衆議院

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第11号 平成16年4月14日(水曜日)

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平成十六年四月十四日(水曜日)

    午前十時三十分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      竹下  亘君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    楠田 大蔵君

      小林千代美君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      土肥 隆一君    中村 哲治君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    松木 謙公君

      笠  浩史君    若泉 征三君

      上田  勇君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      原田 義昭君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (内閣府規制改革・民間開放推進室長)       河野  栄君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            遠藤純一郎君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月十四日

 辞任         補欠選任

  鈴木 恒夫君     竹下  亘君

  古賀 一成君     楠田 大蔵君

  高井 美穂君     松木 謙公君

  松本 大輔君     若泉 征三君

  富田 茂之君     上田  勇君

同日

 辞任         補欠選任

  竹下  亘君     鈴木 恒夫君

  楠田 大蔵君     古賀 一成君

  松木 謙公君     高井 美穂君

  若泉 征三君     中村 哲治君

  上田  勇君     富田 茂之君

同日

 辞任         補欠選任

  中村 哲治君     松本 大輔君

    ―――――――――――――

四月九日

 私学助成の大幅増額、教育費の父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(原口一博君紹介)(第一四六八号)

 小中高三十人以下学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(原口一博君紹介)(第一四六九号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(肥田美代子君紹介)(第一五二六号)

 同(牧義夫君紹介)(第一五六二号)

 同(横光克彦君紹介)(第一五六三号)

 同(山際大志郎君紹介)(第一六〇一号)

 すべての子どもに行き届いた教育、私学助成増額に関する請願(内山晃君紹介)(第一五六一号)

 私立幼稚園教育の充実・発展に関する請願(山際大志郎君紹介)(第一五九七号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第一五九八号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第一五九九号)

 行き届いた教育を進め心通う学校に関する請願(赤羽一嘉君紹介)(第一六〇〇号)

は本委員会に付託された。

四月十三日

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(第一〇四号)は「木下厚君紹介」を「高山智司君紹介」に訂正された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 私立学校法の一部を改正する法律案(内閣提出第五九号)

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八六号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、私立学校法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として内閣府規制改革・民間開放推進室長河野栄君、文部科学省初等中等教育局長近藤信司君、高等教育局長遠藤純一郎君、高等教育局私学部長加茂川幸夫君及び文化庁次長素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。牧義夫君。

牧委員 おはようございます。

 しばらく間があいてしまいましたけれども、私立学校法の審議、質疑の方を始めさせていただきたいと思います。野党の質問のトップバッターでございますから、ごく大ざっぱなところから入らせていただきたいと思います。

 そもそも、日本の私学というもの、明治維新以来、連綿とその伝統があるわけであります。そういう中で、この近代日本の礎を築くような、そんな人材を輩出してきたわけでありますけれども、この私立学校法の制度そのものは昭和二十四年の法制定で創設されたものであると改めて認識をしたわけで、それ以前は財団法人によって私学経営がされてきたということもあわせて認識したわけであります。ただ、今申し上げましたように、日本の私学というのは建学の精神というものがあって、その精神に貫かれた連綿とした伝統があるわけで、法人の形態そのものに私はそうとらわれるべきものではないと思っております。

 最近、構造改革特区等においては、株式会社やらあるいはNPO法人による学校の設置というものもあるように聞いておりますけれども、例えば大臣が御卒業された慶応大学にしても、この間塾長にも参考人に来ていただいておりますけれども、特に慶応が学校法人だから、あるいは、極端な言い方、NPOだったり、あるいは株式会社であっても、文部大臣河村建夫という立派な人材を輩出すると思われますし、余りそういうことに私はとらわれるべきではないと思っております。

 そういう中長期的な歴史認識、その辺も視野に入れた上で、今回の法改正というのが一体どんな意味を持つものなのか、どんな観点から今回の改正に至ったのか、その辺からお聞かせをいただきたいと思います。

河村国務大臣 おはようございます。

 いよいよ私立学校法の御審議をいただくわけでございますが、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 まず、この法案、そもそもどういう観点から提出されたか、こういうお話でございます。

 牧委員御指摘のとおり、昭和二十四年に私立学校法が制定され、今日まで私学が大きな役割を公教育の中で果たしてきたこと、皆さん御存じのとおりでございます。特に私立学校においては、建学の精神といいますか、そういうものが非常に大事であるし、その自主性を重んじていく、そして同時に公共性を高める、こういう特質があるわけでございます。

 この学校法人法に基づく制度のもとで、大学の場合は、もう既に全学生においても七五%を私立大学が占めておりますし、そういう意味からいきますと、私立大学の役割の大きさ、これは日本の教育において非常に大きなウエートを占めておる。しかし一方では、少子化時代を迎え、また御案内のように国立大学も法人化の流れの中、こうした中で、やはり改めて、公教育の担い手としての私立学校のあり方、この変革期にどう対応していくか、どういう戦略を持って私学がこれから振興を図っていくか、こういう観点を持ちながら、この学校法人法を今の時代に合ったものにしていこうということで、学校法人は私学助成も受けているわけでございますから、そういうものに対する責任といいますか、説明責任もあるわけでございます。

 そういう意味で、私立学校がこれから学校法人法のもとで主体的、機動的に対処できる体制、これをつくり上げようということが今回の学校法人法の主たる改正のねらいでございます。現在の私立学校法においては、理事会制度が法定、十分きちっと位置づけていないということ、それから理事、監事、評議員会、それぞれの役割分担が必ずしも法律上明確でなかったという点、また財務情報の公開に関する規定もなかった、この点をきちっと整備しようということでございます。

 このような観点から、理事会の法定化あるいは財務情報の公開義務、これは関係者の皆さん、大学設置・学校法人審議会に学校法人分科会がございますが、私学の関係者の皆さんの御意見というものを十分踏まえながら、今回の法案によって学校法人制度の改善を行おうといたしておるものでございます。

牧委員 済みません、今の質問で、わかるんですが、私も冒頭、余り漠然とした話をし過ぎたのかもしれませんけれども、今回の法改正に至るに及んだその理由、どのような問題点があったから今回改正するのか。

 今の大臣のお話もよくわかります。ただ、例えば私立学校に対する公費助成というものは、たしか昭和四十五年からそういう制度があると思いますけれども、そういった意味で、財務状況等の透明性とか、そういったことはもう既に問われていなければいけなかった話だと思いますけれども、逆に言うと、なぜ今まで放置されてきたのかということも含めて、今回の法改正の意義というものをもうちょっと具体的にお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 私、さっき学校法人法と申し上げましたが、私立学校法の間違いですから、このことは訂正させていただきます。

 牧委員御指摘のとおり、これまでの私学のあり方についてもいろいろな指摘もされておる、それから私学経営のあり方、私学の経理のあり方とか、いろいろな点について国民の批判を仰ぐような面も出てきた、特に少子化時代を迎えて私学間の競争もある、あるいは国公私間の問題もある、こういう中で、やはり国民に対して私学がもっと透明性を持って、そして公開性を持ってきちっと説明のできる機関であるべきだという声にこたえていく必要もあろう、こういうことも一つの大きな観点だと思いますね。

 それからやはり、経営のあり方、特に私学経営、これからなかなか厳しくなる、その中で、理事会、評議員会、この役割分担といいますか、そういうものはきちっとしていく必要がある、私学がやはりそういう戦略を持つ必要がある、そういう観点に力点を置いて、やはり国民の期待にこたえる私学をつくっていこう、こういう機運の中で今回の私立学校法の改正を求めておる、こういうことであります。

牧委員 今の点については、これからの質問の中でもう一度改めてお聞かせいただきたいと思います。

 さて、この四月からいよいよ国立大学法人、公立学校法人制度がスタートしたところでありますけれども、これらの法人と今回法改正後の私立学校法人の違いというのは、一言で言うとどんなところなんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 国立大学法人制度と学校法人制度の違いについてのお尋ねでございます。

 国立大学は、その設置について法律で定められておりまして、国が所要の財源措置を行うなど、一定の関与を行うことが前提とされております。

 これに対しまして、私立学校の場合には、先ほどの大臣の答弁にもありましたように、それぞれの建学の精神に基づきまして、学校法人の自由な意思に基づいて設置されるものでございます。その自主性を最大限尊重する観点から、所轄庁による関与も極めて限定的なものになっております。これが大きな違いでございます。

 具体に申し上げますと、国立大学につきましては、教育研究の特性に配慮しつつも、学長及び監事の任命でございますとか中期目標の策定あるいは中期計画の認可などにつきまして文部科学大臣がこれに関与する仕組みとなっているのに対しまして、私立学校の場合には、所轄庁としてそのような、例えば人事でありますとか計画的なことに関与は行いませんで、私立学校の自主性にゆだねているところでございます。

牧委員 私もこの独法化の議論には参加しておりませんので、ちょっと改めて聞かせていただいたところなんですけれども、学校の自主性がある程度高まったというのは方向性としてはあると思います。東京大学も何か資産を国債で運用するとか、この間も新聞に出ておりましたけれども、そういった一定の流れの方向性の中で、これは、将来もう少し自由化を進めて、言葉をかえれば私学化というんですかね、そういう方向性にあるんでしょうか。

河村国務大臣 これまでのいろいろな議論の中で、国立大学を法人化する方向の中で、例えば東京大学、京都大学は私立化して運営してもうまくいくんじゃないかという議論もあったことも事実であります。

 しかし、そういう検討の中で、やはり国立大学は国立大学として果たす役割、特に教育の機会均等であるとか、そのようなことも考えながら、国立大学としての役割分担があるだろう、そして国がきちっと支えていく大学というものも必要であるということで、これまで以上にそういうものの役割を果たしながら、同時に、もっと開かれた大学となって、そしてそれぞれが個性を出していく大学、国立大学といえども、そういうものが必要だと。

 しかし、これは、大学は教育機関でございます、研究機関でもありますから、単なる行政とは違う、だからやはり独立した国立大学法人としていくべきであろうということになりまして、国立大学法人についての議論をいただきながら、この大学法人化が決定したわけでございます。

 そうしたことでありますから、これまでにある私学、そして国立大学、公立大学、この関係が、切磋琢磨の関係を持ちながらそれぞれの役割を果たしていくのが望ましいと考えておりますし、欧米先進国を見ましても、学校数また学生数を見ますと、国立ないし州立というものが大きなウエートを占めております。そういう意味では、やはり高等教育、学術、教育研究の水準を維持していく、それを発展させて、国と国との競争関係もございますが、やはりそういうものは大宗は国の責任であると考えられておるようでございます。

 そういう観点からしても、日本はややもすると私学の比率が非常に高いわけでありますけれども、しかし、国公私立、それぞれ特性を発揮するという観点から、国立大学は国立大学法人として役割を果たしていただくということ。だから、今の、このままいけば、では民営化にいくのかというと、それは、民営化の考え方はなくて、今回の法人化の形でとどめて、そして切磋琢磨の関係でそれぞれの大学が特色を持ってやっていただく、こういう方向が打ち出されておるわけであります。

牧委員 わかりました。

 ついでの質問で恐縮でございますけれども、高校以下の、例えば都道府県立高校というのはたくさんあると思うんですけれども、高校以下の公立学校の法人化というのは今後、将来的に方向性としてあるんでしょうか。

河村国務大臣 高校以下の公立学校につきましては、御案内のとおり、教育委員会が所管をしている施設ということであります。実は、いわゆる公立大学、県立とか市立とか、そういうものについては独立行政法人を選ぶかどちらを選ぶかということがありましたが、これは対象としておりません。

 それで、当然全体の議論の中ではこの問題もあったと思うのでありますが、これを今もし対象とするという場合にどういう問題点があるかということを考えますと、地方公共団体の長が今現在地方の独立行政法人を管理する仕組みについて、教育行政の中立性あるいは安定性を確保する、そうすると、教育委員会制度との整合性をどういうふうに図っていくかという問題がまず出てくる。それから、教育の機会均等、全国の教育水準を維持する、これを国の責任として別にもっと財政支援制度をまた設けて、別途考えなきゃいかぬという問題が出る。それから、国立大学は御案内のように非公務員化にしたわけでございますが、教職員の身分についてどう考えていったらいいんだろう。これは現在地方公務員であります。そういう問題が、仮にそういうふうに考えるならばあるということでございます。このような課題。

 公立学校を設置管理しております教育委員会、関係団体の意見を十分聞いて、公立学校を今後独立行政法人制度の対象とするかどうか、これはこれから検討の課題、現時点では引き続き検討しなきゃいけない課題であろう、このように考えております。

牧委員 どうしてこういう質問をさせていただいたかというと、今回の私立学校法を議論するに当たって、やはりここで一度、国公私、あるいは国と地方の役割の違いですとか、その辺のところをきちっと頭の中を整理しておく必要があろうかと思ったので、ちょっとそういう質問をさせていただいたんですけれども、そういう観点から、国と地方、あるいは国公私の役割分担について大臣はどんなビジョンを持っておられるのか、お聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 今、日本は学校において、国立、公立、私立、今後特区において株式会社立、NPO立、こういう問題も出てまいりましたが、これがそれぞれの役割を果たしながら今日の公教育を支えてきておるわけでございます。

 国立学校においては、特に我が国の学術研究あるいは研究者養成という大きな課題の中核を担っているという部分があります。それから、全国にあります国立大学は、それぞれの地域の教育、文化、産業の中核として、教育機関の中核としての役割を果たしている。それから、国立大学については、やはり低廉な教育費といいますか学費のもとにおいて、学生の経済状況に左右されなくて進学機会を提供している、教育の機会均等が特にこの中できちっと役割を果たしている、こう思っておりますし、これは、公立と言われる、市、県等が持っておりますそういう教育機関においても同じような役割を果たしてきた。特に地域社会の知的、文化的な拠点でもあるという点の役割があると思います。

 一方、私立学校、先ほど来の議論にもありますように、建学の精神に基づいて個性豊かな教育ができるところ、こういう役割を担っておりますし、大学生の七五%、高校生も三割、幼稚園においてはもう八割、こういう状況下にあって、そういう意味で、国立、公立、これはかなり一体に近いものでありますが、そして私立学校というものがそれぞれの特性を生かして発展をしていく形をとっていこう、またとっていかなきゃいかぬということで進んでおるわけでございます。

 私は、そういう意味では、それぞれの基本的な制度の枠組み、それから全国的な基準を設定する、必要な財政支援をする、指導助言等の役割、そういうものをそれぞれ国と地方が担いながらやっていくことが望ましい、こう思っております。特に、地方公共団体においては初等中等教育の直接的な学校現場を持っておる、児童生徒の直接の教育を行っている、それから生涯学習、社会教育、文化、スポーツ、住民の皆さんと直結したところで実施主体としての役割を持っている。こういう役割分担をお互いに持って、そして国は、特に義務教育の段階においての教育の水準を守る、そして優秀な先生を確保して、それを全国にあまねく配置しながら、その全体を見ていく、そういう役割の中にあると私は思っております。

 それぞれの国立大学、あるいは公立も含めてでありますが、公立学校と言われるもの、そういうものと私立学校と言われるもの、これがやはりそれぞれの今申し上げたような特色を生かしながら発展をしていくことがこれからの日本の教育においてこれからますます重要であって、どちらに比重を置いてやればいいとかいうことではなくて、むしろ両者が相まって切磋琢磨の関係で伸びていく、こういう方向をとっていくことが望ましい、このように私は考えております。

牧委員 今、そこら辺の整理をしていただいた上で、私、特区のお話をお聞かせいただこうと思っていたところ、大臣からもちらっと特区のお話がございました。

 今の整理の上で、今、構造改革特区におけるNPO法人やら株式会社による学校の設置というのがあるんですけれども、これの意義について、そしてまた、なぜ特区じゃないとだめなのか、そこら辺のところをちょっと改めてお聞かせください。

河村国務大臣 これは、特区制度が始まりまして、そして、株式会社で、あるいはNPO法人でという声が上がってまいりまして、我々もこの問題についていろいろな角度から議論をし、考えてきたわけでございます。

 やはりどうしても、教育というものが、公教育といいますか、全体にあまねく及ぶものであるということ、そしてその水準が維持されなきゃいけないということ、その点で、いわゆる公共性であるとか継続性であるとか安定性、これは教育に不可欠な条件だというのが基本認識にあるわけです。

 そのことが、民間の主体が入ってくる場合にこれをどういうふうにきちっとして担保できるであろうかという観点から見たときに、新しいケースですから、やはり特別にそういう希望があるし、また国民の皆さん方もそれに対する期待があるならば、それを限られた地域の中で、そして地方自治体がやはり公教育については責任があるわけでありますから、地方自治体の発意と思って、一緒になって一体でやっていただくということが必要であろう、こう考えたわけでございます。

 私は、教育にいろいろな形があっていいし、現実に、公教育で十分対応し切れない部分をNPO法人が、例えば不登校の対策であるとかADHD児あるいはLD児、そういう今までにない新しい現象、さらに見ているとこういう部分もあるということがわかってきた、こういうことに既に対応しておられる。現実に、学校不適応児というような人たちもいる、そういうことにきちっと対応していただいておる。それを特区の中で学校のあり方としてさらに一歩進めていただくことは国民の皆さんの期待にこたえることになるんじゃないかということでやっておるわけでありますが、これについて、さっき申し上げた学校としての継続性、安定性といいますか、そういうものがきちっと担保されるかどうか。

 これは、やはり特区でまずやっていただいた上で、私も、特区でやるということは、結果的には、特区でやれることであれば、最終的には全国あまねくやれるはずだ、こう思っております。思っておりますが、教育に対してはそういう要件がございますから、それをきちっと満たしていただきながら学校運営がきちっとできるかどうか。特に、その辺の公共性、安定性、継続性、そういうものの確保が十分であろうかということも、教育の最終責任である文部科学省としても検証しなきゃならぬ面もありますから、やはり、地方公共団体に関与していただきながら、そして条件整備を図っていただきながら、地域を限定して、いわば実験的にという言葉は余りいい言葉とは思いません、実際に教育を実験に使うということはあり得ないわけでありますから。しかし、現実にやっていただいた中でさらに検討していくという形が望ましいと思って、特区に今限定をさせていただいて、御努力をいただいている、こういうことであります。

牧委員 地方の実情に応じた教育のあるべき姿、またそれをなるべく地方の裁量にゆだねるという方向性については私も全く同感であります。

 まず、なぜ今あのような質問をさせていただいたかというと、ちょっと私も疑問に思ったので、事務方で結構ですけれどもお答えいただきたいんですが、今回の私立学校審議会の構成の問題、都道府県知事の裁量にゆだねてしまおうと、思い切った改革があるわけです。そうすると、例えば、知事の裁量で、ある株式会社が別建ての、形式的には別の学校法人を立ち上げて、これの設置ということがもう本当に自由になるということで、形式はともかくとして、実体としては全国にそういった特区ができるようなことにも、私は悪いんじゃないと思うんですけれども、そういうことになりかねないと思うんですけれども、どうなんでしょうか。

