衆議院

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第3号 平成16年2月27日(金曜日)

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平成十六年二月二十七日(金曜日)

    午後一時五十分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    上川 陽子君

      城内  実君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      加藤 尚彦君    城井  崇君

      小林千代美君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    鳩山由紀夫君

      肥田美代子君    牧野 聖修君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            遠藤純一郎君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        田中壮一郎君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十七日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     原田 令嗣君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     加藤 紘一君

    ―――――――――――――

二月二十七日

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

同日

 国庫補助の堅持・拡大、父母負担の軽減、教育条件の改善、私学助成制度の大幅な拡充に関する請願(小泉俊明君紹介)(第六二二号)

 三十人以下学級の実現、教育予算の大幅増、父母負担軽減に関する請願(小泉俊明君紹介)(第六二三号)

 学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(前田雄吉君紹介)(第六二四号)

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(前田雄吉君紹介)(第六二五号)

 同(伴野豊君紹介)(第六七一号)

 教育条件の改善と教育予算の増額に関する請願(萩野浩基君紹介)(第六六九号)

 同(今野東君紹介)(第六八三号)

 同(安住淳君紹介)(第七一八号)

 同(橋本清仁君紹介)(第七五五号)

 助産の高度専門職大学院での質の高い助産師教育実現に関する請願(阿部知子君紹介)(第六七〇号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(山花郁夫君紹介)(第六七二号)

 同(土井たか子君紹介)(第六八二号)

 同(佐藤公治君紹介)(第六九二号)

 同(佐藤公治君紹介)(第七一七号)

 同(中川秀直君紹介)(第七五四号)

 義務教育諸学校の学校事務職員・栄養職員に対する義務教育費国庫負担制度の維持に関する請願(阿部知子君紹介)(第六七三号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(高山智司君紹介)(第六九一号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(佐藤公治君紹介)(第六九三号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(達増拓也君紹介)(第七一六号)

 行き届いた教育を進めるための私学助成の大幅増額等に関する請願(玉置一弥君紹介)(第七五三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案(内閣提出第四五号)

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、高等教育局長遠藤純一郎君、スポーツ・青少年局長田中壮一郎君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がございますので、順次これを許します。富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。大臣に所信についてお尋ねをいたします。

 大臣は所信におきまして、国際化等への対応といたしまして、「留学生交流については、昨年、留学生受け入れ十万人計画の目標を達成したところですが、受け入れ体制や留学生の質の向上にも留意しつつ、留学生受け入れの推進を図る」というふうに述べられております。

 平成十五年度の文部科学白書によりますと、「留学生交流の推進」というところに、このように記載があります。「これまで文部科学省では、昭和五十八年に策定された「留学生受入れ十万人計画」に基づき、「知的国際貢献」の観点から、渡日前から帰国後まで体系的な留学生受入れのための施策を総合的に推進してきました。 我が国の大学などで学ぶ外国人留学生の数は、平成十五年五月一日現在で前年比一四・六%増の十万九千五百八人に上り、目標とされた十万人を超えています。」続いて、「これらの留学生は、その約九割がアジア地域より渡日した留学生であり、中でも中国、韓国、台湾の三か国(地域)で全体の約八三・〇%を占めています。」というような記述があります。

 この記述に関連してですが、留学生、就学生制度の問題点ということについて質問をさせていただきたいと思います。

 就学生というのは、日本各地の日本語学校で最長二年間、日本語を学ぶ外国人学生です。大学や専門学校を受験し、合格すると留学生という身分になります。日本独特の制度とも言えるもので、アジア各国との草の根交流で果たしてきた役割は大変大きなものがあったというふうに私自身は思っております。

 実は、私の地元の方の娘さんで、中国の内モンゴルの方と結婚されて現地に行きまして、現地で日本語学校に勤務されている方から、先日ファクスをいただきました。何枚かのファクスだったんですが、この方は、日本の入国審査の際に、中国の就学生、この親御さんの方になるんだと思うんですが、日本円で三百万円相当の預金を持っていることの証明が要求されている、これは不当だということで、訴えを私のところに送ってきてくれました。

 ちょっとファクスの内容を御紹介させていただきたいんですが、いろいろ不満を言った後に、

  留学希望者の九九%が、日本の言う、三百万円相当の預金をもっていません。ですから、仕方なく、大金持ちに、三千元を払って通帳のコピーをさせてもらいます。表紙のみ、保証人のものを作り、再び一枚のコピーに連ねます。

三千元というと約四万円相当だと思うんですが、

  地方の学生は、自宅の近くに、銀行がありません。一番近い銀行は車やバスを乗りつぎ、五時間行った所にあったりします。たんす預金がほとんどで、日本の様に、買い物の往き帰りに銀行による、なんという習慣もなければ、余裕もありません。

そして、彼女が教えているクラスの生徒に、遊牧民のお子さんがいらっしゃるようで、お父さんが遊牧民で、実は羊を千匹、牛を二百頭、馬を三十頭飼っている。遊牧民としては大変な資産家だ。だけれども預金はゼロだ。羊、牛、馬がお金のかわりなんだ。羊一頭四百五十元だそうです。

 お金が必要な時は、その羊を売ります。又、自給自足ですから、生活費もあまり必要ない。でも、預金口座はありません。経済的に、財産を持っていても、銀行に預ける訳にはいきません。これは文化とその民族の価値観です。日本の価値観がパーフェクトとは思いません。

  もし、以上の事をよく理解した上で、入国審査の手続きを考えたなら、日本人は、いじわる、をとおりこして、とても下品な者です。

ここまで書いてあります。

  人間は、貧しい国の者でも、富める国の者でも、学ぼうという志をふみにじってはいけないと思う。貧しさは、その人のせいじゃない。そして、若者はその貧しさからぬけ出て、いつか、自国を豊かな国にしたいと本当に望んでいるのです。中国の九九%の留学生は、皆、そんな気持ちでがんばっています。

ここで留学生というのは、多分就学生のことだと思うんですが、

  実際に、学生が住んでいる所を見ると、涙が出ます。本当に、マントウだけかじって、勉強している子もいます。

  日本が、三百万円だなんて言うから、又、これによって裏の金もうけが生まれるんです。

という指摘をしております。

 小学校の教師の給料は四百五十元から六百元だそうです。一カ月一万円になりません。

 どうやって、三百万円が出来ますか?

  解ってやっているのなら、私は日本人として、本当に恥かしい。

こういう内容のファクスでした。

 彼女のファクスには、随分誤解している部分もあると思うんですね。これまで、留学生や就学生に係る入国、在留の審査については、不法残留者の減少等があったために、これは法務省の方から資料をいただいたんですが、平成十二年一月以降、教育機関の在籍管理の状況に応じた審査の方針を定め、実施してきた、ある程度緩やかにどうもしていたようであります。しかし、近年、留学生の不法残留者が再び増加する傾向にあり、また留学生や就学生による犯罪が大きな社会問題となってきた、さらに、不法就労者等の摘発の際にも、これらの者が被摘発者の半数近くを占める状況になってきた、このため、留学生及び就学生に対する審査を一層適正に行うことが求められているというふうに、法務省の入国管理局の方では考えているようであります。

 これは逆にまた、中国の、就学生を送り出そうと思っている方から見ると、かなり審査が厳しくなったんじゃないかなというふうにどうも受けとめているようであります。

 入管の方では、提出資料の簡素化を図ったり、日本における日本語教育の機関の方に管理をきちんと任せていた、だけれども、今指摘したような状況になってきたから審査を適正に行わざるを得ないというふうに、対応が変わってきたようであります。

 その中で、実は、出入国管理及び難民認定法に別表第一の四、在留資格というところに就学という規定があるんですが、この就学の項に関して、出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令というのがあります。その省令の二号に、「申請人が生活費用を支弁する十分な資産、奨学金その他の手段を有すること。ただし、申請人以外の者が申請人の生活費用を支弁する場合は、この限りでない。」という規定があって、実際の運用で経費の支弁能力をどういうふうに判断するかというペーパーをいただいたんですが、こうやって書いてあります。「予定する本邦の大学又は教育機関での勉学のために必要な学費及び生活費を有していることを証する資料」、これを提出しろというんですね。これだけじゃよくわからないんですが、そこの「注」で、「預金残高証明書を提出する場合にあっては、預金残高を明らかにする資料だけでなく、預金通帳写し等当該預金の入出金の経緯が明らかになるものの提出を併せて求めます。」

 こういうふうなことがあるので、窓口で言われたときに、ああ、三百万円程度の預金通帳がないと日本には行けないんだなというふうにどうも思い込んでいるようなんですが、そういう誤解の部分もあると思うんですけれども、こういう規定を厳格に適用してしまうと、今御紹介した中国・内モンゴルの経済状況、生活状況だと、事実上、日本へ就学するな、あなたたちに来てもらっちゃ困るよというふうになっていると言わざるを得ないと思うんですが、今御紹介したファクスの中身を聞かれて、また出入国管理の状況が少し変わってきているという状況を踏まえて、大臣はその点についてどのように思われますか。

河村国務大臣 就学生は留学生の予備軍でもございまして、これは留学生を、十万人計画を達成して、今からさらにその質を高めながら受け入れていくということ、これは大事なことだと思っております。

 今、富田委員御指摘のように、ことしの四月からいわゆる就学生としての日本語教育機関の学生の入国、在留審査、経費支弁能力とか日本語能力、こういうものを厳格化するという方針が出たということを私も聞いております。かつて、短大等でああいう悪質な留学生がいたりして、在留管理が問われるということもあって、こういう方向にされたと思います。

 ある意味では、そういうものを防ぐということで、私は厳格化する方向というのは一つあると思いますけれども、しかし、真に学びたい、そして日本に留学したい、その前提としてまず日本語力をつけたいということでそこへ入ってくるわけですから、そういう皆さんの願いを排除しては私もならぬと思うんですね。

 だから、審査の段階も、最初から疑ってかかるのと、何とかして入れてやりたいけれどもこれではちょっと、あるいは、これは単なる働きの目的があって留学というか就学を目標にしているんではないか、こういう点をやはり見分ける力を法務省も持っていただきませんと、別に法務省の悪口を言うつもりはありませんが、どうも一人その地域から出るともうそこの希望者は全部だめだというような観点を持っている嫌いがなきにしもあらず、これまでの私の体験からいっても、これはやはり留学生をできるだけ多く受け入れたいと思っている文部科学省の方針と違う、私はそう思っておりまして、これはやはり慎重に審査をしてもらいたいと思います。

 それから、文部科学省としても、奨学金の支給等、留学生にはそういうことをやっておりますし、就学生についてもこういう制度をつくってできるだけ多くという思いでございますが、まだ、毎年今五十人ずつふやしておりますが、平成十二年は百人受け入れて、毎月五万二千円、いわゆる学習奨励費というのをつくっているんです。今三百人です。しかし、日本語学校に行っている人たちというのは四万人近くもおりますから、四万人ぐらいいるので、それのまだ三百人では十分とは思いませんが、私どもとしては、まさにこれから留学される方に対して、そういう思いでございます。

 日本語学校で学んでおられる方々、四万人、平成十四年度でも三万九千二百五人のうち六九%が進学をされている、いわゆる留学生になっておられるという現状もございます。貴重な御指摘でございまして、我々としても日本語教育機関の学生への支援というのはこれからも大事にしていきたいというふうに思います。

富田委員 本当に前向きな御答弁をいただきまして、入国管理局は入国管理局のやはり立場がありますから、不法残留者とか不法就労者、また就学生が犯罪を起こすのが本当にふえているということで、きちんとした身分の者を入れたいというのは気持ちとしてはわかるんですが、今大臣が指摘されたように、就学生のうち六九%がきちんと留学生にまで、日本語をきちんと習得できて大学なり専門学校に進学している。それで、卒業して、また中国に帰られたり日本で仕事をするようになっているわけですから、この就学生に対する支援をきちんとしていくということが、中国、またアジア各国との関係で本当に大事だと思うんですね。

 大臣に御指摘していただきましたけれども、平成十二年から学習奨励費ということで、就学生にも、三百人ですか、月五万二千円出るようになった。これは、平成十一年から十二年にかけまして、池坊委員長と一緒に私ども公明党の方で、自民党の皆さんに、こういったところに力を入れてもらいたいということでお願いしてできた制度なんですが、先ほどの文部科学白書に、就学生に対する支援というのはたった一行しか書いていない。「さらに、大学進学を目指す日本語教育機関で学ぶ就学生に対しても学習奨励費の給付を実施しています。」これだけではやはり余りにも寂しいと思うんですね。今の大臣のようなお考えで、就学生に対してもきちんと奨学金で日本で学べるような体制を文部科学省としてぜひとっていっていただきたい。

 例えば、財団法人日本国際教育協会では、個々の支援企業や個人名を冠した顔の見える奨学金、何々奨学金というものですね、そういったものをきちんとして、外国からの就学生、留学生を迎え入れている。アメリカを初めとした欧米には、個人名のあるスカラーシップがすごく多いですね。中国からアメリカに行かれて成功した人が、自分で奨学金をつくってまた自分の地元の学生を招き入れる。

 そういった制度を日本でも、本当に文科省が強力にリーダーシップをとっていただいて、民間の方の協力も求めて、本当に日本に行ってよかった、日本との国際交流にこの後も働いていけるような人材をぜひつくっていただきたいと思いますので、奨学金はやっているんだというお話でしたけれども、もう少しそこに一歩、数も金額もふやしていただきたいし、もっと幅広い制度にしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか、大臣。

河村国務大臣 富田委員御指摘のように、確かに公明党の皆さんがこれを提言されまして、実現してここまで来たものでございまして、これを拡大しなきゃならぬ、私もそういうふうに思っております。大事なことだろうというふうに思っておりまして、奨学金の支給も含めて、日本語教育機関の学生への支援の充実、そういう機関が寮をおつくりになりたいとか、いろいろなことがあるんじゃないかと思うんですね。生活費を少しでも楽にしてあげるような方針、こういうことは奨励をしていかなきゃいけないことだ、こう思っております。

 私も、文部科学白書、たったそれだけだというのは、ちょっと不注意だったと思いますが、まだ十分でないので恥ずかしくて立派に書けなかったのかもしれませんが、大きくしっかり書けるように努力いたしたいと思います。

富田委員 ありがとうございます。終わります。

池坊委員長 小林千代美君。

小林(千)委員 民主党の小林千代美でございます。初めて文科委員会で質問をさせていただきますので、ぜひよろしくお願いをいたします。

 本日は、学校選択制についてお伺いをしたいと思います。

 今、全国の自治体の中で、学校選択制、学区域に定められた小学校あるいは中学校に通うのではなくて、学校を選べるといったような制度をとっている自治体がございます。実は私、地元が北海道でございまして、江別市というところが、人口十二万人ぐらいの市なんですけれども、そこでも学校選択制の導入の是非というものが今語られている最中でございまして、ぜひこの点についてお伺いをしたいと思います。

 まず最初に、事実確認をさせていただきたいんですけれども、現在の公立の小中学校におきまして、全国の中でどれだけの自治体でこの学校選択制というものがとられているか、小学校、中学校別にお伺いをしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる学校選択制は、開かれた学校を目指し、特色ある学校づくりと学校の活性化を促進する、こういった観点から、地域の実情に即して市町村教育委員会の判断において導入をされているものでございます。そういったことから、学校選択制につきましては国として一律にその導入を求めているものでもございません。

