衆議院

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第2号 平成16年2月25日(水曜日)

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平成十六年二月二十五日(水曜日)

    午後二時開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      菅原 一秀君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (内閣官房内閣情報調査室内閣衛星情報センター次長)            岸野 博之君

   政府参考人

   (法務省入国管理局長)  増田 暢也君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十五日

 辞任         補欠選任

  西村 明宏君     菅原 一秀君

同日

 辞任         補欠選任

  菅原 一秀君     西村 明宏君

 

    ―――――――――――――

二月十九日

 子どもが伸び伸びと学べる学校に関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第四四八号)

 同(石井郁子君紹介)(第四四九号)

 同(穀田恵二君紹介)(第四五〇号)

 同(佐々木憲昭君紹介)(第四五一号)

 同(志位和夫君紹介)(第四五二号)

 同(塩川鉄也君紹介)(第四五三号)

 同(高橋千鶴子君紹介)(第四五四号)

 同(山口富男君紹介)(第四五五号)

 同(吉井英勝君紹介)(第四五六号)

 私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願(中村哲治君紹介)(第四五七号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(海江田万里君紹介)(第四五八号)

 同(手塚仁雄君紹介)(第四五九号)

 同(東門美津子君紹介)(第四六〇号)

 同(松原仁君紹介)(第四六一号)

 同(城島正光君紹介)(第四九九号)

 同(藤田幸久君紹介)(第五〇〇号)

 同(和田隆志君紹介)(第五〇一号)

 同(岩國哲人君紹介)(第五四四号)

 同(小宮山洋子君紹介)(第五四五号)

 同(高木陽介君紹介)(第五四六号)

 同(牧野聖修君紹介)(第五四七号)

 同(和田隆志君紹介)(第五四八号)

 同(小泉俊明君紹介)(第五七一号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第五七二号)

 同(和田隆志君紹介)(第五七三号)

 同(斉藤鉄夫君紹介)(第五九七号)

 同(中津川博郷君紹介)(第五九八号)

 同(松本大輔君紹介)(第五九九号)

 同(山際大志郎君紹介)(第六〇〇号)

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(島聡君紹介)(第四六二号)

 同(大村秀章君紹介)(第五四二号)

 同(木村隆秀君紹介)(第五四三号)

 同(青山丘君紹介)(第五六九号)

 同(牧義夫君紹介)(第五七〇号)

 同(都築譲君紹介)(第五九四号)

 同(山本明彦君紹介)(第五九五号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成等に関する請願(小林千代美君紹介)(第四九五号)

 同(佐々木秀典君紹介)(第四九六号)

 同(小林千代美君紹介)(第五四九号)

 同(横路孝弘君紹介)(第五七四号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(樽井良和君紹介)(第四九七号)

 同(平野博文君紹介)(第四九八号)

 義務教育諸学校の学校事務職員・栄養職員に対する義務教育費国庫負担制度の維持に関する請願(阿部知子君紹介)(第五六七号)

 学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(阿部知子君紹介)(第五六八号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第五九三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣官房内閣情報調査室内閣衛星情報センター次長岸野博之君、法務省入国管理局長増田暢也君、文部科学省生涯学習政策局長銭谷眞美君、初等中等教育局長近藤信司君及び研究開発局長坂田東一君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小渕優子君。

小渕委員 自由民主党の小渕優子でございます。本日は、河村大臣の所信に対する質疑ということで、このような貴重なお時間をいただきましたことにまず感謝を申し上げます。

 本日、トップバッターということで、四十分というお時間をいただきましたので、大臣を初め副大臣、そして政務官からも幅広く御指導をいただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。

 河村大臣、これまで文部部会長、また文教委員長、そして副大臣、大臣と、まさに一貫してこの文部科学行政の要職、ずっと進んでこられたわけでありますけれども、まず、大臣の先般の所信についての質問であります。

 二十一世紀に入りまして、日本だけでなく世界が、技術の進歩とともにニーズや価値も大変多様化をしてまいりました。それに伴いまして、私たちも新しいさまざまな事象に遭遇し、一つ一つそうした問題に対処をしていかなければならなくなってきています。

 従来の既成の価値観、知識だけではなく、こうした困難に立ち向かう勇気や知恵も必要とされてきているのだと思いますけれども、大臣の所信の結びの中で、幕末の志士、大臣の御地元、長州の偉人であります吉田松陰先生の「意を決して之を為す」、この言葉を使われていまして、まさにこれは大臣みずからのかたい御決意なのではないかと推察いたしました。

 大変、文部科学行政、問題が山積しているわけでありますけれども、そうした大海原にこぎ出そうとする、まさに大臣のかたい御決意、覚悟を感じるわけでありますけれども、改めまして、この「意を決して」のその「意」というものに関しまして、大臣のお気持ち、覚悟をお伺いしたいと存じます。

河村国務大臣 私が敬愛申し上げております吉田松陰、松陰先生とあえて言わせていただきますが、松陰先生自身の回顧録、ここに吉田松陰選集というのがあるのでありますが、これによりますと、あの幕末、まさに列強動く中で、松陰先生は、やっぱりアメリカの実情を知る必要がある、こう思われて、あのときはまだ鎖国でありますから国禁を犯すことになるわけでありますが、それについて、友人に対してその決意を、海外渡航の決意を述べておられる項がございます。

 これによりますと、「丈夫見る所あり、意を決して之を為す。富岳崩ると雖も、刀水竭くと雖も、亦誰れか之を易く移せんや」こうあります。男が一度決意、決断したこと、これはたとえどんなことがあろうとも、富士山が崩れようと、あるいは刀水がかれようと、刀水というのは利根川の水のことでありますが、どんなことがあっても、決意したことは、志は変えるわけにいかないんだと言って、訴えて、表現をされたということがここにあるわけでございます。

 文部科学行政におきまして、まさにこれは国家百年の大計に立ってやらなきゃならないわけでございますが、いわゆる教育立国と科学技術創造立国という一つの大きな課題がございますが、この実現を目指していく上で、知育、徳育、体育、さらに食育を重視した人間力向上の教育改革に取り組まなきゃならぬということで、さきの所信におきまして、今求められておる教育課題といいますか、教育の構造改革を進める上での教育基本法の見直し、改正を初め、家庭、地域の教育力の再生、あるいはこれからの学校のあり方、五つの重要な点を挙げさせていただいたところでございます。

 この観点に立ちまして、さまざまなこうした課題に挑戦をしていく。これはもちろん国会を通じて慎重な御議論をいただきながら進めていかなきゃならぬわけでありますが、その結果が、我が国や国民のためにやらなきゃいけない、こういうことになれば、まさに「意を決して之を為す」の覚悟で取り組んでまいりたい、こういう思いでおるところでございます。

 きょうは小渕優子先生、最初に登壇をされたということ、私、副大臣当時、小渕内閣において総理が特に教育改革国民会議をおつくりになって、その中で濶達な意見を述べられた、取り上げられた、そのことが今日の教育改革の大きな基本になっているということに思いをいたしまして、感慨を深くいたしておるところでございます。

 ありがとうございました。

小渕委員 大臣、ありがとうございました。大臣の大変かたい御決意、聞かせていただきまして、私も、しっかりそうした御指導をいただきながら、文部科学行政にかかわる議員の一人としてまた頑張ってまいりたいと思っております。

 続きまして、稲葉副大臣にも御質問をさせていただきたいと思います。

 ただいま河村大臣から、大変強い覚悟、かたい御決意、お伺いさせていただいたわけですけれども、稲葉副大臣も、先代のころより、また既に科学技術政務次官を歴任されるなど、文部科学行政、特に科学技術政策のスペシャリストでもいらっしゃいます。

 昨年の十二月にはITERの建設地の決定に向けた閣僚級会合がアメリカで行われ、副大臣もそれに出席をされましたけれども、このITER計画、日本の将来に向けてエネルギー問題、これは大変、極めて重要な問題でありまして、このITER計画はそのかぎになるのではないかと認識をしております。

 その成功に向けた取り組みも含めまして、科学技術政策に対しまして、稲葉副大臣のまさに意を決するところの御意見をお伺いしたいと思いますが、よろしくお願いいたします。

稲葉副大臣 大変過分なお話をいただきまして、恐縮しております。

 今、小渕委員から御質問ございましたITER計画についてでありますが、ここにおいでの委員の方々も、それこそスペシャリスト、専門家でいらっしゃいまして、改めて計画の沿革から述べる必要はないかとは思いますが、若干のお時間をいただいて今日までの経緯を少し述べさせていただきたいと思います。

 このITER計画は、約二十年ほど前、一九八五年に、レーガン・ゴルバチョフ会談の中から生まれてまいりました計画でありまして、端的に言うならば、地球上に第二の太陽をつくろう、太陽において今核融合が行われていますが、その核融合を人工的にこの地球上で炉としてつくろうじゃないか、こういう計画であります。将来の新しいエネルギー、夢のエネルギーとして、我が国はもちろんでありますが、世界六カ国、我が国を含めまして六極においてその実現に向けて協議を詰めている段階にあります。

 第一回の会合から、おっしゃられました十二月の二十日の会合、次官級会合で四回目を数えますが、その十二月二十日の会合においては、我が国としましては、日本に、六ケ所村にサイトを誘致する、そのミッションで参ったわけでありますけれども、結果、残念ながら三対三と意見が拮抗してまいりまして、十二月二十日の決定を見るに至らなかったことは、まことに残念なことであります。

 その後、各国からのいろいろな問題点が指摘され、今現在、日本とフランスのカダラッシュ、ここが候補地として名乗りを上げておりますが、これのうちのどちらかにするか、各国からの質問事項に対し、我が国としましても、専門家を各国に派遣し、またさまざまな国際的な会議を通じて、日本の優位性を働きかけてまいりました。

 先般も、二月の十日ないし十二日、こういったスケジュールで結城審議官を各国に派遣し、各国の御理解とそれから協力を求めてまいりました。

 先般、二月の二十一日、次官級の会議をウィーンで行いました。これもまた物別れに終わってしまったわけであります。

 今後、三月あるいは三月の中旬、こういったスケジュールで、さらに次官級会合、専門家の会議を進める中で、私たちも、最終的にはいろいろなシミュレーション、場面を想定しながら、何としても日本に誘致するための努力をこれからも払ってまいりたい、かように思っております。

 今絞られている論点は、やはり資材の輸送の問題、あるいはその輸送される資材の組み立ての問題、要は組み立てコストの問題。同時に、日本に対しての質問事項で一番寄せられているところは、地震国である日本が免震対策、耐震対策に対して十分な保証ができるのかどうかという質問が寄せられております。と同時に、研究者の家族の生活環境について、あるいは就職問題もそうですし、生活コストの問題もそうですし、そういうさまざまな面において、日本に対しての質問が寄せられています。

 我々も努力してその質問に答えてはまいりましたけれども、まだ参加国からは十分な安心感をいただいておらない、こういったところに現在まだあるというふうに考えざるを得ません。

 以上の問題点を踏まえながら、我が国としては、この原子力あるいは新しい科学研究分野においての問題点について、先進国でありますEUあるいはフランス、またアメリカ、こういう各国に対して互角の立場で議論を進めることができた。そしてまた、これからさらに、フランスを抜いて我が国にサイト誘致をしていこう、こういう点において、フランス側についておられる国々に対しての働きかけを十分に果たすことによって、クリアすることによって必ず六ケ所村に誘致できるもの、そう確信しております。

 以上が大体、ITERに関する今までの経緯とそれから会議の内容でありまして、これからもまた、各方面にわたって、それぞれ専門家の委員の方々あるいは国会の先生方、こういう方々を通じて日本に最終的に結論づけたい、こう考えておりますので、ぜひ皆様の御指導、御協力をさらに賜れれば大変ありがたい、かように思うわけであります。

 また、質問の後段の、科学技術分野における所信といいますか意欲といいますか、こういった御質問がございましたが、私たちは、やはり我が国において一番のポイントは、何といいましても、資源の乏しい、あるいはないに等しい国家でありますので、科学技術をいかに伸ばしていくか、ここにポイントが絞られてくると思っております。したがって、科学技術基本計画に基づきながら、これからの文部科学省の科学技術分野における役割、こういうものが重要になってくるわけでありまして、科学技術創造立国あるいはさまざまな科学技術の分野における研究開発、こういうものにもっともっと力を注がなければならないと思うんです。

 そういう面で、国の予算、ここにもポイントがあるわけなので、こういう面においても一生懸命いろいろな分野において頑張りますし、また委員の皆さんの御協力をお願い申し上げる次第であります。

 よろしくどうぞお願いいたします。

小渕委員 ありがとうございました。

 副大臣のITER計画に対する大変積極的なお取り組みと、また意を決して科学技術創造立国のために力を尽くしていただけるということで、大変力強い御決意をいただいたかと思います。

 続きまして、原田副大臣の意を決するお気持ちをぜひともこの場にて伺いたいと思っていたところではありましたけれども、先般の委員会におきまして、大変多岐にわたりまして御抱負をいただきました。ぜひもう一度この場にていただきたいと思ったのではありますけれども、原田副大臣には個別の案件がたくさんこの後控えておりますので、ちょっととっておいていただいてということで、続きまして、馳政務官と田村政務官にあわせてお伺いをしたいと思います。

 馳政務官は、主として教育またスポーツを担当されるとのことであります。御自身も、高校の教員、またレスリングやプロレスなどでたくさんの御経験がおありで、そうしたものがこれからの政策に生きてくるのではないかと、大変御期待を申し上げるところであります。

 最近の子供たちは大変体力が低下しているということも言われていますけれども、そんな中、馳政務官にとっての「意を決して之を為す」、そのような御決意、どこにそのお気持ちがあるのか、お伺いしたい。

 そして、あわせまして、田村政務官、平和で美しい地球、愛のある心豊かな日本、そして社会活動に積極的に取り組み、地球貢献国家として築き上げることを御自身の夢とされているとお伺いをしております。

 田村政務官は、主として科学技術・学術、文化を担当されるとのことでありますけれども、担当される分野はまさに夢の実現に通じるものがあるのではないかと思います。その意を決してなしたいことのお話をいただけたらと思います。

 では、馳政務官からお願いいたします。

馳大臣政務官 御指摘いただきましたとおり、高校の教員、予備校の講師、大学の講師を、また、ちなみにプロレスラーの方は現役でございますが、今は政務官に邁進しておりますので、開店休業中です。こういった経歴をもとにしながら、文部科学行政の推進に取り組んでまいりたいと思っております。

 とりわけと言われれば、今、河村大臣も熱心に推進しておられます子供の居場所づくり、具体的には、総合型地域スポーツクラブの拡充であったり、また厚生労働省とともに取り組んでおります学童保育の拡充であったり、こういった子供の生きる力を伸ばすための政策について取り組みたいと思っております。

 総合型地域スポーツクラブについては、まさしく財源となるtotoの運営についても取り組んでまいりたいと思っておりますし、また、これは子供ばかりではなく地域の教育力を高める政策でもございますので、関係各方面と連携をとりながら一生懸命取り組んでまいりたいと思っております。

田村大臣政務官 先生、御指名いただきまして、まことにありがとうございます。

 先生おっしゃられましたとおり、科学技術・学術、文化芸術、これが国会における私の担当でございますけれども、まさに子供たちに夢を与え、そして心豊かな社会、こういうものをつくっていくためには、科学技術やまた文化等々、大変重要な分野であろう、このように思っております。

