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第4号 平成14年11月27日(水曜日)

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平成十四年十一月二十七日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 山谷えり子君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松野 博一君
      森岡 正宏君    柳澤 伯夫君
      大石 尚子君    中津川博郷君
      中村 哲治君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      細野 豪志君    牧  義夫君
      牧野 聖修君    山口  壯君
      池坊 保子君    丸谷 佳織君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君    松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (総務省大臣官房審議官) 木村  功君
   政府参考人
   (外務省大臣官房外務報道
   官)           高島 肇久君
   政府参考人
   (文部科学省大臣官房文教
   施設部長)        萩原 久和君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策 
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            工藤 智規君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       山元 孝二君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省国際統括官) 永野  博君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  高原 亮治君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
十一月二十七日
 辞任         補欠選任
  鎌田さゆり君     細野 豪志君
  東  順治君     丸谷 佳織君
同日
 辞任         補欠選任
  細野 豪志君     中村 哲治君
  丸谷 佳織君     東  順治君
同日
 辞任         補欠選任
  中村 哲治君     鎌田さゆり君
    ―――――――――――――
十一月十八日
 私学助成の抜本的な拡充と三十人学級の早期実現に関する請願(山元勉君紹介)(第一七八号)
 同(細野豪志君紹介)(第二七七号)
 私立大学の教育・研究の改善を図るために総経常費二分の一助成の早期実現と学費負担者の負担軽減に関する請願(中津川博郷君紹介)(第一七九号)
 私立大学の充実を図るための経常費二分の一助成の実現と父母・学生の学費負担軽減に関する請願(中津川博郷君紹介)(第一八〇号)
 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(五十嵐文彦君紹介)(第一八一号)
 同(細川律夫君紹介)(第一八二号)
 同(木下厚君紹介)(第二七八号)
 行き届いた教育に関する請願(山元勉君紹介)(第一八三号)
 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額等に関する請願(玉置一弥君紹介)(第一八四号)
 同(前原誠司君紹介)(第二四〇号)
 子供たちの夢と希望をはぐくむ社会を実現するため、確かな学力・創造性の育成等に関する請願(園田博之君紹介)(第一九八号)
 同(中山太郎君紹介)(第一九九号)
 同(前原誠司君紹介)(第二四一号)
 同(松岡利勝君紹介)(第二四二号)
 同(達増拓也君紹介)(第二五九号)
 同(佐藤剛男君紹介)(第二七九号)
 同(野田毅君紹介)(第二八〇号)
 すべての子供に行き届いた教育、私学助成増額に関する請願(永田寿康君紹介)(第二〇〇号)
 三十人学級、私学助成拡充に関する請願(北橋健治君紹介)(第二〇八号)
 同(中西績介君紹介)(第二五八号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りをいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として総務省大臣官房審議官木村功君、外務省大臣官房外務報道官高島肇久君、文部科学省大臣官房文教施設部長萩原久和君、生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長工藤智規君、科学技術・学術政策局長山元孝二君、研究振興局長石川明君、研究開発局長白川哲久君、スポーツ・青少年局長遠藤純一郎君、国際統括官永野博君、文化庁次長銭谷眞美君及び厚生労働省健康局長高原亮治君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。森田健作君。
森田(健)委員 大臣、副大臣、おはようございます。本当に寒くなりましたね。風邪を引かないようにして、本当に気をつけないといけないと思うんですよ。
 私、以前、APPUの総会で、私は同僚の田中和徳議員と行ったのでございます、韓国へ。そして、総会が終わりまして、それから、じゃ、全部終わったから飯でも食おうやと焼き肉を食べたんです。これがまたうまくて、それでビールを飲みながら、隣にいた、韓国の人もいるわけですよ。それで、ガイドの人の通訳を交えながら、まあまあ、あなたは日本に来たことがあるかとかいろいろな話をして、よかったらビールでもと、カムサハムニダ、カムサハムニダなんて、私と握手して、非常に盛り上がって。
 それから、ところで田中さんよ、どこへ行こうか、しっかりいろいろと見ておかなきゃいかぬなと。そうしたら、ガイドの方がいろいろパンフレットを出してくれました。そして、田中議員が、どうだい森田さんここへ行ってみようか、おお何だい、西大門独立公園だ。西大門独立公園とあるんですね。私は正直言って知らなかったんですよ。そして、ここはいいところだと言うんですよ。とりあえず行こうと、行ったら、だから西大門刑務所歴史館というのがあるんですね、これ、あるんですよ。それで、おい刑務所だってよ、こんなところ入っちゃいけないけれども、とりあえず見ていこうかと、それで二人で見に行ったんです。
 そうしたら、刑務所の跡ですから、入っていったら、小学生の子たちがいっぱいいるわけです。それで、ノートを持ってメモで一生懸命書いて、こう見ながらやっている。そうすると、各房があるんですね、独房もあるんです。ああ、すごいな、ほう。そうしたら、急にきゃあっと声が聞こえるんですよ、はあっと。ライトがぱぱぱぱぱっとついた。おい何なんだ、これはと。ちょっとちょっとちょっとと、いっぱいいる中を私はぱっと見た。
 そうしたら、その房の中で、それはそれは恐ろしい顔をした日本人の軍人ですよ、これがこんなこん棒を持って、韓国のあれは女性だったかな、よくわからぬけれども、言うならば拷問をしているような、ろう人形ですよ、ろう人形があるんです。それで、韓国の女性はかわいそうな顔をして、ここから血を流している、そういう人形なんですよ。そして、声も出して、音も出しているんですよ。それでライトがぱぱぱぱぱぱっと。それはそれは、本当にええっと。
 こちらに、言うなれば刑務所でこういうことが、日本語でも書いてあるんですが、韓国語でずっと書いてある。子供たちが一生懸命それを見ながら、そうやって房を見ながら、こうやって書いている。おれたちも、すごいな、これはと。ふと思ったら、目線を感じるんですよ、あれっと。その小学生の子たちが、私たちが日本人だとわかったんでしょうね、じいっと。おいちょっと田中さんよ、これはちょっとまずいなと言って、それで私たち二人は出ていっちゃったんですよ。
 そうしたら、ガイドさんに聞いたならば、これは授業の一環として、小学生が必ずこれを見て、そして感想文を書いて、教室でいろいろ討論会等があると。なるほどと。
 それで、私は、小学生の子だな、そうか、じゃ、中学、高校になったらどういう教育がなされているんだろうなと、私は、日本に帰ってからいろいろ心配になりまして、ちょっと、向こうで、韓国の子供たちが教えられている教科書、何と書いてあるんだろう、日本の関係は、財団法人国際教育情報センターから「世界の教科書にみる日本 韓国編」、これを取り寄せてみたんです。そして、読みました。
 いや、これは、大臣も、副大臣ももう読んでおられると思いますが、すごいですよ。まず言葉は、略奪だとか隷属、弾圧、強奪、収奪、こういう言葉が頻繁に出てくるのでございます。そして、例えば弾圧という言葉にも、悪賢い弾圧、巧妙な弾圧、過酷な弾圧、残忍無道な弾圧、そういう言葉が羅列されるんですね、これは。
 そうかと思うと、じゃ教育関係はどうかなと。これは高校生が教わっている教科書なんですよ。教育関係は、我が民族は日帝の過酷な植民地差別主義教育政策によって教育を失った、まさに日帝が目標としていたところの韓国人の愚民化を意味する、農村啓蒙と文盲退治運動も日帝の弾圧が加えられて終わりを告げた。
 私はこれを見て、なるほどと。確かに、歴史というものは、その評価というものは個人個人によって違うのも当たり前です。ましてや当事国になりますと、国と国になりますと、その評価をすり合わせるというのは非常に難しゅうございます。まして半世紀を過ぎた今、またその評価も変わるところもあるのでございます。
 しかし、それはさておいて、大臣、副大臣、この間のワールドカップも、日本が敗退した後も韓国は頑張った。多くの日本人たちは、アジアの代表じゃないか、韓国頑張れと拍手して、それこそ、あれはフェースペインティングというんですか、日本人の人も韓国のをやったりして応援した。
 芸能、文化においても、以前から向こうの歌手の方が日本に来て芸能活動をやっていた。しかし、最近になって、日本人の歌手の人も向こうで公演することもできるように門戸が開かれてきた。そして、以前では余り考えられなかったけれども、韓国の映画が日本に入ってきて、これがまた大ヒットしている。そういう意味においては、この三、四年は、以前には考えられなかったぐらい、日本と韓国は非常に、言うなれば友好が進んでいる、私はそのように思うのでございます。
 しかし、私は、やはりこの日本においても在日の方が四十万、五十万もいるのでございます。一番近い国でございます。確かに昔いろいろありました。歴史的認識というのは、それは大事でございます。しかし、私は、もう半世紀を過ぎた以上、過去に重きを置くより、未来に重きを置くべきだと。
 ですから、私は、何とか次世代、次々世代の人たちが心から友情をはぐくめるようにするためには、何かいい案がないかな、何かいい知恵はないかなとずっと考えていたのでございますが、副大臣、いい知恵はございますか。どうぞ。
河村副大臣 森田委員言われるように、一衣帯水の韓国との交流等々、この理解、未来志向型の交流をしていく、これは私も非常に大事なことだというふうに思います、教科書等々で過去をお互いに傷つけ合ったって、これは未来に発展はないわけですから。
 結論から言いますと、私は、確かに、今全く御指摘のとおりだと思いますが、それは、過去の事実はお互いに消し去るわけにいきません。これはやはり正視をしながら、しかし、少なくとも日本は戦後五十有余年、平和国家としてここまでやってきたんだ、この実績にもっと我々は誇りを持つべきだし、また韓国側もそのことを理解してもらう必要が私はあると思いますね。
 だから、そういう意味で、これからの日韓の交流、文化交流を含め、スポーツ交流を含め、もっと活発にやるべきではないか、こう思っております。
 これは、知恵といったってそんないい知恵があるわけじゃありませんが、私はもうそれしかない、こう思っておりまして、実は、日韓新世紀交流プロジェクトというものがいよいよ今年度より出てまいりまして、具体的に、お互いに教職員を交換し合うとか、あるいは、学者間の歴史研究、歴史の研究事業というのも始まりました。学者間で歴史認識をどういうふうにするかという問題もあります。そうしたまた専門家を交流する。
 それから、特に文化、スポーツ関係ですね。例えば、私の方では子どもゆめ基金というのが、超党派の議員連盟がございますが、先般これの基金の予算で、韓国の子供たち、中国も含めてですが、日中韓の子供たちを百人ばかり集めまして、お互いに代表的な絵本を読み合って交流し合う、そして一緒に紙芝居をつくるようなことをさせてみましたが、そうすると、後、感想文なんかを見ますと、日本のことについていろいろ学んだけれども、実際はもっと日本の人たちは勉強もするしお互いに交流できるんだということを述べているんですね。
 だから、そうした交流をどんどんしていくということによって、過去はもちろんありますけれども、それを超えたものが生まれてくるんではないか、こう思っておりますから、今御指摘あったようなことで誤認があったり行き過ぎなことがあれば、お互いに調整をし合うということが必要になってくるんではないか。日韓議員連盟の議員外交等も私は必要ではないか、こう思っておりますから、ひとつそういう経験を生かしていただいて、大いに御協力をいただければありがたいというふうに思います。
森田(健)委員 さすが副大臣、本当にそうだと私も思います。
 ただ、例えば白紙の状態のときにそうやって、先ほど言ったような刑務所のあれを見たり、また教科書、言うなれば学校においての教育ですね、こういうことを徹底的にやられちゃうと、やはり、その上にそういうものがせっかくあったとしても非常に難しいのかなと私は感じるんですが、これは例えば、よく日本の教科書について中国だとか韓国とかいろいろ注文もあるようでございますが、こういうのを見て、日本も、いや、ちょっと待ってくれよ、そういう表現は割こうじゃないかとか、そういうことを言ってもいいんじゃないかと思う。
 これは外務省の方ですか。外務省の広報課。
高島政府参考人 今森田委員から御指摘がありましたように、外国の教科書の問題については、一応、外務省の外務報道官のもとにあります海外広報課というところでもって、今どういう状況が外国であるかということを調査したり、また研究したりしております。
 韓国につきましては、今先生が御指摘いただいた国際教育情報センターというところが、これは外務省認可の公益法人でございまして、ここで、御指摘のように、まさに韓国の教科書に日本がどういうふうに記述をされているか、またその内容がどうであるかということを研究しております。
 そればかりではございませんで、この教育情報センターは、実は専門家を多数擁しておりまして、韓国の教育の専門家と意見交換をする、そうした意見交換の場を通じて、記述に誤りがあったり、または歴史観の問題などを意見交換を通じて正していく、そういう努力を続けております。そういうことでございます。
森田(健)委員 そのとおりでございますね。例えば、富士山の高さが間違っていたというならば、その富士山の高さは違うよと。これは考えてみれば当たり前なんですよ。私はそうじゃなくて、例えば弾圧という言葉を使ったとしましょう、そのときに、悪賢い、巧妙な弾圧だとか過酷な弾圧だとか残忍無道な弾圧だとか、そういう言葉をやめたってその意味は通じるでしょうということを言いたいんですよ。この教科書を見ると、歴史を学ぶというよりも、日本、このやろうと書いてある。要するに、白紙の子供たちに日本への憎しみというか、そういうものを増進させているとしか、これは私の偏見かもしれませんが、そうしかとれないところもあるんですよ。
 ですから、事実がどうというよりも、例えば、同じ表現するにしても、事実は曲げなくたって、その子供たちにこういうことですよと淡々と伝えることはできるんじゃないか、そういう面においても私は広報課としても考えるべきじゃないかなと思うんでございますが、いかがでございましょうか。
高島政府参考人 先生が今御指摘くださいましたように、単に事実の誤りを正すということだけではなくて、教科書の中の表現の仕方、また子供たちにどういう印象を与えるかという書き方についても、これは大変重要なことだと私たち考えております。
 実は、先ほど副大臣の方から御指摘がありました日韓歴史共同研究委員会、これは、韓国と日本の間で一体どういう歴史観の違いがあるのか、歴史認識の違いがあるのか、それをまずお互いに認め合おう、わかり合おうということで、ことしの五月から立ち上がって、今三つの分科会で時代に合わせてそういう違いをまず研究しているところです。
 こうした専門家同士の歴史認識のお互いの理解が深まることによって、この中には教科書を書いている先生方もたくさんいらっしゃいますので、そうした先生の気持ち、理解の仕方を少しずつ正していく、それによって韓国と日本の間で正しい、教科書なら教科書の書き方、そんなことがじわじわと正されていくということを私たち期待しております。
 それから、今先生が御指摘になりました日韓のワールドカップサッカーの大成功、さらに、あえて言いますと、これからますます進んでいくであろう日韓の若者たちの交流、そうしたものを通じて、言葉の問題もそれから記述の仕方についてももっとお互いがお互いを温かく見る、そうした雰囲気が生まれてくることを期待しております。
森田(健)委員 はい、わかりました。ただ、小学生が今こういうことになっていることは、これは本当に実際進んでおりますから、早くやっていただきたいなと。
 どうですか、大臣、今私もいろいろくだらないというか、たわ言も申しましたが、今ずっと、この教科書問題も含めて何かお考え、御感想がありましたらお願いしたいです。
遠山国務大臣 日本国民が、委員がおっしゃいましたような感情を持つというのは、それは私どもとしても理解できることではございますけれども、一国の教科書のあり方というものは、それぞれの国において学説等を十分反映した上でつくっておられることでございまして、そのことについて直接この立場でコメントすることはできないわけでございますが、日本と韓国という非常に近い国、これがお互いにこれから未来に向けてしっかりと理解し合い、協力し合っていくということは非常に大事だと思いますので、この問題については、粘り強く人的交流を深め、特に若者たちに、過去のみではなくて未来に向けての協力関係を持てるような、そういう機会をつくっていくこと、そして学問的にもしっかりした専門家による学説上の意見交換というふうなこともあって、私はこういう粘り強さというのは非常に大事ではないかと思っております。
 幸いにして、現在の金大中大統領は、過去のみにとらわれず未来をということを言っておられますし、そういった両国のリーダーたちの信頼関係をさらに深めていくということも大変大事ではないかと思っております。
森田(健)委員 そうですね。やはり次代、次々世代の子供たち、本当に仲よくしていただきたい、そう思います。
 時間も余りないので、本当は、実は完全学校週五日制についていろいろな面からいろいろ聞きたかったのでございますが、余り時間がございませんので、一つだけ、ちょっと文科省の対応を聞きたいなと思うのです。
 実は、有馬文部大臣のとき、私、政務次官をしておりまして、小学生の子たちが文部省に来たのでございます。
 それで、大臣あいさつ。大臣は、皆さん、勉強はそのぐらいでいいです、それより思いっ切り外で遊びなさい、元気よく、やはり子供は元気でなければいかぬと。
 はい、じゃ、政務次官。皆さん、勉強しろよ、いいか、思いっ切り勉強して、余ったら遊べや、そう言った。全然違う。
 聞かれて、私、言ったんですよ。有馬大臣は、例えば五段階でいえば、あの人はオール五の人なんです。だから、小さいときから勉強しろ勉強しろと言われて、絶えず、おれは遊びたい遊びたいと思っていた人なんです。私は小学校のころ、体育と音楽は五でした。あとは二と三の混合ですよ、私は。だから私は、大きくなって、何でおれはあのとき勉強しておかなかったんだろう、何でおれはあのときお母さんに言われたとおりしなかったんだろうと。そう思ったから、今の子たちにそういう思いはさせたくないと思って、私は言ったんです。ここに大きな差がある。
 今、五日制が始まって、正直言ってまだ戸惑っているというのが二二%、始まったばかりで何とも言えないというのが四一%、親子の触れ合いがよくなったというのは一四・五%でございます。言うなれば、この迷っている人の多くは、私の方じゃないかな、そう思うのでございますが、しかし、土日になって、大体、子供に休養だとか余暇がよかったとか何だかんだ言うけれども、河村副大臣、考えてください、自分の小さいころを。大体、子供に暇なんか与えるとろくなことを考えないですよ。そうでしょう。私たち、そうだったじゃないですか。子供は、寝るなと言ったって、寝たいときは寝るんですよ。だから、そういうものを私は考えて、また親の反省もある、例えば土曜日に勉強したいとかさせたいという子に対して、文部省は今、五日制においてどのように対処していますか。
矢野政府参考人 土曜日の子供の活動に関する取り組みでございますが、これは基本的にはそれぞれの教育委員会において判断される事柄でございまして、各教育委員会においては、土曜日における子供のさまざまな活動の場あるいは機会の充実につきまして、完全学校週五日制の趣旨を踏まえながら、種々工夫をして適切に対応をしていただいていると考えているところでございます。
 この四月からの完全学校週五日制の実施以来、幾つかの教育委員会におきまして、委員御指摘のように、土曜日に子供の多様な活動の一つとして、学習活動の場あるいは機会を提供する例が見られるところでございますけれども、このことは、私ども、一つの工夫として受けとめているところでございます。
 そういう意味で、私どもとしては、今後とも、完全学校週五日制の趣旨を踏まえながら、例えば地域の人材を活用するなどして、特色ある活動が、それぞれの教育委員会の創意工夫によって盛んに展開されていくことを期待いたしたいと考えているところでございます。
森田(健)委員 わかりました。
 これは私たち錯覚してはいけないのは、子供を尊重するとか人権だとかいろいろありますが、それは二番手に来るということですよ。まず教育と指導が一番手に来る、それは私たちは間違ってはいけないと思います。
 もう、だんだん時間もなくなりました。
 俳優がいますけれども、いますというか、いるんですが、俳優の平均的年収というのは皆さん、幾らぐらいだと思いますか。私がやっていたころというのは十五、六年前ですが、今はもっと悪くなっているんですよ、皆さん。年収というのは幾らぐらいだと思いますか。なかなか思わない、まあでも一千万ぐらいかなとか、二千万ぐらいかなと。私のころで、十五、六年前ですが、俳優の年収が平均で二百五十万でございます。二百五十万です。そしてなおかつ、今大変仕事が減っているということで、この間聞きましたところ、いや、二百万切っているんじゃないかなと。そうなんですよ。
 この間、「砂の器」を上映して、山田洋次監督が来て、監督どうですか最近の活動屋はと言ったら、いや森田さん、活動屋というのは映画関係者のことですけれども、今活動屋は失業率八五%だよ、こういうことを言っていました。それで、すばらしい映画を撮ったカメラマンが、今仕事がないので何をやっているか。日にちがとれるように、今、車の運転手の代行をやって頑張っている。それもこの間けんかしてやめちゃったというんです。あとは日雇いだとかいろいろやって、みんな頑張っているんですよ。
 でも、やはり私はここで、それは需要と供給があるから、いろいろ、どんな職種でもあります。しかし、私、映像文化というのは、この間イランの人に聞いたら、日本に興味を持った、好意を持ったのは何かといったら、「おしん」を見てからだと言うんですよ。言うなれば、そういう、政治だとか宗教だとかすべてを超えて、映像というのは大事なんでございます。
 大映もつぶれましたよ。最近だって、日活の撮影所も売られた、松竹の撮影所も売られた、どんどんどんどん日本の邦画というのは落ち込んでいます。邦画の人数が上がったというのは、あれはアニメが上がっているんです。ですから、こうなっていくと、第二の黒澤だとか小津安二郎だとか溝口だとか、そんなのはもう出てきませんよ。
 そして私は、大事なことは、日本はすばらしい技術を持っている。例えば、コンピューターグラフィックのあの最先端の技術も、スピルバーグの映画の最先端の技術も、あれは日本人がやっているんですよ。そういう技術を私は決して消すことがあってはいけない。それと同時に、こういう映像文化を何とか、今、お国が手助けしてもらいたいと思うのですが、文化庁として、今こういう背水の陣に立っている映画界において、ひとつ銭谷さん、どうですか。
銭谷政府参考人 映画にかける森田先生のお話を伺って、私どもも大変意を強くしたわけでございますけれども、特に昨年、文化芸術振興基本法を成立させていただきまして、映画を初めといたしますメディア芸術の振興について規定をいただきまして、映画に対する支援への国民的な理解も深まりつつあるというふうに私どもは思っております。
 今お話にありましたように、昨今、伝統のある有名な撮影所がなくなったりいたしまして、映画を愛するファンから見れば大変寂しい気持ちもいたしますし、映画監督など映画人育成の面からも心配な状況があると私ども認識をいたしております。
 もちろん、映画人養成のための方策というのはさまざまございまして、大学とか専修学校などの映画学科、映像学科での養成に加えまして、文化庁でも、若手映画人の海外留学とか国内研修の支援とか、フィルムセンターにおける映画製作専門家講座など、映画人養成についての事業を実施してきたところでございます。
 昨年の法律制定を受けまして、さらに平成十五年度の概算要求におきましては、映画振興についてもっと力を入れようということで、前年度の約十三億円から二・二倍の約二十九億円の概算要求を今行っているところでございます。
 さらに加えまして、ことしの五月に、文化庁長官の私的な懇談会として、映画振興に関する懇談会というものを立ち上げまして、映画人の養成を含め、撮影から上映に至るまで、映画振興全般について現在御議論いただいているところでございます。私ども、こういった懇談会の意見も聞きながら、国として映画振興について今後どのような施策がとり得るのか、よく検討し、充実を図ってまいりたい、かように考えている次第でございます。
森田(健)委員 そうですね。やはり、私たちの青春時代も、言うなれば、昔は、植木等さんの無責任時代だとか加山雄三さんの若大将シリーズだとか、テレビは「青春とはなんだ!」とか「これが青春だ」とか、ある意味でファッションのリーダーであり、また、私たちの、ああいう学校に入りたい、ああいう青春を送りたいというものがございました。
 本当に、お隣に伊藤信太郎先生もいますが、一緒に映画を何とかしよう、映像を何とかしようと頑張っております。どうぞこれからも御理解を賜りたいと思います。
 ありがとうございました。
古屋委員長 近藤基彦君。
近藤(基)委員 自由民主党の近藤基彦でございます。
 私の選挙区は新潟県第二区で、今大変有名になっている選挙区であります。それは、佐渡島と柏崎を抱えておりまして、拉致の問題で、帰国者三名、五名帰国なされているうち三名いらっしゃるということで、本当は拉致の問題をお聞きしようかなと思ってもみたんですが、もう一つ、私の選挙区で非常に有名な場所があります。それは、世界最大の原子力基地と言われています柏崎刈羽原子力発電所を抱えております。また、西蒲原郡の巻町というところは、日本で初めて住民投票を実施して、原発を拒否した町でも有名であります。
 原子力発電に関しては、最近、一連の検査における不祥事が出まして、我々の地元の住民は大変な不信感にさいなまれて、もう怒りを通り越して、あきれたというような感じさえ持つわけでありますが、直接の管理責任がある経産大臣の発言や顔はよく見えるんでありますが、つい数年前まで、文部省と科学技術庁が統合される前まで、原子力政策の中枢を担ってきた原子力委員会の委員長が科学技術庁長官であった。現在、所管が内閣府に移っておりますので、直接所管を文科省がしているわけではありませんが、いずれにしても、原子力の安全評価とか研究、人材育成を担っている文部科学大臣の顔がなかなか見えてこないという地元の批判もあります。
 そういったことで、今回の不祥事に対して、まず大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 近藤委員御指摘のように、原子力発電にかかわります今回の不祥事は、国民の信頼を大きく損なうものでございまして、大変遺憾に思っております。
 我が省といたしましては、試験研究炉、それから核燃料物質などの使用に関します安全規制を担当しておりまして、原子炉等規制法に基づいて安全規制を厳正かつ確実に実施しております。
 今回の事案を受けまして、さらにしっかりやろうということで、試験研究炉などの安全規制を所管する我が省としましても、幾つか取り組みました。
 ちょっと例を申し上げますと、一つは、その所管する事業者に対しまして、自主点検にかかわります総点検を求めて、さらに、その結果を国が確認することにいたしました。
 それから二番目には、自主点検の項目を原子炉等規制法に基づく保安規定に入れて、その実施状況を保安検査で確認することにしております。
 それから三番目に、原子炉等規制法に基づきます申告制度の対応体制の整備を図りました。
 また四番目には、安全規制担当職員の品質保証などの技術能力の向上あるいは情報公開、透明性の向上というのを図っておりまして、このようなことが私どもの関連では起きることのないように、今、万全を期すため努力を払っているところでございます。
近藤(基)委員 今日の状況ですと、やはり安全と信頼というのが第一の原子力の問題だと思いますので、ぜひその研究をなおも続けて、安全面に関して、一〇〇%安全とは言い切れない部分も当然残るでしょうけれども、とにかく積み上げが大事だろうと思っておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 我が国の原子力をめぐる状況というのは非常に厳しいものがあります。こうした中で、日本の原子力研究を担ってきた二つの特殊法人、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が統合、独法化の議論が進んでおります。私も自民党の行政改革推進本部の役員でありますので、今までの経緯は十分承知しているつもりでありますが、事業を民間で行い、基盤的研究開発は国が行うという形態をとっている我が国の原子力産業にとって、新しく法人となるものの果たすべき役割というのは、これから極めて重要なものがあると思っております。
 我が国にとっての原子力政策の重要性の中での新しい法人の位置づけを、どのような位置づけになるのか、お聞かせいただきたいと思います。
渡海副大臣 ただいま御指摘のこの二法人の統合、昨年の特殊法人の整理合理化計画の中で決定をされておるわけでございますが、まず両法人を廃止して、そして統合して、新たな中核的な原子力研究機関を立ち上げるという方針のもとで、平成十六年度までにこの新しい法人の法律を提出する、こういうことになっておるわけでございます。
 その決定を受けて、我が省では、事業の重点化や効率化、また、先ほど先生御指摘になりました新法人の役割、機能等についても鋭意今検討をいたしておるわけでございますが、この検討は、私が座長をさせていただいておりまして、大野政務官が今副座長ということで、この準備会を立ち上げております。原子力二法人統合準備会、これを開催いたしまして、現在検討いたしております。
