衆議院

メインへスキップ



第14号 平成14年6月7日(金曜日)

会議録本文へ
平成十四年六月七日(金曜日)
    午前九時十分開議
 出席委員
   委員長 河村 建夫君
   理事 斉藤斗志二君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 田野瀬良太郎君 理事 増田 敏男君
   理事 平野 博文君 理事 山谷えり子君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 武山百合子君
      伊藤信太郎君    岩倉 博文君
      小渕 優子君    大村 秀章君
      岡下 信子君    金子 恭之君
      北村 直人君    後藤田正純君
      佐藤  勉君    杉山 憲夫君
      高市 早苗君    谷田 武彦君
      中野  清君    馳   浩君
      林田  彪君    松島みどり君
      松野 博一君    松宮  勲君
      森田 健作君    山本 明彦君
      大石 尚子君    鎌田さゆり君
      中津川博郷君    中野 寛成君
      藤村  修君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山口  壯君
      山元  勉君    池坊 保子君
      西  博義君    佐藤 公治君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      青山  丘君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   文部科学委員会専門員   高橋 徳光君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月七日
 辞任         補欠選任
  近藤 基彦君     松島みどり君
  谷垣 禎一君     佐藤  勉君
  谷田 武彦君     大村 秀章君
  馳   浩君     北村 直人君
  松野 博一君     山本 明彦君
  松宮  勲君     岩倉 博文君
  森岡 正宏君     後藤田正純君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     松宮  勲君
  大村 秀章君     谷田 武彦君
  北村 直人君     馳   浩君
  後藤田正純君     森岡 正宏君
  佐藤  勉君     谷垣 禎一君
  松島みどり君     金子 恭之君
  山本 明彦君     松野 博一君
同日
 辞任         補欠選任
  金子 恭之君     近藤 基彦君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第五七号)(参議院送付)


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――
河村委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫でございます。
 今回の著作権法の一部改正案は、現在のデジタル化、ネットワーク化の進展という時代の状況、それから知財戦略をつくっていかなくてはならないという状況、その中で、大変時宜を得た必要なもの、このように評価をしております。その上で、二、三、具体的なことについて質問をさせていただきます。
 今回の法改正には、実演家人格権の創設など、実演家の権利の拡充が盛り込まれております。実演家の権利については従来からさまざまな議論があるようですけれども、例示されるものには歌手、俳優などが多く、そうしたものが実演家のイメージになっているようでございます。しかしながら、我が国の文化を支える実演家には、例えば、先日亡くなられた小さん師匠のような落語家、講談師、浪曲師、曲芸師、漫才師、手品師など、さまざまな方々がおられます。
 文部科学省では、実演家の権利について考えるときには、このように、歌手、俳優というだけでなく、日本の伝統文化等を支えているこうした方々のことも当然視野に入れるべきであると考えておりますが、まず、現在の日本の著作権法において、落語家や漫才師など、いわゆる演芸を行う人々はどのような権利を与えられているのか、このことについてお伺いいたします。
銭谷政府参考人 現在の我が国の著作権法におきましては、著作権と著作隣接権という二種類の権利が規定をされております。
 これらのうち、著作権は、音楽とか映画、アニメ、コンピュータープログラムなどの著作物を創作した人が持つ権利でございまして、一方、著作隣接権は、著作物を伝達する人、すなわち、お話にございました歌手や俳優などの実演家、音楽CDなどを製作するレコード製作者、番組を放送する放送事業者などが持つ権利でございます。
 この著作隣接権を持つ実演家につきましては、著作物を演じる人が広く含まれておりまして、歌手や俳優のほか、お尋ねのございました落語家や漫才師などの演芸を行う人々も実演家として著作隣接権を持つということになります。
 また、例えば古典落語を演ずる落語家は、俳優の方と同じように著作隣接権のみを持つわけでございますけれども、御自分でネタを考えて行う、例えば新作落語の落語家の方とかというのは、シンガーソングライターと同じように著作権も持つ、したがって、こういう方は著作権と著作隣接権の両方を持つということになります。
 実演家といいますと、御指摘がありましたように、歌手や俳優をイメージすることが多いわけでございますけれども、ただいま申し上げましたように、落語家や漫才師などの演芸を行う人々も実演家として著作隣接権を持ち、また、みずからネタも考える方々は著作者として著作権も持っているということになります。
斉藤(鉄)委員 いわゆる演芸と言われる人々についても著作隣接権、もしくは著作隣接権と著作権両方、これが存在するという御答弁だったと思います。
 今回の改正においては、実演家人格権が新設されますけれども、これについても、俳優の演技の改ざんとか歌手の声の改ざんなどといったことが例示されることが多いわけですけれども、演技をおもしろおかしく改ざんするといった行為については、芸人ならいいだろうという発想があるのか、演芸の世界の人々が犠牲になることが少なくないようでありますし、いろいろその苦情も聞くところでございます。
 そこでお伺いしたいわけですが、今回新設を予定している実演家人格権の対象には、歌手や俳優だけではなく、芸人と言われる方々の演技も含まれるんでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、著作権法上の実演家には、落語家や漫才師など、芸人と言われる方々が広く含まれているわけでございます。
 したがって、現在、御審議をいただいております著作権法の一部を改正する法律案が成立をいたしますれば、実演家人格権が創設されるということになるわけでございますが、芸人と言われる方々も、実演家人格権として、名誉、声望を害する改変をされない権利、いわゆる同一性保持権と、名前の表示を求める権利、氏名表示権を持つということになります。
 具体的には、同一性保持権を持つことによりまして、芸人の方の演技を改ざんする行為を禁止することができるようになり、また、氏名表示権を持つことによりまして、落語や漫才などのCD、DVD、こういったものを販売する際には、御自分の氏名や芸名の表示を求めることができるということになります。
斉藤(鉄)委員 実際のビジネスの世界においては、芸人と呼ばれる方々は非常に弱い立場に置かれていることが多くて、例えば著作権だとか演芸家の権利だとか、そういうことを言うと、もう、次、あんた来なくていいよということを言われることが多いということも聞いております。非常に弱い立場の方々が多い、歌手や俳優の方々に比べて冷遇されることが多いとも聞いております。
 これを乗り越えるためには、芸人の方々自身も、例えば音楽の世界におけるJASRACのような団体を築いていくことが必要、こういう認識を持っておられるようでございますけれども、芸人の方々が、音楽におけるJASRACのように、著作権等管理事業、これを行う団体を結成するというふうなことは可能なんでしょうか。
池坊大臣政務官 斉藤委員は、今までにも、落語家、漫才師などの演芸を行う方々の権利について心を砕いていらっしゃいましたけれども、今御質問の、芸人の方々が団体を結成して自分たちの権利を集中して管理運営する著作権等管理事業を行うことについては、何ら問題はございません。
 一般に、芸人と言われる方々は、一部の有名な方々を除いて、放送局との交渉などでは交渉力がどうしても弱いという弱者の立場にいられる方が多いと思います。そういう方々が、団体の結成や管理事業による権利の集中管理を行うことによって、交渉力を高めるということは大変有効なのではないかと思っております。
 今、斉藤委員がおっしゃいましたように、JASRACと呼ばれております社団法人日本音楽著作権協会は、かつて弱者の立場にあった作詞家、作曲家が一人一人では交渉するのが弱いということで築き上げてきた管理事業者であり、芸人の方々についても、管理事業の実施等について、もし御相談がございましたら、必要な助言等を行っていきたいというふうに思っております。
斉藤(鉄)委員 昨年秋に、この委員会で、文化芸術振興基本法という法律をつくらせていただきました。この文化芸術振興基本法の中に、日本の伝統芸能、伝統演芸についても積極的に我々はこれを守って発展させていこうということを議論し合ったわけでございますけれども、その具体策として、こういういわゆる演芸を行っている方々の創意工夫、また実演家の人格権、こういうものを守ることが必要だな。実際の現場の声を聞いてみますと、これがなかなか現実には守られていないということでございますので、どうかこれらの方々の権利が守られるように文部科学省としても御配慮をいただきたいと思います。
 次に、もう一つ、最近話題となっておりますCDのコピーの問題についてお伺いさせていただきます。
 情報化の進展については、デジタル化ということとネットワーク化ということが重要な課題であると言われております。これらのうち、インターネットの普及などのネットワーク化への対応については、日本は国際的に見ても非常に進んでおり、今回の改正案にある放送事業者等への送信可能化権の付与も世界初の法整備と聞いております。こうしたネットワーク化への対応とともにデジタル化への対応も重要であり、今回の改正案にある実演家人格権の創設はむしろデジタル化対応である、このように思います。
 デジタル化によって完璧なコピー、一〇〇%コピーがつくれるようになった。アナログの時代はだんだんコピーを重ねていくうちに劣化していくわけでございますが、デジタルの場合はそれがないということで、一〇〇%完全なコピーがつくれるようになったということも従来から指摘されている問題でございます。
 特に、最近、音楽CDのいわゆる私的複製という問題が頻繁に議論されておりまして、このこととCDの売り上げの減少、それから中古品流通の問題が指摘されております。CDを買ってくる、デジタル化で一〇〇%完璧なコピーをつくる、買ってきたCDについてはこれを中古市場に売る、こういうこと。また、その私的にコピーしたものが、これは何度複製しても、コピーしても劣化しないわけですから、CDを一枚買ってきて、これが広く私的コピーが繰り返されて使われる、こういう問題でございます。
 この個人使用目的のデジタルコピー、法律でも個人使用目的というのは許されているわけですが、このデジタルコピーの問題への対応については国際的に見てどのような対策が想定されているのか、まずこの点をお聞きしたいと思います。
銭谷政府参考人 先生お話がございましたように、我が国を含めまして多くの国の著作権法におきましては、例えばテレビの番組を録画いたしまして後日見る場合のように、いわゆる私的使用のための複製というのは例外的に権利者に無断で行えるということとされているわけでございます。
 ただ、最近、お話のございましたように、デジタル方式の録音機器の普及によりまして、オリジナルと全く同じ品質のコピーができるようになってきております。お話にございましたように、例えばCDを買ってまいりまして、それを、今百円か二百円だと思いますけれども、ブランクのCD―Rに録音いたしますと、オリジナルのCDと全く同じ品質でコピーができるわけでございまして、それを自分が持っていて、オリジナルなものは中古店などに売るというようなことも見受けられるというような指摘もございます。
 こういった、かつての品質が劣化するコピーとは違いまして、全く同じ品質のコピーができるようなこの時代に、私的使用のための複製が権利者に無断で行えるということでいいのかどうかという議論があることは私どもも承知をいたしております。
 こうした状況に対応するためには、したがって、私的使用のための複製を禁止するという方策も理論的にはあり得るかとは存じますけれども、そのような法制を採用しても、個人的に行われるコピー行為の把握が困難であって、権利の実効性を確保できないという面はございます。
 そのため、関係条約におきましては、いわゆるコピープロテクションを権利者自身が用いるということを想定いたしまして、そのコピープロテクションを回避する、解除する行為を防止するための法制度を設けることを締約国に義務づけているわけでございます。これに従いまして、我が国におきましても、著作権法の改正を行いまして、コピープロテクション解除装置の販売等を禁止する、それからコピープロテクションを解除した上での私的使用のための複製、こういうことを禁止するといったことを行っているわけでございます。
 また、これは条約上の義務ではございませんけれども、我が国を含む幾つかの国では、デジタル方式での私的使用のための複製によって生じる損害を補てんするための補償金制度というものを採用して、損害を受ける側に対してこれを補償するという制度も採用しているという実態はございます。
斉藤(鉄)委員 このこととの関係で、中古品流通の問題が指摘されております。
 先日最高裁判所で判決のありましたゲームソフトの中古品問題、これは私的コピーは無関係である、こういうことでございましたけれども、この中古品問題と音楽CDの中古品問題。音楽CDの中古品問題の本質は、私的コピーがつくられることによってオリジナルが転売されるということに本質があると思いますが、このゲームソフトの場合とはちょっと音楽の場合は違うと私は思いますけれども、そこで、今後文部科学省また文化庁として、中古品の問題と著作権との関係、これをどう考え、どうしようとしているのか。
 レコード協会からは、中古品の販売そのものを禁止するような法的措置もとってほしいというふうな声も出ているところでございますけれども、もしくは、どうしてもそれが不可能であれば、例えば新品を売るときから中古品対策費も上乗せして売るようにしてほしいとか、そういう意見も悲鳴のような形でレコード協会から出ておりますが、この中古品の問題と著作権との関係についてどうお考えになっているか、お伺いします。
青山副大臣 著作権に関係してまいります中古品販売、実はこれには二つの種類がありまして、今御指摘の点のように、一つは、私的使用のためのコピーが合法的に行われた、合法的に行われたことによって今度は不要になったオリジナルを中古品として転売をするというケースがあります。これは、音楽CDがそういうものであります。もう一つは、今お話しになりました書籍やゲームソフト、こうしたものは、コピーをしないでそのまま買われたものが他に転売をされる中古品という、二種類あるわけです。
 前者の音楽CDの場合につきましては、国際的には、コピープロテクション、これを活用することによって私的コピーそのものを防止する方法、それから、今補償金のお話が出ましたが、補償金制度によって権利者の損失を補てんすることという対応策が今とられております。
 ただ、これらの対応策の本当のあり方について、現在文化審議会の著作権分科会でも実は検討をいたしております。そして、検討していく予定でおりますが、もう一つの、後者の書籍やゲームソフトの場合ですと、これは一般の、例えば自動車中古車と同じようなもので、すべての中古商品に当てはまるものでございまして、この種問題商品については、国際条約においても、諸外国の著作権法においても、中古品販売には著作権は及ばないという考え方が今とられているようでございます。
斉藤(鉄)委員 今の法制度によるとそういう御見解ということでございますが、現実には、私的コピーが本当に普及をして、レコード業界の売り上げが激減しているということは、やはり日本の音楽文化の振興にとってもこれはゆゆしき問題だと思います。文化芸術振興基本法をつくったときにも、音楽というのは、やはりその一つの大きな柱でございますので、この文化を守り育てていくような方策を考えていただきたいということを要望して、質問を終わります。
河村委員長 中津川博郷君。
中津川委員 民主党の中津川博郷でございます。
 今回の改正案の柱の一つであります放送事業者等への送信可能化権、これをつけるといった背景には、物すごい勢いで情報革命が進んでいる、今や大人から高齢者、子供まで、それこそ一億人日本国民のだれもがパソコンとかインターネットとか、いつでも自由に気楽に使える、そういう現状になっておりまして、加えて動画、これも簡単に送信できる、容量が大変大きく、そしてハイスピード、いわゆるブロードバンド時代というんですか、そういうものを今迎えているということであります。
 ちなみに、私のホームページもかなり早い時期から動画を使っておりまして、数年前なんですけれども、そのときは余り議員の方たちもなかったんですが、ここのところ、たくさん動画でホームページをつくっているという方もいらっしゃって、物すごい時代の流れが速いな、こんなふうに感じております。
