衆議院

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第4号 平成13年11月21日(水曜日)

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平成十三年十一月二十一日(水曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 高市 早苗君

   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君

   理事 田野瀬良太郎君 理事 高橋 一郎君

   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君

   理事 西  博義君 理事 都築  譲君

      伊藤信太郎君    小此木八郎君

      小渕 優子君    岡下 信子君

      河村 建夫君    杉山 憲夫君

      砂田 圭佑君    谷垣 禎一君

      谷田 武彦君    谷本 龍哉君

      馳   浩君    林 省之介君

      増田 敏男君    松野 博一君

      水野 賢一君    森岡 正宏君

      大石 尚子君    鎌田さゆり君

      首藤 信彦君    中野 寛成君

      葉山  峻君    藤村  修君

      松野 頼久君    山口  壯君

      山元  勉君    池坊 保子君

      斉藤 鉄夫君    武山百合子君

      石井 郁子君    児玉 健次君

      中西 績介君    山内 惠子君

      松浪健四郎君

    …………………………………

   議員           斉藤斗志二君

   議員           坂井 隆憲君

   議員           中野 寛成君

   議員           山谷えり子君

   議員           河合 正智君

   議員           松浪健四郎君

   文部科学大臣       遠山 敦子君

   文部科学副大臣      青山  丘君

   財務大臣政務官      林田  彪君

   文部科学大臣政務官    池坊 保子君

   政府参考人

   (文化庁次長)      銭谷 眞美君

   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月二十一日

 辞任         補欠選任

  河村 建夫君     小此木八郎君

  砂田 圭佑君     伊藤信太郎君

  牧  義夫君     首藤 信彦君

同日

 辞任         補欠選任

  伊藤信太郎君     砂田 圭佑君

  小此木八郎君     河村 建夫君

  首藤 信彦君     牧  義夫君

    ―――――――――――――

十一月十九日

 文化芸術振興基本法案(斉藤斗志二君外十五名提出、衆法第一二号)

同月十六日

 私立大学の教育・研究条件の改善と父母・学生の学費負担の軽減に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三五五号)

 同(石井郁子君紹介)(第三五六号)

 同(小沢和秋君紹介)(第三五七号)

 同(大幡基夫君紹介)(第三五八号)

 同(大森猛君紹介)(第三五九号)

 同(木島日出夫君紹介)(第三六〇号)

 同(児玉健次君紹介)(第三六一号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三六二号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三六三号)

 同(志位和夫君紹介)(第三六四号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三六五号)

 同(瀬古由起子君紹介)(第三六六号)

 同(中林よし子君紹介)(第三六七号)

 同(春名直章君紹介)(第三六八号)

 同(不破哲三君紹介)(第三六九号)

 同(藤木洋子君紹介)(第三七〇号)

 同(松本善明君紹介)(第三七一号)

 同(矢島恒夫君紹介)(第三七二号)

 同(山口富男君紹介)(第三七三号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三七四号)

 私立学校の保護者負担の軽減、教育条件改善のための私学助成の充実に関する請願(町村信孝君紹介)(第四四九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文化芸術振興基本法案(斉藤斗志二君外十五名提出、衆法第一二号)




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     ――――◇―――――

高市委員長 これより会議を開きます。

 斉藤斗志二君外十五名提出、文化芸術振興基本法案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。斉藤斗志二君。

    ―――――――――――――

 文化芸術振興基本法案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤(斗)議員 ただいま議題となりました文化芸術振興基本法案につきまして、私が提出者を代表して、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 文化芸術は、人々の創造性をはぐくみ、その表現力を高めるとともに、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するものであります。

 また、文化芸術は、それ自体が固有の意義と価値を有するとともに、国民共通のよりどころとして重要な意味を持ち、自己認識の基点となるものでございます。

 このような文化芸術の役割が今後においても変わることはないと確信いたしておりますが、現状では、文化芸術に関する基盤の整備や環境の形成は十分な状態にあるとは言えません。二十一世紀を迎えた今、これまで培われてきた伝統的な文化芸術を継承し、発展させるとともに、独創性のある新たな文化芸術を創造することが緊急の課題となっています。

 このような事態に対処して、我が国の文化芸術の振興を図るためには、文化芸術活動を行う者の自主性を尊重することを旨としつつ、文化芸術を国民の身近なものとし、それを尊重し大切にするよう包括的に施策を推進していくことが不可欠であります。

 このため、文化芸術の振興についての基本理念を明らかにしてその方向を示し、文化芸術の振興に関する施策を総合的に推進するため、本法案を提出した次第であります。

 次に、本法案の主な内容について御説明申し上げます。

 第一に、この法律の目的は、文化芸術の振興に関し、基本理念を定め、国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、文化芸術の振興に関する施策の基本となる事項を定めることにより、文化芸術に関する活動を行う者の自主的な活動の促進を旨として、文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図り、もって心豊かな国民生活及び活力ある社会の実現に寄与することとしております。

 第二に、文化芸術の振興に当たっての基本理念として、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性の尊重、国民の文化芸術の鑑賞・参加・創造のための環境の整備、我が国や世界の文化芸術の発展、多様な文化芸術の保護及び発展、各地域の特色ある文化芸術の発展、文化芸術に係る国際的な交流・貢献の推進、国民の意見の反映の八項目について定めています。

 第三に、国及び地方公共団体の責務として、基本理念にのっとり、国は、文化芸術の振興に関する施策を総合的に策定し、実施する責務を有すること、地方公共団体は、国との連携を図りつつ、自主的かつ主体的に、その地域の特性に応じた施策を策定し、実施する責務を有することを定めています。

 第四に、政府は、文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るため、文化芸術の振興に関する基本的な方針を定めることとしております。

 第五に、国の文化芸術の振興に関する基本的施策として、文化芸術の各分野の振興、地域における文化芸術の振興、国際交流等の推進、芸術家等の養成及び確保、国語についての理解、著作権等の保護及び利用、国民の鑑賞等の機会の充実、劇場・美術館等の充実、民間の支援活動の活性化、政策形成への民意の反映などについて規定いたしております。

 なお、この法律は、公布の日から施行することといたしております。

 以上が、本法案を提出いたしました理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願いを申し上げます。

高市委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

高市委員長 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。大石尚子君。

大石(尚)委員 民主党の大石尚子でございます。

 このたび文化芸術振興基本法を審議する運びとなりましたことは大変喜ばしいことと存じております。すぐれた文化芸術に触れたり体験したりしながら子供たちが成長できる、それから私たちも生活できるということは、豊かな心、また心豊かな、争いのない社会をつくっていく上に、この上なく重要なことと思っております。

 現代の世相を思えば、この基本法制定をきっかけとして、国民の皆さんが、御自分の生活に文化芸術を組み入れていくことの大切さ、それから楽しさを膨らませていただけるきっかけとなるのではないか、そのように願いながら、文化芸術振興基本法に関して、次の四点について確認させていただきたいと存じます。

 まず第一点は、多種多様な文化芸術の振興の必要性についてお尋ねいたします。

 まず、この法案の第三章、第八条から第十四条にかけまして、文化芸術の分野別分類が例示されてございます。この法案に接せられまして国民の皆さんが心配されることは、まず、御自分が大切と思っている文化芸術が例示されているかどうか、それから、御自分がかかわっている文化芸術がここにやはり載っているのかどうか、そういうことを大変心配なさると思うのでございます。

 それで、私が住んでおります町の鎌倉の、ごく周辺から感じ取った中でも、例示されていないもの、あるいは分野が定めにくいものがございます。

 例えば、二、三、気づいたところをお話し申し上げますと、第八条から順を追ってまいりますと、第八条関連では、社寺仏閣、いわゆる建築、庭園、工芸。工芸の中でも、刀剣でございますとか鎌倉彫ですとかあるいはガラス細工ですとか、いろいろあろうかと思います。

 また、狂言はやはり第十条に入るのではないかと存じます。

 それからお神楽やお祭り、これは第十四条に入るのかなと察しております。

 それから、流鏑馬はどこに入るのかしら、あるいは今度、分野が大変難しいということでは、映画というのはメディア芸術になじむのかなと感じましたり、あるいは茶道、華道、書道、これは生活文化と申すよりもむしろ芸術の分野、華道は空間の芸術かと思うようなときもございますゆえ、書もまたそうでございます、そちらの方にも分類されたり、あるいは衣食住文化はどうなるのかしらと、いろいろな思いがめぐってくるわけでございます。

 そこで、文化芸術の分野のうち、例示されているものと例示されていないものとのその隔たりと申しますか、いずれも重要なものばかりでございますので、当然本法の対象となるものでありましょうから、記述にとらわれずに、文化芸術の振興に関しては、例示されていようがされていまいが、取り扱いに差異が生じてはならないと考えます。その点、提出者の方の御見解をお尋ねいたしたいと存じます。

 恐縮でございます、第二問まで続けて、第二点目に移らせていただきます。

 第二点目は、伝統的な様式表現を伴う身体文化の扱いについてお尋ねいたします。

 身体文化というのはちょっとなじみの薄い言葉かと存じますが、要するに、お相撲とかあるいは古武道など、特に古武道の中はいろいろございますようで、居合道、居合術とも申すかと存じますが、剣道、弓道、柔道、合気道、なぎなた、杖術、これはつえですね、それから槍術、棒術、こういうふうに挙げてまいりますと、数十に及ぶそうでございます。これらのものはすべて我が国の伝統文化としてすぐれた価値を持つものでございますし、海外からも日本文化の一つとして大変高く評価されております。

 したがって、これらの伝統的な様式表現を伴う身体文化、これを身体文化と称させていただいていいかと存じますが、当然本法の対象となると考えておりますが、提出者の御見解をお尋ねいたします。

 この二問についてとりあえずお願いいたします。

斉藤(斗)議員 お答え申し上げます。

 まずもって大石委員に、本法案の提出の理由につきまして御理解いただいたことを厚く御礼申し上げたいと思います。

 御案内のように、大変多くの方々が文化芸術に携わっていらっしゃるということ、その中で、御質問の中の例示の問題がございました。八条から十四条までの各条においてそれぞれの文化芸術の例示を挙げているということでございますが、これはあくまでも各条の内容をわかりやすくするためでございまして、すべての文化芸術を網羅した内容であるということを御理解いただきたいと思います。したがいまして、例示に挙がっていない分野も、当然、本法律案による施策の対象となります。

 また、文化芸術の振興のための施策を講ずるに当たりましては、例示されている分野と例示されていない分野との間に差を設けたり、そういうことはいたしませんし、例示されている分野について優先的に取り扱う、そういったこともいたしません。そのような趣旨でございますので、御理解賜りたいと思います。