 既にことしの八月に基本報告が行われておるところでございますが、この準備会の中で、各界各層、いろいろな方々、あらゆる方々の御意見を聞いた上で、基本報告では、新法人は、原子力基本法に定められる唯一の原子力開発機関として、原子力委員会の策定する原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画などの計画に基づく我が国の原子力研究開発利用の中核的拠点の役割を担うということ、それから、これも先ほどから委員が御指摘でございますが、原子力安全研究、これをしっかりとこの中核機関で着実に実施をすること、また、原子力政策というのは、日本の場合、平和利用と安全という二つの大きな柱がございますから、こういった意味でも、立地地域との共生というものを念頭に置きながら、新たな法人の基本理念として確立をする、十六年度までにこの作業を進め、法案を提出するという予定で、今検討をさせていただいておるところでございます。
近藤(基)委員 大変重要な研究機関で、大学等の小さい研究機関を除けば、唯一と言っていいぐらいの研究機関に今後二つが統合されるとなるわけでありますので、あらゆる研究がその中に含まれるとは思いますが、いずれにしても、今回統合されるこの二法人に対して、これまで大変な研究資金が国から出されております。昨年度現在、日本原子力研究所に約二兆円、核燃料サイクル開発機構に約三兆円という、合わせて約五兆円の税金が現在まで使われております。
 ただ、その五兆円という税金の研究成果がどうも目に見えてこない。どうも国民に成果が必ずしも十分還元されたのだろうか。幾つかいろいろな意味で成功した研究も当然あるだろうと思いますけれども、今後ますますそういった費用対効果といいますか、そういった研究にも目に見える成果が上がらなければ、なかなか研究費も出しにくいような現在の状況でありますけれども、今の原子力の状況を見れば、第一に、先ほども言いましたが、安全、信頼の確保、そして二つ目に、プルサーマルを初めとする核燃料サイクル事業の推進、そして、これは一番私は今後大事になってくるだろうと思っておるんですが、高レベル放射性廃棄物の処分の仕方、あるいはその処理、あるいは貯蔵の仕方、これら重要な問題が山積みとなっております。
 今後、新しく法人になった、何という法人になるか名前はわかりませんけれども、その法人に、これまでのように資金投入に見合う貢献ができるような事業の進め方あるいは事業内容、そして組織運営がこれでよかったのかという、そういった反省に立って、変革、改革をしていくことが大事なんだろう、せっかく新しい法人になるわけですから。
 重ねてお聞きしますが、廃止をして新しいものをつくるということでありますけれども、今までと多少ここが違うんだということが、ここをこう変えるので、なお一層の研究成果もあらわれるし、そういった資金が国民に十分還元されるようになるんだという特色がありましたら、お聞かせください。
渡海副大臣 先ほど申し上げました統合準備会議では、現在、個別事業等の具体的な見直し、それから整理統合、より効率化、合理化、こういったことを鋭意進めておるわけでございます。
 こういった中で、既存事業の見直しによって、効率化、重点化、整理合理化、これを図るとともに、各事業所、現在それぞれ六つずつの事業所を持っているというふうに思っておりますが、この事業所ごとのミッションを明確化いたしまして、最適に、この二つの廃止をした法人の資源といいますか、施設なり、さまざまな人材なりをより重点的、効率的に配置をし直す、これが一つあると思います。
 同時に、これは科学技術全般に言えることですが、やはりシステム改革というものを行いまして、そのことで、経営とか業務の運営、具体的な姿、こういったものを明確化して、より効率的な原子力研究を行っていくということが大事であろうと思います。
 今鋭意検討、努力をいたしておりまして、また、その成果につきましては、この報告書がまとまった段階で改めて御報告をさせていただきたいというふうに思っております。
近藤(基)委員 ぜひ立派な研究施設あるいは研究システムになるようにお願いをいたしたいと思います。
 ちょっと資料をお配りしたので眺めていただければありがたいと思いますが、科学技術創造立国を打ち出して以来、科学技術予算というもの、全体予算というのは資料一にあらわれているとおり、大変な伸びを示しております。資料一の右側のグラフの下側に、これは原子力関係予算であります。左の棒グラフがそれを取り出したものなんですが、ごらんになるとわかるように、予算そのものも急速に減少しておりますし、割合たるや大変な減少の仕方であります。
 資料二と三は、今ほどちょっとお話をいたしました核燃料サイクル開発機構と日本原子力研究所のこれまでの予算の推移でありますけれども、いずれも平成九年前後をピークにしまして急激に減っております。
 今、原子力の必要性、環境、あるいはエネルギーの安定化ということから、必要性、重要性を非常に声高に叫ぶような時代であるにもかかわらず、原子力の関連する予算がこう減っているというのは、どうも腑に落ちないというか納得ができないような気がいたしますが、この辺の予算の配分の仕方、あるいは文部科学省のその辺の所見をお伺いしたいと思うのです。
渡海副大臣 委員の御指摘をされております懸念というのは、実は関係者の中にもないわけではないわけでございます。この前もノーベル賞の小柴先生が、ITERにたくさんお金を使ったら原子力予算がなくなるんじゃないか、こんなこともおっしゃっておったわけでございますが、私は、研究開発予算というのは、その時代時代に応じて、その時代の要請、そのことによってやはり資源配分というものを適正にしていかなければいけないと考えております。
 その中で、この原子力予算につきましては、確かに、この資料を提出いただきましたように、ピーク時が八年とすれば、現在約六百億強実は予算が減っておるわけでございますけれども、この中で行われてきたというのは、やはり最大限の合理化というものをやってまいりましたし、それから同時に、私はいつも考えておりますのは、やはり原子力の場合は、ある程度基幹的な、基礎的な役割を国が果たせば、それがどんどんと実は民間に移管されていっている。現実に再処理という問題を考えれば、今六ケ所村では既に日本原燃がかなり始動態勢に入っているわけですね。こういったことを考えれば、ただ単に費用だけで判断をするわけにはいかない。
 そういう中で我々といたしましては、先ほどから議論になっております、やはり安全を確保するとか、そしてまたエネルギーという問題がございますね。日本は非常に脆弱なエネルギー基盤でありますから、こういうものをしっかりと確保する上で核燃料サイクルをどう位置づけるか。また、地球温暖化の問題、環境問題で、実は非常に化石燃料にはCO2という負の面がございますから、そういった面も考える。また、原子力研究が国民生活に果たしている役割、特に医療等では、放射線の研究等では大変大きな役割を果たしておるわけでございますから、こういったことはしっかりとやっていくという重点化を図り、そして、より着実に、やはり非常に世界のトップレベル、トップと言ってもいい部分がたくさんあるわけでございますから、その研究分野で今後とも役割を果たしていくということが大事ではないかというふうに考えておるところでございまして、額だけ見れば減っておるわけでございますが、決して原子力の必要性であるとか重要性というものを我が省も軽く見ているということではないということだけは申し上げておきたいというふうに思います。
近藤(基)委員 それは額だけではないのは重々承知でありますが、こういった基礎研究というのは、すぐに目に見えて成果があらわれるというものではない、地道に何年もかかる、あるいは一生かかってもその研究の成果が出ないという研究もたくさんあるだろうと思います。しかし、事原子力に関しては、地道な研究というのは、ノーベル賞をとれるほどの原子力で研究があるのかないのかちょっとわかりませんが、余りノーベル賞を将来数年で何十人出すのだというような華々しい研究に費用を使うということも、それは国力を上げるためには大事なことかもしれませんが、やはりこういった基礎研究、大変、原子力に関しては膨大な予算が、研究にしてもかかるだろう、炉を一つつくる、あるいは委員長の御地元で今行われている地層の地下施設にしても膨大なお金がかかるだろうと予想されております。
 ですから、やはり予算面でもしっかりした基盤をつくってやらないと、なかなか研究の成果が上がらないと思いますので、これは、我々も一生懸命頑張って、文部省全体の予算も上げるような形で我々も頑張りたいと思いますので、ぜひ、そういった意味で、研究がおろそかにならないように、ひとつこれからもお続けいただきたいと思います。
 我が国の核燃料サイクルを確立する上で、プルサーマルの持つ意味というのは大変大きいものだと思います。しかし、残念ながら、現状で、東電の事件もあり、私どもの新潟県でも大変厳しい状況に置かれております。この際、地元の理解を得る上でも、このプルサーマルを行った後MOX燃料を使うわけでありますが、MOX燃料の再処理という問題、この施設は現在具体的なものはありません。ただ、核燃料サイクル開発機構で技術開発中とお聞きをしておるんですが、現在の状況と、それからこの技術が新しい法人に統合された後も着実に実施されていくのかをお聞かせください。
白川政府参考人 お答えいたします。
 使用済みのMOX燃料の再処理技術についての御質問でございますけれども、この点につきましては、現在の原子力の長期計画で、核燃料サイクルの自主性を確実なものにするといった観点から、その成果は将来に重要な貢献をもたらすと考えられるという位置づけがされておりまして、先生御指摘のように、現在、核燃料サイクル開発機構の東海再処理施設におきまして、これは新型転換炉の「ふげん」の使用済み燃料でございますが、これも、先生御案内のように、一種のMOX燃料でございまして、その再処理などを通じまして技術開発を行っているところでございます。
 そこで、お尋ねの新法人設立後でございますけれども、先ほど来副大臣の方から答弁されておりますように、原子力二法人の統合準備会議の方で、ことしの八月に、まず基本報告をお取りまとめいただきまして、その中で、新法人に求められる役割につきましては、総論的ではございますけれども、先生御指摘の核燃料サイクルの確立を目指した研究開発の実施、これを新法人の主要なミッションと位置づけているところでございます。
 この後、この準備会議の方では、個別事業の評価、見直しの検討、それを進めておるところでございますので、今後、このプロセス、この過程の中で、MOX燃料の再処理の技術開発、これをどのような形で進めていくべきかということを含めまして、新法人に求められる役割について、鋭意検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
近藤(基)委員 大変大事な研究でありますので、これを続けて、個別な内容にぜひ含めていただければと思います。
 今まで原子力開発というのは、戦後もう長い期間にわたって、五十年以上になるんですが、その原子力の開発、あるいは研究を行えば、いかに研究炉といえども放射性廃棄物が発生するわけであります。これを安全に処分しなければならないというのは当然のことでありますが、原研にしろ核燃料サイクル機構にしろ、あるいは各大学の研究機関にしろ、そういった研究開発を行ってきた中で、そういった放射性廃棄物の保管あるいは処理をどのように現在しておるのか、お聞かせいただきたいと思います。
石川政府参考人 国の研究機関等における放射性廃棄物の保管と処分についてのお尋ねでございますけれども、日本原子力研究所等の研究機関あるいは大学等におきましては、先生今お話しございましたように、試験研究用原子炉の運転ですとかあるいはウランなどの核燃料物質の使用によりましてさまざまな研究が行われておりまして、これらの研究に伴いまして廃液とか廃材、手袋とかペーパータオル等などもございますけれども、こういったものが放射性廃棄物として発生しているところでございます。
 これらにつきましては、各研究機関におきまして圧縮、焼却あるいは蒸発、濃縮等の減容処理を行いました後に、ドラム缶等の容器に収納いたしまして、関係法令にのっとりまして保管施設に現在安全に保管されているところでございます。
 また、これらの放射性廃棄物につきましては、ただ、年々その量が増加しておるところでございまして、今後、セメントで固形化するなどの処理を行いました上でこれを安定化させ、廃棄体とした後に放射性核種あるいは放射能の濃度等を確認しまして、これらに応じた態様によりまして地中に埋設処分をするというようなこととしておるところでございます。
近藤(基)委員 使用済み燃料等の高レベル放射性廃棄物に関してはどのように取り扱っておるんでしょうか。
白川政府参考人 お答え申し上げます。
 試験研究用の原子炉からも使用済み燃料が出てくるわけでございますが、一般の発電炉等と違いまして、研究用の原子炉は大変形態がさまざまでございまして、燃料の濃縮とか出力等が大変違うわけでございまして、一概に御報告できないわけでございますけれども、考え方といたしましては、まず一つは、臨界実験装置等の非常に出力が小さい原子炉、これはほとんど燃料を消費いたしませんので、燃料の取り扱いが必要ないというものがございます。
 それから、濃縮ウランを使っておる研究炉、これはアメリカから濃縮ウランの供給を仰いでおるわけでございますが、アメリカの方の核拡散の政策もございまして、これにつきましては米国のエネルギー省の方に引き渡しておる、そういう形態もございます。
 それから、その対象外になるものもあるわけでございますが、これにつきましては、フランスとか日本の国内等において再処理するまでの間、原子炉の施設内におきまして現状において安全に保管しておる、こういうものもございます。
 いずれにいたしましても、現在、各事業者におきまして安全上問題ない形で処理をしておるということでございます。
近藤(基)委員 保管をしていると。それは勝手にどこかその辺に捨てるわけにいきませんから、当然のことでありますが、民間の電気事業者等はこれまで処分費用の積み立て等を行っていると聞いておるんですけれども、しかし、研究開発期間の間、国の研究機関というのは収益を期待できるような事業を行っているわけではないわけで、独自に処分費用を手当てするということは、独法といえどもできるわけではないだろうと思っております。
 試験研究炉にしても、これを廃炉にする、あるいは現段階で国の研究機関の最終処分費用というのを、算定方法、いろいろあるんですけれども、原研と開発サイクル機構、合わせて一兆三千億と今言われておりますが、いろいろなことを言う方がいまして、そんな程度の費用じゃ済まぬだろう、恐らく二兆を超える費用がかかるのではないか、これは国だけの施設でありますが。
 一遍にそれがどんと来るということではありませんけれども、しかし、これは多分すべて国の責任で手当てをしなければいけなくなってくることが当然出てくるだろうと思うのですが、将来、もしかするとかなりになるかもしれません。しかし、今からそういったことを考えておかなければならない時代に入ってきつつあると思っております。
 そういったものの費用の積み立てあるいは基金的なものをつくっていくのか、あるいは単年度予算ではなかなか難しいだろうと思っておるので、その辺のお考えがありましたらお聞かせください。
石川政府参考人 放射性廃棄物の処分に関する費用のお尋ねでございますけれども、こういった研究所等から出てまいります放射性廃棄物の処分に要する費用につきましては、原子力委員会から考え方が示されておりまして、基本的には発生者責任というような考え方に基づいて処理をすべきであるというようなことになっておりまして、適切な費用の見積もりを行った上で各発生者が負担をするという考え方になってございます。
 そこで、今先生からお話のありました、例えば国の研究面での廃棄物等のこれからの費用の問題などでございますけれども、基本的には、この考え方にのっとれば、国の予算によって実施されました研究活動に伴って発生する放射性廃棄物の処分費用につきましては、当然ながら、先ほど申し上げましたように、適切な費用の見積もりを行った上で国の予算によって今後措置していくことになるだろうと思っておりまして、具体的な措置の仕方については今後私ども十分に考えてまいりたい、このように思っております。
近藤(基)委員 時間になりましたので、最後に重ねて大臣に御決意をお聞かせいただきたい。
 今後、安全、信頼を回復する面で、これは現在の大変な不信感を払拭する意味においても、大臣の口から今後の原子力安全研究に対して改めて最後に御決意だけお聞かせをいただいて、質問を終わらせていただきます。
遠山国務大臣 まさに御指摘のとおり、これからの原子力の安全を維持する基盤としまして、原子力安全研究は極めて大事だと思っておりまして、これについては私どもとしましても、今後とも一層の充実に取り組んでいきたいと考えております。
近藤(基)委員 どうもありがとうございました。
古屋委員長 丸谷佳織君。
丸谷委員 公明党の丸谷佳織でございます。
 当委員会におきまして、青少年の薬物乱用防止教育とまた喫煙防止教育についてお伺いをしたいと思いまして、お時間をいただきました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず、青少年の覚せい剤乱用の状況からお話ししますと、平成十四年の一月から十月調べにおきまして、総数では、昨年、平成十三年度一月から十月の八百十二名に比べまして、本年度同時期においては六百二十一名と人数は減少したものの、年齢別で見てみますと、十五歳の検挙数が三十九名から四十二名へと若干数ふえている状況にございます。
 青少年の薬物乱用防止の精神というのは、キャッチフレーズにもございますように、「ダメ。ゼッタイ。」ということで、薬物乱用防止ゼロを目指すという目的からしますと、薬物乱用防止対策の充実強化というのを今後一層図っていかなければいけないというふうにも思います。
 また一方、喫煙の状況を見てみますと、これは政府からいただいた資料が若干古いものなんですけれども、二〇〇〇年国立公衆衛生院の調査によりますと、喫煙経験者、男子の中学校一年生で二二・五%、高校二年生になりますと過半数を超えて五一・三%となります。また、女子におきましては、中学校一年で一六・〇%、高校三年では三六・七%と四割近くに上っております。
 また、初めての喫煙経験学年を調べてみますと、中学校三年生までに喫煙経験のある青少年においては、小学校四年生以下から吸い始めたという結果が出ております。
 こういった結果を踏まえて、学校教育における薬物乱用防止また喫煙防止教育の実施状況と、大臣にお伺いしますけれども、こういった数を踏まえて、初等中等教育にずっと携わられていらっしゃった経験から、どのようにこの結果をお考えになり、今後どうしていくべきだとお考えになるか、この点についてお伺いします。
遠山国務大臣 薬物乱用の件も喫煙の問題も、これは私どもといたしましては、子供たちの健康を害するというだけではなくて、それをもとにいろいろな問題にも発展していくわけでございまして、これは私は、小学校、中学校、高校のいずれの段階でもしっかりとその問題性を子供たちに教育し、そしてまた、学校自体もそういったことが起こらないようにさまざまな工夫をしていくべきだと考えております。
 具体的な方策については、それぞれ担当の方からお答えをいたします。
遠藤政府参考人 薬物乱用防止教育でございますけれども、我が省におきましては、総理が本部長になっております薬物乱用対策推進本部が決定いたしました薬物乱用防止五カ年戦略に沿いまして、薬物乱用防止教育の一層の充実を図っている、こういう状況でございます。
 具体的には、中学校や高等学校で、警察職員や麻薬取締官OB等から薬物の恐ろしさを具体例を挙げながら指導してもらう薬物乱用防止教育を、できれば全校でということでお願いをしておりますが、現実には約七割の高等学校等で行われている、こういう状況でございます。
 そのほか、中学校や高等学校に入学するすべての生徒に対しまして薬物乱用の影響等について解説しましたパンフレット等の配付を行っている、こういうことでございますし、また喫煙防止教育につきましても、同様にいろいろな形で教育を行っているという状況でございます。
丸谷委員 具体的に言いますと、学校の現場で行われている喫煙防止教育あるいは薬物乱用防止教育、学年別で見ますと、小学校では五年生と六年生時、また中学校、高校では三年生時に行われております。
 しかし、先ほど挙げました結果を見てもわかるとおり、十五歳から例えば初動喫煙をするとか、あるいは学校が変わって新しい友達がふえた途端に、その友達の輪に入りたいがために例えばたばこの勧めを断れないとか、そういった状況。環境が変わる中学校一年、高校一年、あるいは小学校四年生以下から初動喫煙をしているということからしますと、小学校五、六年以下、早い時期での対策というものも効果があると思いますが、この点についてはいかがでしょうか。
遠藤政府参考人 御指摘のように、教科としましては小学校では六年生の体育、中学校では三年生の保健体育で指導する、こうなっておりますが、これに限らず、特別活動を初め、学校教育全体を通じてこういった喫煙防止に関する指導をぜひ行ってほしいということでお願いをしている次第でございます。
丸谷委員 そこのお願いはより一層強くお願いとして実行していただいて、また、現在行われています七割の薬物乱用防止教育、これを十割、一〇〇%にするような努力を引き続きしていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 実際に、喫煙防止教育について非常に積極的に取り組んでいる例としまして、例えば和歌山県、これは県教育委員会が各市町村の教育委員会と協力をしまして、学校区域、敷地内すべてをノー・スモーキング・エリアと決めまして、灰皿も置かない、分煙ではないという完全なノー・スモーキング・エリアとして、ことしの四月一日から実施をしています。
 その後の経過を聞いてみますと、運動会ですとかあるいは学園祭を経たときも、PTAがそこの学校の場に行って、あるいは学校の先生から、ノー・スモーキング・エリアにしたことによる苦情というのはやはり出ていないそうなんですね。ですから、県がそのようにリードをしてノー・スモーキング・エリアと定めることによって、親の意識も変わっているという非常によい結果が出ているわけなんです。
 こういったノー・スモーキング・エリア、和歌山県のみならず全国各地に徐々に広がってきておりますが、これを推進していただく意味で、文部科学省はこれをやるべしという命令形は余りなじまないかもしれないので、このノー・スモーキング・エリア推進のための顕彰といいますか、そこを実施している地域を、例えば、何でもいいんですけれども、煙害ゼロ地域とか健康教育推進地域として表彰するようなシステムがあれば、より一層私はこの活動が進むのではないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
池坊大臣政務官 四月十一日に青少年に関する特別委員会で、丸谷委員から和歌山教育委員会の取り組みを御紹介いただきました。私も大賛成で、これは全国の学校が禁煙になってほしいというふうに願っております。
 学校教育の中で教科として教えることも大切ですけれども、先生がおいしそうにたばこを吸っていらっしゃったならば、子供たちはやはり好奇心旺盛ですから、僕も吸ってみたいなという気持ちになると思います。
 隗より始めよで、まず先生が吸わないことというのが私は大切だと思っておりますので、それ以後、さまざまな協議会におきまして、和歌山県を初め各自治体における禁煙の取り組みについて、この状況を知らせております。例えば健康教育行政担当者連絡協議会だとかあるいは保健室相談活動研修会等々、さまざまなときにこういうことをしてほしいというふうに申しておりますし、また教育委員会においても禁煙の推進を進めておりますが、まだ全国的な広がりになっていないということは残念でございます。
 やはりいろいろな方法を考えていかなければいけないと思っておりますので、今丸谷委員がおっしゃったように、いい学校を表彰するということはこれから必要で、すべてが同じようにする必要はないので、やはりいいところは、こんなすばらしい事例があるのだということをどんどん文部科学省はみんなに知らしめていかなければいけないと思っておりますので、それも参考にして頑張っていきたいと思います。
丸谷委員 大変いい御答弁をいただきまして、どうもありがとうございました。ぜひこれは、検討の範囲を超えて、実施に至るまでやっていただかなければ困りますので、どうかよろしくお願い申し上げます。
 もう皆さん御存じのように、日本は国際的にたばこ対策後進国と言われていまして、それはなぜかといいますと、当然喫煙も含めて個人の自由というのは尊重されるべきですけれども、その中においても、医療機関ですとかあるいは学校ですとか、そういった公的機関において、諸外国ではノー・スモーキング・エリア指定とかあるいは分煙という対策がとられているのに比べて、日本はまだまだそこがとられていないということから、たばこ対策の後進国というふうに言われています。
 ぜひこの汚名を返上すべく、学校という教育現場、あるいは健康推進教育という方針も文部科学省で打ち出していると思いますが、この観点から、ノー・スモーキング・エリア指定として無煙環境づくりに積極的に取り組んでいる地域あるいは学校に対しては表彰するということを重ねてやっていただくようにお願いをしたいと思います。
 また、その表彰するに当たって検討していく中で必要になってくる事項というのはやはりあるんだと思います。というのは、ことし、十四年四月一日から、ノー・スモーキング・エリアとして学校区域内を指定した、それを実施した。その実施したことによって、結果、その小学校あるいは中学校の生徒がいかに喫煙をしなくなったか、喫煙防止の結果にどのようにつながってきたかという因果関係の数字的なものがあることで、より表彰するあるいは顕彰するというシステムが確立されるんだと思います。
 時間がなくなりましたので、文部大臣に最後に感想も含めてお伺いしたいと思うんですが、例えば、こういったノー・スモーキング・エリア校をモデル地域として指定をして、その後調査をして、ノー・スモーキング・エリアの地域の子供たちの喫煙状況とその他の地域の子供たちの喫煙状況の数字の比較等をして、ノー・スモーキング・エリア地域を学校教育において拡大していくというような提案に対してはどのようにお考えになるか、最後にお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 委員御指摘の御趣旨は、心から賛同いたします。どういうふうなことが最も効果的でまた可能か、検討させていただきます。
丸谷委員 どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。ありがとうございました。
古屋委員長 斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 私は、シックスクールに関して質問をさせていただきたいと思います。
 厚生労働省が、シックハウス症候群に関しまして、有害化学物質濃度の指針を順次出しております。文部科学省も、それを受けて昨年、一昨年と五十校、二百八十一カ所で調査をして、そのうち十二カ所でホルムアルデヒド濃度がその厚生省の設定した指針値を上回っていたという結果が出ました。これを踏まえて、ことしの二月、学校環境衛生の基準というものを改定して各都道府県に通知をしたところ、このように認識をしております。
 この改定学校環境衛生基準、これを各都道府県の教育委員会に通知後、いかなる改善がなされたか、その認識についてまずお伺いします。
遠藤政府参考人 御指摘ございましたように、本年の二月に学校環境衛生の基準を改定いたしまして、新たに化学物質の室内濃度について検査事項として盛り込んだということでございます。
 この基準に基づきまして、現在、学校におきましては、定期的な検査や新築、改築などが行われる場合の臨時の検査が実施されておりますが、これまでのところ、新築、改築などの際の検査におきまして基準値を超える場合がある、こういう場合が出てきていると聞いておるところでございます。こういったその基準値を超えた学校につきましては、換気を励行したり、原因を究明し、原因物質の除去を行うなど、適切に事後措置をとるよう教育委員会に対して指導をしている、こういう状況にございます。
斉藤(鉄)委員 改定された学校環境衛生基準、基準値を上回った場合、先ほど答弁ありましたように、原因物質を除去せよ、もしくは換気をせよ、こういうことなんですが、原因物質は建てた建物そのものなんですね。これを除去するというのは現実問題としてなかなか難しい。また、換気扇を設置するのもなかなかこれも費用がかかるということで、根本的な解決になっていないという声もございます。
 国としても、各自治体と緊密に連携をとって、この基準値を超えた場合のさらなる主導的な対策を講じていくべきだと思いますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
萩原政府参考人 お答えいたします。
 学校施設は、子供たち、児童生徒が一日の大半を過ごす場所でもございますし、その環境については安全かつ快適なものでなければならない、こう考えております。このような観点から、委員御指摘のように、学校環境衛生基準が二月に改定されたわけでありまして、そこに検査方法や判定基準及び事後措置が記されているわけでございます。
 この学校環境衛生基準とは別に、学校施設の整備指針というのがございまして、この中に、学校を建てる場合、室内の空気の汚染を発生する化学物質、こういうものを使わない、あるいはその発生が少ない建材を使うように、また換気設備に対しても配慮するように、日ごろから設置者である都道府県等に要請をしているところでございます。
 また、ことしの二月に、シックハウス対策に関するパンフレットを出しまして、同様のことをさらに細かく要請しているところでございます。さらに、学校等の建設、改造を行う場合、これらの対応について経費を国庫補助しているところでございます。
 もう既に一部の学校でその基準をオーバーしたということがあるわけではございますけれども、基準を超えた場合につきましては、先ほど局長の方から答弁ありましたように、換気を励行するとともに、その原因を究明しまして、その除去等、汚染物質の発生を低くするような措置を設置者が講じる必要がございますが、文部科学省としても、適切な技術指導や情報提供を行いまして、自治体等の設置者と十分連携を図りながら今後しっかりと対応してまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 トルエン、ホルムアルデヒド等、基準値の十倍とか五十五倍とか、かなりもう、本当に子供たちの健康が心配なような例も報告されております。かといって、壁紙をすぐはがしてその原因となっている物質を取るわけにもいかない、ほかに空き教室もない、仕方なくそこで子供たちが勉強せざるを得ないという現状ですので、ぜひこの対策を急いでいただきたいと思います。
 現場の教員におけるシックスクールに対する認識不足なんですけれども、そういう認識が足らなくて、シックスクールによって、そういうものが原因で落ちつきがなくなったり疲れやすくなったりした児童でも、認識のない教師は単なる問題児として片づけてしまうという報告もございます。こういう教師に対する認識の浸透、これについてはいかがでしょうか。
遠藤政府参考人 いわゆるシックスクール、シックハウス症候群に対する対応ということでいいますと、やはり化学物質過敏症の児童生徒に対しましては、個々の状況に応じた対応が求められるわけでございまして、したがいまして、教育委員会あるいはその学校の先生などがシックハウスに関する基本的な知識につきまして正しく認識することが重要である、こう考えておりまして、私ども文部科学省におきましても、教育委員会や学校関係者に対しまして、化学物質の健康に対する影響や化学物質過敏症についての理解が深まるよう、これまで健康教育指導者中央研修会等々、各種会議の場におきまして、シックハウスの問題点、その対策について説明をし、学校での取り組みの重要性について理解を求めてきたということでございます。
 平成十五年度の概算要求におきましても、教育委員会、それから学校関係者向けに、最新の知見に基づくシックハウスの基本的な知識や具体の対応方法を示しました参考資料を作成して配付をする、そういった経費を要求しているということがございます。