加茂川政府参考人 今回の私立学校審議会についての法改正について、御説明を申し上げます。

 私立学校審議会は、都道府県知事の私立学校に対する行政の適正を期するために都道府県に置かれる審議会でございます。

 今回改正に至りました経緯といたしましては、一つには、例えば、不当に新規参入をこの審議会運営等が規制しているのではないか、または、俗な言い方で恐縮でございますが、既得権の擁護として機能している面もあるのではないかといった厳しい指摘や批判があるわけでございます。その事実は承知をいたしておりますが、私どもが知る限り、現状を調査してみました限りでは、そのような批判、指摘に当たる事実は確認はされておりません。

 しかし、私立学校審議会を取り巻く状況としては、そういった指摘や批判もあるのも事実でございます。

 現状を申し上げますと、私立学校審議会の構成の四分の三以上を私立学校関係者が占めるという規定がございまして、また、その委員の推薦方法についても、現状では細かな規定があるわけでございます。そういったことも踏んまえながら、先ほど申し上げた指摘や批判につながっているのではないかと考えているわけでございます。

 今回法改正をお願いしましたのは、そういった批判、指摘とは別の観点から、すなわち、こういった詳細な規定が各都道府県における私学行政を過度に規制しかねないという考え、同じような指摘を総合規制改革会議よりも受けたわけでありますけれども、これを踏まえて改正をいたしました。先生御指摘になりましたけれども、委員については、その構成手続、推薦手続に関する規定を削除いたしまして、教育に関し学識経験を有する者のうちから、都道府県知事が地域の実情を踏まえて任命をする、判断をするということとしたわけでございます。

 そうしますと、都道府県知事の裁量余地が実際広がりまして、都道府県における私学振興に関する行政について多様な意見がこの私立学校審議会の場で反映されることになろうと思います。私学関係者の意見も大事でございますし、私学関係者以外の方々、外部の、いわゆる外の方々からの意見もこの場で開陳されて、知事の適正な行政判断が総合的になされることが望ましいと思っております。

 その場合に、先生、特区のことを御指摘になりましたけれども、今回の私立学校審議会の構成の改正につきましては、特区とは直接関連がないものと思っております。すなわち、私立学校審議会が特区との関連を持ってまいりますのは、都道府県が特区申請をいたしまして、その特区の中で必要な審査、認可について私立学校審議会が関与する場合でございますけれども、その際は、特区における設置主体の特例とは別に、学校の設置認可については従前どおりの運用、適用が想定されているからでございます。

牧委員 わかったようなわからないような答弁であれですけれども、今、私立学校審議会のお話でありますので、ちょっと一点だけ最後に確認させていただきたいと思います。

 今回の法改正に至ったのは、総合規制改革会議の答申に基づいて、この私立学校審議会をより開かれたものにするためということの理解でいいと思うんですけれども、この答申そのものが、第一次答申から昨年十二月の第三次答申まで同じ文言で、「学校審議会をより開かれたものにするために、委員名簿や議事概要等については、各都道府県のホームページ等において公開することを促進するべきである。」このように述べておられます。

 それは、一定の問題意識に基づいてこういった答申がなされて、さらにそれを繰り返しているんだと思うんですけれども、その問題意識を文部科学省としては果たして本当に共有しているのかどうなのか。今回の法案の中にも、ホームページ等に公開するということは書かれておりませんけれども、その辺、いかがなんでしょうか。最後に質問させていただきたいと思います。

河村国務大臣 この問題、御指摘のとおり、既に総合規制改革会議で二度ほど指摘を受けました。平成十三年、平成十五年、第一次と第三次で受けておりまして、このことについては各県においても承知をいたしておりまして、既に公開へ取り組みを進めている都道府県も幾つか出てまいりました。

 そこで、この私立学校審議会、高校以下については県知事のもとに置くものでございますから、これは国が一律に規定すべきでなくて、地方の私学関係者等の意見等々も踏まえながら、やはりそれぞれの都道府県において判断される事柄だと。しかし、このことは指摘をされておるわけでありますから、我々としては望ましいと考えているけれども、一律に義務づけるという形をとらずに、その県の裁量に今回はゆだねるという形にしておるわけでございまして、やはり都道府県において主体的な取り組みをするようにという観点から指摘を受けておりますから、そのことを受けとめた上で、地方の裁量といいますか、審議会の、都道府県において判断をされる事柄というふうに考えて、今回の法律に一律義務としての規定をしなかった、こういうことでございます。

牧委員 時間が来たので、終了いたします。ありがとうございました。

池坊委員長 笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 今、牧議員の方から、いろいろと大所高所にわたった、そもそも、今回のこの改正というものがどういうものなのか、何の目的で、なぜ今なのか、そういった質問があったわけでございますけれども、先ほど大臣、答弁の中で、私学の役割、大変大きな役割を果たしてきた、また日本の教育で大きなウエートを占めてきたというようなことをおっしゃいました。

 その中で、今後、国立、公立、あるいは私立、この私学というもの、それぞれの役割分担があるんだということを大臣おっしゃったわけでございます。確かに高等教育ではそうかもしれませんけれども、私は、特に初等教育の分野では、これからこの二十一世紀の教育を考えるときに、公立とか私立とか関係なく、どういう教育をしていくのか、やはり中身で競い合う、その環境づくりをしていくことが文部科学省の役割ではないかと思っておるんです。例えば、親が通わせたい、子供が通いたい、そう思うような学校がどれだけたくさんできていくのか、このことがやはり特に初等教育においては大事なことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

河村国務大臣 笠委員御指摘のとおり、私も全く同感であります。

 特に義務教育段階においては、国が中心的な責任を持ちながら、その根幹といいますか、義務教育は国が責任を持つという憲法の要請もございます。そういうことを前提にしながら、これは本当に、私学であろうと公立であろうと、まさに子供たちにとって理想といいますか、本当に学ぶ意欲を教える、生きる力をつけてくれる、そして基礎をきちっとつけてくれる、そういう学校が望まれるわけでございますから、これが公立でなければならない、私学でなければならない、そういう考え方は持たないで、それぞれ特色を出してやっていただく、ある意味では競い合ってやっていただく、そういうことがこれからますます必要になってくるのではないか、私もそういう認識を持っております。

笠委員 大臣もそのような思いを持たれているということでございますけれども、これからこの少子化の時代の中で、かなり学校間の競争というものも、これは経営という面からも、特に私学の場合、やはり厳しい矢面に立たされざるを得ない、そして一方、親にとりましても、お金のある人はいいんですけれども、お金のないところは行かせたくてもなかなか私立には行かせることができないという中で、この今の助成の仕方含めてトータルに、もっと大きな観点から、特に義務教育段階でこの私学のあり方というものについて大胆に改革をしていこうではないかというようなお考えというものは、大臣、お持ちでしょうか。

河村国務大臣 特に義務教育段階について考えるならば、その大宗は公立学校にあっておるわけでございます。そういう意味では、公立学校がやはりもっと地域から信頼をされ、そしてもっと開かれたものにしていく。今度コミュニティースクールの話も出てまいりましたが、またこれも実際化できる方向を今打ち出さんとしているわけでございますけれども、そういうもので、同時に、そこの学校で経営している校長のリーダーシップ、あるいは教員の資質の向上、これからはやはりそういう課題が出てきておると思いますね。

 そして同時に、ややもすると心配だと言われる子供たちの社会規範、倫理観、道徳観、そういうものもあわせ持った学校、教育ができるような学校というもののウエートも、かなり私はこれからかかってくるんじゃないか、またそういうことも期待をされている。そういう中で、学校がどうあったらいいかということをこれから真剣に考えていかなければなりません。

 私の口から言うとあれかもしれませんが、そういう意味では、ややもすると、まだまだ詰め込み教育の残渣といいますか、これは大学の入試制度も影響があるんでしょうけれども、塾通いに忙しい状態、これはやはり何とか、そういうことじゃなくて、公教育がもっと責任を持って果たすべき役割がある、しかしそれがなかなかできないことについて、私学へやるという流れも一方では起きております。そういう意味では、やはり公教育がしっかりしなきゃいかぬという思いがございます。しかし、同時に、もっと違う意味での教育を受けたいという私学を選ぶ選択、これも私は必要な道だと思います。

 ただ、教育の機会均等、教育費の問題、こういうことがございますから、私学についても、これは私学助成という形で、できるだけこの公私の格差を狭めながらする努力をこちらもやっていかなきゃいかぬ、やはり多様な選択肢があることが望ましいと考えておるところであります。

笠委員 ぜひとも、今大臣おっしゃったような、やはり私学助成、お金がかかるというところで最初から機会の均等を与えられていない子供たちもいるのが現実でございます。そういった観点もぜひ念頭に置いていただき、この改革を進めていただきたいと思うわけでございます。

 公立、私立関係なく、これからは、教育の地方分権のさらなる推進、あるいは規制の撤廃、そして、それに伴って当然、これは私学といえども、やはり情報公開、説明責任といったものが求められていく時代になるわけでございますけれども、今回のこの改正といったものが、単に、総合規制改革会議から、私立学校審議会の構成がどうも新規参入の障害になっているんじゃないか。あるいは、どことは申しませんけれども、学校法人の不祥事の反省に立って、この機会にこういう改正が行われたというような気がしてならないわけでございますけれども、そういった次元のことなのか。それとも、大臣の頭の中では、これはあくまでも、まだこれからの私学というものを考えていく改革の第一歩であるという位置づけなのか。そこのあたりの大臣のビジョンというものを聞かせていただければと思います。

河村国務大臣 この私立学校法の改正については、私も、今日の私学の置かれる環境、それから少子化時代、また国立大学法人化の流れの中、そして、事前にいろいろ厳しいチェックがあって後は野放しというんじゃなくて、やはり事前はできるだけ自由に参入、それで事後チェックという形、こういう大きな流れがございます。そうした中で、やはり私立学校はどうあったらいいか、私立学校の戦略というものがもっと必要である、こういう視点から今回の改正に入った。

 しかし、それに入るに及ぶについては、例えば、私立学校審議会が四分の三は私学関係者が占めているということになると、ほかとの競争、自由競争から考えたときに、これがまたむしろ歯どめになる可能性もある、十分ある、そういう懸念というのはやはり一回ぬぐい去った上で、それぞれの地域の特性に合わせて、知事の裁量というものに、地方分権の時代であります、任せましょうということが生まれてきた。この指摘については、もちろん、特区をやるときの規制改革の方からも指摘があったことでありますから、こういうものも受けとめよう。

 同時に、御指摘のように、私学についても不祥事が起きた、いろいろな指摘もある、これにどうこたえていくのか、それはやはり会計的なものをもっと透明にしていかなきゃいけない、説明責任がある、こういう視点があったことも事実でありますね。そういうことと相まって今回の改正に及んだ、こういうことであります。

笠委員 先般参考人としておいでいただきました慶応義塾の安西塾長が、今回の改正について、国からの助成の少ない中で多くの人材を育成してきた貧しい私立学校と豊かではあるが制約の多かった国立系の学校、こういう学校のはざまの中で、子供扱いから、これからは一人前の扱いを受けながらも、これからむしろ私立学校が日本の教育の中心になっていく、そういう背景のもとでこの改正案が出てきたんだという認識をしているということをおっしゃいました。まさに私学こそがこれからの教育を担っていくんだと、非常に前向きにこの改正案について受けとめられていたわけでございます。

 これはこれで非常にすばらしいことで、やはりこれまで財政的なハンディというものは確かにあった、しかしそのかわりに自主的な自主性というものがあったじゃないか、ここを生かして、まさしく独立自尊の精神で知恵を生んで、そしてすばらしい学校をつくっていくんだ、こうした私学の基本的な精神にのっとった形で、こうしたことを基本にしながら、いろいろな個性あふれる学校がたくさんできていくことがやはりこの二十一世紀、教育を考えるときに非常に重要なポイントになると思うのでございますけれども、それでは、今回の改正が本当にこの改正で大丈夫なのかどうか、その点についてちょっと個別に、具体的にお伺いをさせていただきたいと思います。

 まずは、先ほどもありました私立学校審議会の構成の見直しについてですけれども、地域における私立学校の参入障害になっているとの指摘もあってのことだということを先ほどもおっしゃいましたけれども、この中で私、一つちょっとよくわからないことがあるんです。「学識経験を有する者のうちから、」という文言が入っておるわけでございますけれども、ここで言う学識経験というのは一体何なのか、具体的にお聞かせください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私立学校法は、先ほど来お話に出ています、私学の自主性を尊重いたしまして、この公共性を高めることを目的としておるわけでございます。都道府県知事の私立学校に対する行政の適正を期するために、私立学校審議会は、学校の設置認可や廃止など一定の事項について知事が意見を聞くこととされている、その立場に置かれておるわけでございます。

 一定の行政処分に関しまして、私立学校の行政の適正を期するために私立学校審議会があるわけでございまして、その構成員につきましても一定の知識または実務に関する経験を有していることが適切であると私どもは考えてございまして、今回、教育に関し学識経験を有する者から選任することとしたところでございます。

 ただ、この「教育に関し学識経験を有する者」という字句の意味するところは大変広く考えてございまして、教育に関して学問上の知識または実務に関する経験を有する者、具体的には学校の教員でございますとか私学の経営者、教育行政の関係者、PTA役員など、幅広いものが該当するものと考えておるところでございます。

笠委員 例えば、実際、学校の先生でもなければPTAで携わったわけでもない、けれども、例えばすばらしい会社の経営者であるとか、教育の現場に身は置いていないけれども、非常に造詣が深いあるいは教育に対する思いがある、そして人格的にもすばらしい方がおられたとして、そういう方をこのメンバーとして起用することはできるんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど御説明申し上げましたように、ここで求めております教育に関し学識経験を有する者、幅広いものを考えておりますので、知事の御判断として、委員御指摘のような方がこの者に該当するという御判断をなさる場合も十分あり得ることだと考えております。

笠委員 私は、よく思うんですけれども、こういう学識経験とかという言葉が非常に多いんですね、教育行政の文言として。今の御答弁のあれであれば、むしろ、学識経験なんという言葉、何かこれに限定するような受けとめられ方をしかねないような文言というのはわざわざ盛り込まなくてもいいのではないかなという気がするんですけれども、それこそ、都道府県知事に任せるというのであれば、任せればいいんです。そうしないと、中には、やはり学校関係者じゃないとだめかなとか、いろいろそういうふうになってしまう。

 だから、そのあたりのことを、むしろ逆に、本当にどこまで都道府県知事の裁量にゆだねられるのか、今回の改正によって。そのことをちょっとお尋ねしたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどの答弁とも重複する部分があるかもしれませんが、ここで申しております「教育に関し学識経験を有する者」につきましては、知事がかなり広範な裁量権といいますか、判断の余地を有していると言うことができようと思っております。

 ただ、一切こういう字句が不要かと申しますと、知事がこの任命権を行使する際に、総合的な判断で人選をします際に、いわゆる一定の適格者を意識して慎重な選任をしてほしいという法意をこの文言に込めておるわけでございまして、意味がある改正なのだと思っておるわけでございます。

笠委員 こだわらせていただきますけれども、私は、それだったら学識人生経験者ぐらいにしていただいた方が、むしろ、教育の現場の人たちでやっていると新しい発想が出てこないことも大変多いんですよ。もちろん素人だけではやれませんけれども、そこがまさに今の閉塞感、なかなか新しい発想が出てこないというところを生んでいるのではないかと思いますので、こういうのは法律文言なんだと思うんですけれども、余り安易にこういう言葉を、ちょっと失礼でございますけれども、何となく耳ざわりはいいんですね、もっともらしいんですけれども、少し考えていただきたいなと思っております。

 次に、公共性をいかに高めていくか。これは、当然ながら、学校の自主性と同時に公共性というもの、これを高めていくことは大事なことでございますので、その点について幾つか御質問させていただきたいと思います。

 まず、理事会の機能の強化の問題。これについて、今回の改正で、理事会が法令上明確に位置づけられると同時に、理事長や理事会の権限が強化されたものだと私は受けとめております。責任がより明確化されるという側面がある一方で、かつての不祥事、事件が起こらないのかとまた改めて、理事長が非常に権限が大きくなり過ぎて、同様の事件が起こらないのかという危惧もあるわけです。

 私学といえども、理事長の私物化というものは許されるわけはございませんので、学校法人としての公共性というものをいかに確保するかが求められると思うんですけれども、これに対するチェック機能が評議員会なのか、それとも監事制度なのか、ここがちょっとよくわからない部分がありますので、そこのところを御説明していただけるでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今回御審議をお願いしております改正案におきましては、学校法人の理事会制度、監事及び評議員会の制度に関する規定を整備いたしまして、理事会及び理事長の経営責任及び監事や評議員会のそれぞれの権限や役割分担を明確化しておるわけでございます。これをもって学校法人の管理運営の改善、内部チェックの適正化を図ろうとするものでございます。

 先生御指摘の一部学校法人の不祥事への対応としましても、今回の法改正の整備を踏まえた運用が適切になされますれば、相当程度その対応策として効果を発揮すると期待されると私どもは考えておるわけでございます。

 具体には、監事の選任につきましても評議員会の同意を要することといたしまして、例えば、理事長が独断的に監事の選任をすることがないように今回はしておるわけでございますし、あわせて、内部からの監事の登用だけではなくて、外部からの監事の導入も義務づけておるわけでございます。さらに、評議員会の役割、権限についても明確化を図っておりまして、監事、評議員会双方が、いわば理事会、理事長に対する内部チェックとしての適切な役割を果たすことを期待しておるわけでございます。

笠委員 今おっしゃった中で、先般の参考人をお招きしての質疑の中でも問題になった点、御指摘された点があるわけでございます。この監事制度、今、評議員会の同意を得て初めて理事長が選任するというお話があったわけですけれども、ただ、理事会が監査を受けるわけですね、そして、その監査を受ける人間が監査をする人を選ぶという基本的な構図自体は全く変わっていないんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 監事の選任についてお答えをいたします。

 現状の監事の選任方法につきましては、学校法人によってさまざまでございます。評議員会選任という例もございますし、理事会選任というところ、それ以外のところもあるわけでございます。

 監事につきましては、今回の法改正においては、委員御指摘のように、何より監査される側が監査する者を選ぶだけの制度にならないように考えまして、今回は、評議員会の同意を前提として理事長が選任をするという規定に調整を図ったわけでございます。

 評議員会だけで監事を選ぶということも例としてあることを申し上げましたけれども、評議員会も寄附行為の定めによりましては決議機関としての機能を有する場合がございますので、評議員会だけで監事を選任することがすべての問題点をクリアできるというわけではございませんで、評議員会と理事会、理事者側、双方が監事の選任について適切に関与し合う、総合的にかかわり合うことが望ましいのだと私どもは考えておるわけでございます。

