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第5号 平成15年3月14日(金曜日)

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平成十五年三月十四日(金曜日)
    午前十時開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    松島みどり君
      松野 博一君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      五十嵐文彦君    鳩山由紀夫君
      肥田美代子君    平野 博文君
      藤村  修君    松原  仁君
      山口  壯君    白保 台一君
      西  博義君    東  順治君
      黄川田 徹君    石井 郁子君
      児玉 健次君    中西 績介君
      山内 惠子君    松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   参考人
   (東京都教育委員会教育長
   )            横山 洋吉君
   参考人
   (千葉大学教育学部教授) 天笠  茂君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
三月十四日
 辞任         補欠選任
  伊藤信太郎君     松島みどり君
  牧野 聖修君     五十嵐文彦君
  池坊 保子君     白保 台一君
同日
 辞任         補欠選任
  松島みどり君     伊藤信太郎君
  五十嵐文彦君     牧野 聖修君
  白保 台一君     西  博義君
同日
 辞任         補欠選任
  西  博義君     池坊 保子君
    ―――――――――――――
三月十四日
 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第三九号)
 国立学校設置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四〇号)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、参考人として、東京都教育委員会教育長横山洋吉君及び千葉大学教育学部教授天笠茂君、以上二名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いを申し上げます。
 次に、議事の順序でございますが、横山参考人、天笠参考人の順に、お一人様十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。また、参考人は委員に対して質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。
 それでは、まず横山参考人にお願いをいたします。
横山参考人 全国都道府県教育長協議会の会長を務めております東京都教育長の横山でございます。
 本日は、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律に関しまして、私どもの意見を述べさせていただく機会を与えていただきましたことを、まずもって感謝を申し上げます。
 私ども都道府県教育長協議会といたしましては、義務教育費国庫負担金の一般財源化、こういう流れの中で、その方向性によっては憲法で保障する義務教育の水準が守れなくなるのではないかと非常に強い危惧を持っております。以下、そうした観点から意見を述べさせていただきたいと思います。
 最初に、義務教育費国庫負担制度に対します私どもの基本的な考え方をまず述べさせていただきます。
 これは申し上げるまでもなく、義務教育は、憲法の規定によりまして、国民として必要な基礎的な資質を培うために、すべての国民に一定水準の教育を無償で提供するものでございまして、国民に義務を課す一方、国と地方とは適切な役割分担のもとで国民に対して一定水準の教育を提供する責務を負っており、都市、地方を問わず、全国どこでもすべての子供に無償で義務教育を受ける機会や水準を確保することは国の責務であると理解をいたしております。
 この憲法が要請します義務教育制度を担保するためには、内容面での担保と財源面での担保が必要でございます。まず、内容面では、学習指導要領が告示として定められまして、それに基づき教科書が編さんされ、学習指導要領に沿った検定制度により義務教育において教えるべき教科内容が担保をされております。
 一方、運営に要する財源につきましては、教職員の人件費及び施設整備費につきまして、国庫負担制度が地方財政法上明記されております。特に、最大の経費でございます人件費につきましては、義務教育費国庫負担法が定められております。
 教育の成否は教員の質にかかっているとよく言われることでございますが、義務教育の水準を確保するためには、すぐれた教職員を一定数確保することが必須でございます。それには、教職員の給与費につきまして、一定の財源が安定的、継続的に確保されることが必要でございます。このため、教職員給与費につきましては、市町村にかわって都道府県が負担することとされ、その二分の一を国庫負担とすることによりまして国がその責任を果たしているのが義務教育費国庫負担制度であろうと思います。
 したがって、義務教育費国庫負担制度は、憲法の要請を受けて、義務教育の水準を確保するための国によります最低保障の制度でございまして、この制度によって教育の機会均等、その水準の維持が図られているものと認識いたしておりまして、この国庫負担金制度の根幹は、ぜひとも今後とも堅持していかなければならないものと考えております。
 次に、今回の義務教育費国庫負担金の負担対象経費の見直しについて意見を述べさせていただきます。
 今回の法改正では、共済費長期給付及び公務災害補償に要する経費につきまして、国庫負担の対象から外して、交付税等の措置により一般財源化を図るものでございます。これまでも、旅費あるいは教材費、恩給費等が一般財源化されておりまして、今回の措置によりまして、教職員の給与費、退職手当など教職員本人に直接支払われる経費以外は、すべて一般財源化されることになりました。
 今回の共済費長期給付や公務災害補償に要する経費は、法律によって支出が義務づけられているものでございまして、一般財源化されたからといいましても、それぞれの給付水準を直ちに引き下げる、こういうことはできませんので、これ自体では地方の財政運営の自主性を高めることにはならないと考えております。
 しかしながら、今回の法改正に伴う国庫支出金の削減額見合いで、地方交付税及び地方特例交付金によりまして地方負担の財政措置がなされたこと、また、今回の見直しと同時に、公立学校教員給与について国立学校準拠制の廃止や教職員定数の弾力化など、各都道府県の自主的な取り組みの余地が広がりまして、地方の自由度を高める方策を文部科学省が打ち出していること、さらに、交付税不交付団体の立場からは、これまでの義務教育費国庫負担金の一般財源化のときとは異なりまして、不交付団体にも交付対象となる地方特例交付金による財源措置がなされておりますこと、こうした点から、今回の法案につきましては、積極的に賛同するというものではないとしても、これまでの経緯、また現下の諸情勢を考慮した場合、容認できる範囲のものと考えております。
 次に、今後の義務教育費国庫負担制度の見直しに当たりまして、幾つか、懸念している点や、あるいは御期待申し上げたい点について述べさせていただきたいと思います。
 今回の義務教育費国庫負担制度の見直しにつきましては、その過程において、地方分権や財政論からの視点を中心に議論がなされてきたように考えております。
 言うまでもなく、地方分権のもとで、地域の実情に応じた特色ある多様な教育を展開することは時代の要請でもございます。そのため、現在、各都道府県では、画一的な教育から個性化、多様化へ向けて、地方の判断と責任で教育改革を推進いたしております。
 義務教育費国庫負担制度が地方の独自性の発揮を妨げているとの議論もございますが、義務教育費国庫負担制度の根幹を堅持しても、この教育改革への主体的な取り組みは可能でございます。何ら地方分権の推進と矛盾するものではないと考えております。
 地方でできることは地方でという地方分権や、現下の厳しい財政状況を踏まえますと、地方行財政構造改革の議論が重要だということは十分理解をいたしておりますが、その議論が、まさに国家社会の基礎たる義務教育をどうするのか、あるいは憲法で保障されている義務教育を今後どのように国民に保障していくのか、こういう議論に結びついていないような感じをいたしますのは、地方教育行政を担っている者の一人として非常に残念な思いがいたしております。
 経済財政諮問会議あるいは地方分権改革推進会議等における議論では、国庫負担金ではなくとも、何らかの財源措置がなされれば支障はないのではないか、こういった意見が多く出されていると伺っております。それは、地方財政の実態あるいはこれまでの経緯をよく理解されていない議論ではないかと考えざるを得ません。単に財源措置の問題として議論するのではなくて、この国庫負担金制度が有する教育水準の保障機能という点に重点を置いた議論を期待いたすものでございます。一定レベル以上の義務教育の水準を維持するということであれば、担保する仕組みとしての国庫負担金制度が今後とも堅持される必要があると考えております。こうした国庫負担金制度の保障機能を考慮するならば、教職員の給与費が一般財源で措置されるというのと国庫負担金で措置されるのでは大きく違うものである、こういうことをぜひとも御理解いただきたいと思っております。
 かつて、昭和二十五年に義務教育費国庫負担制度が廃止され全額が一般財源化されましたが、三年後の昭和二十八年には負担制度が復活した経緯がございます。これは、個々の団体の財政力の違いによりまして児童生徒一人当たりの教育費など義務教育の条件に大きな格差が生じましたことから、地方公共団体の強い求めに応じて復活したものと考えております。もし義務教育費国庫負担金の全額が一般財源化された場合には、これと同様のことが起こることを強く危惧いたしている次第でございます。
 これと関連しまして、昨年十二月十八日の予算編成過程における文部科学大臣、総務大臣、財務大臣の合意では「義務教育費に係る経費負担の在り方については、現在進められている教育改革の中で義務教育制度の在り方の一環として検討を行い、」「「改革と展望」の期間中(平成十八年度末まで)に国庫負担金全額の一般財源化について所要の検討を行う。」とされておりますが、義務教育に係る経費負担のあり方につきましては、その重要性にかんがみまして、財政論を重点に議論するのではなくて、教育改革の観点から、義務教育制度のあり方の一環として議論すべきものであろうと考えておりますので、今後、広く国民の意見を聞くとともに、中央教育審議会等におきまして、地方教育行政全体を見通しつつ、慎重の上にも慎重を重ね、十分議論した上で国としての結論を出していただきますよう御要望申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)
古屋委員長 ありがとうございました。
 次に、天笠参考人にお願いをいたします。
天笠参考人 千葉大学に勤めております天笠と申します。本日は、このような発言の機会を与えていただきまして、心より感謝申し上げたいというふうに思います。
 私は、この原案が、義務教育費国庫負担制度の根幹を維持する、それを前提としてということと受けとめさせていただきまして、その立場から、これについて基本的に賛成する者として、この場で意見を述べさせていただきたいと思います。
 その前提として三点ほど述べさせていただきますけれども、それは、義務教育及びそれを支える国庫負担制度の意義ということについての私なりの理解を申し上げさせていただきたいと思っております。
 まず一つは、日本の近代化及び現代において、それから将来にわたって、義務教育制度の果たしてきた役割というのは語ることができないぐらい大きな役割を持っている、意義を持っている、成果を持っているというふうに理解しております。もちろん、いろいろな意味で手直しをしなければいけないところはそれぞれあるとは思うんですけれども、全体としてとらえた場合にそういう理解の仕方をしております。
 しかも、今後、国際間の競争がさらに激しくなるということが予想される、そういう将来的展望を見たときに、それに我が国が生き残っていく一つの手だてとして、やはりしっかりとした義務教育の存在、活力のある、そして安定した義務教育の制度の存在と維持向上というのが大きなかぎを握っているというふうに理解しております。
 教育の機会均等と教育水準の維持、すなわち、良質の教育を維持し、向上を図るに当たって、国、地方、学校、教師、それぞれがそれぞれを保障する責任があるというふうに考えております。この義務教育を支えるシステムとして義務教育費国庫負担制度の存在は大きなものがあるというふうに理解しております。すなわち、義務教育の安定性、教職員の資質能力の向上、それから先生方の社会的地位の確保などに大きな役割を果たしているというふうに思っております。
 それから、二点目に、義務教育において良質な教育を提供できるか否かということは、やはりすぐれた教職員の確保によるところが大きいのではないかというふうに思っております。
 そういう意味で、教育の水準の確保と教職員の確保というのは決して切り離すことができないというふうに私は理解しております。そのすぐれた教職員を確保するには、その社会的、経済的な地位の確保も無視することはできないというふうに思っておりまして、教員の給与費の安定的な確保というのが今後とも重要な課題であるというふうに思っております。その意味で、二分の一を国が負担しているこの制度は、教職員の方々が安心して教育活動を行っていくことを保障するシステムとして、その意義は極めて大きいものがあると思っております。
 現在、社会全体に大変将来に向けての漠然とした不安感が広がっているのではないかというふうに思っております。また、学校もその例外ではないと思っております。先生方、教員の不安定な状態というのは、義務教育の不安定化に広がっていく心配も懸念されるところであります。これらを食いとめるという意味において、義務教育費国庫負担制度の存在そのものというのは大きな意味を持っているのではないかと思っております。
 それから、三つ目は、義務教育及びその制度について国民全体の信頼をつなぎとめるということが、実は大変重要な課題だというふうに思っております。公教育に対する国民の信頼性の確保において、国の存在というのはやはり抜け落とすことができないのではないか、こういうふうに考えておりまして、この支えというんでしょうか信頼感に、義務教育費国庫負担制度の存在というのは大きな役割を果たしている、そんなふうに思っております。
 以上、三点申し上げさせていただきましたけれども、こういった義務教育の存在を支えていくのが国庫負担制度であるというふうに思っておりますけれども、その上で、この制度の維持、それから根幹を維持するということを前提にした今回の改正であるということ、それから、今回、見直す対象となる経費の財源というのも所要の措置が講じられて確保されるということが確かめられたということにおいて、原案ということを受けとめ支持したい、そんなふうに考えております。
 確かに、財政の問題ですとか経済の活性化ということ、これも今大変重要な国の課題であることは私も理解しております。それから、地方分権の上に地方への権限の拡大、こういうこともまた政策的な課題ということとして受けとめております。こういういろいろな課題をどういうふうに具体的に調整を図っていくのか、バランスをとっていくのか、そういう中で、私は、今回のこの措置ということについては、ある意味での苦渋の選択、やむを得ない措置、そういう受けとめ方をさせていただいております。そういう点では、たびたび繰り返しますけれども、国庫負担制度の根幹については今後も維持、こういうことの方針のもとで、今回の改正はまさにやむを得ない措置として理解をしたいというふうに思っております。
 ただし、義務教育のこれからということについては、先ほど申し上げましたように、私は、大変重要な存在であると思っていますし、国の将来とのかかわりということもやはり考えていかなければいけないというふうに思っております。そういう点において、義務教育のこれからということについて、そこにおける義務教育費国庫負担法の存在の果たす役割について、国民の広いコンセンサスの形成ということが今後望まれるのではないかというふうに思います。それは、これまでの論議がとかく財政からの視点あるいは経済の活性化の視点からの詰めはあったかと思うんですけれども、やはり、義務教育あるいは教育の質の維持向上、そういう立場から改めて、今申し上げたようなこれらのもろもろの制度というのが果たしてきた役割を詰めていかなければいけないんじゃないかと思います。
 したがいまして、義務教育についての新たなる将来的な展望というんでしょうか、あるいは新たなる青写真、こういうことを描くということが必要であって、この展望を欠いて財政と経済の論理を突出させてシステムを見直ししようというのは、義務教育の現状あるいは将来において非常に安定性を欠くものになってくるんじゃないか、そんな心配の念を持っております。
 以上、そういう危惧の念を持ちながらも、先ほど申し上げましたように、現在の状態を踏まえたときにはやむを得ない措置としてこれがあると理解させてもらいますということで私の意見を述べさせていただきました。
 以上であります。どうぞよろしくお願いします。(拍手)
古屋委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。奥山茂彦君。
奥山委員 私は、自由民主党の奥山でございます。与党を代表してというようなことで質問させていただきたいと思いますが、ひとつよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 横山参考人、そして天笠参考人、本当に御苦労さまでございました。
 このたびの義務教育をめぐる論議というもの、我が国は、言うまでもなく教育の水準というものは過去において非常に早くからその制度が着手されて、そして、その中で義務教育の果たしてきた役割というものは、基礎教育を固める上からも非常に大きな役割を果たしてきたわけであります。ところが、このたび地方分権会議で、地方へ義務教育をゆだねるということで、さっきも話がありましたが、財政論とそれから経済活性化、そういう面の論議がやや先走りしておりました。こういうところから少し地方にゆだねるということでありますが、財政の裏づけがなかったということで、国会の中でもかなり批判があったわけであります。しかしながら、国庫において基本的なものは堅持するということになっておるわけでありますが、さもありながらも、まだまだいろいろこれからのあり方、特にまた、義務教育の根幹に関するような問題で論議が随分出てきておるわけでありますから、初めに横山参考人に御質問をさせていただきたいと思っております。
 今回の法改正に当たって、共済費の長期給付及び公務の災害補償にかかわる部分が国庫負担の対象外となるが、それらに要する経費が地方の特例交付金やあるいは地方交付税によって全額このたびは措置されるということなどがありました。しかし、教員の共済制度、公務の災害補償制度に支障が起こらないかということが言われているわけであります。この点につきましてどうか。
 それからもう一点、義務教育費の国庫負担の全額を一般財源化するという議論があった中において、全国都道府県教育長会議ではこの問題をどのように受けとめられておられるのか。まずこの二点、お尋ねをしたいと思います。
横山参考人 お答えを申し上げます。
 共済費の負担金並びに地方公務員災害補償の負担金、これは一応義務的な経費でございまして、いずれにしろ、個々の地方団体の裁量で減額するというものではございませんので、特に今回、財源措置をされておりますので、共済制度あるいは公務災害負担制度に対する制度的な支障が起こるということはないと考えております。
 それから、もう一点の国庫負担金制度全額一般財源化の方向というのは、教育長協議会の中でもかなり関心を持ってこれまで議論をしてまいりました。これまでの国庫負担金の一般財源化については、あくまでも個別経費の一般財源化の議論というのはなされましたが、今度のように全額一般財源化という話になりますと、先ほど意見として述べさせていただきましたが、これはまさに憲法が保障する義務教育の保障機能、国庫負担金が持っている保障機能をなくすということでございますので、義務教育の水準の確保というものに対して大変な危惧を持っているというのが共通した見解でございます。
奥山委員 天笠参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、義務教育の国庫負担制度は、義務教育の水準の維持あるいはまた優秀な教職員の確保という観点からどのような意義を有しているかということでありますが、今回の改正によりまして義務教育の水準の維持や優秀な教職員の確保に支障が生じることがないであろうかということでありますが、いかがでしょうか。
天笠参考人 日本の教員というのは、日本国内ではいろいろな批判を浴びることも時々あるわけですけれども、世界の全体から見ますと大変高い水準に日本の先生方はいらっしゃるということは、まず多くの方々の指摘するところであるかと思います。そういう方々がそれぞれのところで教育実践をしている、その集合体で日本の教育の水準というのは維持されている部分が多分にあるというふうに思っております。そういう先生方が安心して教育活動を実施していく、また安定的に教育活動を実施していく、そういう基盤を確保するということにおいて、この負担制度の存在というのは実は大きな役割を果たしているんじゃないかというふうに思っております。
 したがいまして、この制度の根幹が崩れるということは、そういう意味において、義務教育の安定的な質の確保ということを失わせる、そういう要因というのをより多く広げることになるんじゃないかと思っております。したがいまして、そういう点では、やはりこの制度の持つ意義、役割というものは私は大変大きいんではないか、こんなふうに思っております。
奥山委員 天笠参考人にもう一点お尋ねをしたいんですが、公立の高等学校については、学級編制とか教職員の定数の標準化を定めているだけで、教員の給与に国庫負担をしていないということがあります。義務教育についての国庫負担制度は、それに伴って同じように負担制度も不要であるという意見もあったそうであります。
 そこで、義務教育については、高等学校とは異なって、これはやはり国がしっかり国庫負担として行う必要があると考えているわけでありますが、この点につきましては、先ほどの先生の話も少し聞かせていただくとその方向であろうと思いますが、いかがでしょうか。
