衆議院

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第17号 平成15年6月6日(金曜日)

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平成十五年六月六日(金曜日)
    午前十時一分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      岩倉 博文君    小渕 優子君
      大野 松茂君    岡下 信子君
      岸田 文雄君    左藤  章君
      佐藤  勉君    谷田 武彦君
      西川 京子君    林田  彪君
      福井  照君    増原 義剛君
      森岡 正宏君    山本 明彦君
      大石 尚子君    大谷 信盛君
      鳩山由紀夫君    平野 博文君
      藤村  修君    牧野 聖修君
      松原  仁君    山口  壯君
      白保 台一君    東  順治君
      黄川田 徹君    樋高  剛君
      石井 郁子君    児玉 健次君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学副大臣      渡海紀三朗君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文部科学省高等教育局長
   )            遠藤純一郎君
   政府参考人
   (文部科学省研究開発局長
   )            白川 哲久君
   政府参考人
   (経済産業省大臣官房審議
   官)           広田 博士君
   政府参考人
   (経済産業省製造産業局次
   長)           福水 健文君
   政府参考人
   (環境省環境管理局水環境
   部長)          吉田 徳久君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月六日
 辞任         補欠選任
  小渕 優子君     岩倉 博文君
  近藤 基彦君     左藤  章君
  佐藤 静雄君     西川 京子君
  中谷  元君     佐藤  勉君
  松野 博一君     山本 明彦君
  柳澤 伯夫君     福井  照君
  肥田美代子君     大谷 信盛君
  池坊 保子君     白保 台一君
  佐藤 公治君     樋高  剛君
同日
 辞任         補欠選任
  岩倉 博文君     小渕 優子君
  左藤  章君     近藤 基彦君
  佐藤  勉君     中谷  元君
  西川 京子君     佐藤 静雄君
  福井  照君     柳澤 伯夫君
  山本 明彦君     増原 義剛君
  大谷 信盛君     肥田美代子君
  白保 台一君     池坊 保子君
  樋高  剛君     佐藤 公治君
同日
 辞任         補欠選任
  増原 義剛君     松野 博一君
同日
 理事佐藤公治君同日委員辞任につき、その補欠として佐藤公治君が理事に当選した。
    ―――――――――――――
六月五日
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一八号)(参議院送付)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 理事の補欠選任
 政府参考人出頭要求に関する件
 独立行政法人日本学生支援機構法案(内閣提出第九三号)(参議院送付)
 独立行政法人海洋研究開発機構法案(内閣提出第九四号)(参議院送付)
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、独立行政法人日本学生支援機構法案及び独立行政法人海洋研究開発機構法案の両案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 両案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君、高等教育局長遠藤純一郎君、研究開発局長白川哲久君、経済産業省大臣官房審議官広田博士君、製造産業局次長福水健文君及び環境省環境管理局水環境部長吉田徳久君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山元勉君。
山元委員 おはようございます。民主党の山元勉でございます。
 いよいよ大詰めの委員会になったわけですけれども、本題に入ります前に少し、重要なことについて一、二点、大臣の所信をお聞かせいただきたいというふうに思います。
 一つは、前の委員会で問題にしましたし、世論的にも大きな問題になっております外国人学校の卒業生の大学入学資格についてです。前の委員会のときにも、これは三月でしたけれども、英米系の学校にだけ入学資格を与えて、ブラジルやフィリピンあるいはアジア系、そういう学校が資格が与えられない、国連などの勧告にも反するような、そういう扱いになっているということを申し上げました。
 そのときに、たしか大臣は、今パブリックコメント中であって、改めて検討をする、こういうお返事でした。矛盾あるいは問題があるということについては、十分文科省も認識をしていらっしゃったというふうに思っています。これは、河村副大臣もそういうふうに認識をしていらっしゃいました。
 あれから相当たったわけです。そして時間は、もう余裕がないというふうに私は思っています。国立大学も、それぞれ来年度の募集要項の検討に入っているわけです。今、これから卒業するという子供たちが、大学が受けられるのか受けられないのか、僕らは差別されるのかどうか、こういう思いに一々悩んでいるわけです。
 そこで、今、お約束の検討というのがどういう状況になっているのか、あるいは見通しについてはどういうふうにお持ちなのか、これは時間が迫っているという認識でしっかりとした御回答をいただきたいというふうに思います。
河村副大臣 山元委員御指摘の点でございます、外国人学校卒業者の大学入学機会の拡大ということで、ことしの三月に、国際的な実績が認められる評価団体により評価を受けている外国人学校の卒業生に対して入学資格を認めるという対応策が発表されたわけでございますが、この結果によって、結果的にアジア系の外国人学校が対象にならなくなるという問題がございまして、多くの御意見も寄せられ、パブリックコメントにおいても、この点についての御意見があったわけでございます。
 これについて、どのような対応が可能であるかということについて検討を今進めておる段階でございまして、御答弁としては、この前に山元委員からも御指摘をいただいた時点から、引き続き今検討をしているという答弁しか申し上げられない状況下にあるわけでございまして、どのような対応が可能なのかということをさらに今詰めておる段階でございます。
 高卒と同等以上の一定の水準の教育をどのように担保できるか、それをどういうふうに、確認と言うと言葉は悪いかもしれませんが、それができるかどうか。さっき申し上げました、欧米の評価機関の評価を受けられるということについてはそれで一つクリアしたわけでありますが、その点について、まだ具体的な方向性が現時点では結論が出ておりません段階でございますので、今の時点でまだ、どの点をどういうふうにして、いつの時点でどうするということが明確に申し上げられない状況であるということをお答え申し上げたいと思います。
山元委員 いや、今申し上げたことをおわかりいただいていないんです。実際に今、卒業する子が、どうなるんだということについて本当に苦しんでいるわけですよ。
 あのときにも申し上げました。本当に、僕らは差別されてへん、日本というのはいい国や、僕らは日本のところできちっと認めてもらって、将来はアジアとのかけ橋になりたいとか、あるいは自分の国とのかけ橋になりたい、そういう思いを持ってくれる子供を育てるという絶好のチャンスなんです。あのときには、マスコミが全部書きました、これは差別だということを。ですから、やはり早急に結論を出していただきたい。
 あのときに、民間の評価機関というのがあって、そこが認定した十六の学校だけが認められたんだ、こういう話がありました。民間の評価機関が認定をすると。文科省が認定したらいいじゃないですか。ここはまじめに一生懸命やって勉強している、そう認めたら、受けさせて、学力が足らなんだら各大学が不合格にすればいいわけです。そういう機会を均等に与えるということについて、やはり一刻も早く決断をしていただきたい、判断を出していただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。
 時間が、本題に入らなきゃなりませんが、もう一つだけ、昨今の新聞で、義務教育国庫負担制度の問題について大きな記事になっています。
 いよいよ大詰めに来ました。前の予算審議のときに、義務教育費が二千二百億円削られるというときに、私もここで大臣を随分と責め上げた。そのときに大臣は、三位一体なんだ、義務教育国庫負担制度の根幹を守るんだと繰り返し言い切られました。けれども、今それが本当に危なくなってきて、さらに、三項目ですか、義務教育国庫負担や保育園の問題、三つが標的になっているわけですね。
 きょうの新聞でも、文科省が強い抵抗をしているということが書いてあったから、少し心強い。けれども、いよいよこれは、やはり前のときに財務省や総務省にいかれたと言うと失礼な言い方だけれども、本当に三位一体を大前提にして、義務教育国庫負担制度の理念は守るんだということの決意を、あのときに大臣は立派なことをおっしゃっているんです。日本の教育を守る私は唯一の閣僚だ、こうおっしゃったんです。私が、根幹を守るといっても、むいてむいて、鉛筆でいえばしんだけ残すようなのは守ることにならぬと言うた。大臣は、鉛筆を守ります、こうおっしゃったんです。
 今この鉛筆が危ない状況になっているわけですが、今の状況について一体どういうふうになっているのか、そして、大臣の改めての決意をお聞かせいただきたいというふうに思います。
遠山国務大臣 先般の義務教育費国庫負担制度に関する法案審議の際に、こちらで成立のときに附帯決議もつけていただきました。これは与野党を通じて、義務教育費国庫負担制度の根幹は守るという御決議をいただきました。私は、国会にお約束をしているわけでございます。
 今の状況は、地方分権改革推進会議の方から改革の重点の中に入れ込まれておりますが、私は、義務教育といいますのは憲法の要請によって国民のすべての者が一定水準の教育を受けるということにおいて最も確実で最も大事な制度だというのが、義務教育費国庫負担制度だと思っております。これは国の礎でございまして、国を一つの城と考えれば石垣の部分でございます。石垣を削ってその城が将来ともに発展すると私は思えないわけでございまして、義務教育費国庫負担制度の根幹は守るという姿勢にいささかの揺るぎもございません。
 抵抗勢力というお話がございますけれども、抵抗勢力というのは、本来規制緩和するべきもの、あるいは本来何か弾力化すべきものについて抵抗すれば、それは抵抗勢力だと思うわけでございますが、私は、この義務教育費国庫負担制度というものは、国が最後まで補助金、負担金の中でしっかりとやっていくべきものだと思っておりまして、抵抗勢力という批判は当たらないと思っておりますし、私といたしましては、先般の経済財政諮問会議におきましても、この点についてはしっかりと主張をしたわけでございまして、今後ともその姿勢を貫くつもりでございます。
山元委員 私どもも大変危機感を持っておりまして、超党派で皆さんに呼びかけて、これを守る運動を進めようというふうに思っていますけれども、自民党の皆さんも地元へ帰ったら、県議会がどんどんどんどんと義務教育国庫負担制度を堅持という決議を上げていらっしゃるわけです、意見書を上げていらっしゃる。ですから、そういうことは、地方の実態だ、実情だというふうに思います。今、大臣、抵抗勢力に当たらない、こうおっしゃったけれども、胸を張って立派な抵抗勢力になってもらえばいいわけですよ。それはあしき意味の、そういう意味だというふうに思いますけれども。ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 それでは本題に入らせてもらいます。
 この奨学金制度というのは多くの歴史がございます。戦前は本当に貧しい子供の英才教育の援助といいますか、そういう資金であったわけですけれども、戦後になって、ああいう混沌とした混乱の中で、勉強したくてもなかなかできない子がどっとふえた。そして何よりもの転機は、契機は、憲法二十六条で教育を受ける権利がひとしくあるということをきちっと明記をした。もう一つは教育基本法で、機会均等、これは三条できちっと明記をした。受ける権利があって、機会が均等に与えられるんだということが憲法や教育基本法できちっと定められた。そして、日本の教育というのはそういうものだということになったとき、行けない子供についてきちっと支援をしようと、それから大きく奨学金制度というのが拡充をしていくわけです。
 ですから、この奨学金制度というのは本当に、憲法や教育基本法が考えている教育の理念を実現していく、あるいは担保をしていく大きな意義を持つ制度だ、仕組みだというふうに思います。それが今、危ないというふうに感じる。確かに無利子制度を含めて増加をしてきています、大きくふえていると言ってもいいでしょう。けれども、考えてみると、有利子がどんどんふえて、比率でいうと逆転をしてしまっているわけですね。今、危ないというふうに思っています。
 そこで、今申し上げましたような、日本の教育を守る憲法や教育基本法の理念の実現のための制度だというきちっとした御認識が文科省にあるのかどうか、基本のところをちょっと聞かせてください。
遠山国務大臣 奨学金事業といいますものは、教育の機会均等の実現とすぐれた人材育成を図るための重要な教育施策であると認識しております。従来から、意欲と能力がありながら経済的理由によって進学を阻害されることのないよう経済援助を行うという観点から、教育の機会均等の実現を図る奨学的な観点と、それから次代を担うすぐれた人材の育成を図るという人材育成、育英的な観点の二つの理念に基づいて事業を行ってまいっております。
 近年、多くの方々の御理解を得て、奨学的な部分、そして育英的な部分、これは両方とも伸びてまいっておりまして、現在では、本当に奨学金を借りて学びたいという人に、ほとんどの場合お貸しできるような状況になってまいってきております。もっといろいろな意味で充実をしてまいらねばならないと思うわけでございますけれども、私としましては、冒頭に申し上げましたような認識を持ってこの問題について十分対応していきたいというふうに考えております。
山元委員 とすると、そういう認識をしていただいている。そういう中で、今科学技術がどんどんと進んでいって、学問の幅も広がってきている、いわゆる学習ニーズが広がっているわけですね。あるいはグローバル化もある。学習のための、教育のための費用というのはますます大きくなってきているわけです。けれども、一方で不況だとかあるいは倒産だとか、親が職を失う。さまざまな状況の中で、子供たちが安心して学校へ進学できるか、勉強ができるか、そういうことが非常に困難になってきているわけです。ですから、この奨学金制度というものに対する要請といいますか、ますます強くなっているというふうに考えるべきだと思うんです。
 しかし、現状は、今大臣がおっしゃったような状況ではなしに、無利子枠が、計算をしてみると、平成十一年でいうと無利子の方がうんと多いわけですけれども、ことしでいうとどんと有利子の方が多くなってしまっているわけですね。
 実際に、文科省の施策として、授業料が払えなくなって学校を退学しなきゃならぬという子を援助する、そういう制度、仕組みができた。そこまでしなきゃならぬときに、有利子の育英資金がどんどんどんどんふえていっているということについては、やはり問題があるのと違うか。十一年から比べると逆転してしまって有利子の方が多くなっているのを、もう一遍逆転させるような努力を文科省がすべきではないか。それでこそ、安心してほとんどの子が育英資金を受ける、奨学資金を受けることができると今胸を張って言えるんだというふうに思うんです。