斉藤(鉄)委員 その点、ぜひ認識をしていただきたいと思いますし、学校建設の場合、建設会社、地元の業者さんを使うことが多いわけですけれども、いわゆるそういう有害化学物質に対しての認識がなく、安い材料を使ってしまうということもあるようでございまして、そういう面での設計、施工段階での指導も大事かと思います。
 次に、そういう症状が見られる子供に対しての措置ですけれども、有効な医療手だてを打てずに放置されているという現状です。父母の方々からは、子供に対する健康調査を実施してほしいとの要望も出ております。ある地域の小学校では、学校と地元医師会が連携し、健康実態調査を実施した例もあると聞いております、これは長野県の塩尻西小学校だそうですけれども。
 一方、シックスクールに対する研究がまだ不十分であり、診断できる医師もまだ少ないといった指摘もございます。化学物質過敏症になった子供は、適切な治療を受ける機関も少なく、保険が適用されないので、高額な医療費がかかるとの声もございます。
 この問題に取り組む際には、教育現場と医療現場の緊密な連携が必要であり、この点、文部科学省並びに厚生労働省として、今後どのように連携を深め、対策を講じていくか、この点についてお伺いをいたします。
遠藤政府参考人 いわゆるシックハウス症候群につきましては、厚生労働省におきまして、病態の解明、診断法、治療法の確立に向けた調査研究などが進められている、こう承知をしております。
 我が省におきましても、本年度から、学校におけるシックハウス症候群の対策を検討するため、医師や薬剤師などの専門家から成る検討会を設けておりまして、厚生労働省が行う調査研究の状況も踏まえながら、化学物質過敏症の児童生徒の状況等について、できるだけ実態の把握に努め、その結果を踏まえて必要な対策を検討したい、こう考えております。
 なお、シックハウス対策につきましては、文部科学省、厚生労働省等の関係省庁で構成されておりますシックハウス対策関係省庁連絡会議が設置をされておりまして、今後とも、こうしたような場を活用しまして、関係省庁と連携を図りながら対策を講じてまいりたい、こう考えております。
高原政府参考人 ただいま文部省当局から御答弁がございましたように、ただいまシックハウス対策関係省庁連絡会議を設置しておりまして、関係省庁が連携して総合的な対策を実施しておるところでございます。
 厚生労働省といたしましては、例えば、平成十三年から十五年にかけまして、住居内空気汚染等とアレルギー疾患との関係に関する疫学研究でございますとか、化学物質過敏症等室内空気中化学物質にかかわる疾病と総化学物質の存在量の検討等々、また室内環境の評価法及び健康影響の予測法の開発等々の研究を現在行っているところでございます。
 これらによりまして得られた医学的知見が医療現場や教育現場、生活現場に適切に応用されるよう、文部科学省とも連携をとりながら、普及啓発等に努めてまいりたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 昭和五十年代に児童が大きくふえて、それによって校舎がたくさん建てられました。その改修期、山がこれから出てくるわけでございまして、その改修した後、このシックスクール問題、非常に大きな問題になるんではないか、このように言われておりますので、今からぜひ手を打っていただきたいと思います。
 最後に、いわゆる過敏症によりまして、化学物質過敏症、このシックスクールによって登校できず、やむなく休学している子供たちもいらっしゃいます。解決の方途が見出せないまま、教育を受ける権利が脅かされている実態があるわけで、シックスクールの解決に全力を挙げることは当然としても、このような状況下に置かれている子供たちに対して、学ぶ権利を守るために、学習支援対策を早急に行う必要があるのではないかと思います。原因が学校側にあると言っても過言ではないわけで、責任ある対応が必要かと思います。今日まで文部科学省としてどのような学習支援対策がとられてきたか、また今後さらなる具体的な支援策を講ずる用意があるのか、これをお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 我が省といたしましては、いわゆるシックハウス症候群に関しまして、これまでに、学校の室内汚染の実態調査、それから学校環境衛生基準の改定、それからシックハウス症候群の児童生徒の配慮についての通知などを行ってまいりました。
 ただ、委員御指摘のように、シックハウス症候群に悩む子供たちが学校に行けないというのは、これは大きな問題でございまして、これはその症状によって幾つか対応策があると思っております。
 一つは、就学を指定された小中学校への通学が困難な場合には、保護者の申し立てによりまして、就学する学校の指定変更を行うということも大事だと思っておりますし、それから、症状が重度の場合には、病弱養護学校に転学した上で養護学校の教員が自宅などを訪問して教育を行うなど、個別の配慮を行うようにこれまでも各都道府県に対し指導してまいりましたが、そういったことも徹底していきたいと思います。
 ただ、もっと根本的にどうしたらいいかということで私どもも頭を悩ましておりまして、我が省といたしましては、今年度から、七月に発足したわけでございますけれども、医師や薬剤師といった方々から成る検討会を設けておりまして、化学物質過敏症の児童生徒の状況等についてできるだけ実態の把握に努めることといたしておりまして、そうした人たちの意見も聞きながら、今後どうやっていくかについて支援の充実を図りたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 終わります。よろしくお願いいたします。
古屋委員長 松浪健四郎君。
松浪(健四郎)委員 おはようございます。保守党の松浪健四郎でございます。余り時間がございませんので、端的にお尋ねをしたいと思います。
 私は大の相撲ファンであります。ところが、なかなか盛り上がらないんですね。さきの九州場所では、モンゴル人力士として初めて朝青龍が優勝してくれて若干話題性がありましたけれども、横綱が二人、大関が二人休場するということで、盛り上がらない。
 よく調べてみますと、この一年間で大体一場所一六・四%の幕の内の力士が休場しておるんです。これではファンがなかなか喜ばない。だからといってチケットが安くなっているのかというと、そうではないわけですね。私は、余りにも休場が多過ぎるじゃないか、こういうふうに思っておるんですが、このことについて文部科学省はどのように考えているか、お尋ねしたいと思います。
遠山国務大臣 これは私が答えるのに適当かどうかわかりませんけれども、お尋ねでございますので感想を述べたいと思いますが、私も同感でございまして、やはり相撲というのは国民が日本の伝統的な競技として大変大事にしているものでございまして、やはり横綱でありますとか大関でありますとか、大いに健康に留意した上でしっかりと戦ってもらいたいというのが国民の意見ではなかろうかと思っております。
松浪(健四郎)委員 大臣も同感だということで意を強くしたわけでございますが、一九六二年のお相撲さんの平均体重は百十七・五キロであります。四十年たった今、平均体重は実に百五十五キロであります。これだけお相撲さんが大きくなっているんです。そして、人気は下がっておるんです。
 つまり、何に問題があるのか。もちろん、日本人が大きくなってきておることは学童を見てもわかるわけでありますけれども、発育、発達がよくなったのは事実でしょう。しかし、相撲には寄り切り、押し出し、うっちゃりという決まり手がありまして、体が大きい方が有利だという競技なんですね。
 では、なぜ急にそんなに大きくなったのか。私は、発育、発達だけではないと思っています。これはドーピングが原因じゃないのかと思います。大臣は病気をされないようにとおっしゃいましたが、病気で休場する人はいないんです。けがで休場しているんです。つまり、昔のお相撲さんはけがをしなかったのに今のお相撲さんは体が大きくなったからけがをする、こういうふうに言えるわけです。そして、体を大きくしておるのは、お相撲さんは薬物を使っておるのではないのか。多分使っていると思います。
 だから、文部科学省としては、日本相撲協会に対して、ドーピング、やりなさい、力士の薬物の使用を中止しなさいということを強く注意すべきだと私は思いますが、いかがでしょうか。
渡海副大臣 ドーピングの問題というのは、これはスポーツの世界で大変な大きな国際的な問題になっておるわけでありまして、松浪議員も御指摘のように、このことに関しては、世界アンチ・ドーピング機構、これが一九九九年に設立をされておりますし、また、昨年我が国におきましても、JOCそして体協、それぞれのスポーツ団体が参加をして、日本のアンチ・ドーピング機構というのが設立されております。
 ちょっといろいろと調べさせていただいたんですが、プロの世界におきましても、現在、Jリーグ、プロボクシング、それからサーキットレースの中でも、どうもオートレースはやっていないようでありますが、それ以外のフォーミュラ・ニッポンなど四輪、それから二輪レース、こういうものでは行われている。競馬がスポーツか、まあスポーツなんでしょう、ちょっとこれは不遜な発言かもしれません、スポーツのジャンルに入るそうでございますが、競馬もやっていますね。それから競輪もやっている。こういう状況でありますが、現在、野球、大相撲、オートレース、競艇、これについては今のところは行っていない、こういう状況でございます。
 文部科学省としてということでございますが、ドーピングという問題そのものがやはりフェアプレー精神に反するという観点がございます。そういった面では青少年教育に余りいい影響を及ぼさないだろう、むしろ悪影響を及ぼすだろう。もう一点は、やはり確かに競技者の健康を損ねるという点、こういった点をしっかりと認識していただくための努力というのはさせていただいておるところでございますし、今後教育の中でもこの問題を取り上げることが、どういうふうに取り上げることがいいかという議論を今させていただいておるところでございます。
 しかしながら、プロのスポーツということになりますと、一義的には、各種団体がやはり積極的にこの問題に取り組んでいただかなければいけないのではないか。現実に、アメリカで最高記録を持っておりますマグワイア選手、これはよく御存じだと思いますが、間違いなく筋肉増強剤を使っていることは、もう本人も言っているわけですから。オリンピックの場でもいろいろな問題が起こっていることも事実でございますが、プロの世界というのは、ある種、やはり自主判断というものをしていただけるような環境というものを整えていくという努力をやっていくというのが今のところできることかな、そんなふうに思っております。
 いずれにしても、環境を整えることによって、プロの世界も、先ほど言いましたように既にかなり導入をされておるわけでありますから、そういったことが今後とも大相撲にもぜひやっていただけるようにお願いをしていきたいというふうに思っておるところでございます。
松浪(健四郎)委員 体の大きいことはいいことだということですけれども、明らかにお相撲さんの体は学問的に言えば肥満症、脂肪過多症と呼ばれる病名をつけることのできる形であるということ、そして財団法人日本相撲協会は文部科学省の管轄下にあるということ、そういう意味では、今の副大臣の御答弁の中にありましたように、相撲協会に対して、文部科学省としては、少なくとも薬物の使用、ドーピングテストの導入、これらについては御意見をされるよう強く希望をいたします。プロのスポーツだからといいますけれども、プロでも今やオリンピックに参加することができるようになっておるわけでありますから、文部科学省が手の届く範囲内で私は指導していくべきだ、こういうふうに思っております。
 次に、この前の国民体育大会は、三十八年ぶりに開催県である高知県が天皇杯をとることができませんでした。大変、私はよかったと思っておりますし、大きな問題提起をした、こう思っております。
 大体初めから、一千万人を超える人口を持つ東京都と百万人いない小さな県が対等に得点争いをするということ自体ばかげておると私は思っておるわけですけれども、ただ、天皇杯を仰ぐということでなかなか議論されなかった。
 そこで、高知県が今回、優勝するための努力をしなかったことに私は敬意を表しておりますけれども、このことについて文部科学省はどのような感想を持たれているのかお尋ねしたいと思います。
遠山国務大臣 国民体育大会、私は、これは国民にとって秋の大変大事な行事として、また、いろいろな人たちがこれに参加することによって体育あるいは体を鍛えるということについて関心を持ってもらうのに大変大事な行事だと思っております。
 これまで開催地の道府県が優勝してきた理由といたしましては、一つは、ルールとしてすべての競技に出場できるという利点があったこと、それからもう一つは、国体開催に向けた計画的な選手強化が行われてきたということが挙げられております。そのために、前例どおりに開催県の優勝にこだわるということがありまして、時として、一時的で過剰な強化が行われたという指摘もあるところでございます。
 本年の国体におきまして、高知県が男女総合成績は第十位ということで優勝はできなかったわけでございますが、私は、開催県としましては、選手がベストを尽くされ、また大会自体の運営について非常にすばらしい実績を上げられたということで、そういう姿勢を私としては賞賛をいたしたいと思っております。
松浪(健四郎)委員 大変結構な御答弁だと思いますけれども、国体がもう二巡目に差しかかっておるわけですね。
 一流選手からすれば、国体というのはどの程度のものかというのは、ここに馳議員がいらっしゃって、よく経験されておることでありますけれども、大体スポーツ界の同窓会なんですね。あるいは、私もそれが専門でしたけれども、高校生の選手のスカウト、そこで私は馳選手をスカウトした経験者ですけれども、その程度のものなんですよ。だんだん国民体育大会の意義が薄れてきていることを私は残念に思っているんです。
 そして、かつては開会式も閉会式も、そして主要種目もNHKが中継するというようなことがありましたけれども、昨今、ほとんど国体の放送がなくなってまいりました。つまり、NHKも、こんなものやってもしゃあない、こういう認識なんです。そして、その認識は正しいんです。
 そこで、やはり幅広く真の意味での国民体育大会にしていくためには、各県がお互いに協力して運営をしていく必要がある。今までのように体育館や競技場建設のために莫大なお金を使ったり、そしてその運営費で、維持費で後で困るというようなことが当たり前のことになっておりましたけれども、こういうことはやめて、一県単独で主催するというようなことをやめて、私は、隣と隣の県が互いに助け合って大会をやる、いわゆる分散開催、こういう考え方も必要ではないのか。そうすれば、もはや皇后杯だ天皇杯だといって大騒ぎすることがなくなってくるのではないのか、こういう思いを持っておるんですが、こういう意見についてはいかがでしょうか。
遠藤政府参考人 国体も二巡目に入りまして、御指摘のように、やはり改革しなくちゃいけないんじゃないか、こういうことで平成十二年の十一月でございますか、主催しております日本体育協会が、今後の国体の簡素化に関する基本的方向、こういうことで、今御指摘ありましたようなことについていろいろ御提言をされているわけでございます。
 例えば、秋季大会の実施競技を夏季大会に移行して施設の有効活用、同じ施設を二度使うとか、それから既存施設の活用に努めて新設はもう最小限にする、こういったようなこと。それから、近県とかブロック内の既存の施設を活用、近県の方も視野に入れながらやっていこうじゃないかといったような、それから用具の点、いろいろなことについて簡素化の方向が打ち出されている、こういうことでございます。
松浪(健四郎)委員 スポーツを普及させるということは青少年の健全育成にとって極めて有効であることは多言をまつまでもございませんけれども、そのためにお金がかかる。そこで、ない知恵を絞ってサッカーくじの導入ということになりました。
 大変な反対をされましたけれども、私も法案提出者の一人でありますが、大体これをやれば年間一千八百億円売れる、力んでやりました。昨年は六百四十億売れました。思ったより少なかったな、こういう思いでありましたけれども、それでも有効な形で全国のいろいろな施設やクラブ、団体等に、また強化費等にこの売り上げのお金が補助されることになっております。喜ばしい限りでありますが、ことしは昨年の六百四十億に比して、もしかしたら四百億割るのではないのか、こういう予想が立っておるわけです。
 となりますと、今のくじの販売の方法、これが悪いのか、場所が悪いのか。この前も埼玉競技場でアルゼンチンと日本の国際試合がありましたが、超満員であります。サッカー熱というのはちっとも落ちていないんです。サッカーくじの熱が落ちているんです。これはやはり私は今のくじの十三試合を当てる、しかもJ2の試合まで入れる。ファンはそこまで果たして掌握し切れるか、なかなか難しいと思うのですね。
 だから、売り上げを伸ばすためには、まず第一に、新しいくじを考案する必要がある。今のままだけではだめだ。もちろん今のシステムも定着しておりますから、なくす必要はないと思いますけれども、新たなくじ、これについて考えなきゃいけないし、すぐやるべきだ、こういう思いを持っておりますので、このことをお尋ねしたい、第一点。
 第二点は、あの法案を通すときには大変問題になりました。子供たちに悪影響を及ぼす、大変でしたけれども、新聞を読んでおる限り、私はそんなに青少年に問題が起こっていないんじゃないのか、そのことをもお尋ねして、さらに加えて、私は、売る場所、これらについてやはり検討すべきじゃないのか、こういうふうに思いますが、この三点について、お尋ねしたいと思います。
遠藤政府参考人 御指摘のように、スポーツ振興くじの売り上げにつきましては、大変苦戦をいたしておるような状況にあるわけでございます。
 どうして売り上げが減少しているかということで、いろいろ原因分析もしておるんですけれども、ことしで言いますと、例えば、ワールドカップで二カ月Jリーグが中断した、こういうことがございまして、その中断によりまして、例えば販売店が近くにないといったようなことなどのいろいろな不満の要因が顕在化をしまして、もう買うのやめたということで、購入意欲が減退したということが一つあるのではないか。
 それから、やはり宣伝がいまいちだったのかなということもございますし、それから、先ほど言いましたように、二カ月あいたことでJリーグ自体が過密日程になりまして、販売期間も重複せざるを得なかった、あるいは同一試合を複数回指定せざるを得なかったといったような変則販売を行ったことも、わかりにくい、やめた、こういう原因があったのではないかな、こういういろいろ要因分析をしている次第でございます。
 それに対しまして、宣伝活動をさらに追加するとか、販売店の数をふやす努力をするとか、いろいろ改善を図っております。
 今委員の方から御指摘ございましたように、新しいくじ、こういうことでございますが、やはり、こういう現状を打破するということで、スポーツ振興くじが国民により親しみを持って参加していただくというような観点から、試合の得点数を予想する新しいタイプのくじ、こういったような検討も実は行っておりまして、近くその具体案がまとめられる、こういうふうに承知をしている次第でございます。
 それから、青少年の点、これもやはりきちんと対応しなくちゃならない問題でございますが、今、十九歳未満の者に対するチェックがきちんとくじの販売店でできているかどうかということで、シャドーバイヤー、これは、知らんぷりして行って、十九歳未満に見えるような人が行って買ったら、あなたは年齢何歳ですか、売れませんということをきちんとやっているかどうかというチェックをしているわけでございます。
 最初は、まだ販売店の方もなれませんで、五割以下だったようでございますが、平成十三年の後半では約九割がきちんとチェックをする、こういうことでございまして、また、既に販売、二年近くが経過したわけでございますが、青少年について特段大きな問題が起きたということは全く報告ございません、聞いておりません。そういうことでございます。
 以上でございます。
松浪(健四郎)委員 答弁漏れがありましたので、指摘をします。
 販売店をどうするのかということについての答弁がありませんでした。
遠藤政府参考人 スポーツ振興くじに関するアンケート調査をしますと、やはり、どこで売っているのか、買いにくい、できればコンビニエンスストアで購入し得るようにしてほしい、こういったような要望がかなりの高い比率であるわけでございます。
 ただ、先ほど申しましたように、青少年の健全育成という点にも十分配慮する必要があるということもございますけれども、コンビニで売るかどうかという問題につきましては、今後の大変大きな検討課題だ、こう考えております。
松浪(健四郎)委員 青少年の中でこのサッカーくじが問題になっていないということでございますから、私は、コンビニで売るべきだ、こういうふうに強く要望して、質問を終わります。
 どうもありがとうございました。
古屋委員長 肥田美代子君。
肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。
 きょうは、文部科学大臣に提出されました中央教育審議会の「新しい時代にふさわしい教育基本法と教育振興基本計画の在り方について」、その中間報告及び大臣の諮問理由に関連して質問したいと思います。
 教育方針は、一つ間違えますと子供たちと日本を誤った方向に導いていく、これは歴史の教訓が教えているところでございます。それだけに、日本国憲法と並び、我が国の戦後社会に平和をもたらし、貢献してきました教育基本法の扱いは、冷静かつ慎重に審議しなければならないと私は考えております。そうした問題意識を前提に、以下質問をさせていただきます。
 全国PTA協議会の小中学生の保護者を対象にして教育基本法に対する認知度の調査をされましたけれども、この回答者四千人のうち、教育基本法の内容を知らない、またはよく知らないと答えた人が八四%に上っている。しかし、教育基本法は、およそ五十年、我が国の教育のバックボーンとなってまいりましたし、国民の間に定着をしていると私たちも思っておりました。けれども、こういう現状でございます。この現状を大臣はどのように受けとめておられますでしょうか。
    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕
遠山国務大臣 今御指摘の日本PTA全国協議会が、ことし五月から七月にかけて、これはまだ中間報告が出ていない段階ですが、行いました学校教育改革についての保護者の意識調査の報告書におきまして、教育基本法に関しては、回答者の約八割が内容をよく知らないと答えたという結果は承知いたしております。ただ、見たり聞いたりしたことはあるが内容はよく知らない、あるいは、目を通したことはあり、おおよそその内容も記憶している、それぞれニュアンスのある質問であろうかとは思いますが。
 そういうことを前提にいたしまして、中央教育審議会が去る十一月十四日に中間報告を公表しました。この段階におきまして、私どもとしましては、今後、パブリックコメントの募集、あるいは教育関係団体等からのヒアリング、また全国五会場での一日中央教育審議会、公聴会でございますが、これを開催したりいたしまして、国民各層の幅広い御意見を伺いながら、さらに審議を深めていただくことになっているところでございます。
 我が省といたしましても、今回の中間報告の公表を契機に、広く国民の皆様でこれからの教育のあり方をめぐる議論が深まりますように、教育基本法や中間報告の内容について広報を行っていきたいと考えております。
肥田委員 ただいまのお答えは、教育基本法並びに今回の中間報告、それぞれ周知徹底させるということでよろしゅうございますね。そうだということでございますので。
 教育基本法は、戦前の教育行政との決別を宣言し、日本国憲法の精神にのっとり、教育の目的を明示することで、人間像や国家像までも描いております。
 これは、例えば、対象範囲を限定しました農業基本法でありますとか災害対策基本法、原子力基本法、消費者保護基本法など、他の基本法と名のつく法律とは明らかに異なっております。
 この現行教育基本法のそうした特徴と価値について、大臣の見解をお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 教育基本法は、日本国憲法と関連して教育上の基本原則を明示し、憲法の精神を徹底するとともに、教育本来の目的の達成を期して、昭和二十二年に制定されたものでございまして、憲法とのかかわりは深いわけでございます。
肥田委員 ただいまの御答弁に関連しますけれども、教育基本法は、教育の理念、目的、方針、教育行政、制度設計、学校運営、教育実践などの基本的枠組みは規定しておりますけれども、教育内容には踏み込んでおりません。
 したがって、諮問されました伝統、文化教育、環境教育や家庭教育、宗教的情操教育や男女共同参画教育など、具体的な教育内容が書き込まれておりますと、教育基本法は歴史的な転換を遂げることになってしまいます。大臣はどういう御認識でいらっしゃいますか。(遠山国務大臣「失礼しました、ちょっと」と呼ぶ)
 もう一度申し上げます。
 要するに、大臣が諮問されました諮問内容でございますけれども、かなり具体的な教育内容が書き込まれております。ですから、今回、教育基本法は歴史的な転換を遂げることになるんですかという質問でございます。
遠山国務大臣 今回の諮問に際しまして、幾つかの項目を挙げているわけでございます。これは、諮問が白紙の状態で出されたということではなくて、教育改革国民会議の報告というものも踏まえた上で諮問をしているということでございます。
 その意味で、広く教育の基本にかかわる問題を論じていただくということは大変大事だと思っておりまして、諮問文の中にそういった項目についても触れているわけでございますし、さらに、中央教育審議会という審議会の性格上、諮問にかかわることだけではなくて、幅広く議論されているというふうに承知いたしております。
肥田委員 ということは、法律になりますと、例えば教育基本法の改正案が出た場合には、そういう具体的な教育内容については書かないということでよろしゅうございますか。
遠山国務大臣 今は中間報告が出た段階でございまして、今後、国民の皆様のいろいろな御意見あるいは有識者の方々の御意見などもさらに踏まえた上で、教育基本法についてどのように考えていくかということは、これからのさらに詰めていくべき問題だというふうに考えております。
肥田委員 教育基本法が成立したその歴史的な背景とか過程を考えますと、やはり具体的な教育内容を基本法に盛り込むことについては、慎重にも慎重でなければいけないと私は思っております。この点に関して、大臣、もう一度お願いいたします。
遠山国務大臣 諮問の中では、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について、あるいは教育振興基本計画の策定について等の項目にわたりまして審議をお願いしているわけでございますけれども、教育基本法のあり方を考えていく、その際に、教育の根本にさかのぼった改革についても論じていくということの重要性について、ここで、諮問文の中で述べているわけでございます。
 したがいまして、私といたしましては、諮問した姿勢としては、今申し上げたような考え方に乗っかっているわけでございます。
    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕
肥田委員 教育基本法の見直しを憲法改正につなげようとするという懸念を指摘する声もマスコミの間にはございます。中教審のこの間の論議の中では、憲法との関係については、現行憲法の枠内で見直すべき点を見直すという方向が出されております。
 河村副大臣にお尋ねしたいんですが、六月二十六日、自民党中央政治大学院で講演されまして、この中で、これは抜粋ですから、ひょっとしたら前後がありますから。読んでみます。
 「憲法改正が先ではという議論もありますが、新しい教育基本法の考え方が憲法に反映されるという形のものをつくるのが本来だという気持ちでこの問題に取り組んでいただきたい」、こうおっしゃっておりますが、この御真意についてお話ししていただきたいと思います。
河村副大臣 自民党の大学院ですか、そこで私、講演を求められまして、たしかこの話は質問に対してお答えしたのかもわかりませんが、私も、基本的認識としては、今憲法というものが健全にあって、そしてその憲法の精神にのっとり今の教育基本法ができているということは、その枠を超えて新しい教育基本法を求めるということは現実的ではないというふうに思っております。
 しかし同時に、今の憲法が時代に合わなくなっている面もあって、これの見直しも行われているときであります。これは、現実に国会の中に憲法調査会が置かれて、活発な議論がされて、この前中間報告的なものを出されたわけでございますが、そういうものを考えますと、その中にも、今度、教育のあり方について当然触れていかなきゃならぬものであります。
 そこで、我々のこれからの教育の、二十一世紀の新しい時代にふさわしい教育はどうあるべきであろうかということは、今のときにしっかり議論をして、そして文部科学省が諮問いたしました中央教育審議会でいろいろ議論をされている。
 自由民主党としては、当然責任ある与党として、教育の根本理念についてどう考えるということがあって、またそういう基本にのっとって新しい教育基本法の形ができていって、そして最終的に憲法の枠を超えて、新しい憲法の中で考えていくときに教育の理念というのは教育基本法にこういうふうな形になっている、やはりそれは当然、教育の理念を我々ずっと考えてきたものでありますから、憲法の中にも、逆に憲法を考えるときにこういう理念の大枠の中で憲法が新しく制定されていくということを期待しながら、そういうものの精神というのは生かされていっておかしくない、私はこう思ってそのような話をしたわけであります。
肥田委員 河村副大臣は、先ほど日中韓子ども童話交流のことに触れられました。この夏本当に大変お世話をいただいたわけでございますが、子供に寄り添うことがいかに大切かということを身をもって体験されたんじゃないかと私は思っております。
 ぜひ今回の教育基本法の問題も、政治問題化させることなく、やはり子供の側に立った教育の形を追求していきたいと私は思うんですけれども、副大臣、いかがですか。
河村副大臣 政治問題化するということはいろいろなケースがあろうと思いますが、ただ、新しい教育基本法も、法律でありますから、これは最終的に国会で決めていかなければなりません。ということは、国会の中で議論するということが、とらえ方によっては、各党の意見が違えばそこで政治というものが出てくるであろう、こう思いますけれども、ただ、これはやはり大事な問題でありますから、教育という観点を外れてやるべきではないと私も思っております。
 しかし、肥田委員も御存じのように、日中韓の子供たちを集めていろいろな話をさせますと、まずは同じ人間としてのつき合いがあります。しかし、やはり最終的にはそれぞれの国という問題があるわけでありまして、相手の国のことを理解しようとすれば、やはり自分の国のことをよく知らなきゃいけないということが生まれてまいります。
 先ほどの答弁でもちょっと申し上げましたけれども、中国や韓国の子供たちは、反日教育という言葉は語弊があるかもしれませんが、やはり日本でこういうことがあったということを習っているわけです。そういう印象でそこへ出てみると、しかしやはり子供同士がつき合ってみると、そういうふうに習っていた人たちと違うじゃないかというイメージを子供たち持つわけですね。
