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第2号 平成14年11月1日(金曜日)

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平成十四年十一月一日(金曜日)
    午前九時三十一分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 山谷えり子君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    岡下 信子君
      岸田 文雄君    近藤 基彦君
      佐藤 静雄君    谷田 武彦君
      中谷  元君    林田  彪君
      松野 博一君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      鎌田さゆり君    中津川博郷君
      肥田美代子君    平野 博文君
      藤村  修君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山口  壯君
      池坊 保子君    黄川田 徹君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長       
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青       
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (厚生労働省大臣官房審議
   官)           渡辺 芳樹君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 連合審査会開会に関する件
 政府参考人出頭要求に関する件
 学校教育法の一部を改正する法律案(内閣提出第四号)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りをいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、厚生労働省大臣官房審議官渡辺芳樹君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決まりました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。
奥山委員 おはようございます。
 久しぶりに文部科学委員会へ帰らせていただきまして、質問をさせていただきたいと思っております。
 今回提案されております学校教育法の改正につきまして、数点出ておるわけでありますが、今この中で一番問われているのが日本の高等教育であろうと思います。
 そして、さきに国際経営開発研究所というところが世界の大学の競争力のランキングというものを出したわけであります。この評価の信憑性というものは、これはいろいろ問題があろうかと思いますが、しかしながら、一面、日本の高等教育の競争力をやはりあらわしているんじゃないかと思います。それによりますと、一位がフィンランド、そして、ずっと世界の国々が並んでおりまして、韓国で四十一位、中国で四十二位、そしてインドネシアで四十八位で、何と日本がその後ろに四十九位というような状態になっておるということであります。
 どういうところから調査したのかということでありますけれども、これは、いろいろ企業経営者とか、そういうところの一つのいわゆる感想のような形でこれが出ておるので、具体的に科学的なデータのもとで出されたのではないということは、我々も承知はしておるわけであります。
 しかしながら、日本もどんどんと大学進学率が上がってきて、高校から大学に進学する進学が、何と大学へ四〇%に近い方々が今進学をしているわけであります。さらに、高等専門学校等々も入れますと、これがもう五〇%近いものになるんじゃないかと思いますが、そういった中には、特に女子の短期大学で見ますと、何か花嫁修業のために大学へ行くとか、そういう過去の経過もありました。そして、盛んに駅弁大学とかいろいろなことが言われて、我々は、大学が現在、粗製乱造になり過ぎておらないかというような懸念を持つものであります。
 もちろん、多くの方が大学へ行かれるということは、それはそれなりに非常に大きな意義があって、日本の教育力を示すものではあろうかと思いますが、その中には、本来、大学というものは、高い教養を身につけて、そして専門性を持ったエキスパートを育てていくということが、本来の大学の役割であろうかと思います。
 しかしながら、最近の大学生の中には、因数分解がわからないとか、あるいは当用漢字も十分わからないような学生までおるということで、大学の先生を驚かせているというようなことを考えてまいりますと、果たして、これまでのような大学政策というものはこれでよかったのかどうかということになってくるんじゃないかと思います。
 そういった点で、大臣の基本的な高等教育に対する考え方を聞かせていただきたいと思います。
遠山国務大臣 御指摘のように、戦後、日本の経済力が発展しますのと同時に、国民の進学意欲というのはどんどん高まってまいりまして、さらにまたベビーブームというようなことがありまして、そういう大学進学への意欲にこたえるために、たくさんの大学が設立されてきたという経緯があることは事実でございます。
 進学率が四〇%なり五〇%に近くなりますと、かつては到底そういう高等教育の対象でなかった人たちも入ってまいるわけでございまして、どうしても大学の質というものが、平均いたしますと、さまざまな問題をはらんでくるということは事実だと思います。
 そのことから、大学のレジャーランド化でありますとか、さまざまな御批判もあったわけでございますが、私は、大学でも、非常に一生懸命、本来あるべき教育なり研究なり等しっかりやっている大学、もちろんあると思っておりますが、しかし、全体として、そういう大学の量的発達に比して質の問題はどうかという反省に立ちまして、そして、一九九〇年代から大学改革が大変な勢いで今進んでいるところでございます。
 大学改革のねらいというのは、やはりそれぞれの大学がみずからの設置目的なり個性なりというものを十分に発揮して、そして、今おっしゃったように、教養も持ち、かつまた専門についても必要な知識を持つような、そういう社会にとって重要な人材を育ててほしいということで取り組みが始まっております。
 そのことを政策として一番わかりやすいのは、大学設置基準の大綱化というのを図りまして、がちがちにいろいろと規制をかけるという行き方ではなくて、それぞれの大学の特色を発揮してもらいたい、それができやすいように設置基準を大綱化いたしまして、今、それに基づいてそれぞれの大学が非常に努力を払ってきてくれていると思います。今調査をすれば、大分日本の企業人の日本の大学に対する意識も違ってまいるとは思いますが、しかしながら、さらにまた、これからもあるべき方向に向けて大いに各大学が努力してもらいたいと思っております。
 二十一世紀は知の世紀と言われております。その知の拠点としての大学がしっかりしてくれないと日本の将来はないと思っておりまして、その意味で、一生懸命努力する大学に対して私どもはしっかり支援していきたいというふうに考えております。
奥山委員 大学もどんどんふえて、進学者がふえてまいりますと、どうしても質の面でいろいろと問題が出てくるということは従来から指摘されておったわけであります。そういう中で、これからはまさに二十一世紀、その質を上げていくということであるわけであります。
 ということになってくると、どのような形で質を上げていくかということになってくるかと思いますが、現在、私学は、大学経営というものは、それなりにいろいろ個性化を持たせた経営をしていかなければなかなか生徒が集まらないということは当然であろうと思いますが、国公立の大学というものは、どちらかというと、比較的競争をするというような条件のもとに、環境にないわけであります。改めて今回大学をつくるということの規制がかなり緩められるということになって、一方において、質の悪い大学、問題のある大学は、これは是正をするということにはなっておるわけであります。
 ただ、やはり私は、ここでもう少し競争的な要因を導入していく必要があるのではないか、つくるのも自由にできるかわりに、これは退場させるのもどんどん退場させていったらというふうに思うわけであります。その中で、大学がその質を競う、その特色を競うというものにこれからはやはりリードしていく必要があるんじゃないかと思いますが、その点でいかがでしょうか。
河村副大臣 お答えいたします。
 奥山委員御指摘の点でございますが、これからの国際化時代といいますか、あるいは多様な時代、価値観の高い時代、そういう時代に大学がたえ得るためには、今指摘のような観点が私は非常に大事だというふうに思います。大学をつくることについてはできるだけ自由にする、しかし、その後の大学の質を高めることの努力をどういうふうに評価するかということが一方で非常に必要になってくるということだろうと思います。
 国立大学、公立大学についても御指摘がございましたが、既に御案内のように、国立大学につきましても、これを法人化してそれぞれ独立をさせて、切磋琢磨、競争環境に入れる。したがって、競争的な環境の中で、それぞれの大学が特色を競って、あるいは魅力ある大学づくりに努力をしていくということが非常に必要になってきた、こういうふうに思っておりまして、今回の学校教育法改正によって設置基準を緩めたということも事実でございます。
 それによって大学をつくりやすくするということももちろんでございますが、それにあわせて、同時に第三者評価をすることをきちっと位置づけるということになってまいりまして、これまで国立大学もそういうことをやってきたわけでございますが、私立大学にも第三者評価を受けていただくという形で、これから競争的な環境の中で各大学が魅力ある大学になっていってもらう、そして、いわゆる世界の競争の中に太刀打ちできるような大学になってもらう、そういうことを強く期待いたして今回の改正に臨んでおるようなわけであります。
奥山委員 今河村副大臣からありました、大学にその質を高めるという意味で第三者評価を導入するということは、我々もこれは大賛成だと思います。ただ、その第三者評価というものが、これがいわゆる数値できちっと出せる評価と、それから、非常に主観的に見なければならないような見方というか、なかなか数値的に出せない評価というものがあるんじゃないかと思います。
 そこで、一つは、その客観性をいかに担保していくかということがあります。さらに、その評価も、日本の国内でどうかということじゃなくして、これからの大学というのは国際性というものが問われるわけでありますから、特に一橋大学なんかは、日本の国内の評価を受けない、外国の評価を受けるというような学校も出てきておるわけであります。
 さらにまた、競争的なやはり要因を取り入れるという意味におきましては、大学人あるいは知識人のみが評価機関の評価員になるんじゃなくして、いわゆる民間的な手法というものもこの評価機関の中に導入をしていく必要があるんじゃないか、その上で、いかにしてその客観性を担保するかということになってくるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
河村副大臣 奥山委員御指摘のとおりでありまして、大学がある程度の評価を得る、そのためには評価する側がいかに客観的な立場で公正にやれるか、高い評価、中身のある評価ができるかということが非常に大事だと思います。
 そういう意味で、この評価機関の評価員については、まずは各大学が自己評価をきちっとやっていただくということが大事だろうと思うんですね。それから、同じレベルのといいますか、同じ大学間の競争ということもございますから、そういう大学関係者も実際の現場におる人たちがそれをどう見るかという評価もあろうと思います。
 と同時に、奥山委員が御指摘のように、いわゆる完全な第三者といいますか、あるいは先ほどのランキングなんかも、社会的な要請に大学がどうこたえているかということが非常に評価されるということで、それで世界のランキングが出て、日本はどうも社会的あるいは産業界等の期待度が、ちょっと世界の期待度から比べて低いんだというのがこの前のランキングの結果ですから、そういう面においても社会、いわゆる経営者といいますか、そういう方々が評価機関に入っていただいて、そういう目できちっと評価していただくということを、特に大事なことでありますから、これからの評価機関を認証する、これから見ていく場合に、そういうことがきちっと行われているかということも大事な要点であろうと考えておりまして、そういう配慮が当然なされてしかるべきだ、このように考えます。
奥山委員 評価というものは、できるだけ客観性を担保しながら質を高めるという面において活用されるようにお願いを申し上げたいと思います。
 その次に、このたび専門職の大学院がつくられる、特にこれは法科大学院ですね。今回はこれを視点に置きながら考えていってもらうわけであります。我々も、これはこれからの高度の文明社会の中で、それぞれのエキスパートをつくっていくということは非常に大事なことであろうと思います。
 しかしながら、余りにもそれが専門性に走り過ぎて、本来、社会的常識の欠けるような、そういった人物が専門家として社会に出ていくということになってくると、これは甚だ本来の目的とは、少しやはり人材の育成という面においては問題があるんじゃないかと思います。そういった意味で、できるだけ常識を兼ね備えながらやはり専門的な知識を持つ、そういう方々を育成していくということではないかと思います。
 そういう意味では、できるだけ大学院の入試の条件の中に、幅広いやはり教養を大前提として持っているということでないと、これは余りにも専門性に走り過ぎると、またこれは問題の出てくる人物が生まれてくるんじゃないかと思いますので、そういった点の見解をお尋ねしたいと思います。
遠山国務大臣 私も同感でございます。
 高度専門職業人というのは、それは特定の分野に関する高度の専門的知識を持つことはもとよりでございますが、今御指摘のように、同時に幅広い教養でありますとか、あるいは柔軟な思考力、あるいは豊かな人間性といった良識を持たないと、これは社会を担っていくすぐれた人材にはなり得ないわけでございまして、学部段階でもそのことは、教養教育の重要性というのはもう申すまでもないわけでございますが、高度専門職業人の場合には、特に、単に専門に偏らないで幅広い知見とともに豊かな人間性を持つ、そういった人を養成するために、入試のときに選ぶ際にも、あるいは教育の課程においても、そのことはしっかりと念頭に置きながらカリキュラムを組み、実際の指導をしてもらいたいと思っておりまして、今後、これから構想される例えば法科大学院におきましてもそのようなことが十分配慮されるように、私どもとしても各大学の取り組みを見守っていきたいと思っております。
