衆議院

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第9号 平成16年4月2日(金曜日)

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平成十六年四月二日(金曜日)

    午前十時五十二分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    木村  勉君

      城内  実君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    左藤  章君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      大谷 信盛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      中野  譲君    計屋 圭宏君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   参考人

   (慶應義塾長)      安西祐一郎君

   参考人

   (桃山学院大学教育研究所名誉所員)        伊藤 正純君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二日

 辞任         補欠選任

  小渕 優子君     左藤  章君

  鈴木 恒夫君     木村  勉君

  鳩山由紀夫君     大谷 信盛君

  松本 大輔君     計屋 圭宏君

同日

 辞任         補欠選任

  木村  勉君     鈴木 恒夫君

  左藤  章君     小渕 優子君

  大谷 信盛君     鳩山由紀夫君

  計屋 圭宏君     中野  譲君

同日

 辞任         補欠選任

  中野  譲君     松本 大輔君

    ―――――――――――――

四月一日

 私立学校教職員共済法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 参考人出頭要求に関する件

 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私立学校法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として慶應義塾長安西祐一郎君及び桃山学院大学教育研究所名誉所員伊藤正純君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

 午後一時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時五十七分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 本日は、本案審査のため、参考人として、慶應義塾長安西祐一郎さん及び桃山学院大学教育研究所名誉所員伊藤正純さん、以上二名の方々に御出席をいただいております。

 この際、参考人のお二方に一言ごあいさつを申し上げます。

 本日は、大変お忙しい中、本委員会に御出席いただきまして、心よりお礼申し上げます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序でございますが、安西参考人、伊藤参考人の順に、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いをいたします。また、参考人は委員に対し質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず安西参考人にお願いいたします。

安西参考人 慶應義塾の塾長をしております安西でございます。

 今般は、お招きいただきましてありがとうございます。参考人としての意見を述べさせていただきます。

 私立学校法の改正ということでございますけれども、私立学校法に基づく私立学校は、平成十五年の五月現在でもって約一万六千六百校ほどあるというふうに認識しております。いわゆる四年制の私立大学だけでも五百校を超えております。短大を含めますと、四年制の大学と短大でもって約千校の大学が日本にはございます。

 私立大学だけをとった場合にでも、学生の約七三・五%が私立の学生でございまして、国立大学、約九十校ほどだと思いますけれども、国立大学に約一・六兆円の国費が補助をされているのに比べまして、私立の大学、経常費補助でもって約三千三百億円ということであります。これは平成十五年度のデータでございます。

 今、いろいろに数字を申し上げましたけれども、私立大学が、あるいは私立学校法で言うところの私立学校が、特に戦後の人材育成について、日本の、特に若い人材の育成を大きな範囲で担ってきたということは紛れもない事実だというふうに思います。

 そういった中で、今、世の中、日本だけでなく世界的にも、いろいろなところでいろいろなことが起こっている。その中でもって、多様で活力のある人材が求められていると思います。新しい多様な価値を創造するということと活力ある多様な人間を育成していくということ、この両方を私立学校法がカバーしている私立学校の多くが担ってきていますし、これからはますますそうなるであろうというふうに考えられます。

 今般の私立学校法の改正は、こうした状況の中でもって、いわば私立学校が、国からの助成が少ない中で多くの人材を育成してきた、その貧しい私立学校と、それから豊かではあるけれども制約の大きかった国立系の学校、こういう教育のはざまの中で、いわば子供扱いから一人前の扱いを受けながら、これからむしろ日本の教育の中心になっていく、そういう背景のもとでこの改正案が出てきているというふうに認識をしております。

 今申し上げたような意味では、私立学校の経営の仕組みを外から見てはっきりわかりやすいように法文的にもサポートしていくということと、それから情報の公開、特に財務情報の公開についてあいまいさのないようにしていくということ、この二つが求められていると思いますし、一人前の、むしろ日本の教育を担っていく、そういう教育の中心としての役割を担うについては、今申し上げた経営の仕組みを明確にしていくということと情報の公開、特に財務情報の公開をしていくということの二つが大事だというふうに思います。

 そういう中でもって、ますます学校間の競争が激しくなっておりますけれども、その競争環境の中で、むしろ、私立学校法のカバーする私立学校が多様な活力のある人材を育成し、新しい多様な価値を創造していくということによって、これからの日本を担っていくということが大事だと考えております。

 私自身は慶應義塾の塾長をしておりまして、塾長とは、慶應の場合には理事長と大学の学長を兼務する、そういうポジションでございます。今申し上げた経営の仕組みについて、私立学校法の改正案におきましては、理事会のあり方、また評議員会のあり方、そして監事のあり方がかなり以前よりは明確になってくるというふうに認識しておりますけれども、慶應義塾の場合には、理事会それから評議員会のコンビネーションが極めてうまくいっていると思います。

 ただ、学校法人全体、私立学校法でカバーされる私立学校全体を見ますと、ほとんどの学校では、例えば既に理事会というのは設置されておりますけれども、そのあたりのところをさらに明確にしていく必要がある、そういうことでこの私立学校法の改正が出てきているというふうに考えております。

 また、評議員会の役割、これも余りはっきりしなかったと思いますが、慶應義塾の場合には評議員会が極めてよく機能しておりますけれども、最初に申し上げましたように一万六千数百あります私立学校のすべてをカバーする、ミニマムの経営の仕組みとしての評議員会のあり方について、この改正案はあるミニマムの一定の構造をうたっているかというふうに思います。また、監事のあり方についても同様でございます。

 それから、財務情報の公開につきましては、私立学校はもっともっと情報を一般向けに公開していかなければいけない。そういう中でもって、いわばユーザーといいましょうか、そちらの、外部の方々が私立学校の中でどういう学校がいい学校であるのかということを選び取っていけるような、そういう仕組みをつくっていかなければいけないというふうに思います。

 ただ、学校法人の場合には、その学校の情報をどういう人に対してどういうふうに公開するかということについては、やはり一定の状況が必要だと考えております。そういう意味では、財務情報の公開についてのこの私立学校法の改正案も適切なものだというふうに思っております。

 全般としてこの私立学校法の改正案は、今申し上げたような意味で、考え方といたしましては、これから私立学校が日本の教育の中心を担っていくに当たって、一方では財政基盤の充実ということが切に求められるわけでありますけれども、それを担保した上で、経営の仕組みと財務情報の公開についてより明確な提示をしていくべきである、それをサポートする、そういう案になっているというふうに考えている次第でございます。

 以上、私の方のこの改正案に対する考え方を申し上げました。

 慶應義塾の場合には、学校法人慶應義塾でございますが、大学以外に小学校から高等学校もございます。塾長というのは、理事長として小学校から大学、大学院まで全部を法人の業務についてカバーしておりますし、一方で大学の学長を兼務している、こういう仕組みになっております。その慶應のことだけを申し上げれば、慶應義塾は、教学の面とそれから法人の面、経営の面のコンビネーションが極めてうまくいっているというふうに申し上げてよろしいかと思います。

 学校法人全体としてそういう方向に向かっていただくに当たって、この改正案が、あるいは改正された私立学校法が適切に運用されることを切に望む次第でございます。

 以上、参考人の御意見を申し上げました。ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 安西参考人、ありがとうございました。

 次に、伊藤参考人にお願いいたします。

伊藤参考人 桃山学院大学教育研究所の名誉所員であります伊藤と申します。

 急な話で、三日前の夜、突然電話がかかってきまして、余り十分に用意できていませんけれども、基本的な私のスタンスを言いますと、今回の私立学校法の一部改正については基本的に賛成であります。