 この前のときに、河村副大臣もそういう認識を少し持っていらっしゃって、強い気持ちを聞かせてもらいました。もう一遍、これこそこれからの制度の根幹にかかわることですから、有利子と無利子との関係を含めて、どういうふうに拡充をしていくのか、ちょっと決意を聞かせてもらいたい。
河村副大臣 山元委員御指摘の方向というのは、私も、この奨学金、奨学事業の根本はそれでなければいかぬ、こう思っております。
 ただ、できるだけ広くこの事業を拡大していこうということで、伸び率が有利子の方が多かったものでありますからこういう現象が起きたわけでありまして、無利子のものがどんどん減って、有利子がふえたためにそうなったのではなくて、無利子の方もふやしてはおるわけでありますが、その伸び率が低かったということで、それは皆さんの要求ができるだけ多くの方に奨学金の恩恵にあずかってもらいたいということから、そうすると、資金の確保という意味で財投を投入したいという方向になってまいりまして、財投には利子がついているということもあって、そちらの方が拡大率が高かったということでございます。
 そういう意味では、無利子もふやすように努力をして、この比率がまた戻るようにという方向で努力いたしたい、こう思っておることには間違いございません。
山元委員 努力をするというふうにおっしゃっていただいたんですけれども、これはなかなか難しいだろうと思うんですね。今の財務やあるいは総務のことを考えるとなかなか難しいと思うんです。けれども、欧米諸国でいうと、有利子、無利子どころか、給付奨学金もあるわけでしょう。そこのところをやはり、日本の奨学金制度が貧しいということについて十分認識をしていただきたい、いわば責任を持ってもらいたいというふうに思うんですよ。
 今、河村副大臣、こっちの方がようけふえたんだとおっしゃるけれども、そうじゃないですよ。無利子の方はこの五年間でわずかに二百六十四億しかふえていないんです。有利子の方はどっとふえて千七百億円ふえているわけですね。ですから、やはりそこの力の入れ方というのは頑張ってもらいたいというふうに思います。
 具体的なことについて随分ときょうまでの委員会で論議がありましたから、出尽くしているといいますか、まだまだあるというふうにおっしゃっている方もありますけれども、大体大事なことはもう出てきているんです。ですから、私は、具体的なことについて確認するような、そういう御質問になるかもわかりませんけれども、一つは、前の国立大学の独立行政法人化のときにも大問題になりました、今度独法化していく、機構が独立行政法人になっていくときの中期目標、中期計画の問題ですね。
 あのときに、学問の評価の仕方とかいろいろ問題はありましたけれども、この場合は事業をどういうふうに見るのか。独立行政法人化をして、効率的、合理的な運営をしていくんだという観点で評価をするのか、あるいは目標を立てるのか、そうでなしに、先ほどから申し上げていますように、日本の教育の基盤をどんと、これをきちっとするんだという観点で中期目標や中期計画を立てるのかということで、将来大きな違いが出てくると思うんですね。
 文科省として、機構の中期目標、中期計画について、どのように立てようとしていらっしゃるのか、それは一体最終的にだれが責任を持つ仕事なのか、そこのところをお聞かせいただきたいと思います。
遠藤政府参考人 奨学金の事業につきましての国と学生支援機構との役割分担でございますけれども、奨学金事業の規模あるいはその貸与方式の設定といったようなことにつきましては、国におきまして政策的に責任を持って決めるということでございまして、学生支援機構につきましては、国が決定した事業規模や貸与方式等のもとでの事業執行に努めるということになろうかと思います。
 したがいまして、中期目標におきましては、奨学金事業の実施に関して、法人の自助努力による業務の効率化や質の向上、財務内容の改善等の観点から、業務の内容、性格に応じた目標を設定することが必要となってくる、こう考えております。したがいまして、例えば回収率等の定量的な目標のみならず、申請手続の簡素化、給付手続の迅速化、奨学生に対する指導状況、奨学金制度に関する広報の充実など、奨学金事業の性格に即した定性的な目標もあわせて中期目標とすることを考えておるわけでございます。
 もちろん、その際、教育施策の一環であるという点に十分配慮をする必要があろうか、こう思っておるわけでございます。
山元委員 後で教育施策の一環であるというつけ足しがありましたけれども、あえてつけ足しと言うのは、遠藤局長の答弁、参議院の委員会の答弁でも、どうもやはり合理化、効率化という点について力が入っているんですよ。参議院の答弁においても、今よりも、これは批判があったからちょっと考え直したんではないかなという感じがするんですが、「やはり返還率をできるだけ高くするということが大事でございまして、やはり中期目標の設定に際しましてはこういった観点からの」、こう言っているんです。
 回収率でいえば、現在九八%なんでしょう。前の河村副大臣の答弁の中でも、一日でもおくれたら延滞というところに率が入るんだと。それでも二%なんです。九八%は、何としてでも返さなければならぬということで返しているんです、みんな。そこのところを、回収率を上げるとか、回収率が評価の基準になるというようなことを一番先に言うようなことでは、私は、先ほどから申し上げているような理解が弱いんだろうというふうに思う。本当に、この事業が日本の教育にどういうふうに資したか、どういうふうに子供たちを守ったかということについての評価の大観点がなかったらいかぬと思うんです。
 そこのところは総務省が、独立行政法人評価委員会ですか、そこを使ってやる、それはそういう方向でしょう。けれども、文科省は少なくとも、教育的な、そういう理念実現のためにどう働いたかということについて一番の評価の観点あるいは目標でないといかぬだろうと思うんですが、そこのところをもう一回。大臣ですか。
河村副大臣 奨学金事業というのは、これは教育的な観点から立っておるものでありますから、委員の御指摘、私もそのように考えます。
 ただ、奨学金というのは、この制度は、今もらっている方々がこれによって恩恵を受けて立派な成績で立派な学業を修めていく、そして次の後輩たちにもまたさらにそれが戻っていくという循環性を持っておるものでありますから、そのこともやはり受給者の方もしっかり理解をしてもらわなきゃいかぬわけでございます。
 そういう観点から、きちっと奨学金を循環させるという観点から、事業としてはそのこともやはり目標の中に入ってきておるわけでございます。これだけを一義的にということじゃございませんが、当然それもこの目標の中に入ってきているということは御理解いただきたいと思います。
山元委員 やはり、わかった、大丈夫だという気持ちにならないんですよ。
 こだわるわけではないけれども、九八%の子供たちは返している。二%でしょう。それも、一日、一月おくれた、それも入って、カウントしてでも二%の子。これは、つらい思いをしているはずやと私は思いますよ。逃げてしもうて、そんなものは食い逃げしてやったらいいのや、こういう根性の子というのはそんなにないと思うんです。ですから、そこのところは回収率ということが大きな問題ではなしに、あるいは、次の世代のためにというのは、二%のことで、それをあてにして次の子に回すのやというような話ではないわけです。
 ですから、やはりこの評価の観点というのは、あるいは目標というのは、どういうふうにぴたっと子供たちを守ったか、希望する子供たちにできるだけ、どれだけいったかということについて評価をするような、そういう目標なり計画というのを大事にする文科省であってほしい。総務省の評価委員会はぎりぎりやるでしょう。それはやるでしょう、そんな簡単な数の金額ではないわけですから。ですから、二%といっても軽んじるわけではありません。けれども、やはり文科省の立場としては、一番はこれだということについてはしっかりと明確にこれからも持っていただきたいとお願いをしておきたいと思います。
 それから、その次ですが、大きな転換の一つとして、育英会がやっていた高校生の奨学金を地方自治体に移管する、都道府県に移管するという問題です。
 これは、やはり大きな問題というか、不安があるわけです。今まで各都道府県が、これはまさに地方分権の先駆けのようなもの、自分のところの県の子供たちを何としてでも守ってやらなければいかぬということで、地方財政が厳しい中でも、奨学金事業をやってきた都道府県がどんどんふえてきている。今までやっていなかったのは三県と違いますかね。ほとんどの県が、自分のところの県の子供たちを守ろうということで独自の事業を行ってきたわけです。
 それに、去年からでしたか、この事業の補助金が出せるようになった。各都道府県、財政が大変厳しいからそういう事業に対する補助金を出そうということで、補助の制度ができた。これは、私はよかったと思うんです、地方の財政が厳しい中でそれをつけるということですから。
 ところが、そこへ育英会の事業が入ってきて、各県に一緒にやりなさいということになってきたんです。そうすると、今まで独自で頑張って歯を食いしばってやってきたことに、育英会の大きな事業がどんと来て、さあ、奨学事業補助金というのがどうなるんだ、先細っていくのと違うか、自分のところの県の独自の事情を育英会にわかってもらえないのと違うかという心配が各自治体にあるわけですよ。
 そこで、簡単に言います。
 これからの状況でいうと、今県独自の予算で事業、そして補助金が来ていた、そこへ育英会の資金、育英会の事業が入ってくる、三つが一緒になるわけですね。きちっと三つが足し算になって、そして、先ほどからおっしゃっているようにこれから強化をしていくということであれば、プラスアルファがつく。一足す二足す三、プラスアルファというように各自治体は考えて、うちの子供は守れるというふうに安心をしてもよいのかどうか。補助事業が削られていく、あるいは地域の実態を無視したような形で育英会の資金がおりてくる、こういうことにならないかという心配はどうですか。
遠山国務大臣 平成十四年度から行っております高等学校奨学事業費補助といいますものは、実施主体が都道府県でございまして、貸与条件というのは、経済的に困窮している高校生を支援するという観点から、より低い所得層を対象としておりまして、国から都道府県に対して、事業の執行に必要な経費の一部を補助しております。他方で、日本育英会の高校奨学金事業は、実施主体は日本育英会でございまして、貸与条件は、すぐれた生徒で経済的理由により高校での修学が困難な者に奨学金を貸与するものでございます。
 これは二つの別の制度でございまして、したがいまして、私どもといたしましては、いずれも引き続き適切に対応していく必要があるというふうに考えております。我が省としましては、今後とも、大変厳しい情勢下ではございますけれども、必要な予算措置を講じて、都道府県における経済的に困窮している高校生を対象とする高校奨学金事業の充実に努めていきたいと考えております。
山元委員 ぜひ、混乱が起こらないように、あるいは縮小されないように御努力をいただきたいというふうに思います。
 各県が今行っている事業というのは、それぞれの地域の実情に応じたといいますか、特性があって、非常に格差があるわけです。今申し上げましたように、三つ、それはやっていない県もある。どんと大きな事業をやっている、大阪だとか福岡だとか、それぞれの地域の、被差別部落の問題だとか、あるいは経済的な貧困といいますか、そういうところ、いろいろの事情を加味して、各都道府県が、県民が納得いくような事業を行っているわけですね。そういう今までの、例えば受給資格の問題、成績条項、いろいろな条件がそれぞれの地域によってあるわけですが、そういう地域の特性、条件というのは最大限尊重される、それが基本だということでよろしいですか。
遠藤政府参考人 これまでの高校奨学金事業もそうでございますし、これから移管されます高校の奨学金事業につきましても、御指摘のように、地域の実情、制度のニーズ等に応じてきめ細かく対応した形で、都道府県の自主性、主体性のもとに行われていくもの、こう考えております。
山元委員 国会で、努力しますとか、と思っていますということは余り当てにならぬと言うたら失礼になるんだけれども、本当にきちっとそのことを、制度的にも文科省が責任を持って各地域のそういう事業については守りますよということについてしっかりとした約束をして発足をさせていただきたい、これはお願いをしておきたいというふうに思います。
 そしてもう一つ、それの具体的なこととして、各地域は、希望する子、いわゆる受給資格が認定されたらすべての子供に、予算にかかわらず貸し付けているわけですね。この子らが我々の地域を守ってくれるんだ、次の世代を担ってくれるんだということで、資格がある子には全部貸していく努力をしてきたわけです。
 そこへ日本育英会が入ってくるわけですね。そうすると、日本育英会が来て、日本育英会がびゅっと地域に関係なしに事業をするのではなしに、県の事業とあわせてやっていくとすれば、各都道府県にしてみれば、強い味方が、強い応援団が来るような感じになるはずなんです。そして、今までの地域の実態をきちっと守ってくれるということであれば、本当に心強い応援団となるはずなんです。
 ですから、そういう意味で、重ねてですけれども、大臣から、そういう地域の、今までやってきた積み上げとか、あるいは実情というものは最大限大事にする、それを壊すようなことはしない、監督官庁として、機構がそういうことをするときにはしっかりと監督するということをお約束いただきたいんですが、いかがですか。
遠山国務大臣 私は、高校生に対する奨学事業というのは、やはり都道府県が責任を持っておやりになるというのがいいと思っておりまして、今回、地方へ移管するということは理にかなったことだと思っております。
 他方で、先ほどのような、新たに始まった補助事業についてはしっかりと担保をしていくということでございますし、もともとそういう性格のものと思いますので、各都道府県独自のこれまでのやり方を阻害したりということはございませんわけで、むしろ、しっかりと各都道府県においてみずからの方策をお立てになっておやりいただく、それをサポートしていくという関係になると思います。
山元委員 ぜひ努力をしていただきたいというふうに思います。
 地域の実情からいいますと、あの制度ができましたように、授業料、お父さんが失業したから学校が続けられない、そういう子に対する援助の制度もできている。けれども、今入っている子はそういうことですが、入学金も払えないという子供があるわけです。さまざまな困っている子供たちがいて、勉強はしたいけれども、学校は好きなんだけれどもと、こういう子たちがしっかりと学校へ行けるような、そういう仕組みとして、地域の皆さんと一緒になってぜひ頑張っていただきたいというふうにお願いをしておきたいと思います。このこと、具体的にはあるんですが、次に行きます。
 機構が、日本育英会と四つの事業が一緒になって仕事を始める、いわゆる再編されるわけです。そのときに、日本育英会というのは大きなボディーですからなんですけれども、ここにも問題があるんですが、四つの事業の公益法人を統合して継承公益法人というのになる。その事業の中身も変わってくる、人の配置も変わってくる、大変動が起こるというふうに思うんですね。しかし、この間からの質疑の中で、学友会がこうなります、学生センターがこういうふうになるんだということについては一向に見えてこないんですね。継承公益法人というのは一体どうなるのかということについて少しお尋ねをしたいんですが、まず最初に、職員です。
 この間も話がありましたけれども、全部で六百四十六人でしたか、六百四十六人。そして、育英会の仕事をする人、公益法人に行く人、大学等へ行く人というふうに、ずっと、割合に細かく十何人だとか四人だとかいう数字も上がりました。けれども、まだ決まっていないのが数十人、私が計算すると百数十人になるんだけれども、まだわかっていないと。
 どんどんと仕事が進んでいくというんですか、こうやって法律が、きょうはここで多数決で決まっていく。そういうふうに路線は決まっていくけれども、百数十名の人が、一体わしらの仕事はどうなるんだ、わしらはどこへ行くんだ、あるいは雇用がされるのかということについて本当に見えていないんですよ。
