衆議院

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第22号 平成13年6月27日(水曜日)

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平成十三年六月二十七日(水曜日)

    午前十時開議

 出席委員

   委員長 高市 早苗君

   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 高橋 一郎君

   理事 平野 博文君 理事 藤村  修君

   理事 西  博義君 理事 都築  譲君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      河村 建夫君    左藤  章君

      砂田 圭佑君    谷垣 禎一君

      谷田 武彦君    谷本 龍哉君

      馳   浩君    林 省之介君

      増田 敏男君    松野 博一君

      水野 賢一君    森岡 正宏君

      大石 尚子君    鎌田さゆり君

      葉山  峻君    肥田美代子君

      牧  義夫君    松沢 成文君

      山口  壯君    山谷えり子君

      山元  勉君    池坊 保子君

      斉藤 鉄夫君    武山百合子君

      石井 郁子君    児玉 健次君

      北川れん子君    中西 績介君

      松浪健四郎君

    …………………………………

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   内閣府副大臣       仲村 正治君

   文部科学副大臣      青山  丘君

   文部科学副大臣      岸田 文雄君

   経済産業副大臣      古屋 圭司君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   文部科学大臣政務官    水島  裕君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   興  直孝君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策

   局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育

   局長)          矢野 重典君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長

   )            工藤 智規君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学

   術政策局長)       大熊 健司君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長

   )            遠藤 昭雄君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長

   )            今村  努君

   政府参考人

   (厚生労働省医政局長)  伊藤 雅治君

   政府参考人

   (厚生労働省雇用均等・児

   童家庭局長)       岩田喜美枝君

   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二十七日

 辞任         補欠選任

  杉山 憲夫君     左藤  章君

  山内 惠子君     北川れん子君

同日

 辞任         補欠選任

  左藤  章君     杉山 憲夫君

  北川れん子君     山内 惠子君

    ―――――――――――――

六月二十五日

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(中山義活君紹介)(第三九四三号)

 サッカーくじの実施計画再検討に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四一四九号)

 同(石井郁子君紹介)(第四一五〇号)

 同(大森猛君紹介)(第四一五一号)

 同(木島日出夫君紹介)(第四一五二号)

 同(児玉健次君紹介)(第四一五三号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四一五四号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第四一五五号)

 同(中林よし子君紹介)(第四一五六号)

 同(春名直章君紹介)(第四一五七号)

 同(藤木洋子君紹介)(第四一五八号)

 同(松本善明君紹介)(第四一五九号)

 同(山口富男君紹介)(第四一六〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件

 大阪教育大学教育学部附属池田小学校における児童等殺傷事件に関する件




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     ――――◇―――――

高市委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官興直孝君、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、科学技術・学術政策局長大熊健司君、研究振興局長遠藤昭雄君、研究開発局長今村努君、厚生労働省医政局長伊藤雅治君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田野瀬良太郎君。

田野瀬委員 自民党の田野瀬良太郎でございます。大臣初め答弁者の皆さん方には、どうぞよろしくお願いいたしたいと思います。

 今、小泉内閣のもとで、各種構造改革がいよいよ断行されようといたしておるところでございます。今、日本は深刻な少子高齢化社会に見舞われておりまして、七、八年前、一学年二百万人ほどおったと思うんですが、あと五、六年から七、八年たちますと百二十万、どうかすると百万、約半分になろうといたしております。逆に高齢者が、私から言うまでもなく、大変な数にこれから上っていくわけでございます。私は団塊の世代のはしりでございますが、昭和二十二、三年、二十四、五年生まれの団塊の世代が七十歳代、八十歳代に入ってきたとき、若者がどんどん減っていく、そういったお年寄りがどんどんふえていく、その時代を想定したときに、そら恐ろしい気がいたすわけでございます。

 景気が悪くなるのも当たり前でございますし、そこへ持ってきてダブルパンチでございまして、大変日本は賃金が高うございます。どんどんと世界各国にメーカーが出ていって、産業の空洞化、これも深刻な問題でございます。安い賃金のもとで安い商品をつくって逆に日本に輸入するという、このことにつきましてもダブルパンチでございますが、ここのところへ来て、確かに日本は、体に例えるならば、弱ってきて老体化してきた、脂が回ってきてぜい肉がつき過ぎた、早く構造改革を断行して、脂を落とし、ぜい肉を落とし、若い体にし、ばねのある体にして、再びあの活力ある日本をよみがえらせなければならない。そういった各種構造改革はいよいよ断行しなければならない時期に来ておりますし、非常に小泉内閣に期待をいたすところでございます。

 一方、非常に大事なことは、この各種構造改革の断行を進めるに従って、企業は倒産し、失業者がふえ、一時期大変なことになることも一方で懸念いたすわけでございまして、私は、そういった企業倒産あるいは失業者を吸収する、すなわち、新しい産業を早急に生み出していく新しい科学技術の振興、研究開発、これに力を入れていく、構造改革を断行しながら新しい産業を生み出していく、そういう科学技術の振興は喫緊の課題であると。

 そんなことで、科学技術会議、国民会議が創設され、内閣府に新しい大臣も創設されておるんですが、私は、やはり文部科学省の占める責任も非常にこれから大なるものがあろうかと思います。まさに私は、各種構造改革とともに科学技術創造立国、これを敢然と推し進めていかなければならない、このように認識をいたしておるんですが、改めまして、その辺の御認識につきまして大臣の所見をまずお聞きいたしたい、このように思います。

遠山国務大臣 これからの日本にとりまして、科学技術立国、科学技術創造立国ということはまことに重要な意味を持っていると思います。本年三月三十日に閣議決定されました第二期科学技術基本計画、この中でその重要性が分析されておりますけれども、これに基づいて、科学技術と学術のそれぞれの特性を生かしながら、創造性に富んだ世界最高水準の研究成果の実現を目指していかなくてはならないと考えております。

 特に、政府の研究開発の主体を担うという立場に立って大学や各種研究機関などで独創的な基礎研究を推進するとともに、それを技術につなげていく応用力というのも非常に大事だと思っております。同時に、ライフサイエンスでありますとか情報通信など、重要分野の研究開発を推進することといたしております。宇宙開発でありますとか原子力など、国の存立にとって基盤的であるものの、リスクがあって長期にわたり国として取り組むべきプロジェクトも、着実に進めていかなくてはならないと考えております。

 同時に、これらを実行するためには科学技術システムの改革が必要でありまして、そのことについても幾つかの柱立てをして取り組んでいるところでございます。

 今後とも、先生の御指摘のように、科学技術と学術の振興によって、我が国が直面する経済、社会のさまざまな課題を克服して、我が国の明るい未来を切り開いて、科学技術創造立国の実現に向けて精いっぱい努力してまいるべきと考えております。

田野瀬委員 そういうことで、大臣も並々ならぬ決意を今披瀝していただいたところでございますが、現実は非常に厳しいものがございます。

 私はきょうは、この委員会のために委員の皆さんにも資料を配付させていただいたんですが、ぜひ一遍、まずこの資料、「理科好き算数好きが少ない」というこの調査をちょっと見ていただきたいのです。なるほど成績は、理科、数学、中高校生、世界一レベルではあるんですが、好き嫌いということになりますと、日本は最下位に近いんですね。小学生にしても、中学生にしても、高校生にしても、この資料を見ていただいたらもうはっきりと、歴然とわかるわけでございますが、成績はいいんだけれども、理科、数学は大変嫌いだという生徒が多い。理科好き、数学好きの生徒数は最下位に近い、こういうデータが出ておるところでございます。

 また、科学技術に対する国民の関心度の、「OECD加盟国民の科学技術への関心比較指数」というデータも皆さんに配付させていただいておるんです。これも、日本はいずれの指数も最下位になっておるところでございます。また、IMDによる各国の大学の世界競争力ランキング、これも日本は最下位。

 これらを見たときに、いよいよ、科学技術創造立国だと言いながら非常にお寒いゆゆしき現状にあるのではないか、このように私は認識をいたしておる次第でございます。

 この辺のところの文部科学省としての御認識、あるいは今後どう取り組んでいかなければならないのかといったことについて、今どういう見解にあるのかお聞きをいたしたい、このように思います。

青山副大臣 まさに、我が国にとっては知的創造力が非常に重要な資源でございまして、今お示しいただきましたように、各種指標では成績はそんなに悪くないのに、好きか嫌いかと言われたらむしろ嫌いな方である。科学技術及び理科離れが現実的に非常に進んできておるということに対して、私どもは非常に憂慮しております。

 そこで、新しい学習指導要領によりますと、観察、実験や課題学習などを通して児童生徒の学ぶ意欲、この意欲が非常に重要なところでございますが、学ぶ意欲や知的好奇心、探求心を高めていきたいと、理科や数学好きな児童生徒がふえるような内容の改善を図っているところであります。また、中学校や高等学校において、選択学習の幅を拡大して、生徒の興味、関心、能力に応じて、理科や数学などについて発展的に学習することができるようにしているところであります。さらに、総合的な学習の時間においても、観察、実験、それから自然体験、問題解決的な学習、こうした課題に取り組んでいくという問題解決的な学習が行われるようにしているところです。

 今回の省庁再編によりまして、そのメリットをぜひ生かしていきたい。そういう意味で、科学技術関係の研究機関に蓄積されております最先端の科学に関する情報を活用いたしまして、児童生徒にわかりやすく理科を教えるためのデジタル教材、これを授業で効果的に活用していきたい。そのためには、教師用の指導資料というものを新たに作成することとしております。指導者の方にも、そういう意味で学んでいただきたい、そして子供たちに興味を持っていただきたい、そういうところでございます。

 特に、田野瀬議員には、このたび、科学技術・理科離れ対策小委員会の方で報告書をまとめていただきました。新学習指導要領の趣旨の実現のために努めていきたいと考えておりますし、教員の指導力の向上や理科教育設備などの整備の施策を通じて、理科離れ、数学離れの対策をこれから進めていきたいと思っております。

田野瀬委員 青山副大臣から御答弁いただいたのですが、また我々国会としても、政府と一緒に全力を挙げてこれに取り組んでいかなければならない、そのように私も認識するわけでございます。

 今の青山副大臣の御答弁は小中高に限っての御答弁でございましたので、さらにもう一度、先ほど私申し上げましたように、国民の関心も世界一低い、特に高等教育機関、大学の競争力が世界最下位。この間からの富山大学、山形大学の入試結果の報告のあの一件ですね、これはもう高等教育のたるみのきわみだと私は思います。考えられない。一般企業だったら一遍につぶれてしまう、ああいうことをやりますと。ちょっとしっかりと一遍活を入れていただいて、大学の競争力が非常に落ちておる、落ちておるというか、最下位であるという世界の評価を、副大臣、どう認識しておるのか。もう一度、再度、国民の意識の低さ、大学の競争力の低さ、この間からのいろいろな事件を踏まえて、御答弁を賜りたいと思います。

青山副大臣 御指摘の点は全く同感でございます。民間企業であったらこのようなことは恐らく許されないというようなことが続きました。

 ただ、国民の立場ででも、科学技術、理科離れが心配されておりまして、そういう意味では、今学校における学習指導要領の件について申し上げましたが、やはり文部科学省といたしましては、難解と思われる、困難と思われるような最先端の科学技術をできるだけ身近に感じてもらいたい、科学技術に夢を感じていただきたいと。

 そういう意味で、来月、七月九日から、日本科学未来館が臨海副都心において開館されることとなりました。今その準備を進めているところでございますが、毛利宇宙飛行士に館長になっていただいて、そしてまず子供たちから、それから子供たちを引率する親御さんたちまでも、幅広く、科学、そして日本の未来に対する夢や希望を持っていただけるように、科学未来館をぜひひとつ活用していただいて、青少年も含めた国民の科学技術に対する関心を高めていっていただけるように取り組みたいと考えております。

田野瀬委員 そこで、先ほど青山副大臣から御紹介いただきましたように、私ども自由民主党といたしましても、科学技術庁と文部省が一緒になったこの機に、私は、今まで視点がややもするとなかったのではないか、おくれておったのではないかと思われる、科学技術者の卵をどう育てていくのかという視点、これに基づいて、科学技術・理科離れ対策小委員会なるものを立ち上げました。過去十回、けさもその小委員会を、最終日を迎えての小委員会を開いてまいったのですが、小委員会を立ち上げまして、過去十回にわたりましていろいろと協議をした結果、その取りまとめを見ることができました。

 それに基づいて、この席でこれから何点か提言をさせていただきたい。それについての見解あるいは提言をまとめさせていただいているのですが、それを何としても実現させていただきたいというのが我々の願いでございまして、それについて、これから御見解を賜ってまいっていきたい、このように考える次第でございます。

 まず、私どもは、今後五年間で、政府研究開発投資を総額約二十四兆円、これから五年間、投ずるということになっておるのですが、この政府研究開発の投資費一%に相当する額を、私は、科学技術、理科教育の振興、あるいは科学技術、理科離れ対策のための施策の充実にぜひひとつ使っていただきたい、こういうことをまず提言申し上げておるところでございます。

 そして、さらに具体的な施策として、まず第一点目を申し上げたいのですが、青少年の科学の夢、まず子供たちに夢を持たさなければならない、このように思うわけでございます。その夢をはぐくむために、現在ロボットコンテストというのを、全国の中学校約二千校が参加して、最近なかなか大々的になされておるのですが、これを科学の甲子園のようなものに、一大イベントとして国としても位置づけて積極的に応援していってはどうか、このように考えます。

 さらに、加えて、この種のコンテスト、あるいは甲子園、あるいはオリンピックと称して、日本の数学オリンピック、財団法人があるらしいのですが、これにももっと強力に国として支援して、日本数学オリンピックを育てていく。

 私はいろいろと現場の先生方に聞くのですが、優秀な科学技術者、研究者になるための素地は中学時代の数学にあると聞くわけでございます。中学時代の数学、中学時代に数学に非常にすぐれていると研究開発者志向につながっていく、最も大事なのは中学の数学だ、こう聞いておるのですが、中学、高校の日本数学オリンピック、これをもっともっと育てていってはどうか。あるいは、IT時代を迎えて、ITのソフトウエアの開発等についての表彰を行う、そういうものの甲子園というようなものも創設し、育てていってはどうか。このように私なりに夢を描き、そしてこの小委員会の取りまとめに入れさせていただいておるところでございます。

 繰り返しになりますが、ロボコンの甲子園、ITソフトウエアの中高等学校における甲子園、あるいは日本数学オリンピックを全面的に支援していく、こういった提言をぜひここでさせていただきたいのですが、いかがなものでしょうか。

青山副大臣 まず、ITのソフトウエアに関する科学の甲子園の提案が第二点目にありましたが、本当に家庭や学校においてITを理解して活用する能力を身につけていかなければならない段階に来ましたので、そしてソフトの面で、開発をされたその研究の成果や努力の成果というものを発表する機会、御提案の趣旨を踏まえましてこれから発表する場を提供するということについて考えていくことは、実は私どもも非常に意義があることだと思っております。

 ただ、従来も実施してきておりまして、「科学の祭典」というイベントがありますが、青少年の創作活動について発表する場として、その活用を一層充実していくために、まず支援をしていきたいと考えております。

 それからもう一つは、ロボットコンテスト、科学のそういう意味での甲子園ということがありましたが、ロボットの製作や操作を通じて物づくりのおもしろさを学んでいただくことは、将来有為な人材を育てていく意味で非常に意義があることだと私どもも理解しております。そこで、地区の大会、それから全国大会、物づくりに取り組む青少年にとって夢と目標を持ってもらう、そういう意味でまさに晴れの舞台として、そういうときに大臣賞を授与していくとか、積極的にその開催の支援を私どもとしては進めていきたいと考えております。

 ロボット創造国際競技大会、実はこれが本年七月から十一月にかけて関西及び神奈川県で開催されることになっておりますが、これはまさに、ロボット競技に取り組む青少年にとっては晴れの舞台、ひのき舞台として、彼らの研究の成果を幅広い国民の皆さんに見ていただくことのできる、極めて意義深い大会ですので、教育的な効果が高いという意味で、国際フォーラムを開催するなど、ぜひこの大会を支援していきたいと考えております。

 それからもう一点、数学のコンテストについてでありましたが、実は平成二年以降、既に十二回、日本数学オリンピックが開催されておりまして、中学生、高校生の約千人から千五百人ぐらいが参加して進められております。

 この日本数学オリンピックは、生徒の数学に対する興味や関心を高めて、論理的思考力を伸ばしていく、創造的な思考力を伸ばしていく、こういう意味で非常に意義深いものと私ども認識しております。その意味で、この大会の周知をさらに図っていきたいと考えております。

 ロボットコンテストや数学オリンピックについては、その充実のために積極的に支援していきたいと考えております。

田野瀬委員 ぜひひとつインセンティブのあるものにしてやっていただきますようにお願いしておきたいと思います。

 次に、専門的知識、技術を持つ科学者や企業の研究者、あるいは科学技術の普及啓発に関心を有する研究者、技術者、あるいはシルバーボランティア、技術者のシルバーさんですね、こういった人材バンクを整備いたしまして、本物の科学技術者を、全国各地の講演会あるいは実験教室、あるいは小中高等学校に魅力のある授業としてそういった人材をどんどん派遣していくという制度、これを一層強固なものにしていただくことが科学技術、数学教育の充実に非常につながると私は思うわけでございますが、このことにつきまして、学術政策局長さんがいいでしょうかね、どうぞ。

大熊政府参考人 御説明をさせていただきます。

 先生御案内のとおり、青少年にとりまして、第一線の研究者、技術者と直接触れ合うこと、これはもう、科学技術活動に青少年が将来携わろうとする志を強める、あるいは科学技術に関する探求心を養う上で大変大事、有効である、こういうふうに思っております。当省におきまして、こうした研究者や技術者の方々をサイエンスレンジャーという名前で登録をさせていただいておりまして、要請に応じまして全国各地の実験教室等に派遣をしておりますし、また、実験教室の開催の支援も行っております。

 具体的な事例をちょっと申し上げますと、登録者として百七十人を超える方々を登録させていただいておりまして、サイエンスレンジャーの出動回数、これは昨年、十二年度でございますけれども、合計三百四十回ぐらい出動をしております。

 もう一つ新しい試みとしまして、先ほど青山副大臣から、七月に日本科学未来館を開館しますという話をさせていただいておりますが、その科学未来館におきましても、一流の研究者、技術者を講師とする科学技術講話を定期的に開催したい、こういうふうに思っております。また、研究者、技術者の方々にボランティアとして、これまた登録させていただいて、展示の解説とか実験教室の講師として積極的に参加してもらおう、こう思っております。

 実はボランティアの登録についてちょっと呼びかけをしまして、現在のところ、登録をしたいというボランティアの方々が百六十人近く出てきております。

 そういうことで、こうした取り組みを通じて、研究者、技術者の方々と青少年が直接触れ合う機会、これをより充実させていきたい、こういうふうに思っておるところでございます。

田野瀬委員 次に、今いろいろな施策を提言させていただきましたし、私の取りまとめにはそのほかいろいろと提言させていただいておりますので、それをぜひひとつ見ていただいて、生かしていただきたいと思うのです。

 そういった、科学技術、理科離れ対策、いろいろな施策をやっていっても、尽きるところは、高校二年生、三年生のときの進路を決めるときに、科学技術系に進むか文系に進むか、ここが一番大事なところなんですね。これは、幾ら科学技術、理科対策をやっても、進路が文系の方に行ってしまうと何にもならないわけでございます。そんなことで、科学技術者、研究者、優秀な科学技術者、研究者をつくる、そういったところに資する高等学校、こういう高等学校をスーパー・サイエンス・スクールなるものに指定をして、そして一層支援していくというような方法を、科学技術、理科の、あるいは数学の教育と同時に、その進路にも照準を合わせた、そういう施策が非常に大事ではないか。

 非常に優秀な、超優秀な子たちは今医学部へ、科学技術の方に進むのですが医学部へ行くという傾向にあります、本当に優秀な、センター試験で七百五十点以上とるような子たちが。そして、さらにその先、どこに行くのかというと、町医者を目指すんです。バイオサイエンスの方の研究者になっていくのならまだしも、そっちを向いて目指すという傾向があるんですね。さらには弁護士だとか会計士だとか、なかなか、ロボットの研究だとかロケットの研究だとかあるいはバイオだとか、そういった方向に向かおうとする生徒が、ややもすると違う方向へ行ってしまうという傾向にあることを私はゆゆしく考えておるんですが、その辺のところについて、ちょっと教育局長、よろしく御答弁いただきたいと思います。

矢野政府参考人 将来有為な科学技術者の人材の育成に資するためのという観点で、このたびスーパー・サイエンス・ハイスクールの創設という御提言をいただいたところでございまして、文部科学省といたしましては、今後、この御提言の構想を踏まえまして、我が国の科学技術、理科教育振興策の一つとして、その教育内容等具体的な内容につきまして積極的に検討してまいりたいと考えているところでございます。

