衆議院

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第13号 平成16年4月20日(火曜日)

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平成十六年四月二十日(火曜日)

    午後二時二十九分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 平野 博文君 理事 牧  義夫君

   理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      奥野 信亮君    加藤 紘一君

      城内  実君    小泉 龍司君

      近藤 基彦君    田村 憲久君

      西村 明宏君    馳   浩君

      福井  照君    古川 禎久君

      松島みどり君    三原 朝彦君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   参考人

   (女子栄養大学長)    香川 芳子君

   参考人

   (薬学教育協議会代表理事)  井村 伸正君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

四月二十日

 辞任         補欠選任

  上川 陽子君     松島みどり君

  岸田 文雄君     福井  照君

  鈴木 恒夫君     三原 朝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  福井  照君     岸田 文雄君

  松島みどり君     小泉 龍司君

  三原 朝彦君     鈴木 恒夫君

同日

 辞任         補欠選任

  小泉 龍司君     上川 陽子君

    ―――――――――――――

四月二十日

 すべての子供たちに行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(山内おさむ君紹介)(第一六二五号)

 すべての子供たちへの行き届いた教育に関する請願(藤田幸久君紹介)(第一六五三号)

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(牧野聖修君紹介)(第一六七四号)

 助産の高度専門職大学院での質の高い助産師教育実現に関する請願(水島広子君紹介)(第一七一六号)

 私立専修学校の教育・研究条件の改善と父母負担軽減に関する請願(穀田恵二君紹介)(第一七一七号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(末松義規君紹介)(第一七六五号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 学校教育法等の一部を改正する法律案(内閣提出第八六号)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。

 本日は、本案審査のため、参考人として、女子栄養大学長香川芳子さん及び薬学教育協議会代表理事井村伸正さん、以上二名の方々に御出席いただいております。

 この際、参考人のお二方に一言ごあいさつ申し上げます。

 本日は、大変お忙しい中、お二方には本委員会に御出席いただきまして、本当にありがとうございます。本案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。

 次に、議事の順序でございますが、香川参考人、井村参考人の順に、お一人十分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答えをいただきたいと存じます。

 なお、念のため申し上げますが、御発言はすべてその都度委員長の許可を得てお願いいたします。また、参考人は委員に対し質疑ができないことになっておりますので、あらかじめ御了承願います。

 それでは、まず香川参考人にお願いいたします。

香川参考人 女子栄養大学の香川でございます。

 本日は、意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございました。

 ちょっと先に私のことを申し上げておきますと、私のおります女子栄養大学というのは、私の両親が医師であって、食生活に問題があるために病気になる人が非常に多いので、ちゃんとした食生活をみんなに普及させることで人々を健康にしたいという願いで、ちょうど約七十年ぐらい前に創設したものでございまして、現在もなお、それだけをひたすらに求めているという学校でございます。

 私も母の跡を受けましてただいま学長を務めさせていただいておりますので、その立場から申しますと、今回、栄養教諭制度を創設していただくというのは、長い間の念願がかなうということで、大変にうれしく存じております。ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

 食というのがどれぐらい大切なものかは改めて申し上げるまでもないのでございますけれども、現在の日本の食は昔と比べて非常に変わった状況になっているということはよく御承知のとおりでございます。それを申し上げていると時間がなくなりますので省略いたしますけれども、そういうふうに変わった食の環境に対してどのように食べていくか、対応していくかということは本能ではわかりませんので、ちゃんと学習しなければいけないわけでございます。

 それをしないものですから、こういった誤った食べ方のために、生活習慣病が大変ふえて、医療費が増大しております。この医療費は、二次予防、早期発見あるいは早期治療というようなことが言われておりましたけれども、それでも医療費が非常にかかります。原因は主として食生活でございますから、一次予防としてちゃんとした食生活をすればよいのですけれども、それが癖になってしまっている大人では、ほとんど、なかなか変わらない、病気にでもならない限り変えようとはしないというような状態でございますので、国民全体に対してちゃんとした食べ方、食の教育ということを徹底させなければいけません。

 家庭ということを言われておりますけれども、家庭というのは、今はほとんど親の方がどう対応していいかわからないというような状態であることと、家庭の状況が変わってきたというようなこともございまして、家庭に任せることで食の改善ということはとてもできない状況になっております。

 全国民にちゃんとした食べ方を教えるということは、いわば次の世代を育てる義務教育の中でするのが最も適当であろうというふうに考えておりますけれども、現在の学校の現場におきましては、家庭科というのが食のことを教えることになっておりますが、これは既に、小学校の五年生からでないと習いませんし、それも家庭科教員がいるところは非常にまれでございます。一般の教員はほとんど食のことには詳しくないという状態でございますし、その上さらに新しい教員を配置するということは、経済的に見てもかなり無理があると思います。

 ところが、ここに学校給食というものが行われております。この日本の学校給食と申しますのは、世界的に見ましても、その普及率あるいは内容ともに世界では第一級のものでございまして、その成果の例として、例えば十四歳の男児が十八センチ全国の平均で伸びております。それから、死亡率につきましても、先進諸国の中では最も低い。五歳から十五歳の子供でございますね。そういうふうに学校給食が子供の健康に対して実際に大変に役に立っているわけでございますが、ただ食べさせるだけで、そこでの教育というのは、するようにと勧めてはおりますけれども、何せ教員としての資格がないこと、それで、そういったトレーニングも受けていないというようなことがございます。

 そこで、学校給食を用意するのは栄養士でなければいけないということで、全国に多くの栄養士が学校給食のために学校栄養職員として配置されているわけでございます。この人たちは、明らかに食の専門家でございますけれども、今申しましたように、教員としての素養を特につけていないということもございまして、必ずしも教壇には立てない。子供に向かって食の教育をしなければいけないという立場ではございません。させていただける学校もありますが、まちまちになっているわけでございますので、そこで教員としての素養をつけていただきまして、そうすれば食の専門家になることができるであろうというふうに考えられるわけでございます。

 そして、それを栄養教諭というふうにして配置すれば、全国の、全学校にはとても今のところはできませんが、今いる栄養職員もなるべく栄養教諭に置きかえていく、あるいは上進というか、かえていくというようなことで、食の教育にタッチしていただけば、これはまさに食の教育の専門家ということが言えると思います。

 ですから、栄養教諭というのは、まず学校給食の運営管理は従来どおり責任者でございますけれども、同時に、今どんどんふえていて大変問題になっている生活習慣病の原因にもなっております肥満とかアレルギー、偏食、それから最近ふえている摂食障害といったような子供の、栄養士でございますから個人指導に当たることもできます。

 それから、給食のときだとか学級の中で、時間割りにはありませんけれども、いろいろな機会に子供たちに食に関する指導ができます。それから、子供たちを取り巻いております父母だとか地域だとかの食の教育も大事でございますけれども、そういったもののコーディネーター、学校内での食教育のコーディネーターということで働いていただくこともできるようになると思いますので、非常に期待されるわけでございます。

 最近は、総合学習というのも取り上げられておりますが、総合学習と申しますのは、本当に身近なものにテーマを求めることが多うございまして、食を取り上げている方が大変に多うございます。そういったような場合でも、大変に専門家として力になってもらえるのではないかというふうに思っております。

 ちなみに、もう一つのあれでちょっと書いてございますけれども、外国ではどんな状況かといいますと、実は、外国では国を挙げて栄養教育に取り組んでおります。

 ノルウェーが一九六〇年代から国を挙げて栄養教育を始めました。それからアメリカでは、一九七七年にマクガバンが上院においてそういう法律をつくりまして、そして国を挙げて、必死で食の教育を大人も子供もやり始めまして、そのおかげでコレステロールも下がり、心筋梗塞だとか脳卒中も減らしているわけでございます。

 子供に対しては、そこのもう一つのプリントがございますけれども、まず学校を拠点としてするというのはどこの国でも考えていることでございます。それから、教員の新任研修等において取り上げる。それから、スクールカフェテリアなどの食事サービスの場において教えるといったようなことをしているわけでございまして、プリントをごらんになっていただければ大体わかると思いますけれども、おいしくて栄養基準に合った食事を供給して、それをどう食べるかということにつきまして学校を挙げて勉強していく、子供と一緒にしていくということは、これはごらんのように、ちょっとアメリカとオーストラリア、それからカナダのを挙げましたけれども、イギリスでもそうでございまして、みんな一生懸命取り組んでいるわけでございます。

 日本は、早くしないと間に合わない、大変危険な状態だというふうに、元来が医者でございますので、医療費のことを考えますと、本当にこのままで行きますと二〇二五年には百十兆円ですか、とにかくとても、国の予算も突破するほどの医療費になってしまうと思いまして、それではみんなの幸福も保障できない。これは義務教育の中で何とかしなければいけない。栄養教諭制度というのはその点で、とにかく完全ではないとしても非常に大きな一歩になると思いますので、先生方には、この件、よろしくお願いいたしたいと思います。

 私の意見、ここまでといたします。(拍手)