 一方で、デジタル技術の進歩は、だれでも簡単に、テレビ番組あるいはそういうところの動画をインターネットで無断で世界じゅうに流すことができる、そういう技術が可能になりましたものですから、被害がたくさん出てきているんですね。今回の法改正というのは、そういうことに対応するためだというふうに私は理解しております。
 テクノロジーの発達、普及ということも大事なんですが、むしろ重要なのは、多くの人たちが、今までは縁の薄かった著作物等の利用手段を手にすることによって、著作物を利用すると同時に、自分では意識しないうちに、何か知らないうちに著作権の権利侵害者、加害者ですか、そういうものになってしまうという大変な時代を迎えたんだなというふうにも実感しております。
 一方では、パソコンとかインターネット、著作物等の利用だけでなく、創作にも使えますので、ですから、一億人日本国民が創作者でもあって利用者でもある、クリエーターでもあってユーザーでもある、言いかえれば権利者でもあって利用者でもある、もうごちゃごちゃなんですね。こういう時代が来ていて、今、本当に大変な時代だということを改めて基本的に認識する必要があるというふうに思います。
 そうしたところが、今どんどん大事な問題が起こってきているわけでありまして、パソコンとかインターネットとかデジカメ、携帯電話などの普及によって、今申しましたように多くの人々が気楽に著作物等のクリエーターでありユーザーである。そういうことになりますと、結果として、著作権というものが私たちの知らない間に非常に身近な存在になってきている。今まで著作権といいますと、小説家とか評論家とかあるいは作曲家とか、一部の、特定の人のためのものだというようなイメージがあったんですが、もうそれは古い考えなんだな、今やもう一億人全部が著作権時代に突入したと言っても過言ではないと思うんです。
 そこで、問題になりますのは、私たちは日常いろいろなルールの中で生活しているわけですよね。たとえ相手が嫌な人であっても傷つけちゃいけないよとか、人の物をとってはいけないよ、無断で借用してはいけないよ、あるいは交通ルールで、赤だったらとまって、青だったら歩いて、黄色だったら注意しろ、そういうルールというものを守って生活しているわけでありますが、ただ、自分でお金を出して買った本でも、これを無断でコピーしてはいけないというようなルールというものは、余り日本人にまだよくわかっていないんではないか、こんなふうに思います。
 私、常々思っているんですが、水と空気と安全はただであると日本人は思っているんですが、実際にはただじゃない。常に危機管理、国の危機管理は大事でありますし、そういう中で今有事法制というのも議論をしているというふうに思っているわけでありますが、それに今度プラスして情報も、著作権がついているのであるならば、それもただじゃないんだということですね。
 ですから、今回の法改正というのはそういうことを認識する上で大変いい機会だと思うんですよ。そこで、著作権法改正ということで、権利の新設というのも大事なんですが、もう一億人全部が著作権時代に今入っているわけですから、著作権の普及、啓発、教育にまず基本的に国が力を入れるべきだ、こんなふうに思います。
 そこで、大臣にまずお伺いしたいんですが、こういうことを、国民を対象にした著作権教育の重要性、これについての御認識と、どのように取り組んでいかれるのか、基本的なひとつ考えをとうとうと述べていただきたいと思うんです。
遠山国務大臣 とうとうといけるかどうかあれでございますが、著作権制度の定着いかん、あるいは制度の内容の充実ぶりというのは、私は一国の文化のバロメーターだと思っています。その意味から見ますと、日本の著作権制度の内容というものは世界に誇るべきものだと思っております。
 ただ、大事なのは、中津川委員がおっしゃいましたように、そのことが国民に広く普及されて、実質すべての国民がクリエーターであり、かつユーザーであるという両面において、著作権の制度をきっちりと認識し、かつこれを活用していくということが非常に大事だと思っております。
 殊に、近年、インターネットやパソコンの普及など情報化が大変な勢いで進んでおりまして、著作権に関する知識や感覚というのは、無意識のうちにそれが使われてしまうような問題点もはらんでしまうということもございますので、すべての国民にとって必要不可欠なことだと考えております。
 そのことを考えますと、広く国民を対象として、著作権について教育や普及啓発を行うことは極めて重要であると認識しております。
 では、どういうふうにやっているかということでございますが、これまでも講習会の開催など、著作権に関する普及啓発事業をいろいろな方式を用いて行ってきたところでございますけれども、平成十四年度から、各学校においてこの問題に真剣に取り組むという方策をとっているところでございます。
 それは、新学習指導要領におきまして、中学校や高等学校を中心に著作権の保護について指導をするといたしますなど、著作権教育に関する授業の充実、これをしっかりやっていきたいと思います。これは学校段階に応じて、著作権についての知識の内容をきちんと考えまして、学習指導要領に基づく教科書もつくり、あるいはいろいろな副教材などもつくったりいたしまして、この思想をしっかりと子供たちに定着させていきたい、そういうふうな取り組みを今始めているところでございます。
中津川委員 学校教育の中に、今取り入れるということをお聞きいたしました。大変結構なことだというふうに思います。
 基礎教育というのは、読み書きそろばん、江戸時代の人はうまいことを言ったものだと思うんですが、これは今日でも同じでありまして、先日、学力低下、ゆとり教育の検証ということで、大臣は時間が少なかったんですが、副大臣ともいろいろ議論をしました。まだまだ私はこれからこの件についても、基礎学力というのは国力ですから、大変重要な問題がありますので、また機会がありましたら、そっちの方を徹底的にひとつ委員会で議論をしていきたいというふうに思っておりますが、読み書きそろばん、基礎力、これも今、非常に小学生、中学生、基礎力がついていないんですね。
 それと、そのことはきょうは触れませんけれども、私は常々思っているんですが、日本の初等教育で欠けているもの、何個かあるんですが、特に経済教育ですよね。環境教育とかいろいろたくさんあるわけですが、経済教育、例えば株の仕組みとか、我々は資本主義社会の中で生きているわけでありますから、経営とは何ぞやとか、そういうものをアメリカではがんがんやっているわけでありまして、そういうものをもう初等教育の中で、いわゆる読み書きそろばんと同じような概念で取り入れていくべきだというふうに考えているんです。
 著作権も、そういう目から見ると私は同じだと思うんですね。こういうものも、やはりしっかりと小学生、中学生のときに教えていく。ただし、今突然一億人が著作権時代になったわけでありまして、今大臣、学校でやっていくと言いましたけれども、教育委員会でも学校の先生でも、これを理解している人はほとんどいないわけでありますよね。専門的な知識がないということでありまして、これは対応に限界があると思うんですね。
 そこで、文部科学省として、学校における著作権教育について、今大臣、総論を語られましたけれども、もうちょっと具体的にお聞かせ願いたいと思います。
銭谷政府参考人 先生御指摘がございましたように、現代社会を生きる者として、やはり著作権のルールや考え方についてきちんと理解をしておくというのは、基本的なマナーということが言えようかと思いますが、そのことを子供のうちから教えるということは極めて重要な課題だと認識をいたしております。
 このため、文化庁におきましては、実は学校教育の分野においては、従来から、関係団体と協力をいたしまして、全国の児童生徒を対象とした漫画を用いたパンフレットを配付して、学校教育の実際の場で活用していただくように取り進めております。
 それから、先ほど大臣の答弁にもございましたように、新しい学習指導要領では、高等学校の公民や中学校の技術・家庭科の内容として、また高等学校の教科「情報」の中で、著作権の保護について指導することにいたしております。
 例えば高等学校の公民というのは、科目としては現代社会、倫理、政治・経済といった科目があるわけでございますが、こういった科目の中で、情報モラルの確立ということの中で著作権を含む知的所有権の問題について取り扱って学習をしていただく、あるいは、教科「情報」の中では、著作権への配慮といったようなことを学習していただくというようなことにいたしております。
 ただ、先ほど来、先生から御指摘がございましたように、学校教育の現場におきましては、著作権に関して専門的な知識を持った教職員が少ないという課題があるのは事実であろうと思っております。そこで、こういう教員の方々に対して、著作権教育を進める上で、文化庁としてもさまざまな支援を講じてまいりたい、こう考えております。
 具体的には、教員の方々が学校教育の場で著作権を子供たちに教えることをやりやすくするために、学校での著作権についての教授方法について先生方のための指導書を作成して、教職員に提供するということを考えております。また、学校の教職員向けの著作権に関する講習会、こういうものの開催も予定をして、学校における著作権教育の充実を支援してまいりたい、かように考えております。
中津川委員 社会人とか大人への著作権に関する普及啓発についてはいかがですか。
銭谷政府参考人 広く多くの国民を対象とした著作権に関する普及啓発も、これまた極めて重要な課題でございます。これまでも全国各地で講習会を開催して、著作権に関する知識の普及や意識の高揚に努めてきたところでございますけれども、今後、文化庁といたしましては、さらにその事業を拡大していきたいというふうに考えております。
 そこで、平成十四年度から、子供たちから高齢者に至るまで広く多くの方々を対象として、それぞれの年齢なり現在の立場に対応した総合的な著作権教育事業を開始することといたしまして、「著作権学ぼうプロジェクト」、こう名づけまして、事業を実施していきたい、こういうふうに考えております。
 具体的な事業といたしましては、現在の文化庁のホームページによる著作権の解説に加えまして、より多くの人々を対象としたさまざまな著作権に関する質問に答えるデータベースを構築いたしまして、一問一答形式を含んだ情報提供を行っていきたいというふうに考えております。
 それから、例えばセミナーの開催につきましても、一般の方々向け、それから都道府県などの職員の方向け、あるいは先ほどちょっと申し上げました教職員向け、あるいは図書館の職員の方々に向けて、さらには企業にお勤めの方々に向けてなど、対象者別のセミナーを幅広く開催していきたいというふうに考えております。
 これらの事業を通じまして、広く多くの国民の方々に対しまして著作権に関する普及啓発を進めていきたい、かように考えております。
中津川委員 次に、著作物の活用について伺いたいと思います。
 著作権の制度というのは、基本的には無断利用を防止する、こういうものですが、文化的価値の高い著作物、こんなものは逆に多くの人に利用してもらって初めてその価値が発揮できる。もちろん、それは権利者の了解を得た上で、合法的な理由でなければならないわけなんですが、実際の場面を想像しますと、利用者が権利者を探し出して交渉や契約を行うこと、これは大変なことですよね。例えば、私が自分のホームページで、ある絵を使おうとします。その絵をかいた人が一体だれなんだろう、どういう経歴なんだろう、調べて、連絡をとって、絵を使うことについて了解を得て、細かい権利や義務について交渉をして契約をしなければならないということは、これはもう実際不可能ですよね。
 ですから、こうした契約というのは、本来は、こういうふうに民間の当事者同士が行うものであって、行政というのがコントロールすべきではないというふうには思うんですが、合法的な利用、流通を円滑化することは、やはり一億人、ここまで普及したということ、拡大したということであれば、権利者、利用者の双方に利益になることでありますから、国として、行政として、これは必要な支援をむしろすべきだというふうに私は考えております。
 そこで、大臣に、そういう著作物の円滑な利用の促進の必要について、御所見を伺いたいと思います。
遠山国務大臣 著作権は、人間の知的な創作活動によってつくり出されたものを無断利用から保護するということでございますが、それによって創作者にインセンティブを与えてさらにクリエーティブな活動をしてもらうということもございますし、同時に、それを広く活用していって社会全体の文化度を高めるという意義もあるわけでございます。
 今、中津川委員が御指摘のように、そういうすぐれた内容のものを広く国民が利用するという際に、著作者の許諾をとったりあるいは報酬を支払ったりするような手続が非常に複雑でございますと、なかなかその普及といいますか、活用が図られないというのはまさに御指摘のとおりでございます。その意味で、ルールにのっとった利用を促進していくということは、著作権保護の基本的な目的の一つでもあると考えております。
 このために、私どもといたしましては、日本経団連や関係省庁とも協力して、価値ある著作物を多くの人々のために円滑に流通させるためのいろいろな工夫を今行っておりまして、それによりまして契約システムあるいはビジネスモデルを開発しているところでございまして、そういう開発に対して支援を行うなどによりまして、今御指摘のようなことについての努力をさらに進めてまいりたいと考えているわけです。
中津川委員 次に、著作物の具体的な利用についてお伺いしたいと思うんですが、例えば携帯電話の着メロですが、これは日本人が考え出したすごいビジネスとして大成功をおさめているというのがわかって私もびっくりしたんですが、国際的にも注目されている。
 自分の携帯電話の音楽というのは、登録するということでありますが、これは平成十年ごろから始まって、わずか三年で八百五十億円という巨大ビジネスになった、すごいですよね。例えばカラオケがこの世の中に出て二十年以上たつそうなんですが、今、大体四百三十七億円らしいんですね。まだ着メロの半分だ。いかに急激に拡大したかということがわかるんですが、こういう成功例を踏まえて、権利者にも利用者にも喜ばれる、こういう流通システムというのはどんどんこれから開発されていくべきだな、こんなふうに思っております。
 何で着メロが成功したのかなという要因を考えてみたんですが、もちろん、ユーザーのニーズに合っていたということは当然でありますが、技術的な面で二つの点があると思うんですね。
 一つは、自動的な課金システム、これを採用した。通常のビジネスなら、着メロを使うユーザーは、音楽家の著作権を管理しているJASRACと契約を結んでお金を個別に払いますよね。ところが、着メロの場合は、電話会社が間に入って、着メロの著作権料も電話料金に入っておりますから、自動的に支払える仕組みになっているということですね。これは大変便利だと思います。
 それからもう一点は、これはトラブルがないということは、無制限のデータの流出、つまり、携帯電話からパソコンとか、パソコンからインターネットとかいった流出を防止するためのプロテクション技術、こういうものを使ったということで、安心して着メロをユーザーに提供できるというふうに分析をいたしました。
 そこでお伺いしたいんですが、文部科学省では、やはり第二、第三の着メロを見つけないといけない、新しい流通システムを開発して、関係業界、それから関係省庁、経済産業省とも連絡をとりながら、これからどんどんやっていかなければいけない、こんなふうに思っておりますが、その展望をひとつお聞かせください。
銭谷政府参考人 先生から御指摘がございました着メロは、先生のお話のように、日本で考えられて大きな成功をおさめているビジネスとして世界からも注目をされているわけでございます。
 今先生からお話がございましたように、この着メロは、自動課金システム、プロテクション技術をうまく組み合わせ、さらにJASRACによる権利の集中管理、それから契約システムの効率的な運用といったような要素も組み合わせまして成功した事例だと思っております。
 先ほど来先生からお話がございましたように、元来、著作物を流通させるためには、著作物が権利者から離れて流通するということから、利用者が著作物を利用したい、契約したいと思っても、その相手方を探すのに時間と労力がかかるということで、乗り越えなければならない障害がある。着メロの場合は、個々の携帯電話のユーザーが個々人で作曲家と契約をするというのではなくて、作曲家の権利を一元的に管理しているJASRACと、それから着メロ運営会社、こういうところが連携をとり合って、ユーザーにとって非常に使い勝手のいいシステムをつくったということが言えるわけでございます。
 そこで、こういった観点を踏まえながら、文化庁といたしましても、権利者、利用者の双方にとって利益となる流通システムの構築を援助していきたいというふうに考えております。このため、ことしに入りましてから、文化庁では、流通契約システムを担当する室を著作権課の中に設けていろいろ御相談に乗るとともに、文化審議会著作権分科会にも、この課題について方策を検討する小委員会を設けて検討しているところでございます。
 具体的には、例えば放送番組について、再放送やビデオ化などのいわゆる二次利用を促進するために、総務省、経済産業省、文化庁の三省連携で契約システムについての研究を進めているところでございます。また、日本経団連とも、いわゆるインターネット放送における音楽CDの利用契約システムなどの研究を御一緒に進めさせていただいているところでございます。今後ともこうした努力を積極的に進めてまいりたいと考えております。
中津川委員 ぜひそういう姿勢でやっていただきたいと思います。
 最後なんですが、パソコンやインターネットが使われるようになると、無断利用のすべてを権利者が把握、立証するのは困難ですよね。ですから、このような技術を活用した実質的な権利保護、これが必要になると思われるんですが、日本の著作権制度においては、テクノロジーを活用した著作権の実質的保護についてどのように扱われているのかというのを最後にお聞きしまして、私の質疑を終わらせていただきます。
