衆議院

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第18号 平成15年6月11日(水曜日)

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平成十五年六月十一日(水曜日)
    午前九時三十分開議
 出席委員
   委員長 古屋 圭司君
   理事 奥山 茂彦君 理事 鈴木 恒夫君
   理事 馳   浩君 理事 森田 健作君
   理事 鎌田さゆり君 理事 山元  勉君
   理事 斉藤 鉄夫君 理事 佐藤 公治君
      青山  丘君    伊藤信太郎君
      小渕 優子君    大野 松茂君
      岡下 信子君    上川 陽子君
      岸田 文雄君    佐藤 静雄君
      谷田 武彦君    中谷  元君
      林田  彪君    福井  照君
      松野 博一君    森岡 正宏君
      柳澤 伯夫君    大石 尚子君
      鳩山由紀夫君    肥田美代子君
      平野 博文君    藤村  修君
      牧野 聖修君    松原  仁君
      山口  壯君    池坊 保子君
      東  順治君    黄川田 徹君
      赤嶺 政賢君    石井 郁子君
      中西 績介君    山内 惠子君
      松浪健四郎君
    …………………………………
   文部科学大臣       遠山 敦子君
   文部科学副大臣      河村 建夫君
   文部科学大臣政務官    池坊 保子君
   文部科学大臣政務官    大野 松茂君
   政府参考人
   (文部科学省初等中等教育
   局長)          矢野 重典君
   政府参考人
   (文化庁次長)      銭谷 眞美君
   文部科学委員会専門員   柴田 寛治君
    ―――――――――――――
委員の異動
六月十一日
 辞任         補欠選任
  岸田 文雄君     上川 陽子君
  近藤 基彦君     福井  照君
  児玉 健次君     赤嶺 政賢君
同日
 辞任         補欠選任
  上川 陽子君     岸田 文雄君
  福井  照君     近藤 基彦君
  赤嶺 政賢君     児玉 健次君
    ―――――――――――――
六月九日
 日本育英会奨学金制度の拡充に関する請願(中西績介君紹介)(第三一〇七号)
同月十日
 国立大学病院薬剤部の組織体制の充実・強化等に関する請願(三井辨雄君紹介)(第三三六六号)
同月十一日
 国立大学病院薬剤部の組織体制の充実・強化等に関する請願(肥田美代子君紹介)(第三五五二号)
 日本育英会の存続と奨学金制度の充実に関する請願(石井郁子君紹介)(第三六六一号)
 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(大石尚子君紹介)(第三六六二号)
は本委員会に付託された。
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第一一八号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――
古屋委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、お諮りいたします。
 本案審査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長矢野重典君及び文化庁次長銭谷眞美君の出席を求め、説明を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡下信子君。
岡下委員 おはようございます。自由民主党の岡下信子でございます。
 とても緊張しておりますけれども、質問の機会を与えていただきまして、本当にありがとうございました。ただ、非常に時間が短いものですから、早速に質問に移らせていただきます。
 いわゆる情報化というものが進展するに従って、コピー機とかデジタルカメラ、コンピューター、インターネットなどを活用して、多くの人々がさまざまな情報やコンテンツを活用する時代になりました。一方で、情報化の影の部分と言われるネット上での誹謗中傷や名誉毀損という問題も起こってきております。人々が情報や著作物をつくったり使ったりしていくには、一定のモラルやルールが尊重されることが必要であると思っておりますが、そうしたものの一つにこの著作権があると認識しております。
 変化の激しい現代にあって、この著作権というものの本質的な部分について改めて考え、なぜ著作権を保護しなければならないのか、また守るべきものとは何なのかということを再認識する必要があるのではないかと思っております。
 これは、本質論として重要なことでございますので大臣にお伺いしたいのですが、著作権を保護する基本的な趣旨や、情報化時代における著作権の重要性といったことについて、大臣の基本的なお考えをお聞きしたいと思います。
遠山国務大臣 私は、著作権保護の水準というのは、一国の文化の程度をあらわすものだと思っております。
 その意味で、我が国は、明治三十二年から著作権法を制定したりあるいは国際条約に加入するなど、世界に冠たる著作権制度を保ってきていると思います。私は、人間の英知とか思想、感情、そういうものを著作物に対してあらわしてそれを保護していくということは、これからの社会でも極めて重要なものだと思っております。
 同時に、インターネットの発達のような時代の変化に応じて、著作権の保護の制度を順次改善していくということは大変大事だと思っておりまして、私どもといたしましても、インターネット等に対応した著作権制度の整備を逐次進めてまいったところでございます。さらに、創作された著作物等の文化的所産を多くの人が活用できるようにしていくということも大変大事だと思っているわけでございます。
 その趣旨で、今後とも、著作物の適切な保護を図りますとともに、著作物の円滑な流通の促進に努めてまいりたいと考えております。
岡下委員 大臣のお答えを受けとめまして、この改正の中で、一般の著作物の保護期間というのは、著作者の生存期間を含んで死後五十年という期間が決められております。我が国が非常に強い競争力を持っているアニメとかビデオとか映画、ゲームソフトなどの著作物については、保護期間というのが公表後五十年になっておるのを、今回、公表後七十年に改定しようということでございますので、それはもっともだと私は思っております。この改正については、全然異論はございません。
 次に、副大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の改正案について、全体的な趣旨について副大臣にお伺いいたします。
 今回の改正案は、既にこの国会に提出されている特許法それから種苗法、不正競争防止法などの改正案と同じように、政府が推進している知的財産戦略を実現するためのものと伺っております。政府の知的財産戦略はどのようにつくられて、現在どのように推進されており、そしてその中で著作権はどのように位置づけられているのでしょうか。そうした知的財産戦略の推進において、今回の改正案の内容はどのような意味を持つのでしょうか。お伺いしたいと思います。
河村副大臣 今回の改正案でございますが、今岡下委員も御指摘のように、特許法、それから種苗法、それから不正競争防止法や民事訴訟法、これと同様に、知的財産戦略大綱とか知的財産基本法に示されました政府全体の知的財産戦略、これを具体的に進めていこうとするものでございまして、知的財産戦略大綱と知的財産基本法に示されました政府全体の戦略の中で、著作権に関する部分は五つの分野がございます。
 つまり、第一に法律ルールを整備するということ。第二点には円滑な流通の促進。第三点に国際的課題への対応、海賊版等ありますが。それから四番目に著作権教育を充実させること。五番目が司法救済制度の充実。このように五つあるわけでございます。
 今回の改正案は、今御指摘申し上げました五つの分野のうちの、法改正による対応が必要な法律ルールの整備、それから司法救済制度の充実、この分野に係るものでございまして、これを関係者間で協議が調った事項順に今回の改正案に盛り込んだ、こういうことでございます。
 そのほか、円滑な流通の促進、国際的課題への対応、それから著作権教育の充実についても所要の施策を展開していくことになっておるわけでございまして、文部科学省といたしましても、今後とも、知的財産戦略を推進するため、その中でも特に著作権に関する施策、これを総合的に進めていかなければならぬ、このように考えておるところでございます。
岡下委員 ありがとうございました。
 今回の改正案の中には、教育のための著作物の利用を円滑化するために、例外的に著作権者の許諾を得ずに利用が認められる範囲を拡大するという内容が含まれていると思います。しかし、学校現場では、まだ著作権に対する意識が低くて、平気で違法コピーを行っているとか、それから無断でコピーできるのが当然だと思っている人が多いということも聞きます。また一方では、著作権侵害になるということを非常に恐れて、法律上自由にできる行為であっても行われていないというような話も聞きます。そういうことで、この新しい規定が実際の教育活動に活用されなければ、改正を行う意味はございません。
 学校教育活動と著作権の関係全般について、素人にも、だれにでもわかりやすいように、パンフレットのようなものをつくって全国に配付するとか、それから学校等への十分な情報を提供する、そういう普及活動がぜひ必要ではないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。お伺いいたします。
銭谷政府参考人 ただいま先生からお話がございましたように、著作物の創作手段や利用手段が急速に普及をしておりまして、著作権に関する知識や意識というのは学校教育の場においても不可欠なものになっていると思います。ただ、御指摘ございましたように、学校現場の教員などにつきましては、著作権に関する知識や意識が必ずしも十分でない面もあると認識をいたしております。
 今回の改正案のうち、特に教育機関等での著作物活用の促進に関する部分につきましては、改正の内容が学校現場での教育活動に適切に活用されるためには、御指摘のように、その内容が教員や子供たちに正しく理解されることがぜひとも必要である、こう認識をいたしております。
 このため、ただいまの御指摘を踏まえまして、改正法が施行されるまでの間に、今回の改正の内容を含めて、学校における教育活動と著作権の関係全体について、現場の教員や子供たちにわかりやすい形で解説した資料、パンフレットのようなものを作成いたしまして、広く関係者に配付をしたいと考えております。あわせて、一般の国民の方に対する普及啓発活動についても力を注いでまいりたい、こういうふうに考えております。
岡下委員 ありがとうございました。
 早く早くと思っておりましたら、随分と時間が早く終わりそうなんですが、最後に大臣にもう一度お伺いしたいと思います。
 今回の改正案には、いわば権利を強める改正、これはすなわち保護期間の延長、それから権利を弱める改正、これは例えば、今言った、権利者に無許諾で利用できる、そういう範囲を広めるということは権利を弱める改正でありまして、もう一つは裁判制度の改善といった内容が含まれております。
 多様な分野がカバーされていると思うのですけれども、今後、知的財産戦略を推進していく上で、著作権という分野についてはどのような施策を総合的に展開していかれるのか、大臣にお伺いをいたします。
遠山国務大臣 岡下委員御指摘のように、私は、日本の将来というのは、日本人の知的活動をもとにして、これを知的財産として戦略的に活用し保護していくことが大事だと思っております。
 我が省は、著作権以外に、知の創造ということで新しい装置をつくり出すこと、それから、それをいかに保護していくかということ、それから、それをいかに活用していくか、人材育成も含めてさまざまな場面で仕事をさせていただいておりますが、今の知的財産戦略ということで政府が初めて大戦略を立てているわけですが、その中でも我が省の役割は重大だと思っております。
 著作権に限って申し上げますと、これは、今回、法改正で、まさに御指摘になりましたように、権利を保護するのを強化するのと、それから活用をさらにしやすくして普及をしていくなどの角度からお願いをいたしているわけでございますが、今後、そうした施策のほかに考えておりますのが、既に副大臣からもお答えいたしましたけれども、一つは、円滑な流通を促進していくこと、これにつきましては、ビジネスモデルをつくったり、あるいは契約システムを構築したり、そういう支援を行っていこうと考えております。
 二番目には、国際的な課題へ対応する必要があるわけでございますが、これにつきましては、特にアジア地域におきます海賊版対策、これは非常に大事でございまして、それから国際的なルールづくりへの参画ということが大事だと思っております。日本の著作権制度についての非常に蓄積したいろいろな力というのは、各国からも大変信頼されておりまして、国際的なルールづくりにも日本のそうした蓄積した英知を反映していくというのは、大変有効だと思っております。
 それから三つ目が、著作権教育の充実ということでございまして、今御説明したように、学校教育の段階から著作権というものについて理解を深め、そして国民一般が正しく著作権を理解し、かつ活用していくということは大変大事だと思っております。
 そういった意味で、これからもこうした施策を総合的に推進することによりまして、知的財産戦略というものの実現に向けて積極的に取り組んでまいりたいと思います。
岡下委員 一つ、私、中国に行って経験したことでございますけれども、日本の古い、フランク永井の歌がカーステレオから流れておりまして、これは日本の歌だよと言いますのに、中国人は台湾の歌だと思っているんです。そういう海賊版というのが世界じゅうに広まっていくような懸念をそのとき非常に感じましたので、今大臣がおっしゃったような、知的財産戦略というものをきちっと打ち立てていただいて、これから先、今御答弁いただいたことをよろしく推進していただきたいと思います。
 本日は、どうもありがとうございました。
古屋委員長 肥田美代子君。
肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。
 著作権法の一部を改正する法律案につきまして、特に拡大教科書に関する部分を中心にお尋ねするとともに、この法改正に至った弱視の子供たちへの対策の充実について質問させていただきたいと思います。
 今回の法改正は、弱視の子供たちにとっては遅きに失した、そういうふうな感想は持ちますけれども、しかし、この問題が提起されましてから法案が国会に提出されるまでの時間としては、率直に言いまして異例の速さでございます。政府におかれまして迅速な対応をしてくださったことに、私は敬意を表したいと思います。
 さて、これまで弱視の子供たちのいわゆる拡大教科書をつくるのは、全国各地のボランティアの方々の努力に負うところが大でございました。今後、本改正案をよりどころにいたしましてボランティアの皆さんは作業を進めてまいりますけれども、今の段階で、実務的なことを二、三確認させていただきたいと思います。
 まず第一でございますけれども、拡大教科書と呼ばれているものの中には、教科書一冊丸ごとコピーして本の体裁にしたものだけでなく、何冊かの分冊を順次作成していくものもあり、また場合によっては、一部の見えにくいページだけを拡大する場合もございます。これらのすべてについて、三十三条の二の規定が適用されるかどうか。
 それから二つ目には、第二項に通知義務と補償金支払い義務の二つのことが規定されております。この両者の関係はどのようなことになるのか。
 それから三つ目でございますが、この補償金支払い義務についてですが、これは営利目的の場合のみに課せられるというわけでございますけれども、拡大教科書を作成しているボランティアの方々の中には、紙代とかコピー代などの実費を受けられる方も当然いらっしゃいます。このような実費の受け取りは営利目的に当たらず、ボランティアの方々は補償金を支払う必要がないと私は思っておりますけれども、以上三点についてお願い申し上げます。
銭谷政府参考人 三点お尋ねがございました。
 まず第一点目の拡大複製ができる範囲についてでございますけれども、著作権法の第三十三条の二第一項では、教科用図書に掲載された著作物すべてについて拡大して複製することができると規定をしております。したがいまして、まず、拡大複製できる範囲については、既存の教科書の全部についてでも、その一部についてでも適用されるものであるということでございます。
 それから、二つ目のお尋ねの通知義務と補償金支払い義務についてでございますけれども、ただいま申し上げましたように、第一項におきましては、既存の教科書の全部についても一部についても拡大して複製できる旨を定めておりますけれども、第二項においては、既存の教科書の全部または相当部分を拡大複製する場合について定めておりまして、これを教科用拡大図書と呼ぶこととしております。
 具体的な第二項の規定内容としては、そのような教科用拡大図書を作成する場合につきまして、通知義務と補償金支払い義務を課す旨を定めているわけでございますけれども、通知義務と支払い義務は対象となる者の範囲が異なっているということでございます。
 ちょっと長くなって恐縮でございますが、通知義務については、営利、非営利を問わず、教科用拡大図書を作成するすべての者に対して、もととなる教科書の発行者への通知を義務づけております。ただ、これは、例えばはがきや電話で教科用拡大図書を作成するということを伝えればよいというふうに考えております。
 一方、補償金の支払い義務でございますけれども、これは、こうした教科用拡大図書を営利目的で作成する者に対してのみ課されるというものでございます。
 最後に、三点目の、営利目的の意味についてのお尋ねがございましたけれども、営利とは、一般に、収益を上げた上でこれを構成員などに分配することを意味いたしておりまして、ボランティアの方々が実費の範囲内で費用を徴収するようなことは営利目的には該当しない。したがって、先生お尋ねの件について申し上げれば、この場合は、補償金を著作権者に支払う必要はないということでございます。
肥田委員 次に、大臣にお尋ねしたいと思います。
 今回の法改正の趣旨を生かしまして、文部科学省では弱視の子供たちのための教育をどのように充実していくか、それを伺いたいと思います。
 この問題は、実は、大きく二つに分けられます。第一は、弱視の子供たちへの教育環境をどう整備していくか、その対策が必要ですね。もう一つは、やはりその一部としての拡大教科書の問題があるというわけです。この両者を混同してはいけないと思うんですね。
 これまで弱視の子供たちは大変理不尽な扱いを受けてきたと私は思っております。ですから、私たちはこれから障害ということについて根本的に発想の転換をしなければいけない時期に来ていると思うんです。私たちは、ややもすると、心身の障害をその人の欠陥と見て、特別の場所で特別の処遇によって治そう、そういう考えに陥りがちでございます。しかし、今日の国際社会におきましては、そして国内においてもそうですが、障害は治療の対象ではなく、その人の個性である、そういう考え方が普通でございます。そして、その個性を尊重して、配慮されるべき個として、その個に合った指導を行うという流れになってきたと私は思っております。
 大臣は、障害児の心身のハンディを欠陥とごらんになりますか、それとも個性として尊重されますか。また、文科省は、個の尊重あるいは個を重視した指導とおっしゃっていらっしゃいますが、その指導上配慮されるべき個の中には弱視の子供たちも含まれておりますか。
遠山国務大臣 障害のある児童生徒につきましては、障害の種類あるいは程度に応じて、その可能性を最大限に伸ばして、児童生徒が将来自立し、社会参加するために必要な力を培うということは大変大事だと思っておりまして、さまざまな指導形態で教育を行っているところでございます。
 ことし三月に、今後の特別支援教育の在り方についての最終報告が出ましたけれども、その中でも、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行うことが提言されておりまして、私は、弱視の児童生徒につきましても、引き続き、個々の教育的ニーズあるいは必要性に応じた適切な支援に努める必要があると思っております。
 障害者のハンディは欠陥か個性かということでございますが、日本語はなかなか難しいわけでございますけれども、私は、欠陥というふうなとらえ方はどうかなと思いますね。それから、個性というのかどうかよくわかりませんけれども、少なくとも、その子の持っている資質の特性といいますか、そういうものであるように思うわけでございます。
 いずれにしましても、どのような障害のある児童生徒であっても、一人一人、その教育的ニーズに応じた適切な教育に努めるということは非常に大事だというふうに考えております。
肥田委員 大臣の御答弁に関連いたしまして、弱視のような障害を持つ子供たちの学ぶ場所、学ぶ場について伺いたいと思います。
 少しきつい言葉になりますけれども、これまで障害児教育をめぐる文科省や教育委員会の対応は、親の意見を十分聞こうとせずに、盲学校や養護学校に振り分けることを障害に配慮した指導と呼んできたと思っております。障害児の就学をめぐり、親と教育機関との間で対立とかトラブルが起きている、これがその証左だと私は思うわけでございます。しかし、今日では、障害はその人の心身の欠陥ではなく個性として認識され、私たちの発想もやはり大きな転換を求められておると思います。
 そういう時代の趨勢を踏まえましたときに、私は、弱視の子供たちにも、普通学級を選択できる、選択の自由が与えられるべきだと考えてまいりました。そのことを前提といたしまして初等中等教育局は今回の法改正を文化庁に要望されたと私は理解しておりますけれども、私の理解で正しいですか。
矢野政府参考人 委員のお尋ねの、まず、普通学級を選択できる自由ということについてでございますが、私どもといたしましては、障害を持っている児童生徒につきましては、一人一人の教育的ニーズに応じた適切な支援を行うことが重要であると考えておりまして、このために、弱視の児童生徒につきましても、それぞれの市町村、またそれぞれの学校におきまして、障害の種類、程度等に応じた適切な教育の内容及び方法、また教育を行う場を、専門家の意見や保護者の意見を聞いて、児童生徒にとって最もふさわしい教育を行う、そういう観点に立ちまして、そういう視点に立って適切に判断することが重要であるというふうに考えているわけでございます。
 なお、このことにつきましては、平成十四年、昨年の九月には、社会のノーマライゼーションの進展あるいは教育の地方分権、そういう考え方を踏まえまして、学校教育法施行令を改正いたしまして、盲学校等に就学すべき、そういう障害の基準に該当する子供でありましても、市町村教育委員会が、その障害の状態に照らして、小中学校において適切な教育を受けることができる特別の事情がある、そういうふうに判断いたしますときには、小中学校に就学させることを可能とする、そういう就学手続の弾力化を図ったところであるわけでございます。
 文部科学省といたしましては、今後とも、障害のある児童生徒のニーズに応じた教育を行うための制度あるいは施策の改善充実に努めてまいりたいと考えているところでございます。
肥田委員 次に副大臣にお尋ねしたいと思います。
 文科省の答弁の中には、これまで弱視の子供たちについては、見え方が多様である、そういう御答弁が続いてまいりました。盲学校で学ぶことがよいのかあるいは普通学級で学ぶのがよいのかということは、一概には言えないと思います。そうだとすれば、個を重視し、また、その個をどのように伸ばすかという親の考え方も尊重する必要があると私は思うんですね。ですから、盲学校で学ばせるか普通学級で学ばせるかということは、親の意向を最大限尊重すべきだというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
河村副大臣 委員御指摘の点でございますが、やはり保護者といいますか親が、一番自分の子供のことをわかっていると思いますので、親の意見を十分聞くということは非常に大事なことですが、一方、その専門的な所見というのもあると思うんですね。教育学、医学、心理学、そういった専門家もおられますから、保護者は、やはりそういう方ともしっかり話し合って、我が子のためにどの選択が最良であろうかということを十分考えた上で、最終的に親が決断される、できるだけそれを尊重する、そういうことが私は大事だろうと思います。
 やはり、そこに立つ、いわゆる教育を施さなきゃいかぬ側も一緒になってその子供を中心に考えていく、総合的に考えていくということが大事だろうと思いますが、一義的には、やはり親の御意見というのは非常に尊重しなきゃいかぬ、このように思います。
肥田委員 次も副大臣にお尋ねしたいんです。
 ここで、普通学級の授業風景を思い浮かべていただきたいと思うんですね。同じ四十五分間の授業の中で、弱視の子と普通に見える子がいるわけですが、お隣の子はぱらぱらと教科書をめくって読んでおりますけれども、弱視の子はルーペを使って時間をかけて必死に読んでいるわけですね。これでは平等な教育とは言えないと思うんです。
 文科省は従来から、お考えの中に、社会に出てからルーペで新聞を読むのだから、学校でもルーペで教科書を読むように訓練しておいた方がいいというふうにおっしゃるんです。
 ところが、私はこの考え方は完全に間違っていると思います。社会に出てからでしたら、新聞を読むのに十分時間をかけてもいいわけですね。ところが、教室の中で、限られた四十五分という授業の中で読みこなさなければいけないということは、弱視の子供たちにとっては大変な苦痛、苦労なんですね。
 つまり、普通学級で学ぶ弱視の子供たちは、国語や算数などの教科書、教科等についてほかの子供たちと平等に学ぶべき、この環境整備をしなければいけないことと、もう一つは、社会に出てから困らないような弱視者向けの学習や訓練を、例えばルーペなんかで訓練する、この二つが必要なんですね。それが私は個の尊重ということだと思うんですけれども、これまでの文科省の考え方はこの二つを混同していらっしゃったと思います。この二つは全く別のことです。そしてまた、別に実施しなければいけないことだと思います。
 それで、普通学級の中に弱視の子供たちがいるという前提で、先ほど申し上げた弱視の子供たちのみを対象とした訓練、そういうものをぜひ位置づけなければいけないと思うんですが、さらに申し上げれば、普通学級で他の子供たちと平等に学べることと弱視者向けの学習や訓練、そのバランスも必要だと思いますけれども、副大臣はこのことについてどう考えられますか。
河村副大臣 肥田委員おっしゃるように、社会に出てからのために今から準備していくということもあろうと思いますけれども、現実に、同じ教室で学ぶ場合には今委員御指摘のような問題があるわけでありますから、今回、拡大教科書等々についても、そういう環境整備をしなきゃいかぬということで、特に理科それから社会ですか、これはまだ十分ではなかったということでございますので、その点もきちっとやろうということで、拡大教科書をしっかり活用していただく、それによって学ぶ環境を少しでもよくしてあげよう、その障害者に合った教育をしようということになっておるわけでございます。
 一方では、やはり自立活動ということも必要でございまして、そのことは、これから社会に出てからのことも考えていかなきゃいかぬということですから、そのバランスということを今御指摘されましたけれども、そういう意味では、視覚補助具、ルーペ等もございますが、そういうものもうまく使いこなす、ちゃんとそれを育て上げる指導もしなきゃいかぬということで、両方相まってやっていくことによってまさに弱視の児童生徒一人一人の個性、障害の状況に応じた指導ができる、またその指導体制をきちっとつくっていくということが非常に大事だ、こう考えております。
 ことし三月の、今後の特別支援教育の在り方についての最終報告、これも、通常の学級に在籍する障害のある児童生徒を含めて、特別支援教育を進めることについていろいろそういう面の提言がされておりますので、これも十分踏まえた形で、まさに両方のバランスをとりながら、そして弱視の障害を持っているお子さんにとって、将来も考えながら一番ベストな方法をとっていくというのが教育のあり方だ、このように考えております。
