衆議院

メインへスキップ



第26号 平成16年6月11日(金曜日)

会議録本文へ
平成十六年六月十一日(金曜日)

    午前十時一分開議

 出席委員

   委員長 池坊 保子君

   理事 青山  丘君 理事 伊藤信太郎君

   理事 遠藤 利明君 理事 渡海紀三朗君

   理事 川内 博史君 理事 平野 博文君

   理事 牧  義夫君 理事 斉藤 鉄夫君

      宇野  治君    江崎 鐵磨君

      小渕 優子君    奥野 信亮君

      加藤 紘一君    金子 恭之君

      上川 陽子君    城内  実君

      岸田 文雄君    倉田 雅年君

      近藤 基彦君    鈴木 恒夫君

      田村 憲久君    西村 明宏君

      馳   浩君    古川 禎久君

      山際大志郎君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    小林千代美君

      古賀 一成君    須藤  浩君

      高井 美穂君    土肥 隆一君

      鳩山由紀夫君    肥田美代子君

      牧野 聖修君    増子 輝彦君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      富田 茂之君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       河村 建夫君

   文部科学大臣政務官    田村 憲久君

   文部科学大臣政務官    馳   浩君

   政府参考人

   (警察庁生活安全局長)  伊藤 哲朗君

   政府参考人

   (財務省大臣官房審議官) 大前  忠君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 白川 哲久君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)   銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)   近藤 信司君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)   加茂川幸夫君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)   田中壮一郎君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)   金子 順一君

   政府参考人

   (厚生労働省大臣官房審議官)   鶴田 康則君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

六月十一日

 辞任         補欠選任

  今津  寛君     倉田 雅年君

  近藤 基彦君     金子 恭之君

  鳩山由紀夫君     増子 輝彦君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     近藤 基彦君

  倉田 雅年君     今津  寛君

  増子 輝彦君     鳩山由紀夫君

    ―――――――――――――

六月十一日

 学校教育法の一部を改正する法律案(武正公一君外三名提出、衆法第四八号)

同月四日

 私立幼稚園教育の充実と発展に関する請願(川内博史君紹介)(第二八一一号)

 教育基本法の改悪反対に関する請願(大出彰君紹介)(第二八五〇号)

 同(土肥隆一君紹介)(第二八五一号)

 同(照屋寛徳君紹介)(第二八八一号)

 同(辻惠君紹介)(第二九一一号)

 同(土井たか子君紹介)(第二九四三号)

 同(横光克彦君紹介)(第二九四四号)

 著作権法による恒常的洋楽商業用レコード輸入禁止可能化規定創設反対に関する請願(奥田建君紹介)(第二九四〇号)

 同(中村哲治君紹介)(第二九四一号)

 同(肥田美代子君紹介)(第二九四二号)

同月七日

 著作権法による恒常的洋楽商業用レコード輸入禁止可能化規定創設反対に関する請願(佐藤謙一郎君紹介)(第二九七七号)

 同(井上和雄君紹介)(第三〇二八号)

 同(城井崇君紹介)(第三〇二九号)

 同(川内博史君紹介)(第三〇七〇号)

 同(今野東君紹介)(第三〇七一号)

 同(樽井良和君紹介)(第三〇七二号)

 同(近藤洋介君紹介)(第三一二一号)

 同(高井美穂君紹介)(第三一二二号)

同月八日

 教育基本法の改悪反対に関する請願(東門美津子君紹介)(第三一七一号)

 著作権法による恒常的洋楽商業用レコード輸入禁止可能化規定創設反対に関する請願(小林千代美君紹介)(第三一七二号)

 同(高山智司君紹介)(第三一七三号)

 同(中津川博郷君紹介)(第三一七四号)

 同(橋本清仁君紹介)(第三一七五号)

 同(原口一博君紹介)(第三一七六号)

 同(山田正彦君紹介)(第三一七七号)

 教育条件の改善と教育予算の増額に関する請願(鎌田さゆり君紹介)(第三二四〇号)

同月九日

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(北側一雄君紹介)(第三三〇三号)

 助産の高度専門職大学院での質の高い助産師教育実現に関する請願(川端達夫君紹介)(第三三〇四号)

 教育基本法の改正反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三三〇五号)

 教育基本法の改悪反対に関する請願(阿部知子君紹介)(第三三〇六号)

同月十日

 学校事務職員・学校栄養職員の定数改善と給与費等半額国庫負担の拡充に関する請願(古本伸一郎君紹介)(第三五五五号)

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(神崎武法君紹介)(第三五五六号)

 同(古賀潤一郎君紹介)(第三六五一号)

 父母負担の軽減、私学助成の拡充に関する請願(古本伸一郎君紹介)(第三五五七号)

 国立バレエ高等学校の設立に関する請願(斉藤鉄夫君紹介)(第三八四二号)

 同(中馬弘毅君紹介)(第三八四三号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


このページのトップに戻る

     ――――◇―――――

池坊委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として警察庁生活安全局長伊藤哲朗君、財務省大臣官房審議官大前忠君、文部科学省大臣官房長白川哲久君、生涯学習政策局長銭谷眞美君、初等中等教育局長近藤信司君、高等教育局私学部長加茂川幸夫君、スポーツ・青少年局長田中壮一郎君、厚生労働省大臣官房審議官金子順一君及び大臣官房審議官鶴田康則君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

池坊委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

池坊委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。伊藤信太郎君。

伊藤(信)委員 自由民主党の伊藤信太郎でございます。

 まず冒頭に、昨日亡くなられました、私の友人でもある和泉流狂言師、京都造形大学教授の野村万之丞さんの死を悼み、哀悼の意を表したいと思います。四十四歳というまことに若過ぎる死でありまして、つい二カ月前、私と二人でイタリア料理で日本の文化芸術について語ったばかりでございました。心から御冥福をお祈りしたいと思います。

 きょうは、悲しい話ばかりなのでございますけれども、長崎県佐世保市の市立大久保小学校で起きた小学六年生の女児による殺害事件についてお尋ねしたいと思います。

 この事件、日本国民どの方も大変な衝撃と悲しみ、そしてやり場のない怒りを感じている、そういう事件だろうと思います。本当にどうしてこういう事件が起きたのか。理由は一つではないと思うんですけれども、特に、小学校、初等教育を所管する文部科学省として、この事件についてどのようにお考えなのか、そして文部科学省の今までの初等教育のあり方に何か大きな欠落点はなかったのか、その点についてお伺いしたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 今回の事件は、学校の中で小学校六年生の女子児童が同級生の女子児童をカッターナイフで切りつけ死亡させるという大変痛ましい事件であり、私どもといたしましても重く受けとめているところでございます。

 現在、長崎県教育委員会等を通じまして状況の把握に努めているところでありまして、去る六月八日には職員三人を現地へ派遣いたしまして、長崎県教育委員会、佐世保市教育委員会並びにこの学校関係者から事情を聴取したところでございます。

 事件当日の対応状況でありますとか学校での様子、そういったことを事実確認したわけでございますが、何分にもこういう少年少女の事件でもございますし、現在は家庭裁判所による審判開始決定というようなことも手続としてなされているわけでございまして、また、佐世保市の教育委員会の方では、これまで子供や教職員のケアを優先せざるを得なかったというようなことから、なかなか現在まだ、この原因でありますとか動機を特定するまで、そういった整理ができていない状況でございます。

 引き続き私どもは、長崎県教育委員会を通じまして、この事件の概要について把握をしてまいりたいと考えているところでございます。

 これまで、私ども、こういったいろいろな少年の問題行動が起きるたびに、心の教育の充実でありますとか、あるいは教員の資質、能力の向上、スクールカウンセラーの配置、あるいは学校、家庭、地域社会の連携、そういったことで、協力者会議の御提言も受けながらいろいろな施策も講じてきたわけでございますが、なおこういった事件が起きていく。

 しかも今回は、インターネットを活用して、そういったいろいろなことも指摘をされておるわけでございまして、私ども、現在省内に、大臣の御指示もいただきまして、六月四日にプロジェクトチームを設置いたしまして、命を大切にする教育、学校で安心して学習できる環境づくり、情報社会の中でのモラルやマナーについての指導のあり方などについて、もう一度、どこまで進んできたのか、その検証と今後の問題行動に対する取り組みの一層の充実に向けての検討を進めることにいたしておるわけでございます。そういった検討も踏まえながら、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

伊藤(信)委員 こういった事件が起きるたびに、対策といいますか、再発防止策ということが言われるわけですけれども、どうも今までの対応を見ていると、何かパッチワーク的な、本源的な部分についての深い考察がやはり十分ではない。であるから、こういう事件が繰り返し起きるわけでございます。

 戦後の日本の教育の中で、いろいろな問題といいますか欠落があると思いますけれども、心の教育といいますか、少し古い言葉を使えば、道徳教育というかあるいは倫理教育といいますか、そういったものがやはりどうも十分ではなかったのではないか。そして、人に優しくあるためには、人を愛するためには自分が強くあるということがやはり必要だと思うんですね。今度の関係者の対応を見ていると、自分の心の弱さの方が露呈して、児童を守るというところまで十分いっていないということも露呈していると思います。

 ですから、教職員、あるいは社会人の教育も含めて、今後、日本の教育をどう立て直すのか、そしてまた、今視野に入っております教育基本法の改正という中に今度の教訓をどのように生かしていくのか、その点について文部科学大臣にお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 伊藤委員御指摘のとおり、今回の事件、大きな教訓を残していると思いますし、我々もこの事件をしっかり受けとめて、そして、教育現場においてももう一度教育の原点といいますか、そういうことを考えながらこれからの対応を図っていかなきゃいかぬ、こう思っております。

 今回の事件で教えられたといいますか、先生も、教員も生徒としっかり向き合っているつもりでも、子供たちの方がその先を行っているといいますか、例えば、インターネットを使って見えないところでお互いに議論し合っている、あるいは悪い感情を持ち合っておったとかいう、そこまで見えない、こういうことも現実に起きておるということ、それから、子供たちに、我々が考えている以上にテレビとかあるいは映画も含めて、そういうものの影響が大きくあるということ、こういうことをかねてから言われておったわけでありますが、こういう具体的な事実を目の前にいたしますと、まさにそういうことがあるんだということを突きつけられたわけであります。

 そういう問題にぶつかる、あるいはバーチャルの世界、そういうものの中に入っていったって、やはり現実をちゃんと見つめて、やっていいこと、悪いこと、その識別がつくような強い心といいますか、あるいは正しい心といいますか、そういうものを日ごろから養成していくということが大事になってきた。それがこれまで十分であったかどうかという反省点に立たなきゃならぬと思っております。

 そういう意味で、教育基本法が人格の完成をうたい、そのことそのものが決して私は間違っていると思いませんけれども、では、それを具体的にどういうふうにやっていくかということを、もっとインパクトを持って考えていかなきゃいかぬ。そういう意味で、教育基本法の改正の中においても、家庭教育の重要性でありますとか、あるいは地域社会、地域の教育力の問題、そういうものも含めた基本的な考え方をやはり織り込んで、国民全体がこういう問題に取り組んでいける体制をつくっていくということが大事だと思います。

 倫理とか道徳とか、ややもすると何か古い言葉のように思える、伊藤先生も今、古い表現かもしれぬとおっしゃったけれども、しかし、やはり人間の不易なもの、人間として生きていく上で非常に大事なもの、そういうものを大事にする教育といいますか、これは教育の一面的なものだけではありませんけれども、日常の生活の中でそういうものを大事にする、そういうまさに心を養っていく、それはやはり教育もその一端がある、こう思っております。

 今御指摘をいただきましたように、そういうものを根本から教育の原点に立ち返って考えていくということになれば、まさに教育基本法の改正ということ、そういうことを考えていかなきゃいかぬ。そういうものを織り込みながら、まさに子供たちにとって、命を大事にし、また心を大事にする、人間いかに生きるべきか、こういうような問題まで入っていくような、まさに大事な、そこで基本的なことをやはり教育で学びながら、そしてそれの実践を社会の中できちっと受けられるような、社会体験が足らないんじゃないか、こういういろいろな御意見もありますが、そういうことを踏まえた形で教育の基本的な原点に立ち返る。

 そういう意味で、今回、教育基本法を見直そう、改正しようということで御議論をいただき、その大詰めを迎えておる、こういうふうに考えておるところでございます。

伊藤(信)委員 次に、東北文化学園大学の問題についてお聞きしたいと思います。

 堀田元理事長の脱税事件を端に次々と明るみに出るこの大学の不祥事、全く異常とも言える経営のあり方、設置時における架空寄附、そして二重帳簿、不正が次々と明らかになる中で、いろいろな金融機関のお金の引き揚げ等もあって、今大変厳しい状態になって、二百億を超える債務があるわけでございますけれども、まさに、今、にっちもさっちもいかない状態になっております。

 この大学には、二千五百六十七名の学部生、三十八人の大学院生、六名の研究生が日本全国から来て学んでおります。北海道から沖縄まで、来ております。この教育機会の確保あるいは再構築を願って六万名の署名も集められて、私も、何とかこの学生の教育機会というものをつくっていくというか、再構築していくという中で動いているわけでございますけれども、こういう大学をそもそも認可した、そしてまた、六年余にわたってこういう異常な、不正な経営というものを看過していた文部科学省のその責任というものを問うものがすごく多いわけですね。

 学生あるいはその父兄から来たいろいろな手紙なりを見ますけれども、大学として認可されていなければこういうところへ自分の子供は行かせなかったし、そして今まで数百万を超える授業料を自分たちの生活費を切り詰めて払ってきた、そして子供たちは、この大学がすばらしいと思ってその青春をかけてきたわけです。

 こういった中で、文部科学省としてどういう責任を感じられているのか、そしてまたその責任をどのように果たそうとしているのか、お聞きしたいと思います。

加茂川政府参考人 学校法人東北文化学園大学の大学設置認可申請に係る問題につきましては、私どもとしましては、大学の設置認可の根幹にかかわる大変重要な問題であると認識をいたしております。

 先生御指摘のように、この法人の認可に係る審査につきましては、手続としましては、第三者機関である大学設置・学校法人審議会の学校法人分科会におきまして客観的な審査が行われたわけでございます。

 しかし、架空寄附の計上という悪質な方法によって、いわば所轄庁を欺く形で設置認可の申請が行われましたこと、またいわゆる二重帳簿によりまして学校法人会計全体が粉飾されていたこと等、ゆゆしき事実が判明したわけでございまして、結果として重大な瑕疵を見過ごす形で大学設置認可をすることになりましたこと、また不正な会計処理を長期間放置することになったことにつきましては、私ども行政上の対応に不十分な点、非があったのではないかという御批判もあろうかと思います。こういった御批判に対しましては、謙虚にこれを受けとめなければならないものと考えておる次第でございます。

 もとより、学校法人の経営は、その自主性を尊重するという私立学校法の基本的な考え方に基づきまして、通常の経営につきましては、所轄庁が細かく関与する仕組みにはなっていないわけでございます。しかし、御指摘の御批判等に対しましては、私ども重く受けとめまして、何よりまず学生の立場、利益、あるいは保護者の立場、利益を最優先にした対応を今後速やかに講じることで、まず行政の責任を果たしていきたいと思っておりますし、さらには、今回の教訓を十分に踏まえまして、いろいろな再発防止策も検討しなければなりません。大学等の設置認可の審査のあり方につきましても、見直すべき点がないか等、真摯に問題を受けとめて検討してまいりたいと考えておるところでございます。

伊藤(信)委員 この大学、きょうも地元の新聞の記事に出ておりますけれども、西松建設に出した二億一千万の手形が不渡りになっております。五月から教職員の給与も支払われていない。そして、十日、非常勤の講師に対する給与も支払われていない。そして、もうじき六月の二十五日が来ます。そしてまた、水道、光熱費も滞納して、今、コピーのインクのトナー代もないと言われている。まさにがけっ縁の状態なわけですね。

 そういう中にありまして、文部科学省の対応を見ていると、どうもスピード感に欠ける。何か私立大学の経営の自主性というようなことを隠れみのに、これだけ不正なり異常があり、学生ががけっ縁に立っているのに、それを救うためにスピード感を持って積極的にそれを実施しようとする態度に欠けるように私は非常に感じるわけです。

 認可した文部科学省の責任として、この二千六百人の学生がやはり青春をむだにした、あるいはその人生でつまずかないようにする責任が私はあると思うんですね。そのタイムリミットはもう非常に迫っている。多分、最大二週間、もっと言えば一週間だと思いますね。ですから、この間にやはりもう少し責任をとって、しっかりと学生の勉学機会を確保する具体的な手段をとるべきだと思うんですね。

 その前段として、では、今二百億を超す債務があるというけれども、どこがどういう債権を持っているのか、このリストの提出を求めたいと思いますし、この場に及んでまだ理事が報酬を取っている危険性もありますので、そもそもここの大学の理事、評議員、顧問というものがどういう出身官庁から来ているのか、あるいは自治体から来ているのか、天下りですね、そしてまた関係の大学から来ているのか、その報酬はどうなっているのか、この件について明らかにしていただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 まず、最近の法人の経営状況についてでございますが、先生御指摘のように、学校法人は極めて厳しい財政状況下にございまして、手元資金の不足から、五月の給与、五月二十五日に支払うべき給与がございましたけれども、これが遅配になっております。また、昨日給料日でございました非常勤講師の報酬も未払い状態にございまして、財政状況が極めて逼迫をいたしております。

 このような状況の中で学校法人としましては、現在、私ども、毎日のように連絡をとり必要な指示を行っておりますけれども、大学の存続を前提として、当面の資金の融資を含む支援者の確保に向けてぎりぎり、最終段階にも近いようなぎりぎりの努力を続けておるところでございまして、私どもも十分連絡をとっていきますが、現時点ではそのめどが立っていない、大変厳しい状況にあるというのもまた事実でございます。