銭谷政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、デジタル化やネットワーク化の進展によりまして、権利者がすべての利用行為を把握することは大変難しくなっております。権利侵害があった場合にも、これを発見、立証することが極めて困難になってきております。
 こういった状況に対応するためには権利者自身の努力が必要でございまして、例えば、CDに特殊な信号を入れてコピーできないようにするコピープロテクションの活用でございますとか、写真などのデジタル画像に著作者を特定する情報を目に見えない形で埋め込むという、いわゆる電子透かしの活用などが行われつつございます。
 しかし、こうした努力が行われる一方で、コピープロテクションを解除して無断でコピーをしたり、電子透かしを改ざんしたりする行為も目立つようになってきました。このため、平成八年に採択されました国際条約で、これらの回避、改ざん等を防止するような法整備を行うということが要請されました。
 我が国は、平成十一年に、コピープロテクション解除装置の販売や電子透かしの改ざん等を禁止する法整備を行いまして、テクノロジーを活用した著作権の実質的な保護を行っているところでございます。現在、このような法整備を終えているのは、先進国中では日本とオーストラリア、アメリカの三カ国だけという状況でございます。
 また、円滑な流通の促進のためには安全性を確保するということも必要がございますので、プロテクション技術が大きな役割を今後も果たしていくと思いますので、こうしたコピープロテクション技術などを活用した流通システム、ビジネスモデルの開発等について、今後とも積極的に支援を行ってまいりたいと考えております。
中津川委員 どうもありがとうございました。
河村委員長 平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文です。
 今回の著作権法の一部を改正する法律案について、多少細かいところもあるわけですが、質問をさせていただきたいと思っています。
 まず、今回の法律改正に伴いまして、私はある意味では非常に評価をしたいと思っておるところが多々ございます。特に、芸術家の権利を保護して創作活動等にインセンティブを与えていく、芸術家等の育成環境を整えていく、我々も昨年、文化芸術振興基本法を成立させましたのも、まさにそういう思いであった、こういう観点で、今回の改正は、世界でもいち早く時代の変化に合わせて著作権を保護する対応の取り組みであるというふうに思っております。特に、実演家の人格権という新たなる保護対象を加えた点については、私は高く評価をするところであります。
 しかし一方、この条約にもうたわれておりますし、公共性というところとのバランスというのも一方では考えていかなければならないと思うのであります。先ほど同僚議員の方からの御指摘もありましたけれども、著作権の立法をしたときの、時の背景の著作物というのは、極めて限られた時代から、昨今、ITとか、メディアがいろいろな領域に広がってきているということでありますから、そういう中にあっての著作権者の権利というのが適正に守られていく、こういう意味でどう改正をしていくかというのが今の流れだと私は思うのであります。
 著作権を財産権として認めていくのか、あるいは、より社会的公共性の高いものだから、社会の変化に調和をした権利として担保をしていくのか、この辺が非常に難しい議論だと思うのでありますが、その点については、大臣、特に著作権の社会的公共性という観点とどのように調和をさせていこうとするのか、いやいや、これは固有の財産権であるから、社会の調和というよりも権利保護をしっかりとすることの方が大事なのか、その辺、大臣の見解をまずお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 非常に本質的な御質問だと思います。
 著作権制度は、私的な創作活動によってつくり出されたもの、いわゆる著作物について、創作者に無断利用を防止する権利を付与して人格権なり財産権を守ってあげるという点と、それから、国全体としてそういう創作活動を活性化させるというようなことを目的としているわけでございます。
 一方で、そういう創作活動の成果というものは、できるだけ多くの人がこれを活用して、社会全体として文化度を上げていくのと同時に、多くの人がそれで裨益するということも非常に大事なことでございまして、公正な利用への配慮ということも重要でございます。
 したがいまして、まさに御指摘のように、著作権制度全体として、権利者の利益とそれから公益や利用者の便益という二つの非常に大事なもののバランスをとっていくということが非常に肝要であると考えております。
 そういうことから著作権制度の長い歴史を振り返りますと、当初は権利者の権利をいかに守っていくかということが中心であったと思いますけれども、近年になりますと、いろいろな法改正を国会にお願いいたしまして日本の制度をつくり上げてきておりますが、その際には、国際的な動向も勘案しながら、国内におきましては、関係者の合意形成、あるいは審議会での議論などを十分に行った上で、そのバランスをとるということにまことに意を用いているわけでございますし、また、権利者の権利を前提としながらも、権利制限をどうやってやっていくかということについても、非常に慎重で内容のある議論を前提として常に考えているところでございます。
 今後とも、制度全体としてのバランスに十分留意しながら、この問題に対応していきたいと考えております。
平野委員 今大臣の御答弁、まさにそのとおりでございますし、具体的にどうするかというのは非常に微妙な、考え方としてはそのとおりだと私は理解をします、しかし、具体的に制限をどうするかとか、この辺は非常に利害が起こってまいりまして難しい視点だと思うのです。
 そこで、私、一つ指摘しておきたいのは、我が国の著作物に係る再販制度という制度があります。この再販制度という制度の中で、特に音楽のCD等の価格が国際社会、諸外国と比べますと非常に高い、高額で維持されている、国際社会と比較したらコストが日本は非常に高い。これは私は、この再販制度が本来の、先ほど大臣が御答弁されましたバランス、公共性のバランス云々等々、社会の公共性、こういうところから見ると、この再販制度というのは非常に健全なる著作権を社会へ浸透させるための大きな弊害になりはしないか、こういうふうに思いますし、逆に言いますと、著作権の経済的側面、いわゆる財産を保護しようとする権利、再販制度によって守られる中でさらに財産権を守っていこうとするこの点については、非常に、自由競争との立場におきまして、市場原理が働きにくい中にあって矛盾を起こしているのじゃないかなというふうに思うのですが、この点については、これは文化庁がお答えいただいたらいいのかどうかわかりませんが、私自身はこの再販制度がこれを非常に弊害化している要因にもなっているのじゃないかと思うのですが、どうでございますか。
銭谷政府参考人 今先生から再販制度についての御指摘があったわけでございます。
 先ほど来お話し申し上げておりますように、著作権というのは、創作者の創作活動のインセンティブを確保するという観点で、無断利用から著作物を保護する、したがって、著作権は著作物の種類を問わずすべての著作者が権利を持っているわけでございます。
 再販制度でございますけれども、これは著作権制度とは別の観点から、我が国の文化の振興、普及に大変大きな役割を果たしております新聞、書籍、雑誌、音楽用レコード、CD、テープにつきまして、独占禁止法の例外として、これらのものが全国どのような地域においても同一の価格で容易に確実に入手することを可能にするために許容されている制度というふうに理解をいたしております。
 したがって、再販制度は、文化の地域格差の拡大でございますとか、あるいはこのような著作物の多様性の喪失といった事態に陥らないように、今日まで文化政策上意義あるものとして存続してきたと私は考えております。
 今後とも、文化庁といたしましては、再販制度を維持することを通じまして、文化政策上の再販制度の持つ機能が発揮をされるということについて、関係方面の理解を深めていただくよう努めてまいりたい、かように考えております。
平野委員 昔の状態であれば、再販制度を維持して国民に、津々浦々まで同一価格で提供するという考え方はいいんですが、先ほど申し上げましたように、非常にITとか情報社会が進展をしている中にあって、情報格差が生じるというリスクを恐れる余り再販制度を使うんだという発想は、もうこの二十一世紀の情報社会には通用しないんじゃないか。消費者はもっと適正な価格で商品が提供されることをやはり望んでおると思うのでありますが、従来の制度を維持するためにいろいろな理屈をこね回しているだけにすぎない。
 今は情報社会ですから、距離も全くない、あらゆる情報手段によってとれるわけですから、先ほど次長が御説明いただいた理屈はわかりますが、今の時代に合った仕組みになっていないと思いますので、消費者が、利用者がより納得する、より満足するような仕組みに対応できるように努力をしていただきたい、このようにお願いをしておきたいと思います。
 そこで、今回の法律の中で、私は個人的には非常に評価をしているところがあります。本法律案において、実演家における人格権はその死後においても保護されるということになっています。私は、死後も侵害されるべきでない人格権は多々あると考えており、実演家についてのこの権利が保護されたことについては、私自身は評価をしたいと思うのであります。
 ただ、ここで確認しておかないかぬのは、死者に人格権というものがあるのかという基本的な問題との対比であります。この点について、私は、我が国の法律では一般に死者の人格権というのは保護の対象にないというふうに理解をしておりますが、なぜ実演家の人格権は、あるいは著作権の死後五十年とか、こういうところで人格権を与えようとしておるのか、この点についてお聞きをしたいと思います。
遠山国務大臣 これまたなかなか鋭い御質問でございまして、人格権といいますと、確かに、生存している人が持つ権利のように思うわけでございますが、これは権利上はモラルライトということでございまして、著作権法におきましては、従来から著作者に人格権を付与しているわけでございますが、その人格権は、生存中だけではなくて著作者の死後においても、著作者が生きているとしたならば侵害となるべき行為をしてはならないというふうに我が法制ではなっておりまして、このことはベルヌ条約上の義務となっているところでございます。
 実演家の人格権につきましても、実演家の死後の取り扱いは、著作者の人格権と同様とすることとしているわけでございます。このことは、実演・レコード条約上の義務となっているものでありまして、実演家の死後の人格権を保護することについて、私どもとしては、これは問題はないというふうに考えているわけでございます。
 もちろん、すべて守るということではなくて、ただし書きがついておりまして、その行為の性質及び程度、社会的事情の変動その他によりその行為がその著作家の意思を害しないと認められる場合は、この限りでないということでバランスを保っているといいますか、そういう法制になっていると考えております。
平野委員 これは非常に、今大臣すらっと御答弁されましたけれども、私、これはなぜここで引っかかるかといいますと、先般、個人情報保護法という法律がございました、今も審議中であるんだと思いますが。
 このときに、個人の保護という、個人の権利というのはどこまで通じるのか。お亡くなりになると、お亡くなりになった後にも個人の人権が侵害されるときがあるから、本来、亡くなった後もあるのではないかということで、かなり私は政府とやり合いをしたのでありますが、お亡くなりになった時点で人格権というものは消滅をする、これをはっきり政府の方で明言されたものですから、これは例外適用として国内的に取り扱っているのかなと。その辺が、法的には認められないのに例外的に認めるという法体系が許されるのかなというところが一つの疑問であります。
 もう一つは、著作権というのは財産権であるという考え方でいきますと、その人一身にしかない専属権なのか。ほかの人にはいかない、その人の死後、その人にだけしか伴わない専属権である。そうしますと、私は、人格権というのは発生するのかな、相続権というのは起こってこないんじゃないか。ここの矛盾が、私、頭が悪いものですから、きのうずっと一晩悩み続けて、きょうはぜひ大臣に、ある省庁は、死後の人格権は認めない、この著作権、あるいは改めて実演者については認める。僕は認めるべきだという論者だから言うんですよ。ほかは認めないのに、何でここだけ認められるのか。その点、どうなんですか。ちょっとわかりやすい御説明をしてください。
銭谷政府参考人 亡くなられた方の人格的利益の保護のあり方は、それぞれの制度、法律ごとにその必要性等が判断されているというふうに承知をいたしております。
 例えば、刑法におきましても、虚偽の事実を示すことにより死者の名誉を毀損した者は罰するといったような第二百三十条の規定がございまして、死後の人格を守っているというふうに承知をいたしております。
 したがって、やはりそれぞれの制度、法律ごとに、その必要性に応じて死後の人格的利益の保護というのは考えられているというふうに理解をいたしております。
 それから、今回付与する実演家の人格権は、先ほど先生がお話しございましたように、第百一条の二のところに規定をいたしておりますけれども、「実演家人格権は、実演家の一身に専属し、譲渡することができない。」というのは御指摘のとおりでございます。財産権は譲渡できるわけでありますけれども、人格権は譲渡できない。そこで、この条約あるいはこの法律におきましては、実演家が生存しているとしたならば、その実演家人格権の侵害となるべき行為、こういうものをしてはいけないというふうに定めているわけでございます。
 なお、先ほど大臣からもお話がございましたけれども、著作者あるいは実演家の人格権に関して、著作者の死後においてもそれを保護するということは、条約上、例えば著作者の人格権についてはベルヌ条約上、それから実演家の人格権についてはこのたびの実演及びレコード保護条約においてそれぞれ規定をされておりまして、国際的にも認められているものでございます。
平野委員 今、政府参考人が説明されたけれども、少し違うんですね。死者の人権を保護している部分が刑法上にもありますよと言っておりますけれども、これはそういうことではなくて、死者の人権を認めておるんではなくて、死者の名誉を保護するということなんですよ。
 人権を認めているというふうに今おっしゃいましたけれども、私は、そういう例外的に刑法上やっているというのは、死者の、亡くなった人の名誉を傷つけられたときに名誉を守るという制度上であって、人格権を守っておるという、人権を守っておるということではないと思うんですが、どうですか。
銭谷政府参考人 ちょっと私の言い方が正確を欠いているかもしれませんけれども、著作者人格権、実演家の人格権も、死後につきましては、いずれもその著作者あるいは実演家の名誉を守るという観点が非常に強うございまして、例えば著作者の人格権について規定をしたベルヌ条約の書きぶりも、そもそも著作者人格権が、自己の名誉または声望を害するおそれのあるものに対して異議を申し立てる権利を有する、まずこう規定した上で、その権利は死後においても存続をする、そういう書き方をされておりますので、まあどう呼ぶかは別にして、基本的には、内容としては、著作者の名誉をきちんと守るというところが大事な趣旨ではないかというふうに思っております。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
平野委員 名誉ですね。いや、だから、この法文の説明でも人格権という言葉がごろごろ出てきましたから、それは絶対聞いておかないと、国内の法体系とは相矛盾するなと思いまして、条約だからといって安直にそういうことが平易にやられてきた日本の国内の行政なり法体系の整備がきちっとない中で、追従している今の矛盾を私は指摘したのであります。
 したがって、名誉ということであれば私も納得しますが、私は人格権を認めるべきであるという立場に立っていますから、この間拒否をされました省庁にまた言いますけれども、もう一度改めて、死後の人格権ということについて、この国内でそれぞれのところできちっと整合性がとれているのかなというのを見ておいてくださいな。私は、今回この法案の改正が出てきて初めて、はたと、つい直近で拒否されたものですから、こちらでは許されてあちらではだめなのか、こんなばかなことはないだろう、こんな思いでしたわけで、これに時間をかけるつもりはありませんので、ぜひよろしくお願いをしておきたいと思います。
 さて、そこで、この部分でいきますと、昨年十月に著作権等管理事業法の法律改正が、施行法で少し改正がありまして、今まで管理事業については文化庁による許可制であったのが、今回から、今回というか昨年ですね、登録制ということに変わったのであります。
 許可制でありましたから、今まではJASRACという社団法人が、著作権等管理事業法の施行に伴って、社団法人という格好でやってこられた、登録制ということで、民間企業が参入でき得る、こういう状態になったのですが、民間企業というのは当然営利企業でありますから、収益事業体として活動するわけであります。
 社団法人という、こういう法人との中にあって本当に平等な競争ができ得る環境にあるのか、さらにはなぜ許可制から登録制に変えたのかということを改めて、簡潔で結構でございますが、御説明をいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 著作権等の管理事業法が施行されまして登録制に切りかわったわけでございますが、法が施行されまして、現在まで二十六の事業者が登録をされ、うち十二の事業者が事業を実施いたしております。
 今回登録制に切りかえたというのは、基本的には、この著作権管理業務につきまして広く民間の参入を許容いたしまして、むしろ著作物の円滑な利用をさらに図っていこうという趣旨で行ったものでございます。