奥山委員 もう余り時間がありませんので、一点だけ、現在、いろいろな大学があるわけでありますが、その中で、さっきも少し触れましたけれども、短期大学ですね。短期大学は、今、定員割れをしておる短期大学が非常にたくさんふえてきておるわけであります。これは、一面、やはり社会に十分対応できないという短期大学の姿があるんじゃないかと思います。これらにつきまして、今後の短期大学の位置づけ、これをどのようにしていくかということが現在審議会等でも検討されているやに聞いておりますが、少しその点につきまして、どのようなこれからの短期大学の方向というものを考えておられるか、お尋ねをしたいと思います。
河村副大臣 奥山委員御指摘のように、最近短大の定数割れ等もあり、あるいは短大が四年制にどんどん変わっていくという状況下にあることも事実でございますが、今奥山委員御指摘ありましたように、短期大学についても、平成十年でありますけれども、二十一世紀の大学像と今後の改革方策についてというところで、教養教育と実務教育を結合した専門的な職業教育をやる場として、あるいは豊かな社会生活の実現を視野に入れた教養教育をやる、あるいは地域社会と密着した社会人や高齢者、そういうような人たちも受け入れるような生涯教育の機会としての短大、こういう形で短期大学がもっと多様化する、あるいは個性化する、それが非常に大事なことだという御指摘があります。したがって、私は、ビジネスに関する問題とか、あるいは語学をやるとか、さらに、今、健康な生活の知識とか、資格を取るための短大とか、そういう意味で、私は、短大が生きていくといいますか、特色を出してやっていく道というのはあると思いますね。
 これは極論だと思うんですが、ある有名な学者が、今の一般の四年制の大学だって、あるいはもう二年で十分ではないかと言われるぐらいの指摘もあるぐらいでありますから、私は、短大の存在というのは、そういう考え方に立てば十分社会のニーズにこたえられるものができていくんではないか、もっとそういう意味で短期大学自身もいろいろ御努力をしていただく必要があろうし、我々として、文科省としても、そういうことに対する支援をしっかりしていかなきゃいかぬ、このように考えております。
奥山委員 もう質疑時間が終わりましたので、あと、ロースクールの問題とか、それから入試の問題、これもいろいろお尋ねをしたかったわけでありますけれども、ひとつこれからも質の高い大学を何とか我々も一緒につくっていかなければならないと思いますので、頑張りたいと思います。
 ありがとうございました。
古屋委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 時間が十分しかございませんので、三問質問をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 まず第一点は、今回、大学と専門職大学院に第三者評価が導入されるということは大きな大学改革の一つの方法だ、一環だと思っております。この第三者評価、必要だと思っておりますけれども、また逆に、非常に重要であるからこそこれは間違ったものになってはいけないという思いから質問をさせていただくわけですけれども、まず第一点は、どのような機関が第三者評価を行うのかということでございまして、本会議の質問で、大臣は、いろいろな民間機関の導入も考えられるということでございましたが、大学評価・学位授与機構も評価をするというふうに認識をしているというふうにお答えになっております。
 当然、この大学評価・学位授与機構、大学評価をするんでしょうけれども、いわゆるこれから民間が参入してきても、いわゆるイコールフッティングになるのかなという心配もございます。大学評価機構はある意味では税金でつくられているわけでございまして、これから入ってくる民間はある意味ではその民間資金で行われる、ある意味でスタートラインが違う、公平な競争が行われる環境にないのではないかという心配もございます。例えば、それが検査料ということにあらわれてくるかもしれません。
 そういうことも含めて、どのような機関が第三者評価を行うのか、また民間機関の導入ということが考えられるのであれば、既にある学位授与機構とのイコールフッティングをどうするのか、この点についてまずお伺いをいたします。
河村副大臣 斉藤委員御指摘のように、第三者評価についてはいわゆる大学評価・学位授与機構がある、さらに、各大学間が持っております財団法人のいわゆる四年制の大学の大学基準協会、あるいは短大が持っております短期大学基準協会、それ以外にも私立大学が加盟している日本私立大学協会を中心とした新しい第三者機関をつくろうという動きがあることも我々承知をいたしておるところでございまして、これについては、この法律でもありますように、認証の基準に合うものについてはこれを広く認めるという方向になっております。
 そして、その場合に、御指摘のように、他の評価機関ができますから、競争的な関係になるわけでございますが、それを、例えば学位授与機構、そこだけが特別有利になるとかということがあっては私は問題があるんじゃないか。できるだけそのバランスをとるということが必要であろう、手数料等についても。その点については、十分な私は配慮が必要であろうというふうに思います。
 さらに、こういう機関の中にはNPO法人とかそういうものの参加も十分考えられるんではないか、こう思っておりまして、それぞれの評価機関は独立性を持つんでありますけれども、できるだけそれぞれの機関が競争的な中で、特にそこだけが特別な国の機関的な優遇を受けるとか、そういうことのないような十分な配慮というのは必要であろう、このように考えております。
斉藤(鉄)委員 結果として大学評価・学位授与機構だけが残るというようなことになりますと、ここはあくまでも行政からは独立した機関であるとはいえ、国民の目から見れば、税金でつくられていて非常に行政に近いという視点もございます。そうしますと、行政が直接大学に対して評価を行うというふうな誤解を受けることにもなりかねないわけでございまして、どうか民間のいろいろな評価機関が育つような制度設計をしていただきたいと思います。
 この評価機関の第三者性、独立性、これをどう担保するのか、一番ポイントになるところだと思いますけれども、この点についてお伺いいたします。
河村副大臣 斉藤委員御指摘の第三者性、独立性を保つということは私非常に大事なことだというふうに意識しておりまして、認証評価というのは認証評価機関が責任を持って主体的に行うということになっておりますし、評価基準についてもみずから定めるといたしております。評価結果によって行政処分とかあるいは直接的な資源配分が行われるといったような仕組みにはなっていないということでございますし、また、一定基準を満たすものであるかどうか評価機関が認証を求める場合に、これは中央教育審議会の意見も十分聞いて判断する、こういうふうになっておりまして、それによって国の関与をできるだけ最小限にしながら、評価機関の独立性、あるいは評価機関が独立性を持って評価ができる、自立的に評価ができる制度にするということが今回のこの評価機関を認証する場合の基本的な制度として仕組まれているということであります。
斉藤(鉄)委員 この第三者性、独立性の担保ということも非常に今回の法改正の一番大きなポイントだと思いますので、どうか慎重な制度設計をまたよろしくお願いいたします。
 最後の質問ですけれども、今回の学校教育法の改正、専門職大学院という新しい制度をつくりました。そして、具体的には法科大学院というものが想定をされております。法務委員会でもこの法科大学院にかかわる二つの審査が行われておりますけれども、この法科大学院について、これまでの司法試験による一発試験による法曹養成、養成といいましょうか、一発試験そして司法修習という法曹養成から、プロセスによる法曹養成へと大きく転換しよう、これが今回の制度改革の趣旨だと聞いております。
 したがいまして、この法科大学院を出ないで予備試験を受けて司法試験の受験資格を取って司法試験に受かるというルート、予備試験ルートはあくまでも例外的な措置であるというふうに私ども考えておりますし、与党三党合意の根幹はまさにここにあると私ども公明党は考えております。
 この予備試験、あくまでも法科大学院、これを成功させるために、これが法曹養成の中核なんだ、そして予備試験ルートはあくまでも例外なんだということを実現するために、文部科学省としてどのような決意があるか、お伺いいたします。
河村副大臣 法科大学院というものがこれからの法曹を養成していく上での中核的教育機関である、このことは、私どももそう思っておりますし、また今度の、今まさに法務委員会でも議論をされております法科大学院の教育と司法試験等との連携等にかかわる法律、いわゆるブリッジ法においてもはっきりうたわれているところでございます。
 斉藤委員御指摘のように、極めて例外的だという言い方は、これが主でない、こちらの、いわゆる法科大学院で養成するのだというのが主であって、いわゆる予備試験からずっと入ってくるルートというのも、これはしかし、いろいろな多様な選択がありますからその道を開いておこうという意味で残されておるということでありまして、これを一概に例外的と言っていいかどうかについては、表現の仕方はいろいろあろうと思いますが、あくまでも中心は法科大学院が養成機関の中核的機関として、これから大いにこの制度が成功するように我々としては最大の努力をしていくということを申し上げたいと思います。
斉藤(鉄)委員 もう一度同じことを繰り返しますけれども、法曹養成の中核的機関にこの法科大学院がなるように、また、専門職大学院というのはこれからいろいろな種類でできてくると思いますけれども、そういう専門職大学院が日本の社会の中に根づくように、この試金石でございますので、どうか成功するように御努力をいただきたいと思います。
 終わります。
古屋委員長 山谷えり子君。
山谷委員 学校教育法の一部を改正する法律案について質問させていただきます。
 さきに遠山大臣がごあいさつにありましたように、人間力戦略ビジョンによって高い教育の質、また高等教育のレベルを維持しなければいけない、向上させなければいけないというものには大変共感を覚えるものでありますが、その前に、二、三質問させていただきたいというふうに思います。
 さきの日朝国交正常化交渉におきまして、五人の拉致被害者が北朝鮮に残している家族の帰国日程が確定できなかったというのはまことに遺憾でございますけれども、親子は一体でございます、日本人が日本へお帰りになるのは当然で、お帰りの日が早からんことを思いつつ、お伺いしたいと思います。
 遠山文部科学大臣は、閣議の後の記者会見で、就学、日本語習得に配慮したい、自治体、大学と連携して支援したいというふうにおっしゃられたかと思いますけれども、そこで、具体的なことをお伺いしたいと思います。
 現在、北朝鮮におられるお子様、大学生が四人、中学生が一人と報じられておりますけれども、これは日本にお帰りになった場合に、日本国籍を持つ日本人として中学の修学修了証明書というものはお出しになられるのでしょうか。
池坊大臣政務官 山谷委員も私も子供を持つ親でございますので、拉致された御家族の一番の懸念されることはきっとお子様方の問題ではないか、そして、その中でも極めて教育問題が比重が高いのではないかというふうに思っております。
 総合的な施策の中で、安心してこの日本の社会の中に溶け込んでいかれるよう願っておりますが、今お尋ねの中学校の卒業証書は中学校の課程を履修した者に与えられるものでございますので、ちょっと趣旨が違うのではないかと思いますが、卒業証書をお渡しすることができなくても、高等学校の入学のときには、北朝鮮と日本との教育制度の違いがございますけれども、御本人や御家族の意向を十分に伺いながら、教育委員会とか学校において入学資格や選抜においての配慮がなされるべきと考えております。
 文部科学省といたしましても、きちんと子供の高等学校受け入れが円滑に行われますよう、教育委員会、学校と密に連絡をとって、心配のないようにしていきたいと思っております。
山谷委員 日本人として義務教育終了、中学修学修了というのは、特例として前向きにぜひ御検討いただきたいというふうに思っております。
 続きまして、日本語教育、あるいは社会主義国で育ったということで子供の適応問題があろうかと思いますけれども、これはどのような、専門家でチームをつくるなりなんなり、対策、具体策を考えておられますでしょうか。
池坊大臣政務官 国内での就学については、一番の問題は、やはり日本語がどの程度、日本語の問題にかかってくると思っております。
 義務教育である小学校、中学校については、帰国されたお子様方の日本語のそれぞれの習得状態に配慮しながら相当学年に就学なさることだと思いますけれども、その就学に際しては、日本語教育のための教員とかあるいは配置、朝鮮語のわかる相談員の派遣といった点についても、市町村の要請を受けながらきめ細かにやっていきたいと思います。
 また、高等学校、大学についても、我が国と北朝鮮との教育制度の相違、問題点がどのようなところにあるかということがまだわかっておりませんけれども、御本人や御家族の意向を踏まえながら、入学者選抜試験における配慮、あるいは円滑な受け入れが行われるように支援したいと思います。また、そのときに、日本語の習得等についても、都道府県や大学の要望を踏まえながら支援策をしていきたいと思います。
 このごろ、国際人を受け入れるということにはだんだんなれてきたと思います。朝鮮語を話す方もいらっしゃいますので、それは早急にそういう方々の援助をいただきながら、お子様方の日本語の習得にも努めていきたいと思っております。
山谷委員 ぜひとも、そのようなきめ細かい、自治体それから大学などとの連携も考えながら、御支援をお願いしたいというふうに思うのですけれども、福井県立大学の場合は、希望の場合は入学、授業料の減免措置を予定しているということでございますけれども、このような自治体の動きについて大臣はどのような御見解をお持ちか、また国としてどのような措置をお考えか、お聞きしたいと思います。
河村副大臣 お答えいたします。
 福井県立大学のケースについてお話がございました。これは総合的に支援策を講じていかなきゃいかぬと考えておるわけでございますが、福井県立大学は、受け入れの方向の場合にはどういうことができるかということを今検討いたしているわけでございます。これは、大学の自主的判断、取り組み、これにまつ、これを評価していきたいというふうに思っておるところでございます。
 また、日本の大学への編入の問題等々これから出てくるであろう、こう思うわけでございますが、これは、言葉の問題もこれございまして、やはり特別な配慮が必要であろうというふうに考えております。
 選抜における特別な判断をする必要もあるだろう、こう思っておりまして、総合的に、御本人の希望とか、あるいは編入前、いわゆる編入入学前あるいは在学中に日本語教育をどの程度受講していけばいいのか、こういうことを踏まえて、総合的な、全面的な配慮の中で、特別な配慮の中で受け入れを考えていくということで、先ほど池坊政務官もお答え申し上げましたように、これは文部科学省としても非常に重要な課題であるという認識のもとにこの受け入れについて前向きに取り組んでいきたい、このように考えております。
山谷委員 総合的に特別な配慮を持ってというような今の御答弁に心強いものを感じましたので、ぜひそのような形で進めていただきたいというふうに思います。
 続きまして、大臣が、文部科学委員会、百五十五回のごあいさつの中で、人間力戦略ビジョンを進めていきたい、新しい時代を切り開くたくましい日本人を育成すること、豊かな心の育成というふうにおっしゃいました。
