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第6号 平成14年4月5日(金曜日)

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平成十四年四月五日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    近藤 基彦君
      佐藤  勉君    杉山 憲夫君
      高市 早苗君    谷垣 禎一君
      谷田 武彦君    中野  清君
      馳   浩君    林田  彪君
      二田 孝治君    松野 博一君
      松宮  勲君    森岡 正宏君
      大石 尚子君    後藤  斎君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      藤村  修君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山元  勉君
      池坊 保子君    西  博義君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    加納 時男君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   大熊 健司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            遠藤 昭雄君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            今村  努君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月五日
 辞任         補欠選任
  谷垣 禎一君     佐藤  勉君
  二田 孝治君     森田 健作君
  山口  壯君     後藤  斎君
同日
 辞任         補欠選任
  佐藤  勉君     谷垣 禎一君
  後藤  斎君     山口  壯君
    ―――――――――――――
三月二十五日
 私学助成の抜本的拡充等行き届いた教育に関する請願(久保哲司君紹介)(第一〇六八号)
 私学助成の拡充と三十人学級の実現に関する請願(佐藤観樹君紹介)(第一〇六九号)
四月一日
 私学助成の抜本的拡充等行き届いた教育に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一一九九号)
 私学助成の拡充と三十人学級の実現に関する請願(河村たかし君紹介)(第一二〇〇号)
 教育費の父母負担軽減、教育予算の大幅増額に関する請願(大幡基夫君紹介)(第一二〇一号)
は本委員会に付託された。
三月二十八日
 私学助成の抜本的拡充等行き届いた教育に関する請願(第一三六号)、私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願(第六七四号)及び同(第六九〇号)は「辻元清美君紹介」を「中川智子君紹介」にそれぞれ訂正された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官大熊健司君、文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、高等教育局私学部長石川明君、科学技術・学術政策局長山元孝二君、研究振興局長遠藤昭雄君、研究開発局長今村努君、文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松野博一君。
松野(博)委員 おはようございます。自由民主党の松野博一でございます。
 いよいよ新学期がスタートいたしまして、週五日制、そしてゆとり教育と新しい制度にのっとった教育がスタートをするわけであります。この改革が成功して、子供たちにとって有意義な改革であることを念じてやまないわけでありますが、一方で、このゆとり教育に関して、学力低下の面から危惧が指摘をされております。
 特に、我が国は科学技術創造立国と宣言をしたわけであります。その中で、理数離れが指摘をされているわけでありますけれども、この理数離れに関しては、さまざまな観点から発言がなされております。
 子供たちの学力というのは低下しているんじゃないかという意見、いや低下していないよというような意見もあるわけでありますけれども、この理数離れ、理数系の学力低下という議論に、文部省は、IEAの調査等で成績は国際的にトップクラスである、また国内の過去の統計と比較をしてもおおむね良好である、しかしながら、数学、理科という科目に関して好きだという子供たちが少なくなってきたり、将来、理数系を使う仕事がしたいという子供たちの比率が下がってきている、このことが問題なんだというふうに答えております。
 一方で、大学入試センターが国立の九十五大学の学部長に対して調査をしたところ、五〇%を超える学部長が新入生の学力が低下をしてきているというような指摘をしておりますし、大学の教育現場、高校の教育現場にある方々から、実感として、子供たちの学力低下、特に理数系の学力低下が指摘をされておりますけれども、現在、文部科学省としては、この子供たちの理数系の学力低下の問題、意識変化の問題をどう分析、整理をされておるかについて質問をさせていただきたいと思います。
矢野政府参考人 学力の問題でございますけれども、OECDやIEAが実施いたしました国際比較調査の結果によりますれば、我が国の児童生徒の理科、数学におきます知識や技能の習得の状況、またそれを活用する面では、国際的に見て上位に位置しているわけでございまして、全体として、私ども、おおむね良好であるというふうに考えているところでございます。
 その一方で、委員御指摘のとおり、理科が好きであるとか、将来、科学を使う仕事がしたいとする者の割合、あるいは宿題や自分の勉強する時間を見てみますと、国際的に見て最も低いレベルであるわけでございまして、そういう面で、私どもも学力の面においての課題があるというふうに認識をしているわけでございます。
 また、これも御紹介ございましたけれども、大学入試センターが国立大学の学部長を対象に実施いたしました調査では、五五%の学部長が、新入生の学力について、低下している、もしくはやや低下していると答えているわけでございますが、一方で、四〇%が変わりない、さらに、五%が上昇している、やや上昇していると答えているわけでございます。また、自主的、主体的に取り組む意欲が低い、さらには、論理的に思考し、それを表現する力が弱いと八割前後の学部長が回答しているわけでございます。
 この調査は意識調査でございまして、また大学入学者に限られたものでございますけれども、これらの状況は、先ほど御紹介申し上げました国際比較調査結果や全国的な調査結果と同じような傾向も見受けられるのではないかと考えているわけでございます。
 新しい学習指導要領は、このような我が国の児童生徒の学力の状況を踏まえて策定をいたしたものでございまして、基礎、基本を確実に身につけさせ、それをもとにして、みずから学ぶ意欲、思考力、判断力、表現力までも含めた確かな学力を身につけさせることをねらいとしているものでございまして、今後とも、こうした新しい学習指導要領のねらいを真に実現をいたしまして、児童生徒に確かな学力をはぐくむように、私ども努めてまいりたいと考えているところでございます。
松野(博)委員 学力とは何かという議論というのは、非常にそれぞれの立場、見方によって変わってくることと思いますが、この学力論をやっていますと時間が足りなくなってしまいますので、非常に重要なことでありますけれども、今回は、もう一つの調査結果、子供たちが理科や数学を嫌いになってきている、また理科や数学を将来使ったような仕事につくという興味が薄れてきている、このことに焦点を絞って話を進めさせていただきたいと思います。
 そうしますと、一体なぜ、諸外国や国内の過去の調査と比較をして、我が国の現在の子供たちが、理数系を好きではないとする子たちがふえてきているのか。また、統計等を見ますと、小学校の高学年までは八〇%、理科や数学が好きだよと答える子供たちが多いわけでありますけれども、中学生の時点から六〇%を切って、理数系に関する拒否反応がふえてきている。これらの問題を現在どう分析をして、どう対応策をとっているのか、このことについて御質問させていただきたいと思います。
矢野政府参考人 先ほど御紹介申し上げましたように、国際比較調査の結果で見まして、児童生徒の数学や理科に対する興味や関心が低いこと、また学びへの意欲や学ぶ習慣が必ずしも十分でないことなどから、子供たちが理科や数学に対して知的な関心を持って問題を真剣に考える姿勢が希薄になっているという指摘がなされておりまして、こうしたことが、いわゆる理科離れ、数学離れという問題ではないかと考えているわけでございます。
 この原因や、また、今お話にございましたように、御指摘ございましたように、中学生の時点で理科離れが進むかといったようなことにつきましては、これは率直に申し上げて、私ども、きちんとした分析がなされていないところでございますけれども、授業の理解度が学校段階を経るに従いまして全体として下がっていることなどを考えますと、今後のあり方として、学ぶ意欲や知的好奇心、探求心を高めるために、きめ細かな指導を通じて基礎、基本を確実に身につけさせ、みずから学び、みずから考える力を育成することが重要であると思っているところでございまして、特に理科におきましては、観察、実験、また課題学習等の体験的、問題解決的な学習を通じまして、実感を伴った理解を促すなどの取り組みが今後特に必要なのではないかと考えているところでございます。
松野(博)委員 時間の関係で、通告させていただいた質問が幾つか抜けてしまうかもしれませんけれども、一つ、日本の小学生、中学生の子供たち、児童生徒が理科、数学に関して好きではないということが多い。僕は、その一つの原因に、今、日本の子供たちというのは、科学の進歩、科学というのは人間を幸せにしないんだという意識や、今社会問題になっている、例えば環境の問題、戦争の問題、原子力の問題まで含めて、こういった社会問題というのが科学の進歩に由来をしている、そういった科学に対してネガティブな感情を持つ子供たちが諸外国に比べて高いというデータが出ているわけでありますけれども、このことは日本の子供たちの理数離れの一つの大きな原因になっているのではないかと思いますが、このことに関してはどういうふうな分析をされていますでしょうか。
加納大臣政務官 日本の子供たちの科学技術認識、ネガティブな感情を持っているのではないかという松野委員の御指摘でございます。おっしゃるとおりの事実があると思います。
 例えば、一九九九年に財団法人日本青少年研究所が行った調査がございます。四カ国調査で、日、米、韓国、中国といった四カ国の高校生、中学生に対して、今松野委員が指摘された問題についての比較調査がございました。この結果が発表になっておりますが、例えば、科学が進歩することで人類は幸せになるかという設問がございます。これに対して、典型的な例で申し上げますと、中国では八割の子供たちがイエスと言っております。つまり、科学の進歩で人類は幸せになるというのは中国で八割。一方、日本はどうでしょうか、わずか四割、半分でございます。
 子供だけではございません。実は、大人の科学技術あるいは科学的発見に関する関心度というものが、ことしの一月でございますが、私どもの科学技術政策研究所で発表したところがございますが、これを見ますと、大人であっても、やはり科学技術に対する関心度とか理解度は、日本の場合、主要な先進国の中では最も低いランクに入っているということで、委員の御指摘は、子供だけでなく大人もということに実はなっているんじゃないかと思います。
 この背景と対策でございますが、二点申し上げたいと思うのは、一つは、なぜこうなっちゃったのか。日本もかつて中国のように夢を持っておりました。今、日本はその夢がないんじゃないだろうか。
 夢を実現するのが科学技術でございます。そうやって見ますと、これまで戦後復興から、先進国に追いつき、そして先進国を追い越そう、人生を長く生きよう、長寿化社会を実現しよう、人生を楽しくしよう、暮らしをもっと便利に豊かにしよう、こういう気持ちを持って夢を追い続けてきた、その夢を実現したのが科学技術だ。科学技術の光について、大変大きなポジティブな認識がかつては日本の子供たちにも大人にもあったと思います。
 その夢が実現しました。豊かな国になりました。この瞬間に、夢が一つ大きく色があせてきたのではないか。中国は今真っ盛りの成長の最中でございますから、夢が非常に大きく、その実現の担い手としての科学技術に対する信頼が非常に強いのかなとも思います。
 だとすると、どうしたらいいのか。やはり私は、新しい夢を描くべきではないだろうかと思っているところでございます。
 例えば、発展途上国の方々、まだまだ四十億に近い方々が世界で飢えているわけであります、生命の危険にさらされております。これを救うのも科学技術であり、科学技術創造立国を担う日本の役割だ、そういう大きな夢を青少年に描いてもらうことも大事だろうと思います。
 もう一つのポイントは、科学する心の創出だろうと思います。
 あと簡単で一分ぐらいで終わりますけれども、科学する心といいますのは、要するに、不思議さとの出会いだと思います。この不思議さとの出会いということがどうも失われてきている。
 結論を急ぎますと、これについては、今、新学習指導要領を実施いたします、総合的学習の時間もつくります、こういったことで、理科が大好きな子供たちをつくっていこうということで、我が省としても全力を尽くしてまいりたいと思います。
松野(博)委員 丁寧にお答えをしていただいて、ありがとうございます。あと十五、六分で三つほど聞かなければいけないので、よろしくお願いをしたいと思いますが、今お話をいただいたような風潮というのはあると思います。
 そこで、文部科学省がこの理数離れに対してどういうような対策をとっていくかということでありますけれども、文科省の方も、科学技術・理科大好きプラン等、理数離れに対する対策を講じられておりますし、それぞれに有意義なものであると思いますけれども、私は、一番重要なことは、これは理数離れだけではなく、日本の英語教育にも言えることだと思うんですけれども、最後は決意と気合いの問題ではないかというふうに思います。
 科学技術創造立国宣言というのをしまして、科学技術でこれから日本は生きていくんだ、食っていくんだということを宣言したわけでありますが、どうも若干上滑りの感があるな、また、文部科学省が今出している理数離れ対策というのも、どの程度実効性が出てくるのかなというのを心配しているわけであります。
 それは、やはり文部科学省の方で、学校の教育現場の先生に関して、日本はこれからも科学技術でいくしかないんだから、生徒にその基礎をしっかりと教え込まなければいけない、こういう決意を持っていただくように指導を徹底した方がいいのではないか。
 もう一つは、生徒の側も、これから科学技術を使った職業につかない子供たちでも、科学技術の基礎知識というのを持っていないと、例えば、自分の健康を維持していくだとか、環境問題にどう対応していくのか、こういう活動が阻害をされてしまう。どうしても、二十一世紀、これから生きていく子供たちはこの知識が必要なんだということを生徒自身も認識することが重要ではないかというふうに考えておりますけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 委員御指摘のとおり、日本の今後を考えますと、科学技術そして文化というのが日本の将来を支える柱だと思っておりまして、理数離れが起きているということは本当に大きな問題だと思っております。
 これに対応しますには、今政務官からもお話ししましたように、いろいろな方策が考えられるわけでございますけれども、一つは教育内容のあり方、これについては、基礎、基本を厳選した上で、自分で考えるような力をつけていく、そのための方策として、総合的な学習の時間でありますとか、あるいは、実際に自然の中で、いろいろな体験活動を通じながら、自然の不可思議さでありますとか、理科への興味を覚えさせる、そういう学習方法ないし内容の充実の問題が一つございます。
 それからもう一つは、今仰せになりましたように、理科大好きプランのようなことも考えておりますし、さらには、やはり私は、先生がみずから、理科が好きあるいは算数が好きという方が、できるだけ学校の現場で子供たちにその情熱を込めながら教えてもらうことが大事ではないかと思っておりまして、時間があれば詳しく御説明はいたしますけれども、教員の資質を高めるための、あるいはすぐれた資質を持っている人たちを小学校にも送っていくというような、そういう施策を今展開しているところでございます。
 それからもう一つ、先ほどの政務官からのお話にも出ておりましたけれども、国際的に比較しますと、日本の大人たちも科学についての知識が大変低いわけでございまして、そういう子供を含めた国民の科学技術リテラシーに対してどういうふうにそれを高めていくかということについて、私は大変危機感を持ちました。
 そのことを前提にいたしまして、今、加納大臣政務官を座長にいたしまして検討会をつくったところでございまして、いかにしてそういう科学技術のリテラシーを高めるかということについて、今鋭意検討してもらっておりまして、そういう成果も見ながら、今後とも力を尽くしてまいりたいと考えております。
松野(博)委員 総合学習の時間が理数離れに歯どめをかけるかどうかというのは、私はちょっと異論があるところでありますが、それはまた別の機会にするということにしまして、理数離れ対策をするためには、先ほど申し上げた決意と、もう一つは、やはり指導の仕方の工夫が必要であるというふうに考えるわけであります。
 自分自身のことを思いますと、私も理科、数学が嫌いだった生徒でありますが、なぜ数学が嫌いになったのかなと思い返すと、数学の中で、マイナスとマイナスを掛けるとプラスになるという数式がございまして、そのときに、どう考えても、なぜマイナスとマイナスを掛けるとプラスになるのか、このことが理解できなくて、恐る恐る先生に手を挙げて、先生、なぜマイナスとマイナスを掛けるとプラスになるのですかというふうに質問しましたら、先生も恐らくよくわかっていなかったのだと思うのですが、これはもう数学のルールだから覚えろと言われまして、それ以来ずっと、なぜかなと思いつつ、とにかくマイナスとマイナスを掛ければとプラスだというふうにやってきたわけであります。
 このことの疑問が解けたのが、それ以来十数年たって、ある数学者のエッセーを読んでいて、それでここで初めて、なぜマイナスとマイナスを掛けるとプラスになるか書いてありまして、目からうろこが落ちる思いで、このことを中学生の当時、先生に教えていただければ、また私も違った人生があったのではないかなというふうに思うわけであります。
 理数系の場合といいますのは、歴史等の教科と違いまして、歴史の場合、例えば古墳時代が理解できないから明治時代が理解できないということはないと思いますが、理科、数学は、基礎となる理論というのがわからないと、その後の積み重ねが全部わからないというふうになってくるわけであります。そういった意味で、特に小学校、また中学校の低学年の時点での数学、理科に対する理解を、しっかりと基礎を高めるということが重要だというふうに思います。
 その工夫の一例ですけれども、子供たちは理科、数学は嫌いだというふうなデータが出ていても、サイエンスをテーマにしたテレビ番組や映画、小説というのは非常に人気が高いわけでありますし、数学的思考が必要なゲームには一生懸命熱中をしているわけであります。理数教育の教材やシステムに、例えばシナリオライターですとかゲーム作家ですとか、今までの教育分野以外の他分野からノウハウを導入すること、このことも必要なことではないかというふうに思いますが、御所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 子供たちの興味、関心を引くために、そういういろいろな技術ないし能力を持たれた方の御協力をいただくということ、大変大事だと思っております。科学に関する情報や最先端の研究成果を利用して、児童生徒にわかりやすく理科を教えることができるようなデジタル教材を、専門的な機関を得ながら目下作成しているところでございます。
 しかし、そういう興味を引くということも大事でございますが、まさに先生が御指摘になりましたように、基礎、基本をしっかり身につけさせる、そうすると、いろいろな興味も広がっていくわけでございまして、その両様のことを大事にしながらこの問題に対処していくべきかなと考えております。
松野(博)委員 ぜひ、子供たちが今興味を引きやすいような仕組みの中で、基礎教育というのを徹底していただきたいというふうに思います。
 これから科学技術創造立国ということで、日本の産業形態自体が科学に期するところが大きいわけでありますけれども、それ以外の分野でも、これから私どもの生活を考えていくと、科学技術と社会生活というのは不可分であるということが言えると思います。職業として科学技術に携わらない大多数の国民にとっても、日常生活が円滑に行われる、また基本的な人権がしっかりと守られる、尊重されるためには、やはりあるレベルの科学知識というものを広く国民が理解するという状況が必要ではないかというふうに思います。
 例えば健康を守る、医療に向かうに当たりましても、今後の医療はバイオテクノロジーという考え方、免疫という考え方、これの基本的なところは理解をしていかなければいけないというふうに思いますし、地域社会の中で問題になっている環境の問題に関しても、いたずらな政治論やイデオロギーではなく、実際の科学的な分析の中でどうこの環境問題に対応していくのか、この基礎知識も議論をしていく上では不可欠になってくると思います。
 特に、今後の日本の中心分野、産業分野としても中心になっていくと言われております情報通信の分野、バイオテクノロジーの分野、こういった分野の中で、中学校卒業時もしくは高校卒業時までに、少なくともこのぐらいの最低の基礎知識というのは子供たちに理解をさせていかなければいけない、こういうことを具体的に目標設定をするべきではないか。その方が、学校の教師の側に立ってもわかりやすい目標ができますし、先ほど申し上げましたとおり、子供たちにとりましても、これからはこのことを理解していくということが自分たちの生活にとっても非常に重要なことなんだという意識を喚起することにもつながっていくかと思います。
 ぜひ、文部科学省として、このレベルまでは必ずそれぞれの各分野において科学的基礎知識を習得させるのだという目標を具体的にしていただきたいと思いますが、このことに関して御所見をお伺いしたいと思います。
矢野政府参考人 御指摘のように、知の世紀と言われますこれからの社会にありましては、国民が社会経済活動に関するさまざまな課題について、社会的、合理的、主体的な判断が行えるように、科学技術を理解し活用する力、いわゆる科学技術リテラシーを備えることは極めて重要であると考えます。
 このため、学校教育におきましては、将来どの分野に進む生徒に対しましても必要となる基礎的、基本的な事項を確実に身につけさせることが大切でございまして、その具体的な事項につきましては、学習指導要領におきまして教科、科目ごとにその目標や内容を規定しているところでございます。
 新しい学習指導要領ではその目標につきまして、例えばでございますけれども、高等学校では、新設されました理科基礎におきまして、科学と人間生活とのかかわりについて理解させ、科学的な見方や考え方を養うこと、さらに新しい教科、情報の中の選択必修科目でございます情報Bにおきましては、コンピューターを効果的に活用するための科学的な考え方や方法を習得させることなどをそれぞれ目標にしているところでございます。
 こうしたそれぞれの教科、科目の目標を踏まえまして、学習内容の定着を図ることが何よりも必要かつ大事なことであるわけでございまして、文部科学省といたしましては、学習指導要領に示す目標に照らしまして、その実現の状況を客観的に評価するための評価基準を作成いたしますとともに、全国的な学力調査を実施し、その結果を新しい教育課程の基準や指導の改善に生かすなどを通じまして、児童生徒が科学技術に関する基礎的な知識を確実に身につけることができるように努めてまいりたいと考えているところでございます。
 委員の御提案、御指摘の中で、それについて数値目標的なものをという御提案でございますけれども、私どもといたしましては、そういう数値目標的なものを国として設定するというのは、御趣旨、ねらいはわかるわけでございますけれども、率直に申し上げて、これはなかなか難しいのではないかと考えているところでございまして、今申し上げたような方法を通じまして、児童生徒に科学技術に関する基礎的な知識を確実に身につけさせることができるように努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