 私ども、そういうことから、全国的な導入状況を網羅的に把握しているわけではございませんけれども、例えば東京都などでは、私どもがホームページ等で知る限りでございますけれども、十九区、四市、ほかにもあるのかもしれませんが、現在私どもが知っている限りでも、そういったところでいろいろな形でこの学校選択制が導入をされている、こういうふうに承知をしているわけでございます。

小林(千)委員 それは、今のは東京都だけの数字ですか。全国では把握していないのでしょうか。

近藤政府参考人 この学校選択制をそもそも導入するかどうか、これはそれぞれ地域の実態があるわけでございます。選択しようにも、学校が数が少ないとか、ないとか、いろいろあるわけでございますから、私ども、一律にこの学校選択制を市町村に導入しろとかするなとか、そういう立場でもございません。

 そういうことから、全国的な数値は把握をしていないわけでございますけれども、今、東京の例を申し上げましたし、確かに幾つかの市町村でこういった学校選択制を導入している事例もございますから、代表的な事例につきましては、私どもも、こういった形で事例集を作成いたしまして、全国の教育委員会に配付をいたしまして、ああ、この市町村ではこういった取り組みをしている、そういったものも参考にしていただきながら市町村で適宜適切に対応していただく、こういうことかと思っております。

小林(千)委員 選択制といいましてもいろいろとやり方があるようでございまして、もちろん、自治体の面積の問題にもかかわってくると思うんですね。

 ちょっと調べたところによりますと、選択制というものが、例えば、市町村、全市一区みたいな形でどこでも行けるというやり方、全区域型みたいなもの。そして、今指定されている学校か、それとも隣の学校かどっちかに行ける、隣接校型というふうに言うそうですけれども、そういうタイプをとられているところもある。そして、折衷案と申しますか、その自治体を幾つかのブロックに分けまして、ブロック型というふうな選択制をとっているところもあるそうですけれども、これは大体、今調べられた範囲の中でどのような分布の割合になっているでしょうか。

近藤政府参考人 先ほどから申し上げておりますように、私どもは、そこを詳しく詳細を承知しているわけではございません。

 ですから、例えば東京都の品川区、この区は学校選択制に非常に熱心でございまして、平成十二年度から、区内の小学校、四十校ほどあるようでございますけれども、四つのブロックに分けまして、住んでいるブロック内の学校であればどの学校でも選択することができる。ある意味ではブロック型なんだと思いますし、平成十三年度からは、区内すべての中学校、これは十八校ほどございますけれども、どの学校でもその中から選択ができる。そういう幾つかの市町村あるいは区での先行的な事例を集めまして、そういった形で事例集に載せ、ほかの県の教育委員会等でそういったものもまた参考にしながら考えていただく、そういう形での把握、こういうふうに御理解を賜りたいと思っております。

小林(千)委員 さまざまなタイプが学校選択制という中に盛り込まれているんですけれども、実際に、例えば全区域型の学校選択制の場合、どうやって学校の特色づくりというものをオープンにしていくかということが大変重要な課題だと思うんですけれども、学校の特色というものを選択されている学校は今どのように出しているんでしょうか。

 例えば、今、学習指導要領の中で授業のこま数ですとか細かに決められているわけですね。そういった授業のこま数が決められている。例えば、自然科学に一生懸命取り組みますといったところで、理科の授業ばかりやるわけにも当然いかないわけですし、スポーツに力を入れますといったところで、体育の授業ばかりやるわけにはいかないわけなんです。

 今のこのような学習指導要領の中で、どのように特色ある学校づくりというものを行っているんでしょうか。また、今学校の中には、週三時間、総合学習の時間というものがございますけれども、それはどのように今使われているんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 私どもは、学校選択制の導入のいかんにかかわらず、すべての学校が開かれた学校を目指して特色ある学校づくりを進めていただく、こういうことはやはり大切なんじゃないかな、こういうふうに考えているわけでございますが、学校選択制が導入された地域におきましては、やはり、外部から見られている、これがまたその学校の一つのモチベーションを高めていくと申しましょうか、やる気を高めていくことにもなるんだろうと思っております。

 例えば、今お話が出ました総合的な学習の時間、これは板橋区のある小学校の例でございますけれども、地域の大学の学生に来ていただきましていろいろな交流的な活動をするとか、あるいは高齢者や障害者の福祉施設とのボランティア交流を熱心にやるとか、そこはいろいろな取り組み方があるんだろうと思っております。

 それからもう一つ、今の学習指導要領の観点での御指摘がございました。私どもは、これまでも地域や各学校の裁量の範囲を広げるために、学習指導要領の大綱化、弾力化を行ってきたわけでございまして、現在でも、多くの学校で学習指導要領のもとでいろいろなカリキュラム編成ができる仕組みにはなっているんだろうと思っています。

 特に、今回の学習指導要領では、今先生御指摘になりましたように、総合的な学習の時間を創設いたしました。これは教科でもございません。その学校の判断で多様ないろいろな教育活動が実施できるわけでございますし、また、中学校、高等学校では選択学習の幅を拡大したわけでございます。特に、高等学校などでは、学校設定科目というようなものの開設ができるようになっておるわけでございます。

 そういうことから、現行学習指導要領のもとでもいろいろな多様なカリキュラム編成はできる、こういうふうに私どもとしては考えておるところでございます。

小林(千)委員 多様なカリキュラムづくりができるというふうにおっしゃいましたけれども、私は、どうも、今の縛りのある授業のこま数ですとか、あるいは今の学習指導要領の中では、なかなか特色のある学校づくりというものは難しいというふうに自分では思っているところなんですね。

 次に質問を移らせていただきたいと思いますけれども、特に全区域型というふうに選択制を導入された場合、通学区域というものが大変広がります。全市から、あるいは全区から、あるいは全町から通ってくるということもあり得るわけでございまして、そういった場合、通学路の安全確保というものは大変重要な学校の課題になってくると思います。

 また、公共交通手段、バスを使って、地下鉄を使って、電車を使って通学をするといった場合、そういった金銭的な負担も出てくるわけでございますけれども、こういったことはどのように学校として対処をされているでしょうか。

 また、もう一つお伺いしたいんですけれども、全市からそういった子供たちが集まってくるということは、その地域の中で、ここの学校に行っている子供、遠くの学校に行っている子供というものが出てくるわけでございまして、その中で地域力というものが低下してしまうのではないか。特に、今、学校と地域のかかわりというものがとても大切な時期になってきていると思います。

 この点についてお伺いしたいと思いますし、あともう一点、済みません、そうやって選べる制度になった場合、ある学校に申込数が殺到をした場合は今どのような措置がとられているんでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 三点、御質問をいただいたかと思いますが、一つは、通学路の安全確保の問題だと思っております。

 これは、学校選択制を導入するしないにかかわらず、児童生徒の通学路の安全確保ということを十分配慮しなきゃいかぬことは当然のことでございますけれども、とりわけ、今おっしゃいましたように、区域が広がってくる、こういう中におきましては、今以上に通学路の安全確保について適切な取り組みが行われるということが大事かと思っておるわけでございまして、私どもは、これは、学校選択制の導入とは別にいたしまして、今、幼児児童生徒の安全確保、いろいろな事件も起こっているわけでございますので、もう三年前にもなりますけれども、通知を各都道府県の教育委員会に出しまして、安全確保、学校の安全管理についての徹底を促したわけでございますけれども、特に、こういう学校選択制を取り入れる場合には、各教育委員会でしっかりとそういった点について十分配慮をいただきたいと思っておるわけでございます。

 なお、学校選択制の導入に伴いまして通学費用の援助を行っているかどうか、これにつきましては、私ども、承知をいたしておりません。

 それから、第二点目は、地域と子供のつながりが薄れてしまうのではないか、こういう地域の教育力の御指摘であったかと思いますけれども、御案内のとおり、学校選択制のメリットとして、保護者が学校に対してより深い関心を持つとか、選択の幅が広がるとか、いろいろメリットが指摘をされておるわけでございますが、一方では、学校の序列化が発生するんではないか、それから、今委員御指摘になりましたように、学校と地域の連携意識が希薄になるんではないか、こういうことも指摘がされておるわけでございまして、それであるからこそ、逆に言えば、学校選択制の導入に当たりまして市町村の教育委員会が、その地域の今置かれている状況、あるいは学校を取り巻く状況を十分に判断をしていただきまして、適切に対応していただくことが大事かな、こんなふうに考えておるわけでございます。

 三点目は、希望者が多かった場合にどういう形で対応しているかという御質問であったかと思いますけれども、大体、私どもが承知をしておるあれでは、特定の学校への入学希望者が受け入れ可能数を超えた場合は、公開抽せんを行って公平に入学者を決定するというような事例が多いんではないんだろうか、こんなふうに承知をいたしております。

小林(千)委員 学校を選ぶときに、小学校に入るときであれば幼稚園児とその保護者、あるいは中学校に入るときであれば小学生とその保護者の方が、多分、一生懸命学校を調べて、見学をしたり、いろいろな情報を得て、この学校に決めようということで決定をすると思うんですね。その中で、抽せんで外れましたからあなたはだめですというのは、幾ら何でも子供たちにとってかわいそうなのではないかというふうに思います。ぜひとも、こういう点も考慮に入れて、そういった学校づくりをしていただきたいと思うわけでございます。

 また、隣接校方式というふうにさっき申し上げましたけれども、こういった方法をとられているところも実際としてございます。しかし、隣接校方式というふうになりますと、ほとんどの場合が、今学区域制をとられているけれども、実は、今指定された学校よりも隣の学校に行った場合が距離的に近い、こういっただけで採用されていることが大変多いようです。これは本来の意味の学校選択制とは言えないのではないかと思いますけれども、どうでしょうか。

近藤政府参考人 通学区域の弾力的な運用、その中にいわゆる学校選択制の導入も入るのかなと考えております。私は、それはそれで、いろいろな地域、学校の実情に応じていろいろな対応があってしかるべきではないんだろうか、それはまさしく市町村の御判断なんじゃないんだろうか、こういうふうに考えております。

小林(千)委員 次に、先ほども御説明がありました学歴社会とのかかわりについて、ぜひお伺いをしたいと思います。

 特に、今、受験地獄ですとか、子供たちに詰め込み教育だとかというふうに言われております。本来ならば、選択できる学校、魅力あふれる学校というものが、正しい意味で特色として出てくればいいんですけれども、ともすると、有名校にどれだけ入学者が多かったかですとか、どれだけ優秀な生徒をつくり出しているか、こういうことに重きが置かれる心配も大変多いのではないかというふうに思います。そういった面で、公立の学校の序列化にこれがつながってしまうのではないか、受験戦争の低学年化、そしてそれに拍車をかけるものではないかといったような心配も大変多いわけでございます。この学校選択制というものがそういったマイナス面を引き出すものではあってはならないと思うわけなんですけれども、これはぜひ見解をいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 品川区のお話を先ほど申し上げました。品川区は、既に平成十二年度から学校選択制を導入しているわけでございますけれども、そういったことで、品川区の教育委員会の関係者とお話をしたことがあるわけでございます。

 たしか先月だと思いますが、品川区で開催をいたしましたフォーラムにおきましても、学校の序列化が進むのではないか、あるいは不人気校が切り捨てられるのではないか、そういった懸念の声がそのフォーラムで出されたわけでございますけれども、一方で、これはまた外部の有識者でありますけれども、学校が情報提供を積極的にするようになって、学校、保護者が相互に批判、評価し合うようになった、あるいは教員の自主性が発揮されるようになった、各校が工夫した特色が品川区全体の特色として整備化されてきて大変いい結果を得ている、こういった評価も一方ではあるわけでございます。

 おっしゃるような、そういう学校選択制導入のメリット、デメリットをやはり教育委員会で十分に分析をしていただいた上で、また地域の実情それから保護者の意向を十分にお聞きをする形の中で、その後の学校運営等についても適切に対応していただくことが肝要かな、こんなふうに考えております。

小林(千)委員 ぜひ、この学校選択制というのが学歴偏重社会というものを助長するものではないものにつくり上げていただきたいと思います。

 最後に、ぜひこれは大臣にお伺いをしたいわけなんですけれども、公教育としての国の責任といいますか、国が本来持つべき教育に対する責任というものをお伺いしたいと思います。

 実は、私が先ほど例に挙げた地元の江別市なんですけれども、ここが、就学前そして小学校、中学校の児童を、学生をお持ちの御家庭にアンケートを実施いたしました。サンプル数は二千ちょっと、二千六十五ぐらいなんですけれども、そのアンケート調査によりますと、学校選択制に対しては七〇%近くの方が賛成というふうに答えているんです。

 その賛成の理由を聞いてみますと、一番最初は、子供の個性や希望に応じた学校選択の権利は保障されるべきだから、これがその賛成の一番の理由なんですね。その次は、特色ある開かれた学校づくりが進むから、これがその賛成の二番の理由になっております。こういった、子供たちも、あるいは保護者の方々も、学校選択制ということについては大変積極的に評価はしていると思います。

 しかし、そのアンケートの次の項目で、実際に学校を選べたらどこの学校を選びますか、こういう問いがあるんですけれども、これの答えは、実は六〇%が今の指定された学校に入学をするというふうに答えているんですよ、積極的に選択制というものを評価していながら。

 その理由を聞いてみますと、一番は八七%の人たちが、一番近いからというふうに答えているんですね。次は、友達が通学をしている学校だから。次の三番目の理由が、兄弟姉妹が通学をしている学校だから。その次が、学校と地域のつながりを重要視しているから。こういったアンケート結果が出ておりまして、子供たちも、そしてその御家庭の保護者の皆さんも、地域とのつながりというものを大変学校に対して求めているという事実の結果が出てきているわけでございます。

 そして、もう一つ、このアンケート調査に、今、通学区域外の学校を選ぶというふうに答えた四〇%の人なんですけれども、その理由というのは、いじめや荒れが今の学校にあるから、その学校には行きたくないから。そして、今の指定された学校は設備や施設が老朽化して古い、隣の方が新しい学校だからそっちに行きたい。こういった実に消極的な理由で学校を選択するといったような考え方もいらっしゃるんです。

 この中で、この消極的な理由というのは、私は大変重要だと思います。指定された学校はいじめが多いから、荒れているから、学級崩壊が起こっているからその学校には行きたくないで隣に行っちゃいますよ。この学校は古くて、老朽化していて、すき間風が入るから隣の新しい学校に行きたい。これは根本的な学校選択ではないと思いますし、本来、いじめや荒れや学級崩壊というものは、それについて改善を積極的にしていかなければいけませんし、特色を出す、特色を出すと学校が頑張ったところで、建物が老朽化しているというものは、学校自体がどんなに頑張ったって解決できない問題のところで保護者が判断をされるという実情もあるわけなんです。

 こういったことを考えてみますと、国が本来教育に、特に公教育に対して行うべき役割、全国どこでも均等な教育の機会というものを与えることができるのが今の公教育の役割だと私は思っておりますけれども、ぜひ大臣に、その公教育としての国が本来行うべき役割というものを御所見を伺わせていただきたいと思います。大臣、お答えください。

原田副大臣 後でまた大臣にお話しいただきますけれども、先ほどの江別市のアンケート、なかなか含蓄のある結果が出ておると思っております。アンケートの中には、選択制に観念的には評価をするけれども、実際は地域内の学校に進む人が多い、その場合に、いろいろ積極的な理由、すなわち特色のある教育を求めるという側面と、今先生おっしゃったように、どっちかというと、地元の学校ではいろいろいじめがあるというような消極的な理由もあるようでございます。