田野瀬委員 時間が参りましたのでこれで終わらせていただきますが、それ以外に、子供たちに科学技術者へのあこがれを持たせるということも非常に大事なことでございまして、私は、日本版ノーベル賞のような顕彰システム、これをぜひひとつ検討していただきたい。現在、日本科学賞だとか京都賞だとか、そういったたぐいのものがあるんですが、社会的認知が非常に足りないんですね。そういったものを育てると同時に、新たな顕彰制度も検討していただいて、子供たちに科学技術者、研究者に対するあこがれの念をもっと持たせるような、そういったことをぜひひとつ御検討いただくことを強く要望申し上げまして、質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。

高市委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文でございます。

 きょうは委員長の御配慮で、今国会で科学技術を中心とした議論をしていただく委員会を開いていただきまして、大変ありがたく思っております。

 そこで、きょうは、文部科学大臣ほか、内閣府、さらには経済産業省の方からもお越しをいただいておりまして、大変恐縮に思うところであります。といいますのも、何でこういうふうに他の省庁の方々に来ていただかなきゃならないかといいますと、非常に組織がわかりにくくなっている。今までだったら文部科学で一本でよかったんですが、物によっては経済産業省、あるいは物によっては内閣府に入っている、こんなことがあって、複数の副大臣の方にお越しをいただきました。大変恐縮ですが、私は、逆に運営上混乱を起こしていないかなという危惧もしてなりません。そんな質問もあわせてさせていただきたい、このように思います。

 それでは、まず、先ほど田野瀬議員におかれてもやはり、技術立国、こういうことで御指摘がございました。私も、資源の乏しい日本の国の将来を考えますと、何でもって発展をし、豊かな国にしていくかといいますと、やはり科学技術の発展ということが一番中心になっていく。しかし、それを支えていくのはだれだといいますと、やはり人である。そういう意味から、科学技術離れを起こしている若い学生の諸君の将来像を見ますと、危惧する点がうかがわれるわけであります。私も、そういうことを思いながら、もっと楽しい日本に、また教育内容を通じて、楽しい将来の夢を語れる、そんな人材をつくっていかなきゃならない、こういうふうに思っている一人でございます。

 そういう中で、最初の質問になるわけでありますが、今年度を初年度とする新しい科学技術の基本計画、五カ年計画で策定をされているわけであります。この基本計画について少しお聞きしたいと思うのでありますが、政府の投資の拡充と、効果的な、あるいは効率的な資源配分に盛り込まれた、いわゆる二十四兆円を五年間で科学技術分野について投資をしていきましょう、こういうことが出されているわけであります。

 その中身によりますと、平成十三年度より十七年度までの政府研究開発投資の総額の規模を二十四兆円とします、しかし、その前提はGDP比率一%、GDPの名目成長率が三・五%を前提とした試算形態であります。先日示されました経済財政諮問会議の報告によりますと、当面二、三年はゼロ成長を覚悟しなきゃならない、こういうふうな言い方をしておりますし、GDPの成長率を三・五とする、基本計画の前提となっております背景が早くもこの時点で崩れていっているのではないか、こういうことを私は思っております。

 したがって、そこで聞きたいわけでありますが、この二十四兆円という総額はどういう状態があっても堅持をされるおつもりなのかどうかを、まずお聞かせいただきたいと思います。

仲村副大臣 お答え申し上げます。

 政府研究開発投資については、三月三十日に閣議決定された第二期科学技術基本計画において、今後とも欧米諸国の動向を意識し、かつ、第一期基本計画のもとでの科学技術振興努力を継続していくとの観点から、対GDP比率で少なくとも欧米主要国の水準を確保する必要があるため、平成十三年度より十七年度までの総額の規模を約二十四兆円とすることが必要であるとされているところでございます。これは、第二期基本計画中に政府の研究開発投資の対GDP比率が一%、上記期間中のGDPの名目成長率が三・五%を前提としているものでございます。

 科学技術基本計画においては、財政の健全化が不可欠の課題である旨の財政の立場からの考え方も示されているところでございまして、このような観点を踏まえて、実際の研究開発投資については、厳しさを増す財政事情はもとより、科学技術振興の必要性を勘案し、基本計画に掲げる施策の推進に必要な経費の拡充を図っていくこととされております。

 基本計画が示す二十四兆円の確保は容易ではないかもしれませんが、科学技術創造立国を目指していく上では投資の拡充が求められているところであり、その実現に向けて努力してまいりたいと思っているところでございます。

平野委員 今のお話であれば、難しいかもしれないが努力するということですが、確保するのですかという質問に対しては、するというふうに答えられないのですか。

仲村副大臣 ただいまも御答弁申し上げましたように、二十四兆円の算出に当たっては、平成十三年度のGDPの名目成長率を一%程度とし、また平成十四年度以降については、平成十一年七月の経済審議会「経済社会のあるべき姿と経済新生の政策方針」をもとにしております。また、今年の一―三月期の名目GDP成長率は、対前年比で〇・六%増、昨年度の名目成長率は〇・六%減との月例経済報告が今月六月十四日になされたことを承知いたしておりますが、そのような中で、ぜひ欧米諸国の水準についていくためにはその目標の設定をしておく必要がある、こういうことを考えているところでございます。

平野委員 非常に見込み、見通しがわかりにくいということですが、少なくとも経済財政諮問会議では、当面はゼロ成長を覚悟でする、こういうことを言っている。片方、この二十四兆円の根拠というのは、GDP比率一%、名目成長率三・五%を前提として組んだ。しかし、それが組めなくなっている状況でも二十四兆円というのは確保しますか、私はこういう質問なんですよ。諸外国云々を言っておるんじゃないんです。日本の国内の状況は、担保した二十四兆円、こういう基準でやりますと言ったけれども、成長が当面はゼロ成長だ、こういう覚悟をすると言っているんですけれども、二十四兆円はキープします、こういうことなのかどうかを聞いているんですよ。

仲村副大臣 確かに経済の現状は厳しいものがございますけれども、この二十四兆円を目標に設定することによって我が国の経済の成長に大きく寄与していく、こういう考え方を持っているところでございます。

平野委員 二十四兆円と決めておるのに、その二十四兆円の背景に、重点分野八分野とか、そういうことをやはりベースに置いているんですよ。ということは、ただ単に数字が、前回の五年間は十七兆円でした、今度五年間は二十四兆円の考え方でいきましょうと。その前提になっているのは、そろばんはじいて前年比七兆円アップなんてことをやっていないんですよ。

 少なくとも、重点分野ということを決めて、この分野の中で新しいテクノロジーを開発しようと思ったら、八分野と置いているけれども、その中にもさらに、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジーという四つの重点分野を置いて、それを積み上げてきたら二十四兆円は要るんだ、こういう考え方でこれを決めたんじゃないんですか。それはどうなんですか。それなら、どこを削るんですか。

仲村副大臣 総合科学技術会議としては、三月三十日に閣議決定された科学技術基本計画に基づいて、国家的、社会的課題に対応した研究開発の重点化を行うため、専門調査会の機能を活用しつつ審議を行っておりますが、昨日、六月二十六日の総合科学技術会議においては、平成十四年度の科学技術に関する予算、人材等の資源配分の方針案について審議を行ったところでございまして、平成十四年度においては、科学技術基本計画において「優先的に研究開発資源を配分すること」とされております。それがいわゆる、今おっしゃったライフサイエンス、あるいは情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料などでございます。

平野委員 きょうの朝日新聞に出ていましたが、成果が出ていなかったり必要性が薄れていたりする研究は思い切って削減する方針だ、こういう話が出ているんですよ。そうすると、予算を含めて、こういう二十四兆円というあめを入れて、さすがだなと。一方では、成果が出ていなかったり必要性が薄れてきたりする研究は思い切って削減する方針だと。尾身大臣が、めり張りのある予算にする、来年度の予算計画ではそう言っておるんです。

 そうすると、きょう言ってあした成果が出るものと、さらに長い間、長期スパンで研究開発をしていかなきゃいかぬものと、いろいろあるんです。この話だったら、ああ切って張って、これで云々、それで聖域なき構造改革をするんだという発想で、もし科学技術とか将来の技術立国の中で予算を削減するということであれば、もともと予算をとるときのバックグラウンドとした研究開発のターゲット、目標計画なんというのは、極めてあいまいな計画で予算措置をしているんじゃないでしょうか。ここが私は非常に気になるんです。私も、過去、技術者の一人としていましたが、少なくとも細かく論理立てて研究開発のテーマを決めていっているんですよ。政府は、そういうことを考えずに、枠だけ決めて、あとは順次何を研究するかということでの予算配分をするという、こんな感覚ですか、これ。

仲村副大臣 確かに、優先的に予算配分をする、研究開発をするというのは、先ほど申し上げましたライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の四分野に特に重点を置くということにしておりますけれども、これらの四分野とそれ以外の四分野とのめり張りをつけるとともに、各分野で重点的に推進すべき事項を明確化する方向で審議が進められておるところでございます。

 それ以外の各分野というのは、エネルギー、製造技術、社会基盤、フロンティアなどでございます。

 そして、平成十四年度に特に重点化する事項として、例えばライフサイエンス分野においては、長寿社会を実現するための疾患の予防・治療技術、二番目に物質生産及び食料・環境への対応のための技術などについて審議が行われたところでございます。

 今後は、これまでの審議を踏まえ、専門調査会において調査検討を進めるとともに、科学技術政策担当大臣と有識者議員との間でさらに議論を深め、七月に開催される総合科学技術会議において、平成十四年度の資源配分の方針を作成されることになっております。

平野委員 余り議論を深めるつもりはございませんが、いずれにしても、私が言いたいことは、二十四兆円という総枠を決めて、それでないと科学技術立国日本の将来はない、そんな重みを持って二十四兆円と決めたんでしょう。お金がないからとかあるからとか、お金がなかったら、どこか削るところは何ぼでもあるんじゃないの。私は、削っちゃいかぬのは人づくり、科学技術創造立国を目指す日本、そういうところへの先行投資というのはやはり削っちゃいかぬ、こういうことが言いたいことでございまして、道路を削っても、人のあれは削っちゃいかぬと。あるところに配分するものは置いても――米百俵というのは、これはまさにそういう意味じゃないんですか。これを言いたいわけです。

 次の質問に入ります。

 そこで、私は今度は、文部科学省が将来のための重点テーマとしてやはり大型プロジェクトを組んで研究開発をされているテーマがあると思うんです。それと、この二十四兆円で重点分野、これに対する考え方との整合性がとれているのかどうか、こういうところを実は聞きたいわけであります。

 とれていないと、先ほど、とれていないから、研究で必要性が薄れてきたり、あるいは成果が出ていなかったら思い切って削減する、こんな言葉が、これは新聞情報ですけれども、出てきているのかなと思いまして、あえてここで確認をしておきたいのは、文部科学省がやはり将来の研究開発を目指して進めてきている大型テーマがございます。そのテーマについて、羅列でいいですから、どんなテーマがあるんでしょうか。

青山副大臣 先ほどの御質問の中にありました考え方は、まことに私は立派だと思います。まさにそのとおりだと感じました。

 これまで、宇宙開発、海洋科学技術、それから原子力研究開発、この分野において多額の経費を投入するところの総合的な大型科学技術プロジェクトを実は推進してきているところでございます。

 第一に宇宙分野でございますが、H2Aロケットの開発、それから国際宇宙ステーションへの参加でございます。第二に、海洋の分野でございますが、深海掘削計画や地球シミュレーター計画。それから、第三に、原子力研究開発の分野でございますが、高速増殖原型炉「もんじゅ」でございます。これらをぜひ推進してまいりたいと考えております。

平野委員 そこで、副大臣、今そういう主なテーマをやっていただいているんですが、例えば海洋開発なんか見ますと、深海数千メートルの地層やマントルまでドリリングする、こういう発想ですよね。これを例えば、開発プロジェクト、研究プロジェクトですから、際限なくやるということはないんですね。

 やはりプロジェクトというのは、期間を決めて、どれだけの期間にこういう成果を出します、こういうことが本来――私は民間の研究所にいましたから、毎年予算をいただくときに、一年間でどれだけ研究開発としての成果が生まれたか、こういうことが必ず問われるんですね。生まれなかったらそのプロジェクトテーマは廃棄だ、民間は割合成果主義が多いものですから、こういうふうにやられるわけです。

 これは、今言いましたような民間との比較にはならないぐらい大規模な問題ですし、予想もしていない課題が出てくると思うんですが、少なくとも大型プロジェクトと称して実行段階に入っているテーマでありますから、どれぐらいの期間でもってやり得るのか、こういうプロジェクトに対する成果及び費用対効果というんでしょうか、これは出しているんでしょうか。

青山副大臣 例えば、具体的に言いますと、今お話が出ましたように、深海地球ドリリング計画で深海掘削船を建造しておりますが、平成十六年度の完成を目指しております。相当な投資をするわけですから、目標が達成されるものであって、客観的にきちっとした評価が得られるものという事業として進めていきたいと思っています。

平野委員 例えば宇宙分野。宇宙分野も一番お金がかかっていますよね、一千二百億円ですか。よく落ちているじゃないですか、ロケット。落ちるというのは、研究開発というのは当然失敗もあるのでこれは否定はしませんが、これだけ厳しい環境下で、今度は八月にまた打たれるそうですが、何か空打ちするらしいですな。こういうのは、国民から見ると、非常に難しい。また何百億円損した、こんなことにややもするとなるんですね。

 僕は技術屋の立場からいくと、やはりそれも積み上げていかないと最終いいものができ上がってこない、一つの糧だと思うんですが、糧の割には代償が余りにも大き過ぎるということで、もう少しうまく、随分何か節約してやっていただいたようでございますが、やはり国民の目線から見ると、やはりもしあれを失敗したら、ああ、またか、こういうことになる。

 加えて、原子力開発でいう「もんじゅ」がありますね。これ、総建設費は幾らですか。六千億円かかっている。今やっと安全審査をやっている。こういうことでしょう。しかし、「もんじゅ」だって将来どうなるかわからぬ。後の質問に関連するんですが、どうなるかわからぬのに六千億円もつぎ込んできている。

 このことに対する評価、これは文部科学省なのか経済産業省なのかわかりませんが、評価するのは、だれが評価するんだというところを何か間違っていませんか。国民が評価するんですよ。こういうわかりにくいテーマですから、今まで余りにも国民の目線ということを忘れて仕事をしているのじゃないでしょうか。特に、研究開発というのは一般にわかりにくいですから、そういう意味で、国民の目線と比較したときに、この大型プロジェクトは十分に国民の目線にたえ得るテーマなのか。

 さらには、先ほど内閣府の仲村副大臣からお聞かせいただきましたが、将来の科学技術立国の重点分野との整合性については、十分合っているのかという視点で、どうでしょうか。

青山副大臣 まず一点、H2ロケット八号機の失敗の話が出ました。

 私どもは、実はその前に二十九機、大型ロケットを成功させてきまして、これが連続して成功してきたという国は恐らく世界の中でも非常に少ない、相当高い技術の国であるという評価をいただいてきておると思います。機数が少なくて、それでいて二十九機連続で成功してきたということでございますが、しかし、その後二機連続して実は失敗いたしましたので、非常に日本の高い技術に対する信頼性というものを傷つけました。

 しかし、今、大型ロケットが発射できる国は、アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中国、そして日本と、世界でも五極だけでございます。日本は、この分野で本当に国の存立の基盤をかけたような決意で今日まで取り組んできておりまして、今、品質管理の徹底を進めており、かつエンジンの地上燃焼試験を進め、ことしの八月には何としても成功させていかなければならない、その強い強い決意で今臨んでいることをまず一つ御理解いただきたい。このことは、国家にとって存立の基盤的使命感ということで取り組んできたことを御理解いただきたいと思います。

高市委員長 青山副大臣、将来の重点目標との整合性等、答弁漏れだと思っております。

青山副大臣 はい。

 客観的な評価の問題と成果の問題になってくると思いますが、先ほど私が御理解いただきたいと申し上げたあの三分野、宇宙、海底、そして原子力、この事業は国家の存立の基盤を支える重要な研究開発の分野であるという位置づけでぜひ取り組んでいきたいと考えております。

平野委員 二十四兆円との、重点分野との整合性がとれていますかという質問に対する答弁はいただいておりませんが、とれているとお答えするんでしょう。時間がないですからあえて聞きませんが。

 そこでです。原子力開発については、やはりその三つの大きなテーマのうちの大きな一つだと今言われましたね。時間がなくなってまいりましたが言いますと、今の原子力行政並びに原子力の運行あるいは将来の研究開発、こういうことを考えていく中で、原子力行政というのは平和利用ということは当然でありますし、その前提になっていますのは、やはり日本のエネルギーの供給をしていく、そういう大きな役割を担っているわけであります。そういう中で、プルサーマル計画というのがございまして、二〇一〇年には十八基ぐらいをやはり実施していくんだ、こういうことを目指してこられておりますが、このことについてはお変わりございませんか。

古屋副大臣 お答えさせていただきたいと思います。

 プルサーマル計画について、二〇一〇年までに十六から十八基についての計画はどうなのかということでございますが、計画としては、第一期が、御承知のとおり四基、これは二〇〇〇年でございますね。それから、第二グループとして、二十一世紀初頭には大体五基。そして、二〇一〇年には七基から九基。これは電事連の基本計画でございますけれども、現時点でこの基本計画に変わりはございません。

平野委員 しかしながら、福島の第一原発、これはMOXの問題、プルサーマルの実施は、福島の県議会でプルサーマルは当面受け入れないとか、地元の部分ではそういう考え方で計画しておりますが、先送りという話が随分出てきたわけですね。ちなみに、御案内のとおり、新潟県の刈羽村でも住民投票によりこれがまた後退した。

 そういたしますと、今古屋さんが言われたけれども、本当に十六から十八基の目標達成というのは可能なのか。どうですか。

古屋副大臣 委員御指摘のように、刈羽の原子力発電所におけるプルサーマル計画、住民投票がございまして、御承知のような結果になったわけであります。そういった観点からは、MOX燃料の装荷を電力事業者が見送りまして、第一グループについての計画はおくれたということが言えるとは思います。

 しかし、このいわゆるプルサーマル計画を電力事業者もあるいは政府も着実に実行していくということに対しての計画は何ら変わりはないわけでありまして、理解を得るために一層の努力をしていかなきゃいけないというふうに考えております。

平野委員 これが一つですね。

 もう一つ、関連しますが、やはり環境ということを考えて、エネルギー源をいわゆる化石燃料から脱却していくんだということで、原子力発電所の建設計画も二〇一〇年までに十三基やるんだ、こういうのを一方で掲げているんですね。ところが、どうですか。新規着工の原子力発電所の計画、八基のうち六基までがもう先送りされているんですよ。一方、先ほどお答えいただきましたが、プルサーマルの計画については、第一期のところについてはちょっと断念、厳しくなったけれども、いささかも変わりない。

 この原子力の、十三基建設する、こういう方針についてはどうなんでしょうか。

古屋副大臣 原子力発電所の立地の問題をお答えする前に、今のプルサーマルの問題でございますが、第一次はそういうことでございますけれども、今後はしっかりと、私ども、連絡協議会もつくりまして、また、平沼大臣も電力事業者にこの計画の推進方を協力要請いたしまして、政府、電力事業者、そして何といっても地元の皆様に正しく御理解をいただくことが大切でございますので、それは不断なる努力をこれからも大いに続けていきたいと思っております。

 また、原子力の基本計画、原子力発電所の立地につきましてどういう状況になっているかという趣旨の御質問だと思いますが、毎年度末に供給計画を提出されております。平成十三年度も三月末に電力関係の十三社から計画が提出されましたけれども、二〇一〇年までに運転開始予定の原子力発電所が十三基ということで提出をされておりまして、私どもも、今回提出のありました計画は妥当なものというふうに考えておりまして、推進をしていきたいと思っております。

 もちろんエネルギー政策の基本は、まず効率的、そして安定的、環境にも優しい、こういった観点から進めていく必要がありますので、その観点からしますと、やはり何といっても原子力を引き続き導入していくということが不可欠でございますので、引き続き私どもとしては原子力の立地というものを着実に進めて、そして住民の皆さん、立地地域の皆さんの理解を得るために全力で取り組んでいきたいと思っております。

平野委員 今までもずっと政府はそういうふうに言っているのですが、物理的時間軸でこれは非常に難しくなっているというのは、私は、現場に行っても地域の人に聞いても直観的に、直観ですから論理性はありませんが、難しいだろうと思うのです。

 ただ、難しいと思うからどうするかということを非常に私は、国がもっとしっかりと、エネルギーを供給していくんだ、こういう観点から進めてもらわないとえらいことになるなと。日本の電気を半分ぐらい消すのか、こういう議論だって起こってくるわけです。ただ、住民の立場から見ると、原子力は危ない、こういう不安感があることも私は事実だと思うのです。