平野委員 そうしますと、今は大体、JASRACで、作詞家、作曲家等々、約一万人ぐらいの著作権を管理しているんですね。年間約一千億円ぐらいの著作権料を徴収し、それぞれの権利者に分配をしているんです。これが民間参入で、約二十社ぐらいあるんだということですが、片一方は非営利の社団法人なんですね。片一方は営利の株式会社。こんなの、税制の部分も含めて自由競争のマーケットになるんでしょうか。社団法人JASRACの方が非常に有利に活動でき得る部分になっているんじゃないんでしょうか。
 郵政の民営化と同じような仕組みをつくっているような気がしてならないんですが、もっとやはり公平な民間参入ができ得る、そういう趣旨であれば、マーケットとしても公平にしてあげないと、片一方は税制上優遇される、片一方は株式会社で一生懸命利益を上げる活動をする、こういう改正上の矛盾が起こるんじゃないかなと思っておりますので、これについても公平な部分であるように、ぜひお願いをしておきたいと思います。
 次の質問に行きます。
 これまた、一昨年の著作権法の改正で著作権法の附則第十四条が廃止になりました。今までは、お店などのBGM等につきましては、著作権の使用料を徴収することを適用除外しておったのですが、この法律改正によって、BGM等々については今度からお金をいただくようになったわけであります。
 本来、先ほど来の議論もありますが、著作権の使用料というのは、受益者が負担をするというのは大原則でありますが、BGMというのは、放送事業者あるいはBGMの貸出事業者が支払う、いわゆる元栓で徴収をする、受益者ではなくて元栓でその使用料は払います、本来は受益者であるけれどもこれについては元栓で払います、こういうふうに変わったのであります。
 私も、よくこの近辺の赤坂とかその辺の飲み屋さんに行きますが、時々、今回法律改正になったけれども料金は払っているのと聞いたら、いや払っておりませんと。受益者が払っていない。そうすると、放送事業者が一括で払っておるものですから、放送事業者に加入をすれば払わなくていいという、本来の使用形態、使用料支払い形態が少し曲げられているというふうに私は思うんです。これも便利な方法ですから、方法としては悪い方法ではないと思うんですが、著作権使用料という本来受益者が払うべきものが便宜的に元栓で払われている、こういうことが一つ。
 もう一つは、有線放送事業者と契約していないお店は個々が払いなさいと。そうしますと、有線放送事業者が、もう必ず、私のところに入ればおたくは払う必要はありませんよ、こんなことにこの業界はなってしまうのかな、こういうふうに思います。また、JASRACは、カラオケ等で契約している店については、BGMとかCDの録音物を使う場合には別途使用料は取りませんよ、こういう理屈になっているんですね。
 要は、本来は、著作権があって、使用した場合には適切にその使用料をいただいて、権利者にきちっと厳正に分配される制度でなきゃならないのに、取りやすい仕組みから取っている、こういうふうに私は思えてならないのであります。
 したがって、私は、もっと公平な著作権の使用料のあり方と捕捉をする仕組みをしっかりしておかないと、結果的には権利者の保護にはならないのではないか、こういう点がございます。
 加えて、もう一つ言いたいことですが、カラオケの使用料、これは規模があるんですが、十坪までは月額三千五百円等々ございます。今、カラオケの業界でいきますと、大体データ通信、カラオケ通信業者が配信をしてやっているんですが、これについては、配信業者が元栓で払うんじゃなくて、配信しているお店で徴収する、こういう矛盾も実は思っております。
 なぜ、カラオケだけが元栓徴収としないのか。BGMだけは元栓で徴収する。カラオケについては明らかにもうデータ通信ですから、カラオケ通信業者が、元栓と同じようにすればいいのに、これは個別の店で徴収する。徴収の仕方がもうぐちゃぐちゃになっているんじゃないかというふうに思えてなりません。
 したがって、改めて、どんな実態でこれは徴収しているのか、きちっと分配されているのか、これはあくまでもJASRAC任せなのか、この点はどうなんですか。
銭谷政府参考人 著作権法附則第十四条の廃止によるバックグラウンドミュージックの使用料について、多岐にわたる御質問をいただきましたので、簡潔に少し御説明させていただきたいと思います。
 まず、有線放送事業者やバックグラウンドミュージックの音源製作者が、音楽を利用している店にかわって、いわゆる元栓方式で著作物使用料を支払っているけれども、その音楽の利用者が使用料を支払う原則からすればおかしいのではないかというお尋ねが最初にあったかと存じます。
 この点につきましては、著作物を利用する場合には、実際に利用行為を行う者が許諾を受けて使用料を支払うのが原則でございますけれども、御指摘の有線放送やBGM音源を用いて店舗等にBGMを流すような利用行為の場合については、JASRACの使用料規程におきまして、各店舗等が使用料を支払う形態、これが原則でございます。
 ただ、有線放送事業者やBGM音源提供会社は多くの店舗と契約をしていることから、これらの会社が各店舗の使用料を一括して徴収し、JASRACに支払うことが効率的であるということから、JASRACの使用料規程においてそのような支払い方法を認めている、実際にはこうした支払い方法の方が一般化しているというのが現実でございます。
 それから、逆に、有線放送事業者と契約をしていない店は個別にJASRACに支払うことになる、そうすると、有線放送の場合は非常に低廉な使用料となるので、結果として有線放送の利用を促すことになり、有線放送事業者を優遇しているんではないかというお尋ねもあったかと存じます。
 これは、いろいろ考え方はあろうかと思いますけれども、例えば、普通の小規模な店の立場から見たときに、有線放送を用いてBGMを流した場合、有線放送事業者に支払う年額の使用料というのは大体約六万円程度でございます。年額で六万円程度でございます。これに対しまして、JASRACに個別に使用料を支払ってBGMを流すという場合は、大体年間六千円ぐらいの使用料を支払うということになります。
 また、JASRACに個別に使用料を支払ってBGMを流す場合には、実は、この使用料に加えまして、CD等を購入する経費がかかるわけでございますけれども、店舗の雰囲気との調和、店舗の個性などを重視したオリジナルな選曲ができるなどのメリットがございまして、それぞれの方法にメリット、デメリットがあるということで、一概に有線放送の利用を促すというようなことになるとは考えていないところでございます。
 それから、カラオケにつきまして、有線放送を利用したBGMの使用料については元栓処理でありながら、通信カラオケの使用料は個別徴収だ、こういう御指摘もございました。
 これは、先ほど来申し上げておりますように、著作権使用料の徴収の方法としては、いわゆる元栓処理と呼ばれる徴収方法があるわけでございますけれども、この元栓処理を導入するメリットとしては、権利者側から見れば、個別徴収に比べて徴収コストをかけずに確実に徴収できるというメリットがございます。また、利用者の側から見れば、有線放送事業者との契約のみで音楽が利用できて、かつ、徴収コストがかからない分使用料を安くしてもらえるということもございまして、ある意味では効率的な著作物使用料の徴収方法とも考えられるわけでございます。
 今、有線放送については、この元栓処理について有線放送事業者の協力が得られているという状況がございますが、通信カラオケの方は、これまでカラオケが個別徴収を行ってきたという経緯もあって、なかなか元栓徴収という状況にはなっていないというのが実情でございます。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
平野委員 理屈はいろいろあるのでしょうが、取りやすい仕組みで取っておる。やはり取る以上は、きちっと完璧に捕捉をするというのが本来のルールですから、そうしてあげないと権利者にきちっとした分配がされないんです。それを、JASRACというのが、そういう取りやすい仕組みで取って、このところについては元栓、このところは個別。個別であったら、元栓にしないと、あなた、もううちの曲流さないよ、こういうふうなやはり業界寡占化の仕組みに入ってしまうのですね。
 したがって、この本来の持つ権利というのは、徴収が非常に手間がかかるとかかからないとかいうよりも、手間をかけてでもしっかりと徴収してこそ、この著作権の権利と使用という意味で保護がされるわけでありますから、業界が適当に価格を決めているというのは本来本末転倒でございます。したがって、ぜひ、JASRACにおかれても、そういう意味で、しっかりと捕捉をし権利者にしっかりと分配する、こういう仕組みをどんな捕捉システムでやればいいのかをぜひ御指導いただきたいと思います。
 時間がたってきましたけれども、私、もう一つ言いたいのは、生演奏の著作権使用料についてであります。
 これも使用料の基準というのは等々あるのですが、非常にカラオケの使用料と比較したら高い。基準単価五千円で月間六十時間やりますと、月間使用料が二万七千円という部分であります。六十時間以上超えますと、四万七千円。六十時間やるなんということは、普通のお店では考えられないのであります。通常、大体その店のあれでいきますと、三十分、三十分、三十分とか、三つのステージぐらいでしか生演奏をしていない、それでも最低二万七千円だけは払わされる、こういうことですから、もう少し生演奏の部分についての使用料、特にカラオケと比較しますと非常に高うございます。
 これは、私、その高いだけを言っておるのではなくて、昨今非常に生演奏するお店が減っていっているのですね。高いからですよ。お店の人が雇わないのですよ。
 先ほども言いましたように、芸術家の地位向上、芸術家を育てていこう、こういう法律を通したのですよ。できるだけ、そういう生演奏をしていく、そういう芸術文化を育てていく機会をよりつくっていってあげなきゃならない。こういう考え方に立ちますと、この著作権の使用料、カラオケまでとは言いませんが、使用料を下げてやることによって、もっと生演奏家を雇い入れ得る店をたくさんふやしてやろうという環境をやはりつくってやるべきだ。余りにも、カラオケと比較して、生演奏に対する著作権の使用料が高いものですから、斉藤先生おられますが、特に芸術文化の地位向上、育てていこうという観点から見ますと、私はやはり、使用料を落としてでも、もっとそういう創造、教育する機会をふやしていくような仕組みをJASRACにぜひお願いしたい、このようにこれは求めておきたいと思うのであります。時間が参ってきておりますから、もう少し行きたいのでありますが、なかなかいきません。
 それで、次の質問に入りたいと思いますが、生演奏をしているお店があるんですが、どんな曲がどういうふうに演奏されているかという、現行の捕捉の仕組みは今現状どうなっていますか、生演奏の場合の捕捉は。
銭谷政府参考人 どんな店でどんな曲が使用されているかというものをどのようにして捕捉しているかというお尋ねでございましたけれども、JASRACでは、個々の店から利用著作物のすべての利用明細を要求できない場合、これが多いわけでございますけれども、結果的には、サンプリング調査によりまして著作物の利用状況を把握いたしております。
 調査方法については、専門の業者に委託をするなどして、その精度は、半年に一回しか歌われないというような作品でもサンプリング調査に当たる確率は九五%というふうに言われております。
 具体的には、四半期ごとに、全国から無作為に抽出をいたしました三百店舗ほどを調査いたしまして、その三百店舗で三カ月間に使用したすべての曲名、その回数のデータを集めている。そして、分配に当たりましては、各四半期ごとのデータ一年分、つまり千二百店舗、このデータを利用して分配の資料としているところでございます。
平野委員 ある店で、私、生演奏しているところへ行きました。使用料徴収に来ておられますか、全く来たことはありません、開店以来来たことない、こんなところもあるんですね。だから、生演奏における捕捉システムというのは極めていいかげんなんです。だから高いのか、こんなことにも相なるものですから、年間大体二十三億六千万ぐらい、生演奏の使用料の徴収金額なんですが、私は、もうちょっとやはり正確な捕捉をしてもらいたいということと、捕捉する以上は、先ほど言いましたように、芸術家を育てるんだ、しっかり捕捉はするけれども料率はやはり落としていくんだ、こういうことで、一挙両得で、逃さない、きっちり捕捉する、しかし生演奏の機会を、演奏者をふやすことによって芸術文化を振興させるんだ。この両面を踏まえますと、やはりカラオケとの価格設定というのは極めて高いと思いますから、ぜひそんな視点でお願いをしたいと思います。
 最後に、私は、JASRACの事業目的というのは、音楽の著作物、著作者の権利を守る、あわせて音楽の著作物の利用を図るんだ、よって音楽文化の普及発展に資する、こういうことであります。先ほど言いましたように、文化芸術振興基本法が成立しましたものですから、現在、カラオケを私は否定はいたしません、カラオケも日本独自の文化であります、しかし、生演奏する場所やミュージシャンがどんどん少なくなっているというこの実態を考えますと、私は、その大きな理由の一つには、著作権使用料が高いという問題、そういうことによって場所がなかなか提供されない、こういうことにあると思うのであります。
 したがって、何回も言うようですが、ライブ音楽含めて、このような文化の普及発展のためにも、もう少し公正な使用料をお決めを、御指導いただきたいということと、取りやすいところだけ取るということではなくて、しっかりと、著作権を使用すれば使用料がかかるんだという、先ほど同僚議員の説明もありましたが、そういう教育、仕組みをつくることがこの普及につながると思いますので、ぜひよろしくお願いします。
 ありがとうございました。
河村委員長 武山百合子君。
武山委員 自由党の武山百合子です。
 参議院の文部科学委員会の方の議論を、議事録を読ませていただきまして、その中で、実は私の息子が、次男なんですけれども、今二十五歳なんですけれども、三歳、四歳のころ、弱視だということがわかりまして、片目が全然見えなかったんですね。私は腰を抜かして、卒倒しそうな状態で、本当に夫婦げんかになりまして、目が悪いのはどっちだなんということになりまして、そのショックというのは今でも鮮明に覚えておるんですけれども、それで、弱視の児童生徒が使用する拡大教科書についてということで議論されておったものですから、これについていろいろお話を聞きたいと思います。
 それで、アメリカでは、七歳までに弱視がわかりましたら見えるようになると言われておるんですね。それで、三歳、四歳だったものですから、なぜ弱視かということがわかったかといいますと、目医者さんが、日本の場合は今何年生ぐらいで目の検査をするのかわかりませんけれども、たまたま当時、もう二十年も前の話ですけれども、日本から来た方が、小学校四年生で目の検査を学校でした、自分は弱視だったけれども、もう生涯、四年生で目の検査があったのでずっと見えなかった。その方は、当時六十歳ぐらいの方だったんですね。ああ、目が見えるようになるんですかと驚いていたことを今思い出しますけれども。
 七歳前に弱視がわかるとその弱視は治ることになっているということで、うちの息子はパッチをずっと片目にしまして、昼間、それで二年ぐらいで全部、全く見えなかったものが、もうもとに戻ったんですね。片目だったものですから、今度は斜視になりまして、斜視の手術をして、今は普通にきちっと見えるんですけれども、やはり早期発見、早期予防なんですね。やはり三歳、四歳ですと、大体まだ文字が読めないということで、動物の絵とか花の絵とかで、これは何かと、片目ずつ目の検査をするわけですけれども、たまたま三歳、四歳のころ、クラスメートの、眼科医がいて、ボランティアでそういう発見を、その保育園では早期に発見していたということで。
 まず、文部科学省に聞きたいんですけれども、この弱視と言われている児童生徒が全国に何人ぐらいいらっしゃるのかということをちょっと知りたいと思います。
 それからもう一点、日本では厚生労働省の管轄になるのか、これは厚生労働省と文部科学省が協力してぜひやっていただきたいと思うんですけれども、目の検査、それが何歳で一応義務づけられて行われているのか、ちょっとお聞きしたいと思います。
青山副大臣 まず、弱視の児童生徒の数を、現在把握しておりますところ、報告させてください。
 全国盲学校長会が平成十三年度に行いました調査によりますと、盲学校の小学部に在籍する弱視の児童数は二百六十一人、中学部に在籍する弱視の生徒数は二百二十六人、合計で四百八十七人でございます。それから、弱視特殊学級に在籍する児童生徒数は、小学校百三十人、中学校四十四人で、合計百七十四人となっております。
武山委員 ありがとうございました。
 私が予測していたよりも、思ったよりも少ないので驚いておりますけれども、あともう一つの質問についてお答えいただきたいと思います。
青山副大臣 現在、児童生徒の視力の検査でございますが、就学時の健康診断で、眼鏡を使用している者について、その眼鏡を装用した視力を検査するということでございますが、これは五歳ということになります。
武山委員 ありがとうございます。
 五歳でしたら七歳前ですので、弱視が早期発見されれば治る可能性があるということだと思いますけれども、今私の隣に座っております民主党の山元先生とちらっとこの件についてお話ししましたら、ああそういうふうにして治るんですかとびっくりされておりました。恐らく、国民の認識としては、本当に早期発見ということは頭に、無意識のうちにないのであろうと思うんですね。ですから、これは私の子供を通して、米国では七歳以下で弱視が発見されると治るということですので、早期に、三歳、四歳ごろにやられたらもっと早く治る可能性があるわけですので、それはぜひ早期発見ということを口にして、省庁、文部科学省、厚生労働省が言っていただきたいと思います。
