衆議院

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第14号 平成15年5月28日(水曜日)

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平成十五年五月二十八日(水曜日)
    午前九時一分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    岸田 文雄君
      近藤 基彦君    佐藤 静雄君
      田村 憲久君    谷田 武彦君
      林田  彪君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      鳩山由紀夫君    平野 博文君
      藤村  修君    牧野 聖修君
      松原  仁君    山口  壯君
      池坊 保子君    黄川田 徹君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      山谷えり子君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   内閣府副大臣       米田 建三君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   経済産業副大臣      西川太一郎君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (人事官)        佐藤 壮郎君
   政府参考人
   (内閣府政策統括官)   大熊 健司君
   政府参考人
   (内閣府原子力安全委員会
   事務局長)        小中 元秀君
   政府参考人
   (文部科学省生涯学習政策
   局長)          近藤 信司君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省科学技術・学
   術政策局長)       林  幸秀君
   政府参考人
   (文部科学省研究振興局長
   )            石川  明君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (文部科学省スポーツ・青
   少年局長)        田中壮一郎君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           広田 博士君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房審議
   官)           小神 正志君
   政府参考人
   (国土交通省大臣官房技術
   審議官)         門松  武君
   政府参考人
   (海上保安庁次長)    津野田元直君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
五月二十八日
 辞任         補欠選任
  松野 博一君     田村 憲久君
  松浪健四郎君     山谷えり子君
同日
 辞任         補欠選任
  田村 憲久君     松野 博一君
  山谷えり子君     松浪健四郎君
    ―――――――――――――
五月二十七日
 独立行政法人日本学生支援機構法案(内閣提出第九三号)(参議院送付)
 独立行政法人海洋研究開発機構法案(内閣提出第九四号)(参議院送付)
同月十九日
 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(石井郁子君紹介)(第二〇六八号)
 同(児玉健次君紹介)(第二〇六九号)
 日本育英会奨学金制度の拡充に関する請願(中西績介君紹介)(第二一一四号)
 同(中西績介君紹介)(第二一三四号)
 日本育英会奨学金制度の廃止反対、拡充を求めることに関する請願(中西績介君紹介)(第二一三三号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 独立行政法人日本学生支援機構法案(内閣提出第九三号)(参議院送付)
 独立行政法人海洋研究開発機構法案(内閣提出第九四号)(参議院送付)
 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。
 この際、お諮りいたします。
 本件調査のため、本日、政府参考人として人事院人事官佐藤壮郎君、内閣府政策統括官大熊健司君、原子力安全委員会事務局長小中元秀君、文部科学省生涯学習政策局長近藤信司君、初等中等教育局長矢野重典君、科学技術・学術政策局長林幸秀君、研究振興局長石川明君、研究開発局長白川哲久君、スポーツ・青少年局長田中壮一郎君、経済産業省大臣官房審議官広田博士君、国土交通省大臣官房審議官小神正志君、大臣官房技術審議官門松武君及び海上保安庁次長津野田元直君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。斉藤鉄夫君。
斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。
 きょうは、科学技術案件を中心にした一般質疑ということで、三十分時間をいただきました。科学技術問題について、早速質問させていただきたいと思います。
 まず最初に、科学技術人材の処遇という問題でございます。
 毎日新聞でも「理系白書」という随分大部の調査が連載をされておりましたし、本にもなっておりました。その中にも提起された問題意識で、日本の科学技術創造立国に向けての最大の障害は、科学技術人材の処遇が、他の国に比べて日本の場合、冷遇をされている、そこに問題があるのではないか、そこがこれからの科学技術創造立国の大きな壁になるのではないかという問題提起もされたところでございます。
 そこで、いろいろ調べてみますと、まず人事院が平成十三年度に行いました職種別民間給与実態調査、それからアメリカのビューロー・オブ・ザ・センサス、統計局が行った同じような職種別民間給与実態調査、これを比較しました。
 それを結論から申し上げますと、米国に比べ日本では、例外的にパイロットとお医者さんが平均給与に比べて極めて高い賃金が支払われている、しかし全般的には、この二つの職種を除き日本における専門的技能や専門的知識を必要とする職種の賃金は、平均賃金に比べて特に高い賃金が支払われているわけではない。それに対し米国では、自然科学系研究者を含めいわゆる技術系の職種では、平均賃金と比較してその職能に応じた高い賃金が支払われている、このように言われております。
 数字でいいますと、米国では、一般事務職に比して、技術職の平均賃金は約一・六五倍、研究職では約二・一三倍だそうですけれども、日本においては、技術職で約一・一一倍、研究者でもわずか一・一八倍、こういうことで、このような現状が優秀な人材を科学技術系の職種に引きつけることを妨げている要因となっている、このようにも言われているわけでございます。
 確かに、お医者さんは特に待遇がいいということで、理科系の人は、向いていない人もとにかく成績がよければ医学部を受けるというような現象もあるわけでございまして、この点に関して抜本的に改革をしていかなくてはいけない。国に何ができるか、民間の問題ではないかということもございますが、この点について、副大臣、どのようにお考えでしょうか。
渡海副大臣 朝一番からなかなか難しい質問だなと正直思っております。
 といいますのは、やはり賃金の体系というのは、ある意味でその国の社会それから歴史等が醸成をしてきたという要素が非常に強うございます。
 例えば、斉藤委員は今二つの例をお挙げになったわけでありますが、斉藤委員も実は建設会社へ御勤務でございました。私も、今はやっておりませんが、一応資格としては一級建築士を持っておりますが、これも、アメリカと比べると、一般給与に比べての差という点から考えれば、実はアメリカは非常に優遇をされているとよく言われている分野でございます。社会がその職種をどう評価するかということにも非常に大きく影響している。
 ただ、研究開発というものを重要視し、科学技術創造立国を目指す我が国としては、きっちりと政策的な問題としてこの問題を真っ正面からとらえて、そして処遇の改善といいますか研究現場の環境改善、これにやはり力を尽くしていかなければいけないのではないか。政府としても、また文部科学省としても、その役割を担っていると思っております。
 そのためには、やはり研究者が自分が仕事をしていてやりがいがある環境というものをつくらなきゃいけない。これは、今スタートしたばかりといいますか、徐々に定着しつつあるわけでございますが、研究者それぞれがやっている研究というものがしっかりと評価をされる、そして社会においてそのことがしっかりと評価をされるような体制というものをつくらなきゃいけないと思いますし、従来よく言われたように、非常に窮屈で自由度がなかったんだと言われるような研究環境を改善していく。
 また、日本において科学技術というものが将来この国の経済社会をしっかりとつくっていくためには大変重要なんだということを、政府としても国民の中に広く広報を充実していく。これは、大臣も従来から広報というものが非常に大事だということをおっしゃっておるわけでありますが、そういった努力を通じて、社会から高い評価を得られるという環境をつくっていく。
 また、資金面では、競争的資金の充実などによって、よりやる気のある人、またよりいいアイデアを持っていた人が十分な研究費をとれるような、そういった仕組みをつくっていくという努力をしていくことによって、全体の評価を上げていくことが大切だというふうに考えておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 民間の話であるわけですけれども、では、ちょっと振り返って足元を見て、霞が関を見てみたいと思うんです。
 データが全部そろわなかったんですが、霞が関の例えば上級職で採られる人、採用時だけは人事院に調べてもらいました。1種採用者のうち技術系職員の比率、平成十五年四月一日、技術系が四八・五%、約半分が技術系です。それで、途中、課長、局長ぐらいでどの程度の技術系の人がなっているかというのを調べようとしたんですが、それがなかなかデータがなくて、文部科学省だけ、本省の課長級以上の者について技系の者の占める割合というのがございまして、平成十四年四月一日で二九・七%、平成十五年四月一日で三〇・六%。もっとぐんと上がりまして事務次官までいきますと、事務次官で技術系は十一官庁のうち一人だけ、パーセントにすると九・一%。ゼロのときもありますので、そのときは〇%に当然なるわけです。
 採用時に比べてだんだん職階が上がるにつれて比率が少なくなっていって、最後はゼロになる、そういう年もあるということで、特に技術系出身だから優遇しろということはないんですけれども、人事上の何らかの問題がそこにあるのではないか。やはり、同じような能力を持って1種に受かって、しかし統計的に、評価をされ、職階が上がっていくのを見ると、技術系がこの数字だけ見ると冷遇をされている。何らかの問題があるのではないか。そこに日本社会の、先ほど副大臣がおっしゃった、技術系の人間を大事にしないというその典型を霞が関がやっているのではないか、このような批判もあるわけでございます。
 きょうは人事院から来ていただいていますので、この点について、いかがでしょうか。
佐藤政府参考人 お答え申し上げます。
 今先生御指摘のように、技術系の専門教育を受けて一般行政職の俸給表を適用されている国家公務員、いわゆる技官でございますけれども、採用時には事務官とほぼ同数、あるいは年度によってはそれを上回る人数が採用されておりますけれども、上に行くに従って、高いポストでは事務官の割合がふえて、技官の場合は非常に少ない割合という現状でございます。
 これに対して私どもも問題意識を持っておりまして、平成十二年度の給与の勧告時の報告におきまして、各府省は昇進管理あるいは人事管理において、技官、事務官の区別なく、能力本位で人事管理をやっていただきたいというふうに申し上げました。ただ、一義的には、この問題は、各府省の人事管理あるいは昇進管理の問題が一つと、それからもう一つは、各府省の組織の中で、科学技術の正確な知識あるいは経験というのが必要とされる業務をどう位置づけるかということにかかわってくるわけでございまして、これにつきましてはなかなか、人事院として具体的に意見を申し上げにくい世界でございます。
 そうではございますけれども、人事院といたしましても、今後の政策立案あるいは行政判断の中に科学技術の知識や経験というのが非常に必要になってくると思いますので、各省庁から技官の処遇について御相談があるような場合、あるいは技官のポストについてより高い格付をしてもらいたいというような要請がある場合には、ぜひ積極的に対応してまいりたいというふうに思います。
斉藤(鉄)委員 この点、また考慮していただいて頑張っていただきたいと思います。我々理科系の人間が社会に出てよく言われるのは、技術系の人は大学時代遊んでいないから幅が狭い、こういうふうに言われるわけですけれども、非常に矛盾した言葉だと思うんですね。でも、大学時代に勉強しないで遊んだことが社会にとって有用な社会というのは一体どういう社会なんだろうという思いもありますし、ぜひこの点は議論を進めていきたいと思います。
 次の問題に入ります。
 超鉄鋼材料、超鉄鋼でございます。文部科学省の方で、旧科技庁時代から、強度は二倍、寿命も二倍という鉄を開発する、そうすれば、材料の世界における革命であって、世の中の様相を一変することができる、こういう超鉄鋼、平成九年から始まっておりまして、もうそろそろ七、八年たとうとしております。この研究の現状、それから今後の見通し、端的にお願いをいたします。
石川政府参考人 超鉄鋼材料研究についてのお尋ねでございます。
 ただいま先生からお話がございましたように、この研究につきましては、私どもの方の所管の独立行政法人物質・材料研究機構におきまして、これは平成九年から十三年度にかけまして、これも先生からお話がございましたけれども、第一期の研究におきましては、強度が二倍それから寿命も二倍というようなそれぞれの目標に向けまして研究を行いまして、試験片等の素材レベルではその実現が可能であるというようなことがほぼ実証できているというような状況でございます。
 そして、平成十四年度からは五年計画で第二期の研究に取りかかっておりまして、第一期の研究成果をもとに、強度が二倍でかつ寿命も二倍だというような両方の特性を有する材料を開発するという目標のもとに、実用化のための大型化等、こういったことも目標にしまして、さらなる研究を進めているところでございます。先生から今お話ございましたように、こういったものが実現いたしますと、高層建築物ほか、建築用の構造材料等、飛躍的な成果といいますか、効果が得られる、こう思っておりまして、私どもとしても、引き続き本研究の推進には努めてまいりたい、こんなふうに思っております。(斉藤(鉄)委員「現状を」と呼ぶ)
 現状といいますと、今、そういった意味では第二期の計画に一生懸命取り組んでおりまして、まだ強度と寿命がそれぞれ二倍というふうなところまでの見通しが必ずしもついているわけではございませんけれども、一生懸命やっているところでございます。
斉藤(鉄)委員 研究が平成九年から始まりましたので、もうそろそろおぼろげな成果が見えてくるという段階に来てもいいのではないか、非常に難しいことはわかりますけれども、そのように思います。
 そこで、これは文部科学省の中の研究所で研究が進んでいるんですが、国土交通省もぜひ絡んでもらいたい、このように思うわけです。
 こういう材料が開発されますと、土木構造物も一変すると思います。また、建築、超高層ビルも一変すると思いますし、地球環境の上でも、材料が半分で済むわけですから大変大きな影響がある。こういうものを国家プロジェクト、国土交通省さんはそういう国家プロジェクトをたくさん公共工事で持っていらっしゃいますから、そういうものに使おう、こういうふうな目標を掲げて、その目標に向かって文部科学省の研究所も研究をする。普通、民間ではそういう手法、ある一つの開発目標を掲げて、そこまでに何とか、コストの面でも、技術の面でもクリアしようということでやるわけですが、そういうものがないと何かだらだらとやっている感じがしないでもないということでございます。
 国土交通省さん、これをぜひ、文部科学省と連携して、国家プロジェクトの中に組み込むということ、いかがでしょうか、きょう国土交通省さんから来ていただいていますので。
門松政府参考人 お答えいたします。