 債権者のことについてのお尋ねがございました。債権者のリストにつきましては、ここに個々の債権者の個人情報が当然に含まれてきますために、いわゆるプライバシー保護の観点から、個々の債権者の情報を提供することにつきましては難しい点があります事情を御理解いただきたいと思っていますが、私どもが大学から報告を受けております十五年度末時点における債権者の概要について申し上げます。

 関連法人である学校法人友愛学園、これは専門学校等を設置しておる法人でございますが、これを合わせまして、現在、債権者として報告を受けておりますのは合計三十四件、債権総額、債務総額とも言いかえることができると思っておりますが、私どもの把握しておりますのは合計約二百十九億円でございます。

 内訳を申し上げますと、個々には申し上げられませんのでくくった形で申し上げますが、いわゆる銀行系、メーンバンクを中心とします銀行系が六件で、約百三億円でございます。ノンバンク系が四件ございまして、約二十四億円。リース会社の関係が十七件で、約十八億でございます。その他の企業等が七件で、七十四億円ほどございまして、合計で債権総額は二百十九億円となっておるわけでございます。

 また、理事等役員の報酬についてもお尋ねがございましたので簡単にまとめて申し述べますが、理事につきましては、現在十五名、現時点で十五名の理事がおられます。常勤が六名、非常勤が九名でございます。

 このうち出身別に見ますと、官庁関係者、私ども文部科学省、当時は文部省でございますが、二名を含めまして官庁関係者は五名含まれております。それから、地元の自治体関係者が二名含まれております。また、大学教員出身者が三名、その他五名、計十五名という内訳になってございます。

 この役員に対する報酬でございますが、各法人によって給与の支払い方に違いがございますけれども、本学におきましては、本法人におきましては、役員に対する報酬は支払われておりません。ただ、常勤役員、常勤理事に対しましては、教職員としての給与を支払ってございます。この合計が、十五年度で締めますと、常勤理事はこの時点では八名おりましたけれども、十五年度、常勤理事八名に対して支払われた給与の総額は約一億二千四百万円でございます。

 個々の給与額等につきましては、先ほども申し上げましたが、個人のプライバシーに関するものでございますので、事情を御理解いただきたいと思っております。

 また、評議員でございますが、評議員は現在二十三名おりまして、出身別に見ますと、当該学校法人の職員が三名、官庁関係者が二名、これはいずれも文部省に縁のある者でございます。自治体関係者が一名、その他民間企業等から十七名の内訳となっております。

 同様に、評議員に対する報酬の制度はございません。無報酬でございます。職員としての身分を有しておる者七名につきましては、職員としての給料を受けておるわけでございます。

 また、顧問についてもお尋ねがあったかと思いますが、顧問につきましては、この制度、そもそも学内規程上の位置づけがどうなっておるのか、取り扱いはどうなっておるのか、照会をしておるところでございまして、法人としては氏名等もまだ公表していないという事情もございますので、照会中ということで御了解をいただきたいと思います。

伊藤(信)委員 お聞きのように、大変な数の方が官庁から天下っているんですね。ですから、このことがやはり、設置認可時に何らかの便宜を図る、あるいは、これだけの人が名前を連ねているので金融機関が信用して、あるいは金融機関が便宜を図っていろいろな操作をしたということが考えられると思いますけれども、その点についてお聞きしたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど答弁しましたように、役員等に官庁関係者等が含まれておるわけでございますが、設置認可の手続、公平であるべき設置認可の判断あるいはその後の法人経営の指導について、何らその影響があったということは私どもは考えておりませんで、客観的な事務処理が公正に行われたものと考えておるわけでございます。

伊藤(信)委員 だとすると、相当、その設置時に書類をチェックする人が財務に疎いというかお人よしかということだと思いますね。

 確かに、ペーパー上は寄附ということで、残高証明等があったと思いますけれども、残高証明というのは、その日一日、そこの口座に一瞬入っていればとれますから、その後の六年間のやりくりというのを全然わからないというのは、素人でもちょっと納得いかないなと思います。

 それで、これだけの人が、文部科学省だけではありません、総務省や厚生労働省も入っていると思いますけれども、理事等に名前を連ねているということが、今までこの学校の運営に対するチェックを甘くしていたということが、私は疑義として残るんだろうと思います。

 しかし、今重要なことは、やはりこの二千六百名の学生の勉学機会をどうやって再構築するかということでございますけれども、タイムリミットが非常に迫っておりますが、なかなか現在の経営者、学校当局が正確な財務状況を出してこない、そしてまた、具体的な再建策も出してこないというところで、物理的に教学ができなくなるという危険性、おそれが非常に高いわけですね。ですから、文部科学省として、具体的に、どういう方針なりどういう工程で、この大学の学生の勉学機会を確保しようとしているのか、あるいは再構築しているのか、お聞かせ願いたいと思います。

加茂川政府参考人 現在、大変厳しい状況下にあって、その再建といいますか今後のあり方について法人が大変努力をしておるわけでございまして、私ども十分それと連携を図りながら、何より学生の利益、立場を確保する観点から対応しておるわけでございます。

 まず必要なのは財務状況の正確な把握でございまして、既に五月末時点で報告書を出していただいております。特に資産の評価等について法人からいただきました報告につきまして、私ども、これがそのものの数字と受け取っていいのかどうか正確な判断ができないと今考えておるところでございまして、学校の緊急調査委員会の中には公認会計士の方々も含まれておりまして、その協力を得て法人も鋭意取り組んでおるようでございますけれども、まず把握をした上で、そして、その財務状況を踏まえて、資金繰り、または支援者の確保等について努力をしているんだと思っておりますが、財務状況を明らかにした上での対応がまず必要だと思っておるわけでございます。

 そして、先生おっしゃいましたように、時間的な限りもあるわけでございますから、スピーディーな対応を大学側に、具体にどういう再建策を考えておられるのかを、明示を迫っていきたい、強く指示して提出を求めていきたいと思っております。

 具体な再建策、計画につきましては、これはいろんな影響等もございますので、まずは法人が考える幾つかの案について私どもが積極的にかかわって、先ほど申しました、学生、保護者の立場を十分配慮した調整、関与をしていきたい、こう思っておるわけでございます。

伊藤(信)委員 今までの法人の対応を見ていると、ぐずぐず延ばして、しかも、この前出してきた財務報告も全く信憑性のないものなんですね。このままいくと本当に時間切れになると思うんです。ですから、文部科学省としてはもう少し、強権的にという言葉が適当かどうかわかりませんけれども、少なくとも積極的に、やはり大学からしっかり財務状況を把握するように、直接、間接を問わず動くべきだと思います。

 それから、再建策のオプションといいますか、いろいろな可能性についても、もちろん私立大学の経営の自主性ということはありますけれども、これはもう緊急事態ですし切迫性のあることですから、文部省がある程度具体的に示していくということが私は必要だと思います。

 その件についてお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 この東北文化学園大学の問題についていろいろ御指摘をいただき、私もこういう事態になったことを非常に遺憾に思っております。

 確かに、私学の自律性といいますか、そういうものを非常にこれまでも我々も大事にしてきた嫌いもございます。それから、認可等についても、ややもすると、認可はできるだけ、もう一々うるさいことを言わずに、私学の自主性、私学の信頼性、そういうものを高める上において、自主自律の形でやっていただいて事後チェックをという声もあって、これまでは、認可についても二年間ぐらいかけて、もちろん事前に校舎をつくるなんてとんでもないというかなり強圧的な形でやってきました。しかし最近は、規制緩和だ、もっと自主性を尊重しろというような声もあって、あれを一年間というのに短縮したりした、こういう傾向もございます。

 今回、その反省、東北文化学園だけでなくて、最近の私学の経営についてはいろいろ指摘されている面もあって、今回の私立学校法の改正等もやっていただいて、かなり財政等についてもオープンにしていただく、それだけまた信頼性を受けるようにしていただくという方向をとり出してきたわけでございます。

 今回のこの問題は、何はさておいて、今御指摘のように現実に在学生がいる、この在学生の皆さんの在学、修学の機会というものを失わせてはならぬ、これが今当面文部科学省がとらなきゃいけない最大の課題だと考えておりますので、これをどういう、もちろん、今の文化学園がきちっとした対応をやっていただいて自主自律で継続していただくことが第一です。

 しかし、今の状態で見ると、どういう不測の事態が起きるかわからない。その場合にどうするかということも考えておかなきゃなりません。事例が既に一回は広島県でもあるわけでございますが、近隣の大学の中で学生を受け入れていただくということも具体的に考えなきゃいかぬ、それから、今回の大学を再生するための法的な措置というような問題もあると思います。一方では経営的な問題もあるのであります。

 しかし、この大学に学生が現実にいるということ、これを踏まえての対応をしなきゃならぬ。現実に大学の皆さんが今の大学で学ばれるということ、継続的に学んで卒業されるということが一番大事なことだろうと思います。

 そのために何をすればいいかということ、もう余り時間的な余裕もございません。そのためにはやはり、保護者の皆さん、それから学生、またさらに教職員の理解、皆さんが一致結束してそういう思いになっていただかなきゃならぬだろうと思っておりまして、これに対して協力できる近隣の大学はどういうものがあるかということももう考えなきゃいかぬ、そういうことも考えながら対応していかなきゃいかぬ、こう思っております。

 そういう意味においては、今回の状況は極めて緊急的な状況下にある、また危機的な状況下にある、そのことを踏まえて、文部科学省としても学生の皆さんの修学機会の確保ということを第一優先に考えながら最大努力をしていきたい、こう思っておるところであります。

伊藤(信)委員 ぜひ、文部科学省が本来の役目を果たすように迅速に、積極的に、この学生が勉強できるように動くことを求めたいと思いますし、この件はこれから日ごとにといいますか、事態が進展していくものと思われます。ですから、それでもし必要があれば、ぜひこの文部科学委員会でも閉会中審査をすることを求めて、質問を終わりたいと思います。

池坊委員長 加藤尚彦君。

加藤(尚)委員 おはようございます。民主党の加藤でございます。

 今国会、私にとっては最後の質問でございます。だから、今まで質問した流れを、私自身が質問したことについてぽんぽんぽんと確認をいたしまして、そして本題に入りたいというふうに思っております。

 質問通告は、東北文化学園大学のことについても通告いたしました。しかし、今の伊藤先生の御質問、それから、午後から我が党の増子議員の質疑がありますので、私は省略させていただきます。ただ、今お話しのように、二千六百十人の学生、今晩も学生大会をやるそうなんだけれども、やはりみんな不安いっぱい、親も不安いっぱい、そういうさなかですから、それを頭に置いて、また増子議員の質問が入ると思いますので、私の方は省略させていただきます。

 それから、コミュニティ・スクール法案あるいは栄養教諭法案、こういう二つの法案についても私は質問いたしましたけれども、法案が通った後、その後の対応について、それぞれの担当の方からお答えをいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 先般、地教行法の改正をお認めいただいたわけでございまして、今私どもはその円滑な導入に向けての準備をしておるわけでございますが、まずは、各教育委員会におきまして学校運営協議会の円滑な導入が図れるように、学校運営協議会制度の意義でありますとか趣旨につきまして、できるだけ速やかに施行通知を発出いたしまして教育委員会に対し十分に周知徹底を図ってまいりたいと考えておるわけでございます。

 学校運営協議会の設置手続でありますとか委員の任命あるいは運営方法などに関連する必要な留意事項をこの通知の中でお示しするなどいたしまして、本制度の普及、定着に努力してまいりたい、かように考えておるところでございます。

田中政府参考人 栄養教諭制度の創設につきましても所要の法律改正をお認めいただきまして、私どもといたしましては、その円滑な実施に向けて、現在、都道府県教育委員会等関係者に対する説明会等に取り組んでおるところでございます。

 今後、各都道府県におきまして、免許法認定講習等の実施によりまして、現在の学校栄養職員の方々が栄養教諭免許をそれぞれ取得していただきまして円滑に栄養教諭としてそれぞれ各学校で食の指導に当たっていけるように、制度の円滑なスタートに向けて一生懸命努力してまいりたいと考えております。

加藤(尚)委員 それぞれお答えをしていただきました。

 私は、神奈川県の、県下三十数市町村あるんですけれども、それぞれの教育委員会に一応一通り全部電話しました。そして、その取り組み、対応について準備万般整っているかという質問もいたしました。どこも、実はまだできていない、まあこれからでしょうと。いわゆる評議員制度、完結したばかりで、いずれにしても、きちっとした通達なり通知が来ればその対応について努力をする、そういう言い方でありました。でも、感じとして、七〇%ぐらいの教育委員会が、弱ったな、続けてまたか、こういうイメージを私はいただきましたので、懇切丁寧の通知あるいは通達をお願い申し上げたいと思います。

 特に、僕は、個人的ですけれども、地元の中学校二つ、小学校二つ、それぞれの校長さんと会いまして、そして、これは法はいずれ来ると。教育委員会から、恐らく当初はモデルケースだと思うんだけれども、手を挙げる学校はあるかないかというときには、積極的に手を挙げるように、私たちみんなで協力するから、こういうふうに地元の中学校あるいは小学校、それぞれ二つずつの校長さんに申し上げました。しかし、戸惑っておりました。

 我々は、法案を出されて審議して、そして全員で通したわけです。ですからそういう努力も個人的にはしたわけですけれども、やはり、近藤局長みずから――近藤局長は官舎ですか、それとも自宅ですか。ちょっと一言お聞きします。

近藤政府参考人 かつては官舎に住んでおりましたが、今は自宅に住んでおります。

加藤(尚)委員 田中さんもそうですけれども、そちらは食育の方ですけれども、やはり食育の方だって、三万校あって九千人から一万人という栄養教諭では、とてもじゃないけれども、大変なんですよ。やはりそのことも予算を伴うものですから、法案通したから後は任せるよということじゃなくて、一緒になって考えるようにしてもらいながら、同時に、近藤局長には、御自分の住んでいらっしゃるところの小学校、中学校の校長さんに、忙しいということはわかっていますから、僕もやったんだから、一緒にやろうじゃないかというふうに呼びかけをすると、僕は物すごいモデルケースになるような気がしてなりません。

 同時に、委員の皆様方にも、この法案をみんなで責任を持って通したわけですから、それぞれの地域で努力してもらいたいなという希望をこの際申し上げておきたいというふうに思います。

 ところで、中高生に対していろいろな世論調査があります。いろいろ目を通してみました。

 しかし、この国の、我が日本の未来について明るいかという質問に対しては余りいい答えが来ておりません。つまり、中高の六〇%あるいはそれ以上の人が、日本の将来に明るいという気持ちを持てないというふうに言っております。

 また別に、親に対する質問もそうです、これは文部科学省の調査、二〇〇二年ですけれども、これについては、親の方も悲観的であるというデータがたくさん出ております。しかも、親の方の将来に対する不安は七〇%、八〇%ということで、子供より高いんです。だから、この前、きのうかおととい、厚労省で少子化ということが言われておりましたけれども、将来不安だから子供をつくるはずがないんです。

 だから、この文部委員会というのは、いかにすばらしい子供を生み出すか、育てるかという重要な任務をしょっている、そういう意味で、次々と出される法案について全力投球するということが当然重要になってくるわけですけれども、少なくとも、親の不安をいかにして取り除くか、子供の将来に対する不安をいかに取り除くか、これがこれからの大きな課題の一つだというふうに私は思っております。

 子供たちの学力低下とか不登校とか、あるいはいじめの問題とか不良行為とか、もうごまんとあります。そういったことをどうしたら解決できるか。それは、もちろん学校も、そして、一番重要なのは親だし、そして地域だし、あるいは警察当局だというふうに思います。

 私の知る限りの警察署でも、やはり不良化されている子供を何とか引っ張って逮捕するとか補導するというんじゃなくて、できれば一人一人がいい子供に育ってほしいという気持ちで接しているということを聞いておるんですけれども、きょう、警察庁にもお見えいただきました。警察庁の伊藤生活安全局長さんにも来ていただきましたので、ちょっと参考までに聞かせてほしいんですけれども、たくさんの不良化というか、検挙率とか非行化ということで、データもいただいておりますけれども、子供の不良化について、非行化について、あるいは検挙率について、その中で主なものをちょっと挙げていただけませんか。

伊藤政府参考人 子供の非行あるいは不良行為ということで主なものは何かということでございますけれども、大きく分けまして二種類ございます。

 まず、少年非行、いわゆる犯罪でございますけれども、その前段階ともいうべき行為として不良行為というものがございます。不良行為の中で多いのは、やはり喫煙であるとか深夜徘回であるとか、そうしたものがございまして、昨年、平成十五年中に不良行為少年の補導人員は、全国で約百三十万人の子供たちを補導しておりますけれども、そのうち約四割に当たる五十四万人強の少年が喫煙で補導されているということでございます。また、もう一つは、深夜徘回というものがございまして、深夜、子供たちが町中を徘回している、うちに帰らないということで、そうした者が、これをやや上回る数の深夜徘回の少年がいるということでございます。

 一方、少年非行ということで、いわゆる事件として補導した少年たちでございますけれども、これにつきましては、やはり事件的には窃盗というものが一番多くなっているところでございます。

加藤(尚)委員 ありがとうございました。

 喫煙とか深夜徘回、コンビニにたむろしている姿をよく見るということをせんだっての委員会でも申し上げましたけれども、それが不良化の原因の一つになっていると思うのですけれども、いずれにしても、喫煙とか、今おっしゃらなかったけれども飲酒とか、そういったことがやはり重要な影響があると思います。

