 高市 早苗君

   理事 岩永 峯一君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 渡辺 博道君

   理事 平野 博文君 理事 藤村  修君

   理事 西  博義君 理事 都築  譲君

      青山  丘君    小野 晋也君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      嘉数 知賢君    杉山 憲夫君

      谷垣 禎一君    谷田 武彦君

      谷本 龍哉君    馳   浩君

      林 省之介君    水野 賢一君

      宮澤 洋一君    森岡 正宏君

      森山 眞弓君    大石 尚子君

      鎌田さゆり君    葉山  峻君

      肥田美代子君    牧  義夫君

      松沢 成文君    松本 剛明君

      山口  壯君    山谷えり子君

      山元  勉君    池坊 保子君

      斉藤 鉄夫君    武山百合子君

      石井 郁子君    児玉 健次君

      中西 績介君    山内 惠子君

    …………………………………

   文部科学副大臣      大野 功統君

   文部科学副大臣      河村 建夫君

   外務大臣政務官      桜田 義孝君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会

   事務局長)        木阪 崇司君

   政府参考人

   (外務省大臣官房文化交流

   部長)          横田  淳君

   政府参考人

   (外務省北米局長)    藤崎 一郎君

   政府参考人

   (外務省中東アフリカ局長

   )            重家 俊範君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 結城 章夫君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長

   )            工藤 智規君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学

   術政策局長)       大熊 健司君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長

   )            遠藤 昭雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長

   )            今村  努君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青

   少年局長)        遠藤純一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省職業能力開発

   局長)          酒井 英幸君

   政府参考人

   (水産庁長官)      渡辺 好明君

   政府参考人

   (海上保安庁警備救難監) 久保田 勝君

   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君

    ―――――――――――――

委員の異動

三月七日

 辞任         補欠選任

  嘉数 知賢君     小野 晋也君

  鎌田さゆり君     松本 剛明君

同日

 辞任         補欠選任

  小野 晋也君     嘉数 知賢君

  松本 剛明君     鎌田さゆり君

    ―――――――――――――

三月二日

 私学助成の拡充と三十人学級の実現に関する請願(大島令子君紹介)(第三二六号)

 小中高三十人学級実現、行き届いた教育に関する請願(大島令子君紹介)(第三二七号)

 行き届いた教育の充実に関する請願(辻元清美君紹介)(第三二八号)

 同(肥田美代子君紹介)(第三二九号)

 国立大学病院の看護婦の増員に関する請願(石井郁子君紹介)(第三三〇号)

 同(山口壯君紹介)(第四三八号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(筒井信隆君紹介)(第三五六号)

 私学助成の抜本的な拡充と三十人学級の早期実現に関する請願(川端達夫君紹介)(第三五七号)

 三十人学級実現、高校希望者全員入学等に関する請願(大幡基夫君紹介)(第三六八号)

 すべての子供に行き届いた教育、私学助成大幅増額に関する請願(大森猛君紹介)(第三八七号)

 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額等に関する請願(前原誠司君紹介)

 (第三八八号)

 私学助成の抜本的拡充等行き届いた教育に関する請願(鍵田節哉君紹介)(第三八九号)

 サッカーくじの実施計画再検討に関する請願(石井郁子君紹介)(第四三三号)

 同(中林よし子君紹介)(第四三四号)

 三十人学級実現、教育予算増、教育条件整備に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第四三五号)

 私学助成大幅増額と三十人学級の早期実現に関する請願(今川正美君紹介)(第四三六号)

 教育条件改善特別助成など私学助成の大幅増額と小中高校三十人学級の早期実現に関する請願(菅野哲雄君紹介)(第四三七号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件




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     ――――◇―――――

高市委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府原子力安全委員会事務局長木阪崇司君、外務省大臣官房文化交流部長横田淳君、北米局長藤崎一郎君、中東アフリカ局長重家俊範君、文部科学省大臣官房長結城章夫君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、科学技術・学術政策局長大熊健司君、研究振興局長遠藤昭雄君、研究開発局長今村努君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、厚生労働省職業能力開発局長酒井英幸君、水産庁長官渡辺好明君、海上保安庁警備救難監久保田勝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。

 まず最初に、愛媛県立宇和島水産高校の実習船えひめ丸と米原潜グリーンビルの衝突事故におきまして、被害に遭われました関係者の方々、そしてまた行方不明の方々の御家族の方々に対して、心からお見舞いを申し上げますとともに、一日も早いえひめ丸の引き揚げ、そして皆様の心がいやされることを心から祈るものでございます。

 まず最初に、文部科学省に質問させていただきますが、この事故に遭って救助をされた九人の生徒の皆さん、またその御家族、そして行方不明の皆さんの御家族の方々の心の問題、大変深刻なものがある、このように聞いております。特に、この生徒さんたちに対して、文部科学省として、心の問題に対してどのような対処をされているのか、お伺いします。

河村副大臣 お答えいたします。

 斉藤委員御指摘のように、あの事故に遭われた生徒さんたちの衝撃といいますか、精神的な影響というのは非常に大きいものがあろうと思われます。そういうことで、あの生徒さんたちに対しての心のケアを十分にやる、これは非常に大事なことであるというふうに考えております。

 愛媛県の教育委員会は、既に、事故に遭った生徒さん方の心のケアに対応するために、臨床心理士を宇和島水産高校に常駐をさせておりますし、それから、同校には養護教諭、それから保健所等の関係機関とも密接に連携をいたしまして、また、保健所管内には、そういう心理士等のケアを行う先生方もいらっしゃいますから、そういう方々も協力をして、各種の対策を今講じておるところでございます。

 文部科学省といたしましても、愛媛県の教育委員会に対しまして、十分な心のケアをお願いしたい、特に生徒たちの心身の健康管理も含めて、養護教諭あるいは学校医などと協力をして万全を期してもらいたいことを、要請を早速したところでございます。また、今後、愛媛県の方から、教育委員会の方から要請があれば、万全を期してそれに対して応じていきたい、このように考えておるところでございます。

斉藤(鉄)委員 愛媛県という言葉がたくさん出てまいりましたが、国としても、文部科学省としても万全の支援体制をとるように心から要請をいたします。

 行方不明の御家族の方々、強い希望として、えひめ丸の引き揚げを要望として出ております。私も、技術的に可能であれば、ぜひこれは実現をさせるべきだと思っております。

 この点について、文部科学省として何ができるのか。一年以上前になりますが、H2ロケットが失敗をしたときに、あのときは、三千メートルの海底から、海洋科学センターの技術を使って、一トンもするエンジンを引き揚げたという実績がございます。この海洋科学センターの活用も含めて、何らかの貢献ができないのかと思いますが、この点についてはいかがでしょうか。

大野副大臣 実習船えひめ丸の一日も早い、一刻も早い引き揚げを我々も心からこいねがうものでございます。

 ただいま先生から御質問のございました、しからば海洋科学技術センターの能力はどうか。

 能力、二つに分けて考えてみなきゃいけないのでありますが、引き揚げそのものにつきましては、残念ながら、機器類もそれに対応したようなものではございませんし、また、海洋科学技術センターの引き揚げという面でとらえたソフトの面、この専門的知識にも乏しいところがございます。大変残念なことでございますけれども、現状はそういうことでございます。

 しかし、先生御存じのとおり、海洋科学技術センターの能力、例えば深海を調査、探索する能力、これはすばらしいものがございまして、例えば無人探査機「かいこう」それからハイパードルフィン、これは機器の方でございますけれども、これを待機させていることは御存じのとおりでございます。いろいろな意味で、「かいこう」にいたしましても、最大潜航深度一万一千メートルということでございますし、テレビカメラ、マニピュレーターを持っているものでございます。

 そういうことで、何とかえひめ丸の引き揚げについて海洋科学技術センターも貢献できないかどうかという意味で、私どもは、六人のミッションをアメリカに派遣しております。その中の一人が、海洋科学技術センター参事役、門馬大和さんという方でございますけれども、この引き揚げについての深海の探索調査技術に関する海洋科学技術センターの専門家、この能力を何とか役に立てたい、こういう気持ちでいっぱいでございます。

 今後とも、この専門家が十分協議してもらって、勉強してもらって、一日も早く、一刻も早く引き揚げができるように望むところでございます。

斉藤(鉄)委員 三千メートルの海底からエンジンを引き揚げたあの技術については、世界が驚愕をしたものでございます。世界一の技術と言っていいと思いますので、これをぜひ活用して、御家族の皆様の希望がかなうようにしていただきたい、このように思います。

 それから、他の水産高校の実習船の活動状況というのは、文部科学省で把握しているんでしょうか。そして、再発防止といいましょうか、今回は一〇〇%米原潜側に原因があるわけでございまして、その再発防止というのもなかなか難しいことはあるかと思いますが、しかし、二度とこういう事故を起こしてはならないという意味で、どのような対策をとられようとしているのか、これをお伺いします。

河村副大臣 まず、水産高校実習船の活動状況でございますが、今回事故に遭ったえひめ丸を含めて、全国で実習船が四十隻あるわけでございます。

 文部科学省において、全国水産高等学校実習船運営協会というのがございますが、そこを通じて調査をいたしましたところ、二月十三日現在で、二十四隻が実習等で航海をいたしております。ハワイ近海には十六隻航海中であったという報告を受けておりますが、残りの十五隻はドック等に係留中である、こういう状況下になっておるわけでございます。

 文部科学省といたしましては、学習指導要領で、実習中の安全確保について、これまでもずっとそれによって指導してきたところでございますが、今回、こういう事故が起きまして、当日の二月十日、全国水産高等学校実習船運営協会を通じまして、各実習船の管理者に対しても、特に入出港の際の沿岸航路の航行にはひとつ十分注意をしてもらいたいという指導を発したところでございます。

 また、全国の水産高等学校の学校長の協会の方からも、ハワイ沖で操業実習を実際やっている船が、今申し上げましたように十六隻ぐらいあるわけでございまして、実習船は運航に必要な補給を行うためにほとんどホノルル港に寄港するわけでございます。国際交流のいい機会でもあるし、このような事故が二度と発生しないように、ぜひアメリカ側に厳重に安全確保を申し入れてもらいたいという要請を受けたところでございます。

 そこで、文部科学省も、今回の要請を重要なものだ、大変皆さんも心配しておられるということを受けまして、先月二十八日にアメリカから特使がやってまいりました。ファロン特使がお見えになりまして、あのとき、関係閣僚の懇談会におきまして、町村大臣から、水産高校の実習船がホノルル港に寄港に際しての航行の安全確保、特に米側に配慮を求めたところでございます。

 文部科学省といたしましても、これまでも乗船実習の安全確保に指導をやってまいりましたし、実績もあるわけでございますが、このような突発事故も起きたわけでございます。この原因究明の進捗の状況も踏まえながら、さらに安全確保の徹底に努めてまいりたい、このように考えております。

斉藤(鉄)委員 その点、ぜひ御努力をいただきたいと思います。

 ちょっと質問が変わりまして、現在、イスラム原理主義勢力タリバーンが、アフガニスタンのバーミヤンにおきまして、巨大石仏を含む国内の彫像、仏像のすべてを破壊するよう指令を発したという問題につきましてお伺いをいたします。

 きょうも与党三党の代表がアフガニスタンに向けて出発をいたしましたけれども、いわゆる人類全体の財産であると思われるこのような文化遺産、これはぜひ守らなければならない、このように思います。今回のこのような破壊活動について、人類、世界協調してこれを食いとめなくてはならないと思っておりますけれども、文部科学省としては、これに対してどのような対応をされるのか、また政府として各国との連携を密にしていく必要がある、そして世界世論としてこの破壊活動を食いとめる必要があるかと思いますが、この点について御答弁をお願いいたします。

池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、それぞれの時代を生きた人々が平和を希求し、祈りを込めてつくり出してきた文化遺産は、民族、宗教、時代を超えて全世界の人々にとってかけがえのない宝だと思っております。今を生きる人間のなすべきことは、それらの重要な文化遺産をしっかりと受けとめ、次の世代に受け渡していくことではないかと思います。これは人類の義務です。私は、少なくとも文化遺産は、そうしたいかなる時代にあっても、そこに価値を見出し、保存、継承していこうとした人間の強靱な意志と使命によって支えられて今日まで来たのではないかと思っております。

 このたび問題となっておりますアフガニスタンは、ヘレニズム文化や仏教などが伝来した古代シルクロードの東洋文明が交錯する十字路に位置し、四世紀から六世紀にかけてつくられたバーミヤンの大石仏を初めとした、人類にとって大変貴重な文化遺産が数多く保存されております。

 文部科学省といたしましても、文部科学省に置かれております日本ユネスコ国内委員会会長の平山郁夫氏が率先して、各国の東洋美術館の館長と連名で仏像破壊令に対する緊急アピールを表明され、また仏像破壊の即時停止を求める署名運動と遺跡保存のための募金活動を開始されました。

 私は、その緊急アピールの中で感動いたしましたのは、タリバーンの指導者に対して寛容の精神を持って人類の歴史を守るよう求めております。私は、この寛容の精神が相手国に伝わるようにと願っております。アピール及び署名運動は、駐パキスタン日本国大使を通じてアフガニスタン・タリバーン政権の駐パキスタン大使に伝えられております。

 また、本件に関連して、三月四日に募金を行いました。これには、署名は一千三百名の署名がすぐに集まったようでございますし、また募金は、仏像等の修復や一時それらのものを緊急避難するためにお金がかかりますので、皆様方のお力をおかりすることになっております。私たち文部科学省も、ユネスコや外務省や関連省庁、また関連機関と連携を図りながら、そのような募金活動、署名運動を積極的に支援してまいりたいと思います。

 また同時に、今回の事件を契機として、今おっしゃいましたように、世界には、あらゆるところで民族紛争が起こっております。ですから、いついかなるときに文化遺産が破壊されていくかわかりません。文化遺産が破壊されないような措置を講じるとともに、破壊されたときにはどのように緊急にそれを避難させ、そして修復するかということは、日本国のみならず、世界各国が連携しなければならないと思いますので、これからユネスコあるいは外務省等と連携を図りながら、私は、そのような文化遺産に対する緊急避難のガイドラインというようなものもこれから検討されなければならないというふうに考えております。

斉藤(鉄)委員 文化大国を我々は目指しているわけですので、この文化遺産を私たちは本当に守っていくという姿勢を強く打ち出していただきたいと思います。

 一部報道に、沼田駐パキスタン大使がタリバーンのザイーフ大使にお会いし、大仏が既に破壊されたなら国外に運び日本の資金で修復する、このように申し入れたという報道がございますが、その用意はあるのか、また、破壊された場合の措置として、日本がとり得る方策は検討されているのか、この点についてお聞きします。

重家政府参考人 我が国といたしましては、タリバーンによる彫像破壊令に対しまして深く憂慮しているということでございます。その旨の外務報道官談話を既に三月一日付で発出いたしたところでございます。

 我が国内におきましても多くの方々から憂慮の念を伝える御意見をちょうだいしております。その中でも、特に、先ほどお話のありましたように、平山画伯から外務省に対しまして、あくまで個人的な意見としてではございますが、爆破等の最悪の事態を避けるための次善の策として、例えば世界的に有名なバーミヤンの遺跡を切り取った上で第三国に移動してはどうかという提案をタリバーン側に伝えてほしい旨の御依頼がありました。これにつきまして、我が国国内における有力な考えの一つといたしまして、その考えを駐パキスタン大使からタリバーン側に伝達したところでございます。

 また、本日アフガニスタンに向けて出発されました与党の代表団に対しまして、タリバーンの外相の役目を務めますムタワッキル氏にあてた河野外務大臣の書簡を携行していただいたところでございます。

 いずれにしましても、我が国としましては、バーミヤンなどの貴重な文化遺産が破壊されるという取り返しのつかないような事態に至らぬよう、引き続き最大限の努力をしていきたいと考えております。

斉藤(鉄)委員 外務省と文部科学省と連携をとりながら、いろいろな手段があるかと思います、どうか、この貴重な文化遺産を残すように御努力をよろしくお願いいたします。

 文部科学省の仕事の中で、一つの役割でございます原子力行政についてお伺いします。

 科学技術庁時代は、原子力局と原子力安全局がありました。原子力局は推進、原子力安全局は規制、これは商業炉以外のものですが、規制と推進。そして、それに対応する委員会として原子力委員会、原子力安全委員会があって、ダブルチェックをするという体制でございました。

 これなりに非常にわかりやすい体制だったと私は思いますが、今回、文部科学省となりまして、いわゆる原子力局、原子力安全局というのはなくなりました。そのかわり、研究開発局に原子力課と核燃料サイクル研究開発課、それから科学技術・学術政策局に原子力安全課というものができました。局が課になったという感じで、格下げになった感がありますが、何がどう変わったのか、また、原子力安全・保安院との関係はどのようになっているのか、そして原子力委員会、原子力安全委員会との関係、そして先ほど申しました、これまでは行政と八条委員会のダブルチェック、こういう認識でございましたが、この考え方はもうなくなったのか、この点につきましてお伺いします。

大野副大臣 今斉藤先生から、文部科学省は従来の原子力行政に対する取り組み、原子力の研究開発そして安全、こういう取り組みにつきまして文部科学省になって格下げになったのじゃないか、こういう大変耳が痛い御指摘でございますけれども、私どもはそういうふうにはとっておりません。

 私どもは、やはり新しい時代に応じて省庁再編成をした、その中でどういう切り口でやっていくか、こういうふうにとらえております。したがいまして、二つの切り口、つまり、研究主体のものは文部科学省である、それから開発というよりも応用面のものは、現実的な問題は経済産業省である、こういうふうな切り口で考えているところでございます。

 そして、組織的にいいますと、内閣府という各行政庁の一つ上の段階のところに原子力委員会、原子力安全委員会、さらに原子力安全委員会には事務局をきちっとつくりました。こういうことで全体として運営していく、その中で仕事の仕分けをきちっとしていきましょう、こういう考えでやっているわけでございます。

 一例で申しますと、まず科学技術振興の観点からいいますと、文部科学省では、例えば高速増殖炉サイクル技術あるいは加速器、核融合、こういうような研究開発をやる。経済産業省の方は、エネルギー安定供給という観点があるわけでございまして、原子力発電の推進あるいは高レベル放射性廃棄物の処分技術、こういうところを担当する。

 それから、安全規制ということで考えますと、文部科学省は、放射性同位元素試験研究炉あるいは核燃料物質の使用にかかわる安全規制、こういうことを担当する。経済産業省の方は、今先生もおっしゃいました原子力安全・保安院におきまして、従来から通産省が行っていたものに加えて、例えば発電用研究開発段階の炉の問題、再処理施設の問題、こういうことをやっているわけでございますから、格下げと言われるとちょっと耳が痛いのですが、私どもはそういうふうなとらえ方はしておりません。

 新しい時代に即して、やはりこの原子力の問題は、一番に国のためのものでございます、国民の安全のためのものでございます。省庁が格下げとかなんとか、そういう観点じゃなくて、もっと大きい観点から取り組んでいかなきゃいけない、このように思っているところでございます。

 それから、ダブルチェックの考え方が変わったか、こういうことでございますけれども、これは、結論から申しますと変わっておりません。要するに、一例で申しますと、文部科学省でやっております試験研究用の原子炉施設の設置許可につきましては、原子炉等の規制法に基づいて審査を行って、その審査結果について原子力委員会、原子力安全委員会でチェックしてもらう、このダブルチェックという考え方は変わっておらない、このことを申し上げたいと思います。

斉藤(鉄)委員 ダブルチェックの考え方は変わっていないということでございます。ダブルチェックがいいのか、それとも、アメリカのようないわゆる三条機関、ある意味では強大な権限を持つ三条機関を置いて、その三条機関がきっちり安全についてチェックする、これはシングルチェックということになりますが、どちらがいいのか、いろいろな議論が交わされてきたところでございますけれども、このような三条機関に対しての非常に強い意見がございます。ダブルチェックではなくてこういう体制にすべきだという意見がありますが、その点に対しての見解。

 それから、原子力安全委員会は、ジェー・シー・オーの事故後、事務局が科技庁、総理府、内閣府と変わりまして、技術サポートスタッフもかなり拡充をされたと聞いております。その原子力安全委員会の現状について内閣府にお聞きします。

木阪政府参考人 先生御承知のように、我が国におきましては、原子力安全委員会が決定いたします安全確保の基本的な指針に基づきまして、個々の原子力施設については、原子力の規制と推進の機能を効果的に分類しつつ、文部科学省それから経済産業省が法令に基づく安全審査等を行いまして、さらに原子力安全委員会が独自の立場からダブルチェックをするということを現在行っているところでございます。

 先生御指摘のような三条機関を設けるべきという意見がございますけれども、それよりも、現在のダブルチェックというこの仕組みが我が国の国情に合ったものとして、安全規制の実効性を高める上で有効に機能しているというふうに私ども判断しているところでございます。

 今般の省庁再編におきまして、安全委員会につきましては、原子力安全行政の体制整備が実施される一環といたしまして、各省庁より一段高い位置にある内閣府に設置されるとともに、さらなる事務局体制の整備が実施され、その独立性と機能の強化が実現したわけでございます。

 さらに、事務局の問題についてでございますが、東海村のウラン加工工場臨界事故を踏まえまして、安全委員会では、今申し上げた独立性と機能の強化を図るために、省庁再編に先立ちまして、昨年の四月に事務局機能を既に科学技術庁から総理府に移管し、その人員も、民間人の専門的スタッフ等を含めまして大幅に拡充をしたところでございます。

