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第13号 平成14年6月5日(水曜日)

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平成十四年六月五日(水曜日)
    午前十一時四分開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    小渕 優子君
      岡下 信子君    近藤 基彦君
      杉山 憲夫君    高市 早苗君
      谷田 武彦君    中野  清君
      馳   浩君    林田  彪君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森岡 正宏君    森田 健作君
      森田  一君    大石 尚子君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      中村 哲治君    藤村  修君
      牧  義夫君    牧野 聖修君
      山口  壯君    山元  勉君
      池坊 保子君    西  博義君
      佐藤 公治君    石井 郁子君
      児玉 健次君    北川れん子君
      中西 績介君    山内 惠子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学副大臣      岸田 文雄君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    加納 時男君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   大熊 健司君
   政府参考人
   (総務省大臣官房総括審議
   官)           板倉 敏和君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            遠藤 昭雄君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房技術
   総括審議官)       今田 寛睦君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           鶴田 康則君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月五日
 辞任         補欠選任
  谷垣 禎一君     森田  一君
  鎌田さゆり君     中村 哲治君
  中西 績介君     北川れん子君
同日
 辞任         補欠選任
  森田  一君     谷垣 禎一君
  中村 哲治君     鎌田さゆり君
  北川れん子君     中西 績介君
    ―――――――――――――
六月四日
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案(内閣提出第九〇号)
 文化財保護法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)
 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案及び文化財保護法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧野聖修君。
牧野(聖)委員 民主党・無所属クラブを代表いたしまして、ただいま議題となっております二法案について質問をいたします。
 一番最初に、文化庁の担当の二法案になるわけでございますが、この席に文化庁長官がいないということは、甚だ遺憾なことだと私は常々思っております。
 今現在、文化庁長官はどこにいて何をしているのか、まず最初に教えていただきたいと思います。
銭谷政府参考人 河合文化庁長官、本日は、文化審議会が開催をされておりまして、文化芸術振興基本法に基づく基本方針の作成について諮問を行っておりますので、その席に出席をいたしております。
牧野(聖)委員 四月十六日の本会議の議場で、私は質問に立った際に、文化庁長官が常任委員会の席に来ないというのはけしからぬ、そういう言い方をしたわけです。国民の代表である我々と、文化行政をめぐって、文化庁長官がこの国会の場で議論をしないということはいかがなものか、私はこういうふうに思っております。
 しかし、いろいろな答弁の中で、出てこないということでありますから、私はここで委員長にお願いをさせていただきたいと思いますが、就任以来、文化庁長官はどういう活動をしているのか我々に全くわからない、それでは我々は国民に対して説明のしようもないわけですから、この活動の報告書をぜひ出していただくように、委員長からお取り計らいをまずもってお願いをしたいと思いますが、どうでしょうか。
河村委員長 今、牧野聖修君からそのような申し出がございましたが、文化庁長官の活動報告書、提出できますか。文化庁次長、御答弁ください。
銭谷政府参考人 河合長官には、本年一月の文化庁長官就任以来、精力的に職務の遂行に当たっているわけでございますけれども、ただいま御要求のございました活動報告書につきましては、後刻、牧野先生の方に提出させていただきたいと思っております。
河村委員長 それでは、次長、委員長の方へまず提出をいただきまして、そういうことでよろしゅうございますか。
牧野(聖)委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 私は、ここで言っておきたいと思うんですが、文化庁長官に対して個人的に恨みつらみがあるわけじゃないんですよ。今日ほど文化行政に対する期待等、文化行政が重要な役割を果たさなければならないときはない、私はかねがねこういうふうに思っているんです。
 御案内のように、IT革命とか情報化社会の到来、地球規模での文明の大転換を迎えている、こう言われてきて久しいわけです。現実にそういうような時代に入ってきたという生活実感は、我々ありますよ。当然、大きな文明の転換期になれば、文化だって変化せざるを得ない、こういうふうに私は思います。
 そのときに、この日本の社会の中で、失ってはいけない文化もあるだろうし、改善して発展させなければならない文化もあるだろう、そのことを文化行政の担当の責任者としてどういうふうに考えているのかというのは、これは国民ひとしく聞きたいことだと思うんですね。ですから、その人がどういうふうに考えているかということを、ぜひ国民にわかるように答えてほしい、そういうふうに思います。
 それから、フランスの行政機構を見て私はびっくりしたんですけれども、フランスには、国民教育省と高等教育省という省がありながら、もう一つ文化省というのがあるんですよ。僕は、本来、教育の下に文化という、文化庁がアリバイ工作的な申しわけ程度に置いてあって、予算規模から人員から、本当に、ないとは言いませんが、あってもないような、そういう状況の中に置かれているということは、文化大国を目指す我が国にとっては非常に残念なことじゃないかなと思うんです。
 本来、文化というのは、総合的で全体的で横断的な大きなもので、その中に、例えば教育とか科学技術とか宗教とか倫理とか、あるいは文化財とか芸術とか芸能とかコミュニティーとかボランティアとか、そういったものが全部入ってくるんですよ。ですから、どっちかというと文化省というものをつくるくらいの感じで、この問題については取り組んでいかなければいけないと思っております。
 それから、今から私は木の文化のことについて質問いたしますが、木の文化のことも、それは木のことだから、山林関係で林業のことだから、農林水産省の方に聞いてくれと言えば、それは一つの回答は出てくるでしょう。あるいは、それを使うところの大工さんたちや左官さんたちの、そういうことを聞けば、それはかつての建設省だから国土交通省へ聞いてくれと言えば、そちらの方で問題の解決の回答は出てくるかもしれない。
 でも、自由経済の中で今非常に困った状況になってきているから、文化というくくりの中では、大きな範囲の中でそういう問題を解決していかなければいけないという時代に入っているから、私は、文化庁の仕事といいますか、それは本当に大きな時代を迎えていると思うんですよ。
 ですから、そういう意味で、どちらかというと文化庁の応援団長みたいな気持ちでいますので、本当は文化庁長官が出てきて我々と論戦するのが一番いいんですけれども、出てこないならば、しっかりとした報告書を出していただきたい。
 それで、今私が文化庁にこういうふうな期待を持っていますが、そのことについてはどうですか。
銭谷政府参考人 ただいま牧野先生から、木の文化ということを一つの例示に引いて、文化行政について励ましのお言葉をいただいたわけでございますけれども、私どもも、文化というものを幅広くとらえて、そして国民の生活の中で非常に重要なものとして位置づけて、文化芸術、文化財保護の仕事に取り組んでいきたいというふうに考えております。
牧野(聖)委員 そういう認識のもとにこれから文化庁が頑張ってほしいということを前提として、二、三質問をいたします。
 最初に、木の文化について質問いたしますが、最近、在来工法による木造住宅が非常に減少しております。それは、外来の新しい工法が入ってきているということが一つの大きな原因でありますけれども、日本人特有の文化の中心的な木造住宅、木造建築が非常に激変している。そのことによって、山林の方のいわゆる林業家も大変な苦しい状況に追い込まれていますね。
 外来工法と外材の使用によって、国内のいわゆる木造建築の技術とか文化が衰退していくと同時に、林業家が太刀打ちできない。四十年、五十年かけて山を育ててきた人たちが、今、木を切り出す時期に、非常に価格の値崩れとかでもって山を維持することができない、手間暇もかけられない、山を捨てて別の職業につかざるを得ないという状況になってきているんですね。
 そのことを考えると、我が国は、世界最古で、しかも最大の木造建築物を有している、文字どおり木の文化の国だと思いますが、その木の文化が音を立てて今崩れようとしているんですね。そういうことについて、文化庁はどういうふうに考えておられて、どういうふうな対策を立てようとしているのか、お伺いをいたします。
銭谷政府参考人 先生からお話がございましたように、例えば我が国の建造物で国の国宝あるいは重要文化財になっているもののうち、木造建築物というのが約九割を占めているわけでございます。そういった国で、やはりこの木の文化というものをきちんと後世に伝えていくということは大変大事なことだと私は思っております。
 特に、木造建造物の保存あるいは修理、建築に当たるそういう技術を持った方の養成、あるいは原材料である木材等の安定的な確保ということは非常に重要なことだと思っておりまして、建造物の修理やひわだぶき、こけらぶきなどの技術を選定保存技術として選定してそれを保護し、後継者を養成していく。
 それから、原材料である木材等の安定的な供給のために、文化庁では、例えば平成十三年度からふるさと文化財の森といったような事業を始めておりますけれども、こういう木材の安定的な確保のための事業なども開始をしているところでございます。
牧野(聖)委員 文化財に関して、日本は技術者が少ないんじゃないですか。技能者の数は正確には把握できないかもしれないけれども、それに関係する技術者がおおむね二百人ぐらいしかいない。しかも、文化財に指定されているのは、国で三千六百、地方ではおおむね七千から八千でしょう。私は、その数も少ないと思うんですよ。もっと広範に技術者の数をふやして、各地域の文化財の改修あるいは再建ができるような体制を整えていく。
 しかも、昔から数が決められているような少なさでは、文化財に対する関心も高まっていかないし、改修とかいろいろな仕事も出てこない、そういう感じがしますので、ぜひ技術者の数をふやすということと、指定の数をこの際もう一度見直して、大幅にふやした方がいいと私は思うんですが、その点どうですか。
銭谷政府参考人 まず、文化財の数でございますが、現在、国宝、重要文化財になっております建築物は三千七百三十六棟ございます。これ以外に、いわゆる登録文化財という制度を新たにつくりまして、重要文化財ではございませんけれども、国として重要な、貴重な文化財として保存する、そういう建造物を約三千ほどこれまでに登録をいたしております。こういったことで、重要な建造物は幅広く保存をしていきたいというふうに思っております。
 それから、技術者の問題でございますけれども、例えば木造文化財というのを適切に維持するためには、周期的に修理を繰り返す必要があるわけでございます。日本の伝統的な工法でございます建物の軸部、これにまで及ぶ解体、半解体の根本修理、これが百年から百五十年の間隔で必要になってまいります。それから、軸部には手をつけないで、屋根とか壁とか塗装等の補修を行ういわゆる維持修理、これもおおむね三十年から六十年の間で繰り返されるということが適当かと存じております。
 こういう技術者につきましては、先ほど少し申し上げましたけれども、こういう木の文化財の保存のために欠くことのできない技術を選定保存技術として選定をいたしまして、その技術の体得者を保持者、保存技術を持つ関係団体を保存団体というふうに認定をいたしまして、その技術の保存、伝承を図るとともに、この保持者の方や保存団体が行う後継者養成事業に対しまして補助金を交付して、伝承者の養成に努めているところでございます。また、文化庁みずからも、そういう技術者の方の講習会を実施して、要員の確保に努めている状況にございます。
牧野(聖)委員 時間も迫ってきましたので、自分の意見を言ってまとめていきたいと思います。
 財団の文化財建造物保存技術協会というのがありますよね。ここの皆さん、一生懸命頑張っておられますが、体制としては、奈良、京都、和歌山等につきましては、あるいは滋賀県については、自分の県でもって全部やれる。でも、あと全国はそういう力がない、力がないからかえってそういう改修とか再建ができない、そういうジレンマにありますので、ぜひ、財団の皆さんに頑張っていただいておりますが、技術者を養成していただいて、全国に、そういう要望にこたえられるような体制をできるだけ早くつくってくださるように要望いたします。
 それから最後に、もうやめますが、今は、いろいろあちこち国民から批判の多い公共事業をやるよりも、この際、一挙に文化財の改修、再建というものに我が国では力を入れた方がいいんじゃないか、こういうふうに思います。そのことが、もしかすると技術保存とか文化保存と、もう一つは、言っちゃいけないんだけれども、景気対策になるんじゃないですかね。ぜひぜひそれに力を入れてほしい。
 委員長のところの萩城とか、私のところの駿府城とか、安土桃山城とか、金沢城だとか、いろいろなものが残っているじゃないですか。国家事業としてそういうのを再建していく、どしどしやっていくということが私は必要だと思います。
 それから、木造については歴史があって、奈良時代、四百年後の鎌倉、そして四百年後の桃山時代。その八〇〇年、一二〇〇年、一六〇〇年と木造のブームが来ているんですよ。その四百年後が今の二〇〇〇年で、このときに来ているんです。
 だから、歴史的な流れからすると、今本当にそういう意味では文化財に力を入れると同時に、木の文化に、その再生に力を入れるべきときだと私は訴えまして、質問を終わります。
 ありがとうございました。
河村委員長 武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 早速、法案の中身を質問したいと思います。まず、大臣にお聞きしたいと思います。昭和四十五年、一九七〇年にユネスコ総会で採択されたこの文化財の不法な輸出入の禁止、これを我が国が三十年以上もなぜ批准してこなかったか、この理由について、わかりやすく、短く説明していただきたいと思います。
遠山国務大臣 我が国といたしましては、文化財不法輸出入等禁止条約の趣旨には基本的には賛同いたしまして、締結に向けての準備をしてまいりました。
 しかし、本条約につきましては、条約に言う輸入規制において、盗難文化財をどのように判別して実効的な措置をとるか、また日本国内に不法に流入した外国文化財の返還措置についてどこまで国内法で措置しなければならないかなど、国内法上、実務的に検討を要する課題が幾つかございまして、締結がおくれてまいったところでございます。
 また、これは単に文化庁あるいは文部科学省のみでできることではございませんで、関連省庁が幾つかございます。
 そのようなこともございまして、これまで準備をしてまいったということでございますが、準備が整いまして、今回、国内措置についての法案をお願いしているところでございます。
武山委員 三十年以上も批准してこなかったその一番の理由、根拠は何だったんでしょうか。
遠山国務大臣 あの条約を本当に実行しようとしますと、それは、日本の国内に流入してくるときに、それが本当に価値のある文化財であるのかどうかということを見分けることも必要でございますし、先ほど申しましたように、輸入規制において盗難文化財をどのように判別するか、では、それに対してどのような実効措置をとるかということについては、これはなかなか難しい問題がございます。あるいは、流入した外国文化財の返還措置というのはどういうふうにやったらいいかということについての困難さがあったわけでございます。
 そのために、今日までもまだ先進国の間で国内的にこの条約を受け入れて整備していない国々もあるぐらいでございまして、私どもといたしましては、真摯にそのことについての準備をしてまいったわけでございますけれども、このたび、不法に流入してくる文化財の特定の仕方について、後に御説明いたしますけれども、その特定し得る方途が確立いたしましたので、今回、こういう法案を御提出いたしまして御審議をお願いしているところでございます。
武山委員 そうしますと、今、急遽批准することになった理由も述べていただいたわけですけれども、世界的視野を持った鑑定士というのは日本に何人ぐらいいらっしゃるんでしょうか。
銭谷政府参考人 文化財の範囲というのは極めて多岐にわたっておりまして、例えば美術工芸品を取り上げた場合には、分野的にも、日本のもの、東洋のもの、西洋のものといった地域の別がございますし、つくられた年代もさまざまでございます。さらに、同じ美術といいましても、絵画、彫刻、古文書、考古資料等、いろいろな種別がございまして、大変広範多岐にわたっているわけでございます。
 それで、こういった文化財を取り扱います専門家につきましては、日本の場合、大学において各分野の専門教育によって養成されているわけでございますが、その多くの方は、大学などの研究機関とか全国の美術館、博物館等に所属しているわけでございまして、分野が多方面にわたることから、確かな専門家の人数というのはなかなか把握しがたいところがございます。
 ただ、例えば国公私立の美術館、博物館等のいわゆる歴史、美術等の分野の学芸員については、約五千人程度配置をされているところでございまして、こういった方々が、この分野の専門家として御活躍をいただいているということでございます。
武山委員 それでは、先ほど、外国もまだ批准していないところがあるという大臣の答弁でしたが、イギリス、ドイツ、スイスもまだ批准していないわけですけれども、この各国の批准していない理由をお聞きしたいと思います。まず、イギリス、ドイツ、スイスがなぜ批准しなかったかということを、副大臣からお答えいただきたいと思います。
青山副大臣 まず、イギリスとドイツとスイスについてでありますが、条約実施のための人的な負担、財政的な負担が相当生じることや、実効性のある措置というものがなかなかとり得ないという意味から、イギリス及びスイスではこれまで締結がなされなかったのでありますが、近く締結すべく準備を進めているところであります。
 それから、ドイツにおきましては、昨今、条約締結の検討を始めたところでございます。問題は、輸入規制においてどのように実効的な措置をとれるか、不法に流入した文化財の返還の措置について、それぞれの国における国内法で措置しなければならないかということについて検討をされてきたようでございます。
武山委員 スイスもお願いします。
青山副大臣 イギリスとスイスが近く条約を締結すべく準備を進めているところでございます。
武山委員 すいすいといかないですけれども、イギリス、ドイツ、スイスと私はお聞きしたんですね。イギリス、ドイツが、なぜ各国が批准していないのかという理由を聞いて、スイスが抜けていたんです。それをお答えいただきたいと思います。
青山副大臣 実は、イギリスとスイスが大体同じような理由でございまして、先ほどスイスと申し上げたと思うんですが、イギリス、スイスが、先ほど申し上げたような条約実施のために人的な負担、財政的な負担について十分な検討ができなかったというふうに理解しております。
武山委員 新聞等では、日本が盗難文化財天国だと言われて、一部高値で盗難文化財が取引されていると言われておるわけですけれども、結果的に、略奪や、盗んで、掘って、それを助長していると言われているわけです。
 この点に関して、文化庁はどの程度事実関係を把握しているか。また、このような現状に対する外国の反応、これを文化庁がどの程度把握しているのか、御説明いただきたいと思います。それは副大臣にお願いします。
銭谷政府参考人 済みません。事務的な内容もございますので、私の方から御説明をさせていただきますけれども、日本は今まで文化財の輸入については特段の規制というものがなかったわけでございまして、日本にいわゆる外国の文化財が不法に流入しているその現状というものは、数的にはなかなかこれは把握をできていない状態でございます。
 時々、新聞等に、日本の美術館なりで購入をしたものが外国の方で盗まれた文化財であるといったような指摘がされて、それが掲載をされるという事例は最近でもございますけれども、全体的な量については、残念ながら私どもの方では把握をしていないという状況でございます。
武山委員 私は副大臣に指名したものですから、ぜひ副大臣が答えていただきたいと思います。
 政治改革で、私は、政治主導ということで、大臣と国民の代表である者で議論をしたいと思うんですね。事務的なことであろうと、数字だけであろうと、それはもう何回もやっていくことに対して経験と体験を会得して、もうすらすらと大臣以上になると思いますので、ぜひ答えていただきたいと思います。
青山副大臣 今次長がお答えいたしましたが、新聞等では御指摘の点は伝えられているようでございます。そのことはよく認識しておりますが、実際には網羅的に把握されているという状況ではないと理解しております。
 以上です。
武山委員 それではまた副大臣にお尋ねします。
 重要文化財などの輸出についてはこれまでも文化財保護法で規制されていましたけれども、文化財の不法な輸入についてはどのように対応していたのか。そして、この文化財の不法な輸入に対して法的措置を今までとってこなかったわけですね。なぜとってこなかったのか。それを御説明いただきたいと思います。
青山副大臣 どのような保護措置を講じるかについては一義的には各国が判断しているところでありまして、諸外国の文化財については、これまで我が国の法令において特に輸入規制を行ってこなかったところでありますが、今回の法改正といいますか、今回の法の適用は、いわゆる外国為替及び外国貿易法にのっとって輸入承認事項として我が国への流入を防止することとなります。
武山委員 私の質問は、文化財の不法な輸入に対して法的措置をなぜとってこなかったかと質問しているんです。
青山副大臣 特定の方法や対象範囲が実は一様でありませんでして、冒頭、大臣がお答えになったように、なかなか国内法整備上十分にとれなかったという点がありまして、税関において、何が文化財に該当するのか等の判断に困難を来してきたということが予想されたものですから、実効性のある輸入規制を行うことが困難でありました。
武山委員 この法律案が成立した場合、輸入を防止していかなければいけないということと、具体的な手続もきちっとやはりとっていかなきゃいけない、そして、その手続の実効性についてもきちっと上げていかなきゃいけないということが言えると思います。
 時間が来てしまいました。終わります。
河村委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 今回の法改正に対しましては、不法輸入された文化財を原産国へ返還する措置が一定前進したものとして賛成できるわけでございます。
 私、国際条約について、今後の問題として、文化財保護のために一点お尋ねをしておきたいと思います。
 盗難文化財保護を目的とするユネスコ条約以外の条約として、武力紛争時の文化財略取を阻止するためのハーグ条約、また文化財の定義を国に登録された物件以外にも拡張して盗難文化財の返還義務を明確に規定したUNIDROIT条約というのがございますけれども、その批准は国際的に進んでいますが、日本は両条約とも批准していません。UNIDROIT条約については署名もしていないわけであります。
 これらについて、今後どういう姿勢で取り組んでいくのか、締結の方向で努力するのかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 二つの条約につきましてお尋ねがございました。
 まず最初の、武力紛争の際の文化財の保護のための条約、いわゆるハーグ条約についてでございますけれども、この条約は、文化財の集中する地域が重要な軍事目標である飛行場とか放送局とか交通幹線などから妥当な距離にあるなどの条件を満たす場合に、こういう地域を特別保護ということにいたしまして、いかなる敵対行為も行えないようにすることが盛り込まれております。
 我が国において、この重要文化財等が集中する代表的な地区として京都や奈良があるわけでございますが、これが重要な軍事目標から妥当な距離にあるという条件を満たして特別保護を得ることについて困難が予想されることや、各方面との調整を図る必要があるなどの課題があると考えられてきたために、これまでこのハーグ条約は締結をしていないところでございます。今後、ハーグ条約の締結につきましては、関係省庁と十分協議をしてまいりたいと考えております。
