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第1号 平成16年2月18日(水曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十六年一月十九日)(月曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      加藤 尚彦君    川内 博史君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      平野 博文君    牧  義夫君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    東門美津子君

平成十六年二月十八日(水曜日)

    午後零時十一分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      小渕 優子君    奥野 信亮君

      加藤 紘一君    上川 陽子君

      城内  実君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      三ッ矢憲生君    山際大志郎君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      小林千代美君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    鳩山由紀夫君

      肥田美代子君    牧野 聖修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

一月三十日

 辞任         補欠選任

  東門美津子君     横光 克彦君

二月十八日

 辞任         補欠選任

  江崎 鐵磨君     三ッ矢憲生君

同日

 辞任         補欠選任

  三ッ矢憲生君     江崎 鐵磨君

同日

 理事大石尚子君、鎌田さゆり君及び佐藤公治君一月十六日委員辞任につき、その補欠として川内博史君、平野博文君及び牧義夫君が理事に当選した。

    ―――――――――――――

二月三日

 学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(石井郁子君紹介)(第二〇号)

 同(東門美津子君紹介)(第八〇号)

 同(牧義夫君紹介)(第九四号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(石井郁子君紹介)(第二一号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二二号)

 同(梶原康弘君紹介)(第一〇九号)

 同(中村哲治君紹介)(第一一〇号)

 同(藤村修君紹介)(第一一一号)

 同(冬柴鐵三君紹介)(第一一二号)

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(北橋健治君紹介)(第七〇号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第七一号)

 同(松本龍君紹介)(第七二号)

 同(古賀一成君紹介)(第九五号)

 私学助成大幅増額と三十人以下学級実現に関する請願(高木義明君紹介)(第七三号)

 私学助成大幅増額と三十人以下学級の実現に関する請願(高木義明君紹介)(第七四号)

 私学助成の大幅拡充、三十人学級の早期実現、教育費の父母負担軽減に関する請願(松野頼久君紹介)(第七五号)

 同(松野信夫君紹介)(第九六号)

 同(松野信夫君紹介)(第一一三号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(黄川田徹君紹介)(第七六号)

 父母・学生の負担軽減、私立大学の充実に関する請願(東門美津子君紹介)(第七七号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(菊田まきこ君紹介)(第七八号)

 同(西村智奈美君紹介)(第七九号)

 小・中・高三十人以下学級の実現、行き届いた教育に関する請願(津村啓介君紹介)(第一〇二号)

 すべての子供に行き届いた教育、心の通う学校に関する請願(津村啓介君紹介)(第一〇三号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(木下厚君紹介)(第一〇四号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(梶原康弘君紹介)(第一〇五号)

 同(冬柴鐵三君紹介)(第一〇六号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め心の通う学校に関する請願(鹿野道彦君紹介)(第一〇七号)

 行き届いた教育を進め心通う学校に関する請願(冬柴鐵三君紹介)(第一〇八号)

 私学助成の抜本的な拡充と三十人学級の早期実現に関する請願(田島一成君紹介)(第一三七号)

同月十三日

 三十人以下学級の実現、行き届いた教育に関する請願(一川保夫君紹介)(第二〇六号)

 学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(近藤昭一君紹介)(第二〇七号)

 同(横光克彦君紹介)(第二七六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五八号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(漆原良夫君紹介)(第二〇八号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(松本剛明君紹介)(第二〇九号)

 同(石井一君紹介)(第三〇八号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第三二九号)

 同(土井たか子君紹介)(第三六〇号)

 すべての子どもに行き届いた教育、私学助成増額に関する請願(志位和夫君紹介)(第二二一号)

 父母・学生の負担軽減と私立大学の充実に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二二二号)

 同(石井郁子君紹介)(第二二三号)

 同(穀田恵二君紹介)(第二二四号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第二二五号)

 同(志位和夫君紹介)(第二二六号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第二二七号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第二二八号)

 同(山口富男君紹介)(第二二九号)

 同(吉井英勝君紹介)(第二三〇号)