 その意味で、きょうは主にたばこのことで質疑を続けたいと思うのです。

 平成十三年に、警察庁の方でも生活安全局の方で通達を出されていますけれども、その通達について、改めて、たばこ規制条約というものを結んだし、しかし、結んだけれどもまだ四十カ国に満たないということで、いわゆる国際的な力がありませんけれども、少なくとも、我が国はやっとこさっとこWHOのたばこ規制枠組み条約ですか、それに参加したわけですから、その意味で、新たにまた通達を各省庁と相談して出される予定があるかどうか、ちょっと聞かせてください。

伊藤政府参考人 WHOのたばこ規制枠組み条約についての取り組みでございますけれども、本条約の第十六条では未成年者に対するたばこの販売を禁止する措置をとるように規定されているところでありまして、警察としましては、これを踏まえまして、未成年者に対するたばこの販売を禁止している未成年者喫煙禁止法等に基づく取り締まりの強化、あるいは、喫煙を行っている未成年者に対する先ほど申し上げましたような補導活動の強化、さらには、関係業界による未成年者喫煙防止に向けた取り組みの強化の要請等諸対策を積極的に行ってまいりたいと考えておりますけれども、もとより未成年者の喫煙問題は警察だけの取り組みで解決できるものではないというふうに考えておりまして、条約の趣旨を踏まえ、関係機関、団体等との連絡、協調を密にしまして、未成年者の喫煙防止に向けて一層適切に取り組んでまいりたいと考えているところでございます。

加藤(尚)委員 御丁寧にありがとうございます。

 資料をいただいたのですけれども、全国に警察署が千二百六十九カ所、交番も六千五百九カ所、駐在所が七千五百九十二カ所ということで、警察庁の取り組みについては、それぞれの機関を通じて努力されているのは聞いております。

 一方、三千の市町村、四十七都道府県もそうですけれども、それぞれ教育委員会に少年課というのがあって、そこで一生懸命、今、こういう枠組み条約も含めてだけれども、たばことお酒はだめですよといって、いろいろな方法で努力されているのも事実です。ですから、言えば社会を挙げて、国を挙げて一生懸命取り組めば、今、残念だけれども、非行少年の状況を見ていると、例えば北海道、東京、大阪、あるいは福岡、神奈川県なんかの資料を見ると、減っていないんですよ。これだけ文部省、あるいは我々もそうですけれども、子供の非行化の問題も含めて、よりよい子供を我々は見守りたいという気持ちからすれば、一向にとまっていない。

 だから、僕はいつもよく言っているのですけれども、親もそうだし、地域もそうだし、学校もそうだし、警察もそうだし、みんなで子供たちを守ろうとしている、ところが一向に減らない、これは何でだろうと。テツ・アンド・トモじゃないけれども、何でだろうということになります。その意味で言えば、やはり社会の問題があるような気がしてなりません。携帯の問題、インターネットの問題、先ほども質問ありましたけれども、いずれにしても、ゲームセンターもそうだけれども、繁華街へ行くと子供の誘惑だらけ。そういったことを、自由社会、資本主義社会ということの中で自由を謳歌する子供たちがふえている、それが原因になっているのですけれども。

 いずれにしても、子供は国家の宝だし、親にとってはかけがえないものだし、社会にとってもかけがえがない。当たり前のことを言っているのですけれども。そういう意味でこれからも、やはり何だかんだ言っても、都道府県の教育委員会なんかへ行っても、いろいろ予算配分したり、いろいろな知恵を絞るけれども、結局取り締まる能力がない、やはり警察に頼らざるを得ないという意味で、今申し上げました、全国に警察署、交番、駐在所、合わせて総力を挙げて、そして各三千の地方自治体の教育委員会の力になっていってやっていただきたいというふうに思います。

 ところで、引き続き、自動販売機とかあるいはコンビニのたばこ、酒について、もう気になってしようがない。それで、酒の方は結構国税庁は努力していますね。物すごく努力している。ところが一方で、たばこの方の努力は全然感じられない。どんどん自動販売機がふえている。平成八年、九年は五十万台ぐらいだったけれども、平成十五年を見ると六十二万台ということですから、ふえている。

 その自動販売機で、子供が買えないようにするということでテストしていらっしゃるというふうに聞いているのですけれども、財務省の方にちょっと聞きたいのですけれども、自動販売機では子供が買えない、どういう努力をして、あるいはどこでそれが見えるんだか、教えてください。

大前政府参考人 先生御指摘のように、現在、全国で、たばこの自動販売機、おおよそ六十二万台が稼働しております。この未成年者喫煙防止に向けて自動販売機についてどう取り組んでいくか、非常に重要な課題であると思っております。

 一つについて申しますと、平成十四年の二月に、財務省、厚労省さん、それから警察庁さんの関係局長の連名で、要請文書を関係業界に出しております。未成年者喫煙防止の観点から、十分な管理監督が期しがたいと認められるたばこ自動販売機の撤去または適正配置、そして、たばこ自動販売機の深夜の稼働停止等の適正な管理の徹底、これを要請しているところでございます。

 また、財務省といたしましては、たばこの小売販売業許可申請時におきまして、自動販売機での販売を予定しているものにつきましては、当該たばこの自動販売機を十分に管理監督が可能と認められる場所に設置しない限り、製造たばこの小売販売等の許可は行わないこととしております。

 さらに、加えまして、たばこ業界におきまして、いわゆる成人識別機能つき自動販売機の導入に向けた取り組みが行われているところでございます。

加藤(尚)委員 努力されているということについてはとやかく言うつもりはありませんけれども、やはり財務省の基本的な姿勢というのは、「たばこ産業の健全な発展を図り、もつて財政収入の安定的確保」というのが、これが表面に出ているわけですよ。ですから、確かにたばこ収入は大きい。それで、二十以下、子供たちのたばこの購買力も年間五千億とも言われているから、財務省としては、吸ってほしいとは当然思っていないし、いろいろな規制をされているけれども、規制の仕方が甘いと言わざるを得ないと思うのです。

 自動販売機がどんどんふえている。いろいろ規制する。しかし、やはりそこで、子供の喫煙について全然減っていない、ふえこそすれ減っていないという現実は、財務省でもどうしたらいいんだということを考えなくちゃいけないというふうに思います。

 広告のことについてもこの前質問しましたけれども、やはり日本が先進国ではもちろん一番甘い。アジアでも、それぞれたばこを取り寄せたんですけれども、結構厳しくやっている。たばこの大きさの三分の一じゃなくて半分ぐらいは、たばこを吸うとこんなになっちゃうよということでおどかしていますけれども、ところが、日本の方では相変わらず見えるか見えないかの形で表示されている。

 だから、この姿勢。もちろん、この財政的な確保という言葉がある、あるいは農家の問題がある、いろいろ大変な問題があるということはわかっているのです。わかっているけれども、子供はだめですよ、とにかく子供は。子供をいかに、この喫煙についてあらゆる方法で考えなくちゃならないかということは、財務省も、せっかくいろいろな法案が出て、また、条約、協定も結んでいるわけですから、これからも引き続き聞きますので、だから、やはりこんなに変わりましたということをなるべく早く見せるようにしていただきたいというふうに思います。

 ところで、私も前回質問しましたけれども、ガムたばこ、ニコレット。吸いたくなったらニコレットとテレビでやっているのです。吸いたくなったらニコレットとか言っちゃって。これはアメリカからなんです、武田薬品が売っているのですけれども。あるいは、ファイアーブレイク。これはスウェーデンから輸入しているのです。だけれども、こちらの小さい方のファイアーブレイク、これは、小さなガム一つがたばこ一本分のニコチンが入っているのです。それから、このニコレットの方は、小さなガム一つがたばこ二本分のニコチンが入っているのです。

 吸いたくなったらニコレットと言うけれども、一個のガムにたばこ二本も入っているんだから、吸うはずがないのですよ。だから、たばこの本数は減っても、ガムをかむ。まあ、一日二十個以上はかまない方がいいですよとは書いてあるけれども、実は、このガムを私は物すごい心配しているのです。子供が買うということについて、煙を吸っていれば補導できるけれども、これは煙が出ませんから。だから、これは薬局で売っているし、子供でも買えるというおそれもある。

 それから、ファイアーブレイクについてはキオスクで売っていますから、これも、対面販売というけれども、やはり売れるものは売っちゃおうというのがあります。

 だから、大変子供の方を心配していると同時に、大人の方ですね。大人で、ガムたばこ、かみたばこについて、私は、WHO、日本のいろいろな団体を歩いて……(パネルを示す)これは恐ろしい。ちょっと見えないと思うんだけれども、舌のがんですよ。口腔がんですよ。これを見ると、恐ろしいですよ。とても、これを見ると、今たばこを吸っている人がやめたくなっちゃうぐらい、恐ろしい絵がかいてあるのです。こういう口腔がんですけれども、今スリランカは、いわゆるかみたばこということで、がんの四〇%が口腔がんなんです。日本ではまだ口腔がんは二%ということなんですけれども、このガムで、口腔外科学会はすごく恐れているのです。スウェーデンなどは、日本に輸出しているけれども、自分の国では売っていないというふうに聞いています。自分の国では積極的に売っていない。日本で日本人を実験台にしようと、外交関係では余りまずい発言かもしれないけれども、私、そう思えてならない。日本人で実験するのかという思いがある。

 それで、結果的に、口腔がんというのは舌を取っちゃう。半分取ったり、三分の一取ったり、三分の二取ったり。しゃべれなくなっちゃう。だから、恐ろしい病気の原因はかみたばこですから。その意味で、これを何で認めたのか。

 まず、こちらのファイアーブレイクの方は財務省ですから、だれがこれを売ることを決めたのですか。だれが申請したかは知っています。だから、これを売ってもいいと決めたのは、財務省のどこで決めたのですか、教えてください。

大前政府参考人 先生御指摘の、いわゆるガムたばこにつきましては、平成十五年九月十一日付で、たばこ事業法三十三条に基づきます小売定価の認可を行ったところでございます。

 この事業法に基づきます認可でございますけれども、小売定価に係るものでございまして、健康問題など価格以外の理由で拒否やあるいは取り消しを行うことはできないものであることを御理解願いたいと存じます。

 なお、だれが認可をしたのかということでございますけれども、これにつきまして、財務省の組織規則などの規定によりまして、この小売定価の認可につきましては、私ども、理財局総務課たばこ塩事業室の事務とされておりまして、また決裁につきましては、財務省文書決裁規則等の規定によりまして、担当の大臣官房審議官、現在私が務めておりますけれども、こちらに決裁が委任されているところでございます。

加藤(尚)委員 あっちこっちだから責任の所在がわからなくなるかもわからないけれども、いずれにしても、口腔外科学会も、三年、五年じゃわからないそうですよ。やはり十年ぐらいすると、これは著しく結果が出るだろうと予測されているのです。そういう予測されているものだからということで、今、どれだけ売れているのか知りません、調べていませんから。それで、問い合わせても答えがないからわかりませんけれども、もう既にどれだけ売れちゃったのか。

 それで、厚生省の方に今度聞きますけれども、このニコレット、これは薬品で、薬局で売っているのです。テレビでも、吸いたくなったらニコレットということであります。それで、薬局には大きなポスターが張ってあります。これを吸うとたばこをやめられますよということですけれども、厚生省のだれがこれを認可したのですか。

鶴田政府参考人 お答え申し上げたいと思います。

 この禁煙補助剤ニコレットにつきましては、薬事法上の一般用医薬品としての承認を受けたものであり、薬局、薬店で販売可能となったものでございます。

 このニコレットは、たばこではございませんので、禁煙補助剤でございまして、たばことして使用することを目的としたものではなく、禁煙を目的としたものでございます。

 それから、どのような手続で承認されたかと申しますと、これにつきましては、承認の過程におきまして、中央薬事審議会におきまして、医学、薬学等の専門家による審議を行った上で、厚生労働大臣が承認して差し支えないという答申を得ましたので、承認に至ったわけでございます。

加藤(尚)委員 たばこですよ、これは。一個でニコチンがたばこ二本分入っているんですから。それで、たばこの葉からつくっているんだから。だから、たばこなんです。たばこじゃないなんて感覚でこれを認めちゃだめなんです。これは、僕は、場合によって内閣委員会でこの答えを出してもらおうというふうに思っていますけれども、いずれにしても、厚生省も、たばこじゃないなんということを、だまされちゃだめですよ。たばこだから、これは。僕はそう思っているのです。

 その意味で、たばこじゃないものはこっちなんです。ニコチネルといって、これはニコチンが含まれているものを体に張って、それこそ徐々に吸いたくなくなるようにするという代物です。でも、これも医学的に結構厳しく、一日に一枚しか張ってはいけませんよとかいろいろ細かく書いてある。これはたばこじゃないです。ニコチンが入っている張り物だけれども、ニコチネルはたばこじゃないんですよ。こっちはたばこですから。その辺をちょっと強く申し上げておきたいと思います。

 時間も迫ってまいりましたので、最後にやはり河村大臣にまとめでお聞き申し上げたいんですけれども、今、警察庁、財務省、厚生省と議論してまいりました。そして、たばこ枠組み条約を初めとして、このガムのことも含めて、子供たちの喫煙がふえる、ふえることがあっても減ることはない、そのことを物すごく危惧しています。また、大臣の場合はお子さん四人いらっしゃって、人一倍子煩悩と聞いておりますし、その意味でも、子供を守るという最高責任者でもありますから、今きょう申し上げました議論の中での感想でもいいし、所感でもいいし、決意でもいいし、お聞かせをいただければありがたいと思います。

河村国務大臣 加藤先生から前回に引き続き、子供を守るという立場といいますか、子供の健康、こういう視点からいろいろ御指摘をいただき、特に喫煙が子供にとって非常に有害であるということ、これをやはりきちっと教育の中でも、私も、御指摘のように、もっと強くこの点について子供たちに意識を持たせていく必要があろうと思います。もともと、健康教育という視点からも、未成年段階では喫煙をしないということはずっと学校でもやってきているわけでありますが、法律でも禁止されているということ、まずそこからきちっと位置づけていかなきゃならぬ。

 我々の子供のころ、特に高校生の時代には、同級の中に隠れてやっていたのがいた。昔からそういう傾向があったのでありますが、しかし、やはり隠れてやるというのは、悪いことだと見つかると怒られるから、やって何となく大人になったような気分を味わいたいというようなこともあったのではないかと思います。

 しかし、これは、やはり小学生の段階からいいこと悪いことをきちっと教えていくということが私は大事だ、こう思っておりまして、もちろん学校では、保健体育とか特別活動とか、教育全体の中で喫煙防止という指導が行われておりますし、既に、たばこをめぐる三つの扉、君たちの未来に、これは高校生用。それから、「たばこに負けない 輝く未来に向けて」、これは中学生用の喫煙防止教育パンフレットでございます。それから小学校にも、薬物乱用等含めて、自分を大事にしようということで、小学生用喫煙、飲酒、薬物乱用防止教育パンフレット、こういうものもあるんですね。

 これはつくっただけでは意味がありませんから、これが徹底するようにということ、それで、たばこを吸うとどういうことになるのかということを子供のころから、何か学校現場では、役割演技法、いわゆるロールプレーイングをしながら指導をやっている、こういうことでみんな努力をしているわけでございます。

 さらに、この喫煙防止教育についても、先生方もやはりこのことをきちっと認識していただく必要があると思います。さらに、こういう問題が小学生から、その下におろしてまでやる必要があるのではないかと思っておりまして、きょう改めて御指摘をいただいたことを踏まえながら、施策といいますか、喫煙防止教育を初めとするこうした健康教育といいますか、そういうものをもっと徹底するように施策の充実に努めてまいりたい、このように考えております。

加藤(尚)委員 ありがとうございました。本当に、さすがにいつもながらと思っています。感謝申し上げます。

 このパネルだけれども、これは自分でつくったんですけれども、もっと何倍でも、畳一畳分ぐらいのものも僕はつくれますので、厚労省と財務省に、パネル展でもやったらどうかなと思うのだけれども、検討しておいてください。

 以上、終わります。

池坊委員長 牧野聖修君。

牧野委員 民主党の牧野聖修です。

 いよいよ第百五十九通常国会も大詰めを迎えまして、実質的な文部科学常任委員会の審議もきょうが最終という感じになりました。大臣も委員長も、そして委員の皆さんも、本当に長い間熱心な次元の高い議論を展開されまして御苦労さまでした。そして、心から敬意を表する次第でございます。

 特に私は、この委員会では六回この通常国会の間に質問をさせていただきまして、いよいよ七回目になります。多くの機会をいただきました仲間の皆さんに心からお礼を申し上げます。

 かねがね、自分の持論でありますけれども、内閣の中では、私は、経済と財政と外交と教育は選挙で選ばれた国会議員がそこはつかさどるべきだ、そういう気持ちを持っておりました。今回、民間から、地方自治から、そして国会へと努力されて、しかも教育畑で努力をされてまいりました選挙で選ばれた河村先生が大臣に選ばれた、その点、心から歓迎を申し上げてきたところでございます。そういった個人的な考え方もありましたので、前回とは違った血の通う議論をさせていただいたのかなと思っております。その点については心から、友人でもありますので、お礼を申し上げたいと思っております。

 今回は、最後の委員会になりますので、六回を振り返りながら、自分としても一応積み重ねてきた案件について整理をしながら、また緊急の問題についてもあわせて質問をさせていただこう、こういうふうに思っております。

 大臣とは、平成十六年度の予算編成をめぐってのその予算のあり方、教育基本法の今後の展望とそして基本的な物の考え方、それから心の教育ということでも質問をさせてもらいました。大学改革をめぐって、あるいはこの前はコミュニティ・スクール、それから栄養教諭の問題、義務教育の国庫制度のこれにかかわる問題、先般は、脱線をしたような感じでありますが、武士道についても質問をさせていただいたものであります。今回、そんなことも整理をしながら質問させていただきたいと思います。

