衆議院

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第4号 平成16年11月10日(水曜日)

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平成十六年十一月十日(水曜日)

    午前九時開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      井上 信治君    江崎 鐵磨君

      小渕 優子君    加藤 勝信君

      加藤 紘一君    岸田 文雄君

      近藤 基彦君    佐藤  錬君

      下村 博文君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    西川 京子君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    浜田 靖一君

      古屋 圭司君    保利 耕輔君

      三ッ矢憲生君    山際大志郎君

      青木  愛君    大畠 章宏君

      加藤 尚彦君    金田 誠一君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      高山 智司君    武山百合子君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      松本 大輔君    三日月大造君

      吉田  治君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   経済産業副大臣      保坂 三蔵君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   文部科学大臣政務官    小泉 顕雄君

   経済産業大臣政務官    山本 明彦君

   政府参考人

   (内閣官房内閣審議官)  橋口 典央君

   政府参考人

   (内閣府大臣官房審議官) 塩沢 文朗君

   政府参考人

   (内閣府原子力安全委員会事務局長)        上原  哲君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房審議官)           小田 公彦君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房文教施設企画部長)      萩原 久和君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省科学技術・学術政策局長)       有本 建男君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁長官) 小平 信因君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁電力・ガス事業部長)      安達 健祐君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院長)     松永 和夫君

   政府参考人

   (資源エネルギー庁原子力安全・保安院次長)    三代 真彰君

   参考人

   (原子力委員会委員長)  近藤 駿介君

   参考人

   (原子力安全委員会委員長代理)          鈴木 篤之君

   参考人

   (核燃料サイクル開発機構理事長)         殿塚 猷一君

   参考人

   (核燃料サイクル開発機構理事)          石村  毅君

   文部科学委員会専門員   崎谷 康文君

    ―――――――――――――

委員の異動

十一月十日

 辞任         補欠選任

  加藤 紘一君     浜田 靖一君

  佐藤  錬君     三ッ矢憲生君

  古屋 圭司君     西川 京子君

  山際大志郎君     井上 信治君

  須藤  浩君     吉田  治君

  高井 美穂君     大畠 章宏君

  達増 拓也君     高山 智司君

  笠  浩史君     金田 誠一君

同日

 辞任         補欠選任

  井上 信治君     山際大志郎君

  西川 京子君     古屋 圭司君

  浜田 靖一君     加藤 紘一君

  三ッ矢憲生君     佐藤  錬君

  大畠 章宏君     高井 美穂君

  金田 誠一君     笠  浩史君

  高山 智司君     三日月大造君

  吉田  治君     須藤  浩君

同日

 辞任         補欠選任

  三日月大造君     達増 拓也君

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 政府参考人出頭要求に関する件

 参考人出頭要求に関する件

 独立行政法人日本原子力研究開発機構法案(内閣提出第一一号)


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 内閣提出、独立行政法人日本原子力研究開発機構法案を議題といたします。

 この際、お諮りいたします。

 本案審査のため、本日、参考人として原子力委員会委員長近藤駿介君、原子力安全委員会委員長代理鈴木篤之君、核燃料サイクル開発機構理事長殿塚猷一君及び核燃料サイクル開発機構理事石村毅君の出席を求め、意見を聴取することとし、また、政府参考人として内閣官房内閣審議官橋口典央君、内閣府大臣官房審議官塩沢文朗君、原子力安全委員会事務局長上原哲君、文部科学省大臣官房審議官小田公彦君、大臣官房文教施設企画部長萩原久和君、初等中等教育局長銭谷眞美君、科学技術・学術政策局長有本建男君、研究振興局長清水潔君、研究開発局長坂田東一君、資源エネルギー庁長官小平信因君、電力・ガス事業部長安達健祐君、原子力安全・保安院長松永和夫君及び原子力安全・保安院次長三代真彰君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより質疑に入ります。

 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。馳浩君。

馳委員 おはようございます。自由民主党の馳浩です。

 法案審議に入ります前に、大臣に所感を伺います。

 就任早々、義務教育費国庫補助負担金制度の問題に関しまして、いわゆる三者三様となっております。地方六団体は中学校分を要らないと。また、それに対し、文部科学省としてはゼロ回答。現在、自由民主党としては、与謝野政調会長のもとで小中学校の分についての補助率引き下げという案が出ておりまして、総理の指示いただいた取りまとめの十一月十八日に向けて膠着状態、今こういう現状でございます。

 大変心配しておりますが、大臣の所見をまず伺います。

中山国務大臣 おはようございます。

 この三位一体関連の義務教育の国庫負担制度の堅持につきましては、当委員会、先般の委員会でもむしろ私が激励をいただいたようなところでございまして、実は、十月二十八日に地方の改革案に対しまして文部科学省の回答を出したわけでございますが、その後、十一月の一日、それからきのう、四大臣プラス私ですね、財務大臣、総務大臣、官房長官、そして財政経済大臣プラス私ということで、二回議論をいたしました。それから、経済財政諮問会議、十一月四日でございますけれども、この席にも呼ばれましていろいろ議論したわけでございます。

 私は、今馳委員からも言われましたけれども、この義務教育の国庫負担制度というのは、日本の教育にとってとても大事なものであるし、絶対堅持すべきだ、こういう立場から主張しているところでございまして、今言われましたような何分の一にするとか、そういう議論までは全く至っておりません。これは世界の趨勢を見ても、例えばイギリスなどは満額国が持つようにしようというふうな世界の趨勢から見て、この時点で日本がなぜ国の関与を減らすのか、国家戦略としてもおかしいじゃないかという立場から今主張しているところでございまして、まだまだ平行線でございますが、総理の方からは地方の案を真摯に受けとめて検討しろと言われていまして、地方の方にもいろんな声がありますので、地方の声にじっと耳を傾けながら、どうしたらいいか真剣に今考えておるというところでございます。

馳委員 私なりの所感を申し上げれば、最終的には恐らく官邸主導で決着が図られるものと思います。これは最終的には政治的な判断になると思われます。

 そうしたときに、例えば、義務教育九年間で何をどの程度我が国の国民教育として学んで、そして身につけてもらわなきゃいけないのかという、いわゆる河村プランでも出されました到達目標の明確化という観点と、もう一つは、よく教員配置などでも少人数学級とか習熟度別学級と言われますが、それに加えて、学校の規模がどの程度あるべきかということを現場の立場としても考えていただきたいと私は思います。

 というのは、例えば、長崎の事件でも言われた点ですが、六年間一度もクラスがえがないとか、そういう中で、やはり小学生ぐらいになりますと、多少のいじめの問題とか人間関係のあつれきとか家庭の問題とかございます。そうしたときに、学校の規模が余りにも少ないままでいてよいのかという観点は、これはやはり教育を考える上で重要な一つのポイントにもなろうと存じますので、そういった観点からもこの義務教育のあり方を総合的に検討していただく。となると、当然、中教審でなぜ議論させないのかという議論が出てくるんですよ。これはやはり文部科学省としてもきっちりと主張をしていただきたい。この一点はまず申し上げておきたいと思います。

 法案の質疑に入らせていただきます。

 現在、日本原子力研究所業務の実施は、原子力委員会と原子力安全委員会の議決を経て文部科学大臣が定める基本計画に従って実施されねばならないとされています。

 また、今回の原研と核燃料サイクル開発機構の統合に当たって、原子力安全委員会が昨年六月十九日に出した報告書には、新法人の中期目標の策定、中期計画の認可等に当たっては、原子力の安全確保の観点から、あらかじめ原子力安全委員会の意見を聞くことと明記しております。

 しかし、この法案では、中期目標の策定に当たっては、原子力委員会の意見を聞くこととされるにとどまり、原子力安全委員会の関与は全く定められておりません。これはなぜなのでしょうか。原子力の安全確保を軽視していると言われかねないと指摘できますが、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 原子力安全委員会の関与についてのお尋ねがございました。

 現在の独立行政法人制度のもとにおきましては、中期目標については、特に必要な場合に限って他の機関の関与が認められるというものになってございます。

 原子力安全委員会は原子力の重点安全研究計画というものを定めてございますけれども、その中の安全研究の実施主体といたしまして、今度の新しい機構だけではなくて、ほかにも幾つかの機関が安全研究の主体として定められております。そういう意味で、この安全研究の実施主体が新機構に限定されませんでした。

 また、中期目標そのものについての記載事項につきましても、原子力安全委員会が関与される範囲が極めて少ないというようなことも勘案をいたしまして、今回、原子力安全委員会の関与に関する規定を置かなかったということでございます。

 なお、法案の提出に当たりましては、私どもといたしましても、内容について原子力安全委員会にしっかりと御説明をし、御了解も得て出したということでございます。

馳委員 この問題は、平成十一年九月三十日に起こった東海村の燃料加工施設ジェー・シー・オーでの臨界事故で問題になった安全性と効率性の問題に突き当たります。効率性を優先して安全性をないがしろにした問題と指摘されました。本法案にもその懸念があるのではないかと思われます。

 その証拠として、まず、本法案の目的には、原子力の研究開発を総合的、計画的かつ効率的に行うと明記してあります。また、中期目標で定める事項において、「業務運営の効率化に関する事項」と「財務内容の改善に関する事項」が明記されております。しかし、安全性に関する事項は独立して明記されてはおりません。これはなぜでしょうか。さらに、中期目標の中で原子力の安全性の確保はどのように規定されるのか、また、その規定の実効性をどのように担保していくのか、説明をいただきたいと思います。

坂田政府参考人 先生御指摘のとおり、原子力の安全の確保は、原子力の研究開発利用を進めるに当たりまして守るべき何よりも大事なことと認識をしております。したがいまして、新機構の業務運営に当たりましても、効率性の追求、こういった面も必要ではございますけれども、そのことが安全性をないがしろにするというようなことになってはならないというぐあいに考えております。

 中期目標にどのように具体的に安全に関することを記載するかという問題のお尋ねもございましたが、独立行政法人通則法に規定されておりますすべての独立行政法人に共通する事項、そういうものがございますが、それに加えまして、「その他業務運営に関する重要事項」というものも記載することになってございます。したがいまして、私どもといたしましては、安全の確保に関する事項というものは、その重要事項の中でしっかりと記載をしていく必要があると考えている次第でございます。

 したがいまして、法案を成立させていただいた場合には、中期目標の中に、安全確保のために必要な職員に関する教育訓練の徹底といったようなことでございますとか、あるいは安全といった問題に密接に関係いたします品質保証活動の実施など、そういったことにつきまして、目標の設定を検討してまいりたいというぐあいに考えている次第でございます。

馳委員 検討するというのではなくて、明確に、その他事項と言わずに、安全確保に関する部分というものを特記していただきたいというお願いを申し上げておきます。

 大臣に質問させていただきます。

 行革の観点から、事業の整理合理化や効率化は確かに重要であります。しかし、昨年九月十九日に出された原子力二法人統合準備会議の報告書にもあるとおり、「原子力安全の確保は、原子力研究、開発及び利用の大前提である。」さらには、新法人は、「業務運営の最優先事項として、その保有する施設及び事業に係る安全の確保を徹底していかなければならない。」と書いてあります。つまり、効率性よりも安全性がもっと大事であると言っております。中期目標等を定める主務大臣として大臣はどうお考えになるのか、お聞かせください。

小島副大臣 お答えいたします。

 新機構の業務運営に当たって、効率性の追求と安全の確保、どちらを優先するのかというようなお尋ねでありますけれども、文部科学省といたしましては、安全の確保は原子力の研究開発及び利用を進めるに際して守るべき最も重要なことと認識をしております。新機構の業務運営に当たっては、効率性の追求は重要でありますけれども、安全の確保が大前提となるというふうに考えております。

 したがって、御指摘の原子力二法人の統合準備会議の報告書にあるとおり、新機構は、原子力事業者として、業務運営の最優先事項としてみずからの保有する施設及び事業にかかわる安全の確保を徹底していくべきであるというふうに考えております。

 以上でございます。

馳委員 安全性の確保と密接な関連にあるのは情報公開だと思います。そこで、本法案に関する情報公開について三点質問させていただきます。

 本法案には、現在の原研法やサイクル機構法にはない役員及び職員の守秘義務に関する規定が設けられております。これは、原子力基本法にもうたう公開の原則と矛盾するのではないでしょうか。公開の原則とこの守秘義務規定とをどう関係づけたらよろしいのでしょうか。また、どのような解釈、運用となるのでしょうか。国家公務員法百条の守秘義務規定と同じような解釈、運用、つまり、本法案の秘密事項は実質的にもそれを秘密として保護に値する実質秘であるのか、また、取材の自由との関係で問題となった西山記者事件のような秘密漏えいの唆しにはどう対処することになるのか、教えてください。

坂田政府参考人 情報公開のお尋ねでございますが、まず、原子力基本法に規定されます成果の公開の原則という問題と今回の新機構法案にございます秘密保持義務との関係についてお答えを申し上げたいと思います。

 独立行政法人制度におきましては、他の研究機関等との研究や発明の内容あるいはノウハウ等、さらには営利企業の営業上の秘密等を知得する機会が多いものにつきましては、その中立性、公正性、これを維持するために秘密保持義務を規定することは可能であるというぐあいにされております。

 みずから研究開発を行うことを主たる業務といたしますこの機構のような独立行政法人におきましては、秘密保持義務が課されていることが通例でございます。既に幾つもの研究開発の独立行政法人がございますけれども、同じ秘密保持義務が課されているところでございます。

 現実に、この新機構は、大学との共同研究でございますとか、あるいは電気事業者への技術支援などを実施いたしますし、また、国際協力といったような機会もあるわけでございますので、役職員がその職務を遂行するに当たりまして秘密を知得する機会は多いものですから、先ほど申し上げましたとおり、他の研究開発の独立行政法人と同様に、今般、秘密保持の義務を課すことといたしたものでございます。

 また、先生も御存じのとおり、原子力基本法第二条に定めます成果の公開の原則というものにつきましては、平和利用に限られるべき原子力の研究開発利用の推進が軍事利用等誤った方向に向けられることを防止するという意味で、この成果の公開によってそういったことを抑制していくというものでございます。

 もとより、新機構の業務運営に当たりまして、このような成果の公開は大変大事であると認識しておりまして、この新機構の法案の目的の中に、新機構の業務運営が「原子力基本法第二条に規定する基本方針に基づき、」ということをしっかりと規定いたしまして、成果の公開の原則を明確に担保するという措置をとったところでございます。

 したがいまして、私どもとしては、秘密の保持の義務、それから基本法に言います成果の公開、こういうことにつきましては両立をして対応していくことができるというぐあいに考えているところでございます。特に、成果の公開の問題については十分に意を尽くしてまいりたいと思っております。

 それから、第二点目の御質問の国家公務員法百条に規定いたします秘密保持規定、これにかかわる御質問がございました。

 この新機構法案の第十五条に規定をいたします秘密保持義務の秘密というものは、一般に知られていない事実でございまして、それを漏らすことにより特定の法益を侵害するものである。したがいまして、先生おっしゃいましたけれども、形式秘は含まれませんで、実質秘であると解すべきものであると考えております。したがいまして、この秘密の意味と申しますのは、この点におきまして国家公務員法第百条に規定いたします秘密と同義であると私どもは考えてございます。

 それから、この新機構の役職員の職務というものは、国がみずから主体となりまして実施をする必要のない研究開発が中心でございますので、外交でありますとか防衛でありますとか、そういった職務に従事します国家公務員とはその内容を異にしてございます。したがいまして、この新機構法に言う秘密保持義務で担保すべき秘密の具体的な内容も同一ではございません。そういったことも勘案した結果、秘密漏えいの唆しということにつきましては、国家公務員法との取り扱いを異にすることといたしまして、刑事罰の対象とはしておりません。

 なお、先ほどからちょっと申し上げていますとおり、研究開発の独法などでも同じような秘密保持の義務が課されているわけでございますけれども、秘密漏えいの唆しということにつきましては、そのような独法の個別法の中に秘密保持義務それから当該義務違反にかかわります刑罰を規定しているものはございませんので、取り扱いという点では他の独立行政法人と同様にしたということでございます。

馳委員 この秘密保持の妥当性であるとか範囲であるとか、そういった観点については、常に厳しい内部におけるチェックが必要であろうかと思いますので、その辺は所管する文部科学省として十分注意を払っていただきたいということを一言申し上げておきます。

 いわゆる動燃改革を経て成立したサイクル機構、そして原研においても、着実に情報公開は進展していると評価しております。では、本法案により成立する新法人において具体的にどう情報公開が進展するのか、その方策と実施体制を教えてください。

坂田政府参考人 情報公開の重要性については、私どもも十分に認識してございます。動燃改革の大きな目的の一つも、いわゆる情報の公開を積極的にやっていく、そのことによりまして事業についての国民の信頼にこたえるということがございました。

 原子力二法人統合準備会議の報告書におきましても、国民の目に見える透明な組織、運営の確立、それから法人みずからが積極的な情報提供を行うことがぜひとも必要であるということが指摘されておりまして、新機構において情報公開の徹底は極めて重要であるというぐあいに認識しております。

 また、言うまでもなく、独立行政法人等の情報の公開に関する法律というものもございますし、その法律の規定にのっとって情報公開を積極的に取り組むということもこれまた当然やらなければならないことであると考えております。

 したがって、具体的に新機構においてどういった体制をとっていくかということでございます。より詳しい具体的な体制については、これから法人の当事者がしっかり考えなければならないことではございますけれども、基本的に、情報公開請求というものが国民の方々から寄せられます、そういった請求に対しまして速やかに対応できる内部体制、こういったものをまずしっかり確立するということがぜひとも必要であろうと思っております。

 そしてまた、そのような社会の求めに応じまして、当然でございますけれども、公表するべき書類、情報、そういったような閲覧の体制をしっかりとる。そういった実施も適切に行っていく。事務所の中でそういった整備もしっかり整える。それから、最近のインターネットを活用した情報公開といったものも非常に効率的かつまた有効な手段でございますので、そういったいろいろな手段を活用して積極的に情報公開をしなければいけない、そしてその内容を充実していかなければいけないと思います。

 私どもの立場といたしましても、新機構がそういった面でしっかり努力するように対応したいと思っております。

馳委員 研究開発、技術は、情報公開の対象になるものと出せないものとあると思います。また、財務内容、管理運営に関する事項においても、まさしく出せるものと出せないものがあると思います。その辺の仕切りを、特に役員の皆様方において常にやはり連絡体制をしっかりとるようにしていただきたいと思っております。

 その上で、大臣にお伺いするのは、要は、安全確保上の観点からも、この情報公開の果たす役割についての所見を伺いたいと思います。

中山国務大臣 原子力につきましては、特に日本では安心、安全ということが一番大事だな、こう思っておりまして、原子力施設におきましては、安全確保のための仕組みが幾重にも設けられておりますほか、施設の巡視、点検等によりまして、万全の対策が講じられております。

 また、原子力の安全の確保に当たりましては、これらの対策に遺漏なきようにすることはもちろんでありますが、御指摘のように事業活動にかかわります情報の公開により透明性を確保するということ、要するに隠し事はないというふうな国民に安心感を与えるということが極めて重要である、このように考えております。

 したがいまして、新機構の安全の確保につきましては、情報の公開及び公表を積極的に推進いたしまして、社会の信頼を得て事業を進めていくということが不可欠であると考えておりまして、新機構がそのように業務運営に取り組みますように、文部科学省としてもしっかり見守っていきたいと考えております。

馳委員 原子力の安全性の確保は、研究開発段階だけでなく、実は、関係施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理の段階においても十分確保されなければなりません。

 これら施設の廃止や放射性廃棄物の処理処分に、今後約八十年間にわたり約二兆円の費用が必要との試算結果が出されております。原子力関係予算が削減される中で、かかる費用が研究開発予算にかなり影響を与えるのではないかと懸念されます。この点に関していかがでしょうか。

坂田政府参考人 新機構の原子力施設の廃止措置あるいは放射性廃棄物の処理処分にかかわる予算措置の問題についてのお尋ねをいただきました。

 原子力二法人の統合準備会議がこの問題についても真剣に検討をしていただきました。それによりますと、現在、両法人が保有しております原子力施設の廃止措置、それから放射性廃棄物の処理処分、これを行いますのに、これから約八十年間の期間をかけて総費用約二兆円がかかるという試算が示されてございます。これは、年額に直しますと、時期にもよりますけれども、年額百億ないし三百億円ぐらいの幅で推移するというぐあいに見積もられております。

 そういう意味で、若干数字的には不確定な部分もございますけれども、現在、原子力二法人の財源規模は、両方合わせまして総事業規模で約二千二百億円余り程度でございますけれども、そういう財源規模と比較をいたしますと、この廃止措置あるいは放射性廃棄物の処理処分に要する費用に関しましては、特別にそのために新たな措置を講じなくても対応していくことが可能ではないかというぐあいに見られてございます。

 もちろん、状況が変わってくることは考えられるわけでございますので、常にそういった費用あるいはやり方についての見直し等を重ねていかなければなりませんけれども、あわせて、そういう廃止措置、放射性廃棄物の処理処分にかかわります所要のコストを低減するための取り組みということも必要でありますし、また、技術開発によって逆にそういうコストが下げられることもございます。そういう意味では、いろいろな経営合理化の努力もこれから必要とされているところでございます。

 私ども文部科学省といたしましては、いずれにしても、施設の廃止措置、放射性廃棄物の処理処分というのは、まず安全を何よりも大事にして、しっかり確実にやるということが大事でございますので、それを支えるために必要な取り組み、必要な財源措置の確保、そういったことにつきましてしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

馳委員 最後の質問になります。

 予算の確保についてはわかりました。このような原子力施設の廃止や放射性廃棄物の処理を一体だれが責任を持って行っていくのか。新法人と国との責任分担はどうなっていくのでしょうか。もし新法人が責任を持つのであれば、中期目標の中でこれもしっかりと明記していくべきであると思いますが、今後の中期目標の計画策定におけるこういった処理の問題、位置づけ、こういうことも含めて明確にしていただきたいと思いますが、どうでしょうか。

坂田政府参考人 ただいま原子力施設の廃止措置、それから放射性廃棄物の処理処分についての責任の問題、あるいは中期目標、中期計画との関係についてのお尋ねがございました。

 現在、原子力施設の廃止措置あるいは放射性廃棄物の処理処分ということにつきましては、原子力委員会の考え方に基づいて進めております。その基本的な考え方は、発生者の責任においてしっかり実施するということでございます。この場合の発生者ということはいわゆる新機構ということになりますけれども、具体的かつ技術的に対応するのはやはり新機構であろうかと思います。

 もちろん国は、その安全規制をしっかりやる、あるいはまたその事業がしっかり進められるように財源措置等も行うということはしなければいけないと思っております。その上で、これから新機構の中期目標の策定、あるいは中期計画の認可も行うわけでございますので、この原子力施設の廃止措置、それから放射性廃棄物の処理処分の問題につきましては、これらの目標や計画の中でもしっかり書き込んで、事業が確実に実施されていくように私どもとしては対応したいと思っております。

馳委員 終わります。

斉藤委員長 保坂武君。

保坂委員 おはようございます。自由民主党の保坂武です。

 中山大臣には、文部省、特に最近の三位一体で、教育行政にわたりましても日夜御努力をしていただいている姿を拝見させていただいているところであります。

 教育はなかなか、社会教育等を初め、目には見えない成果というものがあるわけでありますが、本日のこの法案につきましては、原子力研究開発というものは目に見える、姿が出てくる問題でもありますので、この法案が国民にとっても非常に重要な法案であるというふうに認識をいたしているところであります。そんな意味合いも込めて、何点か質問をさせていただきます。

 原子力に関する研究開発は、国策としてのエネルギー政策や平和政策、またそれ以上に国際的協調が求められる性質を有しております。現在の二法人は、特殊法人として職員を各二千人以上抱える大法人でありました。そこで、当法案によって、独立行政法人として五千人近い、さらに大きな、大規模な法人となるわけであります。制度上、特殊法人に比べまして、政府からの独立性や自律性、採算性が期待される組織となることになりますが、今回の改正案の中で、原子力基本法の改正により、現在のサイクル機構の業務に関する「政府の監督の下に、」の文言が削られることとなりますが、独立行政法人であることに加えて、この改正によりさらに機構における研究開発に対する原子力施策の統一性が失われるのではないかと思うのであります。

 大臣にお尋ねをいたしますが、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構が一つの独立行政法人に統合され、これまでそれぞれが果たしてきた役割を適切に実現できるか、大臣の見解をお伺いいたします。

中山国務大臣 保坂委員にお答えいたします。

 御承知のように、独立行政法人というのは、公益上の見地から実施が必要な事業を、国の定める業務運営の目標にのっとりまして、自主性を持って効率的かつ効果的に実施することを任務とするものであります。したがいまして、原子力の研究開発という国の重要施策を実施する枠組みとして極めて適切なものであると考えておりまして、今回、独立行政法人として設立されます新機構は、統合によって両法人の業務を引き継ぎまして、基礎・基盤研究からプロジェクト研究開発までを一貫して実施するとともに、これらの統合による大きな効果を発揮することができる、このように考えておりまして、これまでも両法人、いろんな役割を果たしてまいりましたけれども、両法人の役割を果たすことはもちろんでございますが、社会の求めるすぐれた研究開発成果を効果的に生み出すことが期待されるのではないか、このように考えております。

保坂委員 続いて、副大臣にもお尋ねをいたしましょうか。

 原子力委員会がおおむね五年で改定する長期計画との関係におきまして、独立行政法人日本原子力研究開発機構の中期目標、そして中期計画とどのように連動していくか伺うわけでありますが、我が国の原子力施策の実施に関しましては、いわばマニフェストとして原子力委員会によって原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画、いわゆる長期計画が策定されております。私は、原子力施策の統一性の確保という観点からは、独立法人制度の趣旨から、機構の自主性が尊重されるとも考えるわけであります。そのため、内容からも、対象期間についても、また相互の計画がどう連動していくのか、伺うものであります。よろしくお願いします。

小島副大臣 お答えいたします。

 原子力委員会の長期計画並びに新機構の中期目標と中期計画はどのように連動するかということでありますけれども、本法案が成立した場合には、主務大臣が中期目標を作成または変更する際にはあらかじめ原子力委員会の意見を聞くこととなっておりまして、長期計画の策定に責任を持つ原子力委員会の方針との整合性は確保されるものと思っております。

 以上であります。

保坂委員 引き続きお伺いしますが、我が国におけるエネルギー確保は重要であることは御承知のとおりでありますが、その推進に向けたプロジェクト研究開発と安全研究をどのように調和させ、そして両立をしていくのか、お伺いをするわけであります。

 天然資源の乏しい我が国におきましては、エネルギー確保の上で原子力は重要な役割を果たしております。当機構はその推進に向けた研究開発の役割が期待されるわけでありますが、近年の原子力関係事故は、人命も失いまして、安全性に疑問が持たれるようになってきております。開発と安全を一つの組織で実施することに関して、組織体制や研究、人材の配分等の両立についてお伺いをするものであります。

小島副大臣 お答えいたします。

 核燃料サイクル開発機構が中心になって行ってまいりました核燃料サイクルの確立を目指したプロジェクト研究開発などは、ウラン資源の有効利用を図り、将来のエネルギーの安定供給に資する重要な研究開発でございます。また、日本原子力研究所が中心となって行ってきた安全研究は、原子力の大前提である安全確保に貢献するものであり、これも原子力のエネルギー利用を図る上で不可欠な研究であると認識をしております。

 新機構におきましては、その双方について、プロジェクト研究開発における技術的課題が安全研究の具体的なニーズとして的確にフィードバックすることが可能となること等により、これまでに蓄積されたそれぞれの研究能力と研究資源を十分に活用しつつ、社会の期待にこたえられるよう、ともにしっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

 以上でございます。

保坂委員 次に、政府参考人にお尋ねをしたいと存じますが、原子力関係予算が削減傾向にあると危惧をいたしている中であります。独立行政法人日本原子力研究開発機構の原子力施設の廃止措置について非常に心配をするわけであります。既に稼働している状況の中でも多々事故がある。そしてまた、今度それが要らなくなった場合等々に関しましても、非常に予算のかかる問題でありますので、お尋ねをするわけであります。

 先ほども馳議員からも質問がありましたように、八十年間にわたっておおむね二兆円以上の費用がかかる、そのようなことに関しましては、やはり文部科学省あるいは二法人が廃止措置及び放射性の廃棄物の処理に相当な努力をしなければならぬというふうに思うわけであります。したがいまして、その廃止措置に万全が尽くせるものなのか、もう一度私の方からもお尋ねをさせていただきます。

坂田政府参考人 原子力の施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分の問題でございます。

 これは、これからの原子力開発を進めるに当たりまして、国民の方々の原子力に対する信頼あるいは安心、そういったことをしっかりといただくためにも、しっかり取り組んでいかなければならない非常に大事な課題であるというぐあいに考えております。

 先生御指摘のとおり、新機構におきましても、たくさんの原子力研究施設を抱えておりますので、施設の寿命が参りましたならば、やはり時宜を失することなく廃止措置の方に移っていくということが必要になってまいります。

 そういう将来の展望を考えた上で、先ほど申し上げましたけれども、これからの廃止措置の費用、一体どれくらいの期間でやるのかという見積もりが原子力二法人の統合準備会議の報告書に書かれているところでありまして、御指摘のとおり、約八十年間、二兆円という数字が見積もられてございます。

 この数字につきましては、先ほども少し触れましたけれども、まだ不確定な要素もございますので、これから、技術の進展あるいは施設の実態ということを踏まえまして、常に見直していく必要があると思っておりますし、また、できる限り、安全を確保するという前提で所要コストの低減化ということにも取り組む必要がございますので、そういう点で新機構は努力をしていく必要がある。いわゆるそういう面での経営合理化ということにもしっかりと取り組んでいく必要があるというぐあいに考えております。

 しかしながら、そういう努力を前提といたしましても、この廃止の措置、それから放射性廃棄物の処理処分を的確にしなければなりませんので、私ども文部科学省といたしましても、新機構が発足後、中期目標あるいは中期計画の中でこの大事な仕事もしっかり書き込むことになると思いますので、そのラインにのっとりまして、新機構における業務のサポート、また環境づくりに努力をし、これらの業務が計画的かつ確実に実施できるように対応したいと思っております。

保坂委員 心配するのは、行政改革のねらいであります人員、予算あるいは設備等の削減を進められているわけでありますが、しかも高度のノウハウを必要とされる新組織の設立であるわけであります。この設立に向けて、二法人等の統合をするわけでありますが、混乱あるいは旧組織への愛着等が交錯するなど、新法人はこれからも多難な道のりを行くものと思うわけでありますが、現法人が有する施設等は安全上からも維持管理を心配せざるを得ないわけであります。

 政府参考人にお尋ねいたしますが、独立法人原子力研究開発機構の財政見通しが非常に厳しいと思われる。新法人が業務を進めていく上に際しまして、施設等の維持管理については万全であるか。大変な、いろいろな施設があるわけでありますが、これらのことに関しましても心配をしているわけでありますが、見通しなど、お尋ねをさせていただきます。

坂田政府参考人 施設の維持管理が大丈夫かというお尋ねがございました。

 確かに、この原子力二法人に関する予算の推移、最近の傾向といたしましては漸減する傾向にございまして、財政が大変厳しい状況にあるということは十分に承知をしてございます。また、今般の統合がいわゆる特殊法人の整理合理化計画の一環として行われるということも考え合わせますと、新機構においては、当然のことではございますけれども、業務運営を効率化するという努力をしなければいけないことは必要なことであろうかと思っております。

 そういう観点から、今後の新機構の業務につきましては、できるだけいわゆる事業の選択あるいは資源の集中等、そういったことにも配慮した仕事のやり方をしていかなければならないと思っております。その上で、どのような施設を動かしていくか、できる限り新しい、そしてまた研究効率の高い施設を動かしていくということに集中していくことが大事であろうかと思っております。

 その際に、施設の維持につきましては、これは動燃改革が起こりました原因といたしまして、「もんじゅ」のナトリウム漏えい事故、あるいは東海再処理施設のアスファルト固化施設の火災爆発事故ということがございましたので、みずからの原子力施設の安全確保を何よりもしっかり確保しなければ、すべての事業に対する地域の方々、国民の方々の信頼が得られませんので、その点についてはしっかり取り組んでいくように私どももサポートしていきたいと思っております。

保坂委員 施設は二度と事故があってはならない、こういう意味では、十分な予算をもって、そして維持管理には万全を期していくという姿勢で臨んでいただかないと、せっかくこうして二法人を独立行政法人にするという意味合いがないわけでありますから、その点は十分配慮していただきたいと思っております。

 次に、大学における原子力開発学科が非常に減少しているなどと仄聞をいたしているものであります。当開発機構の業務におきまして、原子力に関する研究者、そして技術者の養成、また大学への支援はどうするのか、お尋ねをしたいと思っております。

 当機構は、原子力エネルギー研究、放射線利用研究、高速増殖炉、核燃料物質再処理技術、放射性廃棄物処理処分技術などの開発等を初め、多くのことを有しているわけであります。総合的に自然と命を守る原子力利用でありたい、私もこう思っております。

 この先五十年、百年、日本の未来あるいは世界の未来に向けまして、研究者、技術者の養成は必要不可欠であると思います。大学への支援も含めて対応をお尋ねいたします。

坂田政府参考人 原子力人材のお尋ねでございますが、原子力の研究開発利用、これを安全かつ的確に進めてまいりますためには、優秀な人材の育成確保が何よりも重要な課題でございます。特に、大学における教育研究がその中核になるものと認識をしております。

 最近に至りまして、この原子力を冠しました学科の数が減少していること、あるいは大学における実験用の研究炉の運転停止などもございまして、大学の原子力に関する教育研究の基盤に関し、いろいろと御懸念があるということでございます。ただ、一方で、大学院レベルで原子力関係の専攻が新たに設置される動きもございます。茨城大学でございますとか、福井大学にもございますし、また来年度からは東京大学もそのようなことをお考えになっていると承知をしております。

 このような原子力の人材養成に関します環境を踏まえまして、今度の新機構法案においては、原子力に関する研究者及び技術者の養成及びその資質の向上を業務として明確に位置づけたところでございます。したがいまして、新機構におきましては、研修事業とかあるいは共同研究とかいろいろな形がございますけれども、人材養成の事業を充実させるということに意を用いたいと思いますし、また、大学との教育研究、これについても協力関係をより強固にして進めていきたいと考えております。

保坂委員 研究者、科学者等については、最近はこれらに関心を持つ学生等が非常に少なくなっているのではないかというふうな心配をしているわけでありますが、こういう意味では、ぜひこれらの養成については、あるいは大学への支援なども十分な配慮をしていかないと、せっかくつくられたこのシステムが、機構がそれなりの効果を果たしていかないではなかろうかと思っているところであります。

 ここでもう一度大臣にも質問をさせていただきますが、将来に向けて、原子力研究開発に必要な研究者や技術者が学校教育の中で育つものであると私も思うものであります。つまり、義務教育を全国均一に保障するのは国の責任である、この三位一体に関係して、まずここに技術者、研究者を求めるには、もう子供のころから、義務教育の中から育ってくるのではないか、こういうふうに思うわけであります。そういう意味で、義務教育費の国庫負担制度の今後についても、現時点は非常に努力をされているというところでありますが、もう一度、その辺の確固たる大臣の所見をお聞きしたいものであります。

 日本人は非常に勤勉だ、こういうふうに言われております。長い教育の歴史を持っているわけでありまして、日本の科学技術もこの中から育ってきたのではなかろうかと自負をできるかと思います。それは、教育の機会均等と教育水準の維持を、そしてその向上を保障する国の役割があったからであります。

 私もこの国庫負担制度の堅持の立場でこのことを質問させていただくわけでありますが、もうすぐお正月が来るわけでありますが、これをお年玉に例えてみれば一番簡単だ、こういうふうに思うわけであります。

 お国のお父さんが、お金がないからお年玉は上げられないよ、この国庫負担補助金はだめだと言っていると同じでありまして、足りないと思うけれども自分で用意しろと言っているのが税源移譲だ。そして、使って足りなかったら正月が過ぎてから余った分から上げるよ、こういうのが交付税で、子供たちが手にするお年玉というのは、正月にもらって使うから非常に喜ぶ、効果があるんだ、こういうわけでありまして、正月が過ぎてしまってから、あるかないかの金を交付税として、しかも何に使われてしまうのかわからないようなものを、お年玉をくれる、終わってからくれるなんというようなことでは、子供にとってみれば、冗談じゃないよと、こういうふうに思うわけであります。

 やはり、このお年玉、ちゃんと毎年くれるものはくれなければ、子供たちのため、あるいは日本の将来、そしてこの科学技術の発展はないではなかろうか、こういうふうに思うところであります。大臣の所見をお伺いいたします。

中山国務大臣 今、保坂委員御指摘のように、この原子力関係の研究者を初め日本のすぐれた学者、いろいろな偉い方々を輩出してきた日本の教育、その基本となったものは、やはり義務教育がしっかりしてきたということではないか、こう思うわけでございます。

 今、お年玉に例えて交付税の話がございましたけれども、今、交付税につきましても大幅な削減ということが提案されているわけでございまして、地方の方々は大変実は心配をしているわけでございます。また、その中におきまして、この義務教育費国庫負担制度の廃止といいますか、そういった提案が地方から出されているわけでございます。

 私どもは、とかく経済大国になったということもあって忘れがちでございますが、資源のない国日本でございます。人材こそが資源であるということで、昔から日本は教育に力を入れてきたわけでございますが、ここに来て、いわゆる補助金改革といいますか、財政論から、国が本来持つべき義務教育の負担金を地方が持つようにする。これは、地方が持つと言っているからそういうふうにしろということなんでございますけれども。

 いよいよ、いわゆるお年玉もなかなか上げにくくなってきたような国家財政の中で、何といいましても、教育関係だけにつきましては、これは小泉総理も言われましたように、米百俵の精神でもって教育に係るお金だけは確保していく、これだけは堅持しなきゃいけないんじゃないかということで、皆様方の御支援もいただきまして、今頑張っておるところでございます。