 次に、盗取されまたは不法に輸出された文化財に関するUNIDROIT条約、私法統一国際協会条約、いわゆるUNIDROIT条約でございますが、この条約に関しましては、この条約の対象となる文化財の範囲があいまいであって、単にその締約国から持ち去られたものと規定されておりまして、各国で指定するという規定がないということがございます。
 それからもう一つ、原保有国の返還請求権の行使権利の期間が極めて長期間でございまして、例えば盗難のときから五十年とかという規定がございまして、善意取得者の立場を長期的に不安定にさせることといったような課題がございまして、条約の締結に向けては、国内の関係法令との間で慎重な検討を行う必要があると考えております。
石井(郁)委員 今回の法改正も随分おくれたわけでございますが、そのように国際条約について日本の政府というか、文化庁、文科省自身も極めて消極的だということがあちこちで言われておりますので、私はぜひ前向きな姿勢で取り組んでいただきたいということをこの機会に申し上げておきます。
 具体的な問題として、私、きょうは、国内文化財保護の問題として、奈良の平城京跡の地下トンネル問題、これは大変緊急を要しておりまして、対応が必要なのではないかということがありますので、質問をさせていただきます。
 奈良の平城宮、平城京跡の地下にトンネルをつくって京奈和自動車道を通す計画というのがございまして、考古学研究者や文化財の保護団体が地下の埋蔵文化財が破壊されると危惧を表明しています。文化財保護法にもあるとおり、埋蔵文化財も当然保護対象になるわけであります。
 平城宮跡は一九五二年に特別史跡になりましたし、一九九八年にはユネスコ世界遺産に登録されているわけですよね。このことは、古都奈良の文化財としての価値、また景観の歴史的価値が認められていることでありますし、大量の木簡、遺構など、地下に埋もれた埋蔵文化財がある、良好に保存されているからだというふうに考えますけれども、この認識をまず伺っておきたいと思います。
銭谷政府参考人 平城宮跡についてのお尋ねがあったわけでございますが、特別史跡、平城宮跡につきましては、地下の遺構、遺物が良好な状態で広範囲に保存されており、これらは奈良時代の政治、経済、社会の動向を知る上で歴史的、学術的に極めて重要な価値を有する文化財であるというふうに認識をいたしております。
石井(郁)委員 昨年の九月に、ユネスコから日本政府にあてて、古都奈良の文化財の保存状態に関する問い合わせというのが来ているわけです。地下高速道路の建設が、地下の遺存物、とりわけ木簡に回復不能な損傷を与えるかもしれないという危惧が表明されていると思うんですね。
 文化庁は、この平城宮跡及び平城京の跡、地下にトンネルをつくれば埋蔵文化財は破壊される危険がある、そういう御認識はお持ちでございますね。一応確認をさせてください。
銭谷政府参考人 私どもといたしましては、世界遺産でもあり、かつ特別史跡でもある平城宮跡、その地下に埋蔵されております木簡などの遺物等につきましては、これはきちんと保存をしていかなければならない、こう考えておりますが、いわゆるお尋ねの道路の状況につきましては、まだ計画が確定をしたわけでもございませんので、どういう影響があるかということを十分検討しなければいけないというふうに思っております。
石井(郁)委員 先ほど、ユネスコの問い合わせに対して文化庁は、大体、今御答弁のような趣旨を回答しているかと思うんですね。古都奈良の文化財、関連する景色と景観の歴史的価値を保護するために、可能な最大限の努力を継続しますという回答かと思います。問題となる部分についての計画はまだ予備的調査の段階だ、この過程の中で平城宮跡や歴史的建築を含むその他の文化遺産の保護に関してしかるべき考慮が払われてきていますと、何かうまいぐあいに進んでいるかのような回答をしているように私は聞こえるんですけれども、しかし、今日の事態というのはそう楽観できない。
 国土交通省ですけれども、既成事実化を着々と進めているのではありませんか。トンネル建設による地下水の水位変化が埋蔵文化財に影響を与えかねないということから、国土交通省が、昨年からことしにかけて地下水検討委員会をつくっております。そして、結論も出しているんですね、道路建設が地下水に与える影響は少ない、トンネルが第一帯水層の地下水位に与える影響は少ない、埋蔵文化財への影響は少ないと推測されると。
 これはどうなんでしょう。結論です。驚いたことに、その地下水検討委員会の委員五人がそろって出席した委員会というのは一度もないと言われているんです。報告書提出直前の委員会に至っては二人だけで、こんな委員会で、しかるべき考慮が払われているという結論が出るというのはどういうことかなと言わざるを得ないわけです。
 文化庁として、こんなふうに進んでいる事態に対して、文化財保護の立場から私は対応が求められているというふうに考えますけれども、どう対応されるおつもりですか。
銭谷政府参考人 京奈和自動車道につきましては、いまだ奈良市にかかる部分のルート、構造が決定をしておらないで、現在、国土交通省において三つのエリアについて比較検討をしている段階だと承知をしております。
 このうち、中央、東側、西側という三つのエリアのうち、中央エリアにつきましては、世界遺産、古都奈良の文化財の構成資産でもある特別史跡、平城宮跡を初めとした文化財の保護の観点に留意する必要がございまして、特に、先ほど来お話が出ております平城宮跡の地下に存在する埋蔵文化財への影響が懸念をされているわけでございます。
 昨年の七月に国土交通省において、中央エリアにおける道路建設と地下水挙動との関係等について検討をし、本年三月に出た検討結果を踏まえまして、道路建設における埋蔵文化財の保護の観点からの配慮事項を検討する文化財検討委員会を設置して、現在検討を進めていると承知しております。
 文化庁といたしましては、この道路につきましては、いまだルートや構造が決定をされていない段階ではございますが、これまでも国土交通省に対しまして、文化財保護の観点から、問題点等について説明を行うとともに、文化財の専門家からの意見聴取等により、慎重な検討を行うように要請を行ってきたところでございます。文化庁といたしましては、この文化財検討委員会の検討状況にも留意しつつ、国土交通省と調整を行ってまいりたいと考えております。
石井(郁)委員 確定していないということですけれども、確定してからではやはり遅いわけで、本当に文化庁としてのきちんとした対応が要るというふうに私は思うんですね。
 それで、平城宮跡の直下であろうと、その周辺ルートであろうと、三つ言われましたけれども、何かバッファーゾーンとかハーモニーゾーンとか言われているんですが、平城京跡全体で、やはりトンネル建設というのは地下水に影響を与えるというふうに思います。埋蔵文化財の破壊というのがやはり強く危惧されるわけですよね。
 先ほど、最初に、この埋蔵文化財というのは非常に広範囲にわたるという認識もお示しになったとおりでありまして、ですから、文化財保護団体の一つ、奈良世界遺産市民ネットワークなどは、その結論を独自に改めて検討しているんですね。不確定な予測で地下トンネル建設を決定してはならないと異議を表明しています。
 いろいろ、今この地下水の調査というのは、全国的に、関西空港もそうですけれども、全然最初の予測と違ったことがどんどん生じているわけでしょう。だから、研究自身とか調査自身の信憑性というのが大変今は問われているところであるわけですね。
 そういうことで、私は、これは国会で、一九七五年の文化財保護法改正のときも、参議院の附帯決議がありまして、「法の運用にあたつては、関係学会、文化財保護団体、地方公共団体等の意見を十分尊重すること。」というのがございますよね。
 だから、文化庁、今この問題で、本当に埋蔵文化財が破壊されるかどうかという重大な問題でありますので、やはり文化財保護団体の意見を早急にちゃんと聞き取る、その意見をきちんと踏まえて文化庁としても対応するというふうに私は強く申し上げたいと思いますけれども、いかがでございますか。
銭谷政府参考人 私どもが承知をいたしておりますのは、国土交通省において、今後、先ほど申し上げました三つのエリアについて、複数の代替案から成る基本計画原案というものを策定して、市民の方々や専門家の方々の御意見を聞いた上で最終的な決定をするというふうに承知をいたしております。
 そこで、私どもとしては基本的に、繰り返しになりますけれども、将来の道路建設が世界遺産の価値に影響を及ぼすことのないように、国土交通省とよく必要に応じて協議をしてまいりたい、かように考えております。
石井(郁)委員 ユネスコは、イランの歴史都市イスファハンの地下高速道路計画に対して撤回勧告を出したことがあるんですね。だから、今ユネスコは、奈良の世界遺産の保護、保存に大きな懸念、危惧を抱いているわけでありまして、私は、この世界遺産の保護というのは、日本、一国内の問題ではなくて、まさに国際信義にもかかわる大変重大な問題だというふうに考えています。
 今一つ御紹介しましたけれども、いろいろな団体からの御意見ですけれども、国としてもよく知っている奈良の文化財研究所、この人たちは平城宮跡の発掘、調査研究に携わっていますけれども、そこの職員組合の方から、木簡を初めとして、地下に埋まっている遺物が極めて傷みやすくデリケートなものであるということは、遺跡を発掘し、遺物を管理している私たちが肌身にしみてよく知っている、かけがえのない平城宮跡という文化遺産を破壊する可能性の少しでもある地下道路計画には断固反対せざるを得ませんということがあります。
 それから、もう時間がありませんが、ことし五月に日本考古学協会第六十八回総会で、平城宮跡地下の高速道路通過計画の撤回を求める決議というのが上げられています。もう中身を読む時間はありませんけれども、そういうふうに各方面、多数の方々が、今こういう形で地下道路建設を決めるべきでないという声があります。
 だから、私は、はっきりとこうした声にこたえるべきだ、この平城京跡の地下トンネル計画は認められない、文化庁としてはやはりそういう立場できちんと表明すべきだというふうに思いますが、最後に御答弁を伺って、質問を終わります。
銭谷政府参考人 現在、国土交通省によりルート等の検討の前提となる調査が行われている途上でございまして、その建設の是非そのものについてコメントするのは時期尚早と考えております。
 ただ、私どもの基本的な考え方を、ユネスコからの照会に対して政府として回答したその内容を紹介することでお答えをさせていただきたいと思いますけれども、京奈和自動車道のルート、構造の選定に当たっては、世界遺産の構成資産である平城宮跡とその関連文化財の保存に配慮するとともに、専門家や市民の意見を取り入れることにより、計画策定の手続の透明性、客観性、公平性の確保に努める必要があります。
 今後とも、建設当局と文化財当局が十分に連携をし、道路建設によって世界遺産の価値に影響が及ぶことがないように取り組んでいきたいというふうに思っております。
石井(郁)委員 終わります。どうもありがとうございました。
河村委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 今回の法案二つにつきましては、国内法を整備し、批准をするということは当然なことだと思います。その意味で、なぜ三十年間も放置したのかという疑問は私も同じように思いました。先ほどのお答えでは本当にお答えが不十分というふうに思います。
 でも、時間の関係もありますので、では、これを批准した暁には、たくさんの盗難物がある中で、キプロス島のイコンというこの品を、日本は、日本民法の規定の前に泣き寝入りを余儀なくされているキプロスに無償で返還を要求されているんですけれども、このことは、批准は既にするということになっていますが、法改正の後しようと、大臣、思っていらっしゃいますか。
銭谷政府参考人 今先生お話しの件は、石川県内の公立大学が所蔵する聖画像、イコンについて平成七年にキプロスから返還要求があった件かと存じます。
 この問題につきましては、大学側としては、仮に盗品であったとしても、善意取得であって返還に応じることはない、こういう主張をしているわけでございます。
 今回、この条約を批准いたしまして国内法を整備するわけでございますが、この条約、国内法によりまして適用があるいわゆる外国の盗難文化財というのは、この条約に日本が入った後に盗まれたものが対象になるということで、この公立大学の件については、直接にこの法律の適用ということではないということを御理解いただきたいと思います。
山内(惠)委員 大臣のお気持ちをお聞きしたかったんですが、詳しい中身でしたので回答者が違うということはわかりますのでよろしいですが、やはり盗難で、しかも日本の民法が壁となって盗難品をこのような形で国内に置いておくということ自体、世界に対して本当に申しわけないことだと私は思います。
 条約の規制がない日本が、このままでは世界的なブラックマーケットになってしまうと言われてき続けて三十年ですから、なぜこの条約を早く批准しなかったのかということこそ問われると思います。せっかく今これを批准するという意味で国内法の整備ということですから、ではその批准に当たっての整備は十分かという意味で質問したいと思います。
 今回の法案は、七条のところでのみ具体化ということを書かれているのですけれども、条約に関しての五条と十条についてお聞きしたいと思います。特に、(b)項のところですけれども、自国の保護物件目録に基づいていくのですけれども、一覧表を作成し常時最新のものとすること、この体制はできているのでしょうか。
銭谷政府参考人 今回の条約の締結と関係二法案の提出に当たって、政府としては、関係省庁と協力をいたしまして、条約のすべての条文にわたりましてとるべき国内措置について詳細な検討を行いました。
 その結果、条約に記されている内容については、その多くは既に何らかの国内法により対応が可能であること、あるいは宣言的な規定であって法令に基づく措置が求められていないもの、こういうのもあるということが確認をされまして、今回の関係二法案におきましては、既存の国内法では対応できない事項について規定の整備を行った、その結果、文化財の不法輸出入等の規制に関する法律は七条の法案になったということでございます。
 それから、条約の第五条の(b)でございますけれども、自国の保護物件目録に基づいて一覧表を作成し及び常時最新のものとすることという規定がございますけれども、これにつきましては、既に自国の文化財につきましては重要文化財等の台帳を備えてこれを随時更新をしておりますので、特段の法令上の措置は必要ないというふうに考えております。
山内(惠)委員 この後、時間も余りありませんので、まとめて質問したいと思います。
 五条の(d)項、現地保存のことについて、適用法は何なのか。それから(e)項のところでは、この規則の遵守を確保するという意味で政令等を用意しているのか。それから(f)の項目で、すべての国の文化遺産に対する尊重を促し育成するための教育的措置をとるということが条約の方に盛り込まれていますが、具体的に教育の部分でどのような政策を考えていらっしゃるのか。十条については、(b)項のところですけれども、これも五条の(f)と同じ教育にかかわると思います。その意味で、大急ぎで短くお答えいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 簡潔にお答えをさせていただきますが、五条の(d)につきましては、埋蔵文化財の保護ということで対応しているということでございます。それから(e)につきましては、国際博物館会議倫理規定の徹底を図る、古物商については古物営業法の適切な施行を図るということで対応できるかと思います。
 それから五条の(f)、それから十条の(b)でございますけれども、これは文化財の不法な輸出入、これはいけませんということについてのきちんとした教育を行うという規定でございますので、これについては、新たに文化財不法輸出入規制法七条において、国民の理解を深める等のための措置についてきちんと規定を新たに設けたというものでございます。
山内(惠)委員 今の最後のところで、教育というところが大事だと思います。日本の条約の批准が遅かったということで今回法整備をされても、先ほどのキプロスの作品のように、イコンのように、これは盗難されたものと言われているということを、教育上どうやって私たちは子供たちに教えていくのか。世界の重要な文化遺産がそのようなことで入ってしまった三十年間というのは、本当にマイナスのものが大きかったと思います。
 その意味でいえば、日本は条約を批准するのに本当に長い時間をかけ過ぎだと私は思います。まだ批准しなければならない条約もあります。特に今回の文化財と関連して言えば、武力紛争の際の文化財の保護のための条約、ハーグ条約、これも批准していない。それから、先ほど話題になっていましたが、もう一つ、UNIDROIT条約。今後、条約を批准するおつもりというふうに大臣はお答えになっていましたけれども、どのような日程で批准しようと考えていらっしゃるのか、大臣、お聞かせいただきたいと思います。
遠山国務大臣 私は、国際的な見地から見まして、日本は、条約についての加入の意思、あるいはそれについての実行、また国内法の整備において、非常にしっかりしていると思います。今回の点につきましても、先ほど申し上げましたようないろいろな国内措置上のしっかりした対応をするために、準備期間をかけてまいりました。
 そして、できるだけこういう条約については早く加入をし批准をしていくということはもちろん大事でございますし、私どもとしては、まだ批准していない条約につきましても、粛々と準備を整えながら、関係省庁とも十分調整をとった上で、こういう問題について対処してまいりたいと思います。
山内(惠)委員 もしかしたら、先ほどの批准が三十年間かかったということを考えると、粛々とということが三十年というふうにならないようにというふうに思うんですが、当面、ハーグ条約を批准してこなかった理由に、我が国は武力紛争を国内では想定していないから締約国となっていないのだというふうに未批准の理由を述べられているんですが、批准をするとなると、そこのところはどのようなお答えになるんでしょうか。
遠山国務大臣 ハーグ条約の件につきましては、先ほど御議論があったところでございますけれども、この条約におきましては、文化財の集中する地域が重要な軍事目標であるかどうか、これは、飛行場、放送局、交通幹線等から妥当な距離にある等の条約の条件を満たす場合に、このような地域に特別保護を与えて、締約国が当該特別保護下にある文化財に向けていかなる敵対行為も行われないようにすることが盛り込まれているわけでございます。
 日本において、重要文化財が集中する地域におきまして、重要な軍事目標から妥当な距離にあるという条件を満たし得るのかどうかなどについては、なかなか正確にそのことについて国内的な解釈なりあるいは条件を満たしていくということにつきましては、各方面との調整を図る必要があるわけでございまして、そういうことから、これまで締結していないところでございます。
 これにつきましても、今後とも関係省庁と十分調整の上、この問題についても協議をしてまいりたいと思っております。
山内(惠)委員 ハーグ条約の中の七条に、平和時においてこの条約を遵守する、確保するような規定を軍事上の規則または訓令の中に入れることというのがあるんですね。その意味では、日本が別な理由をつけて批准をしてこなかったということが大変問われる問題だというふうに思います。
 アメリカも批准していないと聞いていますが、アメリカは、批准はしていないけれども、戦争後に国際裁判で訴えられるようなことがあることを懸念して、教育は十分にやっているというふうに言っていらっしゃる方がいます。そのことでいえば、日本は、この部分のところで教育をしっかり、やはり先ほどの答えにも入っていくんですが、やるべきだと思います。
 アメリカが原爆を長崎、広島に落としたとき、京都、奈良を抜かしたというのを聞いています。それから、私はスペインに旅行したときに、あそこにはガウディの建築、まだ二百年たっても完成しないような建物が着々と準備を進めていらっしゃるけれども、あの作品があることによってスペインは武力から免れるのではないかと言っていらっしゃる方がたくさんいました。文化というのは、その意味で、私たちに大変意味のあることを教えていると思います。
 特に、ユネスコ憲章、戦争は人の心の中で生まれるものだから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないというのが、文科省の重要な教育の問題だというふうに思うんです。
 そのことを考えますと、学校教育において、武力によらない平和をつくることと、文化財を保存していくということには、大変重要な観点があると思います。その意味で、教育の部分では、どのような教育を考えていらっしゃるか、条約上では先ほどお聞きしましたけれども、文科大臣として、大臣、どのようなことを考えていらっしゃるでしょうか。
遠山国務大臣 文化の重要性というのは本当におっしゃるとおりでございまして、これはだれも異論がないと思います。
 殊に、日本の場合は、長い伝統のもとでつくられてきた、あるいは守られてきたすばらしい文化財を持っております。そういうものについて、しっかりと子供たちに教えて、みずからの国に対する誇りを持たせるということも大変大事でございますし、同時に、他国における文化財というものを尊重していく、そういう精神を学ぶということは大変大事だと思っております。
 その意味で、私どもとしましては、そういう角度での教育というものは、さらに充実をしていく必要があると考えます。
山内(惠)委員 今、私たちは必要のない議論だと言いたいような有事法制三法案が、事態対処特別委員会で論議なされていますけれども、このような形での備えではなくて、人類が築いた文化を大事にすることによって平和が守られるんだという意味でこそ、文部科学省の仕事として大きなものがあると思います。
 その意味で、私たちが、ハーグ条約の批准ということに、全力を挙げて批准していく方向で、しかも短期間でやっていただきたいと思います。条約の批准に長い時間をかけないで頑張っていただきたいという希望を申しまして、きょうの質問を終わります。
河村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより両案を一括して討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 まず、内閣提出、文化財の不法な輸出入等の規制等に関する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
河村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、文化財保護法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
河村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
河村委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時九分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時四分開議
河村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、池坊文部科学大臣政務官から発言を求められておりますので、これを許します。池坊文部科学大臣政務官。
池坊大臣政務官 去る五月二十二日の当委員会の審議における、牧義夫委員の御質問に対する答弁において一部誤り等がございましたので、おわびし、訂正並びに補足をさせていただきます。
 まず、「教員自身が、研修計画を作成することを法律上義務づけております。」とお答えいたしましたが、研修計画書の作成を義務づけられているのは、教員ではなく、任命権者の誤りでございまして、この点、訂正させていただきたいと存じます。
 また、教員が研修内容を選び取ることについての発言をいたしておりますが、これは、任命権者が研修計画を作成する際、教員の主体的な研修への意欲を喚起する観点から、その意見や希望を参考にすることが望ましいという趣旨で申し上げたものでございます。
 よろしくお願いいたします。
     ――――◇―――――
河村委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官大熊健司君、総務省大臣官房総括審議官板倉敏和君、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、科学技術・学術政策局長山元孝二君、研究振興局長遠藤昭雄君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、文化庁次長銭谷眞美君、厚生労働省大臣官房技術総括審議官今田寛睦君、大臣官房審議官鶴田康則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。林田彪君。
林田委員 自由民主党の林田彪でございます。
 まず、今般の待ちに待ったワールドカップに対しまして、非常に空席が目立つというか、チケット問題が社会問題化しているような事態があるように思っております。
 御案内のとおり、四年に一回の世界を挙げての大イベントであり、十七回目にして初めて、しかも二十一世紀の初頭でアジアで開かれる、しかもなおかつ日本と韓国がお互いに手をとり合って大成功に持っていこうという取り組みの中で、総理大臣あるいは文部大臣も開会式にもおいでになられたようでございますけれども、その開会式すら埋まっていない、空席が目立つ。
 しかも、それぞれ事情があって空席が当然出るんでしょうけれども、どうもブロックで出てしまっているということ等を考えますと、いろいろな準備されてきた方々もさることながら、実際このチケットを手に入れて、そこの白熱した生の場面にファンが期待しておって、そしてなおかつ行けなかった人たちの思いを思いますとき、どうしてもここは、どういう問題がこの中にあるのかな。