 ということは、やはり自分の知識とそして実際の知識が違っているということも起きるわけでありまして、まずはやはり、人の国を、他の国を愛そうと思ったら我が国を愛するということ、そういうことも当然教育的観点の中にはあるわけでありますから、そういう広い、これからの国際化時代、そして憲法前文に言われる、日本が国際社会の中で名誉ある地位を占めたいというあの前文の崇高な精神もありますが、そういうものを考えますと、やはり教育の中でそうした知識といいますかそういうものを涵養していく、そういうものが私は必要ではないかなと考えておるわけでありますが、それをもって政治的な、何かそういう形でこの問題をとらえるということは、私も望むところではありません。
肥田委員 ところで、この諮問文でございますが、国際性やグローバル化ということを強調されております。冷戦後、世界の敷居が低くなり、情報が瞬時に世界を駆けめぐる現実を考慮すれば当然のことでありまして、教育にかかわる国際条約の吟味は避けて通れないと思います。
 日本は、既に国際人権規約や子どもの権利条約、それから人種差別撤廃条約、女子差別撤廃条約を批准しております。いずれも国の法律と同じような効力を持つわけですが、今回中央教育審議会に諮問するに当たって、文科省は、国内で批准された国際条約や勧告について吟味されたと思いますが、中央審議会での議論はどうなっていたのでございましょうか。
河村副大臣 中央教育審議会の諮問に当たっては、その諮問文や諮問理由の中に、特に今御指摘のような国際条約と勧告、明文化されておるわけではございませんが、当然審議会の審議においては、資料として、そうした国際条約、世界人権宣言であるとか、あるいはユネスコが持っている教育の地位に対する勧告であるとか、さらにG8の首脳会議であるとか、あるいはG8の教育大臣会合等々で勧告されたこととか、そういうことは出しておるわけでございまして、それを議論の参考にさせていただいておる。
 私も直接中教審の議論を全部聞いたわけではなく、途中からでありましたが、議事録等を見ましても、児童の権利に関する条約等々で子供の権利という意味での教育を受ける権利があるわけですが、その義務を十分に果たせない親も出てきているとか、子どもの権利条約でも、子供たちの教育への権利があるということであれば、この権利をどう保障するのかというようなことで、児童の権利条約関係についてもさまざまな議論がされておりますので、そういう面で、国際条約とか勧告というものは中教審では議論をされながら、これまでの中間報告に至った、私はこのように承知をいたしておるところでございます。
肥田委員 確かに資料は出されましたけれども、私も議事録を精査させていただいたのですが、今副大臣が認識されているほどの議論はなかったように思うんですね。もう少し活発に、あれだけの膨大なすばらしい資料を出されたのですから、横に置いておくのではなくて、議論がもうちょっと活発になればよかったなという感想を私は持っております。
 今回の諮問理由で、二十一世紀を迎えた今日、将来に向かって、新しい時代の教育像を明確に提示することが求められていると述べております。現行教育法は第一条で、「人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」としておりますが、この第一条の教育像にかわる新しい時代の教育像というのはどのようにイメージしたらよろしいでしょうか。
遠山国務大臣 新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方についての中央教育審議会への諮問理由の中では、二十一世紀を迎えた今日、将来に向かって、新しい時代の教育の基本像を明確に提示して、それを確実に実現していくことが求められているというふうに、そうした認識を示したところでございます。
 これは、社会が現行の教育基本法制定当時とは大きく変化していること、また、高等学校、大学進学率も著しい上昇をしておりますし、生涯学習社会への移行など、教育のあり方も大きな変化をしているところであります。さらには、現在、教育全般についてさまざまな問題が生じていることはもう委員ももちろん常に御指摘になっているところでございますが、そうしたことも踏まえて、新しい時代にふさわしい教育というものはどうあったらいいかということを審議会において明らかにしてほしいという趣旨からのものでございます。
 これを踏まえまして、中間報告におきましては、これからの教育の目標として幾つか挙げていただいておりますが、今の御質問は諮問にかかわることでございますね。私としてはそういう意味で諮問をしたわけでございます。
肥田委員 さらに、諮問文の中で、伝統、文化を基本法に書き込むかどうかの検討を諮問しておりますが、大臣も御承知のように、教育基本法の案文作成の段階で伝統という言葉を入れるかどうかという議論がございました。
 二転三転した後、忠孝の精神に象徴される伝統という言葉は好ましくないという結論を出されて、そして現行教育基本法には伝統という言葉がないんですね。それで「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造」という表現になっているわけです。
 諮問理由で言う伝統、文化とは、教育基本法の言う普遍的にして個性豊かな文化の創造とどのような違いがあるのか、ちょっと教えてください。
河村副大臣 今委員御指摘のように、最初の案文といいますか、そういうものの中では伝統、文化という言葉があったわけですね。それがどういう経緯でそういうふうになったか、我々としてもこれは直接聞いたわけではありませんから。
 しかし、あの戦後のまさに占領下といいますか、そうした中で、GHQというものが現実にあって、その支配を受けながらという状況下を考えたときに、そういうものが、また日本の軍国主義的な、あるいは極端な国家主義をとるのではないかという懸念がその背景にあったのではないか、私はこう思います。そういう観点から、広くそういうふうに理解ができるというふうな形のものとして新しい教育基本法が生まれた、私はこう承知をいたしております。
 伝統、文化ということを、強いてといいますか、考えたときに、日本がこれまで長い歴史の中で形成、蓄積して、社会において共有されて、世代を超えて引き継がれてきた精神的、文化的な遺産や慣習とか生活様式、総体を指すものでありますから、そういうものに我々はもっと思いをいたすべきだ。
 あのときの国会のやりとりを見ますと、それをそういうふうに考えるんだということでありますけれども、それで広く国民に、伝統の重みとか我々がつくり上げてきた歴史とか、そういうものに対して本当の理解になるかどうかと言われたときに、なかなか我々はそれにすとんと落ちるものがないわけですね。
 先ほど、教育基本法について国民が全然、八〇%以上が知らないと言われたということも、これは教育関係者の皆さんは御存じでありますが、そのことを国民に全部質問したところ、聞いていないということも、やはり一つは、教育基本法のなじみというものがそこに生まれてきていないのではないか、国民のものになっていないのではないかという思いも私自身は抱いておるわけであります。
 そういう意味で、伝統、文化の重要性、しかし私は、それによって再び日本が軍国主義に陥るとか、それは、六十年近い歴史、これまでつくり上げてきた日本の平和国家への自信といいますか、そういうものを我々は取り戻すときが来ておりますから、そういうことを考えたときに、国民にもっとわかりやすくという意味では、私は、違いと言われれば、広い概念の中にはそういうものも入っているという答弁でありますけれども、これではもう一つ国民にわかりにくいものではないか、こう思っております。
 そういう意味で、これまでつくり上げてきた精神的、文化的な遺産、慣習、そういう総体的なものはもっと大事にすべきだということは、教育基本法、教育の中心にあってしかるべきであろう、このように私は考えています。
肥田委員 そうしますと、伝統という言葉の中に、日本古来の神話の歴史とか中国古来の儒教の伝統とか、そういうことも視野に入っているのだと理解してもいいのですか。
河村副大臣 そういうものを明文化してということには、当然、そこまで踏み込んだものにはなりませんが、これまで日本の歴史の中でこれをどういうふうに位置づけるかというのはいろいろ議論があろうと思います。当然そういうものも視野に含めながら考えていきながら、中教審においても、さらに今後、これを具現化する場合においてどうするかという議論は当然やってもらわなければならぬわけでありまして、それを教育の中心に置くとか置かないとかということではありませんが、歴史的な経緯の中でそういうものというのは考えていったらいい。
 それを教育の中心に置いて、そういうものが生まれたらそういうものが中心になっていくとか、そういうことにはならない。それぞれの国を見ても、みんな神話を持ったりそういうことはやっておるわけでありまして、私は、それは教え方だと思うんですね。だからこれは、教育現場でまたいろいろな問題といいますかいろいろな課題として、今後具体的になっていけばそういうことになるかもしれませんが、今すぐそれを明文化するとか、そういうことで今おっしゃったような神話等々が考えられておるとは私は思っておりません。
肥田委員 明治憲法とそれに基づいた教育勅語は、忠孝を教え、そして、国のために生きる人間像を教育方針にしておりました。
 しかし、現行教育基本法は、自発的精神を養い、自他の敬愛と協力によって、文化の創造と発展に貢献する、そういう人をつくりたいというふうに方針にしているわけですが、大臣が受け取られました中間報告や諮問文でしばしば引用されております教育改革国民会議の報告においても、郷土や国を愛する心を育てることが提言されております。
 これが基本法に盛り込まれるかどうかは別にいたしまして、この郷土や国を愛する心、そういうものを持った人間像というのは、どういうイメージを描けばいいんですか。
遠山国務大臣 まさにその文言があらわすとおりだと思います。
 諮問に際しまして、とにかく、新しいこれからの教育、二十一世紀をしっかり生き抜いてくれる子供たちをつくるのに教育の基本は一体どうあったらいいかということを存分に議論してもらいたいという角度から、幾つか、それまでの国民のいろいろな御意見も参考にしながら私どもとして取り上げたのが、一つは伝統、文化の尊重ということであるわけですが、その諮問文の中にも明確に書いてございますように、国際化が進展する中にあって、日本人としての自覚を持ちながら人類に貢献するということからも、日本の伝統、文化というものが次代の日本人に継承すべきものではないか、そういったものを尊重していくことは非常に大事ではないかという観点から引用しているわけであります。
 私は、海外におりましたときに、やはり日本人として、本当に世界に伍していく、あるいは世界から尊敬されていく、そのためには、まず国民がみずからの国についてしっかり認識をし、そして自信を持ち、日本について多く語ることのできる国民でなければ決して他国から尊敬されない、また、自国を愛する国民でなければ決して他国から尊敬されないということについて、深い学びを経験したわけでございます。
 そのようなことから、私どもといたしましては、諮問文におきましては、そういった角度も参考にしながら広く御議論をしていただきたいということで、諮問文をつくったところでございます。
肥田委員 国を愛するという言葉、それから、愛される国をつくるという言葉、いろいろありますけれども、私は、今やはり、政治家とお金の問題が出てきている。経済の疲弊で自殺する人たちがどんどんふえてきている、子供たちは学校を卒業しても就職先がない、こういう国の状況を見て、では、国を愛しなさいということを私たち大人から言えるのかどうか、その辺の反省もやはり必要だと思うんですね。ですから、愛される国づくりの方がまずは大事ではないかなというふうに思いながら、今質問をさせていただいているんです。
 次の質問に参ります。
 諮問文には、教育基本法の見直しの一つの与件として、過度な画一主義などによる個性、能力に応じた教育の軽視など、教育全般にさまざまな問題が生じていると指摘していらっしゃいますが、教育基本法の第三条は、すべて、ひとしく、その能力に応ずる教育や個人の能力に応じた教育を目標にしておりまして、恐らく、この過度な画一主義になったのは教育基本法のせいではないと思いますが、そういう理解でよろしいですか。
河村副大臣 教育基本法があるから過度な画一的教育になったと私も考えておりません。御答弁はそれだけでいいかと思いますが、ただ、確かに、中間報告において、戦後教育については、学校教育に過度に依存していたと。
 私は、特に戦後の、我々も戦後の教育を受けたものでありますが、子供もたくさんいた時代、一クラス五十人や五十五人や、場合によっては六十人も詰め込んだような中であったという現状もあったし、全部、その後ろにいる親たちは、まず生きること、あるいは豊かになること、国もそういう方向に走っておりましたから、学校教育を、そこに過度に依存する、あるいは経済界もそれに応ずる人材を待っておった、平均的な人材を早く望むような形の中で生まれておりましたから、個性尊重といいますか、そうはいいながらもなかなかそれができなかったということもあったろうし、そしてそれが受験戦争とかそういうものにどんどん走っていって、非常に教育のひずみが出てきたということだろうというふうに思います。
 そういうものをひとつまさにこれから見直していこうということでありまして、家庭や地域社会が子供の心身の健全な育成、そういうものにその教育力が十分に発揮されなかったではないかという反省の上に立って、これからの新しい教育行政の基本、教育の基本を考えていこうということでありますから、教育基本法の精神あるいは憲法の精神、それをさらに具現化する努力をしようというのが、一つのこれからの新しい教育法のあり方を考える上で大事だ、また、その方向に向かって今まさに議論がされつつあるし、これからもされるであろう、私はこう思っております。
肥田委員 教育基本法の十条に関してですが、教育は、不当な支配に屈することなく、国民全体に責任を負うという規定がございますが、これは、教育行政の中立性、自律性を保障して、国を含めていかなる団体、勢力も不当な支配を行使してはならないということを規定したものですが、大臣は、今後もこの教育及び教育行政の中立性、自律性は遵守していく御決意でございますね。
遠山国務大臣 現行教育基本法第十条に規定しております教育は不当な支配に服してはならないという原則、これは、私は、重要な教育の基本理念と考えておりまして、今後も大切にしていく必要があると考えております。また、中間報告におきましてもそのように述べておりますし、文部科学省としましては、この点は今後とも維持してまいりたいと考えております。
肥田委員 教育改革国民会議の議論の中に、不当な支配に屈することなくというこの規定が、文科省や教育委員会、それから校長の指導に反対する根拠に使われているんじゃないか、そういう議論もございましたけれども、こういう議論に屈することなく、しっかりと今の大臣の御決意を守っていただきたいと思っております。
 諮問文は、十条に関しまして、国、地方公共団体の責務と役割分担を含めて検討する必要があると述べておりますが、そしてまた諮問文は、他の多くの基本法と同様、その根拠となる規定を教育基本法に設けることについて検討する必要があるとも述べております。
 こうした諮問文をつなぎ合わせますと、基本計画の策定とその指導、予算配分などを通じて、地方の教育事業や学校運営に関して国が深く関与し、権限を強化する根拠にされる可能性がかいま見えてくるんですけれども、こういう危惧は、危惧として笑って済ませていいんでしょうか。
河村副大臣 現在、義務教育国庫負担の問題等々も俎上に上がっておりますが、教育の地方分権、私は、非常に進んできたと思いますね。だから、国は、いわゆる、基本的には義務教育段階を特に強調いたしますが、日本の国の教育レベルをやはり守っていく教育の精神あるいは教育基本法の精神からいって、私は、その責任があると思っております。
 最近は、ややもすると、教育予算等々についても、経済効率というものが非常に重視されて、そういう面から経済財政諮問会議等でも指摘をされている面がございます。例えば、人確法というのは、何でそんなものがあるんだというような議論が実質されたということ、私は、そういうことについては危機感を持っておるわけでございます。
 今回、教育基本法を見直すについては、もちろん、教育改革国民会議の指摘もあるように、やはりそれの裏づけを根拠にして教育を具体的にどういうふうにやっていくか、あるいはそれに対するきちっとした予算の裏づけは当然必要になってくる、こう思っておりまして、それによって、さらに国の権限を強化してこれをつくるんだということではなくて、むしろ、国は基本的なところをちゃんとやりますから、それぞれの地方においても教育に対する責任をしっかり負っていただきたいということを明確にしていくことは非常に有意義なことではないか、私はこう思っております。決して、御指摘のような国の権限強化を図るということを考えてこの教育基本計画というものが検討されているというふうには考えておりません。
肥田委員 そこで、教育基本計画の位置づけでございますが、これは、改正教育基本法に盛り込むおつもりなのか、別の法律をおつくりになるおつもりなのか。そして、別ならば、法律なのか、法令なのか、省令なのか。その辺のことは、今お話しいただけるでしょうか。
河村副大臣 まさに、これから中教審で、最終答申に向けてどういう形にしていくかということが決まっていく、方向づけがあるだろうと思います。
 私の個人的見解を申し上げれば、これまでの基本法の形をとれば、基本法の中にそういうものを設けるということになって、そして地方は地方でまたそれにのっとってということになっていくのがこれまでの基本法のあり方であります。
 しかし、御指摘のように、教育基本法というのは、前文もあるし、今までの形と違うんだという形になれば、別途ということも考えられるかもわかりませんが、私は、何らかの形で教育振興基本計画というものがちゃんとある、それはまた別途、具体的にはどういうふうになっていくかということは別にやってもらうというのが望ましいのではないかと考えておりますが、これをまさに、広範な議論の中で方向づけをしていただきたい、こういうふうに思っております。
肥田委員 ぜひ、教育計画につきましても、国民の意思が十分に通る形でなしていただきたいと私は希望をさせていただきます。
 私は、いかなる法律も不磨の大典ではないと思っておりますから、国民の意識や内外情勢のもとで変化する、そのことをもとにして改正することを憶しちゃいけないと思っております。ただ、きょう御答弁をいただきました中で、やはり、なぜ今教育基本法の改正なのかなという疑問を払拭することができないんですね。
 きょうの質疑を通じまして、私は、やはり今回の教育基本法の見直しに何が足りないかといいますと、教育現場とか子供の現実からスタートする、そういう肝心な視点が抜け落ちているんじゃないかと思うんです。ですから、まあ五十五年たったから衣がえするために改正ありきというような御意見もあったようでございますが、そういった政治的意思がどうも先行しているように思えてなりません。ですから、学校教育において、不登校でありますとか、いじめ、校内暴力、学級崩壊、高校中退の増加などという教育的な病理現象がある、このことについて、やはりもう一度真摯に総括をされることが大事だと思います。
 そして、その総括をした後、別に犯人探しをするわけじゃありませんが、もう少し子供の側に立った具体的な施策を講ずることに私たちは努力を惜しんじゃいけないと思うんですけれども、いかがでございましょうか。
河村副大臣 その点については全く同感でありまして、当然、今の教育振興計画を立てていけば、そうした問題は当然そういうものの中に含まれて立てられなきゃいけないものであろうと思います。
 ただ、教育全般を広く見直す中で、根本のところをどうするかという問題はやはり考えていかなきゃなりません。目の先の問題と、まさに教育百年の大計と言われますから、その大計をどうするかということと一緒にやっていく問題であって、目の先はこうだから、まずこれをやらなきゃ次へは行けないという問題とはまた別に考えながら、総体的に考えながら、当面の課題はこうであります、百年の大計はこうしましょうということで、この問題は取り組んでいくべき性格のものであろうと思います。
 今委員の御指摘は、私も、まさに、当面の問題をおろそかにしてそっちの方へというわけの問題ではないと考えておりますから、その点について十分、当面の対策として、文部科学省としても、これはまさに不登校があれだけ出ておるというような現状を、真摯に、真剣にとらえていく課題であろう、このように受けとめております。
肥田委員 時間が来ましたので終わらせていただきますが、この教育基本法の改正につきましては、本当に十分な審議をしたい。私たち民主党は、改正すべきかどうかということから話し合いを始めさせていただきたいと思います。
 きょう、大臣、副大臣の御意見も伺いましたが、国民の皆様には教育基本法、そして今回の中間報告を十分に広報していただいて、国民的な議論が起こるように、ぜひ御努力をいただきたいと思います。
 ありがとうございます。終わります。
古屋委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午後零時五分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 質疑を続行いたします。山元勉君。
山元委員 民主党の山元勉でございます。
 午前中にもたくさんの質問が出ましたけれども、今、日本の教育、課題が山積みですし、そしてそれは将来にかかわる大きな課題だというふうに改めてきょう午前中も実感をいたしました。
 私は、きょうは義務教育費国庫負担制度の問題についてお尋ねをしたいというふうに思いますが、これは少し辛口に申し上げたいと思いますけれども、文部科学省の応援団の弁だというふうに聞いていただきたいというふうに思います。
 今、地方分権改革推進会議やあるいは経済財政諮問会議、いわば教育の専門の会議でないところからいろいろの提起がされています。義務教育のあり方について根幹にかかわる問題ですけれども、義務教育費国庫負担制度を見直そう、極端に言えば廃止をしようというような方向ではないかというふうに思うような提起がされています。
 今までにも随分とこの問題については論議をされてきましたし、そして改革という名での施策の変更もありました。けれども、私の経験からいって、そのことが日本の教育にプラスになったということはなかったと言ってもいいくらい、財源論が先走るという状況だというふうに思います。
 今のこの状況について、文部科学省として、大臣としてどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、今の状況、基本的な受けとめ方と、そしてそれに対する文部科学省の基本的な態度といいますか、お伺いをしたいと思うんです。
遠山国務大臣 夏以来、地方分権改革推進会議あるいは経済財政諮問会議におきまして、義務教育費国庫負担制度を見直して地方交付税化するようになどの御議論がなされてきたことは御存じのとおりでございます。また、総理からもそのことについて宿題が出まして、私としてもそれに対して答えるべく全省を挙げてこの問題に取り組んでまいりました。
 地方分権の改革推進会議におきましても、先般、西室会長の方からレポートが出まして、現在の義務教育費国庫負担制度そのものについて見直し、一般財源化というふうには触れておられません。また、経済財政諮問会議におきましても、十月三十一日の会議におきまして、私の方から明確にこの問題について考え方を述べました。
 今後、若干の展開があるかもしれませんけれども、私といたしましては、義務教育というのは、まさに憲法の要請によりまして、国民として必要な基礎的な資質を培うためにすべての国民に一定水準の教育を無償で提供するものでありまして、義務教育費国庫負担制度は、こうした憲法の要請を受けて、義務教育の水準を確保するための国による最低保障の制度であるというふうに考えております。
 もとより、地方分権という思想も大事でございますし、そのために私どもとして協力できることはいろいろ今やっているわけでございますけれども、義務教育費国庫負担制度の根幹を変えるつもりはございません。それを維持した上で、なおかつ、地方公共団体におけるさまざまな自主性、自立性を確保するための改革というものは進めていきたいというふうに考えております。
 したがいまして、今般の一連の推移、まだまだ予断を許さない面があるかもしれませんけれども、私といたしましては、今申し上げましたような精神を堅持したいというふうに考えております。
山元委員 御答弁にあるように、確かに憲法二十六条で定めている、そのことを受けての義務教育費国庫負担法、第一条にしっかり立派なことが書いてある。「この法律は、義務教育について、義務教育無償の原則に則り、国民のすべてに対しその妥当な規模と内容とを保障するため、国が必要な経費を負担することにより、教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的とする。」こう書いてある。これはもう一つの標準定数法の第一条にもきちっと書いてある。共通して使っている言葉というのは維持向上です。
 今大臣は、二十六条はわかっている、憲法はわかっている、根幹はなぶらないと。けれども、今の状況は、ここに言う維持向上、今の状況を維持してさらによくするための国の経費の負担ということになるのかどうか、私は、今の状況ではそうはなっていない。憲法やあるいは義務教育費国庫負担法の精神をきちっと実現していく文部科学省として、今の姿勢は、根幹はなぶらない、けれども、維持向上ということに目をつけたら私はそうはなっていない、そういう厳しい姿勢ではないという気がしてならぬのですが、もう一回、大臣どうですか。
遠山国務大臣 今の各般の状況の中で私どもがしっかりと守ろうとしているこの姿勢と、それから、総理からの宿題もありまして、それに対する答えの回答の一連のものについて、どこが水準維持に資していないというふうに御指摘になるのか私にはよくわかりませんけれども、義務教育費国庫負担制度でしっかりと国が守るべきものは、教員の給与費について国がなすべきことの根幹を守るということだと思っております。その意味におきまして、今回私どもが対案として提出いたしました案というものは、まさに骨格を守るということでございます。
 他方で、地方分権の思想というものも重視しなくてはならないということでございまして、その一連の制度の改革の中には、それぞれの都道府県において教員の給与費を少し自立的に決めていただくようにしますこととか、幾つかの改正点を盛り込んでいるわけでございますが、そのこと自体はむしろ、地域の自主性を重んじ、活性化をして、そして地域の教育のあり方というものを向上させるという面はありましても、私は後退させるということはないというふうに考えております。
山元委員 根幹という言葉はいい言葉かもしれぬけれども、どこまでが根幹であってどこまでが維持向上のための施策なのか、どこをどこまで削っていっていいのか、根幹に切り込んでもよいとは思わないという意味のことでしょうけれども、いかにも、先ほども言いましたように、今の論議というのは、地方分権という名で財源論が先行していってカット、こういう状況ができてきているんだろうというふうに思います。
 今まで、私も現場にいるときに経験をした部分でもあるわけですけれども、義務教育国庫負担制度でずっと国が負担をしてきたもののうちで、例えば、一九八五年には教材費と旅費がカットになった。これは国庫持ちませんよということに、二つの項目がカットになった。そしてその次には、八九年には恩給費がカットになる。その次の、九三年には共済追加費用というのがカットになる。
 今、大臣がこの間五千億円提起をされた。その中では非常に大きな部分が含まれている。教職員の退職金は国は出しませんよ、公務災害補償基金も出しませんよ、児童手当も負担はしませんよ、教員の共済費の長期給付も負担をしない、それを合わすと五千億だ。これは根幹でないんですか。
 恩給だとかあるいは児童手当だとか、今まで切り込んできたそういう旅費だとか教材費だとかいうものも含めて、教育の根幹というのは、本当に現場の教育条件をよくしていく、あるいは教職員や教育に携わっている教育委員会の皆さん、元気を出してやっていける。根幹というような、幹が太くなっていくようなものとしての費用がずっと一九八〇年代持たれていて、九〇年代になってどんどんと削られていって、今度は、遠山大臣は、退職手当やあるいは児童手当までもカットをして、根幹にはかかわらないんだとおっしゃる。私は、そこのところは、日本の教育に責任をきちっと持って、幹をどんどん太くしていくんだ、基盤を強くしていくんだということからいうと、逆行しているんだというふうに思うんですが、いかがですか。
遠山国務大臣 確かに、義務教育費国庫負担制度の見直しにつきましては、これまでも、国と地方の役割分担それから費用負担のあり方などの観点から適宜見直しが図られてまいりました。詳細は委員御指摘のとおりでございます。
 今回の負担対象経費の見直し案につきましては、地方分権改革推進会議の意見それから経済財政諮問会議における議論を踏まえまして、これはまことに厳しいものでございまして、すべてを一般財源化しろという議論であったわけでございます。しかし、そうした中で、義務教育に係る国と地方の役割分担そして費用負担のあり方の見直しという観点から、負担対象経費について改めて見直して、義務教育の水準確保のため、国として真に負担すべきものに限定するという検討をしたものでございます。
 そして、私は、十月の三十一日の経済財政諮問会議におきましても、私の方から、義務教育費国庫負担制度について、財源論のみで論ずべきではないということを明確に申し上げまして、さまざまな論拠も援用しながら、この制度の見直しにつきましては、国の責任によって義務教育の水準を確保するという制度の根幹を今後とも維持するということにおいて譲らなかった、その結果でございます。
 したがいまして、それは確かに、あらゆるものを国が負担していくということであれば、それはいいというふうにお考えというのは私もよくわかります。しかし、今の日本の国の経済情勢、あるいは今回やろうとしている、各地方公共団体にできるだけの自立性を与えていくということの考えからいたしますと、こうした今回の私どもの提案というものはぎりぎりの線であるというふうに考えているところでございます。
山元委員 大臣がぎりぎりのところに両会議の議論の中で追い込まれていったということについては、わからぬではありません。けれども、そこのところで大臣に頑張ってもらわないと、例えば片山総務大臣の新聞記者会見の言葉で言うと、遠山文部科学大臣が義務教育だけが取り上げられてと言うから、全部やるんだと私は言ったのである、ここのところは今おっしゃるとおりだ。けれども、その後の片山大臣の言葉で言うと、全部やるんだけれども、あなたの方が五千億削減してもいいと言うからそこに問題の一つのスポットが当たっているんだ。
 私は、各省が、この財政改革のときにそれぞれ交付金や補助金を見直しなさい、そういう論議が進んでいったんだと思う。片山大臣は、文部科学省だけが言ったみたいなことを言っているわけだ。
 私は、大臣に先ほどお伺いしたのは、今の状況の中で、日本の教育を守るという最高責任者として頑張ってもらいたいという気持ちで申し上げているんですけれども、見直しといってもプラスの見直しもマイナスの見直しもあるわけだけれども、やはりこれは縮減、マイナスの見直しがどんどん進んでいく中で、文部科学省は従ってしまうという弱さがあるのではないか。最初に申し上げましたように、叱咤激励だと思って聞いていただきたいと思うんですけれども、頑張ってもらわなければいけないわけです。
 こういう、教育がだんだんと、教材も旅費も、共済の給付金も、今度は児童手当も恩給費もと、こうなってくると、ますます貧困な雰囲気が現場にできてくるだろうというふうに思うのです。
 今の日本の教育というのは、GDP比でいうと先進国の中で最低だということは御承知のとおりです。もっともっとやはり、大臣も最初のあいさつや前の所信のときにもおっしゃった、教育大国にしていく、人物大国にしていくということでいえば、こういう状況、流れというのは何としてもとめなければいけないんだろうというふうに思いますが、ここまで来て、そうすると、あとは補助金、交付金を削減する、そして地方交付税を削減する、そして地方への税源を移譲する、この三位一体という言葉が盛んに使われている、大臣も使われる。