 何とかしてこの義務教育費国庫負担制度につきましては堅持という方向で頑張らせていただきたい、このように考えておるところでございます。

保坂委員 時間はちょっとあるわけですが、質問は以上にさせていただきます。

 法案成立の上には、やはり、日本の能力を発揮して、まだまだ世界的にもITER初め努力をしているわけでありまして、このことが、人間社会に利用される、真の平和利用である原子力の開発、そしてその研究に努力をされて実を結ぶことを御期待をしながら、そしてまた、義務教育の国庫負担についてもなお努力をしていただいて、国民の期待にこたえるべく大臣には奮闘されることをお願いさせていただきまして、後に質問を譲りたいと思います。ありがとうございました。

斉藤委員長 牧義夫君。

牧委員 おはようございます。民主党の牧義夫でございます。

 大臣、副大臣、大変おくればせで恐縮でございますけれども、御就任おめでとうございます。また、大臣におかれましては、担当大臣として初の法案でございますけれども、しょっぱなから大変恐縮でございますが、このままでは私ども民主党、やや賛成しかねるかなということからお話を始めなければなりません。大変残念なんですけれども、ただ、残された六時間、大臣も気合いを入れて御答弁いただければ、あるいはまた私たちも心変わりもするやもしれませんので、ぜひ最後までよろしくお願いをいたしたいと思います。

 私ども、決して、この国の原子力政策、これを真っ向から否定するものでもございませんし、まさにエネルギー資源に乏しい我が国においてこれから持続可能な発展をしていくためにも、原子力というものは欠かせない、そしてまた核燃サイクル事業についても、これは積極的に推進をしていかなければならない、そういう大前提に立っているということもあらかじめ御了解をいただきたいと思います。

 そういった観点から質問させていただきたいんですけれども、まず、私ども民主党として反対の理由というのを簡単にまとめておりますので、ざっと申し上げれば、まず何よりも安全を最優先すべきであるということなんですけれども、この法案の目的、この安全に関する条項がまさに抜け落ちているわけであります。

 その点と、それから技術面、コスト面で再検討が迫られている核燃サイクルのあり方もさることながら、今後発生する放射性廃棄物の処理や廃炉の処分についての研究開発についても優先的に取り組んでいくべきである、にもかかわらず、研究開発に係る重要な課題についての精査が乏しい上、専ら核燃サイクル事業の推進が前面に押し立てられており、単なる研究開発機関の統合にとどまらないものとなっているということです。

 そして、総じて、この二法人の統合というのが、およそ一年後に予定されている核燃サイクルの見直しを含めた政府の原子力長期計画の策定を待って、その基本方向に沿った形で実施すべきである。

 以上の観点から、今回のこの統合というのはやや拙速なのではないかな、そんなことで幾つかの質問をさせていただきたいと思うんです。

 先ほど自民党の委員の方々からも質問がございました。とりわけ馳議員の質問の中にも、秘密保持条項あるいは安全性の確保の点において非常に重要な指摘があったわけですけれども、先ほどの坂田局長の御答弁を聞いていると、ちょっとそのまま聞き流すわけにはいかない。十分な納得できる説明になっていないので、やや重複をするかもしれませんけれども、もう一回そこら辺確認しないと、このままだと、自民党の方もそういう重要な指摘をしていながら満足できる御回答をいただいていないわけですから、下手すると自民党からも反対者が出るといけないので、重複するかもしれませんけれども、私からもまた質問をさせていただきたいと思います。

 まず、先ほど私申し上げたような観点から、この国の基本的な政策の部分、核燃サイクルの重要性について、その事業の重要性について、最近よく直接処分か再処理かというコストの問題が取りざたをされておりますけれども、これは私は、コストの問題じゃなくてもっと根幹の問題であるかと思います。こういう問題に引きずり回されると、核燃サイクル政策をあたかも放棄するか否かというような、そんな議論にもなりかねないわけですけれども、この安易な放棄というのは将来の国民に対し私は無責任だと思います。まず、この辺のところの基本的な考え方を大臣からお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 牧委員の方から、議論の進展ぐあいによりましては賛成に回るかもしれぬという発言がございましたので、気合いを入れて答弁させていただきたい、このように思うんですけれども、三つの反対意見を言われました。

 いわゆる安全ということが最優先になっていないんじゃないかということ、あるいは推進だけが先に出て、廃棄物処理とかそういったことの対策がまだおろそかじゃないかとか、あるいはまた、一方では長期計画というのが今検討されているのにちょっと拙速ではないか、こういうふうな話がございましたが、これらのことにつきましては、またいろいろな立場からお答えをさせていただきたいと思います。

 そもそもこの統合ということは、平成十三年の閣議決定に基づくものであるということを御理解いただきたいと思いますし、核燃サイクルにつきましては、いわゆる経済性の観点からは再処理はしないで直接処分した方がいいのではないかという御意見があることも承知しておりますけれども、核燃サイクルにつきましては、経済性だけではなくて、我が国のエネルギー事情等考えますと、エネルギーの安定供給等の観点から総合的に勘案して判断する必要があるんじゃないかな、このように考えております。

 そこで、核燃サイクル確立のための研究開発に責任を有しております文部科学省といたしましては、原子力発電によります長期的なエネルギーの安定供給等の観点から核燃サイクルの確立は重要である、こう考えておりまして、今後ともその研究開発を着実に実施していきたい、このように考えておるところでございます。

牧委員 今大臣がまさにおっしゃったように、これはそもそも平成十三年閣議決定による特殊法人等整理合理化計画に基づいた、まさに大臣おっしゃるとおりだと思います。

 反対の理由としてもう一つ、もう一つというか、別の観点から、言葉をかえて言えば、まさにそこら辺のところに私ども疑問があるわけで、猫もしゃくしもただ統合すればいい、そういうたぐいのものではないんじゃないか、その整理合理化の基本路線にこれはそもそもなじまないものなんじゃないか、そういうことを私ども申し上げたいわけで、そういった意味で、役所の方でもこういった統合についてというペーパーをつくっておりますけれども、「徹底的な合理化、統合によるスリム化を行うとともに、事業の「選択」と「集中」により、活力のある事業展開を実現」、本当に立派なことが書かれているわけですけれども、その選択と集中とは、一体これは何なのか、この統合によるメリットというのは何なのかということを、ちょっと具体的に教えていただきたいんですけれども。

中山国務大臣 特殊法人等の改革につきましては、個人的には本当に統合した方がいいのか疑問に思うところもございますけれども、この二法人につきましては、私は、もうぜひとも進めていきたい、このように考えているわけでございまして、基礎・基盤研究とプロジェクト研究開発の間の人材の交流とかあるいは成果の相互活用等が促進されまして、それぞれの研究開発においてより効果的な成果が上げられるもの、このように期待されているところでございます。

 具体的にという話がありましたけれども、両法人に蓄積されております研究能力と研究資源を結集して、次世代原子炉研究開発や放射性廃棄物の処理処分の研究開発分野などにおきまして、より信頼性のある安全な技術の開発を目指して、研究開発の一層の効率化やスピードアップ等の大きな効果が発揮されるということが期待されておる、このように考えております。

牧委員 大臣の実直なところがよくわかりました。そういうふうに書かれておるということもお述べいただいたので、それはそれでお聞きとどめしておくことにいたしましょう。

 それでは、次に進みますけれども、先ほども質問に出ました秘密保持条項ですが、これはやはり、原子力政策、国民的なコンセンサスがまずあって、そしてまた当該地域の住民の皆様方の信頼があって初めて成り立つわけですけれども、そういう中で、秘密をあくまでも保持する、これは表面的に言葉をとらえると、そこら辺の信頼を得るための努力をまず怠っているというか、そこら辺の道をまず閉ざすような印象を受けるわけです。

 先ほど説明にありましたけれども、そういうものではないという御説明もいただいたんですが、これは、例えば、秘匿されるべき秘密というのが、純粋なプライバシーですとか特許取得前の知的財産だとか、あるいは保安上漏らすべきでない情報などに私は厳密に限定されるべきだと思っております。例えば、プライバシーの保護ですと、これは個人情報保護法があり、あるいは知的財産だって、これは財産権の問題ですから、それを保全する法律もあるわけで、これをあえて秘密保持条項というものを設けるというのは、かえって要らぬ心配やら誤解を招くことに私はなるんじゃないかと思います。

 そこで、秘匿されるべき秘密の範囲というものを明確にお示しをいただきたいということと、先ほど私申し上げたような、プライバシーだとか知的財産、あるいは保安上漏らすことができないという情報、これ以外に秘匿されるべき秘密というのが何かあるんだったら、教えてください。

中山国務大臣 お答えいたします。

 どのようなものが秘密に当たるのかということでございますけれども、新機構におきまして秘密の情報として扱うものといたしましては、連携協力相手方企業の営業上の秘密、共同研究等の相手方の外国の研究機関の技術情報等が想定されております。このような秘密保持義務は、法律でもって保護するに値する秘密を新機構の役職員が反社会的な形で漏えいすることを禁止するものでありまして、当該義務が新機構の研究開発成果の公開や業務運営の透明性の確保を阻害するということにはならないと考えております。

牧委員 今の件はわかったんですけれども、これをなぜあえて言うかというと、「もんじゅ」の事故だとか、先ほどお話にもあった再処理工場アスファルト固化処理の火災爆発事故等々、多くの不祥事にこれまで見られてきた部分というのは、やはり隠すということがまず初めにありきで、そこから国民の不信がより広がったという部分がありますので、そこら辺のところをきちっと大臣からも、そういうものではないということと、それから、やはりこういったたぐいのことについては秘匿するものでないということを、はっきりもう一度答弁していただきたいと思います。

中山国務大臣 今答弁いたしましたけれども、この法人として絶対に秘密にすべきことは今申し上げたところでございますけれども、その中で例えば反社会的なことが行われたというようなことについてまでも秘密を守るべきものではない、このように考えております。

牧委員 次に、これも先ほど馳委員の方から質問がございました、原子力委員会、原子力安全委員会の関与についてでございます。

 先ほど坂田局長の方から、これが関与しないことの説明ということで答弁をされましたけれども、聞いていると、どうもこの法案ができるまでの経過の説明だけにとどまっていたと思います。私なりにそこら辺のところが、よく聞いていなかったのか、十分理解ができなかったものですから、要は、最終的には、この法案をつくるとき、法文をつくるに当たって原子力安全委員会の了解ももらっているという御答弁でしたけれども、それで後はもういいんだ、後は新機構が安全性の追求については自己完結型で行うんだという理解でよろしいんでしょうか。確認だけさせていただきたいと思います。

坂田政府参考人 今回の新機構法案におきます原子力委員会の関与あるいは原子力安全委員会の関与の規定の仕方につきましては、先ほど私申し上げましたとおり、法案の提出に当たりまして、原子力委員会あるいは原子力安全委員会にも御説明をし、御理解をいただいたものでございます。

 しかし、そのことが、新機構が例えば安全の問題について新機構のみで勝手に何かをしていくということでは決してございませんで、これはもう当然のことではございますが、原子力安全委員会がお示しになる安全確保に関するいろいろな方針に従って新機構がみずからの原子力施設の安全確保にしっかり取り組むということは当然でございますし、また、先ほど触れました原子力の安全研究の年次計画というものも原子力安全委員会がおつくりになっておりますので、そういう計画に沿って安全研究の業務を進めていくことも、これまた新機構としてはしっかりやっていかなければいけない、そのように考えております。

牧委員 ここでの答弁はそういうふうにいただいているんですけれども、もう一回、ちょっと確認だけします。

 そうすると、従来明記されていた両委員会の関与が消えているというのは、どういう理由からですか。

坂田政府参考人 今のお尋ねの、法的な関与というものが従来の原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構に対する関与よりは薄くなっているということだと思いますけれども、これはまず、原子力基本法に基づきまして、両法人あるいは新機構は原子力の開発機関という特別の位置づけがございます。一方で、独立行政法人になりますので、独立行政法人の趣旨の一つの中に、主務大臣への責任の集中、それから責任の範囲の明確化という要請がございます。例えば、原子力委員会が中期目標を策定するに当たって同意権があるというようなことになりますと、中期目標の認可はあくまで主務大臣が行うわけでございますので、主務大臣と原子力委員会との間での責任関係があいまいになるということがございます。

 そういう意味で、主務大臣への最終責任を明確にするという意味から、今回の独立行政法人の新機構法案におきましては、原子力委員会から意見を聞く、同意ではなくて意見を聞くということにとどめた次第でございます。

 また、原子力安全委員会につきましては、先ほども申し上げましたとおり、新法人の業務にかかわる範囲が非常に狭いものですから、原子力安全委員会の関与を法的に規定するまでもないであろうということで、今般の法律を提出させていただいているということでございます。

牧委員 時間がありませんので、次に進みます。多分、今の件は、またほかの委員も質問すると思います。

 ちょっと整理合理化計画のお話に戻るんですけれども、特殊法人等整理合理化計画との整合性についてお尋ねをしたいと思います。

 この整理合理化計画の中で、エネルギー研究全体の中での核燃料サイクル研究開発、それから原研のエネルギー研究開発の位置づけを明確にするよう求められておりますけれども、その位置づけとやらをまずお聞かせいただきたいと思います。

中山国務大臣 日本原子力研究所は、原子力の総合的な研究開発として、原子力安全研究から核融合に至る幅広い分野において、原子力の基礎・基盤研究を行ってきた機関であります。他方、核燃料サイクル開発機構は、原子力の研究開発のうち、高速増殖炉及び高レベル放射性廃棄物の処理処分の開発等のプロジェクト研究を行ってきた機関であります。

 この二法人が統合して設立される新機構は、原子力の基礎・基盤研究からプロジェクト研究開発までを包含する、我が国で唯一の原子力の総合的研究開発機関となるわけでございます。

牧委員 言葉にするとそういうことだと思うんですけれども、私が申し上げたいのは、それが本当にこの国の原子力政策の中であり方としてなじむものなのかどうなのか、そこら辺のところを申し上げたいわけであります。

 例えば、この整理合理化計画の中で、「もんじゅ」再開までの間、予算と人員を縮小するよう求めているわけですね。これは、例えば今回のこの新機構の業務の中に、「核燃料サイクルを技術的に確立するために必要な業務で次に掲げるものを行う」と、高速増殖炉の開発ですとか、その他あるわけですね。それから、「原子力に関する研究者及び技術者を養成し、及びその資質の向上を図ること。」こういうことが書かれているわけですけれども、この「もんじゅ」再開まで予算と人員を縮小する、そうすると、技術者集団というのが縮小されて技術が失われて再開などできなくなっちゃうんじゃないですか。そういう懸念もあるわけです。

 そういうことからすると、私は、合理化計画に何も従う必要はないわけであるし、この新機構が目指すものと整理合理化計画の中で目的とされているものとのそごというものは明らかにあるわけだと思います。この帰結として、合併というのを含めてもう一回白紙から考えたらどうですか。いかがでしょうか。

小島副大臣 「もんじゅ」関係のお話をいただいたわけでありますけれども、原子力発電による長期的なエネルギー安定供給の確保の観点から、「もんじゅ」を中核とした高速増殖炉サイクルの実用化に向けた研究開発に着実に現在取り組んでいるところであります。

 「もんじゅ」は、御承知のように、平成七年のナトリウム漏えい事故以降、運転を停止し、施設の維持管理を現在行っているところでございます。施設の維持に当たっては安全確保を前提に業務を効率化することによって経費削減を進めるとともに、要員についても最低限必要な数を確保しているということで、現状を今御説明したわけでありますけれども、牧委員がお話ししたことについては私どもも真剣に考えなきゃいけないというふうに思っています。

牧委員 ぜひ真剣に考えていただきたいと思います。

 では、次に進みますけれども、これもちょっと確認しておきたいんですが、核融合研究ですね。ITER、これは今話題になっておりますけれども、将来的に大きな期待が寄せられております。かつ、ITERを推進して数千億円規模の出資を引き受けようとしているところでもあるわけですけれども、このITERを我が国が誘致するか否かにかかわらず計画への参加というのは既定路線であると私は理解をいたしております。にもかかわらず、現在、原研のもとで進められている核融合関係の研究を法人の事業項目として明示していないのはどういうことなんでしょうか。そこら辺をお聞かせいただきたいんです。

 これは、例えばITERを誘致した場合に、核融合研究をこの法人から切り離すということを前提としているというふうに理解してよろしいんでしょうか。そのことと、その誘致が核燃料サイクル研究に、予算、人員その他の面で、そういった意味でこれを別物として考えているのであれば、影響しないというふうに理解してよろしいんでしょうか。その点についてお聞かせください。

坂田政府参考人 新機構におきます、まず核融合の研究につきましては、新機構の業務の中に原子力の基礎的な研究また応用の研究ということがございますので、主としてそういう範囲で核融合の研究は新機構においてもしっかりと着実に進めていくということにしてございます。

 それから、ITERとの関係でございますけれども、ITERは、これが建設、運転される場合には、ITER自体が国際機関として活動することになります。したがいまして、新機構は、このITERの活動の動向を踏まえながら、日本が参加するわけですから、あるいはその場合に国内の取りまとめの機関としてこのITER計画に積極的に協力していく、そのような位置づけになるわけでございます。

 冒頭申し上げました、新機構においても着実に核融合の研究を進めていくということを申し上げましたが、ITERと申しますのは、核融合の研究の中でもトカマクという方式の核融合の技術でございます。現在、日本原子力研究所はこのトカマク方式で世界最先端の成果を上げておりますので、新機構におきましても、このトカマク方式の核融合の研究におきまして国内の研究を先導していく中核的な機関となってその役割を果たしていくということになるかと思います。

牧委員 最後に、もう一点お聞かせいただきたいと思います。

 この新法人の資本金なんですけれども、旧法人の出資金額から負債を差し引いた額というように理解をしております。その負債というのはいろんな意味があろうかと思いますけれども、過去におけるいろんな負の遺産、遺産とともに負の遺産も同時にこれは引き継いでいくわけですけれども、いろんな積み残しももちろんあろうかと思います。

 せんだって、ちょうど新聞を見ておりましたら、これは中央紙には多分載っていなかったんじゃないかと思うんですけれども、鳥取県の湯梨浜町方面地区のウラン残土、この問題について最高裁の決定を見たということで、これは実にウラン残土の存在が発覚してから十六年、撤去協定書を締結してから十四年間、これまで経過をしているわけであります。

 核燃機構と監督官庁の文科省は、この問題の解決に向けてこの十四年間一体何をしてきたんだろうという疑問を抱かざるを得ないわけですけれども、お答えをいただきたいと思います。

小島副大臣 お答えいたします。

 御指摘のウラン残土の撤去問題に関しては、最高裁において核燃料サイクル開発機構側の主張が認められず上告が棄却されたということは承知しております。御指摘のとおりでございます。文部科学省としても、これまで和解による現実的な解決を目指す等努力をしてきたわけでありますけれども、このような結果になったということは非常に残念であるというふうに考えています。

 今後の対応につきましては、まずは核燃料サイクル開発機構が当事者として責任を持って司法の判断に従って対応していくべきものであり、文部科学省としても核燃料サイクル開発機構が司法の判断に従って適切な措置をとるよう対応してまいりたいというふうに考えております。

牧委員 私、それではやはり国民の理解、共感は得られないと思うんですね。これまで何をしてきたんだという質問に対して、これまで係争をしてきた、ただ結果として司法の理解が得られなかったという説明でしかないわけです。現実に原告の皆さんというのは、やはり地域における健康被害を懸念されて、そして一日も早く撤去してもらいたいということで訴えてきたわけで、まず、これはやはり核燃サイクルの役割としての責務を果たすべく努力をしてきたのかどうなのかということを私は聞きたかったわけです。そしてまた、監督官庁である文科省がどのように責任を果たしてきたのかということを聞きたかったわけで、そういった観点から、この十六年間何をしてきたのかということをお答えいただきたいと思います。

殿塚参考人 核燃料サイクル開発機構理事長の殿塚でございます。

 ただいま先生の、今後の対応も含めてのお尋ねということで理解させていただきます。

 サイクル機構は、昭和三十年代に、鳥取県それから岡山県の両県で、ウラン探鉱のための坑道を掘削いたしまして、ウラン鉱石を運び出して、それ以外の岩石だとか土砂、こういったものは捨て石として坑口付近に堆積させておりました。これがいわゆるウラン残土と呼ばれているもので、それぞれの堆積場の現地において措置しております。安全上の問題についてはもちろん、モニターを置いて安全であるということは常々確認しております。

 この残土を関係自治体の御協力を得て撤去する旨の方面区との協定を締結いたしましたのが平成二年八月でございますが、これ以降、旧動燃事業団時代から今日のサイクル機構時に至るまで、現実的な解決方法としてはやはり和解による方法がベストである、こういう基本方針のもとに継続的、精力的に交渉を地元と続けてまいりました。しかし、今日に至るまで和解に至りませんで、その間、地裁、高裁と司法の場で審議が並行的に行われてきましたけれども、最終的に最高裁の判断が下された、こういういきさつでございます。

 司法の場におきましては、関係自治体との同意がなくても撤去、搬出入の法的制約にはならない、こういう旨の判断が示されておりまして、サイクル機構としてはこの命令に粛々と従うということが置かれた立場でございます。

 とは申せ、可能な限り円満な解決をしたいというふうに考えておりまして、残土約三千立米でございますが、これを自主的に撤去するに当たりましては、各位の御理解を得るべく、関係者の御協力をいただきながら最大限の努力をしているところでございます。

牧委員 時間が来たので終わりますけれども、いずれにせよ、この問題、全国レベルから見たらそう大きな問題ではないのかもしれませんけれども、こういったこと一つ一つ、きちっと住民の方のあるいは国民の理解とコンセンサスがあって初めて日本の原子力行政が推進できるわけですから、そこら辺のところをぜひ心してやっていただきたいと思いますし、またこういったいわば負の遺産というものをやはりきれいに清算した上で、あるべきこれからの機構の形をつくっていっても決して遅くないんじゃないかなということも重ねて申し上げさせていただいて、質問を終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 金田誠一君。

金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。

 私は、まず核燃料サイクルの非現実性ということについて質問をいたします。

 本法案の第四条で機構の目的とされている核燃料サイクルなるものは、現実の問題として実現不可能となっているわけでございます。

 第一の理由は、核燃料サイクルのかなめとなっている高速増殖炉計画の技術的な破綻でございます。原型炉「もんじゅ」が致命的な事故を起こし、既に九年間も停止したままでございます。ナトリウムを冷却材に使用する、これが致命的欠陥だと思うわけでございます。

 加えて、昨年一月二十七日には、名古屋高裁金沢支部において、「もんじゅ」に係る国の設置許可処分に対する無効確認訴訟の原告勝訴判決が下されました。国側は上訴しているものの、この判決が覆ることはおよそあり得ない、こう思われます。法的にも「もんじゅ」の再開は不可能となっております。

 さらに、政治的にも、関係者の同意が取りつけられるとは考えにくいことでございます。いずれにしても、「もんじゅ」は再開できないし、また再開すべきものでもない、こう思います。

 にもかかわらず、本法案は、第四条に、高速増殖炉の開発普及を機構の目的としていることは全く理解に苦しむところでございます。「もんじゅ」を再開できる新たな理由でも出てきたのか、お答えをいただきたいと思います。

小島副大臣 お答えいたします。

 「もんじゅ」の関係につきましていろいろと御指摘をいただいたわけでありますけれども、原子力発電による長期的なエネルギー安定供給の確保等の観点から、高速増殖炉などの核燃料サイクル技術を確立することは極めて重要であるというふうに考えております。

 「もんじゅ」は、御指摘のとおり、平成七年のナトリウム漏えい事故以降運転を停止しているわけでありますが、早期の運転再開を目指し、福井県及び敦賀市の事前了解を得た上で、安全性を一層高めるための改造工事に着手すべく、現在努力しているところであります。既に敦賀市長からは御了解いただいており、できるだけ早く福井県からも御了解いただきたいと希望しているところであります。

 本年五月には、文部科学大臣、経済産業大臣及び福井県知事による「もんじゅ」関連協議会を開催したところであります。同協議会においては、福井県知事より、「もんじゅ」運転再開に関し責任を持って的確に判断をしていきたいとの発言がございました。

 それから、先ほどの裁判についてでございますけれども、平成十五年一月の国による「もんじゅ」の原子炉設置許可処分を無効とする高裁判決が出されましたわけでありますが、国はこれを不服として最高裁に上訴しているところであります。文部科学省としては、最高裁において国の主張を認めていただけるものと考えており、「もんじゅ」運転再開のための努力を現在続けているところであります。

 以上でございます。

金田(誠)委員 単なる願望が述べられましたけれども、確たる論拠には全くなっていないと思います。高速増殖炉の実用化のめどは、したがって全く立っていない、これが現状だし、これからも変わらないと思います。そうであるからには、そのことが明らかになった時点で核燃料サイクル路線は中止されるべきであった、こう思います。最低でも凍結されるべきであったと思います。

 そうであれば、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を統合する新たな独立行政法人も、その性格は全く別のものになる必要があるわけでございます。新しくできる機構の目的は、核燃料サイクルから撤退するための調査研究ということが本来あるべき姿ではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 高速増殖炉の将来見通しについてのお尋ね、御意見もございましたけれども、先ほど副大臣から御答弁申し上げましたとおり、私どもとしては、将来に向けて高速増殖炉の技術開発は大変大事であると思っておりますし、またその中核となる施設が「もんじゅ」であると考えております。したがって、できるだけ早く「もんじゅ」の運転再開を目指してさまざまな努力を続けたいと思っております。

 ちなみに、高速増殖炉の開発につきましては、我が国のみならずフランス、ロシア、中国等でも行われておりますし、また最近におきましては、米国が第四世代の原子炉の開発という多国間の協力の枠組みのもとで、「もんじゅ」型の高速増殖炉も炉型選択の一つに入れて各国で研究に向けた取り組みを進めようという動きもございます。

 そういう意味で、繰り返しになりますが、高速増殖炉の開発というものは、日本にとりまして、とりわけエネルギーのない日本にとりまして大変大事な課題であるというぐあいに考えております。新機構が発足いたしましたならば、この高速増殖炉の開発についても、両法人の持てる力を結集してしっかりと取り組んでいきたい、着実に研究開発を進めていきたいと考えてございます。

金田(誠)委員 高速増殖炉は既に破綻をしている、もうだれの目にも明らかでございまして、あとはそれを認めるかどうかでございます。

 裸の王様に王様は裸だというふうにだれが言うかでございますが、決断をするのは大臣だ、お役人ではないと思いますが、大臣、いかがでしょうか。

中山国務大臣 今政府委員が答弁いたしましたように、高速増殖炉「もんじゅ」を何とか早く再開して、本来日本にとっても非常に大事な研究であると考えていますので、ぜひそういう方向でやるということで考えているところでございます。

金田(誠)委員 先ほど来、大変残念な御答弁の連続でございます。

 次に、プルサーマルの安全性について質問をしたいと思います。

 日本政府と原子力業界は、高速増殖炉による核燃料サイクルにけじめをつけることもなく、今度はずるずるとプルサーマル計画に路線転換をしようとしている、こういう遺憾な事態でございます。

 しかし、本法案に関連して政府から提出を受けた資料、ごくわずかな資料しかいただいておりませんけれども、それによれば、原子力二法人の役割として、プルサーマルについての実証的研究が行われたという記載は全くございませんでした。

 今日まで、プルサーマルの安全性を含む研究開発は、いつ、どの機関がどのように行ってきたのか、お答えをいただきたいと思います。そして、その研究開発で安全性が立証されたと言えるのか、あわせてお答えをいただきたいと思います。

三代政府参考人 お答えいたします。

 プルサーマルにつきましては、少数体規模での実証として、PWRでは、関西電力株式会社の美浜発電所一号炉において四体の混合酸化物燃料、いわゆるMOX燃料が昭和六十三年から平成三年まで、またBWRにおきましては、日本原子力発電株式会社敦賀一号炉において二体のMOX燃料が昭和六十一年から平成二年まで、それぞれ三サイクルにわたって問題なく照射され、その後の照射後試験により健全性が確認されております。

 また、事故時のMOX燃料の挙動につきましても、日本原子力研究所におきまして、昭和五十六年度から試験炉を用いた試験が行われており、安全審査の判断基準となるデータが取得されてきております。また、現在も、高燃焼度MOX燃料に関する研究が行われております。

 さらに、原子力発電技術機構、現在は独立行政法人の原子力安全基盤機構でございますが、ここにおいても、平成四年度から三分の一MOX燃料炉心に関する調査分析が行われており、これまでに燃料ペレット組織の非均一性の影響等について成果が得られたところでございます。

 二つ目の、実証されたと言えるのかどうかという御質問でございますが、現在の軽水炉におきましても、ウランの核分裂によりまして約三分の二、そしてプルトニウムの核分裂によりまして約三分の一、エネルギーを発生しております。ですから、軽水炉においてプルトニウムを利用して発電すること自体は新しいことではございません。

 また、MOX燃料を装荷することについては、諸外国でも多くの照射実績があり、また国内においても、これまでに少数体として装荷されたMOX燃料についてその信頼性が十分確認されております。

 さらに、平成七年六月、原子力安全委員会では、炉心装荷率三分の一程度までは、基本的に従来のウラン燃料の技術と同様な安全設計手法や安全評価手法の適用が可能であるという結論が出ております。

 以上でございます。

金田(誠)委員 一貫してそういうお立場でプルサーマル、MOX燃料を軽水炉で燃やす、これについて非常に安易に考えている、これが我が国の今のプルサーマル計画の実態だというふうに思うわけでございます。

 実は、昨日でございますけれども、ドイツからミヒャエル・ザイラーさんという方、エコ研究所副所長ということで、ドイツの脱原発、脱再処理政策をリードしてきた責任者の方でございますが、その方がおいでになりました。

 MOX燃料としてプルトニウムを利用すると、以下のような特殊な問題が生じるということをおっしゃっておられまして、炉心の核的振る舞いが変化する、核的振る舞いという言葉を使っておりましたけれども、ウランとプルトニウムは違うと。例えば、緊急停止の場合、プルトニウムは制御棒がきかなくなる、事故の速度が速くなる、MOXの場合ですね、安全性の境界に達する危険性がある、こういうことから、ドイツはプルトニウム利用、MOX燃料から撤退をしたということをおっしゃっておられます。

 今日までの実験でこういう、例えば緊急炉心停止なんということに対してどう反応するかということなどはやられていない、ごくごくわずかなMOX燃料を装荷して商業炉でやっている、ごく微量のMOXだというふうに思いますけれども、その程度です。それで今度から本格的なプルサーマルに踏み切る自体、一体何を考えているのかということを申し上げたいわけでございます。

 この本法案にも、プルサーマルに関する規定は、第四条の目的にも第十七条の業務の範囲にも全く記載がない。原子力の安全性を含む研究開発の拠点になる新たな独立行政法人をつくるというのに、目的にも事業にも記載がないという程度なんですよ。

 このことは、軽水炉でプルトニウムをMOX燃料として燃やすという未開発の技術について、日本政府と電力業界が余りにも安易に考えているということを実証しているというふうに私は思います。日本原子力研究開発機構は、プルサーマルの安全性を含む研究開発には今後ともかかわらないのか、はっきりしていただきたい。

 加えて、プルトニウムの安全性について、今後どの機関が実証的研究について責任を負うのか。今までは無責任ですよ。どこかの商業炉でちょっとやっていますという程度ですよ。どこがきちんと責任を負うのか、あわせてお答えをいただきたい。

坂田政府参考人 まず、お尋ねのプルサーマルの安全性の研究に関して新機構がどのような役割を果たすかということについて御説明申し上げたいと思います。

 現在の日本原子力研究所におきましても、これまで原子力の安全研究の一部といたしまして、プルサーマル用のMOX燃料の物性等に関するいわゆる基礎的な研究を実施してきたところでございます。

 ことしの七月に、原子力安全委員会が原子力の重点安全研究計画というものをおまとめになりました。その中で、新機構に期待をする重点安全研究の一つといたしまして、プルサーマル等の軽水炉利用の高度化について、規制行政庁が行う行政判断の妥当性の確認に必要なデータベースの研究開発等を挙げておられます。

 このことを踏まえまして、新機構におきましては、規制行政庁等の要請も十分に勘案をいたしまして、プルサーマルの安全性を含む研究開発についても実施をしていくものと考えてございます。

三代政府参考人 原子力安全・保安院といたしましては、プルサーマルに関する安全審査のために必要となるデータの取得について責任を持って対応していくということとしております。

 具体的には、今後MOX燃料の高燃焼度化に伴う安全性の確認が必要となることから、先ほど坂田局長から答弁がありましたように、日本原子力研究所に委託して、試験データの取得などを行っているところでございます。

 また、原子力安全基盤機構においても、MOX燃料に関する調査分析を実施しており、今後ともプルサーマルに関する安全審査のための最新知見取得に努めてまいる所存でございます。

金田(誠)委員 冒頭申し上げましたように、高速増殖炉は実質的に破綻していて、もう動かないという状態だと思います。

 そういう中で、今回新たな機構をつくるとすれば、もしやることがあるとすれば、その高速増殖炉以後の廃炉の問題等々、これが一つ。

 もう一つは、私はやるべきでないと思うんですが、皆さんの立場に立って考えると、プルサーマルですよ。これが本当に安全でやれるものなのかどうなのか、これの実証的研究をやっていくこと、これが新機構の本来の目的に、今の時点でつくるとすれば、ならざるを得ないんじゃないですか。それが四条にも十七条にも全く抜けている。一体何を考えているのか。現実を見ていない。これからやるのはプルサーマルでしょう。高速増殖炉なんかできるわけもないでしょう。それが何で法案にきちんと明記されないのか。

 私は、これはプルサーマルもやるべきでないと思っているんですよ。しかし、やるというのなら、最低安全性を立証するという責任は皆さんにある。であれば、新機構の最も中心的な目的として、四条と十七条にこれを記載するべきではないですか。記載して出し直すべきではないですか。

坂田政府参考人 先ほどお答えいたしましたように、新機構におきましても、原子力安全委員会の安全研究の計画に従いまして、プルサーマルにかかわる安全研究を実施してまいりたいと思っております。

 この業務は、今回の新機構法案におきましては、原子力の基礎的研究、応用の研究、その中でしっかりと取り組んでまいる所存でございます。

金田(誠)委員 そうしたら、このプルサーマルというのは核燃料サイクルではないんですか。一応サイクルではないの。そうしたら、核燃料サイクルという項目があって、高速増殖炉しか書いていないのはおかしいじゃないですか。きちっと明記すべきでしょう、やるというんなら。やらないというんならいいですけれども。どうですか。

坂田政府参考人 新機構法案の業務の中に、核燃料サイクルの確立のための技術の開発というのがございます。これは、あくまで技術の開発という観点で行う業務を書いてございます。

 ただいま申し上げましたとおり、プルサーマルの安全研究につきましては、基礎的研究、応用の研究の範囲でこれを実施していくという考えでございます。

金田(誠)委員 高速増殖炉が実質だめな状態の中で、今再処理をして、プルトニウムを何に使うかといったら、MOX、プルサーマルですよ。その安全性の研究が今までは本当になおざりで、商業炉でちょこちょこやってきた。そんなことでこれは踏み切ってもらっちゃ困るというふうに言っているわけですよ。新機構をつくるんだったら、そこできちっと研究すれば、とても危なくてこんなものできるかということになるということを申し上げているわけですよ。それは一般的な基礎的研究なんてことで十把一からげにできるものではない。これは、やるならきちんと明記する。ここできちんと明記して、やれないんだったらやめるということが必要だということを強く申し上げておきたいと思います。

 大臣、意味がわかって聞いていますでしょう。ぜひよろしくお願いしたいと思います。

 次に大間原発のことについて質問予定でしたが、時間が来ましたので、ちょっとこれは後に回して、時間があったら聞かせていただきます。

 次に、プルサーマルの経済性についてお尋ねをいたします。

 原子力発電のコスト、キロワットアワー当たり幾らということになっておりますでしょうか。キロワットアワー当たり幾ら。そのうち燃料費は幾らになっておりますでしょうか。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 発電コストは諸前提によって変化しますことから、あくまで一定の条件のもとでの数字であることに留意することが必要でございますが、総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト検討小委員会における試算では、原子力発電のコストは、運転年数四十年、利用率八〇%、割引率〇から四%の条件において、一キロワットアワー当たり五・〇円から五・六円とされております。

 これは使用済み燃料を再処理するという前提で試算されたものでございまして、その燃料費は、バックエンド費用も含めれば、割引率〇から四%の条件において、一キロワットアワー当たり一・四三円から一・八三円とされております。割引率を三%とした場合には一キロワットアワー当たり一・四七円でございまして、バックエンド費用も含めた燃料費の発電コストに占める割合は約二八%でございます。

金田(誠)委員 国際基督教大学の八田達夫先生という方がいらっしゃって、その人が新聞に書いてあるものを見ますと、プルサーマルをやると燃料費は今の六倍になるということを書いてございました。

 一・四三円とか一・八三円が六倍になると、これは大変な金額になって、今の単価の倍以上にもなっちゃうのかなという気もするわけでございますけれども、この平均的な五円から五・六円で発電できる、五円台で発電できるという原発で、今は普通の濃縮ウランを使っている、それをMOX燃料に切りかえた場合に、この五・六円なりが幾らになりますでしょうか。五・六円が例えば十円になるとか、そんなふうに、素人なものですから、ある原発で今濃縮ウランを使っている、その原発の燃料をプルサーマルに切りかえる、そうするとキロワット幾らになるんだ、これを端的に教えていただきたいと思います。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 今申し上げました五・〇円―五・六円というものは、プルサーマルを前提とした試算でございます。

 それで、今先生御指摘の、単純にウラン燃料のみの場合でございますけれども、これは現在御審議中の原子力委員会新計画策定会議の試算がございまして、ウラン燃料のみを用いて使用済み燃料を全量直接処分した場合の発電コストは、割引率二%の場合、一キロワットアワー当たり約四・五円から四・七円とされております。

 これに対しまして、使用済み燃料を全量再処理してプルサーマルを行った場合の発電コストは、原子力委員会の試算でございますけれども、キロワットアワー当たり五・二円と、その差は約〇・五円から〇・七円高くなるというふうにされてございます。

金田(誠)委員 これは、ある一定の原発でそうなるという意味なんでしょうか。原子力発電全体のコストの話をしているんではないですか。私の聞きたいのは、ある原発で燃料を切りかえる、濃縮ウランでワンススルーというものからMOX燃料、プルサーマルというものに切りかえた場合の発電単価がどうなるかということでございます。