 私、参議院からの速記録をずっと見たけれども、四人だとかなんとか、こういう数字まで出ているけれども、継承公益法人がどういう仕事をして、どういう人数でということについては全く見えてこないんですが、改めて、公益法人についてどういうふうに考えているのか、今どこまで検討が進んでいるのか、お聞かせをいただきたい。
河村副大臣 山元委員御指摘のとおりでございまして、全体で六百四十六名、関係の四公益法人の皆さん合計いたしますと六百四十六になりまして、そのうち、日本学生支援機構の方へ移行する職員が大体四百五十名程度、こう言われておりますから、残りの方々をどのように雇用するかということが非常に大事な問題になってきているわけでございます。
 そのうちの、これはまだその人数が何人ということを確定しておりませんが、継承公益法人へ数十名の方々が行く、そして、それぞれの法人に移管される業務との関連を踏まえながら、それぞれの職員の各法人で担当している業務とか適性とか勤務地、それから本人の御希望、そういうものを考慮して、各法人において適切に対処していただくということになる、こう考えております。
 しかし、それをやりながらも、さらに、いずれの法人にも移行し得ない職員の処理の問題が残る可能性があるわけでございますが、これについては、大学側への受け入れといいますか、この働きかけを文部科学省としてもしてまいりたい、こう思っておりまして、今、まだ何人がどう行ってと確定する段階ではございませんが、職員の雇用の安定という問題については、文部科学省は十分配慮していかなきゃいかぬ、このように思っております。
山元委員 やはり、今のところ何も絵がかけていない部分があるわけですね。配慮していかなきゃならぬと思っているとおっしゃるけれども、いずれ配慮をしてもらえるだろうという職員の皆さんの気持ちを察すると、一日も早くきちっと具体的な計画が見えてこなければ、これはしかし制度として発足してはならぬ。前の委員会で河村副大臣も、大体残りあと百名ぐらいの方の移行の問題がございます、参議院ではこうおっしゃっているのです。
 ですから、およそ百名、これは大変な、中小企業でいったら二つも三つもぶっつぶれるような、首になるような感じなんですよ。そういう今の絵のかき方というのは、独法化を急ぐ余りといいますか、ずさんな計画だというふうに言われても仕方がない、そういう状況になっているわけです。
 例えば、具体的にいいますと、日本育英会の各県支部の職員についても、この間、横山参考人ですか、各県は受け取りませんよと。あの人は各県の教育長の代表で参考人として来られたと思っていますが、日本育英会の各県支部の職員は各県は受け取るつもりはありません、ぜひ国において処遇されるようお願いいたしたいと。国が職員としてどう処遇するんですか。こういうふうに国会で参考人が言われているわけですね、それも責任ある立場の人です。ですから、そこのところは、やはり早くきちっとした絵をかかないと大変なことになるというふうに御認識をいただきたいと思います。
 そして、その公益法人ですけれども、どういう仕事をするんだ、どこでどういう仕事をするんだと。今までこの四つの事業は、例えば留学生の下宿を世話したり、世話するためには宅建業者の免許も取ってやらなければならぬ。これは宅建業者の免許を取って下宿を世話したらもうかるという仕事ではないわけです。今度は、補助だけはなくなるということははっきりしておる。けれども、どういう仕事をやりなさい、どこでやりなさい、だれがやりなさいということについては絵がかけていないのです。
 ですから、そこのところはしっかりと、一日も早く見えるようにしなければいけないんだというふうに思いますが、どこまでそれは形が見えているわけですか。
遠藤政府参考人 現在、留学生関係公益法人が行っております仕事のうち、補助金を受けて実施されております留学生の宿舎の設置運営業務、留学情報の収集提供業務等につきましては、確実に実施されることが必要であるが、必ずしも国がみずから行う必要はなく、かつ、民間にゆだねた場合には、採算性等の理由により確実に実施されることが期待できないという事業の性格があるわけでございまして、こういう性格から、独立行政法人として設置されます日本学生支援機構に移管するということとしておるわけでございます。
 一方、いわゆる冠奨学金事業あるいは学生教育研究災害傷害保険、日本語教育能力検定試験などにつきましては、独立行政法人で実施する必要性はないものの、公共性、公益性が高い事業ということで、その実施の必要性を種々検討した上で、一つの公益法人において引き続き実施されるよう現在検討が行われているということでございます。
 したがいまして、継承公益法人におきましては、今申しました、冠奨学金事業、学生教育研究災害傷害保険、日本語教育能力検定試験、あるいは場合によっては、業務の委託を受けて、留学生宿舎等の管理運営、こういったような仕事をするというふうに理解をしておるわけでございます。
山元委員 大臣、今ああいうふうに事務的に、こうやっています、こうお話がある。けれども、私、現場の法人の方から一週間ほど前に、こういう状況ですという文書をもらいました。そこには現場の人たちが、どういう仕事をするんだ、どこへ行くんだ、どういうふうに雇用されるんだということが全くわかっていない。例えば「継承公益法人に関する具体的な議論がいまだなされておらず、継承公益法人の設立すら確約されたものとなっていない。」と書いてある。
 局長が言うように、紙の上でこれだこれだといいうふうに、これとこれは日育へ移管をして、これとこれとこれは公益法人に移管をしてというペーパーの話と違うんです。そこに本当に、今まで一生懸命やって働いてきた、外国の留学生を受け入れたり、あるいは奨学金を貧しい子に何としても渡してやりたいなと、まじめに一生懸命になって頑張ってきた人たちが、わしらはどこへ行くのかわからない、公益法人で仕事をするらしいけれども、公益法人が、こういうものができるということは、確約すらという言葉が使ってありますけれども、されていない、こうなっているわけですね。これはずさん過ぎますよ。
 ぜひ、今の職員の皆さんが、わかった、引き続いて頑張るからということになるような仕事を早急にしてもらわなければいかぬというふうに思います。
 そして、具体的にもう一つですが、公益法人に行く人たち、育英会の人はよろしい、私はそういう感覚を持っているのですけれども、公益法人の人たちはばたばたっと変わるわけでしょう。雇用も心配だけれども、雇用されるとして、今の雇用条件、給料あるいは処遇というのは、この水準は維持される、維持するんだということを文科省はお考えになっていらっしゃるのか。そこの、労働条件といいますか雇用条件についてはどういう話になっていますか。
遠藤政府参考人 新しくできます継承公益法人につきましても、日本学生支援機構と処遇、待遇の面で大きく変わらないような、そういう形で今検討を進めているということでございます。
山元委員 別の人格の法人ができるわけですね。そこへ、これで行かすのや、行くのやということにはなかなかならぬと私は思うんですよ、難しいと思う。だから、そういう組織がどういうものができるんだ、だれが行くんだと、行く行かないについてしっかりと今の職員の皆さんと話をする必要があると思う。使い捨ての紙じゃないんです。一緒になって長い間頑張ってきた人でしょう。それが、自分たちの法人がどういうふうになるんだ、そして、どんと給料が上がるということにはならぬだろうということはわかっているかもしれぬ、けれども、今の水準はきちっと守ることが基本だということについてはわかってもらうような努力を急いでしていただきたい。これは大臣、よろしいですね。
遠山国務大臣 組織の移行の際には、私は、非常に注意深くその辺をやらないといけないと思います。今回、法律を成立させていただきましたら、それが決定されるわけでございますから、来年四月の新法人の設立に向けて、これは本当に、そういった個別具体的なことも真剣に取り組んで、そごのないようにやるというのが私どもの責務だと思っております。
山元委員 今、公務員の労働基本権の問題が問題になっています。本当に、やはりきちっとした権利を認めて、そして納得をしてもらって、意欲を持って働いてもらうというのは大原則でないといかぬわけです。今度の場合もやはりそのことについてはどさくさで、あと数十人が職をあぶれたとか、あるいは全然身分が変わってしまって泣いているんだということが起こらないような努力をぜひ急いでしていただきたいし、そのことについては、私は今、大臣から努力するという約束をいただいたような気がしますから、ぜひこれは頑張っていただきたいと思います。
 時間がもう二分しかありませんから、あと二つお聞きしたかったのですが、項目だけ申し上げておきます。
 一つは、先ほど申し上げました無利子奨学金の拡充について。これはやはり、機会均等だとか受ける権利の保障という意味からいって、日本の財政状況は今大変厳しいけれども、もともと基本的に力を持っているわけですから、次の世代の子供を育てるという意味で、ぜひ無利子の拡充をしていただきたい。先ほど触れましたけれども、もう少し詳しく詰めたかったんですが、そのことについては、先ほど河村副大臣もおっしゃいましたけれども、ぜひ頑張っていただきたいということが一つです。具体的な数については、もう申し上げる時間がありません。
 もう一つは、返還免除の問題ですね。私も、教育学部で奨学金をもらって、免除してもらった。ありがたかったです。それが、下宿して就職してという中で、返せ返せと言われると、あのときなかなかいかぬかっただろうと思うけれども。それがなくなってしまう。そういう特定の優遇というのがなくなるということについては、これは少し我慢をしなきゃならぬ部分があるのかもしれませんけれども、この間の答弁では、世界的に評価されるような研究をやった大学院生、あるいは社会的な貢献をした大学院生は返還を免除するんだ、こうおっしゃった。
 この問題については、やはり評価機関、あれは学長のおいっ子やから免除になった、こんなことにならぬように、きちっとした客観的な公平な免除をする評価の手続といいますか、そういうものがなければいかぬと思うんです。これは機構がやるんです、新たな機構がそういうことをするんですということじゃなしに、監督官庁として文科省はきちっと指導すべきだし、そのことについては枠をはめておくべきだというふうに思うんですが、どういうふうにこれはお考えですか。
遠藤政府参考人 御指摘のように、これは大変重要な施策でございますので、これの実施に必要な細目は機構の方で決めるんですけれども、文部科学大臣の認可を受ける必要がある業務方法書で定め、それをきっちり文部科学省としても、その業務方法書の認可ということを通じまして対応していきたい、こう思っております。
山元委員 時間が来ましたから終わりますけれども、そういうところで不公平感が出ないような、矛盾が出ないような、そういう監督をぜひきちっとして、まず枠組みをつくることが大事なんだというふうに思います。簡単な学長の推薦だとかそういうことだけで物を決めるとは思いませんけれども、ぜひ、そういうことについての枠を、これは将来にわたることですからお願いをして、終わります。
 ありがとうございました。
古屋委員長 黄川田徹君。
黄川田委員 自由党の黄川田徹であります。通告に従い、順次質問をいたします。
 まず、日本育英会の独立行政法人化について、幾つかお尋ねいたしたいと思います。参議院先議ということで大分議論が高まっておりますので、私の質問も重複するところがあるかと思いますけれども、改めて確認の意味で質問いたしますので、よろしくお願いいたしたいと思います。
 日本育英会は、昭和十九年の発足以来、次の世代を担うすぐれた人材を育成するとともに、教育の機会均等に寄与することを目的とし、奨学金事業をこれまで実施してまいりました。特に、昨今の厳しい経済状況下においては、奨学金事業は社会のセーフティーネットとして重要な役割を果たしておるところであります。
 そこで、最初に、このような重要な役割を担っている日本育英会でありますが、なぜに今回廃止して独立行政法人とするのか、その意義と必要性について、遠山大臣にお伺いいたします。
遠山国務大臣 今回の特殊法人改革におきましては、組織の廃止、民営化を含めた見直しを行うということとされているわけでございますが、私は、日本育英会の重要性、その奨学金事業は日本の未来にかかわるということで、これは廃止、民営化には全くなじまないということで、確実に実施されることが必要な事務事業であるというふうに考えまして、独立行政法人とするということにしたわけでございます。
 具体的には、奨学金の充実を図るという政府方針を前提といたします一方で、より効率的、合理的なスキームへの見直しを行いますとともに、日本育英会を廃止した上で、国の学生支援業務、これはさまざまあるわけでございますが、これと統合して、新たに学生支援業務を総合的に実施する独立行政法人を設置するということで、平成十三年十二月の特殊法人等整理合理化計画において閣議決定されたところでございます。
 これによりまして、留学生も含めた学生支援の窓口が一元化されて、総合的なネットワークが構築されるということは非常に大きなメリットではないかと思いますし、日本人学生と外国人留学生との交流が促進されるということによって、学生にとってわかりやすく、また日本人学生にとっても国際的な目を持つことができる、さまざまな利点があると思います。同時に、独立行政法人として弾力的、効率的で透明性の高い運営を行うということが期待されるわけでございます。
 我が省といたしましては、新たに構想しております日本学生支援機構といいますものが、独立行政法人としてのメリットを最大限生かしながら、奨学金事業、これは中核的な仕事でございますので、これ自体はこれまでの無利子奨学金、有利子奨学金を含めましてしっかりと維持をして、国民の期待や社会のニーズにより一層こたえられる法人としていきたいというふうに思うわけでございます。
黄川田委員 遠山大臣からは、さまざまな質問に対していろいろ答えられておりますけれども、私にとって、日本の高等教育の施策がどうも見えないような気がするわけであります。この育英会を独法化しなければならない本質的な意味が、ちょっと私には理解できないわけであります。目先の国の構造改革、財政再建、国民に負担を強いる一連の政策の一つではないか、私にはこう映るわけであります。きのう、出生率、戦後最低を更新ということになっておりますけれども、少子化の最大の原因はやはり高い教育費であるということを私は指摘しておきたいと思っております。
 次に、奨学金の回収のあり方についてお尋ねいたしたいと思います。
 奨学金事業は、元奨学生からの返還金を新たな奨学生に対する貸与資金の原資の一部として活用されるわけであります。そのため、日本学生支援機構における返還請求業務については、合理的あるいは効果的に実施しなければならない、これは当然であります。
 そこで、質問でありますけれども、この機構において、返還率向上のためにどのようなことを考えておるのか、文科省にお尋ねいたしたいと思います。
遠藤政府参考人 御指摘のように、奨学金事業は、奨学生からの返還金が次の世代を育成する資金として循環して運用されているということでございますから、滞納は事業の円滑な実施に重大な支障を生ずるものである、こう認識をしております。
 これまで日本育英会では、滞納防止のために、一つには奨学生に対する返還意識の徹底、それから、口座振替による月賦払いの推進、外部委託による電話督促の実施等々の対策を講じてきたところでございます。
 日本学生支援機構移行後におきましても、電話請求業務等の外部委託を一層進めるなど、返還請求業務の改善に向けまして一層の努力をしてまいりたい、こう考えております。
黄川田委員 民間の金融商品と違いまして、この貸し借りの回収ルールは、私は別なものと思っております。回収業務を外部に委託する、民間委託したからといって、効率化、回収率の向上にすぐにつながるか、そういう保証はないという部分もあるのではないかと思っております。逆にコストがかかる場合もあるかもしれません。そういう場合、いろいろな場面があると思いますので、しっかりした対策が必要と思っております。
 次に、保証制度のあり方であります。
