衆議院

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第25号 平成16年6月2日(水曜日)

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平成十六年六月二日(水曜日)

    午前九時六分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      今津  寛君    宇野  治君

      江崎 鐵磨君    小野寺五典君

      小渕 優子君    奥野 信亮君

      金子 恭之君    上川 陽子君

      城内  実君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    佐藤  勉君

      鈴木 恒夫君    田村 憲久君

      中馬 弘毅君    西村 明宏君

      馳   浩君    原田 令嗣君

      古川 禎久君    山際大志郎君

      市村浩一郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      肥田美代子君    牧野 聖修君

      松野 頼久君    松本 大輔君

      笠  浩史君    富田 茂之君

      石井 郁子君    横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学副大臣      稲葉 大和君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長)  山木 康孝君

   政府参考人

   (文化庁次長)      素川 富司君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月二日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     佐藤  勉君

  近藤 基彦君     金子 恭之君

  鈴木 恒夫君     中馬 弘毅君

  西村 明宏君     小野寺五典君

  鳩山由紀夫君     市村浩一郎君

  松本 大輔君     松野 頼久君

同日

 辞任         補欠選任

  小野寺五典君     西村 明宏君

  金子 恭之君     近藤 基彦君

  佐藤  勉君     原田 令嗣君

  中馬 弘毅君     鈴木 恒夫君

  市村浩一郎君     鳩山由紀夫君

  松野 頼久君     松本 大輔君

同日

 辞任         補欠選任

  原田 令嗣君     加藤 紘一君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 著作権法の一部を改正する法律案(内閣提出第九一号)(参議院送付)


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     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、政府参考人として公正取引委員会事務総局経済取引局取引部長山木康孝君及び文化庁次長素川富司君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。高井美穂君。

高井委員 おはようございます。民主党の高井です。どうぞきょうもよろしくお願いいたします。

 そして、冒頭、きのう佐世保の小学校で起きた事件につきまして一言だけ大臣の見解をちょうだいしたいと思って、まずは申し上げます。

 大変に私も、きのうの事件を聞いて、自分も子供を持つ母親としてもショックを受けておりましたし、カッターナイフで人の命が一人失われてしまったという、本当にこの事実に対しても愕然といたしました。大臣初め副大臣も大変驚かれただろうと思います。

 このことについて少しだけ冒頭、御家族の皆様の心中をお察しし、哀悼の意を表するとともに、また委員会としても、一言大臣からの御答弁をお願いいたします。

河村国務大臣 私も、きのう参議院の委員会のさなかに第一報を受けたわけでございますが、一瞬我が耳を疑ったといいますか、そういう思いでございました。

 女子小学生同士であったということ、それから、何が原因でどういういきさつがあったのか、その時点で知るべしもありませんが、いずれにしても、人を傷つけたり、ましてや殺すというようなこと、結果的にそうなったのかもわかりませんけれども、そういうことはいけないことだ、やはり命を大事にしなきゃいけない、どんな、草花といえども命があるんだというような、そういう教育をずっと積み重ねていくことによってそういうことが防げるのではないかと思ってみたり、しかし、最近は非常にバーチャルの世界も入ってきたりして、そういうものの影響があるのかなと思ったり、いろいろな思いをしたわけでございますが、その後、情報を聞くと、やはりインターネットをめぐるというようなニュースも伝わってきております。

 いずれにしても、非常に悲しい、痛ましい事件でございまして、御家族の思い、それからそこに居合わせた子供たちの思い、いろいろなことを考えながら、これからの教育のあり方を、どうあったらいいかということをもう一度原点に立ち返って考えながら、こういうことを起こさせないように、学校現場もそうですし、地域も考えなきゃいけない、大人も考えなきゃいけない、いろいろな大きな問題を投げかけられたな、こういう印象であります。

高井委員 今大臣がおっしゃられた言葉、多分、恐らくすべての国民や全国会議員も同じようなお気持ちでおられるだろうというふうに思います。

 私も、この事件に接し、人の心に巣くうやみの深さというか、それが子供の心の中にも深く深く潜んでいるような気がいたしまして、本当にこれは教育関係者だけでなく、もちろん社会全体で大変重く受けとめ、今後のことも考えていかなくてはならないとは思っていますが、本当に最近の、虐待事件もそうですが、日々残酷な事件を多く耳にするにつけ、やはりどこか日本の社会は間違ってしまったんではないか、豊かさを求めて、目指してきたものが、ここへ来て何か精神的な方のバランスが崩れてしまっていると、非常に複雑な思いで最近の事件を聞いております。

 私もまだ三十代前半ですので、これから先々、子育てしながら生きていかなくてはいけませんので、我が事としてとらえ、今後も子供たちの心の問題というものに真剣に取り組んでいきたいと思っております。

 では、早速、本題の著作権の課題に移らせていただきます。

 金曜日の質疑、そしてきのうの参考人質疑に引き続いて、大変いろいろな問題がこの件に関して出てまいりました。改めてやはり私は、今回の法案、どうしても見直し規定を入れるべきじゃないかというふうに、きのうも質疑通告をつくりながら思いました。

 やはりこの著作権の問題の改正にかかるまでに、集中的に言えば、三つの問題点があったと私は思っています。

 一つには、まずは、文化庁からの説明の仕方、持っていき方がまずかったのではないかと。私どもも、初め文化庁の方にヒアリングをしたときには、この改正について内容を教えてもらったときには、海賊版を防止するためなんだ、還流を防止するためのものなんだ、じゃ必要だなと単純にそう考えました。

 しかしながら、よく考えていけば考えていくほど、詰めていけば詰めていくほど、いや、それだけが目的じゃないんじゃないか、この法案はというふうに思うようになってまいりまして、大変に不信が不信を呼ぶといいますか、消費者の間でもこの問題がいろいろとネット上でも話題になっているという中で、やはり金曜日の質疑でもあった、文化庁の方が持ってきたデータが業界ベースで、業界任せのものだったというような背景もあり、余計不信感を生んでいるというふうに思います。

 もう一つ、やはりこの法案、改正案に持っていくまでの決定プロセスにおける問題というのが大きくあるだろうと思います。閉鎖的な場所での審議があった、消費者の方々が入っていなかった。金曜日の質疑の中でも多々御答弁がありましたけれども、その問題がもう一つにはあったと。

 そして最後に、やはり過去の実例、これは我が党の城井さんが前回の質問の中で申し上げましたけれども、米国へ洋楽のレコード貸与権を与えたときの問題、この点で附帯決議が守られなかったという事実。

 この三点からさらにこの法案に対する疑惑が巻き起こってきて、ここに至っているというふうに考えています。

 やはり法律を変えて権利をつくってしまえば、米国は権利を行使するに違いないという意識が私にもございます。今まで権利を一度つくって廃止されたものはないので、この権利ができてしまえば行使されて、洋楽のレコードの並行輸入がストップしてしまうのではないかという懸念、消費者の間に起こるのも当然であろうかというふうに思います。

 そうした中で、まず、三つの点に絞ってお聞きしたいと思っているんですが、ファイブメジャーというところの思惑について、この間も議論をされてきましたけれども、さらに突っ込んでお伺いしたいというふうに思っています。

 この審議における論点の中で、ファイブメジャーと言われる大手レコード会社が著作権及び著作隣接権保護のために本法案を武器として権利行使するのか否かという点が大変注目をされていますが、きのうもそうでしたけれども、日本レコード協会のお話では、当初、メジャー各社の日本支社として、本社が権利行使して並行輸入をストップされる意思はないということを確認しているというふうに言っておられました。しかし、この前の審議でも言われておりましたのは、文化庁のパブリックコメントの段階で全米レコード協会から意見書が届いていて、その中身は、並行輸入を厳しく批判するものであったと。私も、この間拝見して、大変にこれはびっくりしました。並行輸入はできるならばとめた方がよいというような、本当に手厳しく批判するような内容でありまして、本当にこの日本レコード協会の説明とは余りにも違っていたもので、大変にびっくりいたしました。

 このパブリックコメントで届いた意見について、多分、大臣もごらんになっているとは思うんですが、なぜこの公開をおくらせたのか、少なくともオープンにするということが前提だったはずなのに、なぜ先に公開しなかったのか、これも疑惑というか疑念を呼ぶ原因になっていると思いますので、一言教えていただきたいと思います。

河村国務大臣 文化庁が実施をいたしましたパブリックコメント、意見募集、これに届いた意見については、文化審議会の著作権分科会委員全員に配付をしておるところでありまして、また、求めに応じて公表できるように、常に文化庁には備えつけておいてあります。記者クラブにも公表されておると聞いております。でありますから、主要な意見を含めて、同分科会において意見募集でとれた意見が委員の議論の俎上にのっておった、このように私は理解をしておるわけであります。

高井委員 やはり内容が、私が当初説明を受けていたことと違うんですね。全米レコード協会の皆さんも、今回の並行輸入はとめない、今までの正規の輸入に対しては、並行輸入に対しては変わるものではないということを書いてあって、ちゃんと確約はとれているんだということを大臣も参議院の審議の中でも御答弁なさっていましたし、本委員会でもしておられました。

 でも、本当によく読むと、並行輸入を批判するものだけでなく、この書簡、恐らくあるであろうと思いますけれども、この書簡で、私も、全米レコード協会の会長であるとか、もうちょっと公式なものであろうかと思っていたのです、確約はとれているという話でしたので。でも、きのうの日本レコード協会の依田会長のお話にもございましたけれども、特に一社一社確約をとっているわけではない、個人的な書簡のやりとり等で一応確認をしていることだということでしたので、それではとても確約がとれているとは言えないし、権利行使をしないということの保証には全くならないというふうに思います。

 そうした中で、きのう、参考人のポールさんでしたか、少なくとも、ファイブメジャーというだけでたった五社ですから、五社の本社に確認するなり、それなりのやりとりはもうちょっと突っ込んでできたはずだと思いますけれども、それをなさるおつもりはございますでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 ファイブメジャーの意思の確認に関連いたしまして、昨年の十二月の全米レコード協会、それから国際レコード産業連盟が提出いたしました意見書の内容の問題、それから五月におきまして全米レコード協会と日本レコード協会との間で行いましたその照会、回答ということの内容につきましては、今具体的な御質問ということではなかったかと存じますけれども、これに加えまして、個別のファイブメジャーそれぞれの意思を確認すべきかどうかということにつきましては、昨日、日本レコード協会の依田会長が申し上げましたその全米レコード協会と日本レコード協会との間のやりとり、また、ファイブメジャーの日本の関連会社を通じての意思確認ということで、日本のレコード協会として十分な意思を確認しているというようなことであったわけでございます。

 昨年十二月の意見書の内容につきましては、並行輸入の問題点を指摘しているということは事実ではございますけれども、内容を読んでみますと、やはり発展途上国から日本等へのレコードの輸入によって生じる問題点の懸念というものが表明されているものというふうに私どもは理解しているところでございます。

高井委員 日本レコード協会が訳をしたものとまたこの原文と少し違うところがあるように思います。「レコードの輸入をコントロールする権利の導入が、日本におけるそれら輸入盤の継続に影響を与えることはない」ということをニールさんという上級副社長の方は書いておられて、これが日本レコード協会の訳なんですけれども、本文をよく読むとレジティメートカンパニーというふうに書かれておりまして、つまり正規の会社に、正規の代理店による正規のレコード輸入の継続には一切問題ないというような解釈ではないかと思います。

 ということは、並行輸入を大変厳しく批判し、並行輸入はよろしくないというふうにすべてずっと一番から回答を書きながら、パブリックコメントの中では特に並行輸入に関して厳しい意見をしながら、今までの輸入盤の継続に影響は与えないというふうに訳をつけるのは、訳はつけてはいますけれども、よく読むと、本当に正規の代理店で正規の契約を交わした正規のレコード店の輸入以外は実はちょっと権利を行使するかもしれないぞというふうに、よく考えると読めると思うんですけれども、この点についてどうお考えでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 五月十四日付の全米レコード協会の上級副社長からの書簡の中のレジティメートカンパニーズという表現につきましての御質問であるわけでございます。

 これにつきましては、日本レコード協会におきまして、五月の二十七日付でさらにこの意味について確認しておるわけでございますが、それによりますと、これは海賊版を取り扱う者というものを意識して、そうでない者ということでこのような表現を使ったということにすぎない、米国からの正規輸入レコードを輸入するすべての企業をこのレジティメートカンパニーズという意味で表現しているということが回答として寄せられたというふうに聞いているところでございます。

高井委員 文化庁としても、この書簡というのを大変重く見ているということなんですね。ファイブメジャーとはちゃんと確約をとっているというのは恐らくこの書簡に基づいてのことだろうと思うんですが、これは個人書簡的な形になっていると思うので、そこまでやはり重視して守られるものがあるという確約をどういうふうに考えればいいのかなと思います。

 大臣も副大臣も、ファイブメジャーとは確認しているという御答弁の根拠というのは多分この手紙であり、そのほかやりとりがあったのかもしれませんが、あるんだろうと思いますけれども、普通は、やはり米国というのも契約社会ですし、ちゃんとした、しかも社長というか責任者、トップの本当の責任者ではなくて、なぜ副社長であるのか。また、この書簡の重みということに対して文化庁はどういうふうに考えておられるのか、教えてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 全米レコード協会の上級副社長との書簡のやりとりということでございますけれども、この方は国際担当ということで、海外からの照会、海外との対応につきましては第一義的に対応の責任者ということで、常に窓口として意見照会に応じる立場にあるということで、日本レコード協会の常務理事としては、さきに、十二月に提出されました意見書の内容につきましてその照会を求めたものということでございますので、やはりこれは個人的な書簡というふうには理解していないところでございます。

高井委員 それであるならば、じゃ、かなり確約はとれているということで、ただ、前回の委員会の城井さんとの質疑の中で、海外の著作権者及び著作隣接権者の権利行使をとめることがこの附帯決議でできるのかどうか、前回附帯決議、参議院でも出されましたけれども、そういう効力があるのかどうかということをお聞きしたときに、素川次長が、イエスかノーかということであればノーである、附帯決議を踏まえて尊重した運用をすることでございますので理解をいただきたい、要するに、法的拘束力はないし、実際に守られるかどうかは確証できないというような御答弁がございました。

 さらに、国会での答弁というものは、そのものが法的拘束力があるものではないということは御存じのことだと思いますという御答弁もいただいておりますけれども、この点自身も非常に問題がある。では、今までの国会の委員会の中でのやりとりや附帯決議は何の意味もないんだということになってしまえば、我々のやっていることは本当に何なんだという話に、根本的な話にもなってしまいます。それこそ、このような回答は大臣はどう思われるのかなと思いながら、それでもなお、これを尊重して一生懸命頑張るということでこの間は御答弁いただいたわけですね。大臣、やはりそれでいいんですか。

河村国務大臣 そういう御懸念がある、自分の好きな洋盤レコードが入ってこなくなるのではないかという皆さんの御懸念があるということ、それも踏まえてこの法案をお出ししているわけであります。

 先ほどのレコード協会の上級副社長の書簡についても、アメリカ側の全体の担当の副社長が、国際担当の副社長が把握しておられる事実をきちっと述べておられるわけでありまして、先の保証をどうするかということになってくると、これはどういう形をとろうと、経済は生き物でありますから、そのことについて、絶対にと言われるとそこについての保証はなかなか難しい問題とは私は思います。しかし、ビジネスの世界で、消費者があって生産者、消費者があってレコードがあるのでありますし、もちろんレコード会社もきちっとしなきゃいかぬ、そういう関係で成り立っているということを考えれば、私は、今回の、レコード会社にとってもこの危機的な状況をどういうふうにクリアしていくかということ、そういう特別なケースについてやはり歯どめをかけなきゃいけない。

 それに、高井先生言われたことで私ちょっと気になったのですが、この法案の目的は別のところにもまたあるんじゃないかと言われた。それは、それをあえて恣意的に考えればそうですけれども、そういうことを言われるとますます皆さんの不安をあおるだけのことであって、この法案のねらいは、ああいう還流、海賊版ともまたちょっと違うけれどもそういうものがどっと流れ込んでくる、流れ込んでくるようなものを防ぐんだというところにこの法案の趣旨があるのであって、ただ、そういう懸念がある、これについてはやはり国としてもきちっと対応しなきゃいかぬ、そのことは踏まえた上でお出しをしているということを御理解いただきたい、そういうふうに思います。

高井委員 当初私が聞いていたのは、還流防止措置だ、邦盤レコードの我が国への輸入を防止するためにこの法案を出すんだということを聞いておりました。

 しかし、よく聞くと、いや、国際条約上の内国待遇の原則により、邦盤レコードだけでなく洋盤レコードの権利者も同様に保護する必要があるからこの法案を出すんだということを文化庁の方も言っておりまして、じゃ、それだったらなぜ当初からそういうふうに言ってくれなかったのか。還流防止措置がもちろん第一ですけれども、しかし、洋盤レコードの権利者も同様に保護する必要があるということが背景にある中での議論になってくるとまた違ってきますので、この点を初めからもうちょっとオープンな形で言ってくださればというふうに思って、私はそのように申し上げた次第なんです。

 確かに、大臣がさっきおっしゃったように、確実なことは言えない、それはどんなことでもそうだろうと思います。だからこそ私たちは、もし何かあったときのために見直し規定を入れた方がいいんじゃないかということを主張してきました。稲葉副大臣も、前回の参議院の質疑の中で、「この措置が講ぜられた後も検証を重ねていかなければならない」というふうに御答弁をしておられますし、それが進んで直輸入の洋盤レコードが減少したり、とまってしまうという状況が見えてくるならば、必ずこの制度についての見直しを図っていかなければならない、必ず図らなければならないとおっしゃってくださっています。

 だからこそ、これだけ懸念がある法案ですから、見直し規定をちゃんと入れて修正した方がいいんじゃないか、本則の中に入れた方がいいんじゃないかというのが私たちの思いなんですけれども、この点、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 これは内閣提出法案としてお出ししているわけでございますけれども、見直し規定、これは一般的には附則で置かれるものでございます。一般的な行政規制でございますとか行政上の制度というものを設ける場合に、その見直し規定というものを附則で設けるということがあるわけでございます。

 ただ、私の権利、例えばこの著作権法などは私の権利を創設するわけでございますけれども、そういうものにつきましては、見直し規定というものは私人の権利の安定性、法的安定性の問題から、今まで著作権法を何度も改正しておりますけれども、こういった私的財産権の分野での私権の創設にかかわる部分については設けてはいないわけでございます。

 そういうことで、内閣提出法案のこの見直し規定につきましては、このような御説明をさせていただいているところでございます。

高井委員 副大臣、いかが思われますか。御自身の御答弁でこのようにおっしゃっておられるので。

稲葉副大臣 質問書を拝見しまして、後ほど私に直接御質問されるような、そんな趣旨も承っておりますが、私の考えとしまして、参議院の委員会においてお答えしたその内容にいささかの揺るぎもありませんし、きょう御答弁申し上げる中でも変更する必要はない、このように考えております。

 つまり、変更する必要がないということは、検討しなければならない事情が生じた場合には検討を必ず行う、こういう内容の発言であります。

高井委員 つまり、法案の中では担保しなくていいということなんですね。

稲葉副大臣 今ほど次長がお話し申し上げましたように、行政措置として行う、いわば一種の私人の権利を制限する、こういうような状況のときに、附則あるいは法律事項をもって規定するというのは若干なじまない、むしろ、いろいろな事情を勘案するならば、柔軟な対応ができるような今ある現状が最善、私はそう思っておりますので、あえて皆さんがおっしゃるように附則において明記する必要はない、このように思っております。

高井委員 小泉内閣において閣議決定された答弁として、二十八日の内閣から送付された質問主意書一〇九号に対する答弁書によると、法案が成立し、施行された後に、例えば、商業用レコードの流通実態の変化によって、消費者の利益を不当に害すると認められるような事態が万が一生じたときには、その状況を調査し、検証した上で、必要があれば、法案第百十三条第五項の見直しを検討するとしているというふうに入っております。見直しを行うとして、いつ、どのように、どのような状況になると行うのか。見直しするために具体的に必要な情報の収集を進めているのかどうか、現実的なところでお伺いをしたいと思います。

河村国務大臣 今この時点で見直しを検討しているということは、現時点ではないわけでありまして、いろいろ御意見がある、そのことはもちろん踏まえますが、今回のこの還流を防ぐということ、このことを一義的にまず考えておるわけでありまして、それに伴って御懸念のような問題が起きたときに、きちっとした対応はいたしますということを申し上げておるわけであります。

 これがどのような不測の事態になるのか。まさに輸入権を行使するような、現実のような、こういう具体的な問題が起きる、それによって消費者が多大な迷惑を受ける、消費者にとって大変なことだというようなことになれば、これは今の還流そのものも一緒に、この法案そのものを解除してしまう、削除してしまう、そういうことまで含めて検討しなきゃいけないことで、それはそういう大きな、消費者にとってこれは多大なことだということと、いわゆる業界の皆さんが、これ以上認めたらたまらぬという、将来のことも含めてある。これはやはり政策的な課題として考えなきゃいけないことだと思います。

 今、どういう時点でそれをどうするということは、今この時点で申し上げる時点ではない、こういうふうに思っておりますが、まずはこの還流を阻止していこうということがこの法案の一番の大きな趣旨でありますから、御理解をいただきたいと思います。

高井委員 審議会の中でも多々、こういう副作用が生じるんじゃないかという懸念に関しては、いろいろな方から出されているというふうに思います。

 その中で、ただ、やはり大臣の答弁からも、問題が起きた後ですぐ何とかしよう、結局何か起こってしまわないと対応できないというのもわかるんですけれども、懸念が多々出されている以上、その懸念に対して何かあったときはこうするというような予防的なことも考えて一緒に動いていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思っています。

 審議会の中での懸念が出されたことに対して、レコード業界の方とはいろいろお話しされたと思うんですが、もしこの懸念されるような事項が起きたときには見直しをするということで業界の方からも了解を得られておりますでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 日本レコード協会の依田会長が申し上げておりますように、日本レコード協会といたしましても、還流の、すなわちレコードの流通の実態等に大きな影響があり、消費者に不当に不利益がかかってくるというような状況になれば、今回の措置を見直すことについて同意するといった趣旨のことをいろいろなところでお述べになっていると承知しているところでございます。

高井委員 ありがとうございます。

 問題が生じたらすぐやはり対応していただくのはある意味で当然のことだろうとは思うんですが、実際に権利が行使されて動き始めたら、本当にどんどんとまっていくんじゃないかという懸念は、やはりなかなかぬぐえないわけです。

 先週の委員会の中で、文化庁は、要件をつけたことによって日本と物価水準等大きな差がない先進国からの輸入についてはこれは影響がないということを答弁して、明確にしておるというふうに言われていますけれども、本当に一枚たりとも影響がない、とまらないということを約束するようなことはできるんでしょうか。

素川政府参考人 今回の還流防止措置の趣旨は、物価の安いアジア諸国などからの還流レコードというものが国内へ入ってくること、これを防止しようということでございまして、決して欧米の先進国からのレコードの輸入、こういう現在の実態、これに影響を与えるということではないわけでございます。

 私どもといたしましては、この制度の運用を図っていくという上におきまして、この立法趣旨及び現在の洋盤レコードの輸入の実態、こういうものを十分勘案しながら、その適切な運用を図られるような対応というものをしっかりとってまいりたいというふうに考えているところでございます。

高井委員 先週の城井さんへの答弁の中からも、では、これは大丈夫でこれは大丈夫じゃないというのを何の基準で決めるんだといったときに、物価水準であり、基準があるというふうにおっしゃって、基準の表をいただきました。ということは、例えば欧米からの輸入であって、日本販売禁止というふうに入って、並行輸入を今までしてきたものが、例えばそれは五割安かったとすると、それはこの法案で言うところの、還流により権利者の利益が不当に害されるという場合の不当にということに当たるということになるんでしょうか。

 つまり、国単位で、アメリカからのは大丈夫、要するにアジアからのはだめだというふうに決めている、大体の基準はあるというふうに聞いたんですが、しかしながら、恐らく一枚一枚CDごとの判断でなされるのではないかと思います。これは大丈夫、これは大丈夫じゃないというのを、どこでだれが決めるようになるのか、教えてください。

素川政府参考人 権利者の得ることが見込まれる利益が不当に害されるという場合に当たる状況といいますか、この要件の基準といいますか、そういうものにつきましては、著作権法を所管しております文部科学省、具体的には文化庁の方が、必要なデータをもとにいたしまして、この立法趣旨及び立法趣旨に沿うような形できちんと運用していくというようなことは必要かと存じているところでございます。そういうことで運用の適正というものを担保してまいりたいと考えているところでございます。

高井委員 恐らくすぐ、この法案がかかったら、実際にどんどん問題が生じてくるだろうと思います。その段階で、もっと具体的に多分税関の方に向けても指導されるんであろうというふうに思うんですけれども、例えば、今までは並行輸入で来ていた、そこに日本販売禁止というふうに書いていなければ全く問題がない、そのまま並行輸入で入ってくる、その意識、それは間違いないだろうというふうに思います。

 では、もしアメリカが、アメリカのある会社が日本販売禁止と書くとする、しかしそんなに差はない、二割ぐらい安いだけ、それがとまらないかとまるかというのは、やはりそれは文化庁の判断であり、税関に向けての指導になるんですね。恐らく日本販売禁止というふうに書いてあるだけで、まずは税関でとまるようになるんですね。それは、この法案が通ればとまるようになるんだろうというふうに考えて、それから先、ではこのCDは大丈夫かどうかと審査するまでにまた時間がかかるんだろうというふうに思います。