 いずれにいたしましても、今回のこの選択制につきましては、いろいろ幅広いメニューを提供することによって生徒の側の個性を伸ばす、こういう側面があろうかと思いまして、それを当然のことながら公教育として推進しなければいけないと思っております。

 また、当然のことながら、それは機会均等、教育の基本であることは、これはもうその範囲内にしっかりおさめておく必要があろうか、こう思っております。

河村国務大臣 学校選択制が導入される、そういうことと教育の機会均等との関係、小林議員は、そういうことと学校選択制が入ることが、ひょっとしてその理念に反するのではないかという思いもお持ちかもしれません。

 いわゆる公教育の理念というのは、御存じのように、憲法の精神からしても、国民として必要な、特に義務教育段階においては基礎的な資質を培っていかなきゃいかぬ、国の責任として一定水準の教育をひとしく皆さんに受けてもらう、提供できる、これが教育機会均等の基本的概念ですから、これは国に責任があることでございます。

 このような観点からいけば、さっき御指摘のあったように、教育の条件にやはり格差があってはいけないので、条件整備をしていかなきゃならぬと思いますね。この学校選択制は、かえってこれはこっちにとっては受け身的なあれになってしまうんですけれども、その学校にいじめが起きているとか行きたくないということがあれば、これは選択制によって選ばれるということは、逆にそちらを条件整備に向かわせるインパクトにもなり得ることではあるんですね。これによって教育の機会均等を失うことではなくて、条件整備が進むという意味ですから、私は、教育の機会均等は学校選択制が損なうものではないと思います。

 私は、この学校選択制を入れることによって、まさに開かれた教育、そして国民から信頼される教育、それを促すことにもなり得る、そういう側面からもこれを各地域が実情に応じておやりになる。しかし、これは余り広くやったがために、これは通学だけでも大変だ、だから近くがいいんだということになりますから、実を伴わぬものではせっかくの選択制が泣く、こう思っておりますけれども、私は、教育の機会均等の理念は決して損なわれてはなりません。そのための条件整備をしていかなきゃいかぬ。そういう意味では、どこの学校に行こうと絶対に大丈夫だというのが本当の理想の姿であろうと思います。

 しかし、やはり、親にとっては、少しでも自分の子供の適性に合わせたときにいいと思われるところがあれば、それも選んでいただく、そのことは、ひいては学校間のいい意味での切磋琢磨といいますか、教育内容をみんな高めようとする努力につながっていく、そういう意味での学校選択制というものが考えられることについては決して間違っていないというふうに思っておるところであります。

小林(千)委員 最後に意見を述べさせていただきたいわけなんですけれども、先ほどのアンケート結果で申し上げましたように、実際のところ、保護者の皆さんあるいは地域の人たちは、その地域に密着した、より地域に開かれた学校づくりというものを望んでいるわけでございます。この江別市のアンケート結果だけではなくて、このアンケートは多分ほかの自治体でもとっていることと思います。同じような結果が多分出てきているのではないかと思います。こういった地域の方々のニーズ、そして実際に特色ある学校づくりというものを、今の枠組みに縛られた学習指導要領ですとかあるいは予算ですとか、そういったものをもっともっと広げて、権限を各学校に移譲していく、いわば教育の分野にも地方分権というものをさらに積極的に推進していくべきではないかと私は考えているわけでございます。

 ぜひ、こういった学校、地域に密着し、そして地域の力がどんどんその学校の中に生かされた特色ある学校づくりというものをつくっていただきたくお願いを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 笠浩史君。

笠委員 私も、今の小林議員同様に、昨年の総選挙で初めてバッジをつけさせていただき、きょうが初めての委員会での質問でございます。

 せっかくの大臣の所信に対する質問でございますから、私は教育の基本にかかわる問題について常日ごろ考えていることを真っすぐにぶつけてみたいと思っておりますので、どうか、大臣初め政府の方々、ひとつ答弁の方よろしくお願いをいたします。

 早速なんですけれども、私は、選挙中、やはり人づくりが大事だということを私自身の公約としても掲げて、そのことを訴えてまいりました。今まさに、大変、国際的にも国内的にもいろいろなことが、もう昔では想像ができなかったようなことが起こる時代でございます。非常に不透明で、国内的に見ても、確かに、親が子を殺してみたり、子が子を傷つけてみたり、また本日もオウム真理教の麻原被告の判決が恐らくこの後出るということでしょうけれども、こういう痛ましい、信じられないようないろいろなことが起こる時代、こうしたものにはさまざまそれぞれ原因はあると思います。しかし、結局は人の問題ではないか、そういうことだけは間違いはないのではないかと思っております。

 だからこそ、今教育が本当に大事な時期に来ている。けれども、私、選挙区を初めいろいろな方とお会いをして話をする中で、今の教育について満足されるとおっしゃる方がほとんどおられない。今こういう時代になったのはやはり教育が悪いんじゃないか、教育がもっとしっかりしなければ、そうしたことを皆様切実に訴えられるわけでございます。

 そういう中で、今こそ新しい時代、この二十一世紀にふさわしい教育改革というものをどうやっていくのかということを真剣に今まさに取り組んでいかないといけない。そして、私自身としては、その中で考えますことは、ポイントとして、やはりこの二十一世紀、新しい国づくり、いろいろな制度、改革をやるでしょう、しかし、やはり教育においては理念というもの、哲学というものが大事ではないか、そこをしっかりと国としてもう一度、この教育基本法も含めて、五十年以上たった今、見直す必要があるのではないか、そのことを考えております。

 そしてもう一つ、やはり国におきまして、同時にそうした理念、哲学というものをしっかりと構築した上で、なるべく地方に任せるものは任せていく、そして自由化をしていく、そうした視点が大事なのではないかと思うところでございます。

 こうした中、大臣は、先日の所信表明の中で、五つの重点政策の第一に教育基本法の改正に積極的に取り組むということをおっしゃいました。大臣に、今なぜこの教育基本法というものの改正が必要だと思われているのか、まずはそこをお聞かせください。

河村国務大臣 今、笠議員から御指摘がございました教育基本法、今、笠議員が今の教育を憂う気持ちからおっしゃった中にも、この教育基本法を改正するヒントが私はあったように思うんです。現実にオウム真理教の判決がきょう出る、既に十一人の死刑判決が出ている現状、ああした、いわゆる日本の教育の中でもエリートと言われる医師がいたり弁護士がいたり、それでいてああいうことに入っていった、これは一体何なのかということをやはり今考えていかなきゃいけないときに来ていると思います。

 戦後の教育といいますか、我々もその中にあったわけでありますが、どちらかといえば、やはり豊かさを求めてといいますか、そういうことに走ってきたように思います。そして、人間が生きていく上で、これはやはり人生をいかに生きるべきか、いい点をとっていい学校に行っていい就職するだけがいいというだけではない、やはり生きるべき、大事なことがもっとあるんじゃないかということに、今国民は気づいておると思いますね。そういうものをやはりこれから教育の中にしっかり盛っていく必要があろうと。

 私は、総理から九月二十二日に指名を受けたときに、今の知徳体の教育プラス食育を重視した人間力向上の教育改革に努めるべし、まずそう指示書の最初に書いてあったことを踏まえながら、人間力向上ということになると、やはり人間いかに生きるべきか、まさに心の教育といいますか、そういうものももっともっと重視する必要がある。

 もちろん、教育基本法をお読みになったろうと思います。あの十一条の短いものです。しかし、その中に、教育は人格の完成である、あるいは個人の尊厳も必要だ、あるいは平和国家の形成者としてのあるべき姿とか、これは大事な理念だと思います。しかし、それだけなのかということを考えていかなきゃならぬ。そうすると、今の教育基本法で、今の時代にふさわしいものは何なのか、どういう点をもっと考えていくべきか。

 そこで、実は歴代の内閣、特に小渕内閣からこちらはこのことに特に力を入れて、小渕総理の時代に教育改革国民会議、そこで忌憚のないいろいろな意見を交わされた結果、やはり教育の根本に立ち返って、これが日本の教育の方針だというものが必要ではないかと。あの教育基本法、これが全部間違っているとは言わないけれども、これは世界どこに行ったって通用するもので、これが日本の教育かと言われると、欠けているものがあるんじゃないか、それをみんなで考えようということになって、中央教育審議会でいろいろ御指摘をいただいた。そのものが昨年の三月に答申として出てきて、新しい時代にふさわしい教育基本法のあり方について、こういうことでございました。

 この中には、これから新たに考えなきゃいけない理念としては、個人の自己実現と個性、能力、創造性の涵養であるとか、あるいは社会の形成に主体的に参加する公共の精神、さらに道徳心、また日本の伝統、文化の尊重、郷土や国を愛する心、そうしたものを盛って国際社会の一員としての意識をつくっていこうとか、または家庭教育の役割の重要性、これは全くあのことについては社会教育の一環として家庭教育が書いてある、これでいいのかという問題。またさらに、今言われている地域社会の教育力、そういうものとの連携。学校、家庭、地域の連携がもっと必要だというようなこと。そういうものを踏まえながら、生涯教育というような概念もございませんでしたから、そういうことも踏まえながら、国家百年の大計の基本理念をつくり上げた上で、さらに全体の教育振興基本計画もつくるべきだ、こういう形で出てきたわけでございます。

 これは、昭和二十二年に教育基本法が生まれて以来、今日、まるで手つかずに来たことを顧みながら、新しい教育の根本を考えていこうということで、私も当選以来、笠さんと同じように、やはり教育が大事だ、こう思って、ずっと党内でもそういうことを言い続けてきまして、今こういう立場になってみて、やはりこのことを実現しなきゃいかぬ、こう思っております。

 そのことは、この国会にこの法案を出すことによって、もっと国民的な議論が出てきて、これは国会で議論することは当然でありますが、国民の皆さんもしっかり考えていただく問題ですから、文部科学省も、これで十分だとは言いませんが、これまでも全国いろいろなところへ行ってフォーラムを開き、タウンミーティングをやり、これからも今から二、三カ所計画しておりますが、そういう国民運動になるように努力もいたしておりますので、ぜひそういう視点から、私は教育基本法の改正ということが大事であると思っておりますし、取り組んでまいりたいと思っております。

 これは、今与党の中で、法案でありますから、まず責任がある与党の中で協議をいただいておりますが、これはぜひ野党、民主党の皆さん初め、しっかり議論をいただきたいし、これはまさに超党派で考えていくべき課題であろう、私はそう思っておりますので、しっかり取り組んでいきたい、こう思っております。

笠委員 大臣、私も、やはりこのテーマというのはしっかりとした国民的な議論が必要だと思っております。だからこそ、やはり国会に法案を提出していただかなければいけない。

 もう中教審が答申を出してからまさに一年近くたつわけでございますけれども、与党内の協議というものも大事でしょうけれども、昨今報道されているところでは、どうも今国会にも提出がされない、断念したというような報道がよく目につくわけでございますけれども、もう今国会への政府としての提出というのはあきらめたということでよろしいのでしょうか。

河村国務大臣 私は、あきらめたということをまだ一度も申したことはありません。総理からもそういうことは言っておりません。

 今議論をいただいておりまして、私は、まとまって、早く法案にして今国会に提出させていただきたい、このことをひたすら考えておりまして、そういうつもりでしっかり与党内の協議をしてもらいたいと思っております。総理からも、この協議を進めるように精力的に取り組め、こう言われておるところであります。

笠委員 やはり、私は、この教育基本法というものは、憲法同様に、何を残していかないといけないのか、何を守り続けないといけないのか、あるいは新しく何を追加していかなければいけないのか、そうしたことをきちんと逃げずに議論する。

 そして、やはり民主主義でございますから、我々も、地域の皆さん、国民の皆様に選ばれて、一人一人、この国会に参っているわけでございます。やはり国会の舞台にきちんとした法案というものが提出されることによって、時間はかかるかもしれません、それがどういう形で成立するのか、あるいは今のままでいいという形になるのか。しかし、そのことによって初めて国民的な論議というものがしっかりと行われる。恐らくはマスコミも含めて、これは賛成、反対、いろいろな項目についてあるでしょう。しかし、そういうレベルに今まさに持っていかなければ、いつまでたっても結論というものが得られないということでは、まさしくこの今の一年、二年、非常に大事だと私は思っております。

 大臣もおっしゃいました、国家百年の計です、時間はかかります。だからこそ、これ以上もう次にツケを回していくようなことをせずに、与党内の協議も結構ですけれども、前の大臣は民間の方でしたから余り政治力がなかったかもしれませんけれども、ぜひとも河村大臣は政治家ですからしっかりと提出をしていただきたい。まさしく大臣の、今国会かどうかわかりませんけれども、任期中には必ず提出をするという意気込みをお聞かせください。

河村国務大臣 私の任期がいつまでなのか、総理に聞いてみないとわかりませんが、おっしゃるとおり、私は、これは私の一つの使命だ、こう思っておりますので、早く法案にしてお示しをして濶達な議論をいただきたい、こう思っております。

笠委員 そうした中で、ちょっとテーマは変わるわけでございますけれども、私は、今確かに子供たちの学力の低下ということが叫ばれているわけでございますけれども、この所信の中で、大臣が確かな学力をはぐくむということをおっしゃったわけです。そもそもこの確かな学力の学力というのはどういうことなんでしょうか。

河村国務大臣 この学力という考え方は、ややもすると、要するに、ペーパーテストといいますか、ただ知識だけをはかる物差しを学力と、とかくそう考えやすい。入学試験の学力、これも学力には間違いありません。

 しかし、私は、今の子供たちが持っている能力、学力というものは、我々のときとまた違ったものがあると思いますね。例えばパソコンを使い切る能力、我々の時代にはなかった。やはりそういうものも総合的に見ていかなきゃならぬと思いますので、一概に狭い範囲で学力ということは言えませんが、しかし、それぞれの段階において必要な知識というのがございますから、それはやはりきちっきちっと小学校からずっと、幼稚園も含めてそうでしょうが、それにふさわしい知識というものは必要です。人間が生きていく上にどうしても必要な、まさに読み書きそろばんから始まって、九九もあるし、そういうことをきちっきちっと押さえながらいく。その上に、加えて、学ぶ意欲とか考える力とか、判断力とか表現力とか、そういうものも養っていく。そういうものをトータルとして、私が申し上げた確かな学力という意味はそういう意味でとらえておるわけでございます。

 そういう意味で、学力テストをやって全体的なレベルを見る、そういうことも必要になってまいりましたし、学習指導要領の中では、知識とか理解だけではなくて、関心とか意欲とか態度、あるいは思考、判断、技能、表現、こういう点にわたって状況を把握するという形で取り組んでいくべきであろう、こう思っております。だから、そういう意味では、単なるペーパーテストだけではなかなかわかりにくい面もありますね。こういう点はやはり調査の仕方とかいろいろあろうと思います。こういう調査の段階には、そういう特定の課題についても調査をしなきゃならぬということでございまして、そういう意味では、やはりトータルとして学校がわかる授業をきちっとやるということが非常に必要になってくるだろう、こう思っております。

 そういう意味で、いわゆるペーパーテスト、プラス質問、研究指定校を行うとかいろいろなことを行っておりますが、そういう中で、いろいろな研究課題を持って、そしてトータルとして学校が、まさにそういう意味での学力がつく、学校として伸展させていく、その向上を図っていく、こういうことでなければいけないと思っておりまして、そういう意味を含めて確かな学力をはぐくむという表現を使わせていただいたわけです。