 現在、日本育英会では、貸与に当たって、連帯保証人あるいはまた保証人など、人的な保証を求めております。さらに、今回新たに、学生の自立を支援する観点からという言い回しの中で、代位弁済に類似した機関保証制度を導入するということにしております。
 そこで、この機関保証制度とはどういうものであるのか、また、これまでの連帯保証人、保証人制度との関係はどうなるのか、あわせて文科省にお尋ねいたします。
遠藤政府参考人 機関保証制度でございますけれども、奨学金の貸与に当たって従来求めてきました連帯保証人や保証人といった人的保証にかえまして、一定の保証料を保証機関に支払うことによりまして、最長二十年間にわたる返還期間において当該保証機関の保証を受けることが可能となるという制度でございます。
 この制度によりまして、連帯保証人や保証人の確保が困難な学生でございましても、自己の意思と責任によって奨学金の貸与を受けることが可能となりまして、学生の利便性向上に資するとともに、学生の自立を支援する観点からも意義があることではないかということで、今回導入することとしたものでございます。
 連帯保証人等の人的保証制度についても引き続き残すこととしておりまして、機関保証とどちらを選択するかは学生の判断にゆだねる、こういうことにしておる次第でございます。
黄川田委員 具体的に、教育の機会均等に反しない程度の保証料とは幾らになるわけですか。
遠藤政府参考人 これも、実際にやってみませんと、どのぐらいになるかというのは出てこないわけでございますけれども、いろいろな仮定を置きましてシミュレーションをしますと、大体〇・五%から〇・六%ぐらいの保証料になるんじゃないか、こう思っております。現在、国民金融公庫でやっております教育ローン等で行われております同種の保証におきましては一%となっておりますので、とにかく、教育施策の一環ということで、できるだけ低い保証料にするということで努力をしていきたい、こう思っております。
黄川田委員 収支のバランスというんでしょうか、そういうことでしょうけれども、非営利の奨学金を営利のための教育ローンにしてはいけないと私は思っております。
 最後に、新たな返還免除制度についてお尋ねいたしたいと思います。
 先ほどの委員さんからもお話がありましたけれども、新しい制度は在学中の努力に着目しており、学生の勉学へのインセンティブの付与等の点において、制度趣旨としてはそれなりに意義があると私も思っております。しかしながら、実際の免除の決定を行う際、公平性を担保していくことが大事な課題と思っています。
 そこで、機構では、恣意的な判断とならないように、どのような具体的な基準によりこれを判断していくのか。これは副大臣にお尋ねいたします。
河村副大臣 委員御指摘のように、返還免除制度を行う際に、やはり公平性といいますか、そういうものが担保されなきゃいかぬ、大事な点でございます。そういう面で、選考の手続、基準等をきちっとしなきゃいかぬと思っておりますが、現行制度と同様に、政令等において基本的な事項は定めていきたい、こう思っております。
 具体的に申し上げますと、選考手続につきましては、第一点としては、まず機構が一定の基準を示して、そして各大学院において、これに基づいて策定をした学内推薦基準をつくっていただいて、それに照らして選考委員会等で選考を行ってもらう、そして候補者を機構に推薦していただく、その上で機構が最終的に決定をする、こういう手続になると考えておるところでございます。
 特に、公平性の担保というところで問題になります、いわゆるすぐれた業績を上げた者にという判断があるわけでございまして、これについては、学生の活動の状況を多面的に評価できるように、大学院においては、教育研究活動の内容としては、まずは、授業科目の成績ということがあります。第二点として、事例研究、討論、現地調査その他活動の評価をする。それから第三点として、修士論文や博士論文、これの評価などがあります。第四点として、特定の課題についての研究成果の評価。さらに、学外における活動といいますか、学外において、みずから学んでいることに関連する活動内容等もあります。あるいは、学会等における活動もございます。それから、国内外のコンクール等において評価を受けている、外からの評価を受けている。
 このような複数の活動項目について総合的に評価をして免除者を決定していただくということでございまして、大学関係者の御意見等を十分聴取するなど、特に公平性あるいは透明性の確保ということに最大留意して検討を行っていって、この制度が適切な形で運営されるように我々としても努力をしなきゃいかぬ、このように考えておるところでございます。
黄川田委員 確認でありますけれども、学部・学科で、選考によって差異が生じるということはありませんか。
河村副大臣 もちろん、各学部・学科によって、どういう点を評価するかということについてはその中身が変わってまいりますから、評価の項目は変わってまいると思いますけれども、これはやはり大学院が推薦する場合に、全体をまとめて、そして推薦順位を決めて出していただくということで、中できちっとした選考をしていただく、こういうことになるだろうと思います。
黄川田委員 それでは次に、独立行政法人の海洋研究開発機構法案の質疑に移っていきたいと思います。
 最初に、海洋と環境の基本課題について、三点、環境省にお尋ねいたしたいと思います。
 去る三月、京都を中心に、第三回の世界水フォーラムが開催されたところであります。最終日に採択された閣僚宣言では、その冒頭で、「水は、環境十全性を持った持続可能な開発、貧困及び飢餓の撲滅の原動力であり、人の健康や福祉にとって不可欠なものである。水問題を優先課題とすることは、世界的に喫緊の必要条件である。」と述べられております。
 また一方、過日のフランスのエビアンで開催されたG8サミットでは、世界水フォーラムの閣僚宣言を踏まえた水行動計画が合意され、国際社会が水問題の解決のためにより積極的な役割を果たすことがうたわれております。
 我が国も、四方を海に囲まれまして、海の利用を通じて多くの知識や技術力を蓄積してきておりまして、こうしたノウハウを活用して海洋環境の保全などに貢献していくことは重要であると思っております。
 そこで最初に、海洋は、人類に尽きることのない多様な恩恵をもたらしてくれるわけでありますけれども、地球環境保全の観点からも重要な機能を果たしていると私は思っております。環境省では、海洋はどのような多面的機能を有していると認識しているか、最初にお尋ねいたします。
吉田政府参考人 海洋は、地球上の水の九七%を蓄えております。そういう意味で水の貯蔵庫でございますが、同時に、先生今御指摘ございましたように、人類や生物の生存の基盤でございまして、非常に多様で重要な役割を果たしておるものと考えております。
 例えば、環境とのかかわりが深い面についてだけ申し上げてみましても、一つには、二酸化炭素の吸収機能を有しておりますので、巨大な炭素の貯蔵庫としての機能を持っているというふうにも申し上げることができると思いますし、また汚染物質の浄化にも役割を果たしてまいりまして、物質循環の担い手として重要な機能を持っております。さらに、多様な生物の生態系成立の場としての機能も持っている。こういうふうに多様な機能がございます。
 したがって、海洋環境を保全して次世代に継承していくということが極めて重要な課題であるというふうに私どもは認識をいたしております。
黄川田委員 お話しのとおり、多様な機能があるということでありますけれども、タンカーの座礁とかこの油流出とか、さまざま海洋汚染の問題があるわけであります。海洋汚染の問題に環境省はどう対処しておるわけでありますか。
吉田政府参考人 海洋環境の保全に関しましては、もちろんこれは人類共通の課題でございますし、我が国一国でできることでもございません。世界各国が連帯をして立ち向かわなければいけない問題でございます。
 このために、国際的には、例えば船舶による海洋汚染の防止に関しましては、いわゆるMARPOL73/78条約というものが既に成立いたしておりますし、それから廃棄物の海洋投入に伴う海洋汚染を防止するという観点からは、いわゆるロンドン条約が成立をいたしております。そのほかにもございますが、こうした幾つかの、海洋汚染を地球規模で防止するという観点からの国際的な枠組みができているわけでございます。
 環境省としては、これらの海洋保全の関連条約の策定にこれまでも積極的に貢献をしてまいりましたし、成立した条約の国内での実施につきましては、例えば、海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の整備、そしてその円滑な運用を通じて地球環境の保全に努めているところでございます。
 また、そのほか、海洋環境保全のための調査研究も推進してまいっておりますし、日本沿岸を中心にいたしました海洋環境のモニタリングも継続的に実施してまいっております。また、油流出事故が発生した場合の海洋生物の保護のためのシステムというものも、今、研修などを通じて整備をしておりますほか、普及啓発活動にも取り組んでまいっております。
 今後とも、引き続きこうした努力を進めてまいりたいと思っております。
黄川田委員 大きいくくりの海洋汚染の問題は、地球環境問題であると同時に、私、三陸に住んでおりますので、四方を海に囲まれた我が国にとっては生活に密着した身近な問題でもあります。とりわけ、遠洋漁業の衰退が余儀なくされております昨今、養殖漁業でありますが、これは我が国にとってますます重要性を増しておると考えられまして、海洋汚染の防止は養殖漁業の健全な発展の観点からも私は大事だと思っております。特に養殖漁業は、一般に波の穏やかな内湾あるいは内海、いわゆる閉鎖性海域を中心に行われておるところでありまして、これらの海域では海水が滞留しやすく、そしてまた水質汚濁の進行や赤潮の発生など環境保全上の問題をはらんでおるわけであります。
 そこで、この閉鎖性海域の環境保全に関して環境省はどのような対応をしておるか、お尋ねいたします。
吉田政府参考人 お答えを申し上げます。
 閉鎖性海域における環境保全の措置でございますが、我が国の閉鎖性海域は陸上からの汚濁流入量が非常に多い傾向がございます。しかも、今先生御指摘のように、外洋水との交換が悪いために富栄養化が進みやすうございますし、そのために赤潮や貧酸素水塊が発生をするといった特徴を有しております。
 このため、富栄養化の原因となります窒素及び燐につきまして海域の環境基準を環境省として設定しておりますほか、それに基づきまして、水質汚濁防止法によります一定の規制を、閉鎖性の強い湾、全国八十八ございますが、この八十八の湾に対して実施をいたしております。
 また、特に人口や産業が集中いたしまして汚濁の負荷量が集中してまいります伊勢湾、東京湾それから瀬戸内海につきましては、水質汚濁防止法等に基づきまして、昭和五十四年から、化学的酸素要求量と呼んでおりますが、汚濁負荷量の代表でございます、いわゆるCODとも呼んでおりますが、このCODに係る総量規制を実施し、順次汚濁負荷量の削減を図ってきておるところでございます。現在は、平成十六年度を目標にして第五次の総量規制を推進中でございますけれども、CODに加えまして、新たに窒素、燐もこの総量規制の対象にして総合的な汚濁負荷対策を今進めているところでございます。
 今後も、引き続きこうした努力を通じて水質等生態系の保全に努めてまいりたいと思っております。
黄川田委員 いずれ、私も先ほどお話ししたとおり三陸海岸に住んでおりますので、この海洋の養殖漁業の利活用、本当に進んでおります。水産業の振興とともに、農水省との連携、あるいはまた生活環境保全の観点からも、ぜひともしっかりと取り組みをお願いいたしたいと思います。
 残り時間が、ちょっと通告が多かったために少なくなってまいりましたので、海洋資源問題、経済産業省に一点だけ、二点通告しておりましたけれども、前段のメタンハイドレートの関係のみちょっとお尋ねいたしたいと思います。
 御案内のとおり、資源の乏しい我が国においては、海洋等に賦存する国産エネルギー、この資源の有効活用が私は重要な課題だと思っております。三陸の沖にも天然ガスの一種であるメタンハイドレートがあるのではないかということでいろいろ言われておりますけれども、メタンハイドレートは、現在、政府主導によりましてその開発が行われておるはずであります。
 昨年、カナダにおいて世界で初めて陸上産出試験に成功するなど、我が国の技術、これは世界をリードしておると聞いておりますけれども、メタンハイドレートの開発に向けた今後の政府の取り組み、これをお尋ねいたしたいと思います。
広田政府参考人 メタンハイドレートは、日本近海に相当量の賦存が期待されておりますクリーンエネルギーでございますので、その利用が可能となれば貴重な国産エネルギー源ということで期待されているわけでございます。
 ただ、この賦存量を評価するためにはさらなる調査が必要でございますし、また、通常の天然ガスと異なって、そのまま井戸を掘っても自噴をしないというようなこともございますので、新しい採取技術の開発など中長期的な視点で取り組むことが必要であるというふうに考えております。このため、平成十三年の七月に、メタンハイドレート開発計画というものを専門家の皆様方のお知恵をおかりいたしまして取りまとめたわけでございます。現在、この計画に沿って調査研究を実施しているというところでございます。
 御指摘のように、カナダの永久凍土地帯の試験井におきまして、昨年の三月に国際共同研究による陸上産出試験を実施し、初めてこのメタンハイドレートを処理し、地上にメタンガスを回収するということに成功したわけでございます。こうした成果も踏まえまして、経済産業省といたしましては、メタンハイドレート開発を着実に推進してまいりたいと考えております。
黄川田委員 エネルギーは、原子力の問題、さまざまありますし、それからサハリンの天然ガスの開発、サハリン1、サハリン2等々ありますので、ぜひともエネルギーとしてのメタンハイドレートの関係もしっかりと取り組んでいっていただきたいと思います。
 最後に、海洋研究のあり方について、文部科学省に二点お尋ねいたしたいと思っております。
 先ほど来の話のとおり、海洋は、地球温暖化等の環境問題と密接に関係いたしますけれども、さらに、このメタンハイドレート等の未利用資源を有するなど、我が国が今後持続的な発展を遂げていくためには非常に大事な視点であると思っております。そこで、環境問題の解決やあるいはまた資源の利用を図っていくためには、まず海洋に関する観測研究を行い、それによって得られる知識をもとに実施していくこと、これが大事だと思っております。
 そこで、海洋科学技術センターと東京大学海洋研究所の研究船及びその運航組織を統合いたしまして、今回、海洋研究開発機構を設立するとのことでありますけれども、新しい機構が設立することによりまして、研究船などの施設設備の有効活用、これがどのように進むか、文科省の見解を求めておきたいと思います。
白川政府参考人 お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、研究船は海洋研究を行うために必須の研究基盤でございまして、しかし、その維持管理等には多額の経費が必要になるわけでございます。このため、今般、海洋研究開発機構、これを設立することによりまして研究船の運航管理を機構に一元化いたしまして、我が国全体として安定的な研究基盤の確保を図ること、これが今回の法案の目的の一つであるわけでございます。研究船の運航に当たりましては、これを一元的に運航管理することによりまして、スケールメリットを生かして業務の効率化を進めますとともに、海洋研究船の安定的、効果的な運航体制を整備いたしまして、その一層の有効活用を目指していきたいと考えております。
 また、法案の第十七条に業務の範囲が規定されておりますが、その第四号に「機構の施設及び設備を科学技術に関する研究開発又は学術研究を行う者の利用に供すること。」ということが位置づけられておりまして、研究船だけではなく、「しんかい六五〇〇」とか地球シミュレーターといった大型の施設設備につきましても、積極的に研究者に利用していただきたいというふうに考えております。
黄川田委員 ぜひとも産学官の連携をお願いいたしたいと思っております。
 では、最後の質問であります。これは渡海副大臣にお答えいただけますか。