 日本と韓国が一緒に同時開催をするというただスポーツだけのイベントというのじゃなくて、総理大臣も、この一カ月間はお互いに、言葉で言われなかったと思いますけれども、楽しみましょうと、しかる後横浜での閉会式、そこでまた韓国大統領とももろもろについてお話ししたい、そういう御配慮までされておるような状況の中で、もう既に七試合が我が国でも消化しているようでございますけれども、このチケットの販売につきまして、一般の求めた方々はそれぞれ努力をされて、一次、二次、三次にわたって販売がなされたようでございますし、運よく手に入れた方、昨日の日本・ベルギー戦は聞くところによると二百分の一ぐらいの競争率だったというふうに聞いておりますけれども、そう思っている方々があれを見られたときどう思うかと思いますと、日本と韓国の共催、そしてもろもろの方々が大成功に導いていく努力をされたこともさることながら、一般の本当に多くの人々にある面の絶望というか不信感というか、日本の我が国を蔓延しつつあるように、せっかくのこの大イベントに水を差すような状況になっているんじゃなかろうか。
 幸いまだ始まったばかりというか、まだ三十二試合のうち七試合消化したばかりでございます。そういうことを考えますと、今のどこにそういう原因があるのか、実態と原因等について、これはどなたでも結構ですが、大臣でよろしければ大臣にお願いいたしたいと思います。
遠山国務大臣 林田委員の御指摘は私も全く同感でございまして、この問題は真摯にずっとフォローしてまいりました。
 幸い、昨日の日本・ベルギー戦におきましてはほぼ満杯でございまして、いろいろな理由からあけておかなくてはならないところを除きますと、空席が七百席ぐらいであったということではございます。
 しかし、六月一日から日本国内で開催しております試合におきまして、スタジアムの随所で空席が目立った、そして、それらが我が国のJAWOCが販売したのでない部分で売れ残りチケットがあって、それによって空席が生じたということは非常に残念なことと考えております。
 ワールドカップのチケットにつきましては、JAWOC、日本国内委員会が担当する国内販売分は完売しておりまして、バイロム社という、これはFIFAと契約をしている会社でございますが、これが担当する海外販売分についての売れ残りは、JAWOCにすべて戻されて、国内において完売されたというふうにJAWOCとしては認識していたわけでございます。
 ところが、空席が生じました原因につきましては、現在までのところ、大会の主催者であるFIFAの方から明確な説明は行われておりませんけれども、空席の多くは、バイロム社が取り扱った売れ残り分と、それからスポンサー枠として確保されたものが実際には入場しなかった分が大量に存在したためではないかと推定されているところでございます。
 その空席について、売られたものについて日本側が勝手にまた売るということはできないわけでございまして、私どもとしても切歯扼腕しているところでございますが、いずれにしましても、今後の対応につきましては、できるだけのことをやってまいりたい、今日に至るまでも実は波状的にさまざまな手を尽くしていろいろやってまいっておりますけれども、さらに努力をしてまいりたいと思っております。
林田委員 FIFAを通じて、英国のじゃなくて、英国にある会社、バイロム・コンサルタンツというんですか、そこが結構いろいろな、うさん臭いというような話まで新聞等には出ておるようでございます。
 そういう中で、きのうのベルギー戦、今大臣おっしゃいましたように、何とか埋まったということでございますけれども、テレビの映像あるいは写真というのは正直なものでございまして、ここにちょっと持ってきておりますけれども、VIP用あるいはテレビ報道関係用でスペース、あるいは治安維持のためにそういう死角をつくらないという意味で、確かに収容人員よりも大分削っておるというか、減ってはきているんでしょうけれども、この写真で、日刊スポーツだそうですけれども、これを見ていますと、恐らく、チケットを手に入れようと思って苦労した人たち、もし運よければ私はここに座っておられたんじゃないか、私がここで座って、大声援というか、フィールドで頑張っておる連中と一緒になって、一体となって、そこで場を共有することができたんじゃないか、そういう思いがされると思います。
 私は、テレビ中継は恐らく全世界に流れておるだろうし、そういう中で、日本というところはサッカー熱が余り熱くないのかなと変なふうにとられてもある面では心外だなと思うと同時に、幸い、きょう、あす、五日、六日の分につきましては、何か電話受け付け等で処理されておるというふうに聞いておりますけれども、とりあえず、この問題というのは、首長さん、主催者の県知事さんあるいは市長さん、いろいろなことを、損害とかいうことまで含めておっしゃっているようでございますけれども、私はやはり、今、我が国、特に担当の文科省としてできることは、いかにこの空席を円満に埋めていくかということに尽きると思います。
 先ほどちょっと言いかけましたけれども、あす、あさってのものにつきましては、もう電話受け付けか何かですべて処理できておるということでございますし、日本にとっての第二戦目、九日で、ロシアとの対戦、恐らくこれまでにはそれなりに軌道に乗ってくるんではなかろうかなと思いますけれども、その辺、具体的に文科省として取り組んでおられることをお聞かせいただければ安心できますが。
遠山国務大臣 今例にとられました日刊スポーツのこの部分は、実は、警備上必要な席あるいはセンター分離フェンスに要するスペースということで、最初からここは空席にしておくというのが、これはフーリガンの動きとかそれを規制するために警備上どうしても必要、それから、空いておりました席の中でも、メディア用あるいはテレビカメラ等に要するスペース、そこが、四千席分相当用意していたんですけれども、必ずしも埋まっていない、しかしこれは埋めるわけにいかないというようなものがございます。
 ということで、私はメディアの方にも不安をあおるようなことはやっていただきたくないと思います。一生懸命やっているわけでございますから、それが一つぜひお願いしたいことと、それから、私どもといたしましては、FIFAとの交渉の末、電話受け付けもできるようにしておりまして、少なくとも六月五日、六日分を電話受け付け、販売したところと承知しておりますが、それ以外にも、私自身の名前でFIFAの会長に言ったりあるいは局長名でやったり、これ自体は、私どもがやれることであれば本当にやりたいのでございますけれども、それを実施できるものはJAWOCでありFIFAでありということでございますので、その辺は十分御理解をいただきながら、しかし、私どもとしてはできるだけのことをしているということを御理解いただきたいと思います。
林田委員 ぜひお願いしたいと思います。
 この問題、冒頭言いましたように、日韓共同の開催でございます。いろいろな反省点も含めまして、日本、韓国の組織委員会、連携をとって二度と起きないように、聞くところによりますと、二〇〇六年、次の十八回はドイツで開催されるということでございます。四年間あるから云々というのではなくて、今回の不祥事というか不手際というか、これを十分反省いただいて、そういうことがないようにぜひ御努力のほどをお願いしたいと同時に、三十日の決勝ですか、これが盛会裏に、大会そのものも含めて終わるように、ぜひお願いしたいと思います。
 それでは、次の質問にさせていただきます。
 ワールドカップ、一カ月で終わるわけですけれども、七月からまた現実に我が国は戻っていくような感じがいたします。御案内のとおり、非常に厳しい状況の中で、国民一人一人が将来に向けての何か明かりを求めていきたいという中で、それぞれが立場立場で御努力はされていると思います。しかし、やはり我が国、宿命的なところがございまして、国土が狭く資源に乏しいという我が国の状況を考えますと、これから、グローバルといいますか、諸外国との競争等も含めまして、日本で、どことも負けない資源としては、いわゆる人的資源というか、頭脳というか、それが考えられるわけでございます。
 そこで、科学技術の振興と申しますか、それについて実はお尋ねしたいんですが、昨年三月に第二期科学基本計画が策定された。五年間、平成十三年から十七年度にかけまして、政府研究開発投資の目標として約二十四兆円の規模が一応用意されておるということになっております。科学技術創造立国、これで生き延びていくという国是というか、それがあるわけでございますので、それで、国を挙げて積極的に取り組んでおられますいろいろな分野について、ライフサイエンスとか新薬とか、ちょっとイメージがわかないような科学分野につきましても、いろいろなことで研究開発が進められておるようでございます。
 ただ、この現在の厳しい財政事情の中で、五カ年とはいえ二十四兆円を投資されるわけでございます。そうなりますと、当然、その結果と申しますか、効果と申しますか、その辺の研究評価並びに検証と言った方がいいのかもしれませんけれども、聞くところによりますと、これは第二期科学基本計画となっております。一期の検証も含めまして、五カ年のうちの二年度が十四年度ですから、まだまだ検証するに足らない部分もあろうかと思いますけれども、この財政の厳しい状況の中で研究評価をきちっとしていくことがより重要ではなかろうか、そういうふうに思っております。
 したがいまして、文科省としての基本的な考え方をぜひ、どなたでも結構でございます。
加納大臣政務官 科学技術創造立国を目指す我が国において、研究開発計画の評価が極めて重要だという林田先生の御指摘は全くそのとおりだと思っております。
 特に、こういう研究開発については、競争的な環境を整備していくこと、そして、そのことを通じて貴重な資源の適正な配分がなされることを私どもは期待しているところでございます。
 これも今先生から御紹介のございました、昨年決まりました第二期の科学技術基本計画におきましても、こういった研究開発の評価の重要性を指摘しておられます。それからまた、国の研究開発評価に関する大綱的指針も昨年改正を見たところでございまして、この二つを受けまして、私ども文部科学省におきましても、積極的に評価指針をつくるべく取り組んでおりまして、近々にこれが取りまとまるところでございます。
 その中での大きな着眼点でございますが、三つございます。
 キーワード的に申し上げますと、一つ目は透明性ということでございます。これは、研究開発の評価におきます公正さと透明性を確保していく。例えば、第三者評価であるとか、あるいはその結果の公表であるといったような透明性を確保すること。
 二つ目は、よく企業で申し上げますPDCAといったものがございます。プラン・ドゥー・チェック・アクションとありますけれども、国の研究開発においても同じマネジメントサイクルをやって、研究開発の計画、それの実施、その結果の評価、その評価を次の研究項目の選定なり予算に反映していく。これは最後の反映するところがすごく大事なところだと私ども認識しております。
 それから三つ目は、条件整備ということでありまして、こういったしっかりした評価をするために必要な資源でありますとか、あるいは評価体制を確保することだろうと思っております。
 加えて、私ども文部科学省独自の問題でもございますけれども、私ども、多くの若い研究者、こういった方々の創意を何とか刺激していきたいということでございますので、新しい芽、それからすぐれた研究開発の芽を何とか見出して、これを発展させるような前向きの評価というのが一つ。
 それから二つ目には、さまざまな機関、研究員、いろいろな項目がございます。こういったものについて、例えば資金としても、基盤的資金とか重点的資金とかあるいは競争的資金といろいろな資金がございますので、こういったものについて多様な評価をしていきたい。多様な評価というのが二つ目のキーワードになろうかと思っております。
 三つ目が、重複を排除するということでありまして、さまざまな分野で行われる評価がございますが、こういった評価が重複して、研究者にとってそれが重荷にならないような、そういった工夫もぜひしていきたいということでございます。
 適切な評価システムを通じて、先生の御指摘のとおり、日本の科学技術創造立国に向けての前進を図ってまいりたく、我が省としても頑張ってまいりたいと思っております。
林田委員 では、次に移らせていただきます。
 予定では文化財のお話をお聞きしようと思ったんですけれども、午前中にありましたのでこれは飛ばさせていただきまして、文科省、小学校、中学校あるいはその前からの話も含めまして、あるいは高校、大学、それぞれ入っておるわけでございますけれども、私たち政治家にとって、地元では一番身近なのがどうしてもやはり小中学校の話でございます。
 そうなりますと、冒頭にも申し上げました、今、国を挙げてワールドカップをやっておるわけですけれども、これだけ情報網が発達してきていますと、好むと好まざるとにかかわらず、年少者の、小学生、中学生に対してもいろいろな事件が飛び込んできているんじゃないかと思います。学校では、給食問題ではBSE関係、あるいは子供さんが茫然と見詰めていたあの瀋陽の事件、やはり自分たちの年齢にどうしてもオーバーラップさせて、子供はいろいろな面で考えるんじゃなかろうかと思います。
 そういう中で、学校というところ、学力もさることながら、いろいろな面での、生きるためには何かとか、情操の面も含めまして各現場ではいろいろな取り組みというか、なされているんじゃなかろうかと思うんです。
 非常にこれはお答えしにくいかと思いますけれども、そういうもろもろの社会の営みの中というか、生きている中での現象、教育にとってもいい教材もあろうかと思います。あるいは、これはどう児童生徒に現場として説明したらいいのかなと思われるところもあろうかと思います。私が直接、担当といいますか、小学校の先生に聞いたのでは、自爆テロなんというのはとてもじゃないけれども説明のしようがありません、そういう答えが返ってきたわけですね。
 そういう意味で、恐らく現場の先生が答えにくければ文科省としてもそれなりにやはり難しい問いかなと思いますけれども、この辺につきまして、そういう社会のもろもろの現象を、いい悪いは別にして、特に年少者、一番感受性の強いと申しますか、小学校、中学生の児童生徒にどういうふうに伝えるべきと考えておられるのか、その辺の基本的な考え方でも結構でございますので、よろしくお願いいたします。
矢野政府参考人 学校教育におきまして、児童生徒が社会に対する関心を高めて、多角的、多面的に考察し、事実を正確にとらえ、そして公正な見方や考え方ができるようにするということは、大変大事なことでございます。
 先生お話がございました、さまざまな社会的事象のうち、どのような事象を取り上げて指導をするかということについては、いろいろ難しい問題があるわけでございますけれども、これはそれぞれの学校において、児童生徒の発達段階、今、年少の子供について難しい問題があるという話でございましたが、そういう意味で、発達段階をきちんと踏まえて、適切に判断をされて、そして社会科等のそれぞれの教科や学級活動など、学校教育活動のさまざまな場面をとらえて適切に指導される必要があろうかと思うわけでございます。
 学校教育におきましては、こうした学習を通して、公正な判断力、また社会に対する健全な批判力を育成して、民主的、平和的な国家、社会の形成者として必要な資質を養っていくことが大切であると考えるものでございます。
林田委員 今局長がお答えになったのを文章にしてそれぞれ現場の担当教師、先生が読まれたとき、どう思われるか、いろいろこれはあろうかと思いますけれども、私は、現場の先生方はそれぞれやはりいろいろな面で、研究というよりも、悩みも含めて頑張っておられるなという思いがするわけです。
 それでは、次の質問に移らせていただきます。
 本年度から、全国の小中学校で完全週休、五日制というか、土曜日が休みになったわけでございます。口の悪いと言ったら失礼ですけれども、評論家に言わせれば、ゆとり教育というか、今公的機関である教育機関が推し進めようとしているこの事項というのは、バブルの崩壊と同じだと。要するに土地神話みたいなもので、ゆとり、ゆとりだけを追っかけていって、最後は崩壊するまでいかなわからぬではないかというようなことを言っている評論家もおるようでございますけれども、私自身は、単に学校だけではなくて、地域、家庭、要するに自分の子供たちが生活している全体、二十四時間の中で、力強く育っていくというのがこれは大前提だというふうに思っているんです。
 そういう中で、ちょっと私が聞いたところによりますと、フロンティアスクールとかなんとかいうのがありますかね。何か全国、ケーススタディー的に八百校ぐらいを対象にして、なおかつ各県というか、各地域で十八校というふうに私は聞いておるんですけれども、しかも三カ年の予算で五億ぐらいというふうに聞いたんですが、その辺、各現場の先生に聞いてみますと、確かにこれを推し進めるためには、単に学校だけ、学校内でも、一担任というよりも、いわゆる用務員まで含めたというか、授業を今まで持っていなかった人まで含めての全体としてのやはり取り組みというか、学力向上フロンティア事業でございました、失礼しました。そういう取り組みをしなきゃいかぬ、そういうことで既にスタートして二カ月が過ぎております。
 どういう問題があるのかなと思いながら雑談的に聞かせていただいておるんですけれども、私が聞いた学校では、四十五分の授業を四十分に短縮して、そしてなおかつ時限数をふやして、それから週の中でも後半の方の午後からは、いわゆる少人数学級とか、そういうもので取り組んでいる。
 そういう中で、結論から言いますと、非常にみんなやる気が出てきたというんですね、子供さんが。それはそうでしょう、三十六人とか四十人近い学級の中と、半分近く、あるいは学力というか、それが似たような者同士での競い合いというようなものを含めますと、あるいはまた、先生方もきめ細やかに生徒に接することができるということを考えれば、先生たちも、学校を挙げてやるんだという意味合いでの一体感も出てくるし、やる気が出てくる、そしてなおかつ、生徒自身の学力も上がっているんじゃないかというような評価をしている先生もおられます。
 そういうことを考えますと、このフロンティア事業、非常に厳しい予算の中で、三カ年というふうに聞いておりますけれども、文部科学省として、ぜひこれを、徹底的と言ったらちょっと余りにも強過ぎますけれども、推し進めていただきたいなという思いがしますので、ぜひその辺のこと、御説明をお願いいたします。
岸田副大臣 まず最初に完全学校週五日制について御指摘をいただきましたが、学校、地域、家庭が一体となって、社会奉仕体験活動ですとか自然体験活動ですとか、こうした場や機会を設け、そして、結果として子供たちにいわゆる生きる力というものを持ってもらうということ、大変重要だというふうに思っております。
 そして、あわせて学力向上フロンティア事業について御指摘をいただきましたが、新しい学習指導要領のもとで、基礎、基本を徹底した上できめ細かな指導を行う、そして子供たちがみずから考えみずから問題解決をする、こうした確かな学力というものを定着させていく、このこと、大変重要だと認識して、今真剣に取り組んでいるところであります。
 その学力につきましても、本年一月に学びのすすめというものを公表いたしまして、そのねらいを確認するとともに、それぞれの取り組みを促しているところでありますし、また、習熟度に応じた指導が可能になるためにも、教職員定数改善計画、着実に実施をしているところであります。
 その中にあって、学力向上フロンティア事業、全国約八百校のモデル校を選定して実践研究を進めているわけでありますが、こうした実践研究を進めていきながら、成果を確認して、これを全国へ普及させていくというのが、これからやっていかなければいけないことだというふうに思っております。
 確かな学力定着のために、この事業の重要性を改めて確認しながら、ぜひ全国にこの成果が普及できるよう努力をしていきたいと考えております。
林田委員 ありがとうございました。
 それで、担当の先生と申しますか、雑談の中の話ですけれども、ところでこれをやっていくために何が一番困っておるんですかと、何が一番今足らぬのですかと。これはもう、開口一番、二点でございます、要するに予算、経費だということですね。やはり小グループ、グループごとにやるために、それぞれ試験とか何とかやる、あるいはいろいろなものを、教材を整理していくための棚とか含め、本当に現実的な話のようでございます。
 聞くところによると、児童一人当たり三百円ぐらいというふうに私は聞いたんですけれども、そんなものかなと。そんなものでこの学力向上フロンティア事業がやれるなら、これは安いなと思ったんですけれども、それは定かではございませんけれども、まず一点目がやはり予算。
 そして、やはり要員だということですね。きめ細やかにやっていくためには、校長だろうが教頭だろうが、先ほどちょっと言いかけましたけれども、用務員さんもできたら一緒に入ってもらいたいというぐらいの、やはりカリキュラムというか、時間割りをやっておられるようでございます。
 そういう意味合いで、ぜひ、緒についたばかりと思います。しかしながら、やはり選ばれた学校というか、ケーススタディーになる学校、一生懸命、私はそれこそ学校挙げての取り組みを立派にやっておられると思いますし、文科省の方でサポートできるところはぜひサポートのほどをよろしくお願いしたいというふうに思っております。
 それで、最後でございますけれども、ちょっとこれは言いにくい話ですが、言いにくいと言いながら言ってしまうのが私の性格ですけれども、学童保育というのがあっているようでございます。当然年少者、小学校一、二年生、両親の仕事の関係等で保育所に行かざるを得ないという方がおられるようでございますけれども、これも現場で漏れ聞いた話ですけれども、そういう保育所からマイクロバスで迎えに来るまでの間を校門の外で待っておってくれと。要するに、校内で待っておってもらうと、その児童にもしものことがあったとき、学校の責任だ。したがって、校門の外でマイクロバスを待っている、こういう話を聞きまして、何たることだということを思いました。これが全国のうち何割もあるなんてさらさら思いません。全く私の近くの現場での唯一の話ならば幸いなんですけれども、そういう学校もあるということもぜひ文科省のそれぞれの担当の方々、お含みおきいただいて、立派な宝の山でありますこの子供たちの教育に頑張っていただきたいと思います。
 以上で終わります。
河村委員長 平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。
 先日、決算行政監視委員会で質疑をいたしました関連で文部科学にかかわるところの問題を中心に質問したいと思っています。
 問題の課題は、公益法人であります自治体国際化協会という協会が実施をしております政策プログラムで、一年間に約三千人ぐらい各諸外国から若い二十ぐらいの学生さんを国内にお呼びして、それぞれの自治体の教育委員会等々で、各学校の英語の補助教員としての活動プログラムを推進するものでございます。共管としましては、外務省と文部科学省、さらには総務省ということで、主管的セクションでいきますと、総務省のかかわりが中心でございますが、当然、各自治体の教育委員会等々が絡んでおりますから、文部省も大きな役割を担っているものと私は承知しています。
 そういう観点で質問をさせていただきたいと思いますが、先般の質問で、私は、そういう諸外国からお客様を呼ぶのだから、航空運賃として、長い間ビジネスクラスでもって日本国内に呼んでおった、昨今大変厳しくなりましたから、Y1という通常のチケットでお呼びをする、これについても私は非常に問題だとは思っておりますが、では仕事が終えられて、一年もしくは二年の仕事が終えられて、帰りの切符、チケットに対してはどういう取り扱いをされているのか。まず総務省にお聞きしたいと思います。
板倉政府参考人 お答えいたします。
 JET参加者の帰国旅費の問題でございますけれども、これは受け入れました各地方公共団体におきまして、参加者の都合に合わせて、航空券の手配、または現金の支給を行っているということでございます。
平野委員 お迎えするときはビジネスシートにしてください、さらには、近年では、Y1という高い料金のチケットで諸外国から日本にお迎えをする、帰りは各自治体任せで帰してくださいと。こういうことなんですが、各自治体はそれぞれ財政が非常に厳しいものですから、非常に安いチケットでもってそれぞれの国に帰っていただいている、こういう実態なんですが、行きはよいよい帰りは怖いじゃないですが、迎えるときは非常に高いお客様的なチケットでお迎えをして、帰りは安いチケットで帰ろうがそれは知らないということなんですか。
板倉政府参考人 お迎えをいたしますときは、確かに、この間私申しましたとおり、お客様としてというような意味と同時に、来日の場合に、オリエンテーションに全体として参加をしていただくということで、大量の参加者に指定した日に来ていただくというような事情もございまして、そういうような取り扱いにいたしておるわけでございますけれども、帰国時は、それぞれの事情によりましてばらばらになります。
 また、来たときに比べまして、一年以上日本に滞在をしているということで、事情にも通じてくるというようなこともあろうかと思います。そういう制約がないということで、より安価なものを使用できるというふうに理解をしております。
平野委員 今どき、このワールドカップだって何万人という人が来るんですよ。たかが三千人来るのに、ビジネスでないとだめであるとか、こんな発想は時代錯誤も甚だしいんですよ。これが一つ。
 今もお答えをいただきましたけれども、では、帰りは自治体でお任せしますよとは言いながら、JET参加者に対する特別価格ということをあっせんしているじゃないですか。このあっせんしているのが、通常の自治体が券を求めたときの価格よりさらに安いものであったら私は納得しますが、自治体が発給する、あるいは旅行社から求める安い切符よりもより高い特別あっせん価格でもって、JET特別価格と称してチケットをあっせんしているんですよ。そうすると、私は、これもまた、業界と結託をして差益を確保するというスキームを使っているんではないかという疑念が起こって仕方がないんです。
 第一義に、私は、二十ぐらいの子供さんですから、通常の安いチケットで安全に来てもらったらいい。お客様だから、十何年間ビジネスシートで来た、昨今は世間の目があるし、高いからYに変えたと。もっと価格を落としてでもその方に失礼でないチケットがあるんではないか、私はこう思います。
 加えて、予算措置は定額でしておって、切符は非常に低額の安い切符を買って差益を抜いておる、この疑惑を、私、この間、決算で指摘したところであります。この点が非常に問題がある、一貫していない、私、このことをまず指摘をしておきたいと思います。