松野(博)委員 数値目標とまでは言いませんけれども、なかなか具体的な目標設定が難しいということでありますが、先ほどもお話をさせていただいたとおり、英語教育もそうでありますし、この理数離れ対策もそうでありますけれども、やはり最後は決意と気合いだと思うのですね。
 その中において、こういうメニューも用意してあります、ああいうメニューも用意してありますということも大事かもしれませんが、何よりも、これからの日本の子供たちにとって必要な理数系の知識をしっかりと、優先をして身につけさせるのだという決意。また、英語教育においても、これから子供たちが国際社会の中で生きていく上においては、どうしてもこれを習得させなければいけない、ある種のハングリー精神的なものが文部科学省として前面に出てくることが実は一番効果的なことではないかというふうに思いますが、今現時点において具体的な目標設定というのはなかなか難しいというお答えでありますから、このことに関してのお答えは結構であります。
 新しく始まりました週五日制、ゆとり教育、この中において、理数教育も含めて、子供たちにとって有意義に展開されますことを祈念して、質問を終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。
河村委員長 次に、大石尚子君。
大石(尚)委員 民主党の大石尚子でございます。
 きょうは実は、NHKのテレビを聞いておりましたら、暦の上で清明という日だそうでございます。ちょうど節変わりの日で、清く明るいという日だそうでございますが、きょうこの質問が終わりますときには、その日のごとき気持ちにさせていただけますように心から念じながら、一昨年の臨時国会でも追及させていただきました旧石器発掘捏造事件について質問させていただきたいと存じます。
 ちょうどきょうから一年と五カ月前、二〇〇〇年の十一月五日、これは毎日新聞の大変な努力の結果、藤村新一さんの遺跡捏造がスクープされた日でございます。これがちょうどきょうから一年と五カ月前の日でございます。その五日後の二〇〇〇年の十一月の十日に、私はこの問題を取り上げさせていただきました。当時の文教常任委員会の席上でございます。
 そこで、この問題というのは、私は、日本の考古学学界上もそれから日本の教育上も大変な汚点を残してしまった、いわば知的文化犯罪だと思っております。この知的文化犯罪と私が名づけるのもおかしいのですけれども、要は人間の、狂牛病とかあるいはエイズとかのように、命には差しさわらなかったかもしれないけれども、これは日本民族の命を狂わせた事件でございます。
 この延々と続いた、二十年続いた発掘捏造、これに対して、どうやってその責任を果たしていったらいいのか。見抜けなかった責任というのは追及されなくてもいいのだろうか。あるいは、ある意味では推進してきたその責任というのは行政上追及されなくてもいいのだろうか。
 私は、きょうこれからあと四十数分の間、この問題を追及するというよりは、関係者の皆様と御一緒になって、二十一世紀の文科行政を考える上に、二度と繰り返してはならないこの種の問題に関してどう考えていったらいいのか、どういう片をつけていったらいいのか、御一緒に考えさせていただきたい、そういう気持ちでここに立たせていただいております。
 それにつきましては、私は、きょうはどうしても新しい文化庁長官、河合隼雄さんにこちらにお出ましいただきたかった。二十一世紀の文化庁をしょって立つ方でございますから、答弁者として要求させていただきました。しかし、それはかなっておりません。なぜなのか。まず冒頭、大臣、お答えいただけますか。次長からでございますか。
銭谷政府参考人 文化庁長官の出席の件についてのお尋ねでございますけれども、従来から、文化庁関係の国会審議におきましては、基本的には文部科学大臣や副大臣、大臣政務官が質疑に当たっておりまして、細目的、技術的な事項につきましては、国会のお許しを得まして、文化庁次長が政府参考人として御説明を行っているところでございます。
 御案内のように、文化庁長官は、我が国の文化の顔として国内外の文化関係者との活発な交流を行うことが期待されるなど、その業務は他の行政部局の長に比べて特別の性格を持っている職と考えております。このような文化庁長官の職務の性格にかんがみまして、文化庁関係の国会審議におきましては、従来ございました政府委員制度の時代から現在の政府参考人制度の時代に至るまで、行政の細目的、技術的な説明は、日常的に行政事務全般を取りまとめさせていただいております文化庁次長が担うことで国会の御承認をいただいてきたところと理解をいたしております。
大石(尚)委員 慣例として答弁にお立ちにならないということのようでございますが、小泉総理がぜひといって招かれた文化庁長官だと伺っております。
 文化庁は、これから大きくさま変わりして発展していかなければならない省庁でございます。この財政難の折、唯一と言ってもいいほど、唯一ではないかもしれませんが、予算も増額されております。そういう中で、どういうビジョンを新しい長官が描いておられるのか、これは私たちとしてもぜひ議論させていただきたい課題でございます。
 したがって、今後はこのような慣例にとらわれることなく、このような席に文化庁長官もお招きして、お互いに意見を闘わせる、そういうことができるように、ぜひ委員長もお取り計らいいただきたいと存じます。
河村委員長 本件につきましては、理事会で十分検討させていただきたいと思います。
大石(尚)委員 ありがとうございます。ぜひ前向きに解決してくださいますようお願いいたします。
 それでは、本論に入らせていただきますが、けさの毎日新聞、それから昨日の日経新聞夕刊、ともに、「山形県尾花沢市の袖原3遺跡登録来週にも抹消」、これは前副理事長藤村さんが関与した遺跡でございますが、山形県教委が登録を抹消しようとしているという記事が出ております。
 この問題をめぐっては、上高森遺跡とそれから小鹿坂遺跡などが、既にこれは宮城県、埼玉県の教育委員会が遺跡登録を抹消いたしております。
 きのうきょうも、こうやって新聞紙上に出てくる。この藤村さんの関係した発掘作業というのは百八十六カ所に及んでいると聞いておりますし、そのうちの四十二カ所、これは数え方でいろいろあるようでございますが、四十二カ所は捏造だったということをみずから証言している。そういう中で、この一連の事件をどのように掌握しておられるのか、まず概要をお尋ねいたしたいと思います。
銭谷政府参考人 先ほど大石先生の方からお話がございましたように、平成十二年の十一月に、藤村新一東北旧石器文化研究所前副理事長による遺跡発掘の捏造が発覚をしたわけでございます。そして、昨年の十月には、日本考古学協会の大会におきまして、四十二遺跡について、藤村氏が捏造を告白したということが明らかになったわけでございます。藤村氏が関与をいたしました遺跡は百八十六遺跡でございますが、この四十二遺跡はその中に含まれるものとそうでないものがございますが、御本人が四十二遺跡について捏造を告白したということでございます。
 先ほど来お話がございますように、このような行為は、我が国の考古学に対する国民の信頼を損なうものであり、ある意味では学問に対する冒涜でもありますので、国際的な影響も大きく、私ども極めて遺憾なことであると思っております。
 そこで、その後の状況でございますけれども、藤村氏が関係をいたしました遺跡の検証作業につきましては、関係の地方公共団体や日本考古学協会などで順次現在行われているところでございます。これまでの検証作業の結果、各地方公共団体において遺跡登録の抹消等の措置がとられたものは、六都道県、九遺跡というふうに承知をいたしております。なお、四十二の捏造を告白した遺跡の中で何らかの検証作業が行われた遺跡は、これまで十九遺跡というふうに私ども承知をいたしているところでございます。
大石(尚)委員 まことに残念なことに、この捏造発覚、そしてこれが世の中に認知されていった最初の遺跡というのが、宮城県の座散乱木遺跡でございましょう。
 そして、これは、お手元にお配りいたしております、私どもの部屋でつくりました資料をちょっとごらんいただきたいと思いますが、その一番目に、一九九七年七月二十八日、国が史跡として指定しております。
 ついでにちょっとこれをごらんいただきたいのですけれども、なぜこの資料をつけたかと申しますと、この座散乱木遺跡、これは一九八一年、座散乱木の第三次発掘で、いわゆる旧石器が出てきたということで大変な話題を呼び、学界で認知されていった、そのスタートの遺跡でございますが、そこは約四万年前と推定された。
 それから、この推定された年代というのをちょっと見ていってくださいませ。そうすると、四万年前、大体三万五千年ぐらいまでは検証されているようでございます。それが、この捏造のために、約二十万年前、四十から五十万年前、それから上高森になりますと約七十万年前、それから次のページに参りましても、六十万年、六十万年、約五十万年、約四十五万年。
 こういうふうに、日本列島に人間が住んで、そして生活をしていたという年代がどんどんと古くさかのぼっていったわけでございます。ですから、私は、日本民族の命を狂わせたという言い方をしたわけでございます。
 この座散乱木遺跡を検証し直した方がいいということを、私は第一回目の質問でくどいように繰り返し繰り返しそのときの大島文部大臣にお願いいたしました。この座散乱木遺跡に関しては、国も指定したという責任があるわけでございます。これに対しての検証作業は今どうなっているのでございますか。
遠山国務大臣 座散乱木遺跡につきましては、昭和五十年代に三次にわたって発掘調査が行われまして、平成九年に後期旧石器以前の遺跡として指定されたところでございます。この遺跡につきましては、昨年十月の日本考古学協会の大会で、藤村氏がその一部を捏造したという旨の告白をしたということが明らかになりました。
 この遺跡の学術的な検証につきましては、昨年の十月にこの協会から、みずから検証を行いたいという旨の意思表示がありまして、我が省に対して協力要請があったわけでございます。その内容としては、一つは、国、自治体、協会、三者の連携協力の環境づくり、それからもう一つは、調査費も含めた支援という二点についてでありました。
 これを受けまして、我が省としましては、所要の調査費を措置いたしますとともに、早期に調査を開始いたしますよう、現在、同協会及び関係自治体との調整を進めてきたところでございます。日本考古学協会を中心に、国その他の関係機関などの職員を含めた調査団を編成して、近く調査を開始する予定であります。
 座散乱木遺跡の史跡指定の取り扱いにつきましては、こうした調査の成果などを踏まえながら、適切に対処してまいりたいと考えております。
大石(尚)委員 二〇〇一年十一月九日付の毎日新聞の記事によりますと、今大臣は考古学協会側の方からむしろお話があったというふうにおっしゃいました。私がお願いしていたのは、国の方から積極的に調査をすべきではないかということを再三申し上げていたのですけれども、この毎日新聞の記事によりますと、「文化庁が先月」というのはこれは二〇〇一年の十月のことでございます、「十五日、協会側に発掘調査を打診。文化庁の科学研究費を充てる方向で調整している。」こういう記事が載っておりました。逆ではないのですか。文化庁の方から協会の方へ何らかの働きかけがあったのではないかと考えますけれども、いかがでございましょうか。
 それと同時に、これがもう既に私が調査をお願いして以降約一年たっているわけでございます。その間、何ゆえにほっておきになったのか、それもあわせて伺わせてください。
銭谷政府参考人 昨年の十月十一日でございますけれども、日本考古学協会の方が文化庁を訪れまして、日本考古学協会による前・中期の旧石器遺跡についてのこれまでの調査経緯について、私ども御説明を受けたわけでございます。
 その際、日本考古学協会の方から、まず藤村氏の捏造の告白の件について御説明がございました。藤村さんからは全部で五回告白がございまして、御指摘の座散乱木遺跡につきましては四回目と五回目に言及があったそうでございますが、四回目と五回目の説明内容に食い違いがあったりして、全体として説明内容が揺れているという印象があったというお話でございました。
 その際、あわせて、日本考古学協会の方から文化庁に対しまして、次のような御依頼がございました。一つが、今後、国、地方自治体、日本考古学協会の三者が連携協力をしていけるような環境づくりを検討してほしいということでございました。
 それから二つ目は、座散乱木遺跡につきましては、発掘調査も含めた検討が必要であって、発掘調査はできるだけ早く実施できるように、文化庁において、日本考古学協会に対して調査費も含めた支援を検討してほしいという御依頼でございました。
 私どもといたしましては、御依頼を受けて、前向きに対処したいという旨お話を申し上げたという経緯でございます。
 なお、座散乱木遺跡につきましては、昨年の十月の藤村氏の捏造の告白によって明らかになったわけでございますけれども、この遺跡は宮城県の北部に所在をいたしておりまして、ある意味では、雪解けを待たなければなかなか再調査に着手できない気候条件下にあることから、日本考古学協会では、当初から、年明け、春になりましたこの四月ごろから調査に着手すべく準備を進めてきたというふうに承知をいたしております。
 私どもといたしましては、これまでの間、日本考古学協会が予定をしております調査に対して所要の調査費を措置するとともに、可能な限り早期に調査を開始すべく、同協会及び関係自治体との間の調整を精力的に今進めているところでございます。近く調査団を編成し、調査を開始する予定になっております。
大石(尚)委員 約一年半前に国側の積極的な調査をお願いいたしておりましたが、それに関しては、なさる御意思がなかったと考えてよろしゅうございますね。
銭谷政府参考人 座散乱木遺跡につきましては、先ほど来申し上げておりますように、昨年の十月に藤村氏が捏造したということを告白して、座散乱木遺跡について、これは再調査の必要があるということがはっきりしたわけでございまして、私どもも、調査をみずからやるのか、あるいは考古学協会と協力をしてやるのか、関係自治体あるいは地域の住民の方々のいろいろなお気持ちもございますので、検討していたところでございますが、先ほど来申し上げておりますように、考古学協会の方から発掘調査を行いたいというお話がございましたので、それではその発掘調査に文化庁としてもいろいろな面で、財政的あるいは関係者間との連携等について協力をしようということで、座散乱木遺跡の再発掘調査を今準備を進めているという状況でございます。
大石(尚)委員 この問題は、子供たちの学びの方へ大きな影響を与えております。
 それで、特に座散乱木遺跡の指定ということもありまして、それでいろいろな教科書に旧石器時代、それが、後期まではともかくとして、中期、前期まで取り入れられていったわけでございます。
 私どものお配りいたしました資料の次のページに、これは山川出版社の新日本史改訂版のコピーがございますが、ここをちょっとごらんいただいただけでもわかりますように、夢を膨らませるのではなく幻を膨らませていた、こういう記述が、これは教科書至るところにございました。
 それで、例えば二〇〇一年の五月十七日の日経新聞の報道によりますと、「「中学歴史」六社が訂正」、要するに教科書を自発的に書きかえていったわけでございます。上高森遺跡の記述の誤りが発覚したので、これはもう自発的に書きかえなければいけなかった。
 それから、二〇〇一年の十月の五日には、これは高等学校の日本史教科書、そこで、主要八社のうち五社は四日までに、この旧石器の時代の記述を削除する、残る三社も削除を決める見通しだという。文化庁は、文化審議会に諮って指定の見直しをするというようなことも、これは去年の十月五日の記事に出ております。
 教科書にこのような打撃を与えているということ。既に子供の頭の中には、何十万年前に日本列島に人間が住んでいて、そして生活していたということがインプットされているということ。この問題に関しては、教科書の検定問題もございますゆえに、どのようにとらえておいでになりますでしょうか。
矢野政府参考人 中学校社会科及び高校日本史の教科書において、捏造したとされております旧石器遺跡に係る記述があったものにつきましては、委員お示しになりました教科書も含めてでございますが、いずれも、発行者から申請されました訂正によりまして、昨年十二月までに該当の記述がすべて削除、修正されておりまして、本年四月から使用される教科書におきましては、該当の遺跡に関する記述はなくなっているところでございます。
 また、委員のお尋ねの、該当の遺跡が記述されていた訂正前の教科書で学習した生徒についてでございますけれども、これは、年度途中に訂正が行われたものにつきましては、各教科書発行者から当該教科書を使用する学校に対しまして、訂正内容が周知されることとなっておりまして、教師等によって訂正された内容が適切に指導がなされたものと考えているところでございまして、また加えて、みずから一般の新聞報道等に接することによりまして、それらの遺跡等が問題とされている状況について適切に理解できるものと考えられるところでございます。
大石(尚)委員 多くの教科書にここまで記述されていたという事実、これに関して、文部科学省、どういうふうに責任を感じておられますでしょうか。私思いますに、これは、見抜けなかった責任以外の推進責任というものがある程度問われるのではないかと思うのでございます。
 なぜかと申しますと、このお手元の資料の最後の二枚、これをちょっとごらんいただきたいと思いますが、これは「発掘された日本列島 新発見考古速報」という、文化庁が出しているものでございます。こういうものが毎年、文化庁編で朝日新聞社から出されていたわけでございます。これには二〇〇〇年、二〇〇一年と二つございますが、この二つの年表のところのコピーがこれでございます。
 まず、二〇〇〇年からの抜粋をごらんいただきますと、一番右の六十万年前というところに「日本列島に人(原人)が住み始める」と書いてございます。
 それで、これは直近の一年間に、「新発見考古速報」としてここに、これは一九九五年あたりから発刊されているものでございますが、文化庁がつくっているのです。ここにこのような形で、まだ検証されていない、だけれども、発掘された旧石器時代中期、後期の石器というものが掲載されている。そして、これを全国数カ所、展示して回っているのでございます。これは、地元の教育委員会等々も力を入れておられますけれども、文化庁主催の行事でございます。
 こういうことがあって、そして、ついでに申しますけれども、最後のページ、これは捏造が発覚してから二〇〇一年に発刊されたこの「新発見考古速報」文化庁編でございますが、この年表からは、ごらんのとおり、最初の一行が削られております。そして、その二〇〇一年の冊子の最初のごあいさつ、文化庁長官のごあいさつの文章が載っておりますけれども、この文の中には、藤村さんの捏造によってこれだけ日本の歴史を狂わせていたということに触れられておりません。ただ年表のこの一行が削られていった。何か、そっとしておこう、隠しておこう、触れずにいよう、そのような姿勢を私だけが感じ取るというのでしょうか。
 こういう文化庁お墨つきの展示、あるいはカタログ等々、こういうものがあったからこそ、教科書への記載として取り上げられていったのではないか。このことに関して、大臣、文部科学省としての責任はどのようにお考えになりますでしょうか。
矢野政府参考人 教科書行政にかかわる実務的な点もございますので、まず私の方から御説明をさせていただきます。
 教科書の検定といいますのは、これは、検定の時点における客観的な学問的成果あるいは適切な資料に照らして、教科用図書検定審議会における専門的な審査を経て実施しているわけでございます。
 そこで、今回のようなケースでございますけれども、これは、この検定を行いましたその時点では、この遺跡について、発掘結果について論文が発表されておりましたり、学会等で発表されており、また学会誌でその発掘を踏まえた旧石器時代の研究動向として取り上げられていたということが学界の状況としてあるわけでございますし、またさらに、考古学の概説書、考古学事典、日本史事典などの一般的な資料におきましても、この発掘成果について、発掘成果に基づいた記述がなされていたということがあるわけでございます。そのような学界の状況、またそういう一般的な概説書等における記述の状況、こうした状況を踏まえまして、教科用図書検定審議会における専門的な審議を経て、検定上、これを記述することを認めたわけでございます。
 教科書の検定というのは、あくまでもその時点における学界の状況あるいは資料の状況を踏まえてやるものだということについて、まず御理解をいただきたいと思うわけでございます。
 しかし、この問題に限らず、検定以後、学界の状況が変わったり、あるいはその記述について誤りが発見されるということになりますれば、これも制度上、この場合に限りませんけれども、検定済み教科書の訂正、そういう制度があるわけでございます。
 そして、今回につきましても、その制度にのっとって、今、先ほど御報告申し上げたような形で、既に訂正の申請が行われ、訂正が認められ、この四月からは訂正されたものが子供たちの手に渡るようになっているところでございます。
銭谷政府参考人 先生お話しいただきました資料は、毎年文化庁が実施をしております発掘された日本列島展の資料でございます。これは、お話ございましたように、全国数カ所において巡回展を実施しておりまして、その前年に発掘されました考古関係資料について展示をし、国民の御理解を得るために実施をしているものでございます。
 一般的に、遺跡の発掘の価値づけというのは学界の一般的な見解に沿って行われるわけでございまして、学界の見解を尊重すべき立場にある行政の側としては、今回のような捏造の可能性までを想定するということは、その時点においては困難であったのかなというふうにも思います。
 ただ、私ども、今回のことを教訓に、今後の行政に生かしていきたいというふうに考えている次第でございます。
大石(尚)委員 何かいろいろお話伺っておりますと、対岸の火事のような感じがいたします。
 それで、私は、この犯罪というものは、旧文部省、現文科省の連係プレーによる、現在持てる科学技術を総動員する、総動員までしなくても、考古学のみならず、人類学、地質学、自然科学、今文科省の中にそういう頭脳がおありになる、それを連携作業さえ密に行われていれば防げた問題だろうと思っているのです。
 例えば、この「縄文の生活誌 日本の歴史」ナンバー1、これは講談社が出したものでございます。これは前回の質問でも一部引用させていただきました。きょうは、また別な箇所を引用させていただきます。
 十二ページ。「一九九五年、宮城県築館町上高森遺跡で、六十万年前のものと思われる地層を掘っていた人たちの間に衝撃が走った。」これはどなたが書いていらっしゃるかと申しますと、座散乱木の指定につながっていった第三次発掘の現場責任者、発掘責任者の方が書いておられます。
 そのところ、もう少し読みますと、「石器発見の名人、藤村新一氏が突然、「ここだけ土が円く軟らかい。小さな穴があるんじゃないか」といいはじめた。」という記述がございます。六十万年もの地層の中で、ここだけ土が丸くやわらかい、ここで気づかれなければいけないのではないでしょうか。
 この座散乱木遺跡の第三次発掘に関して、同じこの方が書かれた、どこかで文章を読んだことがございますが、その中にも、石器を抜き出すときの衝撃的な、本当に興奮するような文章が記されていて、やはり周辺がやわらかかったと書いてございます。ここで既に、専門官であれば気づくべきではなかったのか。それで、この方は、その後、シンポジウムですとかあるいは講演の中で、自分もおかしいと思っていたという発言をしていらっしゃいます。
 この方は、座散乱木遺跡が発掘された数年後、どこに赴任された方でございますか。お名前はA氏とさせていただきます。
銭谷政府参考人 お尋ねの方は、当時、宮城県立の東北歴史資料館にお勤めの方だったわけでございますが、その後、文化庁の文化財保護部の方に勤務をしたものでございます。
大石(尚)委員 私が知っております限りでも、本年の三月三十一日まで、文化財の主任調査官とおっしゃるのでございましょうか、要するに、この事件の中核にいらしたという言い方は過ぎておりますけれども、そこに添うように存在していらした。
 それで、ごく最近、昨年の十一月三日に、さるところで「日本最古の旧石器と化石人骨」という講演をなさっていらっしゃるのですけれども、その中でも御自分みずからおっしゃっております。これ変だなという指摘は実は前々からありました。そして自分もおかしいと思うことがあったということも、さきに申しましたようにシンポジウム等でもおっしゃっている。
 この方が、座散乱木遺跡の発掘の成果によっても文化庁に招かれたのではないかと私は察しておりますけれども、それから今日に至る十数年以上にわたって文化庁の考古学の中枢におられたということ、大臣、やはり責任をお感じになりませんでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、座散乱木遺跡の価値づけは、当時の学界の一般的な見解に沿って行われたものでございまして、学界の見解を尊重すべき立場にある行政の側としてやむを得ない状況というのもあったのではないかというふうに考えております。本人につきましても、一生懸命職務を行っていたわけでございますけれども、当然十分な注意を払いながらの作業だったと思いますが、力不足という点もあったかとは思います。