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(佐々木憲昭君紹介)(第二三一号)

 同(鈴木克昌君紹介)(第二三二号)

 同(赤松広隆君紹介)(第三〇九号)

 同(小林憲司君紹介)(第三一〇号)

 同(近藤昭一君紹介)(第三一一号)

 同(中根康浩君紹介)(第三六一号)

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二三三号)

 同(横光克彦君紹介)(第二七七号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第三〇七号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二三四号)

 私学助成の抜本的な拡充と三十人学級の早期実現に関する請願(細野豪志君紹介)(第二七八号)

 私学助成の国庫補助制度堅持等に関する請願(平岡秀夫君紹介)(第三〇四号)

 どの子にも行き届いた教育を進め心の通う学校に関する請願(玄葉光一郎君紹介)(第三〇五号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(石井一君紹介)(第三〇六号)

 同(市村浩一郎君紹介)(第三二八号)

 学校改修のための大幅な予算増額に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第三四八号)

 同(石井郁子君紹介)(第三四九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第三五〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第三五一号)

 同(志位和夫君紹介)(第三五二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第三五三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第三五四号)

 同(山口富男君紹介)(第三五五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第三五六号)

 行き届いた教育を進め、心の通い合う学校に関する請願(穀田恵二君紹介)(第三五七号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第三五九号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 理事の補欠選任

 国政調査承認要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 理事の補欠選任の件についてお諮りいたします。

 委員の異動に伴いまして、現在理事が三名欠員となっております。その補欠選任につきましては、先例により、委員長において指名するに御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。

 それでは、理事に

      川内 博史君    平野 博文君

      牧  義夫君

を指名いたします。

     ――――◇―――――

池坊委員長 次に、国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する事項

 生涯学習に関する事項

 学校教育に関する事項

 科学技術及び学術の振興に関する事項

 科学技術の研究開発に関する事項

 文化、スポーツ振興及び青少年に関する事項

以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

池坊委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、文部科学大臣から所信を聴取いたします。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 文部科学大臣の河村建夫でございます。第百五十九回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。

 我が国が二十一世紀において活力ある国家としてさらに発展し、子供たちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り開いていくためには、国家百年の計に立ち、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指した改革を積極的に進めていくことが極めて重要であります。

 その大きな道筋は既に一昨年八月に人間力戦略ビジョンにおいて取りまとめられており、私といたしましても、新しい時代を切り開く、心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、画一と受け身から自立と創造へという基本理念のもとで、初等中等教育から大学までを通じた教育の構造改革を進めてきたところであります。この人間力向上のための戦略ビジョンについては、知育、徳育、体育のほか食育も重視しつつ、その内容の充実を図りながら、引き続き確かな学力や豊かな心の育成、知の世紀をリードする大学改革などにしっかりと取り組んでまいる所存であります。

 物の豊かさの中で心の豊かさをいかにはぐくむかが現在の教育の大きな課題となっております。私といたしましては、今求められている教育の構造改革をさらに進める観点から、特に次の五点に重点的に取り組んでまいりたいと考えております。

 第一に、教育の根本を定める教育基本法の改正については、昨年三月の中央教育審議会の答申を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、また与党における議論も踏まえながら、教育基本法の改正に精力的に取り組んでまいります。

 第二に、子供たちをめぐる事件、事故が大きな問題となっている近年の状況を踏まえ、本年一月に学校安全緊急アピールを発表したところですが、今後とも学校の安全、安心の確保に組織的、継続的に取り組んでまいります。また、青少年の問題行動の深刻化や家庭や地域の教育力の低下等の課題も踏まえ、今後、地域の大人たちの力を結集し子供の活動拠点を整備するため、子供の安全、安心な居場所づくりの具体策を早急に実施し、家庭、地域の教育力の再生に取り組んでまいります。また、学校や家庭における食育の充実にも取り組んでまいります。