 それでは、このJETプログラムの研修ということでございますので、きょうは文部科学委員会でございますから、文部省も一つの大きな役割を担っておるわけですが、私の理解するところにおきますと、たかだか来られた人に対するオリエンテーション、また自治体の国際協会に対する補助的な、補完役割にしか関与していないというふうに私は思っていますが、それで現実、そうなんですか。
遠山国務大臣 JETプログラムは、私どもにとりましても大変有効なプログラムであると思っておりまして、私どもとしましては、総務省、それから外務省とも連携をとりながら、これが有効に活用できますようにいろいろ努力をしているところでございます。毎年、三千人ぐらい来てくれて、これが日本の学校に配置されて、そして子供たちに国際理解あるいは言葉の問題でいろいろと教えを受けたり、日本の文化を知ってもらったりという、大変いいプログラムだと思っております。
 我が省といたしましては、そのALT、外国語指導助手に対する研修、指導、カウンセリングを担当しております。具体的には、ALTに対する研修としまして、今おっしゃいました来日直後のオリエンテーション、それから再契約予定の人に対する研修も実施いたしております。また、各都道府県教育委員会と共催で、中間期研修も実施しているところでございます。さらに、効果的な研修の実施を図ります観点から、各都道府県教育委員会が独自に実施している研修との連携協力も進めているところでございます。
 個々のALTに対する勤務に関する指導は、各契約団体であります地方公共団体が行うべきものでございますけれども、我が省としましても、各都道府県の指導主事を招集いたしまして、英語指導助手運営連絡協議会などを開催して、ALTの教育活動、活用のあり方、それから研修やカウンセリングの充実などについて指導助言を行っております。
 外国語教育につきましては、コミュニケーション能力の育成を一層重視いたします観点から、ALTの活用は大変重要と思っておりまして、こうしたJETプログラムの一層の充実に引き続き努力をしたいと考えてございます。
平野委員 本来の趣旨、目的について、私は否定するものでは全くありません。ただ、そういうスキームの中で、本当に疑問、疑惑が起こるようなスキームになっているのが私、大問題であります。
 ただ、文部省も共管として一つの大きな役割を担っているんですが、現実は、実態は、各都道府県の教育委員会に任せっきりであります。この全体の三千人がどういう補助授業で教壇に立って、どんな実態にあるかというのはだれがチェックをされているのでしょうか。
矢野政府参考人 個々のALTの勤務実態につきましては、これは契約団体や教育委員会が基本的には管理すべきものというふうに私どもは考えているわけでございますが、ただ、私どもの、文部科学省の役割も当然あるわけでございまして、私どもといたしましては、このALTの効果的な活用を図る、そういう観点から、都道府県・指定都市教育委員会を通じまして、ALTの持ち時間数あるいは指導時間数等について調査を行いました。その調査に基づきまして、より効果的な活用を図るという観点から、必要な指導あるいは助言等を行っているところでございます。
平野委員 今局長、答弁されましたが、調査をした結果、どうでしたか。
矢野政府参考人 今手元に詳細な調査結果を持っておりませんけれども、十二年度のALT一人当たりの持ち時間数を見てみますと、各都道府県ごとに差はございますけれども、大体一週当たり十時間から二十時間の範囲内で指導に当たっている状況でございます。
平野委員 それはまだいい方ですね。私、二、三、調べましたけれども、物すごく、実態的に言いますと、通常の教員さんとか云々で働いている持ち時間でいきますと、月大体八十時間ぐらいあるんですな。私、調べて、うそではありませんよ、調べた事実に基づいて、新聞情報で言っておるんじゃありませんで、現実に調べますと、ほとんどやっていない。何でこんなに穴があいているんだ、今、年休をとっています、どこかへ旅行へ行っています、海外へ、香港へ行っています、こういう実態であって、現実に私、教育委員会、受けてやっておりますが、大変なこれは迷惑になっているというところもあるように聞いています。
 したがって、文部省は、それは基本的には、契約しているのは地方自治体、教育委員会だから、そこが管理すべきだと言いながらも、このスキームをつくっているのは文部省と総務省と外務省であります。したがって、やはりいいことを、目的を、もっと効果的にせしめるためのチェックを私改めて文部省にお願いをしたいのでありますが、全三千人の授業の勤務実態を出してもらいたい、このようにお願いをしたいと思いますが、いかがですか。
矢野政府参考人 今の御指摘につきまして、繰り返しでございますけれども、個々のALTについての勤務の管理は、それは採用している自治体が基本的に責任を持って負うべきものでございます。そういう状況の中で、私どもは、この事業がより効果的に行える、そういう観点から必要な調査を行い、またそれに基づいて必要な指導助言を行っているわけでございますので、私どもの立場からいいますと、今先生の御提言について、直ちにやりますということを申し上げるわけにまいりませんけれども、そのことにつきましては、総務省とも御相談をして対応いたしたいと思います。
平野委員 これは国費、いわゆる税金を使ってやっているスキームなんですよ。やはりそれは、先ほど大臣おっしゃったように国際交流である、非常に大事なことだと僕は思っていますよ。それだけに、本当に効果のある授業補助教員としてやっていただいておるのであれば私は理解をしますが、実態を二、三、私、自治体で確認したところ、月二十時間にもいかない。その間何をしているんだ、どこかへ行っています。ではだれが責任を持ってその方々の面倒と管理をしているのか、これは教育委員会だ。教育委員会だって、これは地方交付税で来ますから適当に扱っているんですよ。みずからの銭で、市民のお金で払っているからしっかりしなきゃだめだという発想ではないですよ。かかった費用は交付税で算入されるから、まあ適当にやっておこうか、害にはならないわ、こんなことだったら来てもらっておる人にも失礼だと思うんですね。
 したがって、文部科学省としては、毎年三千人も来るんですから、やはり有意義な認識をその人にも持って帰ってもらいたい、あそこ、日本に行けばいいぞ、楽で過ごせるぞ、こんな発想でもし来てもらおうとしたら大問題になると私は思いますので、改めて、主体は、それは地方自治体、教育委員会かもわかりませんが、いいところだけ地方分権なんて言わないで、こんなときはちゃんとやはり文部省がチェックをする、こういう僕は発想は持っていただきたいというふうに思うんです。
 加えて、二十の人に一人三十万円かけているんですよ、給料として。二十ぐらいの学生さんに三十万円払うんですよ。総務省は、お客様で来てもらうからそれぐらい手厚くしないと。日本国民の今の生活感から見たら、二十の人に三十万も払ってやる、こんな発想が今の時代に合うのか。ここはどうなんですか。これは文科省じゃないと思いますが、総務省さん、どうです。
板倉政府参考人 お答えを申し上げます。
 一点だけ、大変恐縮でございますけれども、このJETの参加者は二十の方というのはほとんどいない、私の理解では、二十代、大体、大学を卒業して就職をする前のそういう人たちが参加をしている人が多いというような感じで理解をしておりますので、一言。(発言する者あり)現役の方はほとんどいないと思います。
 ということで、三十万円ということでございますが、これはボーナスですとか、当然退職金もございません。年収はこの十二倍で三百六十万円程度ということになるわけでございます。制度発足以来、変更はされておりません。
 当時の同種の事業の水準を参考としつつ、外国青年が日本で生活をするのに必要な金額であって、外国での参加者募集に当たりまして、JETプログラムの参加者にふさわしい優秀な青年の参加を期待できる水準、そういう考え方で設定をされたというふうに承知をしております。その後の十数年間の実績ですとか、外国人が外国で生活をするのには通常以上のコストがかかるという一般的な事柄を考えますと、現在でも妥当な報酬の水準ではないかというふうに私どもは思っております。
平野委員 全く認識が違いますね。これに加えて住宅手当、住宅の敷金、電子レンジ等々、もろもろ全部各自治体が支給しているんですよ、実態的に言えば。今私が言ったのは手取りですよ、手取りが三十万ということですよ。それに附帯するものがもっとかかっているんですよ。
 自治体も、自分の腹が痛まないから、まあいいわ、こうしておいたら、ここに来ている学生も、日本に行ってそういう補助教員で勤めた、これが箔がついて帰国したときに非常に重宝がられている。こんな意味で、中身は別にして、日本に来たら戻ったときに箔がつくという、いわゆる本来の、もともとの、原点の趣旨から随分昨今は逸脱をしているのじゃないか。
 したがって、目的は大事なことだと思いますが、日本はもっと趣旨に合ったスキームにやはり見直してもらいたいと思いますし、総務省、私は、きょう文科省ですから、文科省の立場でぜひ厳しいチェックをしていただきたいと思いますし、こんな公益法人なんか私はなくしたらいいと思っていますよ。
 それぞれ直接、地方自治体が旅行者とやって選んでもいいし、今外国人、いっぱい日本にいるじゃないですか。わざわざ諸外国から呼ばなくても、英語の補助教員であれば国内におられる外国人から来てもらったらもっとコストが安くつくわけですよ。そうしなければ、これだけ大変厳しい財政事情が悪い中にも増して、お役人がやっておること、財団法人がやっていることだから許されるのかという国民の目線に対してどうこたえるのかという問題提起を私はきょうはして、時間が参りましたので、私の質問を終えたいと思います。
 ありがとうございました。
河村委員長 藤村修君。
藤村委員 民主党の藤村修でございます。
 四十分の質問時間をいただきまして、まず冒頭は、林田委員からも先ほど同趣旨の質問がありましたが、これだけ期待し、そして世界の祭典ということで楽しみにしておりましたワールドカップがスタートをして、昨日は二対二ということでまずまずの日本もスタートをしたなと思いつつも、先ほどのチケット問題というのは、これはなかなか深刻な問題かなと思っております。
 御承知のように、日本はどうしてもオリンピックというのがどうもスポーツの世界の祭典というふうにイメージは強いんですが、おおむね、規模から、あるいは見る人の数から、あるいはかけるお金の額からいうと、ワールドカップ、サッカー一種目でありますが、世界最大のスポーツの祭典と言えると思います。そういう意味では、大変期待が高まり、日本においてもこの十年近くJリーグという形で盛り上げてこられた。そして、いよいよ、ひょっとしたら我々が生きている間にはもうないかもしれないこの日本での、それも日韓の共同開催、非常にすばらしい祭典がスタートした。そんな中で、うんっと思ったのは、確かにあのブロックで相当大きく席があいていたことであります。
 きょう時点で、これはある新聞社が集計したところを見ますと、札幌、新潟、茨城、埼玉と七試合、きのうまでありました。いわゆる定員に比して入場者数がどうであったかという調査をして、それで比率を出しておりますが、札幌で二試合で、これは七六・五%、二つ目が七三・八%。新潟の試合が、最初が七九・六、次が七六・二。茨城はまだ一試合しかやっておりません。ここは八一・五%。埼玉の試合が、八二・八%、それからきのうの日本戦が八六・七%。このぐらいの比率であります。
 先ほど遠山大臣もおっしゃって、それなりのスペースが必要なことはよくわかります。例えばきのうの試合、埼玉会場でいうと、定員六万三千七百人です。これに比しての入場者数のパーセントであります。ただ、この定員に加えまだそういうスペースがあるんだということではないんですね。(遠山国務大臣「違います」と呼ぶ)定員の中で今のスペースがあると。四年前のフランス大会で、たしか各試合ごとの平均が四千人ぐらいの空席を大体確保したそうであります。ですから、おおむね数%から七、八%の枠で残っていればいいんじゃないかというときに、そうするとやはり九〇%ぐらいまで確保したいというところが、まだもうちょっとの努力ではないかな、そのように思います。
 そういう意味で、早速にいろいろな努力をしていただいていることを評価しつつも、今からまだ二十数試合ございます。きょうまでの例でいくと、余裕を除いて、つまり確保すべきスペースを除いてまだやはり三千とか四千足りなかった点は、今の、過去のこの七試合の範囲では言えるわけであります。そうすると、今後二十何試合で、もしそのままいってしまえば、十万人ぐらいの人が、本来行けるのに行けなくなってしまう可能性が残るということでありますので、この点、今後の努力について、どういうふうに具体的にされてきたか、それから今後どういうふうにしたいか、簡単に述べていただきたいと思います。
遠山国務大臣 お気持ちは本当に私も同感でございますし、鋭意、今やっておりますが、どうも誤解が多くて、しかも、どうもそういう説明についてなかなか報道されないということがございますので、せっかく発言の機会を与えられましたので。
 例えば、昨日の埼玉スタジアムのことについて申し上げますと、収容人員は六万三千七百席と言われているわけでございますけれども、JAWOCが行いました記者発表によりますと、実際に観客に販売可能な席数といいますのは、その人数の中から、メディアやテレビカメラ用に要するスペース、約四千席分は使うことができません。また、警備上必要な席、センター分離フェンスに要するスペース、要するに、四つのコーナーがございますが、あそこはかなりの幅で、最初からここは人を入れないということになってございまして、これを除きました五万六千七百席であるということでございます。同日公表されました最終確定入場者数は五万五千九百七十五人でございまして、空席は約七百席ということでございまして、先ほどの報道の八二%でしたか、そういう数値とは全く違っております。この点は、ぜひとも御理解をいただきたいと思います。
 そういう座席の部分は埋めることができないわけでございますけれども、しかし、本来、チケットを売って人が埋まるべき場所については、できるだけこれは埋めるべきでございまして、その点について、今、私どもとしてもさまざまな努力をしているところでございます。
 とりあえず、電話受け付けというようなことは、これはFIFAも認めなかったのですが、大変交渉いたしまして、電話受け付けについても、こちらからも申し込んで、可能にしておりまして、きょう、あす分については、それも行って、できるだけ、FIFAないしバイロム社が押さえている、ここは売れてないとわかったところについては、日本側が電話予約も受け付けて販売するようにしております。
 これから先、まだ幾試合も残っておりますので、そういったものか、あるいはもっと何かいい方法があればということで、今、鋭意努力をしているところでございまして、私どもとしては、最後までそういう努力をしてまいりたいと思っているところでございます。
藤村委員 ですから、報道が、ややそういう否定的な部分で躍っていては困るというので、正確に今言っていただいたわけであります。
 それにしても、きのうの席はそれなりに埋まったと思います、日本戦ですから。ただ、今後の試合が二十数試合の中で、日本でやる試合で、どこかへとにかく行きたいという人はまだまだ潜在的にあるわけで、行きたい人の希望がかなえられるという努力が必要でありますし、今ちょっとおっしゃったバイロム社云々でありますが、これはまた終わってからいろいろ問題にしないといけないんですが、今はとりあえず席を埋めていく。
 例えば、外交努力というのはあるかと思います。日本国政府が、すなわち、遠山文部科学大臣が政府関係者としてはJAWOCの理事に入っておられるし、そういう意味では、日本政府挙げてやるとなれば、外交努力、これはできるかできないかわかりませんが、例えば、本当にバイロム社なるところは英国の、とりあえず日本にはあそこに大使館がある。そこからやはり人を、この件で事情聴取に行き、どれだけ席があるんですかと、確保してくるなど、これは、FIFAがあるし、それぞれの協会があるのでなかなか難しいかもしれませんが、一つのケースとして、例として申し上げれば、そういうあらゆる徹底した努力を示してほしい。では、日本でそれを責任持ってやるのはというと、やはり遠山文部科学大臣のもとで、スポーツ振興でありますし、やっていかねばならないだろう、そのことを申し上げたいと思います。
 そういう意味では、私は、ひとつ委員長に提案申し上げたいと思いますが、委員会としても、委員長もきのう行っていただきました、我々、いわゆるスポーツ振興投票というもの、サッカーくじ、一緒に努力をさせていただいた、そういう関係でも、とにかく成功させたいし、それから、行きたい人で、空席があれば一つでも埋めていきたい、そんな思いで、この委員会としても、政府に対して申し入れをしていただいたらどうかと思うのですが、いかがでございましょう。
河村委員長 今、藤村君の方からそういう申し出がございました。理事会にお諮りし、その方向で検討いたしたい、このように思います。
藤村委員 それでは、きょうの本題の問題は、私は昔から、実は自分も経験者の一人として、不思議に思っていたというか、何とかならないかと思っていたケースでございます。
 私立大学に合格をし、そして、さらに国立大学に行きたくて、それも合格したら、私大の入学金等々、大体お金を取られておりまして、我々、当時は、滑りどめとか滑りどめ料とか言っていた。私は団塊の世代でございまして、大変たくさんの受験者がいて、大抵の人は、国公立に行きたいという人もやはり私学を受けて、ある意味じゃ滑りどめをつけておく。その際に、私自身も、自分の経験からいえば、某関西の私立大学工学部に合格をし、入学金等、それから工学部ですので施設費等も払わされたような記憶をしておりますが、それは全く返ってこなかった。
 その当時は、むしろ、それだけのたくさんの受験者の中で受かったんだからというふうな、やや、あきらめもあったんだろうと思いますが、私大に受かって、国立大学に受かって、そして結果的にはその私立大学に入学しない者から、その私立大学が、学生納付金等を徴収して、これを全くきょうまで返還してこなかった。
 このことについて、文部科学省としては、基本的にどのようにお考えでございましょうか。
岸田副大臣 私立大学の入学手続時における学生納付金の取り扱いにつきましては、昭和五十年九月に通知を発出し、納付する費用の性格にかんがみ、授業を受けず、施設設備を利用しない者から授業料や施設設備費を徴収することは国民の納得を得られないことから、授業料等については、合格発表後短期間に納入させることは避ける等の取り扱いを各私立大学に求めたところであります。
 このように、授業料等の納付期限が早期に設定されたり、入学を辞退しても返還されないようなことは、今申しました昭和五十年の通知の趣旨からしても適切ではないというふうに考えております。
 ただ、その納付金の中で、例えば入学料というような、入学手続、準備のための諸経費に要する手数料、それと同時に、入学の意思を確認するための予約金的な性格を持っているもの、ないしは一種の手付金的な性格を有するもの、この入学料というようなものにつきましては、返還しないとすることも合理性があるというふうに考えております。
藤村委員 大分たくさん答えていただきましたが、今の中で、ちょっと確認ですけれども、返還しないことは適切でないという文言がありましたね。
岸田副大臣 そのとおりでございます。
藤村委員 それは、昭和五十年のときに発出された通達でありました。実は、これは御承知のとおりでありますが、昨年四月一日から、新たな法律で、消費者契約法というのが施行をされた。それは、去年、平成十三年四月一日から施行ですよ。去年の四月からこの消費者契約法というのが施行をされて、それで事態がちょっと変わったと思うのですね。
 これの中身、私は今細々申しませんが、私立大学と、そこに入る学生との、入試、そして合格通知を出し、それから入学金等を払うことの契約がいわゆる在学契約になるという見方が一般的であると思いますが、この在学契約という見方として、消費者契約法というのはこの私大の入学に今後かかわってくると私は考えますが、現時点での文部科学省の基本的な考えを教えていただきたいと思います。
工藤政府参考人 今のお尋ねにお答えする前に、先生の方から、私立大学と国立大学のかけ持ちの例でお話がございましたけれども、これは別にそういう類型だけじゃございませんで、A私立大学、B私立大学、あるいはA私立大学の中でA学部、B学部とか、いろいろ、受験生それぞれの志望がございますので、多数の受験をした場合の取り扱いは皆同じだと私どもは受け取ってございます。
 そういう中で、今の消費者契約法のお話でございますけれども、御存じのように、同法の二条におきましては、かいつまんで申しますと、消費者とは個人であり、事業者とは法人その他の団体であると規定した上で、「「消費者契約」とは、消費者と事業者との間で締結される契約をいう。」としてございます。
 私どもの方が有権解釈をする立場にはないのでございますけれども、所管省庁ともいろいろ御相談しながら、私ども理解しておりますところでは、個人である学生と、それから法人である学校法人との間で締結された契約でございますので、この法律による消費者契約に該当するのではないかと理解してございます。
藤村委員 すなわち、昨年四月一日以降、消費者契約法が施行されて以来、事態は少し変化した。昭和五十年時点でも文部科学省通達、当時、文部省が出されておって、基本的に、全く返さないのはさっき不適切であるというお考えは示されていたけれども、昨年の四月以降はそれが法律的にも、今の消費者契約法においていわゆる在学契約というみなしができるわけですから、さらに事態は大きく変わったと思います。
 そこで、具体的な話として、実は、私、きょう聞きたいのは、これは大阪の弁護士の皆さんが、ことしの四月から少し動きをされた。ぼったくり入学金・授業料一一〇番というタイトルで、ぼったくりという言葉はどっちかというと大阪弁でありまして、大体ニュアンスはおわかりいただけると思います。まさに、行かない私立大学に、しかし、滑りどめの意味を持って、入学金や、場合によっては授業料や施設費や学友会費など、いろいろお金を払い込んでいる、結果、行かなかった、全然返してくれない、これこそぼったくりではないかという大阪流発想ではございます。
 こういうぼったくり入学金・授業料一一〇番というのを四月六日の土曜日に一日実施され、電話受け付けをされた、一一〇番ですから。そうすると、四百人ぐらいの父兄、保護者、学生たちから問い合わせが来て、それぞれに訴えをされた。一つの極端な例でいうと、私立大学医学部に合格し入学金などで八百万円を支払ったが、そして、結果、入学を辞退しても一銭も返ってこない、これで本当にいいんでしょうか、そういう一つのケースであります。そういうケースが相当数、四百、それぞれ一覧表になっておりまして、具体例があります、全部は申しませんが。
 三十年以上前、自分もそういう経験があるものですから、これは法律も新たにできたことですから、何とかならないのかな、そういう思いで、私立大学の入学手続において、いわゆる学生納付金の取り扱いについて、これは五十年通知があり、そして、昨年の四月以降、こういう法律ができた、施行された中で、文部科学省は何か対応されているかどうか、お聞かせいただきたいと思います。
工藤政府参考人 さきに副大臣の方から御答弁申し上げました昭和五十年の通知があるのでございますが、当時は、私ども、法令に基づくというよりは、社会情勢としていろいろ問題の事案があったものでございますので、私立大学等に善処を求めたといいますか、御配慮を含めた検討方をお願い申し上げたわけでございますが、今御指摘のような消費者保護の法制が整備されてきておりますので、新たな消費者保護の観点から、関係者はさらに身を引き締めて運用をしていただく必要があるものと理解してございます。
 そういう中で、本年、私ども、大学の入学者の選抜について入試ミスが相次いだり、あるいは、当委員会でもさきに御論議ございましたけれども、留学生の安易な受け入れなどについても注意する事案が出てまいりましたので、それらを含めまして局長通知を発したところでございまして、その中で、今の学生納付金の取り扱いについて改めて御配慮をお願いしているという状況でございます。
藤村委員 今、局長お答えいただいたように、これは五月十七日付で、平成十五年度大学入学者選抜実施要項についてということで通知をされて、今はブロックごとにまた説明会もされているふうに聞いております。
 その中で、今の件については、いわゆる昭和五十年の通知を参照し、推薦入学等も含め少なくとも入学料以外の学生納付金を納入する期限について、合格発表後短期間内に納入されるような取り扱いは避ける等の配慮をする、こういうふうに新たに書き加えられた。
 この際、推薦入学等も含めというところも新たに書き加えられたようでありますが、これはどういう理由、事情からでございましょうか。
工藤政府参考人 昭和五十年当時に比べまして、各大学の入学者選抜、随分いろいろな工夫がなされてきてございます。特に、今の御指摘の点について申し上げますと、推薦入学について、単に筆記試験だけではなくて、多様な入試選抜の一環としての推薦入学というのが大変広がってまいりましたのは、ある意味ではいいことなんでございますけれども、他方で、ことし事例が明らかになりましたのは、大体前年の十月、十一月ごろに推薦入学で合格を決めて、それで学生納付金の納付期限を一月だとかかなり早期に設定している大学が見受けられまして、学生等からのお話もあったものでございますから、五十年当時の通知の延長ではありますけれども、推薦入学についても同じような考えで、余り早期に学生からお金をいただくのはいかがでしょうかねということで、注意喚起したつもりでございます。
藤村委員 推薦入学は相当数ふえていますよね。五十年のときからいえば、もう本当に、全く違う、新たな入学方式といっていいと思うんですが、それを加えていただいたということではございます。しかし、ベースはやはり昭和五十年通知がベースである。
 その中で、その通知には、入学料以外の学生納付金というふうな言い方になっております。入学料以外の学生納付金というのは、一体、何と何のこと、ちょっと例示をいただきたいと思うんです。
