衆議院

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第2号 平成17年2月23日(水曜日)

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平成十七年二月二十三日(水曜日)

    午前九時四分開議

 出席委員

   委員長 斉藤 鉄夫君

   理事 伊藤信太郎君 理事 稲葉 大和君

   理事 中野  清君 理事 保坂  武君

   理事 奥村 展三君 理事 川内 博史君

   理事 牧  義夫君 理事 河合 正智君

      江崎 鐵磨君    小渕 優子君

      加藤 勝信君    加藤 紘一君

      金子 恭之君    岸田 文雄君

      小西  理君    佐藤  錬君

      坂本 哲志君    下村 博文君

      鈴木 俊一君    鈴木 恒夫君

      西村 明宏君    葉梨 康弘君

      馳   浩君    古屋 圭司君

      保利 耕輔君    青木  愛君

      岡本 充功君    加藤 尚彦君

      城井  崇君    古賀 一成君

      須藤  浩君    高井 美穂君

      武山百合子君    達増 拓也君

      長島 昭久君    肥田美代子君

      松本 大輔君    笠  浩史君

      池坊 保子君    石井 郁子君

      横光 克彦君

    …………………………………

   文部科学大臣       中山 成彬君

   文部科学副大臣      塩谷  立君

   文部科学副大臣      小島 敏男君

   文部科学大臣政務官    下村 博文君

   会計検査院事務総局第四局長            友寄 隆信君

   政府参考人

   (内閣府政策統括官)   林  幸秀君

   政府参考人

   (警察庁刑事局長)    岡田  薫君

   政府参考人

   (総務省自治財政局長)  瀧野 欣彌君

   政府参考人

   (外務省大臣官房審議官) 広瀬 哲樹君

   政府参考人

   (文部科学省大臣官房長) 玉井日出夫君

   政府参考人

   (文部科学省生涯学習政策局長)          田中壮一郎君

   政府参考人

   (文部科学省初等中等教育局長)          銭谷 眞美君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局長)            石川  明君

   政府参考人

   (文部科学省高等教育局私学部長)         金森 越哉君

   政府参考人

   (文部科学省研究振興局長)            清水  潔君

   政府参考人

   (文部科学省研究開発局長)            坂田 東一君

   政府参考人

   (文部科学省スポーツ・青少年局長)        素川 富司君

   政府参考人

   (文部科学省国際統括官) 井上 正幸君

   政府参考人

   (文化庁次長)      加茂川幸夫君

   文部科学委員会専門員   井上 茂男君

    ―――――――――――――

委員の異動

二月二十三日

 辞任         補欠選任

  近藤 基彦君     金子 恭之君

  山際大志郎君     坂本 哲志君

  城井  崇君     岡本 充功君

同日

 辞任         補欠選任

  金子 恭之君     小西  理君

  坂本 哲志君     山際大志郎君

  岡本 充功君     城井  崇君

同日

 辞任         補欠選任

  小西  理君     近藤 基彦君

    ―――――――――――――

二月二十二日

 国の補助金等の整理及び合理化等に伴う義務教育費国庫負担法等の一部を改正する法律案(内閣提出第二二号)

同月二十三日

 国による三十人学級実現、私学助成大幅増額に関する請願(横光克彦君紹介)(第一四九号)

 同(赤嶺政賢君紹介)(第二九四号)

 同(楠田大蔵君紹介)(第二九五号)

 私学助成大幅増額と三十人以下学級の実現に関する請願(北村誠吾君紹介)(第一五〇号)

 国庫補助の堅持・拡大、父母負担の軽減、教育条件の改善、私学助成制度の大幅な拡充に関する請願(小泉俊明君紹介)(第一五一号)

 父母負担軽減、私立高校以下への国庫助成制度の維持と拡充に関する請願(木村隆秀君紹介)(第一五二号)

 同(中根康浩君紹介)(第一五三号)

 同(大村秀章君紹介)(第一八六号)

 同(伴野豊君紹介)(第一八七号)

 私学助成の大幅増額など教育関係予算の拡充に関する請願(達増拓也君紹介)(第一六二号)

 行き届いた教育の実現に関する請願(漆原良夫君紹介)(第一七四号)

 私学助成の大幅増額、教育費の父母負担軽減、教育条件の改善に関する請願(原口一博君紹介)(第一八三号)

 小中高三十人以下学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(原口一博君紹介)(第一八四号)

 豊かな私学教育の実現のための私学助成に関する請願(原口一博君紹介)(第一八五号)

 すべての子供たちに、行き届いた教育を進め、心通う学校に関する請願(梶原康弘君紹介)(第一八八号)

 すべての子供たちに行き届いた教育を進めることに関する請願(奥村展三君紹介)(第一九四号)

 行き届いた教育に関する請願(奥村展三君紹介)(第一九五号)

 すべての子供に行き届いた教育等に関する請願(塩川鉄也君紹介)(第二〇九号)

 同(松崎哲久君紹介)(第二九七号)

 学費値上げストップ、大学予算増額に関する請願(城井崇君紹介)(第二九一号)

 同(牧義夫君紹介)(第二九二号)

 子供に行き届いた教育を進めることに関する請願(奥田建君紹介)(第二九三号)

 三十人学級の早期実現、私学助成の大幅増額に関する請願(辻惠君紹介)(第二九六号)

 教職員をふやし、小中高三十人以下学級の早期実現等に関する請願(金田誠一君紹介)(第二九八号)

は本委員会に付託された。

    ―――――――――――――

本日の会議に付した案件

 会計検査院当局者出頭要求に関する件

 政府参考人出頭要求に関する件

 文部科学行政の基本施策に関する件


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     ――――◇―――――

斉藤委員長 これより会議を開きます。

 文部科学行政の基本施策に関する件について調査を進めます。

 この際、お諮りいたします。

 本件調査のため、本日、政府参考人として内閣府政策統括官林幸秀君、警察庁刑事局長岡田薫君、総務省自治財政局長瀧野欣彌君、外務省大臣官房審議官広瀬哲樹君、文部科学省大臣官房長玉井日出夫君、生涯学習政策局長田中壮一郎君、初等中等教育局長銭谷眞美君、高等教育局長石川明君、高等教育局私学部長金森越哉君、研究振興局長清水潔君、研究開発局長坂田東一君、スポーツ・青少年局長素川富司君、国際統括官井上正幸君及び文化庁次長加茂川幸夫君の出席を求め、説明を聴取し、また、会計検査院事務総局第四局長友寄隆信君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。

    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。

    ―――――――――――――

斉藤委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中野清君。

中野(清)委員 自民党の中野清であります。

 前回の十二月一日に、ゆとり教育の見直しと学力低下の歯どめを図るための文部省の姿勢について私は大臣に質問させてもらいましたが、大臣には、その後矢継ぎ早に対策を打ち出されまして、その経過については期待をしたいと思いますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。

 さて、日本の、その中での学力の低下を懸念したり、また、ゆとり教育の本来のねらいである生き方を達成するためには、何といっても、教師、先生方の資質の向上というのが不可欠であるということはもう皆様御承知のとおりでございますが、本来生徒の模範であるべき教職員の中にいろいろな問題がある点がございますので、お伺いをさせていただこうと思っております。

 それは、前回私も少し一部触れさせていただいたんですけれども、今国会の予算委員会でも、我が党の同僚議員でありますところの西野議員や宮路議員が取り上げておりますところの山梨県教職員組合の選挙運動の問題であります。

 この事件の問題につきましては、きょう、具体的な話として資料をお配りしようと思ったわけでございますが、個人的なものが趣旨じゃございませんから、今、それについて後ほどお配りしたいと思いますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。

 昨年の十一月付の産経新聞とか予算委員会でのいろいろな発言をまとめて概要を考えてみますと、まず、昨年の七月の参議院選で、山梨県教職員組合が地域の支部や校長会、教頭会を通じて、カンパや闘争資金名目で組織的に資金を集めていった。その資金集めというのが学校を中心に内外で行われて、例えば校長は三万円とか教頭が二万円、一般教員が一万円などの割り当てがあり、そのほか盆暮れのボーナスのときにもいろいろそういうカンパがある。集められた資金というものは一億円に上るようでございますが、そのほとんどがいわゆる寄附金として届け出がないんじゃないかと言われております。

 また、この山梨県教職員組合は教員の昇進とか異動などの人事権に大きな影響を与えると一貫して言われておりまして、資金集めについてはなかなか断り切れないという声が聞こえております。さらには、輿石東さんとともに明日を拓く会の入会カードへの記入もノルマとして課せられていると伺っております。

 また、教職員によるポスター張りや電話による投票勧誘活動も行われておりまして、それからまた、平成八年の衆議院選でも、県政連が輿石氏の後援会また組合と一緒になって選挙活動を展開している。この種の選対会議が公立学校内でも開かれたというふうに言われております。

 これは、私は、全部が真実とは言いませんけれども、このような事実があるとすれば、教育者が選挙活動を行っていることになりまして、公職選挙法第百三十七条の教育者の地位利用による選挙運動の禁止に当たると思いますが、これについては、警察の岡田刑事局長さんですか、明らかにしていただきます。

岡田政府参考人 個別の事案についての答弁は差し控えたいと存じますけれども、一般論として申し上げますと、公職選挙法上、教育者の地位利用による選挙運動の禁止違反と申しますのは、教育者が学校、生徒等に対する教育上の地位を利用して選挙運動をした場合に成立するものと承知をいたしております。

 いずれにいたしましても、警察といたしましては、具体の事実に即し、法と証拠に基づいて適正に対処してまいりたいと考えます。

中野(清)委員 ぜひ、適正に法のもとに頑張っていただきたいと思います。

 この山梨県の教職員組合が地域支部や校長会、教頭会を通じたカンパというものは一億円に上る。これについては、輿石氏が関係する政治団体が平成十五年に受けた寄附金として届けられているのは五百万円のみで、残りはほとんど不明なんです。また、もし政治資金としての適正な処理が行われていないとすれば、これは政治資金規正法違反にもなると思うんでございますが、仮に、カンパや闘争資金の名目で集めた寄附金が政治資金以外の他の目的で使われたとすれば、これは、ある意味では詐欺とか横領になっちゃうんじゃないかと思うんです。

 いずれにしても、何かの違法行為が行われていると思いますが、この件については、二月七日に山梨県警と東京地検に告発されまして、受理されていると伺っておるわけでございますが、去る二月八日の予算委員会で、我が党の宮路委員の質問に対しては、警察及び法務省は、法と証拠に基づいて適正に対応すると答弁されておりますが、この方針については今の御答弁のとおりでよろしいのかどうか、これだけ確認をさせていただきます。

岡田政府参考人 これも一般論になりまして恐縮でございますけれども、二月八日の予算委員会において申し上げましたとおり、告発を受理いたしました場合、法と証拠に基づきまして所要の捜査を遂げた上、書類及び証拠物を検察官に送付することになるだろうと考えております。

中野(清)委員 私は、この事件について、個々に、いろいろどうこうとか、事実がどうだとか、そんなことを申し上げるつもりはございませんが、本件に対して、予算委員会等でもわかったわけでございますが、山梨県教育委員会の対応というものについては、各方面からいろいろな疑問が出ております。これに対する文部科学省の姿勢というものとあわせて、これを、きょうは文部科学委員会ですから、大臣にお伺いをしたいと思うんです。

 カンパとかそれから闘争資金の名目で組織的に資金を集めた行為についてですが、これは公職選挙法の違反だという話も今出ましたね。それからまた、公務員特例法で、人事院規則一四―七、第六、三項に明らかに違反しているんじゃないかと思うんですよ。それで、二月の予算委員会での質問に対して、大臣は、きちっと、それについては、法令違反である、しっかりと毅然とした処置をしたいと答弁されておりますね。それは間違いないと思うんですけれども、それをまずお願いしたい。

 これに対して、山梨県の教育委員会が行った調査結果では、集めた資金を政治団体に届けた。だから、集めたということと届けたという事実は認定した上で、これは疑いを招きかねない紛らわしい行為だ、そういうふうにこの事態を認識しておりまして、これは、本当に、正確に事態を認識しているかどうかということは言えますけれども、その点がございます。そして、その中で訓告処分とか厳重注意処分のみを行っておるわけでございます。

 また、手続的にも、訓告等の処分というものは服務監督権を持つ市町村教育委員会が行うべきところを、県の教育委員会が行っている。これも手続的に不適正じゃないかというふうに思われますが、そうだとすると、この問題というのは、子供を預かるいわゆる学校現場の荒廃につながる大きな問題だと私は思うんですよ。すべてをうやむやにしちゃっている。

 ですから、この際、文部科学省は、厳正に県教育委員会を徹底的に指導し、適正に処分を、処分というのは対策ですよ。処分と言ったって、教育委員会を処分しろと言っているんじゃありませんからね。それをすべきだろうと思うんですよ。

 予算委員会で、大臣も、それから銭谷初等中等教育局長も、この行為は法令違反に当たる行為だ、厳正な対応をとるというふうに言っておりますけれども、その後の状況とか、それから、これをどういうふうにしようとしているのか、それについて、大臣、ぜひ御答弁願いたいと思います。

銭谷政府参考人 文部科学省といたしましては、山梨県の教育委員会に対しまして、事実関係を確認の上、違法な行為に対しては厳正に対処するように再三にわたって指導を行ってきているところでございます。

 これに対しまして、山梨県教育委員会は、資金カンパの要請の伝達やその資金を届ける行為など、明らかに違法ではないが紛らわしい行為として、昨年の十二月に一部の校長、教頭を文書訓告等としたわけでございます。

 しかし、私ども、県教委の調査結果を見る限り、これらの行為は法令に違反する政治的行為に当たるものと考えられるわけでございまして、さらに、市町村教委が行うべき服務監督上の措置を県の教育委員会が行っておりまして、手続的にも問題があると考えております。

 このため、文部科学省といたしましては、改めて厳正な対応を指導しているところでございますが、今週の月曜日も県の教育長にお越しをいただいて、国会の議論の状況もお伝えをした上で、改めて十分な事実の解明と厳正な措置を強く求めているところでございます。

中野(清)委員 私も、何でもかんでも処罰せよと言っているんじゃないんですよ。ただ、やはり、事実をはっきりしてもらわなきゃ困ると思うんですよね。

 それについては後ほどちょっと申し上げますけれども、もう少し、幾つか話しますと、参議院選をめぐるところの山梨県の教育委員会の対応に不適切な点があるというのは、今申し上げたとおりなんです。

 例えば、現職の教員が教職員組合の組織的な、強制的な選挙運動に対して教育委員会に是正措置を求めた、そういう事実があります。ところが、なかなか取り合ってもらえない。やむを得ず地元紙にその事実を投稿したならば、今度は教育委員会に呼び出されまして、教職員組合のこの選挙運動は特に問題がないと答えられた。そればかりか、何でそんな新聞なんかに投稿するんだと怒られたというんですね。ちょっと怒られたんです。

 ところが、その後、今局長も御答弁なさいましたけれども、教育委員会が一部の人を事実と認定して処分しているわけですよ。ということは、その教員が言ったことは正しかったんですね。ですから、この姿勢というものが、悪く言えば癒着だと言われて、この種の問題の解決をおくらせていると私は言わざるを得ないと思うんですよ。

 それで、このほかにも、余り細かい話をいろいろ言いたくありませんけれども、幾つか参考に言います。例えば、さっきも話が出ましたけれども、後ほど資料でもって見ていただければ結構なんですけれども、カンパ以外にも、教職員によるところの東明会という後援会の入会カードを集めろとか、それからポスター張りや電話かけの問題の事実関係についても、全部、教育委員会の話は、集めたのもわからない、それから、みんなわからない、わからないですね、率直な話が。みんなわからない。

 ということは、先ほど言った、職員が一生懸命言ったって、そんなのもう全然関係ないよ、その姿勢とつながってくると思うわけでございます。今御答弁のとおり、文部省は、じゃ、わからなかったらいいんだよというんでしょうか。

 それからまた、もう一つは、文部科学省と教育委員会の関係というのは、指導、助言、監督だとよく言っていますね。そうすると、これは直接指揮権はない、そのとおりでございますね。では、大臣、このままにしておくんですか。それで放置しておいていいのか。これについて、ちょっと大臣、お考えをお願いいたします。

中山国務大臣 先般から何度も答弁しておりますが、やはり問題があるんじゃないかということで、きちっとした調査をしてしかるべき処分をすべきだということも含めて、山梨県の教育委員会には再三申し入れをしておるということでございまして、このままではいけないというふうに考えております。

中野(清)委員 大臣、これは一部の新聞に載っているかもしれませんけれども、事実、例えば平成八年には衆議院選でも一体活動だ、中学校で選対会議をやっているとか、それから電話作戦に教員動員、これは後でお届けしますよ。いろいろな学校が、本当にもう数多くの学校が電話作戦なんかをやっておるわけですよ、実際の話が。そうすると、それをどうするんだという話ですよ。

 特に、大臣、もう一回お伺いしますけれども、調べた調べたと言っているけれども、教育委員会が調べたのは八機関一個人なんですよ。一個人というのは、さっき言った、新聞に投稿した方らしいんですね。あとは全部機関だ。しかも、延べ三百五十三人から聞いたというんだよ。一つも出なかったものが新聞記事でこれだけの大事件になっているが、この事実をどう考えるかということなんですよ、はっきり言って。

 私は、この教育委員会の姿勢と、それから教組との関係とか、そういう政治団体との関係とかというものが、ちょっとこれは正常じゃないんじゃないか、教育の中立性とか教育本来のあり方と違うのではないかという意味で言っているので、決して個人の人たちを、例えば、この間も予算委員会で、処分された方は犠牲者だという声もありましたよ、はっきり我が党の委員から。私、そう思います。それをどう考えているのですか。

 しかも、例えば、最近になって聞けば、批判をして、これはおかしいんだよというふうに言われて、いろいろなことを言っている方がいるんですね。現教員、元教員らが真相究明の会を結成して六十人もいるというのです、はっきり言って。そういう人の声なんか、全然聞いていないんですよ。全部やっているのは組合であり、教育事務所長であり、校長会であり、各支部会長であり、または教頭会だとか、あるいは学校長とか、それから山梨県民主教育政治連盟であり、また後援会であり、また支部校長会であり、それから、いわゆる処分予定者等のことを聞いたということなんです。

 だから、大臣、今おっしゃった答弁で、皆さん、国民は納得すると思いますか。もう一回答えてくださいよ。

中山国務大臣 本来中立であるべき教育の場においてそういうことがなされたとすれば、これは非常に大きな問題、大問題だと思っていまして、どうも、文部科学省からも再三再四厳正な調査と処分ということを申し入れているんですけれども、はっきり申し上げて、反応がない。このことについては非常に問題である、教育に対する国民の信頼というものを大きく損ねているものではないか、このように考えているところでございますが、はっきり申し上げて、文部科学省としてそれ以上のことはなかなかできないので、再三再四にわたりまして、しっかりしろ、ちゃんとやってくれということを申し入れているところだということを御理解いただきたいと思います。

中野(清)委員 はっきり言って、大臣、お気の毒だと思っているんですよ。権限もなくて、しっかりやれ、しっかりやれと言われていてお気の毒だと思うんですけれども、しかし、日本の教育の最高責任者としてやはりちゃんとやっていただかないと困りますということなんですよ。

 しかも、それは、何回も言うけれども、個々の個人を罰するなんというんじゃなくて、この手のことがずっと行われてきたということなんですよ。ですから、例えば、それについて後ほど言おうと思ったのですけれども申し上げますと、今回だけじゃなかったわけですよ。今回だけじゃなくて、これは恐らく、平成十年にもあるし、それからその前の、昭和でも三回同じことがある。

 大臣、ちょっと申し上げますけれども、教育委員会は、この処分についても、四回あるんですよ、この種の事件が、山梨で。これは五回目なんだ、今回。だから同じ処分をしましたと言っているんですよ。ところが、なくならないわけでしょう。しかも、この出てきたものは氷山の一角に決まっているので、このことでもって、教職員が、いわゆる政治活動というものは法で決まっているんだから、服務規程をちゃんとやれという話と、そこでの話が全然出ていない。大臣を責めるのは申しわけないけれども、これについて、私は、力でもってすべてやれとは言いません。ですけれども、やはりある程度文部科学省として、これからこの辺の問題についていろいろとやる必要があるんじゃないかということだけ申し上げておきます。

 そのことは、今私が何回も言ったということは、実は教職員組合とその政治団体であるところの県政連とか校長会、教頭会も、この地区は何か校長会の組合とか教頭会の組合もあると言っている、全国にもまれだそうですけれども、あるんだと。そうなってくると、三位一体でやっているんじゃないかというようなことを言われざるを得ないんですよ。

 私は、もう一つお願いしたいのは、地元では教育委員会と教職員組合の癒着が指摘されているのがたくさんある。だからカンパも断れないんだと言っているわけですよ。そうすると、教育委員会の人事担当なんかについて大勢入っているんじゃないかという話がありましたので、調べてみましたら、教育委員会の答えというのが、いわゆる組合の本部とか支部の委員長、書記長だけだとしか言っていないんですよね。それだと、行政職の二百三十六人のうち、本部の幹部だと十五人ぐらいだ。しかし、その中には、本庁の課長級が一人と、それから本庁の指導主事が一人と、それから本庁の管理主事というのが二人いるとかというような話があります。ですから、本部だけについて言えばまだこの程度だろう。

 しかし、現実には、この組織というものが活動しているのは、各学校ごとの分会長というか、その責任者とか執行委員とかというような役員さんとかが実質的な活動をしているわけですよ。それが影響があるんですよ。

 そうすると、この教育委員会の本部の書記長と委員長だけやればいいんだという話じゃないんじゃないかということについては、これはぜひ今後考えてもらった方がいいんじゃないか。つまり、そういう意味で、例えば本部の書記長だとか委員長だからこれはあれだと、それはある程度皆さん有名人になっていますよ。ところが、そうじゃない人についても、そういう意味で影響力があるということについてやる必要があるんですけれども、どうですか、これは。

銭谷政府参考人 山梨県の教育委員会の資料によれば、教育委員会の職員につきまして、教員出身で教職員組合の委員長、書記長経験者につきましては、本庁では課長が一人、それから指導主事が一人、管理主事二人ということになっております。また、小中学校の校長では二十五人ということでございます。さらに調査を広げることにつきましては、どこまでを範囲として調査が可能か、先生の御指摘も踏まえながら検討してまいりたいと思います。

 いずれにいたしましても、職員の能力や適性に応じ適材適所の人事が行われることが重要であると考えておりまして、そのような観点に立って必要な指導を行ってまいりたいと思っております。

中野(清)委員 まだ幾つかあるんですけれども、私は、この山梨の場合に、このような政治活動が、さっき言いましたけれども、昭和三十二年、五十年、五十四年、平成十年、それで今度だというふうに、これは処分されたものだけだということになってくると、これの背景は何だろうと真剣に考えてみました。そうしますと、やはり教育公務員特例法で教育公務員の政治活動の制限というものを国家公務員並みに課しているのに、国家公務員並みの罰則規定がないということに起因しているように私は考えられるんですよ。

 現行の制度が成立したのは昭和二十九年の改正で、衆議院では罰則を科した原案で議論されたにかかわりませず、参議院では最終的には罰則なしに修正されております。これは、戦後の間もない時期でありますけれども、やはりそこには人間の善意とか教育者の善意とか、それから反省とか自粛、そしてまた教育界の自浄作用というものは当然あるということを考えて、刑事罰でなく行政罰にしたということは十分考えられるわけでございますけれども、今私が言ったように、山梨県の例で言えば、果たしてこの自浄作用が行われているかということについては問題にせざるを得ない。そのことは恐らく山梨だけじゃないんじゃないかというようなことも、決して私、よそのこと、あそこのことだと言いませんよ。でも、全国的に、この種の問題はいろいろ新聞記事なんかを聞いてもあるんじゃないかと疑いを持たざるを得ない。

 私は、教員というのは、子供たちのかがみとなる模範的な職業だと思うんですよ。ですから罰則のない制度、それで、聖職としての尊敬というものに対して、このことが制定された。私は当然だと思いました。ところが、どちらかというと、今教師というのは聖職じゃなくて労働者だ。だから、自己の権利を主張するんだ、政治的な主張もするんだというような立場を前提とするならば、残念ながら、これは法律でもってちゃんと規制する以外にないんじゃないですか、大臣、はっきり申し上げまして。ですから、私は、教育公務員特例法を改正して、国家公務員並みに罰則規定を定めるべきだと思うんですよ。

 ところが、この法律は、大臣、実は五十年前に制定されたんですよ。当時、議事録を見ますと、この規制については、公立学校の教育公務員の政治行為の制限については、当分の間、地方公務員法第三十六条の規定にかかわらず、国家公務員の例にするというので、当分の間というんです。当分の間が五十年かかってしまった。これは文部省の責任ですよ、はっきり言うと。いろいろな意味で。世論を喚起するという意味でですよ、何も法律を出せと言いませんけれども。そういう意味での実態との乖離があるということなんですが、大臣の責任なんですよ。ですから、その点をまず申し上げて、それで、そのことについて大臣の意見というのは求めませんから、それはいいですよ、はっきり言って。しかし、大臣しっかりやってくださいということです、このことは。

 だけれども、それと一緒に、大臣、教育委員会を初めとする教育界の体質改善というものがなければ、これは今言ったように、法改正せざるを得ない。これはもうやむを得ないと思うんですよ。ですから、私は、決して法改正がすべていいと思わないけれども、五十年やってきて、何回も何回も、選挙違反でやっている、いろいろなことでもって規律違反を犯してでも、それでいいんだ、それは権利だというのだったら、それはやはりちゃんとやってくださいよということなんですよ。

 私は、ですから、そういう意味で、教育界の体質改善、特にやはり教育委員会と教職員組合というものはなれ合いではだめだと思うんですよ。中立的な、公正な関係を持つべきだ。その意味で、主張するのは主張する。教員の立場でもって教育について主張する、それは当たり前なんだ。しかし片方も、そういう点でいろいろある。そこに一種の緊張関係というか、決してそれは圧力じゃなくて、そういうものがなければだめだと思うんです。そしてまた、そのためには教職員の服務規律の確保があると思うんですよ。これについては、あなたの責任ですけれども、どうですか。そういう点、どういう決意を持っていらっしゃるか、ぜひはっきりしてくれませんか。

中山国務大臣 中野委員まさに御指摘のように、教育界、教育に携わる先生方、これは中立的であるべきだ。しかも、教育界に起こったことは教育界の中で処理すべきで、外部の力で強制するというようなことはあってはならないんだ。こういう非常に崇高な、ある意味では本当に期待されてこういう法案、改正になったんだろう、こう思うわけでございまして、教育界にある方々は、そのことをしっかり肝に銘じて、やはり中立的な立場で、特に子供たちの教育という非常に大きな影響があるわけですから、そのことをまず肝に銘じてやっていただきたい、こう思うわけでございます。

 文部科学省の責任だと言われますけれども、さっきから申し上げましたように、再三厳正な処分をということでお願いしているんですけれども、それ以上のものはないということは御理解いただきたいし、立法的なものについては、私どもがどうこう言える立場ではありません。これは二十九年のときのいろいろな議論の過程で、参議院の過程でこれはおやめになったんだという話も聞いていますので、我々も教育の中立性ということについては一生懸命頑張ってまいりますけれども、こういったことについてはやはり国会の方でも御論議いただければありがたいなと思っている次第でございます。

中野(清)委員 今までやってきまして、実はきょう、私は、先般の寝屋川事件について聞こうと思ったんですけれども、これは時間がないからやめます。ただ、その中で亡くなった先生、本当に御冥福をお祈りしたいと思うし、また傷ついたお二人の先生方が一日も早く回復をして、教務の方に復帰してもらいたい、そういう願いがあります。

 その中で、今大臣もおっしゃったような、大変な時期だ。少なくとも、私は、文部省がそういう意味で、権限がないという話だけじゃなしに、あらゆる努力をしてもらいたい。

 実はこの間、私、もとの文部大臣の有馬さんの本をちょっと幾つか読んでみましたらば、日本の教育改革ということで、四点言っているんですよ。一つは、今、この間も、ゆとり教育でどうも成績が下がってしまっているけれども、やはり日本の子供たちは優秀で、一生懸命やっているんだ、これは我々は信じた方がいい、その上で伸ばしていこう。ただ、ちょっと応用力とかそういう点で問題があるんじゃないか。もう一つは、今までどうも日本の社会というのは悪平等の弊害がある。また、心の教育の大切さというものがある。そして、それには何よりも地域社会と学校の役割というものをきちんとすべきだし、学校においても、教育現場でもっとそれぞれの責任、だからつまり、悪平等じゃなくて、だれの責任なんだというのをはっきりする必要があるんだろうということを有馬さんがおっしゃっておりました。

 私は、今回の件で問題にしました組合の先生方も、よく伺ってみれば、子供たちを愛するとか、一生懸命やろう、この国を愛する、私は、そういうことを感じるときがあります。ただその方法論が違うだけです。しかし、お互いが子供たちを愛そうとする中で、やはり規律に違反しても、法律に違反しても、何をやってもいいから国をやる、これは革命になってしまうんですよ。法治主義の日本の中において、やはり先生方だって、ちゃんと法律を守れと教えている以上は、それをちゃんとやった中でその運動をしてもらう。それは当然のように思います。

 そういう点について、ぜひ大臣、さっき言ったように、我々は権限がありません、ありませんじゃなしに、もちろん、そういう意味で、強圧的に教育委員会にあれこれ言うことについては私は求めておりませんけれども、あらゆる機会をとらえて、あらゆる場において、それをいろいろなところで世論を喚起してもらって、そして、何としても、このように何回も何回も起きている、そのことはきっと寝屋川事件の学校の問題も同じでしょう。みんなそういうことで同じことをやって、問題が起きるたびに、場当たり的な手法、失礼だけれども、その対症療法で終わっているのじゃなしに、今こそ、本気になってその改革をやっていただきたい。そのことをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。

斉藤委員長 馳浩君。

馳委員 ただいまの中野清委員の質問を承っておりまして、極めて構造的な課題もやはりあるのかなというふうに思います。

 委員長に申し上げますが、ぜひ、当衆議院の文部科学委員会のもとに、山梨県の教職員組合の政治活動あるいは服務規程に反するような問題等に関しての真相究明のための小委員会を設置していただきたい。その上で、輿石東先生、また山梨県の教育長、県政連の会長など、関係者の意見をぜひ聞きたいので、参考人として招致されることを理事会で協議していただきたいと思いますし、その理事会で協議された結果を当委員会にも報告していただきたいと存じますが、いかがでしょうか。

斉藤委員長 その御提案につきましては、後ほど理事会で協議をさせていただきます。報告につきましても、また理事会で協議をさせていただきます。

馳委員 本来なら二十四日にロケットが発射される予定だったそうですが、報道によりますと、二日ほどおくれるそうでありまして、一日おくれると四千万円以上かかるんだそうですね、経費が。けしからぬと思いますが、理由は何か天候のようでもありますし、いたし方ないのかなと。この辺はやはり技術と自然との闘いなのかなと思います。これは担当の小島副大臣にお伺いいたしますが、今後の見通しを教えてください。

小島副大臣 御答弁申し上げます。

 本来であれば明日打ち上げられるということで、国民が大変に関心を持って期待をしていたわけでありますけれども、今馳委員がおっしゃったように、天候不良ということで打ち上げを二十六日以降に延期することになりました。新しい打ち上げ日時につきましては、気象条件等を慎重に見きわめて、二十四日にJAXAにおいて改めて決定するということであります。

 今回の延期は打ち上げに万全を期するものであります。天候不良ということで、いろいろな条件がありまして、今回は風が非常に強いというような予想もありましたので、やむを得なかったわけでありますけれども、最終段階の準備に当たり、関係者が心を一つにして、打ち上げ成功に向けて最大限の努力をしていくということでありますので、御理解いただきたいと思います。

馳委員 先ほどの山梨県の問題にまた戻りますが、実は今月十三日に、実際の組合の先生方が、やはりこういうことはおかしいということで集会を持ち、またきのう、報道にありましたけれども、県政連の寄附金を二〇〇三年についてゼロから一千二十万円に修正をされていて、これに対しても内部から、おかしいんじゃないか、もっと改めるべきだという声が上がっておりますので、これは、こういった動きも踏まえて、ぜひ小委員会の設置をお願いしたいと思っております。

 それで、我が国の教育現場のことを考えると、やはり先生方にできる限り能力を高めてもらって頑張っていただく、これはお願いするしかないんですね。幾ら我々が国会で大声を張り上げていても、やはり現場の先生方は大変な御苦労をされておられます。それに報いる制度というものがあるのかどうかという観点から、教員のお仕事に対して、評価のあり方について文部科学省にお尋ねをしたいと思います。

 実は、皆さん御存じのように、人材確保法というのが昭和四十年代後半にできておりますけれども、これは議員立法として、当時の世相を考えれば、本音の部分では日教組対策の点もありましたし、また、現場で頑張っておられる先生方に何とか報いる、よりよい人材を教育界に、こういう目標もございましたが、時代の変遷によって人確法ももう既に意味を失ってきているのではないか。そういう観点からいえば、見直しないしは廃止も含めて、頑張る先生に、やはり人事考課を通して、評価に基づいて給与、処遇への反映がされてしかるべきと私は思っておりますが、大臣、この点に関しましていかがお考えでしょうか。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 今先生がおっしゃったように、先生方の頑張りが教育に大きく影響するということは明らかでございまして、私も最近学校を訪問して、スクールミーティングなどのいろいろな意見の中でそういうことが明らかでありますので、教員の能力や実績をきちっと評価することが必要であり、また、その評価の結果を配置や処遇、研修等に適切に反映することが重要であると思っておりまして、これがまた信頼される学校づくりの観点からも重要であると考えております。

 そういうことで、文部科学省としても、平成十五年から十七年までに、教員の評価に関する調査研究をすべての都道府県、そして政令指定都市の教育委員会に委嘱しているところであります。具体的には、自己申告と業績評価による能力開発型の人事考課制度などの評価方法や、評価項目あるいは評価者の研修のあり方について検討が進められているところでございます。

 例えば、東京都におきましては、能力開発型人事考課制度を既に導入をしておりまして、特に評価のよかった者については昇給への反映を行っております。また、評価の悪かった者に対しても、十七年度から処遇への反映を考えているということでありまして、新たな評価システムを試行し、また実施しているところが今現在出てきているということでございます。

 こういう取り組みを踏まえながら、引き続き、教員の評価システムの改善充実に向けた取り組みの推進を図っていきたいと思っております。

 昭和四十九年に制定されました人確法につきましては、教員の職務が一般の行政職とは異なり、次代を担う生徒と直接接し、その人間形成に深くかかわる重要なものと考えておりますので、義務教育に従事する教員の給与を一般の行政職員よりも優遇すると定め、教員のすぐれた人材を確保し、もって義務教育の水準の維持向上を図ることを目的としております。

 当時は二二%ぐらいアップされましたが、最近では約四、五%ということで、その格差は余り大きくないわけですが、いずれにしましても、教員のあり方が教育に大きく反映するということで、この制度については、すぐれた人材を確保する点で非常に重要だと考えていますし、廃止したときの士気の低下とか教育水準の低下につながる可能性もありますので、今後も、人事評価も研究しながら、この法律を堅持していきたいと思っているところでございます。