 先ほど来申し上げておりますように、今回のことを私ども教訓にいたしまして、今後の文化財行政に生かしていきたいというふうに考えております。
大石(尚)委員 既にこの一連の藤村新一さんの捏造につきましては、座散乱木遺跡、一九八一年第三次発掘の後、もう三、四年後から批判論文が出ていたわけでございます。学界でもそれに対しておかしいという御意見が出ました。そういうものがすべて取り上げられてこなかった。ここに、今どきこのような文化行政があったのだろうか、もう少し公正に取り組めなかったのだろうか、私は残念で仕方がないのでございます。
 かつて、このような類似した事件がやはりございました。これは、永仁のつぼ事件というのがございまして、永仁というのは、皆様御存じのように、鎌倉時代、蒙古襲来のあの直後の年代でございますが、そのつぼが、昭和三十四年、古瀬戸の名品として重要文化財に指定された。これは文部省の仕事として重要文化財に指定された。しかし、その後贋作だということがわかって、この指定に奔走された当時の文部技官はみずから職を辞して責任をとられた、そういう事件がございました。
 この著書の方は、講談社の「日本の歴史」ナンバー1「縄文の生活誌」、これを執筆されて、そしてその中に大変誤った記述が多くなされていた。しかし、この本は、これはもう発覚する直前に本屋に並んだものでございますが、その後自主回収したというようなことも伺っておりますけれども、でも、私はこれと同じ本をこの国会内の本屋さんでことしの二月八日にもう一冊手に入れております。それから、この方は他の著書にもいろいろとございまして、こういう中にももう既に改めなければいけないような記述が載っかっております。これがやはり文化庁の主任調査官の執筆というふうになっていくわけでございますから、こういう問題に関して、何かもう少しすっきりとけじめをつけるべきではなかったのか。
 四月一日に、この方はどちらへいらしたのでございましょうか。
銭谷政府参考人 御指摘の文化財調査官につきましては、この四月に、埋蔵文化財の発掘調査を専管業務といたしております独立行政法人の機関、奈良文化財研究所でございますが、そちらの方に移っております。
大石(尚)委員 それは出向されたのでございますか、退職されてそちらに就職されたのでございますか。独立行政法人というのは、よく天下りの席と言われている場所でもあろうかと思いますけれども。
銭谷政府参考人 いわゆる出向という形になろうかと思います。
大石(尚)委員 私はこの方を責めたくはないのですけれども、しかし、やはり最初の国指定になった遺跡の発掘責任者であって、それから十数年にわたって文化庁考古学の中枢におられた。この方がもう少し御自分の学問的な良心に謙虚に敏感に反応しておられたら、書かれたもの等を読みますと、もっともっとさかのぼって、その発覚当初にこれはおかしいと気づかれていたのではないか。
 そうなりますと、これからの文化行政、二十一世紀へ向かって大きく発展していかなければならない。文化芸術振興基本法も制定されたゆえもありまして、文化庁の予算は、前代未聞、前年度比八・何%かの増額だと聞いております。そういう中で、この一連の捏造事件に関しては、私は、文部科学省、文化庁の中に、見抜けなかった責任、ある意味では推進してきてしまった責任というものがあるのではないかと思うのでございますけれども、それに対して大臣はどのようにお考えでございますか。
遠山国務大臣 私も、捏造事件が発覚いたしまして本当に驚嘆いたしました。これは学問の世界の冒涜であり、決して許されるものではないと思いました。しかも、学界においてそのことが長年見抜けなかったということは、これは本当に残念なことでございます。
 文化行政は、やはり学問成果の上に立って行政を行うというきちんとした哲学がございます。その意味で、学界の成果というものを尊重して行政をやってきたということでございます。ただ、今回のケースは、大変私はこれからのあり方について警鐘を鳴らしてくれたといいますか、今後のあり方についてはやはりもう少し細心の注意をしていかなくてはならないと思いますが、ただ、行政と学問の世界との間の関係というものは、これは慎重でなくてはいけないということがございます。
 また、今回の事件は余りにも特異な、学問の世界に携わる者がそういうことをやるということは、およそ想像もできなかったという特異なケースであろうかと思いますが、いずれにしましても、この問題を契機にして、今後の文化行政をしっかりやっていくというために、人材の確保を初めとして、もう少し行政のあり方についてきちんと見直しを行い、またその考え方に沿ってやっていくべきだと私は考えております。
大石(尚)委員 時間が来てしまいましたので、最後に、二点お願いでございます。
 とにかく子供を犠牲にしてしまった、それから国際的にも大変、日本の考古学界に汚点を残してしまった、これをどう説明責任を担っていくのか。それから、これからは文化行政そのものが国際水準をきちっと満たしていかなければいけない。
 そういう中で、人事面におきましても、いろいろな博物館ですとか美術館ですとか、いろいろな独立行政法人にしてもお世話をしていらっしゃるわけでございますから、そういう館長の人事等も含めてどうあるべきか、二十一世紀の文化行政というものはどのようにしていかなければいけないか、大変重大な岐路に差しかかっていると思いますので、ぜひ、この大変な問題を糧として、災いを転じて福となすような文化行政をこれから発展させていっていただくように皆様にお願いして、責任のとり方はけじめをつけるということをお願いして、質問を終了いたします。
 ありがとうございました。
河村委員長 次に、平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。
 先ほど同僚議員の、香り高い文化の質問の後に、現実に戻って、科学技術のあり方の部分から、今の学校教育の問題に立って数点、時間の許す限り質問をしてまいりたいと思います。
 まず最初に、私、過日の二月二十七日でしたが、酒田短大の件をこの委員会で取り上げさせていただきました。途中、理事会等で御報告をいただいておりますが、今、直近の状況がどうなっておるかということについて、概略で結構でございますが、御説明をいただきたいと思います。
工藤政府参考人 過日、いろいろ御質問いただき、御答弁させていただいたわけでございますが、新年度に入りまして、在校生は、留学生が過半でございますけれども、二百五十五名でございます。この四月からの新入生は、留学生、日本人を含め全くございませんので、昨年度以前に入りました在校生がいらっしゃるだけでございます。
 昨日、同学園の理事長、学長に来省を求めまして、実は一昨日、四月三日に理事会があったということでございますので、その報告を求めたところでございます。
 それによりますと、短大としましては、現在いらっしゃいます在学生の全員につきまして、職員が一丸となって転学の手続を進める方針を決めたということが一点ございます。
 それから、貝原前理事長が、理事の役職にはとどまりますけれども、理事長職は辞任いたしまして、新理事長に武田理事が就任されました。また、稲本学長が任期満了となるために御交代されるということが決められました。
 さらに、御心配をおかけしました、いろいろ資金繰りが大変困難だったわけでございますけれども、貝原前理事長から一億数千万円の寄附の申し出があったということでございました。
 私どもとしましても、大変遺憾な学園運営をしていた大学でございますけれども、まずは学生の扱いについて大変気をとめてございまして、今の転学の問題も含めまして、まずしっかりやっていただくこと、かつ教職員の扱い、それから私どもから交付しております奨学金等の処理なども含めまして、さらに適正を期すように指導しているところでございます。
平野委員 今説明を受けましたが、その中で、大学として除籍処分にした生徒の数はどれぐらいおられますか。
工藤政府参考人 二月末と三月に入ってからの二回でございますけれども、連絡がとれなくて行方不明であるとかいう、学則で定めております事由によりまして、合計で六十六人の学生を除籍処分としてございます。
 なお、ほかに申し上げますと、このほか二十名弱が退学してございますが、ほかの学校等への転学希望で退学になってございます。さらに、三月十五日に卒業された方が、韓国人の留学生を含めて八名の方が卒業してございます。
平野委員 そういう実態なのだろうと思いますが、ここで実は、問題が内在しておる点があります。
 在校生、二百五十五名現在おられる。就学ビザでありますから、他の学校に移られて学ばれるということについては結構だと思うのでありますが、いわゆる除籍になって学校にも行かずに、そのとき、本来ビザが切れれば本国に戻るわけですが、今の制度上はビザを緩和してきたという経過があって、そのビザの有効期間は日本に滞在をする、しかし就学をしない、こういう実態が出てくるわけであります。
 平たんな言葉で言えば、夜の仕事についているとか、昼間の仕事についているとか、いわゆるビザの発給目的とは違うところでのワークにつく、仕事につく、こういうことになる可能性が非常に大だと私は思うし、現実、たまたま大量に酒田短大は出ましたけれども、いろいろなケースが日本の国内に、こういう今の仕組みであれば起こっているのではないかと非常に懸念をいたしておるところであります。
 したがいまして、ここで文部省に、お願いというよりもぜひやってもらいたいのは、目的外のところであるビザの残余期間については、これは今の法律では認められているということで、過日の委員会でも、入管のルールからいっても難しいということでありますが、これはしっかりと制限をしていくべきだというふうに思っていますが、文部省としては、その点についてはどう考えておられますでしょうか。
工藤政府参考人 今御指摘ありましたように、留学生についてのビザにつきましては、法務当局の御理解もいただきまして、これまで大変簡略化して、御協力いただいてきたところなのでございます。例えば身元保証人制度を廃止するとか、今のビザによる在留期間につきましても、以前は一年または六月単位で更新ということでございましたけれども、二年または一年単位という、若干長期にさせていただいたということもございます。
 短大でございますので、二年間のビザがあって、そこで除籍あるいは退学になった場合、つまり勉学に当たらない外国人の方の扱いというのは、今回のケースで明らかになったわけでございまして、私どもも対応に心を痛めてございます。
 一つにはビザの更新時期を、ではもう一回個別に繰り下げるという選択もないわけじゃないんでございますが、他方で、留学ビザから就労ビザあるいは観光ビザ等、別のビザへの切りかえの手続でございますとか、それらも含めて法務当局とさらに御相談してまいりたいと思いますし、何よりもまず学校側で学生の指導とか学籍管理というのが大事でございまして、私どもこれまでは、大学関係については一年に一遍、行方不明者等の留学生については地方の法務局によく連絡するようにという御指導などしているわけでございますけれども、もう少しきめ細かな報告連絡体制を築くなども含めまして、学校側に対する指導の強化あるいは私ども自身のさらに点検評価も含めまして、いろいろ御相談してまいりたいと思っております。
平野委員 余りこれにばかり時間を割くわけにいきませんので、いずれにしましても、今の法の網をくぐって、本来の目的でない外国人が日本国内にたくさんいるというのは、やはり不正常な状態であります。したがって、どこがそれをチェックするかということは、第一義には、やはり就学で来ているわけですから学校にしっかりとそのことを求めていっていただきたいと思いますし、私学を助成していないから、私学だから余り文科省が関与するのはいかがなものかという考え方は、今の起こっている事象から見ますと、もっとやはり指導体制をしっかりしていただきたい、このように一つ思います。
 いま一つは、これは非常にゆゆしき問題だと私思っていますが、試験に合格をして検定料なりその学年の授業料を納めているにもかかわらず、入管の手続で、これは入国できません、ビザが発給できない方が二十名ほどおるというのが、実は新聞に出てきたわけであります。ですから、これは現地、現地というよりも中国にいるわけであります。しかし、授業料を極端に言ったら納めている。しかし、入国をさせてくれない。授業料を返してくれと言っている学生さんが、新聞によりますと二十名おる、こういう新聞が出てきたわけであります。
 私、過日の委員会では、このまま余り放置しますと外交問題になりますよ、このこともこの委員会で申し上げたところでありますが、この点については、今文科省で承知しているところはどんなところでございますか。
工藤政府参考人 昨日短大側にお聞きしましたところ、中国人留学希望者の方が、今御指摘のようなことがございまして、お一人の方から中国大使館の方にお問い合わせがあったという旨が、大使館から短大に連絡があったということでございまして、二十人が集団でどうのという話ではないと一応聞いてございます。
 ただ、御指摘のように、実際、来日できなくて、かつ授業も受けられなかったわけでございますので、授業料等について返還の方向で短大側は検討しているというふうに聞いてございます。
平野委員 返還の方向でというよりも、言われなかったらこれは返還しないんですか。といいますのは、酒田短期大学の外国人留学生の募集要項というのがあるんですよ。募集要項には、入国審査を経て在留資格認定証明書が発給次第本学に入学手続の連絡をとっていただきますと、こういう案内書なんですよ。
 そうすると、今局長おっしゃるような事象というのは本来ないんじゃないか。なぜ起こっているんですか。そこはどうですか。
工藤政府参考人 大学側の手続としては、入学金、授業料の納付をしていただいて、そういう学生に対して納付と同時に在留資格証明書をお渡しするというようなことで、おいでになるに当たってあらかじめ学納金を納付していただいていたということでございます。ただ実際は、在留資格証明書をお渡しすると言いながら、ビザは発給されませんでしたので、来日できず、かつ授業も受けられなかったということでございます。
 それで、先ほど返還の方向で検討していると申しましたのは、何しろ資金がショートしてございまして、人件費も払えないような状況でございますので、その資金の確保のめどを立てながら返還する方向で対応するというふうに承知しているところでございます。
平野委員 いや、こういうことなんですよ。私、多分、想像のことを言って申しわけありませんが、合否発表、入国審査、手続、入国審査を経て在留資格認定証明書が発給次第本人に入学手続等を連絡します、審査手続は申請時から一カ月以上かかります、在留資格証明申請を行った後本国に入国が認められなかった場合は入学を認めないと書いているんですよ。
 入学を認めないというふうに書いているにもかかわらず、一年間の授業料を取るんですか。ここはどうですか。
工藤政府参考人 これは、既に日本の大学でも、以前かけ持ち受験なんかの学生さんから授業料を前納さすとか、あるいはそれも、しかも大変合格発表から短い日にちで設定しているものですから負担が大きいという案件が頻発してございまして、昭和五十年でございますけれども、すべての学校法人に対しまして、授業も受けられない者から授業料を徴収したり、あるいは施設設備を利用しない者から施設設備費等を納付させるのはおかしい、やめてくれという趣旨の局長通知を発してございます。
 ですから、今の酒田短大の場合に、実際に在留資格証明書を交付して、それからビザの申請を御本人がされるわけですけれども、実際はそこでとまっちゃったという事例なわけでございますので、本人は、本人の責めに帰する事由で来られなかったとか、もう途中で気が変わったとかということがあれば別でございますけれども、来日の意思があったのに残念ながら来られなかった、しかも授業を受けられなかった、その学生から授業料を取ってそのままというのは、大変ゆゆしい話だと思ってございます。
平野委員 いずれにしましても、局長、こういう事象が起こっておりますし、奨学金でありますとかそういう公的資金もやはり使われておるわけであります。その使われ方がやはり不正常な使われ方になっておりますから、厳しくこれはてんまつまでしっかりと文科省が見届けていただきますように、そうしなければこんな問題がまたまた起こりかねませんから、ぜひその点についてはしっかりと指導、ふだんは余り指導しなくていいんですが、こういうのはしっかりと指導していただくようにお願いをしておきたいと思います。
 それでは少し本題に触れますが、昨今、特に子供たちの理科離れということが叫ばれておりますし、特に学力の低下、こういうこともよく取りざたされているわけであります。
 一方、我が国は、科学技術基本法という立派な法体系がありますし、また、科学技術基本計画に基づいて、科学技術創造立国、こういう国を目指すんだという大きな柱がございます。二十一世紀の日本は、こういう立場に立って、科学技術を中心とする知的資産の拡充、すなわち、人の育成がその大きな寄与につながっていくんだ、このように私は承知をしています。
 しかしながら、現実に学力低下、特に、理数科系の教科を好きですか、こういうふうに設問いたしたときに、好きと答える生徒が諸外国の中でも一番低いランクに位置づけられている、こういうふうにIEAの調査に見られているわけであります。少なくとも、意欲や関心、こういう視点をとってみても、子供たちの理数科離れ、科学技術に対する興味の低下が確かに私はあると思うんです。
 子供たちの理数科に対する興味をいかに取り戻していくかは、我が国の教育の抱える、先ほど申し上げましたように、科学技術創造立国にするんだ、こういう観点からも最も喫緊の課題であると私は思っていますが、まずこの点について、大臣、どういう認識におられるか、お聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 私もまことに同感でございまして、今後の日本、科学技術創造立国、文化立国ということを実現していきますには、まさに人でございます。やはり学校教育の段階からきちんとした教育をしていかなくてはならないと思っております。
 特に、理数系の問題は、小さいときから間断なくきちっとした基礎を与えながら、そして、自分で考える能力といいますか、新たに応用していくそういう能力を身につけさせなければいけないわけでございますが、その意味では、知識、技術の部分をしっかり身につけると同時に意欲を持たせていく、その両面が大事だと思っております。
 そのことにつきまして、また時間があれば御説明したいと思いますけれども、今新しい学習指導要領の移行に際しまして、いろいろな改善の方法を総合的にとろうといたしております。
 そういういろいろな工夫を通じましてこの問題に対処してまいりたいと思いますし、教育方法も改善をし、それから先生についても、より意欲を持ってやってもらいたいと思っておりますし、私自身は、一人一人の子供たちの能力を上げるというのも当然でございますが、すぐれた能力を持っている子の能力をどんどん伸ばしていきませんと、世界の最高水準をやってきた日本の科学技術の水準が極めて危機に瀕するのではないかと思っておりまして、その意味で、発展的な学習をしっかりする、能力に応じた教育をしていくということは、当人にとっても、日本の将来にとっても大変大事なことだと考えているところでございます。
平野委員 私も同じ認識に、久々に大臣と同じ認識に立てたと思っています。ただ、そういうこと、同じ共有の認識に立ったときに、今の、小さいときからそういう理数科系にあるいは自然科学に、科学技術にやはり興味を持っていただく、小さいときのやはり教育が非常に大事である、こういう認識も同じだというふうに私は思っています。
 では、一番基礎を教えていく小学校の教育の今の現場の実態はどうなんだろうか。こういうところに視点を当てますと、特に、入り口となる初等教育においての苦手意識をいかに持たせないで、興味を持つようにどう指導しながら教えていくか、こういうことが非常に求められると思うんです、まず第一義には。
 そうしますと、そういう興味を持たせる教材ということも大事だと思いますが、教える学校の教員の質にもよる、教え方にもよる、ここが私は非常に、どうなんでしょうかというところであります。特に、小学校の教育現場の現状を見てみますと、子供たちの興味にこたえてやれるだけの理数科の資質を持っている先生が少ないんではないかと思います。
 いや、少なくないということであれば後でお答えをいただきたいと思いますが、なぜならば、私の少ないと思うと言いますのは、小学校の教員免許の取得者は、そのほとんどが、大体教員養成を主たる目的とする、いわゆる教育学部を出てこられて任に当たっておられる。そうしますと、これらの学科に入る入学者が、入学試験において、理科とかそういう自然科学にある学力、資質を全く問われていなくて、そういう養成課程に入っておられる方が非常に多いのではないかと思うのでありますが、まずこの点についてはいかがなものでしょうか。
岸田副大臣 今の教員養成学部における入試においてこうした理数系の科目、問われていないんではないかという御質問でございましたが、教員養成大学・学部の卒業者は、小学校の教員採用のうち約六割を占めておりますが、これらの教員養成大学・学部においては、いずれも入試において数学及び理科を課しているというのが現状であります。入試段階では、すべて数学、理科を課しているという現状にあるということでございます。
平野委員 確かに大学入試のためのペーパーテストではあるんですよ。ペーパーテストではございます。だから、ペーパーテストがあるから理科に対する資質があるというふうに受けとめられても困るわけですね。やはり大事なのは、理科や科学技術に対する理解を深める機会をたくさんつくるとか、指導のための素地をもっと身につける、こういうところが私ないんじゃないかなと。
 これは私の経験でもそうですが、嫌な先生に当たると、本当は興味があるものでも、その人が嫌なものだからそこで学ぼうとしないというのが、私小学校のときの経験でもありましたよ。小さい子供というのは大体そうじゃないでしょうか。若い人が来れば嫌な科目でも興味を持って学ぼうとする、こういう部分があると思うんですね。
 したがって、一にかかってその人の資質もあるんでしょうし、もっと子供に興味を持たせるように、みずからもやはりそこに興味を持っている人でないと興味を持たせようとしないわけですから、そんな先生を、特に幼少期というんでしょうか、初等教育の段階においてはしっかりと配置していくことが、次世代の日本を担う、またそういう分野に進んでもらうための人材を育成するための最初の入り口ですから、入り口にしっかりとそういう興味を持ってもらうための教員の配置をしていくべきだと私は思うんですね。
 もう一つは、入学をされてからの問題ですが、小学校の教員の免許では、例えば四年制の一種免許を取った例で見ますと、学術的、学問的な科目での履修、いわゆる教科に関する科目の必修単位というのは、今何単位ですか。
矢野政府参考人 専門の教科に関する科目は、八単位でございます。
平野委員 八単位ということは、どれぐらいのあれで学ぶ時間はあるんですか。一単位はどれぐらい修学するんですか。
矢野政府参考人 九十分をベースにいたしまして、年間を通じて修得いたしますと、基本的に四単位でございますから、その倍ということになるわけでございます。
平野委員 ということは、百八十分を一年間やったら、それであれを修得したことになるんですね、九十分、四単位ですから。百八十分ですよ。全科目を合わせてですよ。ということは、別に理数科の科目を取らなくても、小学校の教員免許は取れるんですよ。今の教育カリキュラムでいきますと、取れますね。
矢野政府参考人 おっしゃいますように、専門の教科に関する科目は八単位でございますけれども、これは、理科、算数等の科目から一以上選択するということになってございますから、そういう意味で、普通、一科目が二単位でございますので、二単位をベースにいたしますと、四科目に相当するわけでございます。四科目の中に理科、算数というものを必ずしも含めなくてもいいようになってございます。
平野委員 そこで、私は、やはり先ほど申し上げましたような背景にありますから、少なくとも履修をしていく必須要件にこの理数系の科目を入れていただきたい。取らなくても可能ですから、小学校の教員免許の養成課程の中で取れていっちゃうわけですから、そうじゃなくて、必ず、一つのそういう大きな国策の流れでやろうとしているわけですから、そういう項目を必須としてその科目の中に入れていただくことはどうでございますか。
岸田副大臣 今、現状ですが、カリキュラムの中身、今局長から御説明しましたように、専門の教科に関する科目は八単位ということで、その中で各科目の中から一つ以上選択するということになっているわけです。