天笠参考人 私は、現状の実態を見たときに、確かに制度的には小学校、中学校と高等学校はそれぞれあるわけなんですけれども、現在の国民が学校へ通っている状況からするならば、やはり小中高というのは全体的にとらえていくというふうなことというのはやはり大切なんじゃないか、そんなふうに思っております。
 そういう点では、先ほど申し上げたような小学校、中学校の教員のそういう意味での安定性と同時に、高等学校においても教職員の方々の安定性ということはやはり共通の課題として受けとめてもよろしいんではないか、こんなふうに思っております。
奥山委員 横山参考人にお尋ねを申し上げたいんですが、平成十六年度から義務教育費の国庫負担の定額制とか交付金化について検討するというようなことが言われているわけであります。検討をするということは、具体的にどういう方向で行かれるのか、あるいは、その検討するという方向で何か考え方を聞かせていただければと思うんですが。
横山参考人 国庫負担金の定額化あるいは交付金化につきましては、私ども、その内容はこれから検討することなんで、よく承知はいたしておりませんが、あくまでもそれは国庫負担金の支出の形態をどうするかという検討であるならば、国庫負担金制度の持つ義務教育の保障機能というのは失われないわけですから。
 ただ、交付金なり定額化の基礎のデータを、どういうものをとっていくのか。単に、例えば児童生徒の数でやるとか教職員の数でやるとか、そういった単純なことではなくて、あくまでも、先ほども申し上げましたが、国庫負担金制度によって義務教育が全国津々浦々保障されているんだ、その保障機能を失わない方向でぜひとも御検討願いたい、こう思っております。
奥山委員 これは両参考人にお尋ねを申し上げたいんですが、昨年の十二月の十八日に、三大臣、すなわち総務大臣、財務大臣それから文部大臣の三大臣の合意によって、さっきからも話が出ておりました地方の自由度を拡大する、これから地方の裁量もできるだけ認めていこう、特色を認めていこう、こういうことから、義務教育費の国庫負担制度の見直しとあわせて、学級編制あるいは教職員の配置などの弾力化、それから公立学校教員の給与について国立学校準拠規定の廃止などを進めていく。さっきも話がありましたが、これらについて両参考人はどのように評価されているのか、まず横山参考人からお尋ねをしたいと思います。
横山参考人 昨年の十二月十八日の三大臣合意の内容につきましては承知をいたしておりますが、そこで私どもかなり懸念しますのは、国庫負担金制度と地方分権を前提とした個々の都道府県における教育分野での自由な裁量、自主性の高まりといいますか、私はそれほどリンクして考える必要があるんだろうかと。
 現に行われている国庫負担金制度の中でも、少人数学級による加配であるとか、いろいろな地方の自主性を高めるような策が現にとられております。その問題と国庫負担金制度を一般財源化することの直接的な意味合いといいますか、必ずしもないとは言いませんが、国庫負担金の全額一般財源化によるデメリットの方がはるかに大きいのではないかというふうに考えております。
天笠参考人 私は地方分権についてはこんなふうに考えておりますけれども、基本的には、地方分権の推進というのはこれからの方向としては一つ考えられる方向だというふうに思っております。
 ただ、その場合に、国と地方とのバランス、あるいは国の存在というんでしょうか、そういうことがあって地方分権というのは私はうまく進んでいくんじゃないかというふうに思っております。ですから、例えば、それぞれ教育の世界で見た場合でも、学級編制の規模の問題なんかについても市町村でいろいろな動きが出てきたというふうに、基本的にはそれぞれの地方自治体の努力ということを私は高く評価したいと思うんですけれども、それができるというのも国の存在があってというふうに私は理解しております。
 ですから、国庫負担の制度というのがそういう点ではあって、それとともに地方のそれぞれの独自な取り組みというんでしょうか、それとの調和、連携、そういう関係をつくり出すということが大切なんじゃないか、こんなふうに思っております。
 以上です。
奥山委員 義務教育といえども、地方がどこまで独自色が出せるかということがこれからの一つの選択になってくるであろうと思うんですね。財政論からいうと、地方分権とはいいながら、なかなかそう大きな差というものはつくることができないわけでありますけれども、先生方におかれましては、地方の独自性というものをこれから認めていくという方向で、基本的に先生方の考え方を聞かせていただければと思います。
横山参考人 これはいろいろ曲解されるおそれがあるんですが、私は、義務教育における地方分権はやはり限界があると思っております。それはなぜかといいますと、義務教育というのは憲法で保障する普通教育イコール義務教育ですから、それに余りの格差がある、独自色とは違いますが、格差があることはやはりまずいのではないか。国庫負担金制度そのものは、先ほども言いましたが、義務教育の実施の最低保障の制度である、その上で個々の自治体が独自の財源を使って独自色を出すあるいは特色を出す、それは当然だろうと思います。
 そういった意味で、個々の自治体の独自色、特色を出す問題と国庫負担金の堅持という問題は、一応やはり、リンクはしていますが、分けて考える方が至当ではないかと考えております。
天笠参考人 地方の独自性ということを考えていく場合に、特に教育の問題のときには、都道府県教育委員会レベルでのそれと、それから市町村教育委員会のレベルのそれと、それぞれを丁寧に見ていかなくちゃいけないところがあるというふうに私は思っております。しかも、その都道府県教育委員会レベルと市町村教育委員会レベルがうまく調和のとれた関係の中で教育行政等々が展開されているということが、実は地方の独自性をつくっていくときにすごく大切なんだと私は思っているんですけれども、どうも現状のところは、まだそこら辺のところがうまく折り合いがつかないようなところがあるように私は認識しております。そこのところをうまく推進していくというときに、私は、やはり国の存在ということが、バランスをとったりとか市町村と県との関係をつくり出していくときにまた大きな役割を果たし得る存在ではないか、こんなふうに思っております。
 ですから、そういう意味で、市町村と都道府県と国とのバランスということが、これからの独自性をつくっていく場合にも大きな役割を果たすのではないか、そんなふうに思っています。
奥山委員 ありがとうございました。
古屋委員長 山元勉君。
山元委員 民主党の山元勉でございます。きょうは、両参考人、大変お忙しいお二方ですけれども、御苦労さんでございました。ありがとうございます。
 十五分という時間、限られていますから、端的にお伺いをしたいと思うんですけれども、正直申し上げまして、少し意外な御意見を承ったという感じがいたしました。
 横山さんは全国の教育長協議会の会長さんでいらっしゃるわけです。今の教育の困難な状況あるいは財政上の苦悩というのは十分御承知の方だ。そして、御承知だと思いますけれども、三月五日現在ですけれども、この問題について三十四都道府県から意見書が出ているんです。これは本当に、現場の各議会というんですか、現場を預かっている議会の痛切な声がたくさん出てきているわけですね。ですから、堅持をせよとか、あるいは具体的に、これは東大阪です、「旅費、教材費、恩給費、共済費追加費用への適用を復活するとともに、」というところまで踏み込んでいらっしゃるところもありますし、堅持だとかあるいはさまざまな地方分権を進めるときの支援をという意見が三十四都道府県、その他の市町村からもどんどん上がってきているわけですね。
 そういう現場の教育を預かっている者の立場、これは例えば首長さん、議会、そして教育長、教育委員会、こうあるわけですけれども、私は、先ほどお伺いをして、この今の流れというのはやむを得ない、もろ手を挙げて賛成ではないけれどもという気持ちはこもっていましたけれども、これはやはりこういう、それぞれの地域の皆さんが、知事会も意見書を出していらっしゃいます。知事会も、これは実際に財布を預かっている方ですから、「見直しを実施すべきである。」に賛成というのは六・一%しかないわけです。
 ですから、そういう今の地域、地方の実態というのを教育長協議会としてどういうふうに受けとめていらっしゃるのか、御論議をどうなさっているのか、まずお伺いをしたい。
横山参考人 国庫負担金制度を分解しますと、いろいろな要素がございます。教員の給与費もございますし、かつては教材費あるいは旅費についてもございました。これまでの議論というのは、そういう個々の国庫負担制度を構成する要素について個々にどうするかという議論がございました。
 それを考える場合に、私は、やはりそれが国庫負担金制度が持つ保障機能が義務教育にどういう影響を与えるのか、この辺を、先ほど天笠先生がおっしゃいましたが、やはりバランスを持って判断せざるを得ないんだろうと。事実、これまでも個々の一般財源化のときには交付税等によって財源措置がされている。問題は、一般財源で措置された場合に個々の自治体でどういう議論がなされるかだろうと思っております。
 したがって、今回につきましても、共済費あるいは公務災害補償基金の経費が一般財源化されたことによって義務教育の本体そのものが水準が低下することはないというような判断を、これはではすべての都道府県教育長会構成員の総意かと言われますと必ずしもそうではないんですが、大勢であるということでございます。
山元委員 総意でないとおっしゃるんですけれども、私は、短時間ですから、むけむけに、東京のように豊かなところはいいと思うんですね。けれども、よく口で言われるように、先ほど天笠先生からも出ましたけれども、格差が出てくる。何ぼうちの地域の学校をよくしようと思っても財源がない、そういう自治体は本当に悲鳴を上げているわけです。子供の教育がどうでもいいというようなことを考える地域はないわけですから、そういう点で私は、この三十四都道府県というのは、にじみ出るような声だというふうに思うんですよ。
 そういう点でいうと、今申し上げましたように、全国を見て、こういうふうに絞って絞っていくと、根幹というけれども、本当に、私は大臣にも申し上げたんですが、むいてむいて、鉛筆でいうたらしんだけが根幹だ、これだけでいいんだということにはならぬでしょう、鉛筆のていをなさぬでしょうということを言ったんですけれども、その地域間格差ということについて、全国教育長協議会で論議をされて、弱いところ、難しいところというのはどういうふうに手当てをしたらいいのか、どういうお考えをお持ちですか。
横山参考人 冒頭先生がおっしゃったように、東京都も決して財政力は豊かではございません。非常に困窮した状況にございます。その問題と、国庫負担金の一般財源化、これまで個々の要素についてはされてまいりましたが、財源としては一応措置をされているわけです。私どもがやはり国庫負担金の根幹と考えるのは、教員の給与費あるいは退職手当等、直接職員に支払われる給与についての国庫負担制度の堅持だろう。今回の共済費あるいは公務災害基金につきましては、これはあくまでも雇用主としての負担金の話でございまして、直接教員に支払われる支給額については何としても根幹として国庫負担制度の対象とすべきだろうという考えを持っております。
 ただ、個々の自治体でいろいろ議論をしますが、極端に言いますと、財源措置があればいいんだという県がないことはございません。今回の一連の流れの中でも、地方交付税あるいは地方特例交付金によって財源措置をされているわけですから、その限りでは、個々の自治体の裁量の中でやっていく範囲ではないかと考えております。
山元委員 時間がありませんから畳みかけるようですけれども、ぜひ教育長協議会で実態を本当に調べてもらいたいと思うんです。
 先ほど申し上げましたように、ある議会は、教材費や旅費やそういうものも全部復活してほしいと。実際に現場へ行くと、もう年度の途中で旅費がなくなってしまって、そして教育委員会の招集の研究会にも行けない、こういう実態もある。去年百三十億円の図書費をといって交付された。けれども、それはわずか三分の一も図書費に使われていなくて、道やら橋になってしまっている。こういう自治体の実態というのは、本当に義務教育を、先ほどおっしゃったように、水準をきちっと保っていくという責務があるとおっしゃるんだったら、しつこく言いますけれども、一遍そこのところは、この流れが、将来財政論が先行してはならぬと教育長さんはおっしゃいましたから、私はぜひそこのところでの論議をして、教育長協議会としていわば行動をしてもらいたいな、こういうふうにお願いを申し上げておきたいと思います。
 時間がありませんから、天笠先生、先生は経歴を見せていただくと、小学校の教諭もされた経験がおありです。そして、今教員養成の仕事をしていらっしゃる。ですから、教育の現場とそこへ送り込む教師の望ましい姿というのはよく御承知だというふうに思うんですけれども、今の教育大学、教育学部、卒業して、しっかりと義務教育を守ってこいよ、いい教師になれよ、学校はちゃんとしてやると。このちゃんとしてやるというのが施設だとかそういうことですね、条件です。そういうお気持ちを毎年お持ちですか。どういう問題点が現場にあるというふうに見えていらっしゃいますか。
天笠参考人 やや意外な質問でちょっとあれだったんですけれども、今の御紹介にもありましたように、私自身、教員の経験を三年ほど小学校で勤めさせていただいて、その後、現在のところで仕事をさせてもらっているんですけれども、私が教員になったときはちょうど人確法の法案の成立云々という、そんな時期でありました。
 それから振り返って、今、時代も状況も随分変わりつつあるわけなんですけれども、やはり人確法の存在というのは非常に私は意味のあるところだと思っているんです。それは、ある意味での社会的な信頼というのの支えになっているんではないか、教職という存在あるいは先生方の存在というのが、そんな一つになっているんじゃないかというふうに思うわけなんですけれども。
 そういう点で、私も力不足でなかなかそこまで学生に迫れないところもあるかと思うんですけれども、やはり国民、保護者の方々の信頼を確保する教師、今そこら辺のところが一番難しい状況があって、いかに保護者の方から信頼を得るような、あるいは関係を得るような、そういうふうなことについて力を込めて学生にメッセージを講義等々で送るということがいろいろあります。
 それから、もう一つは、昨今、教員になかなかなれない、そういう状況が続いてきたわけですけれども、それでも学生には将来教師になりたいというのがおりまして、それには励まし続けたりですとか、しかるべき展望を与えるというふうな、そんなことを心がけております。
 御質問に完全にお答えできたかどうかわかりませんけれども。
山元委員 それぞれの職場、学校に送り出していく気持ちで先生が今おっしゃったこと、大変立派だというふうに思います。
 少し具体的に申し上げますが、地方分権と財政論がある。地方分権の問題で、それぞれの地域で教育の中身をつくりなさいよ、それぞれの地域で教育環境をつくりなさいよ、これが教育の地方分権だというふうに思いますけれども、今の教職員あるいは学校がそういう自主的な力を持てるか、あるいはそういう権限があるのか。よく言われる自主編成という、かたい言葉で言いますけれども、地域に合うた我が町の教育、我が県の教育というのをつくっていこうと思うと、それなりの財政的な保障も権限も、あるいは時間的な余裕もないとそれはなかなかできぬ、馬車馬のように走るような教職員ではだめだというふうに思うんですが、今の地方分権の中での教育づくりということについてどういうふうに見ていらっしゃいますか。
天笠参考人 私は、それぞれの学校、地域に応じて独自のというか特色のある教育課程を編成し、教育を実施するというのは、基本的にはその方向というのは間違っていないんじゃないか、こういうふうに理解しております。
 ただ、そういう教育論と、それから教育課程のそういう意味での特色ある編成論と、それからきょうここで中心的な議論になっている財政の問題とがうまくリンクしていないというか、セットしていないというか、どちらかというとそれぞれがとかく分離するような形で事柄が動いているような感じがしてならないわけなんです。ですから、そういう点では、教育論と、そういう意味での財政論とがうまくセットされて、そして、それぞれのところでの特色ある教育活動、教育の展開ということが望ましい状態ではないか、私はこんなふうに思っております。
山元委員 今おっしゃいましたように、やはり教育づくりと財政とがうまくリンクをしていなくて、こういう環境でこういうことをしてやりたいと思っても、なかなかできない状況になっているわけです。それに、時間的な余裕あるいは人材の確保というのはできぬ。さっき先生がおっしゃったように、先生がちょうどいらっしゃったときに人材確保法ができて大きな役割を果たしたとおっしゃった。今、財政諮問会議では、人材確保法は要らないやないか、こういう論が出てきている。ですから、根幹を守ると言いながらも、やはり安定した教職員の勤務条件というものをつくっていくということでいうと、まさに後ろを向いているわけです。
 先生が先ほどのところでおっしゃったように、危惧を感じながら苦渋の選択として賛成すると。私は、教育長さんもそうだし、大学の教育学部の先生方も、苦渋の選択で賛成してもろうたら困るわけですよ。本当に日本の子供の教育というのはこういう形じゃないといかぬのだ、そういうときにはこういう権限が分権されるべきだし、こういう財政が確保されるべきだと。後ろ向いてどんどんと、先ほど言いましたように、旅費の国庫負担がなくなって、うちの町は貧しいさかいに減らすぞ減らすぞといって年度途中でもう旅費がなくなってしまう。人材確保といって、きちっと守るさかいにいい先生来てくださいよと、先生があいていて探さなならぬときもあった。
 ですから、そういう人材を確保して質の高い地域の教育をつくり上げていく保障というのは、よほどやはり教育長や教育学部の先生方が大きな声を出していただかないと、財務省が言う、文部省が苦渋の選択で参った、こう言うのと同じようなことをやってもらったら困るわけです。これはきつい言い方ですけれども。本当は、実態を踏まえた大きな声を出していただきたいというふうに思うんですが、どうですか。
横山参考人 私ども都道府県教育長協議会の中では、例年のように行われる国庫負担金の一般財源化という流れ、基本的には反対でございます。
 それはなぜかといいますと、これは高等学校教育とは違いますから、義務教育ですから、義務教育をいかに守っていくかというのが私ども教育長協議会としての使命でもございますし、個々の団体においてもやはり使命だと考えております。
 基本的な流れには反対ではございますが、では、それだけ言っていて済むのかという議論も一方でございます。財源措置が何らなされないで一方的に削減をされる、これなら話は別ですが、全体の財源措置のバランスとの中で私どもとしても判断をせざるを得ないという立場も御理解をいただきたいと思います。
天笠参考人 教育を大切にしたい、とりわけ義務教育を大切にしたい、そういう思いというのは非常に強くあります。それと同時に、やはり今のいろいろな社会のさまざまな要素の複合体の中に教育というのもまた存在しているんじゃないかということになりますと、教育と他の社会のもろもろの活動、もちろん経済活動とか財政もあると思うんですけれども、そのバランスを大切にしていくということも私の立場にしたいというふうに思っております。
山元委員 時間が来ましたけれども、ぜひお願いをしておきたいんです。
 小泉総理は、総理になったときに演説で、米百俵という有名な話があります。何をおいても、米を食べなくても、子供たちの教育のために学校を建てるんだ、こう言って、米百俵を我慢したと。それは、現場にいらっしゃる皆さんも私たち議会にいる者も声を大きくせぬといかぬだろうと思うんです。当面、きれいな町をつくるとか便利なというのも大事ですけれども、子供たちの教育のことについてはやはり米百俵の精神だ。この間、この委員会で、あれは米百俵と違う、うそ八百や、こういう話が出たくらいにないがしろにされている状況もあるわけです。
 ですから、ぜひ現場の皆さんからの大きな声をお願いして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 きょうは、お忙しい中、こういった時間をいただきましたことに心から感謝と敬意を表させていただきたいかと思います。
 私の質問をさせていただきますが、お二方のおっしゃられていること、また今までおっしゃられてきたこと、私のとり方が違っていたら申しわけございません。また、失礼なことも多少話をさせていただくかもしれませんが、その辺は大目に見ていただけたらと思います。
 そもそも論というか入り口論のところに私はこだわっているところがございます。本来ならば、今までもいろいろな議論が教育議論ということで出てきていますけれども、やはり政治をやっていくに際して、きちんとした国のあるべき姿というものを政府なり与党なりが示し、それにおける教育がどうあるべきかということを明確にしていき、そこの延長線上にこれが本来あるべきだと思います。
 しかし、私たちがいつも言っていますことは、一体全体内閣は、総理は何を考えているのかわからない、言っていることとやっていることがめちゃくちゃじゃないか、一体全体どんな国にしたいのかということを再三にわたって聞かせていただいておりますが、総理はお答えになられていると思っているのかもしれませんが、私たちには全くわからない、理解ができないような状況だというふうに言わざるを得ないと思います。
 そこで、大変失礼な質問かもしれませんが、お二方が今の政府・与党、小泉さんをごらんになって、本当にこの国のあるべき姿、きちんとしたものを持っていらっしゃるのか、またそこにおける教育論というものを持っていらっしゃるのか、あるのかないのか、どう思われるのかをお答え願えたらありがたいと思います。
横山参考人 私自身は、国の議論、政策にこういう場で余り口を差し挟む立場にございませんが、ただ、国レベルでの教育議論そのものは、今先生がおっしゃったように、今後の教育をどうするんだ、私自身は、中央教育審議会の中で、教育基本法の見直し問題も含めまして、相当な議論がなされているという認識を持っております。
天笠参考人 新聞、テレビ等で知り得る情報でしかありませんけれども、余り総理から教育論を聞いたということはこれまではなかった。ただ、米百俵は、あれは一つの教育論ではないか、そんなふうに受けとめております。
 それで、個人ということよりも、先ほども申し上げましたように、今回のこの件について見た場合に、やはり義務教育についての将来展望とかあるいは大きな青写真とか、何かそういうものが十分じゃないところで議論が進んでいるのではないか、そういう印象をこの間ずっと一貫して持っておりました。