 なお、身体文化については松浪議員の方からお答えさせていただきます。

松浪議員 お答えいたします。

 この法案を作成するに当たりましては、いろいろと問題になったところを御指摘いただきました。ありがたいというふうに思います。

 私はかつてスポーツ人類学者でございまして、身体文化という表現につきましては、一般の方にはちょっと違和感があるかもしれませんけれども、スポーツをも含めて、学問の世界では身体文化という言葉はもう普通の言葉になっておるということをまずお断りさせていただきたい、こういうふうに思います。

 お尋ねの、武道及び古武道など日本の伝統的な様式表現を伴う身体文化は、本法律案では、第十三条に規定する無形の文化財に含まれるものと考えております。冒頭御指摘ありました、恐らくは神奈川県の山北町の室生神社の流鏑馬を指されたのだというふうに思いますけれども、このような身体文化、さらには福島県の相馬市にございます相馬野馬追、さらには和歌山県の由良町にあります小引童子相撲などは国や県の指定文化財となっております。

 また、指定されておりませんもろもろの身体文化につきましても、無形の文化財として本法律の対象となりますので、保存及び活用を図ってまいりたい、このように考えておるところでございます。

大石(尚)委員 それでは、三点目について伺わせていただきたいと思います。

 三点目は、文化芸術の振興に関する施策を実施していく場合に民意をどうやって反映させていくかという問題でございます。

 文化芸術の振興に当たっては、基本理念にございますように、文化芸術活動を行う者の自主性や創造性が尊重されること、これは大変重要なことでございます。このため、基本方針の策定に当たっては文化審議会などの御意見を聞いて進めるということ、これは当然でございますが、具体的な施策の実施についても、文化芸術活動を行う者を初め、広く国民の意見を反映させながら公正に行っていくということが必要と考えております。

 この点に関しましては、提出者並びに文部科学大臣の御見解をお尋ねいたしたいと思います。

河合議員 本法案提出に当たりまして大石先生に大変御尽力いただきましたことを、まず感謝申し上げます。

 民意の反映についての御質問でございますけれども、文化芸術を鑑賞し、参加し、創造することはすべての者にかかわることでございまして、大石委員御指摘のとおり、広く国民の意見を求めることは大変重要なことでございます。

 先生御指摘の、第二条に基本理念として掲げておりますように、広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない、また三十四条に、文化芸術の振興に関する政策形成に民意を反映するために特に規定を設けているところでございます。

 先生御指摘のように、十分民意が反映されて初めてこの基本法に魂が入ると考えております。

高市委員長 大臣の御答弁はよろしいですか。

大石(尚)委員 恐れ入りますが、時間が差し迫ってまいりましたので、次の質問が文部科学大臣への質問でございますので、一緒に質問させていただいて、御答弁をよろしゅうございましょうか。

高市委員長 どうぞ。

大石(尚)委員 恐縮でございます。

 それでは四点目、これは、文化芸術関係予算の拡充について文部科学大臣の御決意を伺いたいのでございます。

 文化芸術活動というのはお金がかかります。こういった性格上、国や地方自治体、あるいは個人や民間の団体が側面から必要な援助を行っていかないと成り立たない面もございます。

 我が国の文化芸術関係予算は、十年前に比べると約二倍に増加していると聞いておりますが、国の予算全体に占める文化関係予算が、フランスの場合は〇・九四%、イギリスが〇・四二%、我が国はわずか〇・一一%と、かなり低い水準にございます。また、創造活動をする場がないとか、それから演奏や上演をいたしますのにリハーサルする場所がないとか、そういう声も間々聞くのでございますが、それですのに、近年、地方財政の悪化や景気の後退から、文化施設閉鎖のニュースも入ってまいります。

 このような現状が、国民から文化芸術に接する機会を奪ってしまったり、あるいは活動の停滞につながっていきはしないか。また、子供の体験学習とのつながりから、新しい、例えば美術館でございますとかあるいは博物館等の活用の仕方等も考えていかなければならない時代でございますゆえに、この基本法の制定を機に、どうやって文化芸術の振興に関する予算を拡充させていったらいいのか。仏つくって魂入れずにならないように、ぜひ文部科学大臣の御決意を伺いたいと思います。

遠山国務大臣 大石委員の御質問にお答えいたします前に、まずもって、今回、長年国民が待望しておりました文化芸術振興基本法がこのような形で提案され、そして御議論いただいておりますことに心から感謝いたします。特に、提案者の皆様方、そして今この委員会で御参加いただいております委員の方々に心から御礼を申し上げたいと思います。

 大石委員の御質問でございますが、幅広く芸術文化にかかわる人の意見を聞くようにというのはまことにそのとおりでございまして、現在も文化審議会及び文化政策推進会議、あらゆる、いろいろな形での懇談会、あるいは公式、非公式に行いますいろいろな場面での意見を聞く機会などございますが、今後とも、本法案の趣旨を踏まえまして、これらの仕組みの一層の活用を図りますとともに、適切に国民の皆様の意見を求めて芸術文化の振興に関する政策形成を図ってまいりたいと思っております。

 また、予算につきましても、本当にこの芸術文化予算につきましてはまだまだ十分でございません。殊に来年度の予算要求におきまして、文化芸術創造プランというものを創設いたしまして、今年度に比べて百二十一億円増の一千三十一億円の要求を行っているところでございますが、私としましても、今後とも、この法律の成立を契機といたしまして、文化予算の充実に全力を尽くしてまいりたいと考えております。よろしくお願いいたします。

大石(尚)委員 よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

高市委員長 都築譲君。

都築委員 自由党の都築です。

 文化芸術振興基本法案の審議に当たりまして、基本的なことをお伺いいたしたいと思います。

 まず初めに、この法案、議員提案ということで、超党派の各議員の皆様方がこうやって法案を取りまとめて提出されましたことに、本当に心から敬意を表する次第でございまして、ぜひ、この法案を軸に、日本の芸術あるいはまた文化、こういったものが大いに盛り上がって、国民の福利といいますか、楽しみが増すことを期待したい、こんなふうに思っております。

 そして、この法案は議員の皆様方で非公式の場で議論をされてまいりまして、こうして正規の国会の委員会で議論されるのは今回が初めてでございますので、まず基本的なところを幾つかお聞かせいただきたい、こんなふうに思っております。

 まず、総論でございますが、提案者の方にお伺いをいたしたいのであります。

 この法案、どうして今日までかかったのかという議論もありましょうが、今、必要とされている日本の芸術や文化といったものが置かれている現状をどういうふうに認識しておられるか、そしてまた、それはどうしてそんなことになってしまったのか、そういった状況についてどういうお考えを持っておられるか。そしてまた、この法案によって実際に芸術や文化といったものが振興されたとき、それはどういう状況をお考えになられるのか、お聞かせをいただきたいと思います。

斉藤(斗)議員 まずもって、本法案がここまで提出の運びになりましたその背景、御案内のように、かなり長い間、関係者の間ではこのような法案が必要だということもうたわれてきたところでございます。

 御案内のように、個別法として文化財保護法とか著作権法とか、個別の法律は幾つかあるわけでありますが、中心となるような、核となるような、文化芸術を振興するようなそういった法律はまだない、そういう背景の中で、一日も早くつくってもらいたいという要請もありまして、今日まで参りました。

 加えまして、音楽議員連盟という超党派の会がございまして、そこでも長い間議論を重ねてまいりましたし、また今回、各政党におかれましても、それぞれの立場で多くの方々から、有識者から意見もくみ上げながら、持ち寄って、そしてこのような法案までたどり着いたということで御理解賜ればというふうに思います。

 現状、私は、日本は経済成長時代からいよいよ文化芸術の時代に入ってきている、また物の時代から心の時代に移ってきている、そして国内からさらに世界への時代に入ってきている、二十一世紀に入りまして、そういうような大きな変革があるのではないかと思っているところでございます。

 我が国におきまして、心豊かで質の高い国民生活や活力ある社会を形成するということの上で、文化芸術は極めて重要な意味を持っているというふうに考えております。しかしながら、現状は、そのような経済的な豊かさの中であっても、果たして文化芸術がその役割を果たすことができるような基盤の整備や環境の形成が十分であるかどうか。私は、十分でないというふうに思っておるわけでございます。

 このことは、これまで行政全体における文化芸術の振興への取り組みが必ずしも十分ではなかったのではないかという私なりの見方をいたしておりますし、我々国民の側においても、文化芸術への理解や関心が十分ではなかったのではないかというような気持ちがございます。

 そこで、予算面等々を見ましても、日本の場合は国家予算に占める比率、現在九百億をちょっと超えたところでございますが、比率でいいますと、〇・一一%という比率でございます。これをフランスで見ますと〇・九五%、日本はわずかその十分の一ぐらいにしか位置づけられないというような背景もございます。

 また、例えば世界遺産ということが当たるかどうかわかりませんが、文化遺産並びに自然遺産、さらに複合遺産の中でカウントされていくわけでありますが、日本は現在十の世界遺産を有しております。イタリアでは三十、フランスでは二十五、こういう水準にあるというようなこと、いろいろな総合的な観点から、もっともっと文化芸術の振興が必要であるのではないかというふうに思っているところでございます。

 先生が、振興されたときはどういうふうな状況かという御質問もございました。一つ一つ振興することによりまして、芸術家を初め多くの国民によりまして多様な分野の自主的かつ主体的な文化芸術活動が促進ないし活発に行われるようなことが、私は、目指す文化芸術の振興が図られたものになるのではないかというふうに思っているわけでございます。国民一人一人が、文化芸術に参加し、みずからが創造的活動の担い手となっていくような、そんな社会をつくっていきたいというふうに思っております。

都築委員 ありがとうございました。

 今、提案者がお話しになった中で予算の関係が出てまいりました。先ほどの大石委員の質問の中でも予算の問題が出たわけでありまして、文化芸術に係る国の予算の割合が、日本ではフランスなどと比べると相当低いのではないか、こういうお話がございました。確かに、文化芸術といった活動を続けていく上で、まずその基盤ができていないといけないということだろうと思います。

 ただ、私の考えるところ、芸術とか文化、そういった人間の基本的な活動、営みといったものは、法律とか社会制度とか、そういったものができる以前から実はまたあるものではないのか。だからこそ、人間の基本的な自由として位置づけられる表現の自由の一つのあらわれというふうにも考えられるわけでございます。

 そういった自由といった活動を行っていく自由な人間がいる、そしてまた、その支える自由な人々が、実は個人でもあるいはまた企業、団体でもあるわけでございまして、国が応援をするということは、国が一般の皆さんから税金を集めてそれを配分する中での割合ということになると思うんですね。