池坊委員長 香川参考人、ありがとうございました。

 次に、井村参考人にお願いいたします。

井村参考人 薬学教育協議会の井村でございます。

 それでは、最初に薬学教育協議会という組織について簡単に御説明申し上げておきます。

 薬学教育協議会は、昭和三十三年に設立されました団体でございまして、各大学、つまり日本では国公私立大学全部含めますと現在五十六大学ございますが、その大学がすべて、それから日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、さらに私立薬科大学協会、国公立の学部長会議等々、それから企業の団体でございます東京医薬品工業協会あるいは大阪医薬品協会、およそ薬にかかわる主要な団体がすべて加盟しております組織でございます。従来ずっと任意団体のままで参りましたけれども、ついこの二月九日に有限責任中間法人という法人格を取得いたしております。

 以上が、薬学教育協議会の組織の御説明でございます。

 さて、学校教育法の一部を改正する法律案のうち、薬学教育に関する部分につきましての私の感想を述べさせていただきます。

 もう既によく御承知のとおりでございますが、医薬分業の著しい進展がございまして、既に五〇%に達しております。さらにはまた、医療技術が目覚ましく高度化をしてまいりまして、それに伴いまして、医薬品の適正使用による薬害の防止でありますとか、さらには医療過誤の防止、こういったようなものにおける医療の担い手としての薬剤師の果たすべき役割につきまして社会的な期待が高まっていると言ってよろしいかと思います。

 今回の法改正がこのような背景から進められてきたことは、既に法案の趣旨説明等で御承知のことと思いますので、ここでは、このたびの薬学教育改革案のうち、特に重要と思われる点につきまして触れさせていただきたいと存じております。

 この改正案では、医療の現場すなわち臨床の場で実践的な能力を十分に発揮することのできる薬剤師を養成するために、薬学教育の年限を二年延長することが提案されております。

 延長する主な理由は、臨床の場で実践的な能力を十分に発揮することのできる薬剤師を養成するために、これまでなおざりにされがちでございました臨床にかかわる教育を充実するためでございまして、特に臨床現場、臨床現場というのは患者と接する業務を行う場というふうに考えていただければよろしいかと思いますが、この臨床現場での実務経験を十分に積ませるためでございます。

 すなわち、そのための長期実務実習がこの新しい教育改革の柱となっていると言ってよろしいかと思います。そのため、大学での導入教育を含む六カ月の実務実習が必要とされております。

 この長期実務実習の実施に関しましては、実習施設の確保が重要な課題であるとされておりますけれども、現在、実習受け入れ側の日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、及びこれまでこの実習の調整を担当してまいりました私どもの薬学教育協議会等の関係者間で、鋭意実行可能な具体案の作成に向けて努力を続けているところでございます。

 なお、実務実習を受ける学生は、もちろんまだ卒業前でございますので、薬剤師免許を所持しておりません。したがいまして、長期の実務実習でかなり高度な臨床現場での参加型の実習を行うためには、その能力が十分備わっているということをチェックするための、いわゆる医師や歯科医師の方でやっております共用試験が必要になるかと存じます。これに関しましては、日本薬学会がその実際の施行方法や内容につきましてこれから検討を開始するところであります。

 それで、今回の長期実務実習を柱とする六年の薬剤師養成教育が実現いたしますと、医療の現場で、いわゆるチーム医療の一員として十分な能力を発揮するための知識と技能と、そして医療人としての適切な態度を身につけました薬剤師が、我が国の医療レベルの向上にこれまでより以上にさらに大きく貢献することができると私は期待しております。

 さて、この長期実務実習の実現に向けて努力をしております私どもの立場からいたしますと、気にかかっていることがございます。それは、このところ薬科大学の新増設が次々に行われていることでございます。

 御説明するまでもないと思いますが、この現象は、非常に多くの人たちがかかわってつくり上げられましたいわゆるコアカリキュラムに盛り込まれております質の高い内容の長期実務実習を実施する上でマイナスの効果を与えることは明らかであります。この二年、つまり十五年度と十六年度で、何と既に十校の新増設がございました。この傾向がもし続けば、どうしても施設の確保が難しくなりまして、無理をして実習の調整をすることはできましても、実習の質そのものが薄められてしまうというおそれが十分にあるかと考えております。

 今回の薬学教育改革の実効を上げるために、新しい制度が円滑に動き始めるまでの間でよろしいかと存じますけれども、この傾向に歯どめがかかりますように皆さんの御配慮がいただければ非常に幸いであると存じております。

 それから、もう一つの懸念でございますが、これは、大学病院など病院における薬剤師数が減少傾向にあることでございます。

 医師や看護師の場合と同様に、薬剤師にとりましても臨床現場は教育の場でもあるということを考えますと、病院での薬剤師の数の減少というのは薬学教育の改革に負の効果を及ぼすことは容易に考えられるところでございまして、この点につきましても私は心配をいたしております。

 次に、今回の改革におきましては、六年一貫の薬剤師養成に並びまして、四年制の学部が併置されることを認めております。この点については大変に意見が分かれたと聞いております。

 私は、四年の学部設置が研究者養成をもし目指すものであるといたしましたらば、そのカリキュラムは六年一貫教育の内容とは画然と違ったものであるべきだというふうに考えております。また、六年の薬剤師教育で十分な医療教育を受けた者がその教育の過程で基礎科学的課題に強い興味を持つことも当然あろうかと考えておりますが、そのときには、四年制学部の上に設けられる二年プラス三年の大学院を利用することもできようかと思います。

 ただし、六年一貫の薬剤師養成教育を受けた者が研究者としては不適当であるというようなことは決してあるわけがございませんで、医療人としての教育を受ける過程で、医療に深くかかわる新しい薬学の研究課題が生まれまして、六年制の上に設けられました四年の大学院博士課程を利用することによりまして、医療への貢献度の高い薬学らしい研究がやがて育っていくことを私は大いに期待しております。

 時間も限られておりますので、その他の問題点につきましては、御質問がありましたときにお話をさせていただこうかとは思います。

 いずれにいたしましても、今回の薬学教育改革の内容は、百有余年の歴史を有する薬学の教育界にとりまして初めての体験でございますので、その実現に向けましては、関係者一同の一致協力した努力が必要であると強く認識をいたしております。

 以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

池坊委員長 井村参考人、ありがとうございました。

 以上で参考人の方々からの意見の開陳は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより参考人に対する質疑を行います。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。青山丘君。

青山委員 お二人の参考人の方にはまことに貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。大変勉強になりました、ありがとうございます。

 私からは幾らか質問をさせていただきますが、まず香川参考人にお尋ねいたします。

 昨日の夕刊で、日本経済新聞に大きく取り上げられておりまして、私は丹念に読ませていただきました。非常に勉強になりました。恐らく先生がおっしゃりたかったことは、例えば、「単純性肥満の人に食事指導をしたところ、三カ月後、彼らは体重だけでなく、血糖やコレステロールの値も正常になっていた。「先生、栄養って効くんですね!」という助手の驚きの声が忘れられない。」と言っておられましたが、まさに食というものが人間生活の本当に重要な基本であるということを改めて私は感じました。

 そのことで、食を指導する立場の栄養教諭が、専門的な栄養の分野における知識を十分確実につけていただかなければなりません。同時に、しかし、学校栄養職員と少し違ってくる点は、教師としての幅広い見識や豊かな人間性、高い志、これはすべての教師に必要な面であろうと思いますが、こういう面もぜひ育てていただかなければならないのではないか。

 そういう意味で、先生のお立場で、このような決意でこれから学校栄養教諭を育てていきたい、養成していきたいという考えをもう少し聞かせていただきたいと思います。

香川参考人 ありがとうございます。

 今まで育てた栄養士にも教職を取っている者はかなりございます。それから、学校栄養職員になった栄養士にも、非常に教育のこと、一生懸命やりたい、そういう機会が与えられれば一生懸命努力するという傾向はございましたので、ある意味では、少し今までの仕事よりも大変ではないかという御意見もありますけれども、それは喜んで取り組んでいくと思います。

 それから、教員としての、栄養指導ということが栄養士の教科目の中にございまして、食生活を対象の方にきちんとするようにお教えして変えられるようにしていくということは、もともと栄養士の仕事の大変重要な部分でございますので、これに、例えば子供の発達過程であるとか教育についてのもっと幅広い知識を与えることがありますれば、なおさら有効に働くのではないかな。非常に私としては、この人たちを通じて日本国民全体の健康を改善したいという思いがございますし、これは学校栄養職員になっている者、学校栄養教諭にこれからなろうとする者、全員が強く志して、それを実現したいがためにそういう仕事にかかると思いますし、そのように私どもも教育していきたいと思っております。

青山委員 ありがとうございます。

 先生のお話を聞いて、私も新たに認識を深めさせていただいた面があるんですが、子供たちに正しい食習慣を身につけてもらう、そのことによって、生活習慣病のリスクを少なくすることができる、そして医療費という社会的なコストの負担を軽減させていくことができる、このこと、非常に大きいと思うんですね。