 今、子供たちの学力、体力、意欲の低下、そのほかに生きる意味と規範意識の喪失というのが非常に大きな根っこの問題となってあるというふうに思うんです。
 そこで、さきの国会で私が問題にさせていただきました、中学生にピルを勧める、あるいはフリーセックスをあおるような内容の「思春期のためのラブ&ボディBOOK」、保護者も大変に反対いたしまして、波紋が広がって回収というようなことにもなったわけでございまして、遠山文部科学大臣は、五月二十九日の答弁の中で、中学生にここまで教えるのはどうか、自分で考えて、いいと思えばやっていいというようなトーンがちょっと強過ぎるというふうにお答えいただきまして、私も本当に共感をしたものでございます。
 これが、各市町村、調べてみましたら、例えば神奈川なんですけれども、三十七市町村、十六回答ございましたけれども、指導者用としてとってあると言って、海老名市なんかは千百とってあるんですね。それから、相模原では、来年の三月に配付予定である、五千百三十六部とってあります。それから、藤沢市などは、三千二百とってあるんですけれども、厚生労働省あるいは文部科学省からの指示待ちをしているというような状況でございまして、これは「ラブ&ボディBOOK」の総括がきちんとできていないためにこのような現場での混乱状況、ハンドルの切りかえがされねばならぬということをきちんと定義したつもりでございましたが、そうなっていないということのように考えますけれども、厚生労働省の方はどのような助言、指示をなさったんでしょうか。
渡辺政府参考人 お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、十代の人工妊娠中絶でありますとか性感染症の罹患率の増加などさまざまな問題に対応するために、性に関する健全な意識の涵養を図るということが大きな課題となっておるわけでございます。
 御指摘の件でございますが、財団法人母子衛生研究会が作成した「思春期のためのラブ&ボディBOOK」というものでございますが、これにつきましては、ピルについての副作用が記述されていないなどの問題があるということについて先生からも御指摘を受けていたところでございまして、こうした御指摘を踏まえまして、先生御承知のとおり、私ども厚生労働省から本件冊子を作成した財団法人母子衛生研究会に対して、必要な見直しを行うように助言を行ったわけでございます。当該財団の方では、訂正資料を作成し、希望のあるところにこれを配付するという措置をとったわけでございますが、全体に配付している中で、回収されているものもあり、そしてまたこの訂正資料も御活用いただくというようなところもあろうかと思います。
 いずれにいたしましても、この財団におきましては、本件「思春期のためのラブ&ボディBOOK」という冊子につきまして、今後の増刷とか配付の予定はない、こういうふうに私ども、報告を受けておるところでございます。
山谷委員 今後増刷しないというのは当たり前のことでございまして、母子衛生研究会がどのような文書を送ったか、渡辺審議官は把握していらっしゃるんでしょうか。都道府県教育委員会殿として、希望に応じ、追加資料を配付するところとしているところでありますがと書いてあって、配付済みの冊子のうち使用見込みがないものについては、当会で引き取ることとしておりますので御案内申し上げます、追って配付先にもその旨の御案内を申しております、配付先にその旨をお知らせいただきますようお願い、何を言っているんだか、これは全然わからないですよ。総括していないということですよ、これは。もう一回お答えください。
渡辺政府参考人 今御指摘いただきましたように、当該財団法人からは、こうした七月十八日付の文書で、都道府県・政令市母子保健主管担当、教育委員会・学校保健主管担当殿ということで、この冊子につきまして、希望に応じ、追加資料を配付することとしているということで、見本を送付させていただいたわけでございます。あとは先生今お読みいただいたような記述もあるわけでございますが、私ども、こうしたことは、国会での先生の御指摘あるいは質問主意書での御指摘等々を踏まえて、私どもから助言指導させていただいた中で、こうした事業について一定の見直しを行い、そして必要な回収についても申し出をし、そして今後の増刷、配付予定を行わない、こういう整理をしていただいたものと考えております。
 個々の内容につきましては、いろいろ御指摘のいただいたところもあり、また一つ一つ、適切な部分ももちろんあるわけでございますけれども、総合的に勘案いたしまして、これまでの御指摘等を踏まえて、当該財団法人からの措置をとっていただいたものというふうに理解をしております。
山谷委員 ということは、きちんとした回収作業をしないということなんでございましょうか。この文書の中では、「日本では中絶することが許されている。」「日本のお医者さんの中絶手術の技術は信頼できるけど、」とか、もうでたらめの記述があるんですよ。回収しないんですか、きちんと。もう一度お願いします。
渡辺政府参考人 冊子の内容におきます問題点等につきましては、十分私ども当該財団の方に状況をお伝えし、意図を理解していただいているものというふうに考えております。
 この冊子そのものは、この財団法人がその責任において作成をしたものでございますし、私ども、省としてこれをみずから回収するというわけにもまいらない性質のものであるというふうに考えております。
 また、その活用におきましては、これまでのさまざまな議論をもちろん踏まえていただくという経緯を理解していただきたいと思っておりますが、まさしく子供の発達に応じて適切な情報が提供されるという基本が大事であるというふうに考えておりますので、現場における取り扱いも含めて十分注意をしていただきたいものと考えておるところです。
山谷委員 適切ではないから回収してくださいということで、世論もそういうふうになっているわけでございまして、今の答弁は非常に納得できないところでございます。
 いろいろな今、性教育、方向を変えてきておりまして、例えばアメリカなんかでは、避妊技術教育をしたところ、むしろ十代の妊娠率が三〇%も上がってしまったと。そうではなくて、きちんと欲望をコントロールすることとか人格形成とか生命尊重というようなふうに性教育の方針を転換したところ、例えばテネシー州のリアー郡、十代の妊娠中絶一位だったところが、転換したところ一年目には十位、二年前目には四十六位、三年目には六十四位と、どんどんどんどん妊娠率が低くなっていったんですよ。
 むしろ、今の厚生労働省がやろうとしているところを進めると、十代の妊娠中絶はますますふえていくばかりです。性感染症はふえていくばかりです。今の十代で十人に一人が性感染症じゃないかというような産婦人科のデータもあるわけですね。こういう現実、実態調査を厚生労働省はきちんとなさって、そしてこの今の回収というのは、これはもう不適切というようなことなんでございますから、財団法人母子衛生研究会が責任を持って編集したからうちはどうのこうの知らぬとおっしゃいましたけれども、これは厚生労働省の所管の財団法人ですよね。お金もおりているわけですよね。知らぬというのは無責任じゃないですか。もう一回答弁をお願いします。
渡辺政府参考人 私どもの所管法人であることは御指摘のとおりでございます。私どもの関係で、例えば在外の在留邦人に対する母子保健の知識の普及等に関しまして一定の補助も出ておるというのは先生御承知のとおりでございますが、本件の冊子の作成につきましては、私ども、誤解のないように御理解賜りたいのですけれども、補助事業として実施しているものではございません。
 もとより先生の御主張のベースでございますこうした十代の性の問題に関して、私ども性育という言葉を使っておりますけれども、それの一層の強化ということが大きな課題であるというふうに考えており、御指摘重々わかるところもあるわけでございます。また、来年度の概算要求におきましても、しっかり子供の発達に応じた性育ができますような研究教材を私どもの方で開発研究をしていくというようなことをとってまいりたい、こういうようなスタンスをとっておるところでございます。
 本件につきまして、私ども、これまでの経緯を踏まえて財団法人には適切な対応を求めてまいりましたし、そのような結果が得られるというふうに考えているところでございます。
山谷委員 何度もお伺いいたしましたが、回収しますか、しませんか。イエスかノーでお答えください。
渡辺政府参考人 役所として直接回収する考えはございません。
山谷委員 財団にお金が出ているわけです。厚生労働省所管の財団でございます。そのような答えは納得できません。もう一度お願いいたします。
渡辺政府参考人 繰り返しになって恐縮でございますが、これまでの経緯を踏まえて、財団としても、当該事業をもうしないという判断をしているということは十分事情を理解していただいているものと考えておりますし、これまでも配付先から、まだ十分とは言えないという御評価かとは思いますけれども、回収もさせていただいている部分もございます。決してこの財団が回収しないという態度でいるのを私どもが放置しているということではないということについて、御理解賜りたいと思います。
山谷委員 相模原では来年三月に配ると言っているわけでございますし、中絶のこのような書き方、あるいは中学生にピルを勧める、WHOでもとんでもないということを言っているわけですよ。それから、フリーセックスをあおる、これによって初交年齢がどれほど下がって、今、複数化、乱交文化が広がっているか、御存じでございますか。
 そのような答弁は本当に納得できないということをここで表明させていただきたいと思います。日本がつぶれます。未来への責任というものをきちんと果たしていただきたいというふうに思います。回収をお願いしたいというふうに思います。
 こんな中で、私は、性教育に関する指導資料、実践報告書などを読ませていただきました。指導資料には、愛がなければ性交してはいけないという考えを押しつけてはいけない、つまり愛がなくてもいいんだよと書いてあるわけですね、学校の先生が使う指導資料に。それから、実践報告書の中に、中学生、高校生のころは、二人の性のコミュニケーションがうまく図れず、避妊について話せない、しかし性交の回数は多い、その場合はピル、確実な避妊方法で、快楽の性が追求できることに気づかせる。中学生に対して、こういう報告書を先生たちが出してやっているわけですね。これは、教科書じゃないからそれは自由だというレベルではないというふうに思っております。
 先ほども申しましたように、アメリカでは、人格教育、それから責任をきちんと教える、節制を教える、生命尊重教育にした途端に、明らかに十代の初交年齢が上がっていって、妊娠中絶率が下がってきた。向こうは政策調査、実態調査をやって予算のつけかえをやっていますから、この五年間、物すごく急速にそっち側にシフトしてきているわけですね。そのような御事情をおわかりだと思います。
 それから、ドイツでは、子供たちには安定した家庭、結婚、親としての責任を教えるように配慮しなければならない。そしてまた、親の教育権として、性教育の内容や方法、議論、情報提供の義務づけをしているわけでございます。
 スウェーデンでは、いっときはポルノ、フリーセックス天国と言われておりましたけれども、これはやはり倫理上の問題を考えて、教科書や教材のチェック、イラストからビデオの映像に至るまでチェックしております。
 日本は、この今の厚生労働省がやろうとしているラインは、二十年おくれなんですね。いや、欧米に比べて日本はおくれている、恥ずかしい、冗談じゃございませんです。二十年おくれのあほなことを今厚生労働省はやろうとしているのでございます。この性育というプロジェクト、数千万円、違った方向に行かないように私たちはチェックしていきたいというふうに思います。
 遠山文部科学大臣、今のようなやりとりをお聞きになられまして、感想あるいはこれからの性教育のあり方に対する所感がございましたら、一言お願いいたします。
遠山国務大臣 人間にとって性の問題というのは、私は、大変生き方に絡む、何といいますか、私などの年代には非常に神聖な問題だと思っておりまして、余り即物的にアプローチをして幼い子供たちにいろいろなことを教えるのはどうかなというのが私の実感でございます。
 性教育について、私は余りうんちくを傾けてお話しするような内容は持っていないのでございますけれども、学校教育として性教育を扱う場合には、まず何といっても人間尊重を基盤としなくてはいけないと思います。そして、児童生徒の発達段階に応じて、性に関する科学的知識を理解されるとともに、これに基づいてあるいは望ましい行動がとれるようにするということをねらいにすべきだと私は考えております。
 つまり、私は、山谷先生のおっしゃったような、人間としての生き方として、そういう問題に対してどういう心構えで生きるべきかというようなことをきちんと教えていくことが本当は大事だと思っておりまして、それをいろいろな教科の中で展開していくんだと思いますけれども、そうですね、今のやりとりについての感想はということでございましたら、私は、問題のある資料は直ちに回収してもらいたいと思っております。
山谷委員 どうもありがとうございました。
 子供への責任、国の未来への責任、これは国家の安全保障の問題でもございます。ぜひ、今の大臣の答弁も踏まえて、厚生労働省として、合同プロジェクトチームをつくってこれからの性教育のあり方を考える、そしてこれは回収するというような方向で、本当にモラル、アイデンティティーを喪失させるような性教育はしていただきたくないというふうに思います。
 今、売春など性を売り物にすることは本人の自由と考えている高校生が四人に一人いる、こんな国異常ですよ。四人に一人。それから、出会い系サイトでの被害者、中高校生、四分の三ですね。本当に申しわけないですよ。私たち大人の義務、責任として、きちんとした責任ある性教育の方向の見直しというものはやっていかなければならないというふうに思います。
 渡辺審議官、もう一度簡単によろしくお願いします。
渡辺政府参考人 本日の先生の御指摘、それから委員会でのやりとりを含めまして、しっかりと財団法人にもさらなる御理解を深めていただくように指導してまいりたいと思います。
山谷委員 何をどう、回収はどうなんですか。もう一度お願いします。
渡辺政府参考人 財団として既に回収をしている実績もございます。不十分だという御指摘でございます。こうした回収の問題につきましても、繰り返し厳しく御指摘をきょういただいております。そういうことをすべて含めて、状況を理解していただき、正しい、適切な判断を財団としてしていただきますように私どもとして努力をさせていただきたいと思います。
山谷委員 厳しく見ていきたいというふうに思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 渡辺審議官、結構でございます。ありがとうございました。
 続きまして、遠山大臣の文部科学委員会での最初のごあいさつの中で、義務教育費国庫負担制度について、制度の根幹を今後とも堅持した上で見直しの具体的な検討を進めてまいりますとおっしゃいました。そのとおりだというふうに思っております。
 しかし、政府が三十日に出した分権改革会議最終報告の中に、義務教育費国庫負担制度の見直しで、五千億円削減とあります。これは税源移譲など、地方分権改革と具体策とセットでなければならないのに、協議は先送り状態。どのように地方の自主性が向上するかわからない中、受け入れられないものでございます。
