衆議院

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第9号 平成14年4月24日(水曜日)

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平成十四年四月二十四日(水曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    左藤  章君
      杉山 憲夫君    田中 和徳君
      高市 早苗君    谷垣 禎一君
      谷田 武彦君    中野  清君
      中本 太衛君    馳   浩君
      林 省之介君    林田  彪君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    今野  東君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      藤村  修君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山口  壯君
      山元  勉君    池坊 保子君
      桝屋 敬悟君    佐藤 公治君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      横光 克彦君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局私
   学部長)         石川  明君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
四月二十四日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     左藤  章君
  松野 博一君     林 省之介君
  森田 健作君     田中 和徳君
  鎌田さゆり君     今野  東君
  西  博義君     桝屋 敬悟君
  中西 績介君     横光 克彦君
同日
 辞任         補欠選任
  左藤  章君     近藤 基彦君
  田中 和徳君     森田 健作君
  林 省之介君     中本 太衛君
  今野  東君     鎌田さゆり君
  桝屋 敬悟君     西  博義君
  横光 克彦君     中西 績介君
同日
 辞任         補欠選任
  中本 太衛君     松野 博一君
    ―――――――――――――
四月二十二日
 私学助成の抜本的拡充等行き届いた教育に関する請願(冬柴鐵三君紹介)(第二〇七四号)
 行き届いた教育、心の通う学校に関する請願(冬柴鐵三君紹介)(第二〇七五号)
 教育基本法の改悪反対に関する請願(川田悦子君紹介)(第二〇七六号)
 アレルギー性疾患、特にアトピー性皮膚炎を学校病指定に取り入れることに関する請願(石井郁子君紹介)(第二一四一号)
 同(瀬古由起子君紹介)(第二一四二号)
 同(中林よし子君紹介)(第二一四三号)
 同(藤木洋子君紹介)(第二一四四号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 教育職員免許法の一部を改正する法律案(内閣提出第三六号)


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     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局私学部長石川明君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中津川博郷君。
中津川委員 おはようございます。民主党の中津川でございます。
 きょうは、大臣がお越しになっていただくという予定だったんですが、何か参議院の方で本会議が入ったということで、大変残念です。ぜひきょうのこの議論を後で大臣にしっかりと伝えていただきたいということと、岸田副大臣初め局長、皆さんたちに、誠意のある具体的な回答、答弁をひとつお願いしたいと冒頭申し上げさせていただきます。
 昭和五十二年の小中学校学習指導要領全面改訂にゆとりという言葉が登場したんですね。二十五年になります。このゆとり教育というのは、現在、我が国の教育の根本理念というか、方針であると文部科学省はおっしゃいますが、そこで、お尋ねしたいんですが、今日までにゆとり教育は、その目指したもの、例えば、いろいろありましたね、受験地獄の解消とか、落ちこぼれをゼロにするとか、画一的でない創造性にあふれた若者を輩出するとか、大変理想的な目標を掲げてスタートしたというわけでありますが、これは実現できたんでしょうか。
 同時に、文部科学省は、この二十五年の経過の中で、しっかり調査して研究して評価してきたか、つまり検証してきたか。このゆとり教育の功罪を、大臣にお聞きしたかったわけでありますが、岸田さんに、ひとつ、どのように考えていらっしゃるのか、まず冒頭にお聞きしたいと思います。
岸田副大臣 御指摘のゆとり教育ですが、ゆとりというものは決して緩みとか遊びであってはならないというふうに思っております。ですから、ゆとりをどう活用するかということが大変重要なポイントだというふうに認識しておりまして、この新しい体制の中でも、ゆとりを活用して、学力においても、従来の知識や技能の習得にとどまらず、それをどう活用するのか、問題解決能力まで含めた学力を習得しなければいけないと認識しておりますし、また、健康とかあるいは道徳等も含めた生きる力というものの習得に充てなければいけないというふうに考えますし、さらには、児童生徒の意欲や興味、こういったものも重視しなければいけない、これがゆとり教育のねらいだというふうに認識しております。
 そして、このねらいのもとに、新しい学習指導要領あるいは学校週五日制、ことしの四月からスタートしたわけですが、検証してきたかという御質問がございました。
 これにつきましては、従来から、国際的なさまざまな学力調査ですとか、あるいは文部科学省、昭和五十六年から五十八年及び平成五年から七年、教育課程実施状況調査、こうした調査を行っております。この調査の中で、学ぶ意欲や習慣を身につけていないとか、あるいは受け身であるとか、それから自分の考えを持ち合わせていないとか、こういった問題点が指摘されているわけでありまして、こうした指摘された問題点を受けとめて、その新しい体制についても議論を積み重ねてきたわけであります。そして、その議論は、中教審あるいは教育課程審議会、こうした場におきましても幅広い方々の議論も経ているということであります。
 こうした評価や検証も踏まえてこのゆとり教育というものについて議論を積み重ねていって、今日に至っているということであります。ぜひ、この新しくスタートした体制の中で、先ほど申し上げましたねらいが実現されるように、しっかりとバックアップをしていきたい、そのように考えております。
中津川委員 副大臣、現場の認識は非常に甘いと思いますね。私は、二十五年、このゆとり路線の中でしっかり調査研究してきたか、現場をしっかりと把握してきたかということではちょっと不満なんですが、私がちょっと分析したんですよ。少し長くなりますが、それで後でまた御意見を賜りたいというふうに思います。
 私は、ゆとり教育がもたらした現場への影響というのは大変深刻だと思っています。それは、今副大臣が御答弁いただいたような、期待していたようなものでは全くなかった。一番、明らかな学力低下、二番、勉強からの逃避、勉強嫌いな小中学生をたくさんつくってしまった、三番目、皮肉なことに学校の荒廃が進行した、この三点であります。
 まず、一番目の学力低下については、少しデータを申し上げたいんですが、昨年の十一月に東京大学の研究グループが、十二年前に大阪大学が行った調査と全く同じ問題を使って、十二年前と同じ学校の同じ小学五年生と中学二年生を対象に、国語と算数、中学は数学になりますが、テストを実施して成績を比較したところ、興味深い結果が出ました。
 小学五年生ですと、国語の平均が、十二年前ですと七十八・八です。そして、今回が七十一・五です。算数の平均が、十二年前は八十・六ですが、今回が六十九・一です。中学二年生、国語の平均が、十二年前が七十一・七、今回が六十七・六、数学の平均が、十二年前は六十九・七、今回が六十四・六なんです。
 それで、つけ足しがありまして、塾に通う子の平均点の低下は小さいが、通っていない子の低下は大きいというコメントが書いてあるんですね。中学二年生の数学の場合、塾に通う子の平均点の低下はマイナス一・三点、しかし、塾に通わない子の平均点の低下はマイナス八点なんです。
 それと、これだけでは足りませんので、もう一つ、これは有名な調査としてよく話題に乗るんですが、国際教育到達度評価学会、IEAでありますが、これは平成十一年、調査結果が発表されたときに、文部科学省は、その前、これは平成七年にやったわけですが、その結果と比較して、順位が若干落ちている、中学二年の数学で三位から五位、理科で三位から四位ですね、しかし、わずかなものだと。それで、文部科学省の表現は、有意差はない、こういう表現で、大したことはないじゃないかと。
 確かに、依然トップグループにはいるものの、もっと前のをちょっと調べてみました。昭和三十九年から五十六年というゆとり教育の影響がなかった時点からその推移を見れば、明らかに傾向的に落ちているんですよ。むしろ、この程度の低下にとまっているのが不思議なくらいです。
 これはなぜかと考えますと、この辺を分析してもらいたいんですが、私は、私学とか塾の果たした役割が大きいという点はあると思いますよ。一〇%か二〇%ぐらいの底上げはしているかもしれません。
 もう一つ挙げましょう。これは、大学生の学力低下です。
 京都大学の西村和雄教授、慶応大学の戸瀬信之教授、埼玉大学の岡部恒治教授らによって実施された大学一年生を対象とする算数、数学テストによって判明した事実はまさにショッキングだったですね。トップレベルの大学生十人のうち二人が小学校の分数計算ができない。このことは、一九九九年に「分数ができない大学生」、そしてたしか翌年に「小数ができない大学生」として出版されて大きな反響を呼んだというのは、多分委員の方たちも御存じかと思うんですね。
 これが、今までゆとり教育を受けてきた子供たちの実態なんですよ。これらの結果を深刻に受けとめて、何が原因で学力や意欲が低下しているのかというのをもう論じなければいけないと思いますね。
 それから、一通り三点を、私の私見も交えて、データを入れながら申し上げさせてもらいますが、二番目の勉強からの逃避ですが、これは、諸外国と比較してみますと、もう明らかです。
 日本は、世界で最も勉強をしない子供のいる国になっちゃったんですね。今、皆さん、学校の先生は宿題を出さないんですよ。予習、復習もしないんです、子供。日本全国至るところに、繁華街、夜うろうろ小学生や中学生が歩き回っている姿、何も都心部だけじゃありませんよね。こういう現象ですよ。
 総務庁が九四年、九五年に、日米韓、この国際比較調査をしたんですが、七歳から十五歳までの子供が学校以外で勉強している時間を比べたところ、一時間以上勉強するというのが、日本が五六・三%、アメリカが七八・七%、韓国が八八・〇%、二時間以上勉強するとなると、日本は二三・二%、アメリカが四一・〇%、韓国が六〇・〇%です。
 総務庁に最近のはないかと言ったら、ないと言うので、この同じデータの比較はできないんですが、興味深いのが去年暮れに出たじゃないですか。昨年末に公表されたOECDの学習到達度調査ですね。日本の十五歳生徒の宿題や勉強に費やす時間が、何と三十二か国中最下位なんですよ。ゆとり教育というから、ゆとりができて、家で好きな勉強をしたり、あるいは不得意な勉強をしたりする、そういうことを期待していたんでしょう。ところが、並行して、家でも勉強しない子を大量生産してきたというのが実態ですね。
 折も折、四月二十二日月曜日です、毎日新聞の朝刊に、「発信箱」という中で「ゆとり教育」、瀬川至朗という科学環境部の記者が書いております。ちょっと急いで読ませてもらいます。
  日本人の議論は、誤解に基づくことが少なくない。例えば、「ゆとり教育」。米国などでは、自由な雰囲気の中、自主性を伸ばす教育が実践されているとみなされ、日本の「詰め込み教育」の見直しが求められる。が、米国の実情はどうか。
  一昨年までの四年間、米国特派員として、首都ワシントン近郊のメリーランド州の町に住んだ。そのとき、息子が地元の公立中学に通った経験からは、「ゆとりなんて、とんでもない」というのが正直な感想だ。
  一日七時間。日本の大学と同じで、教科ごとに教室が異なる。なのに休み時間は四分。みんな急いで移動する。トイレに行くと次の授業に遅刻する。学校が終わると、理科や社会も含めて、宿題がどっさり。各教科に「プロジェクト」というリポートを書かせる宿題があり、夜の十一時、十二時ごろまで机に向かうことも珍しくない。泣きながら、朝の五時までかかったこともあった。とにかく分量に圧倒される。
  その息子が、日本では地元の公立中学に通った。
公立中学です、
 感想を聞くと「日本の学校は楽だ」と言う。休み時間があり、何よりも宿題がほとんどないことが大きかった。帰宅してからは、学習塾を除けば、テレビやゲームの時間が長かった。時間的な「ゆとり」はすでにあるという印象だ。
  「中学校はジェイル(刑務所)と呼ばれている」。カリフォルニア州のGMS中学のベネット校長はこう教えてくれた。米国人は、子どものころから遊んでいると思ったら大間違い。しっかり鍛えなければ、自分で考え、うまく表現する能力が身に着くはずがない。
タイミングよく、こういう記事が出ておりました。
 それから、私が三点目に指摘しました学校荒廃の進行ですが、五十五年のゆとり導入と並行して、当時猛威を振るっていたのは校内暴力ですよね、これにかわって、いじめ、登校拒否、引きこもり、学級崩壊などの問題が立て続けに起きてきました。
 数字を挙げますと、いじめに関しては、昭和六十年四月から十月に起きたいじめ件数は十五万五千件、これは小中高合計であります。また、体罰は二千八百十六件、検挙、補導された小中高生は千九百二十名にも上っている。また、不登校児童生徒数ですが、ゆとりが導入された昭和五十五年に比べて、平成十年度は八・九倍にふえているんですよ。加えて、校内暴力も一時下火になっていたのが増加し始め、昭和五十五年当時のレベルまで達している。
 この実態は、一体どういうことなんでしょう。ゆとりを導入することによって教育現場がまさに暴風雨ですね。この原因を究明したのかと、私、冒頭に申し上げたんです。いかがですか。
岸田副大臣 今先生御指摘になられましたゆとりという言葉が登場してからこの二十五年間のゆとり教育についての問題点、これにつきましては真剣に受けとめなければいけないというふうに思います。
 ただ、一つちょっと整理しておかなければいけないと思いますのは、ゆとり教育というもの、そのスタートがどこからと考えるかによってちょっと年数は違うかと思いますが、約二十五年間、こうしてゆとり教育というものが言われてきました。そして、その間、いろいろ問題点も指摘されてきました。そして、そういった議論の上で、新しい学習指導要領というものが議論されて、そして四月から新しい学校の体制がスタートをしたわけであります。
 ゆとり教育におけるさまざまな問題点、これに対してさまざまな議論や検証が行われ、その議論も踏まえた上で新しい学習指導要領というものも考えられてきたわけであります。
 ですから、学力の問題、勉強からの逃避の問題あるいは学校荒廃の問題、三点御指摘をいただきました。これらの問題についても、例えば、ことし三月までの体制でいうならば、学校においては、できる子、できない子に対して、いろいろな状況に置かれている子供に対しても、ややもしますと、一律に教育が行われてきたわけでありますが、新しい体制のもとにおいて、基礎、基本は厳選するということになっているわけですが、それに上乗せが可能になるわけであります、あるいは選択も可能になるわけです。また、少人数学習あるいは習熟度別学習、個々に応じた学習も可能になるわけであります。ゆとり教育におけるいろいろな問題点を踏まえた上で、ことし四月から、そういった新しい体制、一律に行われる教育から個々に応じた教育に切りかえたというのが今日の姿であります。
 御指摘になった点、真剣に受けとめた上で、どうするべきなのか、こうした議論も行われて今日の体制がスタートしたということも御理解いただきたいと思いますし、また、新しい体制においても、これは、引き続きしっかりとした評価、検証をして、問題点があればまた改めるという謙虚な気持ち、これも必要だというふうに考えております。
中津川委員 議論をこれから深めていきたいんですが、もうすぐ改めた方がいいですよ。僕は認識がまだまだ甘いと思います。少人数学級とか習熟度別なんというのは、もうこれは私学なんかとっくにやっているわけでありますから、塾なんかも当然そうでありますから。
 そこで、私は、このままいくとちょっと問題が出てくるんじゃないかと。それは、今ちょっと触れました公立と私立の格差の問題です。
 平成十四年度の公立中学校とある私立中学校の主要五科目の授業時間数を比較しますと、公立が千五百六十五時間に対して、私立は二千三百八十時間、約一・五倍の開きがあるんですよ。今度の土曜日を休みにしないという私立の学校は多いですね。しかし、これは無理なことではないんです、私立が無理言っていることじゃないんです。この私立中学校の授業時間数は、ゆとり以前の公立学校の授業時間数、これは約二千二百四十時間ですが、同じなんですよ。
 このまま、今文部省が進めているゆとり教育というのは、日本に階級社会をもたらすんじゃないか。私立と公立、塾に通う子と通わない子、あるいは通える子、通えない子と言ってもいいかもしれません、世帯の収入とか、あるいは都会と地方とかでそういう格差が生まれる危険性というものがあると思うのですが、いかがですか。
岸田副大臣 今御指摘になられた私立学校あるいは塾の問題につきましては、基本的には公立学校の信頼回復ということでこたえていかなければいけないというふうに思っております。
 時間数においても、確かに新しい学習指導要領、七%授業数は削減されるわけでありますが、時間の使い方ということが重要だというふうに思っております。全員に一律同じ教育を行っていた今までの体制と比べて、新しい体制においては、基礎、基本の上に上乗せ、選択あるいは習熟度別学習、個々の対応を可能にする、要するに、効率的に時間を使うというのが新しい体制の大変重要なポイントだというふうに思っています。時間数の削減ということ、これも決して軽視することはできませんが、時間をいかに効率的に使うかということが大変重要だと思います。
 また、こうした個々に応じた教育を実現するためには、教員の質とそして教員の数、これが重要だというふうに思っています。教員の増員計画等においてもしっかりと今進めているところであります。五年間で二万六千九百人の増員を計画した第七次計画も今進めているわけでありますし、そうした質、量とも新しい体制を支える教員の体制、こういったものも公立学校においてしっかりと行っていく、こういったことによって公立学校の信頼を維持していくこと、このことが私立あるいは塾との関係において、あるべき姿を実現するために重要なことだというふうに思っています。
中津川委員 副大臣、私の考えと同じなんですよ、その目的とするところは。公立学校の信頼回復、後で触れたいと思うのですが、教員の質と数の向上。だけれども、今のようなやり方じゃ無理なんだということを私は申し上げているのです。
 そこで、二つの外国の例を少し申し上げたいのですが、アメリカなんですが、一九六〇年から七〇年代前半にかけて、リベラルな風潮のもとで、画一的な教育を排除して、子供の選択を重視して個性を尊重するという、今日本がやろうとしているような、総合学習とちょっと似ています、積極的に教え込まない、自分たちで見つけなさい、ふわっとした教育、それが進められたのですよ。その結果どうなったか。暴力や麻薬問題で学校が荒れて、学力は著しく低下してしまったのです。
 そこで、一九八三年にレーガン政権が、あの有名な「危機に立つ国家」という報告書を出して、教育方針を転換したのですよ。この報告書は、政府から国民へ向けての教育改革宣言とも言えて、全米で三千五百万部も売れたのです。大ベストセラーですよ。レーガン政権は、教育は大事なんだ、そういう思いで取り組んだ。
 しかも、そのころ日本がお手本だったのですよ。教育視察団というのが、日本のゆとり教育以前の教育の実態を知ろう、日本はすごいな、敗戦直後、焼け跡からこれだけになってきたんだ、日本は教育に熱心な国なんだ、みんなで教育をやってきたからここまで来たんだという、その実態を調べに来たのですよ。そこで、理数教育というのは国づくりの根幹と位置づけて、授業時間、卒業単位も増強したのですよ。そして、この方針がブッシュ、クリントン、そしてブッシュ・ジュニアと引き継がれているのです。
 結果、大学入学資格学力検査の成績は、一九九八年の数学の平均点が過去二十五年の最高を記録して、二〇〇〇年では過去三十年の最高記録を更新した。また、全体の教育レベルについても取り組んだために、学校内の規範も大変よくなったのです。今までは、学校というのが一番危険な場所だった、よく映画とかテレビでもやりました。学校が再生を果たしたのですよ。だから、アメリカの経済がこんなによくなったんじゃないですか。日本を見てください。経済がだめ、教育がだめ、これは平行線なんです。
 イギリスについても全く同じなんですよ。第二次世界大戦以降の経済的衰退、これが深刻化して、七〇年代以降、トピック学習、これも文部省がとる総合学習と同じです。教育政策を、考える力の重視した詰め込みから、子供中心で楽しく勉強させる、そういう方向へ転換したことで学力が低下して、国力も低下したんですよ。
 これを救ったのがサッチャーさんじゃないですか。一九八八年、首相は、イギリスの最大の課題は教育の質の向上なんだ、日本、ドイツ、アメリカの経済競争に勝つためにはよい教育を受けた若者が必要なんだ、こういう思いで、イギリスの未来をかけて教育改革に取り組んで、大改革に着手したんですね。
 具体的には、ナショナルカリキュラムというのによって、七歳、十一歳、十四歳で全国共通の到達度試験、ナショナルテスト、学校別に公表されました。先生も評価されました。学校単位でも競争が働く制度になったんですね。競争原理というのは大事なんですよ。この改革が、アメリカと同じ、メージャー、ブレアに引き継がれているんですよ。ブレア首相なんか、特に教育、教育、教育、教育と言ったじゃないですか。より一層の学力向上政策を出しているんですね。それで、イギリスの親の九〇%がブレア首相の教育政策を支持しているんですよ。イギリスも教育によって今復活しているんですよ。
 全部の国の例を出したら時間がありませんので、中国もそうなんですよ。中国もそうなんです。インドもそうなんです。シンガポールもそうなんです。どの国も、グローバルなこの時代を生き残るかぎは人材なんだ、教育を国の政策の根幹にするんだということ、その思いで真剣に取り組んでいるんですね。
 そんな中、日本を見てください。ゆとりと称して、きれいな言葉並べて、個性、生きる力、何ですか。教育内容を削減しているのは日本だけじゃないですか。アメリカ、イギリスのやっているのをバックしているんですよ、後追いしているんです。
 私は、そう長い時間じゃないとき、岸田副大臣も立派な方でありますし、遠山大臣だって見識があると思います、きょうは局長もお見えですが、皆さん見識がありますよ、日本人はばかじゃありません、これを変えるときが来ると思います。早ければ早いほどいいですよ。これ以上国力を落としてどうするんですか、いかがですか。
岸田副大臣 二十一世紀、新しい世紀を迎えて、やはり各国ともたくましい有為な人材を持たなければいけない、そういった危機感のもとに教育改革を進めているという現状、このことについては真剣に受けとめ、日本もやはり同じだという意識を持たなければいけないというふうに思います。
 そして、今先生の方からいろいろ例をいただきましたアメリカとかイギリスの例、こうした各国の取り組みは、我々は大いに参考にしなければいけないというふうに思っております。
 しかし、その上で、日本は、決してアメリカやイギリスのかつての姿を目指しているというのではなくして、例えば、アメリカも参考にしたという日本の教育制度のいい部分をしっかりと生かした上で、イギリス等で行われているさまざまな教育改革の試み、こういったものを参考にして、よりよいものをつくり上げようということであります。決して日本はアメリカやイギリスのかつての姿を目指しているというようなことではなくして、日本のよさを生かしつつ、日本においてどのような教育制度がいいのか、これを真剣に考えなければいけない、こうした姿勢や心構えが大切だというふうに思っております。
 ですから、学力についても、今削減をしていいのかという御指摘をいただきましたが、削減というのは、例えば授業時間数の問題ですとか、あるいは新しい学習指導要領で学習項目が削減されたということが随分指摘されるわけでありますが、これにつきましても、基礎、基本の部分だけとらえれば、確かに、従来全員に一律に行われた教育の項目と比べれば、削減されたということはあるんでありましょう。
 しかし、この上に、上乗せや選択やさまざまな可能性があるわけであります。全体として本当に削減されているのかということも見きわめなければいけませんし、さらには、こうした個々に応じた学習が行われるということによって、どちらの方が項目においても定着がしっかりとしたものになるのかどうか、この辺も含めた上で新しい学習体制というものも評価しなければいけないんではないか、そのように感じております。
 ただ、そうしたさまざまな危機感や御指摘については謙虚に受けとめながら、検証を続けていかなければいけない、このことは大切だというふうに認識しております。
中津川委員 ぜひしっかりとした検証をしていただきたいと思いますね。
 それで、月曜日、二十二日ですが、私の議員会館に、小学校、中学校、高校生を持つお母さんたち十二人がお見えになって、きょうのこの委員会もあるので、現場の声を聞こうということで来ていただきました。まあ、非難ごうごうですよ、大体想像つくと思いますが。
 どんなことがあったかといいますと、どんな話が出たかといいますと、ちょうど十三日、土曜日、これから学校五日制が始まったわけで、新聞でもたくさん載りました。大きいのが家でごろごろしている、困ったと。
 それから、小学校三年生のお子さんを持つ方は、ゆとり教育というけれども、何か一日六時間の授業の日が週三日になったそうですよ、学校で。だから、ゆとりどころじゃない、子供、へとへとだと言っているんです。私、びっくりしたんですけれども、そんな現場もあるんですかね。
 それから、中学生を持つお母さんは、学校の行事とか運動会とか文化祭とかクラブ練習とか、そういうのも何かやらなくなるようなことを聞いたとか、また、ある小学生のお母さんたちは、学校の先生に、週五日になったんだから、学力はこれ以上つけるのは難しいんだ、学力低下はもうこれはしようがないんだと言われたと言うんですよ。先生がそんなんじゃしようがないとため息ついていました。みんなうなずいていましたよ。
 つまり、学校を、私もマイナスのところだけ引っ張ったわけじゃありませんから、だれ一人として信頼していない、新制度を信頼していない、不信感でいっぱいだということを申し上げたいと思うんです。
 そして、同じ日、読売新聞、これは四月二十二日ですが、親子モニターという取材が大きく新聞に取り上げられました。百八十八組に親子モニターをお願いしたアンケートの結果ということですが、学校側から保護者への説明が今のところないという答えが二〇%、説明はあったが十分納得できないという回答が四五%もあった。モニターをする人、モニターを引き受けるくらいですから意識は高いかと思いますし、やはり教育を考えている、特に真剣に考えている人たちだと思うんですが、それでこのデータですよね。五五%の家庭が、学校や町内会などから休日の活動についての情報提供がない。土曜日の過ごし方に関する情報が圧倒的に不足している。あるいは、体験活動やボランティアをしたいと思っても、連絡先の心当たりがない、その家庭も全体の三分の一に上ったというんですね。
 ゆとりということで、現実にスタートしたのが十三日からだと思うんですけれども、これが現場の実態ですよね。
 昨年、全国学習塾協会が九月から十一月に、学校五日になって何をしたいかと聞いたら、子供はもう、遊びたい、ゲームをしたい、ゆっくり寝ていたいというのがほとんどなんですよ。それは正直だと思います、そのとおりだと思います。親は、勉強させたい、趣味を何かやらせたい、クラブ活動をさせたい、こんな気持ちなんですね。ずれが物すごくあるわけです。学校五日制でゆとりを感じるのはだれか、この質問に、子供の六割以上は自分たちと言うんです、親は学校の先生と言うんです。
 こういう現場の今の戸惑い、いかが思っていますか。
岸田副大臣 新しい体制がスタートして、さまざまな不安が指摘されているということ、あるいは、先ほど新しい体制のねらいについて申し上げましたが、そうしたねらいが誤解されているということ、さらには説明がないというような不満が大変多いということ、このことは大変重大なことであり、我々真剣に受けとめなければいけないというふうに思います。