 だから、ある意味のダイジェスト、水準であるとか、国ごとの判断であるとか、一枚一枚CDの判断であるとか、税関に指導するように文化庁の中での基準が今もうできているのであれば教えていただきたいし、出していただきたいと思うんです。

素川政府参考人 権利者の利益を不当に害されることになる場合に係る運用の客観的な基準というものにつきましては、法律の施行前にきちんと作成し、公表してまいらなければいけないと思っております。

 そのためには、ライセンス料といいますか、著作権者、著作隣接権者が受けるライセンス料というものの比較をベースにしていかなければいけないわけでございますけれども、そのときに心得るべきは今回の立法趣旨であり、したがって先進国の輸入レコードの実態には影響を与えないような対応をするということでございますので、そういう実態を踏まえて適切な対応をできるようにしてまいりたい。

 文化庁が現在持っています各国のライセンス料の比較につきましては、先週の金曜日、要望、要請がございました。それを受けまして資料は出させていただいたところでございますけれども、そういう資料のデータというものを踏まえながら、これで十分だとは思っておりません、もっと広くそのデータというものは調えなければいけないとは思っておりますけれども、それにつきましては、今後きちんと対応できるように、客観的な基準につきまして検討してまいりたいと思っております。

高井委員 例えば、この基準というのを輸入業者が不安に思って輸入をしなくなるんじゃないかというような意見もきのうの答弁の中で出されました。

 要するに、この基準というのを一般に公開するのか、それとも文化庁と税関の中でのやりとりだけで決めるのか。つまり、そういうふうに考えると、私たち一般の消費者については、これがいいか悪いかというのはやはり判断できません。これがとまるかとまらないか、なぜとまったのか、何が不当に当たってとまったのかというのは、外から見ると全くわからない。例えばもっと輸入業者に公開するようにするのか、ちゃんと指導するようにするのか、その点もまた教えていただけたらと思います。

素川政府参考人 要件の客観的な基準につきましては、これを定めまして、きちんと公表してまいりたいというふうに考えているところでございます。

高井委員 結局、何度お聞きしても、どうやって定め、どのように公表するかというのは、恐らく文科省や文化庁の方に任されているんだろうと思いますけれども、だからこそ消費者の側の懸念が消えないのであって、もうちょっと消費者の側に対しても丁寧な説明と、本当に客観的な基準の開示というのがより大事であろうと思います。今回の法案の審議の、これがここまで上がってきた背景に、非常にオープンにされていないんじゃないかという懸念のもとで消費者の不安が今たくさん上がっているわけですから、もっと姿勢としても本当にオープンにするようにしていただきたいと思います。

 実はそろそろ時間がなくなってきたのであれなんですが、著作権に関して、私も以前、前著作権課長の岡本さんという方の本を読みました。すごくわかりやすくて、著作権に関しての本質のことを書いておられる。その中で、関係者間協議と情報公開による合意形成の促進が一番大事だと。つまり、一部の人、権利者側とか利用者側とかだけの意見を聞くのではなくて、やはりその間の合意形成がきちんとされることが大事であるというふうなことを書いてありまして、著作権の場合の問題点は、特に、既に繰り返し言ってきたように、権利者対利用者という宿命的な対立の構図がある、そうだからこそ、ある人々のためになるような法改正を行うと、それ以外の人々のためにならないということが常に起こる、これが著作権の問題の宿命的な構造で、大前提だと。だからこそ、役所に任せるのではなくて、政治的なちゃんとした議論のもとに多数決での判断をというようなことをこの著作の中には書いておられます。そう考えると、今回の法案の出し方としては、やはり権利者側、余りにも日本レコード協会の意見からの力によって法改正を進めようとしてきた文化庁の姿勢に対して、恐らくその反対側の利用者である消費者が、ちょっとそれはおかしいんじゃないかということで、合意形成を図る場にもっともっと意見を出させてほしかった、もっとオープンにしてほしかった、そういう発言が出てくるのはある意味で当然であろうというふうに思います。

 これからも合意形成、関係者間協議というのをもっともっと開かれた形でやっていただきたいと思っておりますし、今回の法案が通ってしまったことによる副作用ということに対しても、先ほど来から、ちゃんと問題があるごとに見直しをしていくというふうにおっしゃってはくださいましたけれども、本当に本則にもう一度入れることはできないかというふうに、修正案を出して本則にちゃんと入れることで法的に担保されるわけですから、それをしていただけないかと思うんですが、文化庁としての見解はいかがでしょうか。

素川政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、この内閣提出法案の立案に当たりましての考え方というものにつきましては、この著作権法のような私的な権利を創設する場合におきましては、見直し規定というものは、従来つけたことが、経験がございませんし、またなじまないものというふうに理解をしているところでございますので、この点御理解をいただきたいと存じます。

高井委員 大臣、この間のいろいろ議論を金曜日からもずっとお聞きになっておられると思いますけれども、大臣自身のお考えで結構です、本当に懸念は払拭されるのか。本当にCD、並行輸入盤に影響がないのか。

 多分、ずっと聞いておられる方は、もう何人か疑問をお持ちになっただろうというふうに思うんですけれども、私にはどうしてもやはり腑に落ちない、なぜ見直し規定を本則に修正案として盛り込むことができないのか。その明確な理由、盛り込みたいというお気持ちもあると思うんですけれども、なぜ盛り込むことができないのか、その点いかがでしょうか。

河村国務大臣 消費者の皆さん方の御懸念ということがあることは、これは踏まえておることは申し上げてきたとおりでございますが、今回のこの法案立法過程において、この問題についてまるで無視したわけではないわけであります。

 知的財産権等の私権に関する法律、これは法律をつくる場合に、いろいろな例、これまでのやり方、そういうものを踏襲する部分もあるのでありますが、まず私人の権利を付与する、安心して権利を行使できない、こういう法的安定性を害するためだ、こういうふうな内閣法制局の見解も踏まえて、今回、いわゆる附則といいますか法律に書き込まないということを決定したわけであります。その懸念に対しては、これはもうもちろん国会答弁、きちっと対応していかなきゃなりませんし、もちろん附帯決議をいただくということであればそれはきちっと守っていく。

 それから、当然、その実態としてそういうことがあるのか。もちろん、ビジネスでありますから、いろいろなことが考えられるでしょうけれども、日本という大きな市場を考えたときに、それをきちっと、この法律があるから、それをうまく使えば、権利を、並行輸入的なものは日本にもあるんだ、そっちの方を多く売るためにそっちをやめるんだとか、そういうことが現実にあるんだろうか。それは、レコード業界の実情とか向こうからの書簡、いろいろなことを考えてみて、ビジネスの常識といいますか、そういうことから考えてみてあり得ない、しかし、あった場合には毅然とした態度はとらなきゃいけない、これはこれまで申し上げてきておるわけでありまして、まさにそういう観点に立って今回の法案は出させていただく。

 今回、いろいろ御指摘いただいております。そのことは十分踏まえて対応していかなきゃいかぬ、そのことはこれまでも申し上げてきたし、現時点でもそう思っておるわけでございまして、この法案を通していただく、それによって今の還流措置に対する対応をきちっとする、そのことがまず重要である、このように考えておるわけであります。

高井委員 恐らくビジネスの常識では考えられないというふうな話は大臣もおっしゃいましたけれども、ただ、それが一度過去には裏切られた例があり、だからこそ、ここまで消費者の間にも不信の声が起こっているわけで、本当にきちっと守っていくということで法的な担保をできないかというのを、どうしても私たちは求めていきたいというふうに思います。

 私の質疑時間は終わりましたので、次、同僚の議員に譲りたいと思います。ありがとうございました。

池坊委員長 笠浩史君。

笠委員 大臣、どうもお疲れさまでございます。よろしくお願いいたします。

 先ほど高井委員からも言及がありましたけれども、昨日の長崎、佐世保で起きました事件、大変これはゆゆしきこと、本当に耳を疑うような事件でございました。当然ながら、大臣の方も文科省の方で、この原因あるいは背景、どういったことなのか、これから十分な調査をなされることだとは思いますけれども、また、そういったことがすべて把握できた折には、ぜひ当委員会にも報告をしていただき、また委員長にも、ぜひこの問題、いずれ機会を見て議論をさせていただきたく、お願いを申し上げたいと思います。

 ところで、この著作権法の改正についての質問に入らせていただくわけでございますけれども、昨日の参考人質疑、あるいは先週来、いろいろな問題点は明らかになってきています。

 私はその中で非常に思うのは、今回のアジアからの邦楽の還流防止、この法案の趣旨というかそのことについては、多くの議員が理解をしていると思いますし、そこに反対をしているものではないと思うんです。

 ただ、やはり一点だけ、今同僚の高井議員からも指摘がありました、数々、先週の金曜日の質疑でも明らかになりましたけれども、果たして洋楽、洋盤の並行輸入というものが、この法律を逆手にとってというか、今そういうことは想像できないとか、あるいは可能性ないと言われても、やはりこの法案を素直に読む限りはその可能性が否定できないというところに、多くの音楽ファンあるいは消費者、こういう方々が不安の声を上げられているわけです。これは、審議をやればこうした声がおさまっていくというのが普通なんでしょうけれども、私のところにもメールがどんどん、この審議が始まってからやはりふえまして、何とかしてくれという悲鳴にも近いようなメールが、恐らくはいろいろな議員のところにも行っているんだと思います。

 こういう状況になったこと、今こういう不安の声が全くとどまらない、ますますふえている、そういう状況になっていることについて、大臣、この法案を提出される、あるいはその前の準備をされる段階で、こうした事態を予測されていたでしょうか。

河村国務大臣 この輸入権の問題といいますか、狭い意味じゃなくて、広く言えば輸入権、そういう問題について、また著作権という問題は、先ほど高井先生が岡本さんの著書をお読みになったように、私権の問題、それからこの著作権のような問題は必ず相反的な問題がある、これをやはり調整しながらいかなきゃいかぬということ、この御指摘はまさにそうだと思います。

 そういうことからいえば、この法案については、まさに特別に、中国やアジアに対してこうやり、ヨーロッパについてはこうするという差別的な待遇はできないんだという法の精神がございます。これはもう国際条約、世界の共通の概念に立っていますから。その上で、やはりそういう問題があるということは十分考慮しなきゃいかぬ、配慮をしなきゃいかぬということを踏まえての今回の法案の提出であります。

 そういう声が、御懸念があるということについては、これまで十分議論をしてきたといいますか、委員会等々でもいろいろ議論されて、確かに、これまでの議論の中では、消費者の代表が最初からきちっとしたあれになっていなかったじゃないかというような御指摘もありました。しかし、消費者の意見を決して聞かなかったということではない。消費者の皆さんも、あの委員会のメンバーを見てもおられるわけであります。いろいろな意見を踏まえて、合意の上に、こういう法案は、ある程度の合意的な全体の流れというものができないとできないということで進んできておりますから。私は、そういう意味で、意見をあらゆる方面から聞いてやってきたということであります。

 皆さんがまだ御疑念を持って心配をしておられるということ、これは、この議論を通しても、さらに払拭する努力はしなきゃいかぬ、こう思っております。

笠委員 大臣、今大臣は、いろいろなあらゆる方面の意見を聞いてきたと。こういう私的な権利、そして当然ながらこの権利を受ける側、あるいは消費者、その利害によってまた対立するということも、これは当たり前のことだと思います。だからこそ、その合意形成が大事なんだということを今大臣おっしゃったんですけれども、私ももちろんそのとおりだと思うんですよ。

 ただ、残念ながら、今回のこの法案提出に至る過程において、大臣にどういう報告をされていたのかわかりませんけれども、文化庁がやってきたやり方というのは本当に、これは業界団体の声は非常に聞いていると思いますよ。けれども、一方の消費者の声を果たしてどこまで聞いていたのかということについて、私は非常に疑問が残るわけでございます。だからこそ、今消費者サイド、若者たちも含めた音楽ファンが怒っているんですよ、突然のように聞かされて、これは大変なことだと。説明責任もなされていなかった。

 私は、その点について、まず具体的にちょっと幾つかお伺いをさせていただきたいと思います。実は五月六日に、私、川内議員とともに提出者として、文化審議会著作権分科会のあり方に関する質問主意書を出させていただきました。その中で、まず第一点、この閣議決定された答弁書もいただいておりますけれども、ちょっと納得のいかない部分が幾つかございますので、まず確認をさせていただきたいと思います。

 この文化審議会著作権分科会、これ自体、全体で消費者団体選出の専門委員が二名選出されているんですね、わずか二名。そして、この小委員会に関してはいないんですよ。専門委員が配置されていないんです。そのことについて、いただいた答弁書では「法制問題小委員会の目的に照らしてふさわしい構成であったと考えている。」と。これは、先ほど大臣もおっしゃったように、著作権にかかわるような問題ですから当然ですよ。二十名いるんですよ、全部で二十名。消費者団体の方もここに入ってもらって、なぜ議論をされなかったんですか、文化庁。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年の文化審議会著作権分科会の法制問題小委員会につきましては、著作権の研究や法務を専門とする方、それから放送、出版、映画、音楽など幅広い分野におきまして、著作物の権利者及び利用者の立場で実務に携わっている方、このような方々に委員として加わっていただいたものであるわけでございます。

 具体的な小委員会の委員の分属につきましては、分科会長の権限で分属をしたということでございますけれども、著作権法制のあり方について総合的な観点から審議するという目的に照らしてその分属が行われたものと承知しているところでございます。

笠委員 ちょっとお伺いします。この最終的な委員を決定する権限というものは、これはだれにあるんですか。

素川政府参考人 委員の発令につきましては、文部科学大臣でございます。分科会の分属につきましても大臣でございます。ただ、小委員会の分属につきましては、分科会の規則によりまして、分科会長が行うというふうに定められているところでございます。

笠委員 ということは、最終的には、分科会を含めてやはり大臣が、例えば上がってくるでしょう、実際にどういう方を選ぶというのはその中で決めてもらって。大臣、それに目を通されましたか。

河村国務大臣 今回の著作権分科会の委員の任期は、平成十五年の三月二十八日から平成十六年の二月四日、こうなっておりました。私は当時副大臣でありまして、大臣の決裁の前に目を通させていただいて、一人一人の説明を伺って、こういう問題について客観的な意見が述べられる人、特にマスコミの関係者も入っておられるとか、そういうことは私は確認をして大臣の方に上げた、このような記憶がございます。

 それから分科会の小委員会の方になりますと、これは分科会長がお決めになることでありまして、あとはこういうメンバーが小委員としてありますということですから、決裁の対象にはなっておりませんが、それも私は目を通した覚えはあります。

笠委員 大臣、では、その分科会の方、消費者団体二名ですね。これは余りにもバランス的に、先ほど大臣が、こういう著作権というまさに私的な権利、これはまた相反する、こういういろいろ権限、権利のぶつかり合いがある、当然利害が反する、そういうことだからやはり調整が大事なんだ、合意が大事なんだということを大臣がおっしゃったから、大臣、副大臣当時、もう少し消費者サイドも、権利者ばかりじゃなくて、入れた方がいいんだということを全くお感じにならなかったでしょうか。

河村国務大臣 私はこれを見て、それが足らないのではないかという指摘はしていませんが、全体を見たときに、学者の皆さんであるとか、それからマスコミの方も入っておられるし、こういう広範な議論がここでできるのではないか、こう思いました。いわゆる音楽ファンとかなんとかそういう方々が入っている、そういう思いは残念ながらこの時点では、私はそこまで思いは至らなかったのでありますが、このメンバーで、広範な方々が入っておられるという認識を持った、そういうことであります。

笠委員 まあそれは仕方ないでしょうね、恐らくそういういろいろな仕事がある中で。ちゃんと文化庁に任せているわけだから、ある程度きちんと常識を持った対応をしてくるだろうということを信じるところからしか仕事は始まりませんので。

 しかし、ちょっと文化庁、これはひどいですよ。この私の質問主意書にも出しているんですけれども、消費者団体が小委員会、先ほど、会長に権限があると。そこに文化庁の意向がなく仮に会長がすべてを決めたとしましょう。けれども、途中の段階で、消費者団体から、ぜひこの小委員会に入れてほしいという要望が文化庁の事務局に対してあったでしょう。なぜ配慮しないんですか。そのことをお答えください。

素川政府参考人 この還流防止問題につきまして、消費者団体の方から、文化庁の事務局といいますか、文化審議会の事務局をやっている文化庁の方に、関係者間協議という形で入りたい、入るべきだと思うというふうに意見表明されたのは、昨年の十月末か十一月の初めのころであったかと存じております。

 なお、その段階におきまして、既にもう日本経済団体連合会と日本レコード協会、それから著作者団体の間での合意を踏まえまして審議会の議論のテーブルにのっていたということから、消費者団体代表者の方に法制問題小委員会に加わっていただきまして議論を進めたということでございます。オブザーバーとして加わっていただきまして議論を進めたということでございます。

笠委員 レコード協会と経団連だけでいいんですか。要するに、これは一人もいないじゃないですか、委員に。

 文化庁としては、逆にその消費者団体、先ほど大臣もおっしゃっているじゃないですか、きちっと両方の立場の意見をいろいろ出してもらって合意形成が大事なんだと。あなた、そのことを認識していますか。

素川政府参考人 議論の、審議の展開におきましては、幅広く御意見を伺うということが必要であるというふうに理解しておるところでございます。

笠委員 幅広く伺いましたか。答えてください。

素川政府参考人 昨年十月末に、著作権分科会所属の消費者団体の選出の委員からの表明というものを受けまして、十一月以降、先ほど申しましたけれども、その委員に協力を依頼し、オブザーバーとして法制問題小委員会に加わっていただき、御意見をいただいたということでございます。

笠委員 オブザーバーじゃなくていいじゃないですか。なぜオブザーバーなのか。私、ちょっともう一度聞きますよ。

 この「法制問題小委員会の目的に照らしてふさわしい構成」、目的というのは、これは何ですか。わかりやすく端的にお答えください。

素川政府参考人 法制小委員会の目的は、著作権制度のあり方について総合的な観点から審議をするということでございます。

笠委員 総合的な観点から審議をするんでしょう。権利者サイドに立っただけの審議じゃないですね。

 だから、私はなぜ、別に半々にしろとかいうことを言っているんじゃないんですよ。なぜ消費者団体の方を、いいじゃないですか、一名でも二名でもきちっと入れて。では、それは会長がそういうふうなことは全く頭になかった、会長の一存で決めたことだ、文化庁としては相知らない、そういうことでよろしいんですか。

素川政府参考人 小委員会の委員の分属は、通常、年度当初に決めるわけでございますけれども、年の初めに決めるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、小委員会の議論、それを踏まえての分科会の議論、こういう流れで全体の意見を集約していくわけでございます。

 いずれにいたしましても、小委員会の中で、年度の途中ではございましたけれども、オブザーバーとして加わっていただきまして、意見をちょうだいし、全体の議論の中に反映するように審議が、運営が行われたものと理解しているところでございます。

笠委員 私の質問に答えてください。私が聞いているのは、会長の一存で全部メンバーを決めて文化庁は関与していないのか、それとも文化庁が、ではもう一回聞き直しますよ、メンバー選出に、会長と相談して、文化庁の意向も働いているんじゃないですか。いかがですか。

素川政府参考人 制度上は、規則上は、分科会長が分属を決めるという権限でございます。その過程におきまして、いろんな情報というか、そういうものにつきましての意見というものは会長に差し上げることは一般的にはあるわけでございますけれども、権限といたしましては、分科会長がその分属を決めるというふうになっているところでございます。

笠委員 一般的なことを聞いているんじゃないんです。今回のことを聞いているんです。しっかり答えなさい。

素川政府参考人 今回の件につきましても同様でございます。

笠委員 最初からちゃんと答えてくださいよ。先週の金曜日のあなたの答弁を聞いていましても、何か知らないけれども、何を言っているのかわからないような答弁、それが今まさに不信感を与えているんですよ。だから、審議をすればするほど、例えば、大臣が答弁をする、そのことについても心構えと言ってみたり、附帯決議なんかについてもですよ。もっとしっかりとした答弁をしていただかないと、ますます、またこの委員会を中継で見ている消費者、音楽ファンは、どういうことだ、こんな人たちに決められたらたまらない、そのように思いますよ。いいですか。以後、責任を持って答弁していただきます。

 それで、私、これだけの著作権というまさに大事な問題じゃないですか。これはもちろん関係団体から、いろいろなところから意見を聞くことも大事でしょう。同時に、やはり国民の声を広く吸い上げていくということも私は大事だと思っているんですけれども、大臣、そのことはいかがですか。

河村国務大臣 おっしゃるとおり、こういう審議会、特に利益相反するようなケースについては、特にしっかりそういうことは広い範囲の声を聞く、これは当然のことだと思います。

笠委員 大臣もそうおっしゃっています。

 実は、これも私の質問主意書の方で聞かせていただいているわけですけれども、本来、こういう議事は極力オープンであるべきなんですよ。そういう審議会、たくさんありますよ。しかし、これが極めて閉鎖的な、情報公開が非常におくれた形で行われてきているんです。

 例えば、この議事の傍聴についても、一般傍聴に対しては、例えば抽せんとかいろいろなやり方がありますよ、だれでも聞けるというわけじゃないでしょう。けれども、これをやっているところは多いんです。にもかかわらず、これはだめだと。そして、その理由をただしたら、「会場の確保が困難であるため、」なんという回答をよこしているんですよ。そんなものはとればいいじゃないですか、会場なんというものは。その点について、文化庁、お答えください。

素川政府参考人 著作権分科会の運営に当たりましては、会期の当初に分科会長が分科会に諮って、その公開のあり方ということを定めるということになっているところでございます。その中で、今御指摘のような会議の公開につきまして、報道者に限り、現在認めているところでございます。

 その理由につきましては、先生御指摘のように、答弁書の中では「一般傍聴に対して十分に対応できるだけの会場の確保が困難であるため、」というような理由を挙げさせていただいたところでございます。

笠委員 驚きますよね。要するに、私が言っているのは、例えば文化庁の方で、この著作権の審議、これはいろいろな意見が出てくるだろう、当然それぐらいのことはわかっていると思いますよ。やはりいろいろな議論が出てくるのが当たり前だし、いろいろ広く意見も聞かないといけないから、なるべくオープンに、そして透明な形できちっと審議をしていただきたいというような気持ちはなかったんですか。

素川政府参考人 基本的には、審議会につきましては原則公開をするということが著作権分科会のみならず文化審議会全体の方針として定めておるわけでございます。しかしながら、分科会の実際の会議の公開の手続その他の必要な事項につきましては、毎年度、分科会に諮って定めているわけでございます。

 いろいろな制約条件というものもあったわけでございますけれども、いずれにいたしましても、今後、著作権分科会の開催に当たりましては、原則公開をさらに進める方向で検討してまいりたいと考えております。

笠委員 そんなことは当たり前なんですよ。原則じゃなくて、当たり前なんですよ。いろいろな事情というのは会場の都合だけでしょう。こういうところが、まさに文化庁がひょっとしたらレコード協会なんかと結託して最初からこういう方向性でやろうと決めて、なるべく都合の悪いことは表に出したくない、そういうふうに受け取られても仕方がない大きな要因の一つになっているんですよ。大臣、その点についていかがでしょうか。

河村国務大臣 もとより今回のケースについては、消費者側のことについても配慮しろというのは最初から言われておったことでもありますから、私はその点は配慮して今日やってきたと思いますし、文部科学省におきましても、一番大きな中央教育審議会についてもオープンにする。

 最近は、私が一番思ったのは、やはりマスコミの方はみんな入っておられるんですね。そこで公正に、いろいろな形で議論を踏まえて報道していただくこと、これはやはり私は非常に一番だと思うんですよ。これは一つは大きいと思っています。

 というのは、それはいろいろな、余り反対とか賛成とかというケースがあるとあれですけれども、あくまでもこれは阻止しなきゃいかぬ、いや、これはやらなきゃいけないという立場でそこへ入ってこられると、そこでやじが起きるとかなんとかというようなことでもあると、これは委員の皆さんが公正な審議ができないということもあるんですね。そういう例もなきにしもあらず。

 だから、そういうことも考えながらオープンにしていかなきゃいかぬ、当然そうですから、まず一義的にマスコミの方がオープンに入っておられるということは非常に私は大きいなと思って、これは随分昔と変わったなという思いをまず抱きました。

 しかし、おっしゃるように、利益相反に関するものについてはできるだけオープンにしていくということ、これは大事なことでありますから、今後、そういう御懸念が抱かれないような方向でこれからもオープンにしていく、これはしっかり私も検討していきたい、こういうふうに思います。

笠委員 今大臣おっしゃったように、マスコミが入って、これが公正に報道していくということが一番いいでしょうね。

 ただ、この委員会自体、先ほど申し上げましたように、メンバーがまず偏っているんですよ。メンバーもきちっと、そういう消費者の意見も代弁できるような人も一人でも二人でも入った形で行われて、そこでいろいろな立場からの意見があるんだなということでこの小委員会が運営をされていれば私はそれでもいいと思うんですけれども、そのメンバー自体がどうも、どこでどう決まったか、何か文化庁の関与が否定し切れない。先ほどもおっしゃっていました、関与したんでしょう。

 そこに意図があったかどうかはわかりません。けれども、さらには、この閉鎖的な、ほかの審議会に比べれば非常にこれは私は閉鎖的と指摘をせざるを得ないような運営がなぜ今回されているのかということが、さまざまな疑問を生み出しているわけです。

 そのことを、本来であればやはり大臣が指導をし、ただ、大臣も、いろいろな諮問機関だ何だ、審議会だ抱えている中で、恐らくは文化庁からの報告をその都度その都度受けて、なるほどな、そうかというようなことだったとは思うんですけれども、余りにもこれはちょっとひどいとしか、私は、先週の質疑を聞いていても思いましたし、調べれば調べるほど、これは大事な法改正の割には本当にお粗末な過程だな、どうしてもそういうふうな指摘をせざるを得ないんです。