 そのような中におきまして、特に、今もお話がございましたけれども、科学技術創造立国、科学技術分野におきましては、もう御案内のとおりであろうと思いますが、例えば独創的で先端的な基礎研究、この分野、そしてまた、今重点分野といたしておりますIT、ナノ・材料、さらには環境でありますとか、またライフサイエンス、こういう分野に対しても、今、省として全力を挙げております。

 また、国家の存続基盤といいますか、ちょっとロケット等で大変御迷惑もおかけをいたしておりますが、宇宙開発でありますとか、また地震、これに対する研究、さらには海洋開発というのもそうなんですけれども、原子力の分野、こういう分野にも大変今力を入れております。

 今、ITERの話が副大臣からございましたけれども、我が国に資源がないというのみならず、やはりこれからの地球の環境ということを考えますと、環境に負荷がなるべくかからないといいますか、なるべく安全なそういうエネルギー源というものを何としても我々人類は生み出していかなきゃならないわけであります。そのような意味では、この日本、共生の理念で生きてきた日本でありますけれども、その日本にぜひともこのITERを誘致する大きな意味がある、このように思っておりまして、今全力を尽くしておるような次第であります。

 また、産学官の連携でありますとか地域の科学技術の振興、地域クラスター等々でありますけれども、こういうものの振興にも今全力を尽くしておりますし、同時に、今地球観測サミットというのが、実はこの四月の二十五日に日本で開かれるんです。

 これは、日本の国には、海洋科学技術センターの横浜研究所に地球シミュレーターというスーパーコンピューター、これは世界で最も処理能力のあるコンピューターでありまして、アメリカあたりもうらやましいなというふうに思っておるものでありますけれども、これにいろいろなデータを入れますと地球のシミュレーションが出てまいります。このデータを得るために、この意味もあるんですけれども、地球観測サミットということで、どのような観測のデータ、どういう地点で、またどの国がそれを分担していくか、さらにはその得たデータをどのように活用していくか、こういう部分で議論をさせていただく予定であります。

 第二回目で、ここで大体大枠が決まってくるわけでありまして、現在、小泉総理にも出席をお願いさせていただいておるわけでありますが、省内でこのプロジェクトチームをつくりまして、私、座長を仰せつかっております。このような分野をぜひとも成功させてまいりたい、こんなふうに思っております。

 文化芸術の方でありますけれども、最高水準の文化芸術といいますか、こういうようなものの創造、さらには地域の文化、これもやはり振興していかなければならない、こんなふうに思っております。文化財の保存や活用は当然でありますけれども、国際的な意味では、国際的な文化の交流と同時に、文化財等々を国際的にどのように協力しながら保存していくか、こういうことも念頭に置きながら、今、文化行政を進めさせていただいております。

 小渕議員は映画に大変御興味があられるということで、たしかお父様、小渕総理、私も大変お世話になりましたけれども、平成十二年に超党派の映画議連の会長さんになられた。私も当時総会に出まして、小渕総理のお話をお聞かせいただいたわけでありますが、実は、昭和六十二年、この議連をつくるときの会長が私のおじの田村元でございまして、私も映画に対しては大変興味を持っております。

 映画予算といたしましては、やはり映画というものに対して、映像、映画、こういうものをしっかりと守っていかなきゃならないということで、フィルムの保存とか保管、こういうものも含めて今二十五億円ほど予算要求をいたしておりまして、総合芸術的な分野の映画、今日本の映画は世界じゅうでいろいろと評価をいただいておりますから、映画に事寄ったわけではありませんけれども、こういう分野にもしっかりと力を入れてまいりたい、このように思っております。

小渕委員 ありがとうございました。

 ただいま大臣を初めそれぞれ先生方から意を決してなすことを伺いまして、大変心強く思った次第であります。

 時間もありますので、次の質問に移らせていただきます。

 個別の質問に入らせていただきますが、現在私は、今、国会におきましてユネスコの国内委員に選任をされています。ユネスコは今、事務局長に松浦氏、また在ユネスコ日本大使に元文部省の次官であります佐藤氏が着任をしておりまして、それぞれ御活躍のことと伺っています。

 ユネスコから脱退していたアメリカも復帰した現在、国際社会におけるユネスコ活動の現状につきまして、まずお伺いをしたいと思います。

河村国務大臣 昨年の十二月三日付で、小渕優子委員、ユネスコ国内委員ということで、ぜひユネスコの発展のために御努力いただくことを期待いたしております。

 ユネスコは国際連合教育科学文化機関という長い名前でありますが、教育、科学、文化の振興に、これは世界的視野、国際平和と人類の福祉といいますか、人類共通の課題に向かって大きく働きをしてまいりました。今百九十カ国が参加しております。その元締めであります事務局長が元フランス大使の松浦さんであるということ。お聞きいたしますと、また小渕総理の話が出ますが、小渕総理と学習院中学の同級生でいらっしゃいます。私も同県の方でもございまして、大変頑張っておられることを承知いたしております。

 アメリカも帰ってまいりましたし、イギリスもそうであります。私もユネスコの会議にも参画をいたしました。万人のための教育、エデュケーション・フォー・オールということで、そして持続可能な教育開発ということを標榜いたしておりまして、特に低開発国の識字率をいかに上げるかというようなことに大変力を入れておるところでございます。

 さらに、水資源とか海洋学、あるいはそうしたものの政府間共同研究事業とか、生命倫理に関するようなこういう宣言、また世界遺産、無形文化財、無形文化遺産の方等々、最近はユネスコの世界遺産にどういうふうにして指定されるかということを各国競っておるわけであります。日本もまだそうした遺産を持っておるわけでございます。

 このようなことで、大変な貢献をいたしておりまして、日本も国連同様に、ユネスコの存在というのは日本があってできた、こう言われておりますだけに、さらに力を入れていかなきゃいかぬ、こう思っておりまして、きょうは小渕議員を初め文部科学委員の皆さんにも、ユネスコに対する大きな関心とお力添えをいただければありがたいというふうに思います。

小渕委員 大臣、ありがとうございました。

 このユネスコの活動なんですけれども、日本の国内においても地域の中で大変活動をしていただいていると認識しております。

 先般も、私がこの委員になったということで、地元の中之条町のこの活動に携わる方々よりさまざまなお話をいただきました。群馬県中之条町というところは人口二万にも満たない小さな町でありますけれども、そんな中でも、こうした地域の中での活動が積極的にされているということを大変うれしく思ったところであります。国内の地域におけるユネスコ活動、ぜひとも、これは大変意義があり、大切にしていかなければならないことだと感じております。

 原田副大臣にお伺いをいたします。現在、国内のユネスコの事業について、また地域におけるユネスコ活動についての現状と、また今後の支援策についてお伺いいたしたいと思います。

原田副大臣 ただいま大臣からお答えがありましたように、ユネスコは教育、科学、文化、こういうものを推進することによって、世界の平和、繁栄を目指す、こういう高らかな理念のもとに活動が行われているわけであります。当然のことながら、国内においてもそれを受ける形で非常に活発な活動が行われております。

 まず、国内の事業、活動については、文科省に日本ユネスコ国内委員会というのがございます。これは会長が平山郁夫東京芸大学長さんでございますが、ここが活動方針、協力方策等を検討する場として中心的な役割を担っておられるわけでございます。先ほどからお話が出ましたが、小渕議員もこの議会の代表、また、この委員会では遠藤利明理事も、また牧野聖修委員もこのメンバーだというふうに伺っております。いずれにしましても、ここの場で活動方針、協力の方策をしっかりと検討されておる、中心的な役割を担っておられるわけであります。

 また、ただいま議員が言われましたように、各地区で活発な、これは民間レベルでありますけれども、任意団体やら全くの民間グループとして、三百以上のユネスコ協会等が活動を続けております。それを、全体をまとめる形で社団法人のユネスコ協会連盟ができ上がっておるわけございます。

 我が省としては、社団法人ユネスコ協会連盟が行う世界寺子屋運動や世界遺産の普及等、事業への支援を行っております。寺子屋というのは、日本が黎明期にお寺で子供たちの教育のみならず人格形成までいろいろな活動をしたわけでありますけれども、そういう思いを世界じゅうに広げよう、こういうとうとい運動でありますけれども、こういうものにも文科省はしっかりと支援をしておるわけであります。また、財団法人ユネスコ・アジア文化センターや、国内の大学等におけるいろいろなセミナー、ワークショップの開催に対しても各種の支援を行って、全体としてユネスコ活動の最大の拠点が日本である、こういう活動をやっておるということでございます。

小渕委員 ありがとうございました。引き続きましてのユネスコに対する御理解と御支援をよろしくお願いを申し上げます。

 次に、JICAによる青年海外協力隊についての質問をさせていただきたいと思います。

 もう先生方御承知のことでありますけれども、青年海外協力隊、現在、六十九カ国、二千四百七十二人の若者がそれぞれの派遣国に行って活動をしています。この協力隊事業もことしで三十八年を迎えまして、これまでに二万五千百七十一人が活躍をして現地でそれぞれ高く評価をされていることは、先生方も御承知のとおりであるかと思います。

 私は、当選以来、この事業に大変賛同いたしまして、何といっても、私と同世代の若い人たちがそれぞれ派遣国にて頑張っている姿を目の当たりにいたしまして、応援を続けている一人でもあります。

 現在、この協力隊が抱えている問題は、帰国隊員が、帰ってきてから仕事がなかったり、自分が得てきた二年間のすばらしい経験を生かすことができない、そういう環境が整っていないということであります。

 そこで、このたび文科省と外務省とJICAと協力をいたしまして、現職教員特別参加制度を創設いたしました。これまで、現職の教員の先生方に、公立の教員でありますが、千四十三人の教員の方が協力隊として途上国などに行きまして、活動を続けていただいています。このように、教員が国際教育協力に従事することによって、教員自身の幅もまさに広がってくることと思いますし、こうした教員が、帰ってきてからそうしたたくさんの経験を子供たちに伝えていくことができる、まさに還元をしていくことができる、我が国の教育の質を結果的には大変高めることにつながってくるのではないかと思います。

 しかし、二年ほど協力隊として参加いたしますと、帰ってきてから本当に自分の仕事がもとどおりにあるのかどうかなど、いろいろと現場においては不安があると聞いています。現職の教員が安心して円滑にこうしたものに参加できるように、しっかりとした身分保障など環境づくりが大切と考えております。

 これに対しましての大臣の御意見をいただきたいのと、あわせまして、今、会社側も、二年間の協力隊の参加に対しまして、なかなか前向きといった状態ではありません。ぜひとも、教員の皆さんだけでなく、いかがでしょうか、文部科学省の職員の方々も、こうしたものに希望があれば参加をして、いろいろ得てきた経験を日本に帰ってきて生かしていく、そんなことを大臣みずから積極的に後押しをされたらいかがかと思いますが、御意見をいただきたいと思います。

河村国務大臣 大切な点を御指摘いただいたと思います。

 最近の先生方には、もっといろいろな社会体験をしてもらう、特に、海外に出ていっていただいて、その経験を子供たちの教育に生かすということは、非常に私は意味のあることだ、こう思っておりまして、今御指摘のように、現職教員を海外へ出すためのいわゆる特別参加制度をつくりました。

 これによれば、身分を持ったまま行きますから、二年間やって帰ってきても安心して職場につくことができるということになるわけでございまして、毎年、募集をいたしますと、大体五、六十人行くのですが、三倍から四倍に近い応募者がございます。その中から面接をして選んで行かせておるわけでございますが、これはさらに進めてまいりたい、こう思っております。そのためには、それに出かけるに見合うだけの教員をもっと確保するという問題が出てくるわけでございまして、この点についてはぜひ皆さんにも後押しをお願いしたい、こう思います。

 それから、文部科学省職員そのものの派遣でございます。これも、私も、いろいろな経験を文部科学省の職員がしてくる、結構なことだと思いますが、定数にそれだけ余裕があるかと言われるとなかなか大変なのでありますが、もちろん、強い希望がある方についてはできるだけ出ていただくようにしたらどうであろうかと私も思います。

 それから、大学には、国立大学等々、看護師とか医師とかそういう方々、体験してきたいということで、最近では国立大学の看護師等の派遣がされておる、こういう現況でございます。これは国際機関等に派遣される一般職の国家公務員の処遇に関する法律というところでやっておるわけでございまして、これは文部科学省のみならず各省庁にも呼びかけて、そういうところへ参加していくことについては私も結構なことだと思っておりますし、そういうことの希望者があるかどうか、これは呼びかけはやるべきだ、このように思っておるところであります。

小渕委員 ありがとうございます。

 大変心強い御意見をいただきまして、ぜひとも後押しを大臣からしていただけますように、よろしくお願いをしたいと思います。

 続きまして、質問はがらっと変わりますけれども、先ほど大臣のお話にも触れられていました教育基本法についての質問をさせていただきたいと思います。

 教育基本法、制定以来一度も改正されることなく、およそ五十七年経過をいたしました。その間に社会状況は大きく変化をし、教育全般についてさまざまな課題が生じている今日、教育の根本にさかのぼった抜本的な改革を推進することが重要であると考えています。

 先ほど大臣からもお話がありましたが、この問題は、平成十二年、小渕内閣のときに、教育改革国民会議における広範な議論から始まりまして、今日まで自民党内での議論が何度も行われてまいりました。すべての教育の根本法であるこの教育基本法の改正は不可欠であると思いますし、現在、与党といたしましても教育基本法改正に関する協議会を設けて議論を進めているところでありますけれども、少々そのスピードが減速しているのではないかと感じております。

 改正に向けた大臣の決意をお伺いいたしたいと思います。

河村国務大臣 小渕優子議員が小渕元総理の後継者としてこの教育基本法改正に高い見識、熱意を持っておられることに、敬意を表したいというふうに思います。

 教育基本法の改正、歴代の内閣、教育改革の構造的な面がある、構造改革だ、こういう思いで取り組んできていただいたところでございまして、特に、小泉内閣、前遠山大臣のもとで中央教育審議会に諮問をされ、二十一世紀にふさわしい教育基本法のあり方、これについての答申を既に昨年の三月にいただいたところでございます。これを法案化して国会において議論をしていただく、そのことによって国民的な関心も高め、国民の皆さんが教育について根本から考え直そうという思いを高めていただく、大変私は大事なことだ、こう思っております。

 教育基本法そのものにあります人格の完成であるという教育理念等々、この普遍的なそうした考え方は大事にしながら、今この時代に何が必要であるかというような観点に立って、新しい理念を踏まえた教育基本法というものをつくっていく必要がある、このように感じておるわけでございます。

 もちろん、この問題は、教育の憲法と言われる教育基本法でありますから、幅広い議論が必要でございます。文部科学省も、これまでタウンミーティングやあるいはフォーラム、こういうことで、政府主催あるいは文部科学省主催等々全国展開もしてきておるわけでございますし、もっと広く国民の皆さんの御理解をいただく努力を続けなきゃいかぬと思っております。

 今、小渕議員からも御紹介ありましたように、与党間でもこの御協議をいただいております。当然、民主党を初め野党の皆さん方も、この問題についてはいろいろな角度から関心をお持ちになり、研究をされていることであろう、こう思っておりますが、我々としては、引き続きこの議論を高めながら、そしてまず、責任政党といいますか、与党が責任を持つわけでありますから、その間できちっと議論をしていただいて、私は一日も早くこの教育基本法が国会で議論されることをこいねがっておるところでございます。まさに、「意を決して之を為す」、この覚悟で取り組むべき大きな課題である、このように思っております。