 三位一体ということであれば、最初に何があるんだろう。削減があるのか、税源移譲があるのか。私は、やはり日本の教育に意欲を持って取り組むという国民的な気持ちをつくるには、税源移譲が先だというふうに思いますよ。けれども、三位一体といいながらも、税源移譲のことは何も出てきていないでしょう。どういうふうにして地方の財源を守るんです、教育意欲を守るんですか。
 そこのところを、大臣、責めてばかりだけれども、大臣はこの間の委員会の冒頭であいさつをされました。根幹を守るんだ、こうおっしゃるんですけれども、そして、これは大変短かった、義務教育国庫負担のところでは三行だけおっしゃって、十五秒、私も読んでみたけれども、もう少し決意をいただきたかったと思いますよ。けれども、その三位一体とおっしゃって、堅持をして見直しだと。一体、最高の責任者として、この方向で日本の教育大丈夫なんだという確信がおありなのか、もう一回、しつこいようですけれども。
遠山国務大臣 私は、他の大臣の発言についてここで反論をしたりというのは、私はみずからの信条として、真実でないことについて他大臣の責任にするということについては極めて遺憾だと思っておりますが、その中身についてここで申し上げるのは私の生き方に反しますのでやめますけれども、しかし、思いを言えば、国庫負担金、補助金が二十兆円近くある中で、三兆円という義務教育費国庫負担金にだけ目をつけて、これを一般財源化すれば税源を得ることができるということでずっと進めてこられたという経緯は逐一承知しているわけでございます。
 私は、その作戦において間違いがあったのではないか、国の根幹を揺るがすようなことに焦点を当ててこれを一般財源化しようとされた、その作戦自体が間違いではないかと思うわけでございます。
 私どもとしましては、その本体を守る必要があるわけでございましてあのような案を出しているわけでございますし、これは、他方で我が内閣が抱えている地方分権の重要性ということも考えた上で、さまざまな地方分権に見合う改革と同時に発表したものでございます。
 その意味で、私としましては、何も義務教育費国庫負担金そのものだけではなくて、定数改善計画もしっかり守り、あるいは施設費の問題もあり、さまざまな総合的な施策というものを援用しながら、義務教育のみならず、教育の問題について、現下の極めて厳しい財政状況の中で、我々としては懸命に今努力をしているところでございまして、委員もおわかりの上で応援で言っていただいているということはよく拝察できるわけでございますけれども、しかし、記録に残る議事録の中で、私どもの姿勢自体に御疑問をいただくということは、私としては大変遺憾に思っているところでございます。
山元委員 この間の諮問会議の後での新聞、十一月一日付ですけれども、その直後の新聞ですけれども、毎日新聞の大きな見出しに、「義務教育費負担見直し 〇三年度予算最大焦点に」という大きな見出しが出た。ごらんになったと思うんです。義務教育費負担見直し、この問題、今私が言っているような問題が来年度予算編成の最大焦点にという大きな見出しがつくんです。そこで、「三省が激しい攻防」、三省とは、文部科学省、総務省、財務省。そして、例えば、今おっしゃるように、文部科学省は根幹については守るというふうに言う。けれども、総務省は何を言っているか、現職教員の給与も含めて一般財源化と。
 今、各地方自治体がどれほど自分のところの地域の教育を守ろう、よくしようということで汗を流しているか。複数担任だとか、あるいは不登校の子供たちのための特別の部屋だとか、いろいろなことを工夫している。自分たちの地域の子供を守ろうというふうに努力している。そこへ持ってきて、今、先ほども言いましたように、幾つもの項目でばったばったと切られて、地方自治体頑張りなさい、退職金もあなたのところだ、児童手当もあなたのところだと。総務省は、教員の給与も一般財源化だ、こういうことで見出し。私は、これは新聞が心配をしてくるような、国民の心配だと思いますよ、関心事だと思いますよ。
 そして、ほかの新聞がどういうことを書いているかといったら、税源移譲触れず、税源移譲は記述なし、財政措置にあいまいさ、「これが改革とは恐れ入る」というのが社説の見出しです。
 私は、やはり、ここで責め立てるんではなしに、義務教育費国庫負担のありようというのは、本当に地域で頑張る自治体やあるいは教育関係の皆さんに、冷や水をかけるのか、しっかりとした温かい手で押すのかということの境目にあるんです。だから、こういうふうに見出しが最大の焦点だと。もっとほかに、道路のことがあるか、建設のことがあるか、農水のお米のことがあるかわからぬ。けれども、そういう見出しを大きくつけるということについては、私は国民的な関心事だと思うんです。
 副大臣、これから予算折衝が始まっていく、始まっているわけですけれども、こういう予算編成上の最大の焦点にどういうふうに対応しようとしていらっしゃるのか。これは副大臣に、一遍。
河村副大臣 基本認識については、先ほど確固たる信念を大臣がお述べになりました。私も全く同感でありまして、この教育水準、義務教育の水準を確保、堅持していくという、これはもう国の責任においてやらなきゃいけないということ。これは今後ともやっていかなきゃいけないことでありますから、この根幹を揺るがすような、例えば、今御指摘のような、現職教員の給与も一般財源化というようなこと、こういうことをもし認めたとしたら、これはまさに、地方における教育水準、非常なアンバランスもおありでありましょうし、この確保はもてなくなるということはもう火を見るよりも明らかだ、私はこう思っております。
 例えば、習熟度別指導の問題を考えてみても、これはまさに、各地域の自由でやられた場合には一番困難になっていくであろう。また、そこのところを安易に考えた場合にどういう問題が起きるか。それを考えてみたときに、今の教育のあり方が問われてくるだろうというふうに大いに心配をいたしておるわけでして、これから、三位一体といいますか、先ほどございましたように、税源移譲の問題にまで全く触れずにおいて、むしろ教育費の削減というような観点から、財政論でこういう問題を取り上げる。
 最近の経済財政諮問会議においても、午前中の答弁にもちょっと触れたんでありますが、人確法の問題にしても、委員の中には、なぜこんな法律があるんだというような、こういう議論が行われているということに私は非常に危機感を抱いておるわけでございまして、これはやはり文部科学省を挙げて、きちっとした理論武装もしなきゃなりませんし、やはり教育の水準を維持する、そして、それによって日本の今日があるということ、これはもっと強く強調しなきゃならぬ問題だと思うんです。
 私は政治家だからこういうことを言うんでありますが、小泉総理の冒頭の就任のときに言われた米百俵のお話にしても、これはまさに根幹は教育投資の話でありまして、ややもすると国民に辛抱を強いるような方向へとられておりますが、私は、小泉構造改革の最終の帰着点は、まさにこの教育に最終的に戻ってこなければ、米百俵の話と拍子が合わないわけですよ。
 私は、そういうふうな形で大臣にももちろん閣議等においても頑張っていただきますが、我々もきちっとした理論武装をしなきゃなりませんし、やはり一つの教育の水準を守っていくということは、これは我々政治の責任ではないか、こういうふうに思っておりまして、山元委員も御理解をいただいておるわけでありますが、一層のこの面についての御支援もこの席をかりてお願いをする次第でございます。
山元委員 この三位一体というような、言葉はいいんですけれども、例えば今申し上げました新聞でも、文部科学省は、三位一体で検討、こうおっしゃっている。総務省も、これは、一般教員の給与も一般財源化だ、けれども、税源移譲を、転嫁は反対、こう言って、自治体を守れ、こう言っているんです。財務省は、三位一体で検討すべきだ、税源移譲には難色、こうなっているわけですね。
 そうすると、文部科学省が本当に今の教育で、先ほど言ったような多くの項目、児童手当だとか共済だとか恩給だとか旅費だとか、一般教員まで向いてくると、どこが根幹かわからぬ、本当の辛抱だけが残るという、そんな根幹ではないと私は思うんです。本当によくしていくような、基盤なり大きな太い根幹ということを守ろうとすると、こういう三省のせめぎ合いの中で、よほど文部科学省が腹を決めて予算編成に頑張っていただかなきゃならぬというふうに思うんです。
 そうでないと、一般財源化で今までひどい目に遭うている、ひどい目と言ったら言い方は悪いですけれども、例えばよく私たちも出している図書費です。図書費で、ことしどれだけ手当てしたか。五年間で六百五十億円。各学校の図書館の図書購入費で六百五十億円。ことしは百三十億円。けれども、予算化をしているのは三〇%ないんでしょう。
 各自治体にアンケートを出して、図書費をふやしたか、予算化したかといったら、アンケート調査に答えたのが三〇%です。あとの七〇%はアンケートに答えもしない。答えてきた三一%のうち、予算化をしましたというのが三〇%なんです。圧倒的な自治体が、我々一生懸命やって図書費を図書費をと言った、法までつくった、その百三十億円が行ったんだけれども、今年度予算化したのは、本当に実質でいうたら、計算でいくと私は一〇%ぐらいと違うかな、あとの九割の自治体は図書費を別にしている。
 これは、米百俵と全く逆。子供にといってもらった米を大人ががばっと食ってしまう、よそのを食ってしまっておるようなものだ。見舞いにもらった救援米を学校を建てる費用にといって食べるのを我慢してという長岡藩のこととは全く逆のことが行われているんです。
 図書費なんかも本当に食われているわけでしょう。川や道になっているわけです。川や道も大事かもしれぬけれども、本当にここでずっと文部科学委員会、前の文教委員会で、本が要る、図書館が要る、司書が要るということで論議をしてきた。百三十億円の手当てができた。これは全部大人が米を食ってしまっているわけでしょう。
 こういう状況になるような一般財源化だったら、体を張ってでもやはり文部科学省は一般財源化というのはとめなきゃいかぬ。児童手当だとかあるいは恩給費だとか退職金だとかいうものが細っていく、まさにこれは根幹が細っていくというふうに理解をしてもらわなきゃならぬと改めて思うんですけれども、いかがですか。
遠山国務大臣 図書費の例をお挙げいただきましたが、だからこそ、教員給与費の一般財源化には絶対反対という立場であるわけです。今回、これまで負担してまいりましたものの一部、共済費でありますとか退職手当について見直そうとしておりますのは、これについては、個人の教員に手渡す分につきましては、これは地方公共団体としては渡さざるを得ないわけでございますから、ほかのことをちゃんと処理をして、それについては支払われるべきものでございます。ですから、教材費あるいは図書費などとは性格が違うわけでございます。
 そういうことでございますので、根幹が細る、細るとおっしゃいますけれども、私は、根幹は揺るがない、それこそ本体を含めて、もし一般財源化いたしますと、教員の給与費が何になるか。道路になりダムになり、何になるかわからない。その歯どめがないわけでございまして、そこのところの問題を必死になって今堅持しているというのが私どもの立場でございます。
山元委員 やはり根幹ということが違うんですよ、考えていらっしゃることが。
 例えば、私が持っている資料では、八〇年代には、児童手当、公務災害、共済、恩給費、教材費、旅費、給与費、これがずっと国庫負担だったわけです。どんどんと細っていって、今大臣が提起されたので退職金も児童手当も公務災害もといったら、何にも残らぬのですよ。八〇年代八項目あったそういう義務教育費国庫負担法に基づく負担をどんどんと項目を減らしていって、ついには退職金まで持てということになって、これは私は、根幹にやはり触れてきているんだという認識を文部科学大臣に持ってもらわなければいかぬというふうに思うのです。これはまたお願いをし続けていきたいというふうに思います。
 時間がありませんから、一つ申し上げたいのですが、今、教員定数の改善を第七次計画でやっている。ことしで二年目に入っているわけです。あと三年、改善計画が進められるわけですけれども、よもや、これに手をつけられて、計画どおりに実施されないというような事態は起こらないでしょうね。
 今、各地域は、地方自治体は、本当に民間からとかNPOとかたくさんの人に手伝ってもらって、いい教育を、うちの地域はいい教育をと頑張っている。そのときにこの定数改善計画というのがぐらつくようであると、これは五千億どころでない大変な事態になると思うのですけれども、第七次計画についてどういうふうに考えていらっしゃるか、決意していらっしゃるかをお聞きしたいのです。
 つけ足して言いますと、私は五年前につらい思いをしたのです。財政計画で、前の第六次計画が終わろうとするときに、財政上の理由で五年計画が七年計画になった。そのときの文部大臣に私は、官邸へ行ってむしろ旗を立てて座り込みなさいと。厚生省は福祉については手をつけさせないといって頑張って、文部省だけが五年計画が七年計画になってしまった。私はそういう苦い経験があるのですけれども、今度はよもや、こういう逆風が吹いているけれども、第七次はしっかりと、これ以上に上乗せするような施策が行われるのでしょうねとお尋ねしたいのです。
河村副大臣 私もこの問題には非常な決意を持って臨んでおります。
 第六次、最後の段階でああいうことが起きたわけでありますが、今回については、特に学校五日制、そして新しい学習指導要領のもとで、一方では、学力低下というようなことも非常に議論をされ、心配をされる向きもあるわけであります。また、そういうものを我々の方もある程度想定をしながら、そういう議論に対応するにはやはり少人数学級の一部導入も必要だということで、今回の定数改善、第七次が行われたわけでございます。
 御案内のように、算数、理科等々については二十人学級もできるような形、そのためにはどうしても、いわゆる教諭、先生の数をこれ以上減らすわけにはいかない。しかし、財務当局は、子供の数が減るのだから、公務員たる教員、教職公務員も数は減っていくのが当然ではないかという理論で来たわけであります。
 私も、ちょうどあのときは、副大臣をやっていたときでありますが、これは文部科学省としても一歩たりとも譲るわけにいきません。少なくとも現状の教員は減らすわけにいかないんだということは、絶対にこれは譲れない第一線だということであのとき頑張ったわけであります。
 その結果、二万六千九百というのは、ちょうど定年される、やめていかれる数に合うだけのものは確保できて、少なくとも先生の数は減らさない、相対的に子供の数が減るならばその分だけ増加だという話になったわけでございますが、私は、この基本線はこれからも堅持していかなければいかぬ、こう思っておるところでございます。
 特に、これから基礎学力をしっかりつけていこうとすれば、かなり習熟度別、きめ細かな教育というのが当然必要になってまいりますから、その必要性をさらに我々としては強く力説しながら、まず当面はこの第七次改善計画をきちっと全うしていくということは断固守っていく線である、このように覚悟いたしております。
山元委員 断固という言葉がつきましたから、期待をします。
 本当に今頑張っている自治体あるいは現場の人たちに、あのときのようながたっとくるようなことにならない。私は、提案説明のところ、趣旨のところに教育も聖域とせずというのをわざわざ書いてあった、活字になってあった、あけてみたら厚生だけが聖域であった。根幹には触れないんだというようなことでこの計画がずっと延びるということにならぬように断固頑張っていただきたい。
 もう一つ、時間が来ましたからあれですが、国立大学が独法化されて、教職員の給与が国立学校に準拠するということになっていましたが、そうすると、準拠するところがなくなってくるわけですね。そうすると、各県でそういう決定が行われ、自主的な決定という言葉はいいけれども、行われて、そしてこういう財政状況の中ですから、大変難しい問題、混乱が起こるだろうというふうに思われます。
 ですから、十六年からそういうふうに国立大学が独法化されるに際しては、これも根幹の一つだというふうに考えていただいて、混乱が起こらないように、働いている者が意欲を持って難しい今の状況の中での教育に頑張れるような、そういうことはきちっと十六年までに手当てをしておかないとそういうルールはできないだろうというふうに思いますから、そこのところを今からお願いしておきたいというふうに思います。
 この間、知事会あるいは議長会、市長会等六団体からのアンケート調査を見せていただきました。義務教育国庫負担制度を見直してもよろしいというのは知事会で四%しかない。必ずこれはこっちにしわ寄せが来るなと知事さんは皆思っている。だから、今回の見直しについては、見直すべきではないという反対の意見が圧倒的に多くて、見直してもいいというのは四%しかなかった。そういう地域の、地方の……
古屋委員長 質疑時間が終了しておりますので、手短にお願いします。
山元委員 危機感について御理解をいただきたい、頑張っていただきたいというふうに思います。
 以上、ありがとうございました。
古屋委員長 山口壯君。
山口(壯)委員 山口壯です。
 きょうは、科学技術を中心に質問させていただきたいのですけれども、先ほど同僚議員の山元勉委員から、二人で、二人でというか、あのとき共同提案させていただいた三十人学級法案、あのときに、河村議員もちょうど当時副大臣でおられて、非常に厳しい議論をさせていただいて、その後、本当によく頑張っていただいたと私は思うのです。
 本来であれば、児童生徒の数が六十万人減るのであれば、先生の数も、定数も減らさなければいけないところ、とりあえず二万六千九百人の五年間の加配を認めよう、こういうところで落ちついたわけですね。我々は十二万人ふやすことによって三十人学級を実現しようという中での話でした。
 他方、やはり全国の小中学校の公立校というのは三万四千校あるわけですから、二万六千九百人の加配を認めても一校一人にもならない。こういう状態もあることを、ぜひ河村副大臣あるいは遠山大臣にもしっかりこれからも頑張っていただきたいということの意識の中に置いていただきたいと思います。
 さて、科学技術のことですけれども、今、日本の国が本当に大変な状況にあるということについてはだれも異論がないと思うのです。少し前、我々は強い経済力によって国際社会でもきちっとした発言力を持っていた、信頼もそれなりのものを得ていたと思うのです。ところが今、デフレの対策もままならず、不良債権もふえるばかり、落ちるのは日本の国力、この国力をどうやって我々は再生すればいいのか。
 昔は、例えばメード・イン・ジャパンという言葉がありました。メード・イン・ジャパンというのは、最初はどうもチープな、安っぽいということでしたけれども、だんだん、いろいろな会社が頑張ってくれたおかげで、むしろメード・イン・ジャパンというものがいいものだということの代名詞にまでなった。そのすそ野には、基盤には科学技術のきちっとした発展というものがあったと思うんです。
 今でも、例えば車を見て、日本の車もよくなりましたけれども、どうもベンツとかBMWに乗ってみると何かしっかりつくられていて、エンジンもいいような気がついついしてしまう。果たして日本の科学技術はこれから大丈夫なのだろうか、そういう気持ちを持つ人は私だけじゃないと思います。
 特に中国というものががんがん出てきたときに、日本は、中国が今まで安かろう悪かろうで済んでいたものが、今安くていいものをつくるようになってきた、では、この中国とどういうふうに対応していくのか。
 この科学技術の充実を図るということは極めて重要な国策であると思いますけれども、遠山大臣、科学技術が重要な国策である、この認識をまず共有していただけるのかどうか、お答え願います。
遠山国務大臣 二十世紀後半におきまして日本はあれだけ発展いたしましたけれども、その後に近隣国の追い上げが非常に大きくなりまして、特に我が国が物づくりで立ってきた国でありますのに、大量生産の面ではむしろ近隣諸国がその面において日本の技術を受け継いで力を発揮し始めております。
 その意味で、日本としては、やはり大量生産のための物づくりであるよりは、その先端を行く、さらに先を常に開拓していく。科学技術の重要性、それはもう委員御指摘のとおりでございまして、我が国が今後二十一世紀においてしっかりとした基盤をつくっていきますには科学技術創造立国、もちろん教育、文化も大事でございますけれども、今委員がおっしゃいましたことに私としては大いに同感するところでございます。
山口(壯)委員 今遠山大臣言われたように、物づくりというのは我々の経済の中で非常に大事な部分を持っているわけですね。特に、その中でもナノテクノロジーというものがこれからの日本経済を支えていくための大きな切り札になるかもしれない。そういう意味で、このナノテクノロジーに対して、例えば予算的配慮も十分になされていると大臣はお考えかどうか。いかがでしょうか。
石川政府参考人 ナノテクノロジーの予算関係についてのお尋ねでございます。
 ナノテクノロジー・材料分野につきましては、科学技術基本計画におきまして、重点的に推進すべき四分野の一つとして示されているところでございまして、今委員からも御指摘ございましたように、広範な科学技術の飛躍的な発展の基盤を支え、あるいは二十一世紀の幅広い産業の技術革新を先導することが期待される重要な分野だと私ども考えております。
 このような認識のもとに、文部科学省におきましては、平成十五年度の概算要求におきましても、この分野につきまして、平成十四年度は二百四十二億円の予算額でございましたけれども、これに対して約七割増の四百九億円という大幅な増額要求を行っているところでございます。
 具体的な中身といたしましても、例えば経済活性化のための研究開発プロジェクト、七つほど今予定をいたしておりますけれども、このほか研究機関、分野を超えて横断的なあるいは総合的な研究支援を行いますようなナノテクノロジー総合支援プロジェクトでありますとか、基礎的、基盤的な研究開発として独立行政法人の物質・材料研究機構あるいは理化学研究所といったような研究機関、大学等におきます取り組みの着実な推進を図ることといたしております。
 今後とも、ナノテクノロジー・材料分野というのは我が国が特に国際的に強い競争力を持っている分野だと私どもも思っておりますので、そういった点も十分自覚をしまして積極的に推進をしてまいりたい、このように考えております。
山口(壯)委員 今石川局長がおっしゃられた認識は私も非常に心強く思いますし、去年、去年というかことしですね、十四年度に二百四十二億円のナノテクノロジー関連の予算を来年度四百九億円にふやされる、これは国策上非常にかなったものだと思います。
 他方、その四分野の中で、ライフサイエンス、IT、環境と比較して、このナノテクノロジー分野への予算の配分というものは必ずしも十分であるというふうにも思えないような気がするんですけれども、その辺はいかがでしょうか。
石川政府参考人 ただいま他の重点分野との比較でのお問い合わせといいますか、御質問がございました。
 確かに、例えばライフサイエンス分野でございますと、平成十四年で大体七百億円ぐらいの予算額がございますし、環境分野でも五百数十億円というような予算額がございます。例えば、平成十五年度要求の伸びのような点を見てみますと、これはライフサイエンス、情報通信、環境、他の三分野について見ますと、大体二割から四割増ぐらいの感じでございます。先ほど申し上げましたように、ナノテクノロジーについては、確かにちょっと母数が小そうございますけれども、来年七割増という要求をさせていただいております。
 それから、これは数字としてなかなか切り分けるのが難しいのでございますけれども、ナノテクノロジー・材料分野というのは、例えば情報関係ですとかあるいはライフサイエンス関係のところにも、基盤的な技術の研究なものですから、ちょっと入り組んでいろいろ入っておったりすることもございます。
 そんなことを考え合わせますと、私どもとしては、十分な配慮、力点を置いていると考えておりますし、これからも一生懸命やってまいりたい、こういうふうに思います。
山口(壯)委員 石川局長も役所におられる立場ですから、予算を組まれるときに、もともとの母数二百四十二億円から四百九億円にふえるということをもちろん言われるわけです。
 政治家として、遠山大臣あるいは河村副大臣、これは日本の国家戦略の一つとしてとらえるならば、その辺は去年の伸び率だけで判断するのではなくて、さらにいろいろな重点のつけ方はあると思うんですけれども、特にアメリカのナノテクノロジー戦略、あのNNIと呼ばれているナショナル・ナノテクノロジー・イニシアチブですか、アメリカも物づくりについて、日本は追いつき追い越していく、特に小さいものをつくっていく、そういうナノテクノロジーではおくれているというアメリカの意識のもとに大きな予算の配置というのをやっているように思うんです。
 それを考えるときに余計、日本としてこれからアジアの中で、中国とも、ともに繁栄する、そういう経済づくりをしていくためにも、去年の予算と比較して云々という役所の発想、これはもうしようがないわけですけれども、政治家としての大きな、大所高所からの見地からさらに前向きに取り組むべきだと思いますけれども、この点はいかがでしょうか。
河村副大臣 科学技術創造立国というのは、我が日本の一つの大きな国策の最先端を行くべきものだ、こう思っております。
 予算の位置づけにつきましても、平成十五年度を含めてそうでありますが、十七兆円の計画の次は二十四兆円だということで全体の枠を今長期計画の中に持っておるわけでございますが、特にナノテクノロジーについては七割増を目指しておるということでありますから、平成十四年度が二百四十二億に対して七割増の四百九というこれまでにない大幅な要求をいたしておることを見ても、この点に相当力点を置いて考えておると言って間違いないというふうに私は思っております。
 それに含めて、年度の途中で競争的資金というのもございます。それにおいても、ナノテクノロジー関係の経済産業省を中心とした、各省庁にまたがっておりますが、この関係が五百二十億ございますから、平成十四年度だけでもナノテク関係が七百六十億という数字を別に持っておるわけでございます。そういうことで、これは世界の競争の中で日本が先頭に立ってやらなきゃいけない部分だという認識のもとに、これからの予算の問題等々全力を尽くしていきたいと考えております。
 十分なプライオリティーがナノテクにあるのかという御指摘だろうと思いますが、まさにこれからのことを考えますと、この競争的資金も活用しながら、ナノテクというものにもっともっと力を入れていかなければなりませんが、十五年度の要求、さっき七割強ということを申し上げましたが、ライフサイエンス関係が十五年度では四四%増、それから情報通信が二三%、環境が三〇%増、その中でナノテク、さらに材料を含めて六九%増ということで要求をいたしておるということは、プライオリティーは十分与えておるというふうに私は認識をいたしております。
山口(壯)委員 確かに、ある程度のプライオリティーを与えていただいていることは間違いないと思うんですね。これは、きのうの質問の中に入れていませんでしたけれども、もしも今数字が出るようであれば、石川局長なり、アメリカのナショナル・ナノテクノロジー・イニシアチブの予算のふえ方を一言短く紹介いただけますでしょうか。
石川政府参考人 ただいま委員から、日米のナノテクノロジーの予算の比較というお尋ねでございます。
 先ほどもちょっとお触れになりましたように、アメリカの方では、平成十四年度ですと、六億四百万ドル、一ドル百二十円に換算いたしますと大体約七百三十億円ぐらいではないかというふうに思われますけれども、先ほど副大臣の方からも御答弁申し上げましたように、我が国で、ナノテク、材料関係全部ひっくるめまして、全省庁分入れますと、単純計算しますと千二百三十億円程度になろうかと思っております。そのうち、競争的な研究資金、後から配分が決まりますものを四百五十億円程度除きますと、先ほど副大臣からお話がありましたように、七百八十億円、この中に材料関係が入っておりますので、これは大体四分の一ぐらいと見込まれます、これを差し引きますと、大体ナノテク関係だけで約五百九十億円か六百億円程度かな、こう思っております。
 これは確かに、アメリカに比べますとやや少ない額になるかもしれませんけれども、私どもとしては、相当頑張っている額ではないかと思っておりますし、また、先ほど申し上げましたように、これからも一生懸命やらせていただきたいと思っております。
山口(壯)委員 今、石川局長がおっしゃったとおり、アメリカは非常に力を入れてこれを伸ばしているわけですね。特に産学連携というものも、アメリカの場合は、私は、日本よりも進んでいるんじゃないかなという気がしています。そういう意味では、単純にお金の比較だけではない、さらに産学連携という体制のことも考えると、日本の物つくりの体制をこれからもきちっと、リーディングエッジを守っていくというためには、私は、相当の努力をさらにしていただく必要があると思います。
 大臣、一言で結構です、産学連携、これから特に、去年、去年というかことし、つけていただいた予算の中で、知的クラスター、あるいは都市の関連の小規模の都市エリア産学官連携促進事業というものも始められました。これは非常に大事なポイントです。この点について、大臣、まず、この重要性について、認識を共有していただいていると思いますけれども、さらに御確認いただけますでしょうか。
遠山国務大臣 産学官連携、近時、大変大学人も、本来の教育研究のみならず社会的貢献も重要だということで、本当に真剣になって取り組み始めていただいております。
 アメリカとの違いは、私は、やはり日本の大学が、十年ほど前までは、産業への寄与というのはとんでもないという認識がかなりあったと思いますが、現在ではそういう認識もかなり払拭されておりまして、大学が社会的存在として社会貢献、その中で一番、目に見えるのが産学連携でございまして、この勢いは急激に伸びていると思います。
 その意味で、特に、今委員御指摘の知的クラスター、これは全国で十二のクラスターをお願いしておりますけれども、これは地域振興とも関係いたしまして、各地において大学の知恵を使いながら、その地元の産業と結びついた企業化を図るために、大変喜ばれております。私どもとしても、最近の政策の中でもヒットではないかと思っております。
 今、準クラスターの話も出ておりますし、この面につきましては、私どもとしては、大いにやっていきたいと思いますし、また、仕組みの面でも、来年度の予算要求におきまして、その知的な活動を経済力に結びつけていくために知的財産本部というようなものを主要な大学につくってもらいまして、大学の知恵が本当の意味で外に対しても役に立つような形でいろいろ支援をしていきたいというふうに考えております。
山口(壯)委員 非常に大事なポイントですので、大臣、ぜひその点をさらにさらに進めていただきたいと思うんです。
 例えば、西播磨にテクノポリスという施設もあります。その関連で、姫路工業大学というのもそこにあるものですから、この産学官連携の中で、一億円掛ける三年分ということでつけていただいた。これは三年たつと一応区切りというふうに聞いているわけですけれども、三年たって、これがそのままちょん切られてしまうのか、あるいは、せっかく始められたこのヒット、さらにお続けになる見通しがあるのか、その辺はいかがでしょうか。
山元政府参考人 御説明いたします。
 先ほどの大臣からの御説明にありましたような知的クラスターの事業、あるいは、これもことしからでございますが、今の都市エリア産学官連携促進事業、今年度スタートしたばかりでございまして、これからのあり方につきましては、それぞれの各年度におきましての検討の中でより明確になっていくかと思います。
 私ども、この都市エリア産学官連携促進事業、播磨エリアもその十九地域選ばれた中の一つに入っておるわけでございますが、これから三年間ぜひ頑張っていただきまして、各地域でいろいろなこういう事業が盛り上がっておりますので、その盛り上がりを背景にいたしまして、さらにこういう事業を大きく発展していく、そういう制度になっていけば非常に私自身にとってもうれしいな、こう思っているところでございます。