安達政府参考人 個別の発電所においてどう変化するかというコストの試算は、私どもはいたしてございません。あくまでも全体の中でのモデル計算としての、それぞれの燃料を使った場合のコスト計算が今申し上げたものでございます。

金田(誠)委員 お願いなんですが、ぜひ個別の原発で計算すればどうなるんだという話をしていただきたいと思うんですよ、計算を。一定のモデルで一定の条件を、これこれこれこれの条件で計算すればということができると思うものですから、これはお願いです。実際、A原発というところがワンススルーでやった場合がどうだ、再処理した場合がどうだという比較で物を考えたいというふうに思うものですから、これはもうぜひお願いをしたいと思います。後でまとめて、わかりましたという答弁をいただければと思います。

 それで、今の数字、平均的なコストという話にしても、やはり再処理の方がコストが高くなるわけでしょう。この数字が本当かどうかというのは私非常に懐疑的で、今まで明確にこうなるという説明をきちっと受けたことがないんです。結果の数字みたいなものばかり見せられて、こうだと言われているだけで、本当かどうかというのは実は全く信頼できないな、今の状態ではと思っています。ですから、私のような素人でも本当に信頼できるような数字をつくっていただきたい、これもお願いです。

 そういう文脈の中で、さっき、一つの原発でやったらどうなるんだということもきちっとしていただきたい、これもお願いですが、しかし、素人としてはどうもこれは首をかしげるという数字であっても、今より高くなるというか、ワンススルーよりも再処理をやった方が高くなるというのはちょっと考えにくいですね。

 今でも日本の電力というのは世界一高い。アメリカの二倍だという話でしょう。それを安くなるというんなら話は別なんですが、何で高くなることをわざわざするか。これは昔の総合原価主義の時代の名残で、まだその残滓を引っ張っているんじゃないのかな。もうこれは経済性でいったらはっきりしていますでしょう。これから安いところとどんどん競争しなきゃならない。どうやるんですか。引き下げるというんならわかるんですが、多少であっても、本当に多少かどうかはまゆつばですが、八田達夫先生みたいに六倍になると言う方もいらっしゃいますけれども、どっちにしても、上がるという話はもう理解に苦しみますよ。皆さんはどういう思考回路で上がる話をしているんですか。

安達政府参考人 お答え申し上げます。

 電気料金の国際比較に関しましてはさまざまな方法がありますが、先生御指摘の我が国の電気料金が米国の二倍という数字は、IEAの比較を指しておられるものと思います。このIEAが行った二〇〇三年の比較におきましては、例えば家庭用の電気料金につきましては、我が国を一とした場合、米国は〇・五六、ドイツは〇・九四、イタリアは一・二五ということでございます。

 我が国の電気事業につきましては、これまでも電力小売事業の部分自由化の制度改革が行われておりまして、事業者間の競争等によりまして、電気料金は過去十年間で約一六・六%低下しております。その結果として、国際的な料金格差は縮まる傾向にございます。

 当省といたしましては、昨年十月に閣議決定されたエネルギー基本計画に基づきまして、安定供給の確保及び環境への適合を十分考慮した上で、市場原理の活用を進めることにより、電気事業のさらなる効率化を促してまいりたいと考えてございます。

金田(誠)委員 もう全くわかっておらないようで、残念でございます。

 揚水発電についてお聞きしようと思ったんですが、これも後に回します。時間があったら後で聞きます。

 次に、再処理工場の安全性、経済性についてお尋ねをしたいと思います。

 いただいた資料によりますと、原子力二法人のうち核燃料サイクル開発機構、これは旧動燃でございますが、この旧動燃の役割として、使用済み核燃料の再処理技術の開発と日本原燃への技術協力、支援というものがあり、この役割は新しい独法にも引き継がれるということになっております。

 しかし、既に再処理工場では、貯蔵プールで二〇〇一年に漏水事故が起きている。事故というのは起きるものなんですよ。幸い大事に至らなかったということは、私は天の警鐘であるというふうに受けとめるべきだと思います。事故というものは必ず起きるものだ。再処理工場の事故は、ほかの事故もいいとは言いませんけれども、とりわけ取り返しがつかないものになる、再処理工場というのはそういうものだ。まず、そういう観点からして、年内にも想定されているウラン試験というものを、これはとめなければならないというのが多くの関係者の願いでございます。

 原子炉等規制法という観点からすれば経済産業大臣ということになるのかもしれませんけれども、研究開発を担ってきたという立場からすれば文科大臣の責任も免れない、こう思うわけでございまして、ウラン試験は、これは大臣、何としてもとめていただきたい。年内なんというふうに言われておりますけれども、プルサーマル利用自体がもう研究開発がきちっとされているという証拠もない。そのプルサーマル計画を推進するための再処理工場なんというのは、何も急ぐ必要はない。プルトニウムも今余っているわけですよ、それで困っているわけです。今動かす必要はない、まずこれをストップさせてほしいと本当にお願いしたいと思いますが、どうでしょうか。

小島副大臣 金田委員のいろいろな質問を聞いていながら、本当に奥深く勉強されているということで、心から敬意を払います。

 現在、六ケ所村の再処理工場の関係が出たわけでありますけれども、委員御指摘のように、エネルギーの乏しい我が国においてはこういうことも必要であるということを、先ほどもプルサーマルの関係なんかで最低限という話もしていましたけれども、原子力発電による長期的なエネルギー安定供給の確保の観点からは、核燃料サイクル確立はまことに重要である、このような考え方に基づきまして、再処理を初めとする核燃料サイクル確立のための技術開発を進めているところであります。

 御指摘いただきましたように、再処理工場の事故は取り返しがつかないよというようなお話もありましたけれども、文部科学省としては、原子力委員会等の方針に沿って、地元の理解を得て適切に安全を確保しながら進められるべきものと考えておりますので、事業の円滑な推進に寄与すべく、今後とも一生懸命努力してまいりたいというふうに思います。

金田(誠)委員 私とは全く立場も違うし、考え方も違うということはわかりました。わかりましたけれども、副大臣の立場に仮に立ったとしても、今動かすことはないでしょう、別に。プルトニウムは山ほど余っているんですから、何十トンと。そのお立場に立っても、いま一つ慎重に、本当に核燃サイクルに踏み込んでいいのか。再処理工場、ウランを、劣化ウランでしょうけれども、使って動かせば核で汚染される、放射能で汚染される、そういう状態に踏み出す前に、いま一度立ちどまって考えるという必要があるのではないか、百歩譲ってですよ。

 何も年内にウラン試験をすることはない、ひとまず停止をして、立ちどまって考える、これはどうですか。年内にはやらない、もう少し慎重にやるという約束はできませんか。大臣、どうでしょうか。

坂田政府参考人 六ケ所村の再処理工場の運転スケジュールと申しますか、そういうものについては、まずは事業者が自分たちの事業見通しまたは事業にかかわる諸情勢を勘案して判断すべきものであると思いますけれども、実際に再処理工場を具体的にどう動かしていくのか、試験も含めましてですけれども、これはひとり事業者のみで決められることではなく、先ほど副大臣の御答弁にもございましたとおり、とりわけ地元の理解と協力なくしてできないわけでございます。そういった点についても事業者においては十分に配慮した上で、具体的なスケジュールを御検討なさるものと考えております。

金田(誠)委員 事業者と地元だけに全部責任を負わせるというのは、これはフェアでないのではないですか。国の立場として、どうなんですか、本当に。ゴーサインをもう出しているんですか。国としては支障ない、事業者と地元がよければいいんだ、こういう立場なんですか。ちょっと待て、今プルトニウムを抽出しなくたってまだまだ先まであるではないかと。もう一年、二年、半年でもいいですよ。きちっとこの再処理に踏み込むかどうか、最終的な腹を決めるための検討期間を要する、電気事業者、地元、それぞれ立場はあるだろうけれども、国としてはそうだということは言えませんかね。それでなきゃ無責任ですよ、これは。

中山国務大臣 今、副大臣そして政府参考人も答えましたけれども、これは、原子力委員会等の方針に沿ってやっているわけでございまして、地元の理解を得ながら適切に進めようということで今協議しているところでございまして、何といいましても、私どもとしては、核燃料サイクルの研究開発を担当する立場から事業の円滑な推進を進めていきたい、そういうことで努力しているということを御理解いただきたいと思います。

金田(誠)委員 事業者の判断、地元のお立場、お考え、これは尊重されるべきだということは、私は否定しません。それはもう当然だと思います。地元の意向に逆らってやるなんというのはとんでもない話だというふうに思います。

 しかし、国としても、今保有しているプルトニウムの量なり、あるいはプルサーマル計画に本当に踏み込んでいいのか、六ケ所の再処理工場を本当に動かしていいのかということにいま一つ慎重な判断をすべきであると。今国民的な議論の最中ですよ。まだまだ合意形成もされていませんよ。情報開示も不透明です。コストの問題、安全性の問題、まだまだ残っている。ぜひひとつ慎重に御判断をいただきたい。このことを重ねて申し上げておきたいと思います。

 次にコスト面の質問を用意しておりましたが、これも後に譲ります。

 それから、プルトニウムの余剰ということについても後に譲ります。

 次に、核燃サイクルを推進する責任の所在ということで最後、質問をさせていただきたいと思います。

 現在、原子力長計策定会議においては、核燃料サイクルの推進について、国と原子力業界が責任の押しつけ合いをしているというふうに私は拝見をいたしております。結果を予測すれば、国も業界も責任をとらずに、結局は膨大な費用が国民負担となる、このシナリオができ上がるだろうということを憂慮いたしております。そうした観点から質問をしておきたいと思います。

 現行法においては、原子力発電を選択するのは電気事業者の判断によるものであり、国がそれを強制するスキームは存在しない、あったとしてもお願いベースという話だと思いますが、これについて御確認をいただきたいと思います。

安達政府参考人 民間事業者が電源の開発を進めるに当たり、いかなる電源を選択するかは、当該事業者の判断にゆだねられております。

 他方、昨年十月に閣議決定されましたエネルギー基本計画において、原子力発電は、安全確保を大前提として、今後とも基幹電源として位置づけ、引き続き推進することとされており、政府としても、安全の確保や国民の理解の確保を大前提に、今後ともさまざまな取り組みを通じて、その着実な推進に努めていく所存でございます。

金田(誠)委員 強制するスキームはないというふうに明確にお答えをいただきたいと思います。それは後で。今まとめてもう一つ。

 同じく、使用済み核燃料の再処理あるいはワンススルー、この選択も電気事業者の判断によるものであり、国がいずれかを強制するスキームは存在しないというふうに私は考えております。今、エネルギー基本計画において引き続き推進というのは、国の意思、願望としてはわかるわけでございますが、それを選択するかどうかは電気事業者の判断、原発を推進するかどうかも電気事業者の判断、再処理にするか、ワンススルーにするかも電気事業者の判断による、国がいずれかを強制するスキームは現在存在しない、これからも強制するスキームなんというのは、これは我が国は北朝鮮じゃないんですから、自由主義経済の国なわけですから、考えられないと思うわけですが、強制するスキームはないですね。

三代政府参考人 安全規制を所管している立場からお答え申し上げます。

 電気事業者が原子炉等規制法に基づいて、原子炉設置の許可を取得しようとするときには、使用済み燃料の処分の方法を記載した申請書を提出する必要がございます。これまでの案件におきましては、電気事業者からのすべての申請においては再処理を前提とした記述がなされてきております。

 経済産業省は、この申請が法律に基づく許可の要件であります原子力の開発利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないことを満たすかどうかを審査いたします。

 その際、閣議決定文書でありますエネルギー基本計画、閣議了解文書であります当面の核燃料サイクルの推進について、及び原子力長期計画などを総合的に踏まえて、電気事業者が適切に再処理することを確認しております。

 また、今後とも、これらエネルギー基本計画、原子力長期計画などを踏まえ、電気事業者の申請を審査してまいる所存でございます。

金田(誠)委員 それは、聞き方によっては、強制しているんですというふうにも聞こえますし、あるいは、強制はしていません、電気事業者が申請書に勝手に書いているんですというふうにも聞こえますが、強制しているんですか、していないんですか。

 いやいや、それは使用済み核燃料の処分の方法を記載すればいいわけだよ。今たまたま再処理をしますという記載がある、しかしワンススルーという記載だってあるかもしれない、それは禁止されているわけでも何でもないでしょうということです。したがって、現在の許可条件にそういう形で許可されているからといって、国が強制しているのか、それ以外の選択肢はもう全くないということなのかという話です。

三代政府参考人 ただいま御説明いたしましたように、今までの案件におきましてはすべて再処理を前提とした記述になっております。ワンススルーということで申請がなされたという前例はございませんし、仮定の質問であるというふうに我々考えておりますので、ちょっと答えは控えさせていただきたいと思います。

金田(誠)委員 これは、再処理したところで、再処理後の高レベル廃棄物をどうするか。最終処分地、決まっていませんでしょう。幌延だって、どこだって決まっていない。したがって、決まっていないですよ、そんなもの。それは再処理まで、中間のところまでを記載させたというだけの話で、最終処分は全部先送り、国のスキームによっても、電気事業者の申請も全部先送りです、こういう無責任なことが行われている。

 それで、電力会社は、今言ったような申請書にそう記載されているんだから国の責任で、最終的に再処理をやって事故が起きたら国が責任を持てと言っているわけでしょう。だけれども、国の方は、そうもばかりも言い切れない、この財政難で本当に持てるかということで、責任のなすり合いをやっているわけですよ。

 そこで、こういう状態の中で原発や再処理工場で重大な事故が発生したり、予期せぬ事態によって生じた損失は、私は、本来は電気事業者の負担になると思うんです、そういう申請をしたわけだから。しかし、電力会社には背負い切れない負担となる場合もこれは容易に想定されるわけです。

 その場合、どうなるかということを想定しますと、金融機関に対して行われたのと同じことですよ。公的資金。最終的には公的資金でやるしかないというふうになるだろう、そのときには恐らく国の担当者はもう交代して、当時の責任者はだれもいない、電気事業者の方は公的資金で損失は補てんされる、このようにだれも責任をとらない無責任体制の中で核燃料サイクルは推進をされて、事故の危険と金の負担だけは国民に押しつけられる。こういう最悪のシナリオが今進んでいるということを指摘したいと思いますが、否定できますか、これ。このとおりでしょう。お認めをいただきたいと思います。

安達政府参考人 現行の原子力長期計画におきましては、国の基本的な役割は、原子力の研究開発利用に係る基本方針の明確化、安全規制などの法的ルールの設定、その遵守の徹底、長期的観点からの基礎的、基盤的な研究開発の推進と必要な人材の育成の促進など、所要の措置を講ずることとされております。

 また、民間事業者につきましては、安全の確保を大前提に、原子力発電、核燃料サイクル事業などの円滑な推進が図られるよう、積極的に取り組むことが基本的な役割とされておるところでございます。

 こうした国と民間との役割分担の基本的な考え方のもとで、国が安全規制の設定やその遵守などに万全を期すことはもちろん、民間事業者においても、御指摘の重大事故などが原発や再処理工場の操業で生じないよう、最大限の取り組みを行っていくことを期待しているところでございます。

金田(誠)委員 私は、そういう無責任体制で、最悪の場合、公的資金になるだろう、要は事故の危険と金の負担だけが国民に押しつけられるという今のスキームが進んでいるんですよということに対して、今の答弁は肯定したんですか、否定したんですか。どっちかはっきりしてください。

安達政府参考人 六ケ所再処理工場が稼働した後に、仮に低稼働の状態が余儀なくされるような場合等につきましては、本年八月に取りまとめられた総合資源エネルギー調査会電気事業分科会中間報告におきまして、次のように整理されてございます。

 日本原燃株式会社の過失による事故のためのコスト上昇など、電気事業者あるいは日本原燃株式会社の責任によるコスト上昇の場合は、規制料金に直接の悪影響が及ばないようにすること、また、いずれにいたしましても、どのような事情があるものであっても、積立額とか料金原価に影響があるような場合につきましては、第三者的な立場の委員会等の意見を聞いた上で、当該変動を料金に反映すべきかどうか、反映する場合でもどのように反映するかについて判断することが必要と整理されてございます。

 経済産業省といたしましては、この報告に基づき、適切に対応してまいる所存でございます。

金田(誠)委員 これは、いかなる場合があっても国民負担にはしませんと。国民負担には二つありますね。電力料金に上乗せするということと、税金で措置するという二つあるわけですが、いかなる場合があってもそういうことはあり得ません、電力会社の責任です、こう言っちゃえば、だれもこんな事業やりませんよ。だれもやりません。それを言っていないから無責任体制の中で進んでいる、だれも責任をとらない仕組みの中で進んでいるところが最大の欠陥だと。

 今ずっと部長さんが御答弁されていましたが、そんなことでいいんですか、大臣。

 最後に大臣にお聞きをしたいと思いますけれども、今、私は、核燃サイクルの非現実性、高速増殖炉も不可能だということを言いました。プルサーマルの安全性さらに経済性、再処理工場の安全性、経済性、そして責任の所在ということを申し上げました。

 本来であれば、こうした問題の解決こそが大前提になるべきではないでしょうか。これを放置したままで原子力二法人の統合のみが先行するということは、まさに本末転倒だというふうに思います。本法案は、撤回の上、再検討すべきと考えますが、いかがでしょう。

中山国務大臣 金田委員の御意見、御質問をずっと聞いておりましたけれども、一方で私、考えておりましたのは、原油価格が五十ドルを超えているのに、ガソリン価格は少しは上がりましたけれども、まだ備蓄している原油を取り崩すことなく日本経済は動いているなということで、オイルショック以前と今とを比べますと、いわゆるエネルギー全体に占める原油の比率というのは、これは七〇%を超えていたと思うんですけれども、今はもう五〇%前後ということで、では、何がその低下に貢献したかというと、まさに原子力発電でございまして、一方では、我が国における原子力発電というのは、ある意味では不幸な歴史といいますか、前に進もうとすると何か事故が起こったりということで、本当にそういう意味ではなかなか大変なのが日本の原子力政策だなということをずっと考えながら来たわけでございます。

 今、るる言われましたけれども、高速増殖炉についても見解の相違があるわけでございますし、核燃サイクルの問題、六ケ所の問題、本当いろいろありますけれども、しかし、私どもとしては、これは立ちどまるわけにはいかぬわけでございます。

 なぜかといえば、もう既に御理解いただいていますように、資源の乏しい日本ではどうしても原子力発電というものをより重視していくしかないわけでございますから、文部科学省としては、与えられた任務というのは、原子力発電、核燃サイクル、いろいろなものを通じて研究開発を進めていくということだろう、こう思うわけでございまして、そういう意味ではこの法案を撤回するという選択肢はない、私はこのように考えております。

金田(誠)委員 大変残念な御答弁でございますが、くれぐれも六ケ所の稼働だけは、これは何も今やらなくてもいいわけでございますから、これだけはくれぐれも慎重にということを申し上げて、質問を終わります。

斉藤委員長 古賀一成君。

古賀(一)委員 民主党三番手の古賀一成でございます。

 きょうは、もちろんこの二法人統合の問題を中心にやるんですけれども、私自身はかねてより、総合エネルギー行政、あるいはその中でも中枢の一つをなす原子力行政というものは、いわゆる跛行といいますか、ダッチロールというか、今大臣も答弁になりましたけれども、アレルギーが少し薄らぐとまた事故が起こる。要するに、将来何を目指しているんだ、超長期的には何が課題になるんだというものを役所の中でも政府の中でも共有せずに推移してきておるのではないか。あるいは、ましてや国民の皆さんにとっては、そのイメージがわかないままに、ただ行政改革だ、あれだというものが進んでいるように思います。

 そういう視点から、この法案あるいは二法人統合というのにとらわれず、もっと深いというか大きいところから私は質問させていただきたいと思います。

 質問通告は実はきのうの段階でしておりませんけれども、昨晩インターネットでちょっと見ておりましたら、ITERの六カ国次官級協議がまさにきのうウィーンで行われておるという話が載っておりました。きのうのきょうでございますから、これは大変重要な問題でありまして、国際的にも関心の高い問題であります。これについて、協議の結果はどうだったのか、政府委員で結構でございますけれども、ひとつ御報告をいただきたいと思います。

坂田政府参考人 先生お尋ねのITERのサイト地をめぐる交渉の問題でございます。

 この問題につきましては、昨年の六月以来、本格的に協議をしてまいりましたが、現在膠着状態にございます。候補地としては、日本の六ケ所村、欧州、フランスのカダラッシュと二つの候補地がございますけれども、早期解決に向けまして、これまでも六極、これは日米韓欧中ロでございますが、六極による次官級の会合並びに日欧による次官級の会合等々、数を重ねてやってきたところでございます。

 先生お尋ねのとおり、昨日、ウィーンにおきまして第六回目の六極によるITER次官級会合が開催されまして、我が国からは我が省の結城文部科学審議官が代表として参加をしております。

 きのうのことでございますので、余り詳しい情報はまだ入っておりませんが、これまで現地から私の方が得ている情報によりますと、会合では、まず参加各極が、六極でございますけれども、六極によるITERの推進が重要である、六極の協力でITERを実現することが大事であるということを確認したということが一つございます。

 それからもう一点は、日本がホストをするか、欧州がホストをするかということでございますけれども、ホスト国、非ホスト国の役割の分担につきまして、日本もまた欧州もそれぞれ提案をしてございます。日本が九月に提案をし、欧州がそれに対して十月に対案を出してまいりましたけれども、これら日欧の提案をもとに議論が六カ国、六極で行われたということでございます。

 その結果、ホスト国と非ホスト国の役割分担につきましては、日欧のお互いの立場についての理解は進んだということのようでございますが、合意には至っておりませんで、今後ともさらに日欧間で検討を継続するということになったようでございます。

 そういう意味で、ホスト国、非ホスト国の役割分担について合意は得られなかったということではございますけれども、今後も継続して協議をしていくということでございますので、それをベースとして、私どもとしては、できるだけ早期に日欧間での合意、結果として六極による我が国へのITERの誘致について実現ができますように、引き続き努力をしてまいりたいと思っております。

古賀(一)委員 今の局長答弁では、引き続き協議していくという余地が残されているような答弁でございました。私も真偽のほどはわかりませんが、概略の報告がございましたけれども、インターネットで、両国とも、あるいは両陣営ともといいますか、一歩も引かず、十二月のいわゆる閣僚級折衝で決着をつけるという情報もあるんですけれども、そうなりますと、十二月というともう来月ですから、これだけ重要な問題、予算額も将来は大変なものになるであろうこの問題が来月決着ということなんですけれども、そういうシナリオになるんでしょうか。

坂田政府参考人 現時点におきます私どもの考え方としては、最終的な決着はやはり六極による閣僚級の会合を開いてやることが望ましい、またやるべきだと考えております。その会合を開きますためには、先ほど申し上げましたとおり、日欧間でもう少し話を進めて、両者の考え方のギャップを縮めなければいけないんじゃないか。そういう点については恐らく今回現地で協議に参加している六極とも同じような感じを持っているのではないかというぐあいに思われますので、いずれにしろ、日欧の協議をまずは進めていく、状況が煮詰まれば、ただいま申し上げましたように、六極の閣僚級の会合も開かれることが当然あり得るだろう、このように考えております。

古賀(一)委員 本問についてはもうそれくらいにいたします。

 それでは、中山文部科学大臣に御質問したいんですけれども、中山大臣といえば、予算編成を前に、義務教育費国庫負担問題でもう頭が痛いんだろう、心もぱんぱんだろう、こう思うのであります。こういう日本の将来にとって非常に重い、重要な教育のあり方、とりわけ差し迫った義務教育費の国庫負担金削減問題、これが一方にあり、一方、地味とはいえ、原子力のあり方というのは日本にとって死命を制する極めて重要な問題の一つなんですね。

 中山大臣、二つの問題をこうやって答弁する立場に立たれた。文部科学省という役所の設立に伴ってそうなったんですけれども、私自身は、いわゆる橋本行革の省庁再編、大臣の数を減らす、省庁を減らすということというのは二次的な問題であって、本当は、国家にとって、国民にとって重要な課題を一番責任を持って推進していく、新しい施策を立案していくのにはどういう体制がいいかというのが本題であったはずなんだけれども、どうも当時の行革を振り返るに、数を少なくすればいいという感じで流れてきた。その結果が実は文部科学大臣の誕生であり、総務大臣の誕生であり、国土交通大臣、こうなったんですね。

 私自身は、この間の国会運営を見ていましても、まず我々から見れば、委員会が大変大きくなった。したがって、抱える法案が大変ふえた。したがって、会期は延びていませんから、一法案に使う時間が少なくなり、大臣のとり合いが激しくなり、極端に言えば、大変審議時間の短さと、審議の深さといいますか深みというものがなくなったように思うんですね。これは国会にとっては重要問題だと思う。

 一方、大臣から見れば、原子力の次は今度またあしたは義務教育費国庫負担だ、そういうふうに重要問題が日ごと変わっていくんですけれども、私自身はその点について、国会においても行政においても大変問題じゃないかと。こういう行革というのは、きょう審議されておりますこの二法人についても言えることなんですね。共通することなんです。

 大臣、文部科学大臣になられて、その二つの大問題、ほかにもあるんでしょうけれども、担当しておられて、今度の省庁再編というものが本当に意義あったことであるかどうかのひとつ御苦労話も含めまして、御感想をいただきたいと思います。

    〔委員長退席、稲葉委員長代理着席〕

中山国務大臣 今、古賀議員のお話を聞いておりまして、昔は一緒に仕事していたなということを思い出しながら、やはり気持ちは変わらないんだなということを、常に天下国家を考えながら、これまで行動してこられた古賀議員に改めて敬意を表したいと思います。

 省庁再編につきましては私もいろいろ考えるところがあるんですけれども、この場では言わない方がいいのかなと。統合してよかったところ、分離して悪かったところ、そう言うとすぐわかってしまうんですけれども。これは本当はもう一回、そういったことを見直す、そういう機会があってもいいんじゃないかな、こんな感じもしておりますが。

 文部科学省ということに限りますと、私は統合が非常にうまくいっているんじゃないかなという気がするんです。同じような役所が、二つが一緒になりますとなかなか溶け合わないんですけれども、文部省というようなところ、科学技術庁というのは全くその性格が違うものですから、うまく接着しているというか、お互いがお互いを刺激し合いながら今進んでいるんじゃないかなということで、私は統合してよかった例ではないかな、そんな感じがしているわけでございます。

 御承知のように、文部科学省は、一つは、豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成のための教育改革の推進をやっていますし、二つ目には、科学技術及び学術の融合や、その総合的かつ計画的な取り組みの強化ということでございまして、両省庁のすぐれた面を生かしつつ、文部科学行政を一体として進めておるところでございます。

 その統合の効果としまして、例えば産学官連携や地域科学技術の振興による基礎研究の成果の活用とかあるいは科学技術や理科に関する教育の効果的な推進、いわゆる理科離れに対する対策とか、そんなことで政策が上がっているな、こう考えるわけでございます。

 私自身も、文部科学大臣になりまして、本当に、きのうは義務教育費国庫負担、きょうは核燃サイクルと、何かこう視野が本当に百八十度以上ないとなかなか務まらないなと思いながら。しかし、一つのことばかり頭を使うんじゃなくて、違うことを考えますと、かえって頭が柔軟になるという、そういった効果もあるのかなというふうに考えまして、やはりせっかく一緒になりましたから、その長所といいますか、メリットを生かしながら、日本の文部科学行政を推進するように努力してまいりたいと考えております。

    〔稲葉委員長代理退席、委員長着席〕

古賀(一)委員 私の立場からは答えられないというところに答えがあったように思います。

 私自身は、本当に数合わせで、拙速で、とりわけ行政改革につきましては、後ほど申し上げますけれども、いわゆる内閣官房主導というか、いわゆる結論を急がなきゃならぬ、形は出さなきゃならぬという中に行革が進められている感が否めない。しかし、大して国民生活と関係ない、日本の命運と関係のない、事業団と某公団が一緒になるとか、ある局を廃止するというふうな程度ならいいんですが、事この原子力に関しては、超長期的であるということと、これなくしては日本は生きられないという重要問題であることと、日本にはほとんどエネルギーが賦存していないということと、そして原子力に至っては、大変巨大な、長期にわたる研究を積み重ね、それをいわゆるシステムとしてまとめ上げて検証して、ようやくできていくという、極めて大きく長期的な問題である、そういう問題なんですね。

 それを内閣官房のほかの特殊法人と一緒にした、どこか各役所、法人を一つ二つ減らせという流れの中で議論されてきたんではないか、こういう感じが否めないわけであります。それでいいのかと。

 先ほど来、金田委員からもプルサーマルの問題、高速増殖炉、ひいては核燃料サイクルというものの確立の可能性というか破綻というか、そういうものに御指摘があった。先ほど私、質問しましたように、ITERの折衝がまさにきのう行われている、そういうものがみんなばらばらに、要するにかみ合っていないんですよ。そういう感じを持ってきております。

 したがって、まずは副大臣にお聞きしたいんですけれども、もう一回原点に戻りまして、なぜこの二法人が今統合ということになってきたのか。統合の発端、そして本法案提出に至る経緯をもう一度はっきりと、復唱といいますか、見させていただきたいと思うんですが、御説明を賜りたいと思います。

小島副大臣 お答えいたします。

 今古賀委員の話を聞いていて、私も非常に参考になる点があったわけですけれども、現在ここまで進んできたということもありますので、今日までの経過についてお話をさせていただきたいと思います。

 今回の統合は、もう古賀委員は御承知だと思いますけれども、平成十三年の十二月に閣議決定をされた特殊法人等整理合理化計画に基づく統合でありまして、同決定において、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の両法人を廃止して統合するための法案を平成十六年度までに国会に提出することとされたわけであります。これを受けまして、文部科学大臣は平成十四年一月から原子力二法人統合準備会議を開催いたしまして、事業の重点化、効率化を念頭に置きつつ、新たに設置する独立行政法人の役割、機能等について検討を行い、同会議は平成十五年九月に原子力二法人の統合に関する報告書を取りまとめたわけであります。

 文部科学省はこの報告書にのっとりまして、関係府省とともに準備を進め、今回の法案の提出に至ったという経緯がございます。

 以上でございます。

古賀(一)委員 今の副大臣の答弁のとおり、要するにこれは、発端は、内閣官房がまとめました平成十三年の十二月の特殊法人整理合理化計画なんですね。これは別にこの二法人に的を絞って深く研究した末の計画じゃないんです。もう御承知のとおりですね。いわゆる特殊法人一般論から派生をした話でありまして、先ほど言いましたように、軽い行政分野ならともかく、原子力行政について、これが発端で二法人、どこか探して一緒にしなければならぬというような、そういう問題であるかということに私は大変不満を持ちます。

 実はこの半年前に、例えば科学技術基本計画というものをつくられておるんです。科学技術基本計画、平成十三年三月。あるいはその四カ月前には原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画、まさに名前のとおりですね。

 核燃料サイクルどうだ、あるいは「もんじゅ」をどうする、あるいはITERはどうだ、まさに今法案で議論しているようなことを提起した長期計画も、ほんの一年前につくられている。ここには、一切こういう問題意識がないんですね。こういう科学技術基本計画という中で、こういう原子力関係研究開発二法人が統合すべきだとか、あるいは統合した場合、こういう意味があるなんという記述が全くない、審議もされていない中で、ぽっと内閣官房が、何か行革だ、中央省庁再編の後は特殊法人だ、そういうことで、深い議論もなしにこんな行政改革というのがまかり通っていく、これが私は一番の問題じゃないかと思うんですよ。

 もっと言えば、小泉行革の軽さというかパフォーマンス性というか皮相性というか、そこが原子力のこの二法人の統合に如実にあらわれると思って大変――こういう調子で、特殊法人が終わったら、じゃ何をやろうか、公務員制度改革はあるんですよ。私も関与していますからわかりますけれども、本当に、人事院とは何ぞや、これからの公務員と国民のかかわり方はどうという議論じゃないんです。

 まさに私は、政府あるいは政治が人気取りというか形をつけるために基本方針をつくって、内閣官房を中心に、これをやれ、あれをやれ、深い議論もせずに、政策の奥深いところまで突っ込まずに議論して、こういう法案がきょう出てきたというところが、今回のこの法案の一番の問題ではないかと私は思っておりまして、先ほど来議論がかみ合わないのはそのせいなんですよ。

 いわば特殊法人の改革という局地戦をやってきたものだから、じゃプルサーマルがどうなのか、ウランのこれからの価格がどうなるのか、あるいはウランというものが本当に枯渇するのか、再処理コストにどれだけのものがかかるのか、そういうオルタナティブを全然総合的に議論していないままにこの二法人統一となったところにかみ合わない原因もあるし、この法人統合が抱える一番の問題が私はあると思うんです。

 そこで、私は経済産業省にちょっと聞きたいんですけれども、一方で、実際の発電、商用炉等について担当しておるのが経済産業省ですけれども、政府のエネルギー政策の総合立案というのは恐らく経済産業省の所管ではないかと思うんですけれども、経済産業の総合エネルギー政策という中での視点からこの問題はすり合わせをされたんでしょうか。ひとつ御説明をお願いします。

保坂副大臣 おはようございます。経済産業副大臣でございます。

 ただいま御質問がございました点について答弁申し上げたいと存じます。

 お話を拝聴しておりました。原子力の基礎的な、また応用的な研究につきましては、文科省の専管事項といたしまして大変御熱心にやっていただいている、これは経済産業省も見てきたところでございます。

 その一方、今回の統合に関しましては、ただいま小島副大臣からお話がございましたとおり、確かに、きっかけは特殊法人あるいは認可法人等の整理合理化計画がスタートでございますことは事実であろうと思います。時系列的に言えば、十三年の十二月の閣議決定というところがスタートでございますが、その翌年の一月に、直ちに文部科学大臣のもとで原子力二法人の統合の準備会議をつくっていただきまして、おおむね二十カ月の長期間にわたりまして徹底的な議論をしていただきました。

 その間、当経済産業省はもとよりでございますが、あらゆる関係省庁、また関係機関、また当該法人、産業界、いろいろ意見を聞いてきたところでございまして、この結果、行革上のメリットは確かにございます。

 また一方では、現在の原子力行政、これはエネルギーとしての見る面から申し上げますと、入り口の、あるいはまた川上の基礎的な、応用的な研究から、今度は開発を活用する、普及する、そういう面での一体的な行政として総合的に取り組んでいくという大きなメリットをそこに見出したわけでございます。

 我々といたしましても、この二つの法人が一本化いたしまして一つの機構になりまして、例えば、運用面におきましても、人事や組織の総合的な管理は文科省の専管事項。そして、基礎的で応用的な研究も、これももちろん文科省の専管事項でございますが、核燃料サイクルの技術の開発やあるいはまた活用などに関しますと、これは文科省と経済産業省との共管でやっていこう。

 こういうような仕切りになっておりまして、私は、この二法人が一つの機構として統合された結果から、原子力行政を総合的に進める意味では相乗的な大きなメリットがあるものと確信しているところでございまして、七十七特殊法人の中の最後の方に位置いたしますが、どうぞ平成十六年までに一本化するということの提案を御了承いただきまして、御支援をいただきたいと存ずる次第でございます。

古賀(一)委員 恐らく想像するに、そういう行政改革の流れの中からこの話が出てきまして、ほかの省もこの宿題を投げかけられておるし、我々も受けて立つしかないという中でこの法人統合が来たんだと思うんです。そうなれば、その中で二法人統合の効果を最大限発揮するように今後努力します、そういう答弁だったんです。

 そうなると思うんですけれども、やはり問題は、エネルギー行政あるいは原子力行政の本当の多岐にわたる検証しなきゃならぬ問題、判断しなきゃならぬ問題というのは置き去りにされて決まってきたというところにやはり脆弱さというか、将来にわたる禍根を残すかもしれない脆弱さというのが潜んでいると私は思うので、それは、もしこの法律が通るのであれば、今副大臣が御説明になったように、努力願うしかないわけですけれども、私は今でもそう危惧をいたしております。

 それで、これの今までの答弁ではっきりしたのは、エネルギー政策からの流れでこの法人統合はなかった、行革だ、こうなったんですけれども、では、このシナリオ、発端を書かれた、あるいは推進されたのは行革本部なんですね。

 これは私は、今後、行革というのはいろんな形でまた進んでいくんだと思います。どうしても内閣官房というか、そういうもの主導にいかざるを得ない面もある。内閣官房として、この原子力という、エネルギーという事の重大性にかんがみて、この二法人統合を計画に盛り込まれたそのプロセスにおいて、どこまでいわゆる核燃料サイクルの重要性であるとか、あるいは困難性もあります、財政コストの問題もあります、多岐にわたる大きい論点があるんですけれども、そういうのをどうしんしゃくし、検討し、掘り下げられてこの案を書かれたのか。過去の話になりますけれども、ひとつ御説明をいただきたいと思います。

橋口政府参考人 お答え申し上げます。

 今回の特殊法人等改革におきましては、中身である特殊法人等の事業の徹底した見直しが極めて重要である、こういう認識のもと、法人の事業内容、その仕組み、さらには事業実施の方法等にさかのぼった事業見直しが行われるとともに、その結果を踏まえまして、特殊法人等の組織形態について見直しが行われたものでございます。

 日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の検討に際しましても、エネルギー研究全体の中で、核燃料サイクル開発機構の研究開発、日本原子力研究所のエネルギー開発研究及び新エネルギー・産業技術総合開発機構等のエネルギー開発研究、こういったものの位置づけを明確にする必要があるのではないか。あるいは、国が各事業について具体的な目標を設定するとともに、経済波及効果をできるだけ定量的にあらわして費用対効果分析を行う必要があるのではないかといった議論が行われたところでございます。

 また、先生御指摘のコスト、再処理コスト等に関しましても、今後、事業について講ずべき措置といたしまして、高速増殖炉開発までに要するコスト、期待される成果、開発までの道筋、新エネルギー開発、核融合開発との優先順位、想定されるリスクなどを国民にわかりやすく示すこと。

 核燃料物質再処理技術開発、あるいは高レベル放射性廃棄物処理処分技術開発につきましては、技術的課題を明確にした上で、課題解決に向けたコストと道筋を国民にわかりやすく示すことなどとされているところでございます。