 さらに、今回の省庁再編におきまして内閣府に移管され、委員会の設置法に基づく正式の事務局が設置されました。それに伴いまして、さらなる人員の増強も図られて、現在約百人の体制にまで強化されたということでございます。先生御指摘の技術サポートスタッフ等につきましては、この百人の体制のうち約四十人でございまして、技術参与として原子力安全委員会事務局での専門的な検討、審議に御参画をいただいているということでございます。

 こうして事務局機能が格段に強化されたということを受けまして、私どもは、安全審査の指針類の整備とかあるいは設置許可におきます安全審査に加えまして、その後の運転、建設段階におきます行政庁が行う規制活動全般につきまして把握、確認をするという現場調査を含めました新たな規制調査という仕事を始めているところでございますし、同時に、緊急時対応体制の整備とか情報公開の促進とか、そういうことについて着実に進めていこうとしているところでございます。

 いずれにしましても、安全委員会といたしましては、国民から一層信頼される我が国としての安全規制の実現に向けまして、原子力安全のかなめとしてその役割を果たすべく努力をしてまいる所存でございます。

斉藤(鉄)委員 現実問題として、我々の経済は原子力に非常に依存をしているわけでございますので、原子力の安全ということは本当に重大な問題だと思います。このダブルチェックもしくはシングルチェックという議論も続けていきたいと思っておりますけれども、同時に、原子力安全委員会が万全の体制で、二度とジェー・シー・オーのような事故を許さない、こういう強い使命感を持ってやっていただきたいと思います。

 またちょっと話題がかわりまして、昨年の秋、ヒトクローン禁止法が成立をいたしました。しかし、アメリカでは、人クローン個体をつくる、賛成をする、こういう団体も出てきておりまして、現実にその動きもあると聞いております。日本ではどういう状況にあるのか。法律だけつくって、今政省令をつくるという状況だと思いますが、具体的にこういう動きがある中で、これにどう対処していくかという問題が一つ。

 それと、科学技術基本計画、実は旧の科学技術会議でこの原案ができました。しかし、新しくできた総合科学技術会議でこの原案が今大きく書き直されているといいましょうか、特にヒトクローンなどで出てまいりました生命倫理の問題についてもう一度書き直そうという動きがあるやに聞きます。

 ライフサイエンスまた生命倫理という問題について、この二つをお聞きいたします。

大野副大臣 ヒトクローンの問題でございます。

 昨年十一月に法案が成立しておりますけれども、一つは、半年後にクローン人間は禁止ですということが施行になります。

 もう一つの方は、特定胚の扱いでございますけれども、これは、ガイドラインをつくったりあるいは省令をつくったり、こういう話があるわけでございまして、先生も十分御存じのとおり、ガイドラインの方は、法律上は、まず第一に、関係省庁の長、大臣の意見を聞かなきゃいけない、それから総合科学技術会議の意見を聞かなきゃいけない、そういう意見を聞いた上でガイドラインをつくるわけでございますけれども、実態的に申しますと、やはり専門家の御意見を十分聞いていかなきゃいけない、それからパブリックコメントも求めていかなきゃいけない、これは法案が成立しましたときの附帯決議で決められておりますので、そういう方向で今後決めてまいりたい、こういうことでございます。

 これに関連をしまして、最近イタリーで、ヒトクローン計画といいますか、クローン人間計画という集まりがある、こういう問題がありまして、日本人が参加するような情報がございました。我々は、やはり海外であろうとも国内であろうとも、日本人が果たしてこういう計画に携わっていいんだろうか、こういうことに強い疑念と懸念を持つものでございます。

 そこで、総理の御指示を受けまして、二月十三日付で、関係機関に対しまして、法律というのはこういう趣旨なんだよということを徹底させていただきました。また、二月二十日には、町村文部科学大臣と笹川大臣、両大臣の署名で「クローン人間の産生禁止について」という、産生ということはちょっとまだなじまないのでございますけれども、共同の声明を出させていただいております。

 やはり人間の生命の尊厳にかかわることでございますから、そういう意味では、徹底的に、なぜクローン人間なのか、人間の幸せにつながるところもありますけれども、やはり倫理に関する問題もある、こういうことを十分踏まえながら対処してまいりたいと思っております。

 それから、もう一つの総合科学技術会議の問題でございますけれども、これはもう先生御存じのとおりでございますが、今まで、新しい体制になって二回開いております。

 その中で、例えば総合性と戦略性、こういう問題をきちっとやっていきましょうというのが第一点。それから第二点は、やはり先見性と指導性を持って総合科学技術会議を運営していこう。それから第三点として、今先生御指摘の、やはり生命倫理というのを大切にしていこうじゃないか、それからそれに対する社会的責任、こういう問題が出てきておるわけでございます。これは、所管は内閣府になりますので、私どもからは、聞いておりますと言わざるを得ないのでありますけれども、そういうふうな方向でございます。

 総合科学技術会議の策定に関する問題につきましては、三月末までに新しい科学技術基本計画を策定して閣議決定するということになっておりますけれども、まだ二回開いたところでございます。そういうことで、生命倫理が大変重要だという話は伺っておりますけれども、その詳細につきまして、今御報告する段階ではございません。

斉藤(鉄)委員 大学老朽化、それから技術士法についてお伺いする予定でしたが、時間が来ましたので、終わります。また質問させてもらいます。

 ありがとうございました。

高市委員長 藤村修君。

藤村委員 民主党の藤村修でございます。

 さきの委員会に引き続きまして、きょうは、主にものつくり大学に関する件ということで質問をさせていただきます。

 一つの私立大学にこれだけの政、官が絡み、そしてできたなどということは、本当に特異なケースであろうと思います。ただ、さきの委員会でも申し上げましたように、この四月から開校する、学生たちや教員の皆さんや、その人たちに何の罪もないわけで、ぜひともいい大学にしていきたい、基本的にはそう考えております。しかし、経緯についてはきっちりとただしたいというところで、きょう質問に入りたいと思います。

 さきの委員会、二月二十七日のときに、河村副大臣に答弁いただきました。どんな大学ですかということであったんですが、補助金ということは当時あったと思うのでありますが、それ以降のことについては労働省はしないという方針、そのかわりKSDということがあったと思いますが、今これは閉じておりますということで、さらに、今から四年間のうちに一応条件としては今のこの関係が全部排除されるということが前提ですね、多分経営の確定した時点で私は可能性として、つまりこれは労働省の補助についてということなんだろうと思います、可能性としてある話だろうと思う、このようにお答えをいただきました。

 一役所が、特定の、それも一つの私立大学にそうして補助していくというスタイルというのは、非常に特異な例だと思うのですね。労働省でいえば、既に産業医科大学というのがある。ここは経常費を含めて毎年、これは今で言う厚生労働省がお金を出しているわけですが、それ一件ですね。

 国がそうして一私立大学にお金を出すというのは非常に特異な例で、本当に私立大学なんだろうかという疑念が生じるわけですが、一体このものつくり大学は、かつてできた労働省の産業医科大学のような形なのか、それとも、河村副大臣は、いやいわゆる一般の私立大学ですよと、この前多分そういう趣旨もおっしゃったんだろうと思いますが、ものつくり大学の性格をもう一度はっきりさせたいと思うので、答弁をお願いいたします。

河村副大臣 お答えいたします。

 さきの委員会でも御答弁申し上げたわけでございますが、これはあくまでも私立大学として文部科学省といたしては認可いたしたものであることは間違いございません。

 ただ、お話しのように、厚生労働省それから埼玉県、行田市、補助金等も交付をいたしております。しかし、それが可能になったということは、やはり非常に政策的な必要性がある、特に労働省がこれの中心になったというのも、能力開発という面からも職人大学的なそうしたものつくり大学の必要性というものが言われてきておった、そうした中で生まれたものだ、こういうことでございますので、厚生労働省の補助金が含まれている、そういうことについては何ら問題がないと思っております。

 また、大学開設後につきましては、学校法人国際技能工芸機構というのが設置者として、みずから保有する校地、校舎等を基盤にして運営していくということで、こういうことにおいてはほかの私立大学と何ら変わらない、このようにも思っておるわけでございます。

 ただ、考え方によっては、それは労働省中心で、国立とは言えないまでも、何か労働省立的ではないかというような感じがしないこともないし、ただ、もっと考え方によっては、今第三セクター方式というのがございますが、特にこの場合には、埼玉県、行田市も非常に熱心で、また地方自治体が出している私学等においては、非常に地域性も言われて、地域の名前を冠した大学もあります。そのようなイメージも私はなきにしもあらずだという感じは持っておりますが、しかし、私立大学として認可して、立派な私立大学として立派にやっていってもらいたい、このように考えております。

藤村委員 私も副大臣の思いに賛成なんです。つまり、今後の問題としては、労働省立私立大学でないように、立派な文部科学省のもとの私立大学にしたい、していっていただきたい、こういう趣旨なんです。

 これは労働省側からも、今厚生労働省でありますが、意見が出ておりまして、ちょうど同じこの前の質問の日だったんですが、坂口厚生労働大臣は、別の委員会におきまして、このものつくり大学について、新しい執行部の中で私立大学として今後どういうふうな方針でいくかという方針が決定されると思っており、その方針に従って我々が、すなわちこれは厚生労働省ですね、協力できることはぜひ協力したいと。

 どうもあちらの方の役所は、まだ労働省立を相当イメージしているんじゃないかと思うのですが、これを、きょうは参考人来ていただいておりますので、見解をお聞きしたいと思います。

酒井政府参考人 お答え申し上げます。

 結論的に申し上げますと、私どもも、今副大臣がおっしゃいましたように、これは民間主導の構想に基づいて設立された私立大学、それに対して私どもが、政策的な判断から、労働者の職業能力の向上を通じて我が国の物づくり基盤を強化していくという厚生労働省の政策に沿うということで、支援させていただいているということでございます。

 先生御案内のように、発足が、そもそもサイト・スペシャルズ・フォーラムで検討されて、職人大学構想というものが具体化されていったのがこのものつくり大学でございました。そんなことですから、もともとは建設関係の専門家、大学の教授の先生方がおっしゃっていたものが、こういうふうに運んでいったということです。

 そういう意味でも、私ども、労働省立の大学などとは思っていないわけでございまして、今先生がおっしゃった開学後のあり方につきましては、これはもう開学を今待っている段階で、大学の学校法人の方でしっかりとこのあり方について御検討を当然されていきますので、それを見守って、またそれを踏まえまして、私ども、仮にその時点で御要請があれば、またその時点で考えてこれに対応させていただく、そういうスタンスでおるところでございます。

藤村委員 厚生労働大臣がこの前お答えになりました。でも、今労働省立ではないと否定はされましたけれども、私立大学から御要請があれば厚生労働省はそれなりに応援するというのは、非常に特異なケースになりませんかね。だから私は、この際に整理をしないといけないと思って、きょうまた質問をしているわけです。一度整理をするためには、ものつくり大学の認可に至る経緯に関してということで、少しつまびらかにしたいと思うのです。

 まず、一体当時の文部省は、いつごろからこのものつくり大学というものの動きを認知したのか。公式には、設立準備財団が申請されたということではありますが、ただ、いろいろな事実が既に報道もされているし、相当前から多分かかわっていたと思うのですね。現ものつくり大学構想自体の最初には、KSDから労働省に話が持ち込まれて、これは九五年夏ごろではないかと思うのです。翌九六年三月に、国際技能振興財団、KGSというのが労働省において設立認可となった。そして、文部科学省は、このときに大学設立構想というのを聞いたのか、あるいは、それより前なのか、それはどういう場面なのか、だれから聞いたのかということをちょっとお答え願いたい。これは副大臣でも結構です。

工藤政府参考人 私ども、以前の担当者にいろいろ聞いて、かつ記録で調べましたところ、私どもの方で最初に本件について御相談を受けましたのは、平成八年六月ごろでございまして、労働省の担当官の方から、大学設置の手続等についてお問い合わせがございまして、私どもでその手続等の現状について御説明を申し上げたということでございます。

 なお、この時点は、まだどういうものをつくるのか、そもそも労働省あるいは関係者においても構想が固まっていなくて、当時どういう大学のイメージかというのは、私ども必ずしも承知していなかったところでございます。

藤村委員 平成八年六月ごろというふうに今お答えをいただいたので、そのころは、どういうことだったかというと、KGSがその年の三月に設立が許可されております。それで、九月には、逮捕された小山さん、村上さんほか、労働省から二名などが、いわゆる職人大学の視察と称して欧州へ行っておる。それで、四年制の職人大学を全国九カ所になどという構想があった。多分その辺の時期ではないかと思います。

 それで、翌平成九年二月に、これも報道されているのでもう周知の事実なのですが、六省庁関係者が呼ばれて会議があった。その時点で、当時の文部省は、この大学をどういうふうに受けとめたかということなのです。六省庁が呼ばれて、一つの役所として、特に大学ということで、どんな大学を今考えているのだなということをイメージしたのか、その時点ではどうだったのでしょう。

河村副大臣 平成九年二月には、御指摘のように、六省庁の関係者が、国際技能工芸大学設立推進議員連盟の多数のメンバーが参加する会合に呼ばれたということでございました。それで、このときに、この会合の趣旨が、大学設立構想について、各省の理解とその権限の範囲内での助言等を求めるということで、そのときに、労働省側から、かなり具体的な国際技能工芸大学構想というものが打ち出されたわけでございます。

 文部省としては、私立大学設立のために一般的に必要な手続等について説明をしたわけでございますが、労働省からの説明では、そのときに、高度な技能を継承していきたい、そして発展をさせていこうということを目的として、実務というものを尊重した実践的教育を行う私立大学ということで設置をしたい、財団法人国際技能振興財団が検討を進めている、こういう説明があったというふうに聞いております。

藤村委員 それで、同じ平成九年十二月三日に、今副大臣がおっしゃった設立議連の第二回総会で、例えば文部省からは、当時高等教育局長が出席して、大学設置が生かされるように努めたい、準備財団設立申請が予定されているが、スムーズな設立準備が可能となるよう十分に連携をとりたいなどと発言しているわけですが、これは一つの私立大学の設立のまだ準備の申請も何もない、大分前ですね。

 それから、これは、実は今の発言よりもうちょっと前なんです、平成九年十月に、総長にはネームバリューのある人をと労働省から頼まれたようですが、文部省の担当者が梅原猛先生に総長を引き受けてくれるように依頼に行ったのかどうか、これは事実でしょうか。

河村副大臣 御指摘の点でございますが、確かに、平成九年十二月のものつくり大学設立推進議員連盟の第二回総会で、大学設立準備状況が報告されて、文部省としても陪席をさせていただいたということでございます。文部省側にそのような詳細が残っておるわけではないのでありますが、恐らくKSD側の記録にそういうものがあったということであろうと思います。

 これは、文部省側として、その局長がその時点で一歩突っ込んだ発言をしている、こういう御指摘でございますが、これまでも、私立大学の申請の場合に一般的な要請を受けるわけでございます。そのときは、できるだけ丁重な説明といいますか、丁重な対応、親切な対応をするようにということになっておりまして、そのような趣旨から高等教育局長が発言したのではないか、これは私の推察でございますが、私はそのように思っておるのであります。

 それから、総長にネームバリューのある人をということでございます。旧労働省側のときのあの大学構想においても、要するに教授陣の中に、一流の職人を初めとして、立派なスタッフを要請したい、こういう方向がございました。

 そういうことで、平成九年ころでございますが、新大学の教学面で、責任者にしかるべき人をという声がものつくり大学設立に取り組んでおりました国際技能振興財団等の関係者間にございました。それにふさわしい総長、あるいは学長にふさわしい有識者はいないだろうか、紹介してもらいたいというようなお話もございまして、文部省側としても、立派な構想のもとでの立派な大学、私学としてやっていってもらいたいということで、労働省側とも合議をいたしまして、文部省側としては、当時、野村元横浜国立大学長、そして梅原国際日本文化研究センター顧問を紹介したというふうに報告を受けております。もちろん、勝手に梅原さんがいいと言ったわけではございませんで、紹介するには責任がございますから、御本人に対して、あらかじめ、先生のお名前をお出しいたしたいということで、野村さんともども合意をいただいて御推薦申し上げた、こういうことでございます。

藤村委員 今、平成九年の話なのですが、文部省に大学の設立の申請が出てきたのは翌々年の平成十一年二月の話でありますね。一つの私立大学に、労働省と文部省とがある意味では一体になって幹部が動かざるを得なかったというのは、多分、相当な政治の圧力であったのだろうなということは推測できるわけであります。

 その当時、梅原先生がインタビューに答えておっしゃっているのは、私立大学なのに国や県、市の補助金が約百五十億円も入っているということについては、梅原先生はこういうイメージを持ったようですね。各官庁が抱える大学校に近いものを構想したんじゃないか、労働省OBを送り込み、労働省にたくさん金を出させ、KSDを大きくする、古関さんのねらいはそれだったんじゃないかという、インタビューに答えた梅原先生の印象です。そういう大学の印象を持たれたということであります。

 それで、ちょっと項目を飛ばしますが、これらいろいろな経緯の中で、相当政と官が、ある意味では非常に大きな影響を持って一つの私立大学をつくろうという動きがあった、それが相当無理があって、昨年のいろいろな事件の発端があったと私は思うのですが、それに対して、最終的には認可の条件をつけた、非常に特異な、例のないような異例の条件をつけたのはなぜなのかというところだけを少し簡単に説明いただきたいと思います。

河村副大臣 では、私ども端的にお答えをしたいと思います。

 もちろん、あのような条件をつけなければいけなくなったというのは、御案内のように、これは文部省側としてはまことに思いがけないことでございますが、古関前KSD理事長が逮捕された、こういう事件が起きたわけでございます。それを排除しませんと、まず大学のイメージ等々、そしてこれから学ぶであろう学生の皆さん方にも、そういうイメージの面からいっても非常にマイナス面があろうということで、その点はきちっとしなければいかぬということでございまして、ものつくり大学というものが社会的信頼を回復しなければいかぬ、そう思って条件つきの答申になったというふうに思っておるわけです。

 とにかく、立派な大学になるためにはそうした悪いイメージをきれいにして、ねらうところはいいんだから立派にやってもらいたい、そういう思いで異例の条件をつけた、こういうことだというふうに思います。

藤村委員 この条件というのは、大学設置・学校法人審議会が十二月十二日に文部科学省へ答申したとき、認可に当たっての条件ということで、KSDをめぐる一連の事件により逮捕された者との関係を排除すること、また、今後仮に、新たに逮捕者が出た場合も同様とすることなど、非常にすごい条件がついていまして、この関係を排除することというのはどういうことだったんでしょうか。

河村副大臣 これは、ものつくり大学の設置認可に当たって、関係の排除という条件をつけたわけでございますが、さっき申し上げましたように、古関さんが逮捕された、そういう関係者あるいはKSDの関連団体もございます、そういう者との関係をしっかりまず絶つ、そして大学が開設をされても、そういう団体等が運営等に影響力を持つことを払拭しなければいかぬ、これが第一の大きなねらいだったと思います。

 ただ、古関さんは、結果的において既に準備財団の理事を辞任し、そして学校法人の技能工芸機構の理事等にもならないままに逮捕されておるわけでございます。役職員の、KSDとかその他関連団体の兼務の禁止についても、該当者は十二月二十五日までに兼務関係は全部解除されておりまして、既に関係の排除はなされておるという認識ではありましたけれども、やはりこれは、これから先のこともございますから、そのことをきちっとうたっておく必要があるということになったものだと思います。

藤村委員 ここに来て、その認可の後に新たに逮捕者が出ました。すなわち、一月十六日小山参議院議員、そして三月一日村上元参議院議員。

 村上元参議院議員の逮捕容疑というのは、参議院本会議の代表質問で、KSDの進めるものつくり大学の設置を国策として支援するよう提案してほしいという依頼、請託を受けた報酬として云々とあって、まさにこの大学をめぐる受託収賄というのでしょうか、これはつまり、今後新たに逮捕者が出た事態が起きておるわけですが、今文部科学省はどう考えるのでしょうか、どう対応するのでしょうか。

河村副大臣 文部科学省としてはまことに予想だにしなかったような、極めて遺憾なことになったわけでございます。

 それゆえに、こうしたKSDをめぐる一連の事件によって新たに逮捕者が出たこの状況に対しては、当然そういうことも想定して、もう一つ、先々でもそういうことがあってはならぬということで、排除しなければいかぬということで、これからものつくり大学が立派にやっていっていただくためにもこのことをきちっとしなければいかぬということでございます。

 設置認可後にKSDをめぐる事件に関連するさらにそういうことがあったとしても、そういうことを排除するという意味で、それを準備財団それから学校法人国際技能工芸機構の役職員には就任してはならぬとか、そういうふうな確約書がございますから、今後の問題としては、村上氏も小山氏も、いずれもそうした役職には就任されてはおりませんでしたけれども、今後とも、確約書の内容が遵守されるようにきちっと見守っていかなければいかぬ、このように考えております。

藤村委員 確約書の中身の中で、役職員については、KSD及びその関連団体の役職員との兼務を禁止すること、これが整理されたのは事実だと思います。また、一連の事件が解明されるまでの間は、KSD及びその関連団体の役員であった者を新たに役員に就任させることを禁止する。

 これは十二月十二日に出してきて、十二月二十六日に認可をした。その時点で、つまり学校法人が設立されました。その新たに設立された学校法人の役員を見ますと、会長が豊田章一郎さん、理事長で清水伝雄さんが入っています。この方は実は労働省元事務次官。この方の事務次官時代の構成を見ますと、当時、大臣が村上正邦氏、事務次官が清水伝雄氏、秘書官が小山孝雄氏。非常に密接な関係の方が、新たに学校法人ができてその理事長に座っている。あるいはその他に、実は労働省OBが理事に一人、監事に一人、計三人入っております。