 したがって、やはり、原子力は大丈夫です、二重にも三重にも安全性についてはきちっとしておりますということが国民の皆さんから見えないものだから、ウランを燃やしてやる原子力とプルサーマルも原理的には全く同じなんだ、ところが、プルサーマル、何かこれはまた新しいものが来た、こういうふうにとってしまう今の国民の皆さんの意識、認識を私は否定するものではありませんが、もっと国民の皆さんに、大丈夫なんですということを言える、声じゃないんです、大臣が幾ら言ったって大丈夫にならないんだから。要は、きちっとしたシステムができ上がる、そういう仕組みをやはりつくれていないから、国民がだめだと、こういうふうになる。

 私は、民主党の中で、やはり安全性というのは非常に大事なんだ、こういうことで、原子力安全委員会を推進側の立場に置くのではなくて、同居させるのではなくて、独立した三条機関をつくっていくべきだ、そのことをきちっと国民の皆さんに示すことによって、きちっと牽制し合いながら、安全性がないものについては進めない、こんな担保をしていくべきだということで法案を出してきた経過があるものですから、私は決して原子力をやめろという立場に立ちません。やってもらいたいがゆえに、やらなければ日本のエネルギーが供給できない、あるいは環境にもきちっと対応できない、したがってそこをきっちりと押さえてほしい、こういうことをまず強く切望しておきます。

 もう一つは、ITERの問題について本論としてやりたかったのでありますが、ITERについて最後に聞かせていただきたいと思います。

 日本の国として、ITER計画については今どういうスタンス、立場におられるのでしょうか。

仲村副大臣 原子力委員会は平成八年十二月二十日に、今後の国際熱核融合実験炉、いわゆるITER計画の進め方について、長期的展望に立った国際社会の中での役割も見通した幅広い調査、審議を進めるため、ITER計画懇談会を設置いたしました。

 本懇談会は、十七回の審議を経て、本年五月十八日に原子力委員会に対して、我が国がITER計画に主体的に参加するだけでなく、設置国になることの意義が大きいという結論に達したとの報告を行ったところであります。本報告は、国際的役割、科学技術的潜在力、日本社会の倫理性からの評価、投資面からの評価等の観点から検討を行ったものでございます。

 原子力委員会は、六月五日、これまでの累次の検討、核融合会議及び本懇談会の報告を踏まえ、計画を推進することは適当とした上で、同時に、ITERの我が国への誘致を念頭に置いて、当面、サイト選定調査を行い、我が国にサイトとなり得るところがあるかどうかを見きわめること、また、他極の状況の把握に努めるとともにITER計画が我が国の利益を最大化するものとなるよう他極と協議を行うこと、これが必要であると決定をいたしたところでございます。

 御承知のように、他極とはヨーロッパ連合、カナダ、ロシアなどでございます。

 なお、ITERの国内誘致が決定した後で国内の反対により計画が途中で破綻するようなことがあると国際的な信頼関係にかかわるので、サイト選定調査の際には、地元の受け入れ体制の確認が重要であると考えているところでございます。

平野委員 ITERは、では安全性は大丈夫なんですか。大丈夫ですか、本当に。

仲村副大臣 これはすべてこれからの課題だと思っております。

平野委員 いや、これからの課題だということでいくと、地元の、誘致をする住民サイドから見たら、わからないのにここで誘致する、こんなことで進むのですか。

 したがって、僕が言いたいことは、ITERというのは、方式はいろいろあるのです、核融合の方式というのは。今ITERとして勝手に定めているけれども、ITERが本当にベストの方式かどうかというのもわからないんですよ。それをITER計画と称して、もうITERがすべてだと、こういうふうに今進めている日本のあり方がどうなんですかということと、アメリカは違う方式を今やっているわけですよ。だから、どの方式が一番ベストなのかということがまだわからない中で、誘致の地域を早く決めて、やりましょうなんというのは、論理的に言ったら余りにも矛盾が起こるし、もう一つは、ことしの夏までに立地場所を決めないとあかん、決めたけれども住民反対になったらどうするんだ、国際関係を損ねる、いろいろな問題がこれは絡んでいますから、その辺は政府として本当に一貫してどういうふうに進めるんですかということを、最後に聞いておきたいと思います。

今村政府参考人 御質問のうち、ちょっと技術的な点について御説明申し上げたいと思います。

 ITERがなぜトカマク方式で行われているかという点でございますが、核融合研究は、磁場を閉じ込めるためのいろいろな方式はございます。ございますが、国際的に一番進んでいる方式、すなわち、核融合が起こる条件、これはプラズマ臨界条件と言っておりますが、この条件を達成し、将来の展望が一番見られる方式はトカマクでございます。そのために、ITERを国際協力で設計活動を行いました際に、トカマクでやろうということ、そういう国際的に一致した認識として選ばれたのがトカマクであるというふうに考えております。

 我が国もまた、原子力委員会が定めました第三段階核融合研究開発基本計画におきまして、実験炉はトカマク方式で開発すると決めましたのも、この技術の現状、進展状況を踏まえたものである、このように認識をいたしております。

平野委員 この件についてはちょっと不十分でありますが、またの機会にお願いをしたいと思うんですが、要は、いずれにしても二十一世紀というのは、日本の描いた国というのは、やはり科学技術立国でなければだめだ、それを支える人材をやはりきちっと育てなければだめなんだ、このことは共通している。

 一方、エネルギーを供給していく中で、日本というのは資源のない国だ。そうすると、いかに効率よく、資源のない中でエネルギーを供給していく体制をつくるか。そうすると、環境問題も考えたら、今のところ原子力がやはり基幹エネルギー供給源だ、こういうことには変わりない。しかし、いろいろなところでトラブっている。国民から見たら、安全性というのは本当に大丈夫かという疑念がまだある。それをどう払拭して次のプロセスに進めていくかということをきっちりと国民の皆さんに示さない限り、プルサーマル、さらには増殖炉、究極の部分で核融合という、こういう科学技術の進展に伴うそれぞれの具体的施策が実行できないと私は思えてなりません。したがって、腹を据えてやっていただきたい。

 特に、国民の目線で、安全性ということをやはりきちっと担保でき得る仕組みをつくっていただけますことを切にお願いをして、終わります。

高市委員長 山元勉君。

山元委員 民主党の山元でございます。この国会は教育改革国会ということを前総理が銘打って、重要法案を出されました。いわゆる教育三法案です。私ども随分と論議をしましたけれども、飛び入学だとか、あるいは奉仕体験だとか、あるいは子供や教師の問題という、危うい部分が非常に多い法案でしたけれども、我々、賛成するところまで話を進めさせていただきましたが、いかにもやはり今思っても拙速な、強引なという感じがしてならぬわけです。

 いずれにしても、もうあと二日で国会は終わろうとしているわけですけれども、この長い通常国会で、幾つかの議論をすべき重要な課題が抜けていたような感じがするわけです。きょうは特に科学ということで開かれているわけですけれども、私は少し科学から外れますけれども、抜けていたと考えられる一つのテーマでございます、年々ふえ続けてきた学校へ行かない子供、行けない子供の、いわゆる不登校の問題について、きょうは少しお尋ねをしたりお願いをしたりしたいというふうに思います。

 まず、時間が私は少ないので端的にお答えもいただきたいのですが、ふえ続けているというふうに申し上げましたけれども、一体、この学校へ行かない、不登校の児童生徒の実態について、文部科学省はどのように把握していらっしゃるのか、まず確認をしたいと思います。

矢野政府参考人 不登校の実態につきましては、小中学校におきまして、何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因、背景により、登校しない、あるいはしたくてもできない状況にあるために年間三十日以上欠席したもののうち、病気や経済的理由によるものを除いたものを調査いたしているところでございます。

 その結果、平成十一年度の国公私立小中学校における不登校児童生徒数は、中学校におきまして約十万四千人、小学校におきまして約二万六千人の合計十三万人でございます。これは、対前年度比二・〇%の増でございまして、過去最高の数字でございます。

山元委員 私の手元にも、今おっしゃった、合計十三万人という資料がございます。

 これをよく見てみますと、統計で、平成三年から十一年まで八年間で、生徒数、例えば中学生でいうと九十四万人減っているんです、この八年間に。生徒数が九十四万人減っていて、そして不登校の子供は五万人ふえているわけです。ですから、率でいうと、この八年間で、中学校でいうと、一・〇四%だったものが二・四五%、二倍以上に、二・四倍に不登校の子供がふえているわけですね、たったの八年で。十三万人という数は、これは、例えば千人規模の中学校ですと百三十校が空き家になることになる。不登校の率が二・四五%ということは、千人の学校だったら二十五人近い子が不登校になっている現実が生まれているわけであります。

 こういう実態ということを確認しますと、その子供たちの教育について一体どういうふうに文部科学省は対処していらっしゃるのか。前は登校拒否という言葉が使われて、来てほしい、来ない子はいけないよというような思いがありましたけれども、このごろは登校拒否という言葉は使えない状態になっているわけですね。そうすると、その十三万人の子供たちに本当に教育を保障するような手だてというのは、文部科学省の責任だというふうに思うんですけれども、どういうふうに対処しておられるのか、そのことについてお伺いしたいと思います。

岸田副大臣 不登校の問題ですが、不登校の原因あるいは背景というもの、ケースによってさまざまでありまして、家庭の問題あるいは学校のあり方の問題、さらには本人の意識の問題等々、本当にさまざまな要因が複雑に絡んで発生しているというふうに考えられます。

 調査等を見ましても、平成十一年の文部省の調査で、本人の問題に起因するものが三六%、友人関係をめぐる問題など学校生活に起因するもの三五%、親子関係をめぐる問題など家庭生活に起因するもの一九・五%等、さまざま多岐にわたっております。ですから、原因が複雑であり、多岐にわたっているからこそ、こうした不登校というものはどの児童生徒にも起こり得る問題だという認識をまず持たなければいけないと思っております。

 そうした認識のもとに、学校が児童生徒にとって心の居場所としての役割を果たす、あるいは教職員が一致協力する、あるいは家庭、地域、関係機関が連携協力する、そして早期からこうしたサインをしっかりととらえる、こうしたきめ細かな対応が必要だというふうに思っております。

 ですから、文部科学省としましても、まず学校において、子供たちが達成感を感じてもらえるような、わかる授業ですとか、そうした学校のあり方についてさまざまな工夫を凝らす、さらにスクールカウンセラーの配置、心の教室相談員の配置など教育相談体制を充実する、あるいは不登校となった児童生徒に対しては柔軟に対応する、そしてそのために、不登校の子供たちの学校へ復帰することを支援していかなければいけないという認識から、適応指導教室の整備、こうしたものを進めているところであります。

 いずれにしましても、どの児童にも起こり得る問題だという認識のもとに、こうした施策を進めていかなければいけないと思っております。

山元委員 副大臣、私はこの問題で、調査室にお願いをして、この問題についての文部科学省の対応についての資料を出してくれと言った。出てきたのは、今副大臣がおっしゃったようなことが書いてあるような、平成四年の「登校拒否問題への対応について」。ここのところで、どんどんふえていく、だから学校不適応対策調査研究協力者会議を発足させて、この研究をした。そして、今おっしゃるように、学校における取り組みだとか教育委員会における取り組みだということについて、都道府県の教育委員会やあるいは知事に初中局長が通知を出しておられる。それから後の公式的な文書、指導文書というのはないというのですよ。

 さっきも言いましたように、平成三年からずっと、一・四%から二・四%にふえてきている中で、今副大臣がおっしゃったように、確かにさまざまな要因があって、対応についてはそれぞれ現場で工夫をしなきゃならぬということですけれども、私は、この平成四年の指導文書については、評価するところは大変多いですよ。今おっしゃるように、学校へ帰ってこい、帰ってこいと言うだけではなしにということについては評価できるのですけれども、その後、八年間ですか、七年間、そういうものが行われていないということについては、私は不十分だというふうに思うのです。

 そういう文書の中で、こういうところがあるのです。

  相談・指導を行う関係機関としては、適応指導教室、教育センター、児童相談所などの公的機関が適切であるが、公的な指導の機会が得られないあるいは公的機関に通うことも困難な場合で本人や保護者の希望もあり適切と判断される場合は、民間の相談・指導施設も考慮されてよいこと。

というのは、これは平成四年です。民間のそういう施設を考えてもよろしいよというのが出てきたわけですね。それからずっと、いわゆる民間の施設なり民間の皆さんが努力をしてきた実績というのは、ずっと見えているわけです。

 時間がありませんから、例えば東京シューレ、今までに千人ほど卒業させた、あるいは今も二百人ほどの子供がそこで勉強している、こういうものができてきて、この二月にはフリースクールのネットワークができているのですね。全国で三十ほどのフリースクールがネットをつくっていらっしゃる。そういう努力がずっとこの七、八年あるわけだけれども、今の副大臣の答弁では、私は、切実な状況になってきたことについて対応が不十分であったのではないかというふうに思います。

 現に私の地元でも、県会でいろいろ、このフリースクールの支援、税制上、財政上さまざまな支援の方法について論議して、手当てをしているわけです。今そういうふうに自治体はなっているのですけれども、長いしゃべりになるのですが、一体その施設等について文部科学省はどのように考えていらっしゃるのか。平成四年のときに、そういうものを使ってもいいよ、考慮してもいいよというふうに書き方がしてあるのですが、そういう民間の皆さんの努力について、どのようにお考えですか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 フリースクールのお話がございましたが、フリースクールとは、先生御案内のとおり、一般的には、学校に通わない子供たちに対し教育、学習機会を提供するさまざまな民間の教育機関を指して言われていると考えておりまして、そういった機関を、どのような機関をその範囲に含めるか、必ずしも定義も明確なものはございませんし、基本的には民間において自由に設置、運営されるものであるために、その実態を把握するということはなかなか難しいところがございます。

 情報誌などでは二百カ所あるというようなことも言われておりますけれども、いずれにいたしましても、このフリースクール、あるいは塾でありますとかその他民間の教育施設は、子供の私的な教育の場を支えており、ある施設は学校教育を支援するなど、それぞれの役割を果たしているところでありますけれども、学校教育とは異なる役割を担っている、こういうふうに考えております。

山元委員 フリースペースやフリースクールがどうやこうやというようなことを、塾やとかいうことを聞いていないのですよ。実際に十三万人いる子供に対して、どういうふうに教育の場をつくろうとしているのかということなんですよ。行っているところをより分けて、こうじゃないのです。十三万人の子供がどういうふうに学習の場を与えられ、あるいは成長の場を与えられているかということ、それに文部科学省は努力したのですかということを聞いているのです。

 時間が余り残っていませんから、その中でも、例えばフリースクールで、支援をしていただきたい、文部科学省に訴えを聞いてほしいという努力をしてきても、一回も聞いてもらったことがないと。このフリースクール、東京シューレというのは十六年間たっているのですよ。けれども、文部科学省には、前の文部省には一回も話を聞いてもらえなんだ、こう言っている。その東京シューレは例えば、今十六年間と言いましたけれども、一円の公的援助もない中で、私財を出して、あるいは高い授業料で、四万円余りの授業料を出して、あるいは子供たちは一万七千円の定期代を払って、学校へ通っているわけです。

 学校へは行きたいけれども行けない、その子らが書いた本が、私も見ましたけれども、帯には「学校に行きたい、でも行けない。どうしたらいいの?」といって、子供たちがうめいてうめいて、そして東京シューレにたどり着いているわけですけれども、そういう、今先ほども言いましたように、全国ネット三十ほどのフリースクールにどういうふうに援助したらいいのやと。日本の子供、十三万人いるわけですよ。

 ですから、そういうことでいうと、時間がありませんから具体的に少しお願いをしておくような立場ですけれども、例えば、ここに皆さんが公的支援を導入してくださいと言う。それは空きスペースもあろう。例えば、この子たちが運動会をやろう、運動会をどこで、原っぱでやるわけにいかぬわけですから、そういう公的な施設、市民会館やそういういろいろなところが持っている施設を貸してほしい、できたら貸してあげてくださいよという文部科学省の指導が要るのだろうというふうに思います。

 給料についても、経費が要る、その経費の援助をしてやってほしいのですけれども、例えばこの東京シューレでいうと、二十一人の職員がいる。給与は二十万円以下、全部。そういうところで一生懸命になって子供たちを守ってくれている、私の言い方をすると、守っていてくれている人たちに、そういう施設の提供やあるいは経費の援助について、文部科学省としては工夫ができないか。どうなんですか。

岸田副大臣 民間でそうしたさまざまな努力をされておられること、このこと自体は敬意を表し申し上げなければいけないと思います。ただ、不登校問題につきまして、文部科学省としましては、義務教育制度を前提としておりますので、学校に復帰すること、これを支援する。その復帰を促進する、こうした姿勢を持つこと、これを支援するということを重要視すること、これが大切だと思っております。ですから、適応指導教室、八百八十三カ所という数字が今挙がっておりますが、こうした適応指導教室等を通じまして復帰を支援していく、こういったことがまず基本だと思っております。

 その上で、今フリースクール等に支援ができないかという御指摘でありました。施設を使うということになりますと、例えば国庫補助金を得て建設された校舎等を学校以外に転用する場合、法律によりまして、財産処分手続というものを行って、そして文部科学大臣の承認を得る、そういった形で転用を考える手続になっておりますので、こうしたことを個別に審査することは可能だと思っております。ただ、設備、備品等で負担が出た場合、これはやはり当該事業者の負担ということになると思いますので、なかなか公的資金の導入というのは困難かと考えております。

山元委員 文部科学省の予算でとか、文部科学省の備品を持っていって貸してやってくださいとは言うていないんです。例えばこの東京シューレですと、東京都がNPOとして認証しているわけでしょう。例えば私の地元でも、NPOとして認証されて、そして、税制上何とか支援できないか、財政上支援できないか、自治体が、県が、考えているわけです。ですから、そういうことでいうと、それぞれの自治体に、そういう認証したNPOについては支援をすることについて指導すべきではないか、あるいはそれぞれの各県の実績なんかを交流する必要があるんではないかというふうに思います。

 もう時間がありませんから、お願いをしたいのは、例えば、先ほど言いました、そこへ通っている子供が一万七千円も定期代を払っているんです。小中学校の児童生徒でしたら、校長さんが、この子はここへ通っているんだ、出席扱いもするんだからといって証明を出せば、JRだとかそういうところ、公共交通機関は定期を売ってくれるわけです。ところが、十五歳以上になるとそれはできぬわけです、高校へ進学をしてそういうところへ通っているということではないわけですから。ですから、そういう子供たちに、NPOとして認証したような、いい施設というんですか、一生懸命になって頑張っている施設が、JRの窓口へ証明書を出したら、あるいは公共交通機関へ証明書を出したら、便宜を図ってやってくれ、割引定期を売ってやってくれということの指導は、痛切な声として出ているわけです。

 先ほども言いましたように、一万七千円も定期代を払っている、そういう通学定期の問題や、あるいは、親がリストラで職を失った、その子供がにっちもさっちもいかないようになったときには、やはり何とか自治体も考えてやってくれということの指導は、最初に戻りますけれども、この七年間、八年間やっていなかったんではないかという気がするわけです。

 これは答えは要りません。努力をぜひしてほしいというふうに思います。――では、お答えを。もう時間がありませんから、一言だけ。

近藤政府参考人 基本的に通学定期の問題は、JR等、あるいは営団であろうかと思っていますけれども、そういう関係機関が自主的に判断する事柄であろうかと思っています。関係機関に働きかけて先生がおっしゃった問題を解決していくということはなかなか難しい課題があるだろうとは思っておりますけれども、関係機関に働きかけていくかどうかを含めまして、少し検討してみたいと思います。

山元委員 時間が終わりましたからあれなんですが、大臣、最後に。

 最初に言いましたように、長い間、こういう通達が出ていてつくってもよろしいよという機関でありながら、文部省へ行っても一言も聞いてもらえなんだ、一回も聞いてもらえなんだと言うんです。ですから、ぜひ遠山大臣が、おいでなさいと、本当に苦しんでフリースクールへ行っている子供、今、成長の喜びを知った子供たちの気持ちを聞いてやってほしい。

 親にしたって、まさかと思ったろう、自分の子が不登校になるとは。本当に親も大変苦労します。家庭の中も苦労する。そして、職員の皆さんも大変な苦労をしていらっしゃる。先ほど言いましたように、何だったら高い授業料で金もうけしようと思ってフリースクールをつくっている人はいないわけです。やっていたら手柄になる、名誉になるというようなものではないんです。一生懸命になって、はいずるようにしてやっている人たちの、その子供や親や職員の皆さんの話を聞いて、今の局長の答弁は、私は、冷たい人だという感じがしますよ。そうでない思いが文部科学省の中に出てくるように、大臣、お会いしていただくことを約束してください。どうですか。