小渕委員 大臣、ありがとうございます。この教育基本法の改正につきましては、まさに全国展開をされているところでありますけれども、自民党の中におきましても、全国幹事長会議や青年局の会議などでも、こうした議論、全国的に続けております。ですから、この教育基本法改正の行方を多くの方々が注視しているということであります。大臣のリーダーシップを心から御期待を申し上げたいと思います。

 実は、この後、食育、児童虐待、子供の居場所づくりと、たくさんの質問を用意していたわけですけれども、残念ながら時間が来てしまいました。

 二十一世紀、日本の一番の課題は、人づくり、心豊かな子供を育てていくことではないかと思います。大臣、副大臣、政務官、さまざまな御意見をいただきましたけれども、そうした「意を決して之を為す」、私もしっかり意を決してこれからの文部科学行政に取り組んでまいりたいと思いますので、引き続きましての御指導をいただけますように、よろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

池坊委員長 牧野聖修君。

牧野委員 民主党の牧野聖修です。

 美女の後に出てきた野獣のような感じがするわけでございますが、この町とこの国とこの星を愛する優しい気持ちを持った男でございますので、どうぞいい答弁をお願いしたい、こういうふうに思います。

 この場に立ちますと、大臣とは十数年前に、同じこの文部科学の常任委員会の視察で萩へ行ったことを今思い出しました。吉田松陰の松下村塾の後に記念館等を見学させていただきました。あのときのことを思い出したわけですが、私が今一番記憶に残っているのは、あの記念館の中で、岡山出身の一向宗の門徒で聾唖の学僧が、山県大弐の「柳子新論」の中に書かれた放伐論を胸に置きながら、蟄居していた吉田松陰のもとを訪ねた。でも実際に会うことができず、吉田松陰のお兄さんを通じて筆談を十数回交わしてお話をした。当時、吉田松陰は公武合体論者だったんですね。ところが、宇都宮黙霖の熱情あふれる倒幕の思想に吉田松陰も気持ちを動かされて、倒幕開国、尊王開国という新しい時代に向けて立ち上がったのです。

 吉田松陰が歴史にさん然と光を放つ一番のゆえんは、当時、公家と武士が一緒になってこの危機を乗り越えていくという公武合体論者であったものが、その体制を倒して戦う、そういう思想転回し立ち上がったところに歴史にさん然と光を残すゆえんがあったと私は思うのです。

 今大臣は意を決してというお言葉を、私もその気持ちはよくわかりますけれども、今、時あたかも、公明党さんの公と自民党さんの自を合わせると、公自合体としてこの国を乗り切っていこう、そういう状況ですね。かつて吉田松陰は、公武合体を打ち壊して、その体制を打破して新しい日本をつくろうということで立ち上がった。あなたが意を決して文科大臣を務めるということであるならば、この古い体制を勇気を持って倒すべき立場じゃないかと私は思うんですけれども、大臣のお考えはどうでしょうか。

河村国務大臣 公武合体論から転回をしていったというお話、あの短い期間の間によくあそこでその勉強をなされたと思って感心をしておりますが。

 私は、松陰先生の偉いところは、至誠をもって天に通ずといいますか、まさに真心をもってお互いに議論を闘わせながら、そして意に感じたらそれを実行に移すというところにあったわけでありまして、まさにこの鎖国状態、これでいいのかという思い、そして、それならばもう実行に移すしかないと、それを口で言うだけじゃなくて、みずから海外に、先ほど申しました、そういう思いもあって行ったということだろうと思います。

 私は、教育改革、この問題については、もちろん一義的に与党に責任があることは言うまでもありませんが、これはまさに与党、野党ないと思っているんです。これは議論を闘わす中で、至誠をもってお互いに語り合う中で、まさに日本の百年の大計、これを見出していく道ができる、こう思っておりまして、こちらを壊してということじゃなくて、まさに一体となってこの問題はやっていくべき課題だろう、私はこのように感じております。

牧野委員 吉田松陰を奮い立たせた百年前の山県大弐の「柳子新論」の三分の二の辺に「たとえ群下にあるとも、放伐もまた仁なり。他なし。民と志を同じゅうすればなり」という一節があるんですね。身分の低い者であっても、国を倒していくところは天の道に通ずる、それは民と志を同じゅうするという前提だということですね。

 私もそのことを心の底に秘めながら、この現状をやはり打破して新しい時代をつくるために闘っていきたい、そういう立場でございますので、そういう立場で、与えられた時間の中で大臣と関係の皆さんに質問をさせていただきます。

 最初に、地方分権と教育ということについて質問させてもらいたいと思います。

 先日、予算委員会の席上、この議題を取り上げさせてもらいました。麻生総務大臣から御答弁をいただきました。明快に言われましたね。今の三位一体論議の中で、財政論と地方分権論と教育論が混同している、これは整理してそもそも論からやる必要がある、こういうふうに言われました。

 大臣、最終的にあなたは、この地方分権の波の中で、義務教育というのをどうされたいのか、どうしたらいいと思っておられるのか、そのことをまずお聞かせください。

河村国務大臣 義務教育は、憲法の精神からいっても国が責任を持つ課題である、このように思っておりますし、今回の三位一体論の中で言われることは、これは小泉改革の一つの大きな流れにもあるわけでありますが、できるだけ地方に自由度を、地方に裁量権を持たせて、地方がやりやすいようにするのがまさに地方分権のあり方だ、こういうことであります。

 しかし一方では、この義務教育についてはやはり国が責任を持つ部分がある、この部分と、役割分担をどうするかということになりますと、これはやはり今の義務教育費国庫負担制度というものでやってきた、これが一つの担保だと思いますね。特に、義務教育のあり方について、一義的に非常に大きな意味を持つのはやはり教員の質の問題でありますから、ここをまず国がきちっと担保するということが必要であります。

 そのためには、その義務教育費をきちっと国が責任を持つという形、この今の制度の中で、実際にしかし、教育現場は地方でありますから、まさに地方が取り組んでおられることを、その裁量をできるだけ増して、まさに総額裁量制というのはそれでありますが、自由度を増しながら、自由に取り組んでいただく、それを国がしっかり支えていく。いわば、金はしっかり出すが、口は出さないという言い方は、それもまたいろいろ議論があるところでありますが、自由度を高めながら、国が根幹のところを責任を持っていく、これが私は義務教育のあり方だ、このように考えております。

牧野委員 ここ数年の、国の方の、文科省の方の動きをずっと考えて追ってくると、義務教育のその必要性と国家が負っておるその責任は、最終的に、ここまで来ると、きょう現在、人件費だけ一応確保すれば国家としての責務は果たしている、そういうふうに私は聞こえるんですよ。国の姿勢はそうじゃないですか。それが本当の意味での地方分権の中で、この教育、その根幹である義務教育を守り育てるということになりますか。その点についてお聞かせください。

河村国務大臣 今日の日本の教育のあり方、いろいろ言われますけれども、しかし、全国津々浦々、どんな辺地に行こうと、そしてまた離島に行こうと、しかし一定の水準、そして高いレベルを持った教員が派遣されている、そしてそこで教育が受けられる、これが一つの日本の今日の繁栄の基礎を築いてきているわけでありますから、この教育水準を維持するということがやはり国家の義務教育の根幹になければならぬと私は思うんですね。

 アメリカなんかのように、地方分権といって全部任せちゃった、そうすると、州によってすごい教育力に差がついて、この修正に大変苦労したという例も聞いておりますけれども、日本はそれを、そういうことがなきようにするという形で参りましたから、今まさにおっしゃったように、義務教育費だけ、お金だけ持てば大丈夫だと言われるけれども、まさにそれによって格差がつくことは防げるわけでありますから、これが一つの要諦だというふうに思っておりますので、義務教育の水準を維持するという観点、それはやはり教員の質を維持するということと裏腹でありますから、そういう観点で、義務教育費にも責任を持つというのは当然であろう、このように思っておるわけです。

牧野委員 その気持ちはよしと思いますね。

 ただ、具体的に一点だけ質問しますけれども、首長の選挙をやりますね、県知事の選挙も、市長の選挙もやる。その首長さんの選挙が終わった後、その人の基本的な考え方によって方針が変わるおそれがありますね。毎回毎回変わる可能性がある。それをどうするかということ。

 それからもう一つ、文化圏も経済圏も同じなんだけれども、たまたま行政区が分かれているという地域がいっぱいあるんですよ、選挙区でも同じように。その場合、同じ文化圏と同じ経済圏でありながら、たまたま行政区が違うということで、そのとき、そごが生じないかということですね。

 どういうふうにお考えですか。

河村国務大臣 今の御指摘の点、そういうことは考えられると私も思います。そこで教育の中立性を保つために教育委員会制度というのがあるわけですね。これについてもいろいろ議論がありますが、今これを、どうあるべきかということで、見直しについても検討をまさに始めていただこうと思っております、中央教育審議会において。特に、そうした行政区の問題、非常に狭い範囲の中でそれぞれ教育委員会がある問題、あるいは行政区が違った場合のこの格差をどうするかというような問題、教育委員会制度を通じてどうこれを改めていったらいいかという問題、現実にそういう問題があるわけであります。

 特に、首長によって大きな影響を受けることがあっては、やはり私は、教育にそんなに大きな、その都度その都度で変わってはならないと思いますね。よりよき方向にいくということ、それは結構なことだと思いますけれども、しかしそれが、もし意に反するようなことが起きたときにその迷惑を受けるのはまさに教育を受ける人たちでありますから、首長の方はリコールでもされて首がかわれば、それはそれで済む問題でしょうけれども、そうは言えない部分があります。その部分をどう担保するかということは、これは今の教育委員会制度の中に一つの決まりといいますかそういうものがあるわけでありますから、これをさらに見直していくことによって今御指摘のような点については私は解決できるのではないか、このように思います。

牧野委員 三位一体論議が現実的にずっと走ってくる以前に、そういう論議をしっかりと煮詰めていかなければいけないんですよ。だから、そのことを大臣にお願いをして、早く、国民はみんな、あるいは教育に関する人たちはそのことを非常に心配しているのですね。その辺の作業を国民に見える形でしていただきたい、そのことをまず主張させていただき、次の質問に移りたいと思います。

 社会の階層化、分極化といいますか、それと教育の因果関係について質問をさせていただきたいと思います。

 東京大学出版会の「日本の階層システム 戦後日本の教育社会」という本を読みますと、「早期の教育選抜における勝利がその後の選抜における有利な地位を保証し、出発点である出身家庭そのものがその後の人生に大きく影響している事実がある」、こういうふうに指摘されていました。いろいろな数字を挙げて立証されておりまして、それを読んで、確かにそうだなと私も思いました。

 それから、和田秀樹さんの監修の数字で日本を暴く会というのがありまして、そこの調査結果と数字によりますと、親の学歴が子供に大きな影響を与えております。それから、その家庭の収入が低いと子供の成績が下がる傾向にある、そういう数字が調査の結果、出ていますね。

 私が今一番心配しているのは、既に社会が分極化して、親の学歴と親の収入によって子供の人生がほぼ決定されていくというふうな、そういう兆候が顕著になってきているんです。

 そのことについて、文部科学大臣としてどのようにお考えですか、御答弁ください。

原田副大臣 ただいま、社会の階層化、経済的な背景、親の学歴等で子供の人生にどういう影響を与えるか、いろいろなデータ、私も読んだことがございますし、あるいはそうかなという感じもいたしますけれども、しかし、やはりこういうことは基本的にはあってはいけないかな、できるだけ能力と意欲がある学生が平等に学問ができるという社会ができなきゃいけないな、こう思っておるところでありまして、ただいまの質問、そういう分極化された社会があるかどうかについては、申し上げましたように、できるだけそういうことのないようなふうに国全体として頑張らなきゃいけないな、こんなふうに感じるところであります。

牧野委員 あってはならないじゃなくて、ないようにしなければいけないんですよ。皆さんの任務は、それが皆さんの仕事なんですよ。

 もう一度御答弁お願いします。

原田副大臣 そういう意味で、教育行政の中で、そういう経済的な理由で例えば勉学が続けられないというようなことが仮にあるとすれば、こんなことはもう絶対に許せないことであります。子供は国の宝、あすの日本を担うそういう若い子供たちが思う存分に勉強ができる、成長ができる、こういうような制度をつくっていくことが私たちは国の仕事だ、こういうふうに思っております。

 最も直接的には、奨学金制度をいかに充実していくかということが大事だろうと私は思っておりまして、近年ではこの奨学制度も非常に質量ともに充実をさせてきておりまして、貸与基準を満たす希望者はほぼ全員採用できるように、こういうことにもなっておるわけであります。

 新しい平成十六年度の予算案におきましても、事業全体で六千八百二十億円の事業費を用意して九十六万五千人の奨学生に奨学金を与えられるように、こういうような予算案の中身にもなっておるところでございますし、特に、緊急採用奨学金という制度が数年前からございまして、これは、父親、母親が急に亡くなる、また会社のリストラで急に仕事がなくなる、こういうようなときのために、ゆっくり申請していたのでは間に合わないというようなことから、無利子で貸与行為を行う、こういうような制度を充実させておるわけでありまして、十六年度においても一万人分、四十億円の予算をその中に計上しておるということであります。

 いずれにいたしましても、これは一つの、また重要な制度でございますけれども、経済的な理由で学校を退学するとか勉強が続けられないということは、再々申し上げますように、いささかでもあってはならない、こういうことに文教政策の中でも最重点課題として取り組んでおるところでございます。

牧野委員 奨学金制度のことについてはまた別の機会に論じさせていただきたいと思います。

 現実に、本年度も、大学卒業生が三〇%がまだ就職が決定していないんですよ。高校生に至ってはまだ四〇%が就職が決まっていないです、この時点で。既に社会に出ていくときにその傾向も、ある程度、優秀校といいますか有名校といいますか、そういうところの人たちは、仮に進学するにしても就職するにしても、どんどん先に進んでいく。でも、最終的にはやはり、学力低下と言ってはいけないけれども、そういう生徒たちが最終的には社会に出る段階で既に就職ができないという大きなハンディをしょっているんです、現実に。

 ですから、奨学金制度とは別に、この現実の問題を、既に親の出身と親の収入によって差別化が進み、それを受けて、そして、頑張ってきたけれども、社会に出る段階でそのような差別の状況に遭っている。それは能力とかいろいろあるでしょう。でも、統計学上そういう傾向が顕著に出ているという現実をどう見るか。そういうことについてお答えください。

原田副大臣 一番最近の大学ないしは高校卒の就職の状況、御指摘のように大変厳しいものがあるのは事実でございます。それに対して、もちろん文部科学省もそうでありますし、恐らく厚生労働省、特に若年労働者の失業問題、全体としてもしかりでありますけれども、それについて、とにかくよく連絡をとりながら、またそういうための相談事業、学校の中での相談の体制、こういうことをしっかりやっていかなきゃいけない。

 また、議員がおっしゃるように、社会の仕組みの中で、もう出発するときからそのような格差があると。まあ、あるといえばあるのかもしれません。しかし、そこは、個人の努力またそれを最大限にバックアップすることによって全員が世の中に元気に飛び出していけるような、そういうことに努力していかなきゃいけない、こういうふうに思っております。

牧野委員 大臣に質問させていただきたいんですけれども、大臣、ことしの大臣の所信表明の中には、いじめによる不登校あるいは高校の中途退学のことについての言及がなかったと私は思うんですよ。でも、いまだに不登校の児童あるいは生徒数は一年間に十三万一千人を超えている。それから、中途退学の数は、去年から比べると十四年度は減っている。それでも、八万九千四百六十一人が高校生で中途退学している。

