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第1号 平成17年2月16日(水曜日)

会議録本文へ
本国会召集日(平成十七年一月二十一日)(金曜日)(午前零時現在)における本委員は、次のとおりである。

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  錬君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

平成十七年二月十六日(水曜日)

    正午開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      岸田 文雄君    近藤 基彦君

      佐藤  勉君    佐藤  錬君

      下村 博文君    鈴木 俊一君

      鈴木 恒夫君    谷川 弥一君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    山際大志郎君

      青木  愛君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      本多 平直君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   文部科学大臣政務官    小泉 顕雄君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月十六日

 辞任         補欠選任

  加藤 勝信君     谷川 弥一君

  加藤 紘一君     佐藤  勉君

  松本 大輔君     本多 平直君

同日

 辞任         補欠選任

  佐藤  勉君     加藤 紘一君

  谷川 弥一君     加藤 勝信君

  本多 平直君     松本 大輔君

    ―――――――――――――

一月二十一日

 学校教育法の一部を改正する法律案(武正公一君外三名提出、第百五十九回国会衆法第四八号)

二月十日

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(松本龍君紹介)(第一号)

 同(城井崇君紹介)(第二三号)

 同(北橋健治君紹介)(第三二号)

 同(古賀一成君紹介)(第三三号)

 同(楢崎欣弥君紹介)(第三四号)

 同(藤田一枝君紹介)(第三五号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第二号)

 同(黄川田徹君紹介)(第四三号)

 すべての子どもたちに行き届いた教育を進め、心通う学校に関する請願(高橋千鶴子君紹介)(第三号)

 私学助成大幅増額と三十人以下学級の実現に関する請願(高木義明君紹介)(第二二号)

 国庫補助の堅持・拡大、父母負担の軽減、教育条件の改善、私学助成制度の大幅な拡充に関する請願(葉梨康弘君紹介)(第二五号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(市村浩一郎君紹介)(第二六号)

 同(土井たか子君紹介)(第四四号)

 同(中村哲治君紹介)(第四五号)

 同(藤村修君紹介)(第四六号)

 同(樽井良和君紹介)(第五三号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(細野豪志君紹介)(第二七号)

 同(田島一成君紹介)(第五四号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(細川律夫君紹介)(第二八号)

 すべての子供に行き届いた教育に関する請願(細野豪志君紹介)(第二九号)

 すべての子供に行き届いた教育を進めることに関する請願(園田康博君紹介)(第三〇号)

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の維持と拡充に関する請願(小林憲司君紹介)(第三一号)

 同(河村たかし君紹介)(第一一二号)

 同(近藤昭一君紹介)(第一一三号)

 同(牧義夫君紹介)(第一三一号)

 教職員をふやし、小中高三十人以下学級の早期実現等に関する請願(小林千代美君紹介)(第三八号)

 私学の学費値上げ抑制、教育・研究条件の改善、私学助成増額に関する請願(中村哲治君紹介)(第三九号)

 同(馬淵澄夫君紹介)(第五五号)

 すべての子供たちに、行き届いた教育を進め、心通う学校に関する請願(土井たか子君紹介)(第四〇号)

 すべての子供に行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(土井たか子君紹介)(第四一号)

 同(赤羽一嘉君紹介)(第九二号)

 行き届いた教育の実現に関する請願外四件(菊田まきこ君紹介)(第四二号)

 行き届いた教育に関する請願(田島一成君紹介)(第五二号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進め、心の通う学校に関する請願(松本大輔君紹介)(第九〇号)

 すべての子供と生徒に行き届いた教育に関する請願(若泉征三君紹介)(第九一号)

 三十人以下学級の実現、教育予算の大幅増、父母負担軽減に関する請願(大畠章宏君紹介)(第一三〇号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 国政調査承認要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 国政調査承認要求に関する件についてお諮りいたします。

 文部科学行政の基本施策に関する事項

 生涯学習に関する事項

 学校教育に関する事項

 科学技術及び学術の振興に関する事項

 科学技術の研究開発に関する事項

 文化、スポーツ振興及び青少年に関する事項

以上の各事項につきまして、本会期中調査をいたしたいと存じます。

 つきましては、衆議院規則第九十四条により、議長に対し、承認を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

     ――――◇―――――

斉藤委員長 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、文部科学大臣から所信を聴取いたします。中山文部科学大臣。