佐藤(公)委員 また大変失礼な質問なんですが、先ほど横山参考人がおっしゃられた、議論は見えるけれども、私がお聞きしていますことは、果たして総理なり内閣なり政府・与党がきちんとこういった国の姿勢、形をつくりたい、その中で教育というものはこうあるべきだということがきちっと見えていますかということなんですけれども。
 実際問題、議論はたくさんあります。天笠参考人の本、いろいろな記事も読ませていただきました。答申ラッシュ、まさにそのとおりで、議論ばかりはあったとしても、きちんとしたその方向性というものが何も明確になっていない、こういうふうに私は思うんですけれども、横山参考人、もう一度聞かせてください。この国のあるべき形はどうでしょうか。
横山参考人 私の立場からしますと、個々のセクションでどういう議論がなされているかというよりも、国全体として教育についてどういう議論がなされ、例えば教育をもってどういう子供たちを育成したいのか、こういう議論がやはり必要だろうと思っています。
 文部行政を所管するのは文部科学省でございますし、その中で中央教育審議会という、私自身はかなり重い位置づけの審議会だと考えておりますが、その中で、過去の戦後五十年の教育の反省の上に立った今後の教育をどうするか、どういう子供たちを教育を通して育成するのか、そんな議論は十分、かなりされているという認識はいたしております。
佐藤(公)委員 議論はたくさんある、わかりました。では、もうこれぐらいにさせていただきますけれども、実際問題、私が言いたいことは、先ほどから、教育とか地方分権とか財政議論、どれも大事です。でも、やはり大もとになるその一つのプライオリティーの問題、まず基本をどこに置くかということ、それを同じテーブルの上で議論しているがために、確かに天笠参考人がおっしゃられたように、また横山参考人がおっしゃられたように、切っても切れないものであり、セット論で話をしていく、これはわかります。しかし、大もとの哲学論にもなりますけれども、どこに基本を置くのか、私はやはり教育だと思います。
 まさに天笠参考人のおっしゃられた国の基本の教育というものがあってこそ、その上に成り立つ地方分権がどの程度権限の移譲を含めてあり得るのか、その基本がないまま全部同じテーブルの上で議論してこれを進めていくというのは、私は非常に心配なことばかりになっております。
 先ほどからもお話の中で幾つか出てきました。国としての義務教育の責任を堅持できる、よく担保という言い方をします。では、私は、担保といった場合に、お二方にお聞きしたいんですけれども、一体全体このままで、先ほど、非常に気持ちよく言っているとは思えません、容認できる範囲だとか前提を持ってなら賛成だ、こういったことで、もろ手を挙げてという状況じゃないと思います。でも、これが本当に進んでいくのであれば、その担保というのは一体全体、お二方からしてみると、こういったことをもう少し担保として考え、国の義務教育としての責任を持つべきだ、この担保というのに関して、具体的にアイデアがあったらお聞かせ願えたらありがたいと思います。
横山参考人 先生は先ほど同じテーブルの中で議論されているということをおっしゃいました。私は、違うテーブルで議論しているから国としての統一的な教育論というのが出てこないんじゃないか、そんな気がしております。
 今申し上げた担保の問題でありますが、実は、個々の教育をどうするかは、基本的なものは国が決め、地方自治体における自由度というのはかなり高まっております。では、自由度が高まっているから、その所要財源について、交付税等の一般財源あるいは税源移譲等の一般財源で措置すればいいのではないかという議論が一方にございます。
 ただ、現実の地方自治体における予算編成過程の中で、一般財源で措置されたものと特定財源たる国庫負担金で措置されたものとでは全く扱いが違うのは、これは厳然たる事実でございます。そういった意味で、かなりの地方の自主性はありながらも、個々の予算編成をある程度教育分野に振り向ける拘束性がある、この辺はやはり必要な担保であろうと考えております。
天笠参考人 私は、やはり全体的な教育の水準の維持ということがまずあって、そこのところからいわゆる落ちこぼれていくというんでしょうか、あるいは格差という言葉になるかもしれませんけれども、そういう状況を丁寧に診断し、そのところの底上げとか保障ということが、まず一つ大きな役割としてあるんじゃないかというふうに思っています。
 と同時に、もう一つは、歩むべき方向ですとか将来の展望ですとか、こういうものを提示するという役割というのがやはり国にはあるんじゃないかというふうに思っております。
佐藤(公)委員 横山参考人が、同じテーブルではなく、別々のテーブルで議論されているからこういうふうになっている、僕はこれは見方によってだと思います。確かに別々になっているからこういうことになっちゃっている。私の言いたいことは、まさに今までのいろいろな審議会等の議論においては、もう明確に財源論ということ、これのテーブルの上ですべてが論じられているような、そんな思いがいたします。
 実際、横山参考人、都議会の方でもお話しされているように、実際これがまさに財政議論で行われることになったら、やはり先々心配だ、危惧しているというような言い方をされております。実際、だれが見たって、これが財政議論の中から出てきていること、だれも教育議論の中から出てきているとは、僕は思えません。それはそういった財政議論の中から出てきている。そういう中で、横山参考人は、危惧しているというか心配している、もしくは、到底容認できないものだということもおっしゃられています。
 ですが、きょうおっしゃられていることは、容認ができる、賛成だということをおっしゃられた。私は本当の横山参考人の思いと、きょうここに出てくるまでの間に考えが変わってしまったのかなという気がいたす部分があります。ここら辺がちょっと私わかりづらいんですけれども、なぜそういうきょうのお話になったのか、もう少し詳しくお聞かせ願えればありがたいと思います。
横山参考人 都議会でかなり教育の議論というのはされておりますが、一昨年でしたか、教育改革国民会議の中で、教育こそ社会存立の基盤であるという、まさに教育の重要性を宣言をしております。したがって、個々の自治体でどういう分野に限りある財源を振り向けるかにつきましては、私は教育というのはかなりプライオリティーの高い行政分野だろうと考えております。そういった意味で申し上げている。
 今回の国庫負担金の関連で申し上げますと、やはりこれは国においても教育行政というのはプライオリティーのかなり高い行政分野だろうと思っております。そういったものを高いなりに保障する制度として国庫負担金制度がある。
 ただ、国庫負担金制度を一般論として議論しても仕方のない話であって、その中にいろいろな要素がございます。これまでも、旅費から始まって、教材費、あるいは恩給費、共済組合の追加経費、これらが一般財源化されてまいりました。そういう中で、先ほど来申し上げているのは、義務教育を守る国庫負担金の根幹と申し上げています。
 私どもが教育長協議会の中でも議論しましたのは、その根幹というのはやはり直接教員の処遇に関するもの、今回の共済費、あるいは公務災害補償については、これは雇用主としての義務的な経費ですから、それについてはやはり現下の状況、あるいは地方と国の役割分担ということを考えれば、容認できる範囲ではないかというふうに考えているわけでございます。
佐藤(公)委員 私は横山参考人が今おっしゃられたことはわかります。まさにその具体的な政策もしくは行動ということに関しては、教員の給与というそこが根幹だということをおっしゃられることはわかる。
 ではということでまた話がもとに戻るんですね。では、それは結果的に、国が、政府が、総理が考えている国のあるべき姿と教育という一つの哲学と筋があり、その流れの中で一つの具体的な方策が、今回根幹として給与という部分が出てくるという考え方、その大もとがわからないから、その具体的なことだけ逆に論じてもしようがないだろうなという僕の思いが今まで非常に強くある。その根幹が見えない、わからないのに、これをやったってしようがないじゃないと僕は思う部分があるんですね。
 実際問題、根本論の話、これはもう長い時間がかかってしまいますので、最後にもう一点だけお聞きしますけれども、本来は今回のに手をつける前にやるべきことがあったと思います。例えば、文部科学省の中での制度の見直し、もしくは財政議論でいえば、より違うところをカットしなきゃいけない。根幹という部分、プライオリティーをきちっとつけ、義務教育、教育が大事であるのであれば、極論からいえば、公共事業を削減する、削減することがほかにあるじゃないか、なぜそれを先にせずして教育から手をつけるんだ。これはもう哲学も基本もないまま進んでいると私は思います。
 最後に、そういうことに関しての、ほかにやるべきことが先にあるのになぜやらないんだというふうにお思いになられるんだったら、この場で強く主張されていただいて結構だと思いますので、お願いをいたし、私の質問は終わらせていただきますので、お一人一分程度ずつお願いしたいと思います。
横山参考人 財政論からいいますと、国、地方あわせて国家財政の一翼を担うわけでございます。そういう中で、今回の見直しそのものが、今先生がおっしゃったような行政分野の振り分けというよりも、地方と国の財源配分の一つとして、特定財源にするのか一般財源にするかという話だろうと私自身は認識しているわけです。今回、財源措置が全くされなければ話は別ですが、そういった地方と国の財源配分の一つの考え方として出されてきた、その点については容認し得るということでございます。
天笠参考人 人を育てるということ、あるいは日本の国にはかつては人しかいないというふうなことが、ある意味で国民の広いコンセンサス、合意だったんじゃないかというふうに思っております。ところが、いつの間にか、我々が豊かになったところで、それが非常に見失われつつあるんじゃないかと思うんですけれども、やはり人を育てるということが実は、プライオリティーという言葉がありましたけれども、一番最優先であるんじゃないかというふうに思います。これをもう一度我々は、合意形成というんでしょうか、コンセンサスを確立していくということをもう一度しなければいけない、そんなところではないかと思っております。
佐藤(公)委員 時間が来ましたので、どうもお二方ともありがとうございました。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 参考人としてきょうはおいでいただきまして、心からお礼申し上げます。
 先ほど意見陳述を伺いまして、お二人共通されて義務教育の重要性、またその水準の維持向上のためにも義務教育費の国庫負担制度というのは堅持されるべきであるということを強調されたというふうに私は受けとめまして、聞かせていただきました。
 それで、まず天笠参考人に伺いたいと思うんですけれども、文科省に公立学校教員の給与制度等に関する検討会議が置かれておりますけれども、その委員もしていらっしゃると思うんですが、そういう立場からもきょうはおいでいただいたのかなというふうに私は理解しております。
 そこで、この検討会議ではどういう議論がなされてきたんでしょうか。また、義務教育費の国庫負担制度の削減についてここでも議論があったのかどうか、またその論点は何だったのか、お聞かせいただければというふうに思います。
天笠参考人 私、今お話のありましたメンバーの一員ということにさせていただいているわけなんですけれども、この間の私なりの印象としては、論点がはっきりするまでに至らないというんでしょうか、状況を追っていくところで精いっぱいだったというんでしょうか、比較的短い間に次々と、ある意味では私の視野の外と言ってもいいかと思うんですけれども、そういうところから問題が提起されて、その状況がどういうことであって、それについてどんな意義があるかとか課題があるかとかというふうな形の情報を主としていただく。もちろん、それについては少しそれについての印象とかコメントを加えるわけですけれども、論点としてそれを詰めていくような議論の展開がそこまであって、この状況に対してどういうふうなことで詰めていくのかどうなのかというところまではなかなか詰め切れなかったというのが私の印象であります。
石井(郁)委員 せっかくそこまでお話しいただきましたので、もう少し伺いたいのでございますけれども、今、義務教育費国庫負担制度の問題ですから、特に給与費の問題について、これをどういうふうに考えていくのかとか、どういう問題性があるのかとか、そういうようなことについての議論というのはあったんでしょうか。
天笠参考人 私の認識ですと、給与費はどうあったらいいかというふうな議論ということよりも、むしろ、国庫負担制度についてこういう見直しの議論があってと、それは資料等々にもまとめられているところかと思うんですけれども、そういう形での情報の提供というんでしょうか、資料の提供があったというふうに思っておりまして、ですから、給与費云々についての詰めた議論がそこで行われたというふうには私は認識しておりません。
石井(郁)委員 引き続きまして、これは天笠参考人にお伺いしたいと思うんです。
 この点は共通している点でもあるんですけれども、今回の法改正で国庫負担制度の根幹が維持されたというのは、当委員会でもいろいろあることですけれども、先ほども、根幹が維持されているということでございました。
 しかし、削減対象は、共済費長期給付に要する経費、公務災害補償基金負担金等の経費でございまして、今後も退職手当や児童手当も削減対象だと。当初、文部省から五千億円という巨大な額が示されたわけですけれども、義務教育の真の根幹ではないから削減する、根幹は守ったと。では、一体その義務教育の根幹というのは、国庫負担制度の根幹というのはどういう範囲だというふうにお考えでしょうか。
天笠参考人 私は、直接的には、少なくとも先生方の給与の二分の一負担というんでしょうか、というふうに思っております。ただ、諸手当等々というのも当然そこにはかかわってくるかと思うんですけれども、そういうふうにまずは受けとめているというところであります。
石井(郁)委員 横山参考人にも、この点ではお話しいただければと思いますが、義務教育の国庫負担の根幹という問題、根幹というのは何ですかということをお聞かせください。
横山参考人 先ほども申し上げましたが、個々の自治体における予算編成過程の中で、一般財源措置というのは、非常に裁量権の強い、ある意味ではゼロから百まである世界でございます。そういう財源で義務教育の所要経費が担保された場合には非常に不安定なものになってしまう。したがって、私自身が財政論的に言う根幹というのは、義務教育が、ある程度地方自治体における拘束性の強い財源で措置をされることだと考えております。
石井(郁)委員 では、引き続きまして、横山参考人に伺いたいと思います。
 今回、各自治体からは相当の要望書や意見書がこの問題については出されまして、私どもにいただいた文部省の資料では、要望書を出されている自治体は二十八、意見書が十三でございますから、ほとんどがこの問題で意見が寄せられたということなんですけれども、特に東京都の場合、東京都の意見書を見せていただきますと、都は交付税不交付団体ということで他の道府県と違うと。定員定額方式で国庫負担金が算出されるために、他の道府県における定員実額方式で算出した場合に比べ国庫負担金が抑制されている、特に退職手当については現状でも四割抑制され、今後退職者の増大に伴い抑制額も大きくなる、都財政に負担をかけるということが述べられていたかと思います。
 この点、先ほど、不交付団体にも特例が認められてということをちょっと何か触れられたように思うんですけれども、そのことをもう少し詳しくお話しいただければということが一点でございます。
 あわせて、もっと広く、この意見書の中でこのように主張されていらっしゃるわけです。「国庫負担金は、国と地方との役割に基づき、地方公共団体の財政状況いかんにかかわらず、国が支出すべきものである。したがって、この義務教育費国庫負担金の減額措置を通じて財源調整を行なうことは、国庫負担金の趣旨に反するとともに、国と地方との間の財政秩序の確立という観点からも適当でない」というふうにございます。
 私もそのとおりだというふうに思っていまして、今回、退職手当も国庫負担金の対象から外すというのは全く論外だというふうに考えておりますので、東京における教育財政の立場もあるでしょうし、先ほど来議論の、根幹を維持するという立場からの国の財政負担のあり方という問題、この点での御意見をお聞かせいただければというふうに思います。
横山参考人 私どもも毎年度、国に対しまして予算編成期に要望活動を行っておりますが、その際、義務教育にかかわるものとしては二点ございます。第一点目が、従来のような国庫負担金の一般財源化に対する反対の要望活動でございます。もう一点は、現状の国庫負担金制度の中で、他県に比して、交付税不交付団体であるがゆえに削減をされている経費がございます。
 具体的に申し上げますと、交付税不交付団体を理由とする財源調整は、特に退職手当は百八億でございますが、義務教育費国庫負担金で合わせて約百二十二億、これは通常の国庫負担金の財源調整額でございます。
 今回の共済費あるいは公務災害補償基金の一般財源化に伴いまして国庫負担金が減になる金額は、これは東京都ですが、百四十三億でございまして、現在総務省が考えておられます地方特例交付金、これの算定方式によりますと、人口按分比ということでございますので約百億程度、不交付団体ですから。合わせますと、四十億が東京都の持ち出しになる、単独負担になる、こういう計算でございます。
石井(郁)委員 後段の部分で、今後、退職手当なども国庫負担から外すということがございますので、そのこともちょっと御意見を伺いたいなと思います。
横山参考人 先ほど来申し上げていますように、私どもは、国庫負担金制度の持つ義務教育の保障機能の根幹が、やはり教員に直接支払われる給与あるいは退職手当であろうと考えております。
 だから、退職手当を全額一般財源化することについては、これは相当、四十七都道府県挙げて大変な強い反対の意向表明がある、反対を表明するだろうと思っています。
石井(郁)委員 今、自治体というか地方では、教育について取り組みが進んでいる面が随分あると思うんです。その一つが三十人学級の単独実施ということになっていると思うんですね。もうかなりの自治体で、当初は小学校一年とか中学校一年からということですけれども、順次進めていくという方向でなっているわけです。
 私ども、国会で三十人学級法案というのを野党で提出したこともありまして、与党の否決に遭っているわけですけれども、同時にそのときに、地方でもできる道が開かれたということがあったかと思うんですが、しかし、何しろ地方単独での措置ですから、いろいろ教員の給与その他で大変な御苦労を地方がされているという状況だと思うんですね。
 だから、私どもは、そういう点で、今、教育改革ということを言われていますけれども、本当に地域あるいは親そして教師や子供たちを含めて願っている、真っ先に教育の諸条件の整備ということで言うと、そういう三十人学級は、少なくとも、世界からおくれている状況ですから、まずそこからやりたいというのは、私は、本当に大きな流れになってきているなというふうに思っているんですね。
 だから、そういうことからしますと、本来、国というのは、そういう流れを促進させるというか支援をするという立場に立つべきだと思いますけれども、まさに今回議論にあるように、国の方は予算を減らす方向ですから、本当に地方自治体に対して冷や水を浴びせかけるようなことになっているわけですね。
 だから、そういう点では、もっともっと国としてそういう本来の教育予算をふやすという、そう言えば当然だれでも賛成できるという話ではあるかもしれませんけれども、今進んでいる地方自治体の三十人学級の実施とかそういうことについての御見解、そして、それに対してもっと国に対する要望等々がございましたら、お二人にそれぞれお聞かせいただければというふうに思います。
横山参考人 東京都を例にとりますと、今東京都が進めております義務教育における教育改革の方向は、少なくとも住民とこれまで閉ざされた学校の関係をどうやって開いていくのか、私どもが強力に進めておりますのは、学校評議員制度も含めて、開かれた学校づくりが最大の眼目で現在進めております。
 それから、今先生がおっしゃった三十人学級については、確かに全国的に見れば少なからずそういう趨勢があることは承知はしておりますが、東京都は三十人学級を実施する方向はございません。
 それは理由がございます。単にそれは財政論だけではなくて、やはり学校というのは、教科活動としての学習集団、あるいは生活集団といいますか、ある程度の人数の中で、集団の中で教育効果を得ていく、そういう生活集団としての学習効果があるだろう。その生活集団としての学習集団を考えた場合は、私どもは必ずしも三十人が適正規模だとは考えておりません。
 一方で、教科学習につきまして、基礎、基本を定着させていく、これもまた必要でございます。これにつきましては、少人数学級が必要である。これは、現在文部科学省が進めております義務教育教職員定数改善計画の中で少人数学級の加配が行われておりまして、それを利用させていただいて習熟度別の少人数学級を実証して、基礎、基本の定着を図っている、そういう実態がございます。必ずしも、三十人学級を一律に標準法上設定することは、私どもは賛成いたしかねるという立場でございます。
天笠参考人 私は、三十人にすれば教育がよくなって、二十人にすれば云々という、そこのところからもう少し発想をやわらかくしていってもいいんじゃないかというふうに思っております。
 ですから、適宜、教育の課題とかそのときの先生と子供の関係とか、それによってやや多く子供たちがいたりとか、あるときはもっと少なくしたりとか、こういうことがそれぞれの学校でそれぞれに応じてできるような、こういう学校をつくるということがむしろ私は大切なんじゃないかというふうに思っております。
 ですから、そういう点で、学級の数だけが前に出てきて、そこだけで議論しちゃうよりも、むしろ学校としてどういうふうにやわらかく、そして折に応じてできるのかどうか、そういうふうなところを詰めていけたらいいな、こんなふうに思っております。
 以上です。
石井(郁)委員 時間が参りましたけれども、きょうは、たまたま東京都の教育長さんでいらっしゃったり、また今教育理論で一つの御理論を持っていらっしゃる方ですけれども、全国的には、とにかく三十人学級というのはもう相当な数になってきているんですよ。ここにやはり国民の願いがある。また、良質の教育とか教育の水準を上げるということについて言うと、やはりその最低の条件はつくらなきゃいけないというふうに私は考えておりますということを申し上げまして、終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。きょうはお二人の参考人、お忙しい中おいでいただきまして、ありがとうございます。
 初めに、横山参考人にお聞きいたします。