 ただ、今まで文化が発達してきた地域とかそういったものを考えたときに、お金を持っている人と権力というものが一体になっているケースが間々ありましたけれども、実際には今の民主主義の世の中、こういった状況では、国全体のために、国民全体の福利のために予算を分配するという形が今の日本の財政の基本になっているんだろう、こう思うわけであります。

 そうすると、〇・一一%ということで、国の予算の中に占める文化関係の予算が少ない、こういう議論がありますが、もし逆に、税制とかそういったものが本当に整備をされて、民間の人たちがどんどん、国に税金で吸い上げられるんじゃなくて、自由に自分の好きな、例えば美術家を応援をする、音楽家を応援をする、書道家を応援をする、華道を応援をする、いろいろな形でやっておったら、それは全体としては実は十分な資金が回って十分な活動を支えてきているのではないか、こんなふうに思うわけであります。

 むしろ逆に、国が全部その予算を集中して、一手に握って分配することになったら、それこそ、国が文化を奴隷のごとく扱う、自分の気に入った芸術や文化だけを主導する、こういうことになってしまうんじゃないか、そういう考え方はいかがでございますか。これは提案者に、ちょっと哲学論で恐縮でございますが、お願いいたします。

中野(寛)議員 お答えをいたします。

 芸術文化活動にとりまして、その創造性また表現において自由が保障されるということは当然のことであると思います。都築さんの自由党の自由の二文字は極めて重要な原則だと思っておりますし、そういう意味では、憲法の十九条とか二十一条に、思想の自由だとか、そしてまた表現の自由だとかということが保障されている。また、同時に、文化芸術といえども他人の人権を侵害するものであってももちろんならないと思いますし、こういう自由とか人権という問題は、これはもう国の基本法の根幹として憲法に明記されているというふうに思うわけであります。

 その前提に立って、今、この振興基本法は、もう一つ突っ込んで、創造性や自主性を尊重するだけではなくて、それを大いに振興しよう、応援しよう、そういう趣旨での法律でありますので、我々としては、今都築さんが言われたような基本的な姿勢を持って臨んでいきたいと思っております。

 そのときに、例えばお金で拘束するとか影響を与えるとかということになってはならないというのは、これはもう当然のことでありまして、そういうことがないように、例えば文部科学省で基本方針案をつくる際にも、十分配慮をして、パブリックコメントなども含めたいろいろ多様な意見、希望などを聞いた中で判断をしていくという仕組みもつくっておりますし、第三十一条だったと思いますが、税制上の措置についても配慮するように加えております。

 アメリカなどは、国家予算は大変少ないわけですが、州予算の中には文化予算がやはり多い。と同時に、それ以上に、民間の皆さんがそういう文化芸術活動に対して寄附をするという、言うならば、文化のために寄附をする文化があるわけでありまして、日本もできるだけそういうふうにしていくことが大事だ、それを促進するためにも第三十一条も大変重要な意味を持つと期待を込めて書かせていただいております。先生のおっしゃる気持ちを体して、我々としても今後この法律が運用されるように努めていきたいと期待をいたしている次第でございます。

都築委員 ありがとうございました。三十一条の点については、各論ということでまた後ほどお伺いをしたいと思いますが、具体的な議論に少しずつ入ってまいりたいと思います。

 まず、第一条でこの法律の目的が書いてございます。そして、その中で、文化芸術に関する活動を行う者の自主的な活動の促進を旨として総合的な施策の推進を図る、こういうことでございますが、文化芸術に関する活動とは具体的に何をお考えになられるのか。それから、自主的な活動といったものは自由な活動といったものとは異なっているのか。そんなことがちょっと大変気になったわけであります。その趣旨は、また第二条の第一項に、基本理念ということで「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。」こういうふうになっておるわけであります。

 私ども、先ほどから自由ということを申し上げておるわけでありまして、自主的、その自主的な活動、そういったものと自由との考え方をどういうふうにお考えになられるのか。何か、自主的にどうぞやってください、自主的にやっている範囲はいいですよ、こうお上がお墨つきを与えるような印象と、憲法で定められているというか、もともと憲法で定められている以前からの生まれながらの権利というものが、この第二条の三項に実は書いてあるわけであります。

 ちょっと幾つかの質問を重ねて恐縮でございますけれども、この三項はまた、生まれながらの権利といったものが初めてここで、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利である」、こういうふうに憲法の理念を引きながらも書いてあるわけですが、実は三項というのは、国民がその居住する地域にかかわらずひとしく文化活動に参加できるように環境の整備が図られなければいけないという、限定的な項目なんですね。

 ですから、ちょっと質問を幾つかまとめて大変恐縮ですが、文化芸術に関する活動とは一体何か、自主的な活動とは自由な活動とは異なるのか、そしてまた、この第二条三項で言っているところの生まれながらの権利といったものは、むしろ第二条の第一項に書き記すべき、本当に基本的な人間性普遍の原理といったものではないのか、こんなことを思うわけでありますが、提案者の御見解をお伺いしたいと思います。

河合議員 都築委員にお答え申し上げます。

 まず、文化芸術に関する活動とは何かという御質問でございますが、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、またこれを創造する活動であると考えております。

 次に、自由な活動について、憲法上の立場から先生がお述べになりましたいわゆる基本的な自由権、自由な活動はその意味で使っております。そして、自主的な活動というのもそれと同義でございますが、本法律案では、先生御指摘のように、芸術家等の主体性を明確にするという意味を込めまして自主的な活動と規定しているところでございますが、自由な活動と同義であると考えております。

坂井議員 ただいま、第二条の第三項に生まれながらの権利ということを書いてあることについての御指摘がありましたが、この「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利である」ということをうたっておりますのは、まさに御指摘のように、国民がその居住する地域にかかわらずひとしく文化芸術活動を行うことができるような環境整備の必要性、そのことについての理由を述べたものであります。

 そういう意味で、この生まれながらの権利ということをこうして設けたことは、非常に意義のある条文規定になっていると認識しているわけであります。よろしくお願いします。

都築委員 ちょっと時間が大分限られておりますので、少し飛ばさせていただきます。恐縮です。

 この第二条の第八項に「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者その他広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない。」というふうに規定してあります。

 国民の意見が反映をされるというのは大変大切なことではあろうと思いますが、どういう場面でどういうふうにして国民の意見を吸い上げ、反映させていくことになるのか、それを具体的に、ちょっとお考えを提案者の方にお聞きをしたいと思います。

坂井議員 現在、文化庁には、芸術家や有識者で構成される文化審議会を初め、各施策を推進するために各種の会議が置かれております。その意見を政策形成に反映しているものと承知しているわけでありますが、本法律案の趣旨を踏まえて、文化審議会はもとより、各種の会議においてより多くの意見を聞くための機会を設けたい。また、インターネットも普及しているわけでありますから、インターネットなどを通じて国民の声を聞くための方策を積極的に進めていきたい、そう思っているわけであります。

都築委員 今御答弁をお伺いいたしまして、文部科学省はこれからまた実際にこういった施策を担当されていかれるし、また、地方自治体の方もこういった法律を踏まえていろいろな対応をとっていくんだろうと思いますが、本当にそういった声がいろいろと反映されることがまた一つ重要ではないか、こんなふうに思うわけでありまして、ぜひ今の御答弁以上のものを期待したい、こんなふうに思っております。

 それから次は、第三条で「国の責務」ということで書いてございます。ちょっと余りにも抽象的過ぎて、「文化芸術の振興に関する施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」ということですが、今までの施策というのは具体的にどうだったのか、そしてまた、この新しい法律の提案を受けて具体的にどう変えていこうとされるのか、そこら辺のところは文部科学省にお伺いをいたしたいと思います。

遠山国務大臣 文化庁では、従来から文化芸術の振興に関する施策、さまざまな形で展開をしてまいってきたところでございます。本法律案は、そういうことを前提にしながら、しかし、文化芸術の振興に関する施策を総合的に推進するため基本となる事項を定めるものでございます。

 本法律案によりまして、今後は、政府として文化芸術の振興に関する基本的な方針を策定することとなるわけでございますが、その方針の策定の上で、文化芸術の振興のための施策を総合的に推進してまいるということでございまして、一段と総合的な見地から大事なものを取り上げていくということができるようになると考えております。

都築委員 私ども自由党、実は、芸術文化を振興するためにこの法案には賛成の立場でございます。ただ、できるだけ、法案という以上は、本当に法律というのはその時の政府を当然拘束するものですし、国民に対して権利や義務を新しく設定したり、また政府を拘束するということで、例えば具体的な施策の中身として予算の裏打ちをもって具体的な活動についての注文をつけていく、こういうのが本来の法律のあり方であろうと思うわけでありまして、今文部科学大臣のお話を聞いておりますと、まだまだこれから議論をしていくというふうなことでございます。

 そうすると、ちょっと質問をまた飛ばしていただいて、実は基本方針、第七条に規定をされております、この基本方針をそもそも定めることの意義。もともと文化庁の方で今までも取り組んできたということであれば、それを、ただこの法律に基づく基本方針としてまた焼き直すだけのことになるのか、あるいはまた、今までとは違ったものをこれから本当につくっていくことになるのか。

 そしてまた、この七条の条文を読んでおりますと、実は変更の規定が第五項にありますけれども、一回ぽっきりつくって、これが日本の文化政策の、あるいは芸術振興政策の基本方針ですということになるのか、内閣ごとに定めることになるのか、見直しといったものはどういったときに行うのか。そしてまた、同時に、この方針に基づいた実施状況、こういったものの把握とか、その報告を国会にも、あるいはまた国民に対しても行うことはあるのかどうか。そこら辺について、これは提案者の方に、どういうお考えでこの条文を起草されたのか、お伺いをいたしたいと思います。

河合議員 都築委員の御指摘のところは、この法案の中で私たちが、公明党が最もこだわった点でございます。それは、この第七条がこの法律をして基本法たらしめているものであると私たちはとらえたからでございます。

 その意味で、この基本方針は、政府として文化芸術の振興に関する施策の総合的な推進を図るために策定するものでありまして、この法律に基づき、新たに基本方針が定められることになります。そして、政府全体で文化振興に取り組む基盤がつくられることになるわけでございます。この第七条の「政府は、」という主語が非常に大きな意味を持っておりまして、この国にあります基本法のすべては、この基本法と同じような文言を用いてつくられております。

 また、基本方針につきましては、文化芸術をめぐる状況の変化に応じて見直しが図られていくべきものと考えております。したがいまして、一度定められた場合には、ある程度の期間はそれに基づいて具体的施策が実施されていくものと考えております。