 最初に、長崎県の佐世保で起こりました痛ましい事件に対しましては、御手洗さんの御冥福を心から私もお祈りさせていただきますし、残されました遺族の皆様方に心から哀悼の意を表したいと思います。

 この点につきましては後ほど触れさせていただきたい、そういうふうに思いますが、質問の冒頭、昨日、六月十日付の朝日新聞に、はわせ一時間、箱に閉じ込め二十分、障害児に暴力的指導、横浜の市立小学校という見出しの記事が私の目の中に飛び込んでまいりまして、正直言ってびっくりいたしました。

 横浜市教育委員会は九日、同市中区の市立北方小学校の個別支援学級の担任教師ら三人が二〇〇二年から二〇〇三年度に暴力的な指導を繰り返したとして、停職や減給の懲戒処分にしたというふうに書いてありますね。同市教委によると、男性教師は、片づけを覚えさせるためなどとして机の上の道具をわざと落として、児童に床にはったままの姿勢で約一時間かけて拾わせ、パニック状態から落ちつかせるとして、段ボール箱に二十分にわたって児童を閉じ込めた。それに関して、また女性教諭二人も、男性教師を見習う形で二〇〇三年度中に児童を段ボール箱に閉じ込めるなどの行為を繰り返していたという記事が載っておりました。

 前に私は、大臣に対してこの場で自分の考えの一端を述べたときに成蹊大学の教授をやっておられました市井三郎さんの論文の一節を引用しました。人間が幸せになるための第一の原理原則は自助努力である、でも、自助努力でもどうすることもできない事柄がこの世の中には多い、また、問われて責任を答えられないことによる人間疎外であるとか不幸、そういうものがある、それを不条理という、それを一つ一つ克服してこの世に生まれた生を享受する権利を全うするために歴史の進むべき方向があり、そして政治の本質があるということを生意気にも言わせていただいた覚えがあるんです。

 その観点からすると、障害を持った人々、子供たちは持ちたくて持ったわけではない。それを、いやしくも学校の教師は、その児童にこの世に生まれてきた喜びを知っていただき、生きるすべを教えなければならない立場にある、そういう立場の人がこういう事件を引き起こした。

 私が怒りを持ってきょう言いたいのは、何百年に一回の事件ならいいんだけれども、たびたびこの種の事件が起こっている。たびたび起こっている。この事件の実態を御報告いただくと同時に、大臣の見解をまず最初にお伺いしたいと思います。

河村国務大臣 正直言って、こういうことが教育の現場で起こり得るということ、これは、大臣が余り評論家的な言い方をしてはならぬのでありますが、信じられないという感じがまずします。しかし、現実に起きたことであります。

 それで、この先生方は障害児に対して一体どういうふうに向き合っておったのか。今、障害児に対しての特別支援教育といいますか、そういう方々のノーマライゼーション、生きていく能力、また生きていく力、そういうものを十分しっかり認め合って教育をしようという形で進めておる段階でございます。その中で、こういう特に障害のある児童に対して体罰が行われておった。

 特に、体罰そのものも許されるべきことでないということは教育現場ではあります。もちろん教育の中にはいろいろな形のものがありますから、教員と生徒の信頼関係といいますか、本当に愛情を持って教育をしているかどうか、やはりこれが一つの一番原点だと思います。体罰で殴ってけがをさすとかそういうことはあってはならぬのですけれども、愛のむちということもありますから、上手なしかり方というのはあるし、私も、親に殴られたことは一度もありませんが、学校ではやはりげんこつの一発、二発は食らったことがある。そのことは非常に印象に残っているし、その先生を今恨んでいるかというと、むしろ感謝している。

 そういうことを考えますと、教育の中でいろいろなやり方があると思いますが、今回の問題は当然処分も行われたということでありますが、こういう教育があってはならぬわけでありまして、児童生徒一人一人を大事にする教育をやらなきゃいけません。

 教員のあり方も問われておると思いますし、こういう教員がいるということそのものが問題でありますから、これから、処分も当然これは任命権者にきちっとやっていただきますが、今後こういうことが起きないにはどうしたらいいのか、先生方のいわゆる研修といいますか、こういうことを通じて徹底をしていく。この例を一つの大きな反省材料にして、これは全国的にもこういうことがあってはならぬことでありますから、徹底して、こういうことが起きないような仕組みといいますか、先生方に対する啓発、これも今回一つ教訓として与えられた、こう思っておるわけでございまして、本当に極めて遺憾なことだ、こう思っております。

    〔委員長退席、渡海委員長代理着席〕

牧野委員 大臣のこの問題に対する基本的な思いというのは私は了解しました。

 ただ、ここで私が問題にしたいのは、あってはならないこういったことがたびたびあった。しかも、いろいろな施設でも同様の事件も起こっているということを私も聞いているわけです。

 そこで、どちらかというと、大臣の考え、気持ちというものは理解できますけれども、文科省の指導といいますか、その体制の中に基本的な欠陥は含まれていないかという思いが私はしているんです。

 ですから、あえてここで質問をさせていただきますけれども、命を大切にする、生きる力をはぐくむ、そういう教育に向けたいろいろな試み、流れの中に一つ、御案内かと思いますけれども、統合教育、インクルーシブ教育について、そういううねりが今高まってきているわけです。それに対して我が国はどういうスタンスで取り組んでいくのかということを私は聞きたいわけです。

 国連の障害者の権利条約の条約草案を検討する第三回特別委員会が、この五月の二十四日から六月の四日までニューヨークの国連本部で開催されました。この条約草案、障害児教育に関して、統合教育、インクルーシブ教育を原則とすべきか、障害ニーズに応じた特殊教育も認めるべきかが大きな論点になってきたわけですね。

 そして、この会議に日本代表として、外務省担当者とNGO代表者と文部科学省から担当二人が参加しているんですよ。この会議の場でどういうスタンスでどういう発言をしたのか、その点をお聞かせいただけませんか。

    〔渡海委員長代理退席、委員長着席〕

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 統合教育についての基本的な考え方でございますが、障害のある児童生徒に対しましては、その多様な教育的ニーズに応じて、可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、盲・聾・養護学校や小中学校の特殊学級等において今さまざまなカリキュラムや指導方法によって教育が行われているわけでございます。

 また、私どもは、小中学校等の児童生徒が障害のある児童生徒に対する理解と認識を一層推進するために、学習指導要領に交流教育を位置づけるなど、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒の相互理解を推進してきているわけでございまして、こういった施策は今後ともさらに積極的に進めてまいりたいと思っておるわけでございます。

 お尋ねの障害者権利条約の検討委員会での作業でございますが、私どもは、外務省と連携しながら、各国と積極的に協議をし、障害者の権利条約が障害者の自立と社会参加のためによりよいものとなるよう議論に参加してまいりたい、こう考えておるわけでございますが、基本的な考え方は、先ほど申し上げましたようなこういう考え方にのっとってこの議論に参加をしてまいりたい、こういうふうに考えておるところでございます。

牧野委員 今国会で議員立法で障害者基本法が改正されまして、六月四日に公布されました。この改正障害者基本法の第十四条「教育」には、「国及び地方公共団体は、障害のある児童及び生徒と障害のない児童及び生徒との交流及び共同学習を積極的に進めることによつて、その相互理解を促進しなければならない。」という第三項が新たにつけ加えられた、そういうふうに伺っております。

 その基本にある考え方に、私はまだ分離という考え方が前提となっているのではないかなと思うんですよ。そしてその中には統合、インクルーシブに向けた方向性がまだ明示されていないというのを非常に残念に思っているんですが、文部科学省はこの交流及び共同学習というのをどの程度理解しているのか、もう少し突っ込んだ答弁をいただきたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 障害のある児童生徒が地域社会の中で積極的に活動し、その一員として豊かに生きる上で、障害のない子供や地域の人々とともに活動をするということは大変重要な意義を有するんだろうと考えておるわけでございます。

 今先生御指摘になりました障害者基本法第十四条第三項では、障害のある児童生徒がいずれの場で学習する場合でありましても、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒との相互理解を促進させるために、障害のある児童生徒と障害のない児童生徒が同じ教育の場でともに学習や活動を行う交流及び共同学習を積極的に進めることを定めた、こういうふうに認識をいたしているわけでございますが、いずれにいたしましても、私どもは、障害のある児童生徒に対する教育のさらなる充実を図るとともに、この法律の趣旨を踏まえまして、その相互理解あるいは相互交流、こういうものを一層促進する、そういった取り組みを進めてまいりたいと考えております。

牧野委員 横浜で起きた事件の背景には、私は分離という教育の進め方がやはり基本的にあると思うんです。ですから、そういうことが二度と起きてはならない、起こさない、そういう決意でもってこれから行政に携わっていくとすれば、それは、統合教育、インクルーシブ教育について、やはり責任を持って進めていく、少なくとも選択権は保障すべきだ、そういう気持ちを私は持ちますが、この件に関しての最後に、大臣の決意といいますか見解をお聞かせいただけませんか。

河村国務大臣 障害のある児童生徒に対しまして、やはり多様な教育的ニーズに応じて、最大限その人が持っている可能性を伸ばしてやりたい、そして自立させたい、社会参加してもらいたい、そういうことで、盲・聾・養護学校あるいは小中学校の特殊学級、今、さまざまなカリキュラム、指導が行われておるわけでございまして、こうした中で、児童生徒がどういうふうな形でどの学校に就学すべきかということ、やはりこれは障害の状況もあると思いますね。

 それで、一律にもうインクルーシブでいいのかどうか。やはりどうしても、保護者や専門家の意見も聞いて、本当にその児童生徒にとって高いといいますか、専門的な教育を受けることによってその児童生徒にとっては自立と社会参加の適切な教育になるんだ、やはりそういうものは総合的に判断すべきことが大事ではないか、私はそう思っております。

 一昨年の四月に学校教育法施行令が改正されまして、盲・聾・養護学校の就学基準に該当する児童生徒についても、その障害の状態等に照らして、小中学校において適切な教育を受けることができると市町村の教育委員会が認めた場合には小中学校に就学することができるという認定就学の制度もとられたわけでございまして、こういうことで弾力的な対応も可能になってまいりました。そういう意味では、できるだけその選択権を広げたということだろうと思います。

 文部科学省も、そういう立場にございまして、今後とも、保護者の皆さん方、第一義的にはまず保護者の皆さん方の御意見を十分聞くことが大事でありますから、聞いた上で、そして御理解をいただきながら、障害のある児童生徒の自立とそれから社会参加できるようにということで、まさにこれは児童生徒一人一人のニーズというものをしっかり感じて、考えて、適切な教育がされるようにということ。

 今、牧野先生御指摘のあった点も踏まえて、こういう問題については弾力的に、しかし、やはり本当にこの児童生徒にとってどれが一番いいかということも考えながら対応していきたいと思いますし、遺漏なきよう努力していきたい、このように考えております。

牧野委員 大臣の答弁は、積極的な意味で受け取らせていただきましたので、これからもぜひ、どちらかといえば選択権を保障すべきというふうな気持ちを私は持っておりますので、さらに前進をさせてくださいますようにお願いいたしまして、次の質問に移りたいと思います。

 長崎の少女の事件等がありましたので、私は、インターネットあるいは携帯電話、このことと教育という観点から質問させていただきたいと思います。

 大臣、インターネット、携帯電話、これらの発展が子供にどういう影響を与えていると理解されていますか。先般の質問のときも、私、言わせていただきましたが、物事には光と影の部分があるんですね、確かに。これは影の部分がかなり色濃くなってきた感じがするんですよ。その点について、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 確かに、情報、これを活用する、インターネットで知識を得る、非常に知識が広がるし、世界に対しても視野が広がる、そういう意味では、私はインターネットの持つ役割というのは大きいものがあると思いますね。また、これを活用していくことが、今の時代に生きていく上でも大事なツールであるし、人間として持つ一つの大事な技能にもなってきているわけでございます。

 しかし、おっしゃるように、これは極めて直接的であるといいますか、感情を抜きにして入ってきますし、場合によっては人間を失わせる、あるいは非常に匿名性が高いというようなこともあって、これは、やはり最終的にどう使うかというのは人間の心の問題に入ってきますから、よほどこれをしっかり持ちませんと、それに流されてしまう、現実とバーチャルの世界がわからなくなってしまう、こういうことも起きるわけですね。

 こういうことが今回指摘をされてまいりましたので、情報活用能力を育成することは非常に大事だから、これも努めなきゃなりませんし、しかし、この持っている情報にも、情報モラルという言葉で一口に片づけていいかどうかわかりませんが、そういうものもやはり同時に一緒に教育しませんと、将来さらにいろいろな問題が起きる可能性がある。そこに思いをいたして、これからのインターネットの普及というものを見ながら、あわせて影の部分についても、十分そのことがあるんだということを承知した上で教育現場も向かっていかなきゃいかぬ、こう考えております。

牧野委員 文科省は、この問題について責任を持って検証すべきですね。責任を持ってこの問題についての検証をすべきときだと思います。ぜひそれをやってほしいと思います。

 それで、私、この手のことについて余り詳しくないものですから、何冊か一応本を読ませてもらったんですが、「コンピュータが子どもの心を変える」、J・ハーリーさんの本がありました。子供のときからインターネットに親しむことはいいことなのか、よくないのか、そのことを本当に今検証すべきときが来ている。幼児のときからコンピューターを使わせると、学習意欲が低下する、悪い学習習慣が身につく。書いたり、なぞったり、見る、口に出して言うなどを一度に行う多感覚方法が教育には有効である。その点からすると、インターネットはどちらかというとマイナスの要素があると言っています。

 それから、クリフォード・ストールという人の本には「コンピュータが子供たちをダメにする」という本があります。小学生にコンピューターリテラシー教育は不要と本人は言っております。読み書き教育をしっかりとやらないといけない、暗算ができない店員や本も満足に読めない大学生がふえている、大きな原因がIT革命のインターネットの中に潜んでいるのではないかと書いてありましたね。

 それから、シェリー・タークルさんの「接続された心」という本には、コンピューターは企業の戦略によってたちまち陳腐化してしまう、ハードもソフトも絶えず新品にしなければならない、どちらかというと企業に乗せられている面が多過ぎやしないだろうか。思考力、記憶力、想像力の低下、現実とバーチャルの区別がつかなく、対人関係が下手になる。それからまた、日本語、言語の衰退が顕著になっていく等々のことが書籍に書いてありましたね。

 ですから、そういう問題が社会の深層に非常に大きな問題として出てきていますので、この点は責任を持って検証をするということをしてほしいと思います。

 それから、インターネットと携帯が、子供だけじゃなくて、どちらかというと大人社会をかなり侵食しているといいますか、悪い言い方をすると、毒している。光の部分だけじゃなくして、影の部分にかなりこの文化技術がはびこっていますね。

 僕は、インターネットを使っていろいろな犯罪があります、どんな事犯があるのかというのをばっと調べてみましたら、もうここで言うにも恥ずかしいような感じですけれども、痴漢する人されたい人の集まりとか、売春事件、ホモ現場の原像を載せたとか、主婦狩りとか、いたずらメールの攻勢で人を死に追い込むとか、それからネット公開処刑とか、爆弾のつくり方、サイバーおやじ狩り、死体系サイト、サイバー復讐劇、失神ゲーム、悪質懸賞募集者等々、とんでもないことが裏のインターネットの世界の中で展開されているんです。

 これは、僕は悪いことばかり今ちょっと出してみましたけれども、言わんとしていることは、大人社会が完全に投影されて子供社会に来ている。ですから、IT革命によるインターネットとか携帯の影の部分を抑え込んでいくには、大人社会に対する対策を真剣にやらないと、これは解決できないということなんです。

 その点について、大臣、どういうふうにお考えになられるか、見解をお聞かせください。

河村国務大臣 携帯電話が発達し、またインターネットが発達し、確かに便利になったわけでありますが、一方ではこれを悪用する大人がふえてきたということ。これはある意味では、商売に活用して、インターネット社会でどんどんそういう経済の流通も起きてきたことがありますが、しかし、これがまさに悪用されるというケースが非常にふえてきて、私は、今の犯罪の増加等々の中にも相当、今回の携帯電話、出会い系サイトとか、そういうものが果たしている役割というのは、悪い意味で大きいものがあるというふうに考えております。

 これもまた、大人社会がこのことを踏まえてどう対応していくかということを考えていかなければなりません。子供を守らなければいけない大人の方が子供に誘いをかけて、ああいう出会い系サイトによる援助交際という名の売春等が行われて、最近は青少年保護育成条例等厳しくなってまいりましたから、そういうことで逮捕される人が出てきたということ、こういうことが現実にあらわれている。

 そういう面から考えますと、これは社会教育と言っていいのかと思いますけれども、こういう観点から、牧野委員も御指摘でありますが、やはり大人社会が、この問題に裏があり、危険性があるんだということをもっと周知徹底する必要があると私は思います。これは家庭と学校との連携の中でも、私はそういうことをお互いに情報交換しながらやっていく必要があろうと思います。

 文部科学省では、社会教育の充実という観点から、社会教育の実践者を指導する立場にある社会教育主事等の研修カリキュラム、こういうものの中にも、こういう情報モラルとか、あるいはそれによるセキュリティーの問題も含めて、研修でこういうことが取り上げられておるわけでございまして、こういうことから考えますと、ITの利用、IT講習、こういう中にやはりそういうことをきちっと入れていく、これは総務省との連携も必要になってくるわけでございますが。