 それから、その人数なんですけれども、これが本当に数字がすべてなのかな、もう少し、あるいはもっとたくさんいらっしゃるのかなとも実際思うんですよね。よくいろいろ聞きますと、はっきりその辺が、数が現に今おっしゃったようなところでの発見しかできていないということで、もう少し現実にはいるのかなと思いますけれども、何せこの児童生徒が現実に著作権の問題で、教科書の部分で拡大教科書が使えない、文字の大きくした拡大教科書が使えないということが大変問題になっているということで、本当に数としては、子供たち全体の数からしましたら微々たる数の者に対して、著作権の問題がなぜ障害になっていて円滑に拡大教科書が作成されないのか、なぜこの障害になっているのか、そのなぜの部分を御説明いただきたいと思います。
青山副大臣 弱視の児童生徒につきましては、保有する視力を活用して上手な見方を育てるなど、その可能性を最大限に伸ばして、自立して、社会参加するために必要な力を培うことが大切だと考えております。
 このために、弱視の児童生徒は、視力は同じでもその見え方がさまざまであるなどの状況がありまして、その教育につきましては、通常の検定教科書を無償給与し、弱視レンズや拡大読書器等の視覚補助具を用いて、一人一人の見え方に配慮した指導が今行われております。
 御指摘の文字等を拡大いたしましたいわゆる拡大教科書については、弱視の児童生徒が教科の内容を理解するのに有効でありますから、盲学校や弱視特殊学級において、検定教科書にかえて、いわゆる百七条図書として都道府県教育委員会等が採択をいたしました場合、無償給与できるようにしており、現在、小中学部の国語、算数、数学、英語において活用が図られているところであります。
 文部科学省といたしましては、いわゆる拡大教科書を含む教材の作成が適切かつ円滑に行われることが大切であると考えておりまして、現在、小中学部社会、理科の図や表を含む拡大教材の作成ノウハウの研究や、著作権の許諾を円滑に得ることができるような仕組み等の検討を行っているところであります。
武山委員 最もこの子供たちにとっていい方法は何だと思いますか。
青山副大臣 基本的には、弱視の児童生徒が、視力は同じでも見え方がさまざま違っておりまして、一人一人に最も適切な、例えば視覚補助具を用いて検定教科書を無償給与されたもので学んでいただくのがまず基本的にはよろしいのではないか。ただし、拡大教科書が適切であると都道府県教育委員会が判断をして採択した場合、その児童生徒数に拡大教科書を無償給与できることであろうと思います。
 今申し上げましたように、問題は、その拡大教科書・教材の作成ノウハウが十分に研究されていて、著作権の許諾を円滑に得ることができるように、その仕組みを検討していくことであろうと思っております。
武山委員 これはもう何が一番いいかといいますと、御相談しなくてもおのずと人間であればわかると思うんですよね。一々これはだれかに相談しなくても、副大臣が人間であれば、人間、もちろん立派な副大臣ですけれども、もうそれは相談するまでもなく、拡大教科書が使いたいということが本音なんですね、専門家に聞いても、それからその当人たちも。
 それが努力不足で、それも皆さんの努力不足だと思いますよ。では、こっちは努力しないで、こっちの運用の部分で拡大して、それでいわゆる弱視レンズだとか拡大読書器だとか視覚補助具だとか、いわゆるお金で、物を与えてというような、そういう物の基本的な考え方は私は間違えていると思います。
 本質的に、この子供たちは拡大教科書を使いたいわけですよ。その方が、みんなと同じもので、大きくなっているだけで、特別な場所もとらないで、また国民の税金もむだに使わなくていいわけなんですよ。でも、著作権の問題をきちっと、そこに努力する視点を置かないで、そこに努力しないでお金をつけて、すなわち物を与えてやろうとする、そういう発想が人間らしくないと私一言伝えておきます。
 やはり著作権の問題で何が問題なのか。もしそこで、教科書に書いている人たちが、自分の文章が載ったり自分の写真が載ったり、そこを、自分の著作権を侵害されて、ましてや弱視、こういう児童生徒にどうしても拡大して使わせてあげたいというのを使わせたくないという人が教科書に載っているようなことは、私はもう考えられないと思うんですよ。ですから、その辺の見解を、いろいろ理屈はおっしゃっているそうですけれども、その理屈をぜひ聞きたいと思います。
青山副大臣 前段のお話ですが、将来、弱視の児童生徒が自立して社会参加できることが最も好ましいことだと考えて、できることなら検定教科書を無償給与して、それで読んでいくことが本当は、できることならそういう形が、拡大教科書のような形になっていけばよろしいのですが、よろしいのかという一面が当初ありました。
 しかし、今の段階では、拡大教科書を作成する際の著作権の許諾をいかに簡易にしていくのかという問題がありまして、この著作権法の改正の必要性を今議論、検討しているところでございまして、そして、拡大教材が簡易にできる、そういうノウハウというものを確立していきたいと考えております。
武山委員 その拡大教科書を将来、教科書に対して一番権限を持っているんですよ。そして、一番責任を持って、できることなんですよ。それを、そんな情けない、自信のない。私たちのあしたが、子供たちが担うわけですから、その子供たちに対して、今まさに、本当に生きる力をつけて自立して生きていってもらいたい、そのための教科書でもあるわけですよ。それを、自信のない、将来だとか今検討しているだとか、一番権限を持って、自分たちで努力すればできることを、そういう発想でそういう答弁されたら、がっかりしてしまって、生きる望みがこちらの方がなくなりますよ、そういう答弁を現実の副大臣にされたら。
 それで、著作権に何がどう問題があるんですか。個人が嫌だと言うんですか。それに対して、子供たちに対する拡大教科書に自分の部分を拡大されるのは嫌だと言うんですか。その本質を聞きたいと思います。私は、教科書の検定で、そういうことに対して嫌だと言うような人はいないと思いますよ、それは子供たちの教育のための教科書なんですから。その教科書をたまたま拡大するだけのことなのに、それに対して著作権侵害だと言う人はまず常識で考えられません。その理由を述べていただきたいと思います。
青山副大臣 前段のことは、将来、自立して社会参加というのは、通常ある書物をどういう形で読んでもらうかということが一つ念頭に最初はありましたと申し上げただけです。
 それから、拡大教科書を普及させるのには、膨大な著作権の許諾を得なければなりません。そのために、できることならば一括して著作権を獲得、許可を得るような、そういう簡易な手続をする方法を検討しておる、そういうことでございます。
武山委員 簡易なことでしたら、簡易にやっていただきたいと思います。それはもう本当に簡易にできるはずですから。
 それで、皆さんの検討が長引けば長引くほど、子供たちは常に不便を感じて、そして我慢をして、こういう教科書を見て勉強しなきゃいけないんですね。大人が努力してあげなくて、何で子供たち努力できますか。大人がそういう姿をやはり社会に見せて、一刻も早く使いやすい環境をつくるというのが文部科学省の使命だと思います。これは早急に法改正をするつもりがあるのかどうか、まずお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 拡大教材につきまして、その必要性については私も同感でございます。
 この問題に関しましては、今年度、独立行政法人の国立特殊教育研究所におきまして調査研究を実施いたしておりますけれども、もちろん、この問題を解決するには、関係団体との調整も必要でございます。また、方途につきましても、従来の検定教科書の中に拡大教科書を含めていくのか、あるいは著作権法を改正していくのか、法技術的にも検討を要するわけでございますが、できれば、私としては、この問題について、その検討結果を年内にでも得て、できるだけ早い機会に対処していきたいというふうに考えております。
 まさに、この問題について、着手をし、関係のところで今誠実に、かつ迅速な検討を進めているところでございます。
武山委員 膨大な法改正が必要だと言うけれども、膨大なものをつくったのは皆さんなんですよね。行政であり、政府なんですよね。ですから、それは、自分たちでつくっておいて、自分たちで複雑にしておいて、それで法改正できないという理由はないと思いますので、ぜひそこは早急に頑張っていただきたいと思います。
 それから、視聴覚的実演の保護という部分でもう少し聞きたいと思います。
 世界知的所有権機関における新条約の検討ということで、平成十二年十二月、暮れですね、この世界知的所有権機関の外交会議、ここで合意が得られなかったというわけですね。まず、この合意が得られなかったところ、条約案のどの部分で、そしてどのような理由で合意ができなかったのか、二点ですね。それからもう一点。いわゆるその部分について、今、平成十二年、十三年、もう一年半たっているわけですけれども、合意形成に向けた交渉は進んでいるのかどうか。
 条約採択ができなかったということの、いわゆるどの部分で、どんな理由で、そして今、日本の方では合意形成に向けた交渉が進んでいるのかどうか、その三点についてお答えお願いします。
遠山国務大臣 まず第一の点でございますが、この条約につきましては、平成十二年十二月に条約採択のための外交会議が行われて、条約案全二十条のうち十九の条文については暫定合意がなされたわけでございます。しかしながら、実演家の権利の映画製作者への移転など実演家の権利の行使方法に関して、どういう国際的なルールを確立するかについて、特に米国とEUとの間で最後まで合意が得られず、結果として条約の採択が見送られたわけです。
 具体的に申しますと、米国の場合は国内にハリウッドなど大きな映画産業を抱えております。したがって、映画が国際的に流通するに際してのビジネスの安定性を確保するために、実演家の権利を映画製作者に移転できることを条文上明確にすべしという主張があります。これに対して、EUの方は、実演家の権利の移転を禁止する国内法を有するEU加盟国があるわけでして、そういう国に配慮して、そのようなルールを条約上明確に書くということについて強く反対したわけでございます。こうした米とEUの対立に対して調整が図られたわけでございますけれども、合意を形成できなかったというのが第一の点でございます。
 それから、第二の点でございます今後どうかということでございますが、平成十二年の外交会議終了後、現在に至るまで、関係各国それからWIPO、世界知的所有権の幹部との情報交換を重ねるとともに、平成十三年九月のWIPO総会において早期採決の重要性を主張するなど、これは我が国も大いに参加してやっているわけでございますが、早期解決に向けて精力的に努力を行ってきております。本年九月末に開催予定のWIPO総会では、その後の協議状況が報告されることとなっているわけでございます。
 このことにつきましては、第三の御質問にかかわるかと思いますけれども、我が方としましては、国内の実演家団体等の関係者との情報交換を緊密に行いながら、関係各国とも連携し、できる限り早期にその条約が成立するようWIPOの議論に積極的に参加していく考えでございます。
武山委員 ぜひ、国際的な合意形成に向けて積極的な役割を果たしていただきたいと思います。
 国内における法整備についてお聞きしたいと思います。
 音の実演と映像の実演とで権利の内容に違いがあるんですね。これは、なぜ違いがあるのかということを、まず、文化庁がどのように認識しているのか、お聞きしたいと思います。
銭谷政府参考人 視聴覚的実演と音の実演との著作権法上の取り扱いの差異ということでございますけれども、まず、人格権について申し上げれば、音の実演と映像の実演について、今回の改正により両方の実演について人格権を与えるわけでございますので、差異はございません。
 それから、財産権の問題でございますけれども、音の実演、それから映像の実演とも、いわゆる生の実演、これについては双方とも財産権が付与されておりまして、差異はございません。
 ただ、例えば音の実演を録音したものでございますね、CDやそういうものに録音したものの二次利用というものについては、いわゆる音の実演家には財産権はございますけれども、実演をビデオなどに録画をしたいわゆる映像の実演を放送などで次に利用するという場合には、その映像の実演家には財産権というのは付与されていないという点で、この録音、録画された実演についての取り扱いには我が国内法上差異がございます。
武山委員 それでは、時間がもうなくなってきてしまいました。著作権政策全般的なことでお聞きしたいと思います。
 この著作権法は、昭和四十五年の全面改正により制定されたわけですね。それで、今もう三十年以上も経過して、あちこち継ぎはぎだらけという状態ですよね。まず、これに対して、今後、著作権法制の根本を見直しして全面改正を行う必要があるんじゃないかと思いますけれども、これは全面改正を行うつもりがあるのかどうか。ありましたら、具体的なスケジュールをぜひ示していただきたいと思います。
青山副大臣 日本の著作権法については、昭和四十五年の全面改正以来、いわゆるデジタル化やネットワーク化の進展、国際的動向などを踏まえまして必要な改正を行ってまいりました。しかしながら、デジタル化やネットワーク化が進んでも、創作者に無断でコピーなどをしてはならない、こういった著作権制度の根幹を変える必要はないというのが国際的な共通認識であります。
 したがいまして、各国におきましては、我が国と同様、著作権制度の細部については柔軟かつ迅速な改正に努めていると承知しております。このような制度の改正につきましては、著作権制度が常に権利者の利益と利用者の利益の微妙なバランスの上に成り立っているものでありますから、関係者間の調整や合意形成が容易なものもありますが、困難なものが存在するために、十分な協議、検討、調整を経た上で順次改正を行っていくことが必要だと考えております。
 したがいまして、文部科学省といたしましては、現在の著作権法が場当たり的な継ぎはぎ状態になっているというふうには考えておりませんが、著作権法の基本的な構成や考え方そのものを変えるべきではないかという意見もありますので、現在、審議会におきまして中長期的な課題の検討も進めております。その検討の状況を見ながら、適切に対応してまいりたいと考えております。
武山委員 大体そういう答弁ですよね、日ごろから。まず思い切ってやるのかやらないのか答えられない状況なわけですよね。
 昭和四十五年から三十年以上経過して、本当にあちこち、部分部分、ケース・バイ・ケース改正してきたというのが現状ですけれども、今言ったとおりの、検討している、審議会で検討しているというようなことで、やはりそういう体質は、人に、審議会に投げていろいろ決めてもらうんじゃなくて、文部科学省が実際に自分たちでリーダーシップをとって、そこの部分も、答えは常に、投げている、検討する、もうそういう答え、国民は飽き飽きしているんですよね。やはり青写真をはっきりして描いてもらいたい。そういうのを今まさに国民が望んでいるのに、相変わらずのお答えで、非常に残念です。
 それから、著作権保護の実効性を確保するために、もう一つ伺います。
 契約手続ですね。著作権の利用に係る契約内容の明確化や契約手続、国民にとっては物すごく複雑多岐にわたってわかりにくいという印象なんですよね。この契約手続をやはりインターネット上で、もう今物すごいインターネット、第三次産業革命。まさに便利でいつでも使えて、例えば、インターネット上に私もホームページを出しておりますけれども、もうインターネット上であれば、人のホームページの原版をこれはいいなと思ったら、手書きでも何でもとれるわけですよね。
 ですから、本当にもう自由自在に使えるというこういうものに対して、利用者側の契約において契約の手続を簡素化するというようなことを聞いておるものですから、著作権の保護の実効性を確保するために、どんな取り組みをするのかということをお聞きしたいと思います。
青山副大臣 我が国の著作権に対するWIPOの条約に対する対応というのは、相当しっかり我が国はやってきたと思っております。
 ただ、今御指摘のように、我が国においては、契約システムやビジネスモデルを開発して著作物の円滑な流通を促進することによって、一方で著作者等の権利を保護しながら、他方で多くの人々が価値ある著作物を活用できる状況をつくることが重要な課題であると認識しております。
 このため、我が省としては、インターネット上で著作物の利用契約ができるシステムの開発や、経団連、関係省庁との連携によって、ビジネスモデルの開発を支援するということを積極的に行っているところであります。
武山委員 我が国は相当やってきたと。どこの国と比較してやってきたとおっしゃっているのかわかりませんけれども、もちろんそれなりにそこの省としてはやってこられたんでしょう。ぜひそのやってこられた内容、やはり国民に公表すべきだと思いますよ、ちょうど今これを議論しているわけですから。こういうことをやった、ああいうことをやった、それで他国とどう違う、どこがこれから必要なことで、そしてこれらはもうここまでインターネット上のいわゆる侵入もできているんだと。できているんであれば、それをちゃんと発表すべきだと思うんですよね。それが全然皆目よくわからない、新聞報道でもよくわからない、テレビのニュースでもわからない。もうたかだか本当に数分の間でぱっと説明するというのは非常に難しい。
 そういうのをやはり国民に周知徹底させるためには、先ほど中津川さんも御質問されていたように、この制度に対する啓蒙普及活動というのは大変重要だと思うんですよね。ぜひその重要な取り組みを早急に、それで学校教育の中で先ほどされるというふうにおっしゃいましたけれども、これは、する人自体がこの著作権保護法自体の法案を理解するだけでも大変わかりにくくて、多岐にわたって難しい言葉で書かれているものですから、小学校でどんなふうに説明するのかなと思うくらいなものですから、それは本当に力を入れてやっていただきたいと思います。