笠委員 確かな学力とか豊かな心の育成とか、よく、こういう表現というのは常に使われてきているわけでございますけれども、やはり、それだけではなかなか、何が学力なのか、何をやろうとしているのか、何をはぐくむのか、そのことが非常にわかりにくかったのが、私はこれまでの、今は文科省でございますけれども、文部行政、教育行政ではなかったのか。

 そして、それについてゆとりと言ってみたり、最近では基礎学力の部分が、例えば算数とか理科の力がどうも落ちているということで、このままではいけないんじゃないか。二〇〇二年度にゆとりの学習というもの、学校の五日制というものが、現場には、やっていくよと来た途端に、また、どうもそういうことはおかしいんじゃないかというようなことが、いろいろなところで、さまざまなところで御意見が出ている。

 そうした中で、一番問題なのは、やはり学校の先生たち、現場の先生方が、私も何人もお会いしました、やはり戸惑っておられます。これまでの、十年ごとに確かに見直すことになっている、しかし、やはり余りにも一貫性がないんではないか。そうしたところが今の教育行政に対する不信というものを非常に招いている結果ではないかと思っておりますので、やはり、今後はもう少し一段と踏み込んだ方針を出していただき、十年後、二十年後ですね、三十年とは言いません、しかし、しっかりと軸となるような政策を具体的に打ち出していただきたいなということを要望させていただきます。

 そしてもう一つ、私、本当にずっと気になっている問題。これは、学校の安全管理、この問題というものが今大変大きな問題になっているんじゃないかと思います。

 あの池田小学校の悲しい、本当に許されないような事件がございました。しかし、これは大変な数、まだ今でも学校、教室の現場に不審な人物が入ってきたり、あるいは傷つけたりといったことが、これが時折報道されている。そして、こうした中で、確かに文科省としても一定の取り組みをこれまでされてきておりますけれども、例えばセンサーか何かをきちっと配置する、監視カメラを配置するというようなことをやりなさいということ、そしてそれに対する財政の裏づけもきちっとあわせた形でこれまで取り組みはされておりますけれども、今、全国の公立学校でどれくらいにそういった形で配置をされているのか、そうしたことを把握されているでしょうか。

馳大臣政務官 お答えいたします。

 実際に全国でどのくらいの学校にそういったセンサーや非常通報装置が配置されているかといった具体的な数字は、今持ち合わせてございません。ただ、交付税措置であるとか、また平成十六年度の予算において、我が省の方においても安全管理対策上必要な予算は盛り込んでおるところでございます。

笠委員 ちょっと確認なんですけれども、今この場で数字はわからないけれども文科省としては把握をしているということでよろしいんでしょうか。

馳大臣政務官 まず、都道府県の市町村教育委員会等において、学校側と十分に話し合いながらそれぞれの学校の要望に基づいて対応しておりまして、お求めがあるならば、そういった実態というものも個別にまた報告させていただけるものと思っております。

笠委員 よろしくお願いいたします。

 といいますのも、必ずこういうときに、マニュアルを指導徹底したり、あるいはいろいろな対策をそのときは騒ぐんです。しかし、やはりこれは、確かに都道府県それぞれ、あるいは市単位でいろいろなことをやられているでしょう。地域の取り組みもさまざまです。一生懸命やっておられるところもおられる、ボランティアも含めて。しかし、今現に、ひょっとしたら監視カメラも何もなくて、そのまま本当に放置されているような学校があるかもしれない。やはりそういったところに対してはしっかりと、文科省として、そういうところこそ報告を受け、どうなっているのかという状況を把握しておるということが、また次の年の予算でも、じゃ、このままで十分なのか、そういうたたき台があって初めて対策が打てるということではないかと私は思っておりますので、しっかりとそういう点はまた文科省として把握をするように、そしてまた資料がございましたら、ぜひとも提出していただくようにお願いをいたします。

 それと、この点に関しましてあわせて私ちょっとお尋ねをしたいんですけれども、人を、例えば保安要員といいますか監視要員といいますか、例えば今空き交番の対策なんかでも言われておりますけれども、警察官のOBの方とか、そういう方を少し、財政支援、財政の裏づけもある中で配置を徹底していく。本当に私立の学校なんかではそういうことをもう既にやっているケース、たくさんございます。しかし、そういうことを国としてやっていく、検討していくというお考えはないでしょうか。

馳大臣政務官 笠委員おっしゃったことはまさしくそのとおりだと存じますが、基本的にはまず設置者の判断であり、各小中学校の判断であるということも承知いたしております。

 それから、今笠委員おっしゃいました資料に関しましては、お求めがあれば、また現場の方で取りまとめてお知らせしたいと思っております。

 また、一月二十日ですか、先般、河村大臣が緊急アピールを全国都道府県の教育委員会連合会総会において行いまして、また、そういった取り組みを督励するよう、関係機関、警察等々も取り組むように、また小野国家公安委員長の方にも申し入れを行ったところでございますので、この点に関してもお知りおきいただきたいと存じます。

笠委員 やはり、本当に事子供たちの、人の命にかかわる問題でございますので、こうしたことについては予算というものはしっかりと、文部科学省の予算、減っているようでございますけれども、しかし、めり張りをつけて、やはりかけるところにはかける。なかなか、学校設置者の責任、判断といいましても、特に公立の場合、地方も大変今厳しい財政でございます。やはりお金がなければできないこともございますので、そうした観点からの検討ということをよろしくお願いいたします。

 それともう一つ、私は常日ごろ、最近地域の方とお話をする中で非常によく聞かれるのが、やはり今、私は川崎市が選挙区なんでございますけれども、小学校、中学校含めて、非常に私立に行かせたいという方が多いんです。やはり公立の学校に対する不信感というものが非常に漂っている。これは一概に文部科学省だけの問題ではございません。しかし、やはり国と地方自治体と地域が一体となって取り組んでいかなければいけない問題だと思っております。

 まさしくここに、私立の場合は、小学校でいいますと、授業料では三十五万円近く、まさしく入学する年にはその倍の七十万近いお金がかかる。こういうふうなことになっていきますと、当然ながら、お金のある人は私立に行かせられるでしょう。もちろん奨学金というのを利用して行かれる方もおられるでしょう。けれども、やはり公立の学校というものを立て直していかなければ、これは教育を受ける機会の平等というものにも、その憲法の精神にもそれこそ反してくる大きな問題ではないかと思っております。

 そこで、私、これは将来的にということを前提にさせていただきますけれども、例えば、今、公立の学校というものに対して、学校というものにお金を、予算を使っているということを、ちょっと発想を変えて、アメリカの幾つかの州などでも行われておりますようなバウチャー制度、国はきちんと生徒一人一人に対してお金を出していくんだ、そして、そのことによって生徒はまた自分たちで学校を自由に選択できる。

 たくさん生徒さんが集まる学校はもちろんたくさんお金が集まるわけです。一方で、そういう工夫のない学校、親が選ばないような学校というものは、ひょっとしたら廃校に追い込まれるかもしれない。けれども、やはりそれくらいの競争原理というものは、しっかりと、将来的にはこうしたものを持ち込んで、学校がみずから、校長先生にも権限を持たせて生徒さんを集める努力というものをもっとさせないといけないのではないか。それが今まさに私立と公立の差を生んでいるのではないかという気がしますけれども、この点について大臣の御意見をお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 バウチャー制度、将来的な課題として、こういうお話でございました。

 確かに、おっしゃるように学校選択の幅を広げますし、それから学校間に競争をもたらす、そういう意味では一つのねらいがあると思いますが、ではこれが諸外国で定着しているかというと、まだそうでもないようで、イギリスなんかでも就学前にやろうとしたんですけれども、なかなか導入できなかった。あるいはアメリカでも、カリフォルニア州では住民投票で否決された、こういうようなケースもございます。

 しかし、一つのこういう考え方があるんだということ。ただ、これを日本でもし導入したときに、学校間の教育条件の格差という問題は大丈夫なのだろうか、あるいは、公私立を通じて公費で皆負担するということになりますので、財政的な負担がやはり増すことも考えていかなきゃいかぬ、このような課題があるんではないかと私は思っております。

 そういう意味で、このことの検討をこれまでもしてきているわけでありますが、それ以上に、やはり公教育を皆さんの期待にこたえるものにするために、もっとその質を高めることにこれは努力すべき課題だろう、私はそう思っております。

笠委員 確かに、うまくいく地域あるいはなじまない地域、いろいろあると思います。

 私ども民主党といたしましては、将来の道州制導入というものをマニフェストにも掲げさせていただいているわけでございますけれども、やはりこういった形で、地方分権がしっかりと進んでいく中で、そういった選択肢も各自治体、あるいは道州の単位になるのか、そういう中でこういう試みがあってもいいんじゃないか、今まさに硬直化した制度というものを打ち破っていく思考というものが、まさしく二十年後、三十年後をにらんで、しっかりとした改革の視点というものが必要ではないかと私は思っております。

 もう一つ、今の話ともちょっと関連をするんですけれども、今まさに学校の設立の自由化というものをどこまで認めていくのかということが、今確かに一部では特区等でやられているわけでございますけれども、どこまで認めていくのか。こうしたことを教育基本法の中でも定義づけをすべきだと私は個人的に考えているわけでございますけれども、この辺についての大臣の御所見を伺いたいと思います。

河村国務大臣 これからの学びのあり方について、私は、できるだけ選択肢は多くあっていい、こう思っております。

 御案内のように、今度特区で株式会社、また、まだNPOは正式に出ておりませんが、NPOについても今研究をしよう、こういうことになっておりまして、そういういろいろな形態があります。そして、やはりそれは、そのことが、株式会社と言うと、利益を度外視してやるのかというような問題も確かに指摘はございますし、憲法八十九条の公の支配に属さない教育というのは問題だという指摘もあります。

 いろいろな課題があるんですけれども、やはりいろいろな選択肢を持って、いろいろな形態を持ってやる。今新たに考えられるのは、コミュニティースクールの話もございます。地域が盛り上げていって学校をつくっていこうという動き、これに対して、取り入れようという方向ですね。そういうあらゆる形の教育というものが私はあってしかるべきだ、こう考えて、またそうした中で、それでは、今いろいろ御指摘を受けている、いわゆるこれまでやってきた伝統的な公教育をどう変えていって、どう期待にこたえていったらいいか、そういう課題も当然その中に含まれておるというふうに思います。

笠委員 確かに学校の自由化、一概にそこに、例えば財政の、本当に、今は、例えばある会社が学校をつくる、そしてそのときに、つくったのはいいけれども、途中でそのオーナー会社がうまくいかなくなってつぶれちゃったらどうするんだとか、いろいろな課題は確かに多いかもしれませんけれども、やはり、今のこの硬直化した何とも言えない部分において、今本当に非常に地域によって差が出てきていると思うんですね。都道府県によっても、特区なんかも利用して非常に大胆に取り組んでおられるところから、いまだに相変わらずの体質を引きずっているところもまだまだ数多くあるわけでございます。

 やはり、そうしたところをしっかりと、規制をするんではなくて、文科省としていい意味での指導をしていく、そうしたことを切にお願いをしたいな、そのように考えております。

 私ども民主党として、しっかりと地方分権に取り組んでいく、やはりこの最大のテーマというものはまさに教育ではないかと思っております。この教育の制度を、各都道府県、地方自治体の中でそれぞれがいい意味で競い合うような形の中で、そうした中でやはり取り組んでいくということが今まさに求められていることだと思いますので、今後とも、大臣におかれましては、やはり、これまでのしがらみにとらわれることなく、しっかりと、改めて、教育基本法の改正についても国民的な議論ができるように提出をされるよう、与党内の調整も含めて政治のリーダーシップを発揮されることを切にお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 牧義夫君。

牧委員 民主党の牧義夫でございます。

 大臣には、本会議に引き続きお疲れさまでございますけれども、今しばらく御辛抱のほどをお願い申し上げたいと思います。

 所信に対する質問でございますけれども、所信の中にもございましたので、これから始まる法案審議の部分と多少重なるかもしれませんけれども、これは非常に大事な話なものですから、この場でも改めて確認をさせていただきたいことがございます。

 さきの本会議でうちの高井委員から質問させていただいた、義務教育の国庫負担制度についてでございます。

 これは、前回二十五日の牧野委員からの質問にも大臣お答えになっております。いわゆる三位一体の改革、地方分権の流れの中で、この国庫負担制度の目的とする真に国が果たすべき責務とは一体どこまでをいうんだろうか、この辺がこれからの論点になろうかと思います。

 前回の質疑に対する大臣の答弁は、地方の自由度を高める中で制度の根幹を守るという回答でございました。これは所信の中にも、「国の責任により義務教育水準を確保するとの制度の根幹は引き続き堅持しつつ、」とございます。このとおりであろうと思います。私も確かにそのとおりだと思いますし、また、大臣のその根幹というのは一体何なのか、これは教員の資質を維持し、そして向上させることにある、そのようなお答えについても、まさにもっともだと私も思います。

 ただ、先ほどの本会議における麻生大臣の回答を聞いていると、将来的には給与本体にも踏み込むかのようなお話にもとれる、そんなようなニュアンスもございました。その辺のところ、多少閣内で温度差があるのかなといった印象もあったわけでございます。

 まず、大臣は、地方の自由度を高める中で制度の根幹を守るとおっしゃっておりますけれども、今回、さっき高井委員の質問にもありましたけれども、退職手当等義務的な経費でございますけれども、この辺を地方に移譲したところで、果たして地方の自由度が高まるのかと私は疑問を持っておりますし、さっき総務大臣のお話でも、高まるとは言えないとはっきりおっしゃっていました。

 この辺のところ、多少そごがあると思うので、ちょっと大臣のお考えを確認しておきたいと思います。

河村国務大臣 私は、本来、義務教育費国庫負担金というのは人件費ですからね、人件費にそんなに裁量性があるとは思えない。しかし、あるとすれば、それをどんと削るかどんとふやすかなら別でしょうけれども、では退職金にまるで裁量性がないかというと、これは今後、総額裁量制を入れていきますと給与に格差をつけることができるようになります。これは今年度から。

 今までは、義務教育費は、国立大学法人、国立大学の附属学校といいますか、そこの給与を細かく規定を決めたものを今回法人化に伴いましてなくしますから、今度、各県が先生方の給料については定めていただくようになります。そうすると、これは自由に決めていただくことができる。しかし、もちろん人材確保法がありますから、平均したときに一般の公務員より下回っては困るわけでありますけれども、それは格差がつく。そうすると、それを根拠にして退職金をつくるんですから、それは裁量性がないとは言えない。その程度のものだと私は正直申し上げて思っております。

 しかし、今の政府の方針が、そうした負担金、補助金、もうそれはできるだけ縮減していくんだという中でありましたから、確かに、そういう形だけのものじゃないかという厳しい御批判を受けましたけれども、それに応じながらも、しかし、教育のいわゆる義務教育については国が責任を持つんだというところを、やはりこれは担保しなきゃいかぬという思いで今日来ておるわけでございます。

 総務大臣がそう言われたのも、思いとしては私もわからないことはありませんが、では、まるでゼロかというとそうでもないんだ、こう思いつつあの答弁を聞いておりました。しかし同時に、これから実は総務省とも協議しなきゃならぬのでありますが、三位一体論、総務大臣、財務大臣それから文部科学大臣との間の話し合いの中では、十八年度までに、まさにこの全体、今残っている二兆八千億近い義務教育費、これの根幹のところ、これについても一般財源化も含めて十八年度までに検討するということが三者の間で話し合われております。だから我々も、十八年度までにこれを、根幹を私は守ると言っている。