 第三に、国民の学校教育への信頼を取り戻すためには、子供たちの確かな学力と豊かな心をはぐくむことはもとより、信頼される学校づくりを進めることこそが極めて大切であり、各学校では特色ある取り組みが積極的に行われておりますが、昨今の子供たちの状況については、国民の皆さんから不安や懸念の声が聞かれます。

 このため、現在、中央教育審議会において義務教育制度の基本的なあり方を含め幅広く検討いただいているところですが、引き続きその議論を深めてまいります。また、信頼される学校教育制度の確立のため、社会の変化に対応したこれからの学校のあり方について、さらに幅広い検討を行ってまいります。

 また、教育委員会制度のあり方についても、近々、中央教育審議会に諮問し、その役割や意義を含め検討に着手いたします。

 第四に、教育課程実施状況調査など全国的、総合的な学力調査の結果や文化審議会答申等を踏まえ、学習指導要領の不断の見直しを進め、国語教育、英語教育や理数教育などの一層の充実改善を図るための検討に着手いたします。

 第五に、これからの社会で活躍できる人材の育成のため、科学技術・学術分野のすぐれた人材や新たな課題に対応したさまざまな分野の専門家の育成、キャリア教育の充実に取り組んでまいります。

 なお、義務教育費国庫負担制度については、今国会に義務教育費国庫負担法等の一部改正法案を提出するとともに、平成十六年度から、地方の自由度を高めるため総額裁量制を導入することとしております。国の責任により義務教育水準を確保するとの制度の根幹は引き続き堅持しつつ、このような取り組みにより地方の特色ある教育の展開をしっかりと支えてまいります。

 新学習指導要領のねらいは、子供たちに基礎、基本を徹底し、個性を伸ばすとともに、知識、技能に加えて、学ぶ意欲や思考力、判断力等まで含めた幅広い確かな学力をはぐくむことにあります。先般、このようなねらいの一層の実現を図るためその一部を改正したところであり、これを踏まえ、各学校で創意工夫に満ちた取り組みが行われるよう、教職員定数改善計画を着実に実施し、少人数指導や習熟度別指導など個に応じたきめ細かな指導を推進します。また、学力調査の分析等を進め、学習意欲の向上や指導の改善等をねらいとする学力向上アクションプランを引き続き実施するなど、総合的な施策を進めてまいります。

 豊かな心の育成に関しましては、基本的な規範意識と倫理観、公共心や他者を思いやる心など、豊かな人間性や社会性をはぐくむことを目指します。このため、子供の居場所づくりによる地域の教育力の向上、学校における道徳教育の充実、奉仕・体験活動の推進を図ります。子どもの読書活動の推進に関する法律の制定もあり、全国の約七〇%の小学校、約六〇%の中学校で朝の読書が実施されており、引き続き読書活動の推進を図ってまいります。

 また、不登校や問題行動への適切な対応にも努めてまいります。さらに、すべての教育の出発点である家庭教育の支援や幼児教育の振興にもしっかり取り組んでまいります。就学前の幼児の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の実現に向け、関係府省等との検討を進めてまいります。LD、ADHD等を含む障害のある児童生徒の状況の多様化等を踏まえ、一人一人の教育的ニーズに適切に対応するための特別支援教育の推進を図ってまいります。

 子供たちの健やかな体をはぐくむため、低下傾向にある子供の体力の向上に取り組むとともに、生活習慣病など子供の健康に関する現代的な課題に積極的に対応してまいります。さらに、栄養教諭制度の創設を内容とする法律案を今国会に提出するなど、心身の健康に重要な食生活の大切さを教える食に関する教育を推進してまいります。

 また、信頼される学校づくりのためには、適切な学校評価と情報公開が不可欠であり、各学校への支援に努めてまいります。地域住民や保護者などが運営に参画する新しいタイプの公立学校については、その制度化に向けて努力してまいります。さらに、教員評価システムの改善や十年経験者研修制度の着実な実施など、児童生徒や保護者に信頼され尊敬される、教えるプロとしての教師の育成を図ります。学校施設の耐震補強や改築の推進等にも努めてまいります。