 欧米の教育予算水準並みにいたしますと、あと日本は七兆五千億円プラスしなきゃいけない、もうそのぐらい教育に関して貧しい国でございまして、小泉総理の米百俵、あれは何なのだというような憤りを持っているものでございます。
 地方分権推進会議の報告書、ナショナルミニマム、国家による最低保障から、ローカルオプティマム、地域の選択による地域ごとの最適状態の実現を目指すと、何だかわけのわからない単語を使いまして、要するに地方のことは地方に任すというような形で改革をやっていくという、その目標に異論はございません。しかしながら、地方分権一括法、資料を求めましたらば、四千ページ、九キロもあって、ちっとも進まないというこの現状を見ますと、本当にどういうふうになっていくのだろうかというふうに心配でございます。
 昨日、三十一日、経済財政諮問会議で、大臣が御出席なさいまして、義務教育費国庫負担金について、平成十五年から十八年にかけて約五千億円削減という計画案を提出なさいました、分権改革会議と歩調を一にするというような印象を受けますけれども。平成十六年から定額化に向け検討、十八年度から新たな教員の評価、給与制度の実施も示されております。
 繰り返しますが、地域の特性、教育のあり方等グランドデザインで示していく中で、分権具体策とこれはセットでなければ、どうしても、どうなるかわからないということで、心配なことばかりでございますので、大臣はその辺、どのように考え、これから進めていかれるのでございましょうか。
遠山国務大臣 義務教育費の国庫負担金の話につきましては、これは、地方分権という角度から、その全額を一般財源化すべし、あるいは交付税化すべしという論議があったわけでございます。私どもといたしましては、その意見は、これは取り入れられないと思うわけでございます。
 義務教育費国庫負担制度は、憲法の要請によりまして、義務教育の水準を確保するための国の最低保障の制度でありまして、そもそもその制度の中に国と地方の役割分担というものが組み込まれております。その中で、国としては、義務教育の水準確保という観点から、この義務教育費国庫負担金というものを支出しながら、各地における義務教育が本来のあるべき姿で推移するようにきちっと役割を果たしていくということが国の役割だというふうに考えているわけでございます。
 その制度につきまして、地方分権あるいは歳出削減に係る観点から改革案を出すようにということで、総理から指示を受けました。そのことに対しましては、八月末の経済財政諮問会議におきまして、私どもは、義務教育費国庫負担金について、これを一般財源化することはできないと。
 ただ、その義務教育の水準確保のために本当に国が負担すべき経費は何かということを考えろということでございましたので、その角度からいえば、現に教員が働いてくれている、そのことに伴う経費については、給与費については、これは国が負担をしていく。しかし、その現に働いていることに伴うというよりは、共済年金の給付のことでありますとか、あるいは退職手当のようなものは、本来国が持つべきというふうなものに絞っていくべしと言われたときには、これはその対象ではないというふうに判断いたしまして、それについては、これは国庫負担金の方から五千億というものをむしろ一般財源化していくというのもいいのではないかということで、私どもとしましては、本体というものは絶対に守らなくてはいけない、その中で、五千億ということで案を出しているわけでございます。
 財源につきましては、もともとの当初から、そういうことについての財源は、三位一体論といいまして、国の補助金でありますとかあるいは地方交付税がどうなっていくか、それから財源の移譲がどうなっていくか、そういったことの三位一体論の中で対処するということが総理の方針でもございますので、そのこと自体は今後関係者の間で議論されていくものでございまして、当然それはその方向で考えられていくと思っております。
 私どもの立場は、財源論によって国の義務教育制度を論じられては困るということで、国のあるべき責任、それからその役割というものを全うするためにあの案を出したわけでございます。
 その過程で、知事さんのうちの四・五%の方だけが、ということは二人の知事さんだと思いますが、一般財源化しろということで、これはもうほとんど、九十何%の方は、これは一般財源化にはなじまないということで反対をしておられるわけでございます。
 地方の意見も十分聞きながらこの政策を打っていこうと思っておりますが、当然、これからの地方公務員制度の改革あるいは地方行財政制度の改革、さまざまなものと絡みながら、トータルとしての義務教育費国庫負担制度のあり方については、私は、地方の意見も聞き、かつ、教育論としてどうやってやっていくかということを十分勘案して進めていくべきものだというふうに考えております。
山谷委員 教育のあるべき姿、そして国と地方のそれぞれの役割、いかにあるべきかというのは本当に大きな問題でございますので、今国会、この委員会でも時間をたっぷりとっていただきまして議論したいというふうに考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 随分と時間をとってしまいましたが、学校教育法の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
 今、高等教育の高い研究、教育の質が求められております。スイスの経営開発国際研究所、国際競争力の調査によりますと、日本はトップランクだったのですけれども、一九九七年で十七位、二〇〇二年で三十位というふうに、もう本当に競争力が落ちてきておりまして、これは産業界のみならず、本当に多くの国民が心配していることでございます。
 この一部を改正する法律案では、設置基準の緩和を受けて、二〇〇四年より事後チェックで第三者評価を受けることになるという、事後点検型、切磋琢磨をちゃんとやりなさいというようなことでございます。国立大学も、法人化後は、大学評価・学位授与機構などで評価されて運営費交付金も変わるということで質が高まればよいというふうに考えておるわけでございますけれども、この大学に対する第三者評価制度、これまで自己点検、評価など、各大学の自己努力ということから、大学の全学的な教育研究等の状況、専門職大学院においては、各分野ごとに国が認証する評価機関が定期的に評価、公表するというふうに改正されるということでございますけれども、この評価、何年ごとぐらいにやろうというふうにお考えでございますか。
河村副大臣 大学全体は七年と考えておりますが、この専門職大学院については五年ということで設計をいたしておるところでございます。
山谷委員 現在、千二百を超える大学、短大がございます。そして今、大学評価・学位授与機構、並びに財団法人の大学基準協会、それから短大の基準協会、私学の基準協会ができていくというふうに、そしてまた、民間も参入し、先ほど河村副大臣の御答弁では、NPOの参入もというふうなことを考えていらっしゃるようでございますけれども、本当に、当初は、今のところこれだけしかないわけですし、一体この千二百をどのように評価していくんでしょうか。数、それから、参入を待つといったって、そうもうかる仕事とも思えませんし、専門性が高い仕事でございますし、どのような青写真でどう進めていこうというふうにお考えでございますか。
河村副大臣 委員も既に御承知かと思いますが、学位授与機構、国の機関として一つあるわけであります。さらに、四年制のいわゆる大学の持っている基準協会がやろう、それから、短大は短大で持っておりますいわゆるピアレビューといいますか、それぞれの大学間においてまずやるということ、それからさらに、大学の方も、あれだけの大学がありますから、大学連盟、私立大学協会があります、協会の方も新たにそうした機関をつくっていこうといたしておりますし、これは、おっしゃるように、これだけの大学が、国公私入れて六百、七百近い大学があるわけでありますから、それを全部やるということになりますと、ひとつこれだけの機関では足らないだろうということで、さっき答弁申し上げたように、NPO等の参加もぜひ望みたい、こう思っております。
 これは、七年に一回回ってくるような形で設計を立てていかなければなりません。特に、私学も入ってくるということになりますと、確かに計画的にやっていかなければならぬだろう、こう思っておるわけでございまして、各協会ごとにその計画はきちっと立てていただいて、どの大学も公平にできるような仕組みというものをきちっととっていく、これは当然のことであろうというふうに思っております。
山谷委員 財団法人大学基準協会は、一大学二、三十万から数十万の受託費用でやっていらっしゃるわけでございますけれども、これは大学から提出された書面を分析、審査するだけで、一日だけなんですね。欧米はもっと何日も入っていますよ、泊まり込みでディスカッションしたりして。
 それから、大学基準協会、現在やっているのは四十前後じゃないでございましょうか。そのくらいのことしかできない中で、認証の評価機関を入れて第三者評価制度を導入、これは本当に急いで、私、評価自体はいいと思っているんです。いいと思っているんではありますけれども、とにかく組織、人材、どの程度のレベルを考えていらっしゃるのか。七年というのも根拠がよくわかりませんけれども、本当にこんな形で七年ごとに回していけるのか、その辺もうちょっと具体的にお聞かせください。
河村副大臣 確かに、御指摘のように、これを何日間も張り込んでやるということになりますと、今の数で足るかということについては私も懸念をいたしておるところでございますが、外部の有識者にもしっかり参加をしていただくということが非常に必要であろうと思いますね。
 昭和二十二年につくった財団法人大学基準協会においては、これに加盟をしていただく会員校数というのが国公私合わせて五百五十九の大学が入っているわけです。その中で、いわゆる教員の方々にも参加をもちろんしていただく、さらに外部有識者にも入っていただくということで、かなりの数を確保して対応しているということでございます。
 現実に、実地検査もやらなきゃなりませんし、場合によっては、場合によってというか、既に生徒、学生の意見も聞くというようなことも今やっておるわけでございまして、これも、これからいよいよ私学も開始するということでございますから、山谷委員御指摘のような点を十分踏まえて、このスタッフの確保、これが十分であるかどうかということについてはこれからも我々としても十分注視をしていかなきゃなりませんし、さらに、今の協会だけじゃなくて、これに対してNPO等の参加も求めていくという方向で充実をして、図っていかなきゃならぬ、このように考えております。
山谷委員 認証評価項目の内容というのも随分質の点でかかわりがあるというふうに思うんですけれども、例えば、産業界が望む基準とか視点なんかをどう入れるかという工夫をきちんとしていただきたいと思いますし、それから、今大学卒で就職しない若者が五人に一人なんですね。就職しても三人に一人は三年以内にやめてしまうという、この卒業後の質というのも私はフォローしながら評価項目の中に入れていくというぐらいの、やはり大きなチャレンジ精神と時代を見通した評価項目の設定というものをしていただきたいというふうに思います。
 アメリカでは専門分野別に四十九の評価機関がございますけれども、日本の場合、ちょっと学界、幾つかに取材させていただきましたが、非常に学界の動きも鈍うございます。本当に中身まできちんと評価したいと思いましたらば、専門性の必要な分野が多うございますので、学界、産業界あるいは卒業後、さまざまな絡み、どういうふうにビジョンを持っていらっしゃいますか。
河村副大臣 評価基準には今御指摘のようないろいろな観点があるだろうと思います。今回法律で定めております点は、五つ、四つか六つぐらいのものにいたしておるわけでございます。その中に当然具体的な、社会的な要請にいかに大学がこたえているかという視点も入っていかなきゃなりません。
 先ほどのランキングの話も出ましたけれども、これは日本の大学がいわゆる産業界等々の経営者等々から見てその期待にこたえているかどうかということが今回の調査で行われたというふうに聞いておりまして、その点で、日本のランキングが非常に低かったということは、これはある一面的な考え方でありまして、その大学が事実どういう教育をやっているかとか、日本の大学生がよその大学と比べてレベルはどうかとか、そういう具体的なことではなくて、むしろ経営者が持っておられる感覚が非常に出てきたということは、この評価に当然そうした産業界の方々にも入っていただくことが必要になってまいりますので、今考えている基準協会等々の中にもそういうスタッフがきちっと入っているかどうかということについても、我々しっかり考えて指導していかなきゃいけない問題だろうというふうに思っております。
 いわゆる、委員御指摘のように、社会に出てからどのように活躍しているかということの評価、これはなかなか追跡評価は容易ではないかもわかりませんけれども、そういうことも踏まえた評価をするということも大学のいわゆる評価の中に非常に必要になって、要するに教育の後の大学が持つ責任をどういうふうに果たしているかという評価ができるかどうかということだろうというふうに思います。
 今の御指摘も踏まえながら、いわゆる大学をどう見るか、大学が、学生をまさに人格形成等々を含めて教育をしながら、同時に社会の要請にきちっとこたえた人材を出しているかどうか、まさに今内閣が求めている人間的戦略に合っている大学であるかという視点を考えていかなきゃならぬ、こういう理想のもとに評価基準を考えていくということが大事であろうというふうに考えております。
山谷委員 学位授与機構で評価されました国立大学が、非常に反発したということがございました。昨年、百七十件の異議申し立てがあった。これの分析をどのようにしていらっしゃるか。これの分析をきちんとして、いろいろな認証機関の認定などにもかかわらせられる問題を多く含んでいると思いますので、その辺のことと、それから今回の第三者評価制度の導入で、不服申し立て制度などのことはどのように考えておいででございましょうか。
河村副大臣 委員御指摘のように、大学評価・学位授与機構は、ことし初めて三月に評価結果を公表したわけでございます。これは、今回初めての件でございまして、まさにこれからもっと本格的に実施をするための試行的段階のもので、国立大学を中心に評価を実施されたわけですね。これについては、国立大学協会側からは、確かにいろいろな御指摘もありましたけれども、やはりこれは真摯に受けとめてこれからの自己改革に努めたいという意見の表明をいただいておるわけでございます。ただ、分野間での評価基準というものが必ずしも統一されていないという面もありまして、評価担当者間でも共通理解が十分でなかったという面も指摘をされておるところでございます。
 確かに、初めてのケースでございますので、かなり試行的な試みであったということでありますが、この評価結果の解釈についても、十分な理解をいただく、慎重を期していただきませんと、単なる大学のランキングに使われるような形のものであっては困るわけでございまして、この点についてのまだ理解も十分ではないだろう、こう考えておりまして、さらにこの学位授与機構側とそれから大学側とがお互いに協力しながら、その評価についてもっと真っ正面から向き合って、そして立派な評価、いい評価ができるような形をつくり上げていくことが非常に大事だろう、こう思っております。