工藤政府参考人 これは大学によってまちまちでございますけれども、よく御承知のところでいえば、入学金のほかには、授業料、それから施設整備費という経費をちょうだいしている私立大学が多うございますけれども、そのほかに、例えば、校友会費でございますとか、医学、歯学の場合に教育維持費でございますとか、図書の充実費等々、大変多様な経費がそれぞれの大学で工夫されているところでございます。
藤村委員 だから、五十年の通知のときには、入学金以外のと言われて、今のおっしゃったような、授業料や施設整備費やら校友会費やら等、これらを、当該大学の授業を受けない者から授業料を徴収し、また当該大学の施設設備を利用しない者から施設設備費等を徴収する結果となることは容易に国民の納得を得られないとして、それを昭和五十年以来言ってこられたわけですね。言ってこられたことは、それはそれで非常に筋が通っていると思います。
 そして、去年の四月一日以降、消費者契約法ができた。ここで、私、新たなやはり事態だと思うんですが、消費者契約法九条一によれば、消費者契約の解除に伴う損害賠償額の予定、または違約金を定める条項中、ちょっとややこしいんですが、要は、大学の学則とか入試要項などで、つまり、一たん納めた入学金等、授業料等返しません、多分そのことを言っているんだと思います。そういうことは、事業者側に生ずべき平均的な損害額を超えるものは、その超える部分につき無効となる。これは法で決められたわけです。
 すると、今の判断でいうと、入学金以外はとされているところは、つまり、入学金はまあいいとして、それ以外の部分というのは、それを返さないということは無効である、そう考えてよろしいんですか。
工藤政府参考人 消費者契約法は、私人間の取引の指針といいますか、ルールを律する法律でございまして、先ほど申したように、大学に学生が入学を申し込み、それを認められ、在学契約が成立するというのは、同法に言う消費者契約の対象だとは思われますけれども、個々具体のケースで、どういう場合が今御指摘のような無効とすべきもの、あるいは返還すべきものであるかということにつきましては、個々具体に実際の裁判例などを積み重ねながら確定していくべき事柄ではないかと私どもは存じてございます。
 おっしゃいますように、私どもの基本は、授業を受けないのに授業料を徴収する、あるいは施設を利用しないのに施設利用料を徴収する、それは基本的におかしいではないか、おかしいことはおかしいですねということは申し上げているのでございますが、ただ、実際に大学の御都合もございまして、大学は合格者を発表いたしますが、実際入学手続をいたしませんと本当に合格してくださるのかどうかわからない、それが確定しませんと補欠入学の手続もとれないということなどもあって、限られた時間でどう相対で処理されるのかというのは個々具体のケースで違う場合があろうかと思います。
 ですから、一般論で、これが無効である、返還すべきであると一律になかなか言いにくいところがあるのでございますが、基本は先ほど申したとおりでございます。
藤村委員 今、でもはっきりおっしゃったのは、授業を受けない者から授業料を取ること、あるいは施設設備を利用しない者から施設設備費を取ることは、これはやはりおかしいということであれば、当然のことですよ、非常に正しいと思う。それならば、さっきの五十年通知で書かれているいわゆる入学金以外の部分というのは、やはり行かなかった人に対しては返還すべきである、ここまでがやはり言うべきことではないかなと私は思うんです。
 それは、去年の四月一日、消費者契約法というのが施行されて以来のことですから、となれば、もちろん今年度のこの三月、四月のこともありますが、去年の四月一日から施行ですから、厳密に言うと、去年の四月一日以降そのことがもし請求されれば、やはりそれは返還すべきではないかと考えますが、いかがですか。
工藤政府参考人 先生のお気持ち、よくわかりますし、私も同じ気持ちでいるんですけれども、先ほど申しましたように、民法とかこういう消費者契約法というのは私人間の取引を律する法律でございまして、行政庁の立場で個々具体のケースについてああだこうだと言うのは、なかなか立場上申し上げにくいものなのでございます。
 ですから、先ほどありました、大阪の弁護士さんたちがある動きをしていらっしゃるという、そのこれからの動きに私どもある意味で期待しておりまして、そのあたりの指針が司法当局によって示され、一定の規範が成立することを期待しているところでございます。
藤村委員 去年の四月一日施行後、この入学金のケースでは一度もまだ提訴もされておりませんので、確かに司法判断というのはあくまで裁判所でありますから、さっき局長おっしゃったとおりであります。授業を受けない人から授業料を取ること、大学の施設設備を使わない人から施設設備費を取ることはやはりおかしい、おかしいことはおかしい、そのとおり、気持ちはそうだとおっしゃったので、それを多とし、もう一つ。
 これは私、実は学生を毎年ブラジルに三十数名一年間派遣している、こういう事業を行っております。それで、いつも毎年いろいろな壁にぶつかるのが、大学を一年休学してブラジルという国に一年間研修に出すんですが、この際に、私大の中に、すべてとは申しません、多くの私立大学の場合は、基本的に授業料を一年分払えと言うんですね。これは、さっきの理屈からいうとどうでしょう。この点については多分過去指導されたこともないと思うんですが、これもやはり国民の納得が得られないと考えますけれども、いかがでしょうか。
岸田副大臣 休学についての御質問ですが、私立大学に在学中の学生が休学する際の授業料等の取り扱いにつきましては、これは一般論ではありますが、授業料等を徴収するというような取り扱いは、特別な理由がない場合には望ましくはないと考えております。
 なお、国立大学については休学期間の授業料は免除されているという実態もございます。
藤村委員 今この時代、学生時代に大学を休学して海外の大学に留学する、あるいは研修に出る、あるいは一年間本当に放浪の旅に出るなどなどは決して悪いことじゃないと思うのです。むしろ、そういうことは高等教育、大学教育の中で私は勧めている方で、だからこそ事業も行っているわけであります。ですから、このケースは相当ふえてまいります。ぜひとも今のお考えのとおりに、一度大学関係者には通知していただきたいなと思っているところでございます。
 そこで、もう一つ具体に、さっきのちょっと話に戻りますが、先ほど来入学金以外のとずっと言ってまいりました。しかし、この入学金についても、丸々、行かないのに、つまり入学しないのに入学金を取ることが本当に妥当なのか。
 入学金については、先ほどちょっと定義されましたので、もう聞きませんけれども、入学金についても、この消費者契約法施行後においては、平均的な損害の額を超える部分については無効になるのではないか。だから、その平均的な損害の額というのはそれぞれ、やはり今から司法判断もあるのでしょうけれども、入学金も丸ごと納めたものは一切返さないということは、やはりこれは問題になってくるのではないかと思います。
 かつ、その後入学辞退をすることが割に十分に早くに大学に通知されれば、つまり大学は四月一日から入学させるわけでしょう。そうすると、そのずっと一カ月も前に辞退をしている、さっきの例でいうと、推薦入学だと一月末ごろにはもうお金を納めているわけですね。しかし、その他の大学に受かって、二月末には、納めたけれども行きませんというふうなケース、つまり期間が十分にあるケースであれば、大学側だって当然辞退した人数だけ補欠者を繰り入れることはできるわけでありまして、そうすると、平均的な損害額というのはほんのわずかになってくるのではないか、そういう意味で、入学金についてもこれはやはり返還すべきではないか。全額とは申しませんが、やはり平均的な損害額を控除した部分というのは返還すべきではないかと考えますが、いかがでしょう。
工藤政府参考人 これは先ほど副大臣の方から御答弁申し上げましたように、入学金は授業料その他と若干違う性格を帯びている部分がございます。もちろんその額の多寡等にもよりますけれども、他方で、先ほど申しましたように、大学の側からすれば、合格発表をして、入学してくれるのを期待しているところが、残念ながら、直前になって辞退をされる、そうすると、補欠でいい学生を確保しようと思ったのがほかの方にとられてしまうということになりますと、大学の運営、教育研究体制の全体の検討の中で、どれぐらいの金銭的な損害と言うかどうかは別としまして、大学の考え方や御主張もあるんだろうと思いまして、そこの部分、具体的にどういう額までがリーズナブルで、どこまでがおかしいのかということも含めて、これも実は私ども、基本的には先ほどのように、授業料等と性格が違うと思いますけれども、個々具体のケースについて、個々の消費者契約法の適用上どういう判断を司法当局が下されるのか、今後とも注視してまいりたいと思っております。
藤村委員 ちょっと詰めて、さっき伺いましたが、これでよろしいんですかね。入学金の性格というのは、大学からいって、入学の手続、それから準備の諸経費に要する手数料、さらにその本人の入学の意思を確認するための予約金的性格を持っている、そういう解釈をしているんですが、それでほぼ間違いないですか。
工藤政府参考人 私ども、国立大学、国立学校の場合も、入学金あるいは授業料というのは徴収してございますので、その場合の入学金としましては、入学手続、準備に必要な諸経費のほかに、今おっしゃいましたような、予約金的な性格あるいは手付金的な性格を帯びているものと理解してございます。
藤村委員 そうすると、入学金、国立大学の場合は二十数万円取られますよね。そうすると、やはりこれもひょっとして、司法が判断することでしょうが、今の幾つかの性格でそれぞれやはり金額を積み上げてきたものであると。となれば、入学の手続、準備の諸経費に要する費用あるいは手数料、その部分がこのぐらいである、それからいわば予約金的性格のものがこの部分であるというふうな分け方になってきたときに、その損害というのは、やはりそれぞれ個別に算定されてくる可能性は出てきますよね。これは国立大学の場合ですよ。それはありますね。では、うんとおっしゃったんで、結構であります。
 ですから、この消費者契約法ができた、去年の四月一日施行されたことは、今の大学の入学金、そして入学金以外の学生納付金などに相当大きな影響を及ぼすということが現実味を帯びてまいりましたし、事実、これは大阪の弁護士会の皆さんたちが、多分四百件ぐらいの要望を聞いて、その中の本当に問題が大きいものについては、多分百数十件の提訴をされるというふうにも聞いておりますので、これをよく見守りながら、やはり文部科学省としては、本当に常識とか国民の納得が得られる考え方を通していっていただきたいと思います。
 最後に一つだけ。具体的にこの件で、現在国立大学の試験日程が今、通知を出した昭和五十年当時というのは、まだ一期校とか二期校とかいう制度がございまして、その後二段階ぐらい制度が変わってきて、現制度でいうと、いわゆる前期と後期、その前期合格者が遅くとも大体三月十日ごろまでに発表されます。それから、後期の試験を受けた人についても、遅くとも多分三月二十四日ごろにはいわば合否が決まっている。
 となりますと、五十年通知にもありますし、あるいは今回の通知にもあるんでしょうか、入学金以外の学生納付金を納入する期限について、合格発表後、短期間内に納入させるような取り扱いは避ける等の配慮をすることと、これは私大に対してですね。
 例えば、今の話でいうと、合格発表後、短期間内に納入させるような取り扱いは避けるということで、それでその後に、五十年通知に、例えば、入学式の日から逆算しておおむね二週間前の日以降に徴収という言い方があります。それがまだ残っていると思います。となると、例えば、その私立大学は四月の五日に入学式だ。さかのぼって二週間といいますと、ちょうど三月の中旬ぐらいになって、前期試験の合否が非常にどっちかなというところか、あるいは後期試験についてはまだ合否が出ていないなというところで納めねばならないというのは、これは五十年通知でこう書いてあるわけですから、今、その五十年当時からいえば、試験の制度は相当大きく変わっていますので、この今の二週間前の日以降に云々というところは、少し言いかえした方がいいんじゃないか。今の前期試験、後期試験、これは国立大学と私大を併願するというような場合にのみですけれども、ちょっと言いかえをするべきではないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
工藤政府参考人 昭和五十年の通知で御指摘のような表現をしてございますが、これは御指摘ありましたように、例えばということで申し上げているわけでございまして、入学式から二週間前以降であれば安全ですと私どもとして認知しているわけではなくて、本旨は、前段にございますように、合格発表後、短期間内に納入させるような取り扱いはいかがでしょうかということでございます。
 しかも、お話にありましたように、その後、各大学の入試日程、いろいろ変わってまいりました。国立大学だけではございませんで、国公私を通じまして、一応公になっております試験日程でいいますと、三月の二十三、四日というあたりが大体最後のグループになりますので、先生も先ほど御指摘ありましたように、今、各ブロックごとに説明会をしてございまして、今月中に全国を網羅する予定でございますけれども、先ごろ、六月の三日に行いました説明会でも、ここの部分についてはあえて担当者の方から御説明申し上げまして、現時点でいえば、三月の二十四日ぐらいまでは様子を見られてはいかがでしょうかということを注意喚起してございます。
藤村委員 長年、私も不思議だと思っていたのが、この消費者契約法が施行されて、そして一年たって、今やっと現実味を帯びてきたと思っておりますし、大阪の弁護士さんたちの活動、運動に敬意を表し、そして文部科学省も、本当に当たり前の、国民の納得のいくやり方をやはり強く私学に対しても指導していっていただきたいと要望いたしまして、質問を終わります。
河村委員長 武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 早速、現在防衛庁において情報公開請求者の個人的なデータを含むリストを作成、閲覧していた事件が問題となっておりますけれども、この種の対応が他の省庁においても行われている可能性があるのかなと思いまして、そのような事実はないだろうと思いますけれども、まずその確認と、事実関係をぜひ調査をしていただきたいと思いますけれども、その辺の確認ができているかどうか、お願いいたします。
遠山国務大臣 文部科学省におきましては、情報公開法に基づきまして、開示請求者から、氏名、住所、連絡先、請求する行政文書の名称等の必要事項を記載した開示請求書の提出を受けて、法令にのっとって対応しているところでございます。
 そして、このことにつきまして、本省庁におきます、我が省それから文化庁を含めた開示請求受付窓口を担当する課におきましては、これは情報公開室と言っておりますが、ここにおきましては今週七日まで、それからそれ以外の本省庁については十四日まで、それ以外の機関については今月二十六日までということで、現在、総務省の調査依頼を受けまして、そういうところでの機関におきますリストの作成、利用状況を改めて調査しているところでございますが、最初に申しましたところにつきましては、全く問題がございません。
武山委員 申しわけないんですけれども、お答えいただくとき、もうちょっと大きい声でお話ししていただきたいと思うんですね。こちら側は非常に聞きにくいんですね。ボリュームを上げるか、ぜひそうさせていただきたいと思います。
 それで、情報公開法が、もちろんあの法案としてできて、実際に行われておりまして、本当に国民が望んでいる情報公開を、とりたいという本当に前向きな、知りたいという権利は、やはり守られないといけないと思うんですね。
 しかし、悪用する人もいるわけですから、きちっとした判断に基づいて、情報公開をされる人と、それから悪用する人の、その線引きというか、それは非常に難しい判断だろうと思いますけれども、しかし、その悪用するところを恐れて恐らくこういう問題も起きてきておるのだと思いますけれども、この事実関係はいつごろ調査が完了しますでしょうか。
遠山国務大臣 先ほど申し上げましたけれども、ちょっとマイクの入り方が悪かったようでございますけれども、我が省といたしましては、本省におきます情報公開室の分については終了いたしました。それから、本省庁以外の機関も含めた我が省全般につきましてのこの問題についてのリストの作成、利用状況等につきましては、これは総務省の調査依頼も受けまして、目下やっているところでございますが、今月二十六日を提出期限といたしておりますので、その後にできるだけ早くそのことについて取りまとめたいと思っております。
武山委員 それでは、その日を待っていたいと思います。やはり各省庁、もちろん文部科学省も予算を持ち、そして政策評価をし、むだをなくすという意味で、やはり国民の情報公開を望んでいるその事実というのはあるわけでして、そういう評価を、やはり情報公開上してもらいたいし、むだをなくすという意味でも、チェック機能という意味で情報公開の請求をやはりしたいというのが国民の本音の部分だと思いますので、それは総務省の発表を待ちたいと思います。
 それから、副大臣にお聞きしたいと思いますけれども、先日、私が四月五日、科学技術を中心に、一般質疑の中で特許を中心に質問いたしました件で、もう少し突っ込んでお聞きしたいと思いますので、お答えいただきたいと思います。
 日本の大学の研究費について質問したものでございます、特許の、いわゆる大学の研究費。その中で、まず私の質問の中で、日本の大学における研究成果というものが、なかなか今の日本社会で十分活用できておらない、いろいろな理由があるというのは、これは青山副大臣がお答えになりました。それから、日本の大学における研究成果というものが、なかなか特許化されておらない部分がある、これも青山副大臣がお答えになりました。それからその後で、産業界の誤解もかなりある、そのために特許化が進まないということで、まず遠山大臣に産業界の誤解、その誤解の中身をぜひお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 その意味は、これまで産学官連携を推進しますために、大学側におきましても共同研究、受託研究を推進したり、特許取得、研究成果活用の促進を行ったり、人的交流の促進について規制の緩和を含みますいろいろな制度改善を行ってきたところでございますけれども、これらの改善がここ数年の間に集中して行われましたために、産業界の方々に必ずしも十分に御理解が行き渡っていない面があるという意味でございまして、産業界におきましては、大学は非常に古い体質で、産学連携についても十分取り組んでいないというような誤解もあるという意味でございました。
 そういう意味でございまして、さらに詳しいことが必要であればまたお答えをいたします。
武山委員 さらに詳しくお聞きしたいと思います。
 大学側も規制緩和をずっと続けてきたというその規制緩和について、詳しくお答えいただきたいと思います。
遠山国務大臣 具体的には、一つは、国立大学の教員がその知見や技術を生かしまして、企業等での活動に参加できるように教官の兼業に関する規制緩和をしております。また、受託研究、共同研究を推進するために、研究費の受け入れの弾力化や使用の円滑化を行っております。それから、研究成果の活用を図るために教官の特許取得や技術移転の促進などの施策を実施しているところでございます。
 それらの中身につきましては、本当に幾つかやっておりまして、このことについても個別にもし必要ならさらにお答えしたいと思いますが、そういった制度改善、規制緩和を行っているという意味でございます。
武山委員 それは、たしか平成十一年度からだったと思うんですけれども、その中で、研究費の使い方についての柔軟な制度というのは一体どういう内容なのか、柔軟な制度の中身をぜひ御披露いただきたいと思います。
遠山国務大臣 これは共同研究、受託研究についての柔軟な制度という意味でございまして、それは研究費の使用のあり方についてのことでございますが、平成十二年度から、例えば、まず企業等が複数年度にわたる研究の実施を希望する場合には複数年度にわたる契約を行うことができるようにしたこと、それから研究計画の変更に柔軟に対応できますように研究費の費目の区分を廃止する、これまでは旅費あるいは謝金と決まっていたらその枠内にとらわれていたわけでございますが、そういう区分を廃止したということでございます。
 それから、平成十三年度から、共同研究などに携わります非常勤職員の給与について、大学の判断で能力に見合った給与の支給を可能にするということにしたわけでございまして、こういう柔軟な対応をとることによりまして、企業側との共同研究あるいは受託研究というものが非常にやりやすくなっているというところでございます。
武山委員 四月五日の質問のときに、たしか産業界の意見も取り入れながら十分対応しているということですけれども、この産業界の意見も取り入れるというのは、実際に産業界のどんな意見を取り入れたのか、御披露を願いたいと思います。
遠山国務大臣 まず、産業界の意見を取り入れる方策でございますけれども、産学官連携推進法策について検討を行います審議会委員として、産業界の関係者の参加を得たり、あるいは全国それから地方におきます、昨年十月からことし三月にかけて、産学官の関係者を集めて開催されました産学官連携サミットで意見を聞いたり、また、ことし三月に、大学の産学官連携実務者それから経団連の参加によりまして、東京、大阪で開催しました大学発イノベーション創出推進会議などの機会を設けまして、産業界の方々からさまざまな御意見、要望を伺っているところでございます。
 それで、じゃ、何をやったのかということでございます。これはたくさんございます。一つ二つ御説明いたしますと、まず、経団連の方からの要望で、企業が大学に出す資金にあわせて、国が資金を出すマッチングファンドを創設したらどうかという意見がございました。これに対しましては、平成十四年度予算によって科学技術振興調整費による産学それから産官共同研究を推進するマッチングファンド制度を創設したところでございます。
 それから、意見として、企業等の組織に対する大学の窓口を一本化してはどうかという要望がございました。これに対しましては、国公私立大学の研究協力部課あるいは共同研究センターなどの窓口の一覧表をつくりまして、これをその関連の会議、これは平成十四年三月に東京と大阪で開催しました大学発イノベーション創出推進会議でございますが、そこで皆さんに差し上げたわけでございます。
 また、各地域で行われました産学官連携のサミットにおきましても、各地域内にあります国立大学の産学官連携窓口について周知を図ったところでございます。
 その他もろもろございますが、特に要求の強かった、大学が特許を取得するための支出をふやせるような措置を講ずるべきではないかということでございまして、これにつきましては、我が省の対応として、国立大学について、今年度においては国有特許出願などに係る経費を増額したところでございますし、また、競争的資金につきましては、平成十三年度から間接経費を特許出願等に係る経費に使用することが可能となりましたし、それから、科学技術振興事業団において、大学等の研究成果の特許化を図る事業を推進したりいたしております。
 その他さまざまございますが、例示は以上にとどめさせていただきます。
武山委員 そうしますと、産官学関係者のところにはほぼ情報は行き渡っていると判断してよろしいのでしょうか。
 それから、昨年十一月に内閣総理大臣が決定した、国の研究開発評価に関する大綱的指針というのがあるんですけれども、研究者などの業績の評価について、研究開発に加えて、社会への貢献等の関連する活動に着目して評価するようにということで、評価方針を策定する計画を進めているということなんですけれども、この方針の基軸は一体どのようなものなのか、まず基軸ですね、それからどこまでその作業は進んでいるのか、そしていつ完成するのか、具体的に青写真を示していただきたいと思います。
遠山国務大臣 科学技術の振興に当たりまして適切な評価を実施することは大変重要なことでございます。そのような観点から、我が省といたしましては、第二期の科学技術基本計画、国の研究開発評価に関する大綱的指針の改定を受けまして、科学技術・学術審議会におきまして、これは我が省の審議会でございますが、我が省におきます評価指針を策定する作業を進めていただいているところでございます。
 いつまでかということでございますが、現在、四月に実施しました指針案に対する意見募集の結果も踏まえまして、引き続き議論を進めているところでございまして、今月中にも取りまとまると聞いているところでございます。その結果を受けて、文部科学省として指針を決定いたしますとともに、関係機関へ通知する予定でございます。
 その中では、大綱的な指針の方針に沿って、一つは、評価における公正さと透明性の確保、二つには、評価結果の資源配分への反映、そして三つには、評価に必要な資源の確保と評価体制の整備ということを図ることといたしております。
 また、その基軸になる考え方は何かということでございますが、特にすぐれた研究開発を見出し、発展させるという前向きな評価をすること、また多種多様な研究開発の特性に応じた適切な評価方法を採用すること、そして種々の評価の重複による研究者の過剰な負担の回避を図ることなどを重視しているところでございます。
武山委員 そうしますと、日本の場合は原則として研究者個人が特許を取得するという形になっておりませんけれども、これからは特許の取得の方法が違ってくるわけですけれども、日本の大学における特許の取得はこれから進んでいくという方向性ですけれども、大きくこれで変わるという。
 先日、青山副大臣が、アメリカと日本の大学における特許取得の方法が違っておるから、まず、アメリカでは原則として大学が特許を取得するけれども、組織的に日本では取りにくいということですけれども、これで早急にふえるという方向性であろうと、答えはわかりますけれども、早急に、ここ一年で少しずつ変わっていくかと思いますけれども、大きく変わる点は何でしょうか。
青山副大臣 今までは、日本の場合は研究者個人が申請をしてきておりまして、アメリカの場合は大学という組織で特許出願をしてきたということは前の国会でお話ししたと思いますが、国立大学の法人化の後においては、大学の研究成果による特許を、原則として大学、すなわち法人が保有管理する方向で今検討しているところであります。したがって、組織的な取り組みをこれから進めていかなければならない、いくことができるというふうに考えております。