 このような検討を踏まえまして、日本原子力研究所の行う基礎的研究段階から核燃料サイクル開発機構の行う開発段階までを総合的、一体的に実施することが、研究開発の効果的、効率的な推進を図る上で有効である、このように考えられたものでございます。

古賀(一)委員 では、この案をつくる、あるいは結論を出すプロセスにおいて、両法人の研究者あるいは理事長あるいは原子力に関する専門家、そういった人たちのヒアリングというのは幾度もやったんですか。

橋口政府参考人 お答え申し上げます。

 各府省に対するヒアリングは何度も重ねてございます。ただ、今専門家という御指摘でございましたけれども、これは各府省を通じてのヒアリングであったかと承知しております。

古賀(一)委員 私は、これだけの重要な問題が、本当は深い分析あるいは多くの情報を聞いて、本当に客観的に深く判断されての案ではなかったように思うんです。そうは役所はおっしゃらないけれども。

 例えば道路公団改革でもそうなんですよ、あれだけ大騒ぎしたものだって。だって、道路公団総裁と小泉さんは、会って話したことないですものね。ないんですよ。いやもう有無を言わさず政治のえじきというか、政治が何かアウトプットを出さなきゃならぬという中で拙速に走り続けてきたのが最近の行革ですよ。

 私も昔役人をやっておりましたからよく覚えていますけれども、土光臨調というのがありましたね。土光臨調のときは、まあ戦争も激しかったけれども、やっぱり土光さんも偉かったというか、ずうっと深く広く意見を聞いて、次の日本の行政の組織あるいは方向性、いかにあるべきかということで、もうちょっと落ちついて、どっしりと、広く聞いていたように思うんです。

 最近は、もう聞く耳持たずで、官房で早く案をつくれ、そうしたら、出たら、工程表だ、いつまでだ、来年度まで間に合わせろと、選挙が近いか何か知らないけれども、そんな議論がまかり通っています。私は、統治機構の一角、先ほど皆さんもしっかりヒアリングを聞いたとおっしゃるけれども、役所そのものは今本当に省庁間で密に議論をして、本当に日本のためにこれは手をどうとり合ったらいいかなんという議論はないんですよ。

 みんな行革だ、特殊法人改革だ、うちの局がなくなるとかそんなことで、各省庁なり各部各局が自分の行政のことでもういっぱいなんです。そういう中に、内閣は、行革だ、今度はこれをやるぞと言っているからまた大騒ぎ。そこに本当に原子力行政の基本とか、これからの日本のエネルギーのあり方とかいう議論は、ぼこっと欠落したままに今日来ているように私は思うので、これはもうこれ以上申し上げませんが、私自身はそういうふうに厳しく判断をいたしております。

 次に、中山文部科学大臣に再度お聞きしたいんですけれども、今度は組織が変更になる。これについては、日本原子力研究所も昭和三十一年にできて以来今回が二度目になるのかな、組織ががらっと変わる。核燃料サイクル機構も二度ほどの紆余曲折を経てきた。

 ところが、先ほど来何度も言っていますけれども、原子力問題、とりわけ核燃料サイクルにしても、あるいはプルサーマルにしても、システムをつくっていかなきゃならぬ、いろんな側面で安全性を検証していかなきゃならぬ、制度もつくっていかなきゃならぬ、こういう問題なんですね。

 そうしますと、無数と言ってもいい多くの研究が、検証されながら実際のものがつくられ、実際、実証されて、安全かどうか確かめられていって、そういう部品というかシステムは何千も何万も集まってこの大システムができるわけですよ。

 それが今度は、あそこの電力会社のチョンボがあって、原子力発電に対して物すごく国民の批判が高まったとか、今度は行革であの組織が今度は改編になるとか、そういう中で私は、こういう研究というものが本当に高いモラールを、士気ですね、持って続けられるんだろうかというのを心配するんです。これは、理事長が一人ふえたとかそんなことは枝葉末節だと思うんですよ、私は。本当に研究者が使命感を持って、ちゃんと研究できて、それが各関係者がしっかりと集まって安全をお互いに確かめ合いながらシステムをつくっていくことを議論していくという、その研究環境というか、これが私は一番重要だと思うんですよ。

 これがまた今みたいな、きょうの国会質疑のやりとりもそうですけれども、マスコミに至ってはほとんど今のところ書いていませんけれども、どうも原子力行政について、あるいは核燃料サイクルはもちろんであります、先ほど金田委員がおっしゃったとおりです、信頼性がない、揺れ動く、そういう中で今度組織改編。果たしてこの組織変更というものは、私は、研究に大きな影響があるのではないか。こんなことでいいのだろうか、もっと、やるならば超長期の視点からどっしりと研究をしていく、そういう環境と方向性が必要じゃないかと思うんですよ。

 この点について、大臣、ひとつお考えをいただきたいと思います。(発言する者あり)

斉藤委員長 では、速記をとめてください。

    〔速記中止〕

斉藤委員長 それでは、速記を起こしてください。

 古賀君。

古賀(一)委員 思わぬところで会議が中断しまして、これが原子力発電所なら大変なんですよね。一回火をとめると、立ち上がるのにまたえらい時間がかかるんですよ。私の場合は原子力発電所じゃないから、さっと起きてさっと火をつけますけれども。

 いわゆる組織の改編というものは、とりわけほかの公団とは違い、いわゆる研究開発、しかも超長期にわたるものである、しかも一つの研究ではない、無数の研究がコンビネーションで進められている、こういう重要な研究開発機構の組織は、そういう研究あるいは事業に影響のないように万全を期すべきだと私は思いますけれども、これについての大臣の問題意識と御方針をお伺いします。

中山国務大臣 今、古賀議員からこの二つの法人の統合のことにつきまして、これまでも何回も統合やら改編があったわけで、その間において、いろいろな研究成果がどうなっているのかとか、あるいは現場の研究者のモチベーションの問題とか、そういう意味では、そういった現場の方からの御質問があったわけでございます。

 そういう意味で、一番心配しますのは、やはり研究者のモラールの問題だろう、こう思うわけでございまして、そのことにつきましては、統合によるさらなる事業の合理化、効率化が求められているところでありますけれども、これによりまして研究者のモラールやモチベーションの低下を招くことがあってはならない、このように認識しておりまして、今回の統合が組織の能力や構成員の意欲の減退につながるようなことがあってはならない、このように原子力二法人統合準備会議の報告書にもあるわけでございます。

 そして、むしろ、この二つの法人に分散されておりました研究資源の有機的連携や融合による相乗効果を発揮するという前向きの積極的な意義をとらえて、活力ある事業展開を実現していかなければならない、このように指摘されているところでございます。

 文部科学省といたしましても、この新機構の研究者、あまたの優秀な研究者が集まっている、ある意味では原子力に関しての日本の最大のシンクタンクではございますが、この研究者たちが、統合による融合、総合効果を発揮して、本当に社会から信頼される創造的な研究開発に取り組むことができますように、適切に対処していかなければいかぬな、このように考えておるところでございます。

古賀(一)委員 私は、この法人統合の本質的な問題というのは、この部分だと思うんですよ。予算もさることながら、やはり人の面、モラールの面というものは一番重要な面でもありますから、この点については、本当に文部科学行政あるいは原子力行政、あるいはこの二法人を指導していく行政の立場から、真剣に配慮を願いたいというふうに私はお願いを申し上げます。

 時間が、あと一、二問になりましたけれども、もう最後にします。もう一点は、実は、なぜ核燃料サイクルを確立するための高速増殖炉の技術開発がメーンであるかという議論をもう一回したかったんですけれども、これはるる質問があったし、これからもあるだろうと思いますので省略をします。

 最後に、私はちょっと、今、国会でだれもこういう話をしたことがない、しかし重要な問題があるので、ひとつ御披露しながら、エネルギー政策は政府一体となって取り組んでいないという一つの証明みたいな話があるので、ここで、国会の場ではっきり申し上げたいことがございます。

 私の地元、九州・福岡なんですけれども、閉山はしましたけれども三井三池炭鉱というのがございまして、実は、ここでは、直近でいえば通産省、そして三井鉱山、三井物産、そして新日鉄も関与しておったと思いますけれども、石炭の液化、石炭からガソリンをとる、あるいは重油をとるという巨大プロジェクトが戦中からずっと行われてきたんです。国費一千億、そして民間からの出資等一千億という二千億を超える巨大技術開発プロジェクトが、戦中から戦後にかけてずっと行われてきたんですね。これが、私、詳しく知らないので後でちょっと聞きたいんですけれども、数年前についに終わったんですね。そうすると、今、原油価格が暴騰しておりますけれども、十年後、二十年後はもっとわからない、そういう状況です。

 日本にとって国策とも言えたこの石炭液化プロジェクト、これが実は、日本では太平洋炭鉱の閉山を最後としてもうなくなりましたから、しかも、あったとしても炭価が高いということで、中国の内モンゴルの大炭田、内モンゴルは石炭の賦存量で恐らく世界一なんですよ。石炭の価格も安い。ここで、石炭液化プロジェクト、通産省が中心となって国がやってきた国策の石炭液化、この事業のモデルプラントをつくろうという話があって、実際モデルプラントをつくった。しかし、独、ドイツですね、アメリカと日本の競争になりまして、結局、これがどうも負けたらしいんですね。

 私はこれについて、国会あるいは世の中で知られるところじゃないし、こういう技術開発がなぜ実現しなかったのか。それに、政府は、外交もあわせてうまく機能したのかということを非常に危惧するわけですが、この点について概要、結果、それをぜひお知らせいただきたいと思います。

保坂副大臣 御答弁申し上げます。

 古賀先生、御縁の深い石炭の液化事業、これに関しましては、石油代替燃料としての開発というスタートでございまして、お話がございましたとおり、一九八〇年ぐらいからスタートいたしまして、もう二十年にわたりまして研究開発をしてまいりました。

 技術面では確かに、これは液化油収率、何%油に液化できるか、こういう効率の問題や、あるいは連続的に運転を続ける率等に関しましては、技術面では間違いなく開発ができました。

 この件に関しましては、サンシャイン・アンド・ニューサンシャイン計画といいましょうか、あの中で日本も懸命にやってきたわけでございますが、問題は費用対効果なんでございますね。バレル当たり五十ドルを超えるような実態になっておりまして、現在のところ、アメリカ産の方が五十ドルを超えるような状況になればまた違うのでございますが、当時はまだまだ三十ドル前後でございまして、合わないわけですね。一方で、産炭地の方ですと二十ドル前後でできるというような実証データがございます。

 日本の研究も、褐炭と歴青炭を対象にしたんですが、御案内のとおり褐炭の場合、オーストラリアの現地へテストプラントをつくりまして、パイロットプラントをつくってやったんですね。ますますお金はかかったけれども費用対効果で合わなかった。

 一方、中国の方ではこれを現実に、二〇〇一年から第十次の五カ年計画で商業化することをこの中に入れたわけでございます。これは神華炭液化事業という計画でございまして、いわゆるクリーンコール事業でございますね。中国の場合は、御案内のとおり石油もかなり出てはおりますけれども、石炭はもう無尽蔵にあるというような状況下でございまして、これを二〇〇八年ぐらいまでをめどに商業化する、こういうめどで今進めております。

 日本といたしましても、NEDOで既に開発されました技術を温存してありますので、いつでも転用できる、活用できるという状態にはございますが、ただいま申し上げましたように、費用対効果、BバイCといいましょうか、こういう点でどうも追いつかないという状況下でございまして、今のところ技術はしっかりと温存しておりますので、また機会がございましたら、日の目を見るようにまた御指導のほどをお願い申し上げたいと思っております。

古賀(一)委員 これが最後の発言になりますけれども、例えばもう何十年、今の話でも通産省がやっただけでも二十年ですね。戦前からいえば、通産省ができる前からの研究でいえば、もっと長い期間やった。この国家プロジェクトでも、二千億もかけてやったけれども、結局今はただ技術とあれのファイルを持っておるだけという結末なんですよ。そこに私はエネルギー政策の、さっき言ったまとまりのなさ、それを一つの典型で見るわけですよ。これについては、実は中国大使館は全然、担当参事官、知りませんでしたよ。私は唖然としましたね。

 神華炭については、さっき言ったように、アメリカとドイツと競争したんですから。アメリカは今もうあれだけの備蓄を持って、あれだけの石油資源を温存している。日本は全然ない。中東依存度はもうかつてないほど高い。そういうとんでもない不利な立場にある日本が、一つのエネルギーカードを小さいけれども持とうというやつがこのざまですから、私は、冒頭言いましたエネルギー総合政策というのは、外交まで含めて、本当にセクション、セクションで、タコつぼに陥ることなく、政府が、原子力委員会なのか総合エネルギー調査会なのかは別として、しっかりとすり合わせをして、国民のため、国家のために必要なことはしっかりシナリオをつくってやっていくということが必要で、そういうのがないままに幾ら法人を統合しようが、それは私は形の上だけの行革に終わってしまうんじゃないか、そういう危惧を持っているので、きょう一連の質問をさせていただきました。しっかりと受けとめていただきまして、今後遺漏なきをお願い申し上げます。

 これで終わります。

斉藤委員長 午後零時四十五分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十四分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時四十六分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。大畠章宏君。

大畠委員 民主党の大畠章宏でございます。

 午前中の質疑に引き続きまして、独立行政法人日本原子力研究開発機構法案について質問をさせていただきます。

 午前中もかなり、それぞれの委員から、この法律案あるいはまたエネルギー政策全体についての観点から質疑もございましたけれども、私自身も、この法律案、単に統合というだけじゃなく、日本のエネルギー政策に大きな影響を与える重要な法律案だと受けとめております。政府の方は午前中の答弁でも、政府サイドでは当然かもしれませんが、サイクル機構と原子力研究所の統合問題というのは、もう流れは決まったので仕方ないんだというような感じでございますが、再度、私たちは、エネルギー政策にどんな影響が出るのか、どんな視点でこの問題を考えなければならないのか、そういうことで検証をさせていただきたいと考えております。

 まず最初に、過去において、原研と旧動燃というのは非常に密接な関係があったわけでありますが、いろいろお伺いしますと、過去において分離独立した、原研から動燃が、事業部隊が分かれたと聞いておるんですが、まず、なぜ分立、分離独立させたのか、その経緯を、現在の担当省であります文部科学省にお伺いします。

小泉大臣政務官 お答えさせていただきます。

 大畠先生には、これまでの御自身のいろいろ御経験に基づかれながら原子力政策の推進にいろいろ力強い御支援をいただいておりますことにまず御礼を申し上げたいと思います。

 今のお尋ねの件でありますが、何分にも古い話でありまして、四十年近くにもなることでありますので、私が十分なお答えができるかわかりませんけれども、私の聞いておる範囲でお答えをさせていただきたいと思います。

 昭和四十二年の十月に、現在の核燃料サイクル開発機構の前身であります動力炉・核燃料開発事業団、いわゆる動燃事業団は、核燃料の安定供給と有効利用を図るため、新しい動力炉として高速増殖炉及び新型転換炉を国のプロジェクトとして自主開発することを目的に、昭和三十一年に発足をしておりました原子燃料公社の業務の継承、並びに、原研の業務でありました高速増殖炉さらには新型転換炉業務を継承して設立をされたものだと承知をしております。

 なお、本事業団が実施をいたしますこれらのプロジェクトの推進は、我が国にとって、かつて経験をしたことのない新しい分野におきます非常に大規模な事業でありますので、学界、産業界を初めとする国の総力を結集して取り組む必要があった。このため、日本原子力研究所におきます、先ほど申し上げましたけれども、新しい動力炉の研究活動もプロジェクト化されるに当たりまして、動燃事業団においてこれらの業務を一体化して行うこととされたものだと承知をいたしております。

大畠委員 そういう経緯から二つは独立して、それぞれ研究開発させるんだということでありますが、今度はこれを統合するということになりますね。

 なぜ統合するのか。したがって、四十数年前は分離するという一つの理屈があったんだと思うんですが、今度は統合するという理屈について、理屈というか筋について、経緯とそれから背景についてお伺いします。

小泉大臣政務官 お答えをさせていただきます。

 今回の二法人の統合は、平成十三年十二月に閣議決定をされました特殊法人等整理合理化計画に基づく統合でありまして、この決定におきまして、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の両法人を廃止し、そして、統合するための法案を平成十六年度までに国会に提出することというふうにされたわけであります。

 これを受けまして、文部科学大臣は、平成十四年一月から原子力二法人統合準備会議を開催いたしまして、事業の重点化、効率化を念頭に置きつつ、新たに設置する独立行政法人の役割、機能等について検討を行い、同会議では平成十五年九月に原子力二法人の統合に関する報告書を取りまとめていただきました。文部科学省は、この報告書にのっとりまして、関係府省とともに準備を進め、今回、法案を提出する運びとなったものであります。

 今回の統合によりまして、基礎・基盤研究からプロジェクト研究開発までを包含する、我が国でも唯一の原子力の総合的研究開発機関が発足をすることになります。今後の我が国の原子力の研究開発及び利用度を推進するに当たりまして、新機構が積極的に先導的な役割を果たすことが期待をされているものと考えております。

大畠委員 四十年前の一つの理屈、そして今回の理屈を考えますと、今回の理屈は非常に軽いですね、言ってみれば。エネルギー政策をどうするかという観点がほとんどないままに、言ってみますと政略結婚をさせられたような感じすらするんです。私は、きょう経済産業省にも来ていただいていますが、一体日本のエネルギーの責任省庁というのはどこなんだというのがわからないんですよ。先ほどの午前中のいろいろな議論を聞いていましたが、どこなんだろうと。

 これは、今回一つの塊を、二つを一つにするんだ、省庁再編の一環で合理化でやるんだと言うんだけれども、そこには何か一つの哲学とか、あるいは政策をこう考えるからというものがなければならないんだけれども、どうもそれが見えない。ただ二つを一つにしてしまえば、一足す一は一になるんだというだけで効率化なんだと言うんだけれども、私は、そういう発想では、このエネルギー問題に関してはそう軽々にしてはならないんじゃないかという感じがするんですよ。

 そこで、エネルギー政策の責任部署であると私は考えておるんですが、経済産業省の山本政務官がきょうはおいででありますから、山本政務官の方から、エネルギー政策の責任部署として、この二法人の統合問題についてはどういうふうに受けとめておられるのか、これでいいんだよというお話なのかどうか、率直なところをお伺いしたいんです。

山本(明)大臣政務官 大畠委員の質問にお答えさせていただきたいと思います。

 今回統合いたしましても、もともと、核燃サイクル機構の方ですけれども、核燃サイクル機構につきましては両省、文科省と経産省の両方の管理であったわけであります。したがって、今回が一緒になりましても、やはりこの点につきましては両省の管理でありますから、そういった意味では一緒でありまして、やはり行革という分野から考えて統合したというふうに私は理解をしております。

 核燃サイクル事業につきまして、決して後ろ向きになったわけではなくて、前向きになった、しかも、二つが統合したことによって、特に基礎研究につきましてはダブっておったわけでありますから、これが一緒になる、特に研究者につきましては人事交流も図れる、こういったこともありまして、大変効果のある合併だ、そんなふうに経産省としては考えておるところであります。決して後ろ向きにはなっておりません。

大畠委員 山本政務官、そういう考えで本当にいいんですかね。前の状態も私は異常だと思っているんですよ。共管。レフトとライトの中間がセンターですが、レフトが球をとるのかライトが球をとるのか、センターというのが今いないわけですよ。両方で共管しようという話なんだけれども、どっちの責任だかわからないというのが一番これは無責任になってしまうんです。

 例えば、三点目に指摘させていただきますが、今、日本のロケットの打ち上げというのはほとんど暗礁に乗り上げてしまっていますね。この問題でも、文部科学省のいわゆる東大のロケットの研究所がありましたね、宇宙研だったですかね。それから、科学技術庁の関係だったと思いますが、宇宙開発事業団というのがあって、私はこの統合はいいと思ったんですよ。私が前、科学技術委員会で聞いたら、東大の方のロケットは精度が悪いロケットなんです、宇宙開発事業団の方は精度がいいんですと言うから、それで二つやっているという理屈はないじゃないか、だからそれを一つに統合すべきじゃないかと、私はそれはそれで言っていたんです。

 ところが、統合されましたね。統合されましたときに、どうも私は、内部からのあるいは外部からも指摘を受けていますが、結果として責任問題があいまいとなって、失敗してもだれも責任をとらないで済むという甘えの構造ができてしまったから、今、日本のロケットの打ち上げというのは失敗しているんじゃないかということが指摘されているわけですね。これは文部科学省の所管になっているわけですね、現在のこのロケットの問題も。

 私は、この問題は、したがって気持ちの問題なんですよ。形は一つになっても気持ちがばらばらでは、今ロケット問題でも、一部にはもうやめちゃった方がいいんじゃないかなんという話もあるんですが、やはり国民の夢というものをロケットは持っていますから、何とかこれは継続すべきだと私は思っておるんです。いずれにしても、それはそれでやりますけれども。

 ここら辺、何か今回の統合問題についても信念がないんです。信念が見えない。ただ親方が一緒になれと言うから、ではやりましょう、片っ方の方の親は、いや、言われたからしようがないし、前もどっちみち一緒にやっていたものだからいいんですと言うんだけれども、経済産業省だって、もうちょっとエネルギー政策については信念を持って一つの方針を出さなきゃならないんですよ。前と変わらないから今回もいいんだなんという、政務官、周りから耳打ちされたんだと思うんですが、もうちょっとやはり、きょうは政治家同士の話ですから、本音で物を言ってくれないと時間のむだですよ。

 私は、そういう意味で、これは文部科学省と、もう一度政務官にお伺いしたいのは、本当に何か今回の統合については信念を持って、魂を入れてやろうとしているのかどうか、今回のロケット問題と同じように統合して、何かみんなが、だれが責任者だかわからない、共管だ共管だと言うんだけれども、レフトがとれなければライトの責任だ、ライトがとれなければレフトの責任だ、お互いに、その共管というのが私はどうも腑に落ちないんです。

 今回、それを一覧表にしたリストをもらいましたが、先ほど質疑を聞いていたら、予算は文部科学省、人事も文部科学省、技術開発は共管、それがどうも私は腑に落ちないんだ。その技術開発を担っている経済産業省もそれでいいんですなんというのは、どうも私は本音で言っていないんじゃないかと思うんだ。もう一回、本音で言ってくださいよ。そうじゃないと、こんな委員会をやったって意味がないんだから。もう一度、政務官。

山本(明)大臣政務官 大畠委員の熱意に大変敬意を表したいというふうに思いますが、経産省としては、別に文部科学省とけんかするわけでも何でもないわけでありまして、予算と人事が一本化されたということで、それはすっきりしたわけであります。あと技術的にはもともと自信を持っているわけでありますから、技術面についてはお任せくださいということで進んでいきますので、御安心をいただきたいと思います。今、文部科学省と経済産業省はその点で非常にうまくいろいろな情報の交換ができておるそうでありますので、御安心をしていただきたいと思います。

大畠委員 御安心できないから私は質問しているんですよ。

 それで、私はどうしても腑に落ちないのはそこなんですよ。要するに、何で日本のお父さんが実権を失ってしまったのか。お母さんが予算権を持っているからですよ。それはそう思いませんか。最近のおやじはどうも、地震、雷、火事、おやじというけれども、おやじの権限が落ちちゃった。それは、給料袋をうちに持っていったら、ああ、おやじはすごいな、一生懸命働いてみんなのために稼いだお金を持ってきてくれた、そんなのがあるけれども、今ではお母さんの方が実権を持っているのは、どうも給料はお母さんが銀行でおろしちゃいますから、そういうことでおやじの権限が落ちちゃったという話と同じで、予算権を持っているところがやはり強いんです。

 私もサラリーマンをやっていましたから、技術者でしたから、なぜ設計が強いかというと、予算権を持っているからなんです。予算は文部科学省で、実務は経済産業省といったら、どうしても文部科学省が強くなってしまうんです。これは自明の理ですよ。それをよしとするという答弁ではとても私は納得ができないんですが、この話をしていますと時間が過ぎますから、それでは視点を変えて、これはどちらに聞いた方がいいか、予算権と人事権を持っている文部科学省でありましょう。

 新しい事業団が何を目的とするのか。単に政略結婚で結婚させられたというわけだけれども、新婚家庭が目指すべき目標というのを、これはどうなんですか。そこら辺、文部科学省の方から改めて、単に二人が一つの部屋でやれば食費も一・五ぐらいで済むし、家賃も片方が払えばいいしという、それだけじゃないと思いますよ。何か一つの目標がなければならないと思うんですが、この問題についてはやはり文部科学大臣にお伺いするのが筋だと思いますので、中山文部大臣にお伺いします。

中山国務大臣 大畠委員とは経済産業委員会でこういうふうなやりとりをやるのかなと思っていましたけれども、こちらで同じような議論ができて非常に幸せに思っています。

 何を目的にするのかという話でございますけれども、今、政略結婚じゃないかというお話がございましたけれども、私は、戦略結婚だ、こう思っているんですけれどもね。いろいろな結婚がありますけれども、やはり結婚してみて、ああ、よかったなということもありますし、いけなかったなということもあると思うんですけれども、ぜひ私は、新しい機構は、本当に一緒になってよかったな、こういうふうに我々も思い、また国民ひとしく思えるようなそういう機構にしなきゃいけない、こう思っているんです。

 先ほどから話がありますように、二つの機構が一緒になって、やはり原子力に関して基礎・基盤研究からサイクル関係、そして技術の研究、そして最終的に了ということになるんでしょうけれども、一貫してやれる体制が整ったという意味では非常に前向きに考えていいんじゃないか、このように考えております。

大畠委員 私も経済産業委員会で経済産業大臣と、私も今経済産業委員ですから、そこで論戦するのが筋だと思いますよ。

 これはもともと、大臣には申しわけないけれども、文部科学省でこの原子力まで、再処理技術まで踏み込むのは、結局やり過ぎなんだと私は思うんです。さっきの委員の論議を聞いていて、とにかくロケットもやっている、原子力もやっている、再処理、芸術、文化、人づくり、小学校、中学校、それから大学、高校、それから映画もそうでしょう、スポーツ、オリンピック、国体もやっているし、とにかくえらい幅が広いんですよ。先ほどどなたかがおっしゃっていましたね。百八十度の視野を持たなきゃならないというけれども、三百六十度の視野でも足らないぐらいの、いつの間にか幅が広くなってしまったんですよ。

 それで、政略結婚じゃなくて、これは何とおっしゃいましたかね。戦略結婚とおっしゃいましたが、その戦略は間違っているんじゃないですか。余りにも広範に一つの省でやると、結局何をやっているんだかわからなくなってしまうんですよ。

 皆さんの中で、この核燃サイクル問題も含めて、原子力の責任者だというのはいますか。サイクル機構が万が一トラブったときに、まあもちろん、大臣の責任だとなるとこれは全部、オリンピックの問題も芸術の問題も全部そうですから大臣は別として、私がエネルギー政策の責任者だという副大臣とか政務次官がおられますか。全部やっているんですよ、全部。だから、全部ということは責任もその全部分の一になってしまうんですよ。すると、ほとんど責任感がない。しようがないな、現場が悪いんじゃないか、事業団が悪いんじゃないか、民間企業が悪いんじゃないか、それで終わってしまう。それでだれも責任者がいない。

 このロケット問題で、打ち上げが非常に不調なわけでありますが、責任者というのはだれですか。これは文部科学省の範疇ですね。責任者というのはだれなんですか。

坂田政府参考人 お答えいたします。

 ロケットの打ち上げそのものについての責任は宇宙航空研究開発機構でございますので、そのトップである理事長が最終責任を負うことになります。

大畠委員 理事長が責任者だとしたって、これはまた何かのときに人事異動でかわればそれで終わりなんですから、政治家が責任を負わなきゃだめなんですよ、政治家が。これは私の責任でロケットは必ずうまくさせる、そういう、やはり政府の方、行政とかそっちの方じゃなくて我々政治家が。

 私は非常に残念な思いをしたのは、日本のロケットが失敗した、その後に中国が有人ロケットを飛ばしたでしょう。私は非常に、これはみんな口にしないけれども、日本の国民は落胆しましたよ。だから、あの後、政府の内部から責任論なんかも出てこないし、理事長の責任だとしたって、理事長だってかわるでしょう、かわいそうでしょう。いってみれば、何かそういう体質になってしまったわけですから。

 だから、私は、今回の統合問題においても、私も六ケ所に行きまして、あそこの再処理の全自動のコントロールの部屋に入ってきましたよ。再処理が始まったらもう二度と入れませんという、すばらしい組織といいますか、機械ですよ。あれを万が一ロケットと同じように失敗させたら、国民の原子力に対する不信がまた一段と増長してしまいますよ。あれは絶対に失敗させることはできないんですよ。政策結婚とおっしゃいましたけれども、やはり政略結婚かどうかわからない。やはり私は、どうも戦略的に間違えているんじゃないかという危惧をしてしようがありません。もちろん、うまくいってくれることにこしたことはないんですが。

 そこで、今申し上げましたように、原子力に関してはやはり安全第一なんです。上の方でコストを減らすとかなんかいったって、コストは減らしました、ロケットを飛ばしました、失敗しました、済みませんでした、もう一回やりましょうという、原子力はそうはいかないんです。二法人が一緒になってこれだけ予算を減らすことができましたと。

 だから私は政府の戦略を間違えていると申し上げたのは、私この間聞いたら、一様に予算を削ることをかんながけというらしいですね。どこも公平にずうっときりきりきりと削ると、一ミリ削れば全部一%削れる、二ミリ削れば二%予算減。でも、このエネルギー問題、原子力問題まで同じような感覚で、二つの法人を一つにすれば人件費が浮く、あるいはそういう共通経費が浮く、そんな感じで安易に扱っていい品物かなという感じが私はすごくするんです。

 ロケットのときには、私は統合しろと言いましたよ。これは一つの方針といいますか、私は考えがありましたから。ただ、この問題については、もうちょっと、上の方で決まったことだから、しようがなくて二つを一つにするんだというだけじゃなくて、そこで働いている人もいるわけですよ。みんなが、そうだな、よし、結婚して新しい生活の中で国民の期待にこたえる仕事をしようという、燃えるような気持ちになる結婚かというと、どうもそうじゃない。

 そこで、安全第一ということが欠けてはならないと思うんですが、この件についてどういうふうに、本来はこの安全第一も経済産業省が答えなきゃならないんですが、文部科学省にお伺いします。

小島副大臣 大畠委員の御質問にお答えします。

 大畠委員というと、私は思い出すんですけれども、H2Aロケットが成功したときに、大畠委員がちょうど内閣委員長をして、ぜひ日本の科学技術を見に行こうということで、種子島まで実は連れていっていただきました。そのときはもう大成功で、すばらしい感動を共有したということでありますけれども、来年また、そういうH2Aが成功するような段階になればいいなということを期待しているわけであります。

 今の御質問でありますけれども、安全第一ということはもちろんそのとおりでありまして、原子力の安全の確保というのは、原子力の研究開発及び利用を進めるに際して守るべき最大のことだと私も思います。新機構の目的に、「原子力基本法第二条に規定する基本方針に基づき、」と規定し、同条による「安全の確保を旨として、」との基本方針にのっとり、新機構が業務を行うべきことを明記したところであります。

 個々の許認可の具体的な扱いについては、新機構の成立までに、両法人が規制当局と調整を行うことにより必要な措置が講じられるよう万全を期すということになっております。

 文部科学省としても、中期目標の作成等により、新機構における安全確保が適切になされるように対応してまいる所存でございます。

 以上でございます。

大畠委員 私も思い出しました。確かに種子島に行きまして、あのときはちょうど午後五時二十分だったですかね。あんなに予定どおりに打ち上がるのは珍しいことですという話でしたが、成功しました。ぜひ、副大臣になられたわけでありますから、副大臣の任期中にロケット打ち上げが成功するように御尽力をいただきたいということをまず最初に申し上げます。

 今、安全第一は当然ですという話でありますが、私は、今回の統合問題については、どうも収支第一になっているんじゃないかと。だから申し上げているんです。原子力だけは、原子力だけはというのはあれなんでありますが、原子力というのは非常に複雑な歴史を持っていまして、単なる経費削減だけでは立ち行かない、ロケットが打ち上げ失敗しましたというだけでは立ち行かない。これは、再処理問題も大きなトラブル等がありますと、日本のエネルギー政策全体に大きな影響を与えますから、そういうことから、安全第一というものを第一義にして、平成十七年度も、それ以降の行政もやっていただきたいということを申し上げたわけです。

 それから二番目には、これまでの原子力研究所あるいはサイクル機構も、原子力に関する高度な技術開発をずっとやってきました。この技術開発を継承させなければならないんですが、ともすると、戦略結婚をさせられたものですから、どうも新郎新婦はいま一つ乗っていないような感じを受けるんですが、そうすると、どうも毎日の日常業務等も精神的にダウンしてしまって、これまで築いてきた技術蓄積というものがおかしくなってしまうんじゃないか。

 まさに、これまで築いてきたのは、本当に日本のこれからを考えての宝なんです。ですから、その宝である高度技術をこれからも継承するために尽力していただきたいと思いますが、この高度技術の継承問題について、文部科学省としてはどのように考えているか、お伺いします。

坂田政府参考人 ただいま先生御指摘のとおり、日本原子力研究所も核燃料サイクル開発機構も、これまでの長い間の研究開発活動を通じまして、我が国の原子力の発展のために大変大きな貢献をしてまいりました。多くの技術的知見が蓄積されてございます。

 先生既に御存じではございますが、原子力研究所は、日本で初めて研究炉の運転もいたしましたし、また日本で初めて原子力発電の成功もいたしました。核燃料サイクル開発機構は、前身の動燃事業団を含めまして、日本で初めて相当規模の再処理工場の運転もいたしておりますし、またプルトニウムを燃料とする「ふげん」の開発、運転、今とまってはおりますが、原型炉「もんじゅ」の開発、その前身の実験炉「常陽」の開発もやってきておるところでございます。そういう意味で、この両法人のこれまでに蓄積された高度な技術を将来に継承していくということは、大変重要なことであるというぐあいに考えております。

 したがいまして、新機構発足後におきましても、これまで蓄積された技術をベースとして、さらに新たな発展を、技術的な発展をしていくように、私ども文部科学省としてもしっかりサポートしなければいけないと思っておりますし、それは新機構の中における技術の新たな開発にとどまらず、新機構はその成果を外に向かって活用していく。

 例えば、お話にございました六ケ所村の核燃料サイクル事業、具体的には再処理工場の建設、運転などにも旧動燃の技術は使われておりますし、また旧動燃の、現在の核燃料サイクル開発機構の職員が六ケ所の工場に行きまして、いろいろ運転等のお手伝いもしている。そういう意味での外部に向けての技術蓄積の活用、こういった点も非常に大事ではないかと思っております。

 そういう意味で、私ども、御指摘のとおり技術の継承を将来に向けて幅広くやっていく、十分に意を用いて努力していきたいというぐあいに考えております。

大畠委員 非常に淡々とお答えいただきましたが、実のある形でそれが実行されますように敷衍しておきます。

 それから、次の質問でありますが、古人いわく、企業は人なり。やはり、どんなに新居をつくったって、そこに住む人が、よし、新しい人生に一歩踏み出そうという気にならなければいい家庭はできないわけでありまして、組織についても、今回の統合問題についても、人の問題は大事なことなんですね。

 サイクル機構も原研も、日本の未来を担うドクターが多いんですね。私もびっくりしました。あなたもドクターですかと言ったら、そうです、あなたもドクターですかと言ったら、そうですと。原研もサイクル機構も、非常に高度な技術者が集まっています。この方々が、意気に感じて仕事ができるという環境をつくらなきゃならないんですが、今、この二つの法人はどうなってしまうのか。何か人件費も減らすし、二つを一つにすれば、経費削減だというので削られてしまうんじゃないかと。雇用問題が非常に大きな、企業内といいますか、事業団の中での不安要因になっておるんです。

 雇用問題については、どのようにこの統合問題について取り組むのか。文部科学省が人件費まで、人事までやっているというんですから、文部科学省の方から、この雇用の問題について、どのような観点で統合問題を取り組まれようとしているのか、お伺いします。

坂田政府参考人 先ほど先生の御指摘の高度技術の承継ということとも、もちろん関係するわけでございますけれども、今回の新機構の発足に当たりまして、業務についてはもちろん、合理化、効率化、そういった努力はしなければいけませんけれども、そういう中にあって、やはり職員の雇用の安定的な確保というのは大変重要なことであるというぐあいに考えております。

 この点は、両法人のいわゆるプロパーの職員はもとよりでございますけれども、関係企業からこの両法人に派遣をされて、職員の方と一緒になって非常に大事な研究開発活動に取り組んでおられる方々もかなりの数ございます。こういった方々の雇用の立場ということも含めて、新法人におきましては、しっかりと雇用問題を考える、また職員団体との間でも誠実な交渉もして取り組んでいく、こういうことが大変大事ではないかというぐあいに考えている次第でございます。

大畠委員 本来、この技術問題と人事、人の問題というのは重要な問題ですから、本当は政治家の方々から答えてもらいたかったんですが、なぜかすぐ審議官がおいでになるので、そういう情勢にあるのかなという感じもしますが、そこら辺が一番改革しなければならない課題かもしれません。

 次に、私も聞いていますが、単なる正規社員の方だけじゃなくて、関連会社の方も、優秀な人がサポートして、それで両方とも成り立っているわけですが、この関連会社の技術者たちあるいは技能者たちの雇用というものはどういうふうに考えておられるのか。これも、また私が気にするのは、国鉄の民営化のときに大争議になって、今でも騒いでいますよ。なかなか解決しない。

 だから、単に親同士が結婚させよう結婚させようと言うのは簡単なんですが、新郎新婦がその気にならないとだめなんですよ、親同士は盛り上がっていますから。戦略結婚だって親同士が盛り上がってもだめで、新郎新婦が盛り上がらなきゃならないんですよ。どうもそこら辺がいま一つ私は盛り上がりが足らない、何かお互いにまた疑心暗鬼のような感じで、両家が決めたから仕方ないかというんでしょうけれども、それでは世界最高の技術開発なんかはできなくなってしまうんですよ。