 私は、冒頭申しましたように、労働省立の私立大学ではないということをまず整理すべきだ。労働省とはきっぱりこの際縁を切った学校法人をつくるべきである。それも確約書で、一連の事件が解明されるまでの間はとして、新たに役員に就任させることを禁止することと書いてある。これは十二月十二日です。学校法人ができたのは十二月二十六日ですよ。ということは、新たに就任させているのじゃないですか。排除すべきではないでしょうか。

河村副大臣 元労働事務次官であった清水伝雄氏、今藤村委員が御指摘の経歴をお持ちでございます。

 学校法人国際技能工芸機構の理事長に選任された経緯について、文部省側としてその詳細を承知しておるわけではございません。しておるわけではないというのは、文部省側がこれを受けて認めたとかなんとかというわけではないわけでございます。ただ、同氏が労働行政における長年の経験や知識を有しておられる、そして産業界における技能、技術者の実態等に精通をしておられるということから理事長に就任されたと聞いておるわけでございます。

 また、学校法人設立当初の役員、理事、監事も含むのでありますが、これは当然、寄附行為によって決まるわけでございます。大学設置・学校法人審議会の審査においても、理事長としての適格性については何ら問題がないと判断がされたところでございます。

 なお、先ほど委員御指摘ありました清水氏が平成十年七月から十一年六月まで、財団法人中小企業国際人材育成事業団、アイム・ジャパンの顧問を務めておられたということであったわけでございますが、同氏は、条件つき認可の答申が行われたあの時点、平成十二年十二月十二日では、既に準備財団の理事長であり、かつ学校法人理事長就任予定者であられたわけであります。

 したがって、KSD及びその関連団体の役員であった者を新たに準備財団や学校法人の役員に就任させることを禁止した許可条件、すなわち、これから関係者を新たにということではなくて、もう既になっておられた、この許可条件には抵触しないということでございまして、そういう観点から、清水氏が学校法人国際技能工芸機構の理事長であることには特段の問題がないというふうに考えておるところでございます。

藤村委員 村上さんの逮捕の容疑に、まさにものつくり大学ということが入っておった。そのときの元事務次官が、それもKSD関連のアイム・ジャパンに約一年間いた、顧問であった。月百万の報酬を得て、千二百万得ております。その人がそのまま残って、準備財団の理事長だったから新たな学校法人の理事長になるんだという理屈は立たないんじゃないですか。学校法人はあくまで認めた日付に、十二月二十六日でしたか、発足しているのですから、それより以前の条件からいえば、やはり発足したときに新たに学校法人の理事長に就任するわけですよね。それが、準備財団の理事長だったからその人が学校法人の理事長になったというのは理屈が合わないんじゃないですか、時間差の関係からいえば。

 それと、その細かい言葉の解釈よりは、とにかく私は、ものつくり大学をちゃんと立派にやってほしいと思うのです。特に梅原先生の思い入れというのは本当に強いし、ああいう建学の精神でできる大学はいい大学になると思います。がゆえに、本当に労働省立でなくす、もう労働省を排除する、そのぐらいの覚悟でやらないといい大学にできないんじゃないでしょうか。この点について、最後、時間がありませんが、一言お答え願いたいと思います。

河村副大臣 私学でありますから、私学の精神、創立の精神というのがあろうと思います。しかし、これはそもそもの発端が、やはり能力開発という一つの労働政策も相まって、国策と相まって生まれてきたという、私学にはそうした建学の大きな流れがありますから、そういうものを一切排除したら立派な大学になる、私はそのような考え方には立たないわけであります。そういう意味で、もちろんその精神というものを生かして、そして、もちろん旧労働省側が持っているそうした大きな国策、そういうものに乗って人材をつくっていくということも私は必要なことであろうと思います。

 そうしたものを踏まえながら、やはり立派な私学の一つの精神というものを生み出しながら、特色ある大学としてやってもらいたい、このように念願をしておるところでございます。

藤村委員 終わります。

高市委員長 大石尚子君。

大石(尚)委員 民主党の大石尚子でございます。きょうは、愛媛県立宇和島水産高校海洋実習船えひめ丸と米潜水艦グリーンビルとの衝突沈没事故について御質問させていただきます。

 まず、質問に先立ちまして、えひめ丸に乗船していらした方々、御家族の皆様、関係者の方々に心からのお見舞いを申し上げたいと存じます。

 この事故は、えひめ丸側に何の落ち度もないのに、とんでもない事故になってしまったわけでございます。そして、この現実というのは、今水産高校にいる若者たちの大海原にかけている大きな夢を打ち砕いたでしょうし、これから水産高校に学ぼうとしている若者たちの思いも大変壊されてしまった。そして、現実問題、今水産高校に子供を通わせていらっしゃる父兄の方々には、遠洋航海はやめさせようかというお声すらあるのが実態でございます。

 しかし、日本の水産高校の教育と申しますのは、普通高校に見られない大変いい体験学習を進めている、これは申すまでもないことでございますが、大海原との格闘、そして二カ月、三カ月という長期にわたって、一つの家族のように五十人、六十人の先生方、関係者、仲間で生活をしながら訓練を受けて、自然界での体験の感動と深い人間関係のきずなの深まりの中で、子供たちは大変大きく成長して帰ってくる。これが実態でございます。

 そして、日本の水産業というのは、世界の中でも大変高い水準を保っていると聞いております。

 こう考えてまいりますと、耐えられないような憤りと悲しみを覚えるこの事故を克服して、乗り越えて、ここで水産高校の教育並びに日本の水産、海洋界の皆さん方へ何か希望の光を当てていかないと、毎日毎日、当事者の方はもちろんのこと、直接関係のない日本の国民にも心を暗くさせるような報道が、これからもまた続いていくわけでございます。

 したがって、私、今質問させていただきますその気持ちの中には、この災いを何とか転じて、ぜひこういう関係者の方々に希望の光を、ここで皆さんの力で提供したい、そういう努力がなされるということが今一番大切なことなのではないか、そういう気持ちがあるものですから、それをどうして実現していったらいいかということを踏まえて質問させていただきたいと思います。

 まず、今回の事故発生当初でございますが、これは相手が米海軍の原子力潜水艦であったためもございまして、えひめ丸の国の親元は文部科学省でございます。それで、文部大臣がその親でございます。ですけれども、対外的な交渉等々の中で、文部大臣の影はかなり薄かった。もう少し積極的に文部省が動いていただいてもよかったのではないか。河村副大臣は宇和島にも行ってくださいました。しかし、その初動態勢の中で、文部科学省並びに文部科学大臣がどのような動きをなされ、どのような指示をなさったのか、それとあわせて、現在の水産高校の海洋学習の実態並びに実習船の建造状況の実態をも含めてお尋ねいたします。これは、河村文部科学副大臣にお願いいたします。

河村副大臣 大石委員御指摘のとおり、水産王国と言われた日本、確かにその地位が少しずつ下がっておることも事実でございますが、そうした意味で、全国の水産高校にもっと頑張ってもらいたい、こういう思いもございます。

 この事件が、委員御指摘のように、本当に大変な災いでございますが、これを乗り越えて次のステップになるように、皆さんそういう思いで質問をいただきましたことに、私もありがたく、また敬意を表したいというふうに思います。

 この問題は、確かに、私も最初、愛媛県立の宇和島水産高校の船ということを聞いたときに、これはもうまさに文部科学省も直接関係する、単なる漁船が沈没したわけと全く違うという思いをまず抱いたわけでございます。

 ただ、この事故の発生時については、本来、危機管理室なり、そうしたところから外務省を通じて一報が入るということが期待されたことかもわかりませんが、私ども、その当初の時点どうであったのかということだったんでありますが、残念ながらと申していいのか、担当職員の方はマスコミのテロップで第一報を知ったというのが、これは正直なところでございます。

 それで、私も同じような、今申し上げたような感覚を受けたわけでありますが、すぐ大臣の方からも、その一報を受けた五分後に大臣の指示が出まして、当時、大臣は東京都外に講演に行っておられたんでありますが、文部科学省の宇和島水産高等学校実習船事故災害情報連絡室の設置をとったわけでございます。そして、今度は官邸側との連絡に入ったというのが初動の段階でございます。

 そして同時に、これは十一時三十五分、文部省の連絡室を設けたわけでありますが、さらに十二時半には、文部科学省の分館に文部科学省情報収集連絡本部、事務次官を本部長といたしまして、そこに情報の本部を設けて、そして外務省、そして内閣危機管理センターとの情報交換が行われたということでございます。

 ただ、これは余計なことかもしれませんが、事故というのは思いがけないときに起きるもので、文部省本省そのものは、当時、工事中のために停電をいたしておりまして、隣の分館に本部を設けざるを得ない状況下にあったということも実態としてはあったわけでございますが、県立水産高校の学生さんのための実習船であるということは、文部科学省としても、これは最も関係の深い、大きな、大変な事故であるというふうに理解をしてやってきたわけでございます。

 おっしゃるとおり、これから、このような取り組みについてはもう政府一体でなければならぬわけでございまして、文部科学省としても、行方不明の家族の方あるいは学校側からもいろいろな要請を受けておるわけでございまして、町村文部大臣からも、ファロン特使、お見えになりました際にも、特に航行安全といいますか、これからのことについては、文部科学省としてもどういう思いでいるということを強く訴えまして、これからの安全確保といいますか、そういうことを強く要請したようなわけでございます。

矢野政府参考人 実習の実態でございますけれども、全国水産高等学校実習船運営協会を通して調査をいたしましたところ、水産高校で遠洋の海洋実習を行っている実習船は三十四隻でございまして、実習生は年間一千三百人、一回の実習日数は約五十日から七十日程度でございます。

 また、近年の実習船の建造の状況でございますけれども、今手元に持っておりますデータによりますと、平成六年度から、平成十三年度の見込みも含めてでございますけれども、毎年二隻の実習船が建造されている、こういう状況にございます。

大石(尚)委員 ありがとうございました。

 先ほどの副大臣の御答弁にも、十六隻がハワイに行っていたという御答弁がございました。何で実習船がハワイに集まってしまうのか。これは、他の海が、海賊が出没するような海で、安全でないから、危険を呼ぶので、それでなるべく安全な、そして使いいい港へということでハワイに集まってきていると聞いております。

 それで、今大体三十四隻の遠洋航海船があるというふうに伺いましたが、この建造に関して、都道府県が三分の二、国が三分の一の分担をもちまして船の建造資金を生み出していると聞いております。

 細かいことを申して恐縮でございますが、今、上限が四百トンと聞いております。私ども、神奈川県の三崎水産高校の湘南丸にいたしましても既に六百トンを超えておりまして、そして、十五億建造費がかかっております。

 なぜ六百トンを超えるかと申しますと、従来から比べて大型にならなければならない理由の一つに、最近は水産高校にも女生徒が入ってまいりまして、遠洋航海に出ますのに居住環境を男性と分けていく。したがって、余分のスペースが要る。今までよりもより以上、居住環境をよくしようと思うとやや広いスペースが要る。それと、海をきれいにしていこうという環境問題から、汚水処理それからし尿処理の設備も積まなければならない。そういうことから大型化している。それにもかかわらず、やはり四百トンが上限というのは、幾分弾力性はあるようでございますが、今の実態に合っていないのではないか。

 それからまた、十年ごとに新しくしていこうという方針があるにもかかわらず、ただいま実習船の中で十年を超えてまだ新建造の見込みがない船が六、七隻はあると思います。

 したがって、この際でございますから、水産高校の実習船の建造にかかわる基準に関しましては、これはちょっと見直していただけないか、実態に合った方向へ御検討いただきたいと思います。

 それで、時間の関係もございますので、続いて質問させていただきますが、この事故というのは絶対に再び起こしてはならない事故でございますけれども、アメリカの原潜に日本の船がぶつけられたというのはこれが何も初めてではないわけでございます。一九八一年に鹿児島県沖で、日昇丸という商船、貨物船が、同じくアメリカの原潜にぶつけられております。

 したがって、二度と再び起こしては、あってはならない事故ですけれども、どうやってそれを未然に防いでいくのか。そういうことから、これは外務省の御見解も、それからまた文部科学省としても一層取り組んでいただかなければならない実態があるのではないか。

 例えば、私どもの民主党の調査団がハワイに参りましたときに、オアフ島の景観というのは白っぽい、それから船は、漁船は白が多い、波はもちろん白でございます、それからハワイの海は暖かい海でございますから、もやが立つ、そういう中で、白い船というのは潜望鏡でキャッチするのに見にくいのではないか、もう少しカラフルな船の方が見やすいのではないかというサジェスチョンを専門家の方からもらったと、帰ってきて申されておられました。

 そういうこともございますので、これから建造する、あるいは今ある船も塗り直して、ハワイのオアフ島の沖に行くのであるならば、せめて昼間はっきり見えるように、また薄暗くなっても見えるように、となると白の方が目立つなら、白と何かと二色塗りかえるとか、色のことを検討してみる余地があるのではないかと私自身は思っております。

 そんなことも含めて、お二方から、今後の事故の再発防止並びに船舶航行の安全の確保について、御意見を伺わせていただきたいと存じます。

高市委員長 それでは、まず、実習船の規模や予算や船の色等について、河村副大臣からお願いします。

河村副大臣 時間もございましょうから、端的に申し上げます。

 今、大石委員の御提言も含めて、今後どういうふうな形で進めていけば再発防止ができるかということ、これは、原因究明の結果を踏まえて、アメリカ側とも徹底的に対策を講じる必要があろうというふうに思っております。

 今後の問題につきましては、乗船実習の安全確保ということが何といっても第一でございますから、事故原因の究明の進捗状況ということを踏まえながら、安全確保の徹底に努めていく、これが大事なことだというふうに思っております。

桜田大臣政務官 政府といたしましては、今回のような事故が再び繰り返されることがないように、米側に対して、現在、国家交通安全委員会と海軍がそれぞれ行っている調査を通じまして、事故原因が早急に、徹底的に解明されることを求めてきております。

 私自身も、二月十日、ホノルル入りをしまして、到着二時間後にはファーゴ・アメリカ太平洋艦隊司令官と会談を行い、その後、十七日間にわたりまして、ブレア・アメリカ太平洋軍司令官、ケース同軍司令官代行と逐一会談を行い、行方不明者の捜索救助活動を強く働きかけましたと同時に、事故原因の早急な、徹底的な解明を求めたところであります。

 また、アメリカの国家交通安全委員会の調査に当たりましても、同委員会がその日の活動を取りまとめます報告会議におきましては、日本側における在ホノルル総領事官一名が必ず一回から出席をしているということで、みずからの原因解明についても逐一注意を払っているところであります。

 さらに、二月十二日には、元潜水艦司令官の二人の現役自衛官及び日本のサルベージ企業の専門家、これらがハワイに到着し、私を補佐していただきました。これらの専門家の大変有益な意見が出まして、スコーピオの海底捜査実地に当たりましては、その母船であるCコマンダーには、自衛官とサルベージ企業の専門家も一緒に乗せていただきまして、調査に加わったところであります。

 また、民間人の関与が事故発生につながったのではないかということにつきましては、原因究明に当たり重要なポイントだと考えております。

 この点につきましては、二月十三日に、民間人が原潜の操舵にかかわったとのCNNの報道に接しまして、個別に太平洋潜水艦隊司令官を総領事館に招請し、私より事実関係を問いただすとともに、万が一、民間人の関与が今回の事故発生につながったことであるならば、ゆゆしき事態であると言わざるを得ないということで、いずれにしても、早急に、徹底した事故原因を調査していただきたいというふうに申し入れをしたところであります。

 このような日本からの働きかけもありまして、米側としては、民間人の関与を原因究明の重点項目とするということになりました。

 二月二十三日には、ラムズフェルド国防長官により、あらゆる軍事機器に関し、その操作を民間人に対し許可することを停止するモラトリアムが発令されたところであります。

 また、二月二十七日には、アメリカ政府特使として来日しましたファロン特使より手渡されたブッシュ大統領から森総理大臣にあてた親書におきましては、アメリカ政府は、事故原因に対して十分かつ透明性のある調査を行うことを保証するとともに、再発防止のために必要な措置をとるということを約束していただいた次第であります。

 さらに同日、河野大臣より、ファロン特使に対しまして、原潜を含む米軍艦船が我が国に入港しているところを、改めて安全確認を徹底するよう指導願いたいと申し入れたところであります。

 これに対しまして、ファロン特使は、米側は、クラーク海軍作戦部長から下のレベルに至るまで、細心の注意を払って適切な手順を構築するよう新たなる指示が出ている旨述べております。

 また、五日から開催されております海軍の審問委員会には、海上自衛隊の将官をアドバイザーとして派遣する等、政府としては、今後とも、原因究明及び再発防止のため、しかるべき協力を行っていく所存でございます。

矢野政府参考人 実習船に係る国庫負担の予算の問題でございますけれども、先ほど、四百トンが上限というお話がございましたが、これは四百トンが上限ではございませんで、四百トンといいますのは、予算の積算の基準のトン数でございまして、実際の国庫負担は、各都道府県からの事業計画を踏まえまして、実習船の規模に応じて国庫負担できることになっているところでございます。

大石(尚)委員 ただいまの御答弁、ありがとうございました。

 ぜひ今後とも、補助の基準に関しましては、実態に見合って、特にえひめ丸も、即刻建造に着手される。しかし、これはまた、お金の出どころは国とか県であっていいはずはございませんけれども、すべてにおいて、水産高校のある都道府県では、神奈川県でも十億を十年間で負担していくというのはかなり厳しい問題がございますので、実習船を持っていない県もございますので、ぜひ御尽力いただきたいと思います。

 ただいまの桜田政務官の御答弁、ありがとうございます。現地に行かれて、大変だったと存じます。しかし、今回の事件の結果は、いずれにせよ、納得がいくことになるかどうか、本当に心配いたしております。

 けさほどの報道によりましても、ワドル前艦長の弁護士は、とにかく、艦長並びに乗組員はすべて最善を尽くしたのであるから、ミスが重なったため、事故で刑事責任は問えないとまで発言している。そういうことになってまいりますと、これから先、長い間、関係者の方々がどんな思いをなさるのか、本当に心配いたしております。

 それであればなおさらのこと、これからの水産高校の前途に明るい光を当てたい、これは冒頭申したことでございますが。例えば、水産高校にアジアその他の国から留学生を受け入れて、そして、日本の水産高校の高校生の中に外国の高校生もまざって、水産技術を身につけていく、そういうチャンスを与えることができないだろうか。そのために、もし財源がないというなら、これは例えばでございますが、国も国民も力を合わせて、えひめ丸大海原夢基金のような基金を積んで、それで日本と諸外国との子供たちの交流を土台にした、日本の水産技術をもって世界へ貢献していく道を広げていく、そういうようなこと。

 あるいは、今、水産高校の生徒が、ハワイのホノルルを補給港といたしまして、千名を超えてお邪魔しているわけですけれども、学校によりましては単に上陸するだけで、現地を見聞して帰ってくる。もっと現地の方々との人間的な交流とかあるいは文化交流とかを考えたい。

 現に、今回の事故の御家族を慰めようと、現地のハワイの方々は募金活動を始めてくださっていたり、あるいはウクレレ奏者の、シマブクロさんでしょうか、日系四世の方は、「えひめ丸」という鎮魂歌をみずから作曲して演奏会を開かれ、現地の方々とともに祈りをささげておられる。そういうような、向こうの方々の、何とか日本の方たちを慰めたいというお気持ちも現にあらわれているので、そういうお気持ちもいただき、そして日本の子供たちもさらにいい国際親善を通して、それが行く行くは世界への貢献に役立っていく、そういう道を開いていくことを考えられないものだろうか。

 特に、昨今、反日感情としか思えない報道も目立っておりますし、また、あちらのインターネットのホームページに寄せられている退役軍人の方々のコメント、それから学者さんのコメント、それからリチャード・コーエンさんの記事といい、何か、日本のもっと広い分野にわたっての批判のコメントが出だしている。そういうことを考えますと、何とか、日米関係も壊したくない、この本当に悲しい事故を乗り越えて、さらにいい人間のきずなを世界に結んでいきたい、そういうことをどうやって実現していったらいいのか。そういう思いから、何かお考えがございましたら、ぜひお二方のお考えを伺わせていただきたいと存じます。

河村副大臣 委員御指摘のとおり、今回の大変不幸な事故でございますが、これを何としても乗り越えて、また水産高校に対するイメージも上げていかなければならぬ、このように思っておるわけでございます。

 冒頭お話がございましたように、水産高校というのは、こうした体験をもとにしながら非常に立派な教育をやっているわけでございます。こういう事故が起きたがゆえに、また改めて水産高校に対するいろいろな国民の思いもあると思います。

 私は、宇和島水産高校に参りましたときも、非常に印象に残っているのは、中の先生が、この悲しみをどうやってぶつけたらいいのでしょうか、あの行方不明になった四人の生徒の中には、中学時代は不登校ぎみであったけれども、この宇和島水産高校に来て非常に勉強するようになって、資格もいっぱい取って、将来本当に楽しみな学生だったんです、この悲しみ、怒りをどうしたらいいのでしょうとおっしゃって、私どもにもぜひ臨床心理士等をください、こうおっしゃったことが印象に残っております。