 新しい体制、一つのねらいを持ち、そしてあるべき姿を目指してスタートしたわけでありますが、こうした体制に対する信頼性がないということは大変重要なことであり、幾らいい制度であっても、信頼がなければそれを活用されることはないというふうに思います。ぜひ、この信頼をしっかりと得るためにも、しっかりとした説明責任を、文部科学省のみならず関係者、果たしていかなければいけない、このことを強く感じます。
 そのために、例えば文部科学省におきましても、この三月までに全国で教育改革シンポジウムを開催してきたわけでありますが、これを四月以降は、さらに細かく、各県レベルでこうした説明会等を開くなどしまして、こうした説明責任を果たすべく努力をしていく所存であります。
 そして、現状を見るにつきましても、それで十分だろうかということも考えながら、さらに説明責任を果たすために何をするべきなのか、真剣に考えていきたいと思っております。
中津川委員 一月十七日、文部科学省が発表された確かな学力の向上のための二〇〇二アピール「学びのすすめ」ですが、これは、やはりこれはまずいな、学力低下、そしてゆとり教育というもの、ちょっと方針転換をしないといけないんじゃないかということで、この間際になって出したんじゃないですか。
矢野政府参考人 去る一月に、確かな学力の向上のための二〇〇二アピール「学びのすすめ」と題する大臣のアピールを出したわけでございますけれども、これは、一つには、新しい学習指導要領についての社会の各方面から寄せられた、児童生徒の学力が低下するのではないか、そういう懸念、不安があるわけでございますので、そうしたものにもこたえるということもございました。
 さらには、OECDの調査の結果、我が国の児童生徒の学力は国際的には上位にあるわけでございますけれども、一つの大きな課題として、宿題や自分の勉強をする時間が参加国中最低といったような、そういう大変大きな課題も明らかになったわけでございます。
 そういう状況の中で、いま一度、新しい学習指導要領のねらいを明確に示して、確かな学力の向上に向けて各学校における積極的な取り組みを促そう、そういうものでございまして、これはあくまでも、新しい学習指導要領がねらいとする、そういう学力の向上のために、いま一度積極的な取り組みを各学校に促すわけでございますので、そういう意味では、今回言われているような従来の方針を転換するものではないわけでございます。
中津川委員 もうはっきりと、方針転換をしたと言うのが信頼回復しますよ。
 そんなことを申し上げて、ちょうど大臣お見えになりましたので、核心の部分はもういろいろ今議論をしてしまったので、残念なんですが、せっかくお越しいただきましたので、大臣にひとつお答え願いたいと思うんです。
 教員免許制度、これについてお伺いします。
 今回の法改正は、中学や高校の教師が小学校で教えるということも可能になる。また、その逆があってもいいのではないかというようなことも委員会でも議論されておりますね。
 私は、大臣、教育の原点は教師だと思っているのです。どんなに制度をいじっても、どんなに制度改革をしても、基本的には教師、教師改革が必要なんじゃないか。自分でも、三百人近い教職員を抱えて経営してまいりました。子供が伸びる、学力がつく、いい子になるというのは教師、これによって決まってしまうんですね。
 これは、イギリスでも今ブレアさん一生懸命で、成果を上げた教師は公立校でもどんどん昇給するんですよ。それから、中国では、二〇〇〇年に特級教師育成計画というのが策定されたそうです。特級教師というのは、平たく言えばスーパー教師で、生徒指導のまさにプロですよ。この資格を取れば、退職後も特別手当が終身支給されるそうなんですよ。何か、これになるには二千人に三人というエリート教師ということなんですがね。
 私は、日本の場合、教師の採用とか研修制度が今まで十分ではなかったんじゃないだろうか、そんな思いがしているわけであります。
 この話を突き詰めて議論するには、田中前総理の、公務員給与が上がって教師の待遇もよくなった、その辺のところの議論もしなければいけないんですが、きょうは時間がないので、そこのところは、私なりの考えがあるんですが、省かせていただきますが、教育、人を教えるということ、知育、徳育、体育があります。私は選挙区で、美育というものを、地方議員のときに提唱してやりました。それからもう一つ、今、これから大事なのは職業学ですよね。
 それはやはり教師で決まるんですよ。だから、教育の大切さというものを現場の教師に徹底させる、そういう研修制度充実、あるいは学校教育を、そういう教育を外部から監視するシステムなんというのを、それで、競争原理も取り入れるということが必要じゃないかと私は思っているんです。
 ですから、私は、公立校でも教師の評価制度を取り入れていいんじゃないかと。一生懸命やった先生は給料上げていいじゃないですか。それで、クラスの授業ができない、学級崩壊、経営ができない、そういう人は、やはりもっと向いている仕事がありますよ、やめていただくと。指導力のある先生を欧米並みに育てていく。公立の中でそれをやりたいという英断、ありますか、大臣。
遠山国務大臣 委員御指摘のように、教育はもう教員の力量にかかっていると思います。ですから、教員がしっかりとその力を発揮していただいていい教育を展開していただくというのが本当に大事だと思っております。教育を担う教員の意欲あるいは努力というものが適正に評価されるべしというお話は、私もそうだと思います。
 このため、これまでも、我が省といたしましては、各都道府県教育委員会などに対しまして、勤務評定を適切に実施するとともに、その評定結果を人事管理上活用するよう指導してまいっているところでございます。
 また、文部科学省といたしましては、教員の評価とそれに応じた処遇がより一層適切になされますよう、現在、すべての都道府県教育委員会において実施していただきたいということで言っておりますのが二つございます。
 一つは、指導力不足教員などについて、継続的な指導、研修を行う、そして状況に応じて分限処分を迅速かつ適正に行うために必要な人事管理システムの構築、これに関する調査研究の事業を行って、実践に結びつけていただく。
 それから二番目には、優秀な教員を表彰するとともに、それに連動して、給与上の措置を実施するための調査研究事業を開始いたしております。これはもう全県で今準備に入っております。
 それと、大変大事なことでございますけれども、さきの通常国会、昨年、法律改正を通していただいたわけでございますが、それに基づきまして、本年一月から、市町村立小中学校等の指導が不適切な教員を現場から離しまして、都道府県の教員以外の職へ異動させることが可能となったところでございます。
 これらの制度を、形だけではなくて、実際にそういうことを活用しながら、それぞれの学校の教員が本当に指導力を持つように、そういう人事政策をやってもらいたいものだと思っているところでございます。
 今後とも、教員に関するしっかりしたそういう評価と、それに応じた処遇というものを一層適切に実施するよう、指導、支援していきたいと考えております。
中津川委員 関連して、校長先生の問題について少し議論したいんですが、校長というのはこれから大変大事なポジションになってくると思うんですね。学校経営の責任者になる。しかし、今の校長先生というのは、人事権も経営権もないんですよね。何かマスコミで、不祥事が起きたりすると、校長先生にマイク向けられて、何かすべて校長先生に責任があるような様子が映し出されますが、あれは気の毒でしようがないですね。知り合いの校長に聞いたら、自分が使えるお金というのは年間十万ちょっとしかない、窓が壊れたとか備品の整理とかそんなものしかないんだと。
 今、学校の自由化、そして子供と親が選ぶ学校、地域の中で生きていく学校というのがテーマでありますね。校長先生の重要性というのは、僕はこれから増してくると思うんです。校長先生が学校経営、人事とか、責任を持つ。そういう権限も大幅に、当然責任もですよ、権限委譲をすることが、僕は流れではないかと。そして、子供と親が学校を選ぶわけでありますから、この学校は大変進学に熱心だ、この学校は部活に熱心だ、この学校はボランティア教育に熱心だ、いろいろな地域の学校があっていいじゃないですか。それで生徒が来なくなれば考えますよ。いかがですか。
矢野政府参考人 学校におきまして校長がリーダーシップを発揮できるようにするためには、教育課程、教育の内容でございますが、それに予算、人事など、学校運営に関し校長の裁量権を拡大することが御指摘のように必要であるわけでございます。
 このため、我が省といたしましては、教育課程の基準の大綱化、弾力化を行いまして、校長が創意工夫を凝らした教育課程を編成できるようにするということが一つ。
 それから、昨年法改正を行いまして、市町村立小中学校の教職員の人事について校長の意見を一層反映できるように、市町村教育委員会から人事権者である都道府県教育委員会への内申に校長の意見を付することといたしたところでございます。
 さらに、教育委員会に対しましては、私ども、学校管理規則で学校、校長と教育委員会の関係が規定されているわけでございますけれども、その学校管理規則につきまして、学校運営にかかわる教育委員会の許可とか承認、あるいは報告、届け出等を減らすように、学校管理規則を見直すように指導いたしているところでございます。
 さらには、予算につきまして、校長が自由にその使途を決められる、いわゆる校長裁量経費の措置、さらには予算の執行権限の拡大などにつきまして、学校予算に関する校長の権限、校長の裁量範囲を広げるといったようなことにつきまして、各都道府県に対して積極的な取り組みを促しているところでございます。
 そういう意味で、今後とも、校長のリーダーシップのもと、創意工夫を生かした特色ある学校づくりが行われるように、御指摘のとおり、校長の裁量権の拡大に私どもとしても努めてまいりたいと考えているところでございます。
中津川委員 今、日本は、どん底からなかなか抜け出せない状況におりまして、いろいろなうみが出ていますね。BSE問題、食肉ラベルの張りかえの問題、外務省の問題。これは、原因は、突き詰めると同じなんですよ。消費者の立場に立っていなかったために問題が生じているんですね。
 教育も同じじゃないでしょうか。サービスを提供するのは、これは教師、まあ行政ですね。受ける側は生徒、親ですよ。主人公は、教育を受ける生徒であって、児童である。私は、今この認識をしっかりとすることだと思うんです。教育を受ける立場からの教育を実現しなければいけないんです。
 今までそれをやっていたのは私学とか塾ですよ。ですから、公立高校の場合はもう生徒は自然に来ると、来るわけですね。そうじゃないんです。生徒が来なければ教育はできない。当然、公立を私立が凌駕するのは、これは当たり前だったわけです。こういう民間教育のいいところを公教育の中で取り入れる、いかがですか。
遠山国務大臣 確かに、これからの公教育におきましては、教育サービスの受け手といいますか、児童生徒あるいは保護者などの立場を十分踏まえた教育を行っていくということが極めて重要と考えております。
 こうした観点から幾つかの施策を実施いたしておりますけれども、まず、教育を受ける側のニーズをしっかりと受けとめることができますように、平成十二年四月から学校評議員制度を導入いたしました。また、地域や保護者に対して説明責任を果たすために、小中高等学校等の設置基準におきまして、学校が自己評価に努めることあるいは積極的な情報提供を行うことについて規定をいたしまして、本年四月から実施したところでございます。
 このような取り組みは、地域と一体となった信頼される学校づくりの観点から、学校経営に大きな転換をもたらすものと考えておりますが、しかし、本当に大事なのは、委員御指摘のように、校長あるいは教員の一人一人がそういった考え方に立って、しっかりとそのニーズを踏まえながらあるべき教育を展開してもらう、そういう姿勢が大変大事だと思っております。
 今後とも、そうしたしっかりした公教育の確立に向けて、私どもとしても努力をしてまいりたいと考えます。
中津川委員 最後になりましたが、ちょっと大事なことをお聞きしたいと思うんですが、今度、内申書、調査書と呼ばれておりますが、相対評価ではなく絶対評価になるんです。そうですね。つまり、学校の通信簿は全部、場合によったらオール五もあるわけです、オール一もある。何ですか、これという感じですよね。
 子供に勉強を教えて、一回で理解できる子もいますよ、だけれども十回やってようやく理解できる子もいる。それはそれでいいじゃないですか。勉強が得意な子、あるいは勉強は嫌いだけれども、できないけれども、駆けっこが速いとか、人よりも歌がうまいとか、あるいは人前で話すことが得意だとか、人前で話すのは苦手だけれどもパソコンをいじったり何か物をつくったりするのが得意だとか、それぞれみんな子供はいいところを持っているんですよ。勉強もやはり得意な子というのはいて、そしてまたエリート教育も必要ですよ。これをどうやって評価するんですか。これは文部省は揺れていると思うんですよ。
 今度の学びのすすめの中に、私読ませてもらったら、学力テストをやるとありますよね。これはどうやって点数をつけるんですか、矛盾じゃないですか。きょうは偏差値論争はしませんけれども、大臣は偏差値をどんなふうに思っているのかなと思っているんです。昔、偏差値が悪だと言って追放した大臣がいましたけれども、全く認識も甚だしい。偏差値は、全体の中でいる自分の位置なんですよ。百メートル駆けっこして何秒で走るかというのはありますよね。全体の位置を知るんですよ。ただそれが、入試のとき、運用の仕方で、それだけで決めるのがいけないわけですよね。運用の問題なんですよね。それが極端になって今度は絶対評価と。
 先ほど大臣がお見えになる前に、文部省のこれからの方針でいくと、これから日本の国力がどんどん下がっていく、もう欧米にどんどんやられちゃうな、そんな議論をしていたんですが、私は、何か文部省に一貫性がないような気がするんです。全国テストは相対評価になるんですか、絶対評価を導入する意味がどうなっているんだろう、両者の関係がどうなっているんだろうと。全国学力テスト、これは四十年ぶりにやるんですよね。混乱しているんですか。副大臣でもいいですから、ちょっと一言で、済みません。
岸田副大臣 まず、相対評価、絶対評価の問題ですが、新しい学習指導要領、先ほどもちょっとお話をさせていただきましたが、全員に一律に教育を行うのではなくして、基礎、基本の上に個々に応じた教育を行うというのが一つのねらいであります。
 ですから、個々に応じた教育を行うということで少人数学習や習熟度別学習を行うわけでありますから、学習単位というのも絶えず変わるわけであります。組み合わせも数も変わるということになりますと、従来のように一律に教育を行い、その中で、全体の中でどこに位置するかという相対的な評価というもの、これは新しい体制の中ではなじまないということ、これは十分御理解いただけるというふうに思います。
 やはり個々に応じた教育を行う以上、個々の学習到達状況に応じた評価をしなければいけない、その目標に応じた絶対評価をしなければいけない、新しい学習指導要領とこの評価の問題はセットになった問題だというふうに理解しております。
 そして、確かに新しい体制に対する戸惑いの声も聞いておりますが、これに対しては、しっかりとした参考例等をつくることによって、その理解に努めていかなければいけないというふうに思っております。
 また、全国の学力調査との関係でありますけれども、学力調査については、国における教育課程の浸透状況を把握して、教育課程を改める際のしっかりとした材料にしなければいけない、検証をする材料にしなければいけないということで、こうした学力調査を行うわけであります。ですから、個々の評価と学力調査は趣旨が違うわけでありますから、矛盾するものではないというふうに理解しております。
中津川委員 いろいろきょう議論してまいりました。
 最後に大臣、生きる力とは何ですか。大臣にお聞きしたいんです。
遠山国務大臣 今般の新しい学習指導要領でねらいとしているいろいろな力を総合したものを生きる力と私は言っていると思っております。
 まず、学力については、基礎、基本をしっかりと身につけた上で、自分で考えるあるいは自分で行動する、そういう力を持つというのが一点ございましょうし、また、学力だけではなくて、豊かな人間性を持った子供でなくてはいけないわけでございますが、そのことについては、心の教育の重要性というものももちろん包含していると思います。
 そして、さらには、もちろん健やかな体を持ち、いろいろなことに耐え得る、そういった能力を持つというのも大切だと思っておりますが、これからの変転きわまりないと思われます、あるいは不透明な社会ということを考えますと、いろいろな事態が生じたときに、そこで揺らぐことなく、自分でしっかりと考えそこを乗り越えていく、そういった力を持つものを総称して生きる力であると思います。
 したがいまして、学力、あるいは豊かな心、健やかな体、そのほかに私は意欲というもの、生きる意欲、あるいはみずから学ぼうとする意欲、物事を乗り越えようとするチャレンジする心、そういったものが総合的に育成されるというようなことが生きる力なのかなというふうに思っている次第でございます。
中津川委員 個性とか、生きる力とか、ゆとりとか、思いやりとか、どうもソフトクリームのような耳ざわりのいい言葉を羅列し過ぎているような感じがします。私は、もっとはっきりとしたメッセージを伝えるべきではないだろうかと思うんですよ。生きる力、今大臣からお聞きしましたけれども、何となくわかって何となくわからないわけであります。
 私は、生きる力というのはそんな難しいことじゃないと思うんですよ。世の中に出て、自分が自立して、自分ひとりで飯が食えるんですよ。そういう子供をつくることじゃないですか。それが今回の指導要領でそういう形になっているかどうか、私は非常に心配していましたもので、きょう議論をさせていただきました。
 ありがとうございました。
河村委員長 次に、鎌田さゆり君。
鎌田委員 おはようございます。民主党の鎌田さゆりでございます。
 質問に先立ちまして、ちょっとけさだったので急だったんですけれども、ぜひお伺いをしたいこと、あるいは要望も含めてなんですが、お話しさせていただきたいことがありますので、そちらから入らせていただきます。
 質問に先立ちまして申し上げますのは、アフガニスタンへの教育復興支援について触れさせていただきたいと思うんです。
 御存じのとおり、一九七九年のソ連軍の侵攻、それから続きました長い間の内戦、そしてまたアメリカ同時多発テロ後の空爆と、この二十三年間、もう長い間苦難の歴史を刻んできたアフガニスタンであります。今まさに復興の歩みを踏み出したところであるということは、もう多くの方が御存じの事実だと思います。
 先日も、アフガニスタンの教育大臣が日本を訪問され、遠山大臣また岸田副大臣初め当文部科学委員会の皆様も歓迎をし、そしてこれからの教育復興をしっかりとしていくというお約束も大臣は述べられていらっしゃいました。
 実は、私たち民主党としましても、女性議員団をアフガニスタンに派遣をしました。私自身も、そのメンバーの一人として、今月の五日から一週間の日程で、パキスタンとアフガニスタンを訪ねていってまいりました。丸々四日間、カブール市内を中心に、また郊外を見て回ってきたんです。
 私自身は、一九六五年、昭和四十年の生まれでございますので、我が国の戦後の復興の時代、時期というものは、白黒のテレビの映像だとか、あるいは親から、周辺の先輩方から伝え聞く話でしか知らないんですけれども、現地に入りまして、まさにこれなのかなと。戦後の復興の力強さ、たくましさ、純粋な、働くことに生き生きとして、少しのお金だけれども、それを得るために毎朝ショベルを担いで出かけていく人たちの姿を見て、これなのかなということを実は感じてきまして、これはすごいものだと思って帰ってきたんです。
 特に、この過去五年間は、タリバン政権下の中で、女性たちというのは外の世界と、ブルカというあの全身を覆う頭からのかぶり物、あれによりまして遮断されていました。この女性たちにとって、今、教育復興の中では特に識字教育、あるいは就労支援というものが中心になっている喫緊の課題だと思うんです。
 また、過去六年間、教育現場からシャットアウトされてきた女の子それから女性の教員、この人たちを含めて、多くの国民にとって、いわばアフガン全体で識字教育を充実させていくこと。あるいはまた、学校の施設を見ますと、壁と床だけはかろうじて姿をとどめておるんですけれども、冷たいコンクリートにブルーシート一枚だけ敷かれて、そこに直座りしている男女の子供たち、生徒たち、先生たちも全く同じです、机もいすも何もありません。
 そういった施設整備も急がなければならないんですが、この戦後の復興で、特に教育支援というのは、私は、まさにこの日本だからこそやれること、また、与野党の壁を超えてオール・ジャパンで、遠山文部大臣を筆頭にオール・ジャパンでやれることだというふうに確信の思いを抱いて帰ってきたんです。
 ちょうど、岸田副大臣を本部長といいましょうか、筆頭にして、復興支援の体制の枠組みが、文部科学省の中でというか、政府内部であるというふうにもお聞きをしましたけれども、私は、国際的な、外国での紛争解決を武力でもって臨まないというこの日本の基本姿勢、これも同時にあります、だからこそ、この戦後の平和復興支援、特に教育支援は、日本はぜひやるべきだと思うんです。
 まず、岸田副大臣に、これからの教育の復興支援のスケジュール、目標あるいは意欲などもお伺いをしたいと思うんです。
岸田副大臣 まず、先生御指摘になられましたように、アフガニスタンの支援における教育の重要性、大変強く認識しております。
 先日、アミン教育大臣が来日されたときに、私もいろいろとお話をさせていただいたんですが、その中で、大変印象的でありましたのは、アフガニスタンの復興に関しては、世界じゅうの国々がいろいろな形で支援をしてくれる、このことは大変ありがたいわけですが、それぞれの国には、アフガニスタンとのかかわりにおいていろいろな歴史的な経緯があり、また、地政学上のいろいろな関係があるわけであります、そうしたさまざまな事情を考えますときに、特に教育においては日本に期待するということを再三この教育大臣が言っておられたこと、これは特に印象に残っております。
 このさまざまな復興支援の中で、教育において日本に対する期待が大変強いんだなということを改めて認識しまして、身の引き締まる思いがいたしました。そういった思いでこの教育支援を考えていかなければいけない、力を尽くしていかなければいけないと強く感じているところであります。
 そして、このアミン教育大臣来日の際に、一応、我が国といたしまして、教育専門家二名を派遣するということ、さらには、今現在日本の四つの女子大学においてプログラムを進めておりますが、女性教員の研修というもの、これについても提案させていただき、またユネスコを通じた識字センターの建設という識字教育支援、さらには、文部科学省の協力のもと、NGOが学校募金活動を行うプロジェクト、この四つの支援について提案をさせていただきました。
 四月六日から十九日まで、第二次アフガニスタン復興支援調査団というものが派遣されておりますが、当省からは内海成治参与が参加しておりまして、現地調査を行ったところであります。この結果も踏まえつつ、五月中旬から教育専門家を派遣して、将来にわたる教育支援につきまして詳細を詰めていきたいというふうに考えております。
 これがこれからのスケジュールだと考えております。
鎌田委員 ありがとうございました。近いところでは五月中旬からそれが具体的に始まっていくということで、私、岸田副大臣が初めにおっしゃったように、アフガンにはアフガンの独自な文化と、そこの人たちにしか理解できないような特異性もあると思うんですね。そこに、周辺の諸外国が、自分たちのエゴでもって、自分たちの制度や考え方を押しつけてやっていくということは、もちろんあってはならないことだと思うんですけれども、だからこそ、これはすごく長い目で、それこそ日本の教育も百年の計でやらなくちゃいけないけれども、アフガンのこの二十三年前に時がとまってしまった、それを今取り戻そう、あの美しき緑と水の文化の国をもう一度という思いでいるところに対して、日本としても長い目でやっていかなくちゃいけないことだと思います。
 もちろん、アフガニスタンのほかにも、東ティモールを初め、教育支援をしていかなくちゃいけないところはたくさんありますが、やはりこのアフガニスタンというのは、私、二十世紀、世界が極端な話ほうっておいた、平和復興や教育復興の崇高なそういった理念などをそれぞれの諸外国は持っていながら、アフガンに対してはほっておいた、そして空爆があったときにだけちょっと目を向けて、空爆が終わった後も少し目を向けているけれども、イスラエル、パレスチナに、またどおっとそっちに目がいってしまって、アフガンの復興というものが今後先細りにならないように、心配をしながら、ぜひこれは充実をしていかなくちゃいけないし、長い目で見てやっていただきたいという思いを込めて申し上げたんです。
 ぜひ、今おっしゃった四つの支援策の充実を図るとともに、特に、遠山大臣は女性であります、アフガンは女性の識字率というものを大幅にアップをしなくちゃいけないということを物すごく考えているようです。シマ・サマル女性大臣も一生懸命頑張ってはいるけれども、やはり日本との、特に日本の女性との連携というものをシマ・サマル大臣も強く求めていた、その直接の言葉を私も聞いてまいりました。政府の方が行っていらっしゃって、現地を見ていらっしゃる、加えて、あわせて、さらに充実を図るということで、現地のNGOを励まし、そして、お金だけで日本が目立つというのではなくて、人材やシステム構築のソフト面でも、先ほどもイギリスを大分持ち上げるお話もありましたけれども、イギリスが大分ソフト面で活躍をしているというふうに現地で聞かされてまいりました。でも、現地の方は、いや、違う、お金で日本が目立つんじゃなくて、人材とソフト面、システム構築面で日本が目立つべきだというふうに直接聞いてまいりました。
 ですから、大臣もしくは副大臣、ぜひ大臣になんですが、機会をとらえて現地に赴き、カブール、ISAFもいます。国際治安部隊のISAFがしっかりと治安維持に努めています。世界のNGOが、民間人がそうやって元気に活動して頑張っています。現地に足を踏み入れて、教育の現場を視察し、女性の識字率アップ、また女性の教育の支援ということで日本の姿勢をアピールするということ、私は野党でありますけれども、オール・ジャパンでやるべきだと思いますので、そのことをあえて提言させていただきますが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 アフガンというイスラムの世界の一角であのような悲惨な状況になっているということを、私はトルコにいたこともありまして、長年タリバン政権の問題性について認識をしておりました。
 あの空爆後のアフガンをどう立て直すかという復興期に、いち早く私は教育が大事だということで、日本の中では一番最初にアフガンに対する教育の重要性ということを取り上げまして、昨年の秋以降、岸田副大臣をキャップにしまして、いかにしてアフガンにおける教育を充実していくかということについての研究をしてもらってきております。
 私自身は、ちょうど終戦のときに小学校一年生でございましたから、本当に何もないときから日本が立ち上がってきた、そして今日までの国力に至ったときの教育の重要性というのを身をもって体験してまいっております。そのようなことから、アフガンにおきまして、いろいろなことが今、インフラから始まって、医療とかあろうかと思いますけれども、本当にあそこが平和な国になり、世界の一角として重要な、戦略的な意味もありますし、豊かな文化、緑というものをさらに復興させていくというには、やはり教育が大事ではないかと思っているところでございます。
 そういう思いをもちろん持っておりまして、機会があれば向こうにも行ってと思っているところでございますし、もちろん女性教育についても関心があります、識字教育。それから、やはり子供たちをどうやっていくかということでございまして、それには、善意だけではなくて、善意と同時に大事なのは、かなりきちんと客観的に状況を見て、そしてそこを、本当にふさわしい支援の構想を立てて、息を長くやっていく必要があるのではないかなと思っているところでございます。
 まず、専門家をきちっと派遣しまして、その人たちの目で見てもらって、いろいろな構想をきっちりと立てた上で日本政府全体としてやっていく必要があるのではないかと思っております。
 私も、できるだけ早い機会に、もし国会の関係でも許されれば、現地に足を踏み入れて、その状況についてもきちっと把握をして、何らかの前進のために力を尽くしていきたいと思っております。
鎌田委員 非常に前向きな強い意欲を感じ取らさせていただきました。ぜひみんなで応援をし、みんなで一緒に頑張っていかなくちゃいけないことですから、応援しますので、実現を期待して、この件については終わりにしたいと思います。(岸田副大臣「委員長、済みません、ちょっと修正を一言だけ」と呼ぶ)どうぞ。
岸田副大臣 先生、済みません。先ほど、アミン教育大臣に対する支援の提案の中で、女子教育の支援、四つの女子大学で教員研修を行うと申し上げたようでありますが、五つの女子大学の間違いでございました。訂正しておわび申し上げます。
鎌田委員 ありがとうございました。
 それでは、今回の教育職員免許法の一部を改正する法律案に関連をして伺っていきたいと思います。