 ただいま文部科学省の方から御答弁がありましたが、研究開発されました技術を実際の土木・建築構造物へ活用するためには、構造物の設計法や性能評価法などの検討もあわせて進めることが必要でございます。そこで、超鉄鋼の開発を担当していらっしゃいます独立行政法人物質・材料研究機構と、我が省が所管いたします、土木・建築構造物への適用性の研究を行う独立行政法人土木研究所と建築研究所の間で綿密な情報交換を開始しているところでありまして、今後、超鉄鋼の特徴を生かせる分野を選定しつつ、効率的な研究開発を連携して進めてまいりたいと思っております。
 国土交通省としては、このような研究開発の進展状況を踏まえつつ、御指摘のありました超高層ビルや超大橋も視野に入れて、超鉄鋼の土木・建築構造物への活用を検討していきたいと考えております。
斉藤(鉄)委員 連携を始めて進めていただけるということですので、どうかよろしくお願いします。国民にわかるような形でプロジェクトがぱっと出ると非常にいいかと思います。
 次の問題に移ります。
 これは副大臣にお聞きしたいと思いますが、建築基準法旧三十八条問題でございます。これは、建築基準法の話だったら国土交通委員会でやれという声が飛んできそうですが、実はそうではありません。技術開発、大学における研究と非常に深くかかわっております。
 平成十年に建築基準法が改正されました。仕様規定から性能規定へということによりまして、これは民間の公共工事でもそうですけれども、基本的に、使う技術というのは国土交通省が告示した技術しか使えない、こういうふうになってしまいました。
 いわゆる旧三十八条には、新しい技術は大臣が認定すれば、具体的には、専門家が集まってこの技術はすばらしい技術だね、では使ってもいいよというお墨つきを与えるわけですが、その大臣認定ルートがありまして、新しい技術が世の中に出る方法がございました。例えば、今大変はやっております免震、地震が来たときに上のビルだけは揺れない、あの免震技術も、この大臣認定ルートを通って世の中に出たものでございます。
 ところが、この三十八条がなくなった。建築基準法を改正するときに、こんなことを言うと国土交通省の人は違うと言うんですが、聞くところによると、国土交通省はそういう告示した技術しか使えないという法律だと新しい技術が出にくくなると主張したんですが、内閣法制局が、いわゆる透明性だ、法律というのは透明性なんだ、そんな、大臣認定ルートという、どこかの専門家かだれか知らないけれども、密室で決めたようなもの、そういうルートを残すというのは、それはもう法律の世界ではこれからはあり得ないんだというふうなことで、内閣法制局に負けて、旧三十八条を削っちゃった。これは国土交通省の方は決してお認めになりませんけれども、そういううわさも飛んでおります。
 これは、ある意味で、科学技術の今後の発展にとって、この建築基準法だけではありませんけれども、大変ポイントになる問題だと思うんです。確かに法定主義は大事ですが、しかし、法律で規定できない世界で新しい技術ができるわけですから、そういうルートを残しておくことも大事だと思います。
 このことについて渡海副大臣にも、私相談に行きましたけれども、御認識を伺いたいんですが、その前に、この問題について、国土交通省、国土交通委員会でも私質問させていただきましたが、現在の取り組みをお聞きします。その後、副大臣の方から御認識をお聞かせ願えればと思います。
小神政府参考人 お答えいたします。
 先生御案内のように、平成十年に建築基準法が改正されまして、必要な性能を満たせば個別具体の材料ですとか寸法、こういったものを問わないという性能規定化が実施されております。しかしながら、この制度につきましては、今先生も御指摘いただきましたように、大臣認定の運用が厳格化し過ぎているのではないか、あるいは必要な認定のルートが十分整備されていないのではないかという御指摘をいただいているところでございます。
 私どもといたしましては、新技術を速やかに受け入れるという観点から、民間の新技術を適切に評価できるような取り組みをことしの一月から行っております。具体的に言えば、民間の技術者団体あるいは個別の企業等々の方から技術基準に対して見直しの提案をいただく一元的な受付窓口を開設いたしますとともに、そういった提案を受けて、学識経験者等から成ります建築住宅性能基準検討委員会というものを設けまして、この技術基準提案を迅速的確に基準整備に反映していくということを始めたところでございます。また、昨年十二月には、部材、構法レベルの認定ルートを整備するという観点から政令改正を行いまして、これはこの七月から施行させていただくことになっております。
 そういった対応を行うことによりまして、これから新しい技術開発の道が閉ざされないように、さらに円滑に進むような取り組みを今後とも進めてまいりたいと考えております。
渡海副大臣 中身については斉藤委員御指摘のとおりでございます。
 一緒にやらせていただいておりますからあえてここでは申し上げませんが、三十八条の道というもので設計者はチャレンジができたわけですね。そして、そこで新しい構法を見出し、実験によって実証し、許可を得る。一番わかりやすい例としては、後楽園ドームがそうです。あれは壮大な実験をやって空気膜というものを日本に導入したわけでして、実は私も一緒に仕事をしておりましたから、これはある建設会社と設計事務所が一緒になってやったわけでありますけれども、よくわかります。しかし、そういう道を閉ざすことによって、設計の幅がなくなる、新しい技術が生まれてこなくなる、これは設計者の皆さんから本当に多く寄せられているわけでございます。
 そこで、今国土交通省がお答えになったような、窓口を開き、ニーズを吸収して、三十八条的な方法を今後とも認めていこうという検討を、今、何についてやればいいのかということを開始していただいていることも事実でございます。
 斉藤委員もホームページで、今後の見直し、この体制を国土交通省が責任を持ってやってくれるなら私は静かに見守ろうと思う、しかし、しばらくして実質的な改善が見られないならそのときは何らかの動きをしなければならない、議員立法も選択肢の一つであると。そのときは、私は、政府にいなければ、私も提案者の一人にならせていただきたい、そういうふうに考えております。
斉藤(鉄)委員 研究開発を担当する副大臣として、ぜひ御支援をお願いしたいと思います。
 次に移ります。原子力でございます。
 昔、科学技術といいますと科学技術委員会というのがございまして、その中で、原子力、宇宙、海洋、これが三本柱だったわけですけれども、最近、原子力も宇宙も予算はどんどんどんどん減ってきておりまして、ある意味で寂しい思いをしております。しかし、私は重要さは変わらないと思っております。
 この原子力について、いろいろ質問を用意してきたんですが、もう時間がなくなりましたので、教科書問題だけ取り上げたいと思います。
 高校の社会科の教科書です。原子力について社会にいろいろな意見がある、二分されている、これはそうでございます。それに対して、社会科ですから、いろいろな考え方を正確に教科書には書かなければならないと思うんですが、中には、余りに原子力に対してイデオロギー的な、一方的な見方の教科書もまだ存在しているように思います。
 これを全部読んでいる時間はありませんので、例えば、原子力発電について一ページ表現をされているんですが、「原子力は、大量のエネルギーを供給でき、温室効果の影響も少ないといわれる反面、」と一行だけ書いてあって、あとは全部否定的な記述。それから「ディベートをしてみよう」ということで、テーマ、日本は今後、原子力発電所を増設すべきかどうかというディベートをしてみようと。否定側の立場の立論としてこんなことが書いてあるんです。「原子炉の解体、放射性廃棄物の管理費用は膨大なもので、これを算入すると、発電コストは、他のものに比べてかなり高いものになる。」と事実であるかのように書いてございます。
 しかしながら、これは事実ではありません。非常に長期的な試算で、原子力については他の火力発電等に比べてもコスト的にも十分対抗するというのが現在の認識でございます。ある意味では間違ったことが書いてある。
 こういう教科書が実際に使われているというのは大変大きな問題ではないか、これが原子力についてのいわゆる国民的合意を形成する際の大きな妨げになっているのではないかと私は思いますけれども、この点について、副大臣はどのようにお考えでしょうか。
渡海副大臣 教科書というのは、斉藤委員も御案内のように、検定制度の中で行われているわけでございまして、そこで事実誤認がないかというチェックをしっかりとしていると聞いております。しかしながら、バランスを欠いたものになっているということであれば、それはやはりバランスのよいものにしていかないと、確かに誤った情報というものがインプットされてしまう、そういう問題もきっちりと考えていかなければいけないというふうに思っております。
 いずれにいたしましても、誤った記述、先ほどそういう御指摘がございましたが、そういうことが絶対にないように私どももしっかり見ていきたいというふうに思っておりますし、検定制度の中で、バランスのとれたものになるように、私は事実は事実としてある程度は書かないといけないというふうには思いますが、バランスを著しく欠いたということにならないようにしていきたいというふうに考えておるところでございます。
斉藤(鉄)委員 最後、宇宙の問題について。全部細切れの質問で済みません。
 情報収集衛星二機、打ち上げられました。武力攻撃事態対処法も今参議院で議論されているところでございますが、これに関連して、ミサイル防衛構想研究ということも今議論の対象になっております。このミサイル防衛構想、それから先ほどの情報収集衛星、これは宇宙の研究そのものでございます。
 宇宙開発事業団法を見ますと、その第一条に「平和の目的に限り、」このように書いてございます。今後日本の宇宙研究について、この「平和の目的に限り、」という法律の条文と、私自身この研究は進めていかなきゃいけないと思っておりますが、ミサイル防衛、それから情報収集衛星を進めていく上において、私は議論が必要だと思っているんです。ある意味では条文の改正も必要ではないか、このように思っておりますが、この点について、副大臣と、これは大変重要な問題なので、最後に大臣にお伺いをして、質問を終わります。
渡海副大臣 「平和の目的に限り、」ということ、この言葉をどう解釈するかというのは、幅のある議論だと私も思っております。そして、いろいろな情勢が変わる中で、やはりこれは国会がしっかりと議論をすべき課題であるというふうに思っております。
 政府という立場からは、今の段階では、この「平和の目的に限り、」というのは、一番当初議論されたのが四十四年ですか、たしかそうだったと思いますが、その段階の解釈に基づいて今回、事業団の改正法の中にも入れさせていただいているということであります。
 このことをどう考えるかというのは、これは平和目的というものの選択肢の幅ですね。これは国会でも議論があってしかるべきだと思いますし、そういった議論の中でクリアになっていくものである。しかも、従来の考え方だけを踏襲するということで時代に対応できるのかという疑問は、私自身も委員同様持っておるところでございます。
遠山国務大臣 今、副大臣のお答えしたとおりでございまして、私は、宇宙開発、特に研究開発というのは大変大事な、国の存立基盤にかかわるものだと思っております。
 現在、幸いにロケットが、H2A五機、そしてミュー5、固体燃料のロケットが成功いたしております。打ち上げ成功でございます。こうしたものを通じて、さらにそれに載せていく衛星、それらを通じてやろうとしておりますことは、広い意味で、当然ながら平和目的でございます。
 そして、情報収集衛星等は、国それから国民の安全の確保のためでございますし、地球観測衛星等による地球環境保全等の役割を果たすというようなものでございまして、私どもとしては、研究開発という角度からいえば、現在の法体系の中での平和目的ということにおいて、しかし研究開発ということできちっとやるべき技術開発というのをやっていくというのが現在のスタンスでございます。
斉藤(鉄)委員 終わります。ありがとうございました。
古屋委員長 平野博文君。
平野委員 民主党の平野博文でございます。
 与えられました時間を、科学技術に関する一般質疑ということでございますので、何点かに絞って御質問また議論をさせていただきたいと思うのであります。
 けさの新聞にもありましたが、クローン技術を使ってES細胞の問題、これも、クローン技術の禁止法が施行されてことしでほぼ三年になるのでしょうか、一番の根幹でありました再生医療のところの問題については、私は改めてこの委員会で議論をしなきゃならないと。けさの新聞を見ましたものですから、質問通告しておりませんので質問はいたしませんが、その問題と、先ほど斉藤議員が御質問されていましたけれども、建築構造物の問題、さらには原子力の問題。
 実は、私は、二日前に仙台に、ちょうどあの地震のときにその場にいまして、かなり揺れているなと最初は思ったんですが、私も阪神・淡路の震災を大阪で感じた人間ですから、じっと木造の一戸建ての家にいたんです。横揺れが非常に厳しくて、私はじっと家の中で見ておったんですが、一分もいるとちょっと限界になって、まずは窓をあけようということで窓をあけて、それでもずっと見ておったんですが、要は、その後の問題なんですね。
 その地震の揺れていることの問題よりも、終わった後が、すべての機能がパニクっているんですね。まず、携帯電話が全く機能しない、高速道路網は安全のために遮断をする、JRはだめ、こんな状態でずっと数時間を過ごしたのですが、今、そういう対応の仕方がそれしかないんですね。
 だから、特に大事なことは、通信事業において、そういう状態のときに別の回線というものを、ある地震で揺れたとき、地震でなくてもいいんですが、そういう事故が起こったときには、緊急避難的に国民の皆さんが使い得る回線を用意しておく。こういうことでないと、そこに全く孤立した状態の人間が何十万、何百万と一瞬の間おる、こういうことになると思いまして、改めて科学技術の大切さを認識してこの場に立っています。
 きょうは、たくさんの方に来ていただいておりますが、本来、こんなにたくさんの方に来ていただかなくても、ある省庁が科学技術について予算から評価からすべてをしっかりと議論すれば、例えばそれが文部科学省であれば遠山大臣と副大臣で即決して答弁をいただけるという仕組みになるんですが、いろいろな省庁が絡んでおるものですから、多くの副大臣の方に御迷惑をかけて出席をいただいているということでございます。
 したがいまして、私は、科学技術というのは、ある意味では国策の仕事が中心になって考えていくべきテーマが多いと思いますから、やはり一元管理をしてしっかりやる、こんな制度設計がまず必要ではないか。多くの副大臣に来ていただいて大変恐縮ですけれども、来ていただかなきゃならない、答弁をしていただかなきゃならない、そういう今の実態にあることもまずぜひ御認識をいただきたい、このように思うところであります。
 それでは、何点か大きくあるわけですが、まず、原子力に関してでございます。
 昨今、発電所における原子炉のトラブルがたくさん出ているわけであります。そのトラブル自身が本当に安全性に直接かかわるトラブルなのか、科学技術的に見たときにどうなのかということがよくわかっていませんが、事務的制度設計上の問題としてこれはだめであるという基準のもとに評価をされている仕組みと、国民の立場から見ると、原子力発電所で何か微細な事故が起こっても、これは原子力発電所、原発の事故だ、こういうふうに認識をする風潮が今の社会にあるわけであります。
 したがって、改めて国民の皆さんに対しまして、原子力における人的災害における事故とはこういう問題だと。メカニズムになって動いているわけですから、構造的に少しトラブるというのは、何十年と稼働しているわけですから、経年変化もあるでしょう、それに対するトラブルというのは当然起こってくるわけであります。そういう意味合いで、改めて今、原子力にかわる代替エネルギーがない現時点において、原子力に依存をしなきゃならないというのは自明の理であります。そういう視点で、国民の皆さんに、原子力はこうしてありますから安全なんですという信頼性を取り戻すことが、今、原子力行政を進めていく最大の課題である、私はこのように思っています。
 そういう視点で、一、二点、質問いたします。
 まず、東電を中心としてトラブルが起こっている。現実的には十七基あるんでしょうか、東京電力さんの管内に。今、十六基が実態的にはとまっている、こういうことであります。夏のピーク時においては大体八百万から九百万キロワットの電力が不足をする、このようにも言われているわけであります。その一基は、実は柏崎の六号機が稼働したということであります。
 つい先日、お隣の鳩山先生と一緒に現場に行きました。私は改めて、現場では大変苦労されて、そのことに対して努力はしておりますが、制度設計、ルールというのは非常に大事でありますから、そのルールのもとに再開をしようと思いますと、技術的には再開できても再開できない最大の要因は、地元の皆さんを含めて国民の皆さんの信頼性をかち得ていないところが大きな問題だと思っているのであります。