 私は、ぜひ、これは労働組合というのが二つございますけれども、国鉄問題を踏まえて、どうやって融合させていくか、どうやって新婚家庭を両方とも、片っ方だけが燃えていてもだめですから、これは。両者が幸せな結婚をするんだという感じになるためには、この労働問題というのも非常に重要なんですが、ここら辺も含めてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 先ほど政治家が答えるべきだと言われたので、ちょっと答えさせていただきます。

 今回の設立されます新法人におきましては、新機構の役職員、そしてまた関係の会社の職員まで含めて高い意識を持ってその職務に当たる、そういう環境をつくるということがすぐれた研究開発成果を生み出す極めて重要な要素である、こう考えています。

 そういう意味では、今大畠委員が言われましたけれども、非常にたくさんの博士とか高い技能を持った方がいらっしゃるわけでございまして、これは結婚に例えて言いますと、非常に高学歴ですばらしい家柄の方々でございますから、その二人が仕事しやすい環境をつくってやるということが非常に大事なことである、このように考えておるところでございます。

 さらに申し上げますと、二つの法人に分散されておりました研究資源の有機的連携とか統合によりまして相乗効果を発揮するという積極的な意義もあるんじゃないか。結婚に例えて言いますと、一人じゃ暮らせないけれども二人では暮らせるというふうな話もあるわけでございますから、そういったところも十分考えて、合理化にも努めなきゃいけませんが、本当にその二人がやる気を持って新しい新婚生活をスタートできるような、そういった配慮というのは十分やっていかなければいかぬな、このように考えております。

大畠委員 今の大臣のお考えをお伺いしますと、両家の両親だけが盛り上がっているだけじゃなくて、新郎新婦も含めていろいろ話し合いながらやっていく。すなわち、既存の労働組合とも十分話し合いながら、そこで働く人が不安を持つということのないように、また未来に対して夢を持ってこの統合問題に取り組める、そんな環境をつくるということに受けとめてよろしいのかどうか、再度お伺いします。

中山国務大臣 まさに、両家の親たちが幾ら考えても、やはり御本人の問題でございますから、御本人のやる気でございますから、本人たちがやる気を持って前向きに研究開発に取り組んで成果が上がるような、そういった体制をつくるように我々もしっかり見守っていかなければいかぬ、このように考えております。

大畠委員 それから、懸念する声として一つ申し上げますと、放射性廃棄物の処理処分業務というのは、非常に現在私自身も頭を痛めているんですが、重要な問題でありますが、特に、核燃料サイクルを完結させる上では本当に不可欠な技術なんですね。

 今回統合されますと、どうも研究開発というところに重点化されて、処理処分のための予算というのが削られてしまうんじゃないか、そんな懸念を持つ声が一部にございますけれども、私は、研究開発も大事なんだけれども、実際に処理処分するということが、これは各国とも大変頭を痛めている問題ですが、本当に大事なんですね。

 したがって、処理処分のための予算というものも当然確保すべきじゃないかという、この結婚がうまくいくためにはそういうことを考えるべきじゃないかという声がありますが、その辺についてお伺いいたします。

小島副大臣 お答えいたします。

 今大畠委員の御指摘のとおりですね。廃棄物の処理処分業務というのは非常に大切なことだと私も思っています。みずからの保有する原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物の処理処分を行うことは、廃棄物の発生者等として当然の責任だと私は思います。その活動に対する国民の信頼を確保する重要な使命の一つであるとも考えております。

 新機構は、長期的観点に立って、計画的かつ安全に、着実にこれを実施することが必要であることは言うまでもございません。したがって、新機構の原子力施設の廃止措置や放射性廃棄物の処理処分は新機構の責任において実施されるものでありますけれども、国としては、業務が確実に実施されますように、必要に応じ所要の財源措置を講ずることといたしております。

 以上です。

大畠委員 ぜひ、今御答弁を賜りましたが、新郎だけかわいがるとか新婦だけかわいがるということではなくて、両方両家はきちっと平等にやらないと、これはまた新婚家庭が壊れちゃいますから。したがって、片っ方だけに目をかけるというのじゃなくて、両方ともきちっと考えて、幸せな家庭ができるように努力をしていただきたいということを申し上げておきます。

 もう時間が参りましたが、最後に、私は、今回のこの二つの法人の統合というのは、どちらかというと疑問符を持っているんです。というのは、本当にこれでいいのかなと。

 先ほど大臣が戦略結婚だとおっしゃいましたが、私は、戦略結婚とおっしゃるのであれば、言ってみますと、六ケ所の再処理事業まで含めて一つのことをやるというんだったら一つの意味があるんです。研究開発だけやって、あとは民間企業で実務やりなさいというんだけれども、あそこのところが非常に大事なんですね。ですから、あそこまで含めてのというのであれば一つの考え方があるのでありますが、ちょっとどうなのかなという疑念を持っています。

 それから、フランス国ではもう既に、二〇〇九年から高速増殖炉を使って水素をつくる、そしてパリの町を走る自動車は全部将来は水素自動車を走らせるんだという構想で今動いているわけですね。日本だってそのくらいの構想を出してもらわないと、どうも大臣の言葉にこだわって恐縮ですが、戦略がちょっと小さいんじゃないか。どうせならば、国民に対しても、東京の町を走る自動車は全部水素自動車にします、その水素は高速増殖炉で、新しい型でつくってやるんですというぐらいの話をすれば、また私は国民の共感を得られるんじゃないかと思うんですが、そういう構想がまだ出てきていません、日本では。どうも、きょうどうしようか、あしたどうしようか、ここ二、三年どうしようかという、そんな話ばかりが多いので、非常に私は残念に思うんです。

 そういうことから考えますと、私は、やはりこの際、山本政務官、聞いてほしいんですが、経済産業省も文部科学省ももう一回考えて、エネルギー省というのをつくって、そこに全部統合して、予算も人事も技術開発もそこで統合して、すべて、原子力も、火力、水力、いろいろありますが、エネルギー問題は私の省で全部責任持ってやりますという、そういう戦略を打ち出すときが今来たんじゃないか。

 食料問題あるいは防衛問題も大事ですが、エネルギー問題が、今みんな疑心暗鬼になってしまったんですよ。民間電力会社だって、電気が高い高いと言われて、どういうふうにしたらいいかわからない。今長計関係、やっていますが、国民も、あるいはこの問題についてもどこが責任部署だかわからない、だれの責任でこのエネルギー問題をやるのかというのがどうも見えなくなっている。

 そういう意味では、私は、エネルギー省というものを、もしも戦略でやるというのであれば、そういうものをつくって、予算も人事も技術開発も全部エネルギー省でやります、これが本来の戦略ではないかと考えるわけであります。この問題に、お話ししている間に時間が参りましたので終わりますが、大臣、経済産業大臣ではありませんからなかなか答えるのが難しいかもしれませんが、文部科学大臣といいますか、政治家として、このエネルギー政策にどのように取り組まれるか、お伺いして、質問を終わります。

中山国務大臣 極めて気宇壮大といいますか、戦略というか、大戦略に基づいた大畠委員の御意見でございますが、まさに研究開発から利用促進、あるいはそれはまた環境問題まで含むのかもしれませんが、エネルギー問題というのは、我が国にとりましては極めて重大な課題であるということだけは認識しているということをお話し申し上げたいと思います。

大畠委員 終わります。

斉藤委員長 吉田治君。

吉田(治)委員 まず大臣にお伺いしたいんですけれども、先ほど同僚議員、多分牧議員の答弁の中で、この二法人の統合については心から祝福できないというんですか、疑問が残るんだという答弁がございましたけれども、具体的には何を指してそういうふうにお感じになられているんでしょうか。

中山国務大臣 ちょっとそういうことを言った記憶がないんですけれども、具体的にはどういうことを言いましたかね。

吉田(治)委員 さまざまな話の中で、大臣、そう答弁されているんですよ。後で議事録を見てくださいよ。この委員会で発言をなさったことに、記憶にないんだ、しかもこれだけ大きな法人の統合問題について、少しちょっとどうかなと思うということを発言をなさったということに対して、いやあというふうなことは困ります。

中山国務大臣 それはこの二法人の統合じゃなくて、省庁再編に関しての話だと思うわけでございまして、省庁再編についてはいろいろ思うところがある、個人的には思うところがある、こういうふうには申し上げましたが、二法人の統合についてはそういうことは申し上げておりません。

吉田(治)委員 省庁再編の話はいろいろお持ちですね。行革という名前のもとの二法人の統合については何らの一点の疑問もなく、これは大変すばらしいことだというふうにお感じになられている、それでよろしいんですか。

中山国務大臣 この二法人の統合によりまして、何度も答弁しておりますけれども、基礎・基盤研究とプロジェクト研究開発の間の人材の交流とか、あるいは成果の相互活用等が促進され、それぞれの研究開発において、より効果的な成果が得られるもの、こう期待しておりまして、そういう意味では非常に結構なことだ、こういうふうに考えておるところでございます。

吉田(治)委員 期待されて、結構なことだと言っていたら、どういうふうに数字的に成果が出そうな感じなんですか。

 今二法人の統合、それぞれ予算が九百四十一億円と一千二百九十億円、ついていますけれども、具体的にどれだけ減るんですか。どれだけ減るのですか、金額が。

坂田政府参考人 今先生申されました数字につきましては、十六年度の予算であろうかと思いますけれども、現在、十七年度の概算要求につきましては、今年度の予算よりも二十四億円少ない額で概算要求をしております。これにつきましては、当然でございますけれども、十二月には財務省の査定を受けることになると思いますので、来年度の予算についての数字はその段階で固まってくるというぐあいに考えてございます。

 それから、なお、この新法人の発足に当たっての合理化、スリム化の問題について若干補足させていただきたいと存じますけれども、まず人員のことでございますけれども、役員数につきましては、今両法人合わせまして、監事を除きますと二十一名でございますけれども、これを九人に、半分以下にすることにいたしました。それから職員の数でございますけれども、今年度、十六年度末のいわゆる定員の数が四千四百四十五人でございますけれども、第一期の中期目標の期間、五年程度を予定しておりますけれども、第一期のこの中期目標期間後には、最低でも一〇%程度削減をいたしまして、四千人を下回ることを目指すということにしたいというぐあいに考えているわけでございます。

吉田(治)委員 職員の数を一〇%減らすというのは、自然減と考えてよろしいんですか。

坂田政府参考人 基本的には退職される方を中心に、それだけの数を減らしていくということを考えてございます。

吉田(治)委員 具体的に予算の中で、電源特会のお金を使われていますね、サイクルの方で。一千二百九十億のうち一千二十六億。そして、原研の方は九百四十一億のうち八百三十六億が一般会計から来ていると。

 二十四億減らすというのは、どっち側からどういうふうに減らしていくわけですか。

坂田政府参考人 ちょっと詳しいデータを今持っておりませんが、両方合わせまして、全体として二十四億減でございます。

吉田(治)委員 それはおかしいじゃないの。きのう、私、質問のときにこれ聞くと言ったじゃないの。何でこれが答えられないのよ。二十四億減らすんだったら、どっち側からどういうふうに減らすんだと。

 委員長、こんなんだったら、私、質問これ以上できない。ちょっととめてくださいよ。

斉藤委員長 速記をとめてください。

    〔速記中止〕

斉藤委員長 速記を起こしてください。

 坂田局長。

坂田政府参考人 混乱をいたしまして、まことに申しわけございません。

 こういうぐあいにお答えさせていただきます。電源特会、これは電源利用勘定の方の予算でございますけれども、これが今年度が約千二十億円でございますけれども、それが来年度、約千四十二億円ということで、ここでは二十二億円余りふえます。ネットで二十四億減りますので、一般会計の方でこの二十二プラス二十四を減らす。ですから、申しわけありません、約四十六億円ぐらい一般会計で減らしている。したがいまして、ネットで約二十四億減る、こういうことでございます。

吉田(治)委員 じゃ具体的に、ふえる理由は何ですか。

坂田政府参考人 ふえる予算につきましては、例えば高速増殖炉「もんじゅ」でございますと、「もんじゅ」の改造費を少しふやしてございますのでその部分、それから一般会計では、原子力研究所の方で今J―PARCという大強度陽子加速器を建設しております。この予算がふえます。そういったものが増要因としてございますけれども、他方で、もちろん統合を機会に、原研の新型炉の研究開発をサイクル機構の高速増殖炉の実用化調査研究の中に組み込んで全体として減にするとか、そういう減要因もあって、先ほど申し上げましたネットで二十四億減るということでございます。

吉田(治)委員 これはすべて電源開発という形の促進の特別会計ですよね。では、このお金を使うについての、要するにエネルギーの基本的な安全保障であるとか、エネルギーというふうなものについてどう認識しているのか、ちょっと大臣の考え方、いかがなんですか。経産委員長もやられたんですから、一家言も二家言もあると思いますけれども。

中山国務大臣 文部科学大臣になりましても、安全の確保ということは極めて大事であると思っていまして、原子力の研究開発及び利用を進めるに際しまして守るべき何よりも重要なことである、こう考えておりまして、新機構の業務運営に当たりましても安全の確保を大前提としていきたい、このように考えております。

吉田(治)委員 役所、後ろについているんだったらちゃんと教えてあげなよ。こんな恥ずかしい答弁させるの、大臣に。

 私が今聞いたのは、国のエネルギー政策といったものをこうして電源特会のお金を使うことについてどう大臣はお考えなんですかと質問したのに、とんちんかんな答えじゃないですか、今の答え。議事録見直したら全然違いますよ。

中山国務大臣 電源特会という具体的な言葉でなかったので、大まかな話にしてしまったんですけれども……(吉田(治)委員「言いました。大臣の今の答弁は、そんなもの、とんでもない話ですよ。ちゃんと速記見直して答弁させるようにしてください。エネルギー政策ということを言っていますから。――では、言ってないんだと後で確認してください」と呼ぶ)

斉藤委員長 大臣、答弁を続けてください。

中山国務大臣 言っていませんので、大まかに、エネルギー政策ということで言われたので、大きな答えをしてしまったのでありますので、では具体的にお答えいたしますが、電源特会につきましては、電力の安定供給に寄与する原子力発電等の立地対策やその利用の促進を図るものであり、文部科学省等におきましては、同会計の電源利用勘定により、核燃料サイクル開発機構における高速増殖炉「もんじゅ」を初めとする核燃料サイクルの確立のための研究開発を進めていくということでございます。

吉田(治)委員 私の質問が間違っている場合もあるかもしれない。後で確認します。私は、電源開発の話の中で、エネルギー政策についてどう大臣はお考えかと質問したつもりです。大臣がそうとらえていないのかどうかは、後で議事録で確認して、筆頭理事、よろしゅうございますね、それで答弁漏れであるならば、もう一度この委員会に来て、ちゃんと質問させていただきたい。

 そして、このエネルギー政策といったものを、「もんじゅ」だけじゃなくて、エネルギーの安全保障という中でのこの二法人の位置づけについて、どうお感じになられているんですか。

中山国務大臣 この二法人の運営を推進していくに当たりましても、安全はまず第一に考えていくということでございます。

吉田(治)委員 私は、エネルギーの安全保障と聞いたんです。エナジーセキュリティーという言葉は、セーフティーとは別な話ですよね。経済産業委員長をおやりになられたんでしょう、そのときにエネルギーの安全保障という話、聞かなかったんですか。

中山国務大臣 原子力ということになりますと、とかく安全ということが第一に出てくるわけでございますが、今御質問のエネルギーの安全保障というのであれば、我が国のエネルギーの安全保障、こういうことだろうと思うわけでございまして、そういう意味では、日本というのは極めて資源の乏しい国でございますから、この原子力ということも極めて重要な意味を持っている。そのことにつきましては、積極的にその政策を推進していかなきゃいけないんじゃないかということを申し上げたいと思います。

吉田(治)委員 その安全保障とこの二法人の統合はどうかかわるのか、どういうふうにそれで増進されるのか、それをお答えください。

中山国務大臣 ですから、申し上げましたように、日本にとりましては原子力の利用というのは極めて大事なことでございますから、今回の二法人の統合によりまして、原子力の基礎・基盤の研究からサイクルの問題、そして開発利用に至るまで一貫した研究ができることによりまして、日本の原子力利用に大きな貢献、寄与するものだ、このように考えております。

吉田(治)委員 随分時間がかかりましたけれども、大臣の答弁をいただきまして、きょうはエネ庁さん、おいででございます。エネ庁さん、このエネルギーの安全保障、これは二法人、今大臣こういう答弁されました。また電源特会、これも経産省のお金だとは私は思っておりませんが、非常に電源開発という部分とエネルギーというもので深くかかわっている。そして、この二法人自身が経産省との共管マターもあるということ。これらを含めて、エネ庁として、この二法人の統合法案についてどういうふうにお感じになられているのか。

 きょうは、長官、おいでですか、お答えをいただきたいと思います。

小平政府参考人 お答え申し上げます。

 ただいま先生から御指摘ございましたように、私ども、原子力につきましては、昨年の秋に閣議決定をいたしましたエネルギーの基本計画の中で、原子力は基幹電源として位置づけ、今後も推進をする、それから核燃サイクル政策につきましても、今後とも着実に推進をしていくというふうに決定をしているところでございます。

 今後のエネルギー問題を考えますと、原子力、大変国のエネルギーの安定供給にとって重要でございます。これを進めていく上では、技術的に対応をしなければいけない問題もまだ多々あるわけでございまして、新しく統合されて誕生いたします法人、原子力関係の研究、それから核燃サイクル関係の研究、両方とも引き続き今まで以上に力を入れてやっていかれるというふうに思いますけれども、特に核燃サイクル関係につきましては、私ども、文部科学省と共管をいたしておりますので、この法人の今後の活動がさらに活性化するように、よく文部科学省と連携をとりながら努力をしていきたいというふうに考えているところでございます。

吉田(治)委員 たしか動燃法の改正のときに私も科学技術委員でありまして、立ち会わせていただいたときに、あのときですか、あの以降ですか、経産省との共管と。それまでは科学技術庁の所管であったのを共管にしたというのは非常に大きな理由があったと思うんです。

 その辺について、大臣もしくは事務当局、どういうふうにお感じになられているのか。

坂田政府参考人 ただいま先生の方から、動燃事業団を改革して核燃料サイクル開発機構に改組する際に、旧科技庁から通産省との共管になったことについてのお尋ねがございました。

 核燃料サイクル開発機構の特に業務につきましては、例えば今の文部科学省の立場から見ますと、原子力の科学技術に関する研究開発という側面、当然ございます。他方で、この仕事は、六ケ所の例えば核燃料サイクル事業につながるように、実用化ということを目指していることもこれまた事実でございまして、そういう観点からは、経産省が所管されますエネルギー利用としての技術開発という側面もございます。

 したがって、両方の面を考えますと、現在の核燃料サイクル開発機構が、両省が協力してやっていく、いわゆる共管になるということについては、合理的な判断であったというぐあいに思っております。

吉田(治)委員 やはりちょっとおかしいのはおかしいですな。さっきの同僚議員の結婚の話を例に出すまでもなく、やはりちょっとどう聞いてもおかしいなと。

 ただ、さっきから大臣が答弁を何度もされていて、答えたくて仕方がないという原子力の安全の問題について、とりわけこれは当時の動燃の問題というのは、まさに事故が起こったと。もう原子力というと、本当に日本で一番安全でなければならない。まあ人間のすることですから、事故が起こるということは、可能性をゼロにすることは、私は不可能、神さんでもありませんし、できないと思っております。

 そういう中で、残念なことに美浜で原子力発電所の事故が起こったということ。これは私は、この二法人の統合において、安全というものを考えたときに、非常に考えなければならないことでありますし、また、文部科学委員会として、原子力安全委員会等、これは今内閣府ですか、入っておりますけれども、やはり原子力の研究開発、そして今回はこの法人が一緒になることで応用利用という部分が入ってまいりますので、この部分について、この二法人を含めて、きょうは保安院の皆さんとそれから安全委員会の皆さん、おいでになられています、取り組みについて一言御答弁をいただきたいと思います。

 そして、最後に大臣の方から、どう考えるのか、さっきからの答弁の繰り返しになるかと思いますけれども、お答えいただきたいと思います。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 委員御指摘のとおり、美浜原子力発電所で事故が起きました。五人もの方が亡くなるという大変痛ましい事故でございまして、私ども国といたしましても、重大なものと受けとめております。

 事故の翌日、中川大臣は現場を視察いたしますとともに、事故調査委員会を早急に立ち上げまして、委員御承知のとおり、九月の二十七日に中間取りまとめをまとめさせていただいたところでございます。

 この取りまとめで指摘をされております考え方に沿いまして、私ども国といたしましても、こうした事故が再び起きないような定期事業者検査におきます対象の明確化のための省令改正、あるいは、こうした二次系の配管につきましても、点検の管理指針につきまして、国等の関与を明確化する等の施策を講じてきているところでございます。

 いずれにいたしましても、原子力発電所におきます原子力利用の大前提は、安全の確保、それから地元の皆様の御理解ということでございますので、私ども、こうした施策をきちっと積み上げることによりまして、広い意味で国民の信頼回復に努めてまいりたいと思っております。

 加えまして、こうした施策とあわせまして、原子力の安全確保のための研究ということも非常に大事でございまして、これまでも、原子力研究所に対しまして委託をさせていただいて、いろいろな形で研究をお願いしておりますけれども、こうした施策を通じて、原子力の安全の確保に万全を期してまいりたいというふうに考えております。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 美浜の事故につきましては、五人の方々が亡くなるという大変残念な結果になりまして、安全委員会といたしましても、この件につきましては、これを大変重要な教訓と受けとめて、今後の安全確保に取り組んでまいりたいと思います。

 御質問の原子力安全についてどのように考えるかという点でございますが、私どもといたしましては、原子力安全については、基本的なことが大きく分けて二つあって、実態的安全性というのと手続的な安全性というのがあろうかと思います。実態的安全性というのは、設備、機器を多重化して、大きな事故が起こらないように、物理的にその安全を確保するということであります。手続的安全性というのは、そのことを法令等に基づいて確認する、こういうことだと理解をしております。

 しかしながら、その二つをつなぐ重要な要素がさらにあるのであって、これがいわゆる人の問題、人にかかわること、こういうふうに考えておりまして、これを私どもは、原子力安全にかかわる品質マネジメントあるいは品質保証、こう考えております。

 残念ながら、昨今の原子力安全にかかわる事故、トラブル等を見ますと、この人の問題において欠陥がやや見られるというのが率直な感想でございまして、これについては、原子力安全委員会としましては、専門性といいますか、専門的かつ独立的な機能を生かしまして、今後、安全規制あるいは事業所におけるそれぞれの安全確保について、精いっぱい監視の目を光らせていきたい、こう思っております。

 二法人の統合化につきましては、この統合化によって優秀な人材が改めて糾合されるわけですから、その組織が新たになることを機に、さらに安全について新たな自覚を持って取り組んでほしい、こういうふうに願っているところでございます。

 ありがとうございました。

中山国務大臣 安全ということは何度答弁してもいいと思っていますけれども、この原子力の研究開発及び利用に当たりましては、やはりセーフティーカルチャーの確立ということが一番大事である、このように考えておりまして、今回の統合に当たりましても、新機構が、業務運営の最優先事項として、みずからの保有します施設及び事業に係る安全の確保を徹底していくべきだと考えております。

吉田(治)委員 大臣、答弁はいいんですけれども、では、この美浜の事故だとか、ジェー・シー・オー事故の反省だとか、事故防止、安全性確保の姿勢というものは、この条文のどこにそれが読めるんですか。答えてください。

坂田政府参考人 今回の機構法案に目的条項、四条でございますけれども、その中に、原子力基本法第二条の基本方針に基づきというのを大前提に置いております。先生御存じのとおり、その基本法第二条の方針というものは、いわゆる民主、自主、公開というのもございますけれども、「安全の確保を旨として、」というのがしっかり入っておりますので、機構の業務全般を通じまして、安全をしっかり確保するというのが何よりも大事である、また、それが大前提であるというぐあいに考えております。

吉田(治)委員 いや、六年前に大きな事故を起こしてつくった特殊法人をまた変えるわけでしょう。なぜわざわざ一文、条文を出すことができなかったわけですか。

 そして、今回の両法人に対して原子力安全委員会というのはどうかかわるんですか。原子力安全委員会は、今回の美浜のことも含めて、ダブルチェック機能だということもあります。しかし、具体的に安全委員会は、保安院はもちろんチェック機能です、どういうふうにかかわっていくんですか。ちょっと局長と安全委の委員長代理、お願いします。

坂田政府参考人 繰り返しになりますが、機構の業務全般に通じまして安全確保をしっかりやっていく、これが当然でございますので、それは今申し上げましたとおり、原子力基本法第二条の基本方針に基づきで、私どもは法律的には十分である、十分やっていけるというぐあいに考えてございます。これが一点でございます。

 それから、原子力安全委員会との関係でございますけれども、今回、法律の中には原子力安全委員会という文言は直接は出てまいりません。

 これは累次御説明しておりますとおり、原子力安全委員会が新機構の業務にかかわります範囲というものが、機構全体の業務の範囲と比べますと非常に限定されているということ。それから、私どもはといいますか新機構は、原子力安全委員会がおつくりになります安全研究の年次計画、これに沿って仕事は当然のこととして進めてまいりますけれども、安全の年次計画の中では、新機構は幾つかの安全研究実施主体の一つであるということで、そういう観点からも、新機構と原子力安全委員会との関係はやはり限定がされているということから、冒頭申しましたとおり、法律の中に原子力安全委員会という文言はございません。

 ただ、繰り返しになりますけれども、安全委員会の御方針に沿って新機構の業務をしっかりやっていく、これには従来と変わるところはございません。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 最初の安全確保についてでございますが、これについては、これまでの二つの法人が行ってきた事業に対する安全委員会の安全に対する関与というのは、これまでどおり、変わらないというふうに考えております。特に、直接の規制は規制行政庁がこれを行っておりますので、安全委員会としては、その規制行政庁の規制行為が適切かどうかにつきまして、新たに原子炉等規制法の改正によって定められました規制調査活動、安全委員会の規制調査活動においてこれを行いたい、このように考えております。

 それから、今局長からもお話がありましたが、安全研究につきましては、これは国全体としてなすべき安全研究について、原子力安全委員会が適宜にこれを見直し、また、つくっていくということになっておりまして、これについても、ことし新しいのをつくったばかりでございます。これについて、新法人が中期目標の中で達成してほしいことについては、安全委員会としてこれを意見として示し、その遂行の状況についても御報告いただきながら、安全委員会として今後とも二法人にお願いすることをお願いしていきたい、そのように考えております。

吉田(治)委員 安全委員会さんは、今度の美浜の件についてダブルチェックで調査をされたと思うんですけれども、これはやはり最終的に美浜の責任というのは会社の経営陣ということになるんですか。どうなんですか。どんな感じですか。

鈴木参考人 お答え申し上げます。

 安全委員会においては、事故の原因究明をまずすると同時に、再発防止を最優先に考えておりまして、したがって、この事故の責任がどこにあるかということについては、安全委員会が直接それを議論するというよりは、まずはこのような事故が二度とほかの事業所等において起きないようにするということ、こういう観点から、規制行政庁の事故調査委員会の報告書等を伺った上、この二十一日に、原子力安全委員会としての見解を示したところでございます。

吉田(治)委員 そういうふうな中で、今局長は、基本法の中で書いていると。基本法、原則公開ですね。しかし、この新法人においては、守秘義務というものを新たに課していますね。そういう中でいくと、そしてスリム化だということですけれども、現在、両法人の正副理事長のもともとの出身というのは、どういう出身なんですか。

坂田政府参考人 現在の両法人の正副理事長の御出身についてのお尋ねでございますので、お答えいたします。

 まず、日本原子力研究所の理事長は、旧科学技術庁の出身でございます。お二人の副理事長は、いずれも原子力研究所の御出身でございます。それから、核燃料サイクル開発機構は、理事長は電力会社の御出身でございます。それから、副理事長につきましては、一人が科学技術庁、それからもう一人が動燃、サイクル機構の御出身であると承知しております。

吉田(治)委員 そうなってくると、今、正副理事長六人のうち、民間がお一人、プロパーの方が三人、役所の方がお二人ですね。今度の新法人は、これは役員が九人のうちで正副はどうなるんですか。

坂田政府参考人 新機構におきましては、理事長がお一人、副理事長がお一人ということになります。

吉田(治)委員 その二人はどこの出身になりそうなんですか。

坂田政府参考人 これは、当然でございますけれども、発足の前に決まるということで、現時点では何も決まっておりません。

吉田(治)委員 どこで、だれが決めるんですか。

坂田政府参考人 理事長につきましては、主務大臣、この場合は文部科学大臣が、原子力委員会の意見を聞いてお決めになるということになると思います。それから、副理事長については、理事長がお決めになるということになります。

吉田(治)委員 では、文科大臣にお聞きします。

 これは、新法人の組織の問題、経営の問題で、理事長の果たすべき役割は大変大きいと思うんですね。そういうふうな中において、サイクルの場合は、学者の先生から、今回民間の方に来ていただいて、随分サイクル機構自身がいろいろ変革もでき、変わったということもお聞きしております。

 一つは、ちょっと疑問に思うのは、原子力委員会が意見を述べるだけというのは、ちょっといかがかな、関与が弱いのではないかなという感じもします。

 文科大臣として、これは文科大臣、申しわけない、あなたは霞が関出身だからそういうふうなことは言えないかもしれないけれども、これは新法人、しかも電源特会というお金も使われるということであるならば、これは理事長ぐらいはせめて民間人がやり、そして、九人の理事の半分以上は民間の主体の方がやるべきだと。

 そうでないと、経営効率であるとか、今るる御説明をいただいたさまざまな問題、特にエネルギーの安全保障の問題であるとか、同僚議員の質問の中にあるように、本当に研究所の一点の視点というのも、それだけではちょっといかがかと。これから広げていくという部分においては、そういう視点が非常に大事だと思うんですけれども、その辺はどういうふうにお考えになられますか。

中山国務大臣 新機構の役員につきましては、これまでの役員の選任に関する閣議決定等に従いまして、公務員出身にこだわることなく、広く各界から、役員として十分な能力、見識に富んだ者を登用していきたいと考えております。

 離職後の国家公務員には、新機構の役員として十分な能力、見識を有する者もおりまして、私がそういう出身だということとは関係なく、これらの者を含めて一律に役員就任を禁ずることは、人材登用の観点で望ましくないものと認識しております。

吉田(治)委員 では、ここでお約束はできないんですか、民間の人はこれぐらい入れるとか、これぐらい考えていると。文部科学大臣が決めると書いてあるんですから。極端なこと言ったら、いろいろな意見を聞くかもしれないけれども、大臣のリーダーシップがあれば、理事長、そして過半の役員はと。私、以前、サイクル機構の質問をしたときに、当時、主要なポストは全部役所の出向者で占められていたんですよね。議事録にも残っています。今回のこの新法人ができて、また同じようなことになって、しかも、経営ということが言われている、トップもサブも理事もと、そんなことにならない、そういうお約束をしていただければ大変ありがたいんですけれども、いかがですか。

中山国務大臣 どういったことになりますか、具体的なことは申し上げられませんが、広く官民に人材を求めて、すばらしい方々にそういったポストについていただきたい、このように考えております。

吉田(治)委員 もう時間ですので終わりますけれども、一点だけ、大臣、そうしていただきたいのと同時に、やはり事はエネルギーの関係ですから、経産省との連携について、大臣としてどうお考えなのか、一言お願いしたいと思います。

斉藤委員長 中山大臣、簡潔にお願いします。

中山国務大臣 きょうもいろいろな議論がありましたが、やはり文部科学省と経済産業省、連携をしながら、お互いに相協力し合ってやっていかなければいかぬということを、きょう改めて認識したところでございます。

吉田(治)委員 終わります。

斉藤委員長 松本大輔君。

松本(大)委員 民主党の松本大輔です。

 今回の質疑を迎えるに当たりまして、大臣のホームページを拝見させていただきました。やはり国家の発展の礎は人材であるというお言葉は、私もまさに同感であります。それから、目指すべき社会として、「豊かで安心して暮らせる社会」というものを挙げていらっしゃいます。さらに、八月二日の大臣御自身の与党代表質問を掲載されておりまして、その締めくくりでは、「国民に十分説明し、理解を得る努力を尽くしてください。」ともおっしゃっています。

 私は、これはいずれも、本日のテーマであります原子力行政に深くかかわるお言葉ではないかなというふうに思いますので、本日の質疑は、その点を踏まえて御質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 それで、朝から審議されておりますように、今回の新機構は、特殊法人改革の一環として、原研とサイクル機構を統合するというものなんですけれども、早速ですが、大臣は、今回統合対象となっている二つの法人の研究施設をごらんになられたことはおありでしょうか。

中山国務大臣 まだ行っておりません。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 今回の法案審議に当たりまして、まずは現場へということで、先日、東海村へ行ってまいりました。わずか一日という限られた時間ではあったんですけれども、私にとって大変印象的だったのは、現場で働く方々の気概であります。予算がどんどん削減されていっているにもかかわらず、核融合研究においては世界のトップを走り続けている、あるいは加速器研究においてはアメリカとしのぎを削っている、さらには、五十年後を見据えて、放射性廃棄物の処理技術というものも開発をしていると、例を挙げれば切りはないわけなんですけれども、私は、現場の皆さんの気概というものに大きな感銘を受けて戻ってまいりました。

 それに引きかえと申し上げてはなんなんですけれども、朝から審議を聞いておるんですけれども、どうも行政側には現場ほどの気概が見受けられないというのが大変残念でなりません。たとえ我々とは立場や意見が異なっても、大臣にはぜひそういったものをお示しいただけることを期待しつつ、質問を続けたいなというふうに思います。

 現場の気概というお話を今させていただいたんですけれども、一方で私が感じたのは、ちょっと若い人が少ないんではないかなということであります。もちろんベテランの方が悪いというわけではないんですけれども、そのベテランの方が築いてきた経験というものを受け継ぐ若者がいなければ、組織としては持続可能性に欠けるということになるのではないかと思います。

 平成九年から十六年までで約七百人の人員削減が行われております。それから、今回の新機構なんですけれども、スリム化ということで、今後も人員削減を予定されるというふうに伺っております。

 そこで、小島副大臣にお伺いしたいんですが、今回の統合で予定されている人員削減の内容について、お答えをお願いします。

小島副大臣 お答えいたします。

 答弁に先立ちまして、現場まで行って御視察されたということで、本当に御苦労さまでございます。

 私も大臣も視察をしようかということで話し合ったんですが、大臣の方は三位一体の関係等であけられなくて、私が個人的に現地を視察してまいりましたことを御報告申し上げます。

 いわゆる削減計画ですけれども、具体的に申し上げますと、監事を除いた役員数を二十一人から九人と半分以下にするとともに、職員数については、平成十六年度末の四千四百四十五人から、第一期の中期目標の期間と想定される五年間で最低でも一〇%削減し、四千人を下回ることを目指すなど、先ほどお話にありましたように、スリム化に努めているところであります。

 なお、特殊法人等改革基本法にかかわる衆参両院の附帯決議及び特殊法人等整理合理化計画では、職員の雇用の安定に配慮すべきとされているところでありまして、文部科学省としても、これを踏まえて適切に対応してまいりたいと思っています。

 以上でございます。

松本(大)委員 ありがとうございます。

 今後五年間で一〇%、四千人を下回るということは、およそ五百人程度削減されるということなんですけれども、これまでの平成九年から十六年までと、それからこの先の五年間の五百人の減少、これまでとこれからの減少というのをどういった形で進められるのかについてお答えをお願いします。

坂田政府参考人 職員の削減につきましては、退職年齢に達した職員による減でございますけれども、これを基本としてやりたいと思っております。

 もちろん、先生先ほどおっしゃいましたとおり、若い方々が新たに入ってきていただくということも、当然その組織の活力を維持発展していくという意味で大変大事でございますので、その点についても配慮はしなければいけませんが、基本的には自然減ということをベースに全体の人員の削減に努力したいと考えております。

松本(大)委員 自然減ということは、新規の採用の抑制という理解でよろしいでしょうか。

坂田政府参考人 基本的にそうでございます。退職される方と同じ数を採用していれば減りませんので、そういうことになろうかと思います。

松本(大)委員 新規の採用が抑制されるということは、ますますといいますか、組織の高齢化が進むということになろうかと思います。

 十年以上にもわたって削減し続けていくということになれば、それは組織の運営上というか人事政策上、非常に大きなインパクトを持ってくるのではないかと思うんですけれども、この人員削減が新機構の数十年後に与える影響についてどういうふうに評価されているのかをお聞かせください。

坂田政府参考人 先生も御見学されてお気づきになったようでございますけれども、両法人とも大変古いといいますか、歴史的な機関でございますので、四十代、五十代の方々が実は多いわけでございます。二十代、三十代の方が相対的には四十代、五十代よりは少ないということでございます。もちろん、五十代の方々を中心に退職をしていかれるわけでございますけれども、そこで減った数よりはもちろん少ない数の若い方々を採用いたします。

 全体としては確かに人員は減ってまいりますけれども、両法人の中で、あるいは新機構の中で、まさに人から人への技術継承をしっかりやりまして、人数は減っても若い方々の活力で、組織全体としては非常に前向きな仕事ができるような形に持っていきたい。

 今お尋ねは、数十年後というぐあいにおっしゃいましたが、私ども、向こう十年程度を見て、当面まず第一期の五年間ぐらいを考えておりまして、その辺の時間的な視野の中では、私どもが今考えている範囲でこれから重点化していく業務、例えば高速増殖炉の問題、あるいは先ほども申しましたけれども、大強度陽子加速器の問題、あるいは核融合研究の問題、そういう重点化する業務についてはしっかり取り組んでいくことができるのではないかというぐあいに思っております。

松本(大)委員 継承者が絶対的に減っていく中で、それをどうやって活力でカバーしていくのかということについては、私はちょっと今の答弁では納得しかねるわけなんです。

 新機構の業務内容を定めた法案の第十七条一項六号に「原子力に関する研究者及び技術者を養成し、及びその資質の向上を図ること。」ということが記されているわけなんですけれども、それを支える人材は一朝一夕にはつくられるものではないということは申し上げるまでもありません。