遠山国務大臣 不登校の問題というのは大変大事なことだと思っております。その問題に懸命に対応していくという過程でいろいろな意見を聞いていくということは、担当局を初めとして、そういう姿勢というのは大事だと思っております。

山元委員 重ねて大臣に聞いていただくようにお願いをして、終わります。

 ありがとうございました。

高市委員長 牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 本日は、特に科学技術関係の問題を中心にこの会議が開かれたということ、そんな御趣旨だということをお伺いいたしておりますけれども、今通常国会も残るところあとわずかとなってまいりました。その中できょうが恐らく今国会最後の質問の機会になろうかと思いますので、どうしてもその前にお聞きしておかなければいけない問題について、まず先に質問をさせていただきたいと存じます。

 と申しますのも、従前よりいろいろ物議を醸してまいりました例の教科書問題でございますけれども、いよいよもう採択が、各地方教育委員会においてその作業が進んでいるわけでございます。この国会が閉じた後でそれぞれ採択がなされるということでございますけれども、その前に、ぜひともここで議論しておきたい、どうしても看過できない、そんな問題も私なりにあるのではないかなという問題意識を持っております。

 その問題に入る前に、まず、この問題が各地方の教育委員会にもうゆだねられているんだ、検定が終わってそれぞれゆだねられているのであるから、中央の文教行政に携わる人も、あるいはこの議会においても、もうこれは一切関知しなくていいんじゃないか、そういった御認識であれば、もうこの話そのものが前提から崩れてしまうわけですけれども、その辺のところの御認識からちょっと確認をさせていただきたいと思います。

岸田副大臣 教科書の採択は、あくまで教育委員会等採択権者の判断と責任において行うべきものであります。しかし、この採択は、やはり公正の確保を徹底しなければいけない、公正かつ適正に採択がされなければいけない、こうしたことは言うまでもないわけであります。ですから、通知等を発して公正かつ適正に行われるよう指導をしてきているところでありますし、これから公正かつ適正に教科書が採択されることをぜひ期待したいと考えております。

牧委員 今の副大臣のお話でほっといたしました。そういうふうに関心を持って、公正な採択をぜひとも確保していただきたい、そういう決意というふうに受けとめさせていただきました。

 さてそこで、去る六月二十一日付の朝日新聞の記事なんでございますけれども、「「つくる会」教科書 五十六の「誤り」指摘 二十一の学会「ミス・わい曲両方」」という見出しをつけて、このつくる会の教科書について、歴史学研究会あるいは歴史教育者協議会など二十一の学会が、六月二十日に、新しい歴史教科書をつくる会主導で編集された中学歴史教科書の記述について、五十六カ所の誤りを指摘する文書を全国の市区町村教育委員会に送ったことを明らかにした。さらに、この教科書が使用されることによって、教育内容の質の低下を招くおそれがあるなどとするアピールもあわせて送った。そのような記事が掲載をされているわけでございます。

 この問題、私なりにこれを見ると、そもそも文部省の検定そのものがあいまいだったのか、検定に瑕疵があったのか、あるいは、そうでないのであれば、これは重大な採択に対する圧力行為なんじゃないか、このどちらかというような問題にどうしてもとらえられてしまうわけですけれども、その辺のところをこれからお聞きしていきたいのです。

 まず、その前に、今、全国の各教育委員会において、採択の進捗状況といいますか、その辺のところの御認識をお聞かせいただきたいと思います。どんな手順で、その中で今どんな段階にあるのか。

岸田副大臣 まず手順でありますが、公立学校の教科書の採択権限、先ほども申しましたが、学校を設置する市町村教育委員会にあるわけであります。ですから、四月以降、都道府県教育委員会が行う指導、助言、援助を踏まえて教科書の選定を行うということで、その作業が始まっております。

 そして、その際どのような方法をとるかについては、法令の定めはないわけですが、各市町村教育委員会では、選定委員会あるいは調査委員会を設置し、教科書に関する調査研究を行っていくのが一般的であります。そして、市町村立学校の教科書の採択事務は、市または郡あるいはこれを合わせた地域で構成された採択地区ごとに共同して行うこととされております。こうしたプロセスを経て、原則として、使用する前年度の八月十五日までに教科書採択が行われることとなっております。

 これが全体の手順でありますが、今の現状、個々の教育委員会の状況は少しさまざまだとは思いますが、一般的に現在、先ほど言いました都道府県教育委員会が設置した教科用図書選定審議会において選定資料が作成され、これを参考として、市町村教育委員会等の採択権者において採択のための調査研究を行っている。この段階が一般的だというふうに認識しております。

牧委員 まさに、そういう段階でその五十六カ所の誤りが指摘されたわけでございますけれども、その五十六カ所の誤り、単純なミス、それから意図的な歪曲も含めてというような記述がありますけれども、その内容について、文部科学省としての御認識はいかがでしょうか。

岸田副大臣 今先生の御指摘がありました報道については承知しております。ただ、その具体的な誤りの指摘内容、あるいはその指摘している学会、こういったことにつきましては、文部科学省として、何らかの連絡、指摘等を直接受け取った事実は今のところございません。ですから、文部科学省としてはこうした内容について承知していないというのが実情でございます。

牧委員 いかにもお役所的な御答弁をいただいたわけでございますけれども、これだけ大きく新聞に報道もされ、またその内容について、これはホームページも公開されているわけですね。これについて調査もされていないのか否か。調査をされていないのであるとすると、私はこれは怠慢としか言いようがないなと思うわけでございますけれども、反論があれば、どうぞお願いいたします。

岸田副大臣 まず、文部科学省としましては、教科書検定は、その検定基準に基づいて、さまざまな学問成果あるいは資料に照らして、教科用図書検定調査審議会の専門的な審議も経て、厳正に実施されたものと承知しております。ですから、今回の検定につきましても、検定の制度にのっとり、適切に実施されたものと認識しております。

牧委員 ただ、これは、朝日新聞の読者から見ると、過去に検定の段階で、この「新しい歴史教科書」は百三十七カ所ですか、訂正の箇所があったというような経緯もあって、さらに五十六カ所の誤りが指摘されたというふうに、百三十七足す五十六イコール百九十三カ所の実は間違いがあったのに、文部省はその五十六カ所について見落としたのではないかというようなとらえ方を、恐らく一般の読者の方はされると思うのですけれども、そういうこともあって、私はあえてこういう、別に恩を着せるつもりではないのですけれども、こういう機会でもないと文部科学省としての抗弁の機会もないのかなと思いまして、質問させていただいたのですけれども、いかがでございましょうか。

岸田副大臣 教科書検定、先ほど申しましたように、適正に実施していると認識しております。

 具体的には、申請された教科書について、検定の時点における客観的な学問的成果等に照らして、明白な誤りや不正確な記述がないこと、あるいは特定の事項に偏った扱いとなっていないこと、児童生徒の発達段階に適応していること、こうした諸点から審議を行って、そして欠陥と見られるきずがある場合には、検定意見を付し、修正を求めているところであります。

 平成十二年度に実施した中学校歴史教科書の検定についても、こうした観点から、手続を踏んで専門的な審議も経て、適切に行われたと思っております。このことを、文部科学省としては、ぜひ強調させていただきたいと思います。

牧委員 ただ、単純なミスも含めてというのがあるのですけれども、これはどうなんでしょうか。その辺は全く調査も何もまだされていないということですか。

岸田副大臣 文部科学省としては、こうした指摘は直接受け取っておりません。ですから、現状、調査等は行っておりません。

牧委員 そうしたら、検定の方にもさかのぼる話になるのかもしれませんが、いろいろな歴史教科書に記述、記載するに足る、あるいはそれにふさわしい内容かどうかという判断、そういった歴史的な事象を検討するに当たって、例えば定説というか通説というか、あるいは学説というか、一定の史実として定着しているのか否かということが一つの基準だと思うのですけれども、それはどこでどうやって決めるのか。絶対の権威というのは教科書検定審議会なのかどうなのかというところを、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。

岸田副大臣 今先生の御指摘になった部分につきましては、教科用図書検定調査審議会、ここの専門的な審議を経て決めるということでございます。

牧委員 なぜそれをお聞きしたかというと、例えば、今回の朝日の記事にございます、二十一の学会というふうになっておりますけれども、その中の歴史学研究会というところの事務局長によると、今回の誤りの指摘については「日本史に関する主な学会の過半数が賛同している」という言い方を、この事務局長はされているわけですね。

 そうすると、我々素人には、日本には歴史に関する学会というのが果たしてどれだけあって、文部省としてどれだけ認識しているのかということを、あるいは、本当に主な学会の過半数が賛同しているということであると、今の話と重なりますけれども、それは審議会とどっちが権威があるのかという話になるのですけれども、ちょっとそこをお聞かせください。

岸田副大臣 権威のある学会のほとんどですか、多くが誤りを指摘しているというお話でありますが、その権威のある学会がどこなのか、どのぐらいの数なのかも含めて、我々ちょっと把握をしておりませんので、その辺につきましてはお答えのしようがないのですが、少なくとも教科用図書検定調査審議会、この審議会におきましては、専門的な見地から、適切にその審議が行われたと我々は認識しております。

牧委員 恐らく、まだその二十一の学会というのがどういう学会なのかということはお調べになっていないと思うのですが、いずれにいたしましても、この問題、検定に問題があったのか、正確に五十六カ所という指摘があるわけですから、いずれにしても、この学会の指摘が正しいのか、あるいは検定に瑕疵があったのか、この二つに一つ、いずれかだと思うのです、論理的には。この二十一の学会が言っていることが誤りだというふうに断言してよろしいわけですね。

岸田副大臣 検定はあくまでも適切に行われたと思っております。

 しかし、こうした検定制度の仕組みの中で、外部から文部科学省に対して誤りの指摘、これは指摘が直接行われた場合には、その内容等に応じて適宜該当する教科書発行者に情報提供をする、こうした措置をとることとなっております。その上で、その教科書発行者において検定の結果、仮に誤った事実の記載があると判断されれば、検定規定にのっとり訂正の申請がなされる。そして、その申請内容に基づいて、文部科学省において訂正を承認するか否かを適切に判断するという手続があるわけであります。

 ですから、もしそうした指摘がなされたならば、この手続にのっとり判断していくということになると考えております。

牧委員 検定に問題がないとすれば、今回の報道も含めて、特定の教科書を挙げてのこういう活動というのは、公正な採択を妨害する行為であるというふうにとらえざるを得ないと私は思うわけでございますけれども、その点についてはいかがでございますか。

岸田副大臣 採択は、あくまでも採択権者の判断と責任において行われるものであります。しかし、先ほど申しましたように、公正かつ適正に教科書採択が行われることを期待して通知等を発して指導を徹底しているところであります。こうした徹底の中で、その公正さ、適正さ、こうしたものを害することがないように、ぜひしっかりとした対応を期待したいと思っております。

牧委員 指導を徹底していただくという趣旨はよく理解できるのですけれども、今私が質問させていただいたのは、今回のこの行為が妨害行為に該当しないのかという質問でございます。

岸田副大臣 二十一の学会、ちょっと具体的にはどの学会かは今手元にありませんが、それぞれの団体がそれぞれの立場で意見を表明されること自体は、それは当然の権利だとは思います。しかし、その意見を持って何らかの働きかけをする、具体的な行動次第においては、適正な検定を害することになることもあり得るわけであります。そうならないような適切な対応を期待する、そうしたことによって適正かつ公正な採択がされることを期待したいと思います。

牧委員 期待したいというお話はよくわかりました。ただ、文部科学省としても、もう既に前もって、特に今回の採択については公正を期するために努力しなければいけないと、三月三十日付の矢野局長名での通知、各教科書会社そして都道府県教育長あての通知もございます。これを拝見すると、特にことしはその宣伝活動が一層活発になる、そして採択の公正の確保が特に求められるという通知をされているわけで、その辺のところ、過当な宣伝活動があらかじめ予見されているわけでございます。

 そういうことは、裏を返せば、過当な宣伝行為だけではなくて、当然その妨害のたぐいのものも予見されていたと思うのですけれども、その辺はいかがでしょうか。

岸田副大臣 済みません、先生、ちょっと質問の趣旨を十分把握しなかったのですが、そういったさまざまな動きがあった、予見されていたのではないか、それに対して何か対応するべきではなかったかという御質問でよろしいのでしょうか。

牧委員 三月三十日付「教科書の採択に関する宣伝行為等について」と題する通知の中に、採択の公正確保が特に求められているとあります。また、これまでの再三の注意喚起にもかかわらず、平成十二年度においても過当な宣伝行為の事例が見受けられた、こんなようなことが出ているのですけれども、これまで、いろいろのこういった中央からのお話が通用してこなかったわけですね。

 そういう中で、今回、過当な宣伝行為あるいは妨害等も当然予見されていたと思うのですけれども、その辺の予見というものが、文部科学省としてあるのかないのか。

岸田副大臣 教科書検定をめぐりましては、いろいろな動きがあったのは御指摘のとおりであります。ですから、ことしもこうした通知等を通じて、適正かつ公正に行われるように努力をお願いしたわけであります。

 こうした中で、文部科学省としてどこまでこうした事態に対応できるかということになるかと思いますが、こうした趣旨をぜひ関係者にしっかりと認識していただけるよう、これから、まだ採択の手続の途中であります、最後までこういった努力を続けていただきますようお願いをしたいと思っております。

牧委員 採択の公正を確保するための教科書公正取引実施細則というのがございますよね。この細則を見ると、この中に、報道機関に他社の教科書を誹謗中傷させることを禁じている条項があるのですけれども、今回のこの新聞掲載記事の二十一の学会の行為というのは、これに該当すると私は思うのですけれども。

岸田副大臣 今の指摘に関しては、基本的には公正取引委員会の判断になるかと思います。文部科学省としては、文部科学省の立場から、公正、適正な採択が行われるよう、しっかりとその指導をし、お願いしていきたいと思っております。

牧委員 ということであれば、私もあえて、ここで指摘をさせていただきましたので、まず一つは、ここで言う二十一の学会、これがどういう学会なのかということ、それから、この学会の中に、他社の教科書の執筆者あるいは編者あるいは監修者、これが入っているかいないか、これによって公正取引委員会の細則に抵触するか否かということもかかわってくると思うのです。御理解いただけますか、その意味が。

 ただ、さきに質問させていただいた中で、まずこの記事の内容について御認識がないということでございますから、その辺で質問の前提がちょっと狂ってしまったのですけれども。全然お調べになっていないですか、この新聞記事については。

岸田副大臣 御指摘の点についての実態の把握は、あくまでも公正取引委員会の所管になると思います。

牧委員 わかりました。

 いずれにしても、ここで最後にお願いをしておきたいのは、本当の意味で公正を期するためにも、例えばこういう記事、これはもう全国の読者が読んでいるわけで、さらにホームページを開いての話ですから、明らかな妨害行為であると私は思うわけでございます。特に、その妨害行為を行うものの関係者、二十一の学会、これをぜひお調べいただきたいのですけれども、二十一の学会の中の学者が他社の教科書の執筆者であったり、編者であったり、監修者であれば、私は、これは明らかな妨害行為であると思うし、これを文部省が看過することは許されないと思うわけでございます。御理解いただけますか。そこをしっかり調べていただいて、まだこれは採択途上にあるわけでございますから。

岸田副大臣 先ほど申しましたように、正式には文部科学省に何らかの要請、要求はないんですが、先生がおっしゃったような御指摘、ごもっともだと思います。

 実態を把握することは、文部科学省としても、さまざまな今後の対応について大いに資することになると思いますので、その状況につきまして把握すること、これはぜひ努めたいと思います。

牧委員 最後に、確認というか、重ねてお願いをしたいのは、公正な採択を確保したいという意気込みはよくわかるんですが、実際に例えばこういう記事が出たときに、すぐに対応して調査をしていただく、そしてそれについての対応を考えるというのが、公正な採択を確保するための文部科学省としての責務であると私は考えるわけでございます。

 それを全くしていないというのでは、これは、公正な採択を確保したいというのは、まさにかけ声だけで何にも中身がないというふうに判断をするしかないわけでございますから、その辺のところを、本当の公正さがどうやって担保されるのか、そこら辺をきちっとお示しいただきたいし、今の法律でそれが無理であるということであれば、これはもう文字どおり、過当な宣伝行為であろうがあるいは妨害行為であろうが、やった者勝ちというのが実態なんじゃないかなと断言せざるを得ないわけですから、そこら辺の対策を具体的にきちっと示していただきたい。

 そこだけお願いをさせていただきまして、時間が中途半端になりましたので、科学技術関係の質問はこの次ということにさせていただき、終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

高市委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時二分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時開議

高市委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。

 私は、きょうは、ヒトクローン禁止法のその後、それから宇宙開発、そして、時間があれば国際熱核融合炉の問題について質問をさせていただきます。

 まず最初に、ヒトクローンの問題でございますが、昨年の臨時国会でクローン技術規制法が成立をいたしました。そのときの議論を思い浮かべてみますと、大きく二つあったように思います。一つは、ヒトクローンは許してはいけないけれども、かといって研究をすべて禁止する、そのバランスはどうなのかという問題が一つ。それからもう一つは、その研究に使うヒト受精胚、ヒトの受精卵の取り扱いをめぐっての倫理的な問題。この二つが大きな議論だったように記憶しております。

 きょうは、この二つの問題につきまして質問をさせていただきます。

 まず、クローン、これは個体産生を許してはならない、重罰をもってこれを罰するということになりましたけれども、片一方で、非常に将来の人類にとって福音となるような技術開発、これはまた行わなければならない。どこら辺にその線引きがあるのかということにつきまして、新たにこの法律とは別に、指針案、ガイドラインをつくるということが法律の中に定められております。

 特定胚の取扱いに関する指針案、指針ということでございますが、先日、この指針案ができてパブリックコメントを求めるという段階になったということでございますので、まず、この指針案、基本的な考え方、詳しい細かい話は結構でございます、基本的にこういう考え方でこの指針案をつくりましたという点についてお伺いします。

水島大臣政務官 斉藤委員のおっしゃるとおりでございまして、クローン人間はつくってはいけないけれども、役に立つことにつながる研究はやっていこうというので、私は、特に細胞治療と組織、臓器移植にかわるものというものが一番大切だと思いますので、それに通じる研究は進める。それから、非常に厄介な問題ですけれども、生殖医療でやはり役に立つところも続けた方がいい、そういうふうに考えております。

 倫理的なことも申し上げるとすれば、やはりきちっとインフォームド・コンセントをとるとか、そういうことができるようなことをちゃんとするということでございます。

斉藤(鉄)委員 非常に基本的なところをお答えいただきましたが、ちょっと基本的過ぎますので、もう少し詳しくお願いいたします。

水島大臣政務官 結局、ヒト胚、九つあるわけでございますけれども、その中で、ヒト胚を胎内に、子宮内に入れてしまうと人間ができるからそこは禁止するけれども、そのほかさまざまな応用があるわけですね。特に私どもが一番重要だと思いますのは、今、移植とかあるいは細胞治療とかやっていますのが、みんなこれは人のものを使ってやっているわけでございますね。それを払拭する、それをしないで済む恐らく唯一の方法は、クローン技術を使うことじゃないか。

 もう一つは、ES細胞から遺伝的情報をとるということもありますけれども、クローンを使えば自分の細胞ができる、自分の臓器ができる、そういうことがありますので、ぜひそれに通じる道は残しておきたい、そういう研究はしっかりやるようにしたいというふうに考えております。

 そのぐらいの具体性でよろしゅうございますか。

斉藤(鉄)委員 それでは、具体的にちょっと質問させていただきます。

 文部科学省からいただいた資料なんですけれども、胚の種類に九種類ありまして、この中で、ヒト性融合胚とヒト胚核移植胚、動物性集合胚、この三つについて研究が許されて、しかるべきガイドラインがつくられたということでございます。

 その基本的考え方は、今水島政務官がおっしゃった考え方に基づいて行われているんだろう、このように思うわけですが、ちょっとおやっと思いますのは、この九つの胚のうち、昨年のあの法律の論議を思い出しますと、九種類のうち四種類については、非常に反社会性が高いということで、胚の母胎への移植を法律で禁止するということになりました。残りの五つの胚につきましては、反社会性がそんなに高くないといいましょうか、ちょっとそれは言葉が適切でないのかもしれませんけれども、ということで、これは母胎への移植は法律では禁止されなくて、指針で禁止されるということになりました。ですから、その四つ、法律で禁止された四つの胚については非常に反社会性が高いということでございました。五つについてはそうでもない。

 ところが、今回研究が許された三つの胚のうち、ヒト性融合胚については、いわゆるさきの国会論議で反社会性が高いと言われた胚でございます。この胚の研究が今回許されて、いわゆる反社会性がそんなに高くないと言われたヒト胚分割胚でありますとかヒト集合胚、動物性融合胚、こういうものについてはガイドラインでも今回研究が認められませんでした。