 また、文化芸術の振興施策の実施状況につきましては、政府においても適時適切にその実態を把握いたしまして、公表されていくものと考えております。

都築委員 ちょっと質問通告をしていなくて恐縮でございますが、今、提案者の方から、適時適切に実施状況についての報告がなされていくということでございますが、文部科学省の方でこういった点についてどういうふうにお考えになるか、ちょっと御報告をいただければと思います。

銭谷政府参考人 法案が成立をいたしますと、政府全体で、今お話しのように基本方針を策定し、文化庁といたしましては、その基本方針に基づいて具体的な施策を実施するわけでございます。

 その施策の実施状況につきましては、適時適切にその状況を国民の皆様に公表していくということが必要になろうかと思いますが、いろいろな、文教、科学白書とかそういったもの、あるいは文化庁の持っておりますインターネット、こういったようなものを通じまして、情報は適切にお知らせをしていきたいというふうに考えております。

都築委員 ぜひそういうことでお願いをいたしたいと思いますし、また、フランスの例が先ほど何か出ておりましたけれども、フランス政府の方も実際に国会に対して詳細な報告を行っているというふうなことも、国会議員初めいろいろな政治、行政関係者がこういった関心を持ち続ける意味で大変大切なことではないかというふうなことを申し上げておきたいと思います。

 そして、いろいろな施策を講じられていく中で、例えば第六条に、「法制上の措置等」ということで「必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。」というふうに政府に対して要請をしておりますし、先ほど来議論になっております三十一条に、「民間の支援活動の活性化等」ということで、実は「文化芸術団体が個人又は民間の団体からの寄附を受けることを容易にする等のための税制上の措置その他の必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」こういうふうになっておるわけであります。私は、この三十一条の「民間の支援活動の活性化等」といったものこそが、本当に文化芸術、芸術文化、こういったものを大いに振興し、また本当に、人々の生きる自由というか、そういった活動に参加する自由、鑑賞する自由、享受する自由といったものを支えるものではないか、こんなふうに思うわけであります。

 今まで聞いておるところによりますと、こういった活動についての税制上の措置は、例えば特定公益増進法人ということで、芸術文化関係では実は、芸術の普及向上では五十七法人が指定をされているというふうなことでございますし、文化財、歴史的風土の保存、活用では十六法人、こんなことでございます。

 ひところ、実は企業のメセナ活動とかそういったものがいろいろ行われました。本当にそういった活動が、もっとあまねくいろいろな芸術をそれぞれの観点から応援をすることが実は一番大切じゃないのか、こんなふうに思うわけであります。予算の分配といったものも大変大切な面を持っていると思いますけれども、むしろこういった、それぞれ、民間レベルの、個人レベルの自由な活動を支える税制といったものをどういうふうに、このお話を、この法案をお聞きになって、財政当局としてお考えになっていかれるのか。その点について担当の、財務省、来られていますか、お伺いいたしたいと思います。

林田大臣政務官 委員今御指摘のとおり、現在の特定公益法人制度等、まだまだ活用されていない面が多分にございます。財務省といたしましても、この法案を受けまして、文化芸術の分野の事業を行う公益法人等に対する寄附金に関して、それらを支援する方々の税制措置につきましては、今委員御案内のとおり、指定寄附金制度や特定公益増進法人制度により、いわゆる所得税の控除とかあるいは法人税の損金算入等、いろいろな面で枠を設定しております。そういう面でもろもろの、諸制度をよく活用していただいて、この法案の趣旨に従って大いに活用をお願いしたい、そういう意味でございます。

都築委員 ぜひお願いをいたしたいと思います。

 文化立国あるいはまた芸術立国、いろいろな呼び方がございますが、今まで日本の場合は、やはり民生の安定ということで産業基盤を整備し、そして、少しでも豊かになろう、こういうことで政策が進められてきた点があると思います。

 冒頭、斉藤議員の方から、提案者からお話がありましたように、本当に物の豊かさから心の豊かさを求める時代になってきているということで、政府自身がそういった面に大きく踏み出していく、そういったことが大切じゃないか、こんなふうに思うわけでありまして、なお一層の努力をお願いいたしたい、こんなふうに思うわけであります。

 そして、実はもう時間が間もなく切れてしまいます、たくさん質問をつくり過ぎて大変御迷惑をおかけいたしましてまずおわびをしなければならないのでありますが、最後に一点、池坊政務官にお伺いをしたいのであります。

 実は、先週の日曜日、私の地元の町で、文化協会後援で生け花展が開かれました。池坊の流派から、それから彩生会とか真生流とか、本当に美しい花の展示を見まして、自分自身が枯れつつある年代だから一層潤いのあるものを美しく感じるのか、あるいはまた、若いころはそんなでもなかったと思うのは、若いころはもっとはつらつたるエネルギーが内側にあふれているから、花よりも自分の方がすぐれているという思いで余り見ていなかったのかわかりませんが、実際に、中学、高校、大学を見て、生け花展なんて行ったことは一度もないわけであります。

 地域で、そういう華道、あるいはまた茶道でも書道でも、あるいはまた武道でいきますと剣道、柔道、さまざまなものがありますが、そういった活動に、本当に小学校のころから、中学校のころから接していくことが、今、心の教育が叫ばれる中で、人間の心の豊かさを取り戻す一番の活動ではないか。そういった意味で、この芸術文化振興法案の提案に当たりまして、また文部科学省の政務官として御活躍をお願いしたいと思いますが、ぜひ御見解をお伺いしたいと思います。

池坊大臣政務官 都築委員から大変力強い御支援をいただきまして、私もこれをつくってきた一員として、大変うれしく思っております。

 私は、文化芸術に関する体験学習ということは、やはり子供たちが知らず知らずのうちに芸術性や文化を肌や心で感じる大変いい機会だと思っております。学校教育の中におきましても、今、音楽とか総合的な学習時間、あるいは芸術のときに、例えば美術館に参りましてそれを鑑賞する、そしてその後に、鑑賞しただけではなくて、作者と話し合いの場を持ったり、あるいは伝統工芸のところにみずから取材して、そして自分も体験する、そのようなこともやっております。

 文化庁では、十三年度から、学校の文化部活動活性化事業というのを実施しております。学校の文化部活動や総合的な学習時間に、体験をしよう、触れ合おうということでございまして、これは、小中高等学校において、すぐれた舞台芸術公演の実施や、またその担い手たちを呼んで直接指導を行っているところでございます。

 また、平成十四年度においては、この文化芸術振興基本法もできることでございますので、新世紀アーツプランとして、文化芸術創造プランというのを創設いたしております。これは四十一億の予算要求もいたしておりまして、子供たちに本物の舞台芸術に触れる機会の確保や、学校の文化活動の推進、文化体験プログラム支援事業などを行うこととしております。

 また、地域の文化祭などに関しても、地域との連帯を深めながら、子供たちが直接文化祭に参画するような施策もいろいろと講じているところでございます。

都築委員 ありがとうございました。

 終わります。

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高市委員長 この際、遠山文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山大臣。

遠山国務大臣 先般の石井委員からの御質問に対します私の答弁につきまして、一部不適切との御注意をちょうだいいたしました。私といたしましては、今後十分気をつけてまいりたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。

高市委員長 石井郁子君からも発言を求められておりますので、これを許します。石井郁子君。

石井(郁)委員 ただいまの件でございますが、大変重要な問題でありますので、一言申し上げさせていただきます。

 十月三十一日の当委員会で、大臣は、私の質問中に、他の議員に答えている、同じことを聞くのだろうかという趣旨での答弁をされたわけでございます。私は、もう余りにもこれは傲慢な態度というふうに受けとめました。去る五月にも、同僚議員の質問に対しまして、極めて不適切な発言ということで答弁を取り消されたということがございました。私は、こうした不適切発言を二度も繰り返されるという点で、やはり委員会の審議に対して、また院に対しての基本的な大臣の姿勢が疑われると言わざるを得ません。文部科学大臣として、今後、かかる侮辱的発言を行うべきではないということを強く申し上げさせていただきます。

 以上です。

    ―――――――――――――

高市委員長 それでは、質疑を続行いたします。石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 芸術文化を支援する基本法は、大きく期待をされていたところでございます。基本理念で、文化的権利、また専門家の地位の向上などを書き込まれたということが大変重要なことだと考えております。

 この間、我が党に寄せられましたメールなどを見ましても、日本の芸術文化全体の今後のあり方を示す基本法だけに、十分議論をし、五十年、百年の計に悔いが残らないようにしてもらいたいというのが大方の意見でございます。そうした立場から、私、質問をさせていただきます。

 音楽議員連盟の総会決議では、ユネスコの芸術家の地位に関する勧告等の精神にのっとった芸術文化基本法、仮称ですけれども、その創設が必要であるというふうにされてきたと思うわけです。

 一九八〇年のユネスコの第二十一回総会では、芸術家の地位に関する勧告が採択されました。その指導原則の第六項で、こう書かれているわけです。表現及び伝達の自由は、すべての芸術活動にとって基本的な前提条件であるので、加盟国は、この点につき人権に関する国際的、国内規定によって定められている保護が芸術家に確実に与えられるべきことを確保しなければならないというわけです。

 この法律を見ますと、表現の自由についての明記はございません。文化芸術の基本法であるならば、私は、前文に表現の自由の保障を明記すべきではないのかと考えるものであります。提案者からの御答弁をいただきます。

斉藤(斗)議員 お答え申し上げます。

 文化芸術活動における表現の自由ということは極めて重要なものだというふうに私ども理解をいたしておりまして、我が国の憲法第二十一条で保障されている権利だというふうに考えております。

 したがいまして、本法律案では、前文及び第一条の「目的」におきまして、文化芸術の振興を図る上で重要なポイントとして、文化芸術活動を行う者の自主的な活動の促進を旨とする、こういう点を明文で定めております。

 また、第二条の「基本理念」におきましても、第一項及び第二項で、文化芸術活動を行う者の自主性及び創造性を十分尊重すること、また第三項では、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であること」、さらに第五項で、「多様な文化芸術の保護及び発展が図られなければならない。」ということが明記をされているわけでございます。

 そして、このような基本理念の考え方は、この法律のすべての規定の基礎となるものだというふうに御理解いただきたいと思います。

 かように、この法律案は、表現の自由を直接は明記してはおりませんが、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方を十分にあらわしているというふうに思っております。

石井(郁)委員 重ねてで恐縮ではございますけれども、一九六六年の国連第二十一回総会で採択をされて、日本では一九七九年に批准された国際人権規約、この十五条「科学及び文化に関する権利」でこうも書かれています。「この規約の締約国は、科学研究及び創作活動に不可欠な自由を尊重することを約束する。」と。