 今まで、この問題が大きな課題になってきてから、簡単に計算しただけでもおおむね二百万人の人が高校を中途退学しているんですよ。その人たちのその後の人生、進路、追跡調査されていますか。

河村国務大臣 先に所信の問題でありますが、確かに御指摘のように、いじめの問題等々について具体的に所信を申し上げるスペースもございませんでしたが、これは全然ないわけでなく、我々も関心がありますし、また大事なことでありますから、所信の四ページに「不登校や問題行動への適切な対応にも努めてまいります。」と、一言でありますけれども、この問題も触れさせていただいております。そういうことで、そして、こういう問題についてこれからいかに取り組むかということでございます。

 特に、中途退学は確かに多いのでありますが、これはやはり学習指導の段階で、学校の選び方等々、やはりその点についてきちっとした方針が立たない中で、特に職業学校、それから進学のための学校、この辺の選び方を間違えますと、点数で輪切りして、あなたはこのぐらいの点だからこっちに行きなさいということになると、こんなはずじゃなかったかということになりますから、勉強の目的といいますか、そういうものをやはりしっかり小学校段階、高学年に入っていく中学段階で持たせてやる、こういう教育をしていきませんと、そういう中途退学というようなことが起きるのではないかと思います。

 不登校の問題については、最近、虐待も不登校の中にあるんだということもわかってまいりまして、やはりそういう原因究明、それから、先に、それを将来まで追っかけるかどうかという問題、これは就職等の問題もあって、特に途中で学校をやめた方々の就職がないということもありまして、これについては一年間、学校からどうしていますかという通達を出させるとか、ずっと一生追っかけているかと言うとあれですけれども、そういうことで、絶えず就職の問題についても学校側がそれに配慮するように、こういう通達も出しておりまして、取り組んでおるところでございます。

牧野委員 大臣、これは真剣に追跡調査してくださいよ、その後の実態を。

 おおむね私の勘でいくと、二十年、こういう現象がずっと来ているんですよ。抜本的な解決はされていないんですよ。それで、所信表明には、中途退学のことは去年まではずっと入ってきたんだけれども、ことし抜けているんですね。いじめなり不登校のことはあるけれども、中途退学のことについての言及は抜けているんですよ。ですから、これは真剣に調査をしてやってもらわないと困る。

 だから、私が言いたいのは、既に世の中が階層、分極化してきて、その中で子供たちの教育も社会もそういうふうになってきて、しかも、今いじめの問題もいろいろ、それに私は全く関係がないとは思っていないです、関係が大ありだと思っているんですよ。そういう中で、高校生が一年間に十万人も中途退学してやめていくというのが十数年間ずっと続いてきているわけですね。その後の人生はどうかというと、またですよ、またどちらかというと低学歴の低所得者に陥っていって、その負の循環が今この日本社会ではできつつあるということを僕は言いたいから、文部大臣、これは重要な問題ですから、ぜひ追跡調査してください。その決意だけまずお聞かせください。

河村国務大臣 日本の教育全体を考えたときに、そして、特に中途退学した人たちもやはり幸せを求めて生きていかなきゃならぬ、こういうことでありますから、やはりそうしたきめ細かいガイダンスといいますか、そういうことが必要であろうと思います。

 御指摘を踏まえて、これからも、特に高等学校の中途退学者についての先行きといいますか将来についてどのように対応していくか、どういうやり方をやればきちっとした対応ができるか。おっしゃるように、具体的にそういうシステムがあるかと言われると、そういうシステムがきちっとできていて、それをずっと追っかけていくというシステムになっておりませんから、この御指摘を踏まえて、これに対応していくことをしっかり考えてまいりたい、こういうふうに思います。

牧野委員 民間の調査団体に任せてもいいですし、仕事をやらせてもいいし、いろいろな形の中でこの実態を把握しなければ対策が打てないじゃないですか。ですから、そういう意味で、必ずこれはまじめにやってほしい、そのことを要望しておきます。

 時間がありませんので、本当にはしょって最後の問題だけ質問をさせていただきますが、二月の十七日の新聞で、日本の高校生の意識調査、アメリカ、日本、中国、韓国の意識調査というものの発表がありました。このことについてお伺いいたします。

 この中で私がびっくりしたのは、アメリカ、中国、韓国の高校生に比べて日本の高校生は、男は男らしくすべきだという考え方が、価値観が非常に低い。女は女らしくすべきだという考え方もよその国から比べると低い。それで、一番私が気になったのは、結婚前は純潔を守るべきである、そのことについて価値として尊重するかどうかということも、これは、中国の七二・九%から比べると、日本の男性は四〇・九%、中国の女性が七六・五%というのに比べて、日本の女性は男子よりも低くて二九・二%。日本の貞淑な女性はどこに行ったんだ、大和なでしこはどこに行ったんだ、僕は古い人間ですから、そういう思いがした。これは教育のなせるわざじゃないですか。そうでしょう。

 もう一つ。親と学校の先生を尊敬するかどうか、これは最下位ですよ、日本は。それに対する権威がどこにもない、子供に対して。数十年間、文部科学省は子供に対して何を教えてきたんだと私は感じるわけでございますが、大臣はどうでございますか。

河村国務大臣 私も子供四人のうち女の子が三人おりまして、こういう結果であるということについては、これをもって遺憾であるとか問題であるとかという言い方はどうかと思いますけれども、この男らしさ、女らしさの考え方、これは各国によってもいろいろ違うんだろうと思いますけれども、しかし、確かに比較してみて、こういう現状を、これでいいのかという思いは私もあります。

 しかし、これは一概に、どういうふうにこれを教育の中でやっていくかということになりますと、これを一つの形にはめて、こうあるべきだというわけにいきません。

 もちろん、尊敬される先生というものの姿が希薄ではないかという御指摘もあります。そういう点も踏まえながら、これからの教育の中でこの考え方をどう進めていくかということはやはり大事なことでありましょうが、家庭、学校、地域社会といいますか、それが一体となって規範意識をしっかり身につけさせる、こういうやはり仕組みをつくっていかなければいけないんではないかと思いますし、特に、最近の子供たちは成長も早いし、性の情報のはんらんというもの、日本は本当にもう野放し状態であるという指摘もございます。こういう点からやはり正していくということが大事なことではないかな、こう私は思っております。

 文部科学省も、これは放置できないことでありますから、教育手帳とか家庭教育ノートとか、そういうものをつくって、純潔の問題等々についても触れておるわけでございますが、もっとこの点について教育的な観点からどう考えていくか、我々も真剣に考える必要があると私も感じております。

牧野委員 時間が来ましたので、これで質問を終了させていただきますが、最後に心から要望として大臣に訴えさせていただきますけれども、今、大臣の所信表明の中にも、あるいは文科省のありとあらゆるいろいろなペーパーの中に、家庭と学校と地域、そういうことが非常に重要に叫ばれていますね。その中で、家庭の親、学校の先生に対する尊敬の念、畏敬の念が崩壊しているところでは、本当の教育の実効性を上げることは不可能ですね。ですから、このことについては真剣に取り組んでいただきますようにお願いをいたしまして、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。よろしくお願いします。

 大臣の所信に対して、通告に従って質問をさせていただきたいというふうに思います。

 本日、私にとって、代議士の立場をお預かりしまして初めての質問でございます。我が党の新人議員としては一番手、きょうは、先ほどのお話にもありましたが、切り結ぶ覚悟で、切り込み隊長として頑張ってまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 さきの選挙では、私、次の世代の子供たちのためになる日本をということで訴えてくる中で、国会へと押し上げていただきました。今国会では、最も若い文部科学委員として、この新鮮な感覚をぜひとも生かしながら責任を全うしてまいりたいと思っておりますので、大臣初め各位の真摯な御答弁をお願いしたいと思います。

 さて、本日は、科学技術、特に日本の宇宙利用計画について、主に大臣にお伺いしたいというふうに思っています。

 大臣は、ちょうど所信表明の中でも、宇宙研究開発を国の存立基盤の一つとして位置づけられておられました。その根幹政策という割には、我が国の宇宙開発あるいは宇宙の利用開発計画といったものの全体像あるいは戦略といったものが、なかなか我々の目には見えてきていないという感じがしています。種子島のロケットの打ち上げというものは、国民の目には一つのシンボルとして映っていると思います。しかし、その全体像というものがなかなか見えてこない。

 例えば、これまでのそういう技術の積み重ねの中で、技術的なスピンアウト、技術移転といったものがどんな位置づけとして考えられているか。これまでも、我が国は物つくりの国として生きてきました。今、日本各地でも、その技術の積み重ね、磨き上げる努力というものは続けられております。それに対して私も敬意を表するものであります。

 その中で、私、地元が北九州市、福岡にある北九州市というところでございます。物つくりの町として生きてきました。その物つくりの町に育った私から見ますと、この宇宙利用というものは、例えばロボット工学の分野、あるいは情報通信、あるいは医学、新素材といった物つくりの技術を積み重ねてきたからこそ、新しい変わっていくきっかけなり、あるいは宝の山なりというのを見つけていける大きな大きなチャンスになるんではないかというふうに感じております。新技術を開発した暁の効果というものは、先日も報道にありましたが、青色発光ダイオードの例を挙げるまでもないというふうに思っております。

 その中で、将来の飯の種としてある意味の先行投資ということの役割、この宇宙利用の計画においては大きいと思うんですけれども、今後の宇宙開発の展望を改めて大臣よりお示しをいただきたいというふうに思います。お願いします。

河村国務大臣 所信でも申し上げたところでございますが、宇宙開発というのは、一つのやはり子供たちにとっても夢を抱かせることでありますし、また国の発展の基盤といいますか、おっしゃるように、あれだけのロケットを打ち上げるという、そのことそのものが、やはりそうした物づくりの基盤が根底になければならぬわけでございます。

 そういう意味で、この宇宙開発を進めるということはそういう大きな意味を私は持っておると思いますから、今度、宇宙開発事業団あるいは宇宙技術研究所が一体となった形で今進めておりますし、また、これも御案内のように、文部省と科学技術を行うところが一体となってやろうという仕組みもできたわけでございます。省庁再編の中でもそういうことを視点に置いてやってきたということであります。

 その中で、ある意味では国威をかけて、こういう部分もあるわけでございますが、それだけ国民の皆さんが日本の物づくりを信頼して、そしてそれによっていろいろな夢を描くことができる、そういう意味で、私は、宇宙開発というものに国策としてこれからも取り組んでまいりたい、このように考えています。

城井委員 ありがとうございます。

 先ほどの決意というところを踏まえて、ぜひともお伺いしたい点がございます。

 その決意を踏まえた上で、一つ、我が国がある程度早急に検討しなければならない、この宇宙利用計画を改めて考えていくに当たって検討しなければならないと思っていることがあります。それは、先日、一月の十四日に米国のブッシュ大統領が発表されました新しい宇宙計画の件でございます。

 報道によりますと、二〇一〇年までに、これまで日本も協力をしてつくってまいりました宇宙ステーションの完成を目指す、あるいは二〇一〇年までのスペースシャトルの引退、あるいは二〇〇八年までの多目的有人宇宙船、CEVの開発、二〇二〇年までの月への有人探査の再開、あるいは火星への探査といったものなどがその中には盛り込まれておったと記憶をしています。

 この件に関して、アメリカのNASAのオキーフ長官は、この計画について数カ月の集中した議論の成果だというふうにおっしゃっておられました。しかし、私、感じますに、実際のところ、意義やあるいは動機といったものに余り説得力がないんではないかというふうに感じていますし、また、大統領選挙が控えておって、連日報道が続いているというところもあります。その部分でのパフォーマンス、あるいは、最近ちょっと報道でもありました、宇宙開発に積極的な姿勢を示している中国の姿勢、これへの対抗意識といったものが恐らくその部分の背景にはあって、今回の拙速な計画づくりになっているんではないかというふうに感じています。

 しかし、アメリカのあの強いリーダーシップで国が運営されているという部分を見ましたときに、若干荒唐無稽には聞こえますが、実現する可能性というものがある、あるいは実現の方向に実際にそれが向かった場合に、その新計画が産業にもたらす波及効果というもの、これははかり知れないものがあると思っています。とりわけ、基礎的な技術の発達、先ほど私が冒頭申し上げましたように、この宇宙開発というものが、これまでも、例えば情報通信を初めとした技術の一つの突破口になってきたことは言うまでもありません。

 今回の計画の中のもので一つだけ例を挙げて申し上げますと、例えば有人による月面基地の建設を当面の活動として行った場合に、その活動主体として恐らくロボットが使われるのではないかというふうに思います。そうすると、これまでも割と我が国も取り組んできているロボット工学の部分、あるいは情報技術、医学といったところが、恐らくその技術革新の可能性として挙がってくるのではないかというふうに思います。

 ただ、その場合に、一つ我が国として考えなければいけないのは、例えばそのロボット工学、これまでも、遠隔操作をいかに高度にしていくかという取り組みがありました。あるいは、長い寿命のバッテリーを開発するというところも我が国が一歩リードをしているところでございます。そういった日本の得意分野というものを頭に置きながら、今、米国から新しい計画が出されてきた、そのときに、そういう米国主導の計画というものが出てきている状況の中で日本としていかにかかわっていくのか、ここで大臣のリーダーシップとビジョンが必要になっていると思います。大臣の見解をぜひお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 大事な御指摘だと思います。

 宇宙開発部門においても、日本が果たすべき役割というのがあるんだと。アメリカは最先端を行きながら、それなりのまた果たし方をやっておるわけでございますが、先ほど御指摘の、アメリカのブッシュ大統領が、イニシアチブのもとで、宇宙探査についてかなり思い切った意欲的な内容でビジョンを発表されたということを私ども聞いておるわけでございます。

 日本におきましては、昨年九月に宇宙開発に関する長期的な計画というものを打ち出しておりまして、これには、社会的要請に対応する地球観測分野あるいは通信・放送・測位分野、これに重点化をした衛星開発をやろうということが一点。それから、H2Aロケットの標準型は民間へ移管をしていこう、民間活力をもっと増そうということ。それから、国際宇宙ステーションへの補給等のためのH2Aロケットの能力をさらに向上させる、これを開発する必要があるということ。それから、国際宇宙ステーション計画へも日本として積極的に参加をしていこうということ。こうした点を重点的に取り組んで、宇宙開発の戦略を進めていこう、こう思っておるわけでございます。

 アメリカのビジョンが発表されたわけでございますが、これによって日本も大きく具体的に変更しなきゃならぬということは現時点ではないわけでございます。

 しかし、日本は日本で果たさなきゃいけない部分がある。確かに、残念ながら、H2Aロケット、六回目にしてああいう事態が起きました。この原因究明は今もうほぼめどをつけておりますが、これをきちっと発表して、この再開に進んでいかなきゃならぬのでありますが、少なくとも今日まで、このH2Aの部分については日本が最先端を行っていた、こういう部分もございます。こういう面を特化して、やはり日本としての存在価値を示しながら、しかし、さらに世界全体の宇宙開発には日本の人材も活用する、訓練をしてそれに参加させる、こういうことが非常に大事なことでありますから、まさにこれは国際間の協力によって総合的な宇宙開発というのは進むだろうと私は思います。

 ただ、アメリカ、中国等を見ておりますと、かなり軍事的な面というものも否定できない部分もあります。日本がそれに応じ切れない部分もあります。しかし、日本には日本の役割というのはちゃんとある、そういう思いで、これからの宇宙開発には、先ほど申し上げましたいわゆる長期的な計画に基づいて着々と進めてまいりたい、このように思います。