 また、NPO等においても、こういうことを研究し、こういうことに対して積極的に取り組んでおられるNPOもございます。そういう方々とも一体となって、情報モラルをきちっと、インターネットの利用あるいは携帯電話も含めて、情報活用能力の中にそれをきちっと織り込むということ、こういうことが非常に大事だと私は思います。

 さっき、こうしたインターネット、Eラーニングというのが本当に子供たちにとってすべて万々歳なのかという御指摘がありました。脳の活性化からいえば、むしろ基本的な読み書きそろばんの方がうんと高い、Eラーニングというのは本当に脳の活性化からいうとプラスかというと、むしろマイナスだという指摘、私もたくさんそれは伺っております。そういう意味で検証もしなければならぬ、こういうこともあろうと思います。

 しかし、生きていく上のツールとしてきちっとこれを理解し、それを使いこなすということは必要です。それが社会悪に発展していくということは絶対に防がなければいけないことでありますから、大人社会がこの情報化社会にいかに臨んでいくかということ、特に、教育と結びつけてどうしていくかということ、これはやはり一体となってやっていかなければならぬ大事な問題だ、私もそう考えております。

牧野委員 子供であれ大人であれ、この問題の根本は、やはり突き詰めていけば教育に帰する、こういうふうに思いますので、国の教育の最高の任にある大臣として、本当に、どちらかというと国を挙げて真剣に取り組むべき課題だと思いますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 先ほど伊藤先生からも御指摘があったんですけれども、この件に関してさらに前進させた論議をさせてもらうということになりますと、私は、倫理教育というもののさらなる振興といいますか普及といいますか、そういうものの必要性が高まっているなと思うんですよ。

 僕は、手をかえ品をかえて大臣にこの手の質問をしたんです。心の教育であるとか、人格教育であるとか、道徳教育であるとか、いろいろな形で提言をしながら、質問という形の中で議論させてもらったんですが、ぎりぎりのところへ来て、倫理教育の普及という名目で言わざるを得ないと思うんですね。

 ここのずっと新聞の見出しだけでも拾ってきました。政治家、首長、公務員の贈収賄事件、相変わらず不動産関係あるいは建設会社とか、いろいろなところと癒着している事件が多い。それから警察官の不祥事、組織的隠ぺい工作。学校の先生の犯罪、またふえていますね。弁護士の犯罪もふえている。お医者さんの、あるいは医科大学の組織的な犯罪もふえている。歯医者さんの組織も、政治の世界と癒着をして贈収賄事件を起こしている。医薬会社は相変わらずモラルなきもうけ主義で、いろいろな犯罪、事故を起こしている。雪印、日本ハム、食品関係ですね、腐敗に満ちた行為。銀行、証券会社。三菱自動車、いよいよ逮捕されましたね、リコール隠しとか。まあ次から次へいろいろあります。ギョーザに腐ったものが入っていたなんという事件も起きて、びっくりした感じですけれども。

 押しなべて自分勝手になったというか、自分の企業さえよければとか、今さえよければというこの考え方が蔓延しています。これは僕は、道徳教育とか、本当は宗教も関係してくるんでしょうけれども、そういう観点でずっとやってきても全然進みませんので、もう最終的に倫理教育でもって進めてほしいという感じがするんですよ。

 大臣、もう倫理教育でこの難局を乗り切っていくということを言わざるを得ないようなぎりぎりのところまで来ているんですけれども、この現状をどういうふうに認識されますか。

河村国務大臣 これは、学校で、倫理教育で幾ら立派なことを一生懸命先生が黒板に書いたり言葉だけで教えて、果たして子供たちにどれだけちゃんと頭の中に入っていくだろうかなという思いが正直言ってあります。そんなことを言っちゃったらもう教育できなくなるわけでありますが。

 そういうことを含めますと、牧野先生もいつも言われるように、大人社会全体にモラルハザードが起きているということは、やはりこれは、今の子供たちに、少なからずいろいろな意味で影響を与えていると思います。したがって、これは大人社会から直していかなければいかぬと言ってしまえばもうそれきりになってしまいますから、私はやはり、そういうことを踏まえた上で教育現場がどう対応していくか。

 例の心のノートというのもつくらせていただいて、最近の若いお父さん、お母さん方が、何をどうすればいいんだ、こうおっしゃいますから、それでそういうテキストもある、これをひとつしっかり見ていただいて、そしてまず自分でそれをそしゃくして、そして子供たちに教育していただく、それが必要ではないかということ。

 もちろん、学校において先生方も、やはり心のノートにあることを自分で身をもってそしゃくしてもらわなければなりません。そういう意味での徹底、いいこと悪いこと、これは、いろいろな体験とか事例とか、ロールプレーイングと言われますが、そういうことをやらすとか、いろいろなことをみずから体験しながら、こういうことをやるとこういうことになりますよというようなこと、そういうことをきちっと教えていって、まさに倫理観とか規範意識とか公共心とか、そういうものを養っていかなければならぬと思います。

 そういうことが大事なんだということを、やはり教育の中にもきちっとうたう必要が出てくる。教育基本法の見直し、改正と言われる中にも、そういうことがあるんですね。まさに人格の完成と言っておりますけれども、その中にそういうことがあるんだということを、それをやはりきちっとうたいながら教育現場がそれに立ち向かっていただくということがこれから非常に大事になってきました。

 もちろん、新学習指導要領の中にもそういうことはきちっと書いてあるし、小学校低学年から物事の善悪の判断、社会生活のルールをちゃんと身につけるように指導を徹底しなさい、こう書いてあるんですね。書いてある。しかし、現実にそのとおりにいかない部分がありますから、これは、指導を強める、そういう考え方ではなくて、社会全体がそういうことが大事なんだという意識をもっともっと高めることを考えなきゃいかぬ、こう思っておりまして、これは文部科学省だけの問題ではない、いろいろなところでそういうことが起きてこなきゃいかぬ、こう思っております。

 文部科学省としては、まずは、今の新学習指導要領、そのことを徹底させながら、それが本当に身につくような教育現場における教育をもっと考える必要があろう、こう思っておりまして、そういう意味では、非常に社会的な条件も、今の環境、非常にいろいろな問題がありますから、確かに私は容易なことではありませんが、そういう意識を絶えず教育現場も持ちながら、教育の中でそれを植えつけていく意識、それが大事だ、こういうふうに思っております。

牧野委員 家庭と学校と地域、どこを開いても大体文部省のパンフレットとか説明文にはそれが入っている。でも、今、家庭が崩壊して、地域が崩壊している。そして今、企業倫理が音を立てて崩れている。これでは本当の意味で人間は幸せになれないわけですから、もう一度、生きるということ以上により生きるということはどういうことか、人と共生していく、協調していくということはどういうことなのか、そのことの価値観をやはりみんなが心の底にしっかりと持っていなければ、何をやっても、どんな改革も僕はうまくいかないと思うんですね。

 これは、子供の教育だけではなくして、大人の教育。先生方は十年研修とかいろいろなことを制度で取り入れていくようになってきた。だから、いろいろな意味で、社会全体、時々もう一度見直して再教育をされる、研修をする、そういう機会がどんどんふえていくようにしていかないと私は国家の再生はできないのではないかと思っておりますので、大臣として、閣議でも皆さんに国家を挙げてこの精神的崩壊の難局を乗り切るということをぜひ御進言していただいて、御努力いただきたい、こういうふうに思います。

 時間が来てしまいましたので、用意してきた質問はここで大体終了でありますが、過日のこの委員会で私が武士道のことについて触れた折、大臣に一道一芸運動の推進をと言ったら、意外と全国から反響がありまして、いいことだからやれやれという電話とかファクスが私のところへ来まして、意を強くして、きょうもう一度そのことについて要望させていただくようなことなんですけれども、剣道、柔道、空手、合気道、弓道、やはりテレビを見ていると、K1とかPRIDEとは違いますよ。精神性の高いものを求めている。

 それから、前回のときもちょっと触れたんですけれども、静岡ですからあえて恥ずかしながら言わせてもらいますけれども、武士道の本質は平和主義ですよ。ですから、これは、いろいろな見解を言う人がいるかもしれませんが、自信を持って進めてほしい。

 それから、日本舞踊、茶道、華道、民謡、詩吟、琴、三味線、小うた、長うた、書道、笛、太鼓、いろいろな芸事は日本人の素養ですね。文武両道相まってこのことを進めていくときに、日本の文化が初めてもう一度蘇生できると思います。日本文化が蘇生されれば、衣食住にもこの影響は出てくるわけですね。食も変わってきます。着るものも変わってきます。住む住まいも日本の材木で、日本の材で、日本の技術で、日本の風土に合ったそういう日本建築がもう一度私はよみがえってくると思います。

 一道一芸運動と言いましたけれども、これは日本文化再生のための基本的な運動になる、そういうふうに思いますので、ぜひ大臣のお力をいただいて推進してくださいますようにお願いをいたしまして、時間が来ましたので質問はここで終わらせていただきます。ありがとうございました。

池坊委員長 石井郁子君。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です。

 きょうは、日の丸・君が代の強制問題について質問をさせていただきます。

 まず、確認をしたいのですけれども、一九九九年、ちょうど六月でした、国旗・国歌法が審議をされました。そのときの小渕首相の答弁、そしてまた有馬当時文部大臣の御答弁がございまして、その内容なんですけれども、国旗の掲揚等に関して義務づけを行うことは考えていない、したがって、国民の生活に何らの影響や変化が生ずることはないとありました。また、学校における学習指導要領に基づく国旗・国歌の指導は、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではなく、あくまで教育指導上の課題として指導を進めていくことを意味するものであります、この統一見解は、国旗・国歌が法制化された後も変わるところはありません。有馬文部大臣は、児童生徒の内心にまで立ち入って強制することがあってはならないことは当然である、児童生徒の思想、良心を制約しようというものではないと考えていますとございました。

 そこで、この御答弁は現政府の方針でもあると確認してよろしいでしょうか。

河村国務大臣 学校における国旗・国歌の指導というのは、児童生徒に我が国の国旗・国歌の意義を理解させて、これを尊重する態度を育てるとともに、諸外国の国旗・国歌に対しても同様に尊重する態度を養成する、こうなっておるわけでございまして、これは、国旗・国歌法の審議のときに有馬元文部大臣が答弁された、学習指導要領に基づく国旗・国歌の指導は、憲法、教育基本法に基づいて、人格の完成を目指し、平和的な国家及び社会の形成者としての国民を育成することを目的として行っているのであって、憲法に定めている思想及び良心の自由を制約するものではないとの見解、これは現在まで一貫したものであると考える、こうなっておるわけでありまして、この考え方は今も変わっておらないわけであります。

石井(郁)委員 今、河村大臣は学習指導要領に基づく指導の問題として言われましたけれども、それは憲法にのっとって行われる範囲のものだということかと思いますけれども、私、確認したいのは、児童生徒の内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではない、今ここが大変大事なことでございますので、この点の確認をさせていただきたいわけでございます。いかがですか。

河村国務大臣 これは、おっしゃるとおりで、児童生徒の内心にまで立ち入って強制するものではない、あくまでも教育指導上の課題として行われる、こういうことであります。

石井(郁)委員 ところが、今現実に起きている問題としてきょうは申し上げたいんですけれども、今御答弁された政府の方針は間違っていると、政府答弁を逸脱した行為が平然と行われている、そういう教育委員会がございます。東京都の教育委員会です。

 ここに、私、昨年四月十日に開かれた東京都の教育委員会の定例会議録というものを持ってまいりました。ここでは、平成十四年度の卒業式及び平成十五年度の入学式の実施状況が議論をされている様子が書かれておりますけれども、その中に、教職員や生徒がどれだけ不起立であったかとか、あるいはそういう学校は公表しろとか、一連のそうしたやりとりがされているわけでございますけれども、その中でこんなことが書いてあるんですね。教育長の発言です。そもそも国旗・国歌については強制しないという政府答弁から始まっている混乱なのだと。ある委員は、それを受けて、「だから政府答弁が間違っているのです。だから文部科学省はきちんとやりなさいと、こう言っているわけです。」だから、文部科学省にあの答弁をやり直してちゃんとやれ、こういうことを言っているというわけであります。

 そもそもそういう国旗・国歌については強制しないという政府答弁から始まっている混乱だ、こういう強制しないという政府答弁が間違っている、こういう意見について、文部科学大臣の御見解を伺いたいと思います。

河村国務大臣 今御指摘いただいた点でありますが、東京都教育委員会の議事録、昨年四月十日、政府答弁が間違っているという委員の発言が記載をされておりますけれども、この発言の真意が明らかでないという点で、どういう思いで言われたかということが明確でありませんから、これについて私がどうこう言うのは差し控えさせていただきますが、東京都の横山教育委員会教育長、その後、東京都の議会、平成十五年十二月二十日でありますが、ここにおいて、東京都の国旗・国歌の指導は、児童生徒の内心にまで立ち至って強制しようとする趣旨のものではなくて、あくまでも教育指導上の課題として進めているものである、こうした考え方は、学校教育における国旗・国歌の指導に関する政府見解と異なるとは考えていない、こういうふうに答弁をされているわけでありますから、私は、そういう方向でやっていっていただけるものだ、こう思っておるわけであります。

石井(郁)委員 この会議録の真意がもう一つつかみかねるということでございましたけれども、しかし、明らかにちゃんと載っているわけでございますから、大臣、そのようにおっしゃるんでしたら、この「政府答弁が間違っている」、これはどういう真意なのか、そのことはきちっと問いただしていただけますか。

河村国務大臣 これは、私はそのいきさつ、どういうふうな形であれしたか細かくは知りませんが、この政府の答弁が間違っているという議事録があるということを踏まえて、いろいろそれについてあったんじゃないかと思います。

 そこで、その後、横山教育長は、児童生徒の内心にまで立ち至って強制をする趣旨じゃないんだ、あくまでも教育指導上の課題として進めるものだ、こういう考え方を持っておられますから、これは私が先ほど御答弁申し上げたことと一致するわけでありまして、そういう意味で、答弁が間違っているということにはならないのではないかな、私はそういう感じを持っております。

石井(郁)委員 現実に起きている問題というのは大変深刻な事態を招いておりますので、そこで少し具体的に伺います。

 日の丸・君が代実施については、教職員の処分を伴った強制、異常な形で進んでいるわけですね。これが昨年十月二十三日に東京都の教育委員会教育長横山洋吉名で出された通達。そして、その中身というのが、非常に事細かに式の場合どういうふうにするかということが書かれているんですけれども、まずその通達自身は、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たり、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合、これは服務上の責任を問われることになるということを周知させたいということにして、実施指針というのを出されているんですね。これなんですけれども、「国歌の斉唱について」では、「国歌斉唱に当たっては、式典の司会者が、「国歌斉唱」と発声し、起立を促す。」「会場において、教職員は、会場の指定された席で国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。」などと、会場の説明も含めて十二項目です、非常に細かく指示がございます。これに従わないと職務命令違反だと。これは問答無用の押しつけなんですね、処分で従わせるというわけですから。

 私は、これは明らかに、強制しないと言っている政府答弁を逸脱しているものだと考えるわけですが、実際、それで、ことし三月十一日に開かれた都立高校の卒業式、どうだったか。

 二名の指導主事が乗り込んで、一人は来賓席に座る、一人は教員の間に入り込む、来賓として参加した都議会議員とともに監視を行う。だれが立たない、どうしたという問題ですよね。

 ある学校では、式が始まって、司会の教員が国歌斉唱と声を発しますと、途端に生徒が潮が引いたようにさあっと座ってしまった。それを見て、校長と教頭が、起立して歌いなさいと。来賓席にいた都議も、起立しなさいとどなる。校長、教頭は、信念を持って座っている者以外は立ちなさいと叫んだりする。しかし、生徒たちは九割が着席したままでしたということです。だから、九割の生徒は信念を持っているということになるわけですね。

 大臣に私は伺いたいんですけれども、国会、法案審議のときに、例えば国歌の例について申し上げますれば、いろいろな指導を受けた後、しかし、やはり自分としては歌いたくないという児童がいた場合に、無理強いして斉唱させるということになりました場合には、やはりこれは内心に立ち入るということにかかわってくるんだと。これは当時、辻村初中局長の答弁でございます。

 この答弁から見ますと、来賓までもが起立しなさいと叫んだり、教頭が信念を持っている者以外は立ちなさいというようなことを言うというのは、憲法が保障する内心の自由を踏みにじるものになりませんか。いかがでしょう。

河村国務大臣 私はその現場におりませんからその状況はわかりませんが、皆さんがそういう思いでおられるという、やはりこれは、内心の自由に立ち入るというよりも、あくまでも教育的配慮といいますか教育的指導の立場、やはり校長、教員は、学習指導要領に基づいて児童生徒に対して指導しなきゃいけない、指導すべき職務上の責務からそういうことが出ておるわけでありまして、私はそれは、児童生徒の内心に立ち入って強制しようという趣旨とは思えない。

 こういう話を聞いて、教育というのはどうあるべきかということも考えていかなきゃなりません。これから子供たちが社会に出ていって、世界を見ていかなきゃならぬ中で、自分の国の国旗・国歌に対してどういう思いを持っていくか。これは強制とかなんとかじゃなくて、当然、マナーとして、あるいは国旗に対する自分の思い、それはすなわち世界の国々の国旗・国歌に対する敬意の持ち方、そういうものにつながっていく、そういうものが必要であるからということで教育現場が教育をしておるわけでありまして、こういうことがまだ東京都で行われておるということ、これはむしろ、正直言って、私の山口県なんか考えたときに、そういうことが問題になることはないんですね。