 以上でございます。

馳委員 やはり現場の先生方を萎縮させては確かにいけないんですよね。そういう点から、評価はやはりプラスの評価をしてあげるべきだ、その財源として人確法見直しをすべきではないかというのが私の意見なんですよ。大体四%から五%の調整金を既得権益のように先生方が思っていらっしゃるのがそもそも私はおかしいと。民間は、大体能力に基づいて評価をされて、給与も上がっていくんですよ。

 これは、努力をする先生というのはどういう先生かということを具体的に考えると、やはり校務分掌で協力するとか、教科書どおりに授業できるとか、子供一人一人の質問に対応したり、あるいは生活相談、生徒指導をするとか、それをやっていらっしゃる先生方というのは目に見えるんですよね。そういったものを現場の校長や教頭あるいは主任等が評価できるようにしてあげて、マイナスのところについては研修とか相談に乗ったりしてうまく引き上げてあげる。マイナスだからだめだと萎縮させるようなことはすべきではないと私は思うんですよ。だから、よく頑張っている先生はどんどん処遇にも反映させてあげる、やはりそういう前向きなとらえ方をぜひしていただきたいというのが私の質問の趣旨でございます。

 さて、先般、国際学力調査の結果が出ました。我が国の子供たちは読解力がちょっと落ちてきているなと。私も国語の教員を務めておりまして、また最近でも、大学で授業をしておりまして、リポートを書かせると、基本的な、小学校で習うような漢字の間違い、文章が主語と述語が合っていないとか、複文が複雑文になってしまっているとか、助詞の使い方が全くでたらめであるとか、一体小学校の先生は何をしていたんだと、リポートを採点しながらショックを受けております。

 実は、私も時々国会でやじを飛ばしたりして、自分自身も反省はしておるんですが、やはり話す、聞く、読む、書く、この能力というのは、どんな仕事についても私は重要な観点であろうと思っております。

 まず、大臣にお伺いしますが、大臣は先般、学習指導要領の見直しとかカリキュラムの編成の弾力化とおっしゃいましたが、その発言をされた根拠は何なんですか。ただそう思うから、そういう感じがするからそうだという発言では、いわゆる統計学的、定数量的ではなく、何だ、大臣がかわるたびに文部科学省は方針が変わるのか、こういうふうなそしりを免れませんので、なぜああいう発言、方針を出されたのかという根拠をお示しください。

中山国務大臣 熱血先生、馳先生、現場を踏んできておられますから、その発言は非常に重みがあると思うんです。

 昨年末の国際的な学力調査の結果に別に右往左往しているわけじゃないんですが、傾向として、どうもここ最近の子供たちの学力が落ちてきているのではないか、それ以前に、勉強しようという意欲とか勉強する時間がだんだんと減ってきているんじゃないか、こういうことをずっと実は感じておりまして、そういうところにあの二つの調査結果が出たわけでございます。

 成績が下がっていることを一喜一憂してはならないと思いますけれども、低下傾向にあるということはしっかり認識して、これは深刻に考えなきゃいかぬと思っておりますし、それ以前に、今申し上げましたように、子供たちの意欲とか動機づけが非常に弱くなっている。そして、日本というのは非常に豊かな国なものですから、勉強するよりももっと楽しいことがいっぱいあって、そっちの方に関心が行っているんじゃないかということ。

 それから、あの調査の結果を分析いたしますと、まさに、ゆとり教育ということで我々が目指してきたものが、どうもうまくいっていないんじゃないか。

 特に、今御指摘がありました読解力、この国語の力というのが、これは、日常の我々の生活もやはり国語でございますし、また学校で勉強するときの教科の基本も国語でございます。日本文化の創造から継承と、すべて国語が基本になるわけでございまして、この国語力の強化ということについてはどうしても力を入れないといけないと思います。表現力といいますか、やはりテストの結果を見ましても、選択式、マル・バツはまあまあなんですけれども、記述といいますか、何か自分の考え方をまとめて書くということになりますと、もう初めから放棄しているような、そういった生徒も多いわけでございます。

 そこのところを含めて、特に国語力の強化ということについてはどうしても力を入れていっていかなければいかぬな、こういうふうに認識しているところでございます。

馳委員 そこで、国語の授業時間、三十年前と現在と比べてみました。こうやって見渡してみると、例えば、昭和四十三年、四十四年ごろに小学生、中学生だったのは、多分、民主党の牧先生もそうでしょうし、古賀先生も、肥田先生なんかもそうですね。

 そのころは、小学校の国語の一年生から六年生までの総時間数は千六百三時間ですよ。今、平成十年で、比べてみますと、千三百七十七時間です。千六百三から千三百七十七を引くと、おおよそ二百五十から三百時間は国語の授業の時間数が減っているんですよ。

 目が合ったので、失礼ですが、恐らく牧先生が、読解力とか表現力とか、いわゆる読む、書く、話す、聞く、こういった能力に関して現代の子供たちと比べれば、多分はるかに上回っておられると思います。

 それから、中学校でいいますと、中学校一年、二年、三年の国語の総時間数は、昭和四十三年、四十四年ごろで五百二十五時間、平成十年では三百五十時間。五百二十五から三百五十を引くと、百七十時間も減っているんですよ。

 どう考えても、物理的にそれだけの、まず学習内容は削減せざるを得ないですよね。恐らく、それが総合的な時間、総合の時間などに振り分けられているのかもしれませんが、基本的に、我が国の古典の名作を読む、また考える、評論を読んで考える力を身につける、実際に漢字を書く、漢字の成り立ちを考える、そのプロセスで文章を理路整然と書く、こういう基本的なことは、ほかの社会科や英語もそうです、数学もそうでしょう、理論的に物を考えていってそれを表現するという力の欠如につながっているということは、この時間数から見ても、どうも指摘せざるを得ないんです。

 私は、学力テストの結果もいいんです。けれども、こういう物理的なことからも、これはちょっと盛り返す必要があるのではないかということをわかりやすく大臣から国民に訴えていただきたいというふうに私は思っているんですよ。

 それで、今後、学習内容またカリキュラムの編成の弾力化ということを求めていくのはよいと思います。設置者である市町村に、我が地域の子供たちのこういう力を伸ばしていこうという手法、手段というものを考えさせて実行させる、そのための教員を養成する、こういうことをさせることは、私はとてもすばらしいことだと思います。ただし、これは義務教育でございますから、どこまで頑張って身につけたかという到達度を確認し、その到達度を確認した上で、さらにこういうふうな補足であったり、こういう伸ばし方がよいのではないか。

 また、よい地域の事例を文部科学省としてももっとオープンにして、こういう努力をすると、学力テストの成績が上がるというわけではなくて、こういう能力が身につく、学習意欲が身につく、日本人としての基本的な資質が身につくんだ、こういうふうな訴え方をするのが文部科学省の仕事であって、やはり現場での、特に授業を担当するのは先生方ですから、先生方の能力を向上させて、小中学校を設置している市町村に、その地域でこういうことをやろうということをやらせて、その成果はやはり文部科学省が把握し、またバックアップしてやる、こういう姿勢が必要ではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。大臣、お願いします。

中山国務大臣 まさに御指摘のとおり、我が意を得たりという感じでございます。

 やはり読み書きそろばんといいますが、読み書き計算をきちんとやるということは基本だろうと思うんですね。そういう意味で、教科書の内容を削減するのはやむを得なかったとしても、授業時間まで削減してはいけなかったんじゃないか。要するに、基礎、基本をしっかり身につけて、みずから考え、判断し、行動できる、そういうたくましい子供たちを育てるんだということだったんです、いわゆるゆとり教育というのは。

 ところが、時数まで減らしてしまっているものですから、本当に、やはり繰り返し繰り返し、徹底して教えるということも必要だったんですが、そこのところがおろそかになっているんじゃないかなということもございまして、私としては、余り中教審の結論を先取りするわけにいきませんが、何とかもうちょっと授業時数というのをふやしてもらえないものかなという気持ちは持っているわけでございます。

 そして、今まさに御指摘のように、自分たちがやってきたことが果たしてどういうふうになっているのか、その結果については、チェックして、それをさらに次の過程に生かすということは大事だろうと思っています。

 そういう意味で、いろいろ御批判もあるんですけれども、全国的な学力テストというのも実施して、みんなでいろいろと考えながら、反省しながら、次なる発展を考えていく、国民全体として日本の子供たちの学力を向上させていくというのは、私は、これはもう子供たちにとって一番のプレゼントじゃないか、こんな感じで今取り組んでおるところでございます。

馳委員 実は私の娘も小学校一年生で、そろそろ漢字の勉強をして、家でも、親が言わないと宿題をしないんですけれども、一緒に勉強しておりますと、例えば、漢字の書き順というのは原則があるのを御存じですよね。上から下、右から左という原則があるんですよ。その原則に基づいて、いろいろな漢字の書き順を覚えていく。と同時に、漢字には象形文字、表意文字とあるんですけれども、なぜそういう意味があるのか、どういう読み方をするのか、このプロセスを習うことによって、ある意味では人生を勉強することにつながるんですよ。生き方を勉強することにつながるんですよ。

 私はワープロを否定するわけではありませんが、ちなみに私、高校の教員をしていたときは、テストのときの問題は、あえて全部手書きで書いたんですよ。これは、生徒が読みやすいように気をつけることもありますし、教員としての務めとして、自分が一字一字大事に、字を大切にしながら書くことによってその思いを伝えるという意味もありまして、それは、先輩の先生から、馳さん、必ずテストのときの問題は自分で書きなさいという厳しい指導を受けて、ずっと書いてきました。

 現代の社会と相入れないかもしれませんが、すべてワープロで、また変換をして、それで事足れりということは、よした方がいいと思いますよ。例えば手紙のやりとり、あるいは、皆さんもラブレターを書いたことがあるでしょう。自分の字で書くのとワープロで書くのと、心の伝わり方が違うんですよ。

 こういった指導方法一つとってみても、ビジネス文の作だけではなくて、人と人とのつながりといったものはそういったところからも表現できるのであり、受け取った人間としての理解、心の温かさ、こういったものも伝えてあげられるような、現場の教員がこうした方がいい、ああした方がいいと言う。また、地域によっては、いろいろな伝承、物語などもありますよ。そういったことも伝えてあげられるような、工夫ができるような教育制度にしてほしいなと私は思っているんです。

 今、中教審の話をされましたが、義務教の問題ばかりではないんですよ、中教審で議論しているのは。そこで、お願いしたいのは、地方六団体代表がメンバーに入れてくれ、一応中教審のメンバーも法律に従って人数決まっていると思いますけれども、三人入れろ、いや、二人だ、バナナのたたき売りじゃないんですから、早く入ってもらって議論を始めた方がいいんです。

 基本的に私の考えは、知事会、いわゆる都道府県の代表が一人、また設置者である市町村の代表が一人、二名を本体に入れて、三位一体に関する議論、主張したいことはどんどんやっていただければいいと思っているんです。

 ただし、義務教育費国庫負担制度にかかわる問題については、もう一人ふやして、都道府県、市、また町村代表というふうに分けて、多目に入れてあげてもいいと思いますよ。

 これは、今、中教審でも、都道府県の教育委員会、また政令市の教育委員会の役割もあり、中核市の教育委員会の役割もあり、町村の教育委員会の役割もあり、それぞれのレベルで言いたいこと、主張したいことがやはり違うんですよね。それぞれのレベルで入れてあげて、現場で濃密な議論はすべきだけれども、本体の中教審が、この間、地方代表が入らないで、ちょっと見切り発車のようになってしまいまして、大変残念に思っております。

 この辺、大臣も、麻生さんが新しく知事会長にもなられましたし、やっぱり早く入ってもらうようにちょっとお願いして、議論も深めていただきたいと思うんですが、御決意のほどを、中山大臣。

中山国務大臣 中央教育審議会の委員に早く地方の代表の方が入っていただきたいということで、再三お願いしているわけですけれども、せっかくですから、ちょっとお話し申し上げたいんですが、この中央教育審議会、省庁再編の前はこれは七つの審議会がございまして、二百三十七名の委員の方がいらっしゃった。それが、七つが一つになって中央教育審議会にまとまったんですね。それで三十名なんです。ですから、二百三十七名が三十名になったということはどういうことかというと、本当に、義務教育から生涯学習そしてスポーツ全般にわたるいろいろな分野の方々を三十名にまとめなければいけなかったわけでございます。

 そういう意味で、バランスがありますから、地方団体の方には、最初は事務方は一名がやっとです、こういうことを私のところに言ってきたんですけれども、まさに馳委員がおっしゃいましたように、やはり都道府県、要するに、先生方の給料を負担している都道府県が一人と、実際に学校の設置者であり運営している市町村から一人、二人でいいんじゃないかということで、私が提案して二人ということで向こうに申し入れたんですけれども、なかなか聞いていただけないわけでございます。

 そしてまた、今、委員がおっしゃいましたように、この義務教育費国庫負担制度につきましては、特別部会を設けまして、そちらで徹底して議論しよう、そちらには三名でいいですよということなんですけれども、ここについても申し上げますと、今、三十名この特別部会の候補名が挙がっているんですけれども、この中には、知事さん、市長さん、教育委員長さんと七名入っているんですよ、もう既に地方の方が。三十名の中に七名ですね。プラス三名だと十名になるわけで、三十三名の特別部会、要するに義務教育費国庫負担制度について議論する部会には十名の方が入られるわけですから、もう十分過ぎるんじゃないかなと思うんです。

 麻生会長、月曜日に来られましたので、会長がかわられたときがいいチャンスだと思いますし、会長のリーダーシップで早く入ってきてください、私どもこの負担制度ばかりやっているわけじゃないので、もう見切り発車みたいになっているんですけれども、一刻も早く最初から出てきていただいて、教育全般の見直しをしていますから、御審議に加わっていただきたいということをお願いしたところでございます。

馳委員 やはりお互いに協力し合ってできるように、また環境整備はある部分政治家の仕事だと思いますので、大臣、よろしくお願いいたします。

 最後になりますけれども、去年の十二月七日、八日に、ユネスコのスポーツ担当大臣国際会議というのが開かれたんですよ。我が国からだれが出席したんですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 昨年十二月のユネスコのスポーツ担当大臣会合、八十九カ国の国から参加いたしました。我が国からは、文部科学省のスポーツ・青少年総括官、そしてJOCの理事などが出席したところでございます。

馳委員 実は、この会議で、アンチドーピングに関してユネスコでも条約をつくろう、ことしの秋につくる予定になっているんですが、アンチドーピングに関してはアジアでは我が国がリーダーの役割をしているんですよ。大臣も出ない、副大臣も出ない、政務官も出ない、事務方だけが出るというのは、私は文部科学省としての姿勢がけしからぬと申し上げます。

 なぜかというと、やはり国際会議になれば、先生方はよく出席されてわかると思いますが、ロビー活動をしたり、情報交換をしたり、我が国の主張を展開するときには、残念ながら事務方だけではやはり弱いんですよね。こういう重要な会合には、ぜひ大臣、副大臣、政務官が出るべきである。

 特に、十二月三日にこの間は臨時国会は終わっているんですよ。十二月七日、八日、どんな重要な公務が国内にあったか私はわかりませんが、五人もいて一人も出ていないというのはよくないと私は思います。

 井上国際統括官、来ていますか。井上さん、何で出させなかったんですか。ちょっと答弁してください。

井上政府参考人 お答え申し上げます。

 大臣等の出席につきましては、会議が開催された時期は予算編成時期等の大詰めの時期でございまして、海外出張するということが困難な時期でございました。

馳委員 皆さん、聞きましたね、今の答弁。大臣は聞いていないんですよ。多分、副大臣や政務官も、こういう大事な会議がありますから行ってくださいと事務方から言われなければ、日程調整できないんですよ。これは物すごく大事なことなんですよ。

 こういう国際会議があるたびに、特に文部科学省の、井上さん、国際統括官という立場でいえば、ぜひ政治家として出て、ちょうちょうはっし、ほかの国の先生方とやり合って、我が国の国益に応じて、特にアンチドーピングの問題は大事なんですよ。

 私はまた日を改めてやりますけれども、これはやはり、アジアのリーダーでもありますので、折に触れてそういう主張をしないと、私が心配しているのは、国際会議では中国が物すごいロビー活動をするんですよ。こういったところからも我が国の国力が評価されるんですよ。今回、大臣は知らなかったでしょう。副大臣、塩谷さん、知らなかったでしょう。

 こういうのはどんどん現場から上げさせて、国会中は確かに無理なところがありますよ。閉会中はどんどん海外に、国際会議に行くようにお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 河合正智君。

河合委員 公明党の河合正智でございます。

 大臣初め副大臣、関係各位に御質問させていただきます。

 まず、私は、公明党の文化芸術振興会議の事務局長をさせていただいておりますので、その立場から三点御質問させていただきます。

 任期付の短時間勤務職員制度、これが新しくできたわけでございますが、芸術家や文化人を任期つき、または短時間勤務の場合もあり得ると思いますが、公務員として地方公共団体で採用し地方の文化芸術振興に役立てるべきであると考えます。

 このことについてお伺いさせていただきたいと存じますが、実は、この問題につきまして、総務大臣に総務委員会で質問させていただきましたので、そのことを若干紹介させていただきます。ちょっと長くなりますが、引用させていただきます。

  鳥取県では、文化芸術デザイナーをコーディネーターとして全国公募しました。ここで、柴田英杞さんは、就任のあいさつでこのように述べていらっしゃいます。

  地域から発信される個性ある文化価値こそ、今最も日本に必要とされる活力であり、それが牽引となって新しい市民社会へと生まれ変わっていくことを確信しています。地域には、特色ある固有の文化芸術の力があります。それはとてもたくましい力であり、美しい力であると認識しています。その力の源泉となるのは、その町に生きる人です。文化芸術は、人間力を豊かにする力そのものではないでしょうか。

この柴田英杞さんがおっしゃっておりますように、文化芸術に携わる方々を短時間勤務職員として任用することは、この新しい法制上、可能かどうかということにつきまして麻生国務大臣に問いただしましたところ、麻生大臣からこのように答弁されております。

 それはその町の首長さんの権限の中において、私どもとしては、いわゆる任期付文化指導何とかとか、もう少しあか抜けた名前があるんでしょうけれども、そういったものでできると存じます。

このように答弁をちょうだいしておりますけれども、文化庁の考え方につきましてお伺いさせていただきます。

小島副大臣 御答弁いたします。

 今お話がありました制度は、昨年から導入されたものであります。任期付短時間勤務職員制度という非常に長い名前なんですけれども、今河合委員がおっしゃいましたように、この制度は非常にすばらしい制度だと私も委員からお話があったように考えております。やはり芸術家や文化人が、採用による形態、いろいろな形態も含めて、さまざまな形で文化行政に参画していくことは大変意義深いものと考えております。御指摘の制度を活用していくことも一つの有効な取り組みであるということで高く評価をして、地方自治体の方で大いに活用していただきたいというふうに思っているところでございます。

 文化審議会の中で文化政策部会というのがありまして、本年二月に取りまとめられました「地域文化で日本を元気にしよう!」ということについても、この点について指摘をしているところであります。文化庁としては、本報告書を全国の都道府県、市町村等に配付して、その活用を促すということに取り組んでいるところでありますけれども、これはやはり市町村独自の取り組みということでありますので強制的にやることはできませんけれども、できる限りの指導をしていきたいというふうに考えております。

 以上です。

河合委員 芸術家や文化人の採用に当たりましては、地方自治体の理解が必要不可欠でございます。今副大臣がおっしゃっていただきましたように、ぜひともその推進方をどうぞよろしくお願いしたいと存じます。

 次に、例えば、都道府県、市町村でもそうですけれども、文化芸術に関する問い合わせをどこにしたらいいかということで非常に戸惑いがございます。ある部門につきましては知事部局で扱っている、ある場合は教育委員会で扱っている、いずれにしましても、窓口が複雑多様で、利用する方にとりましては非常に混乱を来しております。

 そこで、今月の二日に公表されました文化審議会文化政策部会の報告書には、このように提言が盛り込まれております。文化芸術団体が気軽に利用、相談できる仕組みを各地方自治体に形成すべきという提言でございますが、この具体策について、どのようにお考えか。

 特に、文化芸術へのさまざまな行政支援、助成措置につきましては、もっと利便性を高めるべく、ワンストップサービスが受けられるような総合窓口を国及び都道府県に早急に設置すべきであると考えます。これは、例えば都道府県の窓口に行きましたら、市町村の文化芸術に関する情報もすべて提供していただける、そして国の文化庁を中心とする施策につきましても、その窓口で全部相談に乗っていただける、こういう要望に対しまして、どのようにお考えでしょうか。また、どのような対策をお考えでしょうか。

小島副大臣 御答弁させていただきます。

 今河合委員からお話があったように、この問題もいろいろと委員の質問があってから話し合いをしたんですけれども、確かに、地方自治体に行くと、どこが窓口だか非常に難しい問題があるということで、一つのイベントがあっても、そのスタンスがどこにあるのか、いわゆる商業観光的なものなのか、または芸術的に教育行政にかかわるものなのか、こういうことが一般市民にするとわからないわけですね。ですから、どういう形でとっていったらいいかということは非常に難しいし、そこを訪れる方にしても非常に困難なことだと思うんです。

 今御指摘がありましたけれども、そういうことを国として直接的に措置を行うということは非常に困難なわけでありますけれども、まず最初に国がその事業を起こす場合に、国が模範として、そういうワンストップサービス的なものができる窓口をつくるということから始めることがいいことであって、そのことが地方自治体の方に及べばこれは最高なわけであります。ですから、そういう形で、こういう国の事業があるときに、地方自治体の方でそれを開催するときに、ぜひ窓口を一本化してやってほしいというような指導はできると思いますので、その辺から始めていきたいと思っています。

 以上です。

河合委員 小島副大臣の非常に幅広い御見識を私十分承知しておりますので、期待申し上げます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 この問題につきましては最後でございますが、文化芸術分野でフリーの立場で働く方々は多いわけでございますが、このような立場で労働災害に遭った場合に、常に労働者性が問題にされまして、労災保険による救済を否定される例が多うございます。高裁での判決も出ているところでございますけれども、文化芸術の分野で活躍される方たちは、まさに社会の発展に寄与する宝ともいうべき方たちでございます。文化立国を標榜する政府といたしましても、このような状況は早急に打開すべきであると考えます。文化人や芸術家の社会的地位向上のためにも、社会保障などを制度化すべきであると考えますけれども、いかがでしょうか。

加茂川政府参考人 お答えをいたします。

 文化芸術の分野におきます実演家でございますとか各種の技術者などの労働実態に関しまして、契約関係が必ずしも明確でないといった理由によりまして、活動中の事故等に対する補償がこれまた十分になされていないという事情については私ども十分承知をいたしておりまして、委員御指摘のような課題意識を私ども持っておるわけでございます。

 ただ、具体的ないわゆる雇用契約といいますか契約の形態でありますとか業務の実態につきましては、各文化芸術の分野によってさまざまでございまして、一概に申し上げることはなかなか難しゅうございます。一般的に言われますのは、いわゆる契約が口約束で行われているという慣行等がございまして、これを改善しないことには、すなわち契約関係の明確化、透明化を図っていかないことには、今の課題に対処できないという分析を私どもはしておるわけでございます。

 そこで、御指摘の社会保障制度につきましては、いわゆる労災制度があるわけでございまして、労災制度の場合には労働者を対象にした制度ということでございますので、委員おっしゃいました労働者性があるかないかが一つ課題になるわけでございます。私どもとしましては、この労働者に当たる、すなわち労働者性を確保するということを実現するためには、いわゆる契約の明確化が必要でございますので、この制度が適用されることが望ましいという前提のもとに、その課題に取り組んでいきたいと思っております。

 すなわち、契約の形態、業務の実態によって労働者に該当しない実演家について、労働者に当たるかどうかを明らかにしつつ、一方で、しない者につきましても、労災制度のもとでは特別加入という制度があるようでございます。これについては一定の要件もあるようでございますから、その活用も考えていきたいと二段階で考えておりますし、必ずしも労災制度の適用にならない分野については、民間の保険制度の一層の活用ということも考えられるわけでございますから、いわば二重三重にして、そういった文化人、芸術家の保障について検討してまいりたいと思っております。

 これにつきましては、関係団体のみならず厚生労働省との連携も十分図っていく必要があると思っておりまして、現在鋭意その努力を進めておるところでございます。

河合委員 ただいま建設業における一人親方の制度等についての御答弁がございましたし、民間の保険の御答弁もございました。また、ほかにも共済制度ですとか、いろいろ工夫はあると思います。また、文化大国と言われているフランスにおきましては、芸術家の地位向上法という法律を立法しておりまして、これに当たっているところでございます。ぜひとも御検討を進めていただきたいと存じます。

 それでは次に、科学技術の点につきまして御質問させていただきます。

 東北大学の金属材料研の川崎教授が、世界初の紫外線発光ダイオードの開発に成功いたしました。これは世界に大変大きな市場が予測されておりますし、したがって、熾烈な国際競争の中で勝ち残ったわけでございます。そのためにはさまざまなシステム構築の成果があったと言われていますが、中でも国の支援が大きく貢献したと私は考えております。

 学術創成研究費を初めとする支援に対しましてどのような評価を行っているのか、お伺いさせていただきます。

小島副大臣 答弁をさせていただきます。

 今御指摘の東北大学の金属材料研究所の川崎教授が世界初の紫外線発光ダイオードの開発に成功したということでありますけれども、これは非常に大きなことでありまして、NHKでも大きく取り上げられたというものであります。

 今御指摘の科学研究費補助金というのがありますけれども、本年度、平成十七年度、千八百八十億円計上され、今予算審議をされているわけでありますけれども、その千八百八十億円の中の一つが学術創成研究費ということでありまして、それが今の川崎教授等に充てられてきているということでございます。

 この補助金は、人文・社会科学から自然科学までのすべての分野にわたって、ともかく基礎から応用までのあらゆる独創的、先駆的な学術研究を対象とするものであって、非常に科学者の中では高く評価をされているわけであります。しかしながら、採択すべき研究課題の審査及びその後の中間、事後評価というものがございまして、大学等の第一線級の研究者にその事後評価というのが行われているわけでありまして、学術的観点から厳正かつ公正に行われております。

 川崎教授の紫外線発光ダイオードにかかわる研究課題はこのような審査を経て採択されたものでありまして、ABCランクでもAランクということでございます。今年度に実施された中間評価でも非常に高い評価を受けておりまして、現行のまま推進すべきとの総合評価を得ているところであります。

 文部科学省としては、学術の振興という観点から、このように科学者が自由な発想に基づき行う優れた研究に対して審査、評価を充実しつつ、今後とも科学研究費補助金による支援を引き続き行ってまいりたいと思っております。

 ありがとうございました。

河合委員 これは目をみはるような研究開発成果だと言われております。

 翻りまして、我が国は、御案内のように、科学技術の分野に関しましては、重点四分野という形で重点化しまして、これを国を挙げて支援しているわけでございますけれども、平成十七年度予算におきます科学技術関係予算の総額は三兆五千七百八十五億円でございます。その中にありまして、科学技術関係予算の八分野の、分野別につきましては、平成十七年度は一兆九千八百三十四億円、その中で、私が申し上げました、国が重点化して取り組んでいるライフサイエンス、情報通信、環境、ナノテク等につきましては、この二兆円弱の予算の中で四五・五%を平成十七年度予算においては占めているところでございます。

 先ほど申し上げました川崎教授の例に出てまいりました学術創成研究費に対する評価というのは、ただいま副大臣から御説明ありましたように、大変高度な評価を行っている。それがまた今日の成果につながったと言われておりますけれども、重点四分野そのものに対して、私は、評価システムをきちっと構築してこれに臨むべきであると考えますが、この重点四分野に対する評価システムはどのようになっておりますか。答弁を願います。

林政府参考人 お答えいたします。

 科学技術創造立国を目指しまして、国費を投入して実施されております重点四分野の研究開発につきましては、すぐれた成果を効率的、効果的につくり出す、それから社会経済への還元を図る、さらには国民への説明責任を果たす、そういった目的を持ちまして、厳正な評価を行っております。

 具体的には、平成十三年十一月に、内閣総理大臣によりまして、国の研究開発評価に関する大綱的指針というものが策定されております。それに基づきまして、各府省は具体的な評価方法等を定めます指針というものを個々に策定して、具体的な研究開発に関する事前、中間、事後の評価を実施しておるということでございます。それに基づきまして、研究開発の改善あるいは予算の資源配分に反映しておるということでございます。

 さらに、非常に大規模な研究開発を含めまして、国家的に重要だというふうに考えられます研究開発につきましては総合科学技術会議がみずから評価を実施しておる、そういう状況でございます。

河合委員 大変ありがとうございます。

 それでは、次の質問に移らせていただきます。

 義務教育費国庫負担制度に関しまして、地方六団体協議を踏まえました文科省の見解につきまして、再度確認をさせていただきたいと存じます。簡単で結構でございますが、文科大臣にお願いいたします。

中山国務大臣 義務教育というのは、憲法の保障します国民の権利であるとともに、国家社会の発展を担う人材育成という国家戦略に位置づけられるものでありまして、国が最終的な責任を負っていると考えております。その責任を制度的、財政的に担保する制度がこの義務教育費国庫負担制度である、このように考えておるわけでございまして、地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国のすべての地域においてすぐれた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育水準の維持向上を図るために極めて重要なものである、このように考えております。

河合委員 この六団体案の第二期をそのまま実現しますと、義務教育費はすべて国の負担ではなくて地方の負担になるという案でございました。義務教育費国庫負担法という法律が現に存在する中で、地方六団体から、意見書といった正規の手続ではなくて、こういう形でこういう議論が展開することに私は一種の危惧を覚えたところでございます。

 さて、児童の学力低下という問題に対しまして、どのような見解をお持ちでしょうか。

銭谷政府参考人 昨年の末に公表されました国際的な学力調査の結果によれば、読解力が大幅に低下をするとともに、我が国がこれまでトップクラスにございました数学や理科についても低下傾向が見られるところでございます。

 例えば読解力につきましては、PISAの調査結果では、八位から十四位に順位が低下するとともに、得点の低い生徒の割合がふえていること、自由記述形式の出題において無回答が多いことなどの課題が見受けられるところでございまして、深刻に受けとめているところでございます。また、日本の子供たちの勉強時間が非常に短い、あるいは、子供たちの学習習慣が、あるいは学習意欲が必ずしも十分に身についていないということも指摘をされております。

 私どもといたしましては、基礎的な知識や技能をしっかりと身につけさせ、それを活用しながら、みずから学び、みずから考える力などの生きる力をはぐくむという現行学習指導要領のねらいが十分達成されているのか、また、そのための手だてが十分講じられているのかということなどにつきまして課題があると考えております。

河合委員 先ほど馳委員の質問が既にございましたので、簡潔にお答えいただいて結構でございますけれども、これに伴います学習指導要領の見直しですとか、いわゆるゆとり教育の見直し論議につきまして、文部科学大臣の発言がいろいろ取りざたされておりますけれども、真意のほどを簡潔にお述べいただきたいと存じます。

中山国務大臣 今、銭谷局長が答弁いたしましたように、いろいろ今の学習指導要領は問題があるのではないか、こういう認識を持っておりまして、それに対して一体どうしたらいいんだと。そもそも、学習意欲が乏しいし、なぜ勉強しなければいけないんだという動機づけが弱いという中で、これからの子供たち、どういう時代、どういう社会になるかわかりませんが、どういう時代になっても、やはりたくましく生き抜いてほしい。

 そういうたくましい子供たちを育てるためにどうしたらいいかということで、先日の中央教育審議会に学習指導要領全般について、タブーを設けることなく、忌憚のない意見を述べていただきたいということで諮問をいたしたところでございます。一つは、教育内容の改善充実、二つ目は、学習指導要領の枠組みの改善、三つ目は、学ぶ意欲を高め、理解を深める授業の実現など指導上の留意点、さらに、地域や学校の特色を生かした教育の推進、こういったこと全般について議論していただこうということになっております。

河合委員 この件につきまして、日本を代表する日刊紙の社説でこのように述べております。昨年暮れに公表された二つの国際調査で先進国の平均を大きく下回った、このように述べて、授業時間も教える内容も学習指導要領で細かく決められている、見直すべきは上意下達で学校を振り回してきた教育行政の仕組みそのものにあるというふうに断定しております。

 これは、教育の独立性、中立性をいかに担保していくべきかという議論に、私は非常に収れんされていくのではないかと思いますが、ただいま教育改革のモデルとされておりますイギリスの教育改革、大変たくさん教育改革をしてきた国でございますが、例えばサッチャー首相の教育改革を取り上げましても、従来の労働党政権から保守党政権へ、労働党の支持基盤である地方教育行政当局、ここを壊滅するぐらいの教育改革と言われておりまして、政権交代によりまして教育制度そのものが大転換してしまうという事態を招来しておりまして、これが大きなイギリスの社会問題の基礎を形成しております。

 教育の独立性、中立性ということにつきまして、我が国の教育基本法第十条の解釈につきまして、生涯学習政策局長の見解を求めます。

田中政府参考人 教育基本法第十条についてのお尋ねでございますけれども、同条は、教育について、一部の勢力により不当に支配されることがあってはならず、国民全体のために行われるべきことを規定しているところでございまして、すなわち、教育は法令の定めるところにより適切に行われるものであって、これを逸脱するような行為に服してはならないという趣旨であると解釈しておるところでございます。

河合委員 ただいまの見解に対しまして、立法当時の文部大臣、田中耕太郎文部大臣は、教育には、教育自体のみならず、教育行政も包含する、本条に「教育行政」という表題がつけられている以上、重点は教育行政に置かれていると見るべきである、このように述べております。

 そこで質問させていただきたいと思いますが、さきの二月九日の参議院の憲法調査会におきまして、我が党の山下栄一議員は、教育、教育行政につきましては独立行政委員会的な位置づけが非常に大切ではないかと述べられております。非常に傾聴すべき見解であると私も拝聴しました。

 それは、もう少し詳しく述べさせていただきますと、教育、教育行政につきましては、内閣から距離を置いた独立行政委員会的な、また地方における教育委員会的なものを中央においても考える、このことが求められているのではないかと委員は提言しておりまして、それは、家庭教育のあり方、また社会教育、家庭、家族が崩壊している中で、その家庭のことまで政治、行政が立ち入ろうとする動きがあるわけですけれども、そういうことにつきましては、非常に神経質に、慎重にやるべきだというふうに委員は考えておりまして、学校教育につきましても、人を育てる、また学ぶということ、人格の形成に直接かかわるこの教育行政については、内閣から距離を置く仕組み、すなわち独立行政委員会的なことを志向する考え方も大事ではないかと述べております。

 これは、独立行政委員会、すなわち、我が国の法制でいきますと、公正取引委員会、また人事院といったものが現にあるわけでございますが、この点につきまして文部科学大臣の御見解をお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 教育において中立性ということは非常に重要なことである、こう思っておりまして、我が国の将来を担う子供たちの健全な成長、発達を図っていくという観点から、私はこれは国の責任であると考えております。どこの国におきましても、今は国家戦略として教育を考えているわけでございますが、そういった中で、地方公共団体におきましては、直接選挙によって選ばれた広範な権限を持つ知事や市町村長から独立した機関として教育委員会が置かれて、学校の設置管理や教職員の人事などの教育行政を直接実施する役割を担っているわけでございます。