 だから、国際的水準に照らしても、当然のこととして表現の自由の保障というのはやはり明記すべきだというふうに考えているわけでございまして、この国際的水準から照らしてもどうなのかという点で、もう一点伺わせていただきます。

斉藤(斗)議員 前の質問が表現の自由に関連されて、今回も違った角度からの御質問になったというふうに思います。

 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、御指摘でございますが、我が国の憲法で保障する基本的人権の枠組みに合致するものとして、昭和五十四年に我が国でも批准をされております。そして、先生御指摘の同国際規約の第十五条第三項は、我が国の憲法二十一条で保障されている表現の自由と同趣旨の規定と考えられているところでございます。

 したがいまして、本法案は、当然憲法二十一条に規定する表現の自由を前提としているものでございまして、表現の自由を直接は明記はしておりませんが、文化芸術活動における表現の自由の保障という考え方を十分にあらわしているものと考えております。

石井(郁)委員 今憲法を前提にしているというお話でございましたが、それは当然だとは思うんですね。ただ、基本法で憲法を前提にしているから書かなくていいということにはならないと私は考えているわけでございます。

 既に宗教法人法あるいは男女共同参画社会基本法等々がございますけれども、そこには、やはり憲法で保障された例えば信教の自由の問題、国政において尊重されなければならないとありますし、また、我が国においては、日本国憲法で個人の尊重と法のもとの平等がうたわれて、男女平等の実現に向けたさまざまな取り組みが、国際社会における取り組みとも連動しつつという形で、それぞれうたわれているわけであります。

 だから、憲法に明記されていても第一条あるいは前文に取り入れる、これはもう既にこのように進んでいるわけでありますから、私は、文化芸術の基本法ということですから、その生命ともいうべきこの表現の自由の問題というのは、きちんとやはり書き込まれてしかるべきではなかったのかというふうに思うわけでございます。いかがでしょうか。

斉藤(斗)議員 重ねての御質問になりましたけれども、本法律案は憲法を前提にして組み立てられております。したがいまして、まさに表現の自由の保障、この考え方を前文、目的、基本理念において明らかにしてございますし、文化芸術の振興を図っていく方法について定めているものでございますし、改めて明文で規定しなくとも十分その趣旨は示されているというふうに考えております。

石井(郁)委員 次の問題に移ります。

 行政の芸術活動に対する不介入の原則ということが大変大事だと私は考えています。また、差別、選別を招かないようにするという問題があるかと思うんですね。

 行政は芸術文化活動にやはり介入してはならない、これは特に権力として介入してはならないというのは、ある面で普遍的な到達点だというふうに思うんですけれども、この問題もやはりきちんとうたうべきだと、それがうたわれていない、これは何ゆえに明記されなかったんでしょうか、これも提案者に伺いたいと思います。

中野(寛)議員 お答えをいたします。

 行政が芸術文化活動に介入してはならないということは、もうおっしゃるとおり、これは基本中の基本の考えでなければならないというふうに思います。

 そもそも、法律には消極的な概念と積極的な概念とが表現されると思います。積極的な概念というのは、これこれをするとか、これこれをしなければならないとか、消極的な概念というのは、これこれをしてはならない、これこれはしない、そういう分類も可能だと思いますが、何しろ文化芸術振興基本法でありますので、先生を初めとして、みんなが意欲的に、ぜひこういうものをつくりたいね、せっかくつくるならより一層いいものをつくりたいねという意気込みを持って論議に臨んできたことは御存じのとおりでございます。

 そういう中で、余り消極的な概念の方を入れるよりも、むしろ積極的な概念という形で表現も整える方が基本法としてはふさわしいのではないかなという気持ちが働いたことも事実でありまして、我々としては、言うならば、自主性を尊重するなどの表現をたびたび使っておりますけれども、これはひっくり返して言えば、自主性を侵してはならないということの表現にも通じるわけでございまして、御指摘の御趣旨は私どもも全く同感であります。表現上、我々としては、前向きの表現にむしろ統一するというような気持ちであらわしたことを御理解いただければありがたいと思います。

石井(郁)委員 例を申し上げますけれども、東京都の文化振興条例がございます。そこでは、第二条に「都は、この条例の運用に当たっては、文化の内容に介入し、又は干渉することのないように十分留意しなければならない。」とあるわけです。

 また、社会教育法を見ましても、「国及び地方公共団体は、社会教育関係団体に対し、いかなる方法によつても、不当に統制的支配を及ぼし、又はその事業に干渉を加えてはならない。」というふうにしているわけですね。

 だから、やはり法律で、こういう懸念とか危険性がある分野につきましてはきちっとうたっているということがあるわけです。私は、当法案でも、行政の不介入の原則をやはり条文として立てる、明瞭にすべきだというふうに考えてきたところでございます。重ねてで恐縮ですけれども、伺います。

中野(寛)議員 御指摘の東京都の条例も拝見をいたしました。第二条の第一項には、「都は、都民が文化の担い手であることを認識し、その自主性と創造性を最大限に尊重する。」と、ある意味では懸念される裏返しの部分を第二項に表現されたものと考えております。

 この今御上程をいただいております法案は基本法でもありますので、言うならば、だめ押し、念押しはしなかったと。先ほど申し上げました消極的な表現ではなくて、積極的に振興する、こうする、こうしなければならないということにむしろ統一したところに、基本法としての我々の意気込みをむしろ感じていただければありがたいなというふうに思います。

 ただ、これをもとにしていろいろな個別法ができますときには、憂慮されることなどについて触れられることも起こり得るかと思いますけれども、この基本法については、私どもの意のあるところをお酌み取りいただければありがたいと思います。

石井(郁)委員 どうもありがとうございます。

 私も、いろいろ皆さんと御一緒に討議にも加わった者といたしまして、やはりこの法案の作成で、ある面で大変問題というか、議論が深められたのが第三章かというふうに思うんですね。この「文化芸術の振興に関する基本的施策」というところだったと思います。

 この点で、これは民主党の提案者に伺った方がいいと思うんですけれども、当初、民主党案の第七条でございました「芸術文化活動への支援」というところで、「国は、芸術文化に関する国民の自主的かつ主体的な取組を支援するため、芸術文化活動への財政上の援助その他の必要な施策を講ずる」という形で、いわば大まかな形でここを書かれていたというふうに思うんですが、私はこの方がやはり検討に値する内容ではなかったかなというふうに思っているわけであります。

 それを、ちょっと中野先生に恐縮ですけれども、やはりプラス思考で進めまして第八条以降の例示がずっと入ったということで、このことで逆に、これは国からの介入を招くのではないかとか、また新たな差別を生むのではないかという疑念というか、心配が膨らんだかというふうに思うんですね。

 そこで、民主党提案者にお聞きするんですけれども、なぜ民主党案ではなくてこの振興策の方を選ばれたのかということでございますが、いかがでしょうか。

山谷議員 どうも御質問ありがとうございました。

 この法案を提出するに当たりまして、現在の文化芸術活動、日本における現状認識について問題であるというふうに考えたわけでございます。文化芸術の現状を見ますと、芸術家等の自主的な活動を促進するための基盤の整備や環境の形成は十分な状態にあるとは言えず、これらへの格段の取り組みが必要だというふうに考えたわけでございますけれども、このことを踏まえまして、本法律案は、文化芸術の振興を図るための基本的な法律として、振興基本法というふうに考えました。

 したがいまして、文化芸術活動への支援について、御指摘の民主党案のように七条でざくっと規定するというような方法もありますといいますか、民主党は当初、芸術文化基本法というふうに考えておりましたのでそのように考えたわけでございますけれども、本法律案のように、第八条以下の各条文において、文化芸術の各分野に対応して具体的な施策の例示を挙げて、わかりやすく、国が必要な施策を講ずるものという規定の仕方、振興基本法でございますので、そのような仕方があるというふうに考えたわけでございます。

 石井委員がおっしゃいましたように、そのような例示を挙げることによって、それで挙げられていないものに差が生じるとか優先順位が違ってくるとか、そのようなことはございません。

    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕

石井(郁)委員 しかし、やはりこれだけジャンル別、分野別というふうになりますと、どうしても差別、選別の問題ということが出てくるんじゃないか。出てこないことが最も望ましいわけですけれども、そういう問題を考えておかなくちゃいけません。

 これまでの議論の中でも、この条文に載るか載らないかということがある面で激論にもなって、ぜひ載せてほしいという、ある面で陳情合戦にもなったようなことがあったかというふうに思います。

 だから、この法文上の規定というのは、やはりあくまでも例示だということをぜひはっきりさせていただきたい。だから、これに載らないからといって、その分はもう日が当たらないんだ、あるいは差別されるんだ、差別というか、扱いを受けるんだということにはならないという点を、やはりこの委員会質疑の中できちんと御答弁をいただきたい。これは提案者と文化庁にもお願いしたいと思います。

斉藤(斗)議員 お答えいたします。

 ただいま山谷先生からも御答弁をいただいたわけでもございますが、第八条から十四条までの各条におきましてそれぞれの文化芸術の例示を挙げておるのは、あくまでもわかりやすくするということが目的でございまして、すべてを網羅している、またすべてを支援するという考え方でございます。したがって、この法律案で例示が挙がっていない分野も当然施策の対象になります。御理解いただきたいと思います。

 また、例示されている分野と例示されていない分野との間に差を設けたり、そういうことはいたしませんし、優先順位がどうのこうの、そういった趣旨のものでもございません。

 重ねて申し上げますが、すべて網羅をいたし、すべてを支援いたしたい、またそれに差はつけることはないということでございます。

銭谷政府参考人 ただいま提案者の方からもお話がございましたように、本法律案で第八条から第十四条までの各条におきましてそれぞれの文化芸術の例示を挙げているのは、あくまでわかりやすくするためのものであるというふうに承知をいたしております。

 このため、今後、文化庁におきまして、文化芸術の振興の施策を講ずるに当たりましては、例示されている分野と例示されていない分野との間に差を設けたり、あるいは例示されている分野を優先的に取り扱うなどのことはないようにしてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私、この問題をなぜ重視するかと申しますと、現に文化庁のこの文化行政の中で、予算配分を見ますと、重点配分というのは強まっているんですよね。

 例えばアーツプラン21、これは我が国芸術水準向上の牽引力となることが期待される芸術団体ということで、その芸術水準の向上ということで、もうその評価がされて予算が配分されるということになるんですね。私ども、芸術水準の向上という問題も、法案作成の過程で大変議論をして、これは取り除いた経過があったというふうに思いますけれども、やはりこの新世紀アーツプランではトップレベルの団体ということになって、それが配分の基準とされてきたということがございます。