 私の個人的な略歴を言いますと、一九七九年、昭和五十四年に桃山学院の短期大学の教員になりまして、短期大学時代は六年ほど評議員を経験しましたけれども、短期大学から大学の方に移りまして、少し内情が、いろいろな内紛のようなものもありまして、学部に移れず教育研究所というところに身を置き、そして教育の関係の研究と労働運動をやってきました。もともとは経済原論屋であります。昨年の三月に、三年越しの案件ということでありましたけれども、研究所を廃止しまして、法人の都合にて退職ということで、現在になっています。

 今、日本は、私立大学、民主的だと言われています桃山学院の私学の経営でさえ、ある手続とある補償金を積めば大学の教授の首も飛ばせる、そういう非情な状況の中にあって、私に発言の機会が求められたんだろうと思います。

 私の個人的な話はこれだけにしまして、内容について少し意見を述べさせていただきます。

 私立学校法は大枠を決めた法律だという認識のもとで、文部科学省が出している改正の概要の三本柱がありますので、その三つについて意見を述べます。

 まず、財務情報の公開でありますけれども、これは当然のことだと思っていますし、私が、今、全国私立大学教職員組合の中央執行委員長をやっていますけれども、私がかかわったいろいろな運動でも、理事会のというか、理事長のワンマン経営、そういうものがありますので、我々の主張として、高校以下も含めて財務情報は公開しろという主張でありましたので、この点についてはほとんど異議がありません。

 ただ、「正当な理由がある場合を除いて、」だと、関係者に情報公開するということですけれども、この「正当な理由」というところをきちんと、法律の中では明記できなくても、運用細則か運用規則か何かのところで具体的な事例を挙げておいた方がいいのではないか。

 なお、大学設置審の報告によりますと、プライバシーにかかわるもの、退職金が明らかになるようなものだということがありますので、それはどこかで明記した方がよろしいのではないかというふうに思います。

 その次に、ささいなことですけれども、四十七条の二項に財務情報の閲覧の話が出てくるわけですけれども、この閲覧がいわば公表であります。これに対して、六十六条の四号でそれに違反した場合の規則が載っていますけれども、ここのところに、いわゆる閲覧という項目がなくて、ほぼ旧規定そのままになっているというのはちょっと解せない。備えつけているんだからいいではないかと言われそうですけれども、そこら辺は少し気になったところであります。

 さて、大きな柱の二本目でありますけれども、私立学校審議会の構成の見直しという、これが最初のところに出ています。旧規定は非常に細か過ぎるというふうにも私も思いますけれども、今回の改正案は余りにも大まか過ぎるのではないかという気がいたします。「教育に関し学識経験を有する者」であれば知事はだれでも任命できる、いわば知事に自由裁量権を与えてしまっていますけれども、これは何らかの形で歯どめをかけた方がやはりよろしいのではないかと思います。

 ただ、旧来の規定のように、私立学校の関係者が四分の三を占めるというような決まりは、そこまではなくてもいいのではないか。少なくとも半分か、半分に近いぐらいのところまで私立学校の関係者をということだと思います。

 きのう初めてもらった資料なんですけれども、衆議院調査局文部科学調査室の詳しい資料をゆうべ読んでいますと、いわゆるこれが出てきた背景がやっとわかりまして、総合規制改革会議で出てきたと。新しい学校をつくるときに、この設置審議会の委員構成が障害になって新しいことができないということですけれども、そういう意見があって、急に出た、大学設置審の方では審議されていないものが出てきている、そこに少し疑問を感じます。たとえ総合規制改革会議で案が出たとしても、ここまで自由裁量を与えるという必要はないのではないかというふうに思います。

 三本柱の三番目、最初の柱で、今、安西先生も詳しく言われましたけれども、いわゆる管理運営、学校法人における管理運営構成についてであります。これについても、基本的に賛成であります。

 現行法は、理事会、法定化されていませんのを法定化したということは非常に意義があるということだし、各担当理事を理事の担当領域を決めて、それを担保にとって登記するという形をやるのも、責任の所在をはっきりするという意味で非常にいいことではないかと思っています。また、監事が旧規定では評議員を兼ねられましたけれども、今回は兼職を禁止したということも監事の機能を高める上で非常にいいことではないかと思います。

 そういう意味で、今度の法改正は、私立学校の経営上のガバナンスといいますか、いわゆる責任体制を明確にしたという意味で評価できるというふうに思っています。

 反面、最近、国立大学法人法の改正でもそうでしたけれども、教授会について何も触れないということがいささか気になっていることであります。旧規定も教授会については何も触れていませんけれども、管理運営面の強化をうたったとすれば、反面、教授会の軽視につながるのではないかという意見、批判は必ず出てくるのではないかというふうに思っています。この問題についても考えていただきたいということであります。

 最大の問題は、いわゆる私立学校で、我々が運動をやっていき、好んで運動をやっているわけではありませんけれども、どうしても労使紛争というのが多発していまして、だれかが救済に行かなければならないから救済に行くわけですけれども、そのときに、特に、大学というよりは高校のレベルのところで、理事長ワンマン経営、同族支配、世襲支配と言われている、これに対してチェック機能が働くのかということであります。

 今度の法改正によって、外部から理事を入れ、監事を入れ、評議員を入れる。しかしながら、そこで、外部者によるチェック、監事による業務監査でチェックをする、評議員会のところでチェックするということがありますけれども、外部からの人間で果たしてチェックがきくのか。つまり、その人選が理事長及び理事会の有力者によって決められた場合には、チェックがきかないのではないかという懸念があります。つまり、人選の問題があります。

 大学の評議員会で、桃山の場合は、私は大変よかったと思っています。自分も評議員やりましたので、それほど問題があるとは思っていませんけれども、いろいろなところで聞いた話、体験した話で言うと、同窓会支配によって評議員が事実上機能しなくなる、そういうところがあるわけで、同窓会の、いわゆる卒業生から必ず選ぶという規定がありますけれども、そこら辺、つまり、どういうふうにやってもうまくいかない面はどうしても残る。そういう意味におきまして、何らかの形の公的チェックがやはり必要なのではないか。これは私立学校法の中で書くか書かないかは別にしても、そういう問題は必ず起こるだろうというふうに思います。

 なお、財務情報の公開でありますけれども、これは大変結構なことですけれども、新しい事態としては、今定員割れを起こしておる大学で、合格者数も言わない、入学者数も言わない、秘匿して情報を流さないと言われておるところがありまして、ここが財務情報が流れることによって、どれだけの入学者があったかということが明らかになってきて、悪くなるところは、ますます定員割れのところは定員割れになるだろうというふうに思います。

 したがって、それに対してはどうするのかということも、やはり法律の議論を超えて政策を立てる場合には考えていただきたい。労使紛争の問題を文部科学省に持っていきますと、必ずうちの話ではないというふうに言われますけれども、世間の人は、設置認可をしたんだから、解散の権限を持っているんだから、その間の紛争のところも何か処理してほしいというふうな要望がたくさんあるということだけお伝えいたします。

 時間をオーバーしましたけれども、これで終わりにします。(拍手)

池坊委員長 伊藤参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々の意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自民党の伊藤信太郎でございます。