笠委員 実際にはうまく機能している学校法人というものもたくさんあるんでしょう。しかし、問題は、これが機能していないところがやはり不祥事等を起こすわけです。であるならば、今おっしゃった評議員会、議決機関にいっそのこと格上げをするとか、あるいは評議員会が選任をすることにするというような形にこの法自体はした方がすっきりするんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 学校法人の制度設計については、いろいろのお考えが成り立ち得るかと思います。

 現状と今回の改正法案でお願いをしておりますのは、決議機関、学校法人としての意思決定とその執行に責任を負うのが理事会とその代表である理事長であるという位置づけをしつつ、諮問機関として評議員会、現行制度がそうでございますが、理事長は必要な事項、重要事項については意見を必ず求めなければならない諮問機関としての評議員会を位置づけまして、双方が学校法人経営に責任を持つ仕組みになっておるわけでございます。監事は別途、その監査の適正を期す観点から、理事会、理事長をチェックするという仕組みになっておるわけです。

 御提案のように、評議員会を議決機関とします場合には、理事会との関係が、その決議機関が重層的に存在するようなことにもなりまして、相互の機関の調整がなかなか難しくなってまいると思いますし、現在の決議機関としての理事会、原則諮問機関としての評議員会、監査を機能する監事、三者がそれぞれの役割を果たしていくことで法人経営の健全化、適正化が図れるものだと私どもは考えておるわけでございます。

笠委員 三者が本当に健全に、それぞれに役割分担をして機能すればいいんですけれども、要するに理事会、ひいては理事長、この権限が強められるということは、結局は、例えば評議員会であれ監事であれ、理事長の意を酌んだ人ばかりで周りを固めていくこともこの法案ではできるのかなという気が私はしているんですね。それは、全くそれぞれの独立性というのがこの法律で確保できていると思われますか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 監事の選任につきましては、先ほど来申し上げておりますように、評議員会の同意を条件として理事長が選任をするといたしております。この同意は、評議員会が同意をしない限りは理事長が選任をできませんので、理事長が独断的に監事を任命するということはできない仕組みになってございます。

 この評議員会の同意の仕組みが健全に機能すれば、もちろん法律の改正がなったからすべていいわけではありませんで、その趣旨を踏まえた運用面の確保が何より大事でございますけれども、そのとおり機能いたしますれば、先生御心配のような点については、かなりの効果、対応策になり得るのだろうと思っておるわけでございます。

 評議員会についても、今回の法改正によって位置づけ、役割分担が明確化されておりますので、かなり理事長に対するチェック機能を果たし得ると思います。理事長は評議員会に、いわば形式的な、形骸化した評議員会開催、運営ではなくて、必要な情報を提供することによって、評議員の一人一人が理事長に意見をより言いやすくなる、責任を持って経営に参画できるような仕組みも今回盛り込んでおりますので、何より運用面が大事でございますけれども、それぞれの三者が、チェック機能を働かせる、またはチェック機能を受けるような仕組みの運用が期待されるものと考えておるわけでございます。

笠委員 私は何度聞いてもわからないんですけれども、理事長は評議員の同意だと。だから、理事会と評議員会の、これが本当に健全な関係であればいいけれども、そこで物すごい力を持った理事長というのがおられて、同族ではないけれども、自分の意向に従ったような人間ばかりで固めることだって、特に小さな法人になればなるほどできるわけですね。

 そうすると、私は、例えばこの監事というものをもっと独立させたものにするのであれば、理事長の評議員会の同意というのはありますけれども、例えば完全に外部からもっと独立的に入れさせるような、何かもう一歩踏み込んだような制度というものを考える必要があるのではないかなと。あるいは、常に一人は常勤で置くとか、中のことはわからないですよ、監事の方というのは。恐らく、常勤で置いておられる方というのは、大きいところは別としても、ほとんどないんじゃないですかね。

 だから、そういう中で持っていかないと、やはり本当の大きな大学ぐらいになってくると、情報公開も進んでいますし、そんなに私物化するようなことはできないんですよ。問題は、中規模であったり小さいところ、こういうところの独立性というものが本当にできてくるのか、理事長の私物化というものが避けられるのか、そこが私はポイントであると思っておるんですけれども、それについてはいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今回の法改正が実現したといたしましても、先生おっしゃいますように、運用面でいろいろな心配があるではないか、全部払拭できるのか、こういう御質問でございましたら、何より運用面こそが大事でございまして、私どもは法改正の趣旨をいろいろな機会に学校法人関係者に十分徹底をしてまいりたいと思っております。

 先ほど申し上げましたけれども、制度を改正すればすべての課題、不祥事等に対応できるわけではございませんで、制度の趣旨を踏まえた運用面が何より大事でございますので、その趣旨は十分に図ってまいりたいと思っております。

 特に小規模法人での理事長の独断性の御心配がございましたけれども、現在も学校法人制度としましては、理事会の構成メンバーが、それぞれ学校長理事、評議員理事、いわゆる学識経験者理事、理事会の構成もバランスよく構成されるような、選出されるような仕組みが現行の法制度でもとられておりまして、そしてその中で理事長が互選されるわけでございますから、理事長の独断というものをチェックする機能は理事会の構成自体にもあるわけでございます。

 先ほど申しましたように、評議員会にも評議員会から選ばれる理事がございまして、評議員会自身にも、職員評議員、OB評議員、学識者評議員という仕組みになってございまして、現行の学校法人制度自体が、理事会の制度、評議員会の制度でチェック機能を果たすことが想定をされておるのでございます。

 ただ、何より運用が大事でございますので、私どもはしっかりその趣旨徹底を図ってまいりたいと思っておる次第でございます。

笠委員 確かに運用が大事なんでしょう。

 であるならば、ひとつ、私、監事の職務の中に、学校法人の業務または財産に関しての不正行為、寄附行為に違反する重大な事実があった場合の報告義務というのがございますね、これについて、「所轄庁に報告し、又は理事会及び評議員会に報告すること。」となっているんです。ちょっと確認したいんですけれども、これは、理事会、評議員会に報告をすれば、例えば大学、短大である場合には、これは当然所轄庁は文部科学省ということになるんでしょうけれども、ここには必ずしも報告をする義務はないということでよろしいんでしょうか。

加茂川政府参考人 委員御指摘の監事の報告先としましては、所轄庁または理事会及び評議員会でございますので、法律上、必ず所轄庁に報告をしなければならないという規定にはなってございません。

 ちなみに、これは現行制度も同様に、監事が今の報告について所轄庁に必ず報告をしなければならないという制度にはなっていないものを引き継いでおるものでございます。

笠委員 現行制度はどうでもいいんですけれども、よくしていくための改正ですからね。

 私は、やはりこれだけ自主性を逆に重んじるがゆえに、何か重大なこと、そのためにこれは書いてあるんですよね、違反する重大な事実があった場合のと。そういうときというのは、当然ながら、やはり文部科学省なり都道府県なりがこういうことが起こったんだということをきちんと把握しなければ、ともするとそれが隠ぺいされてしまう、そういうことが、これは教育の分野に限らず多々あるわけですよ。運用は任せたっていいんです。けれども、何か起こったときには、常にやはりそれを把握していかなければいけないということが私は当たり前のことだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 御指摘のように、監事が不正の点を発見した場合において、理事会、評議員会のみならず、必要に応じて所轄庁がその情報に接している必要があるというのは、一般論としてはそのとおりかと思います。

 ただ、今回の法改正案をお願いしております規定の仕方を現行どおりにしておりますのは、私立学校の自主性を尊重するという私学法の精神を踏まえまして、所轄庁による関与をできるだけ抑制するということを踏まえたものでございます。各学校法人による自主的な改善がまずは期待をされておるわけでございます。

 仮に、すべての事項について監事が不正の点を発見したと判断をして報告しなければならないといたしますと、所轄庁の権限の及ばない事項、本来的には理事会または評議員会が関与すべき事項についても報告をすることになって、合理的ではない面が出てくるのではないかと危惧をいたすわけでございます。

 したがいまして、必ず所轄庁にもあわせて報告することを義務づけるのではなく、内容に応じて監事が、もちろん所轄庁と理事会、評議員会双方に、またはいずれかに報告する判断をゆだねておるわけでございます。

 なお、今回の法改正では、別途、この不正の点の発見における報告とあわせまして、監査報告の作成義務を監事に課しておるわけでございます。あわせて、この監査報告を外部の閲覧にも供することとしておるわけでございまして、所轄庁としましては、必要に応じてこの監査報告書の提出を求めることも可能でございますし、一般の報告徴収ということで学校法人に働きかけをすることも可能でございますので、実態面としては先生御指摘の点についてかなり対応ができるのではないか、こう思っておるわけでございます。

笠委員 大臣にお伺いしたいんですけれども、私は、これは何も全部報告しろというより、要するに、重大な事実があった場合ですね、寄附行為に違反する重大な事実、やはりそういうところを、やはり自主性は大事ですけれども、一方で透明性というものも大事です。

 これは、ましてや、今度、役所にとっては危機管理にもつながる問題であると私は思います。よく、後でマスコミに内部から何かリークされて記事に出て、初めてそんな重大なことが起こっていたなんて知ったと。これはまさに大臣の責任問題にも発展しかねないような事態が起こらぬとも限らない。

 そういうことで、なぜこれを義務づけることが、すべて報告しろということじゃないですよ、まさに寄附行為に違反する重大な事実ですよ。それくらいのことは所轄庁として、あるいは都道府県であれ文部科学省であれ、報告を受けることは私は当たり前のことだと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

河村国務大臣 御指摘の点、監事が不正なことがあったと。この場合には、理事会、評議員会または所轄の庁に報告する、こうなっております。

 私立学校の自主性を尊重するという観点から、所轄庁による関与はできるだけ抑制する方向、これは私立学校法の基本の概念にあるわけでございます。そういう点では、一義的には学校法人が自律的に改善をしなきゃいかぬ、こういうことになるんだろうと思います。

 しかし、だからといって、すべての事項について報告しなきゃいかぬというようなこと、これは何でもかんでも皆報告することになりますから、このバランス、今御指摘の点は、非常に後で大問題になるような重要な事柄ということでありますから、やはりおっしゃるように、内容によって、理事者側の方が判断をした上で、これは所轄庁に届けるべきものだということになれば、そこで判断をしていただこうということで、この法律上の考え方は、必ず所管庁に報告する義務づけではなくて、内容に応じて、いずれか、あるいは両方に報告する、こうなっておるわけでございます。

 また一方、監事は監査報告書の作成が義務づけられております。その中に外部への閲覧ということも可能になるようにしておるわけでございまして、そういう意味で、問題の内容によって、必要に応じて監査報告書の所管庁への提出もできる、また提出を求めることも可能になってくるということでございます。

 そういうことで、文部科学省としても、全くこれに対して報告を聞かないままに過ぎ去るとか、そういうことのないような仕組みにはなっておりますので、今回のこの法律改正がそういうものであるということを、今御指摘のような点については、報告すべきかどうかの判断は一義的には私学側にあるわけでありますけれども、しかし、内容によって我々のところにもきちっと届け出ていただく、この法律の精神というものをやはりきちっと周知徹底するように、成立後、各学校法人に周知徹底いたしたい、このように思います。

笠委員 今のテーマで、もう一つ、ちょっとこだわらせてもらえば、確かに、先ほどから部長も答弁されていたように、理事会、評議員会、監事制度、これが本当に健全に機能していれば問題ないし、私は、それは、ほとんどの学校では、そういった形で今もやっているところが多いんだと思うんです。

 ただ、一方で、こういった透明性というものが守られていない、あるいは中で一部の人が私物化したようなことがあると、こういうときこそやはり文部科学省の出番、私は、これからちょっと数少なくなると思うんですけれども、そのうちの大事な出番だと思うので、やはり何かが起こったときには常に危機管理としてそうしたことを把握できる体制というものは整えておかないと、これは、そういうことを起こすところほど必ず公にしないんですね。日ごろからちゃんとオープンにしているんですよ、健全なところは。

 だから、やはりそういったところもきちんと危惧をしていかなければ、この改正をしても、結局は、それが、多分ほとんどの学校はこの改正案に沿ったようなことを、この前の慶応の安西塾長もうちはもうやっていますよと言っておられました。またそうでないところへ向けたこの改正案でもあると思いますので、しっかりとそこのところを今後とも検討していただきたいと思います。

 それでは次に、財務情報の公開についてお伺いをしたいわけでございますけれども、この四十七条第二項で、在学者その他の利害関係人からの請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならないとされているわけです。ちょっと説明をいただきたいんですけれども、この利害関係人というのは具体的にどういう範囲を示すんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今回、財務情報等の公開の請求ができる者として、法律上は「私立学校に在学する者その他の利害関係人」という規定を設けさせていただこうとしておるわけでございます。

 具体的に想定をしておりますのは、私立学校に在学しておる学生生徒及びその保護者でありますとか、具体にこの学校法人と民法上の契約関係に立つ債権者もしくは抵当権者等、そういった法律上の権利義務の関係に置かれる人たちが利害関係人に当たると一般には考えておるところでございます。

笠委員 例えば、この財務情報の公開というものは、一つの説明責任を果たしていくということと同時に、これからいろいろな学校がたくさん競争していく中で、特に私学の場合は、ではどの学校を受験しようかなというときに、受験生の方あるいはその親御さん、そうした方々がこうしたものも、この学校が健全かどうか、これからはやはり選択の判断材料の一つになってくると思うんですけれども、こういう人は利害関係人ということにはなるんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私立学校を選択する段階にある学生等もしくは保護者がどの時点に至ったときに利害関係人に当たるかにつきましては、少々微妙な整理が必要かと思います。

 単にその私立学校に入学を希望するというだけではまだ、先ほど申しました具体的な権利義務関係もしくはこれに近い関係にあるとは言えないと思います。入学を希望いたしまして入学手続を進めていく、受験料、検定料を払うといった何がしかの法律上の関係を持った時点では明らかに利害関係人に当たると思いますけれども、具体にどの時点に至ったときに利害関係人に当たるかは個々のケースに即して判断をすべき事柄ではないかな、こう思っておるわけでございます。

笠委員 この点につきましても、先般の参考人質疑の中で伊藤参考人が、もう一つ、利害関係人という問題と、正当な理由、これも密接に絡んでくると思うんですけれども、この正当な理由というのが一体何なのか、そうした点について、法律の中に明記しないまでも、例えば運用細則とか運用規則とかそうしたことで少し具体的な事例を挙げることを検討するのもいいのではないかというような御指摘をされていたんですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 ただいまの利害関係人の範囲、さらに委員御指摘のございました正当な理由、閲覧を拒むことができる正当な理由の事項につきまして、具体的にはそれぞれケース・バイ・ケースで学校法人が判断することでございますけれども、何か目安が必要ではないかという意見も確かにございます。参考人の意見のやりとりの中にもあったかと思っております。

 そこで、私どもとしましては、利害関係人の範囲あるいは閲覧を拒否できる正当な事由の例等につきましては、この法律案を御承認いただきました後、成立しました後の施行通知等によって一定の目安を示すことで学校法人等を指導してまいりたいと考えておるところでございます。

笠委員 それはひとつよろしくお願いをいたします。

 私、やはり今の情報公開の時代に、これも、この前、安西塾長、慶応のような大学、あるいは多分早稲田なんかでも、大きな大学はそうなんでしょうけれども、ほとんどの情報というものをしっかりとホームページ等に載せてもう公開しているんですね。だから、在学者その他の利害関係人からの請求があった場合にはとか、あるいは正当な理由がある場合とか、何となく今の時代から見ると、もう少し透明性を持たせて情報公開をしっかりしろというような形にした方がいいのではないかなと非常に思うんです、これは公開の仕方になるんですけれども。

 まずちょっとお聞きしたいんですけれども、先ほど私が申しましたように、例えばホームページとかあるいは広報誌、こうしたところで全面的に財務情報の公開というものをしているような学校法人というのは大体どれくらいあるんでしょうか、私学において。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私ども、毎年、学校法人の財務の公開状況に関する調査というのを行っておりまして、最新のものは十五年十月一日現在でございますが、私どもが調査いたしましたのは文部科学大臣所轄のいわゆる大学法人でございますが、そのうち、公開が随分進んできておりまして、何らかの形で公開をしておるものが約九六%ございます。

 公開方法についても調べておりますが、そのうち、御指摘のございましたインターネットを使っていわゆるホームページ上に掲載をしておるものが、大学、短大合わせて約一八%ございます。

 全体の九六%に比べますと、この二割弱は必ずしも十分な数字ではないという見方もあるかもしれませんが、今回の財務情報公開につきましては法律上共通に義務づける最低限の内容を規定させていただきまして、この義務に加えて、より積極的な対応をとること。例えば、大学法人で既にホームページ上であらゆる情報を提供している例があるではないかというお話がございましたが、そういったところが現にございますので、そういった積極的な対応をより進めるための指導は今後とも進めていきたいと思っておりますし、法律上は私学法の精神を踏まえて最低限のものを規定する、それに加えて、より積極的な取り組みを多くの法人には期待したいという考え方を私どもは持っておるわけでございます。

 なお、大学校法人、大きな法人についての御指摘があったわけでございますが、私立学校を設置しております学校法人の実態としましては、一方に、例えば幼稚園一園しか設置をしていないごく小規模の法人もあるわけでございまして、そういった、規模も多様な、または実態も多様な学校法人の実態を踏まえながら今回の財務情報の公開についての制度調整をしましたために、先ほどの利害関係人でございますとか閲覧を拒否できる正当事由についての規定を設けさせていただいておる次第でございます。

笠委員 今の確認なんですけれども、大学法人、その九六%というのは、これは閲覧も含めての、閲覧程度のことしかやっていないことも含めての九六%ですよね。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今の九六%は、何がしかの形で財務情報を公開している、形態はさまざまでございまして、閲覧のものもございますし、インターネット上のものもございますし、いわゆる学内、広報誌等、さまざまなものを通じていわゆる財務公開をしているものを広くとらえたときの数字でございます。

笠委員 ことしから国立大学が国立大学法人としてスタートをするわけですけれども、この国立大学法人の財務関係の情報の公開というものの義務づけというのはどうなっているんでしょうか。

遠藤政府参考人 国立大学法人でございますけれども、基本的には、国からの運営費交付金ということがございますものですから、財務情報につきましては、一つには、法律上、貸借対照表、損益計算書等々の財務諸表を毎年度、事業年度ごとに作成をいたしまして、文部科学大臣の承認を受けるということが法律で決められております。さらにまた、法律におきまして、こういった財務諸表につきましては、官報に公告するとともに、事務所に備え置くことによりまして一般の閲覧に供するということにされてございます。

 また、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律、これは国立大学法人にも適用されるわけでございますけれども、これらの財務諸表につきましては、インターネット上のホームページに掲載するなど、適時に、かつ国民が利用しやすい方法により提供するということが義務づけられているということでございます。