中山国務大臣 第百六十二回国会におきまして各般の課題を御審議いただくに当たり、私の所信を申し上げます。

 まず、一昨日、大阪府寝屋川市の小学校で発生した教職員三名が殺傷された今回の事件につきましては、決して起こってはならない事件であり、亡くなられた方と御遺族に対し深く哀悼の意を表するとともに、被害に遭われた方々に心からお見舞いを申し上げます。

 文部科学省としては、地域と連携した学校の安全対策に全力で取り組んできたところでありますが、今回の事件の原因を究明し、その結果も踏まえつつ、ハード面及びソフト面の両面から組織的、継続的な対策に取り組み、各学校における安全管理の徹底を図ってまいります。

 昨年九月に文部科学大臣に就任以来、私は、我が国が真に豊かで教養のある国家としてさらに発展し、子供たちが夢と希望を抱くことができる明るい未来を切り拓くためには、国家百年の計に立った教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指すことが極めて重要であると考え、全力を傾注して取り組んでいるところでございます。

 今後とも、かかる基本的な認識に立って、教育改革や科学技術・学術、スポーツ、文化芸術の振興のための施策を積極的に展開してまいります。

 世界はまさに国際的な知の大競争時代にあり、すぐれた人材が国づくりの基盤として不可欠であることから、各国とも国を挙げて教育改革に取り組んでおります。天然資源に恵まれない我が国においては人材こそが資源であることを再認識し、子供は社会の宝、国の宝であるという考えに基づき、新しい時代を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指し、国家戦略として、人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要があります。

 このような思いから、昨年十一月、私は「甦れ、日本!」と題する教育改革案を発表し、教育基本法の改正、学力の向上策、教員の資質の向上、現場主義の観点に立った学校、教育委員会の改革、地方の自由度を高めるとともに財源を確実に保障するための義務教育費国庫負担制度の改革の五つの改革案をお示しいたしました。その基本は、二十一世紀の厳しい社会を生き抜くために、頑張る子供を応援する教育を推進し、挑戦する精神を持った子供たちをはぐくんでいくことにあります。

 これらの改革を進めるに当たっては、国民や学校現場の声を聞くことが第一と考え、私を初め副大臣、大臣政務官、職員が全国各地の学校を訪問し、教員や保護者、子供たちと直接対話するスクールミーティングを、三百校を目標に実施しているところであります。

 伸び盛りの子供たちにとってきょうという日は一日しかなく、一日一日が勝負であります。きょう受けた教育の影響は一生に及びます。私たちは、常に考えられる最善の教育を子供たちに与えていかなければなりません。そういう意味で、教育改革は喫緊の課題であり、私は、責任感とスピード感を持ってみずから先頭に立ち、教育改革に取り組む覚悟であります。

 教育基本法の改正については、新しい時代にふさわしい教育の基本理念を明確にするため、中央教育審議会の答申や与党における議論を踏まえ、国民的な議論を深めつつ、可能な限り速やかな改正を目指してしっかりと取り組んでまいります。

 義務教育は、国家、社会の形成者たる国民の育成と、子供たち一人一人が、この世に生を受けたありがたさを実感し、一生を幸せにかつ有意義に生きることができる土台をつくるという二つの目的を持っていると考えます。その根幹は、憲法の保障する教育の機会均等、教育水準の確保及び無償制にあり、これらの要請を国と地方が共同して確実に実施するため、義務教育費国庫負担制度があります。

 これについては、昨年十一月の三位一体の改革に関する政府・与党合意において、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針のもと、平成十七年秋までに中央教育審議会において、費用負担についての地方案を生かす方策や、教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方について幅広く検討することとされたところであります。また、その結論が出るまでの暫定措置として、平成十七年度予算においては、本来の負担額から四千二百五十億円を減額することとしており、この暫定措置を講ずること等を内容とする義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案を今国会に提出しております。

 今後、教育内容のあり方、教員の質の向上、信頼される学校づくりと家庭、地域との連携、教育行政のあり方や国と地方の関係、役割分担など全般にわたり、中央教育審議会において御検討いただき、その中で、本年秋までに義務教育の費用負担のあり方についても結論を出していただきたいと考えております。