 きょうは、安西参考人、伊藤参考人、大変貴重な御意見を御開陳いただきまして、ありがとうございました。

 私も大学で研究教育に携わっておりますけれども、安西塾長におかれましては、感性情報学というのを研究なさって、私も文系の立場から研究しておりますので、きょうは、そういう文理融合のアプローチで今回の私立学校法の改正について質問させていただきたいと思います。

 オートポイエーシスという考え方がありますけれども、これは要するに、プロセスの進行というものは結局のところその機構というものに帰結するという基本的な考え方なんですけれども、このことは、私立学校の経営面あるいは教学の面でもあるのではないかなと思うわけであります。

 今回は、理事、理事会の機能ということが明文化されているわけでございますけれども、その改正文の第三十六条二項のところに、学校法人の業務を決すと書いてあるわけですね。つまり、「理事会は、学校法人の業務を決し、理事の職務の執行を監督する。」この「学校法人の業務」というのはいかなる範囲か。これは解釈が多少分かれるところだと思うんですね。教授会側といいますか教員側は、このことには校務、あるいは別の言い方をすれば、教学は含まれない、教育研究は含まれないという御議論もあるわけでございます。

 しかし、このオートポイエーシスの考え方からいけば、そういう存在の切れ目というのが行為の裂け目というものをもたらすわけであって、要するに、学校というのは、小学校であろうと大学であろうと、教育あるいは研究のためにあるわけです。

 それで、学校の教員もいい教育をしようということで、それぞれの教務内容であるとかカリキュラムとか、そのためにどういう施設とかどういう設備が必要だということになるわけですね。当然、理事会で決定される学校法人の業務の中には、どのような校舎をつくろうとか、コンピューターをどのように導入するかということも入るわけですね。

 そうしますと、もし学校の業務ということを純粋経営的な形で絞った場合、それぞれの学校が、多様な価値観に基づく多様な教育をするという上において、行為の裂け目をもたらすのではないかと思うわけでございますけれども、このことに関して、安西参考人そして伊藤参考人、両方の御意見をお伺いしたいと思います。

安西参考人 今、伊藤先生からオートポイエーシスという言葉が出るとは全く思いませんで、オートというのは、自律的といいますか自動的ということでありますし、やはり、特に私立学校というシステムは、みずから中でお互いにいろいろな部署が融合して、それで新しいものを生み出していく、そういうシステムだというふうに思います。今のオートポイエーシスということを私なりに解釈すれば、そういうことでございます。

 そういう中でもって、学校法人の業務ということは一体何を意味しているのかということでありますが、私の理解するところでは、学校法人というのは学校を設置するための法人であるということが、法文でも規定されていると思います。その学校の設置全般にかかわる業務のことを法人業務というふうに言うのだと。したがって、主たる業務は、やはり組織あるいは施設、例えば、大学の学部をつくるとか、大学院をつくるとか、あるいは廃止するとか、そういったもの、あるいは資産の処分でありますとか、運用でありますとか、取得でありますとか、そういうことが主になるでありましょう。

 ただし、そういったことにはすべて教育研究の推進がかかわっているわけでございまして、その教学をフルに力を発揮させるために今申し上げたようなことを進めていかなければいけない、そういうことだと認識しております。個々の教育研究の内容については、やはり法人の業務という中で余り立ち入ることは、教育研究の自由な進展ということにかんがみて望ましくはないというふうに思いますけれども、そういった意味で、私立学校が活力を持って進んでいくためには不可分な面もある。

 ただ、法人の業務というのは、主たる業務は、やはり今申し上げたように教育研究が十分に推進されていくためのいろいろな仕組み、あるいは資金、資産面の支援を十分にしていくことだというふうに認識しております。

 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

伊藤参考人 お答えしますけれども、私は、理事も何もやったことがありませんので、こういう質問に的確に答えられるかどうか自信がありません。

 ただ、我々が理解していることを単純に言いますと、先ほど安西先生が言われたことと基本的には余り変わらないんだと思います。教授会に出ていて、教授会で審議するときに、主にやっているのは研究教育に関するいわゆる教学上のことでありまして、それ以外のことにつきましては経営側のサイドで、例えば新しいものを、学部をつくるかつくらないかというところの最終的な判断は、教授会でかかわるのは教学面のところでありますけれども、最終的な判断で、設立をしてその運営をしていけるか、経営していけるかというようなこと、そして、経営の見通しについてはどうかとかということは経営側が判断します。

 そして、働く人間としては、そのことによってどれだけの問題が、どういうふうな人件費の支出になるかとかいう話は、教授会ではなくて、我々は組合でやったということでありますから、一応教学面を、法人の業務といえば広い意味で業務ですけれども、理事会が直接そこに入ってきてタッチしてやると、いわゆる学問の自由に抵触しますから、そして教授会の権限事項だということで、私の経験では、それは理事会の方は避けていたということであります。

 新しいオートポイエーシスの理論については、私は余り知りませんので、この程度でしか答えられません。

 以上です。

伊藤(信)委員 ありがとうございました。

 今回の改正では、理事長の権限あるいは理事会のあり方というものが明文化されているわけでございますけれども、今回の改正により、理事長また理事会の権限が強くなるというふうにお考えか。また、そのことが、今後の私立学校の運営に対してどのような影響をもたらすとお考えか。これは安西参考人にお伺いしたいと思います。

安西参考人 今回の改正で、理事会あるいは理事長の権限が強くなるのではないかという御質問だと理解しますけれども、私の理解では、ほとんどの私立学校が既に理事会を持っていると思います。そういう意味では、改正がなされても、多くは異なるところはないであろうというふうに考えます。

 それ以上については、先ほど申し上げましたように、私は、やはり私立学校がこれから一人前の学校として日本の教育の中心を担っていくためには、はっきりした経営の仕組みをつくった方がいい、それにはこの改正というのは役に立つというふうに考えている次第です。

 以上。ありがとうございました。

伊藤(信)委員 今回の改正、今度は第四十七条の第二項、これはいわゆる監査報告書の閲覧の請求権の問題だと思いますけれども、そこにおいて、利害関係人等から閲覧の請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて閲覧に供しなければならないということですね。この利害関係人ということがどれぐらいの範囲を示すか。私どもは社会生活を送っておりますので、拡大解釈すれば、納入業者も利害関係人になるでしょうし、それから、ひょっとしたらこれから自分が産み出す子供がその学校に行こうかなと思う人も、潜在的、あるいははっきり意思を持っていれば顕在的な利害関係人ではなかろうかと思うんです。

 ただ、やみくもにこの範囲を拡大しますと、結局、日本国民全部、あるいは外国からも入るという意味においては地球上に住む人すべてということになってしまうので、どのような範疇で利害関係人を限定すべきかということに対して、また私立学校の経営者の立場から、現実的なお話を安西参考人にお伺いしたいと思います。

安西参考人 利害……(伊藤(信)委員「利害関係人ですね」と呼ぶ)済みません。

伊藤(信)委員 監査報告書の閲覧請求ができる利害関係人はどの範疇で考えるべきか。また私立学校で、例えば、いろいろなところのオンブズマンがそれぞれ関係しているということで全部開示ということになると、これまた現実的に対応が厳しいという面もあるのではないかと推察いたします。

安西参考人 利害関係人の法文の解釈につきましては、私が立ち入るところではないような気もいたしますけれども、自分の考えでは、例えばですけれども、学生とその保護者、また、その学校法人に債権債務等がある、そういう形で関係している者、これはやはり利害関係人に入るというふうに思います。

 また、例えば入学を希望している、気持ちとして希望している者が利害関係人かというと、これは恐らく入らないのではないか、気持ちだけではそれは入らないのではないかというふうに思います。