武山委員 先日の質問で、JST、これは特殊法人の科学技術振興財団ですね、こちらでは、大学研究者に資金を支援しておるわけですけれども、実際にそこで特許ができると、JSTの所属に、専権事項としてJSTのものになってしまっているわけですね。ですから、特許が実用化されないで死蔵しているんだということを私はお話ししましたけれども、これは個人に将来返ってくる方向性で話が進んでいるのか、そして、個人に、本当に開発した人に権限がいつごろ来るのか、その辺の青写真は検討されていますでしょうか。
青山副大臣 JSTは、研究費を実は出していたり、特許出願の費用を出していたりしておりまして、特許がおりた段階ではJSTが占有しているものでございます。これは、経費を支出してきたという経過から、会計学的にそうせざるを得ない一面があります。
 しかし、今までは、JSTの取り組みをこれまで振り返ってみますと、決して死物化しているものではなくて、相当に大きな成果を社会に還元するという意味で特許が企業に活用されてきた、ライセンスされてきたという成果はお認めいただけるものと思います。
武山委員 私、先回の質問で、こちらで調べて、JSTの方は年間二十億円の特許化費用を使って、その技術移転による収入は二億円程度しかないということを言ったんですよね。それで、民間企業への技術移転実績も数件程度しかないと聞いておるということをそのときお話ししたんですけれども、その特許の、個人の研究開発したものに対して、JSTがJSTのものとしてもう占有権を持っているわけですね。それが、将来、個人が、研究開発した人が占有権を持つような方向に流れていくというふうに聞いておるんですけれども、それは、個人が、研究開発した研究者が申請すれば、申請に応じてその占有権は個人のものに移っていくということを聞いておるんですけれども、その件に対して私は青山副大臣に聞いているんです。その占有権は個人に戻るんですかと聞いているんです。
青山副大臣 今は、TLOではなくてJSTのお話であろうと思いますが、JSTの事業の成果を活用していくために、今、TLO関係者から意見を聴取しているところでございまして、平成十四年四月から、発明者が指定するTLO等に優先実施権を設定できるように制度改正を行ったところであります。
武山委員 TLOの方で制度改正したということですね。
 私は、JSTの方で、科学技術振興財団が支援をした研究者や大学や企業との間で、研究者が特許を取ったものに対して占有権を申請すれば得られるというようなことを、この特殊法人の科学技術振興財団、JSTから聞いたんですよね。でも、議事録にきちっと、それが事実かどうか、その場のお話なものですから、改めて今聞いております。
青山副大臣 JSTの事業の成果として、現在までTLO関係者からいろいろな御意見をいただいてきました。それで、JSTの事業として、平成十四年四月から、発明者が指定するTLOに優先実施権を設定できるということにいたしております。
 それから、所有権についてでありますが、委託を受けた大学側の判断によって大学側が占有できるように、日本版バイ・ドール法の適用を近く行う方針で検討しているところでございます。
 以上でございます。
武山委員 バイ・ドール法は、大学の自主性を取り入れて自由に行うということなんですけれども、近くとはいつごろでしょうか。
青山副大臣 先ほどちょっと触れさせていただきましたが、日本版バイ・ドール法の適用につきましては、会計、契約上の調整が実は必要でございまして、できる限り早く適用するつもりでおります。
武山委員 非常に期待できないお答えですね。できる限り、そういうお答えはしていただきたくないですね、政治家同士のお話の中で。やはり、もっと気持ちよく、はっきりと、いつも同じ、何十年も同じ、検討をするとか方向性を出すとか、そういうことから脱却すべきだと思います。身近に青写真が描けることを、今この状況に答えていただけなかったら、夢も希望もないじゃないですか。
青山副大臣 まことに厳しいお話でしたが、今年度から適用できるように、今、鋭意努力いたしております。
武山委員 最初から今年度中というふうに言うべきだと思います、政治家は国民の代表なものですから。
 それでは次に、私立大学の関係について聞きたいと思います。
 まず、私立大学で、私立大学も当然今まで評価されてよかったと思いますけれども、ようやく国がこれから評価の機関を認めてというか、認可しまして、その機関が、それぞれの基準で、各大学に適格とか不適格とか、いろいろと大学の評価をするという話が進んでいるということを聞いております。
 まず、大学の情報公開それから評価、これらの私立大学に対する、国公立も同じですけれども、いわゆる大学の評価は基本的に何を基準にして決めるのか、岸田副大臣にお聞きしたいと思います。
岸田副大臣 大学の評価につきましては、中教審の中間報告におきまして、第三者評価制度の導入等による新たな大学の質の保証システムを構築すべきと提言をいただいているところであります。
 その第三者評価機関でありますけれども、大切なポイントとしまして、適切な評価基準や評価体制を備えていること、さらには、評価結果を一般に公表して、広く評価の結果をまた見てもらえるような体制をつくるということ、このあたりが大切かなというふうに思っております。
 この二つの体制とそれから公表という、この二つのポイントを重視した評価機関というものが設けられるよう努めていかなければいけないというふうに思っております。
武山委員 いつごろ文科省は、この大学の評価の、いわゆる第三者機関といいますか、こういう機関を認定しようと思っているんでしょうか。そうしますと、いつごろから評価体制ができるということがわかるものですから。
 それから、いわゆる評価するそういう認定の機関、一般的に第三者機関といいますとわかりますけれども、どうもこれは、自分たちで、教員の中から独自に評価するシステムをとるようだということなんですね。それももちろん一つの手だと思いますけれども、でも、それでなれ合い体質にならないかなと思うのですね。独自の、お互いの学校同士を、例えば二校を例に出しますと、A校とB校の中から教員が評価システムのグループに入って、それでお互いの大学を評価するなんというのは、今までの考えからしますと、なれ合い体質になる可能性が大いにあると思うのですね。
 その辺で、まず一つは、いつごろ機関ができるのか、それから、そういう第三者評価をする財団法人だとか、お互いの大学同士でつくるとか、その評価機関が非常になれ合い体質であるという、そこはどう国民に説明するのでしょう。
岸田副大臣 まず、時期についてでありますが、先ほど御紹介させていただきました中教審の中間報告ですが、この最終報告、大体ことしの夏ごろ予定されております。この最終報告を受けて、具体的な第三者評価機関というものがつくられていくというふうに考えております。
 そして、その際になれ合いであってはならないという御指摘、そのとおりでございます。なれ合いで容易に行われるような評価機関というものではあってはならないわけでありまして、そのためにも、適切な評価基準や評価体制を持っているということ、さらにはその評価結果というものが公にされるということ、このあたりが重要だというふうに考えております。
 この夏以降整備される評価機関におきまして、その点がしっかりと整えられているということ、これをしっかりと図っていきたいというふうに考えております。
武山委員 評価結果は公表するという方向のようですけれども、財務体質も、いわゆる財務状況、やはり学生は、今までの偏差値で大学を選ぶ時代は終わったというふうに見ているわけですね。受験生の目は、その大学の中身、すなわち特性、特色に向いているわけですね。きちんとした教育や研究の評価を公表するということによって、その公表された結果を見て、受験生は、どこの大学に行きたいとか、どういう大学が新しい分野に先生を投入しているとか、どういう大学の理念それから運営、そういうものがきちっと、どこに視点を置いて行うかというような情報公開もこれから行われてくると思いますけれども、この中で、仲間内の評価を受ければそれで義務は果たせる、片やそういう評価もあるわけですね。
 それで、大半は、全部が全部どれだけ行われるかわかりませんけれども、この仲間内の評価を受ければという、この仲間内は絶対だめだと思うのですよ。今までの事なかれ主義、隠ぺい体質、それから財務状況や何か、結果をきちっと、実効性がどこまで担保できるかという意味で、実効性の担保はどこに視点を置きますでしょうか。
岸田副大臣 まず、仲間内のなれ合いであってはならない、おっしゃるとおりでありまして、大変重要なポイントだと思っております。
 そして、評価の中身につきましても、国民の期待にこたえるきちんとした評価が行われなければいけない、評価の内容につきましてもその点は重要なポイントだというふうに思っています。そして、その内容につきましても、大学設置基準以上のものがその評価の中身にならなければいけないというふうに考えておりますのが一つの目安かなというふうに思っています。
武山委員 実効性を本当に国民が思っているような視点で担保していただきたいと思います。
 それから、私学助成の件に対して幾つか質問したいと思います。
 まず、今、昭和五十年、一九七五年に制定された私立学校振興助成法というものがあって、私立大学に対する国庫からの助成金、これは一般助成というんですか、ところが、最近は、この一般補助金、これと同時に、特別補助というもの、直接補助によって、私立大学教育研究高度化推進特別補助というのが新設されて、いわゆる補助金に占める特別補助の比率は三〇%を超えているような状態だというわけですね。
 それで、文部科学省は、私立大学に対する補助金の基軸、視点をどこに置いていくのか。一般補助金でやっていくのか。私立大学の方からのお話ですと、特別補助金に軸足を置いてきている。そうすると、個性を持ったものに、私立大学教育研究高度化推進特別補助ということですから、個性を持った、各大学の個性に対して研究補助をするために特別補助としてやっていくことに軸足を置いてきつつあるのか。
 私立大学というのは、やはり私は、国に補助を常にもらって、そしておんぶにだっこでやっていくような私立大学では成り立っていかないと思うんですね。私立は私立で、国公立大学とはまた別な理念、哲学、個性があってやっていくべきものだと思うんです。新しい大学が成長するにはやはり補助金が時には必要かと思いますけれども、ある程度成長したところは自立していかなきゃいけないと思うんですよ。
 それで、今、文科省は、私立大学に対する補助金をどういう方向で今後二十一世紀の土台をつくっていくために置いていくのか。一般補助なのか、特別補助なのか、その辺を文部科学省ははっきり私立大学に対して示すべきだと思いますけれども、その方向性を示していただきたいと思います。
岸田副大臣 御指摘のように、私立大学に対する補助、一般補助、それから特別補助、さらには、平成十四年度予算におきまして私立大学教育研究高度化推進特別補助を創設したということであります。
 これらの補助、それぞれその意義があるわけでありまして、一般補助につきましても、引き続きこの所要の額はしっかりと確保していかなければいけないというふうに思っております。それに加えて、特別補助をそれぞれ充実を図る、そのことによって私立大学に対する補助を全体としてふやしていくというのが文部科学省としてのスタンスであります。
武山委員 それでは、その上に立ってもう一つ大きなことを質問したい。
 私学助成の位置づけですね。私学助成の位置づけ、それはどう位置づけるんでしょうか。
岸田副大臣 私学助成の位置づけ、言うまでもなく、我が国の私立大学、学校数ですとか学生数の約八割を占め、それぞれ、建学の精神にのっとり特色ある教育研究を行っているということで、我が国の高等教育において大変重要な役割を果たしているわけであります。
 このような私立大学の重要性にかんがみて、教育条件の維持向上ですとか、あるいは就学上の経済的負担の軽減ですとか、あるいは学校経営の健全性を確保するですとか、こういったことを目的として、教育または研究に係る経常的経費を補助していくというのが私学助成の意味だと思っております。
武山委員 そうしますと、私立大学に対する寄附金の規定などは、やはり国公立と同じ基準に取り扱っていく必要があるんじゃないかと思うんですよね。税制上の取り扱いを国公立大学と同等のものに、やはり寄附金控除を扱っていく必要性があると思いますけれども、いかがでしょうか、この件に対しては。
岸田副大臣 我が国におきましては、寄附を促進するためにさまざまな優遇措置が設けられているわけですが、私立大学に対しては、例えば、個人からの寄附につきましては、国公立大学に対する寄附と同様の取り扱いになっております。
 しかしながら、企業等が寄附する場合は、国公立大学に対しては、つまり国や地方公共団体に対して寄附をした場合には全額が損金算入されるのに対して、私立大学に寄附した場合には、一般の損金算入限度額の二倍を上限として損金算入が認められているということで、企業等が寄附する場合、国公立大学と私立大学、差があるというのが現状であります。
 私立大学が寄附金等の外部資金の導入を促進していくこと、これは重要な課題でありまして、これまでも税制当局に対しまして、文部科学省としてこの優遇措置の拡大を要望してきたところでありますが、今後とも、この拡大につきましてはしっかりと要望をしていきたいと考えております。
武山委員 その税制上、優遇措置の拡大はいつからしてきて、どのくらいその努力をしているんですか。いつになっても優遇措置が拡大できなかったら、それは努力不足だと思うんですよね。それで、いつごろそういう拡大がされるのか。毎年毎年頑張ってやったって、その辺が私立大学として生き残れない部分もあるわけですよね。その辺はどういうふうに考えていますでしょうか。
岸田副大臣 税制上の優遇措置の拡大につきましては、文部科学省としては、平成七年度から本格的に税制当局に対して要望を続けております。しかし、その後、平成七年度以降、経済の状況ですとか国の財政のあり方ですとか、あるいは国の予算のあり方ですとか、さまざまな議論があり、そして変化があるわけであります。
 そういった中で、残念ながら今日までその拡大の成果にはつながっていないわけでありますが、先ほど申しましたように、私立大学に対する寄附金の税制優遇の意義、大変重要だと考えておりますので、この厳しい環境の中にあっても引き続きその拡大に向けて要望を続けていきたいと考えております。
武山委員 一般補助によるのか特別補助によるのか寄附金によるのか、その辺をしっかりと、二十一世紀はやはり、特に私立大学の場合、寄附金に軸足を置いていくべきだと思うんですよね。それが時代の、経済の、社会の流れだと思うんですよね。その流れに、七年間も努力しても全然窓口が見えないというのは、やはり絶望的だと思うんですよね。ですから、それはやはり皆さんの努力にかかわると思います。
 以上です。
河村委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 先ほど武山議員も取り上げられたようですが、昨年四月に始まった情報公開法に基づく情報公開について、この業務には全く関係のない、必要のない請求者の個人情報を盛り込んだリストが防衛庁内で作成されて、憲法が保障する国民の人権が不当不法に侵害された、こういう事実が明らかに出ています。
 文部科学省にあっては、情報公開の権限は遠山大臣がお持ちです。そして、大臣の委任を受けて情報公開の業務が行われている。文部科学省に対する情報公開の請求は、五月三十日現在で二千百四十二件だと承知をしております。
 昨日の新聞に出ていますが、内閣官房及び内閣府は既に調査をして、防衛庁のようなリストは作成していないということを明らかにしております。文部省ではどうか。
 まず、遠山大臣にお聞きしたいのは、防衛庁で明らかになっているあのような事態をあなたはどのように認識しているか、これが第一です。二つ目は、文部省での情報公開請求者のリストはどのように扱われているか、二点についてお答えを求めます。
遠山国務大臣 第一の点でございますけれども、私は、行政機関におきましては個人情報の慎重な取り扱いに配慮すべきだと考えております。それは、行政機関の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する法律、これの四条、九条、十二条にわたりましても書いてございますように、まず第一に、個人情報の保有は所掌事務の遂行に必要な場合に限られること、第二に、保有目的以外の目的のために利用、提供してはならないこと、第三に、職員は業務に関して知り得た個人情報の内容をみだりに他人に知らせてはならないことということが法律上明記されておりまして、私どもとしてはそういうことをしっかり守って行政を行っているところでございます。
 このたびの防衛庁の問題につきましては、防衛庁におきまして事実関係を調査中と伺っております。今申しました私の考え方からしますと、職務遂行上必要のない請求者の個人情報を把握することによって国民の間に不安や混乱を招いているとすれば、それは遺憾なことであると思っております。
 それから、第二の点でございますけれども、私の方で承知いたしております我が省関係の開示請求の件数は、昨年四月の情報公開法施行から本年五月末までの間に二千三十五件と押さえております。
 文部科学省といたしましては、情報公開法に基づきまして、開示請求者から氏名、住所、連絡先、請求する行政文書の名称などを記載した開示請求書の提出を受けまして、担当課において期限までに開示、不開示の決定を行う、そして開示請求者に対し通知をしているところでございます。開示請求書に記載されている以外の開示請求者の個人情報を収集したり保有したりしていることはございません。
 なお、文部科学省では、開示請求がありました場合に、開示請求の進行管理、きちんと請求があったものに対してこたえているかどうかなども含めまして、その進行管理のために、情報公開室、これは我が省のこの問題に関する窓口でございますが、そこで、開示請求書に記載しております開示請求者の、先ほど申しました条件、氏名とか住所、連絡先、請求のあった行政文書名のほか、開示決定期限などを一覧にした情報公開事案管理簿を作成しておりますけれども、これはまさに請求のあったことについてのきちんとした記録でございまして、この管理簿は担当者限りで使用いたしておりまして、他の部局が閲覧できるシステムとはなっておりません。その情報公開室で取り扱っているものにつきましては、さきの御質問にもお答えいたしましたけれども、私どもといたしましては、その件について何ら問題はないというふうに把握をいたしております。
 他方で、片山総務大臣の方から、各省庁において請求者に関するリスト作成調査を依頼してこられました。そのことから、目下、我が省のみならず、関係の機関においてどうなっているかということについての調査を行っているところでございます。
 調査の内容につきましては、リストの名称あるいは作成部署、利用目的、請求書記載事項以外の情報記載の有無、作成部署以外の部署への提供の有無などでございまして、そのことについて目下調査を行っているところでございます。
児玉委員 今問われているのは、憲法が保障する一人一人の国民の権利に対してその省庁がどれだけ厳格な態度をとっているか、その問題です。
 今大臣のお話は、現時点でのこととして承っておきましょう。この後は、この後の推移を見たい、こう思います。
 そこで、国旗・国歌に関する法律が成立してもうすぐ三年が経過いたします。私は、石井郁子議員とともに、当時内閣委員会で中心になって審議されたその論議に参加した者として、国会審議の内容を振り返りながら、最近学校で起きている事態について遠山大臣に質問します。
 まず最初に伺いたいのは、これは九九年の六月二十九日の衆議院本会議、小渕首相、もちろん当時です。小渕首相が、今回の法制化に当たり、国旗の掲揚等に関し義務づけを行うことは考えておらず、したがって、国民の生活に何らの影響や変化を生ずることにはならないと考えている、こう述べました。
 小渕首相が言う国民には、当然、児童生徒、父母、教職員も含まれていると思うが、どうですか。
遠山国務大臣 国旗・国歌の法律の関係は、審議の様子を、私は、在トルコの特命全権大使としてトルコに駐在しておりましたときにそのニュースが流れるのを聞いて、感慨深く思った記憶がございます。
 したがいまして、そのときは日本におりませんでしたけれども、今御指摘の点について、当時の記録を今出してみましたところ、小渕内閣総理大臣は、日本の国民として、学校教育におきまして、国旗・国歌の意義を理解させ、それらを尊重する態度を育てることは極めて重要であることから、学習指導要領に基づいて、校長、教員は、児童生徒に対し国旗・国歌の指導をするものであります、このことは、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものではなく、あくまでも教育指導上の課題として指導を進めていくことを意味するものでございます、この考え方は、平成六年に政府の統一見解として示しておるところでございまして、国旗・国歌が法制された後も、この考え方は変わるところはないと考えますというふうに記録をされているところでございます。
 その趣旨は、あくまでも教育指導上の課題としてこのことについて指導を進めていくということを意味する、そのことについては法制化の後も変わらないという趣旨と私は読んでおります。
児玉委員 あなたがトルコにいらっしゃろうとどうしようと、現大臣として当時の審議に対しては責任を負わなきゃいけない。
 率直に言いますけれども、質問に答えてほしいんです。私が聞いたのは、国民の生活に何らの影響や変化が生ずることにはならない、この国民に児童生徒や教職員、父母が入るか入らないか、そのことを聞いているんです。どうですか。
遠山国務大臣 当時の内閣総理大臣談話の記録がございますけれども、その中で、今回の法制化、これはそのときの法制化でございますが、これは、国歌と国旗に関し、国民の皆様方に新たに義務を課すものではありませんが、本法律の成立を契機として、国民の皆様方が、日章旗の歴史や君が代の由来、歌詞などについて、より理解を深めていただくことを願っておりますということを中心にしながら、前後幾つかのことを述べておられます。
 私としては、この記録は、そういうことで今読ませていただいております。
児玉委員 国会の会議録というのはいいかげんなものじゃありません。別の文書を持ってきてそれを紹介するというやり方はフェアでない。
 私が言っているのは、さっき日付も言ったとおり、本会議のこの文章で言っている国民の生活、その範囲に子供や教職員や父母が入るか入らないか、らち外なのかどうか、その点です。端的に答えてください。
遠山国務大臣 私どもの記録を収録した文章の中にはそのことは述べられておりませんが、今委員がおっしゃいますから、小渕総理がそのように答えられたと思います。
 それで、その中であれば、それは国民が含まれているということであると考えます。
児玉委員 あなた、今言い間違えました。国民がではなくて、訂正してください。
遠山国務大臣 国民に教員それから児童生徒も含まれるという趣旨であろうかと思います。
児玉委員 そこで、ことしの三月の卒業式ですが、北海道の札幌南高校で、新たに赴任された校長さんが、この三月の卒業式から君が代を実施したい、こういう意向を表明した。それに対して、受験直前期にあった高校三年生の諸君が、随分時間を割いて議論をして、次のような意見を取りまとめました。さまざまな意見の持ち主ですから、ある生徒は、サッカー場で見る日の丸には心を動かされる、こうも述べ、そして別の子供は、しかし卒業式でそれが出てくるのはどうかとか、さまざまな議論があった。そして、それらは次のような言葉で集約されました。
 私たちは、君が代に反対なのではなく、君が代を卒業式の場で強制することに反対なのです。卒業式は、三年間をともに過ごしてきた友達と喜びを分かち合い、それぞれの一歩となる大切な場です。この場で評価の分かれる君が代を実施強制することが、教育なのでしょうか。卒業式の場で君が代を流すと、歌うか歌わないか、立つか座るかの意思表示を大勢の前でしなければならなくなり、個人の思想について表現したくない人まで表現を強制させられることになります。これは隠れキリシタンを見つけるために行われた踏み絵と同じです。
 こういうふうに彼らは意見をまとめました。
 私は、これを拝見して、憲法によって絶対的な保障を受けている内心の自由の本質に深く触れたものだ、こういうふうに思いますが、大臣はどのように理解されますか。
遠山国務大臣 学校での子供たちの意見でございますので、学校ではどのようにこの問題について対処すべきかをまず述べたいと思いますが、学校は児童生徒の発達段階に即して教育を施すことを目的とするものでありまして、校長、教員は、関係の法令や上司の職務上の命令に従って教育指導を行わなければならない職務上の責務を負うものでございます。
 そういうことから、学習指導要領につきまして、それぞれの学校の教育課程の基準として、これを法規としての性質を有するものとして、それぞれの学校において、式典において、そこで必要とされている国旗・国歌についてこれを実施していくという状況下にあるわけでございます。
 一方で、良心あるいは思想の自由というものは、それは憲法上の個人の内心の自由として、これは絶対的に認められたといいますか、あるいは守られなくてはならない、そういうものであるわけでございます。他方で、学校がその指導上のあり方として国旗・国歌をきちんと式典において用いるということについて、強制することは許されませんけれども、それが内心の自由にとどまる限り、私は、それぞれの生徒がどのように考えてもそれは許されると思うわけでございますけれども、学校における指導のあり方として、国旗・国歌についてきちんとこれを対応するということは、それは学校としてのあり方として、そうあるべきであるというふうに考えている立場でございます。
児玉委員 今あなたがおっしゃった、内心の自由は保障されるけれども、それなりに学校で君が代・日の丸に子供も対応しなければならないという趣旨の政府発言は、あの間の衆参を通じてただの一回もされていません。
 子供たちは、内心の自由を保障する。内心の自由とは何か。今、多くの憲法学者の共通の考えは、第一に、国家が特定の思想、信条、倫理的価値観を個人に強制すること、それをしないことです。第二に、国家が個人の内心における思想、倫理観の告白を強制したり、あるいは内心を推知させる何らかの行為を強制すること、これが内心の自由に対する侵害ですね。