 そのような水産高校でございますから、これからさらに発展策として、今御指摘のような人間的な交流、文化交流、これは実は、例えば福岡の水産高校は、上海に行って、上海の水産高校の学生と交流したり、一緒に博物館を見るようなこともやっておりますし、新潟県立の海洋高等学校では、韓国の釜山に行きますと釜山の海事高等学校との交流をやるとか、こういうことも既にやっておるようでございますから、そういうものもさらに広げたいというふうに思いますし、また、日本の水産技術を、後進国というとあれでございますが、そういう方々にもしっかり学んでもらう、受け入れを進める、そういうことも含めて、これからの水産高校の発展策というものをしっかり考え、また国際理解、協力の推進、そういうことも含めてやってまいりたい、このように考えます。

桜田大臣政務官 外務省といたしましては、次世代を担う青年交流の重要性にかんがみ、これまで、大学生を中心として、アジア諸国との青年交流を実施してまいりました。また、御指摘の点につきましては、国際交流を進める上での貴重な御意見として承らせていただきたいと思います。

 また、このような機会を利用しまして、若人の国際交流は非常に有意義なことだと考えておりますし、在外公館を通じて、できる範囲のお手伝いをしてみたいと思っております。

大石(尚)委員 ありがとうございました。これをもって終わります。

高市委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。ちょっと悪性の風邪を引いておりまして、聞き苦しいところがあるかと思いますが、お許しをいただきたいと思います。

 今、同僚の議員の方から、今回の悲しい事故でございますが、えひめ丸に関する件、あってはいけない官業癒着のKSDの問題を含めてございましたので、ダブっているところにつきましては少し省かせていただきたいと思いますので、あらかじめ通告をしておりますが、御答弁を省略させていただく場合には、お許しをいただきたいと思います。

 それではまず、この悲しいえひめ丸の事故に関してでございますが、こういう事故はやはり二度と起こしてはならないと私は思います。そのためには再発防止策を速やかに講じていかなければならない、こう思うわけでございますが、今回、この事故の海域というのは、米軍の潜水艦の訓練及び作戦行動に常時使用されている海域で起こったのか。これは私、仄聞しますに、その海域であるというふうに聞いておりますが、その点についてまず確認をしたいと思います。

桜田大臣政務官 御家族の質問状に対して、アメリカ海軍は、この海域はアメリカ海軍の潜水艦の訓練及び作戦行動に通常使用されている海域であると回答しているところであります。

 また、六日、アメリカ海軍審問委員会におきましても、予備審査を行ったグリフィス少将が、グリーンビルが航行した海域の選択は適当であったと証言をしているところと承知しております。

 また、私自身もホノルルに滞在中に、ファーゴ・アメリカ太平洋艦隊司令官に照会したところ、事故の発生した海域は海軍と民間船舶の双方に開かれている海域であるとの説明を受けております。

平野委員 政務官、短くて結構ですから、イエス、ノーで答えてもらったらいいです、時間が短いものですから。

 そういうことになりますと、普通、やはりこの領域というのは非常に危険な領域になるわけです。民間と海軍がこうやってクロスして通っていくということは、さらに十分に気をつけて運航していかなきゃならないエリアにもなると私は思うのですね。

 そういう意味で、今回の事故については、軍事訓練などに使用する海域で、実習船の運航について、文部科学省としてはどのように、これは事前にわかっていたのかどうか、あるいは文部科学省としては許可を与えているのかどうか、その点はどうですか。

矢野政府参考人 実習を行う場合の手続でございますけれども、公立の水産高等学校の実習船による乗船実習は、公立学校における教育活動の一環として行われるものでございますから、設置者である都道府県教育委員会の定める所要の手続がございます。県によっては、それが事前の届け出であったりあるいは承認といったことがあるわけでございますが、そういう所要の手続がございまして、その手続に従って実施をしているわけでございます。

 これは航行とは直接関係ございませんが、先ほど許可云々というお話がございましたが、許可という点につきまして見ますと、水産高等学校の実習船が実習航海を行う場合には、漁業法に基づきます水産動植物の種類等についての制限、禁止の規定があるわけでございますけれども、その規定が適用されないよう、試験研究を行うためのそういう許可を農林水産省から受けているところでございます。

平野委員 では、実習船がかなりたくさん出ているというふうに先ほどの御答弁の中にありましたが、どの航路を行ってどういうふうにするというのはだれが一番つかんでいるのですか、全容をだれがつかんでいるのですか、だれもわからないのですか。

矢野政府参考人 これは、それぞれの実習船は、海上を航海いたします他の船舶と同様に、海上交通の安全や保安などにかかわります国際的なルールに基づく航行規則によって航海することになっているわけでございます。

 それぞれの実習船の実習に当たりましては、このようなルールに基づき実施するという形で進められているわけでございまして、今御質問のような全体的な状況というのは、私、どこがどういう形で把握しているのか、申しわけございませんが、承知しておりません。

平野委員 少なくとも一般の船じゃないのです、学生さんなんですよ。まして、将来のことを考えて、将来の海の男として育てるために実習しているわけですよ。それに対して、文部科学省というのは、公立高等学校だから、やはり学習に対する掌握が必要なんじゃないでしょうかと私はまず思うことが一つ。

 今言われたけれども、農水省が、実習演習の許可というのは、商業でないからいいだろうとかそういう判断をする。ということは、実際、どの領域に走って、ここは危ないですよ云々というのは、だれが判断をしてやるのかというのは、通常の海運の規則でしかないのですか。

矢野政府参考人 申しわけございませんけれども、今申し上げたようなそういう国際的なルールに基づく航行規則に従って各実習船は実習を行っているということでございまして、恐縮でございますが、それ以上のことは私どもも承知いたしておりません。

平野委員 文部省が承知しないというならば、だれが承知しているのですか、そうしたら、実習船、だれが承知しているのですか。

矢野政府参考人 これはもちろん、個々の実習につきまして、あるいは個々の実習船につきましては、その設置者である都道府県の教育委員会が当然のことながら承知しているところでございます。

平野委員 では、都道府県が知っておるということですね。これはまあわかりました。

 そうすると、都道府県はこのエリアは軍事領域だということについてはわかっておられたのですか。

矢野政府参考人 今のお尋ねは、えひめ丸が今回事故に遭遇したのは、先ほど御指摘がございましたように、海軍と民間船舶の両方に開かれた海域である、こういうように聞いているわけでございます。

 通常でございますけれども、各学校が実習計画を立てて実習を実施する場合には、軍の訓練海域かどうかということは、一般的には特に留意されていない、そういう事項でございまして、そういう意味では、恐らく、確認はいたしておりませんけれども、そういう実態は、実情は具体的には把握していないと思います。

平野委員 余り意識していないということですね。

 それは私、海底からまさか原潜がぼんと上がってくるなんて、だれもが想定できない部分だとは思いますよ。思いますが、少なくとも実習船で、教育の一環としてやっているわけですよ。

 あるゾーニングでいったら海賊とか非常に安全性から問題がある、したがってやはりハワイ沖がいいだろうということで、あそこによく、年間何百隻と来るわけですよ。現在も十何隻来ているということですから、少なくともそこはラッシュになることは事実なんです。そうしますと、当然、そのエリアに米軍の作戦行動領域があるとするならば、そこに対してきっちりとそういう問題が起こらないようにチェックするのは、これは都道府県ですか、文部省ですか、外務省ですか。私はそこに非常に疑問を感ずるのですね。

 もう一つ、視点を変えて言いますと、実習船の航海の計画については、農林水産大臣に対してその計画書を提出し、許可を受けることとしておりますと。農林水産省はこの海域が米軍の軍事訓練などに使用する海域ということをまず知っていたのか、先ほどの質問では、そういうことは、知る云々関係なく、商業用にやるのかどうかだけという判断を出している、こういうことですね。

 また、外務省は、便宜供与という観点により、航海日程、航海図などを確認し、便宜供与の依頼を受けることになるが、同様に、この海域が米軍の軍事訓練が行われる海域であるということを知っていたのかという質問を私はしたかったわけですが、それは当然知っている、こういうことになるわけですね。

 そうすると、高校では、外に出るときには、高校の生徒は、都道府県が発行する船員手帳がパスポートにかわって出ていくわけであります。都道府県が実習カリキュラムを決定するわけですよ。農水省が実習演習の先ほど言われたような許可を出してやる。

 大学の場合に、大学もあるわけですから、実習証明書は国土交通省が発行するのですよ。同じ農水の、水産大学の実習に対して、何でこれは国土交通省が発行するのか。

 農水省は漁業法における許可を、先ほど言ったような観点で許可を出す。外務省は便宜供与を受ける。高校はそういうことではなくて、船員手帳という枠内でいきます。大学は実習証明書を国土交通省が発行する。何でこれは、同じやり方をするのにこんな省庁間のばらつきがあるのでしょうか。

矢野政府参考人 実習生につきましては、これは高校生も大学生も同じでございまして、実習生証明書というものを国土交通省に対して交付申請をいたしまして、その交付を受けているということでございます。

平野委員 高校は、船員手帳は、都道府県でしょう。

矢野政府参考人 学生についてでございますが、学生につきましては、それは実習生証明書でございます。船員手帳ではございません。

平野委員 いずれにいたしましても、要はばらばらなんですよ。あるところは都道府県任せ、あるところは国土交通省、あるところは都道府県の教育委員会だ。

 いわゆる文部科学省として、今回のこの事故に対する責任のあり方というのは、どのゾーニングであるのですか。対策本部というのはつくりましたね。これは何のためにつくったのですか。責任がないのに、一応、とりあえず生徒さんのことだからつくったのですか。その点はどうですか。

河村副大臣 対策本部はなぜつくったかということでございますが、今回の突発事故でございます。

 文部科学省としては、県立水産高校、文部省の管轄の中にある、これは我々としてもこの情報もしっかりとっていかなきゃいかぬし、政府一体の取り組みの中に入っていかなきゃいかぬということで、官邸を中心とした関係省庁の中の一つの重要なセクションとして文部省がその役割に対応していかなきゃいかぬということでつくったわけでございます。

 先ほど来御答弁申し上げているように、心のケアの問題等々、それから、今後もいろいろな問題も含めて対策本部としてその任務を果たしていかなきゃいかぬということで、まずは当面の原因究明ということが行われていくでございましょう。最悪の場合には、これから補償の問題といういろいろな難しい問題があろうと思います。それを文部省が責任を持っていくということで、対策本部が設けてあるわけでございます。

平野委員 河村副大臣、対策本部をつくって文部省がしっかりとやっていただかなきゃいかぬのですが、現実には、高校の場合にはこういう考え方、都道府県だ、大学については国土交通省だとか、要は一貫していないわけですよ、実習に出ていくプロセスの中においても。文部科学省が、その主たる業務としてその部分についてほとんど掌握されていないんです。当然そういうことに対して全部文部科学省に情報が日常的にあるかというと、ないわけですよ。事故が起こったときに、公立高校だからといって初めて情報収集に行くという今システムなんです。

 したがって、私が言いたいことは、やはり文部科学省が、きょう河村副大臣お越しでございますが、しっかりとリーダーシップをとってこの原因究明と、河村副大臣も言われておりますが、まだ行方不明者がございますが、やはり事故に遭われた子供さんの心のケアとか、そういう問題も非常に大事なことでございますが、要はもっとリーダーシップを持って、この事故の原因究明は原因究明としてやっていただきたい。でないと、何か形だけつくったらそれでいいのかなというふうにもややもすればとれましょうし、情報をとればとるほどわからない、流れが。ここが非常に複雑にしている要因なのかなというふうに私は思えてなりません。

 したがって、時間もないわけでございますが、何としてもしっかりと、このえひめ丸に関しての原因究明、さらには沈没している船の引き揚げ、これは科学技術庁の力があるわけですから、何としても必ず引き揚げる、そんな決意で全力を挙げておやりをいただくことを心からまずお願いしておきます。

 次に移ってまいりたいと思いますが、これも先ほど同僚議員の藤村議員の方からもお話ございましたが、KSDに関する件でございます。

 細かいところはもう省略いたしますが、何回もこれは出ているところだと思いますが、私立大学とは一体何なのかというこの基本原則をまず聞かせていただきたいと思います。

工藤政府参考人 学校教育法に基づきまして、大学を初めとする学校は、国または地方公共団体または学校法人が設置することが原則となってございまして、学校法人が設置する大学のことを私立大学と私どもは申し上げております。

平野委員 では、学校法人がつくる大学を私立大学と言うということであれば、資金はどういう種類の資金でもそれは構わないということになるのですか。

工藤政府参考人 学校法人を設置します場合には、設置者が開学に必要な資金を調達する必要があるわけでございますが、御本人あるいはその関係者だけではなくて一般の篤志家からの募金など、いろいろな形で資金を調達するのが普通でございます。その際、たまたま、国あるいは地方公共団体が政策目的等から御支援するという例は多々あるところでございます。

平野委員 そういう考え方でいきますと、ものつくり大学の設立に関してでございますが、開設資金が約百五十七億円、内訳を申し上げますと、これは財団だからKSDに直接関係ないわと言うかもしれませんが、労働省が八十八億円、埼玉県が三十一億円、行田市が二十四億円、KSD十億、民間四億、実際の資金の内訳はこういう実態になっている。

 そうすると、本来、今局長が言われた、多くの方から寄附を集めて云々をやるんだということで、それが僕は本来の姿だと思いますが、何らかの財団をつくってそこに公的資金を入れて、それは寄附されたんだからもうそのお金は公的資金ではありませんよという、あたかも迂回をした仕組みにつくってこの資金繰りの運営をしているんじゃないかと私は思いますが、その点は間違いないですか。

工藤政府参考人 私立大学を設置します場合に、このものつくり大学の例のように、あらかじめ準備財団を設置して、資金調達あるいは財産の管理を行うという例が見られます。ただ、これは必須ではございませんで、必ずしもその準備財団をつくらねばならないことではございません。

 ただ、募金活動を行ったり、あるいは土地建物の所有権を確保したりということで準備財団を置く例があるのは確かでございます。ただ、準備財団を通したから公的資金が公的資金でなくなったとかそういうことではございませんで、いずれにしても、どこからお集めなのか問わずに設置主体において必要な資金を集められる、調達して用意されるのが原則でございます。

平野委員 いや、だから今言ったように、労働省から実質八十八億出ておるわけだ。それはある団体を通しているから出ていないと言い切るのか。現実には出ているわけです。こんな百五十七億のうち八十八億も労働省が銭を出す、それを私立大学と言えるのか。この点はどうですか。

工藤政府参考人 公的資金という意味では、地方公共団体の例は多々あるのでございますが、それはおいておいて、各省といいましょうか、国からそういうあらかじめ援助をしての私立大学というのは過去に二例ございます。

 一つは、昭和四十七年に認可されました学校法人自治医科大学でございます。これは、自治省と都道府県がすべて資金を出資してございます。ただ、都道府県の場合は実は地方交付税の措置もありますので、ほぼ一〇〇%自治省からというものでございます。それからもう一つの例は、昭和五十二年に認可されております学校法人産業医科大学でございます。これは当時の労働省から約九三%の資金援助がありまして、残りの七%は北九州市からのものでございます。

 ですから、このものつくり大学の場合に、労働省からのお金が多いから私立大学ではないとはなかなか言えないわけでございまして、学校法人としての資金調達に労働省が政策目的で御援助をされたというふうに理解しております。

平野委員 それはちょっと違うね。やはりもっと純粋に考えないといけないと思いますよ。

 自治医科大学とか産業医科大学とかいろいろ言われているけれども、あれだって、もし今局長が言われるような仕組みの資金を出しておるんだったら、それは私立大学と言っちゃだめですよ。それはやはり公立大学ですよ、あるいは国立大学ですよ。何で国立大学だったらだめなのか、なぜ私立大学にするんだ、ここに非常に不透明さを感じるわけですよ、このお金の集め方を見ると。

 加えて、先ほどの御質問にありましたが、KSDとのかかわりが非常に強い。許可をするに際する条件も、KDSとの関係を切りなさいと。では逆に、何で切りなさいと言うのですか。うさん臭いと思うから切りなさいという条件を出しているんじゃないですか。うさん臭くなかったら別につながっていたっていいんじゃないの。逆に言うと、あの条件を出しているということは、うさん臭いということを認めている証拠ですよ。その辺、副大臣、どうですか。

河村副大臣 現実にKSDから逮捕者が出た、経営にも非常に問題があるということが露呈をいたしましたから、おっしゃるとおりでありまして、健全に行われていて何ら問題はないということであれば、それはそれできちっとやっていただければよかった、私はこう思っているのです。

 ということは、この大学の趣旨は非常にいいのだ、これは国策としても立派なものだということがずっと積み上げられてきたものですから、そうすると、やはり大学は立派に運営していただかなきゃいけない、イメージも上げなきゃいかぬ、それを断ち切っていかなきゃいけない、こういうねらいでああいう誓約書をきちっと入れたものでございます。

平野委員 そこで、では大学というのは一体何なのか、私立じゃないですよ。大学というのは一体何なのか、大学教育というのは一体何なのかということを今まさに問われている時代です。

 昔のように、数%しか進学をしない大学の中で高等教育を受ける、今は短大を合わせたら大体四〇%か五〇%近い人が就学をする、その中で、大学ということが本当に大学という意味合いの教育カリキュラムになっているのか、この点がまた今の時代の中で問われている時代であります。

 加えて、ものつくり大学という中には、技能工芸学部に製造技能工芸学科と建築技能工芸学科の二学科がある、こういうふうに承知していますが、本来の大学の物づくり学というのでしょうか、学術研究及び云々という中に本来当てはまるものを修学するのですか、大学にふさわしい教育にこれはカリキュラムとしてなっているのですか、その点、どうですか。

工藤政府参考人 私立大学の設置を認可するに当たりましては、専門の審議会に諮問しながら御判断を仰ぐという仕組みになっておるわけでございますが、当大学について申請を受け付けまして、厳正かつ公正な審査の結果、大学としては問題ない。

 ただ、先ほど副大臣からも御答弁がございましたように、関係者の逮捕あるいは一連の疑惑の報道等がありまして、せっかくいい大学をつくるのに、学校法人になりますとそれはある程度公益性を持ちますので、社会的な公益性あるいは社会的信頼の確保ということも危惧しながら、委員の中から、この際、疑惑ある団体との関係は断ち切った方がいいのではないかという声などがございまして、ああいう条件つきの認可になったわけでございます。

 したがって、ものつくり大学自身について、大学としての適格性というのは何ら問題ないと理解してございます。

平野委員 適格性に問題ないとおっしゃっているけれども、まず入り口のところで適格性が問われているのだよ、これは。うさん臭いのですよ。だから排除したのですよ、疑われないように。

 私は、大学であるとか云々ということよりも、やはり、これだけの資金を迂回して出してやろうとしている、そこにいろいろな人が群がっている、群がりながらやっている、あげくの果てには、先ほど同僚議員が言ったように、理事長か何かに労働省の事務次官が就任をしている、何かわけわからぬじゃないですか、これは。しかし、受けに来る学生さんは、純粋なことで来るわけですよ、多分非常に傷つきましたよ、きょう受験されているのか終わっているのかわかりませんが。私は本当に、もっとそういう意味では浄化をしたあれをしてもらいたいと思います。

 したがって、我が党は、そんなことも懸念をして、昨年十二月に、許可をすることについてもっと慎重にやってもらいたいということを要請したはずなんです。そんなのお構いなしにやってしまっている。そして、逮捕者が出て、本当は慌てているんじゃないの。顔には出さなくても、心の中でしまったと思っていないですか。私は、その点が非常に危惧されるし、もっとこの問題は根深いものだと思っていますし、私はもっと追及をしていきたいと思います。

 私に与えられました時間が来ましたものですから、終えたいと思いますが、いずれにしましても、事件の件あるいは疑惑のある問題について早急に解明をしないことには、国民は晴れないと思っています。よろしくお願いします。

 ありがとうございました。

高市委員長 小野晋也君。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

小野委員 時がたつというのは本当に早いものでございまして、だれも予想し得なかったえひめ丸の事故からはや一カ月が過ぎようといたしております。その間、行方不明者の家族の皆さん、また宇和島水産高校の関係の皆さん、その御心痛にはいかばかりのものがあったかと心から拝察をし、また、お見舞いを申し上げる次第でございます。

 また、その間、森総理、町村文部科学大臣、伊吹危機管理担当大臣、また河野外務大臣等々、政府関係の皆さんには、日夜を分かたないいろいろな御配慮をちょうだいしてまいりました。私も愛媛県がふるさとである国会議員でございますが、ふるさとの問題にこれだけの御努力をいただいたことに深く感謝申し上げたいと思います。そして同時に、加戸守行愛媛県知事からも、大変な御配慮をいただいていたことに対して皆さんに感謝を申し上げておいていただきたいというお話もございましたので、御報告をさせていただきたいと思う次第でございます。

 ところで、このえひめ丸問題につきましては、既に多くの委員の皆さん方から御議論があったものと存じます。私は、先ほど申しましたとおり愛媛県を地元としております国会議員でございまして、多くの皆さんから声を聞いておりますと、やはり一刻も早い船体の引き揚げをしていただきたい、この声が非常に強いものとしてございます。改めまして御要望をこの場で申し上げておきたいと思う次第でございます。

 加えまして、今後の教育上の問題といたしまして、えひめ丸は深海深く沈んでしまったわけでございますが、教育の場において、この実習というものは決してこれからも無視していけるものではございません。非常に大きな教育効果を持つのが実習でございまして、次の代船建造という問題が大きな課題になっているわけであります。

 愛媛県議会におきましても、この三月の議会に代船の設計費が計上されて審議されるという話も出ておるわけでございますが、その問題に対して文部科学省としてどういう対応をされようとしておられるのか、そしてまた、その代船ができるまでの間の対応についてどのような御所見を持っておられるのか、まずこの点をお尋ね申し上げたいと思います。