 私は小学校の現場に三十年勤めておりまして、東京の財政は全国一よいというふうに思っていたんですけれども、それでも決して楽ではないというお言葉を先ほどお聞きしまして、ああ、そうだったのかということも含めてきょうの質問なんですが、私は北海道出身ですから、北海道からもそれから他県からも、今回の国庫負担、このような形にすることは反対だという声が本当にたくさん来ております。東京も大変楽ではないというふうにおっしゃられたという意味では、学校の条件整備は本当に大変だろうなと思います。
 その中できょう私がお聞きしたいのは、恵まれない子供の教育保障をどのようにやっていらっしゃるか。例えば、私が胸を痛めましたのは、学級で給食費も払えない子供の実態というのが大変多くありましたので、東京都なんかはどうなんでしょうか。
 それから、障害児の子供たちが普通学級に学びたいという声も随分あるんですけれども、お一人引き受けようと思うと、車いすの子でそんなに重い障害ではないとしても、バリアフリーにするのは大変ということが学校現場でいつも話題になりましたので、東京都はそのようなことをどのようになさっているか、お聞かせいただきたいと思います。
横山参考人 生活困窮の児童生徒に対する、特に保護者の方に対する措置ですが、今具体的な数字的な資料は持っておりませんが、かなり東京都の裁量の中で対応措置はとっております。何が何でも徴収するというような姿勢は持っておりません。
 それからもう一点は、普通学級への障害児。
 先般、国の方で、協力者会議ですか、その中でそういう方向が出されまして、現在も、例えば普通学級に障害児の方を受け入れる学校は個々にございますが、正直に申し上げまして、かなり設置者である市町村の負担が増大していること、これは事実でございます。そういった方向性が国としての流れであるならば、やはり設置者たる市町村の財政負担にこたえるような何らかの対応策というのは必要ではないかと考えております。
山内(惠)委員 今の最後のところをもう少し具体的にお聞かせいただけませんか。全国の学校でこのことは苦労していると思いますので、何らかのの部分をもうちょっと詳しくお聞かせいただきたいと思います。
横山参考人 実は、普通学級に障害者の方を受け入れるその判断は、個々の区市町村教育委員会が判断をいたしております。当然、区市町村、行政全体の中で、それに対する財政負担の対応をどうするかというのは考える話でございます。それに対する東京都としての支援要望というのは非常に強いものがございます。現段階で、東京都として支援をする、あるいは、例えばバリアフリー化について施設整備費的な施設補助をするということはございます。
 ただ、障害者の方を受け入れたがゆえに、例えば介護員の話であるとかそういった問題の、都道府県としての、東京都としての対応は現在のところとっておりません。あくまでも設置者たる市町村教委の判断によってなされているというのが現状でございます。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 本当はここのところもいろいろお聞きしたいところですけれども、本当にどの自治体も、何かしようと思えば財政ということが大きいので御苦労なさっていると思いますので、私としても、国庫負担はきちんと今までどおりやってもらいたいな、何で今までどおりならだめなのかという疑問を持ちながら、きょうの質問をさせていただいています。
 それでは、天笠参考人にお聞きしたいと思います。
 現在、合併問題が起こっている三千二百余りの市町村は、福祉、教育、医療等のセーフティーネットに必要な財政に苦慮していると思います。地方経済が疲弊している中で、今回の義務教育費国庫負担の問題の本質がどこから出てきたものとごらんになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
天笠参考人 やはり私は、これは日本の財政が大変危機的状況にあるという、そこから出てきているのではないかというふうに思います。それともう一つは、地方分権の推進というんでしょうか、というのがもう一方において流れがあると思うんですけれども、ここの二つがセットされて、そのセットされた方向が義務教育の負担の制度の見直し、そういう方向に来たところがあるように思いまして、そういう積み上げ方とか展開の仕方ということでいくよりも、もう少し、先ほど来申し上げていますけれども、義務教育の将来的な展望という中でもう一度この負担の制度の問題というのはしっかりと位置づけ、議論し、検討すべきではないか、こんなふうに思っております。
山内(惠)委員 本当にここの部分なんですよね。私も、これは財務省がそもそもこのきっかけの口火を切ったというふうに思っているんです。私から見れば、増税への地ならしなのかなというところまで思って見ているんですけれども。
 先ほど、やむを得ない選択というふうにおっしゃったんですね。そして、苦渋の選択だともおっしゃったので、そこのところをもう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
天笠参考人 先ほど来申し上げておりますように、プライオリティーとしてはやはり教育を優先させる、子供たちを育てるという、このところを一番重視した政策の具体的な展開ということを私としては求めたいとは思うわけですけれども、当然、そういうことにしても、教育というのは、ある限られた分野の中で完結できるものじゃなくて、いろいろな分野とのつながりの中で支えられ、動いていくものですから、当然、その中には、先ほど来皆さん方が指摘されています財政の問題というのも避けて通ることができないところでありまして、やはりここのところの関係を見出していただかざるを得ないと思うし、そういうところは、政策決定ですとか皆さん方の議論にある意味ですごく期待したいところでもあるわけでして、ぜひよろしくお願いしたいなというふうに思っております。
山内(惠)委員 その意味でいえば、苦渋の選択ということに力を入れて先ほど何度かおっしゃったということは、やはり、ここの義務教育のところだけは国庫負担でということに力を置かれて、そして将来展望ということにつなげられたと解釈してよろしいでしょうか。
天笠参考人 それで結構だと思います。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 今回のぎりぎりの選択であったからやむを得ないという言葉は、本当は言えないのが自分の気持ちで、やはり二千二百万円、その後、退職手当、児童手当へと行く、今後のところがずっと続いているわけですから、公教育の役割という観点からここのところは保障するべきだというふうに思います。
 今、先生も国庫負担で、そうおっしゃってくださったんですが、先日、憲法調査会の基本的人権問題の小委員会に苅谷先生が来られまして、階層格差の拡大が子供たちの学力格差への拡大とつながっているというふうにおっしゃられました。既に、子供たちの学力の状況を分析した方によりますと、フタコブラクダという言葉が言われていまして、できるできないという言葉はちょっと語弊がありますから、かぎ括弧づきですけれども、できる子どもの描くラインと、できないと言われる子どものラインが二つのこぶになっている、それで、できる子はますますできるように、できない子はますますその差が開いていく現状があるという状況なんですけれども、それに加えて、今度は階層格差。
 例えば、おうちへ帰れば、ピアノがある、プールに練習に行ける、そういううちの子供、それから、ステレオがおうちにあって音感が本当によく小さいときから育った子と、母子家庭で、今回も母子家庭に支払われる児童扶養手当が削減ということなど打ち出されているんですけれども、本当に、道を歩きながら百円玉が落ちていないかと思って親と子と話してきたという子供が私のクラスにもいたんですけれども、それに加えて、今回は地方の財政格差が加わるダブルパンチになってくる。生まれた星が悪かったのかと思うくらい仕方がないことなのかという声まであるんですけれども、そのことについて、改めて先生の考えをお聞かせいただきたいと思います。
天笠参考人 先ほどの階層云々ということは私も聞いております。それは、私の立場からすると、一つの学説というふうな形で受けとめさせていただきたいというふうに思います。
 それと同時に、今御指摘のあるような、親の経済力が子供の将来を規定していくというふうなそういう社会というのは、将来の社会の活力を維持していく上においても、やはり検討しなければいけない点がすごくあるんじゃないかというふうに思っております。
 したがいまして、親は親として、子は子として自分の人生を生きていく、そういう社会というのが実はすごく大切なんじゃないかというふうに思います。それが、子供たちあるいは青年の生き方とか、将来の展望を開いていくということについて、すごく大切なんじゃないかというふうに思います。
 ですから、繰り返しますけれども、やはり親は親、子は子、そしてその子に大きく成長してもらうような、そんな社会全体の支えというのを目指してつくり出していくということが我々の受けとめるべき課題だというふうに思っております。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 教育というのは、特に義務教育というのは、いろいろな形で子供たちの教育、社会が子供を育てるということも大きくありますが、公教育としての義務教育ということを考えるとき、やはり一人の子供の、今おっしゃったように、親の財政に関係なくしっかりと教育をされる権利というようなことを保障していかなくちゃならないのが公教育だと思うんです。
 子供の教育をすることが労働力の再生産でもありますし、この社会を担っていく一人の人間として育っていかなければならないということもありますので、公教育ということと、社会で果たす教育ということと、この財政にかかわって、先生、もう一回御意見をいただけませんでしょうか。
天笠参考人 そういう点では、先ほど来私が申し上げましたように、教育の問題と、それを支える制度の問題と、それから、その中には当然財政の問題とがあると思うんですけれども、とかくそれがそれぞれ分離されるような形で議論されがちなんですけれども、将来の社会に向けてそれらが一つ一緒になって議論され、積み上げられていくということが大切なんじゃないかというふうに思っております。とかく、それぞれがそれぞれとして言っていることが、難しい状況をつくり出しているところがあるんじゃないかと思っております。
山内(惠)委員 時間がなくなってきたんですけれども、国の財政破綻が今回の問題を生み出しているとしたら、やはりもう一度ここのところは考え直す必要があると思うんですね。今までどおりでなぜだめなのか。その意味でいうと、財政破綻の部分を、どの分野で先にもう少し削るべきところがあるのではないかという提言を、お二人から一言ずついただければありがたいと思います。
横山参考人 確かに、国の財政も厳しい、地方自治体の財政も厳しい、そういった財政の厳しさの中だけで今回の問題が出てきたという理解はいたしておりません。あくまでも、先ほども申し上げましたが、国と地方の役割分担の中で、財源配分を特定財源にするのか、一般財源にするのかという側面は結構大きいわけですね。
 そういった中で、先ほど来申し上げている義務教育の根幹を守るというのは、その地方自治体におけるある種裁量だけに任すような財源措置ではまずいのではないか、そういう趣旨でございまして、今回が財政危機だけで問題提起をされているような理解はいたしておりません。
天笠参考人 目指す将来の社会像というんでしょうか、あるいは国の姿というんでしょうか、そういうものとの中でこれは考えていかなければいけないんじゃないかと思っています。ですから、特定のどこかを切り詰めるとか特定のどこだけだ、そういうことじゃなくて、やはりこの先の社会ということを我々は展望しながら、それを描き出しながらこの問題に対処していくということが大切なんじゃないかと思っております。
山内(惠)委員 ありがとうございました。
 本当に、私たちの社会が、どんな教育に力を入れ、そしてこの経済が疲弊している社会を希望ある社会に変えていくかということは、私たちも国会での論議を十分にしていく必要があると思います。
 きょうは大変貴重な御意見、ありがとうございました。
古屋委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。
 この際、参考人各位に一言御礼を申し上げます。
 参考人の皆様には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。
 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
    午前十一時三十八分休憩
     ――――◇―――――
    午後一時一分開議
古屋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山元勉君。
山元委員 民主党の山元でございます。
 義務教育国庫負担制度の問題について大詰めに来ているわけですけれども、そのお尋ねをする前に、今大変問題になっております、大きく盛り上がっているという感じがいたしますけれども、外国人学校の生徒の大学入学資格の問題、これは日本の文部行政の名誉にもかかわることですし、やはり将来の大きなありようを決めることだというふうに思いますから、少し時間を割いてお尋ねをしたいというふうに思います。
 つい先日ですが、七日付の新聞で、こういう記事が大きく出ました。「文部科学省は六日、英米の民間評価機関の認定を受けたインターナショナルスクールの卒業生だけに資格を」大学入学資格ですが、「付与する方針を正式に表明した。今月末に省の告示を改正し、来月から施行する。」こういう新聞が出たわけです。即、当該の民族学校の皆さんや、あるいは多くの人たち、弁護士さんもありましたし、国立大学の教職員の皆さんもありましたけれども、瞬間に火がついて、大きな盛り上がりが出て、これはおかしいということが出ました。
 国内に多くある、アメリカ、イギリス系だけじゃなしに、例えばブラジルも排除されているし、台湾やあるいは中国、朝鮮の学校が排除されて、ただ十六校だけが認められた。これは新たな、それぞれの学校にかこつけた差別をした、こういうことになるんだろうというふうに思いますが、なぜこの十六校だけに大学入学資格を認めたのか、その理由というんですか、判断の基準というのをお尋ねしたいと思います。
遠山国務大臣 昨年三月に閣議決定がございまして、それは規制改革推進三カ年計画でございますが、そこにおきまして、「インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合には、我が国の大学や高等学校に入学する機会を拡大する。」とされておりまして、それに対応するために、先日、対応案を中央教育審議会の大学分科会の方にもお諮りをし、公表したところでございます。
 ただ、対応案は、一応案としてそのとき出したわけでございますが、まだ決めていないわけでございまして、その新聞の書き方は決まったかのように書かれているようでございますけれども、これは今もまだパブリックコメントに付しておりまして、決めていないというところでございます。
 それにしても、その対応案でどういうふうに考えたかという御質問でございますが、そういう大学への入学の機会を広げるという場合には、どこを出たかということが問題になるわけでございますが、その場合に、国際的な評価機関によって認定を受けている外国人学校を卒業した者について入学資格を認めるということの案になっているわけでございます。これは、各種学校とかいろいろな学校類似の施設の認定につきましては、客観的な第三者評価機関の評価を用いるというのが国際的な行き方だと思っております。
 そんなようなことで、認定機関で、しかも国際的な評価機関として認められているところを用いたら、たまたまそういう結果になったということでございまして、当初から特定の外国人学校を除いて検討したものではございませんで、その対応案では結果的にアジア系の外国人学校が含まれないこととなったわけでございます。
 ただ、この点についてさまざまな御意見があることは承知いたしておりますし、この対応案につきましては、先ほど申しましたように、現在、パブリックコメントを実施しているところでございまして、そういったことも踏まえて、まだまだ時間もございますので、十分検討してまいりたいというふうに考えております。
山元委員 それでは、なお言いますけれども、朝日新聞ですよ。大きな記事で、「正式に表明した。」と、「正式に」という言葉を使ってある。中央教育審議会分科会に提示をした。ついでに言うと、そのときに、これは「外国人学校を区別して扱う形となり、在日朝鮮人や民族学校関係者の間には「さらなる差別だ」との反発が強まっている。」委員の人からもそういう意見が出たと。そうすると、今の大臣の話を聞いていると、これは誤報ですね。
 けれども、大事なことは、それからずっとたくさんの人たちが意見を言っていることについて、これはもう単に国内の小さな施策の問題と違って、日本の教育のありよう、外国からも評価をされる、そういう大きな問題なんです。
 ですから、大臣が今、パブリックコメントを求めている、あるいは、調べてみたら、一つの基準を当てたら十六だけだった、それが無責任だと思うんです。こうやって内外に出ていく問題については、大臣としてきちっと、こうあるべきだ、結果的に十六というのがわかった、これでは大変なことになる、これは日本の教育としては間違いだという判断を大臣みずからがされなきゃならぬ問題だと思うんです。そうしたら、こんなに大きくはならぬと思うんですが、どうですか。
遠山国務大臣 先ほどもお答えいたしましたように、学校といいますかある組織について、それが学校としてふさわしい学校といいますか、資格を認定するのにふさわしいかどうかということについては、第三者機関というものの判断を仰ぐのがこれまでの行き方でございます。
 これまでも、大学入学資格につきましては、バカロレアの制度を使って、これは国際的なバカロレアでありますとかフランスのバカロレアでありますとか、あるいはドイツのアビトゥア、そういう資格試験を通った人については、どの大学でもこれは認めるということでございまして、そういった問題につきましては、国際的な認証のあり方というものを使っていくというのがこれまでの行き方であったわけでございます。
 今回も、そのような行政手法といいますか、理論的な整合性ということでこの案は考えてくれたわけでございますけれども、確かに、私といたしましても、結果的に、アジアの関係の学校といいますか、各種学校ですけれども、それが全部漏れてしまうということになるのはいささか、これは、できるだけ意欲と能力のある人たちは受け入れていくということから考えまして、今後、もう少しよく検討して、何か理論的にも筋が立って、なおかつ、いろいろな御意見のあり方というのもよく見きわめながら検討していく問題だなと思っています。
 もちろん、告示の前まではいわば意思決定までのプロセスでございますので、一つの考え方をお示しして、今パブリックコメントに付している、そういう段階でございます。
山元委員 時間がありませんから一々なんですが、端的に言って、文科大臣としてお考えが浅い。
 今までずっと、例えば私の手元にある、国連のさまざまな機関が朝鮮人学校問題に関する勧告をしています。
 例えば、大分前の九八年にも、児童の権利に関する、子どもの権利条約にかかわっての勧告も出ている。「コリアン出身の児童の高等教育施設への不平等なアクセス、及び、児童一般が、社会の全ての部分、特に学校制度において、参加する権利を行使する際に経験する困難について特に懸念する。」だから、そういうことについては「排除されるように勧告する。」これは子どもの権利条約の委員会からの勧告です。
 国連規約人権委員会も、同じようにこのことについて懸念をして、そして改善するようにという勧告を出している。
 国連人種差別撤廃委員会も、これは一昨年の三月ですから、つい最近、このときにはまだ大臣になっていらっしゃらない、前ですね。けれども、ここのところでは、「委員会は、」差別撤廃委員会ですね、外国籍の子供に関して、初等教育及び中等教育が義務教育となっていない、こういう懸念を表明して、「権利が保障されるように確保するよう勧告する。」と。
 国際人権規約、これも国連の規約人権委員会、これもはっきりと「当該学校が補助金その他」、民族学校がですね、「補助金その他の財政援助を得られるようにすること、及び、当該学校卒業資格を大学入学試験の受験資格として承認することを勧告する」と。
 これは、国際的にこういう判断が示されているんですよ。ですから、大臣が、一つの物差しを当てて、十六、どうだろうか、パブリックコメントを求めているんだ、中央教育審議会にお尋ねをしているんだ。私は、言葉は適切でないかもしれぬけれども、大臣としてはもう少し深く考えていただきたかったというふうに思うんですが、こういう国際的な動き、どうお考えですか。
遠山国務大臣 確かにそういう国際的な視点というのは大事でございまして、この点に関して申しますれば、例えば児童の権利に関する条約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、これはA規約でございますが、ここにおきましては、「能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとすること。」が規定されておりますが、これは、従来の大学入学資格につきましても、これに反するような取り扱いとはなっておりません。また、国際人権規約B規約におきましては、人種等によって差別してはならない旨が規定されているわけでございますが、これも、従来の大学入学資格についても、これに反するような取り扱いとはなっていないわけでございます。
 先ほども申しましたように、この点につきましては、入学資格につきましては、平成十一年には、十六歳以上であればだれでも大学入学資格検定の受検ができることとしたことを初めといたしまして、これまで段階的に拡大を図ってきているところでございます。今回の案も、昨年の閣議決定に沿って、あるいはそこで要求されたものについて、一つのステップとして対応案が作成されたところでございますが、これについてパブリックコメントを求めているということで、いろいろな御意見も踏まえながら、さらに十分検討していきたいと考えております。
山元委員 大臣、重ねて言いますけれども、十六校を選びましたがどうでしょうかというのは、やはり深くないと言うているんですよ。こういう国際的な批判だけではなしに、あるいはこれは常識、良識というかもしれぬ。国内だって、それが出た途端に、明くる日の新聞の社説は、各紙たくさんあります。民族学校外す理由ない、見出しですよ。朝日は「大学の受験資格を認めよ」「民族差別で門戸閉ざすな」。
 こういう日本の世論、良識も、国際的な良識も、やはりしっかりと踏まえる必要があるし、そして、今こういうふうに出てきたら、大臣は、これはやはり国際世論から考えても、朝鮮の子供たちのことを考えても、ブラジルの人も、三十万人今入って、その子供たちは大変難しい勉強の仕方をしているわけです。