 まさに緒についたばかりでございますので、これからさらにこれをきちっとしたものにつくり上げていくということが大事でございます。
 もちろん、これに対して、大学側の評価に対する不服申し立てといいますか、これはきちっと受けとめて、それに対してまたお答えができるような仕組みになっておるわけでございます。
山谷委員 本当に緒についたばかりで、しかもまだまだ頼りない状況でということで、非常に不安材料だらけですね。とにかく初期の条件、スタート時の志がその後の制度の意義と存続を決めるというふうに思っておりますので、今の答弁を聞きますと、非常に頼りない印象を受けているので、その辺のことをしっかりしなければいけないのではないか、もっと議論を尽くす必要があるのではないかというふうに考えます。
 先ほど、NPOなんかも参入していいのではないかというふうにおっしゃいましたけれども、これはみなし公務員制度の適用がないということで、アメリカなんかは五年ごとの更新制で機関をチェックしているというシステムがあるわけですが、日本の場合はそれがない。そうすると、癒着ということも懸念されるわけでございます。
 そのようなことがないように、あるいは財政的な措置を国が考えるとか、いろいろなことが考えられるというふうに思うんですけれども、中教審、八月五日の答申では、国の支援方策について、認証機関に対して検討する必要があるというふうに答申を出しておりますけれども、その辺のビジョンはどのようにお考えでございましょうか。
河村副大臣 委員御指摘のとおりでありまして、中教審もそのような必要性を認めておりますので、文科省としても、この評価というものをもっと充実させる、また発展させるためにも、財政的支援というものを当然考えていく、検討する必要があろうというふうに思っております。
山谷委員 続きまして、専門職大学院制度についてお聞きしたいというふうに思います。
 現行、研究者養成を主とした大学院の目的から、さらに高度専門職業人養成を明確にしていく、高度専門職業人養成に特化した専門職大学院を創設していき、修了者には専門職学位という学位を授与するというような創設の法律案でございますけれども、これは、二〇〇〇年にスタートした専門大学院制度というのがあるんですよね。これは学校教育法を改正しないでやった。これが、ことしの春に初めての卒業生が出た。そうすると、これ、ことしの四月が最後の入学生になっちゃう。これまた非常にいいかげんな状況でございますけれども、これ、総括もなされていないのではないかというふうに思います。
 これは、法科大学院を設置するためにこのような専門職大学院というようなことで、初めに法科大学院ありき、スペース、広いところをとっちゃって、あるいは大きなビルを建ててしまって、法科大学院というのをとにかく一つ入れる、あとは全然ビルに何が入るかわからない。専門職大学院に手を挙げていらっしゃる大学側の意思表示、あるいはまた想定される分野というものをどのようにお考えでございましょうか。
河村副大臣 いよいよこの学校教育法の改正によりまして、専門職大学院制度というものが導入されることになるわけでございます。
 これは今、当面、法科大学院という形でまずスタートすることになるわけでございますが、これまでの大学院レベルでやってきたものを、さらに高度の専門職業人を養成するという形で導入するものでございまして、これについてはいろいろな形でこれからの参入が考えられる、展開されていくだろうと思っておりますが、法科大学院を初めとして、さらに経営管理部門、あるいは公共政策、あるいは知的財産、そういうもので、今具体的な関係、参入は考えておられるようでございます。
 さらに、メディカルスクールの考え方とか、私はかなり広範な分野でこの専門職大学院というものへの参入、展開がされるであろう、このように予想いたしております。
山谷委員 この専門職大学院の評価の場合、特定の分野においては海外の評価機関等の評価を認めるなど適切な配慮、方策について検討するというふうにありますが、一橋なんかはMBA、海外の評価機関の評価をというふうに考えておられるようですが、やはり国際的な経営、ファイナンスの問題、あるいは国際的に活躍できる公衆衛生ジャンルの方とか、国際的に活躍できる高度な専門職の研究者、職業人というものが求められているときに、この国際的保証システムの構築の必要というのは、またそういう視点からも大事なことではないかというふうに思います。
 日本の政府というのは、アジアなんかに企業が海外進出する場合に、非常に、裸でほうり出すようなことがある。この専門職大学院が非常に充実して、国際的に活躍できる人材を輩出していくためにも、国際的な情報ネットワークの構築というものが必要だというふうに思いますけれども、その辺の検討状況はいかがでございましょうか。
河村副大臣 委員御指摘のように、この専門職大学院には、やはり国際的感覚あるいは国際社会で活躍できる人材を出すということも非常に大きな要点でございまして、そういう意味で、国際的な評価を受けるということも私は非常に必要なことだろうというふうに思いまして、そのことについても省令できちっとできるような形で、このグローバルスタンダードの定着している外国の評価機関、これの評価を受けるということは考えておるところでございます。
山谷委員 この専門職大学院の設置基準、組織、設備、人材、カリキュラム等々、再教育の機会の提供という視点も欠かせないわけでございますし、どのような制度設計を考えておられますか。
河村副大臣 この設置基準は、今回の教育法にあるわけでございますが、それで、その設置基準に合ったものについてはそれを認めていくということでございますので、今まで山谷委員が御指摘なさいましたような国際的な観点、あるいは高度な技術を持つあるいは知識を持つ専門家をつくっていくという形でございまして、特に設置基準の中では、この専門職大学院の場合には修業年限は二年を基本といたしておりますけれども、法科大学院など、分野によっては三年、外部、いわゆる広く人材を求めていくというような観点から考えますと、例えば法科大学院の場合ですと、法学部だけを学んできた人たちと、それ以外のを学んできた人たちも参入できるような形でございますので、そういう方々には三年という設置基準が設けてあるということでございまして、これまでのいわゆる大学院ですと、どうしても論文とか研究とか、そちらの方へウエートがあったわけでありますが、もちろんそういうことも大事でありましょうけれども、それをさらに実務と申しますか、それにもうちょっとウエートを置いた形での設計をして専門職大学院を認めるということになっていくわけでございまして、いわゆる研究指導教員というものを、これまで必置条件があったわけでありますが、そういう形のものは必置条件とせずに、むしろ専門大学院の専攻分野を教育するにふさわしい人たちをもっと集めて、そして高度の教育上の指導能力があるという方々を置きながらやっていくという形で、今までの専門大学院というものをさらに実務を重視して視野を広げたものにする設計、こういうことになっておるわけでございます。
山谷委員 法科大学院の場合は教員配置基準は学生十五人に対して教員一人、そしておおむね二割ほどが実務家教員というふうに示されております、具体的に。これでやると、試算によっては授業料が年間三百三十から三百五十万円ぐらいというようなこともあって、とても普通の人は行けないというような議論も起こっておりますけれども、これは法科大学院の実務家というと裁判官、弁護士、検察官、そんなに先生になってくれる人がいるのか。
 それから、今河村副大臣の御答弁では、具体的なほかの専門職大学院については、組織、設備、人材、カリキュラム等々のお答えはなかったわけでございますけれども、法科大学院ではない専門職大学院、実務家、どの程度、このように、法科大学院のように、おおむね二割とか具体的な数字を挙げていくのかどうなのか、その辺どういうふうにお考えでございましょうか。実務家の確保も含めてお答えいただきたいと思います。
河村副大臣 どの程度実務家を入れていくかということについて、これは二割が適当なのか、三割が適当なのか、私はその学ぶ学科等々によっても変わってくるんだろうと本当は思いますね。
 しかし、単なる机上の学問だけでは、これはもう今の社会には通用しないということははっきりいたしておりますから、できるだけ実務家を入れていく。法科大学院で考えれば当然法曹三者、あるいは企業の実務、法務を担当されている方々、そういう方々に入っていただくことが考えられるというふうに思います。
 実はブリッジ法の方でもそのことが指摘をされておりまして、国の責務として、法曹である教員の確保ということが入っておるわけでございまして、当然法曹関係者の協力をいただいて、その方々には勤務体系等々、柔軟にやってもらわなきゃなりません。あるいは兼職、兼業の問題等もあるであろうと思いますが、質、量ともに十分な実務家を確保するということで、このことを考えながら、これは二割あるいは三割ということを特に規定しているわけではありませんが、少なくともそのぐらいは必要になってくるのではないかという想定でありまして、まさに質、量とも十分な実務家の教員の確保、これに対して文科省としても支援をする、また法務省側の御協力もいただくということで進めてまいりたい、こう思っております。
山谷委員 法科大学院の場合でございますけれども、随所に法務大臣との連携ということが示されております。法科大学院の質の確保などについての責任所在はどうなっているのかをお伺いしたいというふうに思います。
 教育と司法試験との有機的連携の確保を図るため、相互に協力しなければならないというふうにあるんでございますけれども、法務大臣は特に必要があると認められるとき、文部科学大臣に必要な措置を求めることができるというふうにもあります。特に必要とか連携とか、これは具体的にはどういうふうになっているんでしょうか。
河村副大臣 委員も御承知と思いますけれども、法科大学院は、設立については、いわゆる司法改革という面からも生まれてきて、今の法曹界、もっと法曹人口をふやす必要があるという指摘にこたえようということが一つでありますし、同時に、いわゆる三権を担う司法界に、まさにそれにふさわしい人材をもっと養成していく必要があるという教育改革、人材育成の面からも、この両方が相まってきたわけでございますが、あくまでもこれはいわゆる教育の根幹を担うものであるということが第一点であります。
 それと同時に、司法界に入っていくにはその上に司法試験がありますから、委員御指摘のように、その連携をしっかり図っていくためには、当然、所管大臣であります、主管であります文部科学大臣と法務大臣との連携というのは必要になってくるというふうに考えておりまして、そのために今このブリッジ法があるわけでございます。
 法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案、これに、今委員が御指摘のように、その設置基準を策定する場合に、当然、法曹界の人材についての所管、責任を持つ法務大臣が、まさに法曹界の求める人材をどういうふうにつくっていくかということについて文部科学大臣に意見を述べるということは当然だろうと思いますし、あるいは、これまで法務大臣が法科大学院について資料を求める場合とか、あるいは法科大学院が法律違反をしているんではないか、いわゆる設置基準に反しているんじゃないかとか、そういうような問題があれば、当然、法務大臣が文部科学大臣に対して意見を言うことができる。
 もちろん、今の法科大学院で、これから行おうとしている法科大学院の人材に対して所管の法務大臣が、この人材のあり方について問題があれば当然法務大臣と協議するという、このことは当然のことだろうと思いますが、あくまでもこの法科大学院というのは法曹人材をつくっていく上のいわゆる教育の根幹をなすものだという考え方で、文部科学大臣が主管としてこの法律を出しておるようなわけでございます。
山谷委員 具体的なところになりますと、まだまだ詰めていかなければいけないところが多々あるというふうにきょう感じました。
 法科大学院に関しましては、法務委員会との連合審査も含めて、さらに議論を詰めていかなければいけない部分も感じておりますので、さらなる議論を求めて、委員会の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。
 今回の学校教育法の一部改正案は、四つの重要な内容を持っています。一つは高等教育の認可事項の見直し、二つ目に法令違反状態の大学等に対する是正措置の整備、それから三つ目に法科大学院を含む専門職大学院の創設、四つ目に認証評価制度の創設でございます。
 是正措置の整備や専門職大学院について、また認証評価制度の問題について、これらは新しい制度の導入ですから、十分時間をかけて審議しなければならない内容だというふうに思います。
 きょうは短時間でございます。最も重要な内容を持つ認証評価制度の問題に焦点を当てて質問をさせていただきます。
 まず、もう既に話になっておりますけれども、二〇〇〇年の四月から学位授与機構が大学評価・学位授与機構に変えられ、試行としての大学評価が行われるようになりました。そしてことしの三月に、平成十二年度着手の大学評価の評価結果が確定して、対象機関及び設置者に通知がされました。
 大学評価・学位授与機構による評価のやり方について、この結果について、各方面の意見、反応がどうだったのかということについて、まず御報告いただきたいと思います。きょうは大臣にひとつお願いします。
遠山国務大臣 先ほどは河村副大臣の方からお答えいたしましたけれども、国立大学学位授与機構、平成十二年に創設されたものでございますけれども、ことし三月に初めて評価結果を公表したわけであります。これは、実際に完成した形での評価ではなくて、試行的な段階のものということでやったものだと承知をいたしております。
 この結果に対しまして、国立大学協会の方からいろいろな意見を述べていると聞いております。このことについては、私は、河村副大臣の方から御説明いただいた方がいいかと思います。
 私からは、この第三者評価というのは、アメリカのように、いろいろな評価機関が続々とできていて、それが歴史的にもかなりウエートを占めて社会の中で役割を果たしている国と違いまして、日本の場合には、そういうものを待っていてもできないという段階であるわけでございまして、しかしながら、これからの大学のあり方ということを考えますと、評価機関の重要性というのは言うまでもないわけでございます。そのようなことから、大学評価・学位授与機構が、日本における大学評価について、それを目的とした機関としてつくられたわけでございます。
 そのことについて、いろいろな意見が初回の試行の段階のものについて寄せられるかもしれませんけれども、私自身は、大学人を初めとする関係者がいろいろ知恵を出し合って、今後そういう評価のあり方について、さらにその改善を図りつつ、よりよいものにしていくということが非常に大事かと思っております。
石井(郁)委員 私は、試行とはいえ一定の準備があり、そしてまた本格実施を目前にしての状況ですから、大変この問題点を明らかにしておくことは重要ではないかというふうに考えております。