 だから、そういうことを考えますと、教育の現場としては、やはりそういう点が今まで十分でなかったというふうに先生方は思われて努力をされておる、校長先生以下、努力されている。そう言うものの、国旗・国歌法というものができてまだ日がそんなに長いわけではありませんから、その過程段階にもあるわけでありますけれども、そういうことで、まさに教育的な指導といいますか、適切な教育的配慮のもとに行われている、私はそのように理解をしておりまして、まさに児童生徒の内心の自由に立ち入っている問題ではない、私はそう思っております。

石井(郁)委員 国旗・国歌についていろいろ指導するということを言っているんじゃないんですよ。指導するということは指導するでしょう。

 ただ、最終的に、結果として、立ちなさいと言ったり歌いなさいと言って、例えばこれは国会でも審議になりました、口をこじあけてまで歌わせるのかということになって、そんなことはできないはずだと。そういう、立ちなさいということを言って立たせるということをさせるのは、本当に内心の自由に立ち入ったことになるでしょうと。これは御手洗当時の初等中等局長も言っていました。一般的に、教育の場においても思想、良心の自由、それを表明する表明しないという自由は、それ自体としては認められる必要がある、これが当時の政府の答弁だったんですよ。それが今踏みにじられているんです、本当に異常な形で。そのことを私は問題にしているんです。

 その過程にどういう指導をしたかしなかったかとか、それはまた別の問題でありまして、私は、現実に起きているこの東京都の問題というのは、本当に内心の自由を踏みにじっているんじゃないのかという問題なんです。

 もう時間なので先に行きますけれども、こういうやり方が、処分をエスカレートさせるということでさらに進んでいるんですね。五月二十五日にはこういうことが出されました。卒業式及び入学式における職務命令違反にかかわる懲戒処分、第三次分。指導不足による生徒の不起立等を理由にして、厳重注意、注意、指導という処分を行っているんです。だから、生徒が不起立した、立たなかったということをもって指導不足だと。

 生徒の内心の問題と教員の指導という問題がこんな形で直線的につながってしまう。歌う、歌わないというのは生徒の自由だということまでは大臣もお認めになるわけでしょう。だとしたら、起立、不起立で教職員が処分の対象になるというのは、おかしいんじゃないですか。なぜ、生徒の自由を踏みにじって、このことが処分の対象になるのか。

 この問題について大臣の御見解をお聞きします。

河村国務大臣 教員が学習指導要領に基づいて指導を適切に行っているか否か、仮に不適切な指導を行った場合にどのように対処するかということは、これは学校を所管しております教育委員会が適切に判断をしなきゃならぬ問題だ、こう思っております。

 今回の東京都教育委員会において、生徒に不起立を促す発言をするなど不適切な指導等が行われたなど、教員の指導がやはり不適切であった、こういう場合には教員を指導する、こういうふうに聞いておるわけでございます。

 国旗・国歌法の審議においては、さっきから御指摘ありますように、児童生徒が単に国歌を歌わなかったり起立しなかったということ等をもって、児童生徒が不利益をこうむるとかあるいは心理的な強制力が働くような方法でその後の児童生徒に対する指導が行われることがあってはならないということであります。

 したがって、東京都教育委員会も、今回の指導についても、このような観点を踏まえて教員に対する指導を行っておられる、このように考えておるわけであります。

石井(郁)委員 私は、今、児童生徒が本当にどういう判断をとるのか、どういう行動をとるのかという問題は、これは児童生徒の内心の自由にかかわる問題ですということをきょうは申し上げているわけであります。そして、生徒が国歌を歌わないということをもって不利益処分の扱いをするなどということがあってはならないということもはっきりしていると思うんですね。

 ただ、次に問題なのは、この学校の中で、児童生徒に心理的な強制力が働くような方法でその後の指導が行われることがあってはならないということも当時言われました。しかし、今の問題というのは、要するに、教員の処分ということがもう出ているわけですから、子供からしたらどうなんでしょうか、私が歌わなければ先生が処分される、これは心理的な強制力になりませんか。なりますよ。

 こういう形でやはり子供たちに歌を歌わすということも、国会の答弁の中からは出てこないんじゃないのか、答弁に反するのではないのかと私は申し上げているわけでございます。いかがですか。

河村国務大臣 東京都教育委員会が通達を出しておられますが、これは、学習指導要領に基づいて、入学式、卒業式等を適正に実施することとあわせて、国旗掲揚及び国歌斉唱の実施に当たっては、教職員が本通達に基づく校長の職務命令に従わない場合には、職務上の責任を問われることを教職員に周知することと指示してありまして、これに基づいて、これまで三次にわたって職務命令違反で処分が行われたわけであります。

 御指摘の問題でありますが、これは、職務命令違反による処分とは別に、生徒に不起立を促す発言をするなど不適切な指導が行われた、この場合には注意とか厳重注意とかいうことがあったわけですね。これは、学習指導要領で、指導が不適切な場合には教員を指導するという、先ほども申し上げましたが、これからきておるわけでございまして、指導が適切に行われているかどうかという観点からこの問題を指導しているのであって、あくまでも、児童生徒の内心の自由をそれによって侵す、侵さない問題、これと別次元の問題であって、この点については東京都教育委員会が適切に判断をされて行っておられる、このように私は思っております。

石井(郁)委員 少し話がやはりどうしてもすれ違っているんですけれども、とにかく、生徒たちは教員の処分問題を大変心配しています。卒業式の前日に、先生大丈夫なのかと聞いてきたりするということで、そうすると校長は、先生が処分されるから大きな声で君が代を歌ってほしいと頼んだりする。

 今、大臣がおっしゃったその不適切な指導の中に、生徒にここで立たないようにと言ったか言わないかという、私は、その問題だけではないんですね、処分はその範囲にとどまっていないと思います。だから問題にしているんです。

 それで、先ほど通達のことを出しましたけれども、この通達の中には、司会者が国歌斉唱と発声して起立を促すということで、その席に立って歌いなさいということを、本当に事細かに書いてあります。しかし、ここには、生徒に起立指導などとは書いていません。つまり、起立しなさいという指導は書いていない。書けないはずなんですよ。これは生徒の内心の自由があるからですよ。

 ところが、生徒が立たなかったということをもって指導不足だ、そして処分をすると。これは本当に行き過ぎではありませんか、国会答弁にもないことをやっているんじゃありませんか、そのことを私は申し上げているんです。

 残念ながら時間が来ました。最後に一言、大臣、お願いします。

河村国務大臣 児童生徒が起立したかしないかというだけ、それだけ、あくまでも教員が適切に指導をしたかどうかということがやはり問われておると思うのでありまして、これが心理的な強制に当たるとかそういうものではないので、適切な指導をしたかどうか、ちゃんと行われていたかどうかということで、やはり教育委員会が個々の具体的な事例に対して判断をすべき事柄であろう、このように思います。

石井(郁)委員 時間が参りました。

 私は、児童生徒の内心の自由は本当に憲法上の侵してはならない自由でありますので、きちんとやはり守り抜く指導をしていただきたいということを申し上げて、終わります。

池坊委員長 午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時六分休憩

     ――――◇―――――

    午後一時二分開議

池坊委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。増子輝彦君。

増子委員 民主党の増子輝彦でございます。

 きょうは、同僚議員の御好意によりまして再度質問の機会をちょうだいしたことに、心から厚く御礼を申し上げる次第でございます。

 まず初めに、先日、大変不幸な出来事が起きてしまいました。長崎県佐世保における小学校六年生の女子児童による同級生の女子児童殺害という、本当に痛ましい不幸な事件でございました。私どもに与えたそのショックというものも非常に大きいものがございます。まずこの事実確認をしたいと思いますので、お願いを申し上げたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 佐世保市立大久保小学校におきまして、六月一日の昼食時間中に六年生の女子児童が同級生を死亡させるという大変痛ましい事件が起こったわけでございます。

 私どもも、この事件、大変重たく受けとめているわけでございまして、私どもは、現在、長崎県教育委員会を通じまして状況の把握に努めているところでございまして、今週、六月の八日に職員三名を佐世保市、現地へ派遣をいたしまして、長崎県の教育委員会、佐世保市教育委員会、また学校関係者からお話を聞いたところでございます。

 現地では、加害児童、被害児童の学校での様子でありますとか事件当日の対応状況等について事実確認を行うとともに、今後の対応について説明を受けたところでございますが、御案内のとおり、こういった少年少女の事件でもございます、現在、家庭裁判所で審判が開始をされておる、また学校も、今動揺をしております子供や教職員のケアを優先せざるを得なかった、いろいろなことがございまして、まだ、原因でありますとか動機を詳細に把握するところまでは至っていないわけでございますが、引き続き私ども、長崎県教育委員会を通じましてこの事実解明の進展に努力をしてまいりたい、かように考えているところでございます。

増子委員 事実確認、当然必要なことではございますが、またそれ以上に、こういった事件がやはり再び起きないようにすることも、より重要だと私は思っているわけであります。

 過去にも、中学生、小学生児童による殺傷事件が多々起きているわけであります。平成九年から数えますと、今回を含めて十二件と私は認識をいたしておるわけでありますけれども、文科省としても、その都度、ただいまのような局長の答弁があるんだと思うんです。事実解明をしながら、そしてそれに対する対策というものを講じるということが答弁の中には出てまいるわけでありますが、しかし、どうしてもこういった事件がなかなか防げないという大きな問題にもなっているということを考えると、今回は、今までのその教訓を踏まえまして、子供たちの幾つかの問題点もしっかりととらえながら、事故防止という対策をしっかりと講じていかなければいけないと思っております。

 そういう意味で、この事件を教訓に、事故防止対策を今後文部省は具体的にどのようにとるのか、御見解を承りたいと思います。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 文部科学省におきましては、事件発生の翌日、六月の二日でございますが、都道府県、指定都市の教育委員会の教育関係者を集めた会議におきまして、こういった事件の再発防止に向けた注意喚起と問題行動に対する一層の取り組みの充実について指導を行ったところでございますが、今後とも、いろいろな会議を通じまして、この指導の徹底を図ってまいりたいと考えております。

 さらに、六月四日に河村文部科学大臣の談話を発表するとともに、学校での安全や安心を確保する観点から、児童生徒の問題行動に関するプロジェクトチームを省内に設置し、六月四日、同日でございますが、第一回の会議を開催したところでございます。

 このプロジェクトチームにおきましては、命を大切にする教育、学校で安心して学習できる環境づくり、情報社会の中でのモラルやマナーについての指導のあり方、これにつきましても、これまでもいろいろな施策を講じてきたわけでございますけれども、もう一度原点に立ち返って検証し、今後の学校現場での取り組みに生かせるような、そういった対策方針をこの会議を通じまして研究して、夏ごろまでには何とか一つの方向性を出せたらな、こんなことを考えておるわけでございます。

 引き続き情報収集を行うとともに、このプロジェクトチームにおきます検討結果を踏まえながら、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

増子委員 まさにショッキングな事件であります。児童たちの心の傷というようなものは私たちが想像する以上に大変大きなものがあるんだと思うんです。子供たちが深く負ったその傷、中には登校ができなくなった子供もいるというふうにも聞いております。先生の中にも一部そういう先生がおられるというふうにもお聞きをいたしております。

 こういった心の傷を、今局長がおっしゃったような形だけの中で本当にいやすことができるのか、あるいは、学校というものに対しての恐怖感を抱かないで、今までどおり濶達に明るく学校での生活をすることが子供たちにできるのか。極めて私は、今回の事件は大きな傷を子供の心の中に残したと思っているわけであります。

 そういう意味で、この佐世保の小学校のみならず、これはやはり全国の学校に対して、大変大きな子供たちへの傷というものに残ってきているんだろうというふうに私は思っているわけでありますが、そういう意味で、この子供たちの心の傷のケアというものについて、具体的に今後どういうふうに対処していくのか、御見解を承りたいと思います。

河村国務大臣 長崎の事件、本当に痛ましい事件でございまして、私どもも非常に胸ふさがる思いでございます。

 このこれからの対応について、まさに遺漏なきを期していかなきゃなりませんし、私は、増子先生御指摘のように、今回の事件というものが一番大変だったのは、やはりそのクラスメートあるいはその周辺の先生方、このケアの問題だと思います。

 それに対しても、今回のこういう事件を踏まえて、各学校においても、こういう問題についてやはりみんなで話し合っていただいて、そして、先生と子供たちが、どうしたらこういうことが防げるんだろうというような話をやっていただくことが、一番私は、効果があるといいますか、皆さんで、みんなでこの問題を考えていただくということが、これからのこうした事件を防止する第一ではないかな、こう思っておるところでございます。

 そこで、大事なカウンセリング等のケアの問題でございますが、佐世保市の教育委員会、それから長崎の教育委員会、六月二日から、常勤三名のカウンセラーをこの大久保小学校に配置いたしております。それから、常勤三名で、さらに相談員を地元公民館に配置いたしまして、児童や保護者、学校の教職員のケアをやっている、こういうふうに報告を受けております。

 また、長崎県の教育委員会からの要望を受けまして、文部科学省もその大久保小学校へ、子どもと親の相談員を一名差し向けたところでございます。

 私も、学校は大変だろうなという思いがございまして、大久保小学校の出崎校長先生とも直接お電話でお話をいたしました。特に公表はしなかったのでありますが、大変さを思いながら、これからの児童生徒のために、ぜひ、しっかり対応をお願いしたいということを申し上げました。校長先生は、自分の傘下でこういう事件が起きて申しわけない、その一点張りでしたけれども、そんなことよりも、これからの対応をしっかりやっていただきたい。特に、担任の先生が、大変な急性のショックといいますか、まさにPTSDといういわゆる後遺症的なものですが、これに至る直前の、まさに急性のそうしたショック状態がある。これにどう対応するかということですけれども、こういう方々にもしっかりカウンセリングを受けていただくようにお願いしたいというお話をいたしました。

 そういう意味で、関係者、児童生徒、保護者、それから学校の教職員の皆さんの心のケア、これにまず力を入れていかなきゃいかぬと思っておりますので、全面的なそういった面の支援は、文部科学省としても、県の教育委員会あるいは市の教育委員会と連携をとりながらしっかり支援をしていきたい、このように思っております。

増子委員 カウンセラーを配置された、そういう対策も非常に大事なことだと思います。

 しかし、やはり現場の先生方という方々が、より自信を持って子供たちに接すること。とかく今の教師の方々は、できるだけ難しいことあるいは大変なことはやらない。それは、何かちょっとやりますと、すぐ親が教育委員会に申し出て、すぐ事件化されるということが心配で、ある意味では、教員が非常に憶病になっているという部分が非常にあるのですね。

 ですから、私は、教員の皆さんに対しても、今後、何らかの形でひとつ改善をしていくという方策をとることとあわせて、こういう事件が起きる前に、多分これは文科省の方でも過去にも何度か話に出たと思うのですけれども、カウンセラーをそれぞれの学校に常時いていただくというような具体的な方法も、今後の子供たちのいろいろな問題についての悩み、あるいは進学、あるいは友人関係等も含めながら、必要ではないのかというふうに思っているわけですので、これらについても、今後、検討課題として、ひとつぜひお考えをいただきたいと思います。

 と同時に、今、子供が本当に心が病んでいるんですね。非常に大変な状況にあるんだと思うのです。そして、生活が大変乱れている。そして、非行化もどんどん低年齢化しているのです。これはもう警察当局からお聞きになればよくわかると思うのですけれども、非常に子供の非行化がどんどん低年齢化しているのです。

 もっと極端に言いますと、もちろん売春ですね、それから援交、あるいは薬、こういったことの低年齢化が非常に実は進んでおりまして、特に性感染症という問題については、極めて我が国においてこの低年齢化ということが深刻な状況になっていることは、もう御承知のことだと思っているのです。お思いだと思います。

 そういう意味では、その原因もまた私たちはしっかりと追及をしながら、それを改めていかなければ大変なことになってしまうだろう。家庭のあり方、学校のあり方、社会のあり方、そういったものも当然必要なことでありますが、と同時に、携帯電話という大変便利なもの、あるいはインターネット、今回のこの事件も、皆さん御承知のとおり、インターネットがその大きな原因になったと実は言われているわけですが、私は、やはり子供に対するインターネットあるいは携帯電話、こういったものについての規制というものも、今後十分考えていく必要があるのではないだろうか。

 それは、大人に対するいろいろなアダルト的なものの規制はあるということよりも、大人はまさに自己責任でありますから、子供は、むしろその自己責任というものからどうしても離れなければいけない、まだまだ成熟していないという部分がありますから、私は、この規制という部分をしっかり今後同じように検討していかなければならないんだろうと思っております。

 それからもう一つ、この子供たちの精神的な乱れというか、成長過程の中で大変大きな要因を占めているのは、食生活だというふうに私は強く認識をいたしております。

 やはり、残念ながら、今の若い御夫婦、親御さんたちの育ってきた環境、そして、今の子供たちの置かれている環境から見れば、非常に食生活がこれまた乱れているんですね。スナック菓子をたくさん食べる。あるいは、お父さん、お母さんが共働きによって、どうしても手軽で便利な食物に進んでいくということになれば、どうしても、人間の精神構造あるいは肉体を含めて、なかなかいい状況にはなり得ない。

 そこで、今後、食育ということも含めながら、この食のあり方、食生活の改善というものを、私は、文部科学省としても非常に力を入れていくべきではないか。学校給食というものがあるわけでありますから、ぜひこの食生活の改善、食育というものについて、文部科学省として、学校給食の中でも積極的に取り入れて、ぜひこの改善というものに強く力を注いでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

田中政府参考人 委員御指摘のように、近年、子供たちを取り巻きます社会環境等の変化に伴いまして、子供たちの食生活に関しまして、朝御飯を食べてこない子供がふえている、また、子供たちだけで食事をする孤食、あるいは偏った栄養摂取等の問題が生じておるわけでございまして、子供のころから正しい食事のとり方、あるいはその望ましい食習慣を身につけるということは、大変重要になってきているというふうに考えておるところでございます。