肥田委員 今回の著作権法改正は、初中局から文化庁への要望、それが契機となっております。すなわち、何度も申し上げますけれども、弱視の子供たちが普通教室にいるということが前提である。そうだとするならば、弱視の子供たちが普通学級で学ぶために、弱視という個に応じた指導法とか教材とか、そういうものが開発普及され、そのための教員研修なども私は必要だと思うんですけれども、具体的にどのような状況を目指して、どのような施策を実施されていこうと思っていらっしゃるか。
 文科省はいつも弱視の子供たちは見え方が多様ですからとおっしゃる。しかし、見え方が多様だから何にもしないということでは許されないと思います。すべての子供たちの学ぶ権利を保障するために、極めて多様な、そしてきめの細かい対応が必要だと思いますけれども、普通学級で学ぶ弱視の子供たちへどういう総合的な施策をされるか、もう一度副大臣、お願いいたします。
河村副大臣 改めて御答弁申し上げたいと思います。
 委員御指摘のように、弱視の児童生徒、教科書を学習するとともに、その保有する視覚、視力を持っておるわけでございますから、これを活用して、そして器具も使いこなしながら上手な見方を育てるといいますか、表現があれでございますが、そういうやり方で、その子が持っている、残存するといいますか保有する可能性を伸ばしていく。やはりこれは、努力することによって、また周辺が支援をすることによって伸びるものだ、こう考えていかなきゃいかぬと思います。
 あわせて、それによって自立して社会参加ができる、それがまさに教育力であろう、こう思っておりますから、そういう視点でやっていかなきゃならぬわけでございまして、盲学校等の自立活動におきましては、個別の指導計画というものが作成をされ、そしてその指導を図るということで、拡大教科書も一緒に使って適切に円滑にやるモデル教育といいますか、そうした作成をやりながら、それをもとにして全国的に今広めておるようなわけでございます。
 先ほどちょっと触れましたように、今回の拡大教科書の中では、これまで不十分であった理科、社会にきちっと対応するということでございますし、また、盲学校とボランティアとの相互連携、これを十分連携をとりながら、弱視の児童生徒のための教育の充実に資する、そうしたネットワークもつくっていくということでございます。
 その中には当然いわゆる教員の研修ということも入ってくるわけでございまして、このたびの先ほど申し上げました特別支援教育の報告を踏まえて、さらに充実した教員研修を行いながら、弱視という一つの障害を持った児童生徒が社会に入っていって、できるだけ社会と一緒になって頑張れる、そうした教育を児童生徒の間にきちっとやる、そういうことで進めていかなきゃならぬ、こう考えておるところでございます。
肥田委員 多分、今副大臣がおっしゃったことは、盲学校、それから特殊学級の場合だと思います。普通学級にいる弱視の子供たちには教科書は全く用意されていないんです。
 それでは、総合的対策の一部であります拡大教科書、この問題に特化して質問いたします。
 私は、拡大教科書問題がなぜ今までこれほど先送りされてきたかということをみずからの反省も含めて考えてまいりました。それはまさに、文科省に、拡大教科書はすぐれて教科書問題であるという明確な問題意識が欠けていたと思います。
 例えば、事の重大さに気がついて、私たちが弱視者やボランティアの方々と拡大教科書フォーラムを開きました。その問題解決に向かって取り組みをし、お役所の皆さんが来てくださいましたが、そういう場所にいらっしゃるのは文科省の特別支援教育課長でありまして、教科書課からは課長補佐が出席されております。肩書が物を言う役所ですから、私たちは、今回の著作権法の改正は、やはり教科書の問題としてきちっと位置づけてもらわないと困るなというわけでございます。ですから、そのことにつきましてぜひ御認識を改めていただきたい。
 文科省は、弱視全体の問題ですからということで、私は、意図的に大きなところに教科書問題を埋没させてしまっていらっしゃるような気がしてならなかったんですね。ですから、全体として検討中ですというお答えがいつも来るわけでございますけれども、やはりこれが先送りの原因だったと思っております。
 これらの経過は、子供たちの幸せ、それから制度の維持、このどちらを大切にするかという、私は行政のあり方が問われていると思います。恐らく初中局にも理屈はあると思いますけれども、しかしその理屈は、私たち、それから弱視の子供たち、親御さんたちには通じないと思います。ですから、わずか千人です、恐らく千人ぐらいが普通学級に入っている弱視の子供ですけれども、その子供たちさえ救えない人々が、一千五百万人の子供たちの将来を託されて本当にいいのかどうかということを感じる人も少なくないというふうに私は思っております。
 そこで、大臣にお尋ねしたいと思います。弱視の子供たちへの対策全体ではなく、拡大教科書問題に絞って伺いたいと思いますが、昨年末議論されてきたこの問題につきまして、あるいは全体について検討中ということを繰り返してきたこれまでの初中局の対応につきまして、今どのようにお感じでいらっしゃるでしょうか。制度の内容とか検討状況についてお尋ねするのではなく、大臣の率直なお気持ちをお伺いしたいと思います。
遠山国務大臣 弱視の児童生徒につきましては、これまで、教科などの学習と同時に、その持っている視力というものを活用して上手な見方を育てる、それが将来自立して社会参加するのに大事だということでやってまいったと思います。
 いわゆる拡大教科書につきましては、弱視の児童生徒が教科の内容を理解するのに有効であるということから、文部科学省としては、その作成が適切かつ円滑に行われることが大事だというふうに考えてはいるわけでございます。
 このために、小中学校国語、算数、数学、理科、社会の拡大教科書モデルの作成などの取り組みも行ってまいりました。それから、今回、著作権法改正ということで、著作権の手続が簡略化されるわけでございまして、拡大教科書を作成する上で非常に大きな負担であったものが軽減されるということで、その作成が一層適切に行われるようになると思います。
 文部科学省としては、こうした初中局の取り組みにおいてさまざまな施策を推進してきたところでございますけれども、一定の努力を重ねてきている。今回、それを大きく踏み出して、拡大教科書をさらにつくりやすくしていくということにおいて大きな決断をして、今後そういう面の充実を図っていこうという姿勢であるわけでございます。
肥田委員 大臣のお考えはよくわかりました。
 それで、今まさにそばにある問題として考えていただきたいんですが、そうだとするならば、法改正の趣旨を最大限に生かすとすれば、私は、費用負担がぜひ大切な問題として話し合われなければいけないと思うんです。
 今教科書は、普通の子供たちはただなんですね。弱視の子供たちは一万円単位のお金を払っているわけですが、この負担というのは保護者にとって大変なんですね。ですから、これを本当に軽減する方向へ持っていかれるおつもりなのか。
 いろいろ方法はあると思うんですよ。文部省自身が教科書をつくってくださってもいいし、それから教育委員会が教科書をつくってくださってもいい。いわゆる教科書無償の制度でも私はいいと思います。また、ボランティアへの補助でもいい。御父兄への援助でもいい。学校への支援でもいいんですが、少なくとも、この改正案で経済的な支援をきちっと約束していただかないと、私は、今まで役所の方々からいろいろな答弁をいただきました。ところが、先に希望が見える答弁が出ないんですよ。
 ですから、今回ぜひ大臣にお願いしたいのは、関係者の方々に希望を与えられるような、そういう御答弁をいただきたい。ぜひ具体的に、経済的な援助も含めてお願いしたいと思います。
遠山国務大臣 拡大教科書につきまして、著作権法上のこれまでの難しさがこれで解除されるわけでございますので、私どもとしましては、拡大教科書をぜひとも、できるだけ無償という形で、実質的に無償というふうになるように予算措置をしたいと思っております。
 いろいろな、どこでつくるかとか、どんなふうにつくるかとか、研究が必要な面もございますけれども、できるだけ早い機会に、できれば来年の四月から子供たちが親御さんの負担を経ないで適切な拡大教科書が使えるように、来年の春から弱視の子供たちの笑顔が見られるように、何とかしたいと思っております。
 もちろん、これから研究をして、予算要求をして、それを獲得してという大変な作業がございますけれども、私は、これは初中局と一緒になって、何とかその方向に向けて歩み出したいと思っております。(発言する者あり)
肥田委員 ありがとうございます。私たちもぜひ応援団にならせていただきたいと思います。
 終わります。
古屋委員長 鎌田さゆり君。
鎌田委員 おはようございます。御心配をおかけしました。行ったり来たりしておるものですから。民主党の鎌田さゆりでございます。
 私も、まず拡大教科書のことからお伺いしようと思ったんですが、ただいまの肥田議員とのやりとりで、最終的には、いい答弁、久々に出たという声もかかったようでございますから、ただいまの遠山大臣の御答弁は、拡大教科書の充実、これを望んでいる方々にとって将来への夢とか希望になった答弁だったのかなというふうに、私は、そのかけ声を聞いてそんなふうに思ったんですが、答弁の方には余り感じなかったんですね。
 肥田議員ともあったと思いますが、もう一度、改めて確認をさせていただきます。
 今回、著作権法を改正して、そして拡大教科書というものの実現を見るに至ったわけなんですが、私たちからすれば、昭和の年代から視覚障害者あるいは聴覚障害者の方々にとっての著作物、公共の著作物の利用をもっと利用しやすくするという附帯決議がそれぞれの国会で出されておりますね。歴史的に見ますと、昭和六十三年からとか、平成元年とか、平成三年とか、それぞれのいろいろな著作権に関する法案を改正しながら、「視聴覚障害者等の障害者が、公表された著作物を適切公正に利用することができる方途を検討する」というのは必ず入っていまして、何でこの間、文部科学省さんが拡大教科書、拡大図書を検定教科書として位置づけられなかったのか、何で弱視者が著作物を享受するために必要となる拡大写本等の作成に関する規定を置いてこなかったのかというような疑問の思いを改めていたすものでございます。
 それでなんですが、最終的に今、経済的なところでのいい答弁があったと思いますけれども、今回の法改正で要望をしている人たちの声にこたえることにはなりましたが、やはりこの問題は、文部科学省がみずからのテーマとして主体的に現状を変えていくということ、その努力を私はしなければいけないと思うのですが、いかがでしょうか。
遠山国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、拡大教科書を作成するということにおいて、著作権法上の制約がなくなるということでございますので、これは大変福音だと思いますが、さらに一歩進めて、それを利用する子供たちが拡大教科書を大きな負担なく利用できるようにするために、私どもとしては来年度のそれの実現に向けてこれから予算要求もしっかりして、経済的な面でも対応したいというところでございます。
 もちろん、専門的にはいろいろ難しい問題があるようでございますけれども、何とかそれを乗り越えて、そういう方向でやっていきたいと思っております。
鎌田委員 専門的なところはなかなか難しいことがあるけれども、乗り越えていきたいという御答弁をいただきましたので、具体的に検定教科書として位置づけたり、それから点字による複製等は認められていますが、それでは違うということ、そういったものをおっしゃっているんだろうと――首をかしげていらっしゃるのは違うのかしら、私は、さっき質問のときにはそういう意味を込めて、そういったことについての現状を変えていく努力をすべきじゃないかというふうに質問したものですから、ぜひそこを期待したいと思います。
 関連してなんですが、教科書の印刷に際してのインク使用についてお伺いをします。
 今、さまざまな化学物質によります健康障害が起きておることは、皆様御存じかと思います。シックハウス、シックスクール、これらの症状で苦しんでおられる方々は、統計上は未知数だとも思いますけれども、やはり見過ごすことのできない、現実に苦しんでおられる方がいるということは認識をしなければならないと思います。
 実は、教科書に使われているインクがもとで健康被害、シックスクール、そして最悪不登校になるケースもあるという話も聞いております。
 それで、いろいろインターネットの方で調べてみましたらば、そういったインクの改善を要望している団体がもう既にあって、文部科学省の方にもその要望を出し、そして文部科学省の中にも検討する部署をつくり、それで平成十五年一月のときには、教科書の印刷インクを改善するということを即答で文部科学省の中の職員の方がお答えになっているようで、私は、大変これは評価に値する、順調に進んでいるんだなと思います。
 大豆インクというものを用いた方がより健康障害、被害を受けないんだという具体な要望も出ておりますが、今後、教科書のインクの使用について、健康障害を起こしている方々への配慮ということについての見通しをお話しください。
矢野政府参考人 教科書におけるインク使用の問題でございますが、教科書は学校の主たる教材として重要な役割を果たしていて、まさに使用義務が課せられているものでございます。そういう意味で、教科書を使用することで体調が悪化するというふうなことがあってはならないわけでございます。そういう意味での適切な対応が必要であるわけでございます。このため、文部科学省といたしましては、教科書発行者で構成されております社団法人教科書協会に対しまして、教科書に含まれる化学物質とアレルギー発症の因果関係についての調査研究を要請しておりまして、現在、調査が進められているところでございます。
 現段階における調査の状況でございますが、御指摘の教科書で使用しておりますインクにつきましては、教科書協会が印刷工業会を通じて成分分析を行いましたところ、厚生労働省において室内空気汚染、いわゆるシックハウスでございますが、そのガイドラインとして指針値が示されておりますホルムアルデヒド等十三の化学物質、これがその要因というふうに考えられているわけでございますが、その十三の化学物質については、教科書で使用しておりますインクについては検出はされなかった、そういう調査結果が現段階では報告されているわけでございます。