 国立大学協会の第八常置委員長から大学評価・学位授与機構長あての意見申し立ての取り扱いと評価結果の公表についての申し入れというのが出されているわけですね。その中にいろいろなことがございまして、各大学からの意見をアンケート調査している、また大学・機関の間で意見交換もした、その結果、深刻な懸念を持たざるを得ない点が少なくないということだと思うんですね。私はきょう、その点のすべてにわたるわけにいきませんが、重要だと思う点についてちょっと最初に伺っておきたいというふうに思います。
 まず、教育評価なんですね。こう述べているわけです。
 教育評価において、その専門領域において共通の理解となっていると必ずしも言えない、評価員の個人的信念が強く反映されている場合が少なからずある。ヒアリング、面接調査において、大学の特定の教育措置について見解の相違が明らかになって、大学がその理念を説明したにもかかわらず、評価結果は結局、評価員の信念に基づくものとなっていた例も少なくない。これは大学独自の視点から設定した教育理念自体を否定するものだ、評価の原則を踏み外している点で、問題は大きいと言っているわけです。
 私は、やはりこれではこの評価は評価足り得ないんじゃないか、余りにも問題が大きいのじゃないかというふうに思います。この点でいかがでしょうか。
河村副大臣 委員御指摘の点、また大学協会からもそのような、要望書といいますか意見書が、結果について、これは国立大学協会の方の第八常置委員会委員長の方の談話として出てきておるわけでございまして、これはやはりきちっと評価機関としても受けとめる必要があろうというふうに思います。
 しかし、大学側の方としても、今回、委員長の談話の中にありますように、あくまでも試行的な段階であるので、この評価についてはやはり真摯に受けとめて、もちろん大学側のいわゆる自己改革に生かすために努力は我々もするということもやっておられます。
 今御指摘のあった点は、当然今後改めるべき問題点だというふうに受けとめて、さらに十分な大学側との協議の上に、今の改めるものは改めながら、さらによき評価ができるように今後の本格評価に入っていくわけでございますから、今の指摘はしっかり受けとめさせていただいて、さらに評価の中身を高めていくという努力を求めていかなきゃならぬ、このように思っております。
石井(郁)委員 それでは、研究の評価についても伺っておきたいのです。
 申し入れによりますと、研究評価において、卓越何割といった形での評価結果が示されているんですね。これは四段階でして、卓越、優秀、普通、要努力というふうにあって、要努力というのは普通の基準に達しないものというんですから、なかなか大学にとってそう認定されたら厳しいですよね。
 それで、この基準が明らかでない、大学として納得できない場合が多い。評価結果には「研究水準の判定基準等について」が資料として加えられていますけれども、この疑問に答えるものとはなっておりません。研究分野によっては、評価の基準が異なる、特定の分野では対象大学すべてに評価が辛い傾向がある一方で、逆の場合もあるということで、研究評価についても大変大きな問題を抱えていると言わざるを得ません。問題は、この教育研究の評価だけじゃなくて、今回の経験を踏まえて大胆に評価のシステム全体の見直しが要る、こういう要請もしているわけでございます。
 私は、今回の認証評価制度の中心的役割を担うのがこの大学評価・学位授与機構でございますから、こういう問題ある評価を行っていては、国立大学協会の言うとおり、評価の公正、公平性に対してやはり大学と社会の信頼を失うのではないかというふうに言わざるを得ないわけで、重ねて伺っておきます。
河村副大臣 今回の試行的であります大学評価については、全学テーマというのが教育サービス面における社会貢献の評価結果ということを中心にやったわけであります。その結果、確かに委員が御指摘のように、貢献をしていない、達成、整備が不十分で大幅な改善の必要があるという指摘もある。これは評価の項目から見ますと一つだけのケースでありまして、全体的には、おおむね貢献している、改善の余地もあるがおおむね貢献しているという二番目の評価が非常に、これはもう八割近く占めたと思いますから、そういう形で評価されました。
 しかし、委員御指摘のように、その評価の観点、水準がどうも不明確だ、あるいはその評価結果というのが、大学が自己診断書を出しております、自己評価、これにどうしても左右される面があったんではないかという指摘、それから、大学側の負担も非常に大きくなっている、これも改善の必要があるという指摘もありました。
 特に大事なのは、評価の実施方法について、評価員に対する事前研修が不十分ではないかという指摘、これも非常に大事でございますので、今回の評価を踏まえて、特に事前研修をしっかりやって、できるだけそういう指摘がなくなるように最大努力をする必要がある、このように考えております。
石井(郁)委員 こういう評価の問題について、大学評価・学位機構の方からの一応回答はなされています。それに対して、再度この七月二日に、国立大学協会長名と第八常置委員会委員長の連名で意見が出されておりますよね。「平成十二年度着手の大学評価に対する意見について」というのを出されているわけです。
 四点ありまして、評価の理念、基本設計上の問題、実施上の問題、手続上の問題、今回の試行についてのメタ評価という問題点がありますので、今河村副大臣の方からいろいろ御答弁いただいたような点がここにあるわけでございます。
 評価結果について、大学側が納得しないケースは少なくない、公表された評価結果が恣意的に数値化される、それをもとに大学間のランキング表がつくられる、これが新聞紙上にも一部に掲載されたりしたわけで、そういう問題点があった。評価における根本的な問題を投げかけているというふうに思います。
 先ほども、この評価を受けて多くの大学から異議申し立てが相次いで、これは百六十七件に及んでいます。それから、分野別の教育あるいは研究評価で、ほぼこの半数以上が評価結果に対して意見の申し立てを行っているんですね。最終的には、全学テーマ別評価では全大学の一割強、専門分野別教育評価、理学と医学でしたけれども、対象機関の七割―九割が申し立てている、専門分野別の研究評価では、対象機関の半数が評価結果に納得しないままに公表されている。
 私は、こういう不十分な評価の基準や方法で、たくさん問題を抱えている中で公表されていくと、これ自身がひとり歩きしていくわけですから、そういう意味では非常にやはり重大な問題をはらんでいたというふうに思うんですね。
 さてそれで、今回提出された学校教育法六十九条の三で、「大学は、前項の措置」、すなわち自己評価とその公表に加えて、「当該大学の教育研究等の総合的な状況について、政令で定める期間ごとに、文部科学大臣の認証を受けた者による評価を受けるものとする。」という形で、国公私立の大学すべてにこの認証評価を義務づけることになるわけですね。
 そこで、やはり、こういう義務づける問題、しかも、これは文科省の出した資料でも、資源配分機関が評価結果を参考にすることは十分あり得るところだという説明もされております。伺いますけれども、この認証評価というのは資源配分にもつながるんでしょうか。
    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕
遠山国務大臣 認証評価といいますのは、大学の自己改善を促すということによってその大学の教育研究水準の向上を図るものでございます。その機関が行います評価結果を大学に通知するとともに社会にも公表するというものでございますが、そういう目的でございますので、資源配分自体を目的とはしておりません。
 ただ、今後多様な評価機関が発達していくと思われます。その評価結果をそれぞれの資源配分機関の方が参考にするということはあり得るかもしれません。しかしそれは、その評価結果を活用するか否かというのは、資源配分機関とおっしゃいました、それは何を指すのかちょっとよくわからないのでございますけれども、資源配分の趣旨に照らしてそれぞれの機関が判断するものであります。
石井(郁)委員 私は、大変やはり重要な問題をはらんでいるなと今の御答弁を伺っても思うんですね。
 これは五月二十七日の朝日新聞に、高等教育局長の工藤局長、ずばりおっしゃっているんですよ。ちょっと読み上げますと、法人化は、文科相が法人の長を任命して、計画書出して、じゃこれだけお金を上げるという仕組みだ、数年後、ひどいという評価になれば、評価です、法人の長に交代してもらうか、予算額を減らすかだ、そのために評価で専門家の意見を聞くことにしましたと、まさに、評価と資源配分とは直結しているということをずばりおっしゃっているんじゃないでしょうか。
 これが真意だ、このとおり進めるんだ、進めていくんだということになると、大変重大で、結局評価によって大学間の格差が助長されますし、大学の淘汰にもつながりかねないんですね。だから、私は、やはり評価というものはよほどしっかりしないとできないし、先ほどのように試行段階の評価で既に公表されているということで、大変そういうことでは納得できないし、認められないという声が大学関係者から上がっているという中で考えますと、これは本当に重大な問題ですということですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 石井委員が御指摘の点ですが、これは、国立大学を法人化する方向についてもいろいろ議論のあるところでございますが、やはりこれから大学が、単なる象牙の塔ではなくて、そして広く世界に向かっても発信できるような機関としてやっていく、それにはやはり競争的な環境というのは必要ではないかという考え方もあるわけでございます。
 また、私学についてもそうでありますが、限られた予算を有効に使っていく、それによって大学は活性化していく、そういう観点からこの評価が求められるわけでございまして、それを形の上でどういうふうに示していくかという中に、この資源配分ということが一つその中に入っていくということは、これはやはり大学の活性化にとって必要なことではないでしょうか。
 大学が、もちろん自己改革を進めて、そして社会に貢献する、また人格形成十分な大学生を多く出していく、そのための自己努力をしっかりしていただく、そしてそれをきちっと評価する。その評価の背景の中にこれからの、ただ報賞的に配分するというのじゃなくて、独創的な教育とか教育努力、教育機関としての努力に対してそれをきちっと評価してあげる、その裏づけはやはり財源にあるという考え方、これは私は自然のものではないかと考えておりますので、これをもって、ともかく大学をつぶすためにそういう評価をするのだというのではなくて、むしろ大学を活性化し大学が生き生きとなるような評価によって生まれてこなきゃなりませんから、おっしゃるとおり、そういうことを考えるならば、評価というものができるだけ公平で、そして第三者的、客観的なものでなければいけない、当然その責務を評価は負っていくということであろうというふうに思います。
石井(郁)委員 大臣の最初の御答弁ですと、評価が直接資源配分にはつながるものではありませんと言いつつ、しかし、今副大臣御答弁のように、結果としてはつながっていくでしょう、いかざるを得ないでしょう、どうもこういうことなんですね。どう言おうとそういう資源配分にやはりこれはリンクしていくというのが今の文科省の方向だということを私は言わざるを得ないわけです。
 しかも、これは国公私すべての大学に義務づけるという評価なんでしょう。やはり、義務づけるということをこういう形でやっていいのかというのは重大問題だと思うんですね。
 評価制度は各国それぞれございますけれども、アメリカでも十九世紀後半から評価というのは始まっている。評価については非常に厳しい国だと言われていますけれども、義務づけるということはないでしょう、聞いていません。
 ですから、何で日本で、まだ歴史も浅くて方法も固まっていなくて、そしていろいろと未確定なこういうところで一斉にこういうことをやり出すのか、走り出すのかという点は、私、本当に重大な問題をはらんでいるというふうに思っているのですね。評価を受けるかどうかは、私は大学の自主的判断にゆだねるべきだというふうに思うし、その評価機関をどうするか、これは国が関与すべきではない。この国の関与の問題については、やはり厳しく考えていかなければいけません。
 重ねて、今のようなこんな状態で、評価の基準や方法も定まっていないという中で評価を義務づけて資源配分をする、これは大混乱を大学としても社会的にも引き起こすのじゃないですか。いかがでしょうか。
    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕
遠山国務大臣 まず、大学が評価を受けるということについての意義につきましては、先ほど河村副大臣がお答えしたとおりでございまして、大学というものがこれから二十一世紀の知の部分を担っていくということにおいて非常に大事な機関でございますので、それはもっともっと自己改革をしていく必要がある。そのときに、評価の成果というものを受け取りながらさらに改革を進めていただくということは非常に大事なわけでございます。それが直接には資源配分にはつながらないということでございます。
 先ほど、いささか混同されたと思うのでございますけれども、国立大学法人化に伴う評価というのは、そこで言っているところの認証評価とはまた別のものでございまして、これは国の運営交付金を支給するに際して必要な評価ということでございます。そこのところは区分をして考えるべきでございます。
石井(郁)委員 それでは、法文に則して、二、三確かめというかお尋ねをしておきたいというふうに思うのです。
 まず、今度、国による認証評価制度ですね。なぜこの認証ということが必要とされるのでしょうか。
河村副大臣 今回導入する、大学の質の保証のために新たな第三者評価制度を求めるということ、これは専門的な評価機関による定期的な第三者評価をすべての大学が受けることを義務づけるわけでありますから、その評価機関については、大学が評価を受けるにふさわしい公正で適確な評価を実施するような機関であることが必要であるということは言うまでもないことだと思います。
 このためにも、やはり一定の、最低基準という言い方が適当かどうか、一定の基準を国で考えて、その基準に達していればそれはもう自動的にといいますか、認証というのは、いわゆる許可証を出すとかそういうあれとはちょっと違いまして、基準を設けてそれをクリアできたものについては認めていくというやり方です。
 ある程度社会的な評価を得るだけの評価機関というものはやはり最低このぐらいは要るということは私は当然ではないかと思うのですね。それで、これをクリアしていただければ認めるというやり方でありますから、それによって社会的な評価もきちっと信頼性が得られるものだ、このように考えて、認証評価機関の認証というものを置いているわけでございます。
石井(郁)委員 その認証基準、認証評価制度の認証基準なんですけれども、これは六十九条の四であるところですね。大学評価基準及び評価方法が認証評価を適確に行うに足るものであることという条文になっているんですが、何かこれだけでちょっとわからないんですよ。
 大学評価基準及び評価方法、どういうものを想定しているのでしょうか。それが適確に行うに足るものというところが、どういう要件だとかどういう内容をもって言われているのか、これをぜひ御答弁ください。