 したがって、その信頼性確保、こういう取り組みに対して、これはどこが中心になってやるべきことなのか、国として、この信頼性確保のためにどのように行動をしなきゃならないか、こういう視点で渡海副大臣にまずお聞きをしたいと思います。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
渡海副大臣 原子力に対する信頼性の認識というのは、平野先生御指摘のとおりだと思っております。やはり、これは国が責任を持って、原子力政策の重要性、また信頼性というものを、説明責任を果たしていく、これが大事なんだろうというふうに思っております。
 その上で、基準等は当然、国が法律等で定めておる手続を経てとっていただくわけでございますが、これは個人の私見も入っておりますけれども、今まで原子力に対する信頼性が揺らいだ一番大きな出来事というのはすべて、実は、事実がゆがめられてとらえられているということが一番問題なんですね。何かを隠してしまったとか、実はこうであったのにもかかわらず、そういう事実が後になって出てきた、これはやはり非常にまずいというふうに私は思っております。
 原子力の今の推進体制というのは、これは委員も御存じのように、基本的な政策は原子力安全委員会、これは今省庁再編で内閣府に事務局が置かれておりますけれども、ここがつくった政策を、各省庁がそれぞれの持ち場といいますか、我が省は科学技術研究開発を中心にした所管をしておりますけれども、経済産業省は、きょう副大臣もおいででございますが、エネルギーを中心に、商用も含めて今所管をしていただいております。こういった分担に応じて、諸省が連携をとりながらしっかりと国民に対して説明責任を果たしていく、また、安全審査等の手続をやはりしっかりと信頼のあるものに高めていく。そのためには、情報公開も含め、我々は国民に対して常に積極的にアプローチをしていく、また窓口を開いていく。
 我が省でいうならば、例えば、今一番、当面の問題でございます「もんじゅ」につきましては、新聞で広告を出しまして、しかもわかりやすいようにして、パブリックアドレスを幾らでも受け付けるという形で現在処理をさせていただいておりますし、近いうちに地元で、これは私自身も出ていきたいと思っておりますが、いろいろな意味での対話の集会をやる。こういったものを通じて、国民に対して必要性と安全性というものをしっかりと広報を続けていきたい、説明責任を果たしていきたいというふうに考えておるところでございます。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
平野委員 今副大臣がおっしゃられましたけれども、国は国民に向かって、原子力の、例えば発電の原子炉の問題について、安全性、これは課題はあるけれども、これについては国は責任を持ってこうしたということを、本当にしっかりと発信できているのでしょうか。
 例えば経済産業省、経済産業省は、今渡海副大臣がおっしゃったような視点で、原子力発電の行政について、あるいは推進をしていく立場において、安全性という視点で、国はどういうふうに国民に向かって訴えられたのでしょうか。
 例えば内閣府の安全委員会あるいは原子力委員会は、省庁間のやりとりはいろいろやるでしょう、けれども、今大事なことは、国民に対して、原子力のあり方について、いろいろあるけれどもこういうことで誤解を招いている点もある、国民の言っていることはわかるが、これについてはこうするということを、積極的にやってきたのでしょうか。
 その点、まず西川経済産業副大臣、経済産業省の立場ではどういう認識でおられるでしょうか。
西川副大臣 平野先生にお答えを申し上げます。
 原子力の、特にエネルギー政策の要諦は、電源の立地地域の皆さんの原子力発電に対する安全性への信頼、こういうことに深く根差しているというふうに承知をいたしております。
 ただいま渡海副大臣から御答弁がありましたような仕組みの中で、私どもは、原子力安全・保安院を中心といたしまして、国の原子力基本法というしっかりした法律に基づいて、内閣総理大臣から私どもの平沼大臣に対しての指示もございまして、その指示に従ってきちっとした安全行政を行わなければ勧告を受けるという立場でもございますので、この点につきましては十二分に意を配って、地域の方々にいやしくも安全について御懸念を持たれないように事業者を指導していく、こういう姿勢に徹しているつもりでございます。
 ただいま先生が御心配いただいております、この夏の電力不足の心配の原因になりました東電のトラブル隠しの問題とか、いろいろ具体的な問題が起こっておりまして、これらについて、もう一度基本的な視点に立ち返って、きちっと安全管理をしながら、事業者を督促し安定供給を確保してまいりたい、こういう姿勢で臨んでおります。
平野委員 ぜひ国民の信頼を回復する、このことを言いますと今の政治とよく似ておりますが、まさに原子力の行政に対する国民の信頼を回復するためにどうするか。あとは、テクニカルな科学技術の領域については、これは別の評価制度があります。国民の皆さんの持つ感覚というのはやはり信頼性そのものですから、そこがきっちりと醸成をされなければ何をやっても同じだというふうに私は思うのです。
 そういう視点で実はもう一つ、それに絡むわけですが、エネルギーの安定供給、さらにはエネルギーをリサイクルしていく、こういう意味で非常に大事な、大きな科学技術があるわけですが、「もんじゅ」の高裁の敗訴、私はこの結果については極めて遺憾だったとは思っていますが、現実に司法の手で、高裁では敗訴になったわけであります。
 この敗訴の問題について、私、国の立場でいえば、たかをくくっておったんじゃないでしょうか。行政訴訟というのは、一審では勝訴していますから、当然負けるはずがない、こういうたかをくくっておったのではないかなと思えてなりません。私が先ほど言いましたように、この問題について国がしっかりと真摯に、裁判ざたになったことに対してもやはり真摯に対応する、このことが、逆に国民の信頼を回復していく上においての大きな判断要素にもなるんです。
 そこで、私、ある週刊誌で、余り週刊誌は読まないんですが、非常におもしろい判決の判断を書いていましたから、同じ理屈だと思い、少し読みます。これは週刊ポストでありました。「「ifの呪縛」が科学技術を否定する」、こういうキーワードがありました。いま一つは、「ifにifを重ねた「事故の可能性」」ということをうたっておられました。いま一つは、学者の方がそこに論評しているのでありますが、「科学技術の「リスク」と「利便」」、こういうお考えがありました。
 私は、司法の判断というのは、これは司法の手で御判断されるのでありますが、裁判官が科学技術のことに対して、もしという、あるいはさらに可能性があるという、要はゼロベースでないという判断だと思うんですね、もしかしたら。もしかしたらを二乗したら全くゼロでないと、判決としては違法判断につなげる、こういう司法の分析の言葉だったと思うのであります。
 そうしますと、科学技術に従事しておられる方が、安全性という視点、あるいは事故がゼロであるという視点に立てるはずがない。そうすると、すべての判断は判決として違法判決につながるのか、こういうことをまさに指摘した、「高裁判決を再論する」、こういう言葉が非常に、これも仙台からの帰りに電車の中でとったんですが、このことを考えますと、科学技術というのはある意味ではリスクを負うものであります。この判決はリスクを否定したものであります。この判断が非常に難しいと私は思うのであります。
 そういう視点で見たときに、科学技術を所管されている、また、今回の訴訟が起こっておりますのは経済産業省に対してでありますが、当事者は「もんじゅ」であります。「もんじゅ」を所管している文科省、さらには「もんじゅ」の事業者を独立行政法人としてやっておられる理事長さんは、こういうことに対してどんな御判断、認識を持たれているのか、お聞きをしたいと思います。
渡海副大臣 平野先生がおっしゃいました、真摯に受けとめなさいという姿勢、それから、少し認識が甘かったんじゃないかという御指摘は、私も全く同じだというふうに感じております。
 要は、国民にとって不安感、不信感があるわけですから、やはりその不信感をどうやって払拭するかということに努力をすべきであろう。そのためには、例えば、内容がおかしいという主張もあるわけです、だからこそ今上告をしているわけですが、一応裁判の結果がそういうふうに出たということをまず受けとめた上で、しっかりと我々の正しさというものを主張していく。この態度がなければ、聞く方は、初めから継続ありき、こういう印象を持ってしまう、これは、私は、平野先生の今の御指摘に近い感覚、全く同じと言ってもいいと思いますが、そういう姿勢で今この「もんじゅ」の問題に取り組ませていただいておるつもりでございます。
 我が省はこの対策のプロジェクトチームというのをつくっておりまして、私が責任者をやらせていただいておりますけれども、基本的にはこのチームは何が一番大事か、推進も大事だけれども、説明責任を果たしていくことが大事だということを常に言わせていただいております。先ほども少し答弁もさせていただいたわけでございますが、そういう姿勢がなければだめだと。
 それからもう一点、平野先生がおっしゃった、いわゆるノンリスクでなければ先へ行けない、ここの問題はこれは大変大きな問題だというふうに思っております。
 日本の国民性にも起因するのかもしれません。要するに、リスクというものは、可能性は減らすことはできても、絶対なくせないんだということについてどのように理解をしていただくか、どのように説明していくか、特に原子力に関して。ここのところは今研究中でございます。これはなかなか難しい問題である。ですから、さまざまな、時間のあるところでの説明では、例えば確率は十のマイナス六乗だとか、こういうことでほとんどないと科学上は言うんです、人類の歴史はそういうところからここまで来たんですという話はするんですが、その辺も含めて、ノンリスクでなければだめなんだ、そういうことにはならないようにしっかりと今後とも対応を協議していきたいというふうに考えておるところでございます。
平野委員 したがって、それだけに説明責任というのは非常に重要になりますし、それをつかさどっておられる方が真摯にこのことに取り組んでいる姿が、私、国民の共感を得ると思うんです。
 そこで言いたいのは、当事者であります「もんじゅ」の理事長さん、これはその判決当日はどこにおられましたか。大臣はわからないと思いますが、だれかわかっている人。
白川政府参考人 御説明申し上げます。
 今御指摘の高裁の判決がございましたのは一月の二十七日でございました。一月の二十七日を挟みまして、核燃料サイクル開発機構の理事長は、一月の十九日から二十九日までヨーロッパの方に出張しておりまして、その高裁判決が出されました当時は、時間的にはスイスの方に滞在をしておりました。
平野委員 どうなっておるんですか。これほど大事なこと、すなわち、ここでとんざをしますとあらゆる科学技術、特に原子力のこれからのあり方が問われる一番の根幹のところなんですよ。そこの「もんじゅ」が、訴訟の当事者でないからと。事業の当事者ですよ。真摯に受けとめて、見守っていなきゃならぬのですよ。それが、今お聞きしますと、海外出張されている。このことは、私、認識の甘さ以外の何物でもないと思いますが、どうなんでしょうか。
渡海副大臣 冒頭も申し上げましたように、要は、これは平野委員も御指摘をいただいた、行政側にもやはりこの裁判に負けるはずがないという思いは結構強かったんだというふうに私自身は思います。そういうふうに思っていたんだろうと。これはそう言っていたということではなくて、私の推測も入っておりますが。そして、裁判の当事者がこれは行政側である、当時としては経済産業省であるというふうなことも含めて、行政裁判という色彩が強い、そういう認識ではなかったのか。
 実は、きのうこの質問をいただきましたのが結構遅かったものですから、当時の状況について先方までは精査しておりませんが、平野委員がおっしゃるような一面がなかったとは言えない。そのことについては、御指摘も踏まえて反省もしていただき、今後、先ほど私が申し上げましたように、やはり真摯に受けとめ、そして説明責任も果たしていく、この態度を徹底してくれということを、今回の裁判以降、私はいろいろな発言の場で理事長にも申し上げております。
 とにかく不用意な発言はやめていただきたい、国策としてこのことをやっている以上は、我々はちゃんと責任を果たすためにも、現場が不用意な発言をすることによって、例えば再開時期についての不用意な発言もその後ありました、そういうことを常に理事長に申し上げながら、同じような気持ちで臨んでいただくように努力をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
平野委員 理事長には前のときにも言ったんですが、あの人は言ってものれんに頭突きで、聞く耳を持たないですよ。私は何回も言ったんです。ジェー・シー・オーのときにも言いました。あらゆるときに言いました。
 今大事なことは、当事者が本当に一心不乱でこのことに対して仕事をしている、真摯に受けとめている、これは「もんじゅ」だけではありませんよ、原子力行政にかかわっているところが本当に汗をかいて安全性確保のためにやっているという姿が見えないと。おれは当事者じゃないからスイスへ行っている、それは遊びに行っているんじゃないと思いますよ、何か再処理の視察に行かれていたと。再処理の視察というけれども、この「もんじゅ」の機能が、もし敗訴でこれができなくなったら再処理もへったくれもないんですよ。だから、一番その当事者である理事長はどんな認識でおるんだ、そんな認識ではこれからやっていられないよということを私は強く言うわけであります。
 私は、言っておきますけれども、裁判の結果なんてどうでもいいんです。ここは裁判の結果に対して反対とか賛成とか言うところじゃないんです。裁判の結果によってこの原子力行政、すなわちエネルギーを供給するシステムがさらにおくれることの方が、国策として、国益にとってマイナスだから言うのであります。
 これをどう認識しているかが一番の問題なんです。縦割り省庁で、おれのところは当事者でないから、関係ないからちょっとおいておこう、例えばこれは文部科学省だ、これは推進しているあれだから経済産業省だ、あるいはこれは安全だから米田副大臣のところだとか、こんなことじゃないんです。トータルとして、エネルギーに対しておくれることが日本の国益にとって大きなマイナスになる、加えて、国民の皆さんの安全に対する不信感をますます増幅する、このことをしっかり受けとめてもらわなければだめなんだと私は思うのであります。
 したがって、プルサーマルの問題を含めて、六ケ所村の問題、これもあります。これは全部リンクしていることでありますから、入り口で詰まっちゃうとすべてのシステムが詰まるのであります。だから、入り口だからこそしっかりやっておかないと、これが何十年とおくれて、もう「もんじゅ」も耐用年数が来ました、あとはつぶすしかない、こんなことでは、あれにかけたコストを含めて、どのように国民に責任を果たすのですか。ここを、私は強く警鐘を鳴らしておきたいと思います。
 次に、同じく原子炉の問題でありますが、大学に今研究用の原子炉が、私学、国立大学を含めて五つあるんですね。単純に申し上げますと、国立でいきますと、京都大学では、これは私の大阪にあるんですが、五千キロワットの原子炉があります。東京大学では、これは東海村にあるんですね、これが二キロワット。あとは私学で、武蔵工大が百キロワット、立教大学が百キロワット、近畿大学、これは一ワットというのは、僕は原子炉で一ワットというのはよくわからないんですけれども、データを整理するとそういう数字が出てきました。
 これはいいんですが、要は、私が言いたいことは、大学が来年、我々は反対をいたしましたけれども、残念ながら独立法人になる。こうなってきますと、この研究用原子炉はどこに行くのでしょうか。どこに行くと簡単な答えで結構ですが、資産はどこに行きますか、所有は。
石川政府参考人 原子炉を含めました資産そのものについては、その法人に資産として所属していくことになると思います。
平野委員 ところが、例えば京都大学の炉は五千キロワットですよね、これは廃炉とする、要は、もうやめだ、この原子炉は廃棄をする、こういうことになっているんですが、その廃棄する部分も含めて、これはそれぞれの大学の予算のもとに廃棄をしていくのでしょうか。
石川政府参考人 こういった大学の原子炉を廃棄する場合についての予算等のお尋ねでございますけれども、これらの原子炉の廃止措置につきましては、原子力委員会の考え方に基づきまして、施設の設置者の責任において適切に行われることとされておるところでございまして、私立大学の場合ですと、各学校法人において措置をしていただく。
 今お尋ねのようなケース、例えば国立大学の場合におきましては、法人化後はその責任において廃止措置を行っていただくということになるわけでございますけれども、国といたしましては、その法人からの要望を踏まえまして、必要に応じて所要の財源措置というものを講じていきたいというふうに考えております。