 しかしながら、実際に教科書を使用することで体調が悪化すると訴える児童生徒がなおいるわけでございますことから、当面の措置といたしましては、教科書協会におきまして、保護者からの求めに応じて教科書のカラーコピーを配付するなどの対応を既に実施いたしているところでございます。
 今後とも、このような措置を講じますとともに、引き続き、教科書に使用されているインクも含めまして、教科書の原材料に含まれる化学物質とアレルギー発症の因果関係等については、なお調査研究を進めてまいりたいと思っております。
鎌田委員 鋭意調査研究を教科書協会とも連携をしながら進めているというお話でございましたので、ぜひそれは精力的に進めていただきまして、特に具体に大豆インクというものの使用を要望している方々も多いわけなんですね。インクというと、もともと石油を主成分にしていて、地球に対してははっきりこれは優しくない。しかし、大豆インクというものは毒性が少なくなる、そして燃やしたときに発生する毒物も少ない、印刷物を再生するときにインクと紙が分離しやすく、非常に地球環境にも優しい、そしてそれを使う子供たちにとっても健康障害をより起こさないで済むというふうに具体的に要望も出ておりますので、ぜひ、大豆インクを中心にそこのところの調査研究も進めていただきたい、そのように要望を申し上げたいと思います。
 教科書のことについては以上なんですが、著作権法の一部を改正する法律案につきまして、具体に今回のほとんどの内容を占めておりますそちらの法案の内容についてお伺いいたします。
 改めてなんですが、著作物というのは何かということについての定義をお示しください。
銭谷政府参考人 お尋ねの著作物とは、著作権法におきましては、「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」ということとなっております。具体的に申し上げますと、小説、音楽、絵画、映画、写真、コンピュータープログラムなどが含まれるわけでございます。
 なお、これらの著作物について、著作権によって保護されているのは表現であって、アイデアではないので、表現を無断利用すると著作権侵害になりますけれども、アイデアそのものの無断利用は著作権とは関係しないということになります。
鎌田委員 まだ、アイデアの方は次だったんですけれども、もうお答えをいただいてしまいました。
 今、おっしゃってくださったとおり、まさにアイデアは著作権保護の対象にはならない、表現の方に入るのでしょうか。粗筋は著作権保護の対象になるということだと思うんですけれども。しかし、現実、著作者の方々の現場というか現実のところでは、ここのところが正しく伝わっておりませんで、表現、それから粗筋、アイデアも、これ自体が著作権侵害の対象になる、保護の対象になるというふうに誤解というか、そのような認識を持っている人がたくさんいらっしゃいます。
 今回の著作権法改正が国会に上がりましてから、私の方にメール、ファクスで、日本の現状はこうなっている、アイデアは盗まれたら、その権利は主張できないんだ、そのアイデアをしっかり守るようにちゃんとただしてくださいという声が上がりました。私も、ちょっと不勉強でわからなくて、改めてお聞きをし、調べましたらば、やはりアイデアはそれに当てはまらないということなものですから、ぜひそこのところを、これを機会に、非常に重要な知的財産権でございますから、もっとこれをきちんと正しく認識してもらえるような周知というものに努力すべきではないでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど申し上げましたように、著作権は表現を保護するものでございまして、表現されていないアイデアを無断利用しても著作権侵害にならないというのは御指摘のとおりでございます。ただ、著作権はアイデアも保護していると誤解している人が依然として多いというのは御指摘のとおりだと思いまして、このことは私どもも認識をしているところでございます。
 ちょっと一例を申し上げますと、例えば料理のつくり方ということがありますけれども、ある料理人の方が自分の考えた新しい料理のつくり方を本として出版した。そうした場合に、料理のつくり方が表現されたその本自体を無断でコピーしたり売ったりすると、それは著作権の侵害になる、表現を盗用したということで著作権の侵害になります。ただ、アイデアそのものである料理のつくり方に従って料理をつくってそれをお客に出すということをしても、それは著作権の侵害にはならないということでございます。
 もう一つ例を申し上げて恐縮でございますが、薬品について申し上げますと、新しい薬品の製法が表現された論文自体を無断でコピーして売ったりすることは著作権の問題になりますけれども、薬品の製法に従って薬品をつくるというのは、その新しい薬品の製法がもし特許権を得ていれば、それは特許侵害になるということになります。
 いずれにいたしましても、今日の社会では著作権というのは多くの人にかかわる問題でございますので、私どもも、御指摘のとおり、正しい著作権知識の普及ということは大変大事なことだと思っておりまして、文化庁といたしましても、さまざまな手法を用いまして、国民一般に対する著作権の普及啓発活動について努力をしていきたいというふうに考えております。
鎌田委員 いろいろ例を出していただきましたけれども、私、これを機会に、この著作権法というもの、法律は地味ですけれども、しかし、社会に出たときというのは、まさに私たちの毎日の生活と、小説も映画も、さまざまなものが密接にかかわっておりまして、大変重要なテーマでありますので、おっしゃいましたとおり、その普及啓発活動、これはぜひ力を入れていただきたいと思います。
 私も、体験上、これでも一応作詞家を目指したときなどは、放送局から作詞の公募があったとき、それに応じまして何編か出しました。しかし、そのときに放送局から来たのは、この応募された作品についての権利一切はあなたには帰属しない、放送局、公募している方に帰属するんだから、後で何が起きても一切……というような表現の紙が来まして、ああ、そういうものなのかしらと思いましたけれども、しかし、これこそまさに、そのことに対して例えば異議を申し立てて、このつくった詩編については私のところに権利がちゃんとあるんだということを主張しておけば、もしも間違ってその曲が、歌が大ヒット、爆発したときには、ちゃんと自分の権利を主張できるわけですよね。
 だから、そういったところを、今の若者たち、そういう文芸活動をしている方々、目指す方々もたくさんいらっしゃる。小さい子供たちも同じですので、ぜひ、やさしく簡単に、その普及啓発活動というものの充実を進めていただきたいと思います。
 関連して、著作権の登録制度についてお伺いをいたしますけれども、著作物の登録制が日本にもあるというふうにお伺いをしておりますけれども、その登録制について御説明いただきたいのと、登録することによってどのような効果があるか、お示しください。
銭谷政府参考人 いわゆる知的財産権の中にはさまざまな種類がございまして、例えば特許権の場合は、発明の新規性、進歩性、産業有用性などの条件を備えたものに限って権利が付与されるということから、これらの条件に合致しているかどうかが審査をされて登録されることによって権利が発生をするということになっております。
 これに対しまして、著作権の場合は、登録等を必要としないで、すべての著作物について、その創作の時点で著作権が自動的に付与される。これがWTOを含む国際ルールとなっておりまして、登録されたもののみに著作権を付与するような制度は、条約によって禁止をされているわけでございます。
 しかしながら、今先生からお話がございましたように、登録制度というものも、著作権については別途設けております。これは、例えばペンネームで出版されたものについて、だれが本当の権利者かがわからないと契約上不便が生ずる場合があるといったようなことや、著作権の譲渡が行われた場合に、そのことを証明する手段がないと取引の安全が確保されないといったようなことから、一定の場合には登録を行えることが著作権法上規定をされております。
 具体的にはどういう登録ができるかと申し上げますと、実名の登録でございますとか、第一発行年月日、第一公表年月日、プログラムの著作物の創作年月日、権利の移転などにつきまして、文化庁へ登録を行えるということになっております。
 登録したらどういうことになるのかということでございますが、これは、権利は最初からあるわけでございますので、権利を得るというものではございませんが、登録を行うことによって、登録された事項が正しいものと推定をされたり、他人に対して正しい権利者であると主張できることが可能になるという効果があると思います。
鎌田委員 ありがとうございました。
 この登録制度も、やはり誤解が多いんですね。まさに著作権を登録することによって、保護するための登録制度だというふうに誤解をしている方々も地方に多い、地域に多いということ。そしてまた、アメリカの登録制度と比較をして、アメリカの登録制度も同時に誤解をしながら、アメリカでは保護するいい登録制度があるのに日本には登録制度がないというふうに、本当に誤解をなさっている方々も多くいらっしゃいますので、ぜひ、この登録制度の正しい現状を周知徹底するということ。
 そしてさらに、今、著作権をとるということは、国際法上でもそういうルールにはなっていないという御説明をいただきましたのでわかりましたが、それ以外に、著作権の取引を保護する、それに資するようなもの、これをこの登録制度につなげて検討していく必要性があるのではないかなと私は思うのでございますけれども、もし検討なさっているのであれば、その状況、そして今後の見通しなどをお話しいただければ。お願いします。
河村副大臣 委員御指摘のように、確かに、この著作権の登録制度は、契約の安全性を確保するという観点からも、だんだんインターネット等でも非常に著作権とかかわり合いが深くなってまいりましたので、いろいろな問題点が出てくるのではないかということで、文化審議会の著作権分科会において、今後の登録制度のあり方について検討を開始することになっておる。これは今からでございますが、そうした検討の結果を踏まえながら登録制度を充実させていきたい、こう思っております。
 今即ではなくて、これは今から、こういう問題が出てまいりましたものですから検討を開始する、こういう状況でございます。
鎌田委員 ぜひ、その検討会におきまして、充実した登録制度のあり方などを御議論いただきますように御期待をして、終わります。
 ありがとうございました。
古屋委員長 佐藤公治君。
佐藤(公)委員 自由党の佐藤公治でございます。前回に引き続き、大臣、副大臣とは大変近い距離で話ができるので、またいい議論ができればと思っております。
 その前に、本日も委員の出席率が余りよくない。確かに、本日いろいろな委員会が開かれておりますので皆さん大変だと思います。この国会における委員会の審議に関しての委員会のあり方というのも、今後考えていかなきゃいけないのかなという気がいたします。また、テレビを見ている方々もいらっしゃると思いますので、今、委員会、人が少ないので、早く皆さん出席するようにしていただけたらありがたいと思います。
 さて、本日の質問に関してですけれども、私以外は皆さん女性の方々ばかりなので、私のときは河村副大臣の顔もちょっと厳しくなるのかなと思いますが、前提としては賛成という立場で質問をさせていただきますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 ダブることは避けたいと思いますが、参議院での議論の中で、委員の方がおっしゃられている部分がございました。「この改正は現に行われている違法行為を合法化するためのものなのでしょうか。それとも、これまでできなかったことをできるようにするためのものなのでしょうか。この点について確認のために伺っておきたいと思います。」こういう質問がございました。覚えていらっしゃるかと思いますけれども、このときに銭谷政府参考人は、「今後はより多様な授業展開が可能になるというふうに考えているところでございます。」と。
 実際問題、この質問に対して答えになっているとは私は余り思えないんですけれども、現状、この著作権に関して、学校教育関係の中でどういった状況であるのか、実態があるのか、問題があるのか。実際、違法行為でありながら今もこういったことが多く行われているのか、その辺が調査されているのかいないのか、このあたりを少しお答え願えればありがたいと思いますが、いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 学校教育現場における著作物の利用の状況について、定量的な調査というのはないわけでございますけれども、現実の実態を見ますと、必ずしも著作権法で認められた権利制限の範囲内だけの利用とは言えない部分があるのかなというふうに受けとめております。
 例えば、学校教育において、今回の改正との関連で申し上げますと、児童生徒が自分だけが学習用に使うために著作物を教材としてコピーすることは、私的使用のための複製ということに該当しますので、これは現行法でも著作者の許諾を得ずに行えることとされているわけでございます。このようなコピーはこれまでも行われていたと思います。ただ、児童生徒が、自分がコピーしたものをクラスの生徒に配付などして使うということは、これは無許諾で行うことはできないわけでございますが、そういうことが全くなかったかといえば、それは必ずしもそうではないということが言えるのではないかと思います。
 今回の改正は、学校教育において、児童生徒が、自分だけが使うためのほか、コピーしたものを他の児童生徒に配付などして一緒に使うということができるようになるわけでございます。その背景としては、やはり今日の学校教育が、調べ学習でございますとか総合学習あるいは個別学習、いろいろ授業形態が変わってまいりまして、また、情報機器の発達等がございまして、今申し上げたようなコピーの形態というのは今後ふえてくるだろう。また、それが学校教育上有用ではないかということで、権利者と学校関係者の間の話し合いをずっと重ねてまいりまして、その協議が調ったので、今回こういう法改正をすることにしたというものでございます。
佐藤(公)委員 これはとらえ方、説明の仕方で変わってくることでございます、結果的に同じことなんだと思いますけれども。