 これは、いろいろ解釈はあるとは思いますけれども、私の持っております経験と感じではそういうふうに思いますし、これは余り広げ過ぎますといけないと思いますし、また、やはり財務の情報の公開という意味では、ある一定の広さを持つべきだというふうに思いますが、やはりそういう法的な債権債務、あるいは学校への束縛関係といいましょうか、そういうものがあるということが条件になるのではないかと考えます。

 以上でございます。

伊藤(信)委員 これで質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一と申します。どうぞよろしくお願いします。

 きょうは、安西先生、伊藤先生、本当に御苦労さまでございます。国会がちょっと荒れておりまして、この参考人の話だけは民主党も応じるということでここに臨んでおります。

 まず、今回の法改正で一番驚くのは、私立学校審議会の中身ががらっと変わりまして、全部都道府県知事に丸投げするということになっております。これはまた委員会でも、私、追及しなければならないと思っておりますけれども、安西先生は私立学校審議会の委員になられたことはありますか。答えてください。

安西参考人 ございません。

土肥委員 伊藤先生はどうでしょうか。

伊藤参考人 ありません。

土肥委員 旧法を見ますと、全く理解できないですね。だれをどう選んだらいいのか、読めば読むほどわけがわからないので。

 それで、今回の法改正で、知事が好きなように十名から二十名以内で選んでくださいと、こうなったわけですね。実は、先ほど伊藤参考人がおっしゃいましたように、今、大学紛争はありませんけれども、高校は結構紛争があるんですね。行政がなかなか当事者の紛争にはかめないということがあるし、補助金規定によれば、文部省は、紛争があってみっともない学校には補助金をストップするとか半額にするとかというような対応をしておりますけれども、なぜ知事に丸投げしたのかということで、あるいは私立学校審議会が一体機能しているのかどうかということについて、お二人の御意見を聞きたいと思います。

安西参考人 私立学校審議会については、恐縮ですが、余り情報を持っておりません。私が条文の改正案等を拝見するところでは、やはり私学関係者が非常な影響力を持ち過ぎるという面と、それから持てなくなり過ぎるという面のそのバランス感覚でいろいろな法案が策定されているような気がいたします。

 それで、改正案につきましては、確かに、知事に丸投げというんでしょうか、そういうふうな文面にもとれますけれども、私はやはり、私学の関係者が何人か、その経験者が何人か入って、私学のあり方ということを十分に吟味した上で、それで私立学校の審議をしていただきたいというふうに考えております。

伊藤参考人 私も余り、内情はよく知りません。ただ、私が勤めていました教育研究所というのは、すぐ横に本部がありまして、その本部のところに高等学校があったんですけれども、そこの管理者の方と、これは雑談でありますけれども話していましたら、やはり一定の、共存共栄というか、つまり新規参入は阻止するけれども、共存共栄の中で、その体制でどれだけの入学者をしてというようなことが事実上行われていたと。

 それは、そういうことが話題になり始めたというのは、少子化が起こってきたからであります。その少子化ということで、どこも経営危機で、新しいことを打ち出さなければならないということがある。それと、九〇年代以降の自由化の路線がぶつかり合って今回の形になったんだろうと思いますけれども、資料を読むと、余りにも私学関係者が多過ぎるということが問題なのであって、私学関係者を全部排除できるような今回の改正でいいとはちょっと思えないということです。

土肥委員 伊藤先生がおっしゃるとおりだと思うんですね。いわば自己規制で、既得権の保護のために審議会が機能したのではないかというふうにも思うわけでございまして、これで新規参入なんというと、この審議会はとても難しい、そこで全部はじかれてしまうということだろうと思います。

 これから多様な教育が展開する中で、ある意味で、こういう中身を全部吹っ飛ばしてしまって、政治家である知事が政治的判断で、当該都道府県の教育の整備のあり方、設置のあり方、学校の設置のことも含めて、仕切ろうという。

 一つだけ条件は、学識経験者となっておるわけでございまして、私学関係者とは言っていないし、細かく言えば、盲聾精の学校の校長だとかなんとかと言っているんですけれども、そういうことも全部なくなったということでございまして、これは、どういう私学像を政府は描いているのかということを究明しなければならないというふうに思っております。

 さて、今回のこの財務情報の公開ということが出てまいりまして、四十七条の第二項でございますけれども。例えば、慶應義塾大学では、四十七条に挙げられております財務諸表その他、どういうふうに備えていらっしゃるんでしょうか、お知らせいただきたいと思います。事務所なのか、閲覧は自由にできるのかどうか。

安西参考人 慶應義塾におきましては、経理部で閲覧に供しております。

土肥委員 経理部に入りますと、財務諸表その他、閲覧をしたいと言ったときにはすぐお見せになるのでしょうか。

安西参考人 所定の手続をしていただいて閲覧していただくということになっております。

土肥委員 所定の手続というのは結構でございますけれども、要するに、正当な理由があるかということでございますね。

安西参考人 そのとおりです。

土肥委員 伊藤先生、桃山学院では……

池坊委員長 お二方でなさらないで、委員長に許可を求めてから発言していただきたい。

土肥委員 どうも済みません。

 桃山学院ではどうでしたでしょうか。

伊藤参考人 どこまで公表しているかわかりませんけれども、桃山学院は、大学がありまして、短大があったときは短大、短大がなくなったときは教育研究所、そして高校ですね、いわゆる予算単位と言われているようなもの、それと法人の単位で、すべてそこでの数字は毎年載ります。たしかこのぐらいのものを毎年もらうのです、読むのは自分の関係しているところだけしか読みませんけれども。それは、評議会の委員に出ると同時に、各組合の委員長にあてて送ってきます。

土肥委員 結局、今度の法改正を見ますと、理事長だの理事だの評議員だの監事だのとうるさく言っているわけですけれども、私は、私学というのは、それぞれ建学の精神があり、みずから学校を運営、経営しているわけでございまして、創学者のモットーを実現するために大変重要な役割をしていらっしゃると思うのですね。

 そこのところのせめぎ合いで、やはり私立大学は、あるいは私立学校はすべてでもいいですが、もっと情報公開をしないと、大学がその存在すら危ぶまれるような状況があるのかどうか、なぜ今回、政府はこういう、いわば厳しいというか、少し踏み込んだ改正を求めてきたのか。その辺の実情はどうなんでしょうか。慶應大学のみならず、他の私立大学の、塾長の御存じの範囲で結構でございます。

安西参考人 私は、これから学校間の競争関係が激しくなり、また、その中で教育の活性化が行われていく中で、特に財務情報の公開というのは必須であるというふうに、先ほど申し上げたとおりでありますけれども、特に私立学校の場合には、どうしても、これまでは財務の情報を余り提示してこなかったというところもやや見受けられるように思われます。

 ただ、そういうところが、恐らくは、外部から見て情報を出さないところほど競争に勝っていけないというのでしょうか、そういう状況が生まれてきているというふうにも思っております。

 以上でございます。

土肥委員 伊藤先生はどうでしょうか。

伊藤参考人 財務情報の公開というのは、情報公開の原則からいって当然のことだと思います。

 ただ、使い方は、情報の公開ということですけれども、公開の次に、それに基づいてシミュレーションをやって、特に臨時定員増が半減をしていく中で、私が結局退職に追い込まれた一つの原因でもありますけれども、シミュレーションをしたら何年先に赤字に転落するという、これが出るわけです。そして、正規雇用で雇っていたのをパートにかえるとか派遣をどんどん入れるとかという形の非情な合理化が、今、大手と言われている私立大学でも行われているということだと思います。