平野委員 この廃棄をする理由も不透明なんですよね。燃料供給が、アメリカからのものが途絶えた、だから廃棄をする。ちまたで、地元で仄聞しますと、これは廃棄するのは大変だから当分保管をしておく、こういう言い方をしているんですね。とんでもない話ですよ、これは。廃棄するのに何百億とお金がかかります、その部分は当該の独立法人が予算を措置すると言っているけれども、当面はそのままおいておきますわ、廃棄するのはお金がかかるしと。
 そんな対応の仕方をするということと、私、廃棄する理由が、アメリカからの研究用の原子炉燃料の供給がストップになった、したがって廃棄をするんですという理由を聞いたんですが、その事実に間違いないですか。簡単に答えてください。
石川政府参考人 京都大学で今原子炉の運転休止についていろいろな検討が行われておりますけれども、その中には、ここで使っております使用済み燃料の引き取り、今は米国が行っているわけでございますけれども、これが二〇〇七年度以降はできなくなるというような要素は、非常に検討の要素としては大きいものというふうに聞いております。
平野委員 しかし、技術的には国内の濃縮ウランを使ってやることは十分可能なんですよ。そんな広範な検討もせずに、一義的に、供給とその後の燃料処理、回収がストップになったということでやめてしまう。この原子炉の研究炉として持つ意味合いは、単純に燃料の供給が断たれたから、あるいは使用済みが回収されないからストップするという、そんな狭義の場で判断されていいのでしょうか。もっと、国内の技術的な立場でいえば、濃縮ウランを使ってやるということも十分可能なんです。そんなことも検討して、廃止という方向を出したのでしょうか。
石川政府参考人 これについては、いずれにしても、廃止等について検討を行っているという状況でございます。
 それから、燃料の問題につきましては、例えば、今米国から導入しておる燃料と違う濃縮度といいますか、違う種類の燃料を使うというようなやり方ももちろん考えられるわけでございますが、その場合におきましても、使用済み燃料の処理というようなものがきちっとできなければいけないといったようなこともございまして、これらの点を総合的にいろいろな角度から検討して、今、今後のあり方を大学において検討しているというふうに承知しております。
平野委員 検討するということは、一義的にそんなことを言っていますが、私は、大学の持っている研究用の原子炉の持つ意味は、非常に重要な問題を持っていると思うんです。単純に、廃止をしたらいい、おいておいたらいいということではなくて、この原子炉を使って我が国の原子力の研究と人材をどのように供給していくかという意味においても大事なんです。これを、はい、廃止しますということは、日本の国から将来、原子力の研究人材、あるいは今の原子力で、長計では出ていませんが、これからも十基以上原子炉をつくっていく、そうすると、それにかかわる人材というのが当然供給されていかなければなりません。どこが供給するんですか。だれが供給するんですか。
 先ほど渡海副大臣が言われた、国策として進めていく、国の責任において説明をしていく、それほど重要なエネルギーの供給制度なんですよ。それに携わる人材も当然国の仕組みにおいて供給されなければ、育成されなければ、だれがするんですか。外国から全部その人材を入れてくるのでしょうか。ここの視点がやはりトータルな見方で抜けておる、ここを私は強く指摘しておきます。
 時間がないものですから、また次のときにはもっと細かいことをやりますが、そういう指摘をまずしておきます。後で答えをいただいたらいいと思いますけれども。
 次に、ALMA計画について質問をしたいと思うんです。
 これは、諸外国との関係において、特にサブミリ波の干渉計を使った天体望遠鏡なんですね。これは何百億というお金をかけて、国際的に、アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計という表現になっているんですが、場所はチリでつくるわけでありまして、直径十二メートルの巨大な移動式の電波望遠鏡を六十四台設置してやる。
 これは当然、釈迦に説法でございますが、このALMA計画の意義というのは、科学技術を高めていく、あるいは宇宙を研究していく上において非常に重要なことだと私は思っております。日本が参画をしていくという意義は、申すまでもなく非常に大事なんですが、昨年の予算は、調査費を含めて八億円だったんですね。今回、本年度のあれで見ますと、六億円に下がっているんですね。これはなぜこんなことになっているのか。米国とか諸外国との連携のもとにこのプロジェクトが進んでいるんですが、日本がこんな消極的なことでよろしいのかなという視点が一つ。
 もう一つは、なぜそういう、六億円という低い、調査費を八億円つけたら次の年度はさらにつけていくというのが私は本来の仕組みだと思うんですが、下がっていく、このことに対して、担当の所管であります文科省はどう認識していますか。簡単に答えてください。
渡海副大臣 このプロジェクトは、私もよく承知をいたしております。
 それで、現在の段階というのは、いわゆるアンテナモデルをどうするかということを決めていくということで、各極が持ち寄って、これから日本からも持っていくわけですが、アメリカでまずそのモデルの評価を行うという段階でございますから、この二年間でそのプロジェクトをまずやる。後、いわゆる建設にかかるに当たって各極がどういう分担をするか、こういうことが決まっていくわけでございまして、今、科学技術・学術審議会の評価をいただきまして、そして総合科学技術会議等ともこれからしっかりと話をしまして、十六年度以降の予算においてしっかりと建設に向けた取り組みといいますか、それをしていきたいということで文科省としては頑張っておるところでございます。
平野委員 物事にはしゅんというものがあります。国際社会の中で共同プロジェクトをしていく上において、やはり対等にやっていくためのしゅんというのがあります。いや、日本はもうちょっと成果、流れを見てやるけれども、ちょっと先づけだけしておきますわ、こういう感覚なのか。そこでもう対等の関係としてしっかりと負担もし、やっていく、本来はこういうプロジェクトだと私は思うんです。アメリカは何百億というあれをする、日本はとりあえずアンテナの設計だからと。だんだん対等性がなくなって、枝葉末節なところだけ日本が担わされる。こういうことになりますと、本来の趣旨でなくなると私は思うんですね。
 そこで、私は総合科学技術会議に聞きたい。
 予算編成に当たって、科学研究のプロジェクトに対してSABCというランクづけがあるらしいが、ALMAプロジェクトはBランクという低い評価をしているんですね。国際社会的にも高い、今渡海副大臣が申されたように、非常に重要であると言いながらも、総合科学技術会議の評価基準ではBランクになっている。Bランクになっているから予算の優先づけからいって低い予算になっているのではないでしょうか。このBランクになった根拠は何ですか。
米田副大臣 お答えをいたします。
 総合科学技術会議は、平成十五年度の予算の編成過程におきまして、関係府省から要求されておる科学技術関係施策のうちの主要なものにつきまして、今お話にも出ましたが、SABCの四段階の優先順位づけを行いました。
 今委員の御指摘のALMA計画、大変すばらしい計画だろうと思います。高精度のアンテナを組み合わせて巨大な電波望遠鏡を構成する、そして、宇宙の生成の初期における銀河の誕生やあるいは生命につながる物質の進化の解明を図ろうという、大変すばらしいプロジェクトであろうというふうに思っております。
 さてそこで、なぜそれがBになったかというお尋ねでありますが、実は、総合科学技術会議といたしましては、このALMA計画の要素技術である大型ミリ波サブミリ波干渉計、この研究開発について優先順位づけを行ったわけでございまして、ALMA計画そのものにつきましては、いまだ文部科学省が正式に参加を決定したものではございません。したがいまして、ALMA計画総体につきまして評価を行ったわけではないというこの基本的なところはまず御理解をいただきたいと思います。
 なお、総合科学技術会議といたしましては、この干渉計の研究開発につきまして、欧米と比べて我が国の技術力あるいは国際貢献の度合い等を明らかにしつつ、着実に推進すべきものとして、優先順位はBといたしました。
 このBというのは、問題点を解決して前進するということになっておりまして、必ずしも低い評価だというふうには思えないわけであります、問題点を解決して前進するわけでございますから。その点もひとつ御理解をいただきたいと思います。
 なお、文部科学省が、平成十五年度の概算要求に当たりまして、この大型ミリ波サブミリ波干渉計に関する予算については平成十四年度よりも減額して要求されております。また、概算要求とほぼ同額が政府予算として認められたと承知をしておりまして、全体の流れとして、先生御心配の点、このすばらしいプロジェクトに対する取り組みが政府全体として熱心でないということではなかろうというふうに理解をしております。
平野委員 時間がなくなってきましたので細かいところへ入れませんが、そもそもALMA計画に参画するというのは、二〇〇〇年十二月に当時の文部省の学術審議会では何を言っていたんですか、早急に推進すべき、こういう結論を出しているんですよ。翌年の日米欧の三者の基本の合意の時点でも、文科省は建設予算の獲得をしっかりと約束しているんだ。にもかかわらず、今こんな状態になっている。逆戻り、カレンダーが後ろへ戻っているんですよ。
 今、米田副大臣言われたけれども、本来の技術の位置づけの問題ではない、こういうことですから、私は一面安心をしましたけれども、推進する文科省の姿勢をしっかり問わなきゃならない、私はこう思っておりますので、そんな意味合いを持っているということをぜひ御理解いただきたいと思います。
 もう一点、通告しておりますものですから行きます。大陸棚の調査ということなんですが、これは、日本の近海においては、地下資源等々含めて非常に重要なエリアであると私は思っています。特に、マンガンであるとかニッケルであるとかいろいろ、さらにはエネルギーのもとと言われておるメタンハイドレートの問題を含めて非常に重要な宝庫であるわけです。
 この問題で、大陸棚の調査をだれがしているんだと聞いたら、海上保安庁だと。ちょっと待てよ、何で海上保安庁なんだということを聞きますと、聞きますとというよりそこが問題なんですが、なぜやっているかというのは、国連の海洋法の条約によって二百海里であるとかあるいは地形、地理的な要件を満たせば三百五十海里になる、こういうことですから、早くきっちりと決めなきゃいけないということで、二〇〇九年までに出さなきゃいけない、こういう流れの中でやっているんですが、海上保安庁は今何隻でこの調査をしていますか。端的に答えてください。
津野田政府参考人 大陸棚限界画定のための調査につきましては、海上保安庁の測量船二隻を用いて調査を行っております。
平野委員 二〇〇九年までに終了をいたしますか。
津野田政府参考人 先ほど先生御指摘のように、この大陸棚の限界画定のためには、二〇〇九年までに国連の大陸棚の限界に関する委員会に申請をするということになっております。
 ところが、平成十三年の十二月にロシアが世界で最初に大陸棚延伸の申請を行いました。この際、当初の予測よりもかなり厳しい審査が委員会の方で行われまして、科学的に極めて高度で詳細なデータが必要であるということが最近になって判明をいたしました。
 このような国連の審査基準に見合う調査結果を得るためには、従来予定しておりましたものよりもかなり詳細な調査をしなければならないということがわかりまして、現在の調査体制では期限内に十分な調査結果を整えるということは非常に厳しい状況でございます。
平野委員 そこで、先ほども言いましたように、私は、やはり日本の国益としてやるときには、所管が例えば保安庁であるということでほうっておくということでなくて、このことが逆に、もし国連に出して、ロシアが却下されたわけですから、却下されるとその線引きができないわけですから、線引きをするということは、その中での地下資源についての権利をその沿州国というんでしょうか、そこが有するということですから、しっかりとそこを確保するというのは、特に科学技術的に見ても文科省や、経済的な側面から見ても経済産業省が主導的にそのことに対応していくということが本当は必要だったんじゃないでしょうか。
 これは、大陸棚を海上保安庁がやっておること自身が私は逆に不思議だったんですよ、この趣旨、目的からすると。エリア、所管はそれであっても、文科省も経済産業省も、きちっと所管が連携をしてやることが、究極的には日本の国益、すなわち海底の地下資源を獲得する権利を有することになるんです。
 余りにも縦割りの弊害と事なかれ主義に終わっている今の縦割り省庁の弊害が、こんなところにまで出ている。ここをぜひ私は反省してもらいたいし、文科省も積極的に応援をして、何としても二〇〇九年に、提出じゃないんですよ、結果をもらわなきゃならないんですよ、だから時間軸はないんですよ、そのことを申し上げておきたいと思いますし、それに対してのお答えと、先ほど来言っておりますことに対する御回答をいただければいいと思います。
渡海副大臣 一言で言いまして、縦割りの弊害というのは、そういうものをなくすために我々が閣内に入っていると思っておりますから、原子力においても、まあ、それは外から見ていればあるかもしれませんが、そういうことはなしで我々はやらせていただいておりますし、きっちりと西川副大臣等とも連携をとらせていただいておりますので、御安心をいただきたいと思います。
 それから、この問題につきましては、従来からも、海洋の調査という中で蓄積をいたしましたデータを海上保安庁等に逐次提供を申し上げ、協力をしてきたつもりでございますが、今内閣官房のもとに、十四年六月と聞いておりますけれども、新たに各省庁連絡会議というのが設置をされております。そこにおきまして、ここに書いてございますが、外務省、文部省、それから水産庁、資源エネルギー庁、国土交通省、海上保安庁、環境省、各省が一緒になって、官房の主導のもとに、それぞれの役割の中で一致結束してこの仕事に当たっていくようにということで現在推進をしているということでございます。
 そこがしっかりしているんだろうと正直思っておりますが、なお、我が省として、海洋科学技術センターという立派なセンターも持っておるわけでございますから、監督しておるわけでございますから、きっちりと協力を進めていきたいというふうに思います。
 それから、あと一点だけ。ALMAは、先生のおっしゃるように心配がございました。しかし、先日も海部それから石黒両先生もおいでになりまして、このペースで日本として十分天文学のいわゆる研究というものが続けられる、こういうスピードに乗せて今取り組んでおりますので、御理解をいただきたいというふうに思います。
平野委員 時間が参りましたので終わりますが、渡海副大臣、最後に言いますが、ロシアが審査におっこちたから、これじゃ大変だということで、慌てふためいて六月に省庁連絡会議ができ上がったんですよ。それまでたかをくくっておったんだ。連携を常に密にしてやっていると言うけれども、うそなんですよ。初めて、これじゃ大変だということで、やっとでき上がった。
 もともとは、そんなこと関係なく、そういう重要な問題は関係省庁としっかりと連携を持ちながら、国益のためにやるんですよ。省益のためにやるんじゃない、国益のために、国民のためにやるということを忘れないでやっていただきたいと思います。
西川副大臣 言わずもがなのことで恐縮でございますが、今渡海副大臣からお名前を出していただいたので、簡単に申し上げます。
 平成十一年には海上保安庁との調査はたった二十日でございました。しかし、昨年六月以降、厳しい予算の中で、先生御指摘のとおり、短期的には商業ベースに乗るとは到底思えないのでありますが、しかし、国益というまさに先生御指摘の国家百年の計に立って、日本のエネルギー、特にメタンハイドレート等につきましてはこれは大変重要でございますので、私どもとしては、百二十日を超える、百二十六日の調査実績をしっかり踏まえて、縦割りという弊害について、これを乗り越えるように、国土交通省としっかり協力をして、文科省の御協力もいただきながらちゃんとやっておりますので、どうぞお見守りいただきたいと思っております。
平野委員 終わります。
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。
 本日は、科学技術関係に関連した質問をする前に、二点だけ、先にほかのことを聞かせていただきたいかと思います。
 まず第一点は、前の委員会でも取り上げさせていただきましたけれども、私の地元広島県尾道市にございます尾道市立高須小学校、三月九日の日でございましたが、痛ましい事件、慶徳校長が自殺をされました。