 一方、国におきましては、これは全国的な教育水準の維持、向上の観点から、基本的な制度の枠組みやあるいは基準の設定、必要な財政的な支援を行うということから、国会、そして特に国民に対して責任を有する内閣の指揮監督のもとで、文部科学大臣が、中央教育審議会の意見も踏まえながら、教育行政を展開しておるわけでございます。

 こういう行政機関のあり方というのは、国と地方ではおのずから違うわけでございますが、私は、国として、やはり国民に教育のまず第一義的な責任を持っていると思っているというふうに考えておるところでございます。文部科学省といたしましては、初等中等教育はもとより、高等教育、社会教育等を含む教育行政を一体的に推進して、豊かな人間性を備えた創造的な人材の育成に、その責任を有する国の機関として今後とも全力を挙げて取り組んでまいりたい、このように考えております。

河合委員 文部科学大臣の御見解としてお伺いさせていただきました。大変にありがとうございました。

斉藤委員長 達増拓也君。

達増委員 初めに、大阪府寝屋川市の小学校で起きた事件に関しまして、亡くなられた先生の御冥福をお祈りし、また、おけがをされた先生方の回復をお祈りいたします。

 さて、教育基本法改正問題について質問をいたします。

 報道などでは、ことしのこの通常国会、教育基本法改正が大きい目玉になるのではないかとされていたわけでありますけれども、政府は、政府原案があるのではないかという報道を否定したりしていまして、今まだ教育基本法改正案、政府原案は存在しないと公表していますけれども、この法案提出はしないんでしょうか。

中山国務大臣 今国会に提出することを断念したということではございませんで、与党ともよく相談しながら、可能な限り速やかな改正を目指してしっかりと取り組んでいるところでございます。

達増委員 この教育については、いろんな改革、この教育基本法改正問題から後、いろんな当面の課題に対する改革、そういったものがどういう優先順位で取り組まれているのか、どのようなパッケージで政府が取り組んでいるのかよくわからないところがありますので、引き続き伺います。

 この教育基本法改正については、遠山文科大臣のときに中教審に諮問をして、そして中教審の答申があったわけですけれども、この平成十三年に行われた文部科学大臣、遠山文科大臣の諮問では、次に掲げる事項について諮問しますということで、一に「教育振興基本計画の策定について」、そして二に「新しい時代にふさわしい教育基本法の在り方について」という諮問でありました。「理由」というところを読みますと、「教育振興基本計画を策定するとともに、」「教育基本法の新しい時代にふさわしい在り方について、総合的に検討する必要がある。」、これは、教育基本法の新しいあり方については検討をする必要なんですが、教育振興基本計画については、これは必要性は、もうこれは必要だ、とにかく策定しなきゃならないという前提でどうも諮問したように読めるんですね。

 実際、中教審で審議が始まったときも、教育基本法の問題の前に、まず教育振興基本計画のことから議論がスタートしていたわけでありますけれども、もしも、教育基本法の見直しもさることながら、この教育振興基本計画の策定が喫緊の課題であれば、こちらの方を先にやるということはないんでしょうか。

中山国務大臣 今、さまざまな教育改革が進められているわけでございますが、やはり根本にさかのぼって考えなきゃいけないということで、この教育基本法の改正論議が進められているわけでございます。

 この教育基本法の改正と教育振興基本計画の関係でございますが、この教育改革を実効あるものにするためには、教育の理念や原則の再構築とともに、その理念や原則を具体化する施策を総合的、体系的に位置づけ、実施することが必要でございます。

 中央教育審議会の答申におきましても、この教育基本法を改正するとともに、その改正後、政府全体として教育振興基本計画を策定することの必要性が提起されていると考えておるわけでございまして、文部科学省といたしましては、教育基本法の速やかな改正に向けてしっかりと取り組むとともに、改正後の基本法の規定に基づき、教育施策を総合的、かつ体系的に推進するための教育振興基本計画の策定を進めることにしたい、このように考えております。

達増委員 中山大臣になられて、そして今国会での所信表明演説でも「甦れ、日本!」という改革プログラムが訴えられています。

 この「甦れ、日本!」、「教育改革の方針」として、「義務教育の改革」というものを柱にしています。しかし、その「義務教育の改革」の中に「(1)教育基本法の改正」というのが入ってきまして、次は「(2)学力向上」、その後「(3)教員の質の向上」、「(4)現場主義」と続いて、「(5)義務教育費国庫負担制度の改革」というのが入ってくる。

 非常に、五十年に一度、百年に一度のような改革と当面の財政構造改革に関連した、そういう金目の当面の改革、また学力向上というのは、これはどうもOECD、共通テスト等の国際的な調査結果を踏まえて喫緊の課題として出てきたようなところもある。どうもそういう中長期的課題と当面の課題、そういったものがごちゃまぜになっているのではないかという印象を受けます。特に、「学力向上 世界のトップへ」という項目については、どうも国際的な調査結果というものを受けて慌てて出してきたんじゃないかという懸念を抱きます。

 大臣所信の中で、大臣は、「国際的な調査結果から見て、読解力を初め、我が国の子供たちの学力が低下傾向にあることは深刻に受けとめる必要があります。特に憂慮するのは、我が国の子供たちの勉強時間が短く、勉強への動機づけが希薄であるなど、学ぶ意欲が乏しく、学習習慣が身についていないことであります。」というふうに述べられています。

 このことというのは、学力低下問題というのは有識者はかなり前から指摘していたことでもありますし、今回の国際調査で初めて問題になったということではないと思うんですけれども、この学力問題については、政府はこの国際的な調査結果が出るまで問題を把握していなかったんでしょうか。

中山国務大臣 私が昨年十一月に公表いたしました「甦れ、日本!」という教育改革案でございますが、具体的に教育基本法の改正から義務教育の国庫負担制度の改革まで並べているわけでございます。

 確かに、中長期的なものもありますし、喫緊のものもございますが、それぞれに私は重みのあるものであるというふうに考えていまして、教育改革全般を論ずる場合に、やはり基本的なものからやっていかなければいかぬし、かつ、今現状はどうなっているかという認識もしっかり踏まえた上で改革をやっていかなければいかぬということで、五つの項目を出したわけでございます。

 そういった中で、この学力の低下、今に始まったことじゃないのに何か慌てているんじゃないか、このような御指摘がございましたが、私自身は、長らく教育というものを外から見てまいったんですけれども、最近の子供たちの状況等を見ながら、どうも学力は大分低下してきているんじゃないかな、低下傾向にあるんじゃないかな、それ以前に、子供の生きざまといいますか生き方、そういったものも問題ではないかな、このように思ったわけでございます。

 確かに、学力調査というのは、今回だけじゃなくて何回かにわたって過去からずっとやられてきたわけでございますが、子細に点検いたしますと、やはりその調査ごとに下がってきているということは、これはもう否めない事実じゃないか。低下傾向といいますか、低下傾向にあることは否めない事実ではないか、これは私のみならず、文部科学省の事務方も認識していたと思うんですけれども。

 これがゆとり教育の結果ではないかということについては、まだ論証といいますか検証は済んでいないわけで、今回そういったことも含めて、全般について見直そう、こう思っているわけでございまして、決して、昨年末の国際的な学力調査の結果を見て慌てふためいているということでは決してない。傾向としてそういうことがあるということはしっかり認識した上で、しかし、このままではいけないんじゃないか。やはり日本というのはほかに資源のない国、人材だけが資源であるという原点に立ち返って、もう一回、学力をかつてのような世界のトップレベルに引き上げよう、そういう決意で取り組んでいるということを御理解いただきたいと思います。

達増委員 国際的な調査結果については、文科省が「課題と改善の方向」という資料をまとめていまして、これによると、例えば、読解力については、「課題」として、「テキストの解釈、熟考・評価に課題がある。 自由記述(論述)の設問に課題がある。」と。この「課題」に対して「改善の方向」として、「テキストを理解・評価しながら読む力を高めること。 テキストに基づいて自分の考えを書く力を高めること。 様々な文章や資料を読む機会や、自分の意見を述べたり書いたりする機会を充実すること。」という改善の方向が示されています。

 こういうことが、読解力のほかにも数学的リテラシー、科学的リテラシーについてもありまして、最後、「質問紙調査」、「学習意欲、学習習慣等に課題がある。」という課題については、「実験・観察や実生活との関連を重視した指導、目標設定や評価の工夫などにより学習意欲を高める指導を充実すること。 宿題や課題を適切に与えることや、学習ガイダンスの充実等を通じて、学習習慣や学習規律を確立すること。」という改善の方向が示されており、これは極めて真っ当な課題と改善という整理だと思います。

 この改善の特徴は、制度的変更を必要としない、今のままで、それぞれ学校現場あるいは学習者自身、また保護者、家庭などがこのことに気をつけてやっていけば、かなりの改善が期待できるというものなので、まずはこれの周知徹底ということが肝心なんだと思います。

 大臣は、学習指導要領の見直しということを指示されました。これはその検討課題の中に授業時間数等の見直しというものが入っていて、これが報道等で、総合学習を減らして教科をふやすということじゃないかという議論になっているところであります。

 総合学習についてですけれども、今学習意欲の改善の方向のところで、「実験・観察や実生活との関連を重視した指導、目標設定や評価の工夫」といった、総合的な学習ということで行われていることがまさに改善の方向として指摘されていることもありますし、文科省が言う生きる力をはぐくむとかそういった目標のためにも、やはり総合学習というのは一定の意味があると思いますので、軽々にこれを削減すればいいという話ではないんじゃないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

中山国務大臣 昨年末の国際的な学力調査の結果をもとにしまして、文部科学省としてはこの評価、分析を行ったわけでございまして、その分析を踏まえまして、ことしの一月に、臨時指導主事会議を開きまして、指導の改善の方向の中間まとめを報告したところでございます。

 具体的には、読解力の得点の経年変化で中位層が下位層にシフトしている、解釈を要する問題や自由記述の問題に課題がある、基礎的、基本的な計算技能の問題や実生活との関連づけが必要な問題等に課題がある、それから学習意欲とか習慣に課題がある、こんなことがわかりましたものですから、すぐにこれは現場に実は指示といいますか、流したところでございます。

 今後、より詳細な分析を踏まえまして、今年度末を目途に、指導上の改善点を示した指導資料を作成して各学校に授業改善の徹底を図ろう、こうしているわけでございます。

 そういった中で、私たちは、今までやってきた指導要領、現行学習指導要領、これは誤解を与えましたが、いわゆるゆとり教育といったものが一体どのように実際に現場で行われているか。もう三年たちますので、やはり検証する必要があるんじゃないかということもありまして、私ども、今、全国三百校ぐらいの学校を回ろうじゃないか。

 まず現場の実情を見て、先生方や保護者の方々がどういうふうに考えているか、また、総合的学習の時間等がどのように活用されているかというようなことについていろいろと話を聞き、また調査しよう、こう考えているわけでございます。まさに生きる力といいますか、御指摘ありましたような自然体験だとかそういったことを含めて、子供たちをたくましく育てたい、こういうことが果たしてそういう方向に進んでいるかどうかということを含めて、総合的な学習の時間、これの検証をしたいということで今取り組んでおるところでございます。

達増委員 学力低下問題をめぐっては、昔はよかった、昔は授業時間数もたくさんあったし、授業内容もたくさんあったから、昔に戻せばいいかのような議論があるわけですけれども、実は、今の教育を取り巻く経済社会環境というものが昔と決定的に違うところというのを踏まえなければならないと考えております。

 そういう中で、私は、コミュニティ・スクールの重要性を今から質問しますが、その前に一つ紹介したいのは、きょう、あす、予算委員会公聴会が行われますが、そこで公述人の一人になっている山田昌弘さん、学芸大学の教授ですけれども、「希望格差社会」という本を出していまして、その中で指摘しているのは、かつては人生におけるレールのようなものがはっきりしていて、いい学校に進み、いい会社に入れば、その会社の中で一生働いて、結婚とか家庭生活とか、そういう人生設計まで見通すことができた。とにかくそうやって勉強していい会社を目指すとか、あるいは大学から一部上場企業みたいな、そういうレール以外にもいろいろなレールはあって、工業高校を卒業して地元の評判のいいメーカーに入る。そこでまた、やはり結婚もして子供も生まれて、そういう生涯設計が可能になる。

 そのどのレールに入っていくかという中で、試験によって選抜されていくけれども、その中で自分なりの生き方、とにかく勉強していわゆるいい大学からいい会社を目指すか、それとももっと地域に根差した生き方を目指すかとかいうのが、そういう試験を通じて振り分けられていた。そういう競争を通じて自分がどのレールに入っていくかが決まり、一たんレールに入れば、そのレールで一生それなりに幸せというものが予測できた。ところが、このレールが最近機能しなくなっている。

 これは、情報化社会、ニューエコノミー、そういう産業社会から情報化社会へという中で、ちょっと前まで、例えば東大法学部を出て都市銀行、大銀行に入れば、それでもう一生幸せというのが、二、三十年前はそういうイメージだったと思いますが、その後、全然そうじゃない展開になっているわけであります。

 そうやって、このレールに乗っていさえすればというところから、そのレール自体が急遽壊れてしまう。リストラ世代の自殺がふえているということも、今までそういうことは想定されていなかったのに、そういうことが起こる時代になっているということだと思います。それは工業高校から地元のメーカーにということも、今の経済情勢では全然就職率が低下していて、そういうことも望めない。

 この山田昌弘先生の趣旨は、そういった、勉強さえしていれば、その中でこのレールに入りさえすれば一生幸せということがもう全然期待できなくなっているから、勉強する気も低下してくる、意欲が低下してくる。学力低下の原因は学校の中にあるというよりは、そういう経済社会の環境変化ということが主要な学力低下の原因だということを山田昌弘先生は紹介しているわけであります。

 もちろん競争によって、例えばお医者さんになるとか、これは試験に合格すればまずお医者さんにはなれるわけでありますから、そういう道も残ってはいるんですが、試験、競争とは違うところで自己実現を図っていかなければならない、そういうことがふえている中で、私が言いたいのは、受験競争主導の学力向上という発想から、コミュニティー主導の学力向上という発想に切りかえた方がいいんじゃないかということであります。学校を中心としたコミュニティーの中で、生徒と先生、保護者、そして地域の人たちが、コミュニティーとしてその中で学ぶことによって学ぶ意欲が高まり、そしてそこで学力を高めていく、そういうコミュニティ・スクール。

 例えば、日本の教育の歴史の中でうまくいった例として、吉田松陰の松下村塾の例があると思いますが、あれも、高杉晋作と久坂玄瑞のライバル関係、競争というのは有名な話ですけれども、みんなが競争して勉強していったわけじゃなく、先生吉田松陰と一緒に畑を耕したり、いろいろな日常の、部屋の掃除をしたりとかそういうコミュニティーの中での先生と生徒の関係とか、生徒同士の友情とか、またそれを取り巻く地域の人たちとの関係とか、そういう中で学ぶ意欲、そして学力の向上ということが実現していった、そういう地域主導の教育ということを日本の教育政策の中心に据えていかなければならないと思います。

 コミュニティ・スクールは法律で認められるようにはなったんですけれども、まだまだ地域の主体性とか学校の権限というのが弱いのではないかと懸念いたします。

 具体的な質問をいたしますと、今、教育委員会がコミュニティ・スクールを指定する、それをつくることを教育委員会が決めることになっているわけですけれども、このときに、例えば一定数の住民の請求があれば、教育委員会は当該学校に必ず学校運営協議会を置かなければならない、そういったことが必要ではないかと思うんですけれども、この点はいかがでしょうか。

中山国務大臣 いろいろお話しされたんですけれども、要するに、昔はいい大学を出ていい会社に就職すればいいという時代だった、今はそうじゃない、まさにそのとおりでございまして、どういう社会、どういう時代になるのかわかりません。だから、そういう意味では、大学へ行っていい会社に入るのか、あるいは工業高校を出て地元に就職するのか、ある意味では安定した、そういった道みたいなものが前は見えていたと思うんですけれども、今は逆に全く見えないわけですから。

 私が申し上げたいのは、どういう時代になっても、やはりたくましく生き抜いていく、そういう子供たちを育てておかないと、せっかくこの世に生まれてきた子供たち、幸せな人生を送れないんじゃないか。何とか、これからを生きる子供たち、せっかく生まれてきたんですから、その人生が幸せなものであってほしい、有意義なものであってほしい、そのために子供たちを育てるという意味で、ゆとり教育もその線に沿ったものだろうと私は思っています。

 ただ、それがそういうたくましい力を本当に備えているのか、どうも無気力で、勉強もしない、何のために勉強したらいいかわからないような子供たちにどうしたら勉強しなきゃいけないよということを教えるか、これが今大きな課題ではないか、このように考えているわけでございます。

 それから、コミュニティ・スクールにつきましては、今お話がありましたように、全国でいろいろなコミュニティ・スクールをつくろう、そういう機運も盛り上がっているわけでございますが、まず、どの学校をコミュニティ・スクールとして指定するか。これは教育委員会において最終的には判断されるべきものでございまして、教育委員会が住民の意向、保護者の意向とかそういったものを反映して、そういったものに沿えるような手続を定めることができるわけでございます。

 そういう意味で、今後コミュニティ・スクールが広がっていくことも期待するわけでございますけれども、まず第一義的には地元、それから保護者、これからの子供たち、どういう子供たちを育てていくのか、そういうしっかりした理念といいますか、そういったものを持ってもらいたいと思いますし、そういうのをつくるに当たりましては、ぜひとも地域の実情に合った、まさに地元の方々が創意工夫をして立派な子供たちが育てられるような、そういう適切な対応ができますように教育委員会の方にもお願いしておるところでございます。

達増委員 今の制度のままですと、コミュニティ・スクールというものをつくっても、そこの学校運営協議会というのが教育委員会に対して意見を言える機関ということで、教職員の任免、異動等々、そういったことについて、これはむしろきちっとそういう学校運営協議会があって、そこで校長先生、教員、学校として話し合って決めたことであれば、それは学校現場に権限があるんだ、そういう形にしていかないと、ただ教育委員会に物申せるだけの学校運営協議会みたいな形では、なかなかコミュニティ・スクールというのも広まらないし、真の形で根差していかないと思うんですが、より徹底した学校現場への権限移譲についてはいかがでしょう。

塩谷副大臣 お答え申し上げます。

 コミュニティ・スクールにつきましては、ただいまいろいろお話ございましたように、地域や保護者が権限と責任を持って学校運営に参画するという仕組みにより、より地域に開かれた信頼される学校づくりを実現することを目的として制度化されたものでございますが、このために、コミュニティ・スクールにおいては学校運営協議会が設置され、学校運営の基本方針の承認、それから教職員の人事に関し教育委員会に意見を述べることができるという仕組みが導入をされているところでございます。

 より裁量権を拡大し、そして創意工夫によることが重要であると考えておりますが、すべてが学校運営に任されるという段階ではまだないと思っておりまして、それが、あくまで今教育委員会との、学校とのお互いの権限の、いわゆるどちらがどうそれを行使するということを、今後ともいろいろな形で議論する中で決めていくべきだと思っております。

 いずれにしましても、予算などにおける学校裁量権の拡大に積極的に取り組む例も見られておりますので、今後さらにこの点は推進していく必要があると思っておるところでございます。

達増委員 学力向上をかき立てるものは、学ぶ者本人の知的好奇心、向上心もあるんでしょうけれども、そこにやはり将来きちっと仕事につきたいという、あるいは古い言葉で言うと立身出世、そういうもの。ただ、そこだけではまだ弱いし、今それだけでは機能しなくなってきている。したがって、そこでコミュニティーという観点を入れることで、この学校で学ぶんだからこれはきちっと学ぼうとか、この地域の中で学ぶんだからこれはちゃんと勉強しようとか、そういう学校づくり、地域づくりというのがこれから非常に重要だということを重ねて指摘したいと思います。

 次に、学力問題もさることながら、体力問題ということも実は今深刻になってきているのではないでしょうか。

 そこで、最近私の地元盛岡市に来て講演をしていった清川輝基さんという元NHKのディレクターの方が、「人間になれない子どもたち」という本を書いているんですが、その中で、子供の背筋力が非常に低下している、そして、一九六四年から文部省がスタートした子供たちの体力テストの中に背筋力調査というのがあったけれども、一九九七年で調査項目から背筋力が外されてしまった、その理由は、背筋力調査をやると腰を痛める子が続出するからだと指摘されているんですね。

 一九六〇年ごろには十七歳女子一・八ぐらいあった背筋力指数というものが、九七年ごろには一・五くらいまで落ちている。この一・五というのは、お母さんが赤ちゃんを抱えたり、おんぶしたりできる限界、一・五以上ないとそれが難しいという、そこも割り込みそうになっていたのが九七年。

 十七歳男子については、一九六〇年ころ二・五くらいあった背筋力指数が、九七年には二・二ぐらいまで落ちていて、ちなみに背筋力指数二・〇というのが、親の介護で親を抱いてベッドに乗せるとかというのに必要な背筋力指数が二・〇、そこに向かってどんどん落ち込んでいたということで、非常に問題なんですが、腰を痛める生徒が続出するからという理由で九七年に背筋力調査が打ち切られたというのは事実でしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生御指摘のように、昭和三十九年から体力テストを実施してきたわけでございます。三十年余りが経過する中で、国民の体位の変化でございますとかスポーツ医科学の進展等々に伴いまして、テストの内容の見直しでございますとか新しい体力テストのあり方について、平成八年から三カ年かけまして検討なされ、平成十一年から現行の新体力テストというものを実施しているところでございます。

 この見直しの視点といたしましては、一つはその対象年齢の拡充、高年齢者についても広げるということはありますが、あと、テスト項目につきましては、児童期から高齢期までの幅広い年齢層の体力を把握するための各年齢共通のテスト項目を設定すること、また、テスト項目の妥当性でございますとか安全性というものを検討すること、そういった観点から見直しがされたわけでございます。

 先生御指摘の背筋力につきましては、今御指摘ございましたように、測定時の誤った使用により腰を痛めるというような指摘もあったわけでございますけれども、見直しに際しましては、第一には、体力要素としての筋力。この筋力を把握するためには、背筋力のほかに握力というのがあるわけでございますけれども、握力を測定することで十分であると考えられたということ、さらに、以前より背筋力の測定につきましては、脚力の影響を受けるということで、正確に背筋の力のみを測定することが困難であるというふうな指摘もあったということでございまして、この筋力の測定に関しましては、握力を六歳から七十九歳までの各年齢共通のテスト項目というふうに改めて位置づけまして、背筋力については新体力テスト項目から除いたということでございます。

達増委員 学力低下問題と並んで、この体力低下問題というのが非常に深刻なので、きちっとその実態を把握して、それに対応した施策ができるように調査をしていかなきゃならないということを指摘いたします。

 次に、この学力低下、体力低下と非常に密接に関係あると思われるテレビゲームについて伺います。子供たちの間でのテレビゲームの普及というのは非常に大きく、勉強時間以上にテレビゲームをやっている例も多く、これが学ぶ時間を少なくしたり、あるいは外で遊び回る時間を減らしたりということにつながっていると思います。

 このテレビゲームと子供の関係については、いろいろ関係の団体、関係業者団体、業界団体が調査をしたり、あるいは研究者、学者さんが調査をしたり、また総務省の世論調査の一環で調査をしたりとか、随時調査されているんですけれども、かなり深刻な問題、特に幾つかの調査で指摘されているのは、親御さんが、保護者の皆さんが実態を把握していないという結果が出ているんですね。

 子供がこれだけやっているということよりも、親がどのくらい自分の子供がやっていると思うかというのは少な目に出てきている。つまり、親が実態を把握していない。

 ゲームというのは、私も幾らか経験がありますけれども、大人でさえ自分をコントロールできなくなって、はまったりのめり込んだり徹夜をしちゃったりとか、大人ですらゲームというのはそういうところがあるので、まして子供ですから、本当に自分をコントロールできなくなっているのがほとんどだと思うんですね。

 そういう中で、家庭で、あるいは子供自身が自己コントロールをきちっとしていくためにも、この際、公的に、定期的にきちっと調査をして、そして現状把握して、必要な情報を開示していくべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 先生、今御指摘のありましたように、子供とテレビゲームとの関係につきまして、平成十一年の実態調査によりますと、子供がテレビゲームに接する時間につきまして、保護者の認識と子供の実態との間では開きがあるということが明らかになっているわけでございます。

 それ以外に、実は、平成十三年の実態調査によれば、小学生が一日にテレビゲームで遊んでいる時間につきましては、男子平均で平日は一・六時間、女子は平日で〇・七時間となっておりまして、男女差が顕著に見られる。このような傾向は中学生も同様でございまして、男子は平均で平日は一・三時間、女子は平均で平日〇・六時間となっておるところでございます。

 また、十五年度の実態調査によりますと、小学生の九%、中学生の六%につきましては、一日三時間以上テレビゲームで遊んでいるというデータがある一方で、小学生の五三%、中学生の六三%につきましては、ほとんど遊ばないか、もしくは遊ばないというふうな回答になっているわけでありまして、かなり個人差もあるというようなデータもあるわけでございます。

 いずれにいたしましても、子供とテレビゲームの現状は非常に重要でございますので、私どもも、今後とも鋭意、実態把握に努めてまいりたいと考えております。

達増委員 では、次に国立大学法人の授業料値上げ問題について伺います。

 国立大学が国立大学法人になりまして、それで国会審議の際に、法人化してしまったら急に授業料値上げとかなるんじゃないかというような指摘もありました。これに対しては、おととしの参議院文教科学委員会で、遠山当時文科大臣が次のように答弁しています。「私としては、学生にとって今回の法人化によって授業料が高くなってしまったり利用しにくくなったりということは、これは絶対避けなくてはいけないと思っています。」と。絶対避けなくてはいけないと遠山文科大臣が答弁している授業料の値上げが、何か今回突如起きてしまう。年額五十二万八百円から五十三万五千八百円、一万五千円の値上げであります。

 これは、国立大学法人への運営費交付金が削減され、その分授業料値上げ、というか、大学が授業料を値上げするということで運営費交付金を削減するというか、その辺はあうんの呼吸で行われる中、我慢して授業料を上げないところも幾つかあるようですけれども、ほとんどの国立大学法人が一万五千円ずつ一律に授業料を上げる。これはやはり、国立大学法人制度を導入する際に、まず基本的に、政府としては絶対やりませんと言っていたことをやっちゃっていることにはならないでしょうか。

中山国務大臣 国立大学の授業料標準額につきましては、従来から、高等教育の機会提供という国立大学の役割等を踏まえつつ、大学教育を受ける者と受けない者との公平の観点、あるいは私立大学の授業料の水準など、社会経済情勢を総合的に勘案いたしまして、結果としてほぼ二年ごとに改定を行ってきたところでございます。

 今回、十七年度からの授業料標準額を改定することとしておりますが、これは、これまでの経緯を踏まえまして、私立大学の授業料の状況等を考慮したものでございまして、適正な水準の範囲内にあるものと認識しておりまして、法人化を契機に授業料改定が大幅なものになったということではないと考えております。

 国立大学法人法の審議の際の遠山文部科学大臣の国会答弁は、法人化によって授業料の大幅な値上げとなることは避けることが望ましいという趣旨の発言、このように理解しておりまして、今回の授業料標準額の改定は、この答弁の趣旨に反するものではないと考えております。

達増委員 義務教育国庫負担制度問題もそうですけれども、政府の中に二枚舌があってはならないと思うんですよね。負担はふやさない、また、国がきちっと負担すべきところは国が負担するという、そうならきちっとそうすべきであって、そう言っている一方で、そうじゃないことをしてみたりとかというのは、これは教育上よろしくないことですし、憲法のもとで国としても非常にこれはよくないことだと思います。

 特に、日本は大学にお金がかかり過ぎる、個人負担が多過ぎる、公的な高等教育への支援が他の諸外国に比べても見劣りしているのが現状でありますし、奨学金にしても、五十万以上になってしまいますと、学費だけで奨学金も吹っ飛ぶくらいの奨学金しか今もらえていないのが実情なわけですから、まだ予算の方は可決していないわけでありまして、この問題については、予算の問題も含めて、まだまだここはあきらめずに取り組んでいきたいと思います。

 同じ大学関係でもう一つ、いわゆるロースクール、法科大学院問題なんですけれども、この法科大学院、もともと法科大学院に行けば半分以上は司法試験に合格して法曹になれる、これは、審議会の答申によっては七、八割が妥当であろうと。

 確かに、今の司法試験受験者、ともすれば法律予備校の勉強中心で、そういう試験対策でどんどん法曹になっていくのは好ましくないんじゃないか、きちっと世の中の酸いも甘いもかみ分けるようなそういう教育を受けた上で法曹になってもらわないと困る、また、そういう法曹がどんどんふえることは、行政による事前チェックから事後の紛争解決へ、そういう規制改革の流れにも沿ったことであるしということで法科大学院というものができたはずなのですけれども、どうも今度、法科大学院入学者のうち三割ぐらいしか司法試験に合格しないというような状況になってきている。

 これは、せっかく法科大学院というのをつくったのに、それしか合格できないのであれば、授業をサボって試験対策に走る生徒が出てきたりとか、教育として機能しなくなる危険性が非常に高いと思います。

 これは、司法試験のあり方については法務省の方でいろいろやるんでしょうが、ただ、そこは文科省としても一緒にやることになっているはずですし、特に教育の側面から見て、きちんと司法試験合格者の数の一定の確保ということは実現していかなければならないと思いますが、この点、どうでしょうか。

塩谷副大臣 法科大学院につきましては、法学教育と司法試験、さらには司法修習を有機的に連携させたプロセスとして、新たな法曹養成制度の中で、法曹養成に特化した実践的な教育を行う大学院として極めて重要な役割を果たすものであると理解をしております。

 新司法試験における合格者数のあり方につきましては、現在、法務省の司法試験委員会において、法科大学院が新たな法曹養成制度の中核であるという理念を尊重し、旧司法試験の試験より新司法試験の試験での合格者数を数多く出すべきという考えのもとで検討を行っているところであります。文部科学省としても、司法試験委員会において、こうした理念、考え方を踏まえた適切な方針が示されることを期待しております。

 各法科大学院において、真に国民の期待と信頼にこたえる法曹の養成に向けて、厳格な成績評価及び修了認定の実施など、法曹養成機関として機能を十分に発揮していけるよう促してまいりたいと思っております。今現在、いろいろな意見が出ておりますが、私どもとしては、今申し上げましたように、少なくとも新しい司法試験での合格者が多くなるようにということの考え方で検討を行っていると思っておるところでございます。

 以上です。

達増委員 法科大学院に入って、そして法曹を目指そうという人たちは、ほかの人がしないような努力をして、一生懸命勉強して、そして公のために働こうという本当にそういう若い人たちでありますから、そういう人たちの思いが真っ正面から裏切られたりとか、そういう人たちが進路で混乱をしたりとか、それは本当に国にとっても大損失になりますから、ここはきちんとやっていただきたいと思います。

 さて、大学関係の質問で、去年もこの委員会で何度も取り上げられた東北文化学園大学の補助金不正受給事件、これはことしに入って公判、裁判がスタートして、堀田元理事長の補助金流用の実態が裁判の場でも明らかにされてきているところであります。

 二月三日の公判では、検察が、この堀田元理事長が石川晋元文部省審議官に資金を支援した。支援というのは、この石川元文部省審議官が平成十年の参議院議員選挙に自民党比例代表名簿第二十一位で立候補した際に、資金面で支援したと。

 この選挙は、自民党は十四位までが当選でしたので、この石川元審議官は当選せず、その後、この学校法人の副理事長に就任するわけでありますが、報道によっては、堀田元理事長、石川氏に三千万円寄附したという報道もありますけれども、事実関係はどうなっているんでしょうか。

金森政府参考人 お答え申し上げます。

 本年二月三日に学校法人東北文化学園大学の堀田元理事長の第二回公判がございまして、同氏が仙台地検の調べに対して御指摘のような供述をしていた旨の報道があったことは承知いたしておりますが、公判中の案件でございまして、文部科学省といたしましては、その詳細について把握をしていないところでございます。

達増委員 はい。

 大学への補助金という形で、これは、税金が補助金という形で何億円もその大学に注ぎ込まれたものが不正に使われた、流用された。そのうち、三千万円だったとしたら三千万円、そういう大きい額が政治のそういう資金に還流する、政官業癒着の典型的なケース。

 今、予算委員会で証人喚問、問題になっている一億円小切手事件も、あれも歯医者さんの政治団体ですけれども、あのお金というのは、七割は保険料とか税金とか、私たち一人一人が出しているお金がそのまま、一億円小切手の七割は少なくともそういう我々一人一人が出しているお金がそこに使われて、それがそういう政治のやみの中に流れていっている、同じパターンだと思います。

 これも、我々一人一人が出している税金というものがそういう選挙に当たってのやみのお金として流れているということであれば、これは非常にゆゆしい問題でありますので、公判中ということではありますけれども、国会は国会で、やはり独自の観点から真相の究明をしていく必要がありますので、この堀田元理事長の参考人招致、ぜひこれは実現していただきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

斉藤委員長 後ほど理事会で協議をさせていただきます。

達増委員 補助金流用、補助金不正受給については、やはり昨年当委員会でも問題になりました世界青少年交流協会、これはもう破産宣告で解散の手続に入ってしまっているそうなんですけれども、逮捕者も出まして、その中で、これも少なからぬ使途不明金があったわけであります。

 この使途不明金の行方について判明しているのかどうか、これも政府に伺います。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 世界青少年交流協会、昨年、同協会の元役職員四名が逮捕、起訴され、現在司法手続が進められているというところでございます。

 この協会が不正受給した補助金等の使途につきましては、公判におきまして、同協会の一般管理費、これは人件費、事務所費等でございますけれども、として使用されたほか、特別手当という名称で同協会の事務局職員の個人利得とされていたということが検察側より明らかにされているところでございまして、この逮捕、起訴された元役職員らもこれらを認めているところでございます。

達増委員 個人利得については、事務局長、経理担当主査、それぞれ六百万円ずつということでよかったでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 個人利得につきましては、この元事務局長及び経理担当主査、各自六百万円ということでございます。

 それから、文部科学省の補助金に関して逮捕されたわけではございませんけれども、元事業課長というのが別件で逮捕されておりまして、二百五十万円ということでございます。公判においては、この元職員は、これら利得したお金をローンの返済でございますとか貯金などに使っていたということを表明しているところでございます。

達増委員 この世界青少年交流協会というのは、文科省の方から補助金が毎年出ていて、かなり多くの事業もやって、また、森喜朗前首相が会長を務めたり、川崎二郎元運輸大臣が常務理事、額賀福志郎元自民党政調会長が理事を務めるなど、日本の青少年交流、国際交流においては非常に重要な役を果たしていたわけでありまして、個人が六百万円ずつ使ったという中身についても、世間から後ろ指さされることのないように、きちっと実態を政府としても明らかにすべきだということを指摘したいと思います。