 もう一つこの点についてお伺いをしますけれども、文化庁の著作権課は、制度改正の前提として関係者間の協議、合意というものを求めて、「各分野における検討事項例」と題する文書を出席者に配付しているわけでございますけれども、この関係者の中に、一般消費者などを代表する立場の消費者団体、これが記載されていないんですね。

 このことについてただしたところ、この文書で「関係者として位置付けているのは、基本的に、関係する権利を業として取り扱う者であって、制度改正を要望する団体等及び当該制度改正に反対する権利者又は事業者の団体である。」という答えをいただきました。けれども、この当該制度の改正に反対する権利者の中に消費者、この団体というのは入っていないんですね。この点についてお答えをいただけますか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 関係者間協議といいますのは、その課題ごとに当然異なってくるわけでございます。それにつきましては、一般的な考え方というのは今先生お話しになったとおりでございます。

 それで、では具体的に個別のケースにつきましてどことどこが関係者という形で、これは広い意味の関係者ということではない、一般的な関係者ということではなくて、個別のテーマにつきまして、著作権分科会で議論するその前に集中的に御議論いただくという意味での関係者ということでございますけれども、それにつきましては、具体的に賛成、反対の意見を個別に表明して、集中的にその問題について協議し合っているという実態、実績というものを踏まえて、私どもは個別のテーマについての関係者というふうに整理させていただいているところでございます。

笠委員 いや、私が言っているのは、何で事業者だけに限定するのかということをお伺いしているんです。

素川政府参考人 これは、過去の経緯もあると思いますけれども、個別のテーマにつきまして、消費者団体の方で反対もしくは賛成の立場もございましょう。そういうことで関係者協議に入るということで行われてきたという実態もしくは実績というものがなかったためと思うわけでございますが、今後につきまして、関係者間協議というものにつきまして、その内容によりまして、消費者団体の方がそういう形で入ってこられるということは十分にあるものと考えているところでございます。

笠委員 今、私は、四つの点からこの小委員会あるいはこの分科会のあり方についてお伺いしたんですけれども、すべて今後は、今後は、今後は、今後は直しますと。何ですか。では、今までやはりこの運び方、運営が、審議の仕方がおかしかった、それをまさに認めたことになるじゃないですか。法案はきょうにも採決されようとしているんですよ。どういうことですか、それは。一番大事なこの法案の準備をどうするかということで意見を聞いているときに、そして、一つ一つ、今後改めます、今後改めます、そんなふざけた態度で、文化庁、ちゃんとこれは理解を得ることはできませんよ。

 それで、この問題は本当に注目されているので、いろいろな情報なりなんなり来る中で、ちょっとこれは一つ確認をしておかなければいけないなということで昨晩通告をさせていただいておりますけれども、四月二十四日の土曜日に歌手の浜崎あゆみさんのコンサートが代々木第一体育館で行われたんです。そのコンサートのVIP席というかVIP枠というんでしょうか、ここに文化庁の方あるいは家族などの関係者の方が何人か参加をされているという事実があるでしょうか。

素川政府参考人 そのような事実はございます。

笠委員 ちょっともう一回はっきり言ってください。

素川政府参考人 もう少し詳しくお答えいたしましょうか。

 この出席いたしました者によりますと、三月の下旬にエイベックスの事務局を通じ依田会長から、四月の二十四日に代々木第一体育館で開催される浜崎あゆみのコンサート、これにつきまして、非常に完成度の高いライブである、また若者に人気のあるコンサートであるということで、その現状を理解するために見てほしいというような連絡が入ったというふうに聞いております。

 我が国のミュージシャンの公演を見ることは文化庁の業務遂行の上からも意義のあることということで、文化庁からは、知的財産戦略本部の次長を兼務しております官房審議官と芸術文化を担当しています課長の合計二名がそのコンサートに出席したわけでございます。

 ただ、これにつきましては、招待ということではなく、自己負担の参加であったということでございます。

笠委員 これは、お金を払った、払っていないじゃない。浜崎あゆみのコンサートなんというのは若者はチケットとれないんですよ。それを、私は別に、文化庁の方が例えば自分で一生懸命朝から起きて電話して、いやとれたよ、家族で行こう、それはいいですよ。しかし、招待はないにしても、そういう便宜を図って、レコード会社がいろいろな関連の人たちを招く、コンサート会場にはVIPの席というのはあるんです。よく知っているんです、私もテレビ局で昔営業をやっていたから。

 そうなんだけれども、これは、エイベックスの会長でしょう、依田さんでしょう、レコード協会の会長じゃないですか。しかも、四月二十四日ですよ。参議院でまさにこの法案が通過した直後じゃないですか。例えばそういう話があったとしても、それは別に文化庁がおねだりしたわけじゃないでしょう、それはやはりこういうときに不謹慎だ、どう思われるかわからない。普通はとれないんですから。それが私は常識というものじゃないかと思うんですけれども、大臣、ちょっとどうですか、この事実。

河村国務大臣 私は、このコンサートがあったこともお話も全然聞いておりませんから、恐らく文化庁に対していろいろありますね、ぜひ見てほしい、自分たちのPRとかいろいろなことも考えて、そういうことはあるんだろうと思います。

 しかし、それは、自分のお金でちゃんと行く、これは当然のことでありますから、これはそのときそのときの判断でやってもらいませんと。

 この法案とこれを結びつけて考える、まあ、たまたまエイベックスだったからということがあるかもわかりませんが、現実を知ってほしいということはよくあります。我々に対しても、スポーツ競技や何かで、そのスポーツ競技そのものよりも、むしろ事前の、若者がわあっとやっている、あの中のエンターテインメント、これをまず見てほしいというようなことがあります。実態を知っておいてもらいたい、これだけ今人気があるんだ、若い人たちに人気があるんだということを知ってもらいたい、勝敗よりもそっちの方が大事ですよと言われたようなこともありますから、そういうもろもろを考えて出席したんだと思いますが、そういう御指摘、それは、ちょうどかかっている、レコード協会がそれを意図してやったんだというふうにそれを勘ぐられるとそういう話になってしまうのでありましょうが、文化全体をいろいろ理解する上では、いろいろなそういうところへ行って実態を知っていくということも大事だ、私はそう思っています。

笠委員 大臣、私がお伺いしているのは、日ごろはそれでいいんですよ。ただ、今回こういうタイミングで、しかも一方の権利者の、しかもレコード協会と文化庁が何かずぶずぶで結託をしてやっているんじゃないかという批判がいろいろたくさん届いている時期に。わかっているはずですよ、当然そういう声。だから、私は、このタイミングでこういう形で行くというのはやはり自覚に欠ける、適切か不適切かというと不適切だったんじゃないかと思うんですけれども、今回の件ですよ、いかがですか。

河村国務大臣 この法案がかかっておった、まあ、これは何というんですかね、利益だけを求めて業界というよりも、この法案というのはやはり著作権者の立場を考えておるのでありまして、業界のためだけにある、私はそう最初から考えておりませんでした。もちろん総合的に考えなきゃいけないのでありますけれども、そういうことも含めて、著作権者の問題、もちろん製作者の問題、いろいろそれはありますけれども、やはり著作権法の改正というのはそういうところに大きな視点があるというふうに考えておりましたから、後からそう言われてみれば、それはそういう疑念を招くようなことというのは、よくよく今からも考えていかなきゃいけない。やはりそういう疑念を招かないように、李下に冠を正さずといいますが、そういう姿勢というのは大事なことだなと、今御指摘を受けながら思いました。

笠委員 まさにこれは隣接権者ですからね。私がなぜそう言っているかというと、いいでしょう、いろいろな立場の方、もちろん役所の方、おつき合いしないといけませんよ、実態も見ないといけない、でも、余りにも偏り過ぎているんじゃないですか。

 では、そういうふうなことでいろいろなそういうものがあるんであれば、例えばこの間ずっと、この何カ月か、音楽ファンの人たちがいろいろな集会をやったり、いろいろなイベントをやったり、反対の声を上げるような催しを各地でやっていますよ。文化庁、一度たりともそういうところに、あなたは、顔を出そうと思った、あるいは見てみよう、直接の声を聞いてみよう、こういう人たちと直接に語り合ってみよう、そういうふうなことを思って行動されたことがありますか。

素川政府参考人 この還流防止措置問題につきまして、いろいろな関係者の団体等々の協議とかということでいろいろな局面というものがあったわけでございます。残念ながら、そちらにつきましては、担当の課長等が直接その会議の場に出て説明をし、お話を伺ってきたということはあったわけでございますけれども、私がその会議の場に直接行ったということはございません。

笠委員 私、別に、最初からセットしてやる会議とかということじゃないんですよ。常日ごろ、これは何も個人的に言っているんじゃないですよ、ただ、文化庁の役人の方々が、一方でこういうレコード協会の業界の方たちともつき合っていく、大事なことですよ。でも、そうであれば、やはりこれだけの問題になって、いろいろな、多くのメールが恐らく大臣のところにも来ているでしょう。そして、さまざま若者たちが自分たちでいろいろな集会をやったりしているんですよ。そんなもの、幾つでも報道されていますよ。そしてまた、インターネットを開けば、どれだけでも出てきますよ。そういうところにやはり足を運んでいこうとか。役所の中にいて、小委員会で会議して、それをこつこつまとめ上げて、大臣、こうこうこうですと言うだけじゃないでしょう。やはり、いろいろな生の声も含めて上げるのが、あなた方文化庁の仕事じゃないですか、両方の立場の。私はそのことを言っているんです。いかがですか。

素川政府参考人 何事によらず、多くの方の意見を聞くということは大事だということで、心に留意しながら行政を進めてまいりたいと存じております。

笠委員 もう本当に、ちょっとあきれちゃうんですけれども。まあ、きょう、次長は代表してここに出てきているんで、大変、私も次長に対して厳しく言っているんです。

 例えば、先ほどのコンサートの件なんか一つとっても、要は、これはまず、大臣のどうこうよりも、文化庁として、次長はやはり現場の責任者として、やはり危機管理の問題なんですよ。そういうふうなことがあれば、当然次長、行かれる以前に、行かれた二人の方からは、こういうのがあるんだけれどもちょっと出席してくるということは聞いていたんですね。

素川政府参考人 文化庁におきましては、立場上、いろいろな公演を見る機会といいますか、行政の職務の関係でも機会が多いわけでございます。そういう情報提供も多いわけでございます。

 この具体的なコンサートの件については、それを承知しておりませんでした。すべてを、部下のコンサート、公演の視察等々について、事前に上がってくるということには必ずしもなっていないわけでございます。

笠委員 いや、それは、システムとしてそうしろということを言っているんじゃなくて、やはり行かれた方が、それなりの当事者ですよね、肩書的にも。若い人がぽんと行ったという話じゃない。であるならば、やはりどなたか一人ぐらいが危機管理の、やはりこういう時期にまずいかなと気づけば自重もされていただろうし、恐らくは相談もあったんじゃないか、これは、この点だけを指摘しておきます。

 それで、ちょっと時間もあと残り少なくなってきたんですけれども、大臣、やはり私、最初の話に戻らせていただくんですけれども、何も私も、この法案自体がどうこうというのは、これは賛成ですよ。ただ、今参議院では附帯決議がつきましたね。これをやはり法律に、しっかりと法律で担保しようと。だから、附則ということでいいじゃないですか。先ほど大臣おっしゃって、私人の権利にかかわる法律について附則はなじまないじゃないかと。それは、たまたま前例がないというだけの話でしょう。附則としてつけていいじゃないですか。

 これだけの消費者の人たちが、音楽ファンが、要はやはり安心したいんですよ、一〇〇%大丈夫なんだと。それだけの話じゃないですか。先ほどの法律的にどうこうという話じゃなくて、こういう思いにこたえようという気持ち、今回、法案成立を目の前にして、大臣、そのことを大臣として何とか、やはり指導力を発揮していただき、この場で、いいじゃないかという表明をしていただけませんか。

河村国務大臣 この法案を提出するに当たって、あらゆる角度から検討を加えたものでありまして、前例あるなし、それは前例がないということは、やはり私権にかかわるものをそういう形で法律化するということに対しては、これは検討しなかったわけじゃないのでありまして、内閣法制局の意向も踏まえて法案をつくっていくというこの手順を踏んでこうなってきておるわけであります。

 したがって、その御懸念については、これは政府としても今後の問題をきちっと対応していかなきゃいかぬ、そのことはもう明確にしていかなきゃならぬ、こう思っております。

 これからも、この問題については絶えず、こういう御指摘があったことを踏まえて対応していくということを確約させていただいて、この法案を、まず還流を阻止するということ、それから貸与権の問題、これも非常に強い要請のあったところでもありますし、問題になっている箇所でありますから、このことをし、次なるそうした懸念についてはきちっとした対応をさせていただくということを申し上げてきているわけであります。

笠委員 時間が参りましたので終わりますけれども、大臣、最後に、今回のこの一連で本当に多くの、恐らく余り投票に日ごろは行かないような若者たちが、初めて今回の法律で政治に対して今関心を持って、当委員会も見詰めているという状況もございます。やはり彼らにとっては、これは初めての政治に対する接点かもしれません。

 そうしたこともきちっと頭に入れていただいて、参議院段階では確かに附帯決議で、我が党も含めて賛成をいたしました。けれども、先週金曜日の質疑、きょうの質疑でも、いかにこの過程に問題があったか、いろいろな準備がまだ不足しているのか、あるいはなかなか不安というものをぬぐい去れない、こういったものが次から次へと明らかになってきているので、まだ午後の質疑、この後の質疑ありますけれども、ぜひ大臣、附則でお願いを改めて申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。

池坊委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 著作権法の一部を改正する法律案について、時間の許す限り目いっぱい質問をさせていただきたいと思っております。

 さて、大臣、今回の質疑、ちょうど先週の二十八日の審議、衆議院の審議中継で、インターネットで流されているんですけれども、生中継と録画の中継と合わせて一万一千を超えるアクセスがあったということだそうです。今までの、生中継だけでいっても四倍の注目度ということで、これはかなりの数じゃないかというふうに思っています。

 ただ、非常に私は本当にさっきから怒っているんですが、素川参考人のこれまでの答弁、本当に誠実さがないというところが感じられてなりません。すりかえすりかえ、やっと出てきた答えがほんの少しというようなところが何度繰り返されたかということがこれまでの同僚議員からの質問で明らかになっていると思います。

 とりわけ、その中で、まず本日冒頭、どうしてもこの点だけは言わせていただきたいと思うんですが、先日の私の質問に答えていただいた素川参考人の答弁の中で、附帯決議は単なる心構えでしかないという非常に不適切な発言がありました。私も、若輩ではございますけれども、立法府に身を置く一人として、附帯決議をそのように軽んじられた方が行政を担って、現在の著作権法の運用をされている、あるいは答弁に立たれているということは、正直言ってあり得ない、この状況をほうったままで質問をしろというのは無理だということを言わざるを得ません。

 まず、附帯決議は心構えだと言ったこの発言の責任について、大臣に所見をお伺いして、その上でこの発言の撤回を要求したいと思います。大臣、お願いします。

河村国務大臣 国会答弁に法的拘束力はないということをお答えする表現、御指摘の点について、私は、表現は適切でなかった、こう思いますので、この点については、心構えだけだということにはならない、このことはやはり訂正しなきゃいかぬ問題だと思います。

 国会における国会答弁、国会における我々の答弁、そしてまた附帯決議というもの、これは行政を進める上で極めて大きいもので、とうといものである、こういうふうに私は考えております。

城井委員 そのようにお感じならば、御本人から撤回をしていただきたいと思います。次長、この心構えという件。

 私は、法律の部分で、要するに運用ではフォローできない穴があるということを御指摘申し上げる質問をしたつもりでしたけれども、そこで立法府を軽んじる部分まで同時に出てくるとは思っていませんでした。その軽んじた発言をされたというところについてきっちり撤回をしていただきたいと思いますが、見解をお願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 国会答弁には法的拘束力がないということを答える中で、その中の表現において御指摘のようなことがございました。適切な表現じゃなかったということで、撤回をさせていただきたいと思います。

 国会における大臣答弁は、行政にとって極めて重いものであるというふうに認識しているところでございます。

城井委員 撤回だけですか。きちっと有権者に対しておわびしてください。

素川政府参考人 決して、国会答弁を軽んじるというような気持ちは全くございませんでした。ただし、言葉につきまして適切な表現ではなかったということで、撤回をさせていただきたいと思っております。

城井委員 なぜおわびが言えないんでしょうか。一回口から出た言葉というのは戻ってこないということを重々承知の上でふだんから答弁はされているはずですよ。もう一回お願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 法的拘束力がないという旨を答える中での適切でない表現があったということで、撤回させていただき、それにつきましては遺憾に存じておるところでございます。

城井委員 何が遺憾なんですか。ちゃんとわかっているんですか、今私が指摘申し上げていることを。もう一回、わかりやすく言ってください。

河村国務大臣 あのときのやりとり、私もきちっと正確に覚えているわけじゃありませんが、要するに、国会決議あるいは大臣答弁を含め国会答弁というものが法的な拘束力を持つのか、だから附則、法的な拘束力をつくれというお話でこられたものですから、答弁としてああいう表現になって、これは、きちっと拘束力がないということを言ったことが舌足らずであったと思います。

 このことについては、今御指摘の点、私からも、これは私の責任において、こういう御指摘を受けたことについてはきちっと訂正をさせるということで、陳謝して訂正をするということであると思いますが、しかし、これはやはりきちっと、表現は、心構えというのは余り重くないと言われるかもしれぬけれども、そういう気持ちをきちっと受けとめてやるということは当然のことですからね。これは、今までもそういうことでやってまいりました。

 それから、確かに今回については、洋盤レコードファンの皆さんが、洋盤レコードがなくなるよという表現になったものですから、これは大変だと皆さんが関心をお持ちになったことは、それは私もわかります。しかし、それについてはきちっと対応するんだということを申し上げてきているわけであって、法的にこれをとめられない部分があるんだということも説明しながら、しかし対応についてはちゃんとやります、その心構えをちゃんと持ってやりますということを言っておるわけでございまして、まあ、ぎりぎり詰めていただきますと、答弁する方もいささか動揺して表現が舌足らずになった点は申しわけなかったと私も思います。

城井委員 大臣から陳謝という言葉が出ましたのでこの質問はこのあたりにしますが、ぎりぎり詰めるというのは当たり前です、こっちも真剣にやっているんですから。その点を改めて受けとめていただきながらきょうの質問をさせていただきますので、きっちり答えてください。お願いします。

 さて、今回のこの法案の審議を進めてまいりまして、問題が非常に多いということはどなたも気がつかれ、そして明らかになってきているというふうに思っています。洋楽の輸入盤のCDへの大きな大きな副作用の問題、データを含めて前提がいいかげんであった点、具体的に申し上げれば、五月二十八日の審議で松本大輔議員からも指摘がございました。法案提出の根拠として大臣が再三再四答弁をしている六十五カ国、六十八万枚、千二百六十五万枚という数字が、計算方法から調査員まで業界のお手盛りの調査であったということ。

 そして、特定業界におもねることは本来あってはならないのに、利害関係者から法案の審議中に便宜を図ってもらって、プレミアチケットを受け取ってコンサートへ行くというようなことがあった。それに加えて、お手盛り調査をうのみにして、一切の自主的な検証を怠ってきたというような部分、非常にいいかげんであるというふうに思っています。

 そういった問題が多い中で、我々民主党としては、見直しを即座にしなければならないという問題意識から修正案を作成しておるところでございます。一部の与党議員がうそ偽りを広めているんですが、参議院の民主党文部科学部門もあわせ含めて、民主党の総意として今回の修正が不可欠だというふうに考えていることを改めてここで申し上げたいと思っています。

 その上で、この見直しについて、先ほどの同僚議員からの質問にあわせて質問をさせていただきたいと思います。

 なぜ、この見直しをすぐに行える仕組みを今回の法律の中に入れておかなければならないのかという点であります。ここの理解がまだいただけていないではないかと思っています。それはなぜか。それは、今回の法律を発動した後に問題が起こった、その場合の影響は非常に大きいからであります。

 例えば要件、今回の、権利者の利益を不当に侵害してしまうといったことを判断する要件といったところの判断に裁判所がかかわってくるといった場合がそうであります。

 恐らく、今回の、利益を不当に害されたことになるのかどうかといったことの判断というものをぎりぎりまで詰めていったときに、恐らく裁判所の判断にされるのではないかと思います。しかし、裁判所の判断となった場合に、違反者に対して懲役刑やあるいは罰金刑があわせて科されるということ、あるいは裁判所の判断が下されるまでにかなりの時間が必要だということを考慮すると、あらかじめこれだけ時間がかかるということがわかっているにもかかわらず、この点を放置したままでいってしまうということはいかがなものかというふうに考えておるわけであります。

 まず、時間がかかってしまうということを含めての、この点への対応について文化庁の見解をお聞かせください。

素川政府参考人 還流防止措置に係りましての手続でございますけれども、これにつきましては、特に水際の措置の問題が多かろうかと思いますが、この辺につきましては、例えば、事前の申し立て制度というふうなことを活用する中で、手続の迅速化というものについて努めてまいりたいと思います。

城井委員 手続の迅速化というお話がございましたけれども、本気でおっしゃっているんでしょうか。今回の法律を発動した後に、手続はむしろ複雑で煩雑になってくるんじゃないんですか。この点は、きのうの参考人質疑でもデゼルスキー参考人から指摘をされたところだというふうに記憶をしています。

 実際に、デゼルスキー参考人がいらっしゃるHMVの運用のところでも、十二万六千種類をも超えるCDの種類を扱っているというお話がございました。これに一つ一つ判断というものを加えていくと、例えば、仮に税関にその作業をしてもらったといったときに、どんな作業になるかというのは想像がつきますか。むしろ、今回の法律を発動する、使うことによって、それだけの複雑な作業が出てくるという認識はあるんでしょうか。この点、文化庁の方、お願いします。

素川政府参考人 還流防止措置について、例えば、まず最初の段階としては、日本販売禁止という表示を張るかどうかというところからまず入るわけでございますけれども、私どもといたしましても、まず欧米の先進国の洋盤レコードについては引き続き輸入が自由に行えるように、その運用について最大限の検討をしてまいりたいと考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、税関当局と連携して、当然そういう措置がとられていなければ起こらないことではございますけれども、たとえそういった表示があった場合でも、事前の還流防止措置の対象を明確にするということなど工夫をして、対応してまいりたいと考えているところでございます。

城井委員 いいですか、昨日のデゼルスキー参考人の話にもありましたけれども、香港で同様の作業をしたときに、一つ一つの商品の許可をとっていくというのはやはり非常に難しいということが、あの香港の例から明らかになっているわけです。

 おまけに、対応されるとおっしゃいましたけれども、もし仮にできなかった場合にどんなことが起こるか。そのタイミングと時期が命のCDが税関の倉庫に眠って動かない状況が起こるんですよ。これでどれだけの利益が失われるか、小売業者にとって利益が失われるかということが本当にわかっているんでしょうか。

 具体的にどうするのか、税関とどのように詰めるのか、その点についてもう少しはっきりと答えてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 還流防止措置につきましては、いろいろ要件があるわけでございます。その要件を全部クリアするということが必要であるわけでございますけれども、まず第一に、先ほど申し上げましたように、日本販売禁止という表示があるということがまず最初に起こるわけでございます。

 そのようなレコード、還流レコードといいますか、そういうものがある場合に、先ほど申し上げましたような事前申し立て制度ということを活用していただくということでございますけれども、その前段階といたしまして、文化庁は客観的な基準というものを作成、公表いたしまして、その中で税関当局と十分打ち合わせをさせていただきたいと思っております。

城井委員 今のお答えでは、とても小売業者の方が安心して臨めるというふうには思えません。具体的に示されていないというふうに思っています。

 今回の、今指摘申し上げている点をなぜ言っているかというところをもう一つだけ申し上げますと、結局、それだけ複雑で煩雑な手続というところに、そこでもしかすると商品がとまってしまうかもしれない、滞ってしまうかもしれないというリスクをとってまで飛び込んでいく輸入業者がどれだけあるのか、そのリスクを負える業者がどれだけあるのかということであります。特に、零細の企業の方々はそういうリスクを本当に背負えるのか。ある意味で輸入行為自体が縮小してしまうという可能性があるという点について、私は本当に深く深く心配をするわけであります。

 輸入行為自体が縮小する可能性が出てくる、この複雑な煩雑な判断の作業のために起こってしまうという可能性があると思うわけですが、この点についてお聞かせください。

素川政府参考人 私どもといたしましては、この還流防止措置によりまして手続が複雑にならないような対応をしてまいりたいと思っています。そのためには、事前に還流防止措置の対象となるものをリストにアップするということによりまして、輸入される方がそれを見て、ある程度の予見を持ってといいますか、それを見て、その輸入という行為というものを判断できるということになるように、できるだけその運用に努めてまいりたいと考えているところでございます。

城井委員 事前にということで仕組みを準備されているということですけれども、では、仮に事前にしたとして、ちょうど昨日の高橋参考人からも指摘があったところですが、実際にその判断をしていただくときに、輸入業者の側から、守秘義務のある契約書を税関に提出するということが実際の判断で必要になってくるケースがあります。これが現実的に本当に可能なのかという部分の意見について陳述がございました。この点についての見解をお聞かせください。