 それに加えまして、カリキュラムの中、学校教育活動に直接する教育実習等の教職に関する科目というのがあるんですが、ここに四十一単位ございます。この中では、必ず理科、算数を含むすべての教科の指導方法の科目、これを学ぶこととなっております。この中では必ず理科も算数も入ってくるわけであります。
 さらに、選択履修が十単位ありまして、この中で理数系の科目を学ぶことも選択できるということでありまして、ですから、必修の部分にも理科、算数の理数系の科目はもちろん入っているわけでありまして、それに加えて、教師の興味にあわせて選択ができるという形にカリキュラムはなっているわけであります。
 基本的な考え方として、特に小学校の教員養成においては、全科目にわたってバランスよく履修するというのが基本的な考え方でありますが、この必須の部分でバランスよく全体を修得した上で、選択の部分でより興味を深めて専門性を高めるということになっておりますので、現状でも、理数系の科目を全く選択制にしているということではないということ、これも御理解いただきたいと思います。
平野委員 そこは副大臣、ちょっと違うんだよ。
 今言われた八単位、教職に関する科目というのはおっしゃるようにありますが、これは授業の方法を学ぶんですよ。専門的領域を学ぶんじゃないんですよ。指導の方法論についてはその中でやるんですよ。
 私は、やはり教える人は専門的領域も含めてやっていただかないといかぬと思っていますから、そういう視点でいきますと、教科に関する科目、教職に関する科目、こういうところでバランスよくやっているわけですが、少なくとも、この教科に関する科目の中に科学技術立国、そういう興味を持たせるために、みずからも進んでそこに興味を持つような科目を必ず小学校の、幼児、初等教育の中に、そういう教員に立っていただく方については、少なくとも持っていただく人がふさわしい。
 したがって、そういう科目の取り方に変えていただくことを心より、時間がないものですから、心よりお願いをしておきたいと思います。
 加えて、もう一つ言いますと、これは四年制の場合ですよ。短大を出てきたときに、二種免許が小学校で与えられるんです。そうしますと、今の四年制の履修科目、もっと低い状態で二種の教員免許が与えられます。現場では一種、二種という差はありません。教員として、同じように生徒は習うわけです。
 そうしますと、短大の場合だったら、平成十二年の三月の卒業者で一万九千四百人ほどおられて、その一割以上、約二千三百人ぐらいが小学校の教員になっている。その方々がどういうふうに学んできているかといいますと、私は理科嫌いだし、四年制やめて短大に行こう、こうなったときに、ますますその先生の心の中というんでしょうか、資質の中では、理科なんて、理数科なんて全く考えてないですよと思うんです。
 したがって、短大においても四年制においても、やはりみずから興味を持って教えてあげるという、こんな教員の養成課程をぜひ初等教育の中に取り入れていただきますようにお願いをしておきたいと思います。
 最後に、時間が参りましたが、ここでもっと時間があれば聞きたいわけですが、行政改革で、文部と科学技術庁とが再編になりまして、文科省になりました。今あります内閣府にも、総合科学技術会議というセクションがございます。科学技術立国、日本の科学技術の行政あるいは企画プランは、内閣府の総合科学技術会議において決められていく、あるいは立案されていく。
 文部科学省におきましては、その決められたことについて実践的にやっていくんだという理屈は行政改革のときに立ったわけでありますが、現実に、青山副大臣、久々に御登場いただきますが、文部科学省の科学技術担当の副大臣として、今までのように主体的に企画立案から、内閣府で決められたことを実践していくという下請的になって、肩身の狭い思いはしておりませんか。
青山副大臣 同じ目標を持って、科学技術創造立国をしっかり築き上げていこうと。
 ただ、今おっしゃられるように、総合科学技術会議は科学技術政策を推進する司令塔であって、総合戦略、資源配分の面で方針を明確に持ってもらうわけでして、文部科学省の方は当然その戦略に沿って、具体的に実施主体としてしっかり成果を上げていくつもりでおりますので、決して下請的な意識はなく、みずから取り組まなければならない。
 その意味では、総合科学技術会議も理科離れについて、推進の方針が出ておりますが、文部科学省も当然そういうことを念頭に置いて、例えば、今度完全週五日制になれば、自然体験活動だとか奉仕活動だとか、いろいろな幅広い分野での、子供たちが理科や科学技術に対して関心を持ってもらえるように、それから、日本科学未来館は非常にいい成績を上げておりまして、毛利館長のもとで、多くの皆さん、子供たちが、お父さんやお母さんまで連れてと言うと逆になるかもしれませんが、お父さんやお母さんと一緒に相当の人たちが訪問して、理科に、科学技術に関心を持ってくれるように今なりつつあります、あると受けとめております。
平野委員 きょう、総合科学技術会議のセクションで政策統括官に来ていただいておりますが、私は、やはり総合科学技術会議、これを見ますと「知恵の場」と書いてあるんですな。この総合科学技術会議の場所というのは、内閣総理大臣及び内閣を補佐する知恵の場として、こういうセクションになっているんですね。
 私は、やはり科学技術立国にするんだったら、人ですよ、知恵ですよ。人というのは知恵ですよ。やはりそういう意味では、人に対しても、総合科学技術会議の方で文科との連関をもっととっていただいて、いろいろやっておられることは認めます。しかし、特に、行政改革でどの省庁をひっつけてやるかというときに、一番悩んだところのセクションが僕はここだと思うんですね。内閣府で本当にいいのか。悩んだセクションだと思うんですが、しかし、決まった以上、それはやはり有機的にどうしていくかということでやらないかぬと思いますが、総合科学技術会議のこの席において、そういう科学技術の立国として、人の教育の中でそういう知恵を絞ろうということが議題になったことはございますか。
大熊政府参考人 御説明をいたします。
 内閣府の総合科学技術会議の役割をお尋ねだと思っておりますが、先ほど来平野先生がおっしゃられましたように、総理に対する知恵の場ということでございまして、科学技術政策の面での知恵の場、こういうことになるわけでございますけれども、これは、国全体における科学技術政策を統一的に進める、またその中における重要な総合戦略あるいは資源配分の方針といったものを適時的確に出していくということがこの知恵の場の役割だ、こういうふうに思っております。
 また、総合科学技術会議自身、非常に、毎月一遍、総理臨席のもとに会議をしておりまして、こうした知恵の場を生かすことをしているかと思っております。
 なお、総合科学技術会議自身、総理、科学技術政策担当大臣、文部科学大臣、こうした関係閣僚と有識者議員となっているわけでございまして、内閣府総合科学技術会議と、それから文部科学省を初めとする関係各省、これが一体となりまして、省庁再編のときを契機としまして、一体となりまして世界最高水準の科学技術創造立国の実現に向けた取り組みが進められているところだ、こういうふうに思っているところでございます。
平野委員 時間が来たから終わりますが、要は、いずれにしましても人なんですよということを、人に対する投資をやはりしっかりしなきゃならぬということは、文科におきましても、総合技術会議においても、ぜひ深い御理解をいただきたいと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
河村委員長 次に、斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 先日、新聞報道ですけれども、文部科学省がヒト万能細胞の、いわゆるヒトES細胞と呼ばれているものですけれども、研究について、これを承認したという記事が出ておりました。すなわち、京都大学の再生医科学研究所が出していた万能細胞の研究について、文部科学省の特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会で議論をした結果、これを了承したということでございます。きょうは、この問題について、まず最初に質問をさせていただきます。
 一昨年の秋の臨時国会で、ヒトクローンの規制について、人クローン胚の研究規制について、法案が通りました。この法案は、二〇〇〇年、一昨年の通常国会に出てきたわけですけれども、非常に議論が白熱をいたしまして、通常国会では継続審議ということで、秋の臨時国会で成立をしたものでございます。
 その議論の中心は、いろいろな特定胚の中に、いわゆるヒト受精卵を使った特定胚がある。このヒト受精卵というのは、まさにヒト受精卵でございまして、着床すれば、将来、一個の人格になる。生命の萌芽と言ってもいいかと思います。その生命の萌芽であるヒト受精卵を材料にした特定胚の扱いについて、生命倫理、人道的な立場から議論があったところでございます。
 結果的には、法案が多少修正され、また、附帯決議についても、この生命の萌芽たるヒト受精卵の扱いについて、慎重な取り扱い、今後の慎重な議論を要する、このような附帯決議を我々全会一致でつけたものでございます。
 この一昨年の議論を踏まえて、今回、文部科学省として、ヒトES細胞、ヒト万能細胞の研究承認をするということが出てきたわけで、私は、今回の決定は、日本の科学技術上、また生命科学倫理上、大変大きなステップだったのではないか、このように思っております。
 世界では、アメリカが一九九八年に、このヒトES細胞について、加工をし、研究をするということを認めておりまして、現在までに、世界で五十株以上のヒトES細胞が樹立されていると聞いております。しかしながら、ヨーロッパの、例えばフランスやドイツでは、生命倫理上、このヒトES細胞の樹立についてはこれを認めない、こういう国もあるわけでございます。
 そういう中にあって、我が国がこのヒトES細胞の樹立を認め、研究を進めるということに対して文部科学省としてゴーを出した、このことにつきまして、その意味、我が国における樹立の意義、これについてまず最初にお伺いしたいと思います。
遠藤政府参考人 お答えいたします。
 ヒトES細胞が生命の萌芽であるヒト受精胚というものを滅失して樹立をされるものであるという生命倫理上の問題があることを踏まえまして、我が国におきましても、科学技術会議生命倫理委員会、それから総合科学技術会議、生命倫理専門調査会、ここにおきまして、かなり時間をかけて活発な議論が行われました。昨年九月に指針の策定を行ったところでございます。この指針に基づき、適切に樹立されましたヒトES細胞を供給できることは、発生・再生研究を適切に進めていきます上で大変意義が大きいというふうに考えております。
 また、国内樹立体制ができますと、例えば、海外のヒトES細胞を輸入して使うという場合には、輸入時の契約によって、国内研究者による自由な使用と研究成果の権利確保に障害が生じる可能性というものが考えられますが、こういったことを回避できるという点があろうかと思います。
 それからまた、将来の医療応用ということを考えますと、樹立段階からウイルス感染の危険性などを排除した品質管理技術の確立に役立つことができる。さらには、ヒトES細胞は、何代も培養いたしますと途中で性質が変化をする可能性があるわけですが、これが国内樹立ですと、そういった特性が明らかなヒトES細胞の供給が可能となるといったようなメリットがある、このように考えております。
斉藤(鉄)委員 よくわからなかったんですけれども、我が国でヒトES細胞を樹立する意義、研究する意義というのは、私の理解では、まず第一義的には、この研究が非常に医学的に有用なものであるということなのではないんでしょうか。
 例えば半身不随の方、脊髄の中の神経細胞が壊れているわけですけれども、これを再生する、これまで不可能だった治療が可能になる。また、目や耳ということが言われておりまして、そういう、人間が受けるメリットに対して、しかし、将来人間になるかもしれないその卵を壊すということのある意味で生命倫理上の問題、このバランスをどこにとるか。だから、そのバランスがどうしてもとれないという倫理上の国はこの研究を禁止しているわけですし、バランスがとれると判断した国はこれを認めているわけですし、今回日本が認めたということは、そのバランスが成り立つということを認めたということだと思うのですけれども、その辺の意義をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
遠藤政府参考人 先生がおっしゃるとおりでございまして、技術の発展といいますか、技術の開発という点では、こういったES細胞が樹立できますと、いろいろなところに画期的な治療が可能になるという点では大いに研究を進めなければいけない。
 しかし、先ほど申しましたように、生命の萌芽でありますヒト受精胚というものを使って、それも滅失させるわけですから、非常に生命倫理上の問題もあるわけでございまして、そこはこの委員会などでも研究者の方々は随分悩まれたというふうに思うわけでございます。
 そこで、そのせめぎ合いというか、どこでバランスをとるか。それから世界各国の動向。ただ、世界各国の動向も、それぞれの国によって、歴史、文化上の違い、風土の違いというものがありますからいろいろな違いが出てきているんですが、そういったこともにらみながら、我が国でどこまでこれを進めればいいかという点で悩んだ上、結果として、厳重にいろいろな手続を経た上で、できる部分の研究をまずはやってみましょうということで、このような結論で進めることにしたというふうに理解をいたしております。
斉藤(鉄)委員 この専門委員会、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会、今局長から、かなり悩んで議論があったというお話でしたけれども、主な論点、どんなところが一番議論の中心になったのか、いろいろあったんでしょうけれども、端的に教えていただければと思います。
遠藤政府参考人 お答えいたします。
 これは、この特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会での審査では、ヒトES細胞の樹立に供されます余剰胚の提供機関であります京都大学医学部附属病院それから豊橋市市民病院、この二つの機関の倫理審査委員会におきまして、ヒトES細胞の倫理的問題を十分に認識して樹立の検討を行ったのかということなどが主な論点になったわけです。
 ちょっと細かくなりますけれども、例えば、ある大学では、機関内の倫理審査委員会で持ち回りでやったんじゃないか、もう少しやはり実際に集まって大事なことを議論すべきじゃないかということとか、議論が内部の者で占められているが自由な議論が可能であったのかというふうなこと、それからヒト受精胚を提供することについてどのような説明が行われ、どのような検討が行われたのか不明確である、それからヒト受精胚の個数についてもしっかりと記録を残すべきじゃないかとかいうふうなことが今回の具体的な審査に当たって論点として上がってきておりまして、それらをそれぞれの、京大の方にもあるいは豊橋の方にも戻しまして、そこをもう一度きちっとやっていただいて、その上でオーケーという結論を出したと聞いております。
斉藤(鉄)委員 わかりました。
 使用されるヒト受精胚が、いわゆる生殖医療の現場で実際に使われないと確定した、つまり胎内に戻されることがないと確定された受精胚が、受精卵が使われるということでございますので、人のプライバシーの問題等、またその提供される御両親のインフォームド・コンセントといいましょうか、そういう問題等、かなり微妙な問題でございますので、今後文部科学省としても、この問題については、専門委員会任せにするのではなくて、きちんとウオッチをして議論をしていっていただきたい、このように要望をするわけでございます。
 では、次の質問ですけれども、このようにして樹立されたES細胞、このES細胞を実際に使って研究をする、そのことに対しての承認手続、これはどうなっているんでしょうか。今回はES細胞を樹立するまでの承認手続と理解しておりますが、今度はそれを使って実際に例えばある器官をつくるとか、そういう研究ということになりますけれども、その手続について質問させていただきます。
遠藤政府参考人 お答えいたします。
 ヒトES細胞の使用に当たっての要件につきましては、この指針によりまして、一つには、ヒトの発生、分化それから再生機能の解明、そして診断法、医薬品等に関する基礎的研究を目的とするんだということが一つ。それから、ヒトES細胞の使用が科学的合理性それから必要性を有しているというふうなこと。さらには、ヒトES細胞から個体を生成することやヒト受精胚へヒトES細胞を導入することなどを禁止するということなどがこの指針で厳格に定められているところでございます。
 また、このヒトES細胞を使用する手続といたしまして、当然ですが、まず使用計画をつくるということ、それから、使用する研究機関において、医学、生物、法律等々の専門家の方のほかに、一般の立場の意見を述べられる方を委員として、男女両性が二名以上で構成されるなどの要件を満たす倫理審査委員会における使用計画の検討をしてくださいということ、さらには使用計画の本省への申請が必要でございます。
 その後、それを受けて、専門家から構成されます特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会というところで検討をしていただく。その検討結果が出ましたら、それを受けて文部科学大臣による確認という行為が行われます。その後、研究結果の文部科学省への報告をしていただくといった大変厳格な手続が必要とされております。
斉藤(鉄)委員 厳格な手続、これは私も賛成ですけれども、樹立までは確かに、受精卵を破壊するということで生命倫理上の問題がある、厳格でなければならない、わかるのですけれども、ある意味では、樹立された後については、そこまで厳格でなくてもいいのではないかというふうな気がしないでもない、その方が研究が進むのではないか。樹立までは確かに慎重でなければいけない、しかし、樹立した後については、もう少し研究促進という面もあっていいのではないかという感じがしないでもないわけですが、いかがでしょうか。
遠藤政府参考人 お答えします。
 平成十二年の三月に、科学技術会議生命倫理委員会というのがございまして、ここで報告書を取りまとめております。ヒト胚性幹細胞を中心としたヒト胚研究のあり方という報告ですが、この中で、樹立されたES細胞を使用する研究におきましては、現在のところ、核移植、他の胚との結合、集合胚ですね、こういったことを行わなければ個体発生につながることはなく、人の生命の誕生に関する倫理的問題を生じることはないというふうにされております。
 しかしながら、同時に、この報告書におきましてはさらに、ES細胞が乱用されますと、いたずらにヒト胚の滅失を助長することにつながりかねない、樹立に際しての慎重な配慮をむだにする結果となり得る可能性がある。さらに、あらゆる細胞に分化できる性質を持っておりますから、例えば精子とか卵子などもできる可能性がありますから、そうなりますと、倫理上の問題を惹起する可能性があるということもこの報告書で言っておりまして、このために大変厳しい手続を定めているところでございます。
 今後、使用の実態など、動き出しまして、それを勘案しながら、この指針の見直しの際に、これらの手続について必要な範囲で検討してまいりたい、こう思っております。
斉藤(鉄)委員 その点についてはよくわかりました。
 ドイツやフランスは、ES細胞の樹立そのものは認めていないが、しかし、樹立した株を輸入してきて研究をするということは計画があるようでございます。一番難しいところをちょっと国内ではパスしようかな、ちょっとひきょうだなという面もないわけではないのですが、日本でも、日本での樹立ではなくて、海外から樹立されたES細胞を輸入して研究するということが計画されているやに聞いております。そういたしますと、かなり倫理的な審査とか手続がショートパスされて、何でもありになってしまうのではないかなというふうな危惧もあるわけですが、この点についてはどのように対処されるのでしょうか。
遠藤政府参考人 お答えします。
 海外で樹立をされましたヒトES細胞の使用につきましては、現在、信州大学医学部が、アメリカのウィスコンシン大学の樹立したヒトES細胞、それから京都大学の大学院医学研究科が、オーストラリアのモナシュ大学の樹立したES細胞をそれぞれ輸入して研究をしたいという使用計画を当省に申請してきております。
 海外から輸入されたヒトES細胞の研究への使用につきましては、この指針の二十六条の第三項におきまして、「指針を基準として樹立されたものであると認める場合には、使用機関は、海外から分配を受けるヒトES細胞を使用することができる」というふうに規定をされております。このため、我が国における使用を認める具体的な要件、これが問題になるわけなのですが、この点について、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会、ここで慎重な検討を行っていただきました。
 その結果、ヒトES細胞の樹立に供されますヒト受精胚に関する基本的な原則は二つありまして、一つは、生殖補助医療のためにつくられ、廃棄されることについて事前同意を受けているいわゆる余剰胚であるべきである、研究のために作成されたものではないということ、これが一つ。それから、その余剰胚は適当なインフォームド・コンセントの手続により提供されたものであるということの二点であるというふうにされました。
 したがいまして、ヒトES細胞を輸入する場合に、樹立が行われた国ごとにその条件が違うということも想定をされるわけでございますので、この場合、先ほど申し上げました二つの基本原則は遵守されるべきでございますけれども、そのほかにつきましては、その国の要件が尊重されるべきであるというふうにされたわけでございます。
 したがって、先ほどの原則を満たし、それからそれぞれの国が研究に使用することを認めております細胞株につきましては、この指針を基準として樹立されたものだというふうに扱って、使用を認めることとされまして、今後、こうした考え方に基づき、先ほどの両大学の計画について審査が行われる予定でございます。
斉藤(鉄)委員 済みません。ちょっと細かいことですが、国内は無償ですが、海外からの場合は無償ですか、有償ですか。
遠藤政府参考人 お答えします。
 実費だそうでございます。
斉藤(鉄)委員 ずっと政府参考人の方に答えていただいたわけですが、大臣もしくは副大臣、今回のES細胞の承認というのは、生命科学研究上の我が国の大きなステップだと思っております。このことに対して、文部科学省の責任者として、今後どのような決意で取り組んでいかれるか、お伺いいたします。
遠山国務大臣 これは、国の指針に基づいて適切に樹立されたヒトES細胞を供給できることは、発生・再生研究を適切に進める上で大変意義が大きいと考えております。同時に、倫理の問題とのことも整合性を考えながら、しかし、新たに開かれた地平に向かって、正しい運用によって研究が進むことを私どもはバックアップしていきたいと思います。
斉藤(鉄)委員 それでは、ちょっとまだ時間がありますので、テーマを変えまして、地雷除去技術に関する研究開発について、その取り組みについてお伺いします。
 アフガニスタンの復興支援におきまして、アフガニスタン復興支援国際会議の開催を初めとして、我が国は、これまで主体的かつ積極的に取り組んでまいりました。我が国が主体的に取り組む一つの大きなテーマとして、この地雷除去がございます。そして、我が国のロボット技術をこの地雷除去に役立たせるべきだということで我々も主張をしてまいりました。
 文部科学省においても、最近、地雷の探知・除去技術に関する検討会を立ち上げた、このように聞いておりますけれども、文部科学省における地雷探知・除去技術の研究開発に関する取り組みについてお伺いをいたします。
山元政府参考人 御説明いたします。
 地雷は、先生御案内のとおり、アフガニスタンのみならず、まさに世界の数多くの国に埋設されており、それは、まさにその国の復興開発上の大きな障害の一つであるということだと思ってございます。
 我が省といたしましても、あくまでも人道的な観点、こういう観点から、いかに地雷の探知とかあるいは除去、そういう活動について、まさに我が国の先端的な科学技術を駆使した、そういう技術を開発できないだろうか、そういう認識で、先生今お話しのように、ことしの一月に研究会を発足させていただきました。
 この場には、私ども事務局だけではなくて、外務省とかあるいは経済産業省、防衛庁、この担当課長にも同席していただいておるところでございます。これまで四回ほど研究会を開催させていただきましたけれども、今先生おっしゃいましたような大学等におけるロボット技術の要素技術に関する研究の状況とかあるいは企業での状況、あるいはNGOとか国際機関、そういう現場でのいろいろなニーズの把握とか、そういう幅広い観点からの研究調査を今進めておるところでございます。