 次に、森元総理に関して、これはスポーツ新聞の報道ですので、どのくらい本当なのかわからないんですけれども、ちょっと驚いたニュースがあったんです。

 花園の全国高等学校ラグビーフットボール大会、これが去年からことしにかけて年末年始に行われたんですが、石川県代表のチームが緒戦突破した際に、そこに来ていた森元首相がお祝いとして、そのラグビー部の監督に金一封、現金を渡していた。これはもろに公職選挙法違反なのでありますけれども、もらった学校の校長先生がこのスポーツ新聞にインタビューに答えているのは、ラグビー部には一たんそのまま学校に持って帰ってくるよう指導する、私が預かった上でどうするか判断すると答えているんですけれども、これはこの後どうなったんでしょうか。

素川政府参考人 その新聞の報道については、見せていただいたわけでございますけれども、本件の事実関係については文部科学省としては承知しておらないわけでございます。

 なお、報道から見ますと、本件は県立学校の管理運営等の問題ではないというふうに考えられるということで、私どもとしては、本件について調査することは考えていないところでございます。

達増委員 花園のラグビーの全国大会ですよ。これは文科省としても、スポーツ振興、青少年健全育成の観点からほうっておけない問題ではないんですか。もう一度質問します。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省としては、公職選挙法の問題があるかどうかということを判断する立場にはないわけでございまして、本件を報道から見ますと学校側の問題ではないということで、先ほども答弁いたしましたように、本件について調査することは考えていないところでございます。

達増委員 学校側の問題ではないというのは苦肉の答弁であると思いますけれども、青少年健全育成、スポーツ振興、そういったところから、花園の果たす役割というのは非常に大きいわけでありまして、そんなところで白昼堂々、選挙違反、公職選挙法違反が行われるようであっては、本当にこの国は何をやっているのかということになりますので、これはちょっとやはり政府としてもほうっておけないんじゃないかということを重ねて指摘したいと思います。

 では、今回のインドネシア沖地震、そしてスマトラ島沖地震、インド洋津波、この教訓の一つは、やはりふだんから、津波というのはどういうものか、地震というのはどういうものか知っておくことが災害を極小化する、被害を極小化することに大変重要だということだったと思います。

 津波というものをよく知らないで、水が引いたところに魚をとりに行く人たちがたくさん出て、返ってきた波にのまれるとか、そういう観点から、ちょっと注目したいのは、ユネスコを通じて今度持続可能な開発のための教育信託基金というものがスタートする。これは、ユネスコ持続可能な開発のための教育の十年ということで、二〇〇五年からその十年がスタートする。これは日本のイニシアチブで実現したわけでありまして、大変いいことだと思うんですが、持続可能な開発のための教育というんですけれども、これは防災教育にも役立てられるんでしょうか。

塩谷副大臣 今委員御指摘のとおり、持続可能な開発のための教育十年ということで本年から国連で始まるわけですが、その国際実施計画を現在ユネスコが主導機関となって策定しているところでございます。本計画案によりますと、持続可能な開発のための教育は、環境、人権、男女平等、健康等、幅広い課題を対象としており、防災の予防と緩和も含まれております。

 我が国では、この持続可能な開発のための教育につきまして、提唱国として、ユネスコと協力してその推進に積極的に貢献していく必要があると思っておりまして、文部科学省としましても、来年度予算案に持続可能な開発のための教育信託基金二億円を計上しているところでございます。

 予算が認められれば、ユネスコに信託基金を拠出することになりますが、その使途については、ユネスコとの協議の上、開発途上国におけるこれらのさまざまな課題に関する教材開発等に支出することになると思っておりますので、今おっしゃった防災教育にも役立てると思っております。

 以上でございます。

達増委員 先ほど、ほかの委員の質問の中で、ユネスコ関係の国際会議に大臣、副大臣、政務官が出ないでしまったという問題が指摘されましたけれども、これはユネスコの問題などでも大変いいことはいろいろあるわけですから、ふだんから、大臣、副大臣、政務官、事務方の皆さんとコミュニケーションをよくして、知識共有、そういうコミュニティーとしての学び場というものがうまくできていくことが教育改革の核心ではないかと思いますので、政府、さらに頑張っていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 長島昭久君。

長島委員 民主党の長島昭久です。きょうは、中山大臣の所信に対する質疑ということで、お話を伺いたいというふうに思っております。

 先週の中山大臣の所信、私も、委員の一人として大変感銘を受けて拝聴させていただいた次第です。特に私がすばらしいなと思ったのは、このくだりです。「今日受けた教育の影響は一生に及びます。私たちは、常に考えられる最善の教育を子供たちに与えていかなければなりません。」全く同感であります。

 そこで、私は、前回に引き続きまして、公教育における文部科学省の果たすべき役割、あるいは日本の教育をつかさどる官庁としての存在意義、この点について質問をさせていただきたいと思います。

 きょうの質疑は、昨年の十二月に出ました、先ほど来少しお触れになった委員の皆さんもおられましたけれども、二つの国際学力調査の結果、その結果が出て初めての委員会ですので、少しこの点について掘り下げてお話を伺ってみたいと思います。

 ただ、その前に、きのうの本会議での小泉総理の答弁を聞いて少し心配になりましたので、一点お尋ねを申し上げたいことがあります。それは、国庫負担金制度の行方についてであります。もう一度おさらいをさせていただければと思っております。

 御案内のとおり、今回、今国会に法案が提出されることになりまして、この後法案審議も引き続きなされるということでありますが、結局十七年度予算では、暫定措置という形で四千二百五十億円国庫負担金が削減され、そして税源移譲される、こういうことになりました。中教審の鳥居会長も、この国庫負担金の削減は間違いであるということを、昨年の十月二十一日、まだ結果が出る前でしたけれども、中教審の緊急要請の中で発言されておられます。

 再度お伺いさせていただきたいんですけれども、今回の暫定措置、この四千二百五十億円の削減ということで、文部科学省は、かねてから心配を、警鐘を鳴らしておりました財源の問題、つまり、地方の財政格差に起因する教育格差の問題は本当にないのかということ、法案提出の責任官庁として、改めて国民の皆さんに説明をしていただきたいと思います。

銭谷政府参考人 まず、本年度、平成十七年度の暫定措置についてでございますけれども、義務教育費国庫負担制度の原則を維持した上で、義務教育費国庫負担金総額から四千二百五十億円を減額し、この減額分に対する補てん措置として、税源移譲予定特例交付金四千二百五十億円を、教職員給与費を基本として配分をするものでございます。

 各都道府県における義務教育費国庫負担金につきましては、各都道府県ごとの本来的な国庫負担金額から、四千二百五十億円を義務教育費国庫負担金総額に占めるその県の国庫負担金の割合で案分した額を減額することとしております。

 一方、各都道府県ごとに措置される税源移譲予定特例交付金は、国庫負担金と同様に、四千二百五十億円を全国の教職員給与総額に占めるその県の教職員給与額の割合で案分した額を交付することとなります。

 以上のように、十七年度につきましては、各都道府県においては、義務教育費国庫負担金から一定額が減額されるものの、減額措置と同様の方法によりまして、税源移譲予定特例交付金の額が算定されております。

 したがって、各都道府県ごとの義務教育費国庫負担金と税源移譲予定特例交付金を合算すれば、本来国庫負担すべき額に相当する額が国から都道府県に交付されるということになります。

長島委員 ありがとうございます。

 問題は、先ほど河合委員も御指摘になられました、地方案と言われているものの第二期に突入した場合、つまりは国庫負担制度そのものが廃止されることになった場合の問題点について、これは前回も私詳しくお尋ねをして、下村政務官の方から詳しい御答弁をいただきました。三つのポイントをお示しいただきました。

 一つは、地域間の税収の格差によって、都道府県において教育費の財源不足に陥る自治体が四十道府県に上ると文部科学省では試算していると。そして、その財源不足を地方交付税で調整するとしても、地方交付税自体が今後の三位一体改革の進捗によって総額抑制されることになると。したがって、結果的に必要な財源が確保されないということになり、義務教育の水準に著しい地域格差が生じてくるおそれがある、こういう御指摘をいただきました。

 私は、重ねて、いや、それでは標準法とか人材確保法があるではないか、そういう規定によって自治体はむやみに教職員の数を減らすことはできないだろう、このようにただしましたところ、同じく、義務教育費の国庫負担制度を廃止した場合には、使途に限定のない一般財源であるのだから、現行においてたとえ標準法で教員配置の標準を定めたとしても、現実問題として財政状況が厳しい自治体においては、その予算を確保できない状況に陥る可能性があると。

 また、人材確保法によって教員の給与について優遇措置を講じるということになっているけれども、標準定数を充足させるための予算がそもそもなくなってしまえばこれは維持できなくなるんだ、こういう御答弁でした。

 そこで、きのうの小泉総理の答弁に今の答弁を重ね合わせると、次のような疑問が起こってくるわけです。

 きのうの総理の答弁はこういうことでした。三位一体の改革においては、補助金を廃止し税源移譲を行う場合であっても、個人住民税の税率をフラット化することにより、税源分布の偏りを緩和するとともに、地方交付税の財源調整機能によって地域間の財政力格差に対する対応策を講じているから、自主財源の乏しい地方の財源確保が困難になって教育の機会均等が著しく難しくなるという批判は当たらない、このように断言をしているわけです。

 これでいくと、きょうは総務省の方も来ておられると思いますが、たとえ国庫補助負担金が廃止になったとしても、今申し上げたフラット税率での税源の移譲と、それから地方交付税での財政調整機能があれば、これは文部科学省が心配しているようにならないんだ、こういう説明だと思うんですけれども、わかりやすく総務省の方からこのメカニズムについて御説明をいただければありがたいと思います。

瀧野政府参考人 補助金の改革と税源移譲に伴います全体の財政力格差についてのお尋ねでございますけれども、ただいまも御指摘ございましたように、総理がきのうの答弁でも御答弁されておりますとおり、税源移譲をいたします場合に、現在、個人の住民税につきましては、五%、一〇%、一三%という緩い超過累進課税の税体系になっているわけでございまして、現在のままの住民税の制度で税源移譲いたしますと、どうしても大都市に税源が偏るということが懸念されるわけでございます。

 その点を考え合わせまして、今後、税源移譲を本格的にやる場合におきましては、税率を例えば一〇%に統一するとかいうようなフラット化の税制を志向しようということを考えておるわけでございます。それによりまして、都市部とそれ以外の部分との税源格差が税源移譲いたしましても開かないということが一つございます。

 さらに、今回、地方税の改正でお願いしておるのでございますけれども、特に法人の関係につきまして、都市部の税源が多いわけでございますので、その部分につきまして、全国で展開しております企業の税収というものにつきましては、各県に帰属をさせる基準といたしまして分割基準というものがございますけれども、これにつきまして、実際、法人の活動が店舗展開ということを中心として行われているという現実を考えまして、従来は従業員数をもとにいたしまして全国展開している法人の各県に対する法人関係の帰属税収を考えておったのでございますけれども、店舗数にさや寄せをして考えていこうという改正を今回お願いしておるのでございます。これによりましても、全国的な法人関係税の各県ごとの隔たりが是正されていくというようなことがあるわけでございます。

 さらに、御指摘ございましたとおり、地方交付税におきましても財政調整機能の発揮ということもできるわけでございますので、全体として財政力格差というものは調整されていくというふうに我々は考えております。

 ただ、交付税について、将来総額が抑制されるのではないかという御懸念もあるわけでございますけれども、委員の御指摘のございましたとおり、標準法等、定数等につきましてきちんとした基準が示されておるわけでございますので、そういったものにつきましてはきちんと交付税の中で算定し、財源を保障していくという考えでございます。

 ただ、現状を見ますと、都道府県におきましては国の標準を超えまして増員配置をしている現状にある、あるいは、全額地方負担で行われております高等学校につきましても適切に教職員が確保されているというようなことを考えますと、一般財源化されることによりまして教職員の配置の地域間格差あるいは教育水準の低下というような事態を我々は想定できないというふうに考えておりますし、むしろ、補助金事務から解放されまして、より創意工夫のある形での教育ということが地方ごとにできるのではないかというふうに考えておるところでございます。

長島委員 ありがとうございます。

 文部科学省、反論ございませんか。ぜひ反論していただきたいと思うんですが、今のお話を伺うと、フラット税率にすると大丈夫だ、こういう話は論理的にはよくわかるんですが、何か聞くと、お上の論理というか、年貢を取り立てる側の論理で、問題ないんだ、こういうことなんですが、やはり所得の低い人たちにとっては、これは税率が一〇%なら一〇%で固定するわけですから、かなり厳しい税制なのかなという印象を持ちますけれども、教育の質の問題に絡めて、ぜひ文部科学省の方の御反論を承りたいと思います。

銭谷政府参考人 義務教育費国庫負担につきまして、仮にこの制度を廃止した場合には、まず地方税の税率をフラット税率といたしましても、私どもの試算では、全額負担金が税源移譲された、こうなった場合には、最前から申し上げておりますように、地域間に県民所得格差があるわけでございますから、それはおのずと地域間の税収格差となりまして、現在、各都道府県が国から負担金として受けている額に比べますと、四十道府県で財源不足ということに陥るおそれがあるわけでございます。これは、私どもの試算でそういうことに計算ができております。

 その四十道府県で財源不足が生じて、それを地方交付税で調整するといたしましても、先ほどもお話がございましたけれども、地方交付税自体が三位一体改革によりまして総額抑制とされておって、本当に必要な財源が確保されるかということが懸念をされるわけでございます。

 私どもといたしましては、義務教育費国庫負担制度は、こういった地方公共団体の財政力の差にかかわらず、全国すべての地域においてすぐれた教職員を必要数確保し、教育の機会均等と教育の水準の維持向上を図るために極めて重要な制度であると思っております。

 これまで一般財源化されました、例えば教材費、教職員の旅費、学校図書館費などを見ましても、一般財源化された当初はそれぞれの地方において標準額以上の措置をしているわけでございますけれども、財政事情によりまして、現在では、例えば教材費は標準額の七五%程度の措置といったように、大変教育の地域間格差がこの面において生じているわけでございます。

 なお、標準法、人確法、それから国庫負担制度というのは、義務教育を各地域で実施する場合に、やはり三つがセットで、私どもとしては大事な制度であって、国として、本当に全国どこにいても、すぐれた教職員を確保する上で、この三点は極めて必要なものであるというふうに考えているわけでございます。

 いずれにいたしましても、義務教育費国庫負担制度の今後の取り扱いにつきましては、昨年の政府・与党合意に基づきまして、ことしの秋までに中央教育審議会において結論を得るということになっているところでございます。

長島委員 これでまた総務省の局長の反論を聞くと、延々と恐らく平行線になるんじゃないのか、こう思いますので。

 ただ、今、銭谷局長、標準法と三点セットだというお話がありました。確かにそうなのかもしれませんが、地方交付税法二十条の二、ここに「関係行政機関の勧告」という規定がありますね。地方公共団体が法律またはこれに基づく政令により義務づけられた規模と内容とを備えることを怠っている場合、関係行政機関が是正の勧告をすることができる、それでも自治体が従わない場合は、地方交付税の全額もしくは一部を減額することができる、こういう対抗措置もあるわけですから、そういうことをトータルに考えると、仮に国庫負担金が廃止をされても、文部科学省が警鐘を鳴らしているような方向には一直線にはならぬだろうと私は思っているわけです。

 それと同時に、これは東京大学の神野直彦教授のコメントなんですが、毎日新聞の昨年の十二月二十日の朝刊に載っておりましたが、義務教育費国庫負担金自体にも問題があるんだと。それはどういうことかというと、貧困な自治体にも行政水準を保障する財政調整機能がないんだ、したがって、裕福な自治体も貧困な自治体も一律に教員給与の半額を負担させられてしまうために、財政力の弱い自治体にとっては非常に不当な負担を強いられる制度なんだと。

 これもまた恐らく水かけ論になるので、ここでやめて、本題に入りたいと思いますけれども、私は、前回以来、常に一つのテーマで申し上げておきたいと思っているのは、文部科学省として、国庫負担金にしがみつくのではなくて、その国庫負担金が地方分権の流れの中で廃止されたとしても、存在意義が発揮できるようなそういう方策、つまりは新しい国と地方との教育をめぐる役割分担についてぜひ模索をしていただきたい。

 そういう意味では、多少我田引水かもわかりませんが、私たち民主党が今提出の準備をしております義務教育環境の整備に係る財源の確保に関する法律案、これを、ぜひ大臣参照していただければありがたいなと思っているんです。

 少しかいつまんで申し上げますと、現行の国庫負担金二・五兆円、これと同規模のまず教育目的の一括交付金というものを地方に渡します。そして、これは教職員の給与にかかわらず、教材費から研究開発費から外部委託費から、いろいろな、全部地方が自由にこの中から教育財源として使っていける。そしてその上で、今申し上げた民主党が準備している財源確保に関する法律案、これは私から言わせるとスーパー標準法ともいうべきものだと思うんですけれども、しっかりと地方に財源の確保を義務づけていく。義務づける以上、財源確保の状況について、ちゃんとどう使われているかということを地方公共団体に公表義務を課して、そして国による事後評価をしっかりやっていく。これなら地方の自由度は高まっていく、そして同時に、義務教育の根幹は国が責任を持つという公約を果たすことができるんじゃないだろうか、こういうふうに思うんですね。

 こういう中での文部科学省の役割というのは極めてはっきりしています。それはどういうことかというと、教育の現場によりよい環境あるいはノウハウといったものを提供するいわばサポートセンターのような、そういう役割を文部科学省がこれで発揮できると思うんですね。

 つまりは、この前提としては、まず、これは大臣もいろいろなところでおっしゃっておられますけれども、教育現場の実態を把握しなきゃいけない。だから、全国の学力実態調査をしよう。こういうものを定期的に実施していく、そしてデータを公表する。そして、さまざまな施策の事後評価、週五日制になりました、そのことの効果はどうだったんだろうか、そういう事後評価をしっかりやる。

 そして、プラス、さっきサポートセンターということを申し上げましたけれども、全国でいろいろな先生方が頑張っている。そういうよりよい教授法、教え方、あるいは学校運営のノウハウ、こういったものを、国際的な事例を研究したり、あるいは全国のいろいろなところで頑張っているそういう事例を研究したりして、文部科学省が吸い上げてくる。そして、その中でベストプラクティスであるようなもの、その実例やノウハウというものを、例えばインターネットあるいはいろいろな手段を使って全国にあまねく展開をしていく、普遍化をしていく、例えば、こういう役割を文部科学省が担っていくことができるんじゃないだろうか。

 これは後で、学力調査の結果についての場面でもう一回改めて触れていきたいというふうに思いますが、本題に行きたいと思います。

 学力低下現象、これは先ほどから何度か委員がお触れになっておられますけれども、今回の試験結果、テスト結果というのは、文部科学省にとっても国民にとってもかなりショッキングなものであったと思います。

 まず最初に、今回のこの二つの学力テスト、どんな特徴を持ったテストだったのか、どんな学力をはかろうとしたテストだったのか。時間がないので簡潔にお示しをいただければと思います。

銭谷政府参考人 それでは、二つの国際学力調査の特徴について御説明を申し上げます。

 まず、OECDのPISA調査でございますが、これは義務教育終了段階の十五歳児を対象として、数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシー、問題解決能力の四分野について調査を行っております。その特徴は、知識や技能等を実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるのかを評価するという調査でございます。これは記述式が中心でございます。

 一方、TIMSSの調査でございますけれども、これは小学校四年生、中学校二年生を対象として、算数、数学、理科につきまして、学校のカリキュラムで学んだ知識や技能がどの程度習得されているか、これを評価するために実施した調査でございます。回答は選択肢が中心でございます。

 両調査はそういう特徴がございます。

長島委員 調査結果なんですけれども、手短に私の方から、もし事実誤認があったら御指摘をいただきたいと思いますが、全般的には、子供たちの勉強時間が短いとか、あるいは勉強への動機づけが希薄であるとか、あるいは学ぶ意欲が乏しい、あるいは学習習慣が身についていないといったような調査結果が出ているというふうに分析をされていると承っております。

 大臣にぜひお答えをいただきたいと思うんですが、何が原因でこういう結果になったのか。先ほど来、大臣、累次にわたってお答えになっておられますけれども、大臣は、ことしの一月十九日の朝日新聞の報道によりますと、授業時間が大分減っているな、あるいは総合的な学習の時間をどうするかを考えなきゃいけない、あるいはゆとり教育が低下の原因の一つではないか、こういうような分析をしておられますけれども、改めて国民の皆さんに、この場を通じて、どの点に問題があると大臣がお感じになっておられるか、御答弁をいただきたいと思っております。

中山国務大臣 今、銭谷局長が答弁しましたその前段ですね。OECDのPISA調査の方が悪いということを私は非常に憂えているわけでございます。

 まさに文部科学省が推進してまいりましたゆとり教育、基礎、基本的な知識をしっかり身につけて、そしていろいろな課題に取り組んで、それをみずから解決していく、そういう力を養おうとしていたんですけれども、どうもそこのところが悪くなっている、悪くなっているといいますか、ほかの国に比べて劣っているということが問題だな、こう思うわけでございます。

 どういう時代、どういう社会になるかわかりませんけれども、これからの子供たちがやはりたくましく生き抜いてもらいたい、そういうことを考えますと、そこのところが一番課題だなと思いますし、先ほどから話がありますように、それ以前に、勉強しなくなった、また、何のために勉強しなきゃいかぬのか、そういう動機づけも弱いということ。これは、子供たちだけの問題ではなくて、先ほど達増議員も言われましたが、やはり日本の社会全体がちょっと元気がなくなっているという中で、端的に言うと、勉強して何になる、そういう風潮がやはり子供たちにも影響している。子供というのは、そういう意味では、時代の産物といいますか反映なのかなと思うわけでございます。

 これは子供たちだけの問題ではなくて、我々大人も含めて、日本の社会をどうしていくんだ、もっと活力あるものにするにはどうしたらいいんだ、そういう観点からも考えていかなければいかぬと思うわけでございます。もう少し子供たちに、勉強しなきゃいかぬよ、何のために勉強するんだと。

 この前ちょっとNHKの放映でも申し上げましたが、アメリカの子供たち、一年生に入った子供たちに先生が、何のために学校に来たの、こういうふうに聞くと、みんな一斉に手を挙げて、ツー・ゲット・ア・グッド・ジョブ、いい仕事につくため、こういうことをみんな一斉に言うそうですけれども、やはりそういうところが日本は少し弱かったのかなと。やはり自分のためだよ、自分の人生をよりよいものにするために勉強しなきゃいけない。それは、勉強というのは、ゲームとかああいったことに比べると決して楽しいものじゃないかもしれないけれども、しかし、将来のためにやはり勉強しなきゃいけないんだということを子供たちにいかに教えていくか。

 そしてまた、ゲームよりももっと本当は楽しい授業、これは教科書の問題から、あるいは先生方の教え方まで含めて、もっとエキサイティングな授業ができるようにしていく、そういったもろもろすべてを含んで、何とか子供たちに、もっと学び、学力がつくような、そういう教育改革をしたいな、こういう思いでおります。

長島委員 ありがとうございます。

 そういう意味で、総合的な学習の時間というのは、そういう学習の動機づけ、何でこの生活の中でこういうことを学ばなきゃいけないんだろうかということを実体験の中からみんなが悟っていくような、そういうことを目的としていたので、この授業というのは非常に重要だと私も思います。

 大臣も、これを削減するという記事もありましたけれども、本意はそういうことではないという話は私も承っておりますが、どうも、先ほど私、文部科学省は現場のサポートセンターになるべきだ、こういう話をさせていただきましたけれども、この総合学習については、いろいろな現場の声を聞くと、子供任せで先生が教えてくれないとか、あるいは地域の見学施設に丸投げしているとか、こういう話があるので、どうも文部科学省としての現場のサポートが不足しているんじゃないか、私はそういう懸念を持っているんですけれども、この辺のところは十分なサポートをしているんでしょうか。

中山国務大臣 やはり総合的な学習というもの、私も現場を随分回りました。今、三百校回ろうということで手分けして行っておりますが、やはり総合的な学習の時間というのは、本当に有効に使っているところもあるし、全くおざなりにやっているところもあるなと。

 一つには、校長先生の意欲いかんにもよるんでしょうが、何といっても、やはり先生方の力量に負うところが大きいなというのが実感でございまして、そういう意味で、先生方、教員の資質、能力向上をいかに図るかということが一番やはり問題だ、大事なところだ、このように思っているわけでございます。

 文部科学省としても、そういう意味ではいろいろな手だてをやってきておるということは事実でございまして、国におきましては、独立行政法人教員研修センターにおきまして、特色ある教育課程を円滑に編成するための指導者養成を目的とした研修や、児童生徒の学習状況を評価するための指導者養成を目的とした研修を行うとともに、各都道府県教育委員会等における初任者研修や十年経験者研修、あるいは教科等に関する指導力向上のための研修等の奨励、支援に努めているところでございます。

 国として、そしてまた各都道府県においても一生懸命やっていますが、やはりこれは先生の自覚にまつところが大きいなということも感じているところでございまして、もともと先生方が尊敬される存在といいますか、もっと評価される、そういう存在になるように、先生方もやはり日ごろから自己研さんを積んでいただくことが一番大事だな、このように今実感しているところでございます。

長島委員 ぜひ現場をサポートしていただきたいというふうに思います。

 ですから、役割が変わったんだということをぜひ御認識いただきたいんですね。

 つまり、国庫負担金で事前統制的に、学習指導要領を教育委員会を通してトップダウンでどんと全国におろしていくのではなくて、そうではなくて、地方の自由裁量というものを拡大していって、そして、そういう中で頑張っている先生方、ベストプラクティスがあったら、それを吸い上げて、ボトムアップで今度は全国展開をしていくというような、そういう役割をぜひ文部科学省は担っていただいて、お金というハードパワーではなくてソフトパワーで、ぜひいい教育をしていただきたいということをお願いして、質疑を終えたいと思います。

 ありがとうございました。

斉藤委員長 午後零時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後零時十一分休憩

     ――――◇―――――

    午後零時五十二分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。肥田美代子さん。

肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 今学校教育は、学力低下とか学びからの逃走とか学習意欲の低下とか、さまざまな問題が指摘されておりまして、教育行政に対する不信とか不安が高まる傾向にあります。大阪弁で申し上げますと、うちの子はどないしてくれるねん、そういうふうに親が心配しているわけでございます。私たちは、そうした国民、納税者の立場から、子供たちが学びたくなる学校そして通いたくなる学校をつくり上げる責任があると思います。

 そこで、改めて大臣にお伺いします。学校教育は何のために、だれのために行われるのか、見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 学校教育、特に義務教育におきましては、次の世代の国家社会の形成者としての国民を育てるという面があるとともに、子供たち一人一人の幸せな人生のための土台づくりという面があると考えております。特に私は、いつも申し上げますが、子供たちが、この世に生を受けた人間としてそのありがたさを十分に自覚しながら、一生を幸せにかつ有意義なものとして送ることができますように、そのために必要な資質、能力をしっかり身につけて社会に送り出すことが重要である、このように考えております。

肥田委員 それでは、大臣は学校教育は子供たちのためにあるというふうにお考えということでよろしいですね。

 中山大臣は、所信表明演説で、学習指導要領の理念や目標が十分達成されていないのではないかと考えると述べておられました。また、新聞のインタビューでは、総合学習時間の削減や学習指導要領の見直しにも言及されております。

 午前中の議論の中で、今自分は慌てているわけではない、ただ、三年たったからこの見直しについて言及したんだというお言葉もございましたけれども、総合学習削減とか指導要領の見直しの必要性は今どこにあるとお考えですか。

中山国務大臣 午前中も申し上げましたけれども、昨年末に公表されました国際的な学力調査の結果によりますと、特に読解力が大幅に低下するとともに、我が国がこれまでトップクラスにありました数学や理科についても低下傾向が見られる。さらに、学業や職業に対して無気力な子供たちがふえているということで、規範意識あるいは体力、気力にも課題が見受けられるということでございました。

 こういったことを踏まえまして、一体これからの教育をどうしていったらいいんだというふうなことで、今省を挙げて議論をしておりますし、また中教審でも審議していただこうということで先般諮問したところでございます。

肥田委員 大臣は、学習指導要領の見直しに当たりまして、中央教育審議会におけるあいさつの中で、子供たちが身につけるべき資質、能力の到達目標の明確化について検討を要請されております。これは何を期待されているんでしょうか。

中山国務大臣 各教科等におきまして子供たちが身につけるべき資質や能力の到達目標を明確化することは、教育成果の評価やあるいは学校の教育指導の改善を図るとともに、学習内容の確実な定着を図る上で重要である、こう考えておりまして、現行の学校教育法では、中学校の目標が大まかにしか規定されていないなど、義務教育全体としての目標が必ずしも明確にはなっていない。さらに学習指導要領でも、教師が指導するに当たっての目標は規定されておりますが、到達目標は必ずしも明確ではございません。

 昨今、諸外国におきましては、到達目標を明確化し、教育成果の評価や学校の教育指導の改善に役立てているところでありまして、このため、先日の中教審総会におきまして、学習指導要領の見直しに当たっての検討課題として到達目標の明確化を示したところでございます。

 今後、学習内容の確実な定着を図る観点から、各教科等の到達目標をどのような形で位置づけるのか、あるいは学習指導要領の中に位置づけるべきなのか、学習指導要領とは別に参考として位置づけられるべきなのかなどについて、学習指導要領全体の枠組みの中で精力的に検討をしていただきたい、このように考えております。

 また、学習指導要領の見直しの検討に当たりましては、これまでも学校関係者、研究者、PTA関係者や企業関係者など幅広い方々に御参加いただいておるわけでございます。また、教育関係者のみならず、広く国民一般から審議内容についての意見募集も実施しているところでございます。

 そして、今後とも、教員や保護者と直接対話いたしますスクールミーティング等を通じまして、現場の関係者の意見をよく聞きながら教育問題に取り組んでいきたい、このように考えております。

肥田委員 大臣が今、一度に答えてくださいましたので、手間が省けました。ありがとうございます。

 それでは、到達目標の設定なんですけれども、これは初めてのことだというふうに考えていいですね。

中山国務大臣 今お答えいたしましたが、一応目標みたいなものはあったんですけれども、それを到達目標とするかどうかということの認識ははっきりしていなかったと思うんですけれども、諸外国等の例も考えながら、やはり到達目標というのを明確化した方がいいのではないか、このような判断をしているところでございます。

肥田委員 私は、それは大変いいことだと思っております。

 というのは、指導要領はどうしても教える側に立っております。ですから、子供の目線で作成する必要がどうしてもできてくるんじゃないかと思いますので、ぜひ私も、どういうものができるか、しっかりと見詰めてまいりたいと思います。

 そこで大臣、先ほどスクールミーティングのお話もしていただいたんですね。そのときに受益者の声、義務教育に膨大な国家予算が使われておりますから納税者の声、それをしっかりと反映するために、先ほどもおっしゃってくださいましたけれども、この到達目標の作成に当たって、要するに、政策を決定する場に、やはり納税者の声、父母たちの声とか、そういうものを聞く場をつくるべきだと私は思うんですけれども、どうですか。

中山国務大臣 今までも、先ほども答弁いたしましたが、幅広くいろいろな方々の意見を聞いてきたと思うんですけれども、今回、私どもスクールミーティングを実施するに当たりましては、まず現場に行こう、現場に行って、保護者やあるいは先生方、そして子供たちの話まで聞こうじゃないかということを指示したわけでございます。

 まさに今おっしゃいました、納税者ということも言われましたが、この教育におきましては、やはり子供たちが消費者といいますか、本当にまず子供たちの立場が一番大事だ、こう思うわけでございまして、そういうような面から、今スクールミーティングもやっていますし、今回のいろいろな見直しについても、現場を重要視していきたい、このように考えております。

肥田委員 到達目標というと誤解を招くといけませんので、最低到達目標というふうに理解させてもらってよろしいですか、大臣。

中山国務大臣 その辺はこれからの議論だろうと思うんですけれども、何が最低かということもございますし、高目なのか低目なのかわかりませんが、一応の基準みたいなものなのか、その辺は私も余り教育の専門家じゃございませんので、むしろ、いろいろな関係者の方々の御意見を聞くのが一番大事だと思います。とにかく、子供たちの目から見て、そうか、ここまでやらなければいかぬのか、ここまで勉強しなければいけないんだな、そういう目標みたいな、頑張らなければいけない、そういう線みたいなものは必要じゃないかな、こう思っております。

肥田委員 大臣は所信表明の演説で、日本の学力を再び世界のトップレベルにするため、学習指導要領を見直すと述べておられます。昨年末に公表されましたOECDの学力調査、さらには、いわゆるTIMSS、国際数学・理科教育動向調査の結果を受けての御発言だということは午前中の議論でもわかりました。

 改めてOECDの調査を見ますと、我が国の平均得点は、前回調査に比べて、数学的活用能力が前回の一位から六位、科学的活用能力が前回と同じく二位、問題解決能力は四位という結果でございました。読解力は確かに前回の八位から十四位に低下して、OECD平均と同程度となっております。

 読解力を除くと、頑張れではなくて頑張っているねというふうに私は思うんですけれども、大臣がおっしゃる世界のトップレベルというのは、一体何位をおっしゃっているのか、どのような数字をおっしゃっているのか、ちょっと御説明ください。

中山国務大臣 いろいろな評価があると思うんです。私も、勉強する時間も一番少ない、何のために勉強するのかという動機づけも乏しい中で、まだ比較的上位にあるなということは感じまして、だからこそ今頑張れば、かつてのようにいろいろな教科においてトップの方にいけるんじゃないか、まだチャンスはあるな、実はそう思っているわけでございます。

 何のためにトップを目指さなければいかぬのか。やはり私たちは忘れてしまいがちですが、日本というのは本当に資源のない国で、人材こそが資源であるということで教育には物すごく力を入れてきたんですけれども、戦後の経済成長がうまくいきまして、欲しいものは何でも手に入るようになりまして、一番日本の弱みであったといいますか原点であった、人材こそが資源であると。そういう意味では、人間、これは学力だけじゃありませんが、体力、気力を含めて、それは人間力といいますか、そういったものを必要だということをもう一回認識しないと、これからの厳しい国際競争、特に中国とか近隣諸国が物すごい勢いで頑張っているときに、日本は本当に取り残されてしまうんじゃないか。そういう危機感でもって、かつてのような、もっと気力、体力、そして学力にすぐれた子供たちを今輩出しておかないと日本の将来は危ういんじゃないかな、そういう認識を持っております。

肥田委員 御答弁に関連して、もう一つお尋ねしたいと思います。

 今回の学力検査でトップの成績を上げましたフィンランド、これはよく聞いてみますと、授業時間が日本よりも少なくて、日本でいうゆとりの時間もふやされている傾向にあると聞いております。そして重要な点は、国はカリキュラムの大枠を決めまして、達成方法は各学校の校長に任されている。授業の組み立てとか教科書の選定などの教育内容の大部分が現場の裁量にゆだねられている、そういう教育システムが確立されていると伺っております。

 ですから、テストでトップクラスを目指すという成績順位の問題よりも、むしろ重視すべきことは、現場に立脚した教育行政、それから子供が生涯にわたって学習する能力を身につけることのできる教育内容の確立こそ、これが私は国際学力テストから学ぶべき点ではないかと思うんですけれども、大臣はどう思われますか。

中山国務大臣 フィンランドがトップであるということは御指摘のとおりでございます。どうしてトップなんだということで、いろいろな視察の方々がいっぱい押しかけているというふうな話も聞きます。