 まあ、やむを得ないのかな、それは私立学校を超えた国の政策で救済すべきなのかわかりませんけれども、そういう使い方を経営者がやっているということだけは知っておいてもらいたいということです。

 なお、これはもう本当に小さなところ、先ほど意見のときに言いましたけれども、倒産をしていくんではないか、これによって倒産を加速するという懸念はありますから、それに対して政治家の先生方には手を打っていただきたいというふうに思っています。

土肥委員 最後に、やはり私は、国が過度に私立大学、私立学校に介入すべきではないというふうに思います。

 可能な限り自由な考え方で、その理念に基づいて運営、経営をなさることが正常な姿だと思いますので、今回は、理事会とそれから情報公開の問題についての二つの大きな柱があると思いますけれども、しかし、補助金をもらっているじゃないか、それは公金が出ているんだから、行政側が、国側が、私立学校の情報をもっと出せと。先ほど伊藤先生がおっしゃいましたように、出し過ぎると、経営実態がわかって、この学校はつぶれるよなんというような話になる可能性もあるわけでございます。

 今、少子化の社会の中で学生数が減っていて、そして私立学校は懸命な経営努力をしているようでございます。女子校が男女共学になるとか、そういうことをやっていらっしゃるわけですけれども。

 そもそも、やはり憲法八十九条の、要するに、慈善と教育には国が手を出さないという重要な憲法規定がございまして、私はこれは大事にしなければならないと思っておりますが、さりとて、学校法人あるいは社会福祉法人もそうでありますけれども、公的な役割を十分担っているから補助金を出すのはいいと思うんです。しかし、ここのところの緊張関係をなくしますと、では、法改正してどんどん出せるんだということになって、そうすると、いわば国の管理のもとにどんどん追い込まれていく。大学行政法人ができましたからそうはならないだろうと思いますけれども、そういうふうなところで、私は、個人的には非常に気遣いをしております。

 お二人の御意見をお聞きしまして、終わりたいと思います。

池坊委員長 質疑者の持ち時間が終了いたしましたので、参考人の方、恐れ入りますが、簡潔に御答弁いただきたいと思います。

安西参考人 私立学校は、公益の立場にあると同時に、やはり私の精神を持って教育をやっていく、そういう組織でございまして、やはりそのバランスが非常に重要だというふうに考えております。

 以上でございます。

伊藤参考人 教育というのは、基本的には公的な性格の強いものだというふうに思います。ただ、それによってどれだけの力をつけるかということが、私的な、私の力になるという意味において、そのバランスをどうとるか。財政的にも運営的にも、そういう面で考慮すべきだと思っています。

土肥委員 ありがとうございました。終わります。

池坊委員長 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。

 安西参考人、伊藤参考人、きょうは本当に貴重な御意見、ありがとうございました。

 先ほど安西参考人の方から、私立も一人前にならなきゃいけないんだという話がありましたけれども、慶應大学はもう一人前中の一人前だと思うんですが。私も、田舎で小中学校は公立に行きまして、高校は東京の建学二年目の私立高校に入りました。大学は国立に行きましたので、それぞれ特徴ある教育を受けてきたというふうに思っているんですが、私立学校というのは、建学の精神を大事にしてこれからの厳しい競争社会を生き抜いていかなければならないと思うんですけれども、私立学校審議会についてお二人にお尋ねしようと思っていたんですが、余りそちらの知識はないということですので、ちょっとほかの論点についてお伺いしたいと思います。

 今回、理事会の機能強化ということが大きな重点として図られていますけれども、理事の機能強化がされるということは、学校法人としての意思決定が機動的にできるといういい面もあると思うんですが、また一方、意思決定が専断されちゃうんじゃないか、専横的になるんじゃないかというような不安もあると思うんですね。

 安西参考人の慶應義塾大学では、そういった部分について何か特別な配慮はしておられますか。

安西参考人 私立学校法の改正案にあります理事の権限、あるいは理事会、理事長のあり方については、慶應義塾は既に長年にわたってやってきていることでございます。私は、法文はともかくとして、これはやはり、それぞれの私立学校がいわばどのようにでもやっていくことができる、またやり方がまずければ落ちていく、こういうことであろうかというふうに思っております。

 慶應義塾の場合には、この理事会とそれから教学の方の面と、その両者のバランスがよくとれているのではないか、また理事会と評議員会がございまして、先ほど申し上げたように、評議員会と理事会の間の関係もまたバランスが非常にとれている。これは、長年にわたって、慶應義塾の場合は評議員会ができましたのが明治二十二年のころのことでございまして、それ以来の伝統がございます。

 やはり、私学というのはそれぞれに歴史をつくっていくものである、それは、もちろん法文をミニマムのベースとしてそれぞれの私学が努力をしていくものだというふうに思います。

 以上でございます。

富田委員 今、安西参考人の方から、理事会と評議員会の連携もうまくとれている、それは明治以来の伝統があるからだということですが、やはりそれは、大学の卒業生が卒業した大学を大事にされて、いろいろな面でバックアップしている、そういったバックボーンがあるからだと思うんですね。

 先ほど、伊藤参考人の方で、評議員会が卒業生によって支配されているというような状況もたくさんあるんだというお話がありました。私も、卒業した大学が一橋ですので如水会というOB会がしっかりしていて、慶應の三田会のように、とにかく大学をバックアップするんだ、経済人になったら資金面でもバックアップしていくんだというような長い伝統があって、そこの部分で理事会、評議員会が機能しているんだと思うんです。

 伊藤参考人の言われる、逆にOB支配がはびこって評議員会制度がうまくいっていないんだというのは、どういった点、何か事実がこういうのがあるんだというのがあったらぜひ御紹介をいただければと思います。

伊藤参考人 大学の名前は出せませんけれども、もちろん。

 要するに、地方大学では、短期大学が四年制に改編していくというときに、理事会または教授会で詳細な手続を踏んで、これはそういう意味では極めて民主的なところでありましたけれども、ほとんど新しく四年制の大学になるということが、最終的決定を残すのみという段階で、評議員会にかけて、そこの評議員の同窓会の連中が、その何々短大の伝統を無視するのかという形でけったわけですね。そうすると、新しい大学になるため人選までしていたものが全部御破算になる、御破算になるということは、それが新聞ざたになるということですから、当然その後の経営に響く。

 だから、この例は最悪の例だというふうに思いますけれども。

富田委員 今回の法改正はそういった意味で評価できるというふうに伊藤参考人は言われていましたけれども、そういう最悪の例ができるだけ起きないようにしてもらいたいと思うんです。

 実は、私、弁護士をやっているときに、ある東京の大学の内部紛争の相談を受けたことがあります。今伊藤参考人が言われたように、いろいろな勢力があって、何とか敵対する勢力をけ落としたいみたいな理事会の争いだったんだと思うんですが、そういったことはちょっと私の法律事務所では加担できないということで、相談だけ受けてお断りしたことがあるんです。そういった意味では、理事会や評議員会がきちんと機能して変な内部紛争が起こらないようにしていくということがまた大事なことなんだと思うんですね。

 それで、伊藤参考人の御意見の中で、一つ、労使紛争ということが出てきましたけれども、財務情報の公開というのが労使紛争に利用される。どういった言い方をすれば適切なのかちょっとわかりませんが、財務情報の公開された中から、労使どちらか自分たちの、当然使側だと思うんですが、それまで得られなかった情報をそれに基づいて得て運動論の中で使っていくんだというような、そういう懸念もあると思うんですね。何でもかんでも出せばいいわけじゃないというふうに思うんですが、そういったところについては、伊藤参考人はどんな御意見をお持ちですか。