 私としては、義務教育に対する国の責任を確実に果たしつつ、地域や学校の創意工夫を生かした教育が実現できるよう、義務教育の改革を力強く進めてまいります。

 初等中等教育においては、子供たち一人一人に確かな学力を身につけさせ、豊かな心と健やかな体をはぐくむことが大切であります。

 各学校では、学習指導要領に基づき、特色ある取り組みが積極的に行われていますが、一方で、国際的な調査結果から見て、読解力を初め、我が国の子供たちの学力が低下傾向にあることは深刻に受けとめる必要があります。特に憂慮するのは、我が国の子供たちの勉強時間が短く、勉強への動機づけが希薄であるなど、学ぶ意欲が乏しく、学習習慣が身についていないことであります。子供たちに基礎、基本をしっかりと身につけさせ、それを活用しながら、みずから学び、みずから考え、よりよく問題を解決する力などの生きる力をはぐくむという現行の学習指導要領の理念や目標が十分達成されていないのではないかと考えます。

 今後、学校教育において確かな学力をはぐくみ、日本の子供たちの学力を再び世界トップレベルにするため、学習指導要領全体の見直しや、全国的な学力調査の実施などによる学習到達度の検証のあり方について、中央教育審議会において御検討いただき、その検討も踏まえ、速やかに改善策を講じてまいります。また、学ぶ意欲の向上のため、子供たちの知的好奇心を刺激し、向上心をかき立てるような教科書や授業方法の改善、少人数、習熟度別指導などきめ細かな指導の充実に努めるとともに、学力向上アクションプランを引き続き実施するなど、総合的な学力向上策に取り組んでまいります。

 さらに、現場を視察するほど、学校教育の成果は教員の資質能力と熱意に負うところが極めて大きいことを再認識しております。教員が日々研さんを積み、指導力の向上を図り、児童生徒や保護者の尊敬と信頼を得られるような存在になることが大切であり、その指導のもと、子供たちが規律をもって学習に取り組める環境を整えることが必要であります。教員評価の徹底や十年経験者研修制度の推進など、教えるプロフェッショナルとしての教員の育成を図るとともに、専門職大学院の設置や免許更新制など教員養成、免許制度の改革についても検討を進めます。

 また、豊かな心の育成については、学校、家庭、地域社会が一体となって、規範意識や倫理観、命を大切にする心や他人を思いやる心などの人間性や社会性をはぐくむため、道徳教育の充実、奉仕・体験活動や読書活動の推進を図ります。家庭教育の支援にしっかり取り組むとともに、地域の子供たちの居場所づくりや、スポーツ、文化活動を積極的に推進します。

 さらに、子供たちの健やかな体と気力をはぐくむため、体育の授業の一層の充実、運動部活動の振興などに取り組むとともに、子供たちが食に関する正しい知識と望ましい食習慣を身につけることができるよう、栄養教諭制度の円滑な実施など食育、健康教育の推進に努めます。

 このほか、不登校や問題行動への適切な対応、職場体験などを通じたキャリア教育のさらなる推進、LD、ADHD等の発達障害を含む障害のある児童生徒に対する特別支援教育を推進します。また、生涯にわたる人間形成の基礎を培う幼児教育の振興に取り組み、就学前の幼児の教育、保育を一体としてとらえた一貫した総合施設の導入に向け、必要な準備を進めます。

 地域に開かれた信頼される学校づくりを進めるため、学校評価の推進、コミュニティ・スクールの設置促進など保護者や地域住民の参画による学校づくりを進めます。また、教職員の服務の確保を図り、教育行政が法令にのっとって中立公正に行われるよう、国として必要な指導を行うとともに、教育委員会については、地域の課題に主体的に取り組めるよう、制度の見直しについて検討してまいります。市町村や学校現場の権限を強化し、それぞれが創意工夫し、競い合って教育の質を高めていくことができるよう、現場主義の徹底を図ります。

 また、非常災害時に地域住民の応急避難場所としての役割も果たす学校施設の耐震化の推進等、防災対策の充実に努めてまいります。

 二十一世紀は知識基盤社会の時代であり、大学を含めた高等教育は、個人の人格の形成の上でも、社会、経済、文化の発展や国際競争力の確保等の国家戦略の上でも極めて重要な役割を担っております。本年一月の中央教育審議会答申「我が国の高等教育の将来像」においては、同年齢の若年人口の過半数が高等教育を受けるという状況の中で、各高等教育機関が、多様な学習者のさまざまな需要に対応するため、各学校ごとの個性、特色を明確にし、国民や社会から期待される役割等を踏まえた教育研究を展開すべきこと、特に大学においては、みずからの選択により機能別に分化していくこと、大学の設置認可と事後評価の適切な役割分担と協調の確保により質の保証を図るべきことや、高等教育の発展を目指した社会の役割等について提言をいただいております。