笠委員 先ほど御指摘ありましたけれども、確かに、小さな幼稚園でありますとかそういうところは、これは負担もかかる話ですし、あるいは一部プライバシーにかかわってくるようなデータがそこから読み取れてしまうというような懸念というのもあるのかもしれません。

 けれども、今、例えば国立の方の大学が今度のこの法人化に伴ってホームページ等できちんと公開するのであれば、やはりせめて大学ぐらいはそういったもう一つ踏み込んだ指導というか、これを義務づけてもいいんじゃないかなと私は思うんですけれども、大臣、そこのあたりの、大学、大きな学校法人の情報公開、透明性、これについての大臣のお考えというもの、いかがですか。

河村国務大臣 御指摘のように、小規模法人はかなり負担になるという話、そうすると、大規模法人、より積極的に求めたらどうであろうかという御指摘でございます。

 これは、この法案においては、閲覧の対象者の決め方とか、いろいろな、正当な理由によってはある場合には閲覧を拒むことができるというような格好にしておりますし、公開の対象となる財務書類、各学校法人便宜を図るというようになって、様式も示すというようなことになっておるわけでございまして、これはすべての学校法人に共通の義務づけということを考えておるわけでございます。

 これを小規模法人と大規模法人を分けるかどうかという問題になってくると、これはやはり大規模法人、複数の学校を持っているとか、そういうところについては積極的に判断をしていただいて情報公開を行う、これは大きく私は期待をされている部分だと思います。ただ、それをこの法律上どこでどう仕切るかという問題もありましょうし、これを一方的に法律上にどれ以上とうたうということについては、今回の法案では考えていないわけでございますが、今後、より積極的な対応がとれるようにということ、これについては最低限の義務づけということがあるわけでありますから、それにのっとって各法人に期待される部分に対して対応してもらいたい、現時点、そう考えておるわけでございます。

 さっき答弁いたしましたように、平成十五年においても、広報誌、ホームページ、広報誌ではもう七割になっておりますし、大規模学校においてはほとんどということでございます。そういうことで、これが積極的に進むように、これからさらに指導をしていきたい、このように考えております。

笠委員 ひとつよろしくお願いをいたします。

 今、本当にさまざまな角度から、特に高等教育になってきますほど、やはり大きな法人になれば、かなりこれからは、あってはいけないんでしょうけれども、どうしても経営が行き詰まってしまうような学校法人というものもやはり出てきかねない。そういう厳しい競争の時代にもなってくるときに、学生が選ぶときに、そういった健全な経営、運営というものがなされているのかどうか、そういった判断をする基準としても、学校を選択する材料としても、この情報公開というものがやはり一番大事なことである。問題がなければ、みんなオープンにするわけですから、そんなに抵抗はないと思うんですね、本来。

 あと、同時に、私も余り詳しくないんですけれども、この財務関係の書類というのは非常に難しいですね、ぱっと数字だけ見ても。だから、やはりこれがわかりやすく、どういう学校の運営の方針があって、そしてそれに基づいてどういうお金の使われ方がしているんだ、あるいは資産を含めて、そういったところが非常にわかりやすく、見ればわかるように、それは閲覧でぱっと見ろと言われても、公認会計士さんとか、そういう人でも連れていけばぱっぱっとわかるんでしょうけれども、そういう意味で、そこをしっかりと調べてみたいな、そういう情報を得たいなと思っても、なかなか難しいという懸念もありますので、そこはぜひともしっかりとお取り組みをいただければと思います。

 そこで、今幾つかの問題を指摘させていただいてきたわけでございますけれども、ここで私も、最初、なぜ今私学か、私立の学校というものをどうやっていくのかということに、ちょっともう一度戻ってみたいんです。

 先ほどもちょっと牧委員の方からもあったんですけれども、今特区でいろいろなことを進められているというところで、NPOの法人、あるいは株式会社がなったり、先ほど大臣は、最終的には、こういうことが、いいものはどんどん全国でできればいいんだというようなことをおっしゃいました。

 私、今回のこの私立学校法の一部改正も、大きな目的でいえば、学校の自主性と同時に、いろいろな学校ができてくる、それこそ大臣がおっしゃった特色ある学校、そしてそれがまたニーズにこたえられていく、それがやはり私はこの目的だと思うんですね。

 この学校の設立をしていく自由化というものについて、ちょっと大臣のお考えを聞かせていただけるでしょうか。

河村国務大臣 御指摘のように、特区でNPO法人、株式会社が出てまいりました。そのときにいろいろな角度から問題になったのでありますが、日本の学校のあり方、既に御案内のとおりで、学校主体というのは、国、それから地方公共団体、学校法人、この基本線があるわけですね。この基本以外の学校ということになってくるわけでありますから、基本的な認識からいえば、それによっていわゆる教育の公共性がどうやって担保できるか、それからよく言われる公共性、継続性、安定性がどういうふうに担保できるかということが、非常にこれは議論の中で問題になった点なんですね。

 それで、株式会社であれば、確かに、経済的な面はかなり期待ができる、資金集めもしやすい、しかし、今度は、公共性ということになると、これが利益を生むような形になってきて、今度の株式会社は、それはすべて還元するんだということですから、本来の株式会社からいうと株式配当じゃなくて、教育へ全部還元させようという意見が出たというものですから、これは新しい形の株式会社ではないかと申しました。

 そして同時に、私学助成という問題が一方ではある。これが、NPO法人の場合にも、今の法律からいうと、今の学校主体でないところに私学助成ということは法律上非常に問題があるということもあって、この辺が非常に問題になったものですから、むしろNPO法人は、学校設立の条件を緩和する、財源的な問題は緩和するので、まず学校法人をお考えになったらどうですかという指導もした例がございます。そのとおりに今やっていただいておる部分もございます。

 そのこともあって、特区でやる場合にどうあったらいいのかということを考えておりますけれども、しかし、この基本線に沿ってやれるところについて、そして、生徒、そこで学ぶ人たちにとってこれまで以上の教育が本当に行われるんだということが実証できれば、これはむしろ、本来の学校法人、私学でいえば学校法人側もそれを大いに参考にされたらいいんだということになっていくでしょうということもあって、今回、特区で株式会社等の取り組みをされているわけですから。

 私は、そういう意味では、教育においていろいろな選択肢がある、そういう方向ということを何も避ける必要は全くないので、いろいろな取り組みをしていただく中で、本当に学生生徒にとって大いに成果が上がるものである、教育効果があるものであるということができれば、これは、今おっしゃるように、全国に広めていったらいい。学校法人側も、見習うべきこと、それで大いに啓発を受ける部分があればそれを取り入れられたらいい、それは本来の学校法人のあり方を変えていかなきゃいけない問題にもなってくるかもしれない、そのぐらいの受けとめ方で、今回のNPO法人、特区法人も我々受けとめておるわけでございます。

 しかし、公教育、教育の成果、そういうものをやはり見させてくださいという点だけは強調しているというのが現状であります。

笠委員 学校を設立するというときに、形態として、確かに株式会社、NPO、そういうのもあるんでしょうけれども、あと、要件としてなかなか、小回りのきくというか、例えば、今やはりみんな塾に行ったり、あるいは昔の寺子屋、そうしたようなところに非常にいい教育がされる場合もあるわけですね。そうしたら、私は、特にこういう私立の場合は、例えば、広い校舎もないけれども、駅前で、駅から歩いて一分ぐらいのところに、各学年十人ぐらいの、本当にきめの細かい教育をするような学校というものの設立が法人として認められてもいいんじゃないか。むしろ法人格を与えてもいいんじゃないか。今、もちろんできないんでしょうけれども、その点についてはいかがでしょうか。

河村国務大臣 基本的には、そうすると、いわゆる塾でもやれる、こういうことになっていくわけですね。

 こういう考え方をどういうふうにこれから取り入れていくかということは、やはり教育の基本線に立ち返って、まずは考えなきゃいかぬだろう教育の機会均等ということを考えれば、そこにおける教育費はどうなのかとかですね。しかし、現実には、今、学校不適応児等に対してはNPO等でそういう対応もしておられるわけです。

 しかし、単なる学力だけをつける、入試に強いためだけの学校というもの、それでいいのか。やはり学校の教育の中には、人格の完成という教育基本法に基づいた大きな一つの基本、バックボーンがあるわけですね、日本の教育の。こういうことも踏まえて学校というものを考えていかなきゃなりませんから、それなりのやはり設備もあり、そういうことが公教育ということになれば必要ではないかという観点がございますので、ただ教室でとにかく授業が受けられればそれでいいんだというわけにはいかない部分がそういうところに出てくるだろうと思います。

 しかし、できるだけ、今の既成概念だけでは、公教育は現実にいろいろな問題を起こしていますから、それをやはり受けとめながら、どう学校が開かれて、どうあったらいいかということは、これからも絶えず真剣に取り組まなきゃいけない課題だと思いますね。

 ただ、基本線はやはり学校教育法という法律に基づいた、教育基本法という根幹がありますから、それからずっと敷衍しながら教育というものを考えていく、これはやはり教育センターである文部科学省としてはそのような概念というのは持たなきゃいかぬ、こうは思っております。しかし、いろいろな皆さんの希望、要求、そういうものにどう対応するかということも絶えず文部科学省側も考えていく、そういうことでなければいけないというふうに思っています。

笠委員 時間が参りましたので終わらせていただきますけれども、最後に、私は、今やはりとにかく、最初に申し上げました義務教育における公立、川崎、私選挙区にしておりますけれども、問題が起きるのはほとんど公立です。だからこそ、私自身は私立に、私学に非常に期待をし、またそこに引っ張られるように公立の学校というものが、それこそ、内容を含めてしっかりと、これから多分、今の大臣のお言葉では、規制緩和も含めて、そこもしっかりやって取り組まれるということでしょうから、教育の中身で切磋琢磨をするような教育、ぜひそういう時代にしていただきたい、そしてまたそういうふうにしていかなければいけない、そのことを一言申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 平野博文君。

平野委員 民主党の平野博文です。

 ちょうどお昼の時間にかかって申しわけなく思っておりますが、三十分でございますので、大臣、少し我慢をいただいて、御答弁をいただきたいと思います。

 そもそもこの私立学校法の一部を改正する、こういうことになり至った背景というのは当然あるわけだと思いますが、一番大きな背景というのは、私、承知をしておりますのは、例えば帝京問題でありますとか酒田短大でありますとか、そういう学校における不祥事の問題を含めて、そういうことを背景にしながら一つのこの法律の改正になったのか。これは背景になった大きなポイントだけ、一言で結構ですから、お答えをいただけますか。

河村国務大臣 国立大学が法人化される大きな流れの中、それから、事前規制よりも事後チェックへ、こういう流れの大きな中で、やはり私学もどういうふうに変わっていくかという時代を迎えている少子化の時代、やはり各私学は戦略性を持たなければいかぬということもございます。そういう観点と相まって、もっと私学が透明性を持つべきだ、不祥事もあった、こういうことが一体となって今回の改正に至った、こういうことだと思います。

平野委員 これは通告しておりませんが、この前の参考人の方々のお話にもありましたが、例えば、大学にかかわる、短大も含めてでありますが、この日本の社会を構成している方々の、教学の鞭をとられた、いわゆる昔で言う国立と私学の比率で言ったときに、私学を出てこの社会を構成しておられる方の比率は大体どのぐらいになるんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今手元に委員の御質問に的確にお答えする資料を持ち合わせておりません。

 ただ、例えば大学レベルで申しますと、私立学校が学生生徒の割合で既に七五%に達する率を占めておるわけでございます。もちろん、これに至るまでの歴史的な経緯を積み重ねて、初めてその人材を輩出したトータルになるのだと思いますけれども。ですから、まだ、全体のその率が今申した率にまで達しているとは思いませんけれども、現状から見ますときに、かなりの率になっていることは確かかと思うわけでございます。

平野委員 この社会を少なくとも構成する、立派な方々も含めて、七五%の方々が何らかの格好で私立学校に、極端に言えば、大学というところに限定してでも七五%の人がそこで学び、この社会の構成員になっている。これはもう事実だ、こういうことになるんですね。

 そういたしますと、私立学校というのは一体何なのか。逆に言いますと、これだけの社会を支えている人材を輩出している学校といいますと、公共性というものが非常に増してくるのではないか、こういうふうに思うのです。私立学校とは一体何なのかということと、もう七五%の人が私立学校を出ているということから考えますと、この社会では当然、私立学校といえども公共性の立場という性格が非常に高くなっているというふうに私は思うのですが、どうでしょうか、大臣。

河村国務大臣 平野先生言われるとおりで、七五%ということは、最終の大学を出るところの段階ですね。そういう意味では、スタートの時点における、まず幼稚園で八割というスタートをして、途中で義務教育段階に入ってきますと、これがもう圧倒的に公立で占め、そして高校で私立が三割入ってくる。それから、小中になりますとまさに数%の段階に入ってくるということから考えますと、これがまさに公私の理想的なバランスなのかどうなのか、これは日本独自のとり方で今日来ておるわけでございます。しかし、最終的なところでは私学、そういうことを考えますと、国民のどの家庭においても私学に、少なくとも大学まで出したことを考えたら、私学に何らかの形で関与しない家庭はまずないと言っていいぐらいの大きな役割を果たしてきていることは間違いございません。

 そういう意味で、やはり私学振興というものを考えていかなければならぬと思いますし、今求められているのは、私学に対する期待というのは、建学の精神というのがあって、そして、国公でないやはり個性豊かな教育が行われるという期待があります。そういう面があり、同時に、教育は公の精神において極めて高いものがあるということですから、やはり公共性も必要でありましょうから、その裏づけとして学校法人制度の中で運営が行われている、これが私学の特質であります。

 したがって、今回の改正に基づいても、やはり私学側も、その公共性の役割の大きさを考えながら、今回の改正の趣旨を理解していただいて、国民に対してオープンで、そして、その役割をきちっと国民にわかるようにしていただいて、振興に努めていただきたいという願いもございます。

 しかし、それに対して、やはり我々の方も、国の方も、これに対してはきちっとした対応をしていかなければいけない、こういう時代が来ておる、こういうふうに思います。

平野委員 大臣、お答えになられたことはそのとおりだと思います。私はやはり私学である以上、建学の精神、学問の自由等々の大学の自治についての自主性をしっかりと担保しつつ、公共性という大きな役割の中にしっかりと調和をした形が一番好ましいんだろうというふうに思います。

 これからもますます私学の持つ役割というのは大きいと思うわけでありますから、したがって、今回の法律の改正の一番大きなことは、私は、帝京大学のときにもこの国会でも質疑をさせていただきました、そのときに文科省の言い分はどういうことだったか。私学に対して行政的な介入はできません、こういう言い方でありました。したがって、疑惑についてもなかなか重い足取りでございました。したがって、是正命令が出せなかったということで、法を改正して是正措置をつくった経過がございます。

 しかし、私は、是正措置をつくったからいいということではなくて、本来は、先ほど申し上げましたように、実態が十分に把握でき得る状態にしておくことが一番大事な視点だと思うのであります。これは所轄官庁が掌握でき得るということではなくて、この社会がしっかりと私学のあり方について実態が把握でき得る環境整備をつくることが、私本来の趣旨だと思うんですが、大臣、それはイエスかノーかで結構ですが、お答えいただけますか。

河村国務大臣 同感であります。

平野委員 ここからが議論に入っていくわけでありまして、したがいまして、そういうお考え、また同じ認識に立っていただいている、こういうことを考えていきますと、まず一つは、私学に入るときに、大きな問題でもございましたが、合格前に入学寄附金を取る、こういうことについて、この国会でも帝京大学のときに大きな問題になったわけであります。私もその点については質疑、追及をさせていただきました。

 しかし、その議論のもとにあったわけでありますが、実は早稲田実業初等部の問題として、早稲田の方がおられたら大変申しわけなく思いますが、寄附金を集めていた、こういうことがあったわけでありますが、この寄附金集めについては適正であったかどうか、大臣どうでしょうか。

河村国務大臣 この問題、いろいろな形で取り上げられ、報じられたところであります。現実に、学校法人早稲田実業の話でありますから、これは所管庁は東京都でございます。

 そこにおいて、寄附金募集に係るこれまでの都の指導に反しておる、学校法人の管理運営上は適正を欠いておるという指摘があったわけでございまして、生徒募集要項と異なる多額の寄附金要請を常務理事会で決定していたというようなこともわかっております。

 学校法人全体の問題ということになったわけでありまして、平成十五年度の経常費補助金の二〇%減額という措置がとられたわけでございますから、そういう意味では、文部科学省としても、面接試験の現場で寄附金の要請がなされた、これはやはり事実上、保護者に対する強制的な寄附金の要請になったという点では、極めて遺憾である、このように考えております。

平野委員 大臣、極めて遺憾である、こういうことですが、国会審議というのは一体どういうふうに受けとめているのか。特に帝京大学のときに、この寄附金集めについては国会で取り上げられた。大臣はいみじくも、所轄は、所管は東京都だと。こういうことだから東京都の問題であるということでは、私はないと思う。

 したがって、私言いたいことは、文科省は一体私立学校に対して、帝京大学のそういう問題があったときにどのように周知徹底、指導をしたのか、ここが私、問いたいわけでありまして、奥島さん、もちろんでありますが、文科省も国会における審議を本当に、私が一生懸命審議をしているときのその思いをどう伝えたのか。いや、あれは国会ですから、あれは帝京大学だから、早稲田実業は関係ないんです、こういうことになるのか。その点はどうなんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 帝京大学の寄附金問題をめぐりましては、委員御指摘のように、国会におきましても、厳しい御指摘を含め、さまざまな御議論があったわけでございます。何より、寄附金の収受に関する指導の徹底がその最たるものでございましたし、そのほか、学校法人における経営責任の明確化、あるいは先ほど委員が御指摘になりました法令違反の疑いがある大学への改善命令等の法制化等々、さまざまなことが議論になり、御指摘をいただいたわけでございます。

 ですから、経営責任の問題についていいますと、今回の法改正において、理事会、監事、評議員会のそれぞれの権限の明確化を図って、責任の強化を図ったところでございます。

 特に、寄附金の収受につきましては、国会の御議論等も踏まえまして、具体には、平成十四年の十月に事務次官通知を発しまして、募集時期につきまして、従来の入学前、入学手続前という時期から入学後にすること等を内容とする改正通知を出して徹底を図ったところでございまして、これは一法人だけではなくて全法人に通知を出しているわけでございます。

平野委員 通知をしてもだめな結果になっているんですね、結論的に言えば。国会、帝京大学以降もやっていたわけですから。

 したがって、私は、通知でなく法律で禁止をすべきだ、こう思うんです。特に、私は、私立大学の場合に経営においての根幹はやはり寄附金というのは欠かせない、これはよく承知をしていますし、寄附金を募るということは、これは当然正当性のある行為なんです。しかしながら、この寄附金というのは、私立学校の社会における貢献の結果として寄附金が卒業生や企業から集まってくる、これが本来の寄附金でありまして、いやしくも入試に結びつけた、保護者から、要求する行為を正当化した寄附金、こういうものは寄附金と言うべきではない、こう思うわけであります。