 法改正をするに際して、やはり問題点というものがどこにあるのか、現行の法律の中で、教育現場においてどういう問題点があるのか、この問題点というのをもう一度明確に御指摘願えればありがたいと思います。私が言いたいことは、今教育の現場で、子供たちの間で資料を配付し、お互いが学び合う、教え合う、こういうことがより必要な現状の中で、こういったことができない点が問題点であれば、そういうところになると思いますが、いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 基本的に、今回の学校教育における著作物の利活用の促進という改正は、時代の変化に応じまして授業の形態あるいは学習の進め方が大変多様化してまいりまして、そういう学習の進め方に対応した著作物の利活用を促進していきたい。そのために、権利者の方には若干の権利制限をお願いするということになるわけでございますが、基本的には、そういう時代の変化に対応した授業の展開、学習の仕方を多様なものとしていくことが必要になってきたというところからの改正でございます。
佐藤(公)委員 こういう改正が行われるわけでございますけれども、そこで、大臣、副大臣に少し御意見をお聞かせ願えればありがたいかと思うんです。
 確かに、この著作権法の改正に関して、大きな一つの柱として教育の充実というのがございます。まさに著作権という、社会でも最も大事な責任であり、義務であり、権利である、こういったものをきちっとわかっていく、わからせていく教育ということが大事だと思います。
 こういう話がずっと今までも参議院から続いて出てきているんですけれども、私も、この法案等、また関連の書物または記事、いろいろなものを見させていただき、またいろいろな方々からも話を聞きました。でも、ここで、教育という分野で実は最も大事なことというのは、著作権の権利、それに伴う責任と義務というものがある、これは当然であります。しかし、先ほど、学校現場でなかったとは言えないという部分のお話があったと思います。どういうことか。これは、社会全体と同じような共通の問題点があると思うのは、わからなきゃいい、ばれなきゃいい、こういうことがあるがために、そういったことが出てくるケースというのがあり得るんじゃないか。
 これは、実際問題、著作権のことは民民のことでございます。ですので、政府の方が余り介入すべきことでもないですし、民間同士の話し合いでありますけれども、僕は、学校現場、特に義務教育の中で、教育過程においては、この著作権の、まさに大人社会における入り口の一番大事な権利、また責任と義務というのを教えていくと同時に、もう一つ、その前提には、わからなきゃいい、ばれなきゃいい、こういったことがいけないことだということを徹底して教えていくことが、やはり、特に子供たちの間では最も大事な、文科省としての教育の大きな、ここには見えない部分の柱のように思えますけれども、いかがでしょうか。
河村副大臣 佐藤委員の御指摘、私ももっともだと思うし、そこのところがやはり教育の原点になければいけない、こう思います。
 著作権のことについては、やはりわかりにくいといいますか、先ほど銭谷次長も御答弁申し上げた中で触れておりましたが、学校現場でコピーを持ってくる、それをどこまで利用するかということについては、恐らく、今回の改正によって違法ではないけれども、むしろ違法を知らずに、そういうことを知らずにやっているケースの方が多かったんじゃないのか。先生方の中には、これはちょっとどうかなと思いつつもというのもこれまであったかもしれませんが、その辺を今回の改正によってはっきりさせる。大丈夫だよ、しっかりそれで授業をもっと活性化してくださいということにこれはなると思うのであります。
 しかし、やはり、著作権法というのはこういうものであって、ここからは法律の保護を受けている、ここ以上やると法律違反ですよということは、それぞれ学年段階によって教え方はいろいろあろうと思いますが、しっかり教えなきゃいかぬ。漫画なんかを使って教えたりもしているようでございますが、今回、この改正をいい機会にして、やはりその辺をきちっと教えて、法律はきちっと守らなきゃいけないということは、授業の中できちっとやっていく。そして、委員御指摘のように、こんなものはばれなきゃいいんだということではない、そういうことじゃないんだということをきちっと教えるということは、今回の改正を契機にさらに高めていくことが必要であろうというふうに思います。
佐藤(公)委員 私は、教育という分野、教育の充実の中で、そこの部分を、読んでいてまさに非常に大事な部分だと思いますので、そこにもやはり力点を置いて、教育の充実ということをしていただけたらありがたいと思います。
 そういう中で、まさに二つあり得るのは、一つは、やはり法律的な線引きのわかりやすい線引き、そしてまた、それをいかにわかりやすく説明をしていくか。その中での一つが、今副大臣がおっしゃられました漫画ということがございます。
 確かに、漫画というのはわかりやすい部分がある。でも、最近、これを何でも何でも漫画にしちゃうという安直な考えはいかがかなという気がいたします。特に、教育機関である以上、やはりそこは漫画じゃなくて、文章なりそういったものの理解、読解ということも含めて、わかりやすいんです、わかるんです、僕らもわかりにくい部分を漫画で見ると非常にわかりやすくなる。ただ、それを安直にすぐさま漫画に頼ってしまうというのは、決していいことではないように思えます。
 こういう部分をきちんと考えて、表現の部分、そしてその大もとになる、わかりやすい、きちっとしたルールというものを確立すべき。この表現とルールの確立というのは、まだまだ不十分な状態というか、あいまいな状態が多いと思いますが、副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 委員御指摘のとおりだと私も思います。特に、これから、インターネットを使ってダウンロードをすればどこからでも何でもやれるという時代でありますから、ここまではいいんだけれども、これ以上はやはり違法ですよということをきちっと教えなきゃいけませんし、また、そのことを教える教員側がきちっと理解をして教えませんと、これまた間違うおそれがございますので、そういうことも含めて、この改正を機にそういうことをきちっと徹底させる必要がある、このように思います。
佐藤(公)委員 よろしくお願いいたしたいかと思います。
 そして、先ほど私、鎌田委員の質問を聞かせていただいている中で、まさに著作権の定義ということの話がございました。これに関して、事前通告しておりませんので、銭谷政府参考人の方でちょっと御答弁願えればありがたいかと思います。
 確かに、アイデアというものは著作権に入らない。だけれども、この後質問することにも関連をしてきますけれども、今、アメリカ、特にハリウッドや何かは、映画づくりに関してネタ探しを大変一生懸命している。そういう中で、日本の特に小説、漫画、コミックというものが大変なアイデアの宝庫だと言われております。
 先ほどの御説明からすれば、確かに漫画というのも一つの表現、小説というのも一つの表現です。この中で、これをもとに形を変えた映像というものにした場合には、これは著作権ということでのものの流用ということになるんでしょうか。もしくは、これはアイデアという分野で、これとこれは別だということでとらえていくんでしょうか。いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど来、著作権によって保護されるのは表現であって、アイデアではないということを申し上げたわけでございます。ただ、その場合の表現というのも、映画という表現を一つ考えた場合に、その映画の表現の非常に重要な部分あるいはかなりの部分が無断で、別の場面といいましょうか、別の俳優とか場面設定などにして、実はほとんど同じような内容で表現されたという場合には、それは表現という観点から見て著作権侵害になることもあり得ると思いますけれども、要は程度の問題だろうというふうに思っております。
 最近よく海賊版とかリメーク版という話が出るわけでございますけれども、日本映画のリメーク、あるいは日本の漫画を原作とする映画というのも外国でかなりつくられているのも事実でございます。
 ただ、私ども、いろいろ調べてみましたところ、最近、そこは海外の映画会社ときちんと契約をして、制作が合法的に行われているという事例も多く見られるわけでございます。一例を挙げて恐縮でございますが、「ザ・リング」とかそういったようなものは、きちんと契約をして、アメリカの方で制作をしているという実態もございます。もちろん、CDとかゲームソフトなんかの海賊版が多いというのもまた事実でございますけれども、映画などについては、やはり大きな会社同士がかかわるものでございますので、契約はかなりきちんとやられているというふうに承知をいたしております。
佐藤(公)委員 契約をされているところは表に出ますからわかりやすい。でも、契約されていないところというのが、実際かなり多いとも言われております。
 そういう中で、今、日本政策投資銀行等は、ベンチャー企業の支援の柱として、アニメ、漫画、こういったものに対しても、まさに知財権担保融資ということで非常に投資をして、お金の調達がしやすくなるような入り口また環境ができつつあります。これは先進国に比べれば随分おくれていると私は思います。とりあえず一歩ということで進んで、より推し進めていただきたいというお願いをまず第一点させていただきたいと思います。
 でも、ただつくるだけではなく、この次にそれを守っていく、まさに著作権ということの関係からいえば、今まで議論されていたことというのは国内的なことが非常に多かったと思います。国外においては、そういったことでコミック、漫画等が映画化された、それがわかっているにもかかわらず何もできない。なぜかと言えば、まさに海外における調査能力、また手間暇、お金ということで、こういったアニメとかコミック、漫画等をやられている方々というのは中小零細が非常に多く、海外でそういったことがわかっても、経済的な面も含めて訴えることすらできない。
 これは、海外の分野ということを考えた場合には、この次に国全体、日本国における、まさに国力の部分、または資源の損失にもなっていく。そういう部分からすれば、これは海外における日本の著作権の流用ということに関して、やはり今業界がまだまだ未発展、未成熟な状態の中で、国内でも今非常に大変な状況なのに、海外に行ったら余計、そういったことがされていても泣き寝入り状態というのが実情だと私は思います。
 こういったことに関して、政府の方としては、民民の扱いだとはいうものの、まさに国の経済力、産業力、また資源ということからしたならば、やはり何らかの形で、海外における違法行為に対してのサポートなり後押し、もしくは、そういったものがわかった場合には経済的な支援をできるような仕組みなりを推し進めていくべきだと私は考えますけれども、大臣か副大臣、いかがお考えでしょうか。
遠山国務大臣 御指摘のように、本当に、中国を初めとするアジア諸国におきまして日本の著作物の海賊版が大量に流通しているわけでございまして、私は、これは放置することのできない深刻な問題だと思っております。
 海外におきます海賊版の生産、流通を防ぎますには、日本の権利者が自分の権利を主張して、侵害発生地における民事、刑事のシステムを活用して迅速に対抗措置をとらなくてはいけないわけでございますが、おっしゃるように、単に民民の話ではなくて、これは国としても大きな戦略性を持ってやっていかなくちゃいけないと思っております。
 その角度で、先般、知的財産戦略大綱ができまして、この問題に真剣に取り組もうとしているわけでございますが、三つ方法がございます。
 一つは、WIPOのような、WIPOというのは世界知的所有権機関でございますが、国際機関との協力を通じた国際ルール、侵害国への法整備への働きかけをする、これによって関心を強めていくということ。
 それから二番目には、二国間協議でありますとか、あるいは民間団体によって、最近、コンテンツ海外流通促進機構、これは昨年の夏でしたか、つくられまして、そことの連携協力などを通じて侵害国での取り締まりを要請するということをやります。これは、例えば日本と中国とのいろいろな定期協議がございますが、私も機会があれば中国に対してそれはしっかりやっていこうと思っておりますけれども、そういったことの要請。
 それから三つ目には、権利行使のための手引書を作成したりしまして、侵害国において日本の権利者がどうやったら権利行使がしやすいかということについて、官の方でもいろいろ支援をする、手引書をつくったりというようなことを考えているわけでございまして、これについては、我が省だけではなくて、経産省を初め民間団体とも連携をしながら、ぜひとも積極的にやっていきたいと思っておりますし、具体的に今そういうことが動きつつございます。
佐藤(公)委員 大臣から、今中国のお話、海賊版というお話が出ましたけれども、全く一緒の場合、わかりやすいケースというのは、問題の解決、方向性というのが非常にわかりやすいと思いますが、先ほどちょっとお話ししたような、例えば小説とか漫画が形を変えて映像になっていく、スチールになっていく、フィルムになっていく、こういうことにおいても、やはり日本の権利を主張する、こういう部分での手引き、指導、または法的な経費というものを、どこか何か業界団体も含めての支援体制というものをとれないだろうか、こういうふうに思います。
 確かに、政府のやるべきことの部分とそうじゃない部分というのがあると思います。私も担当官の方ともいろいろとお話をさせていただく中、担当官もいろいろとやられて考えていらっしゃる、これは僕はよくわかります。ただし、こういった分野に関しては、やはり日本は非常に出おくれておりますので、かなり強力な後押し、また姿勢によって、各省庁、もう内閣を挙げてより一層力強くやっていただけたらありがたいと思いますので、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 まさに今、大量生産、大量消費、大量廃棄ということから、レンタルとかいろいろなことにおける権利関係ということが、著作権だけじゃなく特許権もそうですけれども、社会全体の構造が非常に変わっていく中、今後、この辺を明確に打ち出した考え方、また線引きをしていかないと、社会全体に大変混乱を招いていくのかなという気がいたしますので、何とぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 あともう一点、最後ですけれども、この著作権の件ですけれども、映像等に関して、表に出てくるのは映画会社、テレビ会社、大きいところがその権利を持っているということになるんですが、実際これをつくっているのはその下請会社の方がほとんどつくっている。