 先ほどおっしゃられましたが、二〇二五年には百兆円というような数字が出ておるようでして、これは、これから学校栄養教諭の養成に当たって社会的なコストも幾らか負担しなければなりません。しかし、御本人も負担していくわけですが、そのことによっての社会的なコストよりも医療費が削減されてくる、正しい食習慣を身につけることによって生活習慣病が少なくなることができるというようなことは非常に意味があると思うんですね。そのためには、しかし、相当な社会的なコストが、負担が軽減されるというお話を承りましたが、このあたりの見解、もう少しお考えがあったら聞かせていただきたいと思います。

香川参考人 実は、糖尿病と申しますものは、これはほかにもたくさん生活習慣病はございますけれども、例を糖尿病にとりますと、私が医学部におりました昭和二十年代には、全国の糖尿病の患者は十万人ぐらいでございました。もう既に七百万人を突破しております。そして、健康日本21という厚生省で出した推計によりますれば、二〇一〇年には一千八十万という予想になっております。

 これが大変なコストのかかる病気でございまして、自覚症状がなくて、ほうっておきますと、透析になる人が現在でも毎年一万人以上出ております。失明する者が三千人ございます。そして、下肢切断というのも多くございますが、例えば、透析は現在でも二十二万人いるところに、毎年、今のペースでいくと一万一千人ずつ糖尿病の方から入っていく予定でございますが、これが一人年間七百万円の治療費がかかるわけでございます。ですから、それだけをとってみても、いかに医療費がかかるかということがわかります。

 私どものところで二十五年以上前に食事をきちんと指導しました方々が、今、七十歳の平均になっております。その方々を呼び集めまして、そうしましたら、百人集まったうち、七十歳平均で、普通ですと大体二五から四〇%が糖尿病になっているはずでございますけれども、調べてみましたら、私どものところできちんと食事を教えて、その後はどうしていたかはわかりません、野放しですから。でも、呼んでみましたらば、百人のうち七人だけが糖尿病でございました。

 これは世間一般でいうのに比べますと、はるかに少ないわけで、その医療費のコストの面からいっても、大変に少なくて済む、それから健康でいられるということが明らかではないかと思います。このほかにも、高脂血症なども抑えられておりますし、数字は申し上げませんけれども、非常に少のうございます。健康に暮らしております。

 きちっとした食生活を習慣として、これは大人になってからでも変えられないことはありませんが、非常に難しいです。本人が何とか取り組んで変えようと思わない限り変えられません。しかし、子供のときから給食を、実物教育をすれば、進められる可能性が非常に多いと思います。

青山委員 ありがとうございました。後の質疑者に譲りたいと思います。

 薬学教育について、井村参考人にお尋ねしたいと思います。

 健康に対する国民の関心というのは、今のお話を聞いてもそうですが、非常に今重くあって、そういう意味では、薬剤師さんの養成のための薬学部の修業年限の延長というのは非常に私は時宜を得たことというふうに感じております。

 問題は、ちょっと先ほどのお話の中に、私は長期実習という言葉が印象的にありますが、私自身はよくわからなかったものですから、大学人として先生が、これからはこういうふうに育てていきたい、四年制では足りない、六年どうしてもかかる、具体的にこういうふうに育てていきたいんだというその決意といいますか、もう少し具体的に、だれでもわかるようにお話しいただけませんか。

井村参考人 どなたでもわかるようにということでございますけれども、まず、長期実務実習というものの意味でございますけれども、現在までの従来の薬学教育におきましては、ごく最近になりましてやっと、四週間実習と申しまして、四週間の実務実習がほぼ多くの大学で必修にされるようになったばかりでございまして、ひどい場合には、全く実務実習を経験しない者が国家試験を受験して、それに合格しさえすれば薬剤師になるというようなケースも間々あったというような実情でございます。

 それではやはり医療人としての資格には欠けるのではないかということから、今回の改革に結びついてきたわけでございます。

 長期と申しますのは、これがどのように計算されたかといいますと、まずカリキュラムを、どのような内容の教育が必要かということからカリキュラムを積み上げていく作業が最初に行われました。その過程の中で、実務実習につきましてはこれこれこういうことが必要だということがだんだん積み上がってまいりまして、それについて計算をいたしますと、大体六カ月の教育が必要だということになってきたわけであります。

 その中で、まず一カ月は大学における実務実習の導入教育というのが入っておりまして、それは各大学が責任を持って自分のところでやるという形になります。あとの五カ月の実務実習を半分に分けまして、その半分は病院での実務実習、あとの半分はいわゆる調剤薬局といいますか保険薬局での実務実習ということに分けて、学生に実習をやらせようという形になったわけであります。

 これが、長期といいますか六カ月の実務実習ができ上がってきた過程でございまして、それでよろしゅうございますでしょうか。

青山委員 薬学部における充実した教育の成果を受けて育ってくる薬剤師さん、それから非常に使命感を持って世に出てくる薬剤師さん、そういう人たちが医療の中で果たしていく役割というのはやはりもっと重くなってくると思いますし、私は、非常によい効果といいますか、期待できると思っています。

 具体的に、薬剤師さんがいろいろな専門的な知識をしっかり持っておられる、あるいは、非常に患者さんに対してもあるいは一般の国民に対しても正しい情報を発信していただける、それから医師や看護師さんに対しても、薬剤師さんとぜひ相談していきたいというような、そういう薬剤師さんがたくさん出てくることで、私は、医療が大きく変わってくるし、具体的に医療が向上してくるのではないかという期待を持っております。

 先生の立場で、今、どのように医療が変わってくる、どのように医療が向上する、こういうイメージを少しお話しいただけたらと思います。

 ごめんなさい、時間がなくなってしまいました。あと一分だけですから、ついでにもう一つ。

 創薬産業の振興が非常に重要で、私自身は、科学技術創造立国をこの国、日本に実現して、日本社会が大きく再生することができると思っておる人間なんです。そういう意味では、大学の薬学の研究開発の体制を、先ほどちょっと触れられました四年制と六年制の問題で、研究者が必ずしも六年制で不適切ではない、薬剤師さんが研究者として不適切であるとは思わないというようなお話がありましたが、なるほどなという点もあります。しかし、研究開発の面での教育も受ける必要があると私は思ったものですから、その点はまた、今後なおフォローして教えていただかなければならないかもしれませんが、今考えておられることを、ここの点も含めてぜひお話しいただきたいと思います。

井村参考人 最初の、薬剤師がどのように医療を向上させるかということの具体的な話というのは、青山議員がおっしゃいましたとおりでございまして、それ以上のことは余りないと私は思っているのでございます。

 次の創薬についてのコントリビューションの話でございますが、議員が創薬とおっしゃいましたときに創薬というものの意味をどういうふうにとらえていらっしゃるか、私は不明でございますが、私は、創薬というのは、往々にして、最初の化合物、つまりシーズと呼ばれております、医薬品の最初の候補の化合物を見つけるところが創薬である、そこにかかわるのが基礎研究者であるというふうにとらえられておりますけれども、創薬というのは実はそうではないんじゃないかと思います。

 創薬というのは、そのシーズを見つけ出すところから始まりまして、それについての臨床試験に供するための非臨床試験、動物実験ですね、これが行われ、さらにそれに続いて人体に適用するための臨床試験が行われる。それで、承認審査の場合、それが上がってまいりまして承認されました後で、市販後の調査というのが行われる。そのポストマーケティングサーベイランスというものの成果はフィードバックされまして、それによって医薬品が改良されていく。そういうプロセスになるわけでありますけれども、これらを全部含めて創薬であると考えます。

 そうなりますと、十分な医療教育を受けた、薬剤師教育を受けました者たちが、その部分につきましては非常に貢献するのにふさわしい能力を備えているというふうに考えざるを得ません。したがいまして、最初のシーズを探すところでは基礎研究者が、それ以降では十分な医療教育を受けた者たちのコントリビューションが期待されるところだというふうに考えております。

 以上です。

青山委員 ありがとうございました。

池坊委員長 肥田美代子君。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。きょうは、お二人の先生、参考人に来ていただきまして、本当にありがとうございます。

 まず香川先生にお尋ねしたいんですが、審議会の委員としてとてもここまで頑張ってくださいまして、ここまでこぎつけてくださったことに敬意を表したいと思います。特に、先生の場合は、子供の健康状態に対して本当に懸念をされていらっしゃるというのが先ほどのお話で伝わってまいりました。

 私は、まず摂食障害についてお聞きしたいんですが、先生はこの摂食障害についてどのぐらいの危機感を持っていらっしゃいますでしょうか。

香川参考人 摂食障害というのは、これはいわゆる先進国に特有なものでございまして、日本でも昔はほとんどなかったんですが、最近ふえておりまして、場合によっては命にかかわるというようなこともございます。

 具体的にどのようにすればいいか。大変困難な病気でございますけれども、しかし、精神的なものがございますので、ある程度受け入れる気持ちで、一緒に考えてあげるというリーダーがそこにいれば、よくなる可能性が多いのではないか。