 何かちぐはぐな感じがするんですけれども、この点についてお伺いします。

水島大臣政務官 まず、九つのうち三つでということだと思いますけれども、九つといいましても、これは可能性を全部列記したために九つになったので、およそその九つの中に無意味なものもあるわけですね。例えば動物性融合胚なんて、こんなことをやったってしようがないというのがございますので、何も九つ全部が対象になっていないということでございます。

 それから、私も自民党の小委員長をやっていて、そんなことを言って大変申しわけないんですけれども、やはりこのぐらい時間がたちますと、ちょっと忘れちゃいましたので、けさ九時からこれ全部九つ見て、全然あれなしに、私なりに、非人道的、それから意味がないというふうにしていきますと、必ずしもおっしゃるように今度の三つが私がつけたのとぴしゃり合うわけでもないんですね。

 それで、特に、先ほどの御指摘のヒト性融合胚というのはヒト胚核移植胚というのとほとんど同じですので、後者でもって代弁できる、つまり、ミトコンドリア症などを防ぐ意味で行う研究でございますから、ヒト胚核移植胚というので私は十分だと思うんですけれども、ですから、ちょっと斉藤先生と少し意見が一致するわけでございます。

 そのほかに人クローン胚、これは本当に子宮に入れると人ができちゃいますんですけれども、私なぞは、これは研究としてはなるたけ早く始めた方がいいんじゃないかなと。子宮に入れるのはもちろん禁止、絶対禁止でございますけれども、した方がいいと思いますので、やはりあくまでもこの指針は当面こうしておこうということであって、正直言って、私もこの議論に加わっておりませんし、当面これでいいと思いますけれども、これでずっとやっていこうという意味では決してございません。

斉藤(鉄)委員 私も、率直に言いまして、ちょっと厳し過ぎるんではないかなと。研究もその三種類の胚だけに限っておる、ちょっと厳し過ぎるんではないかなというふうなことを感じましたが、当面ということで納得いたしました。

 すごい進歩で、すごいスピードで研究が進歩しております。そういう中で、この指針というものも当然その進歩に見合いながら変わっていかなくてはならない、このように思うんですけれども、今後の指針の変更とか、進歩に合わせての変化、これについてはどうでしょうか。

水島大臣政務官 これは法律をつくるときも、法律をもっと厳しくした方がいいんじゃないかという意見も随分自民党の中にもありまして、だけれども、やはり研究というのはすごく進むものですから、法律で決めちゃったものを変えるのは大変だから、そこの辺は指針でしようということで、今回指針ができたわけで、おっしゃるように、これは、研究の進歩によって、あるいは今時点でも少し変えた方がいいんじゃないかなと思うところもございますので、この指針は柔軟に対応できて、ただし、科学技術会議の意見を聞くという条件はついておりますけれども、柔軟に、新しく出た結果を踏まえて変えられるということになっておりますので、先生も私も、きっと安心していいんじゃないかなと思っております。

斉藤(鉄)委員 さすが科学者の答弁で、今時点でも変えた方がいいと思う、大変、考えようによっては、すごい答弁を政府側でされておりますけれども、与党ですので、もうこれ以上追及しませんが、大変率直な御答弁をいただきました。

 ES細胞、いわゆる万能細胞については、今回の指針の中では扱われなかったのでしょうか。

水島大臣政務官 ES細胞とクローンというのは、ちょっとディメンジョンが、見方が違うわけですので、ES細胞そのものについてはないのですけれども、例えばそのES細胞に自分の遺伝子を入れる、この方法で遺伝子を入れるというときには、やはり今のクローン法がひっかかるわけですから、全く関係ないわけじゃないのです。ただ、今の医学の進歩、それから人類に対する貢献ということを考えますと、ES細胞の研究の方がクローンよりかはよほど重要だと今時点では私は思いますので、これは早急に検討して出すというふうに予定をしております。

 ただ、先ほどのクローンにも関係するのですけれども、ヒトのクローン、あるいはヒトのESが使えなくて困るかというと、我々科学者はそうでもないのですね。これは、必ずやはりマウス、ラットから始めて霊長類、ヒト、こういうふうにやっていきますので、ヒトのES細胞が今は使えないのですけれども、我々も含めて、研究者はみんなマウスのでやっていって、それをすぐヒトに応用できるようにしておりますので、ほとんど今は困っていないという状態でございます。

斉藤(鉄)委員 それでは、もう一つの論点でございましたヒトの受精卵の扱いにつきまして、御質問させていただきます。

 民主党さんが政府案に対して対案を出されまして、表現は、ヒト受精胚の人の命の萌芽としての取り扱い、こういうことで議論をさせていただきました。そして、その議論を受けて、附則二、政府は、この法律の施行後三年以内に、ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取り扱いのあり方に関する総合科学技術会議等における検討の結果を踏まえ、この法律の規定に検討を加え、必要な措置を講ずるものとするということでございます。

 三年はたっていないわけでございますけれども、実際に研究にヒトの受精卵、まさに命の、生命の萌芽だと思いますが、これが、ある意味で、命の尊厳を脅かすような形で使われているという現実も論議の中でございました。早急に考えていかなきゃいけないなというのを痛感したわけでございますが、この検討がどうなっておりますでしょうか。

興政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生の方からお話ございましたヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取り扱いのあり方に関する審議でございますけれども、総合科学技術会議の中に専門調査会が設けられてございますが、その専門調査会の一つに生命倫理専門調査会がございますけれども、ここでこれらの問題について審議を進めてきているところでございます。

 この生命倫理専門調査会は、会合を持たれましたのが、第一回会合が四月でございますけれども、今緊急に審議を進めていくべきものといたしまして、ただいまお話がございました、ヒトES細胞の樹立及び使用に関する指針について、これは諮問をいただいているところでございまして、この諮問に対する答申作業が進められているところでございます。第二回会合で、ヒト受精胚の取り扱いのあり方に関します資料をお出し申し上げまして、この審議を進めるようにという形になっているところでございますが、直接まだ十分な審議まで入り込んでいるところではございません。

 また、この問題につきましては、この法案の附則の中にございますとおり、平成十三年六月六日に施行されまして、三年以内に、検討を加えまして、その結果に基づいて必要な措置を講ずるということでございますので、この後、平成十五年の秋を目途に結論を得るべく、本格的な議論を行っていくことが予定されてございます。

 このヒト受精胚の取り扱いに関しましては、基礎研究のみならず、生殖医療との密接な関係がございますので、文部科学省、厚生労働省などの関係省庁とも十分連携をとりながら、また、社会的なコンセンサスを得た上で結論を出すことが重要である、このように考えているところでございます。

斉藤(鉄)委員 議論の中でも、このヒトの受精卵、現実には、生殖医療の現場でたくさんのヒトの受精卵ができて、実際使われなくなる、いわゆる余剰胚と言われているものを使っての研究ということで、生殖医療の現場を無視しての議論をしても余り意味がないのかなということも痛感いたしました。

 先ほどの答弁の中にも、厚生労働省とも協議しながらということでございましたので、我々の昨年の議論を受けて、どうか実効のあるすばらしい案を総合科学技術会議の方でつくっていただきたいと思います。

 水島政務官、何かそのことについて。

水島大臣政務官 クローンは主として未受精卵を使うわけですけれども、ES細胞は受精卵から出発していく。それから、今おっしゃった生殖医療が皆これにかかわっておりまして、クローンで、並べた中でも、実際には生殖医療でやっているみたいな感じのところもあるわけでございますね。ですから、これはやはり全部一緒に早急に、我々の省も含めて、やっていかなくちゃいけない問題だなというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 それでは、次に、宇宙開発について質問させていただきます。

 私が今回質問させていただく一番の問題意識は、今の宇宙開発の総合司令塔はどこにあるのかというこの一点でございます。

 宇宙開発の現場の方からもいろいろ御意見を聞きましたところ、いわゆる省庁再編前は、宇宙開発委員会があった。委員長は国務大臣。それは、実質的には科学技術庁が事務取扱をし、科学技術庁が調整官庁として全省庁の宇宙開発関係の調整を行っていた。そういう意味で、明確な総合司令塔、オールジャパンの総合司令塔があった。

 ところが、現在、その宇宙開発委員会は、文部科学省の中の、それも宇宙開発事業団、NASDAの運営に関する提言が行えるだけという、非常に役割が限定をされました。委員長も学識経験者という形になりました。

 しかし、実際には、実際にはといいましょうか、NASDA、それから宇宙科学研究所、航空宇宙技術研究所、この三研究所がすべて文部科学省の中に入りまして、文部科学省が研究開発体制は一元的に見るようになった。片一方で、総合科学技術会議がある。総合科学技術会議が大もとの指針を出すという体制が、法律を読めばそう読めるのだけれども、現実にはそういう発信をしていない。一体、今の日本の宇宙開発はどこに司令塔があるのかという疑問を現場の方々が持っていらっしゃいます。この問題についてはいかがでしょうか。

青山副大臣 御指摘、よくわかります。ただ、ことしの一月六日からは総合科学技術会議が設立されまして、宇宙開発委員会との関係をなかなか理解していただけない部分があるかもしれません。

 そこで、宇宙開発委員会と総合科学技術会議の関係を整理して、ぜひ御理解をいただきたいと思いますが、日本の宇宙開発の大部分は、実は宇宙開発委員会が基本計画を策定して、宇宙開発事業団がそれを進めてきておりましたが、日本の宇宙開発全体の総合戦略を策定する、これは総合科学技術会議の方で策定をしていく、そして宇宙開発委員会は、宇宙開発事業団の基本計画を策定して、そして事業を進めていく。

 特に、例えば、H2Aロケットの成功に向けて、今事業団はそれこそ全力を挙げて取り組んでおりますが、宇宙開発の中で中核的な役割を果たす宇宙開発事業団の事業の推進の基本計画を宇宙開発委員会の方で策定していただくということでございまして、総合科学技術会議と宇宙開発委員会の連携をきちっととっていくことによって宇宙開発全体の研究開発が進められていくというふうにぜひ御理解いただきたいと思います。

斉藤(鉄)委員 宇宙開発につきましては、確かに文部科学省以外にも、例えば経済産業省等も宇宙空間利用等でかかわってはおりますが、先ほど言いました三研究所があるのは文部科学省、その最高責任者は文部科学大臣。その三研究所のうちの一つがNASDA。言い方は悪いかもしれませんが、一つにすぎないわけであって、宇宙開発委員会はNASDAの事業について提言をしているだけ。しかし、今副大臣お述べになりました、総合司令塔は総合科学技術会議なのだ。非常にわかりにくいですね。

 だから、資源の配分とか、本当に基本的な大枠については確かに総合科学技術会議が出すのだけれども、宇宙開発については総合司令塔は文部科学大臣なのだ、そのもとに三つの研究所があり、そのうちのNASDAを宇宙開発委員会が提言している、こういう理解ではいけないのですか。

遠山国務大臣 今委員の御指摘の点は、私自身も、どのように今後整合性をとった形で宇宙開発を進めていくかということについて、かなり私どもとしても努力をしなくてはならないなと思っているわけでございます。

 文部科学省は、御指摘のとおり、宇宙科学研究所、それから航空宇宙技術研究所、宇宙開発事業団の宇宙三機関を所管いたしておりまして、これの関連事業を含めますと、これらの機関は我が国全体の宇宙開発予算の約九割、つまりその大部分を占めているわけでございます。

 したがいまして、文部科学省といたしましては、実際の宇宙の研究開発利用が我が国全体としての科学技術の振興に関する総合戦略と整合のとれたものとなりますように、総合科学技術会議と十分な連携を図っていく必要がある。その連携のもとに、我が省としましては、宇宙三機関を適切に指導して、宇宙開発というものを着実に進めていきたい。

 現在の、今の構図ではそのように申し上げて、そして我が省としてやるべき中核的な宇宙開発について責任を持ってやっていく。その際に、総合科学技術会議とも十分な連携をとってやっていく、これが今私どもの置かれた立場でありますし、またその方向でやっていくよりないかなと今思っているところでございます。

斉藤(鉄)委員 よくわからないところがまだあるのですが、私は、文部科学省、文部科学大臣が宇宙開発の中での位置づけ、リーダーシップをもう少し強く明確にすべきだという意見を持っております。

 総合科学技術会議はどうでしょうか。

興政府参考人 御説明申し上げます。

 ただいま文部大臣の方から総合科学技術会議と文部科学省との関係をお話がございましたが、宇宙の政策の問題につきましては、特に斉藤議員の方からお話ございましたとおり、予算、人材等の資源の配分というふうな観点から、総合科学技術会議はすべての科学技術分野にわたっての配分のあり方をきちっと議論してございますので、もとより、そういう中で、エネルギーの問題でございますとか、宇宙を含んだフロンティアの分野全体を見てきているわけではございます。

 しかしながら、最近、宇宙の開発だけでなくて、宇宙開発利用の一体的な取り組みが必要ではないかとか、あるいは宇宙産業政策を強化すべきではないかとか、こういうふうな御要望がいろいろと出ているところでございまして、そういうものを真摯に受けとめて、社会にきちっとおこたえをすることもまた必要だろう、こう考えてございます。

 宇宙開発委員会がこれまでも、我が国の宇宙開発政策全体を見ながら、その中で、例えば利用のビジョンも打ち出してきたところでもございますし、また、昨年の末には、今後我が国が進むべき宇宙の取り組みのあり方をきちっと出されたところでもございますが、新しい体制下にあって、この宇宙開発委員会と総合科学技術会議がきちっと連携をとっていくことがまさに今重要な問題であろうと考えてございます。

 他方、現在、総合科学技術会議は明年度予算の重点配分の方針について議論をしているわけでございますが、その際に、個別の、各分野の推進戦略に関します調査検討についてという議論もそのベースとしてきちっとやられております。この中に、フロンティアの研究開発に対する取り組みの問題で、宇宙に対する期待感という問題が出てございますが、宇宙開発利用の研究開発は国策として極めて重要であるので、国として一体的な推進を行う体制の再構築を図り、強力に推進していかなければならない、さらに、関連産業の基幹産業への成長に必要な官民協力システムを確立し、研究開発を推進していくことが重要である、このような御指摘もございます。

 まだこれは成案を得ているわけではございませんけれども、きちっとこれらを踏まえまして、今後、この問題に、文部科学省とも十分連携をとって対応していくべきものと考えているものでございます。

斉藤(鉄)委員 宇宙開発に限らないのですけれども、宇宙開発で特に顕著にそういう問題、問題と言うほどでもないかもしれませんが、出ております。文部科学省と総合科学技術会議の関係、文部科学大臣と科学技術担当大臣の役割というものについて、今過渡期でございますので、いろいろな試行錯誤をしながら一つの形に落ちついていくかと思いますが、このように、現場の人にとって、総合司令塔がどこにあるのかわからないというふうな状況は決して好ましい状況ではないと思いますので、今後ともこの議論は続けていきたいと思いますけれども、私は、文部科学省、一つ一つの項目についてもう少しリーダーシップをとっていいのではないかと思っておりますので、その意見を表明させていただいて、質問を終わります。

高市委員長 都築譲君。

都築委員 きょうは科学技術を中心にした一般質疑ということで、幾つか見解をお伺いしていきたい、こんなふうに思っております。

 科学技術、大変夢のある、これからの社会を築き上げていく一番根本にあるものではないかな、そんなふうに思うわけでございまして、ちょっと項目をたくさん挙げ過ぎてしまいましたので、上滑りになってしまうかもしれませんが、それでも、ぜひ今の政府のお考えをお聞きしていきたい、こんなふうに思っております。

 まず初めに、すばる望遠鏡が、昨年五月ごろだろうと思いますが、実際に観測データなどが発表され、本当にすばらしい映像にびっくりしたわけでございますし、昨年の秋には、私は残念ながらちょっと行くことができませんでしたが、当時の文教委員会の皆さんもマウナケアに視察に行った、こういう状況がございました。

 ただ、私、当時はまだ文教委員会に在籍をしておりませんでしたが、去年の春ごろ、たしかNHKが「すばる」を紹介する番組を放映いたしておりまして、その中で、ずっと私も見ておったんですが、えっと思ってしまったのが、実は、すばる望遠鏡を計画する、それは、国立天文台の先生たち、そしてまた国立天文台の会計課長さん、そしてなかなかうんと言ってくれない文部省のお役人の皆さん方、こういったところを駆け回って、さらに、一番のやはり難関は大蔵省の財政当局の抵抗が、九年間で五、六百億もかけるような、そういうものが一体どういう意味があるのか、こんなことで、天文台の方やあるいはまた文部省の人たちも一生懸命取り組んでいた。政治家に話を持っていったら、そんな立派な望遠鏡をつくって一体何の役に立つんだ、こういうことを言われてしまって、愕然としてしまったというたしか内容であったわけであります。

 およそ政治家といったものが、本当に科学技術の最先端の企画とかプロジェクトとか、そういったものに対する理解を十分持っていないのではないのか。だからこそ、そういった学者の先生方が本当に苦労して実現にこぎつけた。しかし、私としての感想は、本当に五、六百億円で世界一のものができるんだったら、それは、大変失礼かもしれませんが、安いものだなと。現実に今、不良債権の処理とかなんとかで何兆円というお金が、国民の皆さんの税金がつぎ込まれることを考えると、本当にすばらしい、実は人類の夢を切り開いていく、そういう活動になるのではないか、こんなふうに思うわけでありまして、そういった意味で、政治家としてもそういった感度をしっかりと持っていく必要があるのではないか、こんな思いでその番組を見たわけでございます。

 実際、世界一の望遠鏡、アメリカのハッブル望遠鏡よりもすばらしいんだ、こういうことでございますが、今までのすばる望遠鏡の成果、こういったものについての評価をどのようにお考えになっておられるのか、まずお伺いいたしたい、こんなふうに思っております。

遠山国務大臣 すばる望遠鏡は、今お話しではございますけれども、担当の研究者、担当の人はもとより、文部科学省、それから当時の大蔵省ですか、それから政治家の方も、全面的な支援を得てでき上がったと私は思っております。

 国立天文台すばる望遠鏡は、平成三年度からハワイ島マウナケア山頂に建設されて、平成十一年一月に完成いたしました。平成十二年十二月から、国内外の研究者による本格的な共同観測を実施しているところでございます。

 まだ本格的な共同観測を開始して間もないところでございますが、生まれたての微小天体集団の発見、あるいは、宇宙の銀河全体の明るさの九〇%をとらえるということで、それまでの八〇%をとらえていたハッブル宇宙望遠鏡を超える成果を上げております。そして、宇宙の構造、銀河の進化を解明する手がかりを得ますなど、数多くの成果を上げているところでございまして、国内外から高い評価を受けていると認識しております。

 今後とも、「すばる」による観測の成果が上がり、人類の究極的な疑問の解明に向けて大きな寄与がなされ、高い評価が得られるよう、我が省としても支援をしてまいりたいと考えております。

都築委員 今大臣がお答えになられましたように、本当にハッブル望遠鏡よりもすばらしい実は研究成果を上げられることができる、こういうことでございまして、いただいた資料では、五十億光年遠方の銀河とかダークマターとか、随分たくさんのものがあるわけでございます。

 ただ、本当に百億光年先の光までとらえる、こういうことになると、私自身は、中学校のころ、たしか本で読んだ経験だと、天体が百億光年もそれぞれ離れていると、それぞれの遠ざかるスピードが光速を超えてしまうから、そんなことあり得ないんだ、こういう話を習ったわけで、本当に今はどうなっているんだろうな、物理学の最先端の状況というのはどこにあるんだろうかということをつくづく思ってしまうわけであります。

 今、本当に遠山大臣が言われたように、それほどの最先端の技術をやる、だからこそ、日本の天文学、あるいはまたそういう物理学、宇宙物理学、こういったものの研究が世界の第一線で、世界から日本の施設あるいは日本の研究機関、こういったものに頭脳が集中してくるような、そういうまた魅力ある施設として大いに機能していっていただくことが大変大切ではないのかな、こんなふうに思うわけでございまして、そういった意味で、ぜひ政府の全面的なそういったサポートといったものをこれからも継続してお願いをしたいな、こんなふうに思っております。

 それでは、大変唐突でありますが、そういう宇宙の観点から、また宇宙開発への今後の取り組みということで、先ほども斉藤議員が大変専門的なお話をされておりました。宇宙開発委員会とか宇宙開発事業団とか総合科学技術会議の関係とか、さまざまございます。