 まず、国際的にも海洋研究の重要性が高まっておるわけであります。また、海洋研究に関する問題でありますけれども、これは一国で解決できないものも多く、国際貢献と国益の確保、この均衡を図りながら対処していく、これが必要だと思っております。
 そしてまた、私、岩手でありますけれども、地元の大槌町には東大海洋研の臨海研究センターがありまして、地方文化の象徴として、あるいはまた地域経済の活性化にも寄与しておるわけであります。
 この海洋研究開発機構も、地球規模の環境問題の解決など、海洋に関する研究を通じて国際貢献を果たしていくことが重要であると思っております。現在、世界的に取り組む海洋研究の主な課題と、それに対して我が国がどのように貢献していくのか、これは副大臣にお尋ねいたします。
渡海副大臣 委員御指摘のように、海洋研究というのは、国益という意味では、今作業を行っております大陸棚の画定、これなんかもそうでございましょう。先ほど御指摘をいただきました資源の開発、こういった面でも国益にかなうわけでありますが、地球規模の環境問題、これは人類に共通の課題でございますから、国際的な枠組みの中で各国が協力をして行っていくということが大事であろうと思います。
 地球の約七割が海でございますから、この海洋の定点、しかも定期的な観測をきちっと行うことによって、これは地球規模の各国の国際的なネットワークの中で観測をしっかり行っていく、そして気象変動のメカニズムを解明していくというプログラムをつくっていく必要があろうというふうに考えております。先ほどお話しになりましたエビアン・サミットの中でもそのことがうたわれておりまして、我が国は、来年の春には閣僚級の会合を東京で開催するということを呼びかけておるわけでございます。
 また、海洋科学技術センターの横浜の研究所には、地球シミュレーターという世界最速のスーパーコンピューターがございます。今、このスーパーコンピューターをシミュレーションに用いて、大気の変動予測、またエルニーニョ現象を初めとする海洋のさまざまな変化、こういったもののシミュレーションを行っておるわけでございます。こういった強力な武器もあるわけでございますから、国際貢献の面でも大いに役割を果たせるというふうに考えておるところでございます。
 何にいたしましても、強力な観測体制ができ上がって、そして世界の国々が力を合わせて環境問題に取り組んでいくということが大変重要であり、この海洋研究という分野も、その一翼を担う分野としては大変重要な役割があるというふうに考えております。
 なお、もう一点だけつけ加えさせていただきますと、今進んでおります計画としては、深海掘削船の計画、IODP計画といっておりますが、十月から新たな枠組みでスタートいたします。今、我が国において、十七年に完成を目指して掘削船の「ちきゅう」を建造いたしておりますが、これは四千メーターの海底から、そこからまだ七千メーター掘る。生物の発生等の解明にも役に立つという意味で大いに期待をされておるところでございます。
 こういった枠組みを通じて、今後とも大いに地球規模の環境問題に貢献をしてまいりたい、そのように考えておるところでございます。
黄川田委員 狭い国土、資源の乏しい国でありますので、ぜひとも海洋に大きな目を向けていただきたいと思います。
 なお、法案に関しましては、特殊法人改革あるいはまた公益法人改革、小泉内閣の構造改革、さまざまな一連の施策の展開なんでありましょうけれども、私は、独法化したからといってそれなりの新しい形の中ですぐれた形で残るというふうには到底思えませんので、法案には反対するということになると思います。
古屋委員長 児玉健次君。
児玉委員 日本共産党の児玉健次です。
 私も、私の兄弟も、そして妻も、日本育英会の奨学金によって一定の教育を受けさせていただいた、そのことについて今でも強い感謝の気持ちを持っています、社会全体の力によって教育を受けさせていただいたと。それだけに、この奨学金制度がさらにこの後充実発展していくことを私は強く願っています。そういう立場から、きょうは、大きく二つの問題で質問をしたい。
 一つは、新しく導入されようとしている機関保証システムの問題です。これは、河村副大臣に主としてお聞きしたいし、その後、奨学金のあり方をめぐって私の意見も述べながら答えをいただこう、こう思っております。
 新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議「新たな学生支援機関の在り方について」、これは最終のまとめですが、この中で、先ほども文科省の方が言われていたけれども、連帯保証人、保証人を確保しにくい場合を考慮して、機関保証システムを導入する、こう取りまとめで言っていますね。私は、連帯保証人と保証人を同列的に述べるというのは、仕組みからいってちょっとおかしいと思うんですね。最初に奨学金を申請するときには連帯保証人が必要ですね。そして、返還を開始するときに保証人が登場するわけですから、そこのところははっきりさせておきましょう。
 それで、皆さんのところにお配りしている資料をちょっと手にとってください。
 これは、平成十三年度、二〇〇一年度に貸与が終了した学生諸君の連帯保証人はどんな本人との関連か。ごらんのとおり、父と母、両方合わせると二十三万一千三百五十五人で、連帯保証全体の九八・六%を占めていますね。これは、平成十三年度貸与終了者です。一番下の(注)にある「平成十三年度新規採用者」に関していえば、まだ連帯保証人と本人の続柄は整理されていません。
 そこで、副大臣にお聞きしたいんだけれども、ごらんのとおり、一昨年貸与が終了した方々の中では、お父さんとお母さんがもう圧倒的な部分を占めていますね、九八・六%ですから。それで、先ほども局長が言っていた連帯保証人が確保できなくなる場合、そういう場合があったのか、連帯保証人が確保できなくて申請を断念したケースがどのくらいあるのか、まずお答えいただきたいと思います。
河村副大臣 御指摘の点でございますが、連帯保証人がないがために奨学金が受けられなかったというケースは、具体的に把握しておりません。ということは、もしそういうことがあればその時点で断念するものですから、こっちに数字が上がってきていないという点がございます。
 ただ、考えられるのは、この機関保証制度を前提としてこういう問題が議論されるわけでございますが、私は、これを見ても、大変努力して、おじさんやおばさんにも、後見人にも頼んだ方もいらっしゃる。これは数でいえば少ないですけれども、やはりそういう大変苦労された方があるんだという現実があることは間違いありません。
 そういう観点から新しい考え方も生まれたものだ、こう思っておりまして、そういう点から今回の新しい制度の導入ということが考えられておる、こういうふうに思うわけであります。
児玉委員 確かに、父、母が存在しない、存在しないというか失った、ないしは、社会的な事情でその関係がなくなった方というのはいらっしゃるでしょう。そういう方々にとっていろいろな不自由があるというのは、私も理解できます。しかし、少なくとも二十数万というオーダーの、高校から高専、大学、大学院に至る奨学金の申請者の中で、連帯保証人、後の保証人は別ですよ、連帯保証人が得られないからということで奨学金を受ける機会を断念せざるを得なかったケースというのは多くはないだろうと思います。そういう方たちに対して一定の何らかの手だてを講じなければならない、これを私は強く感じます。
 そこで、参議院から始まった論議を見てみると、文部科学省の方は、連帯保証人を確保しにくい場合を考慮して機関保証システムを導入すると言っているけれども、仮置きではあっても、その比率が半々だというふうに見ていますね。これは明らかに実態から反している、こう思いますね。もし皆さんの仮置きのシミュレーションを有効ならしめるためには、例えばAという大学で、人的保証の数は五百人、そして、新しい機関保証のシステムによって申請する人間は五百人、こういうふうに枠をつくらなければ、そうはならないですね。
 そして、保証料というのは、今、奨学金の利子の年率は、第二種学資金で〇・二ですから、第一種学資金はもちろんゼロですから、それに対して、保証料の〇・五ないし〇・六というのは非常に負担が重いですね。
 だから、私は、この機会にはっきり河村副大臣に明言していただきたいんですけれども、人的保証と機関保証を、例えば、皆さんのシミュレーションのとおりにするために、枠を設定したり、それから機関保証への申請を何らかの形で誘導するようなことはしないと明言していただきたいと思います。
河村副大臣 委員御指摘の点でございますが、この制度をつくることによってそちらへ誘導するという考え方は全くございません。枠の問題もそうであります。
児玉委員 枠についても設定しませんね。どうぞ。
河村副大臣 枠を設定する予定はございません。
児玉委員 では、次の問題に入ります。奨学金制度のあり方の問題です。
 遠山大臣に私伺いたいんですが、青年がなぜ学ぶのか、そして、自分が大学、大学院で学び取ったことをどのようにして社会に役立てるのか、このように、常にみずからに対して問いかけることの重要性、その点について大臣はどのようにお考えでしょうか。
遠山国務大臣 私は、人として生まれた以上は、常にみずからを高め、また、みずからを高めてみずからの自己実現を図っていくばかりではなくて、そこで蓄えた知識、技術、あるいは精神的なものを用いて社会のために尽くしていく、それが非常に大事なことだと私自身は考えております。
 したがいまして、人として生まれた以上は、常に学び、かつまた学ぶことを楽しみ、それを通じて他者に貢献するという角度でいえば、私は、自立して人が生きていく際に、その学びの成果を職業の場でも十分に発揮していくということは極めて大事なことだと思っております。
児玉委員 私もやはり、青年諸君と接するときにいつも思うんですが、学ぶことと、そして学びを通して知ることによって、ある種の責任が生じますね。その責任に対して、生涯を通して誠実に対応していく、そういう人物を育てることと、奨学金制度の意味というのは非常に重なり合うと思うんです。
 今度の法案を拝見してみて、法案の第三条を読んで、私は、ある意味ではこれは重要な指摘だと思いましたね。こう言っています。「学生等に対する適切な修学の環境を整備し、もって次代の社会を担う」人間性を備えた人材の育成に資する。賛成です、これは。そして、この「修学の環境」という言い方は、日本育英会法第一条で「学資の貸与等を行うことにより、」というよりは広いですね。「貸与等」と「等」がありますけれども、「貸与等」というよりも、この「適切な修学の環境を整備し、」ということの方が、私は可能性が広いと思う。
 そして、この考え方というのは、今の高等教育における欧米の考え方に非常に近いと思う、この三条に限定して言えば。欧米の考え方、私、去年もウプサラの大学に行って少し町を歩いて、町の中に大学があるのか、大学の中に町があるのかわかりませんけれども、そこで、高等教育の学費が基本的には無償という問題、そして奨学金の貸与と給付というのを、給付が中心になっていたり、国によっては、先日副大臣が言われたように、貸与と組み合わさったり、そういう中で、結局、高等教育を受けたすぐれた人材を生み出すことによって受益するのは社会だという哲学がありますね。それにこの法案の第三条は非常に近いと思う。この目的をどうやって実際に育てていくか、そこが問題だと思います。
 そこで、具体的な内容に入りたいと思います。
 検討会議は、閣議で定めた特殊法人等合理化計画に従って、大学院生返還免除職制度の廃止を打ち出しました。そして、その際に、別途の政策手段として、すぐれた業績を上げた大学院生を対象とした卒業時の返還免除、そのほか幾つかの選択肢がありますけれども、それと同時に、給費制奨学金を対象にしていたことがこの中間取りまとめを見るとよくわかりますね。
 中間取りまとめのところでは、別途の政策的手段として幾つかを列挙しているけれども、ここに至るという結論を出していません。そして、去年の十二月十二日のところで、法案の十六条に盛り込まれた「特に優れた」云々というのが結論的なところとして指摘されています。
 私は、ここの経過を一昨日読んでおりまして、あることを思い出しました。中教審が、一九五九年三月の答申、その中でどんなことを言っていたか。こう言っていますね。一九五九年三月の答申で、日本の奨学制度の目標として幾つかを掲げる中に、育英給付金を給付するとはっきり示しています。そして、一九八七年四月、これは遠山大臣御自身がもしかしたらその準備その他の衝に当たられたと思うけれども、臨教審の一九八七年四月の答申で、大学院生を対象にした給付制度の採用を検討課題として提起しています。日本において、この間一貫して、特に大学院生に対する給付・給費制度の採用が課題になってきている。
 なぜこの際給費制奨学金に道を開かなかったのか、大臣の答弁をいただきたいと思います。
遠山国務大臣 今回の、特殊法人から独立行政法人への移行に関する閣議決定におきまして、委員御指摘のようなことが決定の中身に書かれているわけでございます。それは、若手研究者の確保が大事だという政策目標の効果的達成の手法として、現在の免除制度というのはやめて、そして「若手研究者を対象とした競争的資金の拡充等別途の政策的手段により対応する。」ということが書かれているわけでございまして、そのことをベースに、この新たな学生支援機関の設立構想に関する検討会議においても、どういう方途があるかということで御議論をいただいたものと思っております。
 その中におきまして、いろいろな角度から議論をされて、そして最終報告を得たのだと思いますけれども、「別途の政策的手段」は、若手研究者を対象とした競争的資金の拡充のほかに幾つかありますということが書かれているわけでございまして、その中には、特別研究員制度の充実あるいは卒業時の返還免除、大学院生を対象とした給費制奨学金などが考えられるというふうに書いてあるわけでございます。
 その後に、すぐれた人材の確保という政策目的の実現のためにどの手段が最も効率的、効果的かという観点から検討を行ったということでございます。そして、さまざまな御議論を得て、どのような人を対象に考えるかということも議論をされた上で、「「優れた業績をあげた大学院生を対象とした卒業時の返還免除の制度」を導入することが適当である」というふうに結論されたわけでございます。
 私は、給費制というものがとれればまことにいいと思うわけでございますが、しかし、日本の育英制度といいますのは、発足の当初から、貸与をして、そして貸与をされたものについてはしっかりと返還をして、そして自立心を持って社会に責任を果たしていく、それによってまた次代の人がその貸与を受けることができるという循環、それを考えてきた、自立型の日本の貸与制度というものでずっと成り立ってきているわけでございます。その意味で、政府としてこれまでとってきたのは貸与制度ということであったわけでございます。
 給費制度があれば、学生たちにとってまことに学びやすい、経済的な悩みもなくできるわけでございますけれども、この日本のとってきた流れ及び現実のさまざまな社会状況の中で、どうやったらいいか。しかも、若手研究者をどのようにすぐれた人を育成していくかという角度から、私は、検討会議においてしっかりと御議論いただいたと思っております。
 それで、これはちょっと余談になるかもしれませんけれども、日本の中で、国がやるものとそれから民間がやるものとあるわけでございまして、民間の中には約三千四百の育英財団がございます。ここにおきましては、給費それから貸与をもちろんまぜたものでございますけれども、多くが給費という形で、すぐれた学生たちに機会を与えております。それが、およそ六百四十億近くのお金が毎年民間の善意によって出ているということでございます。
 一方で、国としては、そういうものをしっかりと支えて、税制上の優遇措置でありますとか、あるいはさまざまな情報交換をしていただくとか、いろいろな援助をしながら、そういう国としてやるべきことと、そして民間として大いに育英資金をおつくりいただいた精神に基づいてやっていただく、そういったことを総合的にやっていって、日本の学生たちの学びへの援助というのをやっていくというのが現在の状況であり、かつまた、日本のあり方にとりましても、現時点における適切な方途であるというふうに考えているところでございます。
児玉委員 大臣も、給費制が実現すれば、そのことの持っている積極性については、今の答弁の中でもにじんでいます。