 だから、そういうトップレベルかどうかというのはまさに評価にかかわるわけですから、私は、この法文で言う自主性の尊重、創造性の尊重では済まなくなるというふうに考えますし、また恣意的評価も招きやすい。ですから、やはりこの法案の実施に当たって、この行政の恣意的な評価、本当に招かないのかな、招かないんだということをはっきりさせてほしいし、そして予算を十分にふやして、希望する団体に広く当たるようにする。本当の意味でのこの芸術文化の振興を、本当にすそ野から広げていくということ、やはり公正に行っていくということを強調したいわけでございます。

 これは提案者に伺います。

松浪議員 御質問をお聞きして、全くそのとおりであるというふうに思いました。

 それで、文化芸術の発展のためには、我々のやっているスポーツなんかも同じなんですけれども、トップレベルの文化芸術を引き上げるとともにそのすそ野拡大を図ることの双方が必要である、こういうふうに考えます。そのためには、双方の施策を展開していくためには十分な予算と適正な評価が必要であると考えます。したがいまして、今後、予算の拡充ということはぜひやっていかなければならない、このように思います。

 また、トップレベルの文化芸術の支援につきましては、芸術家や有識者等専門家による適切な評価が求められるものであります。このような観点から文化行政が行われていく必要がある、このように思います。

石井(郁)委員 どうもいろいろ御丁寧にありがとうございます。

 私、先ほども触れたんですけれども、やはり国が芸術文化活動の内容に立ち入ってはならないというか、本当に関与してはならないというのは、この分野では何度も念を押しても押し過ぎることがないほど重要な問題だというふうに考えているんですね。

 それは、戦前の教訓からも、やはり芸術文化活動の内容に国家権力が介入したりする、統制をすれば、本当に自由な多様な発展の息の根をとめてしまうわけですから、世界的にも、歴史上そういうことがいろいろありましたから、これは大変大事な原則で、この点で、イギリスではアームズ・レングスの原則、つまりお金は出しても口は出さない、要するに支援者と被支援者との間に距離がある、このレングス、腕の長さ、距離があるという話なんですね。だから、政府とは別にアーツカウンシルだとかを設ける、あるいはアメリカのように税制支援をベースに助成も連邦芸術財団というところでやるだとか、間接支援にして内容には関与しない、そういう仕組みなんか持っているんですよね。

 そこまで今日本ではすぐはいかないかもしれないけれども、やはりせっかくの基本法の提出ですから、こういう国がこの分野で内容には関与しないという仕組みあるいは原則というのは、やはりきちんと確認しておくことが必要ではないのかというふうに思うわけですね。その辺はいかがでしょうか。

中野(寛)議員 お答えをいたします。

 先ほど若干申し上げましたが、我々としては、芸術振興についての、文化振興についての積極的な姿勢をこの法律にいかに強く表現するかという気持ちでつくったことを申し上げましたが、そういう意味でも、前文、それから第一条の「目的」、第二条の「基本理念」等に、この芸術活動を行う者、文化活動を行う者の自主性を尊重する、また創造性を尊重するということを書くことによって、行政の不介入をむしろ明記した、その意味も含まれている、こういうふうに私どもは考えております。

 言うならば、手を出すときにも、手のひらを上に向けて応援する、あおぎ立てるということはあっても、手のひらを下に向けて抑えるようなことはしてはいかぬと。同じ手を出すにも、手のひらによって、向きによって気持ちも表現も違ってくるわけでありますが、私どもとしては、そういう応援の気持ち、すなわち振興の気持ちをベースにした基本法であるという趣旨で御理解を賜りたいと思います。

    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕

石井(郁)委員 別の問題点を申し上げたいと思うんです。

 文化的権利ということは明確にされました。しかし、社会保障等の認知というか、この分野までは踏み込んでないという問題があるんですね。

 何度も申しますが、ユネスコの芸術家の地位に関する勧告では、こういうふうに述べられています。芸術家が享受すべき自由及び諸権利、特に、収入及び社会保障に関する諸権利の認知を意味すると。だから、そういう理解をしなきゃいけないということなんですが、そういう社会保障にまで踏み込まなかった、その理由はどういうところにあるんでしょうか。

山谷議員 御指摘、御質問ありがとうございます。

 第二条の「基本理念」の第二項では、文化芸術活動を行う地位の向上についての規定が置かれております。地位の向上とは、一九八〇年のユネスコで採択されました芸術家の地位の向上に関する勧告によれば、一方で、芸術家に払われる敬意を意味し、他方で、芸術家が享受すべき自由及び精神的、経済的、社会的権利を意味するものとされております。

 石井委員の、社会保障まで踏み込まなかった理由はなぜかという御質問でございますけれども、このように、地位の中には、社会保障を含む経済的かつ社会的権利が含まれているものと考えております。

石井(郁)委員 この前、基本法作成に当たって、いろいろな関係芸術団体、文化団体からの御要望がございましたけれども、いわゆる芸団協、日本芸能実演家団体協議会からの提言、私どももこの五月に受け取りましたが、その具体的な提言の中を見ましても、実演家の地位を保障するためにというところが大変強く出されたというふうに思うんですね。

 実演家の就業形態のうち、労働法の適用になじまない分野については、実演家独自の社会保障制度を創設してほしい、一般勤労者が享受しているものと同様の保障の実現を法的に図る必要があるということがございました。また、仕事上の事故の保障、失業に関する共済制度の創設、医療保障について全国レベルの国民健康保険組合を認めるとか、年金制度については、実演家みずからが運営する芸能人の年金制度を公的に位置づけるというような提案がございました。

 こうした個々の問題について、今後どういう取り組みがなされていくんだろうか。これは、文化庁としてどのようなお考えか、伺っておきたいと思います。

銭谷政府参考人 御説明を申し上げます。

 ただいまお話がございましたように、社団法人の日本芸能実演家団体協議会の方からは、芸能家の地位を保障するために、繰り返しになりますけれども、実演家独自の社会保障制度の創設、仕事上の事故や失業に関する共済制度の創設、全国レベルの国民保険組合の設置、四点目には、芸能人年金制度の公的な位置づけなどにつきまして御要望がなされているのは承知をいたしております。

 これらの御要望につきましては、他の職種における取り扱いとの関係なども考慮をいたしまして、それぞれの制度の中で実態も踏まえて検討すべき事柄であると認識をいたしております。関係省庁ともよく相談してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 大体時間が参りました。

 私、最後に、やはり文化行政の民意の反映ということが大変重要でございますので、その点で、条文の三十四条を、これは政策形成への民意の反映として、芸術家や学識経験者その他国民の意見を求め、これを十分考慮した上で政策形成を行う仕組みの活用等を図るものとするというふうにありますね。

 それからもう一方で、文部科学大臣は、文化審議会などを通して政策決定を行うということがあるかと思うんですが、これは第七条ですけれども、その関係がどうなのかなということも含めまして、特にこの第三十四条ですね、この民意の反映ということは、具体的にどのようなことをお考えになっていらっしゃるのか、ちょっとそこをお伺いしたいと思います。

河合議員 現在、文化庁には、芸術家また有識者等で構成されております文化審議会を初めといたしまして、各施策を推進するために、民間の有識者等から成る各種の会議が設置されて、その意見を政策に反映されていると承知しております。

 今後とも、各種の会議を通じまして、また先ほど答弁の中にもございましたように、インターネット等を通じまして、国民の声を幅広く、深く聞いていく施策を積極的に進めていくべきと考えております。

 さらに、文化審議会の意見を聞くこととされているわけでございますけれども、本法律案の第二条第八項に定められておりますように、石井先生御指摘のように、「文化芸術の振興に当たっては、文化芸術活動を行う者その他広く国民の意見が反映されるよう十分配慮されなければならない。」との基本理念は、文化審議会のあり方そのものにも規定していく基本理念であると考えております。

石井(郁)委員 各それぞれの箇所には、そういう形で広く国民の意見が反映されるよというのはあるんですけれども、何かそれを全体として、どうなっていくのかなということがもう一つわかるようでわからないようなところがありまして、これは今後、私どもしっかり見ていかなくちゃいけないというふうに考えています。

 時間が参りました。

 この法律案の中には、国語についての理解とか日本語教育の充実という点で、これも議論になったところですけれども、私どもは、文化芸術の振興にはなじまない条文ではないかというふうに考えているところであります。

 しかし、申し上げておりますように、全体として、文化的な権利が明確にされたことや、専門家の地位の向上、また税制についても法文に盛り込まれたということなどで、またこれまで答弁をいただきまして、表現の自由についても、また行政の芸術文化活動の内容への不介入、また分野別にも差別、選別をしないということをしっかり御答弁いただきましたので、私どもは法案に賛成をするものでございます。

 しかし、今さまざまな団体からいろいろともっと議論を尽くしてほしいという声はあるかと思うんですね。そういう点で、国会としてもやはり議論はきちんとまだ続けなければいけないというか、しなければいけないということを申し上げまして、質問を終わります。

 どうもありがとうございました。

高市委員長 山内惠子君。

山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。

 日本の芸術文化政策が、各国から比べると、予算が少なく、ある意味での貧困ということが言われている中でしたから、皆さんが本当にいい法案をつくりたいと御努力されたということがよくわかりますが、どのような理念の法案をつくるかについて、多くの人々の議論がもっと必要であると思います。

 今回の法案を作成するに当たっては、日本芸能実演家団体協議会の方の、芸団協とおっしゃるそうですが、御意見をお聞きになったそうですが、有識者からもという答弁が先ほどありましたが、ほかにどんな方々の御意見を聞いたのでしょうか。芸団協がすべての文化を網羅しているとは言えないと思います。その意味では、広く参考人を招致しての質疑を保障すべきであったのではないかというふうに思います。

 先日報道されました新聞の中にも、「国民的なオープンな議論の盛り上がりがない中で、政治家だけで決めていることに危機感を感じる」というふうにまで、これは十四日の朝日新聞でしたが、そのように言われています。なぜ参考人を招致するということを計画できなかったのか、お聞きしたいと思います。

河合議員 山内委員にお答えさせていただきます。

 委員御承知のことと存じますけれども、文化芸術の振興に関する基本的な法律につきましては、超党派の議員で構成されております音議連、すなわち音楽議員連盟におきましては、昭和五十二年の結成以来の課題として位置づけられて、音議連におきましては、昨年の二月には基本法を検討するための特別委員会が設置されて、本格的な検討がなされてきたところでもございます。