 では、ここにおける権利関係というのは、民民の間で契約の問題じゃないかと言われればそれまでの話なんですが、実際、私もそういう中に多少いたこともございます。実際、上の方から言われたら、契約をきちっとしてくれと言っても、なかなかしていただけない、そんなことを言うんだったら仕事をほかに回しちまうぞと。でも、そういう中でもやっていく。いい作品をつくった、でも、それは全部上に吸い上げられていく。労働と契約ということに関しては、大変に悪い環境の業界だと私は思います。
 やはりこういう部分での改善というのも経済産業省と一緒になってやっていただきたいと思いますが、最後に河村副大臣、いかがでしょうか。
河村副大臣 今映画界のお話もございましたが、特に知的部分といいますか、知的財産本部もございますが、そういうものを活用して産業をどんどん興していく、これはこれからの日本の一つの誇るべきところでございます。それが、そういうことによって産業界が育っていかないということはやはり問題でありますから、文部科学省としては著作権とかそういうものを大事にしながら育成をする、支援をする、経済産業省は産業的見地から契約のあり方とかいわゆる中小企業対策とかを含めてしっかり連携をとって、そうしたものがしっかり興るように努めてまいりたいというふうに思います。
佐藤(公)委員 もう時間でございます。最初に話をしました、わからなきゃいい、ばれなきゃいい、これは、実は問われているのは大人社会だと僕は思います。そういうことを一番気をつけた教育の充実ということをお願い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。
古屋委員長 石井郁子君。
石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。
 映画の著作物については、欧米では保護期間が七十年以上、公表後七十五年以上ということであり、関係団体からも保護期間の延長が強く求められてきたと思います。また、ずっと議論がありますように、学校など教育機関での著作物活用を促進する内容となっておりまして、今回提出の著作権法の改正は技術の発展に対応した法整備だと私も考えています。一方で、著作権教育が不十分ではないのかという意見もやはり強くありますので、今後、この点での対応というか改善点も必要かというふうに思っております。さらに、著作権の侵害に対する司法救済については、権利者救済制度を充実させたものであります。以上の三点から、基本的にこの法案には賛成でございます。
 今回、私は、これに関連して、日本映画の振興について、私も映画好きの一人でございますので、質問をしたいと思います。
 ことしの四月二十四日、映画振興に関する懇談会から「これからの日本映画の振興について 日本映画の再生のために」という提言が出されました。提言には、すべての映画フィルムを保存することや映画撮影所への支援など十二の柱にまとめられているわけで、映画関係者の要望も一定盛り込まれているというふうに思われます。また、映画制作にかかわる者が安心して仕事ができるように、一般労働者のように環境の整備や、著作権、隣接権にも触れているわけであります。
 参議院の審議もありましたが、その中で、さまざまな方法によって実態把握を行って、労働環境をめぐる課題を明らかにして必要な検討をするという文化庁からの答弁もあったかというふうに思います。
 最初に大臣に伺っておきたいのですけれども、こうした提言、そしてまた参議院での審議、御答弁を踏まえまして、アニメを含めた映画振興を進めること、これが国に求められているわけでありまして、映画にかかわる人々、また映画振興を願う方々とも協力してこの方向で取り組んでいただきたいというふうに思うわけです。大臣のそのための実行への意欲を伺わせていただきます。
遠山国務大臣 ことし四月にまとめられました映画振興に関する懇談会の提言、私は、非常に内容も充実をしており、示唆に富む提言群であると思います。十二の柱がございますけれども、いずれも本当に大事な点だと思っております。
 映画の魅力あるいは映画の重要性については言うまでもないわけでございまして、日本の将来を考えたときに、文化立国ということで立っていくにも映画というのは非常に重要な手段だと思っております。アニメも含んで映画の振興というのをいま一度やりたい、これまでの文化行政の中で、初めて映画について特化した懇談会の提言だと思っております。ぜひとも、その提言を十分にそしゃくして、実現に向けて力強く歩み出したいというふうに考えているところでございますので、また委員の先生方の御支援をよろしくお願いいたします。
石井(郁)委員 それで、少し具体に入りますけれども、参議院の審議の中で銭谷文化庁次長から、監督、照明、カメラマンなどの職能団体の代表からヒアリングを行う、撮影所で働かれている方々から実態を伺うというふうに述べられたかと思います。
 撮影所には、社員だけでなくて、フリーの契約者も多数いらっしゃるわけですね。私ども、いろいろ各地を回ったんですが、京都の撮影所を調査したときも、未保障契約者の方から話を聞く機会もありました。聞きなれない言葉なんですが、未保障契約者というのはフリー契約者の呼び名で、現在は無保障ですけれども、今後保障されるべき契約者という意味から使っているようでございます。
 労働実態を把握するという点でいいますと、この方々は労働組合をつくっておりますので、そういう労働組合からも意見を聞くべきだというふうに思いますが、この点はいかがでしょうか。
銭谷政府参考人 先ほど来お話に出ております映画振興に関する懇談会の提言の中で、「映画製作に関わる者の労働環境の向上について、映画製作会社及び職能団体双方からの詳細な実態把握を行った上で、検討を行う。」ということが言われているわけでございます。
 こういった提言を受けて、私どもとしては実態把握を行いたいと思っているわけですけれども、その場合、必要な方々から幅広く意見を聞いていきたい。意見を聞く方の中には労働組合に入っている方々も含まれるかと思いますけれども、基本は、労働環境を把握するという観点から必要な方から幅広く意見を聞くということで、今後実態把握を取り進めていきたいというふうに考えております。
石井(郁)委員 それで、労働環境をめぐる課題を明らかにして必要な検討をするということの内容はどういうことになるのかなと思うんですね。それは予算措置も含めて検討されるのかどうか。また、今後の日程、いつごろまでをめどにして、そしてどういうふうにまとめられるのかというあたりのことをお聞かせいただけますか。
銭谷政府参考人 先般の映画懇談会の中でも、幅広い映画関係者の方々から私どもいろいろなヒアリングはしたわけでございます。そういった中で、やはり労働環境をめぐる課題をぜひ明らかにして検討を進めてほしいという要望が出たわけでございますので、私どもは、先ほど申し上げましたように、まず第一に、労働環境あるいは労働条件にかかわる課題を抽出して、課題ごとに実態や考え方の整理、検討を行いたいと思っております。
 その上で、私どもとしては、例えば労働災害の問題とか雇用保険の問題、公衆衛生の問題、賃金といった課題ごとに、必要に応じて、厚生労働省など所管する関係省庁に検討を要望したり、あるいは使用者側に改善を働きかける、あるいは課題を明らかにした上で一般からの意見を求めたり、あるいは状況の社会的な認知の向上に努めたり、いろいろな対応を検討してまいりたいと思っております。
 文化庁だけあるいは映画関係者だけの枠の中で解決できない課題というのもこの場合非常に多いわけでございますので、私ども、必要に応じて、さらに必要な調査を進めたり、あるいは関係方面へ所要の措置、この中には財政的なことをお願いすることもあり得るかもしれませんけれども、そういうことを依頼したり、制度改正が必要なものについてはそれの働きかけをするなど、これは息長く、しかし速やかに実態把握から取りかかっていきたいというふうに思っております。
石井(郁)委員 かなりいろいろな方面で検討されるというふうに期待をするわけですけれども、しかし、最終的にはもっといろいろなことをしなきゃいけないというものはあると思いますが、例えばヒアリングをされて、あるいは現場を調査されたりして、中間的にはいつごろまでにまとめられるとか、その辺のめどですね。息長くとおっしゃったけれども、ずっとかかったら困るわけで、いつごろまでに何らかの発表をされるとか、まとめられるとか、その辺の心づもりをもう少しお聞かせください。
銭谷政府参考人 先ほど来申し上げております労働環境をめぐる具体的な実態把握のための調査というのは、私ども、いろいろな方からのヒアリングでございますとか、あるいは場合によってはアンケートなどの手法を用いて、広範囲の関係者の方々から調査を行う予定を考えております。
 その時期、あるいは調査結果の整理時期というのは、今の段階ではちょっとまだ申し上げるところまで整理がついていないわけでございますが、いずれにいたしましても、その実態調査の結果というのは何らかの形で整理をして、問題点を明らかにしながら、また関係者と相談をしていくという手順を繰り返していきたいというふうに思っております。
石井(郁)委員 日本の映画制作の現場というのは本当にさまざまな問題がある、また、関係者の皆さんが、一言で言えばヨーロッパなどと比べて大変劣悪な状況にあるということをずっと言われておりましたから、ようやくこの部分で、この分野で文化庁として本腰を入れて取り組まれるのかなということでは、本当に重要な問題でありますので、ぜひ一定スピードも上げてやっていただきたいというふうに思います。
 次の問題なんですけれども、映画振興の大きな柱としては、やはり制作への支援ということがあるわけでございます。この点、提言の八ページには、事業者の自助努力を前提にはしますが、「日本映画の創造活動を活性化させ、多様で優れた日本映画作品の生産を継続し得る、製作と上映の創造サイクルの確立を目指す」というふうになっているわけであります。その上で、提言は、「新たな製作支援形態の導入」ということで、公的支援、あるいは民間からの投資、公的融資と三つの角度から述べられているわけです。
 民間投資については、信託の対象にするなど選択肢がいろいろ広がるという御認識もあるかと思うんですけれども、私は、やはり国会では、政治の問題としては公的助成、公的融資という問題を検討していかなければならないというふうに思うわけであります。
 公的助成は、既に文化庁の重点支援、新人監督支援、地域において企画される作品支援ということで、三つ合わせて約十三億円ぐらいかと思います。それから、日本芸術文化振興会から一億七千万円が出ているかというふうに思います。私も、新世紀アーツプランの改善とか芸術文化振興会の増資など、公的助成をずっと求めてきたところでありまして、来年度の予算にもぜひさらなる増額を要望しておきたいというふうに思います。
 あわせて、具体の改善点でちょっとお聞きしたいことがありまして、それは、公的助成が基本的に事業の後払いということになっていると聞いているんですね。小規模の映画会社では、やはり前払い制度でないと立ち行かないという実態があるわけです。それはそうですね、つくるのに大変お金がかかっていくわけですから。そういう点で、前払い制度というのを導入できないものかどうかということを伺いたいわけでございます。いかがですか。
銭谷政府参考人 現在、文化庁関係の映画制作への助成事業としては、先生がお話しになられましたようなさまざまな種類の助成事業、つまり、映画の多様な作品に対する助成事業を芸術文化振興会で、それから文化庁の方では、地域において企画された作品の支援あるいは年間を通じた制作活動の支援である芸術団体重点支援事業といったような事業を行って、日本映画の制作の充実に努めているところでございます。
 ただいまお尋ねの、これらの助成事業における助成金を支出する時期でございますけれども、私どもの立場としては、助成金を支出した作品が完成しなかったり、前払いを受けた制作団体がやむを得ず解散をして助成金が回収できないといったような危険を回避するために、原則として完成試写会等における支援対象作品の完成を確認してから支出を行っているのは事実でございます。
 ただ、芸術団体重点支援事業、平成十四年度から始めたものでございますけれども、これは、複数年にわたる支援ということもございまして、映画制作の進捗状況を確認して、完成の見込みがある場合には完成前であっても制作段階に応じた支援を行っているという状況がございます。
 このシステムを今後どうするか、課題だとは認識しておりますけれども、助成金が税金によって賄われているということを考えますと、完成しないものに助成するというのはなかなか困難な面もございます。
 なお、先生お話ございましたように、映画制作に当たりましては、やはり制作者の資金調達を容易にする仕組み、これが大事だと思っておりまして、映画振興に関する懇談会の提言でも言われておりますように、従来からの助成に加えて、公的融資の導入や民間からの投資を円滑にする制度の整備について、今後さらに検討を進めていきたいというふうに考えております。
石井(郁)委員 最近の日本映画では、独立プロダクションだとか小さい映画会社がつくる映画がなかなかすぐれたものがあるということは、世界でも認められているところがあるでしょう。今言われたように、確かに創造活動ですから、途中で変更になったり、できなかったりということはあり得るわけですよ。だから、そういうリスクはあるけれども、全額完成してからだというのでは、余りにもかたくなだというふうに思います。だから、もう少し柔軟に、一部の支給というやり方だってあるじゃないかとか、そこら辺をぜひ検討していただきたい。やはりかたくなな態度をとり続けない方が映画の振興のためになるのではないかということで、ぜひ強く要望しておきたいと思います。
 それで、もう一点は、公的融資でございます。
 私どもの党としても、また映画関係者の団体からも、独立の支援機関による日本映画振興基金という考え方、その要求はずっとあったというふうに思うんですね。この点も懇談会の分科会でも議論された、討議資料も出されたというふうに聞いているわけでございます。その議論の資料として出されているのは、映画制作を総合的に支援する独立機関の事業では、その融資の方法について、全作品を目標に、作品内容については審査しない、融資は無利子というイメージも示されているほどになっているわけですね。だから、制作資金の確保に苦しんでいる多くの映画人にとっては、これも大変望まれている方法であります。