 朝鮮学校のように古い歴史がある、私も、若いときにそういう学級を担任したことがありますよ。その子たちが、どのように差別をされながらも屈しないで勉強がしたいという思いを持っているか、私はよく知っている。そういう人たちを、今、厳然と、十六校だけは三つの機関があるからいいんだ、そんな規制緩和はないでしょう。これは規制緩和と言わない、新たな差別だというふうに思いますよ。
 ですから、一遍パブリックコメントに出してあるけれども、きょうここですぐ撤回を宣言するわけにもいかぬだろうけれども、撤回をして再検討する、きっちりと再検討する、国際的な常識にもあるいは日本の国内の世論にもたえ得るきちっとした検討をしますということについて、どうですか、おっしゃっていただけませんか。
遠山国務大臣 先ほど来申しておりますように、今、いろいろな御意見を踏まえながら、しかし、制度として論理的に説明できるような方途も考えながら検討してまいります。
山元委員 それではだめですね。
 河村副大臣が一月に、いろいろの新聞にお名前入りでコメントが出ているんですね。前向きに検討するということをおっしゃっているんです。やはり、この問題については、本当に将来に禍根を残します。外国から日本へ来ている子供たちが、将来、例えば日本とアジアとか、日本とブラジルのかけ橋になろう、日本という国はいい国だったということがきちっと胸に入って、そしてかけ橋になってくれるか。あのときにやはり差別をされたと。親は一生懸命になって税金も払っているんですし、日本の法律を守っているんですよ。そういう子供たちが一緒になって勉強したいというのを、決定的な差別とも言えるようなこういう差別をしてはならぬということについての理解をして、大臣、本当に積極的に検討をしてほしい。ここで、私は、あれは一遍中央教育審議会へ提示したけれども、撤回してもう一遍検討し直し、出直しますと言ってほしい。
 けれども、さっき、ちょっと難しいみたいなことをおっしゃるから、河村副大臣、さっきの、最初の方の、一月六日でしたか、一月十七日ですか、このときのお気持ち、これも新聞が誤報なのか、一遍ちょっと、どういうお気持ちでいらっしゃるか。
河村副大臣 さきに朝鮮人学校の皆さん方も書面を添えて私のところへお見えになりまして、私は、インターナショナルスクールについて広く考えたらどうだという閣議決定等も踏まえて考えたときに、これは別の要請もあったわけですね、企業誘致とかいろいろな要請もあって、日本へ来たとき子供たちがきちっとした教育を受けられるように、それでないと諸外国の企業も来づらいんだというようなこともあって、それを受けて私も、これは朝鮮人学校の皆さん方についても、それは韓国、台湾、中華民国もありますが、やはりインターナショナルと言う以上、一応俎上に乗せて、そして一緒に考えていきながら、どうしたらいいかということを考えてまいりますということを申し上げたわけであります。
 何か私がそのことで裏切ったような新聞記事もあって、私もびっくりしたのでありますが、私は、これであの時点で確約申し上げたわけではありませんが、方向としては、国際化時代ということもございます、それから、そういう方々の父兄にとりましては子供さんの教育のことでありますから、できるだけ広く考えていくべき課題だろう、このように申し上げたわけでございます。
 ただ、そのとき私は、記事にはなりませんでしたが、やはり、今回の措置もインターナショナルスクールが日本の教育との整合性とかそういうことも踏まえて見てもらうということでありましたが、あのときも、日本の教育との整合性等々もありますので、そういうことも踏まえてひとつ検討いたしましょうということであったわけでございます。
 今回の案といいますか、方向として第一次的に出しました案は、日本の教育との整合性評価の問題、そういうことを踏まえて出したわけでございまして、大臣もさらにこの問題については検討するべきだ、こうおっしゃっておりまして、私も全く同じ思いでおりますので、今後の検討としてしっかり重く受けとめて検討してまいりたい、このように思っています。
山元委員 大分時間を食ってしまいましたが、本当に将来、あのときにということにまたならないようにぜひ真剣な検討をしていただきたい。
 私、一つ、喜んである人が私のところに持ってきてくれたある新聞で、公明党の冬柴幹事長が与党の幹事長会議の中で、時代に逆行的なことでいいのかと言われて、与党の三幹事長が、そうだ、これは非常に大切な問題だとの認識で一致をした、自民党の山崎幹事長が文科省に申し入れる。これは十三日の新聞ですから、おとついですか。これは本当に、一つの施策だけでなしに、歴史に残る、日本が子供たちに対する大きな差別を始めたのかとか強めたのかということにならないようにぜひお願いをして、この件については終わらせていただきます。
 それでは、本題の義務教育国庫負担制度の問題ですけれども、私、去年の十一月にも十二月にもこの委員会でこの問題について質疑をさせていただきました。教育基本法やあるいは義務教育国庫負担法の精神からも、自治体にしわ寄せしてはいかぬ、地域格差ができる、いろいろなことを言いました。けれども、大臣は、根幹を守る、三位一体だ、こういうふうにずっとおっしゃってきました。きょうの午前中の参考人質疑の中でもありましたけれども、あるいはおとついの委員会の中でもありましたけれども、本当に義務教育の根幹を守るということになり得るのか、ならない、三位一体という形になっているのか、なっていないというふうに私は思います。
 大体、経済財政諮問会議が出してきた意見について、本当にがっくりとしたんですけれども、それに押し切られていく形で文科省がこういう案をつくったということについては、やはり、財政当局のお先棒を担いだといいますか、ねじ伏せられたという思いを持ちます。こちらからの見方です。大臣はこの間からも、頑張ったんだ、流れを変えたんだとおっしゃるけれども、結果はやはり、根幹と言えば幹が細っていく、そういう施策だというふうにどうしても思えてなりません。
 私は、この間からの大学の独立行政法人化の問題やあるいは株式会社の参入だとか、いろいろ日本の教育を変えていく、形を変えていく動きが非常に出てきている、今までになく出てきていると思う。一体、日本の義務教育を、公教育を大臣として、かくあるべきなんだ、大事なのはこことここなんだというふうに、どのようにお考えですか。
遠山国務大臣 私は、一人一人の国民がしっかりした考え方、そして、自分で課題を見つけ、それを乗り越えていけるようなたくましい日本人が育っていかなくては日本の将来はないと考えております。その意味で、教育こそ国家の礎だと思っております。
 そうした考え方を明らかにいたしますために、昨年の夏の経済財政諮問会議に際しまして、どうもそういう考え方が多くの政治家なりあるいは経済財政諮問会議の委員の中でしっかりと受けとめられていないと思ったものでございますから、人間力戦略ビジョンというのを明確にいたしました。
 そこでの大きなねらいというのは、「新しい時代を切り拓くたくましい日本人の育成」ということで、これからの日本人が持つべき幾つかの資質について明確にした上で、それを達成するための施策も明らかにしたわけでございますが、それらを通じて大事なのは、やはりこれからは一人一人の日本人が、画一的で、あるいは受け身の教育を受けるということではなくて、一人一人が自立をして、しかも創造的に生きていく、そういうことが大事だということで、画一と受け身から自立と創造へということで、それらのすべての考え方を一つの施策総合化という形でまとめさせていただきました。
 いろいろな切り口はあろうかと思いますけれども、これからの世紀は二十世紀と違うと私は思うんですね。やはり、知の世紀と言われておりますように、人間の知力、それを発揮しながら、もちろん精神力、体力も大事でございますが、そういったことが問われてくる。特に日本の場合は、経済大国ということで、これから日本が新たな創造的な知をつくり出し、そしてそれを経済なり生活の中に反映できていくような、そういう社会を成り立たせていくよりないと思っておりまして、その意味での教育の重要性ということから、すべての義務教育のあり方あるいは大学のあり方も含めて考えていくというのが私の考え方であり、その会議のときも多くの方が賛同していただいたと思っております。
山元委員 総論ではそういうことだというふうに思います。
 それでは、今おっしゃったように、切り開いていく力だとかあるいは創造力だとか、そういうものをつくっていく上で義務教育は大きな役割を果たさなきゃならぬ。その義務教育というのはすぐれて国の責任だというふうに考えると、今大臣がおっしゃったそういう視点からいって義務教育で何が一番大事か、大事なものが幾つかあると思いますけれども、何が大事だというふうにお考えですか。
遠山国務大臣 義務教育につきましては、憲法上の要請がございまして、国民が国民としての必要な基本的資質を培うために、水準確保については国は責任を果たしていく必要があるわけでございます。その場合に、国だけでやるということではございませんで、国、都道府県、市町村、もちろん私立の学校法人もそうだと思いますけれども、それがそれぞれに適切に役割を分担する必要があると思っております。
 そのときに、教育が成功するか否かというのは教員にかかっているわけでございまして、私は、教育というのは人にありと思うわけでございます。その意味で、教員がその水準を達成するという目標にふさわしい形でそれぞれ配置をされ、そしてそれらの人々の給与費というものはしっかりと担保されていく、そういう必要があろうかと思うわけでございます。
 もちろん教育には、先生が必要であり、学校の施設が必要であり、教材が必要であり、あるいはカリキュラムのいろいろな基準とかさまざまなことがございまして、国としては、そういう大きな法制上の枠組みをとり、それから全国的な基準を設定し、さらには教育条件を整備していく。その整備の一つの主なものに、教員の給与費について二分の一国が負担しているということがある、そのように考えております。
山元委員 水準を確保する、国と地方が分担をして条件を整備していく、一つの側面です。もう一つ、水準を上げることとあわせて、機会均等。貧しい家庭の子も、あるいは身体的、知能的にハンディを持った子も、あるいは都会にいる子も田舎の山の中にいる子も、機会均等、本当に、力に応じて最大限その子たちの力を伸ばす、そういうことが保障されなければいかぬわけです。機会均等という、これは憲法も教育基本法も、あるいはこの負担法にも書いてあるわけです。だから、機会均等というのをしっかりと考える必要があるんだと思います。
 私どもは、この間からの大臣との論議の中で、どうしてもそこのところがすとんと納得いかないんです。例えば、国の負担を減らしていく、財政論がまずあると。そこまで言わなくても、財政負担を減らしていく、そのときに、各自治体の力というのは本当に格差があるわけです。きょう午前中に聞いた東京の力と私の住んでいる滋賀と、自分のふるさとを出してはいかぬですけれども、力はうんと差があるわけです。同じように教育行政をやっている者が、条件をよくしたい、いいところで勉強させたい、安全なところで勉強させたい、いろいろなことを思ってもなかなかできぬ。そこのところで、機会均等の保障というのは、国が責任を持たなければならない大きな役割だというふうに思うんです。そこの点についてはどうですか。今十分ですか。
遠山国務大臣 機会均等の考え方は、憲法上それから教育基本法上も明確にうたわれておりまして、すべての子供たちが無償で義務教育を受けられる、そのことを可能にするためにさまざまな整備を行い、また予算上の措置も行っているわけでございます。今回の措置も、国の給与費についての対象経費の種類を限定いたしますけれども、それの裏打ちはきちんとやるわけでございまして、それは蛇口がどちらから出るかということでございまして、それぞれの教員が得られるものというのはこれまでと同一なわけでございます。
 その意味で、私としては、義務教育の機会均等なりあるいはその水準の確保ということは、今回の法改正によって揺るぐものではないというふうに考えます。
山元委員 この間からずっと論議がありまして、去年からあったわけですから、今、具体的にこうこうというところだし、私の頭の中には、与党の皆さんとも相談をしながら、これには、前向きか後ろ向きかというと、この後減るんですから、だから、もし与党さんがこれで通されるんやったら、附帯決議で歯どめをかけたいという思いがあるわけです。附帯決議の一番先にやはり挙げておかなきゃならぬのは、機会均等を損なわないようにということを、きちっと約束を文部行政としてしていただきたいという思いがあって、私は今言っているんです。
 もう一つは、そういう意味でいうと、地方分権、地方の自主性を尊重する。今までの大臣の答弁の中で、地方の自主性は認める。国の責任は負います、けれども、地域がそれぞれ、例えば教員の配置の基準だとか学級編制の基準だとか、あるいはさまざまな努力を現に各地域でやってもらっている。そういう自主性というのは、言うは格好よう映るけれども、何だ、やってくださいよと。
 例えば、四十人学級を、三十人を基準とした教員を配置しますから、二十人学級のときも四十人学級のときも、野球するときには四十人学級だ、けれども算数をするときには二十人学級だ、こう弾力的に運用したらいい。けれどもそれは、三十人を基準にして、なお教員をふやすという保障がなければ、ぎりぎりのところであちこちこまを動かすだけの自主性とか、あるいは地方の努力ということにはならぬ。国の財政の厳しさを地方にしわ寄せをしている、その中でもがきなさいよ、知恵出しなさいよと言っているだけの自主性の尊重だとすれば、これは大変な質の低下を来してしまうわけです。だから、水準を上げていくために努力を、一方できっちりと責任を果たしながら自主性を尊重する、そういう自主性の尊重でないといけないと思うんです。
 要は、言いたいことは、そういう自主性を大事にするという中で、地域の格差を生むということになりはしないかという懸念を私は持っているわけですけれども、大臣、そこのところは、そこはきちっと持っているわけですか。
遠山国務大臣 国は、義務教育につきまして、最低保障といいますか、これだけは守ってもらわなくてはいけないということはきっちりと負担をし、責任をとるわけでございます。その上で、各地域においていろいろといい取り組みがなされて、それらについては、私は大いにやっていただいたらいいと思うんですね。しかし、すべての子供たちが享受すべき水準というものはしっかり国が守り、かつまたそれが機会均等になるというふうに考えているところでございます。
 今、御存じのように、第七次の教職員の定数計画が走っておりまして、そのことの配置の仕方とか、あるいは各地域における自主的な取り組みを可能にする方法とかという形で自主性を認めつつあるわけでございますが、この定数配置のあり方につきましては、これは大変活発な御議論が私の就任前になされたと聞いております。したがいまして、現下はその計画の実施中でございますし、しかし、その中にあっても、それぞれの地域の自主性を果たしていくということでさまざまな規制緩和も行っているところでございますが、国としては、水準確保とそして機会均等というその理念をしっかり守っていく、守っているというふうに考えております。
山元委員 きっちりとそこのところが、本当に国が責任を持つという仕組みも見えてこないと、あるいはそういう費目も見えてこないと、ああ、そうですかということで、極端に言えば、思っています、考えています、精神論では、これはこれから実際に地域が動いていく、あるいは金を運用していくということの上では何の担保にもならぬというふうに思うんです。これは、やはり大臣の答弁は重いと考えていただいて、これからも努力をしていただくという文部科学省であってほしいというふうにお願いをしておきたいと思います。
 それから、残った退職手当とか児童手当のことについて、十二月十八日の三大臣の合意で、これから検討するということになっているんですけれども、これも大変心配をしているんです。
 何遍も話に出ましたけれども、根幹を守る、根幹といったって、太い根幹からだんだん細くなっていっている根幹だと私は思いますよ。それで、十六年度予算編成までに結論が、やはり今度は児童手当も退職手当も結論がこうです、これに並びますということになってくるのか、そこのところの構えはどういうおつもりをしていらっしゃいますか。
河村副大臣 山元委員御指摘のとおりで、三大臣合意は、「平成十六年度予算編成までに結論を得る。」こうなっておるわけでございます。ということでありますから、まさに今後検討しなきゃならぬわけでございますが、あくまでもこれは、適切な財源がきちっと確保される、措置されるということがその大前提にあるわけでありまして、それなくして検討は前へ進みません。
 そういうことで、当然そういうことで検討、協議するというふうに考え、そして文部科学省としても、見直すべき点があれば大いに見直していかなきゃならぬと思っておりますが、あくまでも義務教育の水準を確保するんだ、あるいは教育の機会均等を確保するんだ、その基本線は今後とも文部科学省の責任において守っていくということがまず念頭にあってやっていくということであります。
山元委員 私は何遍も例に出すんですけれども、前の財政危機のときに、教育も聖域ではないといって第六次教員改善計画が二年延長されてしまった。そのときには、聖域はなしだ、こういうふうになって、教育も聖域でないと法案に書いてあった。その前にずっと圧力があって、大蔵からの圧力があって、頑張って福祉のところだけ、厚生だけは指一本触れてなかったと私は思っている。文部だけは、五年計画が七年計画にどんといってしまった。そのときの大臣、名前も顔も覚えていますけれども、むしろ旗を立てて官邸に行きなさい、大蔵省へ行ってくださいと言って、行った。
 おとついの論議の中で、だれか、体を張ってという話がありましたけれども、私はやはり、むしろ旗を立てて文部の皆さんが、これでは義務教育の最低は守れへんのやということを、根幹を限りなく細くするんだということについて、十六年度にその結論が出るまでには、性根を入れて頑張っていただきたいというふうに思います。
 時間が余りありませんけれども、八分の一の問題、借金の問題ですね。借金の問題、三百億円の問題も心配です。これはやはり、積んで積んで、結局は自治体が面倒を見なきゃならぬというか、処理をしなきゃならぬことになってくるのではないか。国が面倒を見るんだったら、今からしておけば、そんなもの何でもない。二分の一、二分の一にしたらいい。けれども、八分の一は、三百億円は地方財政の借金ですと言う、これも心配です。
 ですから、そういうことが将来どさんと自治体にかぶっていかないようにぜひ努力をしてほしい。もうこんなことはやめておこう、ことしでやめておこうというふうになるように、ぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。
 これは、午前中、参考人の方に申し上げたんですけれども、今現在三十四の都道府県から、議会から上がってきている。これを見て、国庫負担制度の改革を見て、これは危ない、自治体は大変なことになるということを危機感を持って上げてきていらっしゃる。全国の市町村教育長会議もそうですし、これは困るということをこの法案について言っているわけです。ですから、そこのところは、きっちりと、決意を込めて八分の一の問題についても取り組んでいただきたいと思います。
 最後にもう一点ですけれども、学校事務職員と栄養職員の問題です。
 この問題は、長い、二十年ほどずっと大蔵との綱引き、これは文部省、文部科学省も頑張ってきてもらって、定数がえするんだ、国庫負担はやめるんだという圧力に屈しないで、二十年ほどずっと頑張ってきて、今また出てきている、文字になっても出てきているわけです。
 事務職員は、これはもう御承知だと思いますけれども、学校の今の事務というのは、単に先生方、教職員の給料を計算して、物品購入していたらいいものと違う、開放された学校の中でさまざまな業務もふえてきている。そして、教育的な職員でないと事務職員というのは務まらないようになってきているんです。そういう重要な役割をだんだんと果たす事務職員を教員並みに保障するんですよと、きちっと国が身分を保障して、そして、よく言われるように、事務職員としての本分の研修も、努力もきちっとするんですよというふうに、本当に学校の教育集団の一人に事務職員をしていかないといけない、そういう流れになってきているんです。
 ですから、とんでもない、それを外して事務を雇えというような発想になっていったら大変だというふうに思いますし、もう一つの栄養職員もです。事務職、栄養職と並べてずっと来たんです。
 栄養職員の問題も、今の子供たちの食生活の状況というのは、皆さん御承知だというふうに思いますけれども、大変な状況になっているわけです。ろくろく朝に御飯は食べぬとか、偏食をする、あるいはラーメンが一番好きだというような子供もあるわけです。身体的な障害まで出てくるような食生活をしている子供もあるんです。
 ですから、一番望ましいのは、今の栄養職員を栄養教諭にする。前に、長い間かかって司書を司書教諭にして、本当に子供たちに読書の楽しさも、あるいは学校の環境も整える、そういう教職員の一人として司書教諭というのがやっと、やっとと言ったらあれなんですが、発足をした。今度は栄養職員もそういう形になれば、学校の中でしっかりとした栄養の先生がいてくれる、給食のおばちゃんというのではなしに。私は、昔いた学校ではおばちゃん、こう言った。
 けれども、そうではなしに、子供の栄養指導をする、子供たちの今の食生活を考えながらの献立、栄養を考えるというような栄養教諭、これは大変難しいというんですか、教諭の身分をということになってくると、司書教諭のときに大変な苦労があったように難しいかもしれぬけれども、そこのところは、やはり次のステップとして、事務職員も栄養職員も、きちっとした、本分を明確にした学校の教育職員として位置づけをより強めていくということが必要なんだというふうに思うんですが、そこのところは頑張ってもらえますか。
河村副大臣 事務職員、学校栄養職員、従来から教員とともに学校の基幹的職員である、この認識は微動だにいたしておりませんで、これからもそういうことでなければいかぬ、また、それでないと学校そのものが成り立っていかない、こういう思いでございます。
 特に、今御指摘のありました学校栄養職員の問題につきましては、食育といいますか、この重要性というのは非常に高まっておりますし、学校給食の持つ意味というのがスタートした時点と大きく変わっております。
 そういう意味で、私も、今委員の御指摘にありましたいわゆる栄養職員、栄養士のおばさんが学校の現場においてきちっと子供たちを指導できる立場にあってもらいたい、こう願っておりまして、今、文部科学省においてもこの検討にも入っておるわけでございまして、研究会等々におきましても、学校栄養職員からいわゆる学校栄養教諭という形で、それが望ましいんだという形で報告も出ておりますので、その方向に向かって最大努力してまいりたい、このように思います。