 栄養教諭の場合には、そういったことについてもなるべく身につけさせていきたいというふうに考えております、今どんどんふえている問題でございますので。そんなことでよろしいでしょうか。

肥田委員 香川先生、ちょっと重ねてお聞きしたいんですけれども、小学生の摂食障害というのは相当ふえていますか。

香川参考人 はい、大分ふえているというか、出ているようでございます。数字の上では私はまだつかんでおりませんけれども、ちょいちょいこのごろは聞くようになってまいりました。

池坊委員長 香川参考人、一度ちょっといすにお座りくださって結構でございます。

肥田委員 どうもありがとうございます。

 まさに、食の教育というのは焦眉の急なんでございます。先ほどもおっしゃいましたけれども、急がなければいけない、私もまさにそう思うものでございます。今回、栄養教諭の必置義務、これがなされておりません、必置義務になっておりませんので、法改正の後、いろいろまだ大変なことが残ってしまうかと思いますけれども、この法改正以後、参考人がどういう食教育のイメージを抱いていらして全国民に正しい食の教育をというふうに思っていらっしゃるか、その夢を、希望をちょっと語っていただきたいと思います。

香川参考人 栄養教諭ができることによって、今ほとんど野放しになっていて、家庭でも朝食を食べなかったり、買い食いをしたりというような状態を家庭でも悪いとも思わないとか、自分自身も平気でいるというような子供が多いのですけれども、それに、人間はこういうものを食べて健康を保っていくのですよということを、給食をする栄養教諭の場合には実際に物を出しておりますから、こういうものはこういう効果があるとか、こういうふうに食べていかなければいけないとかということを具体的に、抽象的なことではなくて、本当に実物を食べながら教えていくことができますので、私は、日本で考えられる栄養改善というか栄養教育の中では最も有効なものであろうと思っております。

 当然、各学校に欲しいのは関係者としては当たり前の話なんですけれども、そういう無理なことを要求して成立しないよりは、一部の方でもいいから、まずそういう方ができてリードしてくださると少しずつでも進んでいくのではないかというふうに考えまして、このたびはこれで、この段階ではここでよろしいかと思っております。どうもありがとうございます。

肥田委員 先生、どうもありがとうございました。

 それでは、次に井村先生にお尋ねしたいと思います。

 先ほど井村先生は、長期薬務実習が改革の柱である、そうおっしゃいました。そして、それを実践するために二つの懸念を持っていると。一つが薬科大学の新増設ラッシュである、もう一つが大学病院などの病院薬剤師の不足でございますか、減少でございますね。この二つの懸念を私たち立法府、それから行政府でどのように先生の御懸念を払拭できるか、忌憚のないところでおっしゃっていただければと思います。

井村参考人 私が行政府や立法府の先生方にこうせいと言うことは到底できることではないのでございますけれども、まず増新設に関することでございますけれども、これは、長く私どもはそれが非常にぐあいの悪いことだということを認識しておりました。

 決してそれは既存の大学が権益を守るためとかいうようなことではなくて、この改革が進んでいく上で非常に大きな障害になるというふうに認識いたしましたので、文部科学省、もちろん大臣に対しましても、あるいは局長に対しましても、そういうことにつきましては何とか手だてを考えていただきたいというふうに申し上げたところでございますけれども、残念ながら、それは法的に書類がそろっていれば設置認可をせざるを得ないというふうになってしまっているということで、どうしてもやはり成功いたしませんでした。

 それで、きょう私が申し上げましたのは、これは暫定的で結構でございまして、つまり、今進行している改革がある程度めどがつくところまででございまして、永久に新増設を認めるななんということを言うつもりは毛頭ないのでございますが、これが動き始めるところまではやはり何らかの手だてをそれこそ立法府、行政府の先生方に考えていただきまして、そこである程度抑制をしていただくということが非常に必要なのではないかという考えを述べさせていただいたわけであります。

 それから、薬剤師数の減少というのは、実際そういうことが起こっていることは確かでございますが、それにつきましては、私はやはり、厚生労働省の方で担当部局が幾つかに分かれていると思いますけれども、それが十分に御連絡をおとりいただきまして、この問題について、どういうふうにこれからしていこうかということを相談していただきたいというふうに思っております。

肥田委員 確かに、先生がおっしゃいますように、教育を頼んでいる厚生労働省の方からもっと文部科学省の方にいろいろなコミュニケーションをとりまして教育の形を変えていくというのは、本当に大事なんですよね。

 それで、先生、今回、六年一貫、私も全くその考えでございました。しかし、先生のお話でもさっきちょっと悔しさ、残念さがかいま見えておりましたけれども、四年を据え置いたというか、十二年間でございますけれども、据え置いたということに対して、私は相当怒りを持っております。やっと一貫教育でこれからやろうというときに、法律の文章が汚いじゃないか、私はそう思うわけでございますけれども、先生の率直な御意見をいただきたいと思います。

井村参考人 大変難しい御質問でございますが、私は別に怒りは感じておりません。つまり、私は、非常に多くのいろいろな意見がある中で、この法案の提出という格好でおまとめになりました関係者には本当に感謝しておりまして、その努力には敬意を表しているところでございます。

 したがいまして、こういう結果になりましたからには、やはりその制度をいかにうまく、薬剤師の養成教育も、それから薬学研究のこれからの発展につきましても、うまく利用していくかということを我々は恐らく考えるべきなんであろうというふうに思っておりまして、それで先ほどのような考え方を述べさせていただいたわけでございます。

肥田委員 済みません、私の怒りに道連れさせてしまいまして、恐縮でございます。

 それで、もう一度先生に念押しをさせていただきたいんですが、日本の薬学教育、私も四年制を出た薬剤師でございますけれども、本当に病気のことを知らないんですね、恥ずかしいんです。でも、今までの薬剤師は、自己研さんでもって現場で頑張っていらっしゃいました。

 そこで、薬学教育を根本的に変える時期に来ているということは確かでございますけれども、どうも私は解せないのです。創薬とか薬学研究が四年でいいはずはないんですよね。臨床をしっかりとした創薬、薬学研究の人じゃないと本当に役立たないと思うんですけれども、しつこいようですが、もう一度先生お願いいたします。

井村参考人 私が前に申し上げたことを繰り返さざるを得ないのではございますが、先ほども申し上げましたように、私は、よく四年制を主張される方々がおっしゃるように、研究開発のためには、あるいは創薬のためには四年プラス二年の大学院という格好をとるのがいいんだというお話をなさいますけれども、それについては私自身は個人的には多少の疑問を持っておりまして、先生おっしゃるように、十分な臨床教育を受けた者が研究者としてはふさわしくないなんという話はあるはずもないことだと思っております。

 先ほど申しましたように、創薬というものを非常に広範囲なものというふうに考えますと、十分その人たちが活躍する部分というのはあるわけでございまして、しかも、恐らく企業の研究開発担当者も、十分に医療教育を受けて、つまり、高度な薬剤師教育を受けた人たちがほかの分野の基礎研究者をオーガナイズして、創薬という方向に向かわせるという役割をぜひ担ってほしいというふうに言っておられるのを私は聞いたことがございますので、そういう考え方も非常にあるのではないかなと思っております。

肥田委員 長期の実習というのがとても大事になるんですが、六カ月になったことは本当にうれしい話でございますけれども、アメリカのファームドクターの場合は十一ヶ月ですね。それで、日本の今考えている実習と少しニュアンスが違うように思うんですけれども、先生、ファームドクターの、アメリカの実習のやり方というのは、お教えいただければと思います。

井村参考人 私が以前勤めておりました大学では、外国の大学と臨床薬学の教育研究につきまして提携をいたしておりましたので、向こうの大学、ケンタッキー大学でございましたけれども、そこのファームDのやり方につきましてはしばしば目にし、聞くこともできたわけでございますけれども、やはり基本的に、薬剤師がやっている仕事といいますか、それから薬剤師に対する期待といいますか、そういったようなものが、現時点ではアメリカと日本ではかなり違っているんだろうなというふうに感じております。ですから、薬剤師のやっている仕事を細かく見ていきますと、恐らく相当な開きがあるんじゃないかというふうに思います。

 したがいまして、向こうの実務実習とこちらは、現時点では本当に違いますけれども、六カ月になりましても、向こうの実習に比べれば非常に不足しているということは恐らく明らかだろうと思います。しかし、それは将来、改善の余地が十分あるとは思いつつも、差し当たって、例えば私どもが一年間近い実務実習をすべての薬学生に課するなんということは、今の時点では到底、技術的にも考えられませんので、六カ月というのはぎりぎりの線かなというふうに私は考えております。

 よろしゅうございますでしょうか。

肥田委員 今、実習に向けて、日本薬剤師会、日本病院薬剤師会、それから薬学教育協議会と、関係団体がみんな一生懸命苦労をしてくださっていますけれども、文部科学省がこれに協力する方法というのはありますか。