 これに関して、徹底的な調査ということを文部科学省の方にもお願い申し上げましたけれども、それからかれこれ数カ月がたちまして、広島県の教育委員会からも報告書が出て、尾道市の教育委員会からも報告書が出ました。先日は、民間人校長任用に係る調査というようなことで文科省の方でもアンケート調査をし、その結果も出ました。
 こういった結果を踏まえて、文科省としては、このたびの事件をどうとらえ、どう問題意識を持ち、また結論づけていくのか、また今後これにかかわる問題点にどう対応していくべきなのかということについて、お答え願えればありがたいと思います。
矢野政府参考人 御指摘の尾道市立高須小学校問題につきましては、今月の九日でございますが、広島県教育委員会が調査結果を取りまとめて公表いたしまして、文部科学省は同日その報告を受けたところでございます。
 この報告書によりますと、自殺の原因を断定することは困難であるけれども、その要因、背景としては、一つには、慶徳元校長の思いと学校運営や校長職の現実との間にずれがあったということ、それから、慶徳元校長の学校運営に対する県や市の教育委員会の支援が十分でなかったということ、さらに、高須小学校に学校運営上の課題があったということでございます。これは、文部科学省として、これまで広島県に対しまして学校運営についての改善等についての是正指導を行ってまいったところでございますが、その是正指導の指摘事項の課題解決が十分ではなかったということでございます。こうしたことがその自殺の要因、背景として挙げられているところでございます。
 文部科学省といたしましては、これを受けまして、広島県教育委員会に対しまして、一つは、民間人校長の採用に当たっては、採用それから事前研修、さらには支援体制について改善を図るということ、また、もう一つの問題でございますけれども、県内のすべての学校教職員において、先ほど申し上げました是正内容の定着ということと、さらなる充実が図られるように、是正指導の徹底を図るということなどについて指導をいたしたところでございます。
 また、文部科学省では、先ほど御紹介ございましたけれども、一年以上勤務したいわゆる民間出身校長及び当該校長を任用した教育委員会に対して民間出身校長任用に係るアンケート調査を実施いたしますとともに、一昨日でございますが、河村副大臣と民間出身校長との懇談会を実施いたしたところでございます。
 私どもといたしましては、これらの結果や、また広島県教育委員会の調査結果を踏まえまして、民間人校長の登用に当たっての留意事項等につきまして今後きちんと指導してまいりたい、かように考えているところでございます。
佐藤(公)委員 実際私も、現地の方でもいろいろとヒアリングをいたしました。その中で、まだまだこのたびの調査報告に関して不満を持たれている方々も多く、また、それに対する対応ということではまだまだ不十分だという声も聞きます。ただし、私は今ここで、だれがいい、どこが悪い、犯人をどうのこうのということを言っているわけじゃないんです。私が言いたいことは、まずこういった環境ができ上がった今の文部科学省の責任というものをどうとらえているのかということを考えていくべきではないかというふうに指摘をしたい部分があるんです。
 というのは、もう十分局長はこの報告書は読まれていると思います。ただ、委員の方々は、読まれている方々というのはほとんどいらっしゃらないと思います。この報告書の中で一つの事実ということでお話をさせていただければ、幾つかの学校内における背景というのが問題になっている部分、これが原因かどうかはわかりません。わかりませんが、もっと大きい根本論の問題というのが根強くあるのかなと。
 五月十三日の月曜日の職員会議において、保健体育部より二〇〇二年度の春季運動会計画案が提案された。その提案資料の中には、国旗掲揚に係る記載はなかった。教職員からの聴取によると、慶徳元校長が、今年度から、国歌の演奏のもと国旗掲揚を行い、児童と先生方はそれに注目することとなりますと話を切り出した。なぜ日の丸を掲げなきゃいけないのか、注目したくない子もいる、地域で反対する実態を知っているのか、国歌演奏のカセットのボタンを押さない、校長、教頭で上げてくれ等、多くの職員から厳しい口調で質問が出た。慶徳校長は、そのとき何も言わなかったが、最後に、皆さんよろしくお願いしますと涙ながらに言った。
 こういった事実があったわけでございます。これが原因かどうかはわかりません。ただ、僕が言いたいことは、民間人校長の採用ということだけじゃなくて、義務教育を含めた教育の根本的なこと、ここの根底の部分にまだまだ問題点があるのかなと。ただ、言えることは、多分教職員の方、PTAの方、いろいろな思いがある、いろいろな考えがある。そういう部分ですべてを否定するつもりは僕はございません。ただし、言えることは、国の柱である文科省が、こういうことに対して、目をつぶっていたということは僕はないと思いますけれども、もっときちっとした方向性を出して、今後のあり方というものをもっと考えていかなきゃいけないのかなという気がいたします。いかがでしょうか。
矢野政府参考人 この問題の背景、理由といたしましては、委員が御指摘のとおり、一つには民間出身校長の登用という問題があるわけですが、もう一つは、やはり広島県と申しますか、尾道市と申しますか、この学校といいますか、広島特有の問題が背景にあったというふうに思っているところでございます。
 このことにつきましては、私ども平成十年に、学校運営の改善にかかわるといったような問題を中心に、広島県教育委員会に対しまして、これまでの極めて法令に反するような事態等がございまして、そういうことにつきまして指導をしてまいりました。三年間も指導をしてまいりまして、平成十三年に一応の報告を受けたわけでございますが、今回、こういう事件が発生したことに伴いまして、先ほど申し上げましたように、まだ是正指導の内容について、それがいわば内実化されていない、実質上改善されていない、そういう事態が背景にあるのではないか、改めてそういう認識を持ったわけでございますので、先ほど申し上げましたとおり、この問題を契機にして、改めて広島県に対しまして学校運営の改善について指導の徹底をお願いしたところでございます。
佐藤(公)委員 おっしゃられていることはわかりますけれども、私は、こういう事態と環境をつくったのはやはり政治の責任でもあり、文部科学省の今までの無責任な状態もあったことも事実だと思います。文部科学省の無責任さ、こういうことをもう一回私たちがただしていかなきゃいけない。そういう意味で、教育基本法等の改正も、大臣、副大臣等も考えられているんだと思いますけれども、なおより一層、教育現場における現状を踏まえ、リーダーシップを持った政治のあり方というのを考えていかなきゃいけないんだと思います。
 この件に関しては、私はまだまだ不十分な点があると思いますが、今後、だれが悪い、どれが悪いというのではなくて、前向きなことで話をさせていただけたらありがたいと思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。これに関しては、これで終わらせていただきます。
 もう一つは、先般も委員会で取り上げさせていただきました万引き、本の万引き、CDの万引き、特に換金目的ということで万引きが多発しているということで、委員会でも取り上げさせていただいております。前回の委員会でも、河村副大臣が、「教育委員会に対して文部科学省としても通達をし、指導したわけであります。」各地域においても、警察と教育委員会と連携をして、「学校警察連絡協議会における情報交換、あるいは児童生徒を対象とする非行防止アンケート調査を実施する」等々、いろいろなことが並べられた答弁だったんです。
 このときはちょうど四月の二日でございました、それからさほど時間はたっておりませんが、この初発型犯罪というか非行というのはやはり重大な問題を犯すおそれがある、やはり根っこを絶っていかなきゃいけない、そういう意味でかなり私は重要視した見方をさせていただいております。
 四月二日からまだ二カ月しかたっておりませんが、二カ月の間にどういうふうな改善、どういうような状況が出てきているのか、御報告願えればありがたいと思います。
田中政府参考人 青少年の万引きの問題に関しましては、委員から御指摘いただいておりますように、大変深刻な状況であるというふうに認識しておるところでございまして、従来より警察庁等と適宜連携を図りながら取り組んできておるところでございますけれども、より関係省庁の連携を密にするという観点から、定期的な情報交換や連絡協議の場といたしまして、本年四月に新たに関係課長から成ります文部科学省・警察庁連絡協議会を設置したところでございまして、四月二十五日に第一回目の協議会を開催させていただいたところでございます。
 今後、この協議会におきまして、学校と警察との連携を一層強化し、万引き問題を含む非行防止等の取り組みの充実に向けまして具体的な方策について検討を進め、施策に生かしてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 今のお答えは前とほとんど変わりがないと思うんですけれども、今具体的な諸施策というようなお話がございました。今具体的なというのは、例えば古物商法関係の改正だとか、新たな業界団体とのルールづくりとか、地域における仕組み、また特別にこういうことを研究していく、特区という言い方はちょっと違うかもしれませんが、特別地域をつくってみるとか、そういった具体的なことはいかがでしょうか。
田中政府参考人 先ほど申し上げました四月の二十五日の第一回の会議におきましては、両省の取り組み状況等についての情報交換を行いますとともに、これから学校と警察の連携だけではなくて、やはり地域の人々の協力連携が必要であろう、それからまた、青少年にとって非行以外の楽しい居場所づくりといったようなものが必要でないかというような、今後検討すべき具体的な課題等についても話し合ったところでございまして、こういうものを踏まえまして、今後具体的な施策に結びつけてまいりたいというふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 今楽しい場所づくりというようなこともおっしゃられたんですが、大変失礼な言い方かもしれませんけれども、余りのんきなことを言っている場合じゃないんじゃないかな、やはり即座に対応すべく具体的諸施策を掲げてやるべきだと私は思います。このままずるずるいくと、それは決していいことではないので、早急なる具体的諸施策に関して、大臣、副大臣の方でも指示を願えればありがたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 では、科学技術関係のことで何点か質問をさせていただきたいかと思います。
 科学技術関係、私も、大学の教授の方々含めて、研究者の方々とここ何日間いろいろなヒアリングをして歩いてきました。皆さん方とお話をすると、個々の細かいことは違いますけれども、常に話題は国立大学法人化法案の件、または予算の増大、拡大等々のことが出てきております。
 そういう中で、研究費の、まさにその審査の内容、これは具体的に言いますと、日本学術振興会における科学研究費補助事業、科研費と言われるもの、これに関しての補助金の、採択をされればまだいいんですけれども、採択をされなかった場合に、なぜ採択をされなかったかということを今現段階では明確に先方には伝えていない、または記載をしていないということでの不満は、非常に多くのいろいろな方々から聞くことができました。
 確かに、年間四万件ぐらいの採択に対して十万から十一万件の応募がある、申請がある、大変な量だと思います。大変な量ですけれども、本当に日本の科学技術、まさにその基盤というもの、基礎研究というものを大事にしていくのであれば、ここのところはやはり時間とお金と人がかかっても丁寧に指導をし、不採択になった理由というものを研究者の方々に伝えていくということが底上げにもなりますし、日本の科学技術のいい方向になっていくというふうに私は思います。
 ここら辺に関して、ぜひ私は、不採択に関しては、時間とお金と人がかかったとしても、きちっとそこに対する理由を明確に不採択になった研究者の方々に伝えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 科学研究費補助金についての採択結果についてのお尋ねでございますけれども、科学研究費補助金におきましては、申請者への審査結果の開示につきまして、研究費規模の大きい研究種目におきましては、不採択者に対しまして理由を付して文書によって開示をいたしております。また、ただいま先生からお話もございましたように、大変申請件数が多いものでございますから、申請件数が非常に多いような研究種目につきましては、御希望があればその御希望に応じて、おおよその順位とそれから評価要素ごとの御本人の平均点等の情報を差し上げているといいますか開示をしているところでございます。
 先生が今おっしゃいましたように、そういった自分の位置づけとか評価の内容を知るということは、その方の研究の今後のためでもございますし、ひいては学術、科学技術の振興に大きく意味があると思っておりますので、これからもそういった情報提供については充実してまいりたいというふうに思っております。
佐藤(公)委員 不採択になった理由というのをきちんと明確にしてほしいというのは、皆さん方、研究者の方々には、やはり採用の審査基準というものが不明確だとか不透明だという意見がかなり多くあったんです。私は、そういう場に行ったこともございませんし、まさに専門家でもございませんのでよくわかりませんけれども、ただ、何で余りにもこんなに不透明だ不透明だというようなことが出るのか。
 副大臣、ちょっとこれに関して聞かせていただければありがたいんですけれども、なぜ不透明なのという声がこれだけ多く出るのかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
渡海副大臣 そのことについて、実はもう少し内容を細かくお聞きしないと私もその理由について今明確にお答えをすることはできませんが、やはり審査の方針なり基準というものをもう少しクリアにすることによって、そういう御意見におこたえすることができるのかなという印象を持たせていただきました。
 同時に、日本のこれまでの競争的資金の審査制度、これそのものが実はかなりいろいろな問題点があるということで、さまざまな見直しを行っておりまして、今まではどちらかというと、例えばこれまでの経歴とか肩書とか、そういった要するに外形的な要素を審査の標準といいますか、高い点数を与えている、そういう傾向があったわけでございますけれども、今後、やはり申請されている研究の内容、その中身についてもっときっちりと評価できる、そういう体制を整えていこうという改革に今取り組ませていただいておるところでございます。
 いずれにしても、先生方からそういう意見が出ているようでございましたら、公募をかけるときにできるだけ、こういう目的だよ、審査はこういう方法でやるんだよということがわかりやすく示せるような工夫というものをしていく必要があるのかなということで、実態も含めてさらに勉強させていただきたいというふうに思います。
佐藤(公)委員 きのうの夜、文科省の方から、科学研究費補助金の審査要綱とか平成十五年度科学研究費補助金の審査方針、こういった書類をいただきました。私も全部、大体見させていただいたんですけれども、非常に立派なことが書いてある。また、当たり前のことが書いてある。こういうものを公表しているからきちっとした一つの審査基準というものを出しているというのでは、ちょっとやはりわかりづらいかなと思います。
 今副大臣がその改革に取り組んでいるところだということなんで、どういったことで不透明というふうに言われているか、個々によって違う部分もあると思いますけれども、やはりそういった声が極力ない方がいいかと思います。この辺をよくヒアリングを各先生方からして、そこの部分をなくして信頼関係が保てるところがやはり一番重要なのかなという気がいたします。改革に期待をしたいと思いますので、よろしくお願いをいたしたいかと思います。
 そして、先般、これは予算委員会の分科会において渡海副大臣にお聞きしたことですけれども、科学研究関係の教授の方々は、その研究をしていくに際して研究機材が必要で、それをどこかの中小零細に製作を依頼する、発注をする。今、日本の中小零細が大変いい技術を持っている、そういう部分というのはまさに研究分野でも大変重要なことだと私は思います。ここの中小零細が大変いい技術を持っているから研究に適した機材をつくれる、発注をする、でき上がってくる、研究が前に進む。
 しかし、その中小零細が、まさにこの不景気のあおりで、研究者の方々からのオーダーだけで食べていける状態なわけじゃない。景気が悪くなり、商売が上がったりになってくると、当然倒産をしていく。そのときに、そこの中小零細が持っている本当に大事ないい技術というものがそこでなくなっていってしまうということが、今現実に起きている状態だと思います。