 文部科学省としては、この答申を踏まえ、各大学がその個性、特色を一層明確にしていくことができるよう、国公私立大学を通じ、競争的な環境のもとで大学改革への取り組みを支援してまいります。このため、世界的な教育研究拠点の形成、高度専門職業人の養成、地域貢献等の特色あるすぐれた取り組みに対する支援や、創造的な大学院教育の展開、国際化への対応、より資質の高い教員や地域医療を担う医療人の養成等、高等教育が果たしていくべき多様な役割に応じた支援に努めてまいります。

 また、今国会において、教育研究の活性化及び国際的な通用性の向上の観点から、短期大学を卒業した者に学位を授与するとともに、大学の教員組織の整備を行うための法律案を提出することとしております。

 昨年四月に法人化した国立大学については、各大学が自主性、自律性を十分に発揮し、教育研究の一層の活性化を図り、国立大学としての社会的役割を踏まえて、個性豊かな大学づくりを進めることができるよう、国として必要な支援に努めます。その施設整備についても、国立大学等施設緊急整備五カ年計画に基づき着実に実施してまいります。

 加えて、設置認可制度の的確な運用を図りつつ、国公私立大学を通じた第三者評価制度の円滑な実施を進め、包括的な大学の教育研究の質の保証システムの充実に向けて積極的に取り組んでまいります。

 さらに、私立学校の一層の振興に努めるとともに、教育を受ける意欲と能力のある者の学習機会を確保するため、奨学金の充実など学生への支援にも積極的に取り組んでまいります。

 科学技術・学術は、国民の生活や経済活動を持続的に発展させ、環境問題など地球規模の問題の解決に大きく貢献するなど、我が国の、そして人類の希望ある未来を切り開くかぎとなるものです。

 まず、科学技術関係人材の養成については、学校段階から研究者、技術者の研究環境の整備まで総合的に取り組んでまいります。

 また、ニュートリノ研究、加速器科学、南極観測等を初めとした国際水準の独創的、先端的基礎研究を総合的に発展させるなど、新たな知を切り開く基礎研究を着実に推進します。科学技術基本計画における重点分野であるライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料分野の研究開発を強力に推進するとともに、融合領域の研究開発を積極的に推進します。安全、安心で持続的に発展する社会を実現する科学技術を振興してまいります。

 さらに、国の存立の基盤となる原子力、宇宙、地震・防災、海洋等の研究開発を戦略的に推進してまいります。特に、宇宙開発については、信頼性向上のための万全の対策を講じ、我が国の基幹ロケットであるH2Aロケットにより運輸多目的衛星新一号の打ち上げを確実に実施し、国民の期待にこたえてまいります。

 また、本年十月に予定している我が国の原子力研究開発の中核的機関である独立行政法人日本原子力研究開発機構の発足に向けて全力で諸準備を進めるとともに、改造工事の地元了解が得られた高速増殖原型炉「もんじゅ」を初めとする高速増殖炉サイクル技術などの研究開発を積極的に進めてまいります。国際熱核融合実験炉、ITER計画については、日本への誘致に向けて引き続き最大限の努力をするなど、人類の未来のために主導的な役割を果たしてまいります。

 加えて、科学研究費補助金等の競争的資金の抜本的拡充、大学等における知的財産の戦略的な取得、活用の促進と大学発ベンチャーの創出支援など産学官連携のさらなる推進を図るとともに、地域科学技術の振興、先端計測分析技術、機器の開発や世界的な先端大型研究施設等の活用促進など研究基盤の整備強化を推進してまいります。また、国際交流の推進、科学者等による社会への情報発信の支援等に総合的に取り組むとともに、我が国が第一級の国家として競争力を持ち、役割を果たしていくために重要な基幹技術のあり方について検討を進めてまいります。

 政府における研究開発の中核を担う文部科学省としては、これらの施策を通じて第二期科学技術基本計画の総仕上げのための取り組みを強化するとともに、平成十八年度から始まる第三期科学技術基本計画の策定に関し、人材、技術など知的資産の世界的な獲得競争の激化などの情勢を踏まえつつ、総合的な検討を進めてまいる所存です。