井村参考人 その点につきましては、私も文部科学省の医学教育課の方々とお話をしたことがございます。

 それで、私どもが今考えておりますのは、実務実習のいろいろな難しい問題点に関しまして、これからもやはり改善の余地が幾らでもあると思いますし、実際に実施していく上、あるいはまた実習施設の評価を行ったりする上では、その基準等をつくるのに、どうしてもこれからいろいろな作業をしなければなりません。そのためには、やはり一種のワークショップのような組織をつくりまして、そこでそのような具体的な点について大いにディスカッションをしてまとめていくという手法をとりたいと思っております。

 それに関しましては、文部省は非常に協力的でございまして、これからそういうことについて文部省が主宰をしてもいいというような形で御協力いただけるようなふうに聞いております。

肥田委員 これでもう終わりにさせていただきますが、先生、第三者評価機関、評価システム、これはとても大事でございますので、例えば先生のところの薬学教育協議会のようなところが請け負ってくださるということも、私たちは考えてよろしいですか。

井村参考人 はい、ぜひそういうふうに考えていただきたいと思っておりまして、そのために私どもは法人化をしたつもりでおります。ただし、これにつきましては、薬学にかかわるすべての組織の方々が同意をしていただかなければなりませんので、それに向かって努力をしたいと思っております。

肥田委員 どうもありがとうございました。

池坊委員長 富田茂之君。

富田委員 公明党の富田茂之でございます。両参考人、きょうは貴重な御意見を本当にありがとうございました。

 まず、香川参考人にお尋ねをしたいんですが、先ほどのお話では、必置義務はないけれども、まずこの制度をつくって前進をさせたいというお話がございました。

 その点に関してちょっと伺いたいんですが、調査室の方からいただいた資料によりますと、今、単独給食実施校の場合は、小学校には五千四百人、中学校には約千三百人の学校栄養職員が配置されている。ただ、給食センター等共同調理場に約三千七百人の配置がなされているというふうな統計の資料をいただきました。

 私も三人の子供がおりまして、高三、高一と、一番下が小学校五年生なんですが、五年生の子供が行っております小学校の学校給食予定献立表というのが私の家の冷蔵庫の横に張ってありましたので、ちょっとコピーして持ってきたんですが、これを見ますと、小学校六つを給食センターの方で面倒見ている。そうすると、私の子が行っている学校には多分いらっしゃらないんだろうなと。

 献立がばっと書いてあって、子供はほとんどこれを見ないんですよ。母親の方はこれを見て、夕食とバッティングしないようにとか、よく考えたりしているとは思うんですが、こういったいわゆる給食センターにいる栄養士さんが栄養教諭の資格を取られたとして、先生が考えられているような食の教育というところにどういった形で関与できるのか、ちょっと私はそこの点疑問なんですが、どのようなお考えでしょうか。

香川参考人 学校給食そのものが設置者の意向でということになっておりますし、それからセンター化ということがかなり進んでおりますので、自校給食というのがそんなにも減っているというのは私も心を痛めているわけでございますけれども、諸種の制約のためにそうなっているとは思うので、今の段階では、その中で最善を尽くしていくよりほかないのではないか。

 それで、私の承知しております、例えば西会津町というところでは、大きな給食センターをつくりまして、それは中学校にくっついておりますから、中学校としてはそこで給食をいたしますけれども、ほかの小学校は山村でございますので非常に小さくて、そこから配食をしているのでございますが、そこにおります栄養士が、本学出身でございますけれども、順番に小学校へ参りまして、きょうの給食についてとか、それは教員の資格をたまたま持っている者でございますけれども、給食の栄養士として、働きながら子供たちに順番に指導に回っております。

 それぞれの場所でいろいろ工夫して子供たちに教育をしてもらえれば、あるいは地域の方と協力して地域の食生活を改善してもらえれば、幾らかでも今よりはよくなるのではないかと思っております。

富田委員 今の点に関しましてもう一つお尋ねしたいんですが、実は、先ほど、日経新聞の昨日の夕刊に先生が出ていた、私も見ましたが、それと同じ新聞に「立て直せ子どもの食」ということで、「給食調理は校内で」という記事がございました、「ドキュメント挑戦」ということで。これを見まして、本当にこのとおりだなと思ったんですが、ちょっと御紹介をさせていただきたいんです。

 愛媛県の今治の小学校のことを取り上げてありまして、「地元の有機農産物をふんだんに使った「安心・安全給食」がモットー。校内放送で毎日「今日の献立はカレー、切り干しダイコンのごま酢あえ、青菜の卵炒め……」とメニューや産地、生産者を紹介」というふうにした上で、ここでは住民パワーが市長を後押ししてセンター方式を自校方式に戻した、そして、そのおかげで給食の質がぐんとよくなった、また地元の有機農産物の生産グループが学校や保護者、市と連携している、こういった結果、子供たちがよい食材を選ぶ目までできてきたというふうな記事があったんですね。

 これは、もう本当にすごいことだなと。私たちが小さいときは、私は千葉県の銚子で生まれたんですが、魚も揚がってきますし、友人に農家の子供もいましたから、田んぼや畑にも行きましたので、何がどういうふうにとれてきて、食べられるというのはわかったんですが、今の子供はそういった経験もありませんので、こういったことをきちんと給食の中で実施していくというのは非常に大事だと思うんですね。実際にこういう取り組みを栄養士さんが学校職員としてされている。これは本当にすばらしいと思います。

 そもそも、「学校栄養職員の職務内容」にも「学校給食指導」というのがございますね。これをずっとやっている。「学校給食指導」の中身を見ますと、「望ましい食生活に関し、専門的立場から担任教諭等を補佐して、児童生徒に対して集団又は個別の指導を行うこと。」また、「学校給食を通じて、家庭及び地域との連携を推進するための各種事業の策定及び実施に参画すること。」この二つが書かれております。

 この二つを実際に今、学校栄養職員の方々がやられているとなると、今回、栄養教諭の職務の中に、食に関する指導と新たに設けられて幾つか出ていますけれども、現実には学校栄養教諭としてできるのではないか。先ほど新聞の記事を紹介させていただきましたけれども、現実にここまで現場ではやられているというふうになりますと、わざわざ栄養教諭という資格をつくってやる必要が本当にあるのかなという疑問が一つあるんですが、そこは先生はどんなお考えですか。

香川参考人 大変お勉強してくださいましてありがとうございます。

 実は、学校栄養職員については、そういうことをするようにと中央省庁の方からは伝達が行っておりますけれども、一応そういうことにはなっているけれども、この人は職員であるからということで、そういうチャンスを与えられない、本人がしたいと思っても与えていただけない校長さんが非常に多いということ。それから、先生方の間でも、この人は教員の仲間ではないということで疎外されていて、非常に教えたいと思っていてもさせていただけないというようなことがございますので、栄養教諭になればその立場がしっかりしてくるということが一つ。

 それから、家庭科の先生でもそういうことだったらできるじゃないかとおっしゃる方もいらっしゃいますけれども、先ほど申しましたように、今は肥満児が非常にふえて、そのままにしておくともう本当に生活習慣病の苗床みたいなものでございますので、非常に危険でございます。

 それから、先ほど御質問のありました摂食異常の子供もふえておりますし、アトピーなどアレルギーの子供もふえておりまして、こういうのには子供に対していわゆる個人指導をする必要があるわけでございますが、これはちょっと家庭科教員ではできないと思いますので、栄養教諭にはそういった個人指導を依頼できるというふうに考えているわけでございます。

 そんなことでよろしゅうございますか。

富田委員 あとは個人指導も大事だと。個別の対応ができるようになるというのも非常に大事だと思うんですが、やはり家庭の方でもきちんと教育を受けて、子供たちに対する、食に対してきちんとした考え方を持っていく必要があると思うんですね。

 先ほど献立表をお見せしましたが、何も書いていないんですよね。どういうふうにしていくかということについては何も書いていない。どんなものを子供が食べているのかなというのはよくわかるんですよね。赤として、血や肉になるもの。緑として、体の調子をよくするもの。黄色で、熱や力になるものという、成分は書いてあるんですけれども、では、これでどういうふうに子供たちに教えていったらいいのかというのが、どうも親としてはわからない。こういったものに対しての啓蒙活動、広報活動というのが非常に大事だと思うんですが、先生はその点はいかがですか。何か具体的な方法等として考えられていることはありますでしょうか。

香川参考人 これは、学校によりまして、あるいは栄養士によりまして、今までのやり方でも随分違いはございまして、学校じゅうの先生方にも教育し、父母も呼んで教育し、おじいさん、おばあさんも呼んで教育するという非常に積極的な人もおります一方で、言われないからしないとか、忙し過ぎてできないとか、そういうような人もおります。特にセンターの場合でございますと、地域だとか父母との密着度がやはり薄くなると思いますので、私は、できることでしたら、本当は自校給食が望ましいとは思いますけれども、今置かれた環境でできることを少しずつやって前進していくのに、教諭という資格をつけていただくということは非常にプラスになると考えております。