河村副大臣 本当に思いもかけない、非常に悲しい事故でございます。一日も早く関係者の皆さんに立ち直っていただきたい、こう思うわけでございますが、そのためにも、早くえひめ丸を海底から引き揚げるということが第一義でありますし、それから代船、新しい船をつくって次に備えなきゃいかぬ、これも必要なことであろうというふうに思っております。

 既に愛媛県としては三月議会に設計費をお上げになったというふうに聞いておりますし、十三年度当初予算になろうと思いますが、具体的な建造計画が出ましたら、これまでも国としてもああした船をつくるときの対応の仕方がございます、それに応じてきちっとした対応をしていきたいと思いますし、もちろん、その間どうするかという問題については愛媛県側とも十分相談をして、それにふさわしい代船の問題等々御相談に乗りたい、このように考えております。

小野委員 今回のこのえひめ丸事故に対する国民世論の動きに関してでございますけれども、私は、いささか問題があったような気持ちがしてならないのでございます。

 例えば、手元に電気新聞という新聞の二月二十一日号を持ってきているわけでございますが、ここに「焦点」というコラム欄があります。そこにこんな意見の開陳がなされているわけなんですね。この想定は、アメリカの家庭でアメリカ人がこのニュースを見ているという想定になっております。

 ある日、テレビをつけると海難事故のニュースをやっている。わが国の原子力潜水艦がハワイで事故を起こしたという。浮上訓練をしているうちに、日本の船舶と衝突してしまった。相手の船は沈没し、行方不明が九人。どうも一方的に潜水艦のほうが悪いらしい。いったい海軍は何をやってるのだろう。

  相手は、高校生を乗せた水産実習船だという。ひどいなあ。しかも潜水艦のほうは、財界人やマスコミ関係者を乗せてデモンストレーションのようなことをやってたらしい。日本人はさぞ怒っているだろうな。これは外交的に大問題になるぞ。

  と、思っていたのだが、外電を見てびっくり。日本国内の話題は、首相の進退問題に集中している。日本の政治家もマスコミも、原潜事故はそっちのけにして、モリ首相の悪口ばかり言ってるようだ。ゴルフがどうのこうの言ってるけど、ゴルフと原潜事故が、あるいは極東の安全保障問題が、どう関係するのだろう。まるでモリさんが事故を起こしたような騒ぎ方。

  やはりニッポンは神秘の国ですよ。アメリカじゃ考えられない。こんな時、どさくさ紛れに大統領叩きなどやったら、国民が本当に怒りだす。まあ、ホワイトハウスは胸をなで下ろしているに違いない。

こういうような文章でございます。

 私は、何をここで問題に取り上げたいかといいますと、森総理がいろいろと説明を、この事故の後に行いました。なぜゴルフ場からすぐに帰らなかったかという問題についても、第一報というのは、あくまで事故が起きたようだ、救助作業に取り組んでいるというだけの情報で、その事態がよくわからなかったという状況であった、こういうふうに森総理は説明をしているわけですね。それに対して、世論、またマスコミ報道というのが、もうとにかくその状況は責任者として許せないという一方的なことばかりが報じられ、また世論がそれにこたえたという形になっているわけであります。

 その様子を見ていながら、昔、山本七平氏が「「空気」の研究」という著作を出されて、日本の国というのは、論理で物事を考えて結論を出すのではなくて、空気がどういう空気になるかということで、論理を超えて結論を出す傾向の強い国であるというような指摘をされておられたことを思い出すわけであります。

 これから日本の国は、国際化社会だと言われる時代になってくるわけであります。もう既になっているということでございましょうけれども、いろいろな文化があり、いろいろな考え方がある国際社会の中で日本という国がこれから生きていこうとするならば、またその中でたくましく日本人がやっていこうとするならば、このような感情論に身を任せるような国家であっていいのだろうかというような基本的な問題を私は感じたわけであります。

 教育基本法の問題も、最近この委員会で取り上げられることが多くなっているようでございますけれども、この教育基本法においても、第一条「教育の目的」には「教育は、人格の完成をめざし、」云々と書いてありまして、「自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」こう書いてあるわけですね。自主的精神を持つ国民を育てようというふうに書いてあることと、今回のこの世論の動きというものを比べてみましたときに、どうも私は、その間にギャップがあるように感じられてならないわけであります。

 そこで、これはもう河村副大臣の個人的見解としてお伺いをさせていただきたいと思うわけでありますが、このように感情によって右にでも左にでも大きく動いていくというような日本国民を育ててきたというのは、これは日本教育上の問題だったのでありましょうか、それとも、ほかに何か問題があったとお考えでございましょうか。そして、教育の問題だと考えられるのならば、このような状況をどうしたいのか、どういう対策をとっていこうとしておられるのか、少し難しい質問かとは存じますけれども、個人的な御所見をお伺いさせていただきたいと思います。

河村副大臣 まことに難しい質問でございますが、一口に言えば、文化の違いというのはやはり大きいと私は思います。日本の場合でしたら、どっちかというと以心伝心的なところがあって、アメリカあたりですと、明確に物事をきちっとしなきゃならぬ。イエスかノーかをまずする、だめなら裁判。そんたくするとかそういうことはほとんどないというのは、個の文化。

 私は、そういうものがずっと根底にあるがゆえに、この場合も、国益もさることながら、まず事故に遭った子供たちのこと、それに向けて親心を発揮しなきゃいけない、まずすぐそういうふうになってしまう。それがゆえに、森総理の行動がもう一つそれに対して敏速でなかったというふうにとられたということ、直接的にはそう思うのであります。相手の心を非常におもんぱかる、それは人間でありますから、最終的にはアメリカ人も日本人も同じようなのでしょうが、その割り切り方が全然違うわけですね。

 私も総理に聞いたのでありますが、フォーリー・アメリカ大使はすぐに謝りに行きたいと。その場合に、まだあの時点でありますから、我々としては、まだどこかで生きていてもらいたい、確認されるまではあの方々が亡くなったという思いはしたくないという思いであります。ところが、アメリカ側はややもすると弔意を表したいような形であった、だからそれはまだ早いと言ったのだ、こうおっしゃっておりました。これなんかもまさに文化の違いかなと思って私は聞いておりました。

 そういうものを我々は長い歴史の中でつくり上げてきたわけでありますが、さはさりながら、それではアメリカ社会のような社会を日本がつくっていけるのかということになりますと、私は、必ずしもそのとおりのものではない、こう思っておるわけであります。しかし、日本人が持っておるそのよさというものを、さきの大戦によって一回投げ捨てたのではないかという議論もあるわけであります。そういうものをもう一度思い出しながら、今の教育基本法のことにもお触れになりましたが、日本の教育の根幹をもう一回見詰め直していこうということであります。

 その中には当然、国際社会の中でどういうふうに生きていくかという問題もありますから、例えば教育でいえば、もっと日本人としては物がはっきり言えるような、ディベートの教育をしなきゃいかぬとか、そういうことも指摘をされておりますし、もちろん国際化のためにはもっと外国語も学ぶ必要があると言われます。しかし、いや、それ以上に日本語がもっと大事だという意見もその中にありますけれども、やはり国際化、グローバル化の中で日本人が生きていく教育というものをやっていかなければいけないだろう、こうも言われております。

 一遍に日本がそのような社会に移行するとは思われませんけれども、当然、日本もそうした国際社会の影響を受けて、またその中で生きていかなきゃなりませんから、そうしたものを必要なものは取り入れていきながら、やはり日本には日本の独特な文化、伝統、そういうものを大事にしながら、国際社会に対応するような教育といいますか、そういうものを取り入れながら、新しいといいますか、二十一世紀に対応した教育をつくっていくということであろうか、このように感じております。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

小野委員 国際時代を生きていける自立した日本人の育成というような観点での御答弁をちょうだいしました。私もこの点、賛成をするものでございます。

 今回のこの国民世論の動きを見ておりまして気になりましたことは、一度この人はこういう人なんだ、こういうことだったんだというレッテルを張ってしまうと、そのレッテル以外のことを受け入れようとしないというような雰囲気を感じてならないわけですね。

 先ほど申しましたとおり、国際社会というのは多文化で成り立っております。いろいろな主張がある、いろいろな考え方がある、いろいろな表現の仕方がある。それらを一度受け入れて、その上でみずからが判断する日本人を育成することが何よりも大事な課題だろうというような気持ちがする次第でございます。今回、はしなくも、この事故を通して日本の国の姿、日本人の姿というのがかいま見えたような気がしてならないのです。それはやはり大きく教育の課題としてとらえるべき問題だと私は思っているところでございまして、この点は、今後の文部科学省の取り組みの中でぜひ御検討いただき、推進をいただくということについての要望とさせていただきたいと思っております。

 次の質問でございますけれども、教師の問題でございます。

 教育の世界におきます教師の役割の重要性ということは、文部科学省ないし前の文部省がレポートを出せば必ず、教育の基本は教師である、こういうふうに書いてあったと思います。

 私自身の体験から申しましても、愛媛県の愛光学園というところで学んだ人間でございますけれども、戦後の貧困の中で、この日本の国を復興させるためにはどうしても日本人が立派な日本人にならねばならない、こんな思いを持って創立されたその学校にあって、創立者の田中忠夫元校長先生は、第一に学校をつくるのに必要なのは教師である、ひとえに教師である、教師に人を得なければいかにほかの条件が整ってもいい教育などはできない、こういう信念を披瀝されておられました。

 ちなみに、それ以降のものを述べますと、第二は、生徒なんですね。学ぶ意欲を持つ生徒が集まらなければ、教育ができない。第三には、親です。その学校の教育方針をきちんと受けとめて、学校と親が一緒になって子供に対して教育を行うということでなければ、本当の意味の人間教育はできない。最後に求められるとするならば、なければないでもいいけれども、学校施設の整備が一番最後にくるだろう、こういうふうな見解をお持ちになっておられた方でございます。非常な御見識だったと私は思っている次第であります。

 ですから、教育者の重要性ということは幾ら語っても語り足りることはない、これが私の信念でございます。

 その一方で、私が気になりますのは、教育者というのは非常に、社会の縁の下の力持ちという役割になってしまっているのではないだろうか。その教師がいかに立派な教育を施して、その教えられた子供が立派な業績を上げても、裏方の存在なんですね。青は藍より出て藍より青しというような言葉もありますから、こういうことで教師はいいのかもしれません。

 しかし、例えば国が出す賞にいたしましても、国民栄誉賞だとかいろいろな賞をお持ちになっておられるわけですけれども、私は可能ならば、そういう立派な業績を上げられた方が、私の人生を振り返ってみたら、あのときあの先生に御指導いただいたおかげで私の現在があるんだよ、こういう業績を上げる人生を生きられたのはあの先生のお力のおかげだというようなことを顕彰の対象にしていただけないだろうか。受賞された方があの先生に賞を渡してほしいというふうなことを言われた場合に、恩師をたたえる賞というようなものを、文部科学省が主導されまして制定されてその先生にお渡しするようなことになれば、人を育てるということの重要性というものが改めて日本の国内で皆さんに理解されるのではなかろうか、また、人をはぐくむことに人生をかけた先生にとってはこれ以上の栄誉はないのではないだろうか、こんな気持ちがするわけでございます。

 御見解を問いたいと思います。

河村副大臣 教育にとって、教育を進める上で、教師の力といいますか、教師の責任、また教師の影響、いろいろな意味で教師が大事であることは、小野委員おっしゃるとおり、その点は全く私も同感でございます。

 愛光学園もすばらしい高等学校と聞いておりますが、私のふるさとには松下村塾というのがありまして、吉田松陰という先達がおられた。わずかの期間でありますけれども、あの明治維新をつくった先達を出したところであります。松陰先生の偉かったのは、そこの塾生一人一人の心に火をつけていった、こう言われます。我が人格をすべて子供たちにぶつけていってやったと言われておりますが、やはり教師の力というのは非常に偉大であるというふうに私は思います。

 そういう観点から、今小野委員がおっしゃった点、ノーベル賞とか文化勲章が出た、その恩師にということを、私も一つの貴重な御意見だと思うのでありますが、私の意見としては、私がノーベル賞や文化勲章をもらう心配はないのでありますが、もしそういう立場に立ったとしたら、私はずっと小学校から大学までいろいろな先生の感化を受けておりまして、確かに、だれか一人挙げろと言われたらあの人にということはありますが、どの先生にもいろいろな意味で感化を受けておるのではないか、こう思うことが一つと、もし小野先生が受けられたら、その恩師にむしろノーベル賞ならノーベル賞を持っていかれて、先生にぬかずいて、あなたのおかげですとおやりになったら、私は、それでその先生は十分満足をされるのではないかなという気持ちがあるのです。

 だから、これを制度上ということになるといろいろな壁があるのではないかなと思いますが、お気持ちといいますか、御意見は貴重な御意見だ、教育を奨励する先生をもっと鼓舞する、そういう意味では非常に意義のある御提言だとは思って、拝聴させていただきました。

小野委員 副大臣、どうもありがとうございました。

 やはり先生の道というのを立てたいというのが私の願望でございます。昔、師道というふうに言っていたと思いますけれども、師道を生き抜いた人にはそれなりの誇りと喜びがあっていいはずだ、だから、それを国として何らかの評価をしてあげることができないかな、こんな思いでございますし、できれば、その教えを受けた人間自身がその賞を差し上げるというような発想になると価値がより高められるのではなかろうか、こんな発想でございますから、また今後御検討をいただければ幸いだと思う次第でございます。

 では、続きまして、科学技術の分野の問題について幾点か質問させていただきたいと思います。

 まずは科学技術基本計画の問題でございますけれども、日本の国が科学技術創造立国ということをスローガンに掲げて、将来の産業の種をはぐくむという活動を重視してやっていこうということを行っていることはもう周知のとおりでございます。

 今回、科学技術基本計画の第二次の計画が策定されているわけでございますけれども、その中を読んでおりますと、目指すべき国の姿といたしまして、三本の柱が上がっております。第一には、知の創造と活用により世界に貢献できる国を目指そう、第二に、国際競争力があり持続的発展ができる国を目指そう、第三に、安心・安全で快適な生活のできる国を目指そう、この三つの高らかな理念が挙げられているわけであります。これらはそれぞれ非常にとうとい理念だと思います。

 しかしながら、もしももう一つ加えさせていただくことを許していただけるとするならば、私はぜひ、この国で生まれた科学技術をこの国の中で大きくはぐくめる国を目指そうという言葉を入れさせていただきたいと思うわけであります。

 これまでの日本の歴史を振り返ってみましても、今では当たり前に使われておりますLSIの基本的なアイデアも、日本人が出したものだと言われております。また、最近話題になっております光通信のための光ファイバーの技術も、日本の国でまずつくられたものだと言われておりますが、残念ながら、それが日本の国で評価されないままにアメリカに渡り、アメリカで育てられて、これが物になるという段階になると初めて日本の国に戻ってきて、ということは、日本の企業は特許料のようなものをアメリカに払いながらそれを製造しているというような形になっているわけであります。

 ですから、私自身の体験の中でも、昨年一つ、ディーゼル排煙を減少させる技術ということで、愛のスカイラインで有名だった桜井真一郎先生が開発されたエマルジョンシステムの問題についてしばらく取り上げて動いたことがあったわけであります。このシステムも、黒煙の九五%ぐらいはカットできる、NOxも六〇%カットできますね、燃費は二割アップできますねというような技術で、しかも簡単な改造でそれを生かすことができるということですから、いろいろな人にとっては非常にいい基本的な技術だろうと私も思ったわけでありますが、桜井先生のお話等を聞いておりますと、なかなか日本の国でうまくその展開ができないのだと言われるんですね。

 そのときはっと気づいたのは、日本の国で技術を製品にして育てることのできる場所はどこかというと、大企業の中だけだということなんだろうと思うのです。ですから、大企業の中で生まれて、そしてそれがその企業の利益に目の前でつながるということが理解されたならば、それは大きく日本の国内で育てられるけれども、そうでない、大企業から外れた皆さん方が新しい画期的な技術を開発しても、この国の中ではなかなか育てるシステムがない、こういうことなのではないかという気持ちがいたしました。

 科学技術創造立国というのは、この国の中でつくり育てるというネーミングであります。立国というのは、それによってこの国が成り立つ国を目指そうというネーミングであります。その点を考えてまいりますならば、自国で生まれた技術はやはりこの国の中でちゃんと育てられる国を目指そうというふうに語るのがこの理念に合致することなのではないかという気持ちがするわけでありますが、副大臣の御所見、いかがでございましょう。

大野副大臣 恩師をたたえる賞というアイデアに引き続きまして、さすがアイデアマンと言われる小野晋也先生の、また卓越せるお説だと思って感心して伺っておりました。

 私は、しかしながら、このように考えます。

 今、科学技術を日本でどんどん生んでいこうと。場合によっては、生み方も国際協力があっていいんじゃないか、こういうふうに思います。ただ、どんどん生み出していこう、では、育てるのはどうなのか。育てるのは、もし今の日本で状況が不足しているならば外国で育ってもらってもいいじゃないか、あるいは国際協調の中で育てていってもいいじゃないか。

 こういう科学技術の研究成果というのは、やはり人類共通の財産でございます。だからこそ、今先生いみじくもおっしゃいましたけれども、科学技術創造立国あるいは科学技術基本計画の根本となる理念の一つに、知の創造と活用による世界への貢献、こういう言葉が入っているのではないか。

 ただ、問題は、なろうことなら日本ですべて生み日本で全部育てたい、こういう気持ちは共通に持っています。共通に持っていますけれども、そのやり方としては、やはり日本自体が科学技術創造立国を目指して科学技術の大きな国になることによってそういう環境ができてくるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。

 したがいまして、今先生がおっしゃった三つの目的を達成するためには、やはり国として重点分野をきちっとつくっていこう。御存じのとおり、ナノテクノロジーとかあるいはライフサイエンス、情報通信、環境の問題、四つの分野をきちっと決めていきましょう。

 そして、分野を決める以外に大切なことは、いかにしてその研究成果をつくり出していくかというシステムの問題だと思います。システムで大切なことは、やはり競争的に研究をやってもらう。そのためには、例えば任期つきの研究者をつくっていこう、こういう問題も出てくるかと思いますし、評価をする場合にどういう制度でやるか、場合によっては評価する人を評価しなきゃいけないなんという話もあります。

 そういう中で、もう一つ大切なのは、先生がおっしゃっていた産学官の連携だと私は思います。TLOが進んでおりますけれども、今後やはり産業と学問の世界、研究の世界、産学官の連携、こういうことがきちっとでき上がることによって、大きな土俵の中で先生がおっしゃるような目的が達成されるのではないか、私はこのように思っているところでございます。

小野委員 随分御評価いただいて申しわけありませんでした。

 副大臣、私が申し上げたいのは、この日本の国の中である基本的な技術を生み、それを製品にまで持っていって販売するプロセスの、ある一部分が非常に弱いということだと思うのです。基本的な部分についての育成というような部分について、どうも機能的に弱い部分があるみたいだと。これは教育の部門でも、本当の意味で育てるというような部分が日本の国で弱まってきているということを痛感しているわけでありますが、科学技術でもやはり同じように、何か、ある段階を育てるという部分が決定的に弱いな、こういう思いの中で語らせていただいた問題でございます。

 副大臣の御所見のとおり、日本の国で生まれた技術が世界のほかの国で育てられるということも結構なことでしょう。世界のほかの国で生まれた技術が日本の国で育っていくということも大事なことであります。それらを否定するわけではありませんが、一度この日本の国の中における科学技術を育成していくというプロセスをチェックしていかれる中で、この部分の問題点についての御検討もいただければと、これが本意でございますので、何とぞよろしくお願い申し上げたいと思う次第でございます。

 もう時間がなくなってきつつありますので最後の質問になろうかと思いますが、私は、この場に立つと必ずロボットの問題を語らねばならないことになっております。

 もう既に語り始めて七年近くなるだろうと思いますが、ロボットの世界のオリンピックをつくろうということで語ってまいりましたものが、ロボフェスタという形で本年いよいよ開催ということになったわけでございます。多くの皆さんが心を合わせ、力を合わせながらお取り組みをいただいておりますことに心から感謝を申し上げますと同時に、今後のことといたしましては、やはり広報の対応がもう少し必要なのではなかろうかという点について、またこれは御要望をさせていただきたいと思います。

 その上で、最後の質問といいますのが、私は、未来を担う子供たちにロボットになれ親しんでいただきたいという点なんですね。

 ことしは二十一世紀初めの年であるということで、新年の新聞、雑誌などを見ておりましても、多くの表紙の部分にロボットが登場していました。それくらい、二十一世紀にはロボットがシンボルになるということが多くの人のイメージの中にあるのでございましょう。ならば、それを担うのはだれかといえば、間違いなく今の子供たちであり、青年たちなんですね。ですから、その人たちが、子供時代から、青年時代からロボットをみずからつくる、そしてそれで楽しむという経験をすることこそが日本にとって非常に大きな意味を持つことになるだろう、こう思う次第でございます。

 そこで、これも提案含みの質問ということになるわけでございますが、小中学校で夏休みの自由研究、工作をつくったりするような取り組みでございますけれども、これにロボット部門というのをひとつつくってみてはいかがだろう。貯金箱アイデアコンテストというのを旧郵政省と一緒になってやっておりましたが、それと同じように、みんながロボットをつくる、そして、そのつくったものをアイデアコンテストということで全国的に評価をするような取り組みを行うということを提案したいと思うのでございますが、御所見いかがでございましょうか。