 さらに、各政党におきましても、私どもと共同提案させていただきました保守党さんにおきましては、各種御意見を取りまとめて、独自法案を用意されていた経緯もございます。私たち公明党におきましては、本年の二月、基本法案を私案として取りまとめたわけでございますが、それに至る経緯につきましては、五十に上る文化芸術諸団体、それから文化人の諸先生方と御意見を交換し、その意見を集約したものを取りまとめた経緯がございます。

 さらに、この法案が三党で提案するといういきさつになったその前後、私たちの文化芸術政策を語る集いというものを開催しましたところ、文化芸術関係の四十八団体、代表五十一名、翌日には二十八団体、四十一人の参加者と意見交換をさせていただいたところでございます。

 しかし、先生御指摘のように、なぜ急ぐのか、拙速ではないかといった御意見があるのもまた事実でございます。それが、私どもがこの多様な御意見、実はこの各団体の御意見をお聞きする中で、どのように取りまとめていいかわからない事態に陥るくらい多様な御意見がございまして、したがって、これを基本法として制定したわけでございます。

 御指摘の点につきましては、各個別法で対応できていくと考えております。

山内(惠)委員 基本法をつくるという、策定するということですから、公明党の例でおっしゃられましたから、公明党は選挙の公約の一つでもあったというふうにお聞きしていますので、その御努力はわかりますけれども、今回の新聞にあるように、ある団体は法案の動きも知らなかったというようなことまで書かれている状況なだけに、もう少し時間をかけて多くの皆さんの声を聞くべきであったというふうに思います。

 時間がございませんので、次の質問に移ります。

 名称についてですが、民主党案の方は芸術文化だったというふうに先ほどお答えありましたが、あえて文化芸術となさった理由、恐れ入ります、ほかに質問がたくさんありますので、端的にお答えいただきたいと思います。

河合議員 結論から申し上げますと、文化芸術にしました理由につきましては、芸術を中心とする文化として受けとめられる芸術文化ではなくて、それぞれの分野が並立なものとしてとらえられる文化芸術としたわけでございます。

山内(惠)委員 今までは芸術文化という慣用句というふうにありましたので、そのことをお聞きしました。意見はいろいろありますけれども、急ぎます。

 先ほど一つ言おうと思ったんですけれども、新聞報道の中に要請文を出したという文がありましたので、私も取り寄せてみたんですけれども、本当にたくさんの方たちが、百五十人以上の方たちが声を出して、急ぐなということがあることを受けとめるべきであったということを、先ほどのところで一言つけ加えてから、次の質問に行きたいと思います。

 この法案の最後の方だったと思いますが、青少年という言葉がありますが、私は、この文言は、青少年にもう一つ少女を加えていくべき言葉だというふうに思っていますが、いかがでしょうか。

 女性差別撤廃条約を批准したときに、私は学校現場で教科書のチェックをしました。いろいろなところにこの問題点があることがわかりました。特に音楽の中に、主語が、僕、僕らというのがあります、「ぼくらはみんな生きている」というように。学級の中の半数は女の子ですから、歌うたびに自分はという声が聞こえてくるというふうに子供たちが言っていました。「ら」の中にあなたも入ると何度言っても、それは納得するものではありません。男中心の社会から残ってきた文言だと思います。

 大人社会で考えれば、私たちの中に男性が入るというのに、なぜ子供たちのところはそうなのかということで言えば、少年少女世界文学全集のように、少女は入れるべきだというふうに思います。

 時間がありませんので、そのことも含めて後でお答えをいただきたいと思います。

 芸術文化活動で大変重要なのは、先ほどの質問の中にも何度もありましたけれども、思想、信条、表現の自由、創造の自由を保障することだというふうに思います。芸術活動の生命線だと思います。

 その意味では、先ほど何度も憲法が前提にあるとおっしゃるのであれば、憲法にのっとりというようなことが前文に当然あるべきだと思います。しかし、そこのところがなく、より一歩踏み込んで、自主、創造性というのでおっしゃっていますけれども、芸術活動における表現の自由ということは大変重要なことですから、これは当然前文に書くべきであったと思いますが、書かなかったのはどういう理由なのか、先ほどのとあわせてお答えいただきたいと思います。

高市委員長 一つ山内委員に確認いたします。

 後ろの方の青少年という文言は、二十三条の「青少年」という言葉でよろしゅうございますか。

山内(惠)委員 はい。その部分を指摘したものです。

高市委員長 では、御答弁をお願いします。河合正智君。

河合議員 山内委員の貴重な教育体験に基づく、貴重な御指摘として受けとめさせていただきます。

 ただ、この法文につきましては他の法制的な用例を参考にいたしました。少女を含まないという意味では決してございません。

斉藤(斗)議員 ただいま御指摘いただきました表現の自由、創造の自由という点でございます。大変大事な点を御指摘いただいたのかなというふうに思っておりますが、文化芸術活動における表現の自由、創造の自由につきましては、憲法で保障されている権利でございまして、極めて重要なものだというふうに重ねて申し上げます。

 したがいまして、本法律案では前文及び第一条の「目的」において、文化芸術の振興を図る上での重要なポイントとして、この自主的な活動を促進する旨、こういうことを明文化しているところでもございます。

 また、第二条の「基本理念」におきましては、第一項及び第二項で文化芸術活動を行う者の自主性及び創造性を十分尊重することを、また第三項で「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であること」、さらに第五項で「多様な文化芸術の保護及び発展が図られなければならない。」ということが明記されているわけでございます。

 そして、このような基本理念の考え方はこの法律のすべての規定の基礎となるものでございまして、この法律案は文化芸術活動において表現の自由、創造の自由を保障するという考え方を十分にあらわしていると考えておりますので、ぜひとも御理解を賜りたいと思います。

山内(惠)委員 大変重要な項目ですから、後のところでもまた触れていきたいと思います。

 諸外国で、芸術や文化にかかわった基本法があるかということを調べて、研究された方がいらっしゃいます。それによりますと、文化領域に属するものは法とか法律とか規制という言葉になじまないというふうに考えてきた歴史があるというふうにおっしゃっています。その意味で、文化領域は国家からの自由が保障されなければならない、そのことによって精神的自由権をしっかりと守っていくのだという考え方があるというふうにお聞きしています。

 余り基本法がないその例の中で、オーストラリアの芸術振興法では、芸術家の生活を支える物質的な諸条件の改善をするということに重点を置いて、振興法があるそうです。

 基本法がなかなかないようですけれども、ドイツの連邦共和国基本法、特にボン基本法と言われている中には、芸術表現の自由を保障する条文をのみ置いているということです。芸術表現の自由を保障する。なぜここのところを保障するための文章をあえて法律としたかというと、ドイツ、御存じのように、ナチスによる一元的、統制的文化政策が国民の表現の自由を圧迫したという歴史的事実から導き出されたというふうに、この研究をなさった方が書いています。

 その意味で、今回の振興基本法の中で表現の自由をしっかりと、前文なり一条、二条、ずっとこの辺で、今お答えにあったところに、あえてこのことを書かなければならなかったのではないかと私は思っています。憲法が前提だというのであれば、その憲法が前提であるということを前文に書くべきであったと思います。ここのところは、質問としてではなく私の意見として申し述べておきたいと思います。

 ところで、今回、国が芸術文化をどのように扱うか、二十一世紀、どのような理念を持ってこの政策に取り組んでいくかということでこの法案をつくられたとしたら、今おっしゃったように、表現の自由を保障するんだ、憲法にのっとっているんだということを強調されたお答えからいうと、国が芸術や文化に対して一定の価値観を教育するべきではないということにそのお答えはつながると思います。

 そのことでいえば、この法案の最後の三行の部分の中で、特に最後にかかわりますが、「国際化が進展する中にあって、自己認識の基点となり、」というのは、アイデンティティーの基点となり、「文化的な伝統を尊重する心を育てる」というふうに書かれている。これは相当無理な記述だと思います。表現の自由を保障すると一方で言っていながら、このことを、子供たち、大人の自己認識の基点に、伝統を尊重する心を育てるという、これは大変問題だと思っていますので、このことを指摘して、質問したいと思います。

 伝統にはプラス面とマイナス面があると思います。プラス面は相当文章の中にも書いてありますので、マイナスの点についてどのように押さえていらっしゃるか、お聞きしたいと思います。

斉藤(斗)議員 ただいまは、本法律案の前文の最後の部分になるかと思いますが、それに関しての御質問をいただきました。

 本法律案では、前文、第一条の「目的」、さらに第二条の「基本理念」におきまして、文化芸術活動を行う者の自主性、それを十分尊重するということを定めております。この点では御理解いただきたいと思いますし、また第三条においても、我が国は、この基本理念にのっとりまして、文化芸術の振興に関する施策を講ずる責務を有することを明確にしており、決して国が文化芸術を規制しようとする意図を持ったものではありません。御理解いただきたいというふうに思います。

 また、御指摘の伝統、その言葉に関してでございますが、将来にわたって継承、発展させていくべき古きよき伝統を意味する、そっちの方の意味で私ども記述させていただきまして、現代にそぐわないと考えられる因習まで含むものではないと考えております。

 ですから、私なりの考え方を申し上げますと、歴史というのはその伝統と因習、そして直さなければならない因習は残してはならない、直していかなければならない、しかしながら、古きよき伝統、よきものはしっかり継承、発展させていった方がいいのではないか、そういうような考え方を持っております。

 前文の御指摘の部分につきましては、文化芸術が有する意義について申し上げたところでございまして、教育基本法の改正とは何らの関係するものではないということを明確にお答えさせていただきたいと思います。

山内(惠)委員 斉藤議員が、伝統の中にやはり古い因習その他があるということを押さえていらっしゃるということを、私と共通する部分を持っていらっしゃるということでのお答えとしてはわかりました。

 日本の文化というのは、大陸や半島やアジアの諸国から伝来されてきていますね。それは、ただ宅急便のように来たのじゃなくて、人々がそれを持って住みついて育つ、その中から伝統として残ってきたものがあるでしょうし、ある意味では、地方の文化の中から、権力者に立ち向かっていくに当たって、笑いに託しながら権力者批判をしたり、踊りに託しながらしていったという、芸術の進んできた道筋があるというふうに思います。

 しかし、文化とか伝統こそが差別だと言っている人もいます。その言っている部分が今斉藤議員のおっしゃったところにつながることなんですけれども、例えば歌舞伎だとか狂言の中の表現方法はすばらしいと私も思います。しかし、マイナス面でいえば、かなり差別的なものが含まれています。狂言なんかの中には、女を売る、買うという世界、相当書かれていると思います。それをおもしろおかしく演じたりしているということでいえば、差別的なものを含んでいる。