河村副大臣 六十九条の四第三項の細目がございます。これに想定している内容についてどうかというあれでございますが、大学評価基準でございますけれども、これは、当然大学設置基準というのがございますから、それをまず踏まえて定めていかなきゃならぬ。それから、教育課程、教員組織あるいはその他の認証評価のための適切な項目を設定して、項目ごとの内容も適切であるかどうかということ。それから、大学関係者等からの意見聴取を踏まえて定めるものである。これが大学評価基準になるわけです。
 評価方法の細目でございますが、認証評価機関がその特性に応じた適切な評価方法を持っているかどうかということ、あるいは書面審査だけではなくて、原則として実地調査ができるようになっているかどうか、これも評価方法の中に入っております。
 それから、評価体制についても、評価対象分野等を公正かつ適確に評価し得る評価員を用意しているかどうか。先ほど研修の問題も指摘がありました。そういう必要性も出てまいりましたが、当該分野の専門家、特に専門職大学の場合には実務家が含まれているかどうか。それから、先ほどの研修の問題、きちっと実施されなきゃいかぬということ。
 そのほかにも、大学から評価の申請があったときには遅滞なく認証評価をやる、こういうことを評価してくれということがあればそれをやらなきゃいかぬとか、それから評価結果に影響を及ぼし得るような基本的事項を大学が変更した場合には、速やかに再評価をやらなきゃいかぬ。さらに、評価活動の実績がある、あるいはまた公正、適確な評価の確実な実施が見込まれるものであるとか、さらに評価業務に関する独立した管理運営を行うものであるとか、そうした細目があるわけでございまして、そういうことを想定して具体的に進めてまいりたいというふうに考えておるわけでございます。
 さらに、細部にわたる機関は、法科大学院の場合には、認証評価機関に係る規定は別に定めていかなきゃならぬというふうに考えております。
石井(郁)委員 かなり具体的にというか、お答えいただきましたが、今の内容というのはこの六十九条四の三ですね。「前項に規定する基準を適用するに際して必要な細目は、文部科学大臣が、これを定める。」という、この必要な細目の一部というふうに理解していいんでしょうか、ちょっともう一度。
河村副大臣 今想定ということで申し上げたわけで、このとおりになるということではありません。
 ただ、この問題は、今後、認証機関の問題については、中央教育審議会の意見も聞いてさらに検討するということになっております。
石井(郁)委員 今伺ってみますと、認証評価の基準、そして大学評価基準及び評価の方法の想定ですよね。かなり細部にわたっているなということがうかがえまして、実際、評価というのはそういう部分が出てくるかなとは思うんですが、逆に言いますと、これは結局、国がそういう細部にわたる基準をかなり決めたものになる、ならざるを得ないというか、そういうことなんですよね。
 これがどうして第三者評価機関になるのか。つまり、認証評価機関はこういう基準が必要です、こういう評価方法やこういう体制を持っていなければいけませんということを国が決めるわけですね。かなり細かなことを国が決めていく。そういう認証評価機関というのがどうして第三者評価機関というふうに言えるのか。国が全部決めているじゃないですか、今お話しのように。いかがですか。
遠山国務大臣 認証評価機関についての条件を明確にして、そしてその条件に合ったところについては余り裁量を加えないで、そして認めていくということでございます。つまり、判断の基準を少なくして裁量でもってやっていけば、それはかなり国の関与になると思いますが、今考えているのはそういう方法ではなくて、国が認証するという際によるべき基準というものをむしろ明確にしていく、それによって第三者機関をつくりやすくしていくということだと考えております。
 もちろん、認証を経ないでも、いろいろな評価機関があってもいいと思うわけでございます。しかし、認証機関がやる評価を受けようとする大学にとって認証評価機関がしっかりしたものであるという必要があるわけでございまして、そのために今、法文上でいろいろな条件を書いているところでございます。しかし、その目的というのは私が今申したものでございまして、委員の御理解を賜りたいと思います。
石井(郁)委員 この問題は、大変やはり重要な問題なんですね。基本的なことだと思うんですが、ですから、中教審の中間報告が出されたときにも国立大学協会は大変な問題点の指摘というか、懸念を持っているわけでございまして、こういうふうに言っています。
 評価機関の認証について、今言われたような幾つかの基準が挙げられている、その基準の具体的な設定の仕方によっては政府が直接に大学の適格認定を行うのと実質的には異ならない、この意味でいわゆる機関認証基準の具体的内容について政府はあらかじめ明確にすべきだというふうに述べたわけですね。私は、こういう点ではもっと明確にならなかったらやはりこの審議は到底できないというふうに思います。
 だから、第三者評価制度の導入と言いつつも、国の言うとおりの評価機関で、これでは文部科学省から独立したものにならないのじゃないか、この懸念はあるわけです。これは払拭できませんので、重要な問題で、私は明確にしなければいけないというふうに思います。
 そこで、最後に委員長にお願いをいたしますけれども、やはり、大学評価を導入して、しかも日本のすべての大学に義務づけるんですから、これはもう日本の学問研究の将来の発展あるいは大学のあり方を左右する重要問題でございますので、私は、関係者を参考人として招致して審議をすることをぜひ要求したいと思います。
古屋委員長 理事会で協議をさせていただきます。
石井(郁)委員 終わります。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 今回の学校教育法の一部を改正する法律案につきましてですが、新しい時代の法律家養成のための法科大学院が含まれる専門職大学院の創設ということですけれども、きょうは特に、法科大学院もこの分野の一部ということで、現行の制度がどのような欠点や限界があってこの創設までこぎつけるという分析をなさったのか、お聞かせいただきたいと思います。
遠山国務大臣 新たな時代を担っていく法曹としてどのような資質が必要かということにつきましては、司法制度改革審議会意見書でもうたわれているところでございます。豊かな人間性、感受性、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考力、説得、交渉の能力などの基本的資質に加えて、人権感覚、国際感覚等の資質が求められるというふうに書いてございます。このような資質を有する人たちを多数養成する必要があるわけでございますけれども、現行の学校教育制度では必ずしもこれにこたえるシステムとはなっていないという指摘があるわけでございます。
 そこで、お尋ねの件でございますけれども、これまでの大学における法学教育というのは、基礎的教養教育の面でも法学専門教育の面でも必ずしも十分なものとは言えなかったこと。それから、従来の学部段階の教育では、一定の法的素養を持つ者を社会のさまざまな分野に送り出すということが主な目的とされていたということ。それから、大学院段階の教育においては、研究者の養成が主な目的とされてきたために法律実務との乖離が指摘されるなど、必ずしも高度専門職業人としての法曹を養成する役割を果たしてきたとは言いがたいこと。それから、司法試験におきます競争激化によって学生が受験予備校に依存する傾向が著しくなって、ダブルスクールの傾向あるいは大学離れという傾向があるということの問題などが指摘されてきたというふうに言えると思います。
山内(惠)委員 今言われました高度な知識がやはり必要だということを先ほどからも強調されております。
 それにしても、今回の司法制度改革審議会が、国民の期待にこたえる司法制度、司法制度を支える法曹のあり方、それから国民的基盤の確立というようなことを挙げていますけれども、今おっしゃられた言葉の中にも、私は、新しい時代を迎えて実務的な能力をぜひ力をつけたいというふうに分析されたんですが、二十一世紀、国民の願っている司法制度の理念というのは大臣はどのように押さえていらっしゃいますか。
遠山国務大臣 司法制度の理念は、これはもう法務大臣の専管事項でございまして、私がここで未熟な言葉で述べるとかえってどうかなと思う気はいたしますけれども、しかし、基本的には、法曹を養成していくことについて責任を持つ者として申し上げれば、現状の司法制度の持ついろいろな問題を解決していく、その問題というのはさまざまにあるわけでございますけれども、それにふさわしい法曹というものが要求されているわけでございます。
 それは、国民の法意識の向上も必要でございますけれども、国の司法制度として安定的な社会を形成するにふさわしい司法というものをつくっていかなくてはならないわけでございまして、そのようなことを目指した改革というものが今大きく踏み出されようとしているものというふうに考えております。
山内(惠)委員 今大臣がおっしゃられたような安全な社会ということ、本当に私たちも願っている社会です。国民が根源的に求めているものというのは、今のお言葉と共通しますが、安心して暮らせる社会だと思います。この安心して暮らせる社会というのは、基本的に、やはり私たちの人権が保障される、そして社会正義が守られる社会だというふうに思います。
 それにしても、ハンセン病の例のように、国会の不作為も問われるような、社会正義ということが守られるには余りにも長い時間がかかってしまった司法の問題もあったように思います。その意味で、安心して暮らせる社会を構築していくという課題は大変重要だと思います。
 その中で、実務が不足だったというのが今回の提起なんだと思いますけれども、五年間勉強していく法学部があって、そしてその一方で三年間でやっていくということを考えましたときに、学部を修了してから三年間、法務博士という学位を授与するというふうに言われていますが、この学位を取得するために、五年間勉強する側の法学研究科大学院の博士課程が、五年間修了して、かつ博士論文の提出が必要でという一方があるわけです。そのときに、法科大学院の修了者にとっては、博士の学位が年数からいって余りにも簡単に与えられる、そしてしかも論文は要らないということに決められている趣旨は何なんでしょう。
 私は、今の学校教育、小中高大続いて、全部どこかで暗記中心的な知識注入というものの、子供たちの人生をそういうふうに追い詰めてきたものということこそ批判されるべきだと思うんです。この社会正義を実現するということについて言えば、論文の果たす役割というのはもっと大きいんじゃないかというふうに思うんですけれども、そこのところを含めてお聞かせいただきたいと思います。
工藤政府参考人 今回の法科大学院の必要性といいますのは、法曹の分野に多様な方々、しかも結構高度の、質の高いといいましょうか、司法制度改革審議会で言われている言葉で言いますと、これからに求められる法曹というのは、社会の医者であると……(山内(惠)委員「済みません、もう一度そこを」と呼ぶ)社会の医者として、要は人の心の痛みをわかる、そういう立派な人材を、あちらこちらのバックグラウンドを持つ方々に入っていただきたい、そのためのしっかりした養成コースをつくろうではないかというのが法曹、法科大学院の構想が始められたきっかけでございます。
 それで、従来の博士課程が五年、学部卒業後五年なのに対して、こちらは三年のコースでございますので、それなのに同じ博士でどうなのかという御質問でございますが、実はこれは同じ博士号ではないのでございます。
 これまで、従来の修士、博士という大学院の課程の中で、その枠組みを活用して、既にビジネススクールといいましょうか、経営管理関係の修士課程でございますとか、いわゆる専門大学院というのが発足してございます。それはそれで、従来の二年、五年のコースに合った仕組みの中で対応できた仕組みなんでございますが、今回の法科大学院というのは、もっとしっかり、二年じゃ足りない、五年ほどぐずぐずやる必要はないですけれども二年じゃ足りない、では、三年の制度設計にしたときに、それを大学院上どう位置づけた方がいいのかというのは、大変真剣な議論を中央教育審議会でしていただきました。
 それで、結論としまして、新しい制度をつくろうじゃないかということになったのでございますが、こういう新たな需要も含めて、これから各界で想定されますいろいろな分野でのプロフェッショナルの養成に当たりまして、ベッドが二年、五年というベッドしかないからそれに合わせて寝てくれという、ベッドに合わせた人の足ということじゃなくて、やはり人に合わせたベッドをつくろうじゃないか、それを可変的にやれるような仕組みにして専門職大学院というのが構想されたのでございます。
 したがって、専門職大学院のコース設計というのは、従来の修士課程のように二年、あるいは博士課程のように五年と限定するのではございませんで、大体二年程度を標準としながら、三年もあり、あるいは一年もあり、それぞれの分野の特殊性に応じて修業年限を定められるべきであろう。
 あわせて、そこを修了した方についての学位というのも、従来の修士、博士とは違った形の専門職学位を差し上げるようにしようじゃないか。その専門職学位の名称を随分議論したのでございますけれども、修士、博士以外の第三の名称なども議論されましたが、余り珍奇な名称を新たに設けるよりは、少なくとも法科大学院について言いますと、今グローバルスタンダードとして、アメリカのロースクール修了者については、いわゆる学部修了後三年のコースでございますが、そこを出た方々にジュリスドクターといいますか、略称JDという学位が差し上げられております。日本語に訳しますと法務博士あるいは法曹博士に当たるのでございますが、やはり日本でもしっかりした、法科大学院を立ち上げるに当たりまして、その修了者については国際標準の学位で差し上げるのが適当ではないかということで考えているわけでございます。
 したがって、たまたま、これはまだこれからの、法案が成立後さらに検討しながら確定する話でございますが、語尾に博士というのが使われましても従来の博士とは違う、カテゴリーとして違うということを、括弧書きで専門職学位というような形の、別の、プロフェッショナルスクールの学位ですよというのが明示されるような形でのものを予定されているものでございます。
 したがいまして、そういう実務にかなり軸足を置きました教育課程でございますので、従来の研究論文のように論文を必須とするのではなくて、コースワークをしっかりやっていただくことによって修了要件にしようじゃないか。もちろん大学の見識によりまして論文を課すことがあっても構いませんけれども、制度設計として、法令の上で、この専門職大学院については論文を必須にしないようにしようじゃないかということが検討されたものでございます。
山内(惠)委員 社会の医者養成のようなものだというお言葉でしたが、本当に裁判所なども、裁判所は人権擁護の最後のとりでとよく言われますし、弁護士も裁判所に劣らず人権擁護の最後のとりでということを考えれば、本当に社会の医者養成に通じる。お医者さんの問題も、随分人権感覚その他問われている時代だというふうに思います。その意味で、今回の専門職大学院ができることで現在ある大学院のあり方にも影響が及ぼされるというふうに私は思います。