 なぜ守るかということをきちっと理論づけ、また皆さんの御理解もいただいて、やはりこれは国が責任を持つ、そして質の高い先生を確保していくために必要な制度であるということをきちっと位置づけていかなきゃいかぬ、こう思っておるところであります。

牧委員 大臣のお考えは大体わかりました。十八年度までとりあえず勝負は先送りして、それまでにきっちりとこちらの考えをまとめて何とか守り抜きたいという、意を決してのお話だったと私なりに理解をさせていただいた次第でございます。

 そういう中で、ここだけはっきりもう一度確認をしておきたいんですけれども、この義務教育費国庫負担制度、制度の発足から一定のいろいろな変遷があったかと思います。いろいろな手当がついたり、また外れたり、この変遷があったんですけれども、まさに教員の資質を守るという観点から、これはどういうふうに判断したらいいのか。大臣のお考えとして、もうここだけは最終守らなければならない最低ラインだというところをはっきりお示しいただきたいと思います。今のお話と重複するかもしれませんけれども。

河村国務大臣 これまでにも、私も副大臣当時、もう相当な議論がございまして、枝葉をとられて幹だけ残った、こう言われたんですが、この幹の部分が私は非常に大事だ、こう思っておりまして、これはもちろん、私は今の時期でこういうことを言うのはあれかと思いますけれども、今の義務教育費を含めて国庫負担制度そのものを全部もうなくすんだということになれば、新しい制度を考えていかなきゃいけない。

 それから、民主党は特例交付金みたいなことを考えておられる。しかし、これが交付税的な考え方でいくと、まさに首長さんの自由ですから、何に使ってもいいという考え方になります。

 これはやはり教育費がそういう考え方であってはいけないんではないか、私はこう思いますから、そういう意味での根幹を守るという意味で、そして、二分の一という制度でありますけれども、きちっと財源は持つから、後はできるだけ自由に地方でやっていただきたいという総額裁量制、これはまさに教育論だと思うんですね。財源論あるいは地方分権論だけじゃなくて、まず教育論があって初めてそういうことが言えるんではないか、こう思っておりますので、そういう意味では、私は、この根幹を守っていくという考え方に立って、これからも貫いていきたい、こう思っておるわけです。

牧委員 せっかく大臣の方からまず教育論というお話をいただいたので、あえて申し上げさせていただきたいんですけれども、まず教育論というお話からすると、地方の自由度を高める一定の地方分権の流れの中で、やはり本来的には、例えば教科書検定制度だとかあるいは教員の資格の問題あるいは学習指導要領等々、文部行政というのは常に中央集権的にこれまで来たわけですけれども、その辺の部分を、地方分権の観点から、教育論的に大臣なりにお考えになる部分というのはあるのかないのか、その辺をお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 これまでも私は教育の地方分権というのは非常に進んできたと思っております。

 これまでの取り組みを見ても、いわゆる教育の機会均等それから全国的な教育水準を維持する、この基本的な概念の中で、全国的な一つの基準といいますか、それを設けながら、できるだけ自由な裁量権を増すということで、地域でいろいろ取り組みをされておりますから、その上で、こういう制度が要る、これはさらに緩和すべきだというような指摘があれば、それはやっていかなきゃならぬわけです。

 総合的な学習の時間というのも、やはりそういう地域の要望といいますか、もっとバラエティーに富んだ教育、がちがちの中じゃなくてもっと自由な教育がやれるようなものが必要だということから生まれてきたものでありますし、高等学校で選択の幅をもっとふやすべきだということで、そういうものも拡大もしてきたし、また、教員免許を持たなきゃ教壇に立てない、これでは困ると言われて、それはそういうことであるから、特別免許状とか特別非常勤講師制度というのを設けて、自由に各地域で先生を採用してやっていただきたいとか、こういうような形で今とってまいりましたし、特区においても今いろいろな取り組みがされておりますから、そうした地方の取り組みについてはこれをしっかり支えるというのがこれからの文部科学省のあり方だ、こう思っております。

 しかし、教員免許制度の根幹、あるいはまた学習指導要領でここまでは最低線、これだけはまずやっていただきたい、こういう基本的なものは維持しながら、こうした全国的に必要な基本的な枠組みを維持しながら、できるだけ自由にやっていただく、このことは私は大事じゃないだろうか、こう思っております。

 教科書についてもお触れになりました。これは市町村教育委員会で採択をしていただきます。この検定制度、要らないんじゃないかという御意見があることも私も承知いたしております。しかし、これも国が、今までのような、昔のような形じゃなくて、やはりいろいろな執筆者の意向というのを大事にしながら、標準的な教科書をつくりながら、そして幾つかの教科書の中から教育委員会がそれぞれ選択をしていただくという仕組みを今設けておりまして、この基本というのは、やはり教育水準全体を維持するということからいえば必要なことじゃないかな、私はこう思っておるのであります。

牧委員 わかりました。

 交付金ですとかあるいは負担金に関連して、ちょっとついでの質問でございますけれども、一つさせていただきたいと思います。

 子どもの読書活動の推進に関する法律というのが諸先輩の努力ででき上がって、それに基づく基本計画、学校図書館整備五カ年計画、これが十四年度から始まっていると聞いております。毎年百三十億、総額六百五十億円で、全国義務教育の図書室において四千万冊を整備するという、こういう計画なんだそうですけれども、念のために、この財源というのはどういう財源でしょうか。

河村国務大臣 これは交付税措置なんですね、総務省から出ている交付税措置。我々は政策官庁ですから、そのことを要請してまいりまして、それを受けて、それじゃ交付税措置で、交付税に換算しましょうということで、年間百三十億を五年間、六百五十億という約束がございまして、それを毎年やっていただいております。

 しかし、これは交付税ですから、これを受けた首長さんがこれを何に使おうと自由なんです。我々政策官庁としては、ぜひこれは、そういうことで換算されているんだから、それでお金が行っているはずだから、ちゃんと整備してくださいと。我々、整備計画はこういうものです、この読書活動推進法案で国が基本計画を立てますから、地方もぜひ計画を立ててやってくださいということですが、ここにも、実は、落とし穴という表現はあれですが、交付税の使い勝手のいいところはありながら、我々政策官庁から言わせると、そのとおりになっていない部分がある。全部きれいにやられているかというと、そうじゃないですね。まだ三分の一ぐらいがほかの金に回っている可能性が十分あるんです。

 私は、今回の交付税措置の問題を、こういうこともあるじゃないかと言うと、マイナス面ばかり考える必要はないので、すべて任せたら安心だということを、知事会等も言われる方もありますけれども、やはり今おっしゃった学校図書館の整備の問題一つにしても、一〇〇%うまくいっているかというと、そうじゃないんです。かといって、我々が予期した以上に、さらにその上にプラスしてやっている学校もあるんですね。その格差が随分出ているんです。こういう問題も起きております。

 しかし、これは、子供に本を読ませることは非常に大事ですから、せっかくこの制度を我々もしっかりPRしながら、そして全国津々浦々の町村長さん方にも、この制度があるんだから、ぜひ各学校の図書館をしっかり整備してくださいということは、政策官庁としてはしっかり今PRをしておるところです。

牧委員 まさに、今大臣がおっしゃったとおりだと思います。

 ちなみに、資料をいただいて調べたら、当初の十四年度において整備されたのが、差し引きすると三百五十五万冊、五カ年計画で五で割れば、当然、一年間に八百万冊整備されなければならないところが、半分以下という数字であります。このていたらくですから、今大臣がおっしゃったように、地方に交付金という形でばらまいたら、それがどういうふうに使われるか、全く当てにならないと言えると思うわけですけれども、やはり交付金としてばらまいたらもう当てにならないというお考えなのかどうなのか、はっきりお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 私がそれを言い切りますと、地方を信じないのかということになろうと思います。もっと地方を信じてやれということになろうと思います。

 基本的に、これほど地方の教育委員会、特に県単位の教育委員会というのは整備されております。しかし、教育委員会というのは、小さな、二千人ぐらいの村にも今ある状況もございます。これを信用しないということではありませんけれども、やはり人件費ですから、かなり大きいものになります。これは、町村長さん方がこの金を少し向こうへ融通したいという誘惑に駆られないとは言えない、そういうことを現におっしゃる首長さんもいらっしゃいます。

 そういう意味で、やはり教育費はきちっと使いたいから、国で責任持ってくれ、市町村長さんはほとんどみんなそうおっしゃいます、これは大事なことですからとおっしゃる、それだろうと私は思います。しかし、一方では、そんなことをやったらリコールされたり首になるんだから、大丈夫だ、もう任せていいよという意見もあります。

 しかし、そのときに迷惑を受けた子供たちがあったとしたら問題ですし、非常に熱心な首長さんはもっとそれにプラスしてやるところ、少し減らすところ、この格差、こんなものがどんどんつながっていったらどんなことになるかということを考えると、我々としては、これはちょっと待ってくれ、慎重にならざるを得ないし、この根幹はやはり守っていくというのが教育論ではないか、こういう結論に達する、こういうことであります。

牧委員 ありがとうございました。

 続いて、食育についてちょっと教えていただきたいと思います。

 大臣の所信をお聞きしていて、まず、この言葉に私は正直突っかかったわけであります、いつの間にこういう言葉ができたのかなと。恥をかいてもいけないので、念のために広辞苑で調べましたら、食育という言葉はございませんでした。

 大臣の所信の中にも、「国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう取り組んでまいります。」と力強い言葉があるわけですけれども、どうも、私、特に文部科学省という役所は言葉をもてあそんでいるように思えてならない場面が多々あるわけで、例えば人間力向上だとかあるいは生きる力だとかゆとりだとか、言葉の定義もはっきりしないまま、言葉をもてあそんでいるような感が否めないわけであります。

 そういう言葉遊びをやっているような状況には教育の現場はないと私なりにはっきり申し上げたいと思うんですけれども、その延長線上にこの食育なんという言葉がぽんと出てきたのかななんという変な勘ぐりもあるんですけれども、まず、この言葉の定義からお願いをいたしたいと思います。

河村国務大臣 食育というのは、食をはぐくむ、こうなるわけでして、一般的に食育という言葉をそう頻繁にこれまで使ってこなかったと思いますが、こういうことを今まで随分研究してこられた方も実はあるんですね。それで、やはり食べることが大事だという基本概念に立ったときに、健全な食生活を実践できるようにする一般的な啓発運動といいますか、それがまさに食育というふうに考えるべきだろうと思います。

 この問題が最近ぐっとクローズアップされたのは、一つは、BSE問題が起きたときに、日本の食の安全、安心ということが非常に強調されました。これは、要するに、そちらの方から来た話であります。一方では、学校給食の段階で、やはり食べることの大事さ、食を通じての教育、一家団らんの時間をつくろうとか、あるいは栄養素の問題、それがずっとつながっていくと、地産地消につながっていって、農林関係から来たものとずっと一致して、急に盛り上がったという経緯があります。

 しかし、食文化ということもございます。これはやはりかなり広い範囲で考えていったらいいんではないか、こう思っておりまして、文部科学省がまさに今所信で申し上げた食育、それから、総理から私にあった指示の、知徳体プラス食育という中には、今申し上げたいろいろなもろもろの意味が入っておるわけでございます。

 文部科学省で進めようという食育というのは、まさに、知育、徳育、体育にも非常に皆それぞれかかってくる、この体育にもかかってくることであります。もちろん徳育といえば、その中に、一家団らんの中にしつけのことも食育の中に入ってくる、そういうような、これにかかる、今考えてみれば、今時点では非常に大事な概念、考え方ではないか、私はこう考えております。

 そういう意味で、食育をこの中に入れていって、まさに、人間力というのも一体どうだと言われればまたこれは解説しなきゃいけなくなるかもしれませんが、いわゆる人間としての持っている力をはぐくむ上で食育というのを大事に考えていくということで、食育という言葉をこれから具体的に入れて、今まさに食育基本法をつくろうという動きも出ております。そういう方向で今進んでおるということも御理解をいただきたいというふうに思います。(発言する者あり)

牧委員 ほかにやることいっぱいあるぞというやじも飛んでおりますけれども、私も全くそう思います。

 特に、こういうところでどうして突っかかるかというと、例えば、大臣の所信の中に、私は非常に残念に思うところが一点ございます。環境教育という観点が著しく欠如しているんじゃないかなと思った次第であります。

 環境という言葉は数カ所出てまいります。六ページ、八ページ、九ページ、わずかに触れられておりますけれども、どうも食育の方が突出をしているように思えてならない。食育の内容について、本当はきょうもっと詳しくお聞きしたかったんですけれども、時間がございませんので、ちょっと先に環境の方をお聞きしたいと思います。

 環境教育という言葉が出てくるのはわずか一ページ、九ページのみでございまして、環境という言葉が出てきても、それは例えば科学技術分野の中に、例えば六ページ「また、環境問題など地球規模の問題の解決に大きく貢献するなど、」というような部分で環境という言葉に言及をされております。

 私、言いたいのは、ただ扱いが小さいということだけじゃなくて、これは根本的な認識の違いじゃないかなと。例えば、地球規模の問題というのは多分温暖化の対策について言っていることであろうと思いますけれども、例えば、政府の温暖化対策大綱を見ますと、この取り組みというのは、国と地方の責務があり、また産業界あるいは民生部門がみんなで取り組むべき問題であるというように規定をしているわけです。そういう中で、京都議定書の目標数値をいかにして達成するかという全国民的な課題であるという認識のもとで政府もこういうお話をされていると私なりに理解をしておりますけれども、その中のほんの一部ですよね、技術革新によって温室効果ガスの削減をどう図っていくかということは。そのほんの一部の部分をとりたててこういうところに持ってきて、まさにライフスタイルから、あるいは私たちの価値観までもう一回みんなで考え直さなければならないという、まさに環境教育をメーンに持ってこなきゃいけないところを、どうしてこういう形になるのかなというところが非常に残念に思われてならないわけであります。

 どうしてまたその辺のところで目くじらを立てるのかと申し上げれば、今まさに稲葉副大臣あるいは田村政務官もいらっしゃいますけれども、ともに前国会においては、環境教育を推進するための議員立法、一緒に努力をして成立をさせた先輩、先生方でありますから、こういう方たちが文科省に入れば、これは文科省もいよいよ環境教育に本気で取り組むんだな、そういう布陣だなと私なりに理解をしていたものですから、そういった観点から、やや拍子抜けがしたということを申し上げさせていただきたいと思います。

 そこで、この新しい法律で、正式名称、ちょっと長いんですけれども、環境の保全のための意欲の増進及び環境教育の推進に関する法律、これが昨年七月に成立をいたしておりますけれども、文科省としての取り組みについて、その意気込みについて、せっかくでございますので、稲葉副大臣と田村政務官から一言ずつお聞かせいただきたいと思います。

稲葉副大臣 所信を述べながらお答えさせていただきたいと思います。

 今、牧先生おっしゃられましたように、この法律は、さきの国会において、松本龍環境委員長の委員長提案で衆参可決を見て、昨年の七月二十五日に公布され、十月一日から施行されております。特に牧先生も、また私も、当時は民主党では小林守先生、一生懸命この法案の準備に汗をかいていただいた方々であります。

 その議論の経過の中で、環境省あるいは文部科学省、このあたりの環境教育問題に対しての取り組む姿勢といいますか、意気込みといいますか、そういうことに触れますと、若干温度差があったように私は感じております。これは環境部会長であったからというわけではありませんけれども、やはり新しい制度、新しい法律をつくるに当たっては、各省庁ともいろいろ議論を進め、あるいは慎重にならざるを得ない部分もあるかもしれませんけれども、特に環境族サイドからしますと、文部科学省のこの案件に対する取り組み方については若干腰が引けていたような、そんな記憶もあります。