 そして、中間まとめとこの最終まとめの別途の政策的な検討のあれを比較してみると、検討会議の皆さんの、私はいろいろな面で彼らの議論については賛成できない点が多いんだけれども、「別途の政策的手段」の中で給費制奨学金を常に選択の対象にしていたというのがこれでもよくわかるし、大臣に私は強く要望したいんだけれども、この後、この給費制の実現について文部科学省やその他の重要な検討課題としていただくことを強く望みたい、こう思います。
 そこで、給費制であったら出てこない問題として、法案の十六条の問題が出てくるんです。「在学中に特に優れた業績を挙げたと認められる者」。私は言葉にこだわるような感じなんだけれども、「挙げた」と。しかも、「挙げた」というのを、文科省にいただいたペーパーには平仮名で「あ」になっているんだけれども、この法律ではわざわざ「挙」になっているんですね。結局、わずか数年のスパンで「特に優れた業績を挙げた」と。
 この制度の本旨からしても、将来への発展可能性が主眼となるべきで、過去の実績というのは、どうも私はよくわからない。そして、先ほどの副大臣のお話を聞いていますと、機構が基準を示す、そして大学院に選考委員会等を設けて選考するということを皆さんはお考えのようですね。
 それで、去年の十二月十二日の検討会議の「別途の政策的手段」「優れた業績をあげた学生に対する返還免除」、そこのところで「概要(イメージ)」というところがあります。「対象者の選抜は、卒業時に各大学院で判断」、結局基準をつくるのは機構ですからね。ページ数を言いましょう。最初の分の四十四ページ。「対象者の選抜は、卒業時に各大学院で判断」「各大学への免除枠は、入学定員を基に大学評価を勘案して配分」とある。
 この大学評価というのはだれがどのようにして行うのですか。評価が高い大学では、例えば申請した第一種学資金の院生二十人に対して、ある大学は五割を設定し、別の大学院では二割を設定する、そう読めるんです。この評価はだれがどのようにしてやるんですか。
遠山国務大臣 この問題は、私は、制度のねらいというものをしっかりシステムの中に反映していくということが大変大事だと思います。
 今、この検討会議の方向、提案をベースにしていろいろと考えている段階でございまして、先ほど副大臣の方からお答えいたしましたものは現段階で内部で検討しているものでございますけれども、これをさらに、機構が基準として定めていきます前には、もっと広く、いろいろな専門家、これまですぐれた人材育成に当たってきた人たちの幅広い意見も聞いた上で、どうあったら最もいいのかということを決めていった方がいいと思っています。その意味では、一つ先ほど申し上げたのは今の検討段階のものでございます。
 これからどうやっていくかということの精神としては、検討会議の報告の中で、国際的に活躍し得るすぐれた高度専門職業人及び研究者を養成していく上で大学院の重要性がますます高まっている、そんな中で大学院進学をちゅうちょするような人にインセンティブを与えていく、そういう精神であること。それから、大学院在学中の学修の成果等を適切に評価することによって、大学院生の質的向上のみならず、ひいては日本のあらゆる分野で中核的に活躍している人材を育成するんだ。私は、この精神をしっかりと反映した基準をこれからつくっていったらいいと思います。
 ただ、あらゆるところで完全に平等で公平でなければいけないから、したがってその制度はよくないというあり方は、これはちょっとどうかなと思いまして、いい制度をどのようにつくっていくかということにおいて努力をしていく必要がある、そういう分野だと思っております。
児玉委員 指摘しておきますが、もしこの法案が成立して、そして皆さんがある仕事をなさるとすれば、簡単に大学評価などという言葉は入れるべきでないですね。それは国立大学法人法のときに私たちはこの場所でとことん議論した問題ですから、その点は厳しく指摘しておきましょう。
 その上で、短いスパン、せいぜい大学院で言えばドクターコースで五年でしょう。研究の有用性そして過去の実績、そういう形でもし評価がなされ、しかも、その評価が奨学金の返還免除という現実的な利益に結びつく、そのやり方で大学院での基礎科学がどうなっていくかというのは、これまで繰り返し議論をされました。私は、同様のことが社会科学にもあると思うんです。
 ちょっと私は懐かしい本を持ってきましたが、これは石母田正という方の書いた「中世的世界の形成」という書物です。これが書かれたのは昭和十九年の十月です。太平洋戦争末期ですね。そして、場所は東京大学文学部国史学研究室、国史と言っても若い方はおわかりにならないかもしれないけれども、日本史ですね。そこの教授は平泉澄氏、皇国史観の鼓吹者だと私は今でも理解しています。そういう大学の中で、石母田氏が、伊賀国の黒田荘、東大寺領です、そこの荘園の歴史的過程を実に克明に描き出した。戦争中のあの時代ですよ。
 そして、昭和十九年十月の初版の序で彼は何と書いたか。「荘園の歴史を一箇の人間的世界の歴史として組立てるためには、遺された歯の一片から死滅した過去の動物の全体を復元して見せる古生物学者の大胆さが必要である。」日本の歴史学者の中でこういう言い方をした人は、私の狭い範囲で言えばこの方が最初ですね。そして、そう述べた上で、「この大胆さは歴史学に必須の精神である。」こう述べている。皇国史観が君臨する研究室の中で、「年少の友人達が本書によってわれわれの祖国の古い歴史がけっしてそれほど貧困なものでないことを学んでくれることを希望している。」と。万邦無比の神国日本という言い方がされているときに、堂々と、我々の祖国の古い歴史が決してそれほど貧困なものでないことを学んでほしい、こういう研究が育ちましたね。
 私は、これは戦前の大学の持っている可能性の一つだったと思うんです。これを今の時代に置きかえてみて、そして機構がこの基準をつくる、大学院に選考委員会ができて、この平泉氏がキャップになって選考するとすれば、日本のあの中世史の画期となったすぐれた業績が選ばれるかどうか、私はそこのところは大きな問題だと思うんです。
 大臣、御感想でいいですから、どうですか。
遠山国務大臣 私は、今回の制度というのは、学問的業績、将来どのように実り輝くかというようなことまで見通すことはなかなか難しい。例えば、将来ノーベル賞をおもらいになる方が、大学院の段階で本当に光り輝いているかどうかはおよそわからないわけでございます。
 しかし、やはりインセンティブを持って、大学院生時代というのは、最も勉強してもらって、最も伸びる、特に理数系の方々はそうなんですね。むしろ人文社会系は、その後の蓄積というものが実ってそのようなすばらしいものをお書きになるとかというのが出てまいるわけでございますが、その大学院生時代という大変大事なときに、よし、一生懸命やって、そしてできるだけ多くの成果を上げて、そして自分は給費生といいますか免除をしてもらおう、そういうインセンティブを与えるだけでも、日本の若手研究者の育成にとって大変重要な施策であると思っております。
 したがいまして、今委員が大変うんちくを傾けてお話しになりましたそれ自体、大変大事だと思っておりますが、政策判断においてどうやっていくか。私は、未来に対してすぐれた若手研究者を育成していくのに、よきインセンティブになるようなものはしっかりと導入していく、そのことは大変大事だというふうに思います。
児玉委員 時間ですから、最後に一言述べたいんですが、石母田さんがこれを書いたのは若かったときなんです。決して中年で書いたんじゃありません。序文の中で書いているけれども、学窓を巣立って七年と書いています。
 それで、最後に一言述べたいんだけれども、今、日本の高等教育というのは、現状にあっても学費負担の重さは世界一ですね。そして、奨学金制度の劣悪さという点でいっても、これはもう極めて残念な状態です。しかも、この法案の審議と並行して、今、国立大学、公立大学、高専の法人化の法案が審議されています。そこでは、学費のさらなる値上げも考えられ、さっき私、ちょっと厳しく言ったけれども、大学の評価というのは簡単にできるものじゃない。
古屋委員長 質疑時間が終了しておりますので、簡潔にお願いします。
児玉委員 そういう中ですから、私は、皆さんが提起されている法案の示す奨学金の将来像というのは、日本にとって後退はもたらすけれども、それ以外ではないという点を指摘して、終わりたいと思います。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 山内惠子です。
 独立行政法人海洋研究開発機構法案について、最初に、白川研究開発局長にお聞きいたします。先ほど黄川田議員も質問をされましたけれども、持続可能な地球環境問題にかかわって、私も質問したいと思います。
 四日の新聞に「キンメダイ摂食 妊婦は週二回まで 水銀が胎児に影響 厚労省、注意を呼びかけ」。しかし、なぜかここで、妊婦は週に一回なら食べていいもの、週に二回なら食べてもいいもの、二カ月に一回だったらバンドウイルカまで挙げているんですけれども、イルカを日本の人が食べているのかどうか私はわかりませんけれども、それにかかわって、妊婦以外は大丈夫と考える厚労省は何なんだろうと私は思ってこれを読みました。また、次の日は「環境危機救えるか 生物異変、温暖化のセンサー」、大変大きな記事が載っています。
 このような研究、例えば水銀はメチル水銀に変化をするし、水俣病になった方たちもこのような状況でなったわけですし、わずかな量でも胎児の神経発達に悪影響を及ぼすということですから、厚労省の、これは海洋にかかわる研究をした方たちとどうつながっていたのかなと、この記事を見たときに思いました。
 そういう意味で、この機構が変わるという状況、今の研究のあり方を整理統合していくということによって、ここの研究は深められていくのでしょうか。それとも、政府としてはここのところはどのような評価をなさっているかということを先に聞きたいと思います。
白川政府参考人 お答え申し上げます。
 現在、海洋科学技術センターでは、先生御指摘の分野におきましては、例えば環境の分野でございますけれども、地球温暖化や異常気象などの地球環境問題解決のために、研究船等を用いました地球環境観測研究、あるいは地球シミュレーターを活用した地球変動予測研究、こういうものに取り組んでおりますし、また、生物関係では、深海底の未知の生態系や微生物に関する研究、こういうものを実施しておるわけでございます。
 こういった海洋に関連いたします基礎的な研究開発、これは今後とも必要かつ重要な課題であるというふうに考えておりますので、独立行政法人化されました後も、こういった分野につきましても着実に研究開発を進めてまいりたいというふうに思っております。
山内(惠)委員 先ほどの黄川田議員が長時間かけて質問されていたお答えも私はお聞きしました。その意味で、環境問題、CO2の問題というのは、今後研究を重視していくというふうなお答えだったと思います。そのことでは、国際的な関連の研究の方たちとも共同してやっていくというふうにお聞きしました。
 とすれば、それを支える意味で、今も基礎研究ということをおっしゃられたんですけれども、もちろん私はこの世界は相当素人ですけれども、例えば、海洋微生物学だとか海洋物理学だとか、そういう本当の意味の基礎にかかわるもの、ほかにもあると思うんです。そういうことについて、やはり今回の法案では、前回、国立大学の法人化の問題のときに通りましたように、中期目標を立て、その目標も文科大臣が許可をし、六年後に評価していくということになるわけですから、これは、地球環境という意味では、世界の方たちと共同できるという意味で、研究は重視されると受けとめましたけれども、それを支える基礎的研究が、直接環境問題と国際的な問題とつながらないような問題を文科省はどのように評価していくのでしょうか。
 そして、これが六年後に、どのような評価をしていくのか、予算がそこでちゃんとつくのか。そのことにかかわっても、白川研究開発局長、お聞かせいただきたいと思います。
白川政府参考人 お答え申し上げます。
 先ほども御答弁申し上げましたように、現在、海洋科学技術センターでは、先生御指摘のような環境問題、生物関係の研究開発、そういうものに鋭意取り組んでおるわけでございますので、この後、法案が成立いたしましたら、機構の設立の準備にかかるわけでございますが、そういった中で、機構の中期目標の中にこういった研究開発につきましてもきちんと位置づけまして、着実に研究開発を進めていきたいというふうに思っております。
 研究開発の結果につきましては、独法通則法の評価のメカニズムがございますので、その中できちんとした評価を行っていくというふうに考えております。
山内(惠)委員 そのように取り組まれるということですから、六年後のときにも私はここのところに関心を持ち続けていたいと思いますが、この研究が、本当に基礎的なもので、目に見えなくて、企業などに評価されにくい分野ということの問題点を大変危機的に思っている方たちもいらっしゃいますので、そこのところに十分予算もつくような今後のあり方を御検討いただきたいと思います。
 その意味で、一問目のこの法案についての質問を終わりまして、次に遠山文科大臣にお聞きいたします。
 独立行政法人日本学生支援機構法案について、参議院からずっと続けてこられている審議ですので、もしかしたら私も見逃していての質問で、ダブっていたら恐縮でございますけれども、日本育英会奨学金には、大学に進学する前に経済的な見通しを立てられるように、予約奨学金制度があるとお聞きしています。既に有利子の方たちとか無利子の方たちの手続をしたというふうに聞いていますが、現在のような経済状況では、今後、大学に入る前にこの予約をしておきたいという人の数はますますふえると思います。
 その意味で、今、文科省は、この予約奨学金制度の予算をふやそうと思っていらっしゃるのかどうか、お聞かせください。
遠山国務大臣 予約採用につきましては、次の年度に上級学校に進学を希望している人が安心して勉学に取り組んで入試にチャレンジできるようにするために、大変有意義な制度だと思っております。それは進学希望者に対して安心を提供することでありますし、そのためにこれまでも予約採用人員の増員に努めてまいっております。平成十五年度予算では、大学生の新規採用予定人数約十四万四千人のうち、四割の五万七千人を予約採用としております。
 今後とも、状況の変化などによりまして、進学後初めて奨学金を希望する者もおりますので、予約採用で全部占めるというのも合理的でないわけでございますけれども、今言ったような予約採用の意義にかんがみまして、学生のニーズなども踏まえて検討していきたいというふうに考えております。
山内(惠)委員 現在、十四万四千人の方が希望していてとおっしゃったんですか。私、ちょっと一瞬聞き逃しました。その四割が、五万七千人、その方が予約をしていらっしゃるという現状をおっしゃったのね、済みません、聞き逃しまして。それで、次は、状況を見てふやすとおっしゃったんですか。その確認でよろしいでしょうか。
遠山国務大臣 数の点は、大学生の新規採用予定人数の約十四万四千人のうち四割ということでございまして、今後、学生ニーズを踏まえながら検討していきたいということです。
山内(惠)委員 はい、そうですか。
 現在でも、無利子の方で四万人、有利子の方で七万人と文科省の担当者からお聞きしたんですが、これを合わせると十一万人になっているんですが、今の五万七千人という数は、何か随分少ないように思うんですけれども、それをふやすのかというのは、現状を見てふやすこともあり得るとおっしゃっているのでしょうか。
遠藤政府参考人 補足して数字を申し上げますと、現状でいいますと、無利子につきましては、貸与人員総数で五万五千二百四人で、そのうち予約採用の人数が二万四千四百九十六人でございます。有利子につきましては、貸与人員の合計で八万八千四百六十六人、そして予約採用の人員が三万二千五百四十四人、合わせまして、先ほど大臣が申し上げましたように、貸与人員の合計で十四万三千六百七十人、予約採用の合計が五万七千四十人、そして比率を正確に申しますと三九・七%、このような現状でございまして、今後ともニーズ等も勘案しながらこの点について検討していきたい、こういうことでございます。
山内(惠)委員 わかりました。時代が時代なだけに、希望する方たちが皆さん予約して奨学金があるということが本当に大変重要ですので、今後ぜひ拡充をしていただきたいと思います。