 したがって、通知で守られていない以上、入学前の寄附金のことについて法令で禁止をする、このことが私、正しいやり方ではないかなと思うのでありますが、大臣いかがでしょうか。

河村国務大臣 私も、本来の私学のあり方、私学経営のあり方、寄附に負う面が非常に大きい、したがって、これは寄附金をしっかり集められるように税制面からも支援をしていかなければいかぬ、こう考えて、今税制改革の点からも、我々が強く求めておる学校法人に対する寄附金のあり方、漸次その点について改善されつつあります。

 今回の改正も、御指摘のようにああいう不祥事に端を発していることは否めないところでありますし、これまでも先ほど通達もしたわけでありますが、また学校教育法の改正もやったわけでございまして、平成十四年、やりました。大学等が法令違反の場合の学校閉鎖命令に至るまでの是正措置が必要だということで、改善勧告ができる、あるいは変更命令、あるいは学部等の組織の廃止命令、こういう規定が整備をされておるわけでございまして、そうした御指摘を踏まえながら、問題があればこの規定によってさらに必要な指導監督を行える、こういう方向を打ち出しているわけであります。

平野委員 いや、余り行政が指導監督するということよりも、法律でしっかり縛っておく、これはまた別の意味で違うと思うんですね。だから、入学前に寄附金を求めてはいけませんよという、これをした場合に、きちっと、通知でやるんじゃなくて、その場合には法律違反ですよということをやはり明確にうたっておくべきだと思うんです。寄附金を集めることは、私は私学については否定はいたしません。しかし、入試にまつわるところにそういうものを絡ませることは、不正の温床につながるということだから、法的に担保すべきでないでしょうかと。

 いま一度、大臣、お答えいただけますでしょうか。

河村国務大臣 これは、まさに委員御指摘のとおりであります。

 今回の通達で入学手続前じゃなくて入学後とするということも、いわゆる入試の公正性といいますか、そういうものをきちっと担保していかなきゃいかぬという考え方に立っておるわけでございます。

 これをどこまで法律で縛るかという問題ですね。これはまた、今後の状況を見て、今後ともそういうことが起きるということであれば、どこかできちっとおっしゃるような法的な縛りが要るというふうに考えなければいけなくなる場合もありますので、今の御指摘を踏まえて、これは今後の検討課題にしたいと思います。

平野委員 そういう中で、財務の公開ということなんですが、財務の公開とその適正化、こういうことで公開義務が盛り込まれたということは非常に評価をしたいと私は思っています。

 しかしながら、事業報告書の内容、こういう中にあっては、財産目録でありますとか貸借対照表、収支計算書、事業報告書、さらには監査報告書を出すようになっておるわけですが、事業報告書の中身についてはそれぞれの学校法人に任せる、こうなっておるわけであります。そうすると、学校のそれぞれの単位で、薄っぺらいものやら分厚いものやら、何が出てくるかよくわからぬ、こういうことになるわけであります。

 最低必要な開示事項については何らかの、法なり何かで縛るべきではないかなと思うんですが、その点はいかがでしょうか。

加茂川政府参考人 委員御指摘のように、今回の財務情報の公開の制度設計に当たりましては、単に財務諸表だけではなく、あわせて事業報告書も作成をして、これを公開することを義務づけておるものでございます。その趣旨は、広く財務状況等経営状況について一般の方が理解しやすくなる、専門の財務書類、計算書類だけではなくて理解しやすくなる、その一助にするための趣旨でございます。

 この場合、事業報告書の内容について何を記載すべきかということにつきましては、先ほど来申し上げておりますように、私学法の精神に基づいて、私学がまず自主的に取り組むべき事柄だろうと私どもは考えておりまして、法律等によって強制するよりは、具体的な例示等を通知レベルでお示しして、積極的な学校法人の取り組みを期待するのがあるべき姿だろうと思っておるのでございます。

 具体には、私学法の改正の発端ともなりました学校法人制度改善検討小委員会でもこの事業報告書の内容について御議論があって、報告書にも示されておりますけれども、例としましては、学校、学部、学科等の入学定員、学生数の状況でありますとか、役員の概要等、一般の方々から見て重要な事項もこの事業報告書に加えることができるような指摘がなされてございます。

 こういったことも踏まえながら、必要な参考例を示しながら指導をしてまいりたい、こう思っておる次第でございます。

平野委員 私学部長、私立学校がたくさんあるから、そんなものをつくったら見るのが大変だということで、大学の自主性を重んじてという、私学というふうにすりかえていませんか。

 私は、公共性という、冒頭言いましたように、私立学校はこれだけの多くの人材を輩出しているわけですから、やはり公共性でなきゃいかぬのだろうと思いますよ。その公共性ということは、世に言う国民の皆さんが、この学校はこんなすばらしい決算内容なんだ、こんなところからも寄附をもらっているんだ、こういうことがみんながわかるようにしていくべきなんだろうと思います。そのことによって、またその学校が大きく伸びていくんだろうと思います。

 一方、財務体質が悪いところは自然にやはり淘汰されていく。これも、私は淘汰されていってしかるべきだと思う。財務内容が悪いと生徒が来ないからちょっと隠して、ことし学校運営を頑張ろうという頑張り方はあるんですけれども、隠すことによって、公共性にもし問題があったときに、その責務はだれが負うのですか。ここをやはりはっきりしていないといけないと私は思うんです。

 今、部長が言われたけれども、大学設置の学校小委員会、学校法人の会計基準に準じて作成することが適当であるという小委員会の報告があるにもかかわらず、今回の法改正の中にこの趣旨が生かされているのか。どこに生かされているんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 財務情報の公開の対象となります財務関係書類、計算書類につきましては、確かに法律上はその様式等は規定をされていないわけでございますが、具体の対応を学校法人がとります際に目安となります様式例を私どもは用意したいと考えておりまして、その際には、先ほど委員も御指摘になりました小委員会報告に示された考え方も基本にしながら、その様式例について十分取り組んでまいりたいと思っておるところでございます。

平野委員 様式例を出されるということですが、様式例に従って書かなかった場合はどうするんですか。

加茂川政府参考人 様式例に基づく指導でございますので、その指導の趣旨を踏まえて学校法人が積極的に対応してくださることをまず期待いたすわけでございますが、望ましいと考えて示した参考例が実際に使われない、または一部の法人では従っていないということでございましたら、よりその趣旨を受けとめていただけるような働きかけを新たにする、もしくは様式例について再度検討するといった次々の対応を考えていかなければならないと思っておる次第でございます。

平野委員 要は、行政の裁量に、そこにゆだねてしまっているんですよ。やる、やらないは行政の勝手だみたいなことになると、公共性というものは損なわれるし、万が一、何かあったときの責任のとり方が、所在がはっきりしない。だから、こういう変な法律になるんです。せっかくいいところまで出してくれているんだから、しっかり最後まで詰めたような中身にしていただきたい、このことは要望しておきます。

 時間がないので、次へ行きます。

 先ほど、我が同僚議員が質問いたしましたが、利害関係者ということにもかかわるわけですが、正当な理由という、正当な理由がある場合はこれを拒否することができる、開示についてこういうことになっているんです。その正当な理由というのは、そもそもどのような理由なんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 事例ごとに判断をする必要があろうかと思いますが、私どもが想定しておりますのは、請求権者がその情報を悪用すること、学校法人に対して害意を持つなど悪用することが明らかである場合、あるいは、その情報を開示することによって例えばプライバシーを侵すことになるような場合等がその閲覧を拒否できる正当な事由があるものとして、現在の時点で考えておるところでございます。

平野委員 ちょっと待ってください。悪用するとか悪用しないとかの問題じゃなくて、情報公開というのはどういう状態であっても国民の目にさらすということなんです。さらした結果、問題がある、問題がない、云々という、これは国民が判断することだと思うのであります。出す側がこれは悪用されそうだから出すのをやめておこう、こういうことが事前に入るというのは、本来のより透明性を確保するという趣旨からすると本末転倒しているように思いますが、どうでしょうか。

加茂川政府参考人 委員御指摘のように、学校法人、私立学校は公共性の高い存在でございますから、しっかりと説明責任を果たすことが求められておるわけでございます。

 ですから、御指摘のように、今回の法律に定められております正当な事由関係、あるいは利害関係人の解釈等について、学校法人が恣意的にこれを解釈してその説明責任を果たすべきことを回避することはふさわしくない、好ましくないと思っておりますので、学校法人がそういった恣意的な判断、運用に陥ることのないよう、先ほど来申しておりますけれども、法改正の趣旨を十分徹底してまいりたい、こう思っておるわけでございます。

平野委員 次に行きます。

 次に、監事の職務についてちょっと聞きたいのでありますが、この法律案では、三十七条に規定する監事の職務について、報告義務を、「不整の点のあることを発見したとき、」という、この不整の整ですね、これは、今度は「不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実が」あったときと改めておるんですが、この不整の整を正に、不正にかえた法律の根拠は何ですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、不整の用語、整わずという現在の用語を正しくないの不正に改めようとするものでございますが、両者の用語の意義としては、整わずの方がより広義であると一般には解されてまいりました。ただ、この用語自体が日常にはなじみのないということもございまして、その範囲が必ずしも明確ではないという指摘がなされてございます。それで、監事がどこまで監査すべきかがかえってあいまいになってしまって、監査が十分に行われない一因にもなっているのではないかという指摘もあったわけでございます。

 今回、何度も申し上げておりますように、監事につきましてもその役割を明確にするという観点から、法改正をお願いするわけでございますが、この正しくないという用語は、近年の他の法律の例を参考にして規定の整備を図ったものでございます。

 監事の監査の見直し、役割の明確化につきましては、この不正についての取り組み以外にも、今回は監査報告書の作成義務等を課しておりますので、監事の役割全体についてこれを御理解いただければ、改正後も監事の役割について、決して弱体化することなく、強化されておる、実質的には前回以上のものが担保されておることを御理解いただけるものと思うわけでございます。

平野委員 そこは少し、法律的に言うと違うんじゃないでしょうか。整わずという言葉でいくと、これは民法上や社会福祉法上でも使われておる言葉で、範囲の範疇でこれは説明がつかぬのですね。

 小委員会という中での報告では、整わずの不整は正しい不正に比べて、理事の職務、職権乱用等を含む、より広い概念で使われている言葉で、実質的に公益に反する事項等も含む、こういう、法律的にかかわるわけであります。

 しかし、今回の改正は監事の権限を、さらに法令上、限定的にこの言葉を使っておるわけでありまして、監視する範囲を縮小するための言葉にかえたとしか私は思えないのでありますが、そうではない、整わないと書く不整同様の範囲をこの監事に認めているんだということなのかどうか、ここだけをお聞かせいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどの繰り返しになって恐縮ですが、整わずの不整の用語の方が正しくない不正の用語よりも広義であると解されておるのは、委員御指摘のとおりでございます。したがいまして、今回の「不正の行為又は法令若しくは寄附行為に違反する重大な事実があることを発見したとき」の監事の対応としては、現在よりもその範囲が、厳密に申しますれば狭まることになろうかと思います。

 ただ、先ほども申し上げましたように、監事の責務、権限としましては、一方で、現行にない監査報告書の作成義務を明示しておりますこと、さらには、理事会に出席して監事が意見を述べることも法制化しておりますので、あわせて見ますれば、決して監事の責任、権限が弱まっていることはないものと私どもは考えておるわけでございます。

平野委員 時間が来ましたので、これだけ指摘しておきます。

 監査報告書も義務づけているということですが、不正を監事が発見したときの報告先でありますが、これは所管庁、理事会、評議員会となっている、こういうことでありますけれども、私は、少なくとも、不正ないし報告を、公表される監査報告書にその内容と対処を表示すべきと思いますが、その点だけ最後にお答えいただけますか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 監査報告書に盛り込むべき事柄につきましては、最終的にはその作成権限、責任者である監事が判断すべきことだと思っておるわけでございます。したがいまして、発見した不正事由についてこれに含めるかどうかは監事が判断をすることになりますが、その事由によっては、当然、多くの場合は監査報告書に含まれることになるものだろうと期待をしておるわけでございます。

平野委員 終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時三十六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。土肥隆一君。

土肥委員 民主党の土肥隆一でございます。

 我が党としては最後の質問者ということで、ほぼ出尽くした感がありますので、少し違った視点からいろいろとお聞きをしたいと思っております。

 今回のこの法改正、最も驚いたのは、私立学校審議会ががらっと変わるということでございます。

 資料に基づきますと、大体こういう原案が出てくるのは、例の総合規制改革会議の三度にわたる提言、平成十三、十四、十五と三回にわたっておりますね。それから、学校法人制度についても、総合規制改革会議、十四年、十五年、それから、総務省の私立学校の振興に関する行政評価・監視結果報告書、十四年十二月、こういうものが背景になっていると思うのでございます。

 よくもこんなにばっさりと変えたものだと感心しております。しかし、中身はかなり問題になるのではないかということでございます。

 教育現場における規制というのは甚だしいものでございまして、きょうは、私、文科法令要覧というものを持っておりますけれども、私は苦い経験がございまして、今もその経験が続いているのであります。私は選挙区は神戸でございますが、神戸に師友塾といいまして、教師の師に友達と書いて塾なんです、何をする塾かというと、不登校、情緒障害、乱暴な、何と言いますか暴行を働く子供、何しろ今の義務教育の中からはじき出されたというか、そういう子供たちを預かりまして、先週でしたけれども、三十周年の記念の会を持ったんです。この塾は余り注目されておりませんけれども、文科省あたりはよく検討していただきたいと思うのであります。

 そこで、やはり公的な教育機関として認められたい、あるいは、保護者の評価においてもやはり何らかの学校法人が欲しいということで、この三十年間、悪戦苦闘したのです。私もその間、二十五年ぐらいかかわっておりまして、それは例えば専修学校でどうだということを言いますと、敷地の広さだとか運動場の広さだとか教員室がどうかとか、何といいますか、学校というものに必要なあらゆるスペースを要求しまして、何平米と書いてあるのですね。そういう条項がもう延々と続きまして、県の担当部局ももうはなから相手にしないということでございました。

 そこでどうしたかというと、株式会社にしまして、今日も株式会社なんです。その出発の当時、二十五、六年前の話になりますと、私は、ちょうど御影というところに住んでおりまして、校舎のかわりに私の持っている施設を貸していたんですね。隣に東灘警察署というのがございまして、警察から必ず見回りがあるのです。それほどすごい子供たちが集まってくるわけです。まずバイクに乗ってきまして、夜の教室もありますから、夜の学校をやっておりますと、近所からうるさいとか何とか、けんかはするし、大変な中でございましたが、塾長の大越先生というのがいまして、その人がきちっとスタッフを養成しまして、本当にスタッフの力量がこういう子供たちには問われるわけですね。

 何とかならないかということで努力したのですが、一切そういう法規制にかなうような条件を出すことはできません。小さな民家を改造して、今は、ちっぽけな学校をつくっておりますし、土地を少しずつ買い集めてその規則に合うようにしようとしたのですけれども、もうとてもそんなことじゃできないわけでございます。

 五、六名から出発しましたこの塾が、今、三百名おります。それで、ことしの四月の三十周年記念と入塾式に出てまいりました。学校を放棄した、学校に行かなくなった子供だけが集まって、子供はふてくされているわけですよ。全員茶髪ですね。親は泣いているわけです。何で私の子供がこんな塾に入らなきゃいけないのということなんですけれども、今や三百名。

 そして、赫々たる実績を上げております。

 ことしなんかは、その入塾生が貸し衣装屋から羽織はかまを借りてまいりまして、全員羽織はかまで、女の子は振りそで。それはもう彼らは自分で持っているんだと思いますけれども。そして、合唱をするんです。一緒に何かやるなんということは、ほとんどこういう場所ではあり得ない話なんですけれども。そして、この秋から淡路島に、やはり土に親しむ、自然に親しむような指導をしなきゃいけないということで、これまた株式会社が土地を求めまして、そして、自然学校的な教育をしようということで、宿泊して教育をいたします。

 ですから、私、これを見ていますと、今や国が株式会社に義務教育をやらせるというのですから、今昔の感をもう本当に久しくするわけでございますけれども、やはりニーズに合った、そして、本当に必要なものは必要だと認めて認可をしなければいけませんよ。今度のこの私立学校審議会が、いわばノーチェックで県民の、市民の教育ニーズにこたえましょうということだろうと思うのですね。たとえ県がこういう塾を専修学校に認めるとしても、これは審議会で何だかんだけちをつければ幾らでもつくわけですよ。

 そういう点から、ぜひ私立学校審議会が今後、しっかりした、子供たちの問題点に目をとめて、最も必要なものを最優先にしていく、こういうことになってほしいと思うのであります。

 ところが、この総合規制改革会議の報告書を見ますと、競争抑制的になっているからもっと競争をさせなさい、あるいは、私立学校がふえないのは、国民が無償で受けられる義務教育が最大の理由といって、一方で、公立学校における学級崩壊があり、特色ある教育サービスを提供する私立学校に対する、需要者側である国民の期待が大都市においては期待にこたえていない、こういう報告書を出しているわけですね。

 私は、義務教育費国庫負担法の財政諮問会議の報告書もそうでありますけれども、いわば政府の機関の提言というのはこういう形でどんどん出てくるんだなということを改めて、私学の方面にもあらわれているというふうに思うのであります。

 地域内で学校間競争の活性化を通じて、公立学校によりよい学校づくりを進める契機になる、これらの観点から私立学校の参入を促進しなきゃならない。こういう報告書に基づいて、今度、地方における、都道府県における私立学校審議会はいわばノーガードで知事にやらせる、全部すべてやらせるという私の理解でいいでしょうか。文部大臣の御回答をお願いします。

河村国務大臣 土肥先生、端的にわかりやすく、ノーガードとおっしゃいましたが、審議会がなくなるというわけじゃございませんから、そこでやはり議論は一応されるということですから、ノーガードということではないと思います。

 しかし、御案内のように、これから改正する現法では、四分の三が私学関係者で占める、こういう規定があったものでありますから、そうすると、新たに私学をつくりたい、小学校をつくりたいという人は、そこの審議会で私学の四分の三のメンバーを向こうに回してやらなきゃいけないということはやはりプレッシャーになるだろう。表は少なくとも、そういう実態があったかと言われると、文部科学省の中で、それは抑制ぎみで、抑えられて進出できませんでしたという報告にはなっていないんですね、聞いてみると。ありませんということに表向きはなっていますが、しかし現実に、そこで過半数を得ようとしたら、まずその私学関係者のところへ回ってこいということになるだろうと思うんです、それは。一軒一軒訪ねて許可をとる、これだけでも大変なことですから。