 ただ、本当に、人間が月面に着陸したのがもう三十年以上も前の話でございまして、以来、実はアメリカ中心に、スペースシャトルということで地球を周回する宇宙の軌道には人間を送り込んでおりますけれども、なぜ最近は、この三十年間月に行かないのかな、こんなことも思ってしまいますし、他方、数年前、アメリカの火星探査機のマーズ・パスファインダーとかいうのが、火星を実際に生の映像で送ってくる、こんなすばらしい実は成果も上げていることを思いますと、日本のこういった宇宙開発への取り組みといったものももっと実は加速をしていくべきではないのかな、こんなふうに思っております。

 幾つか、本当に素人の発想で恐縮でありますけれども、その宇宙開発委員会の計画、大ざっぱなものも拝見をさせていただきましたけれども、その中には、国産ロケットによる例えば有人宇宙飛行の計画、こういったものはたしかなかったと思います。それからまた、国産ロケットあるいはまた国産の衛星による月面探査とか、あるいはまた火星探査の計画とか、こういったものを、やはり最先端を走り続けることで、すそ野がどんどん広がっていくというのが科学技術の進歩の実は一つの形態ではないのかな。

 だから、先を余り走っていかなくなっちゃうと、そこのところで実はすそ野の方もとまってしまう。だから、どんどん先へ突っ走っていけば、すそ野もどんどんまた広がっていくということを考えると、そういった全般的なことを考えながらやるのは実は論外なことかもしれませんが、それでも、夢を追い続けるという観点からは大変大切なことではないのかな、こんなふうに思うわけであります。

 まず、国産ロケットや衛星による、今申し上げたようなもの、あるいは、含めてさらに、太陽系外の探査計画とか、そこら辺まで夢を広げて実はこれからいかれるのかいかれないのか、そこら辺の点について、ぜひ、お考えがありましたら、お聞かせをいただければ、こんなふうに思います。

青山副大臣 大変豊富な質問の内容がありまして、一つは、有人宇宙飛行でございますが、さきにH2ロケットが二回失敗をしましたこの苦い経験、実はこれをよい教訓として、今、H2Aロケットをぜひこの夏に成功させていきたい、強い決意で取り組んでおります。

 しかし、有人宇宙飛行となりますと、相当、現在のロケットの技術を大幅に向上させていかなければならない、安全性を高めていかなければならない。そういう意味で、現時点における有人の宇宙飛行の計画というものはありません。しかし、将来の検討課題としては十分に取り組んでいくことになると思って、考えております。

 それから、そういう意味で、将来は人類がもっと宇宙空間に活動領域をこれから広めていく、そういうことがもう大体明らかな段階でございますから、我が国としては、国際宇宙ステーション計画に参加をしていく、そして「きぼう」を一緒に運営していく。

 それから、先般、野口宇宙飛行士がスペースシャトルへの搭乗が決定いたしましたが、来年の七月だと思われますけれども、野口さんのこの搭乗をぜひ進めていきたい。そういうような形から、有人活動を可能とする技術の基礎的な獲得に努めてまいりたいと考えております。これが一点。

 それから、月面探査及び火星探査でございますが、もうその意義は十分御理解いただいておることでございまして、平成十五年に月の探査機LUNAR―Aが打ち上げられる予定でございます。これは月の起源を解明するための月の内部構造を探査するLUNAR―Aでございまして、翌平成十六年度には、宇宙科学研究所と宇宙開発事業団の共同のプロジェクトとして、月面の地形それから鉱物組成を探査するためのSELENEが打ち上げられる予定になっております。

 もう一つ、火星の探査についてでございますが、火星の探査については、平成十年七月に探査機「のぞみ」が打ち上げられました。そして、平成十八年一月ごろには火星に到着をいたしまして、観測を行う予定になっております。(都築委員「十八年」と呼ぶ)はい、十八年一月ごろだと見ております。

 したがって、今後も、地球型惑星である火星や月を中心に太陽系探査を推進してまいりたいと思います。

 もう一点ありました。実は、太陽系外探査計画についてでございますが、現在のところは、人類が手にしている技術ではロケットや衛星による本格的な太陽系外探査は実現不可能でありますので、当面は、天文学的手法による観測研究を目指しているところでございます。その意味では、国立天文台や今の望遠鏡、そして宇宙科学研究所などを中心に、太陽系外の宇宙についても広範な研究活動が行われておりまして、文部科学省といたしましてもこうした活動を支援してまいりたいと考えております。

都築委員 ありがとうございました。

 ちょっと私の知識不足で、月面探査の計画、それから火星探査のお話、「のぞみ」というのが打ち上げられていると。たしか、そういえばそんなのがあったかなというふうな記憶でございまして、平成十八年まで……(青山副大臣「十年」と呼ぶ)十年ですね。ですから、八年かかってようやく火星に到達をするということで、今でも、全くブラックアウトの状況でございまして、だれもそういったものが今着々と火星に向かって日本製の衛星が飛んでいるということを知らないだろうと思う。

 ただ、恐らく文部科学省のホームページや何かクリックをしてのぞいてみればそういったものがそこに載っているのかな、こんなふうに思うんですが、そういった本当に夢のある話、そういったものが国民の皆さん、特にまた、先ほど理科離れの問題もございましたけれども、小学校や中学校の皆さん方に、こういったものが飛んでいるんだ、実際どういう映像を運んでくるかお楽しみというようなことで、もっと夢を持つような広報、宣伝をやっていただくことも大変大事ではないのかな、こんなふうに思う次第であります。ちょっとロケットの問題、ぜひまたそういうことで御努力をお願い申し上げたいと思います。

 もう一つ。私も、いろいろな新聞の切り抜きなどを拝見しておりましたら、実は、今度は、宇宙から突然地球上の問題になってまいりますが、核融合の問題。

 先ほど、それこそトカマク型だITERだ、どうのこうのという議論がございました。ただ、ひところ前に、常温で核融合が起こるという記事が出ておったわけでありまして、先年は実は常温で核分裂を起こしてしまった動燃の事業団の大変な、バケツの中で核分裂を起こしてしまった問題もあったわけですが、常温の核融合というものがもし実現をするような事態になれば、本当にすばらしいエネルギーの供給源としてあれだろうという期待が込められておったと思うんですが、その後の研究の状況とか実際の物事の推移というのはどういうふうに、国内、国外、どうなっておられるのか、そこら辺のところ、科学技術白書を拝見しても全然その項目は出てきておりませんので、恐らくもうだめになってしまったのかなという思いもするんですが、ちょっとそこら辺のところをつまびらかにしていただきたい、こんなふうに思います。

青山副大臣 先ほどの件ですが、文部科学省のホームページに載っておりますので、ぜひこれからもっと皆さんに見ていただけるような努力もこちらはしていきたいと思います。

 それから、常温による核融合の件ですが、平成元年にそのニュースが流れました。そういう発表がなされましたが、我が国を初め世界各国で実は確認をして試験が行われましたが、結果として、エネルギー源としての可能性はほとんどないとされております。したがって、現在では、大学の基礎的なレベルにおいて研究が続けられていると承知しております。海外においても、アメリカやイタリアや中国において同様の基礎的な研究が今続けられていると聞いておりますが、あの平成元年のニュースは米、英の研究者によってその現象を発見したと発表されましたが、実態はなかなか困難な状況であるというふうに理解しています。

都築委員 我が国でも、そうすると、まだ細々とそういった研究というのは続けられているのか、基礎的な、恐らく理論的な研究も含めてかもしれませんが、そこら辺のところはいかがでしょうか。

青山副大臣 現在、大阪大学大学院工学研究科、それから北海道大学工学部の研究グループにおいて基礎的な研究を実施中でございます。

都築委員 本当に科学というのは、それこそ、この間ノーベル賞をもらった白川先生の例を引き合いに出すというのは大変失礼なお話かもしれませんが、どういう発見がどういうところで起こってくるかわからない面もあるわけでございまして、ぜひ温かい目で見守っていただくことが大切ではないのかな、そんな思いをいたしております。

 それでは、今度は、もう一つの話題は、実は常温での、常温というか、高温での超電導といったものが以前報告をされ、絶対零度の水準からかなり高い状況でも超電導現象が起こるということになれば、これまたエネルギー問題やら、あるいはまた通信の問題、さまざまな面での利便が大変大きくなるというふうな話があったわけでございまして、そういった状況について科学技術白書も若干言及を今年度いたしておりますが、いろいろな機関が、いろいろな政府関係機関が各省にまたがってやっているというような状況の中で、私はどうも、各省でそういった多様な研究をやるというのもそれは大変いいことかもしれないんだけれども、むしろ本当に一つの結論を、すぐに出ないかもしれませんが、一極集中でどっと骨太の研究予算を組んで人を、人材を集めてやってみるというのも一つのあれではないのかなというふうな気もするわけでありまして、そこら辺の研究の現状と今後の見通しについて、各省にまたがる話になりますから、文部科学省だけではなかなか難しいのかもしれませんが、御見解を聞かせていただければと思います。

水島大臣政務官 おっしゃるように、各省にまたがっているのは、目的がそれぞれ違うからそういうふうになっているんだと思います。

 都築委員御存じのように、低温では電気の伝導が速くなりますし、今の常温というのは、一時、クロアチアでそういう報告があったけれども、ちょっとあれはうそじゃないかということですけれども、絶対零度じゃなくてもっと上の方に、酸化物あるいは金属を工夫することでだんだん上がってきますと、これは非常に応用価値が出てくる、御存じでしょうけれども、リニアモーターカーとか、あるいは電気の輸送とか電気の貯蓄に非常に役に立つわけでございます。

 ですから、おっしゃるように、これは技術としては文部科学省が中心にして今後ともやっていかなくちゃいけないので、やはりこれができるとさまざまな応用ができるということで、ぜひこれは進めていきたいというふうに思っております。

都築委員 今大臣政務官がお答えいただきましたが、どっと予算を集中して、日本の研究者、技術者を全部集めて、一気呵成にやるというふうな考え方はございますか。

水島大臣政務官 今のところございませんけれども、よく検討してみたいと思います。

 それから、これは、やはりどこかでいい発見ができましたら、それを見てそこにどっと研究費をつけるということが必要です。

 御存じだと思いますけれども、私もほとんど知らなかったんですけれども、青山学院の秋光教授が、金属に工夫を加えることによって、二百三十三度ですから絶対温度で四十度ぐらいですか、でも超電導ができたということを発表しました。これはアメリカではすごい騒ぎになって、その数カ月後、シアトルで国際学会があったときは、アメリカの人はみんな追試していたんだけれども、日本は案外追試していなかったと。文部科学省も筑波できちっとはしておりますけれども。

 ですから、やはり何かができたときに予算がどんとつく。最初からどこかに予算をどんとつけても、そこで必ずしもいいことができるかどうかというのもわかりませんから、両方のシステムでいくべきではないか。ですから、やはり研究費というのはあくまで弾力的に、いいことができたらそこに行くというふうにしていかなくちゃいけないものだと思っております。

都築委員 それでは、また次のテーマに、飛び飛びで大変恐縮ですが、はしょっておりまして。

 この間、新聞を見ておりましたら、ニュートリノが重量を持つことが発見されたというふうなことでございまして、それが岐阜県のスーパーカミオカンデのデータを使いながら、これはノーベル賞級の発見だとか、そういうふうな話も言われておるわけでございますが、実際によくわからぬわけでありまして、どうしてそれが本当にノーベル賞級の発見になるのか、何でそれが、どういうふうに人類に大きな意義を持つことになるのか、そこら辺のところを、新聞も一生懸命科学部の皆さん方がわかりやすく解説しているようでございますけれども。

 ただ、スーパーカミオカンデを国の予算で維持するということでも実は大変膨大な予算がかかる。しかし、それでも、先ほどの「すばる」とか宇宙開発の問題とも絡めて、本当に究極の物質の姿とか、そういった真理の究明という人間の無限の欲求を満たしていく方向で、また逆に、現実面での恩恵といったものも期待できるのかなというふうな気がするんですが、今後のそういったものについての研究体制、こういったものについてどういうふうにお考えになっておられるのか、ちょっとお伺いをいたしたいと思います。

青山副大臣 ニュートリノは重量を持つというような研究発表がもしなされますと、これまでの素粒子物理学を構成した標準理論を見直すことになっていくという意味でノーベル賞級の研究成果ではないかと新聞で報道されておりますが、実はニュートリノというのは物質の最小単位の素粒子の一つでして、現在の素粒子物理学を構成する標準理論ですと、ニュートリノに質量はないと実はされてきました。

 しかし、東京大学の宇宙線研究所が、今お話がありました、岐阜県の神岡鉱山の地下一千メートルに建設いたしましたスーパーカミオカンデという大型装置による観測研究によって世界的に注目を集めるような発表をなされましたが、それは、平成十年六月の国際会議において、世界で初めてニュートリノに質量があるという確証を得たという発表をいたしまして、世界的に注目を集めました。この直後にアメリカのクリントン大統領も、大変な発見であるということをアメリカで発言しておられましたが、この研究の成果は、歴史的に大発見でありまして、これまでの標準理論に見直しを迫るというノーベル賞級の成果と言われております。

 そこで、今後のニュートリノの研究への支援についてでありますが、スーパーカミオカンデの観測実験であるとか、これをさらに推進するとか、高エネルギー加速器研究機構、これは筑波にあるんですが、加速器研究機構と共同で実施しているニュートリノ振動実験という、人工的につくったニュートリノの観測実験を推進してまいりたいと考えております。

都築委員 素人ですから、よくわからないところも多々あるんですが、それでも、何かすごい発見を、日本人の学者の皆さんあるいは日本人のつくった施設が貢献をしているということは、やはりすばらしいことかなというふうに思うわけであります。

 先ほど来質問にも出ておりましたが、どうも理科離れといった最近の子供たちの傾向、それから、最近の日本の新聞の科学技術白書についての報道でも、科学技術の水準は二番目だけれども、実は実力が全然評価されていないんじゃないかと。

 こんなお話も報道の中に見られる状況などを見ると、今の教育の問題も、この間、教育改革三法案の審議の中で随分いろいろな議論が行われてまいりましたが、何か子供たちも本当にあくせくあくせく一生懸命毎日を過ごすことにストレスを感じながら生活しているような状況の中で、何か私も、それこそ団塊の世代の最後でありまして、本当に貧しい時代、何もない時代、それでも夢だけはいっぱいあったような時代に生きてきたような思いがするわけでございまして、そういったことを思うと、何か先が見えてしまって、あくせくあくせく受験勉強ばかりやっているような子供たちからは、やはり今までの日本の発展を支えてきたような、夢とか希望とか、そういったものがあって初めて、執念といったものもあって壁を打ち破っていく気力というのも出てくるんじゃないか。

 そんなことを思うと、ぜひ、今の理科離れの問題の根本をもう一度、今の教育のあり方、そういったものも問い直してしっかりと取り組んでいく必要が、これは日本の国力全体の問題も、余りにも現実御利益重視の方向かもしれませんけれども、そうじゃなくて、もっと本当に個人個人の夢が生かされるようなそういう社会をつくっていく必要があるんではないか、そんなふうに思いまして、最後に大臣の御見解をちょっと、大臣じゃなくて副大臣でも結構でございますが、お聞かせいただければと思います。

遠山国務大臣 日本の将来を考えますと、青少年たちにあらゆる問題に意欲的に取り組んでもらうということが大事だと思っておりまして、殊に、日本は科学技術創造立国ということを目指さなければならない国である以上、子供たちが、理科や数学を中心として、物をつくることであるとか物を十分に観察するとか、そういうことに意欲を持ち、またそういうことを学ぶ楽しみを持ってもらいたいとつくづく思うところでございます。

 科学技術白書でも指摘されましたように、データを見ますと、小学校から高等学校に行くにつれて理科に対する興味を持つ人が少なくなってきている、大変な問題であろうかと思います。けさほども田野瀬先生の方から御質問がございましたけれども、この理科離れの問題について本格的に取り組まなくてはならないと思っております。

 ちょうど今、私どもが先生方の御議論を経て教育改革三法を成立させようとしておりますけれども、あれによって、自然体験の活動とか、あるいは実際に自分で動いてみていろいろなことに興味を持つような、そういうふうな教育方法というのを取り入れようといたしておりますし、またいろいろな御提案もあって、最先端の科学技術に親しんだり、そのおもしろさを体験させるようないろいろなプログラムを組んだりして、私どもとしては、学校教育を中心としながら、その周辺でも、科学技術に夢を感じ、そして高い志を抱くような、そういう子供たちが育つようにこれからも力を尽くしてまいりたいと思っております。よろしくお願いいたします。

都築委員 終わります。

高市委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 私、本日は、文部科学省発表になりました大学の構造改革の方針について、また昨日、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針が閣議決定されたわけでございますが、それとの関連でも質問をさせていただきます。

 私どもにとっては極めて寝耳に水の大学の構造改革方針でございました。この問題は日本の学術研究の基盤を揺るがしかねない重要な問題を含んでいるということでございますので、まず、これはどこでどのように検討されたのでしょうか、またこれは文部科学省の正式決定と見ていいのでしょうか、大臣にお伺いいたします。

遠山国務大臣 今回の方針の発表の背景といたしましては、経済財政諮問会議におきまして、今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針、いわゆる骨太の方針と言われておりますが、これの検討がかなり速いペースで進められている中で、国立大学のあり方がテーマとして取り上げられたことが挙げられると思います。

 大学、とりわけ国立大学の改革の方向につきましては、文部科学省としても大変大きな政策課題の一つであることは言うまでもございません。したがいまして、経済財政諮問会議の議論に所管官庁としての考え方を適切に反映させる必要から、我が省の責任において今回の方針を策定して、今月十一日の同会議で説明したものであります。

 他方、委員の先生方御存じのように、国立大学のあり方につきましては、従来から各種の審議会等で種々の検討がなされてまいっております。例えば旧大学審議会におきましては、大学の教育研究に対する第三者評価システムの導入でありますとか、あるいは卓越した教育研究拠点の形成と評価に基づく資源の重点配分の問題、それから責任ある意思決定と実行を可能とする組織運営体制の整備などの指摘がなされているところでございます。

 今回の方針の作成に当たりましては、これらの長い期間にわたる十分な英知を集めた御審議の結果である御指摘、あるいは国立大学の法人化についての検討状況などを踏まえまして、省内におきまして、事務次官、関係局の局長等による協議、検討を重ねて、最終的に六月上旬に策定したものでございます。

石井(郁)委員 いろいろ背景まで含めて御答弁いただきましたけれども、今回の構造改革の方針と、それから国立大学の民営化の問題で私お聞きをしなければなりません。

 総理が五月十一日の参議院本会議質問に対しての御答弁で、「思い切って国立大学の民営化を目指すべきだという御指摘でありますが、私はこれには賛成であります。国立大学でも民営化できるところは民営化する、地方に譲るべきものは地方に譲るという、こういう視点が大事だというように私は思っております。」と答弁されています。

 今回の大学の構造改革の方針は、民間の経営手法を導入する、国立大学の機能の一部の分離などを挙げているわけでございますが、国立大学の民営化の方向をとろうとしているのでしょうか、これも大臣に御答弁願います。

遠山国務大臣 小泉総理は、先般の国会質疑におきまして国立大学の法人化の問題に触れられ、改革のためのいろいろな可能性を検討すべきであり、国立大学でも、法人化に際して、民営化できるところは民営化する、地方に譲るべきものは地方に譲るという視点が大事であると指摘されたところであります。

 文部科学省といたしましても、その視点に立って、大学の自主性を尊重しながら、活力に富み、国際的競争力のある大学づくりの一環として、いわばこれまで何年もかけて大学改革を進めてまいったわけですが、その大学改革をより本質的なものとするということもねらいとしながら、国立大学の法人化に際していろいろな可能性を検討することが重要と考えているところでございます。

 しかしながら、学術研究面等での国立大学の役割、これに遺憾なきを期することが大事でございまして、したがって、初めに民営化ありきということではなくて、民間的発想による経営手法の導入という視点で運営面の活性化を図ることが重要と考えているところでございます。

 この点につきましては、既に、旧の大学審議会でございますけれども、そこの幾つかの答申の中でも触れられているところでございますが、大学運営の活性化という観点から、例えば一つは、学長を中心とする全学的な運営体制の整備あるいは学内の運営と教育研究に関する機能分担の明確化、大学運営に対する外部有識者の意見の聴取など、種々の指摘がなされてきたところでございます。そのようなことを背景として、私どもは民営化についての指摘について考えているところでございます。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

石井(郁)委員 大学の活性化であるとか、大学がいろいろ評価機関を設けなければいけないだとか、いろいろ運営形態を考えなければいけないとか等々は言われてきたとおりでありまして、その問題と民営化に行くかどうかというのは質的に全く違う問題ですね。そこはまずはっきり区別をしなければいけないというふうに私は思いますし、今御答弁を伺っても、極めて重要な問題だというふうに言わなければならないと思うのです。