 まず、専科担任の拡充とそれから隣接校種の免許状の取得促進というところを、この二つ、ちょっとあわせてお伺いしていきたいと思うんです。
 中教審として、ことしの二月にまとめられた答申が出されまして、いろいろ提案がなされているようです。もちろん、これまで多くの団体からヒアリングを行ってきて、リサーチが伴っているものと思いますけれども、文部科学省として、今回の法改正に至るまで、現場の教職員に対してあるいは保護者等に対して、リサーチ、調査活動というものは行ってきた事実はありますか。
矢野政府参考人 今回の専科担任の拡充は、一つは平成十一年の中教審答申、初等中等教育と高等教育との接続の改善についてにおきまして、学校段階間のより望ましい連携や接続のあり方について検討する必要があると指摘がなされたことが一つでございますし、また、本年二月の同じく中央教育審議会の答申でございますけれども、今後の教員免許制度の在り方についてにおきまして、専科担任の拡大等による学校段階間の連携などが提言されたことを踏まえて、法律改正を行おうとするものでございます。
 今回の措置を行うに当たりまして、文部科学省として、御質問の学校や教員に対する大規模な調査等は特段実施をしていないわけでございますけれども、これまで既に音楽、体育等の実技教科で専科担任が実施されてきているということがございます。さらに、専科担任は、地域のニーズに応じて、各学校、教育委員会の判断により、特色ある学校づくりに生かされるものであるということ、さらには、研究開発学校におきまして、幼小連携あるいは小中連携等々の連携の取り組みを行っているということはあるわけでございまして、専科担任の拡充の趣旨を踏まえまして、既に効果的に実施をされているというふうに私どもは考えるわけでございます。
 なお、中教審答申の取りまとめに当たりましては、二十四の関係団体からヒアリングを行いまして、おおむねこの点については御賛同をいただいたところでございます。
鎌田委員 私は、まさに現場の生の声を直接匿名で聞けるぐらいの調査をしているのかな、ぜひすべきじゃないかなと思ったから伺ったんですが、中教審あるいはそこが行う多くの団体からのヒアリングがもとになっているということで、本当に現場の現場を構成しているところの生の声とはちょっと離れているのじゃないかなという思いを残し得ないというようにお聞きをしました。
 当初、小学校の専科担任ということについては、教科の専門性、専門的に担任できる教員が不足をしていたという事情があって、教員が不足をしていたということから、当分の間の措置としてこの措置がとられていたというふうにここにもはっきり書いてありますけれども、不足教員という認識に立ってずっと来て、それでやっているうちにというか、それを続けてきているうちに、その効果とかすばらしいメリットの点を見出しながら、では不足教員ということをどうやって解消していくかということはしなかったのかしらと、この間の不足教員ということに対しての検証だとか、それを解消することなどのお取り組みなんかはなさってきたんでしょうか。
矢野政府参考人 御指摘のとおり、現在の専科担任というのは、音楽とか美術とか体育とかといったような実技教科に限られているわけでございますが、そのそもそもの趣旨というのは、免許発足当時、それに対応する免許を有している者が少ないということで、当分の間そういう特例的な制度がなされてきたわけでございまして、そういう制度を使ってこれまで、平成十三年度でございますけれども、現行の小学校の専科教員数というのは、延べにいたしまして五千人を超える実技教科の専科教員が専科の指導に当たってきているわけでございます。
 今回は、そういう当分の間という趣旨ではございませんで、現在の学校教育における学校間の接続の重要性ということで、とりわけ全教科担任制の小学校と教科担任制の中学校との学習指導の連続性、一貫性を確保するということが、先ほど御紹介申し上げました中教審の指摘にもございますように、大変大きな課題になっているということがございますし、また、今年度から実施いたします新しい指導要領におきましては、小学校等において、専門分野について深い理解を持ち、かつ多様な教授技術を備えている教員を確保するということが必要になってまいっているわけでございます。
 そういうことから、これまでの当分の間の措置ということではなくて、今申し上げたような趣旨で、今回新たに教科指導に関して、より専門的な知識、技能を有する教員が他校種の学校で児童生徒に対し教科の教授をできることができるような、そういう恒久的な制度として教員の免許制度の改善を図ることといたしたところでございます。
鎌田委員 もう恒久的な制度として位置づけていきたい、非常にこの点について今回の法改正、意義を感じ、効果を求めて臨んでいくんだろうなというふうにお聞きをいたしましたけれども、では、ちょっと手続というか、技術的なところでお聞きしますが、例えば中学校、高校の先生が小学校へ行く際、その期間なんですけれども、最短で、想定される行く期間というのはどのくらいになりますか。
矢野政府参考人 専科教員につきましては、採用、任用の仕方として二通りのやり方があろうかと思うわけでございますが、一つは、中学校等、中学校、高等学校でございますが、中学校等の教員を小学校の教員に異動させる、そういう場合がございます。転任として異動させる場合がございますし、もう一つのやり方といたしましては、中学校等の教員を小学校の教員に兼職させる、そういうやり方、この二つのやり方があろうかと思います。どういうやり方をするかというのは、それは人事権者、任命権者の判断であるわけでございます。
 そこで、異動や兼職の期間についてのお尋ねでございますが、これも基本的には任命権者であるそれぞれの教育委員会の判断によるわけでございますが、異動の場合でございますと、通例二年から三年といったようなことが在任期間としてあろうかと思うわけでございますが、兼職の場合でございますと、これは一般的には一年を単位として採用されるというケースがほとんどではなかろうかと思うわけでございます。
鎌田委員 兼職の場合ですが、一般的には一年という今御答弁をいただきましたが、聞くところによりますと、一カ月ぐらいの短い期間も想定されるというふうにお聞きをしているんですが、そのことについて、もう一度。
 あと、あわせてなんですが、中学校の先生が小学校に来た場合、小学校でもともとクラス担任を持っていた先生というのは、中学校の先生がいらしたときのその間の授業中の時間の使い道というのはどういったものになるんでしょうか。
矢野政府参考人 異動する場合で、限られた期間で在職するというのは、これは恐らくよほどの特別な事情のある場合だと思います。もちろんないというわけではございませんけれども、よほど特別な事情がある場合だと思います。
 また、兼職につきましても、教育活動あるいは人事計画というのは大体年間を通じて計画を立てているものでございますから、これも一定の限られた期間、数カ月なりという限られた期間で、そういう兼職の期間ももちろんあり得るわけでございます。あり得るわけでございますけれども、一般的には、いろいろ、今申し上げたような一年を単位としてなされるケースが多い。ただ、制度上、もちろん任命権者、人事権者の判断でそれはあり得るものでございます。そういう特別の事情を踏まえてあり得るものでございます。
 それからもう一つは、兼職に対応していない、そういう教員が通例どうしているかということでございますけれども、そういう教員の勤務のあり方は、これも基本的には校長の判断によることとなるわけでございますが、考えられる勤務のあり方としては、例えばチームティーチング等で授業に一緒に参加する、兼職を受けた教員と一緒にチームティーチング等で一緒に教育活動に参加するといったようなことでございますとか、あるいは別途教材研究等その他の校務に従事するといったようなことが考えられるわけでございます。
鎌田委員 兼職の方の場合などは、現在中学校、高校の先生たちにとって、小学校まで行って教える、そういう時間的な、物理的な余裕というものが果たしてどれほど確保されているのかな、保障されているのかなと。
 小学校のクラス担任の先生の方は、TTに臨むときもあるし、あるいは教員室で御自分の授業の研究などにその時間を使うこともできるということのようですけれども、小学校の先生は少し喜ぶ、いいかなと思うような点もあるけれども、小学校に行く先生方にとっては、中学や高校で御自身も持っているわけですよね、そんな余裕が果たしてあるんだろうか。もちろん、いろいろな調査を踏まえてのことでしょうから、やらなくちゃいけない、やれるというような裏づけもあってのことでの今回の永久的にこれをやっていくという決定だと思うんですが、その辺のところはいかがでしょうか。
矢野政府参考人 御指摘の点でございますが、これは本務校においては当然持ち時間、勤務の時間を持っているわけでございますけれども、今回のようなケースで、小学校と兼職をして小学校の教育活動に従事するということになりますれば、当然のことながら、本務校における勤務時間について、従来の勤務時間からその分、その分というんでしょうか、例えばその分軽減するといったような、当然本務校における勤務のあり方あるいは勤務時間のあり方について必要な配慮がなされるはずのものでございます。
鎌田委員 本務校において軽減されるということですけれども、その軽減をするということは、やはりまたその軽減をした分、どこかが、だれかが軽減した分の充実を図らなくちゃいけないし、だから、私、今回の法改正というのは、もちろん教育免許に関しての法律が、教職員、先生方の質の向上であったり、あるいは子供たちにとっての、専科担任ということで、専科教授の充実だったり、ねらいは大変すばらしいし、大いに賛同しておるんですけれども、何かこれをやっていくに当たって、そっちの仕組みを充実していく、拡充していくのはいいんだけれども、ではもともと抱えている課題だとか、もともと流れている本質的な問題みたいなところには何か着手しないのではないだろうか。
 はっきり申し上げれば、私たちはというか、私は特に、少子化だから先生はふやさなくていいというふうに短絡的に意見をおっしゃる方もいるけれども、それに大反対でありまして、少子化だからこそ先生を今ふやしやすい。子供がいっぱいふえているときに先生をいっぱいふやさなきゃいけないんじゃなくて、少子化だからこそ先生をふやす枠が、ごめんなさい、これもはっきり言って、少なくて済む。だけれども、子供たちというのは非常にもう個性が激しいし、一人一人に目を向けなくちゃいけない時代で、今定員、生徒の数も四十人という、法改正もまだなされていないし、先生方が今どれだけ現場で大変な状況にあるかということを考えれば、本務校で軽減をしていって、小学校にも行って、でも本務校でも持っている、またその軽減した分をだれかが埋めなくちゃいけない。またその一方で、小学校の先生は、上からというか、中学、高校から先生が来たときに自分の授業の研究に充てられる。
 何か、初めこの問題に、この法案のいろいろな説明を読み、接したときには、本当に率直にいいな、すばらしいなと思って読み進めておったんですが、いろいろ考えていくと、何かどんどん、日本は教育立国、教育が大切だと言っておきながら、一方で、最も大事な教員の絶対的な、物理的な数の部分で、今後もうこれでふやさないというような方向に行っちゃうんじゃないかというような、私は読み進めていくうちにそんな危惧の思いばかりが膨らんできまして、そのことをこの質問の流れの最後に大臣にぜひ確認をさせていただきたいなというふうに思っておったんです。
 中学校、高校の先生方がもっと低学年の、低年齢の子供たちに教えに行くということは、私も中学校と小学校の子供がおりますので、まさに実生活、実体験にこれがかかわってくる問題として考えますと、物すごい大きなこと、大それたことというか。
 というのは、中学校や高校と小学校とで、教授法というものにつきましてはきっと大きな差異があると思うんですね。それから、心理的な発達段階においても、小学生の子供たちと、ましてや一年生の子供と中高の生徒たちとでは本当に差異が大きいと思うんですが、これを実施していくに当たって、実際、そういう心理的な発達の段階の差異だとか教授法の差異だとか、そういうものにしっかりと対応できていくんでしょうか。あるいはまた、それに対応していくための事前の研修というものがあるのか。あるいは、それに対応するためのマニュアルづくりのようなものを文部科学省は行ってきているんでしょうか。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
矢野政府参考人 御指摘のように、小学校段階の児童に対する指導と、中学校、高等学校段階に対する指導は、心身の発達段階から見て当然差があると考えられるわけでございますことから、中学校や高等学校の教員が小学校段階の児童を指導するには、当然のことながら十分な配慮が必要となるわけでございます。
 今回の他校種免許状による専科担任制度の趣旨は、先ほど申し上げましたように、特定の教科に関して深い理解や専門性を有し、多様な教授技術を備えている教員が小学校において専科担任ができる道を開こうとするものでございまして、必要な知識を、免許を持っていればだれでも教えることができるというものではないわけでございます。実際は、小学校で教える適性等について個々に判断される必要があるというふうに考えておるわけでございます。
 また、実際の指導に当たりましては、個々の児童についての情報交換、これは、例えば小学校の教員と中学校の教員が一緒になって指導に当たるそういう一定期間を設けるなど、中学校の教員が教える場合に円滑な教育指導ができるような配慮も必要となってまいろうかと思うわけでございます。
 そういう意味では、国といたしましても、本法案改正の趣旨を踏まえまして、今私が申し上げたような適切かつ円滑な実施がなされるように指導をしてまいりたいと考えているところでございます。
鎌田委員 最後に、指導をしてまいりたいと考えているという御答弁で、これから指導してまいりたいというふうに受け取りますけれども、本当にこれはすごい重大なことだと思うんですね。だからこそ、物すごいきちんとした理念や準備や、そういう決意でもって私は臨むべき問題じゃないのかなと。
 今回のこの法改正、人によってとらえ方は違うと思いますけれども、今だって小学校の現場で、先生方、多いところは四十人ですから、その子供らを前にして、あれでストレスがたまらなかったら本当に不思議だよなと思うぐらい、ストレスが高じてしまって子供に当たってしまうケースというのが非常に今多いんですね。本当に私の身近なところでもたくさんあります。子供の頭の後ろ髪をつかんで、机にごんと子供の額をぶつけて、それで、子供はそんなことを一日に二回も三回もされるから、だんだん行きたくなくなるし、授業中何度も教室を抜け出してほっつき歩いて、あげくの果てにうちに帰ってしまったりして、何かしら精神的な病になったんじゃないかと、親はパートをやめて、お母さんはパートをやめて、毎日学校に通って授業参観をして。
 そういうのも、先生方が毎日生き生きと熱意を持って、ましてやストレスなど感じることなく授業に、教育に当たれるという環境づくりというのが非常に大切で、そういう環境づくりとかバックアップ体制とかがなされない中で、これからしていこうという状況の中で、では、この仕組みをつくったから任命権者に任せる、各地方教育委員会に任せて、きっとやるところはいっぱいやるところも出てくるんでしょうし、やらないところは全然やらないのかもしれないけれども、私は、大きな事業ととらえていますから、その大きな事業をやるに当たって、何か今までの延長でちょっと拡大をして、法改正をしてというふうにとらえられて本当にしようがないんですね。
 続けて、関連してお伺いしますけれども、きのうの事前の打ち合わせのときには入っていたような、なかったような感じなんですけれども、今回の永久的に、恒常的に行っていくという制度改正で、実際に任命権者に任せていく、地方のニーズを尊重するというような考え方で行っていくようなんですが、その土台を支えるためにどのような環境整備を行っていく必要性があると考えているか。あるいは、この環境整備については、今この場でお答えいただける範囲で結構ですけれども、これに伴う予算措置というものはどのようになっているか。
 この予算措置の方につきましては、私たちがこの問題を議論するに当たって、果たしてどれだけの予算措置があるんだろうか、財政的なバックアップ体制はあるんだろうか、ないのではないかというふうな議論がなされておるんですけれども、その点についていかがでしょうか。
矢野政府参考人 先ほど委員も御指摘になりましたように、当分の間の措置でございますけれども、実技教科については既に小学校において専科指導が行われておるわけでございまして、単年度で見れば五千人近い教員が、件数として、そういう指導が現に行われているわけでございます。
 今回、その措置を、その対象の教科を拡大しようとするのが今回の改正の趣旨でございますけれども、そういう意味では、先ほど委員が定数の問題について若干お触れになりましたけれども、私どもとしては、今回そういう改正措置をとることによる定数上の影響というのは特段、直接的な影響というのはないというふうに考えております。すなわち、現在の定数の枠内の運用として当然これはやり得るものである、そういう意味で、新たな定数上の措置は必要ないというふうに考えておるわけでございます。
 ただ、先ほどちょっとお触れになりましたように、この制度の改正になって、例えば、発達段階が異なる児童生徒を対象にする場合の円滑な指導といったようなことについての配慮が必要ではないかというような御指摘がございました。そういう点については、私ども、予算措置とかあるいは定数上の措置ということではなくて、先ほど私が申し上げましたけれども、円滑なそういう指導が行われるように、この法案が成立いたしますれば、国として必要な指導、指導通知等による指導は進めてまいりたいと考えているところでございます。(鎌田委員「予算措置」と呼ぶ)
 今申し上げましたように、今特段の予算措置、新たな予算措置というのは必要ないと考えております。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
鎌田委員 これは、特段の予算措置は考えていない……(矢野政府参考人「新たな」と呼ぶ)新たな予算措置は考えていないと。現行でも、もう既に、今五千人という数字がありました、なされていると。
 それで、現行でもやっている、現行に対しての予算措置はまああるんでしょう。それに対して新たなのは、今回の法改正で制度を拡充していくに当たっての新たな予算措置はないということでよろしいんですよね。
矢野政府参考人 今の、既に行われていることについて何らかの事業費的な予算措置があるということではございません。私が予算措置として新たなものは考えていないと申し上げましたのは、既にある予算措置としては、定数、人件費のことを念頭に置いたわけでございます。そういう意味で、御案内のように、平成十三年度から五カ年計画で、第七次の定数改善計画を進めているわけでございますので、その計画を進めるということが大変必要であるということで、それ以上の、それ以外の新たな予算措置は考えていない、そういう趣旨でございます。
鎌田委員 もちろん人件費がほとんどメーンでしょうけれども、実際に異動するわけですよね。中学校、高校の先生が小学校に異動して教えに行って、そしてまた帰ってくる往復の異動ですよね。
 それから、小学校に教えに行くに当たって、何の準備もしないで、自分の専科のその資格というか知識、それを生かしてただ教えに行くわけじゃないですよね。どうしたって事前に、行く先の小学校の子供たちのことを見たり聞いたり、あるいはその担任の先生と打ち合わせをしたり、何の準備もなくというわけではないと思うんですね。
 だから、先ほどから申し上げているように、何か、これをやるんだったら、しっかりとその予算的な、財政的なバックアップ体制も含めて、少ない中にもこれだけきちっとあるから、これを生かしてきちっと子供たちの専科担任の充実ということでやっていくべきだという、その大きなところでの理念や方針、考え方というのは、それは文科省が示すべきだと思うんですね。
 細々としたところまで、これはこういうやり方でやりなさい、こういうふうな計画でやれというような指示を出しているわけじゃないですから、これをスムーズに進めていく上での環境整備というのは、それは文科省が、これはよく批判されておりますけれども、中央集権という言葉がありますが、中央集権にもいいところはあると思うんですね。文科省が、全国にいいことをより進めてもらうために、促進するために、いろいろなバックアップ体制は文科省としてやるべきものがあると思うんです。
 ですから、細かい話かもしれません。ただ、これが全国的にどういうふうな数の膨らみとかというものを想定しているかは聞いておりませんけれども、すごくこれを活用する地方がふえたときに、どうしたってそういうものは必要な経費としてかかってくるわけですから、私は、これは欠かせないものとして、その措置というものの充実を、文科省、きちっと責任を持って当たっていくべきだと思いますので、ぜひ検討していただきたいと思います。
 それで、大臣にお伺いしますが、先ほどちょっと私が触れました今回の専科担任制度の拡充ということなんですが、やはり現場にかかわる者としてはすごく重大なこと、重大なというのは、危ういという意味じゃなくて、大きなテーマじゃないかなというふうに思うんですね、単にその拡充をするとか、例外を除いていってもっと広げていくとかという問題じゃなくて。そういうふうな御認識はどの程度お持ちなのか、お伺いしたいんですね。
 やはり小学校には小学校の、あるいは中学校には中学校のそれぞれの校種別によって、先生方にとってはすごく重い役割があると思います。それを今回拡充して、どんどん交流というか、行ったりできるようになるわけですから、そういったところの認識、どのようにお持ちかという点。
 あともう一つなんですが、私自身は、幼児期から高校生までの子供たちの教育を、縦で一貫して見ていくということ、そういう観点に基づいて、では、中高の先生が小学校に行って教えるとか、中学校の先生が小学校に行って教えるとかということよりも、横の連携というものはどうなるんだろうと。横の連携の方が実は、今も実際なされているかもしれません、ですけれども、横同士で、例えば小学校同士で、同じ小学校五年生が、今、どんな精神状況にあって、どんな発達段階にあって、先生がそれに対応するためにどんな悩みを感じているのか、どんなふうに解決策を模索しているのか、それを考えるときに、中高の先生との交流で、中高の先生が来て教えるということも大事かもしれない。しかし、もう一方で、横の、小学校同士の先生方で、おたくの小学校の五年生こうなんだって、うちはこれでこうやって解決したんだよ、こんなふうにいい方向に向かったよという、横の、同じ校種同士での連携、定期的な会合だったり、そういったものの方を、今もやっていると思いますが、そちらの方がさらに充実を図られるべきだと思うんですけれども、あわせてお願いします。
遠山国務大臣 鎌田委員は本当にいろいろ、学校の実態についていろいろお考えになって、御心配の御質問でございましたけれども、まず最初に、今回の改正は、本当に小学校の教育を充実させようという目的でございますし、それから、中学、高校で専門的な知識を持っている人の知識あるいはそういう情熱を小学校の教育にも反映させてもらいたい、それによって小学校における教育を生き生きさせていくということが大きなねらいであるわけでございます。
 もう既に今でも、特別非常勤講師でありますとか、あるいは学校いきいきプランによりまして社会人を入れたり、いろいろな能力を持った人をそれぞれの学校段階に入れて、そういう能力、知識、技術というものを活用しながら教育を充実していこうという大きな転換期にあるわけでございますね。
 特に、小学校における高学年、理科、数学、あるいは社会、国語の中でもそうかもしれませんけれども、一人の教員がそのクラスのすべての教科を持っていくというのはなかなか大変でございますよね。そういう意味で、特別にその能力といいますか、特別に専門的な知識を持つ人がやわらかく、しかもわかりやすい形で子供たちを教えていくということにおける教育効果というのも大変大きいのではないかと思うわけです。
 そのような意味から、今回、そういう道を免許制度の中で開いていこうという趣旨でございます。したがいまして、定数をこれから増さないようにするとか、あるいは既存の定数の中でやりくりをして何か減を図るとかいうことは一切ございませんので、そこをまず御理解いただきたいと思っております。
 そして、確かに、小学校という雰囲気の中に中学校、高等学校の教員が入ってくるというのは、ある意味では大きな影響があるかもしれませんけれども、むしろ、私は、その入ってくる人たちもいろいろな準備をした上で、将来自分たちの中学校に入ってくる、高校に入ってくるような子供たちにどう教えておいたら中学校の教育が効果が上がるだろうかというような観点も持ち、あるいは、子供たちに対してどういう教え方をすれば非常にわかるようになるのではないかというような工夫をした上で、私は授業に当たってくれると思っております。
 したがいまして、今回の制度というのは、そういう大きな目的といいますか、学校教育を内容的に充実していく、そして学校段階における大きな違いというものを克服していく、そういうことをねらいにしているということでございまして、御懸念の角度から見ればいろいろそういう疑問はわいてくるかと思いますけれども、私どもといたしましては、その御懸念というのは、むしろ杞憂に終わればいいと思いますし、そうではないかなと思っております。
 それから、縦の連携よりもむしろ横の連携、現在でも、それぞれの地域の小学校ないし中学校相互が、小学校なら小学校同士、中学校なら中学校同士でいろいろな教師間のネットワークもございましょうし、お互いの抱えている問題について、地域ごとにいろいろな研修を行ったり、情報交換をしたり、そしていろいろな事例を共有しながら問題解決に当たっていくということは当然でございます。そういうベースの上に立って、今度は少し縦の間の連携というものを大事にしていこうという姿勢でございます。
 後の方の、小学校ないし横の連携の話は、副大臣の方からも別途追加してもらえると思います。
岸田副大臣 今回の制度改正の趣旨は、今大臣から申し上げさせていただいたとおりであります。
 加えて、先生今御指摘になられましたように、各小学校がそれぞれさまざまな教育課題に取り組んでいる、そうした状況を情報交換するという横の連携の重要性、おっしゃるとおりであります。この重要性もかんがみて、そうした横の連携を適切に実施していかなければいけないというふうに思っております。
 横の連携に対して縦の連携と今回の制度改正を言うならば、この縦の連携によって他校種の教員が小学校に入ってくる、そのことによって学校全体が活性化する、それをさらに横の連携の中で情報交換していくということで、縦横の連携が相まって学校現場が一層活性化し、充実していくということをぜひ期待したいものだなと思っております。
鎌田委員 ありがとうございました。
 それでは、私がいろいろ懸念に感じていることは一切なく、いい方向に充実でもって、今基礎、基本が大事だ、学力低下、さっき随分やりとりがありましたように、今回のねらいの中には実は学力低下解消もちらっとあるのではないかな、小学校、特に高学年の理科、算数、数学に関しては。そんなのも感じますので、そういった中で、基礎、基本が大事だと言っているときに、専科、高度化の過多になるのじゃないかという、これまたそういう懸念が生まれるのもしようがないんじゃないかなと私は感じているんですね。
 ですから、そういったことにならないように、そして、ましてや今大臣が、絶対の定数をこれからふやさなくてもいいということは一切ないのでというふうな御答弁もありましたので、私は、先生方が、もちろんそうやって縦の交流をしながらですけれども、絶対数のところでもっとゆとりを感じながら、余裕を持って子供たちと接する、コミュニケーションがさらに充実が図れるようになるには、絶対数のところでもう少しふえていいのではないかと。
 ただ、ふやす方法については、社会人登用なんかもあるでしょう、今回も仕組みの改正でありますから、一概にこの方法でということは申し上げませんけれども、ぜひ、今回の法制度でねらいとされている充実を目指すというのと同時に、また一方で、その充実を目指していかなきゃいけない部分がございますので、ぜひその御認識を持っていただきまして事に当たっていただきたいと思います。
 ほかにもこの二つの改正であったんですが、時間がないので飛ばします。
 特別免許状に関する質問なんですが、この特別免許状に関する今回の法改正で何がどう変わるとお考えになっていらっしゃるか。あわせて、これまで特別免許状の取得ということが進まなかったというふうに指摘されている理由が何点か挙げられておりますけれども、この指摘されている進まなかった理由をまず解消するということ、これは行ってきたのかどうか。まずこの二点について、済みません、手短にお願いします。
岸田副大臣 今の特別免許状制度のねらいでありますが、すぐれた知識や技術等を有する社会人を学校教育において活用することでありまして、学校教育の多様化、活性化を図る、これがこのねらいであります。
 今回の免許状改正によりまして、学士要件及び有効期限が撤廃されるということになります。そのことによって、学歴にとらわれず幅広い人材を確保できるということ、そして有効期限の撤廃によって身分の安定性が図られるということ、これが図られることによって授与が促進されるというふうに思っております。