素川政府参考人 税関における手続におきましては、輸入するものにつきましての認定手続というものが必要になるわけです。これはシールを、日本販売禁止という表示が張ってあるということが大前提になるわけですけれども、その中で、今先生お話しの、契約書というものがその手続の中で必要になってくるのではないかということでございますが、確かに、そういう契約書ということも出すことによって、自分たちの立場というものを明確に主張するということが可能になるわけでございますので、必要な書類というのは提出を願うことになるわけでございます。

 ただ、契約書がなければ絶対にだめかということにつきましては、私どもは、契約書または陳述書ということで、陳述書でも対応可能な場合があるというふうには税関当局からは聞いておるところでございますが、いずれにいたしましても、手続につきましてスムーズな運用が行われるように、税関当局と協議してまいりたいと存じております。

城井委員 ということは、契約書でなくてもよいという理解でよろしいですね。ちなみに、陳述書というのは何ですか。その二点、お願いします。

素川政府参考人 陳述書とは、事実関係を記載し、それにつきまして、自分が、こうこうしかじかの者が書いたものだということを証明したというようなものだということでございます。

城井委員 そうすると、その陳述書があれば契約書は要らないんですね。

素川政府参考人 この点につきましては、いろいろなケースがあろうかと思いますので、税関当局ときちんとした情報交換をしていく必要があろうかと思います。

 そういうことで、関係の団体の方々、関係者の方々に対してきちんと情報が提供されるように努めてまいりたいと思っております。

城井委員 先ほどは、税関の方と話してということで言われたんじゃないんですか、契約書の部分と陳述書の部分。それをもう一回持ち帰って考えなきゃいけないぐらい、今いいかげんな状況というわけですか。もう一回お願いします。

素川政府参考人 一般的には、契約書または陳述書ということが必要だというふうに税関当局から聞いているところでございますけれども、どのような場合にでもそうなのかというふうなこととか、どういう条件がついているかということについては、残念ながら、今の段階ですべての情報を持っているということではございませんので、そういうことも含めましてきちんと税関当局から情報をいただき、関係の方々に情報提供していくということに努めたいと存じております。

城井委員 法律の施行までにきちんと示してほしいと思います。これはきちっとやってください。

 そうでないと、この後聞こうと思っていたんですが、実際に、この法律ができたときに、やはり輸入業者はリスクをとるわけです。この質問にもぜひお答えいただいて、リスクが本当にあるのかということを確認したいわけです。

 文化庁の国会答弁の中で、ファイブメジャーは権利行使しません、口約束だとは思いますが、あるいは、洋楽は本法律の対象にならないということを信じて輸入を行って、それに伴う損害が生じた場合に、この国会答弁を信じた輸入業者に責任があるというふうに政府が考えているのかどうかというところにかかわってくると思うわけですよ。

 つまり、リスクをとるのは業者の自由ですよというところになってしまうならば、結局そこは、政府は法律だけ、仕組みだけ準備して非常に無責任だということになるのではないかというふうに思うわけですが、この損害が生じた場合の輸入業者の責任というものについての政府の考えをお聞かせください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましては、先ほどから申し上げましたように、先進国の並行輸入、直輸入につきましては、引き続き自由に行えるというような運用基準というものを明確にしてまいりたいと考えておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、還流防止措置の具体的な適用に当たっての件につきましては、国が損害賠償をするというような法的責任ということはなかなかなじまないのではないかというふうに考えているところでございます。

城井委員 ということは、この法律が運用され始めて、実際に今の政府の説明を信じて輸入を行って損害が生じた、その損害をかぶってしまっている、国会答弁を信じた、あるいは今の次長の説明を信じた輸入業者に、その損害の責任を結局負わせる、政府は負いかねる、そういう理解になってしまうわけですが、この理解でよろしいんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置の要件を満たしているレコードというものにつきましては、その最初の段階で、日本販売禁止という表示が出るわけでございます。先ほどから申し上げておりますように、その段階で事前にそのリストというものを公表して、消費者の方、輸入者の方の心配というものを軽減するという努力をしたいと存じておりますし、また、不当な侵害の基準に当たりましても、客観的な基準を事前に公表したいというふうに考えておりますので、できるだけそのような心配がないように努めてまいりたいと思っております。

城井委員 今、日本販売禁止と書いてあるだけで輸入がとまるとおっしゃいましたけれども、本当ですか。

素川政府参考人 日本販売禁止というのが書いてあるということが、まず、税関で手続を開始するかどうかの最初になるということでございます。すべての要件を満たさなければ還流防止措置の対象にはならないわけでございますけれども、物事の始まりといいますか水際では、その表示があるかないかということが、まず手続の最初になるわけでございます。

 それらにつきましても、今申しましたように、事前に申し立てていただきまして、これがその措置に該当するものかどうかということにつきましては、リストを作成し公表して、対応をしていくということが必要かと存じております。

城井委員 要件については後から伺うので横におきますが、今伺っているのは、事前の制度で対応ができない部分について伺っているんですよ。先ほど言ったのは、要するに、国会答弁を信じた輸入業者さんが輸入を行って損害が生じた場合という話を一つしておるわけです。

 それに加えて、事後に起こり得る可能性というのはほかにもあるわけですよ。もう一つだけ指摘を申し上げて、この点について見解を伺いたいんですが、例えば、善意の国内のレコードショップさんが既に輸入して販売をしている洋楽盤、これに対して、ほかの国のレコード会社が今回の権利を行使した場合、例えば、仕入れなどにかかった費用というのは一体だれが負担をするのか。

 先ほどの話と同じです。国会答弁や附帯決議、政府の説明を信じて行った人々です。その方々がそれをかぶってしまうのか。実際に権利行使をしない旨主張していた国やあるいは企業といった責任についてはどうなのか。もし、これが、輸入をし販売をした善意の国内のレコードショップの自己責任ということになるならば、音楽レコードの輸入はとまりますよ、全面的に。この点について、いかがですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 輸入の段階で還流防止措置の適用の対象になっていないものが、輸入の後に、たとえ権利者がそのような還流防止措置の対象にしたいと思っても、これは要件に該当するようになるものではないということで、その点については御安心いただけるものと存じておるところでございます。

城井委員 今のケース、二番目に言ったケースはわかりました。

 では、事後に、損害が生じた後に、政府が責任を負いかねるといって、その輸入業者の自己責任で損害をかぶるということになってしまうという点については、その考え方、見解でよろしいんですね、改めて確認をします。

素川政府参考人 申し上げておりますように、そのような場合はできるだけないように努力するわけでございますけれども、先生がおっしゃっているのは、そういうことが起こった場合はどうするのかということでございますので、お答え申し上げます。

 一般論で申し上げれば、やはり私人間の民事の問題につきまして、やはり国が責任をとることはできない性格のものであるというふうに存じているところでございます。

城井委員 国が設定する権利でしょう。それで、こういう影響が起こるというのはあらかじめわかっていてそういう説明になるわけですか。今回の権利を設定することによって起こり得る影響ですよ。今想定できるから御説明申し上げているわけです。もう一回お願いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 そのようなことがないように、運用に当たってはきちんと適正な対応を図ってまいりたいというふうに考えておるところでございますが、もしそのようなことが起こればということでのお話につきましては、やはり私人間の民事の問題について国が責任をとるということは困難なものと考えておるところでございます。この点につきましては御理解をいただきたいと思います。

城井委員 今回の法律が設定されることでこれだけの大きなリスクがあるということがよくわかりましたので、その点をよくよく輸入業者の方々にもお伝えいただきながら法の運用をしていただきたいと思います。

 次の質問に移ります。

 さて、先日の、先週の私の質問の中で資料の要求をさせていただきました。委員の皆さんのお手元にも来ておるかと思います。ライセンス料というものが、利益を不当に害しているかどうかという判断の基準の一つの部分として使われるというような趣旨の発言でございました。

 このライセンス料の基準となる資料というものをいただいたわけですけれども、これはぜひ皆さんにも見ていただきながら質問させていただきたいと思いますが、今回の出していただいた数字、「洋盤ヒットアルバムの各国国内盤から権利者が得る利益の比較」というもの、これが、アメリカ盤、イギリス盤、ドイツ盤、フランス盤そして香港盤、台湾盤ということで、「日本国内盤から得られる利益を一〇〇とした場合」ということで、それぞれ指数が出されています。

 さて、この数字ですが、じっくり読ませていただきました。大変申しわけないと思うんですが、文化庁の方、これ、ちょっといいかげんじゃないですか。実際のライセンスの実務を行っている方々の扱っている数字の実態と違うんじゃないですか、この前提となっているところが。

 細々御指摘を申し上げながら質問したいと思います。例えば、ここで計算をする利益としているところ、注の二でありますけれども、「著作権使用料及び原盤印税(著作隣接権者)をいう。」とあるんですけれども、著作権使用料と原盤印税というのは全く別々の権利じゃないんですか。

 それに加えて、それぞれの方が今回の権利行使というものができる、それぞれにお持ちであるにもかかわらず、この利益の中では、このペーパーによると合算をされているわけです。これは別々の権利で、利益はそれぞれあるだろうと思うんですが、今出されている、例えば一ページ目でいうと、アルバムA、日本国内盤、指数一〇〇としたときに、アメリカ盤の指数で九四・二という例えば数字があります。でも、この九四・二の中に著作権使用料がどれぐらいなのか、原盤印税がどれぐらいなのか、その割合がここからはわからないわけです。つまり、個々のアルバムでどのような利益体系になっているかというところがわからなくて、これで判断しろというのははっきり言って無理じゃないか。

 しかも、なぜ指数なのかという点もよくわかりません。

 それに加えて、あと二点ほど御指摘を申し上げると、利益の比較で前提としている、注の三ですが、「卸売価格は、各国とも希望小売価格の七〇%とした。」とありますけれども、これは実際にライセンスの実務にかかわっている方に伺いました。こういう数字でふだんから扱っていらっしゃるんでしょうかということで、聞きました。ところが、ライセンス契約というものは、現在は日本でもいわゆる卸価格を算出対象としているという部分があるわけです。つまり、もうここだけで実態が異なっているということがあります。

 そして、それに加えて、注の四と書いてありますところについても、卸売価格についても三〇%というのは非常に高過ぎる。実際には二〇%から二五%が普通だという指摘を受けているところであります。

 つまり、今ここで出されている指数というものでは、一体どのようにしてはかるのかということ、この計算の前提となっている部分が、これだけ実際のライセンスの実務と実態がかけ離れている資料で、もし仮に文化庁とそして現場の税関が判断をしていくということになるならば、実態とかけ離れた部分の悪い影響というものがその判断で及んでしまうという懸念がありますけれども、この点についての見解をお聞かせください。

素川政府参考人 まず、なぜ指数でこれを表示したのかというお尋ねだったかと存じます。

 これにつきましては、まず還流防止措置につきましては、国内の音楽レコードの利益というものをベースにして物事を考えていくというようなことになっているわけでございますので、そういう意味におきまして、指数で外国盤の利益というものをあらわす方が適切でわかりやすいということで、このような資料を作成させていただいたところでございます。

 また、ライセンス料のベースとなるものにつきましては、卸売価格がベースになるということは御指摘のとおりでございまして、ここにおきましても卸売価格をベースとして原盤印税というものを算出しているところでございます。

 また、三〇%という数字につきましては、二〇から二五が普通ではないかということでございますが、世界的にこの数字を比較する場合に、やはり三〇%というものが国際的な標準とされているというような実態を踏まえまして三〇%、個々の契約によりましてはそれは二〇とか二五、いろいろ変動はあろうかと思いますけれども、国際的に見て、同じレコードの比較をする、その推定をするという意味におきましては、このような前提というものは適切なものというふうに認識しているところでございます。

城井委員 ここで前提としている、例えば国内盤ですけれども、この価格というのは、これはいわゆる定価ですか、それとも実売の価格になるわけですか。この価格の部分について、もう少し詳しく教えてください。

素川政府参考人 日本の場合の定価と申しますのは再販売価格ということでございます。これをベースに、JASRACの規程というものによりまして、著作権料というものが計算されるベースになっているということでございます。

 原盤印税につきましては、これは卸売価格をベースにするということで、各国とも共通の希望小売価格の七割ということで設定をしたものでございます。

城井委員 このいただいた資料の指数ですけれども、先ほど御指摘を申し上げたように、これは、著作権使用料と原盤印税の足し算をしたものを指数化したという理解になると思うんですが、それぞれの内訳があると思います。お示しをいただきたいと思います。

 なぜか。先ほど申し上げたように、著作権使用料と原盤印税、つまり、著作隣接権者というのは別々の可能性はあるわけでありますし、そうすると、それぞれがそこで得られる利益で不当に害されるかどうかという判断になってくるのではないか。そのアルバム自体の足し算だけで本当にいけるのかというところ、懸念があるというふうに思うわけですが、その指数の内訳についてお示しください。

素川政府参考人 指数の内訳につきましては後ほどお示ししたいと存じますけれども、この著作権使用料及び原盤印税が一緒になっているということについての御指摘でございますけれども、今回の還流防止措置につきましては、権利者が得る利益の比較ということにつきましては、レコード全体について、総体的にどのような著作権者、隣接権者の利益が集積されているかということを判断するということにしているわけでございますので、そういう意味におきまして、著作権使用料及び原盤印税を合算しているということについて問題があるというふうには考えていないところでございます。

城井委員 個々のアルバムについて判断をするということでございますけれども、実際にアルバムにかかわる権利者の方というのは本当にたくさんおられるというふうに思うわけです。この利益というところの計算の段階でも、最低二人というと変かもしれませんが、最低二つの権利者が想定をされるわけです。

 そうすると、アルバム全体のところで判断したときに、実際に著作権者あるいは著作隣接権者の方が利益を害されるかどうかという判断をするところと、実際にこのアルバムについてはこうですよと文化庁が判断をしたところとのギャップというものが生じると考えますが、この点についていかがですか。

素川政府参考人 この法律の施行に当たりまして、先ほどから文化庁において必要な客観的な基準というのをお示ししたいというふうに申し上げていますが、それはやはりアルバム全体で、著作権者、権利者、大きく分けて二種類あるわけでございますけれども、この方々の利益の総体というものでその基準というものもお示ししたいというふうに考えているところでございます。それが運用の基準になるということでございます。

城井委員 先ほど私が申し上げた部分、ちゃんと御理解いただいているんでしょうか。

 今回の、例えばアルバムにかかわる権利者の数というのは、非常に膨大な数に上るというところがあると思うんですが、その中でも、利益と計算をすると言っている部分についても、これだけかかわりがある。そのほかの権利を持っている方々のところは、これでどうやってはかるのかというのは、結局見えないわけですよ。そこを、今の御答弁の中で、ではどれぐらい担保されたのかといえば、運用でちゃんとしますという話になるわけでしょう。全然見えないわけです。

 もう一回答えてください。

素川政府参考人 音楽レコードの中の一枚を売った場合の利益というものは、御指摘のように、著作権使用料、原盤印税、それぞれの関係者がかかわっているということではございますけれども、この還流防止措置の適用としてレコードがとまるかとまらないかというようなことになるわけでございますけれども、レコードは一つの有体物でございますので、そういう意味におきまして、著作権使用料及び原盤印税を合算いたしまして、このレコードに係ります権利者のすべての利益の総体を比較するというのが最も適切な対応だということでございます。

 権利につきましては、関係者がそれぞれ行使するということでございますけれども、レコードの比較、不当な利益はどうかという比較につきましては、このような全体の比較というものが適切であるというふうに考えているところでございます。

城井委員 これまで言ってきたことと実際の仕組みと、ちょっと違うんじゃないんですか。先ほどのこの内訳の数字というものも示されていないどころか、今の御説明ということになりますと、一体だれを守っているのかというのがよくわからなくなってきますね。

 そんな一くくりにして判断をするということなんですね。だれを守るんですか。

素川政府参考人 音楽レコードにかかわる著作権者及び著作隣接権者というものが保護の対象でございます。

城井委員 質疑時間が終わりということですのでこれで終わりますが、そういう、実際にこれまで言ってきた、個々の権利者の方を守りますよと言ってきた部分と、今この利益の比較の表から始まった御説明のところで示されたものというところのギャップというのがこんなに大きいというのがこの場で明らかになったということは、非常にゆゆしき問題だというふうに思っています。もうちょっとよく考えてから答えてください。もう本当にあきれます。

 ほかにもまた聞きたいことはたくさんあるわけですけれども、非常に時間が限られておりますのでここで私は終わりますが、ここで私が聞かなかった点もきちんと通告をしておりますので、その点、また後ほどお答えいただくということにさせていただいて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 斉藤鉄夫君。

斉藤(鉄)委員 公明党の斉藤鉄夫です。よろしくお願いいたします。

 まず、ちょっと法案審議と直接関係ございませんが、昨日の佐世保の事件につきましては、教育について議論をする文部科学委員会の委員として、大変ショックを受けております。私どもも、学校安全ということで先日も提言をさせていただきましたが、これは、池田小学校に代表されるような外部からの危険に対してどう対処するかというところに視点を置いた学校安全の提言でございました。

 そういう意味では、今回、内部からといいましょうか、生徒そのものでございまして、大変ショックを受けておりますが、この問題について、教育の本質にかかわる問題かとも思っております。

 この問題に対しての大臣の御見解とこれからの決意について、まず最初にお伺いさせていただきたいと思います。

河村国務大臣 長崎県教育委員会からの報告をいただきながら、あってはならないことが起きた、こう思っておりまして、本当に深刻に受けとめさせていただいております。御家族の思い、それからそのクラスの子供たち、学校全体、あるいは全国の子供たち、これをどう受けとめるかということであります。

 改めて、今斉藤先生御指摘のように、教育の根幹にかかわる問題でもございますし、やはり心の教育といいますか、まさに人を傷つけてはいけない、人に対する思いやりを持っていかなきゃいかぬ、そういうものをどういうふうに養っていくか。

 一方では、まさに情報化時代、バーチャルの世界が迫っている。これとどういうふうに向き合っていくか、そして、子供たちを取り巻く環境がどういうものであるか、これをしっかり見きわめながら教育を進めていかなきゃならぬ、こう思っております。

 改めて、全国の学校に対しましても、もう一度原点を見詰め直して、心のケアといいますか、そういうことも含めながら、今回、この現場については心のケアということが非常にまた必要になってくると思いますが、心の教育を改めて問い直す、そういうことで取り組んでいかなきゃいかぬと思っております。

斉藤(鉄)委員 よろしくお願いいたします。しっかり我々も一緒に議論をし、考えていきたいと思っております。

 それでは、著作権法の改正案について質問させていただきます。

 これまでの委員会質疑、それから参考人質疑を通して、ある程度論点が浮き彫りになったのではないかと思います。

 まず第一点ですけれども、これは私なりの、私の理解ですけれども、書籍、雑誌の貸与権については、これは必要であるという、ほぼ合意点が得られたかと思います。また、音楽レコードの還流防止措置につきましては、まずこの還流防止措置そのものは日本の音楽文化を守るために必要ということで、ほぼ皆さんそのようにお考えになっているんではないでしょうか。ただし、いわゆる内外無差別の原則があって、いわゆる洋盤の直輸入盤、並行輸入盤に影響が出るのではないか、こういう懸念が出されております。

 それと関連しまして、法案の中にある、権利者の利益を不当に害するという、その不当の基準ということがまた論議されておりまして、先ほど言いました最後の二点が論点として浮き彫りになった、このように私は理解しております。

 この点について質問をしたいと思いますが、その前に、これまで議論の俎上に上らなかった点について、しかし国会審議の中できちっと確認しておかなくてはならない点について、小さいことかもしれませんけれども、実際に国民の多くにかかわるケースがありますので、この点を確認しておきたいと思います。

 まず、個人が楽しむために輸入をする場合。これは、海外旅行に行ったときのお土産、それから、海外赴任先から帰ってくる場合、現地で、日本で販売してはいけませんというシールの張ってあるレコードを買うということも当然あり得ると思います。そういう場合、日本に帰ってくるときにどうなるのかという点とか、それから、国内で販売されていないレコードを輸入という形で買い求める。こういうケースはあるのかどうかわかりませんが、それに例えば日本への輸入禁止と書いてあった場合。理論的にはあり得ると思うんです、日本では売っていないけれども海外では売っている。そういう盤を日本でつくっているということもあり得るかもしれません。そういう場合はどうなるのかとか。

 いろんなケースが考えられると思いますので、これまでの委員会の中で議論にならなかったわけですので、いろんなケースをちょっと挙げていただいて、こういう場合はこうなるということをここで確認しておきたいと思います。具体的にどういうケースがあるのか、また、それは一つ一つどうなるのか、わかりやすく説明していただきたいと思います。

田村大臣政務官 先生御質問の点でございますけれども、基本的に、今回の音楽レコード、これの還流防止措置の対象となるものでありますけれども、国内において頒布する目的を持って行われる輸入、これが対象であります。

 その頒布という言葉の定義でありますけれども、有償、無償にかかわらず、公衆に譲渡または貸与、こういうことをすることとされておるわけでありまして、その公衆という定義が、一つは不特定ということであります、それから特定多数ということでありますから、そういう言葉を整理していきますと、特定少数は対象とならないということでありますので、先生おっしゃられました、御自身が聞くために持ってきたもの、それから、家族等々、友人に、枚数というのはなかなか難しいんですけれども、常識の範囲程度内でお土産で持ってくるもの、こういうものは特定少数ということで今回の法律の対象にならない、自由にお持ち帰りできるというふうに我々認識いたしております。

 それから、海外で売られておって国内で売られていないというようなものはどうかということでありますが、これは国内において売られておるもの、これと同一ということでありますから、そういう意味では、同一じゃないものに関しては、これまた、持ってくること、これは当然のごとく自由ということになるというふうに認識いたしております。そしてまた、国内でおくれて販売されるもの、こういうものもあると思います。これに関しても同様であるというふうに考えております。

 以上でございます。

斉藤(鉄)委員 基本的にこれまでどおり自由である、こういう理解でいいかと思います。ありがとうございました。

 それでは次に、先ほどちょっと私なりに整理しました二つの問題について質問をしたいと思いますけれども、まず、権利者の利益を不当に害する、その不当の基準ということでございますけれども、民主党の方からの要求でこういう資料が出てまいりました。読ませていただいたんですけれども、まず、これをどう読むのか、概要をわかりやすく説明していただきたいと思います。このデータからどのようなことが結論できるのか、お願いをいたします。

素川政府参考人 権利者の利益を不当に害するという還流防止措置の要件の一つでございますけれども、これに関しまして文化庁がつくった資料でございますが、二〇〇三年の洋楽ヒットアルバムの上位三十位の中から、日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスの五カ国におきまして共通にそれぞれの国内盤が発売されているものについて比較データをとるということでまずリストアップさせていただいております。それにつきまして、著作権者及び著作隣接権者が得るライセンス料の比較を行ったわけでございます。

 そこで、日本盤から得られますライセンス料を、今回の措置の基準がまず国内盤ということでございまするけれども、そういうことでそれを一〇〇といたしまして、各国の平均というものを、平均といいますか、個々のデータもあるわけでございますけれども、さらに平均もデータとしてあるわけでございますが、アメリカにつきましては八九・六、イギリスにつきましては一一九、ドイツが九九・一、フランスが一一一・三ということで、各国間で差はありますけれども、それほど極端な差ではないというような数字になっているかと思います。しかしながら、アメリカ盤の一部につきましてはこの値が七〇・九というものがありまして、今回の措置の運用に際しましては、このような状況を十分踏まえて対応する必要があると考えております。

 同様に、二〇〇三年の邦楽ヒットアルバムの上位三十の中から日本と香港と台湾の三地域におきまして国内盤が発売されているものにつきまして、著作権者及び隣接権者が得るライセンス料の比較を行ったところでございます。やはり同じように日本盤から得られますライセンス料を一〇〇といたしました場合の各国の平均につきましては、香港が五五・二、台湾が四四・二という数字が得られているところでございまして、欧米盤と比べまして日本盤からのライセンス料には一定の差があるということが認められるところでございます。

斉藤(鉄)委員 わかりました。

 次に、権利者の利益を不当に害するということの解釈ですけれども、改めてわかりやすく説明をいただきたいと思います。

 それから、先ほどの質問にもありましたけれども、改めてライセンス料とは何かと。先ほどの質疑を聞いておりましても、いま一つはっきりしませんでした。ということについても教えてもらいたいと思います。不当の判断基準に関する考え方をどうするのかということもあわせて明確にしていただきたいと思います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 本法案におきます国内頒布目的商業用レコードの発行により著作権者及び隣接権者の得ることが見込まれる利益とは、具体的には、その音楽レコードを複製する、それを許諾することの対価でありまして、これを一般的にライセンス料と呼んでいるわけでございます。

 この国内頒布目的商業用レコードの国内販売によって得られるライセンス料が、国外頒布目的商業用レコードの国外販売によって得られるライセンス料、これと比べまして著しい差がある場合に限りまして、権利者の利益が不当に害されるという要件に該当するというふうに考えているところでございます。

 この著しい差につきましては、今回の還流防止措置の立法の趣旨に照らして判断されるべきものと考えておりまして、欧米先進国からのレコードの輸入には影響がないような運用を行うことが適切と考えているところでございます。

斉藤(鉄)委員 私が見る範囲では、この資料を見ますと、いわゆる欧米からのものと、それから、邦楽の香港盤、台湾盤、アジア盤、かなり隔絶した差が明確ですので、その点については、妥当な、だれもが理解できる不当の基準ということができるのではないかと思いますけれども、改めまして、その点、確認をしたいと思います。

河村国務大臣 先ほどの説明のように、確かに、こういう差があるということは現実にあるわけですね。そこで、今回の措置が、いわゆる大きな差があるものに対する還流をとめる、このためにこの法案があるわけでありまして、すべての音楽レコードを対象にしたものではないということ、その制度になっていないという点であります。