 もっと自由にやれるということであれば、やはりそれは地方の時代、知事の裁量でもっと、地域にそういう要請があればそれを受けて立つということであれば、そういうことが規制になるのならば、やはり今度は一回外して、その中で考えていただく。しかし、私学審議会をなくせと言っているわけじゃございません。やはりそこで公正な判断はしていただくし、学校は公益性の高いものでありますから、それなりのやはり整備が必要であろう、こう思います。

 先生、師友塾というんですか。そうですか。それは初めて聞きましたが、三百人というのは大変なことで、現実にそういう問題がある。これを今後どういうふうに認めていくかというのは、今まさに特区ではもうNPO、株式会社でやっておりますから、それを現時点では、特区であれば学校としても認めることもできます。

 昔、私の小学校時代は子供がたくさんおったものでありますから、田舎であると分教場なんかがあるんですね。これなんかは本当の、今の言う学校かと言われたら、学校じゃないところに先生一人で三学年が集まってでもちゃんと認めてやっておったんですから、そういうことを考えれば、やはり今の時代に合ったものに変えていくということは必要ですから、そういう意味で特区制度も生まれてきた。いずれ、特区になればそれを全国にということにもなっていくでしょうから、まずそれで始めながら、認めながら。

 やはり、実際に不適応児というのがあるという現実も直視しなきゃいかぬと私も思っておりますから、そういうことを踏まえながら、今回の改正によってそうした抑制的なものはできるだけ省きながら、そしてやはり地方の、地域の要請に応じられるような形に変えていこうというのが今回の改正の一つの課題でございます。

土肥委員 今の教育状況の中で、事情の中で、本当に必要な教育施策ということが必要なわけでありまして、文科省が全国の文部科学行政をやるわけですけれども、ちょっとお聞きしますけれども、私学関係の部局のスタッフは何名いらっしゃるんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文部科学省における私学を担当している私学部のスタッフの陣容についてお尋ねでございますが、四十数名で組織されております。

土肥委員 四十数名で、日本の大学教育の場合は七五%をカバーする私学の管理運営というのは事実上できないですね。私は、先ほどから同僚の議論を聞いておりまして、だんだん文科省側に心が傾いておりまして、何も皆さんをひいきにするという意味じゃございませんで。

 そもそも、私立大学というのは私の大学、私の教育機関ですね。しかも、寄附行為に基づいてやるんですから、この中で学校関係者はどれくらいいらっしゃるか、私立学校に寄附した方というのは余りいないと思うのでありますけれども、寄附をしない者は学校関係者じゃないわけですね。まあ学生は、もちろん授業料を払いますから、学校関係者と言っていいわけであります。そもそも設立の段階から、寄附行為による、要するに普通の法人でいう定款のようなものをつくっていくわけですね。規則をつくっていくわけです。ですから、評議員であれあるいは監事であれ理事であれ、これはもうすべてその学校の関係者なんです。何らかの意味でお金も出し、そして苦労をして、借金のときには保証人にもなり、そうやって学校をつくってきたわけでございます。最近は、私立学校も建学の精神を忘れて、ただひたすら一流校を目指す、一流学校を目指すなんということは私は余りよくないと思います。まさに教育が多様化し、そして問題化しているときにはますます私学の建学の精神を発揮する。某私立大学がもう既に建学の精神がなければ、それをやめて、また新しい建学の精神に基づいて日本の教育を担おうというような人がどんどん出てこないとおかしいわけです。そういう意味で、今回の私学の学校法の改正というのは、もっともっと日本の教育事情や国民の教育参加を促すような法律に変えていかなければならないと思うのであります。

 少し報告書にこだわるわけでありますけれども、私立学校の参入を促進する観点から、補助金配分に当たっても、私立学校を優遇する方向へ向けていくことが必要であると。これはどの程度認識していらっしゃるんでしょうか。担当者で結構です。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員引用の文章は、総合規制改革会議の第一次答申で述べられておる事柄ではないかと拝察をいたします。

 具体には、「私立学校の参入を促進する観点から、公財政支出の見直しを図る中で、補助金配分に当たっては、児童生徒や保護者のニーズにこたえて優れた教育サービスを提供している私立学校を優遇する方向へ向けていくことも必要ではないか。」こういう記述がございます。

 このとおり、私学が特色ある教育サービスを提供いたしまして保護者等の期待にこたえていくというのは、私学の役割だ、責務だと私どもも思っております。具体に、例えば、公立学校との比較で申しますと、高等学校以下の私立学校の参入促進でありますとか振興が望まれるわけでございますけれども、高等学校以下の経常費助成費補助におきましても、厳しい財政状況にはございますけれども、十六年度の予算額で申しますと、対前年度二十七億円増の一千二十八億五千万円を計上しているところでございます。

 具体には、この中でいろいろな補助費目ございますけれども、教育サービスの向上、すぐれた教育サービスということに対応しますことで申し上げれば、例えば少人数教育、きめ細やかな学習指導の推進でございますとか体験学習の推進などについても必要な予算措置をいたしまして、個性豊かで多様な教育の推進を支援しておるところでございます。こういったことで、この提案、要請にはこたえておるという考えでございます。

土肥委員 私学の財政事情についてはまた後で質問いたしますが、私立学校をどう見るか、扱うかということは、国がどれくらい金を出しているかだ。それから、認可法人ですから、それは認可法人は言うことを聞かないわけにはいかないでしょう。それは、県にしても国にしてもそうであります。認可法人であることと、あとは私学助成をどれくらいしているかということで決まりなんですね。私、それ以上のことを言う権限はないと思いますよ。これは、義務教育国庫負担のときも申し上げましたように、人件費を全部おろしちゃったら、一体何が文科省として物が言えるんだろうかというふうに思うわけでございます。

 それを十分踏まえた上で、今回の理事会以下の法改正をしているわけでございまして、そもそも建学の精神に基づく、それがどんなものであれ建学の精神に基づいて、寄附行為に値する、校舎のスペースであるとか人員だとかカリキュラムなどを承認して、文科省が認可法人をおろしたということでございます。認可しただけでも権限はあるんだといえば、それはどういう根拠によるか、つまびらかではございませんけれども、やはり、先ほど額が出ましたけれども、後でまた質問しますけれども、私学の一般経常費に対して何%ぐらいの補助金を出しているのということになりますと、極めてお寒い状況だろうというふうに思うわけでございます。

 そういうことを踏まえた上で、もうこれは都道府県に私立学校の審議会をゆだねたわけですから、あとは都道府県のいわば実力といいましょうか、あるいは常識といいましょうか、あるいは教育に対する情熱といいましょうか、そういうものが必要になってくるわけでございまして、私立学校審議会が十名から二十名程度で、あとは学識経験者というだけでございます。

 知事とは一体何なのか、これは明らかに政治家でございます。選挙によって選ばれてくるわけでございますから。これは、衆議院の小選挙区と同じで一名しか当選できないわけでありますから、あらゆる支持者を集めなきゃならない。今までも、私の経験でいうと、私学関係者がかなり組織的に動きますね。そして、審議会があったんですから、それはそれなりに応援もしたんでしょう。そしてまた、私学のいろいろな補助金等についての圧力にもなったんでしょう。しかし、いわばその当該県の教育の、特にこの場合は私立学校のほとんどの権限を知事が握るということでございます。

 旧法では、何かもう読んでいても全然わからない団体が出てまいりまして、だれがどこに行くのかというのはわからないんですけれども、四分の三まで、現実に学校法人を持っている人たちの意見を聞いてきたわけです。そこはもう本当に、言葉は悪いですけれども、抑制型の審議会にならざるを得ない。

 今度は全くフリーハンドで、学識経験者というだけで、どうするんでしょうかね。いわば、既に私学を経営している人たちの意見を聞かないというわけにもいかないでしょうし、また、そこからぞろ、おたくから何名か出してください、各小学校、中学校、高校、大学と、大学は違いますけれども、出してくださいよという話になれば、全く同じ形になるんですね。

 だから、知事が政治家であるということと、最大多数の支持を得ないと知事になれないというようなことも含めて、この学校審議会というのは、望ましい形としてはどんなことを考えていらっしゃるんですか。

加茂川政府参考人 今回の改正は、委員も引用なさいました総合規制改革会議の答申におきまして、私立学校審議会の委員の資格、構成割合、それから推薦の手続等詳細な規定ぶりが現行にはございます。これが都道府県の私学行政を過度に規制しかねない可能性もあるとされたわけでございます。

 そこで、各都道府県の実態に即した構成等、対応ができますよう規定を見直しまして、教育に関し学識経験を有する者から都道府県知事が判断し、任命をすることとするものでございます。したがいまして、都道府県知事がかなり広範な裁量、判断をすることができまして、委員の構成割合あるいはその推薦手続につきましても、都道府県知事の責任と判断のもとにおいてさまざまな工夫をする余地があるというわけでございます。

 こういたしましたのは、実は私立学校の現状と申しますのは、委員も御存じであると思いますが、地域差がございます。私学がたくさん多くございまして、関係者の意見を聞きながら私学振興を図らなければならない地域、あるいは、まだまだ私学の参入が十分ではなくて、推進方を進めなければならない、力を入れなければならない地域等々ございますものですから、それぞれの地域の実情に応じて都道府県知事にこのような裁量を与えることが、ひいては私学の公共性を高め、振興につながると考えたからでございます。

 繰り返し申し上げますが、知事の広範な権限が委員の選任、審議会の構成等に及ぶわけでございますが、本来の私学法の趣旨でございます私学の自主性を尊重しながら私学振興のための私学行政の万全を期していくためには、当然広範な方々から意見を聞く、もしくはこの審議会の構成メンバーとしてふさわしい方々から委員を構成していただくという当然の判断が知事には働くものと私どもは期待しておるわけでございます。

土肥委員 さあ、そこですね。これから知事を選ぶときには、教育関係者はよく考えて選ばなきゃならないわけでありまして、また同じような、従来のような総花的な委員を選んでどうでしょうかというのでは、その当該県の本当に目指すところの教育、特に私学の部分で担うべき教育の目標というのが明らかにならない、またぞろ抑制的な審議会にならざるを得ない、そういうことを強く危惧するわけでございます。

 やはり先ほど言いましたように、建学の精神あるいはその私立学校の持っている特色というものをどう引き出して、そしてその振興を図るかというのが知事の役割になるわけでございまして、先ほど言いましたように、首長は政治家でありますから、既得権を保護した方がいいなというようなところに傾きますと、そういう知事がおりますと、身もふたもない、従来どおりということになるんじゃないかと思っております。

 学識経験者とおっしゃいますけれども、学識はあっても経験がないとか、経験はあるけれども学識がない、学識と経験を二つあわせ持たなきゃならないわけでありますけれども、教育の専門家が即、例えば私学の適正な配置だとか私学の振興だとかという視点に立てる人がどれくらいいるだろうか、本当に当該県における私立学校の全体のあり方を見回して、これこそあるべき何々県の私学教育行政であるべきだというようなことを出せるような審議会になるだろうか。

 この学識経験者というのは、先ほどから同僚の質問でも、何か一つ条件を置いておかないと、だれでもいい、株式会社の社長でもいいというふうに、僕はそれでもいいと思うんですよ、要は私学というものをしっかりと踏まえた審議会にするにはどうしたらいいかということですね。

 そういう意味でいいますと、知事が政治家で、そして審議会が学識経験者、この間で行ったり来たりするんでしょう、恐らく。本当に活力のある、進取の気性に富んだ審議会委員が集まっていただきたいと思うのでありますが、まあ行政側からいえば、国の側からいえば、知事におゆだねするということでございましょう。地方分権といいますと、ますます地方の首長に権限が移るわけでありますけれども、あらゆる部門で、特に教育部門で知事を選ぶ視点というのが必要になってまいります。

 本当に、私学振興、私学の意味を踏まえて、そしてその視点を大事にしながら、公教育との調和だとか、あるいは競争だとかいっておりますけれども、そういう指導性を発揮できるような審議会の委員というのはどうやって集めたらいいんでしょうかね。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 私立学校審議会の委員の選任についてでございますが、委員も御指摘をいただきましたように、今回、「教育に関し学識経験を有する者」と定めましたのは、構成員についても一定の知識やまたは実務に関する経験を有していることが適切である、ふさわしい方を選んでいただきたいですよ、大変平たい言い方で恐縮でございますが、そういう趣旨で法文化を図ったところでございます。必ずしも教育の専門家である必要はないわけでございまして、こういった有資格者かどうかは、広く知事が判断をしていただければ、地域の実情に応じて知事が判断していただければよろしいものと思っております。

 したがいまして、私学振興のためにふさわしい構成員を発令する、任命するというのは、まさに知事が、その実情に応じてケース・バイ・ケースの御判断をしていただけるものと私どもは期待しておりますし、当然、それには責任も伴っている。地方分権一般について言えることでございますが、広い裁量権の行使には責任も伴っている。その中で期待をしておるわけでございます。

土肥委員 それを知事にゆだねたわけですから、国がチェックするわけにはいかないでしょう。この審議会の委員の選任については、国の干渉、関与は一切ないんですね。

加茂川政府参考人 そのとおりでございます。知事の権限ということになるわけでございます。

土肥委員 ますます県議会、あるいは政令指定都市では市議会議員の皆さんの識見が、見識が高まって、この審議会の委員の選任を承認していただかなければならないわけでございます。

 これは、県議会の承認の対象になりますね。

加茂川政府参考人 私立学校審議会の委員の発令については、議会承認事案という扱いにはなってございません。

土肥委員 まさにチェック機能はどこも働かないということでございますから、知事の能力、知事の見識が問われるということを確認しておきたいと思います。

 学校法人運営制度の改善が、理事会を初め、監事、評議員会と出てまいります。私は、この改正は多といたします。

 だけれども、単に公共性ということでくくっては、私学の経営努力、建学の精神に基づく運営努力を阻害することが、たまたま、よくあることであります。行政の関与というのは、物事を正しく、先ほどから、不正というのがないようにというようなことはわかるのであります。公共性というのはそれはございましょう。公の補助金をもらい、認可法人として設立し、子供を預かって運営をしているわけですから、確かに公共性はございます。今回の理事会などの学校運営制度の改善というのは、まあこの程度ぐらいまでかなというふうに思っております。というのは、やはり私学は私学なんですから、私学の意欲をそぐようなものであってはならないというふうに思うのであります。

 ただ、結局、まずは寄附行為でスタートするのが私立学校でありますから、寄附をした者が評議員なり、まあ監事はちょっと別かもしれませんけれども、理事なりになるのでありまして、寄附しない者が横から出かけていって理事になりたいなんて言ったって、それは無理な話ではあります。

 今度の法改正で、相当なチェック機能を果たすことになるだろうというふうに思います。しかしながら、さまざまな報告義務が出てまいりますと、学校法人によっては余り知られたくない部分も出さざるを得ない。

 先ほど、生徒の定数が何人で、そして充足率は何%かというようなことは出してもいいとは思うんですね。余り出すと、これはもう五〇%なんというと、将来つぶれるんじゃないかと思って心配する父兄もいるかもしれません。しかしながら、例えば大学教授の平均賃金は幾らであるなんということを公開しろと言われたら、これはちょっと嫌な話になってきますね。

 ですから、情報公開というのは大切なんですけれども、では、すべて出せるのかということになりますと、学校によってはいろいろ難しい問題があるんじゃないでしょうか。賃金の高い学校と低い学校とがあって、うちの教授はこんなにもらっているのかといって、それで学校を変わろうという人はいないと思いますけれども、余りいい気持ちはしないものであります。

 しかし、今回は、諸文書をそろえまして、そして要するに実態を、事業報告書も含めて閲覧に供するということでございます。その閲覧に供するというところの中身を、先ほど、例えば事業計画とか事業報告なんというのは一体どんなものだろうという意見が出ておりました。何かガイドラインを決めて示したらどうかという意見もございました。

 ここは余り細かく言うと、結局、私立学校に対するいわば行政の干渉ということにもなりかねないところでございまして、行政が絡むといろいろ厄介なものなんです。私は学校法人を持っておりませんけれども、厄介だろうというふうに思うわけですね。そして横並びの報告書が並んで、かえってその学校の特色や努力しているところが浮かび上がってこないで、いわば役所が示したガイドラインだけでおさめておけばそれでいいんだというような、そういう報告書になりがちですので、余り厳しくする必要はないというふうに考えております。

 だけれども、先ほどから問題になりましたように、閲覧に当たって正当な理由というのは何なのかということで、しかも、それを閲覧に供するというわけですから、どんなふうな形態にするかということでございます。

 この前参考人をお呼びしたときに、学長さんに、総長さんですか、おたくの報告書類はどこに置いてあるんですかと聞いたら、後ろで学校関係者の人に聞いて、経理課か何かに置いてありますという話ですが、慶応大学なら慶応大学に入っていって、経理課を探し当てて、その建物を探し当ててずっと入っていって、おたくの公開文書を見たいんですがというふうに入っていったときに、あなたはだれですかと聞かれるわけですね。そして、正当な理由、正当な理由の中に、あなたは慶応と何の関係もない人じゃないですかとか、あるいは、慶応の名前を出して申しわけありません、有名な大学だからいいと思いますけれども、あなたはどういう理由で資料を見たいんですかとか。普通は、事務所の前にテーブルか何か置いて、事業報告、収支計算書も含めて並べておいて、そしてだれでものぞけるというのが本当の意味での情報公開だと思うんです。しかし、それは私学ですから、私学なりの見識があっていいと思うんです。

 そういう閲覧の方法などについて、検討はしていらっしゃるんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 財務情報の公開、その閲覧の仕方についてでございます。

 今回御審議をお願いしておりますのは、公開の方法として、閲覧に供するという表現をさせていただいておりますが、関係者から、在学者等の関係者でございますが、請求があった場合に、備えつけてある財務書類等をお見せするというところまででございます。

 具体に、それに加えて、例えば写しを交付するですとかより詳しい資料をどこまで出すかといったことは、すべて学校法人の判断にゆだねられておるわけでございまして、委員先ほど来御指摘のように、私学でも自分の独自性を出していく、私学間でもこの情報公開というテーマについて、テーマはいろいろありますけれども、このテーマについてもいい意味での競い合いをする中で、私学振興に役立てば大変ありがたいと私どもは期待をしておるのでございます。

土肥委員 恐らく、なかなか見せてくれないんじゃないですかね。窓口で押し問答になって、訴訟でも起きたらこれは大変な話でございまして、情報公開法もあるわけでございますから、今後、情報公開を、各学校あるいは企業体その他含めて、情報を公開するというのは非常に大事な中身でありますが、恐らく私の感じとしては、閲覧に供するといったって、閲覧に行くために相当な勇気が要りますよ。弁護士でもつけて出向いていかないと、あなたは何者だと言われて追い返される可能性も非常に高いんじゃないかと思うんです。