 ちょっとお時間いただきまして、どんな状況かということをこの際お話しさせていただきますと、地雷除去につきましては、まさにその技術開発も世界各国でなされてございます。それから日本を含む各国のメーカーにおいても、既に、例えば建設用機器、こういうものに地雷の探知とか除去、そういうものを付加したような形で、現場においてももう活用されつつある、そういう状況でございます。
 ただ、実際の今の探知の現場でございますけれども、手作業が中心でございますので、非常に事故による被害、こういうものも多うございますし、処理速度も遅い、できるだけスピードアップも図りたい、こういうニーズがあるわけでございます。
 一方また、世界各国の敷設の状況、埋設されている状況でございますけれども、種類がもういっぱいございます。それから、実際の地雷原の地形も土壌も、それから埋設の方法も、物すごいいろいろな多様な状況にあるようでございます。
 したがいまして、そういうものに応じたいろいろな多様な技術、こういうものも必要だろうなという話になってございますし、あるいはまさにそういう中で、我が国が得意とする科学技術分野で何らかの貢献ができるはずだ、そういう認識にもなってございます。そういう中で、今、探知用のセンシングのところ、そういうところにも焦点が当てられておりますし、その先の話としてはロボット技術、そういうものの活用、こういうものも十分認識しておるところでございます。
 こういう議論を現在進めておるわけでございますが、あくまでもこれは現場で使われてこそ初めて意味があるわけでございますので、あくまでもそういうニーズ、現場のニーズというものを踏まえながらこれからまたさらに検討を深めまして、一方でできるだけアフガニスタンにも早く何らかの形で貢献でき、あるいは世界各国にも貢献できることが大事だろうなということで、現在鋭意検討を進めておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 ぜひ御努力をいただきたいと思います。
 最後に一点、地球温暖化対策について、文部科学省の努力についてお伺いします。
 京都議定書の批准、いよいよ迫ってまいりました。物すごい不平等条約だという意見もございますが、日本が率先してやらなくてはいけない、私はこのように思っております。そういう中で、環境省や経済産業省ばかりが表に立っているんですが、私は文部科学省の役目も非常に大きいと思います。
 一つは環境教育ということ、それから実際の、二酸化炭素排出を抑えていく基礎技術、これはやはり文部科学省が中心になってやっていかなければなりません。CO2の固定の問題でございますとか、また全地球規模での気候予測等でございます。
 それから、私は、何といいましてもこの温暖化対策のキーは原子力だと思っております。新エネルギーもふやしていかなければなりませんが、これは主にはなりません。省エネルギーも限界がございます。百三十万キロワットで、大体これを石炭火力でやった場合に比べると〇・七%、十基で七%に相当する二酸化炭素排出のキーがある。この原子力についての理解を子供たちにも深めていく、国民の皆さんにも納得してもらうということも、私はこの地球温暖化対策の文部科学省がやるべき大きな仕事だ、このように思っております。
 この地球温暖化に対しての文部科学省の決意をお伺いします。
今村政府参考人 御説明申し上げます。
 ただいま先生御指摘のように、我が国におきまして、地球温暖化対策推進大綱及び科学技術基本計画等に基づきまして、この問題については政府一体となった総合的な温暖化対策が必要ということで取り組まれているところでございますが、当文部科学省といたしましては、この推進大綱あるいは総合科学技術会議の地球温暖化イニシアチブなどに基づきまして、大学、独立行政法人、特殊法人等が連携して取り進めております。
 まず、監視観測から予測、解明までの有機的、体系的な研究開発の推進といたしまして、海洋科学技術センター、東大海洋研等の研究船による観測、人工衛星あるいは南極観測事業等、総合的な地球規模での大気、陸域、海洋等の観測を進めているのが第一点でございます。
 さらに、それらの成果を踏まえまして温暖化予測モデルの開発、さらには先般完成いたしました高度の計算機システムでございます地球シミュレーター等を用いたシミュレーション研究等にも力を入れているところでございます。
 さらに、今御指摘のとおり、温暖化ガスを出さないエネルギー源といたしましての原子力発電等に対する研究開発面からの推進、さらには環境への負荷が少ない燃料電池、エネルギー効率を向上させるための耐熱材料の開発などのいわゆる革新的な研究開発への取り組み等も進めておりまして、これと並行いたしまして、教育面その他におきましての環境教育、エネルギー教育等にも力を入れているところでございます。
斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
河村委員長 この際、暫時休憩いたします。
    午後零時六分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四十四分開議
河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子でございます。
 早速質問に入りたいと思います。
 まず第一問目。日本の産業競争力が年々低下してきているというのが現状でございますけれども、産業競争力を回復させるには、日本の技術開発力を強くする必要があると思います。そのためには大学の研究基盤を強くしていかなければならないというところで、文部科学省、大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 大学には、教育それから研究、それらを通じての社会貢献、いろいろな役割があると思いますけれども、今委員が御指摘になりましたように、今日の日本の経済状況、それから産業界の状況を見ますと、研究の部分を大学に期待する、そういうニーズが大変高まってまいっております。大学も、本来の教育研究の機能を進めると同時に、それらを社会に生かしていく、そういうことが強く求められており、またそういうことへの貢献を通じて大学の存在意義を高めていく必要があろうかと思っております。
 我が省としましては、国際競争力のある大学づくりを目指しまして、大学改革の取り組みを今進めておりますし、科学技術基本計画を踏まえまして、科学研究費補助金などの競争的資金を拡充したり、あるいは研究施設設備の整備などに努めているところでございます。
武山委員 原因として、今、情報技術産業革命ですね、もうまさに今真っただ中。それから、どこで何をつくっても製品は同じ品質になってきている、コストだけ競争力の源泉になっている、人件費、土地代、電気代、法人税率、世界一高いのは日本ということで、それも原因の一つで競争力がないというところでございます。
 今、情報技術産業革命なんですけれども、技術革新の速度が非常に速く、しかも、途上国も先進国も同時に技術革新が進んでいるというのが現状だと思います。
 大学は知的基盤の源泉と言われており、アメリカでは大変多くのベンチャー企業が生まれているわけです。日本はまだまだ少ないと言えると思います。なぜそのような状況になっているのか、これも大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 日本の情報通信技術は、ソフトウエア技術などについては米国におくれていると言われておりますけれども、その原因は、一つには、研究者の層がまだまだ薄いこと、そして新しい時代に対応した研究体制が整備されていないことなどが指摘されております。
 ただ、ごく最近でございますが、大学の姿勢も大いに変化をいたしておりますし、いろいろな研究者の興味、関心、努力というものも、日本の産業に資するようなことについても力が入れられるようになってまいっておりまして、大きな変化が起こりつつあると思います。
 例えば、IT産業革命の関連でございますけれども、携帯電話を初めといたしました移動体の通信技術など、日本の得意とする分野もあるわけでございまして、欧米に比して優位でありますモバイル、光、デバイス技術を核に研究開発を重点的に進めることが重要であると考えています。後追いよりは、日本の得意の分野をどんどん伸ばしていく、そういう姿勢が大事だと思っているところでございます。
 科研費などの資金によって情報分野の研究を推進してまいっておりますけれども、本年度からは新たに、大学などが持つ知見、ノウハウというものを活用して、産業界からのニーズに基づく、次世代のモバイル端末でありますとか、ハードディスク、メモリーの開発など、産官学の連携のもと取り組んでいくことといたしております。
 今後とも、総合科学技術会議でありますとか、IT戦略本部というのがございますけれども、これらでの議論などを踏まえて、大学等におきます情報分野の研究開発の推進に取り組んでいきたいと考えております。
武山委員 日本の企業は、アメリカの大学の研究室には研究を助成するのに、日本の大学に助成したり共同研究することが少ない、これはもう間違いない事実だと言われております。なぜこうなっていると思いますか。
青山副大臣 民間企業が、日本の大学に余り寄与しなくて、アメリカの大学に多く研究費として助成を出してきておることは今御指摘のとおりでありますが、どちらかというと、日本の大学における研究成果というものが、なかなか今の日本社会で十分活用できておらない、いろいろな理由があります、というような背景があるのではないかと思われます。
武山委員 これは企業に言わせると、日本の大学には魅力がない、研究レベルが低い、あるいは研究費を助成しても使い方で規制があるという、いろいろと意見が出ております。このような企業の意見にどう対応しますか。
青山副大臣 一つは、日本の大学における研究成果というものが、なかなか特許化されておらない部分がありまして、それが社会としてあるいは産業の面で活用されるケースが非常に少なかったという点があるのではないかと思われます。
武山委員 それでは、研究費を助成しても使い方に規制がある、この規制を取っ払うおつもりはありますでしょうか。すなわち、こういう企業の意見に対して、政府としてはどんな対応をするかという質問でございます。
遠山国務大臣 産業界側の誤解もかなりございます。それから大学側も、いろいろな規制緩和をずっと続けてまいったことについての理解がまだ行き渡っていない面がございます。
 こういったことについて、私どもとしても十分説明を行いながら、今、例えば国立大学の教員も兼職、兼業が認められておりますし、あるいは研究費の使い方についても極めて柔軟な制度になってまいっております。そういった規制の緩和、それから人的な面での対応をさらにやりやすくしているようなことが、近年特に、私どもの政策として進めてまいっております。
 産業界の意見も取り入れながら、そういうことに対して十分対応してまいっておりますし、今後とも、そういう姿勢で取り組んでいきたいと考えております。
武山委員 十分対応しているということであればもっと内容が充実して、こういう質問はしないわけでございます。対応の中身を十分対応していただきたいと思います。
 次に移ります。
 企業から大学へ寄附する場合、税制上、優遇措置がないと言われております。これは本当に、企業から大学へ寄附する場合、優遇措置というものを欧米では非常に充実しているのですね。非常におくれているということをぜひ認識していただきたいと思います。
 それから、例えば企業が教育現場や大学に多額の寄附をした場合、法人税を優遇するなどがあって、ここは随分違ってくるのですね。こういうことによって、大学は民間から研究資金を調達しやすくなるということで、このような考えに立って財務省に申し入れるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 確かに、日本の大学が特色ある質の高い教育研究活動を展開していきます上で、寄附金などの外部資金の導入を促進していくことは大変重要な課題であると考えております。このために、我が省といたしましても、幾つかの対応をしてまいっているわけでございます。
 例えば、一つは冠講座などのように、寄附者の名前をきちんと冠した講座をつくれるようにいたしておりますし、それから、各種の経済団体等に対して、税制上の優遇措置を活用した寄附の促進について要請するということもいたしております。
 それから、税制の優遇措置の枠が十分使われているかというと、まだ十分ではございませんで、企業側もその税制の優遇措置を十分に活用して、日本の大学に対する寄附を行ってもらいたいと思っておりまして、大学を中心とし、私どもも、そういうことについても努力をしなくてはいけないかなと思います。
 また、各大学に対しましても、寄附募集を含めまして、全国の大学におきますすぐれた取り組みを事例集として配付いたしますなどによって、大学における寄附募集の積極的な取り組みを促すように努力をしてまいりたいと思います。
 また、産学官連携の観点からも、今の税制上の優遇措置をさらに進めることが必要と思いますけれども、これまで、例えば、私立大学に対する民間企業等からの寄附の損金算入に関する優遇制度が行われておりますし、また、研究開発への投資が増加傾向にある企業に対して適用される税額控除制度に該当する企業が大学と共同研究を行う際に、共同研究にかかわります経費の一部をさらに控除上限額に加算する優遇制度なども行っているところでございます。
 今委員御指摘のように、そういったことも踏まえながら、今後、民間の資金も活用しながら、大学の研究がさらに活性化いたしますように、税制上の改善の問題についても考えていかなくてはならないと思っているところでございます。
武山委員 これらも本当に欧米と同じように、足並みをそろえて、要は、単純でわかりやすい税制優遇措置が必要なのですね。日本は本当に細かくて複雑で、それを理解するのに非常に時間がかかって、もう嫌になったということになりかねないんですね。
 例えば、あるA社が五億大学に寄附をしたら、法人税を払うところから五億を差っ引くとか、単純に諸外国では行われているんですね。それを日本の場合は、複雑に複雑に複雑に考えて行われておりますので、非常にわかりにくい。そして、最終的には寄附をしたくなくなるような現状であるということを、ぜひ単純でわかりやすくしていただきたいと思います。
 それから、アメリカでは大学から多数の特許が出ており、ベンチャー企業が多数出ているわけです。例えば日本の大学からの特許出願数ですけれども、これは特許庁の年報で、日、米、中国の大学の特許出願件数も出ております。
 これは、日本では二〇〇〇年に五百七十七件なんですね。アメリカは、一年古いのですけれども、一九九九年に三千二百九十五件。では、中国がどうかといいますと、びっくりしました。二千九百二十四件も二〇〇〇年に特許出願件数があるわけですね。それで、中国では、清華大学だけでも二百七十七件の特許出願数だというわけです。
 これを見ると、日本の大学はなぜこんなに特許が少ないのかなと思いますけれども、大臣の見解をお聞きしたいと思います。
青山副大臣 アメリカと日本の大学における特許取得の方法が違っておりまして、まず、アメリカでは原則として大学が特許を取得する、組織的に特許を取得するという環境になっておりまして、日本の場合は原則として研究者個人が特許を取得する、そういう形になっておりますから、特許の取得の方法が違うとはいえ、やはり日本は、大学における特許の取得は少ないと私は見ております。
 その背景がありますが、一つは、特許取得が研究業績として評価されにくい環境に日本はあった。例えば論文が中心であったとかということでございます。いま一つは、特許出願の際の資金的、時間的な負担が非常に大きかったというような背景がありまして、日本の場合は特許出願の件数が少なくなっております。
 そこで、文部科学省としましては、平成十年度から、科学研究費補助金を申請する場合に、研究者の研究業績を評価するために申請書に特許の記載欄を設けることといたしました。これが一つ。
 それから、教官個人の特許出願を支援するための二十六の技術移転機関を承認してきておりまして、これが組織的な特許取得の大きな力に今なりつつあると見ております。
 もう一点は、やはり大学の教員自身の特許マインドを涵養していかなければならない、その意味では、知的所有権セミナーを開催するなどして進めております。
 もう一点非常に重要なことがありますが、国立大学の法人化の議論が今非常に確実に進められておるところでございますが、大学の法人化されてまいりました後には、大学の研究成果による特許を原則として大学が保有して管理していく、そういう形で今検討がされているところであります。そのような状況になってきますと、大学がみずから特許の取得とそれから活用に積極的に取り組むことになるものと考えております。
 したがって、文部科学省といたしましては、これらの施策を通じて大学の研究成果を特許化していく、社会はその研究成果を活用していく、そういう環境をつくり上げていきたいと考えております。
武山委員 アメリカや中国では、大学の研究者は論文よりも特許を重視しているというのが現状なんですね。教官の昇進の評価でも、アメリカでは論文よりも特許数が評価の対象になっていると聞いております。
 それでは、日本では特許をどのように評価していますでしょうか。
遠山国務大臣 これまで、確かに大学におきましては、論文による評価が重視されてきたと言われております。そして、産学官連携の取り組みでありますとか、特許取得が研究業績として評価されにくい実態があったわけでございますが、ここ数年来、大学の社会貢献の一環といたしまして、産学官連携の重要性が大学としても認識が深まり、また特許についての意識も大学人の間で変化してきていると認識いたしております。
 文部科学省といたしましては、今副大臣からも紹介がありましたけれども、平成十年度から、科学研究費補助金の審査に際しましては特許等についても配慮するという方向転換をいたしておりまして、これは私は研究者のマインドを大きく変えつつあると思っております。
 それから、昨年十一月に内閣総理大臣の決定があった国の研究開発評価に関する大綱的指針におきましては、研究者等の業績の評価につきまして、研究開発に加えて社会への貢献等の関連する活動に着目して評価するよう、そういう旨の提言が示されております。これを受けまして、現在、文部科学省といたしまして評価方針を策定する作業を進めているところでございます。
 そのようないろいろな条件整備を整えながら、特許というものも業績の重要な要素として考えようといたしております。
武山委員 大学で生み出された特許、発明ですね、民間企業に移転するためにTLO、テクノロジー・ライセンシング・オーガナイゼーションというのがあるんですけれども、このTLO活性化のために文部科学省はどのように取り組んでおりますでしょうか。
遠山国務大臣 平成十年に大学教員の研究成果を権利化いたし活用するTLOが制度化されまして、それから現在まで二十六のTLOを承認しているわけでございます。
 TLOの設立、運営を支援いたしますためにいろいろな施策を実施しているわけでございますが、一つは、国立大学教官がTLOの役員を兼ねることができるように、その兼業の承認を平成十二年四月から実施いたしておりますし、また二つ目には、TLO事務所を開設するに当たり国立大学施設を無償で使用できるように、そういう許可の制度を平成十二年四月から実施いたしております。
 このことによってTLOの場所の問題あるいはその人的な問題の解決に資しているわけでございますが、平成十三年からは、TLOによります特許の一元管理を図りますために、一つは、国有の特許についてもTLOへの譲渡を可能とすること、二つには、大学とTLOの連携強化によって個人所有の特許がTLOに集まりやすくしていく。これまで、大学教員の研究への意欲を増すために、特許は個人有としていくという政策を長年とってまいったわけでございますが、その個人所有のものをTLOに集めて、さらに強力にそれを生かしていくというふうな方向に今転換をしつつあるわけでございます。
 これらの取り組みによって、TLOにおきます累積特許出願が急激に伸びているところでして、実施許諾数につきましても、例えば平成十三年の三月に百二十五件だったものが半年後には二百二十三件と、二倍に急増しているような今実態でございまして、まさにこのことについて大きく動きが出ているという実態でございます。
武山委員 現在、国立大学の独立行政法人化が二年後に迫って、大学の研究技術をいかに産業界へ円滑に移転するかということが問題となっておるわけです。これについては、文部科学省、経済産業省で九八年のいわゆる、今のお話ですね、大学等技術移転促進法によって各大学にTLOが設置承認され、活動を行っていると。
 ところが一方で、特殊法人である科学技術振興事業団、略称JST、ですからTLOとJSTと二つここであるわけですけれども、特許化支援事業によってTLOと全く同様の事業を行っておる。
 小泉政権の特殊法人改革では、民間で同様の事業を行っている事業については廃止するとの前提で議論されてきておりますけれども、これは民間のTLOと全く同様の事業スキームで、廃止すべき事業ではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
加納大臣政務官 JSTとTLO、委員御指摘のように一見似ている仕事をしているのではないかということはそのとおりでございますが、子細に見てみますと、実はかなりその役割は別なものを担当しているというのが実態でございます。
 TLOの方は、大学等の研究成果のうち、比較的短期で実用化可能なものを対象として、これらを権利として確定する、特許化をする、そしてまた企業の方に移転していくというのは、委員おっしゃったとおりであります。
 JSTの方でございますけれども、これはその対象とする研究成果というものはTLOと若干違っておりまして、大学等の研究成果のうち、実用化までに中長期のかなり時間のかかるもの、それから多額の開発費がかかるものというものを主な対象にしているということ。
 それから、TLOがある大学だといいんですけれども、ない大学もございます。TLOのない大学の研究成果、これはもうJSTしかできないと思っております。それからまた、JSTみずからの基礎的研究成果を対象として特許化したり企業への技術移転をやっていく、これもJSTの役割かと思っております。加えまして、実用化を目指した研究開発というのがございます。
 結論を申し上げますと、JSTの事業はTLOの業務と重複せず、むしろ補完関係にあるということから、私どもとしましては、今後とも、JST、TLOの連携を図り、研究開発の実用化に向けて効果的な推進を図ってまいりたいと考えております。
武山委員 JSTの方は、年間、こちらで調べた数字ですと、二十億円の特許化費用を使って、その技術移転による収入は二億円程度しかない。二十億円の特許化費用を使って、その技術移転による収入は二億円程度しかない。民間企業への技術移転実績も数件程度しかないと聞いております。
 また、この科学技術振興事業団全体の収支が赤字であることから、その収益は全く国民に還元されていない。産学連携を特殊法人を通じて中央集権的に行う方法と、各大学が独自のTLOを通じて行う地方分散的な二つの方法が同時に存在するということも、これは国家として矛盾しているんじゃないか。
 国立大学の独立行政法人化を促進するためにも、この科学技術振興事業団の特許化支援事業は即刻廃止して、各大学が自身のTLOによって産学連携を行う仕組みに整備すべきではないかと思っておりますけれども、きちっと整理するという意味ですね、同時に存在することが矛盾である。それから、その収益は赤字で、全く国民に還元されていないということで、整理すべきであると私は思っておりますけれども、いかがでしょうか。
加納大臣政務官 二点御指摘がありまして、一つは矛盾がある、二つ目は赤字であるということかと思います。
 まず、矛盾ということにつきましては、先ほど申し上げましたとおり、TLOとそれからJSTとは重なり合うように見えるところはもちろんございますけれども、その主たる役割は違うということ。繰り返しませんけれども、そういうことで矛盾はないと。つまり、JSTならではという分野があるということも申し上げておきたいと思っております。
 JSTは、公的な機関として、みずから基礎的な研究開発を行う、それから、研究開発や大学独自の研究成果の企業への技術移転などを主目的としているものでありまして、技術移転事業について、二点目の赤字ということになりますけれども、これはどうなのか。私どもはそれなりの成果は上がっていると考えているわけでございます。
 例えば、委託開発事業費というのは、これは大学の研究成果を製品化するように企業に開発を委託する仕組みでございます。これまで、ちょっとざっくり申し上げますと、約千三百億円程度投資されております。そのうち成功回収したものが八百九十億円ございます。そのほかに、特許化して、特許を取ってそれを利用してもらいますと、売り上げの三%が実は御案内のとおり入ってまいりますから、これが百四億円ございます。これは大ざっぱに計算しますと、約一千億円は入ってきているということでございます。