山元委員 ぜひそういう検討を早めていただきたいと思いますし、司書教諭の問題も、あれは当分の間置かないことができるという文言がずっと、四十年ですか、続いたわけです。ですから、そういうことにならないように、わっと一遍にできるような財政状況ではないことはだれでもわかっているわけですから、着実な前進ができるように、そしてそういう意味づけ、教育職員として、先生ということ、給食のおばちゃんじゃないというステップをきっちりと踏む、そういう手続を始めていただきたいというふうに思います。
 時間が来ますからあれなんですけれども、大臣、こだわるようですけれども、根幹は守る、地方分権は進めるんだ、こういう二つがありました。三つ目でいうと三位一体ですけれども、私は、根幹を守るということについて、根幹をどう考えるかということだと思っています。本当に子供たちを最大限伸ばすための経費というのが根幹でなければならぬというふうに思います。ですから、ぜひ、財務やあるいはほかの人たちの圧に屈するのではなしに、やはり文部科学省がまなじりを決して教育を守るんだということで御努力をしていただくようにお願いをして、終わります。
 ありがとうございました。
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 本日は、前回の委員会に引き続き、大臣、副大臣にお聞きをさせていただきますが、私もいろいろなところでいろいろな方々にお会いをし、いろいろなお話を聞きました。その中で、一人、私どもの党の参議院会長でもあります西岡先生と話をいたしました。いろいろと議論をしている中、今回の問題というのは遠山大臣にお尋ねすることは、ちょっと同情的な話かもしれませんが、かわいそうなんではないかなということをちょっと漏らしておりました。西岡先生がおっしゃられたのは、この手のことに関しては、副大臣の河村副大臣と大いに委員会で議論をし、教育行政全般に関することを話し合うべきだ、こんな御指示、御指摘もいただきました。
 そういう中で、私がいつもこだわり続けている、本当にこの国のあるべき姿、そこから教育というものがどうあるべきかということ、この根本論をいつも話をいたしておりますけれども、なかなか平行線のままで終わってしまっているような状態だと思います。
 きょうもお二人の参考人の方に来ていただき、お話を聞かせていただきました。私、いろいろな委員会で、参考人の方々にお話を聞く前に必ず、今の政府、そして小泉総理に本当にこの国のあるべき姿またはビジョンというものが明確にあるかどうかという質問を大体最初にいたします。ほとんどの方々がわからない、もしくははっきりしないというのが私の今まで聞いてきた答えだったと思います。
 また逆に、あると言った方もいらっしゃいますけれども、では、あると言われるのであれば、どんな国をつくろうとしているのか、またビジョンがあるのかということを聞くと、ほとんど回答はいただけなかった状態でございます。まさに、今この法案の審議をしているに際して、常に、いつも根本論のところで何かぼやけたもので、あいまいになり、国会審議が進んでいる、そんな気がいたします。
 このたびも、私、厚生労働もやらせていただいているんですけれども、まさに三方一両損という健康保険法の改正、三割負担。まさに一九九七年のときに、抜本改革を必ず二〇〇〇年度までにする、でも、それをせずして財政状況が悪化する中、とりあえずお金だけまた上げさせてくれ、こんなことを厚生労働委員会でも去年も随分議論いたしました。
 私は、全部同じだとは言いませんが、同じような財政議論の中から、根本論の大事なところをないがしろにしながら、また、そういったものもきちんと見えないままお金の帳じり合わせをしていく、これは僕は決していい状況じゃないと思います。そして、いつもこういった議論のしわ寄せというのは、国民であり地方だということになっているような状況だと思います。
 そういう中で、政府として、やはりそのビジョンをきちんと明確にし、自分たちはこうしたいと。いや、私たちはそういったものは出しているんですということかもしれませんけれども、それが私たちにはよくわからない。わからない上に、やっていることと言っていることが食い違ってくると余計わからなくなってきているのが実情にも思えます。
 そこで、きょうはちょっと、今までのこの話、平行線なので、立場を変えて、では、私が賛成をするとしたら、賛成をするという立場だったらどういうことを考えるのかなということを思ったときに、今までも、国の根幹として堅持をしていく、していく、堅持をしていく、していく、こういうことがずっと言い続けられてきております。では、今回の改正によって、義務教育というものがまさに脅かされる、堅持されなくなる事態というのがもしも想定をされるのであれば、どういうことであるのかなということを考えたことがございます。例えば、その議論も今まで出てきておりますけれども、地方財政の圧迫によって義務教育というものがないがしろにされていくようなこともあり得るのかなと思うのです。
 河村副大臣、もしもこの改正によって、各地方において、国民において、義務教育が、今まで国の根幹として堅持していくということをおっしゃられておりますけれども、堅持されなくなった場合もしくはそういうおそれがあるというのは具体的にどういう、特に地方行政または財政または教育行政においてあり得るのだろうかなということを、お思いになられることを御説明願えればありがたいかと思います。
    〔委員長退席、馳委員長代理着席〕
河村副大臣 一番我々身近に感じる例といたしましてはアメリカの例があるわけであります。これは、州によって教育を、随分権限を移譲して州でほとんどやれるようにしたところが、各州によって財政状況によってすごく格差がついた。今度はその修正のために大変な思いをするし、先生の確保も大変な思いをするというところから、アメリカの国家戦略はまさにそこに置かれているというふうに聞いているわけです。
 その点、日本は早くから、画一教育ということを逆に批判される部分もありますけれども、とにかく水準はきちっと守っていくという思いで来ました。これを全部地方にお任せする。私は、税金の使われ方ですから、国が出そうと、結果的に地方にいかに回っていくかということですから、根本的に、義務教育が地方に回る時代ということも理論上はあると思うんですね。
 あると思うのですが、しかし、この水準を守ろうとしたら、やはりそれぞれにおける首長さん方、いわゆる施政者の皆さん方の考え方によって使い方が自由になりますから、特に今の仕組みでやろうとしたら、これは交付税ですから、交付税は色がついておりません、どのように使ってもいい。特に文部科学省の予算で持っております三兆近い、二兆五千、六千億というこれだけの膨大なお金ですから、恐らく首長さん方は、それだけのお金が各県に渡れば、その何分の一になっていくのでしょうけれども、このお金があればほかに使えるという誘惑に駆られる可能性がかなりある、人間のやることですから。
 やはりそれは歯どめをかけなければいかぬ。水準は守っていかなければいかぬということですから、やはり今、国の義務教育の根幹、特に憲法上の要請もあります、私はそこにあると思うのでありますが、そういう視点に立って、国の持っている標準は守っていかなければいかぬと思います。
 私は、必ずその格差が非常になってくるし、今のこれを認めたならば水準が落ちるところが出てくる。これは今の現状から推察されるところでありますから、必ず根幹は守っていく、それ以上のことについていろいろ工夫なさってやっていただくことについては大いにひとつ奨励をいたしたい、このように感じております。
佐藤(公)委員 だとすれば、私は、もしかしたら、答えとして、いや全くありませんというのも答えだったのかもしれないというふうにも思いました。しかし、副大臣がおっしゃられていることというのはまさにそのとおりだと思います。そういうことというのは十分可能性としてあり得る。
 だとするのであれば、では、もしも私がこれに賛成しようとするのであれば、そこのところをきちんと、もうこの前の委員会でも話にありましたが、どういう歯どめをつけるのか。憲法上のということは、それはもう当然のことでございます。しかし、きょうも参考人の方がおっしゃられた内容の中でも、まさに内容的な、制度的な問題と財政的な問題点、やはり二つの点があり得るということの話の中から、いかにそこのところを歯どめをかけていくのか。
 つまり、今副大臣がおっしゃられたのは、今のままでは割と精神論的な部分がすごく強いと思います。でも、精神論的な部分というのは、まさにいい人たちが、きちっと認識している人たちが、理解している人たちがやっていけばそれは問題はないかもしれませんが、そういう人たちだけがすべて首長になっていくとは限りません。そういう部分で、そこにどういった歯どめをかけていけば今回のものに賛成ができるのかなということを思いますし、また逆に心配もする部分なんですけれども、その辺、副大臣どうでしょうか。
河村副大臣 この義務教育費国庫負担分を全額地方にということも検討課題に入っている、これは三大臣の合意にもちゃんと書いてあります。しかし、私どもでやっております、少なくともその最低限はどこなのかということ、これは今、二分の一ということで来ているわけです。私は、この二分の一というのは、やはり国が義務教育の水準を確保するという上で一番譲れないといいますか、地方のことも考え、そして国の教育に対する根幹を考え、二分の一というこの線をきちっと堅持していくということであろうと思います。これを三分の一にしたらどうだとか、いろいろな意見も一部あるように聞いておりますが、やはりこの二分の一というのは、そういう面では非常にきちっとした一つの担保の線だ、このように感じます。
佐藤(公)委員 今の御説明を聞かせていただいて、では、その二分の一というのを、今もある程度担保されているということですけれども、本当にこれがきちっと担保されているということ、これによってまさに義務教育というものが、今後、地方自治体または財政状況によって、きちんとある一定の水準を維持し、国の根幹として堅持していくことが間違いなく可能だという、一つのセーフティーネットになっているというふうに副大臣は本当にお思いになられているのでしょうか。
河村副大臣 これまでこういう形できちっとやらせていただいておりますし、そのことによって、義務教育のいわゆる標準といいますか、水準といいますか、それがきちっと守られてきているわけでありますから、私は、これをきちっと守ることによってこれが維持できる、このように確信をいたしております。
佐藤(公)委員 ちょっと私の方としては、それだけでは賛成し、納得し切れないかなという気は自分自身いたします。
 それと、先ほど山元先生もお話をされておりました、まさに聖域なき構造改革ということで内閣として取り組まれております。まさに構造改革、教育分野も聖域をなくして手をつけていこうということで進んでいると思います。これは副大臣がお思いになられていることでも結構ですけれども、個人的に、言えること、言えないこともあると思います。今の日本の教育、学校教育、社会教育、それに家庭教育、幾つかの分野で分かれていると思いますけれども、特に学校教育に関しての一つの構造改革ということをうたったとするのであれば、まさにどこかに問題点が大きくあるからこそ構造改革をすべきだという今までの私の話の流れどおりに説明をしていただくならば、今副大臣がお考えになられている学校教育の一番の問題点というのはどこにあるのか、またその思いはどんなものか、お聞かせ願えればありがたいかと思います。
河村副大臣 いろいろな切り口があるんだろうと思いますけれども、今一番、皆さん、我々が心配していることは、やはり子供たちが学ぶということに対する意欲を失っている、いわゆる目標を持たないといいますか、これは私は、大きな社会的な要因があると思うんですね。
 日本が戦後、右肩上がりの経済社会の中で、豊かになろうという思いで国民の意識がそういう方面にずっと走っていて、みんなそういう思いで頑張ってきたという思いがあった。それがある程度の目標を達成されて、第一段階的にといいますか、今すべて国民が全部中身ともども豊かになったとは、質の問題もありますから言えませんが、少なくとも豊かになろうという目標を達した時点で次なる目標を持ち得ないということと、それによって、いわゆるお金さえあればといいますか、平たく言えばそういうことになるんだろうと思いますが、そういう意識の中で、人間として生きていく上で何が必要なのかというようなことを今失いつつあるんじゃないか。
 その顕著な例としては、青少年の犯罪が多い、それから現実に、学校に目標を持たないで、不登校児がふえてきた。数字の上でもそういう現実の問題がありますから、これは当面、まず、優秀な先生をしっかりつくるという、すぐ目の前の大きな対策、それに対して、やはり根本から日本人としてこの問題をどう考えていくか、これは国民全体が考える問題にしていかなければいかぬ。そこに今、教育の根本を見直そうということで、教育の根本法であります教育基本法についても一緒に考えてみようというときに来ておると思うんですね。
 だから、やはり全国民がこのことに思いをいたしてこの問題に取り組んでいくということでなければならぬと思いますから、小泉改革、構造改革なくして日本の未来はないと言われること、私は、そのことの中には教育の改革というのは当然入っていると。小泉首相が就任のとき言われたあの米百俵のお話というのは、確かに前段の国民に耐乏を強いる意味にも使われましたけれども、これは、最終的にはやはり教育投資の話であり、人材育成の話でありますから、小泉改革の終局、起承転結は教育改革に尽きる。まさに、人間力戦略といいますか、それを文部科学省としても強く訴えているわけでありますが、そこへ持っていくことに尽きるであろう、このように感じております。
    〔馳委員長代理退席、委員長着席〕
佐藤(公)委員 今説明を聞かせていただいたんですけれども、要約すれば、まさに目的を持たなくなった子供たち、もしくは日本人ということが今問題になっているということなんでしょうか。
河村副大臣 もちろんそれだけが、それもその大きな要因の一つだと思いますが、それは強いて言えば、佐藤委員がいつも指摘されますように、国家ビジョン、日本の国づくりをどうしていくんだというものがもうひとつ明確でない、これは今、我々、まさに見つけ出さなければいかぬ。小泉総理が、日本の構造改革をやっていく中で日本の未来があるんだ、こうおっしゃっております。そうした中には、いろいろ提言された中には、当然人材育成ということも入っておるわけでありますから、私は、これはやはり国のあり方が問われておる問題だというふうに思います。
 もちろん、目標を持てないことも一つですし、規範意識が薄れてきた、あるいは家庭できちっとしつけをやらなければいけないことができなくなった、そういうようなことが複合的に重なって、そして今の現状があるんだ、私はこのように思います。
佐藤(公)委員 副大臣、繰り返しになりますけれども、やはりそこの問題点の整理ということがわかりやすく、委員の皆さん方、そして国民の皆さん方にきちっと明確に伝わるような説明というものが必要だと思います。何となくはわかっても、はっきりよくわからないまま今こうやって議論をしているような感じがするんですけれども、目的を持たなくなった国民、そして子供たち、それだけじゃないということですけれども、まさにそれは今の政府に言えることなのかなという気がいたします。そして、話はさきに戻りますけれども、参考人の皆さん方から、きちっと明確な政府の方針、ビジョンがあるのであれば、ある、それがどういうものか、こういうものですという話が聞けるような状況になってこないといけないのかなという気がいたします。
 実際、そのビジョンというものが、人間力戦略ビジョンということでもよくお話も出て、まさに受け身ではなく、自立をして創造的な人間、次世代を切り開く人間をつくり出す、こういうきれいな言葉では並んでいるんですけれども、では、具体的にこれを、どこに問題点があって、どこにどう変えていくのかということに関しては、何となくぼやけた状態になっている。
 では、一つのプライオリティーというのをつけていった場合に、今もう一度お聞かせ願えればありがたいのは、この国の教育の、例えば小中学校、義務教育なら義務教育のここにこういった問題点があるから、これを直すべく構造改革をしなければいけない、この論理性が非常に抽象的に、あいまいな状態の中で物事を進めているのに対して、私は、この国の行く末を非常に心配するところがあるんですけれども、副大臣、いかがでしょうか。もうちょっと具体的にはっきり、自分の思いでも結構です。
 自分の長い間、まさに西岡武夫先生がおっしゃっておりました。副大臣は、もう少し若いころは非常に教育分野に対しての志高く、いろいろなビジョンを持たれていた、それが今副大臣になられているのであれば、その志を聞いてこい、こういうことも言われました。ですので、そこら辺を詳しく、端的に、具体的に、わかりやすく説明をしていただくことがこれからの議論で非常に大事なことだと思うんで、副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 私は、やはり教育の原点というのは、生まれたときからスタートするわけでありますが、家庭にあるというふうにずっと思ってきております。ただ、我が身を振り返ってそんな大きなことを言えるかと言われるとじくじたるものもありますが、そこからやはりスタートしております。
 日本がここまで来れたというのも、やはり国民の教育にかける思いといいますか、そういうものが非常に高かった、そして国もそれに向けてきちっとした標準を維持してきたというところにもあると思いますね。しかし、それに戦後の今日、制度疲労的なものもあると私は思うんでありますが、ゆがみが来たということでありますから、これからは、前にも一度委員の御質問にお答えしたことがありましたが、「国際社会において、名誉ある地位を占めたい」と憲法の前文にうたってある。私は、これは一つの大きなグローバル時代における日本の考え方として、根本にあっていいと思うんですね。
 しかし、それにはやはり、教育基本法による人格の完成という一つの大きな課題がありますが、それに向けてまず日本人一人一人が、さっき御指摘があったように、自立といいますか、人格ともに自我をきちっと確立して、自分の考えを持って生きていく。その目標をどうするかということでしょうから、これはわかりやすく言えば、努力すれば報われる、いろいろな選択肢があって、一度二度挫折したって必ず次の道があるんだ。また、そのことを、親もそうでしょうけれども、学校に行ってもあるいは地域に行っても、それを国民がみんなで支えてくれる、激励してくれる、そういう社会をつくっていくということになっていくのではないでしょうか。
 私は、日本はこれだけの平和国家をつくってきたことにもっと自信を持っていいと思うんですね。そういう意味で私は、これからも日本はこの平和路線を守りながら、これまでつくってきたものに自信を持って、日本人はこれだけやってきたんだということを胸を張っていけるような教育をする。もちろん、国内で頑張る人もおれば、海外に出て頑張る人もおる。そして、日本人というのは偉いものだ、あれだけの戦争をやってきたけれども、しかし、ちゃんと頑張ってここまで来たんじゃないのかと、私は、これはある意味で評価されていると思うんですよ。そのことを、我々はもっと自信を持っていく。
 また、子供たちもそのことに、その年代に応じた教育の仕方はあると思いますけれども、そういうことで、もっと自信を持っていくことが国民をもっと生き生きとしていく、そして、そのことをきちっと担保するのが教育でなければいかぬ、このように思っています。
佐藤(公)委員 もう時間もなくなってきましたけれども、私は、しつこいようですけれども、この議論は毎回の委員会で何回でもやります。何回でもやって、お話し合いをさせていただきます。
 正直言って、大変失礼な言い方かもしれませんが、細かいことは官僚の皆さん方がよく御存じです。
 先ほど目的を持たなくなった日本人、これは僕は、政府、政治家に今言えるんじゃないかなと。夢をきちんと持ち、そして自分の信念と理念をきちっと話ができる。自分たちは、義務と責任を踏まえ、権利を大事にする自立した個人であり、家族であり、地域であり、国家をつくりたい。その中で、フリー、フェア、オープンな社会において、だれもが創意工夫によって何遍でもやり直しがきくような社会をつくりたい。そしてそこには、規律、道徳心、倫理というものがあり、弱者をきちっと守っていく、規律を重んじていく、こういったものを表裏一体できちっと確立していく。
 多分、僕は、副大臣と同じ考えだと思うんです。でも、それをなぜかきちっと表に出して議論ができない。また、そこが、政党がみんながばらばらになる。何か今の政界自体が非常にわかりにくくなっている。これが、今の日本の社会全体にゆがみを生じさせているんじゃないかなと。まさに、そこは政治家、私たちが本当に襟を正し、原点に立ち返りやっていくことを副大臣、また委員の先生方にお願いをし、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 初めに、外国人学校出身者の大学受験資格付与問題が緊急を要する問題として浮かび上がっておりますので、一問伺いたいと思います。
 インターナショナルスクール修了者に対する大学受験資格の問題ということで、欧米系スクール修了者については、文部省告示の改定で十四年度中に措置するという発表かと思います。先ほどもいろいろ議論もありましたけれども、その中で、一方、在日韓国・朝鮮人など民族学校を含むアジア系スクールについては外されたということで、私もこの報道では大変驚いたわけであります。これは先ほど、今後検討もという御答弁が一応あったかと思いますけれども、もう一度確認をさせていただきたいのです。
 この問題では、やはり、当の学校、大学関係者から強い批判の声が上がっているというのはもっともなことだというふうに私は思うんですね。というのは、特に朝鮮学校については、長年の入学資格付与についての要望、運動もあったわけですよね。それから、日弁連が一九九七年には、五年間に及ぶ調査活動に基づいて報告書を出されている。「朝鮮人学校の資格助成問題に関する人権救済申立事件調査報告書」というものがありまして、その次の年には、総理大臣あてあるいは文科省、大臣あてに勧告書なども送られているということで、関係者の皆さんは、やはりこれは早く実現してほしいという声だった。公立や私立の場合には既に受験資格のあるところもあるということで、なぜ国立ができないのかということもあるわけです。
 それで、私、文科省にちょっと聞いてみましたら、インターナショナルスクールというのは一体どのぐらいあるのかということで一覧をいただきましたら、各種学校、ずっとありますけれども、大学資格でいいますと、高校を持っている学校ということになりますけれども、三十幾つある。そのうちの過半数は朝鮮人学校なんですよ。朝鮮学校なんです。だから、ある意味で、大部分の学校については外して、そして十六校だけ認めた。これは、いかにもおかしいじゃないかということになるわけですね。