 還流防止措置の権利行使の対象となるものについては、先ほど来話が出ておりましたように、日本販売禁止の音楽レコードであって、輸入者がその旨を知っている、そのことを知っていること、それから、国内で既に同一のレコードが販売されている、それから、還流により権利者の利益、ライセンス料が不当に害される、こういう要件を満たす必要があるわけで、今御指摘いただいておりますような、欧米の先進国から日本に直輸入される洋盤レコードが、一般の権利者の利益を不当に害することをいう要件を満たさない、今、数字のように、ごらんになったとおりでありまして、今回の還流措置による権利行使の対象にならないと考えておるわけでございます。

 内外無差別という国際条約上の要請がございまして、欧米の先進国から日本に輸入される洋盤レコードについての外国の権利者を法制上、還流防止措置の対象外とすることは、立法上、これは条約上平等に扱え、こういうことになっておりますから、還流防止措置の対象外とすることは不可能であるという点で、権利行使に当たって数多く要件を定めておるということが、まさにこれを実質的に担保している、このように考えておるわけであります。

斉藤(鉄)委員 今の大臣の御答弁、よくわかりましたけれども、もう一度、確認させていただきます。

 消費者の不安にこたえるという意味で、洋楽レコードの輸入に関しては、海外のレコード会社の意思とは全く別に、独立して実質的な担保、保証があることだ、こういう理解でよろしいんでしょうか。

 実は、私のところにもたくさん、もう読み切れないほどのメール、ファクス、はがき、お手紙、不安のお手紙やそういうものをちょうだいしております。ふだんはそういうものは、私、全部目を通すんですが、今回だけは全部目を通せないぐらいたくさんいただきました。そういう不安の声に政府がきちんとこたえることも、私は大事なことだと思います。

 海外のレコード会社の意思とは別に、実質的な担保、保証があるということを、もう一度、明確にお聞きしたいと思います。大臣から、ぜひこれは答えていただきたいと思います。

河村国務大臣 先ほど御説明申し上げましたように、権利行使に当たって数多く要件を定めているということ、これが実質的に担保措置を講じている、このように考えておりまして、担保措置はあるというふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 いずれにせよ、消費者の利益という観点からは、先ほど来議論がありますけれども、実務が非常に重要であると思います。利益を不当に害するというこの要件に該当するかどうかという、わかりやすいガイドライン、わかりやすさということが必要かと思います。これは、音楽ファンにとっても、国民にとってもそうでございます。また、著作権者にとってもそうですし、また、レコード業界にとってもそうだと思います。こういうわかりやすいガイドラインを作成して公表するということは、いかがでしょうか。もうぜひそうしていただきたいと思いますが、提案を申し上げますけれども、いかがでしょうか。

河村国務大臣 今回の還流防止措置の趣旨、これは、アジアの諸国等の物価の安い国から輸入を、還流することを防止するということであって、不当に利益を害する場合に限るという要件、これをきちっと立法趣旨に照らして運用することが大事でございます。

 文部科学省としても、欧米の先進国の洋盤レコードの輸入に影響を与えないような、権利者が得るライセンス料に関するデータがございました。それを踏まえて、立法趣旨に沿うように、利益を不当に害する場合の要件の客観的なガイドライン、御指摘のとおり、指針をもって、法執行までにきちっと対応していきたい、検討してまいりたい、このように思います。

斉藤(鉄)委員 そういう消費者の不安にこたえるためにも、ぜひそうしていただきたいと思います。

 次に、書籍、雑誌の貸与権についてですけれども、これは、これまでの議論でかなり明確になっておりますけれども、もう一度、確認のために質問させていただきます。

 新しい権利を創設するわけであります。既に貸し本の営業を行っている方々が急に多額の使用料を払うことになれば、経営上の問題が生ずることも考えられます。そこで、経過措置において、既存の業者への配慮はどのようになっているか、この点をお伺いします。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 書籍、雑誌につきまして貸与権を付与することによりまして、既存の貸し本業者が貸与を行っております在庫本についてすべて使用料の支払いが必要ということになりますと、貸し本業者に過大な負担がかかるということでございます。

 したがいまして、改正法の附則におきまして、改正法公布の日の翌々月の初日に貸与のために所持している書籍につきましては貸与権が及ばないということにいたしまして、既に貸与を行っている現行の貸し本業者に配慮するというふうにしたところでございます。

斉藤(鉄)委員 特に零細な業者について、本当に零細な業者、町々にございます。権利者との間でどのような合意がなされているのか、この点について、もう一度、確認したいと思います。特に零細な業者。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 貸与権連絡協議会、これは、書籍、雑誌の権利者であります漫画家、作家等により構成される団体でございますけれども、この協議会と、旧来の貸し本業者であります全国貸本組合連合会及び東京都図書商業組合との間で協議が行われてまいったわけでございます。

 それを踏まえまして、貸与権連絡協議会は、平成十二年一月一日以前に貸し本店として営業を開始し、転廃業などをせずに営業を継続している店舗であるということに加えまして、店頭の貸し出し対象書籍が一万冊以下である店舗ということで、その店舗の規模を限りまして、こういうものを満たす貸し本業者につきましては、著作者に与える経済的影響が少ないということから、新たに購入いたします書籍等につきまして無償で許諾をするということなど、これまでどおり、貸し本業を営むことができるという旨を表明しているところでございます。

斉藤(鉄)委員 わかりました。その点、明確になりました。

 それから、きのう、参考人質疑がありまして、弘兼参考人から共存共栄という言葉があって、まさにキーワードだと思います。

 ただ、我が党の富田委員の質問の中で、協議がすべて調っているというふうに理解していたけれども、よく話を聞いてみると、例えばレンタル料をどの程度にするのかとか、禁止期間をどの程度の長さに設定するのかということについてはこれから協議をする、まず、貸与権というものをつくってもらって、そのつくってもらったという前提のもとでこれから話をしていくんだ、こういうお話があって、私も、大体、内々話がついているのかなと思ったら、まだついていないということでびっくりしたんですけれども、今後、法が改正されれば、そのような話し合いが円滑に行われるシステムが必要になってくると思います。

 どのようにその準備が進んでいるのか、そして、円滑な許諾が行われるシステム、どのようなシステムになるのか、このことについてお伺いします。

稲葉副大臣 お尋ねの件についてお答えします。

 まさしく、先生御指摘のように、この法改正の後も、貸し本業者が権利の許諾を容易にできるようにシステムづくりをしていかなければならないところでありまして、今、素川次長が答弁しましたように、貸与権連絡協議会、つまり、コミック作家あるいは文芸作家などの著作権団体及び出版社の団体で構成する組織でありますが、この貸与権連絡協議会が、法改正後も引き続き、貸し本業者がコミックあるいは小説等の貸与が行われるように、権利の許諾を容易にできるようなシステムづくり、集中管理体制を整備することによって対応するようにしております。

 具体的には、これはまだ仮称でありますけれども、出版物貸与権管理センター、こちらは貸与権を集中管理する団体として設立されるものでありますが、その団体へは、先ほど申し上げましたコミック作家あるいは文芸作家など、およそ四千八百名の方々が権利行使の委託をする予定となっておりますし、その準備会が去る三月一日に設立されて、団体の設立に向けた準備をただいま行っている最中であります。また、管理業務の方法につきましては、貸し本業者の代表であります日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合と協議を重ねつつ、内容の詳細について検討を重ねているところであります。

 我が文部科学省としましても、この集中管理体制の整備に向けて関係者の協議がスムーズに行われますように、その時期時期に応じて必要な指導とそれから助言をしてまいりたい、このように考えております。

斉藤(鉄)委員 よくわかりました。円滑な許諾システムができるように、また御努力をいただきたいと思います。

 最後になります。

 総括的な質問を大臣にさせていただきたいと思いますが、この著作権法の上位になる法律は何か。もちろん憲法だと思いますけれども、憲法には文化的な生活という、文化という言葉がございますが、それ以上の詳しい記述はございません。

 やはり平成十三年に、超党派で各党の代表の方に出ていただいて、議員立法でつくった文化芸術振興基本法というこの基本法が、ある意味では、今回、我々が議論している著作権法の上位の基本的な考え方になるのかな、法律になるのかな、このように思っております。

 文化芸術振興基本法の「基本理念」ですけれども、まず第一に、「文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。」これは当然かと思います。二番目が、「文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに、その地位の向上が図られ、その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない。」これが二番目でございます。そして三番目が、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利であることにかんがみ、国民がその居住する地域にかかわらず等しく、文化芸術を鑑賞し、これに参加し、又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。」この一番目、二番目、三番目の基本理念というのは、今回の著作権改正案の議論をするに当たって基本的な考え方なのかな、このように思います。

 まず、能力が十分に、創造者、創造性の尊重とその能力が発揮されるように、そういうことで、著作権、著作隣接権というものが本当に保護されて、日本がこれから文化芸術立国として成り立っていくその中心で頑張っていただかなくてはならない。

 しかしながら、それを享受することが人々の生まれながらの権利という議論、私は、これを読みながら、「生まれながらの権利」というのは民主党さんが強く主張されて入った文言でございますけれども、「享受することが人々の生まれながらの権利である」、そういう創造者がつくったその文化芸術作品を、みんなができるだけ安い料金で楽しめる、これもある意味で行政が心がけなくてはならないことでありまして、今回の議論は、その理念の二番目と三番目について考えさせるいい例ではなかったかな、このように思います。

 この基本理念を大切にしながら、今回の、特に音楽レコードの還流防止措置について今後運用されていくということについての御決意を大臣に最後にお聞きしたいと思います。

河村国務大臣 非常に重要な御視点、指摘をいただいたと思います。

 まさに、文化芸術振興の観点、それはいわゆる創造者、そして、それを享受する側、この両方がまさに調和がとれて、そして、文化芸術が振興していくということが大事でございます。

 そういう意味で、今回の著作権法、日本の邦楽といいますか、そういうものが非常に今人気を得ておる、そういうものを振興させていかなきゃいかぬ。そういう意味で、第一義的にこの問題が出てまいりました。それから、貸与権のような新しい権利を望む著作者それから隣接者、そういうものも配慮しなきゃいかぬ。両方考えながら、まさに生まれながらの権利が、まさに国民がどこにおられてもひとしく文化芸術を受ける権利がある、このことを尊重していかなきゃならぬという指摘、そして、同時に、文化振興、文化芸術を振興できる環境を整備していかなきゃいかぬ、こういう視点に立って、これから文部科学省、文化庁中心に文化芸術振興に当たってまいりたい、こういうふうに思っております。

斉藤(鉄)委員 終わります。

池坊委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午前十一時五十七分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時三分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 質問に入る前に私も一言申し上げておきたいと思いますが、きのう長崎県の佐世保で起きた事件、クラス内の子供同士で、そして学校の中でカッターナイフで刺されて死亡するという、本当にあってはならない事件が起きたわけでございます。学校におけるこうした事件というのは、実はこの間、これほどまでではないとしても、これは本当に新しい事件ですけれども、幾つか起きてきたところでもありますし、私たちは改めて、何が背景なのか、何が原因なのか、その究明はもとより、二度と本当に起こしてはならない、こういうことで、この問題を痛切な課題として受けとめていきたいということをまず申し上げておきたいと思います。

 さて、本法案の質疑に入らせていただきますけれども、音楽レコードのアジアからの還流防止措置が必要であるという本法案の立法の趣旨でございますけれども、これは他方では、やはりアジアへ日本の音楽文化を普及していく、そういう問題ともかかわっていると私は考えております。

 日本レコード協会のアンケート調査によりますと、レコード会社十九社中の十三社が、日本販売禁止レコードの還流防止措置が実施された場合、アジア諸国に積極的に国際展開するというふうに答えているわけでございます。このように、アジアに広く日本の音楽文化を広げていこうとする、これは音楽関係者の強い要望であるというふうに私も思いますので、文化庁としてはこういう点をどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 アジア諸国等におきまして我が国の音楽に対します強い要望があるにもかかわりませず、現状におきましては、積極的にアジア諸国等に海外展開した場合、物価、価格を原因といたしまして、現地の音楽レコードが日本に還流してくる、そして日本において頒布されるということで日本の国内のレコードの売り上げに影響があるおそれがあるということで、作詞家、作曲家、歌手やレコード製作者などが積極的な我が国の音楽の海外展開を控えざるを得ないというのが現状であろうかと存じております。

 今回の措置は、このような状況を踏まえまして、還流を防止する措置を講ずることによりまして作詞家、作曲家、歌手やレコード製作者の経済的な利益を守りまして、我が国の音楽文化のアジア諸国を初めとする海外への普及というものを促進しようとするものであります。

石井(郁)委員 そのアジアへの展開という場合、その利益を還元する、これは依田参考人が述べておられました。私は、その意味というのは、直輸入盤との小売価格の差を縮めることだとか邦盤の価格を下げることだと受けとめているんですね。ですから、還流防止策が講じられる、それで消費者への利益還元がなされた場合、消費者の利益、権利者の利益の双方が守られるという関係になろうかと思いまして、音楽文化の振興が一層花開くというふうに考えますが、この点でも文化庁はいかがお考えでしょうか。

素川政府参考人 お答え申します。

 御指摘のとおり、文部科学省といたしましても、知的財産政策の推進に当たりましては、著作者、著作権等の保護と消費者の利益のバランスを図るということが非常に大事なことだと考えておるところでございます。

 日本レコード協会の依田会長の意見表明にもありましたように、還流防止措置が導入され、日本音楽がアジア市場へ拡大することによって得られた利益については多様な形で消費者に還元していきたいということが表明されているところでございます。文部科学省としては、このような業界の取り組み、認識について非常に期待をしているところでございます。

石井(郁)委員 アメリカのタワーレコードのホームページにも、アジア諸国からのJポップCDの日本への還流について、現在何らかの防止措置が必要であるということは理解している、日本国内市場への影響の大きさを考慮すると、その趣旨には賛同いたしますとあるんですね。昨日の参考人の多くの方々からも必要だという意見が出されておりました。

 問題は、ずっと審議にありますように、この著作権法改正ということになりますと、欧米からの洋盤輸入にも適用されるのではないか、輸入が禁止されるのではないかというところにあるわけでございます。この点で文部大臣の見解をまずきちんと伺っておきたいと思いますが、欧米からの洋盤の輸入禁止は、消費者はもちろん、日本の音楽家、音楽業界も望んでいないと思います。法改正の趣旨からもあってはならないと考えるわけでございますが、いかがでございましょうか。

河村国務大臣 石井先生御指摘のとおり、今回の還流防止措置に対しまして、現に行われている欧米諸国からの洋盤レコードの直輸入への影響、このことを皆さん御心配されている。したがいまして、今回のこの制度、この法案による取り組みについてこの懸念が払拭されるように明確な説明をしなきゃいかぬ、こう思って、これまでもそのつもりで答弁してきたつもりでございます。

 今回の還流防止措置につきましては、内外無差別の原則という国際条約、ベルヌ条約やWTO協定がございますため、外国の権利者を保護の対象から除外できないというわけでありますので、制度設計に当たっては、侵害とみなす行為について要件をきちっと設けて、それで限定をしていこう、そういうことで消費者の利益にも十分配慮した制度にしておる、こういうことでございます。この限定によって欧米の先進諸国からの直輸入について影響が出ないようになっていることも消費者及び音楽業界に御理解をいただくとともに、実務においても、税関当局に対して今回の措置の趣旨それから内容を十分説明して、運用に際して基本的な考え方についての共通理解を図って、欧米の先進諸国からの音楽レコードの輸入に影響を及ぼすことのないように十分連携をとって取り組んでまいりたい、このように考えております。

石井(郁)委員 大臣からは、かなり整理をされていまして御答弁いただいたかと思うんですが、しかし、国民の間では、まだ不安が完全に払拭されているとか、取り除かれているという状況にはないように思うんですね。ですから、私は、もっと納得がいくように、やはり説明責任が政府にあるというふうに思っておりまして、そこで幾つか質問を続けさせていただこうと思います。

 まず、欧米からの輸入盤禁止というのはどこからか求められているのかどうかということなんですね。全米レコード協会や国際レコード産業連盟が求めたのかどうか。全米レコード協会とか国際レコード産業連盟の要請というのがあるかと思いますし、またその内容はどういうものなのかということについて、これは文化庁としての見解をお示しください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 全米レコード協会と国際レコード産業連盟の連名におきまして昨年十二月に提出された意見書、これは文化審議会の著作権分科会の方に提出された意見書でございますけれども、これにつきましては、いわゆる並行輸入の問題点を指摘し、還流防止措置の内外無差別の原則により権利を付与することを求めるということでございますけれども、この意味するところにつきましては、日本レコード協会から全米レコード協会に対して問い合わせ、五月の十四日付で回答があったところでございます。

 その回答によりますれば、全米レコード協会の会員レコード各社が、例えば中国で提供した安価な製品が日本やアメリカの市場に還流することを懸念することなく、中国市場におきまして価格づけを可能とするというような制度の導入を支持するという見解であるということ、また、輸入をコントロールする権利の導入によって、現在日本で行われているアメリカやEUからのレコード輸入が阻害されるということは全くないだろうという見解が示されているところでございます。

 文部科学省といたしましては、昨年の、先ほど申し上げました意見書の趣旨、これは物価の安い国からの並行輸入に関する問題点についての趣旨というふうに理解しているところでありますけれども、この五月十四日付の回答によりまして、全米レコード協会も同様の認識にあるということを再確認できたと理解しているところでございます。

石井(郁)委員 もう一点御答弁いただいていないんですけれども、欧米からの輸入盤禁止がどこからか求められているのかどうかということなんですね。これを明確にしてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 欧米の先進国からの我が国に直輸入される洋盤レコードにつきまして、これらを差しとめてほしいと要望されているということはございません。

石井(郁)委員 今御答弁いただきましたけれども、米国やEUからのレコード輸入を阻止したいというような要望というのは政府には届いていない、政府レベルでも産業からも全くないということではないかと思うわけです。

 しかし、次に問題になるのは、欧米からの輸入禁止を求める声はないけれども、それでも、これはある新聞が書いておりましたが、その気になれば発動できる条文が法律に加わると書いていますし、欧米からの輸入盤が禁止されてしまう、こういうふうにいわば断じているわけですね。そうすると、やはり音楽関係者が心配するのも無理がないわけですね。ですから、私どものところにもたくさんのメールやいろいろな御要望が寄せられるということになっていると思います。

 それで、大臣の御答弁にもありましたけれども、この法案では、要件を課している、条件を限ってしている、実際には適用できない法案なんだということを説明していただいているかと思いますけれども、それは本当に明確に確認できますか。

素川政府参考人 申し上げます。

 先生御指摘のように、この法案につきましては、アジア諸国等からの音楽レコードの還流を防止するための措置を講じるということを目的としておりまして、要件というものを数多く設けているところでございます。これらをすべて満たさなければ還流防止措置というものが発動されないというふうになっているわけでございます。

 内外無差別という国際条約上の要請から、欧米の先進国からの我が国に直輸入される洋盤レコードにつきまして、外国のレコード製作者にこの措置を法制度として認めないという立法は不可能でありますけれども、権利行使に当たっての所要の要件を定め、適法に運用するということで、欧米の先進国からの輸入がそのまま継続できるような実質的な担保になると考えておりますし、そのような運用をしてまいらなければいけないと考えているところでございます。

石井(郁)委員 今のその確認の上でさらに質問をしたいと思いますけれども、法案の百十三条、ここでは、著作権を侵害する、侵害とみなす行為について「情を知つて、」という規定と「得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合」という二つの限定がついていますね。そのうちの、権利者が得ることが見込まれる利益が不当に害される場合に限りということで、もう少し立ち入ってお聞きします。

 利益が不当に害されると判断する基準というのは、審議の中でも、物価水準の著しい格差とかライセンス料の格差が問題となるということが出ているかと思いますが、しかし、法案にはその具体的な中身というのは書かれていないわけでしょう、「見込まれる利益が不当に害されることとなる場合」としかないわけですから。だから、その基準が明確にならないと、どこまでどういうふうに適用されるのかということが不安になるのは当然だというふうに思うんですね。ですから、その基準というものを明らかにしてほしい。

 そしてまた、だれが判断するのか。政府の答弁では、立法趣旨に沿って行政府が運用する、運用ということがしきりに言われますし、最終的には裁判所が判断ということもあるわけですけれども、その点、明らかにしていただけますか。

素川政府参考人 先生御指摘のように、利益を不当に害したかということにつきましては、司法の判断というものが最終的にはあろうと思いますけれども、政府といたしましては、例えば税関におきましての実務というものがまず発生するわけでございます。その場合におきまして、立法の趣旨に沿った運用がなされますように、まず文化庁におきましてその客観的な基準を定め、税関当局と共通理解を図って、法の趣旨に沿った適切な対応ができるように努めてまいりたいと存じております。

石井(郁)委員 ですから、その客観的な基準をやはり一応決めなくちゃいけないということまでは明らかになっているんですが、それはどういう数値的なものとして考えられますか。そこら辺までもう少し言っていただかないといけないと思いますが。

素川政府参考人 利益を不当に害したかというこの利益は、著作者及び隣接権者が受け取るライセンス料というものになろうかと思います。これの著しい差があるかどうかということが、この利益を不当に害したかどうかという判断になるわけでございます。

 その中におきまして、まず、権利者が受けるライセンス料というものにつきましてのデータに基づきまして、アジア諸国からの還流を防止するという制度の趣旨を踏まえ、また欧米からのレコードの輸入については現状のまま影響を受けないようにするということを踏まえて、その客観的な基準というものを定めていくということになろうかと存じます。

石井(郁)委員 この質疑の中でやはり大変不安になっているのが、そういうライセンス料の差の問題だと思うんですね。どのぐらいで発動されるのかということがあるわけで、米国の会社なんかが権利を行使しないと言っても、本当にしないというのは担保されるのかという問題があるわけでしょう。だから、ちょっとライセンス料の差をどのぐらいと見ているのか、どのぐらい以下だったら発動されるのか、それはもう少し言えないんでしょうか。

素川政府参考人 午前中に提出させていただきました資料がございます。その中に、アメリカで製作されている音楽レコードのライセンス料の試算というか計算があったわけでございますけれども、その中で、平均的には八十数%というところで、日本を一〇〇とした場合でございますけれども、その中でも、例えば七〇%程度のところでの数字がございました。

 そういうものがあるということを前提といたしますと、そういうものが影響を受けないような形で基準というものを考えていかなければいけないというふうに考えているところでございます。

石井(郁)委員 やはりある程度客観的基準の設定が必要だということがありましたし、幾らかそういう数字も念頭に置いていらっしゃるということもわかってきたわけです。

 それで、立法の趣旨に沿って運用されていくということかと思いますが、もう少しそこの辺の数字的なことでお聞きしておきたいんですけれども、物価水準の著しい差もある、あるいはライセンス料の格差という問題もある。今回ちょっと問題になっている、物価水準で比較されるべきCD、コンパクトディスクの内外価格差の現状なんですね。一応どうなっているか、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツの場合でちょっとお知らせいただけないでしょうか。

素川政府参考人 音楽レコードの価格のとり方というものは、どのようなものを基準としてといいますか、どのような対象でとるかというのはいろいろあろうかと思いますけれども、一例といたしまして、欧米との比較のために、日本、アメリカ、イギリス、フランスの大手の通販業者におきます各国の売り上げの上位百タイトル、これは二〇〇三年の十月段階の調べでございますけれども、その平均販売価格、これは税込みでございますけれども、それを挙げてみますと、日本が約二千四百二十二円であるのに対しまして、ニューヨークが千六百五十七円、ロンドンが二千三百六円、パリ二千六百五十二円となっているところでございます。これは、国によりいろいろディスカウントの幅が異なるというようなことで一概には、価格につきまして比較するということが絶対的なものかどうかというのはないわけでございますけれども、一つの数字としてとってみたわけでございます。

 なお、今回の還流防止措置の要件であります権利者の利益を不当に害するか否かのこの権利者の利益というものはライセンス料であって、小売の価格とは直接には関係ないというところでございます。

石井(郁)委員 一般に言われるように、洋楽CD、例えば米英など本国で発売されるものは大変安い。日本のレコード会社が発売する日本盤で特に新譜の場合は三千円台もする。価格差が大きいというようなことが一般に言われるわけですね。だから、その場合、お話しのように店頭価格とこのライセンス料というのが混同されているんじゃないかというふうに考えるわけですけれども、これは不当に利益を侵害するということに当たるのかどうか、この点は文化庁としてはどのようにお答えになりますか。

素川政府参考人 今回の還流防止措置を考えるに当たりましては、著作者及び隣接権者が得る利益ということを直接的なメルクマールというふうに考えておりますので、小売価格、相対的な関係はあるわけでございますけれども、直接の比較の数字といたしましてはやはりライセンス料があるということでございますので、実際の小売価格といいますか実売価格というもので不当な利益に該当するか否かということは判断することは難しい。実際、販売価格、小売価格といいましても店によっていろいろ異なるわけでございますので、そういうことであるというふうに理解しております。

石井(郁)委員 ですから、「得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合」というのはライセンス料で比較をされるということが確認されるかと思うんですが、ちょっと先ほどの質問にも戻りますけれども、一体どのくらいのライセンス料の差ということで設定されるかということで、先ほどもう少し答弁がはっきりしなかった点がありますので、数値などで一定のガイドラインみたいなことが示されるのかどうかということをやはりぜひ伺っておかなきゃいけません。どうでしょうか。

素川政府参考人 御指摘の点は、非常に重要なことだと考えております。

 この不当に利益を害するかどうかという要件につきまして、客観的な基準につきましてそれを定め、公表してまいりたい。また、税関当局との間でその件につきまして連携を図り、適切な運用を図ってまいりたいと考えているところでございます。