 基礎的な研究をやる事業団でございますから、基礎的な研究というのは収入が見込めないというのはもちろんありますけれども、これ一つを見ても、そうアンバランスがひどいというものではない。特に、今申し上げました特許実施収入が百四億円あるということは、これは三%でこれだけの金額でありますから、割り戻しますと、売り上げは、約三千五百億円の売り上げを新しく生んだというふうに考えますと、これはそれなりのやはり成果があったのではないかなと思っているわけでございます。
 そういうことで、大学等の特許の企業への技術移転というのは九百七十三社あるわけでもございますし、最近やりました技術開発事業、プリベンチャーというものでは、十の課題のうち八つが既にベンチャーとして業を起こしておりますので、こういった企業のことを見ましても、JSTは役割を果たしているというふうに考えております。
武山委員 国立大学の独立行政法人化を促進するためにも、このJSTの特許化支援事業ですけれども、各大学がそれぞれの自身のTLOによって産学連携を行う仕組みができつつあって、こちらの方を整備すべきではないかと思うんですね。今お話ししましたように、独立行政法人化を促進するためにも整備する方向ではないかと思いますけれども、そこはいかがでしょうか、加納政務官。
加納大臣政務官 独立行政法人を志向するという観点は私どもとしてはしっかり持っているつもりでございます。そのこととJSTが今やっていることをどうするかということはつながってはおりますけれども、議論としては二つそれぞれあるのではないかと思っております。将来の志向として、独立行政法人化ということはもちろん志向してまいります。
 それから、産学連携につきましてでございますが、各大学の方にも共同研究センターというものもできております。私も各地へ実はお邪魔しておりますが、先般もそういった集会にも出てまいりました。あらゆる面で地域の企業、自治体それから大学、これがそれぞれの強みを生かしながら、役割は若干異なりますが、強みを生かしながら産学官の連携を図って新しい日本の技術開発を図っていく。そういったときに、このJSTの果たしている役割というのはしっかりと認識していきたいというふうに考えております。
武山委員 JSTとTLOの事業が競合しているわけですね。この中身が競合していること、これ自体は、やはり両方が競合していることは、今おっしゃった別々な仕事をしているという点では違いがあると思うんですね。ですから、競合している点は、やはり独法化に関係なく現在も起こっていることですので、これは早急に整備すべきであると思います。これは言っておきたいと思います。
 それから、現在JSTが特許取得を行っているベストテンと言われている京都大学を筆頭に、東大、東工大のTLOを有している大学が大半であるんですね。そして、京大は独自の単体のTLOは持っていないけれども、関西大学がTLOをカバーしているわけですね。そういう意味では、TLOがない大学をカバーしているのではなく、TLOがある大学との競合が多いわけですね。それでまた北海道TLOは、北大だけでなく北海道全体をカバーしている。それから東北大学のTLOも、東北の他の大学をカバーしている。それで、TLOのみで国内の大学をカバーできる状態であるので、カバーできない大学がある場合は、JSTではなくTLOをつくるか、または既存のTLOがカバーする形で推し進めればいいんじゃないかという意見もあちらこちらで聞くんです。ですから、これ一つに整理した方がいいという意見を私は伝えておきたいと思います。
 それから、今現在文部科学省の承認を受けているTLOは、たしか先ほど二十七とおっしゃったと思いますけれども、それ以外にも実質的にTLOをつくっている大学、芝浦工大や電通大など、数十の大学が設立済み、あるいは準備中であるということで、一方で大学にTLOをつくることを勧めておきながら、一方でそれと競合する組織を特殊法人として持っているという矛盾はいかがなものでしょうか。
加納大臣政務官 先ほど来申し上げておりますように、TLOの役割とJSTの役割というものは確かに重なり合っているところはございます。例えば、JSTが持っております特許を企業化するに当たってTLOを活用していくとか、さまざまな工夫はございますから、今のままでが絶対いいんだとは決して申し上げておりません。これからさらに改善しなきゃいけないところがあるのは十分わかっております。
 それから、あくまでもTLOのない大学というところでJSTの果たしている役割、これは不可欠だと思っております。それからまた、大学の教官の立場は、私も現実にTLOにもお邪魔していろいろ意見交換してまいりましたけれども、大学の教官が個人としていろいろなことを発明した、これを何とか世の中の役に立たせたいと思ってもなかなか大変だというので、TLOをフルに活用していくというのはあるのでございますが、TLOが現実にないところでも非常にそういう問題がありますので、JSTというのは役割は重要だろうと思っています。
 TLOのあるところでのJSTということでございますけれども、これは繰り返しませんけれども、JSTとTLOの基本的な役割は違うところがございますので、これは両立はあり得るというふうに考えております。
武山委員 アメリカでも、TLOが設立されて成果を生み出すまでには約十年かかっているんですね。ですから、現在、日本のTLOの技術移転実績件数はJSTのそれをはるかにしのぐ数であり、JSTの特許化支援事業の存在意義はもうなくなっているのではないか。また、年間数件程度の実績しかないJSTこそが十分なパフォーマンスが上がっていない特殊法人であるということをここで明言しておきたいと思います。
 そして、この特許化支援事業をなくすことが急務である。特殊法人というのは、もう今までの役割を終えているわけですよね。それで、新しい今ここにTLOが生まれて、そして競合する部分が、重なっている部分が非常に多いということで、これはもう今までの発想の転換を、やはりまさに今この科学技術特許支援事業、これが最も急務であるというときにきちっと切り口が示せないというのは、やはり問題があると思います。
 それから、次に移ります。
 まず、米国経済が再生した最大の起爆剤は、バイ・ドール法案であったと聞いておるわけです。日本においても日本版バイ・ドール法が施行されておりますけれども、現在、バイ・ドールが適用されているのは経済産業省だけなんですね。
 また、このJSTの研究費を大学教授が受けた場合、その権利は、JSTに専用実施権、この特許を唯一実施できる権利、これがJSTに設定されて、この特許についてJSTのみしか扱えない、こういう問題があるんですね。そのほとんどの特許は産業界へ技術移転がなされることなく、もうそこにお蔵入りして死んでしまっているんですね。
 そこで、無条件にその権利の返還を教授が求めても、無条件に返還されることはまずないわけですね。仮に国立大学が法人化されても、すべての研究資金にそのような専用実施権が設定されたら、大学も、発明者である教授も、それからTLOも、その権利については全く自由にできないという状態なわけですね。
 ですから、すべての、国及びそれに準ずる特殊法人、財団法人等からの研究資金は、バイ・ドールを適用し、大学の自由に任せるべきではないかということについての見解を聞きたいと思います。
加納大臣政務官 バイ・ドール法の適用でございますが、適用はないというふうに今ちょっと委員は御指摘なさったんじゃないかと思います。経済産業省ではもちろんやっておりますが、我が省におきましても、科学技術振興調整費でバイ・ドール法適用をやっております。
武山委員 私の方で調べた日本版バイ・ドールが施行されているのは、現在、経済産業省だけであるというふうに聞いているんですね。この日本版バイ・ドールが施行されているのは経済産業省だけであると、こちらは専門家が調べた資料でございます。
加納大臣政務官 現在のところ、保有をしているというふうに聞いておりますけれども、実施にはまだ至っていないというふうに事務局では言っているようでございます。
武山委員 ですから、私が今説明しましたように、自分が発明したにもかかわらず、特許を、JSTの専用実施権といいましても、JSTだけしかこれは扱えないわけですね。ですから、産業界へ技術移転がされることなく、そこで死んでしまっている。だから、それでは産業界も技術移転されなくて、また産業も興せない、ニュービジネス、ベンチャーも起こせない。だから、そこで無条件にその権利の返還をやはりみんな求めているわけですよね。ところが返還されない。ですから、ここを大学の自由に任せるべきではないかという私の質問です。
加納大臣政務官 先ほど、数字がちょっとないまま申し上げて、大変失礼しました。実施許諾をやっているのがあります。二十三件でございます。それは、許諾はしているけれどもまだ実施されていないというのは、委員が御指摘のとおりでございます。
武山委員 最後になりますけれども、ですから、日本版バイ・ドールは、既に施行されていても直ちに適用できるものではないということですよね。ですから、これを適用しないのは、単に特殊法人であるJSTなどへの天下りを確保するものであって、大学の独立した運営を阻害しているんじゃないかと思うわけです、自由にできないものですから。
 ですから、米国経済はこれによって再生した事実があるものですから、日本も早急に措置すべき内容ではないかということを言い置いて、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
河村委員長 次に、石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 遠山大臣は、この間、人材・教育・文化大国と二十一世紀科学技術創造立国を実現するには、知の創造と継承の拠点である大学の役割は極めて重要でありますということを述べておられるわけでございます。きょう、私は、この問題に関係して質問をしたいと思っています。御答弁は、そういうわけで大臣にお願いしておりますけれども、基本的な認識を問う形での質問ですので、どうかよろしくお願いをいたします。
 大臣がおっしゃっておられますように、私も、我が国の科学技術の発展のために大学の果たす役割は極めて大きいというふうに思いますけれども、改めて大臣のこの御認識について確認をさせていただきたいと思います。
遠山国務大臣 日本の大学は、これまでも学術研究あるいは人材養成などの面で日本の発展に寄与してきたところでございますが、新たな時代におきまして、国民や社会の期待にこたえて、さらに一層その使命を果たしていくことも求められているところでございます。
 特に、今日の日本の経済財政状況が低迷を続けて、社会全体が決して明るくない中、社会の活性化のためにも大変大きな期待が大学に対して寄せられていると理解いたしております。
 このような期待も受けまして、また知の時代とも言われる二十一世紀に入りまして、人材・教育・文化大国、科学技術創造立国を目指す日本にとって、知の創造と継承を目指している大学というものの役割は大変重要であるということは、これまで述べてきたとおりでございます。
石井(郁)委員 大事である、重要であるという御認識は重ねて伺ったわけですけれども、問題は、やはり研究予算でどのようにそこがちゃんと保障されているかということだと思うんですね。私は、大臣の答弁を裏づける予算となっていない、今日本の最大の問題があるというふうに考えております。
 主要国における研究費の対国内総生産、GDP比、この割合を見ますと、日本は三・一二、アメリカが二・六五、ドイツ二・三七、フランス二・一七というふうになっていて、日本が最高なんです。
 問題は、この研究費がどの分野で支えられているかだということでございまして、研究費の組織別負担割合で見ますと、政府の負担の割合と民間の負担割合があるわけで、日本の場合の政府の負担割合は二一・九%、民間が七七・八%なんですね。主要国の中で、政府の支出というのは一番少ないんです。アメリカでも二七・八%、フランスで三八・七%ですから、日本の場合、民間依存型だ、大学の研究費が極めて低いということがあると思います。
 事実、平成十三年の科学研究調査報告書を見ますと、平成十二年度の研究費は、会社等が十兆八千六百二億円、大学等は三兆二千八十四億円にしかすぎません。会社等は対前年比で二・二%増ですけれども、大学の伸び率はゼロ%。これは、国立、私立、公立で組織別にさらに見ますと、公立は対前年度二・二%増、私立も〇・三%増ですけれども、国立は〇・七%減です。
 私は、こういうことでは、大学の役割を幾ら強調しても、やはりその裏づけるものがないじゃないか、大臣の御答弁と余りにも違うんじゃないかと言わざるを得ないわけですけれども、いかがですか。いや、これは大臣にお聞きしていますから、基本認識で。
遠山国務大臣 平成十三年の科学技術研究調査によりますと、日本の研究費の支出総額は十六・三兆円、対GDP比で三・一八%でありまして、欧米に比べても高い水準であります。
 今お話しのように、その中の負担割合を見ますと、政府の負担につきましては、日本は諸外国に比べて十分でないわけでございます。日本は民間による研究開発活動が活発であること、それから欧米諸国は国防研究費の割合が高いなどから、単純には比較できないわけでございますけれども、国防研究費を含めた政府負担割合でいいますと、欧米諸国において二七%から三九%でありますのに対して、日本は約二二%と低い状況となっております。
 政府の研究開発投資のGDP比は近年かなり改善されつつございまして、欧米主要国の水準に近づきつつあるわけでございますが、例えばアメリカが〇・七三%、フランス〇・八三%、ドイツ〇・八一%という状況に比べますと、〇・六九%でございまして、依然、欧米諸国に比べて低い状況であるわけでございます。
 このような状況を踏まえまして、第二次科学技術基本計画におきましては、対GDP比率で少なくとも欧米主要国の水準を確保しようということで、平成十三年度から十七年度末までの政府研究開発投資の総額を、一定の条件を前提として、二十四兆円とすることが必要とされているわけでございます。
 我が省としましては、今後とも、必要な予算の獲得に努めますとともに、産学連携等の施策を通じて、民間の研究活動とも連携をとりながら、国全体として研究開発が活発に進むようになりますように施策を講じていくつもりでございます。
石井(郁)委員 私は、政府の負担割合が余りにも低過ぎるということや研究費が少な過ぎるという問題を強調しているわけですけれども、その結果、今、大学の研究環境、本当にひどい状況というか、深刻な状況にあるというふうに思うんですね。
 ちょっと一例を挙げさせていただきます。
 これはノーベル賞をとった野依教授の名古屋大学でございますけれども、地球水循環研究センターができているようなんですけれども、この冬に、予算不足でボイラー暖房が中止される、各研究室がストーブで暖房をとる、だから、ストーブというのは、そばに行くと暖かいけれども、暑いけれども、離れると寒い、ぶるぶる震えながら研究活動をしているという話で、研究費が削減されて、毎年捻出していた百万円の暖房費も出なくなった。だから、企業からたくさん外部資金をもらえる研究室はいいけれども、気象とか海洋の水の循環に着目した基礎研究の環境というのは劣悪だ、これでいいはずがないということなんですね。
 こんな状態が放置されている。私は、これでは本当に日本の未来というのは思いやられる、まさに、このぶるぶるじゃないけれども、肌寒さを感じるわけでございますけれども、こういう実態、大臣、どのように思われますか。
遠山国務大臣 いかに、とにかく研究費についてはしっかり増を実現していこうということでやっているかということでちょっと御説明させていただきますと、科学研究費補助金、平成十四年度の予算額、先般決定していただきましたけれども、これは対前年度百二十三億円増で千七百三億円となっておりまして、近年にない増を見ておりますし、それから国立大学等施設の問題につきましては、重点的かつ計画的に整備しようということでございまして、十三年度の第二次補正予算額で三千八百二億円計上いたしました。また、十四年度予算額におきまして、千四百六十四億円、これは対前年度四百五十一億円増ということでございまして、これも画期的な手当てでございます。
 もちろん、今、五年計画も始まったところでございまして、これから順次研究環境の充実、研究費の充実に向けて力を注いでまいるわけでございます。その意味で、国費による研究の充実を図るために、これからも力を入れてまいりたいと思います。
 個別の問題につきましては、もし必要であれば副大臣の方からお答えをいたします。
石井(郁)委員 確かに、二次補正ですとかいろいろな形で一定の予算がついているんですけれども、やはり大事なのは、教育研究の基盤の校費、積算校費という問題なんですね。
 それで、いかに今これが細っているかという問題で、これは白川教授が総合科学技術会議で述べられたことを私は御紹介したいと思うんですが、ノーベル賞でいうと、白川教授、野依教授と続いて大変喜ばしかったわけですが、その先生方は、本当に若い時代にそういう研究の萌芽ということを、研究をされたということなんですけれども、こんなふうにおっしゃっているわけですね。
 その萌芽的研究がどういうお金で出てきたか、これは助手の立場ですから、教授がいただいている講座費、つまり、その当時でいう教官当たり積算校費、現在では教育研究基盤校費というふうに言っていますけれども、そういう校費から出ていると。これはプロジェクト研究でもないし、競争的資金からでもない、こういう自由な発想のもとに自発的に使えるお金で研究が行われていたということが非常に重要だということなんですね。教官当たり積算校費が、やはり非常に限られている、十分ではないということで、今後も配慮していただきたいとわざわざこの総合科学技術会議で述べていらっしゃる。
 これはつい最近のことで、昨年の暮れですけれども、十三回の会議でもこのことに触れておられまして、もともとこの教育研究基盤校費というのは、学生数あるいは教官当たりということになっていますけれども、十四年度予算を見ると、前年度と同じだと。本来ですと、科学技術の最も基礎になる部分の研究費あるいは教育費が全く伸びなかったというのは、大変残念だ、平成十五年度にはぜひこのことを考慮して予算を組んでいただきたいということなんですね。
 だから、この間、こうした積算校費というのは据え置かれていて、実質にはマイナスです。だって、院生数なんか伸びているわけですから、マイナスなんです。十四年度予算では微減だ、こういう状況を放置して、いろいろ重点配分だとか科学研究予算とか言っても、やはり大学の最も基礎的な部分で本当に研究が保障されないというか、問題があると思うんです。
 だから、大学の役割を重視重視というふうに幾ら言われても、具体的にこういう場面でそういう保障がないじゃないかということがありますので、本当にこの部分を今後飛躍的にやはり増額していくという点での、私は大臣の御決意をぜひ伺っておきたいと思います。
遠山国務大臣 白川先生が御指摘になりましたように、研究者が自由な発想に基づいて行います萌芽的な研究というのは大変重要でございまして、こうした日常的な研究教育活動を支えます経費である教育研究基盤校費、平成十二年度に従来の教官当たり積算校費と学生当たり積算校費を統合してできた経費でございますが、この校費はこの数年横ばいとなっていることは、委員御指摘のとおりでございます。
 それでも二千二百億という額がこれに投入されているわけでございますが、他方、文部科学省といたしましては、従来、基礎研究につきまして、研究者個人に対する科学研究費補助金を初めとする競争的研究資金の充実に努めてきたところでございます。
 さらに、これは大変大きな制度改革だと思いますけれども、平成十三年度には間接経費を導入したわけです。これは、競争的研究資金に上積みをして、オーバーヘッドを支給するということによって、学内の今お話しのような点の経費に使うことができる、そういう形で研究環境の一層の充実を図っているところでございます。
 我が省といたしましては、基礎研究の推進のために教育研究基盤校費の果たしている役割にかんがみまして、今後ともその確保には引き続き努力をしたいと考えます。
石井(郁)委員 白川先生も野依先生も、その受賞のきっかけとなった研究というのは非常に若いときで、それぞれ三十一歳とか二十八歳というときなんですね。だから、大学で、まさに講座であったり、それはいろいろ研究組織はありますけれども、共同的な研究をする、そういう研究環境を整えるというのは本当に大事なことだということを私は重ねて強調しておきたいというふうに思います。
 さて、きょうは、大きな問題としても出ております国立大学法人問題で次にお尋ねをしたいと思っております。
 私は、高等教育の予算確保という、これが政府の最も基本的に果たさなきゃいけない責務だと思うんですが、その部分が非常になおざりにされていて、この間、制度いじり、改革いじりということが続けられました。大学は、今スクラップ・アンド・ビルドということまで持ち出されて、大変大きな問題に突き当たっているわけですね。しかし、今日の大学を、いろいろな問題を困難にしてきたあるいは疲弊させてきたのは、私はやはり文部科学省に非常に大きなその責任があるというふうに思うわけですね。
 新しい「国立大学法人」像について、これは中間報告に対してパブリックコメントが発表されましたけれども、それを見ますと、本当にこの間の大学関係者のうめきともいうべき声が私はそこからよく読み取ることができたわけであります。
 一つ御紹介しますけれども、不毛な大学改革を繰り返してはならないというコメントがございました。大学審答申を受けて一九九〇年代に進行した大学改革、特に設置基準の大綱化と大学院重点化に対応するために、国立大学の教育研究現場の全域が行政的活動に忙殺された、しかし、それが一段落した今、冷静に見渡すとき、労力に値する実質的成果は見出しがたい、むしろ大学改革は、高等教育予算の大学間格差の増大、居場所のない大学院生の増大、若手研究者の就職難、全学教育の弱体化等々、国立大学全体にゆがみを発生させた、これらのゆがみの是正問題は、大学社会の重い負担となっているだけではなく、苦い大学改革経験全体が大学社会の士気を低めたという、国立大学法人化はこうした不毛な大学改革と本質的に違うところがあるのだろうかという声がございました。
 私は、本当に改めて、この間の文部科学省が進めてきた、文部省が進めてきた改革というのは一体何だったのかという検証が要ると思っているんですね。それは、きょうはその議論はしませんけれども、私は、文部科学省としての反省と責任というのは本当に明らかにされるべきではないのかということを強く思っているということをきょうは申し上げまして、中身の方の質問に入っていきたいと思います。
 それは、一つつけ加えますと、有馬元文部大臣が、教養部の解体、国立大学の教養部を解体しましたよね、これはもう失敗だったということも述懐されていらっしゃるわけでしょう。だから、いろいろそういう問題がありますので、今後それはきちっと検証されるべきだというふうに私は思っております。
 さて、きょうは、三月二十六日に、新しい「国立大学法人」像についてという国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の最終報告が出されましたので、その内容に沿って、主に目標と評価について私は質問をしたいと思っています。この最終報告には非常に重大な内容もたくさんございますけれども、きょうは、とりあえずこの目標と評価ということで質問をいたします。
 まず、この中期目標なんですね。これは文部科学大臣が定めるということになってございます。こう書いていますね。中期目標は、大学が中期計画を策定する際の指針となると。だから、目標があって計画をつくらなきゃいけないわけで、計画をつくるときの指針だと。大学の実績の評価基準となる。しかも、その評価は、その後の大学の改廃、予算配分に直結するというもので、私は大学の教育研究のまさにかなめとなる問題だというふうに考えているわけですね。
 さて、そういう問題をどうして大学ではなくて文部科学大臣が決めるということになるのでしょうか。つまり国が大学の目標を決めるということは、私は聞いたことありません。大変これは重大な問題だというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 中期目標、中期計画につきましては、独立行政法人通則法によりますと、中期目標といいますものは、主務大臣が定め、当該独立行政法人に指示するということとなっております。これに対しまして、調査検討会議報告におきましては、国として責任を持って所要の予算を行いながら、事前関与は最小限に限定するという独立行政法人の考え方を維持しながら、国立大学法人につきましては、大学の自主性、自律性を尊重する観点から特例を考えているわけでございます。
 中期目標と中期計画は、あらかじめ各大学において一体的に原案を検討することとされております。
 そして、中期目標につきましては、文部科学大臣は、各大学から提出された原案を十分に尊重し、大学の特性に配慮して定めるということになっております。通常の独立行政法人の場合は主務大臣が指示するとなってございますけれども、国立大学法人につきましては大学の特性に配慮して定めるという表現になっているわけでございます。