 次の質問なんですが、これも先日、石井議員が質問されたというふうに聞いているんですが、改めてもう一度、ここのところをちょっとお聞きしたいと思います。
 実は、奨学金について、大学ごとに推薦数が決まっているんだということをお聞きしました。これは大学枠とおっしゃっているんだそうですね。それで、私学と国立大学の枠、それから学校によっても違うんでしょうけれども、これは公表されていないというふうにお聞きしましたので、私の質問は、なぜ公表しようとなさらないのかというのが質問です。
 もしかして、あえて推測をすれば、私学より国立大学の方を優遇しているのかな、そういうことをちょっと疑問に思いましたので、やはり説明責任があると思うんです、そういう枠があるということは。その意味で、なぜ公表されないのか、お聞かせいただきたいと思います。
遠藤政府参考人 推薦の数の問題につきまして御説明をいたします。
 奨学生の選考に当たりましては、効果的に事業を実施するということで、日本育英会におきまして、一括選考ではなくて、各学校からの推薦を最大限尊重して採用を決定する仕組みとしてございます。そして、各学校には採用の目安としての推薦数を配分しているということでございます。
 その配分でございますけれども、各大学に推薦数を配分するに当たりましては、無利子の奨学金につきましては、各大学の入学定員に対する公平性を重視しまして、配分数の総数のうち五〇%の分につきましては、各大学の入学定員に応じまして比例配分をしてございます。それから、同じく三〇%につきましては、過去の各大学の採用実績数に応じましてこれを比例配分しておりますほか、残りの二〇%でございますけれども、各大学のそれまでの奨学生の滞納率と返還の際の口座振替への加入率に応じまして、それぞれ一〇%ずつを比例配分して、推薦の枠を、各大学の推薦の数というものを計算して示しているということでございます。
 同じように、有利子の奨学金につきましては、学生のニーズへの公平性を重視しまして、配分総数のうち七〇%を各学校における奨学金希望・採用者数の実績に応じて比例配分をしまして、同じく、各大学の入学定員数、卒業奨学生の滞納率、返還の際の口座振替への率に応じまして、それぞれ一〇%ずつ、合わせて三〇%になりますけれども、そういうことで比例配分をしておるということでございます。
 私立大学枠と国立大学枠の状況でございますけれども、私立大学と国立大学における推薦の数につきましては、現在では、先ほど申し上げました方針に基づき、それぞれ配分をしているわけでございまして、平成十四年度の一学年の学生数に対する一次採用における配分率で申しますと、無利子の奨学金では、国立で四・五%、私立で二・九%となっております。有利子の奨学金では、国立で一三・〇%、私立で九・九%となっております。
 なお、無利子の奨学金につきましては、そもそも配分数による大学間格差といった概念のない予約採用比率を全体としてふやしてきているという、先ほどの予約採用のことでございますけれども、ふやしてきております。在学採用について見ますと、過去に国立大学の方が経済困窮学生が比較的多かったということでございまして、学生数に対する比率では私立大学より高くなっているということはございますが、現在では、入学定員に比重を置いた配分にするということで格差の是正が図られてきておるわけでございまして、数字で見ますと、過去三年間の格差の推移でございますが、平成十二年度は二・四%、平成十三年度で一・九%、平成十四年度で一・六%と徐々に縮まってきている、こういう状況にございます。
 また、有利子の奨学金につきましては、学生のニーズへの公平性に主眼を置いているということがございまして、配分数より格差が生じるものではございませんけれども、希望者数の違いによるものでございますが、近年では、結果的に、基準を満たす希望者はほぼ全員採用しているという状況にあるわけでございます。
 この配分方法につきましては、各大学等の奨学金事務担当者には説明会でお知らせをするとともに、問い合わせがあれば、この点については公表をしているということでございます。
山内(惠)委員 おおよそのことはわかりました。
 それで、私学と国立大学の方では、だんだん格差も縮まっているというふうに今おっしゃられたわけですし、それだけの具体的な数字でパーセントをおっしゃられるのであれば、個人名を挙げるわけでもないわけですから、やはり公表して、それは説明会だけの公開ということではなくて、やはりオープンにしていっていただきたいというふうに思います。それはいかがでしょうか。なぜできないのか。
遠藤政府参考人 今の点につきましては、別に全然隠しておりませんで、聞かれれば全部お示ししております。この前、石井議員に聞かれましたのは、それでは早稲田大学で何名だ、これについて教えてほしい、こういうことでございましたので、この点につきましては、時間が長くなりますから簡単に申しますけれども、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律第五条にこういう規定がございまして、「公にすることにより、当該法人等又は当該個人の権利、競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるもの」については不開示情報に該当する、こういうことでございますので、これに該当するのではないかということで慎重にしているということでございます。
山内(惠)委員 それでは、公表できるものはしていただくということで、なぜできないかの部分は後ほどまたと思います。
 次の質問に行きます。たくさん質問がありますので、何が何でも聞いておきたいことを先にさせていただきまして、副大臣に質問いたします。
 大学に入学するに当たって、国立大学では入学料というものが二十八万二千円という額を支払っているそうですね。それで、授業料は五十二万八百円とお聞きしているんですが、しかし、一たん入学を決めた人がそこの学校に来なかった場合は、授業料はお返ししているとお聞きしましたが、入学料というのはなぜお返ししないのでしょうか。これは、もしも部分的に何としても経費として使うものがあるのであれば、この部分は差し引いてお返しするという方法もできると思うんです。その意味で、入学料の根拠が明らかになっていないと思います。
 それで、この根拠と、なぜ入学料はお返しにならないのかというのをお聞きしたいんですが、お願いいたします。
河村副大臣 国立大学の入学料についてでありますが、学生として大学という施設を利用し得る地位を取得するに当たっては、その入学に際して一括して支払われるお金である、同時に、入学に伴って必要な手続、準備のための諸経費に要する手数料としての性格をあわせ持つことから返還しない、こういうことになっておるわけでございます。
 文部科学省で定めます大学入学者選抜実施要項においては、「大学は、入学に要する経費のすべて及びその納入手続等を募集要項に記載するもの」といたしておりまして、各国立大学の募集要項については、入学を辞退した場合、既に納めている入学料については返還しないということを記載いたしておるところでございまして、そういう意味で、入学料については返還しないということにいたしておるところでございます。
山内(惠)委員 きっとそのお答えをきょうはお変えにならないと思いますので、質問としてはここで打ち切りますけれども、入学料というのは、今施設、諸経費、手数料という言葉をおっしゃられたんですけれども、入学をした者は施設を使っていくと思います。でも、施設を使ったのは、試験を受ける日か何かで大学に行って使ったという日はあるかもしれませんけれども、金額は二十八万二千円という金額です。しかも、この入学料のほかに施設料を別に取っている学校もあります。
 そのことを考えると、必要経費というのを本当に差し引いてもいいですから、これはお返しするべきと考えます。ちょっとそこだけお答えいただけないでしょうか。
遠藤政府参考人 入学料の性格につきまして、今副大臣からお答えいたしましたけれども、もうちょっと詳しく、詳しくというより短く詳しくお話ししますけれども、入学料の性格でございますけれども、入学手続、準備のための諸経費に要する手数料であると同時に、入学の意思を確認するための予約金的性格ないしは一種の手付金的な性格を有すると考えられておるということでございますので、返還をしないというような取り扱いにさせていただいているわけでございます。
山内(惠)委員 お答えはそうなんだと思いますが、このことについて訴訟も起こっていると聞いています。ぼったくり入学金・授業料返還弁護団が、このような文書をいろいろやっていまして、やりとりもおありだと思います。でも、一人の学生にとって、二十八万二千円というのは大変重い金額です。奨学金を論議するにしても、この大学に行かなかったにもかかわらず、これだけ支払わなければならないというのは、家庭の経済にも影響すると思いますので、返還に向けてぜひ御検討いただきたいということで、次の問題に行きます。
 河村副大臣にお聞きするということで質問を出しておりました、日本育英会では緊急採用奨学金制度を創設していますが、今後も堅持するのかということの質問です。リストラされて家庭が苦しくなったということで、奨学金は今までは必要なかったけれども必要だということで育英会では創設をしたそうですが、制度が変わったときにどうなるかということです。
 あわせて、質問事項に入れていなかったんですが、入学時の多額の、今のような入学料、施設料、それからいろいろありますよね、授業料も前は払っていたというわけですから、入学時の多額の学納金負担に対して、これを軽減するような制度を創設すべきと考えますが、これは質問に入れていませんでしたけれども、検討するという方向でお答えいただきたいんですが、いかがでしょうか。
河村副大臣 前段の緊急採用奨学金制度でございます。これは、平成十一年度から採用いたしまして、希望者全員に採用しておるわけでありまして、平成十五年度予算にも所要額として一万人分三十一億円、これで対応できると思っておりますが、こういう方には全員という思いでございますし、この考え方はこれからも続けてまいります。
 それから、今の後段の御指摘の問題でありますが、そういう御指摘も我々としては検討課題として考えていかなきゃいけない。こういう経済状況にございますので、検討課題にさせていただきたい、こういうふうに思います。
山内(惠)委員 ありがとうございます。ぜひ御検討いただきたいと思います。
 少子化の中でこんな金額が取られるということは、次の大学に行くに当たってもまた入学金、それから授業料、みんな払わなくちゃならないわけですから、本当に緊急の課題として受けとめておいていただきたいと思います。
 次の問題ですが、これが本当に時間がなくなって悔しいんですけれども、奨学金の二つの、育英基準と奨学基準については両方必要だということをたくさんの方たちがおっしゃっているんですが、今回の改革では、大学院の優秀者のみに返還免除するという育英基準、そっちの方が強化されていくということに、私も本当にここは問題だと思っています。なぜ大学院にのみシフトしていくのかということもありますが、私として一番言いたいのは、低所得者層への奨学金返還免除というのをやはりしっかりとやっていただきたいというふうに思うんです。
 今、学費が払えず退学する者というのは、高校生でも中退していく方たちとしてたくさんいますけれども、大学でも学費が払えず退学する者という意味では、先ほどの緊急奨学金ということもあるんですが、授業料返還訴訟もあるように、やはりこの返還を免除する人が成績優秀、それが文化的であれそれからスポーツのことであれ、あらゆるもので優秀だと言われている人だけ返さなくてもいいということがこの社会のありようをあらわしていると思うんですね。本当にそうじゃない方にとって苦しい社会だと思います。
 国立大学の授業料は過去三十年間に四十八倍にもなったのに、奨学金は十六倍にしかなっていない。日本の大学は、私立大学含めて、高授業料、低奨学金だと言われても仕方ない現状にあると思います。そしてこれは、無利子であれ有利子であれローンということになっていくわけですから、返済不能だということを考えれば、無利子であれ手を出すことをちゅうちょされる家庭があるんじゃないでしょうか。その意味で進学をあきらめざるを得ないという人もいるんじゃないかなというふうに思います。
 その意味で、ここのところで例えば、これももしかしてどなたか引用されたかもわからないんですけれども、イギリスのローンでは、卒業後、低所得者は返還を猶予され、六十五歳以上では返還は免除されるとおっしゃっているんですね。猶予措置もあるというのをお伺いしましたけれども、大学を卒業したり、また大学院を卒業した後いい就職先がないというのも一方にあるわけですから、猶予期間を五年間と限られてはとてもやっていけない人たちがいるんじゃないでしょうか。「大学は出たけれど」という映画もありましたけれども、その卒業後の収入ということもしっかりと加味しての返還をしないで済む制度を強化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
遠藤政府参考人 新しい返還免除制度でございますけれども、卒業後の進路によることなく、大学院在学中における専攻する学問分野での顕著な成果など、すぐれた業績を評価し卒業時に返還を免除することにより、我が国のあらゆる分野で活躍しその発展に貢献する中核的人材を育成することを目的とするものでございまして、卒業後の所得等を考慮するということは本制度の趣旨にはなじまないのではないか、こう考えておる次第でございます。
 なお、本制度の対象となり得る者は、経済的理由により著しく就学に困難があるため無利子奨学金の貸与を受けている大学院生であり、そもそも所得水準の低い層が対象となっているのではないかと考えております。
 また、奨学金事業は、教育の機会均等の確保を理念として実施しているものでございますから、御指摘のように、死亡、心身障害の場合の返還免除や、倒産、失業等の場合の返還猶予の制度を設けておりまして、日本学生支援機構移行後におきましても、教育的配慮からこの制度はしっかりと維持していくということとしておるわけでございます。
山内(惠)委員 授業料が本当に高いのが日本、そして奨学金が低いということは多くの皆さんが指摘してきたことですけれども、授業料を安くすることが難しければ、それぞれの大学では免除制度もつくっていると聞きましたが、それでも希望する者がみんな当たっていないということを考えると、やはり奨学金をもっと手厚く低所得者の家庭の子供に配分することを充実させていただきたいと思います。ぜひ前進的な検討をお願いしたいと思います。
 時間が参りましたので、終わります。
古屋委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより両案について討論に入ります。
 討論の申し出がありますので、順次これを許します。黄川田徹君。
黄川田委員 私は、自由党を代表して、独立行政法人日本学生支援機構法案、独立行政法人海洋研究開発機構法案に対し、反対の立場から討論を行います。
 まず申し上げたいことは、独立行政法人制度そのものが極めて問題の多い制度であるということであります。
 特殊法人等を独立行政法人に衣がえしても、人の流れ、金の流れ、業務の指示、評価のあり方の実態は何ら変わらず、中央官庁主導の体制は存続されたままとなります。また、そのような実態であれば、今まで国民世論の批判の的となった政官業癒着の構造や、不正の温床とその仕組みはそのまま維持されることになります。
 そもそも、国が実施するべき内容の事業は国が責任を持って行い、民間で実施しても構わないものは民間に任せるという原則を貫くべきであります。その観点からすると、独立行政法人日本学生支援機構法案は極めて問題であります。
 学習意欲のある学生が安心して学業に専念できるための奨学金事業などというのは、わざわざ特殊法人や独立行政法人などに任せるのではなく、国や地方公共団体が責任を持って行うべきであります。
 なぜ、奨学金事業のような極めて重要な事項を独立行政法人等に任せるのでしょうか。まさに、天下り等に代表されるような、役人のポストと金への執着心をこそくに示すものであり、税金のむだ遣いの一言に尽きます。