 したがって、この法律ができまして、十月一日から施行され、その条文の中で、特に七条においては、環境大臣と文部科学大臣が基本方針を策定するんだ、こう規定されておりまして、その策定されたものについて閣議決定を要する、そういう規定が存置しております。二省庁に限らず、ほかの省庁の大臣も所管大臣でありますけれども、特に環境大臣及び文部科学大臣が基本方針を策定する、あえて七条に記述されているということは、お互いの省庁が連携をとってこの問題に、ほかの省をリードする、それぐらいの宿題を出されたものと思っております。

 したがって、今後は、この基本方針の策定に向けて私たちは鋭意努力しなければなりませんし、できる限り早い時期にこの基本方針を策定して、それに基づいて実施してまいりたい、かように思っております。

田村大臣政務官 敬愛する牧先生とともに、この法律の成立に向かって努力したことを思い出すわけでありますけれども、私も、文科省の方で政務官をさせていただきまして、少し調べさせていただきました。

 現在も、総合的な学習の時間等々で、環境教育、いろいろと各学校で努力をしていただいておりますが、小学校で大体五六%ぐらい、中学校で四〇%ぐらい、そのような率で、もちろん、すべての時間を使っているわけではありません。その総合的な学習の時間の中において、年のうちにそのような教育を何時間かやっておるというような今状況であります。

 同時に、今回、子供の居場所づくり新プラン、これを予算の方に計上させていただいておるわけでありますけれども、この中においても、この環境学習、これは体験学習も含めてでありますけれども、そういうものを進めていただきたいなという思いはあります。

 ただ一方で、この法律の中で、たしか人員といいますか、認定事業というものがございました。この人材の認定事業がいよいよ動いてまいりますと、そういうところにいろいろなすぐれた人材が来られるようになるのかな。そういう意味では、この法律が成立したことは非常に大きいと思っておりますので、副大臣がおっしゃられましたとおり、これから鋭意努力をしてまいりたい、このように思っております。

牧委員 ありがとうございました。しっかりと取り組んでいただきますようにお願いをいたしたいと思います。

 環境教育の重要性というのは私も全く同感でございますし、今、地球上で飢餓状態にある人が八億人以上に上ると言われております。そんな中で毎日二万四千人の方が餓死している、まさに食べるという、食育の話が出たので、あえて申し上げさせていただきたいと思いました。

 日本語で、食べるというのは、生きると同義語だとある意味では言えると思います。これでしばらく食っていけるといえば、これは生きていけるということでございますから、食っていけると生きていけるというのは同じ意味ではないかと思います。食育を通じて、そんな意味で環境を教えて、もっとリアリティーのある、生きていくということについての教育を推進していただきますようにお願いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

 ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 大臣に御答弁をお願いしておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 きょうは、私は、都立四大学の統合、改組の問題でまず質問をさせていただきます。

 東京都が都立大学などの大学の意思、意向を無視して、一方的に新大学構想を押しつけようとしているわけです。その大学の自治を無視したやり方というのは余りにも異常でありまして、本委員会で取り上げざるを得ないわけでございます。

 都の大学管理本部は、都立四大学の教員全員に対して、新大学就任承諾に当たっての意思確認書の提出を求めています。回答は二月二十三日までで、五百十八人中二百九十七人しか就任の意思を示していなかった。これはいろいろ各新聞報道などでも大きく取り上げられているところで、御存じのとおりでございます。教員の反発が非常に大きいということを示していると思います。

 この意思確認書には、こう書かれているんです。文部科学省から設置認可の申請に当たっては、専任予定者から早期に確実な意思確認をとり、法科大学院のような事態を二度と招くことのないよう対応されたいという強い意見がありました。そこで、本申請に必要な就任承諾書提出に先立って、今回、首都大学東京への就任の意思確認を緊急に行わざるを得なくなりましたとあるわけでございます。

 だから、文部科学省の意見により意思確認を緊急に行わざるを得ないと書いているわけで、そこで、伺います。文部科学省は、そのような意見を言ったんでしょうか。

河村国務大臣 今の御指摘の点でございますが、東京都が新しく四大学を統合して新大学をつくろうということで、二月十日付で東京都大学管理本部長の名前で四大学の現職教員に対して、首都大学東京就任承諾によっての意思確認書の提出を求めたということは伺っておりますが、しかし、この求めた文書の中で、今御指摘あったように、文部科学省から強い意見があって意思確認を緊急に行わなきゃいけなくなったと記載があったわけですが、文部科学省からこのような意思確認書を集めるように要請した事実はありません。

 そこで、文部科学省としても、二月十日に都に対して訂正を申し入れたわけでございます。これを受けて、東京都は、十二日付で改めて正確な説明を行いました。これが、事実関係であります。

石井(郁)委員 東京都としてその意思確認書の送付についての、ホームページに訂正文を出されたというふうに伺っているわけです。だけれども、その文書を読みましても、別に訂正したというふうにはなっていないんですね。訂正にならない訂正だというふうに言わなければなりませんし、教員に配られている意思確認書の提出についてということでは、内容的には何らの訂正もないということなんです。

 そこで、やはり文科省としては、言っていないことが書かれた、それで確認書提出の口実にもされている、私は、文科省としては、これは大変遺憾なことだというような表明があってしかるべきだと思いますが、その点はいかがですか。

河村国務大臣 これは、こちらがやったことでないことをそのようにされたとすれば遺憾なことなんでありますが、大学設置申請については、既存の組織をもとにして新たに大学申請する、こういう大きな変化がない場合には、教員審査を省略することができることになっておりまして、この場合に教員審査を省略することができるかどうか、事前に大学設置・学校法人審議会に相談することができる仕組みとなっております。この場合に、学部・学科名、教員数等を記入した書類を出してもらう。東京都によりますと、都がこの事前相談をするに当たって、教員数を把握するために各教員に意思確認を求めたものであるというふうに伺っております。

 したがって、このような事前相談に当たって、教員の意思確認書を文部科学省に出していただく必要はないんですね。これは文部科学省、これを求める必要もないし、出していただく必要もないんです。

 ただ、必要なのは、いわゆる設置認可を出していただくときに、教員の就任承諾書を出していただくということになっておるわけでありまして、そういう意味で、就任承諾書は必要なんですが、あの時点で意思確認書を求める必要はなかったわけでありますから、都が求めた意思確認書というのはこの就任承諾書ではありませんから、それと間違えられたということなのか、この辺は私、確認できておりませんが、訂正を求めたというのは、まさにそういうことであります。

石井(郁)委員 確認いたしますけれども、設置認可を文科省に対してしなければいけない、その事前の相談でこういう意思確認書というのは必要はない、大臣は今そのように御答弁された。もう一度、よろしくお願いします。

河村国務大臣 確認書は必要ありません。

 教員数を確認されるためにどういう方法をとられたか知りませんが、そういうものを文部科学省が必要で求めたということもありません。

石井(郁)委員 そうしますと、極めて東京都が進めているのは、異常なことを大学側に押しつけていると言わなければなりませんけれども。

 もう一点、確認をさせていただきますが、大学等の設置申請書類の作成手引きというのがありますよね。それを見ますと、もう大臣も御答弁されていますけれども、専任教員は何人だ、新規学部では計画数で専任何人、そういう形を書けばよろしいと。これは見込み数であるということで、四月末までに出しても七月末までさらに追加書類も出すという形にもなるということだと思いますが、あえて、今事態が大変なものですから、この点も確認をさせていただきたいと思います。

河村国務大臣 大学の設置認可申請の手続のときに教員の就任承諾書を出していただきますが、これは一緒でなくても、設置認可申請後七月末までに追加書類として出していただけばいいわけですから、設置認可の手続上は今の時点で意思確認書を求める必要もない、こういうことになるわけです。

石井(郁)委員 大臣に明確に御答弁いただいたので本当はそれでいいんですけれども、事態が、訂正を求めたと言われますけれども、訂正になっていないんですね。

 これは都の大学管理本部ですけれども、二月十八日ですよ。先ほど二月十日には訂正もされたという話ですが、二月十八日、山口一久というそうですが、本部長名で意思確認書の提出率の、教学準備委員に対して文書が出されています。ちょっと読み上げますと、

 本日現在、貴委員の担当する一部のコースに配置予定の教員からの提出率が極めて低い状況にあります。

  このまま全体の開学を遅らせることは断じてできないため、当該コースの提出率が依然としてはかばかしくない場合は、学長予定者と相談しながら東京都として、非常勤教員の確保、公募の開始、あるいは当該コース及び大学院の関連する専攻の設置とりやめなどの判断を近々にせざるを得ない状況になる可能性があります。

これですと、全然文科省の訂正は、何ら訂正になっていないじゃないですか。しかも本当におどしとも言えるようなこういう文書が出されて、意思確認書を早く提出せよと言っているわけでしょう。必要がないものをこういう形で強要する。

 だから、改めて、文科省として意思確認書は事前審査には必要ない、もう今御答弁されているんですけれども、こういう異常な事態が起こっているということについて、ちょっと大臣の御所見を伺いたいと思います。

河村国務大臣 これは私どもの方はそういうことを求めておりませんよと、もう向こうに言ったわけですから、東京都でこれに対してそれを確認されたわけですから、それは問題なしとしないというのは、そういうプレッシャーがかかったんじゃないかと言われればそういうことが考えられないことはないかもしれません。しかし、東京都にしたら、新しい大学をつくって教員を確保するというのはこれは大事なことですから、これは何らかの形で教員体制を求めていかれる必要は、あらかじめどのぐらいの数の皆さんが希望されるか、そういうことならおれはもうやめるんだとおっしゃる方もあるかもしれぬので、その意思の確認を東京都のやり方でおやりになったことについて、こっちからどうこう言える立場に私はないのではないか。ただ、文部省は、そういうものはお出しになる必要はありませんよ、最終的には就任承諾ですよ、こういうことですから、東京都が、それを文部省が言ってきたと言われるとこれは問題ですから、そうじゃありませんということを正式にやったということであります。

石井(郁)委員 やはり私は、最初の段階でこれは文科省からの強い意見ですという形で言ったように、文科省がただ名前だけをそういうふうに使われたと言ったら、これは本当に心外な話で、文科省としてはきちっとやはり物を言うべきだ、東京都に対して。訂正を求めたということですけれども、そんな形で進んでいるという異常さがあるということについては、私はきちんと認識していただきたいということが一点と、新大学構想を進めるに当たって、このように東京都の大学管理本部、この大学管理本部の独走ぶりというか、余りにもやはり目に余るというか、ひどいと言わなければならないわけです。

 つまり、大学の当事者の意向というものが本当に無視されている、大学内の合意とか意向とか、当事者の意見というのが本当に無視されて進んでいるということが、本当にこれは大学の改革の進め方としていいのかという問題が出されているわけでございます。

 これは、ことしの一月二十七日、大学当事者、都立大学評議会が「新大学計画に関する問題点」というものを出しております。これもちょっと読み上げますと、都の大学管理本部が現在進めている準備手続においては、新大学は実質的には現大学のいわゆる改組、転換であるにもかかわらず、教育課程の編成作業、これはもう大学人が決めることですよね、教育課程の編成作業が、現大学の意思決定機関である評議会、教授会の議を経ずに進められている。さらに教員組織がその教育責任を全うする上で障害となるさまざまな制度が、相も変わらず現大学の意思、意見も求められないままに具体化されていくと。

 だから、大学をどうするかという問題で、大学にいる人たちの意見が求められることもなく進んでいるということがあると言われています。これは私は、やはり大学の自治を本当に無視する深刻な事態だと言わなければなりません。

 大学改革の当事者が教員であり大学関係者である、教職員だということからすれば、そういう方々の意向が、こんなふうにして全く反映されないで進むということを一体認めることができるだろうか、こういう大学改革でいいのだろうかという点で、この点、大臣の御所見をぜひ伺いたいと思います。

河村国務大臣 都立大学の再編統合の問題は、これは設置者である東京都が責任を持って進めていただくということになっております。これは私は、東京都の今の進め方は、この新大学設立本部を設けて、その下に教学の準備委員会を設けて、外部の有識者を含め、また都立大学の各学部長や都立三大学の学長等を委員として検討を進めておられる、こう聞いておるわけでございます。この中で、教員の参加を得て具体的な教育課程等の編成等も検討をしているというふうに聞いておりますから、その方向にのっとってやっておられることであって、我々としては、きちっとしたものが出てくるのを見守っていく、こういう状況にあるわけです。

石井(郁)委員 都の方からの情報としてはそういうことかもしれませんけれども、今私は、まさに大学の当事者、都立大学の評議会、教授会、そういうところでこういうふうに問題点が述べられていますよ、大学の当事者の意見が聞かれていませんと。

 しかも、事柄は教育課程、教育の研究や内容にかかわる問題ですから、本来、普通中の人の意向を無視してできない話ですよね、教育課程を決める、編成をするということ。そういう問題についても意見が聞かれない、これは異常ではないのかということでございまして、もう一度、大臣、御感想いただけますか。

河村国務大臣 一方的に、その大学関係者も入らずにということではないというふうに聞いておりますので、教学準備委員会の中で作業を行い、その中には都立四大学の教員の参加を得てやっておるという報告でありますから、それについて私の方からこれをとやかく言う立場にないのではないか。そういうふうな形でお進めいただいて、きちっとした体制を整えて設置をしていただくことは望ましいことだと私は思っております。

石井(郁)委員 今の大臣の御答弁だと、当然大学の関係者が、当事者が入って進められるものだ、進められているだろうというふうに理解していらっしゃるということですけれども、これは新大学といいますけれども、この大学は平成二十二年度まで現大学で存続するんですよね。今入学した方がいますから、今後、六年間存続するわけです。新しく全部変わるわけじゃなくて、現大学は存続するわけですよ。当然それを存続するには、現状の発展とかいろいろ仕組みというか、現在の教員の皆さんがその中で働くということになるわけですね。だから、やはり現在の大学の自治をきちんと守っていくということも当然ですし、それがこれからの大学改革を進める上でも前提にならなければならないというふうに思うんです。

 もうおわかりのように、なかなか今十分に意見が聞いてもらえないという関係になっていますから、ぜひこれは、その大学関係者と都の大学管理本部となると思いますけれども、きちんとやはり話し合いが持たれる、それからやはり十分な意思疎通が行われる、そういうことが私は改革を進める上では本当に必要だというふうに思いますが、そういう点でもぜひ大臣の御見解、重ねてはっきり伺っておきたいと思います。

河村国務大臣 先ほどもちょっと申しましたが、この公立大学の再編統合については、基本的に、やはり設置者であります各地方公共団体の主体性を尊重していかなきゃいかぬ、むしろそれについて文部科学省がこの統合はいいとか悪いとか言う方が、これは大変なことになる、私はこう思っておりますので、文部科学省がそういう意味での指導を行う考えはございません。

 もちろん、いろいろな面に照らし合わせて本来のあり方と物すごい逸脱するようなことがあれば、まさに教育の現場を担うところでありますから、これはやはり意見を言わなきゃいけないこともあるかと思いますけれども、今、設置者である東京都がいろいろな形をとって進めておられることについて、今の時点でそれについて私の方でとやかく言う立場にないということは申し上げておかなきゃいかぬと思います。