 それから、最後の質問になりますけれども、先ほど映像分野の著作権についてこの懇談会で検討中ということだったんですけれども、まずその懇談会の中で問題になっている点、それからその問題になっている点の検討がどの程度まで進んでいるのか、それで必要な法改正を行う必要はあるのかないのか、その三点についてお答えいただいて、終わりにしたいと思います。
青山副大臣 先ほど大臣から申し上げましたように、いわゆる視聴覚的実演に関する新条約といいますと、まだ採択には至っておりませんが、映像の実演について人格権、財産権を付与するという方向性については、暫定的な合意が既に得られております。
 しかし、これはまだ採択されておらない段階でありますが、従来から検討を行ってきた国内法による対応につきましては、関係者間の合意が形成されておりまして、人格権について、音の実演、映像の実演の双方に対してこれを付与することとして、現在、法改正を御審議いただいているところであります。
 残る映像の実演の財産権についてでありますが、現在、実演家団体や映画製作者団体の双方において、映画等の流通、利用を阻害せずに実演家の権利を保護していくための契約システム、これが検討されているところでございます。今後、双方の案を持ち寄ってさらに検討を進めていく予定でありますが、映像の実演の財産権の実現に向けて合意形成を促進してまいりたいと考えております。
武山委員 終わります。
河村委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 実演家の氏名表示権、同一性保持権など、実演家の人格権の創設は実演家の皆さんの長年の願いでございまして、今回大きな前進だというふうに思います。
 既にちょっと議論にもなっておりますが、二〇〇〇年十二月にWIPOの視聴覚的実演の保護に関する外交会議が開かれておりますが、そこで、新条約の採択には至らなかったけれども、十九の条項の暫定合意によって、実演家の人格権の創設とあわせて実演家の財産的権利の充実についても合意がされております。
 私はこの件で、私自身、百三十九臨時国会、六年前でございますけれども、やはり著作権の改正が審議されましたときに、実演家の人格権の保護ということにもう日本も踏み出すべきだということを強く申し上げたことがございまして、今それを思い起こしてもいるわけですけれども、こうして今日、我が国において実演家の人格権が法定されるということ、大変感慨無量の感がございます。
 今もたまたま話題になっているわけですが、次のやはり大きな課題として、この実演家の財産的権利について、今後、文化庁としてどのように臨もうとしていらっしゃるのか、これは大臣に、見通し等含めて御見解をお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 今お話しのように、実演家の権利につきましては、現在審議いただいております著作権法改正案によりまして、映像の実演についても人格権が付与されますので、人格権については音の実演との差異はなくなるわけでございます。
 財産権については、生の実演については、音の実演と映像の実演について差異はないわけです。ただし、現在我が国を含みます多くの国におきまして、CDなどに録音された歌手の歌などの音の実演と、ビデオに録画された俳優の演技などの映像の実演との間に、権利付与に関する差異がございます。
 具体的には、CDなどに録音された歌手の歌などの音の実演につきましては、これを複製販売したり放送などで利用する場合には、歌手などの実演家の許諾を得るか、あるいは報酬の支払いが必要であるわけでございます。これに対しまして、ビデオなどに録画された俳優の演技などの映像の実演につきましては、これを放送するなどの利用をする場合には、実演家の許諾や報酬の支払いは必要ないこととされているわけでございます。
 このような差異をなくしまして、映像の実演についても音の実演と同様の権利を付与するということが必要と考えるわけでございますが、この点、現在、世界知的所有権機関、WIPOにおきまして新条約が検討されております。
 平成十二年十二月にジュネーブで開催されました外交会議におきまして、録画された映像の実演について財産権を付与することが暫定合意されましたけれども、実演家の権利の映画製作者への移転、先ほども御説明しましたが、ああいう問題がございまして、実演家の権利の行使方法に関する条項について合意が得られておらず、条約採択には至っていないわけでございます。
 この点については、委員も十分御存じだと存じますけれども、こうした映像の実演についての財産権については、次に取り組むべき重要な課題と認識しておりまして、私どもとしてはWIPOにおける議論を促進したり、我が国としてもその方向についての主張をしたり、積極的に対応してまいりたいと考えているところでございます。
石井(郁)委員 そのWIPOの視聴覚的実演の保護に関する外交会議の暫定合意を受けて、我が国でも、昨年七月に映像分野の著作権に関する懇談会が開催されているということで、そこでもう実演家の財産的権利の付与の方向は打ち出したというふうに聞いているわけでございますけれども、もう少し詳しく、どういう内容をもってその方向を打ち出しているのか、財産的権利の付与をどういうふうに行おうとしているのかについて、少し立ち入ってお聞かせいただければ幸いでございます。お願いします。
銭谷政府参考人 ただいま御指摘がございましたように、映像の実演に係る権利の拡大に関しましては、文化庁に、映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会、通称映像懇というものを設けてまして、国内法の整備について検討を行ってきたわけでございます。
 この映像懇におきましては、従来は権利を拡大することの可否について議論が行われてきたわけでございますが、平成十二年の十二月に、先ほど来お話のございますいわゆる視聴覚的実演に関する新条約について、人格権、財産権の双方に関して権利を拡大することを内容とする暫定合意がなされました。このため、映像懇におきましても、それ以降は権利拡大の方向を目指すということを前提として検討が行われております。
 まず、その後とり行われましたのは、関係者間の合意形成が達成された人格権の付与について、審議会での審議を経た上で、本日、法改正の御審議をお願いしているということでございます。
 残る映像の実演の財産権につきましては、現在行われおります映画などの流通、利用を阻害せずに実演家の権利を保護するには、やはり適切な契約システムの開発が不可欠であるということで、この映像懇の場で、実演家の団体の方々、それから映画製作者の団体の方々、それぞれにおいて契約システムの案を作成し、これらを持ち寄ってさらに検討を進めるということが合意をされております。
 これまでのところ、先ほど申し上げましたように、人格権の創設に関する協議等が中心に行われていたため、まだ実演家の団体、映画製作者の団体から契約システムのそれぞれの案というのは提示されていないわけでございますけれども、双方の案が提示された段階で、映像の実演の財産権の実現に向けて関係者の合意形成を促進してまいりたいというふうに考えております。
石井(郁)委員 かなりいろいろ議論が進展しているなというふうに伺いましたけれども、俳優や声優の実演家の皆さんに、私はやはり速やかに財産権を付与すべきだというふうに考えるんですね。
 そのやり方、契約等々が今後の課題だというふうに伺いましたけれども、例えば映画製作会社と実演家団体、あるいはアニメ製作会社と声優などの実演家団体、こういうところの契約をどういうふうにするかということだろうと思うんですが、しかし、そういう実演家の権利を行使できるような条件を整えていくということが大きな課題となってくるかなというふうに思うわけですね。
 そうした際に、私的契約ですから、その私的契約に係るひな形というようなものを、文部科学省やあるいは経済産業省がつくったり押しつけたりするというようなことは、よもやないでしょうねというか、そういうことはないということを言明できるでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほども申し上げましたように、映像の実演の財産権の付与については、適切な契約システムの開発が不可欠であるわけでございますので、映像懇の場で、実演家団体、映画製作者団体の双方において契約システムの案を作成し、これらを持ち寄ってさらに検討を進めていくということが合意されております。
 文化庁といたしましては、契約はあくまでも当事者の自由意思によって行われるべきものであると考えておりまして、特定の契約内容を文化庁が決めるというようなことは考えておりません。
石井(郁)委員 文化庁がそういうふうにきちんとした立場に立っていただくということは大変大事だというふうに思うんですが、ところが、これは経済産業省文化情報関連産業課長の私的諮問機関で、アニメーション産業研究会がございます。そこが、テレビ放送番組の製作及び放送に関する契約書という契約のひな形を作成しているわけですね。
 これはもう一部新聞にも報道されましたから、おわかりのことと思いますけれども、それによりますと、株式会社何々テレビ局と株式会社製作会社とのテレビ放送用アニメーション・シリーズ作品の製作及び放送に関する契約に関するものとなって、その第四条に、権利関係でこう書かれているんですね。本作品に係る著作権、所有権その他のすべての権利は、別段の定めのある場合を除き乙に帰属している、この乙というのは製作会社でございます。
 また、第六条には、「本件作品のプロデューサー、監督、演出家、キャラクターデザイナー、声優等の実演家その他本件作品の製作に参加した者が、本件作品の製作に参加することを約束しており、本件作品にかかるすべての著作権が有効に乙に帰属していること。」としている。
 つまり、すべての著作権及び著作隣接権が、これだと製作会社に帰属するということと読めるわけですね。
 私は、一般原則からいっても、そして文字どおり受け取る感じとしても、これでは実演家の権利保護ということにならないのじゃないか、逆行するのではないかというふうに考えるわけですが、文化庁、いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 繰り返しになろうかと存じますけれども、著作物そのものやその利用形態が大変多様化が進んできておりますので、著作権についても明確な契約を交わすということが非常に重要になってきております。日本の場合は、文書により明確な契約を交わすということを避ける傾向があって、そういう状況のもとで、契約システムの構築というのはやはり喫緊の課題だと思っております。
 こういう問題意識が広く持たれてきたために、さまざまなコンテンツの制作や利用に関しまして、関係する企業、団体、省庁等の間で契約システムに関する研究開発、実験などが活発に行われるようになってきていると存じます。
 ただ、このこと自体は意義あることではございますけれども、先ほど来繰り返しておりますように、契約はあくまで当事者の自由意思によって行われるべきものでございまして、文化庁におきましては、例えば映像懇における視聴覚的実演に係る契約システムの検討におきましても、権利者、利用者それぞれが案を持ち寄って双方の合意の上でこれを進めるということにいたしているわけでございます。
石井(郁)委員 アニメーションの場合でいいますと、これまで実演家がアニメの製作会社と団体協約を結んでいた。それによって、ギャラは幾らとか、リピートの場合幾らとか、CSにかかわった場合幾らとか、テープの場合幾らと定めてきた。だから、既にもうそういうちゃんと団体協約、契約が行われているということなんですよね。にもかかわらずというか、今後その著作権一切が製作会社に移すというか、移るというか、こういうことが、今、WIPOで暫定合意をして、そのための法準備も進めようとしているというときに、これはやはりそういう流れに反するのではないかと。
 今、私、ちょっと内容に関係して言っているわけです。文化庁は、契約システムを構築する、このこと自身は必要だ、しかもそれは絶対合意の上だということですけれども、この内容をどう読むかということに若干かかわってもいますので、もう少し御見解をいただければというふうに思うんですが、いかがですか。
銭谷政府参考人 現在、文化庁が映像懇等で進めております検討も、映像の実演の財産権の実現に向けての合意形成の促進ということでございますので、そういう観点から御理解を賜りたいと存じます。
 確かに契約システムというものは、先ほど来申し上げておるように当事者の自由意思によって行われるものではございますけれども、当然のことながら、市場の中には、権利者側にも利用者側にも強者と弱者が存在する、そういう弱い立場にある方々自身が結束して、交渉力を高める必要、これもまた必要になってくるのかなという感じは持っております。
 例えばJASRAC、現在ございますけれども、これも、当初は弱い立場と言われておられました作詞家、作曲家の方などが結束をしてああいう組織をつくって強い交渉力を持つに至ったということもございますので、基本の方向は私ども踏まえますけれども、ひとつ当事者間のそういう合意形成に向けての御努力ということも必要になってくるのではないかというふうに思っております。
石井(郁)委員 次の問題に移ります。
 日本芸術文化振興会、ずっとこの間進められてきましたけれども、この芸術文化振興会の事業の見直し、また独立行政法人化の問題についてぜひ伺っておかなければならないわけです。
 当委員会でも、文化芸術振興基本法、いろいろ真剣に取り組みまして、昨年臨時国会で成立しました。十二月七日に公布されているわけですが、この内容では、もう繰り返しですが、憲法の表現の自由を前提として文化芸術関係者の自主性を尊重する、それから文化芸術活動への公的支援を充実させていく、やはりこの二つは大きな柱として確認されたというふうに私は思っています。
 ところが、その直後、十二月十九日です。特殊法人等整理合理化計画、閣議決定されておりますね。この中で、日本芸術文化振興会の事業の改革と組織の独立行政法人化が打ち出されているわけであります。その事業の改革というところを見ますと、一定期間後には助成措置を終了することを明記する、新国立劇場の国費投入の抑制を図る、だから、公的支援はもう抑制し、削減しようとする、こういう計画になっているということで、私は大変驚いたわけです。芸術文化振興基金による助成というのは、幅広い団体への助成として本当に大きな役割を果たしましたし、また大変関係者の皆さんに期待をされているところでしょう。
 まず、文化庁として、この芸術文化振興基金の役割というのはもう終わったというふうに考えているのかどうか、この役割をどう認識しているのかということをぜひお聞かせください。
銭谷政府参考人 芸術文化振興基金の意義ということでございますけれども、芸術文化振興基金は、平成二年の三月に創設をされまして、現在、政府出資金五百三十億円、民間からの出捐金百十二億円、合計六百四十二億円の資金による運用益をもちまして、多彩な芸術文化活動を幅広く助成いたしております。平成十三年度の助成実績は約十二億円でございます。
 私ども、国民が芸術文化に親しみ、みずからの手で新しい文化を創造していける環境の醸成を図り、文化振興の豊かな広がりを実現していくというこの芸術文化振興基金の役割は引き続き重要であり、今後とも適切に対応していかなければならないというふうに考えております。
石井(郁)委員 私は、本当にますますこれから役割は重要になっていくというふうに考えるわけですが、さらにこの合理化計画を見ますと、芸術文化活動に不当な介入をしないという大きな前提というか原則というか、こういうことがないままに、国が明確な政策目標を定めるとありますね。こういう点では、芸術文化活動の内容に政府が関与、介入しかねない危険があると多くの関係者から御意見が上がっています。
 例えば、森繁久彌さんが理事長を務める日本俳優連合は、三月十一日にこのような意見を発表されています。「「特殊法人の整理合理化計画」に対する日本俳優連合の意見」という形で、芸術、芸能、文化活動に国の介入や規制が加わると危惧するという指摘でございます。
 計画では、芸術文化活動に対する助成事業で、国が明確な政策目標を定めるとある、また、新国立劇場運営業務についても、果たすべき役割、政策目標を明確にとある。こういうふうになりますと、やはり表現の自由の確保と、あるいは国は条件整備を役割とするということが不明確にされたままで国がその目標を決める。これは私は、芸術文化活動の内容に触れることだし、介入できる仕組みをこれでつくってしまうことになるというふうに考えるわけですが、文化庁の御見解はいかがですか。
銭谷政府参考人 日本芸術文化振興会につきましては、先ほどお話がございましたが、平成十三年十二月十九日の閣議決定におきまして、独立行政法人に移行することが決定されたところでございます。
 御案内のように、独立行政法人制度は、国とは別の自律的な法人格を設けまして弾力的な組織業務運営を可能とし、効率性や質の向上、透明性の確保を図ることをねらいとするものと理解をいたしております。
 独立行政法人になりますと、中期目標の設定を行うわけでございますけれども、これは、例えば入場者数を劇場については何人にするとか、そういった数値のみに着目する、つまり効率性のみを追うということではなくて、芸術が文化の向上に大きく寄与するという目的にかんがみまして、文化芸術活動の性質に応じた適切な目標の設定が今後必要になってこようかと考えております。
 なお、昨年、文化芸術振興基本法を議員立法で成立をさせていただきまして、その第二条に、文化芸術振興の基本理念というものを八項目お示しをいただいているわけでございますが、私どもの文化芸術行政は、今後ともその基本理念にしっかり即して行っていかなければならないというのは当然であるというふうに思っております。
石井(郁)委員 今述べられましたけれども、その中期目標というのは文科省が決めることになるんですよね。これは既に独立行政法人となっているところがあるでしょう。国立美術館、博物館等々がありますけれども、そこに課されている中期目標を見て、果たしてどうなのかということがあるんですよね。