 この二点が今回の改正のポイントだというふうに思っておりますが、御指摘のように、従来なかなか活用が進んでおりませんでした。今回の改正の趣旨を周知徹底することにより、またさらには、その活用事例の作成等を行うことによって情報提供を行って、この法改正が促進につながっていくよう努力したいというふうに思っております。
鎌田委員 私、この特別免許状に関する法改正についても、先ほどからずっと同じような思いを持っているんですけれども、やるんだったらやはりどかんと国民に強くアピールをして、そして文部科学省が教育現場に社会人の知識や知恵やそういった外の風というか、そういったものをどんどん登用していきたい、入れていきたいんだということが伝わるように、もっとアピールの方法があるんじゃないのかなと思うんですね。
 特別非常勤講師制度の方は大分充実が図られているようなんですけれども、もちろん、教育はすべて子供が基本でありますし、子供のためにみんながいろいろ考えなくちゃいけないんだけれども、日本の今の経済情勢を見ますと、リストラに遭っているお父さん方が、また働く世代のお父さん方がたくさん多い。そして、そのお父さん方の後ろ側には子供さんたちがいる。教育を今真っただ中で受けている子供たちがいる。結局、お父さんのリストラ、この国の経済状況が子供たちの学ぶ権利にまでも暗い影をもう落としているというような現状。
 特に高校生なんかは、授業料の格差の大きい私立の高校生の男の子なんかは、夜十時以降就業禁止という仕組みにはなっていますけれども、それを超えて夜中もバイトして自分の私立高校の授業料を何とか捻出する、お父さんがもう職が断たれましたから。そういった話なんかもごろごろしているんですね。
 私は、今回のこの特別免許状のいろいろ緩和するということは、子供の教育あるいは教育現場に新しいそういったものを入れるのと同時に、今そうやってリストラの計画を持っているところ、企業と例えば大臣が話し合いをし、協議をし、そういうところでどういう人材があるのか、そういう人材をどういうふうに生かしていこうとか、もっと外に出ていって、この制度を充実していきたいんだということをアピールしながらいい方向に向かわせていくということは、子供のためでもあるし、ましてや、子供の学ぶ権利に直結しているその親御さんの収入あるいは仕事というものとも関係してくるいいテーマだと思いますので、ぜひそのような積極的な外に出るアピールというものを考えていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 確かに、制度をつくってもそれが周知徹底されないと生きないわけでございまして、この面につきましても、機会をとらえてできるだけ経済団体等にもきちっと話を、説明をするということは大事だと思っております。
 実際には、特別免許状の授与につきましては、採用しようとする者、これは教育委員会あるいは学校法人の推薦が必要でありますし、その有効範囲が都道府県内に限られるわけでございまして、そしてその授与は都道府県教育委員会が行うことになっております。
 私どもとしましては、都道府県教育委員会に対してもあるいは経済団体に対しましても、こういう制度の趣旨、あるいはこれを活用していくことについてのいろいろな情報を周知いたしまして、せっかくつくるこの制度が生きるように努めたいと考えております。
鎌田委員 ぜひそのように、今おっしゃったとおりにこれから実行していかれますように見守っていきたいと思いますので、御期待をしております。
 最後に、特殊教育教諭免許状の取得促進についてなんですけれども、いろいろこれの充実に向けても提言がなされているようであります。前回、民主党の、我が党の山元委員が質問した際にも、充実を図っていくという御答弁がありましたけれども、私、それに加えまして、ぜひ、各都道府県あるいは地方教育委員会に対して、今後、実態の把握、どれだけ必要としているのか、どれだけ足りないのかということの実態把握と、それに基づいてこれからの計画の策定、この提言にあるようにそれを義務づけて、文科省が地方に対してしっかりそのプランニングをせよということを伝えていくことをやるべきではないでしょうかという点。
 それと、その結果、実績評価などもしながら、ノーマライゼーションの理念に基づいて、どの地方が、どの教育委員会が、どの学校が一生懸命やっているんだということも、表彰等も含めて実績評価を適切に行っていって、さらに励みになるようなことも文科省が率先してやっていくべきではないかなということを二つお伺いをいたします。
 時間がありませんから、これにあわせて、今回のこの一連の仕組みの改正で、ああ、日本の教育ってすばらしいんだ、日本全国の親御さんたちがあるいは教育現場にいる先生たちが、こんなふうに一つ一つ着々と制度改正を行っていって、やはり教育立国日本ですばらしいというふうにこれから実感できると胸を張って断言できるんですねということを確認し、さらに、これからの日本の教育の長いスパンの中で、これがまた一つの大きな布石となるんだということを堂々と胸を張っておっしゃれるんですねということを三つ目であわせて伺って、終わりにしたいと思います。
岸田副大臣 まず、特殊教育教諭免許状の件でありますけれども、平成十三年一月の、二十一世紀の特殊教育の在り方に関する調査研究協力者会議、この最終報告におきましても、特殊教育教諭免許状保有率の向上を図ることがまず重要だと指摘をされた上で、各都道府県教育委員会等の免許状の保有率の向上の目標と計画及び改善状況を調査することが必要であるという提言が行われております。このため、平成十三年度、文部科学省におきましては調査を実施いたしました。そして、今取りまとめ中であります。そして、引き続きまして、この積極的な取り組みを促していきたいというふうに思っています。
 それから、今回の法改正、胸を張って大丈夫だと言えるのかという御質問でありますが、この新しい体制、いろいろな議論を積み重ねた上でこうした法改正をお願いしているわけであります。この法改正の趣旨がぜひ多くの方々に理解され活用していただくこと、これが何よりも肝要だというふうに思っております。今、この制度改正の趣旨がぜひ理解され活用されることによって結果につながるよう努めなければいけないと思っておりますので、この説明責任を文部科学省もしっかりと果たしていかなければいけない、そのように感じております。
鎌田委員 義務づけた方がいいのではないですか、その考えはありませんか。実態把握と計画策定を各地方にきちんと出しなさいと義務づけた方がいいんじゃないですか。
岸田副大臣 今、調査結果の取りまとめ中でありますが、各都道府県教育委員会に対しましては、免許法認定講習に対して補助を行う等、さまざまな支援を行っているところであります。そういった現状の上に何を積み重ねたらいいか、この調査結果を踏まえて今検討していきたいというふうに思っています。
鎌田委員 ありがとうございました。
河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時四分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 まず、この法律の内容に入る前に、この法律の言葉、他校種免許状による専科担任制度の拡充、教職経験を有する者の隣接校種免許状の取得の促進。非常に言葉が、法律の言葉でありますから難しいという発想ではなくて、法律の言葉だからこそ、国民のための法律なので、もっとわかりやすい言葉にすべきじゃないかと思いますけれども、私は、文部科学省からいろいろ御説明に来ていただいたときに、まず非常に言葉が難し過ぎる、それから意味が多義にわたっていると。これは、国民のための法律といいながら、専門家がわかる言葉ではなかろうかと思いますけれども、これはいつごろつくられた言葉でしょうか。
遠山国務大臣 確かに私も見ながら、えっと思うようなことがなきにしもあらずでございますけれども、今お話しの他校種免許状という用語は、法律上使われている用語ではないわけでございます。例えば小学校であれば、隣の、小学校以外の、幼稚園、中学校、高等学校、その他、その学校以外の種類の学校ということでありまして、これを端的に言うには、まあ他校種であろうかと思います。
 それから、法律用語の中で、例えば教育職員という用語をよく使われるわけでございますが、そもそも教育職員免許法も教育職員なんですけれども、これの場合には学校段階のあらゆるものがあって、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園の教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭及び講師を指しているということで定義がされているわけでございます。これが一たん確立されますと、その他の法律においても用いられる、そういうことで用いられているわけでございます。
 できるだけ容易なわかりやすい言葉で、平易な表現によって国民一般に対して周知を図るということは大事だと思っておりますが、法律の場合には、ある程度厳密な形で決めませんと、いろいろなことがあいまいになってしまうというようなことがあろうかと思っております。しかし、精神としては、できるだけ国民が理解しやすい、そういう用語というのを大事にしていかなくてはならないと私も思っております。
武山委員 まあ大臣は長年文部省のお役人としてかかわってきたわけですから、そういう言葉はもう朝飯前のことで、やはりそれを視点に物は言えないと思うんですよね。一般の国民がそういう平易でわかりやすい言葉を望んでいる、また私自身、国民の代表として、国会議員自身がそう思っておりますので、そういうふうにやはり進めていくのが政治改革でもあり、行政改革だと思います。
 それはまず一点だけで、次、内容に入ります。
 この内容の中で、専任の担任制度ということですけれども、ここで、専任の担任制度を設けることによって本当に質が上がるということを期待して、この他校種免許状による制度というものを広げていきたいということですけれども、私が地元の校長先生などにそういう質問をしましたら、本当に現場ではそう思っていないんだ、本当に質が上がるのであればその根拠をぜひ聞いていただきたい、こういう質問がございましたので、実際は、市町村の教育委員会、それから任命権者というのは県の教育委員会、そして市町村の教育委員会が選抜する基本的な方法などを決めておるという、制度上はわかりますけれども、素朴な、現場の校長先生がその根拠をぜひ説明していただきたいということですので、お聞きしたいと思います。
岸田副大臣 今回の専科担任の拡充につきましては、教科に関する専門性の高い教員が小学校等において専門性の高い教科指導を推進すること、これをねらいとしているわけでありますが、このねらいによって学力向上にもつながるというふうに考えております。
 そして、本当につながるのかどうか、その根拠についてのお尋ねでありますが、この点につきましては、中教審の答申においても、「小学校においても、教科に関する専門分野についての深い理解を持ち、多様な教授技術を備えている教員を確保し、各教科の指導を充実していくことが必要となっている。」という旨の記述がされております。この中教審等におきましても、さまざまな関係者、有識者等が議論を重ねてこうした結論に至っているわけであります。こうした積み重ねに基づいて今回この法改正を行うわけでありますが、こうした議論の積み重ねが成果につながるものというふうに確信をしております。
武山委員 何か、今のお話を聞きますと、有識者に頼んで決めたような、じゃ、文部科学省自身はどう思っているんですか。
岸田副大臣 もちろん、さまざまな関係者の意見は謙虚に承らなければいけないと思いますが、それをしっかりと受けとめて、そして判断し、その制度改正を決断する、これは文部科学省の責任で行うわけであります。
 こうしたさまざまな議論の積み重ねをしっかりと受けとめた上で、こうした法改正が結果につながるものと文部科学省が判断し、今回法改正をお願いしている次第であります。
武山委員 こういう法改正をするに当たって、まず、どのくらいの割合で、本当にこういう専科担任制度を使って、小学校から中学、高校、中学、高校から小学校という異動、流動化ですけれども、そういうものの試算がまずあるのかどうか、それを一点。
 それから、それとかかわりますので、まず、今後五年、十年スパンで見た場合、少子化で五年間に生徒がどのくらい減るのか、十年間でどのくらい減るのか、それで、具体的にそういう五年、十年の中で、実際に調査して希望者がどれだけいるのか、その実態を知りたいと思います。岸田副大臣。
岸田副大臣 まず、五年、十年の教員数の見通しですが、教員数というもの、まず児童生徒の人数が一つの根拠というふうになるわけですが、平成十三年度の公立小中学校の児童生徒数、一千九十一万人となっております。そして、現行の定数改善計画の最終年度に当たる平成十七年度で見込みが一千五十八万人、三十三万人減という見込みであります。
 これに対して、教員の数ですが、平成十三年度の公立小中学校の校長、教頭、教諭等の数については、六十一万人というふうになっております。そして、先ほど申し上げました児童生徒数の推計に基づいて改善計画を行っていないとすると、二万人減の五十九万人となる見込みですが、現行の定数改善計画を実施することによって、平成十七年度は平成十三年度とほぼ同数の六十一万人という見込みでおります。
 ですから、十三年度と十七年度を比べますと、児童数で三十三万人減、そして教員数はほぼ同数という見込みを持っております。この状況の中で、児童生徒数の減少に伴う定数の減を活用して教育条件の整備を図るというのがこれからの方針であります。
 そして、残念ながら、平成十八年度以降については、現在まだ推計の数字を持ち合わせていないということであります。一応手元に持っている数字としては、こういった数字をもって将来の数字を考えているということです。
 そして、今、先生の方から、この制度がどれだけ活用される見込みなのかという御質問でありますが、ちょっと、それにつきましては、今、現行の免許法におきましても、音楽とか美術とか保健体育とか家庭、こういった科目におきまして専科担任制度を行うことが可能ということになっております。それによって、全国で二千九百二十七校に配置され、五千四十九人が専科担任を行っているというのが現状であります。これをさらに拡充するということでありますから、これにどれだけ上乗せになるかということにつきましては、済みません、私の手元には数字等ちょっと持っておりませんが、現状に上乗せされるというのがこの制度の結果だというふうに思っております。
武山委員 今まで制度改正をしまして、特別教職員、埼玉県で聞きましたら、ほとんど年一件か二件だということなんですね。制度改正をしても、実際に運用で、流動化して、学校の先生になろうという人は本当に少ないわけですね。埼玉県でも、人口七百万近くなのに、一件か二件しか特別免許を取ろうとしないという現状であれば、こういう拡充をしても、実際に本当に意識調査をしたのであれば、どのぐらいかという見込みはあると思うんですよね。
 本当にやろうと思えば、学校の先生一人一人に、個人的にシートを出して、将来こういう希望があるのかどうかということを聞けると思うんですよね。そういう調査というのをしていれば、ある程度、五年でどのくらい、十年でどのくらいの流動化が見込めるかというものが言えるんじゃないかなと思いまして、その辺をちょっと私、具体的な数を聞きたいと思うんです。アバウトで結構ですので。
岸田副大臣 先ほど、現行の免許法におきましても、音楽、美術、保健体育、家庭等で専科担任が行われているということで数字を申し上げましたが、加えて、大阪府教育委員会におきましては、平成十四年度から、国語、算数、理科、こうした教科における教科担任制の導入、あるいは、総合的な学習の時間などの指導の充実を初めとした小学校、中学校間のさまざまな連携を行うため、中学校教員を小学校へ配置するということを行っております。
 これは、もちろんその両方の免許を持っている教員にこういったことをやってもらう。要は、現行制度の範囲内で前向きにこうした取り組みを行っているということでありますが、全国の教育委員会においても、現状、取り組みが進んでいるわけでありまして、先ほど申しました例に加えて、こうした大阪府教育委員会等での例、こうしたものを勘案しますときに、そのニーズは非常に高いというふうに感じております。
 具体的な数字をちょっと申し上げるものを持ち合わせてはおりませんが、こうしたことから考えて、ニーズは高いと考えておりますので、活用が図られるものだというふうに理解しております。
武山委員 文部省は、市町村の教育委員会よりも、県単位の、県の教育委員会と直結しているわけですから、数はそんな多くないわけですから、ぜひそこを通して意識調査なり、先生個人個人に対する、今の教育にどんな意識を持っているかとか、悩みがあるかとか、現状にどう対応しているかとか、そういう意識調査というのは今までやったことがあるのでしょうか。
 そういう意識調査をしていれば、こういう職の流動化というか、拡充した場合に、希望がある程度どのくらいということが見込めると思うのですよね。ただ、あるんじゃなかろうかというんでは、法改正する意味で本当に根拠として言えるのかなと思うのですよね。ですから、今まで意識調査がされているかどうかということを一点聞きたいと思います。
岸田副大臣 意識調査ということで言うならば、特段行っておりません。
 意識調査は行っておりませんが、先ほど申し上げましたようなさまざまな材料は、今までの取り組みの中でいろいろ把握をしているわけであります。こうしたさまざまな材料をもとに、ニーズが高いもの、そしてこの制度を活用することによって学校の現場が活性化されるものというふうに考え、今回の法改正をお願いしているところであります。
武山委員 それでは恐らく余り変わりないと思います。ですから、私はここで申し込んでおきたいと思います。
 地方公務員、小中高のいわゆる公立学校の教師というものは国民の税金を使っているわけですから、ぜひそういう現場の声を調査していただきたいと思います、一人一人に。それは、県を通じて市町村の教育委員会に直接直結しているわけですから、ぜひいろいろな、多種多様な意識調査を、ペーパー一枚で答えが書けるようなもので、今、もうインターネットは本当にどこにでもつながるようになっておりますので、いろいろな方法で使えると思いますので、現場の声を知るという意味で、ぜひそういう調査をしていただきたいということを申し込んでおきたいと思います。
 それから、二つ目の改正の、教職経験を有する者の隣接校種免許状の取得の促進という部分で、まず、ここで、いわゆる先生の免許状を取得する場合に、教育委員会が開設する講習会ということが出ているのですね。それから、単位数を軽減するというようなことも出ております。
 これで、小学校の先生が中学、小学校の先生が高校、中学の先生が高校という場合、検定制度あるいは講習会というふうに出ておるんですけれども、これは基本的に、ポイントだけで結構ですので、具体的な話を、検定はどういうふうな検定制度なのか、講習会はどういう講習会で免許状が取れるのかというポイント部分をぜひ御説明いただきたいと思います。
池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、隣接校種免許状の取得は二つございます。一つは、大学での単位修得、二つ目は、都道府県教育委員会が開設する免許法認定講習による単位修得でございます。
 これは、今おっしゃいましたように、夏に、休業中に実施されるものが多いわけでございます。これに加えまして、三年間良好な勤務成績で勤務することが必要でございまして、その旨の実務証明責任者の証明を提出し、都道府県教育委員会による教育職員検定において、学力や実務などについての審査を経た上で授与されることとなっております。
 では、単位数の軽減など、どういうふうに具体的になっているかということでございます。
 その内訳を申し上げますと、文部科学省の省令で規定することを考えておりまして、その主の内容といたしましては、教職に関する科目は、学習指導要領等に沿った内容を教授する、各教科の指導法、例えば幼稚園においては保育内容の指導法などでございます。また、子供たちの発達段階を踏まえる必要がある生徒指導、進路指導及び教育相談に関する科目については、各学校種でそれぞれ独自性があるため、これらに関する科目については必ず修得させることとすることを考えております。また、道徳の指導法を修得していない幼稚園または高等学校の免許状を持つ者が小学校または中学校の免許状を取得しようとする場合には、これを修得させることといたしております。
 お尋ねの単位の軽減でございます。
 教科に関する科目については、既に大学で修得している科目については原則として修得を要しないこととしております。二点目、選択履修科目である教科または教職に関する科目については、在職年数を評価し、原則として修得を必要としないというふうに考えております。
 なお、現行制度上も、免許状を有する者が他校種の免許状を取得しようとする場合には、教職に関する科目の要修得単位数の軽減措置が図られておりますが、今回の軽減措置の特徴は、新たに、教科に関する科目及び教科または教職に関する科目について軽減すること、並びに、教職に関する科目についても、教育実習等の単位についてさらに軽減することといたしております。
武山委員 それでは、次に移ります。
 まず、今回の法改正のいわゆる趣旨としまして、校長のリーダーシップに基づく特色ある学校づくりの推進ということですけれども、それはもう今まで声高に言われてきているわけですよね。片や校長のリーダーシップ、リーダーシップ、それでいて足かせがあるんですね。それは、人事権がないということなんです。片やリーダーシップを発揮してやれやれ、頑張れ頑張れと言いながら、片や人事権がないわけですね。
 それで、私も、ある中学校の卒業式に、ぜひ出席していただきたいということで、出席はしますけれども行った以上はごあいさつをさせていただきたい、行くからには、政治の話は一切しません、子供たちに何か心に残る話をしたいので、ぜひ話をさせてくれと言いましたら、教頭先生が、あいさつをする場合は各学校で、教頭先生が主宰して、全員にいいかどうか聞かないとだめだ、それで、全員に聞かないとオーケーが出ないので、ちょっと無理ですということで、私は、これは大変、絶対、行く以上は、校長先生にお話ししてあいさつさせていただこうということで、校長先生を捜しました、もうあしたが卒業式という前の日に、三、四時間かかって。そうしたら、校長先生は、何ということはない、ぜひやってください、僕のあいさつが少なくなって、もう大助かりですと。校長はそういうふうに思っているのに、教頭先生は全然別の視点でいるわけですよね。ですから、縦のつながりもどうなっているんだろうという現場の声なんですよね。
 ですから、やはりそういう現場の声を、恐らく校長先生はリーダーシップを発揮したくても、それはほんの一例ですけれども、できない状態でもあるということですね、人事権がない、縦のつながりがない。ということで、校長先生に人事権がなぜないのか、まず、それを御説明いただきたいと思います。
遠山国務大臣 まさに学校におきましては、校長のリーダーシップのもとに学校が組織的、機動的な運営が実施できるということは大変重要でございます。
 人事権に関しましては、公立学校の場合、広域人事によって教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るということが大事でございまして、教職員の任命権は教育委員会が持っております。校長に任命権そのものを委譲いたしますことについては、弊害が大きく、現実的でないと考えているところでございます。
 もっとも、現行制度におきましても、校長は所属職員の採用、異動、免職などについてその意見を教育委員会に申し出る権限を有しておりまして、教育委員会はこの校長の意見を十分尊重すべきこととしているところでございます。
 また、昨年、地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部改正を通していただきましたけれども、その改正によりまして、市町村立小中学校の教職員の人事につきまして、市町村教育委員会の内申に校長の意見を付することといたしまして、校長の意見の一層の反映を図ったところでございます。
 これは画期的な改革であると思っておりますが、我が省におきましては、今後とも、各教育委員会に対しまして、人事に関する校長の意見具申ができる限り取り入れられるよう工夫を講じていきたいと思っております。そして、人事、予算の使途、あるいは学級編制などのさまざまな面において校長の裁量権限を拡大して、校長のリーダーシップのもとに特色ある学校づくりが行われるよう指導していきたいと考えております。
武山委員 今のお話ですと、校長が人事権を持つのはよくない、弊害があると。半分以上の日本の公立学校の校長に弊害があるんだったら弊害があると言えますけれども、本当にほんの一部で弊害があったものを、さも全体的にあったように解釈しているんじゃないかと思うんですよね。もし校長にそれだけ弊害があれば、もっとマスコミや新聞はたたくと思うんですよね。
 片や校長のリーダーシップを基礎づくりに、学校づくりにと言いながら、片や校長に人事権を渡したらそれは弊害があると言っていましたら、現場は動かないと思うんですよね。その辺がちっとも文部科学省の意識の転換が、それはもう画期的なものですと今大臣おっしゃいましたけれども、本当に画期的なものであったら、実際にこういうことを校長先生が言うわけないんですよね。校長の人事権がないとかリーダーシップが発揮できないとかなんということはあり得ないわけなんですよね。
 それでは、今の文部科学省の、大臣のお話ですと、少しずつ裁量権を広げてという、相変わらず今までのやり方なんですよね。それで小さな裁量権を一つずつはがしていくように広げていくだけで、それじゃダイナミズムに、学校が変わろう、地域が変わろうと一生懸命やっているのに、上の方がそういうふうにして、文部科学省という行政のトップがそのようにダイナミックに変わろうとしないというのが、やはり現場の校長先生は言うんですよ。私、衝撃的なことを言われてびっくりしたんです。まず、教育改革の抵抗勢力は行政と校長会と教員組合の三つだと言うんですよね。教育改革の抵抗勢力は行政と校長会と教職員組合の三つだと。私、もうびっくりしましたよ、それ、初めて聞いたものですから。もう本当に国民不在、子供不在だなと。これは、ある校長先生が言っているんですよね。
 ですから、現場はそういう現実があるということをやはり知らないと、どこかでちょぼちょぼ改革していても、裁量権を広げても、それはもう不満とうっせきで、やはり文部科学省自体が、今本当にゆとり教育だ、このように一生懸命、特別免許状の有効期限の撤廃だ、授与要件の見直しだといろいろやっていたって、どれもこれも結局は校長先生の判断に最終的には行くわけですよ、学校のトップなんですから。トップがそういうふうにして、片やいっぱい要件を外しますよ、期間は撤廃しますよと言っても、実際に、人間と人間の本当に触れ合いの中でのリーダーシップを発揮するには、やはり校長先生の立場に立った教育委員会のバックアップ、それから県の教育委員会のバックアップというものがないことには、校長先生は発揮できないと思うんですよね。
 ですから、そういう意味で、もっとダイナミックに裁量権を、もうそれこそ全部を渡すぐらいの、そのくらいの気持ちがないと、今の教育改革は本当に、抵抗勢力の言っているように、かけ声だけで終わるんじゃないかと思いますけれども、岸田副大臣はどう思いますか。
岸田副大臣 先生御指摘のように、校長のリーダーシップというものが大変重要だというふうに認識しております。そのために環境整備をしなければいけない、おっしゃるとおりだと思います。
 ただ、一つ、人事権ということで申し上げるならば、公立学校においては、広域人事を行うことによって教育の機会均等ですとか教育水準の均等化、こういったことを実現するということを行っているわけであります。ですから、個別の校長にそれぞれ人事権を与えるということになるならば、人事を広域で行うということが難しくなるという意味で、公立学校における校長の人事権というものを一般的に与えるということ、これが問題だということを申し上げているわけであります。
 人事権についてはそのように感じておりますが、その部分は教育の機会均等や教育水準の維持、こういった部分において大切にするものの、それ以外につきましては、ぜひリーダーシップを大いに発揮できるような環境整備をしていかなければいけない、そのように思っております。
武山委員 今の教育委員会は形骸化しているという意見があるわけなんですね。去年、教育委員会を活性化するということで、父母の代表を入れるとか男女の比率とか議論して、そういう法改正ができているわけですけれども、しかし、これから浸透していって活性化が進んでいくのであろうと思いますけれども、相変わらず形骸化している、みんな思っているわけですよね。
 形骸化している理由の一つに、やはり教育委員会の意識改革。
 教育委員会のメンバーが、本当に活性化させるために何をしたらいいかとか、具体的にやはり意識が変わらないことには、ずっと今までの流れの中で、教育委員会のメンバーというのは、大体校長先生がなるんですよね。大体どこも、校長先生を経験した人がなります、ほとんどが。