 知の創造と継承の拠点である大学がその期待される役割を十二分に果たしていけるよう、国立大学の法人化を初めとするさまざまな大学改革が進行中であり、我が国の大学制度の歴史の中でも極めて大きな変革のときを迎えております。

 いよいよ本年四月から国立大学の法人化がスタートします。各大学が自主性、自律性のもとでさらなる教育研究の活性化を図り、個性豊かな大学づくりを進めていけるよう、国として必要な準備と支援に努めてまいります。また、国公私立を通じ競争的な環境のもとで各大学における改革への取り組みが一層促進されるよう、二十一世紀COEプログラムの推進により世界的な研究教育拠点の形成を図るとともに、特色ある大学教育改革の支援、法科大学院を初めとする専門職大学院の形成支援等に取り組んでまいります。さらに、医療技術の高度化や医薬分業の進展を背景に、薬剤師養成を目的とする大学学部段階の修業年限を四年から六年に延長するための法律案を今国会に提出することといたしております。

 また、大学の教育研究の質の向上を目指し、本年四月から導入される国公私立大学を通じた第三者評価制度の円滑な実施に取り組んでまいります。あわせて、学校法人制度の整備を図るための法律案を今国会に提出するなど、私立学校の一層の振興に努めるとともに、教育を受ける意欲と能力のある者の学習機会を確保するため、奨学金の充実に努めてまいります。

 科学技術は、国民の生活や経済活動を持続的に発展させ、また環境問題など地球規模の問題の解決に大きく貢献するなど、我が国の、そして人類の未来を切り開くかぎとなるものであります。科学技術基本法に基づく第二期科学技術基本計画も四年目に入ろうとしております。私としては、政府の研究開発の中核を担う立場にあることを踏まえ、世界最高水準の科学技術創造立国の実現を目指し、科学技術及び学術の振興に力を注いでまいります。

 そのためには、人材が最も重要な基盤であり、その養成、確保は極めて重要な課題であります。このため、人材養成拠点の整備や若手研究者の支援等を総合的に実施します。科学技術・理科大好きプランなど国民の科学技術に対する理解の増進、科学技術・理科教育の充実に積極的に取り組んでまいります。

 次に、新たな知を切り開く基礎研究を推進するため、その中心となる国立大学、大学共同利用機関の法人化に向けて万全の対応をとるとともに、ニュートリノ研究、加速器研究、天文学研究、南極地域観測等の国際水準の独創的、先端的な研究を進めてまいります。さらに、競争的資金の拡充や国立大学等施設緊急整備五カ年計画の着実な実施、最先端の計測分析技術、機器の開発といった研究開発基盤の整備に一層の取り組みをしてまいります。また、大学等における知的財産の戦略的な取得、活用の促進、大学発ベンチャーの創出など産学官連携の推進、大学等を核とし全国十八カ所で展開する知的クラスターの創成など地域科学技術の振興を図ってまいります。

 また、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の分野において、経済活性化に資するみらい創造プロジェクトや、安全、安心な国民生活に大きく寄与する研究開発を重点的に推進します。特に、ライフサイエンスについては、国際的なヒトゲノムの解読作業の成果を生かして、画期的な創薬や次世代のがん治療法のための研究に積極的に取り組みます。環境については、本年四月に東京で第二回地球観測サミットを主催するなど、環境保護と経済成長の両立に貢献をしてまいります。

 さらに、国の存立基盤となる宇宙、原子力、地震・防災、海洋等の研究開発も積極的に推進してまいります。

 宇宙開発については、H2Aロケットの六号機打ち上げ失敗等が続いた事態を厳しく受けとめ、徹底した原因究明に基づく万全の再発防止対策等を講じ、早期の打ち上げ再開を目指します。原子力については、放射線障害の防止に関する法律の一部改正案を今国会に提出するなど安全規制の充実を図るとともに、国民の信頼と安全確保を大前提として、原型炉「もんじゅ」など高速増殖炉サイクル技術の研究開発等を行ってまいります。「地上に太陽を」と言われる核融合エネルギーの研究開発を行うITER計画については、人類の未来のため、日本への誘致に引き続き最大限努力するなど、国際協力により推進してまいります。