伊藤参考人 私は労使紛争の話をしましたけれども、現実の問題としていいますと、労働者側の方が極めて不利でありまして、大体折れざるを得ないということであります。この状況の中で今いろいろやっていますけれども、いわゆる従来の組織を防衛するという形の運動だけではもう耐えられないというような事情も出てきている。だから、そういう意味においては、組合、労働者側がそれを利用して何とかしようというようなものではなくて、むしろ、労働者側が防衛に回っているというのが実態だと思います。

富田委員 ちょっと実態がそういうことだというのは驚きですが。

 財務諸表の件について、もう少し別の観点からお話を伺いたいんですが、慶應大学、安西参考人の方ではもうずっとやっているというお話でしたけれども、今回の法改正では、事業報告書をきちんと作成して備えつけろと。これは、慶應大学のように伝統のある大きな大学なら当たり前のことのようにできると思うんですが、小さな規模の短大とか幼稚園とかがいわゆる財務諸表以外に事業報告書をきちんとつくってそれも備え置かなきゃならないというのはかなりの負担になる、理想的にはそのとおりだと思うんですけれども。そういう点は、どのように安西参考人はお考えになりますか。

安西参考人 事業報告書の内容というんでしょうか、それによると思いますので、大規模な学校法人ほどその事業報告書の内容は豊富になると思いますし、小さなところはそれなりに小さいものだというふうに思いますので、事業報告書というのを大規模な大学と同じように小規模の幼稚園が、同じページ数というんでしょうか、それは全く必要ないのではないかと思います。

富田委員 伊藤参考人、今の点は御自分の経験から見てどうでしょうか。

伊藤参考人 私も教育研究所にいまして、その事業計画というのをつくりましたし、事業の実績の報告書も書きましたけれども、それはもう何か世間の人が笑うほど薄っぺらいものであります。それでも一応、何を計画し、何を報告したかというのは書きますので、ちゃんと公表します。

 だから、この法改正の中で大きさだとかそういうのは全然書いていませんので、そういう意味では、組織に合わせてやればいいのではないかと思っています。

富田委員 あと、伊藤参考人にお尋ねしたいんですが、最初の意見陳述の際に、外部からの人選でチェック機能が本当に働くんだろうかという疑念を呈されておりました。どういったふうに具体的にやったらチェック機能が働いているというふうに現場で働いていらっしゃる皆さんがお思いになると思われますか。何か参考になるものが今ありましたら。

伊藤参考人 日本で、そして私が勤めました桃山学院の中では経験ありませんけれども、私が研究していますスウェーデンで、私立学校はほとんどありませんけれども、コミューンレベル、いわゆる市町村レベルの学校教育の委員会というものは、必ずその地域の代表が入っていますし、そして経営者側の代表も労働組合の代表も入るという形で、その枠があって、そこの地域で大きな組織からも入りますし、地域代表というのは立候補できますから、そういう形のものがあればチェック機能になるかなというふうに思っています。

富田委員 ありがとうございました。

 最後に、安西参考人に一点お伺いして終わりたいと思うんですが、財務諸表をもっと公開すべきだという最初の意見陳述の際に、どういう学校がよい学校であるか酌み取っていただけるような情報を出していくんだというふうに言われました。

 今、法科大学院がこの四月一日から始まって、全部の定員合わせると五千七百ぐらい。実際に司法試験は制度が変わって、法科大学院の卒業生が受験するときには三千人ぐらい合格する。そうすると、約半分はおっこちていくようになるわけですね。大学の評価が目に見えてわかるようになってくる。

 法科大学院がまず一番いい例になるのではないかと思うんですが、そういった意味での、できるだけその大学院生に合格してもらいたいというのが学校関係者の思いだと思うんですけれども、それに向けていろいろ仕組みもつくるし、いい先生も集めるし、カリキュラムもつくっていくという御努力をされてきたと思うんですが、そういったものも事業報告書にきちんと書いて、自分の大学の評価をしてもらうんだというふうにとらえてよろしいのでしょうか。そのあたりのことをちょっと最後にお聞かせ願えればと思います。

安西参考人 おっしゃるとおりだと思います。やはり学校法人の事業というのは、今先生がおっしゃったようなこと、例えば法科大学院にしてみれば、法科大学院としてどういう特徴のあることをやり、どういう成果を得たかということを含んでいていいのではないかと思います。

 つけ加えますならば、どういう私立学校がいい学校であるのかということについて、その経営の仕組みあるいは財務情報の公開等々の仕方を含めて、これは、私立学校の数というのは先ほど申し上げたとおり大変多くの数に上っておりまして、そういう中で、外から見て、例えば法科大学院一つとっても、どういう法科大学院がいい法科大学院であるのかということについて、やはり外部からの目を養うような、そういう文化をつくっていくことがこれからの日本にとって非常に重要だと思いますし、その文化が育っていく中で私立学校の切磋琢磨というものが進んでいくというふうに思っております。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 私立学校法の改正に当たりまして、参考人として意見陳述をいただきました。本当にありがとうございます。

 安西参考人にまずお伺いをいたしますが、よく楕円構造の大学ということを提示しておられると思います。例えば、学問の創造は現在の社会を質的に異なる未来に飛躍させる、それはしばしば社会の短絡的動向や社会の要請からは距離を置いた研究を通して行われると述べておられますが、こうした社会中立と社会コミット、二つを焦点に持つ楕円構造の大学ということに立って、大学のマネジメントのあり方ということを提示していらっしゃるというふうに思うんですが、このような大学のマネジメントのあり方と今回の法案についてのお考えをお聞かせいただければと思います。

安西参考人 今先生のおっしゃいましたことは、私が以前より、特に総合大学の場合でございますけれども、やはり長期的に見て未来の人材を育成しなければいけない、また長期的に見て学問の創造をしていかなければいけないという、いわば短期的な社会の動向にとらわれない中立的な面と、それから一方で、やはり社会の中での組織として社会に短期的にも貢献をしていかなければいけない、そういう社会にコミットするという面と、その両面を、楕円というのは二つ中心、焦点がございまして、そういう意味で、二十世紀には、象牙の塔といいましょうか、一つの円、中心が一つであったものが、二つあるべきだという論でございます。

 今申し上げた楕円構造の大学のあり方というのは、この私立学校法の改正については不変である、法文がどういうふうになろうと、そのレベルを超えて今申し上げた楕円構造の姿というものは実現していくことができるというふうに思っております。

 ただ、一方で、それをサポートする経営の仕組みあるいは情報の公開について、やはりミニマムのことは、私立学校というのは非常にたくさんございますので、むしろ社会的な組織として持たなければいけないものが改正案の中に入っているというふうに認識をしております。

 ありがとうございました。

石井(郁)委員 日本私立大学連盟では、「規制改革と「自己責任戦略経営」の確立」という提言をしていらっしゃると思いますが、そのことにかかわって一つ伺いたいと思っております。

 その中にこういうくだりがございます。株式会社参入、利用者補助に対する見解の中に、「教育分野における株式会社の参入を論ずる以前の問題として、それぞれの学校法人が公共性の高揚と私立大学の健全な発達を図りつつ、自らその透明性を確保しようとする自助努力や自律性の確立が必要不可欠である。」ということがありました。