 ですから、子供たちは、この札幌南高校でも校長がその点は明言しましたけれども、あなたたちの内心の自由は完全に保障する、歌う歌わない、立つ立たない、それはあなたたちの自由だと。
 あなたは今それに踏み込みましたよ。対応するというのは、どのように対応するというんですか。
遠山国務大臣 私は、強制力をもってその内心の自由を侵すということは絶対にしてはいけないということを申し上げたわけでございます。
 それぞれの学校におきまして、児童生徒の思想、良心を制約するということではなくて、しかし、それは、教育の目的を達成するために指導を、教育指導として、それぞれの学校において判断した学習指導要領に基づく指導を行っていくということについては、私は、それは学校のあるべき姿だということを申し上げたわけでございます。
児玉委員 もう一回はっきりさせますけれども、そのような指導に対して、子供がごく平穏に、冷静に、それぞれの内心の自由に即して行動することは完全に保障されています。どうですか。
遠山国務大臣 それぞれの児童生徒が、内心の自由といいますか、それぞれの考え方を持っているということはもちろん許されるわけでございます。
児玉委員 多少私は言葉に、こういう性質の議論のときは厳格でありたいと思うんですが、許されるという性質のものだろうか。それは尊重されるべきものではないですか。
遠山国務大臣 思想、良心の自由は、それが内心にとどまる限りにおいては保障されなければならないわけでございます。その意味では、それは尊重されるというふうに言うことができると思います。
児玉委員 三年前の議論は、そんな程度のものじゃありません。内心の自由は、その人の、その子供の胸に手を突っ込んで探るわけにはいかないんですから、どういうことを考えているかということは見えません。
 先ほどの憲法学者の言葉のように、内心を推知させる何らかの行為を強制しない、それが当時の国会での論議の一つの到達点でした。だから、例えば有馬文部大臣などは、口をこじあけて歌わせるようなことは絶対してはならない、これはもう言うまでもないことであって、子供がその場をもし立ち去る、そのときも、式が終わった後、静かに戻っていただいて、名を挙げてそれを非難するようなことは決してしてはならない、こう述べているんですよ。どうですか。
遠山国務大臣 何度も答弁いたしました、強制的にその内心の自由を束縛するようなことをしてはならないというのはまさにそういう意味でございまして、殊に物理的に、強制的に席を立たせる、ないし口をこじあけてなんというのはとんでもないことでございまして、そのようなことをもちろん許されるものではないと思います。
児玉委員 そこで、札幌南高校の状況ですが、昨年の十二月五日に、三年生が中心になって百五十人集まって、校長その他と三時間議論をした。十二月十日に、百三十人の生徒と四時間の意見交換をした。その席で校長さんは、このような会議は今後実施の予定はないと言って、生徒との話し合いを打ち切りました。
 私は、個々の細かな事態について今触れようと思っていません。それは非常に詳細な、それこそこの前、瀋陽事件で私が川口さんとやった時系列のあの表が出ていますから、それは双方争いがない。
 そこで、問題は、十二月十九日に、生徒有志の申し立てによって、札幌弁護士会が、申立人たる生徒と、そして相手側たる校長、教頭から事情を聴取し、そして学校が配った幾つかの資料を受け取り、そして北海道大学法学部の中川明教授から法律的意見を聴取した上で、ことしの二月十四日に、札幌弁護士会田中宏会長が校長あてに勧告を行いました。(発言する者あり)
 委員長、済まないけれども、議論の最中に私語をしないようにちょっと注意してください。
河村委員長 ちょっと、静粛に拝聴してください。
児玉委員 その勧告とは何か。非常に簡明なものです。
 「卒業式の運営にあたり、申立人ら生徒を、その決定過程の重要な参加メンバーとして、生徒らの意見を真摯に受け止め、今後も生徒らに対し、さらに十分な説明と協議を行い、納得を得られるよう最大限の努力を続けることを勧告する。」これまでの国会論議で一部あったような子どもの権利条約の十二条、十四条について云々だとか、そういったものは立論の経過の中では含まれているけれども、勧告の中身は今述べたとおりです。
 申立人ら生徒を、その決定過程の重要な参加メンバーとして、生徒らの意見を真摯に受けとめ、今後も生徒らに対し、さらに十分な説明と協議を行い、納得を得られるようにすべきだ。私は、この勧告は学校にとっても至当なものであって、受け入れがたいものとは考えられないと思うんですが、いかがですか。
遠山国務大臣 私は、個別の、それぞれの地域におきますさまざまな文書をすべて目を通すいとまはございませんで、今お話でございました勧告そのものは、私の手元にありますものでいいますと、その札幌弁護士会の勧告は、校長が児童の権利条約第十二条等を侵害しているとの内容であるというふうに聞いておりますが、今委員がお話しになりましたのは、恐らく、それを読みますと、そのことであるよりは、むしろ簡明なものであるというお話でございます。
 やはり国旗・国歌の指導を含みます教育課程の編成といいますものは、学校の判断と責任において決定されるものでございます。その意味で、私は、その校長先生は二回にわたって生徒の意見も聞いたというふうなことも聞いているわけでございます。生徒の意見も聞いた上で、そして学校として判断をしていくというのが、これは学習指導要領に基づいた行き方であろうかと考えているところでございます。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
児玉委員 事実というのは二つありませんね。勧告書というのは全部で三十二ページにわたるもので、勧告の本文の結論のところはさっき私が読んだところです。後ほどしっかり読んでおいてください。
 そこで、もう一つの問題について提起をしたいと思います。
 先ほどの勧告の特徴は何かといえば、憲法十九条や子どもの権利条約十二条、十四条などを立論の過程ではいろいろ触れているけれども、勧告の勧告たる部分については、生徒と十分話し合って行うべきではないかという勧告なんです。そこのところをあなたは読み違えるはずがないので、ぜひ正確に見てほしいと思うんです。
 私はここに、今度の情報公開に関連して出されてきた、神奈川県の、一昨年三月の卒業式の実施状況について県教委に提出した文書を持っております。ごらんのとおり、一カ所が墨で黒くつぶされている。これは、卒業式の実施状況について一昨年校長が県教委に出した文書で、その末尾のところに、その他、何かあったらお書きください、その部分の記入欄が塗りつぶされているんですが、情報公開によってこれが公開されました。つぶされていないものが公開された。
 当時二年生であった男性がそれを見て、この黒くつぶされた記入欄のところに、過激な発言をする生徒がおり説得に時間を要したなどと書かれていて、そして、前後の事情から、過激な発言をする生徒が自分自身のことである、そのように特定できる、そう考えてその部分の削除を県教委に求めたら、県教委が削除を拒否したために、神奈川県個人情報保護審査会に対してその箇所の削除を申し立て、この五月十七日、神奈川県個人情報保護審査会は神奈川県教委にその部分の情報を削除すべきであるとの答申を行いました。既に質問の準備で予告していますから、あなたは御存じだと思うんです。
 そこで、三年前に私は、当時の官房長官である野中広務氏とこういう議論をしました。当時、与党の幹部から、君が代・日の丸について賛成しないという主張は特殊な思想だ、過激な人たちだという言葉が続いたことがあります。それで私はそのことについて野中氏の感想を求めた。彼はこう答えた。会議録ですから厳格です。
 我が国は残念ながら誤った道を一九四五年まで歩むことになったわけでございますから、そういう経験と反省の上に立って、これはやりとりの中で、ある人間は非国民と名指しし、こちらの人間は過激な思想だと言う、そうやって排除するような、そういったことに対する経験と反省の上に立ってさまざまな御意見があることを私どもとしても謙虚に承知をいたしております、こう答えた。この瞬間、私は多少野中氏と心が通ったように思いました。戦前に対する痛切な反省を一部に込めた真情の吐露だと私は当時感じました。
 そこで言いたいんです。
 学校長が卒業式の前日に国旗掲揚、国歌斉唱に反対した生徒を特定して、過激な発言をする生徒、こういうふうに報告書に記載するような行為が教育者としてあっていいことかどうか、これが事柄の大きな本質です。そして、非国民だと言えばある人物を社会的に抹殺することができる、ああいう暗い時代を繰り返させてはならない、言ってみれば、これが今私たちの共通の土台ですから、そういう立場に立てば、神奈川県の個人情報保護審査会のその箇所を削除すべきであるとの答申は適切、公正な判断だと私は考えます。遠山大臣はどのように受けとめますか。
遠山国務大臣 御指摘の事案につきましては、平成十一年度、卒業式の実施状況の調査票に個人情報が含まれるとして、昨年一月、不服申し立てがあり、本年五月に、県個人情報保護審査会が当該個人に係る情報の削除を求める旨の答申を出したものと聞いているところでございます。
 神奈川県教育委員会は、このような記載については個人情報に当たらないと考えていたようでありますが、県個人情報保護審査会が当該内容の削除を答申したということを踏まえて現在対応を検討中であると聞いております。
 私自身はその具体的な事情を十分とらえておりませんので、これはコメントは差し控えるべきと思いますが、我が省としましては、県の教育委員会の対応を見守っていきたいと考えています。
児玉委員 それは見守っていただきたいですね。
 ちなみに言えば、この種の答申を神奈川県で拒否された前例はありません。
 それで、私が言いたいのは、子供たちに対する内心の自由、内心の自由を尊重するといいながら、教師を通してある種の学校行事に対して大きく流し込んでいくような態度、それは結局父母に対しても及んでいくことになる。
 ことしの四月の大阪府立高校の入学式、この入学式には府教委の職員が派遣されて、そして状況をつぶさに観察し、入学式状況票なるものを府教委に提出する、こういうものです、なかなか詳細ですね。
 ある高校について言えば、起立した者、起立したか起立しなかったかがこうやって問われるわけだけれども、新入生十割、教職員十割、4の項にPTA役員という項目があって、会長のみ立たず、こう書いてあります。PTA会長というのは一人しかいませんから、どなたかということはすぐわかる。そして、この入学式状況票なるものも情報公開により開示されて、そしてそのPTA会長さんであるということが明らかになる。
 府教委はどういう態度を述べているか。入学式でPTA会長の行動という個人が特定できる中で、PTA会長がとられた行為は、他人に知られたくないと望むことに当たらないと府教委は一方的に判断していますね。そして同時に、府教委は、不必要な個人情報を提供したということはあるが、思想、良心の自由を侵害したとは思わない。
 私は、この経過を見て、非常に腹立たしいというよりは寂しい思いがしました。個人の内心の自由を侵害しておきながら、それを侵害したと感じ取ることができない人物が教育行政の中にいるのかという思いです。閉鎖された社会の中でしか通用しないいびつな意識が、もしかしたら一部の教育行政を支配しているのではないか。この状態を速やかに改めなければならない。
 このケースのように、PTA会長の名前がわかる、私はあえてそれが何という高校かというのはここでは申しませんが、そういう事態が今現実に進んでいることについて、文部大臣はどうお考えですか。
遠山国務大臣 御指摘の点は、大阪府教育委員会が、ことしの入学式の実施状況につきまして、管下の学校について調査をした際のことと承知しております。ある高等学校の調査票に、国歌斉唱時に起立しない来賓がいた旨の記載があったようでございます。
 この調査票につきましては、情報公開によって全校、調査票を開示した際に、個人が特定できるとの指摘を受けて、府教育委員会は、検討の上、不必要な記載であることから、その記載部分を削除したという報告を受けております。
 一般的に言いまして、教育委員会が管下の学校に対して教育課程が適切に実施されているかを調査することは必要なことでございまして、その中で書かれたことについての今回は対応がなされたというふうに考えているところでございます。
 その調査につきましては、あくまで、児童生徒、教職員はもとより、保護者の内心にまで立ち入ろうとする趣旨のものではないと承知はいたしております。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
児玉委員 遠山大臣、今のお話は、さっき私が言った特殊な社会の中でしか通用しないいびつな意識だと私はあえて指摘せざるを得ません。普通の民主主義の感覚がある者であれば、大体こういう記入はしません。そして、この記入されたものがそのまますうっとある省庁の中を通り抜けていって、だれも事柄の特異性に気がつくことなくここまで事態が推移する、そこに今日の日本の教育状況の深刻さがあります。
 今私が挙げた事例は、本当に氷山の一角でしかありません。私はあなたに言いたい。このような状況は日本の学校教育にどんな状況を生み出しているか。多数の子供や教職員、父母に対しては精神的な苦痛を、教育行政の担当者や校長さんの中には極端な精神的退廃を生み出している。
 そこで、私は最後にあなたに二つの根源的な問題を提起して、答えを求めたいんです。
 その第一は、法律で強要できないものがどうして学習指導要領によって強要することができるのかという根源的な問題です。もう一つの問題は、最高法規である憲法十九条があらゆる留保なしで絶対的に保障している内心の自由を学習指導要領で制限し、侵害することが許されるのか。この二つの根源的な問いかけに対してあなたはどう答えますか。
遠山国務大臣 学校におきます国旗・国歌の指導は、学習指導要領に基づきまして、これは強制ではなく、児童生徒に我が国の国旗及び国歌の意義を理解させてこれを尊重する態度を育てる、同時に、諸外国の国旗及び国歌に対して尊重する態度を育てるというために行うこととしていることでございます。
 国旗・国歌の指導は、憲法、教育基本法に基づいて、人格の完成を目指し、民主的、平和的な国家及び社会の形成者としての国民の育成を目的として行われるものでございまして、憲法十九条に定めている思想、良心の自由を制約しようとするものではなく、同条には違反しないと考えるものでございます。
 きのうワールドカップがございまして、日本・ベルギー戦がございました。私も担当大臣でございますので会場に行きまして、日本の国歌が流れましたときに、みんなほうはいとして立ち上がって、六万人近い人たちが君が代を歌い、日の丸の旗を揺らがせて、そして日本国民であるということに誇りを持ってあのスポーツ大会を楽しんでいた。そういうのが私は多くの国民の心情であろうかと思っております。
 そういうことは本当に大事なことでございまして、学校教育の場を通じてもいろいろな機会にそういうことへの関心を持たせていくということはしっかりとやっていかなくてはいけないなと思ったところでございます。
児玉委員 時間ですから、最後に一言。
 あなたが今おっしゃったことについて言えば、私もこの原稿を書きながらあれを見ていまして、鈴木選手が見事に飛び込んで一点を入れたときはとてもうれしかったですよ。そして、さっき言った札幌南高校の生徒の言葉をもってあなたに、お答えにしましょう。サッカー場で見る日の丸はすばらしいけれども、卒業式の場にそれを持ち込まれることは私は反対だ。そこが一つなんです。
 もう一つ、私のあなたに向けた二つの問いかけにあなたは一つも答えていない。学習指導要領は大綱的基準だと言っていたものを、あなたたちは今、最低基準だと言い出しているじゃありませんか。その最低基準で、法律で強制できないものがどうして強制できるのか、そのうち答えていただきたいと思います。
 終わります。
河村委員長 北川れん子君。
北川委員 社会民主党・市民連合の北川れん子です。
 私は、前回、五月二十九日に引き続きまして、二〇〇〇年に成立しましたヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律と、今の再生医療の現場、またES細胞樹立に向けての急速な進展とを絡め合わせまして、不妊治療の問題とも兼ね合って、引き続き質問をさせていただきたいと思っています。
 今、どうしても、前回もなんですけれども、社会的な議論というのが成熟していない中で、研究者の、研究をやりたい、おもしろい、新しい分野だということでの意欲と、多くの人たちが余り多くの、言葉遣い自身を知らない中でとり行われていくということへのそごをどう埋めるかという議論を前回させていただいたと思うんです。
 例えば、不妊治療の現場ではこういう言葉が使われていますね。精子進入検査、ハムスターなんかの卵に男性の精子がうまく入るかどうか、そういう勢いがある精子なのかどうかということで、受精卵をつくることができる精子かどうかを調べるという検査らしいんですけれども、不妊治療の現場というのは、本当に人数が少ないカップルの中でとり行われる、そこでしか卵とか胚とか受精卵とか、そういうものを入手することができないということで、ここに偏って現場が盛り込まれていくので、今言ったわけです。
 もう一つは、最近報道がありました、卵子を若返らせ受精成功ということで、核を取り除いて若い女性の卵だけ、その核を取り除いて四十五歳前後の方の核、だから遺伝子はその四十五歳の方の遺伝子だからその人の子供だという意味だろうと思いますが、そういうことで、二十代の女性が提供して、幾ばくかの、二十例の中の一つが、子宮に戻すことはまだしていないんですが受精をした、受精卵になったという報道もありました。
 ということで、私たち、やはり不妊治療の現場のことをもっと一般化して、話して、これを言えば、例えば、精子進入検査というのがどういう問題なのか、聞けばわかる。それは自分が不妊治療の状況というものを経なくてもわかる。卵子を若返らせる受精卵とはどういう意味を持つのか、それもわかる。試験管ベビーと言われた衝撃的な言葉遣いが、余りにもわからなかったので衝撃的というふうになるわけですが、そういうものをもっともっと社会に議論を提供しながら、生命倫理の問題と絡め合わせて、日本はどの道を行くのだということをもう少し私は深めていく必要があると思います。
 その一つの事例で、まずお伺いしたいんですが、不妊治療ですので、排卵誘発剤というものを使うと聞いています。私は、陣痛促進剤とかで医療過誤があったとかということをお伺いしたり、正常分娩ができるのに陣痛促進剤を使われて命も落としてしまった、それはおなかの中にいる子供だったり母体だったりするという例を知っているわけですが、この排卵誘発剤での副作用、近年の後遺症の症例とそして過去の件数、またこの排卵誘発剤を使っての死亡の件数が把握されているようでしたら教えてください。
鶴田政府参考人 それではお答えしたいと思います。
 製薬企業は、みずから製造または輸入承認を有する医薬品、疑われる重篤な副作用等を知った場合には、薬事法の規定に基づき、厚生労働省に報告することが義務づけられております。あわせて、医療機関等に対しても、通知により、副作用等、情報の報告について協力を求めているところでございます。
 このような規定に基づきまして、厚生労働省は、排卵誘発剤の使用による副作用の報告は平成六年から現在まで四百四十件ございまして、そのうち、排卵誘発剤の使用との関連が否定できない副作用による死亡例として五例、副作用発現後何らかの症状が残った症例として七例の計十二例の報告を関係企業または医療機関等から受けているところでございます。
北川委員 先ほどもおっしゃいましたように、四百四十件の事例は何らかの形で送られているけれども、因果関係を本当に証明できたのがそのうちの死亡例が五例、後遺症が七例ということなんですが、これが多いか少ないかということできょうお伺いしたかったわけではないので、これも、緊急安全性情報というネットワークの中で報告があったものだということで、すべての、五百二十七の不妊治療を専門的にやる医療機関が日本にはあるということなんですが、そこを通じて調べた件数ではないということを前段でもお伺いしておりますので、もっと多いと思いますし、医療的な面での因果関係というのは、発症した方または死んだ方の遺族が証明していかないといけないという日本の医療裁判のシステムになっているところでとても難しいということですので、この不妊治療の現場、子供を産む、これはまだ、おなかに着床とかということでなくて、受精する段階だということで、出産とかという以前の問題の段階で死んでしまうんだということを重要に考えたいと思うわけです。
 それほど卵や胚を女性の体からとる特殊な行為ということは、不妊の治療だからということで一定程度許されているんですが、でも、まだまだ問題が多く存在しているし、女性たちにとって、子供を持つことの意味が、女性はどうしても押しつけられて、子供を持たないと一人前に見られないという前近代的な旧弊な考え方、家族制度の中でからめ捕られて、子供を持たざるを得ないというふうに自分を思い込んでいる女性も多いということで、私は、この問題はもっとジェンダーの解放や女性の平等施策等々が進む中では意識は変わってくると思いますので、この排卵誘発剤で死亡するということは重く見ていただきたいというふうに思っています。
 本当は、この緊急安全性情報センターとかというネットワークのシステムだけではなくて、もう少し、どういう状況になっているのか。先ほど、大きな後遺症として七例というふうに言われたんですが、排卵誘発剤における副作用というのは、逆に言えばすべての人が感じるとも言われています。例えば、私も、不妊治療の現場の皆さんというか、治療を受けた方とお話をする中で、真っ白にしらがになってしまった方も知っていますし、また、目まいや動悸が激しくなったり気分が悪くなったりという意味からおいても、何らかの形での副作用は割と多くの方が感じていますので、その辺などもぜひ実態調査をしていただきたいというふうに思います。
 今、そういうことで、不妊治療の現場で、卵をとるだけ、受精卵をつくる前に死亡するということが現実の中にあるということをぜひ認識をして、次に進めたいわけです。
 先ほど言いました精子進入検査、私はまたその不妊治療の方たちとお話ししていると、女性側にそういうことを医療機関から尋ねられたと。何々さん、あなたの彼の精子を進入検査をしていいですか、悪いですかというのを聞いたということで、どうして女性に聞くのかなというお話をしていたんですが、女性しか不妊治療の現場に行かない、カップルで行くケースというのはほとんど少ないということで、女性しか行っていないケースが多いので女性の方に聞かれたのかもわからないんですが。
 この精子進入検査というのは、ハムスターと言いましたけれども、動物ですね。透明帯を除去したハムスターの卵子に先体反応を起こしたヒトの精子が進入することができるかどうか、膜を破る力があるかどうかを検査するらしいんですけれども、これが進むと受精卵になると思うんですが、これは、二〇〇〇年に成立した特定胚の中の規定でありますヒト動物交雑胚、受精卵から胚になっていくわけですが、これに当たらないのかどうかを次にお伺いしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えいたします。
 ハムスターの卵などを用いたヒトの精子の検査につきましては、個体発生に至らないことから、医療機関内にとどまる簡略な手続でよいというふうに考えられているところでございます。
北川委員 今、ごめんなさい、遠藤局長のお声がちょっと途切れ途切れになったのでわからなかったのですが、ヒト動物交雑胚という胚になることは物理的に無理だということですか。医学的に無理と言った方がいいのかどうかわかりませんが、なる可能性はないので大丈夫だということを言ってくださったのでしょうか。
遠藤(昭)政府参考人 報告書によりますと、特定胚には当たらないという報告が出ております。
北川委員 どうしてですか。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 それは、先ほどもちょっと申し上げましたが、個体発生に至らないということからでございます。
北川委員 それは詭弁だと思うんですね。
 個体発生というのは、着床しないと個体発生に至らないわけで、あのときも、ヒトクローン法で一番問題だったのは、人間の体に着床しなければいいというただの法律なんですよ。そこに問題があるんじゃないかというふうに、私は二〇〇〇年の議論のときに詰めてお伺いしたと思うんですが、着床するという行為をすればオーケーな、個体をつくることは可能なので、これは胚になるものですね、医学的に。
遠藤(昭)政府参考人 厳密に申し上げますと、個体発生に至る可能性がないということからだと聞いております。
北川委員 可能性に至らないということは、このときにできたかもしれない受精卵、胚というものが廃棄された証明というものまで不妊治療現場でとるということを厚生労働省は指導されているということですか。
今田政府参考人 ちょっと突然の御質問で的確な答えになるかどうかわかりませんが、今遠藤局長の方から申し上げたように、人間の精子とマウスの卵子が受精をすることがない以上、着床するとかしないとかは関係なく、受精をしないんだから胚にならないというふうに御説明をされたのだというふうに理解をしております。
 つまり、着床する前の段階で、マウスの遺伝子を持つ卵子と人間の精子というものは、遺伝子が全然違うわけですから、そういったものが合わさって胚になる、つまり、受精をし、染色体が、まざり合うというか、重なり合うというようなことそのものが起こらないという意味において、胚にはならないという御説明だというふうに理解をしておりますので、それ以降についての厚生省の対応につきましては、私の方から今御答弁する必要はないのかというふうに思います。
北川委員 今の御答弁は胚にならないという、その前は個体にならないということだったと思うんですが、前段の議論の中で、キメラとかハイブリッドとかというのは禁止ということなんですが、人間と動物というものは、卵や精子をいらうことで胚にはならないんですか。可能性はないわけですか。霊長類同士とかという場合はないわけでしょうか。ハムスターではないかもしれないということは、医学的に確証されているということでしょうか。動物と、例えば豚と人間、猿と人間、チンパンジーと人間というものは、可能性がないのでしょうか。