 先ほどの知的クラスター事業、これ自身と、それから都市エリア産学官連携促進事業、これはそれぞれその趣旨、目的も違いますので、直に連携しているわけじゃございませんけれども、これからのそれぞれの知的クラスター創成事業の中での競争もあるでしょうし、それから、都市エリア産学官連携促進事業、こういう事業の中でもさらに大きく発展していくものもあろうかと思います。
 その辺の全体の動きをにらみながら、しかし一方で、予算的には厳しい予算をさらに今度は集約して、より厳選したところを大きく発展させていけばいいじゃないか、こういう御意見も多分これから出てくるかと思います。その辺を加味しながら、これからのあり方もまた検討したいと思います。
山口(壯)委員 新しい技術を産業界でも活用していくということによって、日本の物つくり、あるいは経済の国際的競争力というものを確保していくということができると思うんです。高い山というのは、必ずすそ野が広いわけですね。すそ野が広くなければ山は高くなれない。そういう意味で、この産学連携の予算についてはさらに重点を置いていくべきだと思いますし、これからの努力、さらにお願いします。
 そして、この姫路工業大学は、近くに放射光施設という、例のSPring8というものもあるわけですね。他方、このSPring8というものが世界最大の要素を持っていながら、近隣の、もしくは地元の、あるいはさらに広げても関西エリアにおいても、必ずしも本当に十分活用されているのかどうか。その辺については、若干、もう少し活用されればいいなと思うわけですね。和歌山のカレーの、あの砒素分析に使われたというので有名になった程度の話ですから、これはもっともっと本当はきちっとしたものが公になってもいいと思うんです。
 そういう意味で、これを産業界に活用しやすいようにということで、トライアルユースという制度があると思うんです。トライアルユース、試験的な利用ということでしょうか、企業がなかなか、どういうふうにSPring8を活用していいかわからないというときに、JASRIのアシスタントの方が支援しながら、こういうふうにやったらどうですかということで、トライアルユース、試験的に使っていく、無料で使えるようにという試みですね。
 これについては、どうでしょう、予算の措置、今年度はないように私は認識しているんですけれども、どういうふうな状況でしょうか。
石川政府参考人 SPring8のトライアルユースについてのお尋ねでございます。
 もう委員よく御存じだというように伺っておりますけれども、大型放射光施設SPring8の活用につきましては、これは、今お話がありましたように、産業界に積極的に活用していただくということは、私どもも、大変いいことですし、これは重要なことだ、こういうふうに思っております。
 そういったことから、平成十三年度の補正予算におきまして、産業利用の促進を図るという観点から、産業界に試行的な利用の機会を提供しようというようなことで、トライアルユース事業を実施したところでございます。そして、こういった事業の中から、産業界が抱えておりました多くの技術的な問題点が解明されたり、あるいは、新たな製品開発に向けての知見が得られたというようなことと承知しておりまして、この結果、民間企業のSPring8の利用希望というのも着実にふえてきておるというような状況でございます。
 こういった点を踏まえまして、私どもといたしましては、平成十五年度の概算要求におきましても、このトライアルユースを本格的に実施したいというふうに考えておりまして、現在、約一億五千万円の概算要求を行っているところでございます。
山口(壯)委員 特に地元地域、地元というのは別に西播磨だけでなくても、広く関西地域ととらえてもいいんですけれども、中小企業等への成果の還元状況、今石川局長は着実にふえているというふうにおっしゃいましたけれども、具体的に、着実に成果を生んでいるということでしょうか。
石川政府参考人 このSPring8を活用いたしました研究成果が地元や地域の、例えば中小企業等へどのような形で還元されているかというお尋ねでございます。
 先ほど申し上げましたトライアルユースで行った事業の中でも、例えば赤穂市にありますある製薬会社の研究では、殺虫剤による害虫の内部器官への影響の鮮明な観察ができて、新薬開発に向けて非常にいい成果が得られたとか、あるいは、トライアルユース事業でなくても、当然のことでございますけれども、通常の事業の中で、例えば兵庫県が放射光施設については独自のビームラインを持っておりますし、また姫路工大もニュースバルというような名前の放射光施設をそこに設けておったりいたしまして、そういったビームラインや放射光施設を通じて、特に地元関係の企業の方、産業界の方々が積極的にこの研究に参加して、大変すばらしい成果を上げているというふうに私ども承知をいたしております。
山口(壯)委員 一億五千万を十五年度に要求されているということですけれども、ぜひぜひこのトライアルユースがより多くの企業に利用できるように幅を広げていただきたいと思うんです。多分、スタッフの数というものもあるでしょうし、あるいはビームラインが建設中も含めて今四十七本、これをふやせば、またそういう利用の範囲も広がると思うんです。ぜひ、そういう観点からもいろいろ取り組みというものをやっていただきたいと思います。
 こういう分野は多分、光科学と言うんだと思います。光科学の中にはいろいろな要素もあるんでしょうけれども、こういうことを担う人材が不足していれば、トライアルユースというものを幅広くやろうと思っても、アシストできる体制がなかなか難しい。
 そういう意味では、光科学ということを、例えば専門の学科として創設していくということも、我々はこれからの科学技術戦略を練る上で非常に大事だと思うんです。今、この光科学を専門の学科として持っている高等教育機関はあるんでしょうか。
石川政府参考人 光科学に関する専門的な教育機関のお尋ねでございます。
 例えば国立大学ですと、徳島大学の工学部に光応用工学科というような学科がございます。また、和歌山大学におきましては、システム工学部の中に光メカトロニクス学科というように、光という字を織り込んで光科学を中心に取り上げているというようなところがございます。私立大学におきましても、そういった光の字が入っているものだけをとりましても七つ、八つのものがございます。
 また、そういった光という字を取り入れていないような名称の学部・学科におきましても、今の光科学の重要性にかんがみまして、光科学に関する教育研究というものは大変幅広く、積極的に行われているというふうに承知しております。
山口(壯)委員 遠山大臣、どうでしょうか。この点について、これから日本の科学技術国家戦略としてとらえていく、特にナノテクノロジーあるいはこの光科学というものを、人材を長期的に育てていくという点では、大学においてそういう専門学科を今の数よりもさらにふやしていくということを慫慂していくということも非常に大事なポイントだと思いますけれども、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 光科学も、やはりこれからの科学技術のフロンティアを築いていくという面で大変大事だと思っております。
 研究者養成につきましては、それぞれの大学で専門の学部や学科を置いて今も取り組んでおりますけれども、多くの大学でこれからもそういうことへの認識が深まって、いろいろな工夫のもとに人材養成が行われていくことが大変大事だと考えておりまして、私どももそういった取り組みを支援していくという形で、この重要性に対する認識を持ち、かつ、それについて任務を果たしていきたいと思っております。
山口(壯)委員 最後に、光科学の問題の関連ですけれども、今、例えば姫路工業大学ということを私言及しました。この姫路工業大学というのは公立大学の一つですね。先ほどの義務教育費の国庫負担にも関係するわけですけれども、公立大学というのは、国からの云々とか、あるいは私学のように私学助成とかいう形じゃないわけですから、国からお金が県に行き、あるいは県の中でそれを運営して公立大学を支えておられる。
 そういう意味では、きょうせっかく総務省からも来ていただいていると思いますので、文部科学省の方よりもむしろ、せっかく来ていただいている総務省の審議官の方から、そういう厳しい状況の中で公立大学についても抜かりがないようにしっかり支援の気持ちをあらわしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。
木村政府参考人 大学につきましては、高等教育におきます大変な重要性にかんがみまして、国及び地方公共団体がその役割分担に応じて財政の支援を行っているところでございます。
 具体的に、公立大学につきましては、普通交付税におきまして、県分、市町村分とも、その他の教育費という費目でございますけれども、基準財政需要額に算入をさせていただいているわけでございます。
 また、そういう算定の中におきましては、学部の種類ごとに所要経費に差がございますので、例えば、医学部でありますとか理科系、理学部、工学部といった学部につきましては、高い単価を設定させていただいております。
 数字的に申しますと、平成十四年度に、全体で、県分で九百七十四億余り、市町村分で四百三十八億余り、合わせて千四百十三億余りを交付税に算入しているということでございます。
 今後とも、公立大学の交付税措置につきましては、大変厳しい財政状況の中でございますけれども、それぞれの経費の実態を踏まえまして、また地方公共団体の御要望を受けまして、適切な算入に努めてまいりたい、このように考えております。
山口(壯)委員 ありがとうございます。
 きょうは、私自身は応援するという意味で、非常に優しい質問をしたので、遠山大臣も、ひょっとしたらまたきつい質問をするんじゃないかなと思っておられたのを、きょうは応援の意味での質問をさせていただきました。
 我々は、不良債権処理とかいろいろなデフレ対策とかを抜け出て、どうにかして、この日本がアジアの中で大きな役割を果たしていくためには、科学技術というものをきちっと育てていって、そして日本の大きな使命というものを果たしていくことが大事だと思います。ぜひとも、これからも大いに予算的な措置も含めて頑張っていただきますようにお願いします。
 終わります。
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 本日は、大臣、副大臣にいろいろなことを教えていただきたい、そんな思いでここで質問をさせていただきたいと思います。私自身もまだまだ勉強不足で、政治の世界におきますお二方諸先輩に、歴史的流れも含めて聞かせていただければと思っております。
 まず第一点目は、小泉総理がまさに米百俵ということの精神、そういうことで発足をし、今日まで一年以上の時間がたったわけでございますけれども、この小泉内閣におきます文科省の大臣、副大臣がやられてきたこと、一回ここで、どういうようなものを掲げ、どういったことをしてきたのか、これは今現段階では非常に抽象的な話になると思います。また、どんな思いを持っているのか、そういった中間総括という形でのお話なり御意見を聞かせていただければありがたいと思います。
 今、小泉内閣は、いろいろなことを教育問題に関しても提案し、また目標らしいものをつくって掲げ、やってきておりますけれども、その目標に向かって、現実、本当に歩いているのか、また、途中、今困っている様子があるのか、また、なかなかできないのか。なかなかできない部分は認めにくいところもあるかもしれませんけれども、率直に、今の現状を中間総括ということで教えていただけたらありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、奥山委員長代理着席〕
遠山国務大臣 一年半の総括をと言われまして、いささか緊張いたしますけれども、そういう意味も込めながら、昨年の四月に発足した小泉内閣のもとにおいて、どのような教育改革が行われてきたかということについて、若干御説明させていただきたいと思います。
 私が前町村文部科学大臣の後を継ぎましたときには、非常に明確に、二十一世紀の教育新生プランというのができ上がっておりまして、それによって教育改革が非常な勢いで進もうとしていたときでございました。したがいまして、私は、その後を継ぎまして、非常に重要な三法案を成立させ、それをベースにして各地における教育改革の実が図られつつあると思っております。
 それで、ことしになりまして、子供たちに新たな学習指導要領のもとで勉強してもらうに際して、教育行政に携わる方々及び学校の関係者に対して、学びのすすめということを明確にいたしまして、基礎、基本を大事にしながら、そしてみずから考える力を持つ、そういった子供たちをしっかりと育成していこうということで、明確な目標を立てたわけでございます。
 そして、四月からは、御存じのように、新しい学習指導要領が実施に移されまして、義務教育段階の子供たちは、ことしの四月から、新しい指導要領のもとに、各地の先生方の御努力によって、新たな教育の目標に向かって今進みつつあると思っております。
 同時に、私といたしましては、ほうはいとして起こってきた義務教育費国庫負担制度も見直して一般財源化しろというようなこともバックにありまして、一体これからの日本の教育というものはそういった財源論だけで論じられていいのかということについて、強い危惧を覚えたわけでございます。
 そのようなことから、この夏に、人間力戦略ビジョンというものを明確にいたしました。これは、小泉総理が主唱されました米百俵の精神というものをより確実にしていくためのビジョンでございます。
 その中身は、これまでの教育の目標といいますものは学校段階ごとに決められてきたわけでございます。初中教育についてはこういうこと、あるいは高校はどうだ、あるいは大学はどうだということで、改革がいろいろなされてまいったわけでございますが、それらを通じて、一体これからの二十一世紀を担う子供たちをどのように育成していったらいいかというビジョンというものを持った方がいいのではないかということで、一つの考え方を整理し、提示したわけでございます。これらは、既に走っていたものも整理をした上で、さらにそれを力強く、また明快な目標を立てて進むべく、人間力戦略ビジョンとして打ち出したものでございます。
 そうしたビジョンと同時に、昨年来の法改正、そして四月からの新指導要領を実施に移したということを総合的に考えますと、私といたしましては、小泉内閣におきます教育の重要性について、ある方向性と同時に、それを実施に移すための具体的な施策も講じながら、今大きな目標に向かって進み始めたというふうに考えているところでございます。
佐藤(公)委員 今おっしゃられました、まさに、人間力戦略ビジョン、こういうものをつくられてやられて、目標としては四つ立てられ、六つの諸施策を実行していこうということでまとめられておりますね。
 でも、この一つ一つを見ていくと、確かな学力の育成、とても大事なことであり、今までもやってきたと思いますけれども、力強く動いている割には、世間一般の声というのは、やはり今、現状、学力の低下ということがより心配、または低下をしているというのが声として上がってくる。
 また、伝統とか文化とか、文化芸術、これは特別委員会でも大臣とも話し合いを多少しましたけれども、本来、国がやらなきゃいけないような諸施策を独立行政法人の方に変えていく、本来は政府がきちっと責任を持ってやっていくべきことを外に出していっている、そんな気がしております。
 そういうことからすると、これを一つ一つ全体的に見てみると、果たして、今掲げている目標と方向に、何か心配だからこういうものを、または、だんだん悪くなっているからこういった目標または諸施策を立てているという解釈もできますが、どうも、一年と数カ月たっている中でも、こういった目標に、近づいているどころか、逆にちょっと遠ざかっている部分があるんじゃないか、または低下している部分があるんじゃないか、こんな思いがいたします。
 前、大臣ともお話をさせていただく中、なかなか将来のビジョンというもの、これは哲学的な話になりますけれども、一本、柱というものが私たちには見えづらい、または見えないということで話をしました。こういって、せっかくこれを見ても、いいものもたくさんあるんです。いいものがあるのに、何か、常に縦割りの行政の中、もしくは縦と横というものがばらばらに政策なり政府自体が動いているように思える部分があるのです。
 これはちょっと、非常に抽象的でわかりにくいかもしれませんけれども、こういう心配の中、大臣または副大臣がいかがお考えになられているのか。または、今後の政策を実行していくので、危惧するというか心配をしている部分がもしもありましたら、お答えを願えればありがたいかと思います。
河村副大臣 日本の教育について心配している部分があればということでありますが、きょうの新聞ですか、きのうでしたか、日本の基礎学力については世界のトップレベルにあるんだということを、これはこれまでの統計でも大体そういう方向にあるんだと。
 だから、学力のことを心配なさるけれども、本当はもっと大事なことは、子供たちが学ぶ意欲が少し落ちているとか、あるいは実際の学習時間が世界の各国の皆さんに比べて少し足らないのではないかとかいう指摘、そういうこととか、あるいは子供たちの規範意識、青少年犯罪等々を見ても、そういう倫理観、道徳観、そういうものの規範が薄れてきていることをむしろ心配すべきであって、学校五日制の問題についても実はそういうところにもっと力点を置くべきであろう。私自身そう思っておりますので、そういうことにもっと我々は力を入れていくときを迎えておるのではないか。
 もちろん、二十一世紀を考えたときに、物づくりだけでは世界に競争できない時代が来て、まさに科学技術創造立国を迎えておりますから、もっとそういう面に力を入れなきゃいけない部分が出てきておることも事実でございます。
 そういうことを考えますと、まさに、戦後の追いつき追い越せの時代から、次の目標を打ち立てて、それに向かって進む。まさに憲法の前文にあります、いわゆる国際社会において名誉ある地位を占めたいという理想に向かって、いかにしていけばいいかということについて、ここでやはり総括をしなきゃいけない。
 そういう意味で、御案内のように、中教審においても、まさに教育全般について広範な議論をいただき、その根幹であります教育基本法の見直しという方向で今事態が進んでおるわけでございまして、そこで、反省すべきことは反省し、さらに日本が目指す道をしっかり打ち立てて、これもまさに佐藤委員いつも御指摘のように、この国の形というものが打ち立っていきませんと次の目標が立たない、こう言われていますが、まさに今、それを日本は模索をしているといいますか、そういうときを私は迎えておると思います。
 現教育基本法にもうたわれているように、憲法の理想を実現するには、まさに教育の力による、そこにあるわけでありますが、そういうことを考えますと、やはり、まさに日本の教育力をいかに高めるかということを今ここで総括をしなきゃいかぬ。
 今、若干申し上げたような心配点も出てきておりますから、やはりそういうものは、戦後のいろいろな経済中心的な日本の立国のあり方、あるいは一国平和主義的な日本のあり方、そういうもののひずみが、私は、自己中心的なもの、いわゆる規範意識が薄れているというのはまさにそういうところにあるわけでありましょうが、そういうものになってあらわれている、そこのたがをきちっと締め直していくということが今必要になってきているのではないか、そのように感じておるわけであります。
    〔奥山委員長代理退席、委員長着席〕
佐藤(公)委員 これに関して全体の話をもうちょっとしたかったんですけれども、たまたま今憲法という話が出ましたので、副大臣は、私が質問することを大体おわかりになられているせいか、憲法という言葉を出されたのかもしれませんが、そういった心配の中、教育基本法の中間報告というまとめが出てきた。
 私が思うことは、やはりこの国のあるべき姿というのは、すべて一つの憲法というところに集約される部分があるのかなと。まさに前文で、おっしゃられた部分を含めて、憲法と教育というのはまさに切っても切れないものであり、また、それの基礎でもありDNAでもあると思います。
 そういったことからすれば、今回の教育基本法の改正、中間答申ということでまとめとしてやられておりますけれども、本来ならば、順序順番立てて考えていけば、まさに、明治そして戦後の憲法を含めて、そして教育基本法関係は、やはり憲法とセット論という形の話という考え方が強かったと思いますし、また、それがある意味で自然だとも思うんです。
 つまるところ、日本の国の形というものがきちんとあった上、やはりそこに最も大事な柱である教育というものをどうするのか。
 憲法調査会、今いろいろと議論も進んでおります。議論も進んで、いい答えもいい話もたくさん出て、私も議事録をずっと見させていただいておりますけれども、そういう中で、きちっとした国の形ができた段階で教育基本法というものがやはりセット論で語られていく、またはつくられていくというのが一つの考えとして、筋論としてあると思いますけれども、副大臣、いかがお考えでしょうか。
河村副大臣 私も、基本的な認識としてはそういうものだろう、そうあるべきものだろうというふうに基本的には考えております。しかし、これはやはり並行してやっていかなきゃなりません。今の時代に合った新しい形の憲法を論ずるならば、当然、それに並行して教育基本法なり教育のあり方についてもやっていかなきゃならぬというふうに私は思っておるわけでございます。
 一歩進んで考えるならば、教育を特別視する必要はございませんけれども、憲法を考える上においても、やはり教育についてはどうあるべきだということは、教育の視点から、専門的な立場も含めて広範な議論をすべきだろうというふうに思っておるわけでありまして、今持っている憲法の枠を考えたときに、大筋として今の教育にかかわる問題、いわゆる教育の機会均等であるとか義務教育における国の責任のあり方とか、私は、そういうものについては、これはむしろ不易なものであって、そう大きな変化、変わっていくものではなくて、むしろ、その具現化についてどうあったらいいかということをもっと掘り下げて考えていく必要があるんではないか、こう思っておりますから、やはり教育基本法を初めとする広範な教育議論というのは打ち出していって、その方向づけをやる。
 これは私の個人的な見解として、午前中の肥田さんの質問にもお答えをしたんでありますが、むしろ、教育の基本の考え方があって、そして、その上にある憲法の広範な中にその精神というものも取り入れていただきたい。私は、逆にそう思っておるぐらいで、そのぐらいの気持ちで教育の問題には取り組むべき問題だろう、こう思っておるわけであります。
 そういう意味で、もちろん、憲法と教育基本法のかかわり合いというのは非常に深いものがありますけれども、教育の根幹の部分については、その精神、これまで日本が培ってきた教育、さらにその上に必要なものを加えたもの、こういうものが必要だというものが、これから新しく、恐らく五年後とか三年後とかいろいろ言われておりますが、そうした中で検討される中に、教育の根幹はこういうふうに考えている、それをさらに憲法としてこのようにしていこうというものになってしかるべきではないか、私はそのように思っておるわけです。
佐藤(公)委員 副大臣、言葉を選びながらなんですけれども、非常に自分のあるべき姿ということが僕はだんだん見えてきたような気がします。その思いでどんどん発言していただければいいなと思うんですけれども、なかなか言いにくいこともあるかと思います。
 結局、副大臣がおっしゃった教育基本法というものを、今ある程度基本をつくって、その要素というものがもしも憲法になければ、それを憲法で取り入れてもらう。こういう一つのやり方というか、作業の手順というのか、もしも教育基本法の中で憲法にない要素があるんであれば、それは憲法の中に入れてもらう。
 つまり、これはこういう言葉を使うと皆さんが過剰反応しちゃう部分がありますので、あえて使いたくもないですけれども、改憲なり憲法を変えていく、そしてこの国の形をつくっていこうというお考えでよろしいんでしょうか。
河村副大臣 私は、教育というのはそうあるべきものだ、国の中心にあるべきものだ、そういうふうに考えております。
佐藤(公)委員 私も、過去の議事録をずっと、全部じゃありませんが読ませていただいて、戻りに戻って、とうとう昭和二十二年まで戻っちゃいました。昭和二十二年のときの国会での議論というのは、やはり本当に真剣に哲学、政治家と政治家との思いと哲学が過激にぶつかり合って、それで成立したもの、それで足りないもの、また、無念さも何か感じられるものがあります。
 こういったことに関しては、今ここにいる委員の皆さん方含めて、真剣に国のあるべき姿、哲学論だと非常に委員会だと嫌うところがあるかもしれませんが、今の委員会のあり方というのは、何か決算行政監視委員会みたいなことにおける議論が多いように思えて、それも必要だし大事、だけれども、やはり根本の哲学の話、政治家の今後の日本のあるべき姿をみんなどんどんぶつけて、激論を交わせていただければなと思います。
 この教育基本法の改正というのは、私どももまさに自自連立のときからの流れで今日まで来ていることがありますけれども、まだまだ不十分要素があり、でも、その上には、やはりこの国のあるべき姿という、まさにそこにおける憲法の新たなる指針の議論ということがより必要だし、それの方向性を早く定めることが必要だと思いますので、何とぞ副大臣におかれましては、大臣に言うと大変無理難題なことも多いかもしれませんが副大臣は、僕は大臣は政治家だと思っていますけれども、時たま私は政治家じゃないという表現をされるので、その部分のあたりは副大臣がきちっと補佐をしながら、議論を活発化していただければありがたいかと思います。
 そういう中で、ちょっと話を戻しますけれども、私は、厚生労働委員会をさせていただいておりますけれども、まさに今の小泉内閣、いろいろな政策が各省庁にわたって実行されている、目標を立ててやられている部分でございます。
 そういう中で、私は、厚生労働をやらせていただいている中、まさにこの文部科学との共通項の大きな一点というのは、やはり今の経済、景気状況ということが直接的にと言ってもいいぐらい、家庭に、そして教育に及ぼしている影響というのが非常に多いと思います。
 これはもうお話しするまでもなく、景気、経済が悪い、リストラをする、倒産をする、そうすると、仕事がなくなる。家庭では、仕事がなくておやじさんが困る、おふくろさんと話がうまくかみ合わなくなる、けんかになる。おふくろさんが、じゃ、外にパートで出る、子供との間がうまくいかなくなる。家庭内不和というのが、まさにこの景気、経済状況ということによって、大きく影響を受けていくことがございます。そして、そこから子供は非行に走る、そしてこの国、都市部においても治安がどんどん悪くなっていく。
 そんなことで、景気、経済というのがいかにこの文科というか教育にも影響を及ぼしている部分というのを肌身で感じているところでございます。
 そういう中で、これも答えにくいかもしれないんですけれども、まず大臣、副大臣、両大臣にお聞きしたいんですけれども、今の小泉内閣の経済に対する政策、姿勢に対して、本当に心から今の状態でいいと、もろ手を挙げて応援をしていらっしゃるのかどうか、いかがなものでしょうか。
遠山国務大臣 当然ながら、閣僚の一人としまして、総理がリーダーシップを持ってやっておられます政策について、これを理解し、かつ、それが効果を上げるように念じているというのが私の立場でございます。
 もちろん、今の内閣が抱えている問題というのは、この内閣の時代にできたというよりは、長年にわたってさまざまな努力が重ねられてきたにもかかわらず、非常に難しい、日本の大きな経済に絡むさまざまな問題が醸し出している問題でございますから、そう急に、何か目の覚めるような政策があって、それが実現できるというものではないと思います。
 しかし、その中で、従来のやり方ではなくて、改革を進め、構造改革を前進させてやっていこうということでございますので、これは経済という角度から見ると我が省が直接絡むものではございませんが、しかし、私どもとしましてはその方向性を見ながら、しかし逆に、私といたしましてはそうした今日の経済の問題というのにも着目もしながら、そうしたさまざまな問題を乗り越えて、しっかりと二十一世紀に、個人としても生き抜き、また国家としてもちゃんと栄えるためにその公共を大事にしていく、そういった精神も持った人材をどのようにつくっていくか、また、経済の重要な側面であります科学技術をどのように振興していくか、そして心の支えとなる文化、スポーツといったものをどうやっていくか、そうした直接経済政策そのものにかかわるといいますよりは、それを熟視しながら私どもの省でできるようなことを今一生懸命取り組んでいるというのが私の姿勢でございます。
佐藤(公)委員 済みません。私が理解不足なのかもしれませんが、今の経済政策をもろ手を挙げて応援をしていますかということに対して、イエスかノーかでお答えを願えればなと思いますけれども。
河村副大臣 私も内閣の片隅におるわけでありますから、小泉総理がまさに進められようとしている構造改革等については理解をいたしておるつもりでございますが、しかし、現下の生き物である経済の動きというのをまるで無視するわけにはいかないだろう、こう思っておりまして、一歩後退二歩前進ということもありますから、やはりそういうことも考えながら経済運営はやっていくべきものだろう、このように思っております。
佐藤(公)委員 僕が言いたいことは、これは厚生労働でもいろいろなところでも聞いているんですけれども、大臣、私の所管は文部科学省です、私は厚生労働です、厚生労働なんというのは経済とはかなり直接関係があるところですけれども、その意識が僕はよくないと思うんです。やはり内閣として一つ一つ、まさに政策というのは一つ一つというよりも連携的なものでの結果が出てくることであり、大臣、副大臣におきます経済認識というのを本来聞きたいんです。
 今経済がどうなっているのか、いや私は文科省だから関係ないで済まされることでは僕はないと思います。
 まさに先ほど話をしましたように、景気が悪くなり、リストラされ、企業倒産がふえる、家庭内不和がある、子供との関係がおかしくなる、離婚が発生する、こういうことで、非常に悪循環作用を及ぼす。それは大きく教育にも影響してくることであり、そこの部分の認識というものを含めて、これは財務金融がやっているから私たちは関係ないのよじゃなくて、やはりそこの部分をマクロ的にきちっと見ながら、意見を言い、または提案をし、またはそれに対して反対も、内閣の中で、だれも聞いていないところだったらいいんですから、そういう部分での話を少し聞かせていただければなと思いますけれども、副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 そういう問題を副大臣である私が直接言う機会というのはほとんどない、副大臣会議ぐらいしかないわけでありますが、ただ、おっしゃるように、今の日本の経済、こうした状況がいろいろな意味で教育にも影響がある。
 例えば、週五日制で学力低下、五日制をもとに戻してくれという議論がある。それは理想かもしれないけれども、地方では実際今、親はそんな土曜日に子供と遊んでいる時間はないじゃないか、こういう議論、意見が現実に起きておるわけですね。
 それについては、やはり早く景気をよくしてくれという声は、私が文部科学副大臣であろうとなかろうと、地方ではそういう声が満ち満ちていることも事実でありますから、そういう意味で、今の経済政策について、やはり麻酔のない手術はないという考え方というのは、私は一つの考え方にあると思うんです。
 だから、さっき申し上げたように、今のもの全部そのままとっていかずに、ちょっと経済政策を、私は、変換と言うと、総理はあれは変わったんじゃないかとおっしゃいますけれども、一歩前進する、一歩後退をして二歩前進を目指すということだってあり得るのではないか、私はそういうふうに申し上げ、また、折に触れてそれは、副大臣会議等々についても意見交換はもちろんしておるわけです。