 そして、大体校長先生というのは、もうみんな固定観念を持っているんですよね。やはりきちっと学校を運営していかなきゃいけないので、難なく一年間無事に問題がなく過ごせたらいいなと思っている人がほとんどなわけですよね。そういう校長先生が教育委員会のメンバーに入って、その中で本当に活性化できるかといいましたら、それだけじゃありませんけれども、もっと多種多様な人が入ったり、そして、校長先生がなるんじゃなくて、ダイナミズムな考え方というのはどこから生まれてくるのか、そういうダイナミズムな考え方を持っているユニークな、個性的な、そういう人を活用していかないと、教育委員会というのは活性化は行われないと思うんですよね。
 それで、活性化の一つに、民間のコスト感覚とか、これは学校経営の中ですけれども、それから公務員の横並び志向の風土や体質を変えるとか、こういう問題が出ていますけれども、私立学校と違うんだじゃなくて、私立学校のようにコスト感覚などを入れなきゃいけないという、民間の活力がやはり必要なんですよね。
 ですから、形骸化しているという固定観念の中で、まず、なぜ形骸化していると思いますか、岸田副大臣。
岸田副大臣 まず、教育委員会制度、教育行政の中立性あるいは安定性を確保し、適正に執行する上で、この制度というものは意味があるというふうに思っております。しかし、その一方で、今先生の方からもいろいろ御指摘がありました、形式的な審議に終始しているとか、あるいは地域の特色、実態に応じた展開に乏しいとか、地域住民の意向が反映されていないとか、そういう厳しい指摘があるということ、これはおっしゃるとおりであります。
 そういったことから、昨年は法改正を行って、教育委員会の構成についての配慮とか相談体制の整備を行ったわけでありますが、こうした活性化につきましては、制度の改正ももちろん大切でありますが、やはり事務局職員の意識を改めて、職員それぞれが意識を持って職務に当たるということ、このあたりが大変重要かなというふうに思っています。制度改正とあわせて、それぞれの職員の意識とか質の向上、これが並行して進むということ、これが活性化において重要ではないかなと私は思っております。
武山委員 それでは、教育委員会の研修制度なんてあるんでしょうか。
 欧米では、校長は専門の学校を出て、管理職だけをするようなシステムになっているんですね。アメリカでも、実は校長は校長ばかりやっているんですよね、もうそこの管理者として。
 日本においても、組織として改革したり、組織マネジメントが必要じゃないかと思うんですけれども、私は日本のシステムでいいなと思っているところがあるんですよ。それは、小学校、中学校、高校、それぞれ公立学校ありますけれども、平の教師をしながら、そして指導主事になったり、主任になったり、それで教頭先生になって、校長になる、それはあらゆる経験を学校の中でしてきて校長になるということなんですね。それは非常にいいと思うんです。
 ところが、その体験と経験が校長になったときにきちっと生かされていないから、校長先生は名ばかりで、校長として学校の管理者としてリーダーシップがとれていない。だから学校が画一的で、そして全然特色ある学校になっていない。それでもういろいろな問題が今山積み。日本のよさ、本来だったら、欧米にはないよさなんですよね。それで、欧米にないよさだから、本当は日本のそういうよさを生かして、本来の基本的な精神というのはそんなものなんだと思うんですよ。そこに視点があったんじゃないかと思うんですよ。
 欧米は、もう管理職は管理職なんです。平の教師はずっと平の、プロでいくわけですよ。何年も何年もプロの、授業だけを教えるわけですよ。小学校でも、クラス別に、能力別になっているわけですよね。ある学校の国語の先生の、Aクラス、Bクラス、Cクラスだったら、一番トップのクラスのAだけを教えるクラスは、プロの国語の先生だけが教えているわけです。授業だけを教えているわけですよ、アメリカの小学校でも能力主義別にやっている学校は。そういうふうに公立学校でもやっているわけなんですよね。
 日本は本来、そういうよさを持っているにもかかわらず、そのよさが発揮できない。それで、本来、日本のよさを発揮させなきゃいけないのに発揮できないから、じゃ新しい方法として、やはり欧米のように管理職だけを校長先生がする、いわゆる組織マネジメントですね、そういう方法も取り入れたらいいんじゃないかと、現場からそういう声が出ているんですよ。もう校長先生、身動きできない、一生懸命やろうとしても、どうしてもリーダーシップがとれない。だから、もう組織マネジメントだけするようなことも考えてもいいんじゃないかという、そういう現場の声に対して、どう思いますか。
岸田副大臣 校長がリーダーシップを発揮して特色ある学校をつくる上でも、校長のマネジメント能力というのは大変重要だというふうに思います。また、今先生御指摘のように、さまざまな経験を生かす上からも、マネジメント能力の涵養というものは大変重要だというふうに認識しております。ですから、現状におきましても、各都道府県の教育委員会におきまして、マネジメント研修を実施するためのカリキュラムを作成する経費を計上しているところでありますし、また、独立行政法人教員研修センターにおける中央研修講座においても、マネジメント研修を導入するというようなことをしております。
 こうしたマネジメント研修の重要性、従来からも認識して、こうした資質の涵養に努めているわけでありますが、これからもこうしたマネジメント能力の重要性にかんがみて、引き続きまして、その資質向上に努めていきたいというふうに思っています。
武山委員 次の視点の、特別免許状の授与要件の見直しと有効期限の撤廃というところで、これは都道府県のみで効力が有するとあるんですけれども、ある県で一度この教師が適切だということで認められても、他の県で不適切として排除する機会を与えてしまうという意見が実際にあるんだそうです。これを定めたのは一体どういう理由なのかということを聞きたいと思います。
岸田副大臣 特別免許状というもの、学校教育の多様化に対応するため、当該地域や学校の事情に応じて、都道府県の判断によって授与するというものであります。ですから、それぞれの地域、学校の事情というものをしっかり踏まえて判断し、授与するということであるならば、やはり当該都道府県に限るということ、これはあるべき姿だというふうに判断しております。
武山委員 私のところは、江戸川を隔てて、千葉県野田市と埼玉県ということで、川を隔てて、橋を渡れば隣ということで、そういう環境からこういう質問をしたわけなんです。
 それから、これにかかわりまして、まず、結婚や転勤等で他県に異動した場合、再就職ができなくなるのではないか。これはもう再就職を支援するのが全体の奉仕者である行政の役割ではなかろうかと。例えば、これは恐らく奥さんで、御主人の転勤に伴ってどこかの県に行って、奥さんがきちっと免許状を持っている場合、これはもう行政の役割ではないかということに対して、副大臣はどう思いますでしょうか。
岸田副大臣 ある教員が他の県において教員になる場合、これは改めて教員採用試験を受けなければならないわけであります。ですから、他の県に引っ越した場合にすぐに教員として再就職できないということは、これは特別免許状だけの問題じゃなくして、普通免許状を有する者においてもこれは同様であります。ですから、その問題は特別免許状を有する者だけの問題ではないというふうに思っております。
 そして、その範囲の限定につきましては、先ほど申し上げましたような理由で、当該県に限るということ、これはぜひ御理解をいただきたいと思います。
武山委員 そこもやはり要件を外していくべきだと思います。優秀な先生だったら、せっかくの経験と、本当に、国が教員養成の学科を設けて、ほとんどそこで養成して、それで、あしたの財産である子供たちの教育に携わるわけですから、そこに大変な税金を費やして先生を育てているわけですよね。それにもかかわらず、転勤や何かで異動した人、それは県単位だから認めないということであったら、せっかくのいい先生であれば、その財産というのはむだになってしまうわけです。あくまでも税金で、結局は、そこに税金を費やして、経験と、それから職業人としてやってきているわけですから、そこを御理解いただきたいというのは理解できません。
岸田副大臣 要は、免許と採用は別物だというふうにぜひ御理解いただきたいと思います。
 この特別免許状というもの、学校の多様化が進む、さまざまな特色化が進む、そして地域の事情等も勘案した上で、それぞれの都道府県が判断するというのがこの趣旨であります。こうした趣旨から見て、当該都道府県に限るということ、御理解いただきたいと存じます。
武山委員 それは、県単位の枠の中でということは、それこそグローバリゼーション、すなわち、よい意味でですよ、国内全体を考えていない、本当に画一的な物の考えだと思います。せっかくのその人の能力も結局お蔵入りになってしまって、生かす機会がないということが言えると思います。
 それから、時間も少なくなってまいりましたので、次に入ります。
 語学の先生ということで、まず、語学の補助教員として外国の先生を、いわゆるALT、AET、これはアシスタント・イングリッシュ・ティーチャー、アシスタント・ランゲージ・ティーチャーと言われている、いわゆるJETプログラムで来ている外国人の英語の先生ですね。これは、教員に関して明確にされていない、各都道府県によって判断に非常に違いが生じていると。この補助教員について特別免許状を与えることができるのかということを聞かれました。そして、与えられるのであれば、どのように免許申請の許可が出るのか、詳しく教えていただきたいということです。
岸田副大臣 今御指摘のALT、要するに外国語指導助手につきましては、異なる言語や文化を理解するとか、コミュニケーション能力を向上させるとか、さまざまな意味で有意義な制度だというふうに思っております。
 そして、特別免許状との関係について御質問をいただきましたが、今回の特別免許状制度の活用については、外国人も日本人も同等に扱うというのを想定しております。
武山委員 現在、英語を指導するには、日本人教師が必ず一緒にいなければいけないということになっているようなんですね。母国語を話すネーティブの人が二人というのはいけないのかどうか。語学を指導する場合に、一人がネーティブで、もう一人ネーティブの人、二人で、英語を話す人が、母国語を話す外国の教師が二人組でやってもいいんじゃないかということを言っているわけですね。ある地域は、そういう先生が雇える環境にあるのかどうか、恐らく雇えるんじゃないかと思うんですよね。なぜ二人ではいけないのか、二人ではいけない理由を明確にしていただきたいというんですよね。
岸田副大臣 教育職員免許法では、外国人であっても、免許状を取得すること、これは可能であります。相当免許状を有して、単独で授業を行うということ、これはALTであっても可能であるというのが現状であります。現状、ALTというもの、外国語の指導助手としての役割が期待されているということから、チームティーチングによる指導を行うのが通常ということにはなっております。
 なお、特別非常勤講師制度、これによりますと、ALTについても、英会話等、教科の領域の一部を担当する場合は、都道府県教育委員会への届け出により単独で授業を行うということ、これもできるというのが現状の制度でございます。
武山委員 母国の教育職員の免許を持ち、例えばイギリス人がイギリスで教職の免許状を持って指導できる教師が日本で指導できないというのは、閉鎖的じゃないか、閉鎖的な教育職員の免許法を改正することも重要じゃないかという意見があるんですけれども、これに関しての見解を聞きたいと思います。
岸田副大臣 現行におきましても、教育職員免許法第十八条の規定によりまして、外国において授与された教育職員に関する免許状を有する者、または外国の学校を卒業し、もしくは修了した者、こうした者につきまして、授与権者、都道府県教育委員会でありますが、教育職員検定によりまして、各相当の免許状を授与することができるというのが現状であります。ですから、これは特段の免許法の改正を必要としないというのが現状であります。
 免許状の授与に当たりましては、外国でどんな免許状を取得しているのか、あるいはどんな学校を修了しているのか、それからそれらの学校における専攻科目等々、こうしたものを教育職員免許法及び施行規則の基準に照らして、教育職員検定によってその審査を行い、そして相当免許状を授与するということを行っている、これが現状でございます。
武山委員 外国人が、大学で英語を指導できても中学や高校では英語の指導が認められないというんですね。より質の高い教育を受ける機会を奪うのではないか、確かな学力を唱える文部科学省には、これはなじまない、国益に反するのではないかと、私の地元の校長先生が言っているんですね。外国人が大学で指導できても中学や高校で指導が認められないということに対して、岸田副大臣、これは国益に反するのではないかと。
岸田副大臣 すぐれた知識あるいは技術等を有する外国人を学校教育において活用させていただくということ、これは大変重要なことだというふうに思っています。
 ですから、今回の特別免許状の取得について、その学歴にとらわれず幅広い人材を確保する、あるいは有効期限の撤廃により身分上の安定を図る、こういったことによって特別免許状の取得が促進されることをねらっているわけですが、そのことにおいて、外国人と日本人を同等に扱うということを想定しておりますので、こうした制度を活用することによって、すぐれた知識、技術を有する外国人、こうした外国の方に、日本の教育の活性化にその力をかしていただけるようなこと、これはぜひお願いしたいものだなと思っております。
武山委員 今のお話ですと、語学のみならず、外国の文化や先端技術等も含めて、非常に質の高い外国人が日本に今いるわけですけれども、そうしますと、特別免許状を与える機会がこれでふえたというふうに解釈できるんでしょうか。子供たちがより質の高い教育を受けることができるような改正であれば、すばらしいと思うんですね。そういうふうに解釈してよろしいんでしょうか。
岸田副大臣 おっしゃるとおり、語学のみならず、文化、先端技術、多方面にわたりまして、すぐれた知識、技術を持っておられる外国の方にこの制度を活用してもらうということ、これは大変重要な意義あることだと思っております。
武山委員 それでは、外国人が特別免許状を取得するときの要件、基本的に何が必要か。卒業証書が必要だとか、そういう要件が複雑であれば、門戸は開かれないと思うんですね、今までどおり、相変わらず複雑な、わかりにくい、煩雑な手続があれば。もっと簡単に欧米では門戸が開かれておりますので、そこに大きな差がありますので、それは後で結構ですので、免許を与える機会をつくるための基本的なそれは、後で教えていただきたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、免許状の失効及び取り上げに係る措置の強化ということですけれども、懲戒処分を受け、その情状が重いと認められた場合、免許状を取り上げる。この情状が重いという基準、一体どこから情状が重いという基準が来ているのか。そこをちょっと詳しく御説明願いたいと思います。
池坊大臣政務官 今委員がおっしゃいましたように、現行制度上、免許状の取り上げは、法令の規定に故意に違反し、また教職員たるにふさわしくない非行があって、その情状が重いと認められたときとされております。
 では、どういうときに情状が重いか否かの判断といたしましては、授与権者が客観的な一般社会通念に基づいて行うものでございますけれども、具体的には、重大な犯罪行為や児童生徒等に対するわいせつ行為などが該当するものと考えられます。
武山委員 この改正なんですけれども、これは取り上げということになると思うんですね。採用のシステムを問題視して改正なのか、教師の数が余るから、労働の問題を考えて改正なのか。この改正の目的は何なのかということですね、副大臣。
岸田副大臣 現行制度において、現職教員については、懲戒免職の処分を受け、その情状が重いと認められるときに限り、その免許状を取り上げることができるというふうに教育職員免許法第十一条に規定されているわけであります。このような規定ぶりもありまして、近年、児童生徒に対するわいせつ行為等の非違行為により懲戒免職の処分を受ける教員が急増しているにもかかわらず、授与権者の判断により免許状を取り上げない場合、こういったケースが多く見られるというのが現状であります。
 これらの非違行為は、教員に対する信頼を失わせ、ひいては学校教育全体に対する信頼を損なうものであり、免許状に係る措置についても厳正に対処する必要があるわけであります。
 また、懲戒免職と資格の関連についての規定でありますけれども、懲戒免職の場合の資格喪失事由が、情状が重いときに限定されている、しかも授与権者の裁量にゆだねられている、これは教員免許状のみでありまして、ほかのさまざまな免許とのバランスということも考えなければいけない点であります。
 こうしたことを考えた上で、教員の信頼を確保するため、所要の規定を整備することとしたわけでありまして、これが今回の改正の大きな理由だということでございます。
武山委員 それでは、もう一度岸田副大臣にお尋ねしますけれども、一度免許状を取り上げますね、そういう行為をしたということで。そうしましたら、その免許状を授与しないこととする期間が三年ということなんですが、この三年という理由は何なのか。
 それで、例えば、現場のある校長先生の話なんですけれども、もう一度復帰してほしいという理由があって、再度研修などを受けることができるのかどうか。この三年間ということに絞った目的が何なのか、それを御説明いただきたいと思います。
岸田副大臣 免許を授与しない期間でありますが、現行二年という期間になっております。教員の職務の特殊性にかんがみて、懲戒免職の処分を受け、そして免許状が失効した者や、非違行為により免許状取り上げ処分を受けた者が、二年という短期間で教職につける可能性があるということ、これは適当でないということで、今回の改正を行ったわけであります。
 この三年の理由でありますが、これは、他の資格との均衡を考えた場合に、さまざまな免許がございます、それぞれの免許との比較をした上で、やはり三年というものが適当だという判断で今回三年という改正をお願いしたということでございます。
武山委員 それでは、恐らく三年間は、学校の先生としては無職という考え方だと思うんですね。恐らく、働かなかったら生活できないということであれば、自分で職を探して働くということになるんではなかろうかと思いますけれども、実際に懲戒免職後復帰した人が本当にいるのかどうか。三年間のブランクで、それで、その復帰するとき、また教員免許状を取り直して復帰するのか。前の免許状は失効ということになりますから、そこでもう失うわけですね、ゼロからのスタートになるわけじゃないかなと思うんですけれども、まず、具体的に以前こういうのがあったかどうか、そして、今まで二年だったということですけれども、復帰が行われた例があるのかどうかということについて、お答え願いたいと思います。
池坊大臣政務官 平成八年度から平成十二年度までの五年間において、懲戒免職処分となった全国の公立学校の教職員数は、合計で三百三十六名となっております。懲戒処分を受けた三百三十六名のうち教員として復帰した者についての数は、把握はいたしておりません。
 それから、失効いたしました者は、もう一度免許状を取得しなければなりません。
武山委員 こういう法律改正をする以上は、ぜひその把握も今後していただきたいと思います。
 これで時間が来てしまいました。終わります。
河村委員長 次に、石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 私どもの事務所に、この四月に入りまして、ある学校から訴えがございました。内容は教員の定数配置に関する事柄でございますので、まず、この問題で質問をいたします。
 訴えの要旨を紹介しますと、平成十四年度が始まり、新しい教育課程が完全実施となった、学習内容の三割削減等により児童生徒の学力低下を心配する声もあるものの、新しい学習指導要領は、各学校の創意工夫を生かして特色ある教育を行い、ゆとりの中で生きる力をはぐくむという高邁な理想を掲げて出発するはずだった、ところが平成十三年十月に突然出された怪文書によって、学校の時間割り編成に手かせ足かせがはめられ、新教育課程のうたい文句にあった弾力的な時間割り編成など全く無理な状況になってしまった、このことは、一般の方には知られていないようだが、学校現場では、前述の怪文書によって与えられた過酷な条件に悲鳴を上げているというものであります。
 この怪文書というのは、平成十四年度公立義務諸学校の研修定数等の計画に係る資料の提出についてという、既に昨年十月に出された依頼文書なんですね。事務連絡ということで、十月十二日付、文部科学省初等中等教育局財務課長前川喜平の名前で都道府県教育委員会に出しているということですが、まず、間違いありませんか。
矢野政府参考人 委員の御指摘の文書は、御指摘どおり、平成十三年の十月に、平成十四年度における公立義務教育諸学校の研修等定数等の各都道府県の計画を把握するための資料の提出を依頼した文書を発出いたしているところでございまして、御指摘の文書はこの文書であろうかと思います。
石井(郁)委員 この依頼文書についている資料には、平成十四年度公立小学校指導方法工夫改善を行う学校の具体の取り組みに対する支援実施計画というのがございますよね。
 例えば小学校で見ますと、これまでは、一学年二クラスとしまして十二学級になるわけですが、担当教員を一人増員したいということになると、週当たり二十から二十四時間、大体約二十二時間なんでしょうか、チームティーチングだとか少人数授業を要望したらよかったわけですが、この十四年度の計算方式によりますと、実施に伴う指導時数の増というのは、週当たりどのぐらいになるんでしょうか。六十六時間になるということでよろしいですか。
矢野政府参考人 この事務連絡において示しました計算方式で算定いたしますと、週当たりの持ち時間数は、十二学級の小学校で、教員一人当たり二十五・一時間ということになります。
石井(郁)委員 ちょっとおかしいと思うんですよね。この支援実施計画ですよ。加配を要求しなきゃいけないわけでしょう。そのために全体どのくらいになるかということなんですけれども、六十六時間になるんじゃないですか。全体、学校が行う全体の、週当たり。
矢野政府参考人 失礼しました。
 今申し上げたのは一人当たり二十五・一時間でございますから、これに、標準法によりますと、十四人を掛けた人数が学校当たりの数字になります。
石井(郁)委員 では、幾ら、それで。
矢野政府参考人 失礼しました。
 そうなりますと、合計で三百五十二時間になります。
石井(郁)委員 いや、どうも計算が違うのですよね、それは。加配、これまでの計算ですよ、これまで。十四年度で明らかに違うでしょう、計算の仕方。あなた方、今までと違うようにしたでしょう。
 この資料集によりますと、実質増加指導時数というのは、何かXから、要するに、今までの計算方法に加えて、新しいやり方をとったわけですよ。このことを聞いているのですよ。それによるとどうなるんですかと聞いているのです。だから、今までと違う計算方式を入れたわけだから、それはどうなんですか。今までは二十二時間でよかった、それがふえることになるんじゃないですかと。
矢野政府参考人 御指摘のように、今までの方式によりますと二十二・〇時間でございます。
石井(郁)委員 聞いている方もわからなくて困るので、ちょっとこれだけをこんなやりとりをしていても困るのですけれども、どう言ったらいいでしょう。とにかく、これは今数字をごまかしているのですよ。ふえることは間違いないのです。ふえているのです。今までの約三倍にもふえているのです。
 つまり、現場で何が起こっているかといいますと、要するに、教頭先生も教務主任も加配の先生もみんなで、この時間を二十二時間ずつ持って、六十六時間というふうに持たなくちゃいけないという計算になるのですよ。
 これは計算方法を変えているのですから、今までと。実質増加の指導時数というので導き出さなくちゃいけないように、新指導要領の実施で授業時数が減っているということでやったわけでしょう。
 この計算を押しつけて、現場は大変混乱をしまして、だから、こういう資料がここにあるのですけれども、平成十四年度、新たな計算方法、あなた方が、机上のプランだと私は思うんだけれども、今までと違った計算方式を押しつけたんですよ。
 この計算方式どおりにやると、これはもう授業時数を教師が実際にふやさなくちゃいけなくなるということになって、このとおりの加配の要求はできないというところも出てくるし、だから、これを無視しているところも出てくるし、それから、このとおりやって、押しつけられて大変だという学校も出てくるということで、学校が混乱をきわめているのですよ。それは聞いていると思います。
 それで、これは大変、都道府県教育委員会から、このとおりにはやれないということでいろいろ苦情があったと思いますけれども、この計算の押しつけについては手直しをしたんじゃないですか。手直し、それをちゃんと言ってください。
矢野政府参考人 改めて申し上げますけれども、この計算方式は、単に加配の申請の様式としてお示ししたものであります。
 しかしながら、これは、御指摘がございましたように、この様式を示した段階で、一部に、教員の持ち時間数を増加させることが必要なのか、そういうふうなお問い合わせがあったのは事実でございますので、そのため、私どもといたしましては、これは、先ほど申し上げましたように、単に加配の申請の様式として示したものでありまして、平成十三年度、今年度に比べて十四年度の持ち時間をふやすという趣旨ではない、そういうことだということで、これは、教員の持ち時間数を減らさないことで少人数指導等の時間を可能な限り確保する、そういう趣旨であって、現状以上の指導時間数の確保を強制するものではないということを、改めて口頭で内容について説明を申し上げたところでございます。
石井(郁)委員 重大な問題でしょう。それが、文書で出して、混乱をきわめているのに、口頭で手直しをする。私は、こんな文部行政というのは本当にいいかげんだと思いますよ、それは。徹底しないじゃないですか、都道府県に、各学校まで。口頭ですよ、大変無責任なやり方じゃないでしょうか。
 それで、実際、それはきちっと伝わっているんですか。今のような内容は伝わっているというふうに言えますか。
矢野政府参考人 失礼しました。
 今申し上げた様式の趣旨は今申し上げたような趣旨であるということを、会議等におきまして、特にこれは都道府県に対して、私どもでございますが、都道府県に対して説明をいたしてきているところでございます。そういう意味で、もしその趣旨が不十分であるといたしますならば、私どもといたしまして、必要に応じて、さらに説明してまいりたいと思っております。
石井(郁)委員 五日制になって、要するに授業時数が減ったと世間は思っているわけですよ。しかし、文部科学省のこの加配の申請の計算様式というのは、どこかがつくられたんですよ。それによると、持ち時間数がふえる、現場は。明らかに大幅にふえるんですよ。
 それで、今のお話のように、手直しをしたといっても、この手直しの内容というのは、ゆとりの時間というのが昭和五十二年に導入がされて、小学校十時間、中学校で十一時間というのがあるんですけれども、授業数を減らせというところにみなしていたので、それはもとに戻したというふうに聞いているんですけれども、考えたら、ゆとりの時間というのは二十年以上前につくられて、その時点では何の手当てもしないで、今、五日制になったからといって急にそれを加味して計算せよというのもおかしな話なんです。
 現実は、それを手直ししたとしても、教員加配で、TTあるいは少人数指導という名前で一人教員をふやしたとしても、週当たりの授業実施時数というのは四十八時間ふえるんですよ。だから、いろいろな指導方法工夫改善の授業を行わなければならなくなるということで、現在よりもいわば倍以上、教員としては、持ち時間としては授業がふえることになるということなんです。
 ある学校なんですけれども、だから、四十八時間の指導工夫改善授業と称して、授業をとにかく持たなきゃならない、先生方がいろいろグループ指導等々に入らなきゃいけないということで、担任を含めて、教頭先生が十二時間持つ、教務主任が十四時間持つ、研究主任が十九時間持つ、生徒指導主事は十七時間の授業を持つということで、本来の仕事もやりながらなんですけれども、それもできずに、職員室もだれもいない学校になってしまっているという状態だということで、こんなことがまかり通っていいんだろうかという訴えなんですよね。
 私は、これは非常にゆゆしき問題だ、そんなことを文部科学省がこの五日制のもとで本気でやれと言っているのかどうか、これは官僚、あなた方の机上のプランの押しつけではないのかというふうに思うんですね。だから、新指導要領で授業時数が減ったんだ、だからその実施に伴う、そういう考え方でかえって持ち時間をふやすという、こんなこそくなやり方をやはり押しつけないということで、今までどおりの、週当たりの、だから、平成十三年度までの計算方式でいいんじゃないかということなんですよ。どうですか。
矢野政府参考人 これは、特に少人数指導等の加配のあり方に対する基礎の考え方でございますが、私どもといたしましては、週二時間、週二こま、完全学校五日制によって減るわけでございますけれども、教員の持ち時間数は基本的には従来の指導要領下における持ち時間数と変わらない、それを前提に、教職員の配置改善計画を進めたいと考えているところでございます。