石井(郁)委員 繰り返して大変申しわけないんですけれども、やはりライセンス料の差が何%になったらこの法案百十三条の第五項が適用されるのかというこの問題がありますので、その基準なんですが、先ほど七〇%というような数字もちらっとおっしゃったかと思うんですが、何かその辺で確認していいのでしょうか。

素川政府参考人 このライセンス料につきましては、現在私どもが持っている数字を踏まえて今申し上げたわけでございますけれども、法律の施行前に一定の期間を置きまして、きちんと基準を定め発表してまいりたいと思っております。

 その段階の状況も踏まえなければいけませんので、現段階の数字だけでは申すことはできませんけれども、いずれにいたしましても、立法趣旨を踏まえた対応をきちんとやるということを前提に考えてまいりたいというところでございます。

石井(郁)委員 その数字、ぜひきちんとお示しいただきたいと思いますけれども、それはアジアからの還流防止には適用されるが、しかし欧米のような国には適用できない、そういう数値として設定されるというふうに考えていいですね。これも確認させてください。

素川政府参考人 御趣旨のとおりでございます。

石井(郁)委員 念のためではあるんですけれども、具体的に少し聞いておきたいと思います。

 これは、今いろいろな御意見が寄せられている方の資料なんですけれども、洋楽CDの並行輸入品の存続を望む有権者有志一同の方々が持ってこられたものでございますけれども、日米英間の音楽CDの価格差は、歌手のジャネット・ジャクソンのCDで三二%だ、ノラ・ジョーンズのCDで三六%となっている。

 これらは価格差が大きい方だけれども、ライセンス料が相関関係にあると見て、百十三条の適用、利益が不当に害されるということになるでしょうか。ちょっと具体的な話でございますが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 今先生三二%、三六%というのはライセンス料ではなくて販売価格の数字だと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、そのような欧米の先進国のレコードにつきまして、この今回の措置が対象になることのないような基準の設定というものを考えてまいりたいと考えているところでございます。

石井(郁)委員 重ねて具体例をお聞きしておかなきゃいけないんですが、このようにも言っていらっしゃるんですね。

 二〇〇四年ビルボード誌アルバムトップ二十にランクされている洋楽CDのうちの十四作品については日本のレコード会社が日本国内向け商品をライセンス生産している。その小売価格は米国での小売価格の一・四七倍から二・二一倍だ。平均一・八倍もしている。そのため、米国内向け洋楽CDの並行輸入品は日本国内向けCDの二五から五三%、平均約三九%オフで販売されているというのが実情である。したがって、利益が不当に害される危険がある、危険性がある。洋楽CD輸入禁止となると概略述べておられるんですが、これはそのように考えていいのでしょうか。考えられますか。

素川政府参考人 今幾つか具体的な例を挙げられたわけでございますけれども、やはりこの数字も店頭販売価格といいますか実売の価格であろうかと思います。私どもといたしましては、ライセンス料というものの計算といいますか、そういうものをいたしまして、しかる後にこのような欧米の先進国のレコードの輸入が影響を受けないような配慮をするといいますか、そういうことを前提に基準を設定してまいりたいと思います。

石井(郁)委員 ちょっと具体の細かなことをお聞きしたかと思いますけれども、やはりいろいろとこういう著作権の問題を議論していくときに、店頭価格の問題で比較したり、ライセンス料がその中でどうなっているのかというようなことを仕分けをして考えていかなきゃいけないという点では、なかなか理解が、いろいろなレベルの理解があったりして、一定の混乱も起きるかというふうに私も思っているところです。

 しかし、もっと明確にしていただかなくてはいけないと思うんですが、これは三月三十日の質問主意書に対する答弁書の問題なんですね。その中で書いてある中身がやはり大変波紋を呼んでいるんじゃないかと私は考えておりますので確認をしたいと思いますが、それはこのように答弁がございました。

 「商業用レコードの国外生産者が、自ら権利者としてその日本現地法人に日本盤を発行させている場合において、当該日本盤と同一の洋盤を日本国内への輸入を禁止する旨を表示して、国外において発行している場合には、前記」それはレコード還流防止措置のことですが、「前記の要件を満たすこととなる。」ということですね。

 だから、これは洋盤についての問題として言っているわけですから、こういう場合というのは、現実的には例えばどのぐらいの枚数の輸入CDで起こり得るというふうに考えているのか、そこを現実の問題としてお答えいただきたいと思います。

素川政府参考人 今の御質問は、枚数の要件はいかがかということでございましょうか。(石井(郁)委員「可能性の問題」と呼ぶ)はい。

 量につきましては、頒布目的の輸入かどうかということが一つの枚数にかかわってくる問題でございますけれども、欧米の先進国の輸入レコードにつきましては、先ほどから申し上げていますけれども、とまらないような措置をしていくということでございます。

 今先生御指摘のありました外国の権利者が国内盤の価格にも影響を持っている場合いかがかということでございますけれども、一般的に申し上げまして、国内のライセンス版それから直輸入盤といいますかそういうものに、少しパッケージに差があるとか、いろいろ、歌詞カードに差があるとかということがございまして、多様な消費者の好みに合わせますと、より多様な好みに合わせるためにそういう輸入盤もあり、還流盤も、国内のライセンス生産盤もあるということでビジネスが展開されておりますので、どちらかを急にとめるということは通常ないものと思っております。

 いずれにいたしましても、先ほどから繰り返しになりますけれども、欧米の先進国のレコードの輸入については影響ないような対応をしてまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 先ほど来答弁では、影響のないように運用でしっかりやっていきたいということはあるんですが、しかし、ここで言われているのは、やはり洋盤の輸入の禁止ということで権利行使があるのかどうかということで、本当に現実的に起こり得るのかどうかということで私はお尋ねしているわけです。やはり起こり得るんだったら、これは大変なことだというふうになるわけでしょう。その辺のことをもっとはっきりさせていただかないと困ると思うんですね。

素川政府参考人 そのような状態というのは通常起こり得ないものと考えております。

石井(郁)委員 同じ質問書の中で、こういうこともございました。

 「国内生産者の意向を受けて、権利者である国外生産者が日本盤と同一の洋盤を日本国内への輸入を禁止する旨を表示」する、あの例の表示ですね、「国外において発行している場合においても、一についてと同様に、法案第百十三条第五項が適用される。」というふうに言っていますが、こういう場合も現実には起こり得るのかどうかということですが、いかがでしょう。

素川政府参考人 洋盤レコードの直輸入への懸念ということはされている方が多い、いるということは承知しているわけでございますけれども、先ほどから繰り返しておりますように、先進国の洋盤レコードの直輸入が影響を受けることは、先生の御指摘の点におきましてもないものと考えているところでございます。

石井(郁)委員 今の確認でいきますと、現在のいわゆる洋盤には適用されないということが見えてきたかというふうに思うんですね。

 しかし一方で、答弁にもありましたけれども、現在のライセンス料の差もあるわけで、得ることが見込まれる利益が不当に害されると権利者がやはり判断するのではないか、そういう権利者の判断というのもやはりあり得るのではないかということは言えるわけですね。その点ではいかがでしょう。

素川政府参考人 確かに権利者としては、この価格差、不当な利益の侵害に当たるのではないかというふうな認識を持たれる方は否定できないと思いますけれども、現実に税関で差しどめるというような措置を考えてみました場合には、事前に申し立てるという制度があるわけですけれども、そのようなものを活用することによりまして、実際、その権利者の判断といいますか見込みというものが基準に照らしていかがなものかということを、税関の方で資料をもとに精査するといいますか審査するということになるわけでございます。そこでその申し出というものが受理されるかどうかということがわかってまいります。受理された場合にはそれがリストとして一般に公表されるということになるわけでございますけれども、そうでない場合には受理されないというようなことになって、そこで明らかになるということがございます。

石井(郁)委員 そうしますと、やはり今回の法改正で、実際に運用するに当たって現在のライセンス料の格差というものがあるわけですから、現在の欧米の輸入盤については権利を行使することは難しいかできないというふうに言えるかと思うんですね。政府はそのように判断していると確認してよろしいですか。

素川政府参考人 先生御指摘のとおりでございます。

石井(郁)委員 しかし、なおいろいろまだあるわけですけれども、一般的に外国の権利者が権利行使を要求してきた場合、やはりどうなるのかということがあります。

 外国人に権利のある洋盤が、アメリカから直輸入され日本で販売された場合が千八百円だ、日本で製作した洋盤が二千五百円だ。二千五百円の方がライセンス料が少し高くなるが、実際問題として、今の議論で、現在は権利が不当に侵害される程度とは判断されないというふうに言えるかと思うんですね。

 しかし、いろいろ出ておりますように、大臣もおっしゃっていましたけれども、情勢が変化をする、あるいは可能性の問題として、日本製が二千五百円のままで、またかつ欧米からの直輸入盤が全体として千八百円から例えば五百円に下落をする、ライセンス料に著しい差が出た場合に、権利行使することができるようになるということも考えられるわけですね。だから、こういう可能性は、一方でというか他方でというか、否定できないというふうに思うんですね。だから、その場合はアジアからの邦盤還流防止措置の立法趣旨とか前提というのが崩れることになるというふうに言わなければならないと思うわけです。

 こういう点で私は大臣の御見解を伺っておきたいと思いますが、大臣、いかがでしょう。

河村国務大臣 ただいま石井先生の方から御指摘があったような特別なケースというか、こういうケースがあった場合、まさに商業用レコードの還流の実態の変化が、そんな大きな変化があった場合には、そして消費者の権利を不当に害するような事態、そういうものが起きた、こういうような場合には、やはりその状況を調査、検証して、その結果に基づいて必要な措置を講ずる、これは消費者側にとっても、また著作権者側にとっても両方考えていかなきゃいけない課題だ。これは、利益を不当に害するようなことが起きるということについては的確に対応していくということであります。

石井(郁)委員 幾つか私自身が持っている疑念も確認をさせていただいたわけですけれども、現在のところでは、外国の権利者が権利行使をして、洋盤のCD輸入禁止というようなことはあり得ないということだと思うんですね。

 しかし、いろいろと、今おっしゃったように、消費者の側からも、あるいは権利者にとっても、不当に害されるというようなことがある場合というときには法改正も含めた必要性が出てくる、法改正の可能性が必要だということだと思うんですね、法改正も見直すというか、そういうことだというふうに思います。だから、大臣のきょうの答弁、私は大変重いものがあると受けとめました。また、参考人からも、きのうの質疑でもその点での異論も出ていないかというふうに思うんですね。

 ぜひ、それを確認させていただきまして、私は、今回のレコード還流防止措置ということが、やはり日本の音楽文化を守り、発展させるという点でも非常に重要だというふうに考えておりますし、そういう角度で力を尽くしていきたいということを申し上げたいと思います。

 それで、貸与権の問題で一点伺いたいと思いますが、この貸与権の改正も大変必要なことでございますが、具体的に伺いたいのは、対価を取らずに私的に行っている子供文庫なんですね。そういうところまで一体及ぶのかどうかということはいかがでしょう。ぜひ、文化庁。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の措置によりまして、書籍等の貸与につきましては著作権者の権利が原則として及ぶわけでございますけれども、著作権法三十八条第四項に規定しております、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、許諾を得ることなく自由に貸与することができるという規定がございます。

 お尋ねの、対価を徴収しない民間の子供文庫につきましては、一般的にはこのようなことから権利の対象とはならないというふうに考えているところでございます。

石井(郁)委員 もう少し時間がありますので、これは質問通告していませんでしたけれども、ちょっと別な件で一点伺っておきます。

 これは、学校における舞台芸術鑑賞教室というか、学校で本物の舞台芸術を鑑賞するという動きが今全国的に進んでいますけれども、非常にやはり公的支援が足りないために上演できない、そして劇団の側も大変行くことが難しいということがありまして、公的支援の必要性があるのではないかということで、これは直接、通告なしで申しわけないんですけれども、ちょっと大臣の御見解を伺いたいと思います。

 学校における舞台芸術鑑賞教室の実態調査というのがありまして、それを見ますと、一九九九年から二〇〇三年の間で、高校ではマイナス八・四%になっている、中学校でマイナス六・三%、小学校でも、鑑賞教室が二〇〇一年度は七四%でしたが、二〇〇二年度は六九%と下がってきているんですね。本当に今、子供たちの間で、実は、そういう芸術に触れる機会というのは必要だというのは言うまでもないと思うんですが、現実に下がってきている、これはやはりここでとめなきゃいけないというふうに私は思います。

 そのいろいろ要因なりはそれぞれあるかと思いますけれども、例えば、劇団がいろいろ公演に行くといった場合でも、交通費、運搬費、宿泊費というのは大きな負担になる。だから、近郊だったら行きやすいけれども、遠いところには行けない、こういう点でも都市と地方との格差が生まれたりしますよね。

 地方自治体がいろいろな形での補助などもしていると思いますけれども、私は、きょうは、文科省として、こういう劇団へのこうした交通費など、宿泊費などの費用の補助ですね、援助というか支援というか、これはぜひやはりするべきではないのかというふうに思っておりまして、大臣にぜひその御決意を伺えればと思います。

河村国務大臣 文化振興の面からいって、演劇等の鑑賞の機会を多く得るということは大変意義のあることだし、そういうものから非常に感激、感動を受ける、そういうものが教育的にも非常に効果があるということは私も承知しております。

 全国には、そういう人たちのためにNPOをつくったり、おやこ劇場・子ども劇場、そういう方々がそういうことをやり、一般にもやっておられますが、そういう劇団がやはり学校へ行くということ、これをどういうふうに支援していくかということを、私ももうちょっとその数字を、実態を調査しなきゃなりませんが、全体にそういう芸術文化を振興するための支援、あるいは振興基金とか、そういうものを持っています。交響楽団等に対しては支援措置を考えていったのでありますが、そういう劇団にもそういうものを支援しながら、それによって公演に回る。これも、一部有料のようなケース、それから実際に無料で全部支援の中でやるのかとか、いろいろな課題があると思います。

 しかし、非常に意義のあることだと私も思いますので、ただいまの御指摘を受けて、さらに今御指摘のような点、現実に、実際のそういう公演が、かつてあったものがどんどん下がっておるとかいうような実態があれば、これはやはり心配なことでありますから、十分調査の上、対応を図ってまいりたい、このように思います。

石井(郁)委員 劇団協の調査によりますと、やはり行っていない最大の理由は、費用負担が大きいということになっているようですね。

 これは、こういった劇団に対する芸術文化振興基金による助成というのは、日本児童演劇協会の児童演劇地方巡回公演には三千百万円、三千万円ぐらいです、日本劇団協議会、高校生・中学生のための巡回公演には二千八百万円だ。これで幾つかの劇団が公演をしている、全国公演をしているということですから、本当にわずかなお金だと言わなければいけないと思うんですね。

 私は、本当に、子供たち、芸術に触れさせ、豊かな心を、それぞれの心をはぐくむという点でも、この面での特段の努力をぜひお願いしたいということを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 まず冒頭、昨日、長崎県の佐世保市で起きました小学生の大変痛ましい事件、本当に胸が痛みます。人の命を大切にしなければならない、人を傷つけてはならない、私は、これらを学ぶことが教育の原点だなというのをまた改めて思い知らされているわけでございますけれども、教育関係者のみならず、子供を取り巻くすべての人たちが再発防止のためにさらなる努力をしていかなければならないと思っております。御手洗さんの御冥福を心からお祈りいたします。

 それでは、質疑に入らせていただきます。

 今回の著作権法の一部改正案、このテーマは、音楽レコードの還流防止措置、そして書籍、雑誌への貸与権の付与、これが中心でございます。この還流防止措置によって、著作権、著作権者を守る、そしてまた書籍、雑誌への貸与権を付与する、それぞれに大変重要な課題だと私は思っております。

 しかし、この法案について、大変多くの国民の皆様、とりわけ消費者の皆様方の不安の声が渦巻いているんですね。先ほど斉藤委員もおっしゃっていましたが、数え切れないほどファクスが来ていると。それぞれ各議員も同じでしょう。私のところにもたくさん来ておりますが、その中で、ちょっと一枚御紹介させていただきます。きのうの参考人の皆様方にもお聞きいただいたんですが、私は、この短い文章がすべて物語っている、そういった思いで、政府の皆さん、文化庁の皆様方にお聞きいただきたいと思うんですが、次のようなファクスが入っております。「私にとって音楽とは、生きていく上で欠くことのできないものであり、音楽と、その音楽を創ってくれた人たちを愛しています。 ですから、著作権者の権利が蔑ろにされてもいいとは、全く思っておりません。」こういうことが書かれておるんですね。つまり、著作権者、アーティスト、それから著作隣接権者、レコード生産者の人たち、すべての人たちに感謝をしている、愛してさえいると。

 そういった消費者がおって、この音楽文化というのはある意味では成り立っていると私は思うんですね。そういう人たちが、これはたった一枚の声ですが、この声はどれほどの声かと思うぐらい、今たくさんのファクスが来ているわけですね。こういった、音楽をつくってくれた人たちを愛していますと思いながらも、今回の法改正については激しく不安がっているファクスが入っております。

 なぜこのような、私は社会問題と言ってもいいぐらいの、今消費者の声が沸き上がっているのかということを考えてみますと、これまで三日間審議してきました。そして法案の中身も、集約点は限られております。その問題点もあるかと思うんですが、もう一つ、私は、やはりこの法律をつくる前の段階から、文化庁の皆様がボタンをかけ違ってしまったのではないか、そんな気がしてならないわけですね。

 つまり、この法案は、いわゆる我が国の音楽文化の海外普及を促進する、そういった目的であるとともに、アーティストあるいは著作者団体、レコード業界、またレコード輸入業者団体、経済界、そして消費者団体、それぞれの幅広い業界関係者の皆様方の利害関係が複雑に絡んでいる法律だとも言えると私は思うんですね。

 ですから、であるならば、とりわけ、私は、文化庁としては、まずやるべきことは、そういった関係者の皆様方の意見を十分に集約して、そして情報公開をして、そして合意形成にこぎつける、それから法案の作成に入る、そういった段階を踏むべきだったと思う、そのために最大限の努力をすべきだったと思うんですね。

 しかし、この審議を通じまして、その大前提が大きく崩れております。十分に関係者と協議をした、あるいは意見集約もした、合意形成も図ったんだとおっしゃるかもしれません。しかし、それにしては余りにも問題点が多過ぎます。

 まず、パブリックコメントの扱いでございますが、これは、中央官庁が法案を提出する前にはパブリックコメントを求めるようになってから、寄せられた意見の概要をまとめたものを公表するのが慣例でした。しかし、今回に限り、それをされておりません。なぜ公表されなかったんでしょうか。

素川政府参考人 このパブリックコメントといいますか、これは意見聴取という形で、文化審議会著作権分科会の決定を踏まえて行うということにしたものでございます。期間につきましても、通常一カ月行うということでございますけれども、パブリックコメントということではなく行ったものでございますから二週間という期間になったわけでございますが、その結果につきましては各委員全員にお配りし、配付したということでございます。

 ただ、事前の話では、これをインターネットに載せるとかというような了解を得ていなかったものでございますから、その委員に配付した後につきましては、文化庁に閲覧、公表のために備えつけておき、その便宜に供したということでございます。

横光委員 期間も余りにも短過ぎた、そしてまた、結果的にいろいろ審議の中で出てきたんですが、組織的な意見が寄せられた、そしてしかも、概要あるいは意見内容すら公表されていない、そういったことで本当の意味のパブリックコメントになったのかと疑わざるを得ないわけですね。この法改正については、賛成したい人たち、あるいは慎重でありたい人たち、反対したい人たち、それぞれおるわけですから、そういった幅広い形のパブリックコメントをまずやるべきだった。そういったこともやらずに、結局、賛否の、反対の数だけを公表して、十分なパブリックコメントが行われたというような状況でない中にこの法案を提出した。いわゆる議論を拙速に進めていることが、私はこの大きな不信感を持ったまず最初の第一歩だという気がしてならないんですね。

 その次に、結局、いろいろな団体の皆様方の意見集約、これがどのように行われたのかということでございます。法改正するには、本当に先ほど言いましたように、幅広い団体の皆様方の利害関係も絡んでいるわけですので、そのあたりの意見を十分に聞く必要があった。ところが、消費者へ大変大きな影響を与えることが明らかな法案であるにもかかわらず、説明は消費者には一切なされていない。なぜ消費者には説明しなかった、また意見を聞こうとしなかったのか、お聞かせいただきたい。文化審議会著作権分科会にも入っておりませんね。小委員会にも入っていなかったんじゃないんですか。これだけ多くのいわゆる影響を与える人たちの意見さえ聞いていなかったと言わざるを得ないんですが、いかがですか。

素川政府参考人 まず、著作権制度の改正といいますか改善といいますか、そういうものを図る場合には、それぞれ関係する権利を取り扱っている団体の間でいわゆる関係者間協議というのをやっていただくわけでございますけれども、本件につきましては、従前より、日本レコード協会と経済団体連合会、そしてまた著作権団体との間で、いわゆる関係者間協議という形で長い間協議が進められてきた、そういう経緯もございまして、その流れの中で、昨年の十一月に関係者間の協議が成立したということになっているわけでございます。

横光委員 関係機関の協議が成立したと。関係機関で一番大切な人たちの意見を聞かずに成立したということですか。

 きのうのレコード協会の会長さんのお話にも、これまでのお話にもございましたが、日本国内で音楽のレコード、音楽家のレコード、これは年間一億七千万枚売られているんですよ。そして、還流CDが六十八万枚ですね。一方、並行輸入で日本国内に入ってくる洋楽のレコードとCDが六千万枚と言われております。そういった説明もございました。

 この六十八万枚の流入を防ぐ、いわゆる還流防止ということは必要ですよ。ですから、今回こうした法案には、そんなにそのことに対しては余り大きな異を唱えてはおりませんよ。しかし、結局並行輸入で日本国内に入ってくる六千万枚のレコードを買っている消費者の人はどれぐらいの人間になるか、その消費者の声がいかに大切かということがわかっていながらも、分科会でも小委員会でも、大して意見を聞こうとしていない。生協の代表者が再三にわたり法制問題小委員会に参加させてほしいと文化庁に求めたが、文化庁は理由すら明らかにせずこれを拒否し続けていた。本当ですか、これは。何で参加させなかったんですか。

素川政府参考人 著作権分科会におきまして、昨年の十一月に、著作権分科会の法制小委員会には属しておりませんけれどもその他の小委員会に属しておられました消費者団体の委員の方から、先生今御指摘のような御要望といいますかお話があったわけでございます。それを踏まえまして、著作権分科会におきましては、その委員の方を著作権制度の小委員会のオブザーバーの委員としてその後審議に加わっていただくという形で御意見を伺い、それを反映させるという形で進めてまいったところでございます。

横光委員 結局話を聞いていなかったということじゃないですか、消費者の。アーティストが作曲をする、作詞家が詞をつける、その楽曲をレコード会社が製作する、そのレコードを音楽愛好家が消費者として楽しむ、そういった一つの文化が成り立っているわけでしょう。その一部の人たちの意見は聞いてこちらの意見を聞かないから、こうしてボタンのかけ違いから始まって、法案が成立しようかという今ごろになって大変な大きな問題になってきているわけでしょう。最初のボタンをもうちょっとかけていれば、私はここまで大きな問題になっていなかっただろうという気がしてならないんですね。ですから、本当に私は、ある意味では文化庁の責任は非常に大きいんじゃないかという気がしてなりません。

 次に、さっきパブリックコメントのことを申しましたが、いわゆる昨年末の著作権法改正に関するパブリックコメントに関して、RIAA、いわゆる全米レコード協会が何とコメントを寄せておりますね。この中身は、我々は日本語歌謡のみを対象にした差別的な立法措置を行わぬよう強く警告するものであり、日本国政府に対して、楽曲の種別を問わず輸入を管理する権利を認めることを要求するものである、こういった意見が寄せられていると思いますが、RIAAは洋楽についても輸入コントロール権を設定せよと要求しているという話もあるわけです。洋楽CDの並行輸入に対して輸入権を行使する気がアメリカのレコード会社にないのであれば、わざわざ日本政府にこんなパブリックコメントを送る必要はないように思えるわけですよ。

 ですから、これまで再三文化庁の方も、海外のレコード会社に洋楽の輸入を禁止するメリットはないと強弁し続けてこられましたけれども、ある意味では、文化庁は故意にこういった虚偽の説明をし続けてきたということにもなりかねませんよ。私は、レコード業界の努力とかそういったものに頼るのではなくて、文化庁みずからが全米レコード協会から輸入権を行使しないという確約をとるべきではないか、このように思いますが、いかがですか。

素川政府参考人 まず、先生から御質問のありました、これは昨年十二月の意見募集に、全米レコード協会と国際レコード産業連盟の連名で出してこられました意見募集の解釈にあるだろうと思いますけれども、この委員会におきましても述べておりますように、アメリカ・レコード協会と国際レコード産業連盟の趣旨は、例えば中国等で提供した、ライセンス生産した安価な製品、これは日本がライセンス生産することもありますけれども、当然、アメリカも中国でライセンス生産、中国だけではございません、アジア諸国でライセンス生産しているわけでございますが、それがアメリカに還流してくることを防止する制度はアメリカの方で既につくっておるわけでございますけれども、日本にはそれがないということで、アメリカのいわゆる中国盤といいますかアジア盤というものが物価の高い日本に流入してくる、輸入されるということを懸念する。したがって、日本の権利者がアジアでライセンスしたものの還流を防止するという権利を日本につくるのであれば、自分たちも同じように、中国等でライセンス生産したアメリカ盤が日本に入ってくるということを、その権利を同等に与えてほしいというのがその趣旨であるわけでございます。