 私が実際に見に行ったときに、再処理工程においてこういういわゆるマニピュレーターというのを操作されていらっしゃったんですけれども、それを操る技術というものはいわゆる職人わざだそうでございまして、だれか一人欠けてもすぐにかわりを補充できるわけではないというふうに伺いました。

 五年間で五百人という数字を机上ではじき出してしまって、果たしていいのかなというのが私の率直な思いであります。長期的な視点に立って、今後の業務内容も勘案した上で数字を出していかなきゃいけないんじゃないか。効率一辺倒、財務リストラ一辺倒の理念なき数値目標というものでは、結果的に国民が不幸になるだけではないかな、私はそのように思うわけであります。本委員会は、特に文部科学委員会でありますので、日本の人づくりに責任を持って議論をしていかなければなりません。

 そこで、もう少し原子力における人材養成についての御質問をさせていただきたいと思うんですけれども、午前中の議論にもありましたとおり、何よりも重要とされておりますその安全確保なんですけれども、それを実質的に担保するのはやはり人材であります。そのためにも、人材の確保は欠かせないということになろうかと思います。

 しかし、その人材を社会に送り出している大学がどうかといいますと、午前中の御答弁にもありました、原子力というものを冠した学科が減りつつあると。私は、国立大学の法人化や少子化の影響を受けて、予算のかかる原子力の研究分野にしわ寄せが行っているというような話もお伺いしているわけであります。

 これは学界だけではありません。産業界においてはどうか。原発は現在日本国内に五十二基を数えているわけなんですけれども、御承知のとおり、建設のペースは落ち込んでいるわけでありまして、長寿命化というのが今の流れであろうと思います。

 原産会議の報告書なんかを見てみますと、電力会社以外の民間企業の原子力関係の技術者数というものを見ますと、この十年、約二万九千人というところでほぼ横ばいではあるんですが、ただ、その内訳を見てみますと、将来の技術開発に携わる研究者の数は、同じ期間、十年間で三千五十九人から千三百十二人、半分以下に減少しているわけでございます。

 先ほども述べましたように、人材の供給源である大学の方でも原子力工学の人気が下がっている。人材の供給源も先細りしようとしている。一方で、その人材の民間の受け入れ先、人材の受け入れ先も同じように先細りしようとしている。

 これに追い打ちをかけるのが今回の法案であります。新機構において人員削減が行われるということであれば、いわばこの負のサイクルを加速するということにもなりかねないと思うわけなんですけれども、こうした言ってみれば負のサイクルを加速しておきながら、一方で人材養成というものを新機構が業務として掲げているのは、私は大いな矛盾ではないかなというふうに考えるんですが、御答弁をお願いします。

中山国務大臣 非常に難しい問題でございまして、せっかく統合するわけですから、その統合のメリットというのは何かというと、やはりそれは合理化だろうと思うので、合理化努力というのは、これは絶対続けてもらわなければいかぬと思うわけでございますけれども、一方で人材の養成ということも、確かに委員おっしゃるとおり大事なことでございます。

 大学での供給源が減っている、一方では受け入れる方も減っているということになりますと、本当に大事な原子力の開発利用という日本の至上命題が崩れていくわけですから、このところはしっかりと守っていかなければいかぬ、こう思っているわけでございます。

 今度の法案におきましても、原子力に関する研究者及び技術者の養成、及びその資質の向上を業務として明確に位置づけているわけでございまして、そういう意味で、大学、それから産業界、そしてこの法人一体となって、原子力関係の技術者の養成ということについても努力していかなきゃいけない、このように考えております。

坂田政府参考人 私の方で少しだけ補足させていただきたいのは、大学における原子力という名前の学科の数が確かに減ってきております。それは一つございます。それと並行するかのようにと言っていいかと思うんですけれども、大学における研究炉、実験炉のようなものです、こういうのも閉鎖が続いておりまして、現実に大学において、いわゆる放射能、現実に目の前に放射能がある施設で原子力の研究の経験が積めるという機会もこれまた減ってきております。

 しかしながら、今回新たにできます新機構は、大変多くのいろいろな、研究炉でありますとか、あるいは研究炉でなくても核燃料関係のいろいろな研究施設ですとか、そういうものがたくさんございます。やはり、そういう現に核燃料物質を扱える施設で大学の学生さんあるいは大学院の学生さんたちが学んでいただく、あるいは研究していただくことが人材養成上非常に重要でございます。

 そういう観点から、新機構においては、この原子力の研究者、技術者の養成ということをしっかり業務に位置づけることが大変今の環境の中では大事なことではないかというぐあいに考えております。

松本(大)委員 大臣、国家発展の礎は人材であるというお考えは原子力分野についても同様であるという理解をしてよろしいでしょうか。

中山国務大臣 まさに人材の育成ということは、どの業界、どの分野においてもそうだと思うわけでございます。特に新しい分野、これから研究開発を促進していかなければならない分野というのは若い人材の育成が何より必要である、このように認識しております。

松本(大)委員 大臣からはこの質疑の中で、文部省と科学技術庁の統合は非常にうまくいっているというお話がございましたので、ぜひ、原研とサイクル機構の統合効果を論ずる前に、まずは人材育成の分野で文部省と科技庁のシナジー効果というものをぜひ見せていただきたいと思います。

 先ほどの局長の御答弁は、午前中の質疑の中では大学の人材育成にてこ入れをという御質問があったわけですけれども、今の御答弁というのは、産官学すべてにまたがる人材育成にこれから取り組んでいくという決意と受け取ってもいいんでしょうか。

坂田政府参考人 まさに先生御指摘のとおり、日本の産官学それぞれのセクターで、原子力に携わっている方々がたくさんいらっしゃいます。あるいは事業体、組織がたくさんいらっしゃいます。そういったセクターあるいは人々のために、この新しい機構は人を養成していくという面でしっかり貢献すべきであるというぐあいに考えております。

松本(大)委員 大臣、先ほど、至上命題として守っていかねばならないという非常に力強い御答弁をいただきました。まさに大臣がおっしゃっているように、国家の発展の礎は人材でありますので、原子力分野の人づくりをおろそかにすることで結果的に原子力の安全を脅かすことにつながらないように、ぜひとも至上命題として取り組んでいただきたい、このように思います。

 さて、研究現場を見た感想について、ちょっと三点目として指摘させていただきたいんですけれども、少し気になったこととしては、原子力という、狭いと言ってよいのかどうかわかりませんが、狭い世界に引きこもっているというような印象をちょっと、閉じた感じを私は受けました。冒頭にお話しした気概というものと裏表の関係なのかもしれませんが、ただ、自己中心的な気概というものは独善につながっていくわけであります。独善に陥らないようにするためには、外に目を向ける、積極的に情報発信をしていくということが大変重要ではないかなというふうに思います。

 今回の法案の四条でも、成果の普及ということが掲げられております。現行のサイクル機構法の一条に由来するものではないかなというふうに思いますけれども、果たして税金を費やして行ってきた研究成果が本当に活用されているのかという点について、ちょっと御質問をさせていただきたいなというふうに思います。

 成果の活用度合いをはかるバロメーターとして特許等が挙げられると思うんですけれども、平成十五年末における特許などの保有件数は、原研で五百六十六件、サイクル機構で千二百十件、その実施率は原研で七・一%、サイクル機構で〇・三%、非常に低調と言ってもいいのではないかというふうに思います。

 成果の普及というものがこれまで十分になされてきたのか、大変疑問に思うわけなんですけれども、目標に掲げられておきながら、研究成果の普及という意識にちょっと乏しいんではないでしょうか。あるいは、今回の新機構の設立、改革によって、これが改善されるというような保証はあるんでしょうか。

小島副大臣 お答えいたします。

 今松本委員御指摘のように、確かに、特許権等の実施率が低迷しているということも事実でございます。

 日本原子力研究所は、特に放射線研究分野においていろいろと事業を行っているわけでありますけれども、民間企業への技術移転も実施はしておりますけれども、なかなか高くないということでありまして、あともう片方のサイクル機構は、ウラン濃縮技術等に関する研究開発成果を日本原燃株式会社などの事業者へ技術移転することにより、我が国の核燃料サイクル事業の推進に寄与しているわけであります。

 委員御指摘のように、原子力に関する研究開発成果の活用が可能な事業というか利用する事業というのが非常に限られているということでありまして、両法人の特許実施率については実際高くないため、今統合したらばという話がありましたけれども、今後、この技術移転に向けてさらに民間に働きかけていって、いわゆる実施率を上げていきたいというふうに考えております。

松本(大)委員 実施率以外の、何かほかの数値目標がもしあれば、それもあわせてお聞かせください。

坂田政府参考人 今の先生のお尋ねに関連してでございますけれども、確かに今、特許の実施率は低うございますので、これからはもっと、従来の原子力に直接関係する事業者の方々に限定せずに、もっと幅広くいろいろな業種の方々との交流をして、その結果として特許の実施というものを広げていく、こういう努力をしなければいけないというぐあいに思っております。

 これまではどうしても原子力のコミュニティーの範囲で考えてきたということもあり、特許の実施率は必ずしも高くなかったということであります。むしろ原子力のコミュニティーの中で考えますと、特許を移転するというよりも現実に成果を、必ずしも特許になっていない形、成果を移転していく、あるいは経験を移転していく、ノウハウを移転していく、人を移転していく、こういったことが原子力研究所あるいは核燃料サイクル開発機構の成果の活用という観点からの主たる仕事でございました。そういうやり方をしておりました。その限りにおいては、両法人は相当の成果を日本の原子力研究開発のコミュニティーに還元したというぐあいに考えております。

 そこで、先生のお尋ねでございますけれども、特許以外にどういうものがあるか。これは私どもとして新しい課題でございまして、新機構発足を契機に、まさに御指摘のような点をどのような形で例えば中期目標の中に掲げていくのか。一つの考え方としては、両法人とも全国に相当の数の事業所、研究所を持っております。そういった地域におきまして、地域の産官学との間でどのような交流ができるか、どのような技術移転ができるか、どのような事業化に貢献できるか、こういった点も、新機構発足後においては新しい活動の目標として考える必要があるんじゃないか、今後の大事な検討事項であると考えております。

松本(大)委員 なぜ私が指標等にこだわるかというと、それはわかりやすいからであります。

 例えば成果の普及というもの、この場合は成果の普及ですけれども、例えば政治家の公約で、生き生きした町づくりとか安心した町づくりというものを掲げても、後になって、どれぐらい生き生きしたかとかどれぐらい安心できたかというのは検証が難しいわけです。それがマニフェストというものが評価された一因ではないかというふうに思います、期限を区切って何をどのようにどのぐらい実現するのかということが後で検証可能になると。

 ぜひともこの成果の普及については何らかの数値目標というものを検討していただきたいなと。特に、国際的なセンター・オブ・エクセレンスなどという言葉が二法人の統合準備会議で掲げられておりますので、ぜひ、かけ声だけでなく、検証可能な目標というものをはっきりと定めていただきたいなというふうに思います。

 これまでの質問で私が申し上げたかったことは何かといいますと、ほかの委員もこれまで指摘してまいりましたけれども、一体いつから財政論とか効率の観点からのみ原子力が論じられるようになってしまったのかというちょっと寂しい思いがしているからであります。すなわち、今回の法人統合については理念といったものが私には少なくとも感じられないということです。逆に言えば、先ほども申し上げたように、財政論だけで語られるようになってしまった原因はどこにあるのかなということです。

 私が考えますに、その理由は、事業の価値について国民の理解が十分に得られていないから、負担に対する納得感がないからではないかというふうに考えております。冒頭にも申し述べましたとおり、大臣御自身が与党の代表質問でもおっしゃっていらっしゃいましたけれども、国民に十分説明し、理解を得る努力を尽くす必要があるというのは、まさにこの原子力行政の分野についても同様であるというふうに考えております。後半は、そういった観点から、その説明責任を十分果たしてきたのかということについてちょっと検証をさせていただきたいなというふうに思います。

 まず取り上げたいのは、動燃改革であります。

 なぜ動燃改革をまず取り上げたいかということなんですけれども、事業についての国民の理解の大前提になるのは、何といっても信頼であります。なぜならば、そもそも信頼がなければ、国民に十分説明し、理解しようと思っても、聞く耳すら持ってもらえないからです。その点で、「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故であるとか、アスファルト固化処理施設の火災爆発事故、これは周辺の環境には影響はほとんどなかったというような議論もあるのかもしれませんが、しかし、ビデオ隠しを初めとした事故後の不適切な対応というものが、原子力行政に対する信頼感を大きく損ねたということは紛れもない事実であります。

 その意味で、まずもって国民に十分説明し、理解を得る努力を尽くすという点では、この動燃改革を検証させていただきたいと思うわけなんです。

 ちなみに、検討委員会というのは、経営の不在、安全確保と危機管理の不備、閉鎖性、事業の肥大化などを指摘してまいりました。六年たった今、この動燃改革の目的というものは達せられたのでしょうか。

中山国務大臣 思い出しますけれども、動燃改革というのは、これは国民の信頼を回復するという必要性から始まったというふうに記憶しておりますけれども、平成十年に動燃を核燃料サイクル開発機構に改組した後は、新型転換炉開発、ウラン濃縮、海外ウラン探鉱等から撤退しまして、高速増殖炉開発等への業務の重点化、第三者から成る運営審議会の設置、積極的な情報公開、地元重視の観点から本社機能を移転する等の対応が行われてまいりました。また、重点化された業務の遂行に当たりましても、外部評価の導入や効率化の推進等の改善に鋭意努力が重ねられてきたものと理解しております。

 したがいまして、本年七月にサイクル機構が依頼した第三者による機関評価におきましても、動燃改革当時に指摘された経営的課題に対して改善が進んでおり、総合して、この五カ年の業務運営は評価できるとされておりまして、動燃改革の目的に向けたサイクル機構の努力が外部有識者に認められたものと考えております。

松本(大)委員 残念ながら、私の考えはちょっと大臣とは違うものでありまして、やはり経営の不在という問題はいまだに解決されていないのではないかなというふうに感じております。

 核燃料サイクル開発機構、サイクル機構の機関評価委員会の報告書の最後のページにも、「恒常的にミッションを再設定・再定義していくことが必要である。」という形で、継続的な業務改善活動というものをしっかりやっていきなさいよということで締めくくられているわけであります。

 私は民間企業出身でありますので、民間企業で普通戦略を立てるとき、経営計画を立てるときというのは、よく経営の世界で言われるような、PDCAというサイクルをたどるわけであります。

 プラン、計画を立てて、ドゥー、実行して、チェックをする、評価、検証して、最後はアクト、改善、反映するというサイクルなんですけれども、サイクル機構のこの中長期事業計画を見てみても、まずそのプランの段階からつまずいているのではないかなという感じを私はどうしてもぬぐい去ることができません。

 高速増殖炉サイクル、それから高レベル放射性廃棄物の処理処分技術、軽水炉処理技術というそれぞれのプロジェクトについて、今どのような技術的な課題が存在していて、いつまでにそれを解決するのかということが明確になっておりません。何となくこのあたりまでに達成するというものであって、いつまでに何をするかというのがはっきり伝わってこないわけであります。

 それから、何よりも致命的なのが、コストについて全く言及がないということであります。こうしたプランでは、民間の世界の常識からいうと、とてもではないけれども、経営計画の名に値しないのではないかなというふうに私は考えるわけであります。

 今回の法案で、新機構ができる、中長期計画が策定されるということになっているわけですけれども、今後も経営計画の名に値しないような事業計画がつくられるのであれば、先ほど申し上げたような国民の理解を得るということは到底不可能ではないかなというふうに考えます。

 そこで、新法人の中期計画の策定においては、プロジェクトごとに達成目標、それと達成時期、それから所要資金というものを設定したロードマップというものを策定すべきだと考えますが、御答弁をお願いします。

小島副大臣 お答えいたします。

 松本委員の御指摘のとおりと私も思います。

 独立行政法人制度には、主務大臣が策定する中期目標において独立行政法人の事業について達成目標と達成時期等を設定し、これを踏まえて、独立行政法人において資金計画を記載した中期計画を作成することとしているところであります。

 御指摘の趣旨は、新機構の中期目標の作成及び中期計画の認可の際に定められる事業についての達成目標と達成時期等が実現できるよう、御指摘のとおり、努力していきたいと思っています。

松本(大)委員 先ほどというか午前中の議論でも、長計をマニフェストに見立てた御質問というものがありましたけれども、マニフェストのマニフェストたるゆえんというのは、先ほども申し上げたように、期限を区切って目標を明示して、どの程度実行するかということを打ち立てて、後で検証可能にする、しかも継続的な検証可能にするという点にその特徴があるというふうに考えておりますので、ぜひ、この中期計画の策定においては、非常に、より具体化した形で経営計画の策定というものを進めていただきたいなというふうに要望をいたします。

 次に、先ほど申し上げたPDCAのCの部分ですね、チェック、評価であり、検証の部分にちょっとお話を進めたいと思います。

 先ほどもちらっと触れましたが、原研もサイクル機構も、それぞれ直近ではことしの十月と八月に評価報告書というものを出していらっしゃいます。報告書の内容はページ数で決まるものじゃないと思うんですけれども、通常、お役所の方からいただく報告書はどっさりとうんざりするほどあるのに対して、これはいかにも薄いなというふうな印象を持たざるを得ません。

 そして、その中身についてなんですけれども、高く評価する、適切である、進展が認められる、非常に耳に心地いいというか優しい言葉が多く盛り込まれておりまして、これではお手盛り評価と言われても仕方がないのではないかなというふうに考えます。統合を前にしたアリバイづくりじゃないかというふうな非難を、そしりを免れないのではないかと私は考えるわけなんですが、監督官庁としてこの評価報告書をどのように受けとめていらっしゃるのか、評価推進部局はこの報告書の内容をチェックされているのかどうか、答弁をお願いします。

小島副大臣 お答えいたします。

 日本原子力研究所及び核燃料サイクル開発機構が実施している機関評価については、文部科学省における研究及び開発に対する評価指針に基づき、研究機関である法人みずからが外部の者を評価者として選任して評価をしてもらっているということは、委員も御指摘のとおりであります。

 なお、両法人が行った機関評価結果については、文部科学省の原子力分野の研究開発に関する委員会において報告が行われることになっており、文部科学省としても、その際の論議等を法人監督における参考としているところでございます。

松本(大)委員 そのお手盛りの評価の甘さをどう是正していくのかということについては、今の御答弁では少し納得ができないんですけれども。

 何を言いたいかというと、独法化されるとそれだけ自主性や自律性が重んじられるようになるので、それをいいことに、お手盛り評価というものが加速するのではないかなという懸念を私は持っているということでございます。ぜひ、新法人になった暁には、あえて厳しい意見を積極的に求めるぐらいの自律性を期待したいところですが、ちょっと今の答弁では期待できないかなという感じを強く受けた次第です。

 今、PとCの部分についてお話をしたんですが、最後は、A、アクト、改善の部分であります。

 総合科学技術会議というものが、政府予算の概算要求に際して、科学技術関連施策の優先順位づけをS、A、B、Cという四段階で行っております。昨年十月に行われた優先順位づけにおいては、積極的に推進すべきSとしてITERや「もんじゅ」が位置づけられている一方、ほとんどが原研とサイクル機構で実施されている原子力分野十四項目のうち半分以上の八項目がBやCである、問題点の解決や見直しが必要であるという指摘を受けているわけであります。

 私ども民主党も、日本経団連さんが行っている政策評価においてエネルギー政策でDをいただきましたので、身につまされる思いがしなくはないわけでございますけれども、大臣にお伺いしたいのは、この総合科学技術会議の評価を受けて、何らかの改善や見直しというものをこの一年間かけて行ってきたのでしょうか。

中山国務大臣 お答えいたします。

 総合科学技術会議において、平成十六年度概算要求における原子力二法人の事業に対する評価として優先順位B、Cとされた項目は、高速実験炉「常陽」、安全性研究など六事業であります。

 上記の項目につきましては、評価結果を受けて、例えば「常陽」については、FBRサイクル実用化戦略調査研究と緊密な連携を図り、効率的、効果的に実験を実施するなどの見直しをしました。安全性の研究につきましては、内閣府原子力安全委員会等関係省庁との連携を強化し、審査に活用されるために必要な研究項目の調査を実施するなどの見直しをしたことによりまして、事業の効率化を図り、所要の成果が得られているところでございます。

 今後とも、評価結果、指摘事項を踏まえ、適切に事業の見直しを行いつつ、着実に研究開発を進めてまいりたいと考えております。

松本(大)委員 所要の成果が得られているというような御答弁でありましたけれども、実はこの優先順位づけというものは毎年行われておりまして、ことしも、先月二十一日に開催された総合科学技術会議において決定をされております。大臣も御出席されていると思いますので御記憶かと思うんですが、昨年の評価に比べてことしの評価がどの程度アップしたか、御答弁をお願いします。

坂田政府参考人 昨年同様、ITERあるいは「もんじゅ」等についてはSでございますけれども、昨年B、Cをいただいたものについては、昨年よりよくなったということでは必ずしもございません。

松本(大)委員 必ずしもないというのは非常に微妙な表現ですが、もっと直接的に申し上げますと、評価がアップしたものは、BからAになったものはたった一つだけでありまして、BやCのままで変わっていないものが五つ、逆にダウンしたものが三つもあるわけであります。

 所要の成果が得られた、改善しているという御答弁だったわけですけれども、実際の結果から見れば、一年間の評価を比べてみれば、そうなっていないということが事実なのではないかなというふうに思います。

 評価結果の反映について、もっと真剣に取り組む必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 御指摘のとおり、総合科学技術会議の評価や予算査定におきまして、幾つかの事業につきまして厳しい評価を受けていることは事実でございます。

 一方でまた、統合準備会議等におきましては、両法人及び新機構に対し大きな期待も示されているということでございまして、今後、それぞれの評価結果の意味を十分に踏まえて、厳しい財政事情の中で、事業の選択と限られた資源の集中投入、そして業務運営の効率化によりまして、研究開発、人材、予算等の研究資源の効率的な活用を実現しつつ、社会が求めるすぐれた研究成果が効果的に生み出されるように、文部科学省としても適切に対処していかなければいかぬと考えております。

松本(大)委員 大きな期待が寄せられているというのは大変結構なことなんですが、私は、この質疑のための調べ物の段階で、実にさまざまな評価が行われているものだなというふうに感嘆をいたしました。

 まずは、先ほどの機関評価委員会の報告書です。それから、先ほど申し述べました総合科学技術会議のS、A、B、Cの優先順位づけがある。さらに、今回の統合に当たっては、原子力二法人の統合準備会議による評価見直しが行われた。サイクル機構は、動燃改革を受けて、運営審議会による経営の外部評価が行われた。この先、独法化されれば、独法としての評価制度が今度は適用されることになると。

 評価は結構なことなんですけれども、一年たってその評価が改善されていない、適切な反映がされていないということであれば大変ゆゆしきことでありますし、そもそも評価は数で勝負するのではなくて、ぜひ質で勝負をしてほしいなというふうに思うわけであります。

 評価される方にとっても、これは負担ばかり多くなるということになりかねないと思うんですが、さまざまな評価が乱立している中で、その質を確保するためにも、数は少なくてもいいから、ある程度きっちりとしたものに集約していくという必要性があると思いますが、いかがですか。

中山国務大臣 まさに御指摘のとおりで、いろいろなところからいろいろな評価を受けても困るわけでございますが、しかしまた非常に限られたところの評価だけに頼ってもいかぬわけでございますから、その辺のバランスは非常に難しいと思います。

 独立行政法人につきましては、この通則法に基づきまして、文部科学省の独立行政法人評価委員会が、当該事業年度における業務の実績評価、それから中期目標の期間における業務の実績評価を行うこととされております。また、先ほど私も出席させていただきましたが、総合科学技術会議におきましては、毎年度予算要求に際しまして、独立行政法人等の業務の実施に当たりまして、主要な業務の優先度、関連する施策等との重複や連携等について検討し見解を示すことが行われております。

 これらの活動は、それぞれの視点から行われておるわけでございまして、評価が乱立しているものとは考えておりません。研究開発評価というのは、質の向上や効果的な資源配分を行うという観点から極めて大事でございまして、今後とも、評価の進め方につきましては工夫改善を重ねまして、適切な評価が得られるように努力してまいりたい、このように考えております。

松本(大)委員 目を変えるというのも大変重要なことでありますが、私が言いたいのは、思い出したようにやるとか、アリバイづくりのようにやるとか、そういうことではなくて、ぜひ質の高い評価を継続的にやってほしいな、継続的な検証を可能にしてほしいなということであります。

 時間がありませんので最後の質問に移りたいと思いますが、先ほどの総合科学技術会議の評価では、八項目についてBとCという辛い評価がされている、この七年間で二法人合わせて七百六十億円も予算を削減されている。

 一方で、こういった機関評価、あるいは今回の統合準備会議の報告書を見ると、統合後の法人に対する期待が非常に大きい。ずれというかギャップが非常にあるわけでございます。一方ではだめだと言われ、お金も減らされている、一方では頑張れ、もっとお金をつけろというふうに言われております。

 大臣はこの矛盾についてどのようにお考えでしょうか、そしてそれをどのように解決すべきとお考えでしょうか。

中山国務大臣 非常に難しい問いでございまして、私のような門外漢のわかるところじゃないのですけれども、やはりそういう意味では、一つの事業について幾つかの視点から評価していただくというのは、非常に大事なことだと思っているわけでございます。そういった評価を十分に踏まえた上で、選択と集中ということを重点的にやっていくということが私の答えられることではないか、このように考えております。評価とかそういったものについては、やはり専門家の先生方の意見を十分尊重しながらやっていくということになるのではないか、このように考えております。

松本(大)委員 やはり、きょうの質疑を聞いている限りでは、経営の不在という、経営サイクルが機能していないというふうな感じをぬぐい去ることはできませんでした。

 要するに、計画やコスト、コストや期限というものが不明確であるということ、評価は身内にとても甘いものになって、お手盛りの評価であるということ、厳しい評価を受けても見直しが不十分で評価が改善されない、これでは、やはり国民のコスト負担に対する納得感というものは、なかなか得られないのではないかなというふうに思います。

 その結果、結局、お金も人も先細りとなり、原子力の大前提である安全確保というものがままならなくなるということに強い懸念を指摘しまして、私の質問を終わります。

斉藤委員長 午後四時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後二時五十三分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時一分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。川内博史君。

川内委員 民主党の川内であります。

 二回の休憩を挟みまして、中山文部科学大臣には、きょうは大変長時間質疑に御出席をいただいておりますことに心から感謝を申し上げたいというふうに思います。

 まず、法案の質疑に入る前に、実は私、筆頭を務めさせていただいておりますが、国対から、前々からこれを大臣に聞け、あるいは副大臣、政務官にこれを聞いてこいと言われていることがあったんですが、私個人的には、中山大臣を初めとして、人づくりの頂点に立つ文部科学省の大臣、副大臣、政務官の皆さんは、そんなことはあり得ない、大丈夫だというふうに国対に返答していたのですが、いや、どうしても確認をしろ、どうしても確認しろと言われるので、きょうお聞きをいたしますが、今すぐお答えいただけないことだと思いますので、文書で一週間後ぐらいに御返答いただければ結構かと思います。その方が時間もお互いに短縮できますので。

 一番、年金の未納はないか。これは大臣、副大臣、政務官にお尋ねいたします。

 二番、郵政民営化に対する考え方。大臣、副大臣、政務官にお尋ねいたします。

 三番、自由民主党の郵政懇話会に入っていらっしゃいますか。大臣、副大臣、政務官にお尋ねいたします。

 さらに、政治と金の問題に関して、迂回献金や旧橋本派からの献金がございますか。大臣、副大臣、政務官にお尋ねをさせていただきます。

 以上、四項目にわたる質問でございますが、一週間後ぐらいに文書で大臣お取りまとめをいただいて御回答をいただけるものというふうに思いますが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 自分のことについては答えられますけれども、一緒でいいですか。(川内委員「もちろん、お答えいただけるならどうぞ」と呼ぶ)

 年金につきましては、義務化された昭和六十一年四月以降ずっと払っておりまして、私、実は去年の六月に六十歳になりましたので、それまで払っていました。

 それから、郵政民営化については、内閣の方針に従って、内閣一致して民営化に臨んでまいります。

 郵政事業懇話会の加入状況でございますが、閣僚としてお答えする立場にございませんが、一議員としては、加入しておりません。

 それから、迂回献金とかそういうのはありません。

 ほかの、副大臣、政務官については、また一週間後ぐらいに報告させていただきます。

川内委員 大変、もともと尊敬をし、お慕いを申し上げております中山大臣には、その誠実なお人柄そのままにお答えをいただいて、私も言わずもがなのことを申し上げてしまったなと内心じくじたる思いを持つものでございますが、これもお互いに職分の一つということで御理解をいただきたいというふうに思います。

 それでは、改めまして質疑に入らせていただきたいと存じます。

 本日の日本原子力研究開発機構法案でございますけれども、さまざまな午前中からの議論を聞いておりまして、やはり、法案の筋の悪さというか、両法人が統合することの意義というものが余り見出せない。政府の研究開発局長の御答弁やあるいは大臣の御答弁を聞いておりましても、きっかけは何で統合するんですかという質問には、平成十三年の特殊法人等整理合理化計画が発端だということで、両法人を統合した方がよりすばらしい国策である原子力政策に資するからだということではなくて、そういう行政改革の観点のみが出発点であったということを図らずもおっしゃられるわけでありまして、そういう意味では、非常に、この両法人の統合された原子力研究開発機構という事業団が、今後ますます国民の皆さんの信頼を受けて安心、安全な原子力政策に資することができるかどうかということをもう少し議論させていただかなければならないというふうに思うわけでございます。

 まず、十五条の機構の役員及び職員の秘密保持義務についてさまざまに議論が出ておりましたけれども、大臣は、反社会的な行為を秘密として考えるわけではない、そういうものは当然にしっかりと報告なりあるいは公開なりをされていかなければならないものだというふうにお答えになられましたし、局長は、この機構のお取引先の、相手方企業の秘密、あるいは相手方企業の技術等が秘密の具体的な内容であるというふうに午前中おっしゃったんです。

 どうも私は科学技術に関してまだ不勉強でございますので、この秘密というものの具体的な内容について、もう少し、こうだと、要するに、秘密というのはこれであって、それ以外はこの十五条に言う秘密保持義務の秘密には当たらないんだということを明確にしていただきたいというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 この十五条に言う秘密の内容といいますか範囲といいますか、そういうお尋ねであったかと思います。

 この十五条の秘密保持義務の適用される秘密の範囲と申しますのは、最終的には裁判所で個別に決定されるということがあるわけでございますけれども、一般的に申しまして、まず事実として一般に知られていないものでありまして、それを外部に漏らすことにより特定の法益を侵害するものというぐあいに定義づけられております。

 これをもう少し具体的に申しますと、きょう私の方からも答弁いたしましたけれども、新機構が他の研究機関などと例えば共同研究、共同技術開発等そういうことをやるような場合でございますけれども、その場合の相手先の他の研究機関が積み上げてきた研究の成果、あるいはもちろん発明といったこともあるでしょうし、もちろんなかなか他の者は得られがたいようなノウハウもございます。もちろん、相手先が研究機関ではなくて、特定の企業とある種共同活動をしたような場合は、その営利企業の営業上の秘密といったようなこともこの秘密の中には想定をされるということでございます。

 したがいまして、先生もおっしゃいましたが、また大臣のきょうの御答弁にもございましたけれども、反社会的なこと、犯罪でありますとか明確な法律違反でありますとか、そういったことはこの秘密の中には含まれないということでございます。

川内委員 では、私のつたない記憶によれば、例えば、壁にちょっとしたひび割れがあることを見つけた。そうすると、直接の担当者は、いや、そのぐらいのひびは全く問題ないというふうに主張している。しかし、そのひびを見た職員なり、あるいは職員でなくても下請の会社のだれかが、そうはいっても何か心配だなということで、機構の責任あるだれかに報告するなり、あるいは文部科学省にそのことを報告するなりというようなことは、この秘密保持義務違反には当たらないということで理解してよろしいでしょうか。

坂田政府参考人 ただいまの先生のお尋ねについて、私なりに少し解釈を加えて御説明いたしますと、例えば、それがある原子力施設でありまして、そのひび割れが発見されたときに、発見した人が、このままだと、もし地震が起こって壊れてしまうかもしれない、そうすると非常に施設が危険であるというように本当に思った場合、それはしかるべき方に御連絡することは当然でありましょうし、場合によっては、原子炉等規制法で認められておりますけれども、いわゆる内部通報、そういったことも当然あり得ることだと思います。

 したがいまして、今のような場合に、壁のひび割れ自体が今回の新機構法の十五条に言う秘密に該当するということは考えられないのではないかと私は思います。

川内委員 済みません、僕はすごいしつこい性格なんで申しわけないですけれども、壁にひび割れがあって、それを偉い人が、これは絶対だれにも言うな、このぐらい問題ないんだ、これをもしだれかに言ったらこの十五条の秘密保持義務違反に当たるぞと言われた場合でも、それはだれかに報告することに関しては全く問題ない、そういうことはやはりきちんとやらなきゃいけないということで理解していいですね。

坂田政府参考人 先生のおっしゃるとおりであると思います。そういうことを発見した人は通報してしかるべきだと思いますし、仮に上司の方がそういうある意味の不当な圧力をかけるというようなことでありますと、これは本来、原子炉等規制法で認められております内部通報者、そういうことをやった場合でも決して職場において不利益なことをしてはいけないということになっておりますので、そういう責めがむしろ会社側の方に出てくる可能性の方が高いというぐあいに思います。

川内委員 ありがとうございます。それでは、次の質問に移らせていただきます。

 この法案の本会議での趣旨説明及び質疑で、我が党の青木愛議員の質問に対して、大臣は、「現在、原子力委員会において新しい原子力長期計画策定の議論が行われておりますが、核燃料サイクル確立のための研究開発は、原子力発電による長期的なエネルギー安定供給等の観点から重要なものであり、今後とも着実に実施していく必要があると考えております。」と答弁をされていらっしゃいます。

 原子力長期計画というのは、今既に動いているもの、そしてまた来年に向けて策定を議論しているものというふうに理解をしておりますけれども、新しい長期計画の内容について、文部科学大臣は既に承知をしておられるのでしょうか。

中山国務大臣 まだ私自身は承知しておりません。

川内委員 十一月一日の原子力委員会の新計画策定会議において、来年に向けた原子力長期計画の中に核燃料サイクルをどのように位置づけるかということについての議論があったようであります。その議論の中で、核燃料サイクルの推進の方針を維持するということが決まったかのような報道がございましたけれども、そのような決定があったのかなかったのか。そしてまた、もし決定をされたとすれば、どのような内容なのかということをお答えいただきたいと思います。

近藤参考人 原子力委員会の新計画策定会議は、十七年中に新しい長期計画を策定することを目指して、現在審議中でございます。

 それで、核燃料サイクル政策につきましては、エネルギーセキュリティー、環境適合性、経済性、核不拡散性、さまざまな観点からそのあり方等について調査研究を行い、ただいまは、その結果を踏まえて、これを政策の基本的考え方としてまとめていく、そのための論点整理を行っているところでございます。

 御指摘の十一月一日に開催いたしました新計画策定会議におきましては、前回に引き続きまして、この基本的考え方を、再処理路線をベースにするものと、それから直接処分路線をベースにするものに集約して論点整理を行いまして、この紙というかこの案について御議論をいただいたところでございます。

 その結果として、次回の会合には、第一案、すなわち再処理路線をベースとする基本的考え方をブラッシュアップすると申しましょうか、この路線をベースにする考え方に、これまでのさまざまな御議論、御懸念等を反映した中間取りまとめというものを事務局として案を用意して御議論いただくのかな、そういうことで会議の取りまとめを行ったところでございます。

 したがいまして、過日の策定会議で何か基本的方向について決定を行ったということはございません。策定会議としては、今後とも議論の節目節目で中間的な取りまとめを行いつつ、核燃料サイクル政策の基本的考え方を含む原子力政策あるいは原子力研究開発利用の今後のあり方について、御指摘のように十七年中に取りまとめるべく、十分な議論をしていきたいと考えているところでございます。

川内委員 委員長にも、きょうはわざわざありがとうございます。結構いいお声なので、聞きほれておりましたけれども。

 まだ決定をしたわけではない、議論の中間の段階であるという御答弁でございました。

 そもそも、私、この原子力長期計画というのが閣議決定をされたりするものだというふうに思っていたんですね。ところが、この原子力長期計画というのは閣議決定をする性格のものではないというふうにお伺いをしております。

 ところが、きょうの午前中からの答弁を聞いておりましても、原子力長期計画に沿ってとか、あるいは原子力長期計画にのっとってとかいう、まくら言葉のように使われる言葉でありまして、そもそも原子力長期計画とは何なのか、その法的な位置づけあるいは政府との関係、そしてまたその原子力長期計画が持っている法的な効果あるいは法的な手続、決定の手続等について、簡単にちょっと御説明をいただきたいというふうに思います。

塩沢政府参考人 御説明申し上げます。

 原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画、これが今先生がおっしゃった長期計画でございますが、原子力基本法第一条に示される目的を達成するための国の施策が計画的に遂行されるのに必要かつ有効であるという判断から、同法第四条に基づいて、昭和三十一年以来、原子力委員会が策定してきているものでございます。

 その意義ということについてのお尋ねですが、累次の長期計画は、原子力発電……(川内委員「いや、意義は聞いていないんです。法的位置づけ、政府との関係、法的効果、決定手続」と呼ぶ)はい。法的位置づけを御説明いたします。

 累次の長期計画は、原子力発電、核燃料サイクル、放射線利用などの各分野における国の施策の基本的な考え方と、これに基づく研究開発、誘導、規制の各施策の方向性を示すものでありまして、原子力行政を担当する各行政機関が政府全体として、整合的、計画的に研究開発、規制、誘導政策を実施するための指針として、重要な役割を果たしてきておるものでございます。

 それから、決定手続でございますが、従前におきましては、意思決定過程において広く国民等に対して案を公表させていただきまして、それに対して提出された意見、情報等を考慮して意思決定を行う、いわゆるパブリックコメント手続を経て、原子力委員会としての決定を行っております。