 その意味で、大学院のあり方にどんな展望を持っているかということを含めてちょっとお聞きしたいのは、今回のお話、今るるお話しくださいましたけれども、実務中心の講義内容に偏ることの方がもっと心配ではないか、まずはその偏ることの方が心配。それから、このことが大学院のあり方に大きな影響を及ぼすのではないか。その意味で、大学院のあり方をどう展望なさっているのか、お聞かせいただきたいと思います。これは大臣ですか、どちらでも結構です。
工藤政府参考人 従来、戦前からの経緯もございまして、日本の大学院というのは、現行の学校教育法上ありますように、かなり研究後継者の養成に色彩の強いものとなってございます。ただ、実際には、例えば工学系でございますとか、先ほど御紹介いたしました経営管理の関係でございますとか、分野によりましては実践的な専門家の養成をしているところもあるわけでございますが、規定の上では、やはり研究後継者の養成ということがございます。
 その必要性あるいは重要性というのは今後ともなくならないわけでございまして、日本の科学技術創造立国あるいは基礎研究の振興の上で、若い人材がぜひそれぞれの独創性のもとにいろいろな分野での研究に取り組んでいただきたいわけでございますが、それとともに、社会的にもあるいは国際的にも、いろいろな分野で高度の専門家が必要とされてございます。
 その一つがまた法科大学院でございますが、それぞれの専門家として必要な部分について、実務だけを行うのではなくて、まさに司法制度改革審議会で言っておりますように、理論と実務の架橋としての法科大学院、ちゃんとした学問の裏づけを持って、かつ、社会に目を向け、人の心の痛みにも目を向けられる、そういう実践的な人材の養成ということでございますので、やはり、学校制度の中での最高学府としての大学院で行うにふさわしい教育内容を備えた、かつ、軸足として、もう一つの片足としては実務界に視野を置いて、そのために、教育内容、それから実際に教えていただく教員スタッフにつきましても、実務者あるいは実務経験を持った方々に多数参画いただけるようなことを想定しているものでございます。
山内(惠)委員 今お話しされたようなことをこの専門職大学院でやるということになれば、一方で、学部で専門職養成を続けてきているところで、他方で今のような中身を充実するとおっしゃるんですけれども、今ある五年間の中でその方法を入れるということになるのか。そのこともできると思うんですね、本当は、五年間のところで。でも、長過ぎるというのであれば、三年間でそのことが十分できていくということであれば、学生の側から言うと、論文を書いて、五年間学費を払って行くよりは、こちらの方に集中してくること、私は考えられると思うんです。
 そういう意味で、今までの大学院のあり方がどうなっていくかという意味での展望をもう少し本当はお聞きしたかったです。そのことは、また今後のところにしたいと思います。
 今回の専門職大学院、数と適正配置のところに質問を移していきたいと思います。
 現在、司法試験合格者は千人、ごめんなさい、その前に一つ質問します。
 既に法科大学院の設立準備がなされているところがあると聞いていますが、文科省ではどのくらいの数を掌握していらっしゃるんでしょうか、定員合計は何人ぐらいでしょうか、お聞かせください。
工藤政府参考人 これは、司法制度改革の検討がスタートし、その後司法制度改革審議会からの最終意見が出され、その経過に応じまして、大学関係者だけではなくて弁護士会など各方面でいろいろな準備、検討がなされていると承知してございます。
 ただ、現段階で、何校が確実につくられる、あるいはそれを具体的に進めているということではございませんので、法案成立後、その設置基準をしっかり定めまして、来年になりますと各大学が申請をなさることと見込まれているわけでございます。ただ、現段階で私どもの方に具体的にいろいろな御相談があります件数で申しますと、五十件程度でございます。
 ただ、他方で、司法制度改革推進本部の方で、これからの法科大学院の設置予定についてアンケートをとりましたところ、設置の予定をしているというお答えをなされたのが国公私を通じて七十三大学、それから検討中であるというのが二十五大学ですから、合わせますと九十八大学ほどが前向きの方向でございます。
 さらに、これから法科大学院をつくりますと、各大学が共同しながら適性試験をするとか、いろいろな協力関係を確保する必要がございまして、大学関係者が自主的に法科大学院協会の準備会のようなものをつくってございます。そこに参加していらっしゃる大学数で申しますと、今のところ百五大学ございます。
 ですから、大変たくさんの大学がいろいろ検討していると思いますが、現段階では確定しているものではございません。
山内(惠)委員 それだけの大学が今準備中だ、そして、これからももしかしてふえるかもしれないですね。
 そういう状況の中で、司法試験合格者が現在千人前後というふうに資料の中に書かれていましたが、過去長いこと五百人前後であったものが千人になるというのは、倍ふえた状況にあるわけですけれども、この資料によれば、二〇一〇年までに三千人ぐらいを予定して考えていらっしゃるということが数字として上がっていますが、この数字は、不足しているという声に合わせてなのかもしれませんけれども、この数字を展望した基準というか、考え方の中に何があって三千という数字を検討されたんでしょうか。
工藤政府参考人 これは、司法制度改革審議会の方での御検討を受けまして、この三月に閣議決定もされている司法制度改革推進計画で、平成二十二年の司法試験の合格者を約三千人程度に見込みながら全体の体制整備をしていこうじゃないかということでございます。
 なぜ三千人かというのは、今、法曹界は、大変複雑多様な社会情勢等も受けまして、より質の高い、かつ、より多くの法曹人が求められているのでございます。そのために、どれぐらいの目標にするかというのは、養成段階、それから試験後の司法修習も含めた全体のシステムの中で、どれぐらいが現実的であるかという問題が一つと、もう一つは、裁判件数の増加に伴いまして、大変裁判の遅延が見られてございます。それを迅速に処理するための裁判官、検事のスタッフの増強、あるいは、それに伴う人材の養成輩出の必要性というのが他方でございます。
 そういう事情を含みまして、欧米諸外国の状況を比べますと、いかにも日本の法曹人口が少な過ぎるのでございまして、もっともっと多くをというお声もあったようでございますけれども、現実的なところとして、当面この三千人を目指そうじゃないかということが決められているところでございます。
山内(惠)委員 先ほどの準備段階でも百五校、そして今回は司法試験に三千人ほどの合格者を考えて計画を立てていらっしゃるという中で、今後、この大学が動いていった段階で、結果として、試験を受けた者がたくさん出た大学は、ああこれでよかったということでしょうけれども、例えば、ある大学で一割しか合格しなかったような大学が出てくれば、それは何らかの勧告をするという方向にあるんでしょうか。
工藤政府参考人 司法試験にどれぐらい合格するかというのは、結果の話でございます。それは、法科大学院の教育が悪かったのか、あるいは、教育はよかったのですけれども学生がサボって、学生自身の責めに帰すべきことがあったのか、それはいろいろであろうかと思います。
 ただ、今回の制度設計に当たりましては、しっかりした教育を行う法科大学院でしっかり勉強すれば、かなりの者が合格できるような新司法試験にしていこうというものでございます。そのために、法科大学院のレベルアップのために、設置認可後の第三者評価による切磋琢磨といいますか、大学自身の改善の努力を求めていこうじゃないかということが一緒にセットアップされているわけでございまして、ただ、そのときに、第三者評価の評価項目として、合格率だけがすべてではございませんで、教授陣容といいますか、大学院だけではなくて、実務経験を踏まえた方も含めた教授スタッフの体制、あるいはカリキュラムの体制、学生の指導の体制等々、やはり教育面できめ細かい評価をしながら、おかしいところがあれば改善の努力を促すという仕組みじゃないかと思っております。
 したがって、合格者あるいは合格率が低いから直ちに何か改善命令をするとかということではございませんで、私ども、行政行為としての改善勧告あるいはいろいろな措置を行うというのは、あくまでも法令違反があった場合でございます。教育条件、先生がたまたま、しっかりいるはずの先生がいなくなったとか、教育研究条件で数量的にもとることがある場合でございますとか、そういう法令違反に限って改善勧告等の行政措置を講ずることは考えてございますが、司法試験合格率が悪いからそういうことを行うということではございません。
山内(惠)委員 設立準備を進めている大学院が、多くは東京都、その周辺というあたりに固まっているというふうに聞いています。関西を加えても相当一部の地域に集中することが予想されるというふうに私は読んでいるんですけれども、その結果、今以上に法曹人口がある地域に固まって、弁護士の過疎過密が進むおそれがあるんじゃないかというふうに思うんですけれども、大学院の認可に当たって、適正配置を考慮するということがあるんでしょうか。
工藤政府参考人 これは司法制度改革審議会の意見におきましても、「適正な教育水準の確保を条件として、」かつ「関係者の自発的創意を基本にしつつ、全国的な適正配置となるよう配慮すること」と言われてございます。
 現に、私どもに御相談があった様子なども含めますと、北は北海道から沖縄に至りますまで、大変各地の大学等の関係者が関心を示していらっしゃいまして、私どもとしても、それぞれの大学の自主性が基本でございますけれども、できるだけそういう地方、地域におきますいろいろな御努力が実りますように、しかも、地方によりましては地域の弁護士会の方々もかなり積極的に応援していらっしゃるところもあるように承知してございますので、そういう状況を見ながら、私どももバックアップしながら、適正配置になりますように努めてまいりたいと思います。
 ただ、あくまでも、私どもの設置認可というのは参入規制じゃございませんで、一定の最低基準を満たしたものについて、ある程度自由にといいましょうか、幾らでも参入していただくような仕組みを考えてございますので、そういう地方の各地からもいろいろな申請がなされることを期待しているところでございます。
山内(惠)委員 あくまでも自発的にということで今おっしゃっているんですけれども、この少子化の時代、大学の生き残りを考えれば、この専門職大学院を何とか設立したいと考えている地方の学校、大学は相当数あるとこれまた聞いています。しかし、その条件がなかなか整えられないのであきらめたという学校も聞いています。
 そういう状況になれば、現在法曹人口の少ない地方の大学というのは大変やはり難しいという結論になっていくときに、そういう大学がそれでもつくりたいということであれば、何らかの応援をするということがおありなんでしょうか、法曹人口の過疎地に対して。
工藤政府参考人 それは設置者の御判断にもよるのでございますけれども、全くない地域に、では国が乗り出して国立でつくるかどうかとなりますと、また一大決心が要るところなのでございますけれども、少なくとも、今のところはかなり広範に全国的な範囲で御検討いただいているかなと思ってございます。
 それとあわせて、これはそれぞれの大学の教育体制の問題でもございますけれども、今のようなITの発達した時代でございますので、遠隔教育等によりまして、たまたま、別にそこのエリアに住んでいなくても、広域の教育サービスを受けて、あるいは実際に実務家の方がその法科大学院の、ブラッシュアップといいますか、特定の部分についてもう一回勉強したいというときにアクセスできるような仕組みというのも十分考えられるところでございます。
山内(惠)委員 法曹人口が少ない地方が現在あるということと、もう一つ、チャレンジする学生のことも関連があると思います。その意味で、今回のこの大学院をつくるとして、授業料は年間どれくらいと試算していらっしゃるのでしょうか。
河村副大臣 私から答弁させていただきますが、授業料がどのぐらいになるだろうかというのは、学生側にとっても非常に関心事だろうと思います。
 ただ、これは大学側がこれをどういうふうに判断をするかということだろうと思いますが、どのぐらいで考えていますかということをアンケートをとってみたのがございます。
 これによりますと、これは審議会の方でとったんだと思いますが、司法制度改革推進本部の事務局の調べでございますが、国立大学以外の公私でございますけれども、百万円以下でと言っているのが五大学ございます。それから、百万から二百万が二十六大学、それから二百万以上三百万まで、これが十六大学というところでございまして、最高は三百万まで考えているところもあるようでございまして、かなりばらつきがございます。これを、どれでなければいけないということを国が決めるものでもございません。各大学の自主性に任せております。
 恐らくさまざまな要素を勘案して授業料は決まっていくだろうと思いますが、その先、そうすると授業料を負担できない学生はどうするんだという問題は当然あろうと思います。これは、文科省としては、奨学金の問題、ローンの充実の問題、私学助成の支援、経済的困難な学生の支援というものを十分考えておるわけでございますし、また、それならそっちへ行けという意味ではございませんが、この法科大学院をつくるときに考えられたことは、やはりそういう学生のことも考えて、いわゆる予備試験の制度も残しておく必要があろうという観点もございまして、その点も、別の道も残してあるのを、経済的にどうしてもという方はその道もありますよという意味もこれには含まれておるというふうに理解をいたしております。
山内(惠)委員 ありがとうございました。
 過疎地の問題、それから公平な入学者選抜にかかわっても大変重要な課題があるというふうに思います。予備試験も残せという声も私のところにも随分届いております。それから、評価にかかわっては大変重要な、この法案でも大変大きな課題と思っていますので、次の機会にやらせていただきたいと思います。
 終わります。
     ――――◇―――――
古屋委員長 この際、連合審査会開会に関する件についてお諮りをいたします。
 ただいま法務委員会におきまして審査中の内閣提出、法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律案並びに司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案について、法務委員会に対し連合審査会の開会の申し入れを行うこととし、あわせて、本委員会において審査中の内閣提出、学校教育法の一部を改正する法律案について、法務委員会から連合審査会開会の申し入れがありました場合には、これを受諾することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
 なお、連合審査会の開会日時等につきましては、法務委員長と協議の上決定させていただきますので、御了承ください。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時九分散会


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