 それで、文科省は、十四年度中に措置するという方向でこの民族学校についても至急検討するということを強く御要望申し上げたいと思いますし、きちんとした御答弁をいただきたいというふうに思います。
遠山国務大臣 昨年三月の閣議決定において指摘されました、インターナショナルスクールにおいて一定水準の教育を受けて卒業した生徒が希望する場合に、日本の大学や高校に入学する機会を拡大するということで、先般、対応の案を公表したところでございます。
 対応の案では、国際的な評価機関で認定を受けている外国人学校を卒業した者について入学資格を認めることとしようということでございますが、対応案の検討に際しまして、最初から特別の外国人学校を除いて検討したものではなくて、そういうものを検討する際には、客観的な第三者的な評価機関で認定を受けているところはよしとするというのが、これは従来の我が国の行政のあり方のみならず、国際的にもそういう方法でこういう資格については考えられていると思います。
 残念ながら、アジア系の学校といいますか各種学校等につきましての認定機関がないんですね。そういうことで、結果的にアジア系の外国人学校というものが対応案の中では抜け落ちてしまうということになるわけでございますが、この点につきましては、まだ決定ではございませんで、目下パブリックコメントにかけておりますし、いろいろな御意見があるということも承知をいたしております。
 そのようなことから、十分考えてやっていきたいというふうに考えております。
石井(郁)委員 私は、教育の中に差別があってはいけないわけで、特に国際化と言われている折から、またアジアの中の日本ということで非常に注目もされている折から、こういう問題をやはりこのままにしておくわけにいかない。これは、文科省としての姿勢が本当に問われる問題だし、見識が問われる問題でもありますので、必ずきちんと措置していただきたいということを強く申し上げておきたいと思いますし、また、もっといろいろな問題が含まれておりますので、次の機会にはさらなる質問もさせていただこうかなと思っております。
 さて、本題でございますけれども、今回の義務教育費国庫負担法の一部改正案は、共済費長期給付と災害補償基金を国庫負担の対象から外すということで、到底認められないものでございます。きょうは、幾つか確認の質問をしたいと思っております。
 そこで、まず、何度も言われています義務教育費の根幹を守るということでございますが、大臣もそれを強調されていらっしゃいますが、その根幹は何かということなんですね。十二日の児玉議員の質問に対して、給与費等というふうに御答弁があったかと思います。その給与費等というのは何を指しているのか、もう少し内容を明確にしていただきたいと思います。
遠山国務大臣 国が責任を負っております義務教育の水準確保のためには、さまざまな制度なり経費が必要だと思っておりますけれども、根幹とは何かということで、特に今お願いいたしております法律との絡みで申せば、教職員に支払われる給与費ということになると思います。
 それで、給与費という考え方にはいろいろな考え方がございまして、定義上でいいますと、広義の定義それから狭義の定義ということになってまいるわけでございます。今般お願いいたしておりますのは、狭義の、狭い意味の給与の中には入らないわけでございますし、また広義の、広い意味での給与といいますよりは、給与等といいますか、給与以外の経費で、しかしそれを国庫負担にしてまいった経費でございます。
 そのようなことで、これはなかなか、経費の種類をどのように考えるかというのはいろいろな考え方があろうかと思いますけれども、私どもといたしましては、給与費という場合には、狭義の給与というものを中心に考えているというところでございます。
石井(郁)委員 何かどうも、もう少し確認しなきゃいけないんですが、それはちょっと後でおいおい出てくることでございますので、端的にお聞きしますけれども、この法案第二条第一項に、「市町村立学校職員給与負担法第一条に掲げる職員の給料その他の給与及び報酬等に要する経費」、第二項には、「都道府県立の中学校、中等教育学校、盲学校及び聾学校に係る教職員の給与及び報酬等に要する経費」、第三項に、「児童手当法の定めるところによる公立の義務教育諸学校に係る市町村立学校職員給与負担法第一条に掲げる職員に対する児童手当の支給に要する経費」というふうにございます。
 これらは、給与費等という範疇に入るということでよろしいですか。
遠山国務大臣 給与費等といいますか、国庫負担対象経費となっている広義の給与と、今、給与以外の経費のうち児童手当についてお話しでございましたけれども、給与費等という中に含まれるわけですね。
石井(郁)委員 そこで、市町村立学校職員給与負担法に基づくというふうにありますから、そこでの国庫負担の対象となる給与費目はどうなっているかといいますと、ずっとありまして、給料、扶養手当、調整手当、住居手当、初任給調整手当、ちょっと読み上げますけれども、通勤手当、単身赴任手当、特殊勤務手当、特地勤務手当、僻地手当、時間外勤務手当、宿日直手当、管理職員特別勤務手当、管理職手当、期末手当、勤勉手当、義務教育等教員特別手当、寒冷地手当、それで退職手当まで挙がってございますが、これは、今大臣がおっしゃる根幹である給与費、これは給与費ということで確認していいんでしょうか。
遠山国務大臣 今読み上げてくださいました手当、扶養手当に始まって、さまざまな手当があるわけでございますが、これは、狭義の、給料そのものとそれから諸手当ということで、給与というふうに考えております。
 ただ、退職手当につきましては、退職の給与でございまして、これは広い意味の給与に入るというふうに考えております。広義の給与ということでございます。
石井(郁)委員 何だか、最初に狭義、広義と分けられたところが独特かと思うんですけれども、義務教育費の根幹は守ると。給与費という場合と給与費等という場合とで、この給与費等というときの等は広義のものだというふうにおっしゃっているんでしょうか。
 そして、では、給与費というものに入るものは何なのかという問題なんですよ。給与費というのは給料一本だけで、あとは全部、等だ、広義だというふうな大臣の御見解ですか。
遠山国務大臣 これは手当の細々したものの解釈にまたがるわけでございまして、政府参考人の方が正確にお答えできるのかと思いますけれども、私どもの一応の分類では、給与という考え方の中に、広い意味の給与とございまして、これは在職給与とそれから退職給与というものがあるのではないか。退職給与というのは、手当でいいますと退職手当でございます。それから、在職給与、これは狭義の給与というふうに考えておりますが、それは給料と諸手当でございますね。これは幾つもございます。先ほどお読み上げになったもののほとんどが該当するわけでございますが、そのように考えております。それで、給与以外の経費として、児童手当、それから公務災害補償基金負担金、共済費長期給付というのが入る。
 これらをひっくるめまして、現在は国庫負担対象経費になっているわけでございますが、今般改正をお願いいたしますと、給与以外の経費の中の公務災害補償基金負担金とそれから共済費長期給付というものにつきましては、これは一般財源化していくということになるわけでございます。
石井(郁)委員 どうも、広義、狭義というふうに分けられましたけれども、これは文科省の統一した見解として、いつごろからそういう見解でこの問題に臨んでいらっしゃるんですか。これは何か公式に発表されたものとかあるんですか。
遠山国務大臣 これは講学上の分け方でございます。いわゆる学問上といいますか、経費についての諸概念を取りまとめたそういうものの成果として私どもは取り扱っております。
石井(郁)委員 ちょっとややこしい話をして申しわけないんですけれども、私は、やはり根幹というのは給与費。給与費なのか、給与費等まで含めるのかというのが一つあるんですが、給与費等まで入れて根幹という御答弁だと確認していいんですよね、根幹を守るという場合に。一つは、そこの確認と、しかし、その給与費というのは何なんだと。実は、意外と、それぞれの概念で使われては困るわけで、私ども、今の大臣の御答弁というのはやはり違うと思うんですよね。
 これは、給与費という場合には、例えば市町村、自治体が条例などで決めたりしてやるわけでしょう、やっているわけです。これを見ますと、給与という中には、費目で退職手当がちゃんと入っているんですよ。そういう理解なんじゃないでしょうか、普通は。だから、何でここで給与から退職手当というものを外すのかというのはどうも腑に落ちないということで、やはりこれは給与の範疇に入っていますよ。インターネットで引いてみましたけれども、みんな、地方自治体、市町村、自治体は、退職手当は給与の中に入っている。
 こういう理解はどうなんですか。それが間違っているんですか。私は、やはりちゃんと入れるべきだし、守るべきだというふうに思いますが、いかがですか。
河村副大臣 給与費ということになりますと、さっき大臣も答弁いたしましたように、この場合の給与費というのは、さっき大臣が説明された、いわゆる狭義といいますか、退職給与を含まない、退職手当を含まない考えで、私はこれが給与費であるというふうに考えます。
 退職手当については広義の給与費に含まれるという説明を大臣がしたと思うのでありますが、退職手当の考え方は、この場合は教員ですが、教員が長期間勤務して退職する場合の、いわゆる勤続報償的なものである。したがいまして、何年勤務したかによってそれも違ってまいります。在職している時点で支給される、いわゆる狭義の給与費と、それから退職後にもらう退職手当というのは別のものだ、これまでこういうふうに整理をしてきております。そういう考えに立っています。
 そういう意味もあって、ある職員が、退職後にといいますか、退職して後も、懲罰にかけられるようなことがあって有罪判決を受けたような場合に、給与費までは返せとは言いませんが、報償的な意味のある退職手当は没収、返還をするという判決もあり得るわけでありまして、そういう考え方に立ってみても、いわゆる給与費というのはそのときの在職中に支給されるものであるという考え方で整理をいたしておるところであります。
石井(郁)委員 本当におかしいんですよ。これまでの文科省の説明はそういうことじゃなかったはずですよ。
 これは、文部省教育助成局の財務課、高橋伸一氏の論文を私も見まして、それを紹介しますけれども、「義務教育国庫負担制度について」というのがございますよ。その中には、給料から退職手当まで給与費とはっきり言っています。給与費目として、共済長期給付、公務災害補償基金負担金、児童手当までも挙げていますよ。それから、これは先ほどの市町村立学校教職員給与負担法の中でも、退職手当まで入っていたじゃないですか。だから、法律上ではそうなっているじゃないかと。これは地方財政法でも、第十条は、第一に、「国が、その経費の全部又は一部を負担する」ということで、一項目に「義務教育職員の給与に要する経費」と書いてある。給与に要する経費。それで、わざわざ括弧して、退職一時金とか退職手当とか旅費とかは除くがと。だから、今挙げた費目などは除かれていないわけですよ。
 だから、今までの給与という、あなた方が説明したことからしても、その説明を全く、勝手に変えて、それでこういう定義をしているんじゃありませんか。私は、給与費を守るというんだったら、そういうものをきちんと含むということを言明しなきゃいけないというふうに思うんですね。そうしないで、既にもう給与費自身がこうやって削減されていっている。これは一つ削減されたというので、こんな形でやっていく。こんなやり方というのは、私は到底認めるわけにいかないと思うんですが、これは大臣、いかがですか。
 だから、義務教育費の根幹だとおっしゃっているわけでしょう。給与費は守りますというのが御答弁ですが、そういうふうにして、これは給与費ではありません、これは給与費ではありませんということで、もう給与費自身が細っているじゃないですか、削減されているじゃないですかということでございますが、いかがですか。これは給与費を守っていることにならない。
遠山国務大臣 私どもは、その点につきましては非常にしっかりと考えておりまして、給与費で本当の根幹ということになりますと、これは在職給与でございますので、狭義の給与ということで、いわゆる給料とそれから諸手当になるわけでございます。
 ただ、給与というその概念というのは、法律によったり、あるいは用い方によってさまざまな用法があるというのが通説であるわけでございますが、私どもがとっておりますのは、狭義の、給料とそれから諸手当で成り立つ在職給与のほかに、退職給与というのがある、これは退職手当でございますが、これらをひっくるめて広い意味の給与と呼ぶ場合もあるわけでございます。
 ぎりぎりと詰めていった場合に、では、何かということでございますが、私どもとしては、給与の根幹を守るということで、そこはとにかく守っていきたいと思っているわけでございますけれども、今回お願いしております二つの経費の種類につきましては、これは給与等に入るというふうに考えているわけでございます。できるだけ、その根幹である給与についてしっかり守っていきたいという姿勢をお話ししているわけでございます。
石井(郁)委員 広義という形を持ち出して、給与費ということを事実上狭めていってしまう、これは私は、法律の解釈としてもやはり勝手な解釈だということでも、本当に認められないと思うんですね。だから、退職手当や児童手当は、給与費としてやはり国庫負担の対象から外すべきでない、給与費だということで、私は、きちんと遵法精神でやっていただきたいということを強調したいと思います。
 このことに私がこだわりますのは、片山総務大臣、今回、特例交付金、交付税の特会借り入れで対応したということについて、このように述べていらっしゃるわけですね。二千三百億円ぐらいで税源移譲だとか税源配分のあり方を見直すのはなかなか難しい、やはり兆単位にならないと、ウン兆円単位にならないとと言っている。我々は、それまでのつなぎとして地方特例交付金と地方交付税という考え方をとったと言われているわけでしょう。これは、鎌田さゆり議員の質問に対する本会議の答弁でございます。
 だから、全面移譲に向けたつなぎだということをやはり表明されているわけですよ。だから、根幹を守ると言うけれども、結局、給与であるそういう退職手当にも手をつけていったら、これはもう総崩れになっていくんじゃありませんか。そういう意味で、私は、やはりここはきちんとすべきだ、本当に譲れないところなんだということを申し上げているわけでございますが、どうですか、大臣。
遠山国務大臣 御心配いただいている御趣旨というのは大変よくわかるわけでございますが、とにかくこの問題につきましては、退職手当、児童手当等に係る部分の取り扱いについては、関係省庁間における継続検討課題とするということで、今年度末までに結論を得るということになっております。
 私は、今回の一連のプロセスがあったわけでございますけれども、今後どういうふうにしていくかというのは、義務教育費国庫負担制度については、まさに教育改革という角度から教育の土俵の上で考えていくということが一点ございますし、また、経費の点につきましては、私は、仕切り直しといいますか、もう一度この問題を取り扱うというのは、もう一回新たな条件下で議論されてしかるべきだと思っております。
 これは私の個人といいますか、この職にある者として考えるものでございますけれども、やはり年末にどういう日本の経済状況になっているのか、どういう日本の財政状況になっているのか、あるいは三位一体論と言われているけれども、それがどんなふうな形をとろうとしているのか、それが明らかでないといけませんし、それから、義務教育費国庫負担金だけにターゲットが当たるとすれば、私はそれはよくないと思うんですね。やはり全体をどうしようとしているかというのがわからないと納得できないわけでございますし、さらに言えば、仮に何かの手当を今回のように地方に移譲するということになりましたら、財源についてはきちっと手当てする、それは満額の回答がない限り協力できないというふうに、私は個人として考えております。
石井(郁)委員 退職手当、児童手当は、十六年度予算編成までの結論だと。しかし、これはもう危ないと皆さん感じているわけですから、本当にそこのところはきちんともう一度頑張っていただきたいということがあるんですが、私は、今回の法案は、やはり義務教育費の根幹部分を支える義務教育費国庫負担金、大体、二千三百億円も大幅削減ということがありますし、これは、これまでになかったことですよ、これほどの削減は。それから、この後に出てくる国立大学法人法案でいえば、教職員の身分は非公務員型になりますし、国の財政責任というのは放棄することに道を開くということもあります。
 大臣が今、教育改革を進めるとおっしゃるんですけれども、私は、文科省の進める教育改革というのは、このようにして義務教育費の大幅削減を受け入れることなんだ、高等教育の財政責任も放棄するんだと。私、こういうことだったら、これは本当に教育行政の中心的任務の放棄だ、教育の土台を破壊するというふうに言わなくてはならないと思うんですね。
 そういう意味で、これから大きな議論も必要なんですけれども、私は、国会としては、やはり文科省の言うとおりじゃなくて、きょう、前回と今回の議論でもわかりましたように、委員会の審議を見ても、委員会としてはこれは満場一致で否決してしかるべきではないのか、このことを皆さんに要請もいたしまして、質問を終わらせていただきます。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 山内惠子です。
 大臣には先日、二月二十六日の文部科学委員会で、大臣の所信に対する質問で、民族学校の卒業生の大学入学資格について質問しました際、大臣は、「今のもよくわからない御質問なんでございますけれども、」とおっしゃいながら答弁に立たれました。質問内容がわからないのであったのであれば、再確認していただきたかった問題でした。
 このような言い方は、この委員会では初めてではなかったと思います。都築議員、石井議員に続いて三回目ではなかったかと思います。私の質問の意図が伝わらないままお答えいただくと、お答えの中にも内容がちょっとずれるということになりますので、今後、このようなことのないようにということをよろしくお願いいたします。
 恐縮ですけれども、これも質問ではありませんが、河村副大臣に、あの日申し上げましたこと、父兄という言葉について申し上げましたが、またきょうも何げなく使われて、ちょっと気になりましたので、これはもう一度言いますと、父兄というのは母親に親権のなかった時代の用語ですので、どうぞ死語にしていただきたいと思います。
 それで、きょうの本題に入りたいと思います。
 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案についてですけれども、地方財政の現状について、過疎地とか財政の弱い自治体の教育水準の確保についてなんですけれども、私のところにこのような声が寄せられています。地方財政が苦しい中、過疎地などでは、例えば一クラス五人とか十人の小学校では先生を雇えなくなり、学校を維持できなくなるのではないかと教育現場の心配が訴えられていますが、このようなことにどのようにお答えになられるか、お聞かせください。
矢野政府参考人 まず、一般的なあれでございますけれども、そういう過疎地等については、教育条件面でハンディがあるそういう地域等につきましては、これは先生御案内のように、さまざまな特別措置法等によって国として特別な配慮をなされているわけでございますし、また、実際の財政等の運営におきましても、当然のことながら、それを踏まえた運営がなされているわけでございますし、そのことにつきましては、毎年毎年の予算措置を講じて、そういうある意味でのハンディを負った地域の教育条件が低下しないように、むしろ充実するような形で私どもとしてもこれまでも努力してまいっているところでございますので、その点は御理解をいただきたく存じます。
山内(惠)委員 そのような措置がなされていることは知っていますけれども、このように国庫負担の費用がそれぞれ一般財源に振り込まれていくというような方向の中で、大変心配をなさっての声だったと思います。義務教育の国庫負担制度は、全国どこでも同じレベル、同じ条件の教育を保障する、これが憲法第二十六条、「ひとしく教育を受ける権利」であると思います。特に、教育基本法十条の二項で、「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」をすること、これがこの「ひとしく受ける権利」の保障だというふうに思います。過疎地の子供が守られるということで、今後ともぜひその思想をお忘れなくいただきたいというふうに思います。
 次の質問なんですけれども、地方分権改革推進会議の中間報告の二十七ページに下記のような記述がありました。「確保すべきは教育水準であって教員の数ではない。国の関与を弾力化し、学級編制や人員配置上の種々の工夫も地域の実情と地域の判断によって行ってよいというのであれば、補助負担金制度等が地方の自由な判断を事実上制約するようなことは適当ではない。」まだこの後ずっと続いてありますけれども、最初に、この「確保すべきは教育水準であって教員の数ではない。」ということについて、どのように考えられていらっしゃるか、文科省としてどう受けとめられていらっしゃるか、お聞かせください。
矢野政府参考人 これは改めて申し上げるまでもなく、教育の成否は教員にかかっているわけでございます。そういう意味で、義務教育の水準を確保するためにはすぐれた教職員を一定数確保することが必須のことであるというふうに私どもは考えているところでございます。
山内(惠)委員 ただいま言われましたように、本当に必須のことですので、国庫負担の制度を本当に堅持していただきたいのがこのことです。
 次のところにあります、「補助負担金制度等が地方の自由な判断を事実上制約するようなことは適当ではない。」これが総務省の考え方として出されたんだと思うんですけれども、このことについてはどのようにお考えでしょうか。
矢野政府参考人 これは補助負担金制度に限らずでございますけれども、国の補助制度あるいは負担制度について、その運用については国の基準を基準としながらも、その具体的な運用についてはできる限り地方の裁量や自由度あるいは創意工夫を生かせるような、そういう運用があってしかるべきではないかということでございますので、一般論としては、私どもとしては特段問題があるというふうには思っておりません。
山内(惠)委員 それはこういうことではないんでしょうか。今回の共済の問題と災害の問題、そういうようなことに対応するのに今回はそれなりの措置をしたとおっしゃっているけれども、例えば今後給与費を一般財源化したというときに、そのことに縛ってはいけないということを言っているんじゃないんですか。