 そして、中期計画は、各大学が最終的に確定した中期目標に基づいて作成し、文部科学大臣の認可を受けることとされているところでございます。
 さらに、この報告によりますと、このような各大学の自主性、自律性を尊重するための仕組みを制度的に担保いたしますために、中期目標の作成手続につきまして幾つかの提言がなされているわけでございます。
 一つは、大学から文部科学大臣への事前の意見の提出をすること、ですから、文部科学大臣が大学からの意見を待たずに定めるということはあり得ないわけでございますし、二つ目には、文部科学大臣に対する大学の意見への配慮義務というものが明記されております。また、三つ目には、文部科学大臣に対する大学の教育研究等の特性への配慮義務ということでございまして、これは、大きな国の組織としての国立大学法人である以上、何らかの国の関与は当然必要なわけでございますが、その際に、大学の自律性、自主性というものを十分に尊重しろということで明記されているわけでございまして、私どもといたしましては、その考えを尊重しながら、今後の制度設計をきちんとやっていきたいと思っております。
石井(郁)委員 配慮するということを言われたんですけれども、しかし、大学と大臣とでその意見が違うという場合はあり得ると思うんですが、その場合はどちらが優先されるでしょうか。
遠山国務大臣 まだ起きていないことについて想定されての議論というのは、なかなかコメントをしがたいわけでございますが、私は、大学の自主性、自律性というものを十分尊重しながら、しかし、国としての役割というものももちろんあるわけでございまして、そこは両者で十分話し合い、そしてある合意に達して私はこの問題というのは解決すべきだと考えておりまして、どちらが優位かというような議論は、この面については当たらないのではないかと思います。
石井(郁)委員 現実にはそういう問題が起きてくるわけですよ。起きてくるということを十分考えてこの事柄を進めていかないと、それは大変な問題ですよ。
 配慮した結果、必ずそういう計画も認める、文部大臣がやはり定める、認めるということになっているわけですから、これも、配慮した結果、例えば大学の意向は認めるということになるのでしょうか。大変重要な問題ですから、ここのところもお聞かせください。
遠山国務大臣 大学がいろいろな夢を持ち、そして目標を持ち、プランを持つということも大事でございますけれども、それがどのような内容であるかということによりまして、非常に巨額の支出を要するようなものというものを国として将来の計画として認め得るかというような問題も生じてまいりましょうし、いろいろな事態が想定されるわけでございますけれども、しかし、そのことについては、私は、十分相互に協議をし合いながら、大学の本来の目的を達成するため、そして国として大学を支える、そういう両者の立場を十分にいつも勘案しながら、この目標について定めるというときにおいては十分留意をなされるべきでありますし、また配慮義務というものはそのことを前提として今回明言されているものと考えております。
石井(郁)委員 私は、尊重するということを幾ら口で繰り返しても、実際決めるのは文部大臣ですと、ここがやはり重要なんですね。だから、本当に大学の意向を尊重するとか、研究や教育というのは自主的、自発的なもので、大学自身が目標自身をしっかり持つべきものだというふうに考えたら、なぜ目標をやはり国が定めるということになっていくのか。それは必要ないことなんですよ。あえてそこを入れるということは、どういってもやはり国が目標を定めるということに違いないわけですね。
 だから、例えば大学の意向と違った場合には、それはもう絶対国の方が優先するというお答えなんですね。
遠山国務大臣 いろいろな制度についていろいろな見方があるものだなとつくづく伺いながら考えたところでございます。
 この新しい「国立大学法人」像についてというレポートは、三月二十六日に出されましたけれども、これは国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議という会議体で十分に議論をされ、五十数回に及ぶ、専門家、ほとんどがこれは大学人でございます、大学人がみずから自分たちの制度の将来について真剣に議論をして到達した一つの結果が、今議論になっておりますような中期目標の定め方であり、中期計画の定め方であるわけでございます。しかも、その中に尊重義務、配慮義務、それだけのことを明確にうたって、そして大学人の間での合意を得て、今回の調査検討会議のレポートが出たわけでございます。
 他方で、国としては、国立大学法人であるのであれば、これは国費を支出する必要があるわけですね。そのときに、大学側だけがある計画を持って巨額なものを言ってくる、そういうものをそのまま認めるということが一体可能でしょうか。
 そういうふうなことも考えますと、やはり十分に協議をした上で、しかし、大学側の自主性、自律性というものを配慮しながら国としては対応すべしという今回の、私は、このレポートの目指しているところというのは、国の責任と大学の自律性、自主性というものを認めていくという関係におけるぎりぎりの選択であるというふうに考えております。
石井(郁)委員 今、例として、巨額な予算を伴うプロジェクトを出された場合というふうに言われましたけれども、逆に言うと、やはり予算に関連してこの目標というのは決められるということもおっしゃっているわけでしょう。そうすると、やはりそういう目標というのは、研究予算とも関係してというか、まさにかかわって決められるものだ。だから、そこに国として、これはいいとか悪いとか、あるいはこれはできるとかできないとか、もう少しこれは考えてくださいという場面が出てくるということが大変懸念される重大な問題だということなんですね。
 本当にこの問題は重大だというふうに思いますけれども、昨年の中間報告が出されたときにも、こういう方向でいいのかというところでは大変意見が出されまして、国立大学協会自身も、大学としての基本的な理念、目標まで文部科学大臣の認可を得なければならないという、これはおよそ他に類を見ないぶざまな制度になってしまう、こう言っているわけです。これは、パブリックコメントにしっかり出された意見表明でございます。
 だから、私はまさにそのとおりに今なっていると思うんですよ。目標を国が定める、計画も文部大臣が認可をする、こういうことで本当に大学の自主的な教育研究というのが発展するんだろうかという問題なんですね。
 では、角度を変えて伺いますけれども、欧米諸国ではこうした大学の目標を国が決めるというところはあるのでしょうか。ちょっと簡単にお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 まず、その国が決めるかどうかというとらえ方でございますけれども、国が一方的に決めるものでないということは、るる御説明したとおりであります。
 そもそも各国の大学制度といいますものは、その国の社会、経済、文化などのあり方と密接に関係をしながら、さまざまな歴史的な変遷を経て、その国固有の制度として発達してきているのであります、これは釈迦に説法かと思いますけれども。したがいまして、国によって個々の仕組みというのは多様であるわけでございます。
 しかし、各国とも、国の政策と大学の自主性との整合性を図るための何らかの仕組みが設けられているところであります。例えば、米国の州立大学におきましては、州知事が理事を任命するというような理事会方式をとっておりますし、フランスの国立大学等におきます政府との契約方式などが知られているところでございます。
 欧米諸国でも、独立行政法人通則法のように、政府が大学に対して一方的に目標を指示するというような仕組みの例は見られないところであります。しかし、今回の報告書で言っているところの大学の自律性、自主性を尊重した上でという制度のあり方というものは、私は、他国と比肩して、問題があるというふうには考えないところでございます。
石井(郁)委員 これは文科省がよく御存じだと思いますけれども、国立学校財務センターが大学の設置形態と管理・財務に関する国際比較研究というのを出されておりますけれども、それを見ますと、やはり独立行政法人のような法人類型を大学に適用している例はないということと、それから目標とか計画の認可とかという形での独立行政法人的手法をとっている例はアメリカやヨーロッパにはないということをはっきり書いておりますよね。
 だから、そこら辺はいろいろあるかもしれませんというか、アメリカの場合、言われましたように、一定州の意向とかが反映するような仕組みは持っていると思います。仕組みは持っていると思いますけれども、やはり目標を州政府が決める、まさに大臣が決める、こういうことはないんですよ。ここははっきりしておかなくちゃいけないと思います。
 盛んに大臣がおっしゃるように、大学の自主性を尊重するということなんですが、尊重するというのはどういうことになるかという仕組みは全然不透明ですよ、その手続も何も。でしょう。だから、その限りでは、幾らそういう言葉を繰り返されても、本当にどう尊重されるかというのは全然納得がいかないことになるわけですね。だから、事問題は、やはり学問の府としての大学の学問の自由、自治、それがどう保障されるかという問題ですから、やはりきちっとしておかなくちゃいけない問題だというふうに思います。
 私は、きょうはもう一点、評価のことなんですが、これも大変驚きまして、最終報告では評価の主体として国立大学評価委員会が設けられますよね。これは文部科学省に設けられるということになってございます。
 私は、先般の質問でも、いわゆる国公私トップ三十のところで、あのときも、審査委員会が文部省内に置くということになっていたので、本当にこれは驚きまして、これでは第三者評価機関にならないということで、省外に置くというふうになったかと思いますけれども、あのトップ三十は世界的教育研究拠点の形成のための重点的支援と名前はトップ三十からこういう長たらしい名前に変わりましたけれども、こういう議論もあったのに、この国立大学法人の評価は文部省内に置く、それで国立大学評価委員会で評価をする、これはまさに文部省としての管理統括下に置くというそのものだというふうに思うんですが、いかがですか。なぜ今回文部省に評価委員会を置くというふうにされたんでしょうか。
遠山国務大臣 二十一世紀COEの評価につきましては、文部省の外で、そして専門家によって評価されるようにということで、今その方向で制度化が進んでおります。
 これは、教育研究の内容を評価するということでございまして、私は、それは行政がかかわることではないという信念のもとに外側につくるということにしたわけでございますが、今回の評価委員会の中におきましても、その報告の中にきちんと書いてございますが、教育研究に関する評価については、外部の専門的な機関である大学評価・学位授与機構を活用することと明示されているわけでございます。
 それでは、なぜ国立大学評価委員会を文部科学省に置くかということでございますけれども、文部科学省には所管の独立行政法人全体の評価に当たる独立行政法人評価委員会があるわけでございます。これは各省一つずつ持っているわけでして、その傘下の独立行政法人の評価についての任務を負っているわけでございますが、国立大学法人化に際しましては、先般の調査検討会議からいただいた報告書によりますと、それとは別に、国立大学評価委員会、これは仮称でございますけれども、それを設けて、その委員会が各国立大学法人の評価を行うというふうにされているわけでございます。
 したがいまして、各省に置かれるような独立行政法人の評価委員会とは全く性格の違うものを新たに置いて、そこは大学の自主性でありますとか特殊性というものを勘案した上で評価が行われるようにするということであります。それで、そういう別途のものを置くことによって、大学の特殊性、あるいは国立大学法人の場合、大変規模も大きいわけでございます、そういったことも踏まえて、より効率的、効果的な評価を実施するために、そういう形をとることとされたところであります。
 また、調査検討会議の方からは、国立大学評価委員会につきまして、先ほど申しましたように、教育研究に関する評価については外側の機関を活用します、そして、社会、経済、文化等の幅広い分野の有識者を含めて、大学の教育研究や運営に関し高い識見を持つ者によって構成する、構成メンバーも、それは公務員がやるということではなくて、大学についての高い識見を持つ人がやるということ、それから、構成員の選任に当たっては、国際的な水準の活動に従事した経験を有することなどを基本要件とするということでございまして、国立大学にかかわる評価委員会のあり方自体が、公正でかつ専門家の目によるものであって、行政の恣意にわたらないようにという十分な配慮がなされるべきである、そういう提言でございまして、私としては、これは十分に尊重していかなくてはならないと思っているわけでございます。
 国立大学法人は、国の事前関与はできるだけ少なくして、事後評価によって運営費交付金の算定に反映させる仕組みとされているわけでございまして、国立大学評価委員会が文部科学省に置かれるといたしましても、大学の教育研究の特殊性に十分配慮された内容となるものと理解しているところでございます。
石井(郁)委員 大変時間がなくなりまして、私は、評価の問題はなかなか込み入っている、少しきちんと議論をしなきゃいけないと思っているんですけれども、国立大学法人の場合、総務省に設置されている政策評価・独立行政法人評価委員会の評価も受けることになるわけでしょう。それから、審査委員会もあり、それから国立大学の評価委員会もある。二重三重に評価のことがありまして、いろいろ言われましたけれども、私は、やはり独立行政法人通則法に引っ張られてこういう評価のいろいろな仕組みがつくられているというところが大変問題ではないかというふうに思っているわけです。
 それで、本当に、こういうような目標、評価の仕組みを持った法人で、学問の自由があり、そして大学の自治が保障されるのかどうか、ここが大変大事だと思うんですが、その一点だけ、最後に御答弁いただけますか。
遠山国務大臣 今回の国立大学法人の動きの背景には、国の行政機関の一つとしてある国立大学ではなくて、法人格を持たせ、自主性をさらに発揮させて、研究者のそれぞれの自由な発想による研究はもとより、教育についても、より濶達で、本来あるべき機能が十分に果たされるようにということで、いわばこれまでのいろいろな規制を外して、各大学が自主性を持ってやれるように、そういう理念のもとにできているわけでございまして、その全体像あるいはそのねらい、それからそういうことを確保するための非常に周到ないろいろな方策、手続等を全体として御理解いただければ、私は、今委員が御指摘のような御心配には当たらないとここで申し上げたいと思います。
石井(郁)委員 一言だけ。
 時間が来ましたけれども、この問題は、非公務員化の問題だとか、教学と経営の分離の問題だとか、それから、この最終報告には学生や院生のことが全く言及されていないだとか、本当にたくさんの問題がございまして、私は引き続き質問をしたいと思いますけれども、きょうのところは以上で終わります。
河村委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 四月からいよいよ完全学校五日制が始まり、総合的な学習の時間も、小中学校、高校で実践されることになりました。このことにつきましてなんですけれども、教育予算の中で総合学習に充てることのできる予算のことを確認させていただきたいんですが、どの予算が使えるのかをお聞かせください。
矢野政府参考人 新しい学習指導要領において創設いたしました総合的な学習の時間は、これは、各学校におきまして、地域や学校の特色に応じて創意工夫を生かした活動を展開することが大変大事であるわけでございます。
 文部科学省におきましても、各学校のそうした取り組みを支援いたしますための予算措置を講じているところでございまして、何点か御紹介申し上げますと、例えば、総合的な学習の時間の実施を含めまして、新しい学習指導要領に基づく教育に対応できますように、教材等の購入経費につきましては、今後五年間の整備計画が策定されまして、整備に必要な経費に対して地方財政措置が講じられることになったところでございます。
 また、それぞれの学校におきまして、総合的な学習の時間におきます学習活動など、学習活動を充実させるために学校外のすぐれた人材の協力を得ることも大変大事であるわけでございまして、こうした観点から、国といたしましても、学校教育におきまして、多様なキャリアを有する社会人を積極的に活用するため特別非常勤講師を配置する際に国として補助を行うなどの支援を進めることといたしているところでございます。
 さらに、総合的な学習の時間におきまして、体験的な学習活動を実施することも当然のことながら想定されるわけでございますけれども、これらの取り組みを推進いたしますために、国の事業といたしまして、豊かな体験活動推進事業をこの平成十四年度から開始するなど、こうした取り組みにつきまして支援を行うことといたしているところでございます。
 このほか、直接的な予算ということではございませんけれども、こうした総合的な学習活動の取り組みを支援する観点といたしまして、国として、各学校に対して、全国的な取り組みの情報を広く提供することが大変大事であると考えるところでございまして、このため、私どもといたしましては、平成十一年度に総合的な学習の時間に関する事例集を作成、配付いたしますとともに、平成十三年度、十四年度におきましても、その第二集を作成、配付することといたしているところでございます。
 文部科学省といたしましては、今後ともこうした施策の一層の充実を図り、各学校におきまして総合的な学習の時間のねらいが着実に実現されるように努力をしてまいりたいと考えているところでございます。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
山内(惠)委員 今回の総合的な学習、今のお話でおよそのことがわかりますが、例えばということで、総則に「国際理解、情報、環境、福祉・健康」等のテーマを挙げていらっしゃるんですが、この一つのテーマに対してこの予算をということはありませんね。なければお返事は要りませんが、あるのであればお聞かせください。ありませんね。
 では、その点を含めて、次の質問のところに移りたいと思います。
 総合学習は、やはり国際化社会とか情報化社会ということもありますし、環境問題もあるし、また子供たちの生きる力をということも含めて、このような教科の枠を超えて授業をするという時間を与えられたものと思って、現場ではそれぞれ創意工夫、努力をしていると思いますが、今回、教育予算、一般会計の中の教育予算とは別に、原子力・エネルギー、これは後から入ったんですね、概算要求のときにはこのエネルギーという言葉がありませんでしたけれども、原子力・エネルギー教育支援事業交付金の創設ということをなさって、予算としては四億八千三百万円、それからもう一つが、経済産業省の方から、エネルギー促進事業ですか、そのことで約五億七千万組み込まれた予算が今回の予算の中で通ったというふうに思いますが、教育予算が、電源開発促進税、すなわち原子力施設の立地促進を主な目的としている電気料金に上乗せされた目的税を原資とするということが、この予算の創設に当たっては大変間違いをしているんじゃないか。その意味で、本来一般会計で賄われるべき学校教育の趣旨に反すると私は思っていまして、三月に、これに対して質問主意書を提出いたしました。そして、回答は四月の一日付でいただきました。
 この趣旨は、憲法の十三条、個人の尊厳、生命、自由、幸福追求の権利の尊重、二十三条の学問の自由、二十六条の教育を受ける権利、それからずっとありますけれども、とにかく、国家が教育を思想統制の手段として用いることを禁じているということで、これは憲法や教育基本法に反する予算の組み込み方だということを指摘をしましたが、回答をいただきました。その回答の中では、憲法には違反しない、教育基本法にも違反しないというお答えでした。
 それで、きょうは皆さんに資料を配付していますが、ちょっとごらんください。一ページ目の予算のところです。これ、電源特会というのが、さっき申しましたように電気料金の目的税として使われるべきものなんですが、これが、短くして電源特会と私たち言っているんですけれども、これの一のところで、この部分につきまして大臣にお答えいただきたいと思います。
 原子力発電施設等が設置されている地域等における放射線監視施設の設置に必要な事業費等に充てるための都道府県等に対する交付金ということで、文科省分として予算が計上されています。それで、一番下のところに、私は米印をあえてつけたんですが、原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金の積算内容として、この教育支援の事業として四億八千三百万円の金額をつけているんですが、なぜ放射線監視施設の設置の項目にこれがあるのか、お答えいただきたいと思います。
加納大臣政務官 山内委員の御質問にお答えしたいと思います。
 先ほどというか、今お配りになった資料を拝見しておりますが、ここで書いてありますのは、二行目ですけれども、放射線監視施設の設置に必要な事業費等に充てるため都道府県等に対する交付金等とまたありますけれども、ここの放射線監視施設というのは一体どこに出てくるのかということと、それから原子力・エネルギーというのは当たるのか、こういうことだろうと思いますが、お配りいただいた資料の、本当は二枚目がついていまして、その二枚目、何かコピーでは一枚目しかないんですけれども、二枚目の冒頭に放射線監視等交付金の積算内訳というのがついておるんですけれども、それは細かい話ですから結構でございますけれども、等と書いてあるのは、さまざまなものがここに対象になっております。
 その中で、今申し上げました放射線監視等交付金というのは早くスタートしたものでありますから、代表的なものとして放射線監視というのを挙げて、などということで、そのほかたくさんございます、広報・安全等対策交付金、放射線利用・原子力基盤技術試験研究推進交付金、それに並ぶものとして、今委員がおっしゃった原子力・エネルギーに関する教育支援事業交付金と書いてあるところであります。それが一つの回答であります。
 この教育支援交付金というものは、一体それでは今委員が御指摘になったような法律だとか憲法に違反するのかという点でございますが、これは私どもは違反をしないと考えております。(山内(惠)委員「そういうお答え、もういただいていますので」と呼ぶ)ごらんになっているかと思いますが、必要があれば幾らでもお答えいたしたいと思っております。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
山内(惠)委員 お答えいただいたことを改めてもう一度言われると私の時間も減ってしまいますので、短くで結構です。
 それで、この教育支援交付金というのを電源特会のこの会計のところに入れるのは問題だということを事前に何度かお話し合いをしましたけれども、違法ではない、違法ではないとおっしゃっていた後に、当初、予算を計画するに当たって、予算の執行に先立ち、こういう回答をいただいています。電源立地対策に教育支援交付金の交付を加えるということのための一条を改定するというふうにおっしゃっているので、これはどうか短く、どこをどう改定するつもりなのか、お聞かせください。
今村政府参考人 ちょっと実務的なことでございますので、私の方から説明させていただきます。
 いわゆる電源特会の事業につきましては、電源特会の事業の特に新規事業については、その新規事業を電源特会に計上して国会に提出させていただいて、それが承認されますと、その予算が承認されましたことを踏まえまして、その事業の具体的な支出項目というものを、これは法律ではございませんで、施行令、電源開発特別会計法施行令の中で具体的にその条文を記載して追加していくというやり方をいたします。
 したがいまして、今回この教育支援交付金につきましても、先般国会で御承認いただきましたので、今後特別会計法の施行令の条文をこの事業の内容に即して追加する、そういう改正を行う、そういうことでございます。
山内(惠)委員 これは、電源特会の予算から一般会計に移すということではないわけですね。そのことでいえば、やはり電源特会というのは原子力発電ということも含めて原子力を推進していくという会計ですから、その意味で私たちは教育基本法に反するということを指摘しているわけです。その意味で、もう一つ次の問題点のところに行きますが、とにかくこれは私は教育基本法の精神に反すると思っています。
 この資料、本当は大臣にぜひお答えいただきたいんですけれども、「エネルギーと環境」というのを出されて、これは高等学校の総合的な学習の時間のためのワークシートということで出されているのですけれども、このことにお金を出していますかということをお聞きしましたら、出していないというふうにおっしゃいました。本当に出していないのかということでいえば、よく見ましたら学事出版ですから、出版社が出したというところまでわかりました。