石井(郁)委員 私は、その点で終わられたら大変困るんですよ。もちろん、設置者の責任で進める部分というのはあります。しかし、問題は、今申し上げましたように、前国会でも大変議論になりましたように、独立行政法人化するに当たっても、やはり大学の自主性、主体性を尊重するだとか、大学の学問の自由、自治を守るということは当然前提にならなければいけないというのは大変議論いたしました。だから、私は、文科省はその設置者の主体を云々言う前に、やはり文科省としてはそこのところをきちんと踏まえていただかないと困るわけですよ。そういう姿勢は文科省としては持っている、そういう目で見ているということを言っていただかないと、その設置者のお考えでそれはどうでもいいんですということにならないわけでしょう。本来の逸脱は困ると言われましたけれども、ある面で、今本来の逸脱が始まっているかもしれない、そういうときにどうするんですか。

 ですから、私は、こんな憲法二十三条まで言いたくありませんが、持ち出すとなんですけれども、やはり大学改革のあり方として、ちゃんと大学当事者の意向をきちんと尊重するとか話し合いを大事にするとか、そのことは文科省としてはやはり言っていただかなかったら困るんじゃないですか。ちょっと河村大臣は何を大変恐れていらっしゃるのか知りませんけれども、やはり文科省としての姿勢を伺っているわけです。

河村国務大臣 文科省の姿勢は、公立大学、公立高校、東京都、これは地方自治体が行われている公立大学の特にこういう統合、改廃の問題については、設置者である東京都の意思を尊重したいということであります。

 しかし、我々の受けている報告では、設立大学設置本部をつくってそこに教学準備委員会をつくっておられて、そして関係者、外部からも入れる、大学からも入れる、そういうことで進んでおりますと。

 一部新聞等で私も承知しておりますが、もともとその統合にも反対だと言われる立場から意見を言われたのでは、この統合はできないということはあるんでしょう。統合について、その意思決定をうちの方が、文部科学省がこれを言う立場ではありませんから、この取り組みについて見守っていくということで、それについて話し合えとか話し合うなとか、そういう立場にないことを御理解いただきたいと思うんです。

 立派な大学ができることを我々はもちろん期待しております。そのことは、それは当然いろいろ御相談があれば申し上げるわけですけれども、こっちからこういう大学をつくりなさいとかと言う立場にないことはおわかりいただけるんじゃないかと思うんですが。

石井(郁)委員 大学改革のあり方、進め方としてやはり非常にちょっと異常な事態が進んでいるということを私はきょうは申し上げました。

 もう時間があれですし、これでやりとりしていてもあれですから終わりたいと思いますけれども、文科大臣が、ちゃんと大学関係者あるいは当事者も入って、そして十分な話し合いが行われて、事柄が進んでいるというふうに認識をされているというふうに考えて、やはり私もこの推移を見ていきたいと考えております。

 それで、きょうはもう一点、質問をしたいのは、予算に関係してですが、就学援助の問題なんですね。就学援助費、経済的に困難な家庭を支援するという問題ですけれども、この援助費が大変予算が削られている、こういうままでいいのかというふうに私は思っておりまして、それで伺いたいと思います。

 大臣に数字の質問までするのは大変ちょっと恐縮なんですけれども、平成九年と昨年、平成十四年とで比較しまして、この就学援助費、国庫補助金の交付決定額、七億円ぐらい減っていると思うんですね。こういう減っている状態というのはどうしてなのか、御説明をいただきたいと思います。

河村国務大臣 就学援助法に基づいて予算の範囲内でこれの補助を行うということに、今なっております。学校教育法でも、経済的理由によって就学困難と認められた学齢児童、生徒の保護者に対しては、市町村は必要な援助を与えなきゃいかぬということで、これは市町村がやることに対して国が補助をする形で今日来ました。

 ただ、これも一般財源化の方向、補助金を削減する方向がございまして、この一般財源化リストの中にこれが入っておりまして、その分についてはこれからできるだけ市町村によってこの支援をしていただくという本来の就学援助のあり方を進めていただく。これは財政上の要請も受けて、国の予算額が平成九年、八十一億あったものが平成十四年度、約七十四億ですから、七億円減、今御指摘のとおりになったわけでございます。

 これは、我々の気持ちとしてはそれは忍びない面がありますが、この点については、本来の市町村の方でやっていただく筋のものだからということもあって、若干のそういう計画的な削減に入っていったということであります。十四年がこうなっていて、そして十五年度は二億減ということで、そういうことで、一遍に減らしたのでは地方の負担も大変でしょうからということもあって、削減の対象になりながら、こう来ております。

 しかし、援助率の改善を図るとか、これはやはり努力は私は文部科学省の方も、全児童数に対する予算上の補助対象児童生徒数、この援助率、こういうことの改善は図りながら、この予算の確保に努力しているということであります。

石井(郁)委員 実際地方自治体が、ではこの面でどのように負担しているのか、やはりそこが大変大事だと私は思うんですね。それで、あえて生徒数、要保護、準要保護児童生徒数がやはりどのぐらいふえたのかという問題。地方自治体はその就学援助費をどう負担しているのかという点で、これも数、恐縮ですけれども、平成九年と十四年で両方ちょっとそれぞれお示しいただけませんか。

河村国務大臣 御指摘の点でありますが、特にどうしても必要な要保護児童生徒というんですか、これに対する援助率というものは、やはりこれは本当に困っておられる人ですから、やはり国がちょっと減らしたことによって地方も一緒に減らされたら困るという強いあれもありますので、この点については、できるだけ努力をしておりますが、それに次ぐ準要保護児童生徒のところへしわ寄せが行ったということは、これは認めざるを得ない状況がございます。

 しかし、本当に困っておられる方については、最大限努力しながら、そして地方もあわせて一体となってその御努力をいただくようにお願いするという立場であります。

石井(郁)委員 私は、先ほどお許しを得て、こんな簡単なパネルにしてみたんですけれども、実際、この要保護児童生徒、準要保護児童生徒数、これは九七年七十八万人、今百十五万人なんですよ。これだけふえています。一方で、地方が給付した援助額は二百二十三億円から三百十二億円ですよ。ところが、国の方は先ほど言ったように七億円減らしているわけでしょう。こういう数字になるわけですね。

 だから、こういう状態をこの先もずっと続けるわけにいかない。本当に国が、きちんとやはり抜本的に予算をふやすということをしなければ、本当に今子供たちにしわ寄せが行くわけですから、まさに子供の教育の機会が奪われかねないということにもなるわけで、これは私は重大な事態だというふうに考えています。

 もう時間がありませんので、今、地方自治体からも大変いろいろ声が上がっていると思います。これは私の見たところでは、秋田の市議会では、就学援助の充実に関する意見書というのが出されています。もっともっといろいろな自治体があると思うんですね。

 それで、地方自治体、今、長く続く不況の中で、失業や倒産、収入減など大変家計が逼迫している事態、学校の納付金を納められない家庭も増加している、就学援助を必要とする家庭が多くなっていますという中で、地方自治体が認定した件数への補助率はここ数年低下している。だから自治体予算の持ち出しになって、援助件数を減らすなどの状況まで出ているということになっています。

 本当にこのままでは私は大変な事態だと思いますから、ぜひもうここで、やはりきちっと国として予算をふやす方向に、今減らしてきているわけですから、ふやす方向にこれは文科省を挙げて努力していただかないと困るわけで、ぜひこの点では河村大臣は、増額する、そこで頑張るということを確かにしっかりと決意をお述べいただきたいというふうに思います。

河村国務大臣 石井委員がおっしゃることは私も理解をいたしますが、ただ、こういう経済情勢の中にあって、そして補助金について、地方が本来直接現場でやるべきものについては地方にという方向づけが今なされつつある中で、最大限今努力してその削減率を抑えながら今日来て、そして援助率の改善を図っていこうということで、必要な予算については今最大努力をさせていただいているところでございます。

 市町村がこの就学援助を実施することが、国がどんどん削ったためできなくなるということはよくないことでありますから、地方の自治体がきちっとやれることを念頭に置きながら、必要な予算の確保、これは努力しなきゃいかぬ、こう思っております。

石井(郁)委員 本来ならば二分の一補助というのがこの法の建前になっておりますので、今二三%ぐらいだと思います、どんどん下がっていくわけですね。文科省が予算を獲得しなければならない分野というのはいろいろございますけれども、本当にこういう分野でぜひ頑張っていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 大臣の所信についてお尋ねをいたします。文部行政に精通されております河村大臣ゆえに、その御見識を十分お示しいただける課題に絞ってお尋ねをいたしたいと思いますが、大臣のお人柄同様、どうぞ誠実かつ明快な御答弁をよろしくお願い申し上げます。

 まず、高卒予定者の雇用の問題についてお尋ねしたいのでございますが、景気の回復の足取り、動向、これは例えば企業業績の回復にかかわる大企業と中小企業の二極化、また厳しい雇用情勢などが落とす影もあって、今なお不透明と言わざるを得ない状況にあるわけでございます。その影響は、低所得者層を初めとするいわゆる社会的弱者にとどまらず、依然として氷河期にあります高卒予定者の就職内定率等に象徴されますように、若年世代の雇用問題において深刻な広がりを見せていると思うんですね。

 このような現状の中で、若者が可能性や、またみずからの才能を見つけ、やりがいを持って働くことができる元気な社会をつくる観点から、若年世代のキャリア及びスキルアップを支援するための政策誘導は喫緊の課題であろうと思っております。

 まず、この目的意識に基づきまして、文科省が取り組み得る課題についてお尋ねをしたいと思うわけでございますが、一向に改善を見ない高卒予定者の就職内定率、これは昨年十二月の段階では七割弱にすぎません。こういった実態を踏まえるならば、高卒者の安定的な就業の場を確保し、効果的な政策展開へ向かっていかなければならないわけでございます。厚生労働省などとの一層の連携強化が求められていると思いますが、厚労省との連携、どのような連携を模索されておるか、お聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 横光議員御指摘のように、昨年十二月末現在の高卒者の内定率が六八%ということでございます。前年が最悪であったわけでありますが、それよりはプラス一・七ということでありますけれども、非常に厳しい状況にあって、現時点でまだ七万四千人の生徒が就職していないという状況がございます。

 このようなわけで、私、文部科学大臣として、厚生労働大臣とともに、関係経済団体に対して、新規学卒者の採用枠を拡大してもらいたい、あと一人でもいいから一社ずつふやしていただくと随分違うんです、このようなお話を申し上げてきたところであります。直接要請をさせていただきましたし、また各都道府県の教育委員会に対しても、就職のための準備講習とか、就職面接会を積極的に活用してもらいたい、あるいは都道府県の労働局、公共職業安定所と連携して就職支援を進めるようにというようなことを発信したところでございます。

 また、公共職業安定所、ハローワークにおいてもさらに未内定者を把握してもらうこと、あるいは就職相談等の個別就職支援を集中的に実施してもらいたいというような要請もいたしております。また、学校側も未内定者については情報提供するということ、そして、これは学校とハローワークもしっかり連携して就職支援をしてもらいたいということを両方にも、厚生労働省側からも文部科学省からも連携をとりまして、今後とも、こういう状況ですから、厚生労働省との緊密な連絡の中で一人でも多くの生徒が就職できるように努力をしていきたい、このように思っております。

横光委員 この高卒予定者の就職の件は、それはもちろん究極的には業績の回復、いわゆる景気の回復が第一義的でございますが、こういった状況が長く続いている中では、やはり文科省が頑張らなきゃならない、文科省だけでも不十分、厚労省も頑張らなきゃならない、厚労省だけでも不十分、いわゆる連携強化というものが私は一番今大事なときであろう、このように思っているわけでございます。

 学卒未就職者あるいはフリーター、こういった人たちに適した職業の選択、これを支援する観点から、企業での実習及びそれと一体になった教育訓練を受けるとともに、正規雇用への円滑な移行を目的とするいわゆる日本版デュアルシステム、働きながら訓練する、こういった二面性を持った日本版デュアルシステムの導入を厚労省は来年度予算に盛り込みました。これは、ささやか過ぎる措置額の問題はおくとして、私は、大変評価に値する試みに違いないと思うわけでございます。

 ところが、同列には立ち得ないとしても、よく考えれば、この文科省には、職業学生等に大きな可能性と希望を与えてきた定時制高校という貴重なインフラ、財産というものがあると思うんですね。この学びと職業生活の両立を果たし得る定時制高校の抜本的拡充こそが、今積極的に踏み出すことが、今の時代の要請だと思うわけです。定時制高校の現状及びその位置づけ、さらには拡充強化に向けてどのような具体策をお持ちなのか、お聞かせいただきたいと思います。

原田副大臣 定時制高校といいますと、私たちの身の回りにも、そこを卒業した人材がたくさんおられるわけであります。私なんか、親のおかげで全日制を出させていただきましたけれども、この方たちは苦労して職業と勉学を両立させて、そして今日になっているんだな、そういうような尊敬の念も持つわけであります。この定時制の制度は昭和二十三年に設けられたわけでありまして、今申し上げましたように、本当に大きな役割を果たしてきたもの、こう思っております。

 ちなみに、実態をいいますと、昭和三十年で五十四万人、ここに通っておりましたが、平成十五年、昨年では十一万人まで下がっております。もちろん世の中の変わり方、経済的な発展とか、少子化もあるいはそれに関連しているかもしれませんけれども、しかし、私は、定時制高校の役割というのは依然として非常に大きいものがある、こういうふうに思っているところであります。

 また、多少性質も変わってきまして、従来は働きながらという学生ばかりだったわけですけれども、このところは率直に言って全日制に入れないという子供もおるようですし、また全日制から、いろいろ特色とか個性を求めて転入、転学をするというケースもあるようでございますが、いずれにしても、その重要性は、あるいはますます大きくなっている、こんな認識でおるわけであります。

 文科省といたしましては、こういうことを踏まえまして、学校教育設備整備費の補助制度、さらには在籍生徒に対する修学奨励の補助事業というものを長らく講じておるところで、いわゆる補助金を学校に与えることによって、これらの生徒がしっかり勉強できるように、また、昭和六十三年から定時制課程における単位制高校の導入、さらには修業年限の弾力化、従来は四年が年限でございましたけれども、一生懸命勉強して単位を取れば三年でも卒業できる、こういうような制度も導入して今日に至っておるところであります。

 また、これは十六年度、来年度からの新しいプロジェクトでありますけれども、学びなおしの機会の提供事業、ちょっと長い名前でございますけれども、要するに、一たん外に出て頑張っておるんですけれども、やはり勉強しなければいけないというような意味で、定時制高校に新しい課程を設けまして、そこに戻って勉強すればまた単位が取れる、こういうようなことでございます。

 こういうものを通じまして、定時制高校の存在をしっかり生かしていきたい、こういうふうに考えているところであります。

横光委員 今、お話ございましたように、確かに時代の変遷等で定時制に通う学生は減っているわけですね。そういった状況の中で、私は、ある意味では定時制高校生あるいはそういった制度に対して冷たい風が吹いているような気がするんです。ですから、この風は、今、重要性もお示しになられましたわけですから、たとえ数が少なくなっても、これはやはりしっかりと守っていかなければならない、そして最低のレベルだけはしっかりと維持、確保していかなければならないということを強くお願い申し上げたいと思います。

 次に、国立大の法人化についてお尋ねをいたしますが、文部科学省と財務省が協議しておりました二〇〇五年度以降における運営費交付金算定ルールが大筋合意されたとお聞きいたしております。