矢野政府参考人 今のくだりはそういう話ではなくて、学級編制や教職員の配置についてのさまざまな地域の工夫ということでございますから、そういう意味での自由な判断を事実上制約することは適当ではないということでございますから、そういう意味で、学級編制あるいは教職員配置の運用についてはより弾力的な対応が必要であるというふうに私どもとしてはこの指摘を受けとめておりまして、まさにそういう方向でこれまでもやってまいっておりますし、今回もそういう方向での幾つかの弾力的な施策を講じるようにいたしているところでございます。
山内(惠)委員 次のところにこのように書いてありました。「そして何より、教育への投資という面から経費負担を捉えれば、見据えるべきは教員ではなく生徒であるべきである。」というのを先ほどお答えになったんですけれども、もう一度ここのところでこの言葉が出てくるんですね。「見据えるべきは教員ではなく生徒である」と。その意味では、教員の給与費を計算するに当たっても、実質的な賃金ではなくて定額化をしていくということを方向づけて、この「教員ではなく生徒であるべきである。」という方向でこれは書かれた文ではないんでしょうか。
矢野政府参考人 おっしゃいますように、その後のくだりで、そういう教員の給与ということをベースにした経費負担のあり方を考えるべきではなく、「例えば、教員の給与ではなく何らかの客観的な指標に着目した交付金制度への移行等につき、検討を進めるべきもの」である、こういうふうな指摘もございますから、この意図するところはそういう趣旨であろうかと思っております。
 もしお差し支えなければ、私ども、これについての考え方を申し上げれば、交付金化ということになりますれば、これは国庫負担金を、教員給与費を対象としない交付金化として、その金額が、各県の教職員数やあるいは給与水準の実態に関係のない別の指標、ここでは、例えば児童生徒数というようなことを念頭に置いておるようでございますが、そういう別の指標により決められるということになりますと、これは必要な教員を全国的に一定数確保するというこの義務教育費国庫負担制度の機能に大きな支障を来すことになるというふうに私どもとしては考えております。
 さらに申し上げますれば、この国庫負担金を交付金化した場合でございますが、さらに問題があるわけでございまして、交付金化といいますときには、国庫負担金のような地方負担の裏打ちがないわけでございます。地方財源の制度的保障がなされないということになるわけでございますので、そういう点におきまして、義務教育水準の確保に支障を来すということになるわけでございます。そういう点についても問題があるというふうに、私どもこの指摘については考えているところでございます。
山内(惠)委員 先日から似たような質問をしていますのでダブっていることもおありかと思いますけれども、この文章に対しては断固として闘ってくださるということのお答えに近いのかな、国庫負担で堅持するということのお答えだったのかというふうに思うんですが、この後のところで、やはり総務省は、「義務教育費国庫負担金の一般財源化をも念頭に置きつつ検討を行っていくべきもの」というふうに書かれていますので、何としてもここは文科省、頑張っていただきたいと思います。
 二〇〇三年度の地方交付税総額が前年度比一兆四千八百億円減、七・五%の圧迫になっています。それで、交付税制度をめぐって、昨年度から引き続き段階補正の見直しや事業費補正等の縮小が行われるということになっていくわけですから、そのことがなされていけば、より強い影響を受けるのは、都市部ではなくて町村部になっていくということが予想されます。そのことが、先ほど読み上げました私のところに寄せられた声の、過疎地の人たちの思いなんだと思います。
 定額化してぼんと地方に給与費が行った暁は、本当に地方の中でも、都市部よりは町村部が苦しくなる。その意味では、きょう午前中に東京都の教育委員会から来られました、東京はそんなにつらくないと私たちは見ていたけれども、それでも楽ではないというお言葉があったんですけれども、私の北海道では、何としてもこのように地方にしわ寄せの来ない状況にしてもらいたいということを言っています。
 その意味で、ぜひこの国庫負担制度を再度守るという側で頑張っていただきたいというふうに思います。
 午前中来られた参考人にも申し上げましたけれども、階層で格差が広がる、憲法調査会での発言の中に、苅谷参考人が階層格差が子供の学力格差につながるという提言をされたことを思い出したのですけれども、この上にもう一つ過疎地という、地域で格差が広がるとしたら、子供はダブルパンチに遭う状況になりますので、ここのところは文科省、本当に腰を据えて頑張っていただきたいというふうに思います。
 教育基本法の十条の「諸条件の整備確立」に向けて実質化していくという視点に立てば、文科省は、この問題の一番基本のところで、やはり財務省に、財政赤字のツケを、義務教育、子供たちにツケを回すなという意味で抗議をしていただきたいというふうに思っていますけれども、その辺の取り組みはどのようになさっているのか。また、総務省は、このような文書を出しているわけですから、どのような話をなさっているのかお聞かせいただきたいと思います。
矢野政府参考人 申しわけございません、先生の御質問の御趣旨がもう一つわかりにくかったのでございますが、私どもといたしましては……(山内(惠)委員「どの部分がわかりにくかったかもう一度言っていただけると、先ほどと同じように」と呼ぶ)もし私の答弁がすれ違っておりましたら、また後で御指摘をいただきたいと思いますが、今回の見直しにつきましては、ずっと先日来御説明申し上げておりますように、これは、国全体の、国と地方の費用負担のあり方を見直す、そういう国全体の方針の中で、私どもとしては、私どもの制度の基本をきちんと維持しながら必要な見直しをするということで対応してまいったわけでございますので、そういう中で、もちろん、国の財政を扱う財務省と、また地方の財政を担当する総務省ともきちんと協議を重ねながら進めてまいりまして、今回御提言申し上げるような形での案として政府として御提言申し上げているわけでございますので、十分その辺は関係省庁とも協議をしてこういう案となったということで御理解をいただきたく存じます。
山内(惠)委員 ぜひぜひ文科省、頑張っていただきたい。
 特に、今回の財政問題から国の役割と地方の役割、地方分権ということを何度もおっしゃられているので、学習指導要領のこととか国が指導することとか、いろいろ国の根幹にかかわって皆さんに回答されているのをお聞きしているのですけれども、私は、具体的に教室で子供たちと勉強するときのことを思い出しますと、地方分権の部分でぜひ進めていただきたいのが、学習指導要領という大きな枠を国が決めた、そこのところは当然決められて結構なのです。しかし中身については、よく言われることなのですけれども、小学校の一年生が四月に入学をするとき、一月にもう既に沖縄では桜が咲いている、北海道では四月の入学式にはまだ、桜どころか雪がある、ゴールデンウイークも、花見ができるどころかまだ咲いていないつぼみだったり、桜前線が動いています。
 そういう状況にありますから、教育内容についてはやはり地方の自由裁量に十分配慮して取り組んでいってもらいたい、そこのところは国の根幹というよりは地方分権に当たると思いますが、その判断でよろしいでしょうか。
矢野政府参考人 義務教育の水準を確保するという意味で、国の役割は幾つか大きな役割があるわけでございますが、その中の一つとして、教育の内容についての国としての基準を定める、これは義務教育についての国の大変大きな役割の一つであろうかと思うわけでございますが、そういうものとして御案内の学習指導要領は国が設定しているわけでございますが、この学習指導要領の中身につきましては、これまでも大綱化ということを進めてまいってございます。そういう意味で、先生もごらんになれば、既に相当な大綱化がされているということは御理解いただけると思うわけでございます。
 その中で、当然のことながら、各地域や各学校の実態に応じて十二分に創意工夫の運用ができる、そういう実態になっているわけでございますので、そこは十分また御理解をいただきまして、また、そういうものとして、各学校、各地域における創意工夫の努力を私どもとしては大いに期待を申し上げたいわけでございます。
山内(惠)委員 今、学習指導要領の大綱化というところに力を入れておっしゃられましたので、そのことは本当に今後もそのようにあっていただきたいというふうに思います。
 そうであるなら、私は一般質問のときにでももう少し丁寧に発言したい問題があります。それは今回配られた心のノートの問題なんですけれども、そのことも、予算もつけ、そして配付をし、しかし、それは教科書でもなく、副読本でもないにもかかわらず、そのようにおっしゃっているにもかかわらず、使っているかどうかの調査をなさるというのはある意味の圧迫となっているということをぜひ押さえていただきたいと思います。きょうはそのことが主ではありませんので、大綱化ということを本当に進めていただきたいという趣旨で今言いました。
 地方分権最終報告が出された後、これは十一月ですけれども、六知事が連名で、今回の地方分権改革推進会議の報告について批判の声を上げられました。三重県、高知県、和歌山県の三知事が、分権型システムの構築にほど遠いと言っています。それから、特に義務教育費関係の縮減対象を教職員の退職手当など義務的経費に限定した点を、地方の自主性は拡大されないと言っています。
 一方で財政赤字の問題で私はこれを出されたと思っていますけれども、一方でそちらでは地方分権を推進するためだというふうに理由づけをなさっていますが、受けとめた各県の知事はほど遠いと言い、それから地方の自主性は拡大されないと言っていることについて、ここの分は大臣にお答えいただけませんでしょうか。いかがでしょうか。
遠山国務大臣 私は、義務教育費国庫負担金にかかわる給与費について、各地方が、一般財源化されたといって、この手当はやる、やらないなどという自主性があっては困ると思っております。これはどうしても国の基準をしっかり守ってもらって、手当の種類について、あるいは額についても、これはそれぞれの教員の受けるべき給与については払ってもらわないと困ると思っているわけでございまして、その意味で恐らく、経費を一般財源化しましても、それは払わざるを得ないわけでございますね、地方にとりましては。
 そういうことで、経費の種類等につきましてはそういう感覚を持たれたというのはある程度わかるわけでございますけれども、他方で、同時に今回の改革、改正の一環としましては、いろいろな意味での弾力化を図っております。そういうことを援用すれば、私は地方分権化というのももちろん進んでいるというふうに思っております。
山内(惠)委員 義務教育費の国庫負担の問題を、一般財源化の方にずっと道を開いてしまっては、本当にそこのところはしないでくれというのが午前中のお二人の参考人の声でもありました。その意味で、私は大臣にも文科省にもエールの声を送りたいのがここの部分としてなんですけれども、文科省としては、やはり国の根幹だからこそ国庫負担を守るという観点で、今後アクションプランなんかをつくって頑張っていただきたい、財務大臣や総務大臣とも闘っていただきたいというふうに思いますけれども、御決意のほどというか、本当はアクションプランなんかをお知らせいただければこんなうれしいことはないのですけれども、どうお考えでしょうか、お聞かせください。
遠山国務大臣 委員御指摘のとおりでございまして、国として守るべき、あるいは責務を果たすべきこの義務教育の国庫負担制度につきましては、根幹を守るということは引き続きやっていく覚悟でございます。
山内(惠)委員 根幹を守るということではなくて、退職手当から児童手当まで、次のところまで道を開いてしまったということを何とか撤回していただきたい。これは本当に全国民が応援することではないかという意味でアクションプランもということを今申し上げたんですけれども、今後の課題としていただきたいというふうに思います。
 私の質問をこれで終わります。
古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。鎌田さゆり君。
鎌田委員 民主党の鎌田さゆりです。
 民主党・無所属クラブを代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
 この法案は、はっきり申し上げて、小泉内閣の重大な公約違反であり、教育を重んじる米百俵の精神を踏みにじる許しがたいものです。
 まず、交付税交付金、国庫補助金、税源移譲の三位一体改革の芽出しという位置づけについて。
 なるほど、義務教育費関連では約二千三百億円の削減となっています。しかし、国庫補助負担金総額の二十兆一千五百二十億円という数字は、昨年度より二百十六億円の削減にとどまり、うち、経常的国庫負担金では七百八十六億円削減されただけです。文部科学省のあのけなげな努力は一体何だったのでしょうか。
 さらに、今回の法改正と教育の地方分権を結びつけるには到底無理があるということを指摘しなければなりません。
 分権における文部科学省の使命は、今まさに取り組みを進めている授業カリキュラム、学級編制、教員配置等の権限移譲などを着実に力強く推進し、サポートするところにあります。税源移譲も伴わず、削減総額の八分の一は地方負担分としてツケ回し、しかも来年度以降の財源担保に不安ばかりを残す今回のような制度見直しとは、文部科学省は闘わなければならないはずです。これは、全国の自治体、四百を超える地方議会、教育現場にかかわる多くの国民が反対、再考の声を上げていることからも明らかです。
 そして、最もゆゆしき点は、我が国の義務教育が、財政事情により、お金の都合ありきから論じられてしまったということです。教育と財布の都合をてんびんにかけた小泉内閣に、日本の未来を語る資格などないと思います。
 教育立国日本の誇りを支え、その責務を全うすべき文部科学省の権威はどこへ行ってしまったんでしょうか。
 今この場に集う国権の最高機関の私たち一人一人が、学問の自由、教育のとうとさを高らかに唱える日本国憲法の原点に立ち返らなければなりません。私たち文部科学委員の良識と責任が問われています。そして、生涯を教育の充実にかけてきた遠山大臣の政治家としての決断が求められているのです。真の改革とはかけ離れた、単なるツケ回しの見直しに終始する小泉総理に毅然と対峙する姿勢こそが大切だと思います。
 以上、日本の未来への最良の進路である教育をまやかしの芽出しの道具に使われることを阻止するため、民主党・無所属クラブは、本法案に対し、反対の意思をここに表明いたします。
 以上です。(拍手)
古屋委員長 次に、児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 日本共産党を代表して、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、この改悪案が、義務教育に対して国が負うべき責任を放棄することに道を開くものだからです。
 義務教育費国庫負担法、この法律に基づく義務教育に対する国負担は、憲法、教育基本法が打ち出す教育の機会均等を保障し、支えるものであり、国庫負担の削減は日本の義務教育を危うくするものです。遠山大臣と文部科学省は、義務教育費国庫負担制度の根幹は守ると言いながら、五年間で約五千億円に上る共済費長期給付経費、公務災害補償基金負担金、退職手当、児童手当等への国庫負担金の削減を提案し、また提案しようとしている責任は重大です。
 第二は、義務教育に関して、地方財政に負担を転嫁することにつながるからです。
 文部科学省は、今回の改悪による影響額約二千二百億円を一般財源化し、地方交付税交付金等で補てんすることで地方負担がないかのように弁明をしています。しかし、一般財源化そのものが国の負担放棄であり、一部に交付金特別会計借入金を持ち込むことによって地方に償還義務を負わせようとしていることは、今後国と地方の関係に困難を持ち込むものです。
 反対理由の第三は、小泉改革を推進する経済財政諮問会議、地方分権推進会議等が、性質が全く異なる国庫負担金と国庫補助金を意図的に混同し、さらに、「確保すべきは教育水準であって教員の数ではない」等の教育のあり方を無視した乱暴な議論を展開して、義務教育費国庫負担金の全面的な廃止、縮減を強要しています。文部科学省がこの強要に事実上屈服していることは、日本の教育に対するみずからの責任をないがしろにするものです。
 今求められていることは、国の責任として、少人数学級の実現など行き届いた教育を実現するために教育予算を充実することです。
 私は、国民の願いに逆行する義務教育費国庫負担金削減法案の撤回を強く求めます。
 日本共産党は、憲法、教育基本法を生かし、日本の子供たちに明るい未来を保障するために全力を尽くすことを表明し、私の反対討論といたします。(拍手)
古屋委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 山内惠子です。
 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案につきまして、反対討論をいたします。
 国の財政が破綻しているからといって、義務教育費負担制度について詳細な見直し内容を盛り込んだ地方分権改革推進会議の中間報告が六月に出されましたときに、ヒアリングも待たずに設定された経済財政諮問会議で、遠山大臣は、公立学校の根幹を揺るがす国庫負担制度の見直しにみずから手をつけ、概算要求締め切り前のあの時点でなぜ危険なルビコン川を渡ってしまったのかと本当に残念に思います。
 今後、一般財源化が進んでいけば、何度も申し上げますが、人口規模の大きい首都圏の自治体への配分は厚く、小規模自治体は少額になるという都道府県格差の増大、それが明らかになっていくではありませんか。なぜ全国的な教育水準を維持するという国庫負担制度の根幹を崩す案をみずから指し示してしまったのでしょうか。
 先ほども申し上げましたが、きょう来られました参考人のお二人ともが口をそろえて義務教育費国庫負担制度の果たす役割の大きさをおっしゃっておりました。なぜ今までどおりやれないのか、なぜ財政赤字のツケを二十一世紀を担う子供たちを育てる義務教育費に回すのか、ほかに打つ手はあったと思います。
 総務省の高島茂樹さんは、住民の生活・経済圏域、行政区域、どちらを優先するかと問われれば、まず住民の生活があり、住民の生活をよりよくするための手段の一つに行政があるのだから、当然住民の生活を優先するということをおっしゃっています。この言葉をかりれば、教育に置きかえて考えれば、子供たちがいて、教育か財政かと問われたら、まず子供の教育を優先する、それを削ることはだめだと文科省は主張すべきでした。
 かつて、近代化にかかわって、明治五年の学制では、「邑に不学の戸なく」とすることを国の根幹に据えました。これこそ日本の根幹です。これが、今後の教育のあり方の検討の中で、学校の統廃合が進み、バス代とか汽車賃とかを払わなければ学校に行けない状況などが生まれるようなことが危惧される状況にならないことを強く望みます。
 大臣、ここはエールを送るつもりで申します。
 国の財政は緊迫しています。今後も、教育にお金がかかり過ぎるとか削るべきだの声は大きくなるかもしれません。しかし、財政再建の犠牲を教育にかけてはならないということを主張してください。義務教育だけは削ってはだめだと主張してください。
 教育基本法の「教育の機会均等」というのは、すべての子供たちに人生のスタートを平等にしてやりたいという人間の英知だったと思います。そのためにも、教育基本法十条の「諸条件の整備確立」に向けて、国庫負担制度をしっかり堅持していただきたいと思います。
 教育が財政再建の犠牲になってはだめだということを申し上げて、この法案に反対いたします。(拍手)
古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより採決に入ります。
 内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、義務教育の重要性にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 義務教育は、憲法の要請により、国民として必要な基礎的資質を培うものであり、今後とも、国の責任において、その水準の維持向上を図るとともに、教育の機会均等を損なうことのないようにすること。
 二 義務教育について国はその責任を適切に果たすため、地方の自主性の拡大という視点に配慮しつつ、義務教育費国庫負担制度を堅持し、地方の財政運営に支障を生じることのないよう適切な措置を講ずること。
 三 本法律案に係る地方への財源措置は、平成十五年度の暫定措置となっているが、次年度以降も地方財政を圧迫しないように適切な措置を講ずるよう配慮すること。
 四 学校栄養職員、事務職員の学校教育において果たす役割の重要性にかんがみ、これらの職員に係る経費についても国庫負担の仕組みを堅持すること。
以上であります。
 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
古屋委員長 本日付託になりました内閣提出、国立学校設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
    ―――――――――――――
 国立学校設置法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました国立学校設置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 この法律案は、国立大学の統合及び短期大学部の廃止について規定するものであります。
 第一に、国立大学の統合についてであります。
 これは、教育・文化立国と科学技術創造立国を目指す我が国にとって、国立大学を国際競争力のある大学として一層活性化させていくことが重要であることにかんがみ、国立大学の教育研究体制の充実強化を図るため、東京商船大学と東京水産大学とを統合して東京海洋大学を新設し、神戸商船大学を神戸大学に統合するなどの措置を行うものであります。
 これらの大学は、平成十五年十月一日に統合を行うこととしております。
 第二に、短期大学部の廃止についてであります。
 これは、医学・医療の高度化・専門化等に十分対応し得る資質の高い医療技術者の育成が求められていることにかんがみ、北海道大学、東北大学、京都大学及び熊本大学に併設されている三年制の医療技術短期大学部を廃止して、それぞれの大学の医学部に統合し、四年制の課程での育成を行おうとするものであります。
 これらの短期大学部は、平成十六年度から学生募集を停止し、平成十八年度限りで廃止することを予定しております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後三時十六分散会


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