 ちょっと申し上げますと、毎事業年度、一%の業務の効率化を図ると。今答弁で効率化のみを追わせないと言われましたけれども、効率化を図るとありますよ。また、主催事業に参加した者、参加者のうち、毎年度平均で八〇%以上の者から有意義だった、役に立ったと回答されるような内容の充実を図る、そういうことまで言っているわけでしょう。だから、内容にかかわって目標も定められている。
 これでは、あなたが今答弁では効率は追わせないんだと言いましたけれども、事実、違うじゃないですか。だから、芸術分野にやはり政府がこんな形で目標を与える、文科省が決める、このことは、私は文化芸術振興基本法の精神にも反するというふうに思います。そしてまた、こういう支援のあり方というのは世界に例がないんじゃありませんか。そこをはっきりどう御認識されていますか。
銭谷政府参考人 日本芸術文化振興会は、現在、組織形態としては特殊法人という形態でございます。これを国全体の一つの方針として、独立行政法人という非常に法人の自律性を持ってかつ弾力的な組織運営業務が可能となり、さらに効率性や質の向上、透明性の確保を図った、そういう法人の形態に変えていこうとするのが今回の閣議決定の内容と理解をいたしております。
 したがいまして、法人についてその運営の効率というのは当然必要でございますけれども、それだけではなくて、例えば法人の行いますさまざまな文化芸術活動について、これは国費が運営交付金という形で今後投入されることになるわけでございますけれども、きちんと評価をするとか、その事業の透明性を確保するとか、そういうことを通じまして本来の文化芸術振興を図る、そういう日本芸術文化振興会の目的が達成されるように私どもは努めていかなければならないというふうに考えております。
石井(郁)委員 私は、この問題は大変重大な問題をはらんでおりますので、もっともっと議論をしなきゃいけないんですが、きょうはちょっと別のもう一つ尋ねたいことがありますので、また後の機会に回したいと思いますけれども、当委員会としても、せっかく全会一致で文化芸術振興基本法をつくったということですから、本当にそれが生かされるのかどうかということで、私は今後もっと議論が必要だというふうに考えているところです。
 きょうは、もう一点、映画の問題で伺いたいというふうに思います。
 新世紀アーツプラン、この新世紀アーツプランも大変いろいろな問題を抱えているというふうに思って、私も前にもちょっと触れたことがありますが、結局、文化庁はトップレベルへの直接支援を強めているということではないのかという問題があるわけですが、その中に映画が入っておりますので、ちょっときょうはこの問題で具体的にお聞きをします。
 映画は、今実際に日本映画の大半を占めているのは独立プロとか作品ごとにつくられる製作委員会などで進めているわけですけれども、新世紀アーツプランではこの支援を受けられないんじゃないか、活用できない制度になっているんじゃないかということが言われるわけです。つまり、そこでは、毎年一本以上の自主制作映画の実績及び製作計画を有することというふうにあるんですよ。つまり、毎年一本映画をつくらなきゃいけない。そういう会社というのはどれほどあるのか、まず、文化庁はそこをどうつかんでいますか、ちょっと数字で具体的にお示しください。
銭谷政府参考人 新世紀アーツプランにおきましては、トップレベルの映画製作について三年間継続的に重点支援を行うということを考えておりまして、支援の対象となる団体が一定の製作能力を持っているということを前提に事業を考えております。このため、原則として毎年一本以上の創作をしている団体を助成の対象、こう考えたわけでございますが、私どもが承知をしておる限りでは、毎年一本以上の映画製作をしている映画団体は、大手の映画会社や独立プロダクションなど、これは平成九年度から十一年度までの状況でございますが、少なくとも二十社はあると承知をいたしております。
 なお、この毎年一本以上の創作をしているということは、先ほど申し上げましたように、あくまで原則としているものでございまして、映画製作団体の実態にかんがみ、必ずしも毎年一本以上の実績がなければ支援を受けられないものではございません。ただ、製作能力というものを持っているということがやはりこのアーツプランの支援としては非常に大事な要素であるということも事実でございます。
石井(郁)委員 やはり実態に合わないことを条件に書くというのは、これは本当にお役所仕事そのものだというふうに私は思うんですね。やはり実態を解決するのが政治の仕事ですから、行政の仕事ですから、そういうことをやっちゃいけないというふうに思うんですね。
 日本では毎年三百本近い映画がつくられていると言われています。その多くが大手以外の独立プロとか製作委員会の作品なんですよね。文部科学省も選定作品にしました「アイ・ラブ・フレンズ」がありますけれども、その映画監督の大澤豊さんはこうおっしゃっています。お金を集めるのに一年、つくるのに約一年、それから回収に一年から一年半だ、だから、三年に一本できれば一番いいペースだと。これがやはり実態じゃないですか。だから、先ほど二十社と言われましたけれども、やはり資金もある大手だけが対象となって、そしてその大手はさらに国からの助成支援も受けるということになっていくわけで、そういうトップレベルの育成だけでいいのかという問題なんですよ。
 私は、本当に映画が好きでいいものをつくりたいといろいろな方々が本当に必死に努力している、そういうところを支援するのが本当のボトムアップにつながる支援だというふうに思うわけですので、この点は、先ほど原則ではないなどということを言われましたけれども、その程度にとどめないで、もっと真剣に考えていただきたいということがあります。
 それから、きょうはもう一点、映画の分野で重大な問題が一つございます。
 それは、助成を受けるための特別の条件が映画の中にあるんですが、それはこういうものなんですね。商業的、宗教的または政治的な宣伝意図を有しないものであること、映画だけにこういう条件がつけられているという問題なんです。ここはまさに政治ですけれども、何をもって政治的というのか、これこそ大変な議論があるところでしょう。
 そして、私はこれまでもずっと確認してきましたように、やはり芸術文化活動は、自主性を尊重する、これがかなめだということを言いながらも、結局、政治的だということで恣意的な選択あるいは介入をする、こういう余地を残しているんじゃありませんか。この点はいかがですか。
銭谷政府参考人 新世紀アーツプランの重点支援というのは、現代舞台芸術、伝統芸能、大衆芸能、映画の分野におきまして、我が国の芸術水準の向上を図るためにその直接的な牽引力となることが期待される芸術団体の自主的な公演あるいは制作活動を継続的に支援するというものでございます。
 したがって、いずれの芸術分野におきましても、商業的、宗教的または政治的な宣伝意図を有しないもの、いわば純粋な芸術活動を対象とするものでございますけれども、映画につきましては、自主制作映画以外に企業等の依頼によるコマーシャルフィルム等が現実にあるため、特にこのような条件を付したものでございます。したがって、映画だけ他の分野と異なった取り扱いをするという考えは持っておりません。
石井(郁)委員 私は、今の御答弁どおりだったら、この条項というか条文というか、これはもう削除すべきですよね。今、そういう考えは持っていないとはっきりおっしゃったんですから、これはもう削除してください。
 実は、かつて大変大きなことがこの条文のためにあったわけです。これは、芸術文化振興基金ができる前に、優秀映画製作支援というのが行われていましたときに、政治的だということで申請さえ門前払いにされたという例がやはりあるんですね。だから、私たちは、そういう例にかんがみて、本当にこういうものを残しておいてはいけないというふうに思うわけです。
 これは、ちょうど私ちょっと持ってきましたけれども、文化庁の名の入った便せんにこういうふうに書いてある映画なんです。これは、劇場用長編アニメーションで有名になりました「白旗の少女琉子」という沖縄の話なんですけれども、この映画は日本軍の住民に対する暴力行為を中心に描いたものであり、この映画を見る観客にとって当時の日本軍のすべてが沖縄住民に暴行を働いていたという印象を与えかねず見る者に健全な憩いを与えるものとは言いがたいと。見る者の立場でそういう制約も課している。しかも、沖縄戦の事実をどう見るかという問題だってはらんでいる。これは、文化庁はやはりこういうことに介入しているんですよ。
 だから、そういう介入の根拠となるようなこういう条項はやはり残すべきじゃありません。私は、この点では、映画だけにあるんですから、それで他の分野にないわけだから、こういう特別な条項は削除すべきだということを強く求めたいと思います。
 ちょっと一言御答弁ください、時間が参りましたので。
銭谷政府参考人 繰り返しになりますけれども、映画について、自主制作映画以外に企業等の依頼によるコマーシャルフィルム等が現実にあるために、特にこのような条件を付したものでございまして、映画について他の分野と異なった取り扱いをするものではないということを御理解いただきたいと存じます。
石井(郁)委員 終わります。
河村委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 今回の著作権法改正の問題に入る前に、EYEマークの普及についてお聞きしたいと思います。
 昨年の法案審議のときに参議院で附帯決議がついて、その後の衆議院での審議のときに私がEYEマークの普及についてお聞きしましたところ、前向きに検討したいと回答されておりましたので、その後どのようになっているか、お聞きしたいと思います。
 お時間がかかるのであれば、後からでも結構です。待っていますけれども、時間がなくなると思いますので。それとも、時間を切って待っていた方がいいですか。
銭谷政府参考人 突然の御質問でございますので、調べまして御回答申し上げたいと存じます。
山内(惠)委員 きのう、このことを質問事項に入れておりませんでしたので、申しわけないと思います。
 昨年の審議のときに、EYEマークを大きく拡大して見ていただいたことを御存じだと思うんですけれども、EYEマークというのは、ボランティアの優しい愛情、土壌と著作権者や出版社の福祉目的の著作権一部開放ということを受けて、録音図書、拡大写本などがすくすくと育つという意味で、読書障害者の目のかわりになっている本の情報を提供する活動をしているボランティアの姿をあらわして、このEYEマークをデザインしたと聞いています。
 そして、一般の著作権を得るためには相当長い時間がかかるので、著者が自分が出版する本の後ろにこのEYEマークをつけておくことで、点字だとかいろいろなことに応用してもいいですよというマークでしたので、このことを普及することについて、文科省として前向きに検討したいというふうにお答えだったと思います。その意味では、先ほどの武山議員の質問ともダブると思いましたので、急遽先にお聞かせいただきたいと思った次第です。
 著作権があるということは大事なことですから、当然大事に扱わなくちゃならないので手続にも時間がかかると思いますけれども、子供たちにも目の障害のある子がいるわけですから、この普及というのは、文科省として、当然子供たちの幸せ、それから今回は読書のこともいろいろな形で法案までつくって頑張っている文科省としては、この普及にぜひ力を入れていただきたいと思いましたので、きょうの場所でのお答えが無理であれば、改めて、私としては、どのような取り組みをなさって、どれぐらい普及をしているのか、もう既にこの運動はボランティアの方たちもやろうとしているので、もしかしたら一部実際にこれが広がっているんではないかと想定できますので、どのようになっているかのこともお聞かせいただければありがたいと思います。
 その上で、先ほどの武山議員の質問は、私は、教科書としてそのことを言われたという意味では、十分自分の運動として思っていなかったんですけれども、教科書を編集し、これを認めていく段階で著作権は了解を得ていただくことですから、先ほどのお話であれば、A4判の教科書をつくるときに、当然著作権のことがあって了解を得て教科書化するわけですから、そのときに拡大教科書にも使わせていただきたいということを望めば、そんなことは、私は、ある意味で、一方で教科書にすることを許可した方であれば、拡大化することについて嫌だと言われることの方がおかしいな、多くの方に読んでいただきたい、教科書として使っていただきたいという御本人の意向をそんなに踏みにじることではないと思いますが、了解をとるのであれば、教科書化するときに、もう一つ拡大教科書をということで了解を得ることができるのではないかと思いますが、改めて私の質問にお答えいただきたいと思います。
矢野政府参考人 教科書と拡大教科書というのはまた別のものでございますから、教科書の場合の著作権の許諾と別に、拡大教科書については別途必要になるわけでございます。その場合につきまして、教科書には大変多くの情報量がございます。多くの著作権がかかってございます。そういう意味での著作権の許諾についての手続が大変多くございますし、また大変煩瑣であるということから、なかなか難しいという状況があるものでございますから、そこをより簡便に、一括して著作権の許諾ができるような方法がないかということで、関係の団体において今御相談をしていただいている、そういう状況でございます。
山内(惠)委員 やり方、方法は、私の素人的な発言で言いましたから、わかっていないことがあるかと思いますけれども、ノーマライゼーションの時代であり、インクルージョンということで、普通学校の中にも障害のある子供たちが来る時代を迎えた、しかし、ずっと子供たちは、平等という意味では、本当に平等じゃない場面で親子ともどもつらい思いをしてきていることがまだまだいっぱいあると思うだけに、このようなことをやはり早急に進めていただきたいと思いますので、ぜひ前進に向けて頑張っていただきたいと思います。
 それでは次に、具体的に今回の法案について質問したいと思います。
 今回の法改正に当たって、審議会で一年間もかけて御議論されたというふうにお聞きしていますが、権利者と利用者との意向は十分に反映されたと考えていらっしゃいますか、そのことについてお聞かせいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 ただいまの御質問の前に、先ほどのEYEマークの件でございますけれども、著作者が御自分の著書を皆さん自由にどうぞお使いくださいというマークだと思いますけれども、いわゆる著作者の意思表示システム、自由利用の意思表示システムというのも、私ども、契約システムと同様に、これからの著作権、著作物の利用促進という観点からは一つの行き方だと思っておりますので、大変恐縮でございますが、EYEマークそのものについてはまだ十分実態を把握しておりませんが、そういった研究の一環として参考とさせていただきたいというふうに思っております。
 それから、ただいまお尋ねの、今回の法改正に当たって権利者と利用者の意向が十分に反映されたのかというお尋ねでございますけれども、今回の改正は、改正を要望した団体を中心とした関係者間の事前の調整に基づきながら作業を進めてきたというものでございます。
 例えば、実演家の人格権の創設につきましては、実演家の団体である日本芸能実演家団体協議会がかねてから要望していたものでございます。実演の利用者の団体の方は、当初、実演家の方に人格権を付与することについては、コンテンツの制作、流通を阻害する可能性があるのではないかと危惧をしていたわけでございますけれども、日本芸能実演家団体協議会との調整を経まして、例えば日本レコード協会、ネットワーク音楽著作権連絡協議会、経団連、日本映画製作者連盟など、利用者団体からも幅広い理解が得られたものでございます。
 また、もう一点の放送事業者にいわゆる送信可能化権を付与する件につきましては、放送事業者の団体等からかねて要望があったものでございますが、いわゆる利用者側の団体の間に特に反対ということはないというふうに承知をいたしております。
 このようなことから、文化庁といたしましては、今回の法改正事項につきましては、権利者と利用者の意向は十分に反映されているというふうに考えております。
山内(惠)委員 十分に反映された法律ということですから、そのようであるといいなと思っていますが、いろいろな方たちから要望が出ている中に、固定化された放送及び有線放送の規定については今回の保護の対象になっていないということがあるんですけれども、この部分についてはなぜ対象としなかったのでしょうか。
銭谷政府参考人 放送事業者にいわゆる送信可能化権を付与するという件は、今回の法改正では、受信をしたテレビ番組などについて、これをそのままパソコンを用いてインターネット上で再送信してしまう行為を防止するためのものでございます。番組を受信してそのままインターネットに流すと。したがって、一たん録画されたビデオや録音されたテープを用いてインターネットなどで再送信を行うというのは、先生お話しのように、対象にはなっておりません。
 ただ、受信した番組をビデオやテープ等を用いて録画、録音するということは、私的使用を目的とするものであれば複製権の侵害にはならないわけであります。ただ、このようなビデオやテープ等に録音、録画したものをインターネット等で再送信を行うということは、私的使用を目的とした複製物の目的外使用ということになりまして、複製権の侵害ということになって、放送事業者は、現在でもこれに対しては法的な措置を講ずることができるわけでございます。
 したがって、放送番組等、一たん録音、録画したものの利用に関しましては、そういう法的な措置があるということで、今回の送信可能化権の対象にはなっていないということでございます。