 これは具体的な問題としてどういうことを指すのでしょうか。これも安西参考人からお聞かせいただければと思います。

安西参考人 やはり私立学校というのは、みずからによって立つことが基本だということを言っているのだと思います。そういうことであります。

石井(郁)委員 その前段のところがちょっとありますので、もう少し御説明いただければありがたいと思うんですけれども。

 教育分野における株式会社参入という問題が今いろいろ言われておりますので、そういう問題との関連で、学校法人が公共性を高めなければいけないという問題がありますけれども、そういう問題と自助努力やそういう自律性の問題というあたりの関係をもう少しおっしゃっていただければと思うんです。

安西参考人 私立学校は、学校法人としてやはり公益に資するべきだと思います。それが非常に重要でありまして、株式会社立大学、株式会社立学校という組織が公益のために働くことができるか、そういう問題があるわけであります。

 ただし、それ以前の問題として、私立学校というのはまずみずからによって立つべきである、その株式会社立大学、学校ができるから云々ということ以前に、みずからによって立つべきである、そういう論だというふうに思います。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 伊藤参考人にお聞きいたします。

 私立学校審議会の問題なんですけれども、都道府県に置くこの私立学校審議会の委員のうち四分の三は私立学校関係者でありましたけれども、この点については、私学の行政に私立学校関係者の自治的な意見を反映させるものだという解説書などがございましたけれども、今回そういう条文規定がなくなるわけですね。教育に関して学識経験を有する者のうちから知事が任命する問題になるわけですけれども、この自治的意見の反映というための条文を今日なくするということについて、どういう御見解をお持ちでしょうか。

伊藤参考人 詳しくそこまでは考えていなかったんですけれども、私立学校の立場は立場として、経営する側もそこで働く側も、それなりに、自分たちがやっていることは公益性の高い教育をやっているわけですから、そういう意味で、自治的な意見を何らかの形できちんと表明する、できるということが必要なのではないか。ただ、過半数以上とっていかなければならないとは、そこまではちょっと思わないということです。

石井(郁)委員 今の問題に関してもう少しお聞かせいただきたいと思うんですけれども、都道府県に置く私立学校審議会委員の資格、構成割合、推薦の手続は、今度、知事の判断にゆだねられるわけですね。ですから、このことについては知事の権限を強めるものではないかということが言われますし、事によると株式会社参入などへの道を開くのではないか、そういう危惧の声も聞かれるわけでございまして、この点で、私立学校審議会委員選任の規制緩和とこの株式会社の参入という問題についてどのようにお考えでいらっしゃるか、これは両参考人にお尋ねしたいと思います。

安西参考人 改正条文では私学審議会に知事が権限を持つということになる、一方で株式会社立学校のことがある、その間の関係はということだと思いますけれども、直接的にその法文としての関係というのは、ちょっと自分にはわからないというのが正直なところであります。

 いろいろな関係でもって、あるいは知事あるいはその周囲の考え方によっていろいろなことが起こっていく可能性は否定できないというふうには思いますけれども、ではどういうことが起こるのかということは、ちょっと自分にはわかりません。どうも。

伊藤参考人 私の意見を言いますと、教育分野における株式会社の参入には、私は反対しています。

 株式会社という組織は、明らかに営利組織だというふうに認識しています。学校法人は、非営利組織だという認識です。したがって、幾ら規制緩和をやっても、株式会社の参入は私の立場としては認められないということです。

 旧来の審議会の問題は、多分、これは推測になるので申しわけありませんけれども、例えば十条の二項以降を読んでいきますと、その地域で大きな勢力を占めている私学の理事ないしは理事長がたくさん出るという構造になっているから、事実上の、言葉は悪いですけれども、ボス支配になるということで、逆に言うと、従来のは、知事がそのボスの言うなりに判こを押していたのではないかという懸念はやはり残っています。

 そういう意味で、新しい形の、これは先ほど公明党の先生が質問されたときにまた少し言いましたけれども、地域の代表とか、私が研究しているものでいえば、スウェーデンは必ず経営者側の代表と労働組合の代表というのは委員に入れますけれども、そういう形の仕組みも考えられるのではないかというふうに思っています。

石井(郁)委員 どうもありがとうございます。

 あと一つ、残りの時間なんですけれども、冒頭、安西参考人の方からは、私学には七割を超える学生が学んでいるというお話がございまして、国費の投入は、国立大学とか国立への国の予算の投入に比べて、私学は余りにも少ないというお話がございました。

 両参考人とも、やはり私学に対する財政基盤、脆弱ではないのかということもお書きになっていらっしゃるようですので、GDP比に対する公的な、私学だけじゃない、日本の高等教育全体に対しても財政支出というのは大変低いんだという問題の御指摘があるかと思います。この問題をやはり我が国としてどうしたらいいのかということについて、一言ずつ、安西参考人及びスウェーデンのことにお詳しい伊藤参考人にお聞かせいただければと思います。

安西参考人 先ほど申し上げました数字、七三%云々は、これは、四年制の学生についての私立大学生の比でございます。

 私は、戦後何年かの間と、これからという日本の状況を見ましたときに、やはり多様な活力のある人材がいろいろなところでもって育っていくということが、これからの日本の将来、また世界の中での日本の位置づけにおいて非常に重要だと思います。それを一応前提にいたしますと、これまでのいわば国立大学重視の重点政策から、やはり多様な活力ある人材を育成する政策に移行していくべきだというふうに思っておりまして、そういう意味で、私立学校の財政基盤の充実ということが重要であると思います。

 ただ、一方で、私立学校、多々ございまして、国の財政の問題も当然あるわけで、やはりある一定の競争環境ということが重要になっていくと思いますし、その中で経営の仕組みと情報公開ということが重要な位置を占めていくというふうに考えている次第でございます。

 ありがとうございました。

伊藤参考人 私の個人的な意見を言いますと、世界人権宣言にあるとおり、初等教育、中等教育、高等教育を含めて、すべて公的に負担すべきだというふうに思っています。公的な負担をしたからといって、私学というか、自治的な大学運営ができないかというと、そんなことはないと思います。

 一番大切だと思うのは、やはり学生ローンをきちんと組んで、国がそのローンにお金を出して、親の金を使わずに大学に行けるという仕組み、そしてそのローンを卒業後国に返済するという、今の奨学金というものではなくて、新しいローン制度をつくるべきだと思います。これがないと自立した大学生は生まれないのではないかというふうに思っています。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。私は、高等教育の充実というのは、本当に、二十一世紀の日本の社会の発展にますます重要だと考えておりますので、そういう立場からこれからもかかわってまいりたいと思っています。

 どうも本当にありがとうございました。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 きょうは、安西、伊藤両先生、本当に貴重な御意見、ありがとうございます。質問をさせていただきます。

 お二方の先ほどの御意見を拝聴しておりましたら、今回の法改正、おおむね基本的には賛成であるという御意見でございます。私も、今度の法改正、かなり前進したなという思いは持っておりますが、それでもまだ多々問題点が残されていると思うんですね。それらの点についてお尋ねをいたしたいと思っております。

 そもそも、今回の法改正は、学校法人の不祥事に端を発していると言ってもいいわけでございまして、いわゆる疑惑の事件とか不祥事、これらを防止しなければならない、あるいは再発を防がなければならない、そういったことを私は制度改革の主眼にすべきだと思っているわけでございます。