城井委員 ぜひ外圧にあおられない科学技術政策、宇宙開発でお願いしたいというふうに思います。

 今お話で触れられた点でもう一つだけお伺いしたいと思います。宇宙ステーションの件でございます。

 これまで宇宙ステーションの建設、日本としても既に三千億円以上投じておると記憶をしています。最終的な総額は恐らく約五千八百億円に上るのではないかという試算があるとも聞いています。

 しかし、先ほどのアメリカの新計画というものが現実味を帯びてきた場合に、このステーションの完成後はアメリカは手を引いてほかの参加国にお任せになるのではないかというふうにアメリカの態度を分析している声も上がっているという部分があります。

 仮にアメリカが手を引いた場合に、ステーションにキックするその手段というもの、例えばソユーズのロケットといったものに非常に限られてくるという部分があろうかと思いますが、実際にステーションが完成した場合、年間には約四百億円の運用費が見込まれるというふうに思いますが、そうすると、アメリカが手を引いた場合、日本の負担の大きさというものはどさっと肩に乗っかってくるのではないかという懸念がございます。この点について、大臣の御所見をぜひ伺いたいと思います。

坂田政府参考人 国際宇宙ステーションのお尋ねでございます。

 今の先生の御質問は、恐らく、今回の新しい米国の宇宙ビジョンに関連しまして、その中で、米国は二〇一〇年までしっかり責任を果たして宇宙ステーションを建設する、そして二〇一六年まで運用する、そういう趣旨の記述がございまして、それで、二〇一六ということで何かおしりが切られているかのごとき印象がございますものですから、そういうことがきっかけとなって先生の御質問になったのではないかと私ちょっと推察いたしましたが、実は先般、この宇宙ステーションに参加をしている各国の担当者がワシントンに集まりまして、アメリカの今回の宇宙ビジョンが出たことを契機として、これから各国間でどのように宇宙の協力を進めていくか、これは国際宇宙ステーションも含めまして、相談をいたしたところでございます。

 米国側は、あの発表の中に二〇一六年と書いてあることをもって米国が宇宙ステーションの運用から手を引くということではなくて、とりあえず発表についてはああいう記述があるものの、引き続いてどのようにパートナーと国際宇宙ステーションをしっかり運用して成果を上げていくべきか、上げられるか、これは相談をしていきたい、こういう回答でございましたので、私どもは、米国が国際宇宙ステーションから手を引くというようなことはないであろう、ないというぐあいに考えておりまして、先ほど先生御指摘のとおり、この国際宇宙ステーションへの参加につきましては、多額の経費をもってこれまで進めてまいりましたので、しっかりと成果が上げられるように努力をしたい、米国についてもしっかり説得をして、いい成果を上げていきたい、このように考えております。

城井委員 税収の厳しい折でございます。ぜひとも負担増という部分には御考慮いただきながら取り組んでいただきたいというふうに思います。

 さて、次の質問に移らせていただきます。

 先ほど大臣のお話にも触れられましたH2Aロケットの件、ぜひお伺いしたいと思います。

 昨年十一月の二十九日、残念ながら、六号機打ち上げに失敗しました。私も小さいころから宇宙が大好きで、特にこのロケットの打ち上げというものを見ながら育ったという記憶がございます。しかし、この打ち上げ失敗というもので、宇宙科学に夢を膨らませてきた子供たちの期待というものは残念ながら裏切られたのではないかというふうに思っています。世に言われるところの子供たちの理科離れあるいは科学離れといったところを踏みとどめるための一つの大きな方法ではなかったかというところでも、残念な気がしています。

 そして、先ほど申しました新しい技術あるいは産業のパイオニアとしての国民の期待も大きかったがゆえに、この部分の損失、とりわけ、多額のお金をかけて積み重ねてきた部分が一瞬にしてなくなった。打ち上げだけでも百億円かかったと聞いています。その我々の税金、血税といったものが消えていってしまっているという声も厳然としてあるのが事実であります。

 もう一つ加えて言えば、今回のH2Aロケットには情報収集衛星が二機積まれていたと聞いています。この情報収集衛星の打ち上げの失敗ということによって、私自身も、この点、ぜひ我が国は実現をしていかなければならないと思っておりますが、国家としての日本の情報面での自立というところを図っていく上で大きくブレーキがかかってしまったというふうに感じております。

 このH2Aロケット六号機の打ち上げ失敗について、大臣の御所見を伺いたいというふうに思います。

河村国務大臣 御指摘のとおりでありまして、私も種子島の現場に行っておりまして、十分後に、きちっと打ち上がったのでありますが、残念ながら、ブースターの切り離しがうまくいかなかったということで、ああいうことになりました。

 これについては、まさに物づくりの根幹に触れるのではないかというような御指摘もありまして、全体として日本の物づくりの力が弱まったのではないか、こんな御指摘もいただきましたし、もちろん、あれだけの高額なお金をかけたものでありますから、この失敗というのは非常に残念なことだし、しかし一方では、ここまでやってきたことをこれで無にしてはならぬという思いもございまして、これをさらに、この原因だけはきちっと究明をして、次なる手をきちっと打って、再びそういう失敗を犯さないようにするということに今最大の努力をいたしておりまして、今、固体ロケットブースターの捜索をやっておりますが、これをつかまえれば最終的な原因がきちっと確定できる、こう思っておるところでございます。

 これは、今回はやはり、このロケットを少し、百五十億かかったものを百億以内にしようというような方針を出して機材を新しく変えたとか、いろいろな問題もあったようでございます。

 そういうことで、最終的な原因究明にはあと一歩というところに来ておりまして、近々はっきりできると思いますが、私としては、これによってこれまで積み上げてきたことがだめにならないように、原因だけはきちっとして、次の再開に向けて最大努力できるように、現場の皆さんが士気を失わないように、私どもとしてしっかりこれを支えながら、しかし原因究明、その再発防止策だけはきちっととらせるということをまず今最大の課題としておるところでございます。

城井委員 ぜひ原因究明に関しては早期にお願いしたいというふうに思いますが、その際に一つ、やはり考えなければならないと思っていることがあります。

 以前にも、このロケット関係の失敗のときに失敗から学ぶというところで質疑があったというふうに聞いています。今回のH2Aロケットの打ち上げ失敗ということに関して、ある専門家はこのように言っています。ぎりぎりの高性能化、問題を追求しようとする姿勢の欠如、外国との競争や国内の批判に負けてはならないあせりなどが重なって失敗に結びついたんではないか、だから、ロケットの開発過程全般を検証し、根底から出直すべきだと。これは朝日新聞の二月十三日の記事に、桜井淳という専門家の方が言われておった部分でございますが、この部分、非常に大きな指摘をしているんではないかというふうに思っています。

 というのは、これまでの成功の積み重ねという部分に、時間やお金がないというところを理由にしながら、若干あぐらをかいている部分が本当になかったのかどうか。そして、今後の開発への取り組みというところ、設計の部分の発想から見直すという必要が本当にないのかどうかという、全体を見渡しての検証というものは、私自身も必要なんではないかというふうに思っておりますが、この点、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 ただいま大変大事な御指摘をいただいたと思っております。

 先ほど大臣から、原因究明、これを徹底してやって、しっかりとした対策を立てること、これをきちんとやるつもりであるということ、お話ございましたが、私ども、現在、直接の原因究明、これは当然のこととしてしっかりやります。それから、その原因究明を踏まえて、しかるべき対策、これも当然のこととして立てまして、その対策の検証をしっかりするために、今回、固体ロケットブースターが問題でございましたので、小型の固体ロケットブースター、あるいは実機の固体ロケットブースターを使いまして、対策の検証もしっかりやります。

 それから、先生御指摘の、開発過程が適当であったか、妥当であったか、これは大変大事な部分でございますので、現在、原因究明とあわせまして、第一号機を打ち上げる前の段階、まさに開発過程のプロセスにおいて、どのような試験が行われ、そのときにどのような判断が行われ、それが適当であったのかどうか、これもあわせて現在調査中でございます。

 それから、今回の直接の原因の究明ができましたならば、これはそう遠くない時期にできると思いますけれども、その後、H2Aロケット全体の再点検、いわゆる総点検と言っていいと思うんですけれども、設計上非常に重要な部分につきまして、再点検をしっかりして、もし直すべきところがあればしっかり直して、次の打ち上げに備えていく、そのようなことをやるつもりでございます。

城井委員 この打ち上げ失敗の件でもう一点だけ伺わせてください。

 これも、またある専門家のお話なんですが、我が国のロケット打ち上げ、これまでの失敗率というところでいうと約二三%というふうに数字を聞いています。海外諸国は、同様のロケット打ち上げで七%前後というふうに聞いておるわけでございますが、この失敗率の高さからくる技術の不安定さというものは、本当に実用の技術としてたえ得るものなのかという議論が、これは出てきてもしようがない部分があるのではないかというふうに思っていますが、この点について御所見が伺えればと思います。

坂田政府参考人 失敗率のデータについて、最初にちょっと申し上げたいと思います。

 私ども、一九六〇年以降の各国のロケットの失敗率といいますか、むしろ成功率の方のデータを持っておりますが、日本について申しますと、これは旧NASDA、それから現宇宙航空研究開発機構でございますけれども、設立が一九七五年でございましたのでそれ以降のデータを申しますと、三十七回の打ち上げのうち成功が三十三回でございます。八九・二%の成功率でございます。

 それから、欧州の一つの例でございますけれども、一番典型的なアリアンというロケットがございます。これは1型から5型までございますけれども、一九六八年以降、総合計で百六十一回打ち上げておりますが、成功が百五十回ということで成功率九三・二%でございます。

 それからアメリカ、アメリカは幾つかのロケットがございますけれども、例えば一番成功率の高いもの、デルタ型、これは1、2、3型全部合わせますと、一九六〇年以降、三百一回のうち二百八十四回の成功で九四・四。一番悪いのがアトラスというロケットで、一九六〇年から、三百二十二回打ち上げて二百八十一回の成功、八七・三%でございます。ちなみに、中国の長征ロケット1、2、3、4号は、一九七〇年以降、七十四回のうち六十六回成功で八九・一。ロシアが、一九六五年から、二百九十八回のうち二百六十四ということで八八・六%でございます。

 一般的にロケットの場合は、百発以上打ち上がりますとかなり技術が成熟してまいりますが、最初の二十発ぐらいは大変各国とも苦労をしてございます。日本の場合、H2ロケットは七回しか打ち上げませんでしたが、五回成功、二回失敗しておりますし、それから、H2Aが今回まだ六回目でございますが、一回失敗した、五回成功ということであります。

 その他、ロシア、米国等々、最初の二十回のうちの成功率を全部調べてみましても、一番悪いところは成功率五五%でございますし、一番いいところで九五%ということで、やはりロケット技術は大変高度な技術の集積で非常に厳しい条件下でこれを運用するということもありまして、やはりリスクがある技術ではないか。したがって、特に初期段階におきましては、一〇〇%の成功というものを確保するというのは非常に難しいと思います。

 しかし、にもかかわらず、先生も先ほど来御指摘のとおり、ロケット全体はいろいろな技術の集積でございまして、これは開発することはいろいろな技術的波及効果もございます。そういう面もあわせまして、私ども、日本の基幹ロケットでございますH2Aにつきましては、これをぜひ信頼性のあるものにすべく、今回の失敗も踏まえて、しっかり努力をしていきたい、このように思っております。

城井委員 ぜひその詳細な数字、後ほどお届けいただければありがたいというふうに思います。

 少しでも失敗率を下げていただきたいというふうに思います。最初二十回という部分、私も認識はしておるわけですけれども、ただ、今のこの限られた資源と人材の状況というところで申しますと、その部分の回数に本当に甘えていいんだろうかというところは、ぜひ真摯に受けとめていただければというふうに思います。

 さて、続けて、余り時間がないんですが、短く質問をさせていただきたいと思います。

 今回の打ち上げ失敗によって当面打ち上げはないようでございますけれども、再開のめどはいつになりそうでしょうか。所信の中では、早期と書いてありますし、あとことしの後半という意見を聞いたこともあるんですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、今、原因究明をきちっとしたいということに最大の精力を費やしておるところでございまして、これをできるだけ早くはっきりさせたい。三月上旬に入りましたら原因究明を発表したい、こう今思っておるところでございます。その結果を待って、これからの対策ということでありますが、いつなら再開できるということは、ちょっと私、今の時点では時期尚早だと思っております。

 気持ちとしては、今御指摘のように、早く、ことしの後半にでもという思いはございます。しかし、まずこの原因のところをきちっとした上で、これならいけるというめどが立つ、ちょっと今その点について明確にできない状況でございます。

城井委員 今からする質問と関連をするんですけれども、ぜひ早期にというふうにお願いをしたいと思っています。

 というのは、いわゆる今回のロケットは、ただ打ち上げる側ではなくて、それを打ち上げてもらうものを載せている、つまりユーザーサイドの側のニーズ、要請というものがかなりの程度考慮されなければならないと思っているからであります。

 例えば、次期の気象衛星MTSATの打ち上げが今回の打ち上げ失敗によって延期をされているという部分がございました。私も、国土交通省あるいは気象庁の方に今回の件でお話を伺いました。現在は、いわゆるゴーズ九号、あの中古の衛星をお借りして何とか運用しながら、その予備機としてこれまで使っていたひまわり五号を確保しているというような状況で、何とかぎりぎり気象の情報の確保というところには努められているという部分があります。そういう状況をかんがみ、早期かつ万全の打ち上げ再開をぜひユーザーサイドからというふうなお声も伺っているところでございます。

 それに加えて、本日お越しをいただいているかと思いますが、今回の打ち上げ失敗で二機を残念ながら失ってしまった情報収集衛星、これの運用に関しても支障が出てくるんじゃないかというふうに想像をしております。内閣衛星情報センターの方、きょう来られていると思うんですが、ぜひその点について御所見を伺いたいと思います。お願いします。

岸野政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の打ち上げ失敗で二機を失ったのは大変残念に思っております。

 他方、情報収集衛星、これは我が国の安全確保及び危機管理に資する画像情報を収集するということが主目的でございます。したがって、情報収集面で活用していくというニーズがございます。

 これまで運用に向けてさまざまな準備を行ってきたわけでございますが、できる限り早い段階、本年の四月から現行の二機を使って定常運用を始めるということで、目下準備を進めているところでございます。

城井委員 時間がないので最後にしたいと思いますが、先ほどの情報収集衛星の部分も四月から運用ということでしたが、本来でしたら四機の運用の予定というところで計画があったと思います。

 しかし、その部分で今回の場合もう一つだけ考えておかなければならないと思っているのは、その二機プラス二機といったときに、その二機を同時に打ち上げるということを今回やっていたわけですけれども、このダブルローンチの部分、特に非常に機密性が高く、要するに秘密であるということ、そして非常にお金をたくさんかけてつくっているというものをまだ技術的に信頼が置けるかどうか微妙だというところで、今回のその二機同時打ち上げをしてきたというところは、若干そのリスクヘッジという観点から厳しい部分があるのではないかというところを感じています。そこの部分を最後にお聞きして質問を締めくくりたいと思います。

岸野政府参考人 お答え申し上げます。

 御案内のとおり、情報収集衛星導入に至った契機は、九八年のあの北朝鮮によるテポドン発射でございます。限られた期間の間に衛星を開発し、打ち上げて運用まで持っていくということで、一つは時間的なニーズがあった。それから、費用対効果で予算を効率的に活用しなきゃいけないという発想もございました。そういった点をすべて踏まえた上で、最初の四機体制確立まではデュアルローンチ二回でいくということが適当というふうに考えた次第でございます。