石井(郁)委員 現場の状況を申し上げましたけれども、とにかく授業時数を消化するために、チームティーチング、二人ですけれども、それを三人でやるだとか、そんなことが行われているんですね。私は、こういう計算を押しつけるために、現場では逆に、非常に教師に負担をかけているというふうに思います。
 文部科学省に伺いたいんですけれども、第七次の定数改善計画のときに、主要教科で少人数授業というのは可能だということを言われたんじゃないですか。しかし、それは、もう今はできないということを認めて、こういう文書、計算方法を押しつけてやっているんじゃないかと言わざるを得ないんですが、どうですか。
矢野政府参考人 当時、私が担当局長でございましたから、その当時の考え方をこういう形で申し上げたわけでございます。
 第七次の、教員だけの数で申しますと、少人数加配は二万六千九百人じゃなくて、二万二千五百人を基本的には措置していただきたい。それを措置していただければ、現在、六次計画によるチームティーチングの加配が一万五千九百三十一人ございます。それらと合わせますと、約三万八千四百人のいわば財源が確保できるわけでございます。それに、私どもといたしましては、学級担任外教員の一部を有効に活用することにいたしますれば、この計画が完成した段階におきまして、基本教科三教科について二十人程度の少人数指導ができるということを申し上げたわけでございます。
 なお、その際に幾つか条件がございますと申し上げまして、その一つとして、平成十四年度から完全学校週五日制になって授業時数が減るけれども、教員の持ち時間数は現状よりも減らさない、そういう条件のもとに今申し上げたようなことが可能でありますということを国会で私の方から申し上げた経緯がございます。
石井(郁)委員 第七次までちょっと戻ることはできませんけれども、とにかく現場に今混乱を押しつけているわけですよ、これは間違いなく。そうしながら、今、法案の審議に入っていますように、兼職だとか他校種免許状、他校種への異動ができるというようなことになるわけで、私は、今お話しの少人数指導だとかいうことをやるために、本当にその問題の解消に安上がりに、小学校の教員が足りなかったら中学校の教員を使う、あるいは中学校で教員が足りなければ高校の教員を使うということが文部科学省の本音ではないのかというふうに言わざるを得ないんですね。だから、少人数指導とか習熟度別授業というのを中学校や高校の先生を使ってまで促進するということをあなた方はお考えになっているのですかと。
 どうですか、それを聞いたら。では、大臣にお願いします。
遠山国務大臣 今回の他校種免許状によります専科担任の拡充の趣旨といいますものは、各学校段階間の連携を促進する、それから小学校におきます専門性の高い教科指導の推進をねらいとするものでありまして、単に校種を超える兼務を目的としたものではございません。
 それから、定数に絡む御説明をする前に、任用の方法について申し上げますけれども、専科教員の任用の具体的方法につきましては、中学校などの教員を小学校の教員に異動させる、これは完全にその定数の中で処理する話ですね。それから、中学校などの教員に小学校の教員を兼職させる、これは中学校の定員の中で、小学校については一部の時間を使って兼職させるというようなことでございまして、どちらの任用形態とするかは、任命権者の判断によっております。
 次に、今回の改正によりまして、中学校などの教員が小学校教員を兼職するということで教員定数が減るのではないかという点につきましては、全くそうではございません。各学校の具体の教員の配置というのはもちろん各都道府県が決定すべきものでありますけれども、このような兼職の措置は、各都道府県ごとの教員定数の減につながるものではないわけでございます。先ほど説明しましたように、任用の仕方を吟味していただいてもわかると思っております。
 私どもといたしましては、冒頭に申し上げましたような趣旨を周知徹底することによりまして、この専科担任制度を積極的に使ってもらって、学校の教育内容の充実、それからいろいろな、専門的な知識、技術を持つ人を活用していく、そういうことでございまして、この点については誤解のないように、私の方から御説明させていただきました。
石井(郁)委員 兼務ということを実際に行っているところもあるんですね。そこからも実態を聞いてみたんですけれども、やはりなかなか大変な事態だと。
 例えば、中学校で担任を持ちながら小学校に教えに行くということ、それは月一回でも、中学校三年生だと進路指導を受け持っているわけですから、そのクラスがどうなるかという心配があるし、落ちつかなくなったりもするということがありますね。また、小学校に中学の先生が教えに行く場合、行った先の学校とクラスの子供の状態がどうなのかというのは、相当事前にもつかまなきゃいけない、もちろん事後にもフォローしなきゃいけないということになりますと、相当ないろいろな時間と負担がかかるわけでしょう。
 だから、今回、こうしたことが既にもう行われているところがあるわけです。そこでは大変な実態だということが出てきています。だから、これは、こういうやり方が制度的に全国的にやはり広がっていくのかという問題、確かめておかなきゃいけないんですね。
 私は、こんなやり方が、一方的に教師がどんどんと動かされるような状況で広がっていけば、小学校教育も中学校教育も本当にどうなるのかという心配が非常にあるわけでございまして、既にあるところでは出ているわけですから、文部省、その点はいかがですか。
矢野政府参考人 先生御案内のように、今回専科指導ができる対象の教科を広げたわけでございますが、それまでは、音楽とか図工とか体育とか、実技指導について専科指導ができたわけでございまして、現に、平成十三年度のケースで申し上げますと、五千人の教員が兼職あるいは異動というような形で専科指導に携わっている、そういう実績が今日まであるわけでございます。かつ、適切、有効な教育指導として今日までなされてきたという実績があるわけでございます。
 そういう実績を踏まえながら、新たに今回対象の教科を拡大したわけでございますが、先生御指摘のような問題点、留意事項はあろうかと思います。特に発達段階について、中学校あるいは高等学校と小学校との発達段階は違うということもあるわけでございますから、そういうことに十分配慮しながら専科指導のそういう授業を進めていくということはもちろんあるわけでございますけれども、私どもは、そのために新たな定数措置なりを考える必要というものはないというふうに思っているところでございます。
石井(郁)委員 私は、やはり本当に専科の教員というのは必要だと思うんですね、小学校でも。そこをきちんと定数内で配置しないで、安易に兼務、兼務で行うというようなことというのは、本当に教育の将来を考えたときに、まともなやり方ではないというふうに思います。
 先ほども話がありましたけれども、本当に今、正規の教員自身が大変な多忙な中で行っているわけでしょう。それが、さらに他の学校にも行くようにというようなやり方で進めていくと、やはり非常に無理が生じるということがあります。
 それから、先ほども出ましたけれども、少人数学級に移行しないと、あなた方の言う第七次の定数計画によっても少人数授業ということはやはりできていかないんですよ。
 そういう意味でも、他校種の教員を動員してそういうことを行っていくというのは私はやめるべきだと思うし、やはり免許外の教科担任解消のためのきちんとした教員配置、そして少人数学級の実現ということをやるべきだというふうに思います。
 大臣は、その点で、私は今からでも遅くないと思うんですけれども、本当に今いろいろな混乱が起きています。第七次の定数計画の見直しをやはり今の時点で行ってみる、そして免許外の教科担任解消のための教員配置、あるいは少人数学級の計画をつくるというような考え、まあ、いい答弁は出ないと思いますけれども、大臣は本当に考える気はないのか。大変なことになりますよ。ちょっと伺っておきます。
遠山国務大臣 小学校を中心にしての議論になっておりますけれども、教育を充実するためにはいろいろな方策があると思います。
 既存の教員のクラス担任のみならず、教科によっては少人数教育が可能になるように加配をしております。
 そのほかに、専科担任といいますか、専科といいますか、教科によりましては、専門的な知識の深い人がむしろそれに携わっていくという意味では、私は、既存の定数の中でも、もちろん各学校によって工夫してもらう必要があると思うんですね。同じ小学校教員の中でも、数学が得意な人、理科が得意な人、それから家庭科が得意な人、そういう人たちが分担し合って、それぞれ得意なところについて力を発揮していくというようなこともございます。
 それから、あるいは最近、補正予算で昨年度からつけておりますけれども、学校いきいきプランということで、社会人を活用していく、そういうようなこともどんどん進んでまいっております。
 それから、今の御提案申し上げております免許法の改正によりまして、中学校、高校の教員で、それぞれの担当教科について十分な知識、技術を持っている人が小学校に行くこともできるようにする。もちろん、その人たちの負担を重くするとか、あるいは小学校における教員の定数を減にするというようなことでは全くないわけでございます。
 いろいろな可能性を制度としてつくり、それをうまく援用していただいて、それぞれの小学校なり中学校なりというものの教育を充実していく、そのためのものであるわけでございます。
 殊に、今回の改正の場合には、これまで小学校における教育のあり方がクラス担任制であった、中学校に行ってすぐにそれは教科担任制になっていく、そのときの落差が子供たちの対応、適応においてなかなか難しい面があった、そのことがいろいろな問題を生じているという面もある、そのようなことに配慮しまして、小学校と中学校の間の教員や教育のあり方の連携というものをより深めていくというような、いわば、単に小学校の特定の教科についての教育内容充実というだけではなくて、これからの学校種間の連携というふうなこともねらっているということでございます。
 しかも、それは、定数上の措置というのはきっちりとやるということでございまして、現在進んでいる教員定数の充実計画、これはしっかりとやっていくという大前提のもとに進んでいるということを御理解いただきたいと思います。
石井(郁)委員 今審議されているこの法案でございますけれども、施行日はいつですか。ちょっと伺っておきます。
矢野政府参考人 施行日は今年七月一日でございます。
石井(郁)委員 おかしいことがあるんですね。この法律が通っていないのに、既に先取り実施を始めている教育委員会がございます、私どもの大阪ですけれども。
 今年度から小中学校いきいきスクールというのが実施されていまして、中学校から小学校へ三十名、小学校から中学校へ二十二名、この四月一日に校種間兼務の発令を行っているんです。中学校教員の専門性を生かした小学校における理科、算数を初めとする教科担任制の導入、小学校の総合的な学習における国際理解教育の推進をうたい文句にして、算数、理科、国語、総合的学習に英語の教師を兼務させています。
 中学校教員で小学校の教員免許状を持つ者が九割、総合学習を受け持つ英語教員は、小学校の教員免許状を持っていないというわけですね。だから、音楽とか美術、体育、技術などならいざ知らず、こういういわば主要教科、国語、算数、理科、総合学習などは、法案が通らなければできないんじゃないでしょうか。お答えください。
矢野政府参考人 委員お尋ねの件につきましては、大阪府教育委員会から聞きましたところによりますと、今年度から、小中学校間の教員の協力の関係を構築して、個に応じたきめ細かい学習指導、生徒指導、進路指導を一層推進する小中学校いきいきスクールと銘打った事業を開始したと聞いているところでございます。
 この事業におきましては、同じ中学校区内の小学校、中学校間で教員の異動や兼務して、例えば中学校教員が小学校高学年の授業を担当し、児童が卒業後、その生徒を中学校でまた担当することなどによって、一貫した指導を可能にしようとするものであるというふうに聞いているわけでございます。
 そこで、教員のこのような異動や兼務が現時点において可能かということでございますけれども、小中学校の両方の普通免許状を有する者がほとんどであるというふうに聞いておるわけでございます。この場合は、当然のことながら、こうしたことは可能であるわけでございますが、ただ、委員が御指摘のように、ごく一部ではございますけれども、免許状を有しないケースがあるようでございます。それにつきましては、大阪府の対応といたしましては、当分の間、暫定的な措置といたしまして、チームティーチングの指導といったような形で活用をいたしたいというふうに聞いているところでございます。
石井(郁)委員 何か非常にあいまいですよね。実際、こういう兼務が小中の免許があればできるということだったら、この法案の審議そのものが本当にどういうことなのか。この法案に先立って、まさに先取り的にフライングしているんじゃないかというふうにも言えるわけで、だから、できるんだったら法案審議なんか要らないわけですから、そこら辺は、何でこういうことが可能なのか、もっと文部科学省としてもちゃんと根拠をはっきりしてもらいたいというふうに思います。また、きちっとしたその根拠を示してもらいたい。
矢野政府参考人 その御指摘の点についてはごもっともでございまして、ごく一部といえども、免許が、こういう制度改正がまだできていないわけでございますから、現段階ではできない。したがって、チームティーチングといったような対応で対応しているということでございます。
 そういう意味では、いわばこの法律施行を先取りする形で、しかし、もちろん違法な形ではございません、現在、運用として可能なやり方をやりくりしている、そういうぐあいに受けとめているわけでございます。
 一方、先生おっしゃいましたように、両方の免許状を持っておればできるじゃないかというのは、それはそのとおりでありますけれども、それはいわば、これはだれでもいいというわけではなくて、中学校の教員で、例えば小学校の教員にふさわしい、そういう人材を兼職なり異動させたいと思っていても、小学校の免許状を持っていなければ現在はできないというわけでございますから、そういう意味で、この制度ができることによりまして、形式的に両方を備えておれば交流ができるということではなくて、実質的に意義のある交流がこの制度改正によって可能になるわけでございます。
石井(郁)委員 何かやはりいろいろ混乱していますね。私は、文部科学省は混乱していると思いますよ。だから、法律のもとで何がどこまできちんと実施されていくのか、法律がなくてもいろいろなことでやりくりしてやっていることがどこまであるのか、何かはっきりしてもらわないと、ひどいんじゃないかなという気がします。この問題は、また別途議論もしたいというふうに思います。
 次に、特別免許状の授与要件の緩和問題、有効期限の撤廃の問題でお聞きします。
 学校教育への社会人の活用を促進するためということで、特別免許状の要件緩和が出されているわけでございますけれども、我が党も、特別免許状創設時の国会審議で、社会的な経験を豊かに持つ人や文化的活動を担う人が学校の教育活動に参加することはそれなりに意義があるというふうにしながらも、社会人の活用を口実にして、大学での教員養成の原則を崩し、安易で即席の教員をつくろうとしているということには反対を表明してまいりました。
 それで、特別免許状の交付状況でございますが、既に言われているように、一九八八年の教員免許法の改正によって制度化されて、九九年の改正で全教科対象となった特別免許状なんですが、言われていますように、今までのところ、四十四件という授与状況でございますよね。
 それで、特別免許状の活用が進まないという理由があると思うんですけれども、これをちょっと簡単に御説明ください。
矢野政府参考人 特別免許状の授与件数は、昭和六十三年の制度創設以来平成十三年度までの十三年間で申しますと、延べ四十七件に相なるわけでございます。
 そこで、いずれにしても、特別免許状の取得が進まない理由としては、私ども、大きく四点に整理をいたしてございます。
 一つは、一般的な話でございますけれども、児童生徒数の減少に伴い、これまで全体として教員の採用枠が減少されてきたという採用状況を受けまして、教育委員会は教員全体の年齢構成の関係から若い人を優先して採用する傾向があったというふうに考えられることが一つでございます。
 それから、このようなことから、特別免許状は雇用されることが内定してから授与されるものでありますけれども、公立学校の教員採用におきまして、社会人特別選考というのは一部の都道府県教育委員会を除きほとんど実施されていないわけでございまして、そういう意味で、社会人に対しての公立学校の教員採用の門戸が開かれていないという実情がございます。
 それから、三点目といたしましては、教育委員会の立場では、社会人を学校現場に活用するのに、特別非常勤講師制度を活用すれば基本的には足りるというふうな認識も持っているところがございまして、授与要件が限定され手続の煩雑な特別免許状制度の活用には一般的な傾向として消極的である、そういう傾向がございました。
 また、一方、特別免許状には有効期限がありますために、社会における雇用状況が流動化しつつあるとはいえ、転職してまで教員になろうとする人が一般的には少ないと考えられるということなどが、今日まで特別免許状がさほど進まなかったという理由ではないかというふうに私どもとしては考えているところでございます。
石井(郁)委員 続きまして、今度は、免許状を持たない特別非常勤講師がかなり今学校に採用されているというか、入っていると思うんですけれども、これも八九年度から制度化されまして、九八年度から許可制が届け出制になっているというふうに思いますけれども、この特別非常勤講師の採用というのは今何件でしょうか。これは、トータルと、できたら二〇〇〇年度でお示しください。
矢野政府参考人 平成元年度から平成十二年度までの各年度における特別非常勤講師の活用件数のトータル数は四万五千四百九十件でございます。また、平成十二年度における活用件数は一万一千六百七件と相なっております。
石井(郁)委員 二〇〇〇年六月で、公立学校教員の採用状況というのは一万一千二十一人だというふうに承知していますけれども、二〇〇〇年の免許取得者実数の九・五%なんですよね。今、特別非常勤講師は一万一千六百七人と言われましたから、特別非常勤講師の方が多く採用されているということかと思います。
 特別非常勤講師がこれほどふえた要因というのは、文科省はどのようにお考えになっていますか。ちょっと、このようにふえているということについての御見解を伺っておきたいと思います。その要因、なぜふえているのか。
矢野政府参考人 まずは、社会的ニーズだと思います。学校における多様化あるいは活性化を図るという観点で、学校の外部の人材を活用するということが大変求められている、そういう状況の中での対応であるということが一つあると思います。
 それからもう一つは、これは特別免許状といったような非常に厳格な手続を経て授与されるものではなくて、都道府県教育委員会に対する報告という形でもって授与されるというのでしょうか、採用が可能な制度でございます。そういう意味で非常に、言葉は悪うございますけれども、簡単な形で非常勤講師を採用できる、そういうメリットもあろうかと思います。
 そういう社会的なニーズにこたえる形でこういう制度が非常に積極的に今日まで活用されてきているということもございますし、さらにもう一つは、こうした特別非常勤講師として活動したい、教育活動したい、これに携わりたいという、そういう面での社会的なニーズも今日非常に高まってきているということも背景にあると思います。
石井(郁)委員 今、言葉の端に言われましたように、簡単にできるというようなことで、私は、正規の教員ではなくて本当に安上がりに進めてきたということの結果ではないか、それは文部科学省としてそういうことを推進してきたんじゃないかというふうに思うんです。
 さらに、中教審でも、この二月に出されましたけれども、教科の全領域を持つ特別免許状を一部領域にしか持てない特別非常勤講師にも授与して、要するに、少人数学級対策で非常勤講師を任用する際、この特別非常勤講師を活用するということまで提言されているんですね。こういうことを文部科学省としてはお考えになっているんですか。
矢野政府参考人 中教審の答申の非常勤講師について特別免許状の活用を促進するというお話でございますけれども、この中教審の答申の趣旨は、現在、常勤の教員に対してのみ特別免許状が授与されている、現在の状況はそうであるけれども、学校教育における社会人活用の方策として、常勤の教員に対してのみの特別免許状の授与ではなくて、特別免許状を授与することによる非常勤講師としての活用も考えられるのではないか、そういう意味での提案であるというふうに私どもは受けとめているところでございます。
 したがいまして、非常勤講師についてどの程度特別免許状を授与するかどうかにつきましては、それは授与権者である都道府県教育委員会がそれぞれの実態等を踏まえて適切に判断されるべきものであって、国としてとやかく言う筋合いのものではないというふうに考えております。
石井(郁)委員 都合の悪いところになると都道府県にお任せするということを言っているんですけれども、やはり教員の定数配置が十分進んでいないということの中でこういうことがいろいろ言われてくるわけでありまして、私は本当に、免許状を持たない特別非常勤講師ということを少人数学級対策にまで使っていくというようなことというのは大変問題だというふうに思うんですね。
 今、特別免許状は、教育委員会などから指名されて教員検定によって授与されています。だから、任命権者の意向を反映しやすいわけです。これが学士要件の廃止、有効期限の撤廃ということになれば、本当に免許状主義ということが破壊されるんじゃないですか。免許状主義の破壊につながるというふうに言わざるを得ないわけです。
 既に述べましたけれども、九三年度以降、小学校免許取得者、これは延べ人数で見ますと、採用率というのは、四二・〇%から、二〇〇〇年度で一九%に減り続けています。国立の教員養成大学・学部新規卒業者の教員の就職状況を見ますと、九三年度の正規採用が六千三百人です。卒業者比でいうと三九%です。臨時的任用が二千五百人、これは一五%でしたが、二〇〇〇年度では正規採用が千八百人です、一二%に落ちているでしょう。臨時的任用が逆に三千三百人、二二%、ふえているわけですね。だから、臨時がふえていくというために正規採用がますます難しくなっていくということになるわけです。
 私、この点で、私自身もかつてこの文教委員会、これは一九八八年でございますけれども、このとき質問したことがあるんですけれども、当時、教育助成局長は、特別免許状とか非常勤講師の制度で先生方の就職口が狭まることはないという答弁をされているんですよ。しかし、今日の実態を見ますと、今見てきたように、免許状を持った人の正規採用が減っている、臨時的任用がふえているという状況でしょう。これはあなた方の答弁はどこへ行ったのかと言わざるを得ないし、まさに答弁に反している事態が進んでいるんじゃありませんか。
 私は、本当に国会の審議はこういうことでいいのかということを今つくづく思うんですけれども、こういう今の状況、これで本当に少人数学級に対応していけるのかということを考えても、やはり免許制度にのっとって、正規採用をふやしていくという軌道に文部科学省としてしっかり立たなきゃいけないのじゃないのかというふうに思いますが、いかがですか。これはぜひ大臣にもお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 免許状主義という言葉がどの程度いいかどうかでございますけれども、学校の教員につきましては、しっかりと免許状を持った人が中心になって運営していく、教育をしていくということは当然のことでございます。
 いろいろな現在抱えている社会の状況、それから学校に期待されているニーズにこたえていくということから、いろいろな資格を持った、あるいはいろいろな能力、才能を持った人たちが学校に参加していく、そのようなことの機会をふやしていくというようなことからいろいろな政策が打たれているわけでございますが、今回の教職員免許法の改正そのものもその一環でございまして、小学校の教育をきちっと本来達成されるべき目標に向かって充実をしていくという角度からの制度改正であるわけでございます。
 御心配のような日本の学校制度の中核をなしている教職員免許制度そのものを揺るがすようなことではございませんで、よりよくいろいろな方策を取り込みながら時代の要請にこたえていく、そのような大きなねらいであるということにおいて御了解をいただきたいと思います。
石井(郁)委員 いろいろ抽象的に言われますと、そういうことかなというふうに聞いてしまうかもしれませんけれども、本当に学校現場で何が起こっているのかということで考えますと、そしてこれほど正規採用者が減り続けているわけですから、これは深刻な事態じゃないですか。
 だから、いろいろな人たちが学校に入ってくることは好ましいことですということで済ますわけにいかないんですよ。これは、文部科学省の教員政策としてもこれでいいのか、学校現場がこれで本当に教育機能が充実していくのかということとして考えないと、いろいろな社会人が入ってくることは社会のニーズですということで済まされないと私は思うんですね。そこら辺が、実態をよく見ているのかどうかということが大変心配するわけです。
 それから、法改正との関係でいいますと、学校への地域の人や民間の人材を招くだとか、これは既に相当進められています。行事や授業の一部を担当することはかなり進められていますけれども、現行でもできるわけでしょう。だから、どんどん始められていますよ。
 それから、今回のように特別免許状の授与要件の緩和措置というのが本当に必要あるのかどうかという問題なんですよ。
 普通免許状を持っていない人を、有効期限もなくして特別免許状でさらに非常勤講師としても多用していくということになるわけですね。こういう方向を推し進めるということがどういうことになっていくのかということについて、やはりもっとしっかりとした、日本の学校のあり方として、教育のあり方として見ていただかなくちゃいけないということです。
 その辺、再度伺いたいと思うんですけれども、だから、社会人には門戸を大きく広げるけれども、大学で教員免許状を取った人、教員採用試験で合格して正式に採用された人には非常に研修、研修と厳しいものを課されていくという中で、さらに今度は懲戒免職処分ということで免許状取り上げまでここでは出してくるわけでしょう。だから、どうもやることが、教員採用試験、しっかり勉強して採用試験でもって教員になりたいと思った人には門戸が狭くて、しかも非常に厳しいことが課せられていって、研修その他、免許状の取り上げまで課されていって、一方で免許状を緩和する、いろいろなことを取りやすくしますよという政策というのはちょっと異常じゃないですか。どう見ても矛盾しているというか、おかしいですよ。
 だから、何か文部科学省は、本当に正規の教員をきちんとふやしていく、日本の教育を本当に充実させていくというふうに真剣に考えているのかどうかということを私は疑わざるを得ないわけですね。局長にも御答弁を願いたいと思います。
矢野政府参考人 大学の教員養成を受けて免許状を取得した正規の教員、これは学校教育においてまさに主流でございます。その人たちが学校教育の主役であることには間違いないわけでございます。
 そうした中で、先ほど来申し上げておりますように、学校には多様な人材の活用ということが学校教育の多様化やあるいは活性化という観点から必要であるということで、さまざまな施策を講じ、そうした施策の改善に努めているというところでございます。
 なお、先ほど来ちょっと、私ども少し御説明をさせていただきたいのは、特別非常勤講師等の採用がふえることによって、それが正規の教員の採用を圧迫したり、あるいはその減を招いているのではないか、そういう御指摘であるわけでございますけれども、私どもの理解といたしましては、例えば、特別非常勤講師制度でございますけれども、これは教科等の領域の一部しか担当できないわけでございまして、そのために、決して正規の教員の代替として活用されることはないものであるわけでございます。
 そういう意味で、特別非常勤講師が今日、単年度で一万一千六百件というふうな大変多くの数が採用されることになるわけでございますが、その数がふえることによって正規の教員の採用者数の減少につながることは全くないというふうに私どもが考えている点について、そのことについてはぜひ御理解をいただきたく存じます。
石井(郁)委員 最後に、免許状取り上げの問題で質問をさせていただきます。
 今回新たに、第十一条、私立学校の教員が、前条第一項二号に規定する者の場合における懲戒免職の事由に相当する事由により解雇されたと認めるときには、免許管理者は、その免許状を取り上げなければならないとされました。つまり、私立学校の教員の免許状取り上げまで法制化されるということになるかと思うんですね。
 そこで、ちょっと資料を配らせていただきますけれども、今、私立学校では不当解雇が横行しているわけです。その歯どめが求められているときに、私はこういう法律というのは逆行するものではないかと思います。
 伺いますけれども、一九九九年一月から二〇〇〇年十二月まで、私学の解雇、権利に関する争議件数は何件でしょうか。また、そのうち何件で教員側が勝利判決、命令が出ているか、お答えください。