 小さな国といいますか、日本みたいな大きな国じゃありませんからやりやすいのかもしれませんが、やはり先生が全部大学院を出ているということもあるらしいですね。まず先生方を徹底して鍛えているということもあるんだろうと思いますし、御指摘のように現場に任せているということもありますが、私ども、現場の学校、市町村にできるだけ任せよう、現場の創意工夫で教育をやるようにしようという方向は全く同じだ、こう思っているわけでございます。

 その中で、フィンランドと日本と比較しながら、では、日本の学力をどうして上げていったらいいのかということ、これにつきましては、私は、単なる知識だけの学力ではなくて、学力というのもいろいろあると思うんですが、学んだ学力といいますか、知識、技能としての学んだ学力と、それから学ぶ学力といいますか、何か問題が起こったときに、さあ、これをどうして解決していったらいいのか、そういう学力もあるんだろうと思いますし、学ばなければいけないなというその学ぶ意欲といいますか、そういったものもあるんじゃないか、こう思うわけでございます。後の二つを特に重視しながら、いかにして日本の子供たちをそういう非常にたくましい子供として輩出させていくかということが一番大事なことじゃないかなと考えております。

肥田委員 もう一つの問題があるんですが、国際学力テストについて分析する場合に、やはり子供の目線で見ることが大変必要だと思うんですね。

 OECDの調査やその他の学力調査の結果に対しまして、大臣は敏感に確かに反応されたと思います。スピード感は私も必要だと思います。それに、学力競争が全部悪いとも思っておりません。しかし、うちの子はどうなるという父兄の実感にやはり敏感に反応していかなければいけないと思うわけです。

 各国の子供は、その国の伝統とか生活習慣、いろいろな教育制度のもとで学習しております。日本の国内においても、学ぶ場所はまちまちでございます。例えば、大臣が世界のトップレベルを目指すという教育観に立たれるときに、拡大教科書とか点字教科書を使っている、それも今までは十分に給与もされてこなかった、その障害児に対して、しかも学力競争でハンディを持つ障害児でございますね。この人たちのことが本当に視野に入っていたのかなというふうに私は感じたんですけれども、この点、どのようにお考えですか。

中山国務大臣 決してそれが視野に入っていないということではありませんが、やはり、子供たちが持って生まれた可能性といいますか、最大限に発揮できるように、そういう意味では、一人一人に目配りした教育が必要であるということもよくわかっています。また、そういう恵まれない人たちもいるわけですから、その人たちのためにも、普通の人たちはもっと頑張るべきだということもあると私は思うわけでございまして、決してそういった障害児を視野に入れていないということではないということは御理解をいただきたいと思っております。

肥田委員 次に、現行の学習指導要領についてお尋ねしたいと思います。

 ゆとりをうたった現行の学習指導要領が実施されたのは、二〇〇二年の四月でございます。でも、この学習指導要領は不幸な出発をしなければなりませんでした。実施前後から脱ゆとりへの静かな変身が始まってきたんです。そう考える理由が二つございます。

 一つは、新学習指導要領実施直前の二〇〇二年一月、当時の遠山文部科学大臣が全国都道府県教育委員会連合会総会で「学びのすすめ」を公表されたことです。この中で、学習指導要領は最低基準であること、理解の進んでいる子供は発展的な学習で力をより伸ばす、そういうことが提唱されました。こだわるなということですね。

 二つ目は、文科省が二〇〇二年七月、二〇〇五年から使われる全教科書で学習内容を削減した学習指導要領の範囲を超えた発展的学習を進めたことでございます。また、学習指導要領が実施された翌年、早くも学習指導要領の一部が改訂されまして、学習内容の基準を超えた発展的な学習を認めました。いわゆるゆとり教育の転換を明確にしないまま、現行の枠組みの中で次々と修正が行われて、教育現場に混乱をもたらしたと思います。

 そして、今回の中山大臣の学習指導要領見直しの諮問でございます。わずか二年で大手術を受けることになりますが、現場はゆとりのあり方で試行錯誤している最中であります。文部行政に振り回されるのはもうごめんだという現場の声もございます。

 大臣、これまでのゆとりを柱とした現行の学習指導要領は枠組みを残すことになるのか、それとも枠組みを転換されるのか、どのようにお考えですか。

中山国務大臣 新学習指導要領といいますか現行の学習指導要領、これは、知識を詰め込むだけではなくて、基礎的な知識をしっかり身につけさせて、それを活用しながら、みずから学び、みずから考える力、これを生きる力というふうに言っているわけですけれども、これをはぐくむことをねらいとしていたわけでございます。どうもマスコミの方々はつい極端にいろいろ表現したがるものですから、このねらいがゆとり教育ということで、子供たちに、勉強しなくてもいいんだ、あるいは先生方も、これはもう最低限で、これ以上教える必要はないんだ、そういう間違ったメッセージを送ることになるような、そういう風潮が多分ですから、軌道修正ではないんですけれども、そうじゃないんだよということをいろいろと私は遠山大臣以下ずっとやってこられたんじゃないか、こう思うわけでございます。今回も、決してゆとり路線を変えようとかそういう話では全くないということは御理解をいただきたいと思っています。

 何度も繰り返しますが、いわゆる現行の学習指導要領が目標としたもの、その理念とか、それは違っていないんだけれども、それが本当にそういうふうに達成されているのか、そのための手だては十分なのかということを検証していかなければいけない、私はそういうふうに発言しているんですけれども、どうもマスコミ等では非常に端的にいろいろなことを言われる。

 例えば、スクールミーティングなんかへ行きましていろいろな話を聞くんですけれども、出てくるとすぐ、どうでしたかと聞かれるわけで、そのときに、こんな意見もありました、こういうことでしたよと言うと、もうそれがすぐ転換かとかいうふうに言われるわけで、そういう意味で、そうならないようにということを慎重に、言葉を選びながら実は話をさせていただいているわけでございます。

 しかし、基本にあるのは、まさに肥田先生がおっしゃるように、子供のことでございます。子供の視点から考えなければいかぬと思うわけでございまして、今お言葉にありましたけれども、現場が混乱する、混乱するのは子供じゃなくて、現場というのは先生方だろうと思うんですけれども、やはり子供にとっては、私は、先ほども言いましたが、やはり一番いいという授業を与えるべきなので、そのためには、やはり現場の先生方も御協力をいただかなければいけない、こう思うわけでございます。

 何といいましても、子供を見ておりますと、日々成長していきますよね。あっという間に大人になっていくんですけれども、そういう意味で、子供たちにとっては一日一日が勝負だろうと思うわけで、三年というのは朝令暮改ではないか、こういう批判もありますが、三年間というのは、まさに中学校を卒業してしまう。そのときに受けた授業、受けなかった知識とか、そういったものは一生響いていくわけですから、私は、子供にとって三年間というのは決して長い時間じゃない、むしろスピード感を持ってやらないと子供たちに対して申しわけないという思いで今教育改革に取り組んでいるということを御理解いただきたいと思います。

肥田委員 もちろん、大臣がおっしゃるとおり、いつまでも旧にぶら下がっていることはないし、しがみついていることもないと思います。ただ、その枠組みの中で変えるときには、やはり国民に対して説明が一回ずつ要るんじゃないかと思うんですね。知らぬうちに何となく変えられていて、後で私たちが振り返ってみたら、こんなに変えていた、こんなに変えていたということになるので、やはり説明責任というのは、文科省、もう少し果たしていただきたいなというのが私の思いでございます。

 それで、いわゆるゆとり教育は詰め込み教育の反省から生まれたものでございます。そこで、詰め込み教育が批判されるようになったのはなぜかということですが、問題があるから変えたわけですね。どこに問題があったかという原因を検証することは、私はどこの組織でもやることだと思うわけです。

 いわゆる詰め込み教育はどこに問題があってゆとりの導入となったのか、その検証は本当に行われたのかということをお尋ねしたいと思います。

銭谷政府参考人 学習指導要領は大体十年ごとぐらいに大きな改訂をしてまいったわけでございますけれども、いわゆる詰め込み教育ということが言われましたのは、昭和四十年代の学習指導要領の時代が最も言われたのではないかと思っております。そこで、昭和五十二年に改訂をいたしました学習指導要領から、学校生活を全体としてゆとりのあるものとして、その中で充実した教育を行うという方針が出されたわけでございます。

 当時、子供たちの学校生活の実際とかあるいは学習負担の実態を考慮する必要がある、さらに、子供を取り巻く社会環境の複雑化に伴いまして、学習内容はほうっておくと過重になってくるといったようなことが言われまして、こういう詰め込み授業に対する、ゆとりの中で充実した教育ということが言われたわけでございます。

 なお、この昭和五十二年改訂の学習指導要領からそういうことでやってまいりまして、平成元年に再び改訂をその方針のもとで行ったわけでございます。そして、現在の平成十年改訂の指導要領につながっているわけでございますが、実は、平成十年に文部省が行いました学校教育に関する意識調査におきましても、子供の授業の理解度ということを調べますと、よくわかるあるいは大体わかるとする子供が、小学校は七割でございますが、中学校で五割、高等学校では三割という状況がございまして、教育内容をまだ十分に理解できない子供が少なくない状況であったということもございます。

 なお、一言、長くなって恐縮でございますけれども、現在の学習指導要領におきます基本的な考え方は、実は当時、平成八年に中央教育審議会の答申が出ているわけでございますけれども、その答申の中にホワイトヘッドというイギリスの哲学者の言葉が引用されておりまして、「あまりに多くのことを教えることなかれ。しかし、教えるべきことは徹底的に教えるべし」という言葉をかみしめる必要があるということが言われておりまして、すべての子供が共通して学ぶ内容は厳選しよう、しかし、その内容、つまり基礎的、基本的な知識については徹底的にそれは教えるんだということが今の指導要領の基本的な考え方であったわけでございます。

 それに加えて、そういう知識を活用して、みずから考え、判断し、行動できる生きる力というのを育成しようということをこの指導要領はねらいとしていたということでございます。

肥田委員 いわゆるゆとりという言葉ですが、これの議論が空回りするその最大の原因は、ゆとりの定義がばらばらだということなんですね。大臣は、中教審が言うゆとり、この言葉はどういうことを指しているとお考えですか。

銭谷政府参考人 先生お話ございましたように、ゆとりという言葉についていろいろな意味合いを持たせているんではないかと思います。

 それで、一般的に、学習指導要領においてゆとりと言う場合には、幾つかのやはり意味合いがございます。

 一つは、家庭や地域での生活体験、社会体験を豊かにするという観点から、家庭や地域社会での子供たちの生活時間をふやしまして、子供たちが主体的に使える自分の時間をふやしてゆとりを確保するという場合のゆとりという使い方がございます。

 それから、学校の授業の中で、子供たちがじっくり考えるための問題解決的な学習を推進するという場合のゆとりという言葉の使い方もございます。つまり、先ほど申し上げましたけれども、教育内容を厳選して、そのかわり時間をかけてしっかり子供たちに身につけさせるという意味で、ある内容について学ぶ場合にゆとりのある教育活動が展開できる、そういう使い方もございます。

 それから三点目には、学校生活全体にゆとりを持たせるという意味で、これが多分一番多いと思うんですけれども、全体として授業時数の縮減を行うということがございまして、これは、古くは昭和五十二年にそういうことをやったわけでございますけれども、子供の一日の在校時間は変えないで、授業時数を少し減らしまして、それで子供たちの一日の在校時間の中でいわゆるゆとりの時間というのをつくりまして、子供たちが全体としてゆとりを持って学校生活を送れるようにするという意味での、学校生活にゆとりを持たせるためのゆとりというような使い方がございます。

 大体、今、私どもがゆとりと言う場合には、そういうことがあるのかなというふうに思っております。

肥田委員 今、銭谷局長がるるおっしゃっていただきましたが、私は、ゆとりというのは、教育内容と授業時数との比率だと思うんですね。ですから、十時間かけて子供たちが十分に理解できることを八時間で教えようとすると、これはゆとりがないと言うんだと思います。そして、それを十二時間で教えようとすると、それはゆとりがあると言いますね。

 そうしますと、子供たちにゆとりを取り戻そうということで、カリキュラムの内容を三割削減されました。そして、授業時間は二割削減されました。一〇%を総合的な学習に使うことになったわけですが、内容は削減する、授業時数も削減する。この削減によって、子供たちの学習活動とか教師の教育活動について十分なゆとりができたかどうか、私、大変疑問に感じるんですけれども、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 先ほどゆとりの二つ目の使い方で申し上げた点を肥田先生はお話しいただいたんだろうと思います。授業内容を厳選して、厳選した内容を時間をかけて、ゆとりを持って教えるという意味でのゆとりという使い方を肥田先生はされたんだと思います。

 それで、今回の指導要領も、基本的には、教育内容と授業時数についてはそういう考え方で構成をしているわけでございます。私どもは、教育内容は厳選をしたけれども、その内容については、学習の系統性を十分考慮して、各教科間で重複する内容をまとめたり、上の学年や学校段階で扱っていた内容とあわせて教えた方がわかりやすく指導できるものについては移行したり統合したりする、そういう観点から内容の再整理をしたわけでございます。

 こういった教育内容の厳選によって生じた時間的、精神的なゆとり、余裕を活用しまして、基本的な知識や技能を確実に身につけさせたり、じっくり物事を考えさせたりするということを目指したわけでございます。

 その結果、子供たちの実際の基礎的、基本的な知識の理解がどうなっているか、また、実際の学校生活においてそういうねらいのとおりの実践が行われているのかどうか、その辺を私どもは十分に検証していかなければいけないというふうに思っております。

肥田委員 中教審答申の現状認識について、もう一つだけお尋ねします。

 答申は、子供たちは塾や自宅で勉強時間にかなりの時間をとられておりまして、「「ゆとり」のない忙しい生活を送っている。」と記述してあります。

 当時、子供たちは本当に自宅で勉強に追われてゆとりを失っていたのかといいますと、ちょっとこれは疑問なんですよ。データがあるんですね。一九九三年度に実施されました第三回国際学力調査によれば、校外の学習時間の世界平均は一日三時間であります。日本の中学二年生の学習時間は平均二・三時間、比較可能な三十九カ国の中で三十一番目となっております。

 また、別の調査で、七歳から十五歳までの子供の校外の学習時間は、韓国は二時間以上三時間以下に三分の二の子供が分布し、アメリカは一時間以上二時間以下に三分の二の子供が分布しております。それに対して、日本の子供は三分の二以上が一時間以下に分布しているわけですね。念のために申し上げますと、日本の子供の場合は塾の時間も含まれております。

 日本の子供の学習時間は、今や世界最低のレベルにあると言わなければなりません。答申が前提としている子供は塾や自宅の勉強に時間をとられ、ゆとりがないという現状認識の根拠があるのなら、示していただきたいと思います。

銭谷政府参考人 ただいま先生お話をいただきましたのは、平成八年の七月の中央教育審議会「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の第一次答申における記述にかかわる部分だと思います。

 この中教審答申では、「子供たちの生活の現状」として、「ゆとりのない生活」「社会性の不足や倫理観の問題」「自立の遅れ」「健康・体力の問題」「学校生活をめぐる状況」そして、子供たちの積極面について記載をしております。

 お尋ねがございました件につきましては、「ゆとりのない生活」の中で触れておりまして、「現在の子供たちは、物質的な豊かさや便利さの中で生活する一方で、学校での生活、塾や自宅での勉強にかなりの時間をとられ、睡眠時間が必ずしも十分でないなど、「ゆとり」のない忙しい生活を送っている。」との認識を示したものでございます。

 この平成八年の中教審答申のバックデータでございますけれども、実は平成二年にNHKが実施をいたしました国民生活時間調査における学校を含めた学習時間の長さや睡眠時間、これが必ずしも十分でないこと、テレビやマスメディアとの接触にかなりの時間をとっていること、疑似体験や間接体験が多くなる一方で、生活体験、自然体験が不足をして、家事の時間が極端に少ないこと、かなりの子供たちが、当時、一部、学校週五日制をやっておりましたけれども、休業土曜日の午前中をゆっくり休養する時間に当てているといったような報告があること。

 それからもう一つ、平成四年及び六年のNHKの世論調査におきましても、夜眠れないとか疲れやすい、朝食欲がない、何となく大声を出したい、何でもいらいらするといったストレスを持っている子供がかなりいるといったような調査結果がございまして、そういったようなバックデータを踏まえまして、平成八年の当時、このような記述をしたものでございます。

肥田委員 ぜひお願いしたいのは、今後もそうなんですが、しっかりと検証していただきまして、そして、もう何度も何度も繰り返して変更をしなくてもいいような、しっかりした改正を私はお願いいたしたいと思います。ぶれているぶれているという印象を持たれるということ自体、やはり私はよくないと思っております。

 それでは、大臣にお尋ねをいたしたいと思いますが、国際比較調査で、私が一番注目したかったのは、やはり読解力の問題でございます。低下しているということですね。ゆとり教育に原因があるという批判もありますけれども、新学習指導要領が二〇〇二年にスタートしたばかりですから、私は、これが読解力の低下の理由にはならないと思っております。むしろ、中学生の理科や数学の学力低下は既に七〇年代から始まっておりまして、しかもこのころから中学、高校の子供たちの読書離れが指摘されるようになっております。

 OECDの前回調査では、趣味で読書をすることはないと答えた日本の十五歳の子供が五三%に上っています。参加国の中で最も高い数字でありました。私はこれにはびっくりしました。一カ月に一度も本を読まない日本の中高校生は過半数に上っております。読解力はこのあたりに一番低下の理由があるんじゃないかと思うんですが、読解力は子供に必要だとするならばですが、読解力を身につけさせるような方策をお考えでいらっしゃいますか。大臣にお尋ねしたいと思います。

中山国務大臣 今回の調査結果で私が一番懸念しましたのも、読解力でございました。

 PISAの読解力は、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力ということでございまして、それはみずからの目標を達成し、みずからの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために必要なものと考えられております。また、学習指導要領におきましても同様に、目的や意図に応じて文章を読み、広い範囲から情報を集め、効果的に活用する能力を身につけさせるとともに、読書を生活に役立て自己を向上させようとする態度を育てること、こうなっているわけでございます。

 まさに同じようなことを考えているわけでございまして、まだ現行の学習指導要領になって間もないわけでございますが、ずっと長くこの日本の教育を見ておりまして、やはり読解力といいますか、これが落ちてきているんじゃないかな。特に国語の力といいますか、これが落ちてきている、ボキャブラリーが乏しくなっているなということは感じております。やはりボキャブラリー、語彙が豊富だと思考の回路も豊かに、多くなると思うんですけれども、言葉が少ないと極めて単線的な、単純な考え方あるいは感じ方しかできないんじゃないか、こう思うわけでございます。

 読解力を身につけさせるためには、やはり国語を中心にしながら、各教科をまたいで総合的な学習を通じまして、例えば批判的な読み方を取り入れたテキストを理解し評価しながら読む力を高めるとか、あるいは、単に読んで理解するだけでなく、テキストに基づいて自分の考え方を書く、そういう力を高めるとか、さらに、今はもうやられていますけれども、朝の読書など、読書活動を推進することなどによりまして、さまざまな文章や資料を読む機会、そして自分の意見を述べたり書いたりする、そういう機会を多くすることによって、読解力を伸ばしていけないのかなというふうに考えているところでございます。

肥田委員 今の質問とも関連するんですが、新聞を生きた教材として活用しようというNIE運動も大きな成果を上げております。

 若い世代が新聞を読まなくなったわけですね。それは、やはり社会に関心を失ってしまっている。それが遠因となって引きこもりとかニートがふえているということも、あるいは言われております。

 それで、読書活動もNIE運動も、新学習指導要領が強調しておりますみずから学び考える力の育成に効果を上げます。それから、今回問題になっている読解力、これの養成にも大きな効果を上げると思います。

 大臣も、NIEニュースの紙上におきまして、教師の指導で四年生のときから毎日欠かさず新聞を隅から隅まで読んでいらっしゃったと少年時代を振り返っておられましたけれども、まさに低学年のときから新聞を読む習慣をつけることは、判断力や批判力をはぐくむためにどうしても必要なことだと思っております。

 学校教育の教材として新聞が活用されるよう、民間のすぐれた自主的な取り組みを文部省はしっかりと支援していっていただきたいと思うんですが、大臣の御決意をお伺いいたします。

中山国務大臣 私の小さいころというのは、まだテレビもなくてやっとラジオがあるぐらい、出版物も余り買ってもらえなくて、せいぜい新聞ぐらいが目にできる活字だったものですから、それこそ食い入るように隅から隅まで読んでいたものでございますが、先ほどからお話がありますように、やはり読解力、本を読むということ、本を読む習慣をつけるというのは本当に大事なことであると思うわけです。そういう意味で、今の子供たちは本当に恵まれ過ぎているので、むしろ活字の洪水の中に入っちゃっているものですから、活字のありがたさということを余り感じないのかもしれません。

 身近にあります新聞、特に新聞を読む、それも、そのままうのみにするんじゃなくて、批判的な目で、あれは本当かなと。あるいは行間を読むなんという言葉がございますけれども、そういったことも含めて、まず一番最初にある活字というのは新聞でございますから、この新聞運動、NIE運動、こう言われていますけれども、このNIE運動がいろいろ主催しております行事等、これに文部科学省としても支援をしているわけでございますが、今後とも支援を続けてまいりたい。そして、学校におきまして、新聞も適宜活用して国語力を高める、そして、社会的ないろいろな現象、事象を理解でき、そして公正に判断できる、そういうことができる子供たちの教育に資していきたい、このように考えております。

肥田委員 どうもありがとうございました。終わります。

斉藤委員長 笠浩史君。

笠委員 民主党の笠浩史でございます。

 本日は、大臣の所信に対する質問ということで、先ほど私どもの同僚の達増委員の方からも、教育基本法、本来この国会に提出予定になっているかとは思うんですけれども、それについて大臣は、断念したわけではなくて、可能な限り速やかな改正を目指してしっかり取り組む、提出していきたいというような意気込みを示されたわけですけれども、ただ、いろいろと与党内の調整を見ていますと、どうもこの国会には出てこないのかなというような気が私はしておるわけでございます。大臣、これは当然閣法として出されると思うんですけれども、どういった点が今問題になって、本当に出せるのかどうか、改めてお伺いをさせていただきたいと思います。

中山国務大臣 教育基本法の改正につきましては、さかのぼりますと、平成十二年の教育改革国民会議以来、歴代の内閣が取り組んできた課題でございまして、特に、平成十五年三月、もう二年になるわけですけれども、中央教育審議会から答申をいただいているわけでございます。二年もたってまだやらぬのか、これはもう本当に中央教育審議会に対して失礼だ、私はこんな気持ちさえするわけでございます。

 御承知のように、今、与党におきまして、この基本法改正に関する協議会及び検討会が設けられまして、教育基本法の改正について精力的な検討が進められているわけでございます。どういった点が対立点になっているというようなことについては、いろいろとお聞きになっていると思うわけでございますが、私どもとしては、できるだけ速やかに改正に持っていきたい、こう思っています。しかし、拙速もまたこれはいけないと思うわけでございまして、まさに教育基本法、日本の教育の基本になる法律でございますから、いろいろな各方面の意見を聞きながら、そういう意味ではしっかりとした改正をいたしたい、こう思っております。

 午前中も申し上げましたが、決して断念したというわけではございませんで、各方面に、ぜひ早く何とか提出できるように持っていきたいのでよろしくといってお願いして回っているところでございます。

笠委員 大臣、私は思いますのは、確かに、拙速にこうした問題を取り扱っていくということはやはりいけないことだと思っております。

 ただ、これはやはり政府として、大臣、そこまでの思いがあるのでしたら、むしろ国会の場で、それこそ二回ぐらいの通常国会をしっかりと通じて、例えばこの文科委員会なのか、あるいは憲法等の議論もございます。そうした憲法の今後の進め方というものが、調査会がどうなっていくのかということもございますけれども、やはり国会にこの問題についてしっかりと議論する場を設けて、それぞれに論点も出して、国民的な議論を盛り上げていく、そういう関心をきちんと呼んでいく段階にしていくべきではないかと私は考えているわけです。

 例えば、与党の中での調整がついた、だから後は数で押し切ればいいだろう、決してこれはそういうテーマではない。そういう意味では、むしろ、政党間のいろいろな党利とか党略とか、あるいは考え方もあるでしょう。けれども、やはり国会の場で堂々と議論をしていく。そして、その時間をしっかりと確保して、これを本当にどういう観点から、どういう立場から、いろいろな思いの方々がおられると思います、教育については。そういうことも受けとめながら議論をしていくステップに持っていくべきではないかと思っておるわけでございますけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 そういうお考えも当然あるかなと思いますけれども、今の時点で、では今から憲法調査会みたいなものを国会に設けて議論を始めるとなると、もっと先になるかなということも心配でございますので、むしろ、国会に提出した後十分な御論議をいただくという方が私はいいんじゃないかと個人的には思います。

 いずれにしても、国会でどのような調査会を設置するかということにつきましては、これは国会法等の規定に基づきまして、各議院の判断によってお決めになることだ、こう考えておりますので、私の方からそのようなことを発言するのは遠慮したいと思っております。

笠委員 いずれにいたしましても、しっかりとぜひお取り組みをいただきたいということと、私ども民主党といたしましても、今まさにこの新しい時代にふさわしい、むしろ、単なる改正というよりも、新しい教育基本法というものがどういうものなのか。これは、党内において議論をしているところでございます。これは逆に言うと、党と党でそれぞれの考え方があっても、しっかりとした議論をした上で、きょうもちょうどゆとりがどうだこうだという議論があるわけでございますけれども、やはり未来に責任を持つ、しっかりと新しい基本法というものを十分な慎重な議論をしながらつくっていくことをまたお願い申し上げたいと思いますし、そのための御努力をいただきたいと思います。

 それで、きょうはちょっと幾つか聞きたいんですけれども、先ほど来ひとつ議論になっておりますゆとり教育の、これは新聞報道が見直しというふうに一方的に見出しをとっているのか。先ほど来大臣の答弁を聞いておりまして、十分にゆとり教育というものが理解をされていない部分があるということでこの学習指導要領の是正をしていくということのようでございますけれども、まさに、ゆとりというものは確かになければいけない。けれども、ゆとりが緩みになっては決していけないと私も考えております。

 私も地域の学校等の見学をたびたびさせていただいているわけでございますけれども、その中で、ちょうど同じ時期に、公立の中学校の一年生の授業、同じ科目でまた別の私立の一年生の授業を見させていただくと、これは教えている内容が全く違うんですね。私立については、教科書以外に、それはすべてそうじゃないでしょうけれども、別の教材も用意をして、非常に中身の濃い、そして非常に生徒たちも目を輝かせた授業をやっているようなところもございます。

 今、私もいろいろ教科書を見たところ、確かに、授業の時間の問題というよりも、今の教科書の、余りにも薄っぺらい、そして漫画とかいろいろ多いんですね、もう大臣も拝見されていると思いますけれども。教えてもらう内容が、公立に行くかあるいは私立に行くか、そして公立の中でも、今、コミュニティ・スクールなどを導入して、そういったところをしっかり埋めていこうということで、みずから努力をされているところが多々出てきているわけでございますけれども、こうした実態についてはしっかりと把握をしていただき、そして、何といっても、やはり基礎学力というものは私は大事であると思っております。

 ただ、詰め込みだとか成績がよければいいとか、そういうことはいけないことだとは思いますけれども、やはり基礎学力をしっかりと身につけさせるというような方針というものは、これは自信を持って進められて、そして、そういう中で、この学習指導要領なんですが、先ほども、これは従来十年ごとに見直すというようなことが定例となっているわけでございますけれども、今回、大臣、この学習指導要領の見直し、めどとしては大体いつぐらいにこれを行う予定なのか、ちょっと改めてお伺いしたいと思います。

中山国務大臣 前段で、今御指摘ありましたが、本当に、授業内容、これはもう千差万別だと思うんですね。先生の力量によるところ、あるいは先生方の熱意によるところもあるんだろうとは思うんです。そういう意味で、いい授業、いい教育を受けた子供は幸せですけれども、そうでなかった子供は本当に不幸せだな、これは運、不運では片づけられない問題ではないか、こう思っているんですよ。

 ですから、教科書等も、今、実はアメリカでの教科書を取り寄せてみたりいろいろやっているんですけれども、本当に日本の教科書をしばらくぶりで見てみましたら、何か薄っぺらいし、絵や何かがいっぱいあって、目がちらちらするような、もう少し何かこうきちっとした教科書、しかもそれが、子供たちの知的好奇心を本当にくすぐるといいますか、かき立てるような、そういう教科書であってほしいなというようなことも実は感じておるわけでございます。

 そういったことも含めて私は中央教育審議会に今諮問したところでございますが、これは、御承知のように、義務教育費国庫負担の話もあるものですから、ことしの秋をめどにして、ちょっと時間的に大変なんですけれども、精力的に御審議をお願いしたいというふうに今言っているところでございます。

笠委員 いや、その審議は秋をめどに中教審の方で結論を得るということで、実際に、その答申に基づいてこの新学習指導要領が実施をされるというのはいつぐらいを想定されているんでしょうか。

中山国務大臣 これは、どういう答申になるか、まだ今から予測はできないわけでございますから、その答申の内容を見ながら、私たちはできるところからやっていきたいと思っているんです。十年ごととかそういうことじゃなくて、時代の流れ、社会の変化が非常に激しいですから、できるだけ早く変えていく、変えるべきところは変えていく、そういう基本的なスタンスで臨みたいと思っております。

笠委員 先ほど同僚の肥田委員の方からも指摘がありましたけれども、今現場は、先生方も本当に困っておられます。そして、突然のようにくるくる変わってくる。だから、五月雨式にまた変えるというよりも、やはりしっかりと、変えるのであればなるべく早く変えていただき、そこで先ほどの指摘どおり、やはりそのときにはきちっとした説明を果たしていただく、はい、突然変わりましたよではなくて。

 同時に、では、三年になるのか四年になるのかわかりませんけれども、この間の、結局は失敗だったというか、すべてを否定するわけじゃございませんけれども、やはりちょっと問題があったという指導要領のもとで授業を受けてきた子供たちに対する責任というものは、私は、そういう新しい形での指導要領を導入するときの文部科学大臣は、そういうお子さんに向かって、保護者の方々に向かって、やはりきちっとおわびをするぐらいのことがなければ本当に、この文部科学行政というものに対する不信感というものが今渦巻いているのではないかと思います。ですから、そういった点では、しっかりとわかりやすい形で、そして間違っても、また三年後、四年後ぐらいに、あれは間違いだったということがないように取り組んでいただきたい。そのことをお願い申し上げたいと思います。

 大臣も、ちょうど所信の中で、きょうという日は一日しかなく、一日一日が勝負であります、きょう受けた教育の影響は一生に及びますとおっしゃっている、そのとおりだと思います。ですから、その所信に基づいて、しっかりとリーダーシップを発揮されて、またこの取り組みを進めていただきたい、そのことをお願いいたしたいと思います。

 それで、きょうはまず、先日、大阪府の寝屋川市で大変痛ましい、あってはならない事件が発生をしたわけでございます。私も亡くなられた先生に対してお悔やみを申しますと同時に、また、今けがをされている先生方の一刻も早い回復をお祈り申し上げたいと思います。

 私、実は、昨年のこの委員会の場でも、学校安全というものをいかに確保していくかということについては、まさに国が責任を持って取り組んでいくべきテーマじゃないかというようなことを御指摘させていただきました。そして、今回もちょっと説明を受けまして、確かに、安全に関してのマニュアルの作成、訓練をしっかりやろうとか、あるいはボランティア、地域の方々、そうした方々を含めた協力を、しっかりと協力をお願いするとか、そういったことではいろいろな形での文科省としての取り組みもあるようでございますけれども、去年質問させていただいたときに、例えばハードの面で言いますと、監視センサーなりのそういったハード面で、どれくらいの公立の学校で設置されているのか、そういったことについても把握ができていないような状況でございました。

 今回、そうしたことを受けて把握をされているということでございますけれども、大臣、所信の冒頭でこの件について触れられ、ハード面、ソフト面の両面から組織的、継続的な対策に取り組み、各学校における安全管理の徹底を図ると、所信の中でおっしゃっていますけれども、具体的に、今までとどのように違う対応を、新しい対応をされていこうとしているのか、その点についての御説明をお願いいたします。

中山国務大臣 学校の安全の充実に関しましては、子ども安心プロジェクトというのを平成十四年度から推進しているわけでございますが、さらに、平成十七年度、来年度におきましては、このプロジェクトをさらに推進するために、新たに、地域学校安全指導員による各学校の巡回指導と安全体制の評価等を推進するため、地域ぐるみの学校安全体制整備推進事業や実効性のある防犯教室や防犯訓練等を推進するため、先導的な取り組みを集めた防犯教室実践事例集の作成、あるいは学校施設の防犯対策に係る点検リストの作成等を行うということにしておるところでございます。

笠委員 ちょっと今のお話を聞いているだけでは、学校の、特に、小学校あるいは幼稚園も含まれるかもしれませんけれども、公立の小学校などに対する大臣の危機感というか、今本当に、いつどこでああいう事件が起こるかどうかもわかりません。どこで起こる可能性だってあるわけです。

 例えば、今おっしゃったような、地域でボランティアの方々が、これはもう自分たちもしっかりやらなければいけないということで立ち上がって、いろいろな努力をされているところはたくさんございます。けれども、それではなかなか限界がある。

 今回の寝屋川で起こった事件も、ある意味ではマニュアルに基づいた対応を私はされていたのではないかと思っております。しかし、ああいう悲惨な結果を招いてしまった。ということは、もう一歩踏み込んだ何か対策というもの、今大臣が御説明になったことは、これまでもあるものに対して、それをちょっと踏み込んで徹底していこうというレベルにしか私には聞こえないわけでございますけれども、どこが新しく、この事件を受けて大臣としてやっているんだという、もう少しわかりやすく具体的に言っていただければと思います。

中山国務大臣 先般の寝屋川の事件を受けて、早速現地に四名の担当官を派遣いたしまして、いろいろな原因とかそういったものを聴取してきたわけでございますが、それらをもとにしまして安全に関するプロジェクトチームをつくりまして、今具体的に検討を実はしているわけでございまして、まさに今検討している最中でございます。

 とりあえず事件を受けて私が言いましたのは、今回は学校の先生方がねらわれた事件である、だから、先生方を中心にしたまず防犯訓練もやってほしいということと、地域との連携もずっとやっていただいておりますが、やはり地域との連携をもっと強めてほしい。特に、警察との連携も、これは強めてほしい。この三点を都道府県教育委員会等に発したところでございます。

 御指摘のように、今までも本当に、文科省もいろいろマニュアルをつくったりやってまいりました。ハード、ソフト面からやってまいりました。また、地方も、地域も、特に大阪はあの池田小の事件があったものですから、ほかのところに比べても本当によくやっていただいていたんですけれども、そういうところでこういう事件が起こったということでございまして、一体どうしたらいいのか、どうしたら防げるのかということについては、本当に頭の痛い問題でございますが、しかし、そんなことは言っておられません、やはり子供たちを預かっているわけでございますから。安全ということについてもっともっと研究をしていかなければいかぬな、こう思っておるところでございます。