佐藤(公)委員 ちょっと何か頼りないお答えのような気がするんですけれども、私ももう時間がないので、この話は、本当はもっと突っ込んで過激にやりたいんですけれども、きょうはこれぐらいにさせていただきたいかと思います。
 続きまして、もう最後になりますけれども、私が平成十四年三月二十二日ですか、ADHDのことをこの委員会で聞かせていただきました。そのときに、矢野政府参考人からお話を聞かせていただく中で、ADHDの子供やなんかの学習障害児等についての全国的な実態を把握し、調査をしてということのお話がございました。
 この調査結果が出たというふうに私も聞いており、そのことをまた踏まえて、先般行われました十一月一日の厚生労働委員会でも、委員の中から、ADHDに関して厚生省の対応ということで、今、総合的評価、臨床的実証研究を実施し、ADHDに関するガイドラインの作成等を行っているというような答弁があったんですけれども、私のこの四月の質問を受けて、文科省として今現状、調査結果を踏まえて、どういう状況で、どんなことで、どういう形で今後やっていくのか、また持っていくのかということを簡単に説明を願えればありがたいと思います。
矢野政府参考人 まず、今回行いました調査の概要について、改めて御報告をさせていただきたいと思います。
 今回行いました調査は、全国五地域の小中学校の通常の学級に在籍いたします児童生徒約四万人につきまして、学級担任からのアンケート調査の結果を集計したものでございまして、その結果、二・五%程度が不注意または多動性、衝動性の問題を示すものとの、そういう回答があったわけでございます。
 本調査の結果は、専門家の判断を通したものではなくて、この結果が直ちにADHDの児童生徒の比率を示すものではございませんけれども、ADHDに関連して、通常の学級における特別な支援を必要とする児童生徒の実態を示す一つの有力な資料ではと考えているわけでございます。今回初めての調査でございます。
 まず、以上がADHDの調査結果の概要でございますが、このADHDについては、これまで、定義あるいは判断基準等が明らかでなかったために、学校現場におきましては十分な対応がなされておりませんでした。そういうことを踏まえまして、さきの委員会でも御紹介申し上げましたけれども、昨年の十月でございますが、特別支援教育の在り方に関する調査研究協力者会議というのを設置いたしまして、その会議を通じて検討を行いました。その検討の中で、先ほど申し上げましたような調査も行ったわけでございます。
 そういう検討を踏まえまして、先日、中間まとめが取りまとめられたわけでございまして、その中で、ADHDについての定義でございますとか判断基準、さらには指導方法等が一つの案として示されたところでございます。
 文部科学省におきましては、ADHDの児童生徒につきまして、小中学校における指導の充実を図りますために、平成十五年度概算要求におきまして、こうした児童生徒に対する指導の総合的な体制の整備、特に私どもが考えておりますのは、学校におけるそういう子供たちに対応する体制整備ということが大変大きな課題であろうかと思ってございますけれども、そうした体制整備も含めた、そういうことができるような事業を新たに盛り込んで、要求をいたしているところでございます。
 私ども、こうした施策を通じまして、先ほど御紹介申し上げましたような中間まとめの報告もなされたところでございますので、そうした報告を踏まえながら、先ほど御紹介がございましたけれども、厚生労働省等の関係省庁、関係機関との連携を図りながら、これらの児童生徒に対する指導の充実に今後一層努めてまいりたいと考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 丁寧な説明、ありがとうございます。
 では、四月以降で文科省が各学校機関に出したこういうADHDに関しての指導、指示というものは、どういうものがあり得るんでしょうか。
矢野政府参考人 四月以降について、各都道府県に対して具体的な指導という形での通知は特にございません。
佐藤(公)委員 では、一応、学校での対応は現在の校長の意思に一任された状態でやって、文科省としては何もその後動いていないということになりますでしょうか。
矢野政府参考人 御指摘のように、ADHDに関する知識についての教育関係者あるいは一般国民の理解というのは必ずしも十分とは言えない、いや不十分である、そういうふうに私ども思っておるわけでございます。
 先般、先ほど申しました中間取りまとめを行いました調査研究協力者会議におきましても、ADHDの定義、判断基準等が初めて示されたような状況でございます。
 そういう状況であるわけでございますが、私どもは、こうした定義とか判断基準というのはADHDに対する理解促進のためにも大変効果的というふうに考えられるわけでございますので、文部科学省といたしましては、そうしたものを受けまして、今後、校長会、PTA連合会等の関係団体にも周知を図ってまいりたい、かように考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 もう時間でございます。ちょっと本当に、お答えありがとうございます。
 本当に今学校関係で、他人任せで、その場しのぎで、各校で非常に格差が出ているところがある。この辺は、四月に話をして、そのときにいい答弁をいただいているんですから、やはりそれなりに早目に、一時しのぎと言われても仕方がないかもしれませんが、それなりの指導、指示を出していただかなきゃいけないと思う。
 その間にもいろいろ問題が発生しています。ただ、皆さんのおかげでどんどん世論は高まっている、みんなもだんだんその意識は高まっていると思います。
 中間報告の中での施策に関して、個別の教育支援とかコーディネーターの役割とか、地域における教育、医療、福祉の連携というのがあります。このほかにも、あの中にも書いてある、同じようなこともありますけれども、やはり専門的知識を持った指導者もしくはカウンセラーの常設というのが早急に必要になります。
 ひとつどうかここら辺を、今結果が出てからなんて言っている間に、半年、一年、二年たっちゃっている間にどんどん同じような問題が発生して困っている現場がございますので、どうか大臣、副大臣、その辺は早急に指導して、本当に、知っているか知らないか、この知識の問題だけでやはり、不幸な状況になるか、みんなが救われるかという状況になりますので、早く一手を打っていただきますことをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 まず私は、教育基本法の見直し問題でお聞きをいたします。
 中教審中間報告に対しては、新聞各紙、相当厳しい論調で分析を加えております。
 例えば福島民友という地方紙の一部を御紹介いたしますと、中間報告は、教育の本質とはほど遠い政治的文書と断じないわけにはいかない、一つは、中間報告がまとめられた経緯である、諮問されて以来約十カ月にわたって、諮問にこたえてみずから教育基本法を見直す審議を何一つしていない、ただ、今どきの子供は式の思いつきや放言が横行しただけで、基本法を見直すこと自体の是非すらあいまいなまま放置してきた、だから、十月十七日に中間報告の素案が示された際、ほとんどの審議委員が、その内容を初めて目にする仕儀となった、こんなばかげた経緯があっていいはずはない、これだけでも批判は免れまい、せめてその素案を真剣に、精力的に審議するのかと思いきや、十月十七日と二十四日の基本問題部会と、三十日の総会、このたった三回の会合だけで内容を大筋了承してしまったのであるというものでございます、一部省略しておりますけれども。
 そこで、お聞きをいたします。
 この十月十七日と二十四日の基本問題部会は、部会として成立していたのでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 中央教育審議会の基本問題部会は委員十六名で構成をされておりまして、中央教育審議会令の規定では、定足数は九名ということでございます。今御指摘の十月の十七日、二十四日に開催をされました基本問題部会は、出席者がそれぞれ、十七日は八名、二十四日は七名ということで、残念ながら定足数に達しなかったわけでございます。
 したがいまして、この二回の会議は正式な審議会の部会としては成立をしておらず、任意の懇談会、こういう形で取り扱われたところでございます。
石井(郁)委員 そうしますと、引用されました中央審議会令ですけれども、その審議会の定足数が明記されておりまして、分科会及び部会の議事についてもこれは準用されるということですから、私は、これは中間報告として提出する要件を満たしていなかったというふうに言わざるを得ないと思うんですね。
 問題は、その成立していない十七日の部会に、「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」という中間報告の素案が提出されて、そこで基本法の見直しを行うべきであるとの結論に至ったとされたわけですが、その日の部会では、いつ中教審が教育基本法の見直しを行うべきという結論を出されたのか、こういう根本的な批判もされているわけでありまして、私は当然だというふうに思うんですね。
 それで、次の二十四日の基本問題部会に、今度は言い直しがありまして、見直しを行うべきであるとの意見が大勢を占めたというふうにされました。それで中間報告案として出されたわけであります。
 しかも、見直しのキーワードとされました「新しい時代を切り拓くたくましい日本人」というのが、十七日には突如示されましたけれども、それも今度は「心豊かでたくましい日本人」の育成というふうに変わりましたし、また、真の愛国心という言葉が、相当新聞でもいろいろありましたように、みずからの国を愛しなど、根幹にかかわる部分で文言が訂正されている、書きかえられた。それで三十日の総会にかけられたわけであります。
 私、これはもうまさに官僚の作文のひとり歩きというものと言わなければならないと思います。中教審の余りにもずさんな審議のやり方に対しては、現在このように厳しい批判がなされているわけですけれども、こういうやり方をよしとする態度をとるんだったら、後世の批判は免れないわけであります。これは、教育基本法論議に全くふさわしくないものと言わなければなりません。
 そこで、池坊政務官にお尋ねしたいと思いますが、政務官あいさつで、審議会の議論がひとり歩きしないようにしたいと述べておられましたが、このような審議会の審議の進め方について、どうお考えか、お聞かせください。
池坊大臣政務官 中央教育審議会においては、昨年十一月の諮問以来、総会十一回、基本問題部会十四回、そして、定員が足りませんでしたので懇談会といたしました二回を含めまして、二十七回審議が行われております。私も、時間が許す限り、すべてとは申しませんが、審議会には出席いたしております。皆様方、まず一生懸命勉強していらっしゃいまして、教育の現状と課題、それからまた各国の教育基本法、どういうふうになっているかなどの検討も行われていらっしゃいます。そういう中にあって、この間中間報告が出たのだというふうに思っております。
 これからも、私は、中教審の審議のみならず、国民の幅広い意見を集約することがやはり必要ではないかと思っておりますので、これから五回、公聴会も開かれます。それからまた、一般の方々の意見をホームページで募集等もいたしております。私は、小中に子供を通わせているお母様方の八四%が教育基本法を知らないという現状で、まだなかなか国民の喚起がなされていないのではないかと思っておりますので、これはやはり慎重にかつ丁寧に、きめ細やかに、みんながそれぞれ現行の教育基本法はどういうものかということを勉強して、そして、幅広く、深く、いろいろな方々の意見を聞くことも必要ではないかというふうに思っております。
 私が、中教審においてひとり歩きをしないようにと思いましたのは、見直しということになっておりましたので、その結論はおかしいのではないかということで、大半の意見ということになりました。私が出席しております範囲においては、大多数の方が見直しの方がいいのではないかという意見があったことも確かではございます。
 これから五十五年ぶりの見直しをしようかという一歩を踏み出したわけでございますから、教育行政に携わっている者は、次の世代のためにも恥ずかしくない見直しに向けての一歩一歩を着実に歩んでいかなければならないと思っておりますので、そういう点は慎重に、丁寧にというふうに私は思っております。
石井(郁)委員 中間報告の内容につきましても、愛国心教育だとか、能力別教育だとか、それから国家統制の強化など、新しい時代の教育におよそ逆行することばかりだというふうに私は思います。だから、こういう形でこの教育基本法をいわばもてあそぶということは、我が国の教育を本当に台なしにしかねないものです。そういうことで、私は断じて容認できません。
 このことにつきましては、次の機会にもっと議論をさせていただきたいということを申し上げまして、次の質問に移らせていただきます。
 きょうも国立大学の法人化問題でお聞きをいたします。
 国立大学等の独立行政法人化に関する調査検討会議の最終報告に沿って法案化の作業が進められているというふうに聞いておりますけれども、この検討会議の報告書を三月に出されました。最終報告の「新しい「国立大学法人」像について」の中では大学の設置者についてどう述べていたのでしょうか、ちょっと確認させていただきます。
工藤政府参考人 本年三月の調査検討会議のレポートでございますが、いろいろな御議論を経まして、一つには、中期目標、中期計画でございますとか、業績評価等を通じました国の一定の関与、それからそれの裏に、国の予算による所要の財源措置が前提とされているということが一つでございます。もう一つには、大学の組織運営とは別に、法人自体の固有の組織は設けないということを原則として制度設計しましょうということもございます。
 それらのことも考慮しまして、この報告書では、学校教育法上の位置づけとしては、国を設置者とするという提言がなされてございます。
石井(郁)委員 そうだと思うんですね。法人化後の大学の設置者については、学校教育法上は国を設置者とするというふうにされていました。
 ところが、今どんな議論の状況になっているかということで申し上げますと、九月二十日の国立大学協会、今後、国大協というふうに呼びますけれども、第七回国立大学法人化特別委員会で、国立大学法人化に関する法制的検討上の重要論点ということが新たに示されているんですね。
 その一つに、法人化後の国立大学に関する学校教育法上の設置者は国であるとの基本的な枠組みは堅持する必要があることというふうにしています。これに対して、文科省の大臣官房清水審議官からこのような発言がございました。法人化後の大学の設置者については、学校教育法上は国を設置者とすることで努力していきたい、これは議事メモに記されているわけであります。
 この努力していきたいということをわざわざ言わなければいけないというのはどういうことなんでしょうか。これは、政府部内に何か異論があるとか、あるいは異論があるとすればどこからどういう異論が出されているのか、基本的な問題ですので、ちょっと明確にしていただきたいと思います。
工藤政府参考人 この調査検討会議のレポートをまとめるに当たりましては、大変多くの方々の熱心な御議論を賜りまして、しかも、既に経緯は御存じのように、既に発足してございます独立行政法人の制度を活用しながら、そのままでは国立大学にはなじまない部分が多々ございますので、大学にふさわしい制度設計をしようということでこのレポートがまとめてございます。
 そのために、これまでの独立行政法人通則法と違う点、多々ございます。一つには名称のあり方もそうでございますし、運営組織のあり方、あるいは法人イコール大学の長の任命のあり方、あるいは中期目標とか評価のあり方についても、既存の先行しております独立行政法人とは違う仕組みを考えていかなきゃいけない。
 今の設置者の問題もその一つで、これは、既に先行しております法人には学校教育法上の学校がございませんから、これは新たな問題ではございますが、それらを含めてすべて今政府部内で調整中でございまして、そういう意味で、私どもの姿勢としては、この三月のレポートを基本として政府部内で調整し、その方向での実現を見るべく汗をかいているということを申し上げたのが今の表現ではないかと思います。
石井(郁)委員 どうも、はっきりしていただきたいと思うんですけれども、今調整中ということ自身が、私、そういうことになっているのかと大変驚いているんです。一部では、内閣法制局から異論が出ているというふうにも伺っているわけですけれども、要するに、法人化後の大学設置者は、国なのか、あるいは国が設置する法人というような形になるのか、そこのところは枠組みにかかわる重大な問題ですから、やはり今はっきりしておいていただきたいと思います。
 調整中とはどういうことですか。どうなるんですか、それは。もしかしたら、設置者は国ということが変わり得るかもしれないという含みですか。
工藤政府参考人 本件は、私どもの心づもりとしては、次の通常国会で御審議を賜るべく法案作業を準備しているわけでございますが、先生がかねがねおっしゃっていますように、まだ法案ができていないのでございます。一つずつ決めていくという作業手順もございますけれども、先ほど申したような、いろいろな従来の独立行政法人とは違う仕組みでの制度設計で、関係各方面と御相談しながら今準備しているところでございますので、まだ決まっていないというのが事実でございます。
 ただ、私ども、基本としては、この三月にまとめられた方向で、各方面に当たりながらその実現を目指しているという状況なのでございます。
石井(郁)委員 今の段階でこの設置者は国ということでの統一見解は持てていないという状況だということは、私、大変大きな問題をはらんでいるというふうに思います。
 国大協が、先ほど申し上げましたように、法制上の重要論点、これは譲ることができないという形で出されているにもかかわらず、これさえも今クリアできていないという状況でしょう。これは本当に大変な問題です。だから、それもできないで強引に事を進めるということが、今いろいろ大学内外に混乱を引き起こしているんじゃないでしょうか。
 大臣にここでちょっと角度を変えてお尋ねをいたしますけれども、大学の中期目標、中期計画という問題につきまして、私もたびたび取り上げてまいりましたが、その私の質問に対しまして、このように御答弁されていらっしゃいます。国立大学法人につきましては、大学の自主性、自律性を尊重する観点から特例を考えているわけでございます、中期目標と中期計画は、あらかじめ各大学において一体的に原案を検討する、そして、中期目標においては、文部科学大臣は、各大学から提出された原案を十分尊重し、大学の特性を配慮して定めるということになっておりますと御答弁されていたと思います。
 ところが、今どんなことが起こっているか。十一月五日、これも国大協の第九回国立大学法人化特別委員会に、中期目標・中期計画の項目・記載事項というのが配られましたよね。杉野大学改革推進室長がそれをもって説明をされたわけでございます。こうなりますと、文科省が、記載事項、重要事項、かなり詳細なのを配ったわけですから、大学の自主性、自律性どころか、文科省による目標、計画のいわば大学への押しつけということになりませんか。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 私が先般お答えいたしました点、委員がお読みいただきましたけれども、その点はいささかも変わっておりません。今御指摘になりましたのは、中期目標について、記載する事項は一体何なのかということについて項目を示したというお話でございます。
 今、法人化に向けて準備を自主的に各大学で進めてもらっているわけでございますが、その記載事項のイメージについて極めて高い関心がありまして、作成指針を示してほしいと大学側からの強い要望があるわけでございます。要するに、中期計画で何を定めたらいいのかということが明確にならない限り、その中に盛り込むべき中身は自分たちで自由にできるけれども、一体どういう項目を考えたらいいのかということがわからない、ついては、それについてイメージを示してほしいということがございます。
 また、調査検討会議の最終報告におきましても、中期目標の作成指針などを提示することが望ましいと書かれているわけでございます。
 このために、中期目標に関する、現段階において文部科学省としての考え方を事務的に取りまとめて、国立大学法人化特別委員会を設けて検討を行っております国立大学協会に対して検討素案として参考までに提供したものと承知いたしております。
 要するに、各大学が自主的に、自分たちの目標なり、あるいは未来の計画について考えるのは当然でございまして、しかし、どういう点でそれを書きあらわしていったらいいのかという点については、それはイメージが欲しいということはこれまた当然の要求でございまして、それに対して担当の方でそのことについて一つの素案として提供しているということでございまして、何ら私が先ほど申し上げたことと矛盾することではございません。
石井(郁)委員 先般も議論がございましたけれども、やはり目標とか計画とかというのは、それは運営交付金にもつながることでもありますから、評価にもつながることでありますから、大変慎重な検討が要るんだということが大きな前提としてあると思いますけれども、私、文科省が配付いたしましたその項目・記載事項というのを見まして、しかし余りにも細目に及んでいるんですね。それでちょっと驚いているんです。これはあくまでも参考として配ったと言われますけれども、今皆さんがこういうことを提示したら大学がどのようにこれを受け取るかというのは、これまでの文科省と大学との関係でもう重々御存じのはずなんですよね。それは余りにも細目だ。
 例えば、学士課程における教育の具体的目標にどんなふうに書かれているか。専攻分野以外の分野に関する体系的な知識、外国語能力、情報リテラシーの修得などについて学生が身につけるべき学力等に関する具体的な目標ですよ。それから、幾つかピックアップですけれども、想定される望ましい卒業後の進路、国家試験受験・合格率等に関する具体的目標、また、大学教育における産業界、地域社会との連携の推進方策、技術移転や共同研究についての具体的な目標やリエゾンオフィス等の体制整備、こういうことがずっと並んでいるんですよ。それも、二重丸と一重の丸とに区別されているわけです。今申し上げましたのは全部二重丸で必要的記載事項です。だから、これらは必要的記載事項ですよという形でずっと項目が並べられているということです。一重丸は、各大学の状況等に応じて記載する事項例となっている。
 だから、参考例だったら、記載する事項例ということならまだしもというか、ありますけれども、必要記載事項というのは一体何なんでしょうか。こういう枠組みがいわばすべての大学に示されると、これはもう画一的枠組みそのものじゃないですか。必要記載事項ということがありますので、では、これが入らないと中期目標、中期計画というのは認可されないというふうに文科省はお考えなのでしょうか。
工藤政府参考人 おめもじの資料は、あくまでも、上に検討素案・未定稿とありますように、先ほど大臣から御答弁申し上げましたように、大学からの要請もありまして、何らかのイメージのためにお示ししたわけでございますし、ここにありますように全くの未定稿でございます。
 これから、各大学からのいろいろな反応も含めて、十分もっとリーズナブルな方向に改善していかなきゃいけないとは思いますが、むしろ、これに至ります沿革としましては、調査検討会議のレポートをまとめられるに当たりまして、各大学でいろいろこのイメージをまとめてみましたら、大変膨大なものになったのでございます。このレポートの参考資料で示してございますが、余りにも膨大であるがために、これじゃかえって作業が大変だねということで、もう少しスリム化しながらでも、せめてこういうことぐらいは事柄として必要ではないかという御参考のイメージで、検討いただくための資料なのでございます。これで拘束しようということとか、中身まで私どもが立ち入って何か言っているわけでは決してないのでございます。
石井(郁)委員 確かに、この三月の調査検討会議では中期目標、計画の枠組みのおおよそが示されたんですね。だから、各大学はそういうことに沿っての作業をしてきたと思うんですよ。しかし、今お話しのように、どうもそれでは目標たり得ないというか、評価する計画たり得ないということになったのかなと私は思いますけれども、こんなに細かなことを、記載事項を出されると、今未定稿と言われましたけれども、これは事実上確定的なものとして下の方では受け取るんですよ。よく御存じじゃないですか、そういうことは。しかも、一つの案として出される。
 だから、大臣は先ほど、最初の御答弁は全くいささかも変わりないと言われまして、それは大変、そうであるべきだと思いますけれども、要するに、各大学が自主的に決めるんですよというのが今までの文科省の説明なんですよ。しかし、これはどこに自主性があるんですか。こんな細かなことまで、教育研究の内容まで、同じように、同じ枠組みですべての大学が書かなければならない。これは、自主的なもの、自律的なものだというのは全くのごまかしだということになりませんか。
 私は、国が大学の目標までこうやって画一的に決める、そういう法人化になるとすれば本当に日本の大学というのはやはりだめになると思いますよ。だから、今まで、法人化で自主性、自律性が高まるというのが文科省の説明でしたけれども、そしてそういう大学を法人化に向けてずっと歩ませてきましたけれども、結局、最後のところに来て、それほどの自主性は認められない、目標、計画のところでがんじがらめになっているということじゃありませんか。私は、こういう法人化作業はやめるべきだというふうに思います。
 それで、加えて問題なのは、やはり文科省は本当にルール破りをしていますよ。もう一つのことを申し上げたいと思うんです。
 国大協には、もうまさに法律が成立したかのように、いろいろなことが今押しつけられています。国立大学法人の運営交付金の算定基準、今申し上げた中期目標、中期計画の記載事項の課題がございます。それから、会計関係諸規程モデルについて、何々大学の会計規程をつくりなさい、法人ですから会計規程をつくりなさいと。それから大学の物品管理規程もつくる、大学の不動産管理規程もつくるということがどんどん説明されています。これは、今お話しのように、参考案とか未定稿などとして、国会で追及されたら困るということで、逃げられるように取り繕っているようでございますけれども、このようにやりなさいというものなんですよ。確定的なものです。
 国立大学の運営交付金の算定基準では、管理運営に必要な経費として、毎事業年度の管理運営部門の常勤職員にかかわる人件費、退職手当を除いてということでは、次のような数式で決定しなさいと数式がずっと載っていますね。それから、学部、大学院学生等の教育に必要な経費はこういうものです、研究に必要な経費などは以下の数式によって決定すると。だから、もう法人化ということで、具体的なこういう準備作業を各大学に事細かに指示が出ているわけですね。
 これらは法律が成立して初めてできる話じゃないんですか。国会に法律が提出されていません。また、国会の事情で、これは成立するかどうかもわかりません。また、どんな内容で成立するかもわからないじゃありませんか。それなのに、こういうことを大学に持ち出して作業をさせる、実務などさせる、そういう権限はどこにあるのでしょうか。御答弁ください。
工藤政府参考人 国立大学の法人化については、お立場によっていろいろ御意見があるかもしれませんが、少なくとも、この三月のレポートをまとめるに当たりましては、大変多くの大学関係者にも御参画いただきながらまとめてきてございます。
 その中で、議論の終息、終盤に至りましてふと思ったのでございますが、大変激しい議論、いろいろありましたけれども、みんな思いは同じで、もっと国立大学をいいものにしよう、この法人化の制度設計によってはそれが可能になるではないか、いいことはもっと早くやろうということでは、各界、各方面からの御参画の方、一緒だったと私は理解してございます。
 そういう中で、来年の通常国会にお願いしようとスケジュールしてございますけれども、その後できるだけ早く移行するためには、各大学それから私どもも含めて、それぞれの立場でいろいろな準備が必要でございます。もちろんまだ法案は出してございませんし、成立してもいないわけでございますが、仮にその法案、法人化という方向で予定のスケジュールでいくとなりますと、事前に準備することが結構ございまして、各大学でも、国大協の総意として、もう準備に入ろうじゃないかということで、自主的に御準備をしていただいているところでございます。
 そういう中で、今の運営費交付金につきましても、では実際にどれぐらい各大学にお金が来るんだろうか、それが不安でなかなか制度設計しにくい、あるいは検討しにくいという声も寄せられている中で、実際こういうイメージですよと、数式いろいろ使ってございますけれども、突き詰めて言えば、従前の、前年度までの国のお金をある程度勘案しながら教育研究に不自由ないような算定をして、それを運営費交付金ということで行うんですけれども、学生数とか教職員数とか、一定の数値的な基礎で算定できる経費もございますけれども、必ずしもそれだけで一律にいきませんので、そうでない部分は特定運営費交付金という形でちゃんと考えていますよ、実際こういう方向になるのではないでしょうかというイメージを大学の希望によってお示ししたまででございまして、別にこれで確定したとかということじゃなくて、各大学の検討に資するための、あくまでも参考の資料なのでございます。
石井(郁)委員 確かに、国大協の側から、そのイメージが欲しいとか、どういうふうにしたらいいのかとかいうことがあったかもしれません。しかし、それに対して文科省としては、法律が通っていないんだからそういうことはできない、そういうふうに言うのがあなた方の立場なんじゃありませんか。私は、役所としては、法律ができない以上やれないというふうに回答すべきだというふうに思います。
 しかも、この法人化の問題というのは、他省庁にもまたがっているでしょう。文科省だけじゃないでしょう。どうですか。今申し上げましたように、運営交付金の算定基準の問題だとか、それから中期目標や計画の問題だとか、そういう幾つかの問題、あるいは設置者の問題等々で、他省庁が本当にこれは承認していることなんでしょうか。
 今、私は、運営算定基準だとか会計問題とか、そこにちょっと限定して申し上げてみたいと思うんですけれども、これは他省庁の承認の上で、文科省としてこれでやれますという話をされているんでしょうか。確認しておきます。
工藤政府参考人 最初申し上げましたように、これまでの先行独法とかなり違う制度設計の部分がございますので、その部分については、今各方面と折衝をし、調整している最中でございます。
 ただ、先ほどの、例えば会計基準もそうでございますし、運営費交付金のあり方もそうでございますが、先行の独法の例を参考にしながら、かなりリーズナブルなものとして枠組みを示しているわけでございまして、別にこれで決まったとかということじゃなくて、考え方として、大体こういうふうなことをしながら、算定などしながら、ちゃんとした交付金が行くんですよということを大学にお示ししながら、大学の不安感を払拭し、いたずらな混乱とかむだを排除したいというのが私どもの本旨でございます。
 来年通常国会で御審議いただく際に、むしろもっと鋭い御質問があるのではないでしょうか。私ども、こういう準備をしなければ、法案を出したはいいが、ちゃんといくのかねという厳しいおしかりもいただくのかもしれません。私ども、せっかく制度改正する以上は、万全を期して誤りなきようにしたいということで、いろいろな準備を大学ともどもさせていただいているところなのでございます。
石井(郁)委員 今のお話のように、決してこれは確定的ではない、運営算定基準だとか会計の問題でもというお話ですね。もちろんそうだと思うんですよ、確定していたら大変なものですから。しかし、そこには他省庁とのまだ十分な調整の余地もあったり、まだそういうことを含んでいるということでしょう。