 人々が生涯にわたり自己実現を図ることができるよう、生涯学習の環境整備や大学、専修学校における社会人のキャリアアップのための教育を推進してまいります。また、フリーターやニートが社会問題化していることから、若者が勤労観、職業観を身につけ、明確な目的意識を持って職につくとともに、仕事を通じて社会に貢献することができるよう、若者自立・挑戦プランを一層強化します。

 昨年のアテネ・オリンピック競技大会における日本選手団の活躍は、日本じゅうに大きな感動を与えてくれました。スポーツの振興は明るく豊かで活力に満ちた社会を形成する上で不可欠であり、スポーツ振興基本計画に基づき、ナショナルトレーニングセンターの中核拠点の整備など世界で活躍するトップレベルの競技者の育成等に取り組むとともに、国民のだれもが身近にスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現を目指して地域のスポーツ環境の整備に努めます。

 また、子供の目標やあこがれの地となるような全国的なスポーツ大会の拠点づくりを推進するとともに、子供の体力向上を図るなど、スポーツの振興を進めてまいります。

 文化芸術は、人々に感動や生きる喜びをもたらし、豊かな人生を送る上での大きな力になるものです。経済を含め日本社会全体を元気にするためには、諸外国でも重視されつつある文化力の向上を図ることが極めて重要です。我が国の顔となる文化芸術を創造し、世界に発信していくため、文化芸術創造プランや「日本文化の魅力」発見・発信プランを推進するとともに、国民が文化ボランティアなどによりみずから積極的に文化芸術活動に参加し、文化芸術を創造できる環境を整備します。

 また、文化的景観の保護など文化財の保存、活用、地域文化の振興、文化財分野における国際協力や国際文化交流に積極的に取り組みます。

 さらに、新しい時代に対応した著作権等の施策を推進するとともに、国語について国民一人一人が意識を高め、正しく理解するよう努めてまいります。

 我が国が、国際社会においてより魅力ある国、信頼される国となることは極めて重要な課題であり、教育、科学技術・学術、スポーツ、文化芸術などの日本の経験を生かした協力、交流に力を入れます。また、留学生受け入れ体制の充実や日本人の海外留学の支援にも取り組んでまいります。さらに、英語が使える日本人の育成、教育の情報化、環境教育や人権教育の推進、男女共同参画社会の形成等に努めます。

 規制改革や構造改革特区については、今後とも引き続き、地方公共団体や民間の創意と工夫を生かし、教育研究の活性化という観点から、できるだけ柔軟に取り組んでいきたいと考えております。また、個性ある豊かな地域づくりを支援するため、地域再生の観点から、地域の実情に合わせた制度の見直しや施策の連携を進めてまいります。このほか、知的財産戦略の推進、公益法人改革、独立行政法人の組織、業務の見直し等の重要な課題に積極的に対応してまいります。

 私といたしましては、国民の強い期待を真摯に受けとめ、文部科学行政全般にわたり誠心誠意取り組んでまいる決意でございます。委員各位におかれましても、特段の御理解、御協力を賜りますよう心よりお願い申し上げます。(拍手)

斉藤委員長 次に、平成十七年度文部科学省関係予算の概要について説明を聴取いたします。塩谷文部科学副大臣。

塩谷副大臣 平成十七年度文部科学省関係予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。

 平成十七年度予算の編成に当たっては、教育・文化立国と科学技術創造立国の実現を目指し、教育改革、科学技術・学術振興、さらに、スポーツ、文化芸術の振興についての施策を総合的に展開するため、文部科学予算の確保に努めてきたところであります。

 文部科学省所管の一般会計予算額は、五兆七千三百三十二億七千百万円、電源開発促進対策特別会計予算額は、一千六百十二億九千万円となっております。

 以下、平成十七年度予算における主な事項について御説明申し上げます。

 第一に、義務教育費国庫負担金については、平成十六年十一月の三位一体の改革にかかわる政府・与党合意に基づいて、義務教育制度の根幹を維持し、国の責任を引き続き堅持するとの方針のもと、平成十七年秋までに中央教育審議会において、費用負担についての地方案を活かす方策や教育水準の維持向上を含む義務教育のあり方を幅広く検討し、その結論が出るまでの暫定措置として、平成十七年度予算においては本来の負担額から四千二百五十億円を減じた二兆一千百五十億円を計上しております。この減額相当分は、税源移譲予定特例交付金により措置することとしております。また、平成十三年度から十七年度までの五年計画である第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画を完成させることとしております。