 今回の策定作業におきましても同様の手続を踏むものと想定しておりますけれども、実は今回の策定作業は、原子力委員会が内閣府に移って初めての策定作業であることもあり、今後の新計画の内容等も見きわめつつ、その決定手続については検討していきたいというふうに考えております。

 それからさらに、お尋ねの政府との関係でございますが、原子力委員会の決定は、基本的には行政庁で尊重されるべき性格のものでございますが、これを具体的にどのような形で担保するかということについても現在検討中でございます。

 以上でございます。

川内委員 どうも私は、きょうは原子力委員会の近藤委員長にもお運びをいただいているわけでございますけれども、原子力委員会が策定をする原子力長期計画、これが、もちろん十分な御議論をされていらっしゃると思うし、公開もされているわけですよね。それはそれで十分に評価をすべきことであるというふうに思うんですけれども、しかし、政府の原子力政策の隠れみのというか、原子力委員会がつくった原子力長期計画がこうなっているからというような、言葉はちょっと不適切かもしれないんですが、言いわけの材料のようにされてしまっているのではないかと。

 午前中の審議で、中山大臣が図らずもおっしゃった、原子力政策について立ちどまるわけにはいかない、いろいろあるけれども、立ちどまるわけにいかないんだという御心情を吐露されたわけでありますが、なるほど、私も立ちどまるわけにはいかないだろうというふうには思うんですが、しかし、この原子力委員会の構成メンバーあるいはこの新計画策定会議の構成員のリストなども公表されておりますので拝見をさせていただきますと、ほとんどが、核燃料サイクルについてもともと立場上推進の意見をおっしゃるであろうという方たちが大宗を占めている。中川経済産業大臣は先日の本会議で、十一月一日の新計画策定会議でも核燃料サイクル推進の意見が大勢を占めたというふうに答弁をされているわけでありますが、これは、原子力の安全性とか、あるいは安心、信頼感というものに疑問を持つ人たちから見たら、それはこのメンバーだったらだれだって推進の意見が大勢を占めるだろうと思うと思うんですね。ほとんどが関係者ですから。関係者じゃない人が、生協の方とそれから昔から反対してきている人が、勇気ある人が一人ですね。そのくらいが反対者で、ほとんどすべてが大体推進の人。

 中には、新計画策定会議のメンバーでありながら、この策定会議の議事録によりますと、日本原燃が主催するいわゆる住民説明会、これが県内四カ所で開かれまして、私それらの司会進行をさせていただきました、その間、そのときに感じたものは、日本原燃の非常に真摯な説明あるいは必死に取り組まれている姿に、県民の一人としていたく感動しましたのでとおっしゃっておるわけです。新計画策定会議という、日本のエネルギー政策の、これは文部科学大臣もその計画にのっとってと言うし、内閣総理大臣に勧告をするということもできる非常にある意味強い権限を持った原子力委員会、そしてまたその下部にある新計画策定会議の委員の方が、事業者側の住民説明会の司会を四回もやって、そこで感動したというようなことをおっしゃっているわけです。私は、こういうところにこそ、国民の皆さんがこの核燃料サイクル本当に大丈夫かという根本的な原因が隠されているというふうに思うんです。

 これしかないんだ、後戻りできない、やるしかないということでやられるのであれば、反対派もじゃんじゃか入れて、どんどん意見を言っていただいて、それに対してはこうなんです、こうなんですというその場での説明をしっかりしていくことが何よりも求められると私は思うんですね。

 これは、ごめんなさい、ついさっき質問通告をさせていただいたのでお答えいただけないかもしれないんですが、この司会をしていた新計画策定会議の委員の方に謝礼なり車代なりというのが日本原燃から支払われていたんでしょうか。

塩沢政府参考人 ただいま先生が最後に御質問されたことについては、私ども承知をしておりません。

 ただ、先生がおっしゃった原子力政策については、専門的な検討だけでなくて、国民の方々の理解それから安心を得るというのは非常に大事なことだと思っております。そういうことで、今回の新計画の策定会議におきましては、地方自治体、それから市民、NGOの方々、事業者、研究機関、そういった出身の方々から、学術分野、性別あるいは地域のバランス、さらには原子力をめぐる意見の多様性ということも考慮して人選をさせていただいたというふうに理解をしております。

 ちなみに、この人選あるいは……(川内委員「わかりました」と呼ぶ)済みません。人選の考え方については原子力委員会で検討して、すべて公開をしておりますので、その考え方に基づいて人選をしております。

川内委員 今の御答弁がまさしく日本の原子力政策の混迷をそのままあらわしていますね。自分たちがやっていることは公平、公正なんだ、わかってくださいと一生懸命おっしゃる。しかし、このメンバーのリストを見れば、全部、どんな人が見たって、もともと推進派の人たちだよねと言わざるを得ないんですよ。そこをまず認めていかないといけない。

 それから、謝礼や報酬が支払われていましたかという質問に対しては、承知をしていないというふうにお答えになられたが、これは、日本原燃は私はある意味いい会社だと思いますよ。うちの事務所が役所に聞いても教えてくれないんで、うちの事務所が日本原燃に直接電話したんですよ。そうしたら、いや、そんなことはありませんとか、謝礼も車代も払っていませんと言うのかと思ったら、一日につき八万円払っていますと正直に答えるわけです。ある意味、きちんと正直に答えるべき部分については正直に答えなきゃいけないということは、現場の人たちはわかっているんですよ。ところが、ここにいる人たちが全く、地域性を考慮してとか、あらゆる学識の分野から選んでいますと言うけれども、果たしてそうなっていますか。そうじゃないから、この新計画策定会議で物すごい偏った意見ですよ。世の中の人たちの見方とこの新計画策定会議の見方とは百八十度違うと思いますよ。だから、長期計画をつくったときにまた非難が物すごく出るわけです。私はそう思います。

 大臣、近藤委員長もお見えになっていらっしゃいますから、僕は今からでも遅くないと思うんです。この新計画策定会議に、それこそがりがりの反対派も、もう核燃料サイクル大反対だ、一体何言っているんだというような人たちも五、六人入れて、それで、その人たちを説得できたときに初めて日本の原子力政策というのはうまくいくし、この両法人の統合もうまくいくと思うんです。どうですか。最後の質問になりますけれども、委員長と大臣と御答弁をいただきたいと思います。

近藤参考人 策定会議の構成につきましては、先ほど事務方から説明したことが、まさしく原子力委員会の決定に書いてあることなんですが、ただ、私はたまたまこの会議の議長をしておりまして、そこで非常に気を使っていますことは、私どもは事を多数決で決定するのではなくて、議論を尽くして、最終的になるほどという納得のできるものにしたいと考えていることをなお一つ申し上げたい。

 それからもう一つは、この間におきまして長計についてご意見を聴く会というのを十回以上やっていまして、そこでさまざまな方々から検討すべきイシューについて御提言をいただいて、それを議題にし、論点にし、整理して、その上で、それについてそこにいらっしゃる方がどういうお考え、何に重点を置くのか、我が国の将来にとってこのことが重要ということについて、それぞれ、お立場あるいは学問的信条によって異なる意見を持っていることを十分にお互いに披瀝していただいて、その上で、より原子力基本法の定める目的を達成するためにどちらがすぐれたアイデアかということについて最終的に委員会として判断していきたい、そういう心持ち、思いで議事を進めております。

 御注意いただいたことについては、今後とも、さまざまな意見を聞く会の運営において参考にさせていただきまして、御期待に沿えるような計画をまとめたいと思いますので、引き続き御指導のほどよろしくお願いいたします。

中山国務大臣 今、構成員のメンバーを見せていただきましたが、具体的にどういう考えの持ち主かよくわかりませんが、よくまあ幅広く選んだものだと思いますけれども、この人選につきましてはコメントを差し控えたいと思います。

川内委員 私は、まだほかにもいっぱい言いたいことはあるんですけれども、李下に冠を正さず、事業者側の住民説明会に出て謝礼を受け取るというような方がこの新計画策定会議にいらっしゃるということに関しては猛省を促させていただきたいというふうに思いますし、そのことを申し上げて、質疑を終了させていただきます。どうもありがとうございます。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 法案審議に入る前に、震災に関して一言伺っておきたいと思います。

 前回の質問で、私は、新潟中越地震に関連して、学校の安全診断と安全対策を行うように要望いたしました。文科省は応急危険度調査を行ったようでございますが、まず、その結果を報告いただきたいと思います。

萩原政府参考人 新潟県中越地震におきます応急危険度調査についてお答えいたします。

 文部科学省では、今回の新潟県中越地震で被害の著しい小千谷市、越路町、川口町、旧小出町、旧堀之内町からの要請を受けまして、先月の二十九日から今月の三日にかけまして、文部科学省の技術系職員など八名を現地に派遣いたしました。公立小中学校など、被災をした文教施設三十八施設百四十三棟の応急危険度判定など、安全点検を実施したところでございます。

 調査結果でございますが、百四十三棟のうち、柱の大きなひび割れ等、構造体の損傷で危険と判定された建物が二十棟ございました。それから、天井材、照明器具及び本棚等の落下あるいは転倒で危険と判定された建物が三十二棟。危険というのを合わせますと五十二棟でございます。それから、仕上げ材などの部分的な剥離等で要注意と判定された建物が三十一棟ございました。それから、調査したけれども、軽微な損傷といいますか被害で、危険、要注意以外のものですが、これが六十棟ございました。

 この判定結果につきましては、その対処方法も含めまして速やかに設置者である市及び町の教育委員会にお知らせいたしまして、その判定区分に従って適切な対応をお願いしたところでございます。

石井(郁)委員 調査結果に見られるように、やはりかなりの学校がいろいろ危険にさらされているということがわかっています。また、要注意とされた建物もかなりあるということなんですね。今余震がなお続いていますし、しかもかなり強い余震だということもありますから、そんな中で子供たちは学校へ行くわけですから、その学校が崩れたら大変だということもありますので、私は、早急にやはり補修、改築など、万全の安全対策をとるべきだ。そのために、文部省としての、ぜひ大臣としての御見解、御決意を伺っておきたいと思います。

中山国務大臣 私の地元のえびの市で地震がありましたとき、約一年ぐらい余震がずっと続いて、屋外で生活した人が大変多かったことを思い出すわけでございますけれども、今回の中越地震に関しましても、予想以上の被害ということを聞きまして、早く、早急な復旧が図られますように、災害復旧事業に対しましては、地方公共団体等の設置者からの要請に基づき法律の規定による国庫補助を行うということにしておりまして、今後も、被災地域の学校の早期正常化に向けて、関係教育委員会等との連携を密にしつつ、被災地域への協力、支援等に万全を期してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 私は、やはり改修、改築となると予算が伴いますから、国として本当に補正にも反映させてしっかりとした予算措置をするということで、ぜひ大臣、頑張っていただきたいというふうに思います。

 それでは法案に入りますが、原子力研究開発機構法案で質問をいたします。

 この法案は、原子力研究所と核燃料サイクル機構の二つの組織を統合、独法化するというものですけれども、単なる改組で済む問題ではないというふうに思います。これまでの質疑の中でも、そのように見えてきたと思うんですね。我が国の原子力行政のあり方のその根本というか、あり方が問われる、そういう問題だというふうに私たちは考えています。

 例えば、核燃サイクル機構が特化して取り組んできたプルトニウム循環方式ですが、今新しい原子力長期計画策定の中で議論の中心になっている問題であろうかと思います。質問としては重なりますけれども、この長期計画の策定はいつまでに行うことになっているのか、確認をさせていただきます。

塩沢政府参考人 御説明いたします。

 原子力の長期計画は、昭和三十一年以来、おおむね五年ごとに、その時々の情勢変化あるいは技術の進歩などを計画に反映するために見直し作業を行ってきております。今回、現行の長期計画が来年の十一月でおおむね五年を迎えるということもございまして、来年じゅうの取りまとめを目指して現在検討を進めているところでございます。

石井(郁)委員 だから、原子力の長期計画はまだ確定していない段階ですね、現状を引き継いでいるということかもしれませんが。新しいものは今議論中ということですが、法案ではプルトニウム循環方式が継続、推進されることが前提となっているわけです。

 このことを問題にしたいわけですが、この法案を取りまとめてきた行革推進事務局ですね、この原子力二法人の統合、独法化に当たって、このプルトニウム循環方式路線というものの今後についてどのような検討をされたんでしょうか。

橋口政府参考人 お答え申し上げます。

 御指摘の核燃料サイクルにつきましては、平成十三年十二月の特殊法人等整理合理化計画におきまして、今後事業について講ずべき措置として、まず、エネルギー研究全体の中で、核燃料サイクル開発機構の行う研究開発の位置づけを明確にすること、高速増殖炉開発までに要するコスト、期待される成果、開発までの道筋、新エネルギー開発、核融合開発との優先順位、想定されるリスク等を国民にわかりやすく示すこと、核燃料物質再処理技術開発については、技術的課題を明確にした上で、課題解決に向けたコストと道筋を国民にわかりやすく示すとともに、毎年度、厳格な第三者評価により進行管理を徹底することなどとされているところでございます。

 このような検討を踏まえまして、日本原子力研究所の行う基礎的研究段階から核燃料サイクル開発機構の行う開発段階までを総合的、一体的に実施することが、研究開発の効果的、効率的な推進を図る上で有効であると考えられたものでございます。

石井(郁)委員 しかし、今のお話ですと、いろいろそういう課題がありますよと課題を列挙した中で、二法人の統合、独法ということを推進してきたというふうに私は聞いたわけです。だから、聞いているのは、我が国の原子力政策が今後本当にどうなるのか、どういうものとしていくのかという中身とは無関係に決められたのではないかと思うわけです。

 もう一方で、では、原子力の長期計画の中では、この二法人の統合、独法化というのは検討されたということはあるんでしょうか。

塩沢政府参考人 御説明申し上げます。

 原子力委員会としましては、行政改革を推進する観点からの、御指摘の原子力二法人にかかわる政府内部における検討内容については注視をしておったわけでございます。

 それで、特殊法人等整理合理化計画にかかわる閣議決定後、直ちに原子力委員会の臨時の委員会を開催し、原子力委員会としては、統合を前向きに受けとめるとともに、これまで両法人が担ってきた役割を一層効果的、効率的に実施し、原子力の総合的な研究開発体制を構築する観点から、関係者、関係省庁などの意見を聞きつつ、国民の視点に立って積極的に意見を述べることとする旨の見解を取りまとめ、発表しております。

 こうした方針のもとに、原子力委員会は、原子力二法人の統合についての意見を取りまとめ、統合作業の指針として示し、最終的には、本年の十月十二日に機構法案が閣議決定された折に、本法案において、機構の目的、業務の範囲及び原子力委員会の関与については、これまで原子力委員会が示してきた考え方と整合しているとの見解を取りまとめ、発表しております。

石井(郁)委員 今の質疑の中からも浮かび上がっている問題として、原子力の長期計画が来年じゅうだということですから、私は、今大変日本のエネルギー政策、原子力政策が議論になっている中では、やはり、この二つの法人の統合という問題は、その長期計画の中身を待って進んでもいいのではないかということを思うわけです。だから、結局は、原子力政策全体の中での問題というよりも、もう特殊法人の統合、独法化先にありきだという形で進められているということが、こういう拙速性という問題として日本の原子力政策、行政をさらに深刻にさせるのではないかということで問題だと思うわけであります。

 それで、今申し上げた核燃料サイクル政策ですね、プルトニウムの循環方式について、具体的にちょっとお尋ねをしたいというふうに思います。この問題では、私どもの党は、原発やエネルギー政策について、国会でも、予算委員会、本会議等でたびたび取り上げてもまいりました。特にプルトニウムの危険性については指摘をしたところでございます。

 この十年間だけでも、九五年高速増殖炉原型炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ火災事故、九七年に東海再処理施設の爆発事故、九九年東海村ジェー・シー・オーの臨界事故という形で、大変問題が起きている。核燃料サイクルの安全性というのが根本から問われる事態にずっとこの間来ているわけでしょう。だから、そういう重大事故が相次いだという中で、やはり再検討が求められているんじゃないかというふうに思うわけですね。

 ところが、この法案は、核燃料サイクルの確立のための高速増殖炉と必要な核燃料物質の開発と、推進の立場をこの法案では明確に打ち出しているということがあるわけです。それで、こういうプルトニウム循環方式路線というのは本当にどうだったのかということを、幾つかの点で提起をしておきたいというふうに思うわけです。

 一つは、九四年の原子力の長期計画を見ますと、二〇〇〇年代後半で高速増殖炉原型炉「もんじゅ」、あるいはもう実証炉まで運転されるということになっていて、新型転換炉やプルサーマルの利用とあわせて余剰プルトニウム不保持の原則が実現できるということになっていました。わざわざその需給見通しを、数字を挙げてバランスがとれるんだということを示していたわけです。

 そこで伺いますが、現在プルトニウムはどのぐらいありますか。

塩沢政府参考人 お答え申し上げます。

 本年九月二十一日に、文部科学省、経済産業省によって原子力委員会に報告された我が国のプルトニウム管理状況によれば、二〇〇二年十二月末の時点で、日本国内に約三・九トンの核分裂性プルトニウムを保有しております。

石井(郁)委員 だから、余剰プルトニウムは持たないことでバランスがとれるということからすると大変な量があるということですね、一つは。あと一つは、その計画自身がそのとおりになっていないという問題。

 では、そのプルトニウムの使い道というのはどうなんですか、全くとんざしているということが実情ではないんですか。新型転換炉というのは計画自体が取りやめになりました。高速増殖炉は、実証炉どころかその「もんじゅ」の運転の見通しが立ちません。再開見通し、立ちませんよね。

 昨年には、名古屋高裁金沢支部で設置許可無効の判決が出されました。それで、政府は最高裁で争うということを言っておりますけれども。つまり、その判決が出る前からこのプルトニウムサイクル路線の継続、推進を決めている。今、そうでしょう、係争中だけれども、もう推進を決めると。それで新機構の目的と業務に書き込むというのが今回の法案なんですよ。

 率直に伺いますが、私は、最高裁で負けるということもあるんじゃないでしょうか、いかがですか。

坂田政府参考人 裁判の件ですから、後ほど責任官庁の経済産業省からお答えがあるかもしれませんが、「もんじゅ」の推進をやっております文部科学省の立場として申し上げたいと思います。

 確かに、最高裁に今上訴をされております。したがいまして、「もんじゅ」の設置許可自体は法的に有効であるというぐあいに私どもは解釈をしておりまして、そういう意味で、その点を踏まえて、「もんじゅ」の運転再開に向けてできるだけ早く「もんじゅ」の安全性をさらに向上させるための改造工事に着手したいということで、地元に御了解を得るべく働きかけ、お願いを申し上げているところでございます。

 既に地元の敦賀市長からは御了解いただいておりますので、あと福井県の方から御了解をいただく必要がございますが、いろいろな形で話し合い等もやらせていただいておりますので、できるだけ早い機会にそのことが実現いたしますよう努力をしていきたい、こういうぐあいに思ってございます。

松永政府参考人 「もんじゅ」の高裁判決についての御指摘がございました。

 高裁判決につきましては、これまでの最高裁の判例に違背をしていること、重大な法解釈の誤りがあるというふうに私ども考えておりまして、上訴をしておりまして、現在係争中でございます。

 私ども、安全審査を担当いたしました立場といたしまして、「もんじゅ」の安全審査は適正に行われたものだというふうに判断しておりまして、最高裁判所におきましては適切な判断をいただけるものというふうに考えております。

 いずれにいたしましても、今後とも、私どもとしましては、法令に従って厳正に対処してまいりたい、かように考えております。

石井(郁)委員 それでは、具体的な例の、次、軽水炉でのプルサーマルについて伺います。

 これもまた問題が山積みでありまして、福島県とか新潟県など関係自治体の住民の反発は大変大きなものがあり、不安も大変大きなものがございます。

 資源の有効活用といいますけれども、軽水炉でMOX燃料を燃やした場合には燃料中のプルトニウムの質が低下するわけですね。つまり、核分裂しないプルトニウムがふえていく。だから、それ以上のリサイクルには適さないんじゃないかということですが、これは確認できますか。

坂田政府参考人 先生の、プルサーマルをやった使用済み燃料の再処理といいますか、燃料の再利用の問題のお尋ねがございました。

 MOX燃料を、軽水炉、今の原子力発電所で燃やした場合でございますけれども、燃料中のプルトニウムが中性子を確かに吸収いたしまして、先生もちょっと御指摘なさったと思いますが、次第に質量数の大きなプルトニウムに変化をしてまいります。この質量数の大きなプルトニウムには、核分裂をしない、つまり燃えないプルトニウムの含有率、割合が少し多くなりまして、そういう意味では、使用済みのMOX燃料を再処理しましてプルトニウムを何回も何回も回収するということをいたしました場合に、燃えないプルトニウム、余り役に立たない方のプルトニウムの割合が少しずつ多くなっていく、そういう傾向はあろうかと思います。

 そういう意味では、技術的にはある程度、回収する回数、これにはおのずと、効率性、費用対効果という観点でも、一定の限界があろうかというぐあいに考えております。

石井(郁)委員 ですから、やはりリサイクルには余りメリットがない、非常に回収に費用がかかったりするという問題だというふうに思うんですね。

 それから、ちょっとこれは専門的になるかもしれないんですが、私も名を聞きまして、さらにプルサーマル後の使用済みMOX燃料の中には、ネプツニウムというような半減期が数十万年を超えるという超ウラン元素が大量に発生するという問題があるようです。だから、廃棄物の処理など、本当に安全対策が確立されない限り、このプルサーマルというのは実施できないと思うんですね。その点、いかがですか。

坂田政府参考人 プルサーマルの再処理をした後のネプツニウムの問題のお取り上げでございますけれども、現在の普通の原発、つまり軽水炉の燃料にはウラン燃料が使われておりますけれども、それを燃やしまして、当然ながら再処理をして回収いたしますと、その中にもネプツニウム等が入っております。この点は使用済みのMOX燃料を再処理した場合でも同様でございます。

 現在、軽水炉のウラン燃料の再処理をいたしまして、この使用済み燃料から有用なウランとプルトニウムを回収するわけでございますけれども、残った方のネプツニウム等、これは超ウラン元素と言っておりますが、これは高レベルの廃棄物としてガラスの固化をして安全に地層処分をする。この点についてはMOX燃料の場合も同じでございますので、取り扱いは同じになろうかというぐあいに理解しております。

石井(郁)委員 ここのところでいろいろ、本当にもっと質疑を重ねなきゃいけないんでしょうけれども、結局、廃棄物処理で、今ちょっと最後におっしゃったガラス固化して地層に埋めるということですけれども、今問題になっているのは、一体、日本の地下にどれほど安全な、本当に地震がないと言えるその地層があるのかということですから、これはそんなことを簡単に言っていて済む話じゃないというふうに思うんですね。

 ですから、いろいろな意味で、幾つもの点で、このプルサーマル計画の中では、本当に安全性、安全の技術ということがまだまだ未確立、非常に問題があるという中で出ているものと言わなければならないわけです。だから、プルサーマルを実施したといって、資源的なメリットもない、廃棄物処分は一層困難だという問題です。

 だから、ここを考えるときには、プルトニウムが余っているからプルサーマル実施だという立場でやってきている例の循環方式、これをやはり、この逆立ちをやめさせるということ以外に私はないというふうに思うんです。

 しかも、プルトニウムというのは非常に高い放射性、放射能を持って、核兵器に簡単に転用できるというか、そういう問題として危険な物質だということで言われているわけですから、やはりこのプルトニウム循環方式というところにいつまでもこだわっていたのでは、本当の意味のエネルギー政策が発展しないということを言わなきゃいけないと思うんです。

 プルトニウム利用の三本柱だった新型転換炉、高速増殖炉、プルサーマルの現段階、このように見てきまして、だから九四年の原子力の長期計画では、高速増殖炉は二〇〇〇年代初頭には実証炉着手を、こう言っていたわけでしょう、実証炉だと。それはもう完全に行き詰まっている。だから、推進、推進とかけ声はしてきたけれども、全然、計画推進していないじゃないかということになるわけですね。

 そして、高速増殖炉の実用化ということに至っては、今世界ではもう撤退してきているんじゃないですか。アメリカ、イギリス、フランスは撤退している。固執しているのは日本ぐらいだと思うんですね。ですから、このまま従来の原子力政策を継続、推進するということでは、私は日本の原子力の未来そのものがかえって閉ざされるというふうに言わなければならないと思うんですが、この点では大臣の御見解はいかがでございますか。

坂田政府参考人 大臣のお答えの前に、ただいま先生から御指摘いただいたことに関連しまして、ちょっと御説明させていただきたいと思います。

 高速増殖炉の開発については、世界の国が日本を除いて撤退しているのではないかというお話がございましたが、若干正確ではないと思いますので御説明させていただきたいと思います。

 フランスは現在、原型炉フェニックスという発電能力二十五万キロワットの高速増殖炉原型炉、大体「もんじゅ」と同じぐらいの大きさでございますけれども、これを運転中でございます。二〇〇八年までは運転を続けたいというぐあいに聞いております。

 それからまた、ロシアでございますけれども、ロシアは実験炉の運転、それから電気出力六十万キロワットの発電炉の運転をやっておりますし、さらに八十万キロワットの高速増殖炉の、もうほとんど実用炉だと思いますけれども、これの建設途上にもございます。

 それから、中国におきましても、最近、高速増殖炉の実験炉のプログラムを始める、建設を始めた段階でございます。

 したがいまして、高速増殖炉の開発については、日本以外の国がやめているということは必ずしもそうではございません。

 私どもとしては、例えば「もんじゅ」の運転再開、これをぜひ近い時期にやりたいと思いますけれども、その暁には、この「もんじゅ」の原型炉の運転、それを通じまして、世界の高速増殖炉の開発にも積極的な貢献ができるような、そういうやり方をしていきたいというぐあいに考えているところでございます。

中山国務大臣 エネルギー資源に乏しく、隣国との間で電力の輸出入が困難である我が国におきましては、長期的なエネルギー安定供給の確保は国の存立基盤をなす重要な課題であると考えております。

 現行の原子力長計におきましても、高速増殖炉サイクル技術は、ウランの利用効率を飛躍的に高める可能性や、高レベル放射性廃棄物中に長期に残留する放射能を少なくして環境負荷をさらに低減させることができる等の可能性を有しておりまして、将来のエネルギーの有力な選択肢を確保しておく観点から、着実にその研究開発に取り組む必要がある、このように考えております。

石井(郁)委員 私は、そのプルトニウムのリサイクル路線というものを根本的に見直すべきだと。そういうことで世界を見ると、これはさっきドイツ抜かしましたけれども、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスなど撤退しているじゃないか、もう技術的困難で高速増殖炉路線から早々と撤退しているじゃないかということを申し上げて、ただ、言われるように、最近中国やロシアが取り組み出したというのはあるかもしれませんが、申し上げたわけです。

 フランスのことを、フェニックスのことを言われましたので、ちょっと私の知っている限りで言いますと、これはいわゆるプルトニウムリサイクル路線の話ではなくて、増殖炉としてのではなくて、何か高速中性子を使って放射性廃棄物の半減期を短くする高速炉だというふうに私どもは承知をしているんですが、ここは立ち入った話になりますから、立ち入ったというか、事実関係ですから、いずれ判明することではありますけれども、問題は、何度も言いますが、プルトニウムリサイクル路線というものは非常に問題を抱えているんだということを申し上げてきたわけであります。

 それで、今原子力エネルギーというのは、軽水炉再処理、高レベル廃棄物の処分という路線で日本の場合は突っ走ってきたわけですが、そして実用化を急ぐというやり方でやってきたけれども、本当に、先ほど申し上げたように、相次ぐ重大な事故が起きているという中で原子力への国民の信頼も非常に失ってきたということもあり、もっとやはり基礎研究の段階からやり直すべきじゃないのかというふうに思うんですね。

 だから、新機構に引き継がれることになっているこのプルトニウム循環方式という実用化路線、このことはもう私は撤回すべきだというふうに強調したいと思うんです。大臣は、これしかないというような御答弁なんですけれども、やはりそこにしがみつかないで、もっと本当にそうなのかという上で検討を重ねていいのではないか、その上で、こうした新機構の研究組織のあり方を考えて検討するというのがやはり原子力政策にのっとったあり方ではないのかということで申し上げてきたわけでございます。

 再度御答弁いただけますか、大臣。

中山国務大臣 いろんなお考えがあることは承知していますけれども、やはりこの日本におきましては、核燃料サイクルについては、経済性だけではなく、エネルギー安定供給等の観点を総合的に勘案して判断する必要があるというふうに考えていまして、核燃料サイクル確立のための研究開発に責任を有しております文部科学省といたしましては、原子力発電による長期的なエネルギー安定供給等の観点から核燃サイクルの確立は重要であり、今後ともその研究開発を着実に実施していく必要があると考えておるところでございます。

石井(郁)委員 次に、安全研究予算について質問をいたします。

 先ほども出ていましたが、ことしの八月九日、関西電力の美浜発電所三号機の配管破裂で高熱の蒸気が噴出して、五名のとうとい命が奪われました。六名が負傷するという、これは我が国原発史上最悪の事故が起きたわけでございます。

 これは、配管の減肉現象が重大な破断につながるという危険性は知られていました。関電の原発でも、枝管からの蒸気漏れが一九八三年にも起こっていたわけですね。それから、同じ加圧水型の米国のサリー原発では、一九八六年に配管破断で四名が死亡する、こういう事故が起きておりました。

 美浜発電所の三号機は、運転開始から二十八年たっている老朽原発なんです。美浜原発のように七〇年代に運転開始をした原発というのは何基存在するんでしょう。

松永政府参考人 お答え申し上げます。

 実用発電用原子炉につきましては、現在全国に五十二プラントが稼働いたしておりますけれども、一九七〇年代に運転開始をいたしましたものは、そのうち二十プラントでございます。

石井(郁)委員 重大じゃないかと思うんですね。二十基もあるということでしょう。

 それで、ことしの十月二十一日に、関西電力株式会社の美浜発電所三号機二次配管事故についてという原子力安全委員会の決定が出されていますが、それによりますと、高経年化への対応、つまり年数たっているという問題ですね、やはり次のように述べております。

 我が国の多くの原子力施設が運転開始後二十年以上経過している。事故発生の原因となった肉厚管理問題への対応を含めて、高経年化への対応に係る安全研究を重点的に推進し、その成果を共有することが重要である。そのために、当委員会は、国内外でこれまで実施されてきた高経年化への対応に関するさまざまな研究成果等について原子力安全専門部会のもとで検討し、安全研究の推進を図るというふうに述べられています。

 この指摘のように、二十年以上経過した高経年化した原子炉、これをこんなにたくさん抱えている。約半数近く。だから、我が国にとってはやはり安全研究というのは極めて重要な課題ではないのかというふうに思いますが、まずこの点での大臣の御見解をお聞かせください。

中山国務大臣 御指摘のように、高経年化した原子炉がふえている現状でございますので、安全研究というのはますます重要になってきている、このように考えておりまして、日本原子力研究所では、原子炉施設の高経年化に伴う材料の信頼性向上のための研究を初めとする原子力施設に関する安全研究を進め、規制行政庁や原子力安全委員会の安全基準等の整備に貢献してきておるところでございます。

 文部科学省といたしましても、安全研究の重要性を考慮し、統合後の新機構におきましても引き続き着実に研究が実施されるよう、適切に対処してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 二十年以上経たから大変だと言っているわけじゃなくて、本当に早い段階から念には念を入れた安全対策が求められるというふうに思うんですね。原発問題は、本当にきょうも強調されましたように、安全には安全を期すという立場でやらなくちゃいけないわけでございます。

 ところが、実際は、本当に日本はどうなっているかという問題ですけれども、これは国としても安全研究というのがやはり軽視されてきたんじゃないか。日本原子力研究所の二〇〇〇年度以降の安全研究の関連予算というのはどうなっているのかということで、これをお示しください。

清水政府参考人 原子力研究所の安全研究についてのお尋ねでございますが、御案内のように、日本原子力研究所は、原子力安全委員会が定める安全研究計画に基づいて安全研究を実施しているところでございます。

 予算につきましては、平成十二年度以降の推移で申し上げますと、十二年度三十九億円、十三年度四十三億円、十四年度三十五億円、十五年度二十一億円、平成十六年度十九億円となっております。

 これは、一つは研究の進捗状況、さまざまな研究が同時に走っておりますので、進捗状況というものもございますし、また、安全研究の課題を、規制行政庁や原子力安全委員会のニーズに合わせて優先づけをしながら、効果的、効率的に実施するということもございます。

 そういう意味で、しかしながら、安全規制上真に必要な研究について、これまでも着実に実施されてきたものと考えております。

石井(郁)委員 ちょっともう一度、数字ですけれども、平成十六年度とそれから平成元年ですね、一九八九年度をお示しください。ちょっとさっと言われたので。

清水政府参考人 失礼いたしました。

 平成十二年度は三十九億円、平成十六年度十九億円でございます。(石井(郁)委員「いや、平成元年は。一九八九年」と呼ぶ)平成元年でございますか。失礼いたしました。

 ちょっと今手元に資料を持ち合わせておりませんので、済みません。

石井(郁)委員 これは私の方でつかんだ資料ですけれども、一九八九年度では百二十八億円あるんですよ。それで、十六年度十九億円でしょう。どれだけ減りましたか、これは。驚くような減り方じゃありませんか。ずっと経年見ても、この安全研究予算というのはずっと減り続けているんですよ。

 私は、やはり本当に、これは政府が原子力安全神話を振りまいてきたというか、安全神話に寄りかかってきたからこういうことになっているんじゃないかと思うんですが、一貫してこうした安全の研究関連予算がこんなに落ち込んでいる、これでどうして本当に安全性を保てるかというふうに思うんですね。

 どうですか、大臣。驚くような実態じゃありませんか。(発言する者あり)いや、もういいですよ。平成元年、私の数字で間違いなければ、それを前提にお話しさせてください。

清水政府参考人 失礼いたしました。

 平成元年の数字でございますが、安全性研究費は百二十八億円でございます。

 これに関して若干ちょっと注釈をつけさせていただきますと、この時点におきます施設等の費用、経費も入っておるという数字でございます。

中山国務大臣 平成元年に比べますと本当に減っているなと思うんですけれども、今政府参考人が答えましたように、建物の建築費だとかいろいろあるのかもしれませんが、さらにそれにプラスしまして、いろいろなプロジェクトの進捗状況とか、そんなものもあるのかもしれません。

 しかし、きょう、朝からずっと言っていますように、原子力に関しましては、まずは安全、安全、安全だろう、こう思うわけでございまして、予算がふえたから、では安全になったということでもありませんが、やはり非常に乏しい予算ではありますけれども、安全関係の研究開発ということに関しましては最優先で措置すべきものであろう、このように考えております。

石井(郁)委員 原子力に関しては、安全を口で幾ら叫んでもだめ、安全保障にならないわけで、やはり具体的な裏づけがないとできないと思うんですね。美浜原発でのあんな驚くべき状況、これが放置されているということについて、本当に真剣に取り組んでいただきたいというふうに思うんですね。

 この点は、二〇〇三年に出された、原子力安全委員会の国の原子力の安全確保に関する基本にかかわる観点から憂慮すべき事項についてということが出されておりまして、このように言っています。新法人は、我が国の原子力の安全確保に関する基本政策を適時的確に踏まえて、原子力研究開発の中心的役割を担う機関として総合的に安全研究を実施すべきだと。だから、原子力安全委員会からは、やはりそういう強い意向が出されているわけでしょう。それから、特に新法人には安全規制を支える安全研究の着実な実施、原子力施設の事故、災害時等における原子力防災、緊急時対応への技術的支援に関して国の中核的機関としての役割が期待されていると。「高度かつ先進的原子力安全研究に関する国際的な研究拠点としての役割なども期待されている。」

 原子力安全委員会の方からはそういう強い指摘がされているということがありまして、やはりそれをしっかり踏まえて、今後、新機構というのは、私たちはこの機構に反対なんですけれども、中核的機関としてもきちんと国際的な研究拠点の役割を果たしていかなきゃいけないというふうに思うんですね。つまり、現状ではそれはもう果たせないという状況にあるという点で、私たちは大変問題にしているわけですね。

 それで、安全研究関連予算というのを抜本的にふやすという点では、今度は主務大臣となるわけで、大臣の御決意もちょっと伺っておきたいと思います。

中山国務大臣 繰り返しになるかもしれませんけれども、この安全研究が極めて重要であるということから、日本原子力研究所では、原子炉施設の高経年化に伴う材料の信頼性向上のための研究を初めとする原子力施設に関する安全研究をこれまでも進めてまいりましたが、今後も、統合後の新機構においても引き続き着実に研究が実施されるよう、適切に対処してまいりたいと考えております。

石井(郁)委員 次の問題ですけれども、主務大臣の責任明確化のもとで、新機構法の第十二条で、新法人の理事長選任に対しまして原子力委員会の同意権がなくなったということがあります。私は、これは原子力委員会及び原子力安全委員会の新機構への関与が弱まることを示しているんじゃないかということで、重大な変更だというふうに考えております。

 きょうは原子力委員会からもおいでいただきましたので伺いたいと思うのでございますけれども、原子力委員会の同意を得てという同意権というのは、拒否権を含むものだという、大変、一定の強い内容を持っているというふうに思うんですね。だから、間違った人選があればそれは拒否権も出しますよというふうにも考えられるということでいいますと、この同意権という中には、やはり間違った人選や拒否しなければならないような人選があることを前提とされますと、どういうものだというふうに考えられるでしょうか。これは原子力委員長にお尋ねをしたいと思います。

近藤参考人 お答えいたします。

 この法案で規定された原子力委員会の関与に関しましては、基本的には二つのこと、一つは、従来の特殊法人と原子力委員会の関係ということと、それから、まさしくある新しいビジョンを持って制度として整備された独立行政法人制度の趣旨を勘案して適切なところを決めるべきというふうに理解をし、これが原子力委員会の立場でございますが、その立場に立ちますと、新法人の運営等の基本的な考え方と私どもの考えるところは整合していると考えております。

 いずれにしても、原子力委員会の審議は公開で行われるものでございますから、さまざまなことについて意見を申し上げるプロセス自体が透明性があるといたしますと、今にわかにこれについて同意、不同意ということについて判断を求められると準備が足りないのではございますけれども、しかし、およそ世間の常識にかかわるところについて、我々に与えられた責任の範囲で、その場その場で公開で真剣な議論をし御意見を申し上げる、それはほとんど同意というプロセスと基本的には差がないというふうに私どもは理解しております。