 そこで、これまでの文部省の答弁はどうだったのでしょうか。例えば、九七年五月十六日、当時小杉文部大臣でございますけれども、このようにおっしゃっていました。

 再三申し上げていますが、国際的に見ても高度な学術研究とすぐれた人材養成というのは、教育、特に高等教育の基幹部分であって、こうした国家基盤を形成する高等教育は国の責任と考えるべきだというふうに考えている、そして、地方移管とかあるいは民営化といった場合の弊害を逆説的に考えてみますと、学術研究の分野が偏ってしまったり、あるいは地域的に大学配置の偏りができてしまうことを懸念しております、そして、特に国立大学は、自然系、理科系が中心になって、これを仮に民営化した場合には、そういうお金のかかる分野は敬遠されて、人文科学系のみに偏ってしまうということ、それからまた、民営化した場合には地方には果たして大学が行くだろうか、そういう地域的な偏りということも考えていかなくてはいけないと思いますと述べられています。

 文部科学省としてはこういう立場を貫くべきだというふうに思いますが、文部大臣として、こうした文部科学省の立場だと私は思いますけれども、総理に御説明になったのでしょうか。大臣、お願いします。

遠山国務大臣 平成九年五月、小杉大臣は、御指摘のように、答弁において、繰り返しますけれども、国際的に見ても高度な学術研究とすぐれた人材養成という高等教育の基幹部分の実施は国の責任と考える、また、国立大学一般を民営化した場合に、学術研究分野の偏りや地域的な大学配置の偏りができることに懸念があるということを指摘しておられます。私としても、これらの指摘は当然のことと考えております。

 他方で、国立大学が現在よりさらに活力に富んで国際競争力のある大学となってもらうということは、我が国にとっても、また大学の発展にとっても非常に大事であるわけでございますが、そのためには、大胆な再編統合でありますとか、運営についての競争原理の導入、あるいは民間的発想による経営手法の導入という視点で運営面の活性化を図ることが重要と考えております。この点については、御指摘の小杉大臣の答弁の中でも、国立大学といえども、その運営面についてはさらに効率化、合理化を図っていく視点ということの重要性を指摘しているところでございます。

 それでは、そういう国立大学のあり方の独立行政法人の問題について小泉総理に伝えたのかという御質問でございますけれども、総理には、これまでの法人化の検討の経緯でありますとか、それから国立大学の実績や今後の役割、それから国としての責務などについても説明いたしました上で、我が省が考えます国立大学改革の方向性について御説明をしておりまして、総理からも御賛同いただいたと考えております。

石井(郁)委員 こういう記事があるのですね。小泉首相は五月十八日、首相官邸を訪れた遠山敦子文部科学大臣に珍しく声を荒げた、首相が同十一日の参議院本会議で国立大の民営化に賛意を表したことに対して、旧文部官僚出身の遠山氏が国立大側の意向を代弁するかのように、国立大学は既に独立行政法人化が決まっている、民営化には大学側の反発が強いと説明したためだと。少し長くなりますが、首相は、小泉内閣は改革断行内閣だ、あなたはその目玉の一人なのに、改革の意思が感じられないと語った、遠山氏に聖域なき改革への奮起を促した、六月四日の読売新聞でございますけれども。

 こういう経過で今回のような民営化の方向が打ち出されたのでしょうか。この点はいかがでしょうか。

遠山国務大臣 国立大学の問題について御説明したことは確かでございますが、記事のその内容は、私としては正確とは言いがたい状況でございます。したがいまして、そのことと今回の方針との関係については、私は直接関係はないと考えております。

石井(郁)委員 国立大学を民営化するというのは、まさにこれまでの国の大学教育のあり方を根本から変えるものですね。ですから、極めて重大な問題をはらんでいる。それが首相の一言で軽々に変えられてはとてもたまらないということはもう言うまでもないというふうに思うのですね。

 現在、国立大学の独立行政法人化については、国立大学協会等々で検討中であります。また、一部新聞にはその方向などという報道もありましたけれども、どうも一致を見ていないという段階なんですね。秋には中間報告が出されるという状況であります。ですから、これまでの経過で、国立大学は通則法によらない独立行政法人化の方向で、何かまとまるのかまとまらないのかも含めて今検討中だ。この段階で、文部科学省の方が民営化の方もありきだということを出されるという点になりますと、私は本当に重大だというふうに思うのですね。

 先ほど大臣は、先に民営化ありきではないというふうに言われましたけれども、きのうの閣議決定のこの骨太方針によりますと、はっきりと書いてあるわけですね。国際競争力のある大学づくりを目指す、民営化を含め、国立大学に民間的発想の経営手法を導入するということでしょう。ですから、この点はどうなんですか。私は、やはりこの方針のもとで、内閣の方針のもとで、小泉内閣のもとでは、独立行政法人化どころか、この行き着く先まで見えている、もう民営化だということがこれでしかれるんじゃないですか。それはいかがでしょうか。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

遠山国務大臣 小泉内閣の姿勢として、民営化できるものは民営化し、地方移管できるものは地方移管にという精神が貫かれていることは当然のことでございますが、大学、特に国立大学に関しましては、法人化に際してそういう視点はもちろん大事でありまして、その機能の中において民営的な視点で考えるということもあり得るとは思いますけれども、先ほど来お答えいたしておりますように、法人化の問題につきましては、国立大学ないし学問研究をし人材養成をする、そういう機関の持つべき機能から見て、通則法による独立行政法人ではなくて、新たに国立大学法人ですか、そういった方向での法人化を考えるということにつきましては、私は総理も十分御理解いただいていると思っているところでございます。

石井(郁)委員 私は、やはり本当に重大な問題が含まれているというふうに思っておりますので質問しているわけですけれども、やはり政府としても、財政上厳しい、お金は出せない、もう民営化、売り飛ばせるところはどんどん民営化していくことになるのではないかという点でいきますと、本当に重大だ。これでは米百俵も泣くわけですね。

 それで、改めて伺いますけれども、大学審議会では、二十一世紀の大学像と今後の改革方向の中でこういう指摘をしているわけです。我が国は先進諸国と比較して国内総生産、GDPあるいは公財政支出全体に占める高等教育に対する公財政支出の割合が少ないことを踏まえて、公的支出を先進国並みに近づけていくよう最大限の努力が払われる必要がある。私は、この答申に基づいて、高等教育に対する公的支出の割合を高めるのは政府の責務である、しかも、大学関係者はそのことを強く希望し、また願っているというふうに思うわけですね。この分野こそ文部科学省がきちっと主張しなきゃいけないことだ。これは、政府の中でこれを主張するところなんかないわけですから。そういう文部科学省の立場がどうなのかという問題なんですね。

 そこで、もう数字を挙げるまでもないのですけれども、GDPに対する高等教育の支出の割合あるいは一般政府総支出に占める高等教育の割合というのは、日本は〇・五%、一・五%。アメリカと比較したら半分でしょう。他の十数カ国と比較してもこれは最下位ですね。こういう危機的な状況で、とにかく高等教育に対しての予算の増額というか、支出をふやすことが喫緊の課題だというふうに思うのですが、それで、今回こういう構造改革の方針の中にはこういう問題は全然触れられていないのですが、構造改革の方針の中で、この答申のこうした内容の部分は放棄をしたというふうにも受け取れるのですけれども、そういうことなんでしょうか。

遠山国務大臣 大学審議会の答申では、高等教育に対する公財政支出の割合を単純に国際比較することは、制度の違いもあり困難であるとしながらも、我が国のGDP等に占める高等教育に対する公財政支出の割合は、他の先進国に比べて低い状況にある、まさにそうでございます。これでは日本の将来が、知的な、科学技術創造立国として成り立つというわけにまいらないのではないかという危惧については、私も同感でございます。

 我が国の高等教育機関が、世界的水準の教育研究を行って、期待される役割を十分に果たすことができるよう、私どもとしても、今後とも、厳しい財政状況のもとであっても、高等教育予算の充実に努めてまいりたいと思うわけでございますが、ちょうど昨日閣議決定されました骨太の方針の中で、二点にわたって人材育成の重要性と教育の重要性が強調されたということについて御報告しておきたいと思います。

 その第二章で「新世紀型の社会資本整備―効果と効率の追求」という章がございますが、その四番目に、「重点的に推進すべき分野」として、一つは「科学技術の振興」があり、もう一つは「人材育成、教育」、六つの項目のうちの二つを、我が文部科学省の関連する非常に重要な事項について、そういう分野を重点的に推進すべきとして挙げられたということは、これはこの内閣の姿勢を示すのではないかと思っております。

 また、平成十四年度予算について書かれました第六章の中では、七つの項目のうちの二つにわたって、今申し上げました科学技術の振興の話、そして人材育成、教育というものが大事だということを明確に書いているわけでございます。

 この内閣の骨太の方針に沿って、私どもとしては、その意に沿うべく、先生方の御助力も得ながら、この重大な問題について取り組んでいきたいと思っております。

石井(郁)委員 いただいた大学の構造改革の方針なるこのペーパーですけれども、スクラップ・アンド・ビルドで活性化、新しい国立大学法人に早期移行、国公私トップ三十を世界最高水準に育成というのがありまして、本当に、大学の、高等教育への支出をいかにふやすかということは一つもないということは驚きなんですね。

 それで、次の問題なんですが、国立大学の一府県一大学の大原則をこの方針では崩すことになりはしないかという問題なんでございます。国立大学の再編統合ということで、国立大学の数の大幅な削減を目指すということにしているわけですよね。これは、先日の国立大学の学長会議で文部科学省からの説明があったようですけれども、質問の中に、一県一国立大学の最低線も崩すんですかということに対して、県に一つしかないからと安心してもらっては困る、おどかしをさせていただくというふうに言われたというんですが、これは事実でしょうか。

高市委員長 局長でよろしいですか。

石井(郁)委員 はい。事実かどうかだけで結構です。

高市委員長 工藤局長。

工藤政府参考人 一県一大学の原則は、戦後の再編の原則としてあったわけでございますが、これから、いわば、国立大学がより生き生きと活躍していくために、大胆に、これまでの枠にとらわれないで御検討いただきたいという趣旨で申し上げたものでございます。

石井(郁)委員 これは文部省自身がお決めになったことですが、新制国立大学実施要綱というのがございますよね、一九四八年六月二十二日付ですけれども。それを見ますと、国立大学設置の大原則というのが定められています。イ、ロ、ハとありますが、「新制国立大学は特別の地域(北海道、東京、愛知、大阪、京都、福岡)を除き同一地域にある官立学校はこれを合併して一大学とし一府県一大学の実現を図る。」「新制国立大学における学部又は分校は他の府県に跨らぬものとする。」、ハとして「各都道府県には、必ず教養及び教職に関する学部若しくは部をおく。」としています。

 こういう大原則が、もういとも簡単に、ある面では一晩でひっくり返されることになるというのは、私は余りにも異常だというふうに思うんですが、どうですか、文部大臣。これは、副大臣、ではお答えください。

岸田副大臣 済みません。先ほどの発言、私の方から御発言しなきゃいけないところ、私の方からもおわびを申し上げます。

 御指摘の国立大学の再編統合ですが、国立大学を活力あるものにし、国際競争力あるものとするために、運営基盤の強化を意図しているものであります。

 そして、御指摘の一県一大学の原則、各県における戦前の各種の学校を統合する際の原則でありまして、新制大学発足時の整備方針の一つとしてその発展に大きく貢献したという評価、我々も大きく評価しているわけであります。

 しかし、その後今日に至るまで、我々、国、社会も大きく変化をいたしました。人口移動や、交通、通信手段が飛躍的に拡大している今日において、地域の枠組みを超えた連携協力、新しい枠組み、こういったものもどんどんとできているわけであります。ですから、半世紀前とは、さまざまな枠組み、地域のあり方も大きく変わっているわけであります。

 こうした中にあって、先ほど言いました大学の再生を目指すわけでありますから、この一県一大学の原則を含めて既存の枠組みにとらわれず検討していくこと、これは必要なことだと思っております。

石井(郁)委員 確かに、状況がいろいろ変わる、それは日本国内外いろいろ変わっている、だから、そういう状況に合わせていろいろなことを考えていかなきゃいけないのはそうなんですが、問題は、それはきちんとしかるべき審議機関やいろいろなところで、審議会等々で議論をした上で、あるいは大学関係者の間の議論をした上での話でありまして、私は、唐突にこういう形で出されてくるということは、これは今まで文部省になかったことじゃないですか。

 そこで、伺いますけれども、もう時間がありませんが、二十一世紀の大学像と今後の改革方向ということを大学審議会が平成十年にお決めになりました。答申が出されました。今日の大学改革は、この答申に基づいて進められているわけでしょう。大学も随分いろいろな努力をされているし、文部科学省としていろいろなことをやはり押しつけてもきましたよ。私は本当にもう時間がありませんけれども。

 そういう中でいいますと、今回出されてきた再編統合、あるいは単科大学など他大学との統合、あるいは県域を越えた大学間の再編統合、そして、このトップ三十、世界最高水準に育成、これは国立大学だけじゃないですよね、国公私ですから、私立も含んでトップ三十。こういうことは大学審で話がありましたか。大学審議会の答申のどこに出てきますか。どこにもないじゃないですか。大学審の改革との関係でいうと、こんな異常なことってないと思うんですが、これは大臣、いかがでございますか。

岸田副大臣 例えば、トップ三十の話でいきますと、平成十二年の答申の中で、国公私を通じた競争的経費の拡充による競争的環境の整備、こういった必要性も指摘されているわけであります。それ以外にも、平成十年の答申、平成十二年の答申、さまざま指摘がされております。こうしたさまざまな答申の中の提言を踏まえた上で、今回の方針、つくられていると考えております。

石井(郁)委員 私は、そういう答弁を全国の大学関係者に知らせてほしい。驚くんじゃないですか。これはもうだまし討ちですよ、だまされたとしか言いようがない。大学審議会の中では、競争的環境の中でいろいろ研究教育もしていこうという話はあるかもしれませんが、トップ三十を世界最高水準に育成するなんということは、本当に唐突以外の何物でもないですよ。そして、トップ三十と言いますが、ではトップ三十以外は、これはスクラップするということですか、そうするとは言えないかもしれないんだけれども。

 私は、一つ一つ、もう時間の関係で伺いますが、ちょうどきょう、一番最初のきょうの質問者の田野瀬議員から、日本の大学教育の評価で日本が四十九位というのが出ましたよね。しかし、一方では、大学教育は、もっと研究者、大学関係者、力を入れなければいけないと言いながら、今度は研究成果を上げるものトップ三十でしょう。一体これで、トップ三十をつくって、じゃ大学教育のこのランキングは上がるんですか。世界から見て今四十九位ですよ、きょうのデータで。私は、これはもう本当に驚きですけれども。

 こういう問題はどうなのですか。どういう整合性がありますか。トップ三十をつくって大学教育のランキングが上がりますか。ちょっと答えてください。

遠山国務大臣 まず、そのIMDでございますか、それの調査というのは、それぞれの国の企業の人たちに、その人たちにとって大学というのはどれぐらい寄与しているかということについてのアンケート調査なのですね。客観的なデータに基づくデータではないのです。そのことを申し上げたいと思います。

 日本の大学の中でも、国公私を通じてすぐれた研究をしているところがあり、すぐれた教育をしているところがございます。しかし、これからの日本が国際競争力を持つためには、私は、やはり知の殿堂である大学がしっかりしてもらわなくてはいけない。そういうふうなことを背景にして、これからは大学の中ですぐれたものは本当にすぐれたものとして発展してもらいたい、そういう民意を反映してトップ三十ということを方針の中に盛り込んでいるわけでございますけれども、これは、その具体的な評価の方法でありますとか仕組みなどのあり方については、評価の客観性あるいは公正さに留意しながら、今後いろいろな関係者の御意見も伺いながら検討していくことになると思っておりまして、我が省の一方的な判断で、三十大学だけはあらかじめ選定して、これに重点投資という趣旨ではございませんし、また、分野ごとによって違うものでございますし、また、努力によってどんな大学もそのトップ三十の中に入れるということもございます。

 そのようなことから、そういう日本の大学を真にすぐれたものとしていくということのために考えたものでありまして、それ以外のものを切り捨てるとか、それ以外のものについてどうとかということではないわけでございます。そのことを申し添えたいと思います。

石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、一言だけ。

 私学は定員割れを起こして大変な状況ですよね。今回、私学も含めてトップ三十という話になっているわけですけれども、私は、この状況では余りにも不見識だというふうに思います。私学を含めたということは、私学助成のあり方も見直すということなのでしょうか。私学も、トップ三十以外は私学助成を打ち切るというようなことにつながるのでしょうか。このことだけ一言御答弁いただいて終わります。

岸田副大臣 トップ三十の育成をするための支援措置の内容、方法、今後、概算要求等の過程を通じてどういうあり方がいいのか検討していくこととなると考えておりますが、その場合、私学助成との関係もその検討の課題であります。

 いずれにしましても、単一の予算事項で措置するということも考えられるのでしょうが、いろいろな助成措置を組み合わせて総合的に重点的育成を図る方法、こうしたさまざまな仕組みを通じて私学に対しても支援していく、こういったことが現実的だと考えております。

石井(郁)委員 終わります。

    ―――――――――――――

高市委員長 この際、お諮りいたします。

 政府参考人として厚生労働省雇用均等・児童家庭局長岩田喜美枝君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 北川れん子君。

北川委員 社民党・市民連合の北川れん子です。よろしくお願いします。

 きょうは、特定胚のガイドラインについてお伺いしたいと思うのですが、去年のあの法案審議の折には、私の方は、体細胞クローンだけの禁止で受精卵クローンはオーケーであったという面、またヒトES細胞の解禁法であった、そしてきょう出してこられた特定胚、あの法案を審議する前に胚の取り扱いについて審議するべきではないか等々の面から、あの法案制定の折には反対をさせていただきました。

 きょうも、この特定胚のガイドラインについて、その視点から少しお伺いをしたいと思うのですが、きょう出てきておりますが、この人クローン胚だけを除外した理由、それを少しお伺いしたいと思います。

水島大臣政務官 この特定胚の中で最も重要なのは、私、人クローン胚だと思うのです。ですから、今回は除外いたしましたけれども、これはやはり、そのうちまたよく議論を高めて、これはクローン人間をつくるということじゃなくて、ほかに有効な、細胞治療とか臓器移植にも、いろいろな有用なことにつながる技術でもありますので、今回は除きましたけれども、そのうちまた十分これは検討すべきだというふうに思っております。

北川委員 きょうのガイドラインというのは、どちらかというとさらに解禁へ向けてのガイドラインという気がして、ちょっともっと私は慎重であるべきではないかという立場なのですよね。

 それで、その人クローン胚、重要なものであるからというふうに言われたのですけれども、そうしましたら、物すごく人クローン胚に近いわけですが、ヒト性融合胚、これはもうもちろん御存じだろうと思うのですが、人クローン胚をつくらなくても、これは一たん動物の除核卵にヒト細胞を入れるのもオーケーであって、その流れをつくっていけば、ヒト性融合胚も人クローン胚をつくることができるのですが、どう違うのでしょうか。

水島大臣政務官 ちょっと聞き取れなかったのですけれども、ヒト性融合胚とおっしゃいましたですか。(北川委員「ヒト性融合胚です」と呼ぶ)ヒト性融合胚というのは、核はヒトですけれども、細胞質は動物ということでありますので、それはむしろヒトをつくるというのじゃなくて、ミトコンドリア症とか再生医療の部品をつくる、将来そういうことの研究のために残しているということでございます。

北川委員 そういうことで、先ほど私も言いましたように、一回動物の除核卵を通過したらヒト性融合胚になるわけですから、人クローン胚だけの禁止というのはやはり今回おかしいのではないかというふうに思います。

 そして、今おっしゃったヒトのミトコンドリアへの、前回の法案審議のときもミトコンドリア症候群の方々への治療、そのミトコンドリア症候群の方というのが、かなり絶対数が少ないといった意味の中で、なぜそんなに力を入れるのかといえば、ミトコンドリアというのが老化現象を防ぐことにかなりの寄与をするとか、かなりおもしろい動きをするものであるということが解明されつつあるという点で、皆さんは、この上にありますヒト胚核移植胚とヒト性融合胚というのは今回認める中に入れていかれたわけですね、三つの中に。

 そこで、そのミトコンドリア症候群の治療について、不妊治療についてお伺いをしたいわけですけれども、これはいかがでしょうか。患者本人、不妊治療というのもそうですよね、不妊が治るわけではないわけですが、不妊治療という言われ方をしてきました。それと同じようにミトコンドリア遺伝子異常の、母系でつながっていくわけなのですけれども、これは患者本人の治療ではないということは認めていただけるのでしょうか。