笠委員 今検討中だということでございましたけれども、確かに、警察との連携を強めていくということ、これも必要かもしれません。少なくとも、警察とといっても、警察自体が空き交番もあるし、これだけ学校以外の現場でいろいろな犯罪が発生をしておりますとなかなか手が回らないということで、学校にべったりなかなか張りつくということもできないと思います。また、学校の現場に果たして警察がどこもかしこも、学校を警察が守るというのも、私は、ちょっとこれは違和感を非常に覚えるわけでございます。

 もちろん、協力、連携体制というのは必要だと思うんですけれども、学校で独自の保安要員なりをきちんと、せめて小学校ぐらいまでは置けるような体制を国としても財政的にも支援をしてあげるような、私は、何か抜本的な対策というものを、お金もかかることですけれども、ここは考えていかなければいけないのではないか。

 この前、この事件を受けてさすがに、これは相次いでおりますから、やはりプロの助けが必要だということで、大阪府もこの事件を受けて、四月から七百三十三校の公立小学校に、各市町村に府が経費を半額負担する形で、警備員を配置するという方針を早速打ち出されております。渋谷区ですか、東京都の方でもそういう動きが出ているわけです。

 今月十九日の新聞で、この記事が出たところで、ちょっと私、気になるコメントがありまして、これを確認させていただきたいんですけれども、学校健康教育課のどなたかは知りませんけれども、この記事が正しいとすれば、大阪府がこういう方針を決めたことに対して、学校を舞台にした凶悪事件が大阪で相次いだこともあり、やむを得ない面がある、ただ、財政面から長期継続は難しいのではないか。

 これだけ見ると、本当に評論家というか、今差し迫っているわけですよね。これは、もしこういう発言をされている人がいるとすれば、私は甚だ認識が不足しているんじゃないかと。どういう思いで、まさに大臣が所信で、冒頭でおっしゃったわけですよね。これは、もう少し意識を変えていただいて、むしろ国がそれぐらいの方針を打ち出すぐらいのことを私はやっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 ちょっとその報道についてはよく知りませんけれども、そんなことを言う職員は文部科学省にはいない、こう思うわけでございます。

 今回の事件を契機に、都道府県あるいは市町村におきまして専門の警備員を配置するとか、いろいろな動きが出ているわけでございまして、これも学校の安全を確保する一つの方策だと思うんですけれども、一人の警備員を雇えばそれで済む話でもないと思うんですね。これは、やはり、学校全体として、教職員が力を合わせて日ごろからそういった訓練をしたり、あるいはそういう心構えを持っておくということも大事ですし、さらに、地域の方々の力もやはりかりなければいかぬ、こう思うわけでございます。

 警備員を配置するということについては、これは設置者が決めることでございますし、その地域がどういう地域であるかというふうなことも踏まえて判断していただくことになると思うわけでございますが、文部科学省としても、できるだけの支援はしていくのが当然だ、こう思っております。

素川政府参考人 記事のコメントにつきまして補足で説明させていただきたいと存じます。

 大阪府の警備員の配置につきまして新聞社から電話による取材があったわけでございまして、担当者からは、大阪府の方針について、緊急に警備員の配置の方針を決められたことにつきまして評価をしたところでございます。その上で、ボランティアを活用した体制整備も、継続的な取り組みを進めるに当たって有効であるという趣旨のこともあわせて申し上げたということでありますけれども、十分に意を尽くせず、誤解を招き、このようなコメントになったということでございます。これは文部科学省の本意ではございませんので、御理解をいただきたいと存じます。

笠委員 本意じゃないといっても、こういうのがコメントで出ると、ああ、これが文部科学省かと思われるので、そこらあたりは十分に、やはりこれは認識の問題であり自覚の問題であると思いますので、なかなかマスコミも全部を取り上げないかもしれないけれども、少なくとも、こういう評論家的なことではなくて、やはり勇み足ととられかねないコメントというものはぜひ気をつけていただきたいと思います。

 もう一点、大臣、念押しなんですけれども、確かに、財政面から、これを長期継続するというのは、それは自治体によってはできるかもしれませんけれども、これは地方任せではなかなか難しい点はあると思うんですよ。もちろん設置者の判断によるというのはそうでしょう。何も、国が強制してやれという話じゃないと思います。

 ただ、やはりそういう地域のボランティアの方の連携とか含めて、学校の先生方のまたいろいろな日ごろよりの訓練、生徒も含めた訓練、そういうことはもうこれは当たり前にもちろんやっていかないといけないけれども、やはりそこに専属のプロのスタッフが一人いるのといないのとでは全然違うんじゃないかな、それだけで解決するわけじゃありませんけれども。

 ですから、やはりそういう希望があるところは、ちょっと財政的な支援なんかを、例えば今度の二〇〇六年度の予算なんかの時期には、少しそういう裏づけも、支援も含めて、ぜひ今検討されている中で、私は、ぜひ議題の一つとして、テーマの一つとして前向きに御検討いただきたいと思うんですけれども、改めて御答弁をお願いいたします。

中山国務大臣 まさに義務教育の負担のお金を全部文部省が持っているなら最優先でやりたいところでございますが、どうもそうもなっていないものですから、ちょっと歯がゆい思いはいたすわけでございますが、これは都道府県を指導して、ぜひそっちの方にも力を入れてほしいということもお願いしたいし、我々ができることは、研修とかいろいろなことを通じて最大限やっていきたいと思っております。

笠委員 まさに義務教育のお金を国として責任を持つのかどうかというのは、大臣がこれからことしの一番大きなテーマとしてやっていかれることでしょうから。

 ただ、やはりこうしたことも、地域の格差というものが出ると、やっているところはやっていますし、これは、これからちょっとテーマを移すことにも関連してくるんですけれども、やはり学校現場にどんどん権限をいろいろと持たせていくべきだ。国から地方へというのみならず、今度は、地方に渡した権限がさらに学校現場へと持っていくような教育のあり方、システムのあり方を模索するときに、どうしても国として責任を持たないといけない部分が何なのか。これは、やはりその中で生まれる格差、なかなかうまくいかないところに対してどういうふうな形で責任を持っていけるのかということが非常に大事なポイントになってくるとは思いますので、ぜひその辺については大臣の指導力を発揮していただきたいと思います。

 そして次に、今まさにいろいろと、きょう午前中にも同僚の議員の質問にもありましたけれども、コミュニティ・スクール初め、どんどん学校現場に権限を与えて、特色あるさまざまな公立学校、新しいタイプの公立学校をつくっていこう。私もこの方針に大賛成なんです。逆に、どんどん推進をしていかなければなりません。

 ただ、やはりそのときに、では、任せっぱなしでいいのか。使う教科書だって、あるいはこういう教え方をしようよとか、そういうことはどんどんもう現場の工夫でやってもらうべきだと私は思います。

 ただ、そのときに、勝手に何でもやりたい放題にやらせていいのかというとそうではない。そのときに一番大事になってくるのは、評価をするシステムというものをしっかりとつくっておく必要があるんじゃないか。そして、そのことを保護者の方あるいは地域の方々にまた情報公開していく。そして、今その学校がどういう状況に置かれているのかということを、地域の人たちも含めて考えてもらう、あるいはほかの学校と比べてもらう、こういう評価のシステムというものが非常に大事であると思います。

 大臣も、この「甦れ、日本!」の中でも、所信の中でも、学校評価制度の確立ということを一つ挙げられておりますけれども、これは具体的にどういう形でやろうというような大臣のお気持ち、イメージがあるか。まず、そこの点について一点お伺いをいたしたいと思います。

中山国務大臣 今イギリスの話をされましたが、イギリスを初め、各国とも、国を挙げて教育改革に取り組んでおりまして、我が国としても、まさに国家戦略として、人間力向上のための教育改革を一層推進していく必要がある、こう思っているわけでございます。

 その点で、昨年十一月に「甦れ、日本!」と題する教育改革の私案を発表したところでございまして、今御指摘ありましたように、現場主義の観点に立った、学校、教育委員会の改革を進めること、とりわけ学校評価の制度の確立の重要性を指摘したところでございます。

 まさに現場といいますか、学校に、そして市町村にすべてお任せする、任せたい、できるだけ任せたいわけでございますが、任せる以上は、本当にきちんとやっておられるかどうかということは、これは評価しなければいけない。内部評価だけじゃなくて、外部の厳しい目でもって評価してもらいたいということでございます。今、学校評価あるいは情報公開のあり方につきまして、中央教育審議会の中におきまして、義務教育のあり方の一環として審議していただいているということでございます。

 私は、自分なりの考えとして、そういうふうに評価をしながら、これは学力だけじゃございません、学力、体力、あるいはまた健康とか、あるいはしつけの問題も含めて、どこの学校、どこの地域が子供たちを健やかに育てているかという、何といいますか、次世代育成コンテストみたいな、お互いに競い合いながらやっていく。ほかのところに比べて自分の学校はこういうところが劣っているな、そういったことを認識しながら、競い合って教育の質を上げていく、そういうふうな環境を醸成するということに努めていきたい、このように考えております。

笠委員 今、前向きなお答えをいただきましたけれども、学校評価の実施状況というこの資料、今、省令で、学校は自己評価及びその結果の公表に努めることと積極的な情報提供を行うことということで、これは特に罰則規定もなければ、絶対やりなさいということじゃなくて、一つの目安ですね。強制力があるものじゃございません。

 この十五年度の公表率というのを見てちょっと気になったんですけれども、例えばこれは、もちろん自己評価しているところは非常に多いんですけれども、やはり外部評価を導入しているところというのは自己評価をしているところに比べて非常に少ない。そして、外部評価をしているところは八三%も公表しているんです。そして、自己評価は、結果については公表せずが六一%あるんですね。つまり、外部評価をするぐらいの学校というものは、恐らくはうまくいっているから、当然、結果も公表できる。

 ただ、問題は、どういう形かわからないけれども、自己評価で済ませているような学校、しかも、これが公表をしていないというところが多いという現状が非常に不安を感じるところで、実際に私も、教育のタウンミーティングなんかを頻繁にやっておるんですけれども、そういうところでよく保護者の方々から聞くお話が、公立学校で、自分の学校がどういうレベルに、学力だけじゃないですよ、学力もそうですが、あるいは、校内の教え方とか先生との連携とか、雰囲気とか、いろいろなテーマがあると思います。果たしてほかの学校に比べてどういうレベルなのかがよくわからないという切実なる声も聞くんですね。

 だからこそ、私は、きちっとした、先ほど大臣は、第三者のチェック機能、この評価システムというものを模索すべき、検討すべきじゃないかということをおっしゃいましたけれども、昨年、私、下村政務官とも御一緒させていただいて、超党派でイギリスの教育の視察に参りました。そのときに非常に参考になったのが、イギリスでは、まさに日本の文部科学省からは独立した形で、教育水準局というのをつくって評価しているわけですね。

 その結果が、これはもう学力も含めて四十項目ぐらいについて、多々いろいろな面で、外部の方がチームを組んで、これは民間人を大いに活用しているわけです。そして、定期的に、今は六年に一度やっているわけですけれども、それをまた、きちっと情報公開を保護者だけでなく地域にもするし、そして、上がってきた結果について、この教育水準局がまたホームページで公開をするという中で、私はこれは一つのアイデアかなということを思ったわけでございます。

 今、例えば、文科省の中で、こうしたイギリスの例を参考にする形で、何か独立した第三者機関にこうした評価をしてもらうというようなことを検討されているとか、あるいは検討していくとか、そこらあたりについてお願いいたします。

下村大臣政務官 私の方からお答えをさせていただきたいと思います。

 先ほど御指摘をいただいたように、平成十四年度から内部評価をすることになったわけでございますけれども、この内部評価については、実際に自己評価を公表しているのが四〇%程度、実際に公表している内容を見ても、ほとんどが、九〇%以上が大体うまくいっているというような自己評価のデータが出ておりまして、果たしてこれが地域の住民の方とか保護者の方々にとって参考になるのかどうかということになると、この自己評価については限界があるのではないかというふうに思うわけであります。

 そういう中で、今御指摘のように第三者機関を置くべきではないかということで、昨年の十月、委員と一緒に私もイギリスに視察に行かせていただいて、OFSTED、これは教育水準局ですね。これは、単なる第三者評価機関だけでなく権限を持っていて、評価するだけでなく、実際に各学校に対する指導を行い、教育水準が劣っているところについてはそれを指定して、そして、一定期間を設けて、その教育水準を回復できなければ、この教育水準局によって廃校させることもできるというような強い権限を持った機関がイギリスにあるわけでありまして、これは我が国にとっても、事前チェックから事後チェックという行政のシステムの変化の中で、大変に参考になる制度だというふうに思います。

 今後の学校評価については、中央教育審議会において、義務教育のあり方の検討の中で教育活動の評価のあり方について議論されるということになっておりますので、文部科学省として、この中教審の議論を踏まえて、また、先ほど大臣も答弁をされましたが、このイギリスの事例も参考にしながら、全国的な教育水準の維持向上について国の責務をしっかりと果たしていく、そういう観点から、適切な学校評価のあり方について検討していきたいというふうに思っております。

笠委員 ぜひそういうシステム、なぜ今こういうことが必要かというと、これは繰り返しになりますけれども、やはりこれから分権を進めていこう、そして、学校に、いろいろと自分たちで考えて、校長先生と、そしてまた、コミュニティ・スクールであれば学校の運営協議会なりそういったところが、では、自分たちは子供に何をどう教えるんだ、そしてどういうものを身につけさせるんだということを、これからもう本当に、画一的じゃなくてしっかりと考えながら、やはり自分たちの責任でもってやっていただこうというような形に教育行政のシステムをしていかないといけない。だからこそ、一方で、やはりこういうきちんとした形での評価を、評価と言うと、本当に学力というようなイメージがどうしてもつきまとうわけでございますけれども、この言葉には。

 ただ、本当に校長先生と、適切に学校が運営されているか、あるいは先生と生徒の関係は良好か、生徒の学習意欲がどうなのか、態度がどうなのか、非常に、本当にきめ細かく評価をしようとすると、どうしてもこれは、単にボランティアの方々に、保護者や地域のかかわっている方の評価も必要かもしれないけれども、やはり第三者の目というものが非常に必要になってくると思います。

 そして、それをまた国がランクづけするとかそういうことではなくて、もちろん問題のあるところの是正というものに何か援助していくということは大事かもしれませんけれども、やはり情報を公開していく中で、しっかりと当事者としてそういうものを、近くの学校がどうなのか、ほかの学校がどうなのかということも含めて、こういうシステムを、やはりセットだと思うんですね、評価のシステムと情報公開あるいは説明責任。こうしたところをしっかりと踏まえた評価制度というものを私は確立していただきたいと思います。

 あと、もう一点、大臣にちょっとお伺いをいたしたいんですけれども、全国共通テストといいますか、こういうものの導入にも非常に意欲を大臣は示されているようでございますけれども、これはイメージでは、例えば、義務教育段階で何回かに分けて、何歳ごろがいいというのを選んでやるようなイメージで考えられているんでしょうか。ちょっと具体的にお聞かせをいただければと思います。

中山国務大臣 全国的な学力調査の意義、目的、実施内容、あるいは実施方法、調査結果の取り扱いなどにつきましては、中央教育審議会に今意見を伺っているところでございまして、省内におきましても、我々はプロジェクトチームをつくりまして、速やかに実施に向けた検討を進めていきたい、こう思っているわけでございます。

 全国的な学力調査を実施する際には、各学校において児童生徒の学力状況を全国的、客観的に把握して教育の成果を評価すること、各都道府県や各学校における教育指導の改善、児童生徒の学習意欲の向上について動機づけを与えるものとなること、こういうことに資する必要がある、このように考えているわけでございますが、対象となる学年あるいは教科、調査の規模、調査の頻度、結果の公表につきましては、はっきり申し上げて、今後の検討課題だ、こう思っております。今私が予断を持って発言するのは差し控えたいと思っておりますが、いずれにしても、かなりの規模といいますか、本当に全国一律でできればいいなという希望は持っております。

笠委員 きょう、かなりの議論があったわけですけれども、やはりOECDの昨年の学力調査、これは確かに国際的にどうかということもあるのかもしれませんけれども、これはたしか、私の記憶違いじゃなければ、昭和四十一年を最後に、四十一年以来ですかね、こういった全国規模の学力調査というのはなくなっているわけですよね、一部、選んでやっているのはありますけれども。そういう中で、では今の子供たちの基礎的な学力がどの程度なのかということは、きちっとこれは把握をしておかないといけないことだと私は思っております。

 もちろん、個人の成績がそれでいいから、悪いからという、かつての学力偏差値至上主義みたいな、そういうことで陥ってはいけないと思いますけれども、当然先生方も、この子供が、自分の教えている生徒が、どこが苦手でどうなんだ、あるいは自分の学校が全国的にどういうレベルにあるんだ、やはりそういうところはしっかりと、これも先ほどの評価のシステムと一緒で、把握ができる体制というものは、国が責任を持った制度というものをやはりつくっておく必要がある。

 これは私の個人的な考えですけれども、せめて学校単位の平均の学力順位ぐらいはそのエリアごとに公開をしてもいいんじゃないかな。そのことで、近くの学校と比べてどうなんだというようなことも、そうすればやはり中で頑張っていくということも、またそういう意欲というもの、あるいはどこが問題なのかという問題点も、この学力の面においてもはっきりしていくわけでございますので、ぜひともそこあたりはどういう年齢がいいのかも含めてしっかりと御検討をいただきたい。

 もう一つだけ。あと、教師の質ということで、免許の更新制などについて大臣おっしゃっていますけれども、先ほど、ちょうどたまたま大臣がフィンランドの例に言及されましたけれども、私は教員の養成過程にもこれは問題があるんじゃないかと思っているんです。

 例えば、今四年間のところを、その中でボランティアをやるとかいろいろなことが随分入ってきているんですけれども、そういうことが果たして、これからは学校の先生というのは、教える力も必要ですけれども、やはり何よりも人間力を身につけていただかなければならない。そうした中で、例えば六年ぐらいの、むしろ先ほどのフィンランドの例のように、やはり教員養成期間というものはそれぐらいにして、その中で二年ぐらいはしっかりと本当に社会人としていろいろな実体験をするとか経験をするとか、ただ単にちょっとやりましたじゃなくて、そういうこともカリキュラムに組み込んだ形の思い切ったそういう制度の見直しというものをしてもいいのではないかと私は思っておるんですけれども、いかがでしょうか。

中山国務大臣 学校現場を見せていただくたびに、やはり教育というのは人だなということを痛感させられているわけでございまして、すぐれた教員を確保して養成するということは極めて重要な課題である、こう考えておるわけでございます。

 今、教員の養成というのは、御承知のように、教員養成大学とそれから一般大学、これはそれぞれ特色を発揮しながら行っているわけでございます。これには、一つは幅広い知識を持った人材、それから本当に昔の師範学校みたいなそういうイメージの学校、いろいろなところから採用しよう、こういうようなことでございますけれども、やはり使命感あるいは情熱、実践力を有する極めて優秀な教員を養成するためにはどうしたらいいかということは、これは中長期的な立場から考えていかなければいかぬ、こう思っているわけでございます。

 全部六年制にしたらどうかというようなお話も今ございました。

 これにつきましては、現在、教員養成大学・学部のみならず、一般大学・学部においても教員養成を行っていること、また学部における養成が中心となっている現状、さらには今後の修士課程における教員養成の動向等を考慮しつつ検討すべき課題である、このように考えておりますが、御承知のように、昨年十月に中央教育審議会に対しまして新たな諮問を行いまして、この中で、学部段階の教員養成の改善充実とともに、教員養成における専門職大学院のあり方についても御検討を願うということになっているところでございます。

笠委員 時間が参りましたので終わりますけれども、最後に大臣、ことしは本当にいろいろな多くのテーマを中教審の方にまとめられているわけでございますけれども、やはり最後は政治がしっかりと取り組んでいかなければいけない、教育というのはそういうテーマでございますので、中教審がこう言ったからどうこうというよりも、そういったところで姿の見える指導力というもの、またリーダーシップというものをぜひ発揮していただくことをお願い申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。

斉藤委員長 城井崇君。

城井委員 民主党の城井崇でございます。我が党から本日最後のバッターとなります。引き続き、よろしくお願いいたします。

 まず、私からも、先日の寝屋川市における小学校で起こりました痛ましい殺傷事件で犠牲になりました、先生とそしてその御家族に心からお悔やみを申し上げるとともに、負傷された皆様に対しても心からお見舞いを申し上げたいと思っております。

 さて、まず冒頭、私からもこの寝屋川市での殺傷事件について少し触れておきたいと思います。

 容疑者は十七歳の卒業生の方だと聞いています。もちろん、先ほど御指摘もございました学校安全の面からの検討を改めて十分に行わなければならないということは、言うまでもないと思うわけですけれども、今回のこの事件、問題には、検討すべきもう一つの点があると思っています。

 それは、容疑者本人の不登校の影響であります。これまでにも不登校の経験があるという報道がなされております。これまでの不登校への対応はどうだったのか、本人の状況把握はどうなっているのか、実際に親御さんがどういう相談をどこでしたのか、どこで指導を受けたのか。

 不登校の専門家によりますと、不登校というものは、特に始まった当初、初動段階での対応が重要だと言われております。報道によりますと、今回の場合、中学二年で不登校となり、昨年、思春期外来で心理カウンセリングを受けるまでの間がそれに当たると思います。

 この初動段階について、そして不登校自体が今回の事件に影響があったかという点について、文部科学省そして関係各省に対しまして、しっかりとした状況把握と対応をお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。

 それでは、本題に入ります。本日は、まず、先ほど触れましたいわゆる不登校全般の現状把握と対策についてお伺いしたいと思います。

 文科省によりますと、平成十三年以降は不登校の児童生徒数が低下傾向にあると言っております。この低下の理由、一体どういうところにあるのかとお考えか、まずお聞かせください。

中山国務大臣 不登校の子供が減っている、その理由はどういうことかという御質問だと思いますけれども、平成十五年度の国公私立の小中学校における不登校児童生徒数は、約十二万六千人、対前年度約五千人減、三・八%減ということでございまして、平成十四年度に引き続き二年連続で減少しております。

 この不登校への対応につきましては、これまで児童生徒が楽しく安心して通える、不登校を未然に防止する学校づくりとか、あるいはスクールカウンセラーの配置等による教育相談体制の充実、地域の不登校施策の中核的役割を担う教育支援センター、適応指導教室の整備充実などの取り組みを進めているところでございます。

 さらに、平成十五年三月、協力者会議の報告におきまして、早期の適切な対応の重要性や提携ネットワークの構築などの提言がなされたことを踏まえまして、学校や教育委員会等の関係者によるさまざまな取り組みが行われてきたところでございまして、その成果が定着しつつあるものと考えているわけでございます。

 しかし、まだまだ不登校の児童生徒数は依然として相当な数に上っておりまして、教育上の大きな課題であると考えておりまして、今後とも、不登校に関する施策の着実な推進に努めてまいりたい、こう考えております。

城井委員 今、大臣からも、成果は定着してきたというところもあるけれども、まだまだということでございました。私も全く同感でございます。先ほど御指摘いただきました数字を含めまして関係をする統計、記者発表分ということになりますけれども、私も見せていただきました。

 その中で、幾つか気になる点がございます。その一つは、登校か不登校かの中間点、いわばグレーゾーンと言えるかもしれませんけれども、その部分に当たる子供がどうなっているかということであります。

 例えば、先ほどの御説明には出てきませんでしたけれども、保健室登校。保健室登校しているお子さんがいらっしゃいますが、文部科学省に伺いますと、この保健室登校の子供さんは、先ほど大臣がおっしゃいました約十二万六千人という数の中には数えていない、含まれていない、入っていないということでございました。これは一体どういうことなのかと思うわけであります。

 保健室登校という状況ということを考えますと、まだ問題に対処している途中ではないかと考えるわけであります。にもかかわらず、統計からすっぽりと抜け落ちてしまっている。ある意味で、問題の実態と統計がかけ離れてしまうんではないかということを非常に心配をします。

 それと、もしかすると、保健室登校は問題解決の認識というわけではないというふうに懸念をするわけですけれども、この点、大臣の見解をお聞かせください。

中山国務大臣 いわゆる保健室登校については、学校に登校しているとはいえ、教室で授業を受けたり集団活動に参加できる状態にあるわけじゃありませんで、学校生活における適応が十分なされているわけではないと認識しております。

 ですから、これは不登校じゃない、登校だというふうにするにはちょっと問題がある、このように思っているわけでございますが、じゃ、これは不登校かというと、学校には来ているわけでございますから、どのように分類し、考えるかという問題だろうと思うわけでございます。

 不登校傾向の児童生徒にとりましては、養護教育による健康相談がよりどころとなったり、あるいは不登校であった児童生徒が学校復帰のきっかけとして、まず保健室登校を始めて徐々に学校生活になじんできた、あるいは保健室が不登校児童等の居場所としての存在になっている、役割は非常に大きいと思うわけでございます。

 不登校の原因というのは、その背景はいろいろあると思うんですけれども、それらを抱えながら学校復帰の努力を続けている不登校児童生徒等が、それぞれの状況に応じて何とか学校生活に適応したいという、そういう努力ができるように、今後とも保健室や相談室など学校内におけるいわゆる居場所を充実させ、不登校児童生徒の状況の改善、そしてそれが不登校生徒の数を減らすというふうにつなげていきたい、このように考えております。

城井委員 今後ぜひ、いわゆる不登校状態にある子供というところをとらえる統計だけではなくて、不登校状態から抜け出しつつある、保健室までたどり着いているという子供を含めて、不登校に対する対策の対象となっている子供たちについて、きちんと我々から見ても把握できるような形で資料をお示しいただけるように努力をしていただきたいと思いますけれども、大臣、この点いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 私ども、不登校の子供たちの実態の把握についてはいろいろな観点から努めているわけでございますけれども、逐年、その把握の内容や方法についていろいろ改善を加えておりますので、そういう中でいろいろと配慮してまいりたいと思っております。

城井委員 ぜひお願いしたいと思います。

 今御指摘申し上げました保健室登校に限らず、この不登校という問題の認識は非常に難しいというふうに私も思っています。

 ただ、その中で、先ほど申しました統計を見ておりますと、ほかにも気になる点があります。先ほど御紹介ありましたように、平成十五年度の不登校児童生徒数が十二万六千人ちょっと、よく目にする象徴的な数字ですけれども、この年の「指導結果の状況」を見ますと、指導の結果、登校するまたはできるようになったという児童生徒が三万三千九十四人、指導中の児童生徒が九万九百六十一人ということでございました。ざっと引き算をいたしますと、二千百七十一人、先ほどの全体数から残ってしまうわけなんですけれども、それ以外の二千百七十一人というのはどうなっているのでしょうか。全く手つかず、指導中ではない手つかずということなんでしょうか。この二千百七十一人についての対応の見解をお聞かせください。

銭谷政府参考人 平成十五年度の不登校児童生徒数十二万六千二百二十六人というこの数は、学校基本調査の不登校児童生徒数でございまして、国立、公立、私立の小中学校の不登校児童生徒数ということになります。

 御指摘の「指導結果の状況」に出てまいります数は、これは不登校児童生徒への指導結果状況の調査の結果でございますけれども、これは対象が公立の学校における不登校児童生徒についてその詳細を調査した数字でございますので、御指摘いただきました二千百七十一人という数字は、公立学校の不登校児童生徒への指導結果状況の調査の対象になっていない国立及び私立の不登校児童生徒ということになります。

城井委員 そうしますと、今の御説明からしますと、二千百七十一人は国立及び私立の学校における不登校の人数という認識になるわけですけれども、そうなりますと、同様に指導の結果の状況というものは、その二千百七十一人つまり国立及び私立の学校の不登校について、当然指導結果状況というものをつかんでいらっしゃるという認識でよろしいんでしょうか。

銭谷政府参考人 現時点では、不登校の詳細な実態につきましては公立学校のみを対象として調査をしておりますので、国立、私立の学校の不登校児については詳細な実態把握はできていない状況にございます。

 今後、この国立及び私立の学校の不登校児の実態の調査、どういうふうに進めるのか、これは私ども十分検討していかなきゃいけないというふうに思っております。

城井委員 これまでも不登校の実態調査、今の基準になってからでも大分たっているわけですけれども、その間に公立学校のみしか対象にしてこなかった。その間にも、国立にも私立の学校にも不登校の子供たちはいたと思うんですけれども、その点を対象にしてこなかった理由を教えてください。

銭谷政府参考人 実は、こういういろいろ不登校の子供とか問題行動を起こす子供たちの調査というのは、ずっと公立学校を対象に実施をしてまいった。と申しますのは、小中学校は公立学校が圧倒的に多いということもございまして、公立学校を中心に行ってきたというのをずっと引きずってきたということでございます。

 ですから、先ほど申し上げましたように、不登校対策というのは国公私を問わず必要なことでございますので、今後の国立、私立の不登校の子供たちの実態の把握については十分検討していきたいというふうに思っております。

 それから、もちろん、国立、私立の学校におきましても不登校対策がとられていないわけではもちろんございませんで、例えば私立学校におきましても、これは把握している数でございますが、約三百六十人のスクールカウンセラーが配置されているというふうに承知をしているところでございます。

城井委員 公立学校の数が多い、これまでの中で引きずってきたという御説明であったかと思いますけれども、数が多いというところで傾向とかあるいはその規模というものは大体つかめるかもしれませんけれども、そこからこぼれる子供たちがいるというところを考えますと、ぜひきちんと詳細にすべてをとらえられるようにしていただくように、今後もお願いしたいというふうに思います。

 続いて質問をさせていただきます。

 先ほど取り上げた統計の中にございます指導中としている児童生徒、私はここの対応、対策が一番大事じゃないかというふうに思っているわけですけれども、この指導中としている児童生徒に対しての取り組みというもの、先ほども大臣からも若干御説明がございましたが、先ほどの説明と同じかというところの確認を含めまして、改めてお聞かせください。

銭谷政府参考人 この指導中の児童生徒への指導でございますけれども、学校の立場から見た場合、指導として多いのは、一つは、担任の先生やスクールカウンセラーなどが家庭訪問を行いまして学業や生活面での相談に乗ったり、登校を促すための電話をかけたり、迎えに行くといったような家庭への働きかけを行うということがございます。

 それから、二つには、教育相談担当の教員あるいは養護教諭が専門的な指導に当たったり、友人関係を改善する指導を行ったりするなど、学校内での指導の改善を工夫するといったようなこともございます。

 それから、三つ目は、いわゆる教育支援センター、適応指導教室でございますけれども、ここや教育相談機関、医療機関、民間施設などと連携して対応に当たるといったような関係機関との連携を図ること、こういったことを継続して行っているというようなことがございます。

 不登校の児童生徒に対する各学校における取り組みの一層の充実化も図られますように、文部科学省としても施策の充実に努めたいというふうに思っているところでございます。

城井委員 幾つか、今していただいている取り組みを挙げていただきましたけれども、今挙げていただいたような、家庭訪問にしても、あるいは学校内での指導にいたしましても、関係機関との連携にいたしましても、実際に報告が届いているだろう部分と、現場での運用段階での状況が若干異なるケースが大分出てきているということをお伝えしたいと思っています。

 例えば、保健室登校を禁止している学校が出てきているですとか、あるいは相談室自体を閉鎖しているという例もあります。ひどいところになりますと、ある国立の中学では、生徒と保護者を追い込むことでその生徒自体を転校させるというような事例すら、関東圏の学校ですけれども、出ております。

 そういったこともぜひ念頭に置いていただきながら、この指導中としている児童生徒の現状を、特に今後注視していただくようにお願いしたいと思います。

 続いて質問させていただきます。

 私は、そうした指導中の子供たち、不登校状態にある子供たちに対して、社会性をいかに担保していくかということがこの不登校の対策については非常に大事だというふうに思っています。学校こそがまさに社会性を身につける場であるというふうに考えるわけですけれども、学校へ行く、つまり登校を促すきっかけをつくっていく、専門用語で登校刺激と言うそうでございますけれども、この登校刺激について、大臣、お考えをお聞かせください。

銭谷政府参考人 不登校の児童生徒への対応に当たりましては、主体的に学校復帰や社会的自立に向けて歩み出せるように、周囲が状況をよく見きわめて、そのための環境づくりの支援をするなどの働きかけをするということが重要だと思います。

 それで、先生御案内のように、平成四年に文部省で報告書を出したことがございまして、不登校の問題について、登校への促しは状況を悪化してしまうこともあるというふうにその報告書の中の趣旨が一部理解をされまして、働きかけを一切しない場合も、必要なかかわりを持つことまでも控えて時機を失してしまう場合があるということが指摘されたことがございました。

 それで、平成十五年の三月の文部科学省の報告書におきましては、やはり不登校児童生徒については早期の対応が重要であって、児童生徒の状況を理解しようとすることや必要な支援、いわゆる登校刺激ということもあるかもしれませんけれども、必要な支援を行おうとすることなく、ただ待つというだけでは状況は改善しないという認識が必要であるということが指摘をされたわけでございます。

 ただ、同時に、機械的な働きかけ、強引な登校への促しによって児童生徒やその保護者を追い詰めるということはあってはならないということも同じ報告書の中で指摘をされているわけでございます。

 こういったことを踏まえまして、文部科学省におきましては、地域において不登校児童生徒に対して適切な働きかけを行うとともに、きめ細かな支援を行うためのネットワークを整備する調査研究事業を実施しているところでございます。

 今後とも、不登校児童生徒の学校復帰や社会的自立に向けて適切な支援がなされるように努めてまいりたいと思っております。

城井委員 私も、強引な刺激については賛成するものではないというところは賛同をいたします。ただ、先ほど、平成十五年報告書ということでおっしゃっておりましたけれども、ただ待つだけじゃだめだということ、ここの点は非常に大事じゃないかというふうに思っています。

 一部には、休めば登校に向けてのエネルギーがたまるというような考え方が世の中にはあるようでございますけれども、実際には、休みが長引けば、友達やあるいは先生など、外部との接触のきっかけを失いますし、何より学校自体にやはり行きづらくなるというところ、この点は大きいのではないかというふうに思うわけであります。

 実際に統計を見ますと、五月のゴールデンウイーク明けですとかあるいは夏休み明け、不登校の子が特にふえるというようなデータも実際にございます。これらの点を考慮いたしますと、やはり登校刺激、ある程度きちんと効果的な形でというところを基本に据えることが必要だと考えるわけであります。

 では、その点を踏まえながらになりますけれども、先ほどの報告書の部分、これまでの過去の部分はわかりました。現在を含めて今後ということになりますけれども、その登校刺激を含みます学校復帰につながる研究というものを今、それから、これからとなりますけれども、文部科学省として行っているんでしょうか。あるいは、行う予定があるんでしょうか。

銭谷政府参考人 不登校の児童生徒の学校復帰に関しましては、先ほどちょっと申し上げましたけれども、地域において不登校児童生徒に対して適切な働きかけを行うとともに、きめ細かな支援を行うためのネットワークを整備する調査研究事業というものを、今私ども行っております。

 これは、適応指導教室、あるいは民間施設、NPO、さらには学校とか、いろいろな関係者がそれぞれの不登校児へのかかわりの中で不登校児の学校復帰について支援をしていく、そういうことについて、実践しながら調査研究をし、私どもとしてはそれを支援するという事業でございます。

城井委員 ありがとうございます。

 以上のお伺いをいたしましたような状況認識を前提にいたしまして次に移りたいんですけれども、この不登校対策の主体をだれが担うべきかという点を考えていきたいというふうに思っております。