 ところで、これは形を変えて、高校、希望するところに、四百七十校くらいに配ったものと内容がほとんど、これはコピーなんですけれども、ごらんになっておわかりと思いますが、表紙が同じ中身のものなんですが、何とこれは財団法人日本原子力文化振興財団がつくったものです。中身はほとんど同じです。これは二〇〇一年の三月に出されて、全国の高校の希望するところに送られたと聞いています。無料で二冊、上下ありますので、これを出しています。その後、これは学事出版の方は二〇〇一年の七月に出版されています。
 これでもなお、お金を出していないとおっしゃるのか。済みません、出していない、出している、これだけちょっとお答え聞きたいと思います。
今村政府参考人 お答え申し上げます。
 このワークシート、今御指摘のありました「エネルギーと環境」は、先ほど御指摘もありましたように、日本原子力文化振興財団の事業で行っております。
 ただ、この日本文化振興財団の事業の中には事業収入というのがございますが、この事業収入の中に、この「エネルギーと環境」を作成する財源というものがあるわけでございまして、その財源といたしましては、直接文部科学省が支出をいたしてはおりません。おりませんが、日本原子力研究所等の研究所がそれぞれの事業の原子力広報予算の一環としてこの原子力文化振興財団にこのワークシートの作成をお願いしたといいますか、そういう形になっておるということを申し上げたいと思います。
山内(惠)委員 きょう、資料を配りましたので、それをごらんになってそのようなお答えをくださったんだと思います。直接この冊子という形でないとしても、予算を出しているということを後で証明――もう皆さんおわかりかと思いますけれども。
 ところで、これは形を変えて出された学事出版のものになっています。後ろには、高等学校の学校長が、天井さんとおっしゃる方が、ある意味では中立を装ってと私は思いますが、編集その他のところでお名前が出ていますが、それにしても、日立、三菱それから電力中央研究所ですか、基本的に推進をする人たちがこの編集をしているんですが、もともとのものとほとんど同じですから、学校の先生のお名前があっても、この方たちが書いたとは思えないのですが、それは私の感想ですからいいとしまして、この中に、住民の声が載せられているわけでもないし、犠牲者の声が載せられているわけでもないし、反対をする人たちの声が載せられているわけでもありません。
 そこへ、この資料をつくるに当たって、はっきり電源特会の会計のところと関係のあるところから出てきているこの冊子、全国の総合学習の参考にしてくださいと出しているものについて、学校現場の人たちが参加をするというのも、ある意味で問題ではないかと私は思っています。
 時間がありませんので、このことでいえば、原子力文化振興というのは何なのかということを本当は質問として出していましたけれども、これも時間をはしょってしまわなければなりませんので、この中でいえば、原子力平和利用に関する云々という、この寄附行為という形で、皆さんに資料をお上げしているのですが、この中で書かれていることがきっと原子力文化振興だとおっしゃるんじゃないかと思いますので、違うのであれば、後でこれまたお聞かせいただきたいと思います。
 それで、二の三と書いた資料を見てください。原文振と略して言いますと、原文振の中の収入の部分をちょっと見ますと、大きな2のところに賛助金というのがあるのですが、これが四億八千万ですか、それから4のところに受託事業収入というのがあるのですが、これが十四億ですか。
 この内訳を見ますと、もうちょっと後ろのところにあるのですが、2の賛助金というところは、二の五の資料にあるように、これまたゼネコンという感じの、原子力発電をつくっているような関係の日立、三菱、三井、住友、九電、このような方たちと原子力関係の機関があります。これは企業代表ですね。そして、次の二の六のところを見ていただくとおわかりですが、文科省の予算を七億四千二百二十九万円、それから経済産業省が六億三千九百三万円、合わせて約十四億何ぼになると思います。
 ということは、この財団法人日本原子力文化振興財団というのは、企業と文部科学省と経済産業省のお金がほとんどである中で事業が推進されているということが考えられます。これは指摘をしておくだけにいたします。
 そして、次なんです。この意味で、今までの原子力発電にかかわる予算というのは、この電源特会予算というのは、随分ずさんなやり方をしてきたのが、新潟であったあのラピカですか、あのようなやり方がありますが、本当に地方をお金でほっぺたをたたくと言われることが多くあるのですけれども、公共事業のチェック、公共事業といってもある意味ではマイナスの公共事業であって、決してこれはうれしいものではありません。
 私は北海道ですから、泊の三号機が建設されるということも問題ですし、北の外れの大地、酪農の大地、あの大地に深地層研究所をつくる、核抜きだということを言って持ってくる。そういうことが行われている中で、とにかくお金をたくさんたくさんくれますから、地域は、本当に貧しい地域がそこだけお金が赤字になっていないという状況で、お金がばらまかれています。
 そういう中で、皆さん御存じと思いますけれども、住民投票が行われ、プルサーマルの計画にも反対だし、原子力発電の立地も反対だという住民投票が出ている中で、この資料は推進と思われる人たちが原案を、思われるじゃないですね、はっきり、この日本原子力文化振興財団の名簿を見ますと推進の方たちばかりです。
 しかも、あえて言いますと、ジェー・シー・オーの事故があった、この犠牲者の方たちも院内集会で私のところに来て署名を出したりいろいろなことをしていますが、この犠牲者、こんなにいて健康手帳一つ出してもらえない、そういう犠牲者の声はこの中にはありません。それから、被曝線量の危険性なども記述されていません。
 そして、言われているのは、CO2の削減のためだ云々の原発、それから電力安定のための原発だということを主張されている中で、では放射線汚染というのを、地球環境から言えば、環境庁にはこれは関係ないんだと言うから、これはこちらでお聞きするしかないのですけれども、環境汚染の問題があるにもかかわらず、CO2問題だけのような形でPRされているのは、本当に大変問題だと思っています。
 美浜の原発だったと思いますが、社民党の調査団もつくって行ってきましたけれども、一歩間違えればチェルノブイリのような事故になりかねないほど大変な事故だったと聞いています。
 こういう状況の中で、学校現場のことを少しお話をさせていただきます。
 原子力ブックというのをつくられて、あの事故の後、安全対策その他を進められているようなんですけれども、あの事故のあった日、ほとんどの教職員は、原子力に対して特に危険性の認識がなかったと聞いています。子供たちは口をハンカチで覆っただけで下校したそうですし、下校もしないで学校にいたし、窓をあけていたし、グラウンドで授業もしていたということを報告で私は聞いています。
 その後、この原子力ハンドブックですか、つくられたというのですが、この中にも、はっきり言ってこの危険性や被曝線量の問題が十分書かれていないのです。そのことについて大臣、いかが思われますか。
加納大臣政務官 幾つもの問題提起をされておられますが……
山内(惠)委員 私は要りません。感想ですから、大臣、お聞かせください。何度も言います。大臣、お聞かせください。まだ一度も大臣、お話しになっていらっしゃらないのですよ。質問を出したときにも、基本は大臣とお話ししてあるので、担当者が出られることも今回はあえて受けましたが、大臣、お聞かせください。
遠山国務大臣 原子力の問題について、感想としては、いろいろな考え方があるなということと、やはり正しい理解というものを国民全体が持つべきであるなと考えております。
山内(惠)委員 いろいろあるな、大変だなと、そんな感想でこの教育予算四億八千三百万、それでもう一つ、経済産業省から五億七千万、お金が来るのですよ。もう少し厳しくお答えいただきたいと思います。
 いや、だめです、大臣にお聞きしているのです。きょうは厳しく、大臣にお聞かせいただきたいのです。感想で結構なんですよ。感想です。
河村委員長 加納大臣政務官。(山内(惠)委員「いや、どうして、大臣にお答えいただきたいのですよ」と呼ぶ)
加納大臣政務官 大臣が感想を述べましたので、それについてさらに、大臣の身がわりでございます、補足をいたします。(山内(惠)委員「大臣です。何回も言います、大臣にお聞かせいただきたいのですよ」と呼ぶ)
 議事の進行は委員長の指示に従います。
河村委員長 ちょっとお待ちください。(山内(惠)委員「いや、時間がなくなるのですよ、私の質問したいこと、ほかにありますから」と呼ぶ)
加納大臣政務官 エネルギーについて光と影がある、その影のコントロールもある、こういったことをしっかりと科学的に教えていくことが極めて重要だと考えております。
山内(惠)委員 では、お聞きします。
 今回の予算を執行するに当たって、交付要領というのを出されるというふうに聞いています。前回お聞きしたときは、予算がまだ決まっていないというふうにおっしゃったのですが、予算が通りました。交付要領にはどのようなことを書かれるおつもりか、これは担当の方で結構です、お聞かせください。
今村政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほど御説明いたしましたように、予算が通りました後、今後の作業といたしまして、電源特会法の政令を改正いたします。まず、その作業にこれから入る、今準備をしております。それを踏まえまして交付要領に着手するわけでございまして、まだ現時点においてその原案ができているわけではございませんが、一般的に申し上げますと……
山内(惠)委員 一般的には要らないです。時間がないのです。たくさん聞きたいし、こんなチャンスは二度とないじゃありませんか。今度、もっとつくっていただきたいです。(発言する者あり)では、そのことはわかりました。次、ぜひやってください。
 これは交付要領の中で、危険性をしっかり書きたい、そしてそのことを子供たちにも伝えたいという人たち、反対を、こういう問題は問題であると思っている方たちがこの予算を請求したら、オーケーいたしますか。短く答えてください。
今村政府参考人 この予算の建前といたしまして、内容について審査をするということはいたしません。あくまで、これは受けられた地方自治体の考え方で、その内容について交付をさせていただくということでございます。
 以上でございます。
山内(惠)委員 先ほどバランスに関することをおっしゃられましたので、プラス面もマイナス面もあるとしたら、このような一方的な推進のものではないということが大変重要だと思います。でも、今まで出されているもの、ほとんどこのマイナス面については書かれていません。危険性について書かれていません。
 それでは、次の経済産業省の方の関係についてお聞きしたいと思います。
 同じような内容なのですけれども、五億七千万、もう既に経済産業委員会の方で質問していまして、この予算は推進ですかということをお聞きしましたら、何と、平沼大臣、このようにお話ししていらっしゃいます。プルサーマルの問題、刈羽の住民投票などで反対派が上回った、ぜひ推進ということで進めていくと言っています。推進ということを最初に言っている。
 それで、ここのところで、既に経済産業省がいろいろなパンフレットを出していますが、危険性なんてほとんど何にも書いてありません。プルサーマルが重要、原子力は使い終わった燃料をリサイクルできて、再び利用できます。それから、リサイクルすることでそのごみの量を一割以下に減らすことができる、プルサーマルのよいところですね、全く住民の意思と反するような中身でこの資料をつくられて、幾らかけたかというと、二千四百八十三万円ものお金をかけて、既に積極的に推進しているこの問題を、今度は教育予算として持ってくるという計画が出されました。
 これを受け入れるのか、受け入れないのかを決めるのは文部科学省です。ぜひ大臣、どうするおつもりか、ここのところを一言でお聞かせください。これは文部科学大臣、受け入れるのか、受け入れないのかですよ。こんな簡単なことです、大臣。
遠山国務大臣 技術的な問題が絡みますので、大臣政務官からお答えいたします。
加納大臣政務官 教育支援金につきましては、これはあくまでも各自治体、教育委員会の主体性を持って選んでいただくということでございます。
 それから、経済産業省の話でございますけれども、これは現場に押しつけるというものじゃございませんで、それぞれの各学校の自主的な判断によって選ばれる、こういうことであります。
山内(惠)委員 現場で判断するというお言葉をしっかりと受けとめておきたいと思います。
 それにしても、「エネルギーと環境」をつくった日本原子力文化振興財団のこれは、本当に危険について書いていません。このような推進というものを電源特会の予算からこのような形で、文科省を通して、財団法人に入れられてつくられていくというこのことは、これだけが学校現場で受け入れられるということは教育基本法の精神に反します。
 時間がありますので、そこの部分をちょっと読ませていただきます。済みません、ちょっとここのところ、物すごく焦って短く言いましたから、では、ちょっとそこは後で言うことにいたします。ありますので、では、それは後にします。
 朝日新聞、三月三十一日の一面トップ記事「原発「後処理」三十兆円」。これだけかかるというのを報告したことは今までありません。初めてこの数字が出てきました。電気事業連合会による初の長期試算で、二〇四五年までに全国で約三十兆円に上ることが明らかになった。核燃再利用凍結論も出てきている。
 この後処理ということでいえば、廃棄物の処理も、どの方法でするかも全くわからないのを北海道に押しつけようとされているのが深地層研究所の問題であります。
 これだけお金がかかるということを考えれば、皆さんは教育で中立であるべきこの資料、「エネルギーと環境」もそうですが、実はもう総合学習全部、ここのところ、これは経済産業省資源エネルギー庁の委託によって作成した、これもうそが書かれています。先ほど言ったような危険の問題、チェルノブイリのような事故が起こるのだという心配に関してもほとんど書いていません。
 これもどこか中立を装っていますから、ほかのエネルギーのこともずっと書いてあります。自然エネルギー、それから太陽発電、いろいろなことが書いてあります。でも、最後のところで本音が見えるような記述が、これは子供たちに質問をして、どれが一番安くつくでしょうというような趣旨で書かれているのですが、原子力発電は一キロワットアワーの電気をつくるのに、原子力は五・九円、石油火力は十・二円、水力は十三・六円。この数字を持ってくるのは、だから原発はコストが安いと考えられてこれは編集されたと思うのですけれども、後処理の予算を入れたらこんなものではなくなると思います。いかがでしょうか。
加納大臣政務官 御質問にだけお答えしたい、御感想のところは全部伺ったということで、御質問にだけお答えしたいと思います。
 原子力の、俗にバックエンドと言っておりますけれども、廃止をした後の措置、それから廃棄物の処分、こういったこと、それから再処理を行っておりますけれども、再処理に伴うコスト、これの厳密な計算はまだされていないと聞いております。
 朝日新聞に載った記事は私も拝見をいたしました。当事者は、まだこのような計算はしていないという談話を発表したのも読みました。
 五・九円というのがいろいろな前提で計算されていると私も理解しておりますが、それがこんなものでは済まないという今御意見でございます。御意見としては承りますが、物すごい金額になるのかどうかというのは、要するに、一キロワットアワー当たりに直すとどのくらいになるのかということでございまして、これは一円内外のオーダーだというふうに従来言われておりますが、それが何十銭か変わることがあっても、五・九円が一挙に二十円になるとか十五円になるといったようなオーダーでは到底ないというふうに理解をしております。
山内(惠)委員 このほかにいろいろ資料があります。私は、全部持ってこれないぐらい本当にありました。これは「かんでんが「総合的な学習の時間」を応援します!」企業がこれだけお金をかけて、教育にしゃしゃり込んでくる。この総合的学習は本当は自由な観点でやるはずの教科だったじゃありませんか。このことについていかがお考えでしょうか。担当の方で結構です。
矢野政府参考人 総合的な学習の時間においてどのような教育活動をし、またその教育活動においてどのような教材を使うかというのは、これは基本的にはそれぞれの学校の御判断であるわけでございますから、教材として使ってほしいといういろいろなお申し出があっても、先ほど申し上げましたように、それを使うかどうか、またどのように使うかどうかというのは基本的には学校の御判断ということでございます。
山内(惠)委員 学校の御判断とおっしゃるにしては、このあらゆる資料が、企業の主張、そして中身は推進、この問題でつくられた資料ばかりが学校に配られることによって、この次の部分になるんですね。もし教職員の皆さんがこれに対して危険だということを主張して資料の中に入れたいと考えたときに、本当に入れられるのか。また子供たち、これは先ほども申し上げましたように、あのジェー・シー・オーの事故で被曝された父親、母親、自分、そういう状況の中で、被害に遭っているにもかかわらず、子供たちは、危険だと思ったけれども大丈夫なんだねという感想をもたらしたり、俳句をつくったり、推進の方向に行っている。こういう状況にしたいのが今の文科省の考えなんじゃないかなというふうに思います。現場に任せる、現場に任せる、この間随分お聞きしましたが、でもそうおっしゃった後には、処分、処分の結果がいろいろな形で出てきているということを指摘しておきたいと思います。
 そして、私は、質問主意書の中で、旭川学テ判決の判例の問題を出しました。国の正当な理由に基づく合理的な決定権能の範囲であれば許されると考えるとおっしゃるお答えをいただいたんですけれども、原子力を機軸とするエネルギー政策は、普遍的な真理ではもうありません。世界的に見れば、もうこれを何としても廃止していこうという方向にあります。争う余地のない科学的真実でもなく、現に、国民世論を二分し、国民の間で深刻な対立のある政策です。それを、この政治経済の情勢が変わり、政権担当もかわる、そういう中で、今の政権が推進しているというような問題を学校教育に持ち込むことは教育基本法に反すると考えますが、いかがですか。
加納大臣政務官 教育基本法に反するかという一点にお答えしたいと思います。
 教育基本法は不当な支配という、不当な支配を行ってはならないということを教育基本法の第十条で明確にしております。
 それで、現実に原子力が果たしている役割、そして原子力の持っているリスク、そのリスクをどのようにコントロールしているのかというのを客観的に生徒たちにも教え、そして生徒たちがみずからで考えるということが非常に重要なんですけれども、特定の先入観に基づいて原子力に反対しなければならないと思い込むことも、特定のまた先入観に浸って原子力しかないと思い詰めることも、どちらもいかがかと思うところであります。あくまでも客観的、科学的に、情緒的じゃなくて科学的に、学校現場というのは冷静にやらなきゃならない。
 私も学校の教員の経験者でありますから、十三年間大学で教えてまいりましたけれども、また高校、中学校の役員もやってまいりましたけれども、そういうことで、客観的な事実を子供たちに教える。いいところずくめ、悪いことずくめでは、どちらもいけないと思っております。それが教育基本法の精神だと理解しております。
山内(惠)委員 文科省がかかわり、経済産業省がかかわって、そしてできた「エネルギーと環境」、この中にあなたのおっしゃったような大事なこと、書かれていますか、全く書かれていない。これからは地方の自主性でつくられるかもしらないけれども、そんなことは全く書かれていない。経済産業省がつくったものにもそんなことはどこにも書かれていません。
 そういう状況の中で、この不当な支配ということでいえば、一方的な情報を流しているという意味で、両方の情報を流していませんよ。そのことで大変中立に反するということを私は言ったのです。
 六ケ所村で中間貯蔵施設ができていくという中で、何日か前ですけれども、世界の原子力機構は、プルトニウムの核兵器に転用しないようにということで監視をしなければならないという記事があるんですよ。世界から見て、この原子力発電、大変問題視される時代を迎えているという意味では、一方的な先入観ではなくて、国論を二分すると私は言っています。賛成の方もいる、反対の方もいると私は申し上げているんです。一方的に安全だと私は言っているんでもなく、一方的に反対だと言っているわけでもありません。
 しかし、文科省や経済産業省がかかわった資料は一方的です。その意味で、私はこれが問題だということを言っているんです。
 そろそろもう国はこの政策を見直すべきではないかというのが、この間の毎日新聞の記事もそのように終わっています。私の北海道にある北海道新聞もそのように書いています。全国の新聞が、この三十兆円問題を見たときに、やはり今考えるときではないかと言っています。また、住民投票で本当に長い闘いをしてきた住民の皆さんが、やっと反対が多くなった、そうしたら、これだけ莫大なお金をかけて資料をつくる。この資料をつくる方たちは、はっきり言って一方の情報を流しているわけです。
 私も北海道に帰りましたら、深地層研究所の問題を随分大事だ、大事だ、安全だというPRをしていらっしゃるんですが、北海道で核抜きの深地層研究所、それは私は、お約束どおり、この深地層研究所の中に核なんか入れないと思います。しかし、その近辺のところに、この地層が割といい地層であったとなったときに、それはだれが判断するかということはありますよ、なったときに、周りに埋められる、埋められない保証はない、そんなやり方で持ってきているこの状況を私はしっかりと批判をしておきたいと思います。
 そして、このプルサーマル計画、住民が反対、何年かけて闘ったんですか。この結果が出たら、今度はお金でこれだけの資料をつくって、そしてもう公共施設その他に配布して使っていく。
 私は、最近ではありませんけれども、子供たちが見る映画館のあのアニメーションですね、宮崎駿さんの映画を見に子供たちがたくさん行っているところに私も行ったときですよ、間でテレビのコマーシャル、原子力は安全です、安全です、安全ですという、あの大画面でやっています。これこそ一方的な情報じゃありませんか。このことについてお聞かせください。
加納大臣政務官 いろいろなことをおっしゃっていますけれども、プルサーマルは、これは原子力を我々が選んだということから考えますと、原子力の化石燃料にない特性はリサイクル性をおいてないというふうに考えております。
 IAEAの六ケ所村の査察の問題は当然のことでございまして、我々は核不拡散ということをIAEAに、文部科学省も経済産業省もフルにコミットしておりますから、あらゆる新しい施設ができればIAEAがしっかりと査察をするというのは当然のあかしだと思っております。
 北海道の深地層の例も出ましたけれども、ホットのものではないということを言っているところでございます。(山内(惠)委員「いや、もうそっちはいいです、この辺をお聞きしていませんから」と呼ぶ)私は今発言中でありまして、委員長の御指示があれば私は発言をやめますので、私は発言を続けたいと思っております。
 そのようなことでございますので、また、教科書が一方的につくられているということもおっしゃいましたけれども、一方的ではなくて、これは高等学校の現場の物理とか化学とか数学とかをしっかりと教えておられる先生方が執筆したものであって、その方々を一方的だと決めつけるのは、その方々にとって大変私はいかがな表現かというふうに思っております。
 それから、国民は、住民は反対していますとおっしゃいますけれども、住民で賛成している方もおられます。いろいろな方がおられます。そして、国民の声を代表しているのは国会でありますから、国会が国民の声を反映してエネルギー政策をしっかり決めなければいけないというのが、今国会にかかっているエネルギー政策基本法であると思っております。
山内(惠)委員 新しいエネルギーの問題も、大変問題があります。廃棄物の再利用だなんてとんでもないことを考えながら新エネルギーなんて言っていることも問題です。私は、ここの問題を……(発言する者あり)まだたくさん問題がありますが……
河村委員長 時間が来ております。
山内(惠)委員 風力発電だって、買い上げを限定で、もっとつくっていくのも、買いたたきをして限界を決めて、そしてやっているではありませんか。本当に中立の政策ではないものを学校現場に持ってくることについて、何回も言います。賛否両論の、国論を分けるようなこの問題を教育の中に持ってくることは、憲法、教育基本法に反するということを言って、終わりたいと思います。
河村委員長 本日の議事は、以上をもって終わります。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十一分散会


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