 私は、副大臣に一つ提案させていただきたいのは、本来ならば、中小企業の経営育成ということもしくは融資関係というのは、経済産業省等々他の省庁の分野かもしれませんが、今世の中でいろいろと話題になっている、日本の中小零細の技術をみんなで守れ、育成をしろ、これがなくなったら日本の基盤がなくなる、こういう声がよく聞かれます。しかし、それを経済産業省とか他の省庁に任せていたんでは、今どれもこれも一緒の状態の中で、いい技術を持っているところ、持っていないところもみんな同じような扱いになってしまう。
 私は、まさに今、日本で中小零細における製造的な技術を含めたこの技術を守るというのは、文科省の科学技術の目きき、こういったものでそういったものを救ってあげる制度なり対策がとれるんではないかと。それは経済産業省等との連携もあるかもしれませんが、まさに中小零細の中で本当にいい技術を持っているところの目ききをしながら、文科省がその会社または企業に対して融資を考えていってあげる、もしくは、もう経営が行き詰まってどうしようもなければその技術を何とかいい形に残していくようなこと、これは僕は、文科省じゃなきゃできないことなんじゃないかと思います。
 こういうことに対して、新たな融資制度、またはその技術なり人の移行というもの、または、やはり守っていくような新たなる制度というのを考えてはいかがかと思いますが、いかがでしょうか。
    〔委員長退席、鈴木(恒)委員長代理着席〕
渡海副大臣 私の頭のどこかに佐藤先生の御質問が残っていたんだと思います。
 最近私が省内で事あるごとに申し上げているのは、実はそういった中小企業が世界でも最高の技術を持っている、しかしながら経営がうまくいっていない、そういうものが、どういうところにどんなものがあるかということをしっかりまずやはりつかむ必要があるということを、省内で今話をいたしておりまして、そういった技術の蓄積というものをしっかりと我が省としても把握をし、なおかつ、どういう政策が一番これにきくのかということも同時に検証していきたいというふうに思っております。
 既に、それだけではなくて、科学技術の観点からも、我が省も幾つかのプロジェクトは実施をいたしております。細かくは申し上げませんが、特に新しいものが出てくるようなこと、これが主体でございますけれども、既存の技術で高いレベルにあるもの、これをさらに発展させる、もしくはなくならせない、今これは佐藤先生がまさにおっしゃったことでありますけれども、このことをしっかり支えていくための幾つかのメニューというものも用意もしております。
 さらに加えて、そういったさまざまな調査をもとにより新たな政策というものもこれからつくっていきたい。先生が御指摘のように、やはり技術という点、企業の規模とか、いわゆる形態に着目しないで、持っているノウハウというもの、技術力というものに着目して今後とも政策の中に反映をしていきたいというふうに考えておるところでございます。
佐藤(公)委員 この話を文科省関係の方々とすると、もうはなからあきらめたような状態がある。まず一点は、財政的なこと。いや、三千億、五千億財務省からふんだくって中小企業のそういうところにばらまいてあげればいい。まずその予算がとてもとれない。もう一つは、やはりそれだけの技術力を見ていくことができないのではないかという話もございました。
 しかし、日本学術振興会の方でのまさに研究費の採択をする審査機関、これで四千五百人の方々がいらっしゃるわけです。例えば大学の先生、研究者が、この中小企業の技術はすばらしいと、そういうような話を上げて、皆さんで合議制の中で審査をきちっとして、いいというところには五千万、一億つけてあげる、融資制度を考えてあげる。こういうようなことで、この学術振興会のこういった先生方、ネットワーク等を使いながら、私は、中小企業、零細における、本当にいい技術で、苦労している会社、こういうところに、そういった研究者の方々からの申請とか後押しもしくは推薦があって考えていくようなシステムは僕はできると思うんです。こういったことで、私は、文科省が財務省からお金をいつもとられているばかりじゃなくて、取り返す気持ちで文科省の方で頑張ってもらえればありがたく、今後に期待をいたしたいかと思います。
 もう時間でございますので、これにて終わりにさせていただきます。ありがとうございました。
鈴木(恒)委員長代理 山内惠子さん。
山内(惠)委員 山内惠子です。
 きょうは、中教審答申についてを中心に質問する予定なんですけれども、ちょっとその前に質問を一つだけさせてください。
 民族学校の国立大学入学資格問題についてなんですが、遠山大臣は白紙撤回ではないとおっしゃっていましたが、その後どうなったでしょうか。恐れ入ります、質問を提出していなかったのですけれども、お聞きしたいと思います。どなたでも結構です。
遠山国務大臣 この問題は、御存じのような経過をたどりまして、まあ私どもの案というものがあったわけでございますけれども、それは私、それなりに論理的であったと思いますけれども、さらに多くの方々の御意見もあり、かつまた、一般の国民の皆様からの御意見もありました。
 ということで、目下、どういう形でいくかということについて検討している段階でございます。
山内(惠)委員 検討している段階ということはわかっていたんですけれども、国民の多くの人は、あのとき、アジア系民族学校になぜ資格を与えないのかというのがとても大きな声であったと思います。同時に、税制上の配慮をしないのも問題だというのもありましたので、ぜひこの税制に関しても前向きな御検討をいただきたいと思いますので、そのことを申し上げておきます。子供たちこそ平和的国交関係樹立のかけ橋となってくれると思いますので、ぜひこの二点、前向きで御検討いただきたいと思います。
 では次に、中教審答申についての質問に入りたいと思います。
 三月二十日に答申が出されましたが、中間答申を公表した後、一日中教審を開催しまして、全国的に賛否両論が出されていたと思います。その出された意見も資料で私も見せていただきましたが、今回の答申までの間にそのような意見があったわけですから、どのように今回の答申に反映されたのでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 昨年の十一月に中教審が中間報告を出したわけでございますが、その後、中央教育審議会におきましては、国民からも幅広くEメール等で意見募集をしたわけでございます。また、一日中教審は、委員御指摘のように五会場で公聴会を実施したわけでございます。そこでもいろいろな方々からいろいろな御意見が出たわけでありますし、また、中教審は、有識者あるいは教育関係団体からいろいろな形でヒアリングを行ったわけでございます。その結果として、この三月二十日に中教審が答申を提出した。その中には、いろいろな意見を参考にしながら、盛り込めるものは盛り込みながら答申がなされた、こういうふうに理解をいたしております。
山内(惠)委員 たくさんからのヒアリングをしたということも私は承知しています。
 では、私は、委員会の中でもぜひと申し上げたり、憲法調査会でも会長がいらしていましたから会長にも申し上げたんですけれども、子どもの権利条約を批准した我が国ですから、そのことにのっとった方針を出していただきたいと申し上げましたし、女性差別撤廃条約の第五条にも関係があるわけですから、そのこともしっかりと論議をしていただいて、検討していただきたかったんですけれども、その検討はなさったんでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 審議会が開かれるたびに、いろいろな資料を机上にお配りし、そういった資料も参考にしながら熱心に御討議をいただいたと記憶いたしております。
 委員御指摘のような児童の権利に関する条約あるいは女子差別撤廃条約等各種の国際条約も参考にしていただきながら、幅広い観点から御議論、御検討いただいた、このように承知をいたしております。
山内(惠)委員 出された答申を見て、検討されたとはとても思えないような内容です。
 しかも、中で委員として参加された市川委員はこのようにおっしゃっています。本来、中教審というのは、政令があって、そこには審議会をどう構成するとか審議をどう進めるとか手続などが書いてあるんですが、そんなこととは全く関係なく進められていたのです、決をとったりすることも一回もありませんでした、ある人が何か発言してもそれについて議論することはなかったと書いているんです。
 それに続いてまたある人が別のことを言うという形で、会長が感想などを言ったりすることはありましたが議論をすることは全くない、だから議論が煮詰まらない、結局、会長と事務局長がその言いっ放しの話の中から都合のいいと思ったことをすくい上げ、都合が悪いと思ったら無視していく、徹底して無視されたわけです、このようにおっしゃっているんですけれども、どうだったんでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 それぞれいろいろな受けとめ方はあるんだろうとは思っておりますが、中教審は、平成十三年十一月の諮問以来、総会が十一回、基本問題部会十六回を開きまして、昨年十一月に中間報告を提出し、さらに、先ほど申し上げましたような公聴会等を経まして、昨年の十二月からことしの三月まで、総会四回、基本問題部会十二回、これはヒアリングも含めてでありますけれども、大変熱心に精力的にいろいろな御議論を闘わせていただいた。その結果が、ああいった形で答申としておまとめをいただいた。私どもは、中教審のそういった御審議、それを高く評価しているところでございます。
山内(惠)委員 実は、このもっと前の段階から問題があって、今回は教育改革国民会議が色濃く投影された。しかも、メンバーが、教育改革国民会議のメンバーから六人、しかもそのうち四人が基本問題部会の方に出ていた。そういうことも含めると、方向というのを相当強く打ち出して論議がされているということが読み取れるような内容だったというふうに私は押さえています。
 ところで、遠山文科大臣は、広く国民的議論をと繰り返しておっしゃっていらっしゃる。その一つとして今回の教育フォーラムも行われているんだと私は思います。現在、山口県、熊本それから新潟と三カ所で行われ、今後、六月一日には北海道、そこは私も出席する予定ですが、六月八日は愛知、このように行われるんですけれども、どの方が呼ばれるのですかとお問い合わせをしましたときには、しかも、もう報告を出されて、皆さんに案内を出している段階でも、人の名前すら明らかになりませんでした。私は、北海道のことでお聞きしましたが、明らかになったらすぐ報告をするとおっしゃいながら、今日まだその報告もいただいていませんでした。それで、こちらからもう一度お電話を入れましてお聞きして、やっとどなたが来るかということがわかりました。
 それにしても、この発言者の人選は文科省が行ったことだと思いますが、人選の基準は何だったんでしょうか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 今回の教育改革フォーラムは、教育基本法の問題のみならずいろいろ教育改革について議論があるわけでございますから、副題としても「教育改革の推進と教育基本法の改正について」ということで、幅広い観点からいろいろな御意見を承ろう、こういうことで開いたわけでございます。
 当然、今回、中央教育審議会の答申をいただいているわけでございますから、できれば、その基調講演としては、中央教育審議会の委員の方々にお願いをし、現在の教育改革の状況と中央教育審議会の答申の中身等も含めた御説明をいただきたい、こういうことで、その委員の方々の日程に合わせながら選んでいったということが一点ございます。
 それから、パネリストでございますが、これにつきましても、せっかく中教審の委員がいらっしゃるわけでございますから、その方にはぜひパネリストとして基調講演に引き続き御参加をいただきたい。それから、少し全国的な観点からの、有識者と申しましょうか、それから、せっかく地方でやるわけでございますから、その開催県の教育委員会からこの方をという方を御推薦いただく、このようなことを含めて最終的に私どもで選定をさせていただいた、こういう経緯でございます。
    〔鈴木(恒)委員長代理退席、委員長着席〕
山内(惠)委員 幅広くとおっしゃるときに、皆さん、その方の方針というのは賛否が相当わかって人選なさるんだと思うんですね。その意味では、私は一日中教審のときの東京を見ましたが、賛成が圧倒的に多かったです。福岡は、新聞報道によれば反対の人が多かった。あとの三カ所はおよそ半々だったかなという読み取りをできたものですけれども、今回の三会場に参加なさった方たちの声をお聞きしましても、全体として、教育基本法の見直しに反対の人の方が圧倒的に少なかったとおっしゃっています。
 そして、今私が質問する趣旨は、文科大臣が国民的議論をするということを何度もおっしゃっているとしたら、これはなぜ変えなければならないのか、変えなくてもいいんじゃないかという意味で、論議をしっかり深めるということを考えれば、反対の人をもっともっと多く登用するべきだったと私は思います。そうでないと、文部科学省が国民の意見を賛成に誘導していくものになるんじゃないかというふうに私は思います。
 特に、山口県では反対論は出なかったそうです、余り。熊本県はあいまいな意見で討論がかみ合っていなかった。それで鳥居会長の意見が浮かび上がった。新潟県は、それでも藤田委員がいらしたので、もう一人の反対の方もいましたので、討論の性格がよく見えたという声もあったと聞いていますが、それは新潟会場だけでした。あとの二カ所は、今後どのようになるのかわかりませんけれども、今回、中教審の中のメンバーをもぜひ入れたいとおっしゃるのであれば、相当あちこちで反論していらっしゃる市川先生なんかもお入れになった方が、もっと皆さんの論と闘い合わせながら、見えるようになったんではないかと思います。
 私は、六月一日の北海道のフォーラムについて改めてお聞きしたいんですが、会場からの発言はぜひ受け入れていただきたいということを前回の私の発言のときに申し上げたんですけれども、とうとう今回も、その発言は、アンケートをとって、その一部を司会者が発表すると言っているんですね。何で会場に来られている方の声を生でお聞きしないんですか。しかも、これはちゃんと希望者を、はがきで出して、そこからよりすぐって、それは抽せんだったのかどうかわかりませんが、抽せんして、選ばれて会場に入ってきているわけですから、その方もそれなりの意見も書きながら行っているんじゃないんでしょうか。
 憲法調査会が北海道で開かれたとき、私はその会場で見ていました。意見を発表する方は選ばれて発言をしたにもかかわらず、会場は次から次へと発言がされて、それを受けとめていかれました、何の混乱もなく。その中身は本当に皆さんの声が反映できる憲法調査会のあり方でした。なぜ文科省はそのようにやらないのですか、お聞きしたいと思います。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 私も五月十七日の山口会場にも参加をいたしました。限られた時間の中で、パネリストの方々にも幅広くいろいろな問題について御討議をいただきたい、そういう時間の確保も図りたい。また、せっかく会場にたくさんの方々がお越しでございますから、アンケート用紙に御記入をいただきまして、それはまた残るわけでありますから、それをまた今後、基本法の改正なり基本計画の策定の際にも参考にさせていただきたいということで、アンケートの用紙をお配りをし、回収をさせていただいた。その中で、時間の制約もあるわけでありますから、幾つかのものを司会者が読み上げまして、それにつきまして、当日もパネリストの方から丁寧な御回答をいただいた。これは山口の事例でございますけれども、そういった形で実施をしておると御理解をいただきたいと思います。
山内(惠)委員 いろいろな意見はメールで、はがきで、お手紙で出せるということがあるわけですけれども、わざわざ会場まで来て、意見を述べたいと思って来る人たちにそのような形でするというのは、本当に余りにも私は不自然だと思います。時間の制約があるとおっしゃるのであれば、人数制限されてもそれは仕方がないと思いますが、せっかく会場に来たのに、生の声を取り上げないで、しかも、私は、今回の一日中教審、中間答申に対していろいろな発言があったにもかかわらず、何ら丁寧に取り上げもせず答申を出されている。そして、今おっしゃったようなことをやりながらも、本当に、市川委員がおっしゃるように、都合の悪いところは全部無視していっているというのが今回の答申だと私は思います。
 次に、私は、もう一度、こだわり続けているこの答申の中身なんですが、諮問の段階から指摘されていた、今なぜ改正が必要なのかということに対して、根本問題に答えていらっしゃらないと思います。そのことについては市川委員も何度もおっしゃっています。