 しかし、そういうものを大学に投げかけて、今大学は、中期計画、目標も、そしてこういう種類の運営交付金関係の問題でも膨大な作業をしているんですよ、実際。これは大変な作業も要るでしょう、国立大学が法人化に行くわけですから。本当にその作業で、事務量で、忙殺されているんですよ。ところが、それはもしかしたら無になるかもしれないじゃないですか。そういうものを含んでいるんでしょう。私は、これは一番、当の大学に対して、大学人に対して大変無責任なやり方だと思いますよ。こんなこと進めていいのかという意味で、私は、これは法制定以前に、本当にこんなことやるべきじゃない。調整もついていない、承認もされていないことをやるべきでないということを強く申し上げておきたいんです。
 加えて、もう一点ですが、何とこの十一月には国立大学法人化についてのスケジュールまで示されているでしょう。これは最後に大臣に伺いたいと思うんです。これも驚くような中身です。
 十一月上旬には中期目標等の記載事項をつくる、十二月下旬から来年の一月にかけて中期目標等の記載事項等を各大学に提示する、二月に引き続いて各大学において中期目標の原案等を検討する、三月から四月、各大学は検討中の中期目標等の原案について適宜事前の相談、調整をする。だから、もう事前の相談、調整をする。法案も通っていない、私たち法案もまだ見ていません。どんな法案かもわからないのに、こういう事前の調整まで進めていく。これはもう本当に文科省の越権行為そのものじゃないですか。これはもう官僚の暴走行為ですよ。大学の自主性、自律性などどこにもないじゃありませんか。これではもう文部科学省立大学ですよ。どうですか。
遠山国務大臣 かつても御説明したと思いますけれども、国立大学の法人化につきましては、去る六月の閣議決定で、平成十六年度を目途に開始するとされておりまして、我が省としては、次期通常国会への提出を目指して関係法案の作成準備をしているところでございます。
 スケジュールにつきましては、では各大学としてはどうしたらいいのかということで、頻繁なる問い合わせもあり、そうした要望を踏まえて、準備の参考に供するべく示したところでございます。
 先ほど来御指摘のような私どもの作業がもしないとすれば、平成十六年に独法化をするということについて大混乱がむしろ起きるのではないか。各大学の戸惑いを事前に解消して、しっかりした準備をしてもらうために、今私どもとしても、各大学も大変でございましょうが、設置者としてやるべきことをやっております。
石井(郁)委員 もう時間ですが、一言。
 このスケジュール表では、来年の四月から五月にかけて国会の法案審議がされる、五月末に成立する見込みだ、もう国会のことが、全部予定、こういうふうになっている。こんなことでいいんでしょうか。国会の上に文部科学省があるんですか。
 私、けさの新聞で驚きました。これ、規制改革会議、国立大学民営化を提言でしょう。どんどん、事態はどうなるかわからないことをいっぱい含んでいるじゃありませんか。まさに国会情勢も、政治もそうじゃありませんか。そういう中で、こういう文科省が一方的に大学に作業を押しつける、この中身を押しつけるというのは、本当に官僚の傲慢そのものだということを指摘して、この文書はもう撤回すべきだということを要求して、質問を終わります。
 ありがとうございました。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 最初に、大臣にお聞きします。相当たくさん質問したいときょうも思っているんですが、時間が短くてあれですので、お答えは短くいただければありがたいです。
 女性差別ということが、この後いろいろまだ課題があるんですが、女性差別ということを大臣はどういうことが差別だと思っていらっしゃるか、また平等というのはどういうことだと思っていらっしゃるのか、それから俗に言われている男らしさ、女らしさということを大臣はどのように受けとめていらっしゃるか、短いお言葉をいただきたいと思います。
遠山国務大臣 これは、大臣としてお答えするような中身でありますよりは、個人としてどうだという御質問だと思いますけれども、女性差別、そうですね、やはり機会が均等でない場合は、これは一つの差別でございましょうね。それから、組織の中でどのように扱われるか、これも機会の均等に絡みますけれども、そういったことが一つ、大きな点ではなかろうかと思います。
 私は、男らしさ、女らしさということについて、こういうところで言うよりは、それぞれの家庭なりそれぞれの信条においてこのことについては考えればいいと思います。ただ、男らしさ、女らしさということを強調する余り、特定の形にはめ込んで、本来持っている可能性を狭めるというようなことはよくない、こういうふうに考えるところでございます。
山内(惠)委員 条約からということをお聞きしませんでしたから、今のお考えが大臣のお言葉だということだと思いますが、差別撤廃条約では、第一条、女性に対する差別とはという意味では、区別、制限、排除という、このことを差別と言っています。世界の行動計画では、平等とはと言うとき、今大臣がおっしゃった機会の平等、そして権利の平等、そして、大変厳しいと思いますけれども、責任においても平等であることと言っています。
 ところで、女らしさ、男らしさに関しましては、基本的に男女の違い、体の違いということまでは、本当に事実違うわけですから、差別撤廃条約の第四条においても、母性を保護するということで、その規定が差別にならない特別措置ということも書かれています。しかし、男らしさ、女らしさということでいえば、やはり社会的、文化的につくられてきた性差ということでいえば、そこのところを、しっかりと平等感というのを現場で子供たちに教えていかなければならないという意味で、つくられてきたものの変更ということが大変重要だというふうに思っています。
 そのことからいえば、先日もこの委員会で話題になっていましたが、「ラブ&ボディBOOK」というのは、やはり思春期にある男子にも女子にも必要な問題だというふうに思います。その意味で文科省は、一度はこのパンフレットを配られたわけですが、何年生に配り、どのような観点で配られたのだったか、また、回収した、厚生労働省が回収したというふうに言っているんでしょうけれども、現場にあるものを回収したんだと思いますので、なぜそこを回収したのか、二点についてお聞きしたいと思います。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 これは、「ラブ&ボディ」につきましては、厚生省所管の財団法人が作成をし、たしか百二十万部か百三十万部、地方の保健所等、保健機関等を通じて希望がある教育委員会、学校等に配付をした、こういうふうに承知をいたしております。
 なお、国会等でもいろいろな議論があったわけでございまして、その後、この財団法人から、使わないのであれば回収をするというような趣旨の通知が流れ、不必要なものはまたそういった形で法人の方に戻ってきている、こういうことだと承知をいたしております。
山内(惠)委員 思春期にある子供たちというのは、大変性の問題について悩んでいます。私も各教室にいたときに、自分のクラスの子供でない高学年の子からも問い合わせ、相談、いろいろな形でありましたから、中学生や高校生となると、もっと悩みは大きいんじゃないか。
 そういう意味では、我が国は、どちらかというと、性の教育についてタブー視する傾向があるわけで、その意味でこそ情報は本当に学校で欲しいものだと思います。世の中でいえば、はんらんしているのが現状じゃないでしょうか。その意味で、これを回収するに当たって、どこが問題だったのかということがもっと問われるんではないかと思います。
 この中で、私はいろいろな意味で評価したいと思いますが、援助交際というのがあるけれども、この言葉はまやかしだ、それから、子供の買春、子供ポルノ禁止法があるよというようなことまで、本当にいろいろ丁寧に題材を選んで載せている状況にあります。私は、このことを、回収するという形ではなくて、使うのも使わないのも学校現場に任せてよかったんじゃないかと思います。
 もちろん、私だったら、自分の学年にこのパンフレットが合うだろうか合わないだろうか、もうちょっと高学年の方がよかったんじゃないか、もし、中学校で無理であれば高校生でもいいんじゃないかということを考えられる大変いい問題提起であったと思います。
 特に、望まない妊娠というのを、未成年の子供たち、過去最多を更新しているという情報もあります。そのことから考えれば、道徳教育の充実だけでは、もはや及びつかないところに子供たちはいます。寝た子を起こすなという意見もありますけれども、中学生の実態は、もっと知っているのも、しかもそれは間違った情報で知っているというだけに、今後、このパンフレットを活用するというような方向で再検討いただきたいなと思いますが、いかがでしょうか。ぜひ短くお答えいただきたいと思います。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 今先生からの御質問をお聞きして、先般、衆議院の青少年特別委員会で馳先生、きょうお越しでございますけれども、厚生労働省の担当局長とかんかんがくがくの議論をされたことを思い出すわけでございます。
 むしろ、馳先生の方がお詳しいわけでございますが、例えば、ピルの問題、副作用についての記述が十分でないんではないか。それから、これは中学生、例えば中学校三年生全員に配るというようなことでございますけれども、それぞれ発達段階に応じた性教育ということがやはり必要だろうと思っております。中学生全員に一律にそういった内容のものを学校現場で教えるのがいいのであろうか。あるいは、リプロダクティブヘルス・ライツでございますか、こういった記述につきましても、ライツというような、権利でございましょうか、これは男女共同参画社会基本法をつくるときにおいてもいろいろ議論があったと承知をいたしておりますけれども、やはりそういった問題についての記述についても慎重に取り扱うべきではないだろうか。こんな議論が続いたことを記憶いたしております。
 いずれにいたしましても、そういったことについては、やはり学校現場で十分慎重に取り扱う必要があるのじゃないだろうか。そういった観点から文部科学省におきましては、都道府県の教育委員会の担当者にこれまでも指導をしてきたところでございますし、引き続き指導してまいりたい、かように考えております。
山内(惠)委員 慎重であるということについていえば、慎重であっていいと私も思いますが、でも、情報を発信させないという状況こそ間違った判断だと私は思います。かつて悪書追放というような歴史も世界じゅうのあちこちにもありますけれども、この情報を上手に使う現場にはその知恵があるというふうに思います。発達段階と言われれば、こちらの方たちよりは現場にいる者が一番よくわかっているということを押さえて、ぜひ今後もこの活用を改めて考えていただきたいものという意見を述べて、この問題は終わりにしたいと思います。
 次の問題は、今回の中間報告をなさった教育基本法にかかわってなんですけれども、昨年の十一月に文部科学大臣が諮問をされた。この諮問をされた文書自体も随分長いもので、異例の長さであった。そして調べましたら、本当に審議項目まで細かく示唆をしている。こういう視点から見直しをしてほしい、こういう方向から検討をということを述べられているのですけれども、これは中教審での論議を初めから縛るような方向に読み取れる内容だと思いますが、このことについていかがでしょうか。
遠山国務大臣 諮問文、異例の長さというお話でございますが、それは諮問の仕方によっていろいろな諮問の仕方があると思います。
 教育基本法の見直しにつきましては、これは平成十二年三月に発足しました教育改革国民会議において精力的に御議論をいただいて、平成十二年十二月に基本法の見直しに取り組むことが必要であるとの報告をおまとめいただいたところでございます。
 中央教育審議会におきましては、その会議の提言の趣旨も十分踏まえて、さらに具体的な検討をいただくために、検討事項をできる限り明確にして諮問を行いました。中央教育審議会では、この諮問を踏まえながら、その内容には特にとらわれずに、諮問理由に明示されていない事項も含めて幅広く、自由闊達な御議論が行われているものと承知いたしております。したがいまして、諮問が審議会での議論を縛っているとは考えておりません。
山内(惠)委員 十一月の十四日にこのまとめを大臣に提出された中教審の委員がこのように記者団に感想を発表しているという新聞報道がありますが、通常、諮問の中身は数行程度だが、今回は諮問自体異常に詳細で長く、初めから結論が決まっていたとこの委員が言っているんですね。そしてこの委員は、私に言わせればセレモニーのようなものだった、このように言っています。そのことについて新聞も、わずか一年議論不足、そして、民意問わぬ文科省、このように言っています。
 このことについていかがでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 平成十二年に教育改革国民会議が総理の私的な懇談会として発足をし、かれこれもう三年近く、教育改革国民会議の議論を含めればやっておるわけでございまして、決して議論が拙速であるとは思っておらないわけでございます。
 また、文部科学省自身、いろいろなホームページでその都度国民の皆様方の意見も聞きながら議論を進めてきておりますし、決して、この委員会の議論というものがセレモニーである、こういうことは全くないと信じております。
山内(惠)委員 全回出席をした委員がこのようにおっしゃっているということは、そのような感想を持たれたということは受けとめておいていただきたいと思います。
 ところで、大臣は、新しい時代にふさわしい教育の理念となる教育基本法の見直しについて、国民的な議論が不可欠ということをきょうも何度もおっしゃっています。そのことでいえば、実は私はこの傍聴をしたいと思いました。しかし、私以外の市民の方も傍聴をしたいと言った方がいると後から聞きましたけれども、その傍聴もさせなかった、また議員の傍聴もさせていただけなかったというあり方が、私は、大変問題だったと思います。マスコミの方だけでお許しください、会場が狭いからというお答えもいただきましたけれども、国民に開かれた論議を中教審はするべきであると私は思います。
 その上、議事録を取り寄せましたら、この議事録がまた、本当に討論がなされている状況をそのままリアルに載せたというふうに思えません。例えば、お一人お一人の発言について、だれが発言したか、全く氏名が書かれていません。それに比べて教育改革国民会議の議事録は、前に提出いただきましたが、そこには全部お名前が書いているのに、中教審にかかわっては書いていない。これをお聞きしましたら、慣例となっていると言うのですけれども、広く国民的な議論が不可欠とおっしゃっているのであれば、この発言者のお名前は必要であると私は今も思っています。この国民的な議論が不可欠に対して矛盾すると思いますが、いかがでしょうか。
近藤政府参考人 お答えいたします。
 会議や議事録の公開の形式をどうするかは、最終的には中央教育審議会で決定される事柄だと思っております。中央教育審議会では、基本的に、規則に基づきまして議事録をホームページで公表し、積極的な審議を確保する観点から、委員の氏名は示さず、意見のみを表示する形式にしておるわけでございますし、また、中央教育審議会が発足をいたしました昨年の二月に、先生おっしゃいましたけれども、会場のスペース等の問題から、当分の間でありますけれども、傍聴できる人数に限りがあるため、現在、公開の対象をマスコミ関係者とするという形で、中央教育審議会の意思決定としてそういう形で決めたわけでございます。
山内(惠)委員 やはり国民的な議論が不可欠と思うような、はっきり言って、一九四七年以降初めて手直しをするということですから、それぐらいの丁寧な、発言者がだれなのかぐらいは書いておくべきだというふうに思います。
 ところで、公聴会、今回のは、「「一日中央教育審議会」意見発表者・傍聴者の募集」ということで、私も後から知ったわけですけれども、地元に既にこれが行っていまして、私の北海道で参加したいという人がいたのですけれども、よく見ましたら、五会場の中に北海道はなかった。それで、これもお電話で質問いたしましたら、地域バランスなど考えて検討されたと言うのですから、だとしたら、なぜ北海道を入れていただけなかったのかと思って、また調べましたら、何と東北地方は秋田、福島の二県入っているんですね。地域バランスと言えるでしょうか。そして沖縄も入っていない、四国も入っていないというのがこの状況です。やはり本当に国民に十分に知らせる努力をするとしたら、この東北地方の二カ所でほかのところがないということ自体が地域バランスに欠けると私は思います。
 ところで、この一日中央教育審議会のPRの仕方なんですけれども、どのようになさっているのでしょうか。私は、このプリント自体も、地元からそういう要望があって初めて知って要求をしましたので、中間報告のまとめをされる前の日にお電話の状況でこれをいただくことができました。
 ところで、この開催について、文部科学委員である私たちには知らされていない。外務省がヒアリングをするというときには、私は外務委員でも何でもありませんけれども、外交防衛委員でも何でもありませんけれども、北海道でするということを知っていました。そのことでいえば、私たち委員に知らせてもよかったのじゃないかと思いますが、今回は議員の方にはこういうふうにやるというお知らせはありませんでした。ホームページその他を見よという言い方もございますけれども、こういうプリントも出しているわけですから、出していただいてもよかったと思います。
 ところで、東京会場、五百人入る会場を用意していらっしゃる。そこに、私の知った時点では、応募している人が百人と聞いています。それ以降どれぐらいふえているのかもお聞きしたいと思います。
 それから、意見発表は各会場六人ということですが、この意見発表の希望者はこの時点で十人しか希望していないと聞いているんですけれども、現時点でどのようになっているでしょうか。
近藤政府参考人 一日中央教育審議会の参加者の応募状況でございますが、十一月二十六日現在で、今手元にある東京会場の数字で申し上げますと、意見発表希望者が八十六名でございます。なお、傍聴希望者は定員五百名のところでございますが、六百六十七名、こういう状況でございます。
 なお、先ほど委員から地域バランスを欠いているのではないか、こういう御指摘がございました。当初、一日中央教育審議会は、交通の利便性などから、東京、福岡、京都の三会場のみで開催を予定していたわけでありますけれども、こういった大都市圏以外に、特に東日本地区での開催を追加すべきではないか、こういった御意見が寄せられたことを踏まえまして、新たに二会場を追加して開催するということになったわけでございます。
 追加された二会場につきましては、より身近な形で意見交換ができるようにという観点から、ほかの三会場よりも小規模な形で開催することを念頭に置きまして候補地を検討した結果、地理的なバランスも考え、東日本の太平洋側にある福島県と日本海側にある秋田県の二カ所で開催することになった、このように承知をいたしております。
山内(惠)委員 五百人会場に六百を超える人たちが希望があるということで、少し私はほっとしましたが、それにしても、地域バランスと何度もおっしゃるんですけれども、土曜日の開催だけだったものに日曜日を足すと考えた時点で地域バランスの本当の意味を追求していただきたかったです。今、飛行機であれば日帰りが十分できるのが、北海道も、もしかしたら四国も、それから沖縄もできる時代を迎えているわけですから、それぐらいの配慮はあってもよかったんじゃないかと思います。それを、地域バランスというお言葉を使いながら東北の二会場というのは、なお納得はできない選定です。
 次なんですけれども、ついでですから、既に十一月の二十日、二十五日で締め切りをしている状況ですから、福岡、京都会場は三百人入るところ、それから東北の二会場は二百名程度ということですから、何人参加希望あるのか、お聞かせください。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 その他の会場につきましては集計中でございますので、集計が終わりましたならばまた先生に御報告をしたいと思います。
山内(惠)委員 わかりました。
 先ほどのお話の中に教育基本法のことについて知らない人が八四%もいるという状況であるとしたら、もしかしたらきょうこのように審議していることも多くの人々は知らない状況にあるかもわからないと思います。その意味で、PR、先ほどホームページにもとかいろいろな形で言われましたけれども、もっとこのPRを時間をかけ、それから文科省として宣伝する必要があるんじゃないかということをもう一度言って、次の問題に行きたいと思います。
 今回、教育基本法の見直しを文科省が提起をしているわけですけれども、先ほど第十五回と十六回の部会ですか、の人数が成立していないというお話がありましたので、ちょっとここのところをもう一回確認しておきたいと思います。
 十五回と十六回は定数を満たしていなかった、それで懇談会にしたということは、正式にこの法案を審議したという形でないまま中間報告を出した、そういうふうに押さえてよろしいですか。
近藤政府参考人 まず、中央教育審議会は、昨年の十一月から一年にわたって大変熱心な御議論をいただいたわけでございます。確かに、これは大変残念なことでございますけれども、第十五回と第十六回の基本問題部会は定足数が達しませんでしたので、正式な部会としては取り扱わず、懇談会にしたわけでございますが、当日欠席の委員からも、書面でありますとかまた電話で御意見を伺うなど、できる限り多くの意見、意向が審議会に反映されるように努めたわけでございます。
 なお、基本的に中教審のこの基本法あるいは基本計画の議論につきましては、基本問題部会で、それ自体で案を議決して総会に送る、こういう形をとっていないわけでございます。基本問題部会でいろいろ議論がされたことを会長、副会長がさらに整理をし、総会で、しかも総会では基本問題部会の臨時委員も御出席をいただき、全体として御議論をいただいて、去る十一月十四日に大臣に中間報告が出された、こういうことでございます。
山内(惠)委員 出席の状況も全部調べてみました。本当にきちっと全部参加された方は三人しかいないという状況で、五〇%に満たない会合がある。これは本当に問題だったというふうに思います。
 その意味で、もう一つお聞きしますが、素案の文章をまとめた方、中間報告を文章化してまとめたのは文科省の方ですか。
近藤政府参考人 私どもは、それぞれの部会なり総会のそういったやりとりを整理はもちろんいたします。基本的に、会長が副会長等と御相談しながら、もちろん私どもも、そういった議論のたたき台としての、会長、副会長の御指示を受けながら文章を作成するということはございますけれども、第一義的に責任を持って対応されておるのは会長でございます。
山内(惠)委員 基本的に、文章もきめ細かく、このように検討してほしいということも丁寧に書き、そして審議したものをまとめていく、文科省が諮問をするわけですから、ここのところはやはり随分問題があると私は思っています。
 次のところに行きます。
 今回、なぜ教育基本法を見直さなければならないのかという理由のところも読みましたが、なかなか納得できるような説明がないように私は思います。教育の現状と課題というところにも課題はたくさん書かれています。国民の間で自信の喪失、それからモラルの低下、青少年の凶悪犯罪、いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊、さまざまなことが書かれています。では、そのことについて、実際にこのことに当たっている学校現場の先生方それから子供たちの意見は聞いたのかということが、現場と乖離、上滑りの議論というふうに新聞の中でも書かれている状況にあります。
 学校にいる子供たちが本当に勉強することに意欲を持てない一つに、高校を出ても就職ができない、子供が将来への希望を実感できないというような状況にある。そして、モラルの低下を言うのであれば、本当に政治家、国会は政治に関しては最大の教育という場所にいる人たちが次々逮捕されたり、問題を起こす。本当にモラルの低下している、こういう国会状況。自信の喪失と言うのであれば、本当に親も終身雇用ができない時代になっているということであれば、大人の鏡である子供たちだろうと思いますが、この原因究明ということをなさったのかどうか、なさっていないというふうに私は押さえています。
 時間の関係もあるので、もう一つ、ここの教育の現状と課題のところに書かれている国家戦略としての教育という言葉があるんですけれども、これはひどい言葉だと私は思います、国家戦略としての教育改革ですか。そのようなことを考える人がいるのはいいんですけれども、個人の側から考えれば、個人の教育権を踏みにじるものだと私は思います。個人の尊重、このことを骨抜きにする考え方ではないか。子供を敵視しているのではないかということまで思った人がいます。
 あえて私も前の教育改革関連三法案のときにも申し上げましたけれども、教育改革国民会議の中の方の発言にもありましたけれども、子供はひ弱になり、規範意識や学ぶ意欲を低下させ云々、ずっとあって、我が国が立ち行かなくなる危機感を持っているということが教育基本法を変える理由ですか。そこのところをお聞かせください。
近藤政府参考人 国家戦略としての教育改革のお尋ねがございましたが、これは、委員御指摘のように、第一章に書いてあるわけでございますけれども、我が国もまた、今いろいろと教育をめぐって課題がございます。世界各国もまた、今いろいろな、さまざまな課題を抱え、そういったことを背景に国家戦略としての教育改革が急速に進行している。ブッシュ大統領しかりであります。また、イギリスのブレア首相は、一に教育、二に教育と、国家として教育改革を全力を尽くしていくんだと。こういった趣旨のことをこの第一章で掲げているわけでございまして、そういった大きな流れ、国内外で教育改革に寄せるそういう大きな流れ、こういうものを踏まえて、我が国においても教育の根本にさかのぼって議論をしていくべきではないか、こういう問題意識で議論がなされていると思っております。
山内(惠)委員 国家が教育を重視するというのは、それはそうですよ。でも、国家戦略という言葉は、諸外国もそのように使ってはいないんじゃないでしょうか。今のお答え、時間がないから、私は、そういう言葉を使われること自体に、子供の一人一人の人権を大事にしていないからそんなことを当たり前のように言われるんじゃないかというふうに思います。
 今回の中間報告を読みますと、国際化ということが随分書かれていますし、今御答弁いただいた中にも国際化した社会ということを言われるんですけれども、国際化ということを考えるとき、競争ばかりですか。国際化と言われるのであれば、我が国も批准した子どもの権利条約それから国際人権規約その他、先ほどお話をお聞きしましたが、配られたというだけではだめです。論議したのも、だれかが意見を言ったということは論議になりません。
 もう一つ、ユネスコ宣言とさっきおっしゃられたんですけれども、ユネスコ憲章の精神は、今の状況だからこそ、私は、この憲章が問われるときだと思います。戦争は人の心の中に生まれるものだから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならないということを、ユネスコは十年間の方針をとって、ことしからこういうふうに戦略をちゃんと、それこそ戦術を練って、学校現場でやるようにということを願っているじゃないですか。
 しかし、今回、私は、このことと大変矛盾すると思うことが、前文については、法全体の見直しの考え方が決まってから改めて検討するとなっています。そして、でも、その前に国民的議論の場を一日公聴会でやるわけですね。では、それが決まった段階の論議ということを前段のところにちゃんとしておかないで、後からするというのは無責任だと私は思います。しかも、今回の前文を読んで必死に探しましたが、平和という言葉は、もし見逃していなければ、一カ所しかない。これは本当に前文を大事にしての発想でしょうか。このことについてお聞かせいただきたいと思います。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 前文の問題は、今回の教育基本法全体の見直しを踏まえて、その考え方が決まった後で改めて検討しようというのが中教審の審議の状況でございます。
 ただ、今後、一日中教審、公聴会でございます、あるいは有識者等からもヒアリングを行います、またパブリックコメントにおいてもいろいろな国民の御意見を承るわけでありますけれども、その中には、当然、この前文も含めて、教育基本法全体のあり方について幅広い御意見を寄せていただけたら、こういうふうに思っておるところでございます。
山内(惠)委員 時間がもっとあると思って話をしていましたのです。時間がなくなってしまったようなんですけれども、今回の中間報告の中に、道徳などの徳目を法律に盛り込むような提案がなされているように私は思います。これは、憲法第十九条の保障する思想、良心の自由に反すると私は思っています。法律というのは、人々の行為を律するものである、法律は。そして、心を律するということを法律に書き込むなどということはしてはならないと思っています。
 ところで、短い時間でお答えいただきたいんですけれども、日本人とはということ、それから伝統とかいうことが書いてありますが、どんな論議をなさって、どんな定義をしているのか、短くお答えいただきたいと思います。
近藤政府参考人 前段の、道徳などの徳目の件でございますが、これはもう委員御案内のとおり、現行の教育基本法におきましても、第一条の教育の目的において、国民として備えるべきさまざまな徳目が列挙されておるわけでございます。昭和二十一年あるいは昭和二十二年の法制定当時のいろいろな議論の中で、当時やはり教育に欠けていたと考えられる徳目を特に掲げて、現行教育基本法第一条に掲げるんだ、こういう考え方に立って規定をされたわけでございまして、今回、中央教育審議会で、特にこの教育の基本理念についていろいろな議論があったわけでございます。現在の理念に、これはもちろん大事でありますけれども、さらに新たにつけ加えるものは何かないのであろうかということで、公共の精神でありますとか、あるいは道徳心、自律心というものが指摘をされたわけでございますが、こういったものは現在及び将来の教育において重要であり、国民として備えるべきと考えられる徳目を教育の基本理念として法律に規定をするということが内心の自由に反するとは考えていないわけでございます。
山内(惠)委員 考えているかいないかではなくて、法律で縛るというのは、本当に間違っていると思います。そのことを強く言っておきたいと思います。
 それで、先ほど、教育基本法の第十条、「教育は、不当な支配に服することなく、」ということは今後もずっと大事にされるとおっしゃいましたので、ぜひその精神はお忘れになっていただきたくないと思いますが、なぜこの文言が入ったかということをあえて先輩の方たちが言っているんですが、戦前の超国家主義的権力の教育支配が間違っていたということを認識してこの言葉を入れたのだということをぜひぜひ強く覚えておいていただきたいと思います。
 先ほど言いましたように、平和ということは、黙っていてつくれるものでもありません。戦後、今日まで戦争に加担することなく来られたのも、憲法があるからであって、平和ということをしっかりと実現する努力なくして本当の意味の平和は今後ずっと続くことがあり得るかという心配をするのが、今回の教育基本法論議だと思います。
 時間がここまで来ましたので、終わりたいと思います。
古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時五十八分散会


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