 また、子供たちに基礎、基本を確実に身につけさせ、みずから学び、みずから考える力などの確かな学力をはぐくむため、学力向上拠点形成事業など学力向上を目指した施策を総合的に進めることとして、八十三億円を計上しております。

 さらに、学校、家庭、地域が一体となり、地域の教育力の再生を図るため、安全にかつ安心して活動できる子供の居場所づくりの支援、地域におけるボランティア活動や、スポーツ及び特色あるさまざまな文化体験活動などの促進に必要な経費として百十二億円を計上しております。なお、学校施設の耐震化の推進等を図るため、公立学校施設整備に一千二百二十一億円を計上しております。

 第二に、若者自立・挑戦プランの強化等キャリア教育の充実について、学校全体で勤労観、職業観の醸成を図るとともに、就業にかかわる基礎的な能力を付与する機会を提供することとしております。

 第三に、昨年四月に法人化した国立大学等が、自主性、自律性を十分に発揮し、教育研究活動が着実に実施されるよう運営費交付金一兆二千三百十七億円、国立大学等施設緊急整備五カ年計画に基づき国立大学等の施設を着実に整備することとして、施設整備費補助金等五百五十億円を計上しております。

 また、国公私を通じた競争原理に基づいた重点的なプロジェクト支援として、五百三十三億円を計上しております。

 さらに、奨学金事業につきましては、事業費総額で六百九十億円の増額を行い、貸与人員で六万九千人増員するなど、一層の充実を図ることとしております。

 第四に、私学助成について、法科大学院に対する支援を初め経常費助成を中心に、総額で四千五百七十六億円を計上するなど引き続きその充実を図ることとしております。

 第五に、留学生交流の推進を図るほか、ユネスコへの協力や日本の経験を活かした国際教育協力を推進することとしております。

 第六に、世界で活躍するトップレベルの競技者の育成に取り組むとともに、国民のだれもが身近にスポーツに親しめる生涯スポーツ社会の実現を目指すなど、豊かなスポーツ環境づくりを推進することとしております。

 第七に、心豊かで魅力ある社会を目指した文化力の向上について、文化芸術創造プランや「日本文化の魅力」発見・発信プランを推進するとともに、文化財の次世代への継承と国際協力の推進、文化芸術振興のための文化拠点の充実を図ることとしております。

 第八に、大学、大学共同利用機関等で実施されるニュートリノ研究、大強度陽子加速器計画、ALMA計画など、ビッグプロジェクトや重点四分野の推進に資する研究等、独創的、先端的基礎研究について、着実な推進を図るとともに、研究機関間の連携協力をさらに強化することとしております。

 また、ライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテクノロジー・材料の重点四分野への一層の重点化を図ることとして、二千二百四十三億円を計上するとともに、融合新興分野における研究開発、また、安全、安心な社会の構築や経済活性化に資する科学技術を推進するほか、原子力、宇宙・航空、海洋、地震・防災分野については、国として戦略的に推進すべき領域として、効果的に推進することとしております。

 特に、国際熱核融合実験炉ITERについては、人類の未来のため、日本への誘致に引き続き最大限努力するなど、国際協力により推進してまいります。

 また、高速増殖炉「もんじゅ」については、改造工事の地元了解を得ましたので、安全確保を大前提にこれを実施し、早期の運転再開を目指して努力してまいります。宇宙航空分野については、信頼性の向上に全力を注ぐこととしております。

 さらに、地球観測サミットの十年実施計画を踏まえ、地球温暖化、異常気象の解明や自然災害への対策などに資する地球規模の観測システムの構築を推進してまいります。

 第九に、科学研究費補助金を初めとした競争的資金について、引き続き、その改革と大幅な拡充を図ることにより、競争的な研究開発環境の整備に取り組んでまいります。

 また、大学等における知的財産の戦略的な取得、活用の促進や大学発ベンチャーの創出支援など産学官連携の推進、地域科学技術の振興、研究基盤の整備、強化を図ることとしております。

 第十に、科学技術創造立国を支える基盤を充実するため、多様な人材の養成及び確保を図るとともに、科学技術・学術の国際展開を戦略的に推進することとし、また、研究者等と社会との双方向の交流を進め、国民が夢と感動を抱ける機会の実現を図ってまいります。

 以上、何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。

 なお、これらの具体の内容につきましては、お手元に資料をお配りいたしておりますので、説明を省略させていただきます。

 以上です。(拍手)

斉藤委員長 以上で説明は終わりました。

 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後零時三十二分散会


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