山内(惠)委員 今おっしゃられた回答の中であるように、インターネット上での侵害が横行しているということでは、ぜひ固定化された放送についても、放送事業者の送信可能化権の創設をしてほしいという声がありますよね。そのことを御理解の上で今のお返事だったと思うんですけれども、これを放置すれば、放送事業者は甚大な損失を負いかねないというふうに団体の方が言っていらっしゃるんですけれども、積極的な保護対策が必要ではないかと思いますが、その辺も今後の課題として、この法案が通った以降にも、ぜひ点検をしていただき、再検討ということも含めておいていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、先ほど昨年の法案のことでお聞きしようと思っていたことがあったんですけれども、ちょっと後先になりましたけれども、お聞きしたいと思います。
 昨年十月に著作権等管理事業法が施行されましたけれども、著作権等の管理事業者と利用者との間では円滑に実施されているのかどうかについて、済みません、お聞きしたいんですけれども。
銭谷政府参考人 著作権等管理事業法が施行されまして、現在二十六の事業者が管理事業者として登録をされております。実際に管理事業を開始をしているのは十二の事業者でございます。この中にはJASRACなどが入っております。
 そこで、お尋ねの、円滑にいっているのかということでございますけれども、仲介業務法、旧法時代に比べますと、この著作権の管理事業者は増加をしているわけでございます、これは当然でございますけれども。現時点では、著作権者あるいは利用者の間で円滑な利用を阻害するような事態は生じていないというふうに認識をいたしております。
 今後、この著作権等管理事業者がさらにふえるということが予想されますけれども、文化庁といたしましては、著作物等の円滑な利用が図られるように、必要に応じて適切に対応してまいりたいと考えております。
山内(惠)委員 わかりました。
 それにしましても、著作権というこの考え方については、人々の意識がまだまだ不十分だということで、そのことを十分にする法案が今回提案されているんだと思います。それにしても、人々の意識の問題があるので、著作ということに関しても、盗作などもいろいろ事件が起きている現状にあると思うんですね。
 そういう意味では、今回、この著作権の問題を広めるために、先ほどの大臣のお言葉の中には、大人に対しては講習会、子供に対しては新学習指導要領でというふうにおっしゃられましたので、私が質問する前に大体わかりました。
 それで、改めて確認なんですけれども、今回の新学習指導要領にはどのような文章として入ったのか、ちょっと御紹介いただけませんでしょうか。
銭谷政府参考人 新学習指導要領における著作権の取り扱いでございますけれども、非常にはっきり書いてあるところから申し上げますと、まず中学校の技術・家庭科、この中で次のように記してございます。情報化が社会や生活に及ぼす影響、これを勉強します。その中で、特に情報モラルの育成を図ります。創作物の著作権等については、承諾なしに勝手に使用できないことなどを学ぶことになっております。
 それから、高等学校の公民という教科がございまして、この教科には、現代社会、倫理、政治・経済という科目があるわけでございますけれども、これは三つの科目いずれとも知的所有権などに対する情報モラルの確立を学ぶということになっておりまして、この知的所有権の中に著作権が当然入っているということでございます。
 それから、もう一点だけでございますけれども、高等学校に情報という新しい教科ができまして、これはA、B、Cとございますけれども、いずれかを高校生は選んで必ず勉強することになりますけれども、この情報という教科の中で著作権への配慮ということを学ぶことになっております。
山内(惠)委員 どうもありがとうございました。
 昨年まではまだ学習指導要領には盛り込まれていなかったけれども、実は昨年質問したときに御紹介いただいた後、ことしもまた新しい著作権に関する学校現場に送られている資料を今回いただきまして、これを大変すばらしいと思って私は評価をしているところです。
 それで、問題のある中で、ちょっとだけ希望を述べておきたいことが一つあります。
 それは、私が学校現場にいたときのことなんですけれども、ジェンダー問題が取り上げられてそんなにまだ長い時間がたっていないだけに、現在ある教科書の中でも、男の子、女の子の扱いに少し問題があることがあります。特に主人公が、男の子と女の子でいえば、女の子の数が少なくて、男の子が主人公というのがとても多かったり、著作者にも女性の作者が少なかったりということがあって、問題にされてから、これはもう一九七五年の国際女性年以降、現場ではそのことを取り上げてきていますから、相当教科書も前進しています。
 今回のこれも、中身のよさに、そんなに多く問題はないんですけれども、言葉の中では、おれが中心で、おまえが従的に読み取れなくもないので、できればやはりこの中では、私という言葉も出てきていますし、僕という言葉も出てきていますから、出方としては出ているんですけれども、やはりこの、著作権おれにもあるんだね、そういうことがありますので、ちょっとそこのところだけひっかかりましたので、要望です。
 それにしても、書かれている内容は、私は大変よかったと思っているのは、「オレたちの作ったものでも認められるの?」「うん 中学生だって著作権はもってるよ」という形で書かれていること、この著作権というのは自分にあるんだということを書いていること。これは、小学生用も中学生用も両方そのことが書かれていてよかったと思います。
 その意味で、この後ろの方の解説がまたとてもよいなと思います。後ろに、一口解説というのがあって、著作権は、作品の表現をそのまま使うときなどに働く権利だという権利を言った後で、「著作権を取るためには何もしなくていいのです。」と書いてあるんですね。「作品を作ったときに、自動的に権利が取れます。これは国際的なルールです。」このように書かれている。このことを私は評価したいと思います。その意味で、権利というのは教えられなければやはりわからないわけですから、子供は自然に理解していくということではないわけですから、権利は何もしなくてもあるんだよという、このことをとても大事だと思います。
 それで、そのことを評価した上でなんですけれども、全国の小学校六年生と中学の三年生に全員配付とおっしゃられたので、これは文化庁が監修をして、財団法人のところでつくられたそうですけれども、御予算はどれぐらいかかったのか、ちょっとこのことだけ先にお聞かせいただきたいと思います。
銭谷政府参考人 このパンフレットの作成、配付の予算は、予算額で五千二百万円でございます。
山内(惠)委員 わかりました。
 著作権ということを学ぶ側の子供の側からいうと、子供にとっては、先ほどの紹介、内容に書かれているように、自分も権利の主体者であって、自分がつくったものも保障されるんだ、それからもう一つ、他の人がつくった作品なり人のもの、そういうことも保障されるんだという意味で、権利は二つの側面を持っているということをこのパンフレットの中から理解できることも、私は大変よかったと思っています。
 そのことでいえば、著作権は学習指導要領に位置づけられているから守られるということではなくて、既にある法律、今回改正される法律、批准をした条約のすべてが子供にも適用されるという考え方だと思いますが、当たり前のように思いますけれども、そのことでよろしいでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど先生も引用していただきましたけれども、著作権というのは作品をつくったときに自動的に付与される権利ということでございまして、これは国際的に認められたルールでございます。
山内(惠)委員 そういう意味で、あえてここのところでお聞きしたのは、権利というのは子供自身にもあるんだ、権利は、権利の主体者である子供という発想が重要だというふうに思います。
 その意味で、著作権という一つの問題だけではないと私は思っているんですけれども、子供たちは、権利というのがどういうのがあるのかということを十分理解できていない問題がまだまだあります。これからもいろいろ教えていかなければならないものがたくさんあるというふうに思います。
 その意味では、ちょっとこの法案とは外れますけれども、休息の権利なんというのは、当然、睡眠ですから、寝る、そんなの当たり前にしているんですけれども、休息の権利というふうにして条約で批准されているんだということを、子供たちは知らないということがあります。
 その意味で、国際的にも、日本の子供たちは受験勉強などによって休息する権利も脅かされているというようなこともあるし、保護者もそのことをわかっていないということがあるだけに、今回のこのパンフレット、大変すばらしかっただけに、子どもの権利条約を批准してからもうやがて十年になりますが、子供たちが権利を十分わかっていないという意味で、こういうパンフレット、例えば文部省が監修をして、財団法人のどこかでつくっていただくという方法でも結構ですけれども、そういう方策が必要じゃないかというのが、今の子供たちの状況なので、これは即予算化ということまではいかないかもしれませんけれども、そういう必要性があると思いますが、突然ですが、これはきのうの質問に入っていませんけれども、大臣いかがでしょうか。
遠山国務大臣 このインターネット時代のまんが著作権教室というパンフレットにつきまして、高い評価をいただきました。
 これは確かに、子供たちも自分で知的な創作をすれば権利は守られるよということも書いてございますが、しかし、他人の権利を守るにはこういうことが重要ですよということがむしろ重要なんです。つまり、権利だけを教えるということではなくて、権利については義務がきっちりと守られなくてはならないということでございます。
 そのことにつきましては、先般作成いたしました心のノートの中でもしっかりと、一国の国民として権利とともに義務をきちんと考えていく、そのことが非常に大事だということを強調してあるわけでございます。
 今のような、今、山内委員がおっしゃいましたような、権利についてのオンパレードの本をつくるというのは、私としては、ちょっとそういう発想というのはなかなか、どういうふうな意図で本当に子供たちに伝えていくのかということについては、これはきちんと考えた上でなされるべきだと思います。
山内(惠)委員 今回、法案は、今大臣がおっしゃったように、盗作その他横行しているだけに、著作権はしっかり守るんですよということを教えるためにこれはつくられていると思いますから、私が権利を抜き出して言ったんですけれども、当然このことを守りましょうということがわかるようなパンフレットであるということの中に、しかし、自分がつくったものも権利としてあるんだよという意味で私は読み取ってほっとしたという趣旨ですから、どうぞ御理解の方はそのように押さえていただきたいと思います。
 その上で、法律というのは、当然皆さんに守っていただきたいことをつくっていくわけですから、そのとおりだと思います。
 そのことで今あえて言ったのは、権利オンパレード、義務は子供たちが負わないという発想ではなくて、子供たちは学校でも相当たくさんの義務を言われます。その意味で、自分の権利というのは本当に十分わかっていないということも含めての質問だったんですが、これはきょうの審議とはちょっと横に外れますから、あえてそんなに追及はいたしません。
 子どもの権利条約にかかわっても、心のノートだけではなく、こういう条約のPRの仕方という意味で、条約を批准するときに、一枚のポスター裏表だけを張ったのが、私が学校現場にいたときに、文部省として当時出てきたものでありました。その後、こういうようなパンフレットを自治体に任されていて、自治体でつくっていて、前の答弁のときにも自治体がそれぞれやっているというお話でしたけれども、やはり私は、そういう条約を批准したときこそ文科省としてこういうものをつくる必要があると思いますので、それはまた改めてと思いますが、つくってほしいという要望を持っているということを受けとめておいていただきたいと思います。
 その意味で、権利に関してちょっともう一つ追及したいことがあります。
 一昨日、札幌南高の君が代問題のことについて児玉議員がおっしゃったんですけれども、実は、その大分前に私も、南高の問題が、子供の意見表明権にかかわって、札幌弁護士会が、強制をすることは子どもの権利条約の意見表明権に反するんだということのお答えがあって、そのことをどう思いますかということを大臣に質問しましたとき、大臣は、この君が代問題は学習指導要領に載っているので、これは子どもの権利条約の言う子供を対象とするものではないとおっしゃったのは、私は納得をしていないんですね。間違いではないかと思います。
 条約というのは、日本が批准をしているわけですから、すべての子供に当てはまるものです。だから、今回も、当てはまるか当てはまらないかではなくて、著作権というのがあって、そしてこの権利は、子供たちは教えられることは必要だと思うのは、学習指導要領にあるからではなくて、そのことによって子供たちは学ぶという意味で、このことの必要性を皆さんおっしゃったんだと思うんですね。
 著作権をどういうものなのか、自分はどのような権利を持っていて、相手の権利をどうやって守っていくかも条約によるんだということでの質問と、私は、君が代問題も同じだと思います。子どもの権利条約の意見表明権は当然対象になると私は思いますが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 今の御質問の趣旨が必ずしも私には明快でございませんし、私が何か答弁したときのことについても引用していただきましたが、それはよくそのことを見てから答弁させていただきたいと思います。
山内(惠)委員 それは、きょうはこのことが主ではありませんので、では、また改めて、あのときの回答そのまま使って質問したいと思いますので、よろしくお願いいたします。(発言する者あり)
河村委員長 御静粛に。
山内(惠)委員 それでは、今回の学校教育を通じての著作権思想の普及啓発を進めるということについては大変重要だと思っていますし、教職員にも広めるということが大変重要だと思います。
 そのことにつきましてですけれども、著作権の普及啓発につきましては、文部科学省だけでなく、さまざまな団体も取り組んでいるというふうに聞いているんですが、このような取り組みがほかにもあるのかどうか、把握していらっしゃるでしょうか、お聞かせください。
銭谷政府参考人 著作権に関する普及啓発活動につきましては、文化庁がみずから行うことはもちろんあるわけでございますが、それ以外に、著作権にかかわります団体、例えばJASRACでございますとか日本レコード協会とか、そういった関係団体の方々、それからもちろん都道府県、市町村といった地方公共団体の方々、幅広い方々がこの著作権思想の普及啓発には御尽瘁をいただいていると理解をいたしております。
山内(惠)委員 今そちらでも把握していらっしゃるようですから、わかりました。
 文部科学省だけではなく、民間でやっている方たちとそれぞればらばらに行うというよりは、どうぞ連携してそのことを強化していただきたいというふうに思います。
 最後の質問になりますが、今回の法案は世界に先駆けて評価できるという法案内容で、私もよかったと思いますが、あと批准していない国々がまだありますし、今後のWIPOというんですか、そちらの方での課題もあるだけに、日本政府としては音だけではなく映像もということで来られましたが、この後、国際的な審議の中で、日本政府としてはどのような形でこの未批准国の問題や次の課題の部分に参加していこうとお考えになっていらっしゃるか。世界に広めるという意味で、先ほど三カ国しかやっていない例のことをお話になっていましたけれども、どのような考えでいかれようと思っていらっしゃるか、お聞かせをいただきたいと思います。(発言する者あり)
河村委員長 少し御静粛にお願いします。私語が聞こえます。
遠山国務大臣 現在、WIPOにおきまして、インターネット時代に対応した視聴覚的実演及び放送機関の権利の拡大に関する新たな国際的ルールの検討が行われているところでして、このうち、視聴覚的実演に関する条約につきましては、平成十二年に外交会議が行われましたけれども、最終的な合意に至らず、条約の採択は見送られたところでございますが、この条約については、本年九月末に開催予定のWIPO総会において、その後の検討状況について報告がなされる予定です。
 それから、放送機関に関する条約につきましては、現在、各国の提案を踏まえながら検討が進められているところでございます。
 日本はどうかというお話でございますが、これらの権利をインターネット時代に対応したものに改善することは非常に大事な課題であると認識しております。従来から、条約案を提案するなど、その早期解決に向けた議論に積極的に貢献したところでありますが、今後とも、国内の実演家団体、放送機関などの関係者との情報交換を緊密に行いながら、関係各国とも連携をし、できる限り早期にこれらの条約が成立するよう、WIPOの議論の場で積極的に参加していきたいという考えでございます。
山内(惠)委員 ありがとうございました。
 私の質問の意図がよく伝わっていないという問題もあったそうですので、改めて丁寧に説明をしましてお答えいただくようにしたいと思います。きょうは少し早目ですけれども、本当は、いただいたお答えによってお聞きしたいことがあったんですけれども、私の趣旨が伝わっていないようですので、きょうはこれで終わりたいと思います。
河村委員長 わかりました。
 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
河村委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
河村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
河村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
河村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三十四分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.