 人々が生涯にわたり自己実現を図っていくためには、生涯のあらゆる時期に学習機会を選択して学ぶことができ、その学習の成果が適切に評価される生涯学習社会の構築が重要です。このため、生涯学習の環境整備や大学、専修学校における社会人のキャリアアップのための教育を推進します。また、専修学校や専門高校において企業実習と一体となった教育を実施する実務・教育連結型人材育成システムの導入などにより、額に汗して働くことの大切さなど勤労観、職業観をはぐくみ、明確な目的意識に基づく就業を促す若者自立・挑戦プランを推進します。男女共同参画社会の形成、環境教育や人権教育、情報活用能力をはぐくむ情報教育の充実に努めます。

 本年八月には、オリンピック発祥の地ギリシャのアテネにおいてオリンピック競技大会が開催されます。明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で、スポーツの振興は欠かすことができません。このため、スポーツ振興基本計画に基づき、総合型地域スポーツクラブの育成など国民のだれもが身近にスポーツに親しむことができる生涯スポーツ社会の実現や、ナショナルトレーニングセンターの整備等による世界で活躍するトップレベルの競技者の育成を推進します。

 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものです。日本社会の活性化のためには、経済力と並ぶ車の両輪として、文化力の向上に努めることが極めて重要であります。

 このため、近年、海外でも高い評価を得ている映画を初めとし、我が国の顔となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、文化芸術創造プランや「日本文化の魅力」発見・発信プランを推進します。また、国民が文化ボランティアなどによりみずから積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境づくりに努めます。文化的な景観を保護するための文化財制度の改善や著作権制度の改善を図るための法律案を今国会に提出するとともに、地域文化の振興、国際文化交流や文化財保護についての国際協力等の施策を推進します。あわせて、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう取り組んでまいります。

 我が国が、国際社会において積極的な役割と責任を果たし、世界から信頼される国となることは、極めて重要な課題です。このため、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術など各般にわたり、日本の経験や知見を生かして協力、交流に力を入れます。留学生交流については、昨年、留学生受け入れ十万人計画の目標を達成したところですが、受け入れ体制や留学生の質の向上にも留意しつつ、留学生受け入れの推進を図るとともに、日本人の海外留学支援の充実にも取り組んでまいります。また、英語教育の改善充実を図るなど、英語が使える日本人の育成にも努めてまいります。

 このほか、知的財産戦略の推進、特殊法人改革、公益法人改革、規制改革、構造改革特区等の行政改革、地方分権や地域再生など、さまざまな課題が山積しております。構造改革特区については、地方公共団体や民間の創意と工夫を生かし、教育の活性化や地域科学技術の振興を図る観点から、引き続き柔軟に対応していきます。また、地域再生については、個性ある豊かな地域づくりを支援するため、地域の実情に合わせた制度の見直しや施策の連携を進めてまいります。

 私といたしましては、国民の強い期待を真摯に受けとめ、これまでの総括政務次官、副大臣としての経験を生かし、私が敬愛する吉田松陰が鎖国下での海外渡航の試みに際して決意を述べた言葉である「意を決して之を為す」の覚悟で文部科学行政に取り組んでまいりますので、委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますようによろしくお願いを申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 次に、平成十六年度文部科学省関係予算の概要について説明を聴取いたします。稲葉文部科学副大臣。

稲葉副大臣 昨年、文部科学副大臣を拝命いたしました稲葉大和でございます。

 文部科学副大臣といたしまして、科学技術創造立国の実現に向け、未来への先行投資であります科学技術・学術の振興に積極的に取り組んでまいり、文化の振興にも取り組みますので、今後とも、委員長を初めとし、委員各位の皆さんの御指導を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げます。