大野副大臣 ロボットについての小野先生のリーダーシップ、常に尊敬しているところでございます。小野先生のリーダーシップによりまして、ロボフェスタもいよいよことし七月からということになりました。

 今、青少年の理科離れが大変心配されております。この理科離れというのは何だろう。受験のための知識ならあるわけですね。でも、理科離れというのは、本当に心配しなきゃいけないのは、考える力、疑う力、こういうのがなくなってきている。では、考える力、疑う力、これはどうしてつくっていったらいいだろうか。それは、さわってみる、試してみる、体験してみる、こういうことから生まれてくることだと思います。そういう意味で大変貴重な御提案だと思っております。しかも、IT技術と物つくりの技術が一緒になってやれる、こういう問題かと思います。

 小学校あるいは中学校の夏休みの自由研究につきましては、御存じのとおり、基本的には各学校の自由でございます。各学校の自由の中でいろいろな意味での個性を伸ばしていく、これが一番大事なこと。まさに触れてみる、そして体験してみる、この中の一環としてロボットの活動も大事なことだと思っております。

小野委員 ありがとうございました。

高市委員長 都築譲君。

都築委員 きょうは、大変残念な事件に発展をしてしまいましたものつくり大学の問題を中心に文部省のお考えをただしていきたい、こんなふうに思います。

 残念というか、むしろけしからぬというのが国民感情に沿った認識ではないかな、こんなふうに思うわけであります。私も実は非常に複雑な思いをしておりまして、私自身は、物づくりというのが今日の日本の社会の豊かさ、こういったものを築き上げてきた一番の根幹であった、こんなふうに思うわけであります。

 日本人の国民性として、勤勉とか誠実、あるいはまた思いやり、手先が器用とか、さまざまなことが言われております。限られた資源の中で、本当に創意工夫を凝らして新しいものを生み出し、また新しいサービスを提供して消費者の需要にこたえる、そういう活動を、戦後だけではなく戦前も、そしてそれ以前からもずっと、日本人の国民性としてつくり上げてきた。それが今の日本の伝統文化の一番重要なところにあっただろうと思うわけでありまして、そういった物づくりの推進、物づくりの伝統の維持発展、これは本当に大切なことではないかな、こんなふうに思うわけであります。

 それからもう一つの視点は、実は政治と行政の関係でございます。

 私ども自由党は、以前の新進党のときから、政治改革、行政改革、さまざまな改革を訴えてまいりました。そして、今、河村副大臣が副大臣としてお座りになられておりますが、以前から、政治の行政に対する主導性を発揮するようにということで、大臣のもとに副大臣とか政務官を置いて、行政の中に入って政治家がいろいろな国民の声を行政に反映させていく、そういう形での改革が何よりも大切じゃないか、こんなふうに思っておったわけでございます。

 その一部が実現をしつつある今日の状況の中で、今までの明治維新以来、明治政府以来の、超然内閣といいますか、国民あるいは大衆を下に見て、行政の長に立つ者がお上ということで見下して行政を進めていくというのは、民主主義の世の中には合わないんだ、だから、戦後の本当にあの混乱の中でこういう形で民主的な政治体制が築かれてまいりましたが、まだまだ不完全なものがあったのではないかというところを改める、そういう考え方があったのかな、こんなふうに思うわけであります。だからこそ、実は物づくりといったものが恐らく国民の間でも非常に大切なものであるという認識を受けているのだろうと私は思うのです。

 だから、そういった国民の声を反映させるということでいけば、実は政治がもっと率先をして、何もお金をもらわなくったって、物づくりの伝統を維持発展させたり、あるいはまたそういった教育の仕組みをつくり上げていくことが大切ではなかったのかな、こんなふうに思うわけであります。大学という最高学府の設立の問題について、政治絡みになって金まみれにされてしまった、大変残念なことだと思うわけであります。この点について、副大臣の御見解を伺いたいと思います。

河村副大臣 都築委員の御指摘のように、政治改革が問われ、また政治家のあり方というものも問われるような事件だったと思います。こういうことがあってはならぬということで、選挙制度も含めて大きな政治改革をやり、また法律も変えてやってきたと思うわけでございます。

 御党の小沢党首が、特に行政に対して政治のリーダーシップということを言われて、真っ先に副大臣制度を唱えられたことも私どももよく承知をしているところでございます。今回の事件は、そういう意味ではまだこういうことがあったのかという思いで、非常に残念に思っておるわけでございます。

 おっしゃるとおりで、ものつくり大学の理想というものは今の日本にとって必要なことだと、私も都築委員の御指摘のとおり、同感の思いでございます。

 そういう意味で、私自身も、この構想が生まれたときに、これは非常にいいことではないか、この立派な大学ができるということは、日本の二十一世紀にとって必要なことだというふうに思っておりました。それだけに、今このようなことになったことは残念でございますが、しかし、その意図するところをもちろん学生の皆さんも理解をされて、一部社会人の枠は残っているというふうに聞いておりますが、既に受験も終わっております、そういう方々が、やはりこの大学の建学の精神といいますか、そういうものにのっとってしっかり学んでいただくことが非常に必要でございます。

 そういう意味でも、残念ながら悪いイメージ、それを払拭しなければいかぬということでございます。このものつくり大学の設置に関しては、どの大学、どの私学設立についても同じように行われている、大学設置・学校法人審議会における厳正そして公平な審議の中で、さらにこういう問題が起きましたから、このKSDなどとの関係は断ち切って、イメージを一新して新しい出発をしてもらいたいという思いで、異例の条件をつけて認可をされたものでございます。この大学が開学されるということは、もうそのしがらみを断ち切って、新しい大学として出発をしてもらいたい、さらに、それだけに努力をしていただきたい、こういう思いでございます。

 平たい言い方かもしれませんが、難産の子供はよく育つ、こう言われております。出だしは大変苦しかったかもしれないが、これをばねにして、立派な私学としてこのものつくり大学を発展させていただきたい、文部科学省としては、ひたすらそれを念じて期待をしているところでございます。

都築委員 立派な私学として育ってほしい、こういうことでございまして、ちょっとその点についてはまた後で戻ってまいりたいと思います。

 私自身は、実は労働問題などを以前担当しておりました。そういう観点から本当に物づくりの重要性を、先ほどから訴えてまいりましたが、痛切に感じたのが実は今から約八年ぐらい前でございます。

 能力開発関係の専門の月刊誌に載っていたのですが、ニューヨークにメトロポリタン美術館がございます。そこに、いつのころか日本から流出した金びょうぶがあるそうでございまして、その金びょうぶの修復をやらなければいかぬということで、実は、その修復をしてもらえる技能者を探したら、日本にはいなくて、フィリピンの人にその修復の作業を依頼した、こういうことでございました。日本の伝統的な金びょうぶ、こういったものの表装さえも、本当にもう日本にそういった十分な技能者が育っていないのか、こんなことになってしまっては大変なことになると。

 また、バブルのあの時期は土地の高騰がどんどん進んで、八年前というともうバブルははじけておりましたけれども、それでも、例えば東京の大田区を初めいろいろな地域で、日本の戦後の経済発展を支えてきた中小企業や零細企業が、土地を売った方がよっぽどか金になるとか、あるいはまた後継者が全然育ってこない、こういう状況の中でどんどんつぶれていった時期がありましたし、テレビや新聞でも大変大きく取り上げられたわけでありまして、そういったものを本当にしっかりと引き継いでいかなければいけない。

 そんな時期に、またもう一つ聞いたのが、実は私の大学の同窓生の思い出話でございますけれども、新幹線の車両をつくる会社に就職をいたしました。設計図どおり、一ミリも寸分たがわずに鉄板をつくってきましたけれども、ところが、それが新幹線の車両にはまらない。どうしてだろうということで、わいわい技術者がやっておったら、そこに技能者が木づちを一個持ってあらわれて、それで、こことここをこうたたけばということで、とんとんとやったらすぽっとはまったというふうな話も聞きました。

 また、例えば新幹線のあの先頭のとがった部分というのは、もうこれは工学的な手法ではとてもできなくて、技能者が結局手作業でつくり出す、そういった話も実は聞いたわけであります。

 本当に日本のこのすばらしい技能あるいはまた技術、こういったものをしっかりと引き継いでいく必要がある、こんなふうに私自身は深く思った次第であります。

 ただ、その後、物づくりの問題について本当に一生懸命いろいろな方たちがやっておられました。このものつくり大学という問題については、KSDの古関理事長が、職人にステータスをという発想のもとで、あるいはドイツのマイスター制度を参考にしてということで、大学といったものをつくっていった方がいいのではないか、こんなことで音頭をとってたくさんの政治家に働きかけた。

 私自身は、政治家がそういった要望を踏まえ、また、国民経済の動向や日本の産業社会、こういったものの進展といったものを考えたときに、先ほど申し上げたようにみずから取り組むべき課題であった、それが金まみれになってしまったというのは大変残念だし、金をもらわなければ政治は動かないのか、こういう印象を国民の皆さんに与えてしまったことは大変残念なことだな、こんなふうに思うわけであります。

 ただ、そのものつくり大学の問題について、実は労働省の関係者も多く含まれておりますし、それからまた、文部省の方においても、例えば私がいただいた資料の中では、「産業教育」という雑誌がありますが、平成十二年八月号に、ものづくり教育・学習に関する懇談会、これは文部省と労働省と共同で平成十一年十月から検討を行ってきた、その中間報告ということで取りまとめた、こういうことになっております。

 この時期、もう既に中曽根元文部大臣は御在任ではなかったか、こういうふうに思いますけれども、いろいろな予算委員会の審議や新聞の報道、そういった中でも、当時の文部行政の最高責任者であります文部大臣が、平成十一年十二月、赤坂の料亭で、古関さんや逮捕された村上さん、こういった方たちと懇談をした、こんな話もあるわけでございます。行政の責任者がどういうふうに、本当に大学の設置について働きかけを行っていたのかどうか。そこら辺のところをちょっと、わかる範囲で結構ですからお教えをいただければありがたい、こんなふうに思います。

工藤政府参考人 中曽根大臣のお名前が出ましたので、名誉のために申し上げさせていただきますけれども、たまたま大臣御在任中に文化勲章受章者のお祝いの会があるというお誘いを受けてお邪魔したという趣旨でございまして、報じられているようなメンバーとあらかじめ承知していたわけではなかったということを私どもは聞いている次第でございます。ただ、いずれにしても、顔を出してすぐ退席されたそうでございます。

 それから、文部大臣としての働きかけがものつくり大学についてあったかどうか、あるいは関与の仕方がどうであったかというお尋ねでございますけれども、御承知のように、大学の設置認可というのは、旧文部大臣が行うわけでございますけれども、法律によりまして、関係の審議会に諮問して、その答申を待って行うというデュープロセス、適正手続が定められておりまして、専門家による厳正、公正な審議の結果、その答申を受けてこのものつくり大学も設立許可をされたものでございます。

 したがって、大臣なり私ども事務方で何か差配をするという余地はほとんどない仕組みになっているわけでございます。そういう中で、歴代の大臣から、このものつくり大学の準備財団の設立あるいは大学の設立につきまして、特段の働きかけなり御示唆があったことは一切ございません。私ども、事務的に専門家の御審査を経ながら、淡々と公正、適正に処理したつもりでございます。

都築委員 今局長の御答弁をお聞きしますと、公平に審査をして政治的にゆがめられるものではないというふうな御趣旨かな、こう思うのです。

 ただ、私は本当にそれでいいのだろうかというふうに実は思ってしまうわけであります。確かに、大学という最高学府でありますから、だれでもかれでも簡単に設立できるなんというばかなことはないと思います。ただ、実は文部省のこの審査というものが非常に厳し過ぎて、要件が厳し過ぎて、そう簡単に大学をつくっていくことはできないのだと。幾ら善意の篤志者がいて多額のお金を出しても、なかなか大学といったものをつくり上げてやっていくことはできない。だから、最終的に、国の設置する大学あるいはまた地方自治体が設置する大学が、民間の人たちが希望しているような大学といったものをちゃんと設立できているのか。あるいは、大学の水準にふさわしいような教育をやる、大学という名前で呼ばれて、卒業する人たちがちゃんと学士という称号を受けて、そして一般の社会の中に入って、学習した、勉学した成果を生かして働いてまた社会全体に貢献していくことができるのか。そういったことを考えたときに、余りに厳し過ぎてしまうから、逆に政治の力を使ってそういったものを動かしていこう、だからこそこのものつくり大学推進議員連盟とかいうものにたくさんの国会議員が動員をされた。そこに実は問題があるのではないか。

 だからこそ、大学設置について規制緩和といったもの、今度いよいよ国立大学も独立行政法人という形になってまいりますけれども、本来そういったものが一体どうあるべきなのか。ちょっと哲学論争のような形になってしまいますけれども、私はどこかにこういう、金を何億もつぎ込まなければ物事が動いていかなかったことの問題というのもあるのではないのかな、そんな思いがするわけで、本当に国民の声を素直に反映した政治、国民の声を素直に反映した行政になっているのかということをもう一度思い返してみる必要があるのではないか、こんなふうに思うのですが、副大臣、いかがでしょうか。

河村副大臣 これは文部科学省の統一見解ではございませんが、私も文部行政に関心を持つ一政治家として思うに、確かに文部科学省のこれまでの、はしの上げおろしまで細かく指導してきたこのあり方はやはり見直す必要があると思いますし、また、教育にも競争原理というものが必要になってまいります。先ほど御指摘の大学の独立行政法人のこともそうでございまして、国立も私学も競争原理の中でやっていっていただく、これからの一つの大きな方向だというふうに思います。

 ただ、大学、学校というものは、そこにやはり生徒がおるわけでございます。これが非常にずさんなものであって、できたわ、すぐ解散したわ、入学金だけは取ってドロンだというようなことが起きますと、大きな社会問題になってまいります。そんなことは想定したくありませんが、これまでの経緯といいますか、いろいろな専門学校とかなんとか、例えば中国あたりでも日本にどんどん留学したがる、それを一つの材料にしてというような動きもあって、日本側が慌てるようなこともございました。

 しかし、今やもう大学の定員数と大学を希望する学生の数というものが大体合ってくる時代になりました。そうすると、大学というものも極めて厳選をされるという時代を迎えておりますから、本当に大学として高い理想を掲げ、建学の精神を持っている私学については、ある程度そういう形で認めていく。だから、ともかく経営がちゃんとしなければ一切認めませんよということでいいのだろうかという思いです。

 御案内のように、今は、大学をつくるときは一銭の借金もだめですよ、全部自分のお金でなければだめです、こういうものでありますから、それをつくるために四苦八苦しなければいけない。理想はあってもなかなか実現には至らないということもございます。そのようなことはこれから見直していく必要がありましょう。

 それから、完成しなければ私学助成はしません、こうなっておりますから、これからやはり私学の小中学校はもっと設置をしようということで基準も見る方向になってまいりましたが、中学校は三年で完成しますが、小学校は六年かかるわけですね。そうすると、六年間の生徒が終わるまでは全然私学助成が得られないという、ちょっとおかしい現状もあります。

 そういうことも全体的に見直して、教育のあり方、小学校から含めての今の学校の設置のあり方というものも、規制緩和ということもございますが、そういうことで見直していく方向が必要であろう、私はこのように感じております。

都築委員 ありがとうございました。ぜひ副大臣のお取り組みをお願いいたしたいと思います。

 それでは次に、そのものつくり大学に関連をいたしますが、物づくりの伝統的な技能はもちろんのこと、最新鋭の産業に必要とされる技能やあるいはまた知識、こういったものを付与するということで、今度は労働省の方で専門の、以前の職業訓練校、今は能力開発校とかあるいはまたポリテクとかなんとかと呼んでいるようでありますが、こういった頂点に職業能力開発大学校といったものがあるわけでありまして、専門課程二年あるいはまた応用課程二年、こういうことでいろいろな、そういった技能者の養成あるいはまた技能指導者の養成といったものをやる仕組みがあるわけであります。

 ただ、そこが一番目指しておりますのは、しっかりとした技能あるいはまた知識、経験の蓄積、伝授、こういうことでございまして、ものつくり大学というものとの発想の違いは、一つは、カリキュラムの問題にしても、大学と言われるとやはり最初入った二年ぐらいは一般教養課程という形でやって、それから後期二年が専門課程、こういう形になります。それから、卒業するときの資格として学士といったものがもらえる。あるいはまた、カリキュラムの一年間の動きでも、大学の場合は通常、夏休みとか冬休みとかあるいはまた春休み、こういったものもしっかりとあるようなんですが、この能力開発大学校はそれこそもう既に働いておる人たちも、働いた経験を持った人たちもたくさん来るということで、実はもう夏も冬も関係なしに根を詰めてやっていく、こういう仕組みがあるわけです。

 だから、ここでまたものつくり大学の本質に実は戻ってしまいまして、先ほど副大臣がぜひ立派な私学として発展していってほしい、こういう希望を述べられたのですが、私自身は、物づくりといったものには、大学という発想でやるよりも、もっと本当に現場の知識や経験といったものをしっかりと教え、そしてまたそれを伸ばしていく。そういったところにもし国のお金を、それは税金かあるいはまた保険料か、いろいろなものがあろうかと思いますが、注ぎ込むのであれば、集中して効果的に使った方がよかったのではないか。

 先ほど言われている百何十億というお金が、本当にわずか百八十人、百八十人、当面、二学科合計三百六十人でスタートする大学といったものをつくるのにふさわしいのか。また、私立大学助成といった問題もいずれまた出てくるだろうと思いますが、そういったものが本当に必要なんだろうか、効果的なんだろうか、むだ遣いにならないんだろうか。

 こんな観点を実はふと思ったわけでありまして、そういった点についてちょっと御見解を聞かせていただければと思います。

工藤政府参考人 労働行政にお詳しい都築委員のことでございますので、先ほどお話がありました職業能力開発大学校の内容につきまして、私以上に御存じのようでいらっしゃいます。

 私どもは所管でございませんので詳しくは存じませんが、このような各省設置法で設置しております大学校というのは、旧労働省のほかに幾つかの省庁で置かれているわけでございまして、大学とは違いまして、特定の行政目的のための教育訓練機関と承知してございます。

 物つくり技術を磨き、あるいは人材を養成する方法として、いろいろな方法が確かにあり得るところでございます。いわゆる専門学校といいますか、専修学校あるいは各種学校という形式もございましょうし、お話のありました、旧労働省所管の職業能力開発大学校あるいは総合大学校というところでの職業訓練というやり方もありましょうし、いろいろあるわけでございます。

 私どもは、旧文部省が大学設置認可に当たっての申請を受けて、その事務を扱う立場でございまして、そもそも、このものつくり大学の構想をまとめられた関係者の方々は、いろいろなオプションがある中で、学士号がもらえる正規の大学校を、ぜひ立派なものをつくりたいという構想をまとめられて、私どもに認可の申請があったものと承知してございます。白地で考えれば確かにいろいろな可能性があるところでございます。しかも大学だけがすべていいわけでも何でもない。それぞれのところで、それぞれの目的に沿ったいろいろな活動がなされているものと承知してございます。

都築委員 ちょっと時間が短くなりましたので最後の質問に移りたいと思います。

 今、実は進学率が大変上昇いたしまして、大学、短大の進学率は四九・一%というのが最新の数字でしょうか。それからまた、合格率というのも、最近の二、三十年では、平成二年を底にして今や八三・四%ということで、非常に高い合格率で大学や短大へ進学される方たちがふえておるわけであります。ただ、逆に、実数でいきますと、平成五、六年をピークに、今、実際には低下をしてきている。少子化がこういったところに大きく反映をしてきているのかな、こんなふうな気がいたします。

 片や、この三月、大学、あるいはまた高校もそうですが、卒業して就職を希望する人たちは大変厳しい就職状況の中に置かれて、まだ仕事が見つからないという方たちも実は相当いる。これ自身は、本当に今の景気、経済の状況をしっかりと立て直し、また規制緩和といったものを行って新しいビジネス分野を発展させていかなければ、なかなかそういった雇用の場といったものが見つからないのかなという大きな視点もございますが、しかし、逆にまた、ある専門家の話などを聞きますと、最近のこんな若い子でも六割、七割の就職率がよくあるものだというふうに言う、大変辛口の批評をする方たちも実はいらっしゃるわけであります。

 政治や行政の立場からいきますと、高校生一人当たりに税金が注ぎ込まれる額は大体もう八十万円を超えておるのではないか、こんなふうに思うわけであります。また、大学というふうな形になりますと一体どれぐらいの税金が一人当たりの学生についてつぎ込まれているか、私は詳細をよく承知しておりませんが、それでも、国立、公立大学、これはもうほとんど税金の塊であります。また、私学助成という形でさまざまな援助が大学、短大あるいはまた高校、こういったところにも行っているわけであります。そういった私学の助成といったものを、私は、教育を振興する、それがいわゆる人づくり、国づくりというふうに思うわけで、大いにやっていく必要はあると思うのですが、ただ、その効果が本当に上がっているのかどうかということも考えなければいけない。

 そして、特に物づくりという観点。最近では、この高い進学率を見ますと、結局、一般教育というか普通教育というか、そういった形で受験勉強ばかりやって、本当に物づくりの大切さといったもの、あるいはまた職業についての倫理とか勤労の倫理、こういったことを何ら若いうちに覚えることなく、実は受験勉強だけやって、そして大学に行ってまた勉強する。まあ勉強しているのはいいのですけれども、そういった人たちがふえていることで果たして日本の、先ほどから申し上げている物づくりといったものが支えられるのかということを大変私は心配するわけであります。