 また、家族一緒の食事というのは、親子の大切なコミュニケーションの場でもございますし、家族で一緒に食事をする中で、親御さんの方で子供の微妙な変化に気づくというようなことにもつながるのではないかと考えておるところでございます。

 このような観点から、各学校におきましては、学校給食を初め、関連教科あるいは特別活動などを通じまして、食に関する指導の充実に努めておるところでございますけれども、文部科学省といたしましても、児童生徒用の食生活学習教材の作成、あるいは教員に対する研修会やシンポジウムの実施といったような観点から、各学校における取り組みを積極的に支援してきておるところでございます。

 また、今国会におきましてお認めをいただきました栄養教諭制度、これが来年度からスタートすることになっておるわけでございますけれども、この栄養教諭は、学校内での食に関する指導とともに、家庭への働きかけなども含めまして、学校内外を通じた食育のコーディネーターとして、学校、家庭、地域社会が連携協力して食に関する指導に取り組んでいく上で、重要な役割を果たしていただきたいというふうに期待しておるところでございまして、文部科学省といたしましては、この栄養教諭の円滑な実施を始めまして、各種施策の充実に努め、食に関する指導の一層の推進に努力してまいりたいと考えております。

増子委員 ぜひ積極的にお願いを申し上げたいと思います。

 大臣、先ほどちょっと申し上げましたけれども、携帯電話とかインターネット、これについて、子供に対して規制をかけるということ、今すぐ即答というわけにはまいらないと思いますが、十分その余地はあると思うのですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 インターネットの活用は、やはり情報伝達能力、情報収集能力を持つ意味で意義はあるのでありますが、それにはやはり影の部分があるということ。これは、やはり情報モラルの観点。それからもう一つは、やはり携帯電話の影響というのが非常に大きい。出会い系サイトの事件等を見ても、これをどう歯どめするか。学校にそういうものを持ってきたらもう学校で全部預かってしまえとか、今いろいろな意見がございます。

 そういうことも含めて、この問題のマイナスの部分、負の部分に教育界はどう対応するかということは大事な問題でありますから、検討させていただきたいと思います。

増子委員 よろしくお願いをいたしたいと思います。

 この事件、本当に不幸でなおかつ忌まわしい事件でございますし、心の傷というものは非常に大きいものがございます。どうぞ文部科学省におきましても、ぜひ、今度のこの事件を一時的なものとしてとらえることなく、今後こういう事件が起きないようにしっかりと取り組んでいただきたいことを要望申し上げまして、質問を変えたいと思います。

 次に、北朝鮮から、大変喜ばしいことに、拉致をされていた被害者、蓮池さん、地村さんの子供さんたちが帰ってくることができました。ようやく両親と日本で一緒に生活ができるようになったこと、私は本当によかったと思っております。曽我さんにも、一日も早く一緒に暮らしていただけるように実は望むところであります。と同時に、十人の安否不明者、そして四百人とも言われる特定失踪者の問題について、しっかりと日本政府としては取り組んでいかなければならないというふうに、私たちは外務委員会や外務委員会の中の拉致小委員会も通しながら、これは今積極的に進めているところでございます。

 そういう中で、この五人の両親と一緒に生活できるようになった子供さんたち、これから日本の生活の中にしっかりと順応しながら、やはりいい人生を送っていただかなければなりません。そういう意味では、日本の文化、伝統、習慣、人間関係、あるいは社会とのかかわり、いろいろな意味で実は大事な部分があるわけであります。また、将来の職業の問題等も、これはさまざまな課題が今後出てくると思います。

 そういう中で、何よりも重要なことは、早く日本のこのシステムの中に、先ほども申し上げたとおり、順応できるような仕組みをつくっていくと同時に、今度は教育の機会というものを、まだ実は、北朝鮮の中で卒業したといえども、日本で学ぶことがたくさんあるわけであります。そういう意味で、日本における教育機会ということについて文部科学省としてどのような対策をとっていこうとしているのか、この件についての答弁を求めたいと思います。

河村国務大臣 拉致被害者、その御家族に対する支援、これは、拉致問題への対処に関する基本方針というのが十四年の九月二十六日に出ておりまして、その意向を十分踏まえて、内閣官房参与を中心にして、関係省庁、関係機関が連携協力して取り組む、こういうことでやってきておるわけでございますが、今回無事に帰国されました皆様方、家族五名、この子供さん方に対する教育機会の確保のためには、学校の受け入れと学校における日本語習得の支援、これにまず取り組もうといたしております。

 今後、具体的に、いわゆる学校への受け入れを進めていくに当たりましては、拉致被害者の皆さん、それから家族の状況を踏まえる必要があるわけでございますが、当面の対応としては、省内に連絡会議を置きますとともに、関係の教育委員会、大学等に対しましても、今既に通知を出しておりまして、拉致被害者家族の状況に応じた教育の支援について理解と協力をお願いいたしておるところでございます。

 文部科学省といたしましても、この教育機会の確保につきましては、内閣官房と、それから関係地方公共団体とも緊密に連携協力しながら、拉致被害者あるいは家族の御意向も十分に踏まえた上で積極的に対応してまいりたい、このように考えております。

増子委員 ぜひ、積極的にこの支援体制をおとりいただきたいと、強く改めてお願いを申し上げておきたいと思います。

 次に、先般来、当委員会でも非常に大きな問題となっておりますし、また、さまざまな方々から質問が出ておると思います。私も、過去二度、この問題について質問をさせていただいておりますが、仙台市の東北文化学園大学につきまして質問をさせていただきたいと思います。午前中の質問の中にもこの問題についての質問があったと思っておりますけれども、改めて私の方からも、重なるかもしれませんが、幾つかの点について御質問をさせていただきたいと思います。

 今日まで、不正が発覚してからの調査結果について、簡潔に御報告をお願い申し上げたいと思います。

加茂川政府参考人 東北文化学園大学についてのお尋ねでございます。

 この大学の設置認可申請等をめぐる問題につきましては、私ども、大変重要な問題であるという認識のもとに、四月に職員を派遣する現地調査を行ったこともございますし、学校法人に対しましては事実関係の徹底した調査と報告を求めておったわけでございます。

 具体には、正確な財務状況を五月末までに提出するよう指示をしておりました。これを受けまして、学校法人は、外部の弁護士、公認会計士等を含む緊急調査委員会を設けまして調査を進めておりました。私どもには、この調査委員会の報告ということを介しながら、学校法人から五月十七日にまず中間的な報告がございました。それから、五月三十一日にはいわゆる最終の形の報告書があったわけでございます。

 そして、この報告書の中では、いわゆる虚偽の寄附の問題、二重帳簿の問題、不正経理の問題等、重大な事実が再確認されておるわけでございますが、この報告書には財務状況をあらわしております貸借対照表がついておりました。

 この貸借対照表につきましては、実は、私どもとしましては、まだ算出根拠が不十分である等、資料の追加提出を求めておりまして精査に努めておるわけでありますが、学校法人からは、現状において可能な限り監査に近い方法で行われたものだと説明を受けたものでございます。ただ、この貸借対照表を見る限りにおきましては、学校法人の説明では、負債額が約二百十九億あるという厳しい状況を説明するとともに、実質的な資産が約三百億、一方であるんですという説明もございました。

 私どもとしましては、先ほどの追加資料を求めておることとも関係がありますけれども、資産評価についてはなお、公認会計士の監査報告書等もついておりませんので、正確な判断ができないという立場で、さらに詳しい説明を求めておるところでございます。

 なお、この報告書におきましては、学校法人あるいは大学の今後のあり方、見通し等については触れられておらないわけでございます。私どもとしましては、何よりも在学生の修学機会の確保を最優先に考えた対応をすることが最重要な課題と考えておりまして、一貫して学校法人に対してもそのように指導をしてきておるわけでございます。

 午前中の質疑で大臣のお答えにもございましたけれども、在学生等に最も不安の少ない形で、具体的には、現に在学している学生が今のキャンパスで予定どおり勉学を継続して卒業できるようにすることが何よりも重要と考えておりまして、今後、いろいろな展開があるかもしれませんけれども、このような学生の立場、利益が最優先に配慮されますよう全力を尽くしていきたい、こう思っておる次第でございます。

増子委員 当初、この問題について予算委員会の分科会で私は御質問をさせていただきました。あれからずっと時間が経過してまいりましたが、部長、まさかこういう実態だということは想像もつかなかったんだと思うんですね。極めて、実は内容のすさまじさに驚くばかりなんですね。

 そういう意味で、この大学、既に経営上大変厳しい環境に置かれている。きょうの報道でも不渡りが第一回目、出たという報道も実はなされているわけであります。経営が不安だということ、まさに今部長の方からも御答弁がありましたとおり、子供たちのこれまた心の不安というのは私は非常に大きいと思うんですね。果たして自分のこの通っている学校が存続できるんだろうか、せっかく大学に入学したけれども、この大学が存続して自分たちは卒業証書をもらうことができるんだろうか、実態はどうなっているんだろうと。最近、学生集会も開かれているというようなことも聞き及んでいますが、やはり学生たちの動揺は大きなものがあるし、また、御父兄の皆さんにとっても、せっかく子供を大学には入れた、しかし本当に大学は存続できるのか、子供たちは無事に卒業できるのか、そういった不安というものは非常に大きなものがあると私は思うんです。

 今も御答弁ありましたとおり、やはり何よりも、子供たちの修学機会というものがどのように担保されて、どのような方向でこれが存続できるかということが今一番この大学において重要な課題だと思っております。

 改めてお伺いいたしますが、学生のこの修学機会についてどのように対処していくのか、御答弁をお願い申し上げます。

河村国務大臣 今回の事件も極めて遺憾なことでございますが、学生の皆さんの修学機会が失われかねないという現実が迫っている状況下でございますから、このことをまず第一に考える、これは当然のことだというふうに思っております。

 一義的には学校自身が、これは自身で対応策を検討して、そして再建に向けて資金繰りもしながらやっていただくぎりぎりの努力、今それをまさに続けておられるというふうには承知をいたしておりますが、現実にはもう一回目の不渡りが出たということでありますから、極めて危機的な状況にあることは間違いございません。そういうことを踏まえて、在学生の修学機会の確保、これはやはり文部科学省としては最優先の課題だと思っております。

 これまでの例としては、広島県でさきに一件、そういうことがございました。その場合には、近隣の大学がその学生を引き受けたというケースもあるわけでございます。これからどういう形になっていくか、いずれにしても、この問題について、今の学生の皆さんが修学機会をそのまま続けていただいて、そしてちゃんと卒業していただく、このためにはどうやったらいいかという決断をしなきゃいけない時期が参ります。

 いずれにしても、いずれのケース、いろいろなケースがあると思いますが、文部科学省といたしましては、在学生の修学の機会が失われることがあってはならないと考えておりますので、所管庁としての権限を駆使して、在学生、保護者の立場、利益が十分配慮されるように全力を尽くしてまいりたい、このように考えております。

増子委員 ぜひ、子供たちの、学生の修学機会というものについて積極的に文科省としても対処願いたいと思っております。

 しかし、本当に、前理事長の脱税問題あるいは不正大量受験肩がわりとか、さまざまな問題が、今言ったようなことが発端として出てまいりました。やはりこの大学に対して、先般の何度かのこの委員会での質問の中においても、刑事告発を検討しているんだ、宮城県警とも今検討中だということも聞き及んでいるわけでありますが、この刑事告発をするということについて、具体的にどのような状況になっているのか、御答弁をお願い申し上げます。

河村国務大臣 この件につきましては、事柄の重大さにかんがみまして、これまで判明した事実に基づいて、元理事長の刑事告発に向けて宮城県警本部と協議を進めておるところであります。

 文部科学省としても、県警からの要請には全面的に協力しているところでございますが、今の御指摘の協議の内容、進捗状況、これにつきましては、今後の捜査にかかわる問題でありますので、現時点ではちょっとコメントできない状況下にございます。

増子委員 と同様に、大臣が記者会見で毅然とお答えになったということで、大変私、さすが大臣、有言実行だ、委員会で答弁されたことをそのまま毅然とした態度で記者会見をされたということで非常に高く評価をしているわけですが、補助金の問題についてでございます。

 補助金の返還を求めるということを文部科学省として大学側に要求するということでございました。それに対して大学側から、その返還の、いわゆる何とか嘆願をお願いするとか、あるいはほかの団体からもそのようなことが要請として出ているというふうにも聞き及んでおるわけでありますが、私は、今回のこの問題が、補助金の返還ということがもし差しとめられてしまった、そのままに見過ごしてしまったということになれば、これは非常に大きな悪影響を残すのではないのかというふうに心配をいたしているわけであります。

 そういう意味で、記者会見で大臣が毅然とされた、その記者会見と同じようなお答えを私は期待しているわけでありますが、この補助金の返還を求めることについては何ら変更はございませんか。

河村国務大臣 五億七千万円が交付された私立大学経常費補助金、この返還を求める、この方針に変わりはございません。

 文部科学省も、管理運営が著しく適正を欠いている、これはもう間違いないことでありますから、これを返還させる、この方向を打ち出したところでございまして、これは私も会見で述べましたとおり、今後、これを出しました私立学校振興・共済事業団、ここから交付されておるわけでございますが、ここが制度上返還を命ずる、こういうことになっていく。今、必要な手続を進めているところでございます。

増子委員 やはり血税でございます。これは国のレベルでの補助金、あるいは都道府県単位あるいは市町村と、各レベルでそれぞれ私学には補助金が交付されているわけでありますから、やはり血税を投入するからには、きちっとした正しい運営がなされていなければ返還を求めることは当たり前でございますので、ひとつよろしくお願いをいたしたいと思います。

 と同時に、先ほども申し上げましたが、第一回目の不渡り、二億一千万円の手形が不渡りになったというふうに報道されております。まさに厳しい財務内容であることは御案内のとおりであります。

 何か報道によりますと、これも事実だと思うんですが、先月の教職員に対しての給与が実は払われていなかったと。そして、さらに今月末にまた給与の支払いの時期がやってまいるわけであります。果たして教職員の給与支払いができるのかどうか、こういったことも実は大変重要な課題の一つになっているわけであります。それができなければ、もう既にこの学校は不渡りを出しながら、なおかつ過去のいろいろないきさつの中で財務内容が非常に厳しいという現状にあるわけでありますから、この件について、見通しとして文科省としてはどのような見解を持っているのか、お答えをいただきたいと思います。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 委員御指摘のように、この大学の財務状況はかなり厳しい状況にあるわけでございまして、五月の教職員の給与が遅配になったのも御指摘のとおりでございます。

 今後、六月のまた給料の支払い時期が参りますが、そういったことも含めて、財務状況はどうなるのか、または再建について取り組みはどうなっているのかというお尋ねであろうかと思いますが、現時点で申しますと、ぎりぎり大学法人が再建に向けての資金繰り、支援者の確保も含めて最終段階での努力をしているところでございまして、私どもがここで見通しについてコメントをすることが予断を抱かせることになることも心配でございますので、現時点では、大学がぎりぎりの努力をしている、それを文部省は十分連携をしながら協力をしていく、必要な指示をしていく段階にあるということを御理解いただきたいと思います。

増子委員 同時に、実は福島県郡山市に来年四月一日、薬学部開設計画があったわけであります。しかし、残念ながら、これは今回の不正により白紙撤回されました。そして、その際に郡山市が、進出のための協定を結びながら、十四億円というやはり補助金を出すということがありました。校舎用地として三十年間土地を無償貸与するということも実は決まっていたわけであります。

 これが白紙撤回されたことによって、郡山市が約二億八百六十八万円の支払いを損害賠償というような形の中でこの東北文化学園大学に求めるための清算契約書を締結したわけでありますが、今のような財務状況や諸事情を考えれば、この支払いというのは極めて難しい状況にあるのではないかと私は思っているわけであります。この辺のことについての見解を求めたいと思いますが、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 学校法人東北文化学園大学の財務状況、とりわけ負債額、言いかえると債権額の現状について、これは午前中も御答弁させていただきましたが、十五年度末現在における債権者の状況は三十四件、債権額にして二百十九億円でございます。

 今委員御指摘の郡山市に係る賠償金といいますか、支払い金額がこれに追加されるものと私は理解をしておりますけれども、債権額の金額をもってもかなりの膨大な額でございまして、これについてどのような支払い方法が可能なのか。これは債権者間での話し合いということもあるかもしれませんし、今後の展開によっては法的な手続に入ることもあり得るのかもしれませんが、現時点ですべての債権が払える状況にあると言い切れないことは事実でございますが、どうなるかということにつきましては、なかなか判断が難しい、軽々に判断、意見を述べることはやはり予断を抱かせることになるので差し控えたい、こう思っております。

増子委員 先ほども申し上げましたとおり、当初考えていた状況から、極めて深刻な状況にこの大学の問題については進展をしてきたということがございます。そういう意味で、私は、大学の認可のあり方について、今後十分精査をしていかなければならないのではないだろうかというふうに思っているわけであります。

 ぜひこれも今回のこの問題を教訓といたしまして、大学の認可のあり方、加えて、やはり事後のチェックということが極めて重要なものになってきたのではないだろうかというふうに思っているわけでありますが、今後の認可のあり方あるいは事後チェックについての御見解を、大臣、いかがでしょうか。

河村国務大臣 認可のあり方については私の方からお答えさせていただきたいと存じます。

 今回明らかになった検討課題は、申請書類が寄附の事実を確認できる十分な内容であったかどうか、それから書類審査や実地調査における審査方法は十分であったかどうか、それから職員の専門性やチェック体制が十分であったか、また公認会計士による監査が適切であったかということが挙げられるわけであります。