 今、不登校の対応に当たっている現場の主体、例えば教員、カウンセラー、臨床心理士、さまざまな方々のかかわりというものがあるというふうに承知をしておりますけれども、私は、今実際に現場で起こっている問題に、そうした教員を初めとした方々、現場の方々は必ずしも対応し切れていないのではないかというふうに感じているところであります。私なりに、これまで現場の方、さまざまな方にお話を伺いますと、状況はこんな感じではないかというふうに伺っています。

 学校現場では、心理学をやりたがる先生と生徒指導をやりたがる先生に分かれていて、なかなかその二つの要素を組み合わせて対応するということはできていないということが一つ意見として届いています。

 また、対策として評価をされていると言われております相談員制度、例えば埼玉県でございますさわやか相談員などは、実際には現場での孤立が目立ってきているという状況が出てきています。週三回の勤務形態では先生と一緒に働いている実感が非常に乏しい、また、先生と助け合うという場面が少ない、また、相談員自体にかなりのストレスがかかっているということがあります。子供と遊んでばかりいるじゃないかということで、教員が相談員をばかにするというケースも傾向としてかなり出てきています。相談員のストレスをどう解消するかという新たな問題が持ち上がっているような状況にもなっているわけであります。

 臨床心理士にしても、大学院卒の人であり、どちらかと言えば、病院向けの人材です。人数としても十分に配置ができていないのは御承知のとおりでございます。学校現場で我々が望む役割を本当に果たせるか、まだ微妙な状況にあるというふうに思うわけであります。とすれば、やはり百万人弱おります正規軍としての教員がいかに役割を果たすか、この点が非常に重要だと思います。

 この不登校に対応するために行う必要があると私どもが考えます教員の再教育、そして継続教育を文部科学省はどんなふうに考えているのか。これまでのように、カウンセラーなどいわゆる周辺の部分ばかりではなくて、この正規軍の活用を念頭に置いてもっと力を入れるべきだと考えますけれども、この点、いかがでしょうか。

銭谷政府参考人 私も、不登校問題に大変熱心に取り組んでおられる関係者の方からお聞きしますと、学校にはさまざまな職員の方がいるわけでございまして、そういう方たち同士の間の関係づくり、子供とのかかわり合いなどについて、事例ごとに悩みも違いますし、また学校によっても体制がいろいろ違うということをお聞きするわけでございます。

 何といいましても、学校には、校長、教頭を初め学級担任、生徒指導、教育相談担当の教諭の方がいるわけでございますので、そういう教諭の方が日ごろから連携を密にして、一致協力して不登校児童生徒に当たるということが一つはやはり基本だろうと思います。それに加えて、養護教諭、スクールカウンセラー、相談員の方々がそれぞれの専門性を生かしてかかわっていただくということになるのかなと思っております。

 その場合、教諭の方々の再教育の問題でございますけれども、今お話がございましたように、教員はやはり教科の専門家でございますし、同時にいわば教育指導の専門家でもあるわけでございます。その教育指導の中には、生徒指導、教育相談、さまざまなものが要素として入っているだろうと思います。

 現在、文部科学省そして各都道府県、基本的に行っておりますのは、初任者研修あるいは十年経験者研修といったような教職経験に応じた研修の中に、この不登校の児童生徒に対する指導に関する内容を盛り込んだり、あるいは生徒指導、教育相談といった専門的な研修を強化するといったことで、教諭の方々の研修の充実に努めているところでございます。

 なお、こういった教諭の方々、もちろん教科指導、生徒指導と並んでこういう問題に対応するわけでございますので、専門的な知識が必ずしも十分でない部分は、それは否めないわけでございます。そういう点については、先ほど申し上げましたように、スクールカウンセラーや相談員、養護教諭との連携ということについてもよく研修を積んでいただく必要があるだろうというふうに思う次第でございます。

城井委員 現場の教員の方々の専門的な知識というものがまだまだだという点は、私もそう思いますし、ちょうどいわゆる学習障害、軽度発達障害の子供たちがクラスにいた場合に、そこのクラスの教員がそれを見つけられたかというときに、やはりその基本的な知識の部分、そういった子供たちがどういう状況になっているかということについて知識がなかったがために見過ごしてきたというようなケースもありました。

 その対応と同様に、不登校についても、現場の教師に専門的な知識というものが欠如しておりますと、不登校問題そのものを認知できないという可能性があるのではないか。先ほど関係者との連携ということがありましたけれども、教員の数の方が圧倒的に多いという状況の中で、やはり教員のアンテナがどれだけ磨かれているかという点が非常に重要だと思います。そういう意味では、教員の能力の向上というものが急務であるというふうに思います。

 先ほど、研修についても触れられておりましたので、そのあたりを含めまして、教員の能力向上策についてお伺いしたいと思います。

 先ほど御指摘申し上げましたように、現場からの声として、教員が、例えば家庭訪問の技術、不登校の子供の心理を少しでも勉強すれば、家庭訪問の仕方は上達するという意見があります。現場での対応を充実させていくならば、教員の知識、経験の充実のための教員研修の充実は不可欠であります。

 しかし、先ほどお話にも出ておりました、現在の教員研修の現状をつぶさに見ておきますと、問題対処に資する実践的な研修というものがほとんどない。メニューとして存在していても、現場の教員まで残念ながらその知識、経験が伝わっていないという状況にあります。だからこそ、今の現場の教員が、結局最後のところ専門的知識が欠けているという状況はまだ解消されていないのではないか、ここに原因があるのではないかと私も思うわけであります。

 例えば、先日、不登校の子供にこれは聞いてはいけないという二つの質問があるということをある専門家から伺いました。なぜ休んだのか、これが一つ目です。二つ目は、休んだ間に何をしていたのか。しかし、この二つの質問、もし仮に現場の教員に知識と経験がなかったら、間違いなく、学校に出てきた子供に一番最初にする質問だというふうに思うわけであります。こういった最低限の基本の部分をどうやって現場の教師に伝えるのか、これは非常に大事だというふうに思います。

 今の教員の人数の増減を見ておりますと、あと数年もいたしますと、団塊の世代の教員がリタイアをして、今ふえつつあります経験に乏しい若手の教員が教育の現場にあふれるということになります。現場教師の不登校問題に対する認知度と解決能力を向上させる、そのためには、今の研修制度の中で、やはり現実的な対応として何かしら取り組まなければならないのではないか。

 一つ御提案を申し上げたいと思いますけれども、法定研修として位置づけられております初任者研修と十年経験者研修、この中に、先ほど申しました不登校対応の実践的な研修、とりわけ子供と相対したときの、対面時の実践訓練というものをもっと充実した形で入れる必要がある。これはかなり急がなければならないのではないかと考えるわけですけれども、この点、大臣の御所見をぜひお聞かせください。

中山国務大臣 確かに、今委員が御指摘のように、不登校の子供に対して、なぜ休んだの、何をしていたの、専門的な知識がなかったらついつい聞きがちでございますけれども、そういうことは聞いてはいけないんですよね。

 そういう意味で、不登校の児童生徒に対してどういうふうに対応するか、まさに実践的な研修が大変重要である、このように考えるわけでございまして、今文部科学省におきましては、法定研修として都道府県が実施します初任者研修とかあるいは十年経験者研修についても、不登校等の児童生徒の指導上の諸課題への対応のあり方とか、あるいはカウンセリング等の内容を盛り込んだ研修のモデル例を各委員会に示すなどによりまして、その研修の充実を図っているところでございます。

 また、独立行政法人教員研修センターにおきましては、生徒指導上の諸課題に対応するための指導者の養成を目的とした研修を開設いたしまして、不登校への対応演習として事例研究による実践的な研修を実施するなど、不登校への適切な対応のための取り組みを充実させているところでございます。

 今後とも、初任者研修とか、あるいは十年研修を含め、不登校等の生徒指導上の諸課題への対応に対しては、実践的な研修の充実などによりまして、各学校において不登校の児童生徒への適切な対応が図られるように努めてまいらなければいかぬ、こう考えておるところでございます。

城井委員 ありがとうございます。

 不登校をきっかけとした事件を未然に防いでいくには、やはり生徒指導ができる教師の存在がもっともっと必要だと思います。究極的には、その教師のセンスによるところが大きいのかもしれません。しかし、情と理でいえば情の部分で子供とつながることができるか、教師自身が持つ熱をその子供に伝えることができるかというところ、このところがやはり問題解決のポイントだと思うわけであります。たかが一人という教員の認識であったり、あるいは機械的な対応であったりというところでは、やはり温度差が目立ちます。問題発生にまたつながってしまうということになります。

 以上の認識に立って、ぜひ不登校対応、実践的な部分で取り組んでいただきたいと思います。そして、一人でも多くの不登校の子供を救っていただきたい、そのために力を尽くしていただきたいということを、心からお願いを申し上げたいと思います。

 時間が少しずつなくなってきておりますけれども、次にもう一点だけ別の案件についてお伺いしたいと思っています。奨学金、とりわけ大学にかかわる奨学金についてお伺いをしたいと思います。

 大臣所信でも奨学金の充実、述べられておりましたけれども、これまで奨学金、どちらかといえば、育英か奨学かという議論を進めて、そして金額の充実を進めるというところにかなり力点が置かれてきているのではないかと理解をしております。しかし、そうした取り組みの中で落とし穴があったのではないかという感を、非常に強く持つことが最近ございました。

 ある方からのいわゆる陳情、訴えであったわけでございますけれども、各大学、とりわけ今回の件は国立大学ということになりますけれども、国立大学への現在の日本学生支援機構の指導が本末転倒な取り組みになっているという現場の声が、私のもとに届いてきております。どういうことか、少し詳しく申し上げたいと思います。

 国立大学の奨学金の窓口が、奨学金貸与、すなわちこれは借金であります、この借金を勧める営業マンと化しているような実態があるという声が届いているんです。国から各国立大学に割り当てられている貸与枠を埋めるために、奨学金窓口の職員が、借りる必要のない学生に言ってお願いをして、わざわざ借りてもらっているというような現状がある。

 何でそんなことをしているのか、少々ばかげているのではないかと私も最初は思いました。しかし、少しずつ聞いてくると何となくわかってきましたのは、もし大学側が貸与枠を埋め切らなかったということになったら、次年度からの枠が減らされるのではないかという懸念を、その職員の方を含めてお持ちであるということがあるわけであります。

 そこで、この現場の声を踏まえてお伺いしたいんですけれども、実際に、貸与枠の充足率が低いと各国立大学への予算額、次年度予算額というものは減額をしてしまうんでしょうか。これまでにそうした判断、決定をしたことがあるのか、各国立大学の貸与枠の決定方法及びその運用について教えてください。

石川政府参考人 奨学金の国立大学に対する貸し付けの状況等に対するお話でございます。

 奨学生の選考に当たりましては、効果的に事業を実施するために、独立行政法人の日本学生支援機構におきまして、一括選考をするというのではなくて、各学校からの推薦を最大限に尊重しつつ採用を決定するという仕組みをとってございます。具体的には、今委員からもお話ございましたように、各国公私立大学に貸与枠を配分するというやり方にしているところでございます。

 その配分の仕方でございますけれども、例えば、無利子奨学金におきましては、年度当初の各学校に対する採用数の配分につきましては、学校間の公平性を重視するという観点から、各学校の入学定員に応じた比例配分、これは五〇%のウエートを持たせております。これを基本といたしまして、そのほかに過去の採用実績、これが三〇%のウエートでございますが、それから各大学の元奨学生の滞納率あるいは返還の際の口座振替の加入率、このようなものも総合的に勘案いたしまして、貸与枠を配分しておるというやり方をとっております。

 その結果、前年度の実績数というようなものが当初の貸与枠の配分に影響するといったことは、確かに要素としてございますけれども、その点、希望者が推薦数に達しない大学があったとしましても、その不用分等につきましては希望者の多い大学に再配分をするなどして、適切な配分に努めているところでございます。

城井委員 そうしますと、例えば、ある年に枠が足りなくなった、前年度から減ってきたがために足りなくなったという状況になったときに、学生支援機構に対して各大学の窓口から相談を申し上げた場合には、配分に関して柔軟な対応ということはしていただけるという理解でよろしいですか。

石川政府参考人 各大学に対する配分につきましては、先ほど申し上げましたような考え方で、一応の配分枠というものを設定いたします。そういった意味で、その配分枠について、それぞれの大学で希望者が大変多くてそれを使い切ったという場合については、そのように対応させていただきますし、先ほど申し上げましたように、希望者が少なくて使い残すということもあるわけでございまして、さらに希望者が多かったりするような場合には例えば追加配分のケースとか、そういった場合にお申し出いただいて、枠の余裕があればまた改めて奨学金を差し上げるというようなことは可能かと思っております。

城井委員 先ほど御指摘申し上げましたように、一方で国立大学のように、余った枠を営業してでも埋めさせるというような本末転倒な取り組みがあるという声が伝わってくる部分がある一方で、私立の大学は枠が足りずに希望者殺到で四苦八苦しているというふうな声も伝わってくるわけであります。

 実際に、平成十五年度の無利子奨学金、国公立大学の学生への貸与率が学生全体に対して一五・九%であるにもかかわらず、私立は六・一%であります。学生数の比率は、同じ年の計算でも国公立が二六%、私立が七四%、圧倒的に私立が多いという状況の中で、どれぐらい私立の学生の希望がかなえられているかというところ、この点をぜひ踏まえつつ、今後の配分枠を含めての検討をぜひしていただきたいと思っております。

 時間がなくなってきておりますけれども、もう一点だけお伺いしたいと思っております。

 先ほど御指摘を申し上げました点に加えまして、もう一つ気になっている点があります。それは、延滞債権の問題でございます。平成十五年度で三カ月以上返還を延滞している者に絞っても、一千五百六十四億円にも達しているということを聞いております。この質問をする前に、会計検査院の方からも、平成七年度分決算と平成十三年度分決算の二回にわたって、旧日本育英会に対して延滞債権に対する指摘をされているということを、私も伺っております。

 しかし、その点を踏まえながらぜひお伺いしたいんですけれども、それだけ延滞債権が伸び続けているという状況の中で、しかも会計検査院から二度にわたる指摘を受けるという状況の中で、これまでのいわゆる返還金の回収方法の改善というのに本当に努めてきたのか、それが十分だったかというところを検証しなければならないと思っています。例えば、電話での督促ですとか、あるいは外部への委託ですとか、さまざまな改善策を講じてきたということは承知しておりますけれども、そうした回収方法を決めるに当たっても、事前の調査が極めて不十分だというふうに言わざるを得ないと思っているわけであります。

 最近、特に、不況による就職率の悪化あるいはフリーターがふえてきているということによりまして、返済を猶予してほしい、あるいは返済ができないという方がふえているという中で、実際に回収を行っていますけれども、聞くところによりますと、そうした貸付先あるいは連帯保証人の資産状況、あるいは経済状況を把握していないというふうに聞いています。特に、連帯保証人の保証能力について調査をしていないと聞くわけですけれども、保証人の保証能力を調査しなくて保証人という制度が成り立つのかという基本的な疑問に立ち返るわけですけれども、最後にこの点をお伺いしたいと思います。お願いいたします。

斉藤委員長 石川高等教育局長。

 質疑時間が過ぎておりますので、簡潔にお願いいたします。

石川政府参考人 返還金の回収に努めることは大変重要なことだと思っております。

 今お話のございました保証人に関する情報でございますけれども、奨学金の申し込み時に提出することになっております確認書におきまして、本人はもちろんでございますが、連帯保証人の氏名、住所、電話番号、それから連帯保証人の印鑑証明書の提出を求めておりますし、また、貸与終了に当たって提出することになっております返還誓約書におきましても、連帯保証人、保証人の住所、電話番号、それから勤務先、勤務先の電話番号、それから所得証明書等の提出を求めて、その辺の情報をしっかり把握して行っているところでございます。

城井委員 時間が参りましたので終わりますけれども、今お聞きしましたような状況ではまだ足りないのではないかと思っています。貸付先や連帯保証人の資産状況、経済状況、そして恐らく変わることも予想される貸与終了後の就労先、現在の就労先というところまできちんとつかんだ上でなければ、その回収先が現在どういう状況にあるかというところをしっかりと把握した上での回収にならないんではないかと思いますので、その点も踏まえていただきながら、今後の貸与業務とそして回収業務、ぜひ取り組んでいただきたいと思います。

 このことをお願いして、私の質問を終わります。ありがとうございました。

斉藤委員長 石井郁子さん。

石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。

 まず、二月十四日に発生した大阪府寝屋川中央小学校における教職員殺傷事件に関して質問をいたします。

 この事件で男性教諭が亡くなりました。二人の方が重傷で、今も入院しているわけでございます。また、そして多数の児童が心の傷を負っています。私は、亡くなられた鴨崎先生の御冥福を祈るとともに、負傷された先生の一日も早い御回復を願うものであります。

 二〇〇一年六月には、大阪教育大附属小学校の本当に悲惨な事件がありました。それを教訓にして、再びあのような事件が起こらないようにと取り組んできたやさきのことでありまして、安全であるべき学校でこのような事件が再び起きたことにつきまして、文部科学大臣はどのように受けとめていらっしゃるでしょうか。お尋ねいたします。

中山国務大臣 今回の事件につきましては、これは起こってはならない事件でございます。大変痛ましい事件でございまして、被害に遭われて亡くなられた方に心から御冥福を申し上げますとともに、けがをされた方にお見舞い申し上げたいと思います。

 特に、今回は、平成十三年に発生した大阪教育大学附属池田小学校のある同じ大阪で今回のような事件が発生したという点において、大変な衝撃を受けているところでございます。

石井(郁)委員 当の寝屋川市教育委員会は、「学校園における幼児児童生徒の安全を確保するために」という危機管理マニュアルを持っています。しかし、そこを運用するに当たっては、教職員の目と心で対応せよという認識でできているんですね。

 文科省に伺いますが、寝屋川市の中央小学校に聞き取りに行ったようでございますが、あの学校にはインターホンが取りつけられています。防犯カメラもあったはずですが、だれの指示でそれを取りつけたんでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪府の教育委員会から聴取したところによりますと、この中央小学校に設置されておりますインターホン、防犯カメラにつきましては、この小学校の前の校長先生が十六年三月に寄附されたものと伺っているところでございます。

石井(郁)委員 十六年ですから、昨年ようやくできたということでもありますし、大体教育委員会ではなくて、校長先生のいわば私費でつけられている。これをつけることに対しても、教育委員会は、勝手に取りつけるなとか、やめろとかというふうに言ったということも聞いています。子供たちは安全のために笛を下げているんですけれども、この笛はPTAが支出して渡しているという状況なんです。この小学校は、昨年、危機管理の訓練が行われましたけれども、そこでは、さすまたとか木製の三角定規とか竹ぼうきで体を守るということであったというふうに言っています。

 さて、文部科学省として危機管理マニュアルを持っているわけですね、文科省は。こういう点でも、ハード面での具体的な支援というのはどうなっているのかと私は伺わなければならないんですね。この危機管理マニュアルで見ますと、テレビドアホンはあるか、インターホンはあるか、非常用押しボタンはあるか、防犯カメラ等々挙げられていますけれども、では、これらの設置状況、文部科学省としては把握しているでしょうか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 文部科学省では、学校の安全管理の徹底の一環として、全国の国公私立の小中高等学校等を対象にいたしまして、学校の安全管理の取り組み状況について調査を行っているところでございます。その調査によりますと、十六年の三月現在で、防犯カメラ、センサー、インターホン等の防犯監視システム、これを整備している学校の割合は、全体で四五・四%でございます。

石井(郁)委員 その数字を一応承っておきましょう。

 当の寝屋川市ですけれども、寝屋川市の教職員組合、緊急調査をいたしました。インターホンがあるのは三十七校中八校です。しかも、寄附でつけられています。監視カメラは三十七校中九校です。全部これは寄附による設置なんです。寄附ですよ。

 再びこのような学校に対する、あるいは学校が安全な場所にならないような事件を繰り返してはならないということでありましたけれども、やはり、緊急の整備計画というものがなくて、その予算措置もしてこないということがあったんじゃないか。だから、こういう点での設置というのをやはり進めていくべきではないのか。寄附に頼ってやっているというのは、余りにも文科省の施策としてこれはいかがかと言わざるを得ません。それが一点。

 それから、今回は途中で一人の先生が亡くなり、職員室にいた二人の先生が刺されましたけれども、その職員室のずっと奥の方に放送室というのがあって、全校に放送することができない状況でもあるんですね。

 ですから、今学校で言われているのは、事件が起きた教室、職員室もそうですけれども、緊急のブザーで、あるいは電話で、全校にそれが伝わるようなそういう連絡網というのも必要だということも強い要望が出されています。これらも含めて検討対象にすべきだと思いますが、この予算措置についていかがでしょうか。これは文部科学大臣に伺いたいと思います。

中山国務大臣 今回の中央小学校では、放送設備が職員室から行き来ができる隣の部屋にありまして、犯人が職員室にいたため、その放送設備を利用できなかったと大阪府教育委員会から聞いておるところでございます。

 今回の事件のような緊急事態の発生時においては、学校内において事件の発生や負傷者の有無などの情報を収集、提供できる体制の整備が有効と考えられております。

 なお、文部省が行った学校の安全管理の取り組み状況に関する調査の結果によりますと、これは平成十六年三月三十一日で、校内緊急通話システムを整備している学校の割合は三九・二%ということでございまして、こういったシステムを整備するということが非常に有効だと考えますけれども、具体的にどのような設備を整備するかにつきましては、これは学校とかあるいは地域の状況等を踏まえまして、各学校の設置者においてこれらの検討をしていただいて措置していただくことが必要である、このように考えております。

石井(郁)委員 危機管理マニュアルには、点検項目の中に、きちんと学校の施設設備等の面で次のような対策を講じているかということで挙げられているわけですよ。では、その設置の裏づけもなければ、点検も今後文科省としてもしないということになれば、これは単なる作文にしかすぎなくなってしまうわけですね。

 では、伺いますが、この危機管理マニュアルを見る限り、鴨崎先生はマニュアルどおりの対応をしたと思われますけれども、文部科学省としてはどのようにつかんでいますか。

素川政府参考人 今回の事件におきまして、教職員は学校への不審者侵入時の危機管理マニュアルに沿った行動をとっていたものと承知しているところでございます。

石井(郁)委員 そのとおりなんです。にもかかわらずこういう事件に遭う。では、どうしたらいいのか、何が足りないのかということになりませんか。

 そこで、次に伺いたいのは、当日は、チャレンジクラブというのがあって、多くの先生が外に出ていました。だから、言われるように、職員室には二人の先生しかいなかった。校長先生も出張、教頭も出張、事務職員もいない。そういう中で事件が起きているんですね。管理職は一体どこへ行っていたんでしょうか。ちょっと答えてください。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 大阪府教育委員会によりますと、事件発生時、校長と教頭、教務主任については会議に出席していました。校長は大阪府の主催の会議、教頭と教務主任は寝屋川市主催の会議に出席していたと伺っているところでございます。

石井(郁)委員 その会議がどういう会議なのかということも私は確かめたいんですが、今はいいです。たしか、いろいろな研修の会議だというふうにも聞いておりますけれども。

 今現場では、管理職の先生方が会議会議等に追われて、日常的にいないという状況がかなり広がっているんじゃないでしょうかということが一つあります。だから、鴨崎先生はいわば一人で対応されたわけですよね。しかも、危機管理マニュアルどおりに対応した。では、どうしたらいいのかというものがあるわけです。

 私は、この点でも、文科省が出されたこのマニュアルにはこういうふうにあるんですね。「不審者による緊急事態発生に備え、次のような組織、体制等が整備されているか。」、その第一に挙がっているのは、直ちに校長、教頭、教職員、子供に情報が伝達されて、避難誘導されているかどうかと挙がっている。しかし、今管理者はいないじゃないですか。どうするんですか。最もそこで責任を負うべきそういう方々がいらっしゃらない、これは大変な事態でしょう。

 さらにお話し申し上げますと、職員室には日常的に二人から三人しかいないんだ、一人しかいない場合もある。しかし、学校というのはたくさんの訪問者があります、いろいろな方が。もう五分置きにインターホンが鳴るというんですね。それをだれが対応するか。もう対応しているだけでも大変な状況だ、追われている。テレビモニターももう見ていられないという状況で、モニターをつけても、これはありがた迷惑だという話さえ出てくるわけです。

 だから、モニターとかインターホンがあっても、見る人がいないとこれは役に立たないわけですよ。よく言われるように、監視システムをいっぱいつけました、監視カメラつけましたって、だれが見ているか、見ている人がいなかったら意味をなさないでしょう。こういう状況があるということを申し上げたいというふうに思うんですね。ですから、私は、設備というのはあくまでも補助的なものだと思います。やはり人がいてこそ、それが生かされる、機能すると思うんですね。

 しかし、今、学校は本当に驚くような状況でありまして、私も大阪ですから、この学校の先生に私も伺いました。そうしますと、もう一日じゅう走り回っている、子供のいろいろな対応に追われている、昼食だって五分で済ませている、もう毎日毎日そんな神わざのような日ですという話がありました。

 それから、学校では用務員の方がだんだんいなくなりました。警備員も減っています。予算削減のしわ寄せというのが、やはりこうして学校からマンパワーを奪ってきているんですね。平成元年から十四年まで、警備員その他で四千八百六人が三千八十五人と減っています。警備員の配置率というのは全国でも四・九%、約五%ぐらいしかないんじゃありませんか。だから、教職員だけではもう限界もある。

 そういう意味でも、私は、こういう事件を繰り返さないためにも、現場からは、警備員の配置、どういう名称で言うかはいろいろありますけれども、強い要望があります。大阪府は、この四月から緊急にやはり小中学校に措置したいということも決めています。

 私は、本当に文部科学省として、こういう警備員の配置を初めとして学校に必要な職員を今配置する、やはり真剣に、緊急に措置をすべきではないかと思います。予算を含めて、これは今全校にといかなかったら、順次段階的にでいいと思いますけれども、計画的にでいいと思いますけれども、やるべきではないかと思いますが、再度、大臣、いかがでしょう。

中山国務大臣 今、石井委員のお話を聞きながら、本当にどうしたらいいんだろうかなという気持ちになっているわけでございます。

 鴨崎先生もマニュアルどおり行動された。しかし、卒業生と称する少年が後ろから急に刺す、それに対してどういうふうに防御できたのかなということを思いますと、これは別に学校だけではなくて、一般社会においてもそういうことはあるわけでございますから、そういうものとして考えても、これを防ぐのはなかなか難しいな、こう思うわけでございます。

 授業のとき、管理職の先生方がいらっしゃらなかったと。これについても、やはり日ごろから、そういうときにはどうするんだ、学校から校長も教頭もいなくなるけれどもそういうときはどうするんだとか、そういったことを日ごろからやはり話し合っておくべきじゃないかなというようなことも考えます。

 確かに、警備員を配置することも一つの方法だ、こう思うわけでございます。もちろん金もかかりますけれども、では、警備員を置くから絶対大丈夫かというと、やはりそうでもない。やはり日ごろから教職員の方々がそういう危機管理意識を持って常に臨んでおるということが非常に大事だろう。

 いろいろなことを考えるわけでございますが、予算という面におきましては、文科省は今、義務教育費国庫負担制度の問題、いろいろ課題はあるわけでございますけれども、総額裁量制のもとにおいて、それぞれの地域においてどのようにこの予算を使っていくかということ、まさに現場といいますか、地方に任されているわけでございますから、そういった中で、それぞれの地域の特性、学校の場所、その状況等を踏まえて、どういった形で防犯ということに取り組んでいくのがベストなのかということについてはまさに現場が中心になって考えていただきたいし、文部科学省としては、それに対して最大限の支援をしていくという体制をとらなきゃいけない、こう思っております。

石井(郁)委員 私が申し上げましたのは、こういう危機管理マニュアルをつくっても、それを裏づける体制というものがなければ、これ自身が本当に単なる作文に終わってしまいませんか。実際、寝屋川市の教育委員会では、目と心で対応せよと。目と心でですよ。しかし、今、いろいろな意味で、学校の安全、子供たちの安全、人命ということを、教職員の命も含めて考えなければいけない、残念ながらそういう状況になってきている。そういう中では、安全のためには、本当に予算措置も含めたしっかりとした計画、対応というのをしなきゃいけないんじゃないかということなんですね。

 それで、伺いますが、平成十三年に起きた学校内犯罪というのは幾らあるでしょう。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 警察庁の調べによります学校で発生した刑法犯認知件数、このデータによりますと、平成十三年、学校で発生した刑法犯の件数四万一千六百六件ということになっております。

石井(郁)委員 四万件を超えている、こういう犯罪件数ですよ。

 やはり、残念ながら、今日本の社会がこういうことになっているというところから出発しなきゃいけないわけでしょう。

 この危機管理マニュアルでも、その点では、学校内も決して安全な場所とは言えなくなっている、改めて、学校、家庭、地域が一体となって子供の安全を考えねばならなくなっているということをこの数字が示しているというふうに述べています。

 私は、こういう認識に立つんだったら、これをただ文科省が、学校、家庭、地域が一体となりやってくださいと、ただそういうかけ声をかけるだけじゃなくて、それを本当にハードの面で物質的にも保障する体制をやはりつくらなくちゃいけないんじゃないですか。だから、警備員を配置するということも、やはり教育関係の職員として制度化する、そのぐらいのことを考えていいと思うんですね。そういうお考えはありませんか。そして、それを全校に配置したら、一体どのぐらいの予算がかかりますか。

素川政府参考人 全国の小中学校全校に配置した場合、どの程度の予算が必要なのかという仮の計算でございますけれども、公私立のすべての小中学校にそれぞれ一人を配置する、一人当たりの単価をどれぐらいにするかということはいろいろあろうと思いますけれども、額は多くありませんけれども、例えば二百万というふうに設定した場合には約七百億円弱というような経費になろうかと思います。

石井(郁)委員 一応伺っておきましょう。何とかそういう体制をとってほしいというふうに思うんです。

 中山大臣は、特に教育改革、この教育問題ではスピーディーな対応とずっとおっしゃっているわけですから、この安全、こういう問題でこそやはりスピーディーな対応が求められているというふうに思うんですね。ぜひ、この安全確保のための教職員の加配とか学校警備員の配置ということを強く求めておきたいと思います。

 さて、それに関係してなんですが、私は、こういうハード面とともに、本当に今、学校が地域や家庭と一体となって楽しい学校になっているのかどうか、それは一人一人の子供が大切にされているのかどうか、子供にとって学校が居場所でなければならないということはよく言われることなんですけれども、そういうためにも、やはり本当に、学校の規模や内容、教師の対応等々が問題になると思うんです。

 そこで、伺いますが、この少年、残念ながら卒業生だったわけですから、小中学校の学校規模はどのぐらいか、一クラスの人数は何人だったんでしょうか。

銭谷政府参考人 まず、加害少年が在籍をしていた小学校の当時の児童数でございますけれども、少年が一年生のときから順に申し上げますと、一年生のときは八百三十一人でございます。卒業する六年生のときは六百七十六人でございます。

 それから、一学級当たりの児童数でございますけれども、一年生のときは三十六・一人、それで六年生のときが三十三・八人ということでございます。小学校だけでよろしゅうございましょうか。

 中学校も申し上げますと、中学校の方は、一年生のときが七百五十一人、三年生のときが六百九十一人でございます。

 それから、一学級当たりの生徒数は、一年生のときが三十四・一人、三年生のときが三十六・四人ということでございます。

石井(郁)委員 もう一点、数字を伺いたいのは、その小中学校に不登校の子供たちは何人いたんでしょうか。

銭谷政府参考人 不登校の児童生徒数でございますが、小学校は、少年が一年から四年生時まではちょっと不明でございまして、五年生のときに一人いた、六年生のときはいなかったというふうに承知をいたしております。それから、中学校は、これは数字を申し上げますと、一年生のときは二十四人、二年生のときが三十人、三年生のときが二十人というふうに承知をいたしております。

石井(郁)委員 今伺ったのは、やはり一クラスの人数が三十数人という人数は、やはり多過ぎると思うんですね。

 これは私どもがよく言ってきたことですけれども、先進国では大体二十五人前後じゃないですか。今、子供たちというのは、不登校を初めとして、本当にさまざまな問題を抱えています。家庭の事情も非常に複雑です。そういう点では、本当に一人一人に目が行き届く、本当にその子に合わせた指導ができるという点では、やはりクラスの人数を二十五人程度に下げなきゃいけない。これは二十一世紀、そういう決断を本当に文部科学省としてほしい、この三十人学級ということですけれども、三十人学級に国としてやはり踏み出してほしいということを私は強く申し上げたいし、現場からもその声が強く出ています。

 そういう点で、私は、来年度からの第八次の教職員の配置計画があるわけですから、早急に立てるということ。そして、伺いますと、スクールカウンセラー、随分文部科学省は努力してきたと思いますが、小学校には常駐の配置というのはないんですね。やはり私は、常駐のスクールカウンセラーの配置ということが必要だというふうに思います。

 そのほかいろいろな、専門家の配置というか、人たちがもっともっと学校には欲しいというふうに私はかねがね思っているんですけれども、財政事情ということだけ言わずに、本当に子供たちの、議論になっているような、一人一人の力を伸ばしていく、そして人間的な成長を本当に保障する、そういう学校になるためにも、三十人学級にはぜひ踏み込むべきだし、新たな教職員加配というものを考えるべきだと思いますが、再度、この点での大臣の御答弁をいただきたいと思います。

中山国務大臣 十七年度に完成します第七次定数改善計画におきましては、これは、教科に応じた二十人程度の少人数指導等が行われるようになっておるわけでございまして、五年計画で二万六千九百人の教職員定数が改善された、こういうことでございます。その結果、教員一人当たりの児童生徒数は欧米並みの水準に改善されることになりまして、平成十六年度には、小学校で十八・四人、中学校では十五・一人となっております。

 また、スクールカウンセラーにつきましても、今御指摘ありましたけれども、公立中学校のすべての生徒がスクールカウンセラーに相談できるように、その配置の充実に努めていきたいと思っておるところでございます。

 私も、実は、小学校、中学校のころは五十人以上のクラスでございましたし、集団的な行動とかそういったものを学ぶにはある程度の数が必要じゃないか、こういうふうな認識であったものでございますけれども、大臣になりまして、あちこち回りますと、本当に現場の先生方から言われるのは、昔の子供たちに比べて今は手がかかるんだというふうなことでございます。私の妹も先生をしておりましたけれども、それは兄さん、違うよ、本当にもう少し減らさないと先生方も大変だ、こういうふうなことを聞きまして、本当にそういう意味で、少人数といいますか、少しずつでもやはりクラスの数を減らす方にいかないとこれはいけないんだな、そういうことは思っております。

 今後、中教審におきまして、義務教育等のあり方についていろいろ検討いただきますので、それを踏まえて進めていきたい、このように考えております。

石井(郁)委員 都道府県というか地方レベルでは、もう随分と三十人学級が実施に移ってきています。だから、国として、本当に今ここで決断をするというか、それが大きく求められているということを私は強く申し上げておきたいと思います。