 それから、リスクというお話があったわけでございますが、実は、この準備の過程で、専門家の方々にリスクについて所見を伺ったことがございます。その際は、最初の四機については二回のデュアルローンチで行う方が相対的にリスクが少ない方法だという結論が出ております。

城井委員 最後に、衛星ロケット打ち上げ失敗の原因究明と、それから早期の再開を心からお願い申し上げて質問を締めくくりたいと思います。ありがとうございました。

池坊委員長 松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔でございます。昨年初当選した一回生議員であります。

 私の地元は、教育県としての再生を目指す広島でございます。それだけに、同郷の先輩であります斉藤理事それから岸田委員、今既にいらっしゃいませんけれども、お二人とともに与野党で議論できることは大変意義深いものではないかというふうに考えております。

 委員会の質問に立つのは本日が初めてでございますけれども、本委員会には分厚い胸板を持つ政務官もいらっしゃることですし、寛大な先輩の議員の方の胸を精いっぱいおかりして、全力でぶつかっていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 さて、本日は、文部科学大臣の所信に対する質疑であります。私にとっては記念すべき国会議員としての第一問であります。文部科学行政の基本施策に関し、イの一番にお伺いしたいことは何か、大臣にお尋ねいたします。

 文部科学省の任務とは何でしょうか。大臣の力強い御答弁をお聞かせください。

河村国務大臣 文部科学省の担います行政部分、非常に範囲が広いわけでありますが、一言で言うならば、まさに日本の国を教育・文化立国に仕上げていくその責任、そして同時に、科学技術創造立国、この基盤をしっかりつくっていくということ、これによって、日本国民の福祉はもちろんでありますが、日本にすぐれた人材をつくっていくことによって世界に貢献をしていく。資源のない国が今日まで来たこと、さらにそれを躍進しようとすれば、やはり人づくりにある、このことが一番の役割ではないか、こういうふうに思っております。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 人づくりという言葉を今大臣からちょうだいしましたが、文部科学省設置法第三条には、「文部科学省は、教育の振興及び生涯学習の推進を中核とした豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成、学術、スポーツ及び文化の振興並びに科学技術の総合的な振興を図るとともに、宗教に関する行政事務を適切に行うことを任務とする。」とあります。教育の振興、それから創造的な人材の育成、そして科学技術の総合的な振興、こういったことが挙げられているわけでございますけれども、私は、科学技術政策の本質も、やはりより独創的な成果をみずから生み出せる人材の育成であると考えます。つまり、教育の振興にしろ科学技術の総合的な振興にせよ、両者はいずれもその本質は人の育成、人材の育成であるということでございます。

 我々民主党は、昨年十月に発表しました、こちらでございますけれども、「民主党政策集―私たちのめざす社会」にも盛り込みましたとおり、教育に関しては、将来的には国の役割は、「各年齢段階の最低基準・基本方針を定めることに限定し、その他の権限は最終的に地方自治体が行使できるものとします。」とうたっております。現政権、そして文部科学省とは、将来的には目指す方向が異なるわけでございます。しかし、教育の振興にしろ科学技術の総合的な振興にせよ、両者はいずれも、その本質は人の育成ではないかと先ほども申し上げたとおりでございます。

 そういった観点からは、あくまでも旧来の文部省と科技庁、別々に存在していた時代と比べてということにはなりますけれども、その意味では、文部省と科学技術庁の統合というものを全否定するつもりもありません。両者の統合にはそれなりの意味、ねらいというものがあるのではないかと考えております。組織の統合が一足す一を三以上にする、そういった効果を上げ得ることはよく知られているところでありますけれども、実際、私がかつて勤めておりました都市銀行でも、合併でシナジー効果が上がったということが言われておりました。

 我が党の支持率が消費税以下だと言われておりましたころ、保守王国で活動する候補者としては、正直なかなか切ないものもございました。しかし、合併を経て、先般の総選挙では躍進を遂げた。私も、こうして念願の文部科学委員となることができました。組織の統合は、時として大きな効果を上げ得るということだと思います。

 そこで、大臣にお尋ねいたします。文部省と科学技術庁の統合の効果についてお答えをお願いいたします。

河村国務大臣 文部科学省の目指す方向と今御指摘あった方向が、そんなに私は大きく違っているとは思いません。目指す方向は、まさに教育現場というのは地方が取り組んでおられるわけでありますから、これを尊重しなければいけません。それで、国の役割、地方の役割分担、これが今大事になってきておりますから、目指す方向は、私自身考えてみて、今松本先生言われた方向とそんなに違っているとは思いませんので。

 そこで、私が三代目の文部科学大臣になるわけでございますが、まさに省庁再編ということもありまして、一体になりました。それまでは、旧文部省は大学を中心に、特に学術関係でいうならば大学中心にやってきた。それから、旧科学技術庁が、まさに国の研究機関といいますか、国立の試験研究機関を持っていて、それを中心に科学技術の振興をやってきたという面がありました。

 それぞれが別々に、産学官といいますか、そういう連携をやってきて、知的財産の問題等々含めてそういう形であったものを、今度一体となってやろうということになってきたわけでございまして、いわゆる学の研究機関、研究をする文部省と、また国の研究といいますか、研究を担当する科学技術庁が連携することによって、まさに、官が持っている実用化、研究段階の一環でした研究支援というものが、これができなかった部分が一体となってできるようになった。これまでの官の部分と、それから学の部分の連携が、これによってしっかりできるようになったということが一つの大きなプラス面だと思いますね。

 これによって、まさにこれからの教育部門、それから科学技術振興部門あるいは経済活性化における部門、産学官の連携というものが一つの目標のもとに取り組むことができるようになったということが大きな、私はこの両省の合体によって生まれてきた、こう思っております。

 そういう意味で、戦略的な科学技術の振興あるいは大学が持つノウハウ、知的戦略、そういうものをさらに一体となってこれから進めていくことによって、まさにこれから求められております地域再生といいますか、そういうものが生まれてくる可能性が非常に高まったというふうに思っております。

 このように、統合のメリットをこれから最大限生かしながら、これからのいわゆる知的財産戦略といいますか、そういうものとか、あるいは産学官連携による積極的な取り組みによって日本の再生を図っていく。科学技術創造立国、また教育・文化立国、こういうものが一体となって取り組めるようになった点が大きなプラス面ではないか、このように考えております。

松本(大)委員 ありがとうございました。

 産学官の連携に一体となって取り組むことができるようになった、その他いろいろな効果があったということでございますけれども、いずれにしましても、先ほど申し上げたとおり、教育の振興にしろ科学技術の総合的な振興にしろ、どちらも人材の育成、そのことこそがその本質ではないかと私は考えております。

 大臣は違うとおっしゃいましたけれども、中央省庁の肥大化路線というものと、それから、国の役割を限定して地域の自主性それから創意工夫に任せていくという私たち民主党とは、将来的な方向性は異なるのではないか、そのように私は考えているわけでございます。

 しかしながら、与野党で意見あるいは手法が違っていても、人材の育成こそが教育の本質であり、科学技術政策の本質であるという思いだけは共有している。国づくりとはすなわち人づくりであるというただ一点においては、政治家も、それから行政マンの皆さんも、野党も、それから与党も、同じく熱い思いを持ってこの場に集っている、そうあることを期待したいものでございます。

 さらには、先ほど大臣からは科学技術立国それから知的財産について言及もございましたけれども、本文部科学委員会での質疑が、二十一世紀の知識社会に生き残りをかける、我が国の国家百年の計をリードするものとなることを期待しつつ、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 大臣は所信の中で、諸課題への取り組みとして、知的財産戦略の推進というものを挙げていらっしゃいます。二十一世紀の知識社会あるいは知価社会と呼ばれる世の中を日本が生き残っていくためには、もちろん知財戦略が不可欠であることは言うまでもありません。政府は、知的財産戦略本部を設置し、昨年、知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画を作成しておりますが、創造、保護、活用という各ステージに担い手、つまり人が存在しなくては、せっかくの推進計画も絵にかいたもちであります。つまり、知的財産を生み出す人、それから守る人、それから事業へと結びつける人、これらの人づくりが極めて重要であるということでございます。文部科学省の任務とは独創的な人材の育成である、設置法にも規定されてございます。人づくりを担わんとされる文部科学省の責任は、その意味で極めて重大ではないかと私は考えております。

 まずは、知的財産を守る、保護の部分について取り上げさせていただきたいと思います。

 先月、特許庁が発表しました特許行政年次報告書からの数字ですが、昨年七月現在、アメリカにおいては知的財産専門の弁護士が二万一千七百五十四人いるのに対して、日本では技術系の素養を持つ弁理士登録をしている弁護士、わずか三百七人でございます。最高裁の事務総局行政局の資料によれば、知財訴訟の件数は十年前からほぼ倍増しております。技術系ベンチャー企業にとって、ライバル企業の特許侵害を防げるかどうか、この点は経営の生命線でもあります。知財を守る法律家の不足というものは、大臣所信にもある科学技術創造立国を根幹から揺るがしかねない重大な脅威であると私は考えます。

 そこで、人材育成を担当される文部科学省の最高責任者である大臣に、知的財産戦略の推進に絡む人材育成への取り組みについて御質問いたします。知的財産権保護のための人材育成に対する文部科学省の取り組み状況について、お聞かせください。

河村国務大臣 松本委員御指摘のように、知的財産といいますか、こういうものを創造していきながらこれをさらに守りつつ発展させるということ、これは国策としても非常に重要なことでございまして、実は、昨年の三月に小泉総理を本部長とする知的財産戦略本部ができておりまして、私も副本部長という立場でございます。これは内閣官房長官が議長役を務めるわけでございますが、こういう形で今知的財産戦略の強化を図っております。

 中でも、委員御指摘の、いかに人材をつくっていくかということ、これは非常に大きな課題でございまして、御案内のように、一つはロースクールが今度できました。この中にも、著作権法、特許法、工業所有権法等々、そういう複数の科目をしっかり取り入れて、まさにこうした知的財産に強い法曹の養成ということが、これは司法改革の中のロースクールでございますが、ここに特に強く打ち出されておるのがそれでございます。

 そういうことで、新たにロースクールは六十八校できますけれども、これについては知財関連科目はすべて入っておる、各大学もこれに非常に力を入れているということが、今御指摘のあった点に対して強い関心を持っておるということでございます。

 さらに、弁理士の皆さん方も、まだ具体的に上がってきておりませんが、今、専門職大学院制度というのができました。大学院というと、とかく学究面だけが重視されて、そちらの方へ、論文を何枚書いたとか博士号を取るための段階とか言われておりますが、むしろ実学を重んじた専門職大学院をつくろうということで、今、弁理士会もそうした大学院構想というのを持っておられまして、我々の方にも何度か相談に見えております。そういうことを強化しなければいかぬと思っております。

 また、司法改革においては、こうした知的財産に強い法曹をつくると同時に、裁判もいわゆる特許裁判といいますか、そういうものを迅速にやるためにこれに特化した高裁をつくっていこうということで、この方向が今もう打ち出されておりまして、それに向かって今進んでおるところでございます。

 このように、法曹関係の人材。そして同時に、産学官の連携でございますから、大学発のベンチャーというものあるいはその技術移転をする機関、これは弁理士も含めてのTLO、これをしっかり進めていく、こういう課題もございます。

 同時に、大学にも知的財産本部といいますか、知的財産戦略をつくる本部を各大学につくろうということで、既に四十三の大学が本部を設置いたしました。

 このようなことで、御指摘のような、知的財産を守りながら、それをさらに活用しながら、そして日本の国の将来を科学技術創造立国に向けていく。知的財産の問題というのは、単なる科学技術だけではございませんで、著作権等々、文化面といいますか、これもあるわけですね。こういうものを総体的にやっていくということが重要になってまいりまして、先ほど申し上げましたように、政府としてもこれを極めて重視して今政策を進めておるところでございます。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 今の御答弁にもありました法科大学院ですけれども、先ほど答弁にもありました、御高承のとおり、ことしの四月には国公私立合わせて六十八校、入学定員五千五百九十人、法科大学院が開設されることとなっております。

 ここで注目しておきたいことは、二〇〇一年六月に出された司法制度改革審議会の意見書であります。法科大学院について、次のような記述があります。「二十一世紀の法曹には、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者を幅広く受け入れていくことが必要である。」「そのため、法学部以外の学部の出身者や社会人等を一定割合以上入学させるなどの措置を講じるべきである。」

 これは、まさに大臣の答弁にもありましたように、知的財産の番人としての技術系の素養を持った、技術を理解する弁護士を養成するためにも大きな意味を持っていたのではないかと私は思っております。

 現在、最終合格者の方の発表は全大学が終わっているわけではありませんので、昨年行われました法科大学院統一適性試験における志願者総数と、そのうち理工系学部出身者数の割合がどうであったかということをもってちょっと検証させていただきたいと思います。

 日弁連の法務研究財団実施分で四・二%、法科大学院統一適性試験における志願者総数に占める理工系学部出身者数の割合は四・二%であります。もちろん、最終合格者数に占める割合についても引き続きフォローしていく所存ではございますけれども、いずれにしましても、非常に少ないと感じざるを得ません。

 また、夜間開講を行う大学院も七大学にすぎません。一たん大学を卒業し、技術系の素養を持って社会で働いていらっしゃる方々に対しても門戸を開いていくという観点からも、この数字はまだまだ不十分ではないか、そのように思います。

 せっかく省庁再編で、先ほどもおっしゃっていらっしゃいました、文部科学省になられたにもかかわらず、法科大学院構想は旧来の文部行政のままではないか、最も深刻な理科離れは実は省内で起こっているのではないか、私はそのように思う次第であります。

 知的財産戦略においては、引き続き文部と科学がばらばらではないか、同床異夢ではないか、合併効果が存分には発揮されていないのではないか。どこかで聞いた言葉であります。いつもは手前どもに対して向けられている御指摘をそっくりそのまま差し上げたい、かように思うわけであります。

 知的財産戦略本部、先ほどもおっしゃっていらっしゃいました。この知的財産戦略本部が策定をしました知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画の第五章にも、「知的財産に重点を置いた法科大学院や専門職大学院、技術経営大学院など、あらゆる段階における知的財産教育を推進する」とあります。

 先ほど大臣もその意義について認めていらっしゃいました。もし、そうであれば、知的財産に重点を置いた法科大学院というのであれば、法務省とも連携の上、六法の必修科目など、ある程度減らすかわりに、特許戦略であるとかベンチャービジネス論であるとか、あるいはアメリカ法であるとか、こういった知財分野に欠かせない科目を多数盛り込む。そして、そのことによって特色ある法科大学院の創設を行う。そのことで知財分野で外国と対等に渡り合える人材というものを育成していくことも検討に値するのではないかと考えます。

 そこで、大臣に御質問いたします。関連質問ということですけれども、現行の法科大学院とは別に、いわゆる知的財産ロースクールを立ち上げるべきとの意見もありますが、御見解をお聞かせいただけますでしょうか。

河村国務大臣 先ほどちょっと触れさせていただきましたが、いわゆる弁理士会の方もそういうことを考えておられるようでありまして、こうした研究を今進めておられるように伺っておりまして、そういう意味では、そうしたものに特化する専門職大学院ができる、期待をいたしております。