 せっかく貴重な財源が使われる、国民の皆さんが出し合った税金あるいはまた保険料、こういったものが使われるのであれば、本当に効果的に、日本の伝統を支え、豊かさを支えてきた物づくりといったもの、あるいはまた職業観、職業倫理、職業の専門的知識、こういったものがより効率的に習得できるような、あるいはまた身につけることができるような、そういう教育にもっと真剣に取り組んでいく必要があるのではないか、こんなふうに思うわけであります。

 ぜひその点について、ちょっと抽象的な質問で大変恐縮でございますが、副大臣の見解をお伺いしたいと思います。

河村副大臣 都築委員おっしゃるとおりで、最初のスタートは能力開発という面がございました。しかし、先ほどお話の中にありましたように、やはり日本の伝統技術といいますか、そういうものをよみがえらせようという面もあったわけでございます。

 そういう意味で、この大学は実学的なことを非常に重んじるということでもございますから、今現実に、しかしあの大学が、では、インターンシップに行く先があるだろうかという思いもあるわけでございますが、できるだけそういう方面をする。そして、やはり社会人も目を開いて、社会人の方々にもう一度そうしたものを学んでもらう。そうした、日本のまさに一番根幹を支えている人材をつくっていこうという意味で、労働省が考えられた能力開発という意味が生きてくるというふうに思いますので、ぜひそういう意味で期待をいたしたいと思います。よろしくお願いします。

都築委員 終わります。ありがとうございました。

高市委員長 児玉健次君。

児玉委員 日本共産党の児玉健次です。

 先ほどからの議論で主題になっている、ものつくり大学、そして実習船とアメリカ原潜との衝突、沈没、事柄の重大性からして当然大臣が出席すべきだと、私はそうなっていないことが極めて残念であると最初に申し上げます。

 ここでは、実習船えひめ丸とアメリカ原潜の衝突、沈没の問題に絞って質問いたします。

 ハワイの現地の新聞は、今回の事件を、海上での衝突事故一般としては取り扱っていません。そこでは、高校生を乗せた実習船、トレーニングシップ、それをアメリカ原子力潜水艦が衝突、沈没させて、高校生が行方不明になっている、ここに非常に焦点を当てているという点でいえば日本の世論も同じですが、アメリカの現地はそこに一つ焦点を当てている。

 もう一つは、衝突の直後、沿岸警備隊のボートが衝突現場に到着するまでの数十分間、この数十分間現場にいたのは、原子力潜水艦グリーンビルだけです、そのグリーンビルが何をしたのか。この点も非常に重要な論議の焦点になっています。

 私は、一例として、ホノルル・アドバタイザーの二月十四日付の中から、今の二つの点に触れたアメリカの専門家の声をまず皆さんに紹介したいと思う。

 原子力潜水艦の元艦長であったジム・ブッシュ氏、彼はこう言っている。救助作業中に「海軍はみずからの兵員を失うこともある」、「潜水艦部隊の歴史や海軍の歴史を通じて、艦長は特別な選択をまかせられてきた。乗組員が救助のためにあらゆることをやったとは、私には思えない」原子力潜水艦の元艦長がこういうふうに断言していますね。

 海事法弁護士であるジェイ・フリードハイム氏。「彼らは子どもたちだ。高校生たちがおぼれているというのに、彼ら(乗組員)は捜索しようともしなかった」。高校生と言ったら身もふたもありませんが、ハイスクールキッズという言葉を使っていますね、キッズ。彼らに対する親愛の気持ちを込めて、ハイスクールキッズと。そういう子供たちがおぼれているというのに、原潜の乗組員は捜索しようとしなかった。

 そこで、私は最初に伺いますが、将来を担うべき高校生が、教師、乗組員とともに実習中の不測の事態に直面していまだに行方不明です。この事柄の重大性を、文部科学省はみずからの任務と責務に関連してどのように受けとめているか、まず伺います。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

河村副大臣 児玉委員の方から、ハワイの新聞の状況等も説明をしていただきました。

 この事故は、どう考えてみても、まさに日本側に全く責任のないといいますか、実習船側に責任のない事故でございまして、そういうことからいえば、これはまことに遺憾としか言いようがない状況でございます。

 私も、大臣もそうでありますが、この第一報を得たときに、県立の水産高校ということは生徒、しかも行方不明者がある、これはもう大変なことだという思いになったわけでございます。ただ、その相手が相手でございますから、これは日本対アメリカという関係の中でこの問題に取り組んでいかなきゃいけないなという意識はありました。しかし、文部科学省としては、何せ子供さんたちがおられるという状況でありますから、その子供たちのことも考えながら文部科学省としてやれるだけのことはすべてやっていかなきゃいけないだろう、こういう思いでございました。

 今の時点で考えれば、当面ケアの問題とか起きておりますが、これからこんなことが二度と起こらないようにするには一体どうしたらいいのだろうかという思いで今のところいっぱいでございまして、そのことを徹底的にアメリカ側に求めていく、まずはそういうことからではないか、こう感じておるわけであります。

児玉委員 文部科学省の内部で、文部科学省というその任務と責務、それとの関係で、今回起きた事件の深刻さについて論議を深め、この後幾つか具体的に提起しますが、皆さんの取り組みを強めてほしい、最初にそのことを申します。

 さて、ハワイの近海で日本の実習船が、あの二月十日午前八時四十五分、どのくらい運航していたか。先ほどの御質問にも既にそれがありました。第四、第六、第七海区、高校の実習船が十六隻、もしあの事件がなければえひめ丸が加わりますから、十七隻になっていたはずです。そして、北海道大学水産学部の北星丸がハワイの近海でイカ釣り実習中であった。運輸省の航海訓練所の日本丸、乗っているのは文部科学省所管の教育機関、これもやはりあの海域で実習中であった。

 政府参考人に伺いますが、日本近海を含めて、実習船が最も集中する海域がこのハワイ近海ではなかったのか、私はそのように承知しているが、いかがですか。

矢野政府参考人 絶対的な状況を把握しておりませんけれども、例えばこの時点での実習船の運航状況を見ますると、委員御指摘のように、このハワイ近辺は実習船が最も多く実習をいたしているところでございます。

児玉委員 しかも、それは一時的、偶然のものではありません。二月の二十一日に、町村大臣に対して、全国水産高等学校長協会、全国水産高等学校実習船運営協会、全国高等学校水産教育研究会、三者連盟で要請書を出していますね、お持ちだと思う。その中で、なぜ日本の近海すべてを含めてこのハワイの周りに実習船が集中しているか、極めて雄弁に、具体的に語っていますね。

 「治安の良いハワイ・ホノルル港に寄港しています。」「この地への寄港は、国際感覚を養う良い機会であり、生徒たちが待ちに待った陸地は、精神的にも多大な安堵感を与えてくれます。また、ホノルル港は船舶運航上、水・食糧・燃料の補給や緊急時の寄港先としても重要な役割を果たしており」云々と。

 政府参考人も同じ意見ですね。

矢野政府参考人 同じ意見でございます。

児玉委員 おいでいただいている海上保安庁の政府参考人に伺います。航行中の船舶に向けて発する航行警報の問題です。

 海上保安庁は、アメリカからの通報を受けて、この一月二十八日に、ハワイ近海で翌二十九日から行われるミサイル射撃訓練について、その日時、海域を日本航行警報として発信しています。同僚の皆さんにちょっと見ていただきたいけれども、具体的に日時を書き、どの海域かということをきちんとここには書き込まれている。

 そこで、二月十日のこの原潜浮上訓練に関して、アメリカから何らかの通報があったでしょうか。

久保田政府参考人 宇和島水産高校の実習船えひめ丸と米国原子力潜水艦グリーンビルが衝突事故を起こした後に、米国の航行警報担当機関に問い合わせをいたしましたところ、原子力潜水艦グリーンビルの緊急浮上訓練に関する航行警報は出していないという旨の回答を得ております。

児玉委員 出ていない。

 そこで、もう一つお伺いしますが、日本の船舶がアメリカに向かうときに二種類の海図を使います。NOAAと言われるもの、米国海洋大気局発刊の海図、皆さんのところにお配りしている資料はその一部で、ダイヤモンドヘッド沖合の部分を示しているものです。このNOAA発刊の海図は日本で購入することができますか。

久保田政府参考人 今お尋ねの海図の件でございますけれども、米国では、海洋大気庁、NOAAと通称呼んでおりますけれども、ここと画像地図庁、これはNIMAと呼んでおりますけれども、この二つの役所が海図を作成しておりまして、我が国におきましては、これらの海図を販売代理店を通じて購入することができます。

児玉委員 そこで、こういう状況が明らかになるんですね。

 先ほどの、一月二十八日に海上保安庁が発した航行警報、当然これはえひめ丸は受信しています。二月十日についていえば何らの警報がない。そして、どの場所でこの衝突が起きたのか。この海図の中の赤い丸のポイントです。コリジョンサイトと書いてある。衝突地点ですね。この衝突地点は、アメリカ海軍の情報紙であるネービー・タイムズ二月十四日付によれば、グリーンビルが緊急浮上したのは、皆さんのお手元のこの長方形の範囲、サブマリン・テスト・アンド・トライアル・エアリア、その範囲ではなく、東に二海里、シーマイルですね、ずれた場所である、ここで衝突が発生したと。この情報を文部科学省は承知なさっているでしょうか。

矢野政府参考人 承知いたしておりません。

児玉委員 ちょっと済みません、聞こえなかったのだけれども。

矢野政府参考人 失礼しました。

 承知いたしておりません。

児玉委員 それは、文部科学省は努力が足りないと私は思いますよ。例えばこれは、その直後のある全国紙の報道です。幾つもの報道がこの事実を明らかにしています。

 文部科学省の職責、任務に照らして何がポイントかというと、全国の実習船が最も集中している海域で何らの予告、警告もなく、そしてアメリカ海軍自身がこの潜水艦の訓練海域以外で、訓練海域の中だからといって何が行われてもいいとは私は全く考えないが、しかし、その訓練海域以外のところでこういう事態が起きている。そこに対して、日本政府として、文部科学省として必要な意見を述べ、アメリカに要求をしなければならない。

 日本のある県立水産高校では、クラスの代表が協議をして署名を始めることになって、そして、実習に出ている三年生を除く一、二年生ほぼ全員の署名を集めて、先日、首相官邸とアメリカ大使館に届けました。署名簿には何と書かれてるか。「海は水産学校生の学校です、その海で安全に勉強・実習でき、二度とこうした事故が起こらないように」と。海は水産学校生の学校だと。もし農業高校で実習農場で地雷が爆発したとすれば、文部科学省はどうするだろうか。文字どおり海は水産学校生の学校である、この水産高校の子供たちの願いにどうこたえるかが、私たちに今問われている。

 文部科学省は、ただ一般的に、安全の確保と言うだけでは足りません。きのうきょうを含めて明らかになってきているのは、民間人の同乗、司令塔がラッシュ時の電車のようだった、そして蛇行の浮上。その結果が、さっきの訓練海域以外に浮上したことにつながるかもしれない。真実はやがて明らかになるでしょう。そして、ソナーの故障です。実習海域における安全の確保、潜水艦の緊急浮上訓練等船舶の航行を危険にさらす行為の中止を、具体的にアメリカ政府に求めるべきではないか、私はそう考えますが、いかがですか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

河村副大臣 児玉委員の御指摘でございますが、今まさに査問委員会が開かれ、事故の原因究明がなされておるところでございます。

 児玉委員御指摘のように、海は学校であるという生徒たちの思い、これはやはり大事に受けとめていかなければならぬというふうに思っておりまして、これから事故の原因がはっきりする中で、文部科学省としてどういう対応をとればいいかしっかり考えていかなければならぬと思います。

 ただ、先ほどもお話しのように、ハワイ地域は、海のなぎの状態とか安全であるとか、あるいは沿岸警備艇がすぐ来てくれるとか、今までのいろいろな例から安心感というものもあったでしょうし、確かに実績もあったということもあって、あのあたりが一番だということでこれまで来たわけでございます。

 もちろん、これからどうあるべきかについては、公聴会、実習船運営協会、いろいろな御意見もありましょう、そういうものも十分受けとめながら、子供たちの安全確保、そして実習、水産教育効果、そういうものを考えながらこれからのことは考えていかなければいけない問題だろう、このように思います。

児玉委員 海上保安庁の久保田政府参考人、ありがとうございました。

 では、質問を続けます。もう少し今の答弁を踏み込んで考えてみたいと私は思うのです。

 二月十五日に、行方不明になっている四人の高校生、二名の教師、三人の乗組員の御家族が、アメリカ政府に対して今回の事柄に関連して要望書を出された。ごらんになっていると思うのです。その重要性、切実性、文部科学省としてこの要望書を真剣に検討していらっしゃると私は考えます。

 合わせて三十一項目から成っています。例えばその三項目「なぜ事故の起こった海域で訓練を行っていたのか。」十八項目「民間人に緊急浮上を体験させてジェットコースターのようなスリルを楽しませたのか。」なぜ楽しませたのか。「ヨットやボートの多い海域で、こんな馬鹿げた「レジャーランドツアー」を今後も続けるのか。」二十八項目「ハワイ沖での実習が多いが、潜水艦が訓練をすることの通達はしていたのか。」これは、単なる行方不明の方々の御家族の疑問、要望であるだけでなく、国民全体の疑問でもあり要望だと考えます。

 文部科学省は、今私が指摘した三項目、十八項目、二十八項目のそれぞれについて、どのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

河村副大臣 行方不明者の家族にとってまさにそういう切実な思いが、私はこの質問の中に指摘されておると思います。私は、この三項目も含めて、今回の査問委員会で明らかになることを期待しておるわけでございます。

児玉委員 査問委員会というのは軍法会議にかけるかどうかの入り口の問題ですからね。もちろん、そこでさまざまな真実が明らかにされることを私も期待している。

 同時に、この事件についていえば、こういった残念な事態の原因を明らかにし、同じことが二度繰り返されないようにするため、アメリカのNTSBも非常に精力的な検討を進めていますね。例えば、もうかなり以前の問題ですけれども、今度の緊急浮上に関連して、緊急浮上というのはだれにもその危険性を予測することができないとはっきり言い切って、そしてアクティブソナーを使わなければならないという結論も見出していて、アメリカ海軍は、その結論を拒否し続けて今日まで来ている。このNTSBがどういう検討をしていくかということも、私は真剣に見ています。でき得べくんば日米でこれは共同調査をしなければならないだろう、こうも思っています。

 今のお話ですが、査問委員会の結果を待つという性質ではないだろう。例えば、さっきの三項目です。「なぜ事故の起こった海域で訓練を行っていたのか。」これに対するアメリカ政府の回答、アメリカ大使館が出したものをインターネットで入手しました、こう答えているのです。「事故の発生海域はグリーンビルのその日の行動指定海域であった。この海域は米海軍の潜水艦の訓練および作戦行動に通常使用されている海域である。」一つは、答えになっていない。もう一つは、沿岸警備隊が厳しく指摘している訓練区域から外れたということについても、答えていない。

 査問委員会の前に既にアメリカ政府は、文部科学省が今何とか事故の再発を防ごうとしているとき、アメリカ政府の名前で、行方不明の方を抱えている御家族にこういう無責任な回答をしているんですよ。これでいいでしょうか。お答えを求めます。

河村副大臣 この問題については、まさに悲しみに暮れておられます御家族の皆さん方のお気持ちというものを我々としてはもっと重んじて、さらに、疑問点があればそれは厳しく追及していかなければいけない課題だ、こう思っております。この訓練地域を外れた地域でああいう事故が起きたということ、我々も今おしかりを受けましたが、実態は、あの事故が起きた当時、その後の情報においてもまだあの時点でわからなかったことでございます。

 いずれにいたしましても、御家族の皆さん方に少しでも理解がいただけるような回答を得るということは日本側として最大努力をしなければいけないことだろう、このように思います。

児玉委員 日本側として最大の努力をしなければならない、まさにそうですね。そのためにも、アメリカの調査の結果を待つのでなく、今我々が入手できる範囲で――文部科学省は、あの衝突沈没が起きた直後に二名の方をハワイ現地に送られている。現地でいろいろなことをなさっているだろう。我々日本共産党も、直ちに調査団を現地に送りました。

 御家族の皆さんの十八項目というのは、日本国民の怒りの対象じゃありませんか。「民間人に緊急浮上を体験させてジェットコースターのようなスリルを楽しませたのか。」「ヨットやボートの多い海域で、こんな馬鹿げた「レジャーランドツアー」を今後も続けるのか。」アメリカ政府の答えはどうでしょう。査問委員会が終了するまではデモンストレーションとしてのこの種のことは当面中止するとは言っているけれども、しかし、そのことについての責任は、回答からは少しも読み取れない。「大勢の民間人や軍のオブザーバーが搭乗していた。我々はしばしば実業家や地域社会の人々、学識経験者などを潜水艦の体験搭乗に招待し、潜水艦の活動や国防上の任務などを理解してもらう機会を設けている。」これが行方不明者の御家族に対する答えでしょうか。私には、到底そうは思えない。

 そして、三つ目、二十八項目です。「ハワイ沖での実習が多いが、潜水艦が訓練することの通達はしていたのか。」ミサイル射撃訓練については航行警報が出ていたけれども、この緊急浮上訓練については一切通告がない。そして、米政府の回答の中でも、今後通告するとは一言も書いていない。

 今述べた御家族の要望、私は例示的に三項目、十八項目、二十八項目を取り上げましたが、それぞれについての現段階でのアメリカ政府の回答を文部科学省として真剣に検討されて、真実に迫ることを求めるべきだと私は考えますが、いかがでしょうか。

河村副大臣 この問題につきましては、これは政府一体でやるべきことでございましょう。文部科学省としては、生徒さん方と直接の関係のある役所でございますから、第一義的に我々はそのことを非常に案ずる、当然のことでございますが、先ほど申し上げましたが、査問委員会の結論も踏まえながら、日本政府としても、これは対アメリカとの問題でございますから、文部科学省もその中に入って、切実な訴えの中でどの点をどういうふうにしていくか、この三項目だけじゃございません、たくさんの疑問点もあるわけでございますから、それも含めて、政府全体としてこの問題は取り組んでいく課題であろう、このように認識をしております。

児玉委員 もちろん、外務省もあるし法務省もあるし、実習を許可した農水省もある。確かに、文部科学省は政府の中の一部です。

 先ほどから私がどういう言葉をつけてあなたたちに質問しているか。文部科学省の任務と職責に即してこの問題を取り上げる必要がある。この点は、外務省には、実習船に乗り組んで懸命に訓練を受けていた子供たち、その子供たちに対して教育的な見地から云々、当然その見地は求められるけれども、最も責任が重いのは文部科学省じゃありませんか。あれこれの省庁はあるけれども、その中であなたたちが担う責務というのは非常に多い。その特殊性についてお感じになりませんか。

河村副大臣 文部科学省の職責が、事故の責任を負わなきゃいけない、今回の事故についてそうなるかということについては、もちろん今のああいう悲しみに、疑問に思っておられる点を少しでも解明する、これは当然のことでありましょうが、これは日本対アメリカの中できちっとやっていかなきゃいけない課題だ、私はこう思っておりますし、むしろ文部科学省としてやらなきゃいけないことは、もちろんそのことを否定するものではございませんが、文部科学省の所管事項がございます。特に教育現場が非常に混乱をして皆さんがケアを必要としている、あるいは、さらに言えば次の船もつくらなきゃいけない、こういうような問題も出てきているわけでございます。そういうことをきちっと果たしていくことが一義的になってくると思います。

 もちろん、心のケアの中には、今おっしゃったような御指摘もございますから、それについて、被災者の皆さん方ができるだけ納得のいく回答を求めていく。それは、日本政府を代表しての形で、もちろん我々は、こういう問題がテーマになっていますということは、関係省庁に強く申し上げながら一体となってやっていくことであろう、このように感じております。

児玉委員 非常に困難な事態に直面した高校生たちの心の傷跡を早くいやす、そのために最善を尽くすというのは当然のことです。そして、四百九十九トンのあの船のかわりをつくらなきゃいけない、それも当然のことです。と同時に、さっきの、県立水産高校の子供たちの、海は水産学校生の学校なんだ。そこで起きた事故についてどう責任を負い、繰り返すことを許さないか。これは、外務省にはできないことですよ。

 今、行方不明者の御家族の最も切実な願いは、原因の徹底的な究明と、えひめ丸の速やかな引き揚げです。きょうの報道によれば、技術的に可能である、そして最短なら三カ月で完了する、外交筋によれば、アメリカがそのように回答して、十二日にも正式に決定すると聞いている。そこのところを、文部科学省としてもプッシュしていく。さっき私が力説した観点について、ぜひ皆さんにその方向で真剣に取り組んでいただきたい。最後にもう一回お答えを求めます。

河村副大臣 文部科学省としても、この問題の重要性といいますか、また心のケアの問題も含めて、さきのファロン特使が見えたときも、文部科学大臣、町村大臣としても直接会って、これからの問題も含めて強い要請をなしたところでございます。今児玉委員の御指摘の点、海はまさに水産高校の子供たちにとっては学校であるという視点、その視点をきょう御指摘がございましたことも大臣に篤と伝えまして、そういう方向で、これからの交渉についても文部科学省としてやれるだけのことをすべてやっていく、そういうことで頑張ってまいりたい、このように思います。

児玉委員 終わります。

高市委員長 山内惠子君。

山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。

 きょうはたくさんの方がえひめ丸についての質問をなさっていますが、私も、今回の事件は本当に痛ましい事件だと思っています。そして、今、新聞報道で見られるように査問委員会が始まって、少し事態が見えてきたかなという入り口に入っているのだと思います。