 次の問題ですが、学習指導要領の見直しの問題でございます。

 先日、大臣は、中教審にこの学習指導要領の見直しの諮問をされたわけであります。

 そこで、伺いたいんですが、私はきょうもう一つ、平成十二年の教育白書「我が国の文教施策」というのを持ってまいりました。今見直しだと言われているこの学習指導要領ですけれども、このようなクエスチョンとアンサーがありました。

 これは文科省自身がつくったことですが、「学習指導要領が改訂され、教える内容が減ることにより学力が低下するのではないかと心配なのですが、どうなのでしょうか?」、国民のそういう心配があると。答えとして、「共通に学ぶ知識の量は減りますが、ゆとりをもって繰り返し学ぶことで基礎・基本の確実な定着を図り、自分で学ぼうとする意欲や学び方をしっかり身に付けさせるとともに、高等学校卒業レベルの教育内容の水準はこれまでどおりとしており、学力が低下することはないようにしています。」と、これは明確に言い切っているわけであります。

 そうすると、大臣、これは間違いだったということですか。

中山国務大臣 間違いだったということではないと思いますけれども、ここにありますように、「本人のやる気次第でこれまでよりも深い内容を学ぶことができるのです。」とありますように、まさに、新しい学習指導要領が目的としておりました、子供たちが学ぶ意欲を持って主体的、積極的に学習活動に取り組むなど、本来のねらいが十分達成しておれば十分な学力が身につくものだ、こう考えるわけでございます。残念ながら、こうしたねらいが十分達成されていないのではないか、あるいは、そのための手だてが十分講じられていないのではないか、こういったことを今問題意識として持っているところでございます。

石井(郁)委員 私、微妙にちょっと御答弁、後でもゆっくりちょっと考えたいと思いますけれども。

 では、ねらいが達成されない、やり方の問題だということなんですか。このねらい、定めたことは間違いでなかったというふうにも今聞こえるんですが、でも、何か根本的に学習指導要領に今問題がありという発言が大臣の方からは聞こえてくるわけで、そうすると、違うんじゃないかなというふうに思うんですね。

 先日の中教審に対する大臣あいさつでも、要するに、子供たちの学力には低下傾向が見られる、それから、先ほど来、無気力な子供たちがふえているということで言っているわけで、そういう点で、今の学習指導要領に問題ありと。だから見直すんでしょう。だって、見直しをもう諮問されているわけですから。

 では、今の学習指導要領に問題がありという立場から発想されているというふうに思うんですが、違いますか。

中山国務大臣 学習指導要領によりまして、要するに、今までと違って、基礎、基本的なことをしっかり教えて、そして、自分の頭で考えて判断して行動する、そういうことがやれれば学力も落ちることはないんだろう、こう思っておるわけでございます。

 しかし、現実問題として、あの国際的な学力調査等を見ますと、日本の子供たちの学力が低下傾向にある、これは否めないと思うわけでございまして、どうしてそうなっているんだろうかという問題意識を持っているわけでございまして、そこのところを私たちは今検証しながら、学習指導要領を変えるべき点があれば変えていかなきゃいけないんじゃないかと考えておるところでございます。

石井(郁)委員 専ら、子供たちが学力低下だという話が出されている。しかし、文科省自身は、三年前の学習指導要領でも、決して学力低下することありませんと述べていらっしゃったわけですよ。

 これは、本文の中でも、我が国の児童生徒の学力は、国際的に見ておおむね良好です、そこから出発したんですよね。そして、「数学や理科が好きであるとか、将来これらに関する職業に就きたいと思う子供の割合が、国際的にみて最低レベルであるなどの問題点」はあると。

 「新しい学習指導要領では、このような子どもたちの学習の状況も踏まえ、小・中学校では、各学年ごとにみれば教育内容を三割程度減らしていますが、その多くの部分は上の学年や上の学校段階に移して、従来上の段階で扱っていた内容と合わせて教えることなどにより、体系的にわかりやすく、子どもたちにとって理解しやすいようにしています。」と。

 だから、このとおりちゃんとやれば、そんな学力が低下することはありませんとはっきり言っていたわけでしょう。

 私が尋ねたいのは、このときに文科省が述べていたことは、今どうなんですか、間違いだ、そういう判断ですか。

中山国務大臣 ですから、十二年度の我が国の文教施策より抜粋のこの文章、まさにこのとおりであれば、学力は低下することはありませんとその当時は思っていたんですね。

 だけれども、私が申し上げているのは、十二年にこうなったから学力が低下してきたということではなくて、それ以前からの問題だろうと。新しい学習要領の結果学力が落ちたということじゃなくて、長い間の、長い間といいますか、私は、日本の経済が低迷した十数年のことを考えているわけですけれども、日本全体が停滞といいますか、経済社会が無気力になっている中で、子供たちが学ぶ意欲といいますか、何のために勉強するんだ、そういう動機づけがだんだん弱くなってきている、そっちの方により問題があるのじゃないかということも考えるわけでございます。

 ここに書いてある、確かに断定して、低下することはありませんと書いてありますが、これはまさに本人のやる気次第で、やる気があるということを前提にして、ありません、こう言ったのではないかと思うわけでございまして、本人のやる気がどうも薄まっているというところが問題ではないか。どうしたらもっとやる気を出させるか、出させる教育、授業を行えるかということが私は課題ではないかと思うわけでございまして、そういったことを含めて、私どもも現場に行きましていろんな話を聞いておりますけれども、中教審においても議論していただきたい、こう考えておるところでございます。

石井(郁)委員 私はやっぱり、今伺いますと、全然話が別の筋のような気がしてならないんですね。

 つまり、本人のやる気だとか動機づけだとかという問題は、学習指導要領が決めている内容とちょっと別な話じゃありませんか、それは。今、問題は、学力低下だという話題になっている、しかも、専らその内容上の問題、それをどういうふうに学んでいくかという内容上の問題に今なっているわけで、あるいは時間数だとかということが多くの議論なんですけれども、子供たちのやる気とか動機づけだという問題でいうと、本当にそれはもう日本社会全体、先ほど前の委員の質問もありましたけれども、本当に社会全体、家庭も、大人全体の中で生まれていることでありますから、それは全然別な性格の問題ではないのかというふうに思うんですね。

 だから、その点で申し上げたいのは、文科省の側から、もう学習指導要領がくるくる変わったり、教科の編成がくるくる変わったり、それから、時間数がどんどん変わったりする、そういうことが現場に押しつけられる、今現場はそういうふうに受けとめているわけでしょう。

 だって、総合学習というのは、三年前にあれも大変な議論をして、賛否両論ありました。しかし、総合学習というのは、それこそ動機づけ、子供たちのやる気を引き出すために大変ある面で効果があるというか、そういう位置として導入された。それが、総合学習をやっても、やる気が全くなくなってきた、一体どういうことだったのか、こうなるわけでしょう。

 ですから、私申し上げたいのは、国立教育政策研究所の調査でも、もっと現場を踏まえた改革にしてほしい、文科省が上から一方的にやってくる、しかも、くるくる変わる、こういうことではもう本当に対応できないということを言われているわけです。朝令暮改だという声も現場から聞こえてきます。だから、こういう言い方をして現場が混乱をしている、私は、混乱を文科省が押しつけている、そこが大変重大だと思っています。

 そして、これは大臣は言われましたけれども、本当にこの数年の、指導要領も含めて、一体何が問題なのかという検証が必要だというのは私はそのとおりだと思います。だから、教育内容の編成の根拠というのは一体何だったのか、そして、本当に、何が今子供たちとかみ合って学力につながるのか等々、やはりその検証は要ると思います。科学的な根拠が要ると思います。そのためにもやはり開かれた国民的な議論が必要だというふうに思うんですね。

 そういう点でいいますと、私は、今のやり方というのは、本当にひどく文科省として現場に混乱を押しつけている、そういう自覚と反省はございますか。

中山国務大臣 どうも、文科省が押しつけているとか何か、そう言われますが、私どもいつも言っていますのは、これはもう教育というのはできるだけ現場に任せる。学校、そして教育委員会、市町村に任せるんだ。現場がそれぞれの地域の特色に応じて創意工夫をしてやってください、どこの地域の子供にも負けない子供たちを育ててください、こういうことを言っているわけでございまして、何か、くるくる変わるとか、朝令暮改だとか、現場が混乱するとか、もう少し子供の立場から考えていただきたいと思うんです。

 先生方に申し上げたいのは、本当に先生方一生懸命頑張っておられますよ。ですから、子供たちのためにどうしたらいいかということはもう本当にそれぞれ創意工夫をしておられる。文部省が言う前にいろいろなことを先取りしてやっておられるところもあり、すばらしい成果を上げておられるところもあるわけでございまして、どうか、文部省が押しつけているとか、くるくる変わるとか、こういうことは決してないということは御理解いただきたいと思います。

 今回のことについても、もう三年たちますから、三年たったらいろんなことはやはり検証しなきゃいけないんですよね。検証して、変えるか変えないかということはそれからでございまして、指導要領を変えると初めから言っているわけじゃなくて、三年たったから検証をして、総合的学習の時間も含めて、本当に有効に使われているんだろうかどうかということを、まさに私たちは現場に行って見てこよう、いろいろな方々の御意見も聞きながら、よりよい教育のために、教育改革のために邁進していきたい、こういうことを申し上げているわけでございます。

石井(郁)委員 現場に任せるというふうにおっしゃいまして、私は本当にそれがそのとおりされたらいいと思うんですよ。しかし、学習指導要領というのは一律に決めているじゃありませんか。それはやはりかなりの拘束力、かなりというか拘束力があるというのは政府自身がずっと言われたことじゃありませんか。だから、画一的に学習指導要領で現場はやはり押しつけられているんですよ。

 では、本当に指導要領を外して、現場に自由な裁量権を文科省は認めますか。私はそうすべきだと思いますが、その点でも後で御答弁いただきたいと思います。

 ここで、今、学力で世界一ということで注目されているフィンランドなんですけれども、ここでは、教育省の国家予算というのは保持したままで、国家の教育委員会による教育内容、教師教育に対する統制というのを大幅に緩和しています。地方行政と学校に権限を移譲しています。だから、教師の自由は本当に拡大している。創造性を高める改革を進めています。

 私は、教育には自由と創造性というのがないとやはりうまくいかないというふうに思うんですね。だから、カリキュラムというのは国は大枠で目標をつくっているだけであって、事細かな内容というのは、どう達成するかとか、どんな時間を組んでやるかとか、それは各学校の校長にゆだねる、学校に押しつけずに裁量を与えているということなんですね。教科書についても、国の関与はありません。非常にやはり自由度が拡大しています。

 私は、その点で、後でというか、教育基本法の議論とも重なるんですけれども、教育基本法が施行された一九四七年、戦後の教育の中で学習指導要領がもともと位置づけられていたのは試案ということでありました。その試案という言葉に込めた意味というのは、序論でこう書いていました。

 これまでの教育では、その内容を中央で決めると、それをどんなところでも、どんな児童にも一様に当てはめていこうとした。だから、どうしても画一的になって、教育の実際の場での創意工夫がされる余地はなかった。このようなことは、教育の実際にいろいろ不都合をもたらしたし、教育の生気をそぐようになったということがあるんですね。

 ところが、文科省自身がこの試案を外し、どんどん指導要領に拘束性を強めてきたじゃありませんか。では、本当に現場に任せるというのだったら、文科大臣、本当にその拘束性を外してください。いかがですか。

中山国務大臣 そもそも学習指導要領は、全国的に一定の教育水準を確保するなどの観点から、各学校が編成する教育課程の基準として、国が教育基本法の規定に基づき、全国共通に指導すべき各教科等の目標や大まかな内容を告示して定めているものでございまして、この学習指導要領のもとで、各学校において創意工夫を生かした教育課程が編成、実施されているものでございます。

 何度も繰り返しますが、押しつけとかそういうことじゃございませんが、やはり国として、到達目標といいますか、先ほども民主党の委員からも御指摘ありましたが、国として到達目標というのはやはりあるべきじゃないかという御指摘がありました。私はそのとおりだと思うわけでございまして、現場に任せますけれども、じゃ、自由勝手にやればいいというものじゃない。やはり国家として、これぐらいのことは学ばせてほしい、これぐらいのことは子供たちに知ってほしいというのはあって当然じゃないかと思うわけでございまして、それを押しつけと言われるかどうかは、考え方が違うというふうに申し上げたいと思います。

石井(郁)委員 私も、だから大枠は決めることはあっていいと認めているんですよ。その大枠でやってほしいと。後で、そこはまた検証したいと思います。

 最後に、時間で、一点だけ伺いたいと思います。

 教育基本法改正問題がいろいろ議論となっているところでありまして、当委員会でも、大臣からは、今国会の改正法案の提出を断念しているわけではないという話がございましたので、一点伺わせていただきます。

 就任時の記者会見で、この問題では大臣は、教育基本法改正案にどう盛り込むのかという問題で、国を愛する心と愛国心は同じだ、そういう理解になればいいし、その方向で進んでもらいたいというふうに述べておられました。一月二十九日に開かれた、これは宮崎県の都城での大臣就任祝賀の会のあいさつの中では、教育基本法改正案について、私としては、愛国心という言葉でまとめ、改正したいというふうにお考えを示されました。

 私は、もちろん教育基本法は改正すべきでないし、その理由もないという立場でございますけれども、もし政府案として提出されるということになれば、大臣としては、愛国心というものを盛り込むおつもりですか。それが一点。

 それから、二〇〇二年四月二十一日に開かれたタウンミーティング、そこでは宗教教育にも触れて、宗教的情操、宗教教育は大事なものと述べられまして、一人一人の生活の上でも、世界の上にも大事なことを日本人はわかっていない、宗教教育について教えることが何か悪いことのような、避けて通ってきたのではないかと思うわけですということも述べていらっしゃいます。大臣は、宗教教育を復活させるおつもりですか。

 この二点、短い時間で恐縮ですが、お答えください。

中山国務大臣 教育改革を進める中で、やはり教育の根本にさかのぼった議論というのはどうしても必要だ。いろいろ現場のこと等については、本当に現場に任せていろいろやるような方向で検討していますが、どういう日本人を育てるんだというふうなことの根本にさかのぼった議論というのは、これはもう絶対必要だと思っているわけでございまして、これは私が言うまでもなく、歴代の内閣もそのことについてずっと取り組んできたわけでございます。

 今の教育基本法、私は、確かに立派な理念をうたっているし、間違っていないと思うんですけれども、もう既に制定して本当に長い間たちまして、その間に、経済社会、本当に時代が変わってまいりました。その中で、一体どういうふうにこれからの教育を行っていくんだ、そういう原点に立ち返って、教育基本法の改正を速やかにやっていただきたい、やりたい、こう思っております。

 その中で、一つ愛国心という言葉でございますが、この世に生まれたありがたさ、そして、この日本という国に生まれてよかったな、そういう思い、この思いを次なる世代にも伝えていきたい、もっといい国にして、この国を次の世代にバトンタッチしたい、そういう思いというのは愛国心じゃないかな、私はこう思うわけでございます。

 それから、宗教教育ということにつきましても確かに私は発言いたしましたが、何か宗教を語ることが日本ではタブーみたいになっていますが、例えばイラクとかイランとかああいったところで、なぜ自爆テロ、自分が死ぬんだけれども、しかし、それでもって相手を殺す、そういう自爆テロがなぜ起こるんだというようなことは日本の子供たちにわかりませんですよね。そういう世界で起こっているいろいろな出来事の中で、宗教の持つ重みというもの、それから、個人個人の人生において、やはり宗教というものは非常に大きな重みを持っているんだということについても理解する、いろいろな方はいろいろな考え、いろいろな思想を持っているんだ、そういったことも尊重する、そういう気持ちを育てる意味からも、私は宗教的な情操の涵養という言葉を使っていますけれども、そういったものも必要ではないか、このように考えているところでございます。

 いずれにいたしましても、私がどうこう言う前に、いろいろな方々が本当に議論を重ねて、深みのある議論をもとにして、本当に基本法ですから、改正する以上は、すばらしい教育基本法の改正といいますか、本当に創定みたいな、制定みたいな気持ちでやるべきじゃないかな、やっていただきたいなと考えているところでございます。

石井(郁)委員 終わります。

斉藤委員長 午後四時五十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。

    午後三時五十八分休憩

     ――――◇―――――

    午後四時五十六分開議

斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。

 質疑を続行いたします。横光克彦君。

横光委員 社民党の横光克彦でございます。

 党首討論、熱い討論の後、また、こうして文科委員会でお疲れのところ、私、最後、時間を与えていただいておりますので、どうかひとつおつき合いのほどよろしくお願いを申し上げます。

 私も、最初、先般の大阪府の寝屋川市の中央小学校での本当に痛ましい、悲しい事件についてお尋ねしたいと思うんですが、亡くなられた鴨崎先生の御冥福をお祈りいたしますとともに、重傷を負われた二人の教職員に心からお見舞いを申し上げたいと思います。また、一日も早い心と体の回復を願っているところでございます。

 鴨崎先生は、御案内のように、生徒からは慕われ、そして保護者からも信頼をされていたという本当にすばらしい先生であったわけでございますが、それだけに、今回の事件は、私は、とうとい犠牲となってしまったな、このように思っております。

 だれにとっても安心で安全な場所でなければならない学校で、またもやこういった殺傷事件が起きてしまいました。極めて残念であると申し上げなければなりませんが、と同時に、やはり学校の安全な管理のあり方に対して、私は新たな課題が生じた、このように思っております。

 事件の容疑者は、この学校の卒業生で十七歳の少年ということでございます。二〇〇一年六月に発生しました大阪教育大附属池田小学校の事件、これは非常に衝撃的な事件だったわけですが、非常にまだまだ記憶に新しいわけでございます。その後も、二〇〇三年十二月には京都府宇治市立宇治小学校、また、兵庫県伊丹市立桜台小学校の事件など、学校に不審者が侵入したことにより子供たちが危険にさらされるという事件が後を絶っていないわけでございます。

 このように、近年、学校を舞台とした凶悪事件が多発しているわけでございますが、警察庁の調査によれば、昨年一年間に小学校に不審者が侵入して児童が危険な目に遭うおそれがあったケース、これが全国で十九件起きたということでございます。全国の小学校、中学校の数からすればわずかな数かもしれませんが、この十九件というものの持つ意味は、私は、命にかかわるだけに非常に大きな件数であるなという気がいたしております。

 今回の寝屋川の中央小学校の事件では、容疑者が少年ということもあって、慎重に事実関係の解明が進められるべきであると考えておりますが、現在、文部科学省が把握しているこの事件の概要について、まずお伺いしたいと思うんです。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもにおきましては、先週四人の職員を現地に派遣いたしまして、学校の安全管理体制を中心に事情を把握するよう努めてまいったところでございます。

 現在、私どもが設けておりますプロジェクトチームにおきまして、その分析をし、対策を立てるということで検討を始めようと思っているところでございます。

 事件の概要につきましては、新聞報道等で相当詳細に紹介されているところでございますし、教育委員会等では、むしろ警察の方からの情報が多くて、私どもの大阪府、寝屋川市の両教育委員会からの情報ではむしろ十分でないという点はあろうかと思いますけれども、私どもは新聞で出ていると同様の情報、さらに加えまして、私どもとしては、学校の安全管理体制、緊急通報装置とかそういったところのあり方というものを中心に実態を把握し、分析を進めてまいりたいと考えているところでございます。

横光委員 今、省内に安全な学校づくりの方策を検討するプロジェクトチームをつくった、そしてまた、いろいろな対策に取り組んでおると。また、学校においても、それぞれ、PTAあるいは地域の人々と連携協力しながら、学校の安全体制づくりに積極的に取り組んでいるところもあるわけでございますが、今回の事件を見たときに、今や、学校で子供を守るというだけではなくて、まさに教職員の安全についても守らなければならない、そうしなければ十全な教育ができない、そういう事態に立ち至っていると思うわけでございます。

 そこで、先ほど私、石井委員の質問を聞いてびっくりしたんですが、この寝屋川の小学校の防犯カメラは校長先生が自費でつけられたという話を聞いて、しかも、そのときに教育委員会からいろいろと意見を言われたと。こんなことが現実に、学校では、現場ではあるんですね。あったということを私も初めて知ったんですが。これは調査した結果恐らくわかったと思うんですが、このことに対して教育委員会にはどのような、いわゆる意見を文部省としては申し上げたんですか。

素川政府参考人 お答え申し上げます。

 私どもといたしましては、学校の安全管理体制の全体を評価いたしまして、しかる後に、改善すべき点はどうかということで分析の結果をまとめたいと思っております。

 個々の聞き取りの点につきまして、現在のところ、一つ一つについてはコメントといいますか、それはまだ正式にはしておらないところでございますけれども、きちんと評価をしてまいりたいと思っております。

横光委員 遅いんじゃないんですか。挙げてこういった問題は、教育委員会が取り組まなきゃならないことを校長先生がみずから取り組んだ。それが今回明るみになったわけです、こういう悲惨な事件を教訓として。そうした場合は、やはり教育委員会のあり方というものを文科省はしっかりと指令を出す、指導を出すということを早急に私はやるべきであると。まだやっていないということを聞きまして、遅いんじゃないかという気がいたしております。

 実は私、今度の土日に地元へ帰って、学校の先生とお話ししたんですが、冗談とも本音ともとれる言葉で、馳先生がいらっしゃいませんけれども、自分たちも格闘技を身につけなければだめになったというようなことを言われたんですね。まさに冗談です。しかし、冗談とも言えなくなったでしょう、これは。先生が格闘技を身につけなきゃならない。ですから、そういうために学校の先生になったわけじゃないわけですね。そういう事態が今起きているわけでございます。

 本当にこういった事件が発生すると、保護者は、子供たちが学校に行っている間、うちの子が無事だろうかとずっと心配をしなくてはいけないような状況が起きる可能性もある。

 今月の十八日に、学校での事故防止を研究する全国・東京都学校安全教育研究大会が開かれまして、そこで、大阪教育大の例の池田小学校の津田副校長が、不審者侵入時の危機管理というテーマで講演をしたという記事を新聞で読みました。

 津田副校長は、教員は日本が安全な社会ではないことを認識しないと不審者が見えない、こう訴えておられます。自動車通用門が日常的にあいていて侵入を許したわけですが、閉まっていたら入らなかったという例の犯人の言葉がある、門の管理はそれだけ重要だ、そういうふうに語ってもおります。また、事件当日、校内で犯人とすれ違った教員が会釈をしながら声をかけなかったことに触れ、話しかける小さな勇気も必要なんだと強調したということでございます。

 こういったいろいろな経験や蓄積を、私はそういった知恵を活用して、まだまだやるべき対策、ハードもソフトもあるのではないかという気がしておるわけでございます。

 一方で、開かれた学校づくりということも進めておりまして、非常にこれは相まって難しい問題ではございますが、しかし、今回のような事件を防止するために、あらゆる対策をとらなければならないだろう。文科省を中心に関係省庁挙げて有効な対策に取り組まなければならないと思っておりますが、文科省、いかがですか。大臣、いかがですか。

中山国務大臣 地域に開かれた学校づくりということを文科省は提唱しているわけでございますが、これは学校が家庭や地域社会に対して働きかけを行って、地域社会とともに子供を育てていく、こういう観点に立って進められたものでございまして、地域に開かれた学校づくりというのが、この学校の安全確保に支障となるものではない。何も閉じてしまえばいいというものではなくて、むしろ開くことによって、地域の方々、保護者の人たちと一緒になって、子供たちの安全確保ということの意識も含めて、体制ができるんじゃないか、こういうふうに思っているわけでございます。

 今回の事件を契機に省内につくりましたプロジェクトチームにおきましても、学校安全のための方策の再点検ということと、それから学校、地域、家庭が連携した安全、安心な学校づくりのあり方ということに加えまして、開かれた学校づくりとの関係についても検討することにしているわけでございまして、いずれも御指摘のようにスピード感を持って対処していきたいと考えております。

横光委員 開かれた学校づくりとともに、なおさらに、それにかてて加えて安全対策をやる、私も同感でございます。

 午前中、大臣は、こういった事件はどこまで防げるのか、例えば後ろからああいった行為をとられたらどう防げるのか、あるいは、社会一般にもそういうことはあるというお話もございました。確かに社会全体が、私は、今殺人事件が急増していると思うわけですね。それも、恨みとかなんとかではない形での事件も多い。

 このようなことを考えたときには、やはり私は、社会全体での安全に対する意識というものを変える必要がある。安全のための金とかあるいは制度、こういったことも組む必要がもう出てきたのではないか。そういったことに意識を変えることがちょっとおくれているんじゃないか。安全にはコストがかかるんだ、こういう意識転換も今や必要ではないかという気がいたしております。これは文科省だけの問題ではないし、先ほど言いましたように各省庁連携して、さらに私は、政府を挙げてこの安全コストの問題を考えるべきではなかろうかと思っております。

 それで、先ほど石井委員の質問の中で、仮に二百万円とすると全国で七百億かかるというお話がございました。これは膨大な金でございます。膨大な金でございますが、では、その金と人の命とどちらが重いのかということも、これからみんなで論議していかなければならない。

 私は、そういった意味では、これから学校安全法なるものをやはり取り組む必要があるのではないかという気がいたしておりますが、このことにつきましてはまた後ほど、いずれかのときに論議させていただきたいと思っております。これは、学校安全法というのは私が勝手につけた名前ですけれども。

 この事件に関連して、心に傷を負った児童に対するスクールカウンセラーによる心のケアは十分なされているのか。先ほどの新潟中越地震の天災とまた違った意味での恐怖心が子供の心に宿っているわけでございます。それと同時に、四月にこの中央小学校に入学予定の子供の中にも、おびえて不安を抱える子供さんがいるという話を聞いております。

 こうした子供たちの心のケアも同時に行う必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

素川政府参考人 中央小学校の児童に対する心のケアについてお答え申し上げます。

 寝屋川市の教育委員会によりますと、二月十六、十七の二日間で教員が児童の全家庭を訪問し、その状況を保護者から聞き取り、カウンセリングの必要な生徒を把握したということでございまして、この際、五年生については、教員だけではなく専門のスクールカウンセラーが一緒に訪問したと伺っているところでございます。二月十八日の学校再開後、カウンセリングが必要と判断されました百四十五名の児童に対しカウンセリングを実施し、引き続きカウンセリングが必要と判断された児童二名につきましては、二月の二十一日に再度カウンセリングが行われたということでございます。

 また、大阪府の教育委員会によりますと、今後毎日四名のスクールカウンセラーを当該小学校に常駐させるということでございますので、このスクールカウンセラーによって広範なカウンセリングの対応が可能になると考えておるところでございます。

横光委員 どうかよろしくお願いを申し上げます。

 それでは次に、昨日、本会議で趣旨説明、質疑が行われました義教費の件についてお尋ねをいたします。

 これは、十七年度の義教費負担金の暫定的な減額措置が行われるという法案でございますが、先ほどからずっと大臣もお答えのように、あるいは文科省お答えのように、制度の根幹は維持する、国の責任は堅持する、費用負担について地方案を生かす方策を検討する等々の問題は、十七年秋までに中央教育審議会にて結論を得る。そして、それまでの暫定措置として四千二百五十億円削減すると。

 つまり、ことしの秋まで結論は先送りとなったわけでございますが、となりますと、中教審の役割、そしてまた責任、これは非常に私は重要になってくると思うんですね。これからの私たちの国の教育の方向性を変えるというぐらいの大きな役割、責任を今担っているわけですが、ここの中教審でこれから論議が、もう既に始まっていると思うんです。暫定的な措置とはいえ、既に十七年度には四千二百五十億円削減するということになっているわけです。となりますと、初めから削減ありきということが前提条件としてついているんじゃないかという気がして非常に心配しているんですが、このことが中教審に影響を与えるというようなことはないでしょうねということをお聞きしたいんですが、いかがでしょうか。

中山国務大臣 御指摘のように、昨年末の政府・与党合意に基づきまして、中教審において幅広い観点から検討が行われることとされておるわけでございまして、初めから御指摘のように削減ありきということで議論が行われることではないというふうに考えております。

横光委員 かねてから言われております財政論の立場からではなく、教育論の立場から検討を進めるというのが平成十四年末の三大臣合意の基本であったわけでございますし、また、鳥居中央教育審議会会長は、義務教育の将来像に責任を持って答えを出したいと言われておりますし、そういった中で、あくまでも中央教育審議会の意向を尊重するということになっているわけでございますので、仮に中教審が削減に反対という結論を出した場合には、確認をいたしますが、平成十八年度における四千二百五十億円の削減は取りやめる、そして平成十七年度の削減額の四千二百五十億円を復活させるということになろうかと思いますが、大臣の見解を伺いたいと思います。

中山国務大臣 昨年の三位一体改革の議論の中でいろいろ主張したわけでございますが、とりわけこの義務教育国庫負担制度について、経済財政諮問会議の場だけで議論するのはおかしいじゃないか、やはり教育にかかわる問題だから中教審で議論させてほしい、要するに、補助金改革あるいは地方分権という議論から国庫負担制度、国の責任を放棄する、そんなことがあってはいけないんじゃないか、こういうことを主張いたしまして、ことしの秋までに中央教育審議会で議論してもらおうということになったわけでございます。

 その結論がどうなるのか、どうなったときにこうなるという仮定の議論は差し控えたい、こう思うわけでございますが、中央教育審議会の議論が存続ということになった場合には、もちろんそれは尊重されてしかるべきじゃないか、このように考えております。

横光委員 わかりました。

 その中教審ですが、今度、メンバーも新たな新メンバーも加わって審議が始まっているわけですが、この三十名中二名が空席という異常な状況でスタートしているわけですね。この二名というのは、地方六団体が要求している三名の委員枠の求めに対して文科省が二名という地方枠をあけているわけでございますが、これで調整がつかないままスタートしておりますが、この中教審の委員選任にかかわる文部科学省と地方六団体の協議状況、これはどうなっているのか、お聞かせいただきたいと思います。

田中政府参考人 中央教育審議会の委員の選任に関してのお尋ねでございますけれども、御案内のように中教審は、初等中等教育から高等教育まで、学校教育を初め生涯学習、スポーツの振興等、幅広い事項を審議する機関でございまして、各界から幅広く有識者を登用する必要があることから、地方団体の代表の委員といたしましては、義務教育の教職員給与負担者としての立場にございます都道府県知事と、それから学校の設置管理者の立場にある市町村長から一人、計二人ということが適当と考えて、地方六団体に委員候補者の提示をお願いしているところでございますけれども、まだ提示がなされていない段階にございます。

 また、義務教育のあり方について、その具体的な審議を行います、中心となって審議を行う場といたしまして、総会のもとに義務教育特別部会を設置しておるところでございまして、この特別部会には、六団体の御要望どおり、地方団体の委員を三名加えたいということで当初から地方団体に提示をしているところでございますけれども、今の段階ではまだ委員候補者の御提示がないところでございまして、文部科学省といたしましては、引き続き地方団体に対しまして、速やかに委員候補者を提示していただいて議論に参画していただきたいということで、お願いをしてまいりたいと考えておるところでございます。

横光委員 いや、そうはいっても、もう審議が始まって、もう義務教育制度のあり方とか義務教育国庫負担金のことも審議がスタートしているんでしょう。それで、この中で、欠員のままスタートを続けるわけですか、それとも地方との協議がちゃんと調わなければ中断するんですか、そこのところをちょっと聞かせてください。

中山国務大臣 この中央教育審議会は、義務教育のことだけじゃなくて、もっと幅広く議論しておるわけでございます。

 特に、今回は、学習指導要領の全面的な見直しとかあるいは教員制度の改革だとかいろんなことを議論しているわけなものですから、地方団体からの委員を待っているわけにはいかなかったというのが実情でございますが、今週の月曜日に新しい知事会の会長になりました麻生知事が来られましたものですから、いいチャンスだから、ぜひかわったところで御推薦いただけないか、こういう話をしたところでございまして、私としては、近いうちに推薦といいますか提案があるもの、このように考えておるところでございます。

横光委員 中教審は申すまでもなく文科大臣の諮問機関でございますし、当然のように文科省にはこの審議会を正常化する責任があるわけでございます。一刻も早く正常な形で、この重要な課題を審議するわけでございますので、異常な形で審議したって信頼がありません。ですから、正常な形で一日も早くまとまるように全力を挙げて、地方の方たちも参加した中で、私は、真摯な論議をしていただきたい、このように思っております。

 この義教費国庫負担法の四千二百五十億は減額する、そして最終的な結論は秋に得るということですが、それ以外の、結局恒久的措置、就学困難な児童及び生徒に係る就学奨励についての国の補助に関する法律の一部改正等々、一部恒久的措置が、補助金がカットされたり、あるいは一部限定されております。

 これは、補助金カットのかわりに所得譲与税として税源移譲はされるわけです。そして、足りない分は交付税で補うわけでございますが、しかし、事は、補助金から一般財源となりますよね。こうなりますと、こういったいわゆる事業費がその部署に正確にこれから執行されるのかどうか非常に心配されるわけでございます。とりわけ就学困難な児童、この件は、要保護者にかかわる経費はこれまでどおり国が補助金としてやるけれども、準要保護者分はカットされるわけですね。準要保護者分というと、私はもう本当に厳しい世帯であろうと思っております。そして今、非常にこういった世帯がふえているんですね。それだけに、ここの事業費が、各自治体の意向によって、これは裁量で決められることになってしまったわけですので、そこのところでやはり薄くされるということは非常に問題が出てくる。

 そういった意味で、これから文科省としては、一般財源化されたとはいえ、この執行状況についてはどのように対応されるおつもりなのか、お聞かせください。

銭谷政府参考人 昨年十一月の三位一体に関する政府・与党合意に基づきまして、義務教育費国庫負担金を除く文部科学省の地方向け補助金で廃止、縮減されるものがあるわけでございます。

 これらにつきましては、ただいま先生からお話ございましたように、必要な財源は確保されているわけでございますが、今後とも、地方公共団体において、これら廃止、縮減される補助事業につきましても、地方の事業として適切に実施をされる必要があるわけでございます。

 特に、法令等によりまして、例えば就学援助事務のように、各地方公共団体に実施義務が課せられているといったような事務もあるわけでございますので、私どもといたしましては、こういった廃止される補助事業についても、義務教育の円滑な実施や教育条件の整備等を図る観点から重要な施策である考えております。

 今後、各地方公共団体における取り組み状況を把握するとともに、必要に応じて指導するなどして、適切に実施されるように努めてまいりたいと思っております。

横光委員 適切に措置されることが必要だと言われましたが、それは当然のことでございます。また、取り組み状況を把握して、その実態を調査することはできるかと思うんですが、その結果、どうなんですか。そこまでなんですか、文科省としては。その結果、先ほど言ったような薄い、厚いという状況が生まれてきた場合、それなりに意見を言えるということはできないんですか。

銭谷政府参考人 私ども、十七年度における各地方公共団体における廃止された補助金あるいは縮減された補助金の取り組み状況についてきちんと把握をしたいと思っておりますが、その後何ができるかということになりますと、やはり必要な事業であるということを御説明しつつ、必要に応じて指導するということになろうかと思っております。

横光委員 以前、学校図書整備費が一般財源化されて、結果、なかなかそれがほかのところにも使われるというような現実も起きたわけですね。今回は非常に弱いところの人たちがしわ寄せになることがないように、今、調査して、その上でまた指導もするという意向を示されましたので、どうかよろしくお願い申し上げます。

 終わります。

斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。

    午後五時二十六分散会


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