 今後の設置認可における審査のあり方、これらの課題については具体的に検討していきたいと思いますが、大学設置・学校法人審議会等の御意見を聞きながら、どのような改善方策が可能であるか、検討を進めてまいりたいと思っております。また、公認会計士による学校法人に対する監査のあり方についても、公認会計士協会と既に協議をいたしておりますが、さらに具体的な検討をいただいて、協力を求めていきたい、このように思っておるところでございます。

加茂川政府参考人 認可後の事後チェックについては、私の方からお答えをいたします。

 今回の東北文化学園大学に関しますチェックにつきましても、実は、設置認可後、毎年度、これは私立学校振興助成法の規定に基づきまして、財務書類が私どもに提出されておりました。これには監査法人等の監査報告書も添付されていたわけでございますが、この書類自体がいわゆる二重帳簿に基づいて作成されていたものでございまして、私どもとしましては、結果的に認可申請についてばかりか会計上の事後チェックも不十分に終わったわけでございまして、大変遺憾だと考えておるわけでございます。

 また、現在はいわゆる規制緩和、事前規制から事後チェックへという流れがあるわけでございまして、こういったことも十分勘案しますと、今後は設置認可後の管理運営の適正をいかに確保するかが、これまで以上に、先生御指摘のように重要な課題になってきているものと認識をしております。

 一つには、今国会で成立させていただきました私立学校法の一部改正法案の対応、効果を私どもは期待をしております。監事機能を含む管理運営機能の強化、あるいは財務情報の公開の義務づけ等をこの改正法案の実現で形にしていただきましたけれども、学校法人の管理運営の一層の適正に資するものだと考えておるわけでございます。

 また、従来より、いわゆるアフターケア、設置認可後に行う認可計画等の履行状況調査でありますとか、学校法人に対します経営上の指導等を行います学校法人運営調査委員会制度による法人に対するかかわりがございますけれども、例えば調査項目の充実、拡充なども検討をしながら、事後チェックルールの確立に一層努めてまいりたいと現在考えておるところでございます。

増子委員 時間が参りましたので、最後に一つだけお願いを申し上げたいと思います。

 現在、私学、大学関係に文部省からかなりの方が多分天下り、通称天下りをされていると思うんです。こういう方々は、その豊かな経験と実績を踏まえて、高等教育官として日本の教育進展のために大いに頑張っていると思うんです。しかし、天下りというその言葉の響きの中にもあるとおり、やはりそれによって一部の人たちが非常によからぬことをしていく、それによって文科省との間にさまざまな憶測や疑惑を実は招いているというような不信感を抱かれることは、私は文部科学行政にとっても決して得策ではないと思っているんです。

 ですから、すべてとは申し上げませんが、やはりこの辺のところには十分今後とも、天下りというものも含めて、今後のあり方について私は検討していく必要があるんだと思うんです。一生懸命、日本の教育のために、先ほど申し上げたとおり豊かな経験と実績をやっていこうという方にとっては困ったことだなと、私は内心本当に悔しい思いもしていると思うんですね。ぜひ、この辺のところも含めながら、しっかりと今後の文部行政の中で、私は教育官としてのあり方についてより積極的な活動を、あるいは指導をしていく立場で頑張っていただきたいと思います。

 以上で質問を終わります。ありがとうございました。

池坊委員長 横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 本委員会も、教育関係の重要な案件を鋭意審議してまいりましたが、今国会、質疑はきょうが最後でございます。その最後の質疑者でございます。よろしくお願いを申し上げます。

 冒頭、長崎の本当に痛ましい事件に関して、先ほどから質疑もございましたが、やはり、なぜあのような、いわば信じられないようなことが起きてしまったのか、そのあたりの事実の解明、そしてまた再発の防止に向けて、私は文科省挙げて全力で御努力いただきたいということを、まず冒頭お願い申し上げます。そして、御手洗怜美ちゃんの御冥福を重ねてお祈り申し上げたいと思います。

 それでは、質問に入らせていただきます。きょうは私、義務教育費国庫負担制度についてお尋ねをいたしたいと思います。

 経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇四、いわゆる骨太の方針第四弾ですね。この中で、三位一体改革につきましては、二〇〇六年度までに行う「税源移譲は概ね三兆円規模を目指す。その前提として地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。」このように明記されております。

 しかし、三兆円という数字が入ったことから具体的なように見えるわけでございますが、これは何も、四兆円を目的として、一兆円は実施されて残りが三兆円になったというだけであり、実は何も決まっているわけじゃないんですね。おおむねとか規模とか目指すという表現も加わっておりまして、非常にまだ今の段階ではあいまいさが、そのものが残っているわけでございます。税源移譲の中身や削減される国庫補助負担金の内容も先送りされております。結局は、年末の予算編成で、補助金削減やそれに見合った税源移譲につきましては、昨年同様、財務、総務、そして各省庁が改めて綱引きをすることになろうかと思っております。

 教育関係につきましては、この方針の中では、「教育については、義務教育に関する地方の自由度を拡大し、地方公共団体や地域住民の知恵・工夫が一層活かされるような仕組みとするため、これまでの改革に加え、現行法の見直しを含めた検討を進めるなど、義務教育費国庫負担制度の改革を推進する。」こう記述されております。いわゆる義務教育費国庫負担制度の改革がテーマとして取り上げられております。

 この義務教育費国庫負担制度につきましては、この国会でも随分と審議、論議がされました。これは私の私見でございますが、あのさきの大戦の敗戦以来、あの敗戦で私たちの国はまさにゼロからスタートいたしました。もっと言えば、ゼロ以下からスタートしたと言ってもいいんですよ。それが、このわずかの短期間に世界に比肩する経済大国に発展したわけです。本当にいろいろな理由があろうかと思います、この短期間でここまで経済発展するには。しかし、その理由の中でやはり一番大きな理由は、私は教育水準の高さだと思うんですね。そして、この教育水準の高さ、この水準を維持してきたのは、本当に何回も言いますが、私はこの義務教育費国庫負担制度があったからだと思うんですよ。その制度が今だんだん外堀を埋められた。内堀も埋められようとしている。今、本当にこれでいいのかという段階であろうと思うんです。

 ですから、後で触れますが、例えば中教審等いわゆる教育関係者の中からこの制度の問題点が浮き彫りになったのならともかく、経済財政諮問会議というところでこの問題が発端になっているということは、どうにも解せません。

 そこで、大臣にお伺いしたいんですが、経済財政諮問会議でのこの問題についてのこれまでの議論の経緯と、今後の改革の方向性について明らかにしていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 今、横光先生も御指摘がございましたが、経済財政諮問会議ではこの義務教育費国庫負担金の取り扱いが議論になっておるわけでありまして、総務大臣は、全体の一般財源化の方向性と、また学校事務職員等に係るものの先行的検討についても提案をいたしております。

 それを、六月四日の閣議決定、基本方針二〇〇四では、三位一体の改革全体について、基本方針の二〇〇三に掲げられた基本的な方向に沿って着実に推進することを基本として、平成十八年度までの改革の全体像をこの秋に、今秋に明らかにして、年内に決定する、こういう方向づけがなされておるわけでございます。

 こういう中で、義務教育費国庫負担制度に関しましては、我が文部省といたしましても、この問題、総額裁量制の導入を初めとする改革をしてきているところでございまして、今後とも、この義務教育の国の責任という問題、これはしっかり果たしながら、地方の意見を十分に踏まえながら、地方の自由度を高めるという方向、この方向を高めるということによる改革、これは進めなきゃならぬと思っております。

 しかし、現実に、国の役割分担というものが今のこの義務教育費国庫負担制度の中にきちっとうたわれておる、このことを経済財政諮問会議を初めとする関係方面に理解を求めながら、この義務教育の国庫負担金制度の維持といいますか、この根幹の維持についてきちっとした理解を求めていくように最大の努力を今尽くしつつあるところであります。

横光委員 この中で、重ねて申し上げますが、「現行法の見直しを含めた検討を進めるなど、義務教育費国庫負担制度の改革を推進する。」とあります。これが閣議決定されました。そして、河村文科大臣もこれを了承いたしました。

 「現行法の見直しを含めた検討を進めるなど、義務教育費国庫負担制度の改革を推進する。」この部分は具体的にはどのような改革を意味すると大臣は受け取っておられるんですか。

河村国務大臣 この総額裁量制、いわゆる義務教育費国庫負担制度の改革ということになりますと、私どもとしては、この改革として総額裁量制を入れたわけでありますから、これによって地方の自由度を大幅に拡大する、このことについては知事会等も評価をいただいておるところでございます。

 そこで、さらにこれを実施する段階において地方の知恵、工夫が生かされる仕組み、この見直しを検討する、これも改革だと思っておりますが、具体的には、国立学校の教職員の給与について、平成十八年度実施予定の公務員制度改革と歩調を合わせながら、能力、実績等に応じた給与支給や能力給、こういうものが導入されるような見直しが検討される必要があること、あるいは教員の人数、配置についても、加配の一層の弾力化等によって地方の自由度を高める工夫、こうした検討をしなきゃいかぬ、こう思っております。

 そういうことを念頭に置いて、義務教育についてのナショナルミニマムをちゃんと維持しながら、地方の創意工夫によって地方の実態に合った特色ある教育が展開されるように、このための改革をやっていこう、このように考えておるわけであります。

横光委員 今細かく御説明いただきましたが、いわゆる義務教育費国庫負担制度の存続、廃止ということでは、存続ということでお考えなんですね、改革は。

河村国務大臣 もちろん、この義務教育費国庫負担制度の根幹を維持しながら、さらに地方の自由度を増す、そのための取り組みをやっていきましょう、こういうことであります。

横光委員 それは、あくまでもこの制度は存続した上で地方の自由度を高めるというお考えだと受けとめております。

 地方の大事さというのを大臣は今何回もおっしゃられました。確かにそのとおりでしょう。しかし、地方丸投げではいかぬと思う。

 ただ、骨太の第四弾でも、「地方公共団体に対して、国庫補助負担金改革の具体案を取りまとめるよう要請し、これを踏まえ検討する。」地方公共団体にかなり意見を聞くことになっております。また、教育分野においては、「地方公共団体や地域住民の知恵・工夫が一層活かされるような仕組みとするため、」と、いわゆる地方公共団体のお考えというものがこの制度の存続あるいは廃止というものに物すごい影響を与えるという思いを私は持っているわけです。

 その地方公共団体も、現在いろいろと意見があるようでございます。まとまっておるような状況でもございません。しかし、そういった中でも、片山鳥取県知事などは制度維持の立場をとっておりますし、また、全国市長会の有志十五市長がこの制度の維持のための提言をまとめて大臣に提出しているわけでございます。やはりそれぞれ地方自治体にとりましても、税源移譲は欲しい、しかしこの制度は守らなきゃならない、いろいろな悩みがあろうかと思うんです。

 しかし、私、先ほど言いましたように、大臣も言われましたように、まさに国の責務なんですから、こういったことを何とか各自治体に、大臣や文科省挙げて全力で説得して、説明をしてこの制度の必要性というものを訴えるべきだ、これがこれからの闘いの大きな分岐点になるだろうと思っておりますので、その点の文科省のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

河村国務大臣 先ほど来横光先生も御指摘のように、日本の義務教育を全国津々浦々に高い水準を維持しながら優秀な教員を確保していく、このための義務教育費国庫負担制度の重要性については、これまでも述べてきておりますし、また、当面の直接の責任者であります麻生大臣ともこの話はいたしておりまして、中央教育審議会においては、麻生大臣の方から、やはりこれは、いわゆる負担金あるいは補助金的なものをできるだけなくして税源も移譲していくという方向は正しいんだが、しかし、教育はやはりそもそも論が要るのではないかという議論をされております。

 竹中経済政策担当大臣ともこの問題を話しておりまして、これを取り上げるにしても、やはりまず教育論というものを前提にして、教育論をちゃんとやった上で考えるべき課題であるということについては、経済財政諮問会議でも提議をされておるところでございまして、我々の方は、中央教育審議会の報告、答申、これを持っておりますけれども、今後それをさらに経済財政諮問会議の中においても、やるのならやはり教育論を前提としてやってもらいたいということを強く求めておるわけであります。

横光委員 今、麻生大臣のお話が出ましたが、実は私、総務委員会にも所属しておりますので、この問題も論議したことがございます。麻生大臣も、そもそも、この教育に関しての制度の問題は、本来は経済財政諮問会議のテーマにはそぐわないという意見も言ってはおられるんですよ。

 しかし、総務省全体としては、いわゆる、先ほど私、地方自治体の皆さんを説得してほしいと言いましたけれども、向こうは説得するにしても別な道で、教育と別な分野で説得するわけですが、そのときにはあめというものがあるんですよ。交付税やその他税源とか、そういったものの強みがある。こちらは制度の必要性、価値、それで訴えるしかないんですね。あめというものがない。しかし、長い目で見れば国の大変な国益、あるいは損失につながるという大きな問題であるということを訴えれば、私は、自治体の皆様方は必ず理解してくれる、このように思っております。

 そこで、教育論的な立場からこれからも頑張っていかれるというお話でございますが、その中教審で中間報告が出されましたね、作業部会で。この中間報告はいずれ最終答申されるわけですが、この答申の時期はいつごろを予定されておるんでしょうか。できるだけ早く答申してほしいという旨を訴えるべきだと思いますが、いかがでしょうか。

近藤政府参考人 お答えをいたします。

 おっしゃるように、五月に中間報告が出たわけでございまして、さらに今後、この中間報告をもとに親部会の方で、関係者の意見を聞きながら義務教育制度のあり方の一環として議論を深めていただくという予定でございますが、義務教育に係るいろいろな課題がございます。また、特に、市町村の権限と責任を拡大していく、そういった検討すべき課題も少なくないわけでございまして、最終答申の時期につきましては具体的に決まっているというわけではございませんが、十分に審議を尽くしていただいた上で、できるだけ早く答申をまとめていただけたら、こういうふうに考えておるところでございます。

横光委員 昨年暮れの三位一体改革に関する政府・与党協議会の取りまとめで、「中央教育審議会において義務教育制度の在り方の一環として検討を行い、これも踏まえつつ」、これもというのがいかぬのです。これを踏まえつつならわかるんですが、これも踏まえつつという非常にあいまいな形で中教審の意見を聞くということになっておりますが、その意見の中間取りまとめが約半年かけて五月に出された中間報告、これはかなりいろいろな問題点を指摘しております。

 そして、この中間報告というものがほぼそのまま最終答申になろうかと私は思っておるんですが、この中の報告を読むと、本当にこの義教費制度に対しまして、中教審、いわゆる教育関係者の立場からの意見というものは非常にたくさん出されております。それも非常に懸念の意見が多いんですね。

 ちょっと一、二挙げさせていただきますと、一般財源化によって教職員の給与に充てる財源の不足を来し、教職員の給与水準が下がったり、人員削減などが起こったり、教育の一定水準を維持するために必要な教職員の確保が困難になる可能性がある。また、これまで取り組んできた少人数学級や習熟度別指導、障害児教育、問題行動の児童生徒への対応、食の指導などが後退することも考えられる。四十人学級の維持も困難になるおそれを生じかねない。また、義教費制度を廃止して地方にすべてをゆだねた場合は、国民社会、国民経済の健全な発展を支えるために必要な規模と内容の義務教育が提供されなくなり、国の責任放棄というべき事態となるおそれがある。非常に多くの問題点が挙げられております。

 結局は、学校経営の安易な保護者への転換になりかねない、憲法が求める無償制の原則に反する。仮に、この義教費制度、負担金を廃止した場合は、全額税源移譲した場合、四十七都道府県中三十八道府県では、得られる税収が現在の国庫負担金を下回るという試算も出ている。これらのことを考えただけでも、もしこれをやったら、さまざまな形でがたがたと今の日本の義務教育のあり方というのは崩れ去っていく。それを中教審ではここで中間報告ということでまとめておるんです。

 この声をもって、私は、経済財政諮問会議で、それは総務省の意見もあるでしょう、いろいろな財務省の意見もあるでしょう、文科省としては、教育論的に、自分の持っている諮問機関ではこれだけの意見が出たんだ、これだけこの制度というものは大事なんだということを経済財政諮問会議の中で、大臣、ぜひとも、この中教審が指摘しました重要な問題点や懸念をしっかりと強く説明していっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。

河村国務大臣 御指摘の点、必ずこれはきちっと意見を述べなきゃなりませんし、理解を求めていかなきゃならぬと思います。

 ただ、今回は、おおむね三兆円、税源移譲するんだということでありますが、その場合にどれをとるかについては、地方自治体、知事会なり市長会、これがまず案を持ってこい、こういうことになっておりまして、これを見て我々も考えよう、こういうことになっておりますので、これは経済財政諮問会議の皆さんもしかりでありますが、地方自治体の皆さんにも、改めて教育の重要性をかんがみながらこの三兆円についてお考えをいただかなきゃならぬ、このように思っております。

横光委員 まさにおっしゃるとおりだと思います。地方公共団体の国庫補助負担金改革の具体案、それから始まるわけでございますが、三兆円、残り三兆円、しかも二兆五千億が義務教育費の負担金になっておるんです。このことを考えたときに非常に心配せざるを得ませんので、先ほど申しました中教審の意見、これを経済財政諮問会議ではっきり強く申し上げる、そして、地方自治体の皆様方には、この中教審の意見を踏まえながら、この制度がいかに重要であるかということを省を挙げて私は取り組んでいただきたい、このことを強く申し上げまして質問を終わります。

 ありがとうございました。

池坊委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後二時五分散会


このページのトップに戻る
衆議院
〒100-0014 東京都千代田区永田町1-7-1
電話(代表)03-3581-5111
案内図

Copyright © Shugiin All Rights Reserved.