 大学の教育研究、それぞれ大学の自由な意思といいますか独自性を持ってやっていただこうということで、国立大学も法人化をいよいよスタートするわけでございまして、それぞれ特色を出してということでございます。また、社会のニーズがそういうふうになってまいりましたから、私は、今御指摘のような点も踏まえて、専門職大学院が生まれてくるだろう、そういうことについては国としても積極的に支援をいたしたい、こういう所存でおるところでございます。

 今、いろんな各大学、自主的な取り組みで、そういうことについての御相談もいただいておるところでございますので、今御指摘のような専門職大学院、必ず生まれてくるし、またこういうやり方があるんだ、こういう方法があるんだと我々の方の知る限りの情報は公開をして、そういうものが生まれてくるように支援をしてまいりたい、こう思っております。

 まさに高度専門職人材をつくっていくことが今極めて重要になってきておりますから、その要請に合った大学づくりといいますか、そういうものを我々も期待いたしておるところであります。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 入り口の方では、確かに大学の自主性に任せるというのはあるかもしれないんですが、実際に理工系の方々が進もうとしない、あるいは技術系の素養を持った方がそちらの方に受験されようと思わないのは、出口の部分、すなわち新しい司法試験制度において、実質上カリキュラム編成の独自性を奪うような硬直的な受験資格というものが存在していることも背景にあるのではないかと考えております。その点についても、文部科学大臣として踏み込んだ対応をぜひお願いしたいと思っております。

 大臣は、所信の結びに、何人かの方が取り上げられていらっしゃいましたけれども、「吉田松陰が鎖国下での海外渡航の試みに際して決意を述べた言葉である「意を決して之を為す」の覚悟で文部科学行政に取り組んでまいります」と述べていらっしゃいました。

 冒頭でも、文部科学省の任務は創造的人材の育成にあると私も申し上げたところであります。文部科学省の人材の育成という任務を全うするためには、大臣が意を決してこれをなさずして、つまりは省庁の枠組みを超えてということでありますけれども、一体だれが知的財産の創造、保護及び活用に関する人材育成を担当するんでしょうか。「意を決して之を為す」の覚悟で取り組んでいただくことを改めてお誓いいただきたいと思います。

 さて、時間も押してまいりましたので、次の質問に移らせていただきたいと思います。

 知的財産の創造を促進するとの観点から、大学改革の結果、大学間や研究者間において適正な競争原理というものは働くようになるのでしょうか。

 私たち民主党では、今後も継続して独創的な研究開発の成果を生み出していくためには、研究者の水準を質量ともに向上させていかなければならないと考えております。そのためには、チャレンジを奨励するような、頑張った人が報われるような制度づくり、すなわち、競争的な環境の中で特に若い研究者の処遇を改善したり、研究者のやる気を引き出すことが必要であると考えております。

 繰り返しになりますが、稲葉副大臣にお伺いいたしたいと思います。知的財産創造を促進するとの観点から、大学改革の結果、大学間や研究者間において適正な競争原理というものは働くようになるんでしょうか。

池坊委員長 稲葉文部科学副大臣。――今、稲葉さんとおっしゃった。(松本(大)委員「そういうふうにお伺いしていたんですけれども、違いますか」と呼ぶ)間違いですか。(松本(大)委員「いえ、そう聞いていたので。済みません、では、答えられる方で」と呼ぶ)

 原田文部科学副大臣。

原田副大臣 今議員がおっしゃったような観点から、国立大学がこのたび法人化されることになったわけであります。国立大学の法人化は、従来、国が国立大学をきちっと管理といいますか、そういう責任を持っておったわけでありますけれども、国から独立した大学法人とすることによって各大学の自主性、自律性を高める。従来は、護送船団方式という言葉がいいかどうかは別といたしまして、かなりの程度文科省が、国が基準を出しておったわけでありますけれども、まずそれぞれが自主的、自律的にしっかり頑張って、そのことを最終的に事後評価する、こういうことによって努力した大学が報われるというような、そういう仕組みに新しい年度から移行することになったわけでございます。

 そういう形で、大学同士、ないしは大学に勤める研究者同士が事実上かなりの程度の競争、自由競争をするということになる、そういうことで全体の学力なり研究の水準が上がる、こういうことになっておるところでございます。

松本(大)委員 先ほど答弁あったかもしれないんですが、改めて確認させてください。

 知的財産戦略の推進においては、創造それから保護、活用というそれぞれのサイクルの担い手を育成することが重要であると考えます。先ほど、法科大学院を例にとりまして保護のサイクルについては御説明をいただいておりましたが、創造そして活用について、その基盤はやはり人材育成にあると考えますが、これに対する文部科学省の取り組みについて、大臣、お答えをお願いします。

河村国務大臣 知的財産を活用する、そしてこれを経済活性化に結びつけていく、こういうことも必要になってまいりますし、世界との競争もそこにもあるわけでございます。こうした面での人材をどういうふうにつくっていくかということだろうと思います。

 文部科学省には、昨年六月に、科学技術・学術審議会人材委員会というのがございまして、この中で、国際競争力向上のための研究人材の養成、確保、こういうことを踏まえながら関係施策を有機的に進めておるところです。

 この研究者をつくるために、科学技術振興調整費の中に戦略的研究拠点育成ということがございまして、これを活用しようということで、国際的に魅力ある卓越した人材をつくっていこう、研究拠点をつくっていこう、こういう予算を組んでおりますし、また若手研究者に対しても、特別研究員制度ということで予算化をしております。また、科研費、これの補助金を拡充する、特に若手の研究者をしっかり育成していく、こういう点で、十六年度ではかなり大幅な予算を組ませていただいている点がございます。

 さらに、先ほど御指摘ありましたが、MOT、マネジメント・オブ・テクノロジー、このコースを進めておるところには特別にそのコース設置のための支援をするということで、今現在では、東京工業大学等の大学がそういうことを進めております。

 こういうことで、この人材をまずつくっていくということ、このことがこれからの知財立国、科学技術創造立国、文化・教育立国、こういうことでございますが、もう一方では知的財産立国という、この本文の中にもこういう一つの理念がございます。これをこれから進めていくことによって、まさに活用することによってこれが生まれてくる、このように思います。

松本(大)委員 時間が残り少なくなってまいりましたので、最後に一言申し述べさせていただきたいと思います。

 若手研究者の育成ということに触れていらっしゃいましたけれども、その点については私も異論はないところであります。

 経済産業省の技術調査室が昨年十二月に発行しました技術調査レポートによれば、これは総務省が発表している統計調査をまとめたものなんですけれども、大学等における研究資金の九割近くが大学の自己資金、授業料や国立学校特別会計で賄われております。競争的資金などの外部資金は一割強しか入ってきておりません。わかりやすく言えば、大学全体を見たときに、固定給がおよそ九割、努力して外部から調達する研究費、頑張った人が報われる仕組みといいますか、能力給が一割しかないということであります。

 大学改革によって競争原理が働いていくようになる、研究開発の予算の配分の見直しも行われて、そして大臣まさにおっしゃったように、若手の研究者の意欲向上につながるような環境の改善にぜひ御尽力をいただきたいと思います。

 御答弁をいただいてきたわけですけれども、私にはまだ、「意を決して之を為す」という気概が伝わってきておりません。今後の審議を通じて、ぜひまた胸をおかりしたい、かように思う次第であります。

 依然として霞が関の縦割り行政が存置をされている、そして、その弊害に対して、ある種の諦観やニヒリズム、そして見て見ぬふりがまかり通っているとすれば、それは大変残念なことであります。

 私たち民主党は、知財立国の実現に向けて、内閣府や各省に散在する知的財産関連の行政機能を整理統合し、新たな省庁再編を行うことも視野に入れております。知財権をめぐる紛争処理能力の強化、知財にかかわる弁護士などの専門家の拡充、そして新たな知財を生み出す人材育成のための教育環境及びプログラムの整備を目指すことについては、マニフェストにも盛り込んだとおりであります。

 私のモットーでもあります物より人、そしてばらまきよりやる気、こうした観点から、知的財産の創造、保護、活用を担うさまざまな人材を育成する、知恵づくり、人づくりの民主党は意を決してこれを行うことをお誓い申し上げ、私の質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 民主党の加藤尚彦でございます。与えられた時間は四時四十分までということですので、時間どおりおさまるように努力させていただきます。

 大臣、きょう、最初から御答弁を伺いました。非常にさわやかな印象を私は受けとめさせていただきました。また、教育というのはやはりさわやかにやるということがとても大事だと思いますし、また我が国のトップリーダーでありますから、今後とも、そのさわやかさで努力していただきたいと思います。

 きょう、法務省の方から、ちょっと留学生問題で後ほど質問するのでお招きしましたので、法務省の方に先にやっていただいて、そしてお帰りいただいて結構だと思いますので、よろしくお願い申し上げます。

 留学生問題の中で、留学生事件というのが大変多いんですけれども、それも殺人までということであります。殺人までに至らなくても、やはり相当気になることが多いと思います。よって、ここ一、二年の間でいいです。例えば昨年、一昨年あたりで結構ですので、国外退去を命じた留学生、就学生、ちょっと聞かせてもらいたいんですけれども、増田管理局長、よろしくお願いします。

増田政府参考人 在留資格の留学あるいは就学を有する者のうちで、平成十四年中に退去強制手続をとった者の数は、留学が七百十三人、就学が千七百六十人、つまり一年間で二千四百九十九人に上っております。

加藤(尚)委員 留学生、就学生、留学生は大学の方の進学と受けとめて、就学生はどちらかというと専門学校とか日本語学校ですか、そういったところと解釈をしているんですけれども、一年で二千四百九十なんですけれども、その中で退去理由というのは当然あるわけですけれども、それの主なところをちょっと聞かせてください。

増田政府参考人 お尋ねの退去強制理由の内訳そのものについてのデータはとっていないのですが、一般的に、留学生、就学生で退去強制される者の理由で多いのは資格外活動、つまり本来許可を受けている以外のアルバイト、あるいは就労活動に従事しているようなケースが考えられます。

 ちなみに、先ほど私が申し上げました平成十四年二千四百九十九人の退去強制手続をとられた者の中で不法に就労していた者、資格外活動を行って不法に就労していた者は合わせて二千百二十一人ですから、退去強制を受けた者のおよそ八割五分は不法に就労していたということになります。

 それからもう一つ、退去強制事由で多いのは不法残留、つまり与えられた期限を超えて我が国に不法残留をしていたケースです。これも内訳の数は出ませんが、現在、留学生でおよそ五千四百五十人、就学生で九千七百七十九人ですから、両者を合わせますと一万五千人以上の不法残留の留学生、就学生がおります。

加藤(尚)委員 御説明のとおりで、やっと我が国も、昭和五十八年あたりから積極的に留学生の受け入れを始めて、十万人達成したとこの所信表明にも書いてありますけれども、中身としては、そのうちの一五%の人が、やはり私たちの国が思うような留学生、就学生が来ていなかったということになるわけですけれども、これはまた後ほど、大臣でも結構ですし担当局でもいいですからお聞かせいただきたいと思います。

 法務省の方、ありがとうございました。お礼申し上げます。

 本日冒頭、大臣は、もう何人も出ていますけれども、結びです、この結びのところは私はすばらしいと思っているし、また意気込みを強く感じております。

 感じているがゆえに言いますけれども、私も、吉田松陰先生については、獄中日記を初めとして過酷な中で書き上げたものが、これが書き写されて書き写されて、驚くべきスピードで全国の青年たちに伝わって、いわゆる明治維新の大きなきっかけになったというふうに理解しております。もちろん、吉田松陰先生だけじゃなくてたくさんの思想家がいたのは現実であります。まあ刑死されたわけです。死んだわけですね。つまり、自分の考えていること、自分の信念と思うことは、当然覚悟が要るわけですけれども、しかも当時ですから、死を賭すという決意があるわけであります。その意味で、大臣がこの所信で尊敬する吉田松陰先生を導入されたわけです。ですから、覚悟のほどは十分にわかっております。ちなみに、この文部科学省ですけれども、改めてお聞きしますけれども、総額予算、ちょっとお聞かせください。

河村国務大臣 総額で六兆二千億ぐらいいっているかと思います。

 このたび、かなり義務教育国庫負担等動かしたものでありますから――失礼しました、六兆五百九十九億円でございます。

加藤(尚)委員 六兆円というのは、アジアの中でも国家予算ですね。たくさんの国が国家予算に相当するわけですけれども、それだけの予算を持っている、その執行者である。ですから、この一年間でこの所信の意味をそこかしこに、そして結果的に一年たって、この結びのとおりだったという報告は一年後に聞かせていただきたいというふうに思います。

 それから、引き続き質問に入るんですけれども、私はきょう通告いたしました。その中で、読み書きそろばん、あるいは語学、留学生の問題、ボランティアの問題、それから最後にコミュニティースクールの問題を掲げましたけれども、十五分ですから、とても急がなくてはいけないと思います。その中で、読み書きそろばんのうちのそろばんをちょっときょうテーマにしたいと思います。

 学力低下、その原因の一つに、算数といいますか数学といいますか、その低下は目を覆うばかりであります。せんだって、原田副大臣が九九の問題をおっしゃっていました。インドでは、十九掛ける十九のことが、ムンバイ地方で当たり前だよと言っていました。これは調べてみると、インターネットですけれども、インド全域に、十九掛ける十九の学校もあります、しかし、二十掛ける二十二の学校もたくさんあります。あわせて、中学に入りますと、三十掛ける三十、日本で言う九九ですね、それがインドでは当たり前だと。だから、インドはゼロの発見国でもあると同時にITの先進国でもあるし、IT及びその技術者が世界に活躍しているということになります。最近でも、日本にもどんどんインドの技術者が入っていることは御案内のとおりだと思います。

 それで、大臣、この九九の問題ですけれども、私たちももちろん九九を勉強しました。その先については、そろばん塾で勉強する人もいるし、そろばん塾に行かない人もいるし、現実に、そろばん論で言うと、数年前までは小学校の三年、四年が勉強していたんですけれども、今三年生だけであります。そして、文部省から学校の方に、教育委員会を通じてそろばん問題について御指導があるんですけれども、例えば、横浜の例で言うと、年間、大体二時間、四時間。小学校の場合、算数の時間が百五十、そのうち二時間か四時間なんです。しかも、やっていないところまであるというふうに、どこかとは言いませんけれども、そんな話を聞いています。

 冒頭言いました、読み書きそろばんというのはやはり基本だと思います。そして、江戸時代もそうだったし、その力が明治維新だったというふうに思っていますし、そして時代が進んで、後で申し上げますけれども、語学力ということと、それからボランティアという改めての導入とか、そんなことを強く感じながら委員として務めさせていただくわけですけれども、九九問題でいえば、これまでどおり変化がないでしょうか。

河村国務大臣 変化がないかと言われますと、今大幅にこの時間を急にふやすとか、そういう変化は今のところないのでありますが、今御指摘のように、読み書きそろばん、最近はITもこれに、生きていく上に入ってまいりましたが、やはり私はこれは基本だと思いますね。今、便利なものですから計算機に頼りがちでありますが、しかし、そろばんをやっている人たちは、まさに段が上がっていくと暗算ができるんですね。挑戦すればできる。これだけ計算機が出てきても、やはりそろばんがいいんだ、こうおっしゃる方もございますから、私は、そろばんの効用というのは認めざるを得ないと思うんです。これは日本がこれまでずっとやってきたものでありますから、これをまずきちっとやった上で次に進むということは必要じゃないでしょうか。