今田政府参考人 私が答えるべきかどうかはよくわかりませんが、少なくとも人為的に、つまり遺伝子と遺伝子を取り出してくっつけるとか、いわゆる人工的操作を加えた場合にどうかということは、可能性としてあるのかもしれませんが、通例、一般の精子と卵子が異種間で胚化する、あるいは受精化するということについては、ないものと私は理解をいたしております。
北川委員 しかし、クローン法は、まさに胚を人工的に使うことを可能にするといった意味も持たせて範囲を広げたという意味で、私は、この法案というのはもっと慎重に審議をする、そして審議する側も基礎的な医学知識というものを兼ね備えたということで必要ではないか、それは何かというと、時間をもっとかけた方がいいのではないかというふうに言ったわけですから。
 まさに人工的に胚をいらうことが何をもたらすのかということで、可能なわけだということを今御証明になったと思うんですけれども、今一番つくりたがっているのは、人クローン胚をつくりたいということが世界的に、アメリカも今それで混乱をしているということであります。ブッシュさんはこちらの面に関しては、生命倫理は、彼、もしかしたら高いのかもわからない。もしかしたら、他国の領土を攻めるということに関してはまた違うんですが、生命の萌芽に対しては、彼はすごい厳格な意識を持っていたんですが、そのことが、でも、産業界からのいろいろな圧力で、あのアメリカでさえ、大統領が言ってもなかなか難しい状況にあったという報道もあります。
 日本の状況の中で、人クローン胚をつくりたいというような働きかけ、前回はさらっと流されたわけですが、あえてお伺いするわけですが、そういう動きはありますね。全くないのでしょうか。人クローン胚をつくりたいという打診みたいなものは全くないのでしょうか。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 前回も申し上げましたけれども、私どもの方にそういったことのお話ということは来ておりません。
北川委員 厚生労働省までは行っていなくても、日本産科婦人科学会とか、例えばどこどこ大学の医学生命倫理部会とかへ働きかけているとか、そういう水面下の情報というものを入手されていませんでしょうか。
 そして、次にお伺いしたいんですが、この人クローン胚をつくるだけだったら、どれぐらいの罰金になるんでしょうか。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 クローン技術等規制法によりますと、第六条一項で、特定胚を作成という、その場合には、届け出なければいけない。その一項の規定による届け出をしないというふうな場合、そういった場合には、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するということが十七条に規定をされております。
北川委員 ということで、前段では、個体、人クローン人間、着床ということまでなる人の個体の中に入れたら一千万円だったんですが、人クローン胚をつくるだけだったら百万円ということで、もしかしたら、これぐらいだったらいいわという感じというのは、逆に言えば業界ではもうあるというふうに私も思いますし、世界のいろいろな情報を読んでいると、そういう方向というものにあえてやはり踏み入るという段階に来たというふうに思うわけです。
 次にお伺いいたしますけれども、中絶胎児のことを前回もちょっとお伺いしたんですが、中絶をすることの是非ではなくて、中絶胎児を使う研究というものの申請が、何か審査する仕組みにはなっていないということを前段でお伺いしたわけですけれども、報道の方からでは把握ができるので、中絶胎児を使っての研究というものをぜひ、この間お伺いをしておりますので、今の、きょうの段階で、例えば京大とか阪大とか国立大阪病院とか、いろいろあるらしいんですけれども、幾ばくかの研究例が出ていないかどうかをお伺いしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 中絶胎児の組織とか細胞を使った研究として、私ども聞いておりますのは、慶応大学等のグループにおきまして、人工中絶胎児の神経幹細胞を脊髄が傷ついたサルに移植して、運動機能を回復させるという研究、それから、京都大学や大阪大学あるいは独立行政法人産業技術総合研究所ティッシュエンジニアリング研究センター、ここにおきまして、人工中絶胎児の神経幹細胞を取り出して培養する研究が行われているというふうに聞いております。
北川委員 慶応なんかはよく、慶応の優秀な若い男の大学生の精子というのは高く売れるんだと。人工授精において彼らの精子というものはお金の価値がつけられているということもまことしやかに流れているのが現状なんです。
 今、四例ぐらいをおっしゃっていただいたわけですが、中絶胎児を使うということの是非はないまま、症例が、今の少なくとも四件ですか、おっしゃっていただいたんですが、そのことに対しての厚生労働省は、審査する仕組みもないわけですから、いいということが社会の中に合意されていると思うんですが、多くの人が、まさか中絶胎児をこういう研究に使っているということは知らなかったと思うし、知らないと思いますが、この以降、審査をする仕組みとか、それ以前では中絶胎児というものを使っていいかの議論というのはするべきだと思うんですね、特に女性も交えて。それに関してはどのような御見解をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
今田政府参考人 御指摘の中絶胎児を扱っての研究というものにつきましては、厚生労働省としては、ちなみに厚生科学研究費の中で把握いたしましたのは一件ございます。家族性遺伝性疾患の解析のための情報・検体の集積分配ネットワーク構築に関する研究ということで、平成十年から三カ年行っておりますが、そこでは、遺伝性疾患等の解明に向けた胎児の検体、それから遺伝情報の集積等について研究を進めていらっしゃいます。
 これにつきまして、日本産婦人科学会あるいは人類遺伝学会等が策定をいたしております倫理規程に基づいて行われているということで、私ども、関係学会のそういった倫理的な規範のもとで適切な研究が行われるようにという意味では、この研究においては適正に行われていると思いますし、今後の研究においても、こういった倫理規程に基づいて行われる必要があろうかというふうに理解をしております。
北川委員 これは将来に向けて、多くの人たちの、自分は一体、人間は一体何なんだろう、人間はどこから来たんだろうという根源的な問い、ということは、哲学性というか思想性をもたらすわけで、大きく時代が変革する、こちらの方に変革するのか、人類の歩みの中で変革していくというのか、大きな分かれ目だということもあって、そういう産婦人科学会に関係する人というのは、人口一億二千万人いて、その何%かですよね。そういう学会等々だけでこの問題を帰結させていっていいとお思いになっているのかというのをあえてお伺いしたいと思います。
 それともう一つは、先ほどの特定胚の件なんですけれども、特定胚の研究も届け出だけということで今は済まされているというふうにお伺いしました。六十日間の審議ということでお伺いしているわけですけれども、この届け出制という仕組みだけでいいと思われているのか。ある日一斉に査察に入る、監査に入るというようなことをしなくて、届け出だけで、研究者の良心というか善意というのか、そういうものだけに任せておいていいのか。そしてまた不妊治療カップルの、また女性の善意の同意ということだけで事を進めていっていいというふうに思われているのかどうか、その辺もあわせてお伺いしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 特定胚の研究につきましては、適切な規制を行いながらも、有効な研究の進展が阻害されませんように技術の急速な進展に対応をしていくということが望ましいと考えております。
 したがいまして、技術の急速な進展に柔軟に対応できるよう、法律に基づく指針、告示を定めまして、その遵守義務というものを課しますとともに、その遵守状況を確認するため届け出制を採用しているところでございます。
 この届け出制というのは、単に届け出をすれば研究を開始できるというものではございません。クローン技術規制法八条によりまして、届け出後六十日間は研究に着手できないという実施制限が課されております。その間に国で内容をチェックしまして、必要に応じて計画変更命令を出すことができるということが七条に書いてあります。
 さらに、そのほかにも、特定胚の取扱中止命令とか、あるいは立入検査、報告徴収など、国が強制力を持った監視を行うことが可能となっております。また、特定胚の作成等の届け出等に違反した者には、一年以下の懲役または百万円以下の罰金が科される、こういうふうになっております。
北川委員 今のお言葉の中で、やはり気になったのが、技術の急速な進展にどちらかというと人間を合わせていく、生理を合わせていくということで、もっとおおらかな、人間になるその長い歴史というか、たった二千年が人間の社会というものの歴史であって、人間が海から生存してきたということを思えば、六十億年ぐらいの時間をかけて人間になったわけですが、そのことをどう思うのかという意味でお伺いしたかったんです。
 だから、技術というのは危ういもので、技術というものの前にひれ伏す人間というものを日本は目指そうとしているというふうになっていっていいのかというのを、もう少し議論を、一般の人々が話せるようにしていっていただきたいということを今の御答弁でやはりどうしても思わざるを得ないわけです。
 それで、前回の二十九日の未定稿というのを出していただいたんですが、そのときに遠藤局長のお言葉の中に、私が聞いた質問ですね、再生医療の現場でいろいろな研究、特許、次特許に行くわけですが、特許をとるようような申請というものが出されているんじゃないですかという問いに、四月に確認されたばかりでございまして、そういう具体的な特許という例がまだ出ていないというふうに言われたんです。
 そのとき、私も余り意識していなかったわけですが、出ていないからという意味でおっしゃったということなんですが、その後専門的に研究していらっしゃる方から教えていただきましたら、京都大学再生医科学研究所の笹井芳樹教授が、マウスのES細胞をドーパミン産生細胞へと分化させることに既に成功している、この技術の特許は協和発酵が取得をしているというふうにも聞きました。
 これは、二月二十七日に開かれた総合科学技術会議第十二回生命倫理専門調査会においても、笹井教授がみずから発議をされたというか、答弁をされているわけですが、私が聞いた、例えば、特許をとった事例等々を御存じないのかといったことにこの研究というのは当たらなかったから、四月に確認されたばかりだから、そういう特許という例はまだ出ていないというふうに言われたのかどうか、その辺をちょっと具体的にお伺いしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 お答えします。
 今のお話、マウスの例でございますが、ヒト胚ではそういったことがないわけですが、そもそも、私も先日申し上げましたのは、誤解があるといけませんが、出ておりませんという事実を述べただけでございまして、出ていないから特許についてどうこうするということではございません。その点は、誤解がありましたら、訂正をさせていただきたいと思います。
北川委員 あるわけです。
 私は先ほど、六十億年の太古の昔から人が人たるところに来た時間の長さというものと、次の意味はお金、この社会はお金ですから、何事もお金で聞いていった方がわかりやすいというふうに思って、前回も聞きました。でも、話がどうもそらされるわけですね。そのとき遠藤局長は、前回も、特許で入ってきた収入は、それを開発した研究者にバックされるということはありますが、患者さんの方にはいきませんというふうに言われているわけです。
 けれども、私は、一つ一つ、この協和発酵が特許をとって、どれぐらいの市場で、どれぐらいもうけられていくのかというのはよくわかりませんし、マウス、豚、人というのがどれほどの違いがあるのか。この研究においてはもう横並びなんですね、マウスも豚も人も物体としては一緒。そういう意味で、私はヒトクローン法で一番こだわったのが、このヒトクローンのヒトは片仮名でヒトだったのですよ。これは、六十億年以上の長い時間をかけて人が人たるゆえんで来た人間という意味の問題が全部はぎ落とされた片仮名のヒトだなという意味でこだわったわけですけれども、だから、実験段階では、片仮名のヒトも豚もマウスも一緒という意味であるというふうに思うわけです。
 アメリカのアドバンスト・セル・テクノロジー、ACTと言うらしいのですが、例えば、ここでは、先ほど言いました卵子の若返らせ受精の成功には、若い二十代の女性の卵というものが必要なんです、もしかしたら十五、六の人たちのもっと若いのがいいのかもわかりません。今回は善意の第三者である人から提供されたということで、無料か有料かというのは書いてなかったわけですが、アメリカでは、これはもう既に、四千ドルということですから、四十万円で買うということをしているらしいのですね。
 そういう意味において、私は、特許をとっていく事例というのがどんどんふえていくと思うわけですが、どうしていつまでも患者さんの方にはいかないという、これはすごく議論がかみ合わないところにいくと思うのですね。善意の提供者から無償で、物すごく多くの医療的進歩をしたことが、今度医療を受ける人たちが無償でその医療の技術を提供されるんだったら話はわかるんですが、医療を受ける側も無料じゃないわけで、なぜ患者の方に、特に不妊治療をしているカップルまたは女性の方には何ら有償ということへの議論をしようとしないのか、しようとする発想がないのか。
 前回の質問でも感じたのは、そういう発想がないんだなというふうに思ったわけですが、それは、あえて言えば、これにまつわる多くの小委員会や専門部会なども女性の委員というのはほとんどいませんし、不妊治療の女性の意見を聞いてほしいと何度も言っても厚生労働省はなかなかそういう機会も持たないという、どこか男性だけでやっていらっしゃる状況があるからなのか。第三者の善意の提供の無料がいいという意味はどういうことなのか、教えていただきたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 これを議論されておりました生命倫理専門調査会、ここでも女性の委員の方は何人か入って御議論をいただいております。それが一つでございます。
 それから、ヒト胚は、人の生命の萌芽としての意味を持っておりまして、人のほかの細胞とは異なって、倫理的に尊重されるべきである、慎重に取り扱わなければならない。そういったことから、指針の第四条におきましても、「ヒトES細胞の樹立の用に供されるヒト胚は、必要な経費を除き、
無償で提供されるものとする。」というふうに、専門家の報告に基づきそのように定めているところでございます。
 また、インフォームド・コンセントの際にも、ヒト受精胚の提供は無償で行われるため、提供者が将来にわたり報酬を受けることのない旨を明記するというふうにされております。
 このように、ヒト胚の提供者はそのことにより報酬を受けるということは、私どもは適当ではないと考えております。
北川委員 私はとおっしゃったので、局長はそうだということで、もし局長が違う方にかわられたら議論がまた違う方向へ行くのかなという気はしたのですが。
 去年の十月二十五、二十六で、ヒト細胞株を競売にということで、学会理事長が担保、幾らぐらいになるか試算をしてもらったら、その評価額が一億六千万だったと。これは一人一人で見ると五百三十万ぐらいのお金になるわけですが、このときも、この人たちはヒト細胞株というのは無償で提供されたものがお金になるという事例で、私はこれを興味深く読んだわけです。
 でも、片やでは、余剰胚も自分の子だ。今減数治療がいいかどうかという、どうしても排卵誘発剤を使うと多胎になるわけで、そのうちいいのだけを選んで二つとか三つとか、もちろん双子さん、三つ子さんというのは育てるのは大変なので、六つ子や八つ子や十人ぐらいとかになると大変だということももちろんあると思うのですが、時間差をずらしてやれば、今凍結受精卵というのは長く使うことができるらしいので、ある方にとっては余剰胚も自分の子で、次につくるという可能性は薄くても、どうしても、じゃ、捨てるというふうにはいかなくて、二年間延長してもらうというので二万円お金を納めたという記事も片やでは出てきていますね。
 そういうとこら辺で、次にお伺いしたいのは、卵子及び卵胞細胞を使った研究というものもあるわけです。
 今問題にしてきたのは、ずっと受精胚のことを主にしてきたわけですが、これから未受精卵というものについても議論が、もっと欲しいわけですから、もっと欲しいというか、もう受精さすことなんかいとも簡単で、今度は未受精卵が欲しいというふうになっていくと思うのですが、この卵子及び卵胞細胞を使った研究は、今まで、過去にどういう同意のとり方をしたり、どういう研究があったのか。事象がありましたら教えていただきたいと思います。
 そして、これから未受精卵が使いたいという、研究材料に挙がってくると思うのですが、ガイドライン等々、また法的な規制というものをつくっていこうと考えているのかどうか。
 そして、ちょっと時間がないので、先ほどの点では、担保にする、お金が一億六千万にもなるようなヒト細胞株の問題も含めて、特許がとれる市場があるということで研究が盛んになっているわけですから、無償の提供ということに関しては、この件も含めて、あえてやはりどう思っていらっしゃるのかというのを、三つお伺いしたいと思います。
遠藤(昭)政府参考人 まず、文部科学省の立場から申し上げますと、卵子それから卵胞細胞、これを使った研究は生殖補助医療の分野で行われているようでございます。先ほど先生がおっしゃった、新聞等で卵子の若返りといったような表現で報道されていたようでございます。ただ、私どもとしては、詳細な内容は承知をしておりません。
 この卵子等を使った研究の実施に当たりましては、平成十四年の一月に、日本産科婦人科学会の会告、見解がありまして、この会告におきまして、卵子等の取り扱いの条件として、「提供者の承諾を得たうえ、また、提供者のプライバシーを守って研究に使用することができる。」というふうにされているところでございまして、提供者本人のこれによって同意が得られているんだろうというふうに考えておりますが、具体的な研究等につきましては承知をいたしておりません。
大熊政府参考人 ヒト胚の関係につきまして、総合科学技術会議の方でも検討しているところをちょっと申し上げたいと思います。
 と申しますのは、先ほど来のお話でいきますと、北川先生の個々具体的に挙げられた事例、いずれも、ヒトの胚についてどういうふうに考えていったらいいのかという基本的なところの議論、これが大事だということだろうと思っておりますけれども、このヒト胚の問題につきましては、先生先ほど来言っておられますところのヒトに関するクローン技術等の規制に関する法律の中で、ヒト受精胚の人の生命の萌芽としての取り扱いのあり方に関して総合科学技術会議で検討しなさい、こういうふうに法律で書いてございまして、これを受けまして、現在、総合科学技術会議でも検討しているところでございます。
 その際、受精卵も、また未受精卵につきましても、この検討の必要な範囲内において議論しているところでございますが、自然科学のみならず、法学、宗教学、哲学的な問題まで含めて、幅広い分野の方々から構成される生命倫理専門調査会、これを設けまして調査検討しております。その際に、調査検討する際も、公開の場で進めてございます。
 それで、議論の対象として、こうしたヒト受精胚などの人の生命の萌芽としての取り扱い、これはどうあったらいいのかという点についての議論、これはそれぞれの方々が抱く生命観とか倫理観、あるいは科学観にも深くかかわる問題でございますけれども、非常に幅広くやはりこれは議論する必要がある、また時間をかけて議論する必要があるというふうに考えております。
 現在までのところ、十回、専門調査会、検討しておりますが、その際に、先ほど申し上げましたようなさまざまな分野の方々についても、例えば具体的には、実際に体外受精を行おうとしている方々の話も聞きましたし、あるいはそれを実際に実行している産婦人科の先生の話も聞いておりますし、また、こういう専門調査会の場で、さらに現在五十人ぐらい、いろいろな各方面の方々の話を事務局の方も聞きまして、またその先生方の話を専門調査会の中でも聞いていただいておりまして、この議論を今進めているところでございまして、このクローン技術の法律に関する求めは、平成十五年の秋ぐらいを目途に最終的な結論ということでございますので、それまでの間に議論を詰めていきたい、こういうふうに思っているところを申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
北川委員 時間が来たので最後になりますが、やはり普通の人がもっと議論が深まるような材料を提供していくべきではないかというふうに思います。
 ドリーの生みの親が、クローンはすべて遺伝子が異常であったというふうに警告をしています。だから、だれもが個体をつくることへの意欲はないわけで、そして片やでは、ことしの四月は、クローン細胞移植は拒絶反応がない。こっちなんですよね、みんなの意識が向いているのは。
 だから、胚が必要ということでの深まりが、どちらかというと、個体の方への魅力はもちろんないわけだというのが前提で、もう二〇〇〇年の議論のときにもあったと思いますので、私は、やはり多くの人たちが、生命倫理の問題から、命の萌芽ということで胚をさわっていいのかどうかということは、もう一度、普通の人たち、例えば中学生や高校生の授業においても話せるぐらいの材料を提供した上で、社会的議論を巻き起こしてからしか踏み込めないというふうに思いますので、ぜひ、その辺なども御検討いただくということをお願いして、きょうの質問を終わります。
 ありがとうございました。
     ――――◇―――――
河村委員長 次に、内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国の著作権制度については、これまでも逐次改正を行い、その充実を図ってまいりましたが、近年、情報伝達手段の発達等に伴い、著作物等の利用形態の一層の多様化への対応や、著作権法制における国際的な協調の必要性がますます高まっているところであります。
 この法律案は、このような利用形態の多様化等を踏まえ、放送事業者及び有線放送事業者の権利の内容をインターネット等新たな情報伝達手段の発達に対応したものにするとともに、世界知的所有権機関、いわゆるWIPOにおいて、平成八年十二月に採択された実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約の締結等のために必要となる改正を行うことを目的とするものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について申し上げます。
 第一は、放送事業者及び有線放送事業者に対して、インターネット等を用いた無断再送信を差しとめることができるよう送信可能化権を付与することであります。
 現在、著作者、実演家及びレコード製作者には、既に送信可能化権が付与されておりますが、従来はインターネットによる動画の再送信が容易でなかったことから、放送事業者及び有線放送事業者には付与されておりませんでした。しかし、近年、通信回線の大容量化及び高速化に伴い、番組を無断で再送信する行為が行われるようになってきていることから、放送事業者及び有線放送事業者にも送信可能化権を付与し、放送及び有線放送について、インターネットを用いた無断送信を差しとめることができることとするものであります。
 第二は、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約の締結等のために必要となる改正を行うことであります。
 この条約は、インターネット等新たな情報伝達手段の発達に対応し、実演及びレコードに関する国際的な保護制度の改善を図るためのものであります。この条約の内容については、実演家及びレコード製作者に対する送信可能化権の付与などこれまでの法改正により、その主要部分への対応を終えておりますが、この条約の締結のためには、一部法整備が必要な事項が残されているため、今回の改正により措置するものであります。
 具体的には、まず、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約により我が国が保護の義務を負う実演及びレコードを、著作権法により保護を受ける実演及びレコードに加えることであります。
 また、実演家に、その人格的利益を保護するため、実演家人格権として、第一に、その氏名や芸名を表示し、または表示しないこととできる氏名表示権、第二に、自己の名誉または声望を害するその実演の変更、切除その他の改変を受けないこととできる同一性保持権の二つの権利を付与するとともに、他方で実演の円滑な利用に配慮し、これらの権利に係る規定を適用しない場合等について定めることであります。
 さらに、レコードの保護期間について、その起算点を変更し、レコードの発行が行われた日の属する年の翌年から起算して五十年を経過した時をもってその保護期間が満了することとすることであります。
 最後に、施行期日についてであります。
 この法律は、放送事業者及び有線放送事業者に対する送信可能化権の付与に係る部分については平成十五年一月一日から、実演及びレコードに関する世界知的所有権機関条約に係る規定の整備に関する部分については同条約が日本において効力を生ずる日から、その他の部分については同条約が日本において効力を生ずる日または平成十五年一月一日のうちいずれか早い日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
河村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後四時四十八分散会


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