富田委員 井村参考人にお尋ねしますが、平成十五年、十六年で十校が増設されたと。実は、先ほど私、千葉県の銚子生まれと申しましたが、銚子にも一つ突然大学ができまして、薬学部と危機管理学部、この二学部だけの大学なんですよね。資料を見ますと、薬剤師さんが決して足りないわけではない。今、薬学部を出られても、半数近くの方が全く薬剤とか研究とかと関係ないところに行かれている。

 そういう状況で、なぜ、大学を設置する側がこんなに薬学部というものの設置に躍起になっているのか、そのあたりの背景にあるものというのはどういったところなんでしょうか。

井村参考人 私も、実は、本当にどうしてなのかということにつきましてはわからないのでございますけれども。文部科学省の方々とも、どうしてでしょうねという話をよくするんですが、私が察するところでは、まず、医薬分業が非常なスピードでわっと伸びましたので、先ほど申しましたように、もう既に五〇%を超えることになりましたが、そうなりますと、やはり医療機関から出てくる処方せんの枚数が物すごい勢いで伸びてまいります。それを処理する薬剤師の数というのはどんどん必要になってくるわけでございますので、例えば新聞の求人広告欄をごらんになりますと、薬剤師を求む、薬剤師を求むと盛んに出ているわけですね。そうなりますと、それを読んだ一般の方々は、薬剤師という資格を取りさえすれば、これは食いっぱぐれないんじゃないかというふうにお思いになっても不思議はないという事情もございます。

 それからもう一つは、御存じのとおり、十八歳人口の非常に速やかな減少によりまして、大学では分野によりましてはどんどん定員割れをしているという状態でございます。そうしますと、学校法人は、定員割れをした部分をどういうふうに処理するかということできっとお悩みになるんだろうと思うんですね。そういたしますと、今そういうような事情で志望者が減っていない分野というのはどこかというふうにお探しになりますと、薬学、このところ薬学というのが毎年、前年の一〇%ぐらいの志願者の伸びを示しているんじゃないかと思うのでございます。

 そういうような事情でございますので、学校法人の経営者は、これは、財政上何とかするためにはやはり薬学部をつくるのが一番ではないかとお考えになるのかなと予測しておりますけれども、本当のところはよくわかりません。

富田委員 そういった背景があるんだと思うんですが、現実に医薬分業の町の中での姿を見ますと、病院の横に一つ、処方せんを受け取って、きちんとお薬をいただける薬剤師さんがいらっしゃるところがある。現場でお聞きしますと、新しい病院ができたりすると、処方せんを受けられる薬局をつくりたい、何とか院長に話をしてくれないかというような御相談もよく私たちのところにも来ます。

 本当にそういうことがいいのか。処方せんを受け付けて、きちんと調剤をしていただける薬局がどんとあって、どこの病院のでも大丈夫ですよ、あるいは、ここの薬局に行ったら本当に自分のことを考えて、処方せんもきちんと読めて、きちんとお薬の飲み方等も教えていただいて受け取れるような薬局があった方が本当はいいんじゃないかとかいろいろ思うんですが、そういった意味でも、薬剤師さんの質の向上というのが本当に大事だと思うんですね。

 長期の実務研修というのも本当に大事だと思いまして、私、弁護士出身なんですが、今、司法研修が二年から一年半になりました。一年半になると、実務研修が一年半だったものが一年二カ月、刑事裁判、民事裁判、弁護修習、検察修習がそれぞれ三カ月ずつになると、基本的に現場で何も学ばないで帰ってきてしまう。そういった法曹がどんとこの十年間現場に出てきました。物すごいレベルの低下です、はっきり言って。

 だから、それは、今の司法制度改革のあり方がいいのかどうか私は非常に疑問に思っているんですが、薬学の部分でも、長期実務研修のところでしっかりした人材を育てないと、将来的に国民の生命、身体にかかわってくる問題ですから本当に問題になってくると思うんですが、中身について、先生はこれからの検討だというふうに言われていました。しかも、資格がない方が現場に入るわけですから、実際にどういった実務研修をするのかというのは大変だと思うんですね。司法試験でも、裁判所に行ったからといって判決を書くわけではありませんので、裁判官の横にいて事情を聞いているというような状況ですから、実際に薬学部の方で実務研修するときに、どこまで踏み込んだ実務研修ができるのかというのが大事だと思うんですけれども、そのあたりは先生はどのようにお考えになっているんでしょうか。

井村参考人 おっしゃるとおりだろうと私は思っておりますが、実は、実務実習の内容に関しましては、つい最近でございますけれども、文部科学省の音頭取りで、実務実習コアカリキュラムというものが完成いたしました。したがいまして、その内容につきましてはほぼフィックスされたものというふうに私は理解しております。その内容は、コアカリキュラムと言いながらも、かなり高度なものになっているというふうに理解しております。

 それは、非常に多くの人たちがかかわって、教員もそれから薬剤師会の方々もかかわって、協議をしながら積み上げていった結果でき上がったものでございまして、今それをどのように実施するかという、これを我々は方略と呼んでおりますけれども、その方略も完成しておりまして、これは何こまで、どういうふうな人たちがかかわってどういうふうにするというようなことまで案としてはでき上がっておりますので、それに従ってやることになるだろうと思います。

 実際には、それを受け入れる側の日本薬剤師会でありますとか日本病院薬剤師会は、その受け入れの施設、それからその受け入れる施設の質、クオリティーと、それを現場で指導する薬剤師さんのこれまた質、そういったようなものにつきましては、ある一定の基準を設けてそれを確保しようというふうに考えておられまして、私はそれは高く評価しているわけであります。自分たちが自分たちの仲間を評価しておりますから、いずれそれはもうちょっと第三者的な機関でその辺については評価をする必要はあると思いますけれども、しかし、現在の努力といたしましてはそういうふうな努力がされているということをお伝えしておきたいと思います。

富田委員 ありがとうございました。終わります。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 本日は、参考人として貴重な御意見をお聞かせいただきまして、本当にありがとうございます。

 まず、香川参考人にお聞きいたしますけれども、先ほどお述べになりました中で、食の教育は現在の日本の喫緊の課題であるというふうに冒頭提起をされまして、私も全く同感でございます。

 今、子供たちの間に、嫌いなものを食べない偏食とか、肥満ややせ過ぎ、またダイエットと称する誤った食事制限、それから朝食をとらないとか、食アレルギーの問題等々個別的な体質の増加の問題等々が指摘されていると思います。家庭の食生活も大いに変わっていますし、子供たち自身の食生活、食習慣、そしてまた結果として栄養のバランスなども非常にいろいろな問題が出ている今日かというふうに思っております。

 それで、こうしたことに対して、食に対する指導ということが今大変求められている、専門的な見地からの指導が必要だということと、子供一人一人の状況に合った個別的対応、先ほどもちょっと指摘がございましたけれども、そういう両面があるのかなと思っているんですね。

 それで、中央教育審議会のヒアリングに対しましても、この点で、指定都市の教育委員会、教育長協議会とか、全日本中学校長会とか、日本教職員組合、また日本私立大学団体連合会、全日本教職員組合、また日本私立短期大学協会、全国栄養士養成施設協会など、関係するほとんどの団体がやはり栄養教諭は全校に配置すべきだ、こういう意見を上げたかというふうに思うんですね。

 私も、もっともだというふうに考えて、先日の委員会でも質問したんですけれども、現状は、一人の栄養教諭が四・五校ですか、受け持っているという状況なんですね。なかなか難しいという話も政府答弁ではあるんですけれども、しかし、この状況でずっといいのかという問題は当然ありますから、この点で、香川参考人として、栄養教諭の全校配置という問題についての御意見をお聞かせ願いたいと思います。

香川参考人 それはおっしゃるとおりでございまして、私どもも、全校に栄養教諭が配置されて児童生徒の教育ができるとよいと思いますけれども、それは学校給食そのものが、先ほども申しましたように、設置者が決めることということもありますし、栄養士の配置につきましても設置者が決めるということでございまして、こちらで全校配置と法律で決められないようでございます。皆様も御希望なさいますし、私もそのとおりだと思いますが、それができないとしたら、無理をしてこの栄養教諭が創設されないよりは、一人でも、とにかく創設しておいて、それから徐々に皆様に御理解をいただいて、少しずつふやしていければというふうに願っております。

石井(郁)委員 私も、いろいろ国の財政事情ということは当然ありますから、一気にできるとか、そういうふうには思いませんけれども、せめて計画を持ってしていただきたいという立場で、今、国会でも取り上げているところでございます。

 もう一点、香川参考人にお伺いしますけれども、学校給食が食の教育の場として最適だという御指摘もございました。そして、外国の例もいろいろお知らせいただきまして、大変参考になりましたが、これを見ますと、先進諸国では学校が拠点となるということですね、栄養教育でいいますと。