石川政府参考人 私立学校の教員の解雇に関する争いについてのお尋ねでございますけれども、このことにつきましては、私どもとしては把握をいたしておらないところでございます。
石井(郁)委員 文科省の私学というのは、文科省というのはそういうのは全然把握しないんですか。
石川政府参考人 今のお尋ねの件につきましては、今、高等学校以下の学校につきましては都道府県知事の所管でもございますし、また先生も御存じのように、私立学校の教員につきましては、他の民間企業における労働関係と同様、労働基準法等の適用を受けておるところでもございます。
 私どもといたしましては、そのような私学教員の解雇に関して労働委員会あるいはその裁判等において争いになった件数等につきましては、恐縮でございますけれども、これまで把握してきておらないところでございます。
石井(郁)委員 私は、ここでも本当に驚きましたね。文科省は無責任のきわみですよ、これは。
 だって、法案に私立学校の教員のことが出ているんでしょう、これは十一条に。私立学校の教員に及ぶ問題を審議する法案で、あなた方が基礎的なデータというか、基礎的な資料さえ整えてないというのは驚きですよ。こんなひどい話はありません。もうこれは私は本当に何と言っていいかわからない。
 それで、私どもは、これは全国私教連という、私立学校教職員組合連合会がつかんでいるものをもとにして、私の方でちょっと整理をしてみたんですけれども、一九九九年一月以降の裁判事例、勝訴した件と敗訴した件とを出してみました。
 二年足らずの間にこれだけの裁判が起こっている。圧倒的に勝訴ですよ、これは。敗訴しているのは三件しかありません。だから、これだけの争議があるわけですよ。そして、こういう判決が出ている。
 もしこの法案どおりに、不当解雇を真に受けてこれは懲戒免職だ、懲戒免職だからもう免許状取り上げだということになったら、復帰の道を閉ざすことになりませんか。裁判をしなければ戻らないということになるわけですよ、これは。こんなこといいんですか。大臣、いかがでしょう。
矢野政府参考人 今回の改正では、教員に対する信頼を確保するために、国立または公立の学校の教員が懲戒免職の処分を受けた場合を免許状の失効事由として規定することといたしたところでございます。
 これに伴いまして、私立学校教員につきましても、免許状の取り扱いの公平性を図る観点から、これは、免許状は公立学校の教員であれ私立学校の教員であれ、免許状ということについては基本的なその機能は変わらないわけでございます。そういう意味で、免許状の取り扱いの公平性を図る、そういう観点から適用関係を明確にする必要があるわけでございまして、すなわち、私立学校の教員の場合は、その解雇の事由が使用者たる学校法人の就業規則等によりましてさまざまとなっておりますことから、一律に失効扱いといたしますと当該者に不当に不利益を課すおそれがあるわけでございます。
 そういう意味で、このため、今回の改正では、私立学校教員につきまして、国立または公立学校の教員の場合における懲戒免職の事由に相当する事由により解雇されたと都道府県教育委員会が認めたときに限ってその免許状を取り上げなきゃならないということにいたしたところでございます。
 なお、取り上げ事由とすることによりまして、行政手続法の聴聞及び教育職員免許法の聴聞の方法の特例に関する規定の適用を受けることになりまして、私立学校教員につきましては、免許状を取り上げる際には必ず聴聞が行われるなど適正な手続が担保されることになるわけでございます。
 さらに、先ほどちょっとお触れになりましたけれども、仮に解雇された私立学校教員が免許状取り上げの処分を受けた場合でありましても、裁判において勝訴し、当該解雇が無効となりました場合には、免許状の取り上げの根拠となる事実がなくなるわけでございます、さかのぼってなくなるわけでございます、消滅するわけでございます。そのために、当該者の免許状は解雇前にさかのぼって有効となるわけでございます。
石井(郁)委員 もう私は本当に大変驚いているんですけれども、やはり裁判をしなければ免許状がもとに戻らないなんというのは、大変なことなんですよね。
 現場が今どんな事態になっているかということでいいますと、ちょっと一、二例を挙げます。
 これは岡山県の黎明高校のS先生の場合を挙げたいと思うんです。
 この学校は理事長一族が学園内に学園のお金で豪邸を三軒も建てている。それで住んでいる。それをやはり組合は追及しますよ、学園のお金でやっているわけだから。そうすると、私学は世襲制が許されるから当然だというふうに開き直る。逆に、それを追及する組合幹部の先生を解雇する。解雇理由に、数年前のバレー部顧問をしていた指導時のときの一定の、何か行き違いもありましたが、既に生徒の保護者と話し合いも解決している問題、これはセクハラ問題と勝手に認定されたわけですけれども、そういうことで解雇に及んでいるわけですね。
 だから、懲戒免職に該当するような解雇理由を挙げて解雇したということで、それを真に受けて免許状を取り上げるということになったら、本当に現場復帰の道が閉ざされるわけです。
 同様の事件というのはほかにもありまして、これは茨城県の水戸短大附属高校の先生の場合なんです。
 ここでも、今外国から、留学から帰ってくる生徒、これはもう外国のいろいろ、習慣というか、受けていますから、アメリカ流のあいさつであるハグ、抱きつくということですけれども、それを先生が受けとめた。そうすると、抱きついたと言われることで解雇にされる。この学園では、四十代前半になると嫌がらせで退職強要などが行われる。このAさんは、茨城の私教連の中央執行委員として活動している。だから、そういう活動をしていればそういう解雇の対象にされるということが、本当に私学では横行しているんですよ、そうでない私学もあると思いますけれども。
 だから、私は、こういう形で本当に不当解雇が一層進むようなことにつながることも考えられますから、私は断じてこの法案はやはり認められない、撤回すべきだというふうに思います。やはり免許状取り上げというのは大変厳しいものでしょう。私学の場合でこういうことが非常に起こり得るということについて、もっと厳しくきちんと受けとめなきゃいけないというふうに思うのですね。
 それから、公立の場合もこれは現行法で十分対処できるものであります。だから、ますます厳罰主義で、こういうことで学校、教師の教育活動を萎縮させるし、また暗くするということにもつながるわけですから、先ほども全体、幾つかありますけれども、わざわざ改正する必要のないことを、やはりあなた方いろいろ理屈はあるかもしれないけれども、持ち出してきているということで、私どもはこれは断じて認められないというふうに思います。
 最後になりますけれども、大臣は、この私学の問題、どのようにお考えでしょうか。ちょっと見解を伺っておきたいと思います。
遠山国務大臣 私学の問題につきましては、条件をきちっと書いておりまして、国立または公立の学校の教員の場合における懲戒免職の事由に相当する事由により解雇されたと認められるときということで、これは学校間の公平性を図るという観点もございます。
 そして、懲戒免職の事由としても限られたものを挙げているわけでございます。法令違反、職務上の義務違反、または職務怠慢、それから全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合ということなどが明示されるわけでございます。
 その意味では、今回の改正は、先ほど来の議論と、さらに加えれば、本当に教員にしっかりとした内実を持ってもらいたい、そのことを目指す改正でございまして、私は、普通にきちんとやっておられる方が何ら今回の改正によって影響を受けるということはないと考えておりまして、国公私立を通じて、教員というものは本来あるべき使命をしっかり果たしてもらいたい、その思いでの改正であるということを申し上げたいと思います。
石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、とにかく今学校現場で、それは公立、私立を含めて、ともにどんなことが起こっているのかということを、そういう認識をまず文部科学省がしっかり持っていただきたいということを、きょう私は強調いたしました。
 以上で質問を終わります。
河村委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 今回の教員免許法の改正に当たって、教育の基本にかかわる問題について先に質問したいと思います。
 戦後だけでも学校六日制というのは五十六年間ですか、もともと、戦前も入れると百二十年間続いた学校六日制を学校五日制にするということを決めたわけですから、これを決めた時点で、ということは、隔週も入れてやってきたわけですから、その五日制を実施するということを決めた時点で、教育内容の総量をどうするのか見直しをしたのではなかったかと思います。
 その意味で、教課審の段階ではどうだったのかということをお聞きしたいと思います。前段は大臣にぜひお聞かせいただきたいと思います。
遠山国務大臣 五日制の実施を決めた時点というのはかなり以前であるわけでございますけれども、そのことと今の御質問の意味がちょっとなかなかとらえにくい面もございますけれども、お答え申し上げますが、教員免許状の関係で……(山内(惠)委員「教員免許状のことはお聞きしていませんので、後で聞きますので、時数を減らす、教育内容を減らしてくるということについてどのような検討をなさってきたか」と呼ぶ)
 これは、五日制と申しますか、昭和五十年代から学校の教育のあり方ということについて十分検討がなされまして、過剰な受験勉強あるいは詰め込みということではなくて、本当に基礎、基本をしっかり身につけた上で自分で考える力を持つ、そういったような教育を展開すべきではないかというふうなことで教育内容が考えられ、それに応じた授業時数ですか、そういう教育の時間の総量というものにそれを反映して今日に至っているということでございます。
山内(惠)委員 随分前というわけではないと思うのですね、試行の期間というのは六年ぐらいですから。
 その意味では、時数を減らすということがはっきりしているのが、六日制から五日制に変わったわけですから、その中でいえば、教課審の段階で、どのぐらい減らすためにはということでいえば、教科統合のようなことは考えてこなかったのかということも含めて、簡単にお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 免許教科につきましては、原則として、教育課程上ある教科が創設されました場合に、これを専門的に担当する教員を確保するために、免許法に規定することとされております。
 今回の学習指導要領の改訂では、高等学校の情報と福祉が教育課程上の教科として新設されましたために、これにかかわります免許教科の改正につきましては、平成十二年の教育職員免許法改正において既に行っているところでございます。
山内(惠)委員 学校五日制を推進するという段階で、教課審その他で教科統合は考えられたという例は、私は聞いています。例えば生活科というような形で新たに誕生したのもありましたし、音楽だとか美術だとか、芸術科として統合してはどうかとか、それから市民科というようなことはどうだろうかとか、環境問題はどうだろうかとか、出た話の例でいえば、記号科なんというのも出てきたと聞いています。しかし、時数を削減するということでは、やはり大変教科担任の声もいろいろあって難しかったというふうに聞いています。
 それにしても、学校五日制というのは大きな教育改革でありますから、この間、学校六日制をどういうふうに総括してきたのか。この間のことでいえば、人的資源論などというのが出てきた一九七一年中教審、これは四六答申とも言われていますが、四六答申のところは、私は子供たちが本当に詰め込みがすごかったというふうに覚えていますが、この六日制をどう総括し、中教審答申で、ずっとふやしてきたものをどう総括して今回の実施に踏み切っているのか。その部分、免許状のことは後で聞きますので、ここは基本のところですので、お聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 学校五日制の検討の経緯というのでしょうか、これまでの経緯について簡単に触れさせていただきますと、そもそも学校五日制が初めて課題として提案されましたのは昭和六十一年にさかのぼるわけでございますけれども、昭和六十一年の臨時教育審議会の答申におきまして、これからの教育のあり方として、週休二日に向かう社会の趨勢を考慮しながら学校の週五日制への移行について検討するように、そういう指摘を受けたことが、学校五日制の検討がそこから始まったわけでございます。
 以来、私ども、大変大きな課題として、テーマとして、検討とあわせて準備を進めてまいったわけでございますけれども、教課審の関係で申し上げますと、昭和六十二年でございますけれども、これは平成元年の改訂につながる答申でございますけれども、そこでは、学校週五日制の問題は、幼児児童生徒の学校内外における生活に十分配慮しながら、これを漸進的に導入する方向で検討するのが適当である、こういう答申をいただいたわけでございまして、それを踏まえた形で平成元年の学習指導要領の改訂もなされたわけでございます。
 あわせて、漸進的に導入する方向で検討するのが適当であるという答申を、方向性を出されたものでございますから、具体の準備にかかったわけでございまして、平成四年の九月からでございますが、年度の途中からでございましたけれども、月一回の学校週五日制を実施いたしまして、三年後の平成七年の四月から月二回の学校週五日制の実施になったわけでございます。
 そして、平成八年でございます、中央教育審議会の第一次答申で、これは平成十年の教育課程審議会の答申につながる答申になるわけでございますけれども、そこにおきましては、完全学校週五日制の実施は、教育改革の一環であって、今後の望ましい教育を実現していくきっかけとなるものとして、さまざまな条件整備を図りながら、二十一世紀初頭を目途にその実施を推進すべきであるとされたわけでございまして、それを受けて今日まで準備を進めてまいりまして、この平成十四年四月から学校完全五日制の実施に至った、こういう経緯でございます。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
山内(惠)委員 今局長にお答えいただきましたが、いよいよこの四月から学校五日制が始まるわけですから、今のくらいのことは大臣がしっかりとお答えいただく内容だったんじゃないかと私は思います。五日制を進めるに当たって、学力低下論が出てくるときに、このことをしっかりお答えいただけることを、大臣、できるようでなければ、なぜ今回このような学力低下論が出てきているのか、そのことに対してお答えしていくに当たっても、この五日制は、今局長お答えいただいたように、大きな教育改革ですから、その意味で言えば揺れてはならなかった今なんですよ。それをほとんどお答えいただかなかったということで、私としてはもうちょっとここのところ、質問を続けていきたいと思います。
 一九七一年の中教審、四六答申とも言われているんですけれども、あの段階から過度の能力主義の教育をしてきた、詰め込み教育が始まった、私はこのとき現場にいましたからよくわかっています。
 実は、前にここで配った資料、大臣の前の大臣のときだったと思いますが、配ったことがありますが、高校で使っている不等号が中学校から小学校へまでおりてきたりして、それから漢字の字数も高学年に緩く低学年に多くおりてきたり、掛け算も四年生でマスターすればよかったものを二年生にまでおろしてきて、四年生で、割り算はたくさんの長い数を、一けたで割るんなら九九さえ知っていればだれでもできる、それを二けたの数で割るということで、概数という概念が四年生に入ってきたということで、四年生の子供たちの算数嫌いが始まったというのが、七一年の中教審以降の学校の子供たちの現状でありました。そして、それ以降、この子供たちは詰め込み教育で本当にあっぷあっぷする状況だったと思います。
 だからこそ、ここのところで問題にされたのは、画一的な教育内容であったり、伝統的な一斉授業であったり、競争的な相対評価の仕方であった、これが批判されたんです。そして、学校囲い込みのスポーツ文化と言われていたものが、ずっと学校の先生方に重くのしかかって、部活、部活に追いかけられてきたというのが学校現場の、私たちのつらい日々だったわけです。そのことを反省したからこそ、この学校五日制では生きる力をという言葉も出てきたんじゃなかったでしょうか。実は、一斉授業を、もうやはり問題あると考えた以降、現場では随分いろいろな工夫をしてきています。
 ところで、先ほど、相対評価がいいとおっしゃった方に対して簡単に到達目標というふうにおっしゃったけれども、あの方は納得されたかなと私は思いながらお返事を聞いていました。私たち、相対評価というのは、五、四、三、二、一で、五は何%、一も何%つけなければならない。そして、中ぐらいの子供をピークにしたこういう山ができるような学級の子供を見る。だから、子供たちがどんなに努力をしても、一だった子を二につけてあげるぐらいこの子が頑張ったけれども、クラスで一をつけなければどうにもならない相対評価だったからこそ、絶対評価に変えたんです。
 絶対評価を、本当に数字で皆さんにお示しするのは大変難しいけれども、先ほどの方、オール五の子がいるとおっしゃったけれども、五、四、三、二、一で相対評価をしているかどうかは、私の体験にはありません。大体三段階にしたと思います。数字でわかるわかり方で言えば、八十点から百点とった子をよくできた、勉強によって違いますから、数字は相当学校によって違うと思いますよ。それから、教科によっても違うと思いますけれども、わかりやすく算数の例で言うと、八十点から百点とった子はよくできる、四十点から零点までの間の子は理解していない、それで、その真ん中のところはできるという言葉で書いたり、A、B、Cとして、さっき言ったよくできる子をA、だめな子をCとしてきているわけだから、それを到達目標というんですよ。
 ですから、八十点とれるようになった子が全部Aになるのは当然じゃないですか。科目、項目、いっぱいあるんですよ。漢字もよく覚えたのでA、割り算もできるようになったのでA、到達目標をそういうふうに決めたんですから、それを単なる学級の中の順番を知らせる相対評価と違う評価をして、自分はまだ掛け算を覚えていないな、だからCだなとつけられた子は九九を覚えるようにするんですよ。そしたら、次の学期は覚えたのでそこは、次のまた難しい問題も入るからこの子がCがなくなるかどうかわかりませんけれども、掛け算が楽しくなって、割り算もできるようになってCがなくなる。これこそ子供たちの伸びようとする意欲を評価する、そういうやり方が相対評価ではなくて絶対評価なんです。
 だから、担任もこの子に掛け算を覚えさせてやろう、親も通知表を見たら掛け算を覚えさせてやろう、本人も九九を覚えようということを、この絶対評価を見ることによって自分の力を伸ばそうというふうにいくんじゃないんですか。でも、掛け算を覚えるのがみんなより遅かった子はいつまでたっても一であれば、この子の伸びようとすることを伸ばせないといって評価してきたのが、相対評価を変えて絶対評価にしてきたんだということをやはり説明していただかないと、世の中で五、四、三、二、一がいいと思って五ばかりついているよと言われたことに対して、もうちょっと説得力のあるやり方をしていただかなければ、学校現場の苦しみも子供たちの努力も評価されなくなるんじゃないでしょうか。
 その意味で、私はここでもう一度改めて言いたいんですが、文科省の揺れが今回の学力低下論争をますます増強しているように私は思います。
 例えば子供の現状。私の住んでいる地域、いろいろな子供たちがいますが、私が仕事を終わって夜ちょっと用事があって十時ごろバス停のそばを通ると、子供たちが学校のかばんじゃないものを持って帰ってくるのです。お買い物と聞くと、塾の帰り。こんなのはもう小学生、中学生、たくさん、遊び場に子供がいなくなっています。
 おまけに、朝のマラソン。走るのが好きな子も嫌いな子も、朝行ったらすぐ学校を走れ、グラウンド走れと言っていたんですね。そして、それもただ走るだけじゃなくて、必ずそこに、学校というのは先生も一生懸命やるんですけれども、あなたはきょう何周走った、次何周走った、どれぐらいかかったかで、全部走ったらオリンピックの距離だけ走ったよというような表までつくっているんですね。
 そんな頑張りをしているところに、朝自習は読書だと来たら、今度はこのマラソンをやめて朝自習です。そうすると、朝、私、学校の子供を想像できます。マラソンは好きだったけれども読書は嫌いな子、でも、その子に読書を教える、静かに読んでいる。とてもいい風景が想像できますが、その中に、読書より走りたいな、遊び回りたいなという子も、朝読書を、文科省があんな細かなところまで何で言うのかと私は思いますけれども、言われるときっと全国の子供たちが朝読書の時間ふえるんじゃないでしょうか。こんな細かなところまでなぜ文部科学大臣がやるんですか。ちょっとそこをお聞かせください。短くて結構です。
遠山国務大臣 御質問が明快であれば私の方も明快にお答えしたいという関係でいきたいと思います。
 今のお尋ねは、先般出しました確かな学力の向上のためのアピールの中身についてでございます。今おっしゃいましたのは、幾つか挙げました確かな学力を向上していくための私どもがとっている政策の中のほんの一つの例として書いたものを、しかもそれを強制するかのように解釈されての御質問でございました。
 まず第一に、確かな学力の向上のためのアピールを出しましたけれども、その心は、その冒頭に書いてございますように、この四月から新たに実施されることになりました新しい学習指導要領のねらいというものを本当にしっかり定着させていくという目的のために、それぞれが、各地域の実情あるいは学校の状況に合わせて、あるいは子供たちの状況に合わせてしっかりと取り組んでほしいということでアピールを出したわけでございます。
 その中で、いろいろな今の子供たちの現状、それは、国際的な調査を見ますと、成績は非常にいい、世界のトップクラスであるけれども、しかし、学ぶ意欲でありますとか、あるいは宿題をする時間、あるいは自分で学ぶ時間というようなものがOECDの調査国の中で最も低いというような現状にあります。そういったいろいろなことを前提にいたしまして、それでは確かな学力という形での今回のねらいというものが十分に発揮されないのではないかということで出したのが今回のアピールでございます。
 その中で、放課後の時間などを活用した補充的な学習とか朝の読書というのを例として書いてございますけれども、そういったことも援用しながら、しかし、今回の指導要領のねらいとするところは、きめ細かな指導で、基礎、基本やみずから学びみずから考える力を身につけてほしい、あるいは伸びる子はどんどん伸ばしていく、発展的な学習も可能にしていく、あるいは学ぶことの楽しさを体験させ、学習意欲を高めるのだ、それから、学ぶ習慣をしっかり身につけていくことがその子供の将来にとって非常に大事だというふうな角度からこれを整理したものでございます。
 したがいまして、それぞれの学校において、もしそれはマラソンが一番よろしければその方途もございましょう。そういったことを強制するわけでもなければ、これはしっかり読んでいただいて、誤解なきように御理解をいただきたいと思います。
山内(惠)委員 強制するものではない、それはそのとおりですよ。教育は強制からは育ちません。でも、このアピールの力というのは、ある意味で、現場の者には相当強く響くものだということを一言言いたかったわけです。強制だと言っているわけでもないし、そのように受けとめたわけでもありません。
 それで、私としては、先ほどの質問をしたときの状況にプラスなんですけれども、学校現場の状況ということで、今回この法案の中に、今御説明されましたけれども、法案説明の中にも、生きる力という言葉を、あえてなのか書いてないんですけれども、本当は、やはり五日制に移るときに一番大きかったのは生きる力のところだったということがあって前段の質問をしたんですよ。みずから学び考える力などを育成し、それが生きる力だということであれば、私は、これはお答えは要りません。
 しかし、今回の提案説明のところを見ましても、この法案をずうっと開いていきましても、学校現場の教職員、これを見たとき、元気が出るかな。
 一つ目、懲戒免職の処分を受け免許状が、懲戒処分のところにずうっと入ってくるわけですね。そして、法律案のところにいっても、この教員免許状のところの免許取り上げ、五年以内云々、「失効」「取上げ」そして「通知」「報告」、本当にこのかぎ括弧の中をずうっと見てきても、この法案の変えていく趣旨が現場の教職員にとってどう見えるのか。
 日夜子供たちと向き合って、子供たちにわかる授業、楽しい学校をつくってやりたいと頑張っている教職員を支援するという発想はなかなか見当たりません。ある意味では、支援よりは統制に重点が置かれている、そのように思いますが、そう思いませんか。私は、このようなやり方でいけば、学校の教職員は相当精神的に萎縮するのではないかというふうな心配をしています。教員が萎縮をすれば、みずから学ぶ子供たちを育てるということにも相当影響が大きいと思います。
 その意味で、あえてここで質問いたしますが、現場の教職員が授業をするに当たって本当にどんな支援をしようと思っているのか、この法案には見えない支援をお聞かせいただきたいんですが、時間の関係もありますので、一例をちょっと先にお話ししてからその支援の方策をお聞きしたいというふうに思います。
 私がたまたま帰ってたまたま会った地元の中学の女の先生、十九年目に入っている中学の女の先生、理科の先生です。お茶を飲みながら聞いた話では、彼女は十六時間理科の授業を持っています。
 これは、四月十九日金曜日の一日をそのまま、きのうどうしていたのということを聞いた内容ですから、平均でも何でもありませんが、四月は家庭訪問の週間だそうです。朝七時半に起きて学校に来て、朝八時二十分から朝の打ち合わせがあって、日常の学校の仕事が、授業時間みんな終わって五時から家庭訪問をし、戻ってきて七時四十五分から学年会議をすると。この学年会議はどんな内容なのかと聞いたら、修学旅行の細案を立てる、次の日の授業をする、いろいろなプリントが机の上にたまっている、調査報告物もあるので書かなければならない、やっと終わって九時に帰る。学校にいる人たちは、みんながみんなそうではないようです。帰る人もいます。でも、帰る人は、実はさっき言った次の日の授業、プリント、調査物を持って帰る、そして残っているのが三分の一ぐらいのうちの自分は一人だと言っていました。
 理科十六時間というのは少ないんだけれども、学級担任をしている、そうなると、総合的な学習の時間も、ほかの先生にかかわっていただいても担任は出る、学活も自分は出る、そして今、三月、四月は春休みもなく、新しい学級担任として学級づくりの作業がある。空き時間はないのと聞いたら、大体一日に一時間はある、でも、理科の教師ですから実験の準備をしなくちゃならない、高校だったら実習助手がいるんだけれども、中学の自分は自分ですると。
 これは実は一対一で聞いたんじゃなくて、友人何人かと聞いたんですね。そうしたら、小学校も似たような状況だということを言っていました。養護教員の保健の先生も言っていました。この結果、このごろ体がスローモーションになるんだよねと言っています。スローモーションになるってどういうことと聞いたら、丸つけ一つも、ずうっとたったかたったかできたのが、このごろはこのスピードが遅くなった、集金事務、お金を集めるのも、記録していくのも、作業が遅くなるんだよねと。これは寝不足の状況だと思います。
 そういうふうに日夜頑張っている教員にどんな支援をしようと思っていらっしゃるか、お聞かせください。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
岸田副大臣 今回の法改正ですが、そのねらいとしまして、各学校段階の連携の促進、これは教員免許制度の弾力化の措置によって図ろうとしております。また、特別免許状制度の改善によって、社会人の一層の登用を図ろうとしております。さらには、教員免許状の失効及び取り上げの措置の強化によって、教員に対する信頼の確保を図るということをねらいとしております。
 そして、その教員の支援についての御質問でございますが、今回の法改正のこの中身、教員免許制度の弾力化の中においても、例えば、他校種の教員との連携協力や役割分担によって校務の効率化を可能とするというようなこと、さらには、隣接校種の免許状の取得を促進する制度を設けて要修得単位数を軽減するということ、こういったあたりは支援ということになると思っております。
 そして、それ以外に何があるかという御質問でありますが、まずは、平成十三年度から新しい教員定数改善計画、これを進めております。これを着実に進めるということ、これがまず第一に大切なことだと思っておりますし、それ以外にも、例えば、大学院修士課程を学習するために長期間休業すること、これは大学院修学休業制度でありますが、こうした制度を創設する等、意欲のある教員を支援する制度、こういったものはいろいろとメニューをそろえなければいけないということで準備をさせていただく、これが現状であります。