 それでは、平成十六年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成十六年度予算の編成に当たっては、厳しい財政状況のもとではありますが、我が国が二十一世紀において活力ある国家としてさらに発展し、子供たちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り開いていくためには、教育・文化立国と科学技術創造立国を実現することが極めて重要であるとの観点から、教育改革、科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興にわたる総合的な施策の展開を図ることのできる文部科学予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省所管の一般会計予算額は、六兆五百九十九億二千五百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は、一千五百三十六億六千四百万円となっております。

 以下、平成十六年度予算における主な事項について御説明を申し上げます。

 第一は、確かな学力の向上と豊かな心の育成などを図る学校、地域、家庭における子供の育成支援についてであります。

 全国的にすぐれた教員の確保と配置を担保する義務教育費国庫負担制度については、国の責任により義務教育水準を確保するという制度の根幹を堅持しつつ、第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を着実に実施するとともに、地方の自由度を拡大する観点から総額裁量制を導入することとしており、また、負担対象経費を国として真に負担すべきものに限定する観点から、退職手当及び児童手当を国庫負担の対象外とすることとし、二兆五千百二十八億円を計上しております。

 また、子供たちに基礎、基本を確実に身につけさせ、みずから学びみずから考える力などの確かな学力をはぐくむため、学力向上フロンティア推進事業など学力向上を目指した施策を総合的に進めることとし、四十四億円を計上しております。

 さらに、道徳教育の充実、社会奉仕・自然体験活動や読書活動等の推進による豊かな心の育成を図ることとしております。

 次に、子供たちにかかわる重大事件の続発など、青少年の問題行動の深刻化や地域や家庭の教育力の低下等の緊急的課題に対応し、未来の日本をつくる心豊かでたくましい子供を社会全体ではぐくむことは極めて重要であります。

 このため、家庭、地域、学校が一体となった子供の居場所づくりについて、放課後や週末の学校等を活用して、子供たちが安全に、かつ安心して活動できる体制を緊急かつ計画的に整備することとして七十億円を計上するとともに、家庭教育支援の充実を図ることとしております。さらに、問題行動や不登校へ適切に対応するため、地域支援システムづくりを行うなど生徒指導の充実に六十億円を計上しております。

 また、少子化対策の施策として、幼稚園の預かり保育を活用した子育て支援の取り組みを推進することとしております。

 子供の健やかな体の育成について、低下傾向にある子供の体力向上のための総合的な方策を引き続き推進するとともに、人間力の向上を図るため、健康の保持増進と体力向上の基礎となる食生活に関する教育である食育の充実に努めることとしております。

 安全、安心な学校づくりについて、学校施設の耐震化対策に重点的に取り組むこととして、公立学校施設整備に一千三百十一億円を計上しております。

 また、教職員の危機管理意識の向上を初め、学校における安全管理につきましても引き続き徹底を図ることとしております。

 第二は、若者自立・挑戦プランの推進等キャリア教育の充実について、学校全体で勤労観、職業観の醸成を図るとともに、就業にかかわる基礎的な能力を付与する機会、企業等のニーズを踏まえた実践的教育の機会を提供することにより、若者の職業的自立を支援するほか、若者等広く社会人に対し、生涯を通じた就業能力形成の機会の拡大を図ることとしております。

 第三は、二十一世紀を担う人材養成と大学の構造改革の推進についてであります。

 我が国の大学がこれまで以上に活力に富み、国際競争力を有するものとなるためには、大学の構造改革への取り組みを一層推進することが重要であります。

 まず、我が国の学術研究と研究者養成の中核を担う国立大学等は、本年四月に法人化されますが、その移行が円滑に行われるとともに、教育研究活動が着実に実施されるよう運営費交付金一兆三千百二十一億円、国立大学等施設緊急整備五カ年計画に基づき国立大学等の施設を着実に整備していくこととして、施設整備費補助金等六百九十五億円を計上しております。

 また、国公私を通じた競争原理に基づくプロジェクト支援として、第三者評価による世界的研究教育拠点の形成のための重点的な支援や、教育面での特色あるすぐれた取り組みへの支援、法科大学院を初めとする専門職大学院の形成支援を一層推進することとして、四百五十億円を計上しております。