 現行法に不備があるということは出てきませんでした、全く現行法に不備があるということは出てきませんでしたと言うんですよ。そして、そのことをずっとるる説明をして、こういうことはどうなのかということを説明して、回答された方は、元文部次官の委員がそのときに私に言われたのは、支障がなくても変えて悪いということはないだろう、これは私が前回指摘をしました元文科省にいらした小野事務次官のことだったんじゃないですか。支障がなくても変えて悪いということはないだろうという発想のもとにこの答申が出されていることを実証するような発言じゃないですか、いかがですか。
近藤政府参考人 お答えをいたします。
 委員は市川委員の発言を引用されるわけでございますが、正委員は三十人、その他基本問題部会の委員が多数いらっしゃるわけでございまして、会議としては、大方の方々がやはり教育基本法の改正は必要である、こういった形として中央教育審議会の三月の答申が出された、こういうことは御理解をいただきたいと思っておるわけでございます。
 御案内のとおり、昭和二十二年に制定をされた法律でありまして、制定から半世紀以上経ておるわけでございます。社会状況も大きく変わっておりますし、教育を取り巻く状況も大変大きな変化があるわけでございます。そしてまた、教育全般についていろいろな課題が山積をしている。そういった中にあって、もう一度原点にさかのぼって改革をしていこうではないか、こういう問題意識で御審議をいただき、委員御指摘になりましたけれども、答申でも、現行教育基本法の示す幾つかの普遍的な理念は引き続き大切にしていこう、ただ、新たな、現在の時点において明確にすべき理念なり原則はあるであろう、そういうことをはっきりさせようではないか、こういう観点からなされたと思っております。
山内(惠)委員 なぜ変えるのか、どこの条項が悪いのかということもなく、普遍的な問題だけはちゃんと残すんだとおっしゃることに相当の問題があると私は思っています。なぜ変えるのかお答えになっていません。そして、しかも、元文科省にいらした方が、何の理由がなくても変えて何で悪いという居直り発言、そのことを私は指摘しておきます。
 それでは、ここのところを改めて大臣にお聞かせいただきたいと思いますが、中教審並びに文部科学省は、新しい時代にふさわしいものをということを何度もおっしゃっていて、今局長もおっしゃったように、五十年もたって時代は変わったとおっしゃって、そのことを見直しの論拠にしていますけれども、それでは、大臣、新しい時代とはどのような時代を想定していらっしゃるんでしょうか。
遠山国務大臣 今日、二十一世紀の初めに当たります。新しい時代というのは、私どもとしては二十一世紀ということでございまして、この時代については知の時代とも言われておりますし、生命科学の時代とも言われ、さまざまな形でこれまでにない新しい展開が予想される時代だ、そういう認識が行き渡っているわけでございまして、その意味において、新しい時代にその日々を過ごしていく子供たちをどう教育するかという角度から考えるという意味でございます。
山内(惠)委員 新しい時代のことにつきまして、今おっしゃったことは書かれていましたので、読んでおります。
 それで、新しい時代のことについては、河村副大臣は不透明な時代とおっしゃっているし、遠山大臣は日本が直面している危機的状況ということをおっしゃっていらっしゃって、今のようなことを新しい時代に期待するんだということはわかりますが、新しい時代ということを定義するためには過去の歴史認識を十分に説明する必要があると思います。過去の歴史をどう認識されるから、新しい時代を想定して、このようなことを求められるんでしょうか。
河村副大臣 中教審の中間報告あるいは答申等を見ても、やはり過去の、特に第二次世界大戦の反省もあると思いますが、そういうものを踏まえながら、再び日本がそうしたものになってはいけない。それを今さら言うことはどうであるかという議論もありましたけれども、やはり全体主義に陥らないようにという前提に立って考えていこうと。例えば国を愛する心なんというのはそういう意味ではないんだというようなことも強調されている点が、私は、やはりそうした過去の歴史といいますか、そういうものを踏まえながら新しい時代をつくっていこうということで答申されている、こういうふうに思います。
山内(惠)委員 過去の歴史認識を十分にということで、今、戦争のない時代、戦争のあった時代の全体主義に戻らないようにということを河村副大臣はおっしゃったんだと思うんですけれども、教育改革については、明治維新以降、明治の学制に続いて、教育勅語の発布という時代がありました。だから、そこで一回教育改革がありますね。そして、その教育勅語以降、敗戦後に始まる新しい時代、そのときははっきり新しい時代は定義されたと思います。
 手続的には、明治憲法の改正があり、実質新憲法の制定、そして教育基本法が公布されたというふうに歴史は進んでいると思います。その意味で、この答申の中身を読みますと、その歴史認識と新しい時代の説明は私は逆になっているというふうに思います。
 ちょっと読みます。この中教審の文章です。「現行の教育基本法を貫く「個人の尊厳」「真理と平和」「人格の完成」などの理念は、憲法の精神に則った普遍的なものであり、新しい時代の教育の基本理念として大切にしていく必要があると考える。」副大臣が今おっしゃった、その意味でそこは否定していません。「しかしながら、」「新しい時代を切り拓く」「たくましい日本人を育成する観点から重要な教育の理念や原則が不十分であり、」「見直しを行うべきであるとの」結論に至った。
 となると、ここで否定をしているじゃないんですか。見直しをしなければならないという結論に至った、否定しているじゃないですか。残すと言いながら、しかも否定しないと言いながら、ここで否定しているではありませんか。いかがですか。
河村副大臣 これは読み方だと思いますが、私の受けとめは、否定ではなくて、さらに必要なものは何であるかという観点に立って答申されているというふうに思っております。
山内(惠)委員 ちょっと読みます。「しかしながら、」の後の部分です。「新しい時代を切り拓く」「たくましい日本人を育成する観点から重要な教育の理念や原則が不十分」なので見直しをすると言っているじゃないですか。歴史じゃないですよ、この見直しは。その意味では、先に「たくましい日本人を育成する」というのがあって、だから見直すとおっしゃっているんじゃないですか。
河村副大臣 先生のお尋ねのところは、「たくましい」の前に「心豊かで」というのがあるはずなんですよ。ここのところが非常にいろいろ議論されたところで、そういう意味で、例えば家庭教育の、しつけの問題等々がこの教育基本法の中ではすっぽり落ちているではないか、社会教育の一環としてはあるけれども、地域の教育力、学校教育力、いろいろな面で指摘をされた。そこで、実は「たくましい」ということについては、これだけでは筋肉隆々の人間をつくるのかという議論もあって、そうじゃないんだと。やはり心の豊かさと物の豊かさが併存するこれからの時代をどうやってつくっていくか、そういう人材だということで、この観点が私は新しく加わってきた、こういうふうに考えますが。
山内(惠)委員 抜かした言葉に私は意味を持てなかったので読まなかったわけなんですけれども、たくましい日本人を育成する観点から見直そうという発想は、最初に理想像がおありでしょう。そこから見直さなければならないとおっしゃっているんですよね。
 先ほどのところに戻りますと、新しい時代をどう定義するのか、何をもって新しいとするのか、説明をしなければならないと思うんです。だからこそ、過去をどう分析するのかと言いましたら、前段のところで過去のところを否定するわけではないと言うわけですから、全くそこのところの説明がなされていないと私が言うのは、ここのところにあります。
 ところで、社会の状況の変化に対応するには、学習内容や方法を適切に変えていけばよいと思います。また、その努力として、試行的に文科省や地方教育委員会や教育団体や私立学校や学識経験者などによって実行案も出され、多様な提案もあり、無数の現場の実践もあります。このような提案や実践の中で適切なものは残るでしょうし、そうでないものは消えていくのではないでしょうか。それこそが文科省の言う教育の画一性を打破する道ではないかというふうに思います。
 ところで、この間、文科省は、先ほどの日の丸問題にも象徴されるように、地方権限を認めず、まあ、あそこのことと直接つなぐのはちょっと今いたしません、改めていつかすることにいたしますが、地方権限も認めず、学校権限も許さず、父母や子供たちの要望にも耳をかさない文科省の五十年以上を超える中央集権的な教育行政の手法が、教育の画一化と全く関係がなかったんだろうかとおっしゃっている方がいます。学習指導要領の準国定化、教科書検定の恣意化、それらこそ日本の教育の画一化に相当の責任があったということを私は申したいと思います。基本法の精神、理念を実行していないところに問題があると思います。
 その意味で、基本法が時代におくれているのではありません。日本の教育が基本法におくれているということが実態だと私は思います。そのことを指摘するということは、新しい時代、二十一世紀というときに、この「たくましい日本人」ということを定義することなく来られていることに相当多くの問題を私は感じています。もう一度次のところに行ってお聞きします。
 最後の時間になっていると思いますが、日本人という定義をなさっているんでしょうか、お聞かせください。短くお願いします、時間がありませんので。
近藤政府参考人 中教審では、特に定義はいたしておりません。
山内(惠)委員 答申にはこのことが載っていないんですが、日本人と日本国民とはどう違うんでしょうか。そのことを、では今お聞かせいただきたいと思います。日本人と日本国民はどう違うのか、同じなのか。
近藤政府参考人 特に日本人というようなものの定義いたしておりませんが、中央教育審議会の答申、その議論の過程では、日本国民を指して議論をなされたと思っております。
山内(惠)委員 今のようなお答えであれば、本当にいいかげんなものだと思います。これを法律で定義できなければ私はだめだと思います。今まで日本人という言葉は法律に載ってこなかったわけですから、定義していただきたいと思います。
 ところで、鳥居会長は、この日本国民についておっしゃったことがあります。日本は単一民族の国だと発言なさっているんです。そのことを私は前回の委員会でも皆さんに報告をしましたが、このことが問題なんですね。
 例えば、日本にはいろいろな方がいます。北海道のアイヌの方もいれば、在日の方もいます。ブラジルから来た人もいますし、フィリピンから来て定住なさっている方もいらっしゃいます。私は数字を挙げてこのこともこの間説明しましたが、外国人登録をしていらっしゃる方は百五十万人もいらっしゃるんです。さまざまな国籍、民族、そして数十カ国から来ているんですから、今や多様性を認め、多文化共生を探らなければならない時代にあって、日本人よと、こんな答申を出していく問題点を指摘し、まだまだ疑問点がありますので、次回にまた質問していきたいと思います。
 以上です。
古屋委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 文部科学省が主催された「教育改革フォーラム 教育改革の推進と教育基本法の改正について」、五月二十五日に新潟で開催されたようです。
 このフォーラムで、鳥居泰彦氏は中央教育審議会会長として基調講演をされたと私は受けとめるんだが、遠山大臣、どうですか。
遠山国務大臣 今回のフォーラムは中央教育審議会の答申を受けた後のフォーラムでございまして、中間報告の後のフォーラムとはやや違っているのではないかと思います。
 その意味におきまして、中央教育審議会で論じられたこと、また、その答申の意味についてそれぞれの講演者がしっかりとお答えになったということは確かだと思います。
児玉委員 いや、私が聞いているのは、中央教育審議会会長という肩書で基調講演をされましたね。そのことを確認したい。
河村副大臣 この基調講演は、中央教育審議会のメンバーの方にお願いをするということになっておりまして、原則として会長がおやりになるのが一番適切である、こう思っておりますから、新潟でおやりになった場合には会長という肩書がつくのは当然だと思いますが、山口でやりました場合にはあの位置に山本委員が来て説明された、こういう経緯もございます。
児玉委員 そのことをはっきりさせておきましょう。
 新潟でいえば、彼は中央教育審議会会長として基調講演をした。報道によれば、鳥居氏は、教育基本法を指して、終戦直後のどさくさの中でつくられた法律でいろいろと問題がある、このように述べたようですね。
 周知のことですが、田中耕太郎文部大臣のときに、教育基本法は教育刷新委員会、その中には、皆さん御存じの安倍能成氏、南原繁、芦田均氏、天野貞祐、務台理作、関口鯉吉、森戸辰男氏など多くの方々の真摯な論議の中から生み出されて、そしてその後、閣議、枢密院、第九十二回帝国議会の審議、私も最近機会がありましたので、当時の会議録を読んでみて、この前の議論でもその一部を紹介しましたが、そういうものだと。
 それを指して、どさくさの中でつくられた法律でいろいろ問題がある、こういうふうに言えるのか。私は、鳥居氏が個人としてあれこれ言うことについて取り上げるつもりは全くありません。それはもう彼の自由でしょう。しかし、文部科学省主催のフォーラムで中央教育審議会会長として行った発言は個人の発言ではありません。この点、遠山大臣はどう考えますか。
遠山国務大臣 私は、鳥居先生があの場におきまして基調講演をされたと聞いております。その詳細については、細々としたことまでは聞いておりませんけれども、私は中央教育審議会の答申の内容についてお話しになったのであろうと思います。
 鳥居先生は、中央教育審議会の会長として答申をおまとめいただきました。そして、その内容をお話しいただいたと思いますが、みずからの研究者としての思いあるいは感想ということもその基調講演の中で述べられても、私は当然のことではないかと思います。
児玉委員 私の言っていることを正確に聞いてほしいのだけれども、彼が研究者であるということは私も承知しているけれども、自分の研究の成果についていろいろお述べになるのは、私は全く御自由だと思う。
 遠山さん、今あなたが言ったように、中央教育審議会のこれまでの論議、それらが教育フォーラムで基調講演で反映されなきゃいけない。皆さんがそこに向けてどんな内容を準備されたかということもきのう私はいただきましたが、文部科学省自身が教育基本法を終戦直後のどさくさの中でつくられた法律だと思っていますか。そして、日本の現在の数多くの研究者がこの教育基本法について通説的にどのように理解しているかというのは、あなたも知っているはずです。
 先日、四月二日のこの質疑の中で、私は、昭和二十二年五月三日の文部大臣高橋誠一郎氏が出した文部省の訓令四号を皆さんに紹介したことがあった。「この法律によつて、新しい日本の教育の基本は確立せられた。今後のわが国の教育は、この精神に則つて行われるべきものであり、又、教育法令もすべてこれに基いて制定せられなければならない。」遠山さん、あなたはこのとき、このときというのは四月二日だけれども、この訓令は生きている、こう言ったじゃありませんか。
 どさくさの中でつくられた法律だ、もしそれを研究者として言うのであれば、それは研究者の中で厳しい批判が集中するだろうけれども、それを私は国会でやろうとは思わない。要するに、中央教育審議会会長としてこのように発言した、それはこの後議論しなければならない。
 そこで大臣に私は求めたいけれども、新潟での中央教育審議会会長の発言を速やかに提出していただきたい。どうですか。
遠山国務大臣 今回のフォーラムは、御存じのような目的のもとに国民的な議論を深めるために行っているものでございまして、フォーラムに参加していない国民の皆様に議論を深めていただくためにも、フォーラムにおきます基調講演あるいはパネルディスカッションの概要等についてはできる限り早く公表したいと考えております。
児玉委員 全体の中身も私は拝見したいけれども、鳥居さんのこの基調講演についてはフルテキストで求めたいと思う。どうですか。
河村副大臣 このフォーラムについては、審議会のような形で議論するような性格の会議でないという点が一点ございますし、それから、基調講演者、パネリストに事前に、全発言の内容を公表するためのものであるというような形で今回会議に臨んでおりません。
 ただ、おっしゃるように、フルテキストという形になるかどうかは別として、議論概要といいますか、それは当然公表しなきゃならぬと考えておりますが、議事録のような形で公表するということに今回のフォーラムについてはいたしておりません。ただ、マスコミの方も皆さん御出席をされておる会議でございますから、決して秘密的にやったものではないことは明らかだと思います。