 ただし、この国立大学法人法案成立に際して確認されました文科省のこの姿勢と相反するいわゆる効率化係数の手法が依然残された、このことは、私は大問題だと思うんですよ。こういった手法が残されたというよりも、実態は財務省に押し切られたということが私は当たっているんじゃないかと思うんですが、運営費交付金に効率化係数等を掛けて毎年一定の比率で削減する仕組みを設けること自体が、私は社会から負託された国立大学の使命を果たすための大きな障害となる、このように思っているわけでございますが、教育研究機能の不断の拡充あるいは発展を要請されているこの特性を無視したものにつながる。

 国立大学法人法案第三条にはどう書かれていますか。「国は、この法律の運用に当たっては、国立大学及び大学共同利用機関における教育研究の特性に常に配慮しなければならない。」こう書かれています。また、国会での昨年の法案審議における政府答弁あるいは衆参両院の附帯決議、これにも明らかにそごを来す結果になっていると私は言わざるを得ないんですね。あのときはしっかり答弁していた、しかし、こんなことになるなんて絶対答弁していませんよ。

 しかも、衆議院、参議院の附帯決議、衆議院は十項目、参議院は何と二十三項目、この法人法案には附帯決議が付されておるんですよ。こんな法律ありますか、二十三項目も。それだけ多くの問題点をはらんでいるということで、しっかりと押さえなければならないということで、全会一致で附帯決議を決めたわけですよ。

 それと、特性に常に配慮しなくてはならないと同時に、附帯決議には活性化が図られなければならないとも書いてある。今度のやり方で、教育研究の特性に常に配慮することができますか、活性化ができますか。逆の方向に行きかねませんよ。

 私は、もしこの方針、私から言わせれば、いわゆる財務省方針にとらわれることになれば、単純な試算でも、毎年、効率化係数一%にマイナスシーリング、二〇〇四年度は二%ですが、これを加え、中期目標期間累計では一五%程度は削減されることになるんじゃないか、非常に心配しております。これは非常に大きい金額でございます。

 大臣、どうですか。昨年の法案審議に際して文科省が鮮明にした考え方に立ち返って、財務省との再協議に臨むべきだと思いますが、いかがですか。

河村国務大臣 国立大学の法人化、まさに百年に一度の大学改革とも言われておりまして、いろいろな議論があったところでございます。私も、当時遠山大臣とともに副大臣として答弁に立った方でありますから、今横光先生御指摘の点については十分承知をしておるつもりでございまして、財務当局との協議等についても、基本的な今までの議論を踏まえて対応していかなきゃいかぬ、このことは特に言ってきたわけであります。

 そこで、予算のあり方については、六年間の中期目標に基づいて、中期目標期間を通じて大学が見通しを持って着実に教育研究に携われるようにということで、必要な運営交付金を措置できる、こういう算定ルールにしたわけですね。

 そこで、御指摘の点でありますが、まず大学側にも活性化を求めるという点がございます。これは特別教育研究経費ということで、各大学がそれぞれ特色を出すためにいろいろと努力をされる、すぐれたいろいろな研究を打ち出される、こういうことについてはプラス要因として増額できるような仕組みをまず設けるということ、これが教育研究の活性化になる、こういう考え方に立ちました。

 そのために、しかし同時に、今日の大学の法人化については、非公務員化をとりました。今までのように、護送船団方式とよく言われるように、文部科学省の中の組織の一員であって、親方日の丸だけでは困る、これは世界の大学との競争もあるんだ、活性化が必要だ、一たん外に出て、まさに独立行政法人の手法も一部取り入れながら国立大学法人、法人として頑張ってもらわなきゃいけない、社会にも大きく貢献してもらわなきゃいけない、産学官の連携も進めてもらわなきゃいかぬ、こういう大きな期待のもとで、効率化も図れるだけ図っていただきたいということでございます。

 これについては財務当局と相当激しいやりとりがあったわけでありますが、しかし、今委員御指摘の、教育機関であるという特性にどう配慮するかということになると、これは一律に何もかも掛けられたんじゃ、人件費も掛けるというようなやり方は、やはり効率化とはなじまないものではないか、こういう議論をいたしまして、必要とする教員の給与費相当、これは外すんだということなんです。

 だから、今表向き、これはまだ予算が通る前に、担当は余りはっきり言ってもらうとというようなことを言うんですが、効率化係数は一%ということで話してありますが、しかし、必要な教育研究の特性の部分を外していって、本当に効率を求められる部分については、これは平均すると〇・六ぐらいになるんじゃないでしょうか、我々としては〇・五、こう思うのです、大きい大学とか小さい大学とかいろいろありますので。

 やはり地方は特に人件費に影響を受けますから、そういうことも配慮して、そういう教育研究の特性も配慮されておる、そういうことで、我々も、十分国立大学法人化に向かって答弁してきたことを踏まえながら財務当局とも折衝し、所要額の確保に取り組んできた、こういうことなんです。

横光委員 これは東京大学の学長の佐々木毅さんが、この問題を非常に危惧しておるんですね。各学長を恐らく代表した意見だと思うんですが、新聞に投稿されていますね。非常に厳しい批判をされています。これは、文部省のみならず我々政治家にも非常に厳しい批判の矛先を向けられておるんです。

 というのは、六年間の中期計画の達成度と改革の実績を評価し、それに応じて資源配分を変えていくというのが共通の理解だ、こういうふうに前回政府では答弁しておるんです。それが、六年間の中期計画も何も、何にも達成していない、これから法人が動くかどうかも見きわめがつかないうちに、既に運営交付金の一律削減計画が文部科学省と財務省との間で練られ、二〇〇五年度から実行に移されようとしている、非常に厳しいことを言っている。「人材の育成を怠るような政策と科学技術創造立国の建設とがつながるわけはない。」非常に痛いところをついておるんですよ。そして「国立大学法人法案を審議し、決定した「政治」は、こうした事態の認識を踏まえ、識見を持って、政治主導でこの問題の解決に当たってもらいたい。」こう東大の佐々木学長は訴えているわけですね。

 我々にも、私はこの問題がある。だから、ここはしっかり、それは財務省の意向はもう絵にかいたようにわかりますよ。しかし、それは、何とかしてこの法人化の審議のときに約束したことは守っていくというのがやはり文科省の役割だと私は思いますので、何としても頑張っていただきたい、このように思います。

 ちょっと時間がないので、もう一つ、次に行きたいんです。大体同じようなお答えになると思いますので。

 もう一つ大臣、特別教育研究経費というのがございますね。これは新設されましたね。これによって総額が維持できるから大丈夫だ、そういうような立場であるならば、私はこれこそこそくなやり方にしか見えませんよ。

 特別教育研究経費の内容は、これはなお不明でございますが、これまでの競争的資金優先の流れから見ますと、どうしても旧帝大系などメジャーな国立大学により多く金が流れる。これはもう安易に予測できるわけでございます。結果的にさらなる大学間格差を広げることにつながりかねない。

 私は大分県でございますが、地元の大分だけではなく、九州全域でも今地元大学志向が非常に強いんです。これはもちろん、先ほど言いました改善傾向をなかなか見せない経済状況、家計状況というのもあるでしょう。あるいは雇用情勢等から見ても、そういうこともあるでしょう。こういった流れは強まりこそすれ弱まることはないと私は思うんですね。

 ですから、今のような時代の要請にこの特別教育研究経費が果たしてこたえられるのかどうか、到底こたえることはできないんじゃないかと思うわけでございますが、これが一つ。

 それからもう一つは、大学病院でございます。

 この大学病院というのは、高度医療や難病治療、そしてまた医師の養成等、医学を一体的に担うものなんですよ。そのため、経営面のみで見れば、赤字にならざるを得ない面を当然有しているわけですね。これに、私が先ほど言いました、経営改善係数二%を毎年加えて達成できない場合は運営費交付金から削減されていくというようなシステムとなると、これはもう国立大学病院の果たすべき役割、特性を無視して、収益第一主義に追い込むことになりかねない。オーバーに聞こえるかもしれませんが、非常にこの危険性はありますよ。

 ですから、地元に根づく国立大学等の基礎、基盤的教育研究、それと大学病院に必要な経費確保に向けて、どのような具体策をお持ちなのか、お答えいただきたいと思います。

原田副大臣 国立大学の法人化に伴って、運営交付金全体についてはただいま大臣からお答えしたところでございますけれども、まず特別教育研究経費の御心配でございますけれども、これは確かに委員がお話しになるように、心配はもちろんあろうかと思いますけれども、あとは、どういうふうにそれを克服して、その心配を解決していくかということだろうと思っております。

 国立大学は、言うまでもありませんけれども、我が国の学術研究と研究者養成、それの中核でありますし、また、それぞれの国立大学を全国にバランスのとれた形で配置するということによって、地域の文化、教育、産業、そういうものの基盤を整えて、その中核的な役割を果たしてきたわけであります。

 おっしゃるように、特別教育研究経費というような項目が立ちまして、また、それをこれからどういうふうに配分するかにつきましては、それぞれの国立大学の個性や特色、そういうものを生かした教育研究の意欲的な取り組み、しっかりそれを判断して、その具体的なあり方については、今後、十六年度のできるだけ早いうちに十分な検討を行う、それによって十七年度以降に臨もう、こう考えておるところでございます。

 いずれにいたしましても、国立大学が、地域や社会の要請を踏まえて、地域の拠点としてその役割を果たしていく、それを全面的に文科省としてはバックアップしていかなきゃいけないな、そういうふうに思っておるところでございます。相当程度競争的な要素も出てきますから、各大学においては、そういう観点から、自主的な努力、こういうものが当然のことながら必要とされる、こういうふうに今思っております。

 また、二問目でございますけれども、国立大学病院につきましては、これは端的に言いますと、一般治療の仕事の部分と教育研究の部分とを予算の面、勘定の面で二つに分けて考えておるところであります。

 端的に言えば、一般診療業務の方は、支出に対してそれを基本的には収入で補う、足りない部分を運営交付金で補うというような考えでありますけれども、教育研究の役割の部分、開発の部分、こういうことについては、必要な予算を運営交付金、特別運営交付金という形でそれに対応させる、こういうような考え方で臨んでおるところであります。

 ですから、補てんをする交付金が多くなれば、当然のことながら、経営改善努力というものを求めるということになろうかと思いますけれども、いずれにしましても、それぞれ大学病院としても相当な努力はお願いをするということになろうかと思っております。

横光委員 今おっしゃられました経営改善努力というのはもちろん必要でございます。しかし、それには限度というものがあるんです。

 大学病院のことにつきましても、東大の佐々木学長はこのように指摘しております。「文科省が計画中の案が実施された場合、先端医療、地域の高度医療を担ってきた付属病院の将来がおぼつかなくなる。」こういうふうに指摘しておるんですね。

 私が今言ったような形で、これからそういった形で進むと、非常に大学病院の状況は厳しくなる、地域にとって必要だと言われながらも、その機能が発揮できなくなる危険性があるということを重々認識していただきたいと私は思っております。

 次に、学校の管理運営のあり方についてお尋ねをいたします。

 二月二十四日の中教審関係部会におきまして、「今後の学校の管理運営の在り方について」の答申案が提示されました。答申案は、学校教育に対する国民の要請の多様化、高度化を背景に、各学校が国民の期待にこたえて、創意工夫を生かし、学校の担うべき役割を十分に果たすことができるよう、学校の管理運営のあり方をより柔軟で弾力的なものとする、こういうふうであると認識しているんですが、よしんば、この議論の立て方に妥当性があったとしても、この導き出されました結論は何ですか。

 これは、小泉政権が無定見に信奉する規制緩和あるいは市場競争原理に彩られたものになっていると言わざるを得ないと思うんです。すなわち、経済財政諮問会議の主導のもとに、あらかじめ方向づけられた枠組みのみが存在して、公教育再生を要諦とする、いわゆる教育制度全体の抜本改革をいかに進めるのか、そういった肝心の中身は全く見えてきておりません。何を目的として、私は答申案に期待したのか。

 部会で提示されたわけですが、これからまた中教審で恐らく確認されることになろうかと思いますが、その中で、この「公立学校の管理運営の包括的な委託の在り方」という項目についてお尋ねをいたします。

 これは、当面幼稚園と高等学校を対象とするということになっておりますが、市場原理の導入による公教育の縮小であり、公的な財政負担を軽減することを最大の目的にしているのではないか、そんな気がしてならないわけでございます。

 この関係部会でも、次のような意見があったと聞いております。経費の節減等による教育の質の低下につながる可能性がある、あるいは、契約解除等による学校の閉鎖による教育を受ける機会の侵害をするおそれがある等々の課題や懸念が出されたと聞いております。

 私は、こういうことは十分気をつけなきゃいけない課題だと思っております。地方公共団体がみずから設置して、そして最終的な責任を負うべき公立学校の管理運営を委託することは、たとえこの委託先が学校法人であろうとも、私は、地方公共団体が当然担うべき教育に対する責任放棄につながる可能性が大きいと思うんです。

 とりわけ、さきも申し上げましたが、今後ますます重要性を帯びる、あるいは最低限のレベルを守ってほしいと言いました定時制あるいは通信制高校など、職業生活と学業を両立させようとして頑張っている子供たちにとっては、後期中等教育の保障が損なわれかねないと私は思います。

 この二つにつきまして、どういうお考えか、お聞かせください。

池坊委員長 質疑時間が終了いたしておりますので、簡潔に御答弁いただきたいと思います。原田文部科学副大臣。

原田副大臣 お話ありましたように、中間報告がなされ、また近いうちに最終答申がなされるということでございます。

 公立学校の役割、学校教育の役割は、これはもう国民が当然大きな期待をしておりますし、また、管理運営については、しっかりと地方自治体を中心にそれが行われておるところでございますが、今度の答申を踏まえまして、しかし、どれでもいいというわけにはいきません。義務教育の小学校、中学校はやはりどう考えてもそこまで及ぼすわけにいかない、当面、幼稚園並びに高等学校について特区制度の活用をすることによって試験的に実証的な研究を一回行おう、こういう観点から、今先生おっしゃったような方向に進みつつあるわけでございます。

 しかし、いずれにいたしましても、文部科学省としては、公立学校の性格をしっかり踏まえながら、特区における取り組みの実現に向けて必要な検討を進めているところでございます。よろしくお願いします。

横光委員 終わります。

     ――――◇―――――

池坊委員長 本日付託になりました内閣提出、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 義務教育は、憲法の要請により、すべての国民に対し、必要な基礎的資質を培うものであり、国と地方が適切に役割分担しつつ、円滑に実施することが重要であります。

 一方、政府においては、経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三を閣議決定し、地方の権限と責任を大幅に拡大するとともに国及び地方を通じた行政の効率化を図る観点から、国と地方の役割分担に応じた事務事業のあり方の見直し、国庫補助負担金の縮減に向けた検討を進めているところであります。

 この法律案は、かかる政府の方針を受け、義務教育費国庫負担金について、義務教育に関する国の責任を適切に果たしつつ、義務教育に関する国と地方の役割分担及び費用負担のあり方の見直しを図る観点から、その負担対象経費を限定することとするものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明いたします。

 この法律案は、退職手当及び児童手当に要する経費の性質にかんがみ、平成十六年度から、公立の義務教育諸学校の教職員等に係る退職手当及び児童手当に要する経費を国庫負担の対象外とするものであります。

 なお、このことに伴う地方財源の手当てについては、所要の財源措置が講じられることとされております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようにお願いいたします。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時四十二分散会


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