 さらに、奨学金事業については、学生が経済的な面で心配することなく、安心して学べるようにするため、事業費総額で一千三十億円の増額を行い、貸与人員で九万九千人増員するなど、一層の充実を図ることとしております。

 第四は、教育研究の質の向上支援等私学助成について、教育研究条件の維持向上と修学上の経済的負担の軽減などを図るため、教育改革の推進などに配慮しつつ、法科大学院に対する支援を初め経常費助成を中心に総額で四千五百五十六億円を計上するなど、引き続きその充実を図ることとしております。

 第五は、国際教育交流、協力の推進について、留学生交流のため五百三十五億円を計上するほか、ユネスコへの協力や日本の経験を生かした国際教育協力を推進することとしております。

 第六は、心身ともに健全な人材を育成するスポーツの振興について、国民のだれもがスポーツに親しむことのできる生涯スポーツ社会の実現、世界で活躍するトップレベルの競技者の育成を図るなど、スポーツ振興基本計画を推進することとしております。

 第七は、心豊かで元気のある社会を実現するための文化力の向上を図ることとして、「日本映画・映像」振興プランを初めとする文化芸術創造活動に対する支援など、文化芸術立国プロジェクトの推進に二百二十一億円を計上するほか、文化財の次世代への継承と国際協力の推進、文化芸術振興のための文化拠点の充実を図ることとしております。

 第八は、研究開発の戦略的かつ重点的推進についてであります。

 まず、大学共同利用機関等で実施する基礎研究は、知の創造、豊かな生活や経済社会への貢献、国家社会の発展基盤の構築等につながる、世界を先導する研究成果を生み出すものであり、適切な評価に基づきながら、ニュートリノ研究、ALMA計画などの独創的、先端的な研究を着実に推進することとしております。

 次に、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の重点四分野については、これらの分野への一層の重点化を図ることとして二千百三十四億円を計上するとともに、実用化が見込まれる技術開発を支援し、経済活性化につなげていくみらい創造プロジェクトを推進することとしております。

 また、国家の戦略技術である宇宙航空分野、原子力分野については、国の安全、地球環境、最先端の科学など国として積極的に推進すべき領域として、効果的に推進することとしております。

 特に、国際熱核融合実験炉ITERについては、人類の未来のため、日本への誘致に引き続き最大限努力するなど、国際協力により推進してまいります。また、高速増殖炉「もんじゅ」については、地元の御理解のもと早期に改造工事に着手できるよう努力してまいります。宇宙航空分野については、昨年のH2Aロケット打ち上げ失敗等を厳しく受けとめ、徹底的な原因究明と万全の対策を講じるなど信頼回復に全力を注ぐこととしております。

 さらに、海洋、地震、防災分野など国の存立にとって基盤的な研究開発を戦略的に推進するとともに、安全、安心な社会の構築に資する科学技術の強化を図ることとしております。

 第九は、研究開発システムの改革と研究基盤の強化についてであります。

 まず、科学研究費補助金を初めとした競争的資金につきましては、引き続きその改革と拡充を図ることとして、二千八百二十五億円を計上しております。

 また、大学等の知的財産本部の充実や大学等の研究成果の特許化支援など知的財産戦略の強化を図るとともに、大学発ベンチャーの創出や専門人材の養成、確保の支援など産学官連携の推進を図ることとしております。また、大学、公的研究機関等を核とした知的クラスターの創成を図るなど、地域科学技術の振興を積極的に支援することとしております。

 さらに、先導的、独創的な研究活動を支えるために不可欠な先端計測分析分野の技術や機器の開発を、産学官の能力を結集して強力に推進することとしております。

 第十は、科学技術創造立国を支える人材の養成、確保についてであります。

 世界トップレベルの研究者を初めとする科学技術関係人材の養成や、多様な人材が能力を発揮できる環境の整備を図るとともに、科学技術・理科大好きプランの拡充等により人材をはぐくむ社会の構築を目指してまいります。さらに、人が本来有している能力の健やかな発達に向けた「脳科学と教育」研究を推進することとしております。