 それで、せっかく私ここへ立ちましたから、山口では御一緒じゃございませんでした、熊本では御一緒させていただいたのでありますが、だから、もちろんフルテキストでないと、全体を見なきゃわからないとおっしゃるんだろうと思います。マスコミの書き方は、基本法はまさにどさくさで成立、こうなっておりますが、これまで鳥居会長がずっと言われてきたことを私の方で推測いたしますのに、やはり時代の背景といいますか、非常にああいう時代でありますから、国民全般に議論をするような場もありませんし、非常にどさくさ的な、非常にそういう意味での背景があった。
 そのことと、それから問題点があると鳥居会長がよく言われるのは、十一条の短い中に入っている、しかし、ほかの国の基本法を見ていると、非常に精巧に、条文も大きなものをつくってある、そういうものに比較してまだ足らない部分がある、問題がある、こういうような指摘をいつもされておったことを覚えております。
児玉委員 今の私の要請、すなわち、鳥居氏の基調講演の中身をフルテキストでいただきたい、これは委員長、理事会で協議いただきたいと思います。
古屋委員長 この問題につきましては、文部科学省並びに中教審の中で御議論をいただいて結論を出していただきたいと思います。
 むしろ、理事会で議論する話ではないと思いますので、まず委員長としてそういう対応をお願いしたいと思います。その上でまた考えさせていただきます。
 以上です。
児玉委員 あなたは中立公正の立場でこの委員会を進めていただきたい。
 さて次に、教育振興基本計画、中教審答申の第三章、そこをめぐってお伺いをしたいと思います。
 最初に聞きたいのだけれども、遠山大臣、多くの国民や父母そして学校で頑張っている教職員は、教育の振興という言葉を聞いたときにどんなことを思い浮かべると思いますか。あなたの率直な感想を聞かせてほしい。
遠山国務大臣 日本の教育がますます活性化をし、そして振興という言葉から連想するのは、恐らく、いろいろな条件整備をよりよくやって、子供たちが学びやすく快適な状況で学べるようにというようなことがまず頭に浮かぶのではないかと思います。
児玉委員 遠山大臣は、教育のプロだからそういうふうに言われるのだけれども、私が聞いているのは、例えば、あなたのいとこの方だとかめいごさんだとか、それからあなたのお子さんがもしいらしたとすれば、その子供の学んだ学校の先生たちが、教育振興と言ったときに何を思い浮かべるだろう、あなたはそれをどう考えますか。
 今のあなたの言い方は、同義反復ですよ。振興について考えるとおっしゃったので、それは犬が東向けばしっぽは西だというのと同じですよ。
遠山国務大臣 子供、めいとかおいが教育振興という言葉をどこまで解するかよくわからないわけでございますけれども、一般の良識ある国民の皆様がお考えになれば、教育をいかに活性化し、そしてすぐれた教育をしてもらうかというためのいろいろな条件整備等のことをやっていくかということだと思います。
 この振興という言葉はいろいろな角度で使われておりますけれども、例えば、我が省の中で科学技術振興といえば、科学技術をどのように発展させて、そして活性化させていくかということでございまして、その意味で教育についても、よりよいものにしていく、そういうふうに受け取るのが通常の感覚ではないかなと思います。
 子供は、なかなかわからないのではないかと思います。
児玉委員 余り無理には繰り返さないでおきましょう。
 例えば、クリントン氏が、九八年の一月の大統領の教書の中でこう呼びかけましたね。今のアメリカの教育はこのままにしておくわけにはいかない、教育をよくしなければいけないと思う、そのとき、アメリカの多くの母親、父親は、どうすれば教育をよくすることができるか、そのことを既に御存じだ、こう言って、何と言ったと思いますか。グッドティーチャーズ・アンド・スモールクラシーズと言っていますよ。いい先生と、学級数を少なくする。そして、それに続けて彼は、アメリカ全土で小学校低学年を一クラス十八人にする、そのために資格のある教師十万人を採用する、こう述べましたね。
 教育振興というときに、普通の国民であれば、やはり三十人以下学級の実現がいつまでに自分たちの子供に及ぶのだろうか、私立に子供を通わせている親御さんでいえば、経常費の二分の一、そこまでの引き上げがどうなるか、そして大学・大学院でいえば、この前も皆さんと議論をしたけれども、GDP対比の高等教育への予算が欧米に比べて著しく劣悪ですから、そこのところを引き上げる、こういった課題を思い浮かべると思うんです。
 私は、文部科学省に言いたいのですが、今言ったような課題、皆さんの考えている、例えば全国の小中学校の耐震化の実現だとか、そういったものを年次計画的に堂々と打ち出してみたらどうだろうかと思うんですが、いかがですか。
河村副大臣 中教審の基本計画のところにも、今のいじめ、不登校、そういうものを半分に減らすんだという書き方がちょっとございましたが、私は、やはり今の耐震化のような問題はそういう形で計画的にやっていく課題だろう、そういうふうに思います。
児玉委員 少人数学級についていえば、三十人以下学級についていえば、今もう全国で燎原で燃え広がる炎のように大きな力になっています。
 それで、今副大臣がおっしゃった校舎の耐震化の実現、これらは、教育基本法十条二項で明示する「教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立」そのものではないかと思うんですが、大臣、お考えはどうですか。
遠山国務大臣 条件整備という意味では、その中にも入ると思います。
児玉委員 そのことを明確にした上で、この答申の第三章の冒頭のところで、もしお持ちであればちょっと出していただくと、二十二ページをあけてください、二十二ページの冒頭のところ。そこでこう言っていますね。幾つかの基本法を列挙して、「それぞれの基本法に基づく基本計画が策定されている。」云々、こう述べていらっしゃる。
 今、日本には二十を超す基本法があります。大臣に伺いたいのだけれども、一九四七年三月に成立した教育基本法、これがどんなものかというのはもう論ずるまでもない。その後生まれたのが、一九五五年十二月に成立した原子力基本法です。これは見事な基本法です。原子力利用の平和的な性格を貫徹する、そして研究においては自主、民主、公開、これを揺るがすことのできない原則とする、そういった中身が原子力基本法には盛り込まれておりますが、この原子力基本法に基本計画があるかどうか。大臣、どうですか。
遠山国務大臣 教育基本法に次いでの基本法である原子力基本法、これにはまだ基本計画というものは、根拠規定はございません。
児玉委員 おっしゃるとおりですね。
 基本法の問題を何人かの研究者が真剣に検討しています。私も、その方々や国会内で調査なさっている方とも、何回か御教示をいただいたのですが、この分野の研究者はこう言いますね。教育基本法と原子力基本法は、日本の基本法の中の第一期である。そして、そこの特徴は何かというと、憲法と一般法をつなぐ役割を担う根本法としての性格を有する。基本法という名前がついていないけれども、地方自治法や労働基準法にはそれに近い根本法としての性格がありますね。
 すなわち、教育基本法というのは、憲法と例えば学校教育法、憲法と私立学校法との間をつなぐ根本法としての役割、ここに教育基本法の重要な特質がある。
 大臣のお考えを聞きたいと思います。
遠山国務大臣 私は、教育基本法というのは、教育にかかわるさまざまな法体系の中の背骨のような、中心的な意味を持つ法律だと思っております。
 ただ、諸基本法の中の一番最初であったということで、その中に基本計画というものはないわけでございますけれども、原子力基本法の後、あるいはそのちょっと前にできました基本法以下ほとんどの基本法につきましては、基本計画というものが根拠規定をその基本法の中に包摂しているという事実もあるわけでございます。
児玉委員 基本法の中で、最も基本法にふさわしい存在として、この教育基本法というのは、その重さを大いに今認識されつつありますね。大臣がおっしゃった、その後と言うけれども、例えば、その後で言えば、災害対策基本法、昭和三十六年十一月十五日、これには防災計画が入っているけれども、この防災計画というのは、防災振興基本計画ではありませんよ。いうところの基本計画がどんどん入り出したのは、それよりかなり後の話です。
 そこで私は、教育基本法の問題にもう一回戻りたいんだけれども、教育基本法の十一条では、こう言っていますね。「この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。」
 教基法の十一条のような内容を盛り込んだ法律が他にあるかどうか、御存じであれば、御教示いただきたい。
河村副大臣 私の知っている範囲では、このような明確な形ではありませんが、法律の見直し条項といいますか、ほかに条件を必要なときには法律によるという書き方はあると思います。
児玉委員 そのとおりです。しかし、基本法の本体に、補則という形で、「この法律に掲げる諸条項を実施するために必要がある場合には、適当な法令が制定されなければならない。」主文はどこかというと、「この法律に掲げる諸条項を実施するため」とはっきり限定しているんです。こういう形で条文を盛り込んでいる法律は、私がいろいろ御教示願った専門家の皆さんによれば、教育基本法だけだ。立法者の意思がやはり問われます。
 この前も皆さんと議論したとき御紹介した「教育基本法の解説」、一九四七年十二月刊行、そこで、皆さん御存じの田中さんや辻田さんだけれども、実際に筆をとったのは、文部事務官安達健二氏ですね。安達氏は、この十一条についてこう言っています。
 本法は、教育宣言的ないし教育憲法的な規定が多く、これらの規定は、なおいまだ抽象的であって、これから直ちに引き出し得る実際的な効果が少ない。したがって、これらの規定の精神を実現するためには、今後、適当な法令が制定されなければならない云々。逆にと言って、逆に本条は、十一条は、本法の基本的な性格、すなわち、憲法と一般法律との架橋的な性格を示すものと言えよう。
 非常に重要な指摘ですね、立法者の意思はまさにそこにあった。そこで、この間、文部省ないしは文部科学省は、やはりここのところは守ってきたと私は思っています。
 最近の事例で言えば、文部省は、一九九〇年に、長い名前の法律だけれども、略称で言えば生涯学習振興法を制定された。当時、河村副大臣は政務次官でいらっしゃったので、あなたのお話もこの前聞きました。そのとき、中曽根弘文文部大臣は、この生涯学習振興法は教育基本法の大枠の中で制定されたものだと。そして河村副大臣は、先日の私との議論の中で、確かにそれは十一条のことを念頭に置いて中曽根大臣は云々というふうにも述べられておる。これは非常に正確な理解だと思うんです。
 そこで、私は、遠山大臣に提起をしたいんだけれども、真に教育条件の充実を盛り込んだ、例えば教育基本振興法、ネーミングは私はこだわりません、要するに、三十人以下学級だとか私学助成だとか大学・大学院の充実だとか、そういったものを盛り込んだ法律を教育基本法十一条に基づいて制定してはどうかと思うんですが、いかがですか。
遠山国務大臣 私は、教育振興という角度から見まして、今日のいろいろな法体系の中で、基本法が包摂しております基本計画というものをしっかり定めるということが大切だと思います。
 なぜかと申しますと、我が省限りでいろいろな政策を打ち、あるいは、各種の法律、政令、省令あるいは予算ということで頑張っておりますけれども、やはり私は、基本計画というのは、政府が責任を持ってその計画を遂行するという意味で、各省がやっている予算措置あるいは計画といったものとは違う性質のものではないか。そこが、日本の、今委員がおっしゃるような条件を整備するにしても、非常に大事なポイントだと思うわけでございます。
 したがいまして、具体的ないろいろな振興したいということがあるわけでございますけれども、それを政府の基本計画を策定するということでやってはどうか、今回の中央教育審議会の御答申というのは、そういう意味があると思うわけでございます。
 基本計画を策定することで、幾つかの利点があると思うわけでございます。一つは、政府全体としての視点から、基本法の定める理念を実現するための施策を総合的、体系的かつ計画的に推進することが可能になるわけでございますし、施策の全体像をわかりやすく示すことによって、国民への説明責任が遂行できる。あるいは、基本計画に照らした政策評価の実施を通じた効率的な行政運営の実現等に資することができますし、また、教育を重視するという政府のメッセージを発信するということによりまして、地方公共団体、事業者、国民及び民間団体の積極的な取り組みを推進することが期待されるわけでございます。
 その意味におきまして、私は、今回、基本法の中に基本計画の根拠規定を掲げ、そして、それによって教育振興のいろいろな計画というものをしっかりと政府全体の責任においてやっていく、そういう新たなページを開きたいというふうに思うわけでございます。
児玉委員 いろいろおっしゃったけれども、今度の中教審に対するあなたの出した答申というのは、さまざまな答申の中で際立っていますね。「平成十三年十一月二十六日 遠山敦子 次に掲げる事項について、別紙理由を添えて諮問します。」これを読んでみると、教育振興基本計画のところは、実に詳細、具体的ですね。もう中教審は何もする必要はありませんよ、これをそのまま答申すればいいので。大体中身はそのようになっています。
 あなたが今いろいろ言ったけれども、根拠法はあるじゃありませんか。教育基本法の十条二項、教育基本法の十一条、そして、もっと言えば前文、一条、二条ですよ。立派な根拠法がある。そのことを知っての上で、教育基本法改正の理由の一つとして盛り込まなきゃいけないからというのは、これはやはり真っ当なやり方じゃありませんね。そして、政府全体のものになるかならないかというのは、教育基本法があれば、それは十分であって、それをなし得ていないとすれば、それは文部科学省の努力の問題じゃないでしょうか。
 結局、教育基本法の中で教育振興計画をつくらなきゃいけないということが皆さんの教育基本法改正の最大の理由になっていますよ、あなたの諮問によれば。その必要なし。十一条は立派にある。
 そして、この後また続けて議論をしますが、あなたたちはそういうときに実に周到に言葉を使いますね。教育の目的という言葉を使わなくなっている。目標という言葉に差しかえていますね。これは明らかに、人格形成、教育の目的という大きな理念と卑近な政策目標に差しかえる、そういうやり方が根底にあるので、ここのところは文部科学省として真剣に考えていただきたいということを述べて、きょうの私の質問を終わります。
     ――――◇―――――
古屋委員長 次に、内閣提出、参議院送付、独立行政法人日本学生支援機構法案及び独立行政法人海洋研究開発機構法案の両案を議題といたします。
 順次趣旨の説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
    ―――――――――――――
 独立行政法人日本学生支援機構法案
 独立行政法人海洋研究開発機構法案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました独立行政法人日本学生支援機構法案及び独立行政法人海洋研究開発機構法案について、提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 特殊法人等改革につきましては、平成十三年六月に成立した特殊法人等改革基本法にのっとり、同年十二月に特殊法人等整理合理化計画が策定されたところであります。
 この二法律案は、特殊法人等整理合理化計画の実施の一環として、日本育英会を解散し、その業務と国及び関係公益法人の学生支援業務とを統合して新たに学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人日本学生支援機構を、また、海洋科学技術センターを解散し、その組織と東京大学海洋研究所の研究船及びその運航組織とを統合して独立行政法人海洋研究開発機構をそれぞれ設立するためのものであります。
 次に、この二法律案の内容の概要について御説明申し上げます。
 第一に、両独立行政法人の名称、目的、業務の範囲等に関する事項を定めております。
 第二に、両独立行政法人の役員として、理事長及び監事を置くほか、理事を置くことができることとし、その定数を定めております。
 第三に、積立金の処分方法、権利義務の承継、所要の経過措置等について定めるほか、両独立行政法人それぞれに固有の事項について定めております。
 以上が、この二法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
古屋委員長 これにて両案の趣旨の説明は終わりました。
 次回は、来る三十日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時三分散会


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