 そして、二つ目に、教室における学習と食事の場における健康的な食物提供、やはり食事の場ということが大切だという話がありまして、私は大変意を強くしたんですが、私も子供を育てたときにいつもこのことを言っていたんですけれども、日本では教室で給食ですから、もう教室がわんわんほこりでいっぱいになっているところで、さあ次、給食ですといって、そこにナプキンを引くだけで食べる。何とかこれをもっと衛生的なカフェテリア、そういうものができないか、何で学校に食堂がないのかということをずっと言い続けてきた者として、本当にやはりそうでなければいけないなというふうに思うんですね。この資料の中にも、スクールカフェテリアなどの食事サービスというのがやはりとても有効だ、そういう場で食の教育ができるというお話もございました。

 それで、これも前の委員の質問と重なりますが、日本の学校給食は、非常に普及率はいいけれども、最近、単独調理場方式、いわゆる自校方式から共同調理場方式に変わってきているという問題がずっとこの間進みました。私は、少し落ちついて考えてみて、改めてやはり自校方式の方に戻していくべきではないのかという考えを持っておりまして、食の教育に最適な場としての学校教育という立場から、この問題での先生の御意見をお聞かせいただきたいと思います。

香川参考人 全くお説のとおりでございます。ただ、学校を建てて運営しているのが今のところ自治体でございますので、そちらの御都合でもって例えば共同調理場にされてしまったりと私は言いたいところなんでございますが、そういうようなことがございます。

 ただ、子供の数が減って教室が余ってきましたので、少しずつランチルームができるようになってまいりまして、心ある学校というか自治体では、大きなランチルームをつくって全員一緒にそこで食べている。そして、食の教育というか食事についても話をする。それから、地産地消という農水系のお話も随分学校給食に入っておりますけれども、きょうのこれはどこのうちのだれそれがつくったものが入っているみたいな教育もたくさんございますし、そういうお話があるとみんな食が進むそうでございます。そういうようなことは、進めていけるところでは進めていった方がいいと思っておりますけれども、いろいろな制約がございまして、国のお金というか、なかなかこちらで強制するわけにいかないというために、できるところからやっていきたいというのが私どもの願いでございます。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。

 続きまして、井村参考人にお尋ねいたします。

 参考人の書かれました「医療職としてより質の高い薬剤師養成」という論文を読ませていただきまして、その中からの質問でもありますが、そこでは、「さて、その薬系大学はこれまで薬剤師養成にどのように取り組んで来たのであろうか。残念なことに、これまでのわが国の薬学教育は決して薬剤師教育を主たる目的にしていなかった。」と書かれてありました。続けて、「確かに薬学出身者の多くがこのような基礎研究で目覚しい業績を挙げて来たことも事実である。一方で、「薬剤師教育」はなおざりにされ、薬剤師として病院や薬局に勤務する人達を数多く卒業させる私立の薬科大学においてすら、とても熱心な取り組みとは言えない時代が永く続いたのである。」と書いていらっしゃいました。

 どのようにこの薬剤師教育がなおざりにされてきたのか、また、これまでの薬系大学、学部の実態、また今後の教育内容のあり方、あるいは今議論になっている実務実習のあり方、どのように改革していけばいいのかという点で、何かもう少し具体的にお聞かせいただければと思います。

井村参考人 具体的にとおっしゃるのはどの程度か、よくちょっと理解ができないんですが、まず、これまでの薬学教育につきましては、それはたしかどこかで私が書いた記憶がありますので、そこに書いたとおりだと私は認識しております。ただし、それはこの十年から二十年ぐらいの間に、そのことについての反省は薬学の教育界におきましては非常に高まってきておりまして、それが今日の改革につながっているというふうに理解をいたしております。

 さて、今の御質問の具体的に示すというのはどのことについてなのか、私にはちょっと理解ができなかったんですが、実務実習につきましては、もう皆さん方の大変な努力のおかげでその内容についての組み立てができ上がってきた。今度はその実施の手段を考えるという段階に至っているということだろうと思います。

 その実施というのが、実はかなり皆さんが不安に思う部分が多くて、特に、実施施設をどのように確保していくかとか、それから指導の教員の資質をどういうふうに確保していくかというようなことにつきましては、やはりこれから大いに考えていかなければならないことであろうと思います。

 長期の実務実習が実際に始まりますのは、恐らく、もしこの十八年が最初のスタートだといたしますと、二十二年あるいは二十三年というところで実務実習が実際に始まることになるだろうと思いますけれども、その具体的な方策、詳しい方策の確立というのはそれまでに間に合うように鋭意努力をしていくつもりでございます。

 そんなことでよろしいんでございますか。

石井(郁)委員 これまでも少し実態的な面で薬剤師教育がなおざりにされていた、そういう薬系大学、学部の実態、どういうことをもってなおざりにされていた、だからこう改革が必要だというふうにおっしゃっていらっしゃるのかというあたりが、少し具体例でお聞かせいただければと思ったところでございます。

井村参考人 そのことに関しましては、先ほど私ちょっと申し上げたとは思うのでございますけれども、つまり、この十年ぐらい前まででございましょうか、いや、もっと最近までだと思いますが、全く実務実習というのを経験しない卒業生を平気で出しまして、それは、例えば予備校的な国家試験対策を行いますと、不幸なことにそういう人でも国家試験に受かってしまうというケースも出ます。

 そういたしますと、実務実習というのを全く経験しないで薬剤師をやるということも可能になってしまうわけでございまして、その点をとらえて私は、一つの例といたしましては、その点をとらえて薬剤師教育がなおざりにされていたというふうに申し上げているわけであります。

 それからまた、全国の薬学の教員というのが、どちらかといいますと国立大学の出身者が行くことが非常に多い、ケースとしては多かったわけでありますけれども、その国立大学というのが全く薬剤師教育に興味を持たなかった時代というのが非常に長く続いていたと私は思うんですね。

 私も国立大学の出身でございますけれども、在学中に薬剤師というものを意識したような、何か講義でありますとかそういったようなものを受けた記憶というのがほとんどないという、私が関心がなかったのかもしれませんけれども、そういうことでございます。したがいまして、そういう教育を受けた者がいろいろな大学の教員として赴任していく、そういう事態がずっと長く続いていたものですから、やはり薬剤師教育というものに対する理解というのは全般的にうんと低かったというふうに思っております。

 ただし、そこで薬剤師教育を一生懸命やりました方々によって育てられました薬剤師というのは、非常に不利な環境の中で勉強して社会に巣立っていったわけでありますけれども、出てから、自分の力で、それから現場で苦労してきた薬剤師さんの協力で自己研修を積むことによって、非常に有能な薬剤師に育っていっているというふうに私は考えております。

石井(郁)委員 もう一点お尋ねいたします。

 中教審答申がございまして、この「薬学教育の改善・充実について」でございますけれども、その中に、「近年の医療技術の高度化、医薬分業の進展等に伴う医薬品の安全使用や薬害の防止といった社会的要請に応えるため、薬剤師の養成のための薬学教育は、教養教育や医療薬学を中心とした専門教育及び実務実習の充実を図る」とあるところでございます。

 それで、今後の薬剤師養成のための教育で、医薬品の安全使用とか薬害の防止、先ほどもちょっとお話はあったと思うんですが、という視点が重視されていくのかどうかという問題を一点。そして、こうした教育が今後必須科目となるのかどうか、薬学教育のモデル・コアカリキュラムではどのように扱われていくのかということをお尋ねいたします。

井村参考人 おっしゃることはすべて、つまり、例えば薬害の防止でありますとか医薬品による医療過誤の防止でありますとかというようなことについてかかわるような科目というのは、コアカリキュラムの中に確実に取り込まれておりまして、間違いなく必修科目として取り扱われるだろうと思っております。

石井(郁)委員 どうもありがとうございました。終わります。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 きょうは、香川参考人、井村参考人、本当に貴重なお話ありがとうございました。

 まず、香川参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、大変私たちの国の食事の内容、激変と言っていいぐらい戦後五十数年間で変わりましたね。いい面もあるかと思いますが、私はかなり悪い面の方が多いんじゃなかろうか、この内容の変化。そしてまた、食事の内容にかてて加えて、社会情勢の環境あるいは家庭環境、こういったものも大きく変わったということで、ある意味で私は食生活の乱れがかなり深刻な状況になっているんじゃないかという気がいたしております。

 とりわけ、そのことに対応するには、大事なことは、成長期の子供たちの健康な食生活というものがいかに大事であるかということの趣旨をお述べになられました。

 そういった意味で、成長期の子供ということになりますと、いわゆる義務教育の食生活ですね。そうすると、義務教育の食生活になると大きなウエートを占めるのが学校給食である。そういった学校給食の状況ですが、これはお話では、ちょっと重複いたしますが、世界でもトップクラスである、日本の学校給食の状況ですね。普及率もすごい、内容もすごい。学校給食の実施方式、普及率も内容もすごいんです、九〇%、八〇%いっている。ところが、実施状況もすごいんですが、先ほどから自校調理方式、センター調理方式あるいは民間委託と、いろいろ全国的に足並みはそろっていないわけですね。そういったことで、食に関する指導を本当に平等に行うことができるのかという疑問を持っている。