 この点、映画振興基金を含めた映画支援について、中長期的な方向を展望してどのように考えるのか。また、文化芸術振興基本法と提言の精神を踏まえるならば、本気で今ここで日本映画振興基金というのを検討する時期に来ているのではないかというふうに思いますが、文化庁の御見解はいかがでございましょうか。
銭谷政府参考人 お話のございました日本映画振興基金につきましては、映画振興に関する懇談会の際も、「新たな製作支援形態の導入」の検討の中でいろいろと議論はされたところでございます。お話のあった構想自体も、その議論の中で大変参考になる提案と受けとめられております。ただ、しかしながら、現下の厳しい財政状況や経済状況下では、基金の創設は困難であるなど、さまざまな解決すべき課題がまだあるということで、提言の中では余り触れられていない結果になっているわけでございます。
 提言では、むしろ新しい制作支援形態の導入ということで幾つかの提言がなされているわけでございますので、私どもとしては、映画振興の観点から、こういう新しい制作支援形態の導入、特に多様な制作費用の確保方策について、関係府省や関係各方面とよく協議しつつ、鋭意検討していきたいというふうに思っております。
石井(郁)委員 ここで大臣に再度伺っておきたいと思います。
 冒頭、日本映画の振興についての大臣の大変力強い御所見を伺ったわけですが、今お聞きのように、具体的な支援ということになりますとなかなか、まだまだ難しい問題も抱えているということでございますので、私は、ぜひ大臣のイニシアチブを発揮していただきたいと思いますし、やはり日本映画の振興という点で、映画関係者とともにこういう公的融資あるいは財政支援等々の御検討をいただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか。
遠山国務大臣 私は、映画振興には大きなうねりのような機運というのも大変大事だと思っております。その意味で、今は大変機運が上がってきたなという感じがいたします。一九五〇年代から六〇年代にかけて、非常に有名な監督が輩出されまして、日本映画全盛期だったと思います。その後、いささか、どうかなという時代がありましたが、最近では、特にアカデミー賞をもらうアニメが出てきたり、あるいはそれ以外の劇映画的なものでも「たそがれ清兵衛」のようなすばらしいものもできてきつつあるし、やはり国際的には映画の持つメッセージ性、文化のメッセージ性というものに大変着目されてきた時代だと思います。
 このような時期に、文化振興ということは大変に大事な、我が国にとって映画振興はとても重要な施策だと思っています。今次長からもお答えいたしましたように、最も効果的な方法で、現在の厳しい状況ではありながら、最もいい施策をどんどん打っていくということが大事だなと思っているところでございます。
 もちろん、映画というのは、その事業者、制作事業者それから上映する事業者、それらの方々のみずからの努力が大変大事だと思いますけれども、それを前提にした上で、国もそれをバックアップしていく強力な体制が必要だと思っています。これまでは、国は海外市場を開拓したりというようなことはやらなかったわけでございますが、先般、文化庁の専門家もカンヌ映画祭に行きまして、日本映画のブースをつくって、そして国際的な映画の、それを買って利用する人たちに大いにPRしてくれております。
 今後とも、そういった形の幅広いいろいろな政策を打っていくということによって、私どもも映画振興ということを大きな政策の柱でやっていきたいと思います。河合文化庁長官も大変張り切ってくれておりますし、ぜひともその線でいきたいと思っております。
石井(郁)委員 少し時間がありますので、あと一つ二つだけ伺っておきます。
 俳優養成の問題なんですね。これは、古屋委員長のもとにも七万筆の署名が提出されていると伺っているんですが、現代舞踊協会、劇団協から、「学校教育の正課に舞踊・演劇を!東京芸大に舞踊学科・演劇学科を!」ということだと伺っているわけです。私どももこの間、現代舞踊協会の三輝理事長と懇談もしてまいりましたし、新国立劇場の栗山民也監督ともお会いをしてまいりまして、その中で非常に強調されるのは、オペラ、バレエでは養成研修機関があるのに、なぜ演劇部門ではないのかということなんですね。
 これは、ひもとけばヨーロッパではちゃんとそういうものがあるということもありますが、そこまでいかなくても、私たち、とりあえずというか少なくともというか、新国立劇場にやはり演劇の養成研修機関は置くべきではないか、その調査費ぐらいは急いで取りかかるべきではないのかというふうに考えております。そうしないと、本当にこの部分、人をつくるという点で世界におくれる国になってしまうわけですから、このことを強く要求しておきたいと思いますが、いかがですか。
銭谷政府参考人 我が国における演劇分野の人材の育成というのは、現在は大学の学部や専修学校、各種学校等の学校教育において行われているわけでございますが、これらに加えて多くの劇団が附属の養成施設を設けている実態がございます。この劇団の附属の養成施設というのは、演劇人養成にこれまでも大きな役割を果たしてきたというふうに認識をしております。
 国として、新国立劇場において演劇人の養成を行うのかどうかというお尋ねでございますけれども、現在は、まず国立劇場で歌舞伎などの伝統芸能の後継者養成をやっている、それから新国立劇場はオペラ歌手やバレリーナの方の研修を実施しているという実態がございます。そこで、演劇の研修については、これをいかに実施していくかというのが課題であるというのは私ども認識をしておりまして、冒頭申し上げました、我が国の演劇分野の人材養成の実態を見きわめつつ、調査検討を進めてまいりたいというふうに思っております。
石井(郁)委員 時間が参りました。私は、せっかくもう一つ、ナショナルギャラリーの問題を質問したいと思って、二年後にその完成年度が迫っているということで、その進捗状況を伺いたかったんですけれども、時間が参りましたので、以上で終わりにいたします。
 どうもありがとうございました。
古屋委員長 山内惠子君。
山内(惠)委員 社民党の山内惠子です。
 大臣には、いつもは最初に質問させていただきましたけれども、今回は最後に質問させていただきたいと思います。恐れ入ります。それで、担当の方にはたくさん質問したいと思っておりますので、端的にお答えいただけたらと思います。
 今回、著作権法の改正に当たり新設されました第百十四条についてなんですが、この百十四条は特許法の第百二条と同じ解釈をしてよろしいのかどうかについて端的にお答えください。
銭谷政府参考人 お尋ねの著作権法第百十四条第一項は、権利者による損害額の立証負担の軽減を図ろうとするものでございまして、損害額の立証について、海賊版の販売数量に権利者、つまり正規品の単位当たり利益を乗じたものを損害額として請求できるという点におきまして、基本的には、平成十年に設けられました特許法の第百二条第一項の規定と同じ趣旨のものでございます。
山内(惠)委員 ありがとうございます。
 ということは、著作権を侵害した側がその侵害行為によって得た利益を著作権を侵害された著作権者の損害額とみなすということ、これが、今のお答えとはちょっとニュアンスが違うんでしょうか、そのことだと思いますが、いかがでしょうか。
銭谷政府参考人 ちょっと御説明しますと、海賊版の販売数量に正規品の利益を掛けたものが損害額になるわけですけれども、海賊版の販売数量をベースにするというのは、その海賊版がもし売られなかったら正規品がその海賊版の数だけ売れただろうという想定をして計算していいですよということでございます。
山内(惠)委員 わかりました。
 では、そのことで次の質問に入りたいと思います。
 実は、私が今回質問したいのは、教材出版社による著作権侵害問題についてなんです。これは資料の中には入れていないんですけれども、市販のテスト、学校現場では、私も学校にいましたが、自分たちで作成してテストをするというのが基本なんですけれども、学校が忙しくなると市販テストを購入するという例が随分ふえています。
 今まで私が学校現場にいたときは、これはコピーなんですけれども、(資料を示す)例えば国語のテストの場合は、上に教科書に載っている物語文を抜粋したものを載せています。ところが、最近使われているのはこのような形で、これはテレビでも見ていただいた方がよろしいんでしょうか、「わらぐつの中の神様」というのを教材として使うとしましたら、教科書の六十二ページ六行目から六十五ページ二行目までを読んで答えよということを書いてあるわけですから、テストをするときには、横に教科書を置いて、そこのページを開いてテストをするということになっています。
 ということは、教科書に書き込みをしたり、子供たちが感想を書いたり、あのときに先生が言った解答はこれだったなんというのを書いている教科書は、テストのときに使うと困りますよね。その意味で、書き込みが不自由になるわけですから、なぜ、今までのように教科書の使いたい文言を載せておかないのかという問題が発生しているんです。実はきょうは、そのことを質問したい、それを解明していきたいということでの質問をさせていただきます。
 実は、全文が載っているところがあります。それは、著作権料をしっかり払って、そしてテストを作成しているということです。しかし、著作者が、これは載せないでくれと拒否をされた場合は、このように載せられなくなってしまう、教科書には載っているわけですが。そういうことです。
 現在問題になっている教材出版社による著作権侵害の損害賠償金の支払いについてですが、文科省の所管である日本図書教材協会、これは日図協と皆さん略しておっしゃっているそうですのでこの後は日図協と申し上げますが、日図協の加盟出版社による著作権侵害について、一つ目、損害賠償額の支払いの対象となる著作権者の人数、二つ目、そのうち損害賠償金の清算が済んだ人の数、それから未解決者の人数、これが三つ目です。また、これらの支払いや今後の著作権物使用については、日図協は幾つかの文学者の団体と協議をしたり協定を締結しているそうです。具体的にどのような団体と協定を結んだのか、四つお答えください。
矢野政府参考人 四点お尋ねがございました。
 日本図書教材協会、私も日図協と略させていただきますが、日図協に確認いたしましたところ、過去十年間で国語教科書に関連しての補償対象となる原著作者は、小学校向け教材につきましては四百四十九人、中学校向け教材につきましては四百九人でございます。そのうち、いまだ和解に至らない教科書著作者は、小学校向けの教材では九十五人、中学校向け教材につきましては九十八人でございます。したがいまして、清算済みの著作者は、残りの、小学校でいいますと三百五十四人、中学校でいいますと三百十一人につきまして、清算済みの著作者ということになるわけでございます。
 また、この教科書準拠教材において作品を使用することについてでございますが、これまでのところ日図協は、社団法人である日本文芸家協会及び小学校国語教科書著作者の会との間におきまして、過去の教材において作品を使用したことに対する補償及び今後の教材への作品の使用許諾に関する協定を締結したというふうに聞いているところでございます。
山内(惠)委員 それらの団体、今おっしゃったところですけれども、ほかにもあるというふうに聞いているんですが、児童文芸家協会、そういうところも結んでいらっしゃると聞いているんですけれども、それでよろしいですね。では、次に行きます。
 それらの団体はすべて文科省所管の団体のようですが、文科省は、そのような協定締結について、適切な指導や助言を行ってきたのでしょうか。
矢野政府参考人 今お尋ねの問題につきましては、これは教材の著作権使用に係る具体的な問題であるわけでございますが、これにつきましては、本来、民間企業でございます個々の教材会社の責任で処理されるべき性質のものでありますから、民間同士の個々の契約あるいは協定に、国としてこれまで、この問題も含めてでございますが、関与したことはございません。
山内(惠)委員 著作権法を今回しっかり改正するわけですから、未払いをやったり何かするところがあるわけですから、それはやはり関与していただきたいというふうに思います。
 今、日図協が今まで小学校、中学校の国語の教科書に作品が掲載された著作権者に対して、無断で作品を使用してきて、それで著作権侵害をしてきたということで、損害賠償金を支払うという内容の文書を私が入手しています。皆さんにお配りしました一枚目のプリントのところは、どれぐらい支払っていたかというのの本当の一例です。これは学研という大変大きいところで、私も存じている教材会社ですけれども、その中で、小学校五年生の「まなぶくん」、これは平成二年度一年間で十三円、それを合わせて八年間で百四円。それから、「まなぶくん」のところにもう一つチェックしておりますが、一年間で六円、合わせて四十八円。こんな金額です。これは、作家の富山和子さんがこのような明細を受け取ったということですね。ほかにもあるんですけれども、きょうは参考までにこれを持ってきたわけです。
 それで、教科書掲載作品の教材への使用に関する過去分損害補償ということで支払いをするということで、先ほどおっしゃったところと協約をしたので、十年間分支払うというわけですから、これ以上、あと二年間分お払いになったんだと思います。
 両協会が締結したのは二〇〇一年ですので、誠意を持って話し合い、具体的な提案をまとめましたとおっしゃるのですけれども、このことにつきまして、先ほど読み上げましたように、一年間で十三円、そして八年間で百四円という表を御本人がいただいたとしても、発行部数はどれぐらいだったのか、販売価格は幾らだったのか、そんなことが全く載っていないわけです。
 お聞きしましたところ、教材出版社の市場は、日図協の加盟だけでも年間五、六千億円以上になっているというふうに聞いています。今回改正された著作権法の百十四条は特許法百二条と同解釈ということですから、このたびの改正によって知的所有権の確立と著作権者の利益を擁護するということを盛り込んだわけですから、文科省は、所管する日図協が著作権者に支払っている、計算方法も不透明ですし極めて低額な著作権料との落差をどのように考えているのか、御見解をお聞かせください。