 また、独立行政法人海洋研究開発機構法案にしても同様であります。
 国が海洋研究開発を重要な位置づけにしているのであれば、国の機関が直接研究等を行うべきでありますし、国が実施している他の研究で事足りているのであれば、海洋研究開発機構は廃止して、民間にゆだねればいいだけの話であります。
 以上の観点から、独立行政法人日本学生支援機構法案、独立行政法人海洋研究開発機構法案について反対をいたします。
 なお、繰り返しになりますが、特殊法人、認可法人、独立行政法人等は廃止し、必要な事業は国が実施する、民間にゆだねるべき事業は民営化することを原則とするべきであるということを述べて、私の討論を終わります。(拍手)
古屋委員長 次に、児玉健次君。
児玉委員 私は、日本共産党を代表して、独立行政法人日本学生支援機構法案並びに独立行政法人海洋研究開発機構法案の両案について、反対討論を行います。
 反対理由の第一、日本学生支援機構法案は、特殊法人等整理合理化計画を受けて日本育英会を廃止し、他の学生支援業務と統合して新たな独立法人を設置するとしています。この措置は、現在、関係法案が審議中である国公立大学、高専の法人化と同時に実施されます。大学法人化は大学学費の値上げを招きかねないものです。それにあわせて効率化、経費節減を優先する独立行政法人に奨学金事業をゆだねることは極めて大きな問題です。
 反対理由の第二に、従来の連帯保証人制度のほかに、今回、機関保証制度を設け、貸与を受ける学生が保証料を支払うこととしています。これは、保証料等の新たな負担を学生に強い、民間信用情報機関への個人情報の提供などの問題を生み出すものであり、容認できません。
 第三に、教育・研究職につく大学院生の返還免除職制度が廃止され、「優れた業績を挙げた」大学院生への卒業時の返還免除が導入されます。これは返還免除制度の大きな後退です。「優れた業績」の基準も明らかにされず、大学院での自由濶達な研究活動を阻害することが危惧されます。
 反対理由の最後に、高校奨学金事業を都道府県に移管するとしています。高校奨学金は、不況が進行する中、希望者が急増しており、国が引き続き責任を負うべきです。
 次に、海洋研究開発機構法案についてです。
 科学研究においては、研究とその評価には長い時間が必要です。中期目標の設定とその評価は、研究テーマの萎縮をもたらし、海洋科学研究の自由な発展を困難にするものです。また、これまで築かれてきた大学研究者と研究船乗組員との一体的な協力関係を損なうものです。
 以上の理由から両案に反対を表明し、討論を終わります。(拍手)
古屋委員長 次に、山内惠子君。
山内(惠)委員 山内惠子です。
 独立行政法人日本学生支援機構法案と独立行政法人海洋研究開発機構法案の両方の法案に反対する立場で意見を述べさせていただきます。
 初めに、この日本学生支援機構法案の方についてですが、けさも、大学院の学生から、院生の命綱ともいうべき奨学金制度が大きく後退するのではないかという心配の声、法案には絶対反対という抗議の声がファクスでたくさん寄せられてきています。しかし、たくさんといっても、このほかに、高校生、大学生、家族の方々からもたくさんの意見があったと私は思います。この意味では、この法案も、一部の方の声のファクスだったと思います。
 これらに対して、もっと丁寧に、時間をかけて審議するべきであったと思います。この委員会では、参議院で参考人をお呼びして審議をしたので、そのことを理由に、衆議院で参考人をお呼びいたしませんでしたが、呼ぶべきであったと思います。
 国会は国権の最高機関であり、日本の国会は二院制をとっているわけですし、また、委員会中心主義で行われているわけですから、法案については、一本ずつ取り上げるべきであったし、参考人もそれぞれの法案に対してお呼びするべきであったと思います。私も理事会にオブザーバーとして参加していますから、そのことはそちらの方で言うべきであると思いますが、審議に入ってつくづくそのことを思いました。
 また、返還免除について、先ほども申し上げましたけれども、在学中に「優れた業績を挙げた」者と規定しましたことは、これは、エリートだけが優遇されるという、本当に私は問題だと思っています。
 「かごに乗る人、担ぐ人、そのまたわらじをつくる人、捨てたわらじを拾う人」という言葉が日本にはずっと伝わってきています。別な言い方をすれば、社会は、ブルーカラー、グレーカラー、ホワイトカラー等々で成り立っているわけです。発明、発見にしても、文化、スポーツにしても、成績優秀な人だけで成り立っているのではありません。技術の再生部門で社会を支えている人、高齢者の介護に一生懸命になっている卒業生、町づくりにと、本当に人々のためにと頑張っていらっしゃる方でこの社会は成り立っているということで受けとめるなら、大学院の卒業生のみならず、低所得者層への返還免除をしっかり強化すべきであったと思います。
 また、先ほど申し上げましたように、私学の授業料の高さ、これが家庭や学生を圧迫しています。私学への国庫補助とセットで論議すべきであったと思います。(発言する者あり)
 この観点と、独立行政法人海洋研究開発法案が、中期目標と評価の問題で、何らここのところの保障がない文科省の視点ということで危惧していることが相当数ありますので、反対をいたします。
 少し延びたでしょうか、時間を守ったつもりでしたけれども。終わります。(拍手)
古屋委員長 山内委員に申し上げます。
 理事会でも討論は三分以内ということで合意をいたしておりますので、ひとつよろしく御協力のほどお願いいたします。
 これにて討論は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより両案について順次採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、独立行政法人日本学生支援機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
 次に、内閣提出、参議院送付、独立行政法人海洋研究開発機構法案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 この際、ただいま議決いたしました両法律案に対し、それぞれ附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 まず、独立行政法人日本学生支援機構法案に対し、奥山茂彦君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。奥山茂彦君。
奥山委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    独立行政法人日本学生支援機構法案に対する附帯決議(案)
  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 独立行政法人への移行に当たっては、自律的、効率的に運営を行うという独立行政法人制度の趣旨が十分発揮されるよう、その運用に万全を期すること。
 二 独立行政法人日本学生支援機構に対する中期目標の策定や評価に当たっては、事業の特性に十分配慮すること。
 三 独立行政法人日本学生支援機構が行う奨学事業について、憲法、教育基本法の精神にのっとり、教育の機会均等の実現のため、無利子奨学金を基本としつつ、学習意欲のある学生が安心して学べるよう、奨学事業全体の一層の拡充に努めること。有利子貸与については、将来にわたって、奨学生の過度の負担にならないよう努めること。また、奨学事業が時代の変化に適合した国民の多様な学習ニーズに応えるものとなるよう努めること。
 四 在学中に特に優れた業績を挙げたと認められる大学院生に対する奨学金の返還免除については、対象となる学生の選考基準を明確にするとともに、学生の選考に当たっては、客観性、公平性の確保に十分留意すること。
 五 機関保証制度の創設に当たっては、人的保証との選択制とするとともに、奨学生の経済的な負担等に対する教育的配慮を行い、適正な運用に努めること。また、返還金の回収については、返還金が奨学事業の主な原資となっていることにかんがみ、積極的な広報活動等により回収に努めること。
 六 高校奨学金の地方移管に当たっては、都道府県の実情や自主性を尊重しつつ、奨学事業の縮小を招かないよう、適切な財源措置を行うとともに、その事務の遂行に支障が生ずることのないよう万全の措置を講ずること。
 七 留学生を対象とする奨学金の拡充や宿舎の確保等学習環境の整備充実に努めること。また、日本人学生の海外留学に関する施策の充実に努めること。
 八 独立行政法人日本学生支援機構への移行及び継承公益法人の設立に当たっては、これまで維持されてきた職員との雇用の安定を含む良好な労働関係に配慮するとともに、移行後の法人運営に当たっては、職員が安心して業務に邁進できるよう努めること。
以上であります。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 次に、独立行政法人海洋研究開発機構法案に対し、奥山茂彦君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び保守新党の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。鎌田さゆり君。
鎌田委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    独立行政法人海洋研究開発機構法案に対する附帯決議(案)
  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 独立行政法人への移行に当たっては、自律的・効率的に運営を行うという独立行政法人制度の趣旨が十分発揮されるよう、その運用に万全を期すること。
 二 業績評価等を行うに当たっては、独立行政法人海洋研究開発機構の行う研究開発の特性を踏まえ、適切な評価が実施されるよう十分配慮するとともに、その評価体制・手法について継続的に見直し、改善を行うこと。
 三 海洋科学技術の研究開発を行うに当たっては、産学官の連携を一層推進し、成果の有効活用に努めること。
 四 船舶の効果的かつ効率的な活用を図ることにより、観測海域の拡大等、研究機会の提供拡大を含めた研究環境の充実に努めること。また、船舶の運用に当たっては、海洋研究の将来を担う人材の養成にも配慮して大学及び大学共同利用機関との緊密な連携協力に努めること。
 五 独立行政法人海洋研究開発機構への移行に当たっては、これまで維持されてきた職員との雇用の安定を含む良好な労働関係に十分配慮すること。特に、現に船舶の運航に係る業務に従事する職員については、その業務の特性にかんがみ、雇用の維持について特段の配慮をすること。
以上であります。
 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいま議決されました両附帯決議に対し、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
 ありがとうございました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
     ――――◇―――――
古屋委員長 次に、内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 趣旨の説明を聴取いたします。遠山文部科学大臣。
    ―――――――――――――
 著作権法の一部を改正する法律案
    〔本号末尾に掲載〕
    ―――――――――――――
遠山国務大臣 このたび、政府から提出いたしました著作権法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。
 我が国の著作権制度については、情報化等に対応してこれまでも逐次整備を進め、その充実を図ってまいりましたが、昨年七月に策定された政府の知的財産戦略大綱や、本年三月に施行された知的財産基本法に示された基本的な方針を具体化するため、その一層の充実が必要となっております。
 この法律案は、著作権の分野について知的財産戦略を推進し、著作物の利用形態の多様化等に対応した適切な保護と活用に資するため、映画の著作物の保護期間を延長すること、教育機関等において著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲を拡大すること、著作権が侵害された場合の司法救済制度の充実を図ること等について、必要な改正を行うものであります。
 次に、この法律案の内容の概要について、申し上げます。
 第一は、映画の著作物の保護期間を、公表後五十年から公表後七十年に延長することであります。
 著作権法上の映画の著作物には、いわゆる劇場用映画だけでなく、我が国の作品が国際的にも高い評価を得ている、アニメ、ビデオ、ゲームソフトの映像なども含まれますが、その保護期間は「公表後五十年」とされております。これに対し、一般の著作物の保護期間は「著作者の死後五十年」とされており、これには「著作者の生存期間」が含まれております。このため、映画の著作物の保護期間は、一般の著作物の保護期間と比較すると「著作者の生存期間」の分だけ実質的に短いという状況にあります。また、他の先進諸国においては、公表後五十年という条約上の義務を超えて、より長い保護期間を法定することが一般化しております。このような状況を踏まえ、内外における我が国の映画の著作物の保護を強化するため、映画の著作物の保護期間を「公表後七十年」に延長するものであります。
 第二は、教育の情報化等に対応して、教育のための著作物の利用を円滑化するため、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる範囲を拡大することであります。
 具体的には、授業の過程で使用するために学習者が複製を行う場合、遠隔授業において教材等の公衆送信を行う場合、インターネット等を用いた試験等における問題として公衆送信を行う場合、いわゆる拡大教科書を作成する場合を、著作権者の許諾を得ずに著作物を利用できる例外に加えるものであります。
 第三は、著作権が侵害された場合の司法救済制度について、これをさらに充実するための規定を設けることであります。
 著作権の侵害訴訟においては、権利者みずからが、侵害行為や損害額を立証することが必要ですが、著作物等の利用形態の多様化に伴い、その立証が困難な状況が生じております。このような状況を踏まえ、裁判における審理を促進し、侵害行為への迅速で有効な対応を推進するためには、権利者の立証負担をできる限り軽減することが必要となっております。このため、まず、侵害行為についての立証負担を軽減するため、原告が侵害品だと主張するものを被告が否認する場合には、被告自身が自己の行為の具体的態様を明らかにする義務を負わせることとするものであります。次に、損害額についての立証負担を軽減するため、侵害品が販売された数量を、権利者が販売し得たものとして、その数量に正規品の単位当たり利益を乗じて損害額を算定できることとするものであります。
 最後に、施行期日等についてであります。
 この法律は、平成十六年一月一日から施行することとし、所要の経過措置を講ずることとしております。
 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。
 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
     ――――◇―――――
古屋委員長 この際、理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。
 委員の異動に伴いまして、現在理事一名が欠員となっております。その補欠選任については、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。
 それでは、理事に佐藤公治君を指名いたします。
 次回は、来る十一日水曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
    午後零時四十八分散会


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