 日常的に言えば、私のように背の大きい者も、めおと茶わんというのを見ると、女は小さな茶わんで食欲を抑えて食べる文化が今なお残っているわけです。そして、手が大きくても、めおとばし、女は小さなはしでというような文化が残っています。

 夫婦別姓選択制の法案がまだ最終的に出ていませんけれども、夫の姓を名乗るということを強制しているわけではない憲法ですけれども、戦後五十何年たっても、女たちは、キャリアを持って、自分のもとの姓を使うことさえもままならない。

 子供を産み育てという熟語がありますけれども、女性差別撤廃条約の前文のところだったと思いますけれども、子の、子供のという意味ですけれども、子の養育は男女と社会の責務というふうにあえて書いて、性別役割分業の伝統を否定する条文をつくってきています。

 そのことでいえば、この前文の中にある、多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成すること、そしてそれが世界の平和に寄与するものであるというところでこの文章は終わるべきだったと思います。

 一定の伝統観を子供たちの心を育てるために押しつけるような、このことをここであえて言っていきますけれども、自己認識の基点となるというところまで書いて、次に、伝統を尊重する心というわけですから、これはプラス面だけでは、斉藤議員がおっしゃるマイナス面と私の思うマイナス面は、共通しているけれども違うものもあるわけですね。多くの人たちがこの違いをどう乗り越えていくのかということが問われるだけに、一定の価値観を規定するような、基本法の中ですから、これは削除すべきような内容だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

斉藤(斗)議員 今、前文のところの、「自己認識の基点となり、文化的な伝統を尊重する心を育てるものである。」このくだりだと思います。

 先ほど私が申し上げましたように、伝統の中に伝統と因習ということではなくて、歴史の中にそういったところがあるというようなことを申し上げたつもりでございますし、また、私ども、生きとし生きるものとして、生命の存続、継続等々の中で、やはり親がい、おじいさんがい、そういう流れの中での長い歴史の流れがあったと思います。

 生まれたときの自己認識等々、そこら辺につきましては、余り疑問が私は挟まない点ではないかなというふうに思っているところでございますが、ぜひともその点御理解を賜ればというふうに思います。

山内(惠)委員 伝統にはプラス面とマイナス面があるということを御理解していただいているということを考えるときに、日本の伝統文化、それはすばらしいとたたえるその当人が、自分の文章を毛筆ではなくてペンで書くと思います。和とじではなくて西洋風の本をこしらえているのではないでしょうか。だからといって、文章を筆で書けというのは無理でしょう。書く方もいますけれども、ごく一部でしょう。

 本は和とじでつくるという心を育てるなんということも、それは一例であって、日本の伝統を尊重する心を育てるというところは無理があるのではないでしょうか。

中野(寛)議員 文化についての概念をなかなか一言で規定づけることは難しいと思いますし、今おっしゃられたように、いろいろな多様な文化がある。そしてまた、文化とか伝統というのは、その時代その時代に磨き抜かれて、そして残されていくものがあり、そしてまたその時代の、例えば自由とか民主化とかという社会の中で排除されていくものも起こってくるだろうと思います。

 時には、差別感のあるものを表現する、しかし、そこに終わらないで、それをやゆするというか批判をして、そして自分たちの心の中に巣くっている差別感を払拭するための警告にする文化もまたあり得ると思います。

 先般韓国へ行きましたときに、めおと茶わんが売ってありました。韓国風のめおと茶わんはこっち、日本風はこっちと分けてありました。韓国風のめおと茶わんは、大きさが同じでありました。日本のお客様が多いのでその御要望にこたえてと言ってつくられためおと茶わんは、女性用が確かに小さかった。しかし、向こうの売店の方が、必ずしも小さい方を女性が使わなければならないというものでもありませんと、実に大変おもしろく表現をされておりました。そのことを、決して差別を認めるということではありませんけれども、それもまた一つの、韓国側から見た日本文化に対する皮肉だったのかもしれません。

 いろいろな表現の仕方がありますが、それらを我々はよりよいものを残しながら発展をさせていく、そしてそれを伝統と称する、そういう気持ちを持ちたいものだなというふうに思っています。

山内(惠)委員 時代とともに伝統の評価は変わってくるということの一つの例だというふうに思います。

 この文章をあえてなぜここに入れたのかということを、ここに法案化する前の段階でちょっとお聞きしましたら、日本の人が、ここにある国際化が進行する中でにかかわって、外国へ行っても日本の伝統を何も知らぬ人がいるということをおっしゃった人がいるのですけれども、そうであれば、ある意味では、私は先日文部科学の理事の方たちとアフリカに行かせていただきましたけれども、あそこにある日本人学校へ行かせていただきましたが、実はあそこで事件があったので、門がかかっていて、そして銃を持っている方が門番として立たれていました。

 私は、その中に入った私の知っている北海道から来られている方にお聞きしたのですけれども、地元の方と交流していますかという質問をしましたら、何とほとんどの皆さんは地元の人たちと会話も余りしていない、自分も出ていくと怖いとおっしゃっているのですね。

 私は、そのことの方がもっと残念に思います。日本人学校に行ったら、一年間なり二年間なり、向こうの文化をしっかり味わってというか、理解をして、日本に帰ってきて子供たちに伝えてもらえるようなお仕事をされるためにも行く意味があると思って行かれるわけですから。

 そのことでいえば、私たちの社会が必要としているのは、多様性を受け入れることができる心豊かな社会という意味で、多文化共生という思想こそもっともっと育てなければ、私も、小中高大と英語を勉強してきてもなかなか会話もできない教育の中にあり、あの日本人学校の先生方の気持ちも、語学が弱いというあたりもあるのかなというところも思いましたけれども、では、なぜ銃で守らなければならないあの世界、どなたかが亡くなった例があったそうですから、でも、それはある意味で、銃を向けられる日本人社会を批判してのことだったとしたら、もっと私たちは現地に飛び込んでいく、多文化共生が重要だというふうに思います。

 私は、学校教育の中でも社会でも、多文化共生の社会を実現することこそ今回の基本法案の精神とすべきだというふうに思います。その意味で、最後の三行が、このところで、なぜこんなに殊さら伝統なのかということを私は思いますので、こうすべきではないということを強調したいと思います。最後の三行は削除すべき文章であると私は押さえています。

 時間が少なくなりましたので、最後のところで、もう一つ別件で質問させていただきたいと思います。

 先ほど言いましたように、日本の文化は大陸から来たものであるということを考えれば、いろいろな文化がある。しかも、この中でもいろいろな文化を尊重するという精神は書かれているというふうに思いますが、私は北海道ですからアイヌの文化、沖縄の方だったら沖縄の文化、それから日本に住んでいる在日朝鮮の方々の文化。

 これは、日本に住んで、もう日本語でしか話せない子供たちが大人になっているというぐらいですし、この在日朝鮮の方たちが映画をつくって、私は、岩波ホールで見せていただいた映画の中にも、在日韓国人、在日朝鮮人の方たちがつくられた感動するような作品を見たことがございますが、そういう人たちが賞をとったとかいうことは余り聞いたことがありません。それは最後の部分です。

 アイヌ文化、沖縄の文化を保障していくという点では皆さん御理解いただいていると思いますけれども、そういう方々の芸術もこの分野に含まれているのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。

斉藤(斗)議員 最後の御質問ということでございますが、何回か御質問いただきました伝統等々の話でございますが、前文の三行目に「多様性を受け入れることができる心豊かな社会を形成するもの」、こういうことで、多様性ということを非常に重要視していることもぜひ御理解賜りたいというふうに思います。

 ただいま、異文化の関係でございますが、その前に、先生と御一緒にケニアのナイロビに行かせていただきました。銃の問題がございましたが、数年前に日本人学校の校長先生が銃弾に倒れて亡くなられておられます。同時に、ケニアの国の治安が毎年毎年悪化している。それで、毎日何件かの自動車強盗等凶悪犯罪が発生している中で、子供たちを守らなきゃならないということであのセキュリティーがなされている。

 ですから、現地の先生方は非常に熱心に別の格好で現地との交流をされているということは記憶に新しいわけでございますが、そういうことも含めまして、先生、大変熱心に情熱を傾けて視察をされ勉強されておられたので、私は、団の中で、言ってはなんですが、一番勉強された方じゃないかなというふうに思っております。

 そんな中で、三曲奏でてくれたのですよね、「ジャンボブァナ」「アメリカン・シンフォニー」「時を越えて」。そういった世界共通の音楽、楽器等々、新しい時代をつくっていかなきゃならないというふうに思います。先生の御指摘、よく理解できるところでございます。

 そこで、現在さまざまな文化芸術活動があるという大前提があるかと思います。そういったさまざまな文化芸術活動をすべて網羅して、支援していきたいというのが本法律案の趣旨でございますので、どうぞ御理解いただくようお願い申し上げます。

山内(惠)委員 ありがとうございました。

 この後きっと、この法案ができたら、その地域地域に予算がどのような配分でか行くと思いますが、その予算の配分だとか援助だとか表彰だとか、あらゆる部分では、政党とか官僚とか、いろいろな地域の、今まで担当してきた方だけではなくて、やはりもっと広く自由な立場で、民間の方たちが参加する内容で、表現の自由が保障されるような内容となることを期待しまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

高市委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

高市委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 斉藤斗志二君外十五名提出、文化芸術振興基本法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

高市委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外五名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、保守党、六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。西博義君。

西委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    文化芸術振興基本法案に対する附帯決議(案)

  政府は、本法施行に当たり、次の事項について配慮すべきである。

 一 文化芸術の振興に関する施策の策定及び実施に当たっては、必要な財政上の措置等を適切に講ずること。

 二 本法は文化芸術のすべての分野を対象とするものであり、例示されている分野のみならず、例示されていない分野についても、本法の対象となるものである。文化芸術の振興に関する施策を講ずるに当たっては、その取扱いに差異を設けることがないようにすること。

 三 我が国において継承されてきた武道、相撲などにおける伝統的な様式表現を伴う身体文化についても、本法の対象となることにかんがみ、適切に施策を講ずること。

 四 文化芸術の振興に関する施策の実施に当たっては、文化芸術活動を行う者等広く国民の意見を適切に反映させるよう努めること。

 五 文化芸術の振興に関する施策を講ずるに当たっては、文化芸術活動を行う者の自主性及び創造性を十分に尊重し、その活動内容に不当に干渉することのないようにすること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

高市委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

高市委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。

遠山国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、政府といたしましても、御趣旨に沿って配慮してまいりたいと存じます。

    ―――――――――――――

高市委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

高市委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

高市委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五分散会




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