横光委員 私は、多くの消費者が今不安がっているのは、ここの一点だと思うんですね。ですから、アメリカのいろいろな、日本のレコード協会の皆さん方が洋盤がとまるようなことはないんだと言うけれども、私は、その根本のところに行ってはっきりと確約するぐらいのことを文化庁はやった上でこの法案の審議をお願いするということであるべきだったという気がしてなりません。

 同僚議員の質問主意書に対する答弁についてちょっとお聞きしたいんですが、答弁で、「一般論として申し上げれば、個別の事案について著作権法違反による告訴がなされた場合、検察当局において、適切に対処するものと考える。」こういった答弁がございます。結局、検察としては、欧米からの洋楽CDの並行輸入には適用しないと大臣や文化庁の皆さん方は何回も何回も答弁されてきましたよ。幾ら答弁されたところで、結局は、欧米のレコード会社等から仮に告訴等がなされれば、法律の規定どおり検察当局においては適切に対処すると言っているんですから。すなわち、アジア諸国からの洋楽CDの並行輸入を行ったものと同様の扱いをするということになりますが、それでいいんでしょうか。

河村国務大臣 本件、私からも答弁申し上げてきたところでありますけれども、前回の法案審議の際に、今回の還流防止措置は、権利者のいわゆる利益、ライセンス料を不当に害されること、これを要件の一つにしているわけですね。

 例えば、主な海外の音楽レコードの原作、アメリカあるいはイギリス、ドイツ、フランス、こういう国から、一般的な卸売価格とか使用料の率などの実態にかんがみて、これらの国の音楽レコードについては適用されることはない旨を答弁してきたわけです。これは、今回の法案の立法趣旨に照らして、洋盤レコードの輸入禁止はされない旨は明らかにした。この点が一番心配だ、自分の好きな、日本にもあるがアメリカから直に来ているレコードを買えなくなるのではないかという心配ですが、それはありませんということを申し上げた。

 一方、先ほどの質問主意書の問題でありますが、これはこの要件をきちっとかけておるわけでありますから、その要件に適応しないものをどうこうするということにはならぬわけでありまして、検察当局は、具体的事案の取り扱いは個別具体の事実関係を踏まえてされる、一概には言えないけれども、一般論としては、個別の事案について著作権法違反の告訴がされた場合には、これは適切に対処すると言っているわけですから、この要件に当てはまらないものについては、そこでもう除外してまいります。要件に適応する場合については、告訴があればそれは適切に対処するといういわゆる検察の機能について言及したというわけでありますから、そのように御理解をいただきたいと思うんです。

横光委員 個別の事案について、仮に著作権法違反による告訴というものが、これは起こり得ることがあるわけですから、そういった場合はやはり適切に処理する、こういうふうに検察当局は言っているわけですから、幾らここは、並行輸入には適用しないということを答弁されていますが、非常にここはあやふやな気がしてならないわけでございます。

 また、この前の参議院文教科学委員会で文化庁は、欧米の主要なレコード会社五社が、欧米諸国において発行した商業用レコードについて、法案第百十三条五項の規定に基づいて我が国への輸入を差しとめる考えがない旨を述べているが、このように国会に提出している法律案について、当該法律案の所管省庁が了知している事実を説明する行為が、直ちに国家賠償法上の責任を負うべき行為と判断されることはないものと考える。

 非常にややこしい文章で、一回聞いたってわからないかと思いますが、要するに、欧米の主要なレコード会社が我が国への輸入を差しとめる考えはない旨を述べている、そのことから、今回の著作権法改正案が可決されたとしても洋楽CDの並行輸入がとまることはない云々という発言に関しては、文化庁は、ただファイブメジャーの意見を、意向を伝えただけであり、一切責任は持たないと言っているわけですが、そのとおりですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 ファイブメジャーの輸入差しとめに対する考え方、これは日本レコード協会がファイブメジャーの日本の関係会社を通じて意見を集約したといいますかまとめたというのが一つございます。もう一つは、日本レコード協会と全米レコード協会との間の書簡によりまして、全米レコード協会を通じましてファイブメジャーの意向の確認、意思の確認というものをされたということでございまして、これらを日本レコード協会の会長の立場で依田参考人がるる御説明をされたというところでございます。

 文部科学省としては、直接ファイブメジャーから意見を聴取しているところではございませんので、先生の御指摘につきましては、その事実を伝達しているということかということにつきましては、日本レコード協会が確認したことを御紹介するとともに、文部科学省自体としては、欧米からの直輸入盤が今回の措置の対象にならないような基準の設定をしていくということで、今回の法律の趣旨に沿った運用が適切に行われるように努力してまいるということをお話し申し上げているところでございます。

横光委員 よくわかりませんね。五大メジャーから話は聞いていないと言いますが、五大メジャーがそういうふうに我が国への輸入を差しとめる考えがない旨を述べている、これを了知している、そういうことをわかった上で、そのことを所管庁が説明をしている、それは説明してきましたよね、これまでも。説明してきた行為そのものは、直ちに国家賠償法上の責任を負うべき行為と判断されることはないものと考える。

 つまり、五大メジャーの意向を伝えているだけで、そういった意見を言っていますよ、そのことを言ったからといって、文化庁としては、それがもし違った方向に行ったときにも何ら責任はないんですよと言っているようなものじゃないですか。全く責任回避そのものの発言をしている、そういうことですか。

素川政府参考人 一般的な国家賠償法の解釈におきまして、先生が御指摘のようなことを回答として述べたものでございます。

横光委員 文化庁、先ほど五大メジャーにやはり確約をとるべきだとかいう意見を言いましたが、そういった行為、そしてこういったことには今度ちょっと逃げの姿勢を示す、そういったものが私は今回の法案全体の一つの土台になっているんじゃないかというような気がしてならないんですね。

 今回の、特定の類型に属する者が権利行使を控えることをこの法案は前提に起草したものではない。「法案第百十三条五項は、お尋ねのように特定の類型に属する者が権利行使を控えることを前提に起草したものではない。」特定の類型に属する者、それはいわゆる欧米の五大メジャーですが、五大メジャーが権利行使を控えることを前提にしてこの法案をつくったものではないと答えております。そう答えておりながら、ファイブメジャーが権利を行使することをも想定した上でこの法案を起草したとこれまでも何回も明らかに表明している。全く矛盾しているんですが、いかがですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、今回の質問主意書に対する政府の答弁の中で、今回の還流防止措置は特定の類型に属する者が権利行使を控えることを表明することを前提として起草されたものではないというふうに回答しているわけでございますけれども、これは、今回の還流防止措置につきましては、いろいろな要件を付しているということで、以前から御説明しておりますように、そのような権利行使をする意思があっても、いろいろな要件をクリアしたかどうかということによって実際行使できるかどうかということが決まってくるわけでございますので、そのような要件の設定の仕方といいますか、要件の設定におきまして立法趣旨を踏まえた対応ができるように制度設計をしたということでございます。

 そういう意味におきまして、権利行使を控えるであろうということを前提として起草したものではない、そういう御説明でございます。

横光委員 今の答弁もよくわかりませんね。これは、いわゆる特定の類型に属する者といえば大体ファイブメジャーに限られるんですが、ファイブメジャーが権利行使を控えることを前提に起草したものではない、つまり権利行使はしないということを前提に起草したということになるんですね。そういうことになるんです、裏返せば。それをあなたたちは、五大メジャーが権利行使することを想定した上で今回この法案を起草したということを何度も何度も明らかにしている。これは完全に私は矛盾だという気がしてならない。私は、こういった矛盾が結局信用問題につながって今回のような不安につながっている一つのまた原因であるという気がしてならないわけでございます。

 また、この著作権法改正案がもし成立した場合、レコード輸入業者あるいは並行輸入品を取り扱うレコード販売店、こういう人たちは、各取り扱い音楽CDのレーベルに対して、その国外で発行する音楽CD等につき日本への並行輸入が行われても輸入権を行使しない、この確約を求める通知を行うことが当然予想されると私は思うんですよ。こういったレコード輸入業者や並行輸入を取り扱うレコード販売店はこの法改正によって非常にリスクを伴ってくるわけですから、当然のごとく、そういった並行輸入が行われても輸入権を行使しませんねという確約を各レーベルに私は求めていくだろうという気がしております。恐らくそうなると思いますよ。

 これに対して、輸入権を行使しないとの確約を行わないレーベル、皆さん方はそういうことはないんだということを言っていますが、もし輸入権を行使しないと確約をしないレーベルが存在した場合、これはもしもの話ですが、絶対にあり得ないという話じゃないんですから、もし確約を行わないレーベルが存在した場合、輸入業者としては、当該レーベルの音楽CDを並行輸入することは法的に大変大きなリスクを負うことになります。このような事情が明らかになった場合は、この法案を正当化してきたいわゆる基礎事情、そういうことはないんだと言ってきた大前提が崩れるわけでございます。

 となりますと、成立したとしても、施行を待たずして、私はもう一回出し直すということになると思っておりますが、政府はそのようなことでよろしいんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 意見表明をしていますファイブメジャー以外のレコード会社を権利者とする洋盤レコードにつきましては、先生御指摘のようにその態度は明確に表明しているわけではございませんけれども、先ほどから御説明申し上げておりますように、今回の措置につきましては、欧米先進国からの直輸入については権利の行使の対象とならないような、例えば不当な利益の侵害というところの要件設定をまずしてまいりたいと考えているところでございます。

 したがいまして、ファイブメジャー以外のレコード会社が還流防止措置についての見解を明確にしなかったとしても、直ちに法施行前にこの法律の廃止ということにつながるものではないと考えているところでございます。

横光委員 しかし、では、今まで言ってきたことと違うじゃないですか。仮にそういったレーベルがそういった確約をしないということ、あるいは逆に、確約をしないということは権利を行使するということですが、そういったことになった場合は、皆さん方が言ってきた大前提は崩れるわけでしょう。大臣がこれまで何回も答えてこられた、そういったときには必要な措置を講ずると何回もおっしゃってこられた、必要な措置を講ずるときがそのときじゃないんですか。いかがですか。

素川政府参考人 今回の還流防止措置に対しまして必要な措置を講ずるというのは、法律の施行後において、音楽レコードの流通の実態に変化を来し、権利者の利益を不当に害するような状態になれば必要な見直しをするということでございます。

 先生の今の御指摘は、ファイブメジャー以外のレコード会社が還流防止措置に対する見解というものを明確にしていないということだけをもって法律の施行前に法律を廃止しなければいけないというようなことにはつながるものではないと考えておりますし、先ほどから申し上げておりますように、一般的な欧米からの直輸入につきましては、要件の適用につきまして十分な基準というものを設定いたしまして直輸入が影響を受けないような運用をしてまいりたいということは、るる御説明させていただいているところでございます。

横光委員 今のは違う。これまでの審議で、米、英、仏、ドイツからの洋盤の直輸入、並行輸入がとまることはありませんと大臣も答弁されておる、皆さん答弁されている。そして、しかし権利者が権利を行使した場合、必要に応じて適切な措置を講ずる、大臣が答えられた。答えられた。万が一そうした場合が起きた場合、結果を受けて必要な措置を講ずる、いわゆる権利者が権利を行使した場合というのが入っておるんですよ、あなたが言う不当に利益を侵害した場合という別に。

 私が今言っているのは、ここのことを言っておるんです。五大メジャーじゃないレーベルのところがこういった権利を行使した場合というのは、全くここに当てはまるじゃないですか。そうした場合は必要な措置を講ずると大臣は述べられている。ですから、そういうことがもし仮に起きた場合は、もしもの話ですが、起きた場合は、そのときは必要な措置を講じる、つまり、もう一度この法案を廃止してやり直すということになるんですが、それでよろしいかとお聞きしておるんです。

河村国務大臣 もちろんそういう不測の事態が起きた場合には、今御指摘の点も含めてということで検討しなきゃならぬと思うんです。

 ただ、今回の問題で一番、先ほど来お話しのように、音楽ファンの皆さんが心配されたのは、並行輸入というのは、これは向こうの、アメリカやイギリスや何かの、ファンの多い、日本でもあるが向こうでも発行されているものが買えなくなるのではないかという心配。それをとめなきゃならぬ、その理由というのが一体どういうときにあるのかということを皆さん考えていただきませんと、日本の市場がよっぽど何か変化が起きるとか、これは円安、円高の問題でこんな値段がついたとか、特別なよっぽどの変化が経済的に起きるとかいう以外、向こうもビジネスですから。

 私は、そういうことを考えながら、今回、そういう場合が起きたときには、これは条件がつけてありますから、特別に日本の市場にとって大変なことになるというケースをとめると言っておるんでありますけれども、そういうケースが、ほとんど条件も同じ欧米と日本とで起きるだろうかと。向こうもそういうことはないんだということを前提に来ておりますから、そのことをやはり皆さんに御理解をしていただきませんと、その前提が崩れると、大変なことだ、大変なことだだけがどんどん広がってしまう。このことは、私はやはり、私も説明責任を果たさなきゃいけませんが、立法府としてもいろいろお考えをいただきたいと思いますね。

横光委員 そういうことが起きるだろうかということを私は聞いているんじゃない。そういうことが起きた場合のこと、それは大臣もそういう心配されるでしょう、そういうことが起きないのが一番ベストなんですから。ただ、もし起きた場合のこと、必要な措置を講じると今おっしゃられました。

 もう一点、実際に、法改正後、欧米からの洋楽CDの並行輸入が税関で差しとめられたりすること、著作権法上問題があるというようなことで税関で差しとめられた場合、そしてまた、もう一つは、欧米から洋楽CDを並行輸入した業者または並行輸入された洋楽CDを販売するレコード販売店に対して、欧米のレコード会社が、例えば安売りをしたとかいろいろな理由によって民事訴訟を提起し、または刑事告訴を行ったという事実がもし発覚した場合、これももしの話ですが、あり得る話です、そうした場合、先ほど言いましたように、この法案を正当化する基礎事情が崩れてしまうわけですから、同じように必要な措置を講じるということになりますね。いかがでしょうか。

素川政府参考人 権利者が民事訴訟を行ったということの結果、欧米の音楽レコードの輸入といいますか、そういう輸入の実態に大きな影響を与えるというようなことになった場合は、先ほどから申し上げますように、必要な措置をとるということになろうかと思いますが。

 以上でございます。

横光委員 わかりました。

 この法案、本当に我々は、著作者、著作隣接権、そういったものを、還流防止で何とかやはり阻止しなきゃならない、それは必要だという思いで、その結果、参議院では本当に全会一致で通過しているわけです。しかし、それと同時に、こうして、洋盤がとまるんじゃないかという不安が今広がっている。それでまた、洋盤でしか聞けない音楽がいっぱいあるんですね。国内盤では発売されていなくて洋盤でしか聞けない音楽がいっぱいあるんですね。そういった人たちにとっては、本当に音楽の愛好者にとりましては大変な問題、もし起きた場合、そういうとまったことが起きた場合ですね。

 ですから、やはり私は、必要な措置を講ずるというのであるならば、そういったことが起きたときに講じるんでなくて、今から講じていて当然だ、そして、起きなければ一番いいのであって、皆さん方はそういうことは起きないんだからということを言われる。

 しかし、これは、これまで審議がございますように、何ら担保がないんですね。大臣、失礼ですが、大臣の答弁でさえこれまでほごにされた事例は幾らでもあるわけですよ。そういったことを考えたときには、やはりここは担保という形で、あるいは消費者の皆様方が、先ほど示した例のように、法案そのものに消費者も反対しているわけじゃないんですから、これならば安心だなというぐらいのことをやはり国会はやるべきである。

 そういうことは起きないんだ、起きないのが一番いい。しかし、もし起きた場合はこうするんだというのならば、先にしておけば済むことであって、大臣もおっしゃってくれています、あるいは附帯決議にもなっております。しかし、これは言われておりますように、消費者、我々にとりましても、何ら担保されるわけではないのでございますので、何とかして法律に付すことはできないのかということを改めて大臣にお聞きいたしますが、もう一度、大臣、何とかこれは附則に、やはり法律に書いて初めてみんな安心できるわけです、これは守らなければなりませんので。いかがでしょうか。

河村国務大臣 横光先生の御懸念、御心配、私も理解はいたしております。ただ、その著作権の保護という問題は、これは国際条約があって、加盟国は同じ待遇だ、内国民待遇でなきゃいかぬということがございます。ファイブメジャーも言っているのは、中国から還流するのは、ああいうケースは大いにやってくださいと言っているわけです。しかし、それぞれの持っている内国民待遇といいますか同じ権利は我々も留保しますよ、そのことは困りますよということも言っている。

 しかし、現実に実態を見たときに、いわゆる権利者の利益と言われるライセンス料が不当に害されることがないという要件が入っている。しかも、日本に発行されているものと同じものが並行輸入で入ってくる、こういうケースを考えたときに、欧米のレコードはとめなきゃならない理由が私の考えでも見つからぬですよ、現実にビジネスで考えたときに。

 一般的な卸価格、使用料の率、実態にかんがみ、引き続き自由に輸入ができる、このことは大丈夫だという表明をいただいておるわけでございまして、そういう意味で、消費者の心配を解消する説明責任があるということで、この還流防止措置の実務については、税関当局に対して、今回の還流防止措置の趣旨及び内容を十分説明しながら、運用に際しての基本的な考え方について共通の理解を図って、日本と物価水準に大きな差がない国からの音楽レコードの輸入に、何か間違いが起きて、手違いでそんなことが起きるというようなことは絶対ないように十分連絡をとって、政府としても責任を持って対応していく、こう申し上げております。

横光委員 本当に、何回も何回も、大臣も一生懸命そう言って説明されておりますが、法的には権利を行使できるんです。そして、もし仮に行使した場合、あり得ないと言っていますが、行使された場合、これによってプラスになる人たち、マイナスになる人たちがおるということを認識していただきたい。

 そして、これは政府の方ではなかなかそういった明確な答弁ありませんが、立法府でございますので、私は、自民党や公明党の皆様方にも、本心は恐らくこの法案でそういった懸念があるなとみんなお思いだと思います。そういった意味では、私たち、何とかして修正案を提出したいと思いますので、御協力をお願いいたしたいと思います。終わります。

池坊委員長 川内博史君。

川内委員 川内博史であります。大臣、きょうもよろしくお願いを申し上げます。

 この著作権法の改正案の審議を通して、何とかこの法案を通していただきたい、あるいは御理解をいただきたい、趣旨は邦楽の還流防止なんです、わかってくださいという言葉が繰り返されました。私も理解をしたいというふうに思います。しかし、この質疑を通じて明らかになったことは、もともと邦楽の還流防止が趣旨であるということを言いながら、その前提となる現在の還流CDの枚数あるいは未来にわたるアジアからの還流CDの枚数のデータ等が、全くいいかげんな、あるいは架空の数字であったということが我が党の松本議員の質疑で明らかになりましたし、あるいは、利益を不当に侵害するということがどういうことなのかということに関しても、最終的にはしどろもどろの説明に終始をし、明確な基準が示されることはここに至るまでなかったわけであります。それはそのとおりでしょう。

 なぜなら、著作権法というのは最終的には民民の争いを解決する法律であり、裁判所が最終的にジャッジメントを下すわけですから、何をもって利益を不当に侵害するかは裁判所が判断をすることであり、行政の立法時の解釈というものはあるにせよ、しかしそれは絶対的なものではない。だからこそ素川次長も答弁に大変苦労をされていらっしゃったんだなということを今感じるわけであります。

 今回のあの法案の中では、いろいろなテクニックというか、本当に文化庁さんも、ここまで一生懸命この著作権法の改正案、特に還流防止策については、還流防止という名前からして、一生懸命考えたんだな、頑張ったんだなということは私もよくわかります。しかし、その頑張り方が、全くおかしな頑張り方ではなかったのかということを感じているのは私だけではなくて、私の党の仲間も、そしてまた与党の先生方もそうだと思うんです。中村敦夫さんという参議院議員がおりますが、この方が、忙しくて忙しくて、この著作権法の改正案が参議院の本会議にかかるときは、自分は邦楽の海賊版のことだと思い込まされていた、だから賛成しちゃった、ごめんなさいということをいろいろな方にメールで書き送っていらっしゃいます。

 事ここに至るまで、本委員会の先生方は別にして、恐らく大部分の国会議員は、何となく、海賊版対策のことなのかな、あるいはこれは邦楽に限ったことなんじゃないか、そういうことを信じ込まされている議員が大半ではないかというふうに思うんです。それは、先ほど申し上げたように、文化庁が工夫に工夫を重ねて、努力に努力を重ねて、ここまで持ってきたというところでありましょう。

 与党の先生方、今渋い顔をしていらっしゃいますが、私は、与党の先生方もお忙しいだろうからチェックできなかったことを、最後の最後で我々野党がチェックするわけです、この国会で。それをよく聞いていただいて、これから、政府・与党は一体でありますから、しっかりと文化庁を指導していただかなければ、これは大変なことになる。

 二十一世紀は知的財産権の時代だと言われています。そういう中で、いかに公平、公正な制度のあり方、権利のあり方というものをつくっていかなければならないかという重要なときに、事務方に頑張られて、何となく法案が成立をしてしまった。それで、後で、そんなつもりじゃなかったんだけどということでは、私はお互いに責任を果たしたことにはならないと思いますので、残りの、本当はあと十時間でも二十時間でも大臣とゆっくりとお話をさせていただきたかったです、私に与えられた時間は四十五分です。しっかりとお話をさせていただきたいというふうに思います。

 まず、私の前回の質疑で、大臣が事実に反したことをおっしゃっていらっしゃいますので、それを訂正していただきたいというふうに思います。

 五月二十八日の私の質問で、質問通告の十六番でございます。河村大臣が、著作権分科会の報告書を受けて、あと法制問題小委員会でさらに議論をされておりますからと答弁されていらっしゃいます。これは文化審議会の著作権分科会のあり方の根本にかかわる問題でありますから、答弁を訂正していただきたい。法制問題小委員会があり、それを受けて著作権分科会が開かれるというのが流れでありますから、これは死ぬ気で文部科学行政に当たると豪語していらっしゃる河村文部科学大臣のお言葉としては恥ずかしいと思いますので、恥ずかしい、間違ったと一言おっしゃっていただきたいと思います。

河村国務大臣 御指摘の点、おっしゃるとおり、順番を私は間違えて言ったようであります。気持ちの中では、私は――もう弁解する必要、間違ったんですから、間違えました、申しわけございません。訂正させていただきます。

川内委員 ありがとうございます。さすが男の中の男は潔くおっしゃっていただきました。

 さらに、部下の責任は大臣の責任であります。

 参議院の質疑の中で田村政務官が、音楽CDについて、イギリス、フランスと日本は、その価格についてほぼ同水準であるという趣旨の答弁をしていらっしゃいます。

 しかし、私が入手をした、昨年の九月に経済産業省メディアコンテンツ課に提出をされたビルボードのトップチャート二十か三十だったと思いますが、とにかくよく売れているヒット曲の、たくさん、マーケットのシェアが大きいものについての平均価格については、明らかに我が国とイギリス、フランスにおいては価格に差があるという資料が提出をされておりますが、この点についても事実の誤認をお認めいただきたいと思います。

河村国務大臣 この件については、ちょっと私もきちっと弁明をさせていただく必要があると思います。

 確かに田村政務官が、欧米の先進国と国内のCDの平均販売価格はほぼ同じ水準だという答弁をいたしました。これの基準は、インターネットを利用したCD通信販売サイトで提供されている、日本とアメリカとイギリス、フランス、このCD売り上げトップ百タイトルの平均販売価格を比較した資料に基づいております。かなりたくさんのサンプルをとったものであります。

 それから、HMVジャパンによる調査は、CDチャートトップ二十商品に関して各国の最大手小売店の平均小売価格を調査したということでありまして、確かに金額的な差はある、高い低いはあるようでありますが、これはデータの取得の方法にも違いがあったり、しかし、事実認識が誤っておるとは私は考えておりません。

川内委員 そういう、お互いに前提条件が違う場合に、思いが食い違うということはよくあることで、いやしくも政府が提出した法案の根拠を説明される場合に、どういう前提での数字なのかということは大変に重要なことであると私は思いますので、ぜひ、国民の皆さんあるいは国会に対して、正確な情報なり資料なりというものをお伝えする責任があるということを申し上げておきたいというふうに思います。

 そこで、本日の論点でございますが、邦楽の還流防止という法の趣旨ということに関しては、私も理解をしたいというふうに思っています。しかし、それを条文として、邦楽と洋楽とを書き分けることができない。それはなぜかというと、著作権者あるいは著作隣接権者は内外無差別であり、内国民待遇をしなければならないという国際条約上の取り決めがあるからだというふうに教えていただきました。

 そこで、私が質問主意書を提出させていただいて、それに対する答弁書が戻ってまいりました。平成十六年六月一日に戻ってきたんです。きのうですね。

 私は、著作権者は内外無差別で保護をされなければならない、しかし、著作権者がつくった、創造をした著作物がいつでき上がったかということに関しては、国際条約上の取り決めはないのではないかというふうに認識をしております。

 したがって、邦楽というのは大体日本で最初にプレスされるわけですから、最初に日本でプレスをされた音楽CDに関しては、国内法の著作権法の改正案の書きぶりとして書き分けることができたのではないかという思いを今でも持っておりますが、どこで著作権が発生したか、あるいは日本で最初にプレスをされた音楽CDを差別なり区別なりすることが国際条約上の取り決めに違反するかどうかということを御答弁いただきたいと思います。

河村国務大臣 国際条約上、内国民待遇の規定があって、著作物の保護は国内の権利者と国外の権利者は同様に扱う、この認識は共通していると思いますが、おっしゃった著作物の発行の時期について、国際条約上明記されておって、これを書かないことが条約違反になるかどうか。これは、国際条約上、明記したものがあるという認識はございませんから、それによってこれが違反になるという指摘は受けないのではないか、このように思います。