 それにしても、子供が行方不明のままである家族の方々のことを考えると、私も、文部科学委員の一人として今何ができるのか、何をすべきなのかを考えなければならないというふうに思っていますし、二度とこの事件が繰り返されないようにという観点で御一緒に考えていかなければならないというふうに思っています。捜査の継続とか原因究明とか、被害者への誠意ある補償などについても、社民党としましても、先日、アメリカの大使館に申し入れをしてきたところです。

 今回の事故のあったハワイのオアフ島沖、その近くのパールハーバーは、皆さんがおっしゃっているようにアメリカの訓練海域であった。そのことにつきまして、報道によりますと、原潜などが二十二隻もいる、潜水艦が十隻もいる、水上艦艇が母港としている、そういう状況にある。しかも、数字を聞きますと、年間六万五千隻の軍艦が往来する過密海域であった。

 先ほどのお答えの中に、アメリカの訓練海域であったということを調査して知ったというふうに聞いているんですけれども、こういう海域だったということにつきまして、事前にはどの程度のことがわかっていたのでしょうか。

矢野政府参考人 それぞれの学校が実習計画を立てて実際に実習をする場合には、通常、軍の訓練海域かどうかということは特に留意するべき事項とはされていないわけでございまして、そういう意味で、これは確認したわけではございませんけれども、当該学校におきましても、そのことは意識をしない形で計画を立てたのではなかろうかと思っております。

山内(惠)委員 本当にこのことがそのとおりのお答えであるとしたら、この事件は起こるべくして起こったのではないかと言えるような事件ではないでしょうか。

 今回のえひめ丸のほかに、先ほどのお答えの中には、十六隻の実習船がいたというふうに聞いていますが、私の見た報道では、二十隻と書いてある記事もございました。このアメリカの訓練海域で二十隻もの実習船が行っているにもかかわらず、この海が軍事訓練をしているような場所だということを気にもしていなかったということについて、今どのように思われますか。

矢野政府参考人 ここは、既に当委員会で御紹介ございましたように、事故が起こった場所は海軍と民間船舶の両方に開かれた海域であるというところでございまして、そういう中での事故でございます。

山内(惠)委員 今のお答え、何度も繰り返されて私の耳にも残っていますけれども、海軍と民間の両方に開かれている、そういう海であるとしたら、なおのこと、訓練はいつなされるかということを事前に知っておいて、それぞれの水産高校の皆さんの学校にでも、または県にでもお知らせしておく必要があったのではないでしょうか。

矢野政府参考人 実習船は、一般に海上を航行する他の船舶と同様に、海上交通の安全や保安などにかかわる国際的なルールに基づく航行規則に従って航海することになっているわけでございまして、乗船実習に当たっては、このようなルールに基づき実施することが基本でございますし、大前提であるわけでございます。

 先ほどの、海軍と民間船舶の両方に開かれた海域ということにつきましては、これは実習船のみならず、一般の船と同様の対応としてなされてきているわけでございます。

山内(惠)委員 全国の水産高校が、皆さんもお話しになったように四十八校もあるという状況の中で、今回の事故があった日も二十隻もの船がここに来ているということであれば、今おっしゃったように国際的なルールにのっとってということで、今回まではそのようであったという事実を今御回答いただいたと思いますけれども、それでは、今後はそのことについてどのようにしようとお考えでしょうか。

矢野政府参考人 いずれにいたしましても、現在、アメリカにおきまして今回の事故の原因の調査を進めているところでございますので、私どもとしては、事故の原因究明を待って、必要な対応を考えてまいりたいと思っています。

山内(惠)委員 先ほど、どなたかの御質問の中にも、全体的な状況を把握していなかった、それから今の回答の部分も、皆さんが指摘しているように、原因究明がされてからというふうにおっしゃっているんですけれども、子供たちのいる高校の方たちのこれからの実習船のことを考えたときに、それではやはり主体性がない発想だと思いませんか。

 文部科学省としてこのことだけでもどう思われるのか、もう一度お聞かせいただきたいと思います。

河村副大臣 先ほどから査問委員会のことを申し上げておりますが、現実にだんだんその事実が明らかになってきた。民間人を乗せてあんな緊急の浮上なんかが行われていることはわからなかったわけでございます。これも極めて遺憾なことでありまして、今後ともそういうことがあの海上で行われるとしたら、安全な地域だということでなくなるわけでありますから、その時点で考えなきゃいけない問題だと。

 ただ、あの辺は今までそういうことだということで、先ほどの共産党の児玉委員からも御指摘あった三団体からの要請も、あそこは非常に治安のいい立派なところで、いいところなので、我々にとっても非常に大事なところなので、今後もひとつ安全に頼むという強い要請、申し入れてくれということが来ておりますから、その前提に立って、今交渉いたしておるわけでございます。

 そういう意味で、査問委員会での事実が明らかになっていくことによって、それに対する対応というのはやはり考えていく問題も出てくるであろう、そのように考えているわけでございます。

山内(惠)委員 今のお言葉で具体的に道が開かれることを、それでは期待したいと思います。

 私はどうなのかわかりませんけれども、このハワイのオアフ島の沖合は、海域が穏やかで、それから治安もよくて、大変良好な漁場で、そして休養地にも適している、そんないいところだという意味では、私も本当にいいところではあると思いますけれども、それにしても、軍民両方の船の過密地域であるということを考えたときに、これはどうなんでしょうか、実習船がその土地に行くということ、その地から撤退するということは考えないで、安全性の方を追求していかれるんでしょうか。

河村副大臣 この地域はこれまで効果も上がっているところでございますから、やはり安全性ということをまず第一に考えなきゃいかぬ。

 あそこは実習の地域ではなくて航行の地域、これも実習といえば実習でございますので、その航路をまた考えるとか、方法は今後の査問委員会の結果によっていろいろ考えられるのではないか、このように思います。

山内(惠)委員 今のお答えの部分、これからの安全政策というのをしっかりしていっていただくということを含めて、やはり追求をしていく必要がある事項だというふうに思います。

 それにしても、きょうの新聞記事、テレビでのニュースを見ておりまして、今回、アメリカの追及を見ていても、お答えになられる人の様子を見ていても、もしかしたらワドル艦長ら三人に責任をとってもらうことで終わるのではないかという、ちょっと疑念が残るような報道がされているだけに、これだけの事故ですから、アメリカの海軍の上層部の責任は問われなければならないと私は思うのですけれども、そのことにつきましてはどのようにお考えでしょうか。

河村副大臣 これはアメリカ政府がどういうふうにお考えになるかということであろうと思いますけれども、これは政府全体、日本対アメリカの間の関係の問題でございまして、事故を起こしたらその責任をとるというのは、私はどう考えてみてもそれは当然のことであろうと思いますが、アメリカにはアメリカのやり方があろうと思います。

 しかし、我々としては、だれか、どういう形でこの問題に対しての責任をおとりになるんだろう、こういう思いがあることは事実でございます。

山内(惠)委員 たくさんの皆さんの質問の中から、文部科学省がやるべき道筋が少しずつ見えてきていると思いますので、高校生、大学生がこれから安心して実習できるように、安全ということに全力を挙げて努力していただくことを期待しまして、この質問については終わらせていただきます。

 この後の私の質問につきましては、できれば町村大臣に直接お伺いしたかった問題ではあるんですけれども、事情が事情ですので、副大臣にお聞きしたいと思います。

 二月の二十六日、北海道の教育委員会が、一九七一年に北教組と道教委間で締結した協定書の部分を削除するという一方的な提示をしております。

 そのことについてなんですけれども、二月の十四日、衆議院の予算委員会で、佐藤静雄議員の質問に対して、大臣は、早急に全面的に破棄されることが必要だとして、道教委に強く指導する、指導を徹底したいと答弁されたそうですが、それはなぜだったのでしょうか。

河村副大臣 これまで北海道においては、学校における国歌あるいは国旗、そうした指導あるいは学校の管理運営、これが適正に行われていない、その背景として四六協定というものがあるというふうに認識をしておるわけでございます。

 この四六協定は、管理運営事項を交渉の対象とするというようなことでございますが、これは明らかに法令に違反するものもありますし、また、学校の管理運営における校長の権限を著しく制約する事項が含まれておる。このような不適切な協定が教育委員会と教職員団体の間で結ばれていること、これは極めて遺憾であると大臣は考えてこのような答弁をされ、このために、文部科学省としては、これまでも四六協定の破棄については、北海道教育委員会を指導してきておるわけでございます。

 先月の二十六日に、北海道教育委員会が四六協定の一部削除を北海道教育委員会に提示した、今御指摘のとおりでございます。文部科学省としても、北海道の教育の正常化のためには、学校の適正な管理運営の妨げとなっているこの四六協定、これは早急に破棄することが不可欠であるという認識に立っておるわけでございまして、今後とも北海道教育委員会に対する指導の徹底に努めてまいりたい、このように考えておるわけであります。

山内(惠)委員 北海道の教育が正常化されていないと押さえられていることに、私は強く抗議をしたい内容です。

 この協定書は、国立及び公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法、給特法と言っているのでしょうか、この施行に当たって、地方公務員法第五十五条に基づいて労使間で交わしたものであるということを御存じでしょうか。

河村副大臣 そのように伺っております。

山内(惠)委員 地公法の第五十五条に基づいたこの北海道の協定書、覚書というのは、合法的なものだと私は押さえています。これを、この協定書、覚書が結ばれた歴史的経緯を無視して今回破棄させる、このことは大変問題だというふうに思います。この部分についていかがお考えでしょうか。

河村副大臣 確かに、地方公務員法第五十五条にのっとって形式は踏まれたわけでございますが、現実問題として、例えば「帰省の場合は自宅研修扱いとし、年休届は必要ないものとする。」とか、あるいは第二項の七の「事務職員については、教職員に準じた扱いをする方向でさらに交渉を継続する。」このようなことであるとか、それから、校長の権限を制限すると言われる第十一項の「勤務条件にかかわるものはすべて交渉事項とし、その際当事者能力を有する各対応機関が交渉対応者たることを確認する。」さらに、教育委員会の権限でもございますが、第十二項の「条例施行にともなう通達については、両者確認の上発するものとする。また、今後学校管理規則等の改正については、」これは教育委員会の権限になっておりますが、「組合との交渉で行う。」このような問題について、まず非常に問題であるということで指摘をしているわけであります。

山内(惠)委員 協定書が結ばれた背景には、教職員というのは本当に毎日毎日残業、小学校の先生の中にも中学校の先生の中にも、学校で仕事をしている間にトイレに行く暇もないというぐらい忙しいという現状にあります。そういう状況の中で、給特法で教職員の時間外手当の支給を廃止して、給与の四%を調整額として支給するということが出されたことにあります。

 このときに、教職員組合としては、教職員の超過勤務は膨大なもので、その手当を抑制する、本当に、極めてこれは不当な法律であるというふうに主張しました。事実、どんなふうに超勤しているか、一人一人記録しているものを出したりして話し合いを続けたと聞いています。

 そういう中で、超過勤務などに一定の歯どめをかけるために、原則として校長は時間外勤務を命じないなどのルールを決めてきた。そして、長期休業中は原則として校外研修日とする、今おっしゃったように、帰省の場合は自宅研修扱いとするというふうに、そのような話し合いの中で決めてきた協定書です。

 実際に、皆さん、長期休業中、例えば私が私的に自分のお金で海外に行ったとします。行ったこと自体もすべて、私が海外で見たことは、何も子供たちに伝えようとは思わないで見てきたことでも、例えばショッピングしたとしても、海外で自分は必死に英語を使い、海外の文化を知り、そして帰ってくる。そして、授業をしているときに、ぱっと出てきた国があって、私が行っていた、そしたら、その国で見たことを報告できる、そういうときもあります。その意味で、校外研修日とするということは、大変重要なことを決めたと思います。

 余りたくさん海外に行っていませんけれども、私の見た何カ国かの中では、午前中は授業にする、午後は、先生方どうぞ自由に研究してくださいということがまとまっている学校もニュージーランドやスウェーデンなどで見てきています。子供たちも、朝来たらティータイムというのが最初にあって、そして午前中お勉強をして、午後からは音楽会へ行く、それから演劇を見る、いろいろな活動の時間に充てている。ときによっては、先生もついていっていることもあるのだと思います。

 そのように、私の後輩たちが学校で自由な時間が持てることこそ、教育内容が充実し、子供たちに伝えるものも豊富なものを与えられるというふうに思います。そういう中で相談をし、話し合いをしてできた協定書です。それを一方的に破棄するというのは、そこで仕事をしている人たちの考え方を余りにも無視するものではないでしょうか。

 先ほど、特にトイレにも行く時間がないという例、これは一例では全然ありません。あしたの授業のために授業の準備をし、授業が終わったら、子供たちがどうだったのか一言感想をもらったり、テストを見たり、それからそれを記録したり、自分の反省をしてという時間です。特に今は忙しい学期末に入っています。学期末ともなれば、通知表の季節ですから、また何日間も睡眠時間を減らして仕事をしています。

 そういう中で、振りかえ休日なんというのは、一人一人に権利として何日というのがあったとしても、それを実際に簡単にとれるような状況にないという学校現場の状況を御存じでしょうか。

矢野政府参考人 少し技術的な内容でございますので、私の方から御説明をさせていただきます。

 四六協定が締結された経緯は、委員の御紹介のあったとおりでございます。

 ただ、この四六協定には幾つかの問題があるわけでございまして、確かにこの四六協定は、地方公務員法に従った形で、そういう経緯の中で結ばれたものでございますが、先ほど副大臣から申し上げましたように、まず内容として、地方公務員法第五十五条そのものに反する内容が含まれているわけでございます。

 改めて御紹介いたしますと、地方公務員法第五十五条第三項では、「地方公共団体の事務の管理及び運営に関する事項は、交渉の対象とすることができない。」というふうに明記されているところにもかかわりませず、四六協定では、第十二項におきまして、「今後学校管理規則等の改正については、組合との交渉で行う。」という形で、明らかに地公法第五十五条第三項に反する内容が含まれているというようなことがあるわけでございます。

 さらに、学校の管理運営に関する校長の権限を著しく制約する事柄がかなり含まれているところでございまして、これは先ほど委員が御紹介ございましたけれども、例えば「長期休業日は、原則として校外研修日とする。」そういう内容のものがあるわけでございます。これは、長期研修につきましては基本的には、服務監督権者である校長の承認を要するわけでございますけれども、そういう服務監督権者の校長の権限が機能しない形で規定されている、こういう問題があるものでございますから、さきの予算委員会におきましても、こういう内容を含んだ協定は大変問題があるので速やかに破棄される必要があるということを大臣が申したわけでございます。

山内(惠)委員 たくさん申し上げたいことがあるのですけれども、時間がありません。

 それにしても、学校現場がどんなに忙しい状況かを知っているかどうかを質問しましたのに、そのことをお答えいただけなかったことをすごく残念に思います。それから……(発言する者あり)みんな忙しければなおのこと、日本はもっと労働時間を短縮していかなければならない。このことは、子供たちの親の働き方から見ても、そこは本当にそうなっていかなければならないと思います。

 例えば修学旅行のときのことを言いますと、養護教員の方も事務職員の方も一緒に行っています。そして、子供たちが浮かれている状況を抑えながら、あしたの見学があるのだから寝なさいというようなことで回ると、教職員は眠る時間もないまま、例えば二泊であれば前後三日間、大変な思いをしてつき合って、子供たちに勉強をさせてくるわけです。本当のことを言って……(発言する者あり)不規則発言はおやめいただきたいと思います。

 私は、こういう状況にいる教職員に対して、御苦労さまとこそ言っていただきたい。本当に必死で、子供たちの夢や何かをつくるための、いろいろな思い出の一ページをつくるための努力をしている。特に、この二月、三月はそういう時期でもありました。

 そういう状況の中で、今度はまた教職員に関する実態調査を文部科学省が依頼したということです。さっきの協定書の問題もそうですけれども、こういう調査を文部省は今まではしていなかったはずです。是正指導というような形はあったかもしれませんけれども、このような異例なことを、この大変な二月、三月期にやるということ自体が問題だと思います。

 時間がありませんので、先ほど触れられた国旗・国歌法案にかかわってですけれども、国会ではこの扱いを、法制化も学校教育における今までの取り扱いを変えるものではないとおっしゃっています。しかも、単に卒業式、入学式の儀式をめぐって国旗・国歌のありようを考えることよりも、法制化したときは、教育の中で正確に教えていくことの重要さの方を強調した答弁を、当時、野中内閣官房長官からいただいています。これを訂正しているわけではないでしょうね。恐れ入ります、短い時間で、訂正するのかということをちょっとお聞きしたいと思います。

矢野政府参考人 国旗・国歌制定以前から、私どもといたしましては、国旗・国歌の取り扱いについての指導を進めてまいっておりますし、国旗・国歌制定後につきましても、同様の指導を続けているところでございます。

山内(惠)委員 今お答えになっていらっしゃいますけれども、このように強制的とも言えるようなやり方が、この間、全国に蔓延していたんじゃないかと私は思っています。

 そして、今回の調査です。思想調査とも思えるような、そして強制するような内容の調査です。これは、個人だけの回答ではなく、市町村の委員会も回答するものだと思いますけれども、こんなに厚い調査です。この調査を文部省が依頼してということは、大変異例なことだと私は思っています。

 本当は、超勤にどんなに時間をかけているか、自宅にどんなに仕事を持っていっているか、そういう調査を見てからこのことを考えていただいた方が、もっと現場の人々の心にこたえる調査ではなかったかというふうに思います。その意味で、この調査は撤回していただきたいというふうに思います。

 時間がありませんので、急いで申し上げます。

 今回の調査には例示が書かれています。「教職員の勤務及び勤務時間分野」では、「休息休憩の実態」として、勤務時間の終わりに休息時間を置いている場合、過半数の教員が休憩時間中に退勤しているとか。これは例です。それから、勤務時間に非行生徒への、これはかぎ括弧をつけていただきたい言葉で、私たちは問題行動と言っていますけれども、非行生徒への深夜の指導ができず支障がある、職員会議の延長が困難な場合があるなどというのを事例として書いているのですけれども、私は悪意に満ちた事例だというふうに思います。

 例えば、勤務している八時間労働の中に休憩休息の時間を入れるというのは労基法でも保障しているようなことですから、本当は、そのことを問うよりは、休憩室があるかという質問の方をしていただきたかったと思います。

 私が勤務していたときには、休憩室がなくて、この時間、勤務の話し合いの結果、管理職は教育委員会と話し合って、休憩室を男女別につくりました。どこにつくったかというと、階段の下の小さなところに、畳一畳半ぐらいの小さなところを、やっとやっと、立てば頭がぶつかるような、そんな場所をつくったという現状にありますから、ない学校はまだまだあると思います。

 それを、例えば、先ほど申し上げましたように、勤務時間の中に休憩休息の時間をとるとしたら、どこでとるというのですか。はっきり言って、給食時間も、子供たちは本当に最近ちょろちょろ立って、一斉にごちそうさまができないような状況にあります。そして、それから休憩。休憩の時間をもしそこでとるとしたらどうなるかというと、実は、お昼時間にお掃除をするという学校もいっぱいあります。そうすると、休憩時間、一部の子供はグラウンドに行きますけれども、そうでない子供たちはお掃除をする。そうすると、私たちは、休むどころか、その清掃指導にも当たります。

 学校で休息や休憩ができる場がなく、連続で仕事を続けてきているわけですから、このように休憩時間を勤務の後につける例があっても当然だというのが、今までの話し合いの中にあった出来事です。それをだめだと言うのであれば、全国の学校に休憩室をしっかりつくって、本当に睡眠がとれるような施設をこそつくっていただきたいと思いますが、保健室で、頭痛がして休むような場所しかないという学校がいっぱいあるんですよ。お笑いになっていらっしゃる方、学校を一度点検されたらいいと思います。

矢野政府参考人 委員は休息時間のケースの問題をお取り上げになりましたけれども、これは実態として、休息時間を勤務時間の最後に置いて早期に退勤するといったような、そういう問題事例があるということを踏まえて、これは御案内のとおり法令の趣旨に反するわけでございます、そういう事例があることを踏まえて今回の調査をするものでございます。

 この調査について、一点御理解いただきたいわけでございますが、これは昨年の十一月、本院の文教委員会及び参議院の文教科学委員会におきまして、北海道における学校の教育活動あるいは管理運営に関するさまざまな問題点や実態把握の必要性が指摘されたところでございます。このため、文部科学省といたしましては、北海道における教育の問題の改善を図るためには、その実態や事実関係を十分に調査することが必要であると考えまして、昨年の十二月に、北海道教育委員会に対し、必要な調査を行うよう求めたところでございますので、どうぞこの調査の意義について御理解をいただきたく存じます。

山内(惠)委員 事例の件につきましては、何の反省のお言葉もいただけませんでしたけれども、北海道では、こんな悪意に満ちた事例はないということで相当のおわびか何かをしているはずです。この事例は大変問題だったというふうに思います。

高市委員長 山内惠子君、申し合わせの質問時間を過ぎておりますので、御協力をお願いいたします。

山内(惠)委員 はい。

 教職員の皆さんと学校現場、本当にぎくしゃくしないような学校現場にするためにも、本当は超勤実態の方こそ調べていただきたかったというふうに思います。そのことは、要望していても、なさっていなかったというのが現状じゃないかと思います。

 これから総合学習も始まります。学校現場が自由な会話で本当に生き生きとしたものになるためには、このような実態調査は、本当に疑惑をこそ生むものであって、温かな職場をつくるものにはならないのだということを申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。

高市委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時九分散会




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