 細かい話はもう省きまして、実は、私が数年前、もう六、七年前でしょうか、宗教法人法の改正をしたときに、ちょうど今回の法改正と同じように、宗教法人は情報を公開しなきゃならない。そして、宗教法人の場合は利害関係者でしたか、閲覧の請求が不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは、これを閲覧させることができる、こうなっておりますね。少し丁寧になっているんです。

 宗教という非常にセンシティブな、宗教団体が宗教法人として日ごとの宗教活動をしているその活動の中身の情報を閲覧することができるようになったんですね。しかも、包括法人でありましたら文科省に報告が行っているはずでありまして、そういう財務内容を全部文化庁は知っているわけでございます。

 ちょっとお尋ねしますけれども、この宗教法人の情報公開の問題で、これまでに何かトラブルがございましたか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 宗教法人の事務所備えつけ書類の閲覧の御質問でございますけれども、先生御指摘のとおり、平成七年の改正で宗教法人法の二十五条を改正いたしまして、宗教法人の信者その他の利害関係人で、宗教法人の事務所に備えつけられた財務会計書類等の閲覧について正当な理由があり、かつ不当な目的によるものでないと認められる者から請求があったときは閲覧させなければならない、こういう制度をつくったわけでございます。

 財産目録等の閲覧の実態につきましては、私ども統計的なデータを把握しているわけではございませんが、信者からの財産目録等の請求があった場合に、事務所の中で閲覧させる、場合によってはコピーを、これは法律上の義務ではございませんけれども、コピーをとらせるというようなことで、これは当然、宗教法人法の先ほど申しました要件に合致しているということを確認して閲覧させているというふうに承知しております。

 特に、文化庁の方に、こういうトラブルがあったという形で私どもが具体的に聞いたという事案は、今のところはございません。

土肥委員 ついでにちょっとお聞きしますけれども、これは文化庁の宗務課で集約するんですね。それで、認定された宗教法人は、全部所管庁に報告が上がっておりますか。ちょっと通告していなかったので、申しわけないですけれども。

素川政府参考人 提出書類の御質問でございます。

 所轄庁は都道府県知事と文部科学大臣、両方ございます。文部科学大臣の場合には千強ございます。それで、都道府県知事所管は十八万強あると思います。

 文部科学大臣の所管につきましては、大体九八%程度、この規定に基づきまして、この規定といいますかこの二十五条の四項に、所轄庁に、備えつけ書類の中の一定のものでございますけれども、写しを毎年提出するという規定がございまして、その規定に基づきまして毎年提出いただいておるわけでございます。文部科学大臣所管のものにつきましては、大体九八%ぐらいいただいているというふうに承知しているところでございます。

土肥委員 ちょっとついでで申しわけないですけれども、その宗務課で集約しているものは一般に公開されているものでしょうか。

素川政府参考人 この提出書類は、所轄庁において宗教法人の運営の実態を把握するという趣旨のものでございますので、所轄庁に提出される書類につきましては、公知のものを除きまして、基本的には公開はしていない。行政庁の職務のために、業務のために備えているということでございます。

土肥委員 私がなぜ宗教法人を挙げたかというと、宗教活動という非常にセンシティブな問題すら情報公開の原則になっているわけでございまして、それが具体的にどうかということはまた議論の余地がございましょうけれども、今回の私立学校法人の情報公開の原則というのは大事だというふうに思っております。

 ただ、私学、宗教法人も宗教団体が独自の活動をしているわけでございまして、公共性がありながらも、その私学の精神をどう育てるかという視点を維持していくかということは、行政の非常に大事な点だと思います。

 残された時間、あと一つだけ申し上げます。

 これは先ほどから何度も言っておりますように、私立学校納付金問題です。新聞にこのごろ盛んに出るようになりまして、入学辞退者の前納金返済訴訟も起きておりまして、そして、平成十三年四月に施行されました消費者契約法、これが法的根拠になりまして、返せということになっております。返すようにと。しかし、これは、それぞれの裁判が行われて、それぞれ判決が出ているわけでございますけれども、恐らくこの方向は変わらないだろうというふうに思います。

 私の言いたいのは、私立大学における経常経費と補助金の間で、私の調べたところによりますと、補助金の割合は一二%ですね、一二・何%、ちょっと割る場合もありますけれども。つまり、一二%しか補助していなくて、あとは寄附金でやりなさい、あるいは授業料でやりなさいというふうになっているわけでありまして、大学が受験生を当てにして、学校納付金を前もって取るというのもわからないではないんですね。しかし、それはだめよということになれば、何らかの規定を、あるいは指示、指導をしなければいけないだろうと思いますが、今文科省はこれに対してどういう態度を持っていらっしゃるんですか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる前納金の返還取り扱いについての文部科学省としての指導についてでございます。

 私立大学について申し上げますけれども、私立大学の入学手続時における学生納付金の取り扱いにつきましては、入学を辞退したということによりまして、授業を受けない学生から授業料を取る、あるいは当該大学の施設設備等を利用しない学生から施設設備費等を徴収する、これはやはり一般国民の理解を得られないと私どもも考えております。

 ただ、学生納付金、前納金のうち、含まれております入学金、入学料につきましては、入学し得る地位への対価の性格もあると考えておりまして、これは他の授業料でありますとか施設設備費等と違って、返還しないことも一定の合理性があるなと考えておるわけでございます。

 従来から、この基本的な考えに立ちまして、私立大学等に対しては通知等によって指導をしてまいりました。特に、入学手続時における学生納付金の取り扱いにつきましては、今言った観点から、各法人において善処してほしいというものでございますし、これは委員御指摘のいわゆる消費者契約法の施行後、前後について変わりはございません。一貫してこの考えをとり、指導をしておるところでございます。

土肥委員 指導ですよね、規制じゃございませんよね。ですから、あとは私学関係者の常識にまつわけでありますけれども、やはり、弱みにつけ込んだというのは語弊がありますけれども、そういうやり方はよくないとは思いますが、私はもっと私学補助金をせめて三割ぐらい、経常経費の三割ぐらい払わないと、指導だ何だと言っても、それはしょせん無理な話だと思います。

 どうか今後も、私学の振興、私学の位置づけをきっちりいたしまして、少子化社会の中で私学が今後どう生きていくかというのは大変な問題ですから、そういう意味で皆さんの、委員各自あるいは国会、そして文科省当局の御努力をお願い申し上げまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 本法案は、これまで法定されてこなかった理事会を法定して、学校法人の業務に関する決定機関とすることにあります。それ自体は当然のことだと思います。しかし、これまでの私学の不祥事を見ますと、理事長による理事会の形骸化、また理事会における教授会などに対する不当な介入、支配などによって起きていることも見ておく必要があるかと思います。

 そこで、具体例を挙げてお聞きしたいことがございます。

 大阪の明浄短大、明浄大学の問題なんでございますけれども、二〇〇二年に明浄短大教授会として短大改組案というのを決定しているんですね。それは短大の学生定員二百名を、短大百名に減らして、四年生大学に百名の定員を移す、それで新学科を配置するというものでございます。ところが、教授会決定を無視して、理事会側が一方的に短期大学の廃止を決めてしまう。二〇〇四年度募集停止、二〇〇五年三月三十一日をもって廃止しようとしているということが起きています。だから、非常にホットな今の状況なんですね。

 ところが、学生の中には、一年間休学してその後単位を取るという方もあります。単位不足、オリエンテーション不参加がいて、その学生をどう処遇するのかという問題が残っているわけですね。

 伺いますが、そもそも、今年度からそういう学生の募集停止、来年三月三十一日までに短大廃止というようなことがあり得るんでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 学生募集停止の意思決定の手続、またはその時期についてのお尋ねでございますが、端的に申し上げますと、学校法人の運営についての重大事項でございますので、法律上は、理事会の権限と責任において、当然、学生に対する影響、学内、組織内における影響も考えながらでございますが、理事会が決定できることだと理解をしております。

石井(郁)委員 極めてそれは一般的な話でございまして、理事会が決定できるというだけですが、今、学生のこういう処遇問題が残っている、こういう中でできますかと。ちゃんとお答えください。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 当然、理事会は決定をいたしますけれども、その際には、学生または組織内のことを十分総合的に勘案して行わなければならないと考えておりますが、委員御指摘の在学中の学生については、当然その修学機会を確保すべく最大限の配慮を払うべきものだと思っております。

 御指摘のケースにつきましても、在学の学生が三十名程度おると聞いておりますし、そのことにつきましても当然、学校法人、意思決定機関、執行機関である理事会、理事長が適切な判断をしていただけるものと期待をしておるところでございます。

石井(郁)委員 もう一つの問題が、やはり教員の雇用の問題なんですね。いまだに九名の配置転換を願う教員の方がおられます。ところが、先のことは灰色でわからないというような極めて無責任な態度を理事会の方がとっていて、まともに取り合わないと。四年生大学の方で新たに英語の先生が必要になるということがありますね。そういう場合でも、別のところから非常勤で雇うと。だから、短大からの教員はとろうとしないということが出ているようです。

 理事会としては、こういう九名の雇用を確保する責任があるのじゃないでしょうか。いかがでしょう。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど、学生については、その修学機会の確保について最大限努力をすべき立場に立つ、理事会が立つということは申し上げました。

 教職員につきまして、学生の募集停止後、どのように再配置をするのか、あるいは他の就職先をあっせんするということもあるのかもしれませんが、そういったことにつきましても、一般的には、理事会、理事長が可能な限りその確保等について努力をすることが期待されておるのだと思っております。

 ただ、ケースによりましては、当然、教職員の場合にはこれまでの雇用契約の解釈、運用について子細に検討してみる必要があるわけでございまして、ケース・バイ・ケースによって判断をすることになるのかと思うわけでございます。

石井(郁)委員 教員の処遇については、これは理事会側がやはり責任を持って当たるということだと思うんですね。どうなっても構わないんだという無責任な態度をとることは、やはり許されないんじゃないかというふうに思います。こういう問題がやはり起きてくるということなんですね。

 今申し上げましたように、ここの理事会が、実は文部科学省に対して虚偽の報告書を出す、こういう体質を持っているんですよ。文科省も、私はこの事案のことを通告しましたからお調べだと思いますけれども、平成十五年の一月二十一日付で報告文書が遠山文部科学大臣あてに出されています。「大阪明浄女子短期大学英語科及び文芸科の学生募集停止について」というものなんですけれども、それを見ますと、募集停止にかかわる決議等を行った年月日を、教授会が、平成十四年の三月二十七日だというふうになっているんですよ。この文書なんですね。

 ところが、短大の教授会は、今申し上げましたように、短大を改組したい、四年制の大学を充実させたいということでありました。また、短大あるいは短大部継続の決定を二〇〇三年の一月二十二日に行っているんです。だから、教授会は廃止など決定していない、これが事実なんですよ。

 しかし、この文書で見た限りでは、文科省に届くわけですから、まさかここに、うそだというふうにあなた方は思わないでしょう。学校側、理事会側がうそを書くなんて思わないわけだから。これだって、教授会は募集停止の決議を行ったと、年月日が書いてある。こういう文書が文科省に出される、どう思いますか。

 私は、こういう報告自体が本当に大変問題ではないかというふうに思いますが、御答弁願います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の報告書も私持参いたしておりますが、それを子細に拝見いたしますと、平成十四年三月二十七日の教授会の扱いは、募集停止にかかる決議等を行った年月日として整理をされてございます。

 その以下に、当該日、三月二十七日の議事は次のとおりといたしまして、審議事項に入る前に学長から、三月二十三日開催の理事会、評議員会において、平成十六年度からの短大の学生募集停止についての報告、こう書いてございまして、教授会がこの日に募集停止の決議を行ったという報告にはなっていない。事実に即した報告書が出されているものと私どもは理解、受けとめをしておるわけでございます。

石井(郁)委員 それは全然違うんですよ。私もこれはずっと経過を見ましたけれども、大学が行ったのは、短大の改組案の決定なんですよ。

 それで、理事会とのそういうやりとりがいろいろあったかもしれませんけれども、そういうことではないということで、ここでも、二〇〇三年の一月二十二日は、短大教授会で、短大あるいは短大部としての継続を全会一致で決定というのが経過なんですね。

 あなたは何をごらんになったのかわかりませんけれども、事実をきちっと確認してください。ここでこれ以上、これが事実、あれが事実ということはやりませんけれども、それはぜひ事実を確認してください。

 だから、大事な点は、申し上げたいのは、教学側の意向というのはきちんと尊重されていないんじゃないか、理事会側がやはり一方的な判断を押しつけているんじゃないかということがここから浮かび上がるわけで、その点はいかがですか。やはり教学の意向というのは尊重しなきゃいけないでしょう。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 学校法人の経営につきましては、先ほども申し上げました、最終的な責任と権限を有するのは理事会でございますけれども、理事会がさまざまな意思決定をするに際しましては、学内のさまざまな事情について配慮する、教学の意向につきましても、相当程度配慮することは大変重要なことだと私ども認識をいたしておるわけでございます。

 学校法人の経営は、経営側と教学側、いわゆる両サイドが相互の役割分担を理解して、協力し合って進めていくことが大変重要だと私どもも考えておるところでございます。

石井(郁)委員 やはりそういう立場できちんとこういう事態を見ていただきたいということを強調しておきたいと思います。

 もう一点の問題なんですけれども、ここの明浄学院が今回の私立学校法の改正の前に寄附行為の変更を行おうとしたということがあって、その中に、この例の評議員会、議決機関から諮問機関に変える、こういう提案がもう既になされているわけです。

 このことで伺うんですけれども、これは先日の参考人の質疑の中でも、慶応大学でも監事の選任は評議員会の議決によるものだと述べておられました。だから、寄附行為で評議員会は議決機関と定めている、現行で定めているところはそのまま議決機関であっていい、今後、議決機関とすることも、法人の決定による、いろいろ規則を定めるとき、これは法人の決定によるんだということで理解してよろしいですか。

加茂川政府参考人 評議員会の性格づけについてでございますが、委員御指摘のとおり、原則は、理事会が議決機関、評議員会は諮問機関でございますが、理事会が寄附行為を定めることによりまして、評議員会に議決機関としての機能を事実上付与することができます。そのことは現行の規定もそうなっております。この点は変更はございません。改正以降も変更はないわけでございます。

石井(郁)委員 そういう答弁で確認をしたいと思います。

 次の問題に移りますけれども、理事の選任でございますが、理事のうちで外部理事を一人以上選任するということでありまして、また、監事のうち少なくとも一人、外部から選任するということにしております。

 私どもは、この点では、国立大学法人問題でも質問をしたところでございますけれども、天下り問題というのがありますから、まさか文科省からの天下りは、こういう中には行わない、行われないということで理解できますか。はっきり言明していただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 いわゆる外部役員、外部理事等の導入についてでございますが、現状をまず申し上げますと、多くの学校法人、私ども九割以上と把握をしておりますが、既に当該学校法人の職員以外の者を例えば理事として任命しておりまして、このことが学校法人の運営に多様な意見を取り入れ、経営機能を強化する観点から有効だ、そのように機能しておるものと理解をしておるわけでございます。

 今回の法律改正につきましても、こういった実態を踏まえておるわけでございまして、どういった役員、外部理事、外部監事を迎えるかということにつきましては、各学校法人が法改正の趣旨を踏まえて、主体的、自主的に対応していただけるものと考えておるところでございます。

石井(郁)委員 なぜかきちっと御答弁されないんだけれども、文科省の姿勢として、文科省としては、例えばいろいろなことがあるかもしれないけれども天下りなどということはしないと、きちんと言ってくださいよ。なぜ言えないんでしょう。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほどお話をしましたように、実態を踏まえての法改正でございまして、委員御指摘のような趣旨をねらった法改正ではないということをお話ししたつもりでございます。

石井(郁)委員 次に、これも先ほどからも出ておりますけれども、私立学校審議会の規制緩和の問題でございます。

 都道府県に置く私立学校審議会の委員のうち四分の三が私立学校関係者であった。これは、私学行政に私立学校関係者の自治的な意見を反映させるものだったということを、私立学校法の逐条解説で読みました。

 この条文規定をなくして、教育に関しての学識経験を有する者のうちから知事が任命するということになったわけでございますが、なぜ、この自治的意見の反映のためという、こういう条文をなくすのかということで伺っておきます。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 今回の私立学校審議会の改正につきましては、その構成、もしくは推薦手続についての規定を削除して地方の判断にゆだねるというものでございまして、私立学校審議会の意義、私学振興、地方における私学行政の適正化を期すために私立学校審議会が置かれている、もしくは、私立学校法の精神を踏まえて、その機能が期待されているところについては変わりがないわけでございます。

石井(郁)委員 時間もありませんので行きますけれども、結局、私立学校審議会の委員の資格、構成割合、推薦手続が知事の判断にゆだねられるわけでございます。結果として、やはり知事の権限が強められるということになって、これによって株式会社参入などに道を開くのではないのかという危惧の声が聞かれるわけでございます。

 ここは一つ大事な点ですので、ぜひ大臣に御答弁いただければと思うんですけれども、こういう規制緩和で株式会社の参入問題に道を開くものではないんだ、教育に対する株式会社の参入は今のところ特区だけであるということを明確にしていただければと思いますが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 私立学校法によりましても、私立学校の自主性を尊重しながら、まず尊重するという視点がございます。したがって、この制度そのものの本来の趣旨、これは今後とも十分に生かされていくと考えておるわけでございます。

 ただ、今後のあり方といたしましても、私学審議会の形が四分の三私学関係者であったこと、これを除いたということ、これによって、知事の方でまさにこれからの私学運営等々のあり方について見識のある方を選んでいただける、そのフリーハンドを知事にゆだねることになったわけでございます。

 だからといって、それによってどんどん株式会社が私学になって出ていくということにはならないと私は思っております。というのは、今、特区において株式会社、いよいよ始まったわけでございますが、このことは、これから、教育成果というものがどうであるかということをやはり検証させていただいた上で、今後、全国にどうするかという問題について判断をしなければならない。こういうことを考えますと、これからどんどん御懸念になるような形にはならないだろう、私はこう思っております。

 ただ、自由に、公立学校ももっと活性化をしなければいかぬ、こういう要求もございます。そして、私学が出てくる、そういうことによって競争関係も生まれる、よりよい教育がなされる、そういう期待もやはり今回の改正の中には入っておるわけでございますので、それが直ちに、株式会社を進めるためにこれをこういうふうに認めた、法案として出しておる、こういうことではないということであります。

石井(郁)委員 この問題は本当にいろいろありまして、本当はゆっくり議論をしなきゃいけないところでございますけれども、一点だけ、先ほど前の委員の方の質問を聞いておりまして、ちょっと大臣の御答弁の中に、今のところは特区だ、しかし、やがてその特区がもう全体に広がるだろうし、広がるかもしれないし、そういう何か期待、そういう予想をされているような向きのニュアンスでお聞きしたんですけれども、そういうふうにお考えなんですか。