 車の運転免許を取るときに、今はオートマチックになりましたけれども、やはり免許場に行きますと、最初、全部オートギアのないものをきちっとまずやった上で、そしてオートギアに行くという形をとります。そういう基礎を日本人はこれまでずっと培ってきた。DNAの中に入っている。こういうものはやはり大事にするということは必要でしょうし、やはり脳のやわらかいうちというのは、少々たたき込んでも入っていくんですね。だから、そういう意味で、教育の段階で、学年を追っていきますけれども、やはりしっかり頭を、脳をたたくという表現を言いますが、こういう時期がある意味必要なことがあるんですね。やはりそういうものを軽視してはならない、私もそう思います。

加藤(尚)委員 最近の産経新聞で、ごらんになったかどうか知りませんけれども、東京都内の二十三の大学で、一けたの数字を六回足して、そして一分間の間に幾つできるかという、そういうテーマの調査なんです。成蹊大学渡辺研究室でやったものなんですけれども、ごらんなったかどうかわかりませんけれども、それを拝見いたしました。

 それによると、年々、大学生ですら、たった一けたを六回足す、一分間で、かつては十六問、十七問できたけれども、今やせいぜい十問という実態があるんです。

 やはり今大臣がおっしゃったように、暗算力がなくなっちゃったんですよ。何のためにそろばんを勉強するか、何のために暗算を勉強するか、勉強している人たちに聞くと、消費税を速く計算できる、暗算で。こういう答えが笑い話のようにあるんです。実際は、きょうの場合は結論は要らないんですけれども、九九じゃ間に合わないぞ、国際社会の中で競争していくのに、日本の子どもたちは。まさに、子供たちの荒廃を考えると、なおさら学力低下という問題も、基本は読み書きそろばんというふうに思っています。

 その意味で、アジアによっては、毎朝算数の時間、例えば日本の場合は百五十時間ですけれども、算数の時間、十五分だけそろばんをやらせるという国がふえてきたんです。その証拠に、そろばんの生産、ピークとして昭和五十六年あたり二百万個を超えていたんですけれども、今やその十分の一の生産しかないんです。ということは、二十万ぐらいですね。ところが、一方で、そろばんの輸出ですけれども、年々ふえているんです。特に、それはアジア地域にふえているんです。今や、多分去年の段階で、詳しいデータは、いろいろ探ったんだけれどもなかなか求められませんでしたけれども、少なくとも私が調べた段階では、約七万個なんです。そろばんの輸出です。

 ということは、アジアの国々で、日本の伝統文化、日本の伝統文化といったって、せいぜい室町時代から熱心に取り入れたんですけれども、そろばんの歴史からいえば、紀元前三千年前とかあるいは千年前とか、いろいろな歴史がありますけれども、少なくとも日本では室町時代から盛んになってきた、そしてそれが日本経済のパワーになったというのは間違いない事実であります。

 それに加えて、九九のことはまた宿題になるんですけれども、そろばんということがこの国でだんだん退化しちゃっている。後はそろばん塾任せということなんですけれども、それでいいかどうかという問題もありますけれども、短い、年間百五十時間しかない算数の中にそろばんを今後どう考えるか、どう指導していくか。これはもちろん地域の問題です、地域の問題ですけれども、国の学問を預かる文部科学省ですから、いわば大臣を中心に、そろばん問題を、そろばん論議をできればしていただければというふうに、これはお願いを申し上げておきたいと思っております。

 例えば、そろばんで、最近だけでもこんなに新聞ニュースに載るようになったんですよ。いいことだなと思うんです。毎日から朝日から産経から、もういっぱい新聞に報じられるようになった。いかに読み書きそろばん、その中のそろばんがいかに子供の学力向上に大切かということが定着が始まったな、一たんこんなにどん底になったけれども、また上がり出したな、それは、アジアの国々を見ているからなんですよというふうに思います。アジアが日本を目標にしているから、日本は常に先に行かなくちゃいかぬというふうにつけ加えておきたいというふうに思っております。

 それから、英語授業なんですけれども、これは委員長、引き続き恐縮です。英語授業、語学授業なんですけれども、横浜市では昭和六十二年に導入したんです。モデル校を五校設定したわけであります。これについては、過ぐる四年前、だから昭和五十七、八年ごろ、私が市会議員当時に提言したんです、語学というのは会話からだよ、だから会話を導入しなきゃだめですよと。たまたま、その当時の総理大臣が積極的に留学生対策というのを言い始めたころですから、合致して、そして横浜市としては、全国に先駆けて語学授業を導入したわけです。

 当時、終わったことだから言えるんですけれども、文部省はえらい反対だったんですよ、とんでもないことを横浜市がするという。とんでもないことがあったけれども、所信あいさつの中にちゃんと語学教育、英語教育ということが出ているんですけれども、これを進めるというのは容易じゃないと思うんです。

 横浜市も、苦しんで苦しんで、今、どうやらこうやら、横浜市は小学校が三百五十ぐらいで、中学校が百四十校ぐらいあるんですけれども、その中で、三分の一から、まあ半分まではいっていないんですけれども、モデル校が徐々に広がっていった、子供が喜ぶものですから。

 問題は、その対応なんです。英語の先生を雇うというのは、横浜市だって財政的に無理、そして国の財政でも無理、そうすると、物すごい工夫が要ると思うんです。その意味で、英語授業については会話ということなんだけれども、どちらかというと、横浜ではコミュニケーション、つまり外国の方、留学生も含めて、外国の方と会って、そしてコミュニケーションする。その国の歴史とかあるいは芸能とか食べ物とかファッションとか、そんなことを語り合いながら、片言の英語で勉強しているというのが実態ですけれども、文部省の、ことし決意を述べられた英語教育について、大臣のお考えを聞かせてください。

河村国務大臣 私も、初当選、一九九〇年ごろ、自民党の文教部会でそのことを言ったときに、文部省側は全然受け付けなかったことを覚えています。それよりも国語だ、こういう話がありました。その後、モデル校をつくったりしながらいきました。横浜がそこまでお取り組みされている、敬意を表したいと思います。

 私、先般、文部科学省とも、これはもう今、研究開発校をつくってやっています。それから、総合学習の時間では、既に七割の小学校が何らかの形で英語と取り組んでおりますから、もうここまで来て、時期は、中国を見ろ、韓国を見ろ、小学校からやっているじゃないか、おくれをとるなというだけじゃなくて、もうやる必要がある。これだけの国際化時代。

 ということで、今、このためのプロジェクトチームといいますか、研究班をつくって、これを入れるにはどのぐらいの問題点があるんだ、人材をどのぐらい用意しなきゃいかぬとか、こういうことがありますので、小学校は一人の先生が今教えていますから、英語の先生を入れるとなれば、英語の先生をどういうふうに養成するか、いろいろな問題があるだろう。しかし、これはもう今すぐ取り組む必要があるということで、今御指摘のように、横浜のケースも参考にさせていただきますが、それを参考にしながら、全国にそれを広める必要、これはやはり文部科学省の責任だろう、こう思っておりまして、私は、これに本格的に取り組む所存でございます。

加藤(尚)委員 前向きな答弁、ありがとうございます。

 お金がかかっちゃうから、お金がかからない方法を考えなくちゃいけないと思うんですよ。

 先ほど、留学生が十万人突破したと。そのうち、中国と韓国だけでも八万人なんです。ですから、ちょっと偏り過ぎている。このバランスも大事なんです。それから、今度、日本の青年たちが海外に出ていっているんですけれども、これも偏っているんです。ですから、きちっとバランスはとれないまでも、留学生対策の一環として、後ほどちょっとだけ触れさせてもらいたいんですけれども、コミュニティースクールですね、私から言わせると、コミュニティースクールイコール寺子屋と考えているんですよ。昔の寺子屋がコミュニティースクールの中に導入されるといいなと思っていますけれども、それは改めて議論させてもらいます。

 いずれにしても、留学生も含めて、帰国子女も含めて、あるいは学校の先生のOBも含めて、やはり語学に堪能、会話に堪能な人たちが、意外に地域にいるんです。だから、コミュニティースクールと関連するんですけれども、その活用ですね。少なくとも、給料とか手当とかということを考えない人たちが僕の周りにもたくさんいることを知っているんです。そういう人たちをどういうふうに参加させるか、あるいは協力してもらうかが重要だと思っています。

 お考えがあったら、大臣じゃなくてもいいんですけれども、どなたかお願いします。

河村国務大臣 おっしゃるように、人材がいるんですね。実は、文部科学省も生涯学習局が各地域に、要するに授業でなくて、一般の皆さんに参加してもらって、子供たちに英語を教える会をつくりました。私の選挙区の宇部では、これをハローイングリッシュという教室にしてやりました。そして、やってみると結構いろんな人がいらっしゃることがわかりまして、それには留学生なんかも参加してもらって。

 これをずっと続けていけば、地域にかなり人材がいる。それから、各大学の英文科や何かをお出になって、もう主婦になって、一回忘れていた人がもう一度学びたいという人たちもいらっしゃいます。やはり教え方というのは必ずしも外国人でなきゃいかぬことはないわけでありまして、そういう人材を広くこれからつくっていくということも必要であろうと思いますので、そういうことも含めて、英語教育の早い段階からの導入というのを考えてまいりたいと思っております。

加藤(尚)委員 本当に柔軟性ある大臣ですね。ありがとうございます。

 それから、コミュニティーのスクール、私は寺子屋という表現を使っているんですけれども、やはり学校というのは、校長先生がトップリーダーなんです。民間の人も校長先生に登用するというすばらしい方向に行っているんですけれども、不幸にも中には、いじめに遭ったかどうしたか知らないけれども、自殺した人もいる。これは大きな課題としてありますけれども、やはり校長先生をトップリーダーにして、今の語学教育もそうですけれども、地域の中で子供を守る。

 親が子供を守れない。大体、今、小学校、中学校に通わせている親も、団塊の世代か何か知りませんけれども、やはりきちっとした教育を受けていない人たちが親ですから、とても子供をどう育てていいかわからない人たちもたくさんいるわけですよ。

 その意味で、親子に任せりゃいいという問題じゃなくて、学校はもちろんですけれども、むしろ学校以上に地域がというふうに思います。その意味で、コミュニティースクールというのは画期的な提案だというふうに感じている一人なんですけれども、これについては民主党の参議院議員の鈴木寛さんとか、あるいは中島章夫さんとか――この前、中島章夫さんの「中等教育ルネッサンス」、あれは大臣もお忙しいところ来られてびっくりしたんですけれども、これを僕も一生懸命読んでみた。難しい、物すごい難しい。だから、全部読み切れておりません、つまんだんですけれども、やはりコミュニティースクールということが校長を中心に物すごい重要だということを言っていると思うんです。集約すると、江戸時代の寺子屋だというふうに思っています。

 ですから、コミュニティースクールなんて横文字を使うとわからない人がいるから、やはりすべて地域の中に入ろうとした場合は、母親、お母さんがわかる言葉で、文部省はぜひ言葉をつくりかえてほしいんです。その意味で私は昔の寺子屋であるという言い方をしているところなんですけれども、これはちょっと異論があるかどうか、教えてください。

河村国務大臣 実は、真反対のことをおっしゃりに来た方もございまして、地域運営学校といいますか、そういう地域で運営する学校だというふうに、中教審や何かではそういう形で来ておりますけれども、これでは逆にイメージが非常に古い、旧態依然たるものだ、コミュニティースクールというさわやかにやってくれ、こういう意見も実はあったんです。

 しかし、間違いなく言えることは、やはり地域が学校をつくっていく、それによって信頼性が学校に生まれるということが非常に大事だろう。それから、校長にも十分リーダーシップを発揮してもらいたいし、しかし、やる気のある先生をその地域に集める、そしてやっていくということですね。

 ただ、これは新しい学校をつくるのか、今ある学校をそういうふうにして改善していくか。むしろ今、文部科学省が考えているのは、今ある学校をもうちょっと地域に開いたものにして改善していこうという方向でこのコミュニティースクールを考えておると思います。

 だから、私は、これはそれぞれの地域がお考えになって、法律上は一つの法律の名前をつくりますが、あとはそれぞれ看板はその地域にふさわしいお名前にしていただいたらどうだろうか、こんなふうに思っておるんです。

加藤(尚)委員 私も賛成申し上げたいというふうに思います。地域に合ったコミュニティースクールが誕生していく、まだ法案ができていないですから、これ以上の議論はなかなか難しいんですけれども、いずれにしても、親子、これは学校、そしてこれは社会、社会というのは地域ですから、これこそ三者一体となって、子供は地域の宝、もちろん国の宝ということになるわけですけれども、そういう意味で、そういう環境ができればいいなと思っているんです。

 その一つの手段として、私は、持論なんですけれども、ボランティアを正課にということを言っているんです。例えば、遠足なんかでもそうですけれども、いろいろ私の知る範囲内ではワンパターン。小学校一年はどこへ行く、二年はどこへ行く、五年はどこへ行く、六年はどこへ行く、六年は大体国会見学と決まっているようなんですが、要するにワンパターンなんです。

 私は、遠足というのは物すごい重要だと思うんです。この遠足に学校の先生、そして子供たちだけじゃなくて親も参加する、地域も参加する、そういったところでいわゆるボランティアをやる。ボランティアのやり方はいっぱいあると思いますけれども、何も遠くへ行かなくたって、商店街でもいいし、工場でもいい、どこだっていいんです。とにかく、地域の中の子供たちが、遠足を通じて社会性を身につける、そしてボランティアの気持ちを身につける、そんなことから意外や新しい日本人が生まれると思うんですけれども、いかがでしょうか。

河村国務大臣 これからまた議論をいろいろいただくと思いますが、今度新しく文部省の予算の中で子供の居場所づくりというのをつくりました。これは今おっしゃったものに合致すると思うんです。ボランティアの皆さんに参加していただいて、土曜日を使うとか、あるいは日曜日を使ってもいいし、あるいは放課後ちょっとした時間を使う。大人が主体となって子供たちと一緒に遊んでやったり、そうした社会体験をさせてやる。場合によってはスポーツだったり文化だったり、そういうこともあると思います。

 そういうことを一体としてやっていくということが、これから非常に大事になってきておりますし、かなりの皆さん方が、やはり日本の子供たちのことを考えたら何か力になってやりたいと思っておられる方は、私はたくさんあると思うんですね。そういう方々の力をぜひおかりしたいと思っておりますので、ぜひそういう考え方でおりますことを御理解いただきながら、この運動を展開していただくとありがたいというふうに思います。

加藤(尚)委員 所信の結びではないんですけれども、松下村塾ですけれども、ぜひ萩に、河村大臣塾じゃないけれども、いわゆるコミュニティースクールを、これぞコミュニティースクールだということを、模範を。モデル校を幾つか、九校か十校かわかりませんけれども、そんなものじゃなくて、やはり隗より始めろですから、まずこれを提案した大臣が、コミュニティースクール、つまり、小学校でも中学校でも中心となっておつくり――忙しくて無理かもしれない。だけれども、事務所ではできるかもしれない。意思は通じるかもしれない。すると、率先すると当然副大臣、政務官、そして局長、たくさん、それぞれ宿舎に入っている人はふるさとがあるわけですから、いわゆる一人一人が取り組んでいくと、我々議員もそうですけれども、我々の地域でもそうですけれども、意外に早くこの所信で述べられた方向での一つの結論が出るんじゃないかと思います。

 その意味で、これは聞いては失礼ですから、大臣、おつくりになりますかと聞きたいところだけれども、失礼だと思いますので、時間ですので、質問をやめます。

 以上です。

池坊委員長 次回は、来る二月二十七日金曜日午後一時三十五分理事会、午後一時四十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十八分散会


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