川内委員 今大臣が御答弁をされたように、国際条約上、著作物が生まれた時点で書き分けることは可能であったという御答弁であると思います。

 私は、なぜ最初に国内で発行されたというふうに、最初にという言葉をお入れにならなかったのか、それによって、邦楽、洋楽というものを区別することが、書き分けることができたはずだというふうに思います。洋楽についても、日本の著作権法の保護を受けたければ、日本で最初にプレスをすれば、それは著作権者として内外無差別あるいは内国民待遇ということで保護をされるわけであります。

 しかし、最初にという書きぶりをすることが国際条約上違反しないということであれば、そう書くべきであったということを御指摘申し上げたいと思いますが、なぜそう書かなかったのかということを教えていただきたいと思います。

河村国務大臣 還流防止措置において保護される国内頒布目的の商業用レコードと、それから各国それぞれで発行された国外頒布目的の商業用レコードとの発行の前後関係を問うということだけで十分である、こう考えたからであります。

川内委員 今の御説明は、今回の著作権法で、大臣、私、生まれて初めて、これほど勉強したことはなかったですよ。物すごく自分も勉強家だな、勉強家だったんだなと、実は自分自身を再発見しているんですけれども。著作権法については、私は多分いろいろ詳しくなっているとは思うんですが、今の御説明はちょっとよくわからなかったので、もう一度わかりやすく御説明をいただきたいと思います。

河村国務大臣 今回の還流防止措置が、我が国の音楽文化を海外へ普及する、促進をするという趣旨で設けられた、この基本的な考え方がありまして、契約上、外国人を権利者とする音楽レコードについて対象にする必要があることがありますから、これで法案の趣旨が異なってくるということにはならないだろう、こう思いますし、最初にということが問われなきゃならぬということには、私は、さっき申し上げましたように、前後を問うということだけで、最初にということをうたわなければこれが十分でないというふうには考えなかったということであります。

川内委員 ちょっと私のお聞きしていることに十分にお答えをいただいていないように思います。

 著作権法制というのは国際的なルールでありますから、国際的なルールに取り決めがあることはそのルールにのっとって法をつくらなければならない。したがって、著作権者においては内外無差別であり、内国民待遇をしなければならないというのは、これは国際条約上のルールであります。しかし、どの時点で著作物が発行をされたかということに関しては取り決めがない。取り決めがないということについては法律に書けたはずではないか。

 では、違う聞き方をさせていただきます。その書き方をするということを内閣法制局と協議されましたか。

河村国務大臣 これは法制局の審査を経て出しているものでありまして、おっしゃるように、前後を問う、こう言いましたが、国内が先である、このことはきちっとしておかなきゃいかぬということであります。その点は、法制局、発行の前後関係を問うことで十分であるということは、日本が先であるということ、このことだけはきちっとしていると思うんですが。

川内委員 今何とおっしゃいましたか。発行の前後関係を問う、この法案ではそうなっていませんよ。別に発行の前後関係は関係ないと私の質問主意書の答弁書には書いてあるんですよ。だから、私は、大臣、書き分けることが可能であったにもかかわらず書かなかった、それは国際条約上にも違反していない、さらに、それを内閣法制局と検討されましたかと。

 委員長、もし大臣が後ろの吉川さんとかと話をする時間が必要であれば、とめていただいて、十分に御協議をいただきたい。これは大事なところですからね。

河村国務大臣 内閣法制局の審査を経てということで出しておるわけでありますし、日本が先であるという前後関係、これだけはっきりしていればいいという考え方に立っておる、こういうふうに思うんですが。

川内委員 いやいや、法律はそういう書きぶりではないわけですよ。

 大臣、よくお聞きください。邦楽だけを書き分ける書き方が可能であったにもかかわらず、そう書いていらっしゃらないから、それはなぜですかと聞いているんです。――時間が、もう本当に最後なのでもったいないので、委員長、お願いします。

池坊委員長 河村大臣。(川内委員「ひどいですよ、今の議事運営は。ちょっと理事、お願いしますよ、こんなの」と呼ぶ)

 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

池坊委員長 速記を起こしてください。

 質疑者の質疑時間は限られておりますので、答弁者もお考えになる時間が必要かと思いますが、なるべく早く答弁してあげてください。

 それでは、河村大臣。

河村国務大臣 答弁書にもあると思いますが、国内がとにかく最初でなければならないということを書く必要はないという考え方に立っておるわけでありまして、これは、後からであっても国内が出発点であるということを答弁書で、前後を問うという形で答弁していると思うんですが。

川内委員 これは、邦楽の還流防止措置だという法案の趣旨に大きくかかわる書きぶりですよ。

 大臣、大臣は私の最初の質問に対して、著作物が発行された時点で差別、区別をすることについては国際条約上の取り決めはないということを答弁されました。そのとおりです。国際条約上の取り決めはありません。大体、日本の歌手のレコード、CDというのは、日本で最初にプレスされるんですよ。そうでしょう。だから、日本で最初にプレスされたCDを差別、区別することに関しては条約上も違反しないんですよ。そう条文に書けたはずなんですよ。それにもかかわらず、今大臣は物すごい重要な答弁をされました。国内で最初に発行されたものであるということを書く必要はないとおっしゃったんですよ。邦楽という限定をつける必要はなかったんだと言ったんですよ、今。この法案の趣旨そのものが今崩れていますよ。

河村国務大臣 法案の趣旨は、私はこれによって変わるとは考えません。今回の還流防止措置というのは、我が国の音楽文化の海外普及を促進することを趣旨としてやってきている。条約上、外国人を権利者とする音楽レコードについても対象とする必要があるということでありますから。

 それから、答弁書においても、確かに国内において発行されていることが前提となることを答弁しておるわけでありますが、これは、「国内頒布目的商業用レコードが、「最初に」国内において発行されたか否かを問わず、現に国内において発行されている状況において、それ以後に発行された国外頒布目的商業用レコードが国内に流入してくることを防ぐことを目的としたものである」、こう述べておるわけですね。

川内委員 いや、まさしく――大臣、CDを買ったことありますか、最近。

河村国務大臣 最近、娘と一緒に買って、そして並行輸入でどう違うか。これは、日本のものは日本語がちょっと書いてあって、詳しく説明してある。英文のものはそれがない。だけれども、これは同じものだ。値段が若干違う。日本語が印刷されている分が、ちょっと日本のが高いな、こういう思いがあります。

川内委員 大臣、ここは非常に重要なところなんですよ。結局、日本の音楽というのは、日本で最初にプレスされる場合がほとんどですから、九九%以上だと言っていいと思いますね。したがって、文化庁の見解としても、あるいは文部科学省の見解としても、著作物が発生した時点で条文を書き分けることは可能だということを答弁されたわけです。しかし、今、この法律の構成はそうなっていないということが明らかになっている。

 したがって、私は、この委員会の質疑を通じていろいろな問題点が明らかになってきたわけですから、これは閣法ですから、次の国会で条文を書きかえる、最初にと、最初に国内で発行された頒布目的商業用レコードというふうに変えるべきだ。そうしないと邦楽の還流防止という趣旨にこの法律は合わないし、私の提案は、邦楽の還流防止という趣旨に全く合っていますよ。そう思いませんか、大臣。

河村国務大臣 邦楽の還流防止、この法案の趣旨といいますか、これはまさに御指摘のとおりだと思います。

 ただ、最初に発行されたかどうかということを言わなきゃいけない必要があるかどうか、そういう問題です。

川内委員 だから、最初に日本でプレスをされたと言わないと。言えば、邦楽の還流防止措置の法案になるんですよ。今はそうなっていないんです。

 だから、そこの書きかえをしてくださいということを申し上げているんです。文化庁も、それは書きかえられる、条約上はオーケーだと答弁されているじゃないですか。すべて問題解決するんですよ。

河村国務大臣 今の御指摘の点、法文上、最初にと書く場合、実質的に国外の権利者を本来の措置の対象から排除することにならないか、こういう疑念というのはどういうふうにして払拭すればいいのか、こういう問題がありやしませんか。

川内委員 今ちょっと大臣、最後の部分がよくわからなかったんです。国内の、何とおっしゃいましたか。

河村国務大臣 実質的に国外の権利者を本来の措置の対象から排除することとなりはしないかと。

川内委員 いや、それは、私は言いわけだと思いますね。実質的に国外の権利者を排除することになりはしまいかと今大臣はおっしゃいましたが、国際条約上取り決めのないことに関しては、逆に言えば、やっていいんです。それがルールですよ。

 いいですか、今この法律の構成では、今政府がこの委員会にかけていらっしゃる法律では、権利行使をしようと思えば外国の権利者は権利が行使できます。間違いなくできます。

 しかし、私の提案であれば、権利者を差別はしていないんです。権利者は保護されるんです、外国の権利者であっても。なぜなら、この日本の著作権法で保護されたければ、日本で最初にCDをプレスすればいいんです。最初にという限定をつけることは何ら外国の権利者を差別することにはならないです、著作物で区別しているわけですから。

 それで、著作権法にかかわる国際会議で、アメリカなりイギリスなりEUなり、そこから文句を言われたら、あら、悪かったのと。だって、ルールで決まっていないじゃないですかということを主張すればいいわけで、そんな、国際的なルールで決まっていないものを、今ここで、いや、何かそれはちょっと差別することになるかもしれないからと。それは条約上決まっていないとおっしゃっているわけでしょう。法文に書けるとある意味ではおっしゃったわけですよ。それをここに来て、いや、それはちょっとまずいんじゃないかと思っていますからというのはおかしいんじゃないですかね。それだと、邦楽の還流防止措置だというこの法案の趣旨を撤回してもらわなきゃいけないですよ。

 そこで、後ろで一生懸命首を振っているけれども、そうじゃないですか。邦楽の還流防止措置だと言いながら、私の提案を受け入れないと。邦楽に限定する方法がありますよと提案しているのに、それを、いや、受け入れないと。なぜ受け入れないんですか。全く国際的にも問題ないですよ。

河村国務大臣 川内先生の御意見は御意見として、提言として私も受けとめますが、これは、それを書く必要があるかどうかということは最終的に政策判断としてやったわけでありまして、まだ、あなた、九九%とおっしゃったけれども、しかし外国で最初にプレスするケースもある。そういう疑義がある以上は、そこまで今書く必要、これは政策判断としてこうしたわけでありますから、これは今後の提言として、今後いろいろな問題が起きたときの一つのこういう提言があったということは、これはきちっと議事録に残っておりますし、提言として私も研究課題にさせていただきます。九九%だろうとおっしゃるけれども、そういう疑義が残っている以上、そこまで書く必要はないという政策判断をして今回法案を出させていただいた、そういうことであります。

川内委員 今のは答弁になっていないですね、大臣、そう思いませんか。日本の音楽というのは、日本で最初にプレスされるんですよ、ほとんどすべて。わざわざ外国に行ってプレスするのは、何か非常に特殊な事情があるんじゃないんですか。日本で最初に発売するに決まっているじゃないですか、邦楽は。それを、一般的な例ではないと。外でプレスするものが……(発言する者あり)発行するというのは日本で発行するんですよ、レコーディングはニューヨークでやっても。そんなことも知らずに何を言っているんだ。

 いいですか、そういうことを書き分けられるにもかかわらず書き分けなかったということに関しては、私はこの法案の趣旨さえ疑わしいということを言わざるを得ないんです。

 さらに、ぜひこれは最初にという言葉をつけていただきたいと思いますが、これはちょっともう時間もないので、しつこくもう一回聞きますが、内閣法制局と最初にという文言をつけるかどうかを検討しましたかね。

河村国務大臣 今の御指摘の点、法制局と最初に入れるべきかどうかということを相談、協議した上で本案を出している。これは今、確認事項であります。

川内委員 そうなると、法制局が拒絶した理由というのは何ですか。

河村国務大臣 それは、国外の権利者を本来の措置の対象から排除することになる、条約違反の疑義がありはしないかということ、これがやはり一つの大きな疑念があって、では、そこまで書かなくても今回の還流措置はできるということでやったわけであります。

川内委員 あいまいなというか、条約上に取り決めがないことに関して、政府の方で勝手に自粛をしてしまったということなのかもしれないですけれども、邦楽の還流防止ということを言いながら、そして一方洋楽もしっかりと、今までの輸入盤を音楽ファンの皆さんに楽しんでいただくためにはどうしたらいいのかということを考えるときに、私は、今許される最良の方法というのを法文上もとるべきであったということを御指摘申し上げさせていただきたいと思いますし、次の国会で、私は、ほら出してきた、ほら見ろとか言いませんから、ぜひ改正案を出していただきたいというふうに思います。

 さらにもう一点、論点としてお尋ねをさせていただきますが、この法律案の中で、レコード輸入権は政令で定める七年以内をもって消滅するというふうに書いてございます。先ほど申し上げたように、情を知ってとか、不当に利益を侵害するという部分は、最終的には裁判所が判断する。しかし、この百十三条第五項の中で、唯一政府のコントロール下にあるのが、この七年以内という政令で定める期間であります。七年以内というのは、一日から七年までということでよろしいですか。

河村国務大臣 おっしゃるとおり、これは著作権法の改正の百十三条五項、「七年を超えない範囲内において政令で定める期間」、こうなっていますから、おっしゃるように、法理論上からいえば一日から七年、こう考えるわけでございます。

川内委員 先ほど私が、最初にというお言葉を入れていただいて改正案を御提出くださいと申し上げました。さらに、その改正案が施行されるまでの間は、大変に皆さんこの法律だけでは不安でありますから、この政令の部分でレコード業界の暴走というものをコントロールしていただきたいというふうに思うんです。

 ここの部分だけは、これは大臣、大臣答弁が法的拘束力を持ちますから、ぜひ、もし万々が一、もちろん何も起きなければ、それはみんながハッピーです。そして、この法律が施行後、すぐ輸入がとまるなんということはだれも考えていないし起きないと思います。しかし、大ヒット曲、百万枚売れるようなもの、二百万枚売れるようなものに関しては、人がかわり、時が移れば、レコード会社もこれは商売させてほしいといろんなことを考えるかもしれない。もしそうなったときには、この政令で定める七年以内という期間を大幅に短くする、例えば一カ月とか、例えば二カ月とか。そうすれば、この百十三条の五項の効力そのものが、非常に、今の状態、この法改正前の状態に戻るわけですから、そういうことを、今までの質疑を踏まえた上でしっかりとそれは考えている、文部科学省に、文化庁に任せろということを御答弁いただきたいというふうに思います。

河村国務大臣 御指摘の点でありますが、法律の存在そのものを消滅させるような期間の設定というのは、これは非常に難しい話だ、こう思います。しかし、そのような事態が生じたということになれば、法律の見直しで対応する、これは当然であると思っています。

 その一環で、政令で定める一定期間、これについての見直しを検討することもありますので、その場合の具体的な期間については、関係者の意見も聴取しながら適切な期間を設定していく、こういうことで対応したい、こういうふうに思います。

川内委員 適切な期間で対応したい、もっと、私はずっと言っているじゃないですか、大臣が大好きですと。もうちょっと色をつけていただきたいんですよ。

 ここの部分は、いやいや本当に、ここの部分は、大臣のおっしゃることが非常に後々きいてくるんですよ。ここの部分は、なぜなら、行政がコントロールできるところですから、政令だから。したがって、閣議決定でもあるいは知財の改定版でも見直しに言及をしているわけですから、この政令の部分も、法運用に当たっては、しっかりと状況を見ながら適時適切に対応してまいりたいというような、短い期間も想定しているぞということを、ぜひ大臣、男の中の男ですから、言ってくださいよ。事務局ここまで守ったんだから、最後ぐらい言ってくださいよ。

河村国務大臣 これは、七年と決めたそれなりの根拠もあって、七年までという形をとらせていただきました。

 そこで、具体的な期間ですね。これは、同一の音楽レコードが国内において販売されてから七年を超えない範囲ということですから、今回の還流防止措置、これによって権利者の利益の保護の状況あるいは消費者に与える状態、影響、こういうものを総合的に勘案して、周知期間を考慮しながら、大体施行日の二カ月程度前までに決めろ、こういうことでありますから、来年の一月一日からとすれば、この秋には決めなきゃならぬ、そういうことになろうと思います。

 もちろん、この短縮はどのぐらい可能なのか、そういうことも含めて、関係者の意見も聞いて、それこそ慎重に対応していきたい、こういうふうに思います。

川内委員 なかなか世の中というのは思うに任せないなと、いろいろなことを思うわけであります。

 あと質疑が残り五分でありまして、今回のこの著作権法の改正案については、ちょっときょうは意地悪も申し上げましたけれども、邦楽の還流防止だという趣旨に関しては、恐らくだれも異論を差し挟まないというか、それは結構なことだというふうにみんなが思っていると思うんですね。

 しかし、法律の構成を見ると、むくむくと懸念がわき起こってくるし、その懸念を打ち消したくて政府の皆さんにいろんなことをお聞きすると、ますます大丈夫かなという懸念が大きくなっていった。そして、私が最後に、法文の書き分け方について御提案を申し上げ、政令で決められる部分についてお尋ねをしても、大臣はなかなかに私の思うような御答弁をいただけない。もう本当にこんなに好きなのにと思うんですよ。

 大臣、私が出した質問主意書の答弁書に対しても、これは答弁書、閣議決定ですよね。その中に、見直しについては、必要なときに必要な措置を講ずるということを答弁書の中で書いてきていただいておりますし、そしてまた、知財計画の改定版にも、これはさまざまな御要望を踏まえた上で見直しについて触れている。

 せめて、この質疑が終局後、私どもが修正案を提案させていただく予定になっておりますが、この附則に見直し規定を置くと、恐らくこれは多分与党の先生方は何を言っておるんだということで反対をされるというふうに思います。ただ、質疑の経過の中で、やはり懸念があるということは、すべての委員の先生方にも共通の思いであろうと思いますし、最後に大臣、この見直し規定を置く、あるいは見直し規定を置くというより、この法律を次の国会に向けて見直し作業を早速始めるというぐらいはおっしゃっていただきたいんですよ。

 見直すと言っているんですから、この時点でこれだけ問題が明らかになったわけですから、次の国会に向けて見直しの作業を始めるというぐらいはおっしゃっていただきたいというふうに思いますが、いかがですか。

河村国務大臣 川内博史先生が、音楽ファンの皆さん方の懸念、これを払拭すべく大変勉強をされてあらゆる角度からいろいろ質問をいただいたこと、これは重く受けとめたいというふうに思います。

 しかし、著作権法の改正、これがいつの場合においても絶えず著作権の改正は行っておるわけでございまして、法律の見直しというのは、これは不断、絶えず行わなきゃいけない、このように認識をいたしておるわけでございまして、今先生いろいろ御指摘いただいた面も踏まえ、また、先ほど申し上げましたように、期間を決めるとか、こういう問題がございます。そういうことも含めて、全体のこの法案の状況というのを見ながら、御指摘いただいた点はしっかり受けとめさせていただいて、不断の改革、改正、そういうことは絶えず考えていきたい、こういうふうに思います。

川内委員 不断に改正の考えを持っているという私なりの解釈をさせていただきたいというふうに思います。

 レコード輸入権を最近廃止した国にオーストラリアという国があるんですが、権利をつくると、廃止するのは本当に、見直すのは本当は物すごく大変なことだと思うんですね。オーストラリアでは、レコード輸入権をつくったがために物すごい音楽が高くなってしまいまして、その廃止をするのにも、政権交代がなければ廃止できなかったというぐらいに、廃止に苦労したようであります。

 今回の著作権法改正案を通じて、冒頭に申し上げたとおり、公正なルール、透明な議事、そして正確な情報の提供というものが、この著作権法、知的財産の新しい権利をつくっていく場合の、私たちに与えられた課題であるということが明らかになったというふうに思います。ぜひとも、皆さんに頑張っていただいて、国民の皆さんに喜んでいただける法律と運用というものをお願いさせていただきまして、私の質問にさせていただきます。

 ありがとうございました。

池坊委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 この際、本案に対し、牧義夫君外二名から、民主党・無所属クラブ、日本共産党及び社会民主党・市民連合の三派共同提案による修正案が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。牧義夫君。

    ―――――――――――――

 著作権法の一部を改正する法律案に対する修正案

    〔本号末尾に掲載〕

    ―――――――――――――

牧委員 ただいま議題となりました修正案について、提出者を代表して、その主な趣旨及び概要を御説明いたします。

 政府原案においては、著作権制度をめぐる内外の情勢の変化に対応し、著作権等の適切な保護に資するため、アジア諸国など物価水準の異なる国において許諾を受けて生産された商業用レコードが我が国に還流してくることを防止する措置を講じることとしているところであります。

 しかし、この措置は、立法趣旨と異なり、還流レコード以外の音楽レコードの輸入にまで影響が及ぶ懸念があります。

 このため、本修正案においては、多様な輸入レコードが我が国の音楽文化・産業の発展に寄与してきた経緯を踏まえ、消費者保護及び適正な流通市場の維持の観点から、音楽レコードの還流防止措置の運用状況を踏まえ、必要に応じ見直しを行う必要があるとの認識から、政府は、同措置の運用状況を勘案し、必要があると認めるときは、検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする規定を附則に加えるものであります。

 以上が、本修正案の趣旨及び概要であります。

 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 これより討論に入るのでございますが、討論の申し出がございませんので、直ちに採決に入ります。

 内閣提出、参議院送付、著作権法の一部を改正する法律案及びこれに対する修正案について採決いたします。

 まず、牧義夫君外二名提出の修正案について採決いたします。

 本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。

 次に、原案について採決いたします。

 原案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、遠藤利明君外四名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党、日本共産党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。遠藤利明君。

遠藤(利)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    著作権法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 商業用レコードの還流防止措置の存在が欧米諸国からの洋楽のレコードの並行輸入及びすべての商業用レコードの個人輸入等を阻害することのないよう、内外の著作権者及び著作隣接権者に対し最大限の配慮を求めるとともに、欧米諸国からの洋楽の並行輸入等が阻害されるなど消費者の利益が侵害される事態が生じた場合には、還流防止措置の見直しを含め、適切な対応策を講じること。

 二 商業用レコードの還流防止措置の運用に当たっては、私的使用のための個人輸入や並行輸入等により多様な輸入レコードが国民の間に浸透し、音楽に関する文化・産業の発展に寄与してきた経緯等を踏まえ、制度の趣旨に則し、権利の侵害とみなす要件の明確化とその周知に努めるとともに、消費者保護及び適正な流通市場の維持の観点を重視した運用がなされるよう、十分留意し、監視すること。

 三 還流防止措置を適用する期間を政令で定めるに当たっては、権利者、消費者等関係者の意見を十分に聴取し、適正な期間とするとともに、今後の動向も見ながら適宜検討を行い、見直しを図ること。

 四 日本のレコード会社は、日本国内での販売を規制する作品について海外にライセンスするに当たり、日本国内発売禁止と外から見えるようにジャケット若しくはインレイに表示するようライセンシーに要請するなど、適切に対応すること。

 五 還流防止措置の対象となった商業用レコードについては、当該作品の日本国内での販売状況について国内のレコード会社に定期的に報告を求め、国内のレコード会社がもはや発行していないと認められた場合には、速やかに還流防止措置の規制対象外とし、レコード流通業者、小売店及び消費者に告知するよう努めること。

 六 還流防止措置導入後の消費者への利益還元、内外価格差及び商業用レコードの輸入状況等諸情勢について、継続的な評価及び分析を行い、還流防止制度全般について、必要に応じ適切な措置を講ずること。

 七 還流防止措置の運用状況、商業用レコードの国内価格の変動、海外での邦楽レコードの販売状況、商業用レコードの再販制度をめぐる議論その他還流防止措置の必要性並びに消費者及びレコード流通業者の権利利益の保護をめぐる状況について把握するとともに、広く消費者への周知に努めること。

 八 本法施行後一定期間経過後、還流防止措置の必要性並びに消費者及びレコード流通業者の権利利益の保護をめぐる状況について検討を加え、その結果に基づいて還流防止措置の廃止、保護期間の短縮を含め必要な措置を講ずること。

 九 還流防止措置の導入により、再販制度とあいまって商業用レコードの価格が二重に保護されることになるとの指摘等も踏まえ、販売価格の引下げ等消費者への利益の還元に更に努めるとともに、再販制度については、消費者保護の観点から、再販期間の短縮等一層の弾力的運用に努めること。

 十 海賊版による権利侵害に対しては、侵害状況調査の拡充や侵害発生国政府への対策強化の積極的な要請等、実効性のある対策に努めること。

 十一 書籍・雑誌の貸与権の行使に当たっては、公正な使用料と適正な貸与禁止期間の設定によって許諾し、円満な利用秩序の形成を図るよう配慮すること。また、権利者の利益の保護を図るとともに書籍・雑誌の円滑な利用の促進に資するため、書籍・雑誌の貸与権を管理する新たな機関の適切な運営及び環境の整備に努めること。

 十二 今後の著作権法の改正に当たっては、文化審議会著作権分科会の議論の前提となる関係者間協議において、消費者関連団体が加わるよう配慮すること。

 十三 多くの国民がインターネットを通じて自らの創作物を公表するなど、表現手段の多様化により、それぞれが利用者になると同時に権利者となる「一億総ユーザー、一億総クリエイター」の時代を迎えている中、国民が著作権を身近な問題として考え、自ら判断し行動することが求められていることから、学校等における「著作権教育」の充実や国民に対する普及啓蒙活動に努めること。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。

池坊委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

池坊委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。河村文部科学大臣。

河村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいります。

 ありがとうございました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後三時三十一分散会


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