 そこで出てくるのが、やはり学校栄養職員、あるいは調理に対する感謝の気持ちをはぐくんでいくためにも、やはり自校調理方式が本来の学校給食の姿ではないかという思いをいたしております。それは先ほど御質問されました。そのとおりだというお話でもございました。でも、いろいろ制約があると。

 であるならば、事前の、これはいずれそういった状況をつくっていくべきだと思いますが、現状ではいろいろな問題点があるということです。であるならば、やはり今回学校栄養職員に栄養教諭という道が開けるわけでございますし、そうしますと、学校栄養職員また栄養教諭ともに、学校給食の管理と同時に学校における食に関する指導、こういった二つのことをこれからやはり、これまでもやっているし、これからもやらざるを得ないだろう、全校配置じゃないんですから。そうしますと、非常に過重な負担となるような可能性も起きないとも限らない。

 ですから、この学校栄養職員あるいは栄養教諭の定員をいかにふやしていくかということが健全な学校給食ということにつながると思うんですが、この点についてはいかがお考えでしょうか。

香川参考人 お説のとおりでございますけれども、この栄養職員というのを国では少しずつふやしてくだすってはおります。それから、あとは自治体が栄養職員を雇っているというところもございまして、どちらかというと、自治体の住民だとか自治体の姿勢というのが大きく、例えばセンター方式にするか自校方式にするか、それから栄養士をどれぐらい配置するかということについても決めているように思われますので、そこら辺は私どもでは決めるわけにはいかない、できればそうなっていただきたいと願っているわけでございます。

横光委員 それぞれの自治体には本当にこういった問題はばらつきがありますので、このあたり、できるだけでこぼこを少なくしていくということがまず大事だと思うんですね。

 それで、医療のことをお話しされました。本当に、糖尿病の例も出されましたが、私も腎臓病患者の皆さん方とお話をすると、腎臓病患者の方が、腎不全になって透析を受けざるを得ない、そのことには大変感謝しておるんです。感謝していると同時に、先ほどお話しのように、年間一万人ペースでふえている。この原因が糖尿病からくる方が多いというんですね。

 ですから、そういった病気に対する予防医療が非常に大事だ。患者さんの皆さん方が今置かれているところの医療の救済措置とかいうより、その前の段階までもう意識が行っておるんですね。そのことを考えたときには、医療費の増大を防ぐ前の対策がいかに大事かということで、正しい食のあり方というのが重要になってくるわけでございます。

 そうなりますと、私は、一番子供のころの食生活というのは、どうしても家庭だと思うんですね。家庭が最初にやはりあるわけですよ。母乳から、あるいは母乳じゃなくても、赤ちゃんのときからずっと食というのはつながっているわけですから、そのときの家庭のいわゆる食事のありよう、しつけというものが大前提だと思うんです。

 でも、先ほど先生も、家庭の中で親が、そういった環境の変化とかいろいろなことで、なかなか正しい食事まで手が回らないというような現状もあるということで、学校での給食の大切さというものをお話しされておりました。

 しかし、偏食とかアレルギーとかそういったことを家庭と学校といかに、それぞれではやはりなかなかそういったものは矯正できないと思うんですね。やはり家庭と学校が連携をとってそういったものの対策をする、あるいは徐々に矯正していく、こういうことが必要だと思うんです。いわゆる学校給食の栄養職員、栄養教諭と家庭との連携のあり方というのは、どういう方法といいますか、どういった形で進めればかなり効果がある、そういったお知恵を拝借できればと思うんです。

香川参考人 おっしゃるとおりでございますけれども、幼いときからの食生活というのを言いましても、親の方がわかっていなければどうしようもありませんので、私は、これは厚生労働省側なんですけれども、保育園にはすべて栄養士を配置していただきたいとお願いしております。それから、家庭にいる親は子供を通じていろいろな地域での活動をしてほしいのですが、お勤めで忙しい方にはなかなか手が届きかねます。

 振り返って考えますと、中学校の子供も学校給食がございます。中学生は、大体十五年たてば親でございます。ですから、ここでしっかり子供たちに食の教育をしておくことによって、次の時代の親がしっかりしてくるんじゃないかということを私としては願っているわけでございます。

横光委員 どうもありがとうございました。

 それでは、井村参考人にちょっとお尋ねしたいんですが、病院や調剤薬局等での実務実習の充実、この必要性が指摘されております。そういったお話でもございました。しかし、この実務実習、これは現状においてもなかなかこの受け入れ体制が不十分であるというような実情もあるわけですね。

 今回法改正されるわけでございますが、そしてまた長期実務実習の充実が図られることになるわけでございますが、このことによって、長期の実務実習を受け入れる施設を十分確保できるようになるというお考えをお持ちかどうかをまずお聞きしたいと思うんです。

井村参考人 私どもの立場からいたしますと、確保しなければならないというふうに考えておりまして、それで、どういうふうに今事が進んでいるかということを御説明申し上げますと、まず、受け入れ側の日本病院薬剤師会は、病院実習につきまして、次のような方策を打ち出してきております。

 それは、今、大学のありますところが比較的偏っておりますものですから、場合によって、大学が勝手に実務実習の受け入れ機関を指定したりいたしますと大きな混乱が起こりまして、場所によっては、非常に受け入れ施設が足りなくなってしまって学生があぶれるというふうなことも起こり得るものですから、特に、長期の実習になりますとそのコントロールが非常に難しくなってまいります。

 日本病院薬剤師会は、ふるさと実習という言葉を提唱いたしまして、それで、学生が出身地に帰って実務実習をしてもらう、そうすると全国の病院が効率的に使用される、実務実習の施設として使用されるということで、しかし、実習の質を確保しなければなりませんから、同じ薬学生が全然違った質の実習を受けるというのはとてもうなずける話ではございません。

 その質を確保するために、各地域に中核となります、それを幹事病院と仮称しておりますけれども、幹事病院を置きまして、その病院はかなりの機能を持った病院でありまして、その周りにいろいろな種類の病院をグループとしてくっつけまして、グループを形成いたします。それで、学生さんはそのグループの間をローテーションで回って歩きまして、それぞれの病院ができる実務実習をそこで修めていくということを提唱しております。

 それにつきましては、しかし、薬学の関係者の間ではかなりな不安がございまして、それはどういうことかといいますと、やはり教育でございますので、大学といたしましては、自分たちの目の届くところでできるだけ実務実習をやってほしいと願うのは当然でございます。そういたしますと、一律に出身地にぱっとまいてしまいますと、とても各大学はそれに目の届かせようがないわけでございます。

 そこで、私ども調整機構を持っております協議会といたしましては、ふるさと実習というのを完全に実施するということは恐らく無理なんだろうというふうに現時点では判断しておりまして、それで、私どもが今持っております、全国を八つに分けた調整機構の各ブロックがございますので、そのブロックに現在宿題を提示しております。

 そこでは、五月の中旬までに各ブロックで、どのようなやり方でどれだけの人数の学生をどのように実習を受けさせることができるかということについて、詳細な検討をしていただくことになっております。それを持ち寄りまして、どこか地域では当然学生があぶれるところが出てきますので、みんなで協力をいたしまして、その余剰になった学生さんをどういう形でほかで受け入れていくかということについての手段を考えていきましょう、そういう会議、調査を繰り返しまして、できるだけ早い機会に、どういう格好で病院実習を実際にやれるのかという、皆さん方が非常に確かなイメージとしてお持ちになり得るような形でお示ししたいというふうに考えて、今努力をしているところでございます。それが病院実習でございます。

 それから、薬局実習ということは、これは日本薬剤師会が、私どもの八つのブロックの調整機構の下に、非常にありがたいことに調整機関と称するものを立ち上げていただきまして、そこで実習ができるような薬局を選び、かつまた指導薬剤師の養成を図りまして、そこで、保険薬局実習に関しましては自分たちがその調整役をまず買って出ますということを申し出てくださっております。

 したがいまして、その質の担保が十分にできるという状態になりますと、まず保険薬局実習につきましては、もう既に六千ぐらいの薬局を確保してくださっておりますので、余り心配なくできるのではないかなというふうに考えております。

 以上です。

横光委員 私は、多くの薬科大学とか薬学部が集中している首都圏や近畿圏、このあたりではそういった受け入れ施設はかなり大丈夫じゃないかという思いをして質問したんですが、地方の方が逆に大丈夫かなと思っていたんですが、地方もそういった形で、ふるさと実習という形ができつつあるということなんですね。

 長期実習の充実という意味では、そういったいわゆる受け入れ体制初め整備体制が非常に学生のために重要であるということをお話しいただきました。ありがとうございました。

 どうも、終わります。

池坊委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。

 この際、お二方の参考人に、本委員会を代表いたしまして、一言お礼を申し上げます。お二方には、大変お忙しい中、それぞれの分野において大変貴重な御意見を伺いますとともに、また、さまざまな質問に対し細やかに御答弁いただきまして、本委員会の質疑の参考にすることができましたことを心よりお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)

 次回は、明四月二十一日水曜日午前十一時理事会、午前十一時十分委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後四時十三分散会


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