矢野政府参考人 先ほども申し上げましたように、民間の団体でございます日図協と民間人との間においてどれだけの著作権料を払うか、あるいはどういう条件でそれを払うかといったようなことにつきましては、これは法令に違反しない限り、まさに契約の自由、契約当事者間の自由な合意にゆだねられているものでございますので、したがって、それについて私どもとして、これが適当であるとかあるいは適当でないとかという形での関与というのはすべきものではないというふうに考えております。
山内(惠)委員 文科省としては、教科書に載せる教材に当たっては正式な手続をなさっているわけですよね。それが教材として市販されていく場合に著作権者がその正当な金額を受け取っていないという状況があるときに、この法案が今回生かされるわけですよね。そうなると、違反していることについてはどのようになるんですか。
矢野政府参考人 教科書の例をお引きになりましたが、教科書は、検定あるいは無償給与という形で国がきちっと関与しなければならない、そういうものでございます。
 ただ、教材という、そういう補助教材的なものにつきましては、一定の場合、例えばそれを学校で採用するかどうかについては、正規のルールがあるわけでございます。ただ、今のようなお話については、これは全く民間の当事者間にゆだねられているものでございますので、法令に違反しない限り、民間の当事者間の合意に基づくものということでございます。
山内(惠)委員 先ほどお答えいただいた中に、未解決者の数字、それから解決者の数字をお答えいただきましたけれども、これは日図協からお聞きになったんですよね。そうですね。そうなると、この日図協が大事なことをやっていないということになりますので、では、引き続いて次に行きます。
 今回、日図協の部分でですけれども、日図協とその加盟社からの過去分の損害賠償の支払い提案に対して、このような計算根拠が明らかになっていないものは受け取ることができないというふうな方がいまして、それを申し入れ書と言っているんですが、例えば、大岡信さんは、これを受け取るに当たって、よく見たけれども、早急に判断しかねるため支払いをしばらく保留するというふうに、署名をして日図協に言っています。それから、松山善三さんは、今回振り込まれる金額は、本来支払われるべき損害賠償の内金として受領いたしますというふうにしていて、全く納得をしていないわけですね。先ほどおっしゃったように、販売をすれば、その販売された数字掛ける幾らというふうに計算方法も今回はっきりしているわけですから、そこのところをしっかりしていただきたいというふうに思うんです。
 日図協との交渉の中で、申し入れ書を送った著作者は二百人以上いるわけです。その意味では、先ほどの数字が本当にそうだったのかはわかりませんが、確かに二百人以上いるというふうに押さえていらっしゃるので。
 この申し入れをしている作家の中心となっている方が、日本ビジュアル著作権協会の会員なんだそうです。この協会には、現在百六十人以上の会員がいます。そのほとんどが、小中学校の国語教科書に作品を掲載している人たちだそうです。マスコミの記事では、現在、小学校の教科書に掲載されている作品の五〇%近くをこの日本ビジュアル著作権協会の会員の作品が占めているということのようです。
 文科省として、日図協に対して、このような作家が加盟している団体、著作権管理団体と話をするように指導はしないんでしょうか。民間だから全く介入しない、これだけの声が出てきていることに対して、それは民間のすることだからタッチしないとおっしゃるんでしょうか。
矢野政府参考人 先ほど来申し上げておりますように、今御指摘の点につきましては、現在控訴審において係争中でございます。その中身につきましては、著作権料の額であるとかあるいはその条件といったようなことについて、当事者間において係争しているわけでございます。
 そういう問題について、先ほど来申し上げておりますように、例えば私どもの法令に違反するといったような内容がありますれば、それに従って指導することはあるわけでございますが、そういうものでない限り、これは当事者間の自由な判断にゆだねられるものというふうに考えております。
山内(惠)委員 せっかく法改正するわけです。しかも、計算方法もおっしゃっているわけですから、世の中に市販されているわけです、学校現場で使っているものです、そのことを考えると、この数字自体が本当におかしいものなので、これはちょっと精査しないと受け取ることができないとか内金としてとかということになっていますので、やはりこれは、日図協から先ほどもお返事いただいたということですから、日図協がしっかりするようにということぐらいは文科省としてちゃんと指示することが、この法案が守られる道筋だと思いますので、やっていただきたいなと思います。
 日図協にはほかにも問題があります。マスコミでもいろいろ取り上げられている白表紙本と言われている問題なんですが、この日図協が、加盟教材出版社に検定前の教科書見本本、白表紙本を流しています。だれが流したのか、文科省は押さえていらっしゃるんでしょうか。日図協は、白表紙本を各教科書の編集委員や執筆者から入手した、これは裁判の場面でそのように言っているんですけれども、それというのは本当でしょうかという疑いを私は持っています。
 日図協の清水厚実専務理事の名前で加盟出版社に配付された、平成十四年度用小中学校教科書白表紙本の注文についてという文書がございます。これは白表紙本の注文をとるという文書なんです、これは皆さんに配付していません。提供していただいた教科書会社の関係者の立場を考えて外部に公表したり貸し出すようなことは絶対に行わないでください、それから、原本の内容については、教科書会社へ直接問い合わせたり、意見を聞くようなことは絶対しないでください、そういうことを言って、日図協は皆さんにこの白表紙本を注文させているんです。
 誓約書というのまであります。「原本は提供していただいた教科書会社の立場を考え慎重に扱い、外部には絶対公表したり提供するようなことはいたしません。」という誓約書まで書かせています。
 きょう、皆さんにお配りしたのは、その注文書です、縮小してありますけれども。これを数えますと、小中学校合わせて百二種類の教科書の白表紙本です。これは、小学校だと上下巻ありますし、中学校は分厚いもの一冊ということになるでしょうから、実際には八百冊の白表紙本を入手しているということです。これは、小中学校の教科書のほぼ全部なんです。
 それで、教科書の編集委員や執筆者には、児童文学者はもちろん、各分野の専門家の方々がおられますので、この編集委員や執筆者からもらったという言い分をしていることは、この人たちはそうじゃないと考えているとしたら、この人たちの名誉毀損に当たるわけです。
 実際に、日図協が、いつ、だれから白表紙本の入手をしたのか、実名を挙げて報告をしていただきたいと思います。
矢野政府参考人 お尋ねの点についてでございますが、日図協からは、同協会及び教材会社の一部が検定申請図書、いわゆる白表紙本と言われるものでございますが、これを教科書執筆者等により検定決定前の時点で入手し、教材出版社に対して配付していたという報告を受けているところでございますし、また、どの編集委員または執筆者から入手したものかということにつきましては、先方に迷惑がかかるため申し上げられないということでございました。
 なお、この点について誤解のないように一言申し上げておきたいわけでございますが、いわゆる白表紙本というものは、教科書会社の所有に属するものでございまして、本来、教科書会社が、外部に配付することを含めて自由に処分できるものであります。それを外部に出さないということについて、これは文部省として、教科書検定の立場から教科書会社に対してお願いをしている、そういう性格のものでございまして、何か法令に基づいて制度上出してはいけないということを要請する、そういう性格のものではないということについては御理解をいただきたく思うわけでございます。
 いずれにいたしましても、白表紙本の管理につきましては、今申し上げた立場から、今後とも教科書会社に対して協力をお願いしてまいりたいと思っております。
山内(惠)委員 流出することは問題だと思われるからお願いをするわけです。やはり流出することは問題ですよね。だから、流出させないようによろしくお願いしますとお願いなさっているということですよね。
 そうなると、この流出は本当に問題だと私は思いますが、この入手先を、どこだったのかということを今お聞きしているんですが、それは相手に迷惑をかけるから日図協は報告できないと言っています。編集者だったり著作者だというふうに言い逃れをしているわけですけれども、これだけのものを注文とって集めるのに、そんなことが、八百冊ですよ、そのことをするというのは大変な労力ですから、それはできないんじゃないかと私は思います。
 その意味で、全社白表紙本を受け取っているということですから、どこから入手したのかは、きょうはお答えいただけないと思いますね、相手にと言っていますから。でも、後日、本当に編集者だったり執筆者なのか、実名を挙げてお聞かせいただきたいと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
矢野政府参考人 この白表紙本の性格またはその管理の問題につきましては先ほど申し上げたとおりでございますので、今御質問のことにつきまして、そこまでを民間の団体に要請することは難しい、適当ではないと私は思っております。
山内(惠)委員 不正があるときに、子供たちが使う教科書から市販のテスト、ワークブック、ドリルなどに使われているということが、もう裁判にまでなっているわけですから、そこのところは、お願いというのをやはり強化して、どういう形だったのか調査をしていただきたいということを申し上げて、次に行きます。
 謝礼金の謝という字と金と書いて謝金というのが言葉としてあるんです。白表紙本を流していた教科書出版社の責任も大きいと私は思いますが、教科書出版社側にも業界団体があるんですね。それで、教学図書協会、これは任意団体ですが、文科省所管の社団法人教科書協会と同じビルに入っているということがわかりました。任意団体がかかわっているんだけれども、文科省の管轄している社団法人教科書協会と同じビルにいるということがわかりました。
 今私の手元にあるのは、平成三年、日本――そうですか。わかりました。本当は最後に質問がありましたけれども、時間を守ります。
 大臣、きょうこのようなやりとりをお聞きになって、問題が山積していることをお感じになったかと思いますが、新たにこの法案を改正したわけですから、これが守られていくために今後どのようになさっていくか、御決意それから感想を含めて、一言いただきたいと思います。
遠山国務大臣 今回お願いしております法案のねらいというものは、今委員が御指摘の点とはいささか違う点だと思います。
 本法案でお願いいたしました幾つかの改正の実現について、その点についてはしっかりとやっていきたいと思っております。
古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。
 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案について採決いたします。
 本案に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、鈴木恒夫君外六名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び保守新党の七派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。
 提出者から趣旨の説明を求めます。山元勉君。
山元委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明を申し上げます。
 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。
    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、近年のデジタル化・ネットワーク化の進展等に対応し、著作権の保護と著作物の利用の円滑化を図るため、次の事項について特段の配慮をすべきである。
 一 教育機関における複製等に係る権利制限の拡大に当たっては、著作権者の利益を不当に害することのないよう、著作権教育の一層の充実を図ること。
 二 様々な障害を抱える人たちが、著作物等の恩恵を等しく享受することができるよう、制度の見直しを含め積極的に取組みを進めるとともに、学校教育の場において、個々の児童・生徒の障害の特性等にきめ細やかに応じた指導が可能となるよう、教科書・教材の充実等必要な諸条件の整備に一層努めること。
 三 著作物等の利用に関する技術が急速に発展していることを踏まえ、著作権等の保護の実効性を確保するため、損害賠償制度の見直し等、司法救済制度の改善・充実について引き続き検討を進めること。
以上であります。
 何とぞ御賛同くださいますようお願いを申し上げます。
古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。
 採決いたします。
 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
古屋委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。
 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。遠山文部科学大臣。
遠山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をして対処してまいりたいと存じます。
 どうもありがとうございました。
    ―――――――――――――
古屋委員長 お諮りいたします。
 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    ―――――――――――――
    〔報告書は附録に掲載〕
    ―――――――――――――
古屋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。
    午前十一時五十五分散会


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