河村国務大臣 問題は、株式会社であろうと学校法人であろうと、今、法的な根拠というのは学校法人まで、こういうことにしているわけでありますが、今回、特区制度、これによってまさにその教育成果が上がる、これが私は大事だと思うんですね。そこでよりよい教育がなされる、それがあれば、むしろ学校法人も、株式会社がもしそれでうまくやっておられるのなら、それを見習う部分もあるんじゃないですかと。

 ただ、株式会社が私学助成を下さいと言われても、これはどうしても今の法律からいっても無理ですよということを前提にしてやっておりますから、そういうことによって今後、私はこれによって、きちっと検証されればそういうことが出ていく可能性はあるだろう、こうは思います。思いますけれども、現時点では、これによってどんどん出てくるということは考えられないだろう、こう思っておりますが、今後のあり方としては、そういうことを一〇〇%否定して特区を認めたということではないということは言っておきたいと思います。

石井(郁)委員 もう時間が参りましたので、やはり私学の財政基盤の問題、今大臣も言われましたけれども、そういうことも私は質問したかったんですけれども、これは御要望だけにしたいと思いますが、私学助成の大幅増額と、特に学費軽減の直接助成制度というようなことの創設にやはり踏み出すべきではないのかということを御提案申し上げまして、奨学金の問題もありますけれども、直接助成制度という考え方がやはり非常に大事ではないかということを一言申し上げまして、終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 まず、監事機能についてお尋ねをいたします。

 過去五年間で、監事から文科省に報告があった事例は何件おありでしょうか。また、その中に不祥事を起こした帝京大学は含まれているかどうか、お聞きしたいと思います。

加茂川政府参考人 委員のお尋ねは、いわゆる監事が監査の結果、不整の点を発見して所轄庁に報告した件数があるかないのかという御質問だと理解をいたしました。

 過去五年間にそういったケースはございません。当然、御指摘のございました具体の大学からのケースもございませんでした。

横光委員 次に、もう一つ事例を挙げてお尋ねをいたします。

 千葉県の昭和学院にかかわる問題でございますが、昭和学院では、短期大学の定員割れなどを理由に五名の教職員が解雇されました。その一方で、今度は、亡くなった理事長には二億数千万円と推定される退職金が支払われたとも言われております。教職員組合がその基準、支払い額などを示すように理事会、監事に要求いたしましたが、理事会、監事とも何ら回答しておりません。推定されるこの二億数千万円という退職金、これはどう見ても、公教育機関であり国や自治体から補助を受けている私立学校では、常識では考えられない金額ですよね。片一方では解雇している、片一方では信じられないような退職金を払っている。これが一つ。

 そしてもう一つ、私学共済への組合員登録が、短期大学の教職員であるにもかかわらず高校の教職員として登録されている事実があるわけです。これにより、千葉県が私立高校に出している私学共済掛金への補助が短大の教職員にも出されている可能性もあるわけです。

 これらは当然、いわゆる現行法の言う不整の点に入るわけでございますが、この二つの点、これも今お聞きしようと思ったんですが、これも含めて監事から文科省への報告はなかったということでございます。

 ということは、どうなんでしょう、この監事の機能、大変失礼な言い方になりますが、世間的では重大な不正事項と思われる事案についても、文科省は蚊帳の外じゃないんですか。つまり情報疎外状態に置かれていると言ってもいいんじゃないですか。つまり、監事が報告をすると法律に書かれている、それは義務じゃありませんか。書かれているにもかかわらず、そしていろいろな不祥事が現実に発生しているにもかかわらず、何ら報告がない。ここは、監事の機能が有効に働いていない一つの点ですよね。

 この報告の件はまた後でお尋ねいたしますが、この監事が機能しない原因は、まず第一に、監査される理事会が監査する監事を選任するという、この矛盾にどうしても突き当たりますよね。さすがに今回の改正案においては、評議員会の同意が義務づけられました。義務づけられましたが、依然として、選任自体は理事会が行う仕組みは何ら変わっているわけではありません。

 四月二日の参考人質疑の際、安西慶応義塾長も述べておられます。現行法でも、寄附行為によって評議員会が監事を選任することは可能だ、実際行っていると。であるならば、行政権限のあるべき行使の一つとして、文科省は、かかる見地から監事は評議員会において選任するよう指導性を発揮すべきじゃないかと思いますが、いかがですか、大臣。

河村国務大臣 監査される側のみで監事を選任されることのないような視点、観点、こういうことから、監事は評議員会の同意を得て理事長が選任する、こういうことになっておるわけでございまして、この評議員会の同意手続というものが厳格に行われれば、このような御指摘のような趣旨が実現できると私は考えておるわけですね。これは、そういう意味では、私学の自主性といいますか、そういうものを考えながら、具体的な選出手続、これは各学校法人において工夫することが可能である、こう考えておるわけでございます。具体的に、理事会が数名を選んで評議員会が一名に絞った上で理事長が選任をするやり方、理事長が最終的に選任することを担保する、こうなっておるわけでございます。それから、初めから評議員において監事候補を出して、その者を理事会、理事長が選任する、こういうこともできるわけでございますから、各学校法人の実情に応じた対応を可能にするというのが今回の改正の趣旨の中にあるわけでございます。

 やはり文部科学省といたしましては、私立学校の自主性の尊重、これが基本線にございますので、今回の改正の趣旨を踏まえながら、踏まえたものによって、これは適正な選任の運用がされるようにということで、そういう意味において学校法人を今後とも文部科学省の責任において指導してまいりたい、このように考えておるわけであります。

横光委員 もうちょっと強く指導性というものを表明していただきたかったんですが。

 要するに、監事の機能、監事の役割というのは何ですか。現行法でも、不整の点があれば所轄庁または評議員会に報告すること、改正案でも、重大な不正の事実を発見したときには所轄庁に報告し、それぞれ所轄庁に報告するのは最初に載っておるんですよ。それが、これまで何ら一切報告がないということは、監事の機能が停止しているということでしょう。

 その監事の機能がなぜ停止するか。それは、理事会が選任するというところにそもそもの原因があるわけでしょう。そこのところを、実際の大学、慶応ではもうちゃんと評議員会が監事を選任している。そういった寄附行為をやっている大学もあるわけですから、文科省としてはここはやはり指導性を、こういったことに範があるんだということを通知とかで指導すべきである。

 自主性、自主性と言われます。確かに大事です、自主性は重んじなければなりません。その自主性がほったらかしになってしまったら何にもならないじゃないですか。そういうことを私は言っているわけです。ここは、先ほどからも言っておりますように、笠議員も言っていましたが、本当に文科省の出番だと私は思うんですね。

 それから、もう一つ監事が機能しない原因の第二。これは先ほどの事例でも明らかなように、一般の教職員が監事に加わっていない、これも大きな理由だと思うんですね。つまり、監査機能を充実させるためには、二名以上とされる監事のうちの一名を、学校法人とは違う大学の教職員、これを、役職者や管理者を除く一般教職員から選任することだと思うんですね。一般教職員が一番学生のことを考えて、一番身近に、物事が発生したことがわかるんですね。ところが、これは禁止となっている、今回の三十九条で。禁止となっておりますが、ガバナンス委員会の改善報告では、内部監査の重要性、充実性が強調されております、内部監査の充実が。兼職を認めないのであれば、これを補強する措置、つまり改善策として、善後策として、監事と別に自主的に一般教職員を含む内部監査制度の充実、これを図る必要があると思うんですね。そして、この充実を図るよう強く指導することがまた文科省の仕事だと思うんですね。いかがですか、大臣。

河村国務大臣 一般の教職員から監事を選ぶべきではないかという御指摘でございます。

 監事は二名以上置くということで、監査の専門性を高めたいということ、また客観的な監査ができるようにということもあって、少なくとも一名は外部から、こうなっておるわけです。

 それで、外部監事については特に、財務管理とかそういういわゆる専門家、事業の経営管理ができるようなそういう方が外部監事として選任されることを大いに期待をされているところでございますが、こうした外部から選任し、それから、いわゆる外部からもう一人、二人以上ということですから、どういう監事を選んでいくかということ、この考え方であります。まあ何名にするかということもあるわけでございますが、これは各学校法人の規模とかそういうものもあるでしょうから、そこで適切に判断をしていただくということになっておりまして、監事として適切な人材であれば、その学校法人から、教職員であった者から選ぶこともこれは別にあり得ることだと思うんです。

 したがって、一名以上選任することを法令上義務づけるということは、やはりこれはまさに私学の自主性を妨げることになるという考え方に立てば、また、小規模の法人では必ずそこから選ばなければいけないということができない場合もありますから、その辺の判断はやはり各学校の自主的な判断に立つということで、監事機能の充実を図るということの今回の改正の趣旨を踏まえていただいて、各学校法人が適切な監事を選べるようにということは周知徹底していきたい、こう思っているわけであります。

横光委員 監事機能の充実を図るという法律改正案になっておると言われました。

 それと同時に、このガバナンス委員会では、監事機能と同時に内部監査の機能の協調が大切である、そういったことをガバナンス委員会、ガバナンス委員会の内容をこの法案に生かすための委員会なわけでしょう。そこが、監査機能の充実と同時に、それが十分でない場合は、やはり内部監査の協調が大切であるということをわざわざ提案しているわけですから、今言われたように、大臣も、適切な一般教職員であるのはそれもいいだろうというお話もございましたし、そういったことをやはり私は、指導という形で、通知とかいろいろな形でもっていけば大分変わっていくんじゃないかということを今申し上げているんです。

 それと、この法案ですが、先ほど笠委員が監事の報告の、義務とすべきじゃないかというような趣旨、所轄庁にですね。現行法では、「不整の点のあることを発見したとき、これを所轄庁又は評議員会に報告すること。」、これが改正案では、「発見したときは、これを所轄庁に報告し、」それで、新たに加わった、または理事会や評議員会に報告すること。ここの「これを」というところからちょっと見てください。現行法は「これを所轄庁又は評議員会に報告すること。」、改正案は「これを所轄庁に報告し、」、ここで一回切れている。報告をするということ、そして、または理事会や評議員会に報告すること、これが改正案と現行法との違いなんですね。同じであるならば、現行法どおり、これを所轄庁または理事会、新たに加わった理事会ですね、理事会及び評議員会に報告することで済むのですが、「これを所轄庁に報告し、」と改正案ではなっている。

 つまり、かなりこれはある意味では、所轄庁に報告するということは優先的である、強制的に近いという思いで受け取ってよろしいでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘の、現行法と改正法の比較でございますが、監督庁または評議員会に報告するという現行の規定を、監督庁に「報告し、又は理事会及び評議員会に報告する」、こう改めようとしておるわけでございまして、監督庁と評議員会、監督庁と理事会及び評議員会が「又は」で並列されておる。必ず所轄庁に報告しなければならないというものではないというのは、現行法と改正案も同じでございます。

横光委員 先ほどからその御答弁は何回も聞いていますが、では、文言を同じにすればよかったじゃないの。何でここで「所轄庁に報告し、」、それから、同じことがこう書いてある。同じことならば、これを、所轄庁または理事会及び評議員会に報告することとすれば済むことじゃないですか。それをわざわざ変えているということは、所轄庁にまず「報告し、」と、一回切れている。それほど私は重いと受け取っているわけです。それを、相変わらず、どちらでも報告すれば前と変わらぬということをおっしゃるけれども。

 法律でこのように決まったのであるならば、文科省がやることでもあると思うんです。つまり、政省令によって、こういった所轄庁と理事会、評議員会、この両方に、今のところ両方どちらでもいいというから一切報告がないわけですよ、ここ五年間。そうでしょう。ですから、この両方に報告しなければならないとする、いわゆる強制力を有する枠組みを、これは政省令でできるんですよ。これをやることこそが文科省の私は非常に大きな出番だと思うわけですね。

 法律では固まっているけれども、これを柔軟でもって対応するのが政省令でございますので、そういった意味で、今までの報告がゼロという中で、それは私学の自主性を重んじなければなりません、そしてまた、監督庁の関与はできるだけ避けなければなりません、それはよくわかります。であると同時に、現実に不祥事が起こっている以上、では、それをほったらかしにしていいのかということを考えたときには、そこに何らかのいわゆる文科省としての役割があるのではないか、それは政省令によって両方に報告するような義務づけができるのではないか、こういうことを言っているわけでございます。

 いいですか、大臣、ちょっと胸に手を当ててもらいたいんですが、先ほど大臣も、事後チェックの大事さ、大切さをおっしゃっておられましたし、文科省も、いわゆる事前規制から事後のチェックへと、こういうふうに近年の政策としているじゃないですか。これはなぜかと言えば、いわゆる学校法人に不正の事実があれば報告を受けて、そして、不祥事を未然に防止するためにその報告内容に即した適正な対応をとることが要請されているからでしょう。ですから、この事後チェックの大切さということを私は政策としていると思うのですね。

 であるならば、せめて、大臣、この文科省所管の大学法人そして短期大学法人については、政省令に基づいて文科省への報告を義務づけるような方向をとるべきだということでございますが、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 委員の重ねての御指摘でございますが、法律では、所轄庁または理事会、評議員会となってございまして、この法律上、義務が課されていない。法律上の義務は、どちらかに監事が報告をしなさい、しかるべき条件においてはしなさいという規定になってございますが、これを超えて、法律の下位法令でさらに義務化をする、法律以上の義務化をするということは、なかなか法制上問題があろうかと思います。

 ただ、委員御指摘のように、本来、監事が不正、重大な違背事実を発見したときに、所轄庁に報告して、しかるべきときにきちんとその責務を果たさないということはあってはならない、できればきちんと報告すべきだというのは、まことにもっともなことでございますので、この法改正が実現しました暁には、必要な事項が適切に監事からしかるべきときに報告されるよう、私どもは改正の趣旨の徹底を図ってまいりたい、こう思っておるわけでございます。

横光委員 どうぞよろしくお願いします。

 こういうことが、不祥事があってはならないということはもちろんですが、あってはならないのにあり続けているから私は言っているのであって、そういった意味では、法改正後、やはりこの改正の文言が「所轄庁に報告し、」、それから変わっているのですね。前と違うのですね。私は、ここのところを強調して指導していただきたい、このように思います。

 次に、評議員会についてお尋ねをいたしたいと思います。

 評議員の選任については、各学校法人の寄附行為にゆだねられているために、理事会が評議員の多くを選任している学校法人も多いわけですね。しかし、評議員会の機能を高めるためには、本来なら、教職員あるいは卒業生からの評議員、これはそれぞれから互選するよう私は法律で規定すべきであると考えております。しかし、これも今回は盛り込まれておりません。

 盛り込まれてはおりませんけれども、慶応大学の寄附行為では、教職員、卒業生については互選ないし選挙で選任すると定めており、現行法においてもこの寄附行為にうたえばできることなんですね。そして、実際やっている、こういったちゃんとした大学もいっぱいあるわけでございます。

 法案の附則第三条で規定されております、寄附行為の改定、作成、平成十八年の三月三十一日までに改定をすることになっておりますが、この改定や作成に当たって、私は、教職員、卒業生からの評議員は、理事会が選任するのではなく、それぞれで互選するよう、これまた文科省としてはしっかりと指導するべきであると考えておりますが、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 評議員の選任方法についてのお尋ねでございますが、現行評議員につきましては、学校法人の職員あるいは卒業生を必ず含めるような規定になっておるわけでございますが、具体的な選任方法は先ほど先生、一大学の例をお示しになりましたけれども、確かにいわゆる自薦、互選方式で決定をするという例もあるようでございますが、法制度としては私立学校の自主性を尊重して、各学校法人の寄附行為で定めることとなっておるわけでございます。

 これが私学の自主性を尊重した、私学における適切な判断に資するものだと私どもも考えておりまして、文部科学省として、いわゆる互選方式を一律に指導することは適切ではないのではないかと考えておる次第でございます。

横光委員 ありがとうございます。

 本改正案は、私は前進面があると思います。しかし、今私が質問しましたように、監事のあり方、評議員の選び方、多くの問題が、私はまだ課題が残されていると思うのですね。そういった意味で、この私立学校法が私学の公共性を高める内容となるよう、文科省の引き続きの取り組みを強く要請いたしまして、質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、私立学校法の一部を改正する法律案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、青山丘君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。川内博史君。

川内委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    私立学校法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、私立学校の自主性及び公共性にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 学校法人の管理運営制度の改善に当たっては、学校法人の自主的・自律的な取組みが一層求められることにかんがみ、学校法人関係者に対し、本法の趣旨・制度の内容等について十分周知し、その理解と自主的な努力を促していくとともに、改善の状況についての検証を行うこと。

 二 我が国の学校教育において、私立学校が大きな割合を占め建学の精神に基づく特色ある教育活動を通して重要な役割を果たしていることにかんがみ、私学振興策の強化に努めること。

 三 理事長及び理事の権限の明確化に当たっては、私学の教学面における自律性の確保を図るよう配慮すること。

 四 私立学校審議会の委員の選任に当たっては、当該都道府県の教育全般にわたる充実と発展を図ることができるよう配慮すること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 ただいまの御議決につきましては、その御趣旨に十分留意いたしまして対処してまいります。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

     ――――◇―――――

池坊委員長 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 趣旨の説明を聴取いたします。河村文部科学大臣。

    ―――――――――――――

 学校教育法等の一部を改正する法律案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

河村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容の概要を御説明申し上げます。

 近年、児童生徒の食生活の乱れを背景として、児童生徒が望ましい食習慣を身につけることができるよう、家庭だけでなく、学校においても食に関する指導の充実を図っていくことが重要となっております。このため、栄養に関する高度の専門性を有する教育職員を学校に設置できるようにする必要があります。

 また、近年の医療技術の高度化や医薬分業の進展等に伴い、医薬品の安全使用や薬害の防止等についての社会的要請が高まりつつある中で、薬剤師は、医療の担い手としての役割を積極的に果たすことが求められております。このため、臨床に係る実践的な能力を有する薬剤師の養成を目的として、大学における薬学教育を改善充実する必要があります。

 この法律案は、このような観点から、栄養教諭制度の創設及び大学における薬学教育の修業年限の延長を図るものであります。

 次に、この法律案の内容の概要について御説明申し上げます。

 第一に、学校に置かれる教育職員として栄養教諭を位置づけるとともに、栄養教諭に必要な資質を担保するため栄養教諭の免許制度を創設し、あわせて、栄養教諭の身分、定数、給与費の負担等について所要の措置を講ずるものであります。

 第二に、大学の薬学を履修する課程のうち臨床に係る実践的な能力を培うことを主たる目的とするものの修業年限を六年とするものであります。

 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。

 以上が、この法律案の提案理由及びその内容の概要であります。

 何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いいたします。

 以上であります。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 次回は、来る十六日金曜日午前九時二十分理事会、午前九時三十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時四十一分散会


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