 そうなりますと、今回の法改正で、私立学校の公共性を一層高めることができるのかどうか、もっと言えば、私学の公共性喪失の最大の要因であった理事会の学園の私物化、あるいは世襲によるワンマン経営、あるいは独断的な運営、そういったことを改めることができるのか、阻止することができるのか、どのようにお考えですか。お二方にお聞きしたいと思うんです。

安西参考人 あるところの不祥事から出発した話だとおっしゃっておられることは、そういうこともあるのかもしれません。ただ、私の理解では、今般の私立学校法の改正というのは、そういうことを超えて、これからの私学の活性化といいましょうか、そういうことのためのものだというふうに理解しております。

 そういう中でもって、不祥事を防止することがこの条文でできるのかということについて言えば、私は、経営の仕組みがある程度外から見て骨格が見えてくるということは、防止のためには非常に重要なことであるというふうに思います。

 一方で、やはり不祥事というのは、いわばそれぞれの組織、個人に依存するものでもありまして、そういうことの防止というのは、先ほど申し上げたように、日本における教育組織に対する評価の文化というんでしょうか、そういうことを醸成していくことが大事だと思います。

 以上でございます。

伊藤参考人 この法改正が不祥事から端を発したということは、私は知りませんでした。そうかもわかりません。ただ、読んだ限りでいいますと、そして私の経験した限りでいいますと、今度の法改正は、いわゆる中堅以上の私立の大学で普通に行われていることの追認にすぎないと思っています。その意味におきまして、もしやっていないところにとっては、きちんとした組織明確化のためには必要だろうというふうに思います。

 ただ、旧のというか、改正案の出る前の今の法律を読んでみても、きちんと所管庁が対応していれば、ワンマン経営も世襲経営も起こらないのではないか。そういう意味におきまして、今回のは一歩前進はしますけれども、このことによって不祥事が全部なくなるとは思いません。

 以上です。

横光委員 今回、学校法人制度改善検討小委員会の報告を受けてこういった法改正に進んだと私は思っておるわけです。そういった経緯の中で、文科省も、今言った小委員会報告と同様に、学校法人の業務には教学も一部含むという見解を示しているんですよ。ここは大変大きな問題でございますが、このことについて、これまたお二人にお伺いしたいんですけれども、どのようなお考えをお持ちでしょうか。

安西参考人 学校法人の業務、さっき申し上げましたけれども、やはり主たる業務は、組織、施設等々、その学校が活力を持って教育研究等々のことについて進んでいくために資する経営等々のことをやるということだと思います。ただ、それはやはり教学のために行うわけでありますから、教学と不可分だというふうに思います。

 個々の教育研究の内容について理事会等々がいわば口を出すというのは望ましくないと思います。教育研究がそれぞれ自由に進展するためには望ましくないと思いますけれども、一方で、経営と教学というのは不可分の面がある。これはやはり、私学が経営を一方で行いながら、教学の組織として十分な力を発揮していくためのことだというふうにとらえております。

 以上でございます。

伊藤参考人 私も、広い意味におきましては、学校法人の業務の中に教学を一部含むというのは言えると思います。ただ、これをどこまで解釈するかということであります。

 例えば、大学の教員の採用とか、ほかの大学に行く割愛を、今理事会は、教授会がオーケーを出したものには何も言わずに判こを押すという形で、教学面の独立を図っています。

 ただ、最近私が聞いてびっくりしましたのは、教授会が採用を決めた人選を理事会サイドでひっくり返したという事例がありまして、実は、私学は今経営が非常に厳しいということで、ある一定の年齢の先生というのは人件費がたくさんかかりますから、そこをなるべくカットしようということで切ったという事例がありまして、それを聞いてその大学に対する認識を変えたという記憶があります。それはやるべきではないと思っています。

横光委員 私立学校の設置を目的とする学校法人、そしてまた学校教育法に基づいて設置される学校、これは区別されているわけですね。ここが、大学自体が法人となっている国立大学と最も大きな違いだと私は思うんですね。学校教育法では、「学長は、校務をつかさどり、所属職員を統督する。」教育や研究は、これは学校の校務でございます。学校法人の業務ではないと私は思っているわけですね。先ほどからしつこく言っております私学の不祥事のほとんどが、理事会による校務への不当な介入が一番大きな原因となっているんですよ。

 そうしますと、やはり、教育基本法あるいは憲法による学問の自由を守るためにも、私は、学校法人の業務、そして学校教育法に書かれております校務、ここは明確に峻別することが非常に重要だと思っておりますが、いかがでしょうか。お二人に。

安西参考人 私は、さっき申しましたように、私学が教育の中心として、個々の私学についても発展をしていき、また、これからの社会、これからの未来に資するようになっていくためには、私学というのは一方で経営が非常に重要でございまして、その経営は何のためにやるのかというと、教学の推進のために行うわけでございます。そういう意味で、教学と経営というのは不可分でありまして、その教学と経営の間の関係がうまくいく、いっている、そういう私学が発展していくものだというふうに思います。そういう私学を見分けるという文化をつくっていくことが大事だということを申し上げているわけです。

 不祥事云々のことは、介入云々のことは、そういう学校もあるのやもしれませんけれども、そういうところはやはりうまくいかなくなっていくということではないかというふうに思います。

伊藤参考人 今度の私立学校法の改正と学校教育法で言っておる校務、そういう違いについてまできちんと考えてきていませんので、先ほど私が答えた以上のことは答えられませんけれども、私立学校、経営をやりながら、実際に一番重要なことは教学だと思っています。教学をやって、それは単に学生だけじゃなくて、今やエクステンションという形で社会人に向けても開かれているということをやっています。

 それがうまく機能しているところは、多分、経営と教学の面がうまくマッチしているところだと思います。不当に介入してうまくいっている例というのは私は知りませんので、そういう意味において、教学面と経営面のバランスがどこら辺にあるのかというのは、普通の人は大体わかっているのではないかというふうに思っています。

横光委員 もう一点お尋ねしたいんですが、現行法では何の規定もないと言ってもいいぐらいの監事の選任について、規定されたりあるいは義務づけられたこと、これは前進だと思っております、評議員の同意が必要だということにもなりましたし。

 しかし、この監査を受ける者が監査をする者を選ぶといういわば非民主的な構造は、基本的には変わっていないんですね。ですから、依然として監事の人選の権限は理事会が持つことになるわけでございます。

 やはり、監事の制度、せっかくここまで進めるのなら、実効性あるものにするために、私は、監事は評議員会で選任すべしだという思いを持っておるんですが、これまたお二方の意見をお聞きしたいと思います。

安西参考人 私どもの慶應義塾におきましては、評議員会において選出されております。

伊藤参考人 私も、読んでみて、監査を受ける人間が監査人を選んでいるというふうに思います。そこを変えるには、評議員会の性格を変えるしかないと。評議員会は、今、諮問機関という位置づけになっていますけれども、これを議決機関に格上げすれば、先ほど安西先生が言われた慶應の事例が出てくるんではないか。その方が、より踏み込んだ改革にはなるのかなというふうには思っていますけれども。

横光委員 ありがとうございました。

 私も、やはりここで実効性あるものにするためには、評議員会で選任し、そしてまた、評議員会が人選もできるように修正すべきじゃないかという思いを持っております。

 以上で終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、安西参考人、伊藤参考人に一言お礼を申し上げたいと思います。私たちの委員会のためにお時間を割いていただき、有意義かつ貴重な御意見をお述べいただきましたこと、当委員会を代表いたしまして、心よりお礼申し上げます。本当にありがとうございました。(拍手)

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十二分散会


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