石井(郁)委員 私は、原子力基本法に示されている原子力政策の原則、とりわけ平和利用の原則でございますね、それを保持するために、原研やサイクル機構の理事長の人選というのは原子力委員会の同意を得てというふうになっていると考えられるわけですが、そういう理解でよろしいでしょうか。これも原子力委員長にお願いします。

近藤参考人 そこに、原子力基本法にありますさまざまな要件を踏まえつつ御意見を申し上げるということについては、おっしゃるとおりでございます。

石井(郁)委員 現行では、理事長は、「原子力委員会の同意を得て」となっているところ、これは原研もサイクル機構もそうですが、それが「原子力委員会の意見を聴かなければならない。」というふうに文言が変わっているわけでして、同意ということから意見を聞くということに変わるということは、やはり変更ではないのかと考えざるを得ないわけですが、それで伺ってきたところです。

 もう一点、こういう問題として伺いたいと思っております。

 これは二〇〇二年六月十一日の原子力委員会の定例会議の議事録でございますが、このようにありました。「原子力基本法が原子力委員会に要求していることは、平和目的に限って原子力の研究開発及び利用があり得るのだ、ということであり、まさにこれが「原子力の平和利用の番人」と言われているところである。したがって、原子力基本法を改正しようといった動きが具体的に出てきたときは、原子力委員会は身を挺してこれと対決しなければならない。」これは藤家委員長の御発言なんですけれども、私はやはり、ここまできちんとした決意が述べられているということを非常に感動もいたしました。

 それで、少し生々しい話ですが、原子力委員長として、もし将来的に、文科大臣が核武装は可能だ、原子力を軍事に転用するなどということを言い出した場合はどういう措置をとられるでしょうか。(発言する者あり)いや、これは単なる架空の話じゃないんですよ。そうだったらいいんですけれども、二〇〇三年の総選挙での、これは毎日新聞のアンケートがございまして、情勢によっては核武装も検討すると答えた国会議員が何人もいらっしゃいます。まあ、個人はいろいろいいでしょうけれども……(発言する者あり)いや、日本にいたわけですよ。その中に、これは第二次森内閣で文科大臣、科学技術庁長官を歴任した方もいらっしゃるんですよ。だから問題にしているんです。

 こういう状況の中で、原子力の平和利用の番人として身を挺する、こういう原子力委員会の決意で、そういう同意権を失うような場合にはどうなるのかというふうに思わざるを得ないわけです。原子力委員長としていかがでございますか。

近藤参考人 藤家委員長がそのようなことを定例会議で発言されていることについては、それが原子力委員会の考え方の多くを占めるものだというふうに理解をしています。

 しかし、御質問は、ある種の仮定の御質問ですので、これについてお答えするのは適切でない。しかし、あくまでも原子力委員会は、原子力基本法とそれに基づく原子力委員会設置法に定められた所掌事務を的確、適切に行うことが重要で、その中に、おっしゃるように平和の目的に限るということが原子力基本法で明定されているところ、そのことについて正しく事務を運用していきたいと考えているところでございます。

石井(郁)委員 どうもありがとうございます。

 それで、この点では最後に大臣に一問、やはり大臣としての御見解と御決意を伺っておかなければなりません。文言として、法文として、理事長の任命に当たりまして「原子力委員会の意見を聴かなければならない。」ということになっているが、現行法では同意を得てということになっておりますから、これはやはり同意を得てということと同義だ、現行と違うものではないというふうに考えていいのでしょうか。いかがですか。

中山国務大臣 文部科学省といたしましては、今般の法律上の措置は、あくまで理事長の任命における最終責任が文部科学大臣に帰属することを明らかにしたものであると考えておりまして、新機構における原子力の研究開発活動が、これまで同様、原子力委員会の方針に沿って行われることについて何ら変わりはないものと認識しております。

 したがいまして、新機構の理事長の任命に当たっての原子力委員会の意見につきましては、文部科学省としては、これを十分踏まえた上で適切に対処したいと考えております。

石井(郁)委員 では、もう少しの時間ですけれども、次のテーマなんですが、第十五条にある秘密保持義務条項、この点も、きょうの大変長時間にわたる質疑の中で、何人かの同僚議員から質問がございました。

 現行法ではこうした規定はないわけですね。原研にも核燃サイクル機構にもないわけですが、そこで、何かこれまで問題はあったんでしょうか。

清水政府参考人 日本原子力研究所法には、御指摘のように、法律上の規定はございません。ただ、当然、研究所内の就業規程におきまして、職務上知り得た秘密に関する、漏らすことの禁止行為とそれに関する懲戒というような規定はございます。

 このことに関しまして、秘密保持規定に違反することを事由として処分された事例はありません。

石井(郁)委員 だから、これまで特に法律で定めなくても何も問題が起こらなかった、違反というかそれに該当するような事例も何もなかったということなんですね。何で今それを罰則まで入れて条文に組み込まなきゃいけないのかということは、非常に問題だというふうに私は思うんですね。

 それで、この原子力行政について、特に動燃の問題、アスファルト固化処理施設の火災爆発事故、先ほど来出ている「もんじゅ」ナトリウム漏れ事故、こういうときには、うそつき動燃と言われたほど、秘密体質、虚偽体質が問題になってまいりました。やはりこういうところで国民が日本の原子力研究や研究機関に大変不信を持ってきているわけですけれども、日本の原子力行政がこういう秘密体質や虚偽体質が支配的だという状況で、先ほども、内部告発的な、内部通報的なことが一定の意味を持つということになってきたわけですが、こういうことについて大臣はどのように認識されていらっしゃるでしょうか。

中山国務大臣 何度もお答えしておりますけれども、原子力に関しましては、やはりできるだけ公にする、何か隠しているんじゃないか、こう思われないということが一番大事でございます。そういう意味では、セーフティーカルチャーといいますか、そういった確立が極めて大事である、このように考えているところでございます。

石井(郁)委員 それで、この秘密保持義務条項があれば、秘密かどうかという判断というのは裁判所まで持ち越されるわけですね。私は、こういうことが法律として機能していけば、本当に機構の研究者の良心ということが、萎縮させてしまうというか、そういう効果を持つんじゃないかということを一番懸念するわけですね。

 それから、企業との連携で、企業の秘密の保護というようなことも先ほど来言われていますけれども、私は、やはり原子力の問題ですから、安全より優先される問題はないわけであります。

 そういう点で、そしてまた、企業の問題でいいましても、こういうことがあるんですね。動燃改組のときの審議でも、「もんじゅ」関係文書の公表という問題で、設置及び工事の方法の許可申請書の約三割が、請け負っている企業の知的財産権保護の名目で非公開になっていました。このことを、これは九八年の四月の衆議院の科学技術委員会で我が党の同僚、吉井議員が取り上げたんですけれども、こういう非公開になっているような問題という点がいいのかということでは、その後、やはり全面公開ということにもなっているんですね。

 だから、私は、ずっと見てきたように、原子力行政で公開の原則ということがきちっとうたわれているわけですから、この秘密保持義務条項というのは、そういう公開の原則に反する措置になるんじゃないか、反すると言わなければいけないと思いますが、原子力基本法に言う公開の原則という問題と秘密保持義務条項というのは、どうなんでしょうか、本当に反するというふうに考えられませんか。これは大臣の御見解を伺います。

中山国務大臣 独立行政法人になりましても、大学とかあるいはいろいろな機関との間でいろいろな仕事をする上におきまして、秘密として保護するに値する事実というのはやはりあるんだろうと思うんですね。犯罪行為とか法令違反行為に係る事項とは違って、そういったものは保護するしかないわけでございますから、そういう意味では、やはり秘密を保護する必要があるというものはあるのではないか。具体的にどういうことがどうだというのは私もよくわかりませんが、やはりあるのではないか、こう考えております。

石井(郁)委員 まだまだ詰めなければいけないことがたくさんあるかというふうに思いますけれども、私は、今申し上げましたように、やはり原子力行政の中で、そして一番安全という問題が重要視されるというような研究の中で、しかも平和、軍事利用等々が一番問題となるような中で、こんな今の時期に秘密保持義務規定ということを置くと、これはますます国民からしたら、危ない原子力開発や研究がそこで進んでいるんじゃないかと、国民から一層不信の目で見られることになりますよ。そんな必要がないんだったら、どんどん本当に原子力基本法に基づいた研究をやっていくということであるんだったら、わざわざこれを法律に盛り込むことはないわけですね。

 そういう意味で、これはいい役割は全然果たさないというし、私は、この条項は本当に撤回をすべきだということもきつく申し上げておきたいというふうに思います。

 それで、ちょっと審議にも協力する意味で、これで終わりにしたいと思います。

 だから、いろいろな意味で、まだまだ論点はたくさんあるし、そして審議もしなきゃいけないわけですけれども、きょう見てまいりましたように、単に原子力二法人の統合、独法化だ、新しい機構をただつくるんだということにやはりとどまらないわけですね。この両法人が何をしていくのか、その体制をどういうふうにしていくのかという問題で、やはり原子力研究開発やエネルギー政策の根本的な検討なしに、これはよしとしてどんどん進めていいですよということにはならないわけですね。

 きょうは副大臣にも実は御答弁を何かお願いしていたと思うんですが、ちょっと機会がなかったので、総括的に副大臣の御感想も伺って終わりたいと思います。

小島副大臣 私の考え方をということなんですが、私も、科学技術の関係というのは初めて入ってきた問題でありますけれども、大変に、日を追って、日本の科学技術は資源の乏しい日本では非常に大切だということを思っています。皆さんがお話ししている心配していること、こういうことをぜひ早くになくして、安全、安心な原子力政策を進めなきゃいけないということを考えております。

 どうもありがとうございました。

石井(郁)委員 終わります。

斉藤委員長 横光克彦君。

横光委員 社会民主党の横光克彦でございます。

 きょうは、この法案について長時間にわたって審議がされております。この法案によって設立されます独立行政法人日本原子力研究開発機構、これは、原子力に関する研究開発を総合的に行う国内で唯一そしてまた最大の研究開発機関となるわけでございますね。しかし、この原子力二法人統合のこれまでの経過を振り返れば、トップダウンで決めました二〇〇一年の特殊法人等整理合理化計画の必ずしも合理性があるとは言えない統合計画に合わせて、つじつまを合わせただけにすぎないように思えてならないんです。

 そもそも、この日本原子力研究所とそしてまた核燃料サイクル開発機構、これは、性格も位置づけも全く異なる団体でございます。それが今回統合される。この機構がこれから果たす役割の重大性を考えれば、本案の審議に当たっても、我が国の原子力研究のあり方に関する十分な論議が行われているのかと、私は、きょうの議論も朝からお聞きしておりますが、なかなかかみ合っていない、そしてまた、統合後の運営が果たしてうまくいくのか不安さえ感じるような審議状況であると言ってもいいんじゃないでしょうか。

 とりわけ、多くの問題が指摘されておりますこの核燃料サイクル政策のあり方に関しては、私は国民的合意が大前提とならなければならないというふうに思っております。今回の原子力二法人は、ともに原子力に関する法人とはいえ、先ほど申し上げましたように、その目的、そしてまた業務範囲、企業文化、こういったものが大きく異なっております。どうしても、行政改革を動機とした、機械的に統合した感がぬぐえない。非常に多くの問題があると言わざるを得ません。

 そこで、統合によってどのようなメリットが生まれるのか。資源の乏しい我が国におきましては、エネルギー確保の上で原子力は重要な役割を果たしている一方、安全性の確保も極めて重要な課題となっているわけです。これら両面の研究開発を一つの組織で実施するということは、これはなかなか困難であると言わざるを得ません。この両面をどのように調和させ、そして両立していくおつもりなのか御説明をいただきたい。これは、業務内容や組織や予算等の規模も含めてお答えいただきたいと思います。

坂田政府参考人 ただいま先生御指摘のように、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構は、企業文化あるいは業務の範囲等、異なることは事実でございますけれども、むしろそういった違いをお互いに活用し合っていくことが、これから新機構における活力をさらに高めるのではないかと思っているわけでございます。

 既に大臣等から何度も御説明申し上げましたが、主として基礎・基盤研究に打ち込んでまいりました原子力研究所の能力、これは人材もございます、研究施設もございます。また、プロジェクト研究開発を主として担ってまいりました核燃料サイクル開発機構、ここは、それなりに技術の蓄積それからノウハウ等の蓄積等、たくさん持ってございます。お互いにその成果を活用し合う。

 現実に、今日の技術開発におきましては、単に技術開発だけをやればいい技術ができるのではなくて、折に触れて基礎に立ち返って、基礎研究の成果をその技術開発に応用していくというようなやり方をいたしませんと、本当に革新的な技術の開発ができないという流れになってきております。そういう意味で、今回、両法人は確かに違いはございますけれども、その違いの中で培われましたお互いの能力をそれぞれ活用し合う。基礎・基盤研究におきましても、プロジェクト研究から多くの研究課題がもたらされるものと思っております。

 そういう意味で、私どもは、両法人が協力をして、例えば、次世代の原子炉の研究開発、あるいは放射性廃棄物の処理処分の研究開発、そういったこれから大変大事な分野の中で、信頼性のある技術、より安全な技術、こういったものの開発を目指して大きな効果を発揮することが期待されると思っております。

 新しい機構のより具体的な業務の方向性、目的、目標、組織、予算、こういった問題につきましては、この法律を通していただきました暁には、中期目標、中期計画、こういったものをつくってまいりますけれども、そういった中でより具体化していく必要があると思っております。そのことによりまして、ぜひこの新機構に求められる、あるいは期待される社会からの要請にこたえられるように、私ども文部科学省としてもしっかり環境整備それから支援をしてまいりたいと思っております。

横光委員 今、統合によって活力を高めるというようなお話がございましたが、この統合のメリットの一つに合理化ということもあるという御答弁もございました。

 そういったメリットの反面、エネルギー政策、そしてまた研究開発、人材の育成、安全性、これらの面で、私がきょうお話を聞いておると、デメリットの部分も相当あるなという気がしてならないんですね。

 今回、予算も一緒になります。約二千億の大きな巨大な機構としてスタートをするわけでございますが、この予算配分、これからだということでございますが、特に指摘しておきたいのは、私は、バランスのとれた予算配分が何よりも重要であろう、推進とそしてまた安全、このどちらかに偏るのではなく、このバランスをまず予算の段階からしっかりと押さえていっていただきたい、このようにお願いをしておきます。

 また、この統合によってどうしても問題となってきますのが、雇用や労働条件ですね。この両法人は、賃金体系そしてまた勤務の状況等にも差があるわけでございますが、統合後のこの新法人の労働条件等はどのようなものが想定されているのか。また、どのように決まるのか。その際、この所管官庁はどのように関与するのか。そのあたりを御説明いただきたいと思います。

坂田政府参考人 新機構におきましてどのような労働者の賃金体系を決めていくかということでございますけれども、その具体的な中身は、これは当然、今後労使間で決定されるべきものでございます。したがいまして、新機構を所管する役所という立場で個別の労働条件について関与するということは、当然ながら、労使自治の尊重の観点から適当でないというぐあいに認識しております。

 いずれにいたしましても、新機構における労働条件につきましては、労働基準法等の規定にのっとりまして、新機構の使用者とそれから労働者の間で十分に御相談されて決定されるものであるというぐあいに考えております。

横光委員 今お答えのように、労働条件等は当然のように労使間の話し合いで進めていくわけでございましょうが、こうして賃金体系も違うわけですから、これから新たな賃金表というものを作成しなければならない。そうすると、どうしても合理化という観点から低い方に合わせていく傾向があると思うんですね。そこで、先ほど言いましたように、これまたバランスを欠くことになる。そういった意味で、高い方に合わせる努力ということもこれまた必要であろうということを申し上げておきます。

 そしてまた、文科省としては関与は控える、要するに予算上の縛り等で関与するというようなことがあってはならないということを申し上げておきたいと思っております。

 この機構における原子力安全研究の規模についてお尋ねしたいんですが、これは現在、日本原子力研究所で実施している原子力安全研究に比べて、その予算あるいは人員等の規模についてどのように考えているのか。少なくともこの件に関しては現在の水準は維持される必要があると私は考えておりますが、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 原子力の安全研究には大きく分けて二つのカテゴリーがあるかというぐあいに考えております。

 一つは、既に使われている軽水炉でございますけれども、今の原子力発電所、現に運用されている原子力発電所の安全性というものをより高める、あるいはその安全性をより確実に把握する、そういった研究が一つの分野としてございます。

 もう一つの分野は、新しい原子炉、例えば高速増殖炉でありますとか、あるいは高温ガス炉でありますとか、新しい世代の原子炉の開発というのがございまして、その場合は、技術の開発と表裏一体のものとしまして、同時に安全性を高めていく研究もしなければいけないと思っております。

 今度の新機構は両方を一緒にやっていくという使命がございますので、全体として、まさに先生おっしゃいましたとおり、技術の開発の部分と、それからその技術の安全性をしっかり確保するための研究、これを両輪としてやらなければいけないと思います。

 それがちゃんと実現できるような予算の配分、これはもちろん基本的な方向は中期目標に書かれなければいけないと思いますし、またそれを受けて中期計画に、より具体化されなければいけませんが、法人の方では運営費交付金をいただきますので、そのいただいた運営費交付金の範囲で、中期目標、中期計画に沿って理事長がしっかりとその辺の配分を決めていくということになろうかと思っております。

横光委員 きょう、それぞれの委員から指摘もありましたように、どうしても予算全体はここ数年右肩下がりになっているわけです。そういった中で、だからといって、原子力安全研究の規模、ここに、やはり現在の水準を維持していく、そういった努力を最大限していただきたいと思っております。

 また、整理合理化という目的から考えれば、一定の人員の整理ということもこれは想定されるわけでございます。原子力研究所、核燃サイクル機構、またこれらの関連企業等には原子力に関する専門的な経験や知識を蓄積した研究者や技術者が多数在籍しております。これらの優秀な人材を今回の統合によって失うようなことがあってはならないと私は思うんですね。

 一方で、原子力安全・保安院などの日本の原子力規制側の体制、これは諸外国と比べて極端に貧弱なんですね。ここはもう早急な拡充や強化が求められているわけでございます。

 そうなりますと、私は、今回の合理化をただ二法人の中だけで考えるのではなく原子力業界全体の問題として考えていくべきではないか、原子力に関する専門的な知識を安全規制の立場から生かしてもらうことができれば原子力の安全のために極めて有益だと考えておりますが、いかがでしょうか。

坂田政府参考人 まず、先生の御指摘の、今回の統合を日本の原子力産業全体の中で考えていくべきだというお考えでございますが、これは私どももそのように考えて取り組んでいきたいと思っております。

 この新機構の活動が、日本の原子力産業界への寄与はもとよりでございますけれども、大学の教育研究への寄与、あるいは原子力を取り扱っていらっしゃる地方自治体のいろいろな形での支援、あるいは万が一の事故の際の事故の調査分析等への支援、そういう意味で、日本全体の原子力の活動を支えるものとして新機構の活動を引っ張っていきたい、またぜひそういうぐあいにやっていただきたいと思っております。

 特に、今原子力安全規制の観点のお話がございました。これから安全の確保が非常に重要であり、そして現実の原子力発電所の安全確保をよりしっかりしていかなければいけない。例えば、そこに働かれる発電所の方々、あるいはその発電所を安全規制する行政側の方々、そういった方々の人材の養成といった観点からも、この新機構はお役に立てるものと確信しております。

 今回、新機構の業務の中に研究者、技術者の養成ということをしっかりと打ち込みましたけれども、まさにそういった分野で役に立てるような活動をこの新機構が行うために設定したものでございますので、先生の御指摘も受けて、しっかりとした安全確保、安全規制の分野も含めて、機構の活動を支援してまいりたい、こう思っております。

横光委員 原子力保安院、これは経産省の関係ですが、ここは何よりも必要なのは専門的な知識ですよね、これがなければ危険等をチェックできないわけでございますから。ですから、行け行けという力と、安全のためにちょっと待てよという力、先ほどから何度も申し上げますが、ここにもやはりバランスというものが必要である。そういった意味では、現在、安全規制のサイドというのは非常に弱いわけですので、今御答弁のございましたように、しっかりとこれは、私はある意味ではここはいい機会ではなかろうか、そういった優秀な人材をそういったサイドに移していくことによってさらに専門的な知識を生かしていただきたい。よろしくお願いを申し上げたいと思います。

 またちょっと質問がダブりますが、本法案第四条にも明記はされておりますが、原子力事業を運営する上で、原子力基本法二条に明記されております平和、安全、民主、自主、公開の原則、これは非常に重要であると考えております。

 ところが、一方、動力炉・核燃料開発事業団のたび重なる事故に際して同事業団の隠ぺい工作が厳しく批判されたことは記憶に新しいわけでございますが、原子力業界全体の隠ぺい体質を、このことで広く国民の不信を招いてしまった。

 ところが、この本法案十五条では秘密保持義務、二十九条では刑事罰まで新たに加わっている。現在の原研法及びサイクル機構法にはこれはありませんね。それが加わった。

 私は、服務規定等による守秘義務で十分である、過度の秘密保持義務は逆に隠ぺい体質を助長するものにつながりかねないと思うんですよ。さきの通常国会でも内部告発者保護法、いわゆる公益通報者保護法が成立したばかりなんです。こういった流れにも逆行するものと考えておりますが、どうですか。

坂田政府参考人 先生お尋ねの、本法案十五条の秘密保持義務あるいは二十九条の罰則規定にかかわるお尋ねでございますけれども、この十五条に規定いたします秘密保持義務で保護をいたします秘密と申しますのは、非公知の事実で法律上保護に値するものでございます。一方、公益通報者保護法の公益通報の対象と申しますのは、秘密として保護するに値しない犯罪行為、法令違反、法律違反等でございまして、新機構の役職員は公益通報を理由として秘密保持義務違反に問われるというようなことはないというぐあいに考えております。

 したがいまして、この法案に規定する秘密保持義務、十五条でございますけれども、この義務が、役職員の犯罪事実等の内部告発を抑制し、それから先生御指摘の隠ぺい体質を助長するというようなことはないと考えております。

 なお、服務規定で対応できるのではないかというお尋ねがございましたけれども、法人の服務規定による秘密保持義務、これももちろん一つのルールとして決めることはできるわけでございますけれども、その場合は、役職員が退職した後はそれらの者を対象とすることはできません、これはもう職員でございませんので。しかし、今回の十五条の秘密保持義務は退職者も対象としているものでございますので、いわゆる法的に保護しなければいけない秘密の保護、これを一層確実にすることができるというものでありまして、少し服務規定の場合とは取り扱いに差が出てくるというぐあいに考えております。

横光委員 原子力基本法には公開の原則というのが明記されておるわけでございます。この公開の原則という観点からすれば、何で新たに役職員の守秘義務を、しかも刑事罰までつけて設ける必要があったのか、その妥当性というのは非常に疑わざるを得ないわけでございます。

 東京電力の事故等で内部告発があったわけでございますが、あれは結果的には有用であったわけでしょう。内部告発によって、結局、東京電力はすべての原発をとめて点検をした。あれがなければどういう事態になっていたかということを考えてみますと、このいわゆる告発は、私は大変意義があったと思うわけですね。

 そしてまた、炉規法、これが改正されまして、原子力施設の内部告発に関する規定が置かれております。第六十六条の四、いわゆる内部告発を認めるということになっております。

 機構において原子力分野の研究開発を行う上での適正を確保する上で、内部告発に関する意義についてどのように考えているのか。それが一つ。そしてまた、機構において内部告発者に対してどのような対応を行おうとしているのか。この二つについてお聞かせください。

坂田政府参考人 原子炉等規制法六十六条に規定されております、内部告発、内部通報を許容するという規定でございますが、これは、原子力の安全確保というものをより確実にしていくために大変大事な規定であると考えておりますし、当然のことといたしまして、新機構の役職員にもしっかりそれは適用されるというぐあいに考えております。

 したがって、私どもといたしましては、この六十六条における内部告発の問題と、今回の新機構法におきます十五条の秘密保持、これは両立するものというぐあいに考えております。保護すべき秘密と内部告発すべき対象となる情報は、全く異質のものでございますので、両方しっかり両立させて新機構の運営ができるもの、また適切に理事者はそれをやっていかなければいけないというぐあいに考えております。

横光委員 どうしても私にはよくわかりませんね。公開の原則がある、それから、それに今度は秘密保持義務を定めた、そして、一方では内部告発は認められている。私は、これで逆に内部告発ということが難しくなって、結局、言われている、先ほどから問題提起されております隠ぺい体質、国民にとって一番恐れているのがここなんですよ。ここのところがさらに激しくなっていくことが非常に心配されておりますので、何としてもそういうことが、この新たな保持義務によってそういう隠ぺい体質が助長することのないように、とにかく念を押しておきたいと思っております。

 次に、プルトニウム利用の問題について伺いたいと思うんですが、核燃料サイクルの確立はこの新法人の主要な目的とされております。しかし、一九五一年に発電に成功いたしました高速増殖炉、これは実用化が遅々として進んでおりません。そして、後から開発されました軽水炉に完全に主力を奪われているわけでございます。

 そして、これは先ほど質問ございましたが、ロシアや中国では高速増殖炉の取り組みがあるというお答えもございましたが、先進国では、経済性の面からも高速増殖炉の開発からは撤退をしておるわけでございますし、日本も「もんじゅ」の事故後、ストップしております。実用化を目指して半世紀を経てなお、原型炉が事故で動く見通しがない、立たない。一体こんなものが本当に実用化されるのかと非常に疑問がありますし、可能性が本当にあるのかというような思いがするわけでございますが、それでも膨大な予算を投じて開発を続けるのであるならば、いつまでに実用段階の高速増殖炉を何基建設するのか、具体的に提起すべきだと思います。いかがですか。

坂田政府参考人 高速増殖炉の実用化に関するお尋ねでございますが、まず、私どもとしては、今運転がとまっております「もんじゅ」、これを一日も早く安全性を向上させるための工事をいたしまして運転再開を目指したいと思っております。運転再開ができましたならば、その後、約十年程度をめどにいたしまして、「もんじゅ」を建設いたしました所期の目的を達成したいと思います。

 この所期の目的と申しますのは、大きく二つございます。一つは、高速増殖炉の発電プラントとしてしっかりその実績をつくるということでございます。高速増殖炉発電所としてしっかり機能するということでございます。二つ目には、それと表裏一体ではございますけれども、冷却材として液体ナトリウムを使います。液体ナトリウムの取り扱いは、確かに注意が必要でございます。この注意の必要な液体ナトリウムの取り扱い技術をしっかり取得したい、これが二つ目でございます。それをまず運転再開後十年ぐらいたったところでなし遂げたい。

 それから、実は、今現在、核燃料サイクル開発機構と電力事業者等との間で高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究というのをやっております。これは、高速増殖炉としてより経済性の高い、より信頼性の高い、そういった高速増殖炉というものはどういったものであるか、またその中に装荷する核燃料は一体どういったものであるか、そういう研究をしております。この研究も、これから十数年継続する予定にしております。

 それらをあわせまして、恐らく二〇一〇年代の後半ぐらいになろうかと思いますが、実用化に向けた具体的な判断をすることはできるんじゃないか。その段階では、実際には実用化は電力事業者が行いますので、電力事業者も交えまして、一体どのように実用化していくのかということをしっかり評価して判断をしたい、このように考えております。

横光委員 今構想を述べられましたが、原子力委員会等でも、今まさにこの核燃料サイクル、再処理計画の経済性が議論されておるわけでしょう。私、感情的に原子力を否定するつもりはございませんが、冷静で客観的なコスト計算を踏まえるならば、この核燃料サイクル路線については早期に見直すべきだと考えております。無理に無理を重ねながら従来の政策に固執するだけでは、私は、ひいては我が国の産業の国際競争力にも悪影響を及ぼすんじゃないかというふうに思っております。

 高速増殖炉が、もし言われるように将来実用化されれば、現在知られている利用可能なウラン資源だけでも、数百年にわたって原子力エネルギーを利用できる可能性があると言われております。言われておりますが、これはもう五十年前から、できるできると言っておきながらできないわけでしょう、実用化が。そして、もしそういうことが実用化されればという話はするけれども、では、もし高速増殖炉が実用化できなかった場合はどうなるんですか。そういうことだってあり得るんですから。現に五十年間ずっと延びてきたわけです。もしそういうことになりますと、資源であるプルトニウムは、将来世代にわたる核のごみになるんですよ。

 先ほど、プルトニウムの総量は何トンあるかと聞きましたら、三・九トンということでございました。これは委託中のものを含めるともっと多いんでしょう。委託中とか処理中のものを含めるとどれぐらいあるんでしょうか。――いや、もっと多いはずですよ、そういうのはもう調べておいていただきたいんですが。

坂田政府参考人 今、手元の資料で申し上げますと、これは二〇〇三年末の我が国の分離プルトニウムの保管状況でございますが、国内にございますのが約五・五トンぐらいでございます。それから、海外にございますのが約三十五トンぐらいでございます。

横光委員 これからさらに十年やると八十トンぐらいたまるだろうと言われております。要するに、プルトニウムの使い道が今ないわけですね。再処理することによって、次から次から、山ほどたまっていく。余ったら、しようがないから、今度はプルサーマルでやろうとしている。これも無理やり。しかも、これも事故でできない。私は全く本末転倒と言わざるを得ないと思うんですよ。

 再処理も、いよいよ六ケ所村で運転するようにしておりますが、これをやったら、また後戻りできなくなる、大変なことになる。私は、再処理をとにかくやめて、まずこれ以上プルトニウムをふやさない。そして、実用化できて、プルトニウムが使用できるようになったら考えればいいことであって、まず再処理をやめるべきだということでございます。

 そもそも、プルトニウムというのは核に直結するわけでございます。日本の国際公約は何ですか、日本の国際公約。使わないプルトニウムは持たない、これが国際公約なんです。使わないプルトニウムが、今のお話でも、もう三十五トンから四十トンあるじゃないですか。持たないということになっている国際公約にもう既に違反している。使えないわけでしょう。

 ですから、立ちどまるわけにはいかないという御答弁がありますが、ここは勇気を持って立ちどまる勇気も必要なんじゃないか。状況が変わったら考え直すべきだ、勇気がそこには要りますが。何だかんだ言って、スタートしたらもうとまるわけにはいかないというお答えばかりで、こんな危険なことが今進もうとしている。このことを強く申し上げまして、時間が参りましたので、終わりたいと思います。

斉藤委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより討論に入ります。

 討論の申し出がありますので、順次これを許します。城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。

 私は、民主党・無所属クラブを代表し、日本原子力研究開発機構法案に関し、反対の立場で意見を述べ、討論といたします。

 本日、大臣が御答弁の中で、今回の統合を戦略結婚だと表現をされました。しかし、この審議で、今回の統合が、行革の名のもとに必要な検証と議論が省略をされた、いわば省略結婚でしかないということが非常に残念ながら明らかになりました。

 以下、具体的に申し上げます。

 まず、統合の対象となる二つの法人は、その事業目的や事業内容が全く異なるものです。その違いを無視して、ただ特殊法人などの整理合理化の名目のためだけに一体化させることに、いまだ疑問が残っています。しかも、核燃サイクルの確立といういわば国家のエネルギー戦略の根幹にかかわる事柄について、独立行政法人がその任に当たるということがいかなる理由で合理的だと判断されているのか、その詳細な検討が極めて不十分であり、このままではこの統合の意義を認めることは困難であります。

 今後の日本の原子力研究開発の重点の一つは、現在稼働している五十二基の原発から大量に出される放射性廃棄物や廃炉に伴う廃棄物、再処理によって生まれる高レベル放射性廃棄物の処理処分に関する技術開発であります。しかし、法の目的にはこの大切な事項が欠落したままになっています。

 また、私ども民主党は、今後の原子力政策に当たっては安全確保を最優先すべきだと主張しておりますが、法案ではこの安全が法律の目的にはっきりと示されておりません。なぜ安全の二文字がないのか、納得のいく説明はありませんでした。ウラン残土の処理についても、安全に対する姿勢に疑問が示されました。この法案には重大な欠陥があると考えます。

 日本の原子力政策の最大の問題である核燃料サイクルと高速増殖炉の正当性、合理性について、詳細な検証と国民的議論もまだ不十分であることが、質疑の中でも明らかになりました。原子力政策は、政府が原子力委員会を通じて策定する原子力長期計画に基づいて遂行されることになっています。新しい長期計画策定会議のメンバーの選定のあり方について、公正さの問題も提起されました。その長期計画の見直し作業がおよそ一年後に控えているというときに、拙速に新機構の立ち上げを急ぐ理由は一体どこにあるのでしょうか。国民合意のもとに策定された新たな原子力長期計画に基づき、そこで示された基本方向に沿って、改めてそのあり方を構想すべきであります。

 以上の論議をもって、私たちは本法案に反対することを表明いたします。(拍手)

斉藤委員長 次に、石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党を代表して、独立行政法人日本原子力研究開発機構法案に反対の討論を行います。

 この法案は、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構の統合、独立行政法人化にとどまらず、日本の原子力行政のあり方が根本から問われる法案と言わなければなりません。

 核燃料サイクル開発の今後など、原子力政策全体を検討した上で両法人のあり方を決めるのが本来であるにもかかわらず、次期原子力長期計画も定まっていない段階で統合、独法化するのは、原子力政策よりもまず特殊法人の整理合理化ありきの統合、独立法人化と断ぜざるを得ません。

 新機構の目的と業務に、核燃料サイクル確立のための高速増殖炉と核燃料物質の開発が掲げられていますが、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」が、ナトリウム漏れ火災事故以来、運転再開のめどすら立っていません。世界各国が高速増殖炉の実用化から撤退している中で、日本だけ推進に固執しているのは、プルトニウム循環方式の危険性を過小評価するものです。国民的な不安と批判も広がる中で、プルトニウム循環方式推進という危険きわまりない政策は中止すべきであり、推進を前提とした今回の統合、独法化は認められません。

 理事長の任命に際して原子力委員会の役割を弱め、予算措置を含めた安全研究の軽視、秘密保持義務規定による公開原則の形骸化など、危惧される幾つかの重大な問題点も指摘せざるを得ません。

 危険な核燃料サイクル開発に固執し、日本の原子力政策とエネルギー政策を誤らせる統合、独法化には反対であることを表明し、討論とします。

 以上です。(拍手)

斉藤委員長 これにて討論は終局いたしました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 これより採決に入ります。

 内閣提出、独立行政法人日本原子力研究開発機構法案について採決いたします。

 本案に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

斉藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 ただいま議決いたしました本案に対し、伊藤信太郎君外三名から、自由民主党、民主党・無所属クラブ、公明党及び社会民主党・市民連合の四派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。

 提出者から趣旨の説明を求めます。高井美穂さん。

高井委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。

 案文を朗読して説明にかえさせていただきます。

    独立行政法人日本原子力研究開発機構法案に対する附帯決議(案)

  政府及び関係者は、本法の施行に当たっては、次の事項について特段の配慮をすべきである。

 一 独立行政法人日本原子力研究開発機構への移行に当たっては、自律的・効率的に運営を行うという独立行政法人制度の趣旨が十分発揮されるよう、その運用に万全を期すること。

 二 独立行政法人日本原子力研究開発機構における研究開発が適切かつ十分に行われ、我が国の原子力施策の立案・実施に資するよう、必要な措置を講ずること。特に、中期目標及び中期計画の作成及び認可に際しては、原子力委員会の策定する長期計画との整合性の確保を図り、我が国の原子力施策が総合的、計画的かつ安定的に進められるよう努めること。

 三 業績評価等を行うに当たっては、独立行政法人日本原子力研究開発機構の行う研究開発の特性を踏まえ、適切な評価が実施されるよう十分配慮するとともに、その評価体制・手法について継続的に見直し、改善を行うこと。

 四 独立行政法人日本原子力研究開発機構は、原子力基本法に定める平和の目的、安全の確保及び民主・自主・公開の基本方針を十分尊重して原子力に関する研究開発を実施すること。また、技術力の水準が保たれ、研究開発の成果が十分に得られるよう、自律的かつ創造的な研究開発環境の確保に努めること。

 五 独立行政法人日本原子力研究開発機構の運営に当たっては、透明性の確保に留意し、情報公開の徹底に努めること。その際、研究開発の成果の公開のための適切な基準を作成するとともに、役職員の守秘義務が濫用されたりすることのないよう十分配慮すること。

 六 理事長の選任においては、原子力に関する分野に造詣の深い適切な人材を広く内外から起用するよう十分配慮すること。その他の役員の選任についても同様とすること。

 七 独立行政法人日本原子力研究開発機構は、多岐にわたる原子力に関する研究開発の均衡ないし重点化を適正に図り、研究資源の効果的な活用に努めること。また、原子力分野の人材の養成にも配慮し、大学や民間企業との連携の推進に努めること。

 八 独立行政法人日本原子力研究開発機構への移行に当たっては、これまで維持されてきた職員との雇用の安定を含む良好な労働関係に十分配慮すること。

 九 原子力に関する施策は、我が国のエネルギー政策や科学技術振興等の見地から重要な意義を有することにかんがみ、その適切な推進に努めるとともに、国民的議論の継続による合意形成、安全審査機能の強化・拡充、立地地域からの信頼の確保、実効性の高い防災体制の整備等に引き続き努めること。その際、原子力委員会や原子力安全委員会は、多様な国民の意見や要望等を十分反映して、企画・審議等を行うこと。

以上であります。

 何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。(拍手)

斉藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。

 採決いたします。

 本動議に賛成の諸君の起立を求めます。

    〔賛成者起立〕

斉藤委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。

 この際、ただいまの附帯決議につきまして、文部科学大臣から発言を求められておりますので、これを許します。中山文部科学大臣。

中山国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。(拍手)

    ―――――――――――――

斉藤委員長 お諮りいたします。

 ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

    〔報告書は附録に掲載〕

    ―――――――――――――

斉藤委員長 この際、御報告申し上げます。

 去る五日の本委員会において、来る十二日に参考人の出席を求めることに決定をいたしましたが、本日の理事会において協議をした結果、諸般の事情により取りやめることになりましたので、御了承願います。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後六時十三分散会


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