 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、これらの具体的な内容につきましては、お手元に資料をお配りしておりますので、説明を省略させていただきたいと存じます。

 よろしくお願いいたします。(拍手)

池坊委員長 以上で説明は終わりました。

 この際、原田文部科学副大臣、馳文部科学大臣政務官及び田村文部科学大臣政務官から、それぞれ発言を求められておりますので、順次これを許します。原田文部科学副大臣。

原田副大臣 一言、就任のごあいさつを申し上げます。昨年の総選挙を挟んで、文部科学副大臣を拝命いたしました原田義昭でございます。

 我が国が二十一世紀において活力ある国家としてさらに発展し、子供たちが夢と希望を抱くことのできる明るい未来を切り開いていくために、教育・文化立国、科学技術創造立国を実現することが極めて重要である、そういう観点から、私も副大臣として、教育改革、科学技術・学術の振興、スポーツ、文化芸術の振興にわたる総合的な施策の発展、これについてしっかりと頑張っていきたい、こう思っておるところであります。

 もう既に、大臣から基本施策についての所信表明、また稲葉副大臣から予算の概要について説明があったところであります。今求められております教育の構造改革をさらに進める観点から、特に、私は、教育基本法問題について、中教審の答申、国民的な議論を深めながら、与党議論も踏まえて、その改正に向けて全力を尽くしていきたい、こう考えております。

 また、子供をめぐる悲惨な事件、事故が頻発している近年の状況を踏まえますと、地域の大人たちの力を集結して子供の活動拠点を整備するなど、家庭、地域の教育力の再生に取り組みたい、こう思っております。

 また、食育の話がありました。食育という新しい考えの確立に向けても頑張りたい、こう思っております。

 国民の学校教育への信頼を取り戻すために、子供たちの確かな学力と豊かな心をはぐくむということが、これからの学校のあり方として最も大切であると思います。

 学力の問題についても、国民から不安や懸念の声が聞かれます。この問題についても、既にいろいろ施策が説明されたところでありますけれども、十九掛ける十九の掛け算の答えは三百六十一であります。十九掛ける十八は三百四十二であります。日本では、九掛ける九は八十一、九、九、八十一の暗唱はしておりますけれども、十九掛ける十九、三百六十一の暗唱は、インドの多くの地域で行われているということを聞きました。

 私は、インドというのはもともと発展途上国だというふうに思っておったんですけれども、今ではIT大国、教育大国、こういうふうに言われるようになりました。バンガロールという土地なんかは、本当に今や世界のハイテクのメッカ、センターであります。私は、こういう基礎教育の整備がこういう国に成長させていったというふうにも認識しておるんですけれども、私は、国際的な動きにも十分目を配りながら教育環境を整えていくということも非常に大切だ、こういうふうに思っています。

 いずれにいたしましても、私は、副大臣としまして、稲葉副大臣、馳、田村両政務官とともに、河村大臣をしっかり支えていきたいと思っております。今後とも、委員長初め委員各位にしっかりと御指導、御鞭撻を賜ればありがたい、こう思っております。まことによろしくお願いいたします。(拍手)

池坊委員長 馳文部科学大臣政務官。

馳大臣政務官 政務官を拝命いたしました馳浩です。

 大臣、副大臣を支え、田村政務官とともに、文部科学行政の推進に全力を傾注いたします。どうぞ委員の皆様方の御指導、よろしくお願いいたします。

 終わります。(拍手)

池坊委員長 田村文部科学大臣政務官。

田村大臣政務官 昨年、文部科学大臣政務官を拝命いたしました田村憲久でございます。

 私も、大臣、副大臣を馳政務官とともに支えながら、一生懸命文部科学行政遂行のために頑張ってまいりたいと思います。どうかよろしくお願いを申し上げます。

 ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時五十分散会


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