山内(惠)委員 そういう支援だとおっしゃったんですが、実はこの四月から、もう既に試行はされていましたが、総合的な学習が入ってくるわけですね。その意味で言えば、免許法の改正でそれなりの内容を検討されたということはわかるんですけれども、具体的に、総合的な学習をするというときのイメージをどのように持っていらっしゃるのかなと思います。
 総合学習というのは二つ考えられるんですけれども、子供の興味、関心を組織していくというのも総合学習で大変重要なことです。もう一つは、教科の発展形の総合学習。国語にかかわらず社会科も理科も関連するようなものをやっていくというのが総合学習です。
 そうなれば、一人の担任が空き時間に一人で計画するというわけにいかないんですね。多くの、例えば理科の先生、社会科の先生と協力をしてやりたいなということになるわけです。単なる今までの教材研究の時間というわけではなかなかできません。その意味で、総合学習を具体的にやっていくというのを、ある意味では仕込みの時間という言い方をしています。この時間に何を入れることによっておいしいお漬物ができるのかということを想定したような仕込み、そういうような言葉を使っています。
 例えば、私は、まだこの総合学習が入っていなかった段階で、私のクラスの子供のお父さんが南極探検隊に行っていた方がいます。帰ってこられたと聞いたので、その状況を学年の子供たちと一緒に聞くということをしましたが、スライドを持ってきて説明をしてくれたり、南極からパックに入れて持ってきた氷までクラスの子供に見せてくれて、氷を出した途端に音がぴりぴりとして、割れていく音を聞いて、子供たちは感動し、最後には、自分も将来南極へ行きたいという体験をさせてもらったことがあります。
 しかし、この方に何らかのお礼をすることがなかなかできませんでした。どこにも学校で使えるお金はありませんでした。それで、本当に頑張って私たちができるお礼は、子供たちの感想文を上げるという努力をしました。それはそれでよかったかもしれませんが、これからは、さまざまな協力を地域の方にお願いするとしたら、どれぐらいのお金がつくかということは、これは今直接にお聞きできない、時間の関係上、ちょっとやめますが、そういう支援が欲しいな。
 それから、例えば総合学習。前回の委員会で私が質問した原子力教育支援事業、一方であれは文科省からは四億八千万、それから通産省からは五億七千万。すごいお金です。これはこの委員会じゃないところでもお聞きしましたら、何と、バスに乗って原発を見せに行ってもいい、指導者が欲しければ原発で働いている人を連れてきてもいい、お礼を出してもいいとまでおっしゃっているんですよ。
 ところが、一方で、前回聞きましたが、テーマごとに、人権でやるときにお金ありますか、環境で質問するときお金ありますか、ジェンダーで総合学習をやるときお金ありますかと。矢野局長は、それはないということでお返事をされなかった場面、思い出されると思います。
 そういう状況の中で、総合的な学習は、ある企業からはねらわれ、でも文科省からの支援が、ある意味では、金銭的にも人の配置でも、先ほどお答えいただいただけでは足りないと私は思っています。そういう意味で、二つほど地元の取り組みの例をちょっと紹介します。
 総合学習というのを地元の大学が支援する。上川管内の話ですが、上川中学校、上川高校が連携をしている学校としてあるんですが、その学校が、保護者など、年間を通して七事業の実施を地元の私立の大学と提携をして、本年度の総合的な学習のテーマを「広がる自分の世界」と掲げて、進路啓発学習、現地集合型修学旅行、そういうものを計画しています。中学校の三年間を生徒一人一人が自分の夢を実現させる場所として過ごしてもらうことが進路啓発の第一歩とこの校長は言っています。それで、具体的に、大学から講師が派遣されて、実際に親も教職員も中学生も対象にこの講演を聞いたというのが新聞記事に載っていました。
 そのことで言えば、この方が小学校の免許を持ってなかろうが高校の免許を持ってなかろうが、地元は必死にいろいろなことを考え出してやっているわけです。何もこの人に免許を取れなんて言う必要はありません。大学、高校、中学と連携してやっていこうという考えを、先ほどは専科の授業でおっしゃったけれども、四月からは総合学習が入るんじゃないですか。その意味の連携ということを考えられると、もっとそちらのお答えは違ったんじゃないかと思います。
 そして、地域にカリキュラムセンターを建ててほしいという声もあります。大学との連携、地域にカリキュラムセンターをということに関してどのようにお考えでしょうか。地域にカリキュラムセンターについては質問事項に入れていなかったんですが、お答えいただければしてください。
矢野政府参考人 大変質問の範囲が広くて、どの点に絞ってお答えしたらいいのか惑うのでありますが、ポイントは、総合学習の協力についてのお尋ねというふうに受けとめまして、協力というんですか、支援という点に限って申し上げますと、確かに総合学習活動を充実するためには、学校内外の優秀な人材の協力を得ることは大変大事であるわけでございます。
 既に平成十二年度、十三年度と移行措置をやってまいりましたけれども、その移行措置において、総合学習を、より豊かな、より効果的な教育活動をするためには、もちろん教育方法なりあるいは教材の研究も創意工夫も大事でありますが、同時に、それを教える人材、指導者の活用ということも大変大事になるわけでございます。
 そうした観点から、国といたしましても、学校教育において多様な経歴を有する社会人を積極的に活用するために、きょう、いろいろな形で、いろいろな機会に申し上げましたけれども、特別非常勤講師を配置する際に補助を行うなどの支援を行っているところでございますし、あわせて、前年度の補正予算で、学校いきいきプランというのも措置されているわけでございます。そうした事業を大いに活用する形で、特に総合的な学習時間の、よりねらいに即した、よりねらいを実現する、そういう教育活動が展開できるように支援をしてまいりたいと思っているわけでございますし、このことは引き続き私どもの大きなテーマとして考えてまいりたいと思っているところでございます。
 それから、地域にカリキュラムセンターというお話でございましたけれども、御案内のように、ほとんどの都道府県あるいは指定都市におきましては教育センターが設置されているわけでございます。そこにおきましては、研修やあるいは教材開発、教材研究といったような形で専門のスタッフを置いて、そうした研究あるいは研修事業が積極的に、また継続的に展開されているわけでございますので、私どもとしては、そうした活動について、国の政策研究所等を通じていろいろな形で応援をしてまいりたいと思っているところでございます。
山内(惠)委員 大学の連携については、今のでお答えに入っていますか。座られていることで入ったと、それでは人材活用ということで受けとめておきたいと思います。
 先ほど、私の質問のときじゃないときに、矢野局長は、学校現場で教員の持ち時間は減らさないでやっていくということをおっしゃっていたんですけれども、総合的な学習が入ることによって、本当に一人の人が多くの人と連帯をして、一時間なり二時間なりの計画を立てていく、これは少し長い時間をかけていきますね。今週はこの総合学習の入り口をやって、次のときはとなると、持ち時間を減らさないでということによって総合学習を充実するというのは大変無理です。やはりそのことをどうするかということはちょっとお考えおきいただきたいと思います。
 それで、今回の教員免許法の改正のところなんですけれども、先ほど石井議員が相当丁寧にお話をされた中に、正規に免許状を持っているのになかなか正規に採用されないという現状を、数字も挙げておっしゃられていたので、私はここのところ丁寧には質問いたしませんが、今当面、石井議員は石井議員の調査でおっしゃっているんですけれども、もう一度ここは矢野局長にお聞きいたしますが、正規に免許状を持っていて採用されない人は何人というか、何%いるのか、その数字と、この人を今後どうしていこうと考えているのか、新卒でも、二年待っても三年待っても、試験は受け直していても採用されない人に対してどのような対策をしていこうと考えているのか。
 私としては、もうちょっとここつけ加えて言いますと、臨時採用で六カ月雇用というのがありましたが、就職先がないので、それでもいいと思って六カ月雇用をやった人がいます。次は絶対この人は六カ月雇用は採用してもらえないんだそうです。でも、大学を卒業して教員になりたいなと思っている人は、最初は臨時でもいいと思って入るんです。でも二度目の臨時はだめというふうに言われているんです。諸外国のパートだったら、本採用を何人しようと考えていたら、最初に臨採で入った人を正規にしていくという道筋があるんですが、文科省は、そのようなことはどのように考えて、今本当に教員になりたいと思って、職のない人たちにどのような対応をしていこうと考えているか、お聞かせください。
矢野政府参考人 少子化の影響を受けて、国立の教員養成大学・学部卒業者の教員就職率で見てみますと、平成十三年三月、去年の三月卒業者で三七・八%、そのうち正規採用者、すなわち臨採等を除く正規の採用者でございますが、正規採用者では一三・〇%、こういう状況になっているわけでございます。
 これから先は直接的なお答えではないわけでございますけれども、教員養成大学のあり方として、平成十年度から十二年までの三年間で、約一万五千人ありました教員養成課程の全体の入学定員を約五千人削減し、規模の適正化を図ってきておりまして、目下学年進行中であるわけでございますが、私どもとしては、今後ある程度の就職率回復を期待いたしているところでございます。
 また、残念ながら採用に至らなかった教員の志望者、教員を志望する青年、学生につきましては、私どもとしては、教員になりたいという気持ちは大変ありがたいと思いますし、ぜひそういう努力を続けていただきたいと思うわけでございますけれども、それ以上、今私の立場において、どういう対応が可能であるかということは、残念ながら申し上げることができません。
山内(惠)委員 先ほど申しましたように、それでも臨時でもいいからと六カ月頑張ったような卒業生を次は正規にするような、一度そういうふうに頑張った人を評価していくような道筋をぜひ御検討いただきたいと思います。
 他校種免許状による専科担任制度について、先ほどからたくさんの方がおっしゃっています。その意味では、高校から中学へ、中学から小学校へということにつきましては、子供たちにどのような扱いをしたらいいか、高校の教員が中学へ行くときは違うだろうとおっしゃった声がありましたから、この質問も余り今しないでおきたいと思いますが、高校から中学へということを考えたとき、免許状を見ましたら、中学の教員が小学校の免許を持っているのが二八%、それで、高校の教員が小学校のを持っているのが四・五ですよね。この数字のことを考えたら、このコースをとても楽にする方向で、私はありがたいですよ、小学校にいたことを考えると、専科の方が来られるというのは本当にありがたいです。だから、そこは支援として受けとめます。
 でも、この人たちが小学校の教員免許を持っていない、しかし、その人は受け直さなくてもいいんですね。次のところを見ると、次のところというか、小学校から中学校へとか、幼稚園から小学校へという逆の方向はないということもこの間から指摘されていますが、私は、小学校の教員が中学の免許を持っている人六三%いるじゃないですか、高校の免許、四二%持っているじゃないですか。私も実は持っています。中学の免許も高校の免許も持っています。教育実習が大変楽しかったので、小学校に魅力を感じて入りました。でも、ある時点で行きたいということの評価はこの道筋にないんですが、ここの部分だけ、逆を検討しないのかという意味の、ちょっと短くお答えください、次がまだあります。
矢野政府参考人 今回の改正の趣旨は、全教科制をとっております小学校について、特に高学年においては教科の指導の専門性が求められる、そういう状況の中で、教科担任制をとっている中学校の免許状を持っている者また高等学校の免許状を持っている者が、そうした小学校における教科の専門的な指導をより高める、そういう観点から制度改正をするものでございまして、そういう意味では、逆の、小学校から中学校、あるいは中学校から高等学校というのは今回の趣旨には沿わないものというふうに考えるものでございます。
山内(惠)委員 そのお答えはさっきから何度も聞いていますので、そうなんだと思いますが、学校五日制に変えていくという時点で、教育の改革の一つとして教科の専門化だけを充実しようと考えたこと自体が、私はこの免許制度のあり方にすごく問題があると思っています。
 先ほど、これは岸田副大臣に質問ではありませんが、ゆとりというときに、それは緩みであっても遊びであってもだめだとおっしゃった。私は、遊びであることの意味というのを、全く別の観点で遊びが大事と思っている者です。
 実は、今回ノーベル賞をいただいた野依さんが言っている言葉を紹介します、皆さんも読んだと思いますが。君たちが理科離れをしているという話がある、間は省略して、一番大きな問題は、君たちが小さいときから自然に接する機会がないということだ、そして、ここで生きる力を身につけよと言っているんですが、自分が遊んだときの重要性をとてもここで書いているんです。人生八十年をどう生きていけるかが問題で、自分の足で、自分の力で生きていく、その力を小さいときから養ってほしいという意味で遊びの例が書かれています。宝探しと称して、友達が隠したものを探したり、木の枝を折って刀がわりにしてチャンバラしたり、勉強は二の次だった、野山で遊んだこの体験が、僕にとっての生き方の根源になっていると書いています。
 私は、今小学校の低学年の子供を、多動性だとかなんだとかいっぱい言われているこの子供たちのことを考えただけでも、幼稚園の教員は二年間の大学、短大を出ている方が多いわけですから、幼稚園から小学校へというためにはあと二年勉強することを要求してもいいと思いますが、幼稚園では遊びを中心に勉強ということを考えてきています。その意味では、特に低学年に遊びの発想の教育のあり方、教育改革が必要だという意味で、幼稚園から小学校に来るのも一つの道としていいのではないか。
 もう一つ、先ほど教科専門性だけおっしゃっているんですが、中学だっていじめ、不登校、全国で不登校十三万人、それから高校中退十一万から十三万になったんですね。そういうことを考えたら、中学校のノウハウにこそ、そういう体験をちゃんとわかっている人がいてほしいし、専門性とおっしゃるんですが、何回も私が言っていますが、この四月から総合学習が入ってくるじゃありませんか。
 そのときに、小学校の教員は総合学習のノウハウをみんな持っています。なぜか。プールで泳ぐ、泳げない子を泳がせる。同じ一人の人間がピアノを弾いて音楽を教える、そして理科でも、自然観察で子供たちの勉強で連れていっている、社会の時間は町の商店街を調べてきている。そういうことを考えたら、総合学習を全体で考えようというノウハウ、そして一人の子供の人間像を持っている小学校教員が中学へ行って果たす役割は大変大きいと思います。中学で一教科だけを持っていた人たちが集まって総合学習を考えるよりも、小学校の発展として、連携をするという観点でいくことがどんなに重要かと思います。
 これはお返事いただいても私の意見と違うことになりそうですので、この問題は終わりといたします。
 それで、私は、遊びというものを、先ほどのような観点で文科省が押さえていらっしゃることは、ぜひぜひ考え直していただきたい。ノルウェーやデンマークでは、低学年でたっぷり子供と遊ぶ時間を小学校の教員もやっています。森へ行って種を拾い、葉を拾い、そして勉強してきています。そのペーパーテストではなかった勉強が、三年生、四年生となって、国際的な比率で見たときに、ぐんぐん伸びてきているという統計もあります。
 その意味では、私は、この教育改革のあり方というのを、今回のような、現場を励ますような発想ではなくて、専門性、専門性と言いながら、学校で基礎教養というか、教育教養というのかな、そういうことを十分やってこなかったと言ったら言い過ぎですから、優秀な方はいろいろ優秀でいらっしゃるから、それはそうですけれども、しっかりそこも勉強してきて教員免許を持った人たちをしっかり位置づけていく方向に反する今回のシステムはちょっと考え直していただきたいと思います。
 その意味で、教育委員会が開催する講習によって免許状の取得を改めてとなっているんじゃなかったかな、ここ、もし私、誤解があれば、一たん免許を取ってきたけれども、もう一つ、例えば、小学校を取ってきたけれども中学の専門というときは、大学へ行くんですか、私の読み方がちょっと違うんであればいいんですが、大学との連携、教育委員会の研修、ここの連携がどうなっているかだけ、どなたでも結構です。
矢野政府参考人 例えば、今回御提案申し上げております、隣接校種の免許状を取得する際に、教育委員会が開設する講習における取得が可能になるわけでございますが、そうした免許法の認定講習は、免許法に定めます授与権者が、すなわち都道府県の教育委員会が開設することができることとされているわけでございます。
 また、都道府県の教育委員会が免許法認定講習を開設する場合におきましては、開設しようとする講習の課程に相当する課程を有する大学の指導のもとに運営されなきゃならない、これは規則でそういうふうにされているわけでございます。そういう意味におきましては、現在におきましても、教育委員会と大学とが密接に連携しながらそうした講習を実施されているという状況にあるわけでございます。
山内(惠)委員 わかりました。私の読んだのにはそんなに大きな間違いはなかったと思いますので、そうだということがわかりました。確認をしました。
 しかし、先ほどの私の地元の私学の例でいいますと、高校の先生が、もう少し別な教科も勉強して取りたいという方が、この地元の大学の夜間部、二部と言っています、そこへ来て勉強することが日常できます。大変眠いであろうのに夜来ています。この地元の学校は受け入れています、私学ですけれども。それから、先ほどのような総合学習との連携というのも進んでいるわけですから、これは地元の声ですけれども。
 私は東京のある大学の先生のお答えも聞きましたが、自分の学校から教員免許を取る子を卒業させていっているんだけれども、この次に改めて取り直しをするときに、教育委員会主催の講習会で終わるという発想ではなくて、何とか自分の学校も活用していただきたいという声を私は聞いています。
 その意味で、大学との連携開催、今、先生、そちらから教育委員会が選んで来ていただくとおっしゃったんだと思いますが、連携開催ということはいかがですか。
矢野政府参考人 今、制度といたしましては、教育委員会が開設する認定講習、それから大学が開設する認定講習や認定公開講座というのがあるわけでございまして、制度としては教育委員会が行うものと別のものとして大学が行うものがあるわけでございます。
 ただ、実際の講習の運用等におきましては、御指摘のような形で、大学と教育委員会がさまざまな形で連携していくことは大事であろうかと思います。
山内(惠)委員 わかりました。二つの方法がある、それから連携も検討していくんだということでわかりました。
 現在、研修のあり方も、もっと考えていただきたいのが初任者研修の問題点、最初の一年、担任をしたけれども、初任者研修に半分ぐらい出ていって、その間かわりの先生で、ある先輩の先生が来てくださると、このクラスの子供との関係が難しいなどいろいろありますがきょうはこのことは終わりにしておきたいと思いますが、研修のあり方も検討していただきたいと思っています。
 次に、教育実習、免許状の関係で、障害児学校の先生の免許法のことについてはこの間からいろいろおっしゃっていて、総合的な免許の取り方ということはもう既にお話しされているからよろしいんですが、ノーマライゼーション、インクルージョンの教育ということを考えると、一般の学校の中に、普通の学校の中に、普通学級に障害を持つ子が来ることが今後もどんどんあり得ると考えます。
 そうしたときに、全く障害児に会ったこともない、はっきり言って、私の地元の旭川も相当遠いところにそういう学校があるわけで、なかなか日常会いません。その意味では、教員免許状を取る全教員のほんの少しでも結構ですから、盲・聾・養護学校に行ってくる体験を教育実習のところで義務づけるということが必要じゃないかと思いますが、いかがでしょう。全部の先生が手話ができるようになっているということぐらいやってもいいんじゃないかと思います。教育実習についてです。
矢野政府参考人 これから教員になる人には、ノーマライゼーションの観点から、特殊教育についての理解が求められているのは御指摘のとおりでございます。
 このため、一つには、平成十年の免許制度の改正におきまして、障害のある幼児児童生徒の心身の発達及び学習課程ということについてその内容を教員養成課程の中で必修といたしたところでございまして、既に平成十二年度大学入学者から適用されているところでございます。
 さらに、小中学校の教員免許状の取得要件といたしまして、特殊教育小学校や社会福祉施設等における介護等の体験が平成十年度大学入学者から義務づけられているところでございまして、したがいまして、その中では、介護体験はトータルで合わせて一週間でございますが、そのうち少なくとも二日は特殊教育小学校における体験が義務づけられている、そういう状況にあるわけでございます。
山内(惠)委員 そのことを私が十分存じていなくて失礼いたしましたが、その方向であるということで、今後は一歩前進していくと思いますので、その進み方を期待したいと思っています。
 先ほど、学士要件の撤廃についても皆さん相当おっしゃっているからその部分はよろしいんですが、私はよろしくないんで、学士要件の撤廃をしなくても実際にいろいろできるわけですから、ここはやはりしっかりと条件を置いたまま、今ある非常勤講師制度もあって、そこのところの方が皆さんがとりやすかったりというお答えでしたから、そこで十分じゃないか、PRをちゃんとすればいいじゃないかというふうに思いますので、そこは反対をしておきます。
 最後に、公立も私学もなんですが、懲戒免職を受けて免許状を取り上げられることについては、一番心配している皆さんが私のところに来るのは、やはり石井議員もおっしゃっていた私学の方たちです。ある意味で経営者の恣意的な感情で解雇になってしまったりしている例があって、裁判で復帰したというのを私も聞いています。校長の気持ち次第で一人の人生が切り捨てられてはたまったものじゃない。しかもそれは、さっきのお答えでは裁判でという言葉が出てきたのが大変残念です。
 公立も含めて、不当な解雇だということに対する救済措置と異議申し立てのことについてどうお考えなのか、このことを聞いて私の質問を終わりたいと思っています。
矢野政府参考人 まず、公立学校の教員について申し上げますと、現行制度におきましては、懲戒免職や分限免職を受けた職員がその処分について不服である場合には、地方公務員法の規定に基づきまして、人事委員会に対して不服申し立てを行うことができることとされているところでございます。
 それから、これは直接的な免許法の改正にかかわる話でございませんけれども、不当解雇にかかわる救済措置の問題といたしましては、私立学校における労働関係につきましては、これは民間の企業における労働関係と同様に労働基準法等の適用を受けているところでございまして、労働紛争につきましても、個別労働紛争解決制度あるいは不当労働行為救済制度等、一般の労働制度のもとで救済が図られる仕組みとなっているわけでございます。
 このように、現行制度上、私立学校教員が不当に解雇されないような仕組みが整備されているというふうに私どもとしては理解をいたしているところでございます。
山内(惠)委員 要求はありますけれども、時間が来ましたので、これで終わります。
河村委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。児玉健次君。
児玉委員 私は、日本共産党を代表して、教育職員免許法の一部を改正する法律案に反対する討論を行います。
 教育職員には、教科に関する専門性と、子供、青年の発達についての専門的知識、経験が不可欠です。それをすべての教員に求めているのが現行の教育職員免許法であり、免許状が、校種別、教科別に定められているのは当然のことです。
 社会人教員を拡大するために免許状の要件緩和を進め、中学、高校教員の小学校などへの派遣を進める本改正案は、教職の専門性の原則を大きく崩すものです。我が党は、専門的な知識、技術を持つ一般社会人が、さまざまな形態で学校教育に参加することを拒む立場ではありません。しかし、教職について専門的に学んでいない者を教師として安易に拡大していくことは、児童生徒の発達と人格形成に直接かかわる教師のあり方として問題があります。
 また、中高教員の小学校などへの派遣は、複数の学校を兼任することを可能とし、学力差を固定しかねない習熟度別授業を他校種の教員の力をかりて行うことに道を開きます。
 今なすべきことは、小学校、中学校で免許外教科担任を段階的に確実に解消することであり、国として三十人以下学級の実現に踏み出すことです。新卒者の採用が減少し、教師の高齢化が進んでいる中で、若さにあふれる教職員の正規採用を大幅にふやして、教育活動を活性化することこそ日本の教育にとって最も急がれる課題です。
 また、今回の改定は、免許状取り上げの範囲を事実上拡大しています。懲戒免職者の情状が重いと認められるときには、現行法でも免許状の取り上げは可能です。今回の改定により、私学経営者による不当な解雇を助長し、私学教員への管理、統制の手段となる危険性は否めません。
 以上、この法案は、教職の専門性を軽視し、教育の場における管理、統制につながるものであり、法案に反対することを述べて私の討論といたします。(拍手)
河村委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 山内です。
 私は、この間、一年十カ月、文部科学委員会で審議にかかわってまいりましたが、今回の法案も、子供が元気になるために教職員も元気にならなければならないのだけれども、その方向の改正案ではないという観点で、反対をするための討論をさせていただきたいと思います。
 ここに高校生の書いた歌があります。「可能性毎日減っていくようで時間止まれと叫びたい私」これは兵庫県の高校一年生の言葉です。もう一つは、ちょっと古いんだと思いますが、「臨教審頭を絞って出す知恵にいつもとまどう受験生かな」宮崎県の高校二年生の歌です。
 私は、こういう子供たちにこたえていく教育は、教職員が元気で、やる気があってできる授業、そして総合学習の充実というふうに思っていますが、今回の法案は、文章を見ただけでも懲戒免職、免許取り上げ、失効、こんな言葉が躍っていて、現場の先生が頑張っている……(発言する者あり)だめな先生に対してばかりこの中に見えていて、頑張っている先生にどんな支援をするのかと質問したのはそのせいです。
 その支援がない。監視され、ランクづけられて意欲的教員が育つと考えたら大間違い。ヒラメ教員というのが育ちます。皆さん御存じですか。目は上にしかついてないヒラメ。もう既にその失敗が学校現場にたくさん出てきていて、ヒラメ教員が生まれ、校長と違う考えの実践をしていたら飛んできて批判されたという新卒の私の教えた学生。牛の角を矯めて牛を殺す状況になりかねない今回の法改正。
 一部私は評価できるところもありますが、先ほどの質問の中で、皆さん私の言っていたことわかっていただけたと思いますが、先ほど発言された方の中に、子供が眠りたいということを第一に言っていると言ったのは、夜の十時まで塾まで行って帰ってくる子たち。受験勉強、目の上にある子供たち。眠りたい、芝生のある学校の庭で横になりたい、これが子供の本音じゃありませんか。
 しかし、学力低下論がこんなに出ると、親はやはり心配です。はっきり言って、文科省は揺れてはならない今の時期だと思います。
 もっと極端な言い方をすれば、寝た子は育つ、三年寝太郎の童話にあるように、それから太陽と北風のように、教員も子供たちも励まされて育っていくものです。
 その意味で、今回の学校五日制がどう始まっていくかということと、総合学習の部分では、先ほどアメリカやイギリスの例が教育改革の例として言われている競争社会のことをおっしゃっていますが、もっと長い目で見ると、世界の教育の流れはスクーリングからラーニングへ、教えて教化するということではなくて、みずから学ぶ子供たちへ。それはこの前書きにある言葉と同じなんですが、ともに学ぶ教育へ仕込みの時間が必要と考えたら、一人一人の教員をランクづけしておいて日常協力しようというのは難しいですよ。私の給料から減らされた、A先生にだけたくさんいくという発想の……(発言する者あり)わかりました。では、それで終わります。
 基本的に子供たちが元気になるような法改正ではないという意味で、私は、今回の法案の改正の根本的なところに問題があるということで、反対させていただきます。
 以上です。(拍手)
河村委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、教育職員免許法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
河村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
河村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時九分散会


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