水島大臣政務官 患者本人の治療ではございません。

 それから、今、非常に少人数ですからということで、これは多分三けたの数字だと思いますけれども、日本には、酵素欠損があって日本にわずか一人しかいないその患者さんが、その人のためにも一生懸命その酵素をつくって、その人が生きられるようにと頑張っている治療法もあるわけでございますので、やはりミトコンドリア症、少ないことは少ないけれども、その人のため、その人が、それから、その人の子孫が今のところ治る手だてはないわけでございますので、これももちろんすぐに使えるというわけじゃないのですけれども、それに一つの道を開くものということで、これは研究すべきだということでございます。

北川委員 今おっしゃった例ではなくて、私が言っている患者本人の治療ではないということは認めていただいたのですが、優生的な措置というとこら辺の観点になりますと、きょう厚生労働省の方にも来ていただいているのですけれども、厚生労働省雇用均等・児童家庭局母子保健課の方で出されております精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についてという報告書、六大大原則というのが書いてありました。また、九三年四月に決められています遺伝子治療臨床研究に関するガイドラインの六条等々に、今の、次世代へのということは、遺伝子改変も含めて、そこに抵触するという、また優生思想を持ち込むという意味でも抵触してくるのではないかというのが私の立場なんですけれども、いかがでしょうか。それを厚生労働省の方にもお伺いしてみたいと思いますが。

水島大臣政務官 もちろん、考え方は人によっていろいろなことがあると思います、子孫のためのことにこういう治療はすべきではないとか。だけれども、やはりずっと上から受け継いできた、ミトコンドリア症じゃない子供を産みたいという考えもあるわけでございますから、今おっしゃった厚生省の指針というのは、私は、ちょっとよく全文を見てございませんけれども、少なくとも、今そういう子供を産んでいいという法律じゃなくて、そういう研究は続けていい。やはり社会通念でいろいろ変わりますし、またそのときにそういう、今の厚生省のガイドラインがもしもこれに反しているとしたら、そうじゃないガイドラインができることもあるということも想定して、とにかく研究を続けようということで、これをすぐ治療に、これでしていいということではないわけでございます。

岩田政府参考人 昨年の十二月に、厚生科学審議会のもとに設置されておりました専門委員会で報告書が出されました。この専門委員会で扱った範囲は、夫婦間ではない第三者が精子や卵子や胚を提供する、そういう形の生殖補助医療のどこまでを認めるべきか、認めるに当たってどういう条件整備が必要かといったようなことを検討して、結論を出していただいたものでございます。

 この委員会の検討に当たりまして、委員会が六つの原則というのを合意いたしております。一つは、生まれてくる子の福祉を……(北川委員「もういいです、わかっていますから」と呼ぶ)よろしゅうございますか。

 そういう不妊治療の範囲ということで、先生おっしゃいました六つの基本的な考え方に基づいて、委員間で意見の相違があれば、その基本的な考え方にまた戻って御結論を出していただいたというものでございます。

北川委員 九三年にガイドラインも出していらっしゃる、その遺伝子治療臨床研究に関するガイドライン、これが、部課が違うとおっしゃればあれなんですけれども、きょう、厚生労働省の二つの部課の方に来ていただいているのですが、ちょっと今の御答弁では、はぐらかされたかなという感じがやはりしてきています。

 生命倫理委員会をずっとこの間持たれてこられて、かなり長い突っ込んだ審議を、臓器移植の折等々も絡みまして、生命の萌芽をいつからとかという部分等々からもっと深い議論をされていたと思っていたので、私は、この遺伝子改変や、また優生思想を盛り込むことになるのではないかと。

 先ほどの文部科学省の御答弁では、もうずっと、何か研究だけは研究で、治療と研究が割とリンクしないで、治療の方は厚生労働省の方に任せましょうという御意見なのか、文部科学省はずっと研究しっ放しでいくように聞こえてきたのですが、その辺はやはり、厚生労働省の方でこの間ずっと生命倫理委員会を持たれて積み上げられてきた議論というのを、もう少し私は文部科学省が研究の段階においても取り入れるべきではないか。

 さらに言いますと、本当は私は、生殖技術とクローン技術の規制というのは一本の法律にすべきではないかというふうに思うのですが、今の段階でどうお考えになっていらっしゃいますでしょうか。

水島大臣政務官 それはおっしゃるとおりだと思います。おっしゃるとおりでありますけれども、クローン人間というのは比較的簡単にできるのです。私も委員会のときに申し上げましたけれども、私がちょっと前にやめた、今でもかかわり合っている研究で、部下に命令すれば、もうすぐにでもできるのがクローン人間なんです。

 ですから、ここで法律をつくらないで、それができてしまったら大変である。一方、生殖医療は、非常にたくさんのことを、決めなくちゃならないことがたくさんありますので、生殖医療も入れて、ESと、先ほどもちょっと申しましたけれどもクローンと、全部含めてきちっと法整備をするということは大賛成でございます。

北川委員 そこでは立場が一緒になったかなと思うのですが、私が知っているミトコンドリア症候群の女性の、重症の場合は子供を産むというような母体を持つことも不可能という方の症例を知っているわけなんですね。聞いてみますと、このミトコンドリア症候群の方というのは、重症の場合には目に見えてわかるのですが、軽症の場合にはほとんど日常生活も何ら変わりないし、そんな遺伝子解析というのがぐっと進んでいるので、解析技術が進んでいく中で、私の遺伝子も何らかの形で調べられたら、もしかしたらミトコンドリア症候群の、軽症の部分ではあるけれども、何か受け継いでいるものがあるかな、調べたら出てくるかもわからないというぐらい、軽症から重症の幅が広いということもありまして、私は、もうこれは検査漬けになるのではないか。ミトコンドリア症候群、症候群と言われながら、表に出てくる障害として出てきた場合には、とても、自分の母体を保って、自分の生命維持だけで精いっぱいという方の症例が、少ない症例の中で多いわけだと思うのですね。

 ですから、軽症の人たちを引っ張り出してくる、そういうことも含めまして、きょうは明確に、優生思想を盛り込んでいるとか遺伝子改変に抵触するとは、御答弁が厚生労働省の方からなかったのですが、やはりいま一度、先ほどの法律の一本化も含めて、これは重要に見ていただきたいというふうに思います。

 それで、次の質問なんですけれども、未受精卵というのも使うわけですし、ヒト受精胚というのは余剰胚を使用すると決めているのですけれども、クローン胚づくりには不可欠である卵子とか卵細胞とか、これをどこから持ってくるのかというのがすごい私の疑問点なんですけれども、これはどこから持ってくるのでしょうかね。

水島大臣政務官 未受精卵をどこかから持ってくるという御質問でございますか。(北川委員「卵子、未受精卵も含めてなんですけれども」と呼ぶ)受精卵。(北川委員「未受精ですね、受精していない分、胚になる前ですね」と呼ぶ)未受精卵。

高市委員長 委員長の許可を得て質問をしてください、お二人とも。ちょっと、一度おかけください。

 北川れん子君。

北川委員 どうも失礼いたしました。

 おっしゃるとおりです。未受精卵の部分で必要ですね。特に、ヒト胚核移植胚の場合とか、あと研究を深めて進めていくときには、受精卵ではない、胚ではない、卵子とか卵細胞が必要なんですが、それをどこから持ってくるのか。今は不妊治療現場ということになっているのですが、どうでしょうか。どこから持ってくるのでしょうか。

水島大臣政務官 受精卵の場合はもちろん余ったものでいいわけですけれども、未受精卵の場合は、やはり故意にとらないといけないわけですので、インフォームド・コンセントをきっちりとって、これは私も専門じゃないから、必ずしも全部詳しくないのですけれども、最初はおなかを切ってとっていたりしましたけれども、今は経子宮とかいろいろな方法でとってきていると思います。一番大切なのはインフォームド・コンセントだと思います。

北川委員 特に、前回の法案審議のときもそうであったのですが、女性の意見とかを聞く機会を、今、男性でいらっしゃるということで、卵というものに関しての、どうでしょう、女性の中に卵があるわけなんですが、それを資源としてみなしていく法案に近づいているのではないかというのが、私はクローン法案を反対したときの一つの理由であったのですが、女性からの意見をもう少しいろいろな形の分野で聞くべきではないかということ。どこから持ってくるかというところは、女性の体から持ってくるわけですね。

 そこで、お伺いしたいのですが、この中に細胞というのが出てくるのですね。「ヒトの胚又は細胞を用いることについて」「ヒトの胚及び細胞の提供」等々で細胞という言葉が使われているのですが、これは、三条のところには「ヒトの胚及び生殖細胞の無償提供」と書いて、生殖細胞の無償提供となって、「生殖細胞」と生殖がつくのですが、条文になりますと「細胞」になっているのですね。この「細胞」は何を指しますか。

水島大臣政務官 これは、体細胞も含めて全部の細胞というふうに御理解ください。

北川委員 そこで、体細胞を含めて全部の細胞と言い切られたので、お伺いしたいんですが、そうしますと、これがすごく難しくて、手術等で摘出されたヒト組織を用いた研究開発のあり方の、これも答申を出されているんですけれども、そこの条項の中の五の五番目にありますが、この中に、ヒト組織の提供というのがあるんです。そこに、ヒト組織としては、手術で摘出された組織以外にも、生検で得られた組織、胎盤等も研究開発に利用できるが、そのような組織についても、適正な手続を踏まえた上で、利用が図られるような体制の構築が必要であるというふうになっていまして、このときの議論の中でも、胎児とか死体とか等々から取り出すことは、この答申をもちまして、この条項をもちまして、一定歯どめをかけたんですが、今おっしゃった、細胞の中にはあらゆる体細胞が入るとおっしゃいましたが、この答申に沿ったあらゆる細胞なんでしょうか。

水島大臣政務官 人の細胞を使わなければできない研究というのは非常に多いわけです。これは、実は、非常に勉強されておりまして、私よりもよく御存じのような感じでございますけれども、三、四年ぐらい前、私が提案して、厚生省で、こういうようなきちっと案をつくるようにと言って、多分、黒川教授が委員長になってつくったのがそこですから、多分、黒川案とかというふうになっていると思いますけれども、それは主として、手術のときにとか、そういうときにとってきたものの一部を使うんだ、なるたけ負担をかけない、もちろんインフォームド・コンセントをとりますけれども、そういうことでできたものでありますので、無理してこちらのと整合性をとろうとしますと、そういうことなどとかという表現があると思いますけれども、その中に入るということになります。

北川委員 ということになりますと、今回の特定胚の指針、ガイドラインでは、胎児とか死体とかという意味での細胞というふうにとらえる余地もあるという御回答なんでしょうか、今の御答弁は。

水島大臣政務官 後ろから紙が来ているから、紙を本当は見なくちゃいけないんですけれども、今度も、要するに人クローン胚は除外しているわけです。ですから、クローンは途中まで研究はしてもいいけれども、その未受精卵とかそういうものは使ってやってはいけないということになっているので、恐らく矛盾しないと思いますけれども、ちょっと済みません――ろくなことは書いていないですから。

北川委員 今のでも、明確には使えるということで言われたのですか。

水島大臣政務官 何が使えるんですか。

北川委員 胎児及び死体です。

水島大臣政務官 さっき申しましたように、この厚生省の案をつくったときは、主として手術、そういうことでありまして、何が目的かというと、主として医薬品開発研究なんです。今まで医薬品開発というのは、ほとんど動物の組織とか動物の細胞でやっていたんです。だけれども、人に使った途端にもう全然効かないということが非常にあったので、人の組織を使わなくてはすごく損だと。何がそのときに出てきたかというと、外国からそういうものを入れてきた。そういうことでは日本の発展のためにもよくないし、どうせ手術でとったときの余りをこれに使うということでできたのが、この今のヒト組織案で、こういうときにこういうことは全然念頭に多分入っていなかったと思いますし、少なくとも私は入ってはおりませんでした。

北川委員 ですが、この答申を注目していた人たちは、この中に入った過程を一応見てきているわけですから、大臣政務官のお心の中には何か残らなかったみたいに今聞こえたんですが、大臣政務官のお心には残っていないということで、私が先ほど読み上げたガイドラインの中の部分がそれに当たるということですので、その辺は水島大臣政務官にはぜひ、あのときに胎児、私は先ほどから言っているように、女性の体であるという面、それから、若い体がとてもこれには必要なわけでして、そういう面からいくと胎児等々が一番いい研究材料なんです。そこを踏まえて、物すごく私たちは心配をしているということを改めて認めていただきたい。

 やはり今回の九八年の答申、ガイドラインに、平成十年は多分九八年だったと思うんですが、先ほど言いました、手術のときにおけるという部分で、取り出すというときには手術が一番取り出しやすいということで、先ほどどこから持って来るんだというふうに言って、大臣政務官もおっしゃったように、今回のクローン法案もそして今回の特定胚のガイドラインも、すべからく新しい薬づくりへの道筋をゴーサインを出したものなんですという点から、ぜひ、生命倫理部会を持たれた厚生労働省とのつながりを深めていただきたい、文部科学省の研究の部分だけはこれという形で見ないでほしいということをお伝えしておきたいし、やはり法案を一本化するべきだということをあえてお伝えしておきます。

 それから、先ほど斉藤委員もおっしゃっていたんですが、この指針が当分の間というのが三カ所出てくるんです。読売新聞の発表では当面禁止というふうになっていました。そこで、すごく私は気になるんですけれども、この当面禁止を解除するとき、このガイドラインは、すべからく、国会での審議は経ないでいいわけなんです。ということで、この当分の間の禁止を解除するときには何が基準で解除されていくのか。こういうことを本当に胚のガイドラインに入れ込まれるのならば、クローン法案の方にとか、指針案にやはりそういう細かい部分を入れるべきではなかったのか。ぜひ、何を基準に解除するのか教えていただきたいと思います。

水島大臣政務官 その前に、一言。文部科学省は研究ばっかりというようなことをおっしゃっていますけれども、私は、文部科学省に入りましてから、研究はやはり人類の福祉と社会の豊かのためにやるもので、必ず実用化、成果ということを見ながらやらなくちゃいけないとよく言っておりましたし、また言ってまいりましたし、また、クローン法案の小委員長をやるときも、これは女性、特に卵子をとるというときには女性に負担をかけるわけでありますから、女性の意見は十分聞くということで、かなりその辺はきちっとしたつもりでございますので、よろしく御理解いただきたいと思います。

 それから、今の問題ですけれども、これは先ほど斉藤委員もおっしゃいましたように、科学というのは非常に進歩する。それで、私は、自然科学というのは社会にプラスになる、人類に貢献すること以外はもう科学技術と言うべきではないというのが持論でございますので、いろいろな研究が進歩して人類とか社会に貢献するようなことが出てきたら、それを踏まえて、そこでもう一回これを、答申を考え直すということであって、今の時点で想像がつくということはそうないわけでございます。

北川委員 今の段階で解除のことまでは考えていないという御答弁になるのかともお受け取りいたしましたけれども、やはり何らかの形でなければ、かなり慎重にするべきことに関して、一応、今のところは全然この国は法案がないわけですから、ぜひやはり生命倫理の法案づくりの方を先にしてもらいたいというのをお伝えしておきたいと思います。

 それで、これが最終的には一カ月のパブリックコメント、この一カ月という期間は短いと思うのですが、この後、総合科学技術会議の方に上げられるわけですが、上げる前に、障害者団体、女性団体、そしてまたいろいろな、医療問題、医療事故を扱っていらっしゃる方、情報公開を徹底せよと言っていらっしゃるいろいろな、今、医療に関して関心が高まってきます、また、不妊治療の方々の会等々があると思うのですが、そういう方々の意見を広聴すべきだと思うのですが、そういう御計画があるのかどうか、お伺いしたいと思います。

水島大臣政務官 計画は、事務当局の方でタッチするかどうかは知りませんけれども、私も、そういう方の意見を当然聞いてやるべきだと思っております。

北川委員 ぜひそれは、前向きな、公聴会への意見聴取をするべきだという大臣政務官の御答弁だったというふうにお受け取りしておきます。

 それと、ここの中に、情報公開が努力義務なんですね。これは本当におかしい。義務づけないと私はいけないと思っています。研究であるわけですから、努力目標にしたのはおかしいという点で一つお伺いしたい。

 それから、機関内倫理委員会を設けられるということですが、クローン小委員会の、例えば出してみましたら、委員が全員男性なんですね、そして平均年齢が六十歳ということがありまして、やはりこれは、次世代、五十年後、百年後を見据えた形の中では、偏り過ぎに偏っているのではないかという気がします。

 男女比は半々とか、そして年代的にもさまざまな年代、生殖活動に入る前、生殖活動の壮年期の方々、または生殖活動から終えられた方々等々、やはりいろいろな幅広い年代を入れる、そして、専門家、また医療専門家だけではなくて哲学や倫理の問題そして社会学の問題、法学者等々という形での、かなりメンバー構成に厳密性を持たないと意味がない委員会になるというのがもう既にわかっていると思うのですが、その辺はどういうお考えをお持ちなのか、お伺いしたいと思います。

水島大臣政務官 委員のように大変勉強なさっていらっしゃる女性がたくさんいれば、委員を選ぶときに困らないんだと思いますけれども、なるたけ、女性も入るし、いろいろな層の人を選ぶようにといって、私も時々委員の名簿が回ってくるとそういうことを申しておりますので、ぜひそのように努力したいと思います。

北川委員 今の、申しわけないですが、大臣政務官の御答弁は、やはり女性に対しての新たな見地がないといいますか、今女性は、かなり自分の専門性と意見とを持った方がたくさん出てきていて、その方々に光を当てない体制があるのではないかという気がしていますし、今の御発言は、できればぜひ撤回していただきたいということをお伝えしたいと思います。

水島大臣政務官 ぜひ撤回したいと思いますけれども、やはり現に、私も、何もこの政治の世界じゃなくて、学界の世界、そういうところでなるたけそういうふうにしようというふうに心がけておりまして、私の娘も女性でありまして、こういうことを言うと多少言い合いになるんですけれども、やはり、我々も努力しますけれども、女性の方も努力していただきたいというふうに思います。

北川委員 女性は努力していると思いますし、男女共同参画社会を築こうというのが今の流れでありますので、娘は女性に決まっているので、ぜひその点をよろしくお願いしたいというのと、私はやはり、細胞核の核の推進ですね、原子力政策の核の推進も含めてなんですが、いま一度立ちどまって、多くの人からの意見を聞くときであるということをお伝えして、質問を終わりたいと思います。

     ――――◇―――――

高市委員長 この際、大阪教育大学教育学部附属池田小学校における児童等殺傷事件に関する件について決議をいたしたいと存じます。

 本件につきましては、当委員会の審議を踏まえ、理事会等におきまして、各党間において御協議いただいたところ、お手元に配付いたしておりますとおりの案文がまとまりました。

 便宜、委員長から案文を朗読し、その趣旨の説明にかえさせていただきます。

    大阪教育大学教育学部附属池田小学校における児童等殺傷事件に関する件(案)

  去る六月八日、大阪教育大学教育学部附属池田小学校において発生した殺傷事件は、教育の現場で起きた前例のない誠に痛ましい事件であり、社会全体に強い衝撃を与えた。

  よって、政府は、このような事件が二度と起こらないよう責任をもって、大阪府及び池田市と協力して池田小学校の早期の授業再開に向けて最善を尽すとともに、全国の学校の安全確保のため、財政措置を含め、左記事項について対策が講じられるよう努めるべきである。

      記

 一 今回の事件の影響で心に傷を負った児童一人一人に対し、十分な心のケアを長期にわたり行うこと。

 一 児童の授業に支障のないよう仮設校舎を早急に整備するとともに、新しい校舎の建設を早急に行うこと。

 一 児童一人一人に行き届いた指導及び教育を行うため、スクールカウンセラー、養護教員、非常勤講師等の人的措置を早急に行うこと。

 一 大学内に長期的ケアの実践と研究のための場の整備を検討すること。

 一 児童・生徒の生命・身体の安全を確保するため、全国の学校の安全管理体制の総点検を行うとともに、学校内外の通報体制、防犯設備の設置、敷地境界部の整備及び教室・職員室の再配置など、広範な防犯対策を強化するための財政措置を講ずること。

 一 学校の安全管理の確保にあたっては、学校長をはじめ学校管理者は、地域やPTAなどと協力して、十分な体制を確立すること。

  右決議する。

以上であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

 お諮りいたします。

 ただいま読み上げました案文を本委員会の決議とすることに賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。

 この際、本決議につきまして文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。

遠山国務大臣 ただいまの決議につきましては、教育行政の責任者として大変重く受けとめております。

 今後とも、今回の事件によって心に傷を負った児童等の心のケアの充実に努めるとともに、大阪教育大学教育学部附属池田小学校の早期の授業再開に向けて万全を期してまいります。

 また、全国の学校の安全管理を徹底し、子供たちが安心して充実した学校生活を送ることができるよう全力で取り組んでまいりたいと存じます。

高市委員長 お諮りいたします。

 本決議の議長に対する報告及び関係各方